沖縄戦「集団自決」教科書検定問題/沖縄の思い踏みにじる/石山久男さん/林博史さん
憲法談議話はずむ/栃木市・宝蓮寺住職齋藤昭俊さん/日本共産党衆院比例候補あやべ澄子さん、小池かずのりさん
放送この1年/2/NHK裁判判決/番組改ざんの事実は重大と断罪
07回顧/論壇/参院選の結果に連動/改憲・「構造改革」批判のうねり
党後援会女性の集い/石油類高騰何とかして/高橋衆院議員が頼りです/岩手
月曜インタビュー/俳優三國連太郎さん/「北辰斜にさすところ」に主演/戦争を批判する台詞にかけた
日本軍「慰安婦」学んだ学生/ハルモニから託された証言/事実知り未来見えた
日本共産党知りたい聞きたい/強制連行などの戦後補償どう考える?
Yモードワイド/太平洋戦争開戦日12・8に考える/若者がうけつぐ戦争体験
不戦の誓い新た/「12・8」66周年/各地で宣伝/栃木/水戸/筑西/新座
太平洋戦争開始66周年/戦争二度とさせない/笠井議員・谷川候補ら訴え
「徴兵制容認」撤回を/靖国参拝や「従軍慰安婦」発言も/党宮崎県委ら東国原知事に抗議
ひと/在日一世の思いと「慰安婦」の悲しみを語り継ぐ織茂秀子さん
編集局発/こんにちは「しんぶん赤旗」です/社会部/軍事利権・教科書問題徹底的に追及
戦争犯罪の過去とどう向きあう/独・日・韓の研究者交流/東京でシンポ
憲法「改正」反対/講演と音楽のつどいに300人/木津川地域連絡会
若者もお年寄りも手結び/あいち女性9条の会が集い
広げよう非核自治体宣言/宮城の会が総会
戦争と性 韓国で「慰安婦」と向きあう/高柳美知子、岩本正光編著/被害・加害の視点が現在の責任問う
日本の進路語り合う/吉川前参院議員が講演/党広島県委
9条必ず次世代に/大阪・北区憲法フェス
「集団自決」日本軍強制の削除/「靖国」派につながる調査官
「集団自決」で暴言/歴史と世論に逆行/埼玉県議会、保守系議員
「集団自決」教科書問題/本土と沖縄の連帯で検定意見の撤回を♂ォ縄代表団に志位委員長
日本軍「慰安婦」/信頼される国へ/吉川前参院議員が神戸で講演
「真実を」若い決意/沖縄県民大会「集団自決」検定撤回求める/島ぐるみ抗議11万人
焦点論点/沖縄戦の教科書問題/政治介入したのは誰か
議会ファイル/埼玉県議会一般質問から
「集団自決」の現場を見た/小川は血の流れ≠ノ/歴史わい曲許せない/9・29沖縄県民大会
26枚の愛と平和/グループ・アイズLove&Peace展
集団自決の現場を見た/小川は血の流れ≠ノ/歴史わい曲許せない/沖縄・渡嘉敷島
主張/沖縄県民大会/「集団自決」検定を撤回せよ
とやまの会2周年の集い
「自決」の島、現地を調査/沖縄
中国海南島「慰安婦」訴訟/賠償請求権は存在/原告側が主張/東京高裁
今回の政変と日米関係/「靖国」「慰安婦」摩擦で追いつめられた安倍政権/石川康宏
京都で国際婦人年集会/子らに明るい未来を/石坂啓さん講演
脱走なら殺す≠ニ脅し/旧日本軍「慰安婦」戦争展で証言/名古屋
ひと/戦争をテーマとした絵本を創作しつづける村淳さん
伝えよう「大東亜戦争」の真実/日本軍「慰安婦」/1-4/
安倍政権崩壊/海外メディアの見方/英国/米国/東南アジア/インド
「平和のための戦争展ちば」開催/世界の動きも紹介/船橋で16日まで
首相辞任海外の反響/「お粗末な退場」/米紙/中国メディア/ベトナム紙
主張/「集団自決」検定/日本軍強制の否定を許さない
安倍首相語録
安倍内閣の軌跡
潮流
文化/日韓を懸ける舞/韓国伝統舞踊家金一志さん/静けさの中に動き、動きの中に重み
歴史と平和の旅/元「従軍慰安婦」マルディエムさんを訪ねて/上/元衆院議員大森猛
アジア女性基金(女性のためのアジア平和国民基金)
「過去の清算」含め協議/日朝作業部会が始まる
関東大震災/虐殺の悲劇繰り返さない/朝鮮人犠牲者を追悼/さいたま
旧日本軍の慰安婦問題/「14歳で連行され…」韓国のイルチュルさん/解決求める証言集会/高知
東京の戦争遺跡/10/訪ねたい平和博物館/繰り返さない―誓い後世に
朝の風/女性自衛官の人権裁判
論壇時評/土井洋彦/歴史にどういう姿勢で向きあうのか
平和の誓い新たに/各地で催し/世田谷/北区/葛飾
歴史も地理も「改ざん」/安倍首相「拡大アジア」論批判/人民日報
高校生が靖国ツアー=^「都合のいい歴史だけ」
焦る「靖国」派/様変わり8.15―参拝閣僚1人、参院議員半減/広がる包囲網―河野衆院議長からも批判
埼玉・上田県政を問う/「従軍慰安婦」を何度も否定/鈍感な人権感覚露呈
中四国リポート/元「従軍慰安婦」が証言/高知で来月2日、青年ら聞く会/国は声受けとめ謝罪を
日中韓の共通歴史教材『未来をひらく歴史』をエスペラント語で出版/共通歴史は共通言語で/佐藤守男
李大統領候補が安倍首相に注文
戦後62年の夏に/『かわいそうなぞう』をラジオで朗読して40年/秋山ちえ子さん語る
従軍「慰安婦」など歴史問題に向き合え/安倍首相に厳しい注文/インドネシア紙
侵略戦争を検証する本/キリスト者、満州移民、学徒動員…
週間日誌/07年8月5日〜18日
「戦後レジームからの脱却」を批判/8・15地方紙の社説
今問われる「従軍慰安婦」/上/「日本軍がだました」悔恨こめ元兵士は語る/下/「反省できる国に」/学び、声あげる女子学生
神戸女学院大学の石川康宏教授のゼミでは、二〇〇四年度から「従軍慰安婦」問題の学習を続けています。毎年、韓国を訪問し、元「慰安婦」のハルモニ(おばあさん)と交流しています。
歴史に学び友好へ/愛知で平和のための戦争展
靖国参拝すれば悪影響/マレーシア紙が論評
「慰安婦」/謝罪と補償を要求/日韓市民がスクラム/ベルリン
「慰安婦」決議採択の米/「靖国」派の対応を注視
日本政府の公式謝罪要求/ソウルで元「慰安婦」ら
「靖国」派を世界はどうみる/韓国/「慰安婦」否定など右傾化の動き憂慮
「靖国」派を世界はどうみる/中国/歴史をあいまいにする玄人だ/友好望みつつ問題指摘
「靖国」派を世界はどうみる/フィリピン/国立博物館上級顧問ジョン・シルバ氏に聞く
「戦後レジーム脱却」首相をけん制/河野衆院議長
平和のための戦争展、福島・郡山で18日まで開催
「慰安婦」情報ホットラインきょう開設
従軍慰安婦問題/孤立する「靖国」派/中国・海南島の被害者支援−ハイナンNET/作家米谷ふみ子さん
3テーマで「戦争展」/静岡・三島であすまで
埼玉県平和資料館「従軍」記述の削除やめよ/柳下議員、県に申入れ
朝の風/「南京大虐殺」否定の映画
平和な未来へ解決ぜひ/中国人戦争被害者支える会/宮城
証言・「大東亜戦争」の真相/体験をお寄せください
米「慰安婦」決議「正義の勝利」/中国青年報
米下院「従軍慰安婦」決議/日本政府は謝罪せよ/惨敗安倍政権に「同盟国」から痛撃
戦争と医学をみつめる講座/金沢
週間日誌/07年7月29日〜8月4日
証言・「大東亜戦争」の真相/体験をお寄せください
米「慰安婦」決議/各国メディア報道/ドイツ/マレーシア
米「慰安婦」決議を中国各紙が報道/「日本は歴史の責任逃れ」
日朝、歴史問題で応酬/ARF閣僚会議
近畿各地で平和の催し
米国下院の「慰安婦」決議/政府は真摯に受けとめよ/大阪府AALA連帯委が声明
ハイナンNET「慰安婦」問題でネットラジオ特設
おはようニュース問答/米下院「慰安婦」決議、日本政府に謝罪求めたね
米「慰安婦」決議受け要請/日本政府は公式謝罪を/日本AALA/新日本婦人の会/婦団連
潮流
平和のための戦争展/京都で6日まで開催
平和のための戦争写真展/前橋
「従軍慰安婦」問題で会見/上田知事
米下院「慰安婦」決議/国家の責任認め謝罪を/3団体が提言
米下院採択の「慰安婦」決議/要旨
米「慰安婦」決議/平和な未来のためにも/韓国市民団体決議を歓迎
米「慰安婦」決議/正しい対応期待/韓国政府
米「慰安婦」決議/国際社会の声、日本は重視を/中国政府
「慰安婦」決議で安倍首相「残念」
米「慰安婦」決議/参院選に続き安倍内閣に痛打
主張/「慰安婦」決議/安倍外交では米国からも孤立
米下院が「慰安婦」決議/日本政府に謝罪要求「歴史の責任認めよ」/本会議初採択
米下院本会議/30日「慰安婦」決議
2007選ぶ・変える/戦争美化我慢ならぬ/102歳、重なる過去/「百寿は元気」を執筆中、西山竜平さん
証言・「大東亜戦争」の真相/体験をお寄せください
日米同盟感謝決議案を提出/米下院
戦前の強制労働被害/中国赤十字が586人に支援金
「慰安婦」決議案/日本の参院選後に採決/米下院、自民苦戦に配慮
「慰安婦」裁判支えるネット、百数十人に成長/暴行されたのは私と同じ人間だ
本立て/『「慰安婦」と心はひとつ 女子大生はたたかう』神戸女学院大学石川康宏ゼミナール編著
歴史を記憶しよう/盧溝橋事件70年、中国で式典
07私の選択/元中国大使中江要介さん/核抑止力より「外交力」
安倍政権「産む機械」「原爆」発言、「慰安婦」/アジアが参院選注目
「慰安婦」問題説明を続ける/駐米大使
「従軍慰安婦」/「河野談話は自虐的」/自民・中川政調会長が暴言
米下院委「慰安婦」決議/日本政府よ、罪に向き合え/各国メディアが主張
「従軍慰安婦」米紙意見広告/自、民などの議員に抗議文/安保破棄大阪実行委
台湾の元「従軍慰安婦」被害者証言/「看護婦に」とだまし連行
おはようニュース問答/首相は米「慰安婦」決議を正面から受け止めて
チューク諸島に「従軍慰安婦」が/和田堀・9条の会、元日本兵が証言
レーダー/従軍慰安婦問題と報道の責任
「慰安婦」/日本軍の組織的強制/中国弁護士協会が調査結果
「従軍慰安婦」問題/謝罪の公式声明を/志位委員長が提起
朱達成中国国際交流協会副会長と不破社研所長が会談
シリーズ追及「靖国」政治/歴史わい曲/上/「河野談話」攻撃の的に
見放された「靖国」派/日本政府は「慰安婦」に謝罪を/アメリカ議会下院委決議
週間日誌/07年6月24日〜30日
米「慰安婦」決議を報道/中国各紙/英メディア
米「慰安婦」決議、日本の行動期待/韓国当局者
米「慰安婦」決議なぜ採択すべきか/下院委討論から
「従軍慰安婦」決議/日本AALAが歓迎の談話発表
米の慰安婦決議、市民団体が声明/京都
米下院外交委員会/「従軍慰安婦」問題での決議/全文
「慰安婦」問題/あいまいさない謝罪を/緒方議員が要求/参院特委
米「慰安婦」決議を敵視/「靖国」派抱え問われる民主
米「慰安婦」決議/日本政府は歴史に責任を/中国外務省報道官が指摘
年金問題、「従軍慰安婦」問題について/志位委員長の会見/大要
「生存者の尊厳回復を」/米「慰安婦」決議受け各団体が声明
米下院委「従軍慰安婦」決議/首相は真摯に受け止めよ/志位氏
「慰安婦」決議/日本施設前で謝罪など要求/台湾
「慰安婦」決議/正しい方向の一歩/オランダ出身オハーンさん
「慰安婦」決議受け高まる声/世界で「日本謝罪を」/元「慰安婦」韓国で集会/決議案の採択、中国でも報道
「慰安婦」問題/「強制性ない」の首相発言、撤回せよ/共産党、一貫して追及
「慰安婦」問題/最終解決へ被害者と協議を/弁護士44人が要望書/首相あてに
「慰安婦」問題の米下院委決議/断罪された「靖国」派/日本政府は「謝罪を拒否」
米「慰安婦」決議/「多くの決議の一つ」/首相、コメント避ける
米「慰安婦」決議/日米亀裂生む/平沼氏が批判声明
主張/「慰安婦」決議採択/「靖国」派への痛烈な批判だ
「慰安婦」決議39対2/米下院委可決/本会議で来月採決へ
旧日本軍「慰安婦」問題、米下院委の決議/戦争犯罪軽視に厳しい国際世論
「慰安婦」決議案をめぐる主な動き
米下院外交委員会「慰安婦」問題決議案/要旨
「慰安婦」問題の米下院委決議/「靖国」派政治の破たん
「慰安婦」決議可決へ/米下院委、日本政府に公式謝罪要求/「靖国」派の孤立鮮明
「従軍慰安婦」強制を否定、自民・民主議員ら米紙への意見広告/米副大統領も「不愉快」
自民議員の南京大虐殺否定/中国各紙が批判
南京大虐殺否定/自民議員発言、中国が批判
米議会の「慰安婦」決議案、26日に委員会採択へ/外交委員長が言明
自民・民主議員の米紙意見広告/「慰安婦」強制を否定/海外から批判
米「慰安婦」決議案/政府、静観の構え
民主化20年の韓国/5/日本見る視点多様化
日本政府は謝罪して/元「慰安婦」の話を聞く会/日朝協会東京都連
「従軍慰安婦って」「強制連行は?」/「中学生のための『慰安婦』展」を見る
「慰安婦」ら国会前抗議/政府は直接謝れ
日本と朝鮮の平和守る/日朝協会が定期総会
戦争責任にけじめを/教科書の記述消すな/元「慰安婦」の証言に高校生/民青同盟が集い
米コロンビア大(日本近代史)グラック教授に聞く/「慰安婦」問題/世界で認定された事実
日本軍「慰安婦」問題/強制の事実消えない/韓国で注目、アジア連帯会議/日本共産党・吉川参院議員が参加
中学生も知ってほしい/「慰安婦」展始まる/東京
挺身隊訴訟/「国の強制連行」認定/原告の訴えは棄却/名古屋高裁
大連からハルビンへ/戦跡を訪ねて(1-6)
「慰安婦」決議案採択を/米・カナダ市民団体が意見広告
国連拷問禁止委、日本に改善勧告/代用監獄・慰安婦問題…人権状況に強い憂慮
週間日誌/07年5月20日〜26日
放送法改定を考える/NHKへ新たな規制も/愛知東邦大学教授戸崎賢二さん
靖国DVD≠アこが問題/石井議員の質問から
安倍首相訪米と「慰安婦」・憲法/マーク・セルデン教授に聞く/米国にこそ9条が必要
民主・松原議員、「南京大虐殺」「慰安婦」を否定
放送法改定を考える/ジャーナリスト・元民放連放送番組調査会委員長原寿雄さん/政府支配と介入に狙い
「慰安婦」は人権問題/日本政府と裁判所を批判/アムネスティ年次報告
「慰安婦」問題/日本政府は公式謝罪を/アジア連帯会議、立法措置求める決議
ひもで結ばれて拉致=^元「慰安婦」が証言/アジア連帯会議
「慰安婦」問題の解決へ国際連帯/ソウルで会議/吉川議員あいさつ
慰安婦問題で学習会開く/大阪民医連
真の謝罪こそ必要/「慰安婦」問題で学習会/国民学校1年生の会/吉川議員が講演
侵略正当化へ洗脳=^文科省採用の靖国DVD
強制連行裁判の最高裁不当判決/中国で被害者ら抗議
南京事件70周年/連続国際シンポで問われているもの/笠原十九司
パックス・クリスティ平和賞/受賞記念しシンポ開く
日朝協会が全国理事会/来月の総会成功へ
「慰安婦制度」は国家犯罪/被害者救済を訴え/東京高裁で口頭弁論
沖縄3市議会が意見書/軍の強制なしに集団自決ありえぬ/教科書削除に抗議/那覇・糸満・豊見城/全会一致
「慰安婦」問題考えた/9条の会が学習会/江戸川・小岩
歴史認識に「失望」/靖国と「慰安婦」安倍首相を批判/韓国大統領府
「慰安婦」問題/旧日本軍の強制性証言/オランダ女性尋問調書で判明
憲法対決の全体像をつかもう/不破哲三社研所長の講演
安倍首相の靖国供物奉納/韓国政府「非常に遺憾」
レーダー/報道被害と規制の間
慰安婦強制をみる目/米谷ふみ子/安倍首相の発言が議論に火/女に謝れば男が廃る?
元「慰安婦」9条大切に=^日韓友情のうたごえ
慰安婦強制をみる目/米谷ふみ子/安倍首相の発言が議論に火/女に謝れば男が廃る?
米「慰安婦」決議案、共同提案議員100人突破/日本政府は謝罪を
憲法改定の中心に乗り出した靖国派=^不破社研所長が憲法講演で対決の全体像描く/岐阜
おはようニュース問答/中国人戦後補償裁判の最高裁判決はひどいね
安倍首相の改憲論/米保守層からも懸念
9条守る世論さらに/佐賀・日中不再戦碑建立29周年平和の集い
春名さんとざっくばらんに/「鉄血勤皇師範隊」元隊員、体験を語る/元衆院議員古堅実吉さん
中国人戦後補償訴訟/他の3件も敗訴確定/最高裁
安倍首相に公開書簡/「慰安婦」発言非難、米で全面広告/韓国系市民団体
週間日誌/07年4月22日〜28日
日米首脳会談/要旨
安倍首相表明/「謝罪せず」と韓国メディア
主張/日米首脳会談/誰にかけがえない同盟なのか
潮流
イラク政策、日米一体/同盟強化を確認/首相「戦後体制の脱却」表明/首脳会談
慰安婦問題/「日本政府は公式謝罪を」/決議案提出のホンダ米議員/和解は歴史への責任
米の抗議デモ、コメントせず/官房長官
安倍首相の謝罪もっと公の場で/米下院議長
慰安婦問題「おわび」/米議会指導者に安倍首相
元「従軍慰安婦」訴訟に対する最高裁判決について/市田書記局長がコメント
中国人強制連行・「慰安婦」訴訟/司法の役割放棄だ=^最高裁判決原告ら怒り/全面解決要求は続く
安倍さん公式謝罪を/元「慰安婦」らデモ/ホワイトハウス前
日米首脳会談/同盟強化を確認へ
個人の賠償請求認めず/中国人強制連行・「慰安婦」訴訟/最高裁初判断
日本の侵略戦争/個人の賠償請求権認めよ/香港議会が動議
「慰安婦」で米市民団体、日本政府批判の広告
「慰安婦」問題/元日本兵、「強制」を証言/首相訪米前に集会
中国人戦争被害補償/請求権どう判断/企業側法解釈は誤り/あす最高裁判決
論壇時評/田代忠利/首相の人権感覚に批判/軍事力より外交解決もとめる論点も
「従軍慰安婦」安倍首相の発言/戦後日本の歩み否定/強制の事実明らか
安倍首相きょう出発/「すきま風」のなか初訪米/同盟深化へ危険な手土産/人権感覚に広がる疑念
レーダー/偏狭な意見がテレビを占拠
放送法改悪は国家介入/自由法曹団が反対声明
歴史問題が弱点に=^米誌紙、安倍首相訪米前に論評
アジアメディア、安倍タカ派≠ノ警戒/韓国/各国
首相インタビュー/要旨
自民・中山元文科相が暴言/「従軍慰安婦」もうかる商売=^ほとんど日本の女性
「慰安婦」決議阻止の訪米/批判の高まり「火に油」/自民有志議員が延期
「従軍慰安婦」問題/日本軍の強制示す公文書/3点の大要(邦訳)
「慰安婦」問題/「歴史認識は未来と直結」/韓国大統領が英字論文誌に寄稿
「慰安婦」問題/強制性示す新資料、研究者ら公表/東京裁判で証拠採用
朝の風/文学も総決算されるのか
「慰安婦」強制は明確/首相発言撤回求め宣伝/平和委
韓国大統領「慰安婦」で日本批判/「人類の普遍的価値否定」/韓国通信社報道
「従軍慰安婦」米議会報告/「安倍首相矛盾」と批判/拉致問題での主張疑われる
「従軍慰安婦」での米議会報告指摘/全段階で日本軍が関与
志位委員長が温家宝中国首相と会談
従軍慰安婦問題で首相発言の撤回を/旭川市議会に党が意見書案
沖縄戦の教科書検定問題/集団死は軍による誘導強制/従来の学説を一方的に変える根拠ない/石山久男
中国首相きょう来日/歴史問題・経済関係発展/相互理解増進めざす
清流濁流/首相の訪米みやげ
性奴隷制つくり管理したのは軍/ここに「従軍慰安婦」問題の本質がある/中央大学教授吉見義明さんにきく
「慰安婦」強制に軍関与/米議会調査局が報告書/韓国紙が報道
潮流
メディアをよむ/塚本三夫/尋常でない「戦後否定」
「従軍慰安婦」発言/安倍首相、謝罪しても撤回せず/世界が厳しい目/志位委員長「拉致問題解決にも障害」
日本軍の戦時性暴力伝える/被害者、日本兵の証言集め
週間日誌/07年4月1日〜7日
沖縄・参院補選/憲法や格差、雇用…/基地なくせ、国政に届ける/かりまた候補、赤嶺衆院議員訴え
「従軍慰安婦」問題/米国内で批判続く/米政府、幕引き図るが
潮流
中国人戦争被害支援者ら、最高裁に公正判決要請
朝の風/慰安所経営者の合祀
「慰安婦」問題/韓国でデモ
「憲法守れ」願い共産党へ/神戸・京都で穀田国対委員長
大激戦の終盤戦/論戦でのリードを議席に結びつけるために全力/志位委員長が会見
空白克服に燃える/県議選・佐賀市区、むとう明美県議候補/平和・憲法守れの願いを
07水曜随想/衆院議員赤嶺政賢/超過密日程だったが…
新しい政治めざして/こくた恵二/改憲勢力の野望ストップ
新しい政治めざして/こくた恵二/改憲勢力の野望ストップ
都営住宅建設を期待/吉田候補に聴衆/多摩の団地前
おはようニュース問答/「慰安婦」問題、テレビはしっかり報道を
「従軍慰安婦」で米メディア/安倍弁護論評に批判多数/『ニューズウィーク』電子版
「従軍慰安婦」で米メディア/「軍関与文書」は存在/NYタイムズ紙で発見者
参院沖縄選挙区補選あす告示/3つの争点、かりまた候補全力/平和の一議席守る
首相の歴史観批判/TV番組で穀田・小池議員
元慰安婦におわび表明/米大統領に安倍首相
党首討論ゼロ国会/やっても違い示せない!?/自民・民主のジレンマ
「慰安婦」問題/韓国国会47議員が書簡/安倍首相に謝罪求める
県議・福岡市議選/私の願い託せる党です/自民支持者も今度は共産党=^福岡/佐賀/鹿児島
都知事選・新宿西口の街頭演説/志位委員長の訴え/要旨
潮流
「オール与党」県政に立ち向かう堀江候補/長崎・赤嶺衆院議員が支持呼びかけ
9条守れの思いを共産党の候補者へ/春名参院比例候補が北九州で
高校教科書/沖縄戦ゆがめる検定=^「集団自決」修正、体験者ら反発
「従軍慰安婦」問題/安倍首相らの発言撤回要求/全労連/日本平和委員会
日本の侵略戦争、日米研究者がシンポ/「従軍慰安婦」問題など論議/ワシントン
悪政と対決、共産党大きく/幹部・国会議員各地で訴え/大分で穀田国対委員長
日韓外相会談要旨
憲法・教育の条理にも反する関連3法案/小池氏が発言/NHK日曜討論
主張/教科書検定/軍強制否定は戦争を美化する
いっせい地方選/3つの願い日本共産党に/志位委員長、各地で訴え/その2/無駄づかい/憲法と平和
2割の賛成でも改憲、手続き法案/地方選のさなか衆院通過狙う
おはようニュース問答/世界では奴隷制の反省が進んでいるのに…
改憲手続き法案緊迫/「憲法」地方選争点に/強行狙う自・公、推進派の民主/9条守り生かす共産党
潮流
慰安婦問題で誤った言動=^韓国外相が批判/日韓外相会談
下村副長官発言で首相に抗議声明送付/京都母親連絡会
各党幹部の演説
「従軍慰安婦」問題/北朝鮮問題の解決妨害/安倍首相の姿勢を批判/独紙
「従軍慰安婦」問題/謝罪・賠償求める/カナダ下院小委、動議採択
「慰安婦」証言を信頼/「談話」めぐり河野議長
高校教科書文科省検定/沖縄戦での住民集団自決「日本軍が強制」を削除
道府県・政令市議選が告示/福祉とくらし・憲法守れの一票を共産党へ/千葉・大阪で志位委員長訴え
「慰安婦」問題真摯に/行動ネット、首相に署名提出
日本軍の性暴力追うドキュメンタリー映画「ガイサンシーとその姉妹たち」をめぐって/班忠義・内海愛子対談
安倍首相の「慰安婦」発言、世界はこう見る/韓国各紙/英誌/英紙/シンガポール紙
「慰安婦」問題/吉川議員の質問/首相の姿勢問う
「オール与党」の悪政にたちむかう日本共産党の前進を必ず/日本共産党中央委員会常任幹部会
「従軍慰安婦」問題/自民公約から消えた反省
論戦ハイライト/改憲手続き法案/9条標的、いよいよ鮮明/賛成少数でも改憲案承認/衆院特委
「従軍慰安婦」問題/首相は謝罪いうなら自らの発言撤回を/志位委員長が会見
府県議、政令市議選あす告示/近畿から180人立候補/平和くらし、願い託せる共産党
朝の風/どうしてもとり返す
「慰安婦」問題社説/米紙に抗議するが紙面上で反論せず/日本大使館
主張/改憲手続き法案/9条守れの世論総結集して
改憲手続き法案/運動規制に懸念次々/拙速審議を大半批判/地方公聴会
新しい政治めざして/石井いく子/増税推進者に負けない
新しい政治めざして/石井いく子/増税推進者に負けない
埼玉県政の断面/「従軍慰安婦はなかった」と知事/自民党席から「そうだ」/抗議の声なし、公明党
どうみる「従軍慰安婦」問題/志位委員長が語る/CS放送「各党はいま」
改憲手続き法案・与党「修正」案/改憲への第一歩許さない意思を
緒方副委員長と中日関係史学会の武会長が懇談
「首相、国の責任認めず」/「慰安婦」問題の吉川氏質問、外国メディアが相次ぎ報道
「慰安婦」問題の下村氏発言/韓国で超党派の批判
日中関係改善で意見交換/2年ぶり再会、志位委員長、路甬祥中国全人代常務副委員長と会談
改憲手続き法案/与党、国会に「修正」案/最低投票率設けず、公務員の運動制限
国会へ行こう600人行動/改憲手続き法案とめたい
「慰安婦」被害女性に謝罪を/吉川議員、首相に発言撤回迫る
従軍慰安婦いなかった/下村氏の発言
また下村副長官、旧日本軍の関与はない
下村発言は首相と同じ/韓国メディア
緒方副委員長、韓国国会議員と会談
安倍首相「拉致と慰安婦は全く別」/国際批判に開き直り
憲法問題が政党選択の重大争点に/歴史ゆがめる安倍・下村発言は許されない/志位委員長が会見
安倍内閣6カ月/危うさともろさ、あらわに/基本路線/外交/内政
問われる日本政府の人権二重基準/拉致問題での立場を失う「慰安婦」問題
安倍首相は二枚舌=^「慰安婦」と「拉致」米紙が批判
レーダー/「慰安婦」報道の沈黙とわい曲
米「慰安婦」決議案/共同提案100議員目指す/「過去の違法行為償いを」市民ら議会で行動
日韓首脳会談で安倍発言議題に/韓国外相
安倍首相発言に抗議/元「慰安婦」李容洙さん(79)/200年でも生きてたたかう/私こそ歴史の証人です
東京都民の三つの願い≠集め、吉田さんを知事に押し上げよう/第一声での志位委員長の訴え/大要
「慰安婦」問題「謝罪求める」/台湾外交部
「慰安婦」問題で首相の対応批判/前米高官
元慰安婦ら台北で集会/首相発言に抗議
安倍首相「慰安婦」発言/歴史認めること必要/米紙が社説
「慰安婦」問題/抗議広がる韓国/日本大使館前で集会
国民の目ふさぎ改憲狙う手続き法は廃案に/3・20中央集会、市田書記局長あいさつ
「慰安婦」問題での「河野談話」継承いうなら行動を/緒方議員質問
日本のイメージ後退/首相「慰安婦」発言で米紙
「慰安婦」発言に「当惑を感じる」/シンガポール首相
潮流
くらしと憲法を守る日本共産党の議席必ず/志位委員長が3カ所で訴え/神奈川
07年政治考/安倍首相の政局打開策どう見る/記者座談会
メディアをよむ/松田浩/上告を会長の一存で?
Q&Aで考えた/ここが問題、安倍首相発言
「従軍慰安婦」/日本政府は公式に謝罪を/米下院外交小委員長が語る/ワシントンリポート
「従軍慰安婦」わい曲発言/首相に撤回求める/長崎の女性25団体
安倍首相の「慰安婦」発言、世界から批判/シンガポール/米/カナダ/マレーシア
タカ派姿勢が日米に悪影響/自民・加藤氏
「従軍慰安婦」問題で政府答弁書、首相発言を追認
「憲法9条をまもれ」の声はこぞって日本共産党へ/いっせい地方選挙で大いに訴えよう/志位委員長が発言
潮流
「従軍慰安婦」強制を否定/安倍首相発言、世界で孤立/改憲姿勢に警戒
安倍首相発言/オランダ首相、不快感を表明
中国人強制連行・西松建設訴訟/請求権放棄で弁論/最高裁
改憲手続き法案/自公が公聴会日程を議決/共産党が抗議/埼玉・越谷
「慰安婦」番組改変説明を/吉井議員、NHK執行部の責任問う
従軍「慰安婦」問題/「信念を持って河野談話発表」/衆院議長
「慰安婦」問題/日本政府の「謝罪は必要」/共和党実力者
「慰安婦」問題/強制性否定は悪質/米法学者が安倍発言批判
改憲手続きノー・イラク撤兵≠R・20行動/全労連・坂内議長に聞く/職場・地域から声結集を
外相が訪韓へ/「慰安婦問題」で説明
メディアのいま問う/さいたまで9条の会が集い
山東出兵80周年/日中問題で学習会/歴史認識考える
米「慰安婦」決議案/提案者急増/6人→42人/安倍発言機に
「たしかな野党」として躍進めざす/志位委員長、日本政治総合研究所で講演
県議選・政令市議選告示まで17日/各地で演説会/党議席の値打ち訴え/福井/名古屋/新潟・十日町
各地で国際女性デー集会/深川/帯広
慰安婦問題/「日本は既に謝罪」/LA総領事、米紙に投書
米「慰安婦」決議案は「日米離間工作」/麻生外相
安倍内閣/「戦後レジーム脱却」で政権立て直し図るが
メディアをよむ/塚本三夫/誰が「教育」を壊したか
改憲ストップ掲げ国際女性デー福岡集会開く
世界の宝・9条守ろう/国際女性デー集会/愛知県/長野県/上田市
「慰安婦」問題広がる安倍批判/ニューヨーク・タイムズ紙/英誌『エコノミスト』社説
週間日誌/07年3月4日〜10日
石原都政と「オール与党」の3つの大罪≠ノ厳しい審判を/志位委員長の訴え/東京の演説会
全国都道府県委員長会議/志位委員長の報告
国会質問ファイル/9日参院予算委
安倍首相「慰安婦」発言/欧米メディア批判続く
首相の「慰安婦」発言に抗議/新婦人愛知県本部
女性が安心して働ける世の中に/各地で国際女性デー/静岡/福井/富山/石川/新潟
戦争への道許しません/国際女性デー札幌全道集会/旭川集会/稚内集会
「慰安婦」問題/日本政府に批判続く/ボストン・グローブ紙/インドネシア英字紙/中国外務省
国会質問ファイル/9日参院予算委
立場に隔たり=^北朝鮮代表
「慰安婦」河野談話/民主から「見直し」要求/若手が「会」/南京大虐殺もなかった
「従軍慰安婦」問題/首相は歴史歪める言動やめよ/全国都道府県委員長会議
首相の「慰安婦」発言に抗議/宗教者ら声明/元「慰安婦」が証言
「慰安婦」問題/日本政府は公式謝罪を/過去の誤り訂正し前進すること重要/ファレオマバエガ委員長
安倍首相「慰安婦」発言/「慰安婦」問題で河野談話順守を/フィリピン外務次官
安倍首相「慰安婦」発言、怒り広がる/法的、道義的補償を/国際法学者米紙に投稿
「慰安婦」問題、首相発言に抗議/新婦人/日本AALA/日朝協会
「慰安婦」発言/強制に「広義」も「狭義」もない/市民団体・バウネットジャパン共同代表西野瑠美子さん
歴史の真実、直視を/国内外から非難集中/首相「慰安婦」発言
「慰安婦」問題の動き/日朝作業中断は首相発言が影響/元米高官
「慰安婦」問題の動き/下院委員長に採択回避要請/駐米大使
「慰安婦」問題の動き/首相の主張は弁解がましい/自民・山崎氏
「慰安婦」問題の動き/反論掲載要求へ/官房長官
「慰安婦」問題の動き/河野談話には歴史判断ある/自民政調会長が批判
日朝作業部会終わる/次回日程は合意せず
「河野談話」見直すな/首相「慰安婦」発言、市民団体が抗議
「慰安婦」問題/首相は慎重発言を/公明幹事長
「慰安婦」問題/中韓の批判に官房長官言及
改憲手続き法案/首相5月3日までに成立
日本は歴史の責任とって/豪で元慰安婦ら集会
首相の「慰安婦」発言に批判/東南アジア各紙/香港紙
潮流
安倍首相「慰安婦」発言に世界から批判/謝罪と補償を/韓国33国会議員が声明
安倍首相「慰安婦」発言に世界から批判/事実を認めよ/中国外相「適切処理を」
安倍首相「慰安婦」発言に世界から批判/事実ねじまげた日本、恥をさらしている/米NYタイムズが社説
国際女性デー・香川で集い/「改憲ノー」今こそ
首相の「慰安婦」発言/国際社会の不信、広げただけ
首相、米決議でも謝罪しない/「慰安婦」問題「狭義の強制性なし」
「慰安婦」問題/強制性もつのは明らか/市田書記局長、首相の発言批判
安倍首相の「慰安婦」発言/韓国6紙が批判社説
憲法九条は世界の宝物/韓国九条ツアーと文化交流/きたがわてつ
「慰安婦」問題/河野談話は継承/世耕首相補佐官
「史実否定許されない」/首相の「慰安婦」強制疑問視発言/中国の通信社
メディアをよむ/仲築間卓蔵/報道版「あるある」か
3・8国際女性デー全道集会/西野氏講演/「悪政ノー」の声を/集会実行委員長石川一美さん訴え
大戦中の強制労働/被害者早期救済を/名古屋で全国交流集会
「戦時の歴史を修正」/安倍首相「慰安婦」発言、米で波紋広がる
首相の「慰安婦」強制疑問視/韓国外務省が非難
おはようニュース問答/息吹発言、人権軽視の考えは根深い
「慰安婦」問題の決議案/米下院外交委員会/要旨
旧日本軍の「慰安婦」問題/日本政府の態度問う/米議会
報道の使命問う市民の勝利/NHK裁判判決の意味/梓澤和幸弁護士に聞く
「従軍慰安婦」強制の証拠ない=^首相、河野談話見直しも
歴史尊び良い隣人に/独立運動記念日、韓国大統領が演説
「私は被害者」/埼玉県知事に元「慰安婦」
二十一世紀の世界と日本の未来/志位委員長が講演/学者・研究者党後援会全国交流集会
おはようニュース問答/米議会で元「慰安婦」が初めて証言したね
旧日本軍の東ティモール性犯罪/謝罪と補償を求める/外務省に市民団体
解説/米の「慰安婦」決議案外相発言/旧日本軍の関与、決着済みの事実
「慰安婦」問題/日本政府に公式謝罪求める決議案提出ホンダ議員の証言/要旨
日本政府謝罪まで声上げる/米議会で証言、元「慰安婦」が会見/尊厳を取り戻したい
日本政府の謝罪あいまい/「慰安婦」問題決議案提出の米議員、正式な表明求める
テレビ時評/NHKの権力迎合体質に警鐘/元立命館大学教授松田浩
「従軍慰安婦」番組改変訴訟/NHKに賠償命令/問われた政治的圧力
「残留孤児」救済へ決断を/文化人ら34人が賛同/国賠訴訟判決で声明
NHK番組改変/画期なした控訴審判決/自ら「編集権」を放棄したNHK
政治家発言受け改変/NHKに賠償命令/「従軍慰安婦」番組訴訟で東京高裁
歴史の真実伝え続けたい/結成2周年、大阪宗教者9条の会が講座
NHK番組改変事件/控訴審判決を前に/生々しい政治介入、実態が浮き彫りに/西野瑠美子
埼玉・「従軍慰安婦」問題/元憲兵の証言/軍が管理、真実は一つ
本格的作品論が登場/村上春樹をめぐる本/ポップカルチャーから歴史的分析まで/岩渕剛
新春対談/大阪大学大学院助教授木戸衛一さん/日本共産党参院比例候補山下よしきさん
07年、激動含みの政局/ほころび広がる自公政権/勝負の年、共産党全力
今年も戦争体験者に話を聞きに行きました。二〇〇五年夏から始めた証言シリーズです。日本の侵略戦争を加害の立場から明らかにしてきました。三回目の今年は「伝えよう『大東亜戦争』の真実」。日本軍の加害行為を歴史から消し去ろうとする政府や一部の知識人に対し、真実を突きつけたいと思い、取材に臨みました。
〇…きっかけは日本軍「慰安婦」問題や、沖縄戦「集団自決」(強制集団死)に関する教科書検定で、政府が「日本軍の強制」を削除・否定したことにありました。理由は強制性や軍命を裏付ける証拠がないということでした。しかし、体験者の証言は軍の強制を示すものばかりでした。
〇…夏が近づくと毎年思います。「体験を聞きに行きたくない」と。元日本兵に「あなたは人を殺しましたか」、自身や家族が傷つけられた被害者に「どのように殺されたのですか」と聞く勇気がありません。思い出したくない記憶を語らせることで、また悲しませ、泣かせてしまったと相手を傷つけているように思うから。でも本当は、聞くことで私自身が傷つきたくないと思っていたのです。
〇…忘れられない涙があります。いつも周囲を笑いで和ませる「慰安婦」被害者に「なぜ、そんなに強い心でいられるのですか」と問いかけたとき、ふと見せた涙。被害者も加害者も流す涙に私たち戦後世代は寄り添い、再び日本が戦争をする国にしないよう約束したいと思います。今年も多くの投稿をいただきました。ありがとうございました。(本)
( 2007年12月31日,「赤旗」) (Page/Top)
■国際一般
1・1 国連事務総長に潘基文(パン・ギムン)氏が就任。北東アジア出身の事務総長は初
2・2 国連「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)第1作業部会が第4次報告書。最悪の場合、今世紀末の平均気温は、最大6・4度上昇と警告
2・22―23 オスロでクラスター爆弾の使用などを禁止する条約交渉に関する国際会議
6・6―8 主要国首脳会議がドイツのハイリゲンダムで開かれる。温暖化対策などが議題に
9・19 国連安保理がアフガンに展開する国際治安支援部隊(ISAF)の任期を1年間延長する決議を採択。ロシアが棄権
9・24 国連本部で気候変動ハイレベル会合。温暖化防止で各国首脳が一堂に会するのは初めて
9・25―10・3 国連総会で一般討論。各国首脳が米国の単独行動主義を批判
10・8―16 軍縮を扱う国連総会第1委員会で一般討論。6カ国協議の進展を歓迎し、イランの核問題を外交的に解決するよう求める意見が相次ぐ
10・11 国連安保理がミャンマー軍政による武力弾圧に強い遺憾の意を表明する議長声明を採択
10・30 国連で米国のキューバへの経済封鎖を直ちに解除する決議を採択。過去最多の184カ国が賛成
12・3―15 インドネシア・バリ島で国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP13)。2013年以降の新たな国際協定の構築に向けた行程表を採択
■アジア・太平洋
1・15 第2回東アジア首脳会議(EAS)が、フィリピンで開かれ、持続可能な経済発展のために代替エネルギー開発などで協力していくことを確認
2・13 北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議で、北朝鮮・寧辺の核施設の稼働停止で合意
3・16 中国の国会に相当する全国人民代表大会閉幕。私有財産の不可侵を定めた物権法を採択
5・9 東ティモールで、インドネシアからの独立以来初の大統領選挙。ホルタ首相が当選
7・1 香港の英国植民地から中国への復帰10周年記念式典
7・5 パキスタンの首都イスラマバードのイスラム礼拝所などに立てこもった神学生らと治安部隊が衝突、16人が死亡
7・18 国際原子力機関(IAEA)が寧辺の核施設5カ所の稼働停止を確認
8・16 中ロと中央アジア4カ国で構成する上海協力機構首脳会議がキルギスで開催、長期善隣友好条約に調印
9・8−9 オーストラリアで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が地球温暖化問題で特別宣言などを採択
9・27 ミャンマー軍事政権が生活改善や民主化を求めてデモ行進する僧侶や市民に発砲、日本人カメラマン長井健司さんらが死亡、負傷者多数
10・3 6カ国協議で、北朝鮮の核施設3カ所の無能力化と核計画の申告など次段階の措置で合意
10・4 南北首脳が朝鮮戦争終結に向けた協議の開始などをうたう「平和繁栄」宣言を発表
10・15 中国共産党第17回大会開く。胡錦濤総書記は報告で「科学的発展観」を強調、指導部人事では50歳代の幹部も選出
11・3 パキスタンのムシャラフ大統領が全土に非常事態宣言を発令し憲法を停止。抗議する野党指導者や弁護士ら1000人を拘束
11・5 北朝鮮入りの米専門家チームが核施設無能力化作業に着手
11・20 東南アジア諸国連合(ASEAN)がシンガポールで首脳会議。2015年の経済統合、ASEAN共同体結成に向けて憲章を採択。翌日は第3回東アジア首脳会議が開かれ、温暖化対策で宣言
11・24 オーストラリア総選挙でイラク派遣戦闘部隊の部分撤退などを掲げた野党労働党が勝利。ラッド新首相は12月、京都議定書に調印し批准
12・19 韓国大統領選挙で保守野党ハンナラ党の李明博(イ・ミョンバク)氏が当選
12・23 昨年のクーデター後の暫定政権が続くタイで総選挙。タクシン前首相の後継政党、国民の力党が第一党に
12・27 パキスタンのブット元首相がラワルピンディでの選挙集会後に暗殺される
■北米
1・10 ブッシュ米大統領、イラクへ戦闘部隊2万人以上増派発表
1・16−18 ヒル米国務次官補と北朝鮮の金桂冠外務次官がベルリンで会談
2・13 米バーモント州議会上下両院がイラクからの「速やかな米軍撤退開始」求める決議
5・1 米上下両院が08年3月末までのイラク撤退完了を盛り込んだ4月下旬採択の追加戦費予算をブッシュ大統領に送付、同大統領は拒否権を発動
5・31 ブッシュ大統領が温室効果ガス削減で中印を含む「新たな国際的枠組み」提案、目標達成は各国まかせに
7・30 米下院が旧日本軍によって性奴隷にされた元「慰安婦」への公式謝罪を日本政府に求める決議を採択
8・20−21 米国、カナダ、メキシコ3国がカナダで首脳会談、新自由主義を強化する「経済・安保の統合」推進で合意
9・14 米政府がイラク情勢について議会に提出した報告を公表、イラク情勢の「前進」を強調したものの、大半の分野で改善が見られないことが明らかに
11・28 カナダ下院が旧日本軍の「慰安婦」問題で日本政府に謝罪求める動議採択
12・3 米政府が公表した「国家情報評価」報告で「イランは03年秋以降、核兵器開発を停止、現在核兵器を保有せず」と指摘
12・6 ブッシュ米大統領が北朝鮮の金正日労働党総書記に親書を送ったことを両国が確認
( 2007年12月31日,「赤旗」) (Page/Top)
11%成長
中国の今年の経済成長率は、昨年と同じく11%台になる見込みです。「危険食品」問題などはあったものの、貿易は引き続き好調。来年の北京オリンピックを控えていることもあって、各地では建設ラッシュが続いています。ただ各種の格差など深刻な問題は依然残されたままです。
政権党の中国共産党は今秋、五年に一度の党大会を開催。格差解消、農業重視などをめざし「科学的発展観」を強く打ち出しました。胡錦濤総書記は再選、政治局常務委員には五十歳代の若手二人も選ばれました。
孤立の米
今年は、国連「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」がノーベル平和賞を受賞するなど、地球温暖化問題が焦点となった年でした。十二月には国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP13)がインドネシアで開かれ、京都議定書に続く新たな温暖化防止の枠組みづくりに向けた行程表を採択しました。
国際的な努力に背を向ける米国の姿も鮮明になりました。九月には独自に国際会議を開催して巻き返しをもくろみましたが、オーストラリアが京都議定書批准に踏み切ったことで孤立。COP13では日本、カナダと結んで、温室効果ガス削減の数値目標明示に反対し、批判の的となりました。
非核化へ
北朝鮮の核問題はこの一年、重要な前進を遂げました。二月の六カ国協議の合意に基づき、北朝鮮は七月、寧辺の核施設五カ所の稼働を停止。十一月には核施設の無能力化作業が始まりました。
米朝関係も劇的な改善をみせました。十二月には、ブッシュ米大統領が金正日(キム・ジョンイル)総書記に書簡を送り、核の完全放棄を前提に国交正常化に踏み出す考えを直接伝えました。
南北間では、七年ぶりの首脳会談が実現。朝鮮半島での平和体制構築に向けた協議の開始で合意しました。朝鮮戦争時に途絶えた南北鉄道の定期運行も始まりました。
過去直視
米下院は七月三十日、旧日本軍「慰安婦」問題で、日本政府が犠牲者に公式に謝罪し補償するよう要求する決議を採択しました。
決議は、こうした悲劇が二度と繰り返されないよう求め、日本軍の「性の奴隷」となることを強要された女性たちの真実を日本の若い世代にきちんと教育するよう要望しています。また、「『慰安婦』は存在しなかった」などという政治家の発言がなくなるよう最大限の努力を求めました。
同様の決議は、十一月にはオランダとカナダの各下院で、十二月には欧州議会でも採択されました。
共同体へ
東南アジア諸国連合(ASEAN)は、今年八月に創立四十周年を迎えました。十一月にシンガポールで開いた首脳会議では、二〇一五年の経済統合、共同体実現に向けてその法的枠組みを規定する憲法にあたる憲章を採択しました。
憲章は東南アジアを「恒久平和、持続可能な経済成長、繁栄と社会進歩の地域」にするため、平和と安定を志向し核兵器も大量破壊兵器も存在しない共同体をめざすとしています。
「独立と主権の尊重」「平和と繁栄への共同」「紛争の平和的解決」などをうたうASEANは、東アジア共同体をめざす流れの推進役を果たしています。
新自由主義批判の波
大企業の利益擁護、弱肉強食路線の新自由主義に対抗する流れが、欧州やアジアを含む世界各地に広がりました。これと結んで、労働者や国民の権利を守るたたかいも前進しました。
とくに中南米では、グアテマラで中道左派候補が大統領に当選するなど、新自由主義を改め、米国支配から抜け出す変革の波は、中米や「親米国」にまで広がりを見せました。
ベネズエラでは憲法改正案を小差で否決。政府は結果をすぐに認めました。国民の声を聞きながら変革を進めるやり方が根付いていることを、周辺諸国も歓迎しました。
( 2007年12月31日,「赤旗」) (Page/Top)
参院選で与野党逆転
七月二十九日投開票された参院選の結果、自民・公明の与党が大敗。「構造改革路線」や「靖国」派の改憲路線への国民の厳しい審判は、参院で野党が過半数を占める事態をもたらしました。
日本共産党は、国民が自公政治に代わる新しい政治の中身を探求する新しい政治のプロセスが始まったと分析しました。
参院での与野党逆転という状況のもと、与党は国民の要求に配慮せざるを得なくなりました。被災住宅本体への補償を盛り込んだ改正被災者生活再建支援法や元中国「残留孤児」の生活保障を図る新支援法が全会一致で成立するなど、国会にも新たな変化が生まれています。
「靖国」派政権が崩壊
夏の参院選で歴史的惨敗を喫しながら、民意を無視して続投表明した安倍晋三首相―。しかし、臨時国会冒頭の九月十二日、突然辞任表明し政権を投げ出しました。教育基本法の改悪強行、防衛庁の省「昇格」、任期中の改憲表明と改憲手続き法の強行、日本軍「慰安婦」問題での旧軍の強制性の否定など、史上最悪の「靖国」派政権はもろくも崩壊を遂げました。
自民党は後継総裁に福田康夫氏を選出。福田新首相は、自民党の立て直しにとりくみましたが、アメリカいいなり、大企業優先の路線に変わりはありません。就任三カ月を前に、軍事利権疑惑、年金記録漏れ問題での公約破り発言などで国民の怒りが爆発。内閣支持率は急落しています。
「大連立」くすぶる
十月三十日、十一月二日、福田康夫首相(自民党総裁)と小沢一郎民主党代表との党首会談が行われました。席上、両氏は両党間の「大連立」政権の立ち上げを協議し、一度は基本合意にいたります。しかし、民主党執行部は小沢代表が持ち帰った合意を拒否し、当面はお流れ≠ニなりました。
その後、この党首会談について渡辺恒雄読売新聞グループ本社会長・主筆が、「小沢氏の方からのアプローチ」だったと証言。しかも、小沢氏が「無任所の副総理」で入閣することまで話がついていたといいます。参院選で国民が示した「自民党ノー」の審判への重大な裏切りでした。
小沢氏は「今でも正しいと思っている」とのべ、この「大連立」構想を肯定しています。
貧困解決へ広がり
深刻さを増す日本の貧困が社会問題になり、解決をめざすたたかいが大きな広がりをみせました。
労組員、法律家、市民運動家が手をつなぎ反貧困ネットワークを結成。最後の命綱である生活保護行政をめぐって違法な申請拒否、排除がまかりとおるなか、生活保護問題対策全国会議を発足し、地域で法律家などによるネットワークづくりも進みました。
このたたかいは、日本共産党議員の追及もあって、餓死事件をひきおこした北九州市に生活保護行政の誤りを認めさせました。また、厚労省が生活扶助基準を引き下げようとしたとき、社会的反撃がおこり、やめさせるという画期的な成果に結びつきました。
正社員化へ道開く
偽装請負をやめさせ、まともな雇用をつくるたたかいが前進しました。日本経団連の会長企業のキヤノンで直接雇用を実現するなど、各地で直接雇用が実現しました。
偽装請負の是正に反して短期雇用で雇い止めにされている問題では、トヨタ系列の光洋シーリングテクノで、直接雇用で契約社員になった労働者がたたかい、正社員化を勝ち取りました。
青年を先頭に「ネットカフェ難民」まで生む非正規雇用を告発し、政治を動かしました。日雇い派遣のグッドウィルとフルキャストに厚労省が事業停止を命令。派遣法の抜本改正を求める世論が広がり、日雇い派遣規制に厚労省も乗り出さざるをえなくなっています。
海自がインド洋撤収
テロ特措法が十一月二日午前零時に期限切れになり、同法に基づいてインド洋で米艦船などに給油活動をしてきた海上自衛隊が撤収しました。
憲法違反の自衛隊の海外派兵は一九九二年以降継続されてきましたが、派兵継続に反対する国民世論を受けて派兵が中断されるのは、今回が初めてです。
自民、公明両党は派兵継続の新テロ特措法案を国会に提出し、参院で否決されても衆院での再可決・成立を狙っています。民主党はアフガニスタンへの陸上自衛隊派兵を提案しています。
日本共産党は、米軍の「対テロ」報復戦争支援をやめ、政治的和解を促進する外交努力を尽くすよう主張しています。
大地震と支援法改正
二つの大きな地震が列島を襲いました。三月二十五日、能登半島を中心に、震度6強の揺れを記録。石川県などで死者一人、負傷者三百五十八人、全半壊家屋二千四百十六棟の被害が出ました。
七月十六日には、新潟県中越沖地震が発生。新潟、長野両県内で震度6強を観測。東京電力柏崎刈羽原発では、設計時の想定地震動を上回る揺れを観測、運転中の3号機で変圧器が燃える火災が発生しました。長野県などを含めその後の関連死を含めた死者は十五人、負傷二千三百四十五人、全半壊家屋六千九百四十棟の被害を出しました。
被災者生活再建支援法の改正が急がれていましたが、国民の運動が政治を動かし、支援金が住宅本体の再建にも使えるようになり、二つの災害にも適用されます。
最賃 二ケタ引き上げ
生計費もまかなえない低水準で、ワーキングプアの原因となっている最低賃金(地域別)は、全国平均十四円、十年ぶりに二ケタの引き上げが実現しました。
労働組合などが一致して「せめて時給千円に」と求め、「人間らしく生活できる水準にせよ」とたたかった成果です。
政府は、最低賃金法を三十九年ぶりに改定せざるをえなくなり、生活保護水準を下回ってはならないことが明記され、財界が廃止を求めていた産業別最低賃金は維持されることになりました。
労働者が求める全国一律最低賃金についても、「全国最賃」の導入法案が出されるなど新たな変化が生まれています。
原油高 生活を直撃
原油、穀物などの国際価格高騰の波紋が広がっています。
投機資金の流入などが原油価格を高騰させ、ガソリン、灯油の値段を史上最高値にまで押し上げました。灯油の値上がりは、電気・ガス料金の値上げと合わせて冬場の家計を直撃。軽油や重油など石油製品の高騰は、運輸業や農漁業の経営を圧迫し、コスト上昇分を価格に転嫁できない中小零細業者を倒産・廃業に追い込んでいます。
一方、小麦の国際相場も十二月に史上最高値を更新するなど高騰しており、関連する食料品値上げの背景になっています。即席めんやしょうゆなど生活に身近な商品の値上げが、年明けにも相次いで予定されており、家計への影響は避けられそうにありません。
53年ぶりの日本一
プロ野球はセ・リーグの中日ドラゴンズが十一月、日本シリーズでパ・リーグの日本ハムを破って、五十三年ぶりの日本一に輝きました。
初戦は日本ハムのダルビッシュの好投の前に敗れました。しかし、二戦目以降、中日は積極的な打撃と安定した投手陣の活躍で四連勝し、優勝を果たしました。
第五戦では山井大介投手が八回までパーフェクトに抑えました。あと一歩で完全試合という九回で、岩瀬仁紀投手と交代し、議論を巻き起こしました。
中日は今季セ・リーグ二位でしたが、新制度のクライマックスシリーズで阪神と巨人を破り、日本シリーズに進出しました。
( 2007年12月30日,「赤旗」) (Page/Top)
沖縄戦「集団自決」での軍の強制は、「南京大虐殺」や日本軍「慰安婦」問題とともに、侵略戦争の正当化を狙う「靖国」派が、教科書などから消すことを目標にしてきたものです。
侵略戦争を美化する「新しい歴史教科書をつくる会」の現会長、藤岡信勝氏らは二〇〇五年に「軍の強制」を削除する運動を開始しました。
同年、「集団自決」を命令していないと主張する元守備隊長らが、軍の命令を記述した著書は名誉棄損などにあたるとして岩波書店と大江健三郎氏を訴える裁判を起こしました。この裁判の支援者や弁護団には、藤岡氏をはじめ「つくる会」の関係者が多数参加しています。
文部科学省は「軍の強制」を削除した検定意見の根拠の一つにこの裁判での原告の主張をあげています。
政府・文科省はこの検定意見について、教科用図書検定調査審議会が「専門的、学術的観点」で調査・審議して決めたものだとしてきました。
しかし、検定意見の原案である「調査意見書」は文科省の職員である教科書調査官がつくり、初等中等教育局長らが決裁したもので、それが審議会では意見が出ないまま検定意見になったことが、日本共産党の赤嶺政賢衆院議員の国会質問で明らかになりました。
さらに、日本史担当の教科書調査官や審議会委員の中に『新しい歴史教科書』監修者の門下生や共同研究者が多数いることが、石井郁子衆院議員の追及で浮かび上がりました。検定意見は侵略戦争を美化する勢力が、沖縄戦研究の到達点に反して持ち込んだ政治介入だったことが明白になったのです。
沖縄県民をはじめとする検定意見撤回の声が高まり、各出版社は「軍の強制」を明らかにした訂正申請をしました。これに対しても「つくる会」は数回にわたって「訂正を不承認にせよ」と文科省に要請し、宣伝や集会を繰り返しおこないました。
こうした中で、審議会と文科省は、検定意見撤回要求を拒否、訂正申請で出された「軍による強制」という記述も認めませんでした。
沖縄県民の思いにこたえるには、文科省が誤りを認めて検定意見を撤回し、「軍の強制」の記述を復活させ、政治的介入でゆがめられた教科書を事実にもとづいたものにする以外にありません。
(高間史人)
( 2007年12月27日,「赤旗」) (Page/Top)
沖縄戦「集団自決」(強制集団死)の教科書記述について、文部科学省は教科書出版社からの訂正申請についても「軍の強制」の表現を認めませんでした。沖縄戦研究の通説とも異なり、事実にもとづいた記述の回復を求める沖縄県民の思いを踏みにじる判断に、執筆者や研究者から批判の声があがっています。
日本史教科書執筆者・歴史教育者協議会委員長石山久男さん/執筆者として納得いかない
今回の訂正申請承認は、検定意見を撤回せず、その枠の中で「軍の強制」をあいまいにした記述しか認めないというものです。しかも文科省は、実際には教科書調査官と出版社との密室でのやりとりのなかで、訂正申請した記述を書き直させているのです。
審議会の日本史小委員会が出した報告は検定意見を出した理由として、「隊長の命令の存在は明らかでない」という説が出ている、だから「軍の命令の有無が明らかでないという見解が定着しつつあると判断された」とのべています。隊長命令の有無と軍の命令・強制の有無とはまったく別の問題で、この説明には飛躍があります。にもかかわらず、その検定意見を前提として訂正申請を再修正させています。
部分的には実態を詳しく記述したり、沖縄の県民大会についての注記を認めるなど、この間の運動と世論を反映した面もあります。しかし、「軍の強制」をはっきり書いてほしいという沖縄県民の願いや研究者の意見にはまったくこたえておらず、執筆者としても納得がいきません。
問題の根本には日本軍の犯罪行為を隠し、軍と国家に協力する国民を育てようという右翼、「靖国」派の政治的な圧力があります。
引き続き、検定意見撤回の世論を広げることが必要です。同時に、記述の回復のために訂正申請を毎年やるなど粘り強い取り組みもしていきたいと思います。
今回不十分ながら、審議の経過が公表されました。これを機会に審議会を公開させ、密室検定を改めるなど、制度の改善を要求していくことも重要です。
関東学院大学教授林博史さん/検定意見の核心譲ってない
「『集団自決』を引き起こした複合的な背景・要因を書け」という教科書検定審議会の方針によって、「集団自決」の背景が詳しく書きこまれてはいますが、日本軍に「強いられた」「強制された」という昨年までの記述の復活は、認めていません。日本軍の強制は書かせないという検定意見の核心は譲っていない。沖縄戦の研究成果を踏まえたとはいえず、沖縄県民の声も無視するもので、納得できません。
「軍の命令」を狭くとらえ、それが確認できないから軍の強制とはいえないというのが検定意見の枠組みで、そこを変えていません。日本軍「慰安婦」問題で、安倍晋三前首相らは「狭義の強制」をいい立てて強制性を否定しようとしましたが、それと共通しています。
やはり、検定意見そのものの撤回が必要です。そうでないと、中学校教科書など今後の検定にも、今回の検定意見が影響してきます。撤回を求める声をいっそう強めて、運動を進めていくしかありません。
( 2007年12月27日,「赤旗」) (Page/Top)
日本共産党の田村貴昭衆院比例候補は二十二日、北九州市八幡西区内で開かれた「党と語るつどい」で講演し、庶民だけに高負担を押し付ける異常な自民・公明政治をどう変えるか、党綱領と日本改革の展望をユーモアあふれる語り口の中で、わかりやすく説明しました。
田村氏が各地の講演で、写真やグラフなどを取り込んだパソコンを駆使して訴えている「電気紙芝居」は、この日の会場・オリオンプラザでも好評でした。
百十人の参加者を前に、田村氏は、「参院選で、自民・公明両党の『痛みの構造改革』路線などの押しつけに、国民は『ノー』を突きつけた。国民が自公に代わる新しい政治の流れを願っているが、その願いと、日本共産党のめざす改革路線は全く同じ」と指摘。
在日米軍への思いやり予算、グアムへの基地移転費用など米軍再編費用などに年間五兆円もの軍事費を浪費する日本政府の「アメリカいいなりの」の政治、大もうけの大企業への減税の一方で、庶民には大増税の「大企業・財界中心」の政治、沖縄の検定教科書の問題、従軍慰安婦の問題などに対する「過去の戦争に無反省」の政治―この三つの異常≠説明し、「五十二年に及ぶ自民党政治の大本にある三つの異常≠ただしてこそ、日本を国民本位の政治に変えることができる」と語りました。
参加した女性(62)は「三つの異常≠自分の言葉で有権者に説明するのに、勉強になりました。八幡西区の得票目標に見合う党支部の目標をやり遂げるため、年末年始も活動にがんばります」と意気込みを語りました。
(2007年12月25日,「赤旗」) (Page/Top)
米国、カナダ、オランダに続き欧州議会で、日本軍「慰安婦」について日本政府に謝罪と補償を求める決議が採択されました。日本の歴史認識、戦争責任が、過去の問題としてではなく、まさにいま、国際的な信用の問題として問われています。それは、敗戦から六十二年経た今日まで、日本政府が公式謝罪、補償などの戦後責任を十分に果たしてこなかったからです。主権者・国民の問題として、これをどう考えるか―。
日本の起こした戦争は侵略戦争ではなかったという人々が力を持ち、一定の影響を与えている状況があります。
根底には天皇免責
少なくない日本国民が、戦争責任をきちんと認識しない根底には、天皇の問題があると思います。東京裁判で、アメリカの占領政策によって天皇が裁かれなかったために、天皇に戦争責任があるという認識を持てた国民は、当時、そう多くありませんでした。重大な責任を負う天皇が免責されたことは、国民が戦争責任を認識するのを決定的に妨げました。
戦後の日本人には「アメリカに負けた」という意識が強くあります。それは、多くの日本人にとって戦争とは、原爆や空襲、引き揚げなどの被害体験であり、それをもたらしたのは主にアメリカだからでしょう。
リベラルなジャーナリストだった清沢洌(きよし)は、敗戦を迎える一九四五年の元日の日記に「日本国民は、今、初めて『戦争』を経験している」と書きました。三一年の満州事変から数えても十五年間、日本は戦争を続けていたのですが、日本本土の被害は、敗戦の年に集中しています。それまで日本は攻められたことはなかった。これは日本の戦争が、防衛戦争ではなく侵略戦争だった何よりの証拠です。侵略している間は、自分たちはひどい目にあわないので、侵略戦争の意識が薄いのです。
これらの歴史的要因を乗り越えるには、やはり近現代史を学ぶ意識的な努力が必要です。同時に、日本軍「慰安婦」のように九〇年代に名乗り出たアジアの被害者の声を、耳を傾けて聞くことだと思います。
戦後の世代であっても、「自分は関係ない」とはいえません。政府がどう行動するかは、本来、主権者である国民の意思によるからです。政府が、主権者の権利を侵害したり、主権者の意思とは違うことをしたら、政権を替えなければなりません。
黙っていてはだめ
しかし権力者は、軍事独裁にみられるように、その気になれば軍隊を動かしても、国民の意思を圧殺できます。人民が主権者であることを取り戻すには、黙っていてはだめで、政府に、いうことを聞かせなければなりません。大きな世論をつくり、意思表示しなければならないのです。
日本においては、選挙が、主権者がパワーを発揮する大事な場面であり、民主主義を機能させるためのたたかいなんですね。
歴史認識の問題は、これからの国のあり方と密接に結びついています。憲法九条を生かし、アジア諸国と友好を築く。そのためにも、日本政府に、きちんとした歴史認識と戦後責任の遂行を迫っていく―そういう主権者としてのパワーを、それぞれの人が、それぞれの場所で発揮していく。仲間を増やし、つながって、できることをやっていく。それが大切ではないかと思っています。
聞き手 西沢 亨子
たかはし てつや 1956年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科教授。専攻は哲学。『記憶のエチカ』『戦後責任論』『靖国問題』『状況への発言 靖国そして教育』ほか。
( 2007年12月22日,「赤旗」) (Page/Top)
日本共産党の、あやべ澄子、小池かずのり両衆院比例候補は十九日、栃木県栃木市にある宝蓮寺を訪ね、齋藤昭俊住職(日本仏教教育学会名誉会長、大正大学名誉教授)と懇談し、憲法九条は大切な宝と話がはずみました。齋藤住職は、市と大平、藤岡の両町で活動する「太平山麓九条の会」の代表を務めています。
齋藤さん、戦争放棄は人類の願い/その思い国会に届ける、あやべ、小池さん
懇談で齋藤住職は「日本国憲法は、人類共通の願いを受けて戦争を放棄しています。日本の外交は、アメリカと対等の立場ですすめ、アジア諸国ともっと手を結ぶことが重要です。仏教はアジアで生まれ、不殺生を仏教の五戒の一番に掲げた最も平和的な思想です」とのべました。
政治を変える
これにたいし、あやべ候補は「学生時代を含めた七年間を広島で過ごし、平和の大切を知りました。何十年も前の戦争の苦しみについて、従軍慰安婦が声をあげざるを得ない今の日本政治は変えなければなりません」と平和への熱い思いを語りました。
国民の暮らしを苦しめる政治に目を向けた懇談になり、齋藤住職は「小泉、安倍、福田と続く政権が主張する『小さな政府』は、アメリカのレーガン政権がすすめ、失敗した政策です。マスコミは政府の発表をうのみにするのではなく、真実を報道すべきです」とのべました。
あやべ候補は「福田首相は靖国神社参拝をやめましたが、アメリカが行う戦争に直結する『新テロ特措法案』の成立に執念を燃やしています。戦争をしたくないという多くの人の思いを国会に届けていきたい」とのべ、9条の心を政治に貫いていく決意を語りました。
小池候補は「国会再延長で見えてきたのは、原油高などに苦しむ国民生活を顧みず、アメリカ一辺倒にすすむ福田政権の姿です。間違った政治の姿を多くの国民に知らせていく必要がある」とのべました。
九条の会でも
懇談には、「太平山麓九条の会」のメンバーら十人も参加。栃木市の日向野(ひがの)義幸市長が「日本国軍」の創設を主張する人物を市幹部職員に採用した問題や、「九条の会」の活動のすすめ方でも意見を交わしました。日本共産党の白石幹男市議、早乙女利次元都賀町議が同行しました。
あやべ候補は、齋藤住職との懇談に先立ち、小池候補と市内で街頭宣伝を行い、夜には隣町の都賀町で党町支部が開いた「語る集い」に出席し、党の政策を語りました。
(2007年12月21日,「赤旗」) (Page/Top)
日本軍「慰安婦」問題を取り上げたNHKの特集番組が政治的圧力で改変されたとして、取材協力した市民団体がNHKと制作会社二社に計二千万円の損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第一小法廷(横尾和子裁判長)は二十日、原告、被告双方の上告を受理し、両者の意見を聞く弁論期日を来年四月二十四日に指定しました。
問題となったのは二○○一年一月放送の「ETV2001」。戦時下の性暴力を告発する民間法廷を取り上げましたが、主催の「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(バウネット)が事前説明と異なる内容で放送されたとして提訴しました。
二審で東京高裁は「NHKは国会議員らの意図を忖度(そんたく)して番組を改編した」と認定し、NHKと制作会社二社に二百万円の支払いを命じました。
( 2007年12月21日,「赤旗」) (Page/Top)
安倍晋三官房副長官(当時)らの政治介入が焦点となったNHKの番組改変訴訟で1月29日、東京高裁は画期的な判決を出しました。
議員意図を忖度
番組改変を「編集の自由」と居直るNHKの主張を退け、「国会議員等の意図を忖度(そんたく)して当たり障りのないように番組を改編した事実は重大」とNHKを断罪。制作会社のみに賠償を命じ、NHKを免責した一審判決を覆し、NHKと制作会社2社に計200万円の支払いを命じたのです。
控訴審判決は、政治家が「直接指示をし介入」したことまでは「認めるに足りない」としましたが、NHKの国会担当である総合企画室担当局長が番組試写に乗り出したころから、「制作に携わる者の制作方針を離れた形で編集がなされていった」と認定。制作現場の編集行為を「よりよい番組を作ろうとした純粋な姿勢」と評価する一方で、NHK上層部の行為は「憲法で保障された編集の権限を濫用」とし、「自主性、独立性を内容とする編集権を自ら放棄した」と断じました。経営者が独占するとされてきた「編集権」が、制作現場にもあると判断したものでした。
判決は、取材対象者に取材協力を続けるかどうかを決める「自己決定権」があると、その保護を明記しました。
広がる市民の輪
2001年1月放送の番組は「慰安婦」問題をとりあげたものでした。番組を骨抜きにした改ざんに、取材に協力した市民団体バウネット・ジャパンがNHKらを提訴して5年半。4年の沈黙を破って長井暁NHKデスク(放送当時)が政治介入を内部告発して以来、裁判を支援する市民の輪は大きく広がりました。番組への政治圧力が裁判で争われたのは初めてのことで、市民と良識あるジャーナリストによる、壮大な報道被害回復のたたかいといえるものでした。公正な判決を求める署名が4872人分集まったことも特筆すべきです。
この事件を機に、公共放送を市民の手に取り戻そうとする動きも、京都や兵庫など全国各地で生まれました。こうした流れは、橋本元一NHK会長が来年1月で任期満了となるのを受けて、自主自律を貫けるNHK会長を、市民が具体的な名前をあげて推薦する運動にまで発展しています。
しかし、NHKは控訴審判決に対し、即座に上告しました。「自主自律」を標ぼうするなら、今からでも上告を取り下げ、真に権力から自立した市民的公共放送の道を歩むことです。
(板)
( 2007年12月20日,「赤旗」) (Page/Top)
参院選で与党が歴史的大敗を喫した二〇〇七年は、国民世論の変化とうねりを反映した論稿が目立ちました。
改憲・歴史偽造許さない良識
自公政権の軍拡・改憲・歴史偽造などに、多くの論者が立場の違いを超えて反発の声をあげたことは、今年の新たな特徴と言えます。岡本行夫「首相の『言葉』しかこの窮地は救えない」(『中央公論』五月号)、東郷和彦「従軍慰安婦決議は『日本玉砕』の序章か」(『現代』九月号)は、「従軍慰安婦」の「強制性」を否定した安倍発言を、元首相補佐官と元外務省幹部が、真正面から批判したものです。元国連難民高等弁務官の緒方貞子氏も「グローバリゼーション時代の世界システムを読む」(『論座』五月号)で、国際世論に挑戦する安倍外交に苦言を呈しました。
かつて憲法の「選び直し」を主張した加藤典洋氏が、「戦後から遠く離れて」(『論座』六月号)で、現在の改憲策動に危機感を表明し、九条擁護の論陣を張ったことも注目に値します。加藤周一「老=学連帯が開く未来」(『世界』八月号)は、憲法擁護の世代を超えた共同を呼びかけた講演です。七月に死去した小田実氏は、病床で「死ぬ前に言っておきたいことがある」(『論座』八月号)を口述。憲法の人権・平和条項の今日的意義を語り、国民の運動に未来を託しました。
「格差」批判から「貧困」の告発へ
「格差」批判からさらに進んで、社会全体をおおう「貧困」を全面的に告発する議論が各誌で展開されました。『AERA』の特集「立て、万国の貧困者」(四月二日号)、湯浅誠「ダンピングされる生=&n困化」(『論座』五月号)、金子勝・佐野眞一「これは格差ではない。貧困である」(『中央公論』十月号)などはいずれも、若年層を中心とした雇用・生活破壊の実態にせまり、その打開を呼びかけるものです。内橋克人「大企業が人間破壊を行っている」(『世界』三月号)では、こうした「人間破壊」の根底にある財界戦略、日本経団連による政治買収が分析・批判されました。
参院選の審判の深部にせまって
七月の参院選は自民・公明の惨敗に終わり、ついに安倍政権は退陣します。蒲島郁夫・早野透「安倍首相は憲法に敗れた」(『世界』十月号)、間宮陽介・杉田敦「『構造改革』はどう判断されたか」(同前)は、与党大敗の深部に、保守層も含めた広範な有権者による改憲路線の拒否、生活破壊に対する国民の怒りがあることを明らかにしました。
この審判に奮い立たされるかのように、『週刊東洋経済』の特集「老後不安大国」(九月八日号)、尾藤廣喜「北九州市から『生活保護』の現場を考える」(『世界』十一月号)など、雇用破壊と社会保障削減による貧困拡大を徹底告発し、「反貧困」「連帯」の立場から、国民のたたかいを鼓舞する論稿が急増しています。
国民世論が自公政治を包囲するなかで迎える二〇〇八年、各誌でどのような議論が展開されるか注目されます。
(谷本 諭)
私の選んだ3点
石川康宏 (神戸女学院大学教授)
@内橋克人「大企業が人間破壊を行っている」(『世界』3月号)
A木下武男、河添誠他「座談会 今なぜ『若者労働運動』なのか」(『世界』5月号)
B浅尾大輔他「特集 現代の連帯」(『論座』11月号)
渡辺 治 (一橋大学教授)
@井口秀作「何のための『国民投票法案』なのか」(『世界』5月号)
A品川正治、ジャン・ユンカーマン「私たちにとって『九条』とは何か」(9月号)を第一回とする『世界』連載企画「九条の世界的意味を探る」
B伊藤周平「社会保障改革による負担・自立の強制―権利論の観点からの批判と対抗理念」(『現代思想』9月号)
( 2007年12月20日,「赤旗」) (Page/Top)
俳句/丸山美沙夫/平和・いのちの輝きを詠む
この一年は、政治・経済・平和の問題をめぐり激動した年でした。また、国民の怒りや不安が増し行動となって広がりました。俳句の上にも、時局や現実をしっかり見すえて、幅広い角度から詠まれた作品が寄せられました。これは他の新聞にはみられない特徴であり成果でした。
〈ワーキングプアー美しき国凍てる 木山一代〉〈菜の花や「美しい日本」の重い税 鈴木与平〉〈なけなしを攫う増税大熊手 折笠和夫〉など、庶民の暮らしから政治を鋭く風刺した作。〈風花やまさかの赤紙舞っている がもう健〉〈九条いま八十路の気迫初鰹 坂本直宏〉〈瞳孔の目薬あふれ開戦日 南卓志〉〈虫干しの原爆名簿並んで息 小野鮒三尾〉〈敗戦日つくづく南瓜喰っている 石山恵詩〉〈紙魚のあとたどれば昭和戦史なり 鈴木誠〉などいまこそ平和への力づよい作。俳句という短詩型の中に、時局を詠む難しさに挑戦して、しっかり詠み込んだ佳句がありました。
また、〈つなぐ手を差し伸べられて冬ぬくし 田中理枝〉〈神楽面とりて幼なに戻りゆく 権守祥太郎〉〈太陽の試歩の背を押す春隣 真鍋美子〉〈ひとしきり笑えばあとは冬の夜 甲斐明良〉などの詩性が深く感性のぬくもりを感じさせる佳句がありました。〈春のせて川面に揺れる五線の譜 大平順一郎〉〈人と芽の見つめ合うなり植木市 下城正臣〉〈息み声出すときわれとなる寒夜 小島敏雄〉〈背伸びせしわらべ五月の風つかむ 南卓志〉〈わだつみの声してゐたり海紅豆 稲垣長〉など叙情と風土性、いのちの輝きを見せた明るい佳句がありました。
応募者も増え、選者としてうれしい一年でした。選からもれた方も、ぜひ新年度に期待しています。川柳/岡田一杜/批判対象こと欠かず
年来の靖国派政権ではじまった今年、初頭から愛国心とか美しい国とかの、国民生活の実態からは遊離した歌い文句が横行しましたが、赤旗柳壇に集う川柳子は政官財の保守的魂胆を見抜き、その批判精神による鋭い川柳を多数寄せています。
愛国心仕上げは日の丸・星条旗 佐藤早苗
美しい国を叫んで能天気 岡本 猛
安倍政権でのタカ派大臣たちが起こした不祥事や暴言迷言のかずかず、「慰安婦」問題・集団自決へのタカ派による常軌を逸した冒涜(ぼうとく)的発言、死に体ブッシュ政権になおも追従して憲法改悪に執念をもやす自公政治が、その実は経団連に集まる大企業の利益にかなうためのもので、年金も冷酷な弱者無視の行政・噴き出てやまない偽装など川柳子の批判対象にはこと欠きませんでした。
甘い汁軍事費減らぬ謎が解け 吉原 宏
殉国の美談じゃないぞ摩文仁の碑 児玉金友
押し付けたのは憲法でなく安保 小川仙太郎
最たるは「美しい国」という偽装 桑山俊昭
あまりにも多い反国民的行政の中で年間を通して多かったのは防衛省(庁)対象の作品で、インド洋での給油・自衛隊によるスパイ行為、死の商人山田洋行と防衛省との疑獄事件など突出しています。
憲兵の亡霊が棲む自衛隊 松沢 巌
五兆円藪の中には政官財 原藤昌志
川柳子が叙情にふけ込むのではなく、これを脱皮し連帯共生の方向で事象に向かって作句する赤旗川柳群は、この一年をふりかえってみるとき、力強い叙事詩としての共感を与えてくれました。
( 2007年12月19日,「赤旗」) (Page/Top)
岩手県日本共産党女性後援会は十五日、盛岡市の岩手県民会館で、高橋ちづ子衆院議員を迎えた「女性のつどい」を開催し、八十人が参加しました。高橋さんの講演を何度もうなずきながら聞き入る参加者の姿が目立ちました。
高橋さんは、総選挙がどんなタイミングであっても受けて立ち、東北の一議席を守り抜くと決意を表明。与党が新テロ特措法案を成立させるために国会の会期再延長を強行したことを批判し、廃案に向けて全力をあげると訴えました。
党が薬害肝炎、年金記録、原油高騰の問題を解決するために果たしてきた役割を詳しく紹介し、今後も国の対応を求めていくと強調。シングルマザーや新日本婦人の会の運動と党の国会論戦が結び付いて、児童扶養手当削減の凍結などを勝ち取ってきたと語りました。
会場からは日本軍「慰安婦」、ガソリン高騰、原爆症認定の問題についての質問が出され、高橋さんが党の見解を説明しました。
瀬川貞清衆院比例候補も、ともに奮闘する決意をのべました。
参加した六十一歳の女性は「灯油高騰の問題を何とかしてもらうためにも、高橋さんにはがんばってほしい。いつ解散してもおかしくない情勢だとわかったので、私も力を尽くしたい」と話していました。
(2007年12月18日,「赤旗」) (Page/Top)
衛藤 瀋吉さん(えとう・しんきち=東京大名誉教授、元亜細亜大学長・国際関係史)12日午後4時、胃がんのため東京都杉並区の自宅で死去、84歳。中国瀋陽生まれ。葬儀・告別式は近親者で済ませました。後日、しのぶ会を開く予定。喪主は長男光(ひかる)氏。
東大教授を経て、亜細亜大学長や東洋英和女学院院長などを歴任。元「従軍慰安婦」への償い事業を行う「女性のためのアジア平和国民基金」の副理事長も務めました。
( 2007年12月18日,「赤旗」) (Page/Top)
今年一番心に残った出来事として、映画「北辰斜(ほくしんななめ)にさすところ」(神山征二郎監督・二十二日公開)の主演を挙げた三國連太郎さん。「ささやかな役者人生の中で、この作品に恵まれたことはラッキーでした」。話は、大の戦争嫌いだった「不良少年」時代にさかのぼりました。
三國さん演じる上田勝弥は、青春時代、旧制第七高等学校造士館(現・鹿児島大学)に学び、野球部のエースとして活躍。六十年余の歳月を経て、その七高野球部が、創部百年の記念試合をすることになりますが、勝弥は誰の説得にも応じず、欠席を固持します。背景には、従軍した南方戦線で、負傷した学友を泣く泣く置き去りにした悲しい過去がありました。終盤、勝弥は、いったい誰がその責任を取るのかと、悔しさをにじませ「南方の島々に、海の向こうに、帰ってこれんもんが、いっぱいいるんだ」と、震える声で孫に語ります。
「これほどストレートに国を批判する内容を言えるグラウンドは、なかなかありません。僕は、この台詞(せりふ)にかけたんです。もう一度、明確に戦争を批判したかった」
役作りの土台には、自身の戦争体験があります。
筋金入りの権力嫌いは父親譲り
当時、軍国主義を「批判する能力はなかった」けれど、兵隊になるのがいやでいやで、国外逃亡を果たした筋金入りの戦争嫌いでした。筋金入りは父親譲り。「従軍記章をもらっても、それを飼い犬のポチの首輪に付けたりして、とにかく権力嫌いの父親だったんです。電気屋で、よく一緒に集金に回ったんですが、警察は特権意識からか払おうとしない。そしたら親父(おやじ)、駐在所近くの電柱に登って電線切っちゃったんです。そんな姿を見て、頑張っているなぁ、偉いなぁと思っちゃって、僕も軍隊や警察が好きじゃなかった」
父子が嫌った国家権力は、その後、徴兵検査から逃れようとした三國さんを捕らえ、中国出征を強いました。しかし、戦地に赴いたところで、敵がい心のかけらも生まれなかったと言います。その非戦体質を案じた軍医が、目の病気と偽りの診断をしてくれます。結果、前線から陸軍病院に移送されることになりました。
従軍した2年半実弾撃たず終戦
「元気なものですからね、毎日、負傷兵を担架で病室に運んでいました」。そこで、流布されている美談とは異なる悲劇を目にします。「みんな『お母ちゃん!』と言って死ぬんですね。『天皇陛下万歳』なんて言って死んだ人、見たことも、聞いたこともないんです」
「死にたくない、人を殺したくない」という思いが、軍や国への根本的疑問へ発展した体験。結局、従軍した二年半、実弾を一発も撃たずに終戦を迎えました。
戦後は、半世紀をこえ、映像の世界で活躍。歴史をゆがめる作品には出ないとの信念を貫いてきました。逆をゆく信念もまた、日本には存在します。たとえば、「従軍慰安婦」など存在しなかった、とする主張。
「慰安所」へ行く軍票が配られて
「『従軍慰安婦』の女性たちはいました。僕の目にはそう見えましたね。軍票が配られて、それをもって午前中は、僕たち三下奴(さんしたやっこ)、午後になると下士官、夜間は将校とね、慰安所に行くわけです」。出かけてはみたものの、その軍票を使うことはありませんでした。「どうしても、そんな気になれなかったんです」。技術専門部隊に所属していたときには、女性の性器にガラス棒を差し入れ、性病検査の一端も担わされました。
「なぜ現実にあったことを否定するんですかね。今の日本の雰囲気、僕が兵役から逃げ回っていたころに、よく似てるんですよ」。インタビューを受けるたび、孫を兵隊にやりたくないと、話さずにいられないほど、危機感は募っています。
「二時間ばかりの作品ですが、次の世代のため、いろいろ考える指針にしてほしい。それから、戦争に引きずりこもうとする今の政治の体質を見極めてほしいと思ってるんです」
八十四歳にして、出演依頼はいくらでも。断る作品が大半を占めます。「思想や哲学を持たずに演じるのは、ものさびしいです」
(田中佐知子)
みくに・れんたろう 1923年生まれ。51年、松竹の木下恵介監督に認められ、「善魔」に主演デビュー。この時の役名が芸名に。出演作は「異母兄弟」「飢餓海峡」「息子」「三たびの海峡」「生きたい」「釣りバカ日誌シリーズ」など多数。著書に『白い道』『親鸞に至る道』など。
( 2007年12月17日,「赤旗」) (Page/Top)
政治・経済
◆年金名寄せ困難が判明 年金記録問題で政府・与党が「来年3月までに名寄せを完了する」といっていたのに、1975万件が特定困難であると判明。日本共産党の小池晃政策委員長は「国民に対する裏切り」と批判(11日)
◆与党が税制「改正」大綱 自民・公明は来年度税制「改正」大綱を決定。09年度にも消費税増税を図る考え(13日)
◆大企業の景況感も悪化 日銀の12月の企業短期経済観測調査(短観)によると、大企業製造業の景況感が三期ぶりに悪化(14日)
◆臨時国会の会期再延長 自民、公明の与党は来年1月15日まで臨時国会会期の再延長を強行議決。日本共産党の志位和夫委員長は新テロ特措法案の再議決を許さない世論の発揮を呼びかけ(14日)
社会・国民運動
◆葛飾ビラ配布事件で逆転有罪判決 東京都葛飾区のマンションで、日本共産党の都議団報告などを配布した荒川庸生さんが住居侵入罪で不当起訴され、一審の東京地裁で無罪判決を勝ち取った弾圧事件の控訴審で、東京高裁が罰金5万円とする逆転有罪の不当判決(写真)(11日)
◆新テロ特措法を許すな! 日米軍事利権を徹底糾明せよ緊急集会 東京・日比谷野外音楽堂で開かれた集会に1600人が参加し、会期末までに成立させなかった力で廃案にと訴える(12日)
◆大阪高裁の薬害肝炎和解案を拒否 汚染された血液製剤でC型肝炎に感染したとして、患者らが国と製薬会社を訴えている薬害肝炎訴訟の控訴審で、大阪高裁が原告、被告双方に、国や企業の責任を限定する和解骨子案を提示。被害者の全員救済を主張する原告側は受け入れ拒否(13日)
◆タイヤ脱落死傷事故で三菱自の元部長らに有罪判決 2002年1月、横浜市で母子3人が死傷した三菱自動車工業製大型トレーラーのタイヤ脱落事故で、業務上過失致死傷罪に問われた同社の元部長ら2人に対し、横浜地裁は有罪判決(13日)
◆佐世保で銃乱射事件 長崎県佐世保市のスポーツクラブで男が銃を乱射し8人が死傷。現場から逃走した犯人は翌15日朝、教会内で遺体で発見。捜査本部は男性容疑者を特定し、自殺とみて犯行の動機等を調査(14―15日)
国際
◆ボリビアで新憲法草案採択 ボリビアの制憲議会が、モラレス政権が提案した新憲法草案を採択。資源の所有者は国民と規定。土地所有条項については国民投票を予定(9日)
◆温暖化防止閣僚級会合 バリ島での国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP13)の閣僚級会合で温室効果ガス削減対策の行程表を討議、13年以降の新たな国際協定の構築に向けた行程表を採択(12―15日)
◆南京事件で記念式典 日本軍が引き起こした大虐殺などの事件70周年を記念して南京で記念式典。内外から8千人が参加(13日)
◆EUが新基本条約に調印 EU加盟27カ国が新基本条約となる「リスボン条約」に調印。09年発効を目指す(13日)
◆欧州議会が慰安婦決議 欧州連合(EU)の欧州議会本会議が、日本軍「慰安婦」問題で、日本政府に公式謝罪を求める決議を賛成多数で採択(13日)
( 2007年12月16日,「赤旗」) (Page/Top)
欧州連合(EU)の欧州議会(仏ストラスブール)は十三日の本会議で、アジア太平洋戦争中の旧日本軍の「従軍慰安婦」について、日本政府の公式謝罪や歴史事実の国民教育を求める決議案を賛成五四、反対なし、棄権三で採択しました。同様の決議は、米下院(七月)、オランダ、カナダ両国下院(十一月)で採択されており、四例目です。
決議は、「従軍慰安婦」制度は「日本政府が、女性を性奴隷にするという目的だけで若い女性の獲得を公式に指令した」ものだと指摘。「慰安婦」制度は、犠牲者を死や自殺へと追い込んだ「二十世紀で最も重大な人身売買の一つ」だったと批判しました。
そのうえで決議は、日本政府が「明確な形で歴史的、法的責任を正式に認め、謝罪し受け入れること」を要求。生存するすべての犠牲者、遺族に対して補償する「効果的な行政」を求めました。また、「『従軍慰安婦』という服従や奴隷化は決してなかったといういかなる主張に対しても、日本政府が公然と反論することを求める」としています。
決議は「日本国民と日本政府が自国の歴史への全面的な認識をさらに進めること」を促し、日本政府が「慰安婦」問題を含む一九三〇年代から四〇年代にかけての日本の行為を、「現在と将来の世代に教育すること」を求めました。
韓国、フィリピン、オランダの元「慰安婦」三人は、十一月に欧州議会を訪れ、日本に謝罪を求める決議を採択するよう訴えていました。
( 2007年12月15日,「赤旗」) (Page/Top)
来年六月にミュージカル「ロラ・マシン物語(仮題)」の公演を計画している「わっしょい!!憲法9条・ミュージカル実行委員会」(小笠原忠彦委員長)は九日、山梨県ボランティアセンターで出演希望者のオーディションを行いました。
同ミュージカルの作・演出者の田中暢氏らの前で、出演を申し込んだ六歳から六十代までの男女九十人が一人ひとり舞台にあがり、応募の動機や意気込み、憲法九条への思いなどを語りました。
スタッフが紹介され、小笠原実行委員長が、「憲法九条の意味をミュージカルで表現し、身近に感じることはすばらしいこと。今回も力を合わせがんばりましょう」とあいさつしました。
「物語」は、太平洋戦争中、日本軍によって「慰安婦」にされたフィリピンのトマサ・サリノグさん(昨年死去)の物語。出演者はこれから、県内各地の練習場で三十回の練習を重ねたあと、来年六月八日に県民文化大ホールでの公演(昼夜二回)に臨みます。同実行委員会は昨年五月には、ミュージカル「少年がいて」を上演。二千六百人の観客が集まりました。
事務局長の田嶋節枝さんは、「六十人以上が初参加。あと三十人を受け付ける予定です。オーディションは配役決めのためで、応募者全員に出演してもらいます。平和を守ろう、自分を表現しよう―と呼びかけています」と話しました。
(2007年12月14日,「赤旗」) (Page/Top)
大学で初めて日本軍「慰安婦」のことを知り、日本の加害の事実に向き合い、現在の政治を見る目も変えている学生たちがいます。神戸女学院大学の石川康宏ゼミナールの学生たちです。
(西沢亨子)
二日、東京・多摩市で開かれた学習会にゼミ生二人が招かれ、韓国訪問など、学んできた体験を報告しました。三年生の寺田美萌さんと塗田麻美さんです。
きっかけ
「私が『慰安婦』問題に出合ったのは、本当にたまたまでした。夏休みの宿題で、何か本を読まなければならなくて、ゼミの先輩たちが作った『慰安婦』問題の本を手にとったのがきっかけです」と語りだす寺田さん。
「戦争というと、広島・長崎の原爆など日本の被害しか知らなかった」という寺田さんは、その本で初めて日本の植民地支配と侵略を知りました。「日本に裏切られた気がして、日本は本当はどんな国なのか、なぜ、高校時代教えられなかったのか、もっと知りたいと思いました」
ゼミ生の半分以上は、「慰安婦」問題や戦争について特に問題意識を持っていたというわけではないといいます。
研修旅行
九月のゼミの研修旅行では、韓国の元「慰安婦」の人の暮らす「ナヌムの家」を訪ね、被害者のハルモニ(おばあさん)から、「十四歳の女の子が、言うことをきかなかった見せしめに、日本刀で何カ所も切られ、遺体は道に放置された」という証言も聞きました。
隣接する「慰安婦」歴史館には、慰安所が再現され、狭い部屋に粗末なベッドと金だらいが置かれていました。寺田さんは貧血を起こして立っていられなくなり、見学を続けることができなかったといいます。
「本当にこんなことが、というつらい気持ちでいっぱいでした。本当にあったことなんだと身にしみて感じたのは、その後の水曜集会で、手で顔を覆ったハルモニのつらそうな表情を見たときです」と寺田さん。
水曜集会は、ソウルの日本大使館前で毎週開かれている、日本政府に謝罪を求める集会です。学習会では、塗田さんが、水曜集会の様子を報告しました。
「『侵略戦争の事実を隠して日本の未来は見えますか。事実と向き合うことは平和への第一歩』という横断幕を掲げました。ハングルだけでなく日本語でも書いたのは、日本大使館に訴えたかったからです」と塗田さんはいいます。
水曜集会では、ゼミの代表が「日本では、本当のことは教科書に書かれず、多くの人は真実を知りません。私たちはこれからも事実と向き合い続けます。日本政府も向き合うべきです」と発言しました。
くしくもその日、昼食の最中に、「安倍首相辞任」のニュースが飛び込んできました。「安倍さんの耳に声が届いたのかも、とみんなで盛り上がりました」と塗田さん。
中高生に
学び始めて半年。いまゼミ生たちは、中学・高校にも招かれ、日本軍「慰安婦」問題を子どもたちに話しています。
塗田さんは、そうした場所でハルモニから託された証言を伝えながら、自分自身が日々成長していると感じているといいます。
「前は、選挙にも興味なくて、新聞もあまり読まなかったんです。『慰安婦』問題を学んでからは、教科書検定とか、安倍(前首相)さんの言ってること、憲法のことにすごく目が向くようになりました。ただ、歴史を覚えるんじゃなく、自分の頭で考えるようになった。中・高生には、そういうことも伝えたい」
寺田さんも同様です。「日本の戦争は悪くなかったと言う人と被害者の両方の話を聞いて、やはり、『慰安婦』を正当化できない。だから、首相が正当化するようなことを言うのは間違っていると思います。日本が将来も平和であるためには、過去の過ちを伝えていかなければいけないと思っています」
( 2007年12月14日,「赤旗」) (Page/Top)
〈問い〉 西松建設の中国人強制連行、強制労働にたいする裁判で最高裁がこの4月に「日中共同声明で裁判上の個人請求権は放棄された」と補償をしりぞける判決をおこないました。しかし、これで終わらせていいのでしょうか。貴党は戦後補償問題をどう考えていますか?(福岡・一読者)
〈答え〉 戦後補償問題について、日本共産党は、「二度とふたたび侵略戦争の過ちをくりかえさない決意の試金石として、国家責任の立場で補償問題にとりくむべき」だということを一貫してつよく主張しています。この立場の基本は1994年9月6日付の文書「侵略戦争の反省のうえにたち、戦後補償問題のすみやかな解決を」で明確にしており、いまも変わっていません。
政府が戦後補償問題に背をむける「論拠」は、過去に結んだ国家間の賠償請求放棄により、補償問題は国際法上、解決ずみであり、個人への補償は必要ないというものです。西松建設にかんする訴訟の最高裁判決(07年4月27日)も、この政府の「論拠」と同じ不当なものです。
これについて、政策では―
「国際法上、個人の補償請求権の問題は、国家間で解決することがこれまで通例となってきたことはたしかである。しかしそうではあっても、国家間の協定ですべての問題が包摂されえない事態や、協定の成立時には予想もしていない問題があきらかになることもある。…したがって、いったん協定が結ばれれば、それですべてが終わったとは言い切れないことは当然である。しかも、1968年に国連で採択された『戦争犯罪及び人道に対する罪に対する時効不適用条約』により、人道にたいする罪には時効がないことが、国際法上は明確になっている。また、66年の国際人権規約では、人権尊重が国の国際法上の義務とされ、国家とは別に個人が人権侵害にたいして国連に告発する道もひらかれている。すでに国家間で協定が締結されていることを理由に、人道上の犯罪の賠償を回避することはできない」とのべています。
政府が戦後補償問題を回避するもう一つの「論拠」は、いったん個人補償をすれば他の問題にも波及し、数十兆円にものぼる際限のない補償となって、国の財政が破産するというものです。これについて政策では―
「もちろんわが党は、あらゆる補償要求にたいして、すべて無制限にこたえよともとめているのでなく、それぞれのケースごとに、その性格、国際法上の問題等を慎重に検討すべきことはいうまでもない。しかし、従軍慰安婦問題、サハリン残留朝鮮人問題など、国家による人道的な犯罪にかかわる問題は、すみやかに必要な賠償をすべきことを主張する」と指摘しています。
補償をもとめている人びとはすでに高齢となり、解決のために一刻の猶予も許されません。政府、当該企業の責任ある対応がつよくもとめられます。(喜)
( 2007年12月12日,「赤旗」) (Page/Top)
熊本では、非核の政府を求める熊本の会が、熊本市の熊本外語専門学校で、反戦平和のつどいを開きました。約五十人が参加しました。
高校日本史教科書執筆者の一人でもある猪飼隆明大阪大学名誉教授が「沖縄における『集団自決』と教科書」と題して講演。「集団自決」問題で、「新しい教科書」(扶桑社)の監修者の弟子を含む文部科学省職員の調査官が原案を作成し、そのまま検定意見となったことを指摘。改憲勢力の、南京大虐殺、「慰安婦」に続く三つ目の標的が「集団自決」であることを明らかにしました。
沖縄での抗議の県民大集会の後、政府は修正を認めるといっているものの、検定そのものは変えないとしていることを批判。「検定が政治的意図を持って書かれたことは明確。歴史の事実を何とか糊塗(こと)し、日本軍が日本人を守るための軍隊であったと偽り、今の日本を軍隊を持てる国にすることをねらっている」とのべました。
講演に先立って、熊本県出身の青年劇場座員の吉村直さんが、広島原爆で死亡して亡霊としてあらわれた父と生き残った娘のくらしを描いた、井上ひさし作の「父と暮せば」を朗読劇として熱演しました。
同日、平和憲法を生かす会、県平和委員会、県革新懇は、市内下通りでデモ行進し、憲法改悪反対を訴えました。
(2007年12月11日,「赤旗」) (Page/Top)
66年前の12月8日(1941年)、日本はアメリカやイギリスを攻撃し、太平洋戦争が始まりました。戦争の加害と被害の体験を受け継ぎ、平和を築こうと活動する若者たちがいます。キーワードは「継承」です。
那須絹江記者、丸山聡子記者
元「慰安婦」と寝食ともに/証言京都の会
京都市内で元日本軍「慰安婦」の女性たちの証言を聞く会が11月11日、開かれました。
証言をしたのは、フィリピンから来日したピラール・フリアスさん(80)とナルシサ・クラヴェリアさん(79)。ともに10代のころ、村にやって来た日本軍に連行され、被害に遭いました。ナイフで突き刺されたこと、女性数人をロープでつないだまま複数の兵士にレイプされたこと…。
ナルシサさんは何度も言葉につまり、こぶしで胸をたたきながら涙を流しました。
「苦しい少女時代の記憶が今もよみがえる。二度と繰り返さないために、日本政府は真実を認め教科書に書いてほしい」
会場には若い人の姿が目立ちました。
「今日、おばあさんたちが話してくれたことを、きちんとずっと覚えていたい」というのは、前田香織さん(16)。香織さんが生まれる前に亡くなった祖父は、フィリピンに出征していたと聞きました。
「もしかして祖父も…と思ったり、日本政府がおばあさんたちの証言をうそだと言っていることを思うと、申し訳ない気持ちでいっぱいになる」
主催は証言京都の会(旧日本軍性奴隷問題の解決を求める全国同時企画・京都実行委員会)。4年前に韓国のおばあさんの証言を聞き、「本当の解決まで続けたい」と考えた人たちで始まりました。
毎月第1水曜に署名集めなどをしています。
05年夏には「おばあさんたちに少しでもあったかい思いを」と、滞日期間中、民家を借りて寝食をともにしました。心の交流を通じて「また日本に話しに来たい」と言ってくれました。
ネットで集い被爆者訪問/「平和新聞」記者布施祐仁さん(30)
太平洋戦争終結直前の米軍による原爆投下について、「体験継承」に取り組んでいる東京の布施祐仁さん(30)。
昨年6月、インターネットのミクシィ※に「ヒロシマ・ナガサキを受け継ぐ会」というコミュニティーを立ち上げました。
毎月1回、東京在住の被爆者を訪ねて被爆体験を聴いています。
「(インターネットの)掲示板に日時と集合場所を書いて参加者を募ると、毎回、新しい顔が来るんですよ。そういう意味では一つの出会い系=H」と笑います。
海外からの留学生やジャーナリスト志望の学生、ミュージシャンなど、これまでに100人以上が参加しています。
「5〜10人の小人数で被爆者の自宅を訪ねて話を聴くところが、この会の特徴です。互いの表情が見える近い距離で、話す側、聴く側という一方的な関係ではなく、同じ人間として向き合い、話が胸に迫ってきます」
大きな会場の壇上からは語りづらい、心の奥底に封印していた深い傷や悲しみを話してくれることも少なくありません。
「ある被爆者は、自分が被爆者だということで娘の結婚が破談になったことを話してくれました。娘の人生を変えてしまった負い目をもって、今も苦しんでいました」
「平和新聞」(平和委員会の機関紙)の記者として被爆者を取材するうち、もっと多くの同世代に被爆者の話をじっくり聴いてほしいと始めた活動です。
被爆者の話を直接聴ける最後の世代といわれる一方、「体験していないのに継承できるのか」という声も聞こえてきます。
「悲惨さを受け継ぐだけでは足りない。なぜあの戦争が起きたのか、繰り返さないために今何が必要かを知り、戦争の全体を語っていく。それがぼくらの世代にできることだと感じています」
力強い答えです。
※ミクシィ
インターネット上で社会的なネットワークを構築するサービスの一つ。趣味や地域など種々のグループがあり交流できます。利用は既入会者の招待が必要。18歳未満は禁止です。
(2007年12月09日,「赤旗」) (Page/Top)
小池比例候補、野村栃木県議
太平洋戦争開始六十六周年の八日、日本共産党の小池かずのり衆院比例候補と、野村節子県議、渡辺繁県書記長は、宇都宮市の二荒山神社前で街頭宣伝に立ちました。
小池候補は、侵略戦争の歴史的事実を今も認めない自民党が、公明党とともに新テロ特措法の成立を狙っていることを厳しく批判しました。
野村県議は、「慰安婦」問題で軍の関与はなかったとする自民、民主両党国会議員の活動を批判。「今日を、戦争放棄を明記した憲法を守る誓いを新たにする日にしよう」と呼びかけました。
水戸で「赤紙」
「平和・民主・革新の日本をめざす茨城の会」(茨城革新懇)と県母親連絡会は八日、水戸市のJR水戸駅北口で復刻した召集令状(赤紙)を配布し、リレー演説で憲法改悪阻止などを訴えました。
各団体の代表がマイクを握り、「日本を再び戦争をする国にさせてはならない」(茨城革新懇・近澤重男事務局長)、「軍需産業に国民の税金を注ぎ込むような政治は許されない」(県母親連絡会・杉岡澄子会長)と訴えました。核兵器廃絶を求める署名に応じた常陸太田市内に住む女子高校生は「憲法九条の大切さは知っています」と話していました。
筑西市で署名
茨城県筑西市の新日本婦人の会筑西支部は八日、悲惨な戦争を繰り返すなと下館駅北口で当時の召集令状(赤紙)のコピーを配りました。すみやかな核兵器廃絶と憲法九条を守ることを求める二つの署名も呼びかけました。
駅乗降客の少ない時間でしたが、一時間半でそれぞれ三十人近い人が署名しました。八十八歳の男性は「シンガポールで死にそうになった経験がある。戦争は絶対ダメだ」と話していました。
新座市で平和委
埼玉県新座市の野寺地域平和委員会は八日、西武池袋線ひばりケ丘駅前で署名宣伝行動に取り組み、「新テロ特措法の成立は許すな。防衛省はまずみずからの疑惑を国民の前に明らかにせよ」と訴えました。
(2007年12月09日,「赤旗」) (Page/Top)
小沢一郎民主党代表が同党議員らの大代表団を率いて訪中していた七日、衆院外務委員会で質疑に立った同党の松原仁議員が、南京大虐殺の事実を否定し、侵略戦争の歴史をわい曲する発言をくりかえしました。
松原氏は、当時南京に進軍した元日本兵の「フランクな話」として、一度逃げ去った中国人らが戻ってきて「安全区」に大量に集まり、「ラーメン屋」や「散髪屋」を開いたと説明。これらを根拠に、「虐殺は事実上なかった」「日本の兵隊の方々の生の声で、私は実感した」とのべ、当時の生存者や元日本兵らの証言でもすでに明白な大虐殺の事実を根本から否定しました。
つづけて松原氏は、「少なくとも先人の誇りを傷つけるようなことをやってはいけない。慰安婦(問題で)もそうであります」「日本の国益を守る活動をしてほしい」とも発言。歴史の事実をみないで、侵略戦争を美化することが「先人の誇り」や「国益」を守ることなのか、と思わせました。
しかも松原氏の発言は、同日の小沢氏と中国共産党の胡錦濤国家主席との会談の直前におこなわれたもの。発言の意図はわかりませんが、民主党訪中団が掲げる友好≠ニなんとチグハグなことか―。
小沢氏は胡氏との会談で、「両国のきずなを深めることは、ひとり日中間のみならず、アジアと世界の安定と発展にも資することになる」と発言したと伝えられています。しかし、国会での松原氏の歴史わい曲発言は、日中関係だけでなく、日本とアジア各国との関係にとっても百害あって一利なしです。
(信)
( 2007年12月09日,「赤旗」) (Page/Top)
太平洋戦争開始六十六周年の八日、日本共産党は東京・新宿駅東口で街頭演説を行いました。
党本部勤務員が新テロ特措法案の廃案を求めるビラを配布、「しんぶん赤旗」日刊紙と日曜版を宣伝し、多くの人が弁士の訴えに耳を傾けました。
笠井亮衆院議員は、日本の侵略で「アジアで二千万、日本人三百万人以上もの奪われた命があり、狂わされた人生がある」と述べ、過去と向き合う大切さを強調。
その上で、沖縄戦「集団自決」や「慰安婦」への日本軍の強制がなかったという「靖国」政治を厳しく批判し、「二度と戦争をしない国にするために力を合わせよう」と力強く訴えました。
インド洋に海上自衛隊を再派兵する新テロ特措法案が国会で山場を迎えており、この法案がテロとは無縁なアフガニスタン市民を殺す報復戦争支援法だと解明。「いま、戦争支援の給油よりも庶民への給油が必要だ。新テロ特措法案は廃案以外にない」と訴えると、「そうだ」の声と拍手が起きました。
医師の谷川智行衆院東京ブロック比例候補は、戦前・戦後、命がけで戦争反対を一貫して訴えた日本共産党の候補者として憲法九条を守り生かすために全力で奮闘する決意を述べました。
都内の中学校社会科教諭だった田副(たぞえ)民夫都議も歴史の事実を知る大切さを訴え、沢田あゆみ新宿区議が司会を務めました。
谷川候補と握手した奥山昭三さん(78)は「太平洋戦争開始の翌年に空襲が始まり、神田の家が焼かれ、もう国力が尽きたと思った。憲法九条を守る共産党にがんばってほしい」と語りました。
( 2007年12月09日,「赤旗」) (Page/Top)
「敗戦・日本国憲法・戦争責任」をテーマに「第三十回兵庫の『語りつごう戦争』展」が、五日から神戸市兵庫区の妙法華院で開かれています。(九日まで)
戦争の実態をしめす写真や資料、遺品などが豊富に展示されています。
南京大虐殺のコーナーでは、日本兵が中国人を斬首している写真や日本兵に刺殺された中国の幼児が山積みにされた写真が展示され、日本軍「慰安婦」のコーナーでは、強制的に集められた「慰安婦」の姿や「慰安所」前に並んで順番を待っている日本兵の写真などが目を引いていました。
短歌や川柳、絵やイラストなどを色紙に書いた平和色紙展もあり、「千人針/母駅頭に/小雪舞う」など三十七点の作品が展示されています。
「アメリカの暴走族に給油する」という川柳を出品した吉田利秋さん(59)=神戸市兵庫区=は「この催しが三十年も続いているのはすごい。日本兵が『慰安所』に並ぶ写真などをみると、侵略や戦争は人間を鬼にすると思う。平和が大事だ」と話していました。
(2007年12月08日,「赤旗」) (Page/Top)
今から六十六年前の十二月八日未明、日本軍は、東南アジアのマレー半島北端に位置するコタバルに上陸する一方、ハワイ・真珠湾の米海軍を爆撃し、太平洋戦争を開始しました。三百万人を超える日本国民の命を奪い、アジアで二千万人を超える人々を犠牲にした日本の侵略戦争から何を学ぶのか、いまに問われています。
「慰安婦」問題/国際的に広がる批判
太平洋戦争開戦で日本政府は、「南京大虐殺事件」に象徴される中国侵略戦争を継続するための資源獲得をもくろみ、アジア・太平洋地域に侵略の手を広げました。予算編成上も「支那事変(日中全面戦争)と大東亜戦争(太平洋戦争)とは一体のもの」(一九四一年十二月十六日、貴族院予算委員会で賀屋興宣蔵相)でした。
侵略戦争をつきすすんだ日本は、ドイツ、イタリアとの間でファシズムと軍国主義の軍事同盟を結び、世界に巨大な惨禍をもたらしました。戦後、この反省のうえに「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやう」(憲法前文)決意したのでした。
ところが、戦後自民党政治は一貫して侵略戦争に無反省な態度をとりつづけ、とくに侵略戦争肯定の「靖国」派が中枢を占めた安倍前内閣では、歴史を逆行させる動きが表面化しました。
とくに日本軍「慰安婦」問題では、安倍前首相自身が「強制性」を否定し、「軍や官憲による強制連行を直接示すような記述は見当たらなかった」(三月十六日)という政府答弁書まで決定。自民、民主の国会議員は米紙ワシントン・ポスト六月十四日付に同様の全面広告を掲載し、米国内で大きな怒りを買いました。
こうした動きに対し、米下院が七月三十日、「慰安婦」問題で証拠がないという日本政府に対して明確な謝罪を求める決議を全会一致で採択しました。その後、オランダ下院が十一月八日、日本政府に元「慰安婦」への謝罪と賠償を求める決議を全会一致で採択。カナダ下院も十一月二十八日に謝罪を求める動議を全会一致で採択しました。国際社会からの批判はいっそう強まっています。
国際社会で連続して日本政府が断罪されているのは、侵略戦争への無反省ぶりが世界からみて異常だからです。
「戦後レジームからの脱却」など極端な復古的・反動的スローガンを掲げた安倍「靖国」派政権の崩壊は、歴史の改ざんを許さない内外の良識の成果といえます。
教科書検定/問われる「負の遺産」
安倍政権下での歴史逆流の動きに、高校日本史の教科書から、沖縄戦で起きた「集団自決」への日本軍の強制が削られた問題があります。今年三月の教科書検定で、文部科学省が強行したものです。
その後の日本共産党などの追及で、「軍の強制」削除が専門的な検討もなく、文科省ぐるみでおこなわれたことが明らかになりました。
「靖国」派は沖縄戦「集団自決」問題を、南京虐殺、日本軍「慰安婦」問題と並ぶ「自虐史観象徴の三点セット」と位置づけて教科書の書き換えを求めてきました。
教科書執筆者の一人である石山久男・歴史教育者協議会委員長は、その狙いについて「過去に日本の軍隊がやった残虐行為を隠し、軍隊や戦争を美化したい。そうしないと、憲法を変えて、国民が戦争に参加するようにならない。それに尽きる」と指摘します。
この検定問題は、沖縄県民の悲憤を呼び起こし、九月二十九日、検定意見撤回を求める県民大会には十一万人が参加しました。戦場で「軍官民共生共死」を強いられ、手榴(しゅりゅう)弾で「集団自決」を図り、死に切れなかった家族を手にかけるという悲痛な体験の記憶は、六十二年たったいまも鮮明なのです。
ところが、文科省は検定意見の撤回を拒否し続けています。アジア外交で安倍内閣から一定の変化を見せる福田康夫首相ですが、歴史認識ではあいまいなままです。
十一月二十八日には、「靖国」派の中心である日本会議国会議員懇談会が総会を開き、「事実に反する『軍命令による沖縄住民に対する自決の強制』が教科書記述となることは許されない」とする決議をあげるなど、巻き返しを図っています。
アジアの平和に貢献するのか、それとも再び海外で戦争する国にするのか―安倍政権が残した「負の遺産」を克服し、歴史をゆがめる異常な潮流を日本の政治から一掃することは、引き続き重要な課題です。
過去に向き合い発信を/南京事件70周年国際シンポ共同代表尾山宏さんに聞く
日本の侵略戦争から何を学ぶのか。今年、世界八カ所で開いた「南京事件70周年国際シンポジウム」(今月十五、十六日に東京)の中心になってきた弁護士の尾山宏さんに聞きました。(松田繁郎)
世界は記憶している
「南京事件」(一九三七年十二月)は、日中戦争から太平洋戦争にいたる戦時中の日本政府、日本軍、日本企業の加害行為の象徴的存在です。私たちが「南京大虐殺」を「南京事件」と呼ぶことにしたのは、大虐殺だけでなく、レイプや放火、略奪などすべての残虐行為を含めることを考慮したからです。歴史学者の笠原十九司さんの提案です。
一九四一年十二月八日に日本が始めた太平洋戦争によって、日本の加害行為が、中国、韓国から「大東亜共栄圏」と呼称した地域に広がりました。東南アジアにも被害者がたくさんいます。
一九四五年二月、フィリピンのマニラでも市街戦の際に日本軍による住民虐殺がありました。マニラでは毎年追悼の行事を行っています。今でも日本軍の残虐行為を忘れていないのです。
国際シンポ開催を知ったパリ在住の日本人が「なぜパリまで来て、日本の恥をさらすのか」と現地の実行委員会にいってきたそうです。私は、その日本人に、世界はちゃんと記憶しているし、日本が何も記憶しないとしたら、その方がよほど異常だといいたい。
「南京事件」と向き合うことは、究極的には世界の平和にかかわることだと思っています。今でもイラク戦争や内紛があり、大量虐殺や大量破壊、大量レイプが行われています。それをやめるために日本政府がどういう役割を果たせるかを考える必要があります。日本人自身が日本の残虐行為を記憶にとどめ、誠実に向き合っていることを、世界に発信することに、とても意味があると思います。
ストックホルムで
十月にストックホルム国際平和研究所を訪問したとき、私は所長に「和解のための普遍的な方法、方式があるとお考えですか」と聞きました。韓国の盧武鉉大統領がかつて「日本は普遍的な方式に従って過去の克服をすべきだ」と提言したことを思いだしたからです。
所長は、「和解は非常に長い時間がかかり、困難も伴う。じっくりやることを心がけることが一番大切ではないでしょうか」といいました。非常に印象に残っています。
この後、笠原さんと二人でベルリンに寄り、ナチスによるユダヤ人虐殺の記念施設を見ました。びっくりしたのは、その施設がベルリン中央駅の真ん前にあったことです。近くにはブランデンブルク門、国会や官庁街がある。日本でいえば東京駅前、あるいは国会議事堂や霞が関の官庁街に「南京事件」の記念施設があるようなものです。
過去と向き合うことは、日本の民主主義の維持・発展にかかわる重要な問題です。自分が過ちを犯したら、すぐ認めて謝罪する。場合によっては補償するのが民主主義の価値観だと思います。
戦地に赴いた日本兵も、国内にいたときは、ごく普通の人だったのです。それがなぜ軍隊に入り、戦地に赴くと、人間のやることとは思えない残虐行為を行ったのか。それを戦後の日本人は、どれほど考えてみたでしょうか。自らへの根源的な問いかけが必要です。
今に生きる反戦の歴史/日本共産党の真価
侵略戦争反対を訴えることが犯罪とされた時代に、命がけでこれに反対したのが日本共産党でした。
今年七月十八日に亡くなった日本共産党元議長の宮本顕治さんが入党したのは、一九三一年でした。この年、日本は中国東北部への侵略を開始して、第二次世界大戦に道を開く最初の侵略国家となりました。
宮本さんは、日本共産党の最も困難な時期だった三三年に党指導部に加わり、治安維持法違反容疑などで不当逮捕されました。
五年にわたる戦時下の法廷闘争の最後の陳述で宮本さんは、「人類的正義に立脚する歴史の法廷は、我々がかくのごとく迫害され罰せられるべきものではなかったこと、いわんや事実上生命刑に等しい長期投獄によって加罰される事は、大きな過誤であったという事を立証するであろう」と喝破しました。
「九条の会」の呼びかけ人の一人である加藤周一さんは、「しんぶん赤旗」に寄せた追悼の文章のなかで、「十五年戦争に反対を貫いた」宮本さんの態度をたたえ、「宮本顕治さんは反戦によって日本人の名誉を救った」と書きました。
日本共産党の反戦・平和の伝統は、「靖国史観」「靖国」派政治を正面から告発し、安倍「靖国」派内閣を退陣においこんだたたかいをはじめ、イラク戦争やアフガニスタンでの報復戦争反対、自衛隊海外派兵反対の追及に生きています。戦争でテロはなくせないと論陣を張り、憲法九条を守り生かす日本をめざして活動しています。
山田洋次監督映画「母べえ」/治安維持法の悲劇描く
山田洋次監督の映画「母べえ」(吉永小百合主演)が来年一月から上映されます。舞台は、一九四〇年の東京です。ある日突然、文学者である夫を、治安維持法違反容疑で検挙され生活が一変してしまう妻と家族の物語です。
治安維持法は、日本共産党の主権在民と反戦・平和の主張と運動を弾圧するために天皇制政府が一九二五年につくった法律で、二八年には、最高刑が死刑に引き上げられ、さまざまな口実で国民を弾圧する「目的遂行罪」をもうけ、弾圧の対象を大きく広げました。
治安維持法によって二八年から三七年までに検挙された犠牲者の数は、合計六万一千六百八十五人に達しました。映画「母べえ」に登場する夫の検挙は、戦前の暗黒社会の特質を示す出来事だったのです。
( 2007年12月08日,「赤旗」) (Page/Top)
戦前の日本が、当時「満州」と呼ばれた中国東北部や中国全土での侵略戦争につづいて、アメリカやイギリスなどを相手にした「太平洋戦争」を開始した一九四一年十二月八日から、六十六周年を迎えました。ことしは日中全面戦争のきっかけになった一九三七年七月の盧溝橋事件から七十周年にあたり、十二月十三日は日本軍が当時の中国の首都・南京を攻撃し、多くの軍人や民間人を殺りくした「南京大虐殺」からも七十周年を迎えます。
異常な逆流の一掃を
一九三一年から始まった「満州事変」と、それに続く日中全面戦争、さらには「太平洋戦争」まで、十五年にわたった日本の侵略戦争によって、日本が侵略したアジア・太平洋の国ぐにでは二千万人の犠牲者をふくむ多大な損害をもたらし、日本国民の犠牲者は三百十万人以上にのぼりました。
日本は戦後、「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにする」(日本国憲法前文)ことを誓って再出発しました。ところが歴代自民党政府は十五年戦争が侵略戦争であったという歴然とした事実さえ認めず、二十一世紀になってもなお世界から戦争の責任を問われ続けています。侵略戦争と植民地支配への反省をつらぬくことは、日本が世界で役割を果たしていくために、ますます重要になっています。
そのためにはまず、事実を直視し、正面から向き合うことです。侵略戦争を正当化する靖国神社への参拝に固執した小泉純一郎元首相は、中国や韓国と首脳会談が持てないほど外交で行き詰まり、日本軍「慰安婦」(戦時性奴隷)問題で日本軍の強制性を否定した安倍晋三前首相は、アジアだけでなくアメリカなど欧米諸国からもきびしい批判を浴びました。安倍政権の崩壊は、侵略戦争の正当化を押し付けてきた「靖国」派にとって大打撃です。
福田康夫首相は、靖国神社への参拝は否定しています。しかし、日本軍「慰安婦」問題や、沖縄戦での「集団自決」(強制集団死)から軍の強制を削除させた教科書検定など、安倍政権時代の「負の遺産」は残り、「靖国」派の巻き返しの動きも軽視できません。歴史をゆがめる異常な逆流を日本の政治から一掃していく課題は、ひきつづき重要な仕事です。
日本軍「慰安婦」問題では、アメリカやオランダに続いて、カナダの下院でも最近、日本政府に真摯な謝罪を求める決議が全会一致で可決されました。日本政府は、日本軍の強制と関与を認めた一九九三年の「河野洋平官房長官談話」を厳格に引き継ぎ、その立場で元「慰安婦」の方への謝罪と名誉回復の措置を講じるべきです。
沖縄戦の教科書検定では、「集団自決」の記述から軍の強制を削除させた検定意見に何の根拠もなかったことがいよいよ明瞭になっています。沖縄では、十一万人を超す県民が参加して復帰後最大規模の集会が開かれ、検定意見の撤回を求めました。誤った検定意見を撤回させ、記述を元に戻させることが不可欠です。
過去に目閉ざすものは
「過去に眼を閉ざすものは、未来に対してもやはり盲目になる」―ワイツゼッカー・ドイツ連邦大統領の、侵略戦争を反省した、あまりに有名な言葉です(一九八五年の演説)。事実に向き合わないで、歴史を生かすことはできません。
日本共産党は侵略戦争に命がけで反対したただ一つの党として、一切の歴史の逆流を許さず、平和を実現するため、力をつくす決意です。
( 2007年12月08日,「赤旗」) (Page/Top)
新潟県学者研究者日本共産党後援会(代表世話人、加村崇雄・新潟大学名誉教授ら四氏)は二日、新潟市で、党中央委員会の足立正恒学術文化委員会責任者を迎えた講演会を開催し、約八十人が参加しました。(写真)
足立氏は、戦前の思想と体制の復活を目指している「靖国派」団体の日本会議が、なぜ国政の中枢に座ることになったのかという疑問に対して、戦前の思想形成の分析が不十分なことから戦前の「国体論」や侵略戦争の正当化といった靖国史観がはびこることになると指摘。しかし、日本軍「慰安婦」問題をめぐり、頼りにしているアメリカ議会から断罪されるなど、日本会議のイデオロギーの矛盾が広がりつつあることも明らかにしました。
足立氏は、「靖国派」の根を絶つために、アメリカ従属を容認していながら愛国主義を語る資格のない日本会議の復古的イデオロギーと欺まん的画策を国民に広く伝えること、侵略戦争の加害責任を明確にし、正確な歴史認識を国民的なものにすることを提起。九条を守ることこそ真の愛国主義になると訴えました。
会場から「靖国派の財政基盤は」などの質問や討論が続きました。
(2007年12月05日,「赤旗」) (Page/Top)
日本共産党は三日、党本部で幹部会を開きました。志位和夫委員長がおこなった常任幹部会の報告は次の通りです。
みなさん、おはようございます。私は、常任幹部会を代表して幹部会への報告をおこないます。
五中総から二カ月半がたちましたが、この時点で幹部会を開いた目的は、つぎの二点にあります。第一は、五中総後の情勢の新しい展開の特徴を、決定にそくして明らかにすることです。第二は、五中総決定実践の現状と活動の強化方向を示し、討論で深めることであります。
一、5中総後の情勢の展開と、日本共産党の役割
報告の第一の主題として、五中総後の情勢の展開と、日本共産党の役割についてのべます。
安倍「靖国」派政権の崩壊と、自公政治の政治的な行き詰まり
「靖国」派への大打撃――歴史ゆがめる逆流の一掃にひきつづき力をそそぐ
まず安倍「靖国」派政権の崩壊と、自公政治の政治的な行き詰まりについてです。
五中総決定では、安倍・自公政権について「政治的衰退が極まった末期的な姿」とのべましたが、この指摘は、その直後の安倍首相の政権投げ出しで裏付けられました。五中総決定の議論が始まったとたんに政権投げ出しとなり、「五中総決定のいっている通りだ」という議論があちこちでおこなわれました。
安倍政権の無残な崩壊は、「靖国」派への大打撃となりました。安倍ブレーンの一人が、「我々保守は、反動の時代に備えて頑張るしかない」と嘆くなど、「靖国」派の落胆は大きいものがあります。「美しい国」「戦後レジームからの脱却」といった極端な復古的、反動的スローガンは、姿を消しました。これは内外の良識の成果であり、「靖国史観」「靖国」派政治を、正面から告発、批判してきた日本共産党のたたかいの成果であります。
同時に、安倍時代の「負の遺産」は残されています。沖縄戦教科書問題、「従軍慰安婦」問題などの清算が必要です。「靖国」派の巻き返しの動きも軽視できません。十一月二十八日、日本会議国会議員懇談会が総会を開き、三つの決議――「沖縄戦教科書への強制記述復活を許さない」、「全国一斉学力テストの結果の全面公開」、「憲法審査会の速やかな設置」を採択するなどの動きが起こっています。歴史をゆがめる異常な逆流を日本の政治から一掃していく課題は、ひきつづく重要な仕事であります。
福田政権――行き詰まった路線を変える意思も、能力も、まったくない
つぎに、代わって登場した福田政権についてのべます。歴史問題にかかわっては、福田首相自身が、「靖国参拝はしない」と明言するなど、この内閣から「靖国」色は影をひそめました。福田内閣は、国民の厳しい審判の圧力を前にして、政策の部分的な手直し、取り繕いもおこなっています。しかし、自民党政治をここまで行き詰まらせたアメリカ・財界とのかかわりでの政治の基本路線では、それを変える意思も、能力もまったく持たない。そのことがわが党の国会論戦をつうじて浮き彫りになりました。
――まず、米国いいなりの政治には、指一本ふれようとしていません。新テロ特措法案を何が何でも通し、派兵を再開する姿勢に固執しています。外交の初仕事も、日米首脳会談(十一月十七日)で、この悪法の「早期成立に全力を尽くす」ことをブッシュ大統領に誓約することでありました。
――また、大企業に空前の繁栄をもたらしながら、国民のなかに貧困と格差を広げている「構造改革」路線は、取り繕いをしながらも推進する、というのが基本姿勢です。わが党は、国会質問で、貧困の拡大の根源にある労働法制の規制緩和路線、社会保障費抑制路線、「逆立ち税制」からの転換を迫りましたが、首相の答弁は、従来の国民犠牲の路線から一歩も出るものはありませんでした。
――さらに、政治の不正・腐敗に対する鈍感さ、無責任さでも、前任者と変わるところはありません。防衛事務次官という自衛官のトップの汚職事件、日米の軍需大企業、政治家を巻き込んでの一大疑獄に発展しつつある軍事利権疑惑にたいしても、首相として責任をもって真相を明らかにする姿勢はかけらもありません。わが党は、さきの党首会談で、首相としての解明責任を提起しましたが、首相は「私に何をやれというのか」とのべてそれを拒否するなど、政治モラルの欠如ははなはだしいものであります。
五中総決定は、「政治的衰退が極まった自民党の末期的な姿」と指摘しましたが、自民党政治の行き詰まりは、福田政権でいよいよ深刻になりました。
「大連立」の動き――「二大政党づくり」の正体見えた
つぎに「大連立」の動きについて、報告します。
この間、十月三十日、十一月二日と、二度にわたって福田首相と、民主党・小沢代表との党首会談が密室談合の形でおこなわれ、そのなかで「大連立」の動きがおこりました。二度目の会談の後には、小沢代表の「辞意表明」、さらにその「撤回」という騒動もおこりました。「大連立」は、今回の動きについていえば、民主党の側の事情で中断しています。しかし、両党党首がいったんは「大連立」で合意した事実は消えないし、たいへん重いものがあります。これは大きな政治的事件であります。
国民への背信と、その危険な狙い
第一に、「大連立」の動きは、国民への背信であり、危険な狙いをもっていることを指摘しなければなりません。
これは何よりもまず、参院選で示された国民の民意に背き、裏切るものです。自民党は、参院選で示された「自公政治ノー」という民意を無視し、間違った政治に固執するために「数集め」に走ったわけですが、これは邪道の政治といわねばなりません。民主党は、「自公政権打倒」といって選挙をたたかいながら、「打倒」すべき相手と手を組み、延命に手を貸そうとしました。これは国民への裏切りそのものであります。この動きへの国民の怒りがわきおこりましたが、その焦点もここにありました。
何のための「大連立」か。はっきりしていることは、自衛隊を海外に派兵する恒久法をつくる合意があったことです。小沢代表は、「合意文書があった」とまでのべています。この背景には、アメリカの要求があります。今年二月に出された米日超党派アジア専門家グループの報告書「米日同盟―2020年に向けアジアを正しく方向づける」――「第二次アーミテージ報告」では、憲法改定とならんで自衛隊の海外派兵のための恒久法の制定を公然と要求しています。
さらに、「大連立」を推進している勢力――一部大手メディア、財界からは、消費税値上げの野望を「大連立」に託す発言が繰り返されています。「大連立」推進勢力からは、憲法改定をすすめるためには「大連立」が必要という議論も出されています。
「大連立」は、自民党や、民主党が、どちらも単独では、国民の怒りが怖くて、なかなか手をつけられない反動的野望――恒久法、消費税増税、憲法改定などを、一気におしすすめる「翼賛体制」をつくろうという危険な狙いと結びついており、その背景にはアメリカや財界の要求がある。ここを正面からとらえ、広く明らかにしていく必要があります。
民主党――自民党との連立政権を選択肢とする政党であることを自ら明らかに
第二に、この動きをつうじて、「二大政党づくり」の正体が見えたことは、重要であります。とくに民主党が、自民党と「同質・同類の党」であること、自民党との連立政権を選択肢とする政党であることを、自分で証明したことの意味は大きいものがあります。
小沢代表は、「(『大連立』は)いまでも正しい判断だと思っている」と繰り返し、「大連立」の「効能」を説き続けています。民主党は、小沢代表にたいして、無条件で代表留任を懇願しました。これらの経過は、この党が自民党との連立政権を選択肢とする政党であることを、自ら明らかにするものとなりました。
民主党は、「大連立」騒動の後、再び「対決戦術」をとりはじめています。しかしその実態をみますと、つぎのような問題点が浮き彫りとなっています。
――表面での激しい「対決」の裏で、「政策協議」の名での談合政治が始まり、悪法を自公・民主の合作で強行する動きが開始されています。たとえば、使用者が一方的に労働条件を引き下げることができる労働契約法改悪が、自公と民主の合意で強行されましたが、これは労使の合意原則という労働法制の根幹を崩す重大なものです。
――「対決」している問題でも、政治的本質を避けて、表面の問題だけで無理やり中身のない「対決」を作り出す、この特徴があらわになっています。たとえば、軍事利権問題でも、軍事商社の接待の宴席に政治家が同席した問題などは追及しても、この問題が、日米の軍需大企業、軍事・防衛族政治家がかかわった一大疑惑だという立場で本格的追及をおこなう姿勢はみられません。軍事利権の舞台となったのではないかという疑惑がかけられている「安全保障議員協議会」には、自民、公明、民主の国会議員が参加しているという事実も指摘しなければなりません。
――こうした中身のない「対決」が、国会の民主的運営を無視した「数の横暴」につながっているということです。十一月二十七日におこなわれた参院財政金融委員会での額賀大臣の証人喚問の多数決での議決は、「証人喚問は全会一致で」という国会の民主的慣例を無視した暴走でありました。
この問題で、採決にいたる経過をいいますと、わが党は、額賀氏の証人喚問を要求しつつ、「全会一致」の原則を崩すべきではないと主張しましたが、最後に採決の場に出席して賛成するという態度をとりました。これは国会の民主的慣例の順守という原則にてらして間違いでした。退席して棄権すべきでありました。わが党は、間違いを率直に認め、是正をおこないました。わが党の態度表明は、議決の是正へとつながりました。
それが与党によるものであれ、野党によるものであれ、国会の民主的ルール、民主的慣例を破る「数の横暴」には厳しく反対をつらぬくことが、わが党の基本的立場であり、それを確固として堅持することを教訓としたいと思います。
わが党は、今後も、国民の利益にかなった内容で野党間の協力をはかるという姿勢に変わりはありません。同時に、自公・民主による国民不在の談合政治、中身のないごまかしの「対決」、国会の民主的ルールを無視した横暴にはくみしません。「大連立」をつうじて民主党の姿が明瞭(めいりょう)になるもとで、こうした姿勢をつらぬくことがいよいよ大切となっています。
日本共産党の役割――「二重の構え」がいよいよ大切に
思い切って国民のなかに打って出て、党の新たな上げ潮をつくる好機
「大連立」にみられた自民・民主の姿との対比で、日本共産党こそが自公政治にかわる新しい政治の担い手であることが、浮き彫りになる情勢が進展しています。メディアでも「共産党の存在感」ということが注目される状況があります。いま思い切って国民のなかに打って出て、党の支持を広げ、党づくりを前進させる好機であります。
そのさい、五中総決定が強調した「二重の構え」のとりくみ――@直面する熱い焦点で、国民要求を実現し、政治を動かす積極的役割を果たす、A綱領と日本改革の方針を広く国民に語り、国民の利益にかなった「新しい政治」とは何かを、国民とともに探求する――を発展させることが、参議院選挙後に展開している情勢のもとでいよいよ大切になっています。
国民の声で政治が動く新しい情勢が展開している
参議院選挙後の情勢には、両面の特徴があります。
一面では、国民の声で政治が動く新しい情勢が展開しています。たとえば、十一月一日、インド洋から海上自衛隊が撤収しましたが、国民の声で軍隊を撤収させたのは、日本の戦前・戦後の歴史のなかでも初めての出来事であります。
被災者支援法の改正も重要です。まだ不十分な内容ではありますが、住宅本体の再建への公的支援が盛り込まれました。阪神・淡路大震災から十三年。その後の地震、水害など、たび重なる災害のなかで国民運動が粘り強く求め続けてきた要求が、一歩ではありますがとうとう実りました。
政府・与党のなかで、社会保障の負担増の「見直し」の動きがおこっています。母子家庭への児童扶養手当の削減の「凍結」、高齢者の医療費負担の一時的・部分的な「凍結」、障害者自立支援法の「見直し」などであります。これらは、それぞれが選挙目当ての一時的な取り繕いや、いろいろな制約や限界などの問題点をもっていますが、ともかくも国民の怒りの広がりを前にして、自ら決めた制度の矛盾・破綻(はたん)を政府自身が認めたものでもあります。一時的な取り繕いに終わらせないよう、たたかいを広げ、悪法を撤回に追い込むまで力をつくすことが大切であります。
いま、たたかえば政治が動く。このことを多くの人々が実感し、各分野の国民運動が新しい活力を得て前進しています。この間、沖縄、岩国、座間と連続して、「米軍再編」の名による基地強化に反対する大規模な集会が成功しました。憲法擁護のたたかいでも、六千八百以上に草の根の組織を広げた「九条の会」の全国交流集会が成功をおさめ、早稲田大学で都内の学生九条の会が主催した「ピースナイト9」が千百人の参加で成功するなど、ひきつづくたたかいの発展がみられます。革新懇の全国交流会(石川・金沢市で開催)が、過去最高の参加者で大きな成功をおさめたことも重要です。
新しい情勢の特徴をとらえ、熱い焦点の問題で、国民要求の実現のために日本共産党ここにあり≠ニいう奮闘が求められています。
財源論をめぐる論戦――消費税増税の大合唱と、日本共産党の確固たる立場
同時に、もう一面では、本格的に国民の要求を実現しようとすれば、どんな問題でも、大企業中心、アメリカいいなりという自民党政治の政治悪にぶつかる。この政治悪を大本から改革するという政治姿勢がなければ、国民の利益にかなう政治は実現できない。ここを正面からとらえたたたかいが必要です。
暮らしの問題では、私たちは、どんな問題でも、相手は財源論を持ち出してくると言ってきましたが、実際に政治論戦に踏み込んでいけば、まさにここが熱い争点となってきます。たとえば、わが党は、国会論戦で、政府が、小泉内閣いらい続けている社会保障費抑制路線を転換することを求めてきました。そうしますと、舛添厚生労働大臣なども、「抑制路線はそろそろ限界だ」と認めざるをえないようなこともいいます。ところがそれにつづけていうせりふは、「消費税増税を考えねば」というものです。
現実にいま、政府・与党がやろうとしていることは、社会保障をさらに削りながら、消費税大増税に踏み込むことです。五中総後、「社会保障財源」を名目にした消費税増税キャンペーンが、大規模に繰り広げられています。「経済財政諮問会議」の「試算」(十月十七日)、「財政制度等審議会」の「意見書」(十一月十九日)、「政府税制調査会」の「答申」(二十日)、「自民党財政改革研究会」の「報告書」(二十一日)など、政府・財界・与党から、あいついで消費税増税必至論の大合唱がおこっています。
党首会談で、わが党が、「社会保障財源として消費税増税でまかなうのは当然という立場か」とただしたのに対して、首相は「そうせざるをえない」と言明しました。きわめて重大な言明です。
二〇〇九年度を照準にして、消費税大増税が強行される現実の危険性が生まれています。消費税増税反対の国民運動を大いに強めることを、幹部会としてもよびかけたいと思います。
日本共産党は、財源問題で確固たる対案を示しています。国民の立場に立って浪費を一掃しつつ、「二つの聖域」にメスを入れるというものです。@大企業と大資産家にたいするゆきすぎた減税をただすことで、数兆円規模での財源は可能になります。Aさらに、年間五兆円にのぼる軍事費に縮減のメスを入れる。とくに、米国の戦争支援のための支出を中止する。また、著しく高い実際価格となっている兵器価格に抜本的メスを入れることです。この道こそ、消費税にたよらないで安心できる社会保障を築く道であり、同時に、国の財政の健全化、国民経済の健全な発展を保障する道であります。
民主党は、消費税を当面は上げないといいますが、「二つの聖域」にメスを入れる立場はありません。そうなると、どう計算しても財源は出てきません。この党は、参院選の「マニフェスト」で、十五・三兆円の「財源」を暮らしのために捻出(ねんしゅつ)できると宣伝しました。しかし、その内容は、@地方への補助金削減や所得税増税などのように、無理やり実施すれば国民に大被害を与えるものが、大きな部分を占めており、A浪費の削減も、大幅な重複や水増し計算があり、到底なりたたない現実性のない金額となっていることなど、およそ「財源」論としては荒唐無稽(むけい)というほかないものです。民主党は、もともと消費税増税派ですが、この「財源」論のごまかしが正面から問題にされれば、「やはり消費税増税が必要」ということにならざるをえません。
財源問題は、総選挙に向けた熱い争点となってきます。異常な大企業中心政治と正面から立ち向かい、大企業中心にゆがめられた税財政をただす立場をもった日本共産党こそ、国民の立場にたった財源論を示すことができます。
新テロ特措法案――アメリカいいなり政治から脱却する立場をもつ党
平和の問題では、新テロ特措法を焦点として、憲法を破った海外派兵を継続・拡大するのかどうかが、国政の大争点となっています。
政府・与党は、新テロ特措法案を何が何でも成立させ、戦争支援を再開する構えです。政府の言い分は、「テロとの戦いから離脱していいのか」の一点張りであります。そこでわが党は、党首会談で、「テロ根絶というなら、何よりもアフガニスタンの現実がいま何を求めているかの現実から出発した、冷静な議論が必要」として、カルザイ政権が、「平和と和解のプロセス」を探求していること、アフガン上院が和平をすすめるためにも米軍などによる軍事掃討作戦の中止を求める決議を採択していることを示し、「いま日本がなすべきは、対テロ戦争支援を再開することではなく、アフガンにおける和平を促進する外交努力であり、その障害となっている軍事掃討作戦は中止すべきだということを米国にたいしてきっぱりというべきだ」と提起しました。首相は、「和平の努力は重要」としつつも、「同時並行でタリバン掃討も必要」だとのまったく矛盾した対応に終始しました。軍事掃討作戦をおこないながら、和平交渉とは、だれが考えてもできない相談です。
このやりとりからも、福田首相には、アフガニスタンの現実から出発して、テロをなくすためには何が必要かを真剣に考える姿勢がまったくない、ただひたすらアメリカから言われたからというだけで、報復戦争の支援を再開しようという、対米従属の姿勢だけがむきだしの形で示されていることを痛感しました。
他方、民主党は、新テロ特措法案には反対するとしていますが、「対案」としてISAF(国際治安支援部隊)への参加を明言しています。小沢代表は、「自分が政権をとったら参加する」と断言しています。ISAFとは、国連決議にもとづいて創設された部隊ですが、NATO軍の指揮下にある多国籍軍であり、おこなっている活動は、米軍と一体になった戦争そのものであります。ここに陸上自衛隊を派兵するというのが、民主党の「対案」なのです。
なぜこんな「対案」を出したか。私は、アメリカへのメッセージにほかならないと思います。コーエン米国元国防長官は、小沢提案にたいして、「(日本)政府はこのチャンスを無視してはいけない。意味ある前進で憲法にも抵触しない」と歓迎を表明しました。元首相補佐官で「日米同盟」絶対論にたつタカ派論客である岡本行夫氏は、「小沢提案は立派だ。日本が本来目指すべき道だ」と、自民党に同調をせまっています。民主党は、「対米追随はよくない」というようなことを言いながら、アメリカが大喜びする、さらに危険なものを「対案」として出しているのです。
政府・与党の立場にも、民主党の立場にも、どちらも根っこには、抜きがたいアメリカいいなり政治があります。
日本共産党は、日米軍事同盟をなくして独立・平和・中立の日本を築くことを綱領に掲げている唯一の党です。この立場にたってこそ、どんな形であれ憲法違反の戦争支援にきっぱり反対するとともに、アフガニスタンの現実にそくしたテロ根絶の道理ある方途を示すことができる。それは自公、民主のとっている立場との対比でもきわだっています。
国民の切実な願いを実現しようとすれば、綱領に接近・合流せざるをえない
いくつかの角度からみてきましたが、どんな問題でも、国民の切実な願いを本格的にかなえようとすれば、日本共産党の綱領の示す日本改革の道と接近・合流せざるをえない。そのことが日々の情勢の展開を通じて、こんなに見えやすいときはありません。
自民党政治の根本的改革の展望を示す日本共産党こそ「自公政治にかわる新しい政治」の担い手であり、この党を総選挙でのばすことこそ「新しい政治プロセス」を前進させる最大の力となることを、大いに広い国民に語りぬこうではありませんか。
二、5中総決定の実践、総選挙勝利をめざす活動の強化方向について
報告の第二の主題として、五中総決定の実践、総選挙勝利をめざす活動の強化方向についてのべます。
全党の努力で開始された前進――「大運動」、党勢拡大、中間地方選挙
五中総決定は、党に新鮮な活力をよびおこし、全党の努力によっていくつかの重要な前進がはじまっています。とくに三つの活動についてのべたいと思います。
「大運動」が前進を開始した――政治戦略の基本、党活動の「軸」として位置づける
第一は、「綱領を語り、日本の前途を語り合う大運動」が前進を開始したことであります。「綱領を語りあう集い」は、十二月三日報告で、全国で、二千五百三十六回開催され、参加者は七万六千人となっています。とりくんだ支部は11・6%です。
とりくんだところでは、どこでも大きな反響と手ごたえが返ってきています。このとりくみを通じて、どんな国民の要求とも、綱領路線がかみあい、結びつき、共鳴しあうことが、生き生きと実感されています。また、支部を基礎にした「集い」には、普段の演説会などに参加できない新しい層も多数参加し、党のまるごとの姿に初めて接し、共感を広げていることも重要です。前進しているところに共通する教訓として三点を紹介したいと思います。
一つは、「大運動」を、あれこれの課題の一つではなく、総選挙勝利をめざす政治戦略の基本として、また党活動の全体の「軸」として位置づけてとりくみをすすめているということです。すでに三割以上の支部が「集い」を開催した地区が、全国で十五地区生まれていますが、どこでも五中総決定の最大の眼目が「大運動」にあることを党機関と支部が正面からつかんだことが、支部を基礎とした前進につながっています。
二つ目に、機関役員、国政予定候補者、地方議員が弁士をすすんでひきうけ、実際の体験をもって、支部を基礎にしたとりくみを促進していることです。十一月末までに、全国の都道府県・地区委員長の52・5%、三千百人をこえる地方議員の34・6%が、「集い」の弁士をつとめ、そこでつかんだ手ごたえ、実感を生かして、支部への援助を強めていることは、たいへん重要であります。「弁士をやってみて、はじめて威力を実感した」という感想が多く寄せられています。
三つ目に、「大運動」の推進を「軸」としながら、総選挙勝利をめざす諸課題を総合的に推進する、立体作戦≠フ経験が各地で生まれていることです。和歌山県では、すでに25・2%の支部が「集い」を開き、全国でもっともすすんでいる県ですが、そのなかでも南地区・西牟婁郡の党組織では、すべての支部で「集い」を開くか、その計画をたて、そのなかで党員を倍加する目標をたて、党員拡大を前進させ、今年の目標の六割を達成しています。読者拡大でも、前回総選挙時比で106%にする町も生まれるなど、積極的前進が開始されています。
「大運動」のとりくみは、はじまったばかりですが、党の前進の新しい鉱脈をつかんだというのが、みなさんの実感でもあるのではないでしょうか。この運動が、文字どおりの全党的な「大運動」に発展するなら、総選挙勝利への大きな道が開かれることは疑いない。ここに確信をもってとりくみを発展させることを訴えるものであります。
読者拡大、党員拡大での前進――国民の関心・要求と紙面の中身がかみあって
第二は、「しんぶん赤旗」読者拡大でも、党員拡大でも、まだ端緒でありますが全党の努力で上げ潮をつくりだしていることは重要であります。
読者拡大は、九月は後退しましたが、全党の大奮闘によって十月、十一月と連続前進をかちとりました。十月は、四十二都道府県と二百四十五地区(77・8%)、十一月は、四十六都道府県と二百八十一地区(89・2%)で前進をかちとりました。全党の大奮闘に心からの敬意をのべるものです。
この間の特徴は、ここでも国民の切実な関心・要求と、「しんぶん赤旗」の紙面の中身がかみあい、紙面の魅力を語って読者が増える状況が広がっていることであります。この間の記事でも、後期高齢者医療制度問題、日雇い派遣や生活保護など貧困問題の告発、消費税にたよらない財源論、軍事利権の告発などは、「しんぶん赤旗」ならではの先駆的なものであり、とくに反響が強いものです。
「山陽日日新聞」(十二月一日付)は、一面トップで、「群を抜く『赤旗』の報道」という特集記事をのせています。「『しんぶん赤旗』は『伝えたいこと・伝えるべきこと・伝えなければならないこと』など報道の使命を十二分に果たしている」とし、シリーズ「軍事利権を追う」に注目して、「(この問題の)今後の進展のカギも『赤旗』の報道が握っていると期待せざるを得ない追及ぶり」と評価しています。こうした評価が一般メディアでもあらわれるというのは、いまの情勢を反映していると思います。
読者拡大のためには、独自追求がどうしても必要ですが、すすんだ党組織の特徴として二つあげられます。一つは、「どんな情勢のもとでも、つぎの総選挙で勝てる強く大きな党をつくりたい」という総選挙勝利の構えをつくることが、独自追求の土台となっていることであります。いま一つは、独自追求の内容としては、一部の力持ちの同志にだけ頼るのではなく、読者拡大に自覚的にとりくむ支部と党員をいかに広げるかに執念を燃やしていることであります。これらも大いに学ぶべきこの間の教訓であります。
党員拡大でも五中総後、入党者数が月をおって増大し、三カ月間で全党的に二千人をこえる新入党員を迎え、十一月には一千人をこす新入党員を迎えています。
財政活動の根幹である党費納入も、全党的な努力のなかで、九月、十月とも前月比で当月納入でも、のべ納入でも前進をはじめています。
もちろん前進をはじめたとはいえ、それは端緒的なものです。読者の陣地は、前回総選挙時比で、日刊紙90・5%、日曜版89・8%であり、一刻も早く前回選挙の勢力を上回る峰を突破できるように奮闘したいと思います。党員を迎えた支部は24・4%であり、これも総選挙に向けてすべての支部が新しい党員を迎えるという目標の達成のために、がんばろうではありませんか。
全党の努力ではじまった党づくりの前進を、絶対に中断させることなく、十二月、さらに来年も月ごとに、末広がりに発展させるために力をつくしましょう。その促進のために、十一月に開催した機関紙部長会議、組織部長会議、財政部長会議の成果を、機関全体が身につけるようにしていただきたいと思います。
地方選挙での前進――住民の切実な要求と、「住民が主人公」の政治姿勢が共鳴して
第三は、地方選挙での前進です。参議院選挙後の中間地方選挙で、わが党は、百七自治体に百九十八人が立候補し、百八十三人が当選し、ほかに補欠選挙で二人が当選しました。一部に失敗もありますが、全体として議席占有率を7・93%から8・83%へ0・90ポイント前進させました。これは他党とくらべてもきわだった前進です。わが党の定例選挙での当選者百八十三人に対して、自民党は四十九人、公明党は百五十五人、民主党は五十一人、社民党は二十人です。得票でも、わが党は、60%の自治体の選挙で前回票をのばし、全体の平均で106・0%と前進しています。
特徴的なのは、都市部でも農村部でも、顕著な前進をかちとる経験が生まれていることです。東大阪市議選では、定数四十六で九人全員が高位当選をはたし、前回票を一万票上回る画期的勝利となりました。長野市議選でも過去最高の得票で六人全員当選、京都・向日市議選でも過去最高の得票で定数二十四で八人全員が当選しました。
首長選挙では、長野県・南牧村村長選挙でわが党の菊池幸彦前村議が圧勝しました。兵庫県・福崎町長選挙では、党員町長の嶋田正義氏が無投票で四選をはたしました。東大阪市長選では僅差(きんさ)で敗れたものの、党員市長の長尾淳三氏は、前回選挙を一万八千六百票以上上回る得票をえて、大健闘しました。
こうした前進の流れの背景には、自民党政治――多くの自治体では「オール与党」で担われている政治と、住民との矛盾が限界点をこえ、全国どこでも命と暮らしにかかわる叫びともいうべき切実な要求がよせられ、わが党と保守層もふくむ広い人々との共同がすすみ、党の政策・路線への共感の条件が大きく広がっていることがあげられます。
無投票で四選をはたした福崎町長選挙では、町議会議長が応援にかけつけ、「嶋田町長は『住民が主人公』を貫いてきた」と激励しました。有力な保守系町議の一人も、「だれが出ても嶋田町長には勝てません。町民は嶋田さんにまかせておけば大丈夫という安心感をもっている」「嶋田町長は、名前の通り正義感があり、一生懸命勉強して、難問を前向きに打開していく姿はすばらしい」との評価をよせています。
地方政治という舞台でも、住民の切実な要求と、「住民が主人公」の立場で献身するわが党の政治姿勢が共鳴しあい、前進の流れをつくりだしていることは重要であります。
情勢のはらむ新しい可能性をくみつくし、さらに大きな前進を
「大運動」、党勢拡大、中間地方選挙――この三つの前進に共通するのは、情勢の展開そのもののなかに、わが党の奮闘いかんでは、国民の要求と、党の綱領・日本改革の方針とが接近・合致する大きな客観的条件が存在するということです。
これらの前進は端緒的なものですが、参議院選挙で、一面では日本の政治にとって新しい局面を開く結果が生まれるとともに、もう一面では悔しい結果が出た。それを冷静に分析し、確信をもつべき点に確信をもちながら、とりくみの弱点にメスを入れて教訓を引き出し、活動方向を大胆に明らかにしたのが、五中総決定でした。この決定にそくして、この二カ月半に、一連の分野で、党の活動が前進に転じていることは、全党の奮闘の重要な成果であって、大いに確信にすべきことです。
情勢がはらむ新しい可能性をくみつくし、さらに大きな前進をかちとろうではありませんか。そのために幹部会では、経験と教訓を交流するとともに、問題点も討論でぜひ深めてほしいと思います。
総選挙方針の具体化、実践について
新しい選挙方針にもとづく候補者擁立の到達点
つぎに総選挙方針の具体化と実践について報告します。
まず、新しい選挙方針にもとづく候補者擁立の到達点についてです。わが党は、十一月中に、比例、小選挙区とも候補者擁立をはかるという方針でとりくみをすすめてきました。
比例代表予定候補は、十月二十二日に第一次発表として二十四人、十一月三十日に第二次発表として四十九人を発表し、総数七十三人となりました。すべての都道府県において全県的に活動する比例代表予定候補者が決まりました。
小選挙区での候補者擁立は、五中総の提起にもとづいて、十一月末までに各都道府県で決定し中央が承認した候補者は百十五人となりました。各県が擁立を計画・予定している選挙区は約百四十選挙区であり、その八割強の予定候補者が決まりました。立候補計画は、全体として五中総決定にそくした適切なものであり、予定候補者擁立が未定の選挙区はすみやかに決定するようにしたいと思います。
都道府県委員会、地区委員会の努力によって、五中総から二カ月半で、候補者擁立という点で、基本的に総選挙をたたかう陣立てがつくられたことは、大きな積極的意義をもつものです。比例代表、小選挙区とも、予定候補者の活動をただちに具体化し、候補者を先頭に大規模な宣伝、組織活動にふみだし、選挙勝利のうねりをつくりだしましょう。
なお、今後の問題としては、小選挙区の候補者擁立(計画)は、固定的にしないことにします。すなわち現時点で、候補者を擁立しないことを決めた選挙区でも、今後のとりくみのなかで党活動の大きな前進をはかり、候補者擁立の条件が生まれてくることもありえます。その場合には、候補者を擁立してたたかうという選択肢もありうることです。
「六百五十万票以上」という得票目標がどう具体化されているか
そのうえで、新しい総選挙方針の具体化と実践について、三つの点について問題提起をおこないたいと思います。
第一は、「六百五十万票以上」という全国的な得票目標がどう具体化されているかという問題です。全国からの報告では、この提起を積極的に受け止め、得票目標達成を正面にすえたところで、積極的な変化がおこっています。
長野県委員会からは、つぎのような報告が寄せられました。「北陸信越ブロックの議席奪還へ、長野県の得票目標十六万五千を獲得する構えと活動をあらゆる面で貫くようにしている。僅差で惜敗した前回、前々回の雪辱を果たすということだけでは、本当の力を引き出すことにはならない。得票目標を正面にすえなければ、『それくらいなら今回は他の県でがんばってもらったら』などさまざまな消極主義がでてくる。得票目標を正面にすえたことで、後援会活動、選挙区別の地方議員会議の開催、党員拡大などでも、自覚的で積極的な奮闘がはじまっている」。
東京都委員会からは、つぎのような報告が寄せられました。「前回は僅少差で二議席目を獲得できなかったが、議席増に一番近いブロックとして今度こそ必ず議席増をはかる。そのさい九十万という得票目標を正面から掲げることで、二議席絶対確保はもとより、三議席への展望も開かれることから、より大きな構えで総選挙に立ち向かう責任感と積極性が生まれている。すでにほとんどの小選挙区で予定候補者を決定し、候補者ポスターの張り出し、『東京民報』号外の作成・配布など、広い都民のなかでの宣伝活動にも打って出ている」。
得票目標の実現を一貫して目指すという大方針を正面から受け止めたところで、議席増の目標と一体になって、積極性、自発性が引き出されているのは重要であります。
ここで最大の問題は、支部段階でみると、五中総決定を論議して得票目標を決めた支部が、全国平均では44%にとどまっていることにあります。この問題では、中央としての推進にも弱さがありました。この弱点を大胆に打開することは、「支部が主役」で諸課題を本格的に前進させるうえで、要をなす問題です。支部が自らの得票目標を自覚的・主体的に決めてこそ、選挙勝利の諸課題を推進するうえでも生きた魂≠ェ入ってきます。遅くとも年内に、すべての支部が自覚的な得票目標をもって活動を開始できるように、党機関の指導と援助を抜本的に強めることを提起したいと思います。
全体として遅れているもとでも、愛知・名古屋東部地区では、100%の支部が得票目標を決めているなど、得票目標を決めた支部が九割以上の地区委員会が、全国で十一地区生まれています。すすんだ党組織では、参議院選挙のとりくみを自己分析し、総選挙をいかに「自らの選挙」にしていくかについて、真剣な議論をおこなっています。「地方選挙などにくらべても党の力がだしきれないで終わった」、「こんどこそ支部が『自らの選挙』として総選挙をたたかうようにしよう」などの意思統一をはかるなかで、前進をかちとっています。これらの先進例に学びつつ、この立ち遅れの打開を一気にはかろうではありませんか。
比例代表に力を集中する新しい方針の討議・具体化について
第二は、比例代表の前進に力を集中する新しい方針の討議・具体化についてであります。五中総決定では、「すべての小選挙区での候補者擁立をめざす」という従来の方針を見直し、比例での前進に党の持てる力をもっとも効果的に集中する方針を決めました。そして、「この方針のもとで、比例代表で前進をかちとるには、よほどの覚悟とともに、これまでの選挙戦と党活動の抜本的な立て直しをはかることが必要となります」とのべ、とくに選挙活動の日常化という問題を提起しました。
討論で深めていただきたいのは、この方針がどう受け止められ、議論され、具体化がはかられ、実践にふみだしているかという問題です。具体化の過程では、積極的な受け止めとともに、さまざまな消極論もあったと思います。それらを真剣な討論をつうじて克服しながら、前進に足を踏み出している経験が、全国各地に生まれました。報告では二つの県のとりくみを紹介したいと思います。
一つは、青森県委員会からの報告です。「(五中総決定の)最初の受け止めは、『比例に集中して得票目標をやりぬく』という積極的な受け止めとともに、『助かった。楽になった』という受け止め、『ほんとうに前進できるのか』という戸惑いの受け止めなどが混在していた。そこで県委員会として、小選挙区候補を擁立しない選挙区で、それによるデメリットを正面からとらえながら、擁立しないことから生まれるメリットを生かすにはどうしたらよいかを、支部の実際の活動から学ぶ『支部の経験を聞く会』をもった。この会議をつうじて、比例選挙を日常化するうえでのヒントを多数発見した。すすんだ支部では、日常的に住民の利益のために活動し、対話・支持拡大も選挙直前からでなく対面で日常的にとりくむ、選挙の日常化の一つの要として後援会員の拡大とニュースなどをつうじた結びつきを重視しているなどの活動にとりくんでいることがわかった。五中総決定どおり、選挙の日常化をはかれば、前進できるという手ごたえをつかめた」。
いま一つは、石川県委員会からの報告です。「石川2区、3区は、今度は小選挙区で立候補せず、比例に力を集中することを決めたが、ここで『支部が主役』の活動が広がっている。その根本には、五中総を受けて、地方選挙では全力をあげるが、国政選挙で本気にならない弱点をどう打開するかを正面から議論したことにあった。そのためには根本的に党を変えなければと、選挙間際で『お茶を濁す』ような活動でなく、五中総で党員の決起を広げ、『支部が主役』の選挙戦の日常的な活動の強化が必要だという立場に、地区委員長がたった。加南地区は、従来は決定読了は二割程度ときわめて低かったが、今回は支部討議100%、読了は43・4%にひきあがっている。能登地区は、支部討議は100%、読了は55・2%となっている。『綱領を語る集い』、党勢拡大、党員拡大でも前進が開始された」。
こうした真剣で攻勢的な討議、具体化の努力がはかられているか。安きに流れたり、議論がされないなどの問題点を残していないか。討論で率直に深めてほしいと思います。
「選挙の日常化の一つの要」である後援会活動について
第三は、五中総決定が、「選挙の日常化の一つの要」と位置づけた後援会活動の問題であります。
五中総のこの提起は、積極的に受け止められ、五中総以後、後援会員は全国で三百二十万人をこえて前進しています。各県の後援会拡大目標の合計は、六百万人をこえ、得票目標に匹敵するものになっています。これは、この活動には大きな可能性があることを実感させるものであります。
すべての支部が得票目標に見あう後援会員と支持拡大の目標を決め、「後援会ニュース」を活用して、気軽で率直な会員拡大と、後援会員への総選挙での支持・協力依頼という二つの活動にとりくむようにしたい。この両方の活動は、総選挙にむけた対話・支持拡大そのものにもなります。
年内に、三百二十万人をこえた後援会員のすべてに、比例ブロックや都道府県、地区、支部が発行している「後援会ニュース」をとどけ、「比例代表は日本共産党」と、支持・協力依頼をやりきりましょう。また、すべての党員のつながりを生かして、「全国は一つ」「ブロックは一つ」の立場で対話・支持拡大を本格的に開始しましょう。
5中総決定の全党への徹底にひきつづき力をそそぐ
5中総決定徹底の到達点――従来をこえる前進、同時にこれからが大切
五中総決定徹底の到達点は、十二月三日報告で、読了・徹底が35・7%、支部討議は86・9%です。読了・徹底で、四割をこえた府・県が、石川県、宮城県、京都府、奈良県、兵庫県、埼玉県です。読了・徹底で五割をこえた地区は十一地区、100%の支部が討議した地区は三十二地区となっています。
読了・徹底の全国的到達は、第二十三回党大会期、第二十四回党大会期の中央決定徹底で、最も高い率になっています。同時に、ここから先にすすむことが大切であります。
決定を徹底する新しい措置の可能性を徹底的にくみつくす
五中総決定では、中央決定の読了が三割前後にとどまっている現状について、「これではまともな党とはいえない」として、これを抜本的に打開するために、読了を中心にすえつつ、しかるべき責任のある同志が決定の中心点をよくつかんで報告し、議論すれば、徹底とみなすという新しい措置をとりました。ダイジェスト・ビデオ(四十六分)を作製し、これを視聴・議論すれば、徹底とみなすという措置もとりました。これは、党の現状にそくした決定の徹底の方策として、大きな力を発揮しつつあります。
これまでなかなか決定の内容がとどかなかった同志にも、徹底がすすみはじめています。同時に、決定を説明する側にとっても、説明するたびに決定を深く理解することにつながり、政治指導の豊かな力量を身につけることでも威力を発揮しています。
この新しい徹底の措置の持っている可能性を、徹底的にくみつくすことが大切であります。一部に、新しい措置が議論されておらず、具体化されていない機関も残されています。県・地区の中枢幹部が、ダイジェスト・ビデオを見ていない状況も残されています。新しい措置が威力を発揮しだしていることに確信をもち、すべての県、地区で、年内に、過半数の党員の読了・徹底をやりとげて、新しい年を迎えることをよびかけるものです。
そのさい、たえず五中総決定、綱領と大会決定にたちかえり、綱領と決定の目で情勢をとらえ、活動を自己点検し、決定のもつ意義を新鮮にかたり、読了・徹底を前進させたいと思います。
解散・総選挙にむけてどういう構えでとりくむか
報告の最後に、解散・総選挙にむけた構えについてのべます。
解散・総選挙の時期は、予断をもっていえませんが、参議院選挙でつくられた新しい政治的力関係のもとでは、政府・与党がいつまでも解散を先のばしにはできないことも、事実だと思います。いつ解散・総選挙となっても受けて立つという姿勢・態勢を、全党に確立することが必要であります。
まず年内に「大運動」と諸課題で飛躍の波をつくること、つぎの節目としては来年春先の時期を焦点において、総選挙勝利の政治的波をつくることが大切であります。どの時期の選挙になろうとも、党活動の末広がりの発展のなかでたたかえるように、「支部が主役」の選挙戦を一貫して発展させるという見地でのとりくみの前進・飛躍をよびかけるものです。
以上で常任幹部会を代表しての報告とします。
( 2007年12月05日,「赤旗」) (Page/Top)
宮崎県の東国原英夫知事が「徴兵制は、あってしかるべきだ」と発言した問題で、日本共産党宮崎県委員会と日本民主青年同盟宮崎県委員会は十一月三十日、東国原知事に対し、抗議の申し入れを行いました。
党からは、津島忠勝県委員長、前屋敷えみ県議ら三人が、民青同盟からは馬場真由美県委員長が参加しました。県秘書広報課の緒方哲課長が応対しました。
馬場民青県委員長が、申し入れ文書を読み上げ、「知事は、この間に『従軍慰安婦の存在は確証が難しい』と発言したり、靖国神社を参拝したりしていますが、過去の侵略戦争を正当化する流れは国内外で厳しい批判を受けています。今回の発言は、国内外の批判に逆行するものであり、地方自治体の長としてふさわしくありません。知事は、現憲法を守る立場に立って、この重大な憲法違反発言自体を取り消すべき」だと強調しました。
緒方課長は「申し入れは、知事に伝えます」とこたえました。
東国原知事は先月二十八日、県建設業協会青年部との意見交換会で、若手育成について話題が及んだ際に「個人的には、徴兵制はあってしかるべきだと思っている」と発言しました。
(2007年12月02日,「赤旗」) (Page/Top)
「はしがき」と序章「グローバル化と『性の植民地』」の二つの章はまずこの本の全体をスケッチしたものであるが、ここでは、「性の植民地」化の歴史と現状についてのさまざまなデータを豊富に紹介したという意味で、きわめてすぐれた全体的な俯瞰図を提供している。
柳沢伯夫前厚生労働大臣の「女性は子どもを産む機械」という発言、「従軍慰安婦に軍の強制性はなかった」などの「妄言」の数々が引用されている。いずれも今年に入ってからの政治家たちによる無知と偏見にみちたセクシュアリティ観であるが、著者は同時に「紫の上と光源氏の結婚は幼女誘拐」であり、「強姦結婚である」という駒尺喜美氏の発言を引用することを忘れない。さて日本における女性の性的奴隷制の歴史を、遊廓の誕生に求め歌舞伎から吉原への歴史的な変遷をフォローし、大日本帝国と国内国外の娼伎制度の実態を詳細に記述したのが第二章以下である。
まず、ここでは「遊廓の構造」が詳細に語られる。しかもこれに続くのが北海道、当時の樺太、更には朝鮮における売春の情況である。このあたりの記述はたとえば「妓生娼伎名簿」や「娼伎の有毒者」などのデータにまで目くばりをしており、「社会史」の視点が見事に生かされている。このあたりの論考は地域史研究と日本の近代史研究とを見事に総合した文字どおり骨太の研究として高く評価されるべきものといってよい。
なお本書には明治初期の吉原の遊女たちを格子越しにとった写真、朝鮮半島における売春婦たちの生活をスケッチした数々の写真その他のデータはまことに貴重なものというべきだ。
ここでは主に朝鮮での売春状況と梅毒の流行とそれへの対策が具体的に語られている。このあたりの話題はほとんどこれまで語られなかったものだが、「植民地と戦争責任」というこれまで問題にされることの少ないことについて実にすぐれた記述と分析を行っている。
評者 石川弘義 成城大学名誉教授
いまにし・はじめ 一九四八年生まれ。小樽商科大学教授。
( 2007年12月02日,「赤旗」) (Page/Top)
政治・経済
◆志位委員長、ベトナム国家主席と会談 日本共産党の志位和夫委員長が、日本訪問中のグエン・ミン・チエット・ベトナム国家主席(大統領)と会談。両国・両党関係の発展を語り合う(26日)
◆嶋田・福崎町長4選 兵庫県福崎町長選が告示され、「明るい福崎町をつくる会」から無所属で立候補した日本共産党員の嶋田正義氏(現職)が無投票で4期目の当選(27日)
◆原油高騰が収益圧迫9割超 中小企業庁の調査によると、原油・石油製品の高騰で収益が圧迫されている中小企業は92・5%(27日)
◆雇用情勢を下方修正 政府の11月の月例経済報告は雇用情勢を「改善に足踏み」と38カ月ぶりに下方修正(27日)
◆イラク特措法廃止法案可決 イラク特措法廃止法案が、参院本会議で日本共産党、民主党、社民党などの賛成多数で可決され、衆院に送付。イラクから自衛隊を撤退させる内容(28日)
◆ガソリン156円も 石油元売り会社が卸値を大幅に引き上げ、東京都内の給油所ではレギュラーガソリン1g156円の看板も(1日)
社会・国民運動
◆2007年日本平和大会・人間の鎖行動 沖縄で開かれた日本平和大会が、名護市辺野古の新基地建設を阻止してきた地元住民をはじめ沖縄と全国の参加者1300人が手をつなぐ「人間の鎖」行動で閉幕(25日)
◆幼女姉妹と祖母殺害で逮捕 香川県坂出市のパート従業員の女性と孫の5歳と3歳の姉妹が行方不明となった事件で、県警坂出署捜査本部は死体遺棄容疑で、女性の義弟で無職の容疑者を逮捕(27日)
◆守屋前次官を逮捕 防衛装備品の調達をめぐり、ゴルフ旅行の接待を受けた見返りに便宜供与を図ったとして、東京地検特捜部が、前防衛事務次官の守屋武昌容疑者を収賄容疑、妻の幸子容疑者を同容疑の共犯として逮捕(28日)。防衛省を家宅捜査(写真)(29日)
◆薬害C型肝炎リスト問題で厚労省が最終報告書 汚染された血液製剤「フィブリノゲン」を投与されC型肝炎に感染した疑いの強い418人のリスト記載者に事実が伝えられなかった問題で、厚労省の調査チームが最終報告書を発表。不告知の責任について「あるとは言いきれない」と否定。薬害肝炎訴訟の原告・弁護団は記者会見で、国の責任追及見送りを強く批判(30日)
国際
◆豪の現職首相が落選 24日に行われたオーストラリア総選挙で野党労働党に敗れた与党保守連合のハワード首相の落選が確定(26日)
◆韓国大統領選挙が始まる 韓国大統領選挙(12月19日投開票)の告示にあたる候補者登録が行われ(25日、26日)、公式選挙運動始まる(27日)
◆仏で学生3万人がデモ フランス全土で、8月に成立した「大学の自由と責任に関する法」(大学自治法)に反対し、大学生・高校生約3万人がデモ(27日)
◆カナダで日本軍「慰安婦」決議 カナダ下院で、日本軍「慰安婦」問題で日本政府に謝罪を求める動議を全会一致で可決(28日)
◆パキスタン大統領が就任 28日に陸軍参謀長を離任したパキスタンのムシャラフ大統領が文民として大統領に就任、非常事態宣言を今月16日に解除すると表明(29日)
( 2007年12月02日,「赤旗」) (Page/Top)
日本共産党衆院千葉二区の小倉忠平(46)、同四区の斉藤和子(33)両候補(比例と重複)は三十日、県庁で記者会見をおこない、立候補の決意を語りました。
小倉候補は、大手人材派遣会社が労働者をトラックの荷台で運ばせ、低賃金で働かせる違法が県内でも起こっていることを紹介。国民を裏切る自民・民主の「大連立」構想のなか、民主前衆院議員が「ニセメール」問題を起こした千葉二区では有権者の怒りが広がっているとして、「本当の改革の党を訴え人間らしく働くルールをつくるため、全力をつくす」と決意を語りました。
斉藤候補は、経済大国の日本で、母子家庭の高校生が経済的理由から進学を断念している実態を告発。平和運動を通じて被爆者や日本軍「慰安婦」と交流を重ねてきたことにもふれ、「憲法九条を守り、税金を国民のために使う日本に変えたい」と力を込めました。
浮揚幸裕県委員長も同席しました。
【小倉氏の略歴】党県常任委員、労働部長。千葉大学教育学部卒。千葉県職員労働組合書記、民主青年同盟千葉県委員長、志位和夫衆院議員地元秘書などを歴任。二〇〇四年参院比例、〇五年衆院千葉九区に立候補。
【斉藤氏の略歴】党県常任委員、青年学生部長。日本大学農獣医学部卒。千葉県立清水高校講師。学生平和セミナー実行委員、日本民主青年同盟千葉県委員などを歴任。
(2007年12月01日,「赤旗」) (Page/Top)
「慰安婦」問題の解決を求める市民や弁護士、研究者らでつくる「『慰安婦』問題解決オール連帯ネットワーク」は三十日、一刻もはやい解決を求め、日本共産党の国会議員団に要請しました。
「ネットワーク」は「慰安婦」問題解決のためにたたかってきたさまざまな団体や個人が集まり、十一月十七日に結成されました。
要請に訪れたネットの代表らは「『慰安婦』被害者は非常に高齢になっている。彼女たちは戦後も差別を受け、二重三重の被害にあっている。余命少ない被害者が納得のいく解決が急がれる」などと述べ、日本政府の明確な謝罪と立法による補償、国会で公聴会を開催することなどを求めました。
応対した笠井亮衆院議員、紙智子、仁比聡平両参院議員は「この間、運動で沖縄の教科書問題では政府・与党を追い詰めてきた。流れが大きく変わりつつある。『慰安婦』問題でも衆参問わず、党派を超えて取り組んでいきたい」などと述べました。
( 2007年12月01日,「赤旗」) (Page/Top)
【ワシントン=鎌塚由美】カナダ下院は二十八日、アジア太平洋戦争時に旧日本軍が侵略先の女性たちを性奴隷にした日本軍「慰安婦」問題で、日本政府に真摯(しんし)な謝罪を求める動議を全会一致で可決しました。「慰安婦」問題での決議は米下院(七月)、オランダ下院(今月八日)に続くものです。
動議は、カナダ下院の総意として、旧日本軍の関与について日本政府が「全面的に責任を負う」よう「カナダ政府は日本政府に働きかけよ」と求めるもの。そのなかで、日本政府が一九九三年に「慰安婦」の強制と関与を認めた「河野官房長官談話」に言及し、日本政府に対し同談話を「おとしめる、いかなる発言も放棄する」よう求めています。
また、「慰安婦」という「人身売買と性的奴隷化」は、「決して起こらなかった、といういかなる主張に対しても明確に公に反論する」よう日本政府に要求、謝罪の方法の一つとして、「国会が、すべての被害者に対し公式で誠実な謝罪を表明すること」を提案しました。
オタワからの報道によると、動議可決を前に、韓国、フィリピン、中国、オランダから四人の元「慰安婦」の女性たちがカナダを訪問。二十七日には、議会の「特別公聴会」で証言しました。
動議を推進してきたオリビア・チョウ議員(新民主党)は、カナダメディアに対し、「これは人道に対する罪であり、すべての世界の市民は、声をあげる道義的責任がある」と語っていました。
( 2007年11月30日,
在日コリアン二世の舞台俳優です。一世たちの望郷の思いを語る一人芝居「旅人打鈴」を旗揚げし、九年目。いま各地で、韓国在住の元日本軍「慰安婦」に心を寄せた詩「コッパラン―花吹雪―」を朗読しています。
高校の就職活動で、履歴書に国籍記入の欄がありました。日本人でもなく、韓国人でもなく、「自分は何者?」と自問しました。四十歳の時、初めての韓国で「自分のルーツはここから」と…。一世たちの姿と旧日本軍が強制した「慰安婦」を語る、自分探しが始まりました。
二年前の韓国公演の時、統営に住む元「慰安婦」たちが見に来てくれました。しかし、冷たい反応でした。後で、「私たちの苦しみの一割もわかっていない」との感想を聞きました。過去の証言を拒絶してきた彼女たちに受け入れられなかったのです。
「このままではだめだ。溝を埋めたい」。韓国に行き、七カ月間暮らしました。決めたらやりぬく性格、家族も反対しませんでした。彼女たちは、母のように食事を作ってくれ、「いつでも実家のつもりで来なさい」と言ってくれるようになりました。
「迷いから、解き放たれ、自分を探せた。日本と韓国との懸け橋になろう」。歩きたかった道に、やっと出合えました。
「慰安婦」の強制を知らなかった≠ニ、恥じた女性がいました。「知らないことは恥ずかしいことではない。知る出会いを大切にし、事実を受け止めてほしい」
目をつぶり、時には涙を浮かべて話す、一途な人です。
文・写真 田上 光徳
名古屋市港区在住。家族は夫、2男1女。57歳
( 2007年11月25日,
防衛省の守屋武昌前事務次官と、軍需専門商社元専務の宮崎元伸容疑者をめぐる接待疑惑は、守屋氏が証人喚問で、額賀福志郎財務相、久間章生元防衛相が宴席に同席していたと証言するなど、政界に飛び火しました。
本紙は、額賀財務相はじめ政治家ら14人が仙台防衛施設局発注の建設工事の入札にからんで口利きしていた疑いがあることを元仙台防衛施設局長の証言で明らかにしました。日米安全保障戦略会議を主催する団体の事務局長、秋山直紀氏の名前も浮上、2兆円という軍事利権に群がるアメリカがらみの「政軍財」の癒着の構造に真正面からメスを入れます。
本紙スクープの「事務所費」問題に始まって、領収書の書き換え、公共事業受注業者からの違法献金など、後を断たない「政治とカネ」の問題。企業・団体献金も、国民の税金を原資とする政党助成金も受け取らない唯一の政党、日本共産党の機関紙だからこそ、徹底的に追及できます。
旧日本軍による沖縄戦での「集団自決」強制を削除した文部科学省の教科書検定問題など、歴史の真実をゆがめる動きは許せません。連続キャンペーン「伝えよう『大東亜戦争』の真実」では、「集団自決」、日本軍「慰安婦」、満蒙開拓団など、侵略戦争の実相に迫る貴重な証言を紹介しています。
( 2007年11月24日,
第二次世界大戦後に日本兵などがシベリアに抑留・強制労働させられた歴史の事実を伝えようと「シベリア抑留展」が京都市で開かれています。
昨年五月から始めて今回で七回目です。関西在住の元抑留者が十二月に提訴する国家賠償訴訟を前にしての開催です。
六万人もの日本人が亡くなり、今なおその半数がシベリアの冷たい土の中です。鉄道や道路敷設などの強制労働をスケッチした絵とともに、日本軍「慰安婦」問題などの展示もあります。
主催者の「棄兵、棄民政策による国家賠償をかち取る会」代表の林明治さん(83)は「子々孫々まで恒久平和の礎を築くために体験を語り、裁判も起こします。被害を語るには加害の歴史も語ることが必要と『慰安婦』の展示もしています」と話しています。
同展は二十五日(日)まで、下京区「ひと・まち交流館京都」(河原町五条下る東側)で開かれています。
(2007年11月23日,
自国がおこなってきた戦争犯罪や侵略、植民地支配などの過去とどう向き合い、克服していくのか―をテーマに十六、十七の両日、東京都内で「想起の文化と政策」シンポジウムが開催されました。東京ドイツ文化センターが主催したもの。ドイツ、日本、韓国の歴史研究者が参加しドイツと東アジアの比較など、熱心に議論を交わしました。
「想起(エリンナルング)」はドイツ語で過去を記憶、想起することで、ナチスや旧日本軍の戦争犯罪に向き合い、伝えていくことを意味しています。
ドイツのイエナ大学のノルベルト・フライ氏は、ドイツの「過去の克服」も一朝一夕ではなく長い時間とたたかいが必要だったと述べました。第二次大戦直後や一九五〇年代には、ナチス犯罪人を恩赦したり、戦争犯罪をすべてナチスの責任にしてナチス政権下のドイツ軍の戦争犯罪を免除したりする流れが強かったと指摘。六〇年代に青年たちが親の世代の「まだ生き続けているナチス」とぶつかる中で、ナチスの犯罪を堂々と批判したことを振り返りました。
一方で、今日も「ナチスにもいいところがあった」とする意見や連合軍による空爆などドイツ人の戦争被害を主張してナチス被害を相対化しようとする動きがあることを「批判的にナチスの過去と取り組む態度が頂点を過ぎ、下り坂になっている」と警告しました。
韓国・高麗大学のハン・ウンスク氏は、ドイツでも強制収容所の慰安婦問題を最近まで軽視する事例があるなど、ドイツの「過去との取り組み」を理想化することはできないと表明。一方、韓日間では、日本の植民地支配という深い溝があり、植民地支配が朝鮮分断を招き、今日の南北の冷戦状態につながっているということを日本人はわかっていないと指摘しました。同氏は「植民地支配を日本が深く理解し克服することなしに、歴史的和解は考えられない」と語りました。
大阪経済法科大学の内海愛子氏は、日本の戦争犯罪を裁いた東京裁判では朝鮮、台湾などの植民地支配については責任を問われなかったという問題を指摘。東京裁判によってA級戦犯となった人物もその後の日本政府の政策で「戦犯は国内的犯罪者ではない」とされるなど戦争当時の指導者の復権がはかられたと述べました。
また、日本は韓国などとも経済協力方式で国交を回復し、侵略・占領の過去をあいまいにしたまま決着をしてきたと言明。現在、九〇年代から相次いだ韓国人や中国人の戦後補償裁判が過去の日本の侵略戦争と向き合い、問い直す場になっていると語りました。
シンポでは、加害者側にも被害者側にも戦争体験者が少なくなっていく今、どう教訓を若い世代に伝えていくかについても議論が交わされました。
(片岡正明)
( 2007年11月21日,
旧日本軍「慰安婦」問題の解決を求める全国企画の一つとして証言集会「消せない記憶」が十八日、神戸市中央区内で開かれ、「慰安婦」にされたフィリピン人女性二人が実態を証言しました。
ピラール・フリアスさん(80)は、一九四三年、十五歳のときに、村にやってきた日本兵にナイフで鼻を切り裂かれ、レイプされたこと、翌年には日本軍に連行され二カ月間、昼は洗濯などをさせられて夜は日本兵の集団に毎日レイプされたことを生なましく述懐。その後、友人に無視されるようになったことも話し、「女性としての尊厳を回復するために、日本政府は謝罪と補償を」と訴えました。
ナルシサ・クラベリアさん(78)は、同年、父親は顔の皮をはぎとられ、母親はレイプされたうえで、日本兵にそれぞれ殺され、姉、妹とともに駐屯地に連行され、毎晩、何人もの日本兵にレイプされたと語りました。姉は精神を患って治らないまま亡くなったことを話し、「私は尊厳を奪われたままです。日本政府の目を覚まさせてください」とよびかけました。
会場を埋めた二百人の参加者は、息をのんで聞き入っていました。
(2007年11月20日,
