2005年
【慰安婦犠牲者の活動と関連記事】
2005年
列島だより/岡山/NHKに厳しく抗議
日本ジャーナリスト会議岡山支部の天野朋一代表委員ら八人は二十八日、岡山市内のNHK岡山放送局に対し「従軍慰安婦」番組への政治介入問題について、橋本元一NHK会長あてに文書で申し入れ。厳しく抗議するとともに全容解明、責任究明を求めました。
(2005年01月31日,「赤旗」)
政治介入許さない改革NHK会長らに要請書/婦人民主クラブ(再建)
婦人民主クラブ(再建)は二十九日、NHKの「従軍慰安婦」番組への政治介入について、小泉純一郎自民党総裁、日本放送協会会長に対し、要請書を提出しました。
小泉総裁への要請書は「表現の自由、国民の知る権利を侵す重大問題」と指摘し、直ちに国会で証人喚問を行い、真相を究明するよう求めています。
NHKに対しては、「『介入の事実はなかった』と真相を覆い隠す発言さえ行っており、許せません」と批判。第三者による調査機関を設置し、真相究明を始めるとともに、介入を許さない機構改革を要求しています。
また日本共産党、社民党、民主党の各党首あてに、国会での真相と責任の徹底追及を求める要請書を送りました。
( 2005年01月31日,「赤旗」)
NHKの「独立性に疑問」/フランス/ルモンド紙が報道
【パリ=浅田信幸】フランスのルモンド紙三十日付は、一連のスキャンダルに見舞われたNHK問題を報道し、「その独立性に疑問がでている」と伝えました。
記事はまず橋本新会長ら新経営陣が海老沢前会長らを顧問に迎えるという「失敗」によって「視聴者の不満のほどを測り間違えた」と指摘。
「従軍慰安婦」をめぐる番組の改変問題では、朝日新聞の報道に始まる経過に触れ、「このスキャンダルは政権党と公共放送の緊密かつ恒常的な結びつきを確認するものであり、その独立性に疑問がでている」とのべています。
また一連のスキャンダルは「保守政党内で毒気を増す右派のもとで、歴史をめぐる論議が一段ととげとげしくなっていることの兆候」だとし、同時に「信頼性を得ていたメディアに対する世論の信任の後退をも示している」と指摘しています。
( 2005年01月31日,「赤旗」)
番組介入/民放労連が大会アピール/放送の自由・独立脅かす
日本民間放送労働組合連合会(民放労連)は二十九、三十の両日、都内で臨時大会を開催。大会アピールと「憲法改悪に反対する」決議などを採択しました。
大会で焦点が当てられたことの一つは、NHKの「従軍慰安婦」番組への政治介入問題です。碓氷和哉委員長は開会あいさつで、「一連の不祥事も含めて受信料不払いが起き、国民の目は厳しい」と話しました。
司会者あいさつで、関東地連の杉本好造委員長は、NHKとは対照的にイラク戦争に参戦した政府に批判的な報道を貫いたイギリスの公共放送BBCのことをあげ、「市民とともに歩む放送局をつくっていこう」と呼び掛けました。
東京・MXテレビの代議員は「圧力に屈せず、自信を持ってできる放送のあり方を考えたい」と発言しました。
大会アピールには、政治家の介入が事実とすれば「放送の自由と独立を脅かす暴挙」であり、問われるのはメディアの「『国家権力からの独立』という絶対に譲ることのできない原則が守られているかどうかである」と盛り込まれています。
( 2005年01月31日,「赤旗」)
文化/強制収容所解放から60年/平和への橋渡し/ナチスの非道/福島から伝える
アウシュヴィッツ平和博物館(福島・白河市)をご存じですか? 多くのボランティアに支えられ、いのちと平和の尊さを伝えています。今年は、アウシュヴィッツ強制収容所解放から60年。平和博物館では今――。玄間太郎記者
小高い丘に移築された220年前の古民家。入り口に「アウシュヴィッツ平和博物館」の看板。
博物館前の広場で29日、解放60周年の国際イベントに呼応する市民の集いが開かれます。1000個近い手作りのアイスキャンドルをともして犠牲者を追悼し、平和への誓いを新たにします。
博物館には多くの人が訪れ、驚きと悲しみの表情で展示物を巡ります。
ポーランド国立アウシュヴィッツ博物館から借り受けた強制収容所の「囚人」服、トランク、くしや手鏡など犠牲者の遺品。毒ガス室や銃殺、人体実験、強制労働などの写真パネル…。
人間の尊厳を否定した残虐行為、絶望と恐怖。展示は一方、暴虐とたたかったコルチャック先生やコルベ神父などのことも伝えています。「…でも、私はあきらめません。人間の『良心』を信じています」というアンネ・フランクの言葉も。
敷地の一角に貨車が2両。ユダヤ人を強制収容所へ運んだ貨車に見立てたモニュメントです。
貨車の中の展示は「子どもの目に映った戦争」。目の前で行われた強制連行や肉親の処刑、児童労働…。ナチスの仕打ちを描いた抗議の絵です。
ひろがる会話
「アウシュヴィッツを繰り返すな」。イラク戦争の泥沼化や憲法9条改悪の危険な動きのなかで、入館者は増えています。多くの人が感想を書き記していきます。
「みなさんと会話がなりたつ博物館なんです。ホロコースト(ユダヤ人の大量虐殺)だけではなく『従軍慰安婦』や731部隊(細菌兵器の実験)という日本の加害問題にも話が広がって、平和への行動のきっかけにもなるんです」
館長の小渕真理さん(48)は話します。
展示室を遺影が静かに見つめています。初代館長の青木進々さんです。
栃木県塩谷町から移転をよぎなくされた博物館の存続運動の先頭に立ち、ここ白河市に建設が始まった02年の7月に他界しました。末期がんとたたかいながら東奔西走しました。しかし、開館式に姿を見せることはできませんでした。
88年から12年間、全国110カ所を巡回した「心に刻むアウシュヴィッツ展」。そこから始まった常設の平和博物館建設運動でした。資金難や土地探し、いくつもの困難を乗り越えて2000年4月に塩谷町に誕生。しかし、わずか2年たらずで閉館へ。「平和のとりでを守ろう」。青木さんの執念と全国のボランティアの尽力でこの地によみがえったのでした。
支える人びと
平和博物館は現在、90人余の正会員と約370人のサポーター(個人・団体の賛助会員)によって支えられ、運営されています。
6千坪の敷地を提供した白河醸造の専務・藤田龍文さん(36)も、副理事長の一人です。
「私も2回アウシュヴィッツを訪ねました。遺体の脂肪から作ったせっけんや髪の毛の膨大な山。人間はここまで狂えるのかと思いました。私にも3人の子どもがいます。人間のいのちの大切さを子どもたちに伝えたい」
主婦の石原サカエさん(55)は運営委員。地域で長年、平和運動に携わってきた人。
「犠牲者の遺品を見ることは、歴史の事実を知ることです。日本ではここでしか見られません。多くの人々に見て考えてもらい、イラク戦争にも思いをはせていただけたらと思います」
平和博物館では今年、さまざまな企画を計画しています。
4月には白河市移転2周年行事を、夏には「この子たちの夏」の朗読会、秋にはポーランドの著名な芸術家でアウシュヴィッツ強制収容所の生存者ユゼフ・シャイナ氏を招き講演会を開きます。
手狭な今の建物の増築と本館建設を構想、準備を急いでいます。
「もっと多くのボランティアやサポーターの力をお借りし、アウシュヴィッツの悲劇を平和な未来へつなぐ橋渡しにしたいのです。休んでいる暇はありません」
青木さんの遺志を継ぐ小渕館長の思いです。
展示室にその青木さんの色紙が飾られています。こう書かれています。
「平和の種を蒔(ま)きましょう」
問い合わせ先 福島県白河市白坂三輪台245 рO248(28)2108
アウシュヴィッツ強制収容所
第2次世界大戦時にナチス・ドイツが占領地ポーランドに建設した最大規模の強制収容所。150万人の尊い命が奪われた。広島の原爆ドームと同様に「人類が二度と繰り返してはならない20世紀の負の遺産」として、ユネスコ世界遺産に登録。
(2005年01月30日,「赤旗」)
国民と手を携えてやめさせたい増税改憲/通常国会ここが焦点/穀田さんの代表質問
「増税が押し寄せてくるが、頼れるのは共産党しかない」――こんな反響が寄せられた日本共産党の穀田恵二国対委員長の代表質問。何を明らかにしたのか、ポイントを紹介します。鈴木 誠記者
7兆円負担増/8年前の失政の二の舞いに
「重大なことはこれまでと質の違う、巨額の庶民負担増・大増税のレールを国民に押しつけようとしていることです」
穀田さんは、政府・与党がすすめる国民負担増が05年と06年の2年だけで7兆円にのぼる巨額のものだと告発しました。7兆円の大増税・負担増を追及したのは日本共産党だけでした。
―所得税・住民税の定率減税の廃止で総額3・3兆円。
―所得税の各種控除の縮小・廃止、年金や介護・雇用保険の負担増をあわせると7兆円。
この7兆円負担増がいかに道理がないか。穀田さんは、景気に及ぼす影響でも、97年に橋本内閣が犯した「橋本大失政の二の舞いになることは明らかだ」と指摘。財政再建をいうなら関西空港2期工事や巨大コンテナ港湾など、大型開発のムダを改めるのが当然なのに、それをせずに浪費のツケを国民に回すことは許されない、庶民の定率減税は縮小・廃止しながら、一体で実施された大企業や高額所得者への減税はそのままつづけるというやり方も、まったく道理がないと批判しました。
「さらに重大なことは、7兆円負担増に続いて、消費税の大増税が計画されていることです」と穀田さん。
小泉首相は施政方針演説で「税制の抜本的改革を行う」とのべました。穀田さんは「首相のいう『抜本的改革』とは消費税増税ではないのか」と指摘し、この2段階の大増税路線の中止を求めました。
これに対し小泉首相は、「景気は引き続きゆるやかな回復をつづけると見込んでいる」「定率減税縮減の影響は大きなものではない」と、負担増全体についてまともに答えませんでした。
NHKへ政治介入/真相の調査首相の責務
それまで静かだった議場が一転、騒然となったのが、穀田さんがNHK番組への政治介入事件についてとりあげたときでした。
明らかな事実は、「従軍慰安婦」にかかわる番組の放送前にNHKの放送総局長らが、当時内閣官房副長官だった安倍晋三氏らに面会して、番組の説明をし、その後、総局長らの指示で、番組内容が修正・改変されたということだ、とのべました。
そして、安倍氏自身がホームページ上でも認めているように、「明確に偏った内容」だとして「公正中立に」と言ったこと自体が、番組内容への政治介入になることは明らかであり、安倍氏らと会った後でNHKが2度にわたる大改変をしたのは否定できない事実だとのべました。
この行為が憲法21条が禁ずる事実上の事前検閲に当たり、放送法第3条にも反すると強調。「政治介入したのは、当時の内閣官房副長官と現職閣僚。真相を調査し、国民に明らかにするのは総理の責任だ」とただしました。
小泉首相は「NHKが調査をして圧力はないといっているので、憲法や放送法違反には当たらない」と調査を拒否しました。
9条の改悪/世界で生きる足場失う
災害対策では、住宅本体への公的支援を改めて提起。郵政民営化、「政治とカネ」など焦点の問題の最後に、外交・安保問題をとりあげた穀田さん。
昨年末政府が決めた「新防衛大綱」は、米軍がおこなう戦争に地球規模で参戦する、海外派兵の軍隊に自衛隊を根本的に変えようというもので、「この自衛隊の任務の大転換が憲法9条改悪の動きと連動していることは重大です」とのべました。
財界団体の日本経団連や自民党の改憲案がいずれも、「集団的自衛権の行使」を明記するよう迫っており、これは「海外で戦争ができる国」にすることにほかならないと指摘。「こうした道がほんとうに日本の進むべき道なのか」と次のように問いかけました。
―9条は日本が二度と戦争をしないと世界に誓った戦後日本の出発点であり、アジア共有の財産だ。
―9条改悪は、不戦の誓い、アジア共有の財産を投げ捨てるもので、日本がアジアの一員として、世界の中で生きていく足場を失わせるものだ。
首相は、「自民党はことし秋、憲法改正案をとりまとめる予定だ。憲法が実態にそぐわないのであれば憲法改正の議論を避ける必要はない」と答弁、改憲に固執する姿勢を示しました。
NHK追及迫力あった/郵政問題よくわかった/反響次つぎ
穀田恵二国対委員長の質問をテレビでみた人から「よかった」という感想が電話やEメールなどで寄せられました。
高知県の男性は「すごくよかった。憲法9条を『アジア共有の財産』だという指摘は大事。小泉首相も聞いていて、内心はそのとおりと思ったのではないか」と話しました。
京都市の青年は「国民負担増問題で、大企業の法人税減税に手をつけないことの追及には納得した」。同じく京都市民からは「NHK問題の質問は議場をわかせ、迫力もありよかった。いま話題の問題でもあり、がんばって追及してほしい」。
新潟県の年配の女性は「地震で工場がつぶれ、仕事をなくし困っている。穀田さんが一生懸命質問している姿をみて、もう共産党しか頼れないと思った」。
埼玉県の女性は「郵政民営化での質問は、たいへんわかりやすく、すっきりした。小泉首相は、あほらしい答弁しかできなかった。実家の福井県には99歳の母がいるが、民営化され、郵便局がなくなったら大変不便になる」と話しました。
(2005年01月30日,「赤旗」)
NHK改ざん問題で声明/大阪革新懇
大阪革新懇は二十九日に開いた代表世話人会で、NHKの番組改ざん問題について声明を出しました。
声明は番組への政治介入とそれによる改ざんは、憲法二一条に定める「表現の自由・検閲の禁止」や放送内容について外部からの介入を禁止した「放送法第三条」に違反し、民主主義を破壊する重大な問題だと指摘。
「従軍慰安婦」問題という今回の番組の中心部分が大きく改ざんされていることは、「アジアを侵略した日本の過去を覆い隠すことによって、日本を再び戦争する国につくりかえようとする狙いをもった歴史の隠ぺいであり、断じて許すわけにはいきません」とのべています。
(2005年01月30日,「赤旗」)
週間日誌/05年1月23日〜29日
政治・経済
◆自民新憲法起草委が初会合 自民党の新憲法起草委員会の初会合が開かれ、九条を焦点に個別の条文を検討するため、十の小委員会で三月末をめどに報告書をとりまとめへ。四月に委員長試案(24日)
◆穀田国対委員長が小泉首相追及 日本共産党の穀田恵二国対委員長は、衆院本会議の代表質問に立ち、大負担増計画や改憲問題などで首相を追及。「日本経済のかじ取りを根本的に誤るものだ」と批判(25日)(写真)
◆政府税調、06年度税制「改正」論議スタート 政府税調は二〇〇六年度税制「改正」へむけ議論を開始。消費税率引き上げの時期や幅も検討課題に(25日)
◆「連帯の社会を」市田書記局長が代表質問 日本共産党の市田忠義書記局長は、参院本会議の代表質問で平和やくらしの大きな論点を示し、小泉首相の姿勢を問う(26日)
◆04年の失業率4・7% 総務省が発表した二〇〇四年平均の完全失業率は前年を下回ったものの、4・7%と依然高水準(28日)
社会・国民運動
◆海老沢会長が辞任 NHKの海老沢勝二会長は、「従軍慰安婦」番組への政治介入が問題となるなか、一連の不祥事を理由とする受信料不払いの増加が止まらず、事実上の引責辞任(25日)
◆森ビル常務ら書類送検 東京都港区の六本木ヒルズで昨年三月、大阪府吹田市の溝川涼ちゃん=当時(6っ)=が大型回転扉に頭を挟まれ死亡した事故で、施設を管理する森ビル(港区)と、販売元の三和タジマ(豊島区)の幹部ら計六人を業務上過失致死容疑で書類送検(26日)
◆国籍条項訴訟で最高裁「違憲」判決を破棄 外国籍を理由に東京都が管理職試験を拒否したのは憲法などに違反するとして、在日韓国人二世の鄭香均さん(54)が都に損害賠償などを求めた訴訟で、最高裁は違憲とした東京高裁の判決を破棄、鄭さんの訴えを退けた(26日)
◆橋本元首相らの不起訴は不当 自民党旧橋本派(平成研究会)の一億円ヤミ献金事件で、東京第二検察審査会は、橋本龍太郎元首相、野中広務元同党幹事長、青木幹雄同党参院議員会長の不起訴処分を不当とする議決(27日)
◆全労連が評議員会 全労連が第三十六回評議員会を東京都内で開催。賃金改善やパートの均等待遇、青年雇用などを求める「統一要請書」を全国の職場・地域で提出する運動を呼びかけ(27・28日)
国際
◆アウシュビッツ解放から60周年、国連で特別総会 アウシュビッツ強制収容所の解放六十周年を記念してニューヨークの国連本部では特別総会が開かれる(24日)
◆イスラエル、パレスチナ接触再開 イスラエル政府のワイスグラス首相府長官とパレスチナ自治政府のアリカット交渉相がエルサレムで協議(26日)
◆世界社会フォーラム始まる 戦争と差別のない、平和で公正、民主的な「もう一つの世界」を目指す第五回世界社会フォーラムが開幕。約百二十カ国から十万人以上が参加(26日)
◆アウシュビッツで記念式典 ポーランド南部オシフィエンチムのアウシュビッツ強制収容所跡では、解放から六十周年を記念した式典に四十以上の各国首脳や元収容者ら一万人が参加し、ホロコーストの悲劇を繰り返さないと決意表明(27日)(写真、ロイター)
( 2005年01月30日, 「赤旗」)
番組かいざん徹底究明を/東京地評がNHKに抗議
東京地評は二十六日、NHKに対し、「従軍慰安婦」問題の特集番組を自民党の安倍晋三幹事長代理や中川昭一経済産業相の政治介入をうけて改ざんしたことに抗議し、徹底究明と報道の自由を守ることを求める決議を手渡しました。
決議は、政治家の介入によって報道が偏向されたのであれば、「不偏不党」をうたった放送法に明確に違反する行為であるばかりか、憲法が定めた表現の自由、報道の自由への攻撃だと指摘。
また、すべての報道機関、マスコミが「不偏不党」の精神を貫くこと、第三者による調査・検証のための委員会の設置、安倍、中川両氏など関係者を国会に参考人として招致すること、NHKに対し、経営陣の刷新を含む公正中立な改革を求めています。
(2005年01月29日,「赤旗」)
森原公敏リポート/NHK介入と世界の視点
自民党の安倍晋三幹事長代理と中川昭一経済産業相が、NHKに圧力をかけて従軍慰安婦を扱った番組を改ざんさせた問題は、「表現の自由の侵害」「放送法違反で、憲法が禁じる検閲そのもの」として、重大な問題になっています。
しかし、日本のマスコミ報道がこの問題の重大性に正面から向き合っているものとなっているかどうか、この問題を最初に報じた朝日新聞とNHKとの間の泥仕合にしてしまうようなものもあらわれており、はなはだ心もとありません。
なにより、日本のマスコミ報道でまったく欠落しているのは、これがアジアと世界にどんな波紋を広げているかという視点です。欧米のマスコミも東京特派員の記事を掲載し、とりわけ、韓国、中国、東南アジア諸国では「歴史の隠ぺい」と批判されています。従軍慰安婦問題で旧日本軍と政府の関与を認めた一九九三年八月の日本政府見解の否定につながる改ざんですから、なおさらのことです。
韓国の盧武鉉大統領は、昨年末の日韓首脳会談後の記者会見で、「過去の歴史問題において、日本国民の間における道徳的な決断によって問題提起がされた際にそれに反応する日本国民の気持ちと、韓国が問題提起した際の日本国民の気持ちは異なりうると思う」との配慮を示し、日本国民の自主的な論議を見守る、と語っています。
戦後六十年のことし、日本の政治・社会のありようには、私たちが思っている以上にアジアと世界の関心と懸念が集まっています。
(もりはらきみとし・衆院北関東ブロック比例候補)
(2005年01月29日,「赤旗」)
番組への政治介入問題/NHKに真相解明要求/岡山のジャーナリスト会議
日本ジャーナリスト会議岡山支部の天野朋一代表委員ら八人は二十八日、岡山市内のNHK岡山放送局にたいし、「従軍慰安婦」番組への政治介入問題について、橋本元一NHK会長あてに文書で申し入れをしました。
自民党の安倍晋三幹事長代理、中川昭一経済産業相から放送内容の変更や中止を求める不当介入があり、番組内容が大幅に改ざんされたことが明らかになったと指摘、NHK幹部は「圧力はなかった」などと繰り返し、その姿勢は、放送法にてらしても間違いであり、驚くべき独善体質を見る思いがすると指摘しました。
そのうえで、番組・報道への政治家の介入は検閲行為であり、憲法が保障する「表現の自由」を大きく侵害するもので、これを受容したNHKは公共放送の主体性を放棄したものといわざるをえないと厳しく抗議しました。同時に、番組改ざんにいたる全容を徹底的に解明し、責任を明らかにするよう求めています。
応対した小池不二男岡山放送局副局長は「コメントはできない。申し入れ文書は会長に届ける」と述べました。
(2005年01月29日,「赤旗」)
レーダー/NHK番組への政治介入問題/やっぱり放送前に会っていた!?
「報道2001」中川議員のしどろもどろ
NHK番組政治介入事件。「従軍慰安婦問題」を直視しようとするものと、封じこめようとするものの大きな綱引きが始まるはずでした。
ところが途中からおかしな様相になってきました。圧力をかけた政治家と迎合したNHKという構図から「NHKVS朝日」へ。肝心の政治家は安全圏に隠れたかに見えました。
そんなとき、隠すより現る!
渦中の人、中川昭一経済産業相です。二十三日放送の「報道2001」(フジ系)で「緊急生反論」のはずが、逆に馬脚をあらわしてしまいました。
――NHKの伊東律子番組制作局長(当時)と会うくだり。
中川氏 …伊東さんは女性の方で初めてお会いして、この方はどういう方なんですかとお聞きをしたら、番組制作局長さんですと。…なんでこの方がいるんだろうと、一瞬あれっと思ったんですけれど、しかし、この件について実は内部でいろいろと番組をいま検討している最中ですと、こういうご説明が伊東さんからありました。
それを聞いた黒岩祐治キャスター。「『番組を検討している最中』というのは放送前(に会った)ということですね」と突っ込みます。とうとうと語っていたのが一転、しどろもどろになる中川氏。
あの発言はまずかったと誰からか指摘されたのでしょうか。二十五日、中川氏は改めてカメラの前に立ちました。「NHKの人に会ったのは、(番組放送後の二〇〇一年)二月二日のみだった」。怪しい弁明です。
百歩譲って、会ったのは放送後としましょう。しかし、問題の番組「問われる戦時性暴力」は、視聴率1%にもならなかった番組です。予算説明に日ごろ出向くことのない番組制作局長が、NHK予算を審議する総務委員でもない中川氏に、何をわざわざ説明に行ったのか。そこで中川氏は何を助言≠オたのか。
「報道2001」で中川氏はこんなふうにも語っていました。
中川氏 偏向があまりにも過ぎるんであれば、そういう報道は…すべきではないのではないかというようなことは申し上げました。
それ以降、NHKで「従軍慰安婦」がテーマの番組は登場していません。
(板)
( 2005年01月28日,「赤旗」)
政治介入問題/国民の知る権利侵害/全国革新懇がNHK申入れ/視聴者の電話連日4千件
全国革新懇(平和・民主・革新の日本をめざす全国の会)は二十七日、NHKを訪れ、同番組への政治介入問題について申し入れをおこないました。
NHK側は「従軍慰安婦」問題を扱った番組の内容が放送前に変更されたことについて、「自主的におこなったもの」と釈明。放送前に番組内容を特定の政治家に説明することについて「やめようとは考えていない」と答えました。
これに対して全国革新懇の代表は、今回、放送前の番組に自民党政治家が「ひどい内容」とNHK幹部に指摘したのち、内容の変更があったことはNHKも自民党の有力政治家も認めている事実であり、憲法の言論や報道の自由が問われている問題だと指摘。「政治介入」や「事前検閲」を継続させようとするNHKの態度についても、それでは国民の知る権利が保障されず、国民の不信は高まるばかりだと強調しました。
NHKは連日四千件の電話が寄せられていることを明らかにし、「きょうの申し入れは局幹部に正確に伝える」とのべました。
申し入れには、全国革新懇の小林洋二、四位直毅、高田公子の各代表世話人と荒川和明事務室長、東京革新懇と神奈川革新懇の代表が参加しました。
( 2005年01月28日,
NHK番組改変「「赤旗」)問われる戦時性暴力」/海老沢前会長追及していた/八田ひろ子前参院議員
放映直後、4年前から
自民党議員の介入によるNHK番組改変が大問題になっています。このさなか、NHK海老沢勝二会長が二十五日、辞任しました。番組が取り上げた「女性国際戦犯法廷」を傍聴し、「慰安婦問題解決促進法案」を何度も国会へ提出した日本共産党の八田ひろ子前参院議員は、四年前から海老沢会長らに国会で三度にわたり質問してきました。緊張のやり取りを振り返ります。(肩書は当時)
東海・北陸信越総局 唐沢俊治記者
「ヒロヒト有罪! ヒロヒト有罪!」。こぶしを掲げ歓声を上げる被害者をはじめとする外国人女性たち。二〇〇〇年十二月、女性国際戦犯法廷(VAWW―NETジャパン主催)が日本軍の性暴力について日本国と昭和天皇の有罪判決を言い渡した時、八田議員は興奮に沸き返る傍聴席にいました。
八田さんは「議員生活の中で一番の衝撃だった」と振り返ります。ところが、この法廷を取り上げたNHK番組ETVシリーズ「問われる戦時性暴力」(〇一年一月放送)が改変され、判決内容など重要部分が削除されたのです。
改変2カ月後抗議報道手に
〇一年三月二十九日、参院総務委員会。八田議員は、事実をゆがめ元「慰安婦」の心を傷つけた反省がなければ、戦争で女性への暴力が繰り返される≠ニの思いで、海老沢会長にただしました。
ハーバード大ライシャワー日本研究所長ら世界各国の学者・研究者三百六十人がNHK会長に番組改変で抗議文を出したと報道する新聞を手に、「公正中立に番組をつくるという立場からどう対応されたのか」と迫る八田議員。
それまで穏やかだった海老沢会長は、苦虫をかみつぶしたような表情で「編集の過程はそれぞれいろんなやりとりがあるわけであって、それについて私がここでいろいろ申し上げるものではありません」と回答拒否。そして、「政治的に公平に扱うというのが原則。意見が分かれる問題についてはそれを多角的に取り上げて国民の判断に資するというのがわれわれの公共放送の基本」と答弁していました。
放送倫理違反正面からただす
翌〇二年三月二十八日の同委員会で八田議員は、問題となった番組が通常放送より四分間短いことを指摘。NHK板谷駿一専務理事は「その手のことは結構ある」などと取り繕いましたが、ETVシリーズで四分間のカットはほかに例がないことを明らかにしました。
さらに〇四年三月三十日、八田議員はNHKの「放送倫理違反」について取り上げました。
番組に出演した米山リサさん(カリフォルニア大学準教授)が〇二年八月、発言の核心部分を削除・改変されたとして「放送と人権等権利に関する委員会」(BRC)に申し立て、BRCが〇三年に「人格権に対する配慮を欠き、放送倫理に違反する結果となった」と決定していたのです。
「放送倫理違反だというふうに指摘されたんですから、信頼回復に努めるべきだ」と八田議員。
しかし、海老沢会長は、「ある面で放送倫理にもとるようなことがあったかもしれませんが、全体から見れば…、NHKの編集の自由は認められたわけです」と放送倫理違反にはまともに答えず、問題をはぐらかしました。八田議員は「真摯(しんし)にお答えになっていない。これ(BRCの決定)を重く受けとめ対応していただきたい」と厳しく批判しました。
◇
八田さんは今回明らかになった介入問題について、「憲法を改悪したいと思っている人たちは、番組を変え歴史まで変えようとしている。人間の尊厳、女性の尊厳を考えず、戦争を美化する政党・政治家に厳しい審判を」と話します。
放送と人権等権利に関する委員会(BRC)
一九九七年五月にNHKと民間放送によって、放送番組による人権侵害を救済するために設立。第三者機関として公正・客観的に審理し問題解決にあたります。
(2005年01月27日,「赤旗」)
言論・表現の自由を守ろう/鳥取・国民救援会が宣伝
日本国民救援会鳥取県本部(船井昭一会長)は二十四日、JR鳥取駅前で街頭宣伝を行い、「言論・表現の自由を守ろう」と訴えました。
船井氏は、昨年末の東京・葛飾マンションビラ配布弾圧事件やNHK「従軍慰安婦」番組改ざん問題などを取り上げ「いま、憲法改悪の動きがあり『戦争する国』づくりに反対する国民の言論・表現活動への弾圧にほかならない。これを許してはなりません」とハンドマイクで訴えました。これにあわせて、マンションビラ配布弾圧事件を知らせるビラを通行人に渡しました。
受け取ったビラを早速に読む人も多くありました。
(2005年01月27日,「赤旗」)
小泉首相は解明責任放棄/人権連が抗議声明/NHK番組政治介入問題
全国地域人権運動総連合(人権連)は二十六日、安倍晋三自民党幹事長代理と中川昭一経産相がNHK「従軍慰安婦」番組の内容に介入した問題について、抗議声明を出しました。
声明は、小泉首相が「検閲には当たらず」「調査はしない」と内閣の重大問題であるにもかかわらず問題の解明責任を放棄していることを批判。NHKに対して放送の不偏不党、真実及び自立の保障、国民の立場で報道の自由に立脚した公共放送へ立ち返ることを要求しています。
政治権力とマスコミ報道との関係について、検閲につながる条文が含まれている「人権擁護法案」を今国会で政府・与党と「解同」が再提出しようとしていることを指摘し、反対の意を表明。声明は、問題をやみに葬り去ることなく真摯(しんし)な態度で徹底究明するよう求めています。
( 2005年01月27日,「赤旗」)
海老沢会長辞任は責任逃れ=^NHK裁判原告が緊急集会
NHKの海老沢勝二会長辞任から一夜明けた二十六日。衆院議員会館でNHK裁判の原告VAWW―NETジャパンが、緊急院内集会「女性国際戦犯法廷とNHK問題を考える会」をもち、約百三十人が参加しました。
「海老沢会長の辞任理由は不祥事で、政治介入は何もなかったことにされています。責任をとった辞任ではなく責任逃れの辞任」と切り出した共同代表の西野瑠美子さん。問題が「NHK対『朝日』」にすりかえられるなか、メディアへの政治介入と、「慰安婦」問題への政治圧力という原点に戻ることが大事だと話しました。
そもそも女性国際戦犯法廷とは何だったのか。なぜこの番組が、こんなにも改ざんされなければならなかったのか。
集会では「法廷」日本検事団の東澤靖弁護士から「法廷がやろうとしたことが、これまで沈黙の中に追いやられていた歴史的事実を明らかにしようとした試みだったから」と説明がありました。
法廷記録ビデオのダイジェストが上映されました。証言台に立とうとして気を失った中国の「慰安婦」。「日本に見学に来たのではない」と語気を強める東ティモールの「慰安婦」。加害証言をとつとつと語る元日本軍兵士。どれも番組では削除されたものでした。
集会には、日本共産党から、石井郁子、穀田恵二、佐々木憲昭、吉井英勝の各衆院議員、井上哲士、紙智子、小林みえこ、吉川春子の各参院議員が参加。社民党の福島瑞穂党首、民主党の議員らが参加しました。
( 2005年01月27日,「赤旗」)
国民救援会府本部も/山下衆院比例候補連帯のあいさつ
日本国民救援会大阪府本部は二十一日、大阪市北区・大阪グリーン会館で新春旗びらきを行い、七十五人が参加しました。