群馬県の「九条の会」沼田西部地域準備会は十七日、戦争体験と平和を語るつどいを沼田市内で開き、三十五人が参加しました。
同地区在住の小泉初男さん(83)が中国での戦争体験を語りました。小泉さんは、初年兵教育での「しごき」に耐えかねて逃亡者が続出し、捜索隊に発見されると手りゅう弾で自爆した兵隊もいたことや、部隊の駐屯地にあった「酒保」(将兵に日用品などを提供する施設)の付属施設として「慰安所」があり、長期の作戦時には「慰安婦」も宿営地に連れていかれたこと、連日氷点下五〇度を超えたシベリアでの三年間の抑留生活などを語りました。
元社会科教員の中島佑介さんは、中国から強制連行され、みなかみ町(旧月夜野町)で軍需地下工場や発電所の導水トンネル工事などに従事させられた、中国人強制連行・強制労働事件について報告しました。
中国人を強制労働させた日本企業の事務所で終戦まで働いていたという女性も参加。「中国人が罰を受けている姿をいつも目にしていました」と話していました。
(2007年11月20日,
一九三七年七月の盧溝橋事件を契機に始まった日中戦争。「殺しつくす、焼きつくす、奪いつくす」という日本軍の三光作戦の真相を語ったのは、山口県下松(くだまつ)市に住む橋本林郎さん(90)です。
三八年三月から五月にかけて「徐州会戦」に、日本軍の「北支那派遣軍広島第五師団」として参加した橋本さんは、「あんなものじゃなかった」といいます。
「あんなもの」とは、火野葦平の『麦と兵隊』(三八年刊)に出てくる場面のこと。同著は、三八年五月四日から十七日までの「徐州会戦」従軍記。改造社から出版され、「当時百四十万部売れた」といわれています。火野は、一九三七年、『糞尿譚』で第六回芥川賞を受賞。戦後「戦犯作家」として戦争責任を追及されて公職追放を受けました。
隊長命令で銃殺
『麦と兵隊』は、次のように終わっています。
「縛られた三人の支那兵はそのごうを前にしてすわらされた。後に回った一人の曹長が軍刀を抜いた。掛け声と共に打ち降ろすと、首は毬(まり)のように飛び、血が簓(ささら)のように噴き出して、次々に三人の支那兵は死んだ。私は眼を反らした。私は悪魔になってはゐなかった。私はそれを知り、深く安どした」
しかし、当時出版された『麦と兵隊』には、この部分は軍部の検閲で削られました。日本軍は、残虐行為を国民に知られたくなかったのです。
橋本さんは証言します。
「ある重点地区に夜襲をかけたときのことです。武器を家に隠していた二、三人の若者を捕まえました。隊長命令で直ちに銃殺です。『部落は焼却せよ』と命令されて火を放ちました。『殺す』『奪う』『焼く』は作戦行動化していました。夜中に行動して、夜明けごろに部落を襲撃し、木っ端みじんにする」
中国兵の隠れる場所をなくすためにコウリャン畑にも火を放って焼き払いました。「三日三晩燃え続けた。自分たちはいつ死ぬか分からないので少女も老婆も関係なく女性を見つけたら集団で暴行した。全員が終わったならば、証拠を残さないために殺害して埋めた。こうしたレイプは日常化していた。あの時は罪の意識はなかった」
9条を絶対守る
三八年四月に工兵隊に入隊した橋本さんは、道路を直したり、橋をかけたり、船を調達したりする任務に就きました。「点と点を結んだだけで、あの広い広野を支配し占領するなど到底できないいくさでした。木っ端みじんにされたのは日本軍だった」といいます。
「戦争は命の取り合いです。生死の境に投げ出されてしまうのが戦場です」といいます。さく裂する迫撃砲弾。その度に何人もの犠牲者がでました。噴き出る赤い血。戦死した日本兵はどうなるのか。
「死んだ兵士は、手首だけを切って、遺体は焼きました。腹から腐る。埋めないと死臭に悩まされるからです。戦死者の数が増えると、重くなるから小指だけ切り落として名前を付けて本部に届ける。それもできずに死んだ場所にあった石や土だけ持ち帰った」といいます。
「戦争は絶対にやってはならない」。戦後そう心に刻みつけました。橋本さんはいいます。
「憲法九条を絶対に守る」
「軍の関与なしには慰安婦制度は成り立たなかった」。山口県下関市の太田隆司さん(93)は、入院中の病院でそう証言しました。
一九四〇年四月、太田さんが日中戦争で旅団規模の「討伐戦」に参加したときのことでした。所属していた中隊の命令で二度大隊本部所在地から山間警備していた中隊へ、軍用トラックに「慰安婦」を乗せて連れて行ったといいます。
中隊本部近くに「慰安婦」の宿舎を準備しました。「食事は中隊の炊事係から支給された」と証言します。
「軍の援護なしに『慰安婦』だけが前線を動き回ることなど不可能です。安倍前首相は、軍の関与と強制性はなかったなどと言っていましたが、真実ではありません」と、太田さんはいいます。
「顔見知りになった『慰安婦』を一、二回利用しました。軍隊には(『慰安婦』は)付き物でした。当時は、軍が強制的に連れてくるのは当たり前だと思っていました。自分の娘が同じことをされたら『気の毒だ』『かわいそうな人たちだ』で済まされない。戦争の犯罪です」
太田さんがもう一つ忘れられない出来事は、戦友たちの死でした。
最期は「母さん」
太田さんは三八年九月、二十四歳で補充兵として召集≠ウれました。その年の十二月初旬に中国戦線の任地に派遣されました。
任地に到着すると「警備と討伐戦の明け暮れ」でした。三九年の秋、山西省太原付近での討伐戦は、苦戦続きでした。
「晋南作戦」のときでした。中国軍の反撃が激しく前進できず、真夜中に山中で仮眠していたところ、味方の油断か、敵襲にあい、幾人かの戦友を失いました。
「母さん苦しいよ―。幾度か悲痛な低い絞り出す声で助けを求めて死んでいく戦友の姿ほど痛ましく、また悲しいものはありません。私は中国の戦場で散りゆく戦友の最期に幾度か接してきましたが『天皇陛下万歳!』の言葉は一度も耳にしたことはありません。ただ母を呼ぶ戦友の悲しい声だけが耳底に残っていて、いまだにその声がよみがえってきます」
太田さんは、出征のときのことを思い出していいます。「わが家の門前で母が小さな声でいいました。『どうか無事で帰ってきておくれ』。戦友たちが死ぬ間際に母を呼ぶ思いが分かりました」
あまりに無惨で
太田さんは、四〇年八月に中国国民革命軍第八路軍(八路軍)の奇襲攻撃をうけた「百団大戦」で捕虜になります。
その時の様子を手記で次のように回顧します。
「走る先々には鮮血を浴びた死体があちこちにただ転がっているだけである。砲弾にやられたのか、顔も裂け、だれとも分からない死体。すでに息絶えて、土色にむくんだ顔の死体。横に、仰向けに、くの字に曲がったこれらの無惨な数々の姿はいかにいくさとはいえ、あまりにも無惨で痛ましく、恐ろしい死の姿であった」
太田さんは、手りゅう弾のさく裂で気を失い、正気に戻った時は八路軍の兵士の手当てを受けていました。
八路軍に命を助けられて、四七年三月に帰国した太田さん。「民族と人類を滅亡させる戦争は二度と繰り返してはならない」と誓ったのです。
戦争は人間を破滅させる
「日本が負けたことがわかると、致死量の青酸カリを百人分包みました」。そう告白する岡田よし子さん(78)=東京都=は一九四三年、関東軍九一八部隊=南満陸軍造兵廠(しょう)の病院の看護婦養成所に入学しました。中国東北部(満州)の遼寧省奉天(現瀋陽)にありました。
父親が関東軍へ召集された二年後の四〇年、母、兄、妹とともに渡った中国。熱河省(現河北省)承徳の高等小学校を終えても、女子に仕事はありませんでした。そんななか、父が見つけてきたのが看護婦養成所でした。「それしかないから」という理由でした。親元を十五歳で離れました。
二年で卒業後、遼寧省遼陽の三八三部隊の陸軍病院に転属。終戦まで同病院に従軍しました。
終戦時、青酸カリを包むよう命令され、「絶対捕虜になるな」という命令も受けました。岡田さんは「来るときが来た。生きて帰れない」と思ったといいます。
髪と遺書封筒に
「遺書を書け」という命令もありました。便せんに一枚。「何を書いたかもう覚えていません。でも、自分は助からないという気持ちで必死で書いたのは覚えている」。髪を切り、遺書と一緒に封筒に入れました。
その後、「残りたい者は残れ! 逃げたい者は山へ逃げろ!」との命令。岡田さんは何人かでグループになり、軍からの毛布と氷砂糖、そして青酸カリを持って逃げました。
山の途中まで行くと「大丈夫だから戻れ」と、また命令がありました。関東軍が武装解除したからということでした。
「遺書はみんなで焼き捨てた。青酸カリも一緒に焼いた」と岡田さんは振り返ります。
「もう生きられない」と早まり、青酸カリを飲んで「自害」した傷病兵もいたと聞きました。「そんな意味で包んだんじゃないのに…。戦争というのは人間破滅です。何のために生まれてきたのかと思います」
岡田さんは陸軍病院で、前線からひっきりなしに搬送されてくる負傷兵の治療にあたりました。弾が体に入ったままの兵士も診ましたが、多くは凍傷になった手足を切断する手術の補助でした。
負傷兵らは運ばれてくる間に冬の外気にさらされ、凍傷をおこしていました。「凍傷で壊死(えし)した手足が真っ黒で…見た瞬間すごくショックでね。なぐさめる言葉もありませんでした」
肉はメスで切り、骨はのこぎりで切りました。切り離された瞬間、「持っていた腕の重さが何ともいえなくて」
ある患者は術後目が覚め、「手がないんですね…」とポツリと軍医に話したといいます。両手両足を切断せざるを得なかった兵士もいました。「顔見たら泣けてきて…。戦争のために手も足も切られて。何でこんなひどい目に遭わなきゃいけないのか」
思い出す傷病兵
戦後、中国・八路軍への従軍を経て、結婚、看護婦の仕事をしていました。五六年、日本人の夫、娘とともに最後の引き揚げ船で帰国しました。
終戦から十一年がたった東京。目にしたものは、首から募金箱をぶら下げ、駅や路上で物ごいする傷病兵の姿でした。
「看護婦として携わったから余計につらい。なぜ、そんな姿を多くの人の前にさらさなきゃいけないのか。いま思い出してもつらくてね。いまだにあの人たちはどうしているかと思い出します」
重傷患者を毒殺し撤退
「『お母さーん。苦しいよ!』とうめき声をもらして死んでいきました」。秋田県横手市に住む山崎凉子さん(79)は、封印してきた戦争体験を語り出しました。
山崎さんの父親は、中国東北部(旧満州)を走る南満州鉄道(満鉄)の機関士でした。
中国の大連に住んでいた山崎さんは、一九四四年十一月にハルビンにあった「関東軍第七部隊陸軍病院看護婦生徒養成所」に入隊。その後、牡丹江の患者収容ベッド数二千といわれる陸軍病院で看護学と実習教育を受けて、同病院で戦争で傷ついた兵たちの看護に当たってきました。
単身赴任で留守がちの父親。継母と、うまくいかなかった山崎さんは、家を出られる「従軍看護婦」の道を選んだのでした。十七歳のときでした。
青酸カリ渡され
四五年八月九日、ソ連軍が参戦し、中国東北部に侵攻してきました。同日夜勤につき、全身血みどろになった戦傷兵がトラックでどんどん送られてきました。
十日には病院に火を放って撤退することが告げられました。「看護婦」たちにはパイナップル缶詰とカルピスが配られて最後の別れをしました。「認識票」に名前を書き、体に付けました。「何かあったら」と青酸カリを渡され「死ぬときがきた」と覚悟しました。「重傷の多くの傷病兵は、撤退の足手まといになる」という軍医の命令で、毒殺が命じられました。
対象になった患者は、個室に入れられました。主任「看護婦」から二十本ほどの青酸カリ入りの注射器を持たされて重傷患者の部屋をまわり毒殺に立ち会わされました。
「今楽にしてあげるからね」と声をかけて注射する主任「看護婦」。「お母さん苦しいよ!」と叫び、注射して十五秒ほどで死んでいく兵隊たち。「押さえなさい」と暴れて体を弓なりにしてもがく患者を押さえ込まされる山崎さん。「男の人たちの力はすごい。毛布をかぶせて押さえ込みました。あまりにも恐ろしいことで震えていました」
「遺品」として毒殺された兵士の小指や頭髪、時計などが残されて、遺体は防空ごうに入れられました。「遺品が本当に日本の遺族に届けられたのか分かりません。このことは頭の中から離れたことは一度もありません」。病院に火が放されて撤退。生き残った患者や「看護婦」たちは「病院列車」に乗ってハルビンへ。
「列車の中は砲弾でやけどした兵士たちでいっぱいでした。包帯交換をするとウジがわいている。赤ちゃんをおんぶしたお母さんは絶望してトイレで自殺しました。人工呼吸しましたが…。列車の中は生き地獄でした」
忘れられぬよう
五八年四月に中国から帰国した山崎さんは、京都の舞鶴港に着くと、厚生省引揚援護局の係員から多くの軍医や「看護婦」の名簿を示されて消息を尋ねられました。
陸軍病院の出来事について黙って聞いていた引揚援護局の係員に「今お話しされたことは口外しないように」と口止めされました。
「いま語らないと戦争のむごさが忘れられてしまいます。勇気を出して語ってください」。三年前に戦争体験の語り部の一人から促され、「封印を解いた」山崎さんです。
「多くの兵隊さんの最期を見届けてきましたが『天皇陛下万歳』と叫んで逝った人を知りません。最期の言葉は『お母さん』でした。戦争は絶対にやってはいけない」(おわり)
(「中国戦線」シリーズは菅野尚夫、本吉真希が担当しました)
( 2007年11月19-23日,
日本共産党の吉川春子前参院議員と「語る会」が十一日、党越谷市北部地域後援会主催で開かれました。後援会員、「赤旗」読者ら四十人余が参加。用意されたいすが足らないほどの盛況でした。
吉川氏は、参院議員として四期二十四年間の活動について、「女性と働く人の人権を守る」ことにこだわってきたと強調。過去の侵略戦争への無反省、対米従属、大企業優遇という日本の「三つの異常」を克服する党綱領の方針を紹介しつつ、元「従軍慰安婦」への補償や非正規雇用労働者救済のために力をつくした経験を語りました。福田康夫首相と小沢一郎民主党代表との党首会談での連立協議について、「自民・民主両党には差がないことが明らかになった」と指摘しました。
司会の伊東紀久江前越谷市議が、洪水被害のさいに長靴をはいて現場に訪れた吉川氏の思い出を語り、後藤奈美市議も弱者を守る市政を発展させる決意を表明しました。
アルバイトの女性(56)は、「自民・民主の連立騒動の背景がよくわかった。参加してよかった」とのべました。
(2007年11月18日,
カナダにも「会」豊中で囲む会
「九条の会・豊中」世話人会は十三日、カナダ・バンクーバーで「バンクーバー九条の会」(VSA9)を進めている豊中市出身の翻訳家、光久智代さん(44)を迎えて、「囲む会」を開きました。「九条の会・豊中いちばん星」なども参加。「きらら九条の会」からは乳幼児連れの若いお母さんら六人が出席しました。
「バンクーバー九条の会」は、海外で結成された「九条の会」です。小泉政権の動向に危機感をもった日本人在住者や日系カナダ人ら十三氏が呼びかけて二〇〇五年五月に結成しました。会員は現在、百七十三人。光久さんは二十四歳でカナダに移り、VSA9の会員になりました。
参加者から「久しぶりに帰って見た日本で、気になるところは」「カナダでは日本や九条をどう見ている」などの質問に、光久さんは「靖国参拝や『従軍慰安婦』の問題はよく知られていて、『日本人は自分の国の歴史を知らない』と吐き捨てられた。軍事大国アメリカの隣国として、九条は光る」などと答えました。
光久さんも「日本で草の根の活動を広げるうえでの壁≠ヘ」などと質問。「九条の会・豊中」のメンバーが思いを語りました。
ミニ講演とパレード/池田
九条の会・池田の「日本を戦争する国にするな! まもろう憲法9条―平和のパレードin池田2007」が十日、池田駅前公園で開かれました。幼児から高齢者まで八十九人が参加しました。
オープニングは「憲法九条五月晴れ」の女声コーラス。歴史研究者から日本共産党の市議会議員に初当選した山元建さんが、憲法九条の重要性と日本の歴史教育のゆがみについて、縄文時代から現代までの歴史を踏まえてミニ講演しました。
池田集会のアピール採択後、参加者は阪急池田駅周辺をシュプレヒコールしながらパレードしました。
(2007年11月16日,
オランダ下院は八日、太平洋戦争中の日本軍「慰安婦」問題で、女性に「性奴隷」として日本兵との性行為を強要したとして、日本政府に元「慰安婦」への謝罪と賠償を求める決議を全会一致で採択しました。欧州の議会で「慰安婦」問題の決議が採択されたのは初めてだといいます。
現地からの報道によると、発議者のファンバーレン議員は「安倍晋三前首相など日本の政治家がこの問題を矮小(わいしょう)化しようとしたことは容認できない」と述べました。
旧日本軍はオランダの植民地だったインドネシアを占領した際、オランダ人女性を「慰安婦」にしています。
今月初め、韓国やフィリピン、オランダの元「慰安婦」が、欧州議会と各国議会に日本政府に謝罪と賠償を求める決議を採択するよう要請していました。
( 2007年11月11日,
【ブリュッセル=時事】旧日本軍の従軍慰安婦として働かされた韓国、フィリピン、オランダの三女性が六日、欧州連合(EU)の欧州議会を訪れ、米下院が今年七月に採択したような慰安婦問題に関する対日謝罪要求決議を採択するよう訴えました。
韓国のキル・ウォンオクさん(79)は「日本が正式な謝罪をするよう働き掛けてもらうために欧州にやってきた。死ぬ前にそれが実現するよう望んでいる」と話しました。フィリピンのメネン・カスティジョさん(78)は「日本兵にされたことを一度も忘れたことはない」と、六十年以上前のつらい体験を語りました。
( 2007年11月08日,
日本機関紙協会埼玉県本部はこのほど、県立平和資料館について「民主的運営をつらぬき、歴史の真実と真摯(しんし)に向き合い県民本位の平和資料館となるよう期待します」と題する決議を採択しました。
「慰安婦はいたが、従軍慰安婦はいなかった」という上田清司知事の発言を受け、平和資料館運営協議会が展示表記を「従軍慰安婦」から「戦時中『慰安婦』問題」に変更するよう提案していることについて同決議は、委員から軍の関与があいまいになるとの意見が出ていると指摘。「県民の運動で実現した埼玉県平和資料館が、真に戦争の悲惨さと平和の尊さを伝えていく役割を果たすことを願ってやみません」とのべています。
(2007年11月04日,
憲法九条をテーマにした市民ミュージカル「わっしょい!!憲法9条・ミュージカルin2008」が計画され、甲府市内で二日、企画・上演する同ミュージカル実行委員会(小笠原忠彦委員長)がその内容を説明し、出演への応募を呼びかけました。
今回は東京、大阪、山梨で同一の演目を上演。それぞれ実行委員会を立ち上げ、各地で出演者を募集し、練習を重ねたあと本番に臨みます。
演目は、「ロラ・マシン物語―一台のミシン」(仮題)で、太平洋戦争中、日本軍によって「慰安婦」にされたフィリピンのトマサ・マリノグさん(一九二八―二〇〇七年)の物語。山梨では、二〇〇八年六月八日(日)山梨県民文化大ホールを会場に昼・夜二回公演が予定されています。
発表にあたって、実行委員会の古屋繁子副委員長、田嶋節枝事務局長をはじめ、前回も出演した原田直美さん、作・演出を担当する田中暢氏、音楽担当のMatsunobuさんなどが、作品と上演成功にかける意気込みや、憲法九条への思いを語りました。問い合わせは、実行委員会事務局=0551(32)8142田嶋さん
(2007年11月03日,
「憲法いかそう・木津川地域連絡会」はこのほど、港区民ホールで「憲法『改正』に反対する講演と音楽のつどい『やさしさとしての文化』―憲法9条のもとに生きる―」を開催し、三百人以上が参加しました。
港労働組合総連合の山内誠一議長が、憲法九条の大事さを強調して開会あいさつ。シャンソン歌手の松浦由美子さんが、ピアニストの坂下文野さんの伴奏で「愛の賛歌」など四曲を熱唱。「人間を返せ」「従軍慰安婦の唄―祖国と女達―」など戦争の悲惨さを訴える曲に拍手がわきました。
第二部では、雑誌『上方芸能』代表の木津川計さんが講演しました。日本文化の根底に「やさしさ」があることを指摘する一方、若い命を特攻で散らせた予科練のビデオを上映して、戦争は「やさしさ」とは正反対で、美辞麗句を使って人に死を強いるものと強調。「気がついたら戦争が近くに来ていたということのないように、憲法九条を守ろう」と語りました。
同連絡会事務局長の坂田宗彦弁護士が「九条の大切さを広めよう」と行動提起。参加者は拍手でこたえました。
(2007年11月02日,
日本機関紙協会埼玉県本部はこのほど、第三十六回総会を開き、県立平和資料館について「民主的運営つらぬき、歴史の真実と真摯(しんし)に向きあい県民本位の平和資料館となるよう期待します」と題する決議を採択しました。
「慰安婦はいたが従軍慰安婦はいなかった」という上田清司知事の発言を受け、平和資料館運営協議会が展示表記を「従軍慰安婦」から「戦時中『慰安婦』問題」に変更するよう提案していることについて同決議は、委員から軍の関与があいまいになるとの意見が出ていると指摘。「県民の運動で実現した埼玉県平和資料館が、真に戦争の悲惨さと平和の尊さを伝えていく役割を果たすことを願ってやみません」とのべています。
(2007年11月02日,
大阪憲法会議・共同センター草の根交流集会が十月三十日、大阪市のエル・おおさかで開かれ団体、地域から五十九人が参加しました。
日本共産党大阪府委員会の宮本たけし副委員長が情勢報告。参院選での自民党大敗・与野党逆転のもと、二回の会合で四千九百万円も使ったことが明らかになった「『美しい国』会議」が解散する一方、新テロ特措法をめぐって緊迫する国会情勢などを紹介し、「『戦争でテロはなくせない』が広く世論になっていることに依拠して、新テロ特措法は許さないの声を広げよう」と呼びかけました。
討論では、「九の日」に憲法Tシャツを着て仕事をしている福祉保育労組の青年、元日本軍「慰安婦」に会いに韓国訪問した神戸女学院大学の学生を招いて憲法フェスティバルを開いた北区九条連絡会、真宗大谷派やYWCAの重鎮も参加して有権者比23%、八万百七十九人の憲法署名を集めた堺共同センターの取り組みなどが紹介されました。「『給油活動の先で何が起きているのか。空爆で罪もない子どもや女性が亡くなっている』と訴えると、高校生や高齢者が次々署名してくれた」との発言も。
筆保勝事務局長が「あらゆる運動に九条を守る運動を合流しよう。梅田章二さんの勝利で、憲法を生かす府政をつくろう」と訴えました。
(2007年11月01日,
情報は消されていた…。薬害肝炎に感染させられた四百十八人の情報を、本人に知らせず地下倉庫にしまい込んでいた厚生労働省。実は、うち二百七十四人分を捨てていました▼担当局長は以前、「写しが残っている」といっていました。しかし、日本共産党の小池晃参院議員が確かめると、原本も写しも「残っていない」。いったい、どういう感覚なのでしょう。患者一人ひとりにとっては、「命の記録」なのに▼防衛省も資料を捨てます。補給艦「とわだ」の航海日誌を、きちんと残していません。「とわだ」は、アメリカ率いる「不朽の自由」作戦に加わり、インド洋での給油などに携わった船です。肝心な時期の記録を処分したそうです▼こう相次ぐと、第二次大戦が終わったころまでさかのぼって考えてしまいます。敗戦と決まると陸軍省や海軍省は、日本軍の書類を焼却するよう指示しました。「天皇の手によって書かれた書類を集め、…崇拝の念をもって焼却せよ」「機密文書と重要書類は、もっている者が焼却せよ」▼いずれも、陸軍です。戦争責任の追及をおそれての証拠かくしで、日本軍「慰安婦」にかかわる記録も焼きました。「慰安婦」にさせられた女性たちにとっては、やはり「命の記録」だったはずなのに▼戦争中の記録を焼き捨てたのは、日本だけではありません。しかし、いまに続く記録かくしに、日本の権力の過去をひきずるさまが重なってみえてきます。罪の意識をもたない、反省しない、責任をとらない…。
( 2007年11月01日,
あいち女性九条の会は二十八日、名古屋市中区でつどいを開き、約二百五十人が参加しました。
三人の会代表があいさつ。青木みか・名古屋女子大学名誉教授は「沖縄での地上戦や原爆、国内外二千万人の犠牲者など戦争の残酷さは、語り継がないかぎり風化する。私は二度と戦争はしたくない≠フ思いで、憲法九条を心に刻んでいる」と訴えました。
俳優の山田昌さんは、戦争で飢えに苦しんだ体験から「戦争だけはいやだという思いで、九条の会に参加している」と話しました。野間美喜子弁護士は「手づくりで息長く、愛する憲法を変えさせない運動を、若者も年配者も、みんなで連帯してすすめよう」と呼びかけました。
高校生の阪野未彩季さん(17)がショパンの曲をピアノ演奏。「原爆資料館を見学し戦争のひどさを感じた。微力でも、平和のために憲法九条を守りたい」と発言しました。
アメリカで「9・11テロ」に遭遇したジャーナリストの堤未果さんが講演。「子どもを戦場に送らないために必要な三つのこと」として、憲法九条を守る、格差をなくし社会保障改悪をストップさせる、言論の自由を守ることを訴えました。
舞台女優の織茂秀子さんは、芝居を通じて知り合った韓国在住の元日本軍「慰安婦」たちに心を寄せた自作の詩「コッパラン―花吹雪―」を朗読しました。
(2007年10月31日,
「非核の政府を求める宮城の会」は二十六日、仙台市で第十六回総会を開き、二十人が参加しました。
松野豊代表世話人があいさつのなかで、「県内の三十七ある自治体のうち二十二の自治体が非核自治体宣言をしている。議会で核兵器の廃絶を求める決議をあげているのは五つある。大崎市、多賀城市、登米市、栗原市、柴田町、川崎町、山元町、利府町、加美町、南三陸町の十自治体が宣言をあげるように運動を強めなければならない」と訴えました。
松野氏は、国に原爆症の認定基準を抜本的に改定するよう求める百万人署名をすすめていることにふれ、原爆症を軽く見る国の認識は過去の戦争や「日本軍慰安婦」問題への態度と一体のものであると強調し、この署名の取り組みを強化するよう呼びかけました。
杉山茂雅代表世話人が、情勢と活動の報告をし、方針を提起しました。活動方針では、核廃絶の世論を高め、改憲策動に反対し、非核三原則の法制化をめざし、仙台港や塩釜港に入航する船舶に非核の証明を求める「神戸方式」を採用するよう県に働きかけていくことを確認しました。
(2007年10月28日,
戦場ならレイプは許されるのだろうか。その問いに「そんなわけはないだろう、戦時だろうが平時だろうが、レイプは許されるものではない」と答える人は多いはず。では「慰安婦」は必要だったのか、との問いにはどう答えよう?レイプを防止するためにはやむを得ない制度だったのだろうか。従事した女性たちは希望して行ったのだから被害者ではない、のだろうか……。
「慰安婦」問題を考えるときに避けては通れないもの、それが「戦場の性をどう考えるか」、「性そのものをどう考えるか」という問題だろう。著者たちは、長年かけて性教育に取り組んできた経験を活かし、本書でそうした問題提起に、まっすぐに向き合っている。
各章では、様々な視点を取り入れる。被害者自らの声として、韓国に住む元慰安婦のハルモニたちの訴えを聞く一方、加害者側からの告白として、一九九二年に日朝協会が行なった「『慰安婦』ダイヤル110番」に寄せられた元兵士の聞き取りや、二〇〇〇年に行われた女性国際戦犯法廷での元兵士の証言、文学作品に見られる「慰安婦」像を掲載する。こうした両面からの視点は、現在生活する私たちの責任も考えさせる。本書では戦後世代の責任の取り方の一つとして、授業を通しての教育を具体的に提示する。「証言を読んで、体が震えた」「人間としてやってはいけないことをやった」。授業を受けて初めて、生徒たちの中で「戦争の記憶」との葛藤が始まる。
著者は、本書の中で、戦前の活動家、山本宣治の言葉を引用している。「無知と因習の性の鎖≠他の鎖もろとも断ち切らねばならぬ。人が切ってくれるのではない。我々自身が切っていく」。今、その鎖を断ち切るために、「彼女たち」は小さな声をあげ続けてきた。今度は私たちの番だ。日本にいる私たち自身が「慰安婦」問題を乗り越えることが、この鎖を断ち切るひとつの契機になるのではないだろうか。
評者 金子美晴 ハイナンNET
たかやなぎ・みちこ いわもと・まさみつ。
( 2007年10月28日,
日本共産党広島県委員会は二十一日、広島市中区で党の綱領や日本の進路について語り合う集いを開き、九十人が参加しました。吉川春子前参院議員が「福田内閣と日本の進路―くらしと平和を考える」と題して講演しました。
吉川氏は、今の日本の政治の三つの異常(@過去の侵略戦争を正当化するAアメリカいいなりB極端な大企業中心主義)をただす改革の方向を国会活動の経験を踏まえて話しました。
「従軍慰安婦」問題や沖縄戦「集団自決」の教科書検定問題をめぐって、侵略戦争を正当化する「靖国」派を追いつめている状況を語り、「日本共産党の議席が増えなければ日本の政治は良くならないと、声を大にして国民に伝えよう」と呼びかけました。
イラクの現状や日本の財政問題、若者の雇用、統一戦線や後援会の活動など、参加者からの質問にていねいに答えた吉川氏は、最後に日本共産党への入党を訴えました。
(2007年10月23日,
「北区憲法フェスティバル」が二十一日、大阪市の大淀コミュニティセンターで開かれました。憲法を守ろうと地域で活動している各団体が呼びかけたもので、昨年六月に続き二回目。約三百人が参加しました。
メーンステージでは、府内の高校のフォークソング部やダンスバトン部が全国大会で多く表彰された実力を披露。吹奏楽や合唱も行われ、会場は大きな拍手と歓声で沸きました。
「戦争させない日本へ」と題して講演したのは「九条の会」事務局の渡辺治・一橋大教授。「自衛隊を、戦争できる普通の軍隊にしたい」自民党などの改憲理由を論破し、九条が平和のために「役立っている」ことを明らかにしました。その上で、改憲手続き法が施行される三年後を「静かに待っている」改憲派の狙いを阻止するため、「保守層も含めた大きな輪をつくろう」と訴えました。
また、日本軍元「慰安婦」が住む韓国の「ナヌムの家」を訪問した大学生が報告し、手作り品のバザーも開かれました。
友達と二人で来た女子高生(17)=高槻市=は、「(演奏などで)知ってる曲もあったから楽しめた」と語ります。「自分の子どもに残せるもので、ぱっと浮かぶのが九条だし、(戦後)六十年間、戦争しなかったのは九条のおかげ。誰も人は殺したくない」。
(2007年10月23日,
文部科学省で、沖縄戦の検定意見原案(原議書)を作成した日本史担当の教科書調査官は4人です。
そのなかに、過去の日本の侵略戦争を美化・肯定する「新しい歴史教科書をつくる会」教科書の監修者で、東京大学文学部(国史学科)教授だった伊藤隆名誉教授と、深い関係にある人物が二人いることが分かっています。
教科書調査官・村瀬信一氏と、主任調査官・照沼康孝氏の二人です。いずれも伊藤氏の教え子です。
布村幸彦・文部科学省大臣官房審議官は国会答弁の中で「伊藤教授と、教科書調査官になる前に科研費の研究グループのメンバーに加わっていた者がおり」(6月18日、衆院沖縄北方問題に関する委員会)と、伊藤氏と共同研究していた人物が教科書調査官になったことを認めています。
調査官の任命・採用にあたっては採用試験はなく、「調査官OBや学会関係者などからの推薦の形」(文科省教科書課)です。人選は同省のさじ加減ひとつというわけです。
なぜ今になって軍強制を削除したのか――。本紙の取材に、村瀬氏は「答えられない」と拒否しています。
安倍前首相時代の官邸サイドの動きとも符節が合っています。
日本会議国会議員懇談会の事務局長(当時)で、日本の戦争を正しかったとする勢力「靖国」派の中心メンバー、下村博文衆院議員が安倍内閣成立直前の昨年8月末、こう発言しました。
「安倍さんの教育改革は官邸機能を強化して行われる」「自虐史観に基づいた歴史教科書も、官邸のチェックで改めさせる」
その1カ月後、安倍内閣が誕生すると、下村氏は官房副長官に起用され、官邸に座ったのです。
軍強制を削除させた歴史教科書の検定意見の原案がつくられたのは、その1カ月後です。
「靖国」派は、歴史教科書について、日本軍「慰安婦」、南京大虐殺、沖縄戦での「集団自決」にかかわる記述を敵視し、旧日本軍の犯罪性、戦争の侵略性を示す事実を隠そうとしてきました。
(2007年10月21日,
沖縄戦の「集団自決」について日本軍の強制にかんする記述を削除させた教科書検定の撤回を求める運動に対し、十六日の埼玉県議会本会議で保守系無所属の鈴木正人議員(刷新の会、志木市)が、「日本の名誉と誇りを守るためにも」受け入れられないと発言しました。議員席からも発言に迎合する声が上がり、議場は異様な空気に包まれました。
問題の発言は、沖縄県民の声にこたえて検定意見撤回の意見書提出を求める請願に反対する討論です。同請願の採択を主張したのは日本共産党と社民党。自民、民主、公明などが継続審査でいいとしたため、国への意見書は今議会では実現しませんでした。
こうしたなかで継続審査にも反対し、「不採択すべきとの立場で討論する」と切り出したのが鈴木議員です。「集団自決」について日本軍の強制を否定したうえで、九月二十九日の沖縄県民大会の参加者数を大幅に少なく見積もってみせました。自民党議員から「そうだ」と応援の声が次々とあがり、まるで自民党議員が討論しているような光景となりました。
発言は長引き、吉田弘議長が早く切り上げるよう指示するほどでした。鈴木議員は「最後に、民主党の皆さんに一つだけ言いたい」と声を張り上げ、検定見直しを求める民主党中央の方針に矛先を向けて、「党中央のこうした方針を簡単に見過ごしていいのか」と呼びかけました。突然の発言に民主、自民両議員から野次が飛び交い、議場は騒然となりました。
鈴木議員は今年八月の知事選では、民主党の若手県議らといっしょに上田清司知事陣営の運動員として活動しました。「慰安婦」問題で軍の関与を否定した上田知事発言(二〇〇六年六月県議会での答弁)に続き、多大な犠牲を国民に強いた侵略戦争に無反省な暴言が県議会議場で飛び出した形です。歴史と世論に逆行する言動に、厳しい監視が求められています。
(埼玉県・林秀洋)
(2007年10月19日,
沖縄戦「集団自決」検定意見の撤回、記述回復を求め、9・29沖縄県民大会実行委員会の代表が十六日、国会を訪れ、日本共産党の志位和夫委員長に要請書を手渡し、懇談しました。この日、代表団は手分けして各政党代表をはじめ、全国会議員への要請をおこないました。志位氏との懇談には、伊波常洋県議(自民)や島袋宗康元参院議員ら十一人が参加。日本共産党からは石井郁子、穀田恵二、赤嶺政賢の各衆院議員、仁比聡平参院議員が同席しました。
志位氏は冒頭、「教科書検定問題での沖縄県民の島ぐるみのたたかいに心から敬意を表したい」とあいさつしました。
政府が「県民の声を重く受け止める」としながら、検定意見の撤回は「政治的介入になる」と回避していることが一番の問題と指摘。一方で、赤嶺議員の予算委員会(十一日)の質問の中で、教科書検定に最初に不当な政治的介入≠おこなったのが文科省の教科書調査官の意見書であったことが明白になった、と強調しました。
志位氏は、検定意見が文科省の教科書調査官の個人の見解で出され、教科書審議会でまともな議論もなしにまとめられたことを指摘し、「超党派の沖縄県民の要求は政府の不当な介入を取り消し、歴史的事実に直せ、という至極まっとうなもの」と激励しました。
代表団メンバーの県老人クラブ連合会の知花徳盛事務局長は、沖縄戦当時、二歳半の妹の泣き声がうるさいと、壕(ごう)の外に出るようにいわれ、家族で壕を出た後に祖父を艦砲射撃で亡くした自身の体験を語りながら、検定意見の撤回を求めました。
県遺族連合会の仲宗根義尚会長も、沖縄戦当時十歳だった体験を交えながら、「二十一世紀をつくる高校生に沖縄戦の悲惨さをありのままに伝えたい。歴史的事実を伝えて平和を希求する運動につなげたい」と思いを語りました。
また、沖縄弁護士会の新垣剛会長は「(日本共産党は)検定意見をつきつけて記述を修正したこと自体が政治的介入だとおっしゃっておられた。政治的な介入自体を取り消していただく、そういう方針でやっていただきたい」と訴えました。
最後に志位氏は、教科書問題では「内に対しては沖縄戦の記述問題があり、外に対しては『従軍慰安婦』の問題がある」と指摘。「いずれも戦争を美化するという点では一つの流れのなかの出来事」だとして、「本土と沖縄が連帯して歴史のわい曲を許さないためがんばりたい」と強調しました。
志位氏は懇談が終わった後も、「この問題では私たちの間に垣根はありません」と述べ、代表団を激励しました。(15面に関連記事)
( 2007年10月17日,
神戸市内で十四日、日本軍「慰安婦」問題について集会が開かれ、六十人が参加しました。フィリピンの元「慰安婦」が証言する「旧日本軍性奴隷問題の解決を求める証言集会『消せない記憶』」(十一月十八日)のプレ企画として実行委員会が主催したもの。
講演した日本共産党の吉川春子前参院議員は、五十年の沈黙を強いられてきた元「慰安婦」の人たちや女性国際戦犯法廷のとりくみ、国会で野党が共同して「戦時性的強制被害者問題の解決の促進に関する法律案」を提出したことなどを紹介。政府は何の痛みも感じていないし反省もしておらず、元「慰安婦」の人たちがどんどん亡くなっていて一刻の猶予も許されないと指摘し、「この問題を解決しないと、日本は女性の人権、民主主義が確立しない国、世界でも信頼されない国になってしまう」と強調しました。
主催者を代表して兵庫県アジア・アフリカ・ラテンアメリカ連帯委員会の貫名初子会長が、証言集会の成功と、同法案の早期成立を求める請願署名への協力を訴えました。
(2007年10月16日,
女性団体などでつくる「売買春問題ととりくむ会」は十二日、日本軍「慰安婦」問題で、福田内閣に謝罪と賠償を求める要望書を出しました。
要望書は「女性を性搾取・性奴隷とした過去の蛮行を認め、謝罪し、償うことは国際社会において日本の採るべき当然の行動」と指摘しています。
( 2007年10月14日,
「うそを真実と言わないでください」。高校生の訴えが胸をうちました。沖縄戦「集団自決」検定意見の撤回を求める県民大会(9月29日、宜野湾海浜公園)。県民10人に1人、11万人が参加する空前の規模となり、高校生や教師をめざす大学生の姿が目立ちます。歴史をゆがめる勢力に島ぐるみで抗議の声をつきつけました。
前田泰孝記者
「醜くても真実を知りたい。学びたい、そして伝えたい」
壇上からの若い決意に惜しみない拍手が寄せられました。
訴えたのは県立読谷(よみたん)高校の津嘉山拡大(つかやま・こうだい)さん=3年生=、照屋奈津美(てるや・なつみ)さん=3年生=の二人です。
「手榴弾(しゅりゅうだん)を配った日本軍は自決を強制していると思います」と津嘉山さん。「ガマにいた人、肉親を失った人たちの証言を否定できるのですか」と照屋さん。凛(りん)とした声が会場に響き渡りました。
読谷村には住民85人が犠牲になった自然洞くつ「チビチリガマ」があります。同高校の平哲男教諭は「きょうは模擬試験を終えて、生徒約150人が大会に参加した」と語りました。
会場で県立南部商業高校の中山真依さん=3年生=は「教科書を変えようとする人たちは、おじぃ、おばぁに面と向かって説明できるの?」、県立那覇国際高校の赤嶺友里恵さん=2年生=は「教科書がころころ変わるのは困る。勉強するのは私たち。勝手に決めないで!」――きびしい口調で削除に抗議しました。
沖縄国際大学の教職課程ゼミの学生は「真実が知りたい」などと大書されたパネルを多数持って参加。
新里豪さん=4年生=は「小中高生にとって教科書の存在は大きい。教職を目指す者として、見過ごすことはできません。父親も『ぜひ行って来い』と応援してくれました」と声を弾ませます。
糸満市立高嶺中学校の玉城寛之さん=3年生=は、沖縄戦最後の激戦地、糸満市摩文仁(まぶに)から大会会場までをつなぐ「平和の灯」リレーの第一走者を務めました。「僕は来年から高校生。ウソは教えてほしくない。多くの人に走りを見てもらって、思いを示したい」と語りました。
全41市町村と県が決議
大会は県民団体、労組、政党、行政など22団体が実行委員会をつくり、思想信条を超えた文字通り「島ぐるみ」となりました。11万人という規模は沖縄の本土復帰(1972年)以来最大です。独自にバスを仕立てた人たちなど、参加者は会場の外にあふれました。
今年3月末、文部科学省は「集団自決」に日本軍が関与したことを示す記述を高校の歴史教科書から削除させる検定を実施しました。
県下41全市町村議会が検定意見の撤回を求める決議を上げ、県議会も2度決議しました。それでも県民の声に耳を傾けない国。県民はとうていがまんならないと立ちあがったのです。
実行委員長の仲里利信・県議会議長は「全県民一丸となって断固ノーを」、仲井真弘多知事も「日本軍の関与は隠せぬ事実だ」とあいさつしました。
大会は、軍関与を示す記述の回復をただちに行うよう求める決議を採択しました。
日本共産党からは市田忠義書記局長、赤嶺政賢衆院議員、仁比聡平参院議員らが参加しました。
文科相、見直し検討
渡海紀三朗文部科学相は3日、上京した県民大会代表と面会し「関係者が知恵を出し合って、みなさんのお気持ちを反映させることができないか」とのべ、記述見直しの可能性に言及しました。
仲里大会実行委員長(県会議長)、仲井真県知事らの要請にこたえたものです。
歴史教科書執筆者からは「訂正申請」の動きが起きています。その一人、石山久男さん(歴史教育者協議会委員長)は「歴史認識の問題であれだけの県民が集まった意義は大きい」と語ります。
沖縄戦「集団自決」は日本軍「慰安婦」、南京大虐殺とともに旧日本軍の戦争犯罪、戦争の侵略性、国民を守らない軍の本質を語る事実です。
それだけに日本の過去の戦争を正しかったと美化・肯定する右派勢力「靖国」派は、これらの事実の抹殺、わい曲に躍起となってきました。
県民大会の成功はこうした逆流を押しもどす大きな力となっています。
(2007年10月07日,
文部科学省の教科書検定で沖縄戦での「集団自決」に日本軍の強制があったとする記述が削除された問題が、政治の熱い焦点となっています。
先月二十九日、十一万人が参加した沖縄県民大会は、日本軍の強制を削除した検定意見の撤回と記述の回復を県民の総意として求めました。
福田首相は衆参の本会議代表質問で問われ、「沖縄県民の思いを重く受け止め、文部科学省でしっかり検討している」と答えましたが、文科省の態度は教科書会社から訂正申請がなされれば適切な対応をとる≠ニいうものです。問題の所在をあいまいにする、あまりに無責任な対応です。
政府の自作自演
衆院代表質問で志位和夫委員長が明確に指摘したように、この問題を引き起こした責任は政府・文科省にあります。
二〇〇八年度から使用する高校教科書の検定に際し、教科用図書検定調査審議会の場に「沖縄戦の実態について誤解するおそれのある表現である」という調査意見書を持ち込んだのは、文科省の教科書調査官自身です。
審議会ではたいした議論もなく、この意見どおりの検定意見が付され、教科書から「日本軍によって集団自決に追い込まれた住民もあった」とか「日本軍に集団で自決を強いられたものもあった」などという日本軍の強制に関する記述が削除されました。
政府自身がこの問題についての答弁書で、「審議会では…委員から特段の異論はなく、当該指摘と同じ内容の検定意見を付すことが適当としたものである」と認めています。記述削除は、いわば文科省の自作自演です。
それを、教科書会社から訂正申請があれば…≠ネどと、まるで教科書会社や執筆者の責任であるかのようにいうのは、本末転倒です。
文科省の責任で、間違った検定意見を撤回し強制記述を回復させるのが当然です。
見過ごせないのは、歴史的にも県民の体験からも明々白々の事実を、文科省がなぜ削除したかという問題です。
沖縄戦にかかわる教科書記述をめぐっては、一九八一年度の検定で日本軍の住民虐殺記述が削除される事件が起きました。島ぐるみの抗議行動に発展し、文部省(当時)はついに是正表明に追い込まれる事態となりました。その際、小川平二文相はこう表明しました。
「筆舌に尽くしがたい苦しみを味わわれた沖縄県民の方々の心の痛手ということに、十分な配慮がなされなければならない…次の検定の機会に県民の方々のお気持ちに十分配慮して検定をおこなうつもりです」(八二年九月十六日、参院決算委員会)
以降、文科省が建前としてきた沖縄戦に関するこの基本的な認識が、昨年の教科書検定に際して、突然、乱暴に覆されたのです。
背景に右派勢力
符節の合う、いくつかの動きがありました。ひとつは、戦争賛美に歴史をゆがめる「新しい歴史教科書をつくる会」につながる右派勢力が、〇五年以来、沖縄戦の「集団自決」での日本軍の責任を消し去ろうというキャンペーンをはじめたことです。
これに連動するように、同年、元日本軍の隊長らが作家の大江健三郎氏や岩波書店を名誉棄損で訴えました。この一方的訴訟を、文科省は「当時の関係者が訴訟を提起している」と検定意見の根拠のひとつとしてあげています。
昨年九月、「戦後レジームからの脱却」をかかげた安倍政権が誕生しました。戦争賛美の「靖国」タカ派政権のもと、文科省の担当官が右派勢力の意をくんで、南京大虐殺や日本軍「慰安婦」問題に続き、歴史の書きかえを沖縄戦でも一気に成し遂げようと策動した結果ではないのか。教科書検定に対する、これほど乱暴な政治介入はありません。
いま政府・与党や一部右派メディアは、検定意見の撤回と記述の回復を求める沖縄県民や広範な世論にたいし、「政治介入」などと悪ばを投げかけていますが、最初に政治介入したのはだれなのか。
沖縄県民や広範な世論が求めているのは、この政治介入を取り消す措置をとれということです。責任のがれの「政治介入」論は成り立ちません。
(近藤正男)
( 2007年10月07日,
(2日)
【歴史教育】
田村琢実議員(自民) 新しい教育基本法が施行された。国家が行う教育の目的は「愛国心あふれる国民を育成すること」と考えるし、新教基法の「(教育の)目標」にも同様の規定がある。歴史教育においては日本人がいかに高潔な精神を持ち合わせた民族かを学ぶことが必要だ。歴史教育を根本から変える必要がある。真の歴史教科書の採用、(小中学校)社会科教育の見直し、高校の日本史必修化により教育の目的を達成できるのではないか。
上田清司知事 私は常日ごろから、日本の歴史や文化には誇れるものがたくさんあると強調している。歴史(教科書)を県で作ったらという議論もあり、いい提案だと思う。少数の声の大きいグループが特定の著作者やグループにすごい攻勢をかけてくるということもあるので、教育委員会の特別な人に編集してもらうのは困難な状況と感じている。いずれにせよ教育委員会の管轄だ。
島村和男教育長 (小中学校での)単独教科「日本史」を作る特区については市町村教育委員会の判断によるが、地理・公民との社会科全体の構成バランスもあり、慎重に取り扱うべき課題と考える。
【国民投票法】
田村議員 国民投票法が制定、公布された。憲法の規定する(改定手続きの)法律ができたことに、国会議員に敬意を表す。本法を受けた準備状況は。
高篠包・選挙管理委員長 現在のところ関係法令の整備がなされておらず、事務手続きの詳細が不明なので具体的な準備には入れない状況。
【県平和資料館】
小野克典議員(刷新の会) 県平和資料館運営協議会が先日開かれ、資料館側が「従軍慰安婦」から「従軍」を削除する方針を示したが、委員全員の一致した結論にはならなかったと聞いている。歴史的事実としてあったかどうか分からないものまで次世代まで延々と謝罪と賠償を求められることには違和感を覚える。今後はどういう形で展示内容(変更)の結論付けをするのか。
塩川修総務部長 運営協議会は九月十三日に開催された。歴史的事件の名称表記について変更案を提示した。「従軍慰安婦問題」から「戦時中の慰安婦問題」と提示したところ、「従軍慰安婦問題」とすべきという意見と提示案でよいとする意見が出た。今後協議会の意見を十分参考にするとともに、政府見解や現行教科書の記述内容に配慮しながら、平和資料館として検討し判断する。
小野議員 県平和資料館では戦後日本の国際貢献が盛り込まれ、日本赤十字の活動内容などが展示されているが、なぜかPKO活動など自衛隊の活動が無視されてまったく展示されていない。しっかりと展示すべきだ。
上田知事 自衛隊の海外活動についてあってもいいという指摘は、私もそう思う。カンボジアでの平和維持活動などは国連決議にも従い、日本の活躍が高く評価された。県平和資料館は庶民の視点を中心に、埼玉における戦争のありのままの姿を示すことを基本方針として展示されている。今後国際平和貢献活動の常設(展示)化にあたっても、この基本方針に基づき世界平和に貢献する県民や県の活動を中心に展示していくべきものと考える。
(2007年10月05日,
神奈川、千葉参加者
十一万人が集い、「教科書検定意見撤回」に向けた沖縄県民の意思の大きなうねりを示した九月二十九日の「県民大会」。神奈川、千葉県などから参加した人たちは前日の二十八日、「集団自決」があった「悲劇の島」・渡嘉敷島(とかしきじま)を現地視察しました。そこで感じたことは―。
渡嘉敷村は那覇市から西に約三十`、断がい絶壁に囲まれる島です。一九四五年三月末、米軍は数百の艦隊で沖縄本土攻撃のための「兵たん地(補給基地)」として確保する目的で上陸、占領しました。
同年三月二十八日、日本軍と住民は米軍に追いつめられ、住民は、親族・縁者が車座となって日本軍に配られた手りゅう弾で「集団自決」を強要されました。当時の人口約千人で、三百人以上の住民が犠牲となり、小川の清流は血の流れ≠ノ変わったといいます。
同年四月二日付ロサンゼルス・タイムズは、現場に踏み込んだ陸軍撮影兵の言葉として、「いままで目にしたものの中でもっとも凄惨(せいさん)」と記述しました。
連帯と激励
この日、安保破棄中央実行委員会の早坂義郎事務局長らは、渡嘉敷村の小嶺安雄村長にあて「『集団自決』の実相を将来に伝えてください」とする連帯と激励の要請文を渡しました。松本好勝副村長が応対し、軍強制による「集団自決」について、「これは事実ですから(政府は)後世に残していただきたい」と案内しました。
島の小高い山の上にある「集団自決の碑」の背後に、うっそうと茂る雑木林を数十bわけ入ると「集団自決」の現場につきます。樹木におおわれ、日の入らない盆地の眼下には、きれいな小川が流れていました。
案内を終えた副村長は「この場所に『二度ときたくない』という村民がたくさんいる…」とつぶやきました。
副村長によると、沖縄戦を経験した村民で存命なのは人口(七百五十人)のおよそ二割。六十二年が過ぎたいまも、「(集団自決に)ふれたくない…」と口をつぐむといいます。
学び知らせる
神奈川県茅ケ崎市から参加した元小学校教諭・福田やよいさん(62)は「あんな寂しい場所で『なぜ自分が死なないといけないのか』と思った人もいただろうに…悔しかったでしょうね」と涙ぐみました。教育現場に押し寄せる歴史のわい曲に「今の教育は本当にこれでいいのか」と改めて思ったといいます。
神奈川県大和市から参加した大学生(20)は「『集団自決』は自分が直接見ていないからこそ、しっかり学んで現実を知らせていかないといけない」と話します。「教科書検定は『集団自決』だけの問題ではない。『慰安婦』問題、南京虐殺、日本が行った戦争行為すべてにかかわる。世界史のなかで日本の歴史を考え、一つひとつの事件を学び、自分のものとしたい」と力を込めました。
(2007年10月03日,
「グループ・アイズLove&Peace展」が都内で開かれ、「愛と平和」をテーマにした作品を展示しています。七日まで。入場無料。
グラフィックデザイナーや画家などで結成したグループ・アイズ。二十回目となる今回は、二十代から七十代の二十六人の作品が並びました。
日本軍「慰安婦」や戦争、憲法九条をテーマにしたものから、家族や恋人の何気ない日常の光景などを油絵やイラスト、写真や陶芸、木工などで表現しています。共同制作では、それぞれの愛と平和の思いをプリントした二十六枚のTシャツを展示しています。
デザイナーの前山研一郎さんは、福田新首相や歴代首相の風刺画を出展。「改憲の流れを目指してきた本質をあばこうと描きました。共同制作は、会場内展示にとどまらず、皆さんに大いに活用してもらいたい」と話していました。
展示は渋谷区代々木の全労済会館地下一階スペース・ゼロギャラリー(JR新宿駅南口から徒歩五分、都営新宿線・京王新線六番出口から徒歩一分)で。
( 2007年10月03日,
十一万人が集い、「教科書検定意見撤回」に向けた沖縄県民の意思の大きなうねりを示した「県民大会」に先立つ九月二十八日、神奈川、岐阜、千葉県などから参加した人たちは「集団自決」があった「悲劇の島」・渡嘉敷島を現地視察しました。そこで感じたことは―。
(竹原東吾)
渡嘉敷村は那覇市から西に約三十`、断がい絶壁に囲まれる島です。一九四五年三月末、米軍は数百の艦隊で沖縄本土攻撃のための「兵たん地(補給基地)」として確保する目的で上陸、占領しました。
同年三月二十八日、日本軍と住民は米軍に追いつめられ、住民は、親族・縁者が車座となって日本軍に配られた手りゅう弾で「集団自決」を強要されました。当時の人口約千人で、三百人以上の住民が犠牲となり、小川の清流は血の流れ≠ノ変わったといいます。
同年四月二日付ロサンゼルス・タイムズは、現場に踏み込んだ陸軍撮影兵の言葉として、「いままで目にしたものの中でもっとも凄惨(せいさん)」と記述しました。
連帯と激励
この日、安保破棄中央実行委員会の早坂義郎事務局長らは、渡嘉敷村の小嶺安雄村長にあて「『集団自決』の実相を将来に伝えてください」とする連帯と激励の要請文を渡しました。松本好勝副村長が応対し、軍強制による「集団自決」について、「これは事実ですから(政府は)後世に残していただきたい」と語りました。自ら早坂さんらを「集団自決の碑」に案内しました。
島の小高い山の上にある「集団自決の碑」の背後に、うっそうと茂る雑木林を数十bわけ入ると「集団自決」の現場につきます。樹木におおわれ、日の入らない盆地の眼下には、きれいな小川が流れていました。
案内を終えた副村長は「この場所に『二度ときたくない』という村民がたくさんいる…」とつぶやきました。
副村長によると、沖縄戦を経験した村民で存命なのは人口(七百五十人)のおよそ二割。六十二年が過ぎたいまも、「(集団自決に)ふれたくない…」と口をつぐむといいます。
学び知らせる
神奈川県茅ケ崎市から参加した元小学校教諭・福田やよいさん(62)は「あんな寂しい場所で『なぜ自分が死なないといけないのか』と思った人もいただろうに…悔しかったでしょうね」と涙ぐみました。教育現場に押し寄せる歴史のわい曲に「今の教育は本当にこれでいいのか」と改めて思ったといいます。
神奈川県大和市から参加した大学生(20)は「『集団自決』は自分が直接見ていないからこそ、しっかり学んで現実を知らせていかないといけない」と話します。「教科書検定は『集団自決』だけの問題ではない。『慰安婦』問題、南京虐殺、日本が行った戦争行為すべてにかかわる。世界史のなかで日本の歴史を考え、一つひとつの事件を学び、自分のものとしたい」と力を込めました。
早坂さんは、県民大会に参加した感想を次のように語りました。
「歴史的な集会に立ち会えて感激した。私たちの基地再編反対運動にもつながる勇気をもらった」と話します。「『集団自決』の生き地獄≠学んであらためて、日本を『戦争する国』にしてはならないと思った。沖縄県民の強い意思を全国に伝えること。私たちに与えられた任務だと思います」
(2007年10月02日,
「憲法九条の会inとやま」は九月二十九日、富山市内で結成二周年記念講演会を開きました。百人が参加しました。
富山国際大学准教授でハンセン病市民学会事務局長の藤野豊氏が「日本国憲法九条から人権を考える―ハンセン病・障害者・女性、そして部落」と題して講演しました。
藤野氏は、九条改悪の意味の一つに、「民族意識の高揚」「国内矛盾の隠ぺい」をあげました。戦時中、兵力が足りなくなったとき、ハンセン病患者や障害者まで徴兵されたことや、日本軍「慰安婦」の問題などを語りました。
社会的に差別され人権を奪われていた人たちが戦争に参加することで、「平等な日本人になれる」という幻想を政府によって与えられ、命を落としていったと指摘。現在、大学で人権を教えなくなるなど、憲法改悪の先取りのようなさまざまな動きを報告。「人権を守るたたかいは、たえず憲法九条を守ることとイコールだと考えていかなければならない」と話しました。
(2007年10月02日,
沖縄県の宜野湾市で、「教科書検定意見撤回を求める県民大会」が十一万人もの県民の参加で開かれました。沖縄県知事をはじめ行政と県民が一体になった、燃え上がるような大集会となりました。
参加者は高校教科書検定で政府が沖縄戦での「集団自決」が日本軍と無関係かのように書き換えさせたことに怒りの声をあげました。米兵による少女暴行事件に抗議して八万五千人が参加した一九九五年の県民総決起大会を上回る規模となったのは、「日本軍による強制」の記述を教科書から削除させた政府・文部科学省にたいする県民の怒りが頂点に達していることを示しています。
侵略戦争美化と一体
大会決議は、今年三月の高校教科書検定で、文科省が沖縄戦の実態を「誤解する」といって、「日本軍による命令・強制・誘導」の表記を削除したことを糾弾しました。沖縄戦で戦闘による犠牲だけでなく、日本軍による住民虐殺、「集団自決」の強制という悲痛な体験をもつ県民が検定結果に猛反発するのは当然です。
沖縄県議会と県下四十一市町村議会すべてがこの間意見書を採択し、検定結果を「歴史的事実を直視しない押し付け」と指弾し、検定撤回と「日本軍の強制による」との記述の復活を求めてきたにもかかわらず、安倍政権が拒絶した以上、県民から糾弾されるのは当たり前です。
自国民を守るはずの日本軍が沖縄県民を死に追いやり、親子兄弟が殺しあう「集団自決」を強制したことは、侵略戦争の非人間的本質を端的に示す「代表例」であり、忘れてはならない歴史の事実です。
「集団自決」は「日本軍による強制」という表現を削除したのは、日本軍が侵略した南京では「大虐殺はなかった」、「慰安婦」を「日本軍が強制した事実はない」といって侵略戦争と日本軍の行為を正当化する政府の策動と一体です。
しかも「新しい教科書」の監修者と同じ研究グループで活動していた経歴をもつ教科書調査官を今回の検定作業にかかわらせました。侵略戦争を正当化する「靖国」派が主導したことはあきらかです。
「集団自決」検定の撤回は、沖縄県民だけにとどまらず、全国民的な課題です。検定撤回を求める意見書を採択する地方議会も全国に広がってきており、こうしたとりくみを加速することが求められます。
「公式の命令がない」から日本軍の強制はなかったという政府の言い分がそもそも通用しません。各地域に駐屯している日本軍の幹部が行事のたびに住民に、米兵に捕まる前に「玉砕すべし」と訓示していたことは、生存者の証言で明白です。
体験者の証言は無視する一方で、当時の日本軍幹部の言い分だけを取り上げた検定は、「客観的な記述となるように指導をする」(八四年六月二十八日衆院内閣委員会 森喜朗文相=当時)との歴代文科省の約束にさえ反します。侵略戦争を正当化する「靖国」派のいいなりでなく、体験者の証言をこそ大事にすべきです。
受け継がなければ
教師をめざす高校生は県民大会で、「あの醜い戦争を美化しないでほしい」と訴え、採択された県民アピールは「歪められた教科書は再び戦争と破壊へと向かう」とつよく警告しました。日本の将来を託すべき高校生に誤った歴史を教えることは、うそを教えて若者を戦争にかりだした戦前の誤りにつながりかねません。「集団自決」検定は撤回させるしか道はありません。
( 2007年10月01日,
「教科書検定意見撤回を求める沖縄県民大会」を前にした28日、安保破棄中央実行委員会は同県渡嘉敷島に渡り現地調査をしました。
同島は、沖縄本島に先駆けて米軍が上陸し、300人を超える住民が「自決」を強要された島です。およそ30人の参加者は「集団自決」現場や、同島にいた朝鮮人の日本軍「慰安婦」の石碑前などで、松本好勝渡嘉敷村副村長やガイドから当時の状況を聞きました。(
神奈川県から来た藤原千絵さん(30)は「事実は事実として残さなくてはいけないと思う」と話します。
( 2007年09月29日,
戦時中、旧日本軍の性奴隷とさせられた中国人女性八人(うち二人死亡、遺族が継承)が原告となり、日本政府に損害賠償と謝罪を求めている中国海南島「慰安婦」訴訟控訴審の第二回口頭弁論が二十五日、東京高裁(浜野惺裁判長)で開かれました。原告側は、個人の賠償請求権は放棄されたとする最高裁判決の誤りを指摘しました。
今年四月に出された最高裁判決は、国および国民の損害賠償請求権を放棄した一九五二年のサンフランシスコ講和条約の枠組みを引き継ぐ日中共同声明第五項によって、中国人の個人の損害賠償請求権も放棄されているとしました。
これに対し原告側は、同条約締結後、「国民の賠償請求権を放棄することはできない」とするオランダ政府に対し、日本政府が一千万jの見舞金を支払っていることを指摘。二〇〇一年に請求権放棄の条項を問題にした法案が米下院で可決した例を挙げながら、「現在ではサンフランシスコ講和条約における請求権放棄条項に対し、個人の請求権は放棄されていないとする見解が主流を占めている」とのべました。
精神科医とともに中国の原告らを訪ねた際、被害女性らがPTSD(心的外傷後ストレス障害)であると同時に、破局的体験に基づく継続的人格障害であることが分かったとし、医療支援の必要性を訴えました。
( 2007年09月27日,
九月十二日の午後一時すぎ、私は安倍首相辞任のニュースを、ゼミの学生たちと一緒にソウルの食堂で知りました。学生のケータイ画面に映った、たった二行の記事が最初です。
「一体何があったんだろう」。たくさんの疑問が浮かびましたが、それでもそのわずかの文字は、十六名の学生たちに歓喜の声をあげさせるのに十分でした。直前の昼休みに日本大使館前で行われた「水曜集会」で、学生たちは日本軍「慰安婦」問題の解決に向け、日本の政治を変えることの決意と意欲を語ったばかりだったのです。
その後、慌ただしく福田新総裁が決まっていきますが九月二十四日の朝日新聞には、福田氏は靖国や「慰安婦」問題と結びついておらず「日本の近隣外交に柔軟性が出れば、米国にも良いことだ」というアメリカ上院外交委員会スタッフの発言が紹介されていました。私は、この問題を今回の政権交代がはらむ重要なポイントの一つだと考えています。関連する経過を振り返ることから始めてみましょう。
「慰安婦」決議原動力は何か
小泉内閣から安倍内閣への政権交代が行われた二〇〇六年、ブッシュ大統領は小泉首相やポスト小泉に対して靖国参拝を強くけん制するようになります。米下院の外交委員会が、日本政府を批判する「慰安婦」決議を初めて可決したのもこの年のことです。小泉首相の靖国参拝は〇一年から続いており、また「慰安婦」決議もそれまで何度も提出されていましたが、〇六年になって初めて日米関係の大きな焦点とされたのです。
ポスト小泉には、靖国派の「期待の星」である安倍晋三氏が就きました。その後、安倍氏は自身の歴史認識や政治信条と、これに抗する内外の圧力とのあいだで揺れ動きました。公然たる靖国参拝を回避して中国・韓国への謝罪訪問を行う一方で、「慰安婦」問題では謝罪の必要がないと述べて、世界各国を驚かせます。その発言の直後、ブッシュ大統領は今年四月の日米首脳会談で「河野談話」からの後退は許さないと安倍氏に直接くぎをさし、また米下院は「慰安婦」決議を初めて本会議で可決します。安倍首相はこうしたアメリカとの軋轢(あつれき)によっても、靖国派としての進路をふさがれていきました。
では、このようなアメリカの動きの原動力は何だったでしょう。根本には、イラク戦争を推進するアメリカ政府にとってさえ、侵略や「慰安婦」問題に対する日本政府の態度は異常に見えるという問題があります。しかし同時に、そこには、アメリカの国益をかけた外交戦略上の明白な意図もありました。
あくまで対米従属のなかで
一つは、中国など東アジアへのはたらきかけをすすめる上で、歴史問題で孤立した日本政府は役に立たないという判断です。もう一つは、日米戦争の開戦責任をアメリカに押しつける靖国派の台頭は、日米同盟に新たなきしみをもたらすのではないかという懸念です。これが〇六年以降、急速にアメリカが動く原動力となりました。その動きが日本の外交をあくまで「アメリカいいなり」の枠内に押しとどめようとするものであったことは、「慰安婦」決議を可決させた同じ下院が、「対テロ戦争」での対日感謝決議を満場一致で採択したことにも表れています。
こうして考えると、辞任した安倍首相の胸には、靖国派としての信念の実現が、アメリカという「主人」に阻まれたことへのある種の絶望感もあったかもしれません。また自民党総裁選で、より柔軟な東アジア政策をもつ福田氏への支持がただちに集められたところにも、アメリカの力が少なからずはたらいただろうと思えてきます。
戦後日本の支配層は、本来アメリカを敵視する靖国派であると同時に対米従属派でもあるという政治イデオロギー上の矛盾をもってきました。安倍政権の破綻(はたん)と福田新政権の誕生は、あくまで対米従属が優先されねばならないという日米関係の現実をあらためて強く示すものとなりました。福田内閣の前には、一層純化された対米従属の道が開かれているということです。
いしかわ・やすひろ 一九五七年生まれ。神戸女学院大学教授(経済学)。編著書に『「慰安婦」と出会った女子大生たち』ほか。
( 2007年09月26日,
男女平等の実現と女性の地位向上をめざして二十三日、第三十三回国際婦人年京都集会が京都市中京区で開かれ、百六十人以上が参加しました。主催したのは国際婦人年京都連絡会で、京都府と京都市が後援しました。
集会では、同連絡会代表の久米弘子さんがあいさつし、「政権党の総裁が決まる日ですが、私たち国民の生活が豊かで明るいものになってほしい。女性や子どもたちが二度と戦争で苦しむことのないような世の中を守る政治になってほしい」と訴えました。久米さんは、イラク戦争に日本の自衛隊が加担した実態に触れ、男女が平等でなければ平和は実現できないと運動を進めてきたと述べ、憲法九条を守る大切さを強調しました。
漫画家の石坂啓さんが「子どもの未来は大丈夫?――平和と人権が大切にされる未来を」と題して講演。安倍首相の辞任を受け「憲法九条の首がつながった」と切りだし、日本軍「慰安婦」の違法性にも言及しながら平和と女性の生きがいについて「女性が社会にものが言えるということが平和だ」と訴えました。
石坂さんは、安倍政権の一年間での防衛庁の「省」昇格や、教育基本法の改悪、「日の丸・君が代」の強制を例にした教育分野への政治介入などを取り上げ、「格差社会」が徴兵制につながる危険性などを指摘しました。いまでも「慰安婦」問題や沖縄戦での集団自決などがメディアから消されていると話し、おとなの連携・連帯が大切になってくると強調しました。
(2007年09月25日,
名古屋市守山区の区役所講堂で開催中の「第12回平和のための戦争展・守山」(同実行委員会)の特別企画として二十三日、韓国南部の統営(トンヨン)に住む、旧日本軍「慰安婦」だった金福得(キムポクトク)さん(89)が、体験を証言しました。
金さんを招いたのは、名古屋を拠点に活動する舞台女優の織茂秀子さん(57)=在日コリアン二世=。織茂さんは、「慰安婦」をテーマにした芝居を通じて金さんら韓国の元「慰安婦」と知り合い、親交を深めてきました。「演劇人として憲法第九条を守りたい。過去の過ちを繰り返さないために、ハルモニを日本にお連れした」と紹介しました。
金さんは十八歳のころ、「日本で働けば食事付きでいい給料がもらえる」とだまされ、フィリピンで「慰安婦」を強要されました。「脱走したら殺す」の脅しに逃げ出すこともできず、子どもが産めない体になりました。
金さんは、「女の幸せは、お嫁に行って子どもを産み、普通に暮らすこと」「私が受けた屈辱、悲しみ、苦しみを二度とくり返さないよう、日本と韓国とが仲良くし、子どもたちが明るく生きてゆける社会にしてほしい」と訴えました。
金さんらの支援活動を行っている宋道子(ソントジャ)さん(45)も同席し「日本政府がうそを言っても、彼女の存在が軍による強制の証拠。日本で平和を愛する皆さんに出会い、希望をもって韓国に帰ることができます」と述べました。
戦争展は、二十四日まで開かれています。
( 2007年09月24日,
「戦争」に執念をもつのは、「発信したいメッセージを作品化したいから」。
朝鮮戦争時の日本や日本軍「慰安婦」問題でも、徹底的に調べ、ストーリーを組み立て、淡々とした文を書き、絵を描きます。「日本人に生まれたのだから、日本に責任を持たなければ」。そんな思いがこもる史実を重視した作品です。
戦争への関心の土台には小学校三年のときの経験があります。授業で「おこりじぞう」を読み、南京大虐殺の映画を見ました。「地蔵が怒ったのは、原爆投下に対してだけでなく、他国を軍隊で攻めこみ罪のない人々を殺した日本に対しても」。あのとき、こう話し合ったといいます。
一九九九年、「日の丸・君が代」が国旗・国歌として法制化されたとき、初めての作品『この旗』を自費出版。この旗の下で行われた侵略戦争と、悲惨な実態を描きました。高校の先生が教材にし、生徒から「知らなかったことを、きちんと知ることができてよかった」と感想をもらいました。
普段は家事と子育てで、木版画家のパートナーを支えます。パートナーからのエールは「彼の扱うテーマは大切なもの。お金にならなくても続けてほしい」。
合間をみて、戦跡や古本屋なども巡ります。遺棄毒ガス裁判も一市民として傍聴し続けました。その縁で、『ぼくは毒ガスの村で生まれた』の表紙やカットのイラストを手がけました。
「私の絵本を手に取った方が、これをきっかけに、戦争について考えていただけたら」。優しい目と話しぶりです。
文 岩井 亜紀
神奈川県茅ケ崎市にパートナーと3歳の息子と住む。34歳
( 2007年09月21日,
腕に彫られた源氏名
国際的な怒りを広げ、米国下院で七月末、日本政府の公式な謝罪を求める決議が採択された日本軍「慰安婦」問題。戦時中の性奴隷問題に関係した人たちに話を聞きました。(本吉 真希)
「金子」。宋神道(ソン・シンド)さん(84)の左腕に残された源氏名です。刻まれてから七十年近くが経過します。
宮城県に住む在日朝鮮人の宋さんは一九二二年、朝鮮・忠清南道に生まれました。戦時中、日本軍の「慰安婦」を強制されました。「金子」はそのとき彫られたものです。
「これ、消さないでいがった。消してたら、わかんないべっちゃ、(日本軍に)何されたか。これがちゃんとした証拠だよ」
■銭湯で見られて
戦後、宋さんは銭湯で人に見られるのが恥ずかしく、針で突いて消そうとしました。「かっこ悪りいから消したかった。でも消すのも痛いんだよ」。入れ墨は宋さんの体に残りました。
「戦地に行ってお国のために働けば、独りで生きていける」―。母親の決めた結婚に耐え切れず、婚礼の晩に逃げ出した宋さん。当時十六歳。忠清南道東部の大田でだまされ、日本軍が占領した直後の中国中部の湖北省・武昌に連行されました。三八年十一月ごろでした。
武昌の慰安所は「世界館」と呼ばれていました。宋さんは日本語が理解できず殴られました。「ハイ」「ハイ」といって、軍人らのいうことを聞くのが悔しかったと話します。
抵抗すると、容赦ない暴力が加えられました。「嫌といえば、ぶん殴られるべし。ビンタで右も左もはたかれて。鼻血はしょっちゅう出たりしてやあ、死ぬかと思ったあ。鼓膜破れてんだ、この右の耳な」。右耳に手をやり、いいました。左の耳は補聴器がなければ聞こえません。
刀で脅かされたことも。わき腹や背中、足の付け根には刀傷が残っています。右わき腹の傷跡は十a余りにもなります。
源氏名の「金子」は「フクコ」という朝鮮の「慰安婦」女性が名づけ、針で彫りました。「金子」と腕に刻まれたとき、「オレなぜ、ここさ、だまされて来たのか…」。宋さんは何も考えることができなかったといいます。
■心中を迫られる
四一年以降は中国中南部の湖南省・岳州を拠点に、陝西省の長安、湖北省の応山、蒲圻などを「部隊付き」として連れ回されました。岳州に日本軍第十一軍の司令部があり、部隊が通過するときは慰安所に一日何十人も押し寄せたといいます。
帳場に払われた「慰安婦」の代金は、国防献金として集められ、宋さんたちに渡されることは一度もありませんでした。
部隊が前線に行くと、軍人が運転するトラックで連れて行かれたこともありました。「自分のおなじみがいるから、その二、三人引っ張って行って『慰安婦』やらせるわけだよ。で、終わったらまたけえってくるんだ」。銃撃戦のさなか、穴を掘って毛布を敷いただけの状況下で、強制されたこともありました。
兵士が前線に行って不足すれば、宋さんたちが軍服に鉄かぶとをかぶり、二人ずつ衛兵として立たされました。なかには中国の兵隊に殺される「慰安婦」もいました。
好きになった「慰安婦」に、手りゅう弾で心中を求める兵士もいました。宋さんも何度も心中を迫られました。
「オレは死にたくねえもの。『だめだめ、そんなことしない。戦争さ終わったら自分の国さ帰るんだ』っていって。軍人は死んでも(骨は)自分の国さ帰れるけど、朝鮮のおなごは国帰れないっちゃ。そのままそこに穴掘って埋めるだけだ」。差別は死後も続きました。
宋さんは戦争が終わると、日本軍の軍曹に「結婚して日本に行こう」と誘われました。四六年春、引き揚げ船で博多港に着くと、軍曹は宋さんを捨てました。このとき二十三歳でした。
「日本の戦争で苦労したことは恥だと思ってきた」。「『慰安婦』だったおなご」とさげすまれました。戦後半世紀、ぐっと口をつぐんできました。
■心は負けてない
それでも裁判を起こす機会を得て、九三年、東京地裁に実名で提訴。「日本の国に謝ってほしい」。この一心で裁判を始めました。
九九年の一審判決は被害事実を認定したものの、請求を棄却。翌年の二審判決は、婦人及児童の売買禁止に関する国際条約などの違反による国家責任を認めながら、除斥期間を適用して請求を棄却しました。二〇〇三年、最高裁は上告を棄却。敗訴が確定しました。
「裁判負けてもオレの心は負けてない」。宋さんが上告棄却の報告集会で、支援者に向かって語った言葉です。
わが子を育てられず
「ほかの人が子ども持って、孫持ってるのがうらやましいのよ」
在日朝鮮人の宋神道さん(84)=宮城県=は、日本軍「慰安婦」を強制された終戦までの七年間、数度妊娠し、二人の子を出産しました。妊娠七カ月で死産し、自分で埋葬したこともありました。
「みんな男の子ばかりだったんだ。それ自分で育てられないわけだ」。宋さんはわが子を中国人に育ててもらうよう、手放すしかありませんでした。「それが情けなかったの。いま生きてりゃ、六十七、八ぐらいになんでねえか」
一九九六年、中国「残留日本人孤児」が肉親探しに来日したときです。「来る人、来る人、顔見たっけ、全然似てないもの。だからわかんないっちゃ、生きてるか死んでるか。…会いてえんだ、その子と」。宋さんはテレビの映像をずっと見ていたといいます。もしかして、自分の子がいるかもしれない、と。
■生活保護受ける
宋さんは戦後、「日本に一緒に行こう」と誘われた軍曹に置き去りにされました。悲観した宋さんは走る列車から飛び降りました。死に切れませんでした。助けてくれた人が在日朝鮮人の男性に引き合わせ、男性が亡くなるまで一緒に暮らしました。
その日暮らしが続くなか男性が倒れ、宋さんは魚の加工工場や道路の工事現場、飲み屋などで働きました。空き缶拾いもしました。それでも生活保護を申請するしかありませんでした。生活保護を受けると、近所からぜいたくだと白い目で見られました。宋さんは精神的にめいりました。
宋さんは十年におよぶ裁判をたたかいながら、各地で証言活動をしてきました。それらの集会でよく歌を歌いました。「歌っこ好きなの。気持ちが気楽になって苦労も忘れられる」。でも、ほとんどが軍歌です。「そういうのしか知らないから…」
戦地では入院している負傷兵を慰問し、着物姿で歌わされました。「みーんな兵隊さんたちが泣くの。かわいそうで」
宋さんはいつも人を笑わせ、楽しませます。
「どうして、そんなに強い心でいられるのですか」。そう問いかけると、宋さんは口ごもり、不意に出た涙をふきながら話をそらしました。
女性として、そして人間としての尊厳を日本の侵略戦争によって踏みにじられた宋さん。この悔しさを「死んでも死に切れない」と表現します。
「半世紀もの間、語れなかった思いと体験を吐露し、これを受け入れてくれる人がいることを繰り返し確認するなかで、自ら被害回復の道を歩んできた」。裁判をともにたたかってきた「在日の慰安婦裁判を支える会」のメンバーは、そう振り返ります。
■再び戦争するな
宋さんも「支える会」も、日本政府の真摯(しんし)な謝罪を求め続けています。
「謝罪するってことは金払えっていうんじゃなくて、謝罪して再び戦争するなっていってるの」
宋さんは民間から募金を集め、日本軍「慰安婦」被害者に送付した「女性のためのアジア平和国民基金」の償い金を受け取りませんでした。国家補償ではない「償い事業」に、「(日本は)民間と約束して戦争したのか」と怒ります。
一つ一つの体験を語るたびに宋さんが口にした言葉は、「あれ(あのとき)が一番つらかった」でした。しかし、それ以上に繰り返したのは、「二度と再び戦争を起こしちゃいけない」でした。日本の侵略戦争を自分の目で見てきた宋神道さんの願いです。
「『金を稼ぐために慰安婦になった』といわれると、本当につらい思いになる。みなさんに、もしも自分の子どもだったらと考えてほしい」
通訳をとおして語るのは日本軍「慰安婦」被害者の姜日出(カン・イルチュル)さんです。韓国・京畿道広州にある「ナヌムの家」で生活しています。高知県の青年学生の団体・SALAD(サラダ)のメンバー十五人が九月初め、高知市内で開いた「旧日本軍性奴隷問題の解決を求める証言集会 消せない記憶」で、約二百五十人を前に訴えました。
■日本兵らが家に
一九四三年春、姜さんは日本の統治下だった朝鮮・慶北尚州の自宅から連れ去られました。カーキ色の服に刀を提げた日本兵と警察官が家に来ました。当時、数え年で十六歳。姜さんはことし数えで八十歳になりました。
朝鮮から中国東北部の吉林省・長春に連行され、「慰安婦」にされました。数カ月後、黒竜江省の牡丹江にある慰安所に移されました。
「私は罪がないにもかかわらず『慰安婦』にされ、日本の軍人に殴られたり、傷つけられたりした。私の頭に残った傷を見れば、日本の軍人に殴られたことがわかります」。声が震えます。
傷は後頭部に残っています。牡丹江の慰安所にいたときでした。姜さんが性行為に抵抗すると、軍人は怒って慰安所の壁に姜さんの頭をたたきつけました。姜さんは意識を失いました。傷はうみ、後頭部は陥没しました。
姜さんは証言をしたり、体調が悪いと、緊張して体や唇が震えたりします。急に鼻血が出ることもあります。高知での証言集会でも唇が大きく震え、声が途切れました。後頭部の傷や戦時中の体験が後遺症になっているのではと話します。
けがを負ったとき、牡丹江の病院に連れて行かれました。姜さんは、入院していた体の大きな朝鮮人男性に日本軍が注射し、生体実験しようとしていたことを聞きました。「私も同じことをされるのではないかと怖くなった」といいます。
牡丹江の慰安所では伝染病の腸チフスが広がりました。日本軍は患者を山に運び、掘った穴に捨てて焼き殺しました。
姜さんも腸チフスにかかり、髪が抜け、高熱が出ました。親しくしていた北海道出身の日本人女性と他の女性数人で車に乗せられ、穴に捨てられました。初めに連れて行かれた姜さんたちは、あとから来た女性たちの下敷きとなりました。
北海道の女性と姜さんは、火がつけられる前に必死で逃げ出しました。そこに朝鮮の「独立軍」が来て二人は助け出されました。
■55年たち故郷へ
日本軍に性奴隷を強いられたのは二年半余にも及びました。
戦後しばらくは食事だけもらえる家で働き、履く靴もなく、服もボロボロでした。のちに吉林省で看護師となりました。
「何とかして死ぬ前に、お父さん、お母さんに会いたい、そういう思いで生きてきました」。再び故郷の地を踏むことができたのは二〇〇〇年でした。終戦から五十五年がたっていました。
ナヌムの家
戦時中、旧日本軍によって性暴力を受けた被害女性たちが共同生活をしている施設。現在十人が暮らしています。同じ敷地内に日本軍「慰安婦」歴史館もあります。ナヌムとは「分かち合い」の意味。
韓国の日本軍「慰安婦」被害者、姜日出(カン・イルチュル)さんは自身の体験とともに、現在の情勢についても語りました。
■日本政府に怒り
米国の下院本会議で七月末、日本軍の「慰安婦」問題に関し日本政府に公式の謝罪を求める決議が採択されました。姜さんはこの問題に触れ、「日本政府からは何の反応もない」と怒りをあらわにしました。
四月末、安倍首相が訪米した際、日本にF22戦闘機を配備させようと、ブッシュ米大統領に機密情報の提供を求めました。この動きにも、「また戦争をしようとしているから、そんなことをするのだ。本当にひどい。また日本や韓国の人が死んでいくのでしょうか。中国やアジアの人が殺されていくのでしょうか」と訴えました。
一方、「旧日本軍性奴隷問題の解決を求める証言集会 消せない記憶」を企画した高知県の青年学生の団体・SALAD(サラダ)の青年たちを「若い学生たちが歴史を学ぼうとし、考えようとしていることがうれしいし、誇りに思う」と喜びました。このような証言集会は京都や東京、神奈川、愛知など各地で行われています。兵庫では十一月に初めて実施されます。
「姜さんが経験してきた苦しかったことを私たち若い世代は事実として伝えていかなければならないと思います」。集会の企画責任者、安部文章さん(22)=高知大学四年生=は集会の最後にそう呼びかけました。安部さんは「日本の戦争は侵略で間違っていたと、日本の内側から、国民として意思表示していかないといけない」といいます。
同じくSALADのメンバーで同大四年生の男性(23)は「被害者の話を聞くということは自分の未来をつくっていくこと。人間がどういう生き方をしたらいいか見えてくる」と話しました。
韓国からも六人の青年が参加しました。韓国人女性の尹佳恩(ユン・ガウン)さん(25)は「高知に来て、参加している若い人たちやハルモニ(おばあさん=姜さん)と一緒に勉強して、歴史や戦争についてまだ問題は終わっていないと思った。昔の人の問題ではなくて自分たちの問題と気づいた」
姜さんは集会の前日、青年たちが企画したワークショップで、高知県北西部に位置する幡多郡大正町の津賀ダムを訪れました。戦時中、水力発電所のダム建設現場で、連行された多くの朝鮮人労働者が日本人とともに従事し、亡くなりました。
■62年、今も差別
朝鮮人犠牲者の墓はダム湖を見下ろす山の斜面にありました。小さな石が墓標として置いてあるだけでした。日本人犠牲者の遺骨は家族の元に返されたといいます。戦後六十二年たっても差別を受けている現実を目の当たりにした姜さん。「心のなかが痛くて痛くて本当に苦しい思いでいっぱいです。苦しくて苦しくて涙が流れます」
「私は十六歳という幼い年で『慰安婦』にされ、人生を狂わされました。本当につらい思いをしてきました。日本政府は事実を認め、謝罪すべきです」
「朝鮮ピー」「ピー屋」
東京都在住のAさん(82)は戦時中、朝鮮人の「慰安婦」と「慰安所」をそう呼んでいたと告白します。Aさんは一九四五年二月末、二十歳で現役召集≠ウれました。配属された先はソ連(当時)と「満州」(現中国東北地方)の国境地帯、中国黒竜江省牡丹江・東寧にあった関東軍の兵器廠(しょう)でした。
三カ月の初年兵教育を終えたある日曜日。上等兵はAさんら初年兵に「いいことを教えてやる」といいました。
「衛生サック(コンドーム)を渡され、装着の方法を教えられた。ピー屋は部落のはずれにあった」
衛生サックは「ハート美人」といいました。「終戦間際になると『突撃一番』に(名称が)変わっていった」とAさんは語ります。
片っ端から連行
兵器廠から部落まで歩いて二十―三十分。部落に入ってから慰安所までは十分ほどでした。慰安所の壁にはアンペラ草で編んだござのようなものが使われていました。
「慰安婦」を待つ列に友人とともに並んだAさん。上官らが新兵のAさんを次々と抜いて行きました。「お前たち、バンドゆるめとけ」。そういって先に入る古参兵もいました。Aさんと友人は中に入らず、帰りました。「下を向いたまま、入る勇気がなかったんだろうな」
東寧は朝鮮半島との国境が近かったため、朝鮮人の部落が多くあったといいます。Aさんは「慰安婦」の連行について、部隊の班長に聞いたことをこう話します。
「トラックにほろをかぶせて、憲兵一人と兵隊数人が部落へ婦女狩りに行った。そこでは選べないので女を全部片っ端から乗せてきた。よほど腰が曲がって見るからにどうしようもない女性は別として。連れてきてから身体検査をし、使用に耐え得る人たちを残してあとは帰した」
ヤクザらが管理
残された女性たちは慰安所に預けられました。「ピー屋はヤクザとか日本から追われてきた連中が管理していた。管理させるには都合のいい連中だった」とAさん。「軍が関与しない限り婦女子をさらってピー屋で働かせるなんてことは絶対できない」と語気を強めました。
安倍首相は三月五日の国会で「民間業者が女性たちに(売春を)強いた」と発言。これに対しAさんは「当時、関東軍は絶大の力を誇っていた。そのなかで民間人が勝手なことなんてできない」と反論します。
「戦場であすの命もわからないような連中を駆り立てるために、『慰安婦』をあてがっていた。軍は戦場でたたかう人間をつくるためにやったんだ。強制はなかったとしらばっくれる問題ではない。現実の問題として認めるべきだ」
逃げられない性奴隷
「『嫌だったら断ればいいじゃないか。断らないで金ももらってるんだから商売じゃないか』。そういう人はいっぱいいる。僕も『慰安婦』は商売だと思っていた」。湯浅謙さん(90)=東京都=は一九四二年一月、日本軍の軍医として中国山西省路安の陸軍病院へ派遣されました。
「朝鮮人は汚くて、いやしい」と差別していた湯浅さんは、従軍してしばらくは慰安所へ近づきませんでした。半年ほどして軍務に慣れてくると、毎週末、病院長らと酒を飲むようになりました。ある日、「酒の勢いで一緒に行った…」。
急死した女性も
軍人らに抵抗すれば、暴力を受け、時には刀で脅かされてきた「慰安婦」たち。初めて慰安所に行った湯浅さんには、「こびを売り歓迎している」ように見えました。「彼女たちを見て売春婦だと思った」
しかし、証言活動を重ねるなかで考え方は変わりました。「自分のような将校という権力者に『日本軍に連れてこられた』なんて、いえるわけがないんだ。日本軍に協力しないことがわかったら、ひどい目に遭うからいえない。植民地支配に縛られたなかで、ニコニコするしかなかったんだ」
「慰安婦」のなかには、一日に三十人を相手にして亡くなった女性や、てんかんを起こしても断れず、急死した女性もいました。「苦しくても苦しくても逃げられない。彼女たちは性奴隷だったのです」
湯浅さんは山西省南部に派遣されていた四五年春、部隊に連れてこられた女性五―六人の性病検査をしました。産婦人科の経験は学生時代のときしかありません。「とりあえずリンパ腺(せん)をさわったり、尿道の奥をぐっと押してうみが出ないか調べたりして、全員合格。部隊には回覧を回して『肉眼的検診であるから必ず予防具を使うべし』と通知した」
路安での露営会議では部隊の副官が集まり、日曜日だけの外出では慰安所がいっぱいになるため、部隊の外出曜日を割り当てました。
会議に出席した湯浅さんは「物価高騰の折から二円を三円に値上げしたように記憶している」といいます。慰安所の利用料は、兵隊が二円で夕方五時まで、下士官が三円で夜七時まで、将校は一泊して十円。「このように慰安所の経営は業者がおこなったが、管理は軍がしていたのです」
14人の生体解剖
従軍した三年余、湯浅さんは手術演習教育を名目に、七回にわたり十四人の中国人の生体解剖をしてきました。
「あの軍国主義の時代が僕を圧迫し、欺まんし、強制し、そして思想を押しつけて僕という人間ができあがった。僕一人の歴史を知るということは、それを形成する外側の時代がわかる。戦争の歴史、事実。なぜ、そうなったのか。歴史というのはいまを見るためのもの。いまの問題と結びつけて昔のことを考えてほしい」
自身の加害行為が歴史から消され、再び戦争をする日本にならぬよう、湯浅さんは「消せない記憶」を語り続けます。
(日本軍「慰安婦」のシリーズは終わり。本吉真希が担当しました)
( 2007年09月16-21日,
権力のおごり示す/英国
【ロンドン=岡崎衆史】安倍晋三首相の辞意表明に伴う自公政治の危機について、英国の主要紙誌からは、国民無視と米国偏重、タカ派的政策と有権者の関心のずれが主な要因だとする論評が出ています。
十三日付インディペンデント紙社説は「『対テロ戦争』を支援するというブッシュ大統領への約束を果たせないことを理由として安倍首相が辞任したことは、権力のおごりを示す教科書のような事例だ」と述べ、国民よりも米国の顔色をうかがう姿勢を酷評。安倍首相が「美しい国」を掲げて憲法改定や教育への愛国心導入を目指したにもかかわらず、雇用や格差問題を重視する有権者が「関心を示さなかった」とし、安倍政権の政策と有権者の関心のずれが退陣につながったとの見方を示しました。
『エコノミスト』誌(十五―二十一日号)も、「あまりにも多くの自民党の指導者が日本の国際的な名声にとらわれすぎ、有権者との結びつきを失ってきた。彼ら(自民党の指導者)は、平和憲法を改定し、経済力に見合った役割を日本が果たせるように望んでいるが、有権者は経済力そのものと、(国民に)何をしてくれるのか、ということにより多くの関心を持っている」と分析しました。
ガーディアン紙十三日付社説は、@日本が、北朝鮮の核問題にかかわる六カ国協議の包括的な合意を妨害しかねないことA戦後の平和憲法改定の動きがアジア地域だけでなく、世界全体に重大な影響を与えること―に触れ、「日本の国家としての力、重要さと、政治指導者との間には際立ったずれがある」と指摘。その上で、新首相に望まれることとして、国民の社会的な関心事への対処とともに、「世界で通用すること」を挙げました。
一方、民主党については、フィナンシャル・タイムズ紙十三日付社説が「自民党を離脱した旧来の政治家に率いられている」とし、「与党よりもましだという保証はない」としています。
小泉前首相評価「改革」の後退に/米国
【ワシントン=山崎伸治】米主要メディアは米国の経済界や政府の意向を反映し、小泉「改革」を積極的に評価し、その後継者としての安倍氏に「期待」してきました。それだけに、安倍首相の辞任が「改革の後退」になるとの論調が目立ちます。
十三日付の経済紙ウォール・ストリート・ジャーナルは小泉前首相を「国を変革するというビジョンを押し通す能力のある数十年に一人の政治家だった」と持ち上げ、「安倍首相の辞任で日本は、人気指導者の小泉氏による経済改革からのいっそうの後退に直面する」と論評しています。
「安倍氏が小泉氏の後継に選ばれたのは、小さな政府、規制撤廃、自己主張する外交という考え方を共有していたからだ」と指摘。安倍氏の辞任で「利益誘導型の政治に逆戻りしかねず、次期首相は不満のある有権者を喜ばせるために金を使うだろう」と分析しています。
週刊誌『タイム』(十二日の電子版)は「安倍氏の辞任で日本は後退するのか」との論評を掲載。ワシントン・ポストも十三日付で「日本は後退するのか?」と題した社説を掲載しました。
タカ派路線の破綻/東南アジア
東南アジア各国の新聞は社説で、安倍首相辞任表明の背景と日本の政局をさまざまな角度から解説し、これからの日本の政治の展開に着目しています。
インドネシア英字紙ジャカルタ・ポスト十四日付社説「タカ派安倍の下落」は、安倍首相が国民の生活や福祉、年金での切実な要求を無視し続ける一方で、「極右民族主義のゲームをもてあそんだため」自民党が参議院選挙で惨敗したと分析。日本軍「慰安婦」問題などで「攻撃的な発言」を繰り返した安倍首相の「タカ派」政治路線の破綻(はたん)が今回の辞任の背景にあると見ています。
その上で、「日本の指導者たちが、国民を団結させるために、歴史問題で(安倍首相のような)思慮の足りない立場に固執し続けるならば、むしろ、逆効果になるというのがわれわれの意見だ」と批判。さらに、「自民党のエリートたちが自己中心主義の考えを変えず有権者の要求を無視し続ければ、自民党はさらに高価な代価を支払わねばならないだろう」と指摘しています。
マレーシア紙・星州日報十五日付は、「日本の政治は分岐点に到着した」と題する社説を掲載。安倍首相辞任は、参議院選挙で惨敗し国民からの信頼を大きく失った自民党が、次の総選挙での支持回復のためには首相交代しかないと判断したからだとしています。
同時に、「安倍首相辞任は日本人民の不満の目印である。しかし、日本は自らをほころびから奮い起こす処方せんを、まだ、探し当ててはいない」と結んでいます。
改憲の支持得られず/インド
【ニューデリー=豊田栄光】インド英字紙ヒンズー十四日付は「恥ずべき退陣」との見出しの社説を掲載しました。同社説は、安倍首相は憲法改定や歴史認識で国民の支持を得られなかったと指摘しています。
「ほとんどの日本人は平和憲法の規範から離れることに反対している。国際的な安全保障分野で日本の役割増大を成し遂げようとした安倍氏の努力は、日本の国民にはまったく受け入れられなかった」
「第二次世界大戦の記録の修正によって日本の自尊心を再構築しようとした試みも、ほとんど支持されなかった。腐敗スキャンダルで無力化され、貧富の格差拡大に対応できず、高齢者の年金制度に生じたダメージを修復できない政府では、この種のイデオロギー上の目的の追求は、国民世論をひきつけることはほとんどなかった」
( 2007年09月16日,
第十三回「平和のための戦争展ちば」が十二日から十六日まで、船橋市民ギャラリー(JR船橋駅南口徒歩5分)で開かれています。平和遺族会などでつくる同展実行委員会が主催し、船橋、習志野、八千代各市と同教育委員会、鎌ケ谷市が後援しています。
会場には、当時の軍服や出征兵士への寄せ書き、「従軍慰安婦」の説明をはじめ、平和・民主主義をもとめる世界の動きを紹介するパネルなど、豊富な展示物が並んでいます。
今年初めて展示された一つが、豊島区西巣鴨の町会長と同地区の在郷軍人会分会長名で出生軍人の家族にだされた「感謝状」です。
地元船橋市の夏見稲荷神社に憲法交付前に建立された「平和記念碑」を紹介する展示があります。夏見二丁目老婆連中の名で、五十数人の寄付を募り建てられたものです。
同展企画の一環として、十五日(土)午後一時半から宗教ジャーナリストの柿田睦夫氏の講演「現代宗教問題から靖国・憲法を考える」。十六日(日)午後二時からは地元在住の「手織座」俳優、真田五郎氏らの朗読が予定されています。
(2007年09月14日,
米紙/国家主義的な課題で人気浪費
【ワシントン=山崎伸治】安倍晋三首相の辞任発表について、米主要紙は突然だったことを指摘する一方、安倍氏のこれまでの政治姿勢について論じています。
十三日付のニューヨーク・タイムズ紙(電子版)は、安倍氏の辞任が「すでに緊迫した政治情勢をいっそう混迷させる」ものと分析。参院選敗北後、内閣を改造し、十日には国会で所信表明演説までしていたことをあげ、「安倍氏は自称『たたかう政治家』だったが、明らかにたたかう気はなかった」と指摘しています。
同様に「たたかいが始まらないうちに放棄」と論じた十二日付のロサンゼルス・タイムズ紙(電子版)は、「日本の平和憲法を改定しようという何よりも大きな野望は、政権が発足当初から次々とスキャンダルに見舞われるなかで、破たんした」と指摘。「こうした混乱の結果、安倍氏の評判はぜい弱で無力な指導者というものになった」と報じています。
十三日付のワシントン・ポスト紙(電子版)は、「安倍氏は国家主義的な課題で自分の人気を浪費した。そうした課題は有権者の共感は得られなかったし、日本国外の多くの人たちを怒らせた」と指摘。日本軍「慰安婦」問題で「日本政府自身の研究結果にも反し、安倍氏は軍がアジアの女性に売春行為を強制したことを証明する文書はないと主張した」ことをあげています。
中国メディア/自民党内でも求心力失う
【北京=山田俊英】中国各紙は十三日、安倍晋三首相の辞任表明について「日本の政界騒然」「内閣のスキャンダル、安倍首相を引き降ろす」などの見出しで大きく報じました。
新華社通信は「根本的な原因は安倍政権が民衆の支持を失い、自民党内でも求心力を失ったからだ」と解説。「日本の政局の変数は増えた」とし、テロ特措法の問題などで「新しい自民党総裁が苦境の脱出に有効な手を打てなければ、今度の臨時国会は政権交代の序幕を開くことになるかもしれない」と伝えました。
人民日報は、辞任表明の理由について、テロ特措法、健康状態、国民の支持の喪失の三つをあげました。また、賈慶林全国政治協商会議主席が十二日に来日し、河野洋平衆議院議長と会談した記事を一面に掲載。賈主席が「中日関係のさらなる発展は両国や両国国民の根本的な利益に合致する。その勢いは継続すると信じる」と述べたことを報じました。
環球時報は「安倍首相の辞任に日本は驚き、いぶかしむ」との見出しで一面で報道。「安倍首相は『美しい国』づくりや平和憲法の改定を打ち出したが、国民が関心を持っていたのは年金など暮らしの問題だった」と解説しました。
ベトナム紙/軍事力増強の方向を示した
【ハノイ=井上歩】十三日付ベトナム各紙は安倍晋三首相の辞任表明を国際面で報道、論評しました。
国際面トップの扱いだったタインニエン紙は「テロとのたたかい≠ヘ(辞任の)一つの理由にすぎない」と指摘。政治とカネ≠ノついての「延々と」続いた疑惑や問題の後、改造内閣でも相次いで大臣に問題が発覚したことで「威信を失い、安倍首相に政策実現能力はほとんどなくなった。辞任は当然とみられている」と指摘しました。
同紙はまた、「安倍首相と右派は、若者に愛国心教育を奨励する法律を提出した。防衛庁を省に昇格させ、この国が軍事力増強に向かっていることを示した」「日本が諸問題、とくに軍事でより主導的になるための憲法改定の可能性に、安倍首相は何度も言及した。多くの日本国民といくつかの国はこの歩みに懸念を示した」と解説しました。
同じく国際面のトップで報じたトゥオイチェ紙は「(戦後)最年少の首相の結末がこんなに苦々しいものとは(就任時には)だれも想像できなかった」と紹介。「テロ特措法は、安倍氏の政治事業の棺おけに最後に打たれたクギでしかない。核心的な要素は、安倍氏自身が認めたように第一次内閣、改造内閣とも日本の国民の支持を得られなかったことだ」と解説しています。
同紙は、大臣の相次ぐ疑惑に続き消えた年金*竭閧ナ「国民の信頼はさらに失われた。しかし、安倍氏は国際的な地位の向上、民族的精神の発揚など、(民心と)かけ離れた目標に夢中だった」と報じました。
( 2007年09月14日,
高校教科書の文部科学省の検定で、沖縄戦での住民の「集団自決」について日本軍の強制にかんする記述が削除されたことに抗議し、検定意見の撤回を求める沖縄県民大会が二十九日に開かれます。
沖縄戦で犠牲となった十二万人の県民のなかに、日本軍による県民虐殺や日本軍の強制による「集団自決」があったことは明白な事実です。仲井真県知事や自治体、議会、地域諸団体がこぞって参加する超党派の県民大会を成功させることが、歴史のねじまげを許さない県民の意思を政府につきつける力になります。
体験者の証言を無視
太平洋戦争末期の沖縄戦の特徴は、戦闘による犠牲だけでなく、日本軍が県民を死に追いやったことです。
親兄弟などが日本軍が配った手りゅう弾や、かま、棒で互いに殺しあった「集団自決」は、日本軍の強制によるものです。従来の教科書が「集団自決」について日本軍の強制があったと書いてきたのは歴史の事実にたった当然の記述でした。
文科省が、「現時点では軍の命令の有無についてはいずれとも断定できない」(四月十一日衆院文部科学委員会、銭谷文科省初等中等教育局長)というこじつけで日本軍の強制にかんする記述を削除したのは、沖縄戦を多少でも知る者であれば許され得ないことです。沖縄県と県下四十一自治体の議会がすべて、今回の検定に「到底容認できるものではない」と抗議したのはそのためです。
文科省の検定方針には、安倍首相をはじめ過去の侵略戦争を肯定し、日本軍の行為を美化する「靖国」派の意向が反映しています。「靖国」派の「新しい歴史教科書改訂版」の監修者と同じグループで活動していた経歴をもつ文科省の教科書調査官を、政府が教科書検定にかかわらせたことでもあきらかです。
日本軍による「集団自決」の強制は、どんなにごまかそうとしてもごまかせることではありません。
座間味島では、対米戦争完遂の誓いを忘れさせないため国家行事のたびに住民を集め、軍幹部が米兵に捕まる前に「玉砕すべし」と訓示し、阿嘉島でも「いざとなったらいさぎよく玉砕するように」と徹底していました。渡嘉敷島でも同様で、同島に駐屯した陸軍海上挺進(ていしん)第三戦隊の皆本義博元中隊長も大阪地裁で行われている「集団自決」をめぐる裁判で、「赤松嘉次郎隊長あるいは代理が参加し(訓示は)あったと思う」と認めています。貴重な手りゅう弾を住民に配ったことも「集団自決」強制の証しです。
許せないのは、悲惨な体験者の証言を安倍政権がいっさい無視していることです。「従軍慰安婦」問題でも同じ態度です。被害者の直接の証言を聞かないのは、歴史の事実を認めることをおそれているからです。当時の日本軍幹部の言い分だけをとりあげて事実をねじまげるのは本末転倒です。
うそは教えるべきでない
日本軍が侵略した南京では「大虐殺はなかった」、「従軍慰安婦」問題では「日本軍が強制した証拠はない」、沖縄戦では「集団自決」を強制していないと「靖国」派が主張するのは、侵略戦争と日本軍の行為を正当化するためです。こうしたうそを教え込むことは、若者を戦争の道においこんでいったかつての誤りを再び招来しかねません。侵略戦争を正当化し、海外で再び戦争する態勢づくりをすすめるあらゆるくわだてを阻止するとりくみが重要です。
( 2007年09月14日,
任期中に改憲を
(憲法改定について)「時代に合わない条文として一つの典型的な例は九条だろう。(自民党総裁としての)私の任期は3年で、2期まで務めることができる。その任期中に改定を達成したい」(06年10月31日、英紙フィナンシャル・タイムズのインタビュー)
(自民党に復党した郵政造反組十一人に対し)「みなさん、お帰りなさいと申し上げたい」(12月4日)
(本間正明政府税制調査会長の辞任で)「税に対する高い見識を生かしてもらいたいと任命したが、一身上の都合で辞任したいということだからやむを得ない」(12月21日)
(佐田玄一郎行革担当相の辞任で)「任命者として国民に対し責任を感じている。結果を出していくことによって国民に対し責任を果たしていきたい」(12月27日)
(年頭にあたっての記者会見で)「私の内閣として憲法改正をめざしたいということは、当然参院選でも訴えていきたい」 (07年1月4日)
(「従軍慰安婦」問題での河野洋平官房長官談話について)「当初定義されていた強制性を裏付ける証拠がなかったのは事実だ。定義が大きく変わったことを前提に考えなければならない」 (3月1日)
ざんきに堪えぬ
(松岡利勝農水相の自殺で)「大変残念だ。ざんきに堪えない思いだ。捜査当局からは松岡氏の取り調べを行う予定はないという発言があったと承知している」(5月28日)
「私たちは秋に抜本的な(税制)改正を行う。消費税を上げないなんて一言も言っていない」(7月5日、日本テレビ番組で)
月8百円の人を
(赤城徳彦農水相の架空事務所費問題で)「架空計上ではない。05年の光熱水費は月800円だ。800円の人を辞めさせるのか」(7月8日、民放テレビ番組で)
(遠藤武彦農水相辞任で)「任命責任は私にある。今後、農水行政が停滞しないよう全力を尽くすことで責任を果たしたい」(9月3日)
「(インド洋での)自衛隊の補給活動を継続させるため、職を賭して取り組んでいく」(9月9日、シドニーでのアジア太平洋経済協力会議後の記者会見で)
( 2007年09月13日,
【06年】
9月26日 安倍内閣が発足
10月 8日 首相が訪中、胡錦濤国家主席と会談
9日 訪韓し、盧武鉉大統領と会談
11月27日 郵政民営化「反対組」現職11人の自民復党決める
12月15日 教育基本法改悪、「防衛省」法を強行
21日 本間正明政府税調会長が辞任
27日 佐田玄一郎行革担当相が政治資金問題で辞任
【07年】
1月 3日 松岡利勝農水相、伊吹文明文科相などが議員会館を資金管理団体の「主たる事務所」にしながら巨額の事務所費を計上していたことが「しんぶん赤旗」の報道で発覚
27日 柳沢伯夫厚労相が「女性は産む機械」と発言
2月 6日 与党単独で参院本会議を開き06年度補正予算を強行成立
25日 伊吹文明文科相が「人権メタボリック」と発言
3月 1日 安倍首相が「従軍慰安婦」について「強制性を裏付ける証拠がなかったのは事実」と発言
9日 郵政「反対組」の衛藤晟一前衆院議員が自民復党
26日 07年度予算を強行成立
5月14日 改憲手続き法を強行成立
18日 集団的自衛権の行使に向けた「研究」を目的とする有識者会議初会合
28日 松岡利勝農水相が自殺
6月 7日 独ハイリゲンダムでの主要国首脳会議に出席
20日 イラク特措法改悪、改悪教育三法を強行成立
30日 社会保険庁解体・民営化法、年金時効特例法、天下り自由化法、改定政治資金規正法を次々強行成立
久間章生防衛相が「原爆投下しょうがない」発言
7月 3日 久間防衛相が辞任
7日 赤城徳彦農水相の事務所費問題が発覚
21日 塩崎恭久官房長官の事務所費問題が発覚
29日 参院選で与党大敗にも安倍首相が続投表明
8月 1日 赤城農水相が辞任
27日 内閣改造
9月 3日 遠藤武彦農水相が辞任。与党・閣僚から「政治とカネ」で疑惑が続出
8日 シドニーでのアジア太平洋経済協力会議(APEC)に出席
10日 臨時国会開会。所信表明演説
12日 首相が辞意を表明
( 2007年09月13日,
沖縄県の地元紙、沖縄タイムスの連載企画を、熊本日日新聞が転載し始めました。「沖縄戦『集団自決』を考える」という連載です▼文部科学省は教科書検定で沖縄戦の「集団自決」にかんする記述から日本軍の強制・関与を削除させました。沖縄タイムスの連載はこれを正面から批判するものです▼沖縄の新聞は連日、この問題を取り上げてきました。多くの体験者の証言をはじめ、検定意見の問題点、県民の怒り…。しかし沖縄以外のメディアの関心はいま一つ。そんな中で熊本日日は「この問題は沖縄だけでなく、われわれ本土の人間も考えるべきだと考えた」と転載の理由を説明します▼「集団自決」に軍命があったかどうかをめぐる裁判で十日、沖縄で出張法廷が開かれました。裁判官が現地に足を運んで体験者の証言を聴きました。前日の夜に開かれた集会には「歴史のわい曲は許せない」と県外からも多くの人が参加し、代表が発言しました▼「今まで認められていた記述に意見をつけた検定は異常」「軍の強制はなかったとするのは『慰安婦』や南京大虐殺をなかったとする侵略戦争美化の流れと一体のもの」「これからの日本の在り方を左右する問題といっていい」。「愛国心」の強要を狙う教育基本法改悪との関係も指摘されました▼沖縄では二十九日、検定意見の撤回を求める県民大会が開かれます。首都圏などでも連帯集会の計画が進んでいます。「沖縄だけの問題ではない」。そんな声が高まりつつあります。
( 2007年09月11日,
一つの指の動き、操る一枚の白布で、観客を幻想の世界に誘う韓国伝統舞踊家の金一志さん。京都を拠点に、韓国の伝統舞踊を伝えて12年。その技と心――。
玄間太郎記者
舞鶴市の「浮島丸殉難の碑」。8月24日、碑の前で行われた浮島丸殉難62周年追悼集会――。
トランペットの音色は、追悼歌「はまなすの花 咲きそめて」。白いチョゴリの金さんが、静かに舞います。
一枚の白布(スゴン)を振り、放ち、たぐり。天を見、地を見つめ…。抑制された一つ一つの動きが、悲しみと無念の思いを紡ぎ出します。
金さんが、この日のためにつくった創作舞踊。死者を呼び、清め、慰霊するサルプリ舞(韓国重要無形文化財)を、アレンジしたもの。参列者の胸に染み入りました。
「亡くなった方たちの祖国の舞いができて、胸がいっぱいです。こんな悲劇は、二度とくりかえしてはなりません」
金さんの目に涙が光りました。
能にも似て
昨年12月、「大韓民国国楽コンクール」で長官賞(大賞)を受賞しました。今年3月に開かれたその記念公演「金一志の伝統舞〜一心情念」。舞台は、京都の大江能楽堂。そこで踊ることが何の違和感もなく、観客を魅了しました。
演目の一つが、韓国伝統舞踊の精髄といわれるスンム(僧舞、重要無形文化財)でした。
白絹の長い袖を思いのままに操る優雅な舞と、激しく、また静かな法鼓のリズム。その繊細なばちさばきは、青年修行僧の煩悩を絶ち切るさまを表現します。美しく、格調高い舞です。
「静中動。静かな中に力強い動きがあり、動きの中に、重みや静けさがあります。韓国伝統舞踊の特徴です」
指先の動き、床を踏みしめる足さばき、膝(ひざ)の曲げ方…。日本の能にも似ていて、残像を焼きつけます。
韓国に生まれ、7歳から舞踊クラブへ。学校の授業前にも、授業後にも厳しい練習。お弁当を二つ持って通いました。
「足が腫れるんです。母が毎朝、学校に行く前に氷を袋に入れて冷やしてくれました」
金さんは耐えました。
高校卒業後、来日。数年は、舞踊から遠のいていました。だが、ある日異国で見た故郷の舞踊団公演に感動。大きな転機になりました。どこにでも誇れる韓国の伝統舞踊を日本に伝えよう、と。
日韓を往復しながら再び本格的に舞踊を学びます。やがて95年、金一志韓国伝統芸術院を設立。後輩の育成、公演活動で多忙な日々です。
自主公演や学校公演。最近は、能楽堂や寺院での公演がふえています。
「観客との一体感。踊っていて、とても心地いいんです。舞台が踊らせてくれる、という感じ」
一方――。
8月5日、広島の「韓国人原爆犠牲者慰霊祭」でも、平和への祈りをこめて舞いました。今年で3回目です。こういう場で踊ることにも、大切な意義があるといいます。
過去と未来
侵略戦争、植民地支配に反省のない日本政府。「従軍慰安婦」問題もあります。両国の関係は、これでいいのだろうか。金さんは憂えます。舞踊を通して日韓の懸け橋になれれば、と考えています。
主宰する韓国伝統芸術院には、在日と日本の生徒が一緒に学んでいます。
「練習の合間によく話し合うんです。歴史の大きな流れの中に自分たちはいることを。過去を正しくとらえ、未来をどうつくっていくか。よく考えましょうと」
若い人たちが育ってきていることが、一番の喜び。彼女たちとすばらしい舞台をつくりあげていくことが目標です。
キム・イルチ=韓国・慶尚南道生まれ。1983年度全国舞踊コンクールで古典舞踊部門大賞受賞。98年、ソウル舞踊コンクール伝統舞踊部門金賞受賞。金一志韓国伝統芸術院院長。韓国伝統舞研究会京都支部支部長、韓国舞踊協会大阪支部副会長
浮島丸事件
終戦直後の1945年8月24日、戦時中に強制連行された朝鮮人労働者らを乗せた浮島丸が、京都府の舞鶴湾で爆発・沈没した事件。近辺住民などが救助活動をしたが、朝鮮人524人、乗組員25人が犠牲になった。舞鶴のほか、目的地だった韓国の釜山(プサン)、出港地の青森・大湊や、引き取られていない遺骨がまつられている東京都目黒区でも追悼が行われている。
(2007年09月09日,
歌手にしてやる≠セまされて性奴隷
日本の侵略戦争の傷跡をみずからの目、耳で探求する神奈川の教師たちの「歴史と平和の旅」に今年も参加をしてきました。かつて国会で、中国「残留孤児」や旧日本軍の遺棄毒ガス兵器問題を取り上げて以降、私もできるだけこの旅に参加するようにしてきました。今年は、旧日本軍によって性奴隷とされた元「従軍慰安婦」・インドネシアのマルディエムさんを訪ねました。
安倍首相の「狭義の強制性はなかった」との発言に対し、国内外で大きな批判が広がり、七月末には、日本政府に公式の謝罪を求めた米下院決議が行われるなど、国際問題化している日本の歴史認識の問題のもっとも鋭い焦点となっているのがこの「従軍慰安婦」問題です。
報道陣も取材
彼女のドキュメンタリー映画を製作した海南友子(かな・ともこ)さんの紹介をもらい、「旅」の事務局長の菊池克則さんが、マルディエムさんを支援する法律扶助協会に、直接コンタクトを取るなかで、彼女との面会が実現しました。
八月二十一日早朝、私たちは、インドネシアの首都ジャカルタから飛行機でジョグジャカルタに飛びました。街の中心にある法律扶助協会のジョグジャカルタ支部の事務所へ行くと、マルディエムさんとたくさんの報道陣が待ち受けていました。弁護士のブディ・ハルトノさんに聞くと、できるだけ世論や政府にアピールするためメディアに公開したとのことです。
私たち一行とメディア関係者で身動きできないほどいっぱいになった部屋で、今年、七十八歳になるというマルディエムさんは、淡々と静かですが、重い響きをもった語り口で話し始めました。
…小さいころから歌が好きだったマルディエムさんは、十三歳のとき、歌手にしてやるとだまされてカリマンタンに連れて行かれ、慰安所の部屋に閉じ込められた。昼は日本軍の将兵の相手を、夜は民間人と毎日、十人以上のセックスの相手をさせられた。今でも絶対に忘れられないのは、一晩に十五人からレイプされたこと、十四歳のとき妊娠したが、五カ月くらいのとき、腹を押さえるという野蛮なやり方で中絶させられた。しかし、それでも絶対にこのことを忘れまいと赤ん坊に自分の名前の一部をとって、名前をつけた、そのとき全身を強くけられ、殴られ、今でもその後遺症が残っていること…。
踊る娘たちと
私たちはその前日、ジャカルタ市内の私立学校(SMU ツリグナ)を訪問し、授業参観をするとともに、女子生徒たちの民族舞踊を見たばかりでした。見事な踊りを披露した娘たちは、マルディエムさんが慰安所に閉じ込められたときと同じ十三歳くらいでした。
この日、通訳してくれたのは、アミさんという若い女性。帯広市役所で五年間、働いたこともあるというだけに、たいへん流ちょうでわかりやすい日本語です。
マルディエムさんの話は続きます。
…慰安所の地獄のような生活の中で、ワタナベさんという優しい憲兵さんがいた。つらいことをよく聞いてくれ、慰めてくれた。当時、モモエという名前をつけられていたが、ワタナベさんから、「モモエはジャワに帰らなくてはならない。もうすぐ日本軍は負ける。ジャワに帰ったほうがいい」とよくいってくれた。
「日本は謝罪し、事実を伝えて」
マルディエムさんは、一九四五年八月、日本軍が戦争に負けると、ほかの女性とともに三年五カ月いた慰安所を逃げ出し、別々の生活をしました。カリマンタンで夫に出会い、結婚しました。夫も日本軍によって刑務所に入れられており、二人とも日本軍のために苦しい経験をしたのでした。しかし、その後も世間の白眼視や社会的にも見放されるという新たな耐え難く辛い思いをする二重の苦しみを経験したのでした。
すべて伝えて
日本政府が、「従軍慰安婦」問題に関する官房長官談話で、一定の「謝罪」をした九三年、マルディエムさんは、告発に立ち上がりました。半世紀にわたって、自分の中に封じ込めてきた辛い経験、憎しみや怒り、悲しみのすべてを明らかにしよう、事実を日本政府に語ってほしいと法律扶助協会に訴え出たのでした。マルディエムさんは、私たちに対しても「私も生きておられるのはあと数年しかない。私が経験したことをすべて伝えてほしい。明らかにしてほしい」と訴えました。
マルディエムさんは、九三年以降、インドネシア国内の元「慰安婦」のためにもたたかわなくてはと、インドネシア政府へ働きかけるとともに、日本にも来て、日本政府への要求行動、韓国の元「慰安婦」と共同のデモをするなどがんばり続けています。
現在も厳しく
日本の政府に望むことはとの問いに対し、弁護士のブディ・ハルトノさんとともにマルディエムさんが強調したのは、@日本政府にきちんと謝罪してほしいAインドネシアも日本も「従軍慰安婦」問題の記述をきちんとしてほしい。この点では、インドネシアの政府からは、小学生からの教科書に記述する準備をしているという良い返事をいただいている。日本は逆行しているB賠償をしてほしいC元「従軍慰安婦」一人ひとりに、インドネシア政府から年金のような制度で援助をしてほしい…。
この中で、日本政府が、元「従軍慰安婦」のために設立したアジア女性基金の援助は、老人ホームの改修・建設だけで、元「従軍慰安婦」一人ひとりは対象にされなかった問題点を指摘しました。
マルディエムさんは、最後に、元「慰安婦」の現在の生活の厳しさを紹介し、「生きている限り運動は続けたい。ぜひ皆さんも日本に帰って、この事実を若い人たちにも伝えてほしい」と訴えました。
有力紙が1面トップで/「靖国」派の破たん実感
マルディエムさんと、短時間でしたが、参加者とのやり取りがありました。
質問が殺到し
私もその中で、「従軍慰安婦」に「強制の証拠はなかった」などといい、あの戦争も正しいものとする安倍首相の与党が、先の参議院選挙で歴史的敗北を喫し、安倍首相はやめるべきだというのが国民の多数意見となっていること、米下院でも、日本に反省を求める決議が、全会一致で採択されるなど、「慰安婦」問題をめぐって日本内外で大きな変化が起こっており、その変化をつくり出した力の一つが、マルディエムさんなどのたたかいであること、日本がかつて引き起こしたこのような蛮行の事実にきちんと向き合い、きちんと解決してこそ、日本とインドネシア、日本とアジアの友好や平和が確立されるものであることを心をこめて語りました。
事務所の中での面会を終えて、私たちは、事務所の前で記念写真を撮ることになりましたが、集まったメディア関係者から、マルディエムさんや菊池事務局長に質問が殺到し、しばらくはそれもできないほどでした。
菊池さんは、日本から持参した、連帯の旗や純日本風の風呂敷などの記念品を渡し、日本に帰国してもマルディエムさんの告発した歴史の事実を多くの人々に伝えることを強く約しました。
たくさんのメディアが駆けつけ、事務所前の道路は車の大渋滞となりました。ときならぬメディアの殺到に、周辺商店の人たちも何事かと集まってきます。そんななかを私たちは、マルディエムさんに別れを告げ、事務所をあとにしました。
翌二十二日朝、ホテルの食堂へ行くと先に来ていた仲間の一人が会うなり、「大森さん新聞見た?」といいました。見せてくれたジャカルタポスト(地元で最有力の英字新聞)はなんと一面トップに大きく私たちのマルディエムさんとの面会の写真、記事を載せているではありませんか。この新聞が、ホテルにも空港の売店にも帰りの飛行機の中にもたくさん並べられていました。私たちのささやかな行動ですが、その反響の大きさに驚きました。
首相と同日に
私たちがジャカルタに入ったのは、実は、安倍首相と同じ八月十九日でした。翌二十日、日本とインドネシアの首脳会談が行われましたが、その日のジャカルタポスト紙は社説で、「従軍慰安婦」問題に言及し、「日本のリーダーたちが自らの歴史を誠実に受け入れられない限り、国際社会の中枢での役割を担うことは決してできないだろう」(asahi.com)と厳しい論評を加えました。そして、その翌日、私たちはマルディエムさんに会ったのでした。
神奈川から来た教師たちの行動を一面に大きく掲載したのも社説の論調とも結びついています。靖国#hの国内外での破たん、参議院選挙での戦後レジーム脱却志向への国民的審判の例証は、東南アジアの一角でもリアルタイムで進行していることをこの夏、実感することができました。
(2007年09月07-11日,
【ウランバートル5日時事】日朝国交正常化の作業部会は五日、ウランバートルのモンゴル迎賓館で、植民地支配など「過去の清算」を含む国交正常化問題を議題に協議しました。日本側は、正常化の前提として、拉致問題解決の必要性を指摘。北朝鮮側は「被害者や家族の帰国など一定の措置を取ってきた」と簡単な説明にとどまり、同問題での実質的な協議は六日に持ち越しました。
日本代表の美根慶樹日朝国交正常化交渉担当大使は協議終了後、記者団に「拉致問題は六日に意見交換する。(北朝鮮の対応を評価するのは)ちょっと早い」と述べました。交渉筋によると、北朝鮮側は「解決済み」とは述べなかったといいます。
初日の協議は午前に約一時間半、午後に一時間四十五分間行いました。日本側は「過去の清算」に関し、日朝平壌宣言に明記した「一括解決・経済協力方式」で決着させるとの基本原則の再確認を求めました。
これに対し、北朝鮮代表の宋日昊日朝国交正常化交渉担当大使は「日本の立場に認識を深めた部分はある」と述べ、「過去の清算」を積極的に議論する日本の姿勢を評価しながらも、植民地時代の朝鮮人強制連行や虐殺、従軍慰安婦の問題を指摘し「個人補償」を求める従来の立場を崩しませんでした。また、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の本部差し押さえなど朝鮮総連をめぐる一連の問題についても、早急な解決を求めました。
美根大使は、初日の協議に関し「じっくり議論できた。相互の理解を深める上で有意義だった」と記者団に語りました。
両国代表団は五日夜、ウランバートルの日本大使公邸で夕食会を開催。六日は拉致問題について協議し、日本側は解決に向けた具体的な行動を迫る方針で、「解決済み」とする北朝鮮の対応が焦点です。
( 2007年09月06日,
日朝協会埼玉県連合会と同さいたま市協議会は四日、関東大震災後の朝鮮人虐殺の犠牲者の追悼会を、犠牲者の墓のある常泉寺(さいたま市見沼区、小山元一住職)で開きました。
一九二三年九月一日に発生した関東大震災後、軍隊や警察などが社会不安をあおるなか、各地で朝鮮人などが多数虐殺されました。埼玉県片柳村(現さいたま市見沼区)では同年九月四日未明、「自警団」が朝鮮人を発見して襲撃、殺害しました。その後村内の常泉寺に葬られ、墓石には「朝鮮人姜大興(きょうだいこう)墓」と刻まれています。
追悼式は本堂での小山住職による読経に続き、参加者全員で犠牲者の墓に線香をあげ、手を合わせました。
続いて本堂で集会があり、地元在住の高橋隆亮実行委員長が事件について報告しました。「『不逞(ふてい)の朝鮮人が井戸に毒を入れている』などの流言飛語が、わりあい早い時期から流されていた。はじめは(朝鮮人をおそったことは)手柄話だった」など、当時旧制中学四年生だった父親など事件を目撃した人たちから聞いた話を紹介。「歴史教科書問題や知事の『従軍慰安婦はいなかった』発言問題などが(今も)ある。正しい歴史を知り、こういう悲劇を繰り返してはならない」と強調しました。
参加者からは「さいたま市内の別な小学校に関する当時の記録の中に、震災の翌々日の全校集会で『朝鮮人に気をつけろ』と注意された話が残っている」「(大規模な虐殺事件のあった)県北の生まれだが、祖母にそれらしい話を聞いた記憶がある」などの発言がありました。
(2007年09月05日,
「旧日本軍『性奴隷(慰安婦)』問題の解決を求める証言集会」が、二日午後、高知市内で開かれ韓国の元日本軍「従軍慰安婦」のカン・イルチュルさん(78)が証言しました。主催は、青年学生の団体・SALAD(サラダ)。約二百五十人が聞き入りました。
日本軍の「慰安婦」にされた女性たちの共同生活の場、韓国の「ナヌムの家」の「日本軍慰安婦@史館」研究員の村山一兵さん(26)が「ナヌムの家」について説明。
イルチュルさんは、一九二八年十月生まれで「ナヌム家」に住む九人中最年少者です。
証言の中で、イルチュルさんは、日本の政治家の中には「従軍慰安婦≠ヘいなかった」という人がいるが高知では青年たちが一生懸命に勉強して事実を伝えようとしているとエールを送りました。
彼女は、四三年春、十四歳のときに軍刀を提げた日本兵と警察官に連行され、中国の日本軍の施設で性奴隷にされました。最初は将校が彼女を強姦し暴力をふるいました。その後、毎日七、八人の兵士の相手をさせられました。腸チフスにかかり、日本軍に焼き殺されようとしたとき朝鮮の「独立軍」に救われたと語るイルチュルさん。
証言の後、主催した青年たちも舞台に上がり、一緒に朝鮮民謡「アリラン」を歌いました。
(2007年09月04日,
連載のまとめとして、訪ねてみたい平和博物館の紹介です。
しょうけい館は厚生労働省の委託を受け、財団法人日本傷痍軍人会が運営している国立の施設ですが、それ以外は民間民営の施設です。開館日にご注意ください。
東京大空襲・戦災資料センターは、開館から五年を迎え、二〇〇七年三月に展示室を約二倍に拡大してリニューアルオープンしました。東京大空襲を学び、平和を発信する公的施設建設が凍結したため、〇二年に設立されました。名前の通り、東京大空襲の展示を中心に、子どもへの教育の視点を重視して運営されています。開館日・時間は、水〜日の正午から午後四時。〔江東区北砂1の5の4、電話03(5857)5631〕
女たちの戦争と平和資料館は、敗戦から六十年目の〇五年八月にオープンしました。戦時性暴力の被害と加害の証言や資料を集めた日本で初めての資料館です。日本軍性奴隷制を裁いた二〇〇〇年「女性国際戦犯法廷」を発案し実現に奔走した故・松井やよりさんの遺志を受け継ぎ、「慰安婦」支援活動や女性の人権問題に取り組む人々の手によってつくられました(リーフレットから)。開館日・時間は、水―日の午後一時から六時。〔新宿区西早稲田2の3の18、電話03(3202)4633〕
しょうけい館・戦傷病者史料館は、戦傷病者とその家族などが戦中・戦後に体験したさまざまな労苦についての証言・歴史的資料・書籍・情報を収集、保存、展示し、後世代の人々にその労苦を知る機会を提供する国立の施設です(リーフレットから)。〇六年三月に開館。開館時間は午前十時―午後五時で、月曜日は休館。〔千代田区九段南1の5の13、電話03(3234)7821〕
わだつみのこえ記念館は、アジア太平洋戦争における日本の戦没学生を中心に、彼我(ひが)あらゆる戦争犠牲者に関する資料を広く収集して展示します。「わだつみの悲劇を繰り返さない」誓いを後世に伝えていく施設です(リーフレットから)。〇六年十二月に開館。開館日・時間は、月・水・金の午後一時半―四時です。〔文京区本郷5の29の13、電話03(3815)8571〕
(東海林次男・戦争遺跡保存全国ネットワーク運営委員)
(2007年09月04日,
昨年九月、北海道で現職女性自衛官が同僚自衛官によるセクハラ(強姦未遂)を受けた事件があった。被害者は、一度は退職を考えたが家族や弁護士に励まされ、自衛隊にとどまって裁判を起こす道を選んだ。そのため上司から物置部屋隔離や退職強要などのいやがらせ(パワハラ)をされたという。国会でも紙智子参院議員らが追及、別のセクハラ事件でも加害自衛官の男性は停職一日という「甘い」処分であることがわかった。
これらの事件は、個々の自衛官の資質の問題ではなく、自衛隊の反人権的暴力性をしめしている。二十七日札幌地裁の口頭弁論で、加害者は強制わいせつ容疑で札幌地検に書類送検されていたのに、自衛隊側はわいせつかどうか「不知(知らない)」と答えたそうである(本紙二十九日付)。かつて日本の軍隊は強姦や虐殺、「慰安婦」への性暴力などを繰り返したが日本政府は真摯な謝罪もせず、米議会からまで批判された。その体質は現在の自衛隊にも引き継がれているというほかない。
最近自衛隊による市民活動監視行動や、元イラク先遣隊長佐藤正久参院議員の発言で明らかになった意図的な「巻き込まれ」戦闘参加計画など憲法違反の動きが暴露されているが、この裁判は女性の人権を守るとともに、こうした自衛隊の反人権的な本質への告発にもなっている。勇気ある原告を支援したい。
(佐)
( 2007年08月31日,
『論座』『中央公論』『正論』の九月号が歴史認識にかかわる特集を組み、『現代思想』八月号も「東京裁判とは何か」を特集したことが目をひきました。その背景には、日本軍によって性奴隷とされた元「慰安婦」にたいして、日本政府の公式かつ明確な謝罪を求めた七月の米下院決議採択にみられるように、日本の歴史認識の問題が広く国際問題化したことがあります。これにたいする論壇の反応は、国際社会の批判に開き直るものと、真剣かつ誠実な対応を求めるものとに、大きく分岐しています。
慰安婦問題での有害な開き直り
北岡伸一(東京大学教授)「『外交革命』に日本はどう立ち向かうか」(『中央公論』)や、小林よしのり(漫画家)「歴史を守る気概を今こそ取り戻せ」(『正論』)は、前者の立場にたつものです。ことに北岡論文は、前国連次席大使で、昨年の日中首脳会談にもとづいて設置された「日中歴史共同研究委員会」の日本側座長の発言だけに、看過できません。
北岡氏はまず、現代を国家間の「イメージ・ウォー」の時代とする見方を披歴します。そのうえで、米下院決議について、現在の価値観をもとに歴史問題を断罪する流れだと非難する立場から、安倍首相の「狭義の強制性はなかった」発言を擁護します。軍や政府による「暴力的な方法」での強制連行の「証拠」は見当たらないとし、軍当局に「慰安婦」は重大な違法行為との認識がなかったことを理由に、組織的な証拠隠滅も否定します。
しかし「慰安婦」問題とは、日本が植民地化・軍事占領した地域から多数の女性を動員し、日本軍が設置した「慰安所」に閉じ込め、性行為を強要した問題です。この非人間的な所業の全体が、大がかりな国家と軍による強制なしには不可能であり、それを裏づける史料も多数存在します。しかも敗戦時に陸海軍や内務省、朝鮮総督府などが書類を大量に処分したことは歴史研究のイロハであり、北岡氏の議論は通用しません。
北岡氏は「慰安婦」問題への批判を「現代の価値基準」を持ち込むものと非難します。これは、「慰安婦」問題が「婦人及び児童の売買禁止に関する国際条約」(一九二一年)など当時の国際法に反するだけでなく、この問題を今日においても正当化する態度が国際社会から批判されている事実を、二重にごまかすものです。そればかりか氏は「文脈を超えた価値基準の氾濫」として、国連の国際刑事裁判所設置にも「疑問」をぶつけます。ことし日本が同裁判所規定を批准したもとで、前国連大使としてあまりに不見識です。
さらに、現代の人権意識を過去に投影させる見方の根源が「マルクス主義史学」を典型とする「復讐(ふくしゅう)史観」にあるという珍妙な議論を唱えながら、その一方で、日本で「加害者責任」の検討が深められなかったのは民衆を善良な被害者として扱う「マルクス主義の影響が強かったから」と断じます。支離滅裂な放言というほかありません。
いずれにせよ、氏のように歴史認識を国家間のパワーゲームの駆け引きの道具として扱う立場は、歴史に真しに向きあう姿勢とは対極にあります。このような立場で「共同研究」に臨むなら、日中両国間の生産的な対話や相互理解は得られないどころか、重大な障害にもなりかねません。
過去の反省欠く行動への批判も
東郷和彦(元オランダ大使)「従軍慰安婦決議は『日本玉砕』の序章か」(『現代』)は、米下院決議について、採択を助長する日本側の行動が問題だとのべ、それは欧米全体で「慰安婦」問題がもつ意味への理解の欠如=「情報戦における敗北」に起因するとします。
「慰安婦」問題について東郷氏は、日本国内に@政府が法的責任をとるべき国際的犯罪だA公娼制度の一環であり軍に法的道義的責任はないB軍の関与と道義的責任は認める―の三つの立場があると指摘し、自らはBの立場だとしたうえで、一部政治家らによるAの立場が「過去を反省しない、女性の尊厳をふみにじる日本」というイメージを強めたと批判します。日本政府の法的責任の否定をはじめ同意できない論点もありますが、世界に「日本が過去に他人に与えた痛みを感じ取る国である」とのメッセージを発することや、地道な事実関係の検証を基礎とした歴史認識を添付するなどの提案は、当を得たものです。
広がる歴史対話教材作製の意義
三谷博(東京大学教授)「『記憶の穴』を埋める」(『論座』)は、東アジアの歴史対話をすすめてきた研究者の立場から「日本につきまとっている歴史問題に対処するには…二〇世紀の前半に日本が台湾・朝鮮などを支配し、中国に対して一方的な侵略戦争を行ったという大局を理解しておけばよい。そうすれば、個々の事実が話題に上ったときにも、適切な対応ができるだろう」とのべます。これは事柄の本質をついた指摘であり、日本が外交をすすめるうえで歴史認識の基礎におくべき考え方です。
三谷論文が日本と中国・韓国との民間レベルでの「国境を越えた歴史対話と教材作製の動き」の広がりと成果を紹介しているのも重要です。そして「いま東アジアで問題を引き起こしているのは、いずれの国でも大人」であり、とくに日本の成人が近代史を知らないとして、日本がなすべきは「大人に対する補習教育」と指摘します。
林博史(関東学院大学教授)「『慰安婦』問題と戦犯裁判」(『現代思想』)は、東京裁判で「慰安婦」強制の証拠書類がオランダ・中国・フランスの三カ国から提出され、判決でも中国で「女工」とだまして連行した事実が認定されたことを紹介し、この問題を正当化する議論が当時から国際的に通用しないことを明らかにします。北朝鮮の拉致問題と対比して、極端に狭いケースに限定し「強制性」を否定するのは「ダブルスタンダード」「ごまかし」という指摘も、安倍首相や北岡氏への的確な批判といえます。
(どい・うみひこ)
今月の動向(編集部)
▽特集「地球温暖化」(『世界』) 温暖化が何をもたらすのか。世界銀行の報告書は、洪水・干ばつによって2億人の難民が生まれ、海面上昇で東京、ニューヨークなどの沿岸大都市が被害を受けると指摘しています。植田和弘氏は温暖化ガスを大幅削減する「低炭素社会」の実現のため、環境税など「炭素に価格をつける」ことが必要だと指摘。増田耕一氏は温暖化否定論や行き過ぎた脅威論をいましめ、科学の有用性と限界を踏まえた社会の決断を求めます。
▽「政策中心に党内再編≠」加藤紘一(『中央公論』) 参院選の自民惨敗の原因は、「構造改革」で自民党の支持基盤が崩れたことと、小選挙区制によって個人後援会が弱体化したことにあると説きます。市場原理強化の是非を議論する自由な雰囲気が自民党内にないことを憂えます。
( 2007年08月31日,
世田谷公園で原爆写真展
世田谷区池尻の世田谷公園で二十六日、三軒茶屋地域の原爆写真展が開かれました。今年で十三回目。公園に遊びに来た若者や親子連れが写真に見入っていました。
「知識でしかなかったが、写真展で戦争のひどさを知ることができた」「戦争のむごさが伝わってきた」「憲法九条を変えようという動きがある中で大事な展示だ」などの感想が寄せられました。
戦争展に800人/北区
十三回目を迎える「平和のための北区の戦争展」がこのほど、北区の北とぴあ展示ホールで開かれ、二日間で八百人が来場しました。
北区で広がる「九条の会」の活発な活動や、イラク派兵した自衛隊の変ぼうぶり、「従軍慰安婦」と沖縄集団自決の真実、「原爆と人間」などを展示。参加者は、「証言コーナー」や合唱、朗読劇、アニメ映画上映など多彩なプログラムを楽しみました。
参加者からは、「イラクの子どもたちの惨禍を見ると、軍隊のすることのおぞましさを痛感する」「憲法九条は絶対に変えてはいけない」「戦争する国にしないためにがんばる」などの意見が寄せられました。
小森氏が講演/葛飾で集い
葛飾区でこのほど、二十二回目の平和のつどいが開かれ、百三十人余が参加し、「九条守れ」の集会アピールを確認しました。
改憲手続き法と憲法をテーマに、九条の会事務局長の小森陽一氏(東京大学教授)が講演しました。参加者からは「今日の話を周りの人たちに伝えたい」との感想が寄せられました。
(2007年08月29日,
【北京=山田俊英】中国共産党機関紙、人民日報二十六日付は、「国際随筆」欄に「さらに何を改ざんしようとするのか」と題する呉酩署名の論評を掲載し、安倍首相の「拡大アジア」論を、歴史の「改ざん」を発展させた地理の「改ざん」と厳しく批判しました。
論評は、第二次世界大戦での日本のアジア侵略をめぐって「日本で『改ざん癖』が流行している」と指摘。「野蛮な侵略なのに正義の『解放』と強弁し、どん欲な略奪なのに善隣の『共栄』だと強弁している」と批判しました。南京大虐殺を否定し、「従軍慰安婦」を「自発的な遊女」と言うなど、「黒を白と言いくるめ、被害者を中傷している」と強く非難しました。
日本式「改ざん癖」の新たな発展が「大アジア」論だとし、「日本のリーダーはインド、米国、オーストラリアと一緒に『大アジア』を構築することを公然と提起した」と述べました。名指しはしていませんが安倍首相が先のアジア歴訪で打ち出した「拡大アジア」論を批判したものです。
「この大物からみれば、中国、東南アジア諸国連合(ASEAN)、中央アジア、西アジア、朝鮮半島、モンゴルはすべてアジアではなく、遠い大洋のかなたの米国、オーストラリアがアジアだ」と述べ、これを地理の「大胆な改ざん」と論評しました。
そして、安倍首相が訪問したインドなど三カ国が「拡大アジア」論に「必ずしも積極的でなかったようだ」と、冷たい反応だったことを紹介しました。
( 2007年08月28日,
日本が過去におこなったアジア侵略戦争を正当化し「正義の戦争」と発信する靖国神社(東京都千代田区九段)―。二十六日、東京の高校生平和ゼミナールが「靖国神社ツアー」を行い、四十人が参加しました。
一行は、高校教師や大学院生(近現代史専攻)のガイドを受けながら境内の大燈籠(とうろう)や鳥居、閣僚が靖国参拝の時に車を乗りつける「到着殿」などを見学。戦争賛美のビデオを放映する戦争博物館「遊就館」へ向かいました。人間魚雷「回天」に触れ、出てきたところで感想を聞くと…。
この夏休みに中国を訪れ、北京市の「中国人民抗日戦争記念館」や、瀋陽の「九一八歴史博物館」を見てきた、森戸裕一さん(17)と堀江真郷さん(16)。
「遊就館には、南京大虐殺や七三一部隊について、なんの展示もないですからね」と首をひねる堀江さん。
中国で二人は南京大虐殺で生首が並んでいる写真や子どもたちが死んでいる写真に衝撃を受けました。「見るのがきつかった。あの写真を見て悪いことをしたと思わないのは人間としておかしい」と話します。
「日本では都合のいい歴史しか教えないですからね。中国に行かなかったらだまされていた。『慰安婦』問題だって悪かったと思っていない。『ごめんなさい。もうしません』って、子どもでもいえるのにね」と森戸さん。
堀江さんは「日本と中国の友好関係を築いていくには真実を認めることだと思う。安倍首相は中国の人たちに謝ってほしい」と語気を強めます。
「ちょっと難しかった」という門傳朋子さん(18)。のどを撃たれながらラッパを吹きつづけて死んだ一兵卒の美談について、「戦争を美化しすぎ。逆に笑ってしまう」といいます。「自分たちの妄想話じゃなく、歴史の目、科学の目で見た内容を展示しないと、世界の反戦の流れからもおかしい」と話します。
若森希穂さん(16)と友人の女性は「東京大空襲についても展示がないし原爆についてはちょっと触れてあるだけ。上映されているビデオのキャッチフレーズに『わたしたちの今のために犠牲になった…』とあったが、どう考えても違和感がある。戦争を悪いことだと思っていないところが恐ろしい」といいます。
( 2007年08月27日,
侵略戦争を美化・肯定し、安倍内閣の「美しい国」路線を後押ししてきた「靖国」派が矛盾に直面しています。参院選での自民党大敗で、8月15日に靖国神社に参拝した閣僚は1人だけに。「それでも安倍首相を支持する」とまき返しに懸命なのですが…。
田中倫夫記者
終戦記念日の午前、靖国神社。カンカン照りの下、参道に張られたテント周辺に約2千人(主催者発表)が集まりました。昭和天皇の「玉音放送」が流れる中、正装し「礼」をし続ける男性のあごから、汗が地面にぽたぽたと落ちます。
改憲右派団体の「英霊にこたえる会」や「日本会議」が主催した「第21回戦没者追悼中央国民集会」です。
堀江正夫「英霊にこたえる会」会長(元自民党参院議員)が口を開きました。「(安倍首相は)靖国神社参拝のあいまい戦術に加えて、(戦後50年の)村山談話、(『従軍慰安婦』問題での)河野発言まで肯定・容認した。大きく期待していただけにきわめて心外、失望の念を禁じえない」
この日午前の靖国神社には、首相をはじめ閣僚の姿はなし。「日本会議」構成員が「必死にはたらきかけた」(関係者)結果、午後になってようやく高市早苗・沖縄担当相が参拝しました。
前出の堀江氏は、参院選の自民党候補の「毎日」アンケートにふれ、いらだちを隠しません。「安倍首相の靖国神社参拝に、自民党は比例区当選14人中賛成は6人、選挙区23人中賛成11人。自民党のなかですら『賛成』は半数にいたっていない!」「閣僚が参拝しないのは言語道断」
集会最後には「日本会議」の地方議員らが登壇し、「鉄筋も筋金も入っていない国会議員はまことに残念。われわれ地方議員が代わってがんばる」(宍倉清蔵千葉市議)と気勢をあげました。
「靖国」と安倍首相にたいする包囲網は広がっています。
この日、靖国参拝した参院議員は12人。昨年の24人から半減です。
政府主催の「全国戦没者追悼式」であいさつにたった河野洋平衆院議長は、「(日本国民は)海外での武力行使を自ら禁じた『日本国憲法』に象徴される新しいレジーム(体制)を選択して、今日まで歩んできた」とのべました。「戦後レジームからの脱却」をとなえる安倍首相を前にして、批判の意図をこめたのです。
読売新聞グループ本社の渡辺恒雄社長・主筆は、「北京週報」電子版(8月10日付)のインタビューでこう表明しました。「(靖国神社の)遊就館は非常に有害な場所であり、あれは閉鎖しなければならない」「『産経新聞』を除いて、日本のメディアは戦争の責任と靖国神社などの問題について、重要な共通認識を持っている」
しかし、「靖国」派はまき返しに懸命。「憲法改正」や「教育改革」を訴える日本会議の全国キャラバン活動や、安倍首相就任の流れをつくった運動団体「立ちあがれ!日本」ネットワークは31日、「逆流のなかで『保守』は何を為すべきか」をテーマに緊急シンポジウムも開きます。「安倍を除いて憲法・教育改革、戦後レジーム脱却を進められる総理はいない。しっかりと見守っていく」(日本会議幹部)と安倍支持は変えようともしていません。
鹿児島大学の木村朗教授(平和学)はいいます。「自民党大敗の要因の一つには、安倍首相の『戦後レジームからの脱却』『美しい国』路線があるのに、『靖国』派の人たちは認めようともしていません。これは、日本政府がつき従うアメリカの立場とも根本的に矛盾します。保守陣営や創価学会員のなかにも『靖国』や『憲法』で異論が出ているもとで、国民意識とのギャップもますます拡大しそうです」
(2007年08月26日,
上田清司知事は日本の侵略戦争を美化する流れにくみしています。戦争への反省がない知事の態度をあからさまに示したのが、「従軍慰安婦」をめぐる言動です。
平和学習を攻撃
二〇〇六年六月県議会で、自民党の小島信昭議員は県平和資料館(東松山市)を利用した平和学習について取り上げ、「(教師が)自分たちの主張やイデオロギーを教育するため、県立の施設が悪用されている」「こんな偏った内容、展示で良いのか」と非難。「すべての県民に自虐的感情を抱かせることなく、真の史実、日本の正確な立場を学べるようにする」必要があると知事に迫りました。
上田知事は「平和資料館の年表を見ても、『従軍慰安婦問題など日本の戦争責任の論議が多発』とか書いてあるが、東西古今慰安婦はいても従軍慰安婦はいない。軍そのものが連れていったりするわけは絶対ない。こういった間違った記述は修正しなければならん」と答弁しました。小島議員が言及していないことをわざわざ具体例にあげ、直接自分の考えを表明したものです。
知事発言に対し、女性団体はじめ県内外から抗議が殺到しました。上田知事は抗議の声にこたえる形で「私の考え」と題する文章を発表し、「慰安婦はいた。慰安所もあった。しかし、軍が徴用した従軍慰安婦がいたという証拠はない」と繰り返しました。
同年、韓国の元「従軍慰安婦」の李容洙(イ・ヨンス)さんが抗議のために来日。知事に面会を求めたところ、拒否されました。李さんは〇七年三月に再来日し、ようやく面会に応じた上田知事は、ここでも「従軍看護婦などはあっても従軍慰安婦はない」という持論を展開してみせました。
知事選告示後の今月十五日、終戦記念日にあたっての記者の質問にも「慰安婦はいた。日本軍が強制したという証拠はなく従軍ではない」と答えました(十六日付「東京」)。
上田知事は「三大公約」の一つに「女性のチャレンジ支援」をあげ、「男女共同参画社会を実現」とうたってはいます。しかし「従軍慰安婦」をめぐる一連の言動には、女性の人権に対する鈍感さがはっきりと表れています。
応援メンバーも
上田知事を応援するメンバーも、「従軍慰安婦」の強制性を否定した米紙掲載の意見広告に名を連ねている民主党の河村たかし、神風英男の両衆院議員など、同様の考え方を持つ人が目立ちます。特に神風氏は、衆院議員から知事に転身した上田氏の「後継者」として、上田氏の地盤の埼玉4区(新座市など)から立候補した人物です。
(2007年08月26日,
高知県の青年学生の団体・SALAD(サラダ。15人)が、韓国の元日本軍「従軍慰安婦」カン・イルチュルさんの証言を聞く会を9月2日午後2時から高知市の県民文化ホールオレンジホール(1504席)で開きます。(藤原義一)
この会は「旧日本軍『性奴隷(慰安婦)』問題の解決を求める証言集会」(入場料・五百円)。証言するのは韓国のカン・イルチュルさん。
彼女は、一九四三年、十六歳のときに刀を提げた警察官に連行され、中国の日本軍の施設で性奴隷にされました。最初は将校が彼女を強姦し暴力をふるいました。その後、毎日、七、八人の兵士の相手をさせられました。
前回の3倍に
一昨年四月に発足したSALADは、同年十月に韓国の元「従軍慰安婦」パク・オクソンさんの証言集会を開催。そのときは座席五百人の会場でした。今回は、この問題で明確な謝罪をしない安倍政権に国際的な批判が高まっている中「この際、いっぱいきてもらおう」ということに。
といっても前売り券の普及は目標の一割にもなっていません。メンバーは、二十二日から高知市内の繁華街・帯屋町の商店主にお願いし各店舗に集会のポスターを張ってもらうなどアピールしています。ポスターは韓国留学中のメンバー・植田二郎さんのデザインです。
国際的な批判の一例が七月三十日午後(日本時間三十一日未明)のアメリカ議会下院の日本政府に「従軍慰安婦」問題について明確な謝罪をもとめる決議の採決。決議は、日本政府に@歴史的な責任を公に認め謝罪し受け入れるA首相が公式声明で謝罪を表明するB「従軍慰安婦」はなかったという主張を明確に公に否定するC現在と将来の世代に教育すること―を求めています。
SALADのメンバーの杉村直哉さん(高知大学四年生)も「僕が、この問題を知ったのは小学生のときです。中学校国語教師の母が教えてくれました。大学一年生のとき、韓国にいって被害者の話を聞き『何かしたいな』と思ってきました。『そんなことはなかった』といったり、被害女性の訴えに耳を傾けない日本政府の態度はおかしい。被害女性の声をしっかり受け止めて考えていく必要があると思います」と、いいます。
この企画の責任者・安部文章さん(高知大学四年生)は「昨年春、韓国にいき、カン・イルチュルさんの話を聞きました。日本政府は被害者の女性に、ちゃんと謝罪しなさいという思いで、この集会を企画しました」。
日韓の交流も
この企画を含めた二泊三日の日韓交流ワークショップin高知が開かれます(八月三十一日から九月二日まで)。
カン・イルチュルさん、韓国の学生六人も参加。県下の宿毛湾の日本軍の特別攻撃隊基地跡や四万十町の朝鮮人を使役してつくった津賀(つが)ダムの見学もします。
◇
問い合わせは高知市の平和資料館・草の家へ。電話088(875)1275
(2007年08月25日,
四日から一週間、横浜で第九十二回世界エスペラント大会が開催されました。日本は一九六五年の東京大会以来二度目、四十二年ぶりの開催国です。世界五十七カ国、千八百九十七人のエスペランチストが参加、日本がその約半数を占め、フランス(九十三人)、韓国(八十七人)、ドイツ(六十二人)、中国(五十五人)と続きます。
大会は開会式などの式典、専門分野の講演、各種分科会、文化行事、半日および全日の観光などさまざまな国を超えた交流が行われました。もちろん、この大会は全世界のエスペランチストの集まりですから、すべての行事は通訳不要のエスペラントのみで行われました。
この大会では出版したばかりのエスペラント版〈東アジア3国の近現代共通史〉がはじめてお目みえして、注目を集めました。この出版についての分科会には約百人が出席、出版に至る経緯の報告と討論が行われました。質疑では、扶桑社版の教科書がどれほど影響を与えているのかといった心配の声などが出されました。また従軍慰安婦問題も大きな話題となり、同時に日本で刊行されたエスペラント訳『慰安婦のはなし』が披露されました。
以下に紹介するのは、この翻訳出版事業の代表リー・チョンヨン氏(韓国)が行った分科会報告の一部です。
歴史は後世にどのように生きるべきかを教えるものです。そのためには歴史は先輩たちが行った誇るべきこと、恥ずべきことも含めて、ねじ曲げることなく、隠すことなく書かれなければなりません。
日中韓は地理的な近さから歴史的に親密な関係とともに衝突も多くありました。平和な調和のとれた共存を目指すためには三国共通の歴史教科書が必要です。けれども、これまではともすれば国益中心で出されていたため、多くの歴史的事象がそれぞれの都合で避けられがちでした。そのため、総勢四十二人の日中韓の平和を愛する歴史学者などによる三国共通歴史教材委員会は『未来をひらく歴史 東アジア三国の近現代史』を二〇〇五年に出版しましたが、それは日本語、中国語、韓国語で書かれたものでした。
しかし、「真の共通歴史」は中立的共通言語で書かれることが望ましいとも思われます。それゆえ、エスペラントの有用性を示すためにも、三国の平和を愛するエスペランチスト四十二人の共同作業により、そのエスペラント版が出版されることになりました。この本の注目すべき点は第一に、この本は平和、反戦のために書かれたものです。第二に国際的正義と平等を基礎に書かれています。第三に民衆の観点から書かれています。
三国のエスペランチストの共同活動に対して、中国世界語協会、日本エスペラント学会、韓国エスペラント協会が後援を行いました。多くのエスペランチストが予約注文で支持を表明しました。三国共通歴史教材委員会は無償で翻訳出版権を提供してくれました。
私たちは、この本がエスペラントの実践的有用性を示し、明るい未来をひらくことに貢献できることを希望します。
(さとう・もりお エスペランチスト平和の会代表)
( 2007年08月23日,
【ソウル=時事】韓国の聯合ニュースによると、最大野党ハンナラ党の大統領候補に選ばれた李明博・前ソウル市長は二十日、安倍晋三首相について「過去に執着して弁明していては未来に進めない」と語り、未来志向の日韓関係構築に努力するよう苦言を呈しました。
李氏は、旧日本軍の従軍慰安婦問題で狭義の強制性を否定した安倍首相の発言を念頭に、「国民が理解できない発言があったが、安倍首相にはアジアの平和と未来志向の発展のために働いてほしい」と述べました。
北朝鮮に対する方針に関しては、核放棄を前提に本格的な経済協力を行う考えを改めて強調。また、「伝統的な韓米関係を回復し、北東アジアの安全と経済協力の軸にする」と述べ、米韓の同盟関係改善に意欲を示しました。
( 2007年08月22日,
命を失う悲しさ、動物も同じです/憲法9条を持ちつづける国へ
秋山ちえ子さん、90歳。しなやかな語り口は健在です。終戦記念日の15日、今年も東京・赤坂のTBSラジオのスタジオでマイクに向かいました。「かわいそうなぞう」(作・土家由岐雄)の朗読は1967年から始まり41回を数えます。朗読に寄せる思いを聞きました。
(小川 浩)
<童話「かわいそうなぞう」は太平洋戦争末期、上野動物園で餓死させられた3頭の象の物語です>
戦争の惨めさというものを小さい子どもたちにもわかってほしいと思い、朗読をしています。戦争によって、命を失うことがどんなに悲しいことか、人間だけじゃなく、動物も同じです。ラジオを聞いた人たちから、すぐ反応があり、読みつづけています。読み始めた当初は、本屋さんに置いてなかったから、自費でつくって、欲しいという皆さんに配ったんです。
<この日は、1時間にわたりラジオに生出演。放送の中でアメリカに遠慮しないで憲法9条を守るべきだと述べています>
3年目の広島へ
今日の放送は、3分でいいから時間をちょうだいといいました。1分は原稿用紙1枚分を話せる時間です。3枚あればいいたいことを話せますから。憲法9条を持ちつづける国になってほしい。そのために、有権者は主権者という意識で議員を選んでください。今回の参院選で自民党が大敗しました。ある意味、有権者が意識を持って、どういう世の中をつくりたいか、税金の使い方をこうやってもらいたいと、自分の代理人として選んだ議員に、はっきり言わないとだめですね。
<ろう学校の教師をしていた戦中から、自作の童話をラジオで朗読していた秋山さん。戦後は、GHQ=連合国軍総司令部=が設置した民間情報教育局から依頼され、放送の仕事にかかわっていました。原爆投下から3年目の広島を訪れたことがあります>
こんなことって、あるのかしらと思いました。ひっそりとした地面の中から何かが聞こえてきそうな光景でした。国のお金で、広島、長崎の被爆当時の写真を何億枚でも刷って、各国に配ってほしいのね。どんなに無残でいたましいか、わかるように。
<3月、安倍首相が「従軍慰安婦」問題について「強制はなかった」と発言し、国内外の批判を浴びる出来事が起きました。秋山さんは、「従軍慰安婦」問題が今日のように注目される前からラジオの「秋山ちえ子の談話室」(57―2002年)で取り上げてきました>
元「慰安婦」の涙
65年に牧師の深津文雄先生が千葉県に「かにた婦人の村」という寮をつくりました。売春防止法が契機になったのです。募金したり私も応援していました。寮生の中で、一人の女性が告白しました。戦争当時、「慰安婦」として南洋の島で暮らした体験です。その人は、苦労した女性のために碑をつくってほしいといい、85年、木の柱を立てて、除幕式をしました。私も参加しました。その女性は柱に抱きついて、「帰っておいで、帰ってくるところができたよ。海の上をふらふらしてなくていいんだよ」と泣いていましたね。
<最近は若者に、はがきを送る機会があるといいます>
戦争を肯定するような若者がいたら、はがきに、こう書くのよ。「あなたは、人を殺すことができますか、自分が殺されてもいいですか」と。
あきやま・ちえこ 1917年、宮城県生まれ。東京女子高等師範学校(現・お茶の水女子大学)卒業。女性ジャーナリストの草分け。57年からTBSラジオの「秋山ちえ子の談話室」(2005年10月まで)を担当。現在は2カ月に1回、「きょうも元気でわくわくラジオ」(NHKラジオ@)で「ときめきカルチャー」(前10・0ごろ)のコーナーを担当。次は9月21日に出演予定。著書に『風の流れに添って』など。
( 2007年08月22日,
インドネシアの有力英字紙ジャカルタ・ポストは二十日、社説で、同国訪問中の安倍首相に従軍「慰安婦」など歴史問題に正面から向き合うよう厳しく求めました。
社説は、インドネシアには日本企業販売員としてのくらしを享受する女性(40)がいる一方で、第二次世界大戦中の日本の軍事占領下のカリマンタン島でわずか十三歳の時から日本兵の「性の奴隷」を強いられた女性(78)がいると指摘。この元「慰安婦」の女性は、数カ月前に安倍首相が日本はアジアの女性たちに性の奴隷になるよう強制した証拠はないと言い張った時、「私は彼の顔を平手打ちしたい。彼はうそつきだ」と地元メディアに語ったとのべています。
そして社説は、「日本の指導者たちが自らの国の歴史を正直に受け入れられない限り、日本は国際的な舞台で日本にふさわしい重要な役割は果たせない」と警告しています。
( 2007年08月21日,
毎年八月を迎えると、おもに銃後≠ニいわれる庶民の戦争体験をまとめた出版が相次ぎます。しかし、戦後六十二年がたち、体験を語る人々が少なくなってきたこともあり、体験記といえるものは今年はあまり目につきません。かわって増えているのが、侵略戦争をさまざまな角度から検証する本です。
宗教者の戦争期
石浜みかる著『変わっていくこの国で 戦争期を生きたキリスト者たち』(日本キリスト教団出版局・一七〇〇円)は、国家の強要する戦争協力と偶像崇拝にあらがい、また屈せざるを得なかったキリスト者たちのことを書きとめています。
「日本人」牧師として平壌刑務所で獄死した朱基徹は、牧師たちの神社参拝に反対したため投獄されます。息子さんの思い出によると、日本の警察に呼び出され、ガラス越しにつるされた父親が拷問される様子を見せられ、息子と一緒にいた母親を父の見せしめに拷問をしました。
また満州移民に協力したプロテスタント各派の「満州基督教連合会」や賀川豊彦らの果たした役割などについても、今日の教訓として書いています。宗教的信念にもとづいて兵役を拒否した石賀修のことなども貴重な記録です。
飯田市歴史研究所編『満州移民 飯田下伊那からのメッセージ』(現代史料出版・一二〇〇円)は、新しい史料を駆使して満州移民の全ぼうに迫っています。とくに農民を満州にいかせるために、どのような強制的な手段がとられたのか、また移民に反対した村長たちの存在にも目を向けています。戦後半世紀を超えて初めてなされた集団自決の生き残りによる、家族を殺害する生々しい証言も。満州移民の戦後史にも視野を広げ、この問題が現代に何を問いかけるかを提起しています。
勤労動員の体験
『あぁ、48年目の卒業式 小諸商業と戦争体験』(小商一六会発行・рO3・3765・3240高野方)と神谷恵美子監修『海鳴りの響きは遠く 宮城県第一高女学徒勤労動員の記録』(草思社・一五〇〇円)は、それぞれ戦争中の勤労動員体験をまとめたものです。
前者は、十六歳の少年たちが長野から名古屋の海軍工廠(こうしょう)に動員された記録です。飢餓と米軍機に追われ、級友の死など痛恨の記録です。後者は敗戦間際、仙台から横須賀の海軍工廠に動員された女性徒の記録です。当時彼女らがつけていた日記を中心に回想をまとめたもの。火薬工場での砲弾作り、特攻兵器「桜花」の製造、「本当にショックだった。これを抱いて若い兵士が敵艦に体当りして散ってしまうのだ。…と悲愴な気持で作業を続けるほか、なかった」などの感想とともに、当時の女学生らしい喜び悲しみが伝わります。一九八一年刊行の復刻ですが、編者の神谷さんはすでに亡くなっています。
ほかに高柳美知子・岩本正光編著『戦争と性 韓国で「慰安婦」と向きあう』(かもがわ出版・一五〇〇円)、池谷薫著『蟻の兵隊 日本兵2600人山西省残留の真相』(新潮社・一四〇〇円)も、侵略戦争の暗部にせまっています。
(牛久保建男)
( 2007年08月19日,
政治・経済
◆宮本顕治元議長の葬儀 日本共産党の元議長の宮本顕治さん(7月18日死去)の葬儀が東京・港区の東京都青山葬儀所で。不破哲三前議長が弔辞。各界から1300人余が参列(6日)
◆創立85周年記念講演会開く 日本共産党創立85周年記念講演会が東京・渋谷区で開催、約2400人が参加。志位和夫委員長、不破哲三前議長が記念講演(9日)
◆概算要求基準を閣議了解 安倍内閣は閣議で、社会保障費の自然増分を2200億円圧縮することなどを柱とする2008年度予算の概算要求基準を了解(10日)
◆経済成長が減速 内閣府が発表した4―6月期の国内総生産(GDP)は実質が前期比0・1%増と減速。個人消費が0・4%増に(13日)
◆安倍首相が靖国神社参拝見送り 安倍晋三首相と閣僚15人が靖国神社への参拝を見送り。高市早苗沖縄北方担当相が参拝(15日)
◆防衛事務次官に増田氏が内定 政府は防衛省の守屋武昌事務次官の後任に増田好平人事教育局長を内定(17日)
◆円急騰、平均株価が下落 東京市場で円相場は一時、1j=111円台に急騰。日経平均株価の下げ幅は874円に(写真)(17日)
社会・国民運動
◆東京大気汚染訴訟が正式和解 東京都内のぜんそくなど慢性呼吸器疾患患者633人が「疾患は自動車排ガスが原因」として、国、都、首都高、自動車メーカー7社を訴えた東京大気汚染訴訟の和解が東京高裁・地裁で成立(8日)
◆原水爆禁止世界大会が閉幕 原水爆禁止2007年世界大会・長崎の閉会総会には7000人が参加、「核兵器のない世界 扉開け」と訴え、3日から広島、長崎両市で開かれていた世界大会は閉幕(9日)
◆原爆症訴訟国が控訴 原爆症認定を求める集団訴訟熊本判決を不服として厚生労働省が控訴。原告団、弁護団、日本被団協などいっせいに抗議(10日)
◆「白い恋人」など賞味期限改ざんなどで回収 北海道土産「白い恋人」などを製造・販売する石屋製菓(札幌市)が「白い恋人」とアイスクリーム類24品種、バウムクーヘンなどを自主回収すると発表。「白い恋人」は賞味期限表示を10年以上前から改ざんしていたことが判明(14日)
◆観測史上最高の40・9度 岐阜県多治見市と埼玉県熊谷市で、国内観測史上最高の気温となる40・9度を記録。74年ぶりに更新。この猛暑で6都府県13人が熱中症で死亡(16日)
国際
◆比下院に「慰安婦」問題で決議案提出 「従軍慰安婦」問題で、フィリピン下院に日本政府に謝罪などを求める決議案が与野党議員から提出される。上院にも同様の決議案がすでに提出されている(13日)
◆韓国人人質2人解放 アフガニスタンの反政府武装勢力タリバンに拉致された韓国人人質のうち、女性2人が解放される(13日)
◆イラク北部で自爆テロ イラク北部ニナワ州で同時多発爆弾テロが発生。死者500人以上、負傷者300人以上で、03年の米軍侵攻後、最悪の規模(14日)
◆ペルー中部で地震 ペルー中部沿岸部で、マグニチュード8・0の強い地震が発生。死者400人以上、負傷者が1000人を超える(16日)
◆上海協力機構が首脳会議 上海協力機構(SCO)がビシケクで首脳会議を開き、長期善隣友好条約が調印され、宣言が発表された(16日)
( 2007年08月19日,
「国民が『戦後からの脱却』にお墨付きを与えていないことは、先の参院選の結果からも明らかだ」(新潟日報)――。地方紙社説で、安倍晋三首相が主張してきた「戦後レジーム(体制)からの脱却」に批判が相次いでいます。十五日付の地方紙社説に見てみました。
戦後的価値観とは
神戸新聞社説は、「安倍カラーで進む『戦後レジーム(体制)からの脱却』路線に、懸念が付きまとう。それを抜きにして、先の参院選で国民が政権与党に下した厳しい審判は語れまい」と指摘します。
新潟日報社説は、「62回目の終戦記念日 平和の輝きを忘れまい」との見出しで「戦争責任に対するあいまいさと同様、『戦後』とは何なのか、戦後的価値観のどこが問題なのかという説明は首相の口から発せられないままだ」と指摘。安倍首相が目の敵にする「戦後的価値観」が何かを明らかにしていないと問題提起しています。
信濃毎日新聞の社説は、安倍首相が口を閉ざす「戦後的価値観」を次のように論じています。
「戦前、戦中と違って、政府の方針と反対のことを言っても構わない」「自衛隊は海外で一度も武力行使していない。したがって、戦後日本に戦死者は一人もいない。若者が徴兵を心配することもない」
このような価値観にもとづく「社会のレールを敷いたのは憲法だ」と指摘しつつ、「日本人が戦後、憲法を踏まえて営々重ねてきた取り組みは、否定されるべきなのか」「そうではあるまい」とのべ、安倍首相が掲げる「戦後レジームからの脱却」に反論しています。
琉球新報は、沖縄戦「集団自決」への日本軍の関与が教科書から削除された問題や、従軍慰安婦問題での強制性否定などをあげ、「共通しているのは、旧日本軍の犯した非道な行為を可能な限りぼかし、糊塗(こと)しようとする意図が透けて見える点だ」と指摘。「再び過ちを繰り返さないためには、過去の行為を直視して反省し、史実を後世に正しく伝えていくことが不可欠である」と提起しています。
そのうえで、「政府内で、過去の過ちをあいまいにしようとする動きが見られるのは危険な兆候だ」と警告し、とくに「集団自決」問題での検定意見撤回を強く求めています。
「九条の会」に注目
日本国憲法第九条に象徴される価値観を守り、広げようと活動する「九条の会」に注目する社説を掲げたのは、北海道新聞の社説でした。
「九条を守ろうという動きがいま全国各地に広がっている。二〇〇四年に作家の大江健三郎さんや哲学者の梅原猛さんらが提唱した『九条の会』は七千団体を超えた」と紹介し、「北海道新聞の世論調査でも九条支持が改憲容認者の中で増えている」と、九条の理念を誇りにする人々が広がりを見せていることを書いています。
神戸新聞社説は、「九条の会」の名前こそ出さないものの、呼びかけ人の一人で先日亡くなった小田実さんの言葉「平和主義に徹することで、世界を変えうる力がある」を引用し、次のようにいいます。
「戦後、わたしたちが体現した『平和力』に、とりわけ若い人は自信をもて。小田さんはそう言いたかったのだろう。体験を引き継ぎ、世代を超えて共有して不戦の誓いを新たにする。いまこそ、そうした姿勢の大切さを再認識したい」
( 2007年08月19日,
終戦記念日の十五日、「8・15平和のつどい」が神戸市兵庫区の妙法華院(寺院)で開かれ、八十人以上が参加しました。「兵庫の『語りつごう戦争』展の会」主催。
神戸女学院大学の石川康宏教授のゼミナールで学ぶ女子学生(21)が、「従軍慰安婦」問題について話しました。
同ゼミで、元「慰安婦」のハルモニ(おばあさん)が共同生活する韓国の「ナヌムの家」を訪れたことなどを報告。十五歳で「慰安所」に連行されて、拒否すると壁に頭を打ちつけられ、その後遺症でいまも鼻血がでるハルモニから性被害の実態を聞き、再現された「慰安所」を見学しました。緊張のあまり倒れた学生もいたといいます。「私たちが学んだことをまわりに知ってもらうことが一番大事なのでは、と考えています。それで私たちは講演活動をしています」と語りました。
「つどい」では、靖国DVD≠ニして有名になった、日本青年会議所製作のDVD「誇り」を上映。日本の侵略戦争を美化する同DVDに、参加者から「うまくつくってるな」という声が聞かれました。
(2007年08月18日,
アメリカ下院議会は七月三十日、アジア太平洋戦争中に日本軍が性奴隷とした元「慰安婦」に対し、日本政府が「公式かつ明確な謝罪」をするよう求める決議を採択しました。「強制連行はなかった」とのべていた安倍首相は、この決議を無視し続けています。日本が犯した加害の歴史。改めて「慰安婦」問題に注目が集まるなか、実態を目撃した元兵士や、事実を受け止め、未来に生かそうとする女子学生たちがいます。
「もどかしいて、しょうないわ。こっちは女の子に聞いてんねん。だまされて連れてこられた≠ニ」――。
元陸軍兵長だった常川義雄さん(87)は、安倍首相の態度に怒りをあらわにします。「恥ずかしながら、私も慰安所を利用した」。悔恨の思いを込め、生きているうちに真実を語りたい、と妻にも語ったことのない自らの軍隊生活を、声を絞り出すように証言しました。
敷地の外れに
一九四一年(昭和十六年)に徴兵され、旧「満州」(中国東北部)に派遣。朝鮮半島を抜け、八月に東寧県老黒山に着きました。国境警備が主な任務でした。
「今度は慰安婦が来るぞ」。四二年暮れごろ、兵士の間にうわさが広がりました。若い兵士たちは色めき立ちます。四三年初めごろには軍敷地内に「慰安所」が造られました。兵舎と離れた敷地の外れに、三十ほどの部屋が長屋風に並びます。
「日曜や休みになるとみな、喜んで飛んでいった。一人の女のところに十人も十五人も並んだ。『早よ済ませ』とかいいながら」。常川さんも入りました。薄暗く狭い部屋に布団が一つ。当時、植民地にされていた朝鮮の十七、十八歳ごろの女性がいました。
被服の仕事と
「なんでこんなところにきたんや」と聞くと、「兵隊さんにだまされて連れてこられた」と日本語で答えました。「兵士の被服を修理する仕事がある」と誘われ、着いたところがこの「慰安所」だったのです。
「慰安所」は日本軍によって三二年ごろには造られていました。数万人から十数万人いたともいわれています。多くが若い朝鮮人女性。ろくな避妊具もなく、体調不良のときに拒否することさえできません。
後に常川さんは千島列島に移動。色丹島で終戦を迎えました。ソ連の捕虜になり、収容生活の末に帰国しました。
「昔のことだから、細かいところはよう覚えとらん。ただ、日本軍は朝鮮人をだまして連れてきたんや。強制的で否も応もあれへん。女性たちには申し訳ないことをしたと思う。アメリカにまでいわれてるのに、安倍首相は一つも謝らへん。なにかの補償をしたらなあかん」(つづく)
(2007年08月16日,
憲法施行六十年・日中戦争から七十年、歴史を学びアジアとの友好を―。「2007あいち・平和のための戦争展」が十四日から、名古屋市昭和区の市公会堂で行われています。開催は十七日まで。
戦争展は一九九二年から毎年開催し今年で十六回目。県内各地の戦争を記録する会、平和団体、労働組合など四十団体が実行委員会に参加しました。
八つのテーマで、日中戦争・中国人強制連行、戦争下の国民生活と抵抗、空襲、南京大虐殺、「慰安婦」問題、日本の軍事大国化などが展示されました。手りゅう弾や地雷になった「せともの」の展示もしています。
沖縄について考え行動する「命どぅ宝の会あいち」は、文部科学省が来年度から使用される高校教科書の検定で、沖縄戦における「集団自決」の記述を削除させたことに抗議し、沖縄県議会の意見書、沖縄県内の新聞報道、渡嘉敷島や伊江島などの「集団自決証言集」などを展示しました。
メモを取りながら展示に見入っていた中学二年の女子生徒は「学校では教えてもらえない展示が多く、来て良かった。みんなに知ってもらえるようリポートにまとめます」と話しました。
十四日には、国際ボランティアの高遠菜穂子さんが、イラク情勢と国際支援活動について講演しました。十六日には、中国・偽満皇宮博物院の王文鋒研究員が「旧満州における中国人強制連行」について講演しました。
(2007年08月17日,
マレーシア紙・星州日報十六日付は、安倍首相が終戦記念日の十五日に靖国神社参拝をしなかったことについて海外在住華僑向けニュースを配信する中国通信社・東京発の論評を転載しました。
同論評は、今回、安倍首相が靖国神社を参拝しなかった背景には、参議院選挙での与党自民党の大敗や「親密な盟友・米国の下院が『慰安婦』問題で日本政府に正式の謝罪を求める決議を採択した」ことがあると指摘し、次のようにのべています。
「安倍首相が靖国参拝をしないのは賢明だったが、もし、今後、安倍首相とその閣僚が靖国神社に参拝すれば、好転し始めたばかりの日本と中国、韓国との関係は再び行き詰まり状態に陥るだろう」「それは、日本の国際外交にとって決してためにならないばかりか、日本国内で憂慮されている北朝鮮の核問題や『日本人拉致問題』などすべての問題で良くない影響を受けるだろう」
( 2007年08月17日,
【台北=時事】旧日本軍の慰安婦として働かされたとする台湾人女性や支援者ら約七十人が終戦記念日の十五日、台北市内の日本の対台湾窓口、交流協会台北事務所周辺で抗議集会を開きました。
集会には元慰安婦八人が参加。若者を中心とする支援者らとともに、日本政府による公式謝罪と補償を求めました。支援団体によると、台湾の元慰安婦の生存者は二十五人、平均年齢は八十六歳になるといいます。
( 2007年08月17日,
【ベルリン=中村美弥子】六十二回目の日本の終戦記念日の十五日、ベルリンでは市民が、旧日本軍の元「従軍慰安婦」への公式な謝罪と補償を日本政府に要求する行動をしました。ベルリン在住の日本人団体と韓国人団体が共催したものです。
場所は、第二次世界大戦中の空襲で破壊されたままの姿を残し、戦争の悲惨さを伝えるカイザー・ウィルフェルム記念教会の前。喪色の黒い服を着た参加者は、アジア各地の元「慰安婦」たちの写真を持ち、日本政府に謝罪を求める横断幕を掲げ、通行する人たちに向けて静かに訴えました。
「韓国だけでなく、アジアの元『慰安婦』のために訴えている」という参加者のアン・チャジョさん(62)。「悲惨な戦争を繰り返さないために、日本人には歴史をきちんと勉強してほしい」と話し、「生きている間、ずっと運動を続ける」と強調しました。
浜田和子さん(62)は、「韓国やアジアの人たちにとって戦争はまだ終わっていない」と言い、「慰安婦」問題の解決のために公式な謝罪を日本政府に求めました。
前を通りかかったオランダ人観光客のアニさん(56)とバートさん(57)夫妻は「歴史を振り返るこういう行動はとても大事なこと。日本の首相はただわびるだけでなく、被害者の苦しみを直視し、反省をすべきだ」と語りました。
( 2007年08月17日,
日本軍の「慰安婦」問題で米下院が日本政府に公式な謝罪を求める決議を七月末に採択した後も、米国ではこの問題への追及・監視が衰えていません。
米誌『タイム』(電子版)は十五日、靖国神社を参拝しなかった安倍首相について「日本の安倍首相、神社に現れず」と題して伝えました。「故意に中国や韓国などの隣国を挑発した」前任の小泉首相よりも「個人的にはより保守である政治家」の安倍首相が参拝しなかったのは「前向きな動き」だとしながらも、靖国神社は「日本とアジア諸国の関係においてとげ」となってきたと、この問題を注視しています。
日本の「靖国」派外交の破たんを象徴的に示したのは、米下院が七月三十日に採択した「慰安婦」問題で日本政府に公式な謝罪を求める決議でした。日本の過去の侵略戦争を正当化し続ける「靖国」派を厳しく批判し、日本政府に歴史の真実に向き合うことを求めました。
決議採決直後の議員たちの新聞発表でもそのことが端的に語られています。
「罪のない多くの若い女性たちが朝鮮半島から連行され、言い表せない最悪な犯罪に苦しみ、人生を破壊された。謝罪はこの痛みを元に戻すことはできないが、被害者にとってその政府が過去の誤りの責任を受け入れたと知ることは重要である」(共和党のビト・フォセラ議員)
「慰安婦に関する歴史の事実の正確さを日本は棚上げし続けている。日本皇軍が若い女性たちを性奴隷にしたことについて、日本政府がしっかりと認め、謝罪し、歴史の責任を明確であいまいでないやり方で受け入れない限り、正義は果たされない」(共和党のクリス・スミス議員)
ペロシ下院議長も、決議の採決を歓迎。「米下院は真実と認知を求めてたたかう慰安婦を支持する」と述べ、米議会で証言した元「慰安婦」をウソつき呼ばわりする「靖国」派の主張をけん制しました。
本会議での採択の際、反対を表明した議員は一人もいませんでした。それどころか、外交委員長のラントス議員(民主)は「靖国」派の国会議員の米紙への意見広告に言及。「慰安婦」にされた被害女性を責める「靖国」派の主張に「吐き気を催す」との強い嫌悪感を示しました。ホロコーストの生き残りである同議員は、ナチス・ドイツの戦争犯罪を認め、後世に伝える努力を続けるドイツと比較し、日本は「歴史の健忘症を推進している」と指摘しました。
「慰安婦」の強制はなかったという発言で国際的批判を受けてきた安倍首相は、決議採択について「二十世紀は人権が侵害された時代だった。二十一世紀は人権侵害のない、世界の人々にとって明るい時代にしていきたい」と述べました。
決議を提出したマイク・ホンダ議員(民主)は一日、「二十世紀は戦時の人権の残虐行為で満ちている。これらの残虐行為を受け入れてこそ、われわれは今日の諸国に共有の人権基準を順守するように迫ることができる」と表明し、安倍首相に行動を迫りました。
同議員は、「われわれがお互いに間違いを指摘し合い、教訓を共有するときに諸国間の強固な友情もまた築かれる」とも強調しました。日米同盟を重視する米国議員たちも、「靖国」派の主張を容認しないとの立場を明確にしています。
(ワシントン=鎌塚由美)
( 2007年08月17日,
終戦記念日の15日、ソウルの日本大使館前で日本政府の公式謝罪を要求する元「慰安婦」と支持者ら(ロイター)
( 2007年08月16日,
日本の終戦記念日の十五日は、多くのアジア諸国にとっては、日本軍国主義から解放された日でした。アジア諸国やそのメディアは、改めてこの日の意義を振り返り、侵略戦争に無反省な「靖国」派や日本政府に警告を発しています。
【ハノイ=井上歩】第二次大戦中の「従軍慰安婦問題」をめぐり、フィリピンの与野党七人の下院議員が十三日、日本政府に対し、責任を認め、謝罪するよう求める決議案を提出しました。
米下院が七月、日本政府に公式謝罪を求める「従軍慰安婦」決議を採択したことに続こうとする動きです。
決議案は、日本政府に対し「第二次大戦中、若い女性たちを性的奴隷にしたことを公式に認め、謝罪し、責任を認め、犠牲者たちに賠償する」よう求める内容です。
決議案は、「慰安婦」に対する軍の関与と強制性を認めて「心からのおわびと反省」をのべた一九九三年の河野官房長官談話について、「日本の官民の関係者が最近、撤回させるか弱めようとする意図を表明している」と言及しています。
同様の決議案は過去にも数回下院に提出されましたが、採択されていません。上院にも七月、「慰安婦」に関する決議案が提出されています。
比上院にも先月決議案
七月三十一日にフィリピン上院に旧日本軍の従軍「慰安婦」問題で日本政府に謝罪を求める決議案を提出したのは、女性議員のコンパネラ・カエターノさんです。同決議案はフィリピン外相に対し、日本の参議院に日本共産党を含む野党が共同で二〇〇三年と〇四年に提出した「戦時性的強制被害者問題の解決の促進に関する法律案」の進ちょく状況の調査を要求しています。
決議案は、米下院外交委員会で六月二十六日に「慰安婦」問題で日本政府に正式謝罪を要求する決議案が採択されたこと、百人余のフィリピン人女性が戦争中に「性的な強制」の犠牲者となったこと、彼女らの尊厳と名誉の回復を急ぐ必要性などに言及。フィリピン外相に、日本の参議院に提出された法案の即時成立に全力をあげるよう求めています。
フィリピンでは一九九三年以降、百七十人が「慰安婦」だったと名乗り出ています。安倍首相が今年三月一日、「慰安婦」問題で「強制性を裏付ける証拠がなかったのは事実」と述べた時には、フィリピンでも強い抗議の声があがりました。
その際、フランクリン・エブダリン外務次官は「日本政府が、一九九三年の河野官房長官による性奴隷についての謝罪や、二〇〇二年の小泉首相がフィリピンの(元)『慰安婦』たちに送った謝罪の手紙の言葉と内容を順守するよう求める」(三月五日)と語っています。
(宮崎清明)
( 2007年08月16日,
八月十五日は、朝鮮半島が日本による植民地支配から解放された日であると同時に、北部をソ連(現在のロシア)、南部を米国に占領され、現在まで続く南北分断の始まりでもあります。「光復節」と呼ばれる十五日を迎えた韓国では、二十八日からの第二回南北首脳会談を前に、分断の克服と朝鮮半島の平和の確立に関心が集まっています。
与党・開かれたウリ党は十五日の声明で、「真の独立は南と北が平和統一を成し遂げるときだ」と強調、「南北首脳会談が朝鮮半島の平和体制構築に向けた一大転機となり、南北間の協力と信頼構築を通じた平和統一の礎となるよう期待する」と訴えました。
声明は日本政府の態度を「過去への反省なしに、依然として歴史のわい曲と日本軍『慰安婦』を否定するなど厚顔無恥のままだ」と批判。「平和憲法改定などの右傾化策動で周辺国の憂慮を呼び起こしている」と警戒しました。
一方、野党・ハンナラ党は、南北関係を進展させる上で「あらゆることの前提は(北朝鮮の)非核化」だとし、次期政権をしばるような合意をするべきではないと主張しました。
多くのメディアも南北首脳会談に焦点をあてた社説を掲載しています。
韓国日報は「大統領が陸路で(北朝鮮を)訪問することは南北関係の進展を象徴する大きなことだ。首脳会談が六カ国協議の枠内で進む北朝鮮の核廃棄の論議を促進し、北朝鮮が核なしでも生存できると思えるようになる契機にすべきだ」と主張しました。
ハンギョレ紙は「今回の首脳会談は何よりも平和体制の論議と経済協力などで具体的な成果を出すべきだ。これは核問題の解決と平和統一を早める上で大きく寄与するだろう」と期待を示しています。
(面川誠)
( 2007年08月16日,
参院選で自民党が大敗した翌週、北京テレビの国際ニュース解説番組「環球サーフィン」で、代表的な二人の日本研究者が選挙結果について対談しました。中国社会科学院日本研究所の高洪政治研究室主任と清華大学の劉江永教授。話は「従軍慰安婦」問題での米下院決議にも及びました。
「安倍首相もその前任者も、歴史をあいまいにする玄人だ」(高氏)、「共通の価値観の同盟といっても、日米間には歴史観、価値観に深刻な矛盾がある」(劉氏)と厳しい言葉が相次ぎました。
両氏とも一九九〇年代から日本では歴史をゆがめる勢力が急速に台頭してきたと危機感を示しました。それだけに米下院決議を「正義の声」と歓迎します。
中国政府は、安倍首相が就任後ただちに中国を訪れ、小泉前首相の靖国神社参拝で冷え切った両国関係を正常化させたことを評価しています。
政府の対日関係担当者は、本紙に「来年の北京オリンピック後はもっと重要だ。二〇〇八年末は改革・開放開始三十周年。節目としての評価が必要になる。〇九年は建国六十周年。日本を含め他国とはいい関係を持ちたい」と言います。
だからといって歴史問題を脇に置いているわけではありません。日本の憲法改定について、この担当者は「憲法九条は侵略された隣国との約束だ。それを変えようとするなら説明が必要ではないか」と言います。
今年は日本が中国全土に侵略を開始した盧溝橋事件七十周年(七月七日)、南京大虐殺七十周年(十二月)、遼寧省平頂山での住民虐殺七十五周年(九月)と節目の年です。中国外務省報道官は、定例記者会見で歴史問題の質問が出るたびに、「日本が真剣で責任ある態度で、正確、適切に歴史問題を処理するよう希望する」と述べています。
六月十九日、日本の青年友好代表団を迎えた晩さん会で胡錦濤国家主席は、「中日関係は改善の方向に向かっている」と歓迎しました。同時に、「双方が歴史を鑑(かがみ)とし、未来に目を向ける原則を守り、それに従わなければならない」と強調しました。「双方が」というところに思いがこもっています。
「両国の青年が手を携えて中日関係の発展方向を正確に把握することを心から希望する」とも述べました。
平頂山、南京の虐殺記念館はいま、今年の記念日の新展示オープンをめざして改修中。社会科学院日本研究所では、年末までに「日本軍国主義の罪悪記録集」を出版する作業が進んでいます。盧溝橋事件七十周年記念式典のスローガンは「歴史を忘れず未来を切り開く」でした。その言葉通り、侵略を受けた歴史の研究・教育はいまも続いています。
(北京=山田俊英)
( 2007年08月16日,
8月15日、日本は62回目の終戦記念日を迎えました。日本軍国主義による過去の戦争を、「アジア解放」のためだったと正当化する「靖国派」の主張と動向を、いま世界の世論はどうみているのでしょうか。
フィリピン/日本がアジア解放したとの遊就館/歴史家として拒否する
私は二〇〇三年、靖国神社の遊就館を訪ねました。あのとき私は本当に心をかき乱されました。
遊就館の展示は、日本は戦争に追い込まれたのだと繰り返し主張し、日本軍の残虐行為をもっともらしくごまかしていました。フィリピンは大東亜共栄圏に協力する「友人」として描かれていました。
日本は一九四三年、ホセ・ラウレルを大統領にしたてて、フィリピンを「独立」させています。しかし同じ時期に、多くのフィリピン人が抗日ゲリラ闘争を繰り広げていました。そういう歴史は遊就館にはまったくありません。
フィリピンは一九三五年にコモンウエルス(独立準備政府)を米国から勝ち取りました。十年以内に完全独立が約束されていました。日本の占領がフィリピンの独立を妨害し、欧米諸国の植民地からの「解放」を遅らせたのです。
フィリピンの歴史家の一人として私は、日本が東南アジアを列強諸国から解放したという遊就館の歴史観を拒否します。あまりに一方的です。博物館というのは、いろいろな立場から史実を紹介しますが、遊就館ほど歴史をねじまげているところはありません。世界の人びとが足を運びたくなるポピュラーな博物館にはなれないでしょう。
「英霊」の写真が展示されていましたが、死亡した日本兵は祖国や家族を愛していたでしょう。それは真実だと、私は写真を見て思いました。同時にその中には、アジアで残虐行為を行った者もいたはずです。A級戦犯も含め「正義」と描かれ、紹介されています。
さらに遊就館は、兵士の家族を思う気持ちを戦争の美化に利用しています。人間魚雷、戦闘機、戦車すべての展示品が戦争を正当化しています。軍国主義を育成するとんでもない博物館です。
博物館は教育の場でもあります。歴史観の差異はあっても、人を愛し、平和を願うものであるべきです。民族的な敵がい心をあおり、軍国主義を容認するものであってはならないのです。
来館者が残した感想に「すべての朝鮮人、アジア人を殺せ」というのがありました。教科書問題など、日本の歴史認識にかかわるアジア諸国からの批判への憎悪だと思いますが、大変ショックでした。
安倍首相は、就任後は論争を避けるために靖国神社にはまだ参拝していません。しかし、本音がどこにあるかは明確です。「従軍慰安婦」集めに日本軍の関与はなかったと公言し、憲法九条を変えたいと叫んでいます。私はアジアの国民の一人として、日本には九条を堅持してほしいと思っています。
軍隊は外国だけではなく、自国民をも敵ととらえます。フィリピンでは左翼活動家の暗殺、行方不明事件がひん発しています。軍の関与はまず間違いありません。日本にも昔、「ケンペイ(憲兵)」という国民を弾圧する組織がありました。
軍隊をなくすというのは地球上の人びとの願いです。フィリピン国家予算の支出項目第二位は軍事費です。これを貧困対策や経済発展のお金として使えれば、どれだけ多くの人が救われるか。日本国憲法九条は人類の悲願のさきがけです。
先の参議院選挙で与党は敗北しました。安倍首相が改憲を公約にして負けたということは、国民が日本の軍事化を拒否したと考えることができます。米国からの圧力は高まるでしょうが、九条改定は難しくなったはずです。日本の人たちには、九条を今後とも大切にしていってもらいたと思います。
(聞き手 豊田栄光)
フィリピン国立博物館上級顧問ジョン・シルバ氏
一九五〇年生まれ、五十七歳。フィリピンのラサール大学で歴史学を専攻。卒業後米国大学院で修士号取得。留学中を含め米国に二十五年間暮らし、非営利団体(NPO)職員としてHIV・エイズ問題などに取り組む。現在はマニラで教育関係のNPO「Synergeia」理事、フィリピン国立博物館上級顧問を務める。『アジア・ウォール・ストリートジャーナル』〇三年八月号に靖国神社遊就館ルポを寄稿。
( 2007年08月16日,
河野洋平衆院議長は十五日の全国戦没者追悼式で、「日本軍の一部による非人道的な行為によって人権を侵害され、心身に深い傷を負い、今もなお苦しんでおられる方々に、心からなる謝罪とお見舞いの気持ちを申し上げたい」と「追悼の辞」を述べ、日本の加害責任を明確に指摘しました。
そのうえで河野議長は、「海外での武力行使を自ら禁じた、『日本国憲法』に象徴される新しいレジームを選択して今日まで歩んでまいりました」「国際紛争解決の手段としての戦争の放棄を宣言する日本国憲法の理念を胸に、戦争のない世界、核兵器のない世界」などの実現をめざしたいとのべ、日本国憲法の恒久平和主義が正しかったことを肯定しました。
安倍晋三首相の目の前で述べたこの河野議長の「追悼の辞」は、「従軍慰安婦」問題の「強制性を裏付ける証拠はなかった」と発言し憲法改悪を狙う安倍首相の「戦後レジームからの脱却」を強くけん制したものとして注目されます。
「従軍慰安婦」問題をめぐっては、一九九三年八月、宮沢喜一内閣の官房長官時代に河野氏は「おわびと反省」を表明する談話を発表しています。
( 2007年08月
山口県下松市の日本キリスト教団下松教会と下松キリスト者平和の会、平和と民主主義と暮らしを守る実行委員会の三団体は十一日、同市中央公民館で、広島市立大学平和研究所の浅井基文所長を迎え、第三十七回歴史を考える下松市民集会を開きました。六十人が参加し、平和への思いをあらたにしました。
高橋敏通牧師が「安倍内閣の歴史認識に対して、米下院で『従軍慰安婦』問題の決議、沖縄戦をめぐる沖縄県議会での決議など批判が噴出している。これらの問題は、歴史のなかでとらえていくことが大切」とあいさつしました。
浅井氏は「交錯する戦争被害と戦争加害」と題して講演。「戦後六十年たってもなお、戦争被害・加害の問題が噴出している。このような政治の発生を許しているのは、国民のなかに、戦争被害・加害に関して認識や感覚、意識にあいまいさがある」と指摘し、「戦争責任問題の追及に不徹底さが原因にある」とのべました。
そのうえで「日本を真の民主国家とするためには、靖国史観に代表される反動イデオロギーを克服し、人間の尊厳・人権・民主が日本社会に根づくことを目指す運動をすすめることが大切」と強調しました。
(2007年08月15日,
第二十六回平和のための郡山の戦争展が十三日、郡山市公会堂で始まり、十八日まで開催しています。主催は、同実行委員会です。
会場には、「原爆と人間展」のパネルや、郡山の保土ケ谷化学工場空襲の記録、市民から寄せられたガスマスクや軍服、遺髪、防空ずきんなど、戦時中の遺品など数多く展示されています。
また、「従軍慰安婦」問題や常磐炭鉱での朝鮮人強制連行など戦争によって引き起こされた被害を紹介するとともに、NPO法人ルワンダの教育を考える会のルワンダでの学校建設や内戦での被害などの写真を使って活動を紹介しています。
来場者に折りづるを折ってもらうために会場の真ん中にテーブルが準備され、折りづるを折れるようになっています。
(2007年08月15日,
戦時性暴力の被害と加害の記録を集めた資料館、アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(wam)は十四日午前九時から午後六時まで、「慰安婦」情報ホットラインを開設し、「慰安婦」にかんする情報を求めます。
ホットラインの電話番号は、03(3202)7272。ホットラインの開設は今年で三回目です。過去二回の開設で、元日本兵からの中国や東南アジア、日本国内の慰安所での体験や目撃談など百件を超える情報が寄せられています。
( 2007年08月14日,
過去の侵略戦争を美化し、「従軍慰安婦」問題にも反省を示さない勢力「靖国」派と安倍首相に国内外で厳しい声が突きつけられています。首相は「戦後レジーム(体制)からの脱却」「改憲」を掲げ参院選挙で大敗、米下院から「従軍慰安婦」問題で謝罪を要求されました。「歴史の真実に向き合わなければ、世界で孤立する」。日本の青年たちからも、米国在住の作家からもそんな声があがっています。
小林信治記者
中国・海南島の被害者支援−ハイナンNET/首相は事実と向き合って
歴史の事実をありのままに見つめて、行動する青年たちが増えています。旧日本軍の「慰安婦」にされた中国・海南島の被害女性の裁判を支援する「ハイナンNET」もその一つです。
「『慰安婦』問題は歴史ではなく、現在進行形で苦しんでいる女性がいるってこと。安倍首相をはじめ『慰安婦』への狭義の強制がなかったという人たちは、一度でも被害者の話を聞いたことがあるのでしょうか。まずは事実と向き合うことから始まるのに」
そう語るのは同NET設立当初からかかわってきた金子美晴さん(32)です。
すごい衝撃
「私たちは、『慰安婦』『南京事件』といった言葉に意外と抵抗感がない世代です。学校教育できちっと日本の戦争を教えられていない分だけ、わからないから知りたいという人が増えている」と実感します。
同NETの高橋堅太郎さん(23)は「被害女性の証言を初めて聞いた衝撃を忘れられません。ボクらと同年代の人たちがやってきた事実。これはないだろうって。しかも60年も日本政府が放置してきたことも同じように衝撃」と話します。
事実を知って参加する学生がほとんどです。リャン・ヨンソンさん(25)も「今の時代にはありえない人権侵害。とにかく悲惨な。だから日本政府の対応は信じられない」と怒ります。
ネット使い
アメリカ下院で決議が採択された直後の2日、ハイナンNETはインターネットラジオで、「慰安婦」問題をジャーナリスト・西野瑠美子さんが語りかけリスナーからの質問に答える、初めての中継を成功させました。500回以上のアクセスです。
司会役を務めた高橋さんはリスナーの反応を「この問題を解決するにはどうしたらいいのかというような、前向きな質問が多くてびっくりした」と話します。
「決議は評価できるものの、本来的には日本政府がすすんで取り組むべきもの」とも。
「慰安婦」という言葉さえ知らない同年代の学生に、ハイナンNETの学生が大学で講義する出張授業もしています。ふだん発言しない学生も積極的に自分の意見をいう授業になり、「学生は考えていないのではなくて、意見を持っている。一方的に押しつけるのではなく、引き出してくれた」と感想を話してくれる教授もいます。
海南島で直接、被害者から事実を聞き取るスタディーツアーや加害者の側の日本兵からの聞き取りにも取り組んでいます。
時間も場所も超えるインターネット世代と語る同ネットの青年たち。「集まるだけでお金も時間も大変だけど、ウェブカメラを使えば、海南島の女性と日本各地の人たちとが画面を通じて直接、話を聞くなんてこともできるし、ぜひやってみたい」と金子さんは話します。
ハイナンNETは2年前に数人で生まれ、定期的にお知らせを出す人を含めればいま、数百人規模に。近年、同じように「慰安婦」問題に取り組む若者たちも各地に生まれています。「これまでこの運動は穏やかながらもその灯を絶やさないできた」と話す金子さん。「これから広がるかは私たち青年にかかっています」
作家(米ロサンゼルス在住)米谷ふみ子さん/謝罪してこそ世界は評価
このままでは日本は世界中で孤立しかねません。米国に住んでいると、それがとても歯がゆい。
「慰安婦」問題を見ても「強制性はなかった」「決議されても謝罪しない」などという安倍首相の態度は、国際社会では通用しません。日本政府はアメリカに言われなくても、世界中の女性に謝らなければなりません。
だまされたり、強制されたりでなければ、誰がレイプされるために戦地へ行き、1日に20人もの兵隊を相手にしますか。
日本の駐米大使が、ペロシ下院議長らに決議を採択しないよう書簡を送ったそうですが、何を考えているのでしょうか。しかもペロシさんは女性の政治家ですよ。
対照的にドイツは戦後謝罪し、賠償のお金を国が出し、堂々と近隣諸国と付き合っています。
日本は安倍政権になって余計に信用がなくなり、ブッシュ政権ですら日本と距離をおいています。レーガン米大統領は戦時中に日系アメリカ人を収容所に入れたことを謝罪し、評価されました。
過去の過ちを認めて謝罪することで、世界は日本を違う目で見ることになると思います。(談)
参院選で「靖国」派19人も落選
「従軍慰安婦」に「強制」はなかったなどとこの問題自体の抹消を図ったばかりか、「戦後レジームからの脱却」「憲法改正」を掲げ、「愛国心」を教育の場に持ちこもうとしている安倍首相と「靖国」派。今回の参院選挙ではこの勢力に国民がノーを突きつけた結果となりました。
本紙の調べでは、参院選に42人の「靖国」派が立候補(自民32人、民主7人、国民新党3人)。このうち19人が落選しました。民主党では、日本青年会議所会頭として改憲草案作成にかかわった候補も落選しました。
選挙結果は「安倍氏が優先する政策へのノー」だ――こう指摘する日本政治にくわしいジェラルド・カーティス米コロンビア大学教授が語りました。
「(国民は)民主社会における『戦後レジームからの脱却』とは、なんと恐ろしいことを、となってしまった」(7月30日、日本外国特派員協会の講演)
(2007年08月12日,
「2007年平和のための戦争展」(核兵器をなくし平和をつくる三島市民の会主催)が十三日まで、静岡県三島市の三島商工会議所のTMOホールで開かれています。
「悲惨な戦争」「進む戦争への道」「平和な未来を!」の三テーマで展示。三島市民による書や「『改憲許すまじ』マイクの声続く冬来るらし三島駅前広場」などの自由律俳句や書、写真など平和文芸作品、戦争や平和を考える絵本も並んでいます。
「悲惨な戦争」のコーナーでは、実行委員会所属の団体や有志が、韓国の「ナヌムの家」や、中国の七三一部隊本部跡や東山万人坑を現地視察した写真や資料を展示。
元日本軍「慰安婦」のハルモニが描いた絵も掲示され、日本軍に連行され性奴隷にされたことを告発した「私たちの前に謝罪せよ!」と題する絵も。事実を認めない日本政府に謝罪を要求する、アメリカ下院が七月末に採択した「慰安婦」決議も紹介されています。
展示「進む戦争への道」「平和な未来を!」では、日本の軍事費や強化される在日米軍基地、改憲の動きを伝え、憲法九条の値打ちをアピールしています。
「戦争は絶対にしてはいけない。ふつうに暮らせる世界を子どもたちに伝えたい」との感想が寄せられました。
(2007年08月12日,
埼玉県平和資料館の運営協議会に館側から七月、展示の中で記述されている「従軍慰安婦」について「従軍」を削除するともに、常設展を見直して「戦後の平和貢献」として政府開発援助(ODA)や平和維持活動(PKO)における自衛隊の活動などを取り上げる方針が示されました。これに対し一部協議会委員が反発し、協議が続いています。
この問題で日本共産党の柳下礼子埼玉県議は十日、県総務部に対し、「各界から複雑な評価を受けている事例」について肯定的な意見でのみ展示することは「一方的な見解を押しつけるものとなり、公的な資料館にふさわしくない」と申し入れました。さらに自主性・科学性を重視し、協議会などの県民の声を尊重して民主的運営を貫くよう求めました。
応対した浅賀康夫県民生活局長は「埼玉県の資料館なので、埼玉県民の平和のための活動を中心にすえた展示にしたい」「協議会などできちんと議論していただきます。」と語りました。
柳下県議は「平和資料館は国際的にも評価される貴重なもの。歴史の審判に耐える展示をお願いしたい」と述べました。
同資料館の展示について上田知事は昨年六月議会に「従軍慰安婦」の記述の見直しを求める考えを示し、同九月議会では、戦後の国際貢献についても幅広く伝える必要があると答弁。これを受けて展示内容の見直しが検討されていました。
(2007年08月11日,
一九三七年十二月、日本軍が南京を占領、「大虐殺」事件をひき起こしてから七十年。中国本国をはじめ欧米諸国で日本軍の蛮行を糾弾する映画がつぎつぎと製作中。
このような国際世論を向こうにまわして、日本では「南京大虐殺? それでも日本は黙っているのか?」と「祖国日本の誇りと名誉を守る映画製作」と銘打つ映画「南京の真実」の撮影がはじまった。監督・プロデューサーはCS日本文化チャンネル桜の水島総代表。彼は『正論』二〇〇七年九月号に「映画『南京の真実』製作で見えてきた情報戦の真実」というレポートを発表、「南京大虐殺など『無かった』と主張している」唯一の映画、「不当な冤罪を着せられた靖国神社の英霊の汚名を晴らすという使命への誇りと自負がある」と。
彼らはアジア・太平洋戦争は日本の自衛戦争、白人からのアジア解放、「従軍慰安婦」も「沖縄の集団自決」も軍は関与しないと強弁するいわゆる「靖国派」学者たちの「研究」にもとづき、「南京大虐殺」は中国とくに中国共産党がねつ造したものと叫ぶ。今年の世界的「南京大虐殺」キャンペーンも中国の「対日戦争準備」反日キャンペーンとまで言い切る。
二億円を予定する映画製作資金のうち、このレポートによると七月二十日現在、四千二百二十六名から一億四千八百九十七万八千八円あつまったと言う。その動向は要注意である。(反)
( 2007年08月09日,
第二次世界大戦中、日本軍の無法行為によって心や体に深い傷を負った中国人戦争被害者が、日本政府や企業に対して謝罪や賠償を求めた裁判を支援する「中国人戦争被害者の要求を支える宮城の会」(代表・小田中聰樹東北大学名誉教授ら六人)の総会が四日、仙台市で開かれました。
同会では、中国人「慰安婦」訴訟や強制連行・労働訴訟などの裁判を支援しています。東北では、山形地方裁判所で酒田港強制連行・労働訴訟がたたかわれています。
参加した十五人の市民を前に、中国人戦争被害賠償請求事件弁護団幹事長の南典男弁護士が記念講演をしました。
南氏は、四月二十七日に言い渡された西松建設強制連行・強制労働事件訴訟の最高裁判決は、原告らに請求権がないとする不当判決であると同時に、不法行為の事実を認定し、政治的な解決を促す付言をつけるなどの積極面を持つと解説しました。
最高裁判決で、他の裁判も世論も「決着済み」になっていないことを示して、解決には世論が決定的に重要だと述べ、「この問題の解決が、中国国民との信頼につながり、平和な未来へつながっていることを強調していきたい」と語りました。
総会では、宣伝の強化や会員の拡大、山形訴訟支援の強化など、引き続き支援を強める方針が確認されました。
(2007年08月07日,
憲法「改定」を声高に叫ぶ安倍首相を支えるのは、日本の侵略戦争を「正しい戦争だった」という歴史観にたつ、いわゆる「靖国」派です。「従軍慰安婦」問題、沖縄戦での「集団自決」問題など歴史の真実をねじまげる動き…。今年は、中国への全面的な侵略に突き進む口実となった盧溝橋事件、南京大虐殺事件から七十年です。
本紙は一昨年、昨年と「元兵士が語る『大東亜戦争』の真相」を掲載してきました。今年も歴史の真実と戦争の実相を伝える企画を準備しています。元兵士の方、日本軍による被害を受けた方の体験をお寄せください。お知り合いやご家族の方の紹介、情報提供でも結構です。
連絡先=〒151―8586 東京都渋谷区千駄ケ谷4の26の7 しんぶん赤旗社会部「証言・『大東亜戦争』の真相」係。FAX03(3225)1434
( 2007年08月06日,
【北京=山田俊英】中国共産主義青年団機関紙、中国青年報三日付は「『慰安婦』での米国の態度表明は正義の勝利」と題する論評を掲載し、米下院が七月三十日に採択した「従軍慰安婦」決議を高く評価しました。
論説は、決議提案者の一人、マイク・ホンダ氏をはじめとする議員の行動を「正義」とたたえ、「日本の右翼」が米紙に「慰安婦」を否定する広告を出したことが「さらに多数の議員の正義感をかきたてた」と指摘しました。
( 2007年08月06日,
アメリカ議会下院本会議が太平洋戦争中に日本軍によって性奴隷にされた元「慰安婦」たちに日本政府が公式な謝罪するよう求めた決議を採択した問題で、婦人民主クラブ(一戸葉子会長)は三日、声明を発表しました。
声明は、安倍晋三首相らの誤った歴史認識の核をなすのが女性の人権問題だと指摘。女性の人権を否定し、女性の地位を戦前の状態に引き戻そうとする動きが強められていると批判し、決議をうけ、日本政府が公式に明確に謝罪し、「賠償」を行うよう要求しています。
( 2007年08月06日,
米議会下院は7月30日午後(日本時間31日未明)の本会議で、太平洋・アジア戦争中の日本軍の「従軍慰安婦」問題で、日本政府に明確な謝罪をもとめる決議を採決しました。こうした内容の決議が本会議で採択されたのは初めて。参院選で国民から厳しい審判が下った安倍政権に、間髪いれず「同盟国」の議会が痛打を浴びせました。
ワシントンで、山崎伸治記者
「決議の採決は、米市民社会と世界の良識の勝利だ」―採決の様子を傍聴席から静かに見守っていた元「慰安婦」のリ・ヨンスさんは終了後、記者団に喜びを語りました。2月の公聴会で、リさんら3人の元「慰安婦」の女性が証言したことが、決議の採決に大きな力となりました。
一人も反対なし
この日の採決は、参院選の結果を待って行われました。提案者であるカリフォルニア州選出で日系のマイク・ホンダ議員(民主党)は、米紙ワシントン・ポスト(7月18日付)で「選挙前に安倍氏に恥ずかしい思いをさせたくないので、下院の指導部は慰安婦決議の採決を選挙後に延期することで合意している」と語っていました。
しかし、選挙後でも安倍氏には「恥ずかしい」結果となりました。決議の採決は記名投票ではなく、出席議員が声で賛否を明らかにするやり方がとられました。議長が声の大小で賛否を判断するもので、このこと自体、決議が圧倒的多数に支持されていたことを示しています。果たして「ノー」と言った議員は一人もいませんでした。
決議は日本政府が「従軍慰安婦」問題について、@歴史的な責任を公に認め、謝罪し、受け入れるA首相が公式声明で謝罪を表明するB「従軍慰安婦」はなかったという主張を明確に、公に否定するC現在と将来の世代に教育する―ことを求めています。
まさに安倍首相をはじめとする、侵略戦争を正当化する「靖国派」国会議員らの主張とその行動がはっきりと糾弾されたものです。
「ばかげた希望」
採決前には民主、共和両党から計8人の議員が討論に立ちました。いずれも決議案に賛成する立場からのものでした。
「自分自身の過去の真実に顔を向ける勇気があるのか、それとも時がたてば真実は消えてなくなるとばかげた希望を抱いて真実から逃げるのか」―こう切り出したのはトム・ラントス外交委員長(民主党)。「戦後のドイツは、その歴史で最も恐ろしい罪を犯したが、正しい選択を行った。一方日本は、自ら歴史の記憶喪失をすすめてきた」と、日本政府を批判しました。
外交委員会の共和党筆頭委員のイリアナ・ロス・レーティネン議員は女性。「事実を否定し、わい小化しようという企ては、将来の世代を欺くものだ」と批判し、スーダンのダルフール紛争で女性や子どもがいまも軍による犠牲になっていることを指摘。「従軍慰安婦」問題が、世界のいまの問題につながることを強調しました。
トム・デービス議員(共和党)は第2次世界大戦中、米国が日系人を強制収容所に隔離したことにふれ、「それは誤りだった。以来、私たちは犠牲者の家族に謝罪し続けている。これが責任ある指導者のとるべき措置だ」と日本政府に決断を迫りました。
日本政府の妨害
決議案に対し、日本政府はこの間、あの手この手で採決しないよう働きかけました。ワシントン・ポストによると、加藤良三駐米大使がナンシー・ペロシ下院議長ら5人の下院指導者に書簡を送り、決議の採決には「永続的で有害な影響」があると脅迫めいたことを伝えていたといいます。
「決議は日本の人々を非難するものではない。政治指導者が政府として過去の歴史をしっかりとらえるかどうか、が問われている」―採決終了後、ホンダ議員はこう語りました。
「政党指導者の一貫しない発言や全面広告で40人以上の国会議員が名を連ねて決議案に反対したことは採決に影響したと思う」
安倍首相が「強制の根拠はない」と述べたり、「靖国派」国会議員(自民29人、民主13人、無所属2人)がワシントン・ポストに意見広告を出したことが、決議への支持を増やす結果になったと振り返るのです。
さらに「私は安倍首相が決議の言葉に耳を傾け、両国の友好がかつてなく高まることを希望している」とも。
米議会の声を聞くのか、それとも無視を続けるのか、安倍氏の姿勢が改めて問われています。
(2007年08月05日,
石川憲法会議とハンセン病支援ともに生きる石川の会が三日、金沢勤労者プラザで市民に開かれた憲法講座パート20を開き、約三十人が参加しました。
全日本民医連名誉会長で十五年戦争と日本の医学医療研究会名誉幹事長の莇(あざみ)昭三氏が「戦争と医学・植民地医療そしてハンセン」をテーマに報告しました。
莇氏は「戦争の犠牲はまず『弱者』から」として、戦争で患者や高齢者、子どもの死亡率が飛び抜けて高いことを豊富なデータを示して明らかにしました。
細菌・化学兵器開発のために生体実験をした「731部隊」の犯罪を告発した莇氏は、実験データと引き換えに戦争犯罪人である医療人が罪を免れた経緯を明らかにし、ドイツの戦後補償やアメリカ下院議会の「従軍慰安婦」問題決議を例に、過去の侵略戦争を正当化する安倍・自民党を厳しく批判しました。
莇氏は、一八六八年から一九四五年まで日本は十三回出兵したが、一九四五年以降は一回もないとし、「憲法九条があったから」と述べ、憲法九条を守る国民過半数獲得運動の緊急性を訴えました。
(2007年08月05日,
憲法「改定」を声高に叫ぶ安倍首相を支えるのは、日本の侵略戦争を「正しい戦争だった」という歴史観にたつ、いわゆる「靖国」派です。「従軍慰安婦」問題、沖縄戦での「集団自決」問題など歴史の真実をねじまげる動き…。今年は、中国への全面的な侵略に突き進む口実となった盧溝橋事件、南京大虐殺事件から七十年です。
本紙は一昨年、昨年と「元兵士が語る『大東亜戦争』の真相」を掲載してきました。今年も歴史の真実と戦争の実相を伝える企画を準備しています。元兵士の方、日本軍による被害を受けた方の体験をお寄せください。お知り合いやご家族の方の紹介、情報提供でも結構です。
連絡先=〒151―8586 東京都渋谷区千駄ケ谷4の26の7 しんぶん赤旗社会部「証言・『大東亜戦争』の真相」係。FAX03(3225)1434
( 2007年08月05日,
政治・経済
◆参院選で自公大敗 第21回参院選が投開票され、日本共産党は比例代表で440万票(7・5%)、3議席を獲得。自民37、公明9と大幅減で与党過半数割れに。安倍晋三首相は早々と「続投」を表明。日本共産党の志位和夫委員長は「大きな前向きのプロセスが始まった」と記者会見(29日)
◆現金給与7カ月連続減 厚生労働省が発表した毎月勤労統計調査によると、6月の現金給与総額は前年同月比1・1%減の46万5174円。7カ月連続マイナス(31日)
◆赤城農水相が辞任 事務所費疑惑が次々発覚していた赤城徳彦農水相が「与党敗北の原因になった」と参院選大敗を理由に辞任(写真)(1日)
◆自民幹事長、政治資金規正法改正で方針示す 自民党の中川秀直幹事長が政治資金規正法改正問題で、すべての政治団体について1円以上の支出に領収書添付を義務付ける方向を表明(1日)
◆労働生産性伸びても賃金低下 厚生労働省が発表した「労働経済白書」は、労働生産性が伸びても、賃金は低下し労働時間短縮にも結び付いていないと分析(3日)
社会・国民運動
◆薬害肝炎訴訟で広く救済、国・企業に賠償命令 名古屋地裁が国・企業の責任を認め賠償命令。第9因子製剤では国の責任を初めて認定、フィブリノゲンでも救済範囲を拡大(31日)
◆大阪府枚方市の清掃工場談合事件で市長を逮捕 枚方市発注の清掃工場建設工事をめぐる談合事件で、大阪地検特捜部が競売入札妨害容疑で中司宏市長を逮捕、自宅を家宅捜索(31日)
◆電気こんろ、家庭用でも火災事故、改修対象は73万9千台に 小型電気こんろの火災事故で、新たに一般家庭用台所の機種でも火災が起きていることが判明。製造・販売した5社が新聞紙上におわびと改修を掲載(1日)
◆原水爆禁止世界大会国際会議始まる 原水爆禁止二〇〇七年世界大会の国際会議が広島市で、「核兵器のない平和で公正な世界を」をテーマに始まる(3日)
◆フルキャストに事業停止命令 「日雇い派遣」大手のフルキャストが労働者派遣法で禁止されている港湾運送などへの違法派遣を繰り返していたとして、東京労働局が同社に事業停止命令を出す(3日)
国際
◆米下院が「慰安婦」決議採択 米下院本会議はアジア太平洋戦争中に日本軍によって性奴隷にされた元「慰安婦」に日本政府が公式な謝罪を行うよう求める決議を可決(30日)
◆IAEA団長が「北朝鮮が全面協力」と発言 北朝鮮を訪問していた国際原子力機関(IAEA)要員第一陣が平壌から北京に到着し、アデル・ドルバ団長は「任務遂行に当たって北朝鮮当局から全面的な協力が得られた」と表明(31日)
◆EUが東南アジア友好協力条約に加入表明 ASEAN拡大外相会議で欧州連合のソラナ共通外交・安全保障上級代表がEUとして東南アジア友好協力条約(TAC)に加入すると決めたと表明(1日)
◆イラク政権からスンニ派が離脱 イラク国民議会のイスラム教スンニ派の主要会派「イラク合意戦線」は連立政権から離脱し、ゾバイ副首相ら六閣僚を引き揚げると発表(1日)
◆北朝鮮の核でARF議長声明 東南アジア諸国連合地域フォーラム(ARF)閣僚会議で北朝鮮の核開発問題を話し合う六カ国協議がテーマとなり、議長声明で「対話と交渉を通じた核問題の平和解決への支援を表明」(2日)
( 2007年08月05日,
自由法曹団東京支部(島田修一支部長)は一日、アメリカ下院本会議の日本軍「慰安婦」問題決議を受け、「日本の公式謝罪を求める」見解を発表しました。
見解は、多くの裁判所が強制連行などの事実を認知していることを指摘。「慰安婦」問題は「日本の国家・軍が組織的に行った重大な人権侵害であり犯罪行為であることは明らか」として、日本は「性奴隷にした事実を認めたうえ、被害者に真摯(しんし)に謝罪し責任を取り早急に被害者の人権を回復すべきである」としています。
(2007年08月04日,
日本政府の責任を指摘/ドイツ
【ベルリン=中村美弥子】ドイツのメディアは、米下院で日本政府に謝罪と責任の受け入れを求めた「慰安婦」決議案が採択されたことを報じ、日本政府の責任を指摘しました。
ベルリナー・ツァイトゥング紙一日付は、米下院の決議は「拘束力はないが苦痛を与えるものだ。米政府はいつも決議を通じて、同盟国ではなく、ならず者国家をさらし者とするからだ」とし、今回の決議の特別性を強調。元「慰安婦」の女性たちは尊厳回復を求めていると指摘し、「米国の決議ではそれを表現できない。それができるのは日本語の決議のみだ」と述べ、日本政府に注文しました。
フィナンシャル・タイムズ・ドイチュラント紙一日付は、「日本政府は戦時売春の責任を取るべきだ」との見出しで報道。日本が行ってきた謝罪は決して明確なものではなかったとする日本内外の批判を紹介しました。
フランクフルター・ルントシャウ紙一日付は、韓国と中国の反応に触れ、「慰安婦」問題をナチス・ドイツによるホロコースト(ユダヤ人大虐殺)と対比して日本の戦争犯罪を告発した新華社通信の報道を紹介しました。
『シュピーゲル』誌(電子版)は七月三十一日、米下院の決議は「まれな叱責だ」と指摘。日本政府は「慰安婦」にされた女性たちに補償を行ってこなかったことなど「慰安婦」問題の背景を説明しました。
戦争美化論厳しく批判/マレーシア
マレーシア紙星州日報二日付社説「米議会が日本政府に改めて警告」は米下院の「慰安婦」決議採択にふれ、「慰安婦」問題で「強制はなかった」などと過去の侵略戦争を美化する日本の一部の論調を厳しく批判しました。
社説は、安倍首相が米下院決議にたいし、「二十世紀は人権が侵害された時代だった」などとのべたことを「焦点を非常にあいまいにする傾向がある」と指摘。日本の政治家のなかに侵略戦争を反省せず歴史教科書の書き換えなどを繰り返し主張して「いったんは消滅した『大東亜共栄圏』の妄想」に熱中する者がいると強く非難しています。
そして、日本で「極右勢力」が太平洋戦争は「アジアを解放」するためだったと声高に叫ぶ動きに言及し、「米国人は、(日本には)二十一世紀になっても『大東亜戦争』は未完成の事業だと思う軍国主義残存勢力のような考えがあると見なしている」とのべています。
( 2007年08月04日,
【北京=山田俊英】一日付の中国各紙は、米下院が「従軍慰安婦」問題の決議を採択したことを報じました。
環球時報は一面で「米下院、日本を健忘症≠ニ非難」と報道。「参院選で惨敗したばかりの安倍首相はまた悪いニュースを聞くことになった」とし、決議の内容や日本内外での反響をくわしく伝えました。
新京報、北京青年報は国際面で一nを割いて報じました。新京報は「日本の右派の歴史観が政府の言論となり、米国主流の歴史観と衝突した」との識者の見方を紹介。北京青年報は「日本が歴史的罪悪の責任を逃れようとしていることを米議会として明確に批判した」と述べました。中国共産党機関紙の人民日報もこのニュースを伝え、あわせて中国などの被害者が日本政府に賠償問題の最終的な解決を求めていることを紹介しました。
( 2007年08月03日,
【マニラ=井上歩】二日開かれた第十四回東南アジア諸国連合地域フォーラム(ARF)閣僚会議では、北朝鮮の朴宜春外相と麻生太郎外相との間で歴史問題などをめぐり激しい議論の応酬がみられました。
朴外相は、北朝鮮が核施設への査察受け入れなど六カ国協議で合意した初期段階の措置に踏み出したことに対し、他の五カ国の「行動」を要求。その上で、日本について、「従軍慰安婦」問題など過去の清算、防衛庁の「省」への昇格、憲法「改正」、ミサイル防衛、「大東亜共栄圏復活」、朝鮮総連への対応などの問題を列挙し、敵対的な行動だと非難しました。
さらに米国と日本が「行動対行動」の原則にのっとり、敵対行動をやめて、「できること」をやるべきだと主張しました。具体的にはテロ支援国指定の解除、経済・エネルギーなどの支援を求めました。
日本に関する朴外相の発言に対し、麻生外相は再度発言を求めて「事実と異なる内容があり、受け入れられない」とのべました。
朴外相の前に行った発言で麻生外相は、日朝国交正常化は北東アジアの平和・安定のために不可欠であり、拉致問題とともに過去の清算問題にも積極的に取り組む、と表明しました。また「日朝作業部会で北朝鮮が誠意ある対応を示せば、両国関係と六カ国協議に好循環が生まれる」とのべました。
会議では、米中、EUなど八カ国・機構の閣僚が核問題に言及。進みだした六カ国協議のプロセスをさらに前進させるべきだと訴えました。
( 2007年08月03日,
六日、九日の広島、長崎の原爆記念日と、十五日の終戦記念日を前後して反核平和を求めるさまざまなとりくみが各地で予定されています。
原爆投下で
八月六日の広島への原爆投下時間(午前八時十五分)にあわせて梵鐘(ぼんしょう)をつくつどいが六日午前八時から、大阪市谷町筋の三カ所の寺院の協力で開かれます。「核兵器廃絶を願い 世界に響け平和の鐘」をスローガンにかかげています。大阪宗教者平和協議会の主催。協力する寺院は妙徳寺、正覚寺、圓妙寺です。
京都市上京区でも、平和の鐘をつく会が開催されます。立本寺内の大輪院では午前八時から同九時まで、本久寺では午後零時半から一時まで、希望者を募って鐘をつく会が催されます。平和の鐘をつく会(古武博司会長)の主催です。
戦争終結で
「8・15平和のつどい」は十五日午後六時から同八時まで、神戸・新開地の妙法華院で開かれます。内容は「若い世代が戦争をどう受け止めているか」のテーマで神戸女学院大学の女子学生が「従軍慰安婦」問題について講演します。主催は兵庫の「語りつごう戦争」展の会(略称・戦争展の会)。参加費五百円(高校生以下無料)です。
大阪府太子町では、同町の万葉ホールで第十回平和を考える戦争展が十一日と十二日、開催されます。主催者の戦争展実行委員会が太子町の小中学生に「日本のあちこちの町にアメリカのひこうきがとんできて、君のような年ごろの子どもが たくさん たくさん死にました。…62年も昔 君のひいおばあちゃんの若い頃のお話です…見にきて下さい」とよびかけています。
和歌山では「八・一五平和集会」が海南市日方の燦々公園の日中平和塔前で開かれます。主催者の日中友好協会海南支部の幡川文彦支部長は「今年は盧溝橋事件七十周年であり、侵略美化と九条中心の改憲をゆるさないためにも多くのみなさんのご参加を訴えたい」と語っています。
展示会
十八日と十九日には、堺市で「堺平和のための戦争展二〇〇七」(同実行委員会主催)が大阪健康福祉短期大学と東雲公園を会場に開かれます。十八日午後一時からは、「堺のまち戦跡ウオッチング」と銘打ってバスで市内を巡ります。
(2007年08月02日,
大阪府アジア・アフリカ・ラテンアメリカ連帯委員会は一日、安倍晋三内閣総理大臣に「日本政府は米下院での『慰安婦』決議を真摯(しんし)に受けとめ、『慰安婦』に対する公式謝罪の表明と公式補償を早期に実施するよう強く要求する」との声明を送付しました。
声明は、日本政府は一方で「河野談話を継承する」などと表明しながら、他方で閣僚らが「慰安婦はなかった」などと発言していることを批判。「明確かつあいまいさの残らない形で公式に事実を認め、謝罪し、歴史的な責任を受け入れ」るよう求めています。
(2007年08月02日,
中国・海南島で起きた戦時性暴力被害者への謝罪と賠償を求めるネットワーク(ハイナンNET)が、きょう午後2時からネットラジオを特設します。
テーマは、米下院本会議で初めて採択された、「慰安婦」問題で日本に公式謝罪を求める決議について。日本にどんな影響があるのか、基本的なことから最新の事情まで、この問題にくわしいゲスト・西野瑠美子さん(「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク共同代表)が、リスナーの意見、質問に答えます。
ハイナンNETは10代、20代を中心としたネットワーク。当時、自分たちと同じ世代の人々が日本軍の性奴隷にされ、また「慰安所」に通う日本兵であったと知り、日本の戦後責任を問うため海南島裁判を支援してきました。
メンバーの梁英聖(リャン・ヨンソン)さん(25)、「若い人がこの問題に関心を持っていないといわれますが、教科書にも載ってないし、歴史をちゃんと教えてくれる機会もないので、気付かないだけ。この機に多くの人に知らせたい」と話しました。
ネットラジオ特設URL http://blog.goo.ne.jp/hainan−net
( 2007年08月02日,
みどり やっぱり、米国の下院本会議が採択したわね。旧日本軍による「従軍慰安婦」問題で日本政府に公式の謝罪を求める決議を。
陽子 民主、共和両党から計八人の議員が決議案に賛成討論をし、ほぼ全員一致に近い形の採択だったそうよ。
「靖国」派に批判
みどり 日本の侵略戦争を美化する「靖国」派の国会議員らが、米国の新聞に意見広告を出して、女性たちは「強制」されて「慰安婦」になったわけではないと主張したんだけど、ラントス外交委員長は討論で、このことを厳しく批判したね。
陽子 「すべての『慰安婦』は、喜んで強制され合意のうえだったと断定する者は、『レイプ』という言葉の意味を理解していないのだ」と発言したわ。
みどり ラントスさんはハンガリー出身のユダヤ人で第二次世界大戦中のドイツ・ナチスによるユダヤ人大虐殺(ホロコースト)の生き残りよ。「自分自身の過去の真実に顔を向ける勇気があるのか、ないのか?」と切り出したそうね。
陽子 決議は日本政府に@歴史的な責任を公式に認め謝罪し受け入れるA首相が公式声明で謝罪を表明するB「従軍慰安婦」はなかったという主張を明確に否定するC現在と未来の世代に教育するよう求めている。
みどり ペロシ下院議長が声明を発表し、「きょうの採択は『慰安婦』たちの真実と認知を求めるたたかいを米議会が支持するという強いシグナルだ」、日本政府は「もっと行動しなければならない」と訴えたわね。
安倍首相は拒否
陽子 このニュースは世界をかけめぐり、ロイター通信は、「米下院、『慰安婦』で日本に謝罪求める」と報じたわ。でも、安倍首相は「こうした決議がなされたことは残念だ」とのべ、謝罪しなかった。
みどり 参議院選挙では、「戦後レジームからの脱却」や憲法改定を主張し「愛国心」を強要する安倍政権に厳しい審判が下されたのにね。
陽子 さらに国際的な批判が強まるのは避けられないわ。首相にたいし、決議の意味を重く受け止め世界に向けて公式に謝罪するよう迫っていかなくちゃね。
( 2007年08月02日,
日本AALA
日本アジア・アフリカ・ラテンアメリカ連帯委員会(日本AALA)は七月三十一日、米下院本会議での「慰安婦」決議を真摯(しんし)に受けとめ、日本政府の正式謝罪の表明と公式補償をするよう求める要請書を安倍晋三首相に送付しました。
要請書では、下院本会議で「日本政府に公式の謝罪を求める」決議が採択されたことを心から歓迎するとのべています。
今回の決議案の共同提案者が百六十七人にのぼるなど広がりをみせたのは、前回下院小委員会の決議が出たとき、安倍首相が「他国の決議でありノーコメント」という態度を示し、国会議員四十四人が強制はなかったと米国マスコミに意見広告を掲載した結果であると指摘しています。
日本政府が、日本軍「慰安婦」問題の早期解決に踏みだし、公式謝罪と補償をおこなうことを強く要求しています。
新日本婦人の会
新日本婦人の会は一日、アメリカ下院本会議での「慰安婦」決議を受けて日本政府が公式に謝罪することを求める高田公子会長名の要請書を安倍晋三首相に送付しました。
要請書は、日本政府が決議をこれまでのように無視し続けるなら「世界はもちろん日米関係にも大きな影響を及ぼす」と指摘。安倍首相は今回の参議院選挙での敗北の要因の一つが、「戦後レジーム(体制)からの脱却」路線が国民から拒否されたことを直視するよう要求しています。
婦団連
日本婦人団体連合会(堀江ゆり会長)は一日、米下院の「慰安婦」問題決議を受け入れて日本政府が公的に謝罪することを求める声明を発表。安倍晋三首相に送付しました。
声明は、日本政府は「慰安婦」問題の加害国であり、被害者の人権を回復する義務と責任があることを指摘。被害者の声と国際機関の相次ぐ勧告や提言を受けとめ、「日本軍の強制があったという歴史的事実を認め、公的に謝罪し、国際社会の求める人権回復の道をすすむこと」を求めています。
( 2007年08月02日,
ようやく関東も梅雨が明けました。台風の影響か、南よりの風が緑濃い街路樹をざわめかせると、暑さもしばし和らぎました▼戻ってきた夏の青空。しかし、首相官邸の空気は湿りっぱなしです。参院選での大敗。「従軍慰安婦」の連行をめぐって首相に謝罪をせまるアメリカ下院本会議の決議。そして、赤城農水相の更迭です▼事務所費の疑惑が発覚し、まともな説明ができず逃げ回るうちに新たな疑惑が次々でた赤城氏。参院選で自民が敗れた戦犯≠フ一人とみなされています。安倍首相のかばいだても限界にきて辞めたものの、時すでに遅しです▼辞任の弁は、ご多分にもれず「与党に申し訳ない」でした。真相はうやむやに。有権者は投票に、こういうやり方がまかりとおる自民党への不信感を込めたのでした。安倍首相も赤城氏も、有権者の心が分かっていません▼先月九日付で、首相の祖父の岸信介氏と赤城氏の祖父の赤城宗徳氏の間柄について書きました。一九六〇年安保闘争のさい、首相の岸氏が自衛隊の出動を求め、防衛庁長官の宗徳氏が断った話です。二人の交差はまだあります。戦争中、東条内閣のときです▼議員の赤城らは、東条では戦争に勝てない≠ニ内閣打倒へ。東条は、内閣改造ですまそうと大臣の岸に辞めるよう要求。赤城らと通じていた岸は応じず、東条内閣は総辞職…。時代や事情が違いますが、安倍首相も辞職を拒み、農水相の更迭や内閣改造でのりきるつもりです。しかし、こんどは有権者が許しません。
( 2007年08月02日,
「平和のための京都の戦争展」(実行委員会主催)が七月三十一日から、京都市北区の立命館大学国際平和ミュージアムで始まりました。
二十七回目となる今年の戦争展のメーンテーマは、日本国憲法施行六十周年にちなみ「平和憲法の重みを確かめあおう」です。会場では、「核兵器廃絶は世界の声」「戦争の傷あとを忘れない」「戦後の日本と憲法」を主な柱に、たくさんの写真や資料などが展示されています。
林重男氏が撮影した写真パネル「原子爆弾投下五十五日後のヒロシマ」など核兵器被害の恐ろしさを伝える企画や、劣化ウラン弾による健康被害の実態、「棄兵・棄民」されたシベリア抑留や中国「残留孤児」の問題などを解説したパネルなども掲示されています。
見学の子どもたちが、広島型原爆「リトルボーイ」と、今年新たに製作された長崎型原爆「ファットマン」の模型とを見比べ、「小さいね」と話すと、引率のおとなが「これで何十万人も殺されたんだよ」と語っていました。
三十一日にはジャーナリストの西谷文和さんが講演。一日からは「若者たちの六カ国協議」(一日午後)、「悪魔の飽食」(五日昼)などの文化イベントや、学習会「医療と戦争 731部隊の罪証」(三日午後)、「みんなで話そう子どもの権利条約」(六日午前)などの学習会、「慰安婦」問題のパネルディスカッションなどが計画されています。
戦争展は六日まで。入場・参加無料。
(2007年08月01日,
群馬県前橋市で七月二十七日から二十九日までの三日間、「平和のための戦争写真展」が開かれました。前橋平和委員会、日中友好協会前橋支部、日朝協会群馬支部、県平和委員会が主催しました。
会場の前橋市民文化会館小展示ホールには、市街地が焼け野原となった八月五日の前橋空襲や、広島・長崎の被爆写真、中国人強制連行問題、元「従軍慰安婦」の証言などが展示され、訪れた人たちは一つひとつの展示の前で足を止めていました。
モーターボートに爆雷を積んで体当たりする、旧海軍震洋特攻隊員だった関口俊輔さん=前橋市=は、当時の写真や資料を展示しました。来場者に体験を語る関口さんは、「神風特攻隊や回天特攻隊のように知られていない部隊ですが、歴史の事実を伝え学ぶことは大事」と話していました。
「前橋にもこんなことがあったとは思わなかった。人ごとじゃない」(中学生)「高崎から空襲の炎が見えた。これらの写真は本物のことだと肝に銘じて生きる」(七十代男性)などの感想が寄せられました。
(2007年08月01日,
埼玉県の上田清司知事は七月二十四日の定例記者会見で、「従軍慰安婦というのは昭和四十三(一九六八)年にできた造語で、一般的には使わない言葉だと思う。アメリカの決議案も慰安婦だ」とのべました。埼玉県平和資料館運営協議会で、館内の年表の「従軍慰安婦」の表記を「慰安婦」に改める見直し案が提示されたことをめぐり、質問に答えたものです。
上田知事は昨年六月、県議会一般質問への答弁で「東西古今、『慰安婦』はいても『従軍慰安婦』はいない」と発言し、大きな問題となっていました。
上田知事は同資料館運営協議会に示された見直し案について「新聞で知ったくらい。今の時点では平和資料館としての考え方をまとめ、その報告を待つだけだ」と知事自身の関与を否定し、「最高責任者である私が、途中でああだこうだと言わないほうがよいのではないか」とのべました。
(2007年08月01日,
米下院本会議で、日本軍「慰安婦」問題に関する決議が採択されたことを受け、日本の戦争責任資料センター、「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク、アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」が七月三十一日、国会内で会見しました。
会見に先立ち、三団体は、日本軍「慰安婦」問題における謝罪に何が必要か、日本政府に「提言」を提出しました。
提言は、「これまで何度も謝罪した」と繰り返す政府の主張が、被害女性の納得を得られるものではないこと、その理由として、「慰安婦」問題での国の責任を否定する閣僚らの言説が繰り返され、問題を後世に伝える教育的取り組みも被害者への賠償もなされていないことを指摘しました。
そのうえで、日本政府に対し、植民地や占領地の女性を本人の意思に反して「慰安婦」にしたことが違法だったと認め、閣議決定などの公的な形で日本国家の責任を明確にした謝罪を表明すること、被害者への「賠償金」という形で謝罪の意を示すことを求めました。
吉見義明中央大学教授は「安倍首相は『慰安婦』問題で日本軍の強制性を否定し、謝罪もしないと発言した。その発言は今も撤回されていない」と批判。西野瑠美子・「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク共同代表は、「決議は、日本に対し、謝罪とはいかにあるべきか、なぜ謝罪が必要なのかを問うもの。この問題に改めて向き合うことが、解決への入り口である」と話しました。
一方、日本軍「慰安婦」問題行動ネットワークも会見し、日本政府がこの決議を受け入れ、被害者への賠償などを、すみやかに実行に移すことを要求しました。
( 2007年08月01日,
【ワシントン=時事】米下院が三十日に採択した対日謝罪要求決議の要旨は次の通り。
一、日本政府は一九三○年代および第二次大戦中、帝国軍の性的奴隷とする目的で若い女性を手に入れるよう正式に指示した。
一、その残忍性・重大性において前例がないと思われる慰安婦制度は二十世紀最大の人身売買事件の一つである。
一、日本の教科書の一部は慰安婦の悲劇や他の戦争犯罪を軽視しようとしている。
一、日本の官民双方の関係者は最近、九三年の河野官房長官談話を弱めようとの意思を表明した。
一、日本帝国軍がアジア・太平洋の島々で性的奴隷となるよう若い女性に強制したことに対し、日本政府は明確かつあいまいさの残らない形で公式に事実を認め、謝罪し、歴史的な責任を受け入れるべきである。
一、首相が公の声明として謝罪すれば、これまでの声明の誠意に関して繰り返される疑問の解決に役立つだろう。
一、日本政府は性的奴隷・慰安婦の売買の存在を否定するいかなる主張に対しても明確かつ公に反論しなければならない。
一、日本政府は慰安婦に関する国際社会の勧告に従いながら、現在と未来の世代を教育しなければならない。
一、日米同盟はアジア太平洋地域の平和と安定の礎だ。
( 2007年08月01日,
元「慰安婦」を支援する韓国の市民団体・韓国挺身隊問題対策協議会は三十一日、ソウルの日本大使館前で決議を歓迎する声明を発表し、日本政府に対し「一日も早く高齢の被害者に公式謝罪と法的な賠償を実施し、こうしたおぞましい人権じゅうりん犯罪が再発しないよう、後世に正しい歴史を教え、平和な未来を約束すべきだ」と訴えました。
声明は「決議の採択はアジア・太平洋地域の日本軍『慰安婦』被害者に名誉回復と正義実現の希望を与えた」と米下院決議を評価しました。
( 2007年08月01日,
【ワシントン=鎌塚由美】米下院が三十日に採択した「慰安婦」問題の決議は、「『慰安婦』たちの真実と認知を求めるたたかいを米議会が支持するという強いシグナル」(ペロシ下院議長)となりました。
米下院は、二月に訪米して証言した元「慰安婦」の被害者に寄り添う立場を鮮明にし、女性の人権救済を支持することを選びました。
米議会は、「慰安婦」問題について、「戦時の女性への暴力」であり「人身売買」問題でもあると位置づけました。「戦時の女性への暴力」は、「スーダンのダルフール紛争でも注視しなくてはならない」(ロスレーティネン議員・共和)との指摘が上がったほか、「慰安婦」制度は「二十世紀最大の人身売買事件の一つ」(決議)と述べました。
勇気をたたえ世界に向けて
三十日の米下院の議場では、戦時の女性への暴力を告発した「(元「慰安婦」の)女性たちの勇気をたたえ、われわれは世界に向かって決して許さないと言おう」(ウルジー議員)という声が上がりました。女性の人権侵害を許さない米世論の厳しい目もこの決議に反映しているといえます。
二〇〇〇年以来、米下院には「慰安婦」問題で日本政府に謝罪を求める決議案が提出されてきましたが、これまでは日本大使館による決議阻止の働きかけが奏功してきました。
本会議での採択を前に加藤駐米日本大使は、決議は「日米の両国が現在享受している深い友好と緊密な信頼と幅広い協力に長期的で有害な影響を及ぼす」(米紙)などと同下院議長らにあてた書簡で圧力をかけたと報じられています。しかし今回は、日本大使の「脅し」も通用しませんでした。その原因は、安倍首相をはじめとする「靖国」派の国会議員の言動です。
二月に下院外交委員会小委の「慰安婦」をめぐる公聴会で、「慰安婦」とされた女性たちが証言しました。麻生外相は決議案を敵視し、決議案は「客観的事実に基づいていない」などと述べ、証言した元「慰安婦」たちを再び傷つけました。
さらに安倍首相は「慰安婦」の「強制はなかった」と発言(三月)しました。
一月末に提出されていた決議案では、「近ごろ、官民の関係者が撤回の願望を表明してきている」と述べられていましたが、この指摘通り日本軍による「慰安婦」の強制と関与を認めた「河野談話」の撤回の動きが進んでいたのです。
なかでも安倍首相自らの発言は、決議案に述べられた懸念を決定的なものとし、米下院のなかで決議案への賛同議員が一気に広がり、議員たちに決議の採択の必要性を認識させる結果となりました。
日米同盟派の議員らの同調
決議の採択は、「靖国」派の国会議員への反論でもあります。ハンガリー出身でホロコーストの生き残りでもあるラントス外交委員長は、ワシントン・ポスト紙に「慰安婦」否定の全面広告を出した国会議員たちの主張について、外交委員会と本会議で二度にわたり糾弾。「慰安婦」は「売春婦」だったなどとする「靖国」派の主張は、「被害者を非難する策略」だと厳しく指摘しました。「靖国」派の主張は、世界的に通用しないことが浮き彫りになっています。
「真の友人は相手が誤っているときはそのように伝える」(デービス議員・共和)として、日米同盟を重視すると強調する議員たちが、日本政府に「過去の残虐行為に立ち向え」と迫ったのが今回の決議です。
決議を提出したマイク・ホンダ議員(民主)は採決後に記者会見し、決議は「日本の国民を非難するものではない。政治指導者が政府として、過去の歴史をしっかりとらえるかどうか、が問われている」と改めて強調。「私は安倍首相が決議の言葉に耳を傾け、両国の友好がかつてなく高まることを希望している」と語りました。
歴史の直視と反省を求める国際社会の声に安倍首相はどうこたえるのか。日本政府からの公式な謝罪を求め続ける元「慰安婦」たちの声を無視し続けることは許されません。
( 2007年08月01日,
【ソウル=時事】韓国外交通商省は三十一日、米下院が従軍慰安婦問題に関する対日謝罪要求決議を採択したことについて、「米議会の関心と努力を評価する」と歓迎する声明を発表しました。
声明は「日本が国際社会の勧告を謙虚に受け入れ、正しい対応を取ることを期待する」としています。
( 2007年08月01日,
【北京=山田俊英】中国外務省報道官室は三十一日、米下院本会議が「慰安婦」問題で日本に謝罪を求める決議を採択したことについて、「日本は、歴史に責任を負う態度で国際社会の正義の声を重視し、この歴史上残された問題に真剣に対応し、適切に処理すべきだ」とコメントしました。本紙の質問に答えました。
「『慰安婦』の強制は日本軍国主義が第二次世界大戦期間中、中国人民を含め侵略した国の人民に対して犯した重大な犯罪の一つだ」と指摘し、「被害者の人格の尊厳と心身の健康を破壊し、いえることのない傷を残した」と厳しく批判しました。
また、同国の新華社通信は三十一日未明、決議採択を速報しました。ラントス下院外交委員長が趣旨説明のなかで「日本は歴史問題の健忘症だ」と述べたことも伝えました。配信した「背景資料」では、「安倍首相も就任前、『河野官房長官談話』に異議を唱えたことがある。被害者の訴訟での要求に対し、日本政府は拒否する態度を貫いている」と解説しました。
( 2007年08月01日,
米下院本会議が「従軍慰安婦」問題の対日謝罪要求決議を採択したことについて、安倍晋三首相は三十一日、首相官邸で記者団に「先般の訪米でわたしの考えは説明してきた。こうした決議がなされたことは残念だ」と遺憾の意を表明しました。その上で、「二十世紀は人権が侵害された時代だった。二十一世紀は人権侵害のない、世界の人々にとって明るい時代にしていきたい」と強調しました。
塩崎恭久官房長官は「首相を含めて日本政府の考え方についてしっかり伝える努力をしている」と述べました。
( 2007年08月01日,
米下院本会議が「従軍慰安婦」問題で日本政府に謝罪を求める決議を採択したことは、参院選での歴史的大敗に続いて、安倍内閣にとって二重の痛打となりました。
世論調査でも
参院選での敗北も、単に年金問題や閣僚の失言、不祥事が重なったからだけではなく、安倍首相の掲げる「戦後レジーム(体制)からの脱却」路線が国民から拒否されたからでした。JNN(TBS系)の世論調査では、この「脱却」スローガンに共感できない≠ェ過半数を占めました。
「従軍慰安婦」問題での首相の対応も、まさに「戦後レジームからの脱却」と一体でした。日本の戦争は正しかった≠ニ正当化する立場から、アジアやヨーロッパの女性を性奴隷とした「従軍慰安婦」問題など消し去りたいという心情がにじみ出ていました。だからこそ首相自身が「従軍慰安婦」の強制性を否定してみせ、「靖国」派の同志である下村博文官房副長官は「従軍慰安婦などいなかった」と存在そのものを否定しようとしました。
これが、国際的にも通用しない歴史のわい曲であることは、日米軍事同盟を強化・推進する米政府の側からも「同盟関係に破壊的影響が出る」(シーファー米駐日大使)などと批判と懸念が相次いだことで示されました。
日米同盟を評価するラントス米下院外交委員長も三十日、「日本の一部の人々によって、歴史をゆがめ、否定したり、犠牲者を非難するゲームが続けられていることは吐き気を催させる」として、自民・民主の「靖国」派国会議員によるワシントン・ポスト紙への広告を非難しました。
首相は、今回の米下院本会議での決議採択について「先般の訪米でわたしの考えは説明してきた。こうした決議がなされたことは残念だ」と述べ、「二十世紀は人権が侵害された時代だった。二十一世紀は人権侵害のない、世界の人々にとって明るい時代にしていきたい」と強調してみせました。しかし、訪米時に首相がとった態度は元「慰安婦」への「同情」の表明だけでした。旧日本軍が関与した戦争犯罪に「第三者」のような態度をとることは許されないことでした。まして、自らの負の歴史に目をそむけて「明るい時代」にしていくことなどできないことも明らかです。
「戦前回帰か」
作家の保阪正康氏は参院選結果に関連して、「『戦後レジームからの脱却』を繰り返すだけでは『戦前レジーム』への回帰を望んでいるようにしか聞こえない」「首相自身の政治家としての資質や歴史認識が問われた選挙だったからこそ、ここまで負けたのだ」(「毎日」三十日付夕刊)と指摘しました。いま、国内的にも国際的にも批判にさらされている「靖国」派の路線には未来がないことを米下院の決議はあらためて示しました。
(藤田健)
( 2007年08月01日,
米下院本会議が、「従軍慰安婦」問題で、日本の首相に公式の謝罪と歴史的責任の受け入れを求めた決議を異論のでないほぼ満場一致で採択しました。下院外交委員会につづき本会議としてはじめての決議です。
法的拘束力はないとはいえ、政治的意味は重大です。下院定数の三分の一を超える百六十七人が共同提案者となり、ほぼ満場一致で決議を採択したことは、安倍外交にとっても大きな衝撃です。「政府の立場は変わらない」(塩崎恭久内閣官房長官)とこれまでと同じように無視し続けるのでは、日米関係にも大きな影響をおよぼし、アメリカからも孤立する事態になりかねません。
米議会への「脅迫」
下院本会議が決議を採択したのは、日本の「官民の関係者」が、「謝罪と反省を表明した一九九三年の河野洋平内閣官房長官の慰安婦にかんする声明を薄め、無効にしようとする願望を示している」からです。安倍首相らは「慰安婦」問題は「もともとなかった」「河野談話は間違っている」などといっています。こうした侵略戦争を正当化する「靖国」派勢力の、河野談話を空文化する策動に米下院が危機感をもち決議を採択したのはあきらかです。安倍首相がこの決議の意味をしっかり受け止めないと米議会との矛盾をいっそう大きくするばかりです。
委員会段階よりも共同提案者が大幅に増え、本会議がほぼ満場一致で決議を採択したのは、安倍首相が日本軍の「強制性」を否定し続けていることへの反発の大きさを示しています。
決議がいう「日本政府による強制的な軍の売春」という事実は戦後国際社会が再出発にあたって確定済みの問題です。それは侵略戦争と植民地支配を二度と許さないという政治原則の土台になっています。安倍首相ら「靖国」派が「日本軍の強制はなかった」というのは、戦後政治の土台をくつがえすことです。国際社会の一員として存在しようとする限り、歴史の歯車を逆にまわすようなことはすべきではありません。
安倍首相は四月の日米首脳会談で、ブッシュ大統領や議会指導者に「河野談話」の継承と「おわび」を表明してみせながらも、「強制性を裏付ける証拠はなかった」という肝心の発言を撤回していません。六月の下院外交委員会の「慰安婦」決議もこの立場で無視を決め込みました。一方で「靖国」派は、自民、民主両党議員が決議阻止の意見広告を米紙に掲載し、日本会議国会議員懇談会の会長である平沼赳夫氏と自民、民主両党有志議員は河野談話を「歴史事実に基づかない」として「歴史的検証」を求める声明までだしています。
そのうえ安倍首相は、加藤良三駐米大使に「決議が採択されれば永続的で有害な影響を与える」と書いた書簡をペロシ下院議長ら下院の中心メンバーに送付させました。こうした脅迫的手段に訴えるやり方が反発を買ったのは当然です。「靖国」派の安倍政権に正常な外交を期待することができないのはあきらかです。
歴史的責任を認めよ
戦前の天皇制政府と軍部が侵略と植民地支配を進めるなかで、海外の女性を日本軍の性的奴隷にしたことは政府の調査資料であきらかになっている事実です。海外で再び戦争する道を進むために、旧日本軍の行動を正当化するなど言語道断です。
日本軍の強制があった歴史的事実を認め、安倍政権が公的に謝罪してこそ、日本は国際社会とまともな付き合いができることになります。
( 2007年08月01日,
【ワシントン=鎌塚由美】米議会下院本会議は三十日、アジア太平洋戦争中に日本軍によって性奴隷にされた元「慰安婦」たちに対し日本政府が公式な謝罪を行うよう求める決議を採択しました。「慰安婦」問題での米下院本会議決議は初めてです。
(2、3、4面に関連記事)
本会議で三十分にわたる討論の後、声や拍手で賛意を示す発声投票にかけられ、反対なしで可決されました。傍聴席では、二月の公聴会で証言した元「慰安婦」の李容〇さんらが静かに見守りました。
決議には、民主、共和両党の百六十七人の議員が共同提案者として名を連ねました。
決議は、日本軍が女性たちを「慰安婦」という性奴隷にしたことを「(日本政府が)十分に認め、謝罪し、明確であいまいでないやり方で歴史の責任を受け入れよ」と迫り、首相が公式に謝罪をするなら、「これまでの諸声明の誠実さとその地位をめぐり繰り返されてきた問題を解くことに貢献する」と述べています。
本会議の討論で、ラントス外交委員長は「非人道的な振る舞いについて全面的に認め、真実のすべてに光が当てられなければならない。このことは国家間の和解に不可欠だ」と語りました。さらに、「靖国」派国会議員による「慰安婦」強制を否定したワシントン・ポスト紙への全面広告に改めて言及し、「すべての『慰安婦』は喜んで強制され合意の上だったと断じる者は、『レイプ』という言葉の意味を理解していないだけだ」と厳しく非難しました。
ペロシ下院議長は採択後に声明を発表し、「決議は、『慰安婦』たちの真実と認知を求めるたたかいを米議会が支持するという強いシグナル」だと指摘し、日本政府の行動を促しました。
傍聴のために訪米した元「慰安婦」の李容〇さんは、「採決は、米市民社会と世界の良識の勝利だ」と喜び、「今こそ日本政府は、国際社会の呼びかけにこたえ公式な謝罪と法的な補償を行うときだ」と訴えました。
決議の骨子
一、従軍慰安婦問題で日本政府に公式かつ明確な謝罪を要求
一、首相の公式謝罪声明が解決に役立つと指摘
一、現在と将来の世代への教育を要求
一、旧日本軍による慰安婦の扱いを「性的奴隷」「二十世紀最大の人身売買」と非難
一、アジア・太平洋地域における日米同盟の重要性を指摘(ワシントン=時事)
( 2007年08月01日,
【ワシントン=時事】米下院で審議中の従軍慰安婦問題に関する対日謝罪要求決議案が三十日夜(日本時間三十一日午前)に本会議で採決されることが二十七日、固まりました。決議案の共同提案者は百六十七人に上っています。
( 2007年07月30日,
十一月で百三歳になる西山竜平さん=東京都世田谷区=。作曲、文学、書、絵画など多彩な分野で活躍しています。
現在「百寿は元気」と題する本を執筆中。そんな西山さんには心配ごとがあります。
平和憲法を目の上のこぶにして、国民のためでなく、一部の大企業、戦争勢力のために何がなんでも改憲しようとする安倍内閣の動きです。
「改憲を狙う人たちは、過去を美化している。あれほどの戦争や破壊を経験しても、過去に戻ろうとする動きに我慢なりません。戦争責任を再び追及し、靖国神社を軍国主義から解放すべきだ」
西山さんには、過去と現在が重なります。
終戦直後、マッカーサーと昭和天皇が並んで撮影された写真を掲載した各紙朝刊を当時の政府(内務省)が発売禁止処分としたことに、連合国軍総司令部が、発禁解除の指令を出したことがありました。日本政府は、弁明の意見広告をアメリカの新聞に出しましたが、逆効果になりました。
当時と同じような出来事が先日ありました。自民、民主両党の「靖国」派国会議員らが米紙ワシントン・ポストに出した「従軍慰安婦」の「強制連行はなかった」と主張する意見広告です。
西山さんは言います。「戦後六十二年経ても、まったく変わるところのない人たちに、日本の政治を任せられません。政府は『慰安婦』問題や南京大虐殺など、反省すべき点を隠して、責任を回避してはいけません。問題に正面から向きあわない姿はぶざまだ。逆に、悪かったとはっきり認め、反省したのなら、おそらく国際的な評価は大きく違ってくるでしょう」
西山さんは、「終戦日の日記に東久邇宮首相は、『戦争はもうこりごりした。今後は軍備の全廃、戦争の絶滅、世界の平和、人類の幸福に貢献しようとする最高の使徒となって努力しよう』と書きましたが、私は、平和憲法を守り日本共産党の前進をはかろうとする今回の選挙へのこの上ない激励の花束そのものだと思っています」と話しました。
( 2007年07月29日,
憲法「改定」を声高に叫ぶ安倍首相を支えるのは、日本の侵略戦争を「正しい戦争だった」という歴史観にたつ、いわゆる「靖国」派です。「従軍慰安婦」問題、沖縄戦での「集団自決」問題など歴史の真実をねじまげる動き…。今年は、中国への全面的な侵略に突き進む口実となった盧溝橋事件、南京大虐殺事件から七十年です。
本紙は一昨年、昨年と「元兵士が語る『大東亜戦争』の真相」を掲載してきました。今年も歴史の真実と戦争の実相を伝える企画を準備しています。元兵士の方、日本軍による被害を受けた方の体験をお寄せください。お知り合いやご家族の方の紹介、情報提供でも結構です。
連絡先=〒151―8586 東京都渋谷区千駄ケ谷4の26の7 しんぶん赤旗社会部「証言・大東亜戦争」係。FAX03(3225)1434
( 2007年07月28日,
【ワシントン=鎌塚由美】日米軍事同盟を称賛し「対テロ戦争」における日本の役割に感謝する決議案がこのほど米議会下院に提出され、三十一日に下院外交委で採択される見通しとなりました。
同決議案は、日本政府に公式な謝罪を求める「慰安婦」決議案とのバランスを取る形となっています。
二十四日現在、決議案には三十一人の共同提出議員が名を連ねています。民主党からは、「慰安婦」決議案を提出した、マイク・ホンダ議員や外交委員長のトム・ラントス議員、沖縄からの米軍基地撤去を求める県民の願いに理解を示してきたニール・アバクロンビー議員らが、また、共和党からは「慰安婦」決議を推進してきたクリストファー・スミス議員のほか、院内総務のジョン・ベイナー議員らがいます。
( 2007年07月27日,
【北京=山田俊英】中国赤十字基金会と中国民間対日賠償請求連合会は二十二日、第二次世界大戦中、日本で強制労働させられた中国人被害者で、いま生存している五百八十六人に支援金を送りました。新華社が伝えました。
同日、北京市内で生存者十人が出席して式典が行われました。生活の困窮度に応じて、一人三千元(約四万八千円)から一千元(約一万六千円)が支給されました。
両団体は六月十日、強制労働被害者や元「従軍慰安婦」の生存者に支援金を支給する活動を始めました。
同連合会の童増会長は、「被害者は高齢で、戦時中の被害による病気があり、生活が苦しい」と理由を説明しました。原資はすべて香港の企業家の寄付金とのことです。
( 2007年07月24日,
【ワシントン=山崎伸治】「従軍慰安婦」問題で日本政府に公式な謝罪を求める決議案の米議会本会議での採決が、参院選で安倍政権与党の苦戦に配慮≠オ、選挙後に行われる見通しとなりました。同決議案の提案者であるマイク・ホンダ議員が十八日付の米紙ワシントン・ポストで明らかにしました。
同紙は「安倍氏の自民党が七月二十九日に投票がある参議院での主導権を失いかねないと示唆する世論調査もある」と指摘した上で、ホンダ氏の言明として「選挙前に安倍氏に恥ずかしい思いをさせたくないので、下院の指導部は慰安婦決議の採択を選挙後に延期することで合意している」と報じています。
米議会は八月六日から約一カ月の夏季休会に入るため、採決は七月三十日から八月三日までの間に行われるものとみられます。ホンダ氏はロイター通信などに対し、三十日採決との見通しを示しています。
決議案は六月二十六日、下院外交委員会で三九対二の圧倒的賛成多数で可決。賛同者は七月十六日までに百六十人(下院定数四百三十五人)にまで増えており、本会議での採択は確実とみられています。
その採決を参院選後にしたことは、この問題が安倍政権にとって重大問題であることを米側が認識していることを改めて裏付けています。
同紙は、日本の加藤良三駐米大使が六月二十二日付でペロシ下院議長ら五人の下院指導者にあてた書簡を紹介。その中で加藤氏は、決議案が採択されれば「永続的で有害な影響」があると述べたうえで、「日本はこのほどイラク復興への支出を二年間延長したばかりだ」と指摘。米国を応援する財政支出が危うくなりかねないと示唆しているといいます。
同紙はこのことを、「日本は米国のイラク政策を忠実に支持してきた数少ない国の一つとしての役割を再考するかもしれない」と皮肉を込めて指摘しています。
この書簡について、マイケル・グリーン前米国家安全保障会議アジア上級部長は同紙に「日本はブッシュ政権の説得に失敗し、下院指導者に対して強引な文言の書簡を書くよう決断したことは明らかだ」と述べています。また、ホンダ氏は「ロビー活動での空威張り」と一蹴(いっしゅう)しました。
( 2007年07月20日,
中国の海南島で、旧日本軍の「慰安婦」として性奴隷にされた、被害女性の裁判支援に取り組む青年たちがいます。被害者に直接会った彼らが、その目に刻んだ歴史の事実とは。
(平井真帆)
心が壊れたまま生きてる
支援グループの名前は、島の呼び名を取って「ハイナンネット」。2005年に発足し、「入るのも出るのも自由。代表者もとくに決めない自主的なネットワークです」と、結成当初からかかわっている金子美晴さん(31)は言います。
海南島は中国最南端、九州ほどの大きさの島に漢民族など37の少数民族が暮らしています。ハワイと似た気候で一年中泳ぐことができ、リゾート地として人気の島です。
今年の3月と6月、弁護士と精神科医が島を訪れ、裁判の原告となった被害女性の精神状態を調査しました。6月の調査にはネットのメンバーも同行しました。
「ああいう人に初めて会った。小さくて、ガリガリにやせていて、目もうつろ。今までのつらい人生が、体に全部出ている」。調査に同行し、被害女性の話を直接聞いたメンバーの一人、しほさん(24)は衝撃を受けました。
「過去なんだけど、今。過去がずっと続いている。心が壊れたまま生きてるんだ」。6人の原告のうち5人は、PTSD(心的外傷後ストレス障害)よりもっと重い、「人格変容」などの症状を示しているといいます。
聞き取りが終わった後メンバーは、被害女性の家まで行って、彼女たちの生活を垣間見ました。
「日本軍に追われて、あの畑の中に隠れました」。被害女性が指さします。「こんな小さい体で、何人にも暴行されて、あそこに逃げたんだ」。リアルに想像するだけで、しほさんは胸が苦しくなりました。被害にあったのは、はるか遠い国の知らない「誰か」ではなく、「目の前にいる、自分と同じ人間なんだ」。この問題から目を背けることはできない。裁判を支援する気持ちが、いっそう強くなりました。
1939年、海南島を占領した日本軍は住民を虐殺し、島の各地に「慰安所」をつくりました。そこで少女を拉致し、性奴隷にしたのです。
被害女性が実名で告白するのは勇気がいります。名乗り出たため、「日本軍にレイプされたから男の子を産めない」などと蔑視(べっし)されることも多いといいます。
女性たちが差別的な扱いを受けるのは、日本政府が正式に謝罪せず、「被害者」と認めていないことも大きな理由のひとつです。中国では、被害者が名乗りを上げ提訴したのは山西省と海南島の2カ所だけです。
日本の歴史教科書からは「慰安婦」の文字が消え、安倍首相をはじめ政府は「強制ではなかった」などと開き直っています。
それに対し、アメリカでは先月の下院外交委員会で、日本政府が「慰安婦」被害者に対し、公式に謝罪するよう求める決議案が採択されました。
笑って過ごしてほしい
「国内でも世論を盛り上げて、私たちの力で日本政府に謝らせたい」。メンバー自らが大学の授業で「慰安婦」問題の「授業」をする「出張授業」も行っています。授業を受けた学生からは「『従軍慰安婦』問題を知らないということが、問題だと思う」「この問題を解決しないと、戦争は終わったことにならない」といった感想が寄せられました。
たった数人から出発したハイナンネットは現在、百数十人規模のネットワークに発展しました。「ガラガラだった傍聴席が、今では若い人でいっぱいになる」と、金子さん。
「若い私たちがこの問題を解決したいと思ってることを社会に伝えていけば、司法も変わっていくんじゃないかな」と、しほさんは感じています。「強制はなかった、なんてうそ。私たちは本人に直接、聞いたんです。被害にあったおばあちゃんたちには、残された時間、少しでも、笑って楽しい時間を過ごしてほしい。事実を知っている私たちは負けないし、絶対にあきらめない」
(写真は、いずれもしほさん提供)
好きな子など思い至らない14歳のとき…/陳亜扁(チン・アヘン)さんの証言
原告の一人、陳亜扁さんは、2006年3月に来日し、裁判で被害を証言しました。
陳さんが、いつものように両親と田んぼで農作業をしていたある日。銃を持った日本軍が突然やってきて、陳さんを拉致しました。好きな男の子など、まだ「思いも至らない」ほど幼い14歳のときでした。
日本軍の駐屯地に連れていかれ、カギがかかった平屋の一室に閉じ込められました。銃を持った見張りが立っていたので逃げられません。翌日から陳さんは連日のように犯され、抵抗するたびに殴られました。
トイレにまで見張りが付いて連れ戻されるような自由のない生活。場所を転々と移され、多い日には数人からレイプされる毎日が、日本軍が引き揚げるまで続きました。
終戦後、陳さんは結婚し、9回妊娠しましたが8回も流産しました。胎動を感じるまでに育った赤ちゃんをくり返し流産するうち、「自殺しよう」と考えたこともありました。
病院で検査を受けると、何度も性暴力を受けたために子宮、骨盤の向きが変形してしまい、子どもが育たないことがわかりました。数年間、治療を続け、ようやく長女を出産することができました。
陳さんは60年以上たった今でも日本軍に犯される悪夢に苦しんでいます。
海南島戦時性暴力被害訴訟
戦時中に海南島で性暴力を受けた女性8人が、2001年、日本政府に対し戦後の対応について謝罪と賠償を求めて東京地裁に提訴。04年、戦時中の日本軍の加害行為も追及するため訴因を変更しました。東京地裁は06年8月、被害事実は認めたものの、「国家賠償法施行前で請求権がない。仮に請求権があっても、除斥期間が経過し、消滅した」として、請求を棄却。原告は控訴し、今年5月から東京高裁で控訴審が始まっています。
この間、2人の原告が亡くなりました。
( 2007年07月16日,
「私の興味は恋愛とか面白いこと」「『慰安婦』なんて知らなかった」という女子大生たち。「慰安婦」問題に出合い、「政治に興味を持つようになった」「日本を変えたい」と変化します。その理由を座談会で語ります。神戸女学院大学の石川康宏ゼミの取り組みです。
韓国での「慰安婦」だったハルモニ(おばあさん)との衝撃的な出会い。各地の集会で、その体験を伝えていきます。石川教授の論文「安倍首相の『慰安婦』発言徹底批判」も収録されています。
(かもがわ出版 税別1000円)
(2007年07月15日,
盧溝橋事件が起きた7月7日は中国人にとって、全国民が日本の侵略に抗して立ちあがった記念日です。同日、盧溝橋そばの中国人民抗日戦争記念館で「歴史をしっかり記憶しよう 平和を守ろう 未来を開こう」をスローガンに式典が行われ、当時の兵士9人も招かれました。
式典に先立ち歴史学者が討論会を開きました。
「日本で一部に歴史をわい曲する動きがある。台湾を含めて研究成果を交流しよう」。中国抗日戦争史学会の何理会長はこう呼びかけました。
盧溝橋事件は中国側の謀略だった≠ニする暴論が日本で出ていることも話題になりました。北京大学の徐勇教授は「最初の一発を撃ったのは誰かという議論に陥ってはいけない。日本は以前から華北全面占領の計画を立て、駐屯軍を3倍に増やしていた。計画的侵略戦争」だったとのべました。
自民、民主両党議員らが米紙に出した「従軍慰安婦」の意見広告や、中国の抗日戦争記念館から写真を撤去せよという要求が出ているなど、日本の動向も知られています。記者(山田)がこの動きについて聞くと、人々は軽べつの表情でこう口をそろえます。
「あんなことをしたら、日本の評判を世界でおとしめることにしかならない」北京で山田俊英記者、写真も
(2007年07月15日,
日本の政治・外交を考えるうえで、われわれが選択すべきは何か。平たくいえば、米国一辺倒の外交か、独自の自主外交かということになります。
前者は米の核抑止力に依存して日本の安全を守る≠ニいう立場です。
私は、「そうではない、はやりの○○力≠ナ言うなら、『外交力』の選択こそが大事だ」と言いたい。「核抑止力」より強いのは「外交力」なのだと。
何か国際的な出来事があると、軍事力や経済力、さらには「核抑止力」がどうこう言われるが、「外交力」はあまり問題になってこなかった。外交的にみてどう対処すべきか、またどう対処すべきだったかということは議論されることは少なかった。
王道と覇道という言葉があります。核抑止力、軍事力、覇権主義などは覇道です。正義や道徳に基づいて話し合いによって外交力を発揮するのが王道です。この王道の追求こそがいま求められている。
戦後日本の誤り
「選択」ということでいえば、日本は敗戦時に「戦争責任の明確化」という選択をすべきだった。しかし日本の支配層は「国体護持」のために、戦争責任を最後まで追及しなかった。ここに戦後日本の誤りの出発があります。
その結果、本来ならばA級戦犯の岸信介が、「容疑者」どまりで、最後には首相にまでなってしまった。
その孫に当たる安倍首相は、こと外交問題への対応は「逃げ回っている」という一言に尽きます。
就任直後に中国、韓国を訪問し、「近隣外交」の修復だと宣伝した。しかしその後、中韓両国やアジアにどういう理念を示してきたか。一九七七年の「福田ドクトリン」のようなものは何もない。
「従軍慰安婦」問題でも、「河野談話」「村山談話」を継承すると言うだけで、信念を反映した自分自身の言葉は何もありません。
国連安保理常任理事国入りの問題にしても、いちばん支持を得なければならないアジアから強い反対の声が出ているという始末です。
六カ国協議でも最近はカヤの外で、「出る幕がない」状況です。口を開けば「拉致」というだけで、真の外交の道を追求しようとしないから、事態打開の道が開けない。
その一方で安倍首相が執念を燃やしているのは、憲法改定であり、教育勅語復活につながるような教育基本法改定であり、イラク派兵の延長です。これでは「いつか来た道」ではありませんか。私たちの選択は、敗戦時に誓った、断固とした「不戦の道」のはずです。
「今こそ発揮を」
久間発言をめぐる問題についても考えてみましょう。自民党も「核廃絶」を口にはするが、一方で全面的に米国の「核抑止力」に頼るというのではおよそ説得力がない。その矛盾にも気づいていないのではないか。
以下のように言う人はいるでしょう。相手が核で攻めてきたらどうする≠ニ。私はもう一度言いたい。
「核抑止力よりもっと強いのは外交力だ。今こそそれを発揮しなければならない時だ」と。
聞き手 小寺松雄
写 真 浜西重利
なかえ・ようすけ 1922年生まれ、47年外務省に入る。アジア局長、ユーゴスラビア、エジプト、中国の各大使を歴任、87年退職。現在は日中関係学会名誉会長。
( 2007年07月11日,
アジアのメディアが日本の政治と安倍政権に厳しい視線を向け、参議院選挙の行方に注目しています。
揺らぐ基盤
シンガポール英字紙ストレーツ・タイムズ(電子版)は六日、「自民党が昨年九月、試練に耐えたことがない安倍氏を首相に選んだ時、彼は今年七月の参議院選挙に勝つだろうと考えられていた。テレビ映りが良い安倍氏は、当時、最も人気のある政治家であった。しかし、今、安倍氏の基盤は揺らいでいる」と報じました。
同じくシンガポール紙聨合早報は五日、黄彬華・同紙元論説委員の論評「安倍氏には赤信号がともっている」を掲載。同論評は、安倍首相が「日本を『戦後レジームから脱却』させ、(戦争をする)『普通の国』に回復させるといいふらしてきた」と指摘。その安倍氏が、政治資金疑惑による閣僚の自殺、原爆投下を是認した久間章生前防衛相の辞任、「消えた年金」問題で支持率を急速に低下させたことに着目しています。
「日本の爆弾」
インドネシア英字紙ジャカルタ・ポスト五日付は、「日本の爆弾」と題する社説を掲載。安倍氏が「慰安婦」問題で「強制性はなかった」とのべ、柳沢伯夫厚労相が「女性は子どもを産む機械」、久間前防衛相が米国の原爆投下は「しょうがない」と発言したのを厳しく批判しています。
同社説は、「世界第二の経済力を持つ国(日本)の指導者たちが、歴史に関して時々、多くの人に『幼稚』で『無責任』、『横柄』と聞こえる発言をしてきた」と指摘しました。
また、中国の新華社通信(電子版)も二日、「もし安倍政権が国民の信任を回復する措置を迅速に取れないならば、自民党は参議院選挙で敗北する可能性があり、そうなれば政権基盤が揺らぐだろう」と指摘しています。
( 2007年07月07日,
【ワシントン=時事】加藤良三駐米大使は五日の記者会見で、従軍慰安婦問題に関する対日謝罪要求決議案が七月中に下院本会議で採択される公算が大きくなっていることに関し、「正確な事実の説明は手広く行ってきたし、引き続き努力する」と述べ、米議会に対し、日本政府のこれまでの謝罪の経緯の説明を継続する考えを示しました。
加藤大使は、決議の採択は「日米関係にとって有害だ」との認識を改めて強調。ただ、安倍晋三首相らが事態を静観する姿勢を示しているため、ぺロシ下院議長(民主)ら議会指導者に採択回避を直接申し入れるかどうかは明言しませんでした。
( 2007年07月07日,
自民党の中川昭一政調会長は六日、ラジオ日本の番組に出演し、「従軍慰安婦」問題で旧日本軍の関与と強制を認め謝罪した一九九三年の河野洋平官房長官談話について「(河野氏は)自虐的な考え方」と批判しました。中川氏は「外国なんか、うそでも誇りを持って(話を)する。(日本政府が)真実と思われるものを封じ込めているのは納得できない」と述べました。
米国では、六月末に下院外交委員会が、「慰安婦」問題で日本政府に謝罪を要求する決議を圧倒的多数で採択。今月中に下院本会議でも採択される見通しが強まっています。中川氏の発言は国際的批判の強まりに対する重大な挑戦です。
( 2007年07月07日,
米国の下院外交委員会が六月二十六日、旧日本軍による「従軍慰安婦」問題で日本政府に正式の謝罪を求める決議案を採択したのを受けて米国やアジアのメディアは、日本政府が「慰安婦」問題に正面から向き合うべきだと呼びかけています。
米国
米紙ニューヨーク・タイムズ六月二十七日付は、東京特派員電で「日本政府は、(この問題で)コメントはしないといっていた。しかし、下院外交委員会による三九対二の投票は、来月の本会議での採択のおぜん立てをしたのであり、その際、安倍首相は何らかの対応を迫られるだろう」と報じました。
中国
中国の新華社通信(電子版)は六月二十七日、「罪深い歴史を覆すのは人心を得られない」と題する論評を配信しました。論評は、決議採択について、「定説を覆そうとたくらむ日本の右翼勢力にとって真っ向からの痛打に違いない」と指摘、「歴史を徹底的に清算してこそ真に未来に向かうことができ、国際社会の信頼を獲得し再び国際社会に溶け込むことができる」としています。
韓国
韓国では六月二十八日付各紙が、社説でこの問題を取り上げました。
東亜日報の社説、「日本は米下院慰安婦決議案を認めよ」は、決議が「慰安婦」問題では「『強制性はなかった』という日本政府の主張を一蹴(いっしゅう)した」と指摘。「反人倫的戦争犯罪に対する人類普遍の怒りを見せた。人権を最高の価値と考える米国民の良心が生きていることを雄弁に物語る」と高く評価しています。そして、「日本は本会議上程を防ぐというロビー(活動)を断念し、決議案を認めなければならない。(安倍)総理は謝罪し、関連部署は日本の今の世代と未来の世代に慰安婦についての歴史的真実を教え込まなければならない」と訴えています。
同じく朝鮮日報の社説は「米議会『慰安婦は二十世紀最大の人身売買』」と題して、「慰安婦」決議案は一九九七年から何度も米議会で論議されてきたが、「その度に日本政府の執拗(しつよう)なロビー工作で消え去ってきた」と指摘。今回十一回目にして採択されたのは、「歴史上の過ちを覆い隠そうとする日本政府の無分別な態度が米国社会の反発を呼んだためだ」としています。「日本政府はこれ以上、国際社会から後ろ指を指されないためにも歴史的事実を認め、その責任と向き合い、賢明な判断を下すべきだろう」と述べています。
また、中央日報の社説「日本は米下院慰安婦決議案受け入れよ」は、「この決議案がたとえ法的拘束力はないとしても米議会が日本軍の従軍慰安婦強制動員という歴史的事実を公に認めて、これにそっぽを向いてきた日本政府に自省を促しているという点で重要な意味を持つ」と指摘。日本政府は、「米下院決議案に示された勧告を謙虚に受け入れるべきだ」と結んでいます。
マレーシア
東南アジアではマレーシア紙星州日報六月二十九日付が社説「日本は『慰安婦』問題に正面から向き合え」を掲載。決議に示された「六つのポイントは、すべて旧日本軍にふみにじられ恥を忍んできたアジアの人々の心のなかの声」であり、「アジアの被害者の行動を支援するものだ」とのべています。そして、「安倍首相は首相就任以来、慰安婦問題と第二次世界大戦の史実にあいまいな態度を取り、自民党内では『慰安婦』問題を否定する叫びが不断に出されている。日本政府は反省と誠意に乏しいとみられる」と指摘しています。
ベトナム
ベトナム共産党機関紙ニャンザン(電子版)六月二十七日付は、「米外交委員会が性奴隷問題に関して日本に責任を認めるよう求める決議を採択」と報道。「性奴隷問題は、女性たちがこうした境遇の犠牲者になった韓国、中国などの国々と日本の間の不和を引き起こす問題となっている」と述べています。
( 2007年07月06日,
自民、民主などの国会議員四十四人が「従軍慰安婦」の強制性を否定した意見広告を米「ワシントン・ポスト」紙に掲載した問題で、安保破棄・諸要求貫徹大阪実行委員会は二日、この意見広告に名前を連ねた近畿の国会議員に抗議文を送りました。
送付先は、自民党の大塚高司(大阪8区)、鍵田忠兵衛(比例近畿)、山本ともひろ(同)、民主党の北神圭朗(同)、無所属の西村真悟(同)の五人の衆院議員。
抗議文は、「従軍慰安婦」問題で日本政府に公式謝罪を求めた米下院外交委員会の決議を、重く受けとめるべきだと強調。「『慰安婦』に強制性はなかった」という主張は国際的にも歴史的にも通用せず、戦争放棄と恒久平和、基本的人権を明記した憲法をもつ日本への信頼と日本国民の名誉を大きく傷つけるものとして、米外交委決議にたいする見解と反省を求めています。
(2007年07月05日,
「慰安婦は性奴隷≠ナはなく、公娼(こうしょう)である」―。自民、民主両党の「靖国」派国会議員が米紙(六月十四日付)に掲載した全面広告の一節です。自らの意思で行ったかのように史実を偽り、強制はなかったと主張しています。旧日本軍の「従軍慰安婦」被害者たちは戦後六十二年をへて、今度は戦争を知らない国会議員らによって、再び傷つけられています。(本吉真希)
戦前、日本の植民地下にあった台湾から阿媽(あま=おばあさん)六人が来日し、六月二十八日、東京都内で証言しました。
養母と茶摘みをして生計を立てていた盧満妹さん(80)は、「十七歳のとき、看護婦にならないかとだまされて中国の海南島へ連れて行かれた」。台湾より給料がいいともいわれました。
盧さんは日本兵の相手をさせられ、妊娠。八カ月の身重になるまで解放されませんでした。台湾に帰り、男の子を出産しましたが、マラリアにかかり、三十八日目に子どもは亡くなりました。
「十七歳だった私が本当に自分の意思で行ったのでしょうか」と盧さんは訴えます。
日本語で証言した鄭陳桃さん(84)。一九四二年六月四日、高等女学校への通学途中、いつものように派出所の前を通ると、日本人の警察に呼び止められました。「ジープで学校に送ってやる」。警察を恐れていた鄭さんは断ることもできずに乗りました。
ジープは学校の前を通り抜けました。着いた先は小さな旅館。「魏」という姓の夫婦に引き渡されました。ほかに二十余人の若い女性がいました。
翌日、高雄のふ頭から「アサヒマル」という軍艦でインド洋のアンダマン島へ。一年二カ月後には、サイパン島へ連行されました。鄭さんも妊娠しました。
陳樺さん(82)はフィリピンで看護助手を募集しているといわれました。「ナカムラ」という日本人が養父に出国の同意を執拗(しつよう)に迫りました。養父が断ると、「多くの看護婦が死を恐れずに戦地に赴いた。陳家も国のため、兵士のため、何かすべきだ」と繰り返しました。養父は同意せざるを得なくなりました。
フィリピンのセブ島に着き、「慰安婦」として来たことを初めて聞きました。「(連行された大きな建物が)慰安所とわかり、一緒に来た子たちと泣いた」といいます。
黄呉秀妹さん(89)は四〇年から約一年、中国広東省で被害を受けました。「具合が悪くても拒否すれば刀を取り出し、脅迫した。私は子どもを産めない体になった。いまも体がボロボロです。安倍首相は私たちの悲劇をご存じでしょうか。日本政府に謝罪してほしい」
「慰安婦」被害者の証言は参加者に衝撃を与えました。初めて証言を聞いたという大学四年生の女性は「そのまま無視してはいけないと思った」と感想を語りました。
( 2007年07月05日,
みどり 米国の下院外交委員会が、旧日本軍の「従軍慰安婦」問題で日本政府に公式の謝罪を求める決議を採択したわね。賛成三十九、反対二、圧倒的多数よ。
陽子 委員会での討論は一時間二十分、約二十人が発言したそうよ。日本のメディアはほとんど報じなかったけど。
みどり 米議会がなぜこういう議論をするのか、真剣な討論があったそうね。
人ごとのように
陽子 安倍首相は、「コメントするつもりはない。米議会では相当たくさんの決議がされている。その中の一つだろうと思う」と人ごとのように言ったけど、そういう認識そのものが問われているんでしょう。
みどり 韓国の新聞の社説は「この決議こそ歴史の真実はゆがめられないことを圧倒的な票差で立証した」と言ってる。
陽子 インドネシアのジャワ島で日本軍に拘束されて慰安婦にされたオランダ出身の女性は、「これは正しい方向での一歩です。希望で胸がいっぱいです」と言って、改めて日本政府に謝罪を強く求めているわ。
みどり ラントス委員長は、ハンガリー出身のユダヤ人で、ナチスによる大虐殺の生き残りなの。昨年の外交委員会で、小泉首相の靖国神社参拝を「ナチ指導者の墓に花輪を置くに等しい」と厳しく批判したわ。
陽子 「慰安婦」の存在と軍の関与を認め真剣な謝罪と反省を表明したのが一九九三年の河野官房長官談話だよね。今度の決議は、日本政府の閣僚や政治家が河野談話を「薄め、あるいは無効にしようという願望を示している」と言ってる。
みどり 教科書から「慰安婦」問題を削除しているのも批判してる。
世界で通用せず
陽子 自民、民主の議員ら四十四人が「強制はなかった」とワシントン・ポストに意見広告を出したでしょ。ラントス委員長は「ばかげた主張だ」と怒ったそうよ。
みどり 今度の決議は、過去の侵略戦争を肯定したり美化する日本の「靖国」派の主張が国際社会では通用しないことを示したわけね。
陽子 安倍首相は決議を正面から受け止めて、国際社会の疑念を解くためにも、世界に向けて公式に謝罪するべきだわ。
( 2007年07月05日,
杉並区の「和田堀・九条の会」は六月二十六日、同区で講演と映画のつどいを開き、四十人を超える人が参加しました。
松原勝さんが「元日本兵が語る、トラック島での真実 軍が管理した従軍慰安婦」のテーマで講演。松原さんはチューク諸島(旧トラック諸島)を基地にしていた海軍施設補給部に勤務していました。同諸島には五十人規模の日本軍「慰安所」が二つ(海軍用、陸軍用)あり、「従軍慰安婦」の人たちは、ほとんどが朝鮮人で、「だまされて来た」と言っていたと語りました。
また、米軍が撮影した記録映像や戦争体験者の証言で構成し、「従軍慰安婦」にも触れたビデオ「沖縄戦の証言」も上映されました。
(2007年07月04日,
「アメリカ議会の決議なのでコメントするつもりはない」。この安倍晋三首相のコメントそのものが衝撃の大きさを示しています。従軍慰安婦問題で、アメリカ下院外交委員会が、日本に公式な謝罪を求めた決議を39対2で可決したというニュースが、6月27日の日本を駆け巡りました。
NHKテレビも昼のニュースはトップ、夜の「ニュースウオッチ9」でも大きく扱いました。米議会での採決の模様を映します。塩崎恭久官房長官など政府与党の発言を伝えます。「拉致問題には熱心でも、従軍慰安婦への戦争犯罪には目をつむっている」というワシントン・ポスト紙の論調も紹介。大越健介NHKワシントン支局長は、決議の背景に中間選挙で民主党が勝利し、議会の主導権を握ったことがある、と解説しました。
しかし、これだけでいいのかという思いが残りました。それは従軍慰安婦とは何か、従軍慰安婦問題とは何かへの言及がなかったからです。この問題での後追い企画は民放も含め、ありません。大きな人道的・政治的問題でありながら、この数年、テレビは取り上げていません。
90年代後半、NHKは従軍慰安婦問題で優れた番組を制作しました。そして2001年、問題の本質を突いた番組を企画しました。「ETV2001〜問われる戦時性暴力」です。しかし、現首相の安倍氏らの意見を、NHK幹部が「忖度(そんたく)」し、放送されたときは、元従軍慰安婦の証言や、日本の加害にかかわることはほとんどカットされた無残な番組になっていました。それ以降、従軍慰安婦はテレビから見事に消えたのです。
米下院決議は、この問題を脇において日本外交が前に進むことは許されないことを示しました。血を吐くような思いで従軍慰安婦体験を証言した女性たちにも、もう時間は残っていません。今、慰安婦問題の本質を追究することは日本のメディアの責任であるはずです。
(荻)
( 2007年07月04日,
【北京=山田俊英】中国の中華全国弁護士協会と中国法律援助基金会は三日、第二次大戦中の旧日本軍による「従軍慰安婦」に関する調査結果を公表しました。昨年九月から半年にわたって現地調査し、「『慰安婦』強制は日本軍の組織的行動であることが証明された」と結論づけました。
これまで賠償請求を起こした元「慰安婦」以外に、山西省で十六人、海南省で一人、計十七人の被害者が生存していることが明らかになりました。被害当時の年齢は十二歳から二十一歳でした。
報告書は、山西省の一市四県、海南省の二県、雲南省の三市三県に「慰安所」が設けられていたとしています。山西省太原市では市内の二つの会館に設置。雲南省では民間住宅を奪って「慰安所」にしたといいます。
日本の敗戦後、中国の国民党軍に編入された残留日本軍部隊が山西省太原市に設置した「慰安所」は、一九四七年まで存在していました。
また、八カ所の公文書館を調べた結果、「慰安婦」を強制された三百三十八人の名前が記載された資料が見つかりました。この人たちは四四年四月から四五年八月にかけて日本軍の軍医による身体検査後、河南省、山東省、天津などの日本軍部隊に送られ「慰安婦」にされました。
報告は、第一一七師団長だった鈴木啓久中将ら捕虜となった日本軍将兵が「慰安所」設置に関与したことを供述した調書も掲載しています。
報告書は、弁護士協会のホームページ「中国律師網」で公表されています。調査は、今回明らかにされた以外の地方でも継続中です。
( 2007年07月04日,
日本共産党の志位和夫委員長は三日、日本外国特派員協会での講演で、米下院外交委員会が「従軍慰安婦」問題で日本政府に公式の謝罪を求める決議を採択したことにかかわって、「この問題での国際社会の批判と疑念を解くために、日本国首相として公的な立場での公的な表明として、歴史的事実を受け入れ、世界に謝罪すべきだ」と強調しました。
志位氏は、この問題では、旧日本軍による強制と関与の事実を認めた一九九三年の河野洋平官房長官談話が日本政府の見解とされてきたと指摘。その上で、「この『河野談話』が、安倍首相自身の言動によっても、米紙『ワシントン・ポスト』の意見広告にみられるような日本の『靖国』派の言動によっても、繰り返し蹂躪(じゅうりん)されてきた」ことを指摘し、安倍晋三首相が、公的な資格で公式声明として謝罪する必要性を強調しました。
これまで安倍首相は、「河野談話」を継承するとのべながら、「従軍慰安婦」問題で「強制連行はなかった」と発言し、アジアのみならず米国内からも強い批判を浴びていました。六月二十六日には、米下院外交委員会が日本政府に「従軍慰安婦」問題で公式謝罪を求める決議案を可決するなど、大きな問題となっています。安倍首相は同決議について「コメントするつもりはない」などとのべています。
( 2007年07月04日,
日本共産党の不破哲三社会科学研究所所長は二日、党本部で、朱達成・中国国際交流協会副会長ら訪日代表団と会談しました。朱氏は、中国共産党中央対外連絡部秘書長だった一九九八年一月、中国共産党代表として初めて日本共産党本部を訪問し、日中両党関係の正常化について不破委員長(当時)と会談したことがあります。
不破氏は、一行を心から歓迎し、最初の会談から九年半がたったことを想起。両氏は、その後の両党関係の正常化と発展をあらためて喜びあいました。
朱氏は、九八年の両党首脳会談のさいに不破氏が提唱した「日中関係の五原則」の意義を強調し、両国首相の相互訪問など昨年来の両国関係の改善をふまえた日中友好の現状と今後について質問しました。
不破氏は、日本共産党も昨秋の日中両国関係の改善を評価したが、障害は根本的にはなくなってはおらず、その点で日本の政治を注意深く見る必要があるとのべました。靖国問題など歴史問題をめぐる状況、「従軍慰安婦」問題などについて、ていねいに説明しました。
会談には、日本共産党から緒方靖夫副委員長、西口光国際局長代理、山口富男社会科学研究所副所長らが、中国側から趙磊・同協会副秘書長、王可傑・山東省桓台県長、中国大使館の林〇参事官らが出席しました。
( 2007年07月03日,
「このような事実に基づかない対日非難決議は、日米両国に重大な亀裂を生じさせ両国の未来に暗い影を落とすことになる」「なぜ歴史事実に基づかない河野談話が生まれたのか、その経緯と事実関係の徹底的検証が必要になる」
日本会議国会議員懇談会所属の自民党、民主党などの国会議員は六月二十七日、「従軍慰安婦」問題で日本政府に謝罪を求めた米下院外交委員会の決議に対し、こう不満をぶつけました。
同盟重視派も
同決議の引き金となったと指摘されている、ワシントン・ポスト紙同月十四日付への全面広告を出した面々です。
「河野談話」とは、「従軍慰安婦」問題への旧日本軍の関与を認め、反省とおわびを表明した政府の公式見解(一九九三年)です。
この談話を「薄め、無効にしよう」という動きは、国際社会が警告を鳴らしていることを理解しない「愚かというほかない行動」(日本共産党の志位和夫委員長)です。
米下院外交委員会のラントス委員長は同月二十六日、日本政府に対する謝罪要求決議を採択した委員会でこうのべました。
「日本はアジアにおける最も偉大な友人であり、世界で最も親密なパートナーです。にもかかわらず『慰安婦』として苦しんできた女性たちに対する政府の公式の謝罪を拒否することは、日米関係の価値を重んじるすべての人々にとって懸念を生じさせるものです」
日米同盟を重視する相手からさえ、侵略戦争正当化と歴史わい曲の流れは、受け入れられない≠ニ言明されたのです。
民主党内から
歴史問題での「靖国」派の動きは安倍内閣発足とともに強められてきました。
自民党の「靖国」派議員らでつくり、歴史教科書攻撃の急先ぽうとなってきた「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」(会長・中山成彬元文科相)は昨年十月、慰安婦問題小委員会を設置。今年三月八日には、米下院での日本政府批判の動きに対し、九三年の河野談話に原因があるとし、「軍や政府による強制という事実はなかった」との立場から、政府に「実態調査と関連資料の全面公開」を求める要請をおこないました。
翌九日、安倍首相、中川昭一政調会長とともに、一九九七年に同議員の会を結成した衛藤晟一前衆院議員が復党(〇五年の「郵政解散」で離党)したことも印象的でした。
民主党でもこの日、「慰安婦問題と南京事件の真実を検証する会」(会長・渡辺周衆院議員)を結成。二十人の同党議員が参加しました。
日本会議国会議員懇談会で副幹事長もつとめる渡辺氏は六月二十三日、都内で開かれた講演会に参加し、米議会の日本政府批判の動きについて「アメリカは中国のプロパガンダに完全に洗脳されて決議を出す」「河野談話に代わる政府見解を出すべきだ」とのべました。
こうした流れの中で、安倍首相も「慰安婦」連行の「強制性を裏付ける証拠がなかったのは事実だ」(三月一日)などと公然と開き直りました。昨年末以来の内閣支持率の急落を、「安倍カラー」を前面に押し出し、局面打開をはかるという「思惑」もありました。
「靖国」派が政権中枢を握ったことで、議連の策動と政権中枢の動きが呼応する形で歴史の「逆流」を強めていったのです。
「靖国」派の歴史わい曲の策動は「従軍慰安婦」問題にとどまりません。
今年は、憲法施行六十年の年であるとともに、日中全面戦争の戦端となった盧溝橋事件(一九三七年七月)、その後日本軍によって大量の民間人虐殺、暴行が発生した南京事件(同十二月)から七十年にあたります。
「靖国」派は、「今年、中国、アメリカ、カナダなどで、日本はまれに見る残虐な国家だと、約十本の『南京事件』に関する映画が作られようとしている」などとして、「『南京大虐殺』は存在しなかった」「言うべきことは言わなければならない」というキャンペーンを展開しはじめています。
自民党の「靖国」派議員らでつくる「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」(会長・中山成彬元文科相)は二月九日、「南京問題小委員会」を設置(委員長・戸井田徹衆院議員)。六月十九日、南京事件に関する「調査検証の総括」を発表しました。
「総括」では「一次資料を中心にした検証の結果、南京攻略戦が通常の戦争以上でも以下でもない」として、「南京大虐殺」は虚構≠セとの立場を強調しています。
戸井田氏は、自らのホームページで「(南京事件について)少しでも有ったのではないかと認めたら最後である。日本は認めた途端『慰安婦問題』と同じように取り返しのつかないことになる」などと述べています。
「屈辱」と非難
民主党でも「慰安婦問題と南京事件の真実を検証する会」(会長・渡辺周衆院議員、事務局長・鷲尾英一郎衆院議員)を結成(三月九日)。渡辺氏は六月二十三日、都内で開かれたシンポジウムで「今年の暮れには(中国の)南京虐殺記念館を『世界遺産』にしようという動きがある。なかったことを、いつまでも批判され続けるという国民的屈辱に対して、本気でたたかう」と発言しました。
また、六月十三日には日本会議国会議員懇談会会長の平沼赳夫衆院議員を中心に「中国の抗日記念館から不当な写真の撤去を求める国会議員の会」を結成。事務局長の稲田朋美・自民党衆院議員は「中国の抗日記念館にどのくらいのウソ展示があるか把握し、政府を通じて撤去を求めていく」などと述べました。
民間でも「南京事件の真実を検証する会」を結成(三月)。会長には日本会議代表委員の加瀬英明氏、事務局長には「新しい歴史教科書をつくる会」の藤岡信勝会長が就任しています。藤岡氏は六月二十三日、都内で「南京事件があったことを前提とする政府の教科書検定方針そのものを変えさせなければならない」と発言しました。
国際信用失う
「南京事件は幻だ」などとする主張は、国際的にも、国内的にもすでに決着ずみの議論を蒸し返すものにすぎません。
「慰安婦」問題と同様に、政権中枢とも結んでのこうした妄論の横行は、「まったく信用のできない国」として、アジアと国際社会での日本の信用を根本的に掘り崩すものです。
( 2007年07月02−03日,
日本の過去の侵略戦争を美化・肯定する勢力「靖国」派に、米議会が強烈な一撃を加えました。下院外交委員会が6月26日午後(日本時間27日未明)、太平洋・アジア戦争中の日本軍の「従軍慰安婦」問題で、日本政府に明確な謝罪をもとめる決議を賛成39、反対2の圧倒的多数の賛成で可決しました。
ワシントンで 山崎伸治記者
その瞬間、傍聴席から拍手がわき起こりました。決議案の支持を議員に働きかけてきた人たちの喜ぶ姿がありました。慰安婦問題ワシントン連合のオクチャ・ソ会長は言います。
「生き残った元『慰安婦』の女性たちが歓喜し、涙していることは間違いありません」
決議は「従軍慰安婦」問題について、「日本政府が公に、明確な方法で認め、謝罪し、歴史的責任を受け入れること」を第1に求めています。まさに安倍首相ら「靖国」派国会議員らの活動が、糾弾されたのです。
この日の委員会では21件の法案・決議案が採決されました。「従軍慰安婦」決議は対イラン経済制裁法案などとともに主要法案の扱いでした。19人の委員が発言し、採決は1時間20分にも及びました。
最初に発言したラントス委員長(民主党)が「いまだに日本には被害者を非難する人たちもいる」としてあげたのが、「靖国」派国会議員らが6月14日付の米紙ワシントン・ポストに掲載した意見広告でした。
「旧日本軍によって強制的に従軍慰安婦にされたことを示す文書は見つかっていない」―自身の不見識をさらけ出したこの広告には「日本会議議員懇談会」会長の平沼赳夫氏(無所属)のほか自民、民主、無所属の計44議員(別掲)らが名をつらねました。
「まったくばかげた主張であり、事実に反する」とラントス氏は怒りをあらわにしました。
首相の不見識
同委員会のアジア太平洋・地球環境小委員会のファレオマバエガ委員長(民主)は、2月の小委員会の公聴会で米議会史上初めて3人の元「慰安婦」の女性が証言したことを振り返りました。
この証言に安倍首相が「強制の根拠はない」と反論したことで、決議案は一気に日米間で政治問題化。その後安倍氏は訪米しておわびしたものの、26日までに決議の共同提案者は146人にまで増えています。
発言でアッカーマン議員(民主)ら多くの議員が、ナチの罪を追及し続けるドイツと対比しました。バートン議員(共和)は、米国が奴隷制の誤りを認めたことを引き合いに出しました。
ポー議員(共和)は沖縄の集団自決が教科書から削除された問題もあげ、日本政府が「戦時中の事実を隠そうとしている」と批判しました。
反対議員も「しぶしぶ反対せざるを得ない」(タンクレード議員=共和)と断り、「従軍慰安婦」の事実は否定しないとわざわざ説明。マンズーロ議員(共和)が「米議会が日韓2国間の論争の場となる理由は何か」と決議案に疑問を述べると、ラントス氏が「これは2国間問題ではなく、基本的な人権問題だ」と反論しました。
決議案には、ラントス氏と共和党筆頭委員のロス・レーティネン議員が共同で修正案を提出。安倍首相に謝罪を求める文言を和らげました。それでも決議案の根幹は変わりません。
この意見広告にも怒りが
意見広告に賛同した国会議員
自由民主党
衆院
赤池誠章(比例南関東) 稲田朋美(福井1区) 江藤拓(宮崎2区) 大塚高司(大阪8区) 岡部英明(比例北関東) 小川友一(東京21区) 鍵田忠兵衛(比例近畿) 亀岡偉民(福島1区) 木原稔(比例九州) 木挽司(兵庫6区) 坂井学(神奈川5区) 島村宜伸(東京16区) 杉田元司(比例東海) 鈴木馨祐(比例南関東) 薗浦健太郎(千葉5区) 平将明(東京4区) 戸井田徹(兵庫11区) 土井亨(宮城1区) 土井真樹(比例東海) 西本勝子(比例四国) 林潤(神奈川4区) 古川禎久(宮崎3区) 松本文明(東京7区) 松本洋平(東京19区) 武藤容治(岐阜3区) 愛知和男(比例東京) 山本朋広(比例近畿) 渡部篤(比例東北)
参院
中川義雄(北海道)
民主党
衆院
松木謙公(比例北海道) 笠浩史(比例南関東) 牧義夫(愛知4区) 吉田泉(比例東北) 河村たかし(愛知1区) 石関貴史(比例北関東) 泉健太(京都3区) 神風英男(比例北関東) 田村謙治(比例東海) 鷲尾英一郎(比例北陸信越) 北神圭朗(比例近畿) 松原仁(比例東京)
参院
松下新平(宮崎)
無所属
衆院
西村真悟(比例近畿) 平沼赳夫(岡山3区)
(2007年07月01日,
政治・経済
◆国保交付金を国が算定ミス 厚生労働省の算定ミスで、国から那覇市の国民健康保険財政に入る交付金が1996年以来の10年間で5・5億円不足していたことが判明。日本共産党の赤嶺衆院議員に厚労省が国の責任認める(25日)
◆国民生活白書 内閣府が発表した「国民生活白書」は、パート・アルバイトは雇用不安でストレス、正社員は仕事が増えて疲弊など労働実態を紹介(26日)
◆「消えた年金」問題で厚労相が「全員に記録送付」明言 柳沢伯夫厚労相は参院厚生労働委で「すべての受給者、加入者に履歴を送って確認していただく」と年金加入・納入記録を速やかに送る考えを表明。日本共産党の小池晃議員への答弁。政府が全員への履歴送付を明言したのは初めて(28日)
◆「集団自決」検定撤回を求め沖縄県の全議会が意見書 「集団自決」をめぐる教科書検定意見撤回を求め、沖縄県議会と県内の全41市町村議会が意見書を可決(28日)
◆与党の「数の暴力」で4法案が成立 29日から30日未明にかけての参院本会議で、社保庁解体・民営化法案、年金時効特例法案、天下り自由化法案(国家公務員法改悪案)、政治資金規正法改定案が成立(30日)
社会・国民運動
◆ひき肉偽装でミートホープを捜索 食肉加工卸会社「ミートホープ」のひき肉偽装問題で、北海道警は不正競争防止法違反(偽装表示)の疑いで、本社など約10カ所を家宅捜索(24日)
◆福知山線事故で事故調が最終報告 JR福知山線脱線事故で、国土交通省航空・鉄道事故調査委員会は、安全よりも運行を優先させていたJR西日本の経営体質と安全管理体制の問題点を浮き彫りにする最終報告書をまとめ、国交相へ提出(28日)
◆元公安トップを詐欺容疑で逮捕 朝鮮総連中央本部の売却をめぐり、東京地検特捜部は、総連側にうそをいい、中央本部の土地・建物をだまし取ったとして、詐欺容疑で元公安調査庁長官、弁護士の緒方重威容疑者らを逮捕(28日)
◆国会前で労組が連日座り込み 社会保険庁解体・民営化法案、国家公務員法改悪法案の強行採決を許さないと国公労連などが国会前で座り込み、可決に抗議(28、29日)
◆最低賃金引き上げを厚労省に申し入れ 全労連が中央最賃審議会の審議を前に、最賃引き上げを厚生労働省に申し入れ(29日)
国際
◆パレスチナ問題で4者協議 イスラエルのオルメルト首相、パレスチナ自治政府のアッバス議長、エジプトのムバラク大統領、ヨルダンのアブドラ国王がエジプトで会談。ムバラク氏はすべてのパレスチナ人に「抗争の停止、対話を通じた結束を」と呼びかけ(25日)
◆米下院委で「慰安婦」決議可決 旧日本軍の「従軍慰安婦」問題で日本政府に公式謝罪を求める決議案が米下院外交委員会で賛成39、反対2の圧倒的多数で可決(写真)。討論では「強制性はなかった」とする安倍首相への批判の声が相次ぐ(26日)
◆英首相にブラウン氏 ブレア英首相が辞任し、英女王は後任にブラウン財務相(労働党新党首)を指名(27日)
◆中国で労働契約法可決 中国全国人民代表大会の常務委員会が、雇用ルールを明確にし、労働者の権利の前進をめざす労働契約法を可決。来年1月施行予定(29日)
◆IAEAが北朝鮮の核施設視察 北朝鮮入りした国際原子力機関(IAEA)のハイノネン事務次長らが寧辺の核施設を視察。稼働停止・封印の検証方法について北朝鮮と合意したと表明(29日)
( 2007年07月01日,
中国各紙
【北京=山田俊英】二十八日付の中国各紙は、米下院外交委員会が旧日本軍による「従軍慰安婦」問題で日本政府に謝罪を求めた決議を採択したことを報じました。
人民日報が主管する国際問題の専門新聞、環球時報は一面で「米の慰安婦決議が日本を揺るがす」と報じました。同紙は、日本政府がコメントを避けて「この問題を政治化させないようにしている」と伝えました。また、歴史問題を通じて日米関係が「蜜月時代から曲がりくねった道に入ろうとしている」という評価が出ていると指摘しました。
北京青年報、新京報も決議採択を伝える新華社記事を国際面のトップに掲載しました。同記事は、「正式に明確な謝罪をしない日本政府の態度は日本の国際的地位にそぐわない」とのラントス米下院外交委員長の言葉を紹介しました。
英メディア
【ロンドン=岡崎衆史】米下院外交委員会で「従軍慰安婦」問題に関して日本政府に謝罪を求める決議が採択されたことについて英国では、複数の主要紙が元「慰安婦」の写真入りで報じるなど関心の高さを示しました。英メディアは、決議が求める新しい公式な謝罪を日本政府が拒否していることに注目しています。
タイムズ紙二十八日付は、「日本は『慰安婦』での謝罪を拒否」の見出しで報道。「東京(日本政府)は(謝罪の)要求を退けた」と、決議への政府の反応を伝えるとともに、安倍首相の対応についても、「米議会の問題だとして決議へのコメントを拒否した」と報じました。BBC(電子版)も二十七日、「日本は『慰安婦』として知られる第二次大戦中の性奴隷使用について新たな謝罪を求める米議員の圧力を退けた」と報道しました。
( 2007年06月30日,
【ソウル=時事】韓国外交通商省当局者は二十九日、米下院外交委員会が従軍慰安婦問題に関する対日謝罪要求決議案を可決したことについて、「米国社会が(慰安婦問題に)深い関心を持っていることを示した。日本自らが問題の歴史的意味や基本的人権を考慮して、行動し続けることを期待している」と述べ、日本政府に前向きな対応を促しました。
( 2007年06月30日,
米下院外交委員会は26日、旧日本軍の「従軍慰安婦」問題で日本政府に謝罪を求める決議を39対2の圧倒的多数で採択しました。討論では米国の議会がなぜ、こうした決議をすべきなのかをめぐって真剣な討論が行われました。その要旨を紹介します。(ワシントン=鎌塚由美 写真も)
日本が歴史暗部と向き合うこと重要/二国間問題でない基本的人権問題だ
ロイス議員(カリフォルニア、共和) 日本政府は、戦時被害の個人の申し立ては諸国との関係正常化条約で終了したとの立場をとっている。安倍首相の四月の発言を謝罪と考える人もいるが、外務省は謝罪を行わないと公言した。これが犠牲者をいらだたせている。日本政府が歴史の暗部と向き合うことが重要である。この決議案は、過去に関する決議案でもあり、今日に関する決議案でもある。過去の行為を塗りつぶしたり、説明責任を拒否することは、それを弱める。歴史は今日と明日に影響する連続体である。過去を正しく扱わないと未来を正しくすることは、より困難になる。
ファレオマバエガ議員(米領サモア、民主) 日本の首相は誰一人として、日本政府を代表して明確な謝罪を一度もおこなっていない。
スミス議員(ニュージャージー、共和党) よき友人と同盟国に人権侵害や歴史の隠ぺいをさせてはならない。安倍首相は(性奴隷の)強制性を否定した。これは河野談話の正当性と誠実さに対する挑戦だ。近年、日本は、学校教科書の修正を通して、「慰安婦」に関する歴史的正確さへの挑戦もおこなっている。事実の隠ぺい、暗黒化、否定は機能しない。
ユダヤ人と変わらない
アッカーマン議員(ニューヨーク、民主) ホロコーストの議論は犠牲者が声を上げて光が当たった。それまでは話すことができなかったのだ。なかったことにしてはならない、世界にそれを知らせなくてはならないと自らの沈黙の壁を破ったのだ。「従軍慰安婦」たちは、強制収容所へ行進したユダヤ人たちと変わらない。女性たちは今、勇気をもって言葉を見つけ、日本軍の行為を認識させようとしているのだ。日本は自らの平静のため、歴史を前進させなくてはならない。そうすることによって汚点を取り除くことができる。
バートン議員(インディアナ、共和) 米国はおぞましい奴隷制度に長年関与した。われわれはそれを認め、制度を廃止した。ドイツは大虐殺を認め、女性の性奴隷も認めている。日本の政権担当者に前例を示し、彼らに同様のことをすることを促したい。
ワトソン議員(カリフォルニア、民主) 日系人を強制収容所に住まわせたのも米国政府の指示であった。これについては四十年後、政府が認め補償を行った。人権侵害について、きれいな手を持つ国家はひとつもない。選択的に真実を語ってはならない。どの国の話であれ真実を追求しなければならない。日本は重要な同盟国であり、誠実に過去と向かうことで多国間の関係が強化される。
良き友人の間違い糾弾
マンズーロ議員(イリノイ、共和) 「慰安婦」への残虐行為は間違いないが、二国間の紛争の問題で決議をあげなくてはならないのか。日本の謝罪を韓国に受け入れられるかの、裁判官にならないといけないのか。国同士の議論に米議会が介入する資格があるとは思わない。
ラントス委員長 二国間紛争を取り扱っているのではない。基本的人権を扱っているのだ。人権問題について声を上げることは米国議会下院の使命だ。
シャーマン議員(民主、カリフォルニア) 被害者の傷を癒やすためだけでなく過去の真実が日本の健全な未来のための基礎になる。日本のために決議案を採択しよう。良き友の間違いを糾弾するのだから。われわれも自らの行いを認めなくてはならない。
タンクレド議員(コロラド、共和) 性奴隷を容認するのではないが、この種の議論は生産的だろうか。過去について、日本政府はあとどれだけ謝らないといけないのか。
ペイン議員(ニュージャージー、民主) この決議案は適切である。
重荷おろし自由になれ
ファレオマバエガ議員 安倍首相は、保守派からの圧力で、河野談話を否定した。ところが反発を受けて撤回した。筋が通っていない。
ポール議員(テキサス、共和) 不本意ながら決議案に反対する。性奴隷制度を擁護できないが、三世代もあとの人々が、謝罪を求められなくてはならないのか。われわれに裁判権があるのか。当委員会では、グアンタナモの(収容所問題)を検討すべきだ。戦争では市民への爆弾投下をどの国でもやっている。事実、戦争終結のため市民に爆弾が落とされた。おぞましいことである。これへの謝罪も議論されるべきだ。
ウルジー議員(カリフォルニア、民主) まったく逆のことを主張したい。勇気をもって証言した女性たちのためにも。女性たちをどう処遇するかの前例をつくるためにも重要である。世界中の人身売買が問題にされている今日、二度と起こさせないと印象づけることができる。
ポー議員(テキサス、共和) 良き友の誤りを指摘するのは骨の折れることだが、日本は満足のいく謝罪を行ったことはない。政府当局が後悔を表明すると、他の当局者が否定する。教科書で歪曲(わいきょく)もおこなっている。戦時に日本軍が市民に集団自決を求めたことを削除しようとして沖縄の人々が抗議をしている。
ジャクソンリー議員(テキサス、民主) 米国でも奴隷制度で多くの議論があり謝罪は意味を持つという結論に達した。
スコット議員(ジョージア、民主) われわれは奴隷制を謝罪した。州知事たちは罪の重荷が下ろされたと感じた。日本は重荷を下ろして自由になるべきだ。
クロウリー議員(ニューヨーク、民主) われわれは歴史を学び、前に進むことを望んでいる。
ラントス委員長の発言/国家の力が試される
国家の力が試されるのは、歴史における暗黒の時代に向き合わざるを得ない時だ。過去の真実を認める勇気を持つのか、それとも時とともに風化するという愚かな希望でもって真実から逃れようとするのか。戦後のドイツは正しい選択をした。他方で、日本は歴史健忘症になることを積極的に進めてきた。
歴史をゆがめ、犠牲者に罪をなすりつけようとする日本の一部の人の試みも憂慮すべきことだ。最近、日本政府のメンバーらが生存者を中傷する広告をワシントン・ポスト紙に載せた。広告は「当時、世界中で当たり前だった公娼制度」に従事していたと述べている。事実に真っ向から反する、ばかげた主張だ。
われわれの決議は、日本政府に、日本帝国が「慰安婦」に対して犯したおそるべき行為を公式に認め、謝罪することを求めている。重要なことは、決議が犠牲者たちの声を代弁していることだ。恥や偏見、暴力の脅迫で沈黙させられようとしてきた勇気ある女性たちの思いを表現している。彼女たちのために立ち上がることは適切だ。
ペロシ下院議長の声明/遅すぎることはない
日本は、米国にとって死活的に重要な同盟国であり、国際社会の責任ある一員として、リーダーシップを発揮している。しかしこの問題では、日本政府にさらなる努力が求められる。第二次大戦から半世紀以上が経過したが、過去の誤りを認め、歴史が繰り返されないよう、将来の世代を教育するのに遅すぎるということはない。下院がこの決議を可決し、「慰安婦」が耐えた恐怖を忘れないという強いメッセージを送ることを期待している。彼女たちはあまりに長く待たされてきたが、その勇気を認めるのに遅すぎることはない。
( 2007年06月30日,
日本アジア・アフリカ・ラテンアメリカ連帯委員会(日本AALA)は二十七日、アメリカの下院外交委員会で「日本政府に公式の謝罪を求める」決議が採択されたことを歓迎する談話を発表しました。
談話は「歴代の日本政府首脳が常に歴史の責任をあいまいにしてきた結果だ」と指摘。「安倍首相は『慰安婦』の強制性を否定したり、自民、民主の国会議員四十四人が強制はなかったと米国マスコミに意見広告を載せる動きのなかで、良識ある米国会議員の不快感が広がり、採択した」とのべ、日本政府が決議を真摯(しんし)に受けとめ、日本軍「慰安婦」問題の早期解決に踏み出すよう要求しています。
( 2007年06月30日,
米下院外交委員会が、「従軍慰安婦」問題で日本政府に公式の謝罪を求める決議を採択したのを受けて二十七日、旧日本軍性奴隷問題の解決を求める全国同時企画・京都実行委員会は、決議採択を支持する声明を発表しました。
声明は、日本の侵略と約二千万人の殺害、「二十万人以上の女性を性の奴隷」にした責任からは逃れることはできないとしたうえで、「日本政府がやるべきことは、高額なロビイストを暗躍させることでも…アメリカのメディアを通じて歴史を歪曲(わいきょく)することでもないはず」と指摘。「謝罪すべき相手に誠意ある謝罪と賠償」をするよう求め、日本政府が同決議を受け入れ「一日でも早い問題の解決のため行動するよう」働きかけていくとしています。
(2007年06月29日,
米下院外交委員会は二十六日、旧日本軍の「従軍慰安婦」問題で日本政府に公式な謝罪を求める決議を圧倒的多数で採択しました。決議全文は次の通りです。
一九三〇年代から第二次世界大戦を通じたアジアおよび太平洋諸島の植民地支配と戦時占領の期間、日本政府が公式に、その帝国軍隊に対する性的強制労働を唯一の目的として若い女性の獲得を委託し、これらの人々は「イアンフ」あるいは「comfort women」として世界に知られるようになったのであり、
日本政府による強制的な軍の売春である「慰安婦」制度は、二十世紀における最大の人身取引事件の一つであり、身体損傷や死、自殺をもたらした集団強姦(ごうかん)、強制中絶、屈辱、性的暴力など、その残酷さと規模において未曽有のものとみなされ、
日本の学校で使用されるいくつかの新しい教科書は、「慰安婦」の悲劇や第二次世界大戦における他の日本の戦争犯罪を軽視しようとしており、
日本の官民の関係者は最近、彼女たちの苦難に対して政府の真剣な謝罪と反省を表明した一九九三年の河野洋平内閣官房長官の「慰安婦」に関する声明を薄め、あるいは無効にしようとする願望を示しており、
日本政府は、一九二一年の「婦人及び児童の売買禁止に関する国際条約」に署名し、武力紛争が女性に与える特別の影響を認識した二〇〇〇年の「女性と平和・安全保障に関する国連安全保障理事会決議一三二五」を支持しているのであり、
下院は、人間の安全保障、人権、民主主義的価値および法の支配を促進する日本の努力と、安保理決議一三二五の支持者となっていることを称賛し、
米日同盟はアジア・太平洋地域における米国の安全保障利益の礎であり、地域の安定と繁栄の基礎であり、
冷戦後の戦略環境における変化にもかかわらず、米日同盟は、アジア・太平洋地域において、政治・経済的な自由の保持と促進、人権と民主的制度への支援、両国民と国際社会の繁栄の確保をはじめとした、共通の死活的に重要な利益と価値に立脚し続けており、
下院は、一九九五年の日本における民間の「アジア女性基金」の設立に結びついた日本の官民の関係者の懸命の努力と思いやりを称賛し、
「アジア女性基金」は日本国民からの「償い」を慰安婦に提供するために五百七十万jを集め、さらに、
「慰安婦」の虐待および被害の償いのための計画と事業の実施を目的とし、政府が主導し、資金の大部分を政府が提供した民間基金である「アジア女性基金」の任務は二〇〇七年三月三十一日に終了し、基金はこの日付で解散されることになっている。
このため、以下が下院の意思であることを決議する。
日本政府は、
(1)一九三〇年代から第二次世界大戦中を通じたアジアおよび太平洋諸島の植民地支配と戦時占領の期間、日本帝国軍隊が若い女性を「慰安婦」として世界に知られる性的奴隷となるよう強制したことを、明瞭(めいりょう)であいまいさのないやり方で、公式に認め、謝罪し、歴史的責任を受け入れるべきである。
(2)日本国首相が公的な資格での公的な声明として、このような謝罪をするなら、誠実さと、これまでの声明〔注=河野談話のこと〕の地位をめぐって繰り返されてきた疑問を解くことに貢献するだろう。
(3)日本帝国軍のための「慰安婦」の性奴隷化や人身取引などはなかったといういかなる主張に対しても、明確に公式に反ばくすべきである。そして、
(4)「慰安婦」に関する国際社会の提案に従うとともに、この恐るべき犯罪について現在と将来の世代を教育すべきである。
( 2007年06月29日,
日本共産党の緒方靖夫議員は二十八日の参院拉致問題特別委員会で、米下院外交委員会で採択された「従軍慰安婦」問題決議を示しながら、日本政府に、あいまいさのない謝罪を要求しました。
決議は、日本政府に公式な謝罪を求めていますが、日本政府は、四月の訪米で安倍晋三首相が「申し訳ない」と述べたことで「米側の理解は得られた」という立場です。一方、首相は訪米直後、記者団に対し「米国に謝罪したことはまったくない」とも述べています。
緒方氏は、いったい首相は「謝罪」をしたのか否か、どちらなのかと追及。塩崎恭久官房長官は「どう受け取るかは人それぞれだ。総理の言葉の以上でも以下でもない」と述べ、謝罪だと明言しませんでした。
緒方氏はまた、決議が「日本軍による強制的な性奴隷化」と批判していることに麻生太郎外相が「そのような事実を認めている立場にない」(二月十九日衆院予算委員会)と否定していた答弁について「今も同じ認識か」と質問。麻生外相は「強制性については河野談話の通りだ」としか答弁できませんでした。
緒方氏は、「靖国」派の国会議員らが米紙に出した意見広告が、決議を「故意のわい曲」だと主張していることを挙げ、「外相は認識を変えたと答弁しない。そうすると、意見広告と同じ認識ということではないか」と追及しました。麻生外相は「意見広告は政府が出したものではない」などと答弁を避けました。
緒方氏は、麻生外相が意見広告と認識が違うと表明できなかったことについて「非常に深刻だ。このことを日本政府は自覚すべきだ」と批判しました。
( 2007年06月29日,
旧日本軍による「従軍慰安婦」の問題で、米下院外交委員会が日本政府の公式な謝罪を求める決議を採択したことで、それを真っ向から否定する「靖国」派議員の特異な姿勢が浮きぼりになりました。民主党は、「(首相の)結果責任が問われる」(松本剛明政調会長)と批判しますが、同党も「靖国」派議員を多数抱えており、自らの立場も問われます。
米紙ワシントン・ポスト十四日付に、日本の国会議員四十四人が連名で「従軍慰安婦」にたいする強制性を否定する全面広告を掲載しました。米国だけでなく、アジア諸国からも批判の声が上がり、米下院での謝罪要求決議の採択を加速させる要因となったと指摘されています。この広告には、自民党議員二十九人、無所属議員二人とともに、十三人の民主党議員(参院院内会派一人を含む)が名を連ねています。
南京大虐殺も「なかった」と
十三人の多くは、三月に民主党の有志議員が結成した「民主党慰安婦問題と南京事件の真実を検証する会」(会長=渡辺周衆院議員)のメンバーです。同会の中心メンバーは、日本会議国会議員懇談会(日本会議議連)副幹事長などの役員であり、バリバリの「靖国」派。賛同議員は、民主党のすべての派閥に及んでいます。
これらの民主党議員は、国会の委員会質問などで「南京大虐殺」の事実や「従軍慰安婦」の軍による強制性を否定する発言を繰り返しています。
たとえば、日本会議議連の役員でもある松原仁衆院議員は、「事実がなかった、三十万なんていう話じゃないし、三万という話でもない。なかったんですよ」「大虐殺、虐殺はなかった、間違いなく」(五月二十五日、衆院外務委員会)などと発言しています。
しかし、日本軍による南京や周辺地域での大規模な虐殺は、元日本兵や多くの被害者の証言によって、すでに覆せない事実となっています。日本政府でさえ「旧日本軍による南京入城後、非戦闘員の殺害または略奪行為などがあったことは否定できない」(二〇〇六年六月二十二日付「答弁書」)と認めざるをえないのです。
「従軍慰安婦」についてこれらの民主党議員は、強制的な連行があったことを強く否定し、「不名誉なぬれぎぬ」だと主張。日本軍の関与・強制を公式に認め、反省とおわびを表明した「河野談話」の取り下げまであからさまに要求しています。
改憲をめざす流れの底には
民主党内の「靖国」派議員は、こうした見解≠ノもとづく対応を政府に迫ってさえいます。渡辺衆院議員は、四月二十五日の外務委員会での質疑で、南京大虐殺記念館が年内にも拡張され、世界遺産登録の動きもあることに懸念を示し、「これから北京五輪や上海エキスポ(万博)で大勢の方々が世界中から訪れる」「そこに行ったら、何と日本はひどいことをしたんだ、これだけのことをしていたのかということが、まさに刷り込まれてしまう」とのべ、「対応」を急ぐよう求めました。
「創憲」の名のもとに「自衛軍」の創設や集団自衛権の容認を含む改憲をめざす民主党の底流には、侵略戦争の歴史を否定する危険な勢力が存在するのです。
( 2007年06月29日,
【北京=山田俊英】中国外務省の秦剛報道官は二十八日、定例記者会見で、米下院外交委員会が『従軍慰安婦』問題に関する対日謝罪要求決議案を採択したことについて「われわれは日本政府に対し、国際社会の正義の叫び声を直視し、歴史に責任ある態度を持ち、真剣かつ適切に問題を処理するよう要求する」と述べました。
「中国の慰安婦問題での立場は一貫しており、明確だ」とし、「日本軍国主義が第二次大戦中、中国など侵略した国に対して犯した重大な犯罪だ」と指摘しました。
報道官は、札幌高等裁判所が同日、強制連行被害者への賠償を認めない判決を言い渡したことについても、「強制連行も日本軍国主義の犯罪の一つだ。日本政府が真剣かつ適切に処理するよう求める」とコメントしました。
( 2007年06月29日,
日本共産党の志位和夫委員長が二十八日におこなった記者会見での発言大要は次の通りです。
「消えた年金」――1億人への通知問題で重要な進展
「消えた年金」の問題について、日本共産党として「五項目の緊急対策」を提案してきました。とりわけ、政府が現在把握している年金納付記録を一億人の国民――加入者、受給者すべてにただちに通知する、これがもっとも急がれると繰り返し提起してきました。十九日には、安倍首相あての申し入れもおこないました。この問題で、一連の重要な進展がありました。
まず、自民党の中川秀直幹事長が、二十五日、政府・与党協議会で、「受給者だけでなく、すべての加入者を含めた一億人にたいし、加入・納付記録を一刻も早く知らせることが、不安、不信の除去に、最も効果的だ」とのべ、そのことを政府側に求めました。
そして、今日の参院厚生労働委員会で、日本共産党の小池晃議員の質問に答えて、柳沢厚生労働大臣が、「すべての年金の受給者、現役の加入者に履歴を送って確認をいただく」、「(突き合わせ作業と)並行的に年金の履歴をお知らせしながら、ご確認をいただく」と答弁でのべました。
中川発言、柳沢答弁は、わが党の提案が最も合理的で、建設的であることを、与党の幹事長、政府も認めたことを示すものであり、たいへん重要な進展です。ただ、全員への納付通知をいつやるかが、問題です。私たちは、できるだけすみやかに、ただちにということをひきつづき強く求めていきます。
米下院「従軍慰安婦」決議――首相は真摯に受け止め、真剣に検討せよ
もう一つの重要な問題は、米国の下院の外交委員会が、「従軍慰安婦」問題で日本政府に公式の謝罪を求める決議案を採択したことです。
昨日、安倍首相は「コメントするつもりはない」とのべましたが、こうした人ごとのような対応が許される問題ではありません。なぜなら、こうした重大な事態に立ち至った最も重大な要因は、「靖国」派――過去の戦争を肯定・美化する勢力が繰り返してきた言動そのものにあるからです。
米下院外交委員会の決議は、つぎのようにのべています。
「日本の官民の関係者たちは最近、彼女たちの苦難にたいして、政府の真剣な謝罪を表明した一九九三年の『河野洋平内閣官房長官の慰安婦に関する声明』を薄め、あるいは無効にしようという願望を示している」
ここで、「『河野談話』を薄め、無効にしよう」としていると批判されているのは、「靖国」派の一連の言動そのものです。すなわち、首相が三月に「従軍慰安婦」問題について、「強制連行を裏付ける証拠はない」という発言をおこなったこと、さらに六月に、自民、民主、無所属の国会議員らが共同でワシントン・ポストに「意見広告」を出し、「強制連行はなかった」、「慰安婦の待遇はよいものだった」などとのべたことが、批判の対象とされているのです。「靖国」派の、こうした歴史をわい曲する姿勢は、国際社会ではとうてい通用するものではないことが明らかになった、「靖国」派の破たんが国際的にもはっきりしたのが、いま起こっている事態です。
私は、安倍首相と日本政府に、この決議について「コメントするつもりはない」などという無責任な態度はとるべきでない、この決議を正面から真摯(しんし)に受け止め、真剣に検討することを、強く求めるものです。そして、首相は、「河野談話」に反する自らの発言を撤回し、この問題についての日本の歴史的責任を疑問の余地のない明確な形で、国際社会に明らかにすることを強く求めるものです。
「河野談話」に罪を着せ、破棄しようとする「靖国」派の動きは許せない
この問題で、昨日、平沼赳夫氏が代表世話人を務める「自民党・民主党有志議員一同」が、声明文を発表しました。声明文では、「このような事態を引き起こした」のは「河野談話」であるとし、「河野談話」は「歴史事実に基づかない」とのべて、「徹底的な検証」を求めています。これはきわめて重大な動きです。
米国下院外交委員会での決議採択という重大な「事態を引き起こした」――その責任の一端を担っているのが、この声明文に名を連ねている「靖国」派の議員たちであるのに、その自覚もなしに、「河野談話」にその罪を着せようとしている。これは、国際社会が何を問題にしているかをまったく理解しない、愚かというほかない行動だと強く批判しなければなりません。
国際社会が「河野談話」を無効にする動きに強い批判をよせているときに、彼らのいうように「河野談話」を破棄する方向に日本が向かったとしたら、国際社会からの批判と孤立は決定的なものとならざるをえません。こうした逆流は決して許してはならないということを強くのべておきたいと思います。
( 2007年06月29日,
米下院外交委員会が旧日本軍の「従軍慰安婦」問題で日本政府に公式の謝罪を求める決議を可決したことを受け、二十八日までに各団体が声明や要請文を発表しています。
日本軍「慰安婦」問題行動ネットワークは二十七日、国会内で各国同時記者会見を開き、同決議を歓迎する声明を発表しました。同ネットワークによると、韓国、フィリピンでも記者会見がおこなわれました。
声明は同決議を「国際世論の良識を代表する」ものと評価し、「下院本会議において決議され、これ以上日本政府が被害女性の人権をネグレクトすることを許さず、重大な人権侵害を受けた生存者の尊厳が回復され、世界の人権確立のために役立てられることを希望する。そのために私たちはあらゆる努力を惜しまない」としています。
全国保険医団体連合会は安倍晋三首相あてに要請文を発表し、「この間の安倍首相の発言をはじめとして、歴史教科書で『慰安婦』や過去の戦争犯罪を軽視する動きに決議は懸念を表明している」と指摘。「未来永劫(えいごう)、『従軍慰安婦』のような悲劇を二度と起こさないために、日本政府に対して、歴史事実を認め、関係者に謝罪することを求める」としています。
( 2007年06月29日,
日本共産党の志位和夫委員長は二十八日の記者会見で、米下院委で採択された「慰安婦」決議について安倍晋三首相が「コメントするつもりはない」(二十七日)と述べたことに関し、「人ごとのような対応が許される問題ではない。こうした重大な事態に立ち至った最も重大な要因は、『靖国』派―過去の戦争を肯定・美化する勢力が繰り返してきた言動そのものにあるからだ」と厳しく批判しました。
志位氏は、米決議が、「日本の官民の関係者たち」の中に「慰安婦」問題への日本政府の真剣な謝罪と反省を表明した「河野談話」(一九九三年)を「薄め、あるいは無効にしようとする願望」がある、と述べた一節を引きました。そして、ここで批判されているのは安倍首相の「強制連行を裏付ける証拠がない」との発言(三月)や、自民・民主・無所属の「靖国」派国会議員らが米紙に出した意見広告(六月)だと指摘しました。
志位氏は、「歴史をわい曲する『靖国』派の姿勢は国際社会に到底通用しないことが明らかになった」と強調。安倍首相と日本政府が米決議を正面から真摯(しんし)に受け止め、真剣に検討すること、とりわけ安倍首相には、「河野談話」に関する自らの発言を撤回し、「慰安婦」問題についての日本の歴史的責任を明確な形で国際社会に明らかにすることを強く求めました。
( 2007年06月29日,
【台北=時事】米下院外交委員会で従軍慰安婦問題に関する対日謝罪要求決議案が可決されたことを受け、慰安婦として働かされたとする台湾人女性二人を含む十数人が二十七日、台湾・台北市内の日本の対台湾窓口、交流協会台北事務所前で抗議活動を行いました。
元慰安婦は「日本は六十年間、われわれをほったらかしにしてきた。絶対に謝罪と賠償をしてもらいたい」と述べ、改めて日本政府による公式謝罪と国家賠償を求めました。
( 2007年06月28日,
オランダ出身でオーストラリア在住の元日本軍「慰安婦」のジャン・ルフ・オハーンさんは、今回の米下院外交委員会決議に対し、オーストラリアの支援団体「『慰安婦』の友」のプレス発表(二十六日付)を通じて、決議を歓迎し、改めて日本政府による謝罪を強く求めました。
オハーンさんは、二月に米下院外交委員会のアジア・太平洋・地球環境小委員会で、韓国人女性二人とともに、旧日本軍によって性奴隷とされた体験を証言しています。
発表によると、決議採択のニュースを聞いたオハーンさんは、「これは正しい方向での一歩です。希望で胸がいっぱいです」「元『慰安婦』にとって、こんなにも長い歳月を経て、晩年になってからでも(日本政府の)謝罪をもって決着をみるなら素晴らしいことです」と語りました。
「『慰安婦』の友」のキャンペーン調整役を務めるアンナ・ソングさんは、「いまや日本政府は歴史の過ちを正すよう、かつてない国際的圧力にさらされている」と指摘しています。
( 2007年06月28日,
米下院外交委員会が二十六日、「慰安婦」問題での決議を採択したことを受け、かつて「慰安婦」にされた女性が「日本はいまこそ正式謝罪を」の声をあげるなど、日本政府の責任を追及する動きが世界各地で高まっています。
「正義は必ず実現する」―韓国・ソウルでは二十七日、元「慰安婦」や支援者らが日本大使館前に集まり、日本政府に公式謝罪、補償を求める声を上げました。
毎週水曜日に日本大使館前で「水曜デモ」を実施している韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)が開いたもの。委員会での決議可決に、「世界の女性人権運動史に新たなページを記した」と喜びをあふれさせました。
集会には、米議会の公聴会で証言した李容洙さんら七人の元「慰安婦」が出席。李さんは、数日前に亡くなった被害者女性にふれ、「日本政府は謝罪し、補償すべきだ」と涙まじりに訴えました。
政界でも決議の可決を歓迎する声が広がっています。
与党・開かれたウリ党の宋永吉事務総長は、「歴史問題に、日本は客観的に接しなければならない。自国民の拉致問題を強調する日本が、『慰安婦』問題や沖縄での集団自決を隠ぺいするのは、自己矛盾だ」と日本政府を批判。最大野党・ハンナラ党の黄祐呂事務総長は「あらゆる力で(採択を防ぐ)ロビー活動をするという日本政府や一部日本議員の立場に憂慮を禁じえない。人権と良心の声がこの地域から消えることがないよう、後世に教えるべきだ」と述べました。
新聞、テレビ、ネットメディアなど報道各社は、午前二時の米国発速報を皮切りに先を争い報道。決議案を提案したホンダ議員や、米国での運動を進めてきた慰安婦問題ワシントン連合のソ・オクチャ会長らのインタビュー記事も掲載するなど詳しく報道しています。
夕刊二紙は、社説を掲載。「この決議こそ、歴史の真実はゆがめられないことを圧倒的な票差で立証した」(文化日報)、「日本は二度と残虐な行為を行わないと誓う意味で、真実を認めなければならない」(アジア経済)と伝えました。
【北京=山田俊英】中国国営新華社通信は二十七日午前、米下院外交委員会が二十六日、旧日本軍の従軍慰安婦問題で日本に公式の謝罪を求める決議案を採択したことを速報しました。
同電は、決議案が「日本が第二次大戦中、アジアや他国の女性を強制的に日本軍の『慰安婦』としたことを非難」したと伝えました。
中国中央テレビも二十七日午後七時のニュース番組で、決議案の採択を伝えました。番組では慰安婦とされた女性たちの当時の映像や、被害者や支援団体による抗議行動の映像を放映しました。
( 2007年06月28日,
日本共産党は、「従軍慰安婦」問題で早くから元被害者の立場に寄り添いながら、「従軍慰安婦」が強制連行された事実を認めるよう繰り返し政府に迫り、実態調査を要求してきました。こうした追及の結果、政府が、日本軍の関与・強制を公式に認め、反省とおわびを表明したのが一九九三年の「河野官房長官談話」です。
安倍政権が誕生してからも、この「河野談話」を継承するのかどうか、きびしく迫ってきました。安倍首相が中堅議員だった九七年、国会質問で「強制性を検証する文書が出ていない」などと強制性を否定し、「河野談話の根拠が崩れている」と主張するなど、「従軍慰安婦」問題の存在を否定する「靖国」派の立場に立っていたからです。
「河野談話」継承を
日本共産党の志位和夫委員長は、安倍首相が就任した直後の二〇〇六年十月の国会で、ただちに首相の認識を追及。首相のかつての質問も引用しながら、「いまでも『河野談話の根拠は崩れている』という認識なのか」とただしました。
本会議、衆院予算委員会での繰り返しの追及に、首相は、「『河野談話』を引き継ぐ」と答えざるを得ませんでしたが、強制に「狭義」「広義」をもちだして、「狭義の強制性を裏付けるものはない」と答弁しました。
志位氏は、河野談話は、首相のいう「狭義の強制」も認めていると指摘し、首相を批判。「この非人間的な犯罪行為によって犠牲となったアジアの方々、とりわけ直接被害にあわれた方々にたいして謝罪をされるべきではないか」と迫りました。
下村氏の罷免要求
今年二月、米下院で「慰安婦」問題の決議案採択の動きが再び起こると、安倍首相は、「狭義の強制性を裏付ける証拠はなかった」と発言。下村博文官房副長官にいたっては「従軍慰安婦はいなかった。日本軍が関与していたわけではない」と、河野談話を全面否定する発言を公然と行いました。
日本共産党は、市田忠義書記局長が記者会見し、「首相の発言は、事実上、河野談話の否定につながる」と批判。吉川春子参院議員は、予算委員会で、首相に「強制性はない」という発言を撤回するよう追及しました。
首相は、「おわび申し上げている」「河野談話を継承する」といいながら、発言の撤回をせず、吉川質問は外国の報道機関によって世界に伝えられました。
志位氏は記者会見し、強制性を否定した首相発言の撤回と、政府見解を真っ向から否定する下村官房副長官の罷免を要求しました。
「矛盾の拡大」警告
志位氏はさらに、「河野談話を覆そうという動きが底流にある。河野談話では『慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった』といっており、ここに強制性の核心がある」(三月二十七日CS放送・朝日ニュースター)と指摘。
首相発言の撤回と下村副長官の罷免について、「そうしない限り、おわびは本物と受けとめられない。従軍慰安婦問題で、歴史をゆがめ、元慰安婦を傷つける発言に固執することは、拉致問題の解決も遠ざける」と厳しく迫りました。
ことし五月の日本共産党第四回中央委員会総会で、志位氏は「従軍慰安婦」問題での「強制連行はなかった」とする「靖国」派が安倍政権の中枢を握ったことの危険性を警告。「自民党政治のゆきづまりをいっそう深刻なものとするとともに、アジアや世界との矛盾を拡大せざるを得ません」と指摘しました。
( 2007年06月28日,
旧日本軍の「従軍慰安婦」問題で日本政府に公式の謝罪を求める決議が米下院外交委員会で可決されたことを受け、中国、韓国、フィリピンなど各「慰安婦」訴訟を担当してきた弁護士が二十七日、「被害者の名誉と尊厳を回復するため」内閣府に要請、問題の最終解決を求める要望書を安倍晋三首相あてに提出しました。同日までに四十四人の弁護士が連名しています。
要請は四人の弁護士がおこない、日本政府に対し▽「慰安婦」問題が未解決であることを認め、▽今年出された第三十八回国連拷問禁止委員会の勧告や米下院議会の決議、日本兵らに連行、監禁され、性暴力を受けた被害事実を確定した最高裁判決などを真摯(しんし)に受け止め、▽軍の関与を認めた「河野談話」の見地に真に立脚し、問題の最終解決のために被害者および弁護士らとの協議の場を設けるなど、新たな取り組みを求めました。
対応した大臣官房総務課調査役は要望を首相に伝えるとのべる一方、内閣府に同問題の担当所管がないことを明らかにしました。穂積剛弁護士は「所管がないというのは問題を解決していくという意思がないからではないか」と批判しました。
要請後の記者会見で川上詩朗弁護士は、米下院議会での決議について「(他国に)言われたからやるのではなく、人権侵害の問題をわれわれ自身がどう考えるのか、戦後日本のあり方がこのままでいいのか。日本としてどう主体的に考えていくのか、きっかけを与えてもらったと受け止めている」と語りました。
( 2007年06月28日,
安倍発言は「筋通らない」
「戦後ドイツは正しい選択をした。一方、日本は歴史の健忘症を積極的に促進させている」。最上段の委員長席に座るラントス委員長が声を高めると、委員会室の空気が張り詰めました。二十六日、旧日本軍の「従軍慰安婦」問題で日本政府に公式の謝罪を求める決議案を圧倒的多数で採択した米下院外交委員会。討論では、民主、共和両党の議員が相次いで発言を求め、安倍晋三首相や「靖国」派の国会議員を「歴史を反省しない不誠実な態度」と批判しました。
(ワシントン=鎌塚由美)
この日の外交委員会は、イラン問題などの重要法案が審議されました。「慰安婦」決議案は、それらと並ぶ重要案件として特別の討論が行われ、約二十人が発言、一時間二十分に及びました。昨年の同様の決議案が討論なしの発声採択されたのとは様変わりでした。
議員からの批判は、日本軍による強制と関与を認めた河野官房長官談話(一九九三年)を、安倍首相や、「靖国」派議員が覆そうとしていることへ集中しました。
音頭をとったラントス委員長は、日本政府が元「慰安婦」たちに「謝罪を拒否している」だけでなく、「犠牲者を非難するゲームをもてあそぶ」ようだと批判しました。
「意見広告」に批判
同委員長は、ハンガリー出身のユダヤ人で、ナチスによるホロコースト(大虐殺)の生き残り。昨年の外交委員会では、小泉首相の靖国参拝を「ナチ指導者の墓に花輪を置くに等しい」と批判していました。それだけに反省のない日本の「靖国」派勢力の主張に「非常に心かき乱される」と怒りをあらわにしました。
委員長は、ワシントン・ポスト紙に日本の「靖国」派議員が出した意見広告を取り出し、「生き残った慰安婦たちへの中傷」であり、「事実と真っ向から対抗する、ばかげた主張」だと非難。こうした主張が、国会議員によって行われたことに強い懸念を示しました。
スミス議員(共和)は、安倍首相が「(性奴隷の)強制を否定」したことは、河野談話の「正当性と誠実性に対する挑戦」だったと指摘。米国の「よき友、同盟国である日本に、人権侵害や歴史の事実を覆い隠すことをさせてはならない」と述べました。
元「慰安婦」が証言したアジア・太平洋・地球環境小委員会のファレオマバエガ委員長(民主)は、河野談話を読み上げて引用。安倍首相の発言を「筋が通っていない」と指摘。「日本政府がこの決議案を真剣に検討することを望む」と語りました。
「歴史の事実」強調
傍聴には、「慰安婦」決議案の採択を求めてきた諸団体の代表が詰めかけました。アムネスティ・インターナショナル米国のクマール氏は、「決議案は日本たたきではなく、道義的責任の問題です。戦場での人権侵害を未来に起こさせないためにも、引き続き本会議での採決に向け頑張りたい」と語りました。
「慰安婦問題ワシントン連合」のソ・オクチャ会長は、決議案の採択について「生き残った元『慰安婦』の女性たちは、涙を流して歓喜しているに違いない」と述べ、「『慰安婦』は性奴隷であり人権侵害だと、議員たちが深く理解して議論してくれたことが印象深かった」と議員の発言を歓迎しました。
各議員は、日本軍がアジアの女性たちを強制的に性奴隷である「慰安婦」にしたことは「歴史の事実」だと繰り返し指摘。また、米議会で証言した元「慰安婦」の女性たちの勇気をたたえました。アッカーマン議員(民主)は、元「慰安婦」の女性たちは、「過ちを繰り返してはならないと沈黙を破りホロコーストを告発したユダヤ人たちと同じだ」と語りました。
( 2007年06月28日,
安倍晋三首相は二十七日夕、首相官邸で記者団の質問に答え、米下院外交委員会で「従軍慰安婦」問題に関する対日謝罪要求決議が可決されたことについて「米国の議会の決議なので、コメントするつもりはない。米議会では相当たくさんの決議がされている。その中の一つだろうと思う」と述べました。
首相はこの中で「(四月に)米国を訪問した際、(「慰安婦」問題に関する)わたしの考え方は説明した」と強調。記者団の「決議は重要でないということか」との質問には、「それはあなたの考えだ」と述べました。
( 2007年06月28日,
米下院外交委員会で「従軍慰安婦」問題に関する対日謝罪要求決議案が可決されたことを受け、平沼赳夫元経済産業相(無所属)は二十七日、衆院議員会館で記者会見し、「事実に基づかない決議は、日米両国に重大な亀裂を生じさせる。憂慮をもって受け止める」とする声明文を発表しました。会見には自民党の島村宜伸元農水相、民主党の松原仁衆院議員らも同席しました。
平沼、島村両氏らは、「従軍慰安婦」の強制性を否定する米ワシントン・ポスト紙への全面広告の賛同者として名前を連ねています。
( 2007年06月28日,
米下院外交委員会が、「従軍慰安婦」問題で日本政府に公式謝罪を求める決議案を賛成三十九、反対二の圧倒的多数で可決しました。七月の本会議でも可決される見通しです。
日本政府は、歴代の首相が「謝罪」しているといって採決回避を米議会に働きかけてきました。にもかかわらず米議会が謝罪要求決議を可決したのは、安倍晋三首相をはじめ過去の侵略戦争を肯定する「靖国」派が「強制はなかった」と戦争責任を否定していることへの反発の強さを示しています。安倍首相と日本政府の態度が問われます。
戦争責任の否定
米下院外交委員会の決議は、日本軍による強制を認めた一九九三年の河野洋平内閣官房長官「談話」を「日本の官民」が「無効」にしようとしていると指摘し、日本軍が女性を「性的奴隷に強制したこと」を日本政府が「公式に認め、謝罪する」ことを求めています。
安倍首相は「河野談話」を守るといいながら、「慰安婦」について、「強制性を裏付ける証拠はなかった」(三月一日の記者会見)とのべました。麻生太郎外相も米下院決議案が「客観的な事実にはまったくもとづいていない」(二月十九日衆院予算委員会)とのべています。下村博文内閣官房副長官は「従軍慰安婦はいなかった」(三月二十五日)とまでいいました。
こうした言動が、米議会ばかりかブッシュ政権の反発すら招いたのです。「河野談話」は「従軍慰安婦」について、「甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して行われた」と認め、「おわびと反省」を表明しています。それを「薄め」「無効」にすることを、アメリカをはじめ国際社会が批判するのは当然です。
安倍首相は四月の日米首脳会談で、ブッシュ大統領や議会指導者に「河野談話」の継承と「おわび」を表明してみせたものの、日本軍の強制を否定した発言を撤回していません。そのうえ、安倍首相と同じ「靖国」派の自民、民主両党議員らは、決議を阻止しようと十四日付の米紙ワシントン・ポストに「事実」と題する「慰安婦」強制否定の意見広告を掲載したのですから、米議会内に批判が広がったのは当たり前です。
米下院の指摘を「事実無根」だと非難した意見広告は、米議会はもちろんブッシュ政権の内部でさえ、安倍首相の「おわび」は形だけで、「日本の本音は別」だという疑念を大きくさせただけでした。
戦後の国際社会は日本とドイツなどの侵略戦争への反省とそうした違法は許さないという合意のうえに成り立っています。ドイツのホロコーストや「従軍慰安婦」問題は議論の余地のない確定ずみの歴史的事実となっているのに、日本軍の強制はなかったなどというのは、国際社会の土台を掘り崩すことです。
安倍首相は、戦争責任を否定すれば日米関係はもちろん、戦後日本の国際的地位さえも傷つけることになるということを直視すべきです。
心からの反省を
安倍首相はブッシュ大統領には「慰安婦」問題で「おわび」を表明しました。しかし、強制された人々には直接謝罪していません。安倍首相は「河野談話」を守り、進んで公式謝罪を行うべきです。
安倍首相は自らの内閣を「靖国」派で固め、教育基本法改悪や改憲など文字通り「靖国」派政治を強行しています。今回の決議は、そうした「靖国」派政治が国際的に通用しないことを示した点でも重大です。
( 2007年06月28日,
【ワシントン=鎌塚由美】旧日本軍の「従軍慰安婦」問題で日本政府に公式な謝罪を求める決議案が二十六日、米下院外交委員会で圧倒的多数で採択されました。討論では、安倍晋三首相と「靖国」派国会議員への批判が続出。ペロシ下院議長は同日、同決議案の本会議可決を目指すとの声明を発表しました。
採決回避に動いた日本政府のもくろみは破たんし、安倍首相の強制性否定発言をはじめ過去の侵略戦争を正当化する「靖国」派勢力への国際的な糾弾の流れが鮮明になりました。
外交委員会は、ラントス委員長(民主党)とロスリティネン議員(共和党)が共同提案した修正案を協議し、修正案を賛成三十九、反対二で可決しました。
修正案は、日米同盟の重要性を強調する文言を挿入し、日本の首相に謝罪を求める表現を若干和らげました。しかし、日本軍による女性への性奴隷の強制を日本政府が「明確であいまいでない方法で、公式に認め、謝罪し、歴史の責任を受け入れる」との要求は変わっていません。
討論では民主、共和両党の議員が、強制性を否定した安倍首相の発言を批判、「日本の謝罪は不十分」との声が相次ぎました。
委員会を通過した決議案は本会議に上程されます。本会議を取り仕切るペロシ議長は声明で、決議案の本会議での可決を目指すと表明。七月中に本会議で採決の可能性がいっそう高まりました。
ペロシ議長は「慰安婦」問題では、「日本政府には、もっとすべきことがある」と指摘、「過去の過ちを認識し、その歴史を繰り返さないために、未来の世代を教育するのに遅すぎるということはない」と語りました。
二十六日現在、同決議案の共同提出議員は、百四十九議員を数えています。(2、3、7面に関連記事)
( 2007年06月28日,
旧日本軍「慰安婦」問題で日本政府に謝罪を要求する米下院外交委員会の決議案の採決は、強制性否定発言に象徴される安倍首相や日本の「靖国」派勢力の歴史認識に対する米国や国際世論の厳しい空気を反映したものです。
「慰安婦」問題での米外交委の決議は二回目。昨年、ハイド委員長(共和党、当時)の下で採択された決議は、「慰安婦」問題が近隣諸国との間で摩擦を引き起こすことへの懸念を主な背景としていたのに対し、今回の決議はより直接に日本の歴史認識を問うものです。
決議案を提案したホンダ議員(民主党)は、安倍内閣が表向きは「慰安婦」問題で強制性を認めた河野談話の継承を表明しながら、一方で過去の戦争を正当化する立場から河野談話否定の動きをしていることに懐疑の目を向けてきました。
決議案は、日本の一部の右派議員が河野談話の変更を目指していることや、歴史教科書で「慰安婦」や過去の戦争犯罪を軽視する動きが出ていることに懸念を表明、日本政府に公式の謝罪と責任表明を求めています。
そうしたさなかに安倍首相が、「狭義の強制性はなかった」と発言したことは、決議案の根拠をかえって裏付け、「タカ派としての本性を現した」(米議会筋)との警戒感を広げました。首相は訪米してブッシュ大統領に「謝罪」し、大統領もこれを受け入れました。
しかし議会内では決議案の共同提案議員が増え続けます。採決に向けた動きを加速させたのは、日本の自民、民主の「靖国」派国会議員がワシントン・ポスト紙に掲載した「強制性はなかった」とする意見広告でした。
「国際的に確認された歴史的事実」(米コロンビア大学グラッグ教授)を真っ向から否定する内容に「やはり日本の本音は別」と不快感が広がりました。ラントス委員長が自らも共同提案者になり、決議の採決を二十六日に行うと表明したのは、その二日後でした。
「日本は北朝鮮による拉致問題を糾弾しながら、なぜ慰安婦問題で過去を否定するような態度をとるのか」。ワシントン・ポスト紙の社説から「二枚舌」と批判された安倍首相。過去の戦争を正しかったとする歴史観や政治姿勢が国際的に問われ、孤立に追い込まれています。
(田中靖宏)
( 2007年06月27日,
【2007年】
1月31日 日系のマイク・ホンダ議員が決議案を提出
2月15日 下院外交委アジア太平洋小委員会の公聴会で元慰安婦3人が証言
3月1日 安倍晋三首相が慰安婦問題で「強制性を裏付ける証拠はなかった」と発言
7日 加藤良三駐米大使がラントス下院外交委員長に決議採択回避を要請
8日 自民党有志議連が決議採択阻止と慰安婦問題の再調査を求める文書を首相に提出
16日 日本政府が「軍や官憲による強制連行を示す記述は(資料に)見当たらなかった」との答弁書を閣議決定
26日 首相が訪米。議会指導者との会談で元慰安婦へのおわびを表明
元慰安婦らがホワイトハウス前で抗議デモを実施
4月27日 首相、日米首脳会談でもおわび表明
5月2日 決議案の共同提案者が100人突破
6月14日 自民、民主などの国会議員44人らが強制性を否定する意見広告を米紙に掲載
16日 ラントス外交委員長が採決の方針を表明
(ワシントン=時事)
( 2007年06月27日,
下院外交委員会に提出されている元従軍「慰安婦」問題の決議案の要旨は、次のとおりです。
アジア太平洋諸島への植民地支配と戦時占領の期間、日本帝国軍隊が「慰安婦」として性的奴隷を若い女性に強制したことを、日本政府が明確であいまいさのないやり方で公式に認めて謝罪し、歴史上の責任を受け入れるべきであるという下院の意見を表明する。
日本政府による軍事的強制売春である「慰安婦」システムは、その残酷さと規模の大きさで前例のないものと考えられる。集団レイプ、強制妊娠中絶、辱めや性暴力を含み、結果として死、最終的には自殺に追い込んだ二十世紀最大の人身売買事件になった。
日本の学校で使用されている新しい教科書のなかには、「慰安婦」の悲劇や第二次世界大戦中の日本のその他の戦争犯罪を軽視しているものもある。
日本の官民の当局者たちは最近、彼女らの苦難に対し政府の真摯(しんし)な謝罪と反省を表明した一九九三年の河野談話を薄め、もしくは無効にしようとする願望を示している。
このため、以下、下院の意思として決議する。
日本政府は、
(1)一九三〇年代から第二次世界大戦を通じたアジア太平洋諸島の植民地支配と戦時占領の期間、日本帝国軍隊が若い女性に「慰安婦」として世界に知られる性奴隷を強制したことを、明確にあいまいさのないやり方で公式に認め、謝罪し、歴史的責任をうけいれるべきである。
(2)日本国首相の公的な資格でおこなわれる公の声明書として、この公式の謝罪をおこなうべきである。
(3)日本帝国軍隊のための性の奴隷化および「慰安婦」の人身売買はなかったといういかなる主張にたいしても明確、公式に反論すべきである。
(4)「慰安婦」にかんする国際社会の勧告に従い、現在と未来の世代に対しこの恐るべき犯罪についての教育をおこなうべきである。
( 2007年06月27日,
米下院外交委員会で「従軍慰安婦」問題に関する対日謝罪要求決議の採決について、安倍晋三首相は「米議会が判断することであり、コメントすべき事柄ではない」「日米関係はかけがえのない同盟関係として揺るぎないと確信している」とのべました。
しかし、決議採決は、侵略戦争を正当化する「靖国」派の言動によって、首相が「揺るぎない」と断言する日米関係にまで亀裂が入ったことを示しています。
二枚舌≠ノ批判
日本政府は一九九三年の河野官房長官談話で、「従軍慰安婦」問題について旧日本軍の関与を認め、反省とおわびをのべました。安倍首相も、就任後は河野談話の「継承」を表明しており、その誠実な履行がもとめられてきました。
ところが昨年、米議会で日本政府の責任を認めるよう求める決議の動きが出ると、日本政府は採択を妨害するロビー活動を展開。河野談話に反する対応が明らかになりました。
今年二月には、再び米下院で「従軍慰安婦」問題での謝罪を求める決議案が提出されると、麻生太郎外相は「(決議案は)客観的事実に基づいていない」などと国会で発言(二月十九日)。三月一日には安倍首相も、「強制性を裏付ける証拠がなかったのは事実だ」と開き直りました。
さらに、三月下旬には安倍首相の盟友である下村博文官房副長官が、ラジオ番組などで「(強制連行に)軍の関与はなかった」「従軍慰安婦はいなかった」などと発言し、国際的不信を深めました。
しかし、被害者や旧軍関係者による無数の証言などから、軍による強制連行の事実は明白です。歴史的事実を否定する日本政府の言動に、国際社会からは北朝鮮による拉致問題では「人権」を強調するのに、「慰安婦」問題では人権を省みないのかという二枚舌#癆サが巻き起こりました。
「おわび」の裏で
シーファー米駐日大使や米政府高官からも批判が出たため、安倍首相は四月の訪米に際して、「元慰安婦の方々に、個人として首相として心から同情するとともに、極めて苦しい状況に置かれたことに申し訳ないという気持ちでいっぱいだ」と「おわび」を表明。「慰安婦」連行の「狭義の強制性」を否定した自らの発言については、「真意が正しく伝わっていないと思われる」などと釈明しました。
しかし、六月十四日には、自民党、民主党、無所属の日本会議国会議員懇談会所属議員らが連名で、「事実」と題する旧日本軍による強制を否定する全面広告をワシントン・ポスト紙に掲載しました。
広告に対し、アメリカ政府内からも強い批判が噴出。チェイニー副大統領が「この広告は非常に不愉快な内容だ」と発言したと報じられ、下院では決議案への賛同者が急増するなど、火に油を注ぐ事態になったのです。
今回の事態は、「靖国」政治の破たんを示しており、安倍首相の責任が厳しく問われます。
(中祖寅一)
( 2007年06月27日,
【ワシントン=鎌塚由美】米下院外交委員会は二十六日(日本時間同日深夜)、旧日本軍の「従軍慰安婦」問題で日本政府に公式の謝罪を求める決議案を採決します。民主、共和両党の賛成多数で可決されるのは確実で、その後の本会議でも採択される見通し。決議案に拘束力はないものの、安倍政権をはじめ「慰安婦」の強制性を否定するなど過去の侵略戦争を美化する「靖国」派の孤立が一段と鮮明になっています。
(2、6、7面に関連記事)
決議案は、「慰安婦」問題で日本軍による強制と関与を認めた河野官房長官談話(一九九三年)に言及し、「日本政府の当局者は近年、(同談話を)撤回したい願望を表明し続けている」と指摘。日本政府に対し、▽明確であいまいでない方法で謝罪し、歴史的な責任を公式に認める▽首相が公式声明で謝罪を表明する▽「従軍慰安婦」はなかったという主張を明確に、公に否定する▽現在と将来の世代に教育する―ことを求めています。
決議案は一月末、マイク・ホンダ議員(民主)が提出。二月には韓国とオランダ出身の三人の元「慰安婦」の女性が初めて米議会で証言しました。
安倍首相は三月、「慰安婦」問題で「強制性を裏付ける証拠がなかった」と発言。これを機に国際的な批判が高まりました。米主要紙は社説で安倍首相を批判、米議会では当初六人だった決議案の共同提案議員が急増。二十五日現在、百四十五人となり、ラントス外交委員会委員長も名を連ねています。
十四日、日本の自民、民主の「靖国」派国会議員四十四人らが「慰安婦」強制はなかったと主張する意見広告をワシントン・ポスト紙に掲載。その二日後、ラントス外交委員長は同決議案の採択日を言明し、本会議でのすみやかな採決に意欲を表明しました。
「慰安婦」問題をめぐる決議案は、昨年九月、前会期の議会下院の外交委員会(共和党ハイド委員長・当時)でも採択されました。日本政府に責任を認めるよう求める同決議案は、日本政府からの働きかけもあって本会議では可決に至りませんでした。
( 2007年06月27日,
「従軍慰安婦」の「強制連行はなかった」と主張する自民、民主両党の「靖国」派の国会議員らの米紙ワシントン・ポストへの意見広告に、米国内外から批判の声が上がっています。この意見広告は今月14日付に掲載されたもの。ジャーナリストの櫻井よしこ氏、元駐タイ大使の岡崎久彦氏なども名を連ねました。掲載後、元「慰安婦」、韓国紙などから批判の声が上がり、米副大統領の怒りも伝えられています。米下院外交委員会ではこの26日に「従軍慰安婦」問題で日本政府に謝罪を求める決議が採決される予定です。
批判・怒り世界から
意見広告に名を連ねているのは、自民、民主、無所属の四十四人の議員です。「慰安婦」問題で日本軍による強制と関与を認めた河野官房長官談話(一九九三年)の撤回を強く主張してきた稲田朋美(自民)、松原仁(民主)の両氏から、日本会議国会議員懇談会(日本会議議連)会長の平沼赳夫氏(無所属)まで「靖国」派国会議員が勢ぞろいしています。
意見広告は、「事実」との表題で、米下院の「慰安婦」決議案が日本軍による若い女性への性奴隷の強要≠竅A二十世紀最大の人身売買の事件の一つ≠ネどと指摘しているのは、「故意の歪曲(わいきょく)」だと主張しました。
さらに、「日本軍による強制を示す歴史資料は見つかっていない」「慰安婦は性奴隷≠ナはなく公娼(こうしょう)である」などと述べています。
「慰安婦」問題をめぐっては、三月に安倍晋三首相が「強制性はなかった」と国会答弁したことを機に、米メディアが注目。ワシントン・ポスト紙社説が、安倍首相が北朝鮮の拉致問題に熱心なのと対照的に「日本自身の戦争犯罪には目をつぶっている」として、「二枚舌」と批判したのをはじめ、主要各紙が社説で日本政府のこの問題での不誠実な態度をいっせいに批判していました。