主催者を代表して戸谷茂樹会長があいさつ。日本共産党の山下よしき党府副委員長(衆院近畿ブロック比例候補)が「選挙の弾圧を許さないために精力的な活動をいただき感謝しています。マンションへのビラ配布弾圧、従軍慰安婦問題で政権与党の幹部がNHKへの介入。この二つの事件は、強さのあらわれではなく、弱さのあらわれだと思う」と連帯のあいさつをしました。
自由法曹団大阪支部、大阪労連なども連帯のあいさつをしました。
参加者は事件関係者を囲んで懇談。各事件関係者の勝利報告や訴えに拍手を送りました。
(2005年01月26日,「赤旗」)
憲法守れの世論を起こしたい/さいたまで学習会/吉川参院議員講師を務める
とっても分かりやすかった∞疑問に答えるためさらに学ぶ
日本共産党さいたま地区委員会は二十三日、吉川春子参院議員を講師に招き、憲法学習会をさいたま市内で開きました。二百二十人が参加しました。
吉川議員は、参院憲法調査会での議論を紹介しながら自民や民主の改憲策動を批判。「過半数を超える憲法九条擁護の世論に依拠すれば必ず九条を守ることができる」と運動を励ましました。また安倍晋三自民党幹事長代理らのNHK番組圧力問題について「検閲を禁止した憲法に明らかに違反」と糾弾し、「侵略戦争の反省や従軍慰安婦問題の解決を棚上げする日本は世界から批判されている」とのべました。
活動交流では「中学校区単位で『九条の会』を立ち上げて地域が明るくなった」「学者・文化人や宗教者の『九条の会』を組織中。憲法守れの世論を全県的に起こしたい」などの発言がありました。
「講演はわかりやすくよかった」という浦和区の女性(67)は「マスコミの影響で『外国から攻められたらどうする』と言う人も多い。疑問にもきちんと答えられるように学習を地域で強めていきたい」と決意を語りました。
(2005年01月26日,「赤旗」)
スマトラ沖地震・インド洋大津波/共産党が救援募金/白石・厚別地区委/NHKの番組改ざんも追及
日本共産党白石・厚別地区委員会は二十二日、東札幌ダイエー前で、インドネシア・スマトラ沖地震の被災者救援募金の訴えと、NHKの番組改ざん問題についての宣伝行動をしました。
千葉隆委員長がマイクを握り「昨年末のインドネシア・スマトラ沖地震・大津波の災害は二十二万人を超える人命を奪い、被害はいまも広がっています」「テレビなどを通じて悲惨な実態が明らかになっていますが、こうした被災者の救援のための募金の協力を」と訴えました。
また、従軍慰安婦をテーマにしたNHKの番組に、自民党の安倍晋三、中川昭一議員が圧力をかけ番組を改ざんしたことが大きな政治問題となっている事件についても触れ、「国会で真相の究明と責任の追及をもとめましょう」と呼びかけました。
スマトラ地震の救援募金には、若い青年男女の募金に応じる姿が目立ちました。
(2005年01月26日,「赤旗」)
民主主義の根幹にかかわる/NHK政治介入/全国革新懇が声明
「従軍慰安婦」についての「女性国際戦犯法廷」を扱ったNHK番組が事前に自民党政治家の圧力で改ざんされていた問題で、平和・民主・革新の日本をめざす全国の会(全国革新懇)は二十五日、「民主主義の根幹にかかわる重大な問題」だとする声明を発表しました。
声明は、番組が政治家の介入で改変されることは、憲法が禁ずる検閲に等しく、放送法が保障する報道の自由の侵害だと指摘。NHK幹部が政権党幹部の政治介入をかばう態度に終始していることは、放送の自律性の放棄であり、「視聴者にたいする重大な背信」だと批判しています。
そして、国会が真相究明と責任追及をすすめること、NHKが問題の真摯(しんし)な検証を行い、あるべき姿に立ち返ることを求めています。
( 2005年01月26日,「赤旗」)
穀田国対委員長の代表質問/衆院本会議
日本共産党の穀田恵二国対委員長が二十五日の衆院本会議で行った代表質問(大要)は次のとおりです。
私は、日本共産党を代表し、小泉総理の施政方針演説にたいして質問いたします。
質問に先立って、昨年夏以来あいついだ、国内外の災害で、被災された方々、亡くなられた方々に、心からのお見舞いと哀悼の意を表明するものであります。
住宅本体の再建への公的支援を
第一に、焦眉(しょうび)の緊急課題、災害対策について質問します。
被災地への機械的支援打ち切りやめよ
昨年の災害で被災した多くの方々が、生活と営業の再建をめざし、また地域の復興をめざして困難を抱えながらがんばっています。
中越大震災の被災地では、二b、三bの積雪によって、地震で損壊したわが家がいつ押しつぶされるかと、いうにいえない不安を抱えながら仮設住宅で暮らしています。
また、阪神・淡路大震災から十年たちましたが、被災者はいまだ元の生活を取り戻せていません。家賃負担に耐え切れずに災害復興公営住宅から追い立てられ、災害援護資金の返済のめどが立たずに取り立てを強制され、また中小事業者は、事業再建がままならない中で災害復旧資金の返済猶予が打ち切られようとしています。
被災者・被災地の実態をかえりみない、機械的な支援打ち切りは、ただちにやめることを強く要求します。
「住宅再建なくして生活再建なし」――10年の重要な教訓
この十年の重要な教訓は、「住宅再建なくして生活再建なし」ということです。そのためには、国の制度として住宅本体への公的支援に踏み出すことが、どうしても必要だということです。
住宅は個人の財産であると同時に地域社会を支える社会的存在です。何よりも国民一人ひとりの毎日の生活を支える土台そのものです。だからこそ旧国土庁の「被災者の住宅再建の在り方に関する検討委員会」は、個人住宅の再建は、地域社会の復興と深く結びついており、「地域にとってはある種の公共性を有している」との報告をとりまとめたのではありませんか。
鳥取県がはじめた住宅再建支援は、いま多くの自治体に広がり、「世論調査」でも、80%が「国の支援が必要」と答えています。
総理は、昨年八月のわが党の志位委員長の質問にたいして、住宅本体への公的支援の検討を約束しました。この間の災害の教訓をふまえ、いまこそ住宅本体の再建にたいする公的支援――「個人補償」に踏み込むべきではありませんか、明確な答弁を求めます。
国民への7兆円負担増と大増税路線やめよ
第二に、国民にたいする大負担増計画の問題です。
小泉総理は、就任以来「痛みに耐えれば明日がある」といい、サラリーマン本人の医療費三割負担、年金保険料の値上げなど、国民に耐え難い負担を押し付けてきました。そのうえ、いま重大なことは、これまでとは質の違う、巨額の庶民負担増・大増税へのレールを国民に押し付けようとしていることです。
総理は、施政方針演説で「定率減税の半減」の方針を明らかにしました。すでに与党税制調査会は、定率減税を二〇〇五年度に半減し、〇六年度に廃止する方針を決定しています。定率減税を廃止すれば、総額で三・三兆円もの負担増が国民に押し付けられることになります。
これだけではありません。政府・与党が、〇五年と〇六年の二年間に計画している負担増は、国民生活のあらゆる分野に及んでいます。
配偶者特別控除の廃止、公的年金控除や老年者控除の縮小・廃止、消費税の免税点の引き下げなど、増税が目白押しです。
さらに、年金保険料の値上げ、介護保険の利用料や保険料の値上げ、雇用保険料の値上げなど、社会保障のあらゆる分野で負担増の計画が進められています。
定率減税の縮小・廃止による三・三兆円の庶民増税に、これらの負担増をあわせると、庶民の家計が〇五年と〇六年の二年間でこうむる負担増は、合計七兆円にも及びます。
このような巨額の負担増を国民に押し付けることに、はたして道理があるでしょうか。私は、三つの角度からその問題点をただしたい。
第1の問題――大不況の引き金になった橋本内閣の大失政の二の舞い
第一は、景気に及ぼす影響です。
一九九七年、橋本内閣は、「財政危機打開」を理由に、消費税の3%から5%への引き上げなど、九兆円の国民負担増を実行しました。これが、大不況の引き金になったこと、そのことによって税収が数兆円規模で減り、深刻な財政悪化をもたらす結果に終わったことは、国民の記憶に新しいところです。
当時は、年間数兆円規模で家計の所得が伸びているときでした。それでも九兆円の負担増が所得の伸びを上回り、景気を奈落の底につき落としたのです。ところがこの数年間をみると、家計の所得は年間数兆円規模で減っています。この所得の減少に追い打ちをかける巨額の負担増を負わせたら、日本経済はどうなるか。橋本内閣の大失政の二の舞いになることは明らかではありませんか。
第2の問題――巨大開発の浪費改めず、つけを国民に回す
第二は、巨大開発の浪費をいっこうに改めていないことです。
総理は「公共事業の予算を減らした」といいますが、来年度予算をみても、関西空港二期工事や巨大コンテナ港湾など、巨大開発への予算は減らすどころか、大幅に増額しています。総理は、これらの巨大開発に採算と需要の見通しがあると考えているのですか。財務大臣の諮問機関である財政制度等審議会も、関西空港の需要が大幅に下回っている現状を受け、「慎重にあるべき」との提言を出していることを、どうとらえているのですか。
採算も需要も見通しのない巨大空港や巨大港湾へのムダ遣いを拡大しながら、そのつけは庶民にまわす、このようなやり方は、国民がとうてい納得できるものではありません。
第3の問題――大企業・高額所得者に減税続け、庶民には大増税
第三に、「定率減税」は、六年前(九九年)、「景気回復」のためとして、大企業の法人税減税や高額所得者減税などとセットで実施されたものでした。
ところが、定率減税は縮小・廃止しながら、同時に実施した大企業への減税二兆七千億円、高額所得者への減税五千億円はそのまま続けるというのです。
史上空前のもうけをあげている大企業への減税を続け、所得が毎年おちこんでいる庶民には大増税、こんな理不尽なやり方がどこにありますか。これもまったく道理がたたないではありませんか。
以上の三点について、総理の責任ある答弁を求めます。
首相の言う「抜本的改革」とは消費税増税
さらに重大なことは、七兆円負担増に続いて、消費税の大増税が計画されていることです。総理は、「私の任期中に消費税引き上げはしない」といってきました。
しかし、実際には、日本経団連が、二〇〇七年度の消費税の二ケタ増税を打ち出し、政府の税制調査会は「消費税の税率を引き上げていくことが必要である」と答申しています。谷垣財務大臣は、「〇七年度から消費税をお願いする形で議論していかなければならない」と答弁しています。
総理は、施政方針演説で、定率減税の半減にふれたあと、「税制の抜本的改革の具体化に向けた取り組みを進めてまいります」とのべましたが、ここでいう「抜本的改革」とは、消費税増税のことではありませんか。しかとお答え願いたい。
七兆円の負担増に続く消費税増税という二段階の大増税路線は、国民の暮らしを破壊するだけでなく、日本経済のかじ取りを根本的に誤るものです。その見直しと中止を強く要求するものであります。
国民の財産・郵便局ネットワーク破壊する郵政民営化に反対
「郵政民営化」についてききます。
この問題で、国民の多くが何よりも心配しているのは、身近なサービスがどうなるかということです。ところが総理は、この最大の問題について、まともな説明をいっさいしていません。
総理は、郵政事業を分割して、郵便、郵貯、簡保、窓口会社の四つの企業に切り離すとしています。ところが、政府の「基本方針」には、郵貯・簡保会社には「全国一律サービス」の義務がなされていません。これでは、地方や過疎地から、郵貯・簡保の窓口である郵便局が消えてなくなることは、明らかではありませんか。
総理は「民間にできることは民間に」といいますが、民間にできないサービスを地域住民に提供してきたのが郵便局にほかなりません。
過疎地にもあまねく店舗を置いて、貯金や保険サービスを提供している、大手銀行や生保会社があったらあげてみてください。全国あまねく公平に郵便を配達する郵便事業を、営利を第一に追求する民間事業者にできますか。
民営化によって、明治以来、国民の努力で築き上げてきた、まさに国民の財産である郵便局ネットワークを破壊することは許されません。
NHK番組への政治介入明白/内閣の責任は重大
第三に、NHKの番組にたいする政治介入事件についてです。
この問題で明らかな事実は、「従軍慰安婦」問題にかかわる番組について、その放送前に、NHKの放送総局長らが、当時内閣官房副長官であった安倍晋三氏らに面会し、番組の説明をし、その後に、総局長の指示で、番組内容が修正・改変されたということです。
NHKは、なぜ番組の放送前に、安倍氏に説明しに行ったのか。それは、NHK自身が記者会見で明らかにしているように、「安倍氏が『日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会』の幹部だったから」にほかなりません。
安倍氏は、自らのホームページでこうのべています。
「明確に偏った内容であることがわかり、私は、NHKがとりわけ求められている公正中立の立場で報道すべきではないかと指摘した」
NHKの番組を「明確に偏った内容」だとする立場にたつ安倍氏が、「公正中立に」といったこと自体が、番組内容への政治介入になることは明らかです。
現に、安倍氏らと会った直後に、NHKが、二度にわたって、番組内容の大改変をおこなったことは、だれも否定することのできない事実です。
総理は、安倍氏らの行為が、憲法二一条が禁止する事実上の事前検閲にあたり、放送法第三条「放送番組は、(中略)何人からも干渉され、又は規律されることがない」に反することは明白だとは考えませんか。
総理は「調査はしない」としていますが、政治介入をおこなったのは、当時の内閣官房副長官と現職閣僚であり、ことは内閣にかかわる問題なのであります。真相を調査し、国民に明らかにすることは、総理の当然の責任であります。答弁を求めます。
自民党にかかわる政治資金疑惑調査し実態と真相明かせ
第四に「政治とカネ」の問題です。
日歯連による橋本元総理への一億円献金問題について、昨年の政治倫理審査会で、橋本氏は、「受け取ったのは事実なのだろう」と渋々、認めました。しかし、肝心の献金の目的・使途は、依然として未解明です。関係者の証人喚問を求めるものであります。
また、総理が調査を約束した「迂回(うかい)献金」疑惑もヤミにつつまれたままです。そのうえ、あなたが派閥の長をつとめた「清和会」の所属議員にたいする、いわゆる「もち代」「氷代」の政治資金収支報告書への虚偽記載疑惑が新たに浮上しています。
総理、もはや人ごとではありません。一連の自民党にかかわる政治資金疑惑について調査し、その実態と真相を明らかにすることは、総理・総裁である、あなたの責任ではありませんか。
そもそも企業・団体献金は、カネの力で政治を動かすものであり、政治家へのものであれ、政党へのものであれ、本質的にわいろであります。政治腐敗の根絶のために全面禁止に踏み切ることを強く求めるものであります。
アジアと世界の平和の流れに合流することこそ日本の進むべき道
最後に、外交・安保問題、日本の進路の問題です。
自衛隊イラク派兵の根拠は総崩れ
自衛隊のイラク派兵の根拠はいよいよ総崩れになっています。
イラク戦争が、「大量破壊兵器の保有」というウソではじめられた戦争であり、国連憲章違反の侵略戦争であることは、いまや明白となりました。
米軍は、ファルージャなどで無差別攻撃を繰り広げ、イラク国民のいっそうの反発と抵抗を生み、イラク情勢のきわめて深刻な泥沼化をつくりだしています。
多国籍軍の撤退が相次ぎ、いまや「有志連合」は、世界の一握りにまで孤立しました。
アメリカ国内でも「イラク戦争は誤りだった」という世論が多数を占めるに至っています。アメリカの先制攻撃戦略とイラク占領は、深刻な破たんと矛盾に直面しているのであります。
しかも、サマワの陸上自衛隊の宿営地にたいする攻撃が常態化し、「非戦闘地域」というイラク特措法の虚構の論理さえも、もはや完全に崩れ去っているのであります。イラク派兵を続ける理由など、どこにもないではありませんか。政府は、自衛隊の撤退を決断すべきです。
「新大綱」で自衛隊は「海外派兵隊」に
国連憲章からも憲法からも説明のつかないイラク派兵を続けながら、政府は、昨年末、「新防衛大綱」を閣議決定しました。
「新大綱」の核心は、「海外活動」を自衛隊の「本来任務」とすることにあります。しかも、米軍と「共通の戦略」をもち、日米の役割分担を進めるとしています。これは、米軍がおこなう戦争に地球的な規模で参戦する、本格的な海外派兵のための軍隊に根本的に変えてしまおうというものではありませんか。
憲法九条が「戦力」を持たないと定めているもとで、自衛隊は、日本を防衛する必要最小限度の実力組織だから、違憲ではない、「専守防衛」だと、国民に説明してきたのではありませんか。
いったい、自衛隊の海外での活動、しかも、イラク戦争支援などの紛争地域、戦闘が継続する海外での活動を、自衛隊の「本来任務」とすることが、どうして憲法上許されるのですか。これでは、自衛隊ではなく、「海外派兵隊」ではありませんか。明確な答弁を求めます。
憲法9条はアジア共有の財産
自衛隊の任務の大転換が、憲法九条改憲の動きと連動していることは重大です。
この間明らかになった、自民党の「改憲草案」でも、財界の改憲「提言」でも、一番の問題は、自衛隊が米軍と共同で海外での武力行使を堂々とできるよう、集団的自衛権の行使を明記せよ、というものです。これは、海外で米軍と一体となって「戦争をできる国」にしようというものにほかなりません。
こうした道が、ほんとうに日本の進むべき道なのでしょうか。
憲法九条は、日本が二度と戦争をしないことを世界に公約し、誓った、戦後日本の出発点です。二千万人にのぼるアジアの人々と三百十万人にのぼる日本国民の犠牲のうえにつくられた憲法九条は、ひとり日本の憲法であるばかりか、「アジア共有の財産」なのであります。
九条を改悪することは、戦後日本の原点である「不戦の誓い」にそむき、アジアの共有の財産を投げ捨てるものです。それは、日本がアジアの一員として、世界の中で生きていく、足場をうしなうことになるのではありませんか。
国会内での改憲論議とはちがって、いま、多くの国民の中で、また世界各地で、憲法九条が掲げる平和の理想を広げようという声が澎湃(ほうはい)とおこっています。
私は、アジアと世界の平和の流れに合流し、憲法九条を守り生かすため、全力を尽くす決意を述べて、質問を終わります。
( 2005年01月26日,「赤旗」)
遅すぎた/視聴者が解任/NHK会長辞任で関係者談話
海老沢勝二NHK会長(70)の辞任で問題は解決しない――。「従軍慰安婦」問題にかかわるNHK番組改ざん問題のさなかの二十五日、海老沢氏は経営委員会に辞表を提出、ついに辞意を表明しました。海老沢辞任で問われるものはなにか。関係者に聞きました。
政治介入許さぬ体制を/元NHK記者椙山女学園大学教授川崎泰資さん/遅すぎた退陣というのが感想だ。
番組改ざん問題では、NHKと「朝日」のけんかのように描こうとする動きがある。番組に政治が介入し、NHKがそれを許したということこそが問題の中心だ。現NHKの首脳部と政治家は、結託してこの問題の本質をぼかそうとしている。海老沢氏が辞めてすむような問題ではなく、徹底的に明らかにすべきだ。
政界と癒着した海老沢氏の独裁体制が番組制作費の着服やカラ出張など一連の不祥事を隠ぺいしてきた。内部からの批判も封じられてきた。
政治介入は許さないという体制をきっちりと決めなければ問題は残ったままだ。
民主化求め運動続ける/全日本放送受信料労働組合中央書記長成澤浩さん
辞任というより視聴者・国民に解任された、あるいは追放というほうが正しいと思います。
私たちが昨年十月十三日に海老沢会長の辞任を要求した最大の理由はNHKの隠ぺい体質にあり、その隠ぺい体質のなか、私たちが懸念していた権力との癒着、政治介入の事実が明らかになるなどして、NHKの完全に腐りきった実態が露見し、海老沢会長を追放することができました。これを機会にNHKの再出発に踏み出すことができればと考えております。
私たちは、受信料の契約拒否あるいは支払い拒否が増大するなか、苦しみ抜いてNHKの民主化を求めて海老沢会長の辞任の運動を続けてきました。これからもNHKが新たに国民の放送局になるように運動を続ける覚悟です。今後ともよろしくお願いいたします。
改革は未来みすえて/放送批評懇談会理事長志賀信夫さん
海老沢会長辞任は、当然のことでしょう。時期はNHK予算が通ってからやめるのだと思っていました。早くやめたのは今度の「朝日」の事件が絡んだのかとも思っています。
NHKは、特殊法人です。もともと政府与党とは深い関係にあります。放送法では、経営委員会が会長を決めると書かれてはいます。でも実態は、今回は知りませんが、時の総理の承諾を得ないとできない。
たとえ会長が代わっても、政府・与党との関係は、長い習慣でできたものだから、すぐには変わらないでしょう。
ただNHKは受信料で成り立つ特殊法人です。改革は、慎重に、時間をかけてやるしかない。最低十年以上の未来を見すえて、国際化のなかでアジア全体のなかで、NHKはどうすべきか、着実に一つひとつやるしかない、と思います。
( 2005年01月26日,「赤旗」)
NHK海老沢会長が辞任/政治介入問題のさなか
NHKの「従軍慰安婦」番組への政治介入が問題になるなか、NHKの海老沢勝二会長は二十五日午後、経営委員会に辞表を提出し、同日付で辞任しました。一連の不祥事を理由とする受信料不払いの増加が止まらず、予算案編成を待っての事実上の引責辞任となりました。笠井鉄夫副会長、関根昭義専務理事・放送総局長も辞任しました。会長の後任には初めて技術畑出身の橋本元一専務理事・技師長(61)、副会長に永井多恵子・元解説主幹(66)が就任しました。
一連の不祥事は昨年七月、元チーフプロデューサーによる番組制作費着服の発覚が発端。その後もカラ出張や横領、取材費水増し請求などが次々に明らかになりました。
同会長が参考人招致された昨年九月の衆院総務委員会をNHKが生中継しなかったことをきっかけに受信料不払いが急増。不払い件数は同九月末で三万一千件、十一月末で十一万三千件に達しました。昨年十二月十九日には特集番組「NHKに言いたい」を放送し、海老沢会長が出演して改めて視聴者への謝罪と説明を行いました。しかし、自らの進退については明言せず、その後も不払いが増加。NHKによると、受信料の拒否・保留は三月末には四十五万―五十万件に上る見通しです。(2、14、15面に関連記事)
( 2005年01月26日,「赤旗」)
元慰安婦基金07年3月解散/村山元首相
元従軍慰安婦に「償い金」を支払うため、政府決定で設立された「女性のためのアジア平和国民基金」(アジア女性基金)の理事長を務める村山富市元首相が二十四日、東京都内で記者会見し、同基金を二○○七年三月で解散させると発表しました。
( 2005年01月25日, 「赤旗」)
綱領学習会/自分の言葉で党を語る力を/北海道・岩見沢東支部
北海道の日本共産党南空知地区・岩見沢東支部は十七日、支部独自で綱領の学習を始めました。
すべての支部員が、自分の言葉で党を語る力をつけようと計画したものです。当面、月一回、一章ずつ読んで、三十分ぐらいの説明を受け、全員で討議してすすめています。
十七日の第一章は、「綱領とは」「他党の綱領は」、党の誕生の意義、戦前の絶対主義的天皇制の実態、日本の他国への侵略戦争などについて学びました。いま起きている「日の丸・君が代」強制問題や従軍慰安婦問題をとりあげたNHK番組への政治介入などが、なぜおこなわれるのかを、戦前の憲法にもふれ討議しました。
年配の党員は戦争体験をつうじて、戦後生まれの人は父母からの聞き伝えで、戦争の悲惨さを語りました。「小林多喜二など党の先輩たちの生き方にしっかり学ぼう」との感想が出されました。
「ことしやりたいこと」の抱負を語り合い、入浴ツアーで英気を養おうと決めました。
( 2005年01月25日, 「赤旗」)
NHK番組への介入/東海大学加藤久晴教授に聞く/制作現場での圧力、私も経験/政治家に事前説明は大問題
安倍晋三自民党幹事長代理と中川昭一経済産業相が、NHKの番組に圧力をかけた問題は、放送への政治介入として大きな問題になっています。日本テレビで長年ドキュメンタリー番組を制作してきた、加藤久晴東海大学教授(広報メディア学科)に聞きました。
聞き手 小山田春樹記者
今回のNHK番組改ざん問題で、一番大きな問題点は、NHKで番組が企画・放送されるとの情報が事前に自民党に伝わっていて、放送前にいろいろ政治介入された点です。
番組は「放送されてなんぼの話」です。放送後に論議するのは自由で、立場によってさまざまな意見が出るのは当然ですが、放送前に改ざんされてしまっては話になりません。
きわめて重要なテーマである「従軍慰安婦」問題を扱うというだけで、事前に封じこめて放送もさせないとの動きがあったこと自体が重大です。政権の中枢にいる政治家が「公正・中立にやってほしい」といえば圧力になります。その結果、番組が大きく変えられ、自民党としては脅しに「成功」したわけですから、強い危機感を持ちます。
TBSオウム事件
NHKが放送内容を事前に政治家に説明しに行くこと自体が大問題で、絶対にあってはならないことです。これから放送する内容をわざわざ自民党の幹部に説明しに行くというのは放送人として考えられないことです。
「予算説明のついでに話がでた」と言いますが、予算委員会の場で審議すればいいことであり、政治家に説明しに行くのはおかしな話です。
NHKは、TBSの番組担当者がオウム真理教によって殺害された坂本堤弁護士のインタビュービデオを放送前にオウム真理教のメンバーに見せてしまった事件の教訓を全く学んでいません。放送前に外部の人間に編集中のビデオを見せたり、番組の内容を説明することは絶対にやってはならないことです。外部の介入を招き、放送の独立性が損なわれるからです。
しかし、「説明しろ」との圧力が政府や政治家からも企業からも来るのが現実です。放送現場では、「番組内容を事前に教えろ」というアプローチが日常茶飯事になっています。
ドキュメンタリーの現場の人達は、「裸で嵐の海を泳いでいるようなものだ」と言っています。つまり、放送局や法律が船や防波堤の役割を果たさなくてはいけないのに、そうなっていないのです。検閲を禁じた憲法第二一条や、外部からの干渉を排除した放送法第三条が生かされていません。
アメとムチの圧力
私が「NNNドキュメント」を担当していて、一九九一年にリゾート法絡みの乱開発問題を扱ったときに大きな圧力がかかりました。ある大手の開発会社が番組企画の情報をキャッチすると、広報部が毎日のように電話してきました。「内容・構成や出演者を教えてくれ」というのです。収録中のスタジオにまで「構成台本やアナウンス原稿を教えてくれ」と電話がかかってきて、出演したタレントやナレーターもびっくりしていました。
拒否すると、相手はアメとムチの方法を使ってきます。アメは、銀座のクラブでの接待です。断ると、その企業に関係のあるテレビ局の人間や局の上層部が「何とかしてやってくれよ」と言ってきます。アメがだめだと今度は脅しです。「番組の内容によっては法的な手段をとることもあります」との文書がきます。
情報公開積極的に
私はNHKの長井チーフ・プロデューサーの記者会見を見て、「やはり介入はあったんだな」と思うと同時に、「彼は非常に勇敢だな」と思いました。介入があっても普通は表に出しませんからね。しかし、放送は公共性の強いメディアですから、電波という国民の共有財産を預かって仕事をさせてもらっているわけですから、「内部告発」というよりは情報を積極的に公開しなくてはいけないのです。NHKはこの問題の事実経過を正直に情報公開すべきです。
一番大事なことは、NHKや民放は政府や政治家、スポンサーにたいし距離を保ち、「番組内容には介入させない」との鉄則を守ることです。
( 2005年01月24日,「赤旗」)
NHK番組改ざん問題の核心は/官房副長官が「公正・中立に」といえば、当然、強い圧力になる
政権中枢をふくむ政界の介入・圧力で、公共報道機関であるNHKの放送内容が改ざんされた――。これが「従軍慰安婦」にかかわるNHK番組改ざん問題で問われる核心中の核心でした。いま、NHKや政治家側も認めざるをえない事実をもとにして、問題の根本をあらためて検証してみましょう。
NHKも認めた安倍氏の発言内容
焦点の番組は、二〇〇一年一月三十日夜にNHK教育テレビで放送された「シリーズ戦争をどう裁くか 第二回 問われる戦時性暴力」。「従軍慰安婦」問題をテーマにした「女性国際戦犯法廷」を扱った内容でした。
最初に報道した「朝日」。続いて告発した長井暁NHKチーフプロデューサー。反論したNHK。そして介入が指摘され、否定する安倍晋三内閣官房副長官(現自民党幹事長代理)、中川昭一衆院議員(現経済産業相)。これらのなかで、まずNHKが認めた事実は次のとおりです。
――放送前の二〇〇一年一月二十九日、NHKの松尾武放送総局長(当時、以下同)、国会などを担当する野島直樹担当局長が安倍官房副長官を訪れた。予算、事業計画の説明が目的だった。
――松尾氏は「女性国際戦犯法廷」に関し、国会議員の間でさまざまな議論があることを認識していたので、この機会に安倍氏にも説明しておこうと思い、番組の趣旨を概略説明した。
――安倍氏は、概略の説明を受けたうえで、「番組は公平・中立であるべきだ」との感想をのべた。
「明確に偏った内容」と判断した上での発言
安倍氏自身は、このNHK側との面談内容をもっとくわしくのべています。
「朝日」報道直後の一月十二日の日付がある同議員のホームページのコメントではこうしるされています。
戦犯法廷について「主催者側の意図どおりの報道をしようとしているとの心ある関係者からの情報がよせられたため、事実関係を聴いた。その結果、裁判官役と検事役はいても弁護士証人はいないなど、明確に偏った内容であることが分かり、私は、NHKがとりわけ求められている公正中立の立場で報道すべきではないかと指摘した」。
ここでは「明確に偏った内容」という判断をもとに、「公正中立」の報道を、という安倍氏の立場がきわめて鮮明です。事実、面談後の二十九日に番組は一分削られ、さらに放送当日にも三分削られ、「従軍慰安婦」の証言などが消えてしまうというきわめて異常な改ざんがおこなわれました。
安倍氏は十九日になって、テレビ朝日系「サンデープロジェクト」のなかで、問題の面談では、NHKから「非常にバランスのとれた番組になっている」という説明を聞き、「じゃあ公平公正にお願いしますと(いった)」とのべています。
NHK側が放送前の番組でバランスをとりました≠ニ官房副長官に報告に及ぶこと自体、報道機関の自主性をそこなう異常な姿勢ですが、仮に「バランス」をとったというなら、安倍氏にも評価され、終わり≠セったはず。なぜその後に「絶対ありえない」と放送関係者が指摘するような異常な改ざんがおこなわれたのか―という疑問には納得できる説明がありません。
「若手議員の会」の幹部だから説明したとは
重要なポイントがまだあります。
NHKの宮下宣裕理事は十九日の記者会見で、安倍、中川両氏に番組内容を説明した理由について、両氏が「『日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会』の幹部だったため」と答えました。