この意見広告が掲載された二日後の十六日、米下院外交委員会のラントス委員長(民主党)が、同委員会に付託されている従軍慰安婦問題に関する対日謝罪要求決議案を二十六日に採決に付すことを明らかにし、「多数の賛成で通過するだろう」と述べました。
同決議案の賛同議員は急増し、二十二日までに、百四十五人に達しています。ラントス委員長自身も新たに共同提案者になっています。
決議案が委員会で可決されると七月中にも本会議で採決される可能性があります。
(ワシントン=鎌塚由美)
日本の誇り地に落ちる/韓国紙
オーストラリアのAAP通信は十五日、「日本の否定に慰安婦が激怒」と伝え、日本のインドネシア侵略時にジャワ島で拘束されて「慰安所」に送られたオランダ出身女性ジャン・ルフ・オハーンさん(84)の怒りのことばをこう紹介しています。
「まったく恐るべきことです。私は怒りで身が震えています。多くの証拠があるというのに」、「私たちは強制されたのですから。日本は彼らの歴史的責任を認めていないのです。私はトラックに詰められ、家族から離れたところに連れて行かれ、売春宿に入れられて一日中、強姦され続けたのです」
AAP通信によると、元「慰安婦」の支援団体「オーストラリア慰安婦たちの友」は声明で「生存者たちの数多くの証言は、『慰安婦』制度が報奨も賃金もまったく手にできない軍の性奴隷制度であったことを明確にしている」とのべています。
第二次世界大戦終結まで足かけ三十六年に及ぶ日本の植民地支配を受けた韓国でもメディアから厳しい批判が出ています。
東亜日報紙は十六日、ワシントン・ポスト紙への「慰安婦の動員に強制はなかった」とする意見広告にたいし、「米国内には強い逆風が吹いている」と報道。同紙十八日付電子版日本語サイトは、米政府内での反応をこう伝えています。
「チェイニー副大統領は、『この広告は非常に不愉快な内容だ』と、補佐チームに広告の経緯について把握するよう指示したという」
同じく韓国紙・朝鮮日報十六日付は、「日本の知識人の道徳水準をさらした慰安婦広告」と題する社説を掲載。意見広告は、「(慰安婦問題での)最大の被害国である韓国、中国、インドネシア、フィリピンなどのアジア各国」についての事例を完全に無視していると指摘。「日本は首相や外相をはじめとする不道徳な日本政府関係者に不道徳な国会議員、さらに知識人までが加わり、犯罪の歴史を闇に葬り去ろうとあがいている。だが、彼らがこうした行動をとればとるほど、日本国民の誇りが地に落ちるばかりだということに、気づくべきだろう」と結んでいます。
意見広告に賛同した議員
自由民主党
(衆院)
赤池誠章 (比例南関東)
稲田朋美 (福井1区)
江藤拓 (宮崎2区)
大塚高司 (大阪8区)
岡部英明 (比例北関東)
小川友一 (東京21区)
鍵田忠兵衛(比例近畿)
亀岡偉民 (福島1区)
木原稔 (比例九州)
木挽司 (兵庫6区)
坂井学 (神奈川5区)
島村宜伸 (東京16区)
杉田元司 (比例東海)
鈴木馨祐 (比例南関東)
薗浦健太郎(千葉5区)
平将明 (東京4区)
戸井田徹 (兵庫11区)
土井亨 (宮城1区)
土井真樹 (比例東海)
西本勝子 (比例四国)
林潤 (神奈川4区)
古川禎久 (宮崎3区)
松本文明 (東京7区)
松本洋平 (東京19区)
武藤容治 (岐阜3区)
愛知和男 (比例東京)
山本朋広 (比例近畿)
渡部篤 (比例東北)
(参院)
中川義雄 (北海道)
民主党
(衆院)
松木謙公 (比例北海道)
笠浩史 (比例南関東)
牧義夫 (愛知4区)
吉田泉 (比例東北)
河村たかし(愛知1区)
石関貴史 (比例北関東)
泉健太 (京都3区)
神風英男 (比例北関東)
田村謙治 (比例東海)
鷲尾英一郎(比例北陸信越)
北神圭朗 (比例近畿)
松原仁 (比例東京)
(参院)
松下新平 (宮崎)
無所属
(衆院)
西村真悟 (比例近畿)
平沼赳夫 (岡山3区)
( 2007年06月24日,
【北京=山田俊英】自民党議員がつくる「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」が十九日、一九三七年の日本軍による南京大虐殺について中国が主張する三十万人の犠牲者数を否定したことについて、二十一日付の中国各紙が批判しています。
人民日報が主管する国際問題紙の環球時報は、南京大虐殺を「(自民党議員が)虚構だと公言した」と伝えました。また、自民党と民主党議員が米紙に従軍慰安婦の強制性を否定する広告を出したことなど、「最近、日本では右翼が歴史を否定する風潮が高まっている」と懸念を表明しました。
北京青年報は、「日本の議員団体があろうことか南京大虐殺を否定」、新京報は「死者数はわずか二万人とでたらめ」という見出しで、新華社電を掲載。新華社電は、同会の中山成彬会長が歴史問題で「公平さを求めている」と主張したことを「ずる賢い」と批判。同会が三十万人の死者数を否定し、中国の抗日戦争記念館から日本の侵略の写真を撤去するよう求めたことを「荒唐」(でたらめ)と非難しました。
新京報は、日中両国政府首脳の相互訪問が実現したにもかかわらず、侵略を否定する主張が日本で続出していることについて、清華大学国際関係学部の劉江永教授の見解を伝えました。
同教授は「安倍首相や麻生外相ら日本の主要な政治指導者は中国、韓国との関係を緩和しなければならないと考え始めた」、「彼らの歴史問題の態度は日本政府としての立場に基づいたものになっている」と、安倍首相らが村山談話など日本政府の公式見解の継承を表明していると分析。「しかし、国会議員のなかの右翼的人間たちは不満である。今回の大虐殺否定は、安倍政権に圧力をかけ、日本の右翼議員の特定の歴史観を表したものだ」と解説しました。
( 2007年06月22日,
【北京=山田俊英】中国外務省の秦剛報道官は二十一日、自民党議員がつくる「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」が、一九三七年の日本軍による南京虐殺の死者数が中国側発表の三十万人よりかなり少なかったと発表したことを批判しました。
同報道官は「南京大虐殺は日本軍国主義による侵略の中で起きた残虐な暴行だ。日本のごく少数の人がこの歴史を覆い隠すのは、国際社会と人類の良識に対する公然たる挑戦だ」と述べました。
また「従軍慰安婦問題も日本軍国主義の侵略の中で行われた中国を含むアジア各国人民に対する重大な犯罪だ」と述べ、「日本側が責任ある態度で歴史問題を適切に処理することを望む」と語りました。
( 2007年06月22日,
【ワシントン=鎌塚由美】米議会下院に提出されていた旧日本軍の「従軍慰安婦」問題で日本政府に公式な謝罪を求める決議案が二十六日に外交委員会で採択される見通しとなりました。
外交委員会のトム・ラントス委員長(民主党)が十六日明らかにしたもので、同委員長は、ロサンゼルスで開かれた集会後に、同決議案の「審議・投票を二十六日に行う」と表明、「多数の賛成で通過するだろう」と述べました。
ラントス委員長は、決議案は「とても重要だ」と述べ、委員会通過後の本会議で採決に持ち込むことは「私の責任であり、光栄だ」と表明。決議案は「大差で採択されると予測している」と語りました。
「慰安婦」決議案は、一月末にマイク・ホンダ議員(民主党)が提出。当初六人だった共同提案議員は、安倍首相が「慰安婦」の強制はなかったと発言したのを機に急増しました。
安倍首相は四月末の訪米時に、ブッシュ大統領や議会関係者らに、「おわび」を表明しましたが、その後も同決議案への賛同は増え続け、共同提案議員は十八日までに百四十人(下院定数四百三十五)を超えています。
五月の採決は見送られましたが、韓国系の住民団体は早期の採決を求め議会への働きかけを継続。一方、日本の「靖国」派の自民、民主党の国会議員四十四人が連名で、「慰安婦」の強制はなかったと主張する全面広告をワシントン・ポスト紙(十四日付)に掲載していました。
( 2007年06月20日,
日本の自民党・民主党の議員四十四人が十四日付米紙ワシントン・ポストに、「従軍慰安婦」の強制性を否定した意見広告を出したことに対して、元「慰安婦」の女性は激しい憤りの声を上げています。
オーストラリアのAAP通信十五日付は、インドネシアで日本軍の「慰安婦」とされた豪在住のジャン・ルフ・オハーンさん(84)の声を紹介しています。
オハーンさんは、意見広告がとくに日本軍の強制を示す証拠は見つかっていないと主張していることについて、こう語っています。
「私はトラックに詰められ、家族から離れた遠いところに連れて行かれ、買春宿に入れられて、一日中強姦(ごうかん)され続けた」「私たちが強制されていなかったという、どんな証拠を彼らが出せると言うのか」
オハーンさんはそのうえで、「日本は歴史的責任を認めていない。私たちは日本が戦時中に犯した罪を認めて謝罪してほしいのです」と訴えています。
オハーンさんは今年二月に訪米し、米下院外交委小委員会で自らの体験を証言しています。
また韓国の東亜日報十六日付は、意見広告に対して「米国内には強い逆風が吹いている」と紹介。やはり同日の韓国紙・朝鮮日報はこの意見広告に関して次のように論評しています。
「日本は首相や外相をはじめとする不道徳な日本関係者に、不道徳な国会議員、さらには知識人までが加わり、犯罪の歴史を闇に葬り去ろうとあがいている。だが、彼らがそうした行動をとればとるほど、日本国民の誇りが地に落ちるばかりだということに、もはや気づくべきだろう」
( 2007年06月20日,
「従軍慰安婦」問題に関する対日謝罪要求決議案が二十六日の米下院外交委員会で採決される見通しとなったことについて、日本政府は表立った抗議など過剰な反応は避け、見守る方針です。
麻生太郎外相は十九日の閣議後の記者会見で、米議会の動きについて「残念だと思う」と述べる一方、「基本的にこれまで首相の方から申し上げた態度で(政府は)ずっと一貫している」と指摘。塩崎恭久官房長官は「他国の議会の話なので、政府としてのコメントは差し控えたい」と述べるにとどめました。
( 2007年06月20日,
「民主化は日韓関係のなかで植民地支配や侵略戦争といった歴史問題が持つ意味を変えた」
こう指摘するのは、ソウル市立大学の鄭在貞教授(55)です。日韓首脳の合意で設置された歴史研究共同委員会(第一期、二〇〇二―〇五年)の委員を務めました。
変化に鈍感
「情報も人の往来も増え、韓国人が日本を見る視点は多様になったが、いまだに日本政府は『韓国は反日』という偏見にとらわれている。韓国の変化に鈍感なようだ。独り善がりな『美しい国』ではなく、尊敬される『美しい国』をつくってほしい」と語ります。
軍事独裁下で死刑判決を受けた金大中氏(80)は一九九八年に大統領に就任、日本との友好関係を追求します。その象徴が、厳しく規制されていた日本の映画、アニメ、音楽など大衆文化の開放政策。日韓は二〇〇二年のサッカーW杯共同開催を控えていました。
開放政策を任された政府諮問機関「韓日文化交流政策諮問委員会」の委員長を務めた池明観氏(82)は九八年、「軍事政権のように歴史問題を国民の目を外にそらす道具として利用しない。朴正熙独裁政権が国民を弾圧して強行した国交正常化後の日韓関係が『六五年体制』なら、これからは『二〇〇二年体制』だ」と語っています。
金大統領は二〇〇〇年、ノーベル平和賞を受賞しました。授賞理由の一つは「韓国と近隣諸国、特に日本との和解のために活動した」ことでした。
靖国参拝で
しかし、侵略戦争と植民地支配を正当化する「新しい歴史教科書をつくる会」主導の教科書の検定合格、小泉純一郎首相の靖国神社参拝で日韓関係は冷却化します。
五月二十、二十一の両日、ソウルで第八回日本軍「慰安婦」問題アジア連帯会議が開かれ、「慰安婦」動員に「狭義の強制性はなかった」と強弁する安倍晋三首相への非難が相次ぎました。
九〇年の発足以来、「慰安婦」問題解決の先頭に立ってきた韓国挺身(ていしん)隊問題対策協議会の常任代表・尹美香氏(42)は、学生運動時代から女性人権問題に関心を持っていました。
「民主化は多くの虐げられた人々に声を上げる勇気を与えた。外国の市民とともにたたかう道も開いた。三十カ国の市民や専門家が参加して『慰安婦』問題を追及した二〇〇〇年の『女性国際戦犯法廷』は、その大きな成果だ」
(ソウル=面川誠 写真も)
( 2007年06月18日,
日朝協会東京都連合会は十五日、「元『慰安婦』李容洙(イ・ヨンス)さんの話を聞く会」を豊島区で開き、約百人が参加しました。
十五歳のときに日本軍に強制連行され、「性奴隷」にされた李容洙さん(78)は、連行先で逃げ出せないように手足を棒でたたかれるなど、数多くの暴行を受けた経験を語り、「私は生きている証人です。日本政府が謝り、賠償しないと許せない。若い人のためにも、問題を明らかにしなければいけない」と強調しました。
日朝協会都連の吉田博徳会長は、日本人として政府に責任追及を働きかけていくのが重要だとあいさつ。人間と性°ウ育研究所所長の高柳美知子さんが「戦場の兵士のセクシュアリティ」と題して講演しました。
参加した会社員の男性(23)=千葉県・柏市=は「いままで、慰安婦の存在を知らなかった。楽しかったはずの青春の時期を性奴隷にさせられていたなんて、どんなにつらかったかと思う。この事実を知らない人に知らせていきたい」と話しました。
(2007年06月17日,
証言や写真、資料がいっぱい/幅広い世代が学べる
東京・新宿区のアクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」で「中学生のための『慰安婦』展」が開かれています(来年五月二十五日まで)。「『慰安婦』ってなに?」「強制連行はあったの?」―。「本当のことが知りたい」と思っている中学生からおとなまで、幅広い世代が学ぶことのできる場となっています。
(寺田 可奈)
歴史教科書から記述消えたいま/事実で理解深める内容に
国際的な批判を呼んだ安倍発言
日本の侵略戦争に、アジアの広い地域から若い女性が「性奴隷」として動員された、「従軍慰安婦」問題。安倍首相が「慰安婦」動員について、「狭義の強制性はなかった」と述べたことは、国際的な批判を呼んでいます。
同館館長の西野瑠美子さんは、「中学校の歴史教科書から『慰安婦』の記述が消え、若い世代がこの問題を学ぶことが難しくなっています。展示は中学生にもわかりやすい記述に心がけ、豊富な写真や資料で、事実に基づき理解を深めることができる内容にしました」と語ります。とくに、事実の裏付け、確認作業に時間をかけたといいます。
「どのような女性たちが、どこに連れていかれ、どのような被害をうけたの?」「軍は関与していたの?」「証拠はあるの?」「日本政府は何もしてこなかったの?」「女性たちは、戦後どのように生きてきたの?」―。問題の基本をおさえつつ、さまざまな疑問に答える形で展示されています。
アジア地域一帯に広がる慰安所を記した、大きな地図が目を引きます。
個人史に注目の展示パネルも
被害女性や元日本兵の男性の証言が、個人史や写真とともにわかりやすくパネルで展示されています。
ある女性は、少女のときに「いい仕事がある」とだまされ、連れて行かれた先が「慰安所」だったと証言しています。
また、元日本兵は、「私たちは中国人べっ視を徹底的にたたきこまれていたので、強姦(ごうかん)や殺戮(さつりく)の何が悪いと思っていました」と証言。
当時の、大日本帝国の軍票(軍用手票=しゅひょう)や、慰安所で使用するために支給されたコンドーム、性病予防に使われた薬などの実物も展示しています。
都内の学生(21歳・男性)は、「個人史に注目した展示パネルは、その人の人生にふれられるのがいい。『従軍慰安婦はなかった』という人も、単純に知らないだけということもある。わかりやすい表現で、基本を学ぶことができていいと思う」と語っていました。
*中学生のための「慰安婦」展
とき 2008年5月25日(日)まで
開館時間 水曜日〜日曜日の午後1時〜6時(休館日=月・火・祝日・年末年始)
ところ wamアクティブ・ミュージアム女たちの戦争と平和資料館(東京都新宿区西早稲田2の3の18、AVACOビル2階、地下鉄東西線早稲田駅徒歩5分)
「私にとっての『慰安婦』問題」シンポジウムから/政府はきちんと謝罪して/裁判支援の協力呼びかけも
「中学生のための『慰安婦』展」オープニングイベントとして、今月二日、シンポジウムが開かれました。「慰安婦」問題を学ぶ学生など五人のパネリストが、「私にとっての『慰安婦』問題」と題して討論。学生など百人以上が参加しました。
「聞いて終わり」でなく行動を
村上麻衣さん(28)は、被害女性の証言集会を開催している「旧日本軍性奴隷問題の解決を求める全国同時企画・京都実行委員会」のメンバーです。韓国の被害女性たちが生活する「ナヌムの家」で、韓国と日本の若者が被害女性に会ったり、お互いの歴史認識について討論したりするワークショップなどを開いています。
元「慰安婦」の証言を聞いた後の交流会で、「日本政府の謝罪を求めていきたい」と語った村上さんに被害女性は、「証言をきいてすぐは、みんなそういってくれるけど、すぐに忘れてしまうでしょう?」と語ったといいます。
「被害女性は、何度も同じ話をしてきたのに、日本政府は変わらない。私たちが、ただ聞いて終わりにするのでなく、何を始めるのかが問題だと思った」と村上さん。被害女性の声を直接聞ける最後の世代として、証言録の作成にもとりくんでいると語りました。
私たち国民ももっと変わろう
高橋堅太郎さん(23)は、中国の海南島で起きた戦時性暴力被害事件について、日本政府の謝罪と賠償を求める裁判を支援をしている、二十代を中心とした「ハイナンNET」のメンバーです。「被害女性は戦後ずっと放置されてきた。日本社会全体として被害者にどう向き合うかは、未解決のまま。その日本社会で生きていることに、自分も『戦後責任』を負っていると思っている。事実を示して、幅広く対話を積み重ねたい」と語り、裁判支援への協力を呼びかけました。
小谷尚子さん(21)は、神戸女学院大学・石川康宏教授のゼミの学生です。「過去、私と年の変わらない女性たちが、日本兵のレイプの対象として扱われていたという事実に衝撃を受けた。なぜ彼女たちがちゃんと謝罪も受けず、歴史教科書からも外されているのか学びたいと思った」と発言。
韓国で会った被害女性が、「国と国が難しくても、人と人は仲良くしてほしい。もう同じような経験をする子が出てきてほしくない」と語ったことに、感動したといいます。
高校に出かけて「慰安婦」問題について授業をしたり、体験を出版するなどの活動を通し「政治に関しても目をそらしてはいけないと考えるようになった。反省しない政府を作っているのは国民。私たちが変わらなかったら、変わらない」と語りました。
首都圏の国立大学で「慰安婦」問題について学ぶ女子学生(21)は、学生の間に、「現在の風俗店と一緒では」などの声があると発言。事実を学ぼうと、学内でパネル展を実施するなどの活動をしてきました。今回の展示にある元日本兵の証言にふれ、「パネルに『妻にはずっと言えなかった』とある。被害女性にとっても、日本兵にとっても、つらい経験だったということも考えなければいけない」と語りました。
「慰安婦」の証言、紙芝居にして
埼玉県の元中学校教師、高橋美智子さん(62)は、「中学生のための『慰安婦』展であることがうれしい。中学生が『慰安婦』について学ぶことが、早すぎるということはない」と発言。
授業で使ってきた、韓国の元「慰安婦」の証言に基づく紙芝居「元従軍慰安婦スボクさんの決心」を朗読しました。中学生が感想文で、「女性が生きぬいたことがすごい」「日本政府は事実を認めて謝罪を」などと受けとめていることを紹介し、「中学生でも十分理解できる。教科書に載っていれば深く学べるが、教科書から消えても、被害の実態については学ぶことはできる。教師は子どもに対して責任がある」と語りました。
「どう中学生に伝えていくか、参考になった」「若い人たちのパワーに励まされた」などの感想が寄せられました。
( 2007年06月16日,
入館料 18歳以上500円、18歳未満300円、小学生以下無料
問い合わせ рO3(3202)4633
( 2007年06月16日
旧日本軍による性暴力被害者に、日本政府が謝罪と賠償をすることなどを求め、「日本軍『慰安婦』問題行動ネットワーク」や全国の支援者らは十四日、国会前で抗議行動を行いました。
今年二月、旧日本軍の「性奴隷」問題に関して日本政府に謝罪を求める決議案が米議会に提出されました。これを受け、安倍首相をはじめとする日本政府の「強制はなかった」などという発言の撤回や、「慰安婦」被害者たちに直接謝罪し国家賠償のための立法措置を講じることなどを訴えました。
米下院公聴会でも証言した「慰安婦」被害者の李容洙(イ・ヨンス)さんは、十五歳のときに日本軍によって強制連行され性暴力を受けた実態を話し、「性暴力は今も世界中で起こっている。日本政府が謝罪し、この問題を解決すれば、世界の性暴力をなくすことにつながる」と訴えました。
日本共産党の吉川春子参院議員が「国会での法整備と共に、若い世代にこの問題を伝えていく必要がある」などと、あいさつしました。
( 2007年06月15日,
日朝協会は九、十の両日、第四十回定期全国総会をさいたま市内で開きました。
総会では、運動の総括のうえに、@朝鮮半島についての要求と関心の高まりに応える活動A日本と朝鮮半島の平和を守るためにB植民地支配の清算と日朝国交正常化の促進C在日韓国・朝鮮人の人権を守るために―などを柱とする今後の運動方針を決めました。
総会には、在日本朝鮮人総連合会の徐忠彦(ソ・チュンオン)国際統一局長、埼玉県蕨(わらび)市の頼高英雄市長、日本共産党の吉川春子参議院議員、全労連の佐藤幸樹総務財政局長、日本中国友好協会の鈴木定夫副会長、日本国民救援会埼玉県本部の桜井和人会長(埼玉革新懇代表世話人)の各氏が来賓あいさつ。
在日本大韓民国民団埼玉県地方本部、上田清司埼玉県知事をはじめ各界から祝電・メッセージが寄せられました。
元日本軍「慰安婦」の李容洙(イ・ヨンス)さんが特別発言をしました。
選出された主な新役員は次のとおりです。
▽会長・代表理事=渡辺貢▽代表理事=石橋正夫、大橋満、高柳美知子(以上、再)岩本正光(新)▽事務局長=菅野隆(新)
( 2007年06月15日,
日本民主青年同盟東京都委員会は十日、第九回「TOKYO高校生フェスティバル」を千代田区で開き、百四十人が参加しました。
参加者は、韓国の元日本軍「慰安婦」の李容洙(イ・ヨンス)さんの証言を聞きました。李さんは、一九四四年に日本軍に連行されて性暴力を受けた経験を、時折、日本語を交えて絞り出すように語り、「私の心の中は、あのときのまま。変わったのは、歳をとったことだけ」とのべました。
また、「慰安婦」問題の解決に踏み出さない日本政府を許せないと批判、「私は、日本国民を恨んでいない。過去の問題で日本がけじめをつければ、私たちは手を携えて生きていける。次の時代を背負うみなさんは、政府の不正をただして、明るい日本をつくる力になってほしい」と語りかけました。
第二部では、各分野で働く、弁護士や栄養士、ゲームクリエーター、歌手、スポーツトレーナーと高校生らが、はたらきがいや進路などを話し、交流しました。
町田市の男子高校生(16)は「初めて『慰安婦』の証言を聞き、日本がひどいことをしてきたんだと確信した。日本は、戦争責任のけじめをつけなければいけないと思った」と話しました。
「戦争といえば、国と国が武器でたたかうイメージがつよかったが、今日の話をきいて、戦争の裏で人生を変えられ痛めつけられたり、その現実とたたかっていた人もいたということを知った。(『慰安婦』の記述を)教科書から消してしまうのは絶対によくないと思いました」などの感想が寄せられました。
(2007年06月12日,
憲法施行六十周年を機に、憲法九条や「慰安婦」問題について、日本近代史の専門で米コロンビア大学のキャロル・グラック教授に話を聞きました。
(ニューヨーク=鎌塚由美 写真も)
安倍政権の改憲のもくろみはうまくいくでしょうか。安倍首相のいう「主張する国」とか「戦後レジームからの脱却」は日本を世界に押し出していくことだそうですが、政策が見えません。安倍首相の主張を、アジアや世界が受け入れるとは到底思えません。
私たちは日米関係の枠外に目を向けなくてはなりません。自民党政権が続く限り、ブッシュ大統領に代表されるような米国との関係は続くでしょう。しかし、米国は今、世界で孤立し影響力を低下させています。日米関係も変わらざるを得ないのではないでしょうか。
日本だけの特徴
日本は唯一、平和の名がつく憲法を持った国です。平和と繁栄の憲法≠ナも平和と民主主義の憲法≠ナもなく、平和憲法≠ナす。私はこの平和≠ニいう部分がとても重要だと思います。もちろん、これは主に憲法九条から派生していますが、単に九条の交戦権の放棄がもたらすものではなく、国民のなかにある平和への強い支持と関連しているからです。
広島・長崎での原爆体験だけでなく、国土の至るところでの廃虚は、国民に平和を支持する切実な感情のうねりを生み出しました。日本が平和憲法を持つことは、アジアにおいても、大きなインパクトがありました。アジアの人々のなかから、脅威の存在である日本、日本人≠取り除いたのですから。
二十世紀後半の世界において、国民の価値観としては、民主主義や社会主義、植民地主義からの独立などがあげられます。そのなかで、平和が主要な位置を占めているのは、日本だけの特徴です。平和の重要性についての国民的自覚は、米国をはじめ多くの国には当てはまりません。
世論調査でも国民の圧倒的多数が平和を支持している意義は、とても大きい。長い間、平和が(社会の)規範でありつづけています。
一方、米国はどうでしょう。イラクから毎日、恐ろしいニュースが流れてきます。もちろん国民のなかには反戦感情がありますが、イラクの人々の死だけでなく、米兵の死でさえ気にとめていない多くの人々がいるのも現実です。戦争が、壁紙のようになっているとは、ひどい話です。米国では、戦争が規範になっているのです。
各国に諭す立場
私がいう平和とは、戦争をしないことです。平和の反対語は、間違いなく戦争でしょう。戦争をしないこと、を最小限の平和の定義としても、それは日本とアジアにとって唯一の希望だといえます。さらに、日本は化学兵器禁止条約を主導したり、武器貿易を禁止する国際キャンペーンの先頭に立つことのできる完ぺきな立場にいる。平和憲法を理由に、各国に諭すことができるはずです。
憲法九条の見直し論議で、自衛の権利などを持ち出すのは、改憲を受け入れやすくするためでしょう。実際には、平和を後景にまわし、軍隊≠、社会・経済・文化の上に置くのか、が問われていると思います。憲法九条とともに、自衛ではなく、平和を前面に議論すべきではないでしょうか。
もう一つの問題は解釈改憲です。(平和憲法の)侵食は続いています。九条の議論をする一方で、自衛隊を海外に派兵する。この五十年間、自衛隊がつくられ、海外に派兵されてきました。自衛隊が存在しても、九条があれば日本国民は平和原則をはっきり述べ、強く主張することができるのです。
「慰安婦」問題をめぐり、慰安所設立に関する政府・軍による指令書があったかどうかという議論があります。これは戦後のドイツで、ユダヤ人の虐殺命令である「最終的解決策」へのヒトラーによる指令書を探した動きと似ています。研究者は、ヒトラーの指令書を探そうと躍起になりましたが、決して見つかりませんでした。しかし、それ以外のたくさんの資料が見つかりました。
ヒトラーによる指令書がなかったことが、ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)がなかったことを意味したでしょうか。ヒトラー政権が、関与していなかったことを意味したでしょうか。答えは、「ノー」です。
否定はできない
「慰安婦」は新しい事実ではなく、昔からの事実でした。戦後一九四〇年代の日本ではその存在がよく知られていました。社会的事実だったのです。被害者は九〇年代まで名乗り出ませんでしたが、女性を搾取した男性たちはそれを公に語っていたのです。これは、ホロコーストを否定できないのと同様に、否定することはできません。
「慰安婦」制度は、仮説や異説ではなく、学問的に決着のついた歴史の事実です。議論の余地はもうありません。そればかりか今では、国際社会が確定した事実になっています。
国際刑事裁判所(ICC)のローマ規程(九八年)で、レイプ、性奴隷は人道に対する罪として確定されました。ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争でのレイプ・キャンプに関する国連報告(九四年)に携わった人々の念頭には、旧日本軍による「慰安婦」制度がありました。国連人権小委員会が九八年に採択した報告「武力紛争時における組織的強姦(ごうかん)、性奴隷及び奴隷類似慣行」(マクドゥーガル報告)では「慰安婦」制度が引例されました。このように九〇年代に、「慰安婦」制度は国際的な事実になったわけです。
立場傷つくだけ
軍に雇われた女性の割合がどれぐらいだったか、仲介業者に雇われた割合がどれぐらいだったか、自主的に進んでいった女性の割合がどれだけだったのか。細部が問題なのではありません。
慰安所が存在し、それは軍と一緒になって多くの仲介業者や地元の人々がかかわった巨大な制度だった。女性たちの権利を侵害し、人道に対する罪といえる事例が一部にあったのです。
これを否定するのは、アジアでの対立をあおり、世界から嫌悪を誘うだけです。安倍首相のように、自らの立場を傷つけるだけなのです。日本の一部の政治家はいまだにこのような発言を続けていますが、そろそろやめるべきでしょう。
(ニューヨーク=鎌塚由美)
( 2007年06月08−09日,
日本の侵略戦争に朝鮮半島などから多くの若い女性が「性奴隷」として動員された日本軍「慰安婦」問題が、あらためて大きな国際問題になっています。5月20、21の両日、韓国のソウルで第8回日本軍「慰安婦」問題アジア連帯会議が開かれ、日本共産党の吉川春子議員が参加しました。
面川 誠記者(写真も)
会議には日本、韓国、北朝鮮、台湾、フィリピン、インドネシア、オランダから非政府組織(NGO)代表や個人が参加し、米国、ドイツ、オーストラリアとアムネスティ・インターナショナルからオブザーバーが出席。韓国野党のハンナラ党と民主労働党の議員も姿を見せました。
開会式であいさつに立った吉川議員は、侵略戦争についての教科書の記述や、「慰安婦」問題真相究明の活動に攻撃をかけてきた中心人物の一人が安倍晋三首相だと指摘。被害者に対する日本政府の公式謝罪と補償を求めて野党が共同提出している「戦時性的強制被害者問題解決促進法案」成立のために全力を尽くすと強調しました。
会議は、日本政府に公式謝罪と補償を求め、国際連帯をさらに強めることなどを確認する決議を採択して閉会しました。
つのる不信
「慰安婦」問題は1991年、韓国人の金学順さん(故人)が初めて被害を明らかにして世界に衝撃を与えました。問題解決を求める活動の中心を担ってきた韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)と被害者のハルモニ(おばあさん)は、92年1月から毎週水曜日、日本大使館の前で抗議の「水曜デモ」を続けています。
会議初日の昼休み、韓国メディアが吉川議員に共同インタビューを申し入れました。参加したのは日本のNHKに相当する公営放送KBSやMBC、SBSといった全国ネット局や新聞各社などです。インタビューの内容は、テレビニュースやソウル新聞、毎日経済新聞などの記事、さまざまなインターネットメディアを通じて伝えられました。
KBSニュースは「アジア各国の日本軍『慰安婦』被害女性と活動家が連帯会議を開き、日本に向かって怒りの声を上げた」と報道。中央日報は「日本が靖国神社参拝や慰安婦問題で戦前の体制を肯定するような態度を取る限り、韓国や中国の不信感を払うことはできない」と強調しました。
国をあげて
韓国ではいま、侵略と植民地支配による犠牲や、自国の独裁政権による国民弾圧など、被害と加害の両面にわたる歴史の真相究明に国をあげて取り組んでいます。その一つが国家機関である「日帝強占下強制動員被害真相究明委員会」。特別法に基づいて設置され、植民地支配下で朝鮮半島から日本や戦地に強制動員された軍人・軍属・徴用労働者と「慰安婦」が主要な調査対象です。
アジア連帯会議のあと、吉川議員は委員会を訪問、全基浩委員長や委員会メンバーと懇談しました。
全委員長は「吉川議員は虐げられた人々とともに活動を続けてきた方として、尊敬の念を持っています」と歓迎。「慰安婦」動員について「狭義の強制性はなかった」とする安倍首相の発言に対して、「脅迫して連れて行ったり、就職を世話するといってだましたことも、まぎれもない強制だ」と憤りを隠しませんでした。
(2007年06月03日,
「中学生のための『慰安婦』展―すべての疑問にお答えします」が東京都新宿区のアクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」で始まりました。第五回特別展の初日となった二日はシンポジウムが開かれ、多くの若者を含む百人を超える人たちが参加しました。同展の開催は来年五月二十五日まで。
五人のパネリストが「私にとっての『慰安婦』問題」と題して討論しました。
「消せない記憶」全国同時証言集会・京都のメンバー、村上麻衣さん(28)は、フィリピンのピラール・フリアスさんとの出会いを通し、「体験を語るおばあさんたちにとって日本に来る意味、証言をする意味を考えるようになった」。手を広げ温かく見守ってくれる韓国の被害者と出会い、「人間の尊厳がキーワード。個人の尊厳とどう向き合えるか考えていきたい」と話しました。
「被害を受けた女性が戦後六十年ずっと放置されていることに憤りを感じた」と話す高橋堅太郎さん(23)は、海南島「慰安婦」訴訟支援や聞き取り調査をしているハイナンNETの一人です。「被害を放置してきた政府に自分たちは責任を負っている。原告として名乗り出てきた被害者に対し応えていかないといけない」と語りました。
中学校で「慰安婦」問題を教えた元教師、高橋美智子さん(62)は授業で使ってきた「慰安婦」の紙芝居を披露。シンポジウムを通して「平和憲法と人権の大切さを痛感した」と語りました。
「慰安婦」という言葉がすべての中学校の歴史教科書から消えたなか、同展は「『本当のことが知りたい』と思っている中学生から戦争体験者の世代まですべての人のための『慰安婦』展」として始めました。日本軍「慰安婦」制度についてや被害女性たちの証言、消えた「慰安婦」記述の足跡と背景などを展示しています。
場所は早稲田奉仕園内AVACOビル二階。開館時間は水―日の午後一時―六時。問い合わせ=03(3202)4633
( 2007年06月03日,
太平洋戦争末期に勤労挺身(ていしん)隊員として朝鮮から日本に連れてこられ、名古屋市内の軍需工場で過酷な労働を強いられた女性とその遺族七人が、国と三菱重工業を相手に総額二億四千万円の損害賠償などを求めた裁判の控訴審判決が三十一日、名古屋高裁で行われました。青山邦夫裁判長は「脅迫や欺もう行為によって志願させ、給与も支払わないなど、国などの行為は強制連行、強制労働に当たる」と認定しましたが、「日韓請求権協定(一九六五年締結)により請求権は消滅した」として、同じ理由で原告の訴えを退けた二〇〇五年二月の名古屋地裁判決を支持し、訴えを棄却しました。
判決はさらに、帰国後も原告が「従軍慰安婦」と同一視され、差別や偏見にさらされたとして謝罪を求めた点についても「同協定で権利は主張できず、こうした被害を回避する義務も政治上のものにとどまる」として退けました。
一方、国家賠償法施行(四七年)前の公権力による市民への不法行為について責任は問われないとする国側の主張は、「当時批准していた条約に照らしても違法行為と言わざるを得ず、採用できない」と言明。「戦前と戦後は別法人」とする三菱側の主張に対しても、判決は「実質的に同一性があり、民法上の責任を負う余地がある」としました。
原告側は「一審に比べ、国の責任を認めるなどいくつかの前進はみられるものの、判決は不当」として上告する方針です。
( 2007年06月01日,
日本人街の今
歴史認識が政治問題化するなかで「きずな写真友の会」(大阪・百六十人、関屋信行会長)は、かつて日本が侵略した中国東北部(旧満州)に残る戦跡を訪ね、歴史的事実を直視し、その報告の写真展を九月に開催することを二〇○七年度の活動の一つとして企画しました。関屋会長を団長とする九人は五月の連休六日間、中国・大連からハルビンまで九百キロを列車と車で訪れました。
私たちは五月三日午後、関西空港を中国機で出発、一時間半後には大連に着きました。
プラタナスの新緑が美しい大連の中心街をぬけると、南山地区の住宅街。壊れかけた壁や窓の古びた洋風木造二階建て建築が並びます。各地からの出稼ぎの人たちが暮らしています。ここはかつて戦前・戦中には支配者であった日本人が住んでいました。立派な住宅街であっただろうと想像されます。
道路では老人たちが机を囲みトランプを、子どもたちは無邪気に遊び興じていました。やがて壊され高層住宅に建て替わるといいます。
中心街には日本の古い建物が遺(のこ)され、旧横浜正金銀行や旧やまと旅館は今も名前を変えて使われています。
東鶏冠山・二〇三高地
ここは一九〇四年二月から〇五年四月まで、日本とロシアが朝鮮と南「満州」(中国東北部)の支配をめぐり戦った日露戦争での旅順争奪の主戦場跡です。
旅順市街の東北部の丘陵、標高二〇四bの山頂がロシア軍の東鶏冠山北保塁です。
深くて広い掘割へ階段を下ります。片側は石とセメントで固めた二階建ての塹壕(ざんごう)が長く続きます。ほかに弾薬庫、炊事場など。
離れて丘陵の西にあるのが、二〇三高地。砲台から旅順港が一望でき、爾霊山(にれいざん)の文字が刻まれた記念碑があります。
売店で買った「旅順・日露戦争」の図では、塹壕と砲台が機能的に結ばれ、丘陵全域が巨大な要塞(ようさい)であったことがわかります。
日露戦争での日本軍の戦死者十二万人、当時の額で戦費は十五億円とされます。
9・18歴史博物館
この博物館のある瀋陽へは大連から特急列車(旧満鉄)で四時間かかります。
同館は遼寧省の省都瀋陽市の東北、満州事変の発端地、柳条湖にあります。一九九四年、江沢民主席のとき、事件発生六十周年を記念して建設、五年後増設されました。
柳条湖事件とは一九三一年九月十八日、関東軍(満州駐屯日本陸軍)が満州鉄道を爆破し、それを瀋陽(奉天)の軍閥張作霖がやったといいがかりをつけ、一挙に長春(新京)はじめ主要都市を占領した事件です。
同館では、日本の侵略、それへの抵抗、その後の勝利の全歴史を写真で説明展示しています。
特に、平頂山事件の白骨現場や、日本の教科書使用に反対して、さらし首にされた校長十二人の写真などはショッキングでした。(写真・関屋信行、文・楳田尚克)
赤ちゃんまで虐殺
炭鉱を抱える撫順市は瀋陽市のすぐ隣にあります。
露天掘りですから巨大な穴です。東西六・六`南北二`深さ三百五十b。埋蔵されている石炭はまだ二千六百万dあるといいます。炭鉱のふちからのぞくと底深く、貨物列車が箸箱(はしばこ)のように小さくかすんで見えました。
平頂山事件は柳条湖事件の翌年一九三二年九月におきました。抗日武装勢力が、南満州鉄道株式会社の経営下にあった撫順炭鉱に放火し、駐屯していた関東軍を襲いました。軍は報復目的で三千人といわれる赤ん坊を含む村人を集めて殺し、焼いたうえ穴に埋めた事件です。
『万人坑を知る―日本が中国を侵略した史跡―』(瀋陽・東北大学出版社二〇〇五年発刊)に大量殺戮(さつりく)の実例三十六をあげており、平頂山事件は一例にすぎません。
撫順の戦犯収容所
撫順(ぶじゅん)市のはずれにある平屋の収容所は、日本が反日活動家を投獄した刑務所でしたが、今はそのまま博物館になっています。
太平洋戦争後、日本の「満州」国要人や「満州」国皇帝溥儀(ふぎ)など三千人が収容されました。収容室は数人の共同生活でした。溥儀の夫人が訪れた個室や治療を受けた部屋もありました。
彼ら加害者は戦争犯罪を認め反省して、日本人は全員帰国しました。溥儀は服役後、平穏に処遇されました。
帰国後の彼らの歩みは、同収容所で買った『中帰連(中国帰国者連絡会)帰国五十年記念集第三十六号〇六年―季刊』に詳しい。巻頭文で「従軍慰安婦問題など歴史の偽造を許すな」と警告しています。
偽満州国務院・偽皇宮
偽満州国務院と偽皇宮の二つは長春にあります。瀋陽から列車で三時間、窓外は広大な耕地、白樺の防砂林が朝日を浴びて美しい。
日本は一九三一年溥儀(ふぎ)を満州国皇帝にして十四年間支配しました。「偽」は傀儡(かいらい)のことです。
市の中央に位置する偽国務院は日本の国会議事堂そっくり。旧満州の国政の中枢でした。現在、医科大学が入っています。玄関に日本人戦犯の写真が掲示されています。
ここから北東へ三`の偽皇宮には謁見(えっけん)室や調印室など溥儀が執務した建物と居住した建物があります。
特別室には溥儀とその夫人の華やかな姿や幼少から晩年までの写真があり、居間や寝室、トイレ、浴室などはそのまま保存されています。日本軍の憲兵が常駐、監視した部屋がありましたが、傀儡政権を象徴しているように思えました。
七三一部隊罪証陳列館
ハルビンは緑が多い。その市内平房区に「侵華日軍七三一細菌部隊罪証陳列館」があります。
展示室の七三一部隊の全景模型は大規模ですが、実際の施設の大部分は破壊されています。遺跡は隊の本部、人体冷凍実験家屋、ペスト培養家屋などです。罪証文物は血清瓶、骨のこぎり、手術バサミ、注射針、細菌培養箱など。
生物兵器は日本人が多い中国北部をさけ、南部方面で使用されたと図解しています。日本人の旧隊員の証言と写真もありました。最後の展示室は中国人殉難者たちの写真です。
館外へ出、遺跡「ボイラー室」の前で子どもの元気な姿を見てほっとしました。
翌朝五月八日、ハルビン国際空港から帰国しました。
六日間旅をともにした女性のガイド王さんが明るいブラウス姿で手を振ってくれました。
(文・楳田尚克)
(2007年05月25日-06月02日,
【ワシントン=鎌塚由美】日本政府に「慰安婦」問題での公式な謝罪を求める米下院決議案一二一の早急な採択を求め、米・カナダのアジア系市民団体がニューヨーク・タイムズ紙二十八日付に意見広告を出しました。同決議案の五月中の採択は見送られましたが、共同提案議員は百二十九人に達しています。
意見広告は、「安倍首相は『日本軍の性奴隷』のどの部分を理解できず、謝罪できないのか」との三月の同紙の社説を引用する形で、安倍首相の「慰安婦」否定発言を批判。「不誠実と(歴史を書き換えようとする)修正主義者の幻想の上に良い未来は築けない。今こそ日本の指導者は道徳的勇気を示し、恥ずべき真実の否定をやめる時だ」と述べ、同決議案への支持を表明しました。
広告には、中国系米国人が中心となる非政府組織(NGO)の世界抗日戦争史実擁護連合会のほか、韓国系の慰安婦問題ワシントン連合、カナダの「第二次世界大戦のアジア史学習・保存連合」が協賛しています。
同決議案を支持する市民団体は現在、早急な採択のために外交委員会が速やかに本会議に上程するよう、ラントス外交委員長(民主党)とペロシ下院議長(同)に働きかけを強めています。
( 2007年05月30日,
国連拷問禁止委員会はこのほど、日本政府の拷問禁止条約に関する第一回報告書に対する「結論と勧告」を発表、警察施設を犯罪容疑者の拘置所の代わりに使う代用監獄制度や旧日本軍による慰安婦問題などで日本の人権状況に強い憂慮を表明し、改善を勧告しました。「結論と勧告」は九、十の両日、ジュネーブで行われた報告書審査に基づくものです。
「結論と勧告」は、日本でえん罪の温床となっている代用監獄と取り調べの規則、自白偏重の問題に強い懸念を表明しています。捜査と拘禁の機能が分離されていない、迅速な医療の欠如、未決拘禁期間が二十三日間に及ぶなど十一項目をあげ、「『代用監獄』の広範で組織的な利用に深刻な憂慮を表明」しています。
また、「特に第二次世界大戦中の日本軍の性奴隷(慰安婦)行為の生存者を含む性的暴力犠牲者に対する不十分な救済策と、性的暴力と性差に基づく〔拷問禁止〕条約違反を予防するための効果的な教育およびその他の措置の不履行について懸念している」と強調。
日本が「慰安婦」などに関する事実を隠ぺいしたり、犠牲者や生存者に十分なリハビリテーションを行っていない結果として、犠牲者が「引き続く虐待を経験し、精神的傷の上にさらに傷を受け続けている」と述べ、犠牲者への救済手段をとるように日本政府に勧告しています。
この「結論と勧告」について、日弁連は二十二日、平山正剛会長名の声明を発表し、委員会指摘を「日本政府が重く受け止め、誠意をもってその解決に全力を挙げて努力する」よう要求、とくに代用監獄問題などについて直ちに対応措置をとるよう求めました。
( 2007年05月28日,
政治・経済
◆米軍新基地調査でサンゴ礁破壊 那覇防衛施設局が強行した米軍新基地のための「事前調査」でサンゴ礁を破壊していたことが判明。環境保護団体が抗議し、中止を要請(21日)
◆在日米軍再編促進法が成立 在沖米海兵隊のグアム「移転」費負担や在日米軍再編に伴う基地強化のための「再編交付金」などを盛り込んだ在日米軍再編促進法の採決を、自民、公明が強行し、成立(23日)
◆大手銀行、最終益2・8兆円 大手銀行六グループの三月期決算によると、最終利益は二兆八千億円余。サラ金・ノンバンク向け貸倒引当金積み増しで前期比9・5%減(23日)
◆経団連会長、改憲を参院選の争点に 日本経団連の御手洗冨士夫会長は、時事通信社のインタビューに「憲法の改正を(参院選の)争点にするのはいいことだ」と表明(23日)
◆沖縄への海自艦派遣に法的根拠なし 米軍新基地建設のための「事前調査」に海上自衛隊の掃海母艦が派遣された問題で、法的根拠がないことを防衛省が認める。赤嶺政賢議員の追及(24日)
社会・国民運動
◆放鳥したコウノトリにヒナ 兵庫県豊岡市の研究機関「県立コウノトリの郷公園」は、野生復帰を目指し施設外に放鳥したコウノトリのペア一組の卵が、ふ化したと発表。放鳥ペアの二世誕生は初めてで、国内での自然繁殖は四十三年ぶり(20日)
◆全国青年大集会を開催 「力を合わせ職場と社会を変えよう」「人間らしく働きたい」と全国青年大集会が東京都内で開かれ、三千三百人が参加(写真)。志位和夫委員長があいさつ(20日)
◆規制改革会議が意見書 政府の規制改革会議が労働法制の大改悪を盛り込んだ意見書を発表(21日)
◆コースター7基損傷 国土交通省は、全国の遊園地に緊急点検を指示した結果、三百六基のうち五施設の七基で車輪の亀裂などが見つかったと発表(23日)
◆緑資源理事ら逮捕
東京地検特捜部は、林道整備に関する調査業務入札で受注調整をした独占禁止法違反容疑で、農水省所管の独立行政法人「緑資源機構」の森林業務担当理事と林道企画課長、受注側の公益法人、民間企業の担当者ら計六人を逮捕し、同機構を家宅捜査(24日)
国際
◆イスラエル軍が空爆 イスラエル軍は、イスラム武装抵抗組織ハマス勢力からロケット攻撃を受けたことへの対応だとして、ガザ地区のパレスチナ評議会議員宅を空爆。議員の妻、父ら十人以上が死亡(20日)。さらにパレスチナ自治政府のハマス閣僚ら三十人以上の政治家を拘束(24日)
◆レバノン国内で軍事衝突 政府治安部隊と武装組織「ファタハ・イスラム」の衝突が相次ぎ、四十八人が死亡(20日)
◆「慰安婦」問題連帯会議 ソウルで開かれた第八回日本軍「慰安婦」問題アジア連帯会議は、安倍首相の責任回避を批判し、日本政府に公式謝罪と補償を求める決議を採択して閉幕(21日)
◆米中が経済対話 ワシントンでの第二回米中戦略経済対話で金融、エネルギー・環境、貿易不均衡などを討議。航空便倍増、証券参入促進では合意したが、人民元問題、米国肉輸入などでは一致せず(22、23日)
◆クラスター爆弾禁止会議 クラスター爆弾の使用禁止条約国際会議が南米ペルーで開かれ、二〇〇八年末までの条約制定の方針を確認して閉幕(25日)
( 2007年05月27日,
今回の放送法の「改正」は、NHKの受信料義務化は見送られたが、民放番組のねつ造事件を理由にした行政措置の制度が導入された、といった一般的な見方があるように思います。しかし、「改正」案の内容を見ると、NHKへの新たな行政の規制、監督の道を開く条文も幾つか加えられています。重大な懸念を持たざるをえません。
強力な権限も
第一は経営委員会が任命する監査委員会の新設です。監査委員は経営委員会が経営委員の中から任命し、そのうち少なくとも一人以上は常勤となります。
この委員会は、役職員の職務の執行に関する事項の報告をいつでも求め、業務や財産状況の調査ができるとされていますから、運用によってはオールマイティーで強力な権限をもつ組織になりかねません。たしかに不祥事続発のNHKにたいして監視すべきという世論はありますが、総理大臣が任命する経営委員の中に、常勤監査委員の有力な候補が監視役としてNHKに送りこまれる可能性を考えると、警戒を要する条項です。
第二は、NHKの業務に、現行法にはほとんどない「総務省令で定める」とされる内容が多数持ち込まれていることです。「経営委員会の職務」の中にも、例えば「NHKの業務の適性を確保するために総務省令で定める体制の整備」といった条文が新設されますし、提出する財務諸表の中にも、「総務省令で定める書類」という文言が新たに追加されています。
国会審議を経ないで作られる省令で、NHKの業務が指示される、などの条文が増えれば、NHKにたいする総務省のコントロールがいっそう強まる恐れがあります。
また「改正」案は民放のねつ造事件を受けた形で、事実でない事項を事実であると誤解させるような放送を行い、悪影響を与えた、と総務大臣が認めれば、放送事業者に対し行政処分できるという条文を新しく設けています。NHKも民放も含めすべての放送を対象にしたこのような条文は、政府が常に放送を監視し、規制することに根拠を与える途方もないものです。
歴史にも介入
「事実であるかどうか」で、権力とメディアが最もシビアに争うジャンルは何か、それは戦争報道や歴史認識に関する放送です。
NHK番組「ETV2001」でも、幹部が「慰安婦」とされた人々の証言を削除した際、「事実かどうかわからない」との理由をあげたことが思い出されます。「強制連行はなかった」などと主張する政治家の意思を忖度(そんたく)した改変でした。放送内容が事実かどうかを行政が判断するような恐るべき条文は、どんな理由であれ許すべきではないでしょう。
これだけ行政の放送への介入の動きが強まっている今、視聴者市民とメディア研究者の側が、NHKのあり方を含め、放送制度全体についてトータルで簡潔な要求、提案を大多数の国民の支持を得られる内容でつくり上げ、示すべき時期にきていると強く感じます。
( 2007年05月27日,
靖国DVD≠学校に持ち込む教育事業を追及した日本共産党の石井郁子議員の質問(十七日の衆院教育再生特別委員会)が大きな反響を呼んでいます。石井氏は何を問うたのか、ポイントを紹介します。
石井氏は、日本青年会議所によるアニメーションDVD「誇り」を使った教育事業を、文科省が「新教育システム開発プログラム」に採用し、委託事業としていることを告発しました。
同プログラムは、二〇〇六年四月から実施。〇七年度は七十六件が採択されました。委託額の上限は百三十五万円です。
文科省お墨付き
日本青年会議所はホームページで、国のお墨付き≠大宣伝してこう述べています。「この認可を契機に、全国の青年会議所メンバーが積極的にこれらのプログラムを実践していただき、市民意識変革へ邁進(まいしん)されますことを心より願います」
二月から全国九十三カ所で、同教育プログラムが実施、または予定されています。
首相と会頭対談
石井氏は、このDVD「誇り」を手に、安倍晋三首相に問いました。
石井 この「誇り」というDVDはご存じですか。
首相 存じ上げているが、まだ見ていない。
石井 昨年末に、青年会議所会頭と対談し、そこでDVDを渡され、「ぜひ教育再生の参考にしたい」といったと思いますが。
首相 よく覚えていない。
「それはおかしい」として石井氏が取り出したのが、日本青年会議所の雑誌『We Believe』〇六年十二月号。「誇りある日本国を創るために」と題して、安倍首相と池田佳隆青年会議所会頭(当時)が対談しています。
「池田 この教材DVDを安倍総理に贈らせていただきたいと思います。
安倍 教育再生の参考にぜひ拝見させていただきましょう。
池田 お時間の許す限り観ていただいて、美しい国づくりに生かしていただければ幸いです」
しっかり雑誌に書かれているのです。
村山談話の否定
石井氏は、DVDのあらすじを紹介し、「アニメを使って、子どもの心にすっと特異な戦争観が入っていく。靖国神社の戦争観を子どもに刷り込むための教育プログラムだ」「靖国DVD≠ニ言わなければならない」と追及しました。
安倍首相は「共産党の視点から評価されている」と問題をすり替えようとしました。
これに対し、石井氏は「日本共産党の視点というのは心外だ。とんでもない」と反論。「あの戦争を、『自衛のための戦争』『アジア解放のための戦争』、こういう考えでいいのかと言っているだけだ」と追及しました。
石井氏は、過去の戦争への反省とおわびを述べた一九九五年の「村山談話」を取り上げ、「私の言っていることは村山談話そのものだ。安倍首相は村山談話を継承すると表明しているはずだ」と指摘。「このDVDを使った教育プログラムを文科省事業として普及することは、政府の立場と相いれない」とただしました。
「いろいろな立場がある。私は自分の目で確かめていないから、なんとも言えない」と安倍首相は逃げの答弁に終始しました。
「私なら使わぬ」
「日本の政府は、過去の日本とアジアの問題について、学校教育でどう取り組むかの基準を持っている」
こう述べて、石井氏は一九八二年の「官房長官談話」を読み上げました。同談話は、過去の戦争の反省の上に立って、学校教育、教科書の検定にあたっても、その精神を尊重するというもの。石井氏は「この政府の立場に照らしても成り立たない」と指摘しました。
伊吹文明文部科学相は「教材として使う、使わないは各学校の判断だ。私が校長であれば使わない」と述べました。
最後に石井氏は「安倍内閣がいま国家主導で教育に介入し、押し付けようとしている中身は、この靖国DVD≠ノあるような戦争観が中心ではないか」と批判しました。
靖国DVD≠フあらすじ
女子高校生が、過去から来た青年と出会い、靖国神社に行って日本の戦争の話を聞きます。
青年は「愛する自分の国を守りたい、そしてアジアの人々を白人から解放したい。日本のたたかいには、いつも、その気持ちが根底にあった」と語り、日中・対米戦争を自衛の戦争、アジア解放の戦争だったと弁護します。
朝鮮半島や台湾に対する日本の植民地支配についても、「近代化のため道路や学校を造った」というだけで創氏改名や「従軍慰安婦」の強制連行など、加害の事実は触れていません。
( 2007年05月27日,
米コーネル大学東アジア研究所で、東アジアの近現代、戦争と平和、歴史の記憶などを中心に研究してきたマーク・セルデン・ニューヨーク州立大学教授に、安倍首相の訪米と米議会の「慰安婦」決議案、憲法九条について話を聞きました。(イサカ〈ニューヨーク州〉=鎌塚由美 写真も)
謝罪は被害者に
四月の安倍首相の訪米に先んじて「慰安婦」問題での日本政府・軍部の責任を否定する安倍氏自身の発言がありました。そのため「慰安婦」問題が注目を集め、「慰安婦」訪米ともいえるものになりました。
面白いことに、安倍首相は、米国で謝罪の態度を示しました。ブッシュ米大統領は、安倍首相が謝罪したとし(謝罪より遺憾表明といったほうが近いようですが)、自分はその謝罪を受けいれたと述べました。しかし、謝罪とは被害者に向かってするものです。かつ、ブッシュ大統領は米国の戦争犯罪と残虐行為を反省したことのない大統領であり、謝罪を「受けいれる」資格はありません。日本政府が米国指導層にではなく、被害者たちに正式に謝罪し、解決の道を見いだしてこそ、第二次世界大戦の「遺産」を乗り越えていくことができます。「慰安婦」問題は、日米間よりも日本とアジアの未来にとって重要な問題だといえます。
今回の米下院の「慰安婦」決議案で興味深いのは、国務省が介入して阻止するというこれまでのやり方は通用しなかったことです。安倍氏の発言は国際問題となり、米国民もそれを無視できなくなりました。ブッシュ政権でさえも決議案を阻止することが難しくなったといえます。
「慰安婦」問題を米議会が取り上げることが適切かどうか。米国が、同盟国として、日本とアジア諸国の問題を克服するために忠告するという意味では適切だと思います。同時に、そうすることの偽善も強調しなくてはなりません。米国が自らの戦争犯罪や残虐行為への認識を欠き、朝鮮戦争、ベトナム戦争、今も続くイラク戦争で補償さえ行っていないからです。
米国議会が「慰安婦」問題を取り上げるのなら、その出発点として、東京裁判で「慰安婦」問題への言及を怠ったこと、戦争で被害を受けて補償を求めるアジア諸国民や米国人元捕虜の要求にたいし、戦後六十年間米国政府が日本政府をかばってきたことを、まず問うべきだと思います。
この種の決議案が米国内でアジア系の人々に限らず支持される背景には、決議案が日本政府に求めているようなことを、米国自身が行うべきだと考えている人々がいます。米国が自国の戦争犯罪について反省し、その犠牲者に補償を行う限りにおいて、決議案は理にかないます。
米を二次的支持
改憲を優先課題にしている安倍首相にとって、日本を「普通の国」「美しい国」にするための核心が憲法九条の改案あるいは廃棄であることは確かでしょう。
軍事行動への制約を取り払いたいという安倍氏の望みを、もちろんブッシュ大統領は共有しているでしょう。憲法九条がなくなれば、日本が戦争に直接的に関与する可能性は増してきます。
憲法九条が戦後果たしてきた役割については、米国の占領とそれに続く米軍と基地の存在を抜きには語れません。日本は、交戦することはありませんでしたが、米国の朝鮮、ベトナム、イラクなどでの戦争の積極的な参加者でした。日本は米国の核の傘に軍事的に依存し、米国の戦争を二次的な形で支持してきたからです。
日本国民の活動
一方、日本の国民の多くが、憲法九条の精神を自分たちのものにし、世界における日本の位置を考える方法としてとらえてきたことは、積極的な側面です。
日本は、敗戦前の半世紀は継続的な戦争状態にあり、アジア諸国民だけでなく日本国民にも甚大な苦難をもたらしました。そのことを踏まえると、戦後の日本が平和の意義を重視してきたことは、喜びをもって語らずにはいられないでしょう。戦争で他国民を誰一人殺さず、日本人が一人も殺されることがなかった。この事実は、日本人に起こった、並外れてすばらしいことでした。九条はその重要な要因でした。
対照的に米国は一九四一年から今日まで永続的な戦争状態にあります。米国ほど、憲法九条が必要な国はないと思います。九条が国際社会の普遍的な原則となるには、何が必要であるかを考え始めるときではないでしょうか。
日本で憲法九条を守ろうと努力している人たちの活動は、イラク戦争に反対する米国の私たちにとって良い刺激になっています。
ニューヨーク州立大学ビンガムトン校教授。日本とアジア・太平洋地域研究の電子学術誌『ジャパン・フォーカス』(http://japanfocus.org)編集委員
( 2007年05月26日,
民主党の松原仁議員は二十五日の衆院外務委員会で、四十五分間の質問時間のほとんどを「南京大虐殺」と「従軍慰安婦」がなかったとの主張にあて、政府に中国政府の見解を「訂正」させるよう執拗(しつよう)に迫りました。
松原氏は、首相の靖国参拝を推し進め、九条改憲を求める日本会議国会議員懇談会のメンバー。
南京大虐殺について岩屋毅外務副大臣が「何かしらの殺りく、略奪があったことは否定できない」とのべたことに松原氏は、「きわめて副大臣の答弁はあぶない。あったと認めようとしている」と批判。「三十万というロットでなくて、大虐殺そのものがなかったと極めて客観的に考えている」などと否定しました。
また「従軍慰安婦」問題についても、中国の稚拙な情報戦によるものなどと決め付け、「ありえない」「実際、そんなものはなかった」と暴言をはきました。
過去の日本の侵略戦争を正当化する「靖国」派は自民党だけでなく、民主党にも根を深くもっていることを示す質問です。(吉)
( 2007年05月26日,
【ロンドン=岡崎衆史】アムネスティ・インターナショナルが二十三日に発表した二〇〇七年版年次報告は、日本についての部分で、「女性への暴力に対する補償」の見出しを設けて、旧日本軍によって強制的に「慰安婦」にされた女性の問題を人権問題として取り上げています。
報告は、日本の裁判所で、「性奴隷」にされた被害者の賠償請求が棄却され続けている問題を告発。昨年八月に東京地裁が「日本の性奴隷制度の犠牲となった」中国人女性八人(二人は死亡)の訴えについて、女性たちが拉致され、性的暴力を継続的に受けた事実を認めながらも、賠償請求を棄却したことを指摘しました。
報告は、その上で、「日本の裁判所は賠償を求める訴訟を繰り返し退けている。日本の政府は一貫して、補償問題は戦後の条約取り決めで解決済みとしてきた」と批判しました。
( 2007年05月25日,
放送法を大幅に見直す改定案が二十二日、衆院で審議入りしました。政府が提出したこの改定案をどう見たらいいのか、識者に語ってもらいました。
(随時掲載)
有事法制が整備された後、登場したのは国際的に右翼政権と定評のある安倍内閣です。俵義文氏らの『安倍晋三の本性』によると「大臣十八人中十一人が改憲・翼賛右翼組織の日本会議と連携する日本会議国会議員懇談会に所属」しています。菅義偉総務相もその一人で、神道議連、歴史教育議連にも参加しています。
放送法改定は、安倍首相が掲げる「戦後レジーム(体制)からの脱却」のマスコミ版である、と私は考えます。NHKへの政府支配を強め、民放も含めた番組への介入を日常化するのが狙いですね。個人情報保護法で雑誌による政治家のスキャンダル暴露を抑え込みました。次は電波免許権を持つ総務相によって番組取り締まりの道を開くのです。
法的強制力で
一九五〇年に放送法ができてから、「番組は放送人の自主性にゆだねる」というのが政府の国会答弁でした。九三年、当時のテレビ朝日報道局長・椿貞良氏が「偏向報道をリードした」と非難された事件を機に、「放送法違反の判断は郵政省がする」と態度を変えます。それでも、表現の自由を慎重に考えて行政指導にとどめてきました。今度は法的強制力を持つ行政処分に踏み出したのです。
では放送局側はどうか。公共放送であるNHKが、政治的課題に消極的だとみる人は少なくありません。「慰安婦」法廷を扱った番組改変では、自民党議員の国会発言に従って担当者が制作現場から配転させられました。自民党に経営人事と予算議決権を握られているとはいえ、政治に弱すぎます。
民放は視聴率至上主義に毒され、情報ねつ造までやってしまいました。面白主義で政治をショー化し、小泉政権のとりこになるような事態も起きました。
テレビは今でも究極のメディアです。人間社会をもっともっと豊かにできる可能性を秘めながら、それを実現しようとしていません。
久米宏氏が「ニュースステーション」(テレビ朝日)を降板したとき、戦後生まれた民放は、戦争で手を汚していない歴史を大切に、とあいさつしていました。三年前のことです。翼賛報道で戦争責任のあるNHKはもとより、放送人全体が歴史観を問われていると思います。
権力の監視を
今はまだ事実を事実として報道できます。この貴重な自由をフルに活用し、権力監視や社会正義の追求に日常の努力を傾けるべきときです。
七〇年代には、毎日新聞記者(当時)の西山太吉氏が沖縄密約を暴いて逮捕された事件がありました。日米軍事協力が強化され、記者がスパイ容疑で摘発される時代が近づいています。今のうちに事実報道の足腰を厳しく鍛えておかないと、やがて大本営発表の時代が来てしまうのが心配です。
市民も歴史観を問われています。私が小学一年だった一九三一年、「満州事変」で日本の翼賛愛国報道は足並みをそろえたのです。知る権利もモノを言う自由も奪われた過去を繰り返すのは、愚かなことです。マスコミ人の尻をたたきながら、権力と向き合うことの重要性を自覚すべきでしょう。表現の自由はマスコミのものではなく、社会のための自由なのです。
( 2007年05月23日,
【ソウル=面川誠】韓国のソウルで二十日から開かれていた第八回日本軍「慰安婦」問題アジア連帯会議は二十一日、安倍晋三首相が「慰安婦」問題で日本政府の責任を回避していると批判し、日本政府に立法措置を通じた公式謝罪と補償を求める決議を採択して閉会しました。
会議には韓国、フィリピン、インドネシア、オランダなどから非政府組織(NGO)の代表ら約二百人が参加。日本からは日本共産党の吉川春子参院議員らが参加しました。
決議は@日本の「河野談話」見直しに反対し、立法措置を通じて政策的実行と責任を伴った公式謝罪と補償、真相究明と再発防止を求めるA日本政府に国連人権委員会の勧告を受け入れるよう求めるB民間レベルでの歴史記録、市民教育に努めるC各国議会の「慰安婦」関連決議採択の動きを支持するDアジア連帯会議を国際連帯会議へと拡大発展させる―ことを呼び掛けました。
二〇〇〇年の女性国際戦犯法廷における天皇有罪判決など、これまでの国際連帯活動の成果を確認。安倍首相をはじめ日本の政治家が日本の国家責任を回避する発言を繰り返しているうえ、侵略戦争と植民地支配の教訓をほごにして憲法九条の改悪を試み「脅威的戦争国家への回帰」を進めていると批判しています。
さらに、三月末に解散した「女性のためのアジア平和国民基金」は「慰安婦」問題の解決策ではなかったことが確認されたと指摘しました。
これに先立ち、締めくくりの総合討論が行われました。発言に立った新日本婦人の会の高田公子会長は「安倍政権が強硬に改憲を急ぐのは、弱さの表れでもある。改憲の内容が知られるにつれて、反対の声も強まり、九条を守れという声はますます大きくなっている」と述べ、「九条の会」が全国で六千を超えていることなどを紹介。「慰安婦」問題など過去の過ちを教訓に平和を守る活動を強める決意を語りました。
米国から参加したロヨラ・メリーマウント大学の李鍾和教授は、米下院にホンダ議員が提出した「慰安婦」関連決議案について、「米国は第二次世界大戦後、戦略的な理由で日本の戦争責任を免罪してきた歴史がある。日本が責任をとるよう求めるホンダ議員の決議案は、重要な意味を持つ」と指摘しました。
( 2007年05月22日,
【ソウル=面川誠】韓国のソウルで二十日に始まった第八回日本軍「慰安婦」問題アジア連帯会議では、元「慰安婦」が証言に立ちました。
フィリピン人のピラール・フィリアスさん(80)は「日本の憲兵、警察がとても怖くて、行かざるを得なかった。腰をひもで結ばれて拉致され、抵抗するとなぐられた。鼻を刺されて、その傷跡が残っている。顔にたばこの火も押し付けられた」と発言。「狭義の強制性はなかった」とする安倍晋三首相の強弁に反論しました。
日本共産党の吉川春子参院議員は集会後、全国ネットテレビ局の三社など韓国メディアによる共同インタビューを受けました。吉川議員は、「安倍首相は訪米して『慰安婦』関連の発言について釈明したが、米国に謝るのはこっけいで意味がない。本心は変わっていない」と批判。「本当に謝るつもりなら、河野談話を正式に閣議決定して『慰安婦』への謝罪と補償を行い、野党が共同提案している『戦時性奴隷問題解決促進法案』を成立させる決断をすべきだ」と述べました。
新日本婦人の会の高田公子会長は文書報告で、「慰安婦」問題解決のための新婦人の活動を紹介。日本政府が「慰安婦」への国家補償を行い、教科書への記述を復活して歴史を正しく教えるべきだと強調しました。
バウネットジャパンの西野瑠美子共同代表は「安倍首相が『慰安婦』問題で明確に加害責任を口にしないのは、憲法九条を改悪して日本を新たな『戦争する国』にするために、戦争を肯定する国民意識をつくろうという思惑からだ」と発言しました。
( 2007年05月21日,
【ソウル=面川誠】韓国のソウルで二十日、「慰安婦」問題の早期解決とそのための国際連帯を目的とした第八回日本軍「慰安婦」問題アジア連帯会議が二日間の日程で始まりました。会議には日本、韓国、北朝鮮、台湾、フィリピン、インドネシア、オランダから非政府組織(NGO)代表や個人が参加し、米国、ドイツ、オーストラリアとアムネスティ・インターナショナルからオブザーバーが出席。「慰安婦」問題を解決するための各国での活動を報告し、運動の連帯を呼び掛けました。(7面に関連記事)
日本からは日本共産党の吉川春子参院議員、新日本婦人の会の高田公子会長らが参加しています。
開会式では主催団体、韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)の韓国〇・共同代表が歓迎のあいさつ。続いて北朝鮮、フィリピンの団体代表と吉川議員があいさつしました。
吉川議員は、これまで河野官房長官談話や教科書への記載など一定の前進があったものの、「これを快しとしない勢力、あの戦争は正しかったとする人々が、教科書への攻撃、『慰安婦』問題への攻撃をかけ、その人々が日本の権力の中枢を握りました。その中心人物が総理大臣になった安倍氏です」と指摘しました。
また、「『慰安婦』問題は日本ではまだまだ知られていません。憲法を守る運動とも連携して大きな運動にしていきましょう」と呼び掛け、日本共産党と民主党、社民党が共同で提案している「慰安婦」への謝罪・補償のための「戦時性奴隷問題解決促進法案」成立のために全力を尽くすと強調しました。
( 2007年05月21日,
大阪民主医療機関連合会九条の会共同センターは十八日、「従軍『慰安婦』問題学習会」を大阪市の同連合会会議室で開き、三十七人が参加しました。
池田信明センター長が安倍首相が「『従軍慰安婦』はなかった」と発言していることなどをのべ、「真実を知ってまわりの人たちに伝えていきたい」とあいさつ。
在日韓国民主女性会大阪本部事務局長の方清子(パン・チョンジャ)さんが「日本軍『慰安婦』問題が問いかけるもの―戦争と性暴力の歴史を通して考える」と題して講演しました。
方さんは、元「慰安婦」の朝鮮人女性の証言や日本政府の資料などから日本軍の関与は明らかで、「日本軍『慰安婦』」「日本軍性奴隷」の言い方が一番的確だと指摘。一九九〇年代以降の日本軍「慰安婦」問題解決への運動、安倍首相の発言や憲法を改悪し、戦争する国へと歴史を逆行させる最近の動きに「怖い状況がある。怒りの声をあげるかどうかが問われている」と強調しました。
参加者は、「九条が変えられようとしているときに何が真実かを見極める目をもつ必要があると感じた」と話していました。
(2007年05月20日,
国民学校一年生の会は十九日、日本共産党の吉川春子参院議員を講師に、「従軍慰安婦」問題について東京都内で勉強会を開きました。同会は戦時中、「昭和の少国民」として軍国主義教育を受け、戦後、新制中学校第一期生として「あたらしい憲法のはなし」を最初に学んだ世代が、「憲法九条を無傷で孫たちに手渡そう」という思いから一九九九年に結成しました。約五十人が参加した勉強会は今回で二十八回目を迎えました。
吉川議員は安倍首相が九七年、中学校教科書から「従軍慰安婦」の記述削除を求めたことや、現在も「強制性を裏付ける証言はない」と発言していることを指摘。これまで五十人超の「慰安婦」被害者と会ってきた吉川議員は、「安倍首相は事実を知ろうとしない」と批判しました。
また、安倍政権の中枢を「靖国」派が占めていることを挙げ、「侵略戦争や『慰安婦』の問題を放置している内閣を許していていいのかという世論づくりが必要」だと語りました。
吉川議員は「慰安婦」問題がクローズアップされてきた理由として、「日本政府の侵略戦争の無反省ぶりとともに、女性の人権侵害に対する世界の意識の高まりが重なりあって前進してきた」といい、「この問題を反省しなければ日本の女性の人権も向上しない」と語りました。
「被害女性がいちばん望んでいるのは真の謝罪」だと話す吉川議員は、日本人は戦争の被害者であると同時に加害の責任を負っているとし、加害の責任と向き合うことの大切さを訴えました。
( 2007年05月20日,
十七日の衆院教育再生特別委員会で、日本共産党の石井郁子議員が取り上げた日本青年会議所作製のDVDアニメ「誇り」。文部科学省が委託研究事業としているその内容は、日本の侵略戦争と植民地支配を正当化する言葉があふれています。
「愛する自分の国を守りたい、そしてアジアの人々を白人から解放したい。日本の戦いには、いつも、その気持ちが根底にあった気がする」。靖国神社の鳥居の前で、過去から来た青年がこう語ります。「戦後その思いは打ち消され『悪いのは日本』という教育がおとなにも子どもにも施され、しょく罪意識だけが日本人の心に強く焼き付けられてしまった」
子どもに影響
DVDでは青年の語りを通して、「日本は自国を守るためにやむをえず戦争した」「アジアを解放するための戦争だった」との主張が繰り返されます。朝鮮半島や台湾については「植民地支配」という言葉はなく、「日本はこれらの国を近代化するために道路を整備したり、学校を建設した」と述べています。「従軍慰安婦」や強制連行などの加害の事実にはいっさい触れていません。
DVD「誇り」は日本青年会議所が地方青年会議所との「協働運動」として進めている「近現代史教育プログラム」の教材です。同プログラムでは学校の総合学習などで中学生にこのDVDを見せたあと、会議所のメンバーがコーディネーターになって詳しい説明を加えながら討論。子どもたちから「日本を守るためには戦争をするしかなかったのではないか」「日本が自分の国を守るために戦争したなんて初めて知りました」などの感想を引き出しています。
この内容には、当の青年会議所の関係者からも疑問の声が出ています。同会議所のホームページで内容を知った地方青年会議所の関係者は「子どもたちを洗脳するようなもので、ひどいと思った。やめるべきだと思う」と語っています。
国が予算計上
文部科学省はこのDVDを使った教育プログラムを今年度の「新教育システム開発プログラム」の委託事業として採用しました。同会議所はさっそく「協働運動が文部科学省の研究事業に採択」と宣伝。学校の総合学習などの時間に、青年会議所のメンバーが教室に「誇り」のDVDを持ち込んで実践するよう全国的に呼びかけています。
「新教育システム開発プログラム」は、「あるべき新しい教育システムを提言するための調査研究をおこなう」として文科省が二〇〇六年度から実施。研究内容を公募し、採択された団体に委託費を提供します。今年度は青年会議所のほか地方教育委員会や大学などの七十六件が採択され、計約十五億円の予算が計上されています。
採択にあたって研究内容の審査をする文科省の有識者会議のメンバーには、青年会議所の池田佳隆前会頭が加わっています。
池田氏は、昨年六月に衆議院の教育基本法特別委員会で参考人として意見陳述をし、「戦後植え付けられたしょく罪国家意識を払しょくするために、近現代史教育プログラムを作成している」「いまの教科書では自虐的すぎる。そこのところを教育現場が放棄するのであれば我々が買って出る」と述べています。
首相「教育再生の参考に」
安倍首相は日本青年会議所の広報誌『We Believe』昨年十二月号で、当時の池田会頭と対談し、DVD「誇り」を受けとっています。
池田氏が、日本青年会議所が「美しき日本」をスローガンにしていることを紹介。安倍首相が「美しい日本」という同じ理念を掲げたことに期待を表明しています。
受け取った安倍首相は「教育再生の参考にぜひ拝見させていただきましょう」と話し、池田会頭は「美しい国づくりに生かしていただければ幸いです」とのべています。
「アジア解放が戦争の目的」/植民地支配一切触れず/DVDが語る主な内容
DVDアニメ「誇り」は、過去の戦争をめぐって高校生「こころ」が、過去から来た青年「雄太」から話を聞くかたちで進行します。2人は靖国神社へも出かけます。雄太が語る戦争の歴史とは―。
【日露戦争】
「領土拡大戦略として南下してきたロシアと、そのロシアから自分たちの国を守りたかった日本。その後、それぞれの思惑とは別に周囲を巻き込みながら、その後の大東亜戦争にまで発展していくんだ」
【日中戦争】
「ロシアは、中国大陸における覇権争いをしていた国民党や共産党をたくみに操り、さまざまな謀略を日本にしかけはじめた。そうとは知らない日本は中国大陸で抜けるに抜け出せない、泥沼のような戦いを繰り広げていくことになっていく」
【対米戦争】
「日本対アメリカを含む連合国軍との戦いを、当時、日本では東アジアの白人からの解放を大義目的にそう(大東亜戦争と)呼んでいたんだ」
「日本は亡国の道を歩むか、戦争に突入するか―二つに一つの決断を迫られ、アメリカをはじめとする連合国軍との戦争という苦渋の決断を強いられた」
【東京裁判・GHQ(連合国軍総司令部)】
「東京裁判は勝った国が負けた国を一方的に裁く復しゅう裁判だった」
「(GHQは)戦争で残虐行為を働いた凶悪な日本兵というイメージを日本国民に植え付け、洗脳していった」
靖国神社で、雄太は「愛する自分の国を守りたい、そしてアジアの人々を白人から解放したい―日本の戦いには、いつも、その気持ちが根底にあったような気がする」と語ります。
雄太の話を聞いた、こころはつぶやきます。
「私が今ここにいるのは、過去に日本という礎を築いてくれたたくさんの人たちがいたから…。そして大事なことは、正しい事実をきちんと知ること」
( 2007年05月18日,
【済南(中国山東省)=菊池敏也】中国人強制連行被害者およびその遺族、対日戦後補償裁判の弁護士らが十五日、中国山東省の済南市内で記者会見を開きました。四月下旬、日本の最高裁が中国人強制連行被害者および「従軍慰安婦」被害者の賠償請求を相次いで棄却したことに対して、「きわめて大きな憤り」と「強い抗議」を表明した抗議文を発表しました。
記者会見では、戦前に山東省から日本へ強制連行され、戦争後も十三年にわたり北海道の原野をさまよった劉連仁(故人)の遺族の劉煥新氏(中国人強制連行被害者でつくる「聯誼会」会長)が「聯誼会」の抗議声明を発表しました。「強制連行被害者の正当な要求と動かしがたい歴史事実を前にして、最高裁が国際法を無視し、中日共同声明を解釈したことは不当であり、無効だ」と批判。日中共同声明を「曲解」することは、中国人への「再度の加害」であり、氷がとけ始めた日中関係を冷え込ませるものだと非難しました。
北海道に強制連行された王子安氏は、山東省の被害者を代表し、抗議声明を発表。対日戦後補償裁判の弁護にあたってきた付強弁護士は、山東省弁護団の抗議声明を読み上げました。
( 2007年05月17日,
「国際非難知らなかった国民」の克服をめざして
日本の中学校で現在使用されている歴史教科書の八社版のすべてに南京大虐殺事件(南京事件と略称)について記述されている。
その中で、六社の教科書が「この事件は南京大虐殺として国際的に非難されましたが、国民には知らされませんでした」【東京書籍版】、「諸外国から『日本軍の蛮行』と非難されました(南京大虐殺)。しかし、このことは、日本国民には知らされませんでした」【帝国書院版】、「諸外国は、この南京大虐殺事件を強く非難したが、当時の日本人のほとんどはこの事実さえ知らなかった」【清水書院版】などと、南京事件が発生当時から世界に報道され、非難されたにもかかわらず、日本国民は知らなかったことを記述している。
今年は、南京事件七十周年にあたるが、日本国民の南京事件にたいする「歴史認識」は、教科書に記述された当時の状況からどれだけ進歩したであろうか。残念ながら七十年前の戦時中の状況からあまり進歩の見られない日本国民の意識状況を克服するために、南京事件の事実から目を背けることなく、「『負の遺産』と向き合い」「歴史の真実に向き合う市民レベルの交流を促進し、東アジアと世界における真の和解と平和に貢献できる二十一世紀の日本をつくるための大きな一歩になる」(呼びかけ文より)ことを願って、「南京事件七〇周年国際シンポジウム実行委員会」(代表・尾山宏)が昨年十二月に結成された。
ワシントンで第一回シンポ
第一回がワシントンで開催されたのを皮切りに、第二回がトロント(六月)、続いてフィレンツェ(九月)、ドイツのハレ大学(十月)、南京(十一月)、東京(十二月)、マニラ(二〇〇八年二月)、期日未定で韓国とマレーシアと、連続国際シンポジウムが予定されている。
連続国際シンポの第一回は三月三十日に、ワシントンのアメリカ平和研究所(米議会が設立)で、「過去の遺産に向き合い、東アジアにおける正義と和解を促進する」をテーマに開催された。報告者とタイトルは以下のとおり。
《第一パネル=償いと和解および歴史教育》尾山宏「東アジアにおける和解の促進と法の役割」、荒井信一「東アジアの歴史和解のために」、笠原十九司「南京事件の認識をめぐる日中歴史教科書対話への道」
《第二パネル=教育と和解において博物館が果たす役割》吉田俊「日本の戦争記念館と平和資料館」、西野瑠美子「『慰安婦』問題を記録するアクティブ・ミュージアムの取り組み」、金英丸「東アジア共同ワークショップと高知草の家平和資料館の活動」
シンポジウムは会場いっぱいの五十余名の参加を得て、午前九時から午後五時まで、報告に対するコメンテーターのコメントに続いて、参加者からの質問と報告者の応答と、活発な討論が行われ、連続国際シンポの第一回として大きな成果を収めた。
不正義に対処誠実だったか
コメンテーターと参加者の発言から日本に問われたのは、@民主主義社会で大切なのは、不正義にどう対処するかであるが、日本は過去の不正義の問題に誠実に取り組んできたといえるのか、A日本社会は「恥の文化」といわれているが、それならば「歴史における恥」も認識すべきではないか、B日本における戦争責任認識は保守か革新かのイデオロギー問題になっていて、人道主義の問題としてとらえられていない、C現在の日本政府は右傾化し、マスメディアもバランスを欠き、草の根保守主義が強まっているなど、日本社会を内部から変えるのは簡単ではないが、展望はグローバリゼーションにともなって東アジア社会の民主化を進めることであるが、そのためには「過去の負の遺産」の克服が不可欠である、等々の問題である。
(かさはら・とくし 都留文科大学教授)
「南京事件70周年国際シンポジウム」事務局は、東京都新宿区三栄町8の37(03・5842・1666)で、賛同、募金の協力を呼びかけています。
( 2007年05月17日,
戦時性暴力の被害と加害を集めた「アクティブ・ミュージアム女たちの戦争と平和資料館(wam)」(西野瑠美子館長、東京都新宿区)が、二〇〇七年度パックス・クリスティ平和賞を受賞したことを記念したシンポジウムが十六日、千代田区内で開催され、市民ら百三十人が来場しました。
「日本カトリック正義と平和協議会」とwamが主催しました。同館は〇五年八月に開館。受賞理由は「日本の戦時犯罪を明らかにし、戦争と紛争における女性への性暴力の現実を見据えて、平和のために『記憶の場所』を創造した」というものです。
パネリストとして、国際パックス・クリスティ副会長のマリー・デニスさんが発言し、「憲法九条は平和主義への政治的コミットメント(公約)として、最も重要な実例。米国は日本の軍事化を推し進めるのではなく、むしろ日本の模範に学ぶべきだ」と述べました。西野館長は「慰安婦」問題をめぐる米国での動きについて報告しました。
パックス・クリスティ平和賞は、カトリックの平和運動ネットワーク「国際パックス・クリスティ」が毎年、平和、正義、非暴力のために顕著な働きをした人たちなどに授与しています。
( 2007年05月17日,
日朝協会(渡辺貢代表理事)はこのほど、第四回全国理事会を開き、第四十回全国総会(六月九、十日、さいたま市)の成功など当面の運動を決めました。また、元日本軍「慰安婦」訴訟に関する最高裁判決に抗議する特別決議を採択し、島田仁郎最高裁長官に送付しました。
日本軍「慰安婦」にさせられた中国人被害者二人が、日本国政府を相手に損害賠償などを求めた訴訟に対し、最高裁は四月二十七日、原告の請求を棄却。判決は、日本軍による連行、監禁、強姦(ごうかん)や精神的・肉体的被害を認めましたが、一九七二年の日中共同声明で戦争賠償の請求権は放棄され、個人も裁判上訴求する権能を失ったとし、訴えを棄却しました。
特別決議は「個人請求権を認めず、裁判では扱わないとする不当な判決」だと抗議しています。
( 2007年05月16日,
中国海南島「慰安婦」訴訟控訴審の第一回口頭弁論が十五日、東京高裁(浜野惺裁判長)で開かれました。原告の中国人女性八人(うち二人死亡、遺族が継承)は戦時中、日本の植民地下にあった海南島で旧日本軍に性暴力を受けたとして、日本政府に対し損害賠償と謝罪を求めています。原告側弁護団は被害者の救済を訴えました。
弁護団の小野寺利孝弁護士は「『従軍慰安婦制度』を国家犯罪であるとみているのが国際社会の共通の認識であり、従来被害女性たちへの真摯(しんし)な謝罪と賠償をおこなうよう日本に対し勧告してきたのが国際世論だった」と指摘。
「官憲における強制連行という狭義の強制性を裏付ける証言はなかった」と発言した安倍首相に対し、「首相発言は、このような国際世論への挑戦と受けとめられた」と批判しました。
また、裁判所に対し、被害の真相・実相に肉薄し、日本が負うべき法的責任を明確に判断するよう求め、「独自の被害者救済の判決を目指していただきたい」と訴えました。
坂口禎彦弁護士は、同訴訟は「性奴隷とされた戦時中の被害について賠償を求めるとともに、日本政府が被害者らの名誉回復さえおこなわず、放置してきた戦後の行政不作為責任を問うもの」と主張。他の弁護士から「被害はいまも継続している」として、PTSD(心的外傷後ストレス障害)についての報告がありました。
東京地裁判決は二〇〇六年八月、戦時中の被害事実や加害行為による悪夢、どうき、恐怖など戦後も続く被害を認定しましたが、原告の請求をいずれも棄却しました。
( 2007年05月16日,
高校教科書の検定で、太平洋戦争末期の沖縄戦の「集団自決」に日本軍の強制があったとする記述に検定意見が付けられ、各教科書会社が修正した問題で、沖縄県の那覇市議会と糸満市議会は十五日、臨時議会を開催し、検定意見の撤回を求める意見書をそれぞれ全会一致で可決しました。
那覇市議会の意見書では、「沖縄戦における『集団自決』が日本軍による命令・強制・誘導等なしに起こりえなかったことは紛れもない事実」と指摘。「悲惨な地上戦を体験し、筆舌に尽くしがたい犠牲を強いられてきた沖縄県民にとって、到底容認できるものではない」と批判しています。
糸満市議会の意見書は「沖縄戦終えんの地で、激しい地上戦で多くの住民が犠牲になっ」たと述べ、政府の検定結果を「体験者による数多くの証言や、歴史的事実を否定しようとするもの」と厳しく批判。「直接の戦闘による犠牲とは別に、日本軍による『避難場所からの追い出し』や『米軍への投降の阻止』などでも多数の住民が死においこまれた」として、速やかな検定意見の撤回を強く要請しています。
また豊見城市議会も十四日の臨時議会で同様の意見書を全会一致で可決。「県民にとって、今回の検定結果は、歴史的事実を直視しない押し付けの教科書であると言わざるを得ない」と指摘しています。
政府の検定意見をめぐっては、沖縄戦を体験した生き証人から、「こんな教科書では沖縄戦の真実が伝わらない」との怒りが噴出。沖縄県内では沖縄戦の体験者の証言を聞き、歴史の真実を伝えるシンポジウムや集会が相次いで開かれ、六月九日には「沖縄戦の歴史歪曲(わいきょく)を許さない!沖縄県民大会」が予定されています。
各地で定例の六月議会が予定されており、沖縄戦の歴史改ざんを許さない沖縄県民の声と運動が広がっています。
「集団自決」の記述修正問題
二〇〇八年度から使われる高校教科書の検定で、沖縄戦の「集団自決」について五社七点の日本史教科書に対し、文部科学省は「軍が命令した証拠はない」などとして書き換えを命じました。このため各社は「強制」という表現や「日本軍」という主語を削るなどしました。
戦争を美化し「慰安婦」問題の教科書記述を攻撃してきた「新しい歴史教科書をつくる会」など右派勢力が二〇〇五年ごろから「集団自決」における日本軍の責任を消し去る策動を続けていました。
( 2007年05月16日,
江戸川区の小岩九条の会は十三日、「今、日本の戦争と慰安婦問題を考える」と題して第四回学習会を開き、二十四人が参加しました。
講師の歴史教育者協議会事務局長の大野一夫さんは、「慰安婦」問題のビデオを上映し、旧日本軍による「慰安婦」強制の事実を裏付けるとともに、自民党の政治家らが「侵略戦争は考え方の問題」「植民地時代、日本は韓国に良いことをした」「慰安婦は商行為、強制はない」など、強制を否定する発言を繰り返してきたことを説明しました。
大野氏は、安倍内閣の閣僚十八人中十五人が日本会議など「靖国派」の団体に所属している事実を指摘しました。
意見交換では、改憲手続き法案の理不尽さも出され、「このような話は日本人のすべての人々が知っておくべきだと感じた」「歴史教科書をどうやって変えていったか、年表を見てよくわかった」との感想が寄せられました。
(2007年05月15日,
【ソウル=時事】韓国青瓦台(大統領府)は十一日、靖国神社への供え物の奉納問題や従軍慰安婦問題などについて、「失望感と憂慮を禁ずることができない」とする尹勝容広報首席補佐官(次官級)の論評を大統領府のホームページに掲載しました。また、同補佐官は、名指しを避けながらも安倍晋三首相の歴史認識を批判しました。
論評は靖国問題に関し、「ハイレベルを含めた一部の政治家が最近、靖国に供え物を贈っていたという事実に接し、『アジア外交強化』という日本政府の言及に首をかしげる」と、安倍首相に対する不快感を表明。その上で、「供え物は参拝よりももっと刺激的だとの報道機関の指摘がある」として、供物奉納の行為を重く受け止めているとの認識を明らかにしました。
また、慰安婦問題について安倍首相が狭義の強制性を否定したことに対し、「被害者らの証言が数多くあるのに、日本政府の資料が発見されなかったという事実になんの意味があるのか。どれだけ熱心に過去の資料を探したのか」と反論しました。
教科書検定問題でも「相変わらず歴史を歪曲(わいきょく)し、韓日関係を損なう内容が少なからず含まれている」と批判。さらに、検定結果について「日本政府の主導で成り立っている」と断定しました。
( 2007年05月12日,
【ベルリン=中村美弥子】太平洋戦争中、日本占領下のインドネシアで、旧日本軍がオランダ人女性を組織的、強制的に「慰安婦」にしていたことを示す被害者証言が十日、明らかになりました。官憲が強引に女性を連行するような「狭義の強制性を裏付ける証拠はなかった」とする安倍首相の発言を覆すものです。
資料は、オランダの軍事法廷で使われた被害女性への尋問調書。ベルリン在住のフリージャーナリスト梶村太一郎氏がオランダで入手しました。
資料の中には、一九四四年にバリ島スマランからフローレス島に連行され、旧日本軍の慰安所で強制「売春」をさせられた女性たちの証言があります。警察に出頭を求められた若い女性約百人が身体検査を受けさせられ、そのうち十七人が軍の「慰安婦」にされました。慰安所では将校や憲兵の相手をさせられ、週百人に満たないと捕まって殴られたといいます。
日本占領下のインドネシアでの「慰安婦」問題は知られていましたが、記者会見で資料を発表した梶村氏は「被害者が戦後すぐに宣誓供述した原資料によって詳細が明らかになったのは初めて」と説明。「軍による強制性を裏付けるものだ」と強調しました。
( 2007年05月12日,
――憲法改定派はどんな日本をつくろうとしているか
日本共産党の不破哲三社会科学研究所所長が三日、「憲法施行六十周年記念岐阜講演会」でおこなった講演の大要を紹介します。この催しは、岐阜県労連などでつくる実行委員会が主催したものです。
安倍内閣の成立と憲法問題
みなさん、こんにちは。不破哲三でございます。(拍手)
岐阜にはこれまで選挙でおうかがいすることが多かったのですが、今日は憲法の話でまいりました。憲法実施六十周年の大事な日に、みなさんといっしょに憲法のことを考える、こういう集まりにお呼びいただきまして、本当にありがとうございます。(拍手)
私たちは、安倍内閣ができて憲法をめぐる情勢が大きく動いてきたなかで、この六十周年を迎えました。この内閣の言動をみても、首相が「自分の任期中に憲法改定を必ず実現する」とくりかえし強調するとか、その手続き法である「国民投票法」案を国会でしゃにむに押し通そうとするとか、たいへんあせった動きをみなさんの前で展開しています。
そのおおもとに何があるかを考えるうえでも、私は、安倍内閣の誕生に関連して、よく考える必要のある二つの問題が出てきていると思います。
一つは、安倍内閣の成立によって、靖国派≠ニいう特殊な集団が、憲法改定の動きの中心に躍り出てきたことです。その意味を、深くつかむ必要があります。
もう一つは、そのなかで、憲法改定派が私たちの日本をどんな国に変えるつもりなのか、この見取り図がかなりはっきりしてきた、ということです。
今日は、この二つのことに焦点をあてながら、憲法の問題を広い角度から考えてゆきたい、と思います。
憲法改定で、日本は世界でのどんな役割を担うことになるのか
(1)憲法改定の現在の筋書きをしっかりとつかむ
最初に考えたい大きな問題は、憲法改定で、私たちの日本は世界でどんな役目を担わされることになるのか、このことをしっかりつかみたい、ということです。
憲法改定は58年前からのアメリカ仕込みの計画
今年は、憲法実施の六十周年に当たる年ですが、憲法改定の話が始まったのは、いまから五十九年前、日本では新憲法ができてよかった≠ニ国民が祝っているさなかのことでした。どこで誰が始めたのかというと、アメリカの政府と軍部です。日本が憲法をつくったときには、アメリカとソ連との対決の情勢がまだはっきりしていませんでした。この対決がはっきりしてくると、アメリカが、すべてのことをソ連との対決の角度から考えはじめます。そうなると、つくったばかりの日本の憲法が邪魔になってきたのです。
それで一九四八年五月、アメリカの軍首脳部が担当部門にたいし、日本に軍隊をもたせるための方策を考えよ、という指示をだしました。それを受けた担当部門が結論をまとめ、その報告書をアメリカの政府・軍部が承認したのが、一九四九年二月でした。「日本の限定的再軍備について」という表題の報告書で、いまでは公開されていますが、そこには日本に軍隊を持たせるねらいとその方策が生々しい言葉で書かれています。
――極東でソ連と戦うとき、アメリカの「人的資源」の節約のため、日本に軍隊を創設する必要がある。そのためには憲法が大きな障害になる。憲法をすぐ変えるわけにはゆかないから、いまはまがいものの軍隊(限定的な再軍備)で間に合わせて、「最終的に」は憲法を変えて本格的な軍隊に進む道を考えよう――こういう方針書です。
これが、五十八年前のアメリカの決定でした。
だからみなさん。その後、日本では、最初は警察予備隊という名前で、まがいものの軍隊がつくられたでしょう(一九五〇年)。それが、「保安隊」になり、「自衛隊」になり、いまのように大きくなってきた。これらは全部、五十八年前にアメリカが決めた筋書きに沿って、おこなわれてきたことでした。
そして、いよいよ、「最終的」な目標とされてきた憲法改定と本格的な軍隊の創設が日程にのぼってきたわけで、これも、アメリカの発案、アメリカ仕込みの計画なのです。
日本が参加するアメリカの戦争の筋書きが変わってきた
いま見たように、憲法改定の根本のねらいは、アメリカの戦争のために日本に軍隊を持たせること、日本を、アメリカと肩をならべて戦争のできる国≠ノ変えようというところにあることです。このことは、五十八年前の最初の決定から今日までまったく変わっていません。しかし、ここで注意して見なければいけないのは、日本をどんな戦争に参加させるのか、この筋書きは、以前の時期といまでは大きく変わってきました。
以前の、ソ連が存在し米ソ対決≠ェ世界の大問題だった時期には、日本の参戦が問題になるのは、アメリカとソ連とのあいだに世界的な戦争が起こったときの話でした。そのとき、日本の軍隊を米ソ戦争に動員して、極東や日本周辺で米軍と一緒に戦えるようにしようというのが、この時代の筋書きでした。だから、一九六〇年に結んだ日米安保条約には、日本とその周辺でことが起きたときには「日米共同作戦」をおこなうということが、条約に書き込まれました(第五条)。当時の計画では、「共同作戦」の発動地域は日本とその周辺でしたから、「自衛」の戦争だという言い訳の看板もある程度は使えたのです。
しかし、そのソ連が、十六年前の一九九一年に崩壊してしまったのです。しかし、対ソ戦の筋書きは消えても、アメリカの戦争計画そのものはなくならず、新しい筋書きがつくられました。そして、日本をアメリカと肩をならべて戦争をする国≠ノ変えるという以前からの目標が、今度は、この新しい筋書きに沿って追求されることになったのです。
では、その新しい筋書きとはなにか。
アメリカが新たに立てた世界的な戦争計画は、「先制攻撃戦略」と呼ばれるものです。どういうことかというと、世界には、アメリカの立場から見て気に入らない″曹ェいくつもあります。そういう国にたいして、アメリカの方から先手を打って戦争をしかける、という戦略です。相手が攻撃してきたから打ち返すという戦争でもない、自国や同盟国を侵略行動から防衛する戦争でもない。気に入らない″曹つぶすために、アメリカの方から戦争をしかける、という戦略です。
アメリカは、二〇〇一年には、アフガニスタン戦争を始めました。アメリカのニューヨークやワシントンがテロ攻撃を受けた。そのテロへの仕返しということで、アフガニスタン政府をその責任者だときめつけて、その十分な証拠もないまま、戦争をしかけました。この戦争は、テロを根絶するどころか、テロ勢力をふくれあがらせただけでした。
二〇〇三年には、イラクのフセイン政権が気に入らないということで、イラクには大量破壊兵器があると言いたてて戦争をしかけました。アメリカのこの言い分がウソだったことは、いまではアメリカ政府自身も認めています。そして、戦争の結果は、イラク全土をテロと内戦の惨憺(さんたん)たる状況に変えました。
これが、アメリカの先制攻撃戦略の現実の姿ですが、日本の憲法改定の筋書きも、こういった先制攻撃戦争に日本の軍隊を動員するということに、内容が変わってきました。
だからみなさん。いまの海外派兵では、以前のように、「自衛」という言い訳は消えてしまいました。以前は、安保論議といえば、「日本有事」とか「極東有事」とかの話がしきりだったものですが、いまはそんなことはどこかへ行ってしまいました。遠い中東やインド洋の話、そこでアメリカが戦争を始めたとき、日本はこの戦争にどうやって参加するのか、そういうことばかりが、海外派兵論議の中心になっているでしょう。
そして、実際、誰が見ても日本の安全とは直接のかかわりのない遠い地域の戦争に、日本がどんどん軍隊を出すようになったのです。アフガニスタン戦争の時には、海上自衛隊を出動させ、いまでもインド洋でアメリカやイギリスの軍艦に油を供給するなどの支援活動をやっています。続いて、イラクの戦争では、陸上自衛隊と航空自衛隊を派遣しました。陸上部隊はすでにサマワから引き揚げてきましたが、航空部隊の方はいまでもイラク周辺に居つづけて、米軍への補給活動などにあたっています。
こういう海外活動は、日米安保条約でも予定外でした。ですから、この新しい筋書きで自衛隊の海外派遣を実行するときには、政府は、次々に新しい法律をつくらざるをえませんでした。
この十年足らずのあいだに、海外派兵の新しい法律が三つできました。最初は一九九九年の「周辺事態法」です。ガイドライン法とも呼ばれましたが、これで、自衛隊の出動範囲について「極東」などのこれまでの枠組みをはずしてしまいました。次が、二〇〇一年の「テロ対策特別措置法」で、この法律を根拠にして海上自衛隊をインド洋に派遣しました。二〇〇三年には、「イラク特別措置法」をつくり、イラクとその周辺に陸上部隊、航空部隊を送りました。こうして、特別の法律を三本も用意して、自衛隊がアメリカの戦争に加われるようにした、これが、この八年間に自民党政治がやってきたことです。
いまの憲法の平和条項をごまかしの解釈論ですりぬけて、自衛隊をつくり、大きくすることは、歴代の自民党政権が長くやってきたことですが、憲法のもとで海外に自衛隊を出してアメリカの戦争のお手伝いをする、そこまでやった政府は、「周辺事態法」以前にはありませんでした。憲法のごまかし解釈を無理押しでそこまで広げてきたのです。
憲法改定の目的は、「アメリカと肩をならべて戦争をする」同盟国になること
しかしみなさん。そこまでやっても、いまの憲法があるもとでは、どうしてものりこえられない壁があるのです。自衛隊を海外に出しても、「アメリカとともに戦争をする」ことだけはできません。それは、海外派兵の三つの法律にも規定されていることです。
周辺事態法、テロ対策特別措置法、イラク特別措置法――三つの法律をならべて読んでみますと、どの法律にも最初に「基本原則」という章があって、第二条第二項に、同じ文章で次のことが規定されています。
「対応措置の実施は、武力による威嚇又は武力の行使に当たるものであってはならない」。
要するに、出動した部隊がいろいろな事態に対応する場合、武力を使うとか、武力で相手を脅すとか、そういうことはやってはいけない、という規定です。これが、憲法の制約なのです。自民党政治がいくら厚かましくても、「武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」(第九条)と定めた憲法が現存している以上、海外派兵の法律に、この原則を書きこまざるをえなかったのです。
だから、インド洋に軍艦を出したが、かりに相手側の軍艦が現れたとしても、アメリカの軍艦といっしょに大砲を撃つわけにはゆかない、イラクに陸上部隊を出したが、戦闘行為をするわけにはゆかない。海外の戦場に出かけること自体が憲法違反なのですが、それをあえてやっても、戦闘行為の禁止という点では憲法に縛られた形でしか動けない、その枠組みで自衛隊を出動させているのが、いまの実態なのです。
もともとアメリカが五十八年前に憲法改定の方針を決めたのは、アメリカの「人的資源」の節約が大目的でした。ようやく部隊が出てくれるようになったのはありがたいけれども、戦争ができない状態での派兵では頼りにはならない。やはりアメリカと肩をならべて、大砲やミサイルも撃ち、テロ部隊を攻撃する、そこまで進んでくれないと、本当の同盟国とは言えない=Bこういうことで、海外派兵が現実の問題になってくると、アメリカの圧力は、いちだんと本格的になってきました。それに応えるには、もう憲法を変える以外に道はない。ここに、いま憲法改定が、自民党政治の熱い問題になってきた最大の根拠と理由があります。
普通の常識的な見方でいえば、米ソ対決の時代の方が、世の中はよほど物騒だったはずです。しかし、その時代には、自民党政府も、憲法改定を現実の政治問題にするところまでは進みませんでした。それが、ソ連がなくなり、世界的な戦争など問題にならなくなった時代に、憲法改定が急に大問題になってきた。その理由は、ソ連崩壊のあと、先制攻撃戦略という新しい戦争計画に乗り出したアメリカの新たな戦略方針のなかにあるのです。アメリカの気に入らない″曹フリストには、アジア地域の国が多く含まれています。その国をつぶす戦争を始めたときに、アジアの同盟国である日本が、いっしょに戦争のできるしっかりした仲間になってほしい。この要求です。
憲法改定派は、ことの真相をかくすために、九条改定の口実をいろいろ持ち出します。しかし、その口実はどれもすぐ底の見えるごまかしばかりです。憲法改定の本当の動機と目的が、「肩をならべて戦争のできる海外派兵を」というアメリカの要求にあることは、かくしようもない事実です。私たちは、憲法改定のこの真相をしっかりつかんで、憲法をまもる運動に取り組んでゆきたい、と思います。
(2)憲法改定は世界平和への逆流
では、日本が憲法を改定してそういう役目を引き受けることにたいして、世界はどう見ているでしょうか。
改憲派の言い分を聞くと、どの国でも軍隊をもつのは当たり前のこと、それを憲法に書き込むのも当たり前のこと、だから世界はこの動きをなんの心配もなしに喜んで見ている、こんな説明です。
しかし、事実はまったく違います。日本の憲法改定の動きにたいする世界の目には、たいへんきびしいものがあります。私は、そこには、大きくいって二つの理由があると思います。
参加する戦争はアメリカの先制攻撃戦争
第一は、日本が参加しようとする戦争の性格の問題です。
以前の米ソ対決の時代には、発達した資本主義国の大部分が、アメリカと軍事同盟を結んでいる国ぐにでした。ヨーロッパでいえば、NATO(北大西洋条約機構)という軍事同盟があって、ソ連と対決する態勢にありました。だから、この時代に、日本がアジアでの米ソ対決の一翼をになって軍事的役割をより積極的に果たすということなら、共同の事業への貢献として好意的に見る、というのが、軍事同盟仲間のあいだでは、おそらく大方の空気になりえたでしょう。
しかし、いまはまったく違っています。
たとえば、イラク戦争のときに、世界の国ぐにがどういう態度をとったかを、ふりかえって見てください。ヨーロッパでのアメリカの軍事同盟仲間のあいだでも、ドイツやフランスは最後まで戦争に反対し、賛成したのは大きな国ではイギリスだけでした。そのイギリスの政府も、開戦の真相が明らかになったいまでは、アメリカの偽りの開戦理由をなぜ認めたのかを追及されて、政府がたいへんな窮地におちいっています。
だいたい、この戦争は、アメリカが国連の決定なしに勝手に始めた戦争でした。これが間違った不正義の戦争だったことは、いまや世界の常識になっており、アメリカでさえ、世論でも議会でも、この声が多数になっています。
そして、いまの世界では、国連憲章というものが、非常な重みを持ってきています。
国連憲章には、世界であれこれのもめごと(紛争)が起きたときに、平和的に解決する段取りを定めています。相手がどうしてもルールにしたがわない無法な国で、武力を使わざるをえないという時にも、侵略にたいする自衛の行動以外には、個々の国が勝手に武力に訴えることはきびしく禁じています。国連で集団的な議論をつくし、そこでのまとまった決定にしたがって行動する。こういうルールができているのです。
ところが、アメリカの先制攻撃戦略というのは、国連の決定がなくても、アメリカの意志で勝手に戦争を始めるという単独行動主義が行動原理になっています。アメリカは、イラク戦争では、まさにこういうやり方で戦争を始めたわけですが、国際社会では、それが大国の勝手横暴として強い批判にさらされています。
世界は、変わっているのです。
当のアメリカでさえ、イラクでは無法なやり方で戦争を始めましたが、ほかの問題では、同じような乱暴なやり方をするわけにはゆかなくなっています。たとえば、北朝鮮の核ミサイル問題では、交渉による平和的解決を優先させる態度で、強硬路線一本やりの日本外交をあわてさせるといったことも起きています。
こうして、アメリカの先制攻撃戦略が世界の批判にさらされている時に、日本の自民党政治は、こともあろうに、自分の憲法まで変えて、先制攻撃戦争に参加する道を開こうとしているのです。日本が参戦しようとしている戦争の性格を考えたら、このくわだてが、世界の大多数から理解されたり、好意的な目で見られたりするはずがないことは、すぐ分かることではありませんか。
世界のこの変化には構造的な基盤がある
ここで、世界がどう変わってきたのか、なにがその背景にあるのか、現在の新しい状況について、もう少し立ち入って見ておきたいと思います。
やはり世界の構造が大きく変わったのです。その構造からいっても、いまの世界は、もはやアメリカ一国で動かせる世界ではなくなっています。
私たちは世界を見る時に、社会的な姿の似た国ぐにを一つにまとめてみるという見方をよくします。そうしますと、一つは、日本やアメリカ、ヨーロッパ諸国のような発達した資本主義の国ぐに、次に、中国、ベトナム、キューバなど社会主義をめざしている国ぐに、さらに、かつては植民地・従属国の立場にあったが二〇世紀に独立をかちとったアジア・アフリカ・ラテンアメリカの国ぐに、最後に以前の体制が崩壊した旧ソ連・東欧圏の国ぐに、世界は四つのグループに分かれます。こうして見ると、いまの世界の動きが見やすいのです。
まず発達した資本主義の国ぐにですが、人口はあわせて九億人、地球人口六十二億人のうち七分の一ほどです。この国ぐには、以前は世界政治の上で、アメリカのがっちりした同盟国として一致した行動をとるのが普通でした。しかし、いまでは様子はすっかり違って、イラク戦争の場合には、アメリカに同調したのは、日本とイギリス、イスラエルぐらいでした。ほかの国ぐには、ソ連との対決の時代には、仲間割れすると具合が悪いから、多少無理があってもアメリカのいうことを聞いたが、対抗相手のソ連がなくなったいま、その必要はなくなった≠ニ言って、どんな政治問題でも、自分の国なりの立場を堂々と主張する。資本主義のすすんだ国ぐにでも、自主独立が当たり前になったのです。
社会主義をめざす国はどうか。人口は約十四億人、発達した資本主義の国ぐにの一倍半の大きさをもっています。この国ぐには、アメリカの道理のない勝手な行動には賛成しませんし、国連での合意のない先制攻撃戦争などには、もちろん反対です。しかも、世界政治の上では、この国ぐにの存在の重みはいよいよ大きくなっています。
経済でも、その発展の速さ、大きさはたいへんなものです。世界の国の経済力をくらべるのに、国内総生産(GDP)という数字がよく使われますが、この国際統計を扱っている国際機関(国際通貨基金・IMF)が、いまのGDPは経済の実力をよく表していない、本当の実力を比較するには、各国の物価の違いを考慮にいれたものが必要だといって、GDPの新方式の数字を発表しはじめました。普通のGDPでは、各国の順位は、一位アメリカ、二位日本、ずっとさがって六位中国といったところですが、新しい実力GDPではなんと一位アメリカ、二位中国、三位日本と、大逆転です。その逆転ぶりも、世界経済に占める比重が、アメリカの20%にたいして、二位の中国は15%と激しくせまり、三位の日本はぐっと遅れて6%というのです。世界経済の変わり方がまざまざと分かります。こういう状況ですから、世界政治も、これらの国ぐにを無視しては成り立ちません。
アジア・アフリカ・ラテンアメリカの国ぐにについていうと、総人口は三十五億人、地球人口の半分以上です。長いあいだ外国の支配に苦しんでいた国ぐにですから、イラク戦争のような大国の横暴勝手――世界政治では覇権主義という言葉で呼ばれますが、覇権主義は認めない、という声が圧倒的です。ここでは、以前は、ラテンアメリカがアメリカの支配下におかれた大陸となっていたのですが、一九九八年にベネズエラにチャベス政権が生まれたのを転機に、南アメリカで左派政権の勝利があいつぎ、この大陸がいまや自主独立の勢いのもっとも強力な地域に変わってきました。
最後に旧ソ連・東欧圏の国ぐにですが、ヨーロッパに向いている国ぐにがある一方、中央アジアを中心に、中国と「上海協力機構」をつくってアジアの国ぐにの仲間入りをしようとする国ぐにもあります。
世界は、二一世紀を迎えて、こういう構造的な変化をとげているのです。その変化が、アメリカの勝手横暴を許さないという流れの土台となっています。そして、いまや「自主独立」というのは、この世界の共通語になっているといってもよいでしょう。その世界で、日本が、「同盟国」だからアメリカのやることにはなんでも賛成し、アメリカの戦争に武力をもって参加できるように、憲法まで変えようとする、この動きは、世界の多くの国、また国民の目から見ると、ほんとうに異常なことに見えるのです。
みなさん。憲法闘争に取り組むさいにも、これがいまの世界だということを、しっかりと見てほしいと思います。
靖国派≠ナ固めた安倍内閣
憲法改定が、世界からきびしく見られているもう一つの理由は、靖国派≠ェ政権をにぎり、憲法改定の動きの中心にすわった、という問題にあります。
はじめに靖国派≠フことを言いましたが、中身には触れませんでした。ここで中身の解説をしておきましょう。
靖国派≠ニいうのは、日本が過去にやったアジア侵略の戦争を、すばらしい正義の戦争だった、「自存自衛」と「アジア解放」の戦争だったと思い込んでいる人たちのことです。この正義の戦争§_の最大の発信地が靖国神社であり、靖国神社の参拝を自分たちの信念の証(あかし)としていることから、靖国派≠ニ呼ばれるのです。
こういう潮流は、前から自民党のなかには根強くありました。しかし、この潮流があらためてその力を結集し、いろいろな画策をはじめたのは、九〇年代の中ごろからです。日本の戦争についての国内国際の議論が広がるなかで、一九九三年、「従軍慰安婦」問題で過去の行為への反省の態度を明らかにした河野官房長官談話が発表され、一九九五年、日本が侵略と植民地支配の誤った国策をとったことを確認し謝罪した村山首相談話が発表されました。この二つの談話は、不十分な点はあっても、日本の政府として、日本がやった戦争は間違いだった、朝鮮や中国、東南アジアにたいする植民地支配はまちがいだったということを、はじめて公式に認めたものとして、大きな意義をもちました。ところが、靖国派≠ノとっては、この二つの談話はがまんできないものでした。これをひっくりかえせ、取り消させろと、そこから靖国派¢轟居Wの動きが始まったのです。
この動きはいろいろな形で進みましたが、九七年に、靖国派≠フ二つの重要な組織が生まれました。一つは、「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」です。それから十年、当時の若手≠熄\年たてば中年♂サしますから(笑い)、あとで「若手」の言葉はとりましたが、こういう会をつくって、日本の戦争は間違っていたという考えを子どもたちに教えるのはけしからん、教育を立て直せ、こんな運動を猛烈に始めたのです。
同じ年に、「日本会議」という組織とその国会版である「日本会議国会議員懇談会」(「日本会議」議連)とができました。この「日本会議」は、歴史教育の問題をはじめ、各分野にできていた靖国派¥白c体のいわば総元締めとなる組織です。靖国神社の戦争博物館・遊就館で戦争賛美のビデオを映写していますが、その製作者にも「日本会議」がくわわっています。そういうことまでやる正真正銘の靖国派≠フ組織なのです。
安倍内閣には、靖国派≠フ運動の中心をになって、政治をその方向に推し進めてきた人たち、しかも、靖国派≠フ若手で、いちばん行動的で、推進役となってきた人たちが集団をなして入っています。
調べてみますと、十八人の大臣のうち、靖国派♂^動の総元締めである「日本会議」議連のメンバーが十二人、「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」のメンバーが七人、それ以外の大臣も、多くは靖国派£c体のなにかに入っていて、この種の組織と関係がないのは、三人だけです(そのうち二人は、公明党出身の大臣と非議員の大臣)。
この内閣の靖国派≠ニの深い関係を見るために、例の「歴史教育」うんぬんの「会」の創立時の名簿を調べてみました。この会で「代表」という名の会長役をやっていたのは、現在の自民党政調会長の中川昭一氏です。「事務局長」が安倍晋三首相、「副代表」の一人が、高い水≠飲んでいることで有名になった松岡利勝農水相、「幹事長代理」のなかには、女性大臣の高市早苗さんがいますし、「委員」には、菅義偉総務相、長勢甚遠法相、渡辺喜美行革担当相が名をつらね、塩崎恭久官房長官もオブザーバーとして参加していました。これらの人たちはみな「日本会議」のメンバーでもあり、いわば筋金入りの靖国派≠ニいうところでしょうか。
戦前・戦時の「国柄」(国体)にもどりたい
安倍首相をはじめこれだけ靖国派≠ナ固めた内閣が生まれたのは、日本の政治のうえではじめてのことでしょう。この靖国派%煌tが憲法改定運動の中心にすわったのです。
この人たちは、もちろん憲法改定のもっとも熱烈な推進派です。とくに平和条項である九条にたいして、激しい敵意をもっています。
安倍首相に言わせると、いまの憲法は連合国にたいする「詫(わ)び証文」だとのことですが、この人たちの目には、前文にうたわれた日本の戦争にたいする反省の言葉――「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにする」との国民的決意の表明や、その反省をふまえ、世界にさきがけて戦争の放棄と戦力の不保持を宣言した第九条などは、真っ先に破り捨てるべき「詫び証文」の最悪の部分として映るのでしょう。だから、靖国派≠ェ、憲法九条の問題でも、もっとも極端な改定派であることは疑いありません。
しかし、靖国派≠フ憲法論には、九条の問題にはとどまらない大問題があります。
この人たちは、日本が過去にやった戦争をすばらしい戦争≠ニ思い込んでいると同時に、あの戦争をやった日本の国家と社会を「美しい国」だったと思い込んで、これをあこがれの対象にしているのです。
天皇を頂点にいただき、子どもたちと一般国民は「教育勅語」で、軍人・兵隊は「軍人勅諭」で統一され、国全体が一致団結していた、社会的には職場も家庭も「オトコ社会」の秩序できちんと統制されていた、それが日本という国の美しい伝統だった、こういう思い込みとあこがれが靖国派≠フ発表したあらゆる文章からあふれ出ています。彼らによれば、いまの憲法の罪は、九条の平和条項だけではなく、民主主義の体制をもちこんで戦前・戦時の美しい社会秩序を過去のものとしてしまった、ここに大きな罪があるのです。
「日本会議」が、自分たちの運動目標をしめしたものに、「日本会議のめざすもの」という文書があります。その冒頭にあるのは、「美しい伝統の国柄を明日の日本へ」という章で、日本の「国柄」を、「私たち日本人は、皇室を中心に民族の一体感をいだき国づくりにいそしんで」きたと説明しています。次の章「新しい時代にふさわしい新憲法を」では、その「国柄」論を受けて、「歴史的に形成された国柄を反映」するのが国の基本法・憲法だと強調しています。「国柄」というのは、「日本会議」の好きな言葉で、安倍首相もよく使いますが、これは何かというと、戦前・戦時の「国体」の言い換えなのです。戦争終結のときには、日本の支配層にとって「国体護持」が大問題でしたが、「国体護持」はならず、いまの憲法は、明治憲法による天皇主権(主権在君)の「国体」を、国民主権(主権在民)の政体に根本的な転換をさせました。靖国派≠ヘ、これが気に入らないのです。伝統的な国柄(国体)、戦前・戦時の国家と社会にもどりたい、これこそ靖国派≠支配している願望です。
安倍首相は、自分の政権の目標として「美しい国、日本」という言葉をかかげました。この源(みなもと)が「日本会議」の「美しい伝統の国柄」という言葉にあることは、もうお分かりでしょう。安倍首相が、「戦後レジームの打破」、「戦後体制からの脱却」などのスローガンを連発しているのも、戦前・戦時の体制へのこの願望を表したものです。
ここに、靖国派≠フ憲法改定論の本音があります。
戦争への反省の取り消し、軍隊と交戦権の復活、戦前・戦時の体制の回帰を結びつければ、靖国派≠フ「美しい国、日本」路線のゆきつくところは、あの軍国主義日本の復活そのものではありませんか。
靖国派≠フ「正義の戦争」論は世界が許さない
靖国派≠フこういう考えや動きを、世界はどう見ているでしょうか。
実は、一昨年、小泉内閣のもとで、靖国参拝問題が深刻な外交問題となったとき、世界は、その根底に、日本の戦争にたいする評価の見直しという大問題があることには、ほとんど気づいていませんでした。中国・韓国と日本のあいだの特殊な外交問題といった扱いをされることが多かったのです。同様な状況は、日本の国内でもかなり広くありました。
私たちは、日本の外交をゆきづまらせているこの危機を解決するためには、この状態を放置しておくわけにはゆかない、と考えました。そこで一昨年五月、日本共産党の新しい会館を会場にして、公開の時局報告会をひらき、靖国問題で日本はなにを問われているかの解明をすることにしたのです。報告会には、東京にいる外国の特派員や各国の大使館も広く招待しました。そこで、私が報告者になって、靖国参拝問題の本質は、過去の日本の戦争の名誉回復という靖国派≠フ野望にあること、靖国神社そのものが遊就館という付属の戦争博物館を持っていて、ここが「正義の戦争」宣伝の最大の拠点となっていることなどを、事実をもって明らかにしました。
私たちは、この会のあと、そこでおこなった報告を、自民党の有力議員をはじめ、日本の各界にも広く届けて読んでもらう努力をしました。英訳の冊子もつくって、各国の大使館の方々やジャーナリストのみなさんにも読んでもらいました。外国の方々の反響の大きさ、強さには、私たちが驚くほどのものがありました。だいたい、それ以後、遊就館への外国の訪問者がぐんと多くなって、あそこがにぎやかになった、と聞きました(笑い)。外国の記者さんたちが現場へ出かけはじめた(笑い)。外国特派員協会の方から聞いたことですが、ある記者は「私たちはいままで遊就館を見ないで、靖国問題の記事を書いていた。これは恥ずかしいことだった。見てはじめてことの真相がわかった」と語っていたとのことです。
このころから、靖国問題についての世界のマスコミの論調には、大きな変化が現れました。私たちが靖国派%ニ特の歴史観、戦争観を靖国史観≠ニいう言葉で呼ぶことにしましたら、この言葉がそのままアメリカや中国の新聞でも使われるようになりました。世界の平和秩序の立場からいっても、日本でのこの靖国史観≠フ横行をほうっておくわけにはゆかない、ということが、世界政治の重要な問題の一つとなり、アメリカの議会でも、この問題がくりかえし取り上げられるようになりました。
だいたい、戦後の世界は、日本・ドイツ・イタリアの三国がアジアとヨーロッパでおこなった空前の侵略戦争への告発と、その誤りを二度とくりかえさせないという反省のうえに成り立っています。その教訓にもとづいて平和な秩序をつくろうということで、国連憲章が定められ、国連という国際組織の活動も始まったのです。靖国派≠フように、この結論をくつがえす立場を日本がもしとるとしたら、それは、現在の世界秩序の外へ身をおくのと同じことなのです。
反響といえば、自民党の内部からも、「共感を禁じえない」「靖国派≠フ人びとの手で憲法改定がやられたら、日本はどんなことになるのか怖くなった」など、思わぬ反響が続々と寄せられ、自民党という政党も、決して一枚岩ではないのだな≠ニいうことを実感する(笑い)など、心強い思いをしたものです。
靖国派%煌tの成立は新たな国際的亀裂を生みだす可能性がある
安倍首相は、首相になる前には、村山談話や河野談話を攻撃する急先鋒(せんぽう)となってきた一人でした。しかし、この問題で日本外交が窮地に追い込まれた最中に首相に就任したわけですから、その危機を解決しないと内閣が成り立ちません。そういう状況のなかで、この問題については、自分の立場に一定の訂正をしなければなりませんでした。ですから、就任直後の国会で、日本共産党の志位委員長の質問にこたえて、村山談話についても河野談話についても、「その立場を引き継ぐ」ことを明確に公約しました。また、その公約を前提にして、中国および韓国との首脳会談を再開し、この二つの国との政治交流に道を開くことができました。私たちは、安倍首相のこの態度表明を歓迎するとともに、その態度を行動で表し、内閣としてこの表明と矛盾する言動はおこなわないことを強く要求してきました。
ただ、安倍首相のこの態度表明は、内心の問題というか、本音の問題まで解決したものではありません。だから、過去の戦争や植民地支配への評価にかかわる問題でも、本音の部分がつい表に出たりします。「従軍慰安婦」の問題で、安倍首相が「軍による強制連行はなかった」などと、歴史の事実にも河野談話にも反する言明をしたのは、その典型的な事例でした。これには、アジアの国ぐにだけでなく、アメリカが強烈な反応をしました。
安倍首相は、訪米のさいに、いろいろ言い訳をしたようですが、靖国派≠フ言動にたいしては、以前とは違って、世界はその実態を知ってきびしい目で見るようになっています。その靖国派≠ェ日本の政治の主導権をにぎり、憲法改定の中心にすわったいま、そのことが国際的な舞台でさまざまな矛盾や亀裂を生みだす可能性があります。このことは、これからよく注意して見てゆく必要のある問題です。
「戦後レジームの打破」論にアメリカの言論界から批判が
先日、「東京新聞」(四月八日付)に――みなさんがご覧になっている「中日新聞」と社が同じですから、同じものがそこにも出ていたと思いますが――、ジェラルド・カーティスというコロンビア大学教授が、「安倍訪米と歴史問題」という文章を書いていました。私は、この文章を非常に印象深く読みました。
大事な点は、二つありました。
一つは、「従軍慰安婦」の問題で、安倍首相に、自分の発言がアメリカの世論に大きな怒りを呼び起こしていることを軽視するな、と警告していることです。カーティス氏は、安倍首相は、いったい安倍は「日本の戦時責任」についてどう考えているのかという問いを、自分の発言によって「米国人の意識の前面に押し出したのである」と強い言葉で語っています。そして言葉を重ねて言います。「アメリカの現状はもっと厳しい。日本軍が女性たちを『性の奴隷』にしたとの非難に対して、安倍首相が日本軍の弁護をしようとしたようにみえることが、『左』の人々のみならず広範囲な米国人の横断的な怒りを招いている」。
もう一つは、カーティス氏が、安倍首相の「戦後体制」打破論にたいして、きびしい批判の論を展開していることです。「首相は『戦後レジームの脱却』を掲げているが、民主主義国のリーダーが自分の国のレジーム・チェンジ(体制変革)を求める意味は理解しにくい」。安倍はいったい、戦後日本につくられた民主主義の体制を否定するつもりなのか。「安倍首相が捨てたがっている戦後レジームの何がそんなにひどいのか、ぜひ説明してほしい」。ここまで書いています。
私は、憲法改定につながるこの問題について、アメリカの、日本の政治・社会状況をよく知っている知識人が、これだけ痛烈な批判の声をあげたということには、たいへん深い意味があると思って、この文章を読みました。
アメリカは、全体として言えば、九条改定論の原動力とも最大の推進力ともなってきた国です。しかし、そのアメリカの側から見ても、まだ一人の知識人の声であるとはいえ、戦前・戦時の社会と国家をほめたたえ、そこに戻りたいという願望を政治の大きな指針としている現政権の動きにたいしては、非常に敏感な警告の反応が返ってくる。ここには、さきほど述べた、靖国派≠フ登場がもたらす国際的な亀裂への一つの予告があるといってよいでしょう。
いくつかの面から、日本の憲法改定の動きへの世界の見方を紹介してきました。結論的にいえば、アメリカの先制攻撃戦争に武力をもって参加しようという企てだという点でも、戦争をやった戦前・戦時のあの日本にもどりたいという反動的な願望の現れだという点でも、憲法改定派の動きは、まさに二重の意味で日本を世界から孤立させる道にほかなりません。このことを深くつかんで、憲法をまもる私たちの運動をすすめてゆきたいのであります。(拍手)
──憲法改定派はどんな日本をつくろうとしているか
憲法改定派は、日本をどんな国にしようとしているのか
次の問題に進みます。憲法改定によって日本はどんな国になるのか。あるいは、憲法改定派は、日本をどんな国にしようとしているのか。これも、私たちがよくつかんでおく必要がある問題です。
九条の改定が、日本を「戦争をする国」に変える、とくにアメリカがたくらむ先制攻撃戦争に、アメリカと肩をならべて参加する道を開くということは、さきほど話しました。ここでは、それにくわえて、日本の社会全体から見た憲法改定の意味――憲法改定がどんな国づくりに道を開くのかという問題を、いくつかの角度から考えてゆきたいと思います。
(1)異常な対米従属をいよいよ広く深いものにする
まず第一にとりあげたいのは、アメリカへの従属の鎖が、いよいよ太く強いものになる、ということです。
日本の対米従属の状態は、いまでも、世界のなかできわめて異常なものです。その異常な関係を、三つだけあげておきましょう。
世界に例のないなぐり込み部隊≠フ前線基地
軍事でいいますと、日本にはたくさんの米軍基地がありますが、ここにいる米軍がとてつもない任務を持った軍隊なのです。全部が、なぐり込み部隊≠ニ呼ばれる海外侵略部隊です。
横須賀に機動部隊(第七艦隊)がいますが、この正式の名称は「空母打撃群」。遠征していって出先で相手の国に打撃を与える他国攻撃専門の部隊ですから、この名前がついています。
沖縄にいる海兵隊も、正式の名称は「海兵遠征軍」で、海を渡って他国に上陸して戦争をやるという遠征専門の部隊です。
青森県三沢に空軍部隊がいます。これは「航空宇宙遠征軍」に組み込まれている部隊です。宇宙戦艦ではないですよ(笑い)、「宇宙」の名がつくほど、はるか遠方まで遠征してゆくということなのでしょう。もちろん、任務は遠征専門です。
このように、日本にいる米軍は、他国を攻める任務の遠征軍ばかりで、「日本の防衛」を任務とした軍はいないのです。要するに、アメリカが先制攻撃戦略にもとづいて、外国になぐり込みをかける、その時出撃する部隊に日本が基地を貸しているということです。
だいたい、こういう任務の部隊の基地を自国においているという国は、日本以外には世界に存在しません。アメリカの海兵隊は、日本にいるもの以外はすべてアメリカの本国に基地をおいていますし、航空母艦も、横須賀の第七艦隊以外は、みなアメリカの軍港を母港にしています。
昨年来の「基地再編」で、この部隊の司令部までが神奈川県の座間に来ることになりました。まさに、日本列島全体を、アメリカの先制攻撃戦争の基地として提供しているという状態で、日本の対米従属の深刻さが、ここに集中した形で現れています。
外交に自主性なし
外交でも、日本がアメリカだけを見て外交をすすめていることは、世界でも有名になっています。それを最もあからさまに示したのが、イラク戦争にたいする態度の問題でした。
アメリカが、イラク戦争を開始したとき、アメリカの側にたって戦争に賛成した国はいくつかありました。イギリスもそうでした。しかし、イギリスの政府は、その時、これこれこういう理由で、こういう判断からこの戦争に賛成するということを、議会でも首相がきちんと説明しました。だから、その判断が間違っていたことが明らかになったら、その間違いにたいして、議会で責任を問われるのです。
では、日本の場合はどうかというと、小泉首相がイラク戦争に賛成した理由は、要するに同盟国の戦争だから応援する=Aこれだけでした。アメリカの開戦の論拠が崩れても、日本政府は、あのときはそういう情報しかなかったのだから仕方がない、この程度のことでお茶を濁して、間違った戦争に賛成したことの責任など問題にもしません。自分がおこなった戦争か平和かの重大な選択にたいして、自身の責任をなにも感じない、こういう外交を平気でやっている国は、世界にほとんど例がないと思います。
経済でもアメリカの介入が制度化されている
日本の経済にも、従属の強い鎖がかけられています。
いま日本の政府とアメリカ政府とのあいだに、次のような仕掛けが続いていることを、ご存じでしょうか。
ことの始まりはいまから十四年前、一九九三年のクリントン大統領と宮沢首相との首脳会談(ワシントン)でした。そこで、日本経済の仕組みをアメリカの流儀にあわせるために、新しい仕組みをつくることが合意されたのです。
その仕組みとは、@毎年秋に、政治・経済のあり方について、アメリカが文書で注文をつける、Aその注文書にそって、日本政府がその実施方を検討し、実行に移してゆく、Bその実行状況をアメリカ政府が総括し、翌年春、その成果をアメリカ議会に報告する――こういうものです。まるで、部下が上司から指示をうけ、その遂行状況を点検されるようなものですが、こういうシステムをつくることに首脳会談で合意してしまったのです。
このシステムは、いまでも確実に動いています。毎年秋になりますと、アメリカ政府から「年次改革要望書」という注文書が日本政府に渡されます。日本の経済のこういう制度はアメリカに都合が悪い、こういう規制は公正に反する、こういう注文をならべたアメリカ側の要求一覧です。日本政府はこれを受け取ると、これは農水省の分、これは経産省の分というように仕分けして各省にくばり、担当の省庁がその対応策を研究して、できるものから実行に移してゆく、その進行状況を日米の担当者が定期に集まって点検するのだそうですが、翌年三月には、アメリカ政府がその全成果を「外国貿易障壁報告書」のなかにまとめてアメリカ議会に報告する。政府は、日本とのあいだで、貿易の壁を打ち破るうえで今年度はこれだけの成果をあげたと、実績宣伝をするわけです。
このシステムが、合意の翌年九四年から始まって、現在までずっと続いています。「郵政民営化」も、このシステムを通じて、アメリカから何回も要求されたあげくのことでしたし、「農産物の輸入自由化」も繰り返し要求されています。さらに、医療制度の改革、保険制度の改革など、あらゆる分野にわたって、アメリカの家風≠ノあわないとか、アメリカの企業の利益にあわないとかの注文がつけられるのです。
経済の問題でこんな上下関係が押しつけられて、アメリカの介入が制度化されている国、しかも十数年にもわたってそこに安住しているという国は、日本以外には世界で見たことがありません。
憲法改定はこの鎖をさらに太く固いものにする
このように、現在でも、日本とアメリカとの関係は、世界でも本当に異常なものです。
そこへ、憲法が改定されたら、どんなことが起きるでしょうか。九条が改定されたら、自衛隊が軍隊になり、海外でアメリカといっしょに戦争をやることになります。この体制は、戦争が始まったときに、はじめて問題になるわけではありません。いざという時、肩をならべて戦争をやるためには、ふだんから、その体制と準備をととのえ、訓練することが必要になります。つまり、海外で「共同作戦」を展開する準備を、日常不断に日米共同でやるという体制が、憲法改定のそのときから開始されるでしょう。安保条約で定めた「日米共同作戦」の準備が日常のことになって、日米「運命共同体」路線が、政治・経済・国民生活の全分野で、大手を振っていま以上に横行する、こういう状態になることは間違いありません。
憲法改定派は、口を開けば、いまの憲法はアメリカに押しつけられたものだから改定するのだと、いかにも日本の独立の擁護者のような顔をします。しかし、日本の現状のなかで、「異常な対米従属」という、日本の主権独立の立場から打開すべき最大の問題には、まったく手をつけようとしない。それどころか、この従属関係を、もっとひどいものにしようとしているのです。
植民地体制が二〇世紀後半に崩壊して、自主独立が世界の圧倒的な流れとなっている時代です。その時に、アメリカにたいする異常な従属の関係をさらに深刻なものとして固定化する。憲法改定が日米関係にもたらすものは、まさにそのことにほかなりません。
二一世紀に日本が本当の独立をかちとって、一人前の独立・自主の国家になることを願う方は、この現状の打破にこそ力をつくすべきであって、従属の鎖をさらに太く固いものにする九条改定の仕事に絶対に手を貸すべきではありません。ここには、日本の国づくりの第一の問題があります。
(2)軍事優先主義が日本をもっとも外交に弱い国にする
いまの世界では外交こそが安全保障の主役
次に考えたいのは、外交の問題です。
いまの世界では、国の安全保障にとっていちばん重要なものは、外交です。どの国でも、自分の国のまわりに平和な国際環境をどうやってつくるか、国と国との平和的な関係をどうやって築いてゆくのか、ここに大きな力をそそいでいます。他国と紛争が起きたときにも、まず平和的な方法でそれを解決することに力をつくす、これが当たり前のことになっています。
日本の南側に東南アジアの地域があります。この地域の国ぐにが、いまから三十一年前の一九七六年、話しあって「東南アジア友好協力条約」を結び、たいへんよい国際関係をつくりあげてきました。条約には、お互いの国内問題には干渉しない、意見の違いや紛争が起きたときには平和的手段で解決する、武力での威嚇や武力の行使はお互いに放棄する、こうしたルールが明記されています。ベトナム戦争の時には、武器をもって戦いあったこともある国ぐにをふくめ、東南アジアを平和の地域にしようということで、この条約を結んだわけで、それ以来、平和への流れがずっとすすんでいます。
最近には、この平和の流れの仲間入りをしようという声がまわりの国ぐににも広がり、一九八七年には、域外の国の参加も認めるように条約が改定されました。これにもとづいて、二〇〇三年には中国とインド、〇四年には日本、パキスタン、韓国、ロシア、〇五年にはニュージーランド、モンゴル、オーストラリアが加盟し、今年〇七年にはヨーロッパからフランスまでが参加しました。いまでは、世界の人口の半数近い国ぐにがこの条約の仲間入りをしているのではないでしょうか。
こういう平和的な関係を外交の手段で広げてゆこう、というのが、いまの世界の大きな流れです。
さきほど述べたように、イラクなどで「力の政策」を前面に押し出したアメリカでも、それだけでは今日の世界に対応できないことを悟り、一方では外交にも力を入れざるをえないでいます。中国への対応でも、国防総省あたりは、「将来の脅威」になる国だといった発言をしきりに繰り返しますが、アメリカ政府の対外活動では、中国とアメリカのあいだに「戦略的な利害の共通性」があることを大いに強調し、米中関係を発展させる仕事に綿密な戦略をたてて取り組んでいます。北朝鮮の核・ミサイル問題でも、平和的解決の条件が見えてきたら、それを実らすためになかなかの手だてを講じて外交作戦を展開します。
なぜ日本は外交に弱いのか
そのなかで、日本はいま、外交の弱さが特別に目立つ特異な国になっています。
東京で活動している各国の外交官と交流しますと、あいさつの言葉というわけではないのですが、「日本には外交戦略はないね」という感想を(笑い)たえず聞かされます。いろいろな国の外交官が、さまざまな機会に同じことを痛感するようなのです。日本は、アメリカやヨーロッパの資本主義諸大国との関係は別として、世界のほかの地域にたいしては、なんの戦略方針ももっていないようだ、というのです。
その原因はどこにあるのか。一つは、「アメリカの窓」からすべてを見る対米従属外交で、自主的な外交戦略をもたないで来ている、という問題があるでしょう。それにくわえて最近とくに強く感じるのは、何かことが起こるとすぐ軍事的対応を考えるという傾向が根強くあることです。憲法では、武力による威嚇を禁じている国なのに、紛争が起こると実力での対応を優先させる――日本も加盟した東南アジアの友好協力条約とはまったく逆の対応です。
北朝鮮問題でも、このことを痛感させられました。政府はよく「対話と圧力」と言います。ミサイル発射にたいして国連が実施した経済制裁は、ある意味では、「対話と圧力」路線にたつものでした。しかし、経済制裁をやるなかで、「対話」の条件が出てきたら、どの国も対話を成功させるための真剣な努力をするし、それに対応する戦略・戦術に知恵をつくします。
ところが、日本は、「対話」の舞台ができても、それに対応する用意がない、対話の戦略・戦術をもたない。このあいだ、北京で北朝鮮と久方ぶりの会談が開かれましたが、日本がこの「対話」の場を活用して道理ある主張を展開したという状況は、まったく聞こえてきませんでした。ほかの国からは、「北朝鮮の核・ミサイル問題といったら、日本こそいちばん脅威を感じる国のはずだ。しかし、日本の外交を見ていると、拉致で圧力をかけるというだけで、核・ミサイル問題の解決への熱意があるのかどうか、さっぱり分からない」、こういう苦い批評まで聞かれる状況があります。
「対話と圧力」というが、「圧力」をかけて相手が全面降伏するのを待っているというのでは、外交とは言えません。
いま問題なのは、「圧力」の弱さではなくて、外交力の弱さなのです。私は、日本の安全保障を重視するものは、いまそのことを銘記する必要があると思います。
世界平和のため、憲法を生かして外交に強い国になろう
日本の憲法は、実は、東南アジアで始まったような平和の流れを、世界のなかで先取りしている憲法なのです。東南アジア友好協力条約の大事な点の一つは、さきほど紹介したように、「武力による威嚇又は武力の行使の放棄」を国家関係のルールとしたところにありましたが、日本の憲法は、この同じ原則を、世界に先立って日本外交の立脚点として宣言しているのですから。
この憲法を生かす立場に立てば、日本は、世界の平和の流れの先頭に立つ条件を、もっとも強く持っている国なのです。ところが、自民党政治には、この憲法の値打ちが見えないわけで、この原則に立った平和外交を展開することなど、夢にも考えないのです。
そういう時に、憲法を改定して、軍事のしばりがなくなったら、どうなるでしょう。「圧力」の手段のなかに、今度は「武力」まで入ってくるわけですから、軍事対応優先の傾向がもっともっと激しくなるだろうことは、目に見えています。しかし、憲法を改定した政権がいくら軍事の「圧力」をふりまわしてみても、いまの世界は戦前の世界とは根本的に違っています。目先の成功にせよ、そんなことで成果が得られるような世界ではないのです。憲法の歯止めを失った軍事優先主義は、日本の外交的ゆきづまりをいよいよ深刻にするだけでしょう。
私は、いま日本がぶつかっている最大の矛盾は、世界でいちばん進んだ平和の憲法を持っている日本が、世界でもっともおくれた軍事優先の政治に落ち込んでいるところにあると思います。ここに、打開すべき深刻な矛盾があります。憲法を生かして、世界平和のため、外交に強い国になる。私たちは、このことを大きな目標にしようではありませんか。
(3)ふくれあがる軍事予算が国民生活を押しつぶす
日本はすでに世界で有数の軍事費大国
次は経済の問題です。
いま、税金のむだ遣いに対する国民の批判は、たいへん強くなっています。しかし、そのなかで、事実上「聖域」になっている巨大な分野があります。それが軍事予算です。日本の軍事予算は、年間四兆八千億円から四兆九千億円という規模が、この十年あまりずっと続いています。ドルに換算すると四百二十億j前後というところですが、『SIPRI年鑑』(ストックホルム国際平和研究所)で世界の状況を見ますと、年間四千七百億jもの軍事予算を使っているアメリカは別格で、それに続くのが軍事予算四百億jの国ぐに――イギリス、フランス、日本、中国です。戦力の保持を禁じた憲法を持つ日本が、アメリカに次いで軍事予算の大きい四つの国の一つとなっているわけです。日本はすでに、まぎれもない軍事費大国になっているのです。
その膨大な軍事予算のなかで、アメリカと日本の軍需企業を太らせるだけの巨大なむだ遣いが問答無用の形でまかり通っている。今日はまず、その話をしましょう。
ソ連崩壊後に、対ソ戦用の超大型戦車を大量配備する
陸上自衛隊で、いちばんお金を使っている部隊に、90式戦車を装備した戦車部隊があります。この戦車の数は、今年度の発注分まで含めるとすでに三百二十四両にも達しますが、購入予算の総額は、これまでの合計で約三千億円にのぼります。富士にその訓練学校があって、そこに何両かありますが、あとは全部北海道に配備されています。
この戦車はやっかいな代物でして、北海道のある地域に配備してしまったら、ほかの地域に移動することができないのです。一両五十dという特別に重い戦車ですから、道路を走ると道路を壊してしまい、渡れる橋もない(笑い)。日本の橋の重量制限は普通は二十d、高速道路で四十dですから。この戦車を通そうと思ったら、あらかじめ道路や橋を作り直さなければならない。(笑い)
なぜこんなことをやったのか、というと、対ソ戦への備えだったというのです。戦争になったら、ソ連の戦車部隊が北海道に上陸してくるはずだ、その戦車部隊を迎え撃つために、90式戦車を北海道の要所要所に配置した、ということです。しかし、相手が、予定した場所にうまく上陸してくれればいいけれども、思わぬところに上陸したらどうするつもりだったのか(爆笑)。ともかくこういうものを三百二十両以上もつくってしまったのです。
九〇年代に衆院の予算委員会で、志位書記局長(当時)が、「なんのためにつくったのか」と質問したことがありました(九五年一月)。玉沢防衛庁長官が「もし第三次世界大戦があったとすれば、当然、彼ら〔ソ連〕は北海道を侵略してくる可能性があった。それに対抗するためにこの戦車が必要だった」と答弁し、閣僚席からも爆笑が起こった、という記録があります。ソ連崩壊から何年もたったあとで、こんな答弁をしていたのですから。
政府は、ソ連の戦車部隊への反撃用のこの戦車を、いったいいつ買ったのでしょうか。これが問題です。調べてみると、日本の軍事予算に、90式戦車購入の予算がはじめて組み込まれたのは一九九〇年、大量生産の契約を企業側(中心は三菱重工)と結んだのは九一年です。その年にソ連は崩壊するのですが(笑い)、政府は、だからといって契約を解除することをせず、毎年予算を組んでこの戦車を買いつづけ、今年の予算でも新たに九両発注しました。ソ連の解体で対ソ戦の必要はなくなったのに、対ソ戦のシナリオにしか使えない戦車を、ソ連解体後十六年も買い続けて、その購入費用が三千億円にものぼっている。こんなにばかげたむだ遣いがあるでしょうか。
イージス艦のむだ遣いも同じシナリオで
同じようなことは海上自衛隊にも起きています。イージス艦という高価格の軍艦があります。最初に買った四隻は、一隻約千二百億円。新たに追加した二隻は改良型で約千四百億円。ともかくものすごく金のかかる軍艦です。これを何のために買ったかというと、これもまた対ソ戦への備えでした。中曽根首相がアメリカとの首脳会談で、太平洋のシーレーン(海上輸送路)の防衛を日本が引き受けると約束したことがあったのです。その約束を具体化するために、いちばん脅威になるとされていたソ連の爆撃機バックファイアを迎撃するために、イージス艦の購入を計画したのでした。
この建造予算が最初に組まれたのは、一九九〇年。90式戦車と同じです。軍艦の製造には時間がかかりますから、一番艦の「こんごう」が竣工(しゅんこう)したのは一九九三年。ソ連はもう二年前になくなっていました。それでも政府は、イージス艦建造計画の修正をしないのです。二番艦「きりしま」は九五年竣工、三番艦「みょうこう」は九七年竣工。四番艦「ちょうかい」は九八年竣工。
作戦のシナリオはご用済みになったのに、軍艦建造の方はそのシナリオどおりに四隻そろえてしまった。そして、つくってから、何に使ったらいいだろうか、と考える(笑い)。これまたばかげた話になりました。ですから、イージス艦の活動実績を調べてみたら、米軍支援のためにインド洋に交代で出動したのが主要なことで、ほかには活動らしい活動をほとんどしていません。
北朝鮮のミサイル問題が起きて、二〇〇二年から新たに二隻の建造を発注したりしたのですが、つぎに述べるように、ここにも大きな問題があります。
ミサイル防衛――シナリオができないのに配備を始める
これらに続くむだ遣いの旗頭(はたがしら)が、いま進行中の「ミサイル防衛」です。北朝鮮がテポドンを持った、その脅威から日本を防衛する、こういううたい文句で、小泉内閣がその導入を決定しました(二〇〇三年十二月)。最初の数年分だけで予算は一兆円、計画の進行とともに末広がりに予算が増えることは確実で、そこにどれだけのお金がつぎこまれるか、予想がつきません。
この「ミサイル防衛」というのは、すべてアメリカの技術に頼っているのですが、アメリカではまだ開発中で、はたして成功するものかどうか、まだ確かめられていない未完成の技術です。だから、日本が導入を決めた年・〇三年に、アメリカの二十二人の科学者(ノーベル賞受賞者七人をふくむ)が、「まだ成功していない技術に膨大な予算をつぎ込むのは間違いだ、同じ軍事予算を使うのだったら、もっと役に立つことに使うべきだ」という声明を発表しました。さらに翌〇四年には、退役した将軍や提督四十九人が、ほぼ同じ趣旨の大統領あて書簡をだして、政府に計画の延期を求めました。できるかできないか分からないものを配備すれば、莫大(ばくだい)なお金のむだ遣いになるだけだ――この声が、アメリカの専門家のあいだで大きな世論になっているのです。
しかも、みなさん。同じ「ミサイル防衛」でも、アメリカでの「防衛」と日本での「防衛」では、技術のむずかしさが桁(けた)違いなのです。アジアのどこかからアメリカにミサイルを撃てば、目標にとどくまでに数十分はかかります。それだけ対応する時間の余裕は大きいし、ミサイルにたいする迎撃の条件もそれに対応したものになってきます。ところが、日本の場合には、ミサイルが数分間で到着する計算になりますから、その数分間のうちに撃ち落とさねばならないわけで、だから「ミサイル防衛」の技術的な難しさは桁違いだと言われるのです。かりにアメリカで「防衛」実験に成功した場合でさえ、それを日本での成功に結びつけるには、さらに新たな技術開発と時間を必要とするでしょう。
ところが、小泉内閣は、四年前、まだ技術ができあがっていないのに、「ミサイル防衛」部隊の配備を決めてしまいました。これもまた、ばかげたむだ遣いの繰り返しです。90式戦車やイージス艦は、シナリオが消えてしまったのに、古いシナリオにそって兵器を買い続けたというむだ遣いでしたが、こんどの「ミサイル防衛」は、まだシナリオができていないのに、できたことにして新鋭兵器を買いはじめる、というむだ遣いです。
むだ遣いの背後には、日米軍需企業の大圧力がある
それで思い出したことがあります。小泉内閣が「ミサイル防衛」導入を決めたのは、二〇〇三年十二月でしたが、その前月の十一月に、国会のなかの憲政記念館で、自民党、民主党、公明党のいわゆる「国防族」の国会議員たちが「日米安保戦略会議」なるものを開いたのです。会議の名前は大げさですが、中身は、アメリカで開発中の「ミサイル防衛」システムを日本に売り込むことを主題にした会議でした。この会議の後援団体のリストには、三菱重工、川崎重工、石川島播磨、ロッキード、グラマン、ボーイングなど、日米の軍需会社が名を連ねていて、国会内の会場に、なんとミサイル防衛システムの実物大モデルまで持ち込んで、売り込みをはかりました。
アメリカで技術が未完成であろうがなかろうが、導入したシステムが実際に役に立とうが立つまいが、日本政府が導入を決めれば、これらの巨大軍需企業が莫大なもうけを手にすることは間違いありません。だから、日米の巨大企業は日本の政治に大圧力をかけ、それと結んだ「国防族」も騒ぎたてる。
いま見てきた、日本の軍事予算のなかにある巨大なむだ遣い――常識では考えられないようなむだ遣いの背景には、日米の軍事企業およびそれと結んだ「国防族」の圧力や暗躍があるのです。なにしろ、軍需発注といえば、「談合」もなにもありません。それが採用されさえすれば、受注企業は最初から決まっているのですから。日本最大の軍需企業・三菱重工をとってみますと、この企業が昨年、国から受けた発注の総額は二千七百七十六億円でした。
大幅軍縮の要求には客観的な根拠がある
こういう無法がまかりとおっているこの世界で、もし憲法改定が実現したら、何が起こるでしょうか。とめどない軍備拡大の動きに、なんとか歯止めをかける役割を果たしてきたのが、憲法九条でした。そのもとで、「攻撃専門」の兵器は買わないなど、制限的なルールもつくられてきました。もし憲法改定でこの歯止めがなくなったら、軍事予算を途方もない規模でふくれあがらせる新たな圧力が働くでしょう。
現在、私たちの暮らしや福祉に役立つ予算は、さまざまな分野のむだ遣いで押しつぶされています。そのなかで、誰も手をつけない「聖域」となっているのが軍事予算です。憲法改定で、この軍事予算が新たな規模でふくれあがりだしたら、国の財政はどうなるか、経済生活はどうなるか。憲法改定に関連して、そういう深刻な問題が起きてくるのです。
みなさんに新たに目をむけてもらいたい問題が、ここにあります。日本共産党は、憲法九条を生かして日本の安全をまもる道として、アジア諸国のあいだで平和的な国際関係をつくりあげる平和外交を大いに重視しています。同時に、自衛隊の軍縮を段階的にすすめる計画を提唱しています。いま見てきたむだ遣いの現状は、軍需大企業の圧力を取り除いて、無法なむだ遣いをやめさせるだけでも、相当な規模の軍縮ができることを、事実で示しているのではないでしょうか。
(4)社会生活が靖国派≠フ考え方でしばられる
靖国派≠フ憲法案が出てきた
最後に検討したいのは、憲法九条の範囲を超える問題です。
さきほど、靖国派≠ェ、「戦後レジーム(体制)からの脱却」を合言葉に、戦前・戦時の日本こそ「美しい日本」だといって、日本の社会や「国柄」をそこへひきもどそうとしていることについて、お話ししました。
靖国派≠ニいうのは、現代の日本でも世界でも通用しない独特の価値観を信条としている、たいへん特殊な集団なのですが、その集団が、自分たちの独特な価値観を示す新しい文書を、最近、つくったようです。例の「日本会議」が、靖国派≠フ憲法改定案をつくったのです。発表は、「日本会議」ではなく、「新憲法制定促進委員会準備会」という名前の超党派の国会議員グループの名前で、きょう五月三日におこなわれることになっていると聞きました。私は、検討途中の「大綱案」を見る機会があったのですが、そこには、靖国派≠フ独特の価値観がよく出ていましたので、中間段階のものではありますが、とくに注目される点を紹介しておきましょう。
――憲法の「前文」で、「日本国の歴史や、日本国民が大切に守り伝えてきた伝統的な価値観など、日本国の特性すなわち国柄」を明らかにする(例の「国体」論)。
――憲法に、日本国民が「時代を超えて国民統合の象徴であり続けてきた天皇と共に、幾多の試練を乗り越え、国を発展させてきた」歴史を書き込む。
――新憲法がうけつぐべき歴史的達成の筆頭に「近代的立憲主義を確立した大日本帝国憲法」を明記する(現憲法が、前文で「排除する」ことを規定した明治憲法の復権です)。
――「天皇」条項では、天皇が「国家元首」であることを明記し、それにふさわしい「地位と権能」を規定する(天皇は「国政に関する権能をもたない」という現憲法の規定を切り捨てることです)。
――国民が「国防の責務」を負うことを明確にする。
――「人権制約原理」を明確にし、「国または公共の安全」、「公の秩序」などの立場で基本的人権を制限できることをはっきりさせる。
――「わが国古来の美風としての家族の価値」を重視し、これを国家による保護・支援の対象とする。
――「公教育に対する国家の責務」を明記する(「責務」というのは、教育にたいする国家の統制の「権利」のことです)。
――国会を「国権の最高機関」と位置づけている現憲法の規定を見直す。
――参議院の権限をけずり、衆議院の優越をいま以上に大きいものとする。
説明は略しますが、こういう条項がずらっと並んでいて、いよいよ靖国派≠フ正体見たり、という感があります。
こういう靖国派%ニ自の要求が、自民党などの憲法案にどれだけ書き込まれてくるかは、これからの問題ですが、私がここで取り上げたいのは、憲法案への書き込みをどうするかに先立って、いまの政治のなかで、日本の教育や社会生活を、靖国派≠フ独特の考え方、価値観でしばってゆこうとする動きが、すでに現に始まっている、ということです。この動きは、安倍内閣のもとでいよいよ加速しています。
小学校の歴史教科書から縄文・旧石器時代が消えた
靖国派≠ヘ以前から、日本の教育に靖国派≠フ考え方をもちこむことに特別の努力をそそいできました。
戦争観で、まず最初に問題になったのは、「靖国史観」を学校教育にもちこむ「つくる会」の教科書を、検定で合格としたことでした。
最近はそれにとどまらないで、「従軍慰安婦」の問題で国の強制についての記述を削らせるとか、沖縄戦のなかで起こった集団自決について、それが軍の指示でおこなわれた事実を削らせるなど、戦争を美化する方向での乱暴な介入がくりかえし起こっています。
それから、最近起きたことで驚かされたのは、歴史教育への政府の乱暴な介入です。
昨年十一月に、考古学者の集まりである日本考古学協会が、声明を発表しました。いまの日本の教育の体系では、日本歴史は小学校六年生から教えることになっていますが、その六年生の教科書から、縄文時代や旧石器時代が消えてしまったというのです。
声明は、「日本列島における人類史のはじまりを削除し、その歴史を途中から教えるという不自然な教育は、歴史を系統的・総合的に学ぶことを妨げ、子ども達の歴史認識を不十分なものにするおそれがある」として、教科書の本文に旧石器・縄文時代の記述を復活させることを強く求めています。私はまったくその通りだと思います。
なぜ、こんな異常なことが起きたのか。原因は、文部省(現在の文部科学省)が決めた「学習指導要領」にありました。八九年と九八年に決めた「学習指導要領」で、日本の歴史は「大和朝廷による国土統一」から教えればよい、ということをくりかえし指示し、その指示にそった教科書をつくった結果、縄文時代と旧石器時代が消えてしまったのでした。これは、わが祖先たちが日本列島で展開してきた現実の歴史を、靖国派≠フ特殊な価値観で切り刻んでしまうことです。
この暴挙の背景には靖国派≠フ「国柄」論がある
靖国派≠フ「国柄」論は、日本民族の歴史は天皇とともに始まるとしています。旧石器時代はもちろん、縄文時代にも、大和朝廷などは存在しませんでした。そんな時代のことを子どもに教えたら、自分たちの国柄論が成り立たなくなる。おそらく、これが、この暴挙の、もっとも奥深くにある動機だったのでしょう。
大和朝廷ができたのは、人間がこの列島に住みついて、少なくとも数万年の歴史を経てきた後の時代のことです。そして、戦後の歴史学と考古学は、多くの新しい発見でこの長い時代についての私たちの知識を豊かにし、先人たちの活動への夢とロマンをはぐくんできました。この豊かな歴史を切り捨てて、日本人の歴史を、大和朝廷の成立以後のわずか千数百年の「歴史」に切りちぢめてしまう。靖国派≠ヘ、戦時用語である「悠久(ゆうきゅう)」の言葉が好きで、「悠久の歴史」についてよく語りますが、この列島の上でわが祖先たちが現実に展開された数万年にわたる歴史については、これを尊重する態度をまったく持たないのです。
私たちは、アメリカでキリスト教原理主義が、教義に反するとして「進化論」を学校教育から排除している話をきいて、その非文明性にあきれたものでしたが、自分たちの国柄論を無理やり日本の歴史にあてはめ、それに合わない部分は切り捨ててしまう、という靖国派≠フやり方は、同じ性質の非文明性を示しています。
家族と女性差別撤廃の問題と靖国派=@
靖国派≠フ攻撃が集中しているもう一つの分野は、家族や女性の地位にかかわる分野です。
さきほど、靖国派≠フ憲法改定案に、「わが国古来の美風である家族の価値」を国家が保護するという項目があることを紹介しました。この周辺では、自分たちの価値観を日本社会に押しつけようとする靖国派≠フ横暴が、連続的にくりかえされています。
ご承知のように、いま世界では女性差別の撤廃という問題は非常に大きな国際的な流れになっていて、一九七九年には女子差別撤廃条約が結ばれ、八五年には日本もこの条約を批准しました。そして、この条約にてらしてみると、日本の現在の制度にも、問題のある部分があちこちにあることが明らかになってきました。結婚した夫婦は、夫と妻がどちらか一つの姓を名乗らなければならない(民法第七五〇条「夫婦の氏」)とか、女性にたいしてだけ、離婚してから六カ月たたないと再婚が許されない、という規定がある(民法第七三三条「再婚禁止期間」)とかです。
この二つの問題の解決については、九六年に、法相の諮問機関である法制審議会がとりあげて、民法改正案の要綱を決定するところまで来ていましたし、二〇〇三年には、国連の女性差別撤廃委員会から、日本にたいして民法改正の勧告も出されていました。
実は日本の憲法は、この問題でもなかなか進んだ規定をもっているのです。結婚や家族の問題について、憲法にどう書かれているかというと、第二四条にこうあります。
「第二四条〔家族生活における個人の尊厳と両性の平等〕@ 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」。
この条項には、男性という言葉も、女性という言葉もありません。両性の平等という立場をそこまで徹底させているわけです。憲法ですから、具体的な指示はありませんが、社会が発展して、男女の平等の関係がどのような形態にすすんだとしても、憲法がそれにちゃんと適応できるように書かれているわけです。この条の第二項は、配偶者の選択、財産権、相続などなどについての規定ですが、それについても「法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない」と、その立場を一貫させています。私は、各国の憲法をいろいろ読みくらべてみましたが、現憲法のこの規定は、そのなかでもたいへん進んだものだと思います。
ところが、民法の方は、これにくらべると、明治に決められたままで残っているところが、結構多いのです。だから、法制審議会でも民法改定の用意にとりかかったのですが、この前に立ちふさがったのが、「日本会議」などの靖国派≠ナした。
女性差別撤廃への敵意から国連攻撃にまで進む
まず、夫婦別姓問題からその経過をみると、この問題は、九〇年代の後半ごろから、世論のなかでも大きな問題になってきました。そして九八年には野党の民法改正案が超党派でまとめられ、二〇〇一年には自民党や政府のあいだでも前向きの動きが出てきました。しかし、日本会議の猛烈な反対運動で、自民党も政府も腰砕けになり、結局、改正の動きは〇二年につぶれてしまいました。
女性の再婚禁止期間をなんとかしようという動きが大きな社会問題になってきたのは、最近のことです。禁止期間内に生まれた子どもさんが無戸籍になるという問題があって、これはなんとかしなければならない、ということで、自民党もかなり積極的に動きだしました。やはり靖国派≠フ反対でつぶれましたが、今度は「日本会議」が大運動をするまでもなかったのです。政府と自民党の要(かなめ)を靖国派≠ェにぎっているのですから、党の方は中川昭一政調会長が、政府の方は長勢甚遠法相が反対の声をあげ、その一声でお流れになりました。
この分野で、続いていま何が問題になっているか、というと、話が、国連攻撃に移っているのです。そして、靖国派≠フ最大の攻撃目標になっているのは、国連の決定に対応して、一九九九年、政府が国会に提案し採択された「男女共同参画社会基本法」です。靖国派≠ヘ、最初は、この計画が「ジェンダー」(男女の社会的・文化的な性別を表す言葉)などの言葉を使うのがけしからんといって、この言葉を追放する言葉狩り≠主な攻撃の内容としてきました。しかし、もともと「男女共同参画」という法律の名称そのものが、「ジェンダーの平等」という言葉の訳語なのですから、言葉の追放運動では、問題は解決しません。
この矛盾に気づいたのか、最近では、「基本法」そのものが撃滅の目標になってきました。今年の二月、「日本会議」が靖国派≠フ新しい組織「美しい日本をつくる会」を発足させました。その設立趣意書を読むと、社会や学校の乱れの原因はこの「基本法」にあるとして、「個人の人格を破綻させ家庭を壊す男女共同参画社会基本法を廃棄しなければ、遠からずわが国は亡国の危機に直面する」といった最大級の言葉で、「基本法」の廃棄をよびかけています。靖国派≠ノとっては、男女の平等とか女性差別の撤廃が、社会の大目標になること自体が、がまんのできないことなのです。靖国派≠フある女性議員は、その攻撃を直接国連に向けて、国連が提唱した女性差別廃止の条約や児童権利条約が、日本の家族軽視や家族崩壊を導いた≠ネどと、あからさまな国連非難の叫びをあげています。
靖国派≠フ特殊な思想の社会への押しつけを許してはならない
靖国派≠ニは、こういう特異な思想でかたまった人たちの集団です。その特殊な集団がいまや政権の中枢にすわり、その立場を利用して、自分たちの特殊な価値観、特殊な思想を、わが国社会に上から押しつけようとしています。ことはまだいくつかの分野で部分的に始まったところですが、ここには、憲法改定の動きとともに日本社会が直面する大きな危険が現れています。
私はこのことを、この機会にとくに強調したいのです。(拍手)
靖国派≠ェ、憲法改定を、こういう方向に日本社会を転換させる転機にしようとしていることは、疑いありません。ですから、私たちは、いまさまざまな場所で起きている問題をばらばらに見ないで、それらの動きが全体としてどんな流れを示しているかをよくつかみ、靖国派≠フ動きへの警戒と反撃を系統的におこない、これを芽のうちにつぶしてゆかなければなりません。こういうことも、憲法をまもる私たちの運動のプログラムに入れてゆく必要があることを、強調したいのであります。(拍手)
「憲法9条をまもれ」の声を国民の多数派に
最後に運動の問題です。
最近の世論調査から見えてくること
憲法改定をめざして、相手側も大きく動いていますが、憲法をまもる運動の発展も、とくにこの数年顕著な広がりを見せています。「九条の会」ができたのは、三年前の六月でしたが、この三年間、憲法を守る草の根の運動は、全国に着実に広がっています。全国の地域・職場で組織された「九条の会」は、すでに六千をこえる規模になりました。
こうした運動の広がりは、マスコミの世論調査の動向にも、いろいろな形で表れはじめています。
憲法記念日を前にして、多くのメディアが世論調査をしました。「読売新聞」は一九九六年からずっとこの調査をやっていますが、編集部自身が、今年の調査結果に出た変化に注目して、「憲法改正派が今回も多数を占めた」が「改正派は10年ぶりに50%を下回った」(「読売」四月六日付)とコメントしています。
実際、年を追って調査結果を見てみますと、「改憲」意見と「擁護」意見の開きがいちばん大きかったのは、三年前の〇四年調査で、「改憲」意見65%、「擁護」意見23%と三倍近い開きがありました。その後、「改憲」意見は〇五年61%、〇六年56%と減り続け、今年〇七年には46%と半数を割ってしまったのです。他方、「擁護」意見の方は、〇五年27%、〇六年32%と増え続けて、〇七年では39%。三年前に三倍近い開きだったものが、今年は、46%対39%とかなり迫るところまで近づいてきました。この変化が、「九条の会」が活動を始めた年から始まっているということは、なかなか深い意味のあることです。
そのなかで、興味深いのは、九条についての意見です。憲法全体についての質問では、「改憲」意見がまだ多数ですが、九条「改正」の必要について聞くと、戦争放棄の第一項については「必要ない」が80%、「必要あり」が14%、戦力不保持の第二項については、「ない」が54%、「ある」が38%と、「改憲」反対が絶対多数なのです。
同じことは、ほかの調査にも出ていて、NHKの四月調査では、九条について、改定の「必要ある」が27%、「必要ない」が44%でしたし、共同通信の四月調査では、「必要ある」27%、「ない」45%、「朝日」の調査でも、「必要ある」33%、「ない」49%でした。九条は現状のままというのが、国民の多数意見であって、これらの調査で「改憲」意見として出てくるものの大部分は、時代の変化に対応しようなどといった考えのものが多く、自民党や靖国派≠ェ望むような内容のものではないことが、はっきり数字に出ていると思います。
もう一つ、これは「朝日新聞」の世論調査ですが、面白い設問がありました。この調査では、「改憲」についての一般的な質問への回答では、「必要ある」58%、「ない」27%と、「改憲」意見が「読売」などよりも多かったのですが、もう一つ、「安倍政権のもとで憲法改正を実現すること」に賛成か反対かという設問があるのです。これにたいする回答では、「賛成」40%、「反対」42%と逆転の結果が出ました。反対が、27%から42%へ増え、賛成が58%から40%に減ったのです。靖国派≠ェ政府をにぎって改憲を急いでいることにたいしては、わずか半年の経験だが、国民のあいだに早くも警戒心が強まっているわけで、これは九条問題で擁護意見が多数であることとあわせて、非常に大事なことだと思います。
靖国派≠フ政権というのは、自分の政権のあいだに何が何でもやりとげようと、あれこれのことを急いでやってきますから、その面では風雲急≠ニいう状況が強まります。同時に、例の「美しい国」づくりの合言葉にも見られるように、憲法改定で日本がどんなことになるのか、という全体像をいやおうなしに国民の前に明らかにし、警戒心を強める、こういう作用もあるのです。ですから、この政権に立ち向かっているいま、憲法改定に込めた靖国派≠フ怨念(おんねん)というか、野望というか、そのたくらみの真相を国民のあいだで広く宣伝してゆくことが、とりわけ重要になっています。
法律と憲法とでは、事情に根本的な違いがある
いま、私たちの運動のこれからを考えるとき、法律と憲法との違いを見定めておくことが、大切です。法律は国会の多数で決まりますから、反動派が国会の多数を占めれば、どんな悪法でも通すことが可能です。しかし、憲法については、国会で多数を持っていただけでは、ことは決まらないのです。改憲を発議することも、法律一般とは違って、衆参両院での三分の二以上の多数の賛成が必要ですし、その関門を突破したとしても、最後に決着をつける決定権は、国民がにぎっているのです。
一昨年、欧州議会がヨーロッパ憲法の案をつくり、それを各国の国民投票にかけました。そうしたら、なんと、投票の結果は、フランスで賛成45%、反対55%、オランダで賛成38%、反対63%、二つの国で批准に失敗してしまったのです。ヨーロッパ憲法は、全部の国で批准されないと成立しないので、いまだに見通しは立たないままになっています。この状況を見て、日本の憲法改定派が大きなショックを受けたと聞きました。前途は容易でないことを痛感したのでしょう。
自民党などは、国会の多数を確保し強固にするために、小選挙区制の導入をはじめ、あらゆる手だてをつくしてきました。それで国会の議席の数を増やすことはできても、国民世論の多数をつかむことは簡単ではないのです。法律は国会での数で決まるが、憲法は国民のレベルで決まる。これが、この運動の大事なところです。
国会の議席がどうであれ、また議席の多数を使ってどんな段取りを講じようと、「九条守れ」の声を国民多数の声にすれば、彼らの野望は必ず粉砕できます。(大きな拍手)
憲法論ではいろいろなことが問題になりますが、九条を変えられなかったら、彼らにとって、改定の値打ちはないのです。憲法対決の勝負は九条で決まります。だから、草の根の活動がいまいよいよ大事です。運動が進んだところでは、高知県の土佐清水市、岩手県の陸前高田市など、憲法九条を守る署名がすでに過半数の支持をえている地域も出ています。この二つの市での成功は、他の地方でも可能性があることを示すものです。
全国すべての自治体、すべての地域・職場・学園に、憲法九条を守る組織――改定反対の声を国民のあいだに広げてゆく組織を無数に、網の目のようにつくり、草の根で多数を占める運動を広げてゆくことです。そういう力の総結集が、運動の成否を決めます。憲法の前途は、まさに、草の根の力関係でこそ決まるのです。
このことを運動の根本にきちんとすえて、がんばってゆきたいと思います。この運動には、日本の将来がかかっていますが、前途に成功の大きな展望があることは確実です(大きな拍手)。みなさん、おたがいにがんばりましょう。
( 2007年05月09日-10日、「赤旗」)
【ソウル=時事】安倍晋三首相が靖国神社に供え物を奉納していたことが八日、明らかとなり、韓国内では批判が広まりました。韓国政府は「非常に遺憾」との見解を表明。また、メディアは改めて首相の歴史認識を問題視し、慰安婦問題に関する安倍首相の謝罪の真意についても疑いを強めています。
韓国外交通商省は当局者論評で、靖国神社を「過去の侵略戦争を美化し、戦争犯罪者を合祀(ごうし)している」と規定。その上で、靖国への供え物奉納という安倍首相の行動は「域内の平和と安定の根幹になる正しい歴史認識の確立に逆行する」と批判しました。
また、通信社・聯合ニュースは「安倍首相は四月の訪米前後に元慰安婦の被害者に対し、何度もおわびしたが、一連の発言が真実なのか、再び疑わせる」と主張しました。
( 2007年05月09日,
テレビへの政府の介入が強まる中、報道被害とメディア規制の問題を考える機会がありました。先月二十八日、東京・国立市公民館が主催した「図書室のつどい」です。『報道被害』(岩波新書)を著した梓澤和幸弁護士が講演しました。
梓澤さんは松本サリン事件などでの犯罪報道の様子を示し、「市民から『メディアは規制した方がいいんじゃないか』という声が出るほど報道機関が市民と敵対している」と語ります。
政府は、「発掘!あるある大事典」のねつ造問題を契機に放送法を変え、介入しようとしています。視聴者のテレビへの不信感が口実になっています。「報道被害が権力に利用されるのを防ぎ、私たちの元に引き寄せて考える必要がある」
梓澤さんはこう提起し、報道の役割を「環境の監視役」であり、「人民の斥候兵」である、とします。「戦争へ進むかもしれないときに、ジャーナリストは独特の感性で、危ないと言わなければならない。市民に真実を伝えるために、メディアの特権である報道の自由が存在するのです」
政府による放送の規制は絶対に許されません。放送法改定案にたいし、テレビ局は「報道の自由への侵害だ」と批判しました。しかし、テレビは報道の自由の大前提にある国民の「知る権利」に応えてきたと、胸を張って言えるでしょうか。
近年のテレビの問題を見ると、いかに市民不在で番組作りが進められてきたかがわかります。「あるある」では視聴率に目を奪われ、面白さばかりが追求されました。「慰安婦」を扱ったNHKのETV番組では、NHK幹部が自民党の政治家に顔を向けて、伝えるべき事実を削り、番組が改変されていきました。
梓澤さんは言います。「報道機関がちゃんと人々に真実を明らかにして伝えていれば、必ず良き報いがくる。それが報道被害をなくすことであり、権力による規制を防ぐことにつながる」と。テレビ局は、市民に資するという放送の原点を忘れてはなりません。(山)
( 2007年05月08日,
日本人の多くは、他人が自分をどう見るかを気にする。だが、「他国からの日本への批判」と日本人が考えているものは照準が大分離れているのをご存じない。国際社会においては他国がどう日本のことを考えているのかをよく吟味することが大切だ。
最近、慰安婦連行に「強制性がなかった」という安倍首相の発言で、再び火がついたようだ。人々の議論を読んでみると、書類が存在しないから慰安婦の存在はなかったとか、祖父のころのことを自分たちがどうして謝らねばならないのかとか、もう何回も謝ったじゃないかとか(私から見れば、誠実性がない)、蔑視(べっし)している韓国や中国の女性に謝れば男が廃るという態度である。謝れば男の顔が立つこともあることは考えつかないらしい。自分が一国の首相に選ばれた限り、その国が犯した過去の罪を負う覚悟はしていると思っていたが逃げ回っている。更年期を過ぎた女は役に立たないと言った東京都の知事や、女は子どもを生む機械だと言った厚生大臣がいまだに辞任していないのも珍現象だ。そういうことも皆外国の人は知っている。
戦中、多くの慰安所を兵站(へいたん)部が組織立って造った。こういう組織造りは上の命令がないとできない。当時、民間の売春業者が、勝手に外国で、軍隊の駐屯(ちゅうとん)地に、軍の許可なしに慰安所を建てたりできなかったと思う。
日本が占領していた中国や東南アジアの慰安所に、占領地や植民地となっていた中国、台湾、朝鮮、フィリピン、マレーシア、シンガポール、インドネシア、オーストラリア、香港、オランダや、日本の女性を騙(だま)し、強制拉致(らち)して送り込んだのだ。政府は騙していないと言っているが、約二十万人の女性が、占領地での仕事が一日に二十人もの兵隊を相手に性交をするのだと知らされて、喜んでしますとボランティアしただろうか?
女の人権(現憲法にあるとおり)を重視して個人個人に納得させてはいない。当時、女は馬鹿(ばか)だといわれ、選挙権もなく、意見など誰も尋ねてはくれなかった。口を挟もうものなら「黙れ!」といわれたものだ。「ついて来い! お国のためだ」といわれると「いやです」といえる時代ではなかった。ましてや植民地だった朝鮮なんかで軍や警察に「いやです」といえば殺されただろう。
議論している人々は戦中の事情を知らない。世界の大半を占める女性に対する侮辱を無視して議論している。感情もある生身の人間を物質のように性的奴隷とされた侮辱、ひいては当時のお上や軍からの女性全体に対する侮辱を感じて腹が立つ。この人々は北朝鮮に拉致された日本人のことは、とても非人間的だと分かるのだが、日本が昔拉致した人々も同じ目に遭っていることはわかろうとしない。
海外に向かっては明瞭(めいりょう)に法律{戦後すぐに歴史教科書改正、ナチを違法とする法律、そして莫大(ばくだい)な賠償金を払ったドイツは今近隣国と上手(うま)くいっている(拙著『なんやこれ、アメリカと日本』参照)}や、お互いに納得がいく歴史の教科書をつくって他の国を納得させなければならない。今の日本にはこの逆が起こっているからブッシュ政権でさえも気にしているしアメリカのメディアが書き立てているのだ。
このままでは日本は世界で孤立してしまう。孤立してしまうと、また軍国主義がやってくる。外国に住んでいるととても歯がゆい。
レーガン米大統領が遅ればせながら日系アメリカ人にしたように、世界の女性全部に謝ってほしい。それによって日本の男の顔が立つからだ。
よそも同じような罪を犯しているではないかという人もいるだろう。他国は他国、日本だけ正しいことをしていれば、人間の脳って、いつかは篩(ふる)いに掛けて正しいことを弾けだしてくれる。
私は提案をしたい。憲法を改悪して軍隊を持つかわりに、その資金を隣国との友好に使えば、軍隊を持つより、より平和になる。軍隊を持つと女(人口の半分以上)にとっては悲劇であるのは私たちの世代は身をもって経験した。今でもアメリカの女の兵隊はナイフを身につけて夜寝るという。男の兵隊にレイプされるのを恐れて。軍隊を持つと碌(ろく)なことはない。
温暖化で地球が滅びそうになっている時に、もう軍隊を持って破壊するのはやめようと目覚めてほしい。堂々と謝った後、日本が音頭とりをして世界中が過去現在の人間に害を与えたことを俎上(そじょう)に載せて考えようと提案してはどうか。ロシアはシベリア抑留。日本は慰安婦問題、南京虐殺問題。アメリカは原爆投下を日本にだけでなく全人類に謝ること、これによって、世界中の首領が一瞬で地球が滅びる核の恐ろしさを認めると思うから。
(こめたに ふみこ・作家、米ロサンゼルス在住)
( 2007年05月08日,
韓国で四月二十九日、平和なアジアと日韓連帯を築こうと、二回目の「9条フェスティバル」が開かれました。会場は昨年に続き、ソウルから車で一時間ほどの農村で旧日本軍「慰安婦」のハルモニ(おばあさん)たちが暮らす「ナヌム(分かち合い)の家」の広場。ハルモニたちは日本からの参加者に「すばらしい一日だった。大事な憲法九条を大事に守ってください」と声をかけていました。
一体感増して
日本側参加者によると、フェスティバルには、「ナヌムの家」と歴史教科書問題で韓国の運動の中心を担ってきた「アジア平和と歴史教育連帯」が協力。日本から教育評論家の三上満さんを団長とする九十人、韓国からは市民団体や労組、文化団体、大学生など二百五十人が参加しました。
韓国伝統芸能の公演で始まり、日本からは歌手のきたがわてつさん、橋本のぶよさん、たかはしべんさんなど、韓国からは昨年の赤旗まつりに出演した「サム・トゥッ・ソリ」のリーダー、ソン・ビョンヒさんが登場。韓国語の九条キルトの前で、平和と友情を願う心を歌い上げました。
昨年五月、きたがわさんの交流コンサートを見た「ナヌムの家」のスタッフや参加者が「ぜひ来年も」と要望して実現した今年のフェスティバルは、出演者も参加者も規模がふくらみました。
日韓の参加者の一体感も格段に増しました。ある韓国人は「いっしょに手拍子をして歌って、なんの壁もなく溶け合い、自然に一体となったとてもすてきな体験でした」と語りました。
伝統芸能を披露した韓国人グループのリーダーは「植民地時代に父がひどい目にあった。日本は嫌いだったが、きょう思いが変わった。平和な未来をつくろうとする日本人がいることが分かった」と話しました。
きたがわさんは「九条の力を実感した」と言います。「九条への信頼、九条を守ろうとする日本人への信頼です。日本人が植民地支配や『慰安婦』という歴史の過ちを反省するだけでなく、九条は日本人と韓国人がいっしょに平和をつくっていく力になる。新しい信頼と友情、連帯の力が九条です」
9条の力実感
九条が力を発揮したのはフェスティバルの場だけではありません。ソウル市内のタプコル公園。ここは植民地支配を経験したお年寄りが多く集まる憩いの場です。日本からの参加者が、九条の内容を知ってもらおうと、公園で九条キルトを広げました。
「何をやっているんだ」と、お年寄りが数人、険しい顔で近づいてきました。話してみると、九条の条文を初めて知ったといいます。「あなたたちは安倍や小泉みたいな日本人とは違う。とてもいいことが書いてあるじゃないか」と顔をほころばせました。
四人の女子中学生も興味深げに近寄ってきました。一人は日本からの留学生です。みんな九条を初めて見たと言います。四人も「すてきな内容」と驚いていました。
石焼ビビンバで知られる韓国南部・全州市にある伝統家屋の旅館では、職員が九条はがきを分けてほしいと頼んできました。「事務所の壁に張っておきたい」と言います。
植民地支配の実態を展示するソウルの「西大門刑務所歴史館」の館長は、「ここは日本の加害を記録する場ですが、日韓の未来のための懸け橋でもあります。いっしょに未来をつくるために、ぜひ九条を守ってください」と語りかけました。
きたがわさんは「来るたびに韓国は変化している。やはり九条は宝。韓国人と日本人がいっしょに平和運動をする新しい条件が生まれつつある」と感じています。
( 2007年05月08日,
日本人の多くは、他人が自分をどう見るかを気にする。だが、「他国からの日本への批判」と日本人が考えているものは照準が大分離れているのをご存じない。国際社会においては他国がどう日本のことを考えているのかをよく吟味することが大切だ。
最近、慰安婦連行に「強制性がなかった」という安倍首相の発言で、再び火がついたようだ。人々の議論を読んでみると、書類が存在しないから慰安婦の存在はなかったとか、祖父のころのことを自分たちがどうして謝らねばならないのかとか、もう何回も謝ったじゃないかとか(私から見れば、誠実性がない)、蔑視(べっし)している韓国や中国の女性に謝れば男が廃るという態度である。謝れば男の顔が立つこともあることは考えつかないらしい。自分が一国の首相に選ばれた限り、その国が犯した過去の罪を負う覚悟はしていると思っていたが逃げ回っている。更年期を過ぎた女は役に立たないと言った東京都の知事や、女は子どもを生む機械だと言った厚生大臣がいまだに辞任していないのも珍現象だ。そういうことも皆外国の人は知っている。
戦中、多くの慰安所を兵站(へいたん)部が組織立って造った。こういう組織造りは上の命令がないとできない。当時、民間の売春業者が、勝手に外国で、軍隊の駐屯(ちゅうとん)地に、軍の許可なしに慰安所を建てたりできなかったと思う。
日本が占領していた中国や東南アジアの慰安所に、占領地や植民地となっていた中国、台湾、朝鮮、フィリピン、マレーシア、シンガポール、インドネシア、オーストラリア、香港、オランダや、日本の女性を騙(だま)し、強制拉致(らち)して送り込んだのだ。政府は騙していないと言っているが、約二十万人の女性が、占領地での仕事が一日に二十人もの兵隊を相手に性交をするのだと知らされて、喜んでしますとボランティアしただろうか?
女の人権(現憲法にあるとおり)を重視して個人個人に納得させてはいない。当時、女は馬鹿(ばか)だといわれ、選挙権もなく、意見など誰も尋ねてはくれなかった。口を挟もうものなら「黙れ!」といわれたものだ。「ついて来い! お国のためだ」といわれると「いやです」といえる時代ではなかった。ましてや植民地だった朝鮮なんかで軍や警察に「いやです」といえば殺されただろう。
議論している人々は戦中の事情を知らない。世界の大半を占める女性に対する侮辱を無視して議論している。感情もある生身の人間を物質のように性的奴隷とされた侮辱、ひいては当時のお上や軍からの女性全体に対する侮辱を感じて腹が立つ。この人々は北朝鮮に拉致された日本人のことは、とても非人間的だと分かるのだが、日本が昔拉致した人々も同じ目に遭っていることはわかろうとしない。
海外に向かっては明瞭(めいりょう)に法律{戦後すぐに歴史教科書改正、ナチを違法とする法律、そして莫大(ばくだい)な賠償金を払ったドイツは今近隣国と上手(うま)くいっている(拙著『なんやこれ、アメリカと日本』参照)}や、お互いに納得がいく歴史の教科書をつくって他の国を納得させなければならない。今の日本にはこの逆が起こっているからブッシュ政権でさえも気にしているしアメリカのメディアが書き立てているのだ。
このままでは日本は世界で孤立してしまう。孤立してしまうと、また軍国主義がやってくる。外国に住んでいるととても歯がゆい。
レーガン米大統領が遅ればせながら日系アメリカ人にしたように、世界の女性全部に謝ってほしい。それによって日本の男の顔が立つからだ。
よそも同じような罪を犯しているではないかという人もいるだろう。他国は他国、日本だけ正しいことをしていれば、人間の脳って、いつかは篩(ふる)いに掛けて正しいことを弾けだしてくれる。
私は提案をしたい。憲法を改悪して軍隊を持つかわりに、その資金を隣国との友好に使えば、軍隊を持つより、より平和になる。軍隊を持つと女(人口の半分以上)にとっては悲劇であるのは私たちの世代は身をもって経験した。今でもアメリカの女の兵隊はナイフを身につけて夜寝るという。男の兵隊にレイプされるのを恐れて。軍隊を持つと碌(ろく)なことはない。
温暖化で地球が滅びそうになっている時に、もう軍隊を持って破壊するのはやめようと目覚めてほしい。堂々と謝った後、日本が音頭とりをして世界中が過去現在の人間に害を与えたことを俎上(そじょう)に載せて考えようと提案してはどうか。ロシアはシベリア抑留。日本は慰安婦問題、南京虐殺問題。アメリカは原爆投下を日本にだけでなく全人類に謝ること、これによって、世界中の首領が一瞬で地球が滅びる核の恐ろしさを認めると思うから。
(こめたに ふみこ・作家、米ロサンゼルス在住)
( 2007年05月08日,
【ワシントン=鎌塚由美】米議会下院に提出されている、「慰安婦」問題で日本政府に公式な謝罪を求める決議案の共同提出議員は四日までに百人を突破しました。
マイク・ホンダ議員(民主党)が一月末に同決議案を提出した際、共同提案者は六人でした。しかし、安倍首相による「強制性を裏付ける証拠はなかった」との発言が契機となり、共同提案者が急速に広がり、四月末の首相訪米前には九十人に達しました。
一時は、首相の訪米前に採決にかけられる可能性もありましたが、外交上の配慮から議会側が自粛。一方、決議案を支持する市民団体は、百人の共同提出議員を目指すとして、議会への働きかけを強めていました。
四日現在、共同提出議員は、百二人。共和、民主の両党の議員が名を連ねています。決議案は外交委員会アジア太平洋小委員会、外交委員会全体会議の順に審議された後、本会議に上程される見通しです。
( 2007年05月06日,
ふゆみ このあいだ、最高裁の判決を傍聴したんだけど、同じ日に中国人の戦後補償裁判が二つも敗訴したのよ。
のぼる 原告はどんな被害を受けた人たち?
ふゆみ 中国から日本に強制連行されて、西松建設で人権もなく働かされた男性の被害者と遺族計五人が提訴した裁判と、中国山西省で日本兵に性暴力を受けた女性二人が国に謝罪と補償を求めた裁判。どれも第二次大戦中に起きた事件よ。
のぼる 新聞で大きく報道していたね。「個人の賠償請求認めず」って見出しが付いていた。
被害認定しても
ふゆみ 本当にひどい判決だった。一九七二年の「日中共同声明で裁判上の個人請求権は放棄された」と、初めての司法判断を示したの。加害企業と政府には「被害の救済に向けた努力をすることが期待される」といって残された問題の解決を押しつけたの。
のぼる 「司法の役割放棄」という見出しもあったね。
ふゆみ 強制連行や「慰安婦」の被害事実を認定したんだから、政府や企業の責任を問わなきゃいけないのに…。原告や弁護団、支援者から怒りの声が噴出したわ。
のぼる 当然だね。
ふゆみ しかも、同じ日に別の「慰安婦」訴訟と二つの強制連行事件の三件の訴訟も、原告の上告を棄却して原告敗訴が確定したの。
のぼる 「解決済みの賠償問題を蒸し返すような際限のない要求を断ち切ったといえる」と判決を評価する新聞もあったけど、これで問題が解決したとは思えないよ。
ふゆみ ドイツでは、政府と企業が二〇〇〇年にナチスの強制労働被害者への「記憶・責任・未来」基金を創設しているのよ。
問題解決しない
のぼる 日本の中国人戦争被害者損害賠償訴訟弁護団は、問題の全面解決に向けて国と企業が拠出する補償基金の設置を提案しているね。
ふゆみ 私たちが、あの戦争を振り返り、政府や加害企業にきちんと補償をするよう求めていかなければいけないわね。
のぼる 安倍政権の侵略戦争への無反省はひどいからね。人間としての尊厳が回復される謝罪と補償がきちんとされない限り、被害者にとっての戦争は終わらないね。
〔2007・5・4(金)〕
( 2007年05月04日,
岐阜市で三日、憲法施行六十周年記念岐阜講演会が開かれ、日本共産党の不破哲三社会科学研究所所長が「いま日本の憲法問題を考える 憲法改定派はどんな日本をつくろうとしているか」と題して講演しました。主催は、県労連などでつくる実行委員会。会場の岐阜市民会館は県内各地から貸し切りバスで駆けつけた人など、千五百人の熱気で包まれました。
不破氏は、冒頭、安倍晋三内閣の成立から半年、憲法問題をめぐる状況に新しい問題が現れているとのべ、まず、第一の問題として、「憲法改定で、日本は世界でどんな役割を担うことになるのか」を提起しました。
九条改憲がアメリカ発であり、憲法問題の焦点もそこにあることを歴史的に解き明かしたうえで、日本を戦争に参加させるアメリカの筋書きがソ連崩壊以後、国連憲章に背を向けた先制攻撃戦争に変わったと指摘。その戦争に憲法を変えてまで参戦しようという動きが、平和への世界の流れに逆行していることを指摘しました。
つづいて、日本の侵略戦争を「正義の戦争だった」と主張する靖国派≠ェ安倍内閣の中心を握ったことから、日本を戦前・戦時の「国柄」(「国体」の翻訳)に引き戻そうとする「戦後レジーム」からの脱却論が憲法改定派の大きな流れとなったことを明らかにし、この点にアメリカの知識人のあいだからも強い批判の声があがっていることを紹介、「憲法改定はこの二重の意味で日本を世界から孤立させる道だ」と強調しました。
「では憲法改定派は日本をどんな国にしようとしているのか」。第二の問題としてこう提起した不破氏は、@自主どころか、アメリカへの従属の鎖がいよいよ太く強いものとなる、A軍事優先主義で日本をもっとも外交に弱い国にする、B軍事予算が国民生活を押しつぶす国になる、C教育や社会生活が靖国派≠フ考えでしばられる国になる―という四つの角度で詳しくのべました。
四番目の問題にかかわって不破氏は靖国派≠フ改憲案を紹介。「大日本帝国憲法を引き継ぐ」、「国権の最高機関」という国会の地位の見直し、天皇の元首化と国政上の権能の保障、基本的人権制約原理の明確化、「古来の美風としての家族」の国家による保護などその内容を一つひとつあげると会場からどよめきがおきました。
不破氏は「靖国派≠フ考えで社会生活や教育を縛ることがすでに持ちこまれている」と注意を喚起し、歴史教科書の検定でも「従軍慰安婦」などの記述がなくなったり、国連が全世界ですすめている女性差別一掃まで攻撃の対象になっていることを紹介。「そういう特殊な考え方をもった集団がいま中枢にすわって、自分たちの主張を日本社会に押しつけ始めている。この人たちが憲法改定をこういう方向への転機にしようとしていることは間違いない」とこの動きを全体としてつかみ、たたかいにとりくんでいくことの重要性を語りました。
最後に不破氏は、「九条の会」結成以降、各種世論調査でも改憲派が減り、九条守れの声も高まっている流れを詳述し、「九条守れを国民多数の声にすれば、彼らの野望は必ず粉砕できる。勝負の大きな部分が草の根の力で決まる」と国民的な運動を呼びかけると大きな拍手に包まれました。
中津川市のパートの女性(39)は「安倍政権が、私たちの暮らしと未来をとんでもない方向にもっていこうとしていることがよくわかった」と語っていました。
( 2007年05月04日,
佐賀県唐津市鎮西町の波戸岬で四月二十九日、「日中不再戦碑建立二十九周年の平和の集い」が行われ、二十人が参加しました。主催したのは日中友好協会佐賀支部。
主催者あいさつで、関家小夜子支部長は、広島・西松建設の中国人強制連行・「慰安婦」訴訟で、最高裁が個人の賠償請求権を認めない不当判決(四月二十七日)にふれ、「裁判での解決の道が閉ざされ、苦しむ中国人原告の方の思いを察し胸が詰まります。史実にもとづく歴史認識に立った、人権侵害の賠償責任を求める全面解決へ私たちの支援が必要と思う」とのべました。
同佐賀支部の高島保理事は、中国・温首相の訪日で、両国政府の「戦略的互恵関係」の合意に歓迎する一方、安倍内閣が改憲手続き法案を衆院で強行可決したことを批判し、「日本、中国の両国民が再び戦争しないことを願い、日本国憲法九条を守る世論をひろげよう」と訴え、平和と友好の誓いを新たにしました。
参加者は歓談し平和への思いを深めました。
(2007年05月03日,
「従軍慰安婦」問題についての安倍首相の姿勢は、戦争責任を否定するものとして引き続き世界から厳しい批判が寄せられています。
米メディアには、安倍首相の本質を指摘して、それが世界に通用するのかどうか懸念する次のような論評が登場しています。「安倍は、本質的には日本の地位の回復を切望している日本の保守的な国家主義者である。しかし、世界はそれを受け入れる準備ができていないかもしれない」(『ニューズウィーク』四月三十日号)。
その安倍首相が憲法改悪を主導していることに対して、米国の知日派や日米同盟推進論者からも疑問と懸念の声があがっているのが最近の特徴です。
米国の代表的な日本通といわれる、コロンビア大学のジェラルド・カーティス教授もその一人です。同氏は四月末の安倍首相の訪米について「それが良好なものになることは間違いない。両国の防衛・経済関係は強固だ」と評価する立場です(東京新聞四月八日付)。
しかし、「首相は『戦後レジームの脱却』を掲げているが、民主主義国のリーダーが自分の国のレジーム・チェンジ(体制変革)を求める意味は理解しにくい」と率直に疑問を呈しています。
同氏は日本の憲法には直接言及していませんが、米国人は日本が「民主主義と平和の国になったことを称賛している」と指摘。「安倍首相が捨てたがっている戦後レジームの何がそんなにひどいのか、ぜひ説明してほしい」と述べています。
ジョンズ・ホプキンス大学のフランシス・フクヤマ教授は、米国のイラク攻撃を先導してきたネオコン(新保守主義)派の代表でしたが、最近はイラク戦争批判の立場に移行しています。
『週刊東洋経済』四月二十一日号で同氏は米国の立場について、「日本に再軍備を促し、軍事力の保持と交戦を禁止している憲法第九条改正を正式に支持してきた」と認めています。さらに「日米安保条約の拡大」「中国を包囲したい」などの本心を率直に表明したうえで、「日本が憲法9条の改正に踏み切れば、新しいナショナリズムが台頭している今の日本の状況から考えると、日本は実質的にアジア全体から孤立することになるだろう」と主張しています。
こうした発言は、「日米安保」維持勢力の中からも、安倍首相の憲法改定路線を「民主主義否定」「ナショナリズム傾斜」とみる動きが強まっていることを示しています。
( 2007年05月03日,
春名なおあき参院比例候補は沖縄入りした際、日本共産党元衆院議員・古堅実吉さんの案内で沖縄戦追体験≠しました。古堅さんは、十数万人の県民が命を奪われた沖縄戦を沖縄守備軍司令部「鉄血勤皇師範隊」の隊員として経験し、米軍捕虜となって終戦を迎えました。2人の話題は、沖縄戦の歴史の真実をねじ曲げようとする動きなどに集中しました。
想像を働かせる一端に/古堅
歴史の偽造、世界的に批判/春名
古堅 「慰安婦」問題など世の中いっそうおかしくなっているから、まだまだ活動をやめるわけにはいかんなあと思っているんですよ。
春名 国際的な趨勢(すうせい)を見れば、安倍首相の思うようにはいかないでしょう。
古堅 「慰安婦」問題の「狭義の意味での軍の強制はなかった」というのはとんでもない。世界から笑われます。
春名 「狭義」と「広義」といって都合のいいように解釈して、強制がなかったように言う。下村官房副長官にいたっては、「従軍慰安婦」の存在そのものを否定する暴言まで飛び出しました。
古堅 まだ当時、辱められた人たちが生きているというのに、その人たちの心を土足で踏みにじっているようなもの。でも、世論があまり騒がないのは、彼らの反動的な行動が浸透している部分もある。
春名 しかし、政治は国際的にかかわりをもって進められます。歴史の偽造は世界的批判をあびています。
古堅 沖縄戦では、「慰安婦」にされた人たちが、日本軍が捕虜にした米兵を銃剣で刺すよう命令されていた。
春名 そうですか、そこまで…。
古堅 ええ。
春名 今回の沖縄戦追体験をお願いしたのは、参院予定候補として、いまのようなお話を聞かなければ、沖縄の苦しみの根源を理解できない、共同できないと思ったからなんです。
古堅 沖縄戦の追体験は、島内でもほとんどの人が行えていません。体験者も家族には語らなかったりしますから。
春名 百聞は一見にしかず。沖縄戦とは、何なのか、どんな実態だったのか。いっしょに歩き、古堅さんの体験で感じることができました。
古堅 沖縄戦で米軍は夜になると、動くものはすべてパラ、パラ、パラと撃ちました。私も、米軍に見つけられるのがあと一時間遅かったらやられていた。生きているのは偶然なんです。
春名 そうなんですね。
古堅 捕まる直前、私たちの部隊は米軍がパラシュートで落とした食料を見つけました。一瞬毒入りだと思いましたが、三日も何も食べてなくて、すぐに食べ始めた先輩を見て、私も食べました。満腹になってきたら「もう死んでいい」という不思議な気持ちになりました。
春名 そのあと米軍の捕虜になったんですよね。
古堅 食料を食べた後、岸壁沿いに動き始めたんです。そしたら前の人が急に止まって、その先を見たら米兵の銃口がこちらを向いていました。
春名 それが、あと少し遅かったら夜になっていて、撃たれていたわけですね。
古堅 沖縄は、日本が侵略戦争を行い敗戦のなかで占領されました。沖縄戦は歴史の流れのなかで見ないといけません。
春名 沖縄県民の苦難の歴史、命どぅ宝≠フ重みを感じました。
古堅 春名さんに期待するのは、私の体験が国会での質問に役だってほしい。想像を働かせる一端になってほしいということです。
春名 ありがとうございました。いよいよ参院選です。がんばります。
(2007年04月29日,
最高裁は二十七日、中国人強制連行事件の広島・西松建設訴訟と中国人「慰安婦」事件第二次訴訟で原告側敗訴の判決を出したほか、中国人の戦後補償裁判三件について法廷を開かずに原告の上告を棄却する決定をし、敗訴が確定しました。
敗訴が確定したのは、▽中国山西省で旧日本軍の兵士らに性暴力を受けたとして女性四人が国に賠償を求めた中国人「慰安婦」事件第一次訴訟▽強制連行された北海道で逃亡生活を続けた劉連仁さん(故人)が国を相手に提訴した強制連行東京第一次訴訟▽福岡県の炭鉱で強制労働させられた男性十九人が国と三井鉱山(東京)に賠償を求めた同福岡訴訟―の三件。
いずれの訴訟も一審または二審が国や企業の加害行為を事実認定しました。「慰安婦」第一次訴訟は、二審で性暴力による精神的苦痛など現在に至るまでの後遺障害が深刻な被害として認定されましたが、賠償は認められませんでした。東京第一次訴訟、福岡訴訟はそれぞれ一審で賠償が認められましたが、二審で逆転敗訴しました。
戦争被害をめぐる中国国民の請求権に関しては、二十七日午前の西松建設訴訟で最高裁第二小法廷が「日中共同声明で裁判上の個人請求権は放棄された」と初めての判断を示しました。同日午後の「慰安婦」第二次訴訟では、「日華平和条約により、請求権は放棄された」と判断した東京高裁判決について、最高裁第一小法廷は放棄の根拠を改めて、第二小法廷と同様の判断を示しました。
( 2007年04月29日,
【ワシントン=鎌塚由美】米市民団体は安倍首相が訪米中の二十七日、首相の「慰安婦」発言を非難する全面広告をニューヨーク・タイムズ紙に掲載しました。
韓国系市民でつくる「韓国系米国人全国調整協議会」によるもので、安倍首相あての公開書簡となっています。書簡は、日本政府からの公式な謝罪を求める米下院の決議案についての安倍首相の「否定的反応」は、「百二十万人の韓国系米国人を激怒させた」と指摘。また、「あなたの発言は、現在の日本の右翼の政治指導者の発想に光を当てた」と述べました。
「安倍氏よ、われわれは二十万人の若い女性たちが心身ともに傷つけられ、終戦時に決して本国に戻されることなく、むしろ置き去りにされたことを忘れないでほしい」とも述べています。
また、多くの韓国系米国人が北朝鮮による日本人拉致事件に「同情を感じた」としながらも、安倍氏が元「慰安婦」の女性たちについて「ごう慢な態度」をとったことで、「われわれの多くは、もはや十七人の日本人拉致被害者の悲運に懸念を抱かなくなった」と指摘。さらに六カ国協議では、日本政府が「拉致問題を絡ませていることを知り、われわれは激しい憤りをおぼえた」とも述べています。
書簡は、「安倍氏や現在の日本の指導者たちが信奉する態度や方向は、アジア地域の人々の間にある共同体という認識を大きく損なうと懸念している」と結んでいます。
( 2007年04月29日,
政治・経済
◆いっせい地方選後半戦が投開票 いっせい地方選の後半戦となる東京特別区・市町村長・議員選挙が投開票。議員定数が大幅に減るもと、日本共産党は千二百八十四人が当選、議席占有率をのばす。(22日)
◆経済同友会、消費税16%を提言 経済同友会は法人実効税率を5%引き下げる一方、消費税を16%に引き上げることを提言(23日)
◆集団的自衛権行使容認へ懇談会 安倍首相が、集団的自衛権の行使を可能にするため、「個別事例」について研究する有識者会議を設置(25日)
◆中国が最大貿易相手国 財務省が発表した二〇〇六年度の貿易統計によると、中国が米国を抜いて日本の最大の貿易相手国に(25日)
◆安倍首相が米国、中東諸国訪問 安倍首相が訪米(26日)し日米首脳会談(27日)。その後、サウジアラビアなど中東諸国訪問(5月3日まで)
◆日興、米シティの傘下に 米シティグループによる日興コーディアルグループへのTOB(株式公開買い付け)が成立(27日)
社会・国民運動
◆ルーシーさん事件無罪 英国人女性ルーシー・ブラックマンさんら女性十人に乱暴し、うち二人を死亡させたとして罪に問われた被告(54)に対し、東京地裁は九人については無期懲役、ルーシーさん事件については無罪を言い渡す(24日)
◆改憲手続き法案反対で全国行動 改憲手続き法案に反対し、憲法改悪反対共同センターが全国一斉に宣伝や集会、デモ。国会前では座り込みや議員要請、傍聴(25日)
◆「非核日本宣言」運動を開始 日本政府に国会と国連で「非核日本宣言」を行うよう求める運動と共同提唱者の「よびかけ」(第一次)を発表(26日)
◆西松強制連行訴訟で原告敗訴 第二次大戦中に強制連行され過酷な労働を強いられたとして中国人の元労働者と遺族が西松建設に損害賠償を求めた訴訟で、最高裁は「日中共同声明で個人の請求権は放棄された」として、原告の訴えを排除(写真)(27日)
◆中国人「慰安婦」訴訟で原告敗訴 戦中、旧日本軍に拉致され暴行を受けたとして、中国人女性が国に損害賠償を求めた訴訟で、最高裁は女性側の上告を棄却(27日)
国際
◆仏大統領選第1回投票 フランス大統領選挙の第一回投票が行われ、十二候補のいずれも過半数に届かず、保守の国民運動連合のサルコジ候補と社会党のロワイヤル候補の上位二者が五月六日の決選投票へ(22日)
◆MD問題で米ロの溝埋まらず ロシアを訪問したゲーツ米国防長官がプーチン大統領、セルジュコフ国防相と会談し、ポーランド、チェコへのミサイル防衛(MD)システム配備計画について説明。ロシア側は反対姿勢を改めて表明(23日)
◆香港議会が日本に個人賠償求める決議 香港立法会(議会)が日本の侵略戦争で被害を受けた中国人に、個人の賠償請求権を認めるよう日本政府に要求する動議を全会一致で採択(25日)
◆米上下両院、イラク撤退期日盛り込んだ追加予算案可決 来年三月末までにイラクからの米軍撤退完了を盛り込んだ追加予算案(大半がイラク、アフガニスタンでの戦費)を下院(25日)に続き、上院でも可決。ブッシュ大統領は拒否権行使を表明(26日)
◆北朝鮮とミャンマーが国交回復 両国の外務次官がヤンゴンで会談し、韓国閣僚らが爆殺されたラングーン事件以来二十四年ぶりに国交を回復する合意文書に署名(26日)
( 2007年04月29日,
二十七日に行われた日米首脳会談と共同記者会見、昼食会での発言や合意内容の要旨は次の通り。
【全般】
安倍晋三首相 戦後レジーム(体制)の脱却を目指す。日本をめぐる安全保障の環境が変わる中で、(集団的自衛権など)法的基盤整備のため有識者会議を設置した。
【北朝鮮】
ブッシュ大統領 (横田めぐみさんの母親の)早紀江さんをホワイトハウスに招いた際の印象は今も変わらない。北朝鮮に対するテロ支援国家指定の解除に当たっては、拉致問題を考慮する。解除の過程で、わたしのこの問題に関する強い感情が弱まってはならない。
両首脳 六カ国協議を通じ、北朝鮮の核放棄を実現。北朝鮮が約束を守らない場合、圧力を強めることで一致した。拉致問題での日米協力も確認した。
【従軍慰安婦問題】
首相 人間として首相として心から同情し、そういう状況になったことは申し訳ない。二十一世紀を人権侵害のない時代とするため貢献したい。
大統領 従軍慰安婦問題は世界の歴史の中で非常に残念な一節だ。首相の謝罪を受け入れる。(同問題を謝罪した一九九三年の)河野洋平官房長官談話と同様、ここでの(首相の)声明はとても率直で心からのものだ。首相はこの問題をめぐる心の内をわたしに語り、その率直さを評価する。われわれの仕事は過去から教訓を学ぶことであり、国を前に導くことだ。首相はそれをとても高い能力で行っている。
【安全保障】
両首脳 日米安全保障の抑止力で認識を共有。ミサイル防衛(MD)での協力強化で一致した。
首相 昨年五月の在日米軍再編の合意を着実に実施。米軍普天間飛行場の移転を着実に進める。
【アジア情勢】
両首脳 日米豪の協力強化で合意した。
首相 アジア・太平洋地域における主要民主主義国が対話と協力を深め、地域における繁栄と民主化という基本的方向性を支えることは重要だ。日米両国に加え、インド、オーストラリアとの間で対話を行うことは有益だ。
大統領 事務レベルで調整する。
【牛肉】
大統領 米国産牛肉を食べることは日本の人々にとっていいことだと確信する。(全面的な輸入解禁を)よろしく。
首相 担当閣僚で連絡を取り合う。
【気候変動】
両首脳 温室効果ガス濃度の安定化に向けての対話の強化に合意し、共同声明を出した。
首相 中国、インドを含む全主要排出国が参加する実効性のある国際的枠組みが必要だ。
(ワシントン時事)
( 2007年04月29日,
【ソウル=時事】訪米した安倍晋三首相が米議会指導者との会談で、従軍慰安婦問題に関し「申し訳ないという気持ちでいっぱいだ」と表明したことについて、韓国の通信社・聯合ニュースは二十七日、安倍首相の用いた表現が謝罪のレベルに至っていないと批判的に報道しました。
聯合ニュースは米議会筋の話として、安倍首相が「sense of apology」を表明したと指摘。ワシントン外交筋を引用し、この表現は英語には存在しないとした上で、「謝罪にははるかに至らないレベル」の発言だと伝えました。
( 2007年04月29日,
ブッシュ米大統領と安倍晋三首相は二十七日おこなった首脳会談で「かけがえのない日米同盟」を確認しました。イラク戦争、日本の集団的自衛権行使、「従軍慰安婦」問題…。今後の日米同盟は世界と日本をどこに導こうとしているのか。
(小泉大介、坂口明、竹下岳)
「従軍慰安婦」問題/おわびでは解決せず
「従軍慰安婦募集で狭義の強制性はなかった」(三月五日、参院予算委員会)。安倍首相の発言を契機に、米国内で燃え広がった「従軍慰安婦」非難の声。首相は二十六日の米国到着直後、真っ先に米議会関係者と会い謝罪を表明し、二十七日の首脳会談でも再度、謝罪せざるをえなくなりました。
会談のなかでブッシュ大統領は、「従軍慰安婦」徴募で旧日本軍の強制性を認めた一九九三年の「河野談話」に言及。事実上、強制性を否定しようとする安倍首相や日本国内の一部勢力の動きを強くけん制しました。
「いくつかの国での人権について話す一方、日本の戦争中の人権侵害を否定するならば、それは偽善に映るだろう」(米誌『ニューズウィーク』三十日号)――。米国で批判が集中したのは、北朝鮮による日本人拉致での人権侵害を口にする一方、「従軍慰安婦」問題を否定するという、日本政府の人権をめぐるダブル・スタンダード(二重基準)でした。
米国は外交・軍事政策の中で他国民への無数の人権侵害を行っていますが、建前上は「人権」を重視しています。「強制性」を否定しようとする首相の発言に対して、「同盟関係に破壊的影響が出る」(シーファー駐日米大使)との懸念が数多く表明されました。
会談で安倍首相が「日米関係は共通の価値観に基づいている」とあらためて強調し、「二十一世紀を人権侵害のない世紀とするために貢献していく」と表明したのも、普遍的価値の一つとされる「人権」認識をめぐって揺らぎがあったことをうかがわせます。
首相は今回の訪米で「従軍慰安婦」問題での米国内の集中砲火を避けようとしました。しかし、「おわび」だけでは問題が解決しないことははっきりしています。なぜ「強制連行はなかった」とする発言そのものを撤回・謝罪しないのか。それがない限り、「二重基準」批判は避けられません。
( 2007年04月29日,
安倍晋三首相がブッシュ大統領と首脳会談をおこないました。「従軍慰安婦」問題で「狭義の強制はなかった」という首相発言が大きな反発を買い、議会やメディアが批判を強めるなかでの会談でした。
安倍首相はあいまいな「謝罪」で批判をかわしながら、日米軍事同盟を「かけがえのない日米同盟」といい「ゆるぎない同盟として強化する」と公約しました。首脳会談を通じてあきらかになったのは、日米軍事同盟強化の危険な方向と安倍首相の異常なアメリカ追随姿勢です。
解釈改憲を対米公約
「慰安婦」問題は議題にならないといわれていましたが、実際には会談の大きな焦点となりました。安倍首相が三月以来示している「謝罪」をブッシュ大統領が、「慰安婦」問題で軍の強制があったことを認めた河野談話(一九九三年)と「同様」率直なものだと評価する形で、逸脱するなとクギを刺したことは重要です。安倍首相は共同記者会見で、「二十世紀は世界のどこでも人権を侵害してきた」とのべて「慰安婦」問題を人権一般の問題にすりかえる発言をしました。これでは世界の人々との溝を深めるだけです。
安倍首相はブッシュ大統領に「戦後レジーム(体制)の脱却をめざす」とのべました。侵略戦争の反省のうえに戦争をしないという戦後の平和のしくみから脱却するというのは、戦争をするしくみをつくるということです。憲法の平和原則をないがしろにする安倍首相の態度はとうてい許すことはできません。
「安全保障の法的基盤をつくり変えるための有識者会議を設置した」ことをブッシュ大統領に報告したのは重大です。これは、戦後日本の平和の基盤である憲法九条の改悪をめざしつつ、まずは憲法解釈を変え、政府が憲法違反としてきた集団的自衛権の行使を可能にすることを公式に対米約束したことを意味します。
有識者会議が検討するのは、アメリカを標的にした弾道ミサイルを自衛隊が撃ち落とす、戦闘中の米軍艦船を自衛隊が防衛する、イラクなど海外の戦場で自衛隊が米軍部隊を守る、などです。日本への攻撃がないのに、自衛隊が血を流してアメリカを守るというのは、「自衛」どころか「先制攻撃」にほかなりません。日本を戦争への道にひきずりこむ亡国の考えです。憲法九条と両立しません。有識者会議の「可能」の結論を見越して、公約するなど言語道断です。
イラク問題でも安倍首相の態度は卑屈で異常です。イラク戦争が誤った侵略戦争であることがあきらかとなり、アメリカ議会が来年三月末までに米軍の撤退を政府に義務付けた補正予算案を可決しているのに、安倍首相は、イラク戦争を「理解・支援」するといい、「日本は常にアメリカとともにある」とまでいっています。アメリカいいなりにイラクとの戦争に参加し、ミサイル防衛、米軍再編を進めるのでは、戦争の危険を広げるだけです。
戦後政治の原点に反し
日本は、侵略戦争を反省し二度と戦争をしないことを戦後復興の原点にしました。この憲法九条の先駆性は、イラク戦争反対の流れや北朝鮮問題を外交的・政治的に解決するといった現実政治と共鳴しています。
日米首脳会談がうたいあげた日米同盟は、「慰安婦」問題で批判される安倍首相やイラク問題でゆきづまるブッシュ大統領にとっては「かけがえのない」ものでも、国民にとっては重大な危険をもたらすものでしかありません。
( 2007年04月29日,
ワシントンから百`近く離れた山荘、キャンプデービッド。第二次大戦中にルーズベルト大統領が、大統領用の別荘にしました▼ルーズベルトが初めて招いた外国の首脳は、イギリスのチャーチル首相です。一九四三年五月。二人は会談の合間に訪れ、森で渓流釣りを楽しみます。前後の会談ではもっぱら、戦争をどう勝利に導くかを話し合いました▼チャーチルは、会談で発言しています。「一九四五年にはわれわれが対日大作戦に集中し得るもの」と仮定し、「日本を屈服させる長期計画を、研究する時が来たと感じる」(チャーチル『第二次大戦回顧録』=毎日新聞社)。見通しは当たり、日本は一九四五年に降伏しました▼シャングリラ(理想郷)とよばれていた山荘名をいまに変えたのは、アイゼンハワーです。デービッドは、孫の名でした。アイゼンハワーは、一九六〇年安保闘争に訪日を拒まれた大統領。ときの首相が、安保改定をおし通した岸信介氏です▼その山荘で、安倍首相がブッシュ大統領と会談しました。「従軍慰安婦」の強制連行はなかったかのようにいい、四五年までの軍国日本をひきずる首相。「申し訳ない」とわびましたが、まず謝るべき相手は、ホワイトハウス前で抗議する元「慰安婦」ではなかったか▼祖父の岸氏ゆずりに、日米同盟を強める首相。ブッシュ政権のイラク侵略を、崇高とたたえました。過去の過ちにけじめをつけないまま、アメリカとともに戦争する国をめざせば、日本も世界のならず者です。
//DATA-END
( 2007年04月29日,
【ワシントン=山崎伸治】訪米中の安倍晋三首相とブッシュ米大統領との日米首脳会談が二十七日午前(日本時間同日夜)、ワシントン近郊の大統領山荘キャンプデービッドで行われました。
(2、3、4、7面に関連記事)
終了後の共同記者会見で安倍氏は「かけがえのない日米同盟を確認し、揺るぎない同盟として強化していく」と表明。「安倍内閣の使命として、戦後レジーム(体制)からの脱却を目指すと説明した」と述べ、集団的自衛権行使の容認に向けた「有識者会議」の設置について伝えたことを明らかにしました。ブッシュ氏は「日米同盟はかつてなく強力」であり、「地球的規模の同盟だ」と述べました。
内外から米軍の早期撤退要求を突き付けられてブッシュ氏が孤立するイラク問題で、安倍氏は米国の「イラク安定化と再建の努力」に理解と支持を表明し、「日本は米国とともにある」として、イラク特措法の延長など日本側の「努力」を伝えたことを強調しました。
会談は約一時間半行われました。終了後、「エネルギー安全保障、クリーン開発および気候変動に関する日米共同声明」を発表しました。
会見で両首脳は、北朝鮮問題に多くの時間を割いたことを明らかにし、六カ国協議を通じて北朝鮮の核計画の完全な放棄を実現させることで一致したと強調しました。ブッシュ氏は同時に「六カ国協議の関係国は忍耐強いが、その忍耐も無限ではない」と北朝鮮をけん制する一方、北朝鮮に対して同協議の合意実施を求め続けることは「軟弱ではなく賢明な外交だ」と強調しました。
「従軍慰安婦」問題は首脳会談の議題とならないとされていましたが、安倍氏はブッシュ氏に自らの考えを説明したと表明。ブッシュ氏は「『慰安婦』問題は世界史の残念な事件であり、私は首相の謝罪を受け入れる」と述べました。
経済問題では、安倍氏が「構造改革」推進の決意をブッシュ氏に表明し、支持を得たことを強調。ブッシュ氏は世界貿易機関(WTO)のドーハ・ラウンドについて討議したとしたうえで、「日本人は米国産牛肉を食べたほうがよい」と述べ、米国産牛肉の輸入拡大を求めました。
共同声明は「大気中の温室効果ガスの濃度を、気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水準において安定化させる」ことを「究極的な目的」とし、その実現策をさらに検討すると表明しました。
集団的自衛権
「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されてもいないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利」(一九八一年政府見解)のこと。国連憲章第五一条で規定され、侵略戦争正当化に使われてきました。政府は、集団的自衛権を保有するが、「憲法九条のもとでは行使は認められない」(二〇〇四年の衆院予算委員会での秋山内閣法制局長官答弁)との立場をとってきました。
( 2007年04月29日,
【ワシントン=鎌塚由美】日本政府に「慰安婦」問題で公式な謝罪を求める決議案を米下院に提出したマイク・ホンダ議員(民主党)は二十六日、ワシントンで演説。改めて日本政府からの公式な謝罪の必要性を強調しました。
ホンダ議員は同日夜、「慰安婦」問題に取り組んできた「慰安婦問題ワシントン連合」の年次総会に出席し、基調演説を行いました。
演説に先立ち記者団の質問にこたえたホンダ氏は、安倍首相が同日、下院指導部を訪問し、「慰安婦」問題で「おわび」を表明したことについて、「これまで首相の個人的な(「慰安婦」問題への)認知はあったが、明確で公式な被害者への謝罪がないことが問題になってきた」と改めて指摘し、「安倍氏の個人的な発言」であり、「公式な謝罪ではない」と語りました。
ホンダ議員は、基調演説で、心身ともに甚大な被害を受けた元「慰安婦」の女性たちへの日本政府の公式な謝罪は、「歴史への責任」だと指摘。アジア系米国人として、「米国社会をより多様でより教養ある社会とするために、歴史の真実を教え、真実を学ぶ探求に取り組むことが私の責任であり、皆の責任だと思う」と話しました。
ホンダ氏は、歴史問題を乗り越える「和解を確信している」と語り、和解によって「人々、地域社会、国と国とを団結させ、信頼と人間性を促進する」と強調しました。
ホンダ氏は、下院決議一二一は、「日本のためだけでなく、われわれがより完全な世界となるためのもの」だとも語りました。
( 2007年04月28日,
塩崎恭久官房長官は二十七日午前の記者会見で、安倍晋三首相の訪米に合わせ「従軍慰安婦」問題への日本政府の対応に抗議するデモがワシントンで行われたことについて「デモをやるのは自由で、他国の国民の動きにあえてコメントすべきでない」と述べました。
( 2007年04月28日,
ワシントンからの報道によると、ペロシ米下院議長は二十六日の安倍首相との会談後、同首相が「慰安婦」への「同情」を表明したことについて一定の理解を示しながらも、決議案を出したホンダ議員の怒りを和らげるためにはもっと公の場で謝罪する必要があると述べました。
( 2007年04月28日,
【ワシントン=時事】訪米中の安倍晋三首相は二十六日昼(日本時間二十七日未明)、米議会議事堂でぺロシ下院議長(民主党)ら与野党の議会指導者と会談しました。首相は冒頭発言で自ら従軍慰安婦問題を取り上げ、「辛酸をなめられた元慰安婦の方々に、個人として首相として心から同情するとともに、極めて苦しい状況に置かれたことに申し訳ないという気持ちでいっぱいだ」とおわびを表明しました。
米下院の慰安婦問題に関する対日謝罪要求決議案は、五月にも採決される見通し。慰安婦連行の「狭義の強制性」を否定した自らの発言については、「真意が正しく伝わっていないと思われる」と指摘しました。
( 2007年04月28日,
日本共産党の市田忠義書記局長は二十七日、元「従軍慰安婦」訴訟にたいする最高裁判決について、マスメディアの求めに応じて次のコメントを出しました。
◇
中国人元「従軍慰安婦」が国に損害賠償などをもとめた訴訟にたいする最高裁判決は、個人請求権を認めず、上告を棄却する不当なものであるが、旧日本軍による強制、監禁、暴行の事実をあらためて認めた。
安倍首相は、強制連行の事実はなかった≠ネどと、歴史の事実をいつわる言動に固執することなくすみやかに撤回すべきである。
( 2007年04月28日,
西松強制連行訴訟の最高裁判決を受け、中国人元労働者の邵義誠さん(81)ら原告と支援者が二十七日午後、東京都港区虎ノ門の同社を訪問。謝罪や解決金を求める要求書を担当者に手渡すなどしました。
最高裁判決が会社側に対し、「被害救済の努力をするよう期待する」と言及したことから、原告側は強制連行などの事実の承認と謝罪表明、解決金の支払いなどを同社に求めました。
原告側は「きょうを出会いと考え、改めて交渉を始める」としましたが、同社は「すべてゼロから検討。担当弁護士と検討の上、慎重に対応していく」としています。
( 2007年04月28日,
「司法の役割を放棄した大変恥ずかしい判決」――広島・西松建設訴訟と中国人「慰安婦」事件第二次訴訟の最高裁判決に対し二十七日、原告や弁護団、支援者から怒りの声が上がりました。
同日午前に判決を受けた広島・西松建設訴訟の原告らは、判決後の記者会見で「不当な判決だ」と抗議。「裁判所の責任を免れたいという判決で無責任なやり方だ」と怒りをあらわにした原告の邵義誠さん(81)は、「(補償を求め)西松建設との交渉は最後までやっていく」とのべました。
原告団団長だった父・呂学文さんの死後、裁判を継承した息子の呂志剛さん(59)は、「人権を守るためにある司法が正しい裁きをしないとは、いったいどういうつもりなのか。怒りで胸がいっぱいだ」と語りました。
また、西松建設に対し、「なぜ、しかるべき補償をしないのか。私たちはお金を求めているのでない。正義を求めているのだ」と訴えました。
呂志剛さんの父・学文さんは日本滞在中、広島刑務所に送られたために被爆。帰国後は後遺症に苦しんでいました。二〇〇三年八月、八十二歳で死去しました。
作業現場でトロッコがひっくり返る事故に遭い、両目を失明した宋継堯さん(79)は「西松建設とは最後までたたかっていく。終わりはない」と語りました。
西松建設訴訟弁護団の中島憲弁護士は「中華人民共和国政府は、…日本国に対する戦争賠償の請求を放棄する」と宣言した日中共同声明第五項について、「そもそも『国民』という文言はない」と指摘。「中国国民の請求権放棄を勝手に解釈していることは問題だ。しかも、なぜ放棄されたのかを明らかにしていない」と法解釈の誤りと根拠のなさを批判しました。
午後に判決があった中国人「慰安婦」事件第二次訴訟弁護団も判決後、記者会見を開きました。
小野寺利孝弁護士は判決について、「実体的な請求権はあるといいながら、裁判を起こす権利はない。政府に対する要求はできるが、裁判所に訴えを起こすのはダメだという、こんなばかげた判決は司法の自殺行為だ」と批判。「この不当な判決を現在進行している地裁、高裁レベルでのたたかいを通じて、克服するため総力挙げてたたかい抜く」とのべました。
また、「裁判を起こす権利は失ったが、人権侵害を犯した政府や企業に対しての賠償請求権は失っていない」と指摘。「政府と国会はこの判決の趣旨をしっかりと受け止めるべきだ。私たちは全面解決の要求を高く掲げてたたかっていきたい」と語りました。
南典男弁護士は「監禁・強かんは日本軍がやったという事実、被害者が現在もPTSD(心的外傷後ストレス障害)で苦しんでいるという実態を確定した。政府と企業は自主的に解決するべきだ」とのべました。
弁護団によると、原告の郭喜翠さん(80)は、中国で判決の結果を聞き、絶句したまま言葉もなく、しばらく涙を流していたといいます。そして「極めて残念である」と話したといいます。
西松強制連行訴訟
戦時中の一九四四年、西松組(現西松建設)は中国山東省の収容所などから中国人労働者三百六十人を強制連行し、広島県加計町(当時)の安野発電所で働かせました。衣食が十分に与えられない過酷な条件下で、二十九人が死亡したとされます。元労働者の故呂学文さんらが九三年に来日し、西松建設に謝罪と補償を求めましたが、拒否され、交渉は決裂。生存者三人と遺族二人が九八年、広島地裁に提訴しました。
報告集会で会社側批判/遺族
二十七日夜行われた報告集会では、判決後に行われた西松建設との交渉で、当初、中国人原告のつえを投げるなど、力ずくで排除しようとした会社側に、批判が相次ぎました。
原告団長の故呂学文さんの遺族、呂志剛さん(59)は「裁判に一人も来なかっただけでなく、何食わぬ顔で、このような仕打ちをすること自体、私たちを馬鹿にしています。問題が解決するまで、最後の最後まで西松建設とたたかいます」と震えながら話しました。
「慰安婦」裁判弁護団の大森典子団長は「裁判一件一件はそれぞれ別の顔を持っている。それなのに西松裁判の判決を出しておいて、あとは一括して中国人の請求は棄却という判決に、強い憤りを感じています。いま安倍内閣のもとで、極めて政治性をあらわにした最高裁に国際社会の視線が注がれています」と判決の不当性を訴えました。
( 2007年04月28日,
【ワシントン=鎌塚由美】「慰安婦」問題で日本政府に公式な謝罪を求める市民が二十六日、安倍首相の訪米にあわせホワイトハウス前でデモ行進しました。二月に米議会で証言した元「慰安婦」の韓国人の李容洙さん(79)が再び渡米してデモの先頭に立ち、被害女性たちの尊厳の回復を求めました。(7面に関連記事)
デモをしたのは、米議会に提出されている下院決議案一二一(「慰安婦」決議案)を推進するために結成された「一二一連合」や米国アムネスティー・インターナショナルで、韓国系、中国系の住民ら約五十人が参加。「安倍首相は謝罪を」「慰安婦に正義を」と書かれた看板を手に、静かに行進しました。
李さんは、日本政府について「深い反省と行動がない。私たちが死に絶えるのを待っているようだ」と批判。日本政府からの公式な謝罪を求めているのは、「世界の人々と力をあわせ戦争犯罪、人身売買や女性への性犯罪を根絶するためだ」と述べ、「日本政府が公式に謝罪しない限り、これらの問題は解決しない」と訴えました。李さんは、ホワイトハウスの向かいにある安倍首相滞在のブレアハウス前まで行進し、「安倍首相は謝罪しろ」と大声でこぶしを振り上げました。
( 2007年04月28日,
【ワシントン=山崎伸治】二十六日から初訪米中の安倍晋三首相とブッシュ米大統領との首脳会談が二十七日午前(日本時間同日深夜)、ワシントン近郊の大統領山荘キャンプデービッドで始まりました。両首脳は会談後、共同記者会見にのぞみます。(2面に関連記事)
両首脳は日米同盟が「かけがえのない」ものであることを確認し、日本側が集団的自衛権行使の容認に向けた「有識者会議」の設置を説明。米側はイラク、アフガニスタンでの日本の「貢献」を評価する見通しです。
在日米軍の再編・強化を進めることに加え、軍事面での協力の推進についても話し合われます。対北朝鮮問題では、核放棄に向けて、六カ国協議などでの連携強化を再確認するとともに、日本側は拉致問題での米国の協力を改めて要請するものとみられます。
さらに地球規模の問題として、温暖化防止などの環境問題や代替エネルギー開発、途上国における持続可能な開発の支援などについても議論され、環境面での協力の必要性をうたう共同文書を発表する見通しです。
安倍首相はこれに先立つ二十六日午前、米連邦議会議事堂で民主、共和両党の上下両院指導部の議員らと会談。このなかで同首相は「従軍慰安婦」問題でおわびを表明しました。同日午後にはブッシュ大統領夫妻が主催するホワイトハウスでの夕食会に出席しました。
( 2007年04月28日,
最高裁第一小法廷と第二小法廷は二十七日、中国人の「慰安婦」と強制連行・強制労働の被害者が日本国や企業に損害賠償を求めていた訴訟の上告審で、いずれも「日中共同声明で裁判上の個人請求権は放棄された」との初の判断を示し、原告の請求を棄却しました。(2、15面に関連記事、4面に強制連行訴訟の判決要旨)
第一小法廷(才口千晴裁判長)の判決は、第二次大戦中に旧日本軍に拉致され、「慰安婦」にされた女性二人が日本国に損害賠償などを求めた中国人「慰安婦」第二次訴訟の上告審。第二小法廷(中川了滋裁判長)の判決は、強制連行され広島県内で過酷な労働をさせられた中国人と遺族五人が西松建設に賠償を求めた訴訟の上告審。いずれも全員一致の判決です。
両判決は、日本軍や企業の違法行為によって原告らが大きな被害を受けたことを認定しました。第一小法廷判決は、当時十三歳と十五歳だった原告が日本軍に拉致・監禁され、継続的に性的暴力を受けたとし、「慰安婦」が強制されたものであったことを認めました。
しかし、いずれの判決も、「中国政府は…戦争賠償の請求を放棄する」とした日中共同声明(一九七二年)により中国国民個人の賠償請求権も放棄されたとしました。一方で「ここでいう請求権『放棄』は、裁判上の権能を失わせるにとどまる」とし、国や企業が自発的に賠償などに応じることはできるとしました。
二つの判決は中国人被害者が訴えているほかの戦後補償裁判への影響が懸念されます。弁護団は「政府に要求はできるが、裁判はダメというのは司法の自殺行為」(「慰安婦」訴訟・小野寺利孝弁護士)、「後は(企業と)補償交渉をしてくださいという、司法の役割を放棄した判決」(西松訴訟・足立修一弁護士)と批判しました。「慰安婦」訴訟は二〇〇五年、東京高裁が原告の請求を棄却。西松訴訟は〇四年、広島高裁が西松建設に賠償を命じていました。
◇
中国人戦争被害賠償請求事件弁護団によると、最高裁は同日、中国人戦争被害者が賠償を求めている強制連行福岡訴訟、同劉連仁訴訟など三件についてそれぞれの代理人に決定通知を送付したと連絡しました。いずれも高裁では原告の請求が棄却されており、弁護団は上告を受理しない決定になった可能性が高いとみています。
( 2007年04月28日,
中国の香港立法会(議会)は二十五日、日本が侵略戦争で中国人に与えた被害に対し、個人の賠償請求権を認めるよう日本政府に求めた動議を全会一致で可決しました。提案者の何俊仁議員(民主党)は趣旨説明の中で、安倍晋三首相が「従軍慰安婦」の強制性を否定したことを、日本政府の不誠実さの一つとして批判しました。
動議は「日本政府とその他の国家機構は、一九七二年の日中共同声明、七八年の日中平和友好条約の解釈にあたって、第二次世界大戦の戦争犯罪が個人に与えた被害に関し、中国人民が日本の国家と企業に賠償を求める権利が禁止・放棄されたと一方的に認定すべきでない」と宣言しました。
その上で日本政府に、戦争犯罪の被害者が「公平な賠償を受けられるよう」すみやかな立法化を求めました。中国政府には、中国人民の個人賠償請求に「人道的支援」を促しました。
何議員は、小泉前首相の靖国神社参拝や、侵略戦争を否定した歴史教科書とともに、安倍首相の発言を取り上げ、「戦争責任に対する日本政府の一貫した態度は不十分なものである」と批判しました。
また、強制労働被害者が起こしている裁判で日本政府が自らの責任を否認していることにも言及し、「日本軍の武力なしに民間企業が多くの人々を強制労働させることができただろうか」と指摘しました。
動議について審議が始まったのは夜十時すぎ。各党十人の議員が討論し、支持を表明し、深夜、挙手による採決で可決されました。
香港立法会は二〇〇三年にも、日本政府に戦争賠償促進を求める動議を可決しています。今回は、二十七日に日本の最高裁が強制労働をめぐる裁判で請求権について判断を示す判決を言い渡すのを前に、請求権を否定しないよう香港の立法機関として意思を表明しました。深夜にわたる審議になったのも、この判決言い渡しを意識したものとみられます。
提案者の発言からは、安倍首相をはじめ自民党や日本政府内から戦争犯罪を否定する発言が相次いでいることへの強い危機感がみられます。
(山田俊英)
香港立法会
香港はアヘン戦争(一八四〇―四二年)後、英国の植民地となり、一九九七年に中国に返還。その際、憲法にあたる香港基本法で「高度な自治」を保障された特別行政区になりました。立法会は基本法で定められた立法機関で、定数六十。住民による直接選挙で選出されるのは半分の三十議席。残り半分は、業界、労組、医師などの職能団体による間接選挙です。議席を持つ主な政党は民主建港協進連盟、自由党、民主党など。
( 2007年04月27日,
【ワシントン=山崎伸治】二十六日の安倍晋三首相の初訪米に合わせ、同日付の米紙ワシントン・ポストは「『慰安婦』の真実」と題した全面広告を掲載しました。「従軍慰安婦」問題で日本政府に謝罪を求める下院決議案を支持する市民団体「121連合」などによるものです。
広告は当時の「従軍慰安婦」の写真五枚とともに、この問題で日本政府の態度を批判した同紙や経済紙ウォール・ストリート・ジャーナルの社説などの抜粋を紹介しています。
「日本はこの犯罪に全面的な責任をとってはこなかったし、明確な謝罪はしていない」と指摘。安倍首相の発言は日本政府の直接の関与を否定するもので、これまでの政府見解よりも「後退している」と批判しています。
( 2007年04月27日,
安倍首相の訪米を目前にした二十五日、日本軍「慰安婦」問題行動ネットワークは国会内で「慰安婦」被害者に対する真の謝罪と補償を求める記者会見と緊急集会を開きました。七十人が参加しました。
集会では、韓国、中国、フィリピンの被害者が証言する映像が上映され、元日本兵の小山一郎さんと坂倉清さんが体験を話しました。
小山さんは「初年兵教育を中国で受けた後、外出が許されたころに『慰安所』というものを知った。十六―十七歳から三十代の中国人女性たちが五十人くらい並んでいた。彼女たちを兵隊が指名して、各部屋に入っていく。部隊が移動した先にも慰安所があり、そこには六人の朝鮮人女性がいた」と話しました。
今回初めて証言にたった坂倉さんは、自分が慰安所に行ったとき、前日来たばかりという少女がずっと泣いていて、自分はそのまま帰ってしまった経験を話し、「安倍首相は詭弁(きべん)をろうしてもだめ」と述べました。
韓国テレビ局記者の「安倍首相は強制動員の証拠はないと発言しているが」との質問に、小山さんは「衛生兵だった仲間の兵隊は月に一回慰安所に衛生検査に行っていたが、『かわいそうだよ。みんなだまされて連れてこられている』と言っていた」と答えました。
東ティモールから来日中のアンジェリーナ・デ・アラウジョさん(27)が、東ティモールの元「慰安婦」の証言と現状を報告。「聞き取りをした十七人のうち、すでに二人は亡くなっている。彼女たちの尊厳を回復するために日本政府はあらゆるてだてをとってほしい」と述べました。
( 2007年04月26日,
中国人の戦争被害者による日本政府への補償を求める権利をめぐって二十七日、最高裁判決があります。三月十六日、最高裁が論点を「請求権放棄」に絞って弁論を開きました。判決は強制連行や「従軍慰安婦」事件など、日本の侵略戦争で傷つけられた中国人すべての戦後補償裁判に影響を及ぼすことになります。
(本吉真希)
訴訟は強制連行被害者と遺族計五人が原告となり、西松建設を相手に提訴したものです。広島地裁で敗訴しましたが高裁で逆転勝訴。判決は個人の請求権を認めました。
日本政府は一九五一年のサンフランシスコ平和条約、五二年の日華平和条約、七二年の日中共同声明で、日本に対する中国国民の損害賠償請求権は放棄されたと主張しています。西松建設も同じ論調です。
これに対し、中国人強制連行強制労働弁護団全国連絡会事務局長の森田太三弁護士は「根拠薄弱な主張」といいます。
国や企業側の法解釈の誤りを見ると―。
―中国は、連合国とその国民の賠償請求権の放棄を明記したサンフランシスコ平和条約の当事国ではない
―日華平和条約は台湾と結んだもので、中国は当事国ではなく、適用範囲は台湾と一部の地域に限られている
―日中共同声明では、「日台条約(日華平和条約)は不法であって破棄されるべきこと」(復交三原則)を確認している
―日中共同声明第五項は「日本国に対する戦争賠償の請求を放棄する」と宣言しているが、主語は「中華人民共和国政府」であり、「国民」ではない
九二年四月七日の参院内閣委員会では、加藤紘一官房長官(当時)は中国国民が訴える権利について「訴権は存在する」とのべていました。
なぜ、政府は法廷で「請求権放棄」論を主張しはじめたのか。森田弁護士は、次のように指摘します。
「戦後補償裁判は原告が長年敗訴してきました。しかし、二〇〇一年に強制連行事件の劉連仁訴訟が東京地裁で勝って以降、原告勝訴の判決が続くようになった。これに危機感をもった国や企業は〇二年ごろから、新たに『請求権放棄』論を主張するようになったのです」
最高裁の弁論の前日、中国外務省の報道官は定例記者会見で次のように発言しました。
「日中共同声明は両国政府が署名した厳粛な政治外交文書であり、戦後中日関係の回復と発展を形作る政治的基礎となったものである。どちらの一方も司法解釈も含めて(その)文書に及ぶ重要な原則と事項について一方的に解釈してはならない」(三月十五日)
中国政府は強制連行、「慰安婦」、遺棄毒ガスなどは未解決の問題として「人民の正当な利益を擁護する立場から、日本側に真剣な対応と善処を要求」しています。
二十七日、最高裁は中国人「慰安婦」事件第二次訴訟の判決も出します。国や企業側が主張する誤った法解釈について、どのような判断をするのか問われます。
( 2007年04月26日,
「『従軍慰安婦』の強制連行を裏付ける証拠はなかった」という安倍首相の発言に対し、北朝鮮による日本人拉致問題を力説する日本政府が、日本がおこなった人権侵害に無感覚なのは「二重基準」ではないかという批判が内外で広がっています。四月の論壇ではこの問題が各誌でとりあげられています。
この批判がアメリカで始まったことは日本にとって深刻です。有力紙ワシントン・ポスト三月二十四日付は、「安倍晋三のごまかし―彼は北朝鮮による日本人犠牲者には熱心だが、日本自身の戦争犯罪には目をつむる」という社説で、首相の態度を「主要民主主義国の指導者としての恥辱である」とすら非難しました。
元首相補佐官が米国の憤慨危惧
岡本行夫(外交評論家)「首相の『言葉』しかこの窮地は救えない」(『中央公論』)は、この社説について、「アメリカの新聞の社説で、あれほどひどく先進国の指導者を批判したものを読んだのは初めてだ」と衝撃を語っています。いまのアメリカでは、女性の議会進出がすすんだ結果、弱者への加害行為に敏感になっており、このことは「外交に携わる人間ならば、本来常識として知っていなければならない」と苦言を呈します。さらにマイノリティーも伸張しています。それだけに、「日本人同士の間ならともかく、外から見て九三年の河野談話から後退すると見られることが、いかにアメリカの人々を憤慨させるか知っておいてほしかった」といいます。
岡本氏は、拉致問題との関係でも、安倍発言によって「今の日本人は過去の事実を認識していない、というイメージを持たれることが問題なのだ」と危惧(きぐ)します。外務省で対米関係に携わり、橋本内閣、小泉内閣で首相補佐官もつとめた岡本氏の発言だけに、注目しました。
吉見義明(中央大学教授)「『強制』の史実を否定することは許されない」(『世界』)は、安倍発言への本格的な反論です。吉見氏は、「慰安婦」問題を過去の問題ととらえるべきではなく、現在の国際的な注目の背景には、「戦時性暴力の再発防止のために何が必要かという国際社会の問題意識」があると指摘します。この観点は、戦時にはどの国もやっている℃ョの議論がもちだされるだけに大事です。集団的性暴力は最近もアフリカや旧ユーゴでおきており、国際社会は再発防止にとりくんでいます。それだけに日本が「慰安婦」問題を真摯(しんし)に反省するならば、いっそう今日的な意味をもつことになるでしょう。
誰が慰安所作り維持運用したか
軍や官憲が直接おこなった「強制」を否定する安倍発言について、吉見氏は、「この議論の最大の問題点は、軍の慰安所制度を誰がつくり、誰が維持・運用していたのかという問題の本質をみようとしないこと」だと反論しています。
吉見氏は、軍が慰安所の設置を決定し、民間業者に女性を集めさせたことをしめす資料は相当数でているので、「業者を使っているのは、その背後にいる軍や警察であることは否定できない」と主張します。
安倍発言に見られる「慰安婦」否定論の特徴は、論点を「強制連行」に限定し、しかもそれを指示する公文書が見つからないので「強制性はなかった」としていることです。しかし資料が見つからないからといって事実がなかったということにはなりません。吉見氏がいうように、「そもそも、軍や警察が公文書で『強制的に集めろ』といった違法な指示を書き残すことはありえない」し、仮にあったとしても廃棄されるでしょう。それでも軍による拉致が裁判で認定されたり、実行者の証言が明るみに出ているのですから、事実ははっきりしています。
吉見氏は戦前の刑法でも、拉致、誘拐、人身売買を問わず人を国外に移送すれば罪とされ、軍が大規模に「慰安所」をつくりはじめた一九三七年までは実際に処罰されていたことを明らかにしています。
横田一(ルポライター)「安倍総理の『原点回帰』」(『世界』)は、「狭義の強制」と「広義の強制」を区別し、「連れて行き方」だけを問題にして、長期にわたる拘束や監禁への軍の関与を否定しようとする安倍首相の論法は、「人権侵害の議論では通用しない」と批判しています。
イチかバチかの首相は「困る」と
アメリカがイラク戦争でつまずいて影響力を後退させ、他方、中国、インド、ロシアなどが台頭しているもとで、これからの世界を、軍事衝突の可能性をふくむ各国の対抗の時代とみるのか、軍事ではなく外交による問題解決が可能な時代とみるのかも、最近の論点です。
前者の例はニアル・ファーガソン(ハーバード大学教授)「『特異な帝国』アメリカとその後」(『論座』)です。ファーガソン氏は、「複数の帝国が経済的な覇権を競い合った十九世紀的な世界に回帰しているのかもしれない」と主張します。
他方、緒方貞子(国際協力機構理事長)「グローバリゼーション時代の世界システムを読む〔佐々木毅学習院大学教授との対談〕」(『論座』)は、軍事力万能論を否定します。緒方氏は、イラクを例に、「アメリカは他と比べられない軍事力を持っています。だけどそれを行使すればアメリカが思うような安定が来るかというと、そうではない」とのべます。そして大規模な軍事力より警察力の方が必要になると考えます。それは「上から爆弾を落としたって解決にはならない」からです。
緒方氏が重視するのは外交による政治的解決です。「まどろっこしいかもしれないけれど、外交をしている間に政治解決を図っていくことじゃないですか。イチかバチかでものを決めるような簡単な状況が支配的になる世界じゃないんです」と発言し、「安倍首相が好きなのはイチかバチかかもしれませんね」という司会の問いに、「それは困るんですね」と答えています。国連難民高等弁務官を務めた緒方氏ならではの重みを感じる発言です。
「慰安婦」問題でも世界論でも、安倍政権の基本姿勢は世界の流れと隔たっていることが明らかになってきました。
(たしろ ただとし)
今月の動向(編集部)
▽「何のための『国民投票法案』なのか」井口秀作(『世界』)「国民投票法案」は「憲法改正手続法案」と呼ぶべきだとのべ、この法律が国民主権を具体化するものだという議論を論駁(ろんばく)。住民投票と同列に論じる見方を批判。
▽「ワーキング・プアから抜け出せないシングルマザーたち」橘由歩(『中央公論』)年収200万円以下の生活を強いられ、必死に子育てする母子家庭の声をルポ。生活保護の母子加算打ちきり、幼い子を抱えた母親への行政の就労指導・圧力が母子を追いつめている実態を報告。
▽「ダンピングされる生=&n困化」湯浅誠(『論座』)生活保護申請をさせてもらえず男性が餓死した北九州市。「北九州方式」「21世紀のモデル都市」といわれ地域住民の共助を強調する方式の実態をルポし、公助の欠落を批判。
( 2007年04月26日,
安倍晋三首相の訪米を前に「従軍慰安婦」問題での日本政府の姿勢があらためて問われています。米メディアも二十一日、安倍首相へのインタビューでこの問題を質問。関心の高さを示しました。「強制性はなかった」「裏付ける証拠はない」という安倍首相らの言動がなぜ国際的な大問題になるのか。この間、明らかになった資料(十八日、十九日付本紙で一部既報)は、そのことを示しています。
(中村圭吾)
十七日に林博史・関東学院大学教授らが記者会見で公表した資料は、戦争犯罪を裁いた東京裁判(一九四六―四八年)で各国検察陣が提出し、証拠書類として採用されたものです。東京裁判では、日本軍が占領地で行った数々の残虐行為とともに、性行為の強制も問題となりました。
東京裁判の判決は、中国についての記述の中で、「桂林を占領している間、日本軍は強姦と掠奪のようなあらゆる種類の残虐行為を犯した。工場を設立するという口実で、かれらは女工を募集した。こうして募集された婦女子に日本軍隊のために醜業(売春)を強制した」(極東国際軍事裁判速記録)と指摘しています。
オランダの検察陣は、インドネシア・ボルネオ島(カリマンタン)、モア島、ジャワ島、ポルトガル領ティモール(東ティモール)の四カ所での証拠書類(資料@、A)を提出。フランスはベトナム・ランソンでの事件(資料B)を、中国は桂林での事件(資料C)を証拠として提出しました。これらの資料は、日本軍が現地の女性を強制的に「慰安婦」にした事実を物語っています。
日本政府は、サンフランシスコ平和条約(一九五二年発効)で、東京裁判をはじめとする国内外の戦犯裁判の判決を受け入れました。
同条約は第一一条で、「日本国は、極東国際軍事裁判所並びに日本国内及び国外の他の連合国戦争犯罪法廷の裁判を受諾し、且つ、日本国で拘禁されている日本国民にこれらの法廷が課した刑を執行するものとする」と述べています。
サンフランシスコ平和条約は、日本が、国際社会に復帰する第一歩となった条約です。「慰安婦」問題で「強制性がなかった」とする安倍首相らの言動は、同条約締結以来の日本の歩みを政府自らが根底から崩すものにほかなりません。
「日本軍が家々に押し入り脅迫」
提出された証拠書類は英文と邦訳文。カタカナはひらがなに、旧字体は新字体に直しました。また適宜、改行しました。
資料@
「ポンテヤナック虐殺事件に関する一九四六年三月一三日付林秀一署名付訊問調書」(インドネシア・ボルネオ<カリマンタン ポンティアナック)(PD<検察側証拠書類番号> 5326/EX<法廷証拠番号> 1701A)
本日、一九四六年三月一三日容疑者林秀一は在ポンチヤナック臨時軍法会議予審委員たる予、即ちメーステル・イエ・ベ・カンの面前に出頭した。
[証人○○の訊問調書が容疑者に提示され、これについて訊問がなされた]
答 この婦人が○○及○○と共に上杉より訊問を受けたことは本当であります。その場合私は馬来(マレー)語通訳として立会ひました。上記婦人は日本人と親密にしたと云ふので告訴されたのです。日本人と親密にすることは上杉の命によって許されていなかったのであります。私は上記の婦人を平手で打ったことを認めます。又彼等の衣服を脱がせたことも認めます。之は上杉の命令で行ったのであります。かくて三人の少女は一時間裸で立たなければなりませんでした。
問 これは日本で婦人を訊問する時の慣習か。
答 私は知りません。
問 君は部下ではない。かくの如き命令に従ふ必要はない。
答 私はこの婦人たちが脱衣して裸にならなければならなかったことを承認しました。私は此の婦人たちは実際は罰すべきでなかったと信じます。併し彼等を抑留したのは彼等を淫売屋に入れることが出来る為の口実を設けるために上杉の命令でなされたのであります。脱衣させたのは彼等が日本人と親密になったことを彼等に認めさせることを強ひるためでありました。結局その婦人たちは淫売屋へは移されませんで、上杉の命令で放免されました。何故だか私は知りません。
(被害者女性の名前は○○に置き換えました)
資料A
ルイス・アントニオ・ヌメス・ロドリゲスの宣誓陳述書(一九四六年六月二六日付、ポルトガル領ティモール<東ティモール>)(PD5806/EX1792A)
一九四二年二月二一日、私は、日本軍がディリの中国人やその他の家々に押し入り掠奪をおこなうのを見ました。日本軍があちこちで族長らに対して、日本軍慰安所に現地の少女たちを提供するように強制したことを私は知っています。その際に、もし少女らを提供しなければ、日本軍は族長らの家に押しかけて、慰安所に入れるために近親の女性たちを連れ去るぞ、と言って脅迫しました。
資料B
ニェン・ティトンの口述書抜粋(ベトナム・ランソン)(PD2772E―5 EX2120)
四日間自由であった後、私は街で日本人に逮捕され印度支那保安隊の病院の後方にある憲兵隊に引致されました。
私は八日間、日本憲兵隊に監禁された後放免されました。其後私は数回逮捕され乱暴に殴られました。日本人等は私の仏人との交際を咎めたのでありました。
ランソンに於ける捜査の間、日本人等はフランス兵と一緒に生活していた私の同国人数名に彼等が光安に設けた慰安所へ一緒に行くやう強制しました。私は巧い計略の結果、彼等から免れることが出来ました。
資料C
軍事委員会行政院戦犯証拠調査小隊「桂林市民控訴 其の一」(一九四六年五月二七日付、中国桂林)(PD2220/EX353)
敵軍の我が桂林を侵略せしは一年間にして其の間姦淫、捕虜、掠奪等為ささる処無く長縄大尉なる日本福岡県人は敵復興支部長の職を担当し、人と為り陰険悪毒にして桂林市に有る偽新聞社並びに文化機関をして自己の支配下に置き其等を我が民衆の懐柔並びに奴隷化の中心機関とし且又偽組織人員を利用し工場の設立を宣伝し、四方より女工を招致し、麗澤門外に連れ行き強迫して妓女として獣の如き軍隊の淫楽に供した。
( 2007年04月26日,
安倍晋三首相は二十六日、就任後初の訪米に出発し、二十七日午前(日本時間同日深夜)にワシントン近郊の大統領山荘キャンプデービッドでブッシュ米大統領との会談に臨みます。「従軍慰安婦」問題や北朝鮮への対応で日米間に「すきま風」が吹いていると言われるなか、イラク派兵の継続や憲法が禁じる集団的自衛権の行使「検討」を示すことで打開を図る狙いです。
集団的自衛権、イラク戦争支援/同盟深化へ危険な手土産
首相は二十七日午後には次の訪問地・サウジアラビアに出発するので、米国滞在は実質一日半という異例の短さです。日米の「蜜月」ぶりが演出され、訪米中に多くの日程をこなした小泉純一郎前首相時代とは明らかに様相が異なっています。
米国内も反発
「従軍慰安婦募集には狭義の、日本軍による強制を裏付ける証拠はない」(三月五日、参院予算委員会)。安倍首相の答弁に対して、韓国などアジア諸国だけでなく米国内からも反発の声があがり、シーファー駐日米大使も「日米関係に破壊的影響を及ぼす」と述べました。
安倍首相は昨年十月、小泉前首相の靖国神社参拝で関係が冷え込んだ中国、韓国を訪問した成果を携えて今回の訪米を迎えるはずでした。しかし、自らの「従軍慰安婦」発言で「訪米中止の可能性」(加藤紘一自民党元幹事長)もとりざたされるほどになったのです。三日には首相の側からブッシュ大統領に電話をかけ沈静化に努めたものの、「慰安婦」問題を含む歴史認識では本音を隠しません。
「血の同盟」へ
首相は自らの発言で「すきま風」が吹く日米関係の修復へ、「世界とアジアのための日米同盟」路線を示し、さらなる「同盟の深化」を狙い、危険な手土産≠用意しています。
とりわけ、憲法が禁じている集団的自衛権の行使について、首相が米メディアに「法整備」を表明したことは重大です。米側が強く要請している集団的自衛権の行使への「前向きな検討」(政府高官)を表明することで日米関係の現状を打開しようという意図は明白です。
イラク特措法の二年延長案も訪米直前の二十四日に衆院で審議入りしました。「世界とアジアのための日米同盟」の象徴ともいえるイラク派兵を継続し、イラク戦争の破たんで米国内でも孤立しているブッシュ大統領を支えようという姿勢を示すものです。
集団的自衛権行使の「検討」とイラク派兵を手土産≠ニする今回の訪米は、安倍首相の持論である「血の同盟」への一歩といえるものです。
(竹下 岳)
「慰安婦」発言、対北朝鮮政策/人権感覚に広がる疑念
安倍晋三首相の初訪米は、首相の「従軍慰安婦」問題での発言で、首相の人権感覚やタカ派政治姿勢への疑念が広がる中で行われます。
米主要マスコミが首相発言にいっせいに非難を浴びせた直後の今月三日、ブッシュ大統領と安倍氏が電話で会談。ブッシュ氏が「今日の日本は第二次大戦時の日本ではないと指摘した」(ホワイトハウス)ことで幕引きをはかろうとしました。「従軍慰安婦」問題は今回の首脳会談では直接取り上げられない見通しです。
疑問は消えず
しかし米側には「慰安婦」問題での安倍氏の対応に、根本的な疑問と不安は消えていません。
米メディアの反応も厳しく、訪米を前に安倍氏は週刊誌『ニューズウィーク』と経済紙ウォール・ストリート・ジャーナルとのインタビューに応じましたが、それでことが沈静化するかは未知数です。
「慰安婦」問題について日本政府に公式な謝罪を求めるホンダ下院議員(民主党)提出の決議案一二一は、その後も支持表明議員が増え、二十三日現在で八十三人となりました。
二十六日には、国際人権擁護団体アムネスティ・インターナショナルや在米韓国人組織などで構成する「一二一連合」がホワイトハウス前で、首相に公式の謝罪を求めて集会を予定するなど、安倍氏には厳しい出迎えとなりそうです。
一方、首脳会談で焦点の一つとなる対北朝鮮政策でも、制裁強化を図る日本側と、核開発放棄を粘り強く北朝鮮側に求める米側との対応にずれがみられます。
対話姿勢の米
米側は六カ国協議での合意実現に向け、マカオの金融機関バンコ・デルタ・アジア(BDA)にある資金の凍結解除も認めるなど北朝鮮の要求にも応じ、問題を外交的に解決する姿勢をいっそう強めています。
六カ国協議に参加する北朝鮮以外の五カ国のなかで、日本だけが外交の窓口を欠き、経済制裁強化の方向に突出した構図となっています。
あわせて米国では、拉致問題の解決を最優先する日本政府の方針が、「慰安婦」問題での安倍政権の姿勢と対比させられ、人権問題をめぐる「二枚舌」(米紙ワシントン・ポスト)と指摘される状況があります。
ブッシュ政権は六カ国協議の進展を数少ない外交上の「成果」と自賛しているだけに、今後も対北対話に積極的な対応を続けることは必至。表向き、日米間にそごはないとしつつも、安倍政権が今の立場に固執する限り、矛盾が深まることは避けられません。
(ワシントン=山崎伸治)
( 2007年04月26日,
南京大虐殺や「従軍慰安婦」は事実ではない―。こんな主張が平然とテレビで流れることにがくぜんとしました。十六日放送の「たけしのTVタックル」(朝日系)の十四分のコーナーです。
アメリカの下院で出された「慰安婦」問題で日本政府に改めて謝罪を求める決議案について「事実とかなり違っている」とする麻生太郎外相の国会答弁を紹介。番組のナレーションも「なぜ事実に基づかない決議案が提出されたのか」と繰り返しました。南京大虐殺問題では、アイリス・チャン著『レイプ・オブ・南京』などの一部の写真をやり玉に。スタジオでは、自民党や民主党の国会議員から、「写真の説明を中国の都合のいいように書き換えている」「虐殺じゃない」という発言が飛び交いました。
コーナーの半分を占めたビデオ映像は、すべて南京大虐殺と「慰安婦」問題を疑問視、あるいは否定する立場での検証≠ノあてられました。アメリカの決議案の内容を取り上げることも、これまで積み上げられた歴史的事実の紹介も、被害者・加害者の生の声を伝えることもありません。
強調されたのは「二つの問題は中国の反日プロパガンダ(宣伝)によって作られたもの」「このままでは、日本の名誉が損ねられる」という、世界には通用しないヒステリックで偏狭な言い分でした。自民、民主党議員の主張におもねり、その裏付け≠フためだけに映像が使われたのです。
出演した日本共産党の穀田恵二国対委員長は、コメントの機会が少ないながらも「問題は『南京大虐殺はなかった』という人たちの発言ばっかり取り上げることなんですよ。歴史的事実をも抹殺するのか」と問題の本質を突いて、痛烈に批判しました。
今、安倍晋三首相をはじめとする改憲派は、侵略戦争の事実さえ否定しようとしています。ジャーナリズムにはそんな動きを監視し批判する責任があるはずです。そんな中、登場した無批判で権力に追随する番組に、戦時中の大本営発表が重なって見えました。
(山)
( 2007年04月23日,
自由法曹団(団長・松井繁明)は二十一日、政府が国会に提出した放送法改定案に反対する声明を発表しました。
声明は、同法案を「放送内容への政府介入の拡大、放送に対する国家統制の強化をもくろむもの」であり、「表現の自由および国民の知る権利を著しく侵害するものである」と批判。「放送を権力の支配下におくことは、悲惨な戦争に突き進んだ戦前の二の舞いである」と強調しています。
「虚偽」の放送をした局に対して、総務相が再発防止計画の提出を求める行政処分を盛り込んだことについては「放送事業者に与える委縮効果は計り知れない。この仕組みを乱用することにより、政府にとって都合の悪い情報をすべて握りつぶすことすら可能になる」と指摘。安倍晋三首相が任期中の改憲を表明していることに触れ、「行政処分制度を導入すれば、九条改憲のために不都合な事実や情報、例えば『慰安婦』に対する軍部の強制といった事実は『虚偽』と決め付けられ、処分の対象とされるおそれが極めて高い」と言及しています。
( 2007年04月23日,
【ワシントン=山崎伸治】二十六日からの安倍晋三首相の初訪米を前に、米誌『ニューズウィーク』電子版は二十一日、安倍氏が「従軍慰安婦」問題など歴史認識をめぐって、国内の保守派の支持基盤と外交的スタンスとの矛盾に直面していると報じました。
同誌は、安倍氏が「心の底から保守派」で「(歴史)修正主義者」であるため、「歴史問題では多くの前任者よりも弱点を抱えている」と分析。「民主主義の価値」を標ぼうする外交を追求すればするほど、日本の過去の歴史が問われることになると指摘しています。
同誌電子版は、十七日に実施した安倍氏のインタビューの抜粋も紹介しています。
経済紙ウォール・ストリート・ジャーナルは二十一・二十二日付で、安倍氏にインタビューしたメアリー・キッセル論説委員の署名記事を掲載。「(首相官邸)広報部は明らかに今回のインタビューを心配していた」が、背景には「従軍慰安婦」問題があったと指摘。外務省が一週間にわたり毎日電話をよこし、「六点だけでよいから」と質問を事前に用意させようとし、接待攻勢までかけるなど、神経をとがらせていたことを紹介しています。
( 2007年04月23日,
韓国・米国とあつれき
韓国メディアは安倍政権が執着する憲法改悪などの「戦後レジームの清算」を強く警戒するとともに、北朝鮮核問題六カ国協議や日本軍「慰安婦」問題で米国との関係にあつれきが生じていることに注目しています。
韓国で最大発行部数の日刊紙・朝鮮日報は十五日付の社説で、安倍政権が平和憲法改定を任期内に実現すると明言していることに言及。「韓国にとって『軍事力と交戦権を回復した日本』は、日本自身が言う『普通の国』ではなく『普通でない国』となるほかない」と警戒を示しました。
社説は、安倍政権が靖国神社、歴史教科書、「慰安婦」の問題で「歴代政権の謝罪と約束を次々と覆してきた」として、「日本がいま追求している『普通の国』は、強力な経済力にぜい弱な歴史認識と倫理意識が結合した『普通でない国』だ」と批判。憲法九条を変える点では「野党の民主党も立場に大きな違いはない」と指摘しています。
朝鮮日報が発行する『週刊朝鮮』四月十六日号は、安倍首相が目標とする「戦後レジームの清算」が「戦後レジームを支える教育基本法と憲法」を変えることだと指摘。首相と中川昭一自民党政調会長や下村博文官房副長官が主導してきた「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」などが中心となって推進していると伝えました。
ソウル新聞十四日付は、「安倍首相の改憲への執着は歴代首相よりはるかに強い」とし、七月の参院選で改憲を争点にすると明言したことについて、「強硬保守のイメージとリーダーシップを前面に押し出し、保守勢力を結集する政治的意図がある」と報じました。
韓国日報十六日付は、米国が北朝鮮との直接交渉に乗り出したことにより、以前は六カ国協議で日米の結束と米韓の不協和音が特徴だったのが逆になったと指摘。米国には「日本が米国の変化についてこれない」との不満があると報じています。また安倍首相が「慰安婦」動員の強制性を否定したことが、「米国をさらに難しい立場に追い込んだ」としています。
各国・地域を不安定に
アジア各国の新聞は、安倍首相が憲法九条改定に執念を燃やすなど「タカ派」の政治姿勢を示していることに強い警戒心を表明しています。
マレーシア紙星州日報は十七日、中国の温家宝首相の訪日に関し「寒さはまだ取り除かれず、日中関係は楽観できない」と題する社説を掲載。中日両国の戦略的互恵関係の行方は「日本が歴史問題で再び物議をかもさないかどうかにかかっている」と指摘しました。
社説は、安倍政権発足後「日本の保守政治家が戦争犯罪の記憶を以前にも増してぬぐい去ろうとし、平和憲法改定を推進して経済大国・日本を政治・軍事大国に変えようとしている。こうした変化は域内情勢に不安定な要素を生み出している」と述べています。
社説は、安倍首相が日本の戦争責任や戦争犯罪、靖国神社参拝の問題で「あいまいな姿勢」をとり続けている点を厳しく批判し、「日本が再び軍備増強に向かうことは、新しい世紀の新たな脅威だ」としています。
香港紙・明報十四日付社説も、「安倍氏は首相就任後、靖国神社参拝問題であいまいな態度を保持し、『タカ派』の立場は変わっていない。『慰安婦』問題でも間違った見方を述べた。日中関係のもろさもここにある」と懸念を示しています。
シンガポール紙・聨合早報十四日付は、「日本と中国はさらに『氷を解かし』続けなければならない」と題する社説で、「日中の政治関係の不和には長い過程があり、たった一回の訪問で氷を解かすのは容易ではない」と指摘。背景に歴史問題があるとしています。
( 2007年04月22日,
安倍晋三首相の米メディアとのインタビュー要旨は次の通り。
【集団的自衛権】日米同盟の強化は地域や世界の平和と安定に資する。そのために何をすべきか、当然政治家として考えるべきだ。日米同盟強化のためには、法的な整備をしなければいけない。憲法との関係においても、集団的自衛権の行使の研究をしなければならない。
【日米首脳会談】日米同盟はかけがえのない同盟だ。今回の訪米で信頼関係を強め、同盟関係を揺るぎないものにしていきたい。より幅広く、深いものにしていきたい。
【「従軍慰安婦」問題】当時の慰安婦の方々に心から同情するし、そういう状態に置かれたことに対し、日本の首相として大変申し訳ないと思っている。われわれは歴史に対し、常に謙虚でなければならない。彼女たちが慰安婦として存在しなければならなかった状況について、われわれは責任があると考えている。河野洋平官房長官談話をわたしの内閣は継承していると一貫して言っている。
【北朝鮮】今後、北朝鮮が約束を実行しなければ、われわれはどうするか、日米でよく話をしなければいけない。訪米の際も、ブッシュ米大統領と今後の北朝鮮政策について、突っ込んだ話をしたい。
( 2007年04月22日,
自民党の中山成彬元文部科学相は二十日の衆院教育再生特別委員会で、米下院が「従軍慰安婦」問題で日本政府への謝罪要求決議案を採択しようとしている動きを強く非難し、「『美しい国』は強くなきゃいかん。間違ったことに反論していく勇気、強さが必要だ」と述べました。
中山氏が会長を務める自民党の「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」は、米下院の決議案阻止のため今月下旬から訪米を予定しましたが、米国内で「従軍慰安婦」問題の批判が高まるなか、「火に油を注ぐ」として訪米延期を決めたばかり。しかし、この日の質問は中山氏の本音をあらためて示したものです。
中山氏は「当時は公娼(こうしょう)制があり、売春が商行為として認められていた。慰安婦はほとんど日本の女性だった」などと述べ、日本軍による「従軍慰安婦」強制を否定。さらに「(慰安婦は)もうかる商売だったことも事実だ」と暴言を吐きました。
( 2007年04月21日,
「従軍慰安婦」問題で謝罪した河野洋平官房長官談話の見直しを目指す自民党の「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」(会長・中山成彬元文部科学相)は十九日、今月下旬から予定していた有志議員による訪米を延期することを決めました。
同会は、「政府や軍による強制連行の事実はなかった」と主張。有志議員が安倍晋三首相訪米後の二十七日から訪米し、米下院に提出された日本政府への謝罪要求決議案の採択阻止に向け、議会関係者らに働き掛ける計画でした。
しかし、「従軍慰安婦」問題をめぐる首相らの対応に米国内で批判が高まる中で、「訪米しても火に油を注ぐことにしかならない」(幹部)と判断したもの。この問題をめぐっては、同党の加藤紘一元幹事長が十八日、「首相訪米後に、枯れ草にたいまつを持っていくような議論にならないか」と懸念を示していました。
( 2007年04月20日,
林博史関東学院大学教授は十七日、外国特派員協会での記者会見で「従軍慰安婦」問題についての新資料七点を発表しました。一九四六―四八年の東京裁判でオランダ、フランス、中国の検察団が提出した尋問調書や陳述書などです。これらは、同裁判で検察陣を構成した各国の政府機関が作成し、裁判の証拠書類として採用された公文書です。「慰安婦」が日本軍によって強制的に連行され、売春を強制されたことを示しています。
これらの資料のうち、@インドネシア駐留オランダ陸軍大尉の報告A日本陸軍中尉の宣誓証言B「慰安婦」を強制された女性(オランダ人)の尋問調書―の三点の大要を紹介します。
証拠書類は英文と邦訳文があり、ここで紹介するのは邦訳文です。カタカナはひらがなに、旧字体は新字体に直してあります。また適宜、改行してあります。
特警隊が婦人捕まえた
資料@/オランダ印軍情報部J・N・ヘイヂブロエク陸軍大尉の報告「日本海軍占領期間中蘭領東印度西部ボルネオに於ける強制売淫行為に関する報告」(一九四六年七月五日付、インドネシア・ボルネオ島〈カリマンタン〉ポンティアナック
(PD〈検察側書類番号〉5330/EX〈法廷証拠番号〉1702)
一九四三年の前半にポンチアナック海軍守備隊司令海軍少佐ウエスギ・ケイメイは日本人はインドネシヤ或は中国の婦人と親密なる関係を結ぶべからずといふ命令を発しました。当時全ての欧州婦人と事実上全ての印度系欧羅巴婦人は抑留されて居ました。
彼は同時に公式の慰安所を設立するやう命令を出しました。是等の性慰安所は二種に分類することになって居ました。即ち三ヶ所は海軍職員専用、五、六ヶ所は一般人用で其の中の一ヶ所は海軍民政部の高等官用に当てられました。
海軍職員用の性慰安所は守備隊が経営しました。司令の下に通信士官海軍大尉スガサワ・アキノリが主任として置かれ日常の事務は当直兵曹長ワタナベ・ショウジが執って居ました。
日本人と以前から関係のあった婦人達は鉄条網の張り廻らされた是等の性慰安所に強制収容されました。彼女等は特別な許可を得た場合に限り街に出ることができたのでした。慰安婦をやめる許可は守備隊司令から貰はねばなりませんでした。
海軍特別警察(特警隊)が其等の性慰安所に慰安婦を絶えず補充するやうに命令を受けていました。此の目的の為に特警隊員は街で婦人を捕へ強制的に医者の診察を受けさせた後彼等を性慰安所に入れました。是等の逮捕は主として各兵曹長によって行はれました。
一般用の性慰安所は南洋興発株式会社支配人ナワタ・ヒサカズが経営しました。守備隊司令は民政部に命じて之を監理させました。是等の慰安所に対する婦人達も亦特警隊の尽力によって集められました。
上記の報告は日本人戦犯者の訊問から得た報告と本件関係者の宣誓陳述とから輯録されたものであります。
私は上記の事実は真実に上述の報告書に相違する点のない事を情報将校及日本語通訳として誓って断言致します。
抵抗運動家の娘に強要
資料A/オハラ・セイダイ陸軍中尉の宣誓陳述書(一九四六年一月一三日付、インドネシア・モア島)
(PD5591/EX1794)
問 或る証人は貴方が婦女達を強姦しその婦人達は兵営へ連れて行かれ日本人達の用に供せられたと言ひましたがそれは本当ですか。
答 私は兵隊達の為に娼家を一軒設け私自身も之を利用しました。
問 婦女達はその娼家に行くことを快諾しましたか。
答 或者は快諾し或る者は快諾しませんでした。
問 幾人女がそこに居りましたか。
答 六人です。
問 その女達の中幾人が娼家に入る様に強ひられましたか。
答 五人です。
問 どうしてそれ等の婦女たちは娼家に入る様強ひられたのですか。
答 彼等は憲兵隊を攻撃した者の娘達でありました。
問 ではその婦女達は父親達のした事の罰として娼家に入る様強ひられたのですね。
答 左様です。
問 如何程の期間その女達は娼家に入れられていましたか。
答 八ヶ月間です。
問 何人位この娼家を利用しましたか。
答 二十五人です。
常に拒絶をしたが無力
資料B/イエ・ベールマンの尋問調書(一九四六年五月一六日付、インドネシア・ジャワ島マゲラン)
(PD5770/EX1725)
私は一般被抑留者としてムテラン収容所に抑留されました。一九四四年一月二十八日、私は吾が婦人部指導者レイツスマ夫人から日本軍俘虜収容事務所へ出頭する様にと云はれました。此処で私は爪哇(ジャワ)人の一警視を見ました。彼は私を他の六人の婦人や少女等と一緒に連れて収容所の外側にあった警察署へ連れて行った。
私達が爪哇人警視に案内されて収容所へ帰へって鞄に所持品を充めた後に其警視は私達を日本軍俘虜収容所事務所へ連れて行きました。此処で私達は三人の日本人に引渡されて三台の私有自動車でマゲランへ輸送され午後四時に到着しました。
我々はテウグランと称せられ十四の家屋から成っていた小さい収容所へ連れて行かれました。一九四四年一月二十五日、私達の収容所から連行された婦人や少女等の一団と此処で会ひました。
一九四四年二月三日、私達は再び日本人医師に依って健康診断を受けました。此間は少女達も含んで居ました。其処で私達は日本人向き娼楼に向けられるものであると聞かされました。
其日の晩に娼楼が開かれる筈でした。帰宅後ブレッカー夫人と私は凡ゆる戸や窓を閉めました。午後九時頃戸や窓を叩く音がありました。私達は戸も窓も開け、閉さしてはならぬと命ぜられました。寝室だけは戸を錠で閉して私は其処へ閉ぢ籠もりましたが他は其通りにしました。
私は是を二月五日 日曜日まで継続しました。其日にも亦日本軍兵卒等が収容所へ入って来ました(以前は日本軍将校のみでした)。是等兵士の幾らかが這入って其の中の一人は私を引張って私の室へ連れて行きました。私は一憲兵将校が入って来るまで反抗しました。
其憲兵は私達は日本人を接待しなければならない。何故かと云へば若し吾々が進んで応じないならば、居所が判っている吾々の夫が責任を問はれると私に語りました。この様に語った後、憲兵は其兵士と私とだけ残して立去りました。
其時ですらも私は尚ほ抵抗しました。然し事実上私はやられてしまいました。彼は衣服を私の身体から裂き取りました。そして私の両腕を後に捻りました。そこで私は無力となり、その後で彼は私に性交を迫りました。私は此の兵卒は誰であったか又其憲兵将校の姓名を知りません。
此の状態が三週間継続しました。労働日には娼楼は日本将校のために日曜日午後は日本下士官達のために開かれ日曜日の午前は兵卒等のために保留されました。娼家へは時々一般日本人が来ました。私は常に拒絶しましたが無効でありました。
( 2007年04月19日,
韓国の盧武鉉大統領が同国の英字論文誌『グローバル・アジア』(東アジア財団)に寄稿した寄稿文「歴史、民族主義、東北アジア共同体」のうち、歴史問題での安倍政権の姿勢を批判した部分を紹介します。
(大統領府ホームページから)
私は、日本が自らの良識と合理的知恵で過去の歴史問題を前向きに解決すると信じた。故にこの問題を公式の議題や争点として提起しなかった。しかし、このような期待はかなわなかった。
特に日本の一部の主要政治指導者の態度から、歴史に対するわい曲が意図的に繰り返されるためだ。これは日本の未来のためにも残念なことだ。
一部では、私が日本との歴史問題を口実に、国内政治的に反射利益を得ようとしているという批判がある。これには決して同意できない。
指導者の徳目は、過去を直視し、誤った過去を明らかにして今日の教訓とするとともに未来を準備するところにあると考える。とりわけ歴史のわい曲は、反目と不信の悪循環をもたらし、私たち皆を不幸にする。
日本がこの間、見せてきた過去の歴史に対する反省の意をそのまま受け入れたとしても、それに相応する実践が伴わなければ、本当のものか疑われるのは当然だ。最近の日本軍慰安婦問題に対する一部指導層らの公然たる否認のように、この間の反省さえもひっくりかえす言行がどれほどわが国民の心を不快にしただろうか。米国をはじめとする国際社会が批判を提起しているのは、日本のこのような動きが人類の普遍的価値を否定するもので、未来を暗くするものだからだ。
私は日本との過去史の整理だけでなく私たち自身の過去史問題についても厳格な立場をとってきた。真の和解は歴史的真実の土台の上でだけ可能であり、歴史に対する私たちの認識は、私たちの未来、運命と直結しているためだ。過去史に対する反省のない歴史のわい曲は、排他的民族主義と国粋主義をもたらし、国と地域を紛争の渦に巻き込みうるものだ。半面、歴史に対する正しい理解は開かれた民族主義を可能にし、周辺国家と和合と協力の共感の土台をつくってくれるものだ。
( 2007年04月18日,
旧日本軍が占領地の女性たちを強制的に「従軍慰安婦」にした事実を裏付ける東京裁判(一九四六―四八年)の関連資料が明らかになりました。関東学院大学の林博史教授、中央大学の吉見義明教授、バウネット・ジャパンの西野瑠美子共同代表が十七日、都内の外国特派員協会での会見で公表しました。
資料は、オランダ、フランス、中国の検察団が東京裁判に提出した尋問調書や陳述書など七点。いずれも同裁判で証拠書類として採用されました。
林教授が昨年、東京大学社会科学研究所の図書館に所蔵されていた資料から見つけました。
オランダ提出の尋問調書では、ボルネオ島の日本海軍情報機関の軍属が、拘束した現地女性を平手で殴り服を脱がせ、三人の少女を裸で一時間、立たせたと証言。拘束の理由について「彼らを淫売(いんばい)屋に入れることができるための口実を設けるため、命令でなされた」と述べ、命令した守備隊司令の名をあげました。
公表された資料は、インドネシア・ジャワ島やベトナム・ランソン、中国・桂林などで日本軍が現地女性らを強制的に慰安婦にしようとしたことを裏付けています。資料の一部は一九九七年に報道されています。
林教授は、これらの資料は「日本政府がサンフランシスコ平和条約で受け入れた東京裁判の証拠であり、日本政府も認めざるを得ないものだ」と指摘しました。
吉見教授は、被害者への「おわびと反省」を述べた河野談話を否定する安倍晋三首相の態度について、「首相の人権感覚が問われる問題。河野談話からの後退は許されない」と批判しました。
( 2007年04月18日,
まもなく憲法施行六十年の日を迎えるが、それに挑戦するかのような発言が続いている。
強制連行した「従軍慰安婦」などいなかった、沖縄の集団自決を軍が命じたことはない、そして、アメリカをねらった弾道ミサイルは迎撃するなど集団的自衛権を一部使えるようにしよう……。
こうやって歴史を逆ねじで戻していくと、文学などどういうことになるのか。たとえば、田村泰次郎「春婦伝」。
戦争中、中国大陸奥地に配置された下級兵士といっしょに銃火の中を生き、青春と肉体を滅ぼし去った多数の朝鮮人娘子軍の泣きたいような慕情からこれを書いた、と作品の序文にあるが、これは真っ赤なウソと葬り去られるのか。
あるいは、吉田満「戦艦大和ノ最期」。
国のため、君のために死ぬ、それ以上何が必要かと言う兵学校出身者に対して、それは分かるが、俺の死、日本全体の敗北をさらに一般的な価値というものに結びつけたい、と対立する学徒出身者。間に入って哨戒長の臼淵大尉が言う。敗れて目覚める、日本の新生に先駆けて散る、本望じゃないか、と。
やや美しすぎるが、しかしこれも、戦後の「新生」は間違っていたと、臼淵らの願い、著者の思いは否定されるのか。
安倍政権の戦後の総決算は、つまるところ、戦後生みだした文化・文学・芸術・思想などとの全面的対峙でもある。
(泰)
( 2007年04月16日,
日本平和委員会は十三日夕、東京・JR御茶ノ水駅前で、改憲手続き法案の採決強行に抗議するとともに、安倍首相の日本軍による「従軍慰安婦」での強制性を否定する発言の撤回を求め、宣伝しました。「世界青年のつどい」運営委員会や日本原水協、日朝協会、東京大空襲訴訟団のメンバーら十二人が参加しました。
平和委員会の西村美幸さんは「強制的に『慰安婦』にされたことは明確です。その事実を否定する安倍首相は再び被害者を傷つけている。許せない」と訴えました。
原水協の前川史郎さんは「ぼくは毎年韓国に行って、『慰安婦』にされたハルモニ(おばあさん)たちと交流しています。日本政府はハルモニたちの思いをどうして受けとめられないのか」と批判しました。東京大空襲訴訟団副団長の安藤健志さんは「憲法を変えて再び戦争する国にする動きを食いとめよう」と呼びかけました。
( 2007年04月16日,
【ソウル=時事】韓国の通信社・聯合ニュースは十五日、盧武鉉大統領が同国の英字論文誌『グローバル・アジア』への特別寄稿文で、従軍慰安婦問題について「日本指導層の一部が最近、これまでの反省を覆す発言を行い、わが国の国民をいたたまれなくさせている」と批判したと報じました。
韓国政府は安倍晋三首相の「狭義の強制性はなかった」との発言を批判してきましたが、盧大統領自身がこの問題で見解を示したのは初めてです。
大統領は「米国など国際社会が批判するのは、日本の動きが人類の普遍的価値を否定し、未来を暗くするからだ」とし、韓国以外の国でも安倍首相発言への反発が広がっていると指摘しました。
さらに、「日本が示してきた反省に実践が伴わなければ、本当なのかと疑われる」と述べ、重ねて日本の対応を批判。また、「日本が自ら歴史問題を解決すると信じていたが、期待は実現しなかった」と失望感を表明しました。
( 2007年04月16日,
【ワシントン=山崎伸治】米議会調査局の報告書が、安倍首相や日本政府が元「従軍慰安婦」におわびを表明した一九九三年の河野官房長官談話を継承すると言いながら、「強制はなかった」と主張していることは「本質的に矛盾している」と批判していることがわかりました。本紙が十二日までに入手した報告書「日本軍の『慰安婦』制度」で明らかになったものです。
報告書は、この問題が焦点となった今年三月の安倍首相の一連の発言について、河野談話を再確認したものもあれば、その内容と矛盾するものもあると指摘。矛盾の事例として、「政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述は見当たらなかった」とする三月十六日に閣議決定した答弁書をあげています。
また安倍首相が三月二十六日の国会質疑(日本共産党の吉川春子議員の質問)で、元「慰安婦」の人たちの証言の信頼性を問われたのに対して、答弁しなかったことを紹介。証言の信頼性を否定することは、日本人拉致問題で日本の主張を危うくすると指摘し、「百人を超える元慰安婦の証言を否定することで、日本政府は、北朝鮮が日本国民を誘拐したという主張の信頼性に第三者が疑問を抱きかねない状況に自らを置いている」と述べています。
この問題では、安倍首相の「慰安婦」と拉致問題への対応を「二枚舌」と批判した米紙ワシントン・ポストの社説を紹介しています。
さらに「暴力的で強制的な(慰安婦)募集の証拠はない」と主張することは、七人の日本軍将校らに対し「オランダ人その他の女性に売春を強制し、レイプした」として死刑を含む有罪判決を下した「オランダ戦犯裁判」を無視することになると指摘。それは「戦争犯罪法廷の裁判を受諾」するとしたサンフランシスコ平和条約に違反するとしています。
米議会調査局は議会図書館の一部で、議員に審議のための情報を提供する調査・研究機関です。今回の報告書は今月三日に発表されました。
( 2007年04月13日,
【ワシントン=山崎伸治】米議会調査局の報告書「日本軍の『慰安婦』制度」は、日本国内で一九九三年の河野談話を見直す動きがあることを批判的に指摘。「従軍慰安婦」に関してこれまで明らかになっている証拠を改めて紹介し、日本政府、日本軍が深く関与したことを明らかにしています。
報告書は「日本における河野談話改定の動き」として、昨年十月に下村博文官房副長官が「新たな研究」を求めたことや、自民党有志議員による「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」の設立、「慰安所」の設置に軍の関与を否定した自民党の中川昭一政調会長や麻生太郎外相らの発言をあげています。
「慰安婦」制度に関する証拠として、一九九二年の吉見義明氏の研究や四四年にビルマで韓国人「慰安婦」の証言を聴取した米戦争情報局の報告、九二年の韓国外務省報告、九四年に公表されたオランダ政府の報告、日本政府が行い、河野談話の基となった九二、九三年の調査、四百人以上の「慰安婦」の証言にもとづく二〇〇二年出版の田中由紀氏の著書『日本の慰安婦』など九件を列挙。これらが「慰安婦」をめぐって日本の国内外で論争となってきた問題点について情報を提供しているとして、それぞれ資料を示しながら次のように整理しています。
創設と募集・輸送
第一は「慰安婦制度創設における日本軍および日本政府の関与の度合い」。報告書は「日本政府と軍が直接に制度をつくったことは明白」と指摘しています。
第二は「日本軍が慰安婦の募集と輸送、『慰安所』の管理に関与していたかどうか」。報告書は「日本軍は同制度の運営にあらゆる段階で関与していた」と結論づけています。
第三は「女性が慰安婦制度に組み込まれたのは自発的か、強制か」。報告書は「強制」とは「暴力的な行動で無理強いすること」だとして、田中氏の著書で二百人以上の元「慰安婦」が日本軍や憲兵、軍の代理人による暴力的な拘束について述べていると指摘しています。
強制疑う余地なし
しかし同時に、「慰安婦」の募集に強制があったかどうかの議論は、「慰安婦が制度に組み込まれたのは自発的か強制かという、より幅広い問題をあいまいにしている」と批判。「ほとんどの慰安婦が強制的に制度に組み込まれたことは、明らかになっている証拠から疑う余地はない。純粋に自発的だったというのはこの制度ではほとんどなかったようである」と強調しています。
報告書は募集について、「朝鮮半島では軍が直接実施しなかったかもしれない」「大半は民間業者によって、身体的な強制よりも、だましたり、家族に圧力をかけたりしていた」と述べています。しかし続けて、「もっとも、慰安婦の中には物理的に拉致されたと主張する人もいる」と指摘しています。
さらに、「募集段階の強制性の否定はオランダ戦犯法廷の事実認定と判決の無視」につながると強調。安倍首相らの議論は「募集だけを強調することで、他の要素に日本軍が深くかかわったことをできるだけ小さくしようとするものだ」と述べています。
( 2007年04月13日,
日本共産党の志位和夫委員長は十二日、都内のホテルで、日本を公式訪問している温家宝・中国首相と会談しました。日本共産党から市田忠義書記局長らが同席しました。(会談同席者は2面)
志位委員長は、冒頭、温家宝首相の来日を歓迎するとともに、首相が十二日午前におこなった国会演説について、「日中友好への熱意と誠意にあふれるもので、日本国民の心に響くものだと、感銘をもって聞きました」とのべました。温首相は、「両国関係の促進のために貴党は大きな努力をされてきました」と応じました。
志位氏は、昨年十月の日中首脳会談で「戦略的互恵関係」の合意がされたことを「歓迎」する談話を発表したこと、温首相の来日で日中友好関係がさらに一歩前進し、成功裏にすすんでいることを喜んでいるとのべました。
温首相は、訪問の成果について紹介したうえで、「両国関係の明らかな改善をいっそう進めなければなりません。貴党が両国関係の促進のためにいっそう大きな積極的な努力をおこなうことを期待します」とのべました。
歴史問題――「公約を実際の行動で」
志位氏は、「日中の友好関係を促進するうえで重要なことは、歴史問題での逆流を許さないことです」と指摘。温首相が国会演説で「日本側が(歴史問題での)態度表明と約束を実際の行動で示されることを心から希望します」とのべたことについて、志位氏が、「ここにこそいま大切な点があると、私たちも考えています」とのべると、温首相は大きくうなずきました。
志位氏は、安倍首相が「村山談話」「河野談話」を継承すると公言しながら、「従軍慰安婦」問題で歴史をゆがめる発言を繰り返したことが、欧米諸国もふくめて国際的な大問題になっており、発言の撤回をもとめていると紹介。「日本には過去の侵略戦争を正当化する逆流が根強く存在します。昨年の日中首脳会談、今回の温首相の訪日をつうじて、歴史問題を解決する出発点が築かれ、解決の方向性がしめされたが、それが解決できるかどうかは今後の努力にかかっています。わが党は、逆流の根をたつまで力をつくしたい」と表明しました。
温首相は、「中国人民の感情とアジア諸国民の感情を傷つけることはあってはなりません。そうなればもっと深刻になります。安倍首相との会談では繰り返しこの点を強調しました」とのべました。
北東アジア――平和的国際環境の構築を
志位氏は、北東アジアの平和と安定について、中国政府が「平和的発展の道」を強調していること、「いかなる覇権主義、強権政治にも反対し、自らも永遠に覇を唱えない」「国連憲章にのっとり問題を平和的に解決する」と言明していることに注目しているとのべ、とりわけ六カ国協議の議長国としての中国の努力に敬意を表しました。この間の中国との交流をつうじても、「中国が自らの発展のためにも平和的な国際環境を求めていることを強く感じました」とのべました。
温首相は、「おっしゃるとおりです。平和的な国際環境が必要です。(六カ国協議の)最終目標は朝鮮半島の平和メカニズムを構築し、長期的な安定を維持することです。これはアジアの国々のためになります」とのべました。志位氏は、「六カ国協議が成功すれば、ASEAN(東南アジア諸国連合)のような地域の平和共同体に発展する基礎になりえます」と応じました。
最後に、温首相が「両党はこれからも常に交流していきましょう」と語りかけ、志位氏は「私も同じ気持ちです」とのべ、なごやかに会談は終わりました。
( 2007年04月13日,
旭川市議会の議会運営委員会でこのほど、日本共産党の、のとや繁議員が「従軍慰安婦問題での首相発言の撤回と下村官房副長官の罷免を求める意見書(案)」を提出しましたが、自民系一会派と公明党が反対し、議題にすることが拒否されました。
旭川市議会では、定例会以外の意見書は、全会一致で緊急性が認められたときだけ議論の対象にしています。
のとや議員は「安倍首相が『強制性を裏づける証拠はなかった』と発言したことや、下村官房副長官が『従軍慰安婦はいなかった』と発言したことなどが、国際的に重大問題になっている。拉致問題では人権を口にするが、従軍慰安婦の問題は知らぬふりでは、二重基準ではないかと国際的な批判をあびている。このままでは日朝協議などに影響する。安倍首相は、四月末の訪米の前に、自らの発言を撤回し、下村官房副長官を罷免すべきである」と主張しました。
これに対し、自民系二会派と民主クラブ、社民クラブ、無所属四人は緊急性を認め議題として扱うことに賛成しましたが、公明党は「緊急性はあるが、公明党としては認められない」、自民系の新政会は「政府が準備万端すべきこと、市議会でとりあげるものではない」との理由で全会一致になりませんでした。
傍聴していた市民からは「議論もしないのはおかしい」、「政府の判断をただすのが意見書の役割ではないのか」と厳しい批判の声があがりました。
(2007年04月12日,
沖縄戦に関する高校教科書検定で、文科省は、日本軍によって「集団自決」を強制された、強いられた、追いやられたなどの記述から、すべて「日本軍」という主語を削除し、「集団自決」が軍命によるものではなく、住民の自発的な死であるかのように書き換えさせた。
「捕虜」ゆるさず死を名誉として
そもそも「集団自決」とは何だったのか。一九八八年の家永教科書裁判沖縄出張法廷で、金城重明・沖縄キリスト教短大教授(当時)が渡嘉敷島の集団自決について自身の体験を証言し意見書としても裁判所に提出している。住民が集められ、それぞれに愛する者の命を断っていくなか、「兄と私も幼い弟妹達の最後を見届けてやらねばならなかった。私共兄弟二人が、自分達を産んでくれた母親に手をかけねばならなくなった時、私は生まれて初めて悲痛の余り号泣した」(意見書より)。 なぜこのようなことがおこったのか。米軍が上陸し戦場となった島々では軍・民・役場職員の区別なく戦闘に参加協力し生死をともにせざるを得なくなった。敵軍の捕虜になることを許さず、国のために死ぬことを名誉と思わされてきた皇民教育とあいまって、住民は死を選ぶしかない状況に追い込まれたのである。
しかも軍は役場職員などを通じて手りゅう弾を配り、いざというときは自決せよと指示していた。軍が直接に住民に自決命令を伝えたか否かにかかわりなく、まさに軍によって強制された集団死としかいえないのである。そこで、従来の教科書記述は、「集団自決」を軍により誘導強制されたものとして記述し、近年はそれに検定意見がつくことはなかった。
一個人の陳述を定説に押し上げ
ではなぜ突然、今回のような検定意見が出てきたのか。南京虐殺や「慰安婦」問題の教科書記述を攻撃してきた「新しい歴史教科書をつくる会」など右翼勢力は、今度は沖縄戦の「集団自決」における日本軍の責任を消し去ろうとしたのである。二〇〇五年から「新しい歴史教科書をつくる会」につらなる自由主義史観研究会は「沖縄プロジェクト」を立ち上げ、現地調査や集会などを行ってきた。
それと連動して同年、大阪地裁に、当時の座間味島の梅沢裕隊長と渡嘉敷島の赤松隊長の弟が原告となり、「集団自決」を隊長が命じたと著書で記述したのは名誉棄損だとして大江健三郎氏と岩波書店を訴えた。文科省は、この裁判での元隊長の陳述を今回の検定の主要な根拠にしているという。
梅沢陳述にこれまでの教科書記述が依拠してきた学説を変えるほどの価値があると主張するのであれば、当然他の証言やもろもろの事実調査とのつきあわせが必要である。そのような手続きがなされていない以上、従来の学説状況が変化したとはいえない。ところが文科省は、係争中の裁判での一方の側の主張に過ぎない梅沢陳述を定説の地位に押し上げ、すべての教科書の記述を変えさせた。
これはきわめて異常であり、学説状況を無視した学問に対する冒涜(ぼうとく)である。しかも従来文科省がしばしば検定で指示してきた両論併記も認めず、軍の誘導強制というきわめて有力な説を書き加えることすら認めなかった。
「住民虐殺」では撤回させた経験
安倍内閣とそれにつらなる右翼勢力は、「慰安婦」問題や南京虐殺を歴史から抹殺することに必死になっている。今回の沖縄戦問題もそれと軌を一にするものであり、軍隊は住民を守らないという沖縄戦の教訓を抹殺し、戦争と軍隊を美化し、有事のさいに軍への協力を国民に強制する体制づくりをねらうものである。それは改憲への道につながっている。
しかし、スパイ容疑や壕(ごう)追い出しによる日本軍の住民虐殺は否定できず、その点の記述は残った。また多くの新聞社説も今回の検定を強く批判している。いま文科省がなすべきことは、検定意見を撤回し、もとの記述に戻すことである。
一九八二年に日本軍の住民虐殺の記述を削除する検定が行われたとき、沖縄県民ぐるみの大きな抗議がまきおこり、以後その種の検定意見がつけられなくなった。沖縄のみならず全国的な抗議の波をおこすならば、検定意見を撤回させることは可能である。
(いしやま ひさお・歴史教育者協議会委員長)
( 2007年04月12日,
安倍首相の訪米日程が決まりました。二十六日にホワイトハウスでブッシュ大統領夫妻主催の夕食会、二十七日にはメリーランド州キャンプデービッド山荘で首脳会談が行われます。「慰安婦」問題で弱みを抱えた首相がどんな約束をさせられるのか、心配です。
というのも、安倍首相の前任者は、訪米のたびに国民無視のとんでもない約束をして帰ってきたからです。「テロとのたたかい」のために憲法違反の自衛隊派遣を約束、強行しました。経済分野では「日米投資イニシアチブ」で、銀行から医療まで、日本の根幹分野への米国企業の資本参加を可能にしました。
外資は株式交換という手法で、お金がなくとも自由に日本の企業を買収できるため、財界からも「日本のたたき売り」につながると懸念する声があがっています。
そして、最後の訪米ではひんしゅくをかったプレスリー邸への観光旅行と引き換えに、十分な調査もせずに米国産牛肉の輸入再開を認めてしまいました。
今回、米側は牛肉の輸入条件緩和を強く求めていますが、カーギル社が日本に輸出した牛肉の一部から、月齢条件違反の牛タンがみつかったばかり。さすがに合意は難しそうです。そこで、安全保障では航空自衛隊のイラク駐留の延長に加えて集団的自衛権行使の一部容認を表明するのではないかとみられています。しかし、集団的自衛権の行使には世論は否定的です(「読売」六日付)。
アメリカでは大統領選が始まっており、ブッシュ大統領はすでに「過去の人」です。安倍首相も国民無視の約束をすれば、参院選の結果しだいでは「過去の人」になりかねません。
(沢庵)
( 2007年04月12日,
中国の温家宝首相が十日からの韓国訪問に続いて十一日から三日間、日本を訪問します。中国首相の訪日は、二〇〇〇年十月の朱鎔基氏から六年半ぶりです。
中国政府は今回の両国訪問で、経済関係の強化、相互理解の増進を目指すとしています。
温首相は、今回の訪日を特に「氷を解かす旅」とすることを強調しています。小泉前首相が在任中に靖国神社参拝を繰り返し、日中間の政治関係を冷え込ませ、経済関係にも悪影響を及ぼしていたためです。
中国側は昨年の安倍首相の訪中による関係改善の動きを、さらに強固なものにしようとしています。今回の訪日では、「戦略的互恵関係」の内容を具体化した共同文書を結びます。同時に、日本の首相の靖国参拝について、温首相は「このようなことが二度とないよう希望する」(四日)と発言し、靖国神社であいまいな対応をとる安倍首相をけん制しています。
今年は国交正常化三十五周年と同時に、日本が中国に全面侵略戦争を始める発端となった盧溝橋事件(一九三七年七月七日)の七十周年にもあたります。
歴史問題では、靖国参拝だけでなく「従軍慰安婦」も日中間の一つの課題となっています。安倍首相の「強制性はなかった」との発言に対して李肇星外相が「日本は歴史的真実を認めるべきだ」と批判(三月六日)。中国人戦争被害者などへの戦後補償の問題も残っています。
日中貿易は昨年、初めて二千億jを突破し、二千七十四億j(約二十五兆円)になりました。現在、中国の最大の貿易パートナーは欧州連合(EU)で、昨年の貿易額は二千七百二十三億j(約三十二兆円)。一方、日韓合計では三千四百億j(約四十兆円)を突破します。中国にとって日韓両国との経済関係の重要性は、地理的な近さ、歴史的関係の深さ、文化的な結びつきの強さという点からも明らかです。
中国は現在、資源やエネルギーを節約して環境を保護する持続的な経済発展を重視。単位あたりのエネルギー消費量を五年間で二割削減することを目標に掲げ、この分野での日韓両国との経済協力を期待しています。
温首相の今回の訪問では、北朝鮮の核問題をめぐる六カ国協議で合意した初期段階措置の履行問題も課題です。温首相は五日、韓国メディアとの会見で、朝鮮半島に平和のメカニズムをつくりために「最も重要なことはいかなる形の冷戦も根本から取り除くこと」と指摘しました。
中国のテレビでは、温首相訪日に向け、友好ムードをつくる報道や企画が増えました。唐代の高僧、鑑真の日本渡航を扱ったドラマ(「鑑真東渡」)や、人気キャスターによる日本取材特集が放送されました。
(北京=菊池敏也)
( 2007年04月11日,
安倍発言は「官憲の拉致以外問題ない」と容認するようなもの
「従軍慰安婦」についての安倍首相の「狭義の強制性を裏付ける証拠がなかったのは事実だ」という発言や、下村博文官房副長官の「日本軍が関与していたわけではない」などの発言が、国際的な批判をよんでいます。この問題を研究してきた吉見義明・中央大学教授に聞きました。
(聞き手・西沢亨子)
「従軍慰安婦」とは、日本軍の管理下におかれ、無権利状態のまま一定期間拘束され、将兵に性行為を強要された女性のことです。
問題の本質は、軍慰安所制度をつくり、管理・統制し、維持したのは日本軍だということです。軍が、みずからの方針として慰安所の設置を決め、建物を提供し、改装なども行い、慰安所規則をつくった。これは軍の公文書からはっきり裏付けられています。
自由ない状態
軍は、強姦(ごうかん)の頻発と性病のまん延に直面して、その防止のためといって、軍人・軍属専用の慰安所を占領地に積極的につくりました。しかし、軍人たちを帰還させず、泥沼の戦場に長期間くぎづけにしたため、「慰安」の提供が必要になったというのが最大の理由でした。業者を手足として使いましたが、軍の決定なしに、業者が戦地に行って勝手に軍慰安所を開くことはできませんでした。
軍慰安所では、女性たちは軍人を拒否できず、廃業の自由もなく、外出の自由もない、まさに奴隷状態でした。
朝鮮・台湾で、女性を集めたのは主に業者ですが、彼らは総督府や軍の内面指導を受けているのです。「募集等」は「派遣軍において統制し」、「周到適切に」業者を選び、その実施にあたっては「憲兵および警察当局との連携を密に」せよという指示が陸軍大臣の依命通牒として出ています(一九三八年)。
誘拐や略取で
朝鮮、台湾では、女性はほとんど人身売買、または誘拐、または略取によって集められました。「工場で働く」などとだまして誘い出して支配することを刑法で誘拐というのです。略取とは脅して連れて行き支配することです。これらは戦前の刑法でも犯罪でした。軍や警察の指導・監督のもとに女性を集めているのですから、そこで業者が罪を犯せば軍や警察に責任があるのは当然です。軍が、女性が誘拐されてきたことを知りながら解放しなかったことを示す軍人の回想もあります。犯罪を知って「慰安婦」にすることを許せば共犯です。
しかも日本国内では、「慰安婦」にする女性は二十一歳以上でなければならないとしていましたが(必ずしも守られてはいませんが)、植民地ではこのような制限もなく、多くが未成年者だったのです。
このように慰安所制度全体が軍のための性奴隷制であり、国際世論はその責任を問うているのです。だから、安倍首相のように「官憲が家に押し入って人さらいのごとく連れて行く強制性」があったか、なかったかを問題にしても、「理解」されるわけがありません。安倍首相の発言は、「官憲による暴力的な拉致以外は問題ない」といっているようなものです。
軍の拉致認定
軍隊による暴力的な拉致も明確にありました。被害者が提訴し、裁判となった中国山西省やフィリピンなどでの例がそうです。「中国人『慰安婦』第二次訴訟」(一九九六年提訴)では、一、二審とも、日本軍が女性を暴力的に拉致し、監禁して性暴力をふるった事実を認定し、国の責任を認めています(賠償請求は棄却)。
ジャワ島のスマラン慰安所事件では、将校・警察が、抑留所から若い女性を暴力的に慰安所に連行しています。この事件の被害者の一人、ジャンヌ・オフェルネさんは、今回米国議会の公聴会で証言しています。娘を連行された父親の訴えで、二カ月後に軍司令部はその慰安所を閉鎖しましたが、関係者は処罰されませんでした。処罰は、戦後のBC級戦犯裁判でオランダがしたのであって、当時の日本軍は処罰しなかったのです。また同様の暴力的拉致のケースで閉鎖されていない慰安所もあります。これらの詳細は一九九四年のオランダ政府の調査報告書で明らかになりました。
しかし、スマラン事件や、フィリピンの被害者証言、山西省の被害者証言(一部)は、九三年の「河野官房長官談話」以前に明らかになっていたことです。
今回の米国議会での決議の動きは、今もなくならない戦時性暴力をなくすための人類全体の課題の追求ととらえたいと思います。悪いことは悪いと認め、原因を考え再発を防ぐことが、人間の尊厳を守り、人類全体の人権の発展に貢献することになるのではないでしょうか。
人権意識問う
この間、外国メディア十数社の取材を受けましたが、彼らは「北朝鮮の拉致問題に熱心な安倍が、なぜ慰安婦問題であんなことを言うのか」と首をかしげます。日本の政治指導者の人権意識が深刻に問われているのです。「従軍慰安婦」問題を人権の視点に立ってきちんと解決することは、北朝鮮の拉致問題で日本の立場を強くし、大きなプラスになると思います。
国会に調査機関をおき、いまだ非公開の資料を含めて根本的に調査し、被害者の声を聴取することも必要でしょう。
よしみ・よしあき 一九四六年生まれ。日本近現代史。『従軍慰安婦』(岩波新書)『従軍慰安婦資料集』(編著・大月書店)ほか。
( 2007年04月11日,
韓国紙・朝鮮日報十日付は、旧日本軍の「従軍慰安婦」に関し米議会調査局が、「日本政府と旧日本軍が慰安婦の強制動員に関与した証拠は明白であり、旧日本軍が慰安婦の募集から慰安所の運営に至るまですべての段階に関与していた」とする報告書をまとめたと報じました。SBSテレビなども報道しました。
報告書は、米軍がビルマ(現ミャンマー)で発見した約二十人の朝鮮人慰安婦らの証言などに基づいたもの。「証言によると、日本当局が女性たちをだまして慰安所に連れていった。彼女らの大部分が慰安所に強制的に抑留されたという点については疑いの余地はない」と述べています。
同報告について朝鮮日報は、「『慰安婦を強制動員したという証拠は十分ではない』との安倍首相発言への公開反論といえる」と述べています。
同日付夕刊紙・文化日報は社説で、「報告書は、日本の政府と軍が、慰安婦の募集から慰安所運営に至るすべての段階に直接介入した証拠を示している」としています。
米議会調査局は議会図書館の一部で、議員に情報を提供する調査・研究機関です。
( 2007年04月11日,
六年前、地元で戦争体験を聞く会を持ちました。「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書が検定に合格し、世間を騒がせていたころでした。話し手は、全日本年金者組合の人たち。その中にTさんはいました▼被害者としての体験談が続く中、Tさんの話は異彩を放っていました。大学卒業後、南方に従軍。フィリピン、インドネシア、最後に捕虜となったのは、バリ島の隣の島でした。そんな小さな島々にまで「慰安所」はあったと、Tさんは話しました▼タニンバル諸島は、公式の「慰安所」は無いことになっていましたが、二千人近い兵士の士気を維持するために、原住民女性を各部落ごとに強制徴募していました。Tさんも利用しました。「そしたら、(『慰安婦』が)赤ん坊抱えてるんですよ。乳飲み子におっぱい飲ませながら…。さすがの僕も驚いた」▼そんな話は誰にもできませんでした。戦後五十年の一九九五年、初めて戦場体験記で書きます。「貴様、よく書いたなァ」と親しい戦友。「人間という者は、…恥ずかしい事はなかなか話せないものです。占領地諸国人民に加えた罪業については尚更です」(あとがき)▼復員したTさんは記録映画の監督として北朝鮮に出かけました。思い知ったことは、「人の痛みは簡単にはわからない」。戦後十八年たっていましたが、植民地時代の傷は、彼らの心に生々しく残っていました▼聞く会の二年後、Tさんは亡くなりました。生きていたら、今の状況をどう思うでしょうか。
( 2007年04月09日,
自民党・安倍政権の下での強引な政治がますます際立ってきた。「闘う政治家」を自称する安倍総理の面目躍如といったところか。
従軍慰安婦問題では、あたかも軍の関与がなかったかのような言をろうして内外から批判を浴びたばかり。今度は、文科省が高校の日本史教科書検定で、沖縄の集団自決に関し「軍の命令があったかどうかは明らかではない」として軒並み修正を求めたという。
あの戦争と軍の免罪、戦前の反省の上に立って出発したはずなのに、真っ向からこれを否定し、戦後の平和主義と民主主義と「闘う」という安倍政治の本性がむき出しになってきた感がある。これをこのまま許すのか、今重大な局面にさしかかっているというべきであろう。
「朝日」「毎日」などがそれなりに批判しているが、事態の重大さから見れば決して十分ではない。ジャーナリズムは、自らの戦争責任を踏まえ民主主義を土台として、戦後再出発した存在理由そのものが、大きく揺らいでいることに強い危機感を持つべきである。
東京都教育委員会は、今年も卒業式における「君が代」「日の丸」不起立を理由に、多くの教員を懲戒処分にした。違憲判決が出ているにもかかわらず。強権的に物事を進めようとする石原都政という名の別の「安倍政治」がここにある。
地方政治、とりわけ首都東京において、このような「戦後否定政治」がまかり通る事態は尋常ではない。「国民投票法案」の国会提出に、最大「野党」民主党が事実上自民党と歩調を合わせているなかで、こうした反動的な政治動向にどの政党が真に対抗し得るのか。
ジャーナリズムは、始まっている統一地方選の報道を地方から政治の流れを変える選挙として、国政の今後にかかわる選挙として選択軸を明確にした報道に取り組む責務がある。
(つかもと・みつお =中央大学教授)
(2007年04月08日,
吉川参院議員の質問に米有力紙も注目
「日本共産党の吉川春子議員が、安倍首相にせまった」――。米有力紙ニューヨーク・タイムズ(3月27日付)が旧日本軍「従軍慰安婦」に関する吉川議員と安倍首相の論戦に注目しました。記事の見出しは「日本の首相 戦時性奴隷への国家の関与を否定しながら謝罪」。安倍首相が陥った深刻な矛盾に世界が厳しい目を向けています。
責任を回避
同26日の参院予算委員会。「従軍慰安婦」への旧日本軍の関与と強制を認めた93年の河野洋平官房長官の談話を「受け継ぐ」といいながら、他方で「強制性はなかった」と発言した安倍首相に吉川さんがせまりました。
吉川 河野談話を受け継ぐとおっしゃるなら、(強制否定)発言は取り消されたらいい。いかがですか。
安倍 そうした発言も含めて今私は答弁をしているわけでございますが、この河野官房長官談話を継承していくということです。
矛盾を説明できないのに、強制否定発言を撤回しない首相。吉川さんが「公式に(被害女性に)謝る必要があると思いませんか」とただすと、「今、私はここでおわびを申し上げている」とのべました。
この質疑はほかの海外マスコミも注目。
「日本軍あるいは政府が強制したという証拠はないとした言明は撤回しなかった」(ロイター) 「言葉遊びのような表現からしても分かるように、政府次元の責任を回避する態度には本質的に変化がない」「謝罪には真剣さが見られない」(韓国「中央日報」)
この答弁の前日、首相側近で内閣官房副長官の下村博文氏が民放ラジオで本音をもらしました。
「『従軍慰安婦』はいなかった」「日本軍が関与していたわけではない」
罷免を要求
日本共産党の志位和夫委員長は同29日の記者会見で、安倍首相が「謝罪」しつつも、「強制性」発言をついに撤回しなかったことは「非常に大きな矛盾だ」と指摘。「歴史をゆがめる自らの発言は撤回すべきだ」とのべました。下村発言についても、「『河野談話』という政府方針を真っ向から否定する」とのべ、「官房副長官の職責と両立しない。罷免すべきだ」と要求しました。
安倍首相の発言は、北朝鮮による拉致問題でも日本の立場をそこなっています。
「安倍晋三の二枚舌 北朝鮮の日本人被害者には熱心だが、自国の戦争犯罪には目をつぶる」(米ワシントン・ポスト紙同24日付社説)
「北朝鮮が道徳的な高みに立つのを許した」(英誌『エコノミスト』同21日号電子版)
さきの記者会見で志位氏が指摘しました。
「日本人の拉致問題は絶対に許されない国際犯罪であり、解決を求める日本の要求はまったく正当だが、『従軍慰安婦』問題で、歴史をゆがめ、元慰安婦を傷つける発言に固執することは、拉致問題の解決でも障害となっている」
(2007年04月08日,
日本軍の管理下で、拘束され性奴隷状態に置かれた「従軍慰安婦」。軍の関与を否定したり、国の責任を薄めようとする安倍内閣の議論が、内外から批判を浴びています。この問題を知るための本を紹介します。
安倍首相は国会で「官憲が家に押し入って人さらいのごとく連れて行くという強制性はなかった」とのべました。この発言の誤りを示し、歴史の事実を突きつけるのが班忠義著『ガイサンシー《蓋山面》とその姉妹たち』(梨の木舎・二八〇〇円)です。暴力的に連行・監禁され、性暴力を受けた中国山西省の被害者たちの証言を同国人の著者が十年がかりで聞いた記録です。
5カ月間監禁され
十五歳だった李秀梅さんは銃を持った四人の日本兵に家から連行され、追いすがった母親はけり倒されました。五カ月間監禁され、多いときには一日二十〜三十人の相手をさせられました。そこには、ほかにも二人監禁されていたといい、同様の被害者は周辺の三つのトーチカだけで百人以上にのぼるといいます。本書には、そうした被害者を「慰安婦」として扱った日本兵の証言もでてきます。
「女たちの戦争と平和資料館」編『証言 未来への記憶 アジア「慰安婦」証言集T』(明石書店・三〇〇〇円)はアジア各地の被害者の証言を記録するシリーズの第一巻(全六巻、以下続刊)。朝鮮半島出身の十二人の証言と解説を収めます。多くは「いい仕事がある」「日本の軍需工場で働けば金が儲かる、一家に一人は行かなければならない」などとだまされて連れて行かれ、暴力によって逃げることも拒否することもできない奴隷状態におかれました。暴力的に拉致されたという証言もあります。ほとんどが当時の国際法に違反する未成年で、十三歳の例もあります。
川田文子著『イアンフとよばれた戦場の少女』(高文研・一九〇〇円)もアジア各地の被害者の証言を聞いたものです。元日本兵の証言からは、当時、強姦(ごうかん)は罪であるが、慰安所へ行くことは「金を払う」商行為で悪いこととは思っていなかったことが分かります。しかし被害者からすれば組織的な強姦でした。
研究者が多角的に
VAWW−NET Japan編『日本軍性奴隷制を裁く 2000年女性国際戦犯法廷の記録・全六巻』(緑風出版)は、九カ国・地域の六十人を超す被害者が証言に立った同法廷の全記録を収めるほか、戦時性暴力の実態、「慰安所」制度全体の構造、個別ケースの加害責任、加害者の精神構造と戦争責任などを、多くの研究者が多角的に分析した労作です。
「従軍慰安婦」を一九七三年に先駆的に取り上げたのは故・千田夏光氏でした。同氏の『従軍慰安婦・慶子』(八一年)がクラブハウス(一七〇〇円)から復刊されています。吉見義明著『従軍慰安婦』(岩波書店・七八〇円)、吉見義明・林博史編『共同研究 日本軍慰安婦』(大月書店・二五二四円)はともに一九九五年の出版ですが、この問題全体を知るのに大変役立ちます。
(西沢亨子)
( 2007年04月08日,
政治・経済
◆企業の景況感が悪化 日銀が発表した企業短期経済観測調査(短観)によると、大企業製造業の業況判断指数が一年ぶりに悪化(2日)
◆雇用不安85% 日銀の生活意識調査によると、雇用不安を感じる人が84・8%にのぼる(3日)
◆改憲手続き法案の中央公聴会を開催 衆院憲法調査特別委員会で。七人の公述人のうち五人が法案に反対や慎重審議を要求(5日)
◆離婚後妊娠300日規定見直しへ 法務省が「離婚後三百日以内に生まれた子は前の夫の子」と推定する民法七七二条の運用見直しの局長通達を出す方針を決める(5日)
◆日本版NSC法案を閣議決定 外交・軍事政策での官邸機能を強化する「国家安全保障会議」(日本版NSC)創設の関連法案を閣議決定(6日)
社会・国民運動
◆消費税をなくす会が「怒りの行動」 消費税をなくす会が、消費税導入十九年目に「庶民大増税を国民の力でストップさせよう」と全国各地で「4・1怒りの行動」を実施(1日)
◆NOVAの精算方法違法、最高裁初判断 英会話教室NOVA(ノヴァ)に対し、中途解約した男性が未受講分約三十一万円の返還を求めた訴訟で、最高裁は受講済み分を契約時より高い単価で計算するノヴァの精算規定を無効とし、「提供済み役務は契約時の単価で計算すべきだ」とする初判断(3日)
◆西武、新たに5選手への裏金判明 プロ野球西武の裏金問題で、同球団の調査委員会が中間報告を発表。既に判明した二選手以外にアマチュア五選手に計六千百六十万円を支払っていたほか、高校、大学、社会人野球の監督ら関係者延べ百七十人に対し選手入団の謝礼として金銭供与した事実も明らかに(4日)
◆原爆症認定東京訴訟で原告が控訴 原爆症の認定申請を却下された東京都内などに住む被爆者三十人が国を相手に処分取り消しを求めた訴訟で、原告側が被爆者九人の処分取り消しを認めなかった一審判決を不服として控訴(4日)
◆三和ファイナンス違法取り立て、全店に業務停止命令 金融庁は、サラ金大手の三和ファイナンスに対し、二十三日から六月四日まで全店舗の業務停止を命令(4日)
国際
◆ネパールで暫定政権発足 ネパール会議派、ネパール共産党(統一マルクス・レーニン主義)、毛沢東派などが参加した暫定政権が発足。首相は会議派のコイララ氏に(1日)
◆米韓FTA交渉妥結 ソウルで行われていた米韓両国政府による自由貿易協定(FTA)締結交渉が妥結(2日)
◆韓国の国会議員が安倍首相に謝罪求める書簡 韓国の超党派国会議員四十七人が、「従軍慰安婦」問題で強制性を否定した安倍首相に謝罪を求める公開書簡を送ったと発表(3日)
◆南アジア首脳会議開催 第十四回南アジア地域協力連合(SAARC)首脳会議がインドのニューデリーで開かれ、アフガニスタンの正式加盟とイランの準加盟を承認(3―4日)
◆イランが英兵解放 イランが、「領海を侵犯した」として三月二十三日以来拘束していた英国軍兵士十五人を解放(写真、ロイター)(4日)
◆気候変動政府間パネル部会が報告書 二日からブリュッセルで開かれていた国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」第二作業部会が評価報告書を採択して閉会(6日)
( 2007年04月08日,
米軍基地問題や憲法改悪、格差・雇用問題を争点に、参院沖縄選挙区補選が5日告示(22日投票)されました。元自治労県本部委員長のかりまた吉正候補(57)=日本共産党など推薦=は、日本共産党の赤嶺政賢衆院議員らの応援を受けて那覇市内で第一声をあげました。
出発式では、女性を代表して東門美津子沖縄市長があいさつ。十五日告示の宜野湾市長選をたたかうイハ洋一宜野湾市長は「二人が勝利することが普天間問題の解決にもつながる。新たな新基地建設ではなく、一つひとつ基地の負担を取り除くことが私たちの求める答えだ」と訴えました。
各推薦政党の連帯あいさつでは、赤嶺衆院議員のほか、沖縄社会大衆党の糸数慶子副委員長、社民党の照屋寛徳副党首、民主党の菅直人代表代行、国民新党の亀井静香代表代行がマイクを握りました。
かりまた候補が訴え(要旨)
日本の景気は絶好調といわれているのに、私たち庶民にその実感はまったくありません。格差をこれからも広げる政治を認めるのか、格差をなくす政治を選択するかが争点になっています。
安倍首相は、政権が誕生する前から大変危険な発言をしています。「従軍慰安婦」「A級戦犯」問題もそうです。
そして今、沖縄戦における「集団自決」について、(日本軍の強制が)なかったということで事実を曲げています。沖縄戦の教訓どころか、犠牲になった方々を侮辱するものです。
普天間基地問題について、危険なものをそのまま放置すること自体が問題です。だから即時閉鎖なのです。沖縄にこれ以上、米軍基地をつくることは問題が大きすぎる。できるわけはありません。
格差をなくし、安心の社会を創るのは、かりまた吉正であるということを、選挙戦で全力で訴えていきます。
赤嶺衆院議員訴え
今度の参院補選は、「沖縄の基地なくせ」「格差と貧困の広がりをなくせ」の声を国会に届ける大事な選挙です。
安倍内閣は教科書の沖縄戦の記述の見直しと、憲法改悪を一体のものとして持ち出し、沖縄県民に挑戦してきました。憲法九条守れの旗をしっかり掲げてたたかい抜こうではありませんか。
米軍再編の問題で、久間防衛大臣は辺野古の新基地問題は、選挙が終わったら直ちに実行すると言っています。なおさら負けられません。
今年は沖縄振興計画十年の折り返しの年です。県がこの五年間の検証をしました。企業はさまざまな支援策、賃金が安いから沖縄に進出してきている。報告書のなかに入っています。所得格差やワーキングプア。これが一番あらわれています。県民のくらしを豊かにするうえでも、かりまたさん勝利のために全力をあげてがんばり抜く決意です。
(2007年04月07日,
【ワシントン=山崎伸治】安倍晋三首相が二十六日、初めて訪米し、ブッシュ大統領との首脳会談が二十七日、大統領別荘のキャンプデービッドで行われます。日米の「引き続き力強い協力関係」(ホワイトハウス)をアピールする狙いとは裏腹に、「従軍慰安婦」問題での首相の姿勢に対する米国内の批判は強いままです。
安倍氏の訪米を発表した四日のホワイトハウス声明は、首脳会談の議題として「対テロ戦争やイラクでの進展、六カ国協議の次の方策、エネルギーと気候に関する諸政策」を指摘。米議会で日本政府に謝罪を求める決議案が審議されている「慰安婦」問題は取り上げられていません。
両首脳は三日、電話で会談。ホワイトハウスによると「両首脳は慰安婦についても議論し、ブッシュ大統領は安倍首相に対して誠実さを評価し、今日の日本は第二次大戦時の日本ではないと指摘した」としています。
「慰安婦」問題での安倍氏の立場に理解を示すことで、米国で懸念が広がっているこの問題について、米政府として幕引きを図り、首脳会談では取り上げないことを確認したものです。
安倍氏は三月二十六日、日本共産党の吉川春子参院議員の追及に対し、元「慰安婦」の人たちに対する「おわび」は表明したものの、「強制はなかった」とする発言の撤回は拒否しました。
米政府内には「日本が引き続きこの問題に対処し、犯した罪の重大さを認識するような率直で責任ある態度で対応することを望んでいる」(ケーシー米国務省副報道官)と指摘する声もあります。
ブッシュ政権としては決着をつけたとしても、安倍氏の態度への批判は続いています。
「慰安婦」問題で日本政府に公式な謝罪を求める下院決議(案)一二一は、採決が安倍氏の訪米後に持ち越されたものの、支持を表明する議員は増え続け、三月末で七十七人となりました。
( 2007年04月07日,
初めはもたもたしても、終わってみれば打者二十六人と対し十個の三振をとる。松坂投手、まずは上々の大リーグ初登板でした▼「怪物」と騒がれても、童顔の面影をとどめ、時おり白い歯をのぞかせ笑みがこぼれます。あこがれのマウンドで、うれしくてたまらないようすでした。アメリカでも、ファンの心をつかむでしょう▼アメリカでは、日本のマンガやアニメも人気です。日本文化を、「わび・さび・もえ」と特徴づける人もいます。もえ(萌え)は、マンガやアニメに出る人や物に対する深い愛着をさすそうです。もちろん、そのあり方をめぐって、いろいろ意見がありますが▼アメリカで最近、日本の政権の歴史観は評判が悪い。日本のある評論家の論評に、米国内から批判が多くよせられています。評論家は、米誌『ニューズウィーク』に「従軍慰安婦」の強制連行はなかったと書き、安倍首相らをかばいます。彼のいい分はこうです▼日本はイラク戦争などでアメリカに惜しみなく協力するのに、米議会はなぜ「従軍慰安婦」をむしかえすのか=B同じ号の同誌の記事と読み比べると、恥ずかしい。二百年前の奴隷貿易廃止は現代の奴隷制を忘れないためにも大切、と語るイギリスの国会議員。中国が外交力をつけているという報告。EU(欧州連合)がアメリカにかわる「超大国」となるだろう、との論評…▼世界は変わりつつあります。アメリカにへつらい、過去の過ちも認めない日本の政権は、二重に変化にさからっています。
( 2007年04月07日,
「安倍首相は歴史の事実を率直に認めよ」。安倍晋三首相がブッシュ米大統領との電話会談(三日)で「慰安婦」問題について「釈明」した翌日、韓国の李明博・前ソウル市長は、こう述べました。韓国メディアも安倍首相の「釈明」を批判的に報道。韓国世論の対日批判は弱まる気配を見せません。
李前市長は、野党ハンナラ党の大統領選有力候補です。四日、忠清南道の顕忠祠を訪れた李氏は、「歴史問題には真剣さが必要で、行動で示さねばならない。日本は状況に応じて、その時々で変えるので、当事国からは尊敬を受けられない」と語りました。
メディアの報道も安倍首相の「おわび」に懐疑的です。SBSテレビは四日、「安倍首相が月末に米国を訪問するので、事前にこの問題を鎮火しようとした」と報道。同テレビの東京特派員は「米国訪問を前にして、米国内世論が悪化していることに対する苦肉の策」と伝えました。
東亜日報五日付は「安倍首相の目にはブッシュ大統領だけ見えるのか」と題する社説を掲載。「米国内の反日世論を好転させようというジェスチャー」だが、「安倍首相は相手を間違えた。ブッシュ大統領ではなく、当事者の韓国国民と慰安婦被害者に直接、釈明すべきだった」と述べました。
インターネット紙プレシアンは四日、安倍氏の「おわび」について、「米議会が『慰安婦決議案』を推進している状況で、先に姿勢を低くして、米議会の推進力を弱めるため」だと指摘。「河野談話を継承する」という説明は、強制動員を否定した発言と「完全に相反する」とした上で、「この問題に明確な言及がないと安倍首相の(おわびの)真意は確認できない」と述べました。
( 2007年04月06日,
参院福島、沖縄選挙区の補欠選挙が五日告示(二十二日投票)されました。昨年十一月の両県知事選への参院議員出馬に伴うもの。いっせい地方選と同時におこなわれ、夏の参院選の前哨戦として各党が力を入れています。福島選挙区は、日本共産党の宮本しづえ氏(54)=新、前福島市議=と自民、民主の各公認候補との争い。沖縄選挙区では日本共産党などが推薦する、かりまた吉正氏(57)=新、元連合沖縄会長=と自民、公明両党推薦候補との事実上の一騎打ちです。日本共産党の志位和夫委員長は、福島市内で第一声をあげ、県議選ともあわせて支持を訴えました。
(2面に関連記事)
「参院補選、県議選のダブルの勝利をかちとらせてください」。志位委員長は福島駅前で、日本共産党への一票の値打ちを縦横に語り、集まった八百人の大きな拍手につつまれました。
この日は、自民党の片山虎之助参院幹事長、民主党の鳩山由紀夫幹事長が福島入りし、総力戦の様相。日本共産党の宮本しづえ候補は「大企業優先、国民いじめの政治をただすため全力でたたかいます」とのべました。藤川しゅく子(福島市区)、あべ裕美子(伊達市・伊達郡区)両県議候補も訴えました。志位委員長は、県議選が大激戦となっている郡山市にも急きょかけつけ、神山えつこ県議団長の必勝を訴えました。
「貧困と格差をただす一票」――志位氏は貧困と格差の大本に「構造改革」の名ですすめられた弱肉強食の自民党政治があると指摘。三つの提案――@大企業には減税、庶民には増税の税金の「逆立ち」をただすA最低賃金の抜本的引き上げなど人間らしい労働のルールを確立するB農業切り捨て政治を許さない――を示しました。
このなかで志位氏は、庶民負担増の根源にある定率減税の半減・廃止は公明党が「言い出しっぺ」だったと指摘。「東京新聞は公明党を『増税戦犯』と書いた。『戦犯』の公明党、『共犯』の自民党に審判をくだし、増税実施を中止させよう」と呼びかけました。
農政にふれた志位氏は、政府は「品目横断対策」と称して家族経営を切り捨て、日豪経済連携協定で畜産農家は大打撃を被るとのべ、「無制限の自由化にストップをかけ、家族経営を守る価格保障・所得補償をすべきだ」と訴えました。
「憲法と平和をまもりぬく一票」――志位氏は「憲法九条を守るかどうかを政党選択のモノサシにしてほしい」と訴え。安倍晋三首相が改憲手続き法案の強行に向けて暴走を始めるなか、「侵略戦争に反省のない勢力が、憲法をかえて海外で戦争をする国にしようとしていることが重大だ」と指摘。「従軍慰安婦」問題をめぐる首相らの歴史をゆがめる発言を批判し、「憲法九条を守る一票は、党をつくって八十五年、平和を貫いてきた日本共産党へ」と力を込めました。
( 2007年04月06日,
「最高裁は法廷を開き、被害者への謝罪と賠償を認める正義の判決を」と、係争中の「慰安婦」、強制連行、南京大虐殺などの訴訟支援団体や弁護士ら三十四人は四日、中国人戦争被害者の個人の請求権は放棄されていないとして要請しました。応対した最高裁訟廷主席書記官補佐に各訴訟の裁判長あての要請書を手渡しました。最高裁前では早朝ビラ配布をしました。
最高裁は今月二十七日、中国人強制連行事件の広島・西松建設の訴訟で「請求権放棄」について初の判断をするとされています。論点は一九五二年の日華平和条約と七二年の日中共同声明で、中国人個人の損害賠償請求権が放棄されたかどうかです。
これを受けて参加者らは、台湾と一部の地域を適用範囲として結ばれた日華平和条約について、「中国人に適用するのは言語道断。論外の話だ」と意見を語りました。
また、条文が「中華人民共和国政府は」と始まる日中共同声明五条について、「個人の請求権放棄は一言も書いていない。最高裁は条文通り判断してほしい」「文言はこれ以上でもこれ以下でもない。法の番人として判断を逸脱せず、良識ある判決をお願いしたい」と語りました。
支援団体は最高裁に対し、個人の請求権は放棄されておらず、公正な判決を求めるとした要請はがきを送る運動を展開中です。
( 2007年04月05日,
靖国神社発行の『やすくに大百科』は、「靖国神社にはどんな神さまが祀られているの?」という質問に、こう答えている。「日本の独立をしっかりと守り、平和な国として、まわりのアジアの国々と共に栄えていくためには、戦わなければならなかった……こういう事変や戦争で尊い生命をささげられた、たくさんの方々が靖国神社の神さま」だ、と。
こうした「祭神」の合祀を国が主導して進めてきた実態の一部が、国立国会図書館が、このほど刊行した『新編 靖国神社問題資料集』で明らかになった。A級戦犯の合祀も「目だたないよう」「外部発表は避け」て行なおう、とするなど、旧厚生省側が提起し、神社側と打ち合わせている。
驚くべきことに「尊い生命をささげられた」一人に「桜クラブ経営者」が挙げられ、「訴因、婦女子強制売淫刑十年受刑中病死」と記載されている。林博史関東学院大教授によると、この人物はインドネシアのバタビアで慰安所を経営していた人物に間違いない、という(「東京」三月二十九日付、「朝日」同三十日付)。占領地域の慰安所経営を戦争遂行への貢献と国が認めていたのだ。
いっせい地方選では、「一方では改憲手続き法案、一方では『従軍慰安婦』問題での歴史のわい曲ということ」が重大問題と志位委員長が記者会見でのべていたが、今回の新資料の断片からでも頷かれる。
(印)
( 2007年04月05日,
韓国で「慰安婦」問題にとりくむ挺身(ていしん)隊問題対策協議会は4日、ソウル市内の日本大使館前で、日本政府に謝罪と賠償を求める「水曜デモ」を行いました。「慰安婦」問題の解決を求める毎週水曜日の日本大使館前でのデモは1992年から始まり、この日で755回目を数えました。
李容洙さんら7人の元「慰安婦」が参加。同協議会は「被害者の名誉と正義が回復されるまで行進し続ける」と話しています。
( 2007年04月05日,
【ワシントン=時事】従軍慰安婦問題で日本政府に対する謝罪要求決議案を提出した日系のマイク・ホンダ米下院議員(民主)は二日までに、太平洋戦争中、国勢調査で得られた詳細なデータが日系米国人の収容に利用されていたとの報告を受けて声明を出し、米国勢調査局に対し、今回、明るみに出た過去を認めるよう要求しました。
太平洋戦争中、幼い身で収容所に入れられた体験のあるホンダ議員は、「国勢調査局が日系人に関する調査結果を監視当局に提供していたとの報告に心を痛めている」と批判。「二○○四年には、国勢調査局はアラブ系米国人の居住地を国土安全保障省に提供していたと伝えられている」と指摘し、「人種的・民族的マイノリティーのプライバシーを侵害することが繰り返されてはならない」と警告しました。
その上で、国勢調査局に対し「日系人に関して今回明らかになった事実関係を認め、過ちが二度と起きないと約束しなければならない」と要求。「国勢調査データの秘密保持のため、わたしはあらゆる法的手段を用いて戦うつもりだ」と宣言しました。
( 2007年04月05日,
日本共産党の穀田恵二国対委員長は四日、神戸市東灘区(県議選=定数三、市議選=同九)神戸市須磨区(県議選=定数三、市議選=同八)の各二カ所で、京都市では右京区の個人演説会で、「くらしと憲法を守れの一票は日本共産党の候補に」と訴えました。
東灘区では、ふるや敏郎、須磨区では森田たき子の両県議候補とともに、ときおり降る強い雨のなか訴えました。また京都府議選右京区(定数五)で現有二議席確保をめざす島田けい子、かみね史朗の両候補、市議選(定数九)で現有三議席確保をめざす、かとう広太郎、岩橋ちよみ、西村よしみ各候補の全員勝利への支援をよびかけました。
穀田氏は、くらしをないがしろにした「逆立ち政治」が県民、府民の苦しみの根源にあることを示し、「いのちとくらしのかかった選挙」と選挙の意義を解明。安倍自公政権がねらう改憲手続き法案の強行について、「従軍慰安婦」はいなかったとの歴史をゆがめる閣僚発言などと一体のものと指摘。「くらし・憲法を守れの県民の願いにこたえる政党・議員のあり方が問われている」と共産党への一票を訴えました。
神戸市で話を聞いていた岩城直子さん(71)と森脇檀さん(62)は「なんといっても福祉とくらしをよくしてほしい。電話などの対話でも一生懸命がんばっています」と口をそろえました。
( 2007年04月05日,
日本共産党の志位和夫委員長は四日、遊説先の仙台市内で記者会見し、最終盤を迎えた、いっせい地方選前半戦の様相について次のようにのべました。
一、いっせい地方選挙の前半戦は、残り四日間と最終盤にはいった。
わが党は、全国各地で大奮闘し、政治論戦では、どこでも選挙戦をリードしている。わが党の訴えがとどいたところでは、有権者の確かな手ごたえを感じる。
貧困と格差の広がりの中で、自治体の「逆立ち」したあり方――福祉と暮らしを削り、巨大開発や大企業支援に税金を流し込む――をただせという訴えが、どこでも共感を広げている。とくに庶民大負担増から住民の暮らしを守る、国保証取り上げをやめ国保料の引き下げをはかるなど、自治体に「福祉の心」をとりもどそうという訴えへの反応は強い。また、無駄な巨大開発、大企業誘致のための補助金、議員の豪華海外視察など、税金の無駄づかいをやめよという訴えにも共感が広がっている。「住民の命綱」として働く日本共産党への期待が多くの方々から寄せられている。
「オール与党」対日本共産党という対決の構図が、どこでも鮮明になっている。多くの自治体で、自民、公明、民主、社民は、文字どおりの「オール与党」だ。首長選のときなどでは「対立」しても、終わればもとのさやにおさまるのが実態だ。この間の一連の知事選・市長選――宮城県、福島県、愛知県、福岡市、北九州市などで、自公推薦候補と、民主推薦候補が「対立」したケースがあったが、どれも選挙直後に「オール与党」体制が復活している。いまおこなわれている十三都道県知事選でも、そのすべてで「逆立ち」自治体をただそうという大義を掲げて奮闘している政党は、日本共産党だけだ。政党関係でも、わが党の値打ちは浮き彫りになっている。
憲法と平和が重要な争点となっている。これには二つの理由がある。一つは、改憲手続き法案をめぐる国会情勢の緊迫。いま一つは、首相の「従軍慰安婦」問題での歴史をゆがめる発言が、問題を深刻にしている。地方選挙ではあるが、「憲法九条を守れという声は、日本共産党に」という訴えは、どこでも大きな手ごたえがある。
無党派、保守層にも、わが党への期待が広がっている。元自民党関係者や保守系の首長など、これまで日本共産党を応援したことのなかった人々が、はじめて宣伝カーに乗ったり、ビラに名前を出してくれたりしている。
一、同時に、選挙は、どこでも文字通りのしのぎを削る大激戦となっている。
多くの選挙区で、「オール与党」による「共産締め出しシフト」がしかれている。「自民か、民主か」という偽りの「対立」をおしつける動きも強まっている。公明党による反共デマ攻撃も激化している。これは、「増税戦犯」、「福祉切り下げの張本人」、「政調費不正使用」など、みずからの悪政をごまかすための攻撃にほかならない。そしてこれは、日本共産党のみならず住民にたいする攻撃であり、不当な攻撃は断固として打ち破る。どの党にも負けない奮闘をやりぬき、みずからきめた目標をやりきってこそ、勝利がつかめる。
選挙の勝敗は、全国どこでも、投票日を入れて残り四日間、党と後援会の底力を出し切っての奮闘にかかっている。論戦での確かな手ごたえを、議席獲得、得票増に結びつけるために、党の訴えを広い有権者に届けきり、知恵と力をつくしてがんばりぬきたい。
( 2007年04月05日,
「平和を願い憲法守る。海外での戦争に反対する。その願いを、ぜひ、日本共産党の候補にお寄せください」。日本共産党の田村貴昭衆院比例候補は二日、佐賀市に入り、県議選・佐賀市区(定数十)で前回空白となった党議席回復をめざす、むとう明美県議候補とともに街頭から訴えました。
田村候補は「今、平和と民主主義が限りなく脅かされています」とのべ、文科省が太平洋戦争末期の沖縄戦で、住民「自決」の、「日本軍の強要」を削除する高校教科書の歴史を書き換える検定結果を公表したことや、「従軍慰安婦」問題で、「日本軍がかかわらなかった」という安倍首相の発言などにふれました。これは、「侵略戦争を賛美、美化しようとするもの」で、改めなければ国際的に日本は孤立すると批判しました。
田村候補は、憲法改悪に賛成する自民、民主の「二大政党」を選択する危険性を指摘し、「平和を守れ、憲法守れの願いは、日本共産党へ」と呼びかけました。
むとう候補は「自民、公明による国の悪政で定率減税廃止など庶民大増税のなか、県政と『オール与党』議会を変えていく流れをつくり、くらしを守る防波堤の役割を発揮させるために議会に送ってほしい」と訴えました。
(2007年04月04日,
「米軍再編特措法」案の国会審議のあいまをぬっていっせい地方選挙の応援にとびまわっている。先週末は五日連続、鉄道と航空機を乗りついで超過密日程だった。とはいえ、移動していると得られることも多い。
その一つが有明海の風景。最近は佐世保への原子力空母の準母港化に抗議する集会参加、有明海と諫早干拓事業の調査、長崎県議選挙応援で長崎本線を利用する機会が多かった。そのおかげで、有明海沿岸の独特の風景にだいぶなじんだ。
有明海の干潟とそこを漁場とする人々の家並みが列車の窓からとびこんでくると、いつの間にかその風景にみとれている。そしてこの風景がいつまでも続いてほしいと願う。
「干潟は海の生物のゆりかご」と教えられたが、諫早干拓事業によって有明海に異変がもたらされ漁業被害が拡大した。宝の海をとりもどす、たたかいの先頭にたっている漁民や弁護団との交流もあったので、余計にその風景に愛着が生まれている。
佐賀では出陣式のあと、三人連れの女性が選挙事務所に入党を申し込みにきた。その中の一人が山下市議に「私は入党して生きる自信と誇りをとりもどしました。きょうはこの人たちに入党してもらいます」と話していた。
年配の女性だったが、サラ金被害の問題をむとう明美さんや党の応援で解決したとのことで、改めて住民の「命綱」としての党の役割に勇気づけられた。
そして沖縄。名護市の演説会にむかう移動中の車中で聞いたNHKの七時のニュースが「国は沖縄戦で軍の強制による県民の『集団自決』があったと断定できないとし、高校の歴史教科書からその部分を削除する」と報じた。
びっくり仰天だ。「軍隊は住民を守らない」という沖縄戦の真実をわい曲する行為。安倍内閣の「従軍慰安婦」問題の歴史認識と一体だ。「改憲めざす流れと一つ、参院補選、宜野湾市長選で平和の審判下そう」と訴えた。
超ハードな週末だったが、たたかうエネルギーも新たにわいてきた九州、沖縄の選挙応援の旅だ。
(2007年04月04日,
いよいよ「憲法」がいっせい地方選挙の争点に浮かび上がってきた。一つは自民、公明がこの選挙を待って九条改憲と地続きの国民投票法(改憲手続き法)案の衆院通過を狙っているから。もう一点は第二次世界大戦における日本の侵略戦争の歴史をわい曲する策動が強まっているからです。
「従軍慰安婦はなかった」という下村官房副長官の発言、さらには文部科学省が教科書検定意見で「沖縄戦の集団自決」について「軍の強制」を削除したことは見過ごせません。
慰安婦問題では、辛酸をなめた元「慰安婦」の方々の生涯をかけた「軍の強制」という告発を、ウソだと言うのでしょうか。軍によって自決用の手投げ弾を渡されたという沖縄県史や渡嘉敷村史を否定するのでしょうか。
野蛮な侵略戦争の真実、なかんずく軍の強制を否定することは、戦争を美化するものでしかありません。このことは侵略戦争に無反省な内閣が憲法を変えたらどうなるかを如実に示しています。
アジアと世界への平和の誓いが日本国憲法です。それをなきものにしようとする動きと軌を一にしています。自民、公明が改憲手続き法の強行を狙い、九条改憲では推進派の民主は法案を一緒になってつくってきました。
憲法と平和がかかった選挙です。侵略戦争に命がけで反対を貫いた日本共産党の出番です。いま憲法九条を守ろうと草の根で共同を広げている党・日本共産党の躍進・勝利で改憲勢力のよこしまな野望にストップをかけ、平和な日本への第一歩としようではありませんか。「わだつみの悲劇を繰り返すな」を政治信条にたたかう私の出番でもあります。
(衆議院議員)
(2007年04月04日,
いよいよ「憲法」がいっせい地方選挙の争点に浮かび上がってきた。一つは自民、公明がこの選挙を待って九条改憲と地続きの国民投票法(改憲手続き法)案の衆院通過を狙っているから。もう一点は第二次世界大戦における日本の侵略戦争の歴史をわい曲する策動が強まっているからです。
「従軍慰安婦はなかった」という下村官房副長官の発言、さらには文部科学省が教科書検定意見で「沖縄戦の集団自決」について「軍の強制」を削除したことは見過ごせません。
慰安婦問題では、辛酸をなめた元「慰安婦」の方々の生涯をかけた「軍の強制」という告発を、ウソだと言うのでしょうか。軍によって自決用の手投げ弾を渡されたという沖縄県史や渡嘉敷村史を否定するのでしょうか。
野蛮な侵略戦争の真実、なかんずく軍の強制を否定することは、戦争を美化するものでしかありません。このことは侵略戦争に無反省な内閣が憲法を変えたらどうなるかを如実に示しています。
アジアと世界への平和の誓いが日本国憲法です。それをなきものにしようとする動きと軌を一にしています。自民、公明が改憲手続き法の強行を狙い、九条改憲では推進派の民主は法案を一緒になってつくってきました。
憲法と平和がかかった選挙です。侵略戦争に命がけで反対を貫いた日本共産党の出番です。いま憲法九条を守ろうと草の根で共同を広げている党・日本共産党の躍進・勝利で改憲勢力のよこしまな野望にストップをかけ、平和な日本への第一歩としようではありませんか。「わだつみの悲劇を繰り返すな」を政治信条にたたかう私の出番でもあります。
(衆議院議員)
(2007年04月04日,
吉田万三都知事候補(革新無所属、日本共産党推薦)は三日、多摩市の団地前で石原都政の転換を訴えました。冷たい雨のなか、聴衆は百人を超えました。東京地評の堤敬議長、日本共産党の村松みえ子都議が応援演説しました。
吉田氏は、福祉を切り捨ててきた石原慎太郎知事がにわかに福祉を重視しているかのように言い出すなど、暮らし・福祉中心の都政実現を訴えてきた吉田氏の主張が論戦を主導しているとし、「力を合わせ、都民が安心して暮らせる都政をつくりましょう」と訴えました。
訴えを聞いた津山清さん(66)は「石原(慎太郎)さんは知事になってから、都営住宅を新規に一戸も建設していない。庶民は福祉削減や増税で大変で、少しでも安い住宅に入りたいのに。都営住宅を毎年一千戸新規に建設すると公約している吉田さんに期待している」と語りました。
右手足に障害がある男性(70)は「『従軍慰安婦』や教科書検定の問題などを見ても、日本が戦争の道へ戻ろうとしているように思う。私自身も生きていくのが大変だが、吉田さんは人間味があって、その痛みがわかると思う。憲法を守ると正面に据えている吉田さんを知事にしたい」と話しました。
(2007年04月04日,
みどり 従軍「慰安婦」問題で安倍首相が「強制連行の証拠はない」と述べたことが、世界の批判を浴びているわね。
問われる二枚舌
晴男 アメリカのワシントン・ポストも社説で取り上げた。拉致問題では熱心なのに、自国の起こした人権問題では責任を認めない安倍首相の二枚舌が問われたんだ。
みどり 日本のメディアは、あまりふれてないみたいだけれど。総理の記者会見(三月二十七日)で、質問が出てこないのには驚いた。
晴男 いくつかの番組では、扱っているものがあったよ。一日放送の「サンデーモーニング」(TBS系)で、金子勝慶大教授が、世界で孤立している今の日本について「戦前から戦争に至る歴史と同じ状況に入り始めた」と言っていた。
みどり 歴史のわい曲は世界では通用しないってことね。
晴男 「たけしのTVタックル」(朝日系、二日)は、安倍首相に「謝罪するなら発言を撤回したら…」と迫った日本共産党の吉川春子参院議員の国会質問を紹介した。
軍の関与は明白
みどり 「慰安婦」問題で謝罪した河野談話を、やり玉にあげる政治家もいるでしょ。証拠もないのに妥協したっていうのは本当なの?