この「若手議員の会」とはどんな集団か――。
一九九七年に自民党議員で設立したこの会は、中川氏が会長、安倍氏が事務局長。歴史教科書問題で活動し、教科書から「従軍慰安婦」にかんする記述をなくすことなどを主張しました。会が編集した本『歴史教科書への疑問』には、安倍氏らが教科書協会会長を呼び、なぜ「慰安婦」を取り上げるのか、としつように追及する場面も出てきます。
問題になった今回の番組についても、中川氏は、「これをNHKが放送するのは放送法にてらしてどうなのかという、(会の)仲間うちの話はした」(二十三日フジテレビ系「報道2001」)と認めています。実際、NHK側は安倍、中川両氏以外にも「若手議員の会」のメンバーである下村博文衆院議員らに番組放送前に説明していました。NHKが会を強く意識していたことは明らかです。こうした集団の幹部だった官房副長官が「慰安婦」問題を扱うNHK番組の放送前に「偏った内容」と判断し、「公平公正に」とNHK幹部にいえば、それは、一般論ではない、特定の意味―強い圧力という意味になるのは明らかでしょう。
政治家が「公平にやれ」──「自分たちの立場を害するな」という意味に
ロッキード事件当時の東京地検特捜部検事、堀田力・弁護士のコメント(テレビ朝日系「報道ステーション」21日放送から)
「この問題の一番の基本は…政治家が報道の自由に介入していいかどうかという、これですよね。で、それについては、『公平にやれ』ということを言ったという政治家たちの発言があるんだから、それだけ見たってね。慰安婦問題について特定の立場にある人が、『公平にやれ』って言ったら、それは『自分たちの立場を害するな』という意味になりますよ。
例えば検察が総理大臣、自民党の有力者のところに行って『田中角栄さんを逮捕して起訴しました』と言って、『公平にやれ』と言われたらね。それはもう意味ははっきりしてますよね。『政治家の立場を重んじろ』という意味になります」
( 2005年01月24日,「赤旗」)
番組改変何があったか/女性への戦時性暴力/日本の加害責任、兵士の証言/消された場面
NHKの番組「問われる戦時性暴力」(01年1月30日放送)は、どこが消され、改変されたのか。
番組は、第2次世界大戦での「従軍慰安婦」問題で、日本軍による性暴力を裁いた00年12月の民衆法廷「女性国際戦犯法廷」(VAWW―NETジャパン主催)を取り上げました。
企画書
00年10月 NHKエンタープライズ21の依頼を受けた番組制作会社ドキュメンタリー・ジャパン(DJ)は、主催者のバウネットに取材の申し込みをします。
「『女性国際戦犯法廷』の過程をつぶさに追い、戦時性暴力がどのように裁かれるのかを見届ける」
番組「企画書」には、こう書かれていました。
12月中旬 「ニュース7」で女性国際戦犯法廷が報道されると、右翼が騒ぎ出し、放送センターにおしかけるなどの妨害が翌年1月の放送直前まで続きます。
部長試写
01年1月 NHKで上旬から試写開始。19日、教育テレビでは異例の教養部長試写。
24日 再度教養部長試写。「このまま出したら、みなさんとはお別れだ。二度と仕事はしない」と部長が発言。DJは作業から事実上はずされます。
27日 番組のコメンテーターとして出演していた高橋哲哉・東京大学助教授(当時)に修正台本が送られ、28日再収録がおこなわれます。修正台本には、法廷が日本国家と昭和天皇の責任を認定したことや日本軍の加害兵士の証言などが、まだ残っていました。
改ざん
29日 NHK国会対策担当の野島直樹担当局長(現・理事)と松尾武放送総局長(現・NHK出版社長)が、自民党の安倍晋三官房副長官(当時)と中川昭一現経産相を訪ね、番組を説明。
直後、完成していた番組内容は、2回にわたって大きく変えられます。
消されたのは――。
@VTR(スタジオ収録以外の映像)で放送されるはずだった、日本軍兵士の加害証言、女性国際戦犯法廷がくだした、戦時下の性暴力は「人道に対する罪」にあたるとした判断、日本国家と昭和天皇の責任を認定した部分が消えました。
Aコメンテーターの高橋助教授の発言は、性暴力についての日本の責任にかかわる部分などが削られました。
たとえば――。
「お詫(わ)びをしても、言葉だけであると理解されてしまいますし…国家による補償ということが成されない限り、納得が得られないということだろうと思います」
「サンフランシスコ講和条約、それから二国間条約で、戦争被害に関する請求権は解決されたということをとっているんですが…これは…国際機関の国際法上の判断では、退けられている」
Bコメンテーターの米山リサ・カリフォルニア大学準教授の発言は、「従軍慰安婦」の証言にふれた部分など、全体の6割が削られました。
たとえば――。
「(『従軍慰安婦』についての)証言をされている方…の背後に、何百人、何千人という死者、あるいは犠牲者の方がおられて、証言台に出てこれない方がおられる訳ですよね。…苦しい体験を、ものすごい苦しみを込めながら語られる時に、私達はどうすれば良いのか…引き受けるということが大事になる」
(2005年01月23日,「赤旗」)
徹底検証NHKと政治介入/改変番組のデスク(当時)NHKチーフプロデューサー長井暁さん
勇気の内部告発
問題の番組「問われる戦時性暴力」に当時デスクとしてかかわった長井暁氏(NHK番組制作局チーフプロデューサー、42歳)の告発証言の全容を、同氏の発言と発表文書をまじえて紹介します。
2001年1月下旬、衆議院議員の中川昭一氏と安倍晋三氏らが、NHKで国会・政治家対応を担当していた総合企画室の野島直樹担当局長(現・理事)らを呼び出し、「女性国際戦犯法廷」を取り上げたETV2001の放送を中止するよう強く求めました。
自民党総務部会でのNHK予算審議を直前としていたこともあり、事態を重く見た野島担当局長は、1月29日(月)の午後、松尾武放送総局長(現・NHK出版社長)を伴って、中川・安倍両氏を議員会館などに訪ね、番組についての説明をおこない、理解を求めました。
しかし、中川・安倍両氏の了解は得られませんでした。そこで松尾放送総局長は、「番組内容を変更するので、放送させてほしい」と述べ、NHKにもどりました。
松尾放送総局長は、当日の午後6時すぎから、すでにオフライン編集をUPしていた番組(通常、これ以降の編集の変更はおこなわれない)の試写を、野島担当局長と伊東律子番組制作局長とともにおこない、番組内容の変更を制作現場に指示しました。試写は私も立ち会って番組制作局長室でおこないました。そのときの主な変更内容は以下の3点でした。
@日本軍による強かんや「慰安婦」制度が「人道に対する罪」を構成すると認定し、日本国と昭和天皇に責任ありとした部分を全面カットAスタジオ出演者であるカリフォルニア大学の米山リサ準教授の話を数カ所カットB「女性国際戦犯法廷」に反対の立場をとる日本大学の秦郁彦教授のインタビューを大幅に追加する、です。
この指示を受けて、制作現場では既にオンライン編集(本編集)を終えていたVTRの手直し作業を深夜におこないました。この結果、通常44分の番組は43分という変則的な形で放送されることとなりました。
これは、中川、安倍両氏の理解を得るためのものだったことは明白だと思います。
放送当日にも異例のカット
松尾放送総局長は放送当日の30日(火)の夕方、すでにナレーション収録・テロップ入れなどの作業が完了し、完成間近となっていた番組内容を、さらに3分カットするよう制作現場に命じました。
その内容は@中国人被害者の紹介と証言A東ティモールの慰安所の紹介と元「慰安婦」の証言B自らが体験した慰安所や強かんについての元日本軍兵士の証言、です。
松尾総局長から現場に直接命令があり、担当部長もチーフプロデューサーもディレクターの私も何とか思いとどまってほしいと反対しましたが、現場の意向を無視して業務命令で押しきった。
この指示を受けて制作現場ではVTRの手直し作業がおこなわれ、通常44分の番組は40分という異例の形で放送されることになりました。2度にわたる政治介入にともなう番組の改変によって、番組内容はオフライン編集完了時とは大きく異なるものとなり、番組の企画意図は大きく損なわれることとなりました。
このことは海老沢会長はすべて了解していたと考えています。私の信頼すべき上司によると、野島氏はこの経緯をちくいち会長に報告していましたし、当然、会長の指示や了承を得て、この作業がおこなわれたと考えています。実際に総合企画室と番組制作局が、それぞれ会長あてに作成した報告書が存在しています。私は目にしていませんが、存在しているのは確かなようです。(7面に続く)
(2005年01月23日,「赤旗」)
NHK番組改変/何があった/安倍自民党幹事長代理、中川経済産業相の不可解
放送前日に会う―――隠せない政治介入/徹底検証6〜8面で特集
ときの政権の座にいる自民党議員がNHK番組に放送前に介入し、改変させた事件が、大きな政治問題に浮上しています。安倍晋三幹事長代理(当時・内閣官房副長官)、中川昭一経済産業相は一体何をやったのか――。NHK問題取材班
ことの発端は「朝日」12日付。2001年1月30日に放送された、「従軍慰安婦」問題の責任を追及する女性国際戦犯法廷を取り上げた番組「問われる戦時性暴力」が、放送前日の29日、安倍、中川両氏の圧力によって改変されたというのです。
「朝日」報道の翌13日には、当時のNHKディレクター(現・チーフプロデューサー)による内部告発も続いて、世間は「政治介入だ」と大騒ぎに。
ところが、当初は「(放送は)『だめだ』といった」(中川氏)などと介入を認めていた二人が、政治問題化すると一転、否定に回ったために、真相はまるでヤブの中=B
しかし、ハッキリしてきたことがいくつかあります。
認めた安倍氏
まず第1は、番組放送直前の29日にNHK幹部らと会った安倍氏自身が「政治介入」を認めていることです。
安倍氏は10日、「朝日」の取材にこんなコメントを出していました。「偏った報道と知り、NHKから話を聞いた。中立的な立場で報道されねばならず、反対側の意見も紹介しなければならないし、時間的配分も中立性が必要だと言った」(「朝日」12日付)。
さらに、「朝日」の第一報後、マスコミにこんなコメントを――「明確に偏った内容であることが分かり私は、NHKがとりわけ求められている公正中立の立場で報道すべきではないかと指摘した」(12日)。同じ内容を自分のホームページにも載せています。「偏っている」から「公正・中立」にやれといって、反対論の紹介や時間配分を具体的に注文すれば、それを世間では放送番組への「政治的圧力」「政治介入」と呼ぶのではないのか。
安倍氏の説明はその後も微妙に変わりますが、18日現在も、@番組放送直前にNHK幹部に会いA特定の番組の内容についてB「公正・中立に」といった、という事実は変えていません。
NHKへの政治介入は、言論・報道・表現の自由を保障し、検閲を禁止した憲法21条に反し、放送内容について外部からの介入を禁止した放送法第3条に反する、民主主義破壊そのもの。21日開会の国会でも徹底的な解明が不可欠です。
2面につづく
NHK、なぜ両氏に/立教大教授(メディア法)服部孝章さんの話
安倍氏や中川氏のような政権中枢に近い議員がNHKに、ある特定の番組をめぐって「公平・公正に」といえば、党派性や政治性が出るのです。番組の説明をしている側や制作担当者が「政治的圧力を感じた」と、ある意向≠くみ取るのが自然ではないのか。とくに安倍氏が認める、放送前の発言は重い。
表現の自由や検閲の禁止を定めた憲法21条に違反します。民主政治にあってはならないことです。政治家の番組介入問題として、国会で議論すべきです。
NHKも「自主的編集」といいながら、なぜ両氏のところに説明に行くのか。この姿勢は、放送の自律性の放棄です。
ジャーナリズムの根幹部分が腐っているのに、一連の不祥事の時ほど世論が一つになっていないことをいいことに、NHKは高をくくっている節が見える。要注意です。
(2005年01月23日,「赤旗」)
NHK番組介入/東京革新懇が抗議の声明
東京革新懇は二十日、NHKの「従軍慰安婦」番組に、中川昭一経済産業相、安倍晋三自民党幹事長代理が干渉・介入した問題で、「言論・表現の自由全般に対する許すことのできない侵害であり、強く抗議する」との声明を発表しました。
声明は、「番組が放送される前に政権与党の幹部に内容が筒抜けになり、チェックまで受けるということは、公共放送の主体性を放棄した態度といわざるをえません」と批判。「NHKが経営委員会の刷新とともに、番組や経営内容の情報公開と視聴者・国民の願いに真摯(しんし)に向き合うこと」を求めています。
(2005年01月23日,「赤旗」)
戦後補償裁判力あわせよう/都内でフォーラム/弁護団が報告
「戦後補償裁判の現況と今後の課題2005」の公開フォーラムが二十一日、都内で開かれ、裁判の到達点を各弁護団が報告。問題の最終的な解決をめざして運動の強化と弁護団の力を合わせていくことを確認しました。戦後補償問題を考える弁護士連絡協議会と戦後補償ネットワークの主催で、約八十人が参加。
弁連協事務局担当の高木喜孝弁護士は、二〇〇四年の判決概況について報告。三事件の上告を不受理し、一事件の上告を「戦争被害・戦争犠牲への補償は憲法が全く予想していない」として棄却した最高裁の姿勢を厳しく批判しました。
一方、中国人強制連行・強制労働事件訴訟の高裁・地裁判決を評価。企業を相手にした初めての高裁勝訴(広島)や地裁での国・企業への勝訴(新潟)を例に挙げ、「(提訴を始めた)十三年前は乗り越えられないと考えていた国家無答責と除斥期間の壁を乗り越えてきている。法廷での前途はある」とのべました。
中国人「慰安婦」訴訟や韓国の元軍人・軍属・遺族訴訟の報告もありました。
国会の動きを日本共産党の吉川春子、社民党の福島瑞穂両参院議員が報告。吉川氏は弁護団の地道なたたかいに敬意を表し、「慰安婦」問題解決への法案の提出と審議を約束しました。
( 2005年01月22日,「赤旗」)
NHK問題/高知県平和委/首相らに抗議
高知県平和委員会は十八日、安倍晋三自民党幹事長代理と中川昭一経産相によるNHK「従軍慰安婦」番組改ざん問題について、小泉純一郎首相とNHKへ抗議声明を送付しました。
小泉首相には「圧力・干渉事件は戦前の統制・検閲の復活であり断固抗議する」「憲法二一条と放送法三条を踏みにじる問題」と指摘。NHKに対しては、責任の明確化と真相究明に取り組むことを求めています。
(2005年01月21日,「赤旗」)
自民党安倍氏に公開質問状送付/VAWW―NET/NHK番組政治介入問題
「従軍慰安婦」にかかわるNHK番組が、自民党の安倍晋三幹事長代理などの介入で改ざんされたとする問題で、「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(VAWW―NETジャパン)は二十日、安倍氏に対して事実関係を明らかにするよう求める公開質問状を送付しました。
質問状は、安倍氏が放送日前の二〇〇一年一月二十九日にNHK幹部に会ったということを「日程表を見たから間違いない」と断言している点について、「何時から何時にだれと会ったのか」など、日程表や記録に基づいて正確に答えるよう求めています。安倍氏が放送前に番組の内容について「当時、永田町で話題になっていた」としている点についても、「永田町とはだれのことか。放送前の番組内容を知るいきさつはどうか」など真実を隠さず明確に答えてほしいとしています。
( 2005年01月21日, 「赤旗」)
政治家の番組介入を巡って/西野瑠美子/求められる歴史への誠実さ
NHKチーフプロデューサー長井暁氏の告発により白日の下にさらされたNHKの番組内容への政治家の介入は、ジャーナリズムの生命線に関わる重大な問題をはらんでいます。
民主国家を揺るがす事態
第一に、番組に対する政治家の介入は「検閲行為」に当たり、憲法が保障する「表現の自由」を大きく侵害する違法行為だということです。長井氏はNHKへの政治家の介入は「日常茶飯事になっている」と話されましたが、政府に不都合なことには権力を利用して情報を封じ込めることが野放しにされているとしたら、民主国家を揺るがす深刻な事態です。
第二に、海老沢体制になり一段と強まったといわれる、政治家の顔色をうかがうNHKの体質、構造の問題です。国会対策を担当していた総合企画室の野島直樹担当局長(現理事)と松尾武放送総局長(現NHK出版社長)が永田町から帰った後、番組制作局長室で長井氏ら制作現場の三人が集められカットの指示がなされました。その時、伊東律子番組制作局長は「この時期にはNHKは政治と闘えない」と切り出し、「天皇有罪とかは一切、なしにして」とカットを指示したと、長井氏は語っていますが、「この時期」とはまさに放送数日後にNHKの予算説明を控えていたことを指しています。予算がすんなり通るために、ジャーナリズムの魂を売るに等しい行為があったとしたら、それは視聴者の「知る権利」を脅かす重大な裏切り行為といわざるを得ません。
第三は、内部における「編集の自由」の侵害の問題です。制作現場への上層部による内部圧力は、いかなる権力にも政治にも影響されない放送現場の「編集の自由」をメディア自らが手放す自殺行為です。
番組介入の正当化に利用
第四は、安倍氏は放送前に番組内容に「意見を述べた」理由として、女性国際戦犯法廷批判を述べていますが、「法廷」批判が政治家の番組介入行為を正当化することに利用されようとしていることです。批判をするのは言論の自由です。しかし、放送前にこうした「意見」を述べたことが、結果としてカットにつながっている以上、報道の自由への侵害、政治的圧力というほかなく、論点のすりかえと言わざるを得ません。
「法廷」批判として、安倍氏は被告側弁護人がいないと述べています。しかし、「法廷」の裁判官は、被告であった日本政府の森喜朗総理大臣(当時)あてに「被告人弁護」の出廷を求めました。しかし、何の応答も無かったため、裁判官はアミカスキュリエ(注)を認め、三人の弁護士による被告人の主張弁論が行われたのです。
NHKは、こうした事実を知っていました。しかし、当初あったその場面は異常な改変作業の中で削除されたのです。そして、被告側弁護人がいないという秦郁彦氏のコメントを何の説明も訂正もつけずに一方的に流したのです。秦氏は「法廷」の審理を傍聴していません。にもかかわらず「法廷を傍聴した歴史家」として紹介されており、このことは彼のコメント内容について視聴者に必要以上の「信頼」を与えることにつながったといえます。異常なカットは単に情報の遮断だけでなく、真実を歪(ゆが)めて視聴者に情報を提供することになったのです。
一方、安倍氏は報道ステーションの中で、「法廷」の検事は「北朝鮮の工作員だった」と発言していますが、これもまた事実無根の発言です。首席検事は北朝鮮の検事ではなく、オーストラリアの国際法学者であるウスティニア・ドルゴポルさんと、アフリカ系米国女性で、旧ユーゴとルワンダの戦犯法廷のジェンダー犯罪法律顧問であったパトリシア・セラーズさんです。「法廷」には北朝鮮検事団というのは存在せず、北朝鮮と韓国は南北コリア検事団を結成しました。参加したどの国も検事団を作っており、北朝鮮が特別な形で参加したということはないのです。
戦後60年と過去への責任
第五は、二十九日の安倍氏との面談後にカットされた場面は、中国と東チモールの被害者の証言、そして元日本軍兵士の証言だった、すなわち被害者の声を封じたということです。これは、「法廷」に正義を求めて自らの体験を語った被害者の尊厳に対する破壊行為です。
一月十八日、毎日新聞は、「若手議員の会」古屋圭司会長が「議連幹部の多くが放送前にNHK幹部から番組についての説明を受けた」と述べたことを報じました。次第に放送前の政治家関与の構図が明らかにされてきていますが、このことは、番組介入の背景に「慰安婦」問題を巡る歴史認識の問題があったことを明確に指し示しています。
今年は戦後六十年に当たりますが、今の日本社会はもはや「戦後」ではなく、「戦前」に歩みを進めています。過去からの水路を遮断しないこと、過去に責任をもつこと、被害者を置き去りにしないこと、歴史認識を正しくし、正確な事実に基づいた教育をしていくこと、戦後六十年に始まる未来を平和と安定の時代にする可能性は、過去への誠実な向き合いに秘められていると思います。
(にしの るみこ・バウネットジャパン共同代表)
アミカスキュリエ
裁判所の求めにしたがい、裁判所に対し事件についての専門的情報または意見を提出する第三者。英国の制度で、弁護人がいない場合、市民の中から弁護人を要請できるという制度。
( 2005年01月21日,「赤旗」)
NHK番組改ざん問題/大阪労連/解明求め要請
全大阪労働組合総連合(大阪労連・植田保二議長)は十九日、NHKの番組改ざん問題で、NHK大阪放送局に真相解明と責任を求める要請をおこないました。
大阪労連の服部信一郎副議長、薮田ゆきえ女性部事務局長、龍洋治事務局員が大阪市中央区の大阪放送局を訪ねて、要請書を手渡しました。
「従軍慰安婦」問題にかかわる放送で政治的圧力に屈し、番組の改ざんがおこなわれ、その経過について虚偽の弁明を続けていることに強く抗議。事件の全容と関係者の責任を明らかにするために第三者による調査委員会を設けること、大阪放送局としても、視聴者に説明する機会をもつことを求めました。
(2005年01月20日,「赤旗」)
番組改ざんで自民党に抗議/福岡県革新懇
平和とくらしを守る福岡県革新懇話会は十八日、自民党幹部によるNHK番組への介入問題で、自民党本部に抗議の申し入れを送付しました。
申し入れでは、自民党の安倍晋三幹事長代理、中川昭一経済産業相が、二〇〇一年に「従軍慰安婦」問題をとりあげたNHK特別番組に対して、政治介入し圧力を加え、従軍慰安婦問題などの内容を改ざんさせたことについて抗議するとともに、真相を明らかにし、国民に陳謝するよう求めています。
(2005年01月20日,「赤旗」)
放送介入は民主主義破壊/NHK番組改ざん問題/山口の国民救援会抗議声明を発表
日本国民救援会山口県本部(福江俊喜会長)は十七日、NHK「従軍慰安婦」番組の放送に対する安倍晋三自民党幹事長代理と、中川昭一経済産業相による政治介入問題について、「憲法と放送法を踏みにじる行為に強く抗議する」という抗議声明を発表しました。
声明では、「政権・与党の政治家が、テレビ番組の内容について、事前に放送の中止や変更を求めることは、言論・表現・報道の自由を保障し、検閲を禁止した憲法二一条に違反するとともに、放送法第三条にも違反する民主主義破壊の行為である」と指摘し、「一九九三年の政府見解では、『多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた』ことに『お詫びと反省を表明する』と述べている」として、「徹底した真相究明と国民への謝罪」を求めたものです。
同国民救援会は、抗議声明を安倍、中川両氏と、自民党の本部、県連に送付しました。
(2005年01月20日,「赤旗」)
NHK「慰安婦」番組改ざん/中国人「慰安婦」訴訟弁護団長大森典子さんが語る
言論の自由奪う政治介入は許されない/今も深い被害者の心の傷/苦悩の末の証言をカットなんて
NHK番組改ざん事件で、あらためてクローズアップされた「慰安婦」問題。被害者の証言を求めて十八回も中国を訪問、手弁当で日本政府の戦争責任を追及してきた大森典子弁護士(中国人「慰安婦」訴訟弁護団長)は、「権力をふりかざして言論を弾圧し、被害者たちの証言をカットした罪は重い」といいきります。
聞き手 須藤 紀江記者
NHKのチーフ・プロデューサー、長井暁さんの発表文を読むと、一番最後にカットされた内容の一つは、中国人被害者の証言でした。性暴力被害者の方たちの証言がいかに重いものであるかを痛感しているので、本当に怒りがこみあげてきます。
想像を絶する加害の事実
一九九五年と九六年に六人の中国人「慰安婦」が日本政府に謝罪と賠償を求めて訴訟を起こしました。私はその弁護団長をしています。原告たちは、中国山西省の山間の村々の女性たちです。そこで私は、想像を絶する加害の事実を知らされました。
中国への全面的な侵略を開始した日本軍は、広大な中国を支配するために、十人から三十人ぐらいの兵士からなる小さな前線の拠点をあちこちに作り、かいらい軍を組織して、その地域を占領していました。
今や八十歳近いおばあさんになって証言する原告の女性たちは、平穏に暮らしていた十三歳から二十歳のときに、いきなり銃剣をつきつけられ、拉致され、監禁されました。いわゆる慰安所に入れられるのではなく、住民を追い出した民家のなかで、ときには兵士たちが何人もいる中で輪姦(りんかん)され、ぼろぼろになって家族のもとに帰されているのです。
それも、家族にとって大事な財産である家畜を含む、とうてい払いきれないほどの多額の身代金と引き換えに、です。
「ナヌムの家」で語られた朝鮮の慰安所などのイメージと全然違うことに、驚きました。
悪夢に襲われ発作を起こし
原告たちに共通するのは、戦後もずっと深刻なPTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しんでいたことです。
ある女性は、「拠点に連れていかれたあと、どうなりましたか」と私が尋ねたとたん、ワーッとものすごい声で泣き出し、手の先からみるみる硬直してきました。非常に強烈なフラッシュバックに襲われるんです。悪夢に襲われ夜でも外に飛び出す人、村の中をわめきながら走り回る人、失神する人もいます。
結婚し子どもをもっている女性は、発作的に幼いわが子を失神するまでなぐったり、血だらけになっているのに平手打ちをやめられない。もともとはやさしいお母さんたちですから、はっとわれに返ると、激しい自責の念にさいなまれる。そういうことの繰り返しだったというのです。
思い出したくもない、つらい記憶を取り出すという過酷な過程をへて、ようやく口を開いた被害者たちの証言を無残にカットしたことの罪は重い。「慰安婦」問題は、さまざまな国際条約に反して女性を性の奴隷状態にする明らかな戦争犯罪であり、人道にたいする罪です。この「慰安婦」問題を知り、学んでいく貴重な機会を日本国民から奪った罪も重い。
過去の戦争を直視してこそ
昨年、中山成彬文部科学大臣が、「従軍慰安婦や強制連行などの言葉が教科書から減って良かった」と発言しました。アジアを侵略した日本の過去に封をして、侵略戦争を美化する教科書を流布させようという政権与党の動きが強くなっています。だからこそ、過去の戦争は何だったのかを知らせる作業が、ものすごく大事だと思います。
中国の人たちはいいます。「日本はひどいことをしたけれど、あの平和憲法を本当に守るというならば許せる、という気にもなる」と。今の憲法ができたとき、私たちは二度とふたたび戦争の被害にあわないようにという思いが強かったと思います。同時に、残虐な侵略行為など、日本が近隣諸国に与えた大変な加害の歴史を背景にして、憲法ができたことを、決して忘れてはならないと思います。
やはり加害の責任をきちんとふまえ、憲法の原則をきちんと守っていくことが、世界、とりわけアジアの人たちとの共存・友好関係を築く基本になるのではないでしょうか。
内部告発に感動その良心守ろう
今回、長井さんの勇気ある内部告発によって、番組改ざんの背景に、政権中枢にいる政治家による圧力があったことが明るみに出たことの意味は大きい。
番組改ざんをめぐり、「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(VAWW―NETジャパン)がNHKなどを提訴し、裁判をたたかっています。NHKは改ざんの事実を認めず、自主的な編成の自由の範囲内でやったと主張していますが、そうではないということがわかってきたのですから。
今回の内部告発に私自身も本当に感動しました。良心的なジャーナリストの地位や立場が危なくならないように、国民的な監視をしなければならないと思っています。
いま、まさに言論の自由を守れるかどうかの分岐点に立っていると思います。言論を弾圧し侵略戦争を美化しようとする人たちに、みんなで怒りの声をあげていきましょう。圧力をかけている人たちが憲法と教育基本法の改悪を声高に叫んでいることも、しっかり見ておきたい。
事実を知ればとりくみ広がる
私の原点は、家永教科書裁判に弁護士としてかかわったことです。一九八四年に提訴した第三次訴訟で、あの戦争で日本軍がおこなった加害の実態を初めてリアルに知ったことが大きかった。
昨年、学生たちが「慰安婦」たちの証言を聞く集会を開きました。事実を知れば、若い人たちならではのとりくみが広がっていくにちがいないと感じています。
( 2005年01月20日,「赤旗」)
全教が抗議声明/NHK番組政治介入問題
全教(全日本教職員組合)は十九日、安倍晋三自民党幹事長代理と中川昭一経産相によるNHK「従軍慰安婦」番組改ざん問題について、抗議声明を発表しました。
声明は、「政府の要職にある政治家の介入の結果、番組は改ざんされ、当初の企画と全く違ったものになり放送されたことは関係者の証言で明らかである。言論・表現・報道の自由の保障と検閲の禁止を定めた憲法二一条に違反する不当な政治介入に抗議し、小泉内閣の責任を厳しく問う」とのべています。
NHKに対しては、全容を公表し、憲法・放送法・「NHK倫理・放送基準」に照らし責任を明確にするよう要求。
声明は、番組内容の改ざんは、日本軍が行った戦時性暴力を謝罪した日本政府の見解を踏みにじる歴史の改ざんにあたると批判し、国会が関係者の証人喚問を行い、問題の真相究明に取り組むことを求めています。
( 2005年01月20日,「赤旗」)
担当者との面会は放送後/NHK問題で中川氏
欧州歴訪から帰国した中川昭一経済産業相は十九日午後、成田空港で記者団に対し、従軍慰安婦問題を取り上げたNHKの特集番組が放送前に変更された問題について、「NHKの担当者と会ったのは放送の後の(二○○一年)二月二日だった」と述べ、改めて番組への事前介入を否定しました。
中川経産相は、この問題で朝日新聞から取材を受けた経緯について、「(今年の)一月十日の昼ごろ長崎にいるとき、朝日新聞の記者から秘書を通じ、『電話がほしい』と連絡があった。取材の際、(NHK担当者と会ったのが)番組の放送前か後かよく覚えていなかったので、あいまいに答えると、(放送前と)断定的に報道された」と語りました。
( 2005年01月20日, 「赤旗」)
NHK、不自然な弁明/政治介入問題/圧力感じなかった=^納得できない説明、告発の長井氏も反論
「政治的圧力は感じなかった」ので政治的圧力はなかった=\。「従軍慰安婦」にかかわるNHK番組が改ざんされた問題で、NHKは十九日開いた記者会見でコンプライアンス(法令順守)推進室の調査結果を発表、こんな奇怪な「論理」で政治的圧力を否定しました。これにたいし、告発した長井暁チーフプロデューサーは「政治家に魂を売り渡してしまった現経営陣主導の調査結果」と厳しく批判しました。
記者会見したコンプライアンス担当の宮下宣裕理事は、政治圧力で番組改変をしたと告発された当時の松尾武放送総局長(現NHK出版社長)ら三人から、長井氏の会見後に事情を聴いたことを明らかにしました。その結果として、安倍晋三自民党幹事長代理(当時官房副長官)とは放送前日ごろに松尾氏らが面談した事実は認めました。
しかし、「呼ばれた事実はない」とし、「女性国際戦犯法廷」で「国会議員の間にさまざまな議論があることを認識していたので」、安倍氏にも「番組の趣旨について概略説明した」と説明。安倍氏は「番組は公平中立であるべきだ」との「感想」をのべたが、「圧力というような内容ではなかった」としました。
また、松尾氏は、十八日付「朝日」で、番組への「圧力を感じた」と証言したとされた「NHK幹部」とは、自分であることを明らかにしたうえで、報道内容を否定し、「圧力は感じていない」と繰り返しました。
宮下理事は、中川昭一経済産業相とは放送前に会った事実はなかったとし、安倍、中川両氏からの電話や第三者を介した圧力もなかったとしています。
放送当日に番組を三分間カットしたことについて、「カットは業務命令だった」という長井氏の発言も否定し、編集は現場の部長の判断だったなどと説明しました。
( 2005年01月20日, 「赤旗」)
NHK番組問題/安倍、中川氏の喚問を/治維法国賠同盟滋賀県本部が声明
NHKの「従軍慰安婦」番組改ざんで、治安維持法国家賠償要求滋賀県本部は十五日、表現・報道の自由への侵害に抗議し、安倍晋三自民党幹事長代理と中川昭一経済産業大臣の国会喚問と、NHKに事件の全容を明らかにするよう要求した声明を採択し送りました。
また東京・葛飾区のマンションに議会報告を配布した男性を不当に起訴した問題で、東京地方検察庁に「憲法と人権をじゅうりんする許しがたい行為」と抗議、起訴を取り下げるよう求めた文書を送りました。
(2005年01月19日,「赤旗」)
耐震対策と募金訴え/大津波など/札幌で宮内衆院候補ら
宮内聡衆院道比例候補と日本共産党道委員会の若い勤務員たちは十八日昼、札幌市の商店街・狸小路で買い物や食事に訪れた市民に、「インド洋大津波の救援募金活動にご協力ください」と元気に訴えました。
勤務員らは、スマトラ島沖地震の復興支援活動と阪神・淡路大震災十周年を詳しく特集した「しんぶん赤旗」日刊紙・日曜版の記事を使った手づくりのビラと募金箱を用意。商店街から出て「何の宣伝ですか?」と声をかけてきた女性に、男性勤務員がさきのビラを見せて募金を呼びかけると、財布から千円を取り出し「どうぞ」と差し出しました。「ちょっとでも役に立てたら」と、だら銭を募金する中学生もいました。
宮内候補は、ハンドマイクでまず新潟県中越大震災救援募金への協力にお礼を述べました。地震対策と復興支援の重要性を説いた宮内候補は「不況のなかだからこそ、学校の耐震化など、必要な公共事業をしっかりやりましょう。人と街の復興を支える政治に切り替えましょう」と、政治が求められている役割と責任を強調しました。
宮内候補はまた、自民党の安倍晋三幹事長代理、中川昭一経済産業相がNHKに政治圧力をかけ、従軍慰安婦問題に迫ろうとした番組をずたずたにしてしまったことも批判。「冬のソナタ≠フ国と日本が、本当の意味で友好を深めていくために、歴史からしっかり見つめよう」と熱く語りました。
(2005年01月19日,「赤旗」)
安倍自民党幹事長代理のNHK番組介入/事実認め謝罪求める/山口/下関革新懇が申入れ
平和と民主主義をめざす下関革新懇話会(田川章次代表世話人)の会員十二人は十八日、NHK「従軍慰安婦」番組の放送に対する安倍晋三自民党幹事長代理の政治介入問題について、日本共産党の水野純次県議とともに山口県下関市の安倍氏の同事務所を訪れ、政治介入の事実を認め謝罪するよう申し入れました。
申し入れは、「官房副長官(当時)という政府の要職にあった安倍氏が、NHK番組の内容を事前に掌握したうえで、これを改変させることは、憲法が保障する国民の言論・表現の自由を侵害するものである」として、真相を明らかにしたうえで、謝罪するよう求めたものです。
応対した配川博之筆頭秘書は、「申し入れについては、安倍本人に伝え、返答するかどうか検討したい」と答えました。参加者らは、「この問題は、憲法違反に該当する重大な問題だ。憲法を守らなければいけない国会議員として、地元選挙民に対し真相を明らかにする責任がある。演説会などの公の場で説明すべきだ」と強調し、文書で回答することを要望しました。
田川氏は、「政治家の憲法違反の行動は断じて許すことはできない。革新懇として、今後も、平和・民主主義・憲法を守る運動に全力をつくしたい」と語っていました。
(2005年01月19日,「赤旗」)
日韓条約文書公開/当時の両政府/個人補償請求権を黙殺/「日本は政治的責任を果たせ」
韓国政府/被害者・遺族への支援を検討
一九六五年の日韓基本条約に向けた交渉で、当時の韓国軍事政権と日本政府が植民地時代の朝鮮(韓国)人被害者による個人補償の請求権を黙殺していたことが、日韓条約文書の一部公開によって明確になったことから、韓国内では日韓両政府の責任を追及する声が噴き出しています。
面川誠記者
日本政府は「個人補償問題は解決済み」との姿勢を変えていませんが、韓国政府は「生活支援」などの形で財政的な支援を行うことを検討しています。
「慰安婦」言及なし
韓国の民間団体、太平洋戦争被害者補償推進協議会は十八日、「拙速に協定を締結した韓国政府にも責任があるが、日本も責任を免れない」として、「日本も文書を公開してみずから問題を解決する姿勢をみせることが望ましい」と求めました。
これに先立ち、同協議会と太平洋戦争韓国人犠牲者遺族会など五団体が十七日にソウルで共同会見を開き、「両国政府が合意した対日請求権要綱の八項目には、『慰安婦』など非人道的犯罪行為についてはまったく言及がない。したがって、『慰安婦』に対する日本政府の法的責任は依然として残っている」との声明を発表しました。
五団体は、@犠牲者と国民に対する日韓両国政府の公開謝罪A日韓両国による請求権問題の再交渉B日本政府による犠牲者および遺族に対する直接の補償と人道的支援―を求める要請書を韓国外交通商省に提出しました。
反人倫的な犯罪
当時の日韓会談で韓国側は「対日請求権要綱」を提示しています。これについて日韓請求権協定は、両国と個人の請求権が「完全かつ最終的に解決された」としていますが、「要綱」には「慰安婦」問題が含まれていないため、今でも請求権が残っているとの主張です。
ただ、韓国の法学者のほとんどは、「韓日協定で両国間の請求権問題が解決されたとなっている以上、日本政府に対する訴訟で勝つのは困難」とみています。しかし、加害国として被害者への人道的配慮は別問題だとの見方が大勢です。
韓国の民間研究機関、民族問題研究所の金民吉吉(キム・ミンチョル)研究員は「交渉結果については韓国政府にかなりの責任があることが明らかになった」とした上で、「『慰安婦』など反人倫的な犯罪まで日本の責任が免罪されるわけではない。百歩譲っても、最低限の道義的、政治的な責任は日本政府にある」と強調し、自主的に被害者、遺族の救済に乗り出すべきだと主張しています。
政府、国会が対応へ
韓国の李海〇(イ・ヘチャン)首相は十八日の閣議で、文書公開を「歴史を一つずつ整理し、歴史を正しく打ち立てる出発点にしよう」と呼び掛け、「過去に政府が透明な形で問題を処理できず、四十年ぶりに被害者の怒りが噴出している」と指摘、「政府は歴史の前に正直、透明でなければならないと改めて感じた。被害者の心をいやしていく姿勢で臨む」との決意を示しました。
これは、韓国人被害者の救済を、自国の過去の過ちを明らかにし正していこうという盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権が進める「歴史の見直し」政策の一環と位置付けたものです。
公開された文書では、韓国人に対する個人補償は韓国政府が行うと明記したものがあります。今後、被害者による訴訟も予想されます。このため韓国政府は、生活支援金の支給といった形で、補償に準じた支援を行うことを検討しているといいます。
国会では、野党ハンナラ党の李在五(イ・ジェオ)議員が十八日、「韓日会談が拙速に推進された背景、請求権問題、『従軍慰安婦』、原爆被害者問題などに対する調査を行わなければならない」として、国会に特別委員会の設置を提案。「未来志向の韓日関係を開き、北東アジアの平和を維持するためには、過去の歴史を整理すべきだ」と主張しました。
李議員は四五年生まれ。日韓条約締結当時は二十歳の大学生で、条約と協定を「屈辱外交」と批判し、激烈な反対運動を主導した世代です。
広がる怒りの声
怒りの声を上げているのは、アジア太平洋侵略戦争に日本軍人、軍属などとして駆り出された「被害者」だけではありません。植民地支配下で「日本人」として敗戦を迎え、戦争犯罪人として連合軍に処罰された人々もいます。
戦後、捕虜虐待などの容疑で「B、C級戦犯」として起訴された朝鮮(韓国)人は百四十八人、このうち二十三人が死刑判決を受けたといいます。
日本の最高裁は九九年十二月二十日、被害者・遺族が起こした補償請求訴訟の判決で、請求を棄却する一方で、「補償を可能とする立法措置が講じられていないことについて不満を抱く上告人の心情」に理解を示し、間接的に日本政府に対応を促しました。
父がインドネシアで戦犯として処刑された韓国・忠清北道の卞光洙(ビョン・グァンス)氏は、韓国メディアに「文書公開は被害者の苦しみを清算するたたかいの始まりだ。日韓両国政府の責任を問う」と語りました。
日韓基本条約と請求権協定
日本、韓国両政府は一九六五年六月、日韓基本条約を締結し国交を正常化しました。国交正常化交渉で大きな争点となったのが「請求権」問題。日本側は朝鮮半島に残した財産(国家、個人を含む)などの補償に言及。韓国側は、日本による侵略戦争に動員された朝鮮(韓国)人被害者への補償である「戦争による被徴用の被害に対する補償」「被徴用韓国人の未収金」を含む八項目の「対日請求権要綱」を日本側に提示しました。条約とともに締結された日韓請求権協定と同付属議定書は、これらの請求権は「完全かつ最終的に解決された」と明記しました。韓国政府は十七日、交渉関連の公文書を一部公開しました。
侵略戦争での朝鮮(韓国)人被害
日本による植民地支配とアジア太平洋侵略戦争で朝鮮(韓国)人が受けた被害について、韓国の歴史学界は、@徴用七百三十二万人A徴兵三十八万人B「慰安婦」四万―二十万人C原爆被害者七万人―と推計しています。韓国政府は一九七五―七七年に、約百三万人の被害者のうち死者約八千五百人の遺族にのみ一人あたり約三十万ウォン(現在の約六百万ウォン=約六十万円=に相当)の補償金を支給しました。
( 2005年01月19日,「赤旗」)
米軍新基地反対に連帯/日本AALAが理事会で採択
日本アジア・アフリカ・ラテンアメリカ連帯委員会(日本AALA)は十五、十六の両日、静岡県熱海市で第三回全国理事会を開きました。
会議では、昨年末のベネズエラ友好連帯訪問について報告されました。バンドン会議と日本AALA創立五十周年を記念し、四月九日に東京・昭和女子大学人見記念講堂で開く講演会「二十世紀から二十一世紀へ―世界と日本」(日本共産党の不破哲三議長が講演)を全国から二千人の参加者と、非同盟諸国の在日大使らを迎えて成功させることを確認しました。
インド洋スマトラ沖地震・大津波の被災者救援募金、「従軍慰安婦」問題の署名推進、世界社会フォーラム(ポルトアレグレ・ブラジル)への参加―などを決めました。
また、沖縄県名護市の辺野古沖に米軍新基地が建設されようとしている問題で「新海上基地建設に反対し、辺野古の海を守るたたかいに連帯する」とのメッセージを採択しました。
( 2005年01月19日,「赤旗」)
NHK番組政治介入/日本AALA理事会が声明
日本アジア・アフリカ・ラテンアメリカ連帯委員会は十六日、「侵略の歴史のわい曲を許さず、報道の自由、言論・表現の自由を守るために、政府と安倍、中川両氏及びNHKに対して、真相の徹底的糾明と責任を明確にすることを要求する」との第三回全国理事会名の声明を発表しました。
声明は、自民党の安倍幹事長代理と中川経産相によるNHK「従軍慰安婦」番組改ざん問題について「国民の言論、表現の自由を保障し、検閲を禁じた憲法二一条に違反する」と指摘。「何人からも干渉され、又は規律されることがない」とする放送法第三条にも違反するとしています。
安倍、中川両氏の介入について「『従軍慰安婦』問題をなかったことにしようとする『偏った歴史観』を強制し、侵略戦争を美化し、歴史をわい曲しようとする意図は明白」と批判しています。
( 2005年01月19日,「赤旗」)
NHK番組政治介入/全労連女性部/声明を発表
全労連(全国労働組合総連合)女性部は十八日、安倍晋三自民党幹事長代理と中川昭一経産相によるNHK「従軍慰安婦」番組改ざん問題について、「NHK番組の改ざんへの政治的圧力に強く抗議し、徹底した真相究明を求めます」との声明を発表しました。
声明は、「政権・与党の政治家が、放送される前に中止を要求することは、言論・表現・報道の自由を保障し、検閲を禁止した憲法二一条に違反するとともに、放送内容の外部からの介入を禁止した放送法三条に反する行為」「政治家とNHK関係者の責任は、社会的にも重大」と批判しています。
声明は、番組改ざんは「従軍慰安婦」問題における旧日本軍の関与を認め、反省と謝罪、過ちを繰り返さないことを世界に約束した政府見解に反していると指摘し、国民を欺いたことに強く抗議。徹底した真相究明、海老沢勝二NHK会長の辞任、国会で安倍、中川両氏の責任を明らかにすることを求めています。
( 2005年01月19日, 「赤旗」)
NHK番組政治介入/全労連が批判声明/関係者の国会招致求める
全労連(全国労働組合総連合)第十一回常任幹事会は十七日、安倍晋三自民党幹事長代理と中川昭一経産相によるNHK「従軍慰安婦」番組改ざん問題についての声明を発表しました。
声明は、政治的圧力を背景にした番組の改ざんは「不偏不党」をうたった放送法に違反しジャーナリズムの根幹を揺るがすとともに、番組内容変更を迫ることは憲法で禁じている検閲そのものであり言論・表現の自由を侵す重大問題であると批判しています。
NHKに対しては、「政治的圧力に屈していたならば、視聴者に対する重大な背信行為であり社会的責任は重い」と指摘しています。
さらに、安倍、中川両氏をはじめ関係者の国会への参考人招致、第三者による調査委員会の設置、経営陣の刷新をふくむNHKの抜本改革を求めています。
( 2005年01月19日,「赤旗」)
瀬古、八田氏が真相究明訴え/名古屋市/NHK番組改ざん問題
日本共産党の瀬古由起子前衆院議員、八田ひろ子前参院議員は十八日夕、名古屋市栄の街頭に立ち、NHKの従軍慰安婦番組の改ざん問題で、真相究明と責任追及を求める訴えを行いました。
瀬古氏らは「憲法、放送法を蹂躙(じゅうりん)するような自民党・安倍晋三幹事長代理らのNHKに対する政治的圧力は絶対許せません。ご一緒に世論と運動を広げましょう」と呼びかけました。
訴えを聞いた名古屋市守山区の公務員の男性(60)は「安倍氏らのしたことはいけません。その後の発言もうそばかり。保身のためという気がします。NHKも、長いものに巻かれないで、断固とした対応をすべきです」と語っていました。
( 2005年01月19日,「赤旗」)
良心かけ真相明らかに/「声をあげなければ」/政治介入の背景究明へ/NHK問題で緊急会見
ジャーナリストへ。市民へ。一人ひとりの良心に訴えかけるような会見でした。NHKへの「政治介入」問題を受け、十八日午後、参議院議員会館で緊急に開かれた「NHK問題に関する緊急記者会見とアピール」。ジャーナリスト、研究者と、約百五十人の市民が集いました。板倉三枝記者
呼びかけたアジアプレス代表の野中章弘さんが、メディアへの政治介入は、ひとりNHKの問題ではないことを強調します。会見の出席者からも「なぜテレビは、政治介入をした安倍晋三幹事長代理の言い分を検証もせず、垂れ流すのか」と論点のすりかえにメディアが加担している現状が口々に批判されました。
ジャーナリストの斎藤貴男さんは「どちらが呼びつけたかは問題ではない。日常的に(メディアと政治家の)こういう関係があることが問題で、ぜったいあってはならないこと」だと語ります。
注目されたのは、問題となった番組「戦争をどう裁くか」(四回シリーズ)の制作にかかわった坂上香さん(当時・制作会社ドキュメンタリージャパンのディレクター)の発言でした。
政治介入が問題になっているのはシリーズ第二回ですが、坂上さんは、自分がかかわったシリーズ第三回においても、改ざんされた事実を告発。「削られたのは、女性国際戦犯法廷や従軍慰安婦の関連。戒厳令下のようで、どこの国の言論統制かと思うほど異常なものだった」と実態を語りました。
同じく出演者の高橋哲哉東大教授は、「最終段階の手直しはまったく知らず、放映を見てあぜんとした」と発言。放送二日前に、追加撮影までして編集しようとした「修正台本版」が、なぜさらに変えられたのか、長井暁チーフプロデューサーの証言で初めて明らかになったと、次のように語りました。
「今、長井さんを守るということは、真実を明らかにすること。長井さんの発言は正しい、とはっきりさせること。メディアは、大改ざんでくやしい思いをしているNHK教養番組部の人たちに、第二第三の証言を強く働きかけてほしい。NHKの真実を知っている人には、良心をかけて真相を語ってほしい」
NHK職員でつくる日本放送労働組合(日放労)の山越淳副委員長は「何人かのディレクターも、声を上げなければといっていた。長井さんを守ることは責務としてやっていく」と述べました。
会見した16人
記者会見した十六人を紹介します。
▽岩崎貞明(『放送レポート』編集長)▽小田桐誠(『GALAC』編集長)▽桂敬一(立正大学教授)▽北村肇(『週刊金曜日』編集長)▽斎藤貴男(ジャーナリスト)▽坂上香(映像ジャーナリスト)▽坂本衛(ジャーナリスト)▽篠田博之(『創』編集長)▽下村健一(市民メディア・アドバイザー)▽高橋哲哉(東京大学教授)▽服部孝章(立教大学教授)▽原寿雄(ジャーナリスト)▽広河隆一(『DAYS JAPAN』編集長)▽松田浩(元立命館大学教授)▽森達也(映画監督)▽綿井健陽(ビデオ・ジャーナリスト)
( 2005年01月19日, 「赤旗」)
NHK番組問題/不当な政治介入があった事実は明白/真相と責任の解明もとめる/志位委員長、CS番組で主張
日本共産党の志位和夫委員長は、十八日放映のCSテレビ・朝日ニュースター「各党はいま」に出演し、自民党の安倍晋三幹事長代理、中川昭一経済産業相によるNHK番組への政治介入問題について、両氏への取材内容を詳細に報じた「朝日」(十八日付)やこの間の両氏の発言などをみると「不当な政治介入があった事実はいよいよ明白だ」と強調しました。
「朝日」(十八日付)によると、安倍氏が十日に同紙取材に「偏っている報道と知るに至り、NHKから話を聞いた。中立的な立場で報道されなければならないのであり、反対側の立場の意見も当然、紹介しなければいけない。時間的な配分も中立性が保たれなければいけないと考えている、ということを申し上げた」とのコメントを「正確さを期すため」として出しています。
志位氏は「安倍氏が、『偏っている』という認識と立場に立って公平中立にやりなさい≠ニ言ったこと自体が圧力・介入になるし、反対側の意見∞時間的な配分≠ネど番組の具体的な内容にまで言及していることも圧力・介入そのものだ。それを自ら認めた発言だ」と指摘しました。
また「NHK幹部との面会は番組放送後の三日後だった」と、態度を一変させた中川氏の場合、「朝日」(十八日付)では、放送前に番組に介入したことを示す、同紙記者との生々しいやりとりが示されていることをしめし、「これだけリアルなコメントをしておきながら、後になってNHK側の言い分にあわせて、実は会ったのは事後だったというのは、とうてい通用する話ではない」とのべました。
説明つかない大改変
さらに志位氏は、安倍氏がこの問題の弁明で出演したテレビ番組のなかで、NHK幹部から「きわめてバランスのとれた番組になっている」(十六日のテレビ朝日系番組)などと説明を受けたと語っていることを指摘。そのことと「従軍慰安婦」制度への批判的な意見を削るなどの二度にわたる番組の大改変が、安倍氏と会った後に行われたこととの関係に言及しました。
志位氏は、「あの番組が、NHKが『自主的に制作』したものだったら、なぜ『きわめてバランスのとれたもの』と自ら安倍氏に説明した番組を、その後大改変したのか説明がつかない。不当な外的圧力、政治的圧力・介入があったということでしか説明のつかないことだ」と指摘。「ことは憲法・放送法の根幹をじゅうりんするものであり、これが横行すれば戦前の『大本営発表』をそのまま流す報道機関に変質させられてしまうことになる。日本の民主主義の大本が問われている問題だ」と強調しました。
そのうえで、小泉首相が「NHK内部の問題だ」と何ら調査する姿勢をみせていないことについて、「元官房副長官、現閣僚のかかわった重大疑惑を『調査しない』とはまったく無責任な態度だ」と批判。安倍、中川両氏の国会招致による真相究明の必要性を強調しました。(関連記事4面)
( 2005年01月19日,「赤旗」)
◎「朝日」が検証特集/安倍氏/「偏っている」明言/中川氏/放送前に「会った」
「従軍慰安婦」問題をとりあげたNHK番組(二〇〇一年一月放送)の改ざん問題を十二日付朝刊で最初に報じた「朝日」は、十八日付で「NHK番組改変 本社の取材・報道」と題して、取材経過を詳しく紹介。自民党の安倍晋三幹事長代理、中川昭一経済産業相のコメントや一問一答の全容を明らかにしています。
安倍氏には「朝日」記者が一月十日に取材しましたが、「正確を期すためにきちんとコメントしたい」と同日夜、改めてコメントを出しました。その中で「偏っている報道と知るに至り、NHKから話を聞いた。中立的な立場で報道されなければならないのであり、反対側の立場の意見も当然、紹介しなければいけない。時間的な配分も中立性が保たれなければいけないと考えている、ということを申し上げた。NHK側も、中立な立場での報道を心がけていると考えている、ということだった。国会議員として当然、言うべき意見を言ったと思っている。政治的圧力をかけたこととは違う」と答え、番組に注文をつけていたことを認めています。
十三日になって、安倍氏は「こちらから『偏った内容だ』などと指摘した事実も全くなく…」などといいだしていますが、当初は介入を明白に認めていたことを示しています。
中川氏は十三日の会見で、番組放送前にはNHK関係者と会っておらず、会ったのは放送後の二月二日だと弁明しています。
しかし十八日付に掲載された「朝日」記者との一問一答(十日)では、「放送直前の1月29日に、NHKの野島、松尾両氏に会われたわけですね?」の問いに、中川氏は「会った、会った。議員会館でね」と返答。さらに「向こう(NHK)は教育テレビでやりますからとか、あそこを直します、ここを直しますから、やりたいと。それで『だめだ』と」とのべたこと、「放送中止を求めたのですか」の質問に「まあそりゃそうだ」と答えたことを紹介しています。
( 2005年01月19日,「赤旗」)
NHK番組/改ざん圧力の事実解明要求/新婦人都会長声明
新日本婦人の会東京都本部の上伸子会長は十五日、NHKに圧力をかけて第二次世界大戦中の従軍慰安婦の被害をテーマにした番組を改ざんさせた問題で、圧力をかけて放送内容に介入した安倍晋三自民党幹事長代理と中川昭一経済産業相の両氏、政権担当責任者である小泉純一郎首相に対し、抗議声明を送付しました。
声明は、安倍、中川両氏の行為が放送法の精神に背き、憲法で保障された表現・報道の自由を侵害する重大な問題であるとし、両氏が国会で事実関係を明らかにするよう主張。
政府が侵略戦争の責任を明確にし、戦時下での人権侵害に対して謝罪と補償を行うことを求めると同時に、政府や政権党である自民党の中枢をになう人物が、戦争責任の追及を「公正でない」と主張することは許せないと訴えています。
(2005年01月18日,「赤旗」)
番組改ざん問題/NHK、自民に抗議/母親大会連絡会
大阪母親大会連絡会(菅原藤子委員長)は十四日、「従軍慰安婦」問題を扱ったNHK番組の改ざん問題で、小泉首相、安倍晋三・自民党幹事長代理、中川昭一経済産業相とNHKの海老沢会長に抗議文を送りました。
抗議文は、安倍、中川両氏に国会議員辞職を求めるとともに、小泉首相に、内閣としての責任を明らかにするよう要望しています。
NHKへの抗議文では、改ざんの経過について虚偽の弁明をつづけてきたことに強く抗議。会長の即刻辞任を求めています。
(2005年01月18日「赤旗」)
番組改ざん問題/NHK、自民に抗議/新婦人府本部
新日本婦人の会大阪府本部(加藤洋子会長)は十四日、「従軍慰安婦」問題を扱ったNHK番組の改ざん問題で、小泉首相、自民党の安倍晋三幹事長代理、中川昭一経済産業相とNHKの海老沢会長にそれぞれ抗議文を送りました。
安倍氏らにあてた抗議文は、「憲法を守る義務がある国会議員が番組の内容に介入したことは、放送の自立を定めた放送法の精神にそむくだけでなく、憲法21条の表現の自由を侵害する重大な違法行為であり、絶対に許されません」とのべ、安倍、中川両氏に国会議員辞職を求めています。
(2005年01月18日,「赤旗」)
NHK番組改ざん/自民に抗議/古河・総和平和の会
自民党の安倍晋三、中川昭一両氏がNHK「従軍慰安婦」関連番組の内容を改めるよう圧力をかけた問題で、茨城県の「古河・総和平和の会」(野口徳代表理事)は十七日までに小泉純一郎自民党総裁に抗議文を送り、国会での真相究明と「従軍慰安婦」問題での誠実な対応を求めました。NHKの海老沢勝二会長にも抗議文を出し、視聴者・国民に真相を明らかにするよう要求しました。
(2005年01月18日,「赤旗」)
NHK番組政治介入/日本民主青年同盟が抗議/徹底して真相究明を
日本民主青年同盟は十五日、安倍晋三自民党幹事長代理、中川昭一経産相によるNHK「従軍慰安婦」番組改ざん問題について、「政治家の圧力で歴史を隠ぺいする行為に強く抗議する」との抗議声明を発表しました。
声明は、「政治家が放送内容に圧力をかけるのは、言論・表現・報道の自由を保障し、検閲を禁止した憲法二一条に反する」「外部からの介入を禁止した放送法の第三条に反する、民主主義破壊の行為」と厳しく抗議しています。
小泉首相に対しては、国内外に注目されている重大な性格を持つ問題であることを自覚し、全容解明と対処を要求。NHKには、政治家の不当な介入・圧力に屈するとともに、「圧力はなかった」と虚偽の弁明をしてきた二重の責任を指摘し、事件の全容の公表と関係者の責任の明確化を求めています。
( 2005年01月18日,「赤旗」)
NHK番組政治介入/日本中国友好協会が抗議/徹底して真相究明を
日本中国友好協会は十七日、NHK「従軍慰安婦」番組の放送に対する安倍晋三自民党幹事長代理、中川昭一経産相の政治介入問題について、「番組への政治介入に強く抗議します」との声明を発表しました。
声明は「圧力の結果カットされた部分は、昭和天皇の戦争責任はじめ、中国人被害者の紹介と証言、加害兵士の証言など、いずれも、番組の決定的部分と考えられます」と指摘。日本の日中戦争を含む第二次大戦における戦争犯罪の歴史を覆い隠し、戦争を美化するために、「国民の言論・表現の自由を保障し、検閲を禁止している憲法二一条に違反し、また放送法にも違反して、NHKの番組に事前検閲、介入をおこなったものとして、重大」と強く抗議しています。
声明は、問題の徹底的な糾明とともに、NHKが政府に迎合・癒着しない報道の自主性を貫くよう求めています。
( 2005年01月18日,「赤旗」)
安倍氏ら以外も面会/NHK番組放送前/議連幹部認める
歴史教科書の「従軍慰安婦」問題の記述削除などを求めてきた自民党の議連「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」の古屋圭司会長は十七日午後、二○○一年一月放送のNHK番組の改ざん問題について「放送前にわたしを含む議連幹部の多くがNHK幹部に面会を求められ、番組について説明を受けた」と述べました。古屋氏は当時政調副会長でしたが「圧力は一切掛けていない」と弁明しました。党本部で記者団に語りました。
古屋氏のほか、同議連の平沢勝栄会長代理、下村博文事務局長らも十七日、NHK幹部との面会を認めました。この問題では、中川昭一経済産業相と安倍晋三幹事長代理がNHK幹部と面会したことが明らかになっています。当時、中川氏は同議連の会長、安倍氏は元事務局長でした。
( 2005年01月18日, 「赤旗」)
NHK番組政治介入/日本中国友好協会が抗議/徹底して真相究明を
日本中国友好協会は十七日、NHK「従軍慰安婦」番組の放送に対する安倍晋三自民党幹事長代理、中川昭一経産相の政治介入問題について、「番組への政治介入に強く抗議します」との声明を発表しました。
声明は「圧力の結果カットされた部分は、昭和天皇の戦争責任はじめ、中国人被害者の紹介と証言、加害兵士の証言など、いずれも、番組の決定的部分と考えられます」と指摘。日本の日中戦争を含む第二次大戦における戦争犯罪の歴史を覆い隠し、戦争を美化するために、「国民の言論・表現の自由を保障し、検閲を禁止している憲法二一条に違反し、また放送法にも違反して、NHKの番組に事前検閲、介入をおこなったものとして、重大」と強く抗議しています。
声明は、問題の徹底的な糾明とともに、NHKが政府に迎合・癒着しない報道の自主性を貫くよう求めています。
( 2005年01月18日, 「赤旗」)
NHK特集番組/ばかなことをやると思った=^森前首相が暴言
自民党の森喜朗前首相は十七日午後の都内での講演で、二○○一年一月に放送直前に改ざんされた問題が指摘されている「従軍慰安婦」などを取り上げたNHKの特集番組について「(昭和天皇の)弁護人がいない模擬裁判をどうしてNHKが放送しなきゃいけなかったのか。当時、内閣にいたから聞いていたが、(NHKは)ばかなことをやるなあと思っていた」と述べ、首相だった当時、番組内容に疑問を持っていたことを明らかにしました。
ただ、森氏が事前にどの程度事情を把握していたかには言及しませんでした。
( 2005年01月18日,「赤旗」)
党語る学習すすめよう/大阪・河南地区女性部/綱領を読む会開く
日本共産党河南地区委員会の女性部は十三日、『新・日本共産党綱領を読む』を読む会を開き、新しく党に入った人や女性議員、地区委員、新日本婦人の会グループなど二十人が参加しました。
午前十時から午後五時まで約六時間かけて読み合わせをしながら、意見交換しました。
「せっかく本を買ったのに、なかなか読めなかった。きょう、みんなと読めて、この本はみんなに読んでもらいたい本だと思った」「あらためて戦前の天皇制と侵略戦争がどんなものだったかをよく知ることができた。党員として歴史の流れの中で党をみることはとても大事だと思った」
「イラク派兵、ビラ配布への弾圧、従軍慰安婦問題のNHK報道への自民党議員の介入など、情勢と重ね合わせてみると、天皇制、侵略戦争に何の反省もないことがはっきりみえる。九条をなくそうとしていることも系統的にねらいをもってやってきたことだとわかった」「日本の異常な対米従属をアジアの人々はどう見ているか。憲法九条、教育基本法を守るたたかいは国際的にも重要」など、積極的な意見がどんどん出ました。