晴男 いや、そうじゃない。一九九二年に慰安所への軍の関与を示す旧日本軍の資料が発見された。テレビはこうした歴史的事実に立脚して番組を作るべきだね。
みどり ドキュメンタリーの格好のテーマになりそうなのにね。
晴男 NHKの元プロデューサーが書いた『テレビは戦争をどう描いてきたか』(桜井均著)を読むと、九〇年代だけで「慰安婦」問題を取り上げたドキュメンタリーが八本あったよ。
みどり 制作現場は頑張っていたのね。
晴男 一月に判決があったNHK番組の政治介入問題を覚えてるだろう。あれが、NHKが「慰安婦」問題を正面から扱おうとした最後の番組だよ。安倍首相が官房副長官だったときに圧力をかけて、番組がズタズタになったんだ。
みどり 介入した政治家の狙い通りにテレビの状況がなってるわけね。
晴男 関心が高まっている今こそ、しっかりとりくんでほしいね。
( 2007年04月04日,
米誌『ニューズウィーク』が「従軍慰安婦」問題で安倍政権の立場を弁護する右派評論家、加瀬英明氏の論評を載せたことに対し、「身の毛がよだつ」などと批判する意見が多数寄せられています。同誌電子版は、安倍首相発言や加瀬論評を批判するテンプル大日本校アジア研究所長のジェフ・キングストン氏の寄稿を掲載しました。
同誌四月二日号掲載の論評で加瀬氏は、「慰安婦」問題で日本に謝罪を求める下院決議案など米国での動きについて、「イラクや対テロ戦争で米政権に対し空前の支持をしている日本政府には驚きだ」と述べています。
同氏は、戦争中の行為について、日本は「ビジネスにとって好都合な」時は謝罪してきたが、近年は「謝罪することの利益が不明確になってきた」としています。
同氏は「慰安婦」制度が「商業施設」だったとし、米陸軍記録も日本政府による「拉致」の証拠はなかったとしていると述べています。論評は、「近隣諸国や米国が謝罪を強く求めるほど、日本は強く反発するかもしれない」との「脅し文句」で結ばれています。
これに対してキングストン氏は、「慰安婦」制度が「日本軍の命令でつくられ、機構化された性奴隷制だったことを示す証拠は多数ある」と指摘。「重箱の隅をつつくような安倍や加瀬の議論は、年老いた生存者(元「慰安婦」)の尊厳への公然たる侮辱であり、この深刻な人権侵害があったことを認める日本政府の過去の試みを傷つける」と批判しています。
キングストン氏は、安倍首相の支持者は「国民が誇りをもてるように」歴史を書き換えようとしているが、「大多数の国民はこの試みを拒否している」と指摘。シーファー駐日米大使も安倍発言を非難するなど、「日本政府は完全に孤立している」と述べています。
ニューズウィーク電子版によれば、加瀬論評に対しては読者から二百以上のコメントが寄せられ、「多くが筆者に憤慨している」といいます。「筆者は、よく知られた極右の歴史修正論者」であり、反論や筆者の経歴説明なしにその論評を掲載するのは「ジャーナリズムの原則に反する」との批判も寄せられています。
加瀬氏は「史実を世界に発信する会」代表などとして、日本の侵略戦争の美化宣伝活動をしている中心人物の一人です。
( 2007年04月04日,
米紙ニューヨーク・タイムズ三月三十一日付は、日本軍が「アジア全域で売春宿を設立・運営したことを日本政府が否定していたことに我慢がならず」、「防衛庁の図書館でその事実を証明する公的文書を発見した」中央大学の吉見義明教授を登場させています。
同紙は、吉見教授が「帝国陸軍高級将校の印鑑が押された文書」である「軍慰安所従業婦等募集に関する件」(一九三八年三月四日)と題された通牒(つうちょう)など「決定的証拠」となる六文書を突きつけ、その結果、一九九三年の「河野談話」で「日本国家自身の責任」を認めさせた経緯を紹介。
中学校の教科書にも載るようになり、吉見教授は「当時はこれで事実上解決するだろうと楽観していた」が、「強力な巻き返し」に直面します。それは「若い国家主義的な政治家たち」によって始められ、「それを率いたのが安倍晋三(現首相)」だったと述べています。
同紙は、「河野談話」までは軍の役割を証明する公的文書はないといっていたのが、今日では「軍が女性を強制的に徴用したことを証明する公的な文書はない」という言い分で「河野談話」の「価値を引き下げた」と指摘。
一九四五年八月十五日の日本の降伏から米占領軍到着までの二週間に、「東京の空が煙で暗くなるほど多くの文書を焼却した」うえ、「今も残っているとみられる文書の公表を拒んでいる」としています。
「公的文書を強調することは、長年にわたり戦争中の歴史をコントロールする政府の戦略の一部だった」と吉見氏らは言います。
吉見氏は「公的な文書以外使うことができないなら、歴史そのものを明確に記述することは不可能だ」と強調しています。
ニューヨーク・タイムズ紙は、吉見氏が「日本軍が『主役』」だったと指摘する「戦争中の日本による性的奴隷制度を描き出すことに成功した」と評価。その一方で、安倍首相のコメントがアジアと米国で憤激を引き起こし、米下院では性的奴隷の歴史を認め、謝罪するよう求める決議案が審議中だと述べています。
( 2007年04月04日,
参院沖縄選挙区補選(欠員一)が五日告示(二十二日投票)されます。日本共産党が推薦する元自治労県本部委員長の、かりまた吉正候補(56)は、新基地建設や憲法改悪の強行、くらし・福祉を破壊する自公政治を打ち破るために、全県を駆け巡っています。選挙戦は、自民党・公明党が推薦する前那覇市議の島尻安伊子候補(42)との事実上の一騎打ち。政府・自民党は、新基地押し付けの流れをさらに強めようと、二日の経済団体の総決起集会に中川秀直幹事長が参加。安倍首相の沖縄入りも検討されています。
米軍新基地建設
選挙戦の最大の争点は、県民の圧倒的多数が反対している米軍キャンプ・シュワブ(名護市)沿岸域への米軍の新基地建設を許すかどうかです。
かりまた候補は各地の演説会で「普天間基地の即時閉鎖・返還を求め、辺野古への新基地建設は絶対に許さない」と力強く主張しています。
自公の相手候補は「仲井真知事と同一歩調をとる」とのべ、現行案の修正があれば新基地建設を認める立場を表明するなど、違いは鮮明です。
実際、安倍自公政権は、新基地建設を強引に進めるため、事前調査を強行する方針を決定し、仲井真知事もこれを認めています。
沖縄戦の改ざん
二つ目の争点は、歴史の改ざんと憲法問題です。
文部科学省が公表した歴史教科書の検定で、沖縄戦における住民の「集団自決」について、日本軍の強制と誘導を削除させていたことが明らかになり、県民の怒りの声が広がっています。
この削除は、「従軍慰安婦」問題での安倍首相の発言と同様に、戦争の歴史改ざんを狙う動きです。憲法九条を改悪し、戦争ができる国づくりをめざす流れと結び付いています。
沖縄戦で県民の四人に一人の命が失われ、戦後六十二年間も米軍基地を押し付けられてきた沖縄県民にとって、憲法九条は沖縄の心≠サのものです。
かりまた候補は「憲法守れ」の県民の熱い思いを代表する唯一の候補です。
格差と貧困打開
沖縄県民の暮らしの問題も重要な争点です。
国勢調査によれば、沖縄の失業率は、9・4%(二〇〇〇年)から11・9%(〇五年)に大幅に悪くなりました。働いている人の四割、電話関連のサービスをするコールセンターでは八割以上が非正規雇用です。所得の格差も拡大しています。
自公の国政・県政が進めてきた基地依存、県外企業誘致による雇用対策の失敗は明白と主張するかりまた候補。観光産業の発展など、沖縄の特性をいかした産業・経済の振興をはじめ、非正規雇用から正規雇用への転換、ワーキングプア解消策の制度化などを提案しています。
かりまた氏は、沖縄社会大衆党、社民党、民主党とも政策協定を結んでいます。
平和の一議席守る/かりまた候補が決意
私も相手候補も無所属ですが、違いが鮮明になってきています。
今国会で大きな問題になっている「国民投票法案」についても、相手候補は賛成しています。憲法改悪の手続き法案であり、私は絶対に賛成できません。憲法九条を変えてはならないというのは私のポリシーです。
いま深刻なのは、働き方によって所得の格差があり、生活、教育の格差に拡大しているということです。これを止めるためには、自公の金持ち優遇、庶民冷遇の政治を変えるしかありません。
連合沖縄の会長をつとめた私を、共産党が推薦するのは全国的にみて異例なことだと思います。しかし、沖縄には、みんなが結束しないと基地問題を解決できないという特殊事情があります。沖縄が一つになったときに必ず歴史が動いてきました。米軍占領下の土地闘争や祖国復帰運動などでも明らかです。
今回の補選は、糸数慶子前参院議員の知事選立候補によるものです。糸数さんは、野党が一緒に勝ちとった議席を、「平和の一議席」と言ってきましたが、私もこの大事な「平和の一議席」を必ず守り抜く決意です。
( 2007年04月04日,
日本共産党の穀田恵二衆院議員と小池晃参院議員は、二日夜放送のテレビ朝日系番組「たけしのTVタックル」に出演し、「従軍慰安婦」問題、靖国参拝、「愛国心」などの問題について各党議員らと討論しました。
「従軍慰安婦」問題では安倍首相が旧日本軍の関与と強制性を認め謝罪した河野洋平官房長官談話を事実上否定し、その後、改めて河野談話継承を述べましたが、拉致問題の扱いとの比較で外国メディアなどでダブルトーク(二枚舌)と批判されたことが議論になりました。
自民党議員が「中国や韓国の外交カード」が米下院外交委小委員会の「従軍慰安婦」決議案などに飛び火していると語ったのに対し、穀田氏は「外交カードということで、人権と事実について辱めてはならない。『河野談話』にあった強制の核心というのは、『慰安所』の中で多くの人が強制的な状況で痛ましいことをやられたということ。国家の関与、軍の関与なしにはできないというのが結論なんです」と指摘しました。
安倍首相の靖国参拝問題で穀田氏は「一番肝心な問題は、靖国神社の考え方があの戦争(アジア・太平洋戦争)を正しい、自存自衛の戦争だったといっていることだ。あの戦争が正しかったとする歴史観が世界に通用するのか。戦後の国際秩序、国連憲章の前提となっているのはあの戦争は間違っているということだ」と強調しました。
教育・雇用でも
教育問題では、小池氏は「(教育三法案には)義務教育の目標に愛国心が入っている。安倍首相のいう愛国心とは日本の(侵略戦争などの)否定的な部分にはいっさい目を向けないということだ。日本の負の部分にしっかりと目をすえないといけない」と述べました。
最低賃金制の問題では中小企業への影響を理由に最低賃金千円以上を拒否する自民党議員に対し「中小企業の労働者が千円以下でずっと抑えられていいのか。だいたい、中小企業いじめをやってきたのが自民党政権で、こんなときだけ中小企業の味方のような顔をしてもだめだ」と批判しました。
( 2007年04月04日,
安倍晋三首相は三日夜、ブッシュ米大統領と約十五分間、電話会談し、「従軍慰安婦」問題について説明しました。
安倍首相は「これまでの政府の立場を踏襲し、元慰安婦に心から同情しおわびを表明している」と述べました。
ブッシュ大統領は「首相を信じ、日本国民の元慰安婦への同情の気持ちを信じている」と応じました。
二十六、二十七両日の訪米を控え、「従軍慰安婦」問題に対する首相の姿勢に米国内で批判が出ていることを考慮したもの。
( 2007年04月04日,
中盤にさしかかる通常国会で、衆参両院の国家基本政策委員会の党首討論が一回も開かれていません。自民党、民主党それぞれのお家の事情が影を落としています。
〇…自民党の丹羽雄哉総務会長は二日、同派衆院議員の会合でのあいさつで党首討論に言及。「民主党代表は自らが提唱した党首討論が嫌いなのか。党首討論をやる機会がない。私ども安倍総理は気力十分、いつでも受けて立つ気構えでいる」とのべました。党首討論が開かれない理由をもっぱら民主党の小沢一郎代表が出てこない事情に求め、その立場から民主党へ批判の矢を向けています。
一方、民主党の鳩山由紀夫幹事長は「小沢代表には、安倍首相との器の違いを国民に判断していただける絶好の機会ではないかといっている。安倍首相と対決してほしい」(三月三十日、記者会見)。しかし、民主党側から党首討論の開催を求めている形跡もありません。
〇…閣僚の暴言や事務所費など政治資金で説明責任を求められ、「従軍慰安婦」問題でも揺れる言動が追及される安倍首相。他方、五億円を超える巨額の不動産取得費用を政治資金に計上している問題で説明の不十分さが指摘される小沢代表という両党首です。国会関係者は「お互いに国民の前で相手からつつかれたくない問題を抱え込んでいる。だからどっちもすすんで出たいと思わないのでしょう」とみています。
〇…党首討論は一九九九年以来おこなわれてきました。日本共産党は二〇〇四年の参院選後から、「衆参いずれか十人以上の会派」とする「申し合わせ」を根拠に党首討論の機会を奪われています。日本共産党は少数会派にも討論の機会を求めています。
それにしても今回のように通常国会の会期百五十日間の折り返し点に近くなっても一回も開かれないのはまともな国会といえません。
〇…なぜなのか―。政治路線や基本政策で同じ土俵の上にある保守政党同士だからです。
折からのいっせい地方選。東京都知事選での石原慎太郎候補(自民党が自主応援)への神奈川の松沢成文、埼玉県の上田清司両知事の応援が物議をかもしています。保坂三蔵・参院自民党筆頭国対副委員長(同党東京都連会長代行)は「(松沢、上田)二人の知事は衆議院議員の出身でいずれも民主党所属。その方が知事になってからは(自民党が応援する)石原チームの一員になって、石原人気を支えていただくようになった。正直驚いた。しかし、これが現実的なのです」(一日、東京都江東区門前仲町での街頭演説)。
〇…党首討論を避けている背景に、自民、民主両党の足下で政策も政治家も融合≠深めている事情がみえてきます。「党首討論を通じて自民党と民主党の政策の違いを地方選挙で有権者に訴えていくことではないか」と前出の丹羽氏はいいますが、論より証拠。政策の違いを有権者に訴えられない自民、民主両党のジレンマが招く党首討論ゼロ国会≠フ異常なのです。
( 2007年04月04日,
韓国の超党派の国会議員四十七人が、「慰安婦」問題で強制性を否定した安倍首相に謝罪を求める公開書簡を送りました。書簡のとりまとめを主導した与党・開かれたウリ党の蔡秀燦議員が三日、ソウル市内で記者会見し明らかにしました。
四十七人は、ウリ党、ハンナラ党、民主党、「統合新党の会」、「民生政治の会」の議員ら。李在五・ハンナラ党最高委員など有力議員も参加しています。
書簡は三月三十日に発送され、安倍首相の発言に対し、「深い遺憾の意」を表明。「過去の誤りを認め、反省することなしには、日本は国際社会で国力にふさわしい地位と役割を確保できない」として、日本政府による賠償を求めました。
一方、「謝罪と賠償は当然の道理」としながらも、日本が強制性を認めない場合には、日本、韓国、中国など関連当事国による共同調査を実施するよう提案しています。
( 2007年04月04日,
党支部、後援会支持拡大、ビラ配布に全力
八日投票の県議選まで最初で最後の日曜日になった一日、九州各地の党支部と後援会は、住民の命綱として県政に切実な願いを届ける党候補の必勝を、と終日対話・支持の訴えに大奮闘しました。
県都の県議空白克服必ず/福岡
県都・福岡の県議空白克服、全区八人の市議団へ―。一日福岡市の党支部と後援会は、対話、支持拡大、法定ビラ配布を繰り広げました。
つの豊臣県議候補、わたぬき英彦、原田祥一市議候補の必勝に大奮闘する、福岡市東区の箱崎支部は、道路の騒音・振動問題を抱える地域住民の運動に協力し、日本共産党への信頼を広げています。このなかから従来自民党支持だったという人も日本共産党に期待する人に。この日も、地域の松本一美さんと長島千鶴子さんがビラ折りに参加しました。
松本さんは、夫が自民党市議と同級生、自民党の前県議と親せきという関係で、いままでは自民党支持でした。松本さんは、「道路問題で地元の自民党の議員はなんの役にも立たなかったのに、今度の選挙でもよろしくといってきたから『悪いけど、今度は共産党』とはっきりいいました」。「共産党のいっていることが一番正しい。他の党の訴えなんか聞きもしない。前から、いつでも宣伝カーで政策を訴える共産党の活動には感心していました」と話します。
長島さんも、「道路問題で地元の少人数で市にいいに行ってもうけあってくれませんでしたが、共産党の人たちが協力してくれてから、交渉もスムーズにすすむようになりました。押し付けなしに、損得抜きで住民のために応援してくれるのがありがたい」と共産党への信頼を語り、「従軍慰安婦問題や戦争責任の問題でも自民党はうそだらけ。私たちの税金の使い方もひどいし、選挙で負かさなければ」と話します。
むとう候補の議席回復へ/佐賀
佐賀県議選の佐賀市区(定数十)では、支部と党後援会は「何としても、むとう県議候補の議席回復を」と、失った議席の雪辱を胸に奮闘。佐賀市内のセンター(たまり場)で、仲間と、電話での支持を広げている神野支部の岡田百合子さん(55)です。「むとう明美のニュースや、日本共産党の号外はご覧になりましたか」ときりだす岡田さん。
相手が応えると、「佐賀は国保税や介護保険料が高いでしょう。くらしは大変。むとうさんは、負担を軽減するため、長崎新幹線建設(二千七百億円)の大型公共事業の政治から、一世帯一万円の国保税を引き下げて、くらしや福祉を優先する政治をめざします。ぜひ、支持を広げてほしいんです」とていねいに説明。「オール与党」議会で、くらしや福祉の予算が削られた県政を変えるむとうさんの議席が必要と話しました。
相手から、「そうなんですか。くらしのために、ぜひ、共産党に頑張ってください」と返事が返ってきました。
センターに集まった人も「弾みがつくね」と電話かけに、いっそう受話器をもつ手に力を込めています。
連日受話器を握る夫婦も/鹿児島
鹿児島市郡元支部は有権者の10%、九百六十票を得票目標に掲げ連日奮闘しています。
重山正久さん(82)、昭子さん(79)夫妻は、三月四日以来連日四十人を目標に対話、これまでに電話で九百五十二人と語り、支部の対話は全部で千百人を超えました。
これまでの結びつき名簿五百人は、かけ終わりテレデータを使っています。「電話での対話は、お互い気軽にスパスパ本当のことがいえるのでとても有効」と話します。
強調するのは、人工島建設、議員の海外視察などオール与党°c員のムダ遣いの問題です。みんな生活が大変なだけに年配の人でも「人工島は余計。だから、まつざきさんのようなちゃんとした人が県議会に必要」と対話になるといいます。
「心配なのは話せば共感が広がるのに想像以上に、まつざきさんの名前が知られてない。だから必死なんです」と重山さん。
「真琴さんを男性だと思っている人がいる。まだ決めてない人が多いので、たくさんの人に名前と政策を最後まで知らせないと大変」と力を込めました。
一日の電話作戦では「いまの県議会、自民党ばかりではダメよ。共産党に入れなさいといっています。だから共産党も頑張って」と女性から激励があったと語りました。
(2007年04月03日,
日本共産党の志位和夫委員長が二日、東京・JR新宿駅西口でおこなった演説(要旨)は次のとおりです。
マスメディアも認めた吉田さんの魅力と実力
吉田万三候補への支持が日増しに広がっています。「読売」(三月二十五日付)は「ソフトな表情から舌ぽう鋭く都政の問題点を指摘し、一歩も引かなかった」と伝えました。「毎日」(三月二十九日付夕刊)は、吉田さん作の川柳「税金は 庶民のくらしに ドラえもん」(笑い)を、「最も論点が明快」「有権者の気分の代弁」と講評しました。メディアも魅力と実力を認める吉田さんへの支持を、残る六日間広げに広げ、知事に押し上げようではありませんか。(拍手)
「大義の旗」が選挙戦を大きく動かしている
選挙戦の特徴は、吉田候補と「革新都政をつくる会」が掲げた「大義の旗」が選挙を大きく動かし、リードしていることにあります。
石原慎太郎候補はビラで「少しは反省してよね! だけどやっぱり石原さん」などと言い訳です。傲岸不遜(ごうがんふそん)の言いたい放題だった石原知事を、ここまで追いつめたのは、吉田さんと都民のみなさん、共産党の追及の力です。(拍手)
福祉と暮らし――吉田さんの「プラン」に各候補も「福祉」言い出す
政策論戦での吉田さんのリードも鮮やかです。
第一に、福祉と暮らしの問題です。吉田さんの「福祉・子育て・くらし充実 緊急4か年プラン」が選挙を大きく動かし、他の候補もにわかに「福祉」をいいだしました。
石原知事は選挙ビラで「所得格差の是正をはかりつつ、中学3年生までの医療費負担をゼロにします」と宣伝しています。石原知事といえば、格差も、それを是正する必要も認めてこなかった人物。フリーターを「ごくつぶし」といい、「何がぜいたくかといえば、まず福祉」と福祉切り捨てを自慢してきたではありませんか。その人が、こうした公約をいわざるをえなくなった――吉田さんの主張が、知事になる前から都政を動かしています。(「そうだ」の声、拍手)
一方で石原知事は、「(福祉予算は)最大の規模だ」などと言い訳を始めました。
しかし、福祉については、予算を組んでも使い残しが多いのが石原都政の特徴です。決算の数字で見れば、福祉保健費(二〇〇五年度)は、知事就任時より四百五十億円も減ったのは動かせない事実です。寝たきりのお年寄りへの福祉手当は廃止、老人医療費助成も廃止、シルバーパスは全面有料化と福祉を削りに削ってきた事実は、百万言の言い訳をもってしてもごまかせません。「にわか福祉」の石原候補に都民の暮らしは託せません。
宮城県で石原知事と同じ福祉切り捨てをやりながら、「本籍地は福祉」という浅野史郎候補にもまかせられません。足立区長の当時、乳幼児医療費無料化を小学校就学前まで拡充して評判をよんだ実績をもつ吉田候補で、都政に「福祉の心」をとりもどそうではありませんか。(拍手)
巨大開発への暴走を止められるのは吉田さんだけ
第二に、税金のムダ遣いの問題です。石原候補は、選挙戦の最大の目玉に「オリンピック」を据える作戦でした。それが選挙になると、巨大開発や築地市場の移転が大問題になり、「最優先課題といったことはない」とだいぶ弱気になっています。
浅野候補は、当初は「立ち止まって考えます」と主張していましたが、「オリンピックは中止します」と公約を変えました。ここでも吉田候補の「オリンピックを口実にした巨大開発のムダ遣いはやめよ」という主張が選挙を動かしているではありませんか。(「そうだ」の声、拍手)
もちろん石原知事は、オリンピックをあきらめたわけではありません。すでに三つの環状線整備や一千億円のため込みを今年度予算に盛り込み、オリンピックを口実にした総額八兆五千億円もの巨大開発の道にのりだしています。この無謀な道を止めるかどうかが一番の問題です。
浅野候補は、宮城県知事時代に大型開発のムダ遣いで借金を倍にした実績≠もつ人。「借金ではなく住宅ローンと同じだ」(笑い)と居直っています。「船のこない港」のための借金を、「住宅ローンと同じだ」といってのける反省のない人に、ムダ遣いは止められません。(拍手)
吉田さんは足立区長時代、ホテル建設というムダ遣いをストップさせた実績をもちます。吉田さんで、巨大開発への暴走をとめ、「暮らし第一」の都政への転換をかちとろうではありませんか。(拍手)
九条守れの声を東京から世界へ発信しよう
第三に、憲法と平和の問題ではどうか。
吉田さんが「憲法を都政の基本にすえる」といいつづけていることの重みがいっそう切実になっています。
安倍首相は、選挙と同時並行の国会で、憲法九条を変えるための改憲手続き法案を、何が何でも強行せよと号令をかけています。
そして、事態をより深刻にしているのは、首相が「従軍慰安婦」問題について、「慰安婦の強制連行を裏付ける証拠はなかった」と発言し、下村官房副長官にいたっては、「従軍慰安婦というものはいなかった」とまでのべたことです。
米ワシントン・ポスト紙は社説で、「安倍首相のごまかし――北朝鮮による日本人拉致犠牲者には熱心だが、日本自身の戦争犯罪には目をつむる」と書きました。首相は、拉致問題の解決のうえでも、歴史をゆがめる発言はやめるべきです。国会の場で「謝罪」を表明した以上、誤った発言を撤回し、下村副長官は罷免すべきです。(「そうだ」の声、拍手)
戦争に反省のない勢力が、憲法を変えて軍事で海外に打って出る。こんなに恐ろしいことはないではありませんか。候補者のなかで憲法九条を守ると堂々と主張しているのは吉田さんだけです。憲法九条を守れの声を、吉田さんに集中し、首都・東京から世界に向けて平和のメッセージを発信しようではありませんか。(大きな拍手)
石原氏と浅野氏に「対決」の中身なし
マスメディアなどは「石原・浅野対決」などといいますが、どの問題でも対決の中身はありません。石原知事を応援する自民党も、浅野候補を応援する民主党も、都議会では公明党とともに「オール与党」仲間だからです。
そのせいか、はじめは応援の仕方もこそこそしていましたが、ここにきて、石原氏も浅野氏も、公然と自民党、民主党に応援を求めました。しかし、それが新しい大変な矛盾を引き起こしています。
浅野候補は「『日の丸・君が代』については強制的な対応をあらためます」とのべています。しかし、「日の丸・君が代」を子どもたちと教師に強制し、従わない教師を処分せよと要求してきたのは都議会の自民党とともに民主党ではありませんか。(「そうだ」の声、拍手)
浅野候補は「オリンピックは中止します」といいますが、「英知をあつめて成功を」と賛成討論までして推進しているのが、自民党・公明党とともに民主党ではないですか。
さらに、浅野候補は、「情報公開をおこないます」といっていますが、共産党都議団が繰り返し政務調査費の領収書の公開を提案しても、ことごとく否決・先送りし、全国情報公開度ランキングで、政調費では、東京を全都道府県で唯一、「零点」という最低の評価にしてしまったのも、自民党・公明党とともに民主党ではないですか。(拍手)
浅野候補のこれらの公約が本気のものであるなら、民主党に支援をお願いするのではなく、支援をお断りするのが筋ではないでしょうか。(「その通り」の声、大きな拍手)
選挙の対決の真の構図は、二つに分かれた「オール与党」陣営と、都議会で唯一の野党を貫く日本共産党と無党派の方々が共同して推薦する吉田さんとの一騎打ちの対決です。福祉と暮らし、ムダ遣い一掃、憲法と平和の願いを一つに合流させ、吉田万三さんを知事に押し上げようではありませんか。(大きな拍手、歓声)
( 2007年04月03日,
「集団自決」に日本軍の強制はなかったとして批判を浴びている文部科学省の教科書検定。侵略戦争への無反省はほかにも表れています▼「南京大虐殺、強制連行、従軍慰安婦」などの戦後補償問題が「解決すべき課題となっている」と書いた教科書があります。これに対する検定意見は「理解しがたい表現だ」というものでした。「解決すべき課題」の言葉は削られてしまいました▼戦争にかんする記述が変えられたのは過去の問題だけではありません。「自衛隊のイラク派兵」という言葉は「イラク派遣」に変えられました。「米英両軍がイラクに侵攻」は「イラクを攻撃」とされました▼ある世界史の教科書ではこんな例もあります。もとの記述は「日本の空と海、川は70年代と比べるときれいになった…企業が工場を東南アジアや中国へ移転したことも理由の一つと考えられている」というものでした▼文科省は、日本企業がアジアに公害を輸出したと受け取れる書き方が気に入らなかったようです。検定では「…世界では公害防止の試みが追いつかない状況がある」と、世界一般の問題に書きかえられました。現実に日本企業が国外で環境を破壊して問題になったことがあるにもかかわらずです▼しきりに「道徳」や「規範意識」を強調する安倍首相と文科省。それでいながら教科書では過去の問題でも、現在の問題でも、日本の責任をあいまいにしようとしています。その姿勢こそ、子どもたちには「理解しがたい」のではないでしょうか。
( 2007年04月03日,
合併した周辺七町を含め選挙区が広がった長崎県議選・長崎市区(定数十四)には現職八、新人八の十六人が立候補しました。市内中心部の繁華街では、三十分間に三候補が鉢合わせするなど序盤から激しい選挙戦となっています。
日本共産党の堀江ひとみ(48)=新・前長崎市議=候補は約二百人の聴衆を前にした第一声以来、訴えています。「県民には二十億円の増税、高すぎる国保税。一方で四億円もの裏金、干拓農地リース化に五十三億円ものムダ遣い。『あんまりひどかバイ』との怒りの声にしっかりこたえうるのは日本共産党だけです」と。
二日目の日三月三十一は赤嶺政賢衆院議員が応援に駆けつけ、買い物客でにぎわう商店街や市場を一緒に駆け巡りました。
赤嶺議員は、従軍慰安婦問題や「沖縄戦」での「集団自決」の記述をめぐる教科書検定問題にもふれ、「『憲法九条を守れ』の声を被爆地長崎から広げるためにも、県民の暮らしを守るためにも、『オール与党』勢力の悪政に正面から立ち向かうことのできる堀江候補に大きな支持を」と呼びかけました。
訴えを聞いていた市場の商店主(65)は、「今の政治は、税金を裏金や事務所費に使うなど庶民の百円、千円の大事さが分かっていない。腹立たしくてたまらない」と語り、清潔な日本共産党への期待を寄せました。
(2007年04月02日,
「九条を守れという熱い思いを日本共産党の候補者にお寄せください」――。日本共産党の春名なおあき参院比例候補は一日、福岡県議選が行われている北九州市小倉北区に入り日本共産党候補への支持を訴えました。
安倍晋三首相は就任後、任期中の改憲を明言。今国会ではいっせい地方選挙の前半戦後、有権者の二割の賛成でも改憲ができる「改憲手続き法案」強行のシナリオを描いています。
春名氏は、韓国、東南アジアなどの女性を軍が強制的に連行して慰安所に閉じ込め辱めた慰安婦問題で、安倍首相が「軍の関与はなかった」としている発言を批判。「九条は外交の努力で問題は解決しますと世界に宣言している日本の宝。歴史の事実を消そうとし、侵略戦争に無反省な勢力が憲法九条を変えたらどうなるのか」と訴え、平和を求める県民の結集を訴えました。
また、消費税を導入して十八年たったことに触れ「十八年で百八十八兆円が国に吸い上げられた。社会保障を充実すると導入したが、介護保険や医療費など負担だけが増え、その間に法人税は百六十四兆円も安くなっている。大企業の税金を安くする穴埋めに使われた」と指摘しました。
(2007年04月02日,
太平洋戦争末期の沖縄戦の悲惨さを物語る住民の「集団自決」で、日本軍の強制と誘導を明記した記述が高校の歴史教科書から消えました。文部科学省の検定意見によるもので、「軍隊は住民を守らない」という沖縄戦の教訓を心に刻んできた戦争体験者らは「従軍慰安婦問題などと同様に、日本軍の蛮行を否定したい自民党政府の政治的意図のあらわれだ」と怒りの声をあげています。
「戦前、小学校の教員として何人もの子どもたちを戦場に送ったことを今でも悔やんでいる」と語るのは外間トヨさん(89)。「戦前の軍国主義教育がなければ、住民が『集団自決』に追いつめられることはなかった。沖縄から真実の声をあげるためにいっそう力を尽くさないといけない」と話します。
今回の検定意見について文科省は、元軍人が起こした訴訟で命令はしていないという陳述があったことなどを理由にしています。しかし、沖縄から平和教育をすすめる会の山口剛史事務局長(琉球大学講師)は「事実認定もこれからの裁判で、証言にも立っていない元軍人の意見だけを採用しているのは不当で、意図的だ」と指摘します。
今回の検定を、地元新聞各紙も一斉に批判。「沖縄タイムス」(三十一日付)は編集委員の論評で「慶良間諸島の『集団自決』では約八百人が亡くなった。死者の沈黙、家族を手にかけたゆえの沈黙、犠牲となった人数の数倍も数十倍も沈黙がある。その沈黙を利用して『集団自決』の真実をねじ曲げようとする動きを許すことはできない」と書いています。
「琉球新報」も同日付の社説で「沖縄戦の実相を歪(ゆが)める検定になっていないか懸念する。歴史の受け止め方は人それぞれだろうが、国が歴史についての考え方を押し付けていいのだろうか」と疑問を呈しています。
沖縄戦当時、米軍に追いつめられて手りゅう弾で「自決」する直前まで追い込まれたという、元ひめゆり部隊の宮城喜久子さん(78)はいいます。
「教科書から日本軍の関与をなくすことは、この国のおかした罪を消すことになり、真実を見えなくした戦前の教育に後戻りさせることにつながります。今の若者たちには、真実を見つめる力をつけてほしい」
(浅野 耕世)
( 2007年04月02日,
■全労連
全労連は三月二十九日、「従軍慰安婦」問題での安倍首相らの発言について、「歴史の事実に背を向け、ゆがめる言動に厳しく抗議する」として、発言の撤回と謝罪を求める小田川義和事務局長の談話を発表しました。
「従軍慰安婦」は日本政府が認めた事実であり、自国人の人権侵害には声をあげるが、自国の行為による外国人の人権被害には無感覚だという「人権の二重基準」は国際社会には通用しないと批判しています。
■日本平和委員会
日本平和委員会は三月二十八日、安倍晋三首相に対し、同氏が「従軍慰安婦」問題で「証拠はない」と繰り返しのべていることについて、発言の撤回と「河野談話」に立った謝罪、被害者への補償を行うとともに、「従軍慰安婦はいなかった」などと暴言をはいている下村官房副長官の即刻罷免を求める要請書を送りました。
( 2007年04月02日,
【ワシントン=鎌塚由美】日本の過去の植民地支配・侵略戦争と今日のアジア諸国との関係について考えるシンポジウムが三月三十日、ワシントンで開催されました。米議会が設立したワシントンの米国平和研究所(USIP)が主催。日本の戦争責任や「従軍慰安婦」問題に取り組んできた日本の研究者や市民運動家らが招かれ、米国の研究者ら約五十人が参加しました。
弁護士の尾山宏氏は、家永教科書訴訟や中国人戦争被害者訴訟を紹介し、一連の裁判で「日本の加害の事実が詳細に認定されている」と指摘しました。
茨城大学、駿河台大学の名誉教授の荒井信一氏は、敗戦時に陸軍兵士だった自身の体験として、「すべての資料を焼くように」と命令されたことなど当時の軍による証拠隠滅を紹介。それによる「決定的資料」の欠如が歴史事実を否定する「憶測や無責任な言論」の「横行」を招いていると指摘しました。
都留文科大学教授の笠原十九司氏は、日中の学生を対象にした調査をもとに両国間の歴史認識のギャップを紹介。日本の政治状況に触れ、南京大虐殺事件などで教科書記載を政治家が妨害してきたことを指摘、彼らの一連の「教科書攻撃」にも言及しました。
司会のヘルシングUSIP教育副部長は、日本からの報告を「メディアでは分からない日本の動きだ」と評価しました。
「女たちの戦争と平和資料館」(WAM)館長の西野瑠美子氏は、二〇〇〇年に日本軍性奴隷制度を裁いた民衆法廷「女性国際戦犯法廷」の果たした役割に触れ、加害国の責任を明確にしていくWAMの取り組みを説明しました。
高知市の平和資料館「草の家」の事務局長を務めた金英丸さんは、戦時中に北海道で犠牲になった朝鮮人強制連行被害者の遺骨を、日韓市民グループが共同で調査したことを報告しました。
ジョージ・ワシントン大学のマイク・モチヅキ教授はまとめとして、日本と東アジア諸国が歴史問題を解決していく過程での米国の判事や仲介者≠ニしての関与は「米国の手もきれいではなく、確信が持てない」と発言。「地域の社会レベルで議論できる制度的基盤をつくることの支援」を提案しました。
日本側参加者は、南京大虐殺事件から七十周年に当たる今年、アジア・欧州各地で戦争責任を問うシンポジウム開催を予定。今回をその一回目と位置づけています。
( 2007年04月02日,
日本共産党の穀田恵二国対委員長は一日、自公と共産の候補が一騎打ちとなった知事選挙、大激戦の県議選をたたかっている大分県に入り、みえの昇・県知事候補とともに日本共産党への支持を訴えました。
別府駅前では、かとう純子県議候補と、いっせい地方選後半戦をたたかう三人の別府市議候補が、集まった約百人の聴衆を前にそろい踏み。大分市では、約二百人が小雨の中、つつみ栄三県議候補と穀田氏らの訴えに耳を傾けました。
「日本の将来がかかった大切な選挙。『暮らしと平和を守れ』の一票を日本共産党へ託してください」と強調した穀田氏。暮らしの問題では、公明党が提案し、自民党と共同ですすめた住民税の値上げを告発。民主党も自公と一緒に労働法制や国民健康保険法の改悪に賛成してきたことをあげ、「増税派に怒りの審判を下し、増税ノーの思いを共産党へ」と訴えました。
さらに穀田氏は、改憲手続き法案の危険性、「従軍慰安婦」問題をはじめ過去の侵略戦争の事実すら否定する安倍内閣を批判し、「戦前から一貫して侵略戦争反対を貫いた日本共産党の前進で、憲法改悪の策動を打ち破ろう」と呼びかけました。
穀田氏の訴えを聞いた別府市内に住む女性(58)は、「平和憲法の行方がかかった重要な選挙だということがよくわかった。『憲法九条守れ』の声を示すために、さらに共産党への支持を広げたい」と話していました。
( 2007年04月02日,
【済州島=時事】三十一日に行われた日韓外相会談の要旨は次の通り。
【歴史認識問題】
宋旻淳外交通商相 歴史認識問題により前に向かって進んでいくことが難しくなっている。この時代を生きているわたしたちが解決していくべき問題だ。指導力を発揮してもらいたい。日本国内で慰安婦問題をめぐり、誤った言動が見られる。歴史を直視すべきだ。
麻生太郎外相 安倍晋三首相は河野洋平官房長官談話を継承し、おわびしている。日本政府の立場には何ら変更はない。
宋氏 三十日に、韓国外交通商省スポークスマンが教科書検定について遺憾の意を表明した。
麻生氏 検定制度は、政府がこうしろ、ああしろと言う国定教科書とは違う。竹島(韓国名・独島)について、わが国にはわが国の立場がある。大局的な観点から冷静に対応する必要がある。
宋氏 最近、靖国神社への戦犯合祀(ごうし)で日本政府の関与についての資料が公表された。根本的解決のための対応を期待する。
麻生氏 一義的には宗教法人靖国神社が決めた。政府が関与できない。
両氏 第二次歴史共同研究の双方の座長が四月に会談することで一致。
【北朝鮮問題】
麻生氏 拉致問題で韓国の支援を願う。
宋氏 日朝作業部会は六カ国協議全体が進展する中で動くだろう。韓国政府は南北閣僚級会談などで、拉致問題などの懸案解決に真摯(しんし)に対応するよう働き掛けている。
両氏 核放棄に向けた初期段階措置の着実な実施の重要性で一致。
【経済連携協定】
麻生氏 交渉前進が必要だ。
宋氏 ソウルで米韓自由貿易協定(FTA)の詰めの交渉を行っている。日韓間でもハイレベルの協定に向けた作業を行いたい。個人的に努力していきたい。
( 2007年04月02日,
日本共産党の小池晃政策委員長は、一日放映のNHK「日曜討論」で、安倍内閣が今国会の重要法案と位置付ける教育関連三法案について、「そもそも昨年十二月に強行された改悪教育基本法は憲法違反であり、その具体化である三法案は、憲法にも教育の条理にも反する」と主張しました。
義務教育の目標に「国と郷土を愛する態度」を盛り込んだ学校教育法改定案について、小池氏は、「国語や算数よりも、『国を愛する態度』が優先的な中心課題として、押し上げられた。子どもの思想・良心の自由を侵害することになる」と指摘。安倍首相のいう「愛国心」とは、政権中枢に「従軍慰安婦はなかった」という人たちが座るなど「日本の過去の歴史のマイナス面を子どもに教えない、極めて偏狭なものだ」と批判しました。
自民党の中川昭一政調会長は、「教育基本法に明示されたものを、学校教育法で具体化し、学習指導要領に明記するだけだ」と、「愛国心」を盛り込む議論は決着ずみ≠ナあるかのように発言。小池氏は「改悪基本法の審議でも大問題になり、『愛国心通知表』は撤回されたではないか」と批判しました。
また、中川氏は、学校教育法改定案で、義務教育の目標に「愛国心」を盛り込んだ狙いについて、「学習指導要領で国旗・国歌を教えなければいけないのに、一部の先生たちがルールを守らない。これはなんとしても排除しなくてはいけない」と表明。小池氏は、「結局、強制を強めるということだ。『愛国心』を義務教育の目標にして、学習指導要領にすえる。そして、先生が学習指導要領を守らないと攻撃する。これは、『内心の自由』に踏み込むものだ」と批判しました。
小池氏は、十年ごとに教員免許を更新する免許改定法案について、「先生が子どもたちの方を向くのでなく、上ばかり見るようにゆがめる危険性がある」と批判。「大切なことは、教育予算を増やして、本当の意味でゆとりある、子どもに向き合える教育にすることだ」とのべました。
教育関連三法案
@教員免許を十年ごとの研修で更新させる教員免許法改定案A「国と郷土を愛する態度」などを義務教育目標に明記した学校教育法改定案B教育委員会に文部科学相の指示権を新設する地方教育行政法改定案です。
( 2007年04月02日,
文部科学省が、来春から使用する高校(主に二年生以上)教科書の検定結果を公表しました。
日本史では、太平洋戦争末期の沖縄戦のさいの住民の「自決」にかんする記述に検定意見がつき、「日本軍の強制」を削除する修正が行われました。見過ごすことのできない歴史の書き換えの強要です。
特定の立場で押し付け
日本の侵略戦争の末期に、沖縄は米軍の上陸により直接の戦場となり、県民が重大な犠牲を受けました。日本の軍当局が、沖縄を無残な「決戦」に引きずり込んだからです。県民の三分の一に近い十数万人が命を奪われ、九万人の軍人が犠牲となりました。迫りくる米軍との戦闘のさなかに、日本軍によって「自決」を迫られたり、「スパイ容疑」などで虐殺されたりした県民が少なくなかったことは歴史の事実であり、なんら修正を求められることではありません。
教科書検定が争われた過去の訴訟でも日本軍による「自決」強制が次のように認定されています。
「沖縄戦における日本軍による住民の犠牲者の中には、日本軍によって直接殺害された者のほか、日本軍によって自決を強要された者、日本軍によって壕を追い出され、あるいは食糧を強奪されたため死亡するに至った者があるとするのが、概ね学界における一般的理解であるということができる」(一九八九年十月三日、東京地裁判決)。これは二審の東京高裁判決(九三年十月二十日)でも認定されました。
文部科学省は、元軍人が起こした訴訟(二〇〇五年)で命令はしていない≠ニいう陳述があったことや、軍の命令があったとする資料と否定する資料の双方があることをあげて、「断定的な表現に意見をつけた」といっています。
文部科学省が当事者でもない訴訟を、しかも判決も出ていないのに一方の主張のみを持ち出して、検定意見の理由にするなど、きわめて異常です。先の判決でも軍命令の有無にまでは結論を避けたものの、軍による強制は明確にしました。沖縄戦に関する学界状況が変わったわけでもありません。転換したのは文部科学省です。
住民の「自決」について、「日本軍の強制」という記述を削除することは、住民が自ら進んで死んだものとして侵略戦争を美化することにつながります。沖縄戦は、日本がアジア諸国への植民地支配と侵略を行った過去の戦争の末期に起こった悲劇でした。日本が起こした侵略戦争を正義の戦争として描く「つくる会」教科書は、沖縄の悲劇まで英雄∴オいしました。住民の「自決」について、「日本軍の強制」という記述をいっさい認めないとする文部科学省の検定の態度が、あの戦争は正しかったとする流れにくみするものであるなら重大です。
政府は反省の立場を
教育基本法改悪後の初めての教科書検定で、文部科学省が軍命令否定の特定の立場にたって、教科書を修正させたことに、強い危険性を感じないわけにはいきません。
子どもたちに戦争の真実を伝えていくうえで、教科書の果たす役割ははかりしれません。「従軍慰安婦」問題で反省と謝罪をのべた河野談話は、過ちを繰り返さないために「歴史教育」を通して「永く記憶にとどめ」る大切さを強調しています。政府は検定を、特定の立場からの修正の場にするのではなく、河野談話にみられる過去の戦争への政府の反省の立場を教科書に反映させるよう努力しなければなりません。
( 2007年04月02日,
無駄づかいストップ/開発、大企業への補助金…
志位さんは第2に、「税金の無駄づかいストップの願いを日本共産党へ」と訴えました。巨大開発で企業を呼び込めば、財政もうるおうというやり方は、北海道の苫小牧東部開発のように、各地でゆきづまっています。
兵庫県の呼び込み型開発の典型が神戸空港です。開港1年たちますが、搭乗率は60%を割り、空港島建設の借金2千億円の返済もめどがたちません。このうえさらに7千億円をかけて神戸空港と関西空港をトンネルで結ぶ計画まであります。
この失敗にもこりずに「こんどは大企業を札束で誘致するやり方が大手をふって始まった」と告発した志位さん。
▽千葉県茂原市の日立系企業に90億円
▽神奈川県の日産自動車に185億円
▽三重県亀山市のシャープに135億円
▽兵庫県尼崎市の松下プラズマに175億円
いずれも大企業の1社に巨額の補助金を自治体がばらまいています。
志位さんが、兵庫県下の演説で、尼崎の松下工場に175億円投じるのに、雇用された正社員はたった6人、あとは派遣社員で、しかもその後、請負に切り替えられ、典型的な「偽装請負」だったと告発すると、聴衆からは驚きの声があがりました。
しかも兵庫県の中小企業予算が、年79億円。「空前の大もうけをあげている大企業にばらまくお金があるなら、福祉や暮らし、教育、中小企業に使えという声を日本共産党に」と訴えました。
税金の使い方をただす問題では、不正・腐敗の一掃も課題です。
日本共産党は、北海道警をはじめ警察の捜査費不正使用疑惑を各地で追及しました。たとえば高知県では、共産党県議団の質問をきっかけに議会と知事が監査を請求。特別監査が始まり、監査対象の3分の1を超える捜査費が「違法」「不適切」と認定され、昨年末までに1400万円が県と国に返還されました。
同和問題でも、民主市政が復活した東大阪市では、新年度予算案で1億9千万円削減し、新しい方向に政治が切り替わろうとしています。
利権の復活を許さず、不正・腐敗の一掃でも日本共産党が伸びることが大事―。志位さんは訴えました。
憲法と平和守りたい/安倍首相の改憲への暴走ストップ
志位さんは第3に「憲法を守り、平和を守る願いをこぞって日本共産党へ」と呼びかけました。憲法改悪をめぐって安倍首相が暴走を始め、今国会で改憲手続き法案成立の大号令を出し、国会でいま緊迫した情勢にあると報告。「この地方選で、9条を変えるための地ならしの法案を通させてはならないという声をあげよう」と訴えました。
同時に重大なことは、安倍首相が、侵略戦争を正当化する「靖国派」の本性をむきだしにしつつあることだとのべ、「従軍慰安婦」問題で「強制連行の証拠はなかった」とした首相発言をとりあげました。
志位さんは、そもそも「従軍慰安婦」とは植民地や占領地から多数の女性を戦場に動員し、慰安所にとじこめて性行為を強要したというおぞましい実態があり、多数は朝鮮半島から動員した少女だったと告発。「こうした非人間的な犯罪行為の全体が国家と軍の大掛かりな強制なしに不可能であることは誰が見ても明らかだ」とのべました。
そして、安倍首相の発言は、強制を認めた日本政府の公式の見解(河野談話)を否定し、元慰安婦たちを二重に辱めるものだときびしく指摘しました。
米、仏、英をはじめ世界の有力紙がきびしく批判し、なかでもワシントン・ポストの社説が、安倍首相が拉致問題に熱心なのと対照的に、日本自身の戦争犯罪に目をつぶっていると、首相の「二枚舌」を告発したことを紹介しました。
発言の撤回を強く求めるとともに、「戦争への反省のない勢力が、海外で戦争をする国になる。ここに恐ろしさがある」と指摘。自民、公明、民主が改憲で一致するなか、「憲法を守れ」の声を、反戦平和を85年にわたってつらぬいた日本共産党に寄せてほしいと呼びかけました。
政党対決の構図は明らか/「オール与党」VS共産党
いっせい地方選での政党の対決構図はどうでしょうか。志位さんは「地方政治では、自民党、公明党だけが与党ではありません。国政では形式上『野党』の民主党も含めて、共産党以外の『オール与党』政治です」とのべました。
たとえば愛知県です。前回の選挙で日本共産党が議席を失うと、県議会は文字通り、自民、民主、公明だけの「オール与党」議会になり、請願件数が激減。県民の声が議会に届かなくなりました。
議会のチェック機能も失われました。この4年間、知事提案の議案816件のうち814件が全会一致で成立。民主党が反対したのは監査委員の選任案件だけでした。
しかも、2月におこなわれた県知事選で民主党は結党いらい初めて対立候補をたて、にわか県政批判をおこないましたが、敗北しました。
ところが「対決」直後の2月議会で、知事提案の新年度予算案をはじめ88の議案すべてに賛成したことが、県民を驚かせました。
地元紙は、「難癖をつけても結局は『マル』。これで今後はノーといえなくなる」との民主党県議の話を伝え、「『建設的野党』筋通せず」(「中日」)と書きました。
これを紹介した志位さんは「ここに県民を欺く政党の深い退廃がある」と指摘。「日本共産党が堂々と推薦候補をたててたたかったことは、大義あるたたかいだった」とのべました。
民主党は、福岡県でも「対立」候補をたてていますが、直前の議会で現知事の予算に賛成しました。
こうした各地の政党状況を解明した志位さんは、「今度の選挙は、自民、民主、公明の『オール与党』か、日本共産党かに対立軸がある」と強調。唯一の政党らしい政党≠ニして「オール与党」と正面から対決し、「住民が主人公」の自治体、「福祉の心」をもつ自治体を、日本共産党の前進でとりもどそうと訴えました。
(2007年04月01日,
自民・公明の与党は、改憲手続き法案(国民投票法案)の「修正案」を国会に提出(3月27日)し、いっせい地方選挙投票日(4月8日)以降に採決・衆院通過を狙っています。
田中倫夫記者
「国の根本的あり方を決める憲法が、有権者の2割足らずの賛成で決められる。こんなおかしな話はないじゃないか」
3月26日の参院予算委員会、日本共産党の仁比聡平議員の声が響きました。
示したグラフ(左)に他党委員の目が注がれました。今回の改憲手続き法案では、国民投票の「最低投票率」の基準がまったくありません。同法案では、憲法改定は「有効投票の過半数」で成立します。過去8回の国政選挙を平均した有効投票の半分は27・1%です。つまり「4人に1人」の賛成でも成立してしまいます。8回のうち最低の投票率のとき(95年の参院選)だと「有効投票の過半数」は19・5%。なんと5人に1人の賛成でも「改憲」が成立することに!
この点を突かれた安倍首相は「これは政府の提出している法律ではなく議員立法だ」などと、まともに答えようとしません。
政治活動を規制
問題点はこれだけではありません。同法案では、国民投票の有料CMを、「投票日前14日間」を除いて自由化しています。改憲派が財界団体も使って、まさに「憲法をカネで買う」事態にもなりかねません。
自民・公明の「修正案」では、昨年末に民主党との協議で公務員法上の政治活動規制の適用を「除外」することで合意したものをご破算に。国民投票運動に関する公務員の行動を政治活動としてきびしく規制する方向が強まりました。
こんな問題法案を、自民、公明の与党は安倍首相の号令でごり押し。「5月3日までに成立を」との当初のもくろみは、世論の批判をあびてトーンダウンしましたが、なお「今国会で絶対に成立させる」(自民党特別委員)という構えです。「選挙に響く」という公明党の党略で、衆院特別委員会での採決は、いっせい地方選挙前半戦投票日の4月8日以降になるとされています。
選挙の重大争点
安倍内閣とその与党と国民世論との矛盾はますます深まっています。中央公聴会(3月22日)では、与党推薦人を含め、6人中5人の公述人が法案について「慎重審議を」「拙速は避けよ」と主張しました。
東京慈恵医科大学の小沢隆一教授(憲法学)は、最低投票率も定められず、公務員・教員の運動規制が盛り込まれている同法案は「廃案にすることを含む抜本的かつ慎重な検討を求める」とのべました。
「増補型改憲」を提唱する法政大学法学部の江橋崇教授は「急ぐべきだけれど余り拙速になってもいけない」と発言。「国民投票法の制定には大賛成」という政策研究大学院大学の本田雅俊助教授も「与党案を与党だけで成立させることは思いとどまって」とのべました。
道府県議選(3月30日告示)でも、憲法問題は一大争点として浮上。安倍内閣の下村博文官房副長官が、民放ラジオ番組で「『従軍慰安婦』はいなかった」「日本軍が関与していたわけではない」と明言したことも大問題となっています。
3月26日、山梨市内で記者会見した日本共産党の志位和夫委員長はいいました。「一方では改憲手続き法案、一方では『従軍慰安婦』問題での歴史のわい曲ということが、選挙のさなかに重大問題となった。戦争にまともな反省のない勢力が憲法9条をかえて、『海外で戦争をする国』づくりにのりだす――ここにアジア諸国の不安と批判が広がっている」
(2007年04月01日,
みどり イギリスで、奴隷貿易を禁止した法律の二百周年記念イベントが行われてるね。
晴男 エリザベス女王が参列した式典がロンドンの寺院で開かれたと、テレビで報じていたね。
みどり 国教の英国教会は、過去の奴隷貿易に自分たちが関与していたことを認め、正式に謝罪したそうね。政府も正式に謝罪すべきだという声が強まっているそうよ。
晴男 「過去の過ちを謝罪するのは自虐的だ」という議論や、それへの反論も出てるようだね。
米でも反省決議
みどり 面白いのは、アメリカでも今、奴隷制を反省する動きが起こっていることよ。
晴男 南部の奴隷制維持の拠点だったバージニア州の議会が、奴隷制度に「深い遺憾」を表すという決議を上下両院で採択したっていうんだろ。
みどり 連邦議会でも同じような決議案が出されたそうね。
晴男 なるほど、そのように奴隷制を反省する動きが起こっていることを知れば、今なぜアメリカの議会で日本の「従軍慰安婦」のことが大きな問題になっている理由も、分かる気がするな。
性奴隷とズバリ
みどり 英字新聞を見ていてハッと気がついたのは、「従軍慰安婦」の訳語のことよ。最初は「コンフォト・ウイメン(慰安婦)」だったのに、最近は「セックス・スレーブ(性奴隷)」というそのものズバリの表現が使われているのよ。
晴男 そうか。欧米の人たちにすれば、自分たちが奴隷制を反省してるさなかに、日本では首相が先頭に立って「性奴隷」を弁護していると見えるってことだな。
みどり 安倍首相のように「強制はなかった」といって、いまだに奴隷制を弁護するのかっていう根本問題が問われることになると思うの。
晴男 「知日派」と呼ばれて、日本の保守政権の存続を願うアメリカ人からも、「強制」うんぬんの「論理はアメリカでは通用しない」と言われるはずだね。
みどり 奴隷制を弁護するようじゃ、「価値観を共有する同盟国」とは呼べないでしょ。
晴男 人権を軽視し、さまざまな口実で過去の戦争犯罪を正当化する「戦犯政治」継承勢力の矛盾が国際的に問われているってことだね。
( 2007年04月01日,
【済州島(韓国)=時事】麻生太郎外相は三十一日午後、訪問先の韓国南部・済州島のホテルで、同国の宋旻淳外交通商相と会談しました。宋外交通商相は従軍慰安婦問題について「日本国内で誤った言動が見られる。歴史を直視すべきだ」と述べ、「狭義の強制性はなかった」とした安倍晋三首相の発言などを批判しました。
これに対し麻生外相は、首相が同問題を謝罪した一九九三年の河野洋平官房長官談話を継承し、慰安婦への同情やおわびを示したことを強調。その上で「日本政府の立場に何ら変更はない」と述べました。
冒頭、宋氏は「歴史認識問題により前に向かって進んでいくことが難しくなっている」と指摘。「わたしたちが解決していくべき問題だ」と述べ、日本側に対処を求めました。
また、宋氏は靖国神社への戦犯合祀(ごうし)について「日本政府の関与についての(国立国会図書館の)資料が公表された。根本的解決のための対応を期待する」と述べました。A級戦犯の分祀(ぶんし)なども念頭に靖国問題の解決を迫ったとみられます。麻生氏は戦犯合祀に関し「一義的には宗教法人靖国神社が決めた。政府が関与できない」と理解を求めました。
( 2007年04月01日,「赤旗」)
四月一日。六十二年前、アメリカ軍が沖縄本島への上陸を始めた日です。沖縄戦は、住民をまきこむ醜い戦争でした▼その四日前、本島の西に浮かぶ渡嘉敷島でのできごと。当時十六歳の金城重明さんは、のちの著書で「生涯でもっとも長く、暗い日」と振り返っています。住民は、一カ所に集められていました▼「いよいよ軍から命令が出たとの情報が伝えられた。配られた手榴弾で家族同士が輪になって自決が行われた」。発火する手榴弾が少なく、生き残った人が愛する家族の命を絶つ、「阿鼻地獄」でした(『軍国主義的皇民化教育の末路としての「集団自決」』)▼渡嘉敷島だけではありません。沖縄の日本軍は、住民にあらかじめ手榴弾を渡し、米英軍は鬼や獣のよう、と脅していました。投降しようとする住民には銃を向けました。直接の軍命令があるかどうかにかかわらず、「日本軍に集団自決を強制された」のです▼しかし文科省は、教科書の一つがそう書くのを許しません。「集団自決に追い込まれた」と書き直させました。誰が追い込んだのか。住民自身が? 日本軍が? 米軍が? まるで、「日本軍が」と証言する沖縄の人々がうそをついているといわんばかりです▼日本軍の「従軍慰安婦」の連行に直接の強制はなかったと語る安倍首相が、アメリカの下院議員に批判されています。「安倍は元『慰安婦』がうそをついているといっている」。歴史を曲げ、侵略戦争と軍を美化する試みは、初めから道徳的に敗北しています。
( 2007年04月01日,「赤旗」)
いっせい地方選挙で憲法問題が大きな争点になっています。自民・公明両党が九条改憲と地続きの改憲手続き法案を、四月中旬にも衆院通過させようとしているからです。「地方選だが、憲法擁護と平和は政党を選ぶモノサシ」(日本共産党の志位和夫委員長)です。
「四月八日(いっせい地方選前半戦投票日)を過ぎれば、速やかに衆院を通過させる」。自民党は改憲手続き法案について、役員会でこう確認。安倍晋三首相は「絶対に今の国会で成立を」と号令をかけています。
三月二十七日には、公務員の国民投票運動を大きく制限する「修正」案を提出しました。公務員の活動規制は、右翼改憲団体・日本会議と連携する国会議員懇談会のメンバーが「このままでは改憲阻止法案になる」と主張したことから盛り込まれました。九条改憲で自民路線に乗る公明党もあっさり了承しました。
手続き法案の動きに、「日本自身の戦争犯罪には目をつぶっている」(ワシントン・ポスト紙三月二十四日付)と批判される「従軍慰安婦」問題での首相発言が重なっていることも重大です。
「従軍慰安婦はいなかった」と発言し国内外から非難をあびた下村博文官房副長官は日本会議国会議員懇談会の副幹事長。同懇談会のメンバーが中心になって、自民党と民主党の双方で議連をつくり、政府に河野官房長官談話の見直しを求めています。侵略戦争に無反省な勢力が憲法を変えて「海外で戦争をする国」をめざしているのです。
民主党は手続き法案で「与党案反対」を言い出しましたが、もともと同法案は自民と共同で作成してきたもの。党内に賛成派を多数抱えています。九条改憲も「憲法提言」で明確にしています。この民主党と参院選での選挙協力を探る社民党の態度も問われます。
日本共産党は、侵略戦争に命がけで反対を貫いた政党として、憲法九条を守り生かす日本外交をめざし、草の根で九条守れの共同を広げています。「今度の選挙で憲法守れ、改憲手続き法案ノーの旗を掲げている共産党の躍進は、改憲勢力に痛打を与えることになる」(市田忠義書記局長、三月三十日)と訴えています。
( 2007年04月01日,「赤旗」)
京都母親連絡会は二十七日、「従軍慰安婦」問題で安倍晋三首相や下村博文官房副長官が、歴史の事実を否定している問題で、「歴史をゆがめる安倍首相と下村官房副長官の発言に怒りをもって抗議します」とする談話を発表し、安倍首相に送付しました。
談話では、「従軍慰安婦の問題は歴史的に証明された事実です。過去の問題として切り捨てることは決してできないこと」と強調し、両氏を厳しく批判。全世界に謝罪し職責を退くべきだと強調しています。
(2007年03月31日,「赤旗」)
歴史ゆがめる教科書検定/「証拠ない」と侵略戦争美化ねらう
「日本軍によって集団自決に追いこまれた住民」が「自決した住民」に―。沖縄戦で日本軍が「集団自決」を強制したという高校教科書の記述が文部科学省の検定でいっせいに消されました。侵略戦争を美化する検定に怒りが広がっています。
政治家から圧力?
日本軍の強制や誘導があったことは多くの証言や研究で明らかにされてきました。書き直させられた教科書の記述はいずれもこれまでの検定では認められていました。
ある教科書の関係者は「『日本軍がやらせたという証拠はない。違うという説が出てきている』というのが文科省側の理由だった」といいます。別の教科書の編集者も「軍の命令はなかったというのが定説になりつつあるといわれた」と語っています。「軍の強制を証明する史料があるか」といわれ、「伝聞としてはあるが文献で証明するのは難しく、期間が限られていたので書き直さざるを得なかった」と話す編集者もいます。
「集団自決」強制については、侵略戦争を美化する「新しい歴史教科書をつくる会」の藤岡信勝副会長らが「軍命はなかった」と主張し、二〇〇五年から削除を求める運動を展開。同年八月には、自決命令を出したとされる元日本軍の守備隊長らが「命令しておらず、名誉を棄損された」として訴訟を起こしました。訴状によると元守備隊長側の弁護団には侵略戦争美化の言動をしている自民党国会議員や「つくる会」関係者が含まれています。
今回の検定はこうした動きと軌を一にするものです。先の教科書関係者は「新しい説が出たというが裁判以外に新しい動きはない。これでは誰かが訴訟を起こせばすべて新説が出たとして教科書が変えられてしまう。政治家からの圧力があったのではないか。歴史をゆがめるもので許せない」と語っています。
英語や専門科目でも政府主張に沿う表現に
今回の高校教科書の検定でも、文部科学省は自衛隊派兵やイラク戦争などの記述に対し、政府の主張に沿う表現に書き換えさせました。英語の教科書では、男女の性差別や国籍の違いによる差別にふれた例文を変更させるなど、多様な見方や考え方を示し、子どもたちに考えさせる教科書本来の役割を大きく後退させる検定となっています。
自衛隊やイラク戦争についての記述では、自衛隊の派兵先として「戦時中のイラク」が、「主要な戦闘終了後も武力衝突が続くイラク」と改められました。派兵の目的が「復興支援活動」であることを書かせる検定意見も付き、政府の見解に沿うものに書き換えさせられました。
東京裁判にかんする記述では、「冷戦の進行とともに、岸信介ら残りのA級戦犯は、裁判にかけられずに釈放された」という一文がすべて削除されました。
英語の教科書では、「男性は外で働き、女性は主婦であるべきという伝統的な考えが依然として残っている」などと男女平等社会をテーマにした例文に対し、「一面的な見解を十分な配慮なく取り上げている」という意見が付き、別の例文に変更させられました。
専門科目の「発達と保育」の教科書では、幼稚園と保育所の記述に対し、政府が進める「認定こども園」について書かせるなど、政府の施策を推し進める形で修正が行われています。
「集団虐殺」こそ実態/沖縄国際大学名誉教授・安仁屋政昭さんの話
「集団自決」といいますが住民が自発的に死を選んだのではなく、天皇の軍隊による強制と誘導により、集団で死ぬことを強いられ、親子、兄弟姉妹、夫婦などが殺し合う「集団虐殺」だったのです。肉親を喜んで殺す人はいません。地域的にも軍と住民が一緒にいた地域に限られています。
その実態は学者だけでなく体験者や住民、ジャーナリスト、学校の教師らの長年の積み重ねで明らかになっています。文科省はその成果を無視して「命令していない」という当時の守備隊長の話を根拠に、根本から沖縄戦の認識を覆そうとしています。沖縄を愚ろうするもので許せません。
手りゅう弾は軍が厳重に管理しており、一般人が手にすることはありえませんでした。それを配ったこと自体、軍命があったことの証拠です。軍から「いざというときはこれで自決するように」と命じられたという証言もあります。
隊長の命令があったかどうかは本質ではありません。客観的な状況が軍による強制と誘導があったことを示しています。それを否定するのは沖縄の人たちは進んで死んだと美化し、戦争賛美に国民を誘導するものです。
戦争責任の希薄化意図/新崎盛暉沖縄大教授の話
直接命令の有無はともかく、日本軍が住民に対し日ごろから米軍捕虜になる前に自決しろと強く示唆し、武器を与え、それが集団自決に影響したことは否定できない事実です。安倍晋三首相が「狭義の強制性」を否定している従軍慰安婦問題も同じ構図で、小手先で表現だけ変えることで戦争責任を希薄化させる政府の意図を露骨に感じます。
「集団自決」
一九四五年三月からの沖縄戦のなかで、住民らが日本軍に渡された手りゅう弾を爆発させたり、肉親同士が殺し合うなどして集団で死に追いこまれました。自発的に死んだのではないので「集団死」と呼ぶべきだという意見もあります。
高校教科書の検定例
申請本(検定前) 検定意見 修正後
沖縄戦集団自決 なかには日本軍に集団自決を強制 沖縄戦の実態について誤解する なかには集団自決に追い込まれた人々も
された人もいた おそれがある いた
南京大虐殺 捕虜をはじめ、女性をふくむ一般 南京事件の犠牲者数について諸 捕虜や女性をふくむ一般住民に対して、
住民が10数万人以上殺害されたと 説を十分に配慮していない 暴行・掠奪(りゃくだつ)・集団的な虐殺
いわれ、当時世界では注目された がおこなわれた。殺害の人数について、日
本では数万―10数万人以上など諸説があ
り、中国政府は30万人以上を主張してい
る
憲法9条と自衛隊 自衛隊は(中略)自国以外の公海 周辺事態法等にもとづく自衛隊 自衛隊は(中略)自国以外の公海や外国
や外国の領域で米軍を支援できる軍 の活動について誤解するおそれが の領域で活動できる軍事力(実力)へと質
隊へと質的な転換をとげつつある。 ある。日本国憲法第9条をめぐる 的な転換をとげつつある。憲法第9条の解
憲法第9条の解釈変更や第9条自体 今日の状況として理解し難い 釈変更や第9条自体の改正を求める声やう
の改正要求が、日米両政府などから ごきが強まっている
強まっている
自衛隊派遣 自衛隊をはじめて戦闘地域に派遣 自衛隊のイラク派遣について誤 自衛隊をイラクに派遣した。注=復興支
した 解するおそれがある 援を目的として、主要な戦闘終結後も武力
衝突がつづくイラクに自衛隊が派遣された
靖国参拝 首相の靖国神社参拝については 小泉首相の靖国参拝をめぐる裁 首相の靖国神社参拝については(中略)
(中略)下級審の判決で、政教分離 判について誤解するおそれがある 小泉首相の参拝について、公的参拝であり
原則に違反し違憲としたものがあり、 違憲とした高裁判決も出されたが(2005年)、
注目される(2004年福岡地裁、2005 最高裁は、参拝が違憲か合憲かの判断を示
年大阪高裁) さなかった(2006年)
拉致事件 朝鮮民主主義人民共和国(北朝 国交正常化交渉が進展していな 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)とは、
鮮)とは、1991年にようやくはじま い理由について誤解するおそれが 1991年にはじまった国交正常化交渉が、核
った国交正常化交渉が、戦争責任の ある 問題や北朝鮮による日本人「拉致」事件な
問題や核問題、「拉致」事件などが どがあってあまり進展していない。さらに
あってあまり進展していない 日本の植民地支配をめぐる問題ものこされ
ている
夫婦別姓 選択的夫婦別姓の導入が検討され 夫婦別姓をめぐる今日の状況に 選択的夫婦別姓の導入を求める意見もあ
ている ついて誤解するおそれがある る
( 2007年03月31日,「赤旗」)
党幹部・国会議員が全力で訴え/石井副委員長/小池政策委員長/穀田国対委員長
仙台・青森で石井副委員長
日本共産党の石井郁子副委員長は三十日、県議選と市議選が同時に告示された激戦の仙台市と県議選をたたかう青森市と八戸市で各候補の必勝を訴えました。
仙台市太白区のJR長町駅前では、横田有史県議候補、さがさだ子、ふなやま由美両市議候補の第一声に、青葉区のJR仙台駅前の第一声では、遠藤いく子県議候補、花木則彰、すげの直子両市議候補の応援に立ちました。
石井氏は、県や市で無駄な税金が使われる一方で、福祉の切り捨てに、「チェックのきかない『オール与党』では政治は変わらない」と強調。日本共産党が三十年前から乳幼児医療費の無料化を国会で取り上げ、各地で実現してきた経緯を紹介し、「実績の横取り」とあべこべに言う公明党に子どものための政治を語る資格がないと力説すると、「そーだ」の声が上がりました。
石井氏は、太白区では「県政と市政でかけがえのない、住民の命綱として奮闘する日本共産党の議員を議会へ」と訴え、青葉区では「子どもの医療費でずっと頑張ってきた遠藤さんと市議を必ず当選させよう」と訴えました。
石井氏は、青森市で、すわ益一県議候補を、八戸市では、たばた文明県議候補の必勝を訴えました。
神奈川・愛知で小池政策委員長
日本共産党の小池晃政策委員長は三十日、横浜市戸塚区を皮切りに、川崎市川崎区、横浜市鶴見区をかけめぐり、「みなさんの力で支持を広げぬいていただいて、今度の選挙を勝ち抜かせてください」と訴えました。小池氏の訴えに、「がんばれ」「そうだ」などの声援が相次ぎ、三カ所で千五十人の聴衆となりました。
小池氏は、国会で国民健康保険証の取り上げを義務化する法案に、与党だけでなく、民主、社民も賛成したことにふれ、「日本共産党を勝たせていただいて、庶民の命を切り捨てる政治をすすめる人たちに怒りの審判を」と力を込めました。
県と市でも自民、公明、民主などの「オール与党」によって、福祉が切り捨てられ、「インベスト神奈川」で大企業に六百五十八億円もの税金を注ぎ込む逆立ち政治が進められていると告発。その悪政に、住民のくらしを守る立場できっぱり反対する、たしかな野党・日本共産党の値打ちを語りました。
戸塚区の戸塚駅東口で、草野てる子県議候補、岩崎ひろし、坂本としえ両市議候補、川崎区・川崎銀柳街チネチッタ側で、松尾たまき県議候補、佐野よしあき、宮原春夫、ちくま幸一、西尾りえ子各市議候補が決意を表明。鶴見区・鶴見駅東口で、みやした泉県議候補、中島文雄市議候補が力を込めて訴えました。
小池氏は、名古屋市南区で街頭演説し、名古屋市議選、愛知県議選での党の躍進を訴えました。
南区で現職の議席を引き継ぐ佐野たかふみ候補は、「市政に福祉の心を取り戻すため、全力で頑張ります」と力を込めました。県議会の共産党議席の空白克服を目指す中西八郎候補が決意。瑞穂選挙区の森下とうじ市議候補、八田ひろ子前参院議員が紹介されました。
国政について小池氏は、改憲手続き法案の問題点や「従軍慰安婦」問題での安倍内閣の対応などについて報告しました。
名古屋市議会の政務調査費をめぐり、共産党市議団が提出した領収書公開の条例改正案を自民、公明、民主の反対で否決したことについて、小池氏は、「住民の暮らしが大変なとき税金を一円たりとも無駄にせず住民の暮らしを支えるために使うのが議員の仕事。自公民の議席が増えることが税金の無駄遣いにつながる」と述べ、日本共産党への支持を訴えました。
県政について小池氏は、二月の県知事選で自民党との対立を演出した民主党が、自民党が推した知事提出の予算案などすべてに賛成し、元のオール与党に戻ったと指摘。「オール与党に対決する日本共産党の議席を何としても送り出してください」と訴えました。
保育士の神田春美さん(49)は、「政務調査費の問題を多くの市民に知らせたい」と話しました。
香川・広島で穀田国対委員長
日本共産党の穀田恵二国対委員長は三十日、香川県高松市、広島県福山市、広島市を遊説。県議、政令市議選勝利へ候補者とともに街頭から訴えました。
高松市で白川よう子、かし昭二両県議候補と演説した穀田氏は、「今度の選挙は『暮らし守れ』の声を届け、行政をチェックする日本共産党と『オール与党』の対決構図」だと述べました。
香川県では、「オール与党」が不必要な大型開発を進め、大企業へ大盤振る舞いする一方、生活保護の見舞金を削るなど「一番弱いところに負担を押し付けている」と批判。「日本共産党の力の源は住民要求・運動」と強調し、「税金無駄遣いをチェックし県民の暮らし守る党議席を複数に」と大きな支援を呼びかけました。
穀田氏は福山駅前で辻つねお県議候補と、広島市中区では長妻りょう県議候補、皆川けいし、村上あつ子、中原ひろみ、中森辰一各市議候補と訴え。辻候補は、請願の約九割を紹介し、住民運動と連帯して子ども医療費助成の拡充を実現したことをあげ、県民の願い実現に全力をあげる決意を表明しました。
高松市で演説を聞いた田辺健一さん(25)は、「生活に密接している県政を変えていかないといけないと思いました。自分たちの世代は投票率も低いと思うので、周りに話を広げたい」と話していました。
国会議員が応援
四十四道府県議選など(四月八日投票)が告示された三十日、日本共産党の国会議員は各地の選挙区に応援に駆けつけ、党候補への支持を訴えました。
高橋千鶴子衆院議員は宮城、塩川鉄也衆院議員は埼玉、笠井亮議員は東京、佐々木憲昭議員は愛知、吉井英勝衆院議員と小林みえこ参院議員は大阪、赤嶺政賢衆院議員は佐賀と沖縄、井上哲士参院議員は新潟、紙智子、大門実紀史両参院議員は北海道、仁比聡平参院議員は宮崎と福岡、吉川春子参院議員は栃木と埼玉で、それぞれ応援に立ちました。
( 2007年03月31日,「赤旗」)
「拉致」言っても「慰安婦」はなし/自民幹事長
自民党の中川秀直幹事長は三十日、広島市で二百人の聴衆を前に街頭演説し、「道州制の具体案が三年以内に提唱されるなかで、それぞれの地域がみずから成長し、行政サービスを与えていけるかが問われる選挙だ」と訴えました。
また先の訪中について触れ、中国と日本が「和解の精神」をもって新しい平和の世界をつくっていくことが大事だ、と指摘。被爆県である広島は、核兵器廃絶を訴えるだけでなく、北朝鮮の拉致も許さないなど、「人道」も訴える必要がある、と強調しました。
一方で、国際的に重大な問題となっている「従軍慰安婦」問題は一切触れず、拉致問題には熱心だが「慰安婦問題」には無感覚という政府の「二重基準」を相変わらず露呈させました。
そのうえで中川氏は、道州制、省庁再々編、改憲など「改革」をすすめるため「公務員制度改革に必死で取り組んでいる」と強調。その第一歩として、天下り根絶≠閣議決定した、と自賛しました。
格差拡大の責任に触れず/公明・太田代表
公明党の太田昭宏代表は三十日、千葉県庁前で、同日告示された千葉県議選に立候補した同党候補の応援で演説しました。また堂本暁子千葉県知事も同党候補を応援しました。
太田代表は、少子・高齢化やグローバル化(地球規模化)の構造変化で「弱い人」に一番しわ寄せがきていることを認めましたが、自公連立政権で格差を拡大してきた責任については触れませんでした。
若者の不安定雇用・非正規雇用が増加している状況については「日本経団連の御手洗会長にも、トヨタの指導部にも若者がいい仕事につけるようにいってきた」というだけ。また、お年寄りの医療負担が増す実態には目をつぶり、「薬・治療に頼らず、しっかりした予防、食育に力を入れてきた」と述べました。
「オール与党」の反省は語らず/民主・菅代表代行
民主党の菅直人代表代行は三十日、東京都世田谷区、大田区の二カ所で浅野史郎都知事候補とともに街頭演説し、浅野氏を持ち上げました。
菅氏は、浅野氏がかつて、旧厚生省官僚と宮城県知事時代に介護保険制度の確立、情報公開の徹底で「実績」をつくったと説明したうえで「石原都政はほとんど真っ黒なガラスで塗り固められている」「これ以上、石原都政を続けてよくはなりません」などとのべました。
しかし、宮城県では介護保険三施設が全国四十位と低迷しているように、浅野氏が福祉切り捨てを推進してきた実態や、民主党が都議会「オール与党」の一員として支えてきたことへの反省はまったく語らず、同党のにわか「選挙野党」ぶりを示しました。
( 2007年03月31日,「赤旗」)
【ベルリン=中村美弥子】南ドイツ新聞二十八日付は、「従軍慰安婦」の強制性を否定する安倍晋三首相の姿勢を批判し、日本外交の孤立化を指摘するヘンリク・ボーク北京特派員による論評を掲載しました。
「歴史の切り捨て」と題する論評は、「慰安婦」問題での安倍首相の発言が低下する支持率を回復させるために画策したもので、日本の国粋主義者の支持を得ることが目的だったと分析。この態度は、北朝鮮の核問題の解決を困難にしていると指摘しています。
安倍首相が、日本人拉致問題での対応で支持を広げ首相に選出されたのにもかかわらず、「拉致された性奴隷たち(「慰安婦」のこと)を侮辱しているのは歴史の皮肉だ」と述べています。その上で、日本の態度は、北朝鮮の核問題の解決を目指す六カ国協議の進展を妨害していると警告。「国粋主義者の安倍にとって、朝鮮、中国、オランダの拉致被害者は、日本の拉致被害者と同様の人間的尊厳を持っていないのだ」と厳しい見方を示しました。
( 2007年03月31日,「赤旗」)
カナダ下院外交委員会の国際人権小委員会は二十七日、日本政府に対し「従軍慰安婦」の被害者への公式謝罪と賠償を求める動議を採択しました。四月中旬には、外交委で審議される見通しです。
動議は、野党・新民主党(NDP)のウェイン・マーストン議員らが二十三日に提案していたもの。
日本の首相と国会に対し、第二次世界大戦当時、日本軍に性奴隷を強要された「慰安婦」の女性らに公式謝罪する国会決議を採択し、被害者への適正かつ名誉ある補償をするよう要求。カナダのマッケイ外相に、そのための「必要なあらゆる措置」を取るよう求めています。
動議を提案したマーストン議員は、「第二次大戦当時、軍売春宿での奉仕を強要された数万人の女性たちに、安倍首相が公式に謝罪し、賠償プログラムを設けるよう」カナダ政府は「圧力をかけるべきだ」と強調。共同提案者のドーン・ブラック議員は「歴史の否認は、正義を否認することだ」と述べました。
NDPは下院議員二十九人で議会第四党ですが、最大野党・自由党(百人)もこれに同調しました。自由党のレイモンド・チャン議員は、「反対する議員は保守党も含めて一人もいないだろう」と現地メディアに語っています。
国際人権小委員会(委員七人)での採決では、三対三で賛否が分かれたため議長裁定で採択され、外交委員会への付託が決まりました。
( 2007年03月31日,「赤旗」)
河野洋平衆院議長がインタビューで、九三年に「従軍慰安婦」問題で謝罪した談話(河野談話)の見直しを求める論議について「騒ぐのは知的に誠実ではない」と不快感を示していたことが三十日、明らかになりました。
インタビューは、元慰安婦に「償い金」を支払う目的で設立された「女性のためのアジア平和国民基金」(アジア女性基金、理事長・村山富市元首相)が昨年十一月に行ったもので、二十九日に単行本化されました。河野氏は、談話が「官憲等の直接加担」を認めていることに関し「(政府が聞き取り調査した)慰安婦だった人たちの話は信頼するに十分足りる。どなたが何を言おうと問題ない」と述べ、裏付ける資料がないことを理由に疑問を呈する声に反論。「この一点を取り上げて、従軍慰安婦自体がなかったと言わんばかりの議論は変だ」と指摘しています。
( 2007年03月31日,「赤旗」)
文部科学省は三十日、来年四月から主として高校二年生以上が使う教科書の検定結果を公表しました。日本史では、太平洋戦争末期の沖縄戦の「集団自決」について「日本軍に強制された」とした記述に対し、「軍が命令した証拠はない」として書きかえさせました。「住民が自ら進んで死んだとして美化するもの」(安仁屋政昭沖縄国際大学名誉教授)と批判が起きています。
(8面に関連記事)
「集団自決」の記述を書きかえさせられたのは五社七点の日本史教科書。いずれも申請段階では日本軍が「自決」に「追い込んだ」「強制した」などと書いていましたが、「実態について誤解するおそれがある」との検定意見がつきました。このため各社は「日本軍」という主語を削るなどしました。
申請段階の文章はいずれも四年前に合格したものとほとんど同一の記述でした。
文科省は「元軍人が起こした訴訟で命令はしていないという陳述があり、調べた結果、ほかにも命令はなかったという証言があったため、今回から断定的な表現に意見を付けた」としています。
これに対し、歴史研究者や教科書関係者からは「沖縄戦に関する学説状況が大きく変化したわけではなく、軍命令はなかったとの立場から断定的記述を強制したことはきわめて不当だ」(俵義文・子どもと教科書全国ネット21事務局長)と批判の声があがっています。
一方、「従軍慰安婦」については六社十六点の教科書が取り上げましたが、修正意見はつきませんでした。
今年度の検定には十一教科二百二十四点の申請があり、生物Uで二点は検定意見の数が基準を超えたため不合格になりました。理科や数学では、学習指導要領の範囲を超え「すべての生徒が学ぶ必要はない」とされる「発展的内容」の割合が倍増しました。
( 2007年03月31日,「赤旗」)
自・公・民「オール与党」の悪政と対決/市田書記局長ら各地で応援
茨城、東京、沖縄を除く四十四道府県議選と静岡、北九州を除く十五政令市議選、東京で七選挙区の都議補欠選挙が三十日、告示されました。投票日は十三知事選、政令市長選と同じく四月八日です。日本共産党は道府県議選で三百十四人、政令市議選で百八十五人、都議補選で七人の立候補者が力強く第一声をあげました。「『住民が主人公』の立場で自民、公明、民主、社民など『オール与党』の悪政に立ち向かう日本共産党の前進を」と、志位和夫委員長が千葉、大阪で、市田忠義書記局長が京都、滋賀、奈良で訴えたのをはじめ、党幹部、国会議員が各地で日本共産党の躍進をよびかけました。(2、3、4、5、13、14面に関連記事)
志位委員長は千葉市のJR千葉駅前で小松実、ゆうき房江両県議候補、七人の千葉市議候補とともに第一声。五百人の聴衆に、「多くの自治体で、自民、公明、民主の『オール与党』か、唯一の野党として住民の声を届ける日本共産党かが、選択の軸です。日本共産党に三つの願いを託してください」と訴えました。市原市では集まった三百五十人に、船井きよ子県議候補の支持を訴えました。
福祉とくらし
志位氏は、第一に福祉とくらしを良くしたいとの願いを日本共産党へと呼びかけ、全国的に大争点となっている庶民大増税と国民健康保険証の取り上げの問題で、「オール与党」政治を告発しました。
志位氏は、「国が庶民大増税の波をかぶせてきたら、手を広げて住民を守ってこそ自治体だ」と力を込め、負担増の追いうちをかける「オール与党」への審判を呼びかけました。
また、千葉県内で二万八千七百八十八世帯にのぼる国保証の取り上げ問題では、国保料が高すぎて払いたくても払えないのが実態だと指摘。「オール与党」自治体でも、国保証を一枚も取り上げていない自治体があることを紹介し、「取り上げをやめさせ、市町村国保への県の支援増などで市の一般会計から国保会計への繰り入れをふやし、国保料の値下げを迫っていこう」と訴えました。
「自治体とは、読んで字のごとく、住民が自ら治め、福祉とくらしを守る機関です」と志位氏。「国の悪政の下請けではない。日本共産党の勝利で自治体に『福祉の心』をとりもどそう」と力を込め、大きな拍手につつまれました。
税金の使い道
志位氏は、第二に税金のムダづかいにストップの願いを共産党へと訴え、企業呼び込み型の巨大開発、大企業に札束をばらまく誘致補助金をやめさせようと訴えました。
志位氏は、千葉でも誘致補助金がスタートし、日立系企業に県と茂原市で九十億円も出して、新規雇用は一人も増えなかったと批判。「これは全国で競争が始まっているのです」とのべ、神奈川では日産に百八十五億円を出したが雇用は増えず、兵庫では松下電器に百七十五億円も出して「偽装請負」が問題になっていると告発し、「大企業にばらまくカネがあったら、福祉、教育、雇用を支える中小企業にまわせの声を日本共産党に」と訴え、声援に包まれました。
憲法と平和
志位氏は第三に、憲法擁護と平和の願いを日本共産党へと訴え、「今度の選挙は地方選ですが、この問題を政党と候補者を選ぶモノサシにしてほしい」と呼びかけました。
志位氏は、国会での改憲手続き法案の強行の動きを批判。「九条改悪への第一歩を踏み出す計画を許すなの声をあげてほしい」と呼びかけました。
また、「安倍政権が過去の侵略戦争を正当化する本性をむきだしにしていることが重大だ」と批判。「従軍慰安婦」問題で歴史をゆがめる首相発言の撤回を求め、「従軍慰安婦」の存在を否定した下村博文官房副長官の罷免を求めました。
首相の姿勢に、「日本は拉致問題には熱心だが、過去の問題には無関心」との批判が米国などであがっていると指摘した志位氏が、「拉致問題の解決のうえでも、歴史をゆがめる言動をやめることが大切です」と語りかけると、大きな拍手がおこりました。
志位氏は、「『オール与党』は『オール改憲勢力』。九条守れの声は日本共産党に」と呼びかけました。
夜勤明けで千葉駅前を通りかかって演説を聞いた平栗正隆さん(27)=千葉市緑区=は「悪政の問題を詳しく聞けて勉強になった。そのとおりだと思う」とのべました。
( 2007年03月31日,「赤旗」)
日本軍「慰安婦」問題行動ネットワークは二十九日、内閣府に対し、「従軍慰安婦」問題への旧日本軍の関与を認め謝罪した一九九三年の河野談話の内容について積極的に取り組むよう求めた国際署名約一万四千人分を提出し、要請しました。
同ネットワークは二〇〇五年に開かれた「慰安婦」問題アジア連帯会議に参加した個人、団体が結成しました。署名は、首相があいまいな態度を改め、政府が真摯(しんし)に河野談話に向き合うことを求め、二カ月前から日本をはじめ韓国、台湾、フィリピン、ドイツで取り組まれました。
内閣府の山田哲範大臣官房総務課調査役が受け取りました。
要請には日本軍「慰安婦」問題行動ネットワークから七人が参加。
売買春問題ととりくむ会事務局長の高橋喜久江さんは「河野談話は十分ではないと思っていますが、これを批判する若い議員が増えていることに危機感を覚えます。『このような問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意を改めて表明する』とした談話。これを守るべきだという思いで取り組んでいます」と話しました。
日本共産党の吉川春子参院議員が立ち会いました。
( 2007年03月30日,「赤旗」)
戦闘史に残らない被害者の証言が歴史の記録になった/内海
人間性取り戻す回路―同じ人間という視点に立つこと/班
第二次大戦中、中国・山西省で日本軍に拉致され、トーチカ(とりで)に長期間監禁され性暴力を受けた女性たちと、元日本軍兵士の証言とを記録したドキュメンタリー映画「ガイサンシーとその姉妹たち」が上映されています。十年がかりで証言を撮った班忠義(バン・ツォンイ)監督と日本の戦争責任の問題を研究してきた内海愛子さんが、被害側と加害側のギャップをめぐって語り合いました。
内海 当事者の証言には迫ってくるものがありますね。安倍首相が「従軍慰安婦の強制性を裏付ける証拠はなかった」と言いましたが、この映画を見たら、あのような議論はでてこないと思うのですが…。
班 この映画で撮った山西省の性暴力は強制的な連行そのものですからね。同様の事例はフィリピンでもインドネシアでもありますよ。なのになぜ、政治家があんな発言ができるのか。戦争をよく知らないからではないでしょうか。
内海 単に知識不足というのではなく、どういう視点であの戦争を見るかではないかと思います。彼らは彼らなりに、自存自衛という視点で細かく事実を積み上げて戦争を見ているんですね。非常に詳しい「戦闘詳報」とか一連の『戦史叢書(そうしょ)』を読む限りでは、当然のことですが、被害者の視点はまったくありません。討伐で、何人の住民がどのように殺されたのかは、出てこない。
重要だった元兵士の証言
班 資料集めで日本の防衛庁(当時)の戦史史料室へ行きました。山西省の史料もあって、映画で証言している女性たちへの加害部隊が属していた独立混成第四旅団の戦闘記録もちゃんとありますよ。それを読むと、自分たちが八路軍に受けた被害部分はすごく詳しいんです。でも自分たちがやった、焼き尽くし、殺し尽くし、奪い尽くすという燼滅(じんめつ)作戦については記録がないんです。
内海 そうですね。その典型が女性の被害です。男性の場合は労働力として連行されれば、ある程度、記録も残るんですが、女性の場合、「女性を連行せよ」なんていう作戦命令が出るわけもないし、記録も残りません。
班 今回、良心的な軍人の証言を撮れたのは重要でした。近藤一さんの証言は、一九四一年、赤ん坊がいて逃げ遅れた女性を捕まえ、部隊と一緒に山岳地帯を行軍させた。逃げないように裸にして歩かせた。女性が弱ってきたある日、古兵が突然、赤ん坊を取り上げて崖下に投げ捨てた。それを見た女性は自分もそこへ身を投げた、というものです。中国には住民の被害の記録がありますが、日本では旧軍人が話さない限り、そういうことはなかったことになる。
内海 加害者は自分に都合のいい部分をとりわけ強く記憶に残します。とくに指揮命令系統の一部として加害行為をしていると、被害者の現実を自分の責任としてなかなか認識できないんです。一方、被害者は自分の被害を細かく記憶しています。長い間、語れなかった被害者の記憶が、この映画で、ようやく歴史的事実として記録されたんですね。
銃を突きつけて「強制じゃない」
内海 何年も前ですが、ある男性と戦争体験の話になったんです。その人も中国で、逃げ遅れた女性を連行して、レイプもしてるんですが、「強制じゃない。同意だ」というんですよ。銃を突きつけて同意を迫っているんですよ。それで「服や食料をやったら喜んで帰った」というんです。
班 映画にも、拉致・監禁しても、「食事も日本兵と同じものを与え、風呂も入らせた。いい待遇だった」と話す元兵士がでてきます。
内海 いったい、どういう感覚なのか。結局それは、当時の日本人に植え付けられた中国人への差別感なのか、同じ人間と思わない、殺してもいいと思っていたという。自分の加害行為を反省して、いま語り部となっている元兵士の人たちも、そういいますね。アメリカの原爆投下も東京大空襲も同じです。そこに人間がいるとは考えなかったといいますね。
班 元兵士の話を聞くと、刺突訓練などによって人間性を失い鬼になる。そこから戦後、人間に戻る回路があるようです。そのきっかけは、同じ人間なんだと気づくこと。そう気づいて初めて、自分の行為と向き合い戦争犯罪の責任を自覚するといいます。ただ、その回路がつながらないままの人もいるんですね。相手を敵だと見る、あるいは外国人だと見る。「国」という考え方が捨てられないと人間に戻れないのです。
九条は世界の宝アジアで共有を
内海 安倍内閣は憲法を変えると言っていますが、九条は日本人だけでなく、アジアの戦争犠牲者の血の代償でもあります。日本だけで変えてはいけない。議論をもっと広く開くべきだと思います。それに九条を変えたら、アジア諸国の警戒と反感を高めますね。
班 中国に「引火焼身」という言葉があります。自分で自分に災いを招くという意味ですが、九条を捨てるのは、まさに宝を捨てて、みずから悲惨な戦争に飛びこむ感じがします。九条は日本だけでなくアジア全体の安定に役立ってきた宝です。アジア、世界で共有すべきです。
アジア太平洋資料センター共同代表内海愛子さん
うつみ あいこ=1941年生まれ。アジア太平洋資料センター共同代表。BC級戦犯問題などを研究。著書に『朝鮮人BC級戦犯の記録』『スガモプリズン』ほか。
映画監督班忠義さん
ばん つぉんい=1958年、中国撫順市生まれ。87年、上智大学に留学。同大学院、東京大学大学院で学ぶ。著書に、中国残留婦人を描いた『曽おばさんの海』ほか。
ガイサンシーとは「山西省一の美人」の意味。被害者の一人で、そう呼ばれた侯冬娥さんはみずから命を絶っています。同じ被害を受け、戦後も差別、貧困、病気に苦しんだ女性たちが班監督の取材に初めて体験を語りました。同名の書籍(梨の木舎)は映画に入りきれなかった証言も収録。
映画は31日から大阪シネ・ヌーヴォXで公開のほか各地で上映会。問い合わせ03(5343)3101シグロ
( 2007年03月30日,「赤旗」)
安倍首相は「従軍慰安婦」問題で「強制連行はなかった」と言い張り、自ら継承すると言明したはずの「河野談話」(一九九三年)を事実上否定しています。世界の世論は、そんな安倍首相と日本政府の姿勢に厳しい目を向けています。
現在進行の人権侵害/韓国各紙
韓国の新聞七紙は二十八日付の社説で、「慰安婦」問題についての安倍首相の一連の発言を批判しました。「おわびする」と言いながら、国の責任を認めない安倍首相の謝罪≠批判しました。
中央日報は「(慰安婦の方々が)そのような立場におかれたことに、おわび申し上げる」とした安倍首相の二十六日の参院予算委員会での答弁を引用。「(この)言葉遊びのような表現からしても分かるように、政府次元の責任を回避する態度には本質的に変化がない」と指摘。「彼の謝罪には真剣さが見られない」と断じました。
ソウル新聞は、米国務省のケーシー副報道官が二十六日に「(日本は)過去に犯した罪の重大さを認識し、率直で責任ある態度をとるべきだ」と述べたことを紹介。「歴史わい曲と責任回避にきゅうきゅうとする日本に対し米国が公式の立場を明らかにするのは前例がない」と説明した上で、「安倍首相の二重的であいまいな態度を非難したものだ」と指摘しました。
同報道官の発言を中央日報、京郷新聞はともに「異例」と報道し、日本に事態の深刻さを認めるよう迫っています。
安倍首相が北朝鮮による日本人拉致問題を最優先課題とする一方、「慰安婦」問題では政府の責任を否定していることにも強い批判があります。
安倍首相が二十六日、「拉致問題は現在進行形の人権の侵害」で「慰安婦」問題とは「まったく別」と述べたことについて、ハンギョレ紙は「慰安婦問題は決して過去のものではない」と反論。「まだ多くの慰安婦ハルモニ(おばあさん)が、その当時の苦痛を持ったまま生きている。安倍首相をはじめとする日本政府の官吏の発言は、傷口に塩を塗る重大な現在進行形の人権侵害だ」と批判しました。
この問題では朝鮮日報十二日付が、「孤立招く日本」という記事を掲載。「北東アジア外交再編で日本は孤立の様相を呈している。北朝鮮による日本人拉致犯罪にこだわる一方、かつて日本が拉致した日本軍『慰安婦』を否定することにより、日本は外交的、道徳的基盤を失いつつあるとの批判も出ている」と指摘しています。
米国まで敵に回した/英誌
英誌『エコノミスト』三月二十一日号(電子版)は「東京の間違った動き―日本外交に泥を塗る軍の売春宿」と題する論評で、「慰安婦」問題での安倍首相の姿勢を厳しく批判しました。
論評は「安倍晋三は日本の首相となってわずか六カ月で、戦争中の歴史というやぶに突進することによって自らの国際的な評価をずたずたにしてしまった」と書き出しています。
安倍首相が日本政府の「慰安婦」への関与について「強制の証拠はない」と述べたことは、「自らが体験した奴隷状態を証言してきた多くの年老いた女性たち」を驚かせたと指摘。その発言は「軍の文書庫から発見された証拠にも反する」と述べています。
論評は、強制を認めた一九九三年の河野談話を首相は引き継ぐと言ったのに、すぐまた「強制はなかった」とする答弁書を確認したことを紹介。「安倍氏は近隣諸国との関係で最近日本が進めてきた成果の多くを一撃でご破算にしたと同時に、同盟国の米国まで敵に回してしまった」と解説しています。
論評はさらに「安倍氏の無能ぶりを測る物差し」は、「慰安婦」問題で「北朝鮮が道徳的な高みに立つのを許した」ことだと指摘しています。
具体的事例として、六カ国協議で北朝鮮側が「日本は拉致問題を口にするのをやめ、自らの歴史的な過ちを謝罪し補償せよと要求している」現状を説明。「日本はすでに(六カ国)協議で脇に追いやられつつあるのかもしれない」「日本による慰安婦の否定は、それをさらに深刻化するだろう」と述べています。
「完全な謝罪」を回避/英紙
【ロンドン=岡崎衆史】英ガーディアン紙二十七日付は、「日本は戦時の性奴隷(「従軍慰安婦」のこと)についての完全な謝罪を回避」と題する東京発のニュース記事を掲載しました。
安倍首相の二十六日の国会での答弁を取り上げたもの。「首相は日本による戦時の性奴隷の使用について謝罪したが、日本軍によって強制されたことを認めなかった」と報じました。
記事は、「慰安婦」問題での活動家が、日本の国会による公式の謝罪と補償を求めていると指摘。また、米下院で「慰安婦」問題で日本政府に謝罪を求める決議案が採択された場合も、安倍首相が謝罪をしないと述べていることを紹介しています。
ねらいは憲法骨抜き/シンガポール紙
シンガポール紙聨合早報の元論説委員・黄彬華氏は同紙十六日付に論評「歴史論争はアジアから北米に拡大した」を寄稿し、侵略の歴史をあいまいにしようする安倍首相の「慰安婦」発言が国際的批判を広げていると指摘しました。「慰安婦」問題で「強制はなかった」と繰り返す安倍首相や自民党の「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」の狙いは、「憲法を骨抜きにし、河野談話を『まったく無害なもの』に変えることにある」と厳しく批判しています。
論評は、「日本は慰安婦問題ばかりか第二次世界大戦中のシンガポールでの中国系住民虐殺や中国での南京大虐殺など日本軍による蛮行を絶対に認めようとしないか、もしくは『証拠が不足している』との口実で焦点をあいまいにしてきた」と指摘。「その目的は、(過去の行為を)あくまで否定し、それを国家への汚点として残さないことにある」と解説しています。
「欧米人のなかには、日本をアジアで唯一の成熟した『平和、民主、富裕』の国とみる人もいる」とした上で、「しかし(今回)彼らは、日本が言行不一致で歴史の真相を尊重せず、歴史に対し『不誠実、無責任』で、人権を尊重しない国家であることに驚いている」と述べています。
( 2007年03月30日,「赤旗」)
日本共産党の吉川春子議員が二十六日の参院予算委員会でおこなった「従軍慰安婦」問題で安倍晋三首相にたいしておこなった質問をあらためて紹介します。
吉川春子議員 安倍総理は、三月一日の夜、官邸で記者団の質問に答えて、九三年の河野官房長官談話について、当初定義されていた強制性を裏付ける証拠がなかったのは事実だと語られました。そうですか。
安倍晋三首相 何回か答弁を申し上げていますが、私は河野官房長官談話を継承していくということを申し上げているわけでございまして、そしてまた慰安婦の方々に対しまして御同情を申し上げますし、またそういう立場に置かれたことについてはおわびも申し上げてきたとおりでありまして、今まで答弁してきたとおりであります。
吉川 当初定義されていた強制性を裏付ける証拠がなかったのは事実だとおっしゃったんですか、おっしゃらないんですか。
首相 累次この場においてもまた本会議の場においても答弁をしてきたとおりでございまして、それを見ていただければ分かるとおりであります。
吉川 そういう発言はなかったと、取り消されるんですね。
首相 累次、今まで答弁してきたとおりでございます。ですから、今、吉川議員がおっしゃったことも私は答弁をしてきた中の中身でございます。
吉川 総理が記者会見で官邸でおっしゃったかどうかだけを伺っているんですけれども。
首相 強制性について私が申し上げたことは、記者会見で申し上げたことはすべて、これはニュースにもなっておりますから、それはそのとおりであります。
吉川 官房長官談話では、広範な地域に慰安所が設置された、慰安所は軍の要請によって設置された、慰安所の管理運営、慰安婦の移送について旧日本軍が直接又は間接に関与したとしております。これはお認めになるんですね。
首相 先ほど答弁をいたしましたように、河野官房長官談話を継承しているということは、この官房長官談話をまさに引き継いでいるわけでありますから、その中身も、それを引き継いでいるということでございます。
吉川 さらに談話では、慰安婦の募集について、本人の意思に反して集められた、官憲が直接これに加担したこともあった、慰安所の生活は強制的状況で痛ましいものであったと言っていますが、これもお認めになりますか。
首相 河野官房長官談話を継承すると、このように申し上げております。
吉川 お認めになるんですね、今言ったこと。
首相 そうです。
吉川 河野談話の内容と、それから、首相官邸での記者会見の強制性はないという発言は矛盾すると思いますが、談話を受け継ぐとおっしゃるならば、この発言は取り消されたらいいと思うんです。いかがでしょう。
首相 そうした発言も含めて今私は答弁をしているわけでございますが、この河野官房長官談話を継承していくということでございます。
(吉川氏は、ここでオランダと中国の慰安婦の強制の事例を追及)
吉川 (元慰安婦の方は)今日までまだPTSD(心的外傷後ストレス障害)で苦しんでいるんですよ。日本政府が本当に心から公式に謝ってほしいと思っているんです。総理、公式に謝る必要があると思いませんか。
首相 今、私はここでおわびを申し上げているわけであります。内閣総理大臣としておわびを申し上げているわけでありますし、河野官房長官談話で申し上げているとおりであります。
吉川 河野官房長官談話は閣議決定されていません。それでは、閣議決定しますか。
首相 河野官房長官談話ですべてでございます。
吉川 安倍総理、一度被害者に直接お会いいただきたいと思います。細田元官房長官はお会いになりましたけれども、安倍総理も直接、慰安婦にお目に掛かって謝罪をしていただきたい。
( 2007年03月30日,「赤旗」)
県議・政令市議選開始にあたり、すべての党員、後援会員のみなさんに訴えます
全国の党組織と党員のみなさん、後援会員のみなさん
すでに告示されている知事選挙、政令市長選挙につづいて、三十日、道府県議選挙、政令市議選挙、東京都議補欠選挙が始まります。この大事な選挙で日本共産党が必ず全国的な前進と勝利をかちとるために、四月八日の投票日までの十日間、すべての党組織、党員のみなさん、すべての後援会員のみなさんが、文字通り底力を発揮しつくして奮闘されることを訴えます。
すべての党員、後援会員のみなさん
わが党が底力を出し切ってがんばりぬくなら、この選挙で勝利をつかむ客観的条件が生まれています。それを正面からとらえた奮闘が大切です。自民、民主、公明、社民などによる「オール与党」政治と住民との矛盾はかつてなく深まり、「オール与党」勢力と正面から対決し、住民本位の政治をめざす日本共産党の役割、値打ちはどこでも鮮明です。
自民・公明政権がすすめる貧困と格差の拡大、庶民大増税、福祉切り下げ、雇用破壊などの悪政のもとで、多くの「オール与党」自治体が、住民を悪政から守る防波堤になるどころか、悪政においうちをかけています。増税や社会保障負担増のおいうち、国いいなりの福祉施策の切り下げが強行され、その一方で、巨大開発への税金のムダ遣い、大企業誘致のための補助金ばらまきなどに、住民の貴重な税金が浪費されています。こうした自治体の悪政を、「オール与党」が推進しています。議員の豪華海外旅行や政務調査費の不正使用、「解同」がくいものにしている同和行政の乱脈などの税金ムダ遣いも、この「オール与党」体制と一体のものです。
十三の知事選挙を見ても、十三すべてに推薦・公認候補を立て、無党派の人々との共同を広げて自民党政治の転換をめざしているのは、日本共産党だけです。自民党と民主党が、「対決」は選挙時だけで、各地で政党の体をなさない堕落、衰退ぶりを示すもとで、政党らしい政党=Aたしかな野党≠ニして活動しているのが、日本共産党です。
今回の選挙はまた、安倍政権が改憲手続き法を強行し、憲法九条改定に道をひらこうとするもとでたたかわれています。「従軍慰安婦」問題で歴史を歪曲(わいきょく)する勢力、侵略戦争に無反省の勢力が改憲の道をすすめていることに、アジアをはじめとする世界の批判が強まっています。日本共産党は、日本の政党でただひとつ、命がけで侵略戦争反対を貫いた党であり、世界に誇る憲法九条を守り、生かすため、草の根で幅広い人びととの共同を広げて奮闘している党です。「憲法九条を守りぬく日本共産党を伸ばし、平和の力を強く大きく」の訴えが、いま多くの国民の心に響く状況が広がっています。
すべての党員、後援会員のみなさん
勝利の主体的条件では、「二大選挙勝利」の方針を確立した昨年一月の第二十四回党大会以来、第二回中央委員会総会(二中総)、三中総をへて、「支部が主役」の党活動の方針を発展させ、党と後援会が草の根の宣伝戦、組織戦を広げ、本番の臨戦態勢の土台を築いてきました。支部主催の演説会・小集会・懇談会は、のべ五十万の人びとが参加し、全国でかつてない規模に広がっています。客観的条件とあいまって、党と後援会のなかに「がんばれば勝てる」「がんばって勝とう」という機運が大きく高まっています。
同時に、私たちは、「前進から飛躍へ」を合言葉に奮闘してきましたが、前進のテンポはあがっているものの、全体として勝利に必要な目標を突破するための「飛躍」を実現するまでにはいたっていません。選挙区ごとにみても、どこでも他党とのしのぎをけずる大激戦であり、新たな議席の可能性が広がっている選挙区が生まれている一方、このままでは議席を失いかねない現職区も少なからずあるというのが、現在の到達です。
勝敗は、まさにこれから十日間の、あらゆる可能性をくみつくした努力、すべての党組織、党員、後援会員のみなさんの奮闘によって、活動の規模とテンポを文字通り飛躍させることができるかどうかにかかっています。
活動の基準となるのは、「党と候補者が、他のどの党にもまけない政治的気迫と構えを確立し、どの党をも上回る規模の選挙戦を展開し、激戦に競り勝っていくこと」「みずから決めた得票目標を達成することに執念をもち、それにふさわしい宣伝・組織活動をやりきるために、知恵と力をつくすこと」(三月九日の全国会議での報告)――この二つの見地で攻勢的なたたかいをやりぬくかどうかです。
すべての党員、後援会員のみなさん
いま、自民党や民主党の支持からも離れた、「無党派」の人々が増えています。日本共産党に新たな関心をよせ、党の立場を知って新たな支持者となる人が少なくありません。ここで決定的に重要なことは、視野を広げ文字通り全有権者を対象にして、宣伝戦、組織戦をつらぬくことです。
法定宣伝物の徹底した配布と活用、候補者を先頭にした勢いのある街頭宣伝、演説会とともに支部・後援会主催の懇談会などを強めましょう。あわせて、対話・支持拡大を、全有権者を対象にして飛躍させることが、今回の選挙ほど大事なときはありません。「全国、全県、行政区は一つ」の立場で、支持者台帳はもちろん、あらゆる名簿をそろえ、臨時電話も活用して大規模な電話作戦で有権者と対話しましょう。激戦を勝ち抜く根本の力――党勢拡大の上げ潮のなかで、選挙をたたかいましょう。
「オール与党」勢力は「共産党追い落とし」に必死です。公明党が反共の先兵としてデマ宣伝を強めています。しかし、「増税戦犯」「福祉切り下げの張本人」「政調費不正使用」など、この党の実態を徹底して明らかにし、住民のくらしを守る日本共産党の役割を訴えて攻勢的にたたかえば、攻撃は必ず打ち破れます。
すべての党員、後援会員のみなさん
「全党員が立ち上がれば勝てない選挙はない」――選挙勝利の鉄則です。独自の手立てをとって選挙にとりくむ党員を日々増やし、運動を日々末広がりに発展させましょう。選挙だからこそ、支部会議でしっかり政治的に意思統一し、全党員が条件を生かして歴史的活動に立ち上がるように働きかけましょう。対話・支持拡大でも「百人」「二百人」と、力持ちが大奮闘することはもちろん、「三人、五人なら」「十人なら」という党員の力をすべて結集することが大事です。党機関と選対指導部は、忙しい中でも、「支部が主役」を堅持し、三中総決定や選挙資料を届け、党組織・党員の潜在的な力をくみつくす指導と援助を強めましょう。
この間、日本共産党後援会は過去最高の三百万人をこえました。後援会のみなさんにリアルな情勢、党と候補者の値打ちを伝え、具体的な活動を呼びかける「後援会ニュース」を必ず届けきり、党員、後援会員のみなさんが情勢と活動方向をしっかり共有して活動し、後援会員のみなさんの力が最大限に発揮されるようにしましょう。
この選挙の結果は、後半戦のたたかいに、さらには参議院選挙にも大きな影響を与えます。全党組織、全党員、全後援会員が力をあわせて必ず勝利しましょう。常任幹部会も、みなさんと心をひとつにしてたたかいぬく決意です。
( 2007年03月30日,「赤旗」)
いま安倍内閣の姿勢が国際批判を浴びている「従軍慰安婦」問題は、いっせい地方選で有権者が関心を向けている問題の一つです。自民党は三回前、一九九五年のいっせい地方選向け公約のなかで、「従軍慰安婦」問題は「避けて通れない重要な政治課題」とし、「女性を尊重する強い意思を国の内外に表すことにしています」と盛り込んでいました。
九五年は戦後五十周年の年でした。自民党の「第十三回統一地方選挙『わが党の公約』」は、アジア太平洋の近隣諸国や日本の国民の認識として「二度と戦争の惨禍を繰り返さないためには(中略)過去の行為から目を背けることなく、次の世代に対しても戦争の悲惨さと、そこに幾多の尊い犠牲があったことを語り継ぎ、常に世界の恒久平和に向けて努力していかねばなりません」と述べていました。
同公約は「従軍慰安婦」問題にも触れて「いわゆる従軍慰安婦問題については、国民参加による『女性のためのアジア平和友好基金(仮称)』を創設することで、わが国としては、女性を尊重する強い意思を国の内外に表すことにしています」と明記。「従軍慰安婦」問題など戦後五十年問題を「日本がこれから将来、特にアジア・太平洋地域との連帯をさらに強めていくためにも避けて通れない重要な政治課題です」と位置付けていました。
安倍晋三内閣の下での今回のいっせい地方選向け自民党公約では、戦争への反省や「従軍慰安婦」問題への言及はまったく姿を消しました。
代わって公約で突出してきたのは「防衛」と「改憲」。防衛問題では十二年前の「節度ある防衛力の整備」が今回公約で「防衛体制の強化」に変わりました。九〇年代三回の、いっせい地方選を通じて掲げられなかった改憲公約は四年前のいっせい地方選から登場。今回は「憲法改正手続法案の早期成立を実現、憲法改正に向けて国民的論議を喚起」として改憲へ向け具体的な一歩を踏み込む内容をかかげました。
( 2007年03月30日,「赤旗」)
笠井議員追及
改憲手続き法案の与党「修正」案が初めて審議された衆院憲法調査特別委員会で二十九日、日本共産党の笠井亮議員は、安倍首相が主導する九条改憲の条件づくりという同法案の狙いを改めて浮き彫りにし、法案の撤回を求めました。
笠井氏 公聴会では、拙速を戒める声などが多数出ている。どのように受け止めているか。
船田元議員(自民党、「修正」案の提出者) 憲法(改定)の中身の議論が始まる前の今が、(手続き法を)冷静に判断し、決めていく好機だ。
赤松正雄議員(公明党同前) 反対する人は、九条について過剰ではないか。
笠井氏は、九条改憲をねらう安倍首相が年頭から自らの内閣で改憲を目指すと公言し、手続き法の今国会成立を求めていることを指摘し、「手続き法を改憲とからめているのは首相自身だ。九条改憲と一体のものであるのは、いよいよはっきりしている」と批判。同時に「従軍慰安婦」問題に関する安倍首相の発言が国際社会の厳しい批判にさらされている状況にふれ、「侵略戦争に反省のない勢力が、九条を変えて『海外で戦争のできる国』にするために手続き法が位置付けられている」と指摘しました。
笠井氏 改憲手続き法が安倍内閣のめざす改憲のために必要な法制として位置付けられているのは明らかだ。
自民・葉梨康弘議員 安倍さんも総理としてではなく一人の国民として、自民党の総裁として法案の成立にご支援いただいている。
葉梨氏の苦し紛れの発言に傍聴席から爆笑が起きました。笠井氏は「国民はだれもそんな説明に納得しない。法案提出者は、国民の常識の外で論議をおこなっている」と批判。「公正中立なルールづくり」という当初の提案理由が完全に崩れたなかで「法案は撤回が当然だ」と強調しました。
民主党の枝野幸男議員は「法律の施行は三年後。そのときに安倍氏は総理大臣でないことをめざし、それを前提にしている」と述べました。笠井氏は「前提にするのは自由だが、そうなるとは限らない。安倍政権下でつくられる手続き法は、安倍内閣が目指す改憲につながることは明らかだ」と批判しました。
また、与党が「委員会審議を通じてオープンに行う」としていた「修正」案作成の最終段階で、公務員法における政治活動制限の「適用除外」をなくし、公務員にたいする罰則つきの規制を強化した経過について質問。自民党の船田議員は、唐突だったことを認め、「わが党内、自公の中で議論した」と右派議員からの圧力で公務員の主権者としての活動を規制するための方向が盛り込まれたことを示唆しました。
笠井氏は法案の中身でも、かなりの公述人から、最低投票率の設定や有権者の過半数が投票に参加するような仕組みが必要であるという意見が出されたことを指摘。「これを拒否することは理論的にも成り立たないが、一顧だにしないのはなぜか」とただしました。
葉梨氏 ワークする(働く)制度ということを考えると、今回は設けないことにしている。
笠井氏 改憲案を通しやすい制度にするということだ。結局、国民のための法案といいながら、少数の賛成でも改憲案を承認されかねないという国民の懸念に答えていない。そこに提出者の姿勢が現れている。
( 2007年03月30日,「赤旗」)
下村官房副長官の罷免を要求
日本共産党の志位和夫委員長は二十九日、国会内で記者会見し、国際的に重大問題となっている「従軍慰安婦」問題で、安倍晋三首相が謝罪をいうなら、「強制連行を裏付ける証拠はなかった」とした自らの発言を撤回し、「『従軍慰安婦』はいなかった」と発言した下村博文官房副長官を罷免せよと表明しました。
志位氏は、日本共産党の吉川春子議員が二十六日の参院予算委員会で「従軍慰安婦」問題を追及したのにたいし、首相が「内閣総理大臣としておわびを申し上げているわけであります」と「謝罪」しつつも、「強制性」発言をついに撤回しなかったことについて、「これは非常に大きな矛盾だ」と強調しました。
志位氏は、「国会という公式の場で首相としてのおわびを表明した以上、歴史をゆがめる自らの発言は撤回すべきだ」「そうしないかぎり、おわびは本物と受け止められない」とのべました。
志位氏はさらに、下村官房副長官の発言について、「これは『河野談話』という政府の方針を真っ向から否定する発言であり、放置できない重大問題だ」と厳しく批判。副長官発言は民放番組や会見で繰り返し述べた確信犯的なものであり、「官房副長官の職責と両立しないのは火を見るより明らかであり、罷免すべきだ」と強調しました。
また、この問題では、欧米の有力メディアでも、日本政府は日本人の拉致問題には熱心だが、「慰安婦問題」にはあまりに無感覚だという「二重基準」に強い批判が広がっています。志位氏は、「日本人の拉致問題は絶対に許されない国際犯罪であり、解決を求める日本の要求はまったく正当だが、『従軍慰安婦』問題で、歴史をゆがめ、元慰安婦を傷つける発言に固執することは、拉致問題の解決でも障害となっている」とのべました。
そして、安倍首相が、拉致問題は現在進行の問題だが、「従軍慰安婦」問題は「過去の問題」だとして開き直っていることについて、「これは成り立たない。『従軍慰安婦』問題で日本政府がきちんと謝罪して国家的な補償をしていれば一つの歴史の問題になっていたが、それをしないで、しかもいまになって歴史の歪曲(わいきょく)をやれば、まさに現在の問題となる。そうしたのは首相自身だ」と批判しました。
(5面に吉川議員の質問詳報)
( 2007年03月30日,「赤旗」)
いっせい地方選前半戦があす三十日告示(四月八日投票)されます。近畿地方二府四県の日本共産党の立候補者は、府県議選で百九人、大阪、堺、京都、神戸の各政令市議選で計七十一人の合計百八十人。日本共産党は、大企業誘致補助金やむだな大型開発ストップ、国保料・介護保険料を引き下げてくらしを守れ、憲法・平和を守れの願いを託せるのは共産党だけ、と訴え、支持をよびかけています。
日本共産党は各地でアンケート活動にとりくんできました。寄せられた要求で多いのが、「国保料、介護保険料を軽減してほしい」「大型開発や同和事業のむだづかいをやめて」との声。自民、公明、民主など「オール与党」は、国保・介護保険料の引き上げに賛成する一方、むだな公共事業や同和施策を推進してきました。共産党はその責任を問うとともに「大企業誘致の補助金ばらまきをやめて、福祉・くらし、中小企業予算に」「むだな公共事業や不公正な同和予算を削って国保料・介護保険料の引き下げに全力をあげます」「国保証のとりあげをやめさせます」と訴えています。また、安倍首相の「従軍慰安婦」問題発言や改憲手続き法案をめぐる緊迫した動きのなか、「こんどの選挙で『憲法・平和を守れ』の願いを共産党へ」とよびかけています。
こうした訴えやビラに「まったくその通り。共産党がんばれ」などの共感の電話やメールが寄せられています。それだけに、自民、公明、民主の各党・候補者は、悪政を推進してきた市長や知事と一体となってひぼう・中傷をふくめた共産党攻撃を強めています。
公明党の「ハイエナ」などの口汚い攻撃に共産党は「選挙を汚す」と批判。「実績横取り」とのひぼうには、子どもの医療費助成制度の拡充を求める請願の採択に反対してきた「オール与党」の姿を示して反撃しています。
志位委員長、市田書記局長が支持訴え
告示日の三十日には午後六時から、志位和夫委員長が大阪市なんば高島屋前で訴えます。同日は、市田忠義書記局長が京都、滋賀、奈良をかけめぐり、計六カ所で、日本共産党の府県議・市議候補とともに街頭から支持をよびかけます。滋賀県では県庁で記者会見にのぞみます。
三十一日には、志位委員長が京都市内二カ所で日本共産党の値打ちを語り、市田書記局長が大阪市内の二カ所に続いて、和歌山入りし、JR和歌山駅前で訴えます。
四月一日には、市田書記局長が京都市内二カ所と京都・長岡京市の街頭で訴えたあと、兵庫県入りし、姫路市から始まって計四カ所の街頭・屋内演説会にのぞみます。
(2007年03月29日,「赤旗」)
この四月、劇団民芸が木下順二追悼公演として「沖縄」を上演する。戦争と差別にかかわる「日本人の原罪」を追求してきた木下の代表作の一つである。劇中沖縄の表象ともいえる女性主人公が発する「どうしてもとり返しのつかないことをどうしてもとり返す」ということばは、戦後世代をふくめて過去の戦争責任をどう引き受けるのかを問う重みをもってしばしばとりあげられてきた。木下は一貫して「未清算の過去」は戦後まだ清算されていないといい続けていたのであった。
木下が逝って約半年、この国の戦争責任は、「清算」されるどころか過去を隠蔽し、開きなおる方向に大きく振れてきた。三月十六日の閣議は「慰安婦問題」について「強制連行はなかった」という答弁書を決定したが、これにはワシントン・ポストなど有力紙が「拉致問題では北朝鮮を非難しながら、慰安婦問題では強制を否定するのか」と批判した。今統一地方選挙がおこなわれているが、東京都知事選で「ババア発言」や「三国人発言」などを繰り返す「極右」候補の存在は、それは一自治体の問題にとどまらず日本がアジアをはじめ世界から信頼を失い、国際的孤立を深めることになるだろう。
わたしたちは、いまや「どうしてもとり返しのつかない」道を歩いているのだろうか。いや、それでも「どうしてもとり返す」ことが今生きているものの責任なのだ。
(佐)
( 2007年03月29日,「赤旗」)
【ワシントン=時事】在米日本大使館の北野充公使(広報文化担当)は二十七日、従軍慰安婦問題に関して安倍晋三首相の対応を批判する社説を掲載したワシントン・ポスト紙のフレッド・ハイアット論説委員長に対し、「誤った前提で謝罪すべきだと述べている。首相と日本政府が公式に明らかにした考え方を十分に理解していない」と抗議しました。
同紙は二十四日付の「安倍晋三の二枚舌」と題する社説で、首相が慰安婦問題で「戦争責任に目をつぶっている」などと批判し、首相が北朝鮮による拉致問題を支持率回復に利用していると指摘しました。
ロサンゼルス・タイムズ紙が今月、慰安婦問題で対日批判の社説を掲載した際には、兒玉和夫ロサンゼルス総領事が同紙に反論文を投稿しました。同大使館は今回、「逐一紙面上で反論することは必ずしも生産的ではない」として、ポスト紙の論説委員長に個別に抗議する形を取りました。
( 2007年03月29日,「赤旗」)
いっせい地方選挙のさなか、九条改憲に直結する改憲手続き法案をめぐり、国会が緊迫しています。
自民・公明両党は二十七日、同法案「修正」案を与党単独で提出しました。衆院憲法調査特別委は「修正」案の趣旨説明を二十九日に行い、同じ日にすぐ質疑を開始するという日程を、日本共産党の反対を押し切り、自公と民主の合意で決めました。今国会での手続き法成立をねらい、改憲派の動きが急加速しています。
改憲に有利な仕組み
日本国憲法は、改憲について@発議は衆参両院の三分の二の多数の賛成がなければできないAそのうえ国民投票で過半数の賛成を得なければならない―と、他の法律の改廃よりも厳しいハードルを設けています。手続き法案は、そのための手続きを定め、九条改憲を押し通す前提条件をつくるものです。
与党「修正」案は▽最低投票率の規定がなく、有権者の一割―二割台の少数の賛成で改憲が成立しかねない▽公務員など国民の運動に規制をかける▽改憲勢力に圧倒的に有利な有料広告▽改憲推進政党主導の広報など、改憲を通しやすくする仕組みをつくるねらいが明白です。改憲原案作成を目的とする憲法審査会の設置も盛り込んでいます。
これまで与党は、改憲発議のさいに民主党を引き入れるねらいから、手続き法を自公プラス民主の三党の枠組みで共同修正して成立させることをめざしてきました。今回提出された与党「修正」案は、三党の協議で合意された内容を踏まえながら、自民党内の右翼・改憲勢力にも配慮したものです。不公正で反民主的なことはもともとの与党案でも「修正」案でも変わりません。
根っからの改憲派である安倍晋三首相は戦後レジーム(体制)の転換をかかげ、戦後日本が侵略戦争への反省の上に打ちたてた戦争放棄の条項である九条をはじめ、改憲のねらいをあからさまにしています。改憲手続き法は文字通り改憲に直結するものであり、「中立的なルールづくりだ」などという言い訳はどこからみても通用しません。
自民党との「対決」ポーズをとり、「共同修正」を断った民主党も、党内には法案自体に「反対はできない」という議員が多く、手続き法に明確な態度を打ち出せません。憲法改定という国の基本問題で自民と民主は同じ流れに立っているからです。
安倍晋三首相は、「従軍慰安婦」をめぐる「強制」否定発言で内外の厳しい批判にさらされています。このゆがんだ歴史認識は、自民と民主を横断する「靖国派」の共通の基盤です。そんな勢力が主導して、第二次世界大戦の多大な犠牲のうえに築かれた不戦の誓いをくつがえし、日本を「海外で戦争する国」にする九条改憲をすすめていることの危険性は明らかです。
廃案へ力尽くすとき
改憲のための手続き法を拙速に決めるのを望まないという声は、世論調査でも多数を占めます。いま、廃案を求める世論と運動を大きく広げるときです。
日本共産党は戦前・戦後を通じて反戦・平和を貫いてきた党として、九条改憲を許さぬ国民多数派の結集に全力をあげています。
いっせい地方選前・後半戦、夏の参院選と続く一連の選挙で「九条守れ」の世論を集め、日本共産党と国民の共同の力を示すことこそ、九条破壊を許さぬ、きっぱりとした審判になります。
( 2007年03月29日,「赤旗」)
衆院憲法調査特別委員会は二十八日、新潟と大阪で改憲手続き法案についての地方公聴会を開きました。二カ所の公聴会を通じて八人の公述人のうち六人が法案の拙速審議を戒める発言をしました。また、二十七日に国会に提出された与党「修正」案で、公務員の活動規制が新たに示されたことを懸念する発言や、安倍晋三首相の法案審議への介入に批判が相次ぎました。
新潟では四人の公述人中三人が法案の内容を批判。新潟県弁護士会会長の馬場泰氏は、最低投票率の定めがないことから「ごく少数の国民の意思で憲法改正が行われる恐れがある」などの問題点を指摘。特に公務員の活動規制や、教員の地位利用の禁止について「国民の自由な討論を封ずるものだ」と批判しました。
新潟大学名誉教授の藤尾彰氏は、安倍首相を先頭として「従軍慰安婦」問題で戦争への無反省な発言が相次ぐ中での強行の流れについて、「危険な状況だと認識している。何を目指しての法案か透けて見える」とのべました。新潟国際情報大学教授の越智敏夫氏は厳格な改憲手続きを定めた憲法九六条の趣旨から「国民投票法では憲法をなるべく変えにくくするべきだ」と指摘し、憲法順守義務を負う公務員の活動規制に疑問を呈しました。
大阪では関西大学教授の吉田栄司氏が国民主権原理や人権保障の観点から法案を批判。公務員が投票運動に参加できないことは国民的議論の盛り上がりを妨げるとして「法案には憲法違反の疑義がたくさんある」とのべました。弁護士の中北龍太郎氏も、法案は自民党新憲法草案の実現に沿うものであり「国民主権の実現とは言えない」とし、「一から出直し議論するべき」だとのべました。前民主党衆院議員で新時代政策研究会会長の中野寛成氏は法整備に賛成しつつ、「これをセレモニーに終わらせてはならない」と拙速審議を戒めました。
( 2007年03月29日,「赤旗」)
貧困と格差のひろがりが社会問題になるなかで、国の予算のあり方が今ほど問われるときはありません。政府は庶民にはさらなる増税、大企業や高額所得者には減税の二〇〇七年度予算を決めました。
若者の就労支援などの雇用対策費は前年度の約半分(二千百十二億円減)にという驚くべき削減。生活保護費の母子加算も段階的に廃止です。
国民の生活にこれほど冷酷な政治はありません。国民のくらしが見えず、貧困と格差をさらにひろげて平然とする自民・公明の政治にがまんがならない、きびしい審判を下したい。沸々と煮えたぎる思いではないでしょうか。
知事選挙を皮切りに、いよいよ府・県議選、政令市議選。国でも地方でも増税推進の自民、公明、民主に負けられないたたかいです。
各地を駆け回っていますが、どこも前回を上回る勢いの演説会など、うれしい限りです。
私は議席回復を目指して奮闘している選挙区にうかがって、どこでも女性候補が魅力的にたたかい、道を開いている姿に感動しています。
日本共産党員の女性は、女性ゆえにうけるさまざまな困難にぶつかり、日本社会の遅れを知るからこそ社会と政治を変えたいと日本共産党に加わり、草の根のたたかいに力を発揮しているのです。
「女性は子どもを産む機械」などの発言が出てくる古い自民党政治を変えるために、日本共産党の女性議員が進出する議会をつくりたい。
奈良県では共産党推薦の女性候補、西ふみ子さんと自・公対決の知事選挙。告示日に私は心込めて応援しました。
安倍首相の「従軍慰安婦」にかんする発言は世界の批判を浴びています。侵略戦争に反省のない内閣が憲法の九条を変えるという重大な選挙情勢。日本共産党ここにありのたたかいをしようではありませんか。
(衆院議員)
(2007年03月28日,「赤旗」)
貧困と格差のひろがりが社会問題になるなかで、国の予算のあり方が今ほど問われるときはありません。政府は庶民にはさらなる増税、大企業や高額所得者には減税の二〇〇七年度予算を決めました。
若者の就労支援などの雇用対策費は前年度の約半分(二千百十二億円減)にという驚くべき削減。生活保護費の母子加算も段階的に廃止です。
国民の生活にこれほど冷酷な政治はありません。国民のくらしが見えず、貧困と格差をさらにひろげて平然とする自民・公明の政治にがまんがならない、きびしい審判を下したい。沸々と煮えたぎる思いではないでしょうか。
知事選挙を皮切りに、いよいよ府・県議選、政令市議選。国でも地方でも増税推進の自民、公明、民主に負けられないたたかいです。
各地を駆け回っていますが、どこも前回を上回る勢いの演説会など、うれしい限りです。
私は議席回復を目指して奮闘している選挙区にうかがって、どこでも女性候補が魅力的にたたかい、道を開いている姿に感動しています。
日本共産党員の女性は、女性ゆえにうけるさまざまな困難にぶつかり、日本社会の遅れを知るからこそ社会と政治を変えたいと日本共産党に加わり、草の根のたたかいに力を発揮しているのです。
「女性は子どもを産む機械」などの発言が出てくる古い自民党政治を変えるために、日本共産党の女性議員が進出する議会をつくりたい。
奈良県では共産党推薦の女性候補、西ふみ子さんと自・公対決の知事選挙。告示日に私は心込めて応援しました。
安倍首相の「従軍慰安婦」にかんする発言は世界の批判を浴びています。侵略戦争に反省のない内閣が憲法の九条を変えるという重大な選挙情勢。日本共産党ここにありのたたかいをしようではありませんか。
(衆院議員)
(2007年03月28日,「赤旗」)
埼玉県の上田清司知事は「改憲論者」と自称する、ばりばりのタカ派です。知事と二人三脚でタカ派ぶりを競い合っているのが、県議会「オール与党」勢力です。
9条に決着を
二〇〇四年六月県議会で、自民党の大山忍議員は国民保護法にもとづく今後の県の対応について、「日本の自衛隊の規模、安全保障政策の実態から乖離(かいり)した憲法の規定を解釈で取りつくろう手法を重ねるのではなく、…憲法第九条の改正が必要と考える」と知事に質問しました。
上田知事は「集団(的)自衛権も国際法上(日本にも)権利はあるけれども、憲法九条のために行使ができない。…自民党や民主党でもそれぞれの憲法改正草案を作成する方針も定まっており、今後安全保障はどうあるべきかについて、国民の理解を求めて幅広く議論が行われるものだと思っている。この際、憲法九条の在り方について、きちんと決着をつけていただきたい」とのべました。自民・民主による改憲案に乗っかり、九条に手をつけてもいいという考えを示したものです。
その後、上田知事は「従軍慰安婦はいなかった」とまで言いだし、日本の侵略戦争の犠牲になった人たちの心を踏みにじりました。
自民議員の質問に
これを引き出したのは自民党の小島信昭議員の、〇六年六月県議会の一般質問でした。小島議員は県平和資料館(東松山市)を使った平和学習を「(教師が)自分たちの主張やイデオロギーを教育するため、県立の施設が悪用されている」と非難したうえで、「こんな偏った内容、展示で良いのか」とのべ、「すべての県民に自虐的感情を抱かせることなく、真の史実、日本の正確な立場を学べるようにする」よう知事に求めました。
上田知事はこれに食いついて、「従軍慰安婦」発言を展開しました。質問への答弁で、「平和資料館の年表を見ても、『従軍慰安婦問題など日本の戦争責任の論議が多発』とか書いてあるが、東西古今慰安婦はいても従軍慰安婦はいない。軍そのものが連れていったりするわけは絶対ない。こういった間違った記述は修正しなければならん」と表明しました。
知事のこの答弁に、議場の大多数を占める自民党などからは「そうだ」と賛同の声があがりました。
「知事は間違っている」と批判する日本共産党議員の声と、それにかみつく声とで、議場は一時騒然としました。
首相とうり二つ
殺到した批判の声を受けて示した知事の「見解」でも、「慰安婦はいた。慰安所もあった。しかし、軍が徴用した従軍慰安婦がいたという証拠はない」と繰り返しました。「人さらいのように連れて行く強制はなかった」と発言して世界から非難を浴びている安倍首相の発言とうり二つです。
「オール与党」の公明党も、上田知事の「従軍慰安婦」発言に抗議する姿勢はまったく見せません。
それに対し、議会できっぱりと発言の撤回を求めているのは日本共産党県議団です。山岸昭子県議団長は発言のあった六月二十七日に談話を発表し、「知事の答弁は政府の公式見解をも否定するもので、七百万県民の代表として非常に恥ずかしく、重大なことです」と批判しました。
(2007年03月28日,「赤旗」)
日本共産党の志位和夫委員長は二十七日、CS放送・朝日ニュースターの番組「各党はいま」に出演して「従軍慰安婦」問題について語りました。聞き手は朝日新聞コラムニストの早野透氏。
安倍発言――自ら継承を言明した「河野談話」を事実上否定するもの
早野 にわかに、「従軍慰安婦」の問題が再燃しています。アメリカの議会で「従軍慰安婦」問題の決議案が出されて、日本に謝罪を求めていますが、安倍さんの対応を見てどう思いますか。
志位 この問題はどこから起こったかというと、アメリカの下院の外交委員会で、日本に謝罪をもとめる決議案が提起されたのに対して、安倍首相が「慰安婦を強制連行したことを裏づける証拠はない」と、繰り返しのべたことにあるわけです。そして、「アメリカで仮に決議が採択されてもそんなものには従うつもりはない」とものべた。
早野 「謝罪もしない」と、この前も答弁していましたね。
志位 そうだったですね。とくに「強制連行の証拠はない」と。このことを繰り返し言ったということになりますと、これはまず「河野談話」の事実上の否定になるわけです。「河野談話」というのは、たとえば「慰安婦」を集める――徴募の過程でも、「甘言、強圧」など強制が働いたということを認めていますね。
早野 「軍の要請を受けた業者が」と。
志位 「官憲などが直接これに加担したこともあった」と、日本の国家権力が関与したということも認めています。そして、何よりも重大なのは、「慰安所のなかでの生活は、強制的な状況のもとでの痛ましいものだった」とのべている。ここに強制性の核心があります。ですから、安倍発言は、「河野談話」の事実上の否定になります。
勇気をもって証言した元「慰安婦」を二重に辱めることになる
志位 もともと「従軍慰安婦」の問題というのはどういう問題か。日本が植民地にしていた朝鮮、台湾、軍事占領していた中国、東南アジア、こういう国々から八万人から二十万人、あるいはそれ以上ともいわれる規模で、女性たちを戦場に連れて行った。そして「慰安所」に閉じ込めて、性行為を強要した。これは、身の毛もよだつような、非人道的な行為です。これだけのことの全体を、国家権力と軍の強制なしに行うなどということは、およそ不可能なことです。それをいまになって「強制連行の証拠はなかった」と。
「慰安婦」とされた女性の多くは、朝鮮半島から連れて行かれた女性だと言われています。十四歳、十五歳の少女もいた。そういう少女が自分の意思で戦場にいくなどということはありえないことです。そのことは、元「慰安婦」の方々からのたくさんの証言でも裏づけられています。
早野 勇気ある方々が、九〇年代のはじめから名乗り出て。
志位 九〇年代から名乗り出てこられた方々ですね。無数の証言があります。それを公的に認定した裁判所の判決もあります。アメリカ議会での証言もあります。そういう方々から見ると、二重に辱められたということになるわけですよ。一度は戦場で、二度目は安倍首相によって。つまり自分たちの証言はウソだといわれたに等しいことになるわけです。安倍発言がきっかけになって、アメリカでは下院の決議案の賛同者が一気に広がったという事態がおこっています。
歴史認識とともに人権認識が問われている――発言の撤回が必要
早野 「河野談話」との食い違いが問題になっていると。これからどうしたらいいのでしょうか。
志位 私は、首相が、ただ「自分は『河野談話』を継承します」「お詫(わ)びします」と繰り返すだけでは、問題が解決しないと思います。自らがのべた「強制連行の証拠はなかった」ということについて、これは事実とちがいましたと、そこを撤回して詫びないと、問題は解決しないのです。
さらにもう一つ、自分が任命している下村博文官房副長官が、「従軍慰安婦そのものがいなかった」と言い出したでしょう。(下村副長官は)「従軍記者とか、従軍看護婦というのはいたけど、従軍慰安婦はいなかった。慰安婦はいたけれど、軍の関与はなかった」ということをのべた。これは「河野談話」の全面否定になります。これは「河野談話」を覆そうという流れが、今回の問題の底流にあることをしめすものです。
この問題は非常に深刻です。侵略戦争への無反省というだけでなく、日本政府の人権認識の根本が問われているのです。
拉致問題を解決するうえでも、首相は態度をあらためよ
早野 アメリカから安倍首相は拉致問題についてはとても熱心だけれども、「従軍慰安婦」への態度と矛盾しているのではないかという議論が出ていますが。
志位 これは当然の批判です。ワシントン・ポストがそうした趣旨での痛烈な社説をつい最近書きました。私たちが日本国民として、拉致問題の全面解決を訴えていくのは当然の正当な要求であることはいうまでもありません。
早野 これは当然ですね。
志位 ええ。ただ、それならば「従軍慰安婦」問題で、歴史の真実をゆがめたりすべきではない。日本人拉致は絶対に許されない人権蹂躙(じゅうりん)の国際犯罪ですけれども、「従軍慰安婦」問題も女性を強制的に痛ましい状況においやった一大犯罪です。これについてきちんと謝罪して補償すれば一つの解決になります。
早野 国家の補償をすればですね。
志位 ええ。しかしそれをせず、いまになって「強制はなかった」と言い出したら、過去の問題にならない。いまの問題になるんです。
いま日本政府にたいして、「ダブルスタンダード(二重基準)」ではないかという批判があります。つまり拉致問題は熱心だけれども、「従軍慰安婦」の問題は無関心と、これでは人権の基準が「ダブルスタンダード」ではないかという批判ですが、これは当然のものだと思います。
私は、拉致問題を本当に解決するうえでも、「従軍慰安婦」問題で間違った態度をとり続けるということが障害になってくると思います。せっかく拉致問題について国際的な理解がだんだん広がってきたときに、ぶち壊しにするような関係になっている。
早野 なるほど。
志位 私は、拉致問題を解決するうえでも、首相はいまの態度をあらためるべきだということを強く言いたいと思います。
早野 安倍政権の基本的な矛盾に逢着している感じがします。
歴史に反省のない勢力が、憲法を変えることの危険
志位 さらに、もう一つ、憲法(改定)との関係も重大です。
早野 それはどういうことですか。
志位 つまり安倍首相はいま、「自分の任期中に憲法を変える」と宣言し、この国会で改憲手続き法を通すと、たいへん危ない状況をつくっています。その安倍首相が、歴史認識の根本にかかわる問題で、歴史をわい曲する発言をするとなると、そういう勢力による憲法改定は何かということになる。つまり過去の戦争に反省のない勢力が、憲法を変えたら本当に恐ろしいことになる、こういう批判がアジアから起こっています。
この問題は、憲法問題をいよいよ深刻な問題にしています。ですから憲法擁護の訴えを「従軍慰安婦」の問題とのかかわりでも、いま大いに重視してやっていくことが大事だと思っています。
( 2007年03月28日,「赤旗」)
下村氏「慰安婦」発言/歴史の歪曲/中国新華社
【北京=時事】中国国営新華社通信は二十六日、下村博文官房副長官が同日、従軍慰安婦問題について「(強制連行への)軍の関与はなかった」と発言したと伝え、「日本の各野党から、歴史の歪曲(わいきょく)であり、(一九九三年の)河野洋平官房長官談話を否定するものだと強い非難に遭っている」と紹介しました。
ただ、下村副長官の発言を報じた同通信の記事では、この日の参院予算委員会で安倍晋三首相が慰安婦問題に関して「おわび」を表明したことを先に報道。四月の温家宝首相の訪日を控え、配慮を示しました。
( 2007年03月28日,「赤旗」)
解説/外交青書/「対テロ」の米軍再編を補完/中国包囲網の指摘も
外交青書が日本外交の新基軸として打ち出した「自由と繁栄の弧」は、ブッシュ米政権が軍事戦略のなかで、中東から北東アジアなどの地域を指して「不安定の弧」と呼んでいるのと酷似しています。米国はテロリズムを自由、民主主義、基本的人権などの「基本的価値」への敵対者と位置づけ、「不安定の弧」への先制攻撃を正当化しています。在日米軍再編は、そのための拠点として在日米軍を強化するのが目的です。
加えて、「自由と繁栄の弧」とする地域は、中国をぐるりと囲むことから、「中国包囲網」との指摘もあります。実際、外務省では「東アジア共同体」形成で中国が主導権を握ることを警戒。「経済だけでなく政治・社会・価値観まで含めた共同体に深化していくなら、中国とは経済以外の点では異なる部分がある」(外務省幹部)として、数年前から、「価値観」を共有するインドや豪州などとの連携を強化してきました。
一方、安倍晋三首相は今国会の施政方針演説では日本外交の基軸は三本柱とし、「自由と繁栄の弧」には触れていません。また、「自由と繁栄の弧」は地理的に中国を囲む形になり、「賢明な外交だとは思わない」(十六日、阿南惟茂・前駐中国大使)との批判も出ています。
「従軍慰安婦」問題で日本政府の人権感覚が厳しく批判されています。果たして、外交の基本的姿勢として、基本的人権などの「価値観」を強調する資格があるのかも問われています。
(竹下岳)
( 2007年03月28日,「赤旗」)
自民、公明の与党が二十七日に、提出した改憲手続き法案の与党「修正」案は、改憲案を通しやすくするために不公正・非民主的な仕組みをつくるという同法案の本質をあますところなく示しています。その改憲案は、「海外で戦争をする国づくり」のために国民が望まない九条改憲案が柱となっており、手続き法案が九条改憲と地続きであることは明りょうです。
委縮効果も重大
与党は「修正」案提出にむけた最終段階で、国民投票運動にかんする公務員の行動を公務員法上の政治活動として規制する方向を復活させました。これは、「このままでは、公務員による改憲反対運動が繰り広げられ、改憲阻止法案になる」などと主張する右翼改憲団体「日本会議」系議員の圧力を受けて盛り込んだ内容です。
堀越事件でみられたように公務員の活動に対する不当な弾圧が加えられる危険性があり、その委縮効果も重大です。
公務員、教育者を規制する「地位利用による国民投票運動の禁止」については、「罰則を削除した」といいますが、公務員法違反者は罰則が科せられます。「地位利用」も行政処分で対処するとされており、公務員・教育者から主権者としての自由を奪う内容です。
その上「修正」案では、改憲手続き法案で初めて導入される「組織的多数人買収・利害誘導罪」を残しました。組織により「金銭」「物品その他の財産上の利益」等を供与して勧誘するなどの行為を処罰するという規定です。これを口実とした警察による尾行捜査など、市民運動への不当な介入を招きかねません。
問題点そのまま
その上、これまで指摘されてきた重大な問題点もまるごと残されています。
最大の問題点は、国民投票での最低投票率の定めがないため、どれだけ投票率が低くても投票が成立することです。「国民の過半数」を有効投票総数の過半数としていることとあわせ、有権者の一、二割台の賛成でも、改憲案の承認とされかねません。
多額の資金が必要なテレビなどの有料広告は投票日二週間前まで自由。多額の政党助成金を受け取り、財界をバックにした改憲勢力が、金にあかせて、CMを買い占める危険もあります。
国会の常設機関として、改憲原案の審査、提出ができる「憲法審査会」の設置も盛り込まれています。
提出者がいう「改憲のためでも護憲のためでもない、公正中立なルール」(昨年六月一日、自民・船田元議員)といえるものではありません。
なぜ、そうなるのか。与党がこれだけ不公正・非民主的な仕組みをつくるのは、与党が目指す改憲が国民の根本的利益に反するものだからです。自由で民主的な議論によって、「戦争をする国づくり」という改憲の本質があばかれ、改憲案が否定されることを恐れているのです。
重大なのは、一連の「従軍慰安婦」問題で、旧日本軍の関与や強制性を否定する発言を繰り返している右派議員が公務員の活動規制強化でも暗躍していることです。過去の戦争に反省のない勢力が、憲法を変えて「海外で戦争をする国」を狙っているのです。
安倍晋三首相は任期中に改憲を強行するといい、手続き法案を今国会中に通せと号令をかけています。それだけに、「憲法改定への第一歩を許さない」という国民の意思を、選挙でも示すことが、大事になっています。
(藤原 直)
( 2007年03月28日,「赤旗」)
日本共産党の緒方靖夫副委員長・国際局長は、森原公敏国際局次長とともに、二十七日午後、党本部で、訪日中の中国中日関係史学会の武寅会長(中国社会科学院副院長)の一行と懇談しました。
懇談では、日中両国関係の現状と問題点、発展の方向、日本側の歴史認識、「従軍慰安婦」問題、六カ国協議、東アジアの平和と安定の課題など多岐にわたって意見交換しました。
懇談には、中国側から張雲方史学会副会長、徐啓新秘書長、張旺棟副秘書長らが出席しました。
( 2007年03月28日,「赤旗」)
日本共産党の吉川春子議員が二十六日の参院予算委員会で「従軍慰安婦」問題を追及したのに対し、安倍首相は「(元慰安婦に)今、私はここで内閣総理大臣としておわびを申し上げているわけであり、河野官房長官談話で申し上げている通り」と述べる一方、「強制性はなかった」との自身の発言の取り消しは明言しませんでした。このやりとりを、外国紙や通信社が相次ぎ報道しました。
米ニューヨーク・タイムズ紙二十七日付は、「日本の首相、戦時中の慰安婦に国の責任を否定するも謝罪」との見出しの記事を掲載。「安倍氏は国の責任を認めることを繰り返し拒否」しつつも、「吉川氏に元慰安婦の人たち(そのほとんどはいま八十代だ)に述べることはないかとただされ、安倍氏は『私は元慰安婦の方々には同情し、そのような立場に置かれたことにおわび申し上げる』と述べた」と紹介しました。
また、ロイター通信は二十六日、「第二次世界大戦中に女性に性奴隷として仕えることを強要させた政府の関与を否定し、海外で批判を浴びている安倍首相は、『いま、ここで首相としておわびを申し上げている』と述べた」「しかし、今月初め、日本軍あるいは政府が強制したという証拠はないとした言明は撤回しなかった」と伝えました。フランス通信も同様の記事を配信しました。
( 2007年03月28日,「赤旗」)
「慰安婦」問題での下村博文官房副長官の発言が、韓国で怒りを呼んでいます。二十七日には、第一野党ハンナラ党が下村氏の解任を求める立場を表明。三十一日からの日韓外相会談を前に、韓国政府に強力な対応を求める声が高まっています。
「親が娘を売った」と述べた下村氏の発言について、与党・開かれたウリ党の崔宰誠スポークスマンは二十七日の会見で、「もはや口頭警告という次元の問題でない。政府が外交的次元での対策を模索するべきだ」と求めました。
ハンナラ党の黄祐呂・事務総長は同日、「(元慰安婦の)女性たちだけでなく、その両親までも辱めるもの」で「全人類がこのような妄言を永遠に記憶するだろう」と厳しく批判。同党の羅卿〇スポークスマンは同日、下村氏の解任を求めるとともに、政府に明確な抗議と強力な対応を求めるとの立場を表明しました。
韓国メディアは、参院予算委員会での安倍首相の「おわび」発言を、「日本軍による慰安婦の強制動員は認めることができないという見解に相変わらず固執しており、心からの謝罪とは距離が遠い」(毎日経済新聞)と報道。安倍政権への厳しい見方は続いており、三十一日の日韓外相会談での「慰安婦」問題の取り扱いも関心を集めています。
( 2007年03月28日,「赤旗」)
行動伴ってこそ謝罪は価値ある/豪在住の元「慰安婦」
【ワシントン=鎌塚由美】「慰安婦」問題で安倍首相が国会答弁で「おわび」を口にしたことについて、オランダ出身の元「慰安婦」のジャン・ルフ・オハーンさん(オーストラリア在住)は二十七日、「おわび」を評価しつつ、「行動の伴う謝罪を」と訴えました。
二月に米議会で開かれた公聴会で、元「慰安婦」として証言したオハーンさんは、安倍首相の発言について「私は喜んでいる。これは、一歩前進だ。謝れという国際的な圧力に安倍氏が反応したということだ」と歓迎。その上で、「さあ、次の一歩は、生き残った女性たちに対し謝罪することだ。謝罪とは行動がともなってこそ価値がある」と述べました。
( 2007年03月28日,「赤旗」)
日本共産党の志位和夫委員長は二十七日午後、党本部で、参議院の招待で来日中の路甬祥・中国全国人民代表大会(全人代、日本の国会に相当)常務委員会副委員長の一行と会談しました。志位委員長と路副委員長は二〇〇五年にも会談をおこなっており、二年ぶりの再会を喜びあいました。
参議院と全人代との定期交流のために来日した路副委員長は、交流を通じて相互理解や信頼を深めることは、日中関係の改善と発展にもよい影響を与えると表明するとともに、日本共産党が日中関係の促進のために貢献してきたことに感謝をのべました。
志位委員長は、昨年十月の安倍首相の訪中以来、日中関係に前向きの変化が生まれたことを評価し、路副委員長の訪日や四月に予定されている温家宝首相の訪日が両国関係を前進させるものとなるよう期待を表明。同時に、歴史問題の解決では日本は出発点に立っているにすぎないと指摘し、「従軍慰安婦」問題で「河野談話」を事実上否定する安倍首相の発言への批判的立場をのべました。そして、この動きの根底には侵略戦争を正当化する異常な流れが存在しており、その根を断ってこそアジア諸国との本当の友好が可能になるとして、日本共産党はそのために力をつくすと強調しました。
また、「慰安婦」問題をめぐる国際的な批判について、日本は歴史認識とともに人権認識も問われていると指摘。北朝鮮による拉致問題を解決するうえでも、安倍首相は誤った発言をただす必要があるとのべました。
路副委員長は、志位氏の発言にたいし、日中関係の前進について的確な評価をしていると応じました。さらに、中国の外交政策を説明するなかで、覇権主義や紛争の武力解決に反対し、紛争は国連の枠組みで平和的に解決することを堅持するとのべました。志位委員長はこれにたいし、国連憲章にもとづいて紛争を平和的、外交的に解決するという日本共産党の立場とまったく一致すると応じました。
路副委員長は日本共産党の政治理念や歴史認識、日本の未来への責任感に敬意を表したいとのべ、志位委員長は日本が歴史の自己検討によって東アジアの平和の共同体づくりに貢献できるよう努力していきたいとのべました。
会談には日本共産党から穀田恵二国対委員長、西口光国際局長代理、森原公敏、神田米造両国際局次長、笠井亮衆院議員、仁比聡平参院議員が、中国側から全人代の王英凡・外事委員会副主任委員、王雲龍、張春生、周友良、李主其、劉山在、陳章良、倪岳峰、竇樹華の各全人代代表、在日中国大使館の孔鉉祐公使らが同席しました。
( 2007年03月28日,「赤旗」)
自民党と公明党は二十七日、九条改憲の条件づくりとなる改憲手続き法案(国民投票法案)の「修正」案を国会に提出しました。安倍晋三首相が指示する「今国会での成立」にあわせて提出したもので、公務員の活動規制を強化する方向を盛り込むなど、反動的な与党原案に近づけた内容となっています。(2面に関連記事、4面に「修正」案要綱)
「修正」案では、刑事罰を伴う公務員法上の政治活動の禁止を国民投票運動に及ぼす方向にしました。公務員・教員には「地位利用」を名目にした投票運動規制も維持しました。
公務員の活動規制は、「従軍慰安婦」問題で「強制の事実はない」などと強硬に主張し続ける右翼改憲団体・日本会議の国会議員懇談会のメンバーらが、国民投票での市民運動やマスコミの活動への規制を強化するよう圧力を強める中で、特に「重視」していたもの。「機関紙やビラを作成して組織的に配る行為」も検討対象としています。
改憲案を通しやすくする仕組みをつくるため、投票が成立するための最低投票率も設けず、改憲案承認の要件である「過半数の賛成」を「有効投票の過半数の賛成」としています。このため、有権者の一、二割の賛成で改憲が成立しかねません。
資金力に勝る改憲派に有利な有料放送CMについては投票日前十四日間の禁止のみで、無料広告の開放は政党中心の仕組みのままです。市民団体の活動への不当介入を招きかねない「組織的多数人買収罪」の規定も若干修正のうえ残しました。
法案提出後、記者会見した自民党の保岡興治・衆院憲法調査特別委理事は「最後には(自公民)三党合同の修正案を得られる可能性がある」と指摘。衆院通過について「四月中旬がめど。それぐらいに参院に送らないと今国会での成立がきびしくなる」とのべました。
「修正」案のポイント
▽最低投票率は設けない。有効投票総数の過半数で承認
▽公務員・教育者の地位利用による投票運動は禁止
▽公務員の政治的行為の制限は適用除外とはしない
▽テレビなどの意見広告は投票日前二週間は禁止する
▽政党原案の提出・審査を行う憲法審査会を衆参両院に設置する
( 2007年03月28日,「赤旗」)
安倍内閣が狙う改憲手続き法案の成立を阻止しようと、幅広い市民団体と個人が呼びかけた「ストップ!改憲手続き法 国会へ行こうアクション」が二十六日おこなわれ、国会前に集まった約六百人がヒューマンチェーン(人間の鎖)とリレートークで廃案を求めてたたかう決意を示しました。参加者はペンライトやキャンドルを掲げ、労働組合や市民団体の代表が次々と発言しました。
VAWW―NETジャパン共同代表の西野瑠美子さんは「従軍慰安婦」問題での安倍首相の発言を批判し、「二度と戦争を起こさず、世界のどこでも戦争が起こらないようにするために改憲手続き法案に反対します」と訴えました。
日本自治体労働組合総連合(自治労連)の田中章史副委員長は高知県で六つの地方議会が同法案に対し反対や慎重審議を求める意見書を可決したことを紹介。職場での学習や宣伝などの取り組みを全国ですすめていることを語りました。
青年からは、各地で高校生や大学生が平和や憲法九条について語りあい、行動を始めていることが紹介されました。
日本共産党の笠井亮衆院議員は、中央公聴会では与党側の公述人からも法案への疑問が出されるなど「このまま決めていいという人はだれもいなかった」と指摘。与党が衆院通過を強行しようとしていることを批判し、「みなさんとともに法案の狙い、問題点を国民の間に知らせ、強行を許さないために頑張ります」と語りました。
( 2007年03月27日,「赤旗」)
日本共産党の吉川春子議員は二十六日の参院予算委員会で、「従軍慰安婦」問題で旧日本軍による強制を認めた一九九三年の河野洋平官房長官談話について、安倍晋三首相が「継承」を表明しながら、強制性を否定する発言を繰り返していることを批判。軍による強制の証拠を具体的にあげ、発言の撤回と被害女性への謝罪を迫りました。
吉川氏は、「河野談話の内容と『強制性はない』という安倍首相の発言は矛盾する。談話を受け継ぐなら発言は取り消すべきだ」と迫りました。
安倍首相は、具体的な答弁を避け、「河野談話を継承していく」と繰り返しました。
吉川氏は、米下院外交委員会でも、オランダ人の「慰安婦」被害女性が、日本軍の捕虜収容所から「慰安所」に連行された事実を証言していることを麻生太郎外相に確認。安倍首相に「これは強制性の証拠ではないか」とただしました。
安倍首相は、「このオランダ人女性も含めて官房長官談話は出されている。ちなみに軍がその事実を知ってただちに慰安所を閉鎖した」などと述べました。
吉川氏は、河野談話を閣議決定するとともに、「首相が被害者に直接会い、謝罪すべきだ」と迫りました。
( 2007年03月27日,「赤旗」)
下村博文官房副長官が二十五日、民放ラジオ番組でのべた「従軍慰安婦」問題をめぐる発言は次のとおりです。