「きょうの『読む会』を契機に、党を語る力をつける学習を、参加者が中心になってすすめよう」と申し合わせました。
( 2005年01月18日「赤旗」)
NHK政治介入/わずか数時間で「調査」とは/プロデューサーがコメント
NHK番組に自民党幹部による政治介入があったと告発したNHKの長井暁チーフプロデューサーが十七日、NHKの関根放送総局長の見解にたいしてコメントを出しました。
長井さんは十三日、NHKの従軍慰安婦番組が改ざんされたのは安倍晋三幹事長代理(当時・官房副長官)と中川昭一経済産業相による「政治的圧力を背景としたもの」と証言していました。同日、NHKは総局長名で「政治的圧力を受けて番組の内容が変更された事実はない」「(長井)担当デスクの主張は間違い」とする見解を発表。これにたいして、長井さんは「コンプライアンス推進室が1カ月かけても調査できなかった出来事を、わずか数時間の調査で、『主張は間違いだ』などとどうして断言することができるのでしょうか。NHKが私を孤立させようと躍起になっている…」と述べ、NHKが第三者機関を設けて、真相解明の調査をすることを求めています。
これは「各報道機関の皆様へ 全国の皆様へ」として、弁護士事務所を通じて発表したもの。「記者会見以降、実に多くの視聴者の皆様から、励ましや激励のメールやお手紙をいただきました」と感謝を表明。心ある職員がNHK再生に向けて取り組んでいることをあげ、NHKが「真の改革を成し遂げたときに再び信頼をお寄せいただきますように」と訴えています。
( 2005年01月18日,「赤旗」)
NHK番組政治介入問題/引き続き重要問題として追及/市田書記局長が会見
また市田氏は、自民党の安倍晋三幹事長代理が、NHK番組改ざん問題で圧力をかけたことを改めて否定したことに対して言及。「当初は『偏った番組で時間的配分も中立性が必要だ』といっており、単に公正中立さだけを求めたのではなく言論や報道への圧力は明白だ。一政治家にとどまらず当時内閣官房副長官の立場であり、従軍慰安婦問題で旧日本軍と政府の関与を認めた一九九三年八月の政府見解にも反するものだ」として、引き続き重要問題として追及する考えを示しました。
( 2005年01月18日,「赤旗」)
主張/自民党の言論抑圧/弁明すれど「圧力」は消えず
自民党の安倍幹事長代理や中川経済産業相がNHKに政治的圧力をかけて番組を改ざんさせた事件は、政府・自民党による言論抑圧として、きわめて重大な問題です。
安倍、中川両氏は、当初、事実関係を認めたうえで開き直っていましたが、その後「変更するように申し入れたり、注文を付けたりした事実はない」(安倍氏)、「会ったのは番組放送の後」(中川氏)と言っています。NHKも「政治的圧力を受けて番組の内容が変更された事実はありません」との見解を発表しています。通用する弁明でしょうか。
「知る立場にあった」
安倍氏は、特集番組が放送される前日(二〇〇一年一月二十九日)にNHK幹部と会った際のことを、テレビで次のように話しています。
「一応予算という大義名分でこられた」「(番組について)詳細な説明があった」(十六日、フジ系「報道2001」)「ひどい内容になっているという話を聞いていたので、『ちゃんと公平公正にやってくださいね』と話をした」(十三日、テレビ朝日系「報道ステーション」)「そういう番組ができつつあるという話は…知る立場にあったもので、知っていた」「いろんな議論があったことを私は知っていますから、公平公正にというのは当然」(十六日、テレビ朝日系「サンデープロジェクト」)
安倍氏は、NHK番組の内容やそれにかかわる議論を事前に知っていて、「公正にやれ」と注文をつけていたのです。安倍氏は、〇一年一月当時、内閣官房副長官として政権中枢にいました。その安倍氏が、「知る立場」にあって、「ひどい内容」だという認識で「ちゃんと公平公正にやれ」と言えば、「公平公正ではない」と言ったのと同じです。
実際、安倍氏と会ったNHK幹部の指示によって、放送前日の深夜から当日の夕方にかけて、番組内容が大きく変更されました。それは、四十四分の番組だったのに四十分で放送しなければならなくなるほど異例なものでした。
中川氏は、NHK幹部に「会ったのは」放送後だと言い始めましたが、「朝日」の取材には「NHK側があれこれ直すと説明し、それでもやるというから『だめだ』と言った」(十二日付)とこたえていました。「朝日」の記事が出た後のコメント(十二日)でも「公正中立の立場で放送すべきであることを指摘した」とのべています。事前の「指摘」であったことは、中川氏の発言からも明らかであり、「だめだ」などというのは、まさに検閲です。
NHKの「見解」は、放送直前まで手を加えたこと、「当時の放送総局長や番組制作局長」が「意見を述べた」ことを認めつつ、それは「公正で最善の内容」にするために「当然のこと」だったと言っています。「公正にやれ」と言われたことを制作現場に指示していたということです。それでカットしたのは、従軍慰安婦問題での日本政府の責任に関する部分や関係者・被害者の証言でした。
政府でさえ日本の責任を認めざるを得なくなっている従軍慰安婦問題で、真相を隠そうとすることこそ、「公正」に反しています。
国会で真相の究明を
当事者のいずれの弁明によっても、政治的圧力でNHK番組を改ざんさせたことは、否定できません。
言論・表現・報道の自由にかかわる重大問題です。国会は、安倍、中川両氏を招致して、真相の究明と、責任の追及をすすめるべきです。
( 2005年01月18日,「赤旗」)
NHK番組改ざん/各団体が抗議/婦人民主クラブ(再建)
婦人民主クラブ(再建)の一戸葉子会長は十四日、安倍晋三自民党幹事長代理と中川昭一経産相によるNHK「従軍慰安婦」番組改ざん問題についての「抗議と要請」を発表し、小泉首相と海老沢勝二NHK会長に送付しました。
「抗議と要請」は、小泉首相に対して、安倍自民党幹事長代理と中川経産相による番組改ざんについて調査しないと言明していることは「政府の責任を放棄した許せない対応」だと批判しています。
海老沢会長に対しては、早急に調査をすすめ、責任の所在を明らかにし、会長および関係者の辞職、再発を防ぐ手立てをとることを求めています。
( 2005年01月17日,「赤旗」)
NHK番組改ざん/各団体が抗議/徹底して真相究明を/日本婦人団体連合会
日本婦人団体連合会(婦団連)の堀江ゆり会長は十四日、安倍晋三自民党幹事長代理と中川昭一経産相によるNHK「従軍慰安婦」番組改ざん問題について抗議声明を発表し、政府、自民党関係者、NHKに送付しました。
声明は、政権・与党の政治家が番組内容について放送前に圧力をかけ、放送中止を要求することは、憲法や放送法に反する行為であり、社会的にも責任が重いと指摘。今回の行為は日本政府が表明した従軍慰安婦問題への「おわびと反省の気持ち」にも反しており、「私たち国民を欺いたことに強く抗議します」とのべています。
声明は、政府・与党とNHKが徹底して真相究明すること、海老沢勝二NHK会長の辞任、安倍、中川両氏の責任を明らかにすることを求めています。
( 2005年01月17日,「赤旗」)
NHK番組改ざん問題/隠せない介入の事実/安倍氏の弁解を検証すると
「圧力をかけていない」「公正・中立にといっただけ」――。自民党の安倍晋三幹事長代理が、NHKの「従軍慰安婦」番組改ざん問題で、あれこれ弁明しています。介入を明白に認めた当初の発言を変えるなど否定に躍起。しかし、この間の経過や安倍氏自身の発言をみても、圧力・介入の事実は隠しようがありません。
具体的注文こそ圧力
「NHKがとりわけ求められている公正・中立の立場で報道すべきではないかと指摘した」
安倍氏は、こんな調子で番組内容の変更を求めた自らの発言を正当化しています。しかし、安倍氏は一般論を口にしたのではありません。特定の番組に対して、それを「偏っている」という特定の立場から「公正・中立に」と注文をつけたのです。
安倍氏を訪れたのは、NHKの総合企画室・野島直樹担当局長、松尾武放送総局長ら。
安倍氏は、番組で扱った「女性国際戦犯法廷」について「(裁判長が昭和天皇有罪の)判決を下すと、場内は拍手と興奮のるつぼの中で歓喜に包まれるという極めて異常な状況」(十三日、テレビ朝日系「報道ステーション」)と敵視していました。
だからこそ、「偏った報道と知り、NHKから話を聞いた。中立的な立場で報道されねばならず、反対側の意見も紹介しなければならないし、時間的配分も中立性が必要だと言った」(「朝日」十二日付)のです。「時間的配分」にまで言及しているのは、安倍氏が放送前から番組制作の事情を知り得ている証拠であり、具体的な注文をつけたこと自体、圧力そのものです。
さらに、官房副長官として政権の中枢にいた安倍氏が「公正・中立にやれ」と言えば、それは番組で「法廷」を扱うなと言っているのと同じことになります。
コラムニストの天野祐吉氏は、「純粋に無色透明な人が言うならそれでいいです。あの番組に批判的な方が『公正であってほしい』と言えばあの番組は公正ではないという意味になりませんか」(十四日、「報道ステーション」)と指摘。十六日放送のテレビ朝日系「サンデープロジェクト」でも「『公平・公正』にということ自体が客観的には政治圧力になるのではないか」(経済ジャーナリストの財部誠一氏)という声もあがっています。
面会後に内容を改変
安倍氏は、「介入」「圧力」を否定しますが、NHK幹部と会った二〇〇一年一月二十九日から、番組内容が二度にわたって大幅に改ざんされたのは厳然とした事実です。
当時番組の担当デスクだった長井暁氏の証言などによると、同日午後六時すぎ、完成ずみの番組を異例の試写。松尾放送総局長は三点にわたる変更を制作現場に指示します。それは、
――「女性国際戦犯法廷」が、日本軍による婦女暴行や「慰安婦」制度が「人道に対する罪」を構成すると認定し、日本国と昭和天皇に責任があり有罪と判決を下した部分を全面的にカットする。
――スタジオ出演者である米山リサ・カリフォルニア大学準教授のコメントを数カ所カットする。
――「法廷」に反対の立場をとる秦郁彦日本大学教授のインタビューを大幅に追加する。
この手直し作業が深夜まで行われ、番組の尺(長さ)は一分短くなるという異常事態に。
改ざんはさらに三十日午後十時からの放送直前に再び行われました。松尾総局長は、@中国人被害者の紹介と証言A東ティモールの慰安所の紹介と元慰安婦の証言B元日本軍兵士の慰安所や婦女暴行の体験の証言――の三点をさらにカットするよう現場に指示しました。
二度の改変の結果、四十四分間の番組は四十分に縮めて放送され、安倍氏が敵視し、番組の要でもあった「法廷」がどのような判断を下したかわからないものになってしまったのです。
また「法廷」の意義について触れた出演者の発言をカットする一方、「法廷」反対論者のコメントが大幅に追加されました。
なぜ特定番組を説明
「予算の説明にうかがいたいというので応じたもので、こちらからNHKを呼んだ事実はまったくない。NHKが自主的に番組内容を説明した」
安倍氏が、番組放送前NHK幹部と会ったことについて、こう弁解しているのも不可解です。
訪れたうち、松尾放送総局長といえば放送現場に責任をもつトップ。その人物が、わざわざ、特定の番組について放送前日に説明にくるのも不自然です。
安倍氏は、「(NHK側が)非常にバランスのとれた番組になっているということを説明した」と発言しています(「サンデープロジェクト」)。同氏がこの番組が「偏っている」と特別の関心をもっていることがNHK側に伝わらなければ、NHK側がこんな説明をしにくるはずがありません。
NHK番組介入問題の経過
2000年12月8〜12日 「女性国際戦犯法廷」開催
01年 1月29日午後 NHK総合企画室の野島直樹担当局長と松尾武放送総局長が安倍、中川両氏を議員会館に訪ね番組への理解を求める。了解を得られず、番組を変更するので放送させてほしいと説明。(安倍氏「NHK幹部が予算の説明できた。NHK側が自主的に番組内容を説明」、中川氏「会ったのは2月2日」)
同日午後6時すぎ 松尾総局長と野島担当局長、伊東律子番組制作局長が完成済みの番組を試写し、内容の変更を制作現場に指示
同日深夜 制作現場が手直し作業し、44分の番組は43分に
30日夕 松尾総局長が番組の改変を3点にわたり指示。番組は最終的に40分に短縮
同日午後10時 番組放送
(注)長井NHKチーフ・プロデューサー(当時番組デスク)の証言にもとづく。かっこ内は安倍、中川氏の主張
( 2005年01月17日, 「赤旗」)
NHK「慰安婦」番組改ざん問題/安倍氏が事前に内容知り介入/テレビ朝日系番組/小池政策委員長が批判
「従軍慰安婦」問題を扱ったNHK番組の改ざん問題が十六日のテレビ朝日系番組「サンデープロジェクト」でとりあげられました。出演した日本共産党の小池晃政策委員長は、自民党の安倍晋三幹事長代理が、官房副長官当時に特定の番組について事前に内容を知り、「公平・公正に」と発言したことは政府・自民党による介入だと厳しく批判しました。
番組の冒頭、安倍氏が出演。放送前日の二〇〇一年一月二十九日にNHK関係者から番組について「いろいろな批判的な意見も紹介しながらちゃんとした番組をつくっていますという話だった」「それはもう反論も入っているし、とこういう話であった」と、番組の構成や変更点についてNHK側から具体的な説明があり、そのうえで「公平・公正にお願いします」と述べたと弁明しました。
小池氏は、安倍氏が「朝日」(十二日付)のコメントで「中立的な立場で報道されねばならず、反対側の意見も紹介しなければならないし、時間的な配分も中立性が必要だ」と述べていることを紹介し、「番組内容を知っていなければそんなコメントを出せるはずがない」と指摘。「一般論でなく、特定の番組について『公平・公正に』といったら、これはいまつくっている番組は公平・公正じゃない、といっていることで、まさに番組にたいする介入だ」と批判しました。
番組のコメンテーターも「番組が放送される前に当時の官房副長官に(NHKが)お伺いをたてるということはやはり異常」「『公平・公正に』ということが客観的には政治圧力になるのではないか」と指摘しました。
また、自民党の与謝野馨政調会長が「予算の時期には(NHK関係者が)説明にくる」と述べたのに対し、小池氏が「放送総局長がきますか」と指摘すると与謝野氏は返答に詰まり「いろいろな人がくる…」とことばを濁しました。
さらに小池氏は安倍氏が介入した「従軍慰安婦」問題は「官房長官談話(一九九三年八月)で政府の結論が出ている。その国際公約を踏みにじったものだ」と指摘しました。
民主党、社民党の代表も、国会の場で真相を解明する姿勢を明らかにしました。(2面に関連記事)
官房長官談話
「従軍慰安婦」問題についての一年半以上にわたる政府の調査結果を、一九九三年八月に河野洋平内閣官房長官の談話として発表したもの。
旧日本軍が関与して、朝鮮などにおいて「慰安婦」が本人の意思に反し強制的に集められた事実を認めています。
多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけたことを反省、謝罪。歴史の真実を直視し歴史教育などを通じて長く記憶にとどめ同じ過ちを繰り返さない決意を表明しています。
( 2005年01月17日,「赤旗」)
市議選勝利誓う/摂津で集い/宮本前参院議員が講演
今年九月に行われる摂津市議会議員選挙での五議席確保と強大な党と後援会づくりをめざして日本共産党摂津市委員会と日本共産党摂津後援会は十四日、摂津市福祉会館で「新春のつどい」を開催し、六十人が参加しました。
藤岡繁喜後援会長と有木茂党吹田・摂津地区委員長のあいさつの後、宮本たけし前参議院議員が記念講演を行いました。 宮本氏は、NHK従軍慰安婦番組の改ざん問題をとりあげ、こうした勢力がすすめる憲法改悪を許さないたたかいをまきおこす展望を語りました。また、大規模な庶民増税の押し付けをすすめる自民党や公明党、民主党の「二大政党制づくり」のなかで増大する国民の苦難をなくすために奮闘する日本共産党の活動を自らの新潟県中越大震災救援ボランティアの体験に触れて紹介しました。
そして、市議選での勝利を切り開く「実力」をもった党と後援会をつくることをよびかけ、そのために全力で奮闘する決意をのべました。
最後に、五人の市議候補が決意を表明し、参加者は大きな拍手でこたえました。
(2005年01月16日,「赤旗」)
NHK従軍慰安婦番組への政治介入問題/元「ドキュメンタリージャパン」坂上香さん証言
「このまま出したら皆さんとはお別れ」教養番組部長/まるで違う番組に
「だれも反論できない。論議もない。命令だけが下って…。まるで戒厳令下だった」―。NHK従軍慰安婦番組への政治介入問題で、番組制作会社「ドキュメンタリージャパン」(DJ)の担当ディレクターとして制作現場を体験した坂上香さん(映像ジャーナリスト、京都文教大学助教授)が、番組制作時から異常だった当時の様子を、本紙に生々しく語りました。
番組は、NHK教養番組部が、関連会社「NHKエンタープライズ21」(NEP21)を通じてDJに制作依頼したもの。
二〇〇〇年九月、DJは、坂上さんが提出した企画書をもとに、「問われる戦時性暴力」(二回目)と「今も続く戦時性暴力」(三回目)の制作を担当。坂上さんは三回目のディレクターを務めました。
自民党の安倍晋三、中川昭一両衆院議員らが介入したとされる二〇〇一年一月二十九日。それ以前から制作現場の異常は始まっていました。
「女性国際戦犯法廷」が中心に扱われていた「問われる戦時性暴力」の試写は、一月十九日と二十四日に異例の「教養番組部長試写」として行われました。
粗編(素材テープをつないだだけ)段階で上層部が見る試写は、通常、特別番組や大型企画では行われますが、日常的な番組では異例です。
坂上さんは事件の半年前、「医療過誤」をテーマに番組を制作しましたが試写の話などまったくありませんでした。
「部長試写」前の、教養部、NEP21、DJの担当者による、三者合同試写では、大きな異論は出されず作業は順調でした。
「お前らともだ」
十九日の「部長試写」で部長は、「法廷との距離が近すぎる」「企画と違う」「お前らにはめられた」「このままではアウトだ」などと発言。「法廷」の主催団体・「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(VAWW―NETジャパン)代表のインタビューと「天皇有罪」の発表シーンは、番組制作局長と部長の「通達」で削除されました。
二十四日、二回目の「部長試写」では、部長のほかにNHK内部の年配の男性が、自己紹介もないまま出席していました。
性暴力の加害者の証言に「違和感あるな」「いろんなところで同じこといっている」などと、証言の信ぴょう性に疑問を投げかけました。
「そうだろう、うさんくさいよな」。部長と男性は、坂上さんらに背中を向け顔すら見せませんでした。
坂上さんは、「証言はいらないんじゃないの」といった部長の発言に思わず反論しました。
証言を聴き行動を起こすことが、番組の要であることを意見しました。
背中を向けていた部長が「このまま出したらみなさんとはお別れだ。二度と仕事はしない」と言い放ちました。NEP21や教養番組部の人間にも「お前らともだ」。
坂上さんは「なにか時代劇でも見ているようで…。屈辱的だった」といいます。
二十四日以降、制作はDJの手を離れ主導権は完全にNHKが握ることになります。
なにか別の力が
同年一月初めごろ、放映中止を求める右翼団体の決起集会ビラが回覧されるようになりました。
教養部メンバーの自宅に右翼の脅迫めいた嫌がらせがあったことも耳にしました。
坂上さんは「たんなる自主規制ではない。なにか別の力が働いている」と感じていました。
それでも二十八日には番組はほぼ完成したといわれています。
しかし、一月三十日の放送を見て坂上さんはがくぜんとします。「局の手に渡ってしまった以上、かなり変えられてしまうであろうことは予測できたが、まるで違う番組になっていた」
今回発覚した政治介入について「ふに落ちる」といいます。
( 2005年01月16日,「赤旗」)
週間日誌/05年1月9日〜15日
政治・経済
◆NHK従軍慰安婦番組改ざん 自民党の安倍幹事長代理と中川経産相の介入が明るみに 戦争中の従軍慰安婦たちの被害をテーマとしたNHK番組の内容改ざん問題で、自民党の安倍晋三幹事長代理と中川昭一経済産業相が、介入していたと「朝日」が報道(12日)。内部告発したチーフ・プロデューサーが会見(13日、写真)
◆景気下向き4カ月連続 内閣府が発表した昨年十一月の景気動向指数は、現状を示す一致指数が44・4%となり、四カ月連続で50%割れと景気は下向き(11日)
◆銀行貸出8年連続マイナス 日銀によると、二〇〇四年の銀行の貸出平均残高は四百兆円を割り込み、前年と比べ八年連続マイナス(12日)
◆街角景況感5カ月連続悪化 内閣府が発表した昨年十二月の景気ウオッチャー調査によると、街角の景況感は五カ月連続悪化(14日)
社会・国民運動
◆新成人と対話 民青同盟が各地の成人式会場や駅前などで新成人とアンケートで対話。「憲法を九条を変えるのには反対です」「就職の採用枠を増やしてほしい」など回答(10日)
◆ノロウイルス検出 全国の高齢者施設などで相次ぐノロウイルスが原因とみられる感染性胃腸炎の集団発生患者数は、四十三都道府県で七千八百二十一人に達し、うち五千三百七十一人からノロウイルスを検出。死者も十数人(10―13日)
◆農民連が定期大会 農民連が第十六回全国大会を開催。農業復権へのたたかい、食料を守る運動方針を決める(12日―14日)
◆東京・葛飾のビラ配布弾圧で逮捕の男性を起訴 東京地検は男性を住居侵入の罪で起訴(11日)。日本共産党の都議団長、葛飾区議団、弁護団は記者会見し、暴挙を厳しく批判(同)。東京地裁は男性の保釈を決定(14日)
国際
◆パレスチナ新議長にアッバス氏 パレスチナ自治政府の議長選挙が行われ、アッバス・パレスチナ解放機構(PLO)議長が当選(9日)
◆イラクのスンニ派、米軍撤退日程求める イラクのイスラム教スンニ派の宗教指導部イラク・イスラム聖職者協会が、在イラク米大使館高官と会談し、イラク駐留米軍の撤退日程を米国が決めれば、国民議会選挙ボイコットの呼びかけを撤回すると提案(10日)
◆アウシュビッツ強制収容所解放六十周年で国連特別総会開催へ アナン国連事務総長が、加盟国の大半の賛成で一月二十四日に「ナチスの死の収容所解放六十周年」を記念する特別総会を開くことになったと発表(11日)
◆国連主催で津波・地震被災支援国会議 国連主催のスマトラ島沖地震と津波の被災国支援会議がスイスのジュネーブで開かれ、支援国が申し出た国連への拠出額が七億一千七百万j(約七百五十三億円)に達したことを確認(11日)
◆ウクライナ、六月中にイラクから撤兵 ウクライナのクジムク国防相が、今年六月三十日までにイラクに派遣している自国軍すべてを引き揚げることを確認(12日)
◆米国、イラクでの大量破壊兵器捜索打ち切り マクレラン米大統領報道官が、イラクへの侵略戦争開始の口実としたイラクに存在するとされた大量破壊兵器の捜索を米国政府は昨年十二月に打ち切っていたことを認める(12日)
◆地震・津波の死者・不明18万人超える スマトラ島沖地震・津波の死者・不明数が十八万人を超えたと国連人道問題調整官事務所が発表(13日)
( 2005年01月16日,「赤旗」)
NHK慰安婦番組/放送直前何が削られたか/「修正台本」をもとに検証
NHKの番組「戦争をどう裁くかA問われる戦時性暴力」(二〇〇一年一月三十日)。放送日の前日二十九日、安倍官房副長官と面会したNHK幹部はスタジオへ取って返し、作り直しを指示。編集作業は深夜に及び、四十四分ものだったのが四十三分になって完成しました。さらに三十日夕方、幹部から再度「カット」の指示が出て、編集は夜十時の放送まぎわまで続きました。放送されたのは四十分のものでした。何が消され、何が加えられたのか。実際に放送された番組と、四十四分版の修正台本を比較し、番組改変のありさまを見ました。
高橋哲哉東大助教授(当時)と米山リサ・カリフォルニア大学準教授がスタジオ出演し、解説しました。テーマにかかわる重要な発言が大きく削られました。(カットされたおもな部分はゴシック)
論評丸ごと削る
高橋さんは、「法廷」をどうとらえるか、と問われ、ベトナム戦争当時の民間法廷の試みを紹介します。その後、女性国際戦犯法廷の意義について述べた部分は、そっくりカットされました。
「今回は90年代の初めに名乗り出てくれた、日本軍の元「慰安婦」の人達がですね、日本政府に責任をとってほしいということで、訴え続けているんですが、その声がまだ聞き届けられていないという状況の中で、…民間の力で、そういった被害者の人達に一堂に会してもらって、その声を国際法の専門家に届けて、改めて判断を示してもらうと、そういう場を作った…決して模擬裁判でもなく…当事者がこの裁判に参加しているということの意味は非常に大きい…市民の力で国際法にも影響を与えることができるという、1990年代に始まった流れを象徴するような出来事だったんじゃないかと、私は思っています」
米山さんにいたっては従軍慰安婦の証言を直接論評した部分は、すべて消されていました。
「やはり証言をされている方。一人の証言をされている方の背後に、何百人、何千人という死者、あるいは犠牲者の方がおられて、証言台に出てこれない方がおられる訳ですよね。あるいは証言をされている背後に、まだ語り尽くせない…というのは、ものすごく沢山あるということも感じられると思うんですね。…」
日本政府の対応
日本政府の対応についてふれた部分も大きく削られました。
高橋さんは、被害者が求めているのは、国家による個人補償だと述べたあと、それが決して理不尽な要求ではないと、説明していました。
「それが成されない限り、お詫びをしても、言葉だけであると理解されてしまいますし、…国民基金の方は、これは政府ではなくて、民間の基金であるということなので、被害者の人達からは、政府、国家が責任を免れるためのものではないかというふうに理解されているわけですね。国家による補償ということが成されない限り、納得が得られないということだろうと思います」
日本政府は条約で解決済みとの立場だが、と問われ、高橋さんは次のように続けていました。
「…サンフランシスコ講和条約、それから二国間条約で、戦争被害に関する請求権は解決されたということをとっているんですが、これは…クアラスワア報告や、マクドゥーガル報告、…国際機関の国際法上の判断では、退けられている」
米山さんについては「…日本軍あるいは日本政府が、かつて過去に犯した行為が、犯罪であったかどうか…つまり、裁きですね。それを下す手段も経ないまま、…処罰されず免責されたまま」が削られ、「許されることを前提とした謝罪を行って来た」という発言だけが残り、意味不明のものになりました。
さらに米山さんの次のコメントも消されました。
「法廷が和解を前提としたものではない…ということが大事だと思うんです。…和解などというものは、到底許されようのないものだ、それほど償いきれないものだ、謝罪しきれないものだ、ということをある意味でかいま見せている」
昭和天皇の戦争責任と日本軍の従軍慰安婦問題という二つのタブーを裁いた女性国際戦犯法廷。意味が通らないほどズタズタにされた改ざんの跡をみると、安倍・中川両氏の圧力を受け、何が何でも法廷の意義を骨抜きにしたい、というNHK上層部の姿が見えてきます。
加えられたのは
秦郁彦・日本大学教授のインタビューは二十八日に急きょ収録し、追加されました。二十九日には補充され、三分三十秒にもなりました。
女性国際戦犯法廷について、秦氏は「法常識を絶した話」と決めつけ、次のように話します。
「時効があります。したがってもう50年以上経っている。そうすると本人の申し立て以外にもう調べる方法がない。慰安婦だった人の証言に証人に立っている人がいないんですね」
従軍慰安婦制度については、こういいます。
「…当時の状況では、合法的な、売春は合法的に認められた存在だったわけです。…商行為なんですね」
長井暁チーフ・プロデューサーが証言した改変内容
2001年1月29日
@「女性国際戦犯法廷」が、日本軍による強姦や慰安婦制度が「人道に対する罪」を構成すると認定し、日本国と昭和天皇に責任があるとした部分を全面的にカットする。
Aスタジオの出演者であるカルフォルニア大学の米山リサ準教授の話を数カ所でカットする。
B「女性国際戦犯法廷」に反対の立場をとる日本大学の秦郁彦教授のインタビューを大幅に追加する。
同30日(放送当日)
@中国人被害者の紹介と証言。
A東チモールの慰安所の紹介と、元慰安婦の証言。
B自らが体験した慰安所や強姦についての元日本軍兵士の証言。
異例の部長試写≠へて
番組は、二〇〇〇年十二月二十七日、それまでに出来上がっていたVTRを見ながら、高橋哲哉さんと米山リサさんが話をするスタジオ部分を収録しました。これでほぼ完成し、〇一年一月十三日、十七日に局内試写がおこなわれました。
しかし、十九日に異例の教養番組部長試写。以後、三回の部長試写が繰り返され、その都度、番組がつくり直しに。女性国際戦犯法廷を主催した市民団体バウネットの松井やより代表(当時)のインタビュー、天皇有罪の発表シーンが削られます。
二十七日、NHKは高橋さんにスタジオ部分の撮り直しを申し出て、修正台本ができあがります。それに沿って、二十八日にあらたに収録されました。ところが二十九、三十日には高橋さんには断りもなく、NHKの独断で本人の発言を含めて大幅にカットされる異常な事態となりました。
( 2005年01月16日,「赤旗」)
英紙ガーディアン/番組改ざん問題を詳報/中立だという前提が打撃受けた
【ロンドン=西尾正哉】英紙ガーディアン(電子版)は十四日、NHK番組の改ざん、政治介入問題を詳しく報道しました。
東京特派員による記事は「NHKが従軍慰安婦に関するドキュメンタリーで政治圧力に屈したという新たな疑惑に直面した」とし、NHKが中立だという「前提は打撃を受けようとしている」と指摘しました。
同記事は安倍晋三内閣官房副長官(当時)が「NHK幹部に番組の内容を変えるように迫ったことを認めた」としたうえで、「偏った報道と知り、中立的な立場で報道されねばならないと(NHKに)のべた」との同氏の弁明も紹介。つづいて、番組制作にかかわったプロデューサーが告発の記者会見を開いたこと、十四日になって安倍氏とNHKが改ざんを否定したことなどを詳しく伝えました。
記事はまた、「NHKはジャーナリズムの魂≠売り渡す異常な行為で罪深い」とする「戦争と女性への暴力」日本ネットワークの西野瑠美子氏のコメントを紹介。さらに、視聴者がNHKの財政スキャンダルにも怒りを感じており、受信料の納付を拒否するなど「NHKに対し先例のない市民的不服従をおこなっている」と指摘しました。
( 2005年01月16日,「赤旗」)
マスメディア時評/抑圧側に身を置く「読売」「産経」
従軍慰安婦問題を取り上げたNHK番組にたいし、安倍晋三官房副長官(=当時、現自民党幹事長代理)や中川昭一衆院議員(現経済産業相)が介入し、大幅に改ざんさせたとされる問題は、政府・与党の幹部が言論を抑圧した大問題として、批判が広がっています。
安倍・中川両氏やNHKは否定にかかっていますが、これまでの言明によっても、放送前に両氏が番組の内容を非難し、「放送中止」まで口にして圧力を加えた事実は否定できません。ことが検閲を禁じた憲法や「何人からも干渉されない」と定めた放送法に反することは明白です。
被害者と加害者取り違える
各新聞の社説でも、この問題をいち早く報じた「朝日」が十三日付で「NHK 政治家への抵抗力を持て」と主張したのをはじめ、「日経」(十四日付)が「公共放送の独立性を貫け」、「毎日」(十五日付)が「政治に弱い体質が問題だ」と、あいついで取り上げているのは当然でしょう。
「東京」は十三日付社説で、「放送番組介入 憲法のイロハを無視」と主張しています。安倍・中川両氏の責任を真正面から批判しているのが特徴です。
ところが「読売」は十五日付社説で「不可解な『制作現場の自由』論」と、番組を制作した側に矛先を向け、「産経」に至っては同日付で「NHK慰安婦番組 内容自体も検証すべきだ」と主張したうえ、一面トップで番組の内容を非難する記事を載せています。
いま問題になっているのは、番組が放送される前に、政府・与党の幹部がその中身を問題にして圧力を加え、制作現場の意に反して番組を改ざんさせたことです。その問題を取り上げるのに、介入したとされる安倍・中川両氏や圧力に屈したNHK幹部ではなく、制作現場や番組内容を問題にするというのは、文字通り被害者と加害者を取り違えるものであり、番組を抑圧した側に身を置くものといわなければなりません。
実際安倍氏は、放送前日に、NHKの放送総局長に会い意見をいったことを認めつつ、番組が「ひどい内容」と聞いていたからなどと、みずからの行為の正当化を図っています。制作現場や番組内容に矛先を向ける「読売」や「産経」の立場は、これとうりふたつです。
この点では、「政治家が事前に内容を知り、政治的圧力を加えていたとすれば、憲法で禁じる検閲に通じる行為」(「日経」)、「番組に問題があると言うなら、放送後、オープンな場で批判する機会はいくらでもあるはずだし、最終的には番組を評価するのは視聴者」(「毎日」)といった指摘が、はるかに正論でしょう。
歴史の改ざんにつながる
重大なのは、制作現場や番組内容に矛先を向ける「読売」や「産経」が、何を問題にしているかです。
「読売」は、番組が取り上げた「女性国際戦犯法廷」が昭和天皇に有罪を言い渡したことをあげ、そうした「法廷」の趣旨に沿った番組が問題だと主張します。「産経」も、女性国際戦犯法廷が慰安婦を「戦時性暴力」の犠牲者ととらえ、昭和天皇などを裁いたことをあげ、一面トップの記事では「強制連行 事実扱い」などと非難しています。
底がすけて見えるとは、まさにこのことでしょう。「読売」や「産経」が問題にしているのは、歴史の事実として従軍慰安婦問題をとりあげ、旧日本軍の関与や昭和天皇の戦争責任を明らかにすることそのものです。それはNHKに圧力を加えたとされる安倍氏らの言動とも合致しており、NHKの番組改ざんによって、従軍慰安婦問題の責任が日本国と昭和天皇にあるとした「法廷」の判決部分が全面的にカットされたことにも示されています。
従軍慰安婦問題では、政府が一九九三年に発表した見解でも旧日本軍の関与を認め、国際的に「お詫(わ)びと反省の気持ち」を明らかにしています。それを否定するような番組の改ざんは、まさに歴史そのものを改ざんしようとするものであり、国際的にも批判を免れません。
本来、権力による言論抑圧は、言論の自由を守るジャーナリズムであれば、立場の違いはどうあれ、声をそろえて批判すべき問題です。それを放棄しただけでなく歴史の改ざんにまで手を貸そうとしている「読売」や「産経」の姿は、これらの新聞がもはや言論機関ではなく、言論抑圧の機関になりさがったことを示しています。
(宮坂一男)「赤旗」)
( 2005年01月16日,
潮流
腕章のかぎ十字も鮮やかないでたち。仮装パーティーでナチス将校にふんした、イギリスのヘンリー王子が物議をかもしています▼本人は無邪気なふざけのつもりだったのかもしれませんが、風当たりはきびしい。たまらず、父親のチャールズ皇太子が王子に命じました。変装をやめさせなかった兄のウィリアム王子ともども、「(ユダヤ人虐殺の現場)アウシュビッツをみてくるように」と▼ナチスとたたかった民主主義の国を自負するイギリスです。王子がナチスのシンボルを受け入れるようでは、王室が存在し続ける意味も問われかねません。名門校に学ぶ王子。独裁制が人の生きる権利を奪った六十数年前の歴史を、学校できちんと教え伝えているのか、疑う人もいます▼日本では、「従軍慰安婦」にかかわる番組の放送中止を迫った政治家が、物議をかもしています。戦中の軍部の検閲さながらの圧力といい、戦争責任を認めたがらない思想といい、こちらは六十年前に戻ったかのようです▼イギリス皇太子にならって、安倍自民幹事長代理や中川経済産業相にいいたい。「生き残った元『慰安婦』の方々に会い、話をきくように」。しかし、彼らの仲間うちには、とがめる人も諭す人もいません。小泉首相からして、軍国日本のシンボル靖国神社が大好きなのですから▼民主主義が危ない戦後六十年の年。肝に銘じておきたい。「国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」(憲法一二条)
( 2005年01月16日「赤旗」)
NHK「慰安婦」番組/「台本」と比べると/政府責任問う場面削る/安倍副長官(当時)らと会談直後
被害者証言もカット
安倍晋三官房副長官、中川昭一衆院議員らの介入で改ざんされたと問題になっているNHK番組「問われる戦時性暴力」(二〇〇一年一月三十日放送)は、放送前日の一月二十九日、安倍氏らと会ったNHKの松尾武放送総局長らが完成していた番組のさらなる改変を指示したといわれています。二十八日までに完成した番組の、最終的な「修正台本」を本紙は入手、番組がそこから、どう改ざんされたのかを検証しました。(肩書は当時)(3面に詳報、2、15面に関連記事)
司会の町永俊雄アナウンサーと高橋哲哉・東京大学助教授と米山リサ・カリフォルニア大学準教授の対談部分では、まず冒頭の、町永アナの番組のねらいを語った部分が大幅に直されました。修正台本では「先月、東京で開かれた『女性国際戦犯法廷』を手がかりに『人道に対する罪』について考えます」となっていましたが、放送では「女性国際戦犯法廷」にふれないコメントに撮り直しました。
両氏のコメントのなかで集中的に削られたのは国際戦犯法廷にかかわる部分と日本の責任にかんする部分でした。
高橋氏の発言で削除された部分は―。
@元「慰安婦」の人たちが日本政府に責任をとってほしいと訴え、市民がその声を国際法の専門家に届けた意味は大きい、と述べた部分A国連人権委員会などが「慰安婦」問題で日本政府が責任を取るべきだと求めているが日本政府は応えていない、とした発言B被害者救済の「国民基金」は国家補償ではなく、納得を得られないとの発言C二国間条約で戦争被害の請求権は解決したという立場は国際法上退けられている、とした部分。
米山さんの発言は全体の六割が削られました。
@一人の証言者の背後には何千人の犠牲者がいること、苦しみを込めて語った体験を引き受けていくことが大切とした発言全部A日本政府の対応がなぜ元「慰安婦」に納得されていないかを述べた部分など。
あまりにも削ったため、多くが意味不明の発言になっています。
さらにVTRで放送されるはずだったもので削除されたものは―。
被害者たちの証言、専門家証言、加害兵士の証言。戦時下の性暴力が「人道の罪」に当たるとした判断、女性国際戦犯法廷が日本国家と昭和天皇の責任認定したこと、など。
「女性国際戦犯法廷をつぶさに追い戦時性暴力を問うことの意味を考える」という企画意図は完全に葬り去られたのです。
( 2005年01月16日, 『赤旗』) 「赤旗」)
NHK番組介入・ビラ弾圧に抗議/安保破棄大阪実行委
安保破棄・諸要求貫徹大阪実行委員会は十三日、「従軍慰安婦」制度の責任追及をテーマとしたNHK番組への政治家の介入、「圧力」問題で、NHK会長に抗議文を送りました。
抗議文は、NHK幹部が自ら放送法を順守せず、視聴者を裏切る行為は断じて許さないと指摘。このことは、憲法二一条の言論・表現の自由を奪い、民主主義を脅かす露骨な政治干渉で、無法行為だと抗議し、真相の全面解明と謝罪を要求しています。
◇
また、東京・葛飾区で起きたビラ配布弾圧事件で、東京地検の崎坂誠司検事に抗議文を送りました。
抗議文は、「公党の正当な言論活動を抑圧する、民主主義と憲法じゅうりんの暴挙は、日本を再び『戦争する国』に変えようとする一連の策動の一環であり、断じて許すことはできない。ただちに不当な起訴を撤回し、謝罪することを要求する」と、抗議しています。
(2005年01月15日,『赤旗』)
NHK番組改ざんに抗議/群馬憲法会議
戦争中の従軍慰安婦の被害をテーマにしたNHK番組に、当時の安倍晋三官房副長官(現自民党幹事長代理)と中川昭一衆院議員(現経済産業相)が圧力をかけ、内容を改ざんさせた問題で、群馬憲法会議は十四日、安倍、中川両氏、小泉純一郎首相、海老沢勝二NHK会長あてに抗議文を送付しました。
抗議文は、政権与党の政治家がテレビ番組の内容について事前に放送中止や内容変更を求めたことについて、言論・表現・報道の自由を保障し検閲を禁止した憲法二一条に反するとともに、放送内容について外部からの介入を禁止した放送法第三条に反する民主主義破壊の行為だとして、「こうした行為を行った政治家と、圧力に屈し番組を改ざんしたNHK関係者は責任を問われなければならない」と指摘。▽安倍、中川両氏を国会に招致し、真相の究明と責任を追及する▽海老沢会長は一連の不祥事に対する責任をとって辞任する―ことを求めています。
(2005年01月15日,『赤旗』)
NHKが朝日新聞に抗議文/従軍慰安婦番組改ざん報道
戦争責任を扱ったNHKの番組(二○○一年一月放送)が放送直前に改変された問題で、NHKの三浦元・広報局長が十四日、東京都中央区の朝日新聞社を訪れ、この問題を報じた十二日の同紙朝刊について、「NHKが政治的な介入を受けて番組を変更したかのごとく事実をわい曲しており、NHKの信用を著しく傷つけた」として、謝罪や訂正記事を求める抗議文を手渡しました。
この番組をめぐっては、制作にかかわったNHKのチーフディレクターが十三日に記者会見し、NHK幹部が安倍晋三官房副長官(現自民党幹事長代理)と中川昭一衆院議員(現経済産業相)に呼びつけられた後、内容を変更するよう業務命令があったとして、「政治的な圧力が背景にあった」と述べた。これに対しNHKは、関根昭義放送総局長が同日夜、「政治的圧力を受けて番組の内容が変更された事実はない」と反論する見解を出していました。
( 2005年01月15日,『赤旗』)
言論・表現の自由を侵害/日本ジャーナリスト会議が抗議/NHK従軍慰安婦番組改ざん
日本ジャーナリスト会議は十四日、安倍晋三、中川昭一両自民党衆院議員のNHK「従軍慰安婦」番組への政治介入に対する抗議声明を発表しました。声明は、「朝日」報道を紹介しながら両氏が「事前検閲ともいえる干渉を行ったことは、メディアだけの問題にとどまらず、言論・表現の自由全般に対する許すことの出来ない侵害であり、強く抗議する」とし、真相の究明を求めています。またNHKに対し、「公共放送の主体性を放棄した態度と言わざるを得ない」と強く抗議。「視聴者の願いに真摯(しんし)に向き合う立場に立つよう」求めています。
( 2005年01月15日, 『赤旗』)
おはようニュース問答/自民幹部がNHK番組に圧力かけてたって
みどり 母さん今日の新聞見た? NHK番組の改ざんで自民党幹部が圧力をかけていたんだって。
陽子 どういうこと?
「慰安婦」問題で
みどり 四年前に放映された、旧日本軍による従軍慰安婦問題の責任を問う「女性国際戦犯法廷」を取り上げた番組が改ざんされたの。当時の安倍晋三官房副長官と中川昭一現経済産業相が、NHK幹部と会い、「偏ってる」「一方的な放映をするな」などといったらしいのよ。
陽子 その番組は覚えているわ。不当に改ざんされたと市民団体が裁判を起こしたのよね。陰にやっぱり自民党がいたのね。
みどり 中川経済産業相は「やめてしまえ」とまでいったらしい。結局NHK側は圧力に屈し、この法廷が判決で昭和天皇を「有罪」としたことなど、肝心なことはカットして、戦時に性暴力が無かったようなコメントをつけるなど改ざんをしたの。
陽子 それが事実なら放送への政治介入じゃないの。確かテレビや新聞には編集の自由があるはずよ。
みどり 放送法の三条は「放送番組は何人からも干渉されることがない」としているのよ。検閲を禁じた憲法二一条にも違反している。
陽子 言論と表現の自由は憲法で保障されている国民の権利でしょう。検閲は憲法で禁止されている。歴史の事実を検閲までしてねじ曲げるやり方は、日本軍が従軍慰安婦を性の奴隷にしていた戦中の暗黒時代そのものを思い出すわ。背筋が寒くなるよね。
みどり 慰安婦問題は国連の人権委員会も告発するなど、国際的にも問題にされているのよ。
加害国の閣僚が
陽子 よりによって加害者だった日本政府や与党の幹部がこんなことをするなんて。
みどり 安倍、中川両氏とも、中学校の歴史教科書で従軍慰安婦についての記述を削除することをもとめる「議員の会」の幹部をした人物。今回も反省するどころか開き直っている。この二人の行為をかばっている小泉首相の責任も重大だわ。
陽子 あのひどい侵略戦争を美化する彼らこそ偏っているわ。真相は徹底的に究明されるべきね。
( 2005年01月15日,『赤旗』)
NHK番組の改ざん/各団体、厳しく抗議/日朝協会の事務局長談話
日朝協会の岩本正光事務局長は十四日、NHKの「従軍慰安婦」番組の改ざん問題について抗議談話を発表し、安倍晋三自民党幹事長代理、中川昭一経済産業大臣、海老沢勝二NHK会長らに送付しました。
談話では番組の内容にに安倍、中川両氏が介入し、「意図が大きく損なわれた」ことが製作関係者によって明らかにされたが、これは「憲法や放送法に反する重大な許しがたい行為である」と指摘、圧力に屈し改ざんした海老沢会長の責任を厳しく問うています。
談話では「従軍慰安婦」制度について、他に類例をみない非人道的なもので日本政府も日本軍の関与を認め「おわびと反省の気持ち」を表明しているものであり、政府が重要問題として認識し、正しく対応することを求め、両氏らに抗議しています。
( 2005年01月15日,『赤旗』)
NHK番組の改ざん/各団体、厳しく抗議/日本平和委が声明
日本平和委員会は十四日、NHK「従軍慰安婦」番組改ざん問題で、抗議声明をだしました。
声明では、安倍晋三自民党幹事長代理、中川昭一経済産業大臣による番組の内容への介入と、圧力に屈したNHKの責任を厳しく糾弾する、としています。平和委員会は日本国憲法と放送法、平和と民主主義を守るため全力をつくす決意をのべています。
( 2005年01月15日, 『赤旗』)
NHK番組の改ざん/各団体、厳しく抗議/新婦人会長が文書
新日本婦人の会の高田公子会長は十三日、NHK番組、シリーズ「戦争をどう裁くか」の第二回が安倍晋三自民党幹事長代理、中川昭一経産相両氏の介入で改ざんされた問題で、小泉首相と両氏、海老沢勝二NHK会長に抗議する文書を送付しました。
小泉首相らには、憲法を守る義務がある国会議員が番組の内容に介入したことは「表現・報道の自由を侵害する重大な違憲行為であり絶対に許されません」と抗議し、安倍、中川両氏の国会議員辞職を求めています。
また、番組にある「従軍慰安婦」問題は女性の人権をじゅうりんした国家による犯罪であり、安倍、中川両氏は「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」の幹部をつとめ侵略戦争美化の立場に立つ人物であることを厳しく指摘しています。
海老沢会長にたいしては、全容解明と会長辞任を求めています。
( 2005年01月15日,『赤旗』)
NHK従軍慰安婦番組改ざん/奇怪な弁明はじめた中川氏、安倍氏、NHK
戦時中の従軍慰安婦たちの被害をテーマとしたNHK番組(二〇〇一年一月三十日放送)に、自民党の安倍晋三幹事長代理(当時内閣官房副長官)と中川昭一経済産業相(同、衆院議員)が圧力をかけて改ざんさせたとされる問題で、不自然な動きが出ています。問題発覚から沈黙を守ってきたNHKが十三日夜、「政治的圧力を受けて番組を変更した事実はない」と両氏のかかわりを否定する見解を発表。すると、両氏もNHK見解にそった弁明をしはじめたのです。
中川氏/中止要求を認めつつ会ったのは「放送後」
今回の改ざん問題を最初に報じた「朝日」(十二日付)によると、番組放送前日の〇一年一月二十九日に安倍、中川両氏はNHK幹部に対し、「一方的な放送はするな」「公平で客観的な番組にするように」と発言。中川氏は「それができないならやめてしまえ」と放送中止を求めました。
これは、当時、同番組にデスクとしてかかわった長井暁チーフ・プロデューサーが十三日の記者会見で、同時期にNHK幹部と両氏との間で同番組の内容についてやりとりがあったとする証言と一致します。何よりも、当の中川氏が「朝日」の取材に「『だめだ』と言った。まあそういう(放送中止の)意味だ」(十二日付)と答えていました。
問題が明るみになった十二日も、「公平中立の立場で放送すべきであることを指摘したものだ」と、放送前に番組内容に関与したことを認めていたのです。
ところが、奇怪なことに政治的圧力を否定するNHK見解が出された十三日になって中川氏は態度を一変。NHK幹部と会ったのは番組放送後の「二月二日」で、「先方がNHK予算に関して説明に来た際に、この番組についても話が出た」というのです。
放送中止を求めるということは、憲法にかかわる重大問題です。中川氏はそのことを自ら認めておきながら、波紋が広がったからと言い分を変えるなどというのは到底通用しない不自然きわまりないことです。
安倍氏/「ひどい内容」と知り「話をした」と認める
安倍氏は、放映前の一月二十九日にNHK幹部と会ったことはいまでも認めています。
ところが、十三日夜に出演したテレビ朝日系番組「報道ステーション」で安倍氏は、「私が(NHK幹部を)呼びつけたわけではない」と繰り返し強調。NHK幹部が予算の説明に訪れ、そのなかでNHK側が「この機会ですから、ちょっと説明させていただきます」と問題の番組の説明をしたのだ、といいました。
語るに落ちる≠ニはこのことです。当時、安倍氏は官房副長官で、NHK予算を審議する衆院総務委員会には属していませんでした。安倍氏にわざわざ説明にくることも不自然ですが、「予算の説明」にきたのに、どうして数多くあるNHK番組のなかで、「従軍慰安婦」問題を扱った今回の番組だけが話題になるのでしょうか。それは、安倍氏が同番組を目の敵にしていたからにほかなりません。
現に安倍氏は、一月二十九日の時点で改ざんされることになる番組が「当時、もう永田町で話題になっていた」「私は(NHKの)説明を聞いて、ずいぶんひどい内容になっていると聞いていたので、『ちゃんと公平公正にやってくださいね』と話した」と、自らの関与は否定していません。
しかも、安倍氏は、「女性国際戦犯法廷」自体を「異常な集会」と敵視していたことを隠していません。その安倍氏が「公平公正に」といえば、「法廷」を正面からとりあげた番組の内容変更を迫るものだと受け取られても当然です。
現に、大幅な改ざんがおこなわれたのは、その直後でした。
「朝日」(十二日付)で安倍氏は「偏った報道と知り、NHKから話を聞いた。中立的な立場で報道されねばならず、反対側の意見も紹介しなければならないし、時間的配分も中立性が必要だと言った」とコメント。放送前から番組内容の時間配分も知りうるぐらいの立場にいたのです。
右翼は番組放送前からNHKにおしかけており、安倍氏がどこで事前に番組内容を知っていたのかは、大きな疑問です。
NHK/安倍氏と会った直後異常な改ざん2度も
NHKは十三日、関根昭義放送総局長の「見解」を発表しました。しかし、その中には多くのウソ、ほころびが目立ちます。
見解は安倍官房副長官と面会したことは認めたうえで、「圧力で番組は変更していない」「予算の説明を行う際に合わせて番組の趣旨や狙いなどを説明した」といいます。しかし、なぜ、予算の説明に放送総局長まで同行する必要があったのか。安倍氏らと会ったあと、なぜ番組の改変を繰り返したのか。NHKの説明は矛盾だらけです。
「見解」によれば「当時の放送総局長が、試写をして意見を述べたことは事実ですが、議論の分かれる問題を放送する場合にはしばしばあること」だといいます。「とんでもない」というのはNHKの技術畑の元職員。放送されるばかりになった「完パケ(完成した番組VTR)を放送総局長が試写し、注文をつけるなどは、異例中の異例だ」というのです。それは多くの放送関係者が口をそろえるところです。
しかも、放送当日に、さらに三分間も縮めるなどは「技術的にもありえない」と。「しばしばある」はウソ。政治的圧力に屈した以外に説明がつくのでしょうか。
もともと、NHKが通した当初の企画は「現代の性暴力の被害者から話を聞き、何が問われているか」を問うものだったはず。それをNHKはずたずたに改ざんしたわけですから、その責任はきびしく問われます。
( 2005年01月15日,『赤旗』)
「わい曲はない」と朝日新聞/従軍慰安婦番組改ざん報道
朝日新聞社は「報道に当たっては両議員、NHK幹部を含む関係者への取材を重ねた。記事には指摘のような事実のわい曲はないと考えている」とコメントしました。
( 2005年01月15日, 『赤旗』)
国会で解明必要/一致して野党要求/NHK従軍慰安婦番組の改ざん
日本共産党、民主党、社民党の野党三党の国対委員長が十四日、国会内で会談し、政府・与党の圧力によるNHK番組改ざん問題について、二十一日召集の通常国会で事実関係の解明を求めていくことで一致しました。
日本共産党の穀田恵二国対委員長は、NHK番組への政治介入は言論や表現、報道の自由を保障し検閲を禁止した憲法二一条や、放送内容への外部からの介入を禁じた放送法に反するものであり、従軍慰安婦問題で「お詫(わ)びと反省の気持ち」を表明した九三年八月の政府見解にも反する重大問題だと指摘。当時の官房副長官と自民党衆院議員の関与について、国会での事実関係の解明が必要だと提起しました。
野党三党の国対委員長は同日の与野党国対委員長会談で、一致して事実解明にとりくむよう主張。与党側は回答しませんでした。
( 2005年01月15日,『赤旗』)
世界に波紋/NHK従軍慰安婦番組の改ざん/歴史隠ぺい政治家が圧力
官房副長官だった自民党の安倍晋三幹事長代理と中川昭一経済産業相が、NHKに圧力をかけて第二次世界大戦中の従軍慰安婦の被害をテーマにした番組を改ざんさせたという問題は、アジア諸国各紙でも報じられ、海外に大きな波紋を広げています。このなかで各紙は共通して、小泉政権与党の中心的な政治家による公共的な報道機関への不法、不当な圧力で、日本の侵略戦争の歴史の事実と戦争責任に関する問題について番組内容が変更された点に注目しています。(2、3、5、14面に関連記事)
韓国/市民団体や報道「被害者は憤っている」
「慰安婦」問題に十年以上取り組んでいる市民団体・韓国挺身隊問題対策協議会の尹美香(ユン・ミヒャン)事務総長は、NHKの番組改ざん問題について、韓国紙ソウル新聞十三日付で「日本は過去の歴史の隠ぺいを中断し、今回の事件を自己反省のきっかけとすべきだ」と強調しました。また「政権党が圧力を加え、事実報道を妨げたことは、ある程度は予想されていたことであり、今も続いているだろう」と指摘しました。
「慰安婦」被害者が共同生活する「ナヌムの家」関係者は同紙に、「日本の不道徳と良心の欠如をあからさまに示すもの」だとし、「生存している数少ない被害者のおばあさんたちも憤っている」と語りました。
韓国女性団体連合は「日本は、全世界の女性・人権団体が求めている真相究明と謝罪・補償を無視してはならない」と主張しました。
韓国の全国ネットKBSテレビは十二日、「日本軍によって被害を受けた女性の問題を扱ったNHK番組が、政治家の圧力で変更、放送された事実が明るみになり波紋を広げている」と報道。「市民団体などが、圧力をかけた政治家と、政界を意識したNHKの双方を批判し、真相究明と関係者の責任を問うよう求めている」と伝えました。
韓国のケーブルテレビYTNは十三日、日本の「野党は『最も悪質な政治介入』だと強く批判し、今月開かれる国会で追及するとしており、政治問題化している」と伝えました。
中国青年報/「報道審査事件≠暴露」
【北京=小寺松雄】中国共産主義青年団が主管する中国青年報十四日付は、NHKの従軍慰安婦番組改ざんに安倍晋三自民党幹事長代理らがかかわっている問題について「日本メディアが歴史問題の報道審査事件≠暴露した」との見出しで報じました。
同紙は朝日新聞の十二日付第一報を紹介しつつ、NHKが旧日本軍の従軍慰安婦制度に関する番組を制作したが、「関係方面の圧力で改ざんされた」としています。
マレーシア華字紙/「日本批判の大部分削除」
マレーシアの華字紙星州日報十四日付は、安倍晋三自民党幹事長代理らがNHKに圧力をかけ戦時中の従軍慰安婦の被害をテーマにした番組を改ざんさせた問題について、「日本で政治家が、慰安婦模擬裁判に関する報道でNHKに圧力」と報じました。
同紙は、「日本の与党自民党の安倍晋三幹事長代理は十二日、二〇〇一年、NHKにたいし日本の非政府組織がおこなった第二次世界大戦中の慰安婦の模擬裁判の報道について内容変更の圧力をかけたのを認めた」とのべ、こう報じています。
「日本の女性の権利擁護組織が二〇〇〇年十二月に東京で開いた模擬裁判は、昭和天皇裕仁にたいし第二次世界大戦中に日本軍が被占領国の女性に慰安婦になるよう無理強いするのを放任したとの罪名の判決を下した」「NHKは翌年一月、この模擬裁判を特別番組で放送したが、その際、日本の戦時中の行為を批判した大部分が削除された」
同紙はさらに、「現在、五十歳の安倍晋三氏は、日本の未来の首相候補者と見なされている」と指摘。「この番組をめぐっては日本の女性団体がNHKと番組製作会社を相手取り、当初の内容が改ざんされたとして損害賠償請求の裁判を起こしている」と結んでいます。
( 2005年01月15日,『赤旗』)
05都議選/政治の流れ変えよう/教科書東京ネット運営委員吉田好一さん/歴史ゆがめる「つくる会」教科書
子どもにマイナス
中学校の教科書の全国いっせい採択が八月にあります。かつての日本の侵略戦争を美化する「新しい歴史教科書をつくる会」の中学校用歴史教科書や公民教科書を子どもたちに使わせるわけにはいきません。
「つくる会」教科書の採択の動きと憲法・教育基本法改悪の動きは同根です。憲法・教育基本法を守る運動と結んで、東京に五十四ある教科書採択区の一区でも採択させないようにしたい。東京都教育委員会自身が教科書を決めるとしている都立中高一貫校でも採択されないようにしたい。
「つくる会」の中学校用歴史教科書は、「日本軍の南方進出は、アジア諸国が独立を早める一つのきっかけともなった」などと歴史の事実をねじまげて日本の侵略戦争や植民地支配を肯定しています。二〇〇一年のいっせい採択では、その内容に厳しい批判があがり、公立中学校では一校も採用されませんでした。
新版の歴史教科書は、「つくる会」自身が会報で「『南京大虐殺』、『朝鮮人強制連行』、『従軍慰安婦強制連行』などの嘘(うそ)も一切書かれていません」と自慢しています。このことからも、前回以上に日本の侵略の事実を消し去り、美化するものであることは明白です。
日本軍が行った南京虐殺や朝鮮人強制連行、「従軍慰安婦」などの実相はすでにいろいろな角度から明らかになっています。それを「うそ」だとして消し去ることなど、許されません。
この教科書の採択はアジア諸国からも厳しく批判されることになります。将来、アジアや世界の人とつきあっていく子どもたちの教科書として明らかにマイナスです。
昨年八月二十六日、都教委は都立白〇高校付属中学校(台東区)の歴史教科書に「つくる会」の扶桑社版教科書の採択を決定しました。非常に重大な問題です。
この問題では、横山洋吉都教育長が「つくる会」と密接な関係がある「日本の前途と歴史教科書を考える議員の会」のシンポジウム(昨年六月十四日)にパネリストとして出席しています。教科書採択で重要な役割を果たす都教委自身が、「つくる会」教科書に加担するという教育行政がやってはいけないことをしているのです。
「つくる会」教科書採択を求める運動には、石原慎太郎都知事や自民党、民主党の国会議員や都議なども密接なかかわりがあります。
石原都知事は十二月の都議会で、朝鮮などを植民地化する道を開いた日露戦争を美化し、「命がけで憲法を破る」と発言しました。
自民党はこの知事発言を「感動をもって受けとめた」と礼賛しました。日本を戦争をする国へいっそう進める露骨な動きであり、大問題です。
「オール与党」の都議会で、石原知事にきちんと対決しているのは日本共産党だけです。
「つくる会」教科書の問題でも共産党は、都教委の姿勢を批判しています。六月の都議選では、共産党にぜひ前進してほしい。
聞き手・室伏敦記者
よしだ こういち 一九三九年生まれ。「つくる会」教科書採択を阻止する東京ネットワーク運営委員。国際人権活動日本委員会代表委員。子どもと教科書文京ネット事務局長
(2005年01月14日,『赤旗』)
NHK番組改変事件/チーフ・プロデューサー発表文
十三日、NHK番組制作局の教育番組センター(文化・福祉番組)チーフ・プロデューサー、長井暁さんが記者会見して発表した文書全文を紹介します。
私は1987年(昭和62年)にNHKに入局し、ディレクター時代はNHKスペシャル「朝鮮戦争」「張学良がいま語る」「御前会議」「周恩来の選択」「毛沢東とその時代」など、主に日本と東アジアの現代史をテーマとした番組の企画・制作を担当しました。デスクとなってからは、NHKスペシャルの大型シリーズ「街道をゆく」「四大文明」「日本人はるかな旅」「文明の道」などの企画・制作に携わりました。現在は放送総局の放送80周年事務局のチーフ・プロデューサーとして、放送80周年記念の特集番組や、世界遺産に関する番組の企画・制作を担当しています。平成13年当時はETV2001のデスクとして、シリーズ「戦争をどう裁くか」の制作現場の作業の一切を取り仕切る立場にありました。
NHKの放送番組「ETV2001」のシリーズ「戦争をどう裁くか」は、2001年1月29日(月)から2月1日(木)まで、4日間にわたりNHK教育テレビで放送されました。シリーズ第2回の「問われる戦時性暴力」は、第二次世界大戦中に日本軍によって引き起こされた戦時性暴力を問うために、アジア諸国と日本のNGOが開催した「女性国際戦犯法廷」を取材し、日本とアジアの被害者が、どのようなプロセスで和解を目指すべきかを考えようとした番組でした。