国内的には狭義と広義(の違い)は重い意味がある。「従軍慰安婦」というのは、なかった、と。河野談話も「いわゆる従軍慰安婦」としている。従軍看護婦とか従軍記者はいたが、当時、従軍慰安婦はいなかった。河野談話の中でも、はっきりでていない。ただ慰安婦がいたことは事実。どこの戦争、どこの国でも過去にはあった。慰安婦の人からすれば、軍が関与していなくても、日本も昔、貧しい時代に女郎屋に行ったという時代があった。同様に親が娘を売ったということはあったと思う。娘からすれば、それは強制だ。だが日本軍が関与していたわけではない。その線引きは国内的には分かるが、海外的に米国で人権問題と言われれば分かりづらい。一人ひとりの米国の政治家にあって、決議されないように努力を水面下で外務省を通じてやっている。
( 2007年03月27日,「赤旗」)
下村博文官房副長官は二十六日午後の記者会見で、従軍慰安婦問題について「(強制連行への)軍の関与はなかった」と述べ、旧日本軍による強制を否定しました。同長官の発言は、ラジオ番組での暴言につづくもので、慰安所設置や慰安婦の移送などへの旧日本軍の関与を認め、おわびした一九九三年の河野洋平官房長官談話を真っ向から否定するものです。
下村副長官は会見で「個人的発言」としながらも、慰安婦の強制連行に関し「直接的な軍の関与はなかったとわたし自身は認識している」と発言。さらに、記者団が慰安婦の募集についての見解をただしたのに対し、「具体的にということではなく、直接、間接的に軍の関与は明らかでなかったと平林博・内閣外政審議室長(当時)は国会答弁している」とのべました。
また、下村副長官は米紙ワシントン・ポストが慰安婦問題で「首相は戦争犯罪に目をつぶっている」などと批判していることに関しては「個別の記事に逐一反論するのは生産的ではない。関係国の理解が得られるよう引き続き努力を行っている」と述べました。
( 2007年03月27日,「赤旗」)
旧日本軍「慰安婦」問題をめぐる下村博文官房副長官の発言について、韓国メディアは二十六日、「慰安婦」問題での政府の責任を否定する安倍晋三首相の主張を繰り返したものと報道しました。
朝鮮日報、京郷新聞などは「日本の官房副長官慰安婦 親が売ったもの=vとの見出しで報道。ニュース専門チャンネルYTNは「発言は、軍当局や政府官吏が慰安婦強制動員に直接関与した証拠がないという安倍総理の主張を繰り返したもの」と述べました。
( 2007年03月27日,「赤旗」)
下村発言問題/韓国与党厳しく批判
韓国与党・開かれたウリ党の徐恵錫スポークスマンは二十六日の記者会見で、「慰安婦」問題をめぐる下村博文官房副長官の発言について、「万人が憤怒する妄言」「厚顔無恥だ」と厳しく批判しました。
徐氏は、「(慰安婦は)親が娘を売った」とする下村氏の発言について「憤怒を通り越し、言葉を失う」と述べた上で、日本人拉致問題での日本政府の立場と比較し、「二律背反的だ」と指摘。「日本政府が自国の拉致被害者の問題を最優先の課題と考えるなら、当然、自国が犯した従軍慰安婦に対しても反省と補償を伴うべきだ」と述べました。
( 2007年03月27日,「赤旗」)
日本共産党の緒方靖夫副委員長・参院議員は二十六日、笠井亮国際局次長・衆院議員とともに、訪日した韓国超党派議員の研究会「韓民族平和ネットワーク」代表の高鎭和(ハンナラ党)、李永順(民主労働党)両議員と国会内で会談しました。
最初に韓国側から、六カ国協議の進展にともなう北東アジア情勢の変化と先月の同協議合意履行の課題、「従軍慰安婦」問題、日本の憲法「改正」問題、在日韓国・朝鮮人の人権問題について発言がありました。
これを受けて緒方氏は、六カ国協議に対する日本政府の立場、拉致問題解決の重要性とともに「慰安婦」問題での安倍政権の立場の問題点、在日韓国・朝鮮人の参政権問題などについて発言。笠井氏は、憲法問題などを発言しました。
また、両国の政治情勢の特徴などについても意見交換しました。
会談を通じて、情勢や課題についての生きた意見交換が有益であることを確認した双方は、「こうした意見交換の場を、今後も可能な形で持ちましょう」と述べ合い、和やかに会談を終えました。
( 2007年03月27日,「赤旗」)
安倍晋三首相は二十六日、米紙ワシントン・ポストが、北朝鮮による拉致問題とは対照的に従軍慰安婦問題で「戦争犯罪に目をつぶっている」と首相の姿勢を厳しく批判したことについて「(拉致と慰安婦問題は)全く別の問題だ。拉致問題は現在進行形の人権の侵害だ」とのべました。
首相は「従軍慰安婦の問題は、それが続いているというわけではない」と強調する一方、拉致については「まだ日本の方々が北朝鮮に拉致されたままである、という状況が続いている」と指摘しました。国会内で記者団の質問に答えました。
この発言は、従軍慰安婦問題を「過去の問題」として切り捨てる姿勢を示したもの。日本政府は人権問題で二重基準をとっているとの国際的批判に対する開き直りであり、新たな批判は免れません。
( 2007年03月27日,「赤旗」)
日本共産党の志位和夫委員長は二十六日、遊説先の甲府市内で記者会見し、いっせい地方選の大争点の一つとして、「憲法九条を守るかどうかを政党選択の大問題として提起し、憲法擁護の願いはこぞって日本共産党へと訴えたい」とのべるとともに、下村博文官房副長官が「従軍慰安婦はいなかった」と発言したことを厳しく批判しました。
このなかで志位氏は、「今回の選挙は地方選ではあるが、憲法九条に対する各党、各候補の態度が重大な争点になっている」として、二つの理由をあげました。
一つは、憲法改定をめぐる国会状況が緊迫さを増していることです。志位氏は「安倍晋三首相は任期中に改憲を強行するといい、改憲手続き法案を今国会中に通すと号令をかけている。憲法改定への第一歩を許さないという国民の意思表示を今度の選挙でくだすことはたいへん大事だ」とのべました。
もう一点は「歴史問題」が、改憲動向と重なりあって事態を深刻にしていることです。志位氏は、「従軍慰安婦」問題で、安倍首相が「強制連行を裏付ける証拠はない」とくりかえし、日本の人権認識の基本が米国はじめ世界中から問われていると指摘しました。
そのさなかの二十五日、下村官房副長官が民放ラジオ番組で、「従軍看護婦とか従軍記者はいたが、『従軍慰安婦』はいなかった。ただ、慰安婦がいたことは事実。親が娘を売ったということはあったと思う。だが、日本軍が関与していたわけではない」とのべたことを厳しく批判。志位氏は、「ロイター通信や韓国各紙も重視して報道しているが、非常に重大な発言だ。旧日本軍の関与と強制を認定して謝罪した『河野官房長官談話』(一九九三年)を正面から否定する発言であり、官房副長官の発言として絶対に許すわけにはいかない。官房副長官の職責と両立しない」とのべました。
志位氏は、「一方では改憲手続き法案、一方では『従軍慰安婦』問題での歴史のわい曲ということが、選挙のさなかに重大問題となった。戦争にまともな反省のない勢力が憲法九条をかえて、『海外で戦争をする国』づくりにのりだす――ここにアジア諸国の不安と批判が広がっている」と指摘。「今度の選挙で、これを絶対に許さず、憲法九条を守りぬくという願いを日本共産党に託してほしいということを大いに訴えたい」と強調しました。
( 2007年03月27日,「赤旗」)
安倍内閣が発足してから二十六日で六カ月になります。「美しい国づくり」を掲げたこの半年を、基本路線、外交、内政の三つの角度からみました。
基本路線/亀裂呼ぶ「強気」運営
全国紙で最新の世論調査となった「読売」二十日付で安倍内閣の支持率は43・8%で、不支持43・9%。これで主要メディアですべて、不支持が支持を上回る結果となりました。(表)
安倍首相は「支持率のために政治をやるのではない。戦後六十年たって、いまこそ後回しになってきた改革をやらなければならない」(五日の参院予算委員会)と居直っています。教育「改革」と改憲の二つで政局の「反動的打開」を狙う姿勢を強調。九条改憲と地続きの改憲手続き法案では、「三権分立」を侵して成立時期まで指示し、「従軍慰安婦」問題でも「強制性」を否定するなど、「安倍カラー」を鮮明にしています。
「靖国」派は、「強気の政権運営を」(自民党の古屋圭司衆院議員)などと歓迎。右翼改憲派議員でつくる日本会議国会議員懇談会のメンバーが手続き法案のいっそうの改悪にむけて勉強会を開いたり、「安倍外交」を支援する議連づくりにうごいています。
しかし、柳沢伯夫厚生労働相の「女性は産む機械」発言、松岡利勝農水相の光熱水費疑惑などで、閣僚をかばい続ける首相の姿勢には国民から批判が集中しています。歴史教科書攻撃などで盟友となった衛藤晟一前衆院議員の復党についても、自民党の党紀委員会で僅差(きんさ)で認められるなど、党内の不満の強さを示しました。
ある政府関係者は安倍内閣の政権運営について、「固定的な支持層をひきつけ、三割の支持率を維持できれば十分だということだ」と解説します。「靖国」派と一体の政権運営は、党内でも、国民との間でも亀裂と矛盾をいっそう深めることは確実です。
外交/「靖国」の地金で孤立
「官憲が家に押し入って人さらいのごとく連れて行ったというような強制性はなかった」
「従軍慰安婦」問題で強制性を否定した、この安倍首相の発言が国際的な非難をあびています。
きっかけは、米下院外交小委員会で審議されている「従軍慰安婦」問題での謝罪要求決議。安倍発言で決議案への支持議員が六倍化し、シーファー米駐日大使が安倍発言を「破壊的な影響がある」と警告する事態になっています。
中韓両国の外相が批判したほか、シンガポールやオランダ、オーストラリアの首相も不快感を表明。国内で「固定的な支持層」をひきつけようと、「靖国」派の地金を出したとたん、国際的に孤立した格好です。
国際社会の懸念は、侵略戦争を肯定する勢力が憲法改悪をすすめようとしていることにも向けられています。シンガポール紙の聨合早報は首相発言の背景に「改憲に執着する首相の政治信念がある」と指摘しています。
実際、首相は「任期中の改憲」を掲げると同時に、それ以前にも海外での武力行使を可能にする集団的自衛権の行使にむけた「研究」に着手。ブッシュ政権のイラク増派をいち早く支持しただけでなく、自衛隊のイラク派兵の二年延長方針を固め、派兵恒久法の検討まですすめるなど、日米同盟強化で突出しています。
しかし、侵略戦争を肯定する一方で、憲法改悪によって「海外で戦争する国づくり」をめざす方向は、日本外交をいっそうの行き詰まりに陥れるだけです。
内政/暮らしの痛みに鈍感
安倍政権はこの半年、「貧困と格差」拡大の大本にある「構造改革」路線を加速させました。
大企業の成長が経済を拡大させる≠ニして、大企業・大資産家へは減価償却制度見直しや証券優遇税制延長で一兆七千億円以上の減税の大盤ぶるまい。庶民へは定率減税廃止で一兆七千億円の大増税を強いています。
通常国会では、貧困の広がりを認めようとせず、庶民の暮らしの「痛み」に鈍感な安倍首相の姿があらわになりました。
日本共産党の志位和夫委員長が、OECD(経済協力開発機構)のデータにもとづき、子どものいる世帯の貧困率の拡大の深刻さを追及しても、その事実すら認めませんでした。母子家庭にたいする児童扶養手当の削減中止を拒否するなど、冷たい姿勢です。
一方で、世論を意識し、「再チャレンジ」や「成長力の底上げ」戦略などの一定の対応をとることを迫られましたが、貧困と格差を生んだ大本に手を着けようとしないため、なんら改善策を示すことはできません。
教育「改革」に執念
安倍首相は、政権発足直後に教育再生会議を発足させるなど、教育「改革」を最重要課題に位置付けています。
昨年成立した改悪教育基本法の具体化として、教育関連三法案を三十日にも閣議決定し、今国会で成立させる構えです。
三法案は、「不適格教員の排除」を名目に教員免許更新制などを導入。国による教員の統制を狙います。また、教育委員会「改革」として、国の教育への介入を強めようとしています。同案には、与党内や地方団体から反発の声があがるなど矛盾もあります。
支持・不支持が逆転した安倍内閣支持率
実施日 支持 不支持
「朝日」 3/10、11 38 41
「読売」 3/17、18 43.8 43.9
「毎日」 2/24、25 36 41
共同通信 3/11、12 39.9 42.2
( 2007年03月26日,「赤旗」)
「安倍首相は、旧軍によって恐怖を強いられた多くの女性に、拉致被害者にたいするのと同じ同情を持てないでいる」―ロサンゼルス・タイムズ紙(三月十八日付)は、日本政府は拉致問題では「北朝鮮を非難する」が、「従軍慰安婦」問題では「強制を否定している」とのべ、拉致問題で日本政府の立場を支持する人たちを困惑させていると報じました。
日本政府は、日本人の人権侵害については声を大にするが、自国の行為による外国人の人権被害には無感覚で、これでは、人権問題での対応は二重基準(ダブルスタンダード)ではないかという批判が、世界に広がっています。日本政府が北朝鮮による日本人拉致問題を国際人権問題として国際社会に強くアピールし、その理解がひろがってきた矢先に、です。拉致問題は解決されなければならず、そのためにも、「慰安婦」問題をあいまいにしておくことはできません。
いま世界では、「従軍慰安婦」問題と拉致問題の二つは、関連(リンケージ)していると認識されるようになっています。
米紙ボストン・グローブ紙(三月八日付)の社説は、「日本の過去の誇りをよみがえらせようとする安倍(首相)の情熱は、国内政治では当初に効果を発揮したが、国外では悪いときに日本を孤立させることになった」と報道。安倍首相の発言を「日本を孤立に追い込むもの」と指摘し、拉致での北朝鮮の姿勢と「慰安婦」での日本の対応を同列に並べて論じました。
三月に日本を訪問し、日本と准同盟国の関係を確認したオーストラリアのハワード首相は、安倍首相との会談を前にして、「慰安婦」問題について「強制ではなかったなどというどのような意見も、私は完全に拒否するし、それは他の同盟国からも完全に拒否されている」(オーストラリアン紙十二日付)と言明しています。
日本政府の人権認識への深刻な提起
日本は過去の侵略戦争を本当に反省しているのか≠ニいう批判は、これまで、直接の侵略と植民地支配を受けたアジア発でした。
しかし今回は、アメリカの議会とマスメディアが先頭をきって日本政府の対応を批判するというアメリカ発の様相をみせ、欧米諸国にひろがっています。アメリカ議会もマスメディアも、日本が自国の「同盟国」であることを意識して、対日批判にはたえず配慮がありました。この間の連続的な厳しい対日批判は、そうした「堤防」が決壊しつつあるといわれる状況です。
これまで歴代の内閣は、「慰安婦」問題を一九九三年の河野官房長官談話の立場で対応してきました。この談話は「慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送については、旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した」こと、「慰安婦」の募集についても「甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、さらに官憲等がこれに加担した」ことを認めて、「慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった」とし、「心からのお詫(わ)びと反省の気持ち」を表明したものです。
この談話が関係国から十分なものとみなされていなくても、安倍首相にはこの立場の継承を行動で示すことがアメリカのような「同盟国」からも求められていたのです。
しかし安倍首相は、「(河野談話について)当初定義されていた強制性を裏づける証拠がなかったのは事実だ」(三月一日、官邸での会見)とのべました。これは、河野談話を継承するといいながら、その立場を後退させているという批判となりました。加えて、「米下院で慰安婦問題の決議案が通っても謝罪しない」(三月五日、参院予算委員会答弁)と発言したことは、いっそう怒りをひろげたのです。
さらに、問題が深刻化しているさなかの十六日、「慰安婦」問題での質問主意書にたいする安倍首相名の答弁書は、「政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかった」としたのです。
ニューヨーク・タイムズ紙(十七日付)は、この答弁書をとりあげ、「日本が第二次大戦中の性奴隷への関与を再否定」と報じ、シーファー駐日米大使の「私は慰安婦の証言を信じる」「彼女たちは強制的に売春を強要されたのだと思う。つまり、日本軍にレイプされたということだ」との発言を引用して、安倍首相の立場を非難しました。
この答弁書は、河野談話の否定と受け止められ、国際世論への挑戦とみなされています。日本が植民地としていた地域で多くの女性が日本軍の「慰安婦」にされ、レイプされたという広範かつ継続的な人権侵犯は軍の強制なしにはありえないからです。
安倍政権は「人権と民主主義の普遍的な価値を追求する外交」をうたっていながら、「慰安婦」問題も拉致問題もともに同じ重大な人権侵犯問題であるにもかかわらず、日本人の人権問題にしか関心がないではないか、「慰安婦」問題にも同じように重視して対応しなければ、到底国際的な理解はえられない―という非難です。こうして、日本政府の人権認識は二重基準ではないかという深刻な疑問が提起されているのです。
この問題は日朝協議の今後にもかかわる
先月、北京での六カ国協議では、共同文書が採択され、北朝鮮の核兵器とその開発計画放棄にむけたロードマップ(行程表)実現のための具体的な措置とともに日朝協議をふくむ作業部会の設置が合意されました。日朝間の課題は、拉致、過去の清算を含む二国間の懸案解決および国交正常化です。
いま重大化している「慰安婦」問題は、北朝鮮との過去の清算と直結しています。北朝鮮には、かつて植民地支配のもとで多数の女性が「慰安婦」として戦場にかりだされた痛恨の歴史があります。日本政府が過去の清算をすすめ、拉致問題をふくめ協議を前進させるためには、日本の過去に真剣な態度で向き合うことが強く求められています。そうでなければ、拉致問題での国際的な理解は到底得られるものではありません。
拉致問題の解決には、国際社会の理解と支援が不可欠です。だからこそ、日本政府はアメリカ政府をはじめ国際社会に訴え、支援を求めてきました。
しかし、日本政府の人権認識での二重基準という批判のひろがりは、その理解と支援を後退させています。インターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙(三月二十二日付)は、安倍政権が「従軍慰安婦」問題での謝罪を拒否したことは、日本が売り込もうとしている「普遍的人権」重視外交を困難にし、それは「もろ刃の剣」となるだろうと論評しました。
拉致問題のよき理解者としてアメリカ政府を動かしてきたシーファー大使自身が、「河野談話からの後退と米国内で受け止められることは破壊的な影響がある」とのべました。「慰安婦」問題にたいする安倍首相の対応いかんで、拉致問題提起の道義的基盤を一撃で失ってしまうという警告でもあります。
人権問題は国際基準で対応を
安倍首相は十一日、NHKのインタビューで「河野談話を継承していく。当時、慰安婦の方々が負われた心の傷、大変な苦労をされた方々にたいして心からなるおわびを申し上げている」とのべました。
しかし、アメリカのメディアはこの発言をほとんどとりあげませんでした。そんな通り一遍のことで、問題発言を帳消しにしないという強いメッセージの表明です。発言すると誤解を招くし、非生産的になるので話さないという首相の対応は、まったく通用しません。
アメリカから安倍政権に求められているのは、下院決議案にあるように、首相の公式の謝罪、性の奴隷化などなかったという主張にたいする明確な公式の否定の言明などであり、この点は、メディアの要求も共通しています。
人権が差別なく享受されるべき普遍的なものであることは当然のことです。日本政府の人権認識はそれに反していると国際社会が根本的な異議申し立てをおこなっている現状は、深刻です。この議論をきちんと受けとめて、人権問題で独りよがりに陥らず、本当の意味で国際基準の対応が求められているのです。
(檀 竜太)
( 2007年03月26日,「赤旗」)
米紙ワシントン・ポスト二十四日付(電子版)は、「従軍慰安婦」問題について「安倍晋三(首相)の二枚舌」と題する社説を掲載し、安倍首相は北朝鮮の拉致問題に熱心なのと対照的に、「日本自身の戦争犯罪には目をつぶっている」と、その姿勢を厳しく批判しました。
社説は、北朝鮮の拉致問題についての日本政府の態度を「(被害者についての)回答を受け取るまで関係改善についての話し合いを一切拒否している」と説明。その一方で、安倍首相が「慰安婦」問題での「日本の責任の受け入れを後戻りさせようとしている」ことを「奇妙であり、侮辱的である」と指摘しています。
「慰安婦」問題での歴史的な記録は「北朝鮮が日本人を拉致した証拠と同じく信頼できる」と強調。首相が「慰安婦に対する日本の残虐な取り扱いを認めた一九九三年の政府声明(河野官房長官談話)を後退させた」ことは、「主要民主主義国の指導者としての恥ずべきことである」と批判しています。
社説は、「安倍氏が拉致問題で国際的支持を得ようとするなら、日本自身の犯罪の責任を率直に受け入れ、彼が名誉を傷つけた犠牲者たちに謝罪すべきである」と結んでいます。
( 2007年03月25日,「赤旗」)
「慰安婦」問題で「狭義の強制性はなかった」とする安倍晋三首相の発言が波紋を呼んでいます。「性奴隷たちの古傷を開く首相の否定」と安倍発言を大きく伝えた米紙ニューヨーク・タイムズ。外交問題に発展することを示唆した米週刊誌『タイム』電子版。「日本は本当に謝っていない」と伝えるマレーシア英字紙「ニュー・ストレーツ・タイムズ」…。
ただし、これらはすべて海外メディアの話。日本のメディアは、日本政府の言い分を中心に流すか、良くて海外の反応を伝えるといったところで、独自の追究はほとんどなし。
そんな中で、三十分以上の時間を割いて、「慰安婦」問題を取り上げたのは、フジ系の「報道2001」(2月25日放送)でした。事実の認知と首相の公式な謝罪を求める決議案を提出した米民主党下院議員のマイケル・ホンダ氏が生出演。しかし、その内容は日本人であることがはずかしくなるほどお粗末なものでした。
ホンダ氏に、「日本政府が強制連行の事実はないと言っているのに何を根拠にそういうのか」と詰め寄る黒岩祐治キャスター。あげくのはてに「日本人に近い顔をされているのになぜ」と筋違いの批判を始める始末です。島田彩夏キャスターは、「日本人の意見は聞いたんですか」と問いかけ、ホンダ氏の苦笑を誘っていました。
スタジオ討論も同様でした。「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」の山本一太参院議員(自民党)、桜井よしこ氏(ジャーナリスト)、前原誠司民主党前代表らがゲスト。「謝ったのが悪い」と批判の矛先は河野官房長官談話でした。
放送があった日、都内ではNHK裁判の原告バウネット・ジャパン主催のシンポジウムが開かれていました。テーマは、報道被害。「慰安婦」問題を扱ったNHK番組の改ざん事件の後、メキキネット(メディアの危機を訴える市民ネットワーク)をたちあげた板垣竜太・同志社大専任講師が、判決当日の報道と海外メディアとの落差を指摘しました。
AP通信などが昭和天皇の戦争責任にかかわる部分が改変されたと判決を紹介したのに対し、改変の中身にほとんど触れない日本のメディア。「この番組改ざん事件は日本の責任を裁くという『法廷』の核心部分が隠された、という点に重要な問題があったにもかかわらず、何が番組で隠されたのかが、再び隠されている」と語ります。
今なお続くメディアの沈黙。NHK元ディレクターの戸崎賢二・愛知東邦大学教授も言います。
「高裁の画期的な判決が出ても、『慰安婦』問題がタブーであるという状態は何一つ変わっていない。安倍氏らの番組への圧力は功を奏したままです」
(板)
( 2007年03月24日,「赤旗」)
【ワシントン=鎌塚由美】米国で「従軍慰安婦」問題に取り組んできた市民ら約五十人は二十二日、現在議会に提出されている下院決議案一二一への共同提案議員を百人に増やそうと議会でロビー活動を行いました。決議案一二一は、「慰安婦」問題で日本政府に公式な謝罪を求めています。
行動したのは、二月に元「慰安婦」女性が米議会で証言した後に、結成された「121連合」。同決議案への支援を広めようと運動する同連合には、百近くの市民・人権団体が賛同しているといいます。
ロビー活動前の記者会見には、米CBSテレビの人気番組「サバイバー」に出演した韓国系米国人のユル・クウォン氏も参加。「慰安婦」問題での責任を日本政府が否定し続けるのであれば、「国際関係の完全なパートナーとして、多くの人々から完全に受け入れられることはない」と語りました。
シンクタンク「フォーリン・ポリシー・イン・フォーカス」の共同理事を務めるジョン・フェファー氏は、日本政府は「慰安婦」問題への「特別な責任を負っている」と強調。軍事面で「普通の国」を目指す日本の動きに言及し、「日本の政府と国民には、別の意味での『普通の国』になることを考えてほしい」と呼び掛け。「普遍的な人権、歴史、過去の違法行為への償いへの『普通』のアプローチを」と訴えました。
同連合の集計では、共同提案議員に名を連ねたのは五十九人(二十二日現在)に上ります。同連合では、百人の共同提案議員を目指すとしています。
同決議案を提出したホンダ議員(民主)は同日、決議案への賛同者を広げる活動を歓迎。議会内で記者団に「時間がたつにつれ日本の国民も米国民も問題を理解し始めている」と語りました。
採決時期については「安倍首相が(「慰安婦」問題で)考えを述べる機会に敬意を表するために、訪米後の五月まで待ちたいと思う」と表明。「われわれの側には真実がある。真実は人々から理解されると確信している」と語りました。
下院外交委・アジア太平洋地球環境小委員会のファレオマバエガ委員長(民主)も、外交委員会に決議案を送るための審議を「当初の二十七日の予定」から、安倍首相の訪米後に先送りするとの意向を表明。時間をかけて「より多くの共同提案議員を募る」と語りました。
( 2007年03月24日,「赤旗」)
韓国の宋旻淳・外交通商相は二十三日、ソウル市内で開かれた討論会で、安倍晋三首相が「従軍慰安婦」問題で強制性を否定する発言をしていることに関し、「日韓首脳会談が開かれれば、当然論議することになる」と語りました。
宋外相は「性奴隷問題は人倫に反し、人間の尊厳を踏みにじり、人類の普遍的価値を投げ捨てるもの」と指摘し、「強制性はあった。狭義も広義もない。言葉遊びをしてはいけない」と非難。
「河野談話をあいまいにする発言は、われわれ(韓国)がどう対応するかにかかわらず、国際社会において容認されない」として、「過去に行った謝罪の内容に見合う行動をとるべきだ」と強調しました。
( 2007年03月24日,「赤旗」)
ソウルの日本大使館前で二十一日開かれた安倍首相の旧日本軍「慰安婦」問題発言への抗議集会に参加した韓国の元「慰安婦」、李容洙(イ・ヨンス)さん(79)に話を聞きました。李さんは、安部首相の発言を「ここに私がいるのにどうして妄言を繰り返すことができるのか」と糾弾しました。
(ソウル=中村圭吾 写真)
安倍首相が「慰安婦」は「キーセン(妓生)」だと発言していたことを聞きました。ある時には「謝罪する気持ちに変わりはない」と言い、ある時には「(米議会の)決議案が通っても謝罪しない」と言う。いったい同じ口で何度、言葉を変えるのでしょうか。
キーセンだとかいうのなら、自分で調査をして真相を究明すればいいではないですか。昨日は、村山(富市)元首相が日本には道義的な責任がある、謝罪すべきだと言ったそうです。
いくら言葉で隠そうとしても、それで隠せるものではありません。河野談話から十年以上もたつのに、日本政府はずっと責任を否定しようとしています。いったい「慰安婦」を誰がつくったのか。強制動員の証拠がないというが、私は十五歳で連れて行かれました。どんなにねつ造をしても、私こそ生きた歴史の証人です。
私は、最後まで日本政府に抗議するために、私が変わってしまってはいけないと思い、結婚もしませんでした。年をとったことを除けば、連れて行かれた時のそのままです。
ここに私がいるのに、どうして妄言を繰り返すことができるのでしょう。世界中を回って証言してきました。今日もそのために大使館の前に来ました。私が生きた歴史の証人としてここにいます。私たちの後の世代のために、二百年でも生きて、最後まで日本政府とたたかいます。
今も、性暴力というのは世界中で起こっています。世界中の性暴力の根っこを絶つために、この問題を解決するつもりです。
キーセン・ハウス/安倍首相発言
一九九七年に刊行された『歴史教科書への疑問』(日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会編 展転社)に掲載されている、当時「会」事務局長の安倍氏の発言を、韓国国会議員らが改めて問題にしています。安倍氏の発言は次のとおり。
「儒教的な中で五十年間黙っていざるをえなかったという、本当にそういう社会なのか、韓国にはキーセン・ハウスがあって、そういうことをたくさんの人たちが日常どんどんやっているわけですね。ですから、それはとんでもない行為ではなくて、かなり生活の中に溶け込んでいるのではないかとすら私は思っている」
( 2007年03月23日,「赤旗」)
福祉充実、ムダづかいストップ、憲法守れ
二十二日告示された東京都知事選での吉田万三候補の第一声(新宿駅西口)で日本共産党の志位和夫委員長がおこなった演説の大要を紹介します。
お集まりのみなさん、おはようございます。ご紹介いただきました日本共産党の志位和夫でございます(拍手)。今日は駅前を埋めるこんなにたくさんのみなさんが吉田万三さんの第一声に駆けつけてくださいまして、まことにありがとうございます。(拍手)
全国が注目する首都東京の知事選挙が始まりました。無党派の方々と、日本共産党が共同で推す「革新都政をつくる会」の吉田万三さんへのご支持を広げに広げ、「都民が主人公」の都政をみんなの力で取り戻そうではありませんか。(拍手)
この選挙には四人の候補者が名乗りをあげておりますが、それぞれの方が発表した公約、テレビ討論や公開討論を拝見しますと、都民の願いを託せる候補者は誰かは、もはやはっきりしたのではないでしょうか。(拍手)
さきほど吉田万三さんは、大義ということを言われました。都民の暮らし第一の都政への転換、この大義を堂々と掲げている候補者は一人しかいないということがはっきりしたのではないでしょうか。(拍手)
私は都民のみなさんのつぎの三つの願い≠こぞって吉田万三さんに託していただきたいと訴えたいのであります。
福祉と暮らしを良くしたい――この願いをこぞって吉田さんに
第一に、福祉と暮らしを良くしたい、この願いをどうかこぞって吉田万三さんに託していただきたい。このことを訴えたいと思います。(拍手)
いま貧困と格差拡大の問題が一大社会問題になっています。東京新聞が世論調査をやりました。「もっとも力を入れてほしい政策は何ですか」。この質問にたいして「医療・福祉対策」と答えた方が47・5%、断トツでトップであります。この都民のみなさんの願いをかなえられる候補者は誰か。
石原候補――福祉破壊への反省も、具体的な政策もまったくない
石原知事の公約を見ますと、こう書いてあります。「都民の目線による医療と福祉をすすめます」。「都民の目線」、吉田さんが言えばぴったりくるけれども、いきなり石原さんに猫なで声で「都民の目線」と言われても(笑い)、これは巨大な違和感がありますね(拍手)。実際、「福祉」というが具体的な中身はありません。どこを読んでも、介護、高齢者福祉、障害者福祉という言葉さえでてきません。
討論会などで石原さんが繰り返しているのは、「介護を受けるような状態にならない援助が大事」とか、「ピンピンしてきたがコロリといくのがいい」とかいう言葉です。私はこれを聞いて思いました。「介護を受けるような状態にならない援助」と言うのだったら、どうしてお年寄りの足であるシルバーパスを取り上げたのか(「そうだ」の声、拍手)。「ピンピンしてコロリがいい」と言う。しかし、みなさん、現実に障害を持ち、介護を受けながらがんばっておられるお年寄りの姿が見えないのか。私は、石原知事の公約のどこをどう見ても、「福祉の心」はかけらも見られないといわなければなりません。(拍手)
なぜ、福祉の中身を語れないのでしょうか。それはこの八年間、革新都政時代に都民がきずいた福祉の制度を根こそぎ破壊してきたことへの反省がないからであります。
石原知事は、寝たきりのお年寄りの福祉手当を廃止し、老人医療費助成制度を廃止し、シルバーパスを全面有料化し、特別養護老人ホームへの都独自の補助を廃止し、私立保育園への運営費補助を大幅に削減し、はては、年間六十四万円の盲導犬のえさ代補助まで削りました。
石原候補は「コンピューターが故障して誤作動するようになったので、私自身も再起動するつもりだ」と繰り返しています。しかし、みなさん、「誤作動」というのだったら、福祉切り捨てこそが、最大・最悪の「誤作動」ではありませんか(「そうだ」の声、拍手)。それがわからず、反省のない人には、お引き取り願うしかない。この審判をくだそうではありませんか。(大きな拍手)
浅野候補――400億円の福祉切り捨ては引き継ぎます≠ェ公約
では、浅野候補は、どういっているでしょうか。公約をみますと、「私の本籍地は福祉です」と言っています。しかし、これもどう福祉をよくするのか、まともな中身がありません。
「マニフェスト」で公約している施策のうち、福祉にあてる予算増は四年間でわずか二百億円といいます。つまり、年間にすれば五十億円しか増やさないという。しかしみなさん、石原都政のもとで削られてきた福祉の予算というのは、一九九九年度と二〇〇五年度を比較すると、四百五十億円も削っているんですよ。四百五十引く五十は四百でしょう。つまり、福祉の予算を五十億円しか増やさないというのは、四百億円の福祉切り捨ては引き継ぎます=Aと宣言しているにひとしいじゃありませんか(「そうだ」の声、拍手)。浅野候補が「石原都政を引き継ぐ」といった意味はここにある。「引き継ぐ」のは、福祉切り捨てなのだということを、私ははっきり言いたいと思います。(拍手)
だいたい「本籍地」というけれど、「本籍地」の宮城県で何をやってきたのか。石原知事とうり二つです。敬老祝い金の廃止、寝たきりのお年寄りへの介護手当の打ち切り、特別養護老人ホームへの県独自の補助の打ち切り、民間保育所への助成金廃止などです。
浅野候補は出馬の会見で、「東京都の介護保険三施設は、全国四十七都道府県で最下位」と批判しましたが、残念ながら、浅野さんがやってきた宮城県も四十位なのであります。私は、四十位の人が、四十七位を笑うことはできませんよ、と申し上げたいのであります。(拍手)
みなさん、「本籍地は福祉」ではありません。「本籍地は福祉切り捨て」、こう直していただきたいとはっきり私は言いたいと思います。(「そうだ」の声、拍手)
吉田候補――切り捨てられた福祉復活、時代が求める福祉充実を堂々と掲げる
みなさん、吉田万三候補は、さきほど「福祉・子育て・くらし充実 緊急四か年プラン」、これを実行するとおっしゃいました。私も拝見いたしましたが、こちらのほうはぎっしり中身がつまっております。なかでも、私が大切だと思った点が二つあります。
一つは、このプランのなかには、革新都政時代に都民のみなさんがきずき、いったん切り捨てられた福祉を取り戻そう、という要求がずらりと並んでいるということであります。(拍手)
六十五歳から六十九歳までのお年寄りの医療費の自己負担を減らす。マル福を復活していこうではないか。これが入っておりますね。(拍手)
それから、寝たきりのお年寄りへの福祉手当、かつては月五万五千円ありました。いきなり五万五千円は無理だけど、まず一万円から復活しようではないかというのが、きちんと盛り込まれていますね。(拍手)
それからみなさん、シルバーパスです。全面有料化でいきなり二万円以上に上がってしまう。これはいくらなんでも使えない。そこで、「三千円パス」という、値段を下げた新しい制度をつくろうという提案もきちんと盛り込まれているではありませんか。(拍手)
特別養護老人ホームの補助を増やし、整備を三倍化する。私立保育園への補助の復活という要求も盛り込まれています。
切り捨てられた福祉を取り戻そう、この精神がこのプランにはみなぎっていると、私はうれしい思いでこれを読んだしだいであります。(拍手)
いま一つ、それだけではありません。時代が求める新たな福祉の充実に踏み出そうという力強い中身も盛り込まれています。
たとえば、介護保険料が高すぎて払えない。国民健康保険料が高すぎて払えない。こういう事態にたいして、その値下げのための都独自の施策をとると、はっきり明記しております。
「障害者自立支援法」によって一割負担が持ちこまれました。障害が重い方ほど重い負担になるという希代の悪法です。この撤回を求めながら、収入の少ない人の一割負担を無料にする都独自の施策をやろうと吉田万三さんが提案していることに私も大賛成であります。(大きな拍手)
財源のこともきちんと書いてあります。オリンピックを名目にした大型開発のための年間一千億円のため込みをやめよ。それを充てればいいではないか。
みなさん。候補者を比べたら、都民の圧倒的多数が願っている福祉を良くしてほしいという願いに応えられるのは、吉田万三さんただ一人です(拍手)。吉田万三さんで、首都・東京に「福祉の心」を取り戻そうではありませんか。(大きな拍手)
巨大開発と税金のムダづかいは、吉田さんでストップさせよう
第二に、税金のムダづかいストップの願いを吉田万三さんに、このことを私は訴えたいと思います。
オリンピックを口実に、巨大開発のために年間一千億円ものお金をため込む問題が、重大争点になっています。
石原候補――五輪を口実に、巨大開発のために、毎年1千億円のため込み
石原知事は言い訳をはじめました。「一千億円はオリンピックのためだけではない」だとか、「実際にかかる費用は五千億円程度でたいしたことない」だとか、言い出しました。しかし、みなさん。これはまったくのごまかしです。
毎年一千億円をため込むという基金の名称は、何という名前か。「オリンピック開催準備基金」と書いてあるんです。何にでも使えるお金ではありません。オリンピックのためのため込みだと、はっきり名前に書いてあるではありませんか。
「五千億円しかかからない」といいますが、五千億円というのは、新国立競技場建設とか、大会運営費など、オリンピック本体にかかる予算にすぎません。石原知事が、「起爆剤」に進めるというインフラ整備――圏央道、中央環状品川線、外郭環状線という三つの環状線整備や築地市場の豊洲移転などのインフラ整備を含めれば、八兆五千億円になります。これは数字をたせば出てくる紛れもない事実であります。(拍手)
実現もさだかでないオリンピックのためと称して、都民の福祉を削りに削りながら、毎年一千億円ものお金をため込み、八兆五千億円もの巨大開発を進める。この「逆立ち」政治、今度の選挙で正そうではありませんか。(大きな拍手)
浅野候補――大型開発で借金を倍にした人に、巨大開発はとめられない
浅野候補は、オリンピック招致について、「立ち止まって考える」と言っています。しかしみなさん、これは何も言っていないに等しいんですね。ですから討論会で「ゴーサインも出すことはありうるのか」と問われると、「もちろんあります」と答えてしまいました。公開討論会では「×」を出したんですけど、司会者に中身を聞かれますと、「ゴーというのも早い、ストップというのも早い」と答えました。結局、司会者に「要するに△ということですね」とぴしゃり言われておしまいです。
みなさん、宮城県知事時代に、国言いなりで、船の来ない港を造り、借金を倍にした前歴のある人に、巨大開発を止める力はありません。(拍手)
吉田候補――福祉破壊・巨大開発の「逆立ち」都政をただせる唯一の候補
オリンピック招致の白紙撤回、巨大開発のための毎年一千億円のため込みをやめ、福祉と暮らしに回せと堂々と主張している候補者は、吉田万三さんただ一人であります(拍手)。吉田万三さんの足立区長時代に、自公民「オール与党」は、ホテル建設という途方もないムダづかいを強行しようとしました。それに立ちはだかって、議会の激しい妨害に屈せず、これを中止させ、暮らし第一≠フ区政への大転換を見事やりぬいた実績を持つ吉田万三さんでこそ、「逆立ち」都政を正せる。そのことを私はこの場で心から訴えたいと思います。(大きな拍手)
憲法九条守れの声を吉田さんに結集し、平和のメッセージを世界に発信しよう
第三に、憲法擁護と平和への願いをこぞって吉田万三さんに託してほしい。このことを心から私は訴えたいのであります。(拍手)
侵略戦争への反省のない勢力が、改憲で戦争にのりだす恐ろしさ
この選挙は、国会で憲法をめぐって大変危険な動きが進むさなかにたたかわれています。安倍首相は、自らの任期中に、憲法九条を変えると公言し、改憲手続きのための法案を、四月中旬にも衆議院で強行し、何が何でもこの国会で成立させると、号令をかけています。どうかみなさん、この憲法改悪への暴走はやめろという声を上げていただきたい。(拍手)
重大なことは、憲法改悪への暴走を始めた安倍首相が、かつての侵略戦争を正当化する「靖国」派の本性をむき出しにしつつあることであります。首相は「従軍慰安婦」問題について「慰安婦の強制連行を裏づける証拠はなかった」と繰り返し発言し、世界とアジアからごうごうたる批判を呼び起こしています。
「従軍慰安婦」問題とは何か。かつて日本が植民地としたり、軍事占領した地域から、おびただしい数の女性を動員し、戦場に作った「慰安所」に閉じ込めて、性行為を強要したという非人間的な所業です。
「強制連行を裏づける証拠はなかった」というけれど、朝鮮半島の少女たちが、自分の意思で好き好んで戦場に行ったとでもいうのでしょうか。この非人間的所業の全体が、旧日本軍と国家の強制なしには不可能であることは、誰が考えても、火をみるよりも明らかではありませんか。(拍手、「そうだ」の声)
それを認め、謝罪したのが「河野談話」なのです。私との国会論戦で、首相はいったん「河野談話」を継承すると明言しました。ところが、今になってこういうことを言い出す。首相の発言は、「河野談話」を事実上否定するものであり、勇気を出してこの非人間的所業を告発した元「慰安婦」の方々を、二重にはずかしめるものであり、私はその撤回を強く求めるものであります。(拍手)
みなさん、今起こっていることの恐ろしいところは、侵略戦争への反省のない勢力が、憲法を変えて、「海外で戦争をする国」をつくろうとしている。ここに今日の改憲論の最も恐るべきところがあります。
4人の候補者で、「憲法を守りぬく」と堂々と主張しているのは吉田さんだけ
首都・東京の知事候補が、この動きに対してどういう姿勢をとるかは、この知事選挙の大争点ではないでしょうか。(大きな拍手、「そうだ」の声)
石原知事は、「憲法を認めない」「命がけで破る」と言い続けてきた名うての改憲論者であり、毎年靖国神社に参拝する名うての「靖国」派です。黒川候補は、改憲・右翼団体「日本会議」のメンバーです。浅野候補も、憲法改定を議論することは賛成だといい、イラクへの自衛隊派兵に賛成してきた人です。公約でも、憲法については一切だんまりを決め込み、憲法の「け」の字も語ろうとしません。
四人の候補者の中で、憲法九条を守り抜くと堂々と主張しているのは、吉田万三さんただ一人であります(拍手)。どうかみなさん、憲法改悪反対、世界に誇る九条を守れという声は、こぞって吉田万三さんに集中し、首都・東京から世界に向けて平和のメッセージを発信しようではありませんか。(大きな拍手、歓声)
二つに割れた「オール与党」陣営と無党派・日本共産党との対決
福祉の願い、ムダづかいストップの願い、憲法擁護と平和の願い、どれもたくせるのは吉田万三さんだけです。
「石原・浅野対決」というが、応援団はどちらも「オール与党」 一部メディアは「石原・浅野対決」などといいますが、いまお話ししてきたように、どの問題をとっても、「対決」の中身などないではありませんか(「そうだ」の声、拍手)。二人は、福祉切り捨て仲間≠ナあり、巨大開発推進仲間≠ナあり、逆立ち仲間≠ナはありませんか。(笑いと拍手、「そうだ」の声)
なぜそうなるのか。二人の応援団の顔ぶれを見れば、よくわかります。石原候補を応援する自民党も、浅野候補を応援する民主党も、都議会では公明党とともに「オール与党」、そろって与党なんですね。
しかもみなさん、応援といっても、こそこそしているではありませんか(笑い)。だってみなさん、首都・東京で知事選がやられているというのに、政党の党首で、東京で訴えているのは、日本共産党の私一人ではありませんか(「そうだ」の声、拍手)。堂々と政党として都民に訴えられない。これは「オール与党」政治が、東京でもだんだん衰退し、破たんに向かっていることの証拠ではないでしょうか。(「そうだ」の声、拍手)
日本共産党は、全国13の知事選すべてで推薦・公認候補の勝利めざす
全国では、十三の都道県で知事選が始まりました。日本共産党は十三すべてで推薦・公認候補を立てて堂々とたたかっております。十三の知事選、いろいろありますけれども、基本の構図はどこでも自民、民主、公明の「オール与党」対、無党派と日本共産党との共同という対決の構図です。そして、「オール与党」に参加する諸党は、政党としてはだんだん衰退・退化して、政党として選挙をまともにたたかえなくなっている。民主党は、「対立候補を立てる」といいながら、十三のうち八つでは立てられず、そのうち二つでは「オール与党」相乗りです。これが全国の実態であります。
みなさん、東京の選挙の対決の構図も、その真実の姿は「石原・浅野対決」ではありません。二つに分裂した「オール与党」陣営と、都議会で唯一の野党として都民の利益を守り抜いてきた、都民のみなさんと力をあわせて石原知事を断がい絶壁まで追い詰めてきた私たち日本共産党と、無党派の方々が共同して推薦する吉田万三さん、「オール与党」陣営と日本共産党推薦の吉田万三さんとの対決というのが、本当の対決の構図であります。(大きな拍手)
みなさん、残る選挙戦、最後まで頑張って勝利をつかみとりましょう(拍手)。政治的立場の違いを超え、思想・信条の違いを超え、暮らしの願い、平和の願い、憲法守れの願い、都政を変えたいという願いを一つに集め、吉田万三さんをみんなの力で知事に押し上げようではありませんか(拍手)。絶大なご支援を心からお願いして、私の訴えといたします。(大きな拍手、歓声)
( 2007年03月23日,「赤旗」)
【台北=時事】台湾外交部は二十二日、従軍慰安婦問題について、日本の対台湾窓口、交流協会台北事務所に対し、「日本政府が歴史的事実を正視し、元慰安婦に対する正式な謝罪と国家賠償を求める」との立場を改めて伝えました。
日本側はこの申し入れに対し、同問題で謝罪した一九九三年の河野洋平官房長官談話を継承していると説明し、理解を求めました。
台湾外交部は六日、安倍晋三首相が同問題で「強制性を裏付ける証拠はなかった」と発言したことに抗議する声明を発表。翌七日には、交流協会台北事務所の池田維代表が台湾側に日本政府の立場を伝えています。
( 2007年03月23日,「赤旗」)
【ワシントン=時事】グリーン前米国家安全保障会議アジア上級部長は二十一日、ワシントン市内で開かれた会合で、従軍慰安婦問題で狭義の強制性を否定するなどした安倍晋三首相の対応に関し、「この問題が人道面で悲劇的な出来事だったことを忘れている。安倍政権が進める外交政策の良い面を台無しにしている」と批判しました。
また、グリーン氏は記者団に対し、日本政府が強制性を認めた一九九三年の河野洋平官房長官(当時)談話の「継承」を表明しながら、強制連行の証拠はないとの見解を示したことについて、「こうした論理は米国では通用しない」との認識を示しました。
( 2007年03月23日,「赤旗」)
【台北=時事】台湾・台北市内の日本の対台湾窓口、交流協会台北事務所前で二十一日、旧日本軍の慰安婦として働かされたとする台湾人女性や支援者ら約三十人が集会を開きました。
集会には元慰安婦三人が参加。日本政府による公式謝罪と国家賠償を求めたほか、安倍晋三首相が従軍慰安婦問題で「強制性を裏付ける証拠はなかった」と発言したことに抗議し、この問題で謝罪した一九九三年の河野官房長官談話を順守するよう訴えました。
支援団体によると、台湾では元慰安婦二十七人が生存しています。
( 2007年03月22日,「赤旗」)
【ワシントン=鎌塚由美】米紙クリスチャン・サイエンス・モニター(二十日付)は、「慰安婦」問題で「強制はなかった」とする安倍首相の発言を社説で取り上げました。社説は、安倍首相が戦時の残虐行為を教える歴史教科書を「自虐」と批判したことや、「美しい国」という言葉は「『国としての自尊心』を復活させる願い」だと指摘、「その誇りが、自国の過去を真しに認めることに根ざしていてこそ、日本は『美しい国』になるにふさわしい」と強調しました。
日本政府が安倍首相の「強制はない」との発言を政府答弁書で再確認したことに触れ、「多くの公的記録は破壊されている」とし、日本政府の主張は「しゃくし定規な、重箱の隅をつつくようなもの」だと述べました。
社説は、世界第二の経済力をもつ「偉大なプレゼンス」として他国からの「期待に応える」などと述べている安倍首相に対し、「歴史の記録に対する、これら右翼のひんぱんな異議申し立ては終えんを迎えるべきである」と主張。
隣国からの信頼を得るためには、「むしろドイツが行ったように正直に歴史に向き合うことが、日本を世界的指導者へと前進させることを助ける」と指摘しています。
( 2007年03月22日,「赤旗」)
【ソウル=中村圭吾】「慰安婦」問題で強制性はなかったとする安倍首相発言や、「証拠がない」とする政府答弁書の閣議決定に対し、韓国で抗議が広がっています。韓国挺身(ていしん)隊問題対策協議会、韓国女性団体連合など四十五の市民団体は二十一日、ソウルの日本大使館前で集会を開きました。
集会には、米議会の公聴会で証言した李容洙さんら八人の元「慰安婦」も参加。李さんは「証拠がないというが、私が生きた証人だ。強制的に連れていかれた歴史の象徴だ。どうしてそんな妄言を言えるのか」と涙ながらに語りました。
参加者らは「安倍首相はハルモニ(おばあさん)たちに公式に謝罪しろ」と訴えました。
「韓国にはキーセン・ハウスがあって…」/安倍発言、怒り呼ぶ
「慰安婦」を「キーセン(妓生)ハウス」になぞらえた安倍首相の過去の発言も怒りを呼んでいます。
韓国国会議員百十人が参加する「正しい歴史教育のための国会議員の会」の柳基洪代表幹事は二十日、一九九七年に刊行された『歴史教科書への疑問』(日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会編、展転社)の中の安倍氏の発言を批判。「安倍氏は韓国社会全体をキーセン・ハウスとけなしている」と述べ、安倍首相に公開質問状を送ることを明らかにしました。
安倍首相は同書で「儒教的な中で五十年間黙っていざるをえなかったという、本当にそういう社会なのか、韓国にはキーセン・ハウスがあって、そういうことをたくさんの人たちが日常どんどんやっているわけですね。ですから、それはとんでもない行為ではなくて、かなり生活の中に溶け込んでいるのではないかとすら私は思っている」と述べています。
( 2007年03月22日,「赤旗」)
日本共産党の市田忠義書記局長が二十日、東京・日比谷野外音楽堂で開かれた「3・20中央集会」でおこなった情勢報告をかねた連帯あいさつ(大要)を紹介します。
いま国会は、たいへん緊迫した状況にあります。安倍首相、自民党、公明党が、改憲手続き法案をゴリ押しし、なんとしても今国会で強行しようとしているからです。十五日には衆院憲法調査特別委員会を委員長職権で開会し、公聴会を二十二日に開催することを強行議決しました。政府提出でない法案に行政府の長である安倍首相が口出ししたうえ、採決日程を前提にして公聴会日程を強行議決することは、三権分立という憲法の大原則を破壊し、議会制民主主義をじゅうりんする暴挙です。
日本共産党は、この暴挙にみなさんとともに、満身の怒りを込めて抗議するとともに、改憲手続き法案の廃案のために全力でたたかう決意をまず表明するものです。
狙いはくっきり
この法案は、憲法九条を改悪することと地つづきという危険なねらいからみても、不公正で非民主的な内容からみても、絶対に許すことのできない法案です。
自民・公明・民主の各党は「改憲の中身とは関係のない中立的なルールづくり」だなどと宣伝してきました。しかし、この法案のねらいが、「戦争する国づくり」を目指す、そのために憲法九条を変えることにあることが、いよいよハッキリしてきました。
安倍首相はことしに入って、参院選挙で憲法を争点にするといい、改憲手続き法案の早期成立を指示しました。NATOでの講演では、「自衛隊の海外での活動をためらわない」といい放ちました。
法案の中身もきわめて重大です。最低投票率の定めがないため一割、二割の賛成でも改憲案が承認されかねないしくみになっています。さらに承認に必要な過半数を、無効票などを差し引いた「有効投票総数の過半数」にするという内容になっています。
また、豊富な資金力を持つ財界や改憲政党の有料広告が野放しにされ、改憲勢力がカネにものをいわせて憲法を買うことが可能になります。さらに五百万人もの教育者や公務員の運動を不当に制限しています。公務員だから、教育者だから、といって改憲案への意思表示ができないとしたら、これほど国民の主権行使への重大な侵害はないではありませんか。
思惑狂わせている
どこからみても国民の目をふさぎ、手足を押さえて、憲法改悪をゴリ押しするための法案といわなければなりません。
これらの不公正で非民主的な中身が知らされれば、九条改悪反対の人だけではなく、賛成の人でもこれはひどい、ということになるでしょう。また、手続き法は必要だという人でも、それが「再び戦争をする国づくり」への一里塚ということがわかれば反対の声がひろがることはまちがいありません。
事態は、たいへん、緊迫しています。
しかし、同時に、急速に高まる反対運動は、改憲勢力の思惑を狂わせつつあります。抗議ファクスは二日間で千通をこえ、自民・公明議員をおどろかせました。なかにはファクスのコンセントを抜いた議員もいるそうです。
安倍首相も当初、五月三日までに成立をねらっていましたが、スケジュール通りにはいかなくなりました。早くゴリ押しすればいっせい地方選挙に悪影響がでると恐れたとも報道されています。かといって参院選があるため国会を延長することも容易ではありません。
私たちががんばれば、食い止める条件はあります。法案の危険なねらい、不公正で非民主的な内容を急いで国民のなかにひろげにひろげぬいて改憲手続き法案を葬り去ろうではありませんか。
許せない安倍内閣
きょう三月二十日は、アメリカがイラクを攻撃して、ちょうど四年です。四年前の三月二十日夜、私は、明治公園で開かれた緊急抗議集会で、イラク攻撃を糾弾し、みなさん方とともにデモ行進したことを昨日のことのように覚えています。このときの私たちの主張が正しかったことは歴史と事実が完全に証明したのではないでしょうか。
彼らが攻撃の口実とした大量破壊兵器はなかった。テロ集団・アルカイダとのかかわりもなかった。あったのは世界を力で支配しようとするアメリカの横暴な覇権主義です。
こうしたなかで、とくに許せないのは、安倍首相の態度であります。日本政府は、いまだにイラク戦争を正当化している世界でもまれな政府です。いま現実に、イラクでは航空自衛隊が米兵を輸送しているのです。自民党の山崎拓元防衛庁長官(当時)ですら、「航空自衛隊が現在も継続してやっている輸送業務は、実質的には米軍に対する後方支援です」(「朝日」九日付)といっています。
世界の国々が次つぎと撤退を開始しているなかで、安倍首相は自衛隊の派兵を続けようとし、今国会でイラク派兵特措法を二年間も延長しようとしています。しかし、国民の圧倒的多数は、自衛隊の撤退を求めています。「朝日」(十五日付)の世論調査では、イラク戦争は誤りだったというのが75%、イラク派兵特措法の延長に反対は69%です。
憲法さわらせるな
いま、安倍内閣は、くらしや平和・外交の問題でも、「従軍慰安婦」など歴史認識の問題でも、「なんとか還元水」など政治とカネの問題でもきびしい国民の批判にさらされています。こんな首相に憲法をさわらせてはならない、憲法九条を改悪させては絶対になりません。
法案推進勢力をここまで追い込んだ世論と運動の力を確信に、「改憲手続き法案は廃案に」との世論をいっそう盛り上げようではありませんか。いっせい地方選挙に勝利し、憲法施行六十年の節目の年を改憲勢力の野望をくじく年にするために力を合わせ頑張りましょう。私たち日本共産党もみなさんとともに全力でたたかいぬきます。
( 2007年03月21日,「赤旗」)
躍進の流れ埼玉から/志位委員長が訴え/さいたま市で演説会
いっせい地方選前半戦の告示まで十日、投票日まで十九日となった二十日、日本共産党の志位和夫委員長を迎えた演説会がさいたま市の大宮ソニックシティ大ホールで開かれ、二千五百人が参加し、ロビーではモニターで聞き入りました。紙智子参院議員、あやべ澄子参院埼玉選挙区候補があいさつし、埼玉県議選、さいたま市議選候補と後半戦の市町議選候補が壇上に勢ぞろいしました。
埼玉県党は、県議選で現有四議席から八議席以上、さいたま市議選では一議席増の十一議席獲得をめざしています。代表して、もりやひろ子県議候補が「県民の命とくらしがかかる選挙に死力を尽くして勝ち抜く」、青柳しんじ市議候補が「共産党を命綱と頼る住民のため絶対に負けられない」と決意表明しました。
志位氏は、安倍内閣の支持率低落、国民が見放しつつある背景に「暮らしの痛みにあまりに鈍感だということがある」とのべ、貧困と格差の広がりや国保証取り上げの問題に対する政府の姿勢をきびしく批判しました。
党が提案する庶民大増税の中止や最低賃金の抜本的引き上げ、生活保護の母子加算廃止をやめさせるなどの貧困打開要求を紹介し、「誰にでも賛同していただける要求ではないでしょうか」とのべると、大きな拍手がおこりました。
また、憲法改悪の道を暴走し、「従軍慰安婦」問題での発言で世界とアジアから批判を浴びている安倍首相を指弾し、「『憲法九条守れ』の声をこぞって日本共産党へ」と呼びかけました。
埼玉県政の問題で志位氏は、民主党出身の上田清司知事が誕生して「よりまし」になったのか問いかけました。現実は福祉切り捨て、改憲の公言など「自民党以上に自民党的」な姿勢であること、県政でもさいたま市政でも自公民「オール与党」か日本共産党かの対決になっているとのべました。
庶民大増税、重度心身障害者手当打ち切り、大企業誘致のための補助金ばらまきなど「オール与党」の実態を示した上で、日本共産党県議団が築いてきた子どもの医療費助成や少人数学級の前進、障害者自立支援法の軽減措置など「五大実績」をあげていると紹介。「どの党にも負けない奮闘で埼玉から躍進の流れをつくろう」と結び、大きな拍手を浴びました。
( 2007年03月21日,「赤旗」)
歴史共同研究/日中の論文掲載、靖国なども対象
都内で開かれていた日中歴史共同研究第二回会合は二十日、二日間の日程を終え、来年六月までに提出する報告書を「古代・中近世史」「近現代史」の二巻構成とし、各章ごとに日中の学者がそれぞれ作成した論文を掲載することを決めました。また、「共通関心事項」を設定し、南京大虐殺や靖国問題などについて必ず触れることでも合意しました。
「従軍慰安婦」問題は今回の会合では議論されなかったといいます。歴史共同研究は九月をめどに日中それぞれの論文を作成して交換。全体会合を十二月と来年六月に開催して報告書をまとめる予定です。
( 2007年03月21日,
アジア女性基金解散後も事業検討/緒方氏に外務省
外務省の浅野勝人副大臣は二十日の参院外交防衛委員会で、元「従軍慰安婦」たちへの償い事業に取り組んできたアジア女性基金が今月末に解散した後の事業について、「現在、基金において解散後の課題について検討を行っている。政府として、基金側の検討の結果を踏まえ、いかなる対応が可能か検討していきたい」と述べました。日本共産党の緒方靖夫議員への答弁です。
アジア女性基金は、「従軍慰安婦」問題についての「河野談話」に基づき、政府の決定で一九九五年に設立された財団法人。緒方氏は「答弁にあったように積極的な対応を検討してほしい」と求めました。
( 2007年03月21日,「赤旗」)
日本共産党の緒方靖夫議員は二十日の参院外交防衛委員会で、「従軍慰安婦」問題について「政府が『河野談話』を継承するというなら、行動で示すべきだ」と求めました。
「慰安婦」問題では、安倍晋三首相の強制性を否定する発言に続き、政府も十六日、首相の発言を追認する答弁書を閣議決定し、国際的な非難が広がっています。
緒方氏は、一九九三年の河野洋平官房長官談話が、慰安所の設置などでの旧日本軍の関与を認め、募集でも「本人たちの意思に反して集められた」「官憲等が直接加担したこともあった」と明記していることを指摘。
麻生太郎外相は「強制性については、談話の記述の通りだ」と答弁しました。
この問題では、シーファー駐日米大使も首相発言について「(米国内に)破滅的影響を及ぼす」と警告。同大使の発言を受け、米紙も「首相は、旧軍によって恐怖を強いられた多くの女性に対し、(拉致被害者へと)同じ同情を持てないでいる」と批判しています。
緒方氏がこの報道を指摘したのに対し、外務省の浅野勝人副大臣は「(日本政府の立場を)十分理解していない米国はじめ各方面に、理解していただく努力をしていく」と答えました。
緒方氏は、問題は日本側の態度にあると述べ、「つまり日本政府には、人権問題でタブルスタンダード(二重基準)がある≠ニ批判されているということだ。(日本政府の言動は)拉致問題でも、日本を窮地に追いやることになる」と批判しました。
( 2007年03月21日,「赤旗」)
【ワシントン=鎌塚由美】「慰安婦」問題での強制はなかったとの安倍首相発言が、米紙ボストン・グローブ十六日付コラムでも取り上げられました。コラムは、シアトル・タイムズにも掲載されています。
コラムは「慰安婦」問題が再びニュースになっている理由として、日本に明確な謝罪を求める決議案の米議会への提出と公聴会開催、安倍首相の否定発言を挙げました。
日本の「与党エリートの中でそのような失言をするのは安倍氏だけではない」と指摘。「慰安婦」の調達が「民間業者」によるものだとの自民党の中山成彬「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」会長(元文科相)の発言を紹介しました。
コラムは、安倍首相による「歴史の否定は日本のイメージを十五年前に後戻りさせた」と述べ、一九九三年の河野官房長官(当時)談話からの後退だと指摘しました。
コラムは、日本の「慰安婦」制度は「日本軍が実際に計画した」ものだと述べ、慰安婦を否定する「右翼」勢力は、「ホロコースト否定派に匹敵する」とのミンディ・コトラー氏(アジア・ポリシー・ポイント)の言葉を紹介しています。
( 2007年03月20日,「赤旗」)
シンガポールのリー・シェンロン首相は十九日、都内のホテルで公明党の太田昭宏代表と会談しました。
リー首相は、「従軍慰安婦」問題を謝罪した一九九三年の河野洋平官房長官談話について「最近の日本国内での議論には当惑を感じる」と述べ、間接的な表現で安倍晋三首相の「強制性」発言や談話見直しを求める自民党内の動きに不快感を示しました。
これに対し、太田氏は「河野談話でわが国の考え方は定まっており、それに基づき行動している。安倍首相も河野談話の継承は明言している」として理解を求めました。
( 2007年03月20日,「赤旗」)
「安倍首相の言い方は、おじいさんの岸信介氏にそっくりだね」と、知人に一本のビデオを渡されました。一九九八年放送のETV特集「劉連仁・54年目の証言」です▼四四年に北海道の炭鉱に強制連行されて終戦直前に逃亡、十三年もの間、山中に隠れていた中国人が主人公。茨木のり子さんの詩「りゅうりぇんれんの物語」や、有原誠治監督のアニメ映画「ライヤンツーリーのうた」でご存じの人も多いでしょう▼そっくりと言われた発言は、劉さんが発見された五八年の国会でのこと。劉さんの日本政府への謝罪・賠償要求に、岸首相(当時)は「当時の事情を明らかにする資料はない。強制して連れてきたのか、本人が承諾してきたのか、確かめる方法もない」と答弁していました▼中国に帰国する直前、劉さんの手元に届いたのは、十万円と「お気の毒…」と言葉だけでねぎらった愛知揆一官房長官(当時)の手紙でした。その三十八年後の九六年、劉さんは日本政府を相手どり、謝罪と二千万円の賠償を求める訴えを起こします▼安倍首相は、「慰安婦」問題で強制性を否定します。半世紀前と違うのは、廃棄されたといわれた慰安所への軍の関与を示す公文書が発見されたことです。だからこそ河野洋平官房長官(九三年当時)は強制性を認め、「お詫(わ)びと反省」を表明したのでした▼歴史を逆行させ、あったことをなかったことにしようとする安倍首相発言。「人道に対する罪」には時効がないことを思い知るべきでしょう。
( 2007年03月20日,「赤旗」)
いっせい地方選前半戦の投票日(四月八日)まで三週間となった十八日、日本共産党の志位和夫委員長は、神奈川県内三カ所を駆けめぐり、憲法とくらしを守る日本共産党のかけがえのない議席の値打ちを街頭から訴えました。
志位委員長は、横須賀市で、ふじたちえこ県議、藤沢市で鈴木とも子県議、宮応勝幸県議候補(大和市区)、相模原市でかわの幸司県議とともに街頭演説。合間をぬって聴衆に声をかけ、握手でエールにこたえました。行く先々で、演説を囲む人垣が膨らみ、参加者は三カ所で二千四百人にのぼりました。
志位氏は、三つの争点@福祉と暮らしの守り手はだれかA税金のムダづかいをただせるのはだれかB平和と憲法を守りぬくのはだれか―をめぐり、自公民「オール与党」県政を告発し、民主党の不誠実なにわか野党ポーズ≠批判しながら、日本共産党の前進を呼びかけました。
このなかで志位氏は、「平和と憲法」をめぐる問題で「神奈川では二つの大問題が問われている」と指摘。一つ目に「米軍再編」の名による基地強化を挙げました。志位氏は、「横須賀での原子力空母の母港化、座間への米陸軍新司令部の移設。どちらも県民だけでなく日本と世界にとって有害です」と強調。「『オール与党』勢力に審判をくだし、日本共産党の前進で基地強化反対、基地のない神奈川を」と訴えました。
二つ目に、憲法改悪をめぐる動きを告発。安倍晋三首相と与党が改憲手続き法案をいっせい地方選前半戦が終わったら、四月上旬にも強行しようとしていることへの審判を訴えました。
その上で「こうした改憲の動きを、歴史をゆがめる妄言と一体ですすめようとしていることが重大です。侵略戦争と植民地支配を正当化する安倍首相の地金が出てきた」と批判しました。とりわけ「従軍慰安婦」問題で、「強制連行の証拠はなかった」などとする安倍首相の言動が、米国をはじめ世界的な批判を呼び起こしていることを指摘。「戦争の反省のない勢力が、憲法九条を変えて海外にのりだしていく――ここにアジアの心配があります。憲法九条は日本だけのものではありません。この宝を守りぬくために、日本共産党へのご支援を」と呼びかけ、大きな拍手に包まれました。
横須賀市の大学生・飯干歩さん(20)は「大学の先輩が、憲法や教育の問題で安倍首相は怖いから『民主党かな』と言っていた。志位さんの話をきいて、民主党のやっていることは自民党と変わらない。野党ポーズはサギ≠セと思った」と話していました。
( 2007年03月19日,「赤旗」)
内閣支持率の下落に苦しむ安倍晋三首相は、改憲や歴史問題などで反動的地金をみせながら、政局の「タカ派的打開」をはかろうとしています。自民党政治の行き詰まりのなかで、この首相の姿勢をどうみるのか担当記者で話し合いました。
米国からも批判され
A 「従軍慰安婦」問題で、「官憲が家に押し入って人さらいのごとく連れて行ったというような強制性はなかった」とした安倍首相の発言が国際的波紋を広げているね。
C 「従軍慰安婦」問題で日本軍の関与と強制を認め、おわびと反省を表明した河野官房長官談話(一九九三年)否定につながるからね。
B 米紙などが「日本の首相が慰安婦を否定」などと報じたことで、外務省があわてたようだ。
D シーファー米駐日大使も河野談話見直しの動きがあることについて「日米関係に破壊的な影響を与える」と警告。ちょうど、来日していたマイケル・グリーン前米国家安全保障会議アジア上級部長も、米側の懸念を伝えるロビー活動をしたと聞いた。
A それで、安倍首相は答弁を変えて、慰安婦への「同情」を口にしたり、「議論が拡散するのは非生産的」といって強制問題への言及を避けるようになったのか。
D 自民党の「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」が八日に河野談話見直しに向けて提言したときも、首相が「再調査」を約束する振り付けだったはずが、党側による「再調査」にトーンダウンしたという。これも外務省が米政府の動きを懸念して申し入れた結果だと伝えられている。
B 反動的地金を出したものの、国民の常識からも、世界の常識からもかけ離れていたことが浮き彫りになって本音を隠すようになったんだね。
「ブーメラン民主党」
E でも、首相には力強い味方≠ェいる。民主党だ。河野談話見直しでも、九日に「慰安婦問題と南京事件の真実を検証する会」を立ちあげ、十六人が参加した。歴史の逆流でも自民党と同じ体質を抱えている。
C 「政治とカネ」の問題でも、佐田行革相が架空事務所費問題で辞任したら角田参院副議長が政治資金問題で辞任。伊吹文科相らの事務所費問題が噴出したと思ったら、小沢代表の不動産取得が問題化、松岡農水相が光熱水費で窮地に立てば中井元法相が付け替えで謝罪など、全部自分に跳ね返っている。
A 「ブーメラン民主党」と皮肉られている。
B それもこれも、改憲や増税など基本路線でも、政治資金など体質面でも、自民党と同じ流れにいるからだ。
改憲へ強硬姿勢固執
A 安倍内閣の支持率が下げ止まったという見方もあるね。
D メディア関係者は、「自民党の支持率に近づいてきただけ」という見方もしていたよ。下げ止まったのではなく、自民党支持の堅い層にぶちあたったのだというんだ。改憲や教育で「強気」を押し出してきた首相の戦略が功を奏したと見るのは早計だというわけだ。
C 支持の理由も、「政策に期待」などではなくあいまいな理由が増えているともいう。
E ただ改憲手続き法案を四月上旬にも衆院通過させようと中央公聴会日程を強行してきた。「五月三日にはこだわらない」と首相が発言したときには、反発の空気も広がったが、ここにきて立て直した感じだ。
C 「慎重ポーズ」を宣伝した公明党も、結局、マッチポンプだった。同党幹部が「五月三日が重要だ」と発言したことから、自民党は八日の公聴会日程強行を判断した。ところが野党の抵抗にあうと、いっせい地方選への影響を理由に延期を主張した。
A 自分でアクセルを踏んでおいて、「ブレーキをかけた」と宣伝しているわけだね。
B いずれにしても、反動的地金を出した首相のタカ派路線には、厳しい警戒が必要だ。
E 改憲手続き法案でも日本共産党だけが、自公の強硬路線に正面から対決しているし、自公と合作の民主党の姿勢も批判している。地方での「オール与党」政治への審判とともに、「九条守れの声を日本共産党へ」の訴えが大事だね。
( 2007年03月19日,「赤旗」)
拝啓 橋本NHK会長どの。突然、お便りをさし上げる失礼を、お許しください。
なにか、ですって? 例の「慰安婦」問題を扱った番組の改ざんをめぐって争われた裁判の控訴審判決のことですよ。東京高裁はNHKに「政治家の意図を忖度(そんたく)して、制作に携わる者の方針を離れて番組を当たり障りのないように改変、取材に協力した原告らの期待と信頼を裏切った」と200万円の損害賠償を命じましたよね。
あなたは会長の責任≠ナ即時、上告措置をとりました。「判決は、番組編集の自由を極度に制約するもの」「裁判所の判断は不当で、到底承服できない」というのが理由でした。本当にまっすぐ、真剣≠ノ判決全文を読んだのだろうかと、疑問に感じました。
それ以上に首をかしげたのは、これだけの重大な判決を、最高意思決定機関である経営委員会にも諮らず、なぜ会長の一存で上告できるのか、でした。
最近、経営委員会の議事録(1月30日分)をみて、その疑問が間違っていなかったことがわかりました。
ある委員(小林緑・国立音大教授)はこう発言していますよね。
「本当に注目されている問題で、経営委員会として時間をかけて議論する場を設けなければならないし、見解を出すことも考えるべきだと思います。NHKとしても重大な問題として、しっかりと取り組んでいくことを明言すべきだと思います。今公共放送とは何か≠ェ厳しく問われており、この機会を逸すると、信頼回復が難しくなるような気がします」
経営委員のなかにも、こんなにまともに判決を受け止めている人がいる。それに引き換え…。――ハラが立ってきて、これ以上どんな失礼なことを書くかわからないので、この辺で…。敬具
(まつだ・ひろし=元立命館大学教授)
(2007年03月18日,「赤旗」)
Q 安倍首相は、「従軍慰安婦」問題にかんする河野洋平内閣官房長官談話(93年8月4日)について、「当初定義されていた強制性を裏付ける証拠がなかったのは事実だ」とのべているけど、どこが問題?
自らの言明を否定するもの
A 安倍首相は昨年の国会で、戦後50周年にあたっての「村山談話」と、「河野談話」を継承すると公式に言明しました。今回の発言はみずから継承を言明した「河野談話」を事実上否定するものです。
「強制性」について、「狭義」「広義」と分けて、実際は強制性がなかったという印象を与えるねらいです。
河野談話が認めたのは主に次の諸点です。
@慰安所の設置・管理、慰安婦の移送については日本軍が「直接あるいは間接に関与」した。
A慰安婦の募集は、「甘言、弾圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり」「官憲等が直接これに加担したこともあった」。
B「歴史教育を通じてこのような問題を永く記憶にとどめ」、同じ過ちを決して繰り返さない。
このように河野談話は、軍の関与、「本人の意思に反し」た強制性をはっきり認め、「慰安所における生活は強制的な状況の下での痛ましいものであった」とまでのべています。
そもそも戦争中、日本の植民地や占領支配していた諸国では、住民に対する日本軍の権力や強制力は絶対的でした。
「従軍慰安婦」にさせられた女性が、だまされたり甘い言葉をかけられて業者についていった場合でも、行き着く先は軍が管理・運営する慰安所です。軍の監視の下、逃げ出すことのできない監禁状態のなかで日本兵の相手をさせられました。
どういう形で連れてこられたにせよ、慰安所では強制使役が待っていたのです。
Q 「従軍慰安婦」にさせられた女性はどう証言していますか。
被害者のみが知りうること
A 慰安所で働かされたのはアジア諸国の若い女性たちでした。多くの女性が告発しています。
「黄色っぽい服を着た日本人と区長、班長が家に来て母に『挺身隊に送るので娘を出しなさい。軍服を作る工場の仕事だ』と言いました。しかし連れていかれたところは広東の慰安所だった」(朝鮮=金福童さん)
「ある夜、自宅に押し入ったヒロオカという日本兵に無理やり連れ出され駐屯地のビッグハウスに監禁されました。約1年間にわたり連日、大勢の日本兵に強かんされました」(フィリピン=トマサ・サリノグさん)
※『女性国際戦犯法廷のすべて』(女たちの戦争と平和資料館編集・発行)から
かつて河野洋平氏は、被害女性の証言の信ぴょう性に向けられた疑問について、河野談話作成過程を振り返りこう反論しています。
「私はその証言を全部拝見しました。少なくとも被害者として、被害者でなければ到底説明することができないような証言というものがその中にあるということは重く見る必要がある」
Q 日本軍が関与していたことを裏付ける資料はあるのですか。
政府資料にも関与示す証拠
A たとえば、陸軍省の関与を示す重要な資料に、「軍慰安所従業婦等募集に関する件」と題した陸軍省副官通牒(写真)があります。宛(あて)先は「北支方面軍および中支派遣軍参謀長宛」です。内容はこうです。
〈業者に女性を集めさせていたが、業者のなかには誘拐犯と間違えられて警察に検挙される例もあった。そこで今後は派遣軍が募集を統制し、軍の威信を保持せよ〉
中央大学の吉見義明教授が発見したもの。政府公表資料にも入れられました。
直接手を下したのが業者でも、その背後には軍がいました。
(2007年03月18日,「赤旗」)
旧日本軍の「従軍慰安婦」とされていた女性たちについて、「強制性を裏付ける証拠がなかった」――。そう記者会見(1日)で語った安倍晋三首相に米議会やアジアなどから強い批判の声があがり、国内外で大きな問題になっています。米国からのリポートと問答でこの問題を考えてみました。
「日本政府が『制度』として間違いを犯したことを認めてこそ、彼女(「慰安婦」)たちは尊厳を取り戻せるのです」「日本政府による公式の謝罪が重要なのです」
「慰安婦」問題決議案を審議する、米下院外交委員会アジア太平洋地球環境小委員会のファレオマバエガ委員長(民主党)が「赤旗」へのインタビューでそう語りました。
決議案は、1月末に、日系のマイク・ホンダ議員(民主党)が提出したもの。日本軍による「慰安婦」問題を、日本政府が「公式に認め、明確であいまいでないやり方で謝罪すべきだ」という内容です。
安倍首相は記者会見や国会答弁で「慰安婦」について、わざわざ「狭義の強制」と「広義の強制」にわけて、「人さらいのように連れていく強制はなかった」「強制性を裏付ける証拠がなかった」などとのべました。
これは、「旧日本軍が直接あるいは間接に関与」し、「本人たちの意志に反して集められた」と、強制を認めた河野洋平内閣官房長官談話(1993年8月4日)にも反する発言です。河野談話には「狭義」「広義」などの言葉はありません。首相発言で、「日本は何度も謝罪してきた」などとする日本政府の米議会への説明も崩れました。米議会の決議案は「日本軍による『慰安婦』の強制や奴隷化はなかったとするいかなる主張に対しても、明確に反論せよ」と主張しています。
増える提案者
公聴会で、日本政府がロビイストを通して配布した資料を読みあげ、決議案に反対を表明していたローラバッカー議員(共和党)は2日、安倍氏の発言は「これまでの日本の立場と矛盾する」(同議員事務所)と批判し、日本が謝罪しない限り「決議に賛成する」と態度を変更。日本政府擁護を公言する議員はゼロになりました。議案の共同提案者は当初の6人から、13日までに42人に達しています。
同委員会では、2月に韓国人二人とオランダ出身のオーストラリア人一人の元「慰安婦」が公聴会で初めて証言しました。
韓国の金君子さん(81)は、毎日何十人もの日本兵にレイプされた経験などを語りました。オランダ出身のオハーンさん(84)は「初日の夜の恐ろしい記憶は私のその後の人生を拷問しつづけている」と証言。「日本政府の公式な謝罪によって私たちは尊厳を取り戻したいのです」と訴えました。
歴史観に注目
米主要紙も、安倍首相の発言が河野談話と真っ向から矛盾することを指摘し、安倍氏の歴史観にも注目。「東京戦犯法廷の有罪判決の有効性、『慰安婦』の奴隷化における日本軍の役割についての歴史の総意に疑問を呈してきた」(ロサンゼルス・タイムズ)と伝えました。
「安倍首相は、『日本軍による性奴隷制度』のどこが理解できず、謝罪できないのか」(ニューヨーク・タイムズ)、「(元「慰安婦」の)女性たちの古傷に新たな侮辱を加えた」(ボストン・グローブ)などと指摘する社説が続きました。
こうしたなかで前出のファレオマバエガ委員長は、4月の安倍首相訪米後に先送りされる可能性があった審議日程を「3月中に行いたい」と表明し、審議を加速させる意向を本紙に語りました。同委員長は、「安倍首相には今、『慰安婦』問題の責任を認め、前に進むか、党内の保守派ののぞみのとりことなるかが問われている」のではないかと語りました。
決議案は小委員会に続き、外交委員会での審議後、下院本会議に上程される見込み。外交委員会のラントス委員長は、小泉首相(当時)の靖国参拝を「ヒトラーの墓に花輪をささげるに等しい」と批判した人です。安倍首相の歴史のごまかしが問われています。
ワシントンで 鎌塚由美記者
(2007年03月18日,「赤旗」)
安倍晋三首相が、「(『従軍慰安婦』を)旧日本軍が強制した証拠はない」などと発言している問題で、新日本婦人の会、長崎女性史研究会など長崎県内の二十五の女性団体は十六日、一国の首相の発言として「恥ずかしい」と、首相に対し謝罪と発言の撤回を求める抗議文を送付しました。
抗議文は、一連の安倍首相発言を「過去の事実から目をそらし、女性の人権を軽視している首相自身が日本という国の品格をおとしめている」と指摘しています。
出席した女性団体の代表は「(『慰安婦』から)話を直接に聞いたこともある」などと歴史をゆがめる首相発言への怒りを次々に発言しました。
安倍首相の発言には国内外から怒りと反発の声が広がっています。米下院では『慰安婦』問題で日本に公式謝罪を求める決議を支持する動きが急速に強まり、同国の法学者から六年前の連邦地裁判決とも矛盾すると批判されています。
先の柳沢伯夫厚労相の「女性は産む機械」発言にたいし、抗議の昼休みデモを実施した新日本婦人の会県本部の前田保子会長は、「NHKによる(『慰安婦』問題をとりあげた番組の)改ざん事件や柳沢発言などに続き、日本の首相自身が自らの発言で過去の歴史の事実を消し去ろうとしていることに強い怒りをおぼえる」と語っています。
(2007年03月18日,「赤旗」)
「従軍慰安婦」問題をめぐる安倍首相など日本政府の言動に対し、世界中から大きな批判が巻き起こっています。
改憲執着が背景に/シンガポール紙
シンガポール紙・聨合早報十日付論評「安倍はなぜ別の形で『河野談話』を否定するのか」は、安倍首相が「慰安婦」問題で「日本軍が強制した証拠はない」と述べた背景に「憲法改定」に執着する政治信念があると指摘しています。
論評は、中韓両国訪問成功で国内外の拍手と支持を得た安倍氏がなぜ、アジアの隣国などとの間で「歴史観の摩擦」を引き起こすのかと問題提起。「米議会の慰安婦問題決議案への対応で安倍氏が、自民党内の『日本の前途と歴史教育を考える議員の会』がかねてから要求していた『河野談話の修正提言』に支援と同意を与えたからだ」と述べています。
論評は、安倍氏のこうした政治姿勢の背景に触れ、一九九三年に国会議員に当選した際、現在の中川昭一政調会長とともに「直ちに自民党内で歴史の見直しを主張する右派集団の重要な構成員になった」点に注目しています。
「安倍氏は組閣でこれらの『同志』を入閣させたり首相補佐官の要職に引き入れた。十八人の大臣のうち十一人が憲法改定と海外派兵を積極的に主張する『日本会議』の議員連盟の構成員だ。安倍氏は機会を見て閣議での『河野談話』や『村山談話』の変更を考えているといわれる」、「これらの点で安倍内閣は『改憲内閣』と位置づけられる」と述べています。
古傷を再び開いた/米学者
米ハーバード大のジェニー・スック、ニューヨーク大のノア・フェルドマン両教授(法学)はウォール・ストリート・ジャーナル十三日付への連名の投稿で、安倍首相の「慰安婦」問題での発言を「アジアの古傷を再び開いた」と批判しました(本紙十五日付既報)。
両教授は、「日本が歴史を糊塗(こと)してきたことを長い間非難してきた隣国の中国と韓国で、いっそうの不信をかき立てるに違いない」と指摘。さらに「日本はどんな国になりたいかを決定するにあたり、自国の過去に向き合う必要がある」と述べ、歴史認識・戦争責任問題と国の基本的方向をめぐる論議が密接に関係しているとの認識を示しました。
その上で、「憲法に定められた平和主義の六十年間の後、日本政府は安全保障でより積極的な役割を果たすために憲法改定を検討している」と指摘。「このような重大な決定(憲法改定)をするには、なぜその規定が存在しているのかについて開かれた討論が必要だ」と訴えています。
責任を受け入れよ/カナダ元外交官
カナダ紙トロント・スター九日付は、同国元外交官ハリー・スターリング氏の「日本は一貫して過去についての謝罪を拒否している」と題する論評を掲載しました。
論評は米議会決議案について麻生外相が「客観的事実に基づいていない」と述べたことに言及。「多くの慰安婦が日本軍の売春宿に強制的に閉じ込められたことや、日本軍の彼女らへの蛮行を確認する日本の軍人の証言がすでにあるにもかかわらず、そのようなことを言っている」と批判しました。
論評はさらに、「あらゆる社会は、その過去の歴史やイデオロギー的傾向にかかわらず、その行為への責任を受け入れなければならない」ということに「日本の指導者たちは向き合おうとしていない」と厳しく指摘しています。
その上で「慰安婦の扱いを合理化した安倍首相の最近の発言」は、「支持率低落の中で日本の保守層やウルトラ民族主義者たちの支持を得たいとの願いに根ざしている」と解説しています。
外交的に高くつく/米誌
米週刊誌『タイム』(電子版)は八日、「従軍慰安婦」問題についての安倍首相発言を批判的に紹介する記事を掲載しました。
記事は、一九九三年の河野談話の見直しを求める「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」の代表を安倍首相が八日に励ましたことを念頭に、「日本の右翼的国会議員のグループの取り組みを支援すると発表した」と紹介しています。
記事は「右翼を甘やかすことで、安倍首相はずっと重要なものを投げ捨てることになるかもしれない」「それは、日本の重要な隣国であり貿易相手国である中国と韓国との改善しつつある関係である」と指摘。「日本の戦争中の歴史を書き換えようとする日本の指導者の企ては、外交的に高くつくことになりかねない」と結んでいます。
「恥知らず」の発言/米紙
米紙サンフランシスコ・クロニクル九日付は「日本の恥」と題する社説で、安倍首相の一連の「慰安婦」問題での発言を批判しました。
社説は安倍首相が「日本の歴史に関する不名誉な真実を否定した最新の同国首相だ」と書き出しています。
「慰安婦」問題について「日本の記録と、生き残った女性たちの涙の証言は、十分にこの事実を証明してきた」として、一九九三年の河野談話での謝罪を紹介。「しかし首相は、日本の政界の強硬な過激派をなだめようとして、恥知らずにもあいまいな発言をした」と批判しています。
社説は、首相がその後「謝罪は今も有効だ」「新たな調査を求めた」と発言したことを紹介。「このようなごまかしをする原因」は、米議会にかけられている「慰安婦」決議案にあると指摘しています。
社説はこの問題の「別の意味」として、中国や韓国との関係をあげ、日本が「地域での指導的地位を維持するには、歴史的な過ちを正す必要がある」と述べています。
試練に耐えられぬ/マレーシア紙
マレーシア英字紙ニュー・ストレーツ・タイムズ十五日付は「安倍首相は誠実さの試練に耐えられない」と題する論評を掲げ、同氏の「慰安婦」問題での発言と対応を厳しく批判しています。
論評は「安倍首相の最近の一連の言動は、第二次世界大戦から六十年以上にもなるのに戦争中の日本の行動が、なぜ(アジア)地域では依然として敏感な問題であり、日本の謝罪が不誠実だとみなされるのかを示した」と指摘。「日本の政治指導者たちが過去を認めず」、あいまいな「謝罪」を繰り返してきたことに根本的な問題があるとして、次のように述べています。
「謝罪には、しばしば非常に多くの修飾語がつけられ不明確なものになり、他の政治家や(時には同じ政治家が)矛盾した発言をする。だから、謝罪しても日本は本当に謝っていない、実際に日本は謝罪する必要はないと思っているという印象がつくられた」
( 2007年03月18日,
自民党の加藤紘一元幹事長は十六日午後、TBSの番組収録で、従軍慰安婦問題をめぐり米国内で安倍政権に対する批判が出ていることについて「この前の戦争は間違っていなかったというのが安倍晋三首相や下村博文官房副長官の信念だ。(首相らの)心の中が見えて、日米(関係)にも影響している」と述べ、首相らのタカ派的姿勢が日米関係に悪影響を与えているとの見方を示しました。
また、山崎拓前副総裁、古賀誠元幹事長と加藤氏による「新YKK」に関し、「首相の外交を心配する政策的な軸になる」と語り、アジア外交を軸にした「非安倍勢力」の受け皿づくりに意欲を示しました。
( 2007年03月18日,「赤旗」)
政府は十六日の閣議で、「従軍慰安婦」問題をめぐり、安倍晋三首相が旧日本軍による狭義の強制性を否定していることに関して、「政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述は見当たらなかった」とする答弁書を決定しました。
答弁書では、旧日本軍の関与を認めて謝罪した一九九三年の河野洋平官房長官談話について、「談話は閣議決定されていないが、歴代の内閣が継承している。(新たに)その内容を閣議決定することは考えていない」などとしています。
社民党の辻元清美衆院議員の質問主意書に答えました。
( 2007年03月18日,「赤旗」)
千葉県決起集会
千葉県の日本共産党と後援会は十六日、志位和夫委員長・衆議院議員も参加して「選挙勝利 全県党と後援会の決起集会」を千葉市内で開きました。五百人が参加しました。
浮揚幸裕県委員長は、三中総以後の奮闘による積極的変化に確信をもつとともに、勝利をつかめるかどうかはこれからの奮闘にかかっているとして、「前進から飛躍をつくるために、ポスター、音の出る宣伝、対話・支持拡大、党勢拡大などどの活動でも、どの党派・候補にも負けない活動をして、風をおこそう」と訴えました。
発言・交流では、支部・後援会、選対責任者、予定候補者などから、支部を基礎に、要求にもとづく取り組みを広げながら、新しい人々に働きかけている取り組みがのべられ、必勝の決意が語られました。
福祉と暮らしとともに、「憲法をまもれ」と大いに訴えよう
発言に立った志位委員長は、「政党状況がどうなっているか、日本共産党の役割をどう押し出すかについて、よくつかんでたたかいぬきましょう」とのべ、都道府県委員長会議での提起を前提において、いくつかの問題に補足的に言及しました。
一つは、憲法問題です。安倍内閣は、閣僚のモラルが問われるあいつぐ問題、貧困と格差の深刻な広がりにたいする「逆立ち」した対応などで、支持率を続落させ、早くもゆきづまりにおちいっています。このゆきづまりの反動的打開のために、憲法改定に向けた動き、歴史をわい曲する動きを強めています。とくに、改憲手続き法案について、首相の強い意向をうけて、与党が四月上旬までの衆院通過をねらうという重大な状況があります。
これらを指摘した志位氏は「改憲手続き法案をめぐるたたかいは、いっせい地方選挙のさなかの攻防となりますが、反対の国民的運動をつよめるとともに、選挙戦のなかでも大いに重視し、住民の福祉と暮らしの問題とともに、『憲法九条をまもれの声は、こぞって日本共産党へ』と訴えましょう」とよびかけました。
同時に志位氏は、「いまの憲法問題をめぐる状況の特徴は、改憲を推進する安倍首相が、『従軍慰安婦』問題で『強制連行をおこなった証拠はない』などと、歴史をわい曲する発言をくりかえし、国際的にごうごうたる批判がおこっていることです。戦争への反省もない勢力が、憲法を変えて海外に武力で乗り出すことに、多くの国々がたいへんな危うさを感じています。侵略戦争に無反省の『靖国』派が改憲の中心にすわっていることの危険性を訴える、すなわち歴史問題と憲法問題を一体に正面から訴えることが大切です」とのべました。
住民をあざむく「野党ポーズ」――やり方そのものを広く明らかにしていこう
いま一つは「オール与党」批判の問題です。とくに選挙を前にして、民主党の「野党ポーズ」は目にあまるものがあります。千葉県でも、民主党は、自民、公明、ネットなどとともに県政与党ですが、同党千葉県総支部連合会が昨年十二月に発表した「千葉マニフェスト」では、政務調査費の公開、乳幼児医療費助成制度の拡充、介護保険の改善、開発による借金を減らすことなどが列挙されています。しかし、それらのどの問題でも、県民の請願を否決するなど、民主党は、これまで与党として福祉切り捨て・巨大開発の「逆立ち」県政を推進してきたという事実があります。
それらの問題を指摘した志位氏は、「これまでの悪政への加担への反省もなく、選挙間際になると『野党ポーズ』をとる。これは、無責任、不誠実のきわみであり、こういうやり方そのものを住民に広く明らかにしていくことが大切です」とのべました。
選挙勝利の客観的、主体的条件はある――力つくし、それを現実のものに
志位氏が最後に、「昨年の大会、さらに今年の三中総以来の活動によって、選挙勝利の条件をきりひらきつつあります。勝敗は、それを現実のものにする残り三週間余の奮闘にかかっています。千葉県の党と後援会の底力を出し切って、必ず前進・勝利をつかみましょう。私もともに奮闘します」とのべると、大きな拍手がおこりました。
( 2007年03月18日,「赤旗」)
韓国の金大中・前大統領には、いまも心の痛む思い出があります。小学五年の、一九三八年の出来事です▼当時、学校で朝鮮語が禁じられていました。ある日、学校にいると、父が用で会いにきました。しかし、父は日本語をしゃべれません。金大中少年も、朝鮮語を使ってはいけません。父の困った表情。黙って別れました▼前年から日本は、植民地の朝鮮の学校で毎朝、「皇国臣民の誓い」を唱えさせます。「私どもは、大日本帝国の臣民であります」「私どもは、心を合わせて天皇陛下に忠義をつくします」…▼四〇年になると、近衛文麿首相が演説します。日本の人口が一億に達しようというとき、心を合わせて一つとなって戦争を遂行しよう=B「一億一心」です。「一億」とは、実は植民地の朝鮮・台湾の人々を入れた数字でした▼戦争に朝鮮の人たちを動員した、野蛮なやり方の一つが「従軍慰安婦」の連行です。お前らは天皇の臣民だ≠ニいって民族の誇りを傷つけ、日本人と朝鮮人は同じ≠ニいいながらさげすんで性の奴隷にし、戦争が終わると知らん顔、長い間謝りもしない…▼安倍首相も、連行を強制しなかったかのように話しています。アメリカの学者が、首相に問います。「参議院選に向けてナショナリズムをあおろうとしたのか。もしそうなら、レイプと残虐行為の歴史で自国に誇りをもつ有権者とはどういう連中なのか」(『ニューズウィーク』日本版21日号)。憲法を変えよと叫ぶのも、そういう「連中」です。
( 2007年03月18日,「赤旗」)
【ハーグ=AFP時事】オランダのバルケネンデ首相は十六日の記者会見で、日本政府が従軍慰安婦問題で強制連行の証拠はなかったとしたことに関し、「不快感を持って驚いている」と述べました。また、外相が日本の大使を呼び、日本政府の立場について説明を求めたことも明らかにしました。
従軍慰安婦には、旧日本軍に占領されたインドネシアにいたオランダ人数百人が含まれているとされます。
( 2007年03月18日,「赤旗」)
旧日本軍「慰安婦」問題で「強制はなかった」とする安倍首相発言と日本政府の態度にアジアや欧米諸国からの批判がいっそう広がり、安倍政権が国際的な孤立を深めています。「過去を反省しない不誠実な態度」の背景に「タカ派首相の改憲姿勢」があると警戒する論調も出始めています。(6面に詳報)
十七日の米紙ニューヨーク・タイムズは、米国のシーファー駐日大使が元「慰安婦」の「証言を信じる」「(強制性は)自明のこと」とのべ、安倍首相の発言に不快感を示したと報じました。同大使は先に、米下院に提出された日本政府に謝罪を求める決議案に関連して、首相発言は米国内に「破滅的な影響を及ぼす」と警告していました。
日本政府が十六日の閣議で「強制連行を示す記述はなかった」との答弁書を決定したことにたいし、韓国外交通商省は十七日に声明を出し、「過去の過ちを小さくし、歴史的真実を取り繕おうとする」ものと強く反発しました。
首相発言には中韓外相の強い遺憾表明に続き、オーストラリアのハワード首相も批判。シンガポールのリー首相は「過去を真摯(しんし)に受け止める努力」を求めています。
欧米のメディアでは、首相発言が「過去の悪行を覆い隠す」「被害者の女性をうそつきよばわりする」(ボストン・グローブ紙)との批判と怒りが広がっています。仏紙ルモンドは「安倍発言が引き起こした怒号で日本は苦境に立たされている」と報じています。
シンガポールの聯合早報は、首相発言の背景には「改憲に執着する首相の政治信念がある」と警戒をよびかけました。
( 2007年03月18日,「赤旗」)
第二次大戦中に強制連行され、広島県内の水力発電所建設工事で過酷な労働を強いられたとして、中国人の被害者と遺族計五人が西松建設に損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第二小法廷(中川了滋裁判長)は十六日、「請求権放棄」の争点に限って弁論を開きました。
原告二人が来日し、陳述。強制労働中に事故で両目を失明した宋継堯さん(79)は、「ずっと地獄のような生活だった。歴史を正しく認識して公正な判決を求める」とのべ、邵義誠さん(81)は「どのように解釈すれば中国人に賠償請求権がないとなるのでしょうか」と訴えました。中国人が最高裁で陳述するのは初めて。判決は四月二十七日。
最高裁が争点にしたのは、一九五二年の日華平和条約と七二年の日中共同声明で中国人個人の損害賠償請求権が放棄されたかどうかです。
原告側弁護団は、日華平和条約が台湾と一部の地域を適用範囲として結ばれたものであると指摘し、その事実を「無視して請求権が放棄されたと考えることは到底不可能」だと強調。日中共同声明については、中国政府が日本政府に対し「『戦争賠償』を放棄したにとどま」り、被害者個人の「『被害賠償』まで放棄したものではないことは文言上明らかである」とのべました。
原告側が逆転勝訴した二〇〇四年七月の広島高裁判決は、個人の請求権を認めています。
最高裁が個人の請求権は放棄されたと判断すれば、従軍「慰安婦」訴訟など、すべての中国人の戦後補償裁判に大きな影響を与えることになります。
( 2007年03月17日,「赤旗」)
衆院特別委員会で改憲手続き法案の公聴会日程が議決されたことに対し、日本共産党の相沢みよ子県議候補と党越谷市議団は十五日夜、議決への抗議と同法案の廃案を求める街頭宣伝を東武新越谷駅前で行いました。
金子まさえ市議団長が改憲手続き法案の衆院通過めざし国会でごり押ししている自民、公明両党の動きを批判しつつ、「安倍内閣の狙いは九条をなくして、戦争ができる国づくりにある」と指摘しました。
相沢県議候補は、「改憲手続き法案を廃案にして憲法を守り抜きたい。『従軍慰安婦はいなかった』という安倍首相や上田埼玉県知事の認識をただし、子や孫に平和を引き継ぐために全力を尽くします」と訴えました。
(2007年03月16日,「赤旗」)
日本共産党の吉井英勝衆院議員は十五日、総務委員会で、二〇〇七年度のNHK予算と番組改変問題について質問しました。
吉井議員は、一月二十九日に出されたNHK裁判控訴審判決に触れ、「従軍慰安婦」を扱ったETV番組が「安倍晋三官房副長官(当時)に面会した後、NHK幹部の指示で改変されたことは動かし難い事実」と指摘。その上で、「NHKが即日上告したことについて、NHK経営委員会はどのように受け止めたのか」と迫りました。経営委員会の石原邦夫委員長は「係争中の案件なので、見解は差し控えたい」と述べました。
吉井議員は、経営委員会の中で小林緑委員が、番組改変問題に関して「時間をかけて議論し、委員会として見解を出すことも考えるべきだ」「NHKとしても、公共放送とは何か、ということが厳しく問われている」と発言していることを紹介。「NHK執行部が正しいかじ取りをしているか、監督するのが経営委員会の役割ではないか」と、第三者機関を入れて番組改変問題を検証し、視聴者に説明責任を果たすことを強調しました。
吉井議員は、〇六年四月のカラ出張問題を端緒とした全部局調査など、改革への取り組みを注視したいとしました。
また、菅義偉総務相は、民主党議員の質問に対して、放送法改定案の提出を「今月いっぱいをめどに考えている」と発言。その中に受信料の支払い義務化を盛り込むかどうかは、未定と答弁しました。
質疑終了後、NHK予算案は全会一致で採択されました。
( 2007年03月16日,「赤旗」)
河野洋平衆院議長は十五日午後、自民党内で従軍慰安婦問題を謝罪した一九九三年の「河野洋平官房長官談話」を見直す動きが出ていることについて「信念を持って談話を発表しているので、あれについてとやかく言うという気持ちは全くない。あの通り受け止めてほしい」と述べました。国会内で記者団に語りました。
( 2007年03月16日,「赤旗」)
【ワシントン=時事】二○○八年の次期米大統領選への出馬を表明している共和党実力者のハンター前下院軍事委員長は十三日、従軍慰安婦問題について「日本政府は歴史的事実に立脚し、謝罪することが必要だ」と述べ、下院で審議中の対日謝罪要求決議案の採択を求めていく考えを強調しました。時事通信の取材に答えました。
ハンター氏は日米同盟を重視する保守派の代表格ですが、今月五日に決議案の共同提案者に加わりました。その理由について同氏は「関係者の話をいろいろと聞いたところ、多くの女性が慰安婦として人道的にひどい扱いを受けたことは事実だと判断したためだ」と説明しました。
( 2007年03月15日,「赤旗」)
【ワシントン=鎌塚由美】米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(十三日付)は、「従軍慰安婦」問題での安倍首相の発言を批判する米法学者の投稿を掲載しました。両教授は、六年前の米国内での慰安婦裁判の判決を引用し、安倍首相の主張は成り立たないと指摘しています。
投稿は、ハーバード大学法学部のジェニー・スック教授と、ニューヨーク大学法学部の教授で米外交問題評議会の研究員でもあるノア・フェルドマン教授の連名によるもの。
「従軍慰安婦」問題で「強制性を裏付ける証拠はなかった」という安倍首相の発言は、「アジアの古傷を再び開いた」もので、日本軍の関与と強制を認めた河野官房長官(当時)談話から「実質的には、後退」したものであると述べました。
両教授は、安倍首相はいまだに「実際の拉致は日本軍ではなく民間業者が行ったとの立場を維持している」とし、「言語道断」だと述べています。
その理由として、六年前に米連邦地裁で争われた「慰安婦」問題の裁判で、被害者の女性から訴えられた日本政府が「商行為として行ったことを否定した」事実を挙げました。同地裁は女性たちが政府の計画にそって拉致されたとし、日本政府の行為は「商行為」というより「戦争犯罪に近い」と結論を下したと両教授は指摘。政府が「商業的事業」をした場合に訴えられるケース以外には訴追できないとする外国主権免責法の規定によって日本政府の責任が問われなかったことを紹介しました。
その上で、「日本兵による拉致は商行為ではないとの法廷の結論から利益を得ながら、日本政府が今、日本兵は誰も拉致していないと述べるのは、特に悪質だ」と強調しています。
両氏は、「政治と訴訟は同じものでない」とし、「政治と法廷論争が違うからこそ、日本政府は道義的にも責任を果たすべきだ」と指摘。「ナチの強制労働の被害者と違い、『慰安婦』は補償を受けていない」とのべています。
両教授はまた、日本の改憲問題に言及し、「日本がなりたいと思う国になろうと決意するのであれば、日本は何よりも自らの過去と向き合わなくてはならない」と指摘。
日本が過去六十年以上にわたり憲法で平和主義を義務付け、軍事活動を「自衛」のみに制限してきたとし、日本政府が「安全保障においてより積極的な役割を果たす」として憲法改定を検討するという「重大な決定をする」なら、「なぜそういう(平和主義という)条項があったのか、開かれた議論をしなくてはならない」と述べました。
( 2007年03月15日,「赤旗」)
アメリカのイラク攻撃から四年を迎える二十日、全国各地で改憲手続き法案反対、自衛隊はイラクから撤退せよを掲げ、「3・20全国いっせい行動」がおこなわれ、中央集会も開かれます。「3・20中央集会」実行委員会の坂内三夫全労連議長に「3・20行動」の意義について聞きました。
――今年の行動で強調している点は何ですか。
坂内 二つあります。一つは、安倍内閣が今国会で改憲手続き法案を強行しようとしているなかで迎えます。広範な人びとが手をつなぎ、また全労連や憲法改悪反対共同センターも先頭にたち、反対署名、国会要請を繰り広げています。予断を許さない情勢ですが、改憲勢力のスケジュールではすすまなくなってきています。
焦眉(しょうび)の課題である改憲手続き法案反対の声と運動を職場、地域から急速に強め、大きく結集し、さらにたたかいを発展させ、うねりをつくりだすのが、今年の「3・20行動」です。東京では終日行動が組まれています。
もう一つは、イラク情勢が大きく変化しているなかで迎えます。
占領政策が破たん
――イラクでは内戦状態が深刻ですね。
坂内 四年前の三月二十日にアメリカがイラク攻撃を開始して以来、「3・20」は世界で平和について考え、行動する日になっています。
アメリカのイラク攻撃がまったく根拠のない無法な戦争であったことが明らかになり、占領政策も完全破たんしています。
ところがブッシュ大統領は「失敗」を口にしながらも三万人近い米軍増派をすすめています。無法な戦争と占領によって数十万人ともいわれる罪なきイラク市民が犠牲になっているのです。黙ってはいられません。占領軍のすみやかな撤退と平和・復興を求めます。
強調したいのは、安倍内閣が、いまだにイラク戦争を正当化し、イラクに自衛隊を派兵しつづけ、イラクでは航空自衛隊が米兵を輸送しているという事実です。各国が軍隊を削減・撤退させている中で安倍首相は今国会でイラク派兵特措法を延長しようとしています。
絶対に許せません。抗議の声をあげるのは憲法九条を持つ国民として国際的責務です。その場が「3・20行動」です。
――安倍内閣は、改憲手続き法案とともにイラク派兵特措法の延長、米軍再編特措法案などもねらっています。
欠陥があり不公正
坂内 改憲手続き法案は、憲法九条改悪と一体の法案です。しかもごく少数の賛成で憲法を改定できるなどの欠陥を持つ不公正な法案です。
九条を取り除こうとするねらいは「戦争する国づくり」にあります。イラク戦争のようにアメリカが戦争を始めれば、一緒になって自衛隊が武力行使できるようにすることです。改憲手続き法案を許さないたたかいは、イラクの平和を求め自衛隊を撤退させるたたかいと深く結びついています。
米軍再編特措法は、グアムでの米軍基地建設費用などに三兆円ともいわれる税金を投入する、とんでもない内容です。
自衛隊のイラク派兵や米軍基地強化に反対するたたかいは、安倍内閣が憲法を改悪して、どんな国をめざそうとしているのかを告発し、憲法改悪反対の土台を広げ、強めることになります。
――安倍内閣への国民の批判が広がっていることも特徴ですね。
坂内 安倍内閣のもとで、格差、貧困の広がりは深刻です。財界と政府が一体となった雇用破壊が原因です。しかも大企業は、偽装請負やサービス残業などの違法行為までやって大もうけをしています。春闘では「まもろう憲法・平和、なくそう格差と貧困、つくろう安全・安心な社会を」を合言葉に国民的なたたかいを広げています。
憲法改悪に反対する運動の目覚ましい発展、米軍基地再編に反対する住民の頑強なたたかいが続いています。「従軍慰安婦」問題での安倍首相の言明には、アメリカをはじめ、国際的な批判の声があがっています。
強調したいのは、国民的な批判の声やたたかいが広がり、そのなかで内閣支持率が急落している事実です。安倍改憲内閣は非常に危険だけれども、もろい。「3・20行動」は、北海道から沖縄まで全国で準備がすすんでいます。たたかいに確信をもって大いにがんばりましょう。
( 2007年03月15日,「赤旗」)
麻生太郎外相は、三十一日から二日間の日程で韓国を訪問し、宋旻淳外交通商相と会談する方向で最終調整に入りました。外務省幹部が十四日明らかにしました。従軍慰安婦問題で一九九三年の河野洋平官房長官談話を継承すると説明する考えです。また、竹島(韓国名・独島)の領有権問題で難航している排他的経済水域(EEZ)境界画定交渉についても意見交換するとみられます。
( 2007年03月15日,「赤旗」)
【ワシントン=鎌塚由美】米下院に提出された、「慰安婦」問題で日本に公式な謝罪を求める決議案の共同提案議員は、十三日までに四十二人になりました。
(7面に関連記事)
マイク・ホンダ議員(民主党)によって一月末に提出された決議案の共同提案議員は当初六人でしたが、安倍首相が「慰安婦」問題で「強制性を裏付ける証拠がなかった」などと述べたことを受け、急増しました。
共同提案者には、リベラル派の代表格のデニス・クシニチ議員(民主)から保守派で前軍事委員会委員長のダンカン・ハンター議員(共和)まで民主、共和両党の幅広い議員が名を連ねています。内訳は民主党が三十二人、共和党が十人です。
同決議案を支持し請願活動を続ける「慰安婦問題ワシントン連合」や「コリアン・アメリカン有権者協議会」などは、インターネットサイトを立ち上げ、署名活動にも取り組んでおり、共同提案者はさらに増えると予想されています。
決議案を提出したホンダ議員は、地元紙サンフランシスコ・クロニクル(十三日付)で、「安倍首相は、自身の矛盾する発言によって何よりもわれわれのために多くのことを行った」と述べました。
( 2007年03月15日,「赤旗」)
旧日本軍の山東出兵八十周年、盧溝橋事件七十周年を記念して十日、和歌山市勤労者総合センターで、日中友好協会和歌山県連合会主催の日中問題学習会が開かれました。
はじめに「歴史認識と今日の日中関係、中国の現状」について橋爪利次県連会長が報告し、安倍首相の「従軍慰安婦」問題の発言などにふれ、戦後の憲法九条などを柱とした新憲法は中国などアジアや世界に対する日本の反省と謝罪をこめた平和の願いのもとで制定されたと指摘し、九条問題を歴史認識、国際問題から報告しました。
また、昨年秋、県連が派遣した山東省訪問団の事務局長の田野裕司氏は「山東省で見た日本軍侵略のつめ跡」について報告。山東出兵とその後の日本軍の侵略の実態を説明し、細菌部隊や中国人強制連行の施設、市民を虐待した場所などについてくわしく話しました。
(2007年03月14日,「赤旗」)
「草の根メディア九条の会」(事務局・さいたま市浦和区)は十日、VAWW―NETジャパンの西野瑠美子共同代表を招いて「『メディアのいま…』を問う」と題するつどいを、さいたま市浦和区の「コラボ21」で開き、三十人が参加しました。(写真)
西野氏は昭和天皇や旧日本軍幹部らを有罪とした「女性国際戦犯法廷」(二〇〇〇年十二月)をめぐるNHK番組の改ざん問題や、これまでの政治的圧力で番組放送が中止された事件についてふれ、「メディアが自主規制を強めている今こそ、自分たちが生きやすい社会をつくるために市民から声をあげていきたい」とのべました。
西野氏は、裁判などを通じて明らかになった事実を紹介。NHK番組改ざんへの政治家からの圧力について「判決は国会議員の話をNHK側が圧力と受け止めて番組内容を変えたと認めているが、NHKは『なかった』と報道した。公共の電波を使って自己の弁解を流しているものだ」と批判しました。
上田清司埼玉県知事が「慰安婦はいても従軍慰安婦はいなかった」と発言していることについて西野氏は、「軍の関与による『従軍慰安婦』という事実を人々の記憶からなくし、戦死者はお国のために戦って死んだ『英霊』だと美化したいという考え方が根本にある」と指摘しました。
(2007年03月14日,「赤旗」)
日本共産党の志位和夫委員長は十三日、都内で、日本政治総合研究所(白鳥令理事長)の「政治問題研究会」に招かれて講演し、いっせい地方選、参院選の二つの全国選挙に臨む日本共産党の立場と政策について語りました。
同研究所は、「日本の議会制民主政治の研究」を目的に一九七五年に設立され、経済界、言論界、学会の有志が参加しています。研究会では、司会の飯塚繁太郎常任理事が、「共産党(の党首クラス)をお呼びしたのは、(七〇年代に)当時、書記局長だった不破哲三さん以来。今日は、共産党が新綱領のもとで本格的選挙にいかに臨むかお話しいただきたい」とあいさつしました。
志位氏は、二つの全国選挙にのぞむ基本方針として、「安倍・自公政権にたいする審判と『二大政党づくり』にたいする審判の二重の審判を掲げ、『たしかな野党』としての役割を正面から訴えてたたかう」と強調しました。
安倍政権の問題では、内閣支持率が続落している根本理由として、勤労者の平均所得が下がりつづける中での貧困の拡大という、深刻な事態の進行にもかかわらず、安倍首相には、その認識もなければ対策もないことを指摘。同時に、事態をタカ派的、反動的な「安倍カラー」で乗り切ろうとしている危険性を、改憲手続き法案をめぐる動きと、歴史認識問題での逆流をあげて解明しました。とくに「従軍慰安婦」問題では、海外メディアの批判や米議会関係者の発言も紹介しながら、「前向きの是正をはからなければ深刻な事態になる」と警告しました。
「二大政党」の問題では、民主党が、貧困と格差拡大の大本にある、社会保障と税制、労働法制の改悪に賛成してきた事実を反省することなく「格差是正」を主張し、国政でも地方でもにわかに「野党ポーズ」をとっていると批判しました。政党としての道義、責任、節操が問われるとし、同党提出の「格差是正法案」について「本気で『格差是正』をいうなら、民主党の『是正』が必要だ」とのべると、出席者から爆笑が起きました。
志位氏は、「『オール与党』か日本共産党か」という地方政治の焦点も詳しく説明。出席者からの、「民主への政権協力はあるのか」「政党助成金を受け取る気はないか」などさまざまな質問に丁寧に答えました。「政権協力」問題では、「自民、公明、民主は同質集団であり、どんな組み合わせもありえる」と笑いを誘いつつ、「たしかな野党」として、政治の激動に立ち向かう決意を表明しました。
( 2007年03月14日,「赤旗」)
◎(地方版)改憲手続き法案は戦争直結/野崎駅前で訴え/周辺9条の会
大東市の野崎駅周辺9条の会は八日、十四人が参加して毎月定例の駅前宣伝をしました。今回で連続三十三回目。参加者は、同会の独自ゼッケンと「憲法9条ハット」を身につけて署名・宣伝しました。
「改憲手続き法案は廃案に」「9条守ろう」の横断幕を掲げ、「改憲手続き法案でのマスコミ買い占め」「手続き法案は、改憲と、海外での戦争に直結」「世界に輝く憲法9条を守りましょう」と訴えた会の独自ビラ三百五十枚を配りました。
行動には、日本共産党の、とびた茂府議候補と千秋昌弘市議会議員も参加。大東原水協の橘田政明会長らがハンドマイクで「五月までに改憲手続き法案を強行しようとする安倍首相と自民・公明」を批判。安倍首相の「従軍慰安婦」発言について、「この地には『従軍慰安婦』の碑がある。十数万人ともいわれる日本軍による性奴隷は、女性への暴力的な拉致を含むもの。こんなことは二度と繰り返させない」「危ない内閣から憲法を守り抜きましょう」などと訴えました。
(2007年03月13日,「赤旗」)
福井/県政と県民の懸け橋に
日本共産党演説会が十一日、福井市で開かれ、二百八十人が参加しました。井上さとし参院議員、宇野邦弘知事候補、さとう正雄県議(福井市・足羽郡区)、藤岡しげき県議候補(坂井市区)、西村きみ子福井市議、鈴木しょうじゅ同候補が訴えました。
井上氏は、「政治とカネ」、貧困と格差、改憲手続き法案などを報告。サービス残業や偽装請負の解決などの成果を紹介し、「日本共産党の論戦と草の根の運動が結びついて政治を動かしてきた」とのべ、支援を訴えました。
さとう氏は、「日本共産党の議席は県政と県民のかけ橋です」と話し、学校耐震や少人数学級の促進、子どもの医療費無料化拡充、議会改革など、唯一の野党県議として二期八年果たした役割を紹介。県民負担増やムダな足羽川ダム計画や税金を使った海外旅行に賛成する、他の全議員にはない値打ちを押し出しました。
宇野氏は、西川県政のこの四年間を「まさに国に言われるまま格差を広げ、(県民に)負担を押しつけてきたのが実態だ」と厳しく批判し、くらし・福祉を守る県政への転換を訴えました。
藤岡氏は、坂井市で共産党市議が市民と共同して新年度予算で新たに学童保育二カ所分の予算を実現した成果を紹介し、「ここに日本共産党議員の大きな値打ちと役割がある」と強調しました。
各氏の演説を聞いた年金生活の男性(75)=福井市=は「私らみたいな底辺の者に負担ばかりかけないでほしい」と話し、日本共産党へ期待を寄せていました。
名古屋・千種区/市民の怒りを示そう
名古屋市千種区で十一日、二大選挙勝利をめざす日本共産党演説会が開かれ、四百八十人が参加しました。さいとう愛子県議候補、黒田二郎市議、八田ひろ子前参院議員が訴えました。
さいとう氏は、「税金の使いみちをただして、子どもの医療費無料制度や介護保険施策の拡充など、県民のくらしを応援する政治を実現したい」と決意を表明しました。
黒田氏は、住民運動と連携して実現した地域巡回バスなどの実績を紹介。「財政難を理由に福祉を切り捨てる一方、政務調査費の領収書公開に反対する民主、自民、公明各党の態度は許せません。市民の怒りを選挙で示しましょう」と呼びかけました。
八田氏は、「安倍政権による大企業の『成長』優先、格差と貧困の拡大政策を阻止するためには、大企業から一円も受け取らない日本共産党の前進が必要です。地方選、参院選での勝利めざして全力を尽くします」と訴えました。
名古屋市内3カ所で佐々木衆院議員が勝利訴え
日本共産党の佐々木憲昭衆院議員は十一日、目前に迫った地方選挙と参院選勝利をめざし、名古屋市港区、南区、瑞穂区の演説会で訴えました。
佐々木氏は、安倍内閣は大企業減税・庶民大増税≠フ予算案を衆院で強行し、改憲への号令をかけていると指摘。自民と民主が財界から献金をもらい、政党助成金で税金の山分けをしているとのべ、批判。「清潔で国民と力をあわせる共産党の躍進が政治を動かす」と支持をよびかけました。
港区の演説会は三百人が参加。かのう美恵子県議候補は、くらし・福祉を元気に、子育て支援、ガラス張りの県政などの政策をのべ、「港区から唯一の女性県議を」と訴えました。
山口きよあき市議は、オール与党議員の引退後の外郭団体への天下り、不透明な政務調査費などを紹介し「自分が使う税金をチェックできずに、市政を批判できるはずがない」と批判しました。
南区の演説会には三百人が参加しました。
中西八郎県議候補は、「党議席空白の四年間、県議会は国と中部財界いいなりで県民生活を切り捨てた。この県政の流れを変える」と力説しました。
村瀬たつじ市議とバトンタッチする、佐野たかふみ市議候補は、「福祉と暮らしを守る議席を必ず守り抜く。中学校卒業まで医療費無料化など、政治に福祉の心≠」と訴えました。
瑞穂区の演説会には百二十人が参加。森下とうじ市議候補が決意を表明しました。
新潟・十日町/過去最高の800人
新潟県の日本共産党魚沼地区委員会は十一日、十日町市で吉川春子参院議員を迎え大演説会を開きました。いっせい地方選挙で、くわはら加代子県議候補を勝利させようと、過去最高の八百人が参加。山口典久衆院北陸信越ブロック比例候補も激励にかけつけました。
くわはら候補は、県政を変える要はムダ遣いを正し税金の使い方を県民のくらし優先に変えることであり、それができるのは「オール与党」にくみしない日本共産党だと力説。「力を合わせれば県政は変えられます。安心して住み慣れたふるさとで暮らせるために県議会に送り出してほしい。支援の輪を広げに広げてください」と訴えました。
山口候補は、「共産党をもっと知って好きになってもらい、くわはら候補を押し上げてください」と訴えました。
吉川議員は、国民の貧困と格差に鈍感で、従軍慰安婦問題でも「河野談話」を否定する安倍首相と自民党政治を告発し、自民党と悪政を競い合っている民主党を批判。「国民の立場にしっかり立てる党、日本共産党のくわはら候補に大きな支援を」と訴えました。
演説を聞いた佐藤二六子さん(66)は「大勢の参加者で感動しました。訴えが伝わって、何としてもくわはらさんを当選させたい」と語っていました。
(2007年03月13日,「赤旗」)
フィンランドの少人数学級報告/深川
国際女性デー深川集会が八日開かれ、五十三人が参加しました。
新日本婦人の会・兎本弘子支部長があいさつ。
元網走向陽高校長、道高教組付属教育相談所事務局長、岩見沢九条の会代表卜部(うらべ)喜雄氏が「フィンランドの教育と日本の教育」と題して講演しました。
深川西高で教べんをとっていた卜部氏は自らが訪問したフィンランドの教育が、能力や自主性を引きだすことを重視し少人数学級である、学校統廃合などは子どもの意見をきいて決めている、選挙権は十八歳からで十六歳にすることが検討されている、と報告しました。
集会では日本共産党の紙智子、宮内さとし、はたやま和也氏からのメッセージが紹介されました。
「慰安婦」証言280人が聞く/帯広
国際女性デー帯広集会(杉野智美実行委員長)は十日、帯広市とかちプラザで開かれ二百八十人が参加しました。
旧日本軍による性的虐待の被害者・元「慰安婦」カン・イルチュルさんの証言と「ナヌムの家」歴史館の村山一兵研究員が報告し、安倍首相の「慰安婦」発言もあり、関心が集まりました。
カンさんは十六歳のとき、おとなの出払っていた日に、日本の軍人と憲兵に中国に連れていかれました。毎日七―八人に性的虐待を受け、抵抗するとなぐられたといいます。
「安倍首相は、証言しているのに、過ちを認めない。怒りで胸が痛むし、食欲もなくなってしまう」と涙を流しながら証言。「日本はまた戦争しようとしている。戦争になれば、若い人たちが死に、えらい人は死なない。戦争は絶対してはならない」とメッセージを伝えました。
若者たちが熱心に話を聞き、高校生らがカンさんに花束など贈り物を渡しました。
村山研究員は、「女性を船に乗せて移送する手続きも、規定をつくったのも軍で、深く関与している。政府は謝罪と賠償をしなくてはいけない」と語りました。
(2007年03月13日,「赤旗」)
【ロサンゼルス=時事】在米ロサンゼルス日本総領事館の兒玉和夫総領事は十一日付のロサンゼルス・タイムズ紙に投書し、「日本政府は一九九三年、慰安婦問題への関与を認め、謝罪した」と経緯を説明しました。
同紙は今月、「(慰安婦問題など)日本の戦争責任は十分追及されておらず、大半の被害者は補償されていない」とするジョージ・ワシントン大学のディナ・シェルトン教授の意見を掲載していました。
( 2007年03月13日,「赤旗」)
◎「慰安婦」問題/「おわび」発言、中国各紙報道
【北京=時事】十二日付の中国各紙は、安倍晋三首相が十一日、従軍慰安婦問題で「心からおわび申し上げている」と語ったことについて国営新華社通信を引用する形で一斉に報じました。
新華社通信は、安倍首相が一日に慰安婦問題で「狭義の強制性を裏付ける証拠はなかった」などと発言したことで、「アジアの国々の強烈な反対を引き起こした」と紹介。十一日のNHK番組での安倍首相の「おわび」発言とともに、「(同問題で謝罪した)河野洋平官房長官談話を継承していく」と触れたと報じました。
十二日付の北京青年報、新京報、京華時報など北京の大衆紙は一面で「おわび」の見出しを掲げました。北京青年報は「温首相訪日などを控え、慰安婦問題が大きくなれば、安倍首相は内憂外患の状況に陥ると見ている」との専門家の解説も掲載しました。
( 2007年03月13日,「赤旗」)
麻生太郎外相は十一日、フジテレビの番組で、従軍慰安婦問題で米下院に提出された日本政府に対する謝罪要求決議案について「今の段階で謝罪をする必要は特にあるとは思えない」と述べました。安倍晋三首相は既に、決議が採択された場合でも謝罪しない考えを表明しています。
外相は、決議案をめぐる動きに関し「日米(関係)を離間させる有効な手段だ。対日工作、日米離間工作が結構それなりに効果を上げている」として、第三国による対日工作の可能性を指摘。司会者が「北朝鮮や中国による工作か」と質問したのに対し「もちろんそうでしょう」と述べました。
また外相は、従軍慰安婦問題の再調査について「現実をもう一回調査するのは悪くない。党でやるのはいいのではないか」と指摘。政府による再調査については「(同問題を謝罪した一九九三年の)河野洋平官房長官談話を容認している立場だ」と否定しました。
( 2007年03月13日,「赤旗」)
首都圏一都三県で毎週木曜日に六十万部発行される無料誌『R25』(アールニジュウゴ)。現在配布中の三月第三週号は「安倍さんが演説でよく使うフレーズ『戦後レジームからの脱却』ってどういう意味なんですか?」との記事を載せています。
記事は、安倍政権が発足以来取り組む教育基本法改定、防衛庁の「省昇格」をはじめ「いまの通常国会で憲法改正のための手続き法である国民投票法案の成立に意欲をしめしているのも、すべて戦後レジームからの脱却のためというわけ」と解説しています。
そのうえで国民の政治への期待との兼ね合いに触れ「安倍内閣の支持率低下のおもな原因は、閣僚の不祥事などに加え、安倍さんの政策優先順位と国民みんなの期待にズレがあるから」と分析。「格差是正などの生活の問題か、それとも自分の政治的理想か。いま安倍さんが問われているのはそこかもしれない」と結んでいます。
安倍内閣にとって支持率回復の道は、格差是正など国民の生活と労働の底上げをはかる政策路線への転換という選択しかない、ということになります。
ギアの切り替え
しかし、安倍内閣が「戦後レジームからの脱却」路線から脱却≠キるような兆しは見えません。むしろ安倍「戦後レジーム脱却」路線を突っ走る強気の構えにギア(歯車)を切り替えています。
自民党が改憲手続き法案で法案採決の前提となる公聴会開催を決める衆院憲法調査特別委員会の開会を強行しようとしたことは安倍首相の意向が反映した行動でした。「従軍慰安婦」問題、南京事件問題で自民党が検討機関を設け、従来の政府見解を覆す環境づくりに動いているのも「安倍首相が側近を通じ党側から声をあげさせている。いうなれば首相のマッチポンプです」(自民党衆院議員)。
思想的に安倍首相の兄貴分とされる衛藤晟一前衆院議員(郵政「造反」組で離党)を首相のツルの一声で復党をさせたのも、一連の安倍純化§H線の一環と自民党内で受け取られています。
もともと改憲・先軍(軍事優先)のタカ派路線が政治家・安倍氏の売り≠ナした。しかし高支持率を維持した小泉政権を引き継ぐ政権として、国民が期待しない改憲・先軍政治を前面に押し立てるのは得策でないとの思惑から、「ハト派安倍」イメージを先行させてきました。
昨年の首相就任後初の臨時国会で、侵略的行為を認めた戦後五十年の「村山談話」、旧日本軍の関与を認めた「従軍慰安婦」にかんする「河野談話」の立場を、持論を翻して継承すると答弁したものでした。
しかし内閣支持率はジリ貧。本来の安倍路線を打ち出して政権基盤の再構築を、と打ち出されたのが政治家・安倍の原点回帰=$後レジーム脱却路線の全面展開作戦です。
はやる「安倍状況」
安倍首相と内閣―党の間で二人三脚を組む中川昭一政調会長は最近の講演で安倍内閣が取り組む三本柱=教育(教基法改悪体制の全面化)、安全保障(集団的自衛権行使容認)、憲法(九条改悪)=を強調し、この点で「首相はずいぶん自分のことばで話しはじめた」(七日、東京都内の講演)といっています。
しかし、安倍首相の党内求心力の低下と政権体制の弱体化、党執行部との不協和音、止まらぬ世論の安倍離れ…。
「自民党で安倍状況≠ニいうことばがはやっている。機能不全、機能がまひしているという意味。要するに心臓(晋三)まひ状態だということだよ」(自民党議員)
改憲タカ派路線をむき出しにして、それをカンフル剤に政権浮上を託す危険な安倍戦略が実を結ぶ保証はありません。
( 2007年03月13日,「赤旗」)
安倍内閣の支持率が続落している。
当然であろう。柳沢発言以降も、閣僚の問題発言はとまらない。自民党支部大会における伊吹文科相の「人権メタボ」発言もそうだ。
教育行政に責任をもつ大臣ともあろうものが、学校現場で、とりわけ今いじめに代表されるような人権問題が深刻化している中で、さもあり余る人権が日本をダメにしているかのような呆(あき)れた発言をするなど、呆れてものが言えない。首相は、即刻解任すべきであろう。しかし、安倍首相はこれまでの問題発言を一貫して擁護し不問に付してきた。
ここまでくれば、問題発言は、首相にとっては問題ではなく、自身の認識そのものでもあるとしか理解のしようがない。「従軍慰安婦問題については強制という事実はなかった」と発言する首相であってみれば、安倍内閣そのものが呆れた内閣だということだ。
教育といえば、「教育再生会議」の報告を受けて、政府は教育行政法改悪に乗り出した。都道府県教育長を国(政府)の任命にしようとするなど、教育の国家統制、管理をいちだんと強化しようとするのがその狙いである。
いま深刻化している学校問題は、明らかに教育行政の中で、管理体制のみが突出して強化されてきたことに大きな要因がある。これまでの教育政策を見直さないで、国家管理を強化すれば問題が解決されるかのような認識が、教師や子どもの悲鳴が聞こえない管理教育行政を推し進め、学校と子どもたちを壊してきたのではないか。
この問題については、「朝日」、「毎日」はそれぞれその見当違いを指摘する社説を載せていてそれなりの説得力があった。しかし、いまの学校をめぐる深刻な状況をそうした教育行政と結びつけた報道がほとんど見当たらない。今こそ学校、教育問題の本格的な報道が求められる。
(つかもと・みつお 中央大学教授)
(2007年03月11日,「赤旗」)
国際女性デー福岡集会が十日、福岡市アイレフで開かれ七十人が参加しました。
二宮町子実行委員長(新婦人県本部会長)が「『女性は子どもを産む機械』など一連の柳沢暴言は許せないし、『従軍慰安婦』問題で『狭義の意味で強制はなかった』という安倍首相はじめ政府・自民党は、基本的人権、男女平等をうたった憲法をないがしろにしています。戦争できる国づくりをねらう改憲手続き法案を廃案にしましょう」と訴えました。
歴史研究家の高尾翠さんが「平頂山事件 生存者の証言で語る歴史の真実」と題して、日本のアジア侵略の初期に起きた日本軍による住民虐殺事件について講演しました。
集会では「県民を主人公に憲法をくらしに生かす福岡県民の会」のひらの栄一県知事候補のビデオレターが紹介されました。
集会後、参加者たちは天神までミモザパレードをしました。
(2007年03月11日,「赤旗」)
愛知県
国際女性デー愛知県集会が十日、名古屋市中区で開かれ二百人余が参加しました(写真)。改憲手続き法案の廃案を訴える特別決議を採択しました。
水野磯子集会実行委員長は従軍慰安婦問題での安倍首相の姿勢を批判。「日本を再び軍国主義の時代に戻してはいけません。私たち女性が先頭に立って、戦争反対、九条守れの声を大きく広げましょう」と呼びかけました。
ジャーナリストの堤未果さんが「日本でも弱者革命を」と題して講演。
日本共産党の八田ひろ子前参院議員があいさつしました。
長野県
国際女性デー長野集会が八日、百五十人が参加して開かれました。三上満さんが「人々のほんとうの幸い求めて―明日への銀河鉄道―」と題し記念講演、「今が命を大切にされるか踏みにじられかの分かれ道。憲法九条はアジアの人々の犠牲の上にできたアジアと世界の宝です」と宮沢賢治の作品にふれながら命と憲法を守る大切さを話しました。
上田市
上小地区国際女性デー集会がこのほど開かれ、百四十人が参加しました。杉森長子さん(平和・人権教育研究センター代表)が講演しました。
(2007年03月11日,
私が『人間の条件』(五味川純平著)に出会ったのは高校生のとき、たまたま図書室で手に取ったのがこの小説でした。召集された主人公の非人間的な軍隊での生活や、中国大陸での日本兵の蛮行の数々に、「戦争というのは、人間を人間でなくするものなんだ」という強烈な印象を受けたことを今でも覚えています。
その後私は、日本軍によって「従軍慰安婦」とされた女性たちのことを知って以来、同じ女性として胸の奥がうずくような思いを抱いてきました。侵略の過ちを心から反省し謝罪することは、政府として人間として当然のことではありませんか。
「慰安婦」に対して「狭義の強制はなかった」という安倍首相の発言は、「慰安婦」とされ人生を踏みにじられてきた女性たちを二重三重に冒涜(ぼうとく)するものです。政府自身が膨大な資料を検証し「従軍慰安婦」問題に軍の関与があったと認め、謝罪したのが「河野談話」です。これを継承すると明言した首相自らの立場に立ち返るべきです。
他国を侵略し日本国民にも多くの犠牲を強いた戦争の歴史に正面から向き合おうとしない人々が今、戦争する日本をめざし、「憲法9条」を変えるために「国民投票法案」の成立を狙っていることに強い憤りを覚えます。人間が人間らしくあることとけっして相いれない戦争への道を歩んではなりません。いっせい地方選挙のたたかいの中でも、「戦争する国」にさせない、この声を大きく広げてゆきたいと思います。
(参院埼玉選挙区候補)
(2007年03月11日,「赤旗」)
「元性奴隷の古傷開く」/ニューヨーク・タイムズ紙
【ワシントン=鎌塚由美】米紙ニューヨーク・タイムズ八日付は、一面で「慰安婦」問題を取り上げ、「強制の根拠はなかった」などと述べた安倍首相の発言がアジア諸国および米国にも波紋を広げていることを伝えています。
「首相の否定は、日本の元性奴隷たちの古傷を開いている」と題してオーストラリア・シドニーから発信された記事は、七日に現地の日本領事館前で行われた元「慰安婦」たちによる「水曜デモ」を紹介。台湾の呉秀妹さん、韓国の吉元玉さん、オランダ出身でオーストラリア人のジャン・ラフ・オハーンさんの証言と、安倍首相による「慰安婦」否定発言を紹介しました。
記事は、安倍首相の発言が、アジア近隣諸国の抗議を引き起こしているとし、「日本が地域諸国との歴史問題に決着をつけていないことを再び浮き彫りにした」と指摘しています。さらに安倍首相発言により、「東アジア諸国で、近年巻き起こっていた歴史問題の議論に参加することに強く抵抗していた米国をも引き込んだ」と述べました。
安倍首相の発言が、日本政府に明確な謝罪を求めて提出された「米下院の決議案に弾みを与えた」と伝えました。
安倍首相が下院決議案にふれた五日の発言については、「彼は、下院決議案は『客観的事実に基づいていない』とし、採択されたとしても日本は謝罪しないと付け加えながら、民間業者が女性たちに(売春を)強いたと述べた」と紹介。それに対し、決議案を提出したホンダ議員が同紙に「安倍首相は、事実上、女性たちはウソをついているといっている」とし、「日本の歴史家たちによって明らかになった証拠や『慰安婦』の証言から判断して、安倍氏が正しいとは信じがたい」と語っていることを伝えました。
「日本への評価低める」/英誌『エコノミスト』社説
【ロンドン=岡崎衆史】英誌『エコノミスト』(三月十―十六日付)は、「従軍慰安婦」に関する安倍晋三首相の発言について社説を掲載し、「過去の傷に新たな辱めを加えた」とし、「安倍氏は恥を知るべきだ」と非難しました。
『エコノミスト』は、「従軍慰安婦」問題で、旧日本軍による狭義の強制性を安倍首相が否定していることについて、元「慰安婦」の多数の証言があることを挙げ、「彼は耳が聞こえないのか」と批判。「彼女らの証言に疑問を呈すること、すなわち、彼女らをうそつき呼ばわりすることで、安倍氏は、過去の傷に新たな侮辱を加えた」と指摘しました。さらに、首相の発言は、近隣諸国の不信を招くとともに、日本による世界での復興支援活動の評価を低めることになると警告しました。
「慰安婦」の強制性を示す証拠については、「これまでの日本政府が隠ぺいし、破壊しなければ、より多くの証拠が残っているだろう」とも述べました。
『エコノミスト』はまた、安倍首相が「美しい国」日本に「誇り」を抱くよう国民に訴えていることを紹介し、「彼(首相)は日本の過去についてのうその上に未来の誇りを築くことができると考えているようである」と酷評しました。
社説は、「六十年が経過した。故意の記憶喪失は現代の民主的日本にふさわしくない。安倍氏は恥を知るべきだ」と結びました。
( 2007年03月11日,「赤旗」)
政治・経済
◆首相が「慰安婦」問題決議で居直り表明 安倍首相が参院予算委員会で「(『従軍慰安婦』問題をめぐる米下院)決議があったからといって謝罪することはない」と表明。改めて「狭義の強制性を裏付ける証言はない」と言及(5日)
◆東証株価1万7千円割れ 東京株式市場は、世界的な株安傾向に円高の進行も加わり、前週末比五七五円六八銭安の一万六六四二円二五銭に急落(5日)
◆日興、米シティ子会社に 米金融大手のシティグループと日興コーディアルグループは、資本・業務両面で包括提携することで合意。三大証券のひとつが外資の傘下に(6日)
◆浅野氏が都知事選出馬表明 前宮城県知事の浅野史郎氏が都知事選に出馬表明、石原都政の基本継承を強調(6日)
◆日朝作業部会開く 北朝鮮核問題をめぐる六カ国協議の合意に基づき、日本と北朝鮮がハノイで拉致問題と国交正常化に関する問題で協議。次回日程は合意せず(7―8日)
◆改憲手続き法案公聴会日程先送り 自民、公明両党が法案の月内衆院通過を狙った衆院憲法調査特別委員会は抗議と批判の強まる中で流会、公聴会日程も先送りに(8日)
国際
◆中国全人代が開幕 中国の全国人民代表大会第五回会議が開幕。温家宝首相は政府活動報告で「調和のとれた社会づくり」を強調(5日)
◆米副大統領側近が有罪 米中央情報局(CIA)の工作員実名漏えい事件で連邦地裁の陪審団は、チェイニー副大統領の側近リビー被告に偽証罪で有罪の評決(6日)
◆米朝作業部会で非核化を再確認 米朝国交正常化に関する米朝作業部会が終了。ヒル米国務次官補は会見で「北朝鮮側が完全な非核化を実現する必要性を再確認した」と表明(6日)
◆英下院委が核兵器更新で報告書 英下院防衛委員会が、核兵器システムの更新問題で報告書を発表。同国の核兵器更新は、非核保有国に核兵器保有の口実を与え、核拡散を進めると警鐘(7日)
◆インドネシア機着陸失敗で23人死亡 乗客・乗員百四十人を乗せたインドネシアのガルーダ航空旅客機が着陸に失敗し炎上。インドネシア政府は二十三人が死亡と発表(7日)
社会・国民運動
◆平成電電元社長ら逮捕 破たんした通信ベンチャー「平成電電」が虚偽の説明で投資家三人から約一億円をだまし取ったとして、警視庁は詐欺容疑で元社長ら五人を逮捕(5日)
◆春闘勝利へ中央行動 全労連や国民春闘共闘が「なくせ! ワーキングプア、格差と貧困」を掲げて春闘勝利をめざす中央行動(6日)
◆国際女性デーで集会・デモ 「いま、輝かせよう憲法」と国際女性デー中央集会を開催。千人が参加し、デモ行進も(8日)
◆国土交通省の官製談合を認定 国交省などが発注した水門工事をめぐる談合で、公正取引委員会が官製談合と認定し、官製談合防止法に基づく改善措置要求を出す。同法が中央省庁に適用されるのは初めて(8日)
◆東京大空襲の被害者が集団提訴 東京大空襲で被害をうけた百十二人が原告となり、国を相手に損害賠償を求め集団提訴=写真=(9日)
( 2007年03月11日,「赤旗」)
日本共産党の志位和夫委員長は十日、東京・明治公園でおこなった演説の冒頭、国政の焦点について語り、安倍政権の支持率続落にふれ、「なぜ国民はこの内閣を見放しつつあるか」と問いかけました。
柳沢伯夫厚労相発言や「政治とカネ」問題をめぐる、同政権の最低の政治モラルへの怒りとともに、最大の理由として「自分たちがおしつけている暮らしの痛みにあまりにも鈍感だということへの深い怒りがある」と強調。母子家庭の状況や国民健康保険証の取り上げの深刻な実態などを示し、貧困と格差の実態を見ようともしない安倍政権の姿勢を告発しました。
タカ派・反動派の本性むきだしの安倍内閣
その上で志位氏が警告したのは、安倍内閣が行き詰まりの打開と延命のため、タカ派・反動派の本性をむき出しにしていることです。
憲法九条改悪への暴走では、その第一歩として改憲手続き法案を五月三日までに成立するよう号令をかけ、歴史問題の逆流では、首相が「慰安婦の強制連行を裏付ける証拠はなかった」などと事実をゆがめた発言を繰り返しています。志位氏は、改憲手続き法案阻止の国民的運動で国会を包囲しようと訴えるとともに、「従軍慰安婦」問題での首相発言を撤回するよう強く要求しました。
一方、「格差是正」をいう民主党について志位氏は、同党が派遣労働の原則自由化の法改悪などに賛成してきた事実を紹介。「その反省もなく選挙が近づくと『対決』を叫ぶ。これは国民にたいしてあまりに無責任、不誠実ではないか」と批判し、「たしかな野党」の日本共産党がのびるかどうかこそが選挙戦の最大の焦点だと訴えました。
「逆立ち」都政を極端にひどくした罪
都政について話をすすめた志位氏は、八年間におよぶ石原都政には三つの大罪≠ェあると告発しました。
第一の大罪は、都民の福祉と暮らしを切り捨て、巨大開発に税金を注ぎ込むという「逆立ち」都政を、極端なまでにひどくした罪です。
一九九九年に石原知事が就任した当時は、老人福祉手当、老人医療費助成、シルバーパスなど革新都政時代の福祉の制度が生きて働いていました。石原知事は「何がぜいたくかといえば、まず福祉」といい、乱暴極まるやり方で軒並み破壊しました。一方、臨海開発や高速道路建設など大規模開発を中心に年間一兆円も注ぎ、さらに、オリンピック招致を口実に、八兆五千億円もの巨大開発を計画しています。
「ここにこそ、石原都政八年間の最大の罪があり、ただすべき都政の最大のゆがみがある」と力を込める志位氏。聴衆から「そうだ!」の声があがりました。
憲法・民主主義破壊の暴政の罪
第二の大罪は、憲法と民主主義を破壊する暴政を進めた罪です。
石原知事は、「私はあの憲法を認めない」と公言、改憲の旗振りをしてきました。卒業式や入学式での「日の丸・君が代」の常軌を逸した強制にたいし志位氏は、「これが子どもたちの心をどれだけ傷つけ、教育への信頼をどれだけ失墜させているかは、はかりしれない」とのべました。
都政私物化の罪
第三の大罪は、都政私物化の罪。税金をつかっての超豪華海外旅行、四男の重用、知事と側近による公費での飲み食い…。これらはすべて日本共産党都議団が膨大な情報公開資料などを分析して明らかにしたものです。志位氏は都民の怒りについて、「福祉では盲導犬のエサ代補助のような、わずかなものまで削りに削り、ガラパゴス旅行とは許せない」という、福祉切り捨てを土台にわきおこった怒りがあると強調しました。
「ここで重要なのは、三つの大罪≠ヘ石原知事が一人でやったことではなく、都議会の自民・民主・公明の『オール与党』が支え、賛美、激励し、チェック機能を放棄するなかでおこなわれたことです」
こうのべた志位氏は、「にわか野党」としての民主党の姿勢も批判。「この選挙を、石原都政とそれを支えた自民、民主、公明の『オール与党』の三つの大罪≠ノ、きびしい審判を下す選挙にしよう」と訴えると、歓声がわき、大きな拍手が起きました。
都政転換できる立場、 資格をもつのは
では、「逆立ち」都政をただし、「都民が主人公」の都政への転換をはかる立場、政策、資格を持つのはだれなのか。志位氏は、政党では日本共産党、候補者では無党派と共産党が共同で推薦する吉田万三さんだけと強調しました。
三つの大罪≠フどの問題でも、「石原タブー」を打ち破るところまで暴政を追い詰めてきたのが共産党です。志位氏は、石原知事自身が、にわかに予算反対に態度を変えた民主党にたいし、「それなら対案として、共産党のように組み替え動議をだすべき」とのべ、日本共産党の役割を認めざるを得なかったことを紹介すると、聴衆から拍手とともに笑いが広がりました。
「逆立ち仲間」の石原、浅野氏
志位氏は、都知事選に立候補を表明している浅野史郎前宮城県知事の立場についても解明。四年前に宮城県の選挙の応援演説で、福祉切り捨て、国保証取り上げ、大型開発のムダ遣いなどを平然と進める姿に、「やっている政治の中身をみると、自民党よりも自民党型だ」と診断≠オたことを紹介しました。
この診断≠フ正しさは、介護保険導入を口実にした介護手当など経済給付的独自施策ののきなみ打ち切り、乳幼児・障害者・母子家庭の医療費助成への一部負担導入など、石原都政と浅野県政がやってきたことが驚くほど同じであることにも表れています。
志位氏は、「障害者自立支援法」という希代の悪法を賛美する態度も共通するなど、石原氏と浅野氏は「逆立ち仲間」であり、「住民福祉の機関」という自治体の原点を冷酷に踏みにじるという点で、どちらかが「よりまし」とはいえないと力説しました。
「マスメディアなどは『石原・浅野対決』などと書くが、それはまったくの偽りだ。この選挙の真実の姿は、二つに分裂した『オール与党』の陣営と、日本共産党と無党派が共同して推薦する吉田万三さんの対決です」
志位氏が力強く訴えると、聴衆は「よし、やるぞ」の声と大きな拍手で応えました。
( 2007年03月11日,「赤旗」)
九日、党本部で開かれた全国都道府県委員長会議への、志位和夫委員長の報告(大要)を紹介します。
お集まりのみなさん、おはようございます。CS通信をご覧の全国のみなさん、おはようございます。
いっせい地方選挙の前半戦の投票日まで一カ月となりました。選挙勝利をめざし、日夜をわかたず奮闘されている全党のみなさんに、心からの敬意をこめつつ、報告をおこないます。
一、三中総決定にもとづく活動の到達点について
まず三中総決定にもとづく活動の到達点について報告します。
三中総が提起した二つの課題の到達点
この二カ月間、三中総の提起と、「こんどこそ勝ちたい」という全党のみなさんの思いがしっかりとかみあい、響きあって、全党に、新たな活力が高まり、前進の流れがつくりだされています。三中総決定が、前半戦投票日の一カ月前の三月八日までに、やりとげようと提起した二つの課題の到達点は、以下の通りであります。
――選挙戦の勝利に必要な草の根の宣伝・組織活動については、対話・支持拡大は、83・6%の支部がとりくみ、この二カ月間で対話数・支持拡大数とも二倍以上になりました。支部主催の演説会・小集会・懇談会は、50・7%の支部でとりくまれ、累計で約四十万四千人が参加しました。後援会員は、過去最高の三百七万人に到達しました。
――党勢拡大については、読者拡大では、二カ月連続して前進し、全党的に一万五千人の新たな読者を増やしました。二月は、一カ月で一万人をこえる読者を増やしましたが、これは二〇〇四年の「大運動」いらいの読者増であります。党員拡大でも、二カ月で千五百人をこす入党決意者があり、十二月以来、三カ月連続で前進の流れをつくっています。
選挙勝利にむけた臨戦態勢の土台が築かれた――積極的な変化を全党の確信に
三中総後の全党のみなさんの奮闘によって、つぎのような積極的な変化が生まれていることに、全党が確信をもつことが大切であります。
第一は、「支部が主役」の選挙戦が前進を開始し、選挙勝利にむけた諸課題が、多面的・総合的に、発展しつつあることであります。
貧困打開・生活防衛の運動をという三中総決定のよびかけにこたえて、住民要求にもとづくとりくみが、実に多彩におこなわれています。要求にもとづく署名活動、アンケート活動、生活相談・労働相談、自治体交渉など、「国民の命綱」としての活動が多面的にとりくまれ、それは党への信頼を高め、また党の活力を高めています。
支部主催の演説会・小集会・懇談会は、全党で半数をこえる支部がとりくみ、過去の選挙で到達した最高の峰をこえて広がり、たいへん大きな威力を発揮しています。この活動をつうじて、身近な問題で党を語りあうとりくみが豊かに広がり、要求実現と共産党候補の支援に住民がたちあがっています。地域、職場、学園に責任をもつ支部としての自覚が高まり、諸課題を前進させる結節点となっています。「共産党はがんばっている」「私たちの声をとりあげている」などと話題になり、町に党の風を吹かせています。そして、支部を単位にしたさまざまな集会のとりくみは、各県単位でとりくまれている大規模な演説会を成功させる土台ともなっています。
わが党は、昨年の党大会以来、二中総、昨年十一月の幹部会、三中総と、一貫して「支部が主役」の自覚的な党づくりをすすめてきましたが、その努力が、選挙にむけた諸課題の前進にむすびつきつつあることは、たいへんに重要であります。
第二は、中間地方選挙で前進の流れがつくられていることであります。三中総後に実施された四十二の選挙で、日本共産党は六十九人が立候補し、六十四人が当選しました。自民十四人、公明四十一人、民主三人、社民五人ですから、第一党であります。わが党は得票を前回比で114・5%と伸ばし、議席占有率も2・07ポイント伸ばして8・34%となりました。二月におこなわれた中間地方選挙では、一カ月をつうじて立候補者の全員当選をかちとりました。また、岩手県の陸前高田市での党員市長の再選、長野県・御代田町での党員町長の誕生をかちとりました。
自民党の従来の支持基盤が大規模に崩れ、民主党も自治体における存在意義をしめせないもとで、暮らしをまもるために献身する日本共産党と、保守層をふくめた広範な住民との共同が、さまざまな形で広がるなかで、これらの前進がかちとられていることが重要であります。長野県・御代田町では、「解同」(部落解放同盟)いいなりの不公正な同和行政に多額の税金を注ぎ込み、その一方で、県内一高い国保料をとりたてるという異常な事態に、正面からたちむかう日本共産党議員の姿が、幅広い保守の人々をふくめて多くの住民の信頼を集めて勝利をかちとりました。これらの結果は、わが党が、奮闘いかんでは前進できる新たな客観的条件が生まれていることをしめしています。
第三は、党勢拡大で、党員拡大でも、読者拡大でも、後退から連続前進に転じたということであります。この連続前進が、党勢拡大のみに力を集中しての活動ではなく、「支部を主役」にした選挙勝利をめざす課題に総合的にとりくみながらの前進であることが、重要であります。党大会後、私たちは、「支部が主役」の活動の発展にいっかんして力を注ぎつつ、そのなかで党勢拡大での前進をはかる努力を重ねてきましたが、その努力が選挙を前にしてようやく実りつつある。ここが大切な点であります。
三中総決定では、「選挙に向けて党勢拡大で上げ潮をつくることは、党に活力と自信をもたらすとともに、みずからの力で『風』をおこして勝利をつかむ最大の力となります」「党勢拡大で前進の勢いをつくれるかどうかは、党の活力の最大のバロメーターにもなります」とのべました。三中総以降の党勢拡大の前進は、わが党への国民の注目と期待とともに、党に新たな活力がわきおこりつつあることをしめすものであります。
この間、こうした積極的な変化をつくってきた、何よりの力は三中総決定です。文字どおりの年頭からの三中総、それに続く全国都道府県・地区委員長会議の開催によって、党中央と全党のみなさんの心が一つになり、心一つに奮闘してきたことによって、党に明るい活力が広がり、多くの党組織、支部と党員のなかに、「今度はがんばれば勝てる」「がんばって勝とう」という意気込み、機運が生まれました。
そして、この二カ月間のとりくみを通じて、全党に選挙勝利にむけた真剣な政治的構えが生まれ、臨戦態勢をつくる土台が築かれました。ここに三中総以後の運動の最大の成果があります。このことに確信をもって、本番のたたかいにのぞみたいと思います。
到達点をリアルに直視し、すべての活動で飛躍をつくろう
同時に、到達点と目標との距離は大きいものがあることもリアルに直視することが大切です。三中総以降つくってきた積極的な変化を、どうやって選挙の勝利にむすびつけるか。つぎの点で、現在の活動の水準を抜本的に引き上げたいと思います。
一つは、選挙勝利をめざす宣伝・組織活動を、文字どおり全有権者を対象にした活動に発展させることです。対話と支持拡大は、四年前の同日時点の到達点よりも前進しているとはいえ、目標にてらしての支持拡大の到達点は22・8%です。現状は、全有権者を対象にしたダイナミックな宣伝・組織活動に発展させるにはいたっておらず、その飛躍が強く求められます。
二つ目は、文字どおりの全支部、全党員の参加する選挙戦としてたたかうことです。三中総決定の読了率は28・3%、支部討議率は82・2%です。この読了や討議のスピードは、いつもの中央委員会決定よりもかなり早いものがあります。三中総決定は、読み、討論すれば、元気になり、どこでも積極的な変化がおこっています。しかし、それがまだ多数の党員のものになっていないことも事実です。この現状を前向きに打開することをはじめ、党のもつすべての力をくみつくす努力を一段と強めることが必要であります。
三つ目は、一部に重大な遅れが存在しており、それを前向きに打開することが求められているということです。たとえば、県議選対ごとに支持拡大の到達点を見た場合、四年前の最終到達点をすでにこえて前進している選挙区もある一方で、四年前の同日時点と比較しても支持拡大が遅れている県議選対が28・1%あります。党全体に勢いをつくりだしたとしても、個別の弱点が放置されたままでは、議席数で後退することになりかねないことを、率直に指摘しなければなりません。
三中総以降つくりだしてきた積極的な変化に確信をもちつつ、到達点をリアルに直視し、前向きに打開をはかる大奮闘が必要であります。大会以来の努力、三中総決定以来の努力を、残る一カ月の大奮闘で、何としても選挙戦での勝利という結果にむすびつけるためにがんばりぬこうではありませんか。
二、政党状況の特徴と、日本共産党の役割について
つぎに政党状況の特徴と、日本共産党の役割について報告します。
三中総決定の一つの重要な核心は、国政と地方政治における政党状況を解明し、そのもとでの日本共産党の値打ちを明らかにしたことにありました。ここでの解明が的確だったことは、その後の情勢の進展でも鮮やかに浮き彫りになっています。
安倍・自公政権――矛盾と行き詰まりのもとで、反動的打開の動き
まず安倍・自公政権についてであります。三中総決定は、安倍・自公政権の、「史上最悪のタカ派・改憲内閣」としての危険性とともに、その「『脆(もろ)さ』と『弱さ』」を指摘しました。
今年に入ってからの安倍政権の特徴は、あらゆる問題で国民との矛盾を深め、支持率の低落がつづくなかで、危機とゆきづまりの打開と政権の延命のために、その反動的地金(じがね)をむきだしにしているところにあります。
貧困対策の貧困と、最低限の政治モラルの欠如
多くの国民がいま心を痛めている貧困と格差の深刻な広がりについて、安倍内閣は、貧困と格差の広がりという事実すらみとめない冷酷な態度に終始しています。わが党は衆参の予算委員会質疑で、「子どもの貧困」「国保証の取り上げ」など、国民のなかで広がっている貧困の具体的な事実をしめして、政治の責任をただしました。しかし、政府から返ってきたのは、貧困の事実と実態すらみとめないという心無い答弁でした。
安倍内閣は、「成長戦略」、最近では「成長底上げ戦略」といいかえたようですが、そう称して「大企業さえ成長すれば、いずれは家計におこぼれがまわる」という、すでに破たんが証明ずみの大企業中心主義の政策に固執しています。国民の苦難にたいする無感覚と無責任――「貧困対策の貧困」が、この内閣にたいする国民の失望を急速に広げている根本にあります。
さらに、柳沢厚生労働大臣の「女性は産む機械」発言、伊吹文部科学大臣、松岡農林水産大臣などの「事務所費」問題など、閣僚の資格にかかわる政治モラルの問題が、つぎつぎと露呈しましたが、首相は、それらの閣僚の責任を不問にふし、閣僚席への居座りをつづけさせています。安倍内閣は、教育基本法改悪のさい、さんざん「規範意識」を説教しました。しかしこの内閣は、最低限の政治モラルさえ欠いている。このことにも、国民の批判が集中しています。
改憲手続き法案の強行を許さない国民的運動をよびかける
こうしたもとで、安倍内閣が、内閣の延命のために、政治局面のいわばタカ派的打開、反動的打開をはかる動きを強めていることに、きびしい警戒を払うことが必要です。