2001年1月下旬、衆議院議員の中川昭一氏と安倍晋三氏らが、NHKで国会・政治家対応を担当していた総合企画室の野島直樹担当局長(現・理事)らを呼び出し、「女性国際戦犯法廷」を取り上げたETV2001の放送を中止するよう強く求めました。自民党総務部会でのNHK予算審議を直前としていたこともあり、事態を重く見た野島担当局長は、1月29日(月)の午後、松尾武放送総局長(現・NHK出版社長)を伴って、中川・安倍両氏を議員会館などに訪ね、番組についての説明を行い、理解を求めました。しかし、中川・安倍両氏の了解は得られませんでした。そこで松尾放送総局長は、「番組内容を変更するので、放送させてほしい」と述べ、NHKに戻りました。松尾放送総局長は、当日の午後6時すぎから、すでにオフライン編集をUPしていた番組(通常、これ以降の編集の変更は行われない)の試写を、野島担当局長と伊東律子番組制作局長とともに行い、番組内容の変更を制作現場に指示しました。そのときの主な変更内容は以下の3点でした。
@「女性国際戦犯法廷」が、日本軍による強姦(ごうかん)や慰安婦制度が「人道に対する罪」を構成すると認定し、日本国と昭和天皇に責任があるとした部分を全面的にカットする。
Aスタジオの出演者であるカリフォルニア大学の米山リサ準教授の話を数カ所でカットする。
B「女性国際戦犯法廷」に反対の立場をとる日本大学の秦郁彦教授のインタビューを大幅に追加する。
この指示を受けて、制作現場では既にオンライン編集(本編集)終えていたVTRの手直し作業を深夜に行いました。この結果、通常44分の番組は43分という変則的な形で放送されることとなりました。
しかし、番組の改変はそれだけにとどまりませんでした。松尾放送総局長は、放送当日の1月30日(火)の夕方、すでにナレーション収録・テロップ入れなどの作業が完了し、完成間近となっていた番組の内容を、さらに3分カットするように制作現場に指示したのです。その内容は以下の3点でした。
@中国人被害者の紹介と証言。
A東ティモールの慰安所の紹介と、元慰安婦の証言。
B自らが体験した慰安所や強姦についての元日本軍兵士の証言。
この指示を受けて制作現場ではVTRの手直し作業が行われ、通常44分の番組は40分という異例の形で放送されることになりました。こうした二度にわたる政治介入にともなう番組の改変によって、番組内容はオフライン編集完了時とは大きく異なるものとなり、番組の企画意図は大きく損なわれることとなりました。
こうした行為は放送法第3条の「放送番組は、法律の定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない」に違反する不正行為であることは明らかです。
私は去年の12月9日、一連の不祥事を経て作られた「NHKコンプライアンス通報制度」に基づいて通報を行い、この不正行為を調査し公表するよう、NHKコンプライアンス推進室に求めました。推進室からは12月17日に、「調査することになった」との連絡を受けました。しかしその後、調査は進展せず、通報後1カ月を過ぎた今日にいたっても、関係者へのヒアリングすら開始されていません。
このことから、末端の職員の不正行為は直ちに調査し公表しても、海老沢会長やその側近がかかわる不正行為については、これを調査し公表することがないことは明らかとなりました。
制作現場への政治介入を恒常化させてしまった海老沢会長と、国会・政治家対策を担当する役員や幹部の責任は重大です。
以上の点から私は、NHKが真の改革を実行し、視聴者の皆様の信頼を回復するためにも、最低限今回の不正行為についての調査を厳正に行い、これを公表し、海老沢会長と全役員が責任をとるべきであると考えます。
NHK番組制作局 教育番組センター(文化・福祉番組) チーフ・プロデューサー 長井暁
( 2005年01月14日,『赤旗』)
番組はこう改ざんされた/NHKデスクの証言から
大幅に改変されたNHKの番組「戦争をどう裁くか〜A問われる戦時性暴力」(二〇〇一年一月三十日放送)。自民党の安倍官房副長官(当時)と中川現経産相の強い圧力を受けて、制作現場に何が起き、番組がどうゆがめられていったのか。十三日に会見した番組デスク・長井暁チーフプロデューサーの証言がリアルに物語ります。
01年1月下旬/安倍、中川氏が放送中止要求
同29日/安倍氏らは説明に納得せず。夜に3カ所が変更された/天皇の戦争責任などカット、「戦犯法廷」に反対の学者インタビュー大幅追加
二〇〇一年一月下旬。自民党の安倍晋三官房副長官と中川昭一衆院議員らが、NHKで国会・政治家対応を担当していた総合企画室の野島直樹担当局長(現理事)らを呼び出し、放送中止を強く求めます。この時期は、自民党総務部会でのNHK予算審議直前。事態を重く見た野島担当局長は、一月二十九日の午後、松尾武放送総局長を伴って、中川・安倍両氏を議員会館などに訪ねました。
このとき、NHK上層部の指示でとにかく番組は完成していました。政府・自民党幹部に呼び付けられて「放送中止」まで迫られたのは異常なことです。
NHKの局長らは番組についての説明を行い、理解を求めましたが、両氏は納得せず。放送総局長は、「番組内容を変更するので、放送させてほしい」と述べ、NHKに戻ります。その日の夕方六時過ぎから、松尾放送総局長、野島担当局長と伊東律子番組制作局長と長井デスクで異例の試写が行われました。
ここで変更された内容は以下三点です。
@法廷が、日本国と昭和天皇に戦争責任があるとした部分を全面的にカットする
Aスタジオ部分の出演者である米山リサカリフォルニア大学準教授の話を数カ所カットする
B「女性国際戦犯法廷」に反対の立場をとる日本大学の秦郁彦教授のインタビューを大幅に追加する。
「それまでもNHKの上司の指示で何度もつくり直しはしました。でも、それはあくまで編集の範囲だった」。長井デスクは、二十九日以降、番組修正の質が変化したことを語ります。
その結果、通常四十四分だった番組は四十三分に縮小されました。
放送当日30日/さらに中国人の被害者、元慰安婦の証言などがカットされた
番組の改変はそれだけにとどまりませんでした。放送当日も、松尾放送総局長は、三分のカットを現場に指示したのです。
その内容は@中国人被害者の紹介と証言A東ティモールの慰安所の紹介と元慰安婦の証言B加害兵士の証言をカットする│というものでした。
これには制作現場は全員が反対。しかし、押しきられました。二度にわたる政治介入にともなう番組の改変で、当初の番組の企画意図は大きく損なわれました。いまなおNHKは、「番組改変が自主的判断に基づくものだった」と主張していますが、けっしてそうではなかったことを長井さんは強調します。
与党政治家の介入前にも/VAWW─NET代表のコメント削除、天皇有罪の審理結果発表シーンも削除/出演者のコメント撮り直し
この番組は政府・与党幹部の介入前にもNHK内部で、改変が重ねられていました。
二〇〇〇年八月、NHKエンタープライズ21のプロデューサーが、十二月の「女性国際戦犯法廷」をとりあげた番組を企画したい、とドキュメンタリージャパンに制作依頼。十月、取材交渉開始。
十二月、編集開始。編集方針は、十一月のスタッフ打ち合わせの際に決定した法廷の記録性を大切にする、という方針に沿ったものでした。
十二月中旬、「ニュース7」で女性国際戦犯法廷が報道され、右翼がNHKに抗議。
二〇〇一年一月十九日、スペシャル番組部部長とNHK教養部長が試写。二人から「ラディカルで刺激的」「法廷との距離が近すぎる」などの指摘を受け、スタッフが修正について協議。その後、NHK番組制作局長と教養部長の通告として、番組の中でVAWW―NETの松井やより代表のインタビューをはずし、天皇有罪の審理結果の発表シーンも削除し、ナレーションに変更するよう命じられます。
一月二十四日。教養部長がスタッフに「ボタンを完全に掛け違えた。このまま出せば、皆さんとはお別れだ。二度と仕事はしない」と発言。制作会社ドキュメンタリージャパンがおろされます。
一月二十七日、二十八日と右翼がNHK放送センターにおしかけ、放送中止を要請。出演者の高橋哲哉氏にコメントの撮り直し。しかし、まだこの段階では、「女性国際戦犯法廷」の仕組み、加害兵士の発言、天皇有罪判決は残っていました。
( 2005年01月14日,『赤旗』)
「介入は日常、報道現場は委縮」/「会長はすべて了解していた」/NHKチーフプロデューサー会見要旨
この問題で四年間悩んだ。昨年九月にNHKにコンプライアンス(法令順守)推進室が設置され、内部通報制度ができた。NHKの自浄能力を期待して昨年十二月九日に内部通報した。
事件を調査して事実を明らかにしてほしいと思ったが、一カ月たっても関係者へのヒアリングもされていない。マスコミに事実を語るしかないと思った。
末端の職員の不正は発見しだい調査し、公にするが、会長や側近がかかわったできごとは調査する能力も意思もない。そんな海老沢体制のもとではNHKの本当の改革は難しい。
海老沢体制になってから放送現場への政治介入、放送が中止になったり再放送が中止になったりするのが日常茶飯事になってきた。報道の現場では政府に都合の悪い番組の企画は出しても通らないという雰囲気がある。委縮した空気がまん延している。海老沢体制のもっとも大きな問題は政治介入を恒常化させた点にあると考えている。
NHKが危機に存立も危うい
NHKが危機にある。受信料の不払いがどんどん増えている。現場の営業スタッフの努力は並大抵じゃない。存立も危うい。視聴者の信頼を回復し出直す必要がある。海老沢会長は一日も早く辞任し、側近で固められた経営陣も一新してもらいたい。
今回、「会見はやめたほうがいいよ。不利益をこうむるかもしれない」と同僚、友人からの電話もあった。おそらく不利益をこうむるだろう。私もサラリーマンで、家族もある。家族を路頭に迷わすわけにはいかない。この四年間非常に悩んで。(涙声)…でも…やはり真実を述べる義務がある…。
今回の問題は政治がらみだとわかっていたが、安倍(晋三)さん、中川(昭一)さんとは知らなかった。知ったのは放送の後、ある上司から教えられた。
(番組改ざんの)あの時、徹底的に反対すべきだった。言い訳になるが、右翼とかの攻撃があり、けんそう状況の下、突貫工事で何日も徹夜が続く状況だった。
元会長も会長も政治家と一体化
最後までたたかえなかった理由は、現場に最後に投入されたディレクター三人が全員処分の対象になると考えたからだ。
(二〇〇一年一月二十九日の番組改ざんでは)元慰安婦の証言はまだ手がついていなかった。これが放送され視聴者に伝わることは一定の意味があると考えた。しかし、現実的には甘い判断で、翌日、放送で削除されたのは証言部分だった。二十九日の時点で受けてしまったことが、最後の三十日に踏みとどまれなかった原因だ。今は後悔している。放送の数時間前で組合も動けなかった。
一連の経過を海老沢会長は、すべて了解していたと思う。経緯は逐一、報告されていた。この問題については総合企画室と番組制作局の会長あての報告書が存在する。
ジャーナリズム論として、国家権力・政治権力とジャーナリズムの距離という問題がある。欧米でジャーナリストを志すときのイロハは、政治権力には肉薄する必要があるが癒着しちゃいけないということだ。
NHKでは、てらいも贖罪(しょくざい)意識もなく、政治家と一体化できる方が偉くなっている。島(元会長)さんも、海老沢(会長)さんもそうだ。
NHK行動倫理憲章をつくったが、ある派閥のために行動したり、ある政治家の委託を受けて放送内容に影響を及ぼすようなことは、不正行為と規定することが必要だ。
( 2005年01月14日,『赤旗』)
4年悩み「真実を」/NHKチーフプロデューサー「不利益ある。でも…」
「でもやはり真実を述べる義務がある」――。一転、顔を紅潮させ、涙をぬぐって振り絞るように言い切った長井暁さん(42)。番組への政治介入を告発したNHKの現役チーフ・プロデューサーです。十三日、NHKではなく都内のホテルを選んで記者会見にのぞんだ長井さん。言葉と態度にジャーナリストの良心がにじみ出ていました。
告発の「不利益」について聞かれると「不利益を被るでしょう。私もサラリーマン。家族を路頭に迷わすわけにはいかない。この四年間非常に悩んで…」と声を詰まらせ、ハンカチで涙をぬぐいました。
それでも長井さんは「報道の現場では政府に都合が悪い番組の企画は出しても通らないという委縮した空気がまん延している。海老沢体制の最も大きな問題は、政治介入を恒常化させた点にある」と会見にのぞんだ決意を語ります。
改ざんされた慰安婦問題の番組。当時、安倍晋三官房副長官、中川昭一議員に幹部が呼ばれたあと、長井さんは、番組制作局長室に行きました。入るなり伊東律子局長からいきなり「この時期にNHKは政治とたたかえないのよ」と切り出されたといいます。「政治から相当厳しい批判がきていると思った」と感じました。数日後に自民党総務会でNHK予算の説明が予定されていました。
放送日の二〇〇一年一月三十日、それまでの改ざんにくわえ、元慰安婦の証言を三カ所カットすることが指示されました。現場の部長はじめ全員が反対し、松尾武放送総局長に会うと「全責任は私がとる。指示どおりに進めてほしい」といわれました。
「あのとき徹底的に反対すべきだった」と悔しさをにじませる長井さん。最後までたたかったら三人のディレクターも一緒に処分されるとの思いがありました。長井さんは政治家の介入にふれながら、「海老沢会長は、すべて了解していたと思う。経緯は逐一、報告されていた」と語りました。
長井さん自身、政界から放送現場に介入された別の体験があります。
〇一年九月十六日放送された「狂牛病。なぜ感染は拡大されたのか」。イギリス政府の報告書から、狂牛病の感染源が肉骨粉にあり、日本でも発生する恐れがあると初めて伝えました。
大きな反響があり翌週再放送される予定でした。しかし、自民党農林部会で批判が噴出。「政府の対策も入れたほうがよい」との報道局長の意見で再放送はなくなりました。
長井さんの告発は政治権力とジャーナリズムの距離という根本問題を提示しています。
( 2005年01月14日,『赤旗』)
従軍慰安婦番組問題/侵略の歴史わい曲する介入/政府見解、国連勧告にも逆行
「従軍慰安婦」問題をとりあげたNHK番組にたいする、自民党の安倍晋三幹事長代理と中川昭一経産相の政治介入。その重大さが、十三日のNHKチーフプロデューサーの告発でいっそう鮮明になりました。
政府の中枢から
安倍、中川両氏の行為は、放送法第三条はもとより、検閲を禁じた憲法二一条第二項に違反する行為です。
かつての侵略戦争で日本の軍部はNHKの放送に介入、事前検閲が横行しました。戦争遂行の最高司令部・大本営による「大本営発表」では、戦況の悪化をはじめ軍部に都合の悪いことはすべて隠され、真実が国民に知らされなかったことは歴史の教訓です。その反省から、戦後は憲法と放送法で表現の自由を保障し、検閲や外部からの干渉を禁じているのです。
かばう小泉首相
政府・自民党による、放送への介入はベトナム戦争報道などをめぐり、これまでにも報じられてきました。しかし、今回の介入は、当時官房副長官という政府の中枢にあった安倍氏がNHK幹部に対して番組の内容変更を迫っている点できわめて重大です。
ところが、小泉純一郎首相は十二日夜の会見で、政府として圧力をかけていないと弁明する一方で、「(NHKは)公正な報道を心がけてほしい」などとのべ、安倍氏らの行動を正当化しました。
安倍氏は「(番組が)明確に偏った内容であることが分かり、私は、NHKがとりわけ求められている公正中立の立場で報道すべきではないかと指摘した」とコメントし、開き直っています。
しかし、「従軍慰安婦」制度の責任を追及する民衆法廷をテーマにした番組が「偏っている」というのは、政府のこれまでの公式見解にも反するものです。
政府は調査結果をもとに、旧日本軍と日本政府の関与を認め、一九九三年八月に「従軍慰安婦」被害者に謝罪し歴史の教訓として直視していくとの河野洋平官房長官談話を発表しました。昨年十二月には、細田博之官房長官が来日中の被害者と面会して「皆様の尊厳を大きく傷つけており、心から反省しおわびする」とのべ、政府の要人として初めて被害者に直接謝罪しました。
また、一九九三年以来、国連人権委員会は「従軍慰安婦」問題を含む「女性に対する組織的な暴力と性的な奴隷行為」についての決議を採択。旧日本軍の行為などについて「教育課程の中で歴史的な事件の説明」をするとともに、「効果的な処罰や補償」を行うよう、日本政府に求めています。ILO(国際労働機関)も数回にわたって、謝罪と個人補償をするよう勧告しています。
「偏向番組だ」との安倍、中川両氏の主張は、政府のこれまでの公式見解を否定し、歴史の事実をわい曲するものであるだけでなく、戦争犯罪を許さないという国際世論にも敵対するものです。
侵略戦争の美化
安倍、中川両氏らの介入の背景には、歴史の事実をゆがめ、日本が引き起こした侵略戦争を美化しようとの執拗(しつよう)な流れがあります。
これまでにも、自民党閣僚や議員から侵略戦争美化論が繰り返し主張されてきました。とりわけ、一九九七年「新しい歴史教科書をつくる会」が結成されると、安倍、中川両氏が中心的役割を果たしてきた「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」は、同「つくる会」などと連携し、文部科学省などへ圧力を強めていきました。
今回の放送への政治介入は、侵略美化勢力が憲法や放送法までじゅうりんするなど、歴史のわい曲に狂奔していることを浮き彫りにしました。
小山田春樹記者
( 2005年01月14日,『赤旗』)
番組改ざん問題/放送3日後に「放送やめろ」?/NHKの奇怪な否定
自民党の安倍晋三幹事長代理と中川昭一経産相の圧力を受けてNHKの「従軍慰安婦」番組の内容が改ざんされた問題で、沈黙を守ってきたNHKが十三日夜になって、「政治的圧力を受けて番組を変更した事実はない」とする関根昭義放送総局長名の見解を発表しました。
それによると、中川氏とNHK幹部が面会したのは、同番組放送(二〇〇一年一月三十日)三日後の二月二日が最初で、放送前に面会した事実はないと指摘。安倍氏については、関係者の記憶では放送前日の一月二十九日ごろに面会したが、これは安倍氏から呼ばれたものではなく、予算の説明を行う際にあわせて番組の趣旨やねらいを説明したもので、「面会によって番組の内容が変更した事実はない」と否定しています。
しかし、この問題を最初に報じた「朝日」(十二日付)によると、番組放送前日の〇一年一月二十九日、安倍、中川両氏はNHK幹部にたいし、「一方的な放送はするな」「公平で客観的な報道にするように」「それができないならやめてしまえ」などと発言。「やめてしまえ」発言について中川氏は「朝日」の取材に「まあそういう(放送中止の)意味だ」と答えています。
さらに「朝日」報道を受け、中川氏はこの事実を十二日に否定せず、「公正中立の立場で放送すべきであることを指摘したもの」と関与を認め、安倍氏も同様の見解を述べています。
圧力をかけた当事者である中川氏が、「放送をやめてしまえ」といったことを認め、否定していないのです。それが、NHK見解によれば、放送三日後の話だというのですから、奇怪な話です。
奇怪といえば、その中川氏がNHKと口裏を合わせるかのように十三日夜、会ったのは「二月二日」といいだしたことです。しかし、放送を「やめてしまえ」と述べたことは否定していません。中川氏は番組が放送された後、放送中止を求めたことになるのです。
高柳幸雄記者
( 2005年01月14日, 『赤旗』)
主張/NHK番組検閲/どこに「公正・中立」がある
自民党の安倍晋三幹事長代理と中川昭一経済産業相が、二〇〇一年一月、NHKの特集番組の内容を事前に察知し、NHK幹部を呼びつけて「一方的な放送はするな」と中止を要求して、大幅な改変をさせていました。事実上の検閲です。
安倍氏は、当時、森内閣の官房副長官として権力の中枢にいました。権力が検閲で報道、情報を統制するのは、自由と民主主義、国民の人権を根本から踏みにじるものです。
歴史わい曲を強制
戦前の日本では、新聞、雑誌が政府の検閲によって発行禁止にされたり、中身がわからないよう××(伏せ字)にされたり、発行人や執筆者が逮捕されたりしました。
このような事態を再現させないために、日本国憲法は、第二一条一項で国民の言論・表現の自由を保障し、第二項で「検閲は、これをしてはならない」と、権力側の自由侵害を禁じています。放送法も、法律に定められたものでなければ「何人からも干渉され、又は規律されることがない」(第三条)と定めています。
安倍・中川両氏は、番組改変への関与を認めながら、当然のことを言っただけだと開き直っています。「明確に偏った内容であることが分かり、公正中立の立場で報道すべきだと指摘した」(安倍氏)。「公正中立の立場で放送すべきであることを指摘したもので、政治的圧力をかけて中止を強制したものではない」(中川氏)。さらに、小泉首相が、両氏をかばうばかりか「公正な報道を心がけて」などと同様のことを言っているのは重大です。権力を握っている者が「公正中立」の審判者となることこそ、検閲の本質です。
両氏が「偏っている」と番組を攻撃してつぶそうとしたのは、従軍慰安婦問題を問う内容になっていた点でした。これこそ、従軍慰安婦問題をなかったことにしようとする「偏った歴史観」の強制です。
旧日本軍は、アジア・太平洋への侵略拡大にともない、戦地の部隊に「性的慰安所」を設け、多くの女性を閉じ込めて、将兵相手の性行為を強要しました。
一九九〇年代に、韓国人元従軍慰安婦が日本政府の謝罪と補償を求める裁判を起こしたことで、国内外で注目されるようになり、歴史学者の研究によって、日本政府・軍の直接的、組織的関与を示す公文書が明らかにされました。そのため、政府も、それまでのように「民間業者がやったこと」とは言えなくなり、九三年八月の河野洋平官房長官談話で、日本軍の「関与」によって「多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた」ことに「お詫びと反省」を表明するに至りました。
国連人権委員会でも、従軍慰安婦問題が繰り返し取り上げられ、問題解決にむけた勧告がおこなわれるなど、国際的にも注目されている問題です。番組で取り上げることは十分に理由があり、「偏っている」などということはできません。
これを抑圧するのは、歴史の事実を偽り、侵略戦争を美化するためです。これこそ、世界と日本の平和を危うくする「偏った」立場であり、「公正中立」とは無縁なものです。
真相の徹底究明を
これは、報道の自由、言論・表現の自由という民主主義社会の存立にかかわる大問題です。真相を徹底的に究明し、責任を明確にしなければなりません。NHKは、今回の件で、圧力を否定する見解を出していますが、国民にたいし真相を全面的に明らかにする責任があります。
( 2005年01月14日, 『赤旗』)
潮流
「四年間、悩んできたが、事実をのべる義務があると決断した」といいます。NHKのチーフ・プロデューサー、長井暁さん▼内部告発にふみきりました。四年前の「従軍慰安婦」にかんする番組が、政府・与党の幹部の圧力で作り変えられた、と。NHK幹部に放送の中止を迫ったのが、安倍幹事長代理と中川経済産業相。安倍氏は当時、官房副長官。内閣のど真ん中にいました▼安倍氏や小泉首相に反省の色はありません。「公平な番組を」といいはります。しかし、権力者みずからが「公平」かどうかを判断し、番組の中止を命じるとは、憲法が禁じる検閲とどう違うのか。それを、さも当たり前のことのように振る舞う時代錯誤!▼「公平」は、自分たちに都合の悪い番組を葬り去ろうとする口実にすぎません。番組が報じていた女性国際戦犯法廷は、「慰安婦」の制度をつくった日本軍を裁き、昭和天皇にも罪ありと判断しました▼すでに戦犯法廷の前に、国連人権委員会の小委員会が、日本政府への勧告を採択しています。責任者の処罰と、元「慰安婦」への国の補償を求めて。しかし政府は、軍の関与を認めておきながら、勧告に背きます▼韓国で元「慰安婦」を支援してきた尹貞玉さんがいいました。「彼女らは責任者も罰せられず正義を否定されたままで、死んでも目をつぶることができない」。放送をやめさせてまで、彼女たちの尊厳をふみにじろうとした安倍氏ら。歴史を公平にみない、歴史をゆがめるための放送の私物化なのでしょう。
( 2005年01月14日,『赤旗』)
従軍慰安婦番組改ざん/憲法と放送法踏みにじった責任は重大/日本共産党志位委員長が会見
日本共産党の志位和夫委員長は十三日、国会内で記者会見し、NHK番組の改ざん問題について次のように語りました。
一、本日、NHK番組制作局、文化・福祉番組担当の教育番組センターのチーフ・プロデューサーが記者会見し、〇一年一月に放送されたNHK番組(シリーズ「戦争をどう裁くか」の第二回「問われる戦時性暴力」)が政府・与党による圧力によってその内容が大きく改ざんされたことを告発した。
告発によれば、安倍晋三自民党幹事長代理(当時内閣官房副長官)、中川昭一経済産業大臣(当時衆院議員)は、NHKの国会担当者を呼び出し、放送の中止を求めるよう圧力をかけ、その結果、番組の内容は当初の編集と大きく変わり、「番組の意図は大きく損なわれた」ということである。
一、政権・与党の政治家が、テレビ番組の内容について、事前に放送中止や、内容の変更を求めるということは、言論・表現・報道の自由を保障し、検閲を禁止した憲法二一条に反するとともに、放送内容について外部からの介入を禁止した放送法第三条に反する、民主主義破壊の行為である。
こうした行為をおこなった政治家と、その圧力に屈して番組の改ざんをおこなったNHK関係者は、それぞれがその責任をきびしく問われなければならない。
一、しかも、中川、安倍両氏が、自らのおこなった行為について、「公正中立な放送を求めただけ」だなどと居直り、それが憲法・放送法を蹂躪(じゅうりん)するものだという自覚をまったくもっていないことは、きわめて重大である。
一、安倍氏は、〇一年一月当時、内閣官房副長官であり、中川氏は現職閣僚である。この問題は、一政治家による放送内容への政治介入問題にとどまらず、政府の要職にあるものの政治介入として、小泉内閣の責任が問われる。
しかも、両氏が介入した内容は、旧日本軍「慰安婦」制度を批判的に描くことそのものを、「公正を欠くもの」として放送中止を求めるというものであった。これは、この歴史上の犯罪について旧日本軍の関与を認め、「お詫(わ)びと反省の気持ち」を表明した、九三年八月の政府見解――国際公約にも反するものである。
小泉首相は、この問題にたいして、日本国民はもとより、国際的にも注視される重大な性格の問題であることを強く自覚して、対処すべきである。
一、わが党は、国会が、中川、安倍両氏を招致し、真相の究明と、責任の追及をすすめることを強く求める。
同時に、NHKは、不当な圧力に屈して番組内容を改ざんしたことに加えて、「圧力はなかった」と虚偽の弁明をつづけてきた、二重の責任が問われる。NHKにたいして、事件の全容を公開し、真相を明らかにし、関係者の責任を明確にすることを求める。
( 2005年01月14日, 『赤旗』)
従軍慰安婦番組改ざん/ロイター通信が世界に配信/日本の「次期首相候補」が戦争責任問う番組に介入
「次期首相の最有力候補とみなされている日本の政治家が、戦争犯罪責任に関するテレビ番組に介入していたことを認めた」―ロイター通信は十三日、東京発でNHK番組への事前検閲、介入問題について、このように伝え、権力による「メディアへの検閲」に憂慮が強まっていると、世界に向けて報じました。
同通信は、介入した安倍晋三現自民党幹事長代理について「小泉純一郎首相の後継者と目されている」と報道。「公共放送NHKに対し、天皇ヒロヒトを人道に対する罪で有罪判決を下した模擬法廷の報道を変更するよう強く求めた」と伝えました。
安倍氏らが問題にした二〇〇〇年十二月の「女性国際戦犯法廷」について同通信は、「第二次世界大戦で日本軍の性奴隷となることを強制された女性たちに補償するよう日本政府に求める」人々が組織したもので、同法廷は、ヒロヒトの戦争犯罪責任とともに「日本は損害を償うべきだ」との判決を下したものと紹介。
ロイター通信は「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(VAWW―NETジャパン)が「番組への政治家の介入は、憲法が保障する表現・報道の自由への重大な侵害行為だ」と抗議していることを伝えています。
( 2005年01月14日, 『赤旗』)
従軍慰安婦番組改ざん/安倍氏中川氏放送中止強く求めた/幹部が迎合、現場に命令/NHK職員、生々しく証言
戦争中の従軍慰安婦たちの被害をテーマとしたNHK番組(二〇〇一年一月三十日放送)に、政府・与党の安倍晋三官房副長官(現自民党幹事長代理)と中川昭一衆院議員(現経済産業相)が圧力をかけ、改ざんさせた問題で、当時、デスクとしてかかわった長井暁NHKチーフ・プロデューサー(42)が十三日、東京都内で会見し、番組改ざんは「政治的圧力を背景としたものだった」と知りえた事実を生々しく証言しました。(2、3、4、15面に関連記事)
長井氏によれば、一月下旬に国会対応を担当していたNHK総合企画室の野島直樹担当局長と国会担当職員が安倍議員、中川議員らから呼びつけられ、放送中止を強く求められました。そして、問題の番組「戦争をどう裁くか」の第二回「問われる戦時性暴力」放送前日の一月二十九日、予算審議を前に事態を重く見た松尾武放送総局長、野島担当局長は安倍、中川両議員を議員会館などに訪ね番組放送に理解を求めました。しかし、了解は得られませんでした。
NHKに戻った松尾放送総局長と野島担当局長は午後六時、伊東律子番組制作局長と通常はやることのない編集済み番組の試写をおこない、野島担当局長は三点の改変を指示しました。「現場はチーフ・プロデューサーをはじめ全員が断固反対でしたが、編集上の意見とは違い、業務命令でした。しかし、その段階ではまだ慰安婦の方々の証言は残っていました」と長井氏。それさえもが放送日当日、まったく削られました。
長井氏は「そのとき、具体的圧力の内容は知らなかったが、後に、政治的圧力があったことは責任ある上司から聞いた。一連の指示は海老沢会長の了解無しにはありえない」とのべました。
NHKは一連の不祥事から昨年九月に内部通報窓口、コンプライアンス(法令順守)推進委員会を設置しました。長井氏は昨年十二月九日、この窓口に番組改ざんには「政治的圧力があった」として通報し、調査を求めました。しかし今にいたるも関係者の聴取もおこなわれていないことを長井氏は明らかにしました。
そして「海老沢会長の下で、さまざまな政治的介入が恒常化し、政府に都合の悪い企画は通らないという、委縮した雰囲気がNHKにまん延している」「末端職員の不正は調べるが、上層部がかかわる不正は調査しないこともわかった」と今の海老沢体制ではNHK改革はできないことを強調しました。
( 2005年01月14日,『赤旗』)
「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(VAWW−NETジャパン)の抗議声明
NHKの「慰安婦」問題を扱った番組に自民党の中川昭一、安倍晋三両衆院議員が介入していた問題で、「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(VAWW―NETジャパン)が十二日に発表した抗議声明は次の通りです。
表現の自由を侵害した政治家の介入と、NHKの偽証を断じて許さない!!―徹底した真相究明とNHKの明確な責任を求める!!―VAWW―NETジャパン抗議声明
本日(一月十二日)の朝日新聞朝刊で、NHKETVシリーズ2001「戦争をどう裁くか」の第二夜「問われる戦時性暴力」(二〇〇一年一月三十日放送)の番組内容に対して、中川昭一、安倍晋三両自民党国会議員の圧力があったことが報じられた。
報道によると放送前日の二十九日午後、当時の放送総局長松尾武氏と国会対策担当野島直樹氏らNHK幹部が中川・安倍両国会議員に呼ばれ、議員会館で面会した。その席で両議員は「一方的な放送はするな」「公平で客観的な番組にするよう」求め、「それができないならやめてしまえ」と、放送中止を求める発言を行ったという。
番組改ざんについては、女性国際戦犯法廷を主催した国際実行委員会のメンバー「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(VAWW―NETジャパン)と同代表(当時)松井やよりが原告となり番組制作にかかわったNHKとNHKエンタープライズ21、番組制作会社ドキュメンタリー・ジャパンを相手に提訴(二〇〇一年七月二十四日)した。一審判決(二〇〇四年三月二十四日)は責任を末端の番組制作会社に押し付けるものであり、NHKの行為については「編集の自由の範囲内」として責任が不明確にされたため、原告は控訴し、現在、控訴審をたたかっている。
番組改ざんは、日本軍「慰安婦」制度が人道に対する罪で裁かれたことを覆い隠し、昭和天皇をはじめ被告となった日本軍高官に「有罪」が言い渡された判決結果を削除し、「慰安婦」被害者の証言や日本兵の加害証言、「法廷」の意義を伝える松井やよりのインタビューや「法廷」の基本的な情報をことごとく削除するものだった。また、「法廷」を評価するスタジオコメンテーターの発言も不自然な形でカットされ、放送数日前にスタジオ部分をとり直すなど、異常な改編は放送直前まで行われた。このことは、裁判を通して明らかにされた。
これまでの裁判の審議の中で、被告NHKは外部圧力は無かったと繰り返し否定し、番組の方針は当初から変わっていないとの主張を続けてきた。今回、政治家の関与が明らかにされたことで、これらが重大な偽証であったことは明らかである。
今回の番組放送をめぐっては、放送中止を求める右翼の異常な抗議行動があった。中川、安倍両氏は「慰安婦」問題等の教科書記述を調べる研究会「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」の幹部メンバー(中川氏は同会代表、安倍氏は同会事務局長)であり、番組への介入は、教科書問題や謝罪・補償問題、歴史認識の問題などと深くかかわるものであり、政治家が番組の内容に介入した事実は、憲法が保障する表現・報道の自由を侵害した重大な違反行為であり、公共放送であるNHKがうたう「公平・公正」「不偏不党」の精神に反するものである。「裁き」をテーマにしておきながら、日本軍「慰安婦」制度が裁かれた事実が封じられた背景に政治家の圧力があったことは放送の自律を定めた放送法の精神に背くものであるだけでなく、国会議員と公共放送が憲法を踏みにじる行為を公然とおかし、市民を欺いたことは重大な違憲行為であり、断じて許すことはできない。
今回、こうした事実がNHKの内部告発により明るみに出たことに、私たちは大きな感動を持って受け止めている。裁判を通して、私たちはNHKの権力構造を目の当たりにし、制作現場の表現の自由が上層部の圧力により侵害されている事実をメディアの深刻な危機として感じてきた。このままの状況が黙認されていけば、真実の報道は制限され、市民の知る権利に甚大な影響を与えることは必至である。今回の内部告発者の勇気に心から敬意を表すると共に、内部告発者の正義と公正が「力」によりつぶされないことを強く願っている。
VAWW―NETジャパンは、NHKに対してこうした事実を隠し、司法の場において偽証を続けてきたことを強く抗議すると共に、番組改ざんをめぐり何があったのか徹底した真相究明を行い、すべての事実を残すことなく市民の前に明らかにすることを強く求める。
また、これら事実を隠し、偽証し、責任を回避し続けてきた海老沢会長の責任は重大である。私たちは、即刻、海老沢会長が責任を取って辞任することを強く求める。また、国政を担う人物のこのような行為を許すことはできない。中川・安倍両氏が即刻国会議員を辞任することを強く求める。
二〇〇五年一月十二日
「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(VAWW―NETジャパン)
共同代表 西野瑠美子・東海林路得子
( 2005年01月13日, 『赤旗』)
NHK番組への政府・自民幹部介入/憲法・放送法踏みにじる
政府・自民党幹部が圧力をかけ、その意に沿って放送がゆがめられる。憲法に保障された言論・表現の自由を損ない、民主主義を脅かす事態が露骨な形であからさまになりました。とりわけ公共放送NHKで、それが行われたことは許されないことです。
放送直前に告発メール
番組が放送されたのは二〇〇一年一月。安倍官房副長官(当時)と中川現経産相の求めに応じて、NHK幹部が番組内容の大幅変更を指示しました。当初、番組制作にかかわっていた制作会社・ドキュメンタリージャパンの関係者が、放送直前にメールを発信。「目に見えない巨大な圧力がかかり、私たちにはどうすることもできない」。巨大な圧力とは政権政党だったことが証明されたわけです。
自民党は近年、メディアとりわけテレビの影響力を憂慮。一九九〇年代、「ニュースステーション」(テレビ朝日系)へのたびたびの干渉、その後、森政権への世論の批判が急増したのはテレビに原因があるとし、二〇〇一年には、党内に放送活性化検討委員会、報道番組検証委員会を相次いで設置。テレビへの監視を強めてきました。昨年六月、参院選に向け二百のメディア各社に「一部テレビに政治的公平・公正を強く疑わせる番組放送がありました」というファクスを送りつけました。
一連のそれらのやり方を「けん制」とするなら、放送前に番組をチェックした今回はさらに踏み込んだ「事前の検閲」にあたります。その意向を受けて、NHK幹部がカットを指示したのは、天皇の戦争責任やアジアへの侵略にふれた部分でした。〇一年には、戦争を美化する歴史教科書問題もあり、これらの流れにそうものに、放送がゆがめられたといえます。
憲法二一条は、言論・表現の自由を掲げ、検閲を禁じています。それに呼応した放送法三条は放送番組が「何人からも干渉され、又は規律されることがない」とのべています。政府・自民党幹部の行為はこうした憲法や放送法を踏みにじる言語道断のものです。
公共放送の在り方問う
NHKは、政府・与党の圧力に屈するのではなく、憲法と放送法にもとづいた放送をしていくべきです。とりわけ昨年来の不正事件で、公共放送としてのあり方が問われています。自民党の顔をうかがう国営放送ではなく、視聴者の信頼を得た公共放送本来の姿勢を取り戻すことが強く求められます。まず、戦犯法廷番組改変の全容を国民の前に明らかにすることです。
渡辺俊江記者
NHK番組への政府・自民幹部介入/権力にすりよる実態示す/元NHK記者で『NHKと政治』などの著書がある椙山女学園大学教授の川崎泰資さん
外部からの圧力に屈してNHKの首脳部が番組を改ざんしたという、この問題の経過については、私が昨年十二月に出版した『検証 日本の組織ジャーナリズム』(共著)の第四章「なぜ番組を改竄したのか」で、実名をあげて全部、検証して書いてある。
今回、やっと内部告発が出てきたということだが、当時、官房副長官だった安倍晋三自民党幹事長代理と、慰安婦問題などの教科書記述を調べる研究会「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」代表だった中川昭一現経済産業相が放送前日にNHK幹部を呼んで、「偏った内容だ」などと番組内容に介入したという事実が明らかになった意味は大きい。
政権中枢が、政府にとって気にいらない内容の放送をストップさせようとして、事前検閲したという重大問題だ。番組改ざんにかかわった責任者が、論功行賞で出世している。権力にすりよるNHKの実態を示すものだ。
海老沢会長が辞める、辞めないという問題ではなく、森喜朗元首相の「神の国」発言の釈明会見を指南≠オたNHK記者の問題を含め、NHK側に徹底的な検証を求めたい。
NHK番組への政府・自民幹部介入/圧力かけた側の問題重大/メディア総合研究所事務局長・『放送レポート』編集長の岩崎貞明さん
政治家なり外部の人間が、番組放送前に放送局の幹部を呼びつけて、番組に口出しするというのは異常なことで、放送法に明記された編集の自由を侵害するものです。
事実経過を徹底的に究明する必要があります。
今回の番組改変については、以前から政治家の介入が疑われ、NHK内部にも「追及すべきだ」という声があったもので、放映から四年かかったとはいえ、内部告発で明らかになりました。NHKに限らず民放に対しても政治家による圧力が過去にもあり、圧力をかけた側の問題は重大です。
同時に、圧力を受けて実際に番組を改変したNHKの問題も指摘せざるをえません。NHKは「予算を国会で通すために」ということで、総合企画室が中心となり政治部出身者や現役政治部記者も使って、年中行事のように政界工作をしています。
今回の件に典型的なように、与党政治家に文句を言われるとすぐ対応する体質があるといえます。
NHK番組への政府・自民幹部介入/右翼も圧力、改ざん繰返す
問題となった番組「ETV2001」の「問われる戦時性暴力」(01年1月30日放送、四回シリーズの二回目)は、二〇〇〇年十二月に開かれた民衆法廷「女性国際戦犯法廷(VAWW―NETジャパン主催)」を取り上げたものでした。法廷では、日本軍の性暴力が裁かれ、公の場で初めて昭和天皇が有罪とされました。
番組は、NHKエンタープライズ21の依頼を受け、ドキュメンタリージャパン(DJ)が制作。放送された番組は、「天皇有罪」の判決には言及せず、起訴状の紹介すらないものでした。加害者の証言、VAWW―NETの松井やより代表(当時)のインタビューは完全に削除され、代わりに挿入されたのは、法廷の意義を否定する日本大学の秦郁彦教授のインタビューでした。
〇一年二月、VAWW―NETは、当初の企画意図が改変された経緯などを問う公開質問状をNHKに送付。三月の国会審議では、衆参の総務委員会で取り上げられ、日本共産党の八田ひろ子参院議員(当時)も追及していました。
七月、VAWW―NETは、NHKとエンタープライズ、DJを相手取り、提訴。番組の出演者で、コメントをずたずたにされた米山リサ・カリフォルニア大学準教授は、八月、BRC(放送と人権等権利に関する委員会)に、研究者としての権利が侵害されたと救済を申し立てました。
BRCは、〇三年三月、「NHKの編集は行き過ぎであり、…放送倫理に違反する結果を招いた」とする見解を発表。
一方、昨年三月二十四日に言い渡された一審判決は、制作会社ドキュメンタリージャパンに百万円の賠償命令を下しただけで、NHKにたいしては「編集の自由の範囲内」として責任を問いませんでした。原告は、末端に責任を負わせた「トカゲのしっぽ切り」判決を不服として四月一日に正式に控訴。
裁判の過程で、放送前のある時期までは、「天皇有罪」判決や加害兵士の証言が盛り込まれていたのに、NHKの上層部の試写と、収録や編集のやり直しを繰り返すなかで、それらが削除されたことがわかっていました。
右翼などからの圧力があったことも指摘されていましたが、NHKは外部圧力はなかった、との主張を繰り返していました。
NHK番組改ざんをめぐる動き
2000年
8月 NHKエンタープライズ21のプロデューサーがドキュメンタリージャパン(DJ)を訪ね、制作依頼
10月 DJがVAWW―NETに取材依頼
12月8日 女性国際戦犯法廷開始
12月中旬 「ニュース7」で法廷のニュースが放送され、右翼がNHKに抗議
2001年
1月19日 NHKの教養部長による異例の試写。編集方針を変更し再編集にとりかかる。松井やより代表のインタビュー削除と法廷の「天皇有罪」判決のシーンをナレーションで処理するよう指示される
24日 部長試写会。加害兵士の発言削除、関連する高橋哲哉氏(当時、東大助教授)のスタジオ部分を撮り直すことに
27日 右翼約50人がNHK放送センターに乱入
28日 右翼が再びおしかけ、番組の放送中止を求める要望書を手渡す。夜、DJ抜きで上層部による局内試写
29日 安倍晋三、中川昭一両衆院議員がNHK幹部を呼び、番組を「偏った番組」と指摘。幹部らが内容の一部削除を指示
30日 NHK幹部が番組内容のカットをさらに指示。午後10時に放送
( 2005年01月13日,『赤旗』)
小泉首相、安倍氏ら弁護/NHK番組への介入「圧力」を否定
小泉純一郎首相は十二日夜、二○○一年一月に放送された従軍慰安婦問題をテーマとしたNHKの特集番組に、自民党の安倍晋三幹事長代理(当時、森内閣の官房副長官)が「偏った内容」と圧力をかけた問題で、政治介入との批判が出ていることについて「そうではないでしょう」と、安倍氏が圧力を掛けたとの見方を否定しました。
同時に首相は「報道というのは一方に偏らないで、公正な報道を心掛けていただきたい」と述べました。首相官邸で記者団の質問に答えたもの。
( 2005年01月13日,『赤旗』)
「若手議員の会」とは/史実ゆがめる干渉次々/発足時中川氏は代表、安倍氏は事務局長
「従軍慰安婦」問題を扱ったNHK特集番組に圧力をくわえたとされる自民党の安倍晋三幹事長代理、中川昭一経済産業相は、中学歴史教科書の従軍慰安婦問題の記述削除などを求めてきた「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」(現代表・古屋圭司自民党改革実行本部長代理)の幹部を務めてきました。
歴史教科書わい曲
同会は一九九七年二月、「中学歴史教科書に従軍慰安婦の記述が載ることに疑問をもつ戦後世代を中心とした若手議員が集まり」(同会編『歴史教科書への疑問』)、オブザーバーを含め衆参百七人の自民党議員で結成された勉強会です。同年一月には、歴史の事実をわい曲した扶桑社版『歴史教科書』を作成した学者グループが中心となって「新しい歴史教科書をつくる会」が発足、「若手議員の会」はその活動を支援し続けてきています。発足時、安倍氏は事務局長、中川氏が代表に就任しました。
安倍氏らは、従軍慰安婦問題で旧日本軍と日本政府の関与を認めた河野洋平官房長官談話(九三年八月)を「確たる根拠もなく『強制性』を先方に求められるままに認めた」と真っ向から否定。その後、河野氏を会合に呼んで撤回を迫ったこともありました。「若手議員の会」結成から一年五カ月後の九八年七月、中川氏が農水相就任直後の記者会見で従軍慰安婦問題について「教科書に載せるのは疑問だ」と発言し、政治問題になりました。
同会は、歴史の記述削減だけでなく、九九年末からは「極めて偏った人たちが一票を入れることで、偏った教科書が集中して採択される結果になっている」(安倍氏)と扶桑社『歴史教科書』の採択に向けて文相(当時)に働きかけ、同教科書の検定不合格を求める声が中国、韓国からあがったときには、森喜朗首相(当時)に「政府は内外からの干渉・介入を排除すべきだ」(二〇〇一年三月)と要請しました。
民主党も巻き込む
同会の動きは野党も巻き込むものとなり、〇一年六月には、歴史教科書の記述や採択のあり方などの検討を目的に、自民、民主、自由、保守、無所属の会の衆参国会議員四十六人で「歴史教科書問題を考える会」が結成されました。
超党派の議連結成について中川氏は「民主党にもワーキングチームができ…『他国の内政干渉はあってはならない』『自分の国に誇りを持つべきだ』など基本的な考え方は全く同じだ」(「産経」〇一年六月二十七日付)と、侵略戦争の美化の歴史観を民主党議員らと共有できると語っています。
自民党の「若手議員の会」は、〇四年一月の大学入試センター試験の世界史の問題で、「朝鮮人強制連行」を正解選択肢にしたことについて、文科省初等中等教育局担当審議官、入試センター副所長を会の会合に呼び、問題作成者の公表を迫ることもしました。この会合には安倍氏も顧問職で出席しています。
安倍氏は、女性国際戦犯法廷を扱ったNHK特集番組への介入について「明確に偏った内容であることが分かり、公正中立の立場で報道すべきだ」などとコメントしていますが、「若手議員の会」などでの経過をみれば、安倍氏らこそが侵略戦争美化という「偏った」立場から、放送内容に干渉したことは疑いありません。
高柳幸雄記者
( 2005年01月13日,「赤旗」)
許すなビラ配布弾圧/談話/住居侵入にあたらない/松宮孝明立命館大学法科大学院教授(刑法)
マンションで、誰でも出入りできる共用廊下部分に、住人一人の意思で「入るな」と決める権利はない。だから住居侵入にはあたらない。配布しているものを見て騒げば取り締まれるなら、住人一人の意思で、気に入らないビラの配布をいくらでもやめさせることができるようになる。
検察のいうセキュリティーの問題も理由にならない。知らない人がいれば不安を感じるのは当たり前。それは「侵入」の有無とは関係ない。何を配っているかを見ればだれだか分かるはずだ。
東京・立川市の官舎への反戦ビラ配布で「住居侵入」を認めた東京地裁八王子支部の判決でも、政治的主張のビラについて、憲法で保障された表現の自由の一環として、営業活動のビラよりも優越的地位を認め、刑事責任は問わないとした。
それほど重要な表現の自由にたいしてあからさまな攻撃が続いている。NHKの従軍慰安婦問題の番組に、自民党の現職大臣や前幹事長が圧力をかけていたことも分かった。
今回の事件における起訴は、表現の自由への重大な挑戦である。表現の自由への攻撃は、一共産党だけの問題ではない。マスメディア全体が機敏に対応すべきだ。
( 2005年01月13日,「赤旗」)
NHK番組改ざんの裏に検閲=^従軍慰安婦放送「やめてしまえ」/安倍官房副長官(当時)中川議員が圧力
「朝日」が報道
政府・与党による事前検閲、放送への介入というべき事件が明るみに出ました。「従軍慰安婦」制度の責任追及をテーマに、NHKが二〇〇一年一月に放送したETVシリーズ「戦争をどう裁くか」の第二回「裁かれた戦時性暴力」の内容が放送直前に大幅に変更された問題で、自民党の安倍晋三幹事長代理と中川昭一経済産業相は十二日、当時、NHK関係者に説明を求め、自分の考えを伝えていたことを認めました。また番組の取材を受け、番組が改ざんされたと提訴している市民団体「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(VAWW―NETジャパン)は会見し「表現の自由を侵害した政治家の介入と、NHKの偽証を断じて許さない」とする抗議声明を発表しました。(2、3面に関連記事、4面に抗議声明)
「朝日」十二日付報道によれば、番組放送前日の〇一年一月二十九日、当時、官房副長官だった安倍氏と「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」代表の中川氏が松尾武放送総局長らNHK幹部を議員会館などに呼び出し「一方的な放送はするな」「公平で客観的な番組にするように」「それができないならやめてしまえ」などと発言。NHKの幹部の一人は「圧力を感じた」とのべています。
「やめてしまえ」の発言について中川氏は「朝日」の取材に、「まあそういう(放送中止の)意味だ」と答えています。
この問題で番組のチーフプロデューサーは、内部告発への窓口にもなるNHKのコンプライアンス(法令順守)推進委員会に「政治介入を許した」と調査を求めています。
番組は戦争中、日本軍の「従軍慰安婦」などへの戦時性暴力を明らかにし、昭和天皇を有罪とした「女性国際戦犯法廷」を取り上げたものでした。しかし、放送されたものは当初、取材協力者に説明した内容とは違い、起訴状の紹介もなく、戦時性暴力がなかったようなコメントを急きょ挿入したり、肝心の判決には一言も触れないものになっていました。VAWW―NETジャパンは番組が改ざんされたとし提訴。昨年三月、一審の東京地裁判決はNHKの責任は問わず、制作会社のドキュメンタリー・ジャパンにのみ賠償支払いを命じました。現在控訴審を東京高裁で係争中です。
この裁判のなかでNHKは「圧力はない、編集権の範囲内」と繰り返してきました。しかし、NHK幹部が試写を通じ、変更を繰り返し要求したうえ、放送二日前にNHK上層部が了解して完成した番組さえ、さらに改ざんされていました。
今回の報道について、NHK経営広報は「コンプライアンス委員会にかかわることで、守秘義務がありコメントできない」としています。また十二日に開かれた経営委員会では「議題にならなかった」としています。
真相究明求める/「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(VAWW―NETジャパン)共同代表の西野瑠美子さん
政治家が番組の内容に介入した事実は、放送の自律を定めた放送法の精神に背くだけでなく、憲法が保障する表現・報道の自由を侵害した重大な違憲行為であり、許すことはできません。
これまで裁判の審議のなかで、NHKは外部圧力はなかった、と繰り返し否定してきました。司法の場で重大な偽証を続けてきたことに強く抗議するとともに、徹底した真相究明を求めたいと思います。
同時に、こうした事実がNHKの内部告発で出てきたことを、感動をもって受けとめています。その勇気に心から敬意を表するとともに、こうした内部告発者が「力」でつぶされないことを強く願います。事実を隠ぺいし、責任回避を続けてきた海老沢会長にたいしては、即刻辞任を求めたい。安倍・中川両氏にも即刻、国会議員を辞任してほしい。
( 2005年01月13日,「赤旗」)
あすをひらく人たち/元「慰安婦」問題にとりくむ酒井美直さん/行動する/変えるために
元「慰安婦」の痛み人ごとではない
「現状を変えたいのなら、少しずつでも行動しなければ何も変わらない」。意思的な目をまっすぐ向ける桜美林大学四年生の酒井美直さん(21)。昨年末、日本軍「慰安婦」被害女性を招いて全国十カ所で開いた「全国同時証言集会―消せない記憶」の企画にかかわりました。「慰安婦」問題を知ったのは、一年前。図書館でたまたま手にした「慰安婦」に関する本がきっかけでした。
竹本恵子記者
十代で連れ去られ、一日何十人もの日本兵にレイプされた。両親を目の前で殺された――など想像を絶する証言。尊厳を奪われた無数の人生に、酒井さんの体は凍り付き言葉を失いました。
関連する証言集会にも出かけ、昨年は二度、元「慰安婦」たちが共同生活をする韓国広州市の「ナヌムの家」を訪問しました。「日本政府が謝罪と賠償を認めるまで死ぬまで闘う」というイ・オクソンさんは日本語で証言したいと、高齢にもかかわらず日本語を勉強していました。「ここまでさせていることに胸が痛みました」
疑問も感じました。たくさんの日本の学生が訪れる「ナヌムの家」。「証言をきいて学生は帰っていく。それだけで終わっていいの。自分もその一人?」。日本に帰って、ナヌムの家のスタッフに「何かしたい」とメールを送ります。
返信で、知らされたのが学生たちによる「全国同時証言集会」の企画でした。まだ会ったこともなかったメンバーの家で実行委員会が始まりました。そこで「代表をやらない?」といわれ、一週間悩んで「かかわりたいけれど、重い責任は負いたくないっていう自分はいや」と引きうけました。「不正義とたたかいたい。行動しなければ、加害の側にくみこまれる」と思いました。
毎週のように会議を開き同世代と議論を重ねながら企画をつくりあげました。
「証言」という言葉一つとっても、「つらい体験を証言してもらうのはどうか。話したいことを話してもらえば」という意見も。でも、「私は証言してもらうことに責任をもちたいし、『慰安婦』問題をなかったことにしようとする人たちに、証拠をつきつけたかった」
虐げられる側の痛みは人ごとではありませんでした。北海道帯広出身。五歳のとき、出稼ぎ先で亡くなった父親は、アイヌ。差別は色濃く「アイヌは恥ずかしいもの」と思っていました。
「アイヌである自分に誇りをもちたい」と考えるようになったのは、高校時代。カナダの先住民族と交流し、若者が自民族に誇りを持ち、文化を伝承している、生き生きとした姿に衝撃を受けたからです。
先住民族問題や、国際社会の平和について共通の関心をもつアメリカ人のロニーさんと出会い、昨年結婚。酒井さんの行動力に拍車がかかります。
戦後六十年を経たいま、「慰安婦」問題などで被害者の願いを拒否しつづける日本政府。「被害者に時間はない。戦争では『慰安婦』問題と同じような強かんや殺人、人権じゅうりんが必ずおきます。今もイラクでおこっています。問題は現在進行形。自分が間違っていると思うことにたいして、少しでも行動していくことが求められていると思う」と語ります。
( 2005年01月06日,「赤旗」)
新春対談/下/劇作家・俳優渡辺えり子さん/ジャーナリスト斎藤貴男さん
イラク戦争、自衛隊派遣…胸痛む今なすべきこと/やっぱり言うべきことは言う/仕事を通じて
渡辺 二月に「花粉の夜に眠る恋」という芝居を、十八年ぶりに再演するんです。昭和初期の尾崎翠(みどり)という薄幸の作家の原作で幻想と現実が交錯する話。昭和初期と現代とルーマニアの話が多重構造になっているんです。今あまりそういう芝居がなくて分かりやすい話が多いので、あえてちょっと過激にやりたいと思っています。
楽士が演奏しているシーンがあるんですが、実は楽士たちは、舞台の本番の前夜、爆撃で全員死んでいるんです。それで永遠に練習している。一生、死んでもやるぞという芸術についての暗喩(あんゆ)と、大きな意味での非戦もふくんでいます。
映画や演劇好きだけでなく、小説好きだったり、音楽好きだったりする若者たちに見てほしい。それと、私たちの同世代に、もう一度原点に立ちかえろうよという思いを込めてやりたいんです。
斎藤 渡辺さんがやってきたピースリーディング(平和朗読劇)は、テツ&トモとか中村獅童さんとか、とても幅広い人が出演していますね。驚きました。芸能人も、そういう活動をするのはなかなか大変なんじゃないですか。
渡辺 やっぱり、コマーシャルの仕事がなくなったりしないかという不安はあるでしょう。それでも、子どもがいる人とか、絶対戦争をさせたくないという人はやりますね。
「戦争反対」の落書きが有罪
斎藤 あの顔ぶれを見たときに、演劇の人は本当に立派だなと思いました。僕らジャーナリズムは、いま最低だから。二〇〇三年の四月、バグダッドが陥落したころに、東京の西荻窪の公衆便所に「戦争反対」「反戦」と落書きした人がいるんです。懲役一年二カ月(執行猶予三年)になったんですよ。そんな恐ろしい話さえ、ろくに取材しようともしない。
渡辺 その事件とイラクのアブグレイブ刑務所で起きた米軍の捕虜虐待を、劇作家の坂手洋二さんが「私たちの戦争」という芝居にしたんです。ところが、その公演を共催することになっていた某市が、急に「共催できない」といいだす事件が起きたんですよ。本当のことを書いただけなんですよ。劇作家協会が問題にして、市当局に問いただしたんです。明確な回答はないんですが、イラク戦争が正しい戦争か、正しくない戦争か、まだ分からない、市として結論を出せないから、これを批判した芝居はできないということらしいんです。それじゃあ、演劇が死んじゃうでしょう。
斎藤 そこまできましたか。
渡辺 私は、ある会社のPR誌で書評をやっているんですよ。そこでパレスチナ問題の本とか広島の原爆の話とかやったら、戦争に関連する本は取り上げないでくれと言われたんです。イラクで人質になった高遠菜穂子さんたちをたたくような人たちが投書するんですよ、何でこんな本だけ取り上げるのかと。何件か抗議がくると、自主規制するんです。
書けることがどんどん狭く
斎藤 僕もそういうのばっかりですよ。経済誌に五年くらい書評を書いていたんです。ところが、ファシズムを戯画化した絵本『茶色の朝』を取り上げたら、偏向しているとか言われて切られちゃった。フランスで何十万部も売れた本なんですよ。もう一つは、いまの落書きの話を総合雑誌でやっていた連載に書いたんです。そうしたら、そこを削ってほしいと言われた。削れないと言うと載せてはくれたけれど、「斎藤さんは言うこときかないから」って連載は打ち切り。
渡辺 私は「ここをカットさせてくれ」と言われて涙をのんで削除に応じたんですよ。「じゃあボツにしてください」ということもできたけれど、全部やめてしまったら、表現の場がなくなるわけでしょ。仕事がなくなると、発言してもだれにも聞いてもらえなくなる。その兼ね合いが難しいんです。「赤旗」に出たりすると、また差しさわりが出るかもしれない。でもやっぱり、発言しなければいけないと思ってこの対談も受けたんです。
斎藤 僕もどんどんレッテルを張られるようになってきた。もともと『週刊文春』の記者で、僕自身は何ひとつ変わっていないのに。
渡辺 『文春』の記者だったの?!
斎藤 僕が記者をしてきたのは、産経系列の日本工業新聞、『プレジデント』『週刊文春』って、保守系ばかりですよ。
渡辺 私はホステスのアルバイトしていたから、サラリーマンとしゃべるために『文春』を読んでいたんですよ。今もずっと読んでいますが、昔と比べると少しずつ変わってきてはいますね。
斎藤 『文春』に限らず、右よりのメディアというのは、保守ゆえのおうようさもあったんですが。最近はみんな、どんどん極右みたいになってきましたね。僕が駆け出しのころ優しかった先輩が、いまとんでもない雑誌をつくっていたりするので、恐ろしいです。
当然のことを仕事に生かす
阪神大震災、サリン事件があった一九九五年が、いまの政治状況にいたる一つの節目だったように思います。戦後五十年目ということで、従軍慰安婦とか強制連行など日本の戦争での加害が、みんなの共通認識になりはじめていた。それがその後の反動につながった時期です。僕は、あのときに歴史的にさかのぼってみたいと思っています。僕は最近、何をとりあげても階級とか、監視とかの話になってしまってジレンマもあるんですが、やはり、やらなければならないことだと思うんですね。
渡辺 それ、似てます、私のやろうとしているテーマと。従軍慰安婦や部落差別の問題、差別と階級という問題ですね。私は、部落差別の存在をはじめて知ったとき、すごくショックだったんですよ。そのときの気持ちを持ちつづけていたいと思うんです。差別はいけない、戦争はいけない、命は大切だ、当たり前ですよ。当たり前の気持ちを死ぬまで持って、それに背くものに対して、ちゃんとものが言えるような、そういう仕事をやっていきたいと思いますね。
(おわり)
( 2005年01月05日,「赤旗」)