安倍首相の号令のもとで、与党は、改憲手続き法案の強行を最優先の課題とし、こともあろうに五月三日の憲法記念日までに成立させることを公然と打ち出し、月内にも衆院通過を狙うなど、改憲手続き法案をめぐるたたかいは重大な局面を迎えています。
改憲手続き法案の狙いが、憲法九条改定と地続き・一体のものであるということ、その内容も、国民の少数の賛成でも改憲案が承認される、公務員・教育者の自由な意見表明を規制する、改憲派が巨額の金の力で有料CMを独占し世論誘導をおこなう危険があるなど、憲法改定を通しやすくする不公正・非民主的な仕組みが数多く盛り込まれていることを広く国民に明らかにすることが大切であります。
憲法改悪反対のたたかいをさらに発展させることと一体に、改憲手続き法案の強行を許さない国民的運動を急速に広げることを、心からよびかけるものであります。
「従軍慰安婦」問題――歴史をゆがめる言動をただちにやめよ
歴史問題をめぐって生まれている逆流も重大であります。三中総決定は、安倍首相が「村山談話」「河野談話」を認めると言明した以上、「みずからの公式の言明を行動で裏切ってはならない」と指摘し、とくに政権中枢の「靖国」派も参加してすすめられている「従軍慰安婦」問題での「河野談話」見直しの逆流に強い警告を鳴らしました。その後の事態の進展は、この指摘の重大さを裏付けるものとなりました。
米国下院外交委員会で、「従軍慰安婦」問題について、日本政府に明確な謝罪を求める決議案が提起されたことにたいし、麻生外務大臣が「客観的な事実にまったく基づいていない」と非難したのにつづき、安倍首相自身も「慰安婦の強制連行を裏付ける証拠はなかった」などと歴史の事実をゆがめた発言を繰り返していることに、内外からのきびしい批判が広がっています。
「従軍慰安婦」問題とは、日本が植民地としたり軍事占領した地域から、おびただしい数の女性を動員して、日本軍が戦場に設置した「慰安所」に閉じ込め、性行為を強要したという問題であります。この非人間的な所業の全体が、大掛かりな国家と軍による強制なしに不可能なことは明らかであって、それを裏付ける無数の証拠も存在します。そのことを、自民党政府でさえ認めざるをえなくなり、「慰安婦」の多くが「その意に反して集められ」――強制的に徴募され、「慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった」と認定し、謝罪したのが「河野談話」でありました。
わが党は、安倍首相に、「慰安婦の強制連行を裏付ける証拠はなかった」などという、みずから継承を言明した「河野談話」を事実上否定する発言を撤回し、こうした歴史の事実をゆがめる言動をただちにやめることを、強く求めるものであります。そして日中・日韓首脳会談で合意された、歴史認識の基本を共有する仕事に真剣にとりくむことを、強く求めるものです。
国民との矛盾の広がりを、反動的に打開しようという安倍内閣の姿勢は、国民との矛盾をいっそう広げることにならざるをえません。「自民党政治の三つの異常」を根本からただす日本共産党の役割は、いよいよ重要であります。
民主党――国民への無責任と不誠実な態度がきびしく問われている
三中総決定は、「二大政党づくり」の動きを本格的におしかえして、自民党政治を大本から変える力をのばすことを提起し、「今日の民主党をどうみるか」についても、自由党との合流以来の三年余の動きを検証して、この政党の特質を、「もう一つの自民党」、「自民党政治の『三つの異常』を共有する政党であり、政治の基本でどちらかが『よりまし』とはいえない」とのべました。
今年に入ってからの民主党の動向の特徴は、「対立軸路線」と称して、あらゆる問題で自民党との「対決」を演出していることにあります。しかしそれは、自民党と悪政を競い合ってきたこれまでのみずからの態度への反省もなければ、是正もないままでのものです。それでは、「対決」は選挙目当てのポーズにすぎず、この党の国民への無責任と不誠実、政党としての道義がきびしく問われていることを、指摘しなければなりません。
(2面につづく)
( 2007年03月11日,「赤旗」)
「慰安婦」問題
自民・山本一太議員 日本の主要国の議会に対するロビー活動の力が試される事件が起きている。米下院に「慰安婦」問題で日本政府に謝罪を求める決議が提出されている。客観的な事実の検証がないまま、非常に感情的でセンセーショナルな言葉を並べている決議案だ。
麻生外相 私どもとして(決議案の中身で)事実関係が違っているのは確かだ。
「改革」路線
山本議員 小泉「改革」路線を引き継いだ首相は、どれくらい安倍カラーを発揮してきたのか。
安倍晋三首相 小泉総理(が行った「構造改革」路線)は、副作用を伴うかもしれない劇薬も含むお薬ではないか。私は、漢方薬のように、じわじわと効いて、気がついたら成果が出ているラインでいきたい。
( 2007年03月11日,「赤旗」)
安倍首相が「従軍慰安婦」問題で強制性を否定する発言をしたことにたいし、欧米メディアから厳しい指摘が続いています。
米紙ニューヨーク・タイムズ八日付は一面で「首相の否定は、日本の元性奴隷たちの古傷を開いている」と批判(写真)、英誌『エコノミスト』三月十―十六日付は「近隣諸国からの不信」「日本の評価を低めることになる」と述べています。(6面に詳報)
( 2007年03月11日,
新日本婦人の会愛知県本部(水野磯子会長)は八日、安倍首相あてに「日本軍『慰安婦』強制連行の証拠はないとの発言を撤回し、真摯(しんし)な気持ちで『河野談話』の継承を」の抗議文を送付しました。
安倍首相は一日、日本軍の「慰安婦』問題への関与を認め「おわびと反省」を表明した一九九三年「河野官房長官談話」について、「当初定義されていた強制性を裏付ける証拠がなかったのは事実だ」と発言。談話そのものの見直しが必要としました。
抗議文では、「日本軍の占領地域から本人の意思に反して『慰安婦』として連行することは強制以外の何ものでもない。軍や政府が『慰安婦』を連行し『慰安所』の設置に関与した事実を示す文書がいくつも発見されている」と指摘。
安倍首相の発言は「国際社会の不信を広げ、アメリカや韓国などから厳しい抗議の声が上がっている」とのべ、発言撤回を求めています。
(2007年03月10日,「赤旗」)
静 岡
二〇〇七年国際女性デー浜松集会(同実行委員会主催)が八日夜、静岡県浜松市で開かれ、六十人が参加しました。
浅野千枝子実行委員長は、「憲法改悪の動きが進む中、格差が広がり働きにくくなっている。学習し活動を交流しよう」とあいさつしました。
種本良彦・静岡県評労働相談センター所長が「安心して働けるルールをつくろう」と題して講演。社会的格差拡大の根本に、賃金水準切り下げやコスト削減を目的とした成果主義賃金導入、長時間・過密労働があると指摘。さらに財界や安倍・自公政権、民主党などが労働法制改悪を推進していると紹介し「夏の参院選で労働法制改悪をすすめる政党や勢力に審判を下そう」と訴えました。
フロア発言では「売り上げが少なく、パートにも出ているが生活費の確保も困難。政治を変えたい」(民商婦人部)、「市教委にたいし学校を順位づけし、子どもの心に重い負担となる全国いっせい学力テスト実施の見直しを要請した」(新日本婦人の会浜松支部)など六人が発言しました。
福 井
福井県では八日昼、新日本婦人の会県本部が福井市の福井西武前で宣伝しました。行動には、辻照子会長ら八人が参加。「3・8国際女性デー 憲法大好き」の横断幕を広げ、憲法九条を守るよう求める会の請願署名への協力を呼びかけながら行いました。
辻会長らは「今日は、全世界で平和、女性の権利、暮らしの向上を求めて立ち上がる日として、とりくんでいます。平和の宝、憲法九条を守りましょう」と、ハンドマイクで訴えました。
富 山
二〇〇七年国際女性デー富山県集会が八日、富山市内で開かれ、七十五人が参加しました。
実行委員長の田中節子氏(県商工団体連合会婦人部協議会会長)は「憲法と教育の危機を感じるなか、平和と人権を守るため集まったみなさんと手をつないで頑張っていこう」とあいさつしました。
交流と連帯のひろばでは、富商連婦人部協議会、富山民医労、高岡市教組の代表がそれぞれ発言。民医労の斉藤真知子委員長は、「看護師不足で取りあいになっている。中小の病院は看護師が引き抜かれて、経営が難しくなっている。医労連では、署名を集めて配置人員を増やすよう求め、看護師増やせの世論も広がってきている。辞めない労働条件をつくり、女性が安心して働ける世の中にしたい」と話しました。
水谷敏彦弁護士が「改憲(壊憲)手続き法を許すな」と題して記念講演。「こぶしの会」(年金者組合)がコーラスを披露しました。
石 川
国際女性デー石川県集会が八日、金沢市の県女性センターで開かれ、約八十人が参加しました。
橋本恵子実行委員長あいさつのあと、尾西洋子・党県副委員長(県議)、川村孝次郎・憲法改悪反対県共同センター代表の二人が来賓あいさつ。教育基本法を守り生かすいしかわ教育ネット、米軍くるな!市民連絡会、県労連女性部、県農民連女性部、県原爆被災者友の会など七団体代表が「はねかえそう、改悪教育基本法のおしつけ。いかそう、子どもの権利条約」などと発言しました。
記念文化行事では、金沢市出身のシャンソン歌手水樹ユキさんが愛と平和のうたを歌いました。
集会は改憲手続き法案の廃案を求める特別決議を採択し、行動提起を確認しました。
新 潟
二〇〇七年国際女性デー新潟県集会が八日、新潟市で開かれ、約百人が参加しました。
倉沢静江実行委員長が「憲法九条は世界に誇れるもの。改憲手続き法案が強行されようとしている中、法案の中身を学習し、知らせることが重要。集会を契機に取り組みを強めましょう」とあいさつしました。
交流と連帯のひろばでは、「子どもの健やかな成長が教師の願い。改正教育基本法では子どもは守れない。本当のことを教えるには憲法が必要」(市教組)、「不況と構造改革で業者の生活は苦しい。働き過ぎで倒れるのではないかと不安がよぎる。消費税率アップを阻止しないと生活できなくなる」(民商)と訴えました。
元従軍看護婦の石黒三沙子さん(82)が講演。石黒さんは、中国の日本軍駐屯地で朝鮮人の「従軍慰安婦」を目にしたことや、野戦病院で勤務したことを紹介。重病で危篤になりながら一週間生き延びた若い兵士に、上官の命令で死亡させる注射を打たざるを得なかった消し去れない体験を涙ながらに話し、「そのときの感触がよみがえり、今でも決まって手が動かなくなることがある。子や孫たちに戦争を体験させられない。そのために九条の会の呼びかけ人になって平和を訴えている」と結びました。
(2007年03月10日,「赤旗」)
国際女性デー札幌全道集会/各地から630人が参加
「いま輝かせよう日本国憲法、戦争のない平和な未来を」のスローガンで八日、「国際女性デー全道集会」が開かれました。札幌市のかでる2・7ホールには六百三十人の参加者がつめかけました。
オープニングでは、夕張の炭鉱で主婦をしていた波多野信子さんが、自らつくった「炭鉱(ヤマ)の子どもの子守唄」など三曲を、ピアノを弾きながら熱唱しました。
石川一美実行委員長が「女性は戦争への道を許しません」とあいさつしました。
憲法改悪反対共同センターの大地巖事務局長と日本共産党の宮内さとし知事候補は、「平和な北海道の実現を」と訴えました。
札幌中部民商婦人部、道労連青年協、精神障害者を支援する会、光星はとポッポ九条の会の女性たちが、「たたかわなければ生きていけない」「憲法を守ろう」と参加者に工夫をこらして訴えました。
フリージャーナリストの西野瑠美子さんが「女性たちは戦争をする国づくりを許さない」と題して記念講演しました。
西野さんは、「安倍政権は、米議会下院の日本軍『慰安婦』に関する決議案に危機感をもち、軍当局の関与と『強制』を認めた河野談話を修正しようとしている」と訴えました。
安倍官房副長官(当時)らの関与で、従軍「慰安婦」問題を裁く女性国際戦犯法廷のNHK番組が改ざんされた問題について、当事者たちの証言も紹介しながら報告し、「戦争は人びとが沈黙したときにやってくる。一緒に声をあげましょう」とよびかけました。
北区の女性(56)は、「すばらしい集会でした。戦争への流れが広がっているなかで、真実を語ることが大切です」と話していました。
旭川/元「慰安婦」が講演
国際女性デー旭川集会が八日、旭川市内で開かれ、会場いっぱいの二百七十人が参加しました。木元靖子実行委員長は「平和が脅かされている今こそ、女性たちの熱い思で平和憲法を守ろう」とあいさつしました。
記念講演は、「日本軍『慰安婦』の証言を聞く」と題し、姜日出(カン・イルチュル)さんがお話ししました。姜さんは学生時代、従妹(いとこ)と家にいるところを日本の軍と警察に拉致され、中国東北部の慰安所に強制的に送られました。悲惨な体験をさせられ、終戦後も帰国できず、二〇〇〇年にやっと韓国に戻ることができました。現在は、元「慰安婦」の人たちが共同で暮らす「ナヌムの家」にいます。
姜さんは、「安倍首相は、慰安婦問題で謝罪していない。過去の戦争で日本がどれだけの人々を殺し、苦しめたというのか。謝罪しないということは、また同じ間違いを起こすことにつながる」と厳しく批判し、日本を再び戦争する国にしてはいけないと訴えました。
日本共産党の真下紀子道議が連帯のあいさつをし、合唱団ペニウンクルがすてきな歌声を披露しました。
参加した柴山裕子さんは「強制はなかったとの安倍首相の発言は姜さんたちをさらに苦しめている。女性として人間として日本軍の行為と安倍首相と政府を絶対に許せない」と述べていました。
高野哲哉さんは、「姜さんが自らのつらい体験を語る思いを考えると涙が止まらない。平和憲法を守る運動の大切さをあらためて痛感した」と話していました。
稚内/守ろう平和憲法
二〇〇七年国際女性デー稚内集会実行委員会は七日、稚内市内で国際女性デー稚内集会を開催しました。荒天のなかでしたが、約百五十人の市民が参加しました。
地元の青年たちのピアノやサクソフォンの演奏による第一部文化コンサートにつづいて、安保破棄道実行委の山下忠孝さんが「子どもを守るために今できること=教育基本法が変えられ、防衛庁が『省』になって、そして…=」という演題で講演しました。
山下さんは、イラク情勢や在日米軍再編・強化を巡る情勢にふれながら、米ブッシュ政権やそれに追随する安倍政権が言われるがままに教育基本法改悪に次いで、平和憲法改悪を狙っている現状、それに対する平和勢力のたたかいの必要性について詳しく分かりやすく熱弁をふるいました。
参加者からのアンケートには、「情勢が平和勢力と戦争勢力の厳しい綱引き合戦であることがよく分かった」「平和憲法改悪にむけて国民投票法案が重大な状況にあることで頑張らなければならない」「稚内でも『九条の会』を発足させ署名を進めなければ」などの意見がよせられました。
(2007年03月10日,「赤旗」)
歴史直視、真の国益=^ボストン・グローブ紙社説
【ワシントン=鎌塚由美】米紙ボストン・グローブ(八日付)は、「謝ることのできない日本」と題する社説で、安倍首相の「慰安婦」発言を批判しました。
社説は、安倍首相が「軍の売春宿に閉じ込められた二十万人にのぼる女性たちの苦しみを公式に認めることを拒否した」と指摘。安倍首相の発言は「日本国民を反映したものと理解すべきでなく、むしろ与党・自民党の安倍氏や右派が権力への布石として採用してきた国粋主義の症状だ」と述べました。
社説は、米議会で審議中の決議案について「客観的事実に基づいていない」と主張する安倍首相に対し、「むしろ安倍氏は、十分に確立された歴史の真実を認め、生き残っている被害者たちに公式な損害賠償を行うべきだ」と主張。「真の国粋主義者は、このような日本の真の国益にとって最良となる方法で、歴史に向き合うだろう」と述べました。
世界で理解しがたい=^インドネシア英字紙社説
インドネシア英字紙ジャカルタ・ポスト六日付社説「日本の未熟さ」は、安倍首相が「慰安婦」問題で「強制を証明する事実はなかった」とのべたことを厳しく批判し、誠実に歴史と向き合うよう求めています。
社説は「安倍氏はわずか六カ月で、日本の戦争中の歴史と向き合う点で小泉首相とあまり変わらないことを世界に示した。安倍氏は、日本が戦争中に性の奴隷の問題に関与したことを認めて謝罪するよう求める米下院での決議案にいらだっている」と指摘しています。
また、「第二次世界大戦後六十二年にもなるのに、日本がなぜ戦争中の歴史的事実を正直に受け入れずこうした子どもじみた態度を維持し続けるのか、世界中の人々にとっては理解し難い」と問いかけています。
強制否定は許されない/中国外務省報道官
【北京=菊池敏也】中国外務省の秦剛報道官は八日の記者会見で、米下院外交委員会が「慰安婦」問題で決議案の審議を進めていることについて、「『慰安婦』の強制徴用は、日本軍国主義が第二次世界大戦で犯した重大な犯罪行為の一つ」と述べ、「これは客観的な歴史事実であり、否定することは許されない」と強調しました。
同報道官は、「慰安婦」問題が「隣国および国際社会での日本のイメージにかかわる」と指摘、「日本側が勇気を示し、歴史・人民・未来に責任を負う態度で、国際社会の正義の声に真剣に対処し、歴史的に残されたこの問題を真剣かつ適切に処理することを希望する」と述べ、日本政府の対応を促しました。
( 2007年03月10日,「赤旗」)
日朝作業部会
自民・川口順子議員 ハノイで日朝国交正常化作業部会が行われた。その評価について、うかがいたい。
麻生太郎外相 具体的成果が得られなかったのは遺憾だ。ただ、今回は一年一カ月ぶりの再開であり、最低限のお互いの立場が変わっていないことを確認しあったことは、一定の意味があった。今後とも、粘り強く交渉を進めていきたい。
「慰安婦」問題
民主・若林秀樹議員 首相と従軍慰安婦の問題についての一連の海外マスコミの報道などについて、おかしければおかしいという必要があるのではないか。
安倍首相 従軍慰安婦問題についての米国での決議案については、事実の誤認を含むものもある。私どもの発言が、事実と違う形で伝わっていく現状にある中で、非生産的な議論を拡散させるのはいかがなものか。
クラスター爆弾
公明・山口那津男議員 クラスター爆弾の規制のあり方についての政府の見解をうかがいたい。
麻生外務相 (クラスター爆弾の禁止を求める国際会議に)参加したが、残念ながら(禁止を求める)宣言にサインするにいたらなかった。効果があがらないからだ。今後、うまくいけば、地雷(の禁止)が成功したときと同じようなところまでいければと思う。
米軍グアム基地
民主・浅尾慶一郎議員 米軍グアム基地につくる家族住宅は、日本が負担すると一戸七十二万八千五百jとされるが、米軍のプレスリリースに出ていた契約では一戸あたり十七万六千jで落札している。日本が負担するといかにも高い。
久間章生防衛相 かなり高めに出ているのも事実。ただ家族住宅は融資でやるので出した分は返ってくる。
浅尾議員 ある程度の負担はやむをえないが、この差はあまりにひどい。
米軍再編促進法案
社民・近藤正道議員 (米軍再編促進法案は)再編の進ちょくに応じて、交付金を自治体に支給する枠組みだが、(進ちょくの)各段階の交付割合について政府は明らかにしていない。
久間章生防衛相 具体的なことについては決まっていないので申し上げることができない。法律が(国会で)通れば決めていきたい。
( 2007年03月10日,「赤旗」)
「従軍慰安婦」問題をめぐり安倍首相が「狭義の意味で強制性を裏付ける証言はなかった」という発言を繰り返しています。そのほこ先は、旧日本軍の関与と慰安婦が「強制的な状況」におかれていたことを認めた、一九九三年八月の河野官房長官談話に向けられています。あたかも河野談話に瑕疵(かし)があるかのように印象付けようというねらいです。
成り立たぬ議論
首相のいう「狭義の強制性」とは、「官憲が家に押し入って人さらいのごとく連れて行く」という物理的な連行行為に限定した議論です。「強制性」について、あえて官憲や軍による「強制連行」に限定し、それを裏付ける文書・資料が出てこないという一点を持って「強制性はなかった」と断定するなどは、歴史の事実や「軍慰安婦」とされた人たちの体験に照らして到底成り立つ議論ではありません。
これについては、河野元官房長官自身が、次のように明確に反論しています。
「こうした問題で、そもそも『強制的に連れてこい』と命令して、『強制的に連れてきました』と報告するだろうか」
「政府が聞き取り調査をした元慰安婦たちの中には明らかに本人の意思に反してという人がいるわけです。つまり、甘言あるいは強制によって、あるいは心理的に断れない状況下で集められた」
「連れていかれた側からすれば、精神的にも物理的にも抵抗できず、自分の意思に反してのことに違いない。それは文書には残らないが、連れていかれた側からすれば、強制だ」(「朝日」一九九七年三月三十一日付)
「強制性を裏付ける証拠がない」などとする議論は今に始まったものではありません。「従軍慰安婦」問題の存在を認めず、河野談話に反対する自民党内の超タカ派議員グループのかねてからの主張です。
国会で、「この強制性についてはまったくそれを検証する文書が出てきていない」「河野談話の前提がかなり崩れてきている」(九七年五月二十七日、衆院決算委員会分科会)と河野談話の改変を迫ったのは、自民タカ派集団の一員だった安倍氏自身でした。
昨年十月、安倍首相就任後、初の臨時国会で「河野談話の継承」が議論になった際、この質問が問題になりました。
「いわゆる強制性、狭義の意味での強制性があったのかなかったのか」と言い出した首相に、日本共産党の志位和夫委員長はその矛盾を鋭く突きました。
「今になって狭義、広義と言われているが、議事録では一切区別なく、あなたは強制性一般を否定している」「本人たちの意思に反して集められたというのは強制そのものではありませんか。河野談話を否定するのですか」(昨年十月六日、衆院予算委員会)
戦時動員体制で
まして、「軍慰安婦」が存在した当時は、侵略戦争遂行のため国家総動員法にもとづく動員計画をつくり、植民地・朝鮮半島からも大量の朝鮮人を強制連行し炭鉱・鉱山、軍需工場、土木などに送り込み、さらには軍人・軍属として戦地に動員していた時代です。
「軍慰安婦」もこうした戦時動員体制の下でつくられた仕掛けであり、国家・軍の関与と強制性なしには不可能だったことは、資料・証言から明らかです。だからこそ日本政府も、河野談話という形で、軍関与と強制性を認め謝罪を表明せざるを得なくなったのです。
資料の有無や証言の信ぴょう性をいいつのり、ことさらに「狭義性」にこだわるなどは、あまりにひきょうです。
首相が「河野談話を継承する」というなら、「狭義」「広義」の言葉遊びで強制性を否定しようという、歴史を偽造する卑劣な議論を直ちにやめるべきです。
(近藤正男)
( 2007年03月10日,「赤旗」)
【北京=時事】ハノイで開かれた日朝国交正常化に関する作業部会の北朝鮮側代表、宋日昊・日朝国交正常化交渉担当大使は九日午後、ハノイでは「両国の立場の違いが非常に大きいことが確認された。特に過去の清算問題だ」と述べ、正常化に当たって日本の植民地統治に対する補償を最重視する立場を改めて示しました。北京空港で記者団に語りました。
宋大使は、従軍慰安婦問題をめぐる安倍晋三首相の発言にも触れ、「過去を清算しないという考えであり、遺憾だ」と指摘しました。大使は十日に北京から帰国の途に就きます。
( 2007年03月10日,「赤旗」)
全国都道府県委員長会議への報告の骨子
一、三中総決定にもとづく活動の到達点について
(1)三中総が提起した二つの課題の到達点
(2)選挙勝利にむけた臨戦態勢の土台が築かれた――積極的な変化を全党の確信に
(3)到達点をリアルに直視し、すべての活動で飛躍をつくろう
二、政党状況の特徴と、日本共産党の役割について
(1)安倍・自公政権――矛盾と行き詰まりのもとで、反動的打開の動き
貧困対策の貧困と、最低限の政治モラルの欠如
改憲手続き法案の強行を許さない国民的運動をよびかける
「従軍慰安婦」問題――歴史をゆがめる言動をただちにやめよ
(2)民主党――国民への無責任と不誠実な態度がきびしく問われている
「格差是正」をいうなら過去の行動をどう説明するのか
地方政治――「オール与党」の一員が「野党ポーズ」をとるひきょうな姿勢
(3)「いまこそ必要 たしかな野党」――日本共産党の役割をおおいに訴えよう
間違った政治に反対する――「貧困と格差」「政治とカネ」「憲法と平和」
国民の要求実現に奮闘する――労働のルールを守るたたかいでも現実政治を動かす
野党外交を発展させる――日本共産党の歴史と綱領は世界のどこでも通じる
三、必ず勝利をかちとるために、残る1カ月、何が必要か
(1)宣伝・組織活動を、全有権者を対象にした活動に発展させる
無党派層の急増――「政治を変えたい」という思いにこたえた働きかけを
大量宣伝――日本共産党の元気いっぱいの姿を広く有権者にしめそう
対話・支持拡大――大飛躍をかちとるために試されずみの手だてを
党勢拡大――宣伝・対話と一体に目標に正面から挑み、上げ潮のなかで選挙を
支部演説会――すべての支部で開催し、さらに二度、三度とひらこう
(2)全支部、全党員の参加する選挙戦としてたたかう
最大のカギは三中総決定の全支部、全党員への徹底
職場支部と労働者党員が選挙勝利のけん引車として奮闘を
分野別後援会の活動をさらに発展させよう
すべての支部が選挙本番にふさわしい臨戦態勢の確立を
(3)議席を獲得するために必要な手だてをとりきる
情勢判断と必要な手だてを――都道府県委員会とその長の責任で
立ち遅れは絶対になりゆきまかせにせず、打開の手だてをただちにとる
(4)機関の指導体制を強化しながら選挙戦をたたかう
四、東京都知事選挙について
党大会後の1年2カ月の努力のすべてを選挙勝利に実らせよう
( 2007年03月10日,「赤旗」)
民主党の若手議員は九日、「慰安婦問題と南京事件の真実を検証する会」を発足させました。会長に選出された渡辺周衆院議員は、「従軍慰安婦」問題で旧日本軍の関与を認めた一九九三年の河野洋平官房長官談話について「見直しを求めていきたい」と、党内で賛同者を募る方針を示しました。自民党に続き、民主党にも歴史逆行の動きが広がった形です。
また、同会幹事長の松原仁衆院議員は、旧日本軍が占領下の中国で起こした南京大虐殺に関して「事実無根だと発信していく必要がある」と語りました。
会合では、東京基督教大学の西岡力教授が講演。「河野談話」に代わる新たな談話を出す必要があるなどと主張しました。初会合には衆参両院議員十六人が出席。
鳩山由紀夫幹事長は同日の記者会見で、党としては談話を尊重すると強調した上で「真実を検証することに関して異を唱えるものでない。見直すという発想でスタートして見直さないという結論(に至ること)も考えられる」と述べ、若手の勉強会を容認する考えを示しました。
( 2007年03月10日,「赤旗」)
志位委員長は「従軍慰安婦」問題をめぐり、旧日本軍の関与を認めて謝罪した河野洋平官房長官談話(一九九三年)を見直す逆流が生まれている重大性に言及しました。安倍首相自身が「強制性を裏付ける証拠はなかった」などとのべたことに、国内外から批判が広がっています。
志位氏は、「従軍慰安婦」問題とは、日本が植民地化、軍事占領した地域から多数の女性を動員し、日本軍が設置した「慰安所」に閉じ込め、性行為を強要した問題だと指摘。「この非人間的な所業の全体が、大掛かりな国家と軍による強制なしに不可能なことは明らかであり、それを裏付ける無数の証拠も存在する」とのべました。
その上で、安倍首相が自ら継承すると言明した「河野談話」を事実上否定する発言をしていることにたいし、「発言を撤回し、歴史の事実を歪(ゆが)める言動をただちにやめることを強く求める」と強調しました。
( 2007年03月10日,「赤旗」)
宗教者ら声明
安倍晋三首相、中川昭一自民党政調会長が旧日本軍「従軍慰安婦」の事実をねじ曲げる発言を行っていることに対し、道宗教者平和協議会、道キリスト者平和の会、日本キリスト教団、札幌地区カトリック正義と平和委員会、道在日朝鮮人の人権を守る会は七日、声明を発表し、謝罪と被害者への補償を求めました。
声明では、政府に@性奴隷強制の事実を認めた「河野談話」の抹殺に反対するA歴史に向き合い、善隣友好・非戦平和を守るBアメリカ下院の「慰安婦」謝罪要求を受け入れる―ことなどを要求しています。
女性デーであす帯広集会/元「慰安婦」が証言
第四十五回国際女性デー帯広集会が十日午後一時半から、帯広市のとかちプラザ視聴覚室で開かれます。
歴史を後戻りさせないために、歴史の真実とむきあって、日本軍元「慰安婦」の証言を聞きます。韓国「ナヌムの家」で暮らす日本軍元「慰安婦」のカン・イルチュルさんの証言と、「ナヌムの家」歴史館研究員の村山一兵さんの報告を中心に行われます。
集会実行委員会では、「ナヌムの家」とナヌムの家歴史館後援会の協力で絵画・写真展を開催してきました。
参加費は千円(学生五百円)。
問い合わせ=新婦人帯広支部0155(41)7040。
(2007年03月09日,「赤旗」)
米下院で旧日本軍「慰安婦」に関する決議案の審議を進めている同外交委員会アジア太平洋地球環境小委員会のファレオマバエガ委員長は七日、本紙のインタビューに応じ、「強制性を裏付ける証拠がなかったのは事実だ」と述べた安倍晋三首相の発言や「慰安婦」決議案について次のように語りました。
(ワシントン=鎌塚由美 写真も)
安倍首相の発言は、矛盾のある、とても深刻な発言です。私は、河野官房長官(当時)談話をしっかり読みました。日本政府による調査で根拠があったからこそ、河野氏はあのような談話を出したはずです。安倍首相は、談話の根拠となった調査を信じていないというのでしょうか。
政府の高官としての発言が政府を代表しないものだとすると、それはいったい何なのでしょうか。
「靖国」と関連
安倍首相の発言は、自民党の保守派、河野談話に強く反対するグループにアピールするために行ったものであると理解していますが、このことは、靖国神社に関連する深刻な含意があると思います。靖国神社には、歴史を見直そうとする動きがあるからです。
これまでの日本政府の謝罪は決して本当の謝罪ではありませんでした。河野談話について、私は河野氏が表明した立場に敬意を払いますが、公式な謝罪だとは考えていません。それは国会および首相による謝罪を意味しないからです。国会が決議を上げ、首相がそれを政府の立場として表明する、これが謝罪です。今回の決議案でもその旨が述べられています。
何人もの日本の首相が謝罪を繰り返しても、政府が裏書きするものになっていないかぎり、謝罪とはなりません。
私たちの議会による謝罪の例を挙げましょう。一八九九年に米海兵隊が無法にもハワイ王国の王と王妃を投獄したことを、米議会は百年の後に、ハワイの先住民の人たちに謝罪しました。また、第二次世界大戦中の日系人の強制収容について議会が決議を上げ、大統領が署名し、日系人に公式に謝罪しました。
民主主義にとって重要なことは、過去の間違いをすすんで訂正することです。日本の多くの国民は、起こったことには必要な手立てをとり、過去の誤りを訂正し、前へ進もうと考えていると思います。
一方、日本の指導者の一部は、いつも揺れています。安倍首相には今、「慰安婦」問題の責任を認め、前に進むか、彼の政党内の保守派の望みのとりことなるのかが問われているでしょう。
安倍首相は、民間人が売春宿を作り、女性たちが金のために自主的に売春したといいたいのかもしれません。しかし、それは私たちが公聴会で被害者の女性たちから直接聞いた話とは違います。
尊厳取り戻し
歴史の責任を受け入れる、という決議案の意味は、公聴会で元「慰安婦」の女性たちが語ったことがすべてだと思います。証言した女性たちのように、兵士によってもてあそばれたらどう感じますか。すべての女性に聞いてみましょう。そうすると、彼女たちの気持ちが分かるはずです。
元「慰安婦」のオランダ出身のオハーンさんは、日本政府の公式な謝罪によって尊厳を取り戻したいと語りました。日本政府が「制度」として間違いを犯したことを認めてこそ、彼女たちは尊厳を取り戻せるのです。それが歴史の責任を受け入れるということではないでしょうか。
証言した女性たちは、世界中の女性たちに同じ思いをさせたくないといいました。どの国であろうと戦時において女性があのように扱われることがあってはならないと。だからこそ、日本政府による公式の謝罪が重要なのです。
( 2007年03月09日,「赤旗」)
マニラからの報道によると、フィリピン外務省のフランクリン・エブダリン外務次官は五日、「慰安婦」問題についての安倍首相の発言に関連して、「日本政府が、一九九三年の河野官房長官による性の奴隷についての謝罪や二〇〇二年に小泉首相(当時)がフィリピンの(元)『慰安婦』に送った謝罪の手紙の言葉と内容を順守するよう求める」と語りました。
( 2007年03月09日,「赤旗」)
安倍首相「慰安婦」発言/ホロコースト否定にも類似/米紙に非難の声
【シリコンバレー=時事】米紙サンノゼ・マーキュリーは六日付の紙面で、安倍晋三首相が「(慰安婦問題で)強制性を裏付ける証拠はなかった」と発言したことに対し、「ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)否定論者にも似た行為だ」と非難する専門家の声を紹介しました。
日本の近代軍事史が専門のマーク・ピーティ・マサチューセッツ大学教授は同紙に、「愚かさにあきれ、開いた口がふさがらない」と批判。首相発言を受け、米議会で審議中の慰安婦問題に絡む日本政府への決議案採択に向け、大きな弾みが付くだろうと予測しました。
( 2007年03月09日,「赤旗」)
【ワシントン=鎌塚由美】米ジョージ・ワシントン大学のディナ・シェルトン教授(国際法)は六日付のロサンゼルス・タイムズ紙に投稿し、安倍首相が旧日本軍の「慰安婦」の強制の根拠はなかったと発言したことを厳しく批判しました。同氏は、元「慰安婦」の訴えを棄却し続ける日本の司法に触れ、「日本には不正義を正す道義的、法的義務がある」と述べました。
シェルトン氏は、「欧州諸国でホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)の否定が罰せられるべき犯罪」であるのと対照的に、日本の戦争犯罪は「完全に訴追されたり認識されることなく、ほとんどの犠牲者が救済されていない」と指摘。安倍首相の「慰安婦」否定発言は、「この説明責任の欠如を利用したもの」で、「抗し難い歴史の記録を否定することにより、生き残った女性を再び被害者にした」と述べました。
一九九三年の河野談話について同教授は、日本政府は「道義的な責任の一つを認めた」が「法的な責任は認めていない」と指摘しました。
その上で、「いかなる違法行為も終戦時のサンフランシスコ平和条約で決着済み」とする日本政府の主張について、「同条約の諸条項は、補償問題の再交渉が可能かもしれないことを示唆している」との見解を提示。元「慰安婦」や、日本政府の主張が間違いであると証明しようとしている日本国内外の人権活動家は、「その本文に、より慎重に目を向けるべきだ」と述べました。
同氏は、日本の歴史問題は、「ニュルンベルクのような、完全で論駁(ろんばく)できないアジアにおける戦争犯罪の記録の欠如から発生している」と指摘。「日本政府が多くの自己の記録を焼却した」ことは、「歴史の空白が安倍首相の『証拠はなかった』と発言する余地を与えている」とし、「日本政府は、『慰安婦』たちに謝罪以上のものを負っている。法的で道義的な補償は避けられない」と述べました。
( 2007年03月09日,「赤旗」)
発言撤回求める/新婦人
新日本婦人の会は七日、安倍首相の「日本軍『慰安婦』強制連行の証拠はない」との発言の撤回を求める抗議声明を発表、首相に送りました。一九九三年の「河野官房長官」(当時)の談話について、安倍首相が一日夜、「当初定義されていた強制性を裏付ける証拠がなかったのは事実だ」と発言、事実上河野談話そのものの見直しが必要としたことに対して、声明は「怒りを禁じえません」と抗議しています。
河野談話厳守を/日本AALA
日本アジア・アフリカ・ラテンアメリカ連帯委員会(日本AALA)も七日、安倍首相への抗議文を送りました。内外の批判にこたえて謝罪と反省を貫くべきであり、国際的に約束した「河野官房長官談話」を厳守するよう求めています。
首相の見識疑う/日朝協会
日朝協会は六日、渡辺貢代表理事の「安倍首相の『慰安婦』問題の発言を糾弾する談話」を発表しました。「意図的なものであれ、歴史認識の不足によるものであれ、総理大臣としての見識を疑わざるを得ない。この問題が韓国、朝鮮、中国をはじめアジア諸国はもとより国際的性格を持つ重要問題として、強く糾弾する」としています。
談話は首相と韓国・中国・アメリカ大使館、在日本大韓民国民団、在日本朝鮮人総連合会などにも送付されました。
( 2007年03月09日,「赤旗」)
安倍首相は、「慰安婦」の連行について、「狭義の強制」と「広義の強制」の二つにわけ、「狭義の強制」=人さらいのような強制はなかったといっています。
しかし、「河野談話」のいう「強制性」の定義は、「本人たちの意思に反して集められた」ということ。「広義」も「狭義」もありません。
それでも「狭義の強制」でいえば、かつての戦争で日本の占領地となった中国やフィリピンなどアジアでは、暴力的な拉致や脅迫によって連行された女性がたくさんいました。
また、暴力的な連行であろうと詐欺や甘言であろうと、いったん「慰安所」に入れられれば、逃げ出すことも、拒否することもできませんでした。
首相は、被害者の証言を聞いていない。政府の資料さえわかっていない。だから、あんなことが言えるのです。
「河野談話」には、「慰安婦」問題について「永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さない」という決意まで書いてあります。政府は、この談話に向き合い、被害を受けた女性たちが納得する解決をはかるべきです。
( 2007年03月09日,「赤旗」)
安倍晋三首相は「従軍慰安婦」問題で、「人さらいのように連れていく強制はなかった」と強制性を否定しました(五日の参院予算委員会)。これには、国内はもとより、韓国や中国、米国や東南アジア諸国などから国際的な非難が集中しています。安倍発言はなぜ許されないのか、改めてみてみました。
(田中一郎)
国家と軍による大がかりな強制
首相の発言は「官憲が家に押し入って人さらいのごとく連れて行くという強制性はなかった」「慰安婦狩りのような強制性があったという証言はない」というものです。「慰安婦」は強制ではなく、政府に責任はない≠ニ印象づける狙いが透けてみえます。
しかし、首相の主張は、みずから「継承する」と述べた、河野洋平官房長官(当時)の談話(いわゆる「河野談話」、一九九三年)にも真っ向から反するものです。
河野談話は、軍の関与を明確に認めた上で、「慰安婦」が「本人たちの意思に反して集められた」もので、「官憲等が直接これに加担したこともあった」と明記しています(別項)。
政府は、この河野談話と同時に、談話の背景となる調査結果をまとめた内閣官房外政審議室の文書(「いわゆる従軍慰安婦問題について」)も発表しています。
それによれば、談話作成のため、防衛庁(当時)や外務省、警察庁、米国立公文書館など十の内外政府機関を調査。元「慰安婦」や元軍人、元朝鮮総督府関係者などから聞き取りを行い、この問題についての「本邦における出版物のほぼすべてを渉猟(しょうりょう)した(読みあさった)」としています。
その結果、明らかになった事実として、次の点を挙げています。
――慰安所の開設は、当時の軍の要請によるものだった。
――慰安所の経営・管理は、軍が直接経営するか、民間業者の場合も、軍は直接関与した。
――「慰安婦」は、外出時間や場所が限定されており、「戦地においては常時軍の管理下において軍と共に行動させられており、自由もない、痛ましい生活を強いられたことは明らか」だ。
政府は、こうした結論を根拠づけた当時の公文書も明らかにしました。
集め方=徴募の方法だけでなく、その輸送・移動から慰安所の設置・管理に至るまで、「従軍慰安婦」の仕組み全体が、女性たちに兵士の性の相手を強制する、政府・軍による「性奴隷制」というべきシステムだったのです。
こうして、日本が植民地としたり、軍事占領した地域から、おびただしい数の女性が動員されたのです。この非人間的な所業が、国家と軍による大がかりな強制なしに不可能なことは明らかであり、それを裏付ける無数の証拠も存在します。
だからこそ河野談話は、元「慰安婦」たちに対し、「当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた」として、「心からのお詫(わ)びと反省の気持ち」を表明したのです。
被害者を二重に傷つける発言
「強制性を裏付ける証言はなかった」という首相の発言に至っては、元「慰安婦」たちをウソつき呼ばわりするものです。心も体も傷つけられ、人生を奪われた女性たちにとって、振り返るだけでもつらい過去を語った証言だからこそ、加害の側は正面から受け止めなければなりません。
証言は、元「慰安婦」だけではありません。日本軍の元兵士からも、強制的に「慰安婦」を集めた「慰安婦狩り」を明かす証言は少なくありません(海軍経理学校補修学生第十期文集『滄溟』など)。
談話を発表した当時に官房長官だった河野洋平氏は、新聞のインタビューで「本人の意思に反して集められたことを強制性と定義すれば、強制性のケースが数多くあったことは明らかだった」と述べ、「そもそも『強制的に連れてこい』と命令して、『強制的に連れてきました』と報告するだろうか」と指摘しています。(「朝日」一九九七年三月三十一日付)
日本軍と政府は、戦争直後に重要な文書を組織的に大量処分しています。みずから証拠隠滅をしておきながら、被害者に対し証拠を示せというに等しい首相の主張は、居直りというべきものです。
首相が、どんなに「強制」を認めたくなくても、河野談話を継承するというのなら、「歴史の真実を回避することなく、歴史の教訓として直視し」(同談話)、行動で示していく必要があります。
河野談話(抜粋)
「従軍慰安婦」問題で、河野洋平官房長官(当時)が発表した談話(一九九三年八月四日)は次の通りです(抜粋)。
◇
…調査の結果、…数多くの慰安婦が存在したことが認められた。慰安所は、…軍当局の要請により設営されたものであり、慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送については、旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した。…募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、…甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった。…慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった。
…政府は、…いわゆる従軍慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し心からお詫(わ)びと反省の気持ちを申し上げる。
( 2007年03月09日,「赤旗」)
【ニューヨーク=時事】米民間団体コリア・ソサエティーの所長に就任したエバンズ・リビア氏(元米国務省日本部長)は七日、六カ国協議の日朝作業部会が一時中断したことについて、従軍慰安婦問題をめぐる安倍晋三首相の発言に北朝鮮が反発しており、これが「中断につながった」との見解を示しました。記者団との懇談で語りました。
リビア氏はこの中で、「わたしの見解では、北朝鮮は最近の安倍首相の発言に反発している」と述べ、「残念なことにこの反発が中断につながった」と指摘しました。
一方、米朝国交正常化への道のりについては、「(北朝鮮の)金桂冠外務次官の話を聞いたところでは、北側は極めて速いスケジュール進行に熱心だ」と前向きな見通しを示しました。
リビア氏は東アジア・太平洋担当の国務副次官補を務めた北東アジアの専門家。
( 2007年03月09日,「赤旗」)
【ワシントン=時事】加藤良三駐米大使は七日、ラントス下院外交委員長(民主)と会い、第二次大戦中の従軍慰安婦問題で日本政府に謝罪を求めた超党派決議案を採択しないよう申し入れました。同大使はこの後、記者会見し、「客観的事実に基づかない決議案の採択は日米関係にとって有用ではない」と述べ、採択回避に向けた議会への要請活動を継続していく考えを強調しました。
同大使は会見の中で「日本は政府最高レベルで幾度か公式な謝罪をしている」と指摘。仮に決議が採択されても追加的な謝罪を行わないと表明した安倍晋三首相の発言について「自然な立場だ」と語りました。
( 2007年03月09日,
自民党の山崎拓前副総裁は八日の山崎派総会で、「従軍慰安婦なるものが存在したのは事実だ」と指摘。その上で「それが強制か、間接的な強制かという議論は弁解にすぎない。弁解がましい態度は取らない方がいい」と述べ、「狭義の強制性を裏付ける証拠はなかった」と発言した安倍晋三首相を批判しました。
( 2007年03月09日,「赤旗」)
塩崎恭久官房長官は八日の記者会見で、「従軍慰安婦」問題をめぐる安倍晋三首相の「狭義の強制性」否定発言に海外のメディアが批判を強めていることについて「誤った解釈に基づく報道には、反論掲載を含めて適切に対応することを検討している」と述べ、日本政府の反論文掲載などを要求する意向を明らかにしました。
( 2007年03月09日,
自民党の中川昭一政調会長は八日、「従軍慰安婦」問題を謝罪した一九九三年の河野洋平官房長官談話について「政治家は歴史判断をしてはいけないが、河野談話にはちょっと歴史判断が入っているような気がする。いかがなものか」と批判しました。国会内で記者団の質問に答えたもの。
( 2007年03月09日,「赤旗」)
【ハノイ=鈴木勝比古】ハノイで七日に始まった日朝国交正常化に関する第一回作業部会は同日午後の中断ののち、八日午前に討議を再開しましたが、四十五分足らずで終わり、二日間で正味三時間余り討議しただけで終わりました。次回の作業部会日程についての合意は得られませんでした。
原口幸市・日朝国交正常化交渉担当大使は作業部会終了後の記者会見で、「六カ国協議の成果文書にもとづき、日朝平壌宣言をふまえて懸案事項を包括的に解決し、過去の清算を基礎として日朝国交正常化を実現するという基本方針でのぞんだ」とのべながら、「北朝鮮側が拉致問題で従来の主張をくりかえし、誠意ある対応をしなかったことは遺憾である」とのべました。
同時に「六カ国協議の合意にもとづいて設置した最初の作業部会で最低限、互いの立場を直接、表明し、確認しあったことには一定の意義があった。今後も話し合いを粘り強く継続したい」と語りました。
北朝鮮の宋日昊(ソン・イルホ)・朝日国交正常化担当大使は同日午前の会談終了直後に記者会見し、「日本側は解決済みの拉致問題に固執した。われわれはこのような日本側の立場を決して受け入れない」と語りました。さらに、@日本側は別人としている拉致被害者横田めぐみさんの「遺骨」の返還A植民地時代の「八百四十万人以上の朝鮮人強制連行、百万人以上の虐殺、二十万人の「従軍慰安婦」への個人補償B脱北者を支援する日本人の引き渡し―などを改めて要求しました。
宋大使はまた、日本政府が拉致問題の進展がなければ六カ国協議の合意にもとづく北朝鮮へのエネルギー援助に参加しないという態度をとっていることについて、「われわれは日本にエネルギー援助を求めるつもりも、受け入れる意思もない」と語りました。
( 2007年03月09日,「赤旗」)
米「慰安婦」決議案、安倍発言で審議加速/下院小委員長本紙に語る
【ワシントン=鎌塚由美】「従軍慰安婦」問題の米議会下院の決議案について、下院外交委アジア太平洋地球環境小委員会のファレオマバエガ委員長(民主党)は七日、決議案を外交委員会に送るための審議を「三月中に行いたい」と本紙インタビューのなかで語りました。同決議案は、アジア太平洋戦争時の日本軍による「従軍慰安婦」問題で日本政府に謝罪を求めているもの。
訪米に配慮の情勢「劇的に変わった」
ファレオマバエガ委員長は、四月末に予定される安倍首相の訪米に配慮して採決をその後に先送りする可能性を一部メディアに語っていましたが、「慰安婦」問題で強制性を否定する「安倍首相の重大な発言」で「情勢は劇的に変わった」と述べました。
同委員長は、安倍首相の発言は「大変矛盾のある、とても深刻な発言だ」とし、日本軍による関与と強制を認めた一九九三年の河野官房長官(当時)談話は、「根拠があったから出されたはずだ」と主張しました。日本政府のこれまでの態度については、「決して本当の謝罪ではなかった」とし、河野談話についても「敬意を表する」としながら、「公式な謝罪だとは考えていない」と語りました。
安倍首相の発言は、日本政府を擁護していた米議員の態度にも変化をもたらしています。元「慰安婦」の女性が証言した公聴会で、「日本政府は何度も謝罪してる」として同決議案に唯一反対を表明していたローラバッカー議員(共和党)のセットマイヤー報道担当者は七日、首相の発言は「九三年の河野談話とも矛盾し、受け入れられない」とし、同決議案が採決にかけられれば「支持する」と表明しました。
安倍発言によって、同決議案の共同提出議員の数も増加。発言直後に新たに十人が加わり、現在三十六人になっています。ファレオマバエガ委員長は、「今後、超党派でさらに増えるだろう」との見通しを示しています。
河野談話、首相、再調査に言及
安倍晋三首相は八日、首相官邸で自民党の「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」の中山成彬会長(元文部科学相)らに会い、同議員の会が河野談話の「修正」を念頭に求める「従軍慰安婦」問題の再調査について、「必要があれば調査する。資料も公開する」と言明しました。
同時に首相は、「米下院決議案は客観的な事実に基づいておらず、日本政府の慰安婦問題への対応も踏まえていない」と指摘。採択阻止に向けた外交努力を強化する考えを示しました。
( 2007年03月09日,「赤旗」)
おはようニュース問答/安倍首相「慰安婦」発言、内外に波紋広げているね
晴男 安倍首相の発言が内外に波紋を広げている。
秋平 旧日本軍の「慰安婦」問題についての発言だろう。国会答弁でも「慰安婦」の「強制性を裏付ける証拠はなかった」と繰り返した。
晴男 「慰安婦」というのは、アジア・太平洋での侵略戦争中に日本軍当局が関与するもとで集められ、日本軍兵士に奉仕する性奴隷として働かされた女性たちのことだ。
秋平 日本政府は一九九三年に当時の河野官房長官の談話を出して、日本軍の「関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた」ことを認め、「おわびと反省」を表明したよね。
河野談話の否定
晴男 安倍首相は一方で河野談話を継承するといいながら、「慰安婦」の連行に「広義の強制性はあったかもしれないが、狭義の強制性はなかった」と談話を否定するような発言をしてる。
秋平 自民党の右派議員たちは、過去の戦争を正当化する立場から河野談話の見直しを求めている。だから外国のメディアは、ニューヨーク・タイムズ紙が「日本政府が談話の破棄を用意している」と報道したし、ロサンゼルス・タイムズ紙は「国粋主義者の要求に安倍首相が同意した」と伝えた。
晴男 多数の被害者を出した韓国の怒りは大きい。韓国外務省はすぐ声明をだして「歴史の真実をごまかそうとするものであり、これに強い遺憾の意を表明する」と非難したね。新聞も一斉に社説を出して批判した。
歴史書きかえる
秋平 安倍首相の発言は、本人の右翼的な本質から出ているという指摘もある。ニューヨーク・タイムズ紙は首相を「戦時の歴史を修正する活動を率いてきた国粋主義者だ」と書いた。
晴男 首相の発言は、米下院で審議されている「慰安婦」問題についての決議案について答えたものだ。決議案は日本に河野談話の否定など過去の歴史を書きかえる動きがあることを憂慮し、日本政府に改めて謝罪を求めるものだ。
秋平 安倍首相の発言は、米議会や世界にあるそうした懸念に根拠があることを逆に示す結果になった。日本に対する不信を世界にさらに広げた責任は大きい。
( 2007年03月08日,「赤旗」)
「従軍慰安婦」問題で強制はなかった≠ニ安倍晋三首相が述べた問題に抗議し、日本軍「慰安婦」問題行動ネットワークが七日、国会前で抗議行動を行いました。約七十人の市民が参加しました。韓国の元「慰安婦」たちが、毎週水曜日に同問題の解決を求めて行っている「水曜デモ」に連帯して行ったものです。
安倍首相は、「慰安婦」を集める際に「官憲による強制連行があったことを証明する証言はない」(五日)などと発言し、国内外から非難を浴びています。同発言は、旧日本軍の関与と強制を認めた河野洋平官房長官談話(一九九三年)を事実上、否定することにつながる重大発言です。
あいさつに駆けつけた日本共産党の吉川春子参院議員は、首相発言に対し、「私がこの耳で聞いただけでも、暴力的に拉致されたことを示す証言は無数にある。なのに首相は、被害者の声を一人も聞かずに証拠を挙げろという。これが、侵略戦争の責任を果たさなければならない日本の首相にふさわしい行為なのか」と糾弾。「日本共産党は、この問題をあくまで追及し、女性の人権を守り、再び戦争によってこういうことが起きないよう憲法九条を守るため全力を挙げる」と決意を表明しました。
行動の中で「慰安婦」問題に取り組む韓国の市民団体・韓国挺身隊問題対策協議会からの「韓国の市民たち、日本の良識ある市民、世界の多くの人たちが声を一つに叫んでいこう」というメッセージが紹介されると、拍手がわきました。
参加者は、「河野談話」の見直しの動きに反対し、被害者が求める真の解決を講じるよう要求するアピールを採択。吉川議員のほか、民主党の岡崎トミ子参院議員、社民党の福島瑞穂党首があいさつしました。
( 2007年03月08日,「赤旗」)
公明党の北側一雄幹事長は七日の記者会見で、従軍慰安婦問題での安倍晋三首相の発言について「首相の発言は外交などに影響を与えていく非常に重い言葉なので、誤解を与えないことが非常に大事だ。そういうこともよく踏まえた慎重な発言をしないといけない」と述べました。
( 2007年03月08日,「赤旗」)
塩崎恭久官房長官は七日午前の記者会見で、従軍慰安婦問題をめぐる「狭義の強制性を裏付ける証拠はなかった」とする安倍晋三首相の発言に中韓両国などが反発していることについて「こういう話が続けば続くほど誤解が生まれるのではないか」とのべました。
また、同問題を謝罪した一九九三年の河野洋平官房長官談話に関し「政府のスタンスは談話に尽きており、強制性についても狭義、広義の話はきちっと書いてある」と述べ、談話で認めたのは「広義の強制性」との認識を示しました。
( 2007年03月08日,「赤旗」)
安倍晋三首相は七日、首相官邸で内閣記者会のインタビューに応じ、改憲手続き法案について「自民党の中に憲法記念日までに成立させることが大切だという気持ちがあるのは当然だ」と述べ、改めて五月三日までに成立させる意思を示しました。その上で改憲論議では道州制導入をテーマに加えて、具体化していく考えを示しました。
首相はまた、海外での武力行使を可能にする集団的自衛権の行使に関する個別事例研究に関し「そんなに時間をかけるべきではない」と述べ、早期に検討を進める立場を表明しました。
「従軍慰安婦」問題では、「河野洋平官房長官談話を継承するのは変わっていない」としつつも、旧日本軍官憲による強制連行を否定。韓国などの反発については「話が正確に伝えられずに拡大し、それに反応してくる繰り返しがあった。だから生産的ではない」と指摘しました。
( 2007年03月08日,「赤旗」)
【シドニー=時事】オーストラリア・シドニーの日本総領事館前で七日、従軍慰安婦問題をめぐる集会が開かれ、元慰安婦三人を含む約五十人が日本政府の公式な謝罪などを求めました。集会は、韓国の元慰安婦らがソウルの日本大使館前で毎週水曜日に行っている「水曜デモ」と連携し、豪州でも慰安婦問題を幅広く知ってもらおうと企画されました。
インドネシアで慰安婦にされたという豪州在住のオランダ人、シャン・オハーンさん(84)は「日本は歴史の責任を取らなければいけない。女性を性的に奴隷化したことを否定する日本の人たちに繰り返し言いたい」と、日本政府が公式な謝罪と正当な国家賠償を早期に行うよう訴えました。
( 2007年03月08日,「赤旗」)
歴史書き換え許されない/東南アジア各紙
東南アジア各国の新聞は、社説や論評で安倍首相が旧日本軍の「慰安婦」問題で「強制性を裏付ける証拠がなかったのは事実だ」と述べたことを厳しく批判しています。
フィリピン英字紙マニラ・タイムズ七日付社説「(歴史についての)汚らわしい書き換え」は、「われわれフィリピン人は米国の議員らと同じく日本帝国軍隊がフィリピンなどアジア諸国の女性を慰安婦にしたという残虐行為に対し真の謝罪を求める」と主張。マレーシア紙星州日報六日付論評「日本は何のために慰安婦の事実を否定するのか?」は、「日本が第二次世界大戦中にアジアの女性に慰安婦になるよう強要したのは歴史的事実だ」と述べています。
隣国の人民を顧みないもの/香港紙
香港紙・明報三日付は、「安倍首相は慰安婦に関する不適当な発言について謝罪すべきだ」と題する社説で安倍首相の「慰安婦」に関する発言を厳しく批判しました。
社説は、「『安倍首相は第二次世界大戦中に日本軍がアジアの女性を強制的に慰安婦にした証拠はない』と述べた。しかし、多くの人たちは日本軍が直接もしくは間接的に慰安婦の徴集、移送、管理に関与した物証を示している」と指摘。「安倍氏は日本軍による慰安婦強制の事実を否認することで、米議会での『慰安婦決議案』可決を阻止しようとしている。これは、歴史を改ざんし否定する立場であり、隣国の人民の感情を顧みないものだ」と強く非難しています。
( 2007年03月08日,「赤旗」)
春泥。雪解けや霜解けでできる、春めいたぬかるみです。東京あたりのアスファルトの街ではあまりみませんが、山登りのときなど難儀します▼支持率のかんばしくない安倍内閣も、ぬかるみに足をとられだしました。そこで首相は最近、「安倍らしさ」の旗色をあざやかにして浮上につとめているそうです。憲法「改正」へ改憲手続き法づくりを急がせたのも、「安倍らしさ」といいます▼たしかに、国会での答弁からも安倍色はうかがえます。第二次大戦中の「従軍慰安婦」の連行に日本軍の「強制」を裏づける「証拠はなかった」と繰り返しています。日本軍がしくんだ犯罪なのに、首相として謝ろうともしません▼日本共産党の小池晃参院議員への答弁も同様でした。国民健康保険の保険証とりあげで糖尿病の治療を中断し、死亡した女性もいる―。事実をしめし、とりあげをやめさせるよう迫る小池議員▼首相も最後は本当なら、そんなことがないよう指導しなければ≠ニ認めました。しかし、初めは違いました。「突然保険証をとりあげることはない」。まるで、人々が困っている事実はなく、小池議員がうそをついているかのような口ぶりでした▼性の奴隷にされ、身も心もふみにじられた女性たち。高い保険料に命を削られる庶民…。現実から目をそむけ、人の痛みや苦しみを感じ取れないのが安倍色なら、政権は人々に見放され、ぬかるみにはまります。こんな句もあります。「春泥の道を悪夢のつづきかと」(上田五千石)。
( 2007年03月08日,「赤旗」)
◎「6カ国」合意履行へ米韓協力で一致
【ソウル=時事】韓国訪問中のネグロポンテ米国務副長官は六日、ソウル市内のホテルで外交通商省の趙重杓第一次官と会談し、先の六カ国協議での合意履行の重要性を確認するとともに、北朝鮮核問題の解決に向け、米韓の緊密な協力を継続させることが必要との認識で一致しました。交渉が大詰めを迎えている米韓自由貿易協定(FTA)についても意見交換し、双方がFTA締結に向けて確固たる「政治的な意思」を持っていることを確認しました。
また、同省によると、趙次官は会談で、安倍晋三首相による従軍慰安婦発言を踏まえ、日韓間の歴史問題に対する韓国政府の基本的な立場を説明。ネグロポンテ副長官は、問題が微妙なものである点を十分理解していると伝え、関連国間でうまく解決できればよいとの考えを示したといいます。
同副長官は、青瓦台(大統領官邸)の白鐘天統一外交安保政策室長や、六カ国協議の首席代表を務める外交通商省の千英宇朝鮮半島平和交渉本部長とも会談しました。
( 2007年03月07日,「赤旗」)
韓国の「過去史清算のための国会議員の会」に所属する議員三十三人が五日、旧日本軍「慰安婦」をめぐる安倍晋三首相の発言を批判する声明を発表しました。声明は「彼(安倍首相)が夢見る美しい国は、戦争犯罪にまみれた軍国主義日本にほかならない」と非難、「慰安婦」への謝罪と補償を行うよう求めています。
声明は「日本がアジアと世界各国と本当の友人になり、国際社会のリーダーになる唯一の道は、人類の歴史上に前例のない反人類的、反人道的な戦争犯罪である(旧日本軍)『慰安婦』問題の真実を自ら明らかにし、心から謝罪し直ちに補償すること」だと指摘。「河野談話で表明した通り、歴史の真実から逃げずに、教訓として直視し、実践に踏み出すこと」を求めました。
韓国国会の女性家族委員会は二月二十一日、全会一致で「米国下院の『慰安婦』関連決議案を支持する決議案」を可決しています。米下院の動向に合わせ、本会議に上程する予定です。
決議案は「女性の人権の尊厳は、現在も未来も必ず守られるべき人類の基本的価値」と指摘、米下院の決議案が「現在も地球上で続いている武力紛争における性暴力の終息にも、大きな役割を果たすと確認する」としています。
( 2007年03月07日,「赤旗」)
【北京=菊池敏也】中国の李肇星外相は六日、全国人民代表大会(全人代)が開かれている北京の人民大会堂で記者会見し、安倍晋三首相が「慰安婦」問題で「強制性を裏付ける証拠がなかったのは事実」と発言したことについて、「『慰安婦』の強制徴用は、日本の軍国主義者が第二次世界大戦のなかで犯した重大な犯罪行為の一つであり、これは歴史的事実だ」と批判しました。
李外相は、「日本は歴史的事実を認めるべきで、責任をもって厳粛、適切にこの問題を処理すべきだと思う」と表明し、日本政府に適切な対応を促しました。同外相は、「歴史認識は強大な進歩の力となるべきで、後足を引っ張る重荷となるべきではない」と述べ、「真理は往々にして最も素朴なものだ。『歴史を鑑(かがみ)に未来へ向かう』は最も素朴で、最も確かに問題を解決する方法だ」と述べました。
四月の温家宝首相の訪日に関連して、李外相は、「今年は日中国交正常化三十五周年で、両国関係の発展のチャンスとしてとらえ、両国関係の政治的基礎にかかわる原則問題をうまく処理すべきだ」と指摘しつつ、中国首相として七年ぶりとなる温首相訪日の「重要な意義」を強調しました。
( 2007年03月07日,「赤旗」)
【ニューヨーク=時事】六日付の米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は、従軍慰安婦問題で安倍晋三首相が「強制性を裏付ける証拠がなかった」と発言したことを社説で取り上げ、「傷ついた日本の国際的評価を修正するより、自民党右派の支持を得る方が大切なようだ」と批判しました。
同紙は従軍慰安婦について「女性たちは強制徴用され、彼女たちに対する行為は買春ではなく、連続レイプだった」と主張。「日本は事実をねじ曲げて恥をさらしている」と厳しく非難しました。
その上で、日本政府は率直に謝罪し、生存者に十分な補償金を支払うべきだと訴え、「恥ずべき過去を乗り越える第一歩は、事実を認めることと政治家は自覚すべきだ」と強調しました。
( 2007年03月07日,「赤旗」)
二〇〇七年国際女性デーかがわのつどい(同実行委員会)は三日、高松市で開かれ百五十一人が参加しました。「従軍慰安婦」の問題をゼミで取り上げている石川康宏神戸女学院大教授が記念講演。「憲法九条を守り平和を守るため女性が声をあげ連帯していこう」とのアピールを採択しました。
石川教授は国が関与した資料もある「『従軍慰安婦』とはなにか」を伝え、最近の日本の情勢について「過去の侵略戦争を否定する国づくりを進めようとしている」と批判しました。
また昨年秋に韓国の「元従軍慰安婦」を訪れたゼミ学生が、スライドも使いながら心境を報告。「当時の慰安所を再現した部屋や展示品を見終わったあと言葉が出なかった」「ゼミを進めるうち被害者の女性の写真を見る機会があった。その時、本だけでなく何か行動しなければ、と思うようになった」と話しました。
また、自営業や保育士、看護師などの立場から発言があり、香川医療生協職員労組の田井一美さんは「新人の看護師の約10%が一年以内で離職している。小児科、産科の医師不足も深刻」と報告しました。
その後、幹線道路をシュプレヒコールをあげながら行進しました。
(2007年03月06日,「赤旗」)
アメリカの下院で審議中のいわゆる「従軍慰安婦」決議をめぐり、安倍晋三首相は、五日の参院予算委員会で「決議があったからといって、われわれが謝罪することはない」と答弁しました。
政府・自民党内では、日本の謝罪が不十分だという決議案には「事実誤認」があると反対する動きが強まっています。自民党内の「靖国派」議員が中心になった「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」は、「慰安婦」問題で軍の関与を認めた一九九三年八月の「河野官房長官談話」そのものを見直すべきだと、謝罪を否定する立場で画策しています。
見過ごせないのは安倍首相の姿勢です。「河野談話」は継承するといいながら、「慰安婦」が強制連行された証拠はないと、「靖国派」同様、軍の関与を疑問視する発言を重ねています。
軍の関与と強制は明白
安倍首相の発言に対しては、ワシントン・ポストやCNNテレビなどアメリカのマスメディアがいっせいに「近隣諸国との緊張緩和を危うくしている」と批判したのをはじめ、韓国の外交通商省も「歴史の事実をごまかそうとするもの」と非難する声明を発表しました。国際社会の不信を広げているのは明らかです。
「従軍慰安婦」問題で軍の関与を認め「お詫(わ)びと反省の気持ち」を表明した「河野談話」を継承するという首相の発言と、「慰安婦」強制連行の証拠はないと繰り返す首相の発言は、とうてい同一人物の発言とは思えぬ、成り立たないものです。
いわゆる「従軍慰安婦」といわれるのは、第二次世界大戦中、日本軍の管理下に置かれ無権利のまま拘束されて将兵の性交の相手をさせられた女性たちのことで、戦時性奴隷ともよばれます。軍と政府の関与をぬきに「慰安婦」を集めたり、「慰安所」を設置したりすることがありえなかったのは明白であり、「河野談話」でも「当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた」と明記しました。
安倍首相は、この「河野談話」は継承するといいながら、強制連行の証拠はないと言い張り、「広義の」強制性はあったかもしれないが家に乗り込んで連れて行く≠謔、な「狭義の」強制性はなかったと主張します。しかし、軍による占領を背景に本人の意思に反して「慰安婦」として連れ出されるのは明らかに強制です。「狭義」「広義」などの言葉をもてあそんで強制性を否定するのは、反省と謝罪の気持ちのなさを示すだけです。
占領行政にかかわる資料は多くが敗戦時に廃棄されていますが、それでも研究者などの努力で軍や政府が「慰安婦」の連行や「慰安所」の設置に関与したことを示す文書がいくつも発見されています。「河野談話」が軍の関与を認めたのもそうした積み重ねの結果であり、安倍首相や「靖国派」が重箱の隅をつつくような議論で強制性を否定するのは、文字通り歴史の事実にそむくものです。
「継承」なら行動で示せ
米下院の「慰安婦」決議は、「慰安婦」問題での日本政府の謝罪の不十分さとともに、日本国内での「河野談話」を「薄め、あるいは無効にしようとする」動きを批判して出されたものです。安倍首相の発言や「靖国派」の策動は、こうした懸念の根拠を広げるものでしかありません。
「河野談話」を継承するというのなら、安倍首相は、言葉だけでなく実際の行動でも謝罪と反省を貫くべきです。そうでなければ、いくら「継承」といっても、口先だけといわれるのを免れなくなります。
(宮坂一男)
( 2007年03月06日,「赤旗」)
参院予算委員会は五日、安倍晋三首相と全閣僚が出席し、二〇〇七年度予算案の総括質疑に入りました。
安倍首相は、米下院に提出された旧日本軍による「従軍慰安婦」問題で日本政府に謝罪を求める決議案について、「決議があったからといって、われわれが謝罪することはない」とのべ、「決議案は客観的事実に基づいていない」とのべました。小川敏夫氏(民主)への答弁。
安倍首相は「従軍慰安婦」問題で、旧日本軍の関与と非人道的な実態を認めた河野洋平官房長官談話(一九九三年)について、「基本的に継承する」と改めて表明しました。しかし、「官憲が家に押し入って人さらいのごとく連れて行くという強制性はなかった。狭義の強制性を裏付ける証言はなかった」とのべました。
小川氏が「ではどういう強制があったのか」と質問したのに対し、安倍首相は「進んでそういう道に進んだ方は恐らくいなかったが、当時の経済状況や、間に入った業者が事実上強制していたケースもあっただろう」とのべました。
安倍首相は、「従軍慰安婦」問題を質問する小川氏に、「国会の場で議論するのは生産的でない」「戦後日本の歩みをおとしめている」などと発言し、審議が中断しました。自民党席からは「恥ずかしいことを質問するな」とのヤジさえ飛びました。
( 2007年03月06日,「赤旗」)
日本共産党の市田忠義書記局長は五日、国会内で記者会見し、安倍晋三首相が「従軍慰安婦」問題で、旧日本軍の関与と非人道的な実態を認めた河野洋平官房長官談話(一九九三年)について、「強制性を裏付ける証拠がなかった」(一日)とのべたことについて記者団に問われ、「河野談話をどこから読んでも、政府・軍が関与して強制的におこなわれたことは明らかだ。それに対するあやまりを認めて謝罪する立場を政府は堅持すべきだ」と批判しました。
安倍首相は五日の参院予算委員会でも、「官憲が家に押し入って人さらいのごとく連れて行くという強制性はなかった。狭義の強制性を裏付ける証言はなかった」と答弁しました。
市田氏は、河野談話では慰安所の設置、管理、慰安婦の移送について、「旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した」と明記し、「慰安婦」の募集についても、「甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあった」としていることを指摘。また「慰安所における生活は、強制的な状況のもとでの痛ましいものであった」としていることをあげ、「強制性をもっていることは明らかだ。安倍首相の発言は事実上河野談話の否定につながる重大な発言だ」と批判しました。
( 2007年03月06日,「赤旗」)
旧日本軍「慰安婦」問題での安倍首相発言をめぐり、韓国の新聞六紙は五日付に安倍発言を批判する社説をいっせいに掲載しました。
各紙は、安倍首相の発言が日本の植民地支配からの独立運動を記念する「三・一節」の当日に行われたことを厳しい口調で非難。「自分の姉妹や娘がそのような経験をしても、『証拠がない』という言葉で目をつぶるのか」(東亜日報)、「安倍首相は、三・一節妄言を取り消し謝罪せよ」(ソウル新聞)と批判しています。
京郷新聞は、「日本軍慰安婦が強制的に動員されたことは、慰安婦ハルモニ(おばあさん)の直接の証言と日米の関連文書などですでに証明された事実だ」と指摘。「歴史の事実を否定し、強制性を狭義≠セ広義≠セと薄めようとするのは、到底隠せないものを隠そうとするものだ」と批判しました。
朝鮮日報は、靖国神社参拝で近隣諸国との関係を悪化させた小泉前政権は「軽薄でごう慢な『アジア無視外交』だった」とした上で、「安倍政権もまた、小泉政権と同じ轍(てつ)を踏むのだろうか」と述べました。
( 2007年03月06日,「赤旗」)
「ぜひ、来年もやりましょう」。昨年五月、韓国九条ツアーで訪れた「ナヌムの家」での交流コンサートの後、現地のスタッフや参加者からそういう声が続きました。元日本軍「慰安婦」のハルモニ(おばあさん)のみなさんも少し暑いなか最後まで参加してくださって、フィナーレでは自ら踊り出るなど、とても有意義な、そして楽しい交流ができました。
その意を受けて、今年は四月二十九日に「ナヌムの家」の屋外ステージで第二回九条フェスティバルをおこなうことになり、今、急ピッチで準備を進めています。
安倍内閣が、憲法改悪を公言している今、六千を超える九条の会が全国各地で改悪阻止の精力的な活動をおこなっています。そんな時だからこそ、あえて憲法記念日前に、平和を願う韓国の人たちと交流をおこないたいと思うのです。
昨年のコンサートでは、十代半ばで強制連行され、毎日地獄のような日々を送ってきたハルモニのみなさんが、日本から行った私たち男性にも優しく手をさし出してくれ、九条について学ぼうとする姿に僕は深い感動を覚えました。
フェスティバルの中では、ハルモニのお話はもちろん、「アジアの平和と歴史教育連帯」の方たちの報告、高校生のグループ「フンサダン」の演奏、そして青年たちの太鼓、平和シンガー(交渉中)など韓国からの参加者、出演者も多数予定しています。
日本からは三上満さん(教育評論家)のあいさつ、名古屋の堀田さちこさんと大阪のKei・Sugarさんの演奏、埼玉からたかはしべんさん、東京から橋本のぶよさん、そして僕も九条を中心にしたステージを予定しています。フィナーレでは全参加者で歌い、踊り交わしたいと思っています。
フェスティバルにむけて、たかはしべんさんから「戦争はいかにむごいかということを学びに行きます」、橋本のぶよさんからは「今習っているハングルをフルに生かした演奏で、韓国のみなさんと平和の交流をしたい」とのメッセージが届いています。
音響や出演者の手配をして下さっているソン・ビョンヒさん(昨年の赤旗まつりに出演した「サム・トゥッ・ソリ」のリーダー)がメッセージを送ってくれました。
「憲法九条は日本だけでなく、東北アジアの平和のためにも守るべき世界の宝物。九条ツアーへの参加者は世界平和と日韓友情の希望であり、光です。皆さんの勇気と期待にこたえるよう準備します。韓国でお会いできることを楽しみに待っています」
(シンガー・ソングライター)
( 2007年03月05日,「赤旗」)
世耕弘成首相補佐官は四日、テレビ朝日の番組に出演し、安倍晋三首相が従軍慰安婦問題で「強制性を裏付ける証拠がなかった」と発言したことに対し、韓国政府が非難声明を出したことについて「河野談話はしっかり引き継ぐ。いまに至るまで全然変わっていない」と述べ、河野洋平官房長官談話を継承する立場に変わりはないと強調しました。
一方で、世耕補佐官は「いわゆる強制性に関して広義、狭義いろいろ定義はある」と指摘。首相が否定したのは直接的な「狭義の強制性」との認識を示しました。
一方、世耕補佐官は「ポスト安倍」については「(安倍首相に)代わりたいと思っている人はいるかもしれないが、世論が納得する安倍さんに代わる人はいない」と語りました。
( 2007年03月05日,「赤旗」)
【北京=菊池敏也】安倍晋三首相が「従軍慰安婦」問題で「強制性を裏付ける証拠がなかったのは事実」などと発言した問題について、中国の新華社通信(電子版)は三日、「日本軍による『慰安婦』強制徴用の史実の否定は許されない」と題する論評を伝え、安倍首相らの発言を厳しく批判しました。
同論評は、一日の安倍首相の発言をはじめ、塩崎官房長官や中山元文科相が「従軍慰安婦」問題を否定する発言を繰り返していることを注視し、「大量の歴史資料は『慰安所』が当時の軍当局の要求によって設置されたもので、当時の日本軍と政府が『慰安所』の設置、管理、『慰安婦』の移送などに直接、間接に関与していたことを反ばくの余地なく証明している」と指摘。六十年あまりが過ぎた現在でも、韓国、中国、フィリピン、オーストラリアなどには日本軍により強制的に「慰安婦」にされた生存者がおり、日本政府に謝罪と賠償を粘り強く求めているとし、「アジアの女性を強制的に『慰安婦』にした日本の犯罪行為の動かぬ証拠は山のようにあり、否定することは許されない」と批判しました。
同論評は、日本の要人が「慰安婦」問題には事実の裏付けがないなどと発言をしている目的は、「『慰安婦』問題の犯罪的性格を弱め、歴史の責任を逃れ、さらには軍国主義の名誉回復を企てることだ」と分析。こうした日本側の主張は「かつて日本に侵略され、隷属させられたアジア諸国の人民の反感と怒りを買うだけで、アジア隣国との友好協力関係の改善・発展にもマイナスだ」と警告しました。
( 2007年03月05日,「赤旗」)
アメリカ下院議会は現在、「従軍慰安婦」問題で日本政府に公式謝罪を求める決議案を審議中です。フジ系「報道2001」が、提案者のひとり、下院議員マイケル・ホンダ氏を生中継で登場させ、この問題を取り上げていました。(2月25日)
日本側の出演者のやりとりを聞きながら、これがテレビ局のやることか? と思わず耳を疑い、恥ずかしささえ覚えました。
ホンダ議員は「河野談話(93年)以降、その内容を変えようとしている議員がいる。アジア女性基金も民間のものだ」「政府として陳謝を」と、決議案の趣旨を説明しました。
しかし出演した日本の国会議員が、「あまりに感情的だ」(山本一太氏、自民)、「客観的事実ではない。それで謝れとはメチャクチャ」(稲田朋美氏、自民)、「日本は主権国家。政府が反応すれば内政干渉になる」(前原誠司氏、民主)と非難し、「従軍慰安婦」問題を否定する姿勢を強調しました。
ジャーナリストの桜井よしこ氏は、「河野談話は政治的なもの。(韓国との関係を配慮して)事実がなかったことを、日本が甘い読みで謝ってしまった」とのべました。
番組司会者も、「中国や韓国がいうならわかるが、アメリカは関係ない」と、くり返し批判しました。
「従軍慰安婦」にかんする旧日本軍関係史料は、すでに数多く開示され、歴史的事実として認識されているにもかかわらず、右派の攻撃を受け、教科書会社が中学校の歴史教科書から削除しました。改めて歴史認識が問われているときだけに、「報道2001」の取り上げ方に恥ずかしささえ覚えてしまったのです。
フジ系「発掘! あるある大事典U」のウソもさることながら、歴史的事実のわい曲は、報道機関として厳に慎まなければならないことでしょう。
(なかつくま・たくぞう=元ワイドショー・プロデューサー)
(2007年03月04日,「赤旗」)
世界中の女性たちが貧困と暴力、戦争をなくして平和の中で生きる権利を求めて集う日、国際女性デーが近づいてきました。国際女性デーは、一九〇八年、アメリカの女性たちがパンと参政権をもとめて立ち上がった行動に学び、一〇年、デンマークで開かれた第二回国際社会主義婦人会議でクララ・ツェトキンの提唱により世界の統一行動日になりました。
日本では二三年、婦人講演会として開かれたのが最初です。天皇制国家の弾圧で公然と集会が開けなくなっても、個人の家に集まり、国際女性デーのともしびをともし続けました。戦後初の集会は四七年に開かれ、今年で六十年になります。
また、国連が三月八日を「女性の権利の歴史において非凡な役割を果たしてきた普通の女性たちの行動を祝福する日」として命名してから三十年になります。道内でも毎年、全道集会をはじめ二十カ所を超える自治体で集会が開かれています。
全道集会は、八日午後六時半から、札幌市のかでる2・7ホールで、「いま輝かせよう日本国憲法、戦争のない平和な未来を」のスローガンのもと、記念講演、ピアノ演奏、「私たちのメッセージ」などが準備されています。
「女たちは戦争する国づくりを許さない」と題して講演するフリージャーナリストの西野瑠美子さんは、日本軍「慰安婦」制度を裁いた女性国際戦犯法廷≠主催したバウネットジャパンの共同代表で、この法廷の膨大な記録・資料などを展示している「女たちの戦争と平和資料館」の館長を務めています。
バウネットジャパンは、NHKから要請され女性国際戦犯法廷≠フ取材に協力しましたが、製作・放映された番組「ETV2001〜問われる戦時性暴力」は、改ざんされたとして、西野さんらは原告となり訴訟を起こしていました。
一月に東京高裁は、NHK上層部が、当時の安倍晋三官房副長官らの意図を酌んで番組を改変したとして損害賠償を命じる判決を下しました。
「勇気ある内部告発、法廷での証言で山が動いた。政治家との関係が番組改ざんに大きな影響を与えたことを認めた判決が出されうれしい。『従軍慰安婦はデッチあげ』などと攻撃するジェンダー・バックラッシュと重ねてお話ししたい」と西野さんは語っています。
憲法施行六十年の春、女性パワーで「悪政ノー!」の声をあげる「3・8国際女性デー全道集会」へ多くの人たちの参加を呼びかけます。
(2007年03月04日,「赤旗」)
第二次大戦中、日本政府によって行われた強制労働の被害者早期救済を求める全国連帯交流集会が三日、名古屋市東区で開かれました。強制連行・企業責任追及裁判全国ネットワークの矢野秀喜氏が基調報告しました。
集会は、五月に控訴審判決が出される予定の名古屋三菱・朝鮮女子勤労挺身(ていしん)隊訴訟など全国で行われている四訴訟の支援者が参加。原告の早期救済を安倍首相に求める集会アピールを採択しました。
開会あいさつにたった、寺尾光身「名古屋の会」代表世話人は、「日本がこれから世界とかかわっていく上でも、政府と強制労働に関与した企業は被害者にきちんと謝罪し補償していくことが求められる」と強調しました。
矢野氏は、「従軍慰安婦」問題で日本政府に謝罪を求めているILO(国際労働機関)や、米下院議会での動きに触れ、「日中・日韓の国家間で取り交わした『請求権放棄』を理由に、国と企業の責任を永遠に闇に葬ることは許されません。勝訴に向け、被害者を含めた国際的な市民の連帯を広げる必要があります」と述べました。
( 2007年03月04日,「赤旗」)
【ワシントン=鎌塚由美】安倍首相が旧日本軍の「慰安婦」問題で、「強制性を裏付ける証拠がなかったのは事実だ」と述べたことについて、米各紙は二日、地方紙を含め「日本の首相が慰安婦を否定」などの見出しでいっせいに報じました。安倍首相を「歴史を修正する国粋主義者」だと断じた報道もみられます。
ニューヨーク・タイムズ紙は「安倍首相、戦時の性にかんする日本の記録を退ける」との見出しで、東京特派員電を掲載。安倍首相の今回の発言は「日本政府のこれまでの立場を否定する」もので、「政府が一九九三年の談話の破棄を用意している最も明確なもの」だと述べました。
さらに、米議会下院の動きも紹介し、日本政府に改めて謝罪を求める決議の議論が始まっていると伝えています。
ロサンゼルス・タイムズ紙も、東京特派員の記事を掲載。「国粋主義者の政治家たち」が旧日本軍の関与を認めた河野談話の撤回を政府に求め、安倍首相も彼らに「同意した」と伝えました。
同記事は、「従軍慰安婦」問題をめぐって、大部分の歴史家と日本政府自身の調査が、日本軍による関与と強制があったと結論付けていることを指摘。一方、国粋主義者の政治家や学者が「従軍慰安婦」を「職業的売春婦」と主張し続けていると述べました。
安倍首相について、ニューヨーク・タイムズ紙はその歴史観にふれ、「戦時の歴史を修正する活動を率いてきた国粋主義者」だと指摘。ロサンゼルス・タイムズ紙も「与党・自民党の保守派で、国粋主義的な政治を積極的に主張する若い政治家グループの出身」だとし、「東京裁判での(第二次大戦の)戦犯の有罪判決の有効性や『慰安婦』の奴隷化における日本軍の役割にかんする歴史の総意に疑問を呈してきた」過去も紹介しています。
「従軍慰安婦」問題で、米議会に日本政府に誠実な謝罪を求める決議案を提出したマイク・ホンダ議員の地元カリフォルニア州のサンノゼ・マーキュリー・ニューズ紙は、「日本が『慰安婦』を否定」と題して、ホンダ議員の言葉を引用。「日本の高官は公式な謝罪を決して行わず、この問題で長年あいまいな言葉をつかってきた」と伝えました。
ペンシルベニア州のフィラデルフィア・インクアイアラー紙は、東京発の通信社電で、「中国でレイプした女性たちの絶えることのない悲鳴をいまだに忘れない」という「慰安婦」問題で証言を続ける元日本軍兵士の金子安次氏(87)の一文で始まる記事を掲載。自責の念を込めた同氏の言葉を引用し、安倍首相の「慰安婦」否定発言と対比させています。同記事は、テキサス州のフォート・ワース・スター・テレグラム紙にも掲載されました。
( 2007年03月04日,「赤旗」)
韓国の外交通商省は三日、安倍晋三首相が旧日本軍の「慰安婦」問題で「強制性を裏付ける証拠がなかったのは事実だ」と述べたことに対し声明を発表し、「歴史の真実をごまかそうとするものであり、これに強い遺憾の意を表明する」と非難しました。(7面に関連記事)
声明は、一九九三年の河野洋平官房長官(当時)談話は「慰安婦」について強制性を認定したと指摘し、「反省と謝罪を表明した河野官房長官談話を継承するという日本政府の度重なる立場の表明にもかかわらず、日本の反省と謝罪の真剣さに疑問を抱かせる」と批判。「日本の責任ある指導者の正しい歴史認識」を求めました。
安倍首相は昨年十月に訪韓し盧武鉉大統領と首脳会談した際、河野談話を継承すると明言していました。
ワシントンからの報道によると、訪米中の宋旻淳・外交通商相は二日、同市内で講演した後、質問に答え「両国間の健全で未来志向的な関係構築にまったく役に立たない」と強く非難、「真実と人類の普遍的な価値を直視しなければならない」と強調しました。
米紙も注目
米各メディアも安倍首相の発言に注目し、いっせいに報道。CNNテレビは同日、「中国、韓国、フィリピンの女性団体が怒りの声を上げている」と伝えました。
( 2007年03月04日,「赤旗」)
秋平 今夜、久しぶりに一杯やらないか。
晴男 悪いけれどやめとくよ。ダイエット中で酒を控えているんだ。
秋平 メタボリック症候群…。
晴男 うーん。メタボ≠ニいえば伊吹文明文科相がまたひどい発言をした。
我慢を押し付け
秋平 人権をバターに例えて、「食べ過ぎれば人権メタボリック症候群になる」といった問題だな。健康への心配を逆手に取って悪い政治への我慢を押し付けようなんて卑劣だよ。
晴男 本人は「人権は大切」と言い訳しているようだけど、人権軽視の考えは根深い。去年の十一月にも、改悪前の教育基本法を肉やバターに例えていた。「栄養にいいと再三言ってきましたが、食べ過ぎたらメタボリック症候群になる。社会の状況に合わせて教育基本法や諸法令を変える」などと、同じような発言を繰り返していたそうだ。
秋平 いわば彼の持論というわけだ。教育基本法については、日本は「大和民族が統治した同質的な国」とも言ったって。
晴男 二十年前に当時の中曽根康弘首相が同じような発言をして大問題になったけれど、まったく反省がない。
秋平 日本にはアイヌ系住民もいれば、在日韓国・朝鮮の人たちもいる。それを無視する大臣が教育基本法改悪で愛国心押し付けの先頭に立ったんだから、背筋が寒くなるよ。
晴男 伊吹文科相の責任は重大だけど、問題は、安倍内閣の閣僚から重大発言が相次いでいることだよ。
秋平 柳沢伯夫厚労相も「女性は産む機械」と暴言をはいたり、工場労働者にたいして「労働時間だけが売り物」とばかにしたり、人を人として見ない人間観と人権感覚の根本的な欠陥に非難ごうごうさ。それなのに、安倍首相は大臣を辞めさせる気はさらさらない。
歴史への無反省
晴男 「従軍慰安婦」問題でアメリカの下院に提出された決議案にたいして、麻生太郎外相は、「客観的事実に基づいていない」「はなはだ遺憾だ」といったのにも驚いた。ここにも、過去の歴史への無反省ぶりと、人権感覚のなさが露骨にあらわれている。
〔2007・3・3(土)〕
( 2007年03月03日,「赤旗」)
米民主党のマイク・ホンダ議員らが下院外交委員会に提出している元従軍「慰安婦」問題の決議案の要旨は、次のとおりです。
一九三〇年代から第二次世界大戦中を通じたアジア太平洋諸島への植民地支配と戦時占領の期間、日本帝国軍隊が「慰安婦」として性的奴隷を若い女性に強制したことを、日本政府が明確であいまいさのないやり方で公式に認めて謝罪し、歴史上の責任を受け入れるべきであるという下院の意見を表明する。
植民地支配と戦時占領の期間、日本政府は公式に、帝国軍隊の性奴隷にすることを唯一の目的として若い女性の獲得を委託した。
日本政府による軍事的強制売春である「慰安婦」システムは、その残酷さと規模の大きさで前例のないものと考えられる。集団レイプ、強制妊娠中絶、辱めや性暴力を含み、結果として死、最終的には自殺に追い込んだ二十世紀最大の人身売買事件になった。
日本の学校で使用されている新しい教科書のなかには、「慰安婦」の悲劇や第二次世界大戦中の日本のその他の戦争犯罪を軽視しているものもある。
日本の官民の当局者たちは最近、彼女らの苦難に対し政府の真摯(しんし)な謝罪と反省を表明した一九九三年の河野談話を薄め、もしくは無効にしようとする願望を示している。
日本政府は女性と子どもの人身売買を禁止する一九二一年の国際条約に署名し、武力紛争が女性に与える特別の影響を認識した女性、平和、安全保障にかんする二〇〇〇年の国連安全保障理事会決議一三二五を支持している。
「慰安婦」の虐待および被害の償いのための計画と事業の実施を目的として日本政府が主導し、資金の大部分を政府が提供した民間基金「アジア女性基金」の権限は二〇〇七年三月三十一日に終了し、基金は同日付で解散される。
このため、以下、下院の意思として決議する。
日本政府は、
(1)一九三〇年代から第二次世界大戦を通じたアジア太平洋諸島の植民地支配と戦時占領の期間、日本帝国軍隊が若い女性に「慰安婦」として世界に知られる性奴隷を強制したことを、明確にあいまいさのないやり方で公式に認め、謝罪し、歴史的責任をうけいれるべきである。
(2)日本国首相の公的な資格でおこなわれる公の声明書として、この公式の謝罪をおこなうべきである。
(3)日本帝国軍隊のための性の奴隷化および「慰安婦」の人身売買はなかったといういかなる主張にたいしても明確、公式に反論すべきである。
そして、(4)「慰安婦」にかんする国際社会の勧告に従い、現在と未来の世代に対しこの恐るべき犯罪についての教育をおこなうべきである。
( 2007年03月03日,「赤旗」)
米下院外交委員会アジア太平洋・地球環境小委員会で二月十五日に開かれた元従軍「慰安婦」問題決議案についての公聴会でのエニ・F・H・ファレオマバエガ委員長の発言要旨は次のとおりです。
第二次世界大戦中、日本軍が朝鮮、中国、台湾、フィリピン、オランダ、インドネシアの女性五万人から二十万人に日本兵への性の提供を強要したというのは明白な歴史的事実の問題である。ホンダ議員が提出した決議案は、日本にたいし日本軍の行為について全面的な責任を認めるよう求めている。
日本は責任を認めてきたと主張する。しかし、日本の大手の出版社が「慰安婦」制度を詳しく述べ始めたのは一九八〇年代、九〇年代に入ってからだ。また、日本に占領された国々がこれについて語り始めたのも同じころである。
こうした事態の進展にともない日本の河野官房長官が謝罪の談話を発表した。ところが二〇〇六年には下村官房副長官と日本で最大発行部数を持つ読売新聞が河野談話の妥当性に疑義をさしはさんだ。これによって日本が歴史を書き換えようとしていると考えられるに至った。
デーリー・ヨミウリ紙二〇〇六年十二月二十四日付は「自民党、『慰安婦』問題で分裂 責任を認めた一九九三年談話の修正を国会議員が求める」と題する記事を掲載している。内外の他の新聞記事も、同様の憂慮を示し、この問題に直接関係する問題を取り上げている。さらに、米議会調査局によると、慰安婦への言及を削除する顕著な傾向が歴史教科書の新しい版に出てきている。
この公聴会はけっして日本を困らせようというものではないが、「従軍慰安婦」にされた人々の人権を守ることはわれわれの神聖な義務である。
文明社会は、どんな状況のもとでも歴史を書き換えたり否定するのを許すことはできない。文明社会は人権擁護のために過去に苦しんだ人々を記憶し、その人の声を聞き、過去と現在の犠牲者に敬意を表する道徳上の義務がある。さもなければ新たなホロコーストを起こす危険がある。
日本が第二次世界大戦中にアジアと太平洋諸島を占領した期間、帝国軍隊が若い女性に性的奴隷を強制した歴史的責任を認めて謝罪し受け入れることに今日的意義がある。日本政府によれば、すでにそうしてきたし、一九九六年からどの首相も誠実な謝罪を述べてきたし、現在の安倍首相も二〇〇六年十月に国会で今後も謝罪の談話を守り続けると公言した。
決議案は、これでは十分ではないという。だから、今後どの方向にすすんでいくかについて誠実な努力をするために証言を聞き、熟慮しようというのだ。
( 2007年03月03日,「赤旗」)
第二次大戦中の旧日本軍「慰安婦」問題で日本政府に改めて謝罪を求める決議案が米下院に提出されています。元「慰安婦」が公聴会で証言、告発するなか、日本が行った過去の戦争犯罪と人権侵害にたいする日本政府の姿勢が改めて問われています。(ワシントン=鎌塚由美 写真も)
安倍首相は一日、従軍「慰安婦」問題で旧日本軍の関与を認め謝罪した一九九三年の河野談話について、「強制性を裏付ける証拠がなかったのは事実だ」などと発言しました。このことは、「慰安婦」問題での日本政府のあいまいな態度を問題にする米議会議員の懸念に根拠があったことを首相自らが裏付けるものとなりました。
米議会下院に今回提出された「慰安婦」決議案(下院決議案一二一)は、アジア太平洋戦争時に日本軍によって性奴隷にされた「従軍慰安婦」の女性たちに対し、日本政府がその責任を「明確であいまいさのないやり方で認め」、首相が「公式の謝罪をおこなうべきだ」と求めるものです。
同決議案が一月末に提出されて以来、日本政府は、同決議案は「客観的事実に基づいていない」などとし、採択阻止に力を入れてきました。
加藤駐米大使は、「(謝罪など)日本政府がすでに行ったことを蒸し返して注文をつけ、その結果、日米関係が本来なくてもいい悪影響を受けるのはよくない」(二月十三日)と述べ、決議案を批判。麻生外相は、「客観的事実に基づいていない。日本政府のこの問題に対する対応を踏まえていないので、はなはだ遺憾だ」(同十九日)と国会で答弁し、同決議を敵視しました。安倍政権はさらに、世耕首相補佐官を訪米させ、米政府関係者に決議採択阻止の働きかけを行っています。
一月末にマイク・ホンダ議員(民主)によって提出された同決議案の共同提案議員は、当初の六人から、元「慰安婦」の女性が初めて証言した公聴会(二月十五日)を経て、二十五人(民主党十九人、共和党六人、二月末現在)に達しています。
公聴会を主宰したアジア太平洋・地球環境小委員会のファレオマバエガ委員長は、「文明社会は人権擁護のために過去に苦しんだ人々を記憶し、その人の声を聞き、過去と現在の犠牲者に敬意を表する道徳上の義務がある。さもなければ新たなホロコースト(大虐殺)を起こす危険がある」と語り、韓国とオーストラリアから招いた元「慰安婦」の女性たちの話に耳を傾けました。女性たちは、日本政府に「行動の伴う謝罪」を求めました。
ホンダ議員は、公聴会で、河野談話は「勇気付けられるものだ」と述べながら、「最近の与党・自民党の一部幹部による河野談話見直し・撤回の試みは、がっかりさせるものであり、日本政府の同問題でのあいまいさのあらわれとなっている」とするどく指摘しました。
決議案が、日本軍による「慰安婦」の強制や奴隷化はなかったとする、いかなる主張にたいしても日本政府は、「明確、公式に反論すべきだ」と求めているのは、そのような政治家の言動は国際的に通用しないことを強調したものです。
日本政府は、公聴会を前に、「決議案一二一は、日本政府が長年かけてすでに行ってきたことを要求し、米外交関係に不利益をもたらす可能性がある」と主張する資料を大手ロビー事務所を通して配布しました。
日本政府は、同決議案阻止に動けば動くほど、同問題での日本政府の不誠実な態度を国際的にさらけ出すだけです。
「河野談話」とは
第二次世界大戦中の旧日本軍によるいわゆる「従軍慰安婦」問題について、日本政府は一九九一年十二月から調査した結果を、九三年八月四日に河野官房長官の談話として発表しました。このなかで、従軍慰安婦は「旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した」こと、「慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった」ことなどを認め、「歴史研究、歴史教育を通じて…永く記憶にとどめ、同じ過ちを繰り返さない」と約束しました。
( 2007年03月03日,「赤旗」)
「慰安婦」問題、摩擦を懸念/首相発言に米紙
【ワシントン=時事】二日付の米紙ワシントン・ポストは、安倍晋三首相が第二次世界大戦中の従軍慰安婦問題で「強制性を裏付ける証拠がなかったのは事実」と発言したことについて、「アジアの近隣国との緊張緩和を危うくしている」と強い懸念を示しました。
同紙は首相発言に関し、旧日本軍が慰安婦の徴用で直接的役割を果たしたとする一九九二年発見の史料と「矛盾する」と指摘。また、「過去の政府の謝罪に疑問を呈するものだ」とし、「戦時中の残虐行為への十分な償いをしていないと主張している韓国や中国をいら立たせることは確実だ」と論評しています。
同紙は、慰安婦問題で謝罪を表明した九三年の河野洋平官房長官(当時)談話の見直しを求める動きが自民党内にあることも紹介。「日本の国家主義的な政治家や学者は、慰安婦が職業的売春婦であり、強制的に苦役に従事させられたのではないと主張している」と伝えています。
( 2007年03月03日,「赤旗」)
「慰安婦」問題を取り上げたNHKの番組改変は、「これまでにない報道被害だった」。こう指摘するのは、「報道・表現の危機を考える弁護士の会」の代表世話人・梓澤和幸弁護士です。一月に『報道被害』(岩波新書)を出版したばかりの梓澤さんに、NHK裁判控訴審判決が市民にとってどんな意味を持つのかを聞きました。
(山本正剛)
判決でいちばん注目したのは、非合理的な番組改変があったという事実が、裁判所によって詳細に認定されたことです。そこから真実が浮かび上がってきます。
侵略の歴史削除
判決は、放送前に右翼団体がNHKに詰め掛け、「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」所属の国会議員の間で番組が話題になり、騒然たる雰囲気にNHKが包まれたと指摘。NHK幹部と安倍氏(当時、官房副長官)が会うようになった経過も詳しく認定し、安倍氏が「従軍慰安婦」問題について持論を展開した後、「公正中立な立場で」と指摘したことを認めています。
安倍氏の持論とは何か。事務局長だった「若手議員の会」は、「慰安婦」制度への軍の関与を否定し、「商行為」などと主張しています。「公正中立」とは一般論でなく、「慰安婦」問題を否定する立場で言ってるのです。
侵略の歴史と責任を否定し、過激なナショナリズムをあおる政治家が権力の中心に座るこの時代。介入問題とはそのような政治家におもねって番組の核心が骨抜きにされたという事件です。その事実を裁判所が認定したのです。歴史家の目でこの事件を見たい。
「慰安婦」問題は、一九九三年に河野洋平官房長官談話で国の責任を認め、九〇年代に教科書に載るほど国民的な認識になりました。それをひっくり返す動きの中で番組改変に至る一連の出来事があった。今も在米日本大使館がロビイストを動かして、日本政府の責任を追及しようとするアメリカ議会の「慰安婦」決議を阻もうとしています。
NHKが番組から削除した加害兵士の証言や、被害者自身の体験をうったえる場面が放送されていれば、加害の歴史を否定する動きに警告を鳴らせたはずです。こういうことが積み重なれば、イラク戦争でも確固とした反戦世論の基礎になり得たと思います。多くの人が真実に接する機会を失いました。
メディアの役割
取材を受けた側が番組に対して抱く「期待権」が認められたことを、メディア側は、報道の自由の制約と感じるかもしれません。しかし判決は、NHKが市民の信頼にこたえて報道の使命を果たさないならば、報道の自由は保障するに足りないといっているわけです。
『報道被害』でも書いたように、ジャーナリズムの本来の役割は、権力監視です。ジャーナリズムが真摯(しんし)にその使命を達成しようとすると、多数派権力と衝突することもある。それでもあえて本来の役割を貫く覚悟がメディアには求められているのです。
ところが、実際にはそうなってはいません。安倍氏が総理大臣に選ばれる直前の記者会見で、NHK裁判とのかかわりについて質問したメディアはひとつもありませんでした。
今回の判決報道も問題を感じます。焦点は、NHKの番組改変が事実だったということでありその背景です。つまりNHK幹部と安倍氏の面会の後、不当な改変が起こったということです。それが視聴者にいかなる意味を持つのかを中心に論ずべきでした。しかしメディアは「期待権」と報道の自由の問題に論点をずらしている。これでは判決が指摘した歴史上の危険なできごとがわきに追いやられてしまうのです。
これだけ大きい報道被害、回復のたたかいは過去にありませんでした。歴史の真実を埋もれさせないという思いで、多数派権力に一つの運動体がぶつかっていき、市民が支えた。そして勝ったところに大きな意味があります。判決の一行一行が市民の苦闘の産物です。
市民とのきずな
取材協力し、裁判を起こしたバウネット、政治圧力を告発したNHKの長井暁デスク(放送当時)、法廷で証言した永田浩三チーフプロデューサー(放送当時)がやったように、犠牲に満ちたたたかいを通じて、初めてメディアを正す道が見えてきます。この裁判は、そういうことを示した尊い実践だと思います。長井、永田氏は、現場からはずされましたが、証言は歴史に刻まれました。
権力=多数派に好意をもたれなくても真実を追求し、そこに自分たちの公共性を見いだしていくのがジャーナリズムです。市民とのきずなをしっかりしてこそ、権力の介入とたたかえます。大事なときに大事なことが言えないのでは何のためのジャーナリズムか。闇とみえる時代こそジャーナリズムは光を示すべきなのです。
( 2007年03月03日,「赤旗」)
埼玉県の上田清司知事が「従軍慰安婦はいなかった」と議会答弁した問題をめぐり、韓国・大邱在住の元「従軍慰安婦」、李容洙(イ・ヨンス)さん(78)が来日し、一日に県庁内で上田知事と面会しました。面会後、県庁内で記者会見した李さんは、「私は日本の軍人に強制連行され、特攻隊基地で『慰安婦』にされた被害者だ、ということを直接会って言いたかった」とのべました。
李さんは十五歳だった一九四四年秋、台湾・新竹の日本軍基地に強制連行されて「従軍慰安婦」にされました。上田知事の「従軍慰安婦はなかった」発言後の二〇〇六年十月にも来日して上田知事に面会を求めていましたが、拒否されました。
李さんと上田知事は、通訳をはさんで一対一で面会。同行した支援者らは同席できず別室で待機し、報道陣にも公開されませんでした。李さんによると、上田知事は「従軍」の文字を書いてみせたうえで、「従軍看護婦などはあっても、従軍慰安婦はない」という知事の主張を説明したとのことです。
(2007年03月02日,「赤旗」)
韓国の盧武鉉大統領は一日、日本による植民地支配からの解放を目指した「三・一独立運動」八十八周年記念式典で演説し、日本に対し「何よりも歴史の真実を尊重する態度と、これを支える実践が必要だ。歴史教科書、日本軍『慰安婦』、靖国神社参拝のような問題は、誠意さえあればいくらでも解決できる問題だ」と述べました。
大統領は「日本と仲の良い隣人になることを願う。(日韓は)経済、文化などで切り離せない関係を結んでいる。両国関係を超え、北東アジアの平和と繁栄のために、一緒に寄与しなければならない」と呼び掛けました。
また、日本政府が旧日本軍「慰安婦」に公式謝罪するよう求める決議案が提出されたことについて、「日本帝国主義が犯した蛮行に対しては、国際社会が容認しないことを改めて確認するもの」と指摘。日本に対し、「間違った歴史を美化したり正当化するのではなく、良心と国際社会で普遍性が認定されている先例に従って、誠意をつくすことを願う」と求めました。
北朝鮮の核問題については、「(六カ国協議の)二月十三日の合意を成功裏に履行し、朝鮮半島の平和体制を強固に定着させ、協力と統合の北東アジア時代を主導していかなければならない」と強調しました。
( 2007年03月02日,「赤旗」)
安倍晋三首相は一日夜、「従軍慰安婦」問題への旧日本軍の関与を認め謝罪した一九九三年の河野洋平官房長官談話について「当初定義されていた強制性を裏付ける証拠がなかったのは事実だ」と述べ、談話見直しの必要性に関して「定義が大きく変わったことを前提に考えなければならない」と語り、ふくみを残しました。首相官邸で記者団の質問に答えました。
首相はまた、自民党の「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」が同談話見直しを求める提言を作成していることについて「歴史、事実関係を研究することは悪いことではない」と容認する考えを示しました。
( 2007年03月02日,「赤旗」)
二十五日、東京で全国学者・研究者日本共産党後援会の全国交流集会が開かれ、志位和夫委員長が「二十一世紀の世界と日本の未来」と題して記念講演をおこない、二十三都道府県、百二十八人の参加者が聞き入りました。
志位委員長は、「目前の選挙をたたかううえでも、その土台となる日本共産党の綱領と歴史の持つ意義を、世界の視野から考えてみたい」とのべ、昨年の韓国・パキスタン、一月のベトナム訪問時のエピソードや、国会質問のパネルも紹介しながら、ユーモアを交えて二つの主題について語りました。
第一は「自民党政治の異常を、世界の流れとのかかわりで考える」です。大会決定が明らかにした「三つの異常」のうち、過去の戦争への無反省という点では、米下院外交委員会に提出された「従軍慰安婦」問題の決議案を、政府・自民党が妨害している最新の動きについて、「公的言明を行動で裏切ってはならない」と厳しく指摘するとともに、日中、日韓で歴史認識の基本を共有する仕事に真剣に取り組む重要性を強調しました。
米国いいなり政治では、同国の外交政策を「複眼」で見ることの意義を、イラク情勢と、先の六カ国協議合意にそくしあらためて解明。世界の流れが「軍事同盟」から「平和共同体」の形成にダイナミックに変わっている現実を具体的に示し、「日米同盟」絶対化の自民、民主両党の異常さを浮き彫りにしました。
異常な大企業中心主義の問題では、「新自由主義」路線をとる日本と米国で貧困が突出する一方、民主的変革の波が広さと深さの両面ですすむ南米で貧困が減少している事実を豊富な資料で紹介し、自民党政治には未来がないとのべると、参加者は大きくうなずきながら聞き入りました。
志位氏は、第二の主題に、「日本共産党の未来社会論を、社会主義をめざす国々の現状とのかかわりで考える」を挙げ、ベトナムでの理論交流の中身を詳しく紹介。「生産手段の社会化」「生産者が主役」を未来社会論の核心とした日本共産党綱領について、「中国やベトナムとの社会主義をめぐる理論交流でも大きな役割を発揮している」と語り、参加者は大きな拍手で応えました。
講演には、「非常にスケールの大きな話でした」「『三つの異常』について、『異常』のありかが理論的、とくに世界情勢の関係で明らかになり、認識が深まった」「世界の政治の流れと、日本共産党の綱領とそれに基づく活動がしっかりかみ合っていることに確信を深めました」「ベトナムとの今後の理論交流が楽しみになった」などの感想が寄せられました。
加藤幸三郎事務局長の開会あいさつで始まった集会は、志位委員長の講演のあと、田村智子・参院東京選挙区候補につづき、足立正恒党学術・文化委員会責任者があいさつ。間近に迫ったいっせい地方選挙と参院選挙へ向けて各地から経験の交流をおこない、「日本共産党が勝利するために、一人ひとりが豊かな個性を生かして力を発揮し、後援会の活動をいっそう強化しましょう」との「申し合わせ」を確認。山口啓二代表世話人が閉会のあいさつをのべました。
( 2007年02月26日,「赤旗」) (Page/Top)
米下院で提出された旧日本軍による「従軍慰安婦」問題での反省決議案について、麻生太郎外相が「客観的事実に基づいていない」などと発言した問題で二十一日、大阪府アジア・アフリカ・ラテンアメリカ連帯委員会(大阪AALA・田中克彦理事長)は、麻生外相発言に抗議と謝罪を要求し、政府が「従軍慰安婦」に対する謝罪と個人補償を速やかに行うことを求める抗議・要請文を安倍晋三首相と麻生外相に送付しました。
抗議文は「国際社会からの批判にも、あれこれ言い逃れをするのみで、賠償はおろか、国家としての明確な謝罪すらしなかった」とのべ、「日本政府が、世界史に恥を残す『慰安婦』問題に真摯(しんし)に向き合い、国家としての謝罪と、被害者個人にたいする補償を速やかにおこなう」ことを強く求めています。
(2007年02月24日,「赤旗」) (Page/Top)
「戦時性的強制被害者問題解決促進法案」の審議を求める緊急集会が二十一日、国会内で開かれました。米下院外交委員会で今月十五日に証言した韓国人の元従軍「慰安婦」が報告。法案の早期成立を求めた請願署名を参加した野党議員に手渡しました。約七十人が参加しました。
日本軍「慰安婦」被害者の李容洙(イ・ヨンス)さん(78)は、米下院でのもようを報告し「五分の証言時間でどう私の人生を語れというのか」と心境をのべました。李さんは一九四四年、日本軍人に脅かされ、台湾・新竹の海軍「慰安所」に連行されました。「夜寝ていたところ、男が(私の)首を押さえ、黒い物を首筋に当ててきた」と当時を語りました。
また、日本政府に対し「(訴えは)私の個人的悔しさからではない。(日本と韓国は)隣の国です。平和的に早く解決し、若い人たちに真実を教えていく。そのためにも調査をおこない、この問題についても解決に向けて早期にとりくんでほしい」と訴えました。
日本共産党の吉川春子参院議員は、従軍「慰安婦」問題について九三年、「お詫(わ)びと反省」を表明した河野官房長官談話の見直し論の再燃を指摘し「与党に対してのたたかいはこれから。(前国会からの継続審議にある)法案を内閣委員会で審議するためにも、全力をあげていきたい」と語りました。
支援団体の代表らから「ハルモニ(おばあさん)たちが存命のうちに日本の正義を示したい」との声が相次ぎました。
( 2007年02月22日,「赤旗」) (Page/Top)
陽子 米下院の外交委員会で、元従軍「慰安婦」問題について日本政府に公式な謝罪を求める決議案が提出され、公聴会が開かれた。
みどり 元「慰安婦」三人が証言して、日本軍兵士の「性の奴隷」にさせられた状況を涙ながらに語ったわ。
歴史と向き合え
陽子 オランダ出身の女性は一九四二年、日本軍がインドネシアのジャワ島に侵攻した時、十九歳で拘束され、二年後に「慰安所」に送られた。「私の若さ、尊厳、自由、家族などすべてがはぎ取られた」と訴えた。
みどり 韓国人の女性は四四年、十六歳で連れ去られ上海から台湾に向かう船内でレイプされて「慰安所」に入れられた。もう一人の韓国人は四二年、十四歳で中国に連れていかれて「慰安婦」にされたと証言したわ。
陽子 彼女らは戦後のつらい体験も語り、「日本はまっすぐに歴史と向き合え」、「日本政府は罪を認め公式に賠償を」とよびかけたわ。
みどり 決議案を提案したホンダ議員は、カリフォルニア州で教師をしていた。当時、日本の文部省が教科書から「『慰安婦』の悲劇」を削除しようとしているのを知り、関心を持ったそうね。
米国議員も警告
陽子 彼は、「ひるむことなく(過去の)悲劇と不正義を教える」ことが「和解」には欠かせないが、最近、自民党の一部幹部は、「慰安婦」問題の存在と責任を認めた政府の立場の見直しや撤回を主張していると述べ、決議案を出した理由を説明しているわ。
みどり 日本政府は「慰安婦」について調査し、九三年八月の河野官房長官談話で、日本軍の「関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた」として「おわびと反省」を表明したね。
陽子 それを否定して侵略戦争を正当化する動きが日本になくならないから、アジアだけでなく米国の議員たちも警告を発しているのね。
みどり ところが安倍政権は、決議案採択阻止に躍起なのよ。それで、麻生外相は国会で、決議案は「事実に反する」と居直ってたね。こんな態度は対日不信を増すだけなのに。過去の過ちを誠実に認めるかどうかが問われているんだから。
( 2007年02月22日,「赤旗」) (Page/Top)
ファン・ソギョンさんは、一九一八年朝鮮生まれ。七十七歳のとき、国連人権委員会に「従軍慰安婦」の体験を証言しています▼「私たちは、…病気(性病)にかかっているとわかると、殺されてどこかわからない所に埋められました」。日本軍の兵士に抵抗する女性もいました。その一人は庭にひきだされ、みんなのみている前で「首を切り落とされ、体を切り刻まれました」▼別の女性も、同じような証言を残しています。ところが麻生外相は、旧日本軍が若い女性を性奴隷にして殺したり自殺に追い込んだとの告発について、「客観的事実にもとづいていない」「はなはだ遺憾なもの」といいました。先日の国会での答弁です▼案の定、韓国の人々の反発が伝えられました。「ハルモニ(おばあさん)の憤怒に対し、謝罪でなく否定することで一貫する日本は、二十一世紀の先進国なのか疑わざるをえない」「全国民を憤怒させる不快であきれた妄言」。いずれも、政界人の発言です▼江戸時代、朝鮮との外交に携わった雨森芳洲は、「誠心交隣」をとなえました。外交にあたっては、お互いに欺かず、争わず、真実をもって交わる。朝鮮との交流の窓口、対馬藩につかえた芳洲は、釜山に留学して朝鮮語をほぼ修め、朝鮮国王が日本におくる使節「通信使」につきそいました▼芳洲は、豊臣秀吉の朝鮮侵略も「大義名分のない出兵」と評しています。初の朝鮮通信使がきて、ことしで四百年。麻生外相らは、先人の努力もけがすつもりなのか。
( 2007年02月22日,「赤旗」) (Page/Top)
東ティモールを支援する市民団体「東ティモール全国協議会」の松野明久さん(大阪外国語大学教授)と古沢希代子さん(東京女子大学助教授)は二十日、外務省を訪れ、旧日本軍の犯罪行為に対する謝罪と補償を求める申し入れ文書を南東アジア第二課長に手渡しました。
一九四二年二月二十日、旧日本軍はポルトガル領ティモール(現東ティモール)に侵攻。終戦までの約三年半占領を続け、多くの現地女性を「慰安婦」としました。
申し入れ文書は、日本軍によって性的奴隷状態におかれた女性たちが、戦後も不妊や差別、自らのトラウマによって苦しみ、戦後六十年間放置されてきたと指摘。日本政府に一刻も早く被害の認定を行い、公式な謝罪を行うこと、被害者に対する補償方法を検討するため、東ティモール(二〇〇二年独立)の政府、被害者、関連団体との協議を早急に開始することを求めています。
( 2007年02月21日,「赤旗」) (Page/Top)
米議会で旧日本軍から受けた性被害を証言した元「慰安婦」の金君子さん(81)は二十日、韓国紙のインタビューに応じ、米議会の「慰安婦」決議案を敵視した麻生外相の発言について「昼夜を問わず日本にはがっかりする」と語りました。文化日報(電子版)二十日付が報じました。
金さんは、米議会での証言内容について語った後、「米国で一番訴えたかったことは?」と問われ、「日本は謝罪し賠償しなければならない。私は幼くして日本軍に連れて行かれ、青春を失った。私は結婚もできなかった」と答えました。
( 2007年02月21日,「赤旗」) (Page/Top)
韓国の国会各党は二十日、米下院の「従軍慰安婦」決議案について「客観的事実に基づいていない」と述べた麻生外相の発言を厳しく批判する立場を相次ぎ表明しました。
与党「開かれたウリ党」の徐惠錫スポークスマンは同日午前の記者会見で「日本の政治家の厚顔無恥と歴史認識の不在をみる思いだ」と指摘。「ハルモニ(おばあさん)の憤怒に対し、謝罪でなく否定することで一貫する日本は、二十一世紀の先進国なのか疑わざるをえない」と述べ、日本政府が心からの謝罪と適切な措置をとるよう求めました。
ウリ党を離党した議員らでつくる「統合新党の会」が同日開いた全員会議でも趙培淑議員が、「全国民を憤怒させる不快であきれた妄言だ」と批判。「決議案を阻止しようという緻密(ちみつ)な計算が敷かれた発言だ」として、日本政府のロビー活動に対応した「全方位的対応戦略」に基づき対応するよう韓国政府に求めました。
野党・民主労働党は、
米下院の決議案は、民主党のマイク・ホンダ議員らが提出したもの。「慰安婦」制度は「日本政府による強制的な軍事売春」だとし、首相に対し公式に謝罪するよう求めています。十五日には、外交委員会アジア・太平洋・地球環境小委員会で公聴会が行われ、三人の元「慰安婦」が証言しました。
( 2007年02月21日,「赤旗」) (Page/Top)
日本政府に「従軍慰安婦」問題で公式謝罪を求める米議会での決議案に関する麻生太郎外相の発言は、安倍内閣が「受け継いでいる」と繰り返し表明してきた一九九三年の河野洋平官房長官談話に背くばかりか、被害女性の心を再び傷つけるものです。
旧日本軍が若い女性を性奴隷にし、最終的に殺害または自殺に追い込んだとする決議案についての認識を問われた麻生氏は、「基本的にまったくそのような事実を認めておる立場にはない」などと述べました。
「慰安婦」問題が、旧日本軍が直接、間接に関与するなかで引き起こされた問題だということは既に決着済みです。日本政府は九三年に発表した河野談話で、「当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題」だと認定。「従軍慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々」に「心からのお詫(わ)びと反省」を表明しています。
しかし、日本政府は、被害者の補償要求に応じず、「慰安婦」の事実すら認めない一部政治家の発言が繰り返されてきたため、被害者や関係国から「お詫び」は「偽り」ではないかとの批判を浴びてきました。
ILO(国際労働機関)の条約勧告適用専門家委員会が「強制労働禁止条約に違反する」として被害者の要望にこたえるよう求め、国連人権委員会でもたびたび問題となるなど、日本政府の態度は、国際社会からも批判されています。
米議会での決議案は、こうした中で、日本政府に責任を認めさせ、被害女性らの尊厳を取り戻そうと提出されたものです。
昨年、同内容の決議案が外交委員会を通過した際には、日本政府が本会議での採択を妨害していたことが報道で明らかになりましたが、こうした態度は、怒りの火に油を注ぐだけです。
韓国各紙は、米議会での公聴会を受けて、この問題を社説で取り上げ、「手のひらで天を隠すような行動が民主国家を自認する世界第二位の経済大国の本当の姿なのか、すべての日本人に聞きたい」(ハンギョレ紙)、「真実の謝罪もなく、『何が間違っていたのか』と抗弁することにより自らの基盤を確保しようとする政治家ばかりだ」(朝鮮日報)と報じました。
麻生氏は十九日の委員会で「理解を得るためにいろいろ努力を行っていきたい」とも述べましたが、「歴史の真実を回避することなく、むしろこれを歴史の教訓として直視」(河野談話)していかない限り、理解されることは決してないでしょう。
(中村圭吾)
( 2007年02月20日,「赤旗」) (Page/Top)
麻生太郎外相は十九日、衆院予算委員会で、米下院で提出された旧日本軍による「従軍慰安婦」問題での誠実な反省を求める決議案について、「客観的事実に基づいていない」「はなはだ遺憾だ」などと、敵視する態度を表明しました。自民党の稲田朋美議員への答弁。
米下院の決議案は、民主党のマイク・ホンダ議員が提出したもので、「慰安婦」制度は「日本政府による強制的な軍事売春」とし、首相が謝罪を声明するよう求めています。
決議案に関し、自民党内の改憲タカ派の急先ぽうである稲田議員は、「安倍総理もこの従軍慰安婦問題については『強制性についてまったく根拠がない』といっていた」などとした上で、麻生外相に対し、「日本国軍隊が若い女性を強制的に性奴隷にしてあげくの果てに殺したり、自殺に追いやった事実があるという認識か」と迫りました。
麻生外相は、「(決議案は)私どもからみて客観的事実に基づいていないので、日本政府の従軍慰安婦の問題に対する対応を踏まえていないので、はなはだ遺憾なものだ」と答弁。さらに、「われわれの立場として理解をうるためにいろいろ努力をおこなっていきたい」と、採択阻止を目指す立場まで示しました。
「従軍慰安婦」問題では、一九九三年に官房長官談話で「強制性」を認め、「当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた」と述べ、「お詫(わ)びと反省」を表明。歴史の教訓として直視し、「同じ過ちを繰り返さない」としています。稲田議員は、この談話の変更・撤回を迫りました。
この問題に関連し、塩崎恭久官房長官は同日の記者会見で、米下院で「加藤良三駐米大使が議会筋などに日本の立場を説明して回っている。(同問題へのおわびと反省を表明した)河野洋平官房長官談話を中心に日本のこれまでのスタンスと、(談話を継承した)安倍内閣の考え方も伝えている」と述べ、採択阻止に努力する考えを表明。安倍晋三首相も同夜、「客観的な事実に基づいていることが大切ではないかと思う」と述べました。
( 2007年02月20日,「赤旗」) (Page/Top)
日本軍「慰安婦」問題で日本政府に公式な謝罪を求める決議案(下院決議案一二一)を米議会に提出したマイク・ホンダ議員(民主党)が、議会公聴会で元「慰安婦」とともに証言した内容(要旨)は以下の通りです。 (ワシントン=鎌塚由美)
◇
「慰安婦」問題への私の関心は、サンノゼ(カリフォルニア州)で教師をしていたときの二十年ほど前に始まる。日本の文部省が、認定教科書から「慰安婦」の悲劇について削除しようとしていることを知った。歴史問題での和解に興味のある教師として、ひるむことなく(過去の)悲劇と不正義を教える重要さを私は知っている。誠実さと率直さなしには、和解の基礎はない。
日本の旧敵国との長く解決されない歴史問題については、その後、私のカリフォルニア州議会での追求に続く。一九九九年に、私は州議会で、連邦議会が日本政府に対し、南京虐殺の犠牲者や「慰安婦」、強制労働を強いられた元捕虜への謝罪を求めるよう促す合同決議を起草、採択させた。
米議会が下院決議案一二一をすみやかに採択することは緊急の課題だ。(「慰安婦」にされた)女性たちは年老い、その数は毎日減っている。われわれが今行動しなければ、「慰安婦」に対する責任について適切に認めるよう日本政府に促す歴史的な好機を逃すことになる。
日本の政府高官は、この問題を解決するための措置をとってきた。一九九三年の河野官房長官の「慰安婦」談話は、勇気付けられるものだ。生き残っている「慰安婦」へ金銭的補償としてアジア女性基金も試みられた。
しかし、最近の与党・自民党の一部幹部による河野談話見直し・撤回の試みは、がっかりさせるものであり、日本の同問題でのあいまいさのあわられとなっている。
私は、アジア女性基金の設立と基金を受け取った一部「慰安婦」への首相の謝罪を評価する。しかし実際は、日本政府からの誠実で明確な謝罪を求め多くの「慰安婦」が、基金を受け取ることを拒否している。
この決議は、歴史問題における和解とそれによる前進に資するもので、日本との強固な関係を損なうことはまったく意図していないし、意図すべきでもない。日米同盟関係に否定的影響を与えるとの心配は、根拠がない。「慰安婦」の悲劇への責任の受け入れは、日本のようなすばらしい国が行うに値するものであり、和解によって歴史問題の懸念を打ち消し、周辺地域との関係に積極的な影響を及ぼすだろう。
われわれの政府も間違いをおかしているが、英知をもって間違いを認める難しい選択をしてきた。一九八八年に議会が通過させ、レーガン大統領が署名して法制化した(第二次世界大戦中の日系人への強制収容について補償する)「一九八八年市民的自由法」は、日系米国人に対する、公式で明快で明確な謝罪である。議会が通過させ、大統領が署名して法制化したことを強調したい。日系人社会はこの法を公式で明快で明確な謝罪として受け取った。日系人の補償を求める旅路は長く困難であったが、ひとたび行われた謝罪は、明快で明確だった。
平和な国際社会を育成するために、過去の問題を解決する和解を、われわれの世代が呼びかけるべきだ。今日、証言した女性たちの強さと人間性とその真実が、この決議へのいかなる政治的圧力をも超えていくべきだ。
( 2007年02月18日,「赤旗」) (Page/Top)
十五日に米議会で元「慰安婦」を招いて開かれた公聴会は、米議会で初めてとなる「慰安婦」問題の公聴会でした。元「慰安婦」による証言から、日本政府が謝罪と補償に背を向けてきた姿が、改めて浮き彫りになりました。
一九九一年に韓国人元「慰安婦」が始めて名乗りを上げて以来、五十年以上にわたる沈黙を破り多くの女性が次々と名乗り出ました。日本政府に公式な謝罪と補償を求め、その声を国連をはじめ国際的に広げてきたのは元「慰安婦」です。
米国では、韓国系米国人らを中心に「慰安婦」問題を知らせる活動が九十年代初めから取り組まれてきました。米議会では二〇〇〇年以来、「慰安婦」問題で日本政府に謝罪を求める決議案が数度にわたり提出されています。
前議会では、本会議でこそ採択されませんでしたが、「慰安婦」決議案は下院外交委員会を通過。当時の外交委員長のヘンリー・ハイド議員(共和党)は、第二次世界大戦の退役軍人でもあり、日本の歴史問題には高い関心を示し、小泉首相(当時)の靖国神社参拝に強い反対の意思を表明していました。
「慰安婦」問題に熱心に取り組んできたレーン・エバンス議員(民主党)が引退したのに伴い、議会ではマイク・ホンダ議員(民主党)がこの問題を引き継ぎました。
カリフォルニア州議会時代に、日本政府に「慰安婦」および南京大虐殺、捕虜の強制労働について謝罪するように求める決議をあげたホンダ氏。米国政府が謝罪し補償を行った第二次世界大戦中の日系人の強制収容を幼児期に体験した同氏は、議会証言で、米国政府の日系人への姿勢を例に、日本政府に公式な謝罪のあり方を示唆しました。
今回、議会で証言した元「慰安婦」たちは、七十八歳、八十一歳、八十四歳とみな高齢です。
オーストラリアで「慰安婦」問題に取り組んできたアナ・ソンさんは、早期の問題解決の必要性を強調します。
「日本政府は、生存する元『慰安婦』たちが死に絶えたあとに、謝罪をしようとでも言うのでしょうか。今、謝罪を求める女性たちが亡くなったあとの謝罪に意味があるでしょうか。日本政府が公式に謝罪を行うチャンスは、わずかしか残されていないことに気づいてほしい」
日本政府は、一貫して公式な謝罪には背を向け、歴代首相による「おわび」の手紙、民間の「アジア女性基金」による償い金で「謝罪」が行われたかのように取り繕っています。その態度が通用しないことがますます明らかになっています。
(ワシントン=鎌塚由美)
( 2007年02月18日,「赤旗」) (Page/Top)
【ワシントン=鎌塚由美】旧日本軍によって性奴隷にされた「慰安婦」の実態を米議会で告発した元「慰安婦」の女性たちは十六日、ワシントン市内で米国「アムネスティ・インターナショナル」とともに記者会見を行いました。
アムネスティは、日本政府による元「慰安婦」への公式な謝罪・補償を求め、元「慰安婦」の女性たちと国際的なキャンペーンを行っています。日本政府に対しては、第二次世界大戦時の性奴隷制度について教科書での正確な記述と、その保証として国際刑事裁判所(ICC)規定を批准するように求めています。
正義を求める
会見したのはオランダ出身でオーストラリア在住のジャン・ルフ・オハーンさん(84)と韓国人の李容洙さん(78)。前日、議会で共に証言した金君子さんは体調の不調を訴え、欠席しました。
ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争(一九九二―九五年)で女性たちが組織的にレイプされたことを知ったオハーンさんは、一九九二年に「このような残虐行為が二度と繰り返されてはならない」と名乗りをあげたと自己紹介し、韓国人の元「慰安婦」らとともに日本政府に謝罪を求めてきたと話しました。「私たちが日本政府に求めているのはお金ではなく、正義です。日本政府が戦時の残虐行為を認めて謝罪すれば、われわれは尊厳を取り戻すことができます」と訴えました。
李容洙さんは、名乗りを上げて活動するうちに「私たちが声を上げないと、日本政府は『慰安婦』の事実を隠して責任を否定し続けることになることに気づきました」と述べ、日本政府が不誠実な対応を取り続けていることを批判。「戦時の犯罪を日本政府が認めるまで、私は声を上げ続ける」と決意を語りました。
政府も誠意を
「慰安婦」問題を訴えるための訪米は初めてというオハーンさんは、「米議会で証言することで、日本をバッシングしているのではありません」と語りました。元「慰安婦」として証言する目的で来日したときの経験にふれ、「私に謝罪し、温かく迎えてくれた日本の人々のことを今でもよく覚えています。日本の人々に、誠実な心があることを知っています」と話し、「日本政府にも、戦時の非道な行為を認める誠意を示してほしい」と語りました。
( 2007年02月18日,「赤旗」) (Page/Top)
政治・経済
◆消費支出が2年連続減少 総務省が発表した全世帯家計調査の結果によると、二〇〇六年の総世帯(単身、農林漁家世帯含む)の月平均消費支出は二十五万八千八十六円と、実質で前年比3・5%減少。マイナスは二年連続(13日)
◆衆院予算委、志位委員長が質問 日本共産党の志位和夫委員長が、衆院予算委員会で総括質疑に立ち、子どもの中での貧困の広がりを指摘。児童扶養手当の大幅削減、生活保護を受けている母子家庭への母子加算の廃止計画を批判(13日)
◆吉田都知事候補が重点公約発表 吉田万三都知事候補が、都政改革プラン「憲法を都政にいかし、税金のムダづかいをやめて、くらし・福祉最優先の東京をめざします―三つの転換と六つの重点公約」を発表(14日)
◆実質GDPが年率4・8%増 内閣府が発表した二〇〇六年十―十二月の国内総生産(GDP)速報によると、GDP成長率は名目では前期比1・2%増、年率換算で5・0%増、実質では前期比1・2%増、年率4・8%増(15日)
社会・国民運動
◆沈没漁船の3人救助 沈没した宮崎県日向市のマグロはえ縄漁船「幸吉丸」(九・一d)の乗組員ら三人が救命ボートで漂流しているのを発見、三日ぶりに救助(12日)。国土交通省九州運輸局は鹿児島県奄美市のマルエーフェリー所有の貨物船「フェリーたかちほ」(三、八九一d)が衝突相手だったとみて立ち入り検査(15日)
◆老齢加算廃止は違憲と提訴 生活保護の老齢加算廃止は憲法二五条に反するとして、東京都内に住む十三人の高齢者が廃止処分の取り消しを求め、東京地裁に提訴(写真)(14日)
◆八甲田で雪崩、2人死亡 青森市の八甲田山系でスキーツアー客らが雪崩に巻き込まれ二人が死亡、八人が負傷。青森県警は表層雪崩だったと見て調べる(14日)
◆雇用と地域経済守る全国集会開く 偽装請負・サービス残業などの無法を一掃し、雇用と地域経済を守る全国交流集会が都内で開かれ、全国の職場・地域の実態とたたかいを交流。日本共産党の市田忠義書記局長が国会報告(17日)
国際
◆トルクメン大統領に副首相 中央アジア・トルクメニスタンの大統領選挙で、ベルドイムハメドフ大統領代行兼副首相が当選と中央選管が発表(11日)
◆イラクで爆弾テロ 88人死亡 イラクの首都バグダッド中心部の二つの市場で爆弾テロが起き、八十八人が死亡、百八十六人が負傷。イラク内務省は容疑者三人のうち外国人二人を逮捕したと発表(12日)
◆米国州議会でイラク撤兵決議 米バーモント州議会の上下両院がそれぞれイラクからの米軍撤退の「速やかな開始」をブッシュ大統領と連邦議会に求める決議を可決(13日)
◆北朝鮮核問題 6カ国協議で共同文書 北朝鮮の核問題をめぐる六カ国協議で、二〇〇五年の共同声明の履行に向けた「初期段階の措置」を共同文書として確認。北朝鮮は六十日以内に寧辺の核施設の稼働を停止、他の五カ国は重油五万d相当のエネルギー支援を提供(13日)
◆米下院委で元「慰安婦」が証言 米下院外交委員会アジア・太平洋・地球環境小委員会の公聴会で元「慰安婦」の三人が証言。「日本政府から謝罪を受けたことはない」として、誠意ある形での謝罪を要求(15日)
( 2007年02月18日,「赤旗」) (Page/Top)
「NHK問題を考える会(兵庫)」はこのほど、「従軍慰安婦」番組改変問題で、原告バウネットジャパンが勝訴した東京高裁判決を不服として上告したNHKにたいし、抗議の申し入れ書を送りました。
申し入れ書は、原告勝訴の判決を歓迎するとともに、改変と政治家との面会は「無関係」としてきたNHKの主張を退けた判決への上告は、「ウソにウソを重ね、視聴者を二重に裏切ること」だと厳しく批判。NHKが判決を真摯(しんし)に受けとめ、上告を取り下げ、バウネットジャパンに謝罪するよう強く求めています。
(2007年02月17日,「赤旗」) (Page/Top)
【ワシントン=鎌塚由美】アジア太平洋戦争時に旧日本軍によって性奴隷にされた元「従軍慰安婦」が十五日、米議会公聴会で初めて証言しました。「慰安婦」問題で日本政府に公式な謝罪を求める決議案が今議会に提出されていることに伴う公聴会です。
下院外交委員会のアジア・太平洋・地球環境小委員会で証言したのは、元「慰安婦」の韓国人の李容洙さん(79)と金君子さん(81)、オランダ出身でオーストラリア人のジャン・ルフ・オハーンさん(84)。兵士に次々とレイプされた体験を語りました。
金さんは、日本政府に「謝罪しないなら、私の青春を返せ」と訴え。オハーンさんは、日本政府が償い金として民間の「アジア女性基金」を設立したことについて「侮辱だ」と批判、「行動の伴う謝罪」を求めました。
デナ・ローラバッカー議員(共和党)は、「日本政府はこれまで何度も謝罪してきた」と述べ、決議は必要ないと表明しました。
これに対し、決議案を提出したマイク・ホンダ議員(民主党)は、「『慰安婦』の悲劇の責任を受け入れることこそ、日本のような大国がすべきだ」「わが政府も(過去に)間違いを犯したが、英知でその誤りを認める厳しい選択をした」と発言。政府による補償こそ謝罪だと指摘しました。
日本の戦後補償問題の専門家である「アジア・ポリシー・ポイント」のミンディ・コトラー理事長は、「慰安婦」に対し日本政府が公式に謝罪したことは「一度もない」と強調。首相の「謝罪」は「アジア女性基金」を受け取った女性にのみ送付しているだけで、日本政府を代表するものではないと指摘しました。
日本政府は、今議会でも「慰安婦」決議案を阻止する構えを強めています。加藤駐米大使は、日本はすでに謝罪しているとする書簡を同小委員長に送っています。
日本政府と契約する有力ロビー事務所「ホーガン&ハートソン」は、日本政府は「何度も謝罪している」とする資料を議会で配布し、「日米関係に悪影響を及ぼす」とロビー活動をしています。
( 2007年02月17日,「赤旗」) (Page/Top)
【ワシントン=山崎伸治】「従軍慰安婦」問題について日本の首相に謝罪表明を求める決議案を米下院に提出したマイク・ホンダ議員(民主党)が八日、記者会見し、下院外交委員会のアジア太平洋・地球環境小委員会が十五日、元「慰安婦」の女性らを招いて公聴会を行うことを明らかにしました。
ホンダ氏は「この問題が急がれるのは、被害者の女性が高齢化しているからだ」と強調。一九九五年の村山首相談話や一九九三年の河野官房長官談話など、過去の表明は「あいまいな謝罪」だったと指摘し、「『ごめんなさい』と言うのに遅すぎるということはない」と述べ、改めて日本政府に正式の謝罪を求めました。
「この決議が日米関係を損なうとは思わない。こうした問題を認めてこそ成熟した国家だ」と指摘。「和解はきずなを強くする」と述べ、日米に限らず日韓、日中関係にもよい影響を及ぼすとの考えを示しました。
日本政府によるロビー活動についてもふれ、「自分たちの見解を伝えようとするものだった。われわれとも面会した」と述べました。
決議案には民主、共和両党の議員が共同提案者に加わっています。ホンダ氏は過去の決議案にはペロシ下院議長も共同提案者になっており、「いまも個人的には賛同してくれている」と指摘。三月末までに本会議で採択されることを期待していると述べました。
( 2007年02月11日,「赤旗」) (Page/Top)
米下院外交委員会は十五日、アジア太平洋戦争中に旧日本軍によって性奴隷にされた元「従軍慰安婦」の女性を招き公聴会を開きます。日本政府に「慰安婦」問題での誠実な反省を求める決議案を提出したマイク・ホンダ議員(民主党)が八日、明らかにしました。
同委アジア・太平洋・地球環境小委員会の公聴会で証言するのは、二人の韓国人と一人のオランダ生まれでオーストラリア在住の元「慰安婦」。ホンダ議員も証言する予定です。
会見した同議員は、「(日本の)政策の犠牲者の女性たちは歳を重ね、亡くなりつつある」と述べ、公聴会開催は急を要すると強調しました。
ホンダ議員は一月三十一日、「従軍慰安婦」に対する責任を認めて謝罪し「総理大臣の声明」として表明するよう日本政府に求める決議案を提出しました。同決議案の提出には共和党議員も加わっています。
( 2007年02月10日,「赤旗」) (Page/Top)
「慰安婦」問題を扱ったNHK番組の改変をめぐる控訴審で、勝訴した原告バウネットジャパンが八日、都内の日本外国特派員協会で会見しました。
バウネットジャパン共同代表の西野瑠美子さんが判決のポイントを報告しました。西野さんは、一審判決で「編集の自由の範囲内」として不問に付されたNHKの改変行為を、控訴審判決では、「編集権を自ら放棄したに等しいと断罪し、NHKの責任を明確に指摘した意義は大きい」と話しました。NHKや一部のメディアが「政治的圧力は認められなかった」としていることについては「判決は『具体的な話や示唆』については証言からは断定できないと言っているにすぎず、政治圧力が無かったとは言っていない」と語りました。
「(取材される側の)期待権が拡大解釈される恐れはないのか」との質問には、東海林路得子共同代表が、「前向きな放送内容になると思って取材を受けた。二カ月、取材協力し、撮影当日も便宜をはかったことなどを含めて、今回は特段の事情と認められた」と話しました。日隅一雄弁護士は、判決が「期待権」はニュース番組では生じないとしていることを紹介。通常の報道について一般化するものではない、と説明しました。
( 2007年02月09日,「赤旗」) (Page/Top)
3・8国際女性デー帯広実行委員会(杉野智美実行委員長)は、「ナヌムの家」絵画・写真展を帯広市の藤丸デパートで開いています。韓国・ナヌムの家とナヌムの家歴史館後援会が後援し、二日から八日まで行われています。
「ナヌムの家」とは、戦前、朝鮮半島が日本に植民地支配されていた時代に、日本軍に「慰安所」に監禁されて、性的虐待を受けた「ハルモニ(おばあさん)」と呼ばれる人たちが暮らす場所です。
隣接する歴史館の貴重な資料と、ハルモニたちが心を込めて描いた絵画、ハルモニたちの写真など約五十点を日本にある後援会の協力で展示しました。
夫婦で訪れた八十二歳の男性は「私は少年兵だった。天律で『慰安婦』の人たちに食事をもっていく係をやらされていた」と語りました。見学者からは「強制的に連れて行かれた体験を見ているうちに涙があふれてきた」などの感想が寄せられました。
帯広市は、「従軍慰安婦」問題について「強制の証拠はない」などと主張する中川昭一自民党政調会長の地元。実行委員会は市庁舎ロビーの使用を申請しましたが、許可がおりず、「慰安婦」証言の行われる女性デー帯広集会の市の後援も得られませんでした。
実行委員会では、十五日から二十日まで帯広市図書館でも展示、三月八日の女性デーでは、元「慰安婦」カン・イルチェルさんの証言集会を行う予定です。
(2007年02月06日,「赤旗」) (Page/Top)
「慰安婦」問題を扱った番組の改ざんをめぐり取材協力のバウネット・ジャパンがNHKなどを訴えた訴訟の控訴審判決で、東京高裁はNHKに「政治家の意図を忖度(そんたく)して、制作に携わる者の方針を離れて番組を当たり障りのないように改編、取材に協力した原告らの期待と信頼を裏切った」として二百万円の支払いを命じた。
戦後、放送番組への政治介入や自己規制が問題になったケースは数限りないが、裁判で争われたのは初めてだ。市民の「知る権利」が実質的に問われたこの裁判で、原告側勝訴の判決が下された意義は、極めて大きい。
控訴審判決の最大の功績は、視聴者・市民の「知る権利」を踏みにじって政府・与党におもねるNHKの権力迎合体質を白日のもとにさらし、公共放送のあり方に警鐘を鳴らしたことである。
首相の鉄面皮
放送直前、NHK幹部は「慰安婦」問題に批判的な「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」前事務局長の安倍官房副長官(当時)を訪ね、安倍氏は持論を展開したうえで「番組は公正中立に」と注文をつけた。
判決は、NHK幹部が予算承認の時期を控えて「相手方(安倍議員ら)の発言を必要以上に重く受け止め、その意図を忖度して…直接指示、修正を繰り返して改編が行われた」と認定している。「自律的改変だった」というNHKの主張は完全に否認されたわけである。
安倍首相が「判決で不介入が証明された」かのように語っているのも鉄面皮な話だ。持論を展開し、「公正中立に」と注文をつけたこと自体が圧力なのであり、だからこそ、それが動機となって「忖度による改編」が行われたのではないか。
NHKが「判決は番組編集の自由を極度に制約するもので、到底承服できない」と上告したことにも怒りを禁じえない。
NHKは原告に「期待権」を認めたことを反対の口実にしているが、判決は「編集の自由」の尊重を大前提に据えたうえで、極めて限定的に「期待権」を認めているにすぎない。今回のように取材協力が番組制作にとって不可欠なドキュメンタリー番組などのケースでは、番組内容に重大な変更がある場合、相手に自己決定権行使(協力撤回など)の余地を残す必要から、説明義務を課したのは、当然といえる。判決はNHKのガイドラインなども引用したうえで、全体状況の判断に即して「期待権」を認定しているのである。
編集権を放棄
「編集の自由制約」は問題のすりかえとしかいいようがない。NHKのいう「番組編集の自由」について、判決は制作現場が「番組制作の責任者として、よりよい番組を作ろうとした純粋な姿勢」で完成させた番組を、松尾、野島両NHK幹部が「制作に携わる者の制作方針を離れた形」で削除、改ざんした事実を指摘し、「番組改編の経緯からすれば、一審被告NHKは憲法で尊重され保障された編集の権限を濫用し、又は逸脱して変更を行ったものであって、自主性、独立性を内容とする編集権を自ら放棄したもの」と断じている。
なぜなら、ここでは「編集の自由」の名のもとに自立性、独立性が投げ捨てられ、制作現場の「編集の自由」や市民の「知る権利」を逆に踏みにじっているからだ。NHKが「編集の自由」を掲げて上告すること自体がいかに破廉恥か、誰の目にも明らかだろう。
二度と不祥事を繰り返させないためにはどうしたらいいか。
第一にNHK予算案が国会提出に先立って、まず自民党の政調会、総務会などにかけられ、NHK会長以下出席のもとで政府提出議案なみに審議、承認が行われるという長年の慣行を廃止する必要がある。これは明らかに放送法に反し、議事公開もない密室でのやりとりは、政治介入の温床となる。番組改変事件は、こうした政治的圧力=自己規制の密室構造が必然的にもたらした事件だったのである。
第二にジャーナリストや制作者の自由と権利を制度的に保障することの重要性を痛感しないではいられない。もし、ドイツなみに「内部的自由」が制度的に保障されていたら、今回のような事件は起こらなかったに違いない。内部告発した長井デスクや法廷で真実の証言をした永田チーフプロデューサーが懲罰人事≠ナ非制作現場に配転されることもなかった。彼らの勇気で裁判は勝訴し、メディアの「不正」を明るみに出すことができたが、このような破廉恥な事件は二度と繰り返させてはならない。
( 2007年02月05日,「赤旗」) (Page/Top)
NHK上層部によって改変された番組「問われる戦時性暴力」(01年1月30日放送、NHK教育テレビから)
判決後、原告の市民団体・バウネットジャパン(「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク)が開いた報告集会は、喜びにあふれました。
共同代表の西野瑠美子さんは、「裁判所は、政治家との関係が番組改ざんに大きな影響を与えたことを認定しました。大変うれしい」と満面の笑顔で語りました。
問題の番組は、「従軍慰安婦」問題を扱ったNHK教育テレビ「ETV2001〜問われる戦時性暴力」(01年1月30日放送)です。戦時中の慰安婦問題を裁いた2000年の女性国際戦犯法廷を取り上げたものでした。
番組は、NHK側の当初の説明と大きく異なり、慰安婦への日本政府・軍の責任、昭和天皇の戦争責任に触れた部分などはすべてカット。取材に協力したバウネットが01年7月、番組内容が改変されたとしてNHKなどを訴えました。
内部告発
「一挙に道が開けた」とバウネット共同代表・東海林路得子さんが語るほど、審理に大きな影響を与えたのは、05年1月のNHK・長井暁プロデューサーによる内部告発でした。これにより、政治介入があったか否かが一大争点になり、審理は延長されました。
飯田正剛弁護団長は、「よくぞ、やってくれたと思います。内部告発だけでなく、法廷でも涙をこらえて証言してくれました。感謝したい」。
判決は、事実経過として、放送前の01年1月29日午後、NHK上層部が、安倍晋三官房副長官と会った際、「公正中立」を求められた―などとのべています。
そのうえで「(国会議員等の)意図を忖度(そんたく)してできるだけ当たり障りのないような番組にすることを考えて試写に臨み、…直接指示、修正を繰り返して改編が行われた」としました。
ただし「政治家が一般論として述べた以上に…具体的な話や示唆をしたことまでは…認めるに足りず」としました。
NHKは「番組編集の自由を極度に制約するもので、到底受け入れられない」(広報局)と即日上告しました。
編集権乱用
NHK問題に詳しい元立命館大学教授の松田浩さんは、こう語ります。
「前後の経緯から、政治的圧力があったことは明白です。ただ密室での政治介入の立証は難しく、裁判所は直接的介入までは認められないとしたにすぎません。また、現場の意思に反して、上層部が番組を根幹から変えたのを『編集権の濫用(らんよう)、逸脱』とした点は、現場の人たちの番組づくりの自由と権利を制度的に保障する必要を浮き彫りにしたものといえます」
公正な裁判を求める署名4872人分を高裁に届けたNHK問題京都連絡会の湯山哲守さんが語ります。
「署名は、京都はもちろん、全国から寄せられました。これでNHKがきちんと判決に向き合ってくれればよかったのですが、上告で、やはり裏切られました。みなさんもまた、活動に火がつくのではないでしょうか」
(2007年02月04日,「赤旗」) (Page/Top)
政治・経済
◆厚労相が「女性は産む機械」と発言 柳沢伯夫厚労相が松江市内の講演で「女性の数は決まっている。産む機械、装置の数は決まっている」などと発言(27日)
◆志位委員長が柳沢氏の罷免要求 日本共産党の志位和夫委員長は衆院代表質問で柳沢厚労相の罷免を要求。安倍首相は拒否(30日)
◆実質賃金0・6%減 厚生労働省の毎月勤労統計によると、実質賃金指数の二〇〇六年平均は前年比0・6%減と二年ぶりにマイナス(31日)
◆「九条の会」6000超す 「九条の会」事務局はアピールに賛同する地域・分野別の「会」が六千二十に達したと発表(1日)
◆補正予算案が与党単独で衆院通過 補正予算案が与党単独で衆院通過。日本共産党は、一部野党が欠席する不正常な状態のまま開会すべきではないとして本会議を欠席(2日)
社会・国民運動
◆「従軍慰安婦」番組訴訟でNHKに賠償命令 「慰安婦」問題を扱ったNHKの番組改ざんをめぐり、取材協力した市民団体が賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁がNHKに損害賠償命令=写真(29日)
◆中国「残留孤児」訴訟で東京地裁が不当判決 首都圏に住む中国「日本人孤児」が国に対して早期帰国実現と自立支援の義務を怠ったとして国家賠償を求めた裁判で、原告の請求を棄却(30日)
◆東電原発の不正のべ199件に 東京電力が原子力発電所に対する国の法定検査にかかわるデータ改ざんなどの不正が百九十九件あったと発表(31日)
◆原爆症訴訟で名古屋地裁が判決 原爆症認定集団訴訟で名古屋地裁の判決があり、国の機械的な認定行政を批判し、原告二人を原爆症と認定(31日)
◆福知山線事故で遺族ら陳述 百七人が死亡したJR西日本の福知山線脱線転覆事故で、国交省の航空・鉄道事故調査委員会は「意見聴取会」を開催。鉄道事故では初めて。学識経験者や遺族・負傷者が意見陳述(1日)
◆労働政策審議会が答申 労働政策審議会が「ホワイトカラー・エグゼンプション」などを盛り込んだ労働基準法改定案と労働契約法の法案要綱を了承する答申(2日)
国際
◆ニカラグア 小中学校無料化 中米ニカラグアでオルテガ大統領が「今後、授業料の徴収は禁止になる」と表明(29日)
◆6カ国協議 再開発表 北朝鮮の核問題をめぐる六カ国協議を二月八日に再開すると中国政府が発表(30日)
◆金融制裁めぐり米朝が協議 北朝鮮に対する金融制裁をめぐり、米朝が北京で三日間にわたり協議。米代表のグレーザー財務副次官補は協議終了後、「非常に生産的な協議だった」と表明(31日)
◆「慰安婦」に謝罪求める決議案 米議会に提出 米民主党のマイク・ホンダ下院議員ら民主・共和両党の六議員、代議員一人(グアム選出)が、日本政府に「従軍慰安婦」への謝罪を求める決議案を提出(31日)
◆国際戦略研究所 米軍のイラク増派に疑問表明 「ミリタリーバランス2007」の公表にあたっての記者会見で、チップマン所長が米国の軍事力によるイラクの事態改善に疑問を表明(31日)
◆国連専門家が地球温暖化で報告 国連「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)第一作業部会が第四次報告書を正式発表。最悪の場合、今世紀末の平均気温が最大で六・四度、海面は五十九a上昇すると予測(2日)
( 2007年02月04日,「赤旗」) (Page/Top)
ふくらみきった梅のつぼみが、日差しをあびてまぶしい。きょうは節分。暦の上では冬の終わりです▼鬼は、こわいものの代表でしょう。しかし、節分の風習で語られる鬼は、なんとなく愛嬌があります。豆をぶつけられては逃げ、戸口に挿してあるイワシのにおいやヒイラギの葉のぎざぎざにびっくりしては逃げる…▼ほんとうにこわいのは、鬼に変身したような人間です。かつて中国の人々は、日本軍を「日本鬼」とよんでおそれました。焼き、殺し、奪い、はずかしめる。他民族をふみにじる侵略戦争は、善良な市民をも「鬼」に変えました▼「天皇の軍隊」そのものが、「日本鬼」でした。先月末、アメリカの民主・共和の超党派議員が、アジア太平洋戦争中の「従軍慰安婦」にかんする決議案を議会に出しました。日本政府にたいし、責任を認めて総理大臣が公に謝罪を表明するよう求めています▼「日本政府による強制的な軍事売春」「二十世紀における最大の人身売買」(決議案)。米下院の外交委員会は、昨年、同じような決議案を採択しています。しかし本会議では、日本政府の働きかけが功を奏し廃案に。ことしの決議案は、初めて安倍首相が謝れ≠フ要求を盛り込みます▼日本軍は、女性を性の奴隷、なぐさみの道具にしました。先日の大臣発言に表れた「女性は産む機械」の思想も、女性の人格の否定では、それに通じます。心からの謝罪と償いなしに、「慰安婦」の身につきおとされた女性たちから、鬼は去りません。
( 2007年02月03日,「赤旗」) (Page/Top)
「祖国よ 中国『残留孤児』の苦難の人生に謝罪し、人間回復のための政治決断を」求めて、八人の文化人が一日、東京都内で記者会見を開き、「1・30東京地裁判決をうけての緊急アピール」を発表しました。中国からの引き揚げ体験のある作家や俳優、大学教授ら三十四人が賛同しています。
同アピールは「国には、自国民を保護すべき基本的な義務があるという現憲法下における当然の条理を根本から否定した、歴史的にも、国際的にも、恥ずかしい限りの判決」だと厳しく指摘。
戦後六十二年の今年、「国は『無慈悲な政策』を終わらせ、中国『残留孤児』の方々が心から祖国に帰ってきてよかったと思える解決が実ること」を望み、「それは、『孤児』の方々の人間としての尊厳を回復すると同時に、国策によって再び幼い子どもが棄(す)てられることがあってはならないという、国民の願いにつながるもの」だとのべています。
作家の澤地久枝さんは「残念ですけれども、この反動的判決はある意味歴史の教科書になる」と指摘。「若い人たちにこの判決、裁判の意味を考えてほしい。国というものは(国民にとって)どういうものなのか。(『残留孤児』たちのように)救いの手が伸びない人生を自分のこととして考えてほしい」と訴えました。
「判決のひどさはあるが裁判はやってよかった」と語った作家の林郁さんは「バラバラだった『孤児』たちが団結した。解決を求めた百万人署名も達成した。半分の五十万人分は当事者や家族が集めたのですから」と訴訟の意義を語りました。
同訴訟の法廷で証言した遠藤誉筑波大学名誉教授は「なぜ、戦後処理をきちんとやってこれなかったのかという事実を見つめ、国民とともに議論していかなければ、私たちは子孫に負の遺産を永久的に残し続けることになる」と指摘しました。
衛藤瀋吉東京大学名誉教授は、「残留孤児」や従軍「慰安婦」問題は「司法の解決しうるところではない」と語り、「国会議員に働きかけ、国会の手によって救済の仕組みをつくろう」と提起しました。
アピール賛同人
記者会見には井出孫六(作家)、小川津根子(ジャーナリスト・女性史研究家)、山崎朋子(ノンフィクション作家)、渡辺一枝(作家)の各氏も出席しました。主な賛同人は池辺晋一郎(作曲家)、井上ひさし(作家・日本ペンクラブ会長)、佐野洋(作家)、新藤兼人(映画監督)、宝田明(俳優)、仲代達矢(同)、山田洋次(映画監督)の各氏ら。
( 2007年02月02日,「赤旗」) (Page/Top)
【ワシントン=山崎伸治】米民主党のマイク・ホンダ下院議員は三十一日、日本政府がアジア太平洋戦争中の「従軍慰安婦」の責任を認めて謝罪し、「総理大臣の声明」として表明するよう求める決議案を提出しました。これには他の民主党議員のほか共和党の二議員も加わり、超党派の決議案となっています。
「従軍慰安婦」に関する決議案は二〇〇一年の第百七議会以来、議会ごとに提出されていますが、日本の首相に謝罪表明を求めたのは今回が初めてです。
決議案は「慰安婦」制度が「日本政府による強制的な軍事売春」であり、「その残酷さと規模の大きさにおいて前例がない」「二十世紀における最大の人身売買」と指摘しています。
「日本の学校で使用されている新しい教科書の中には、『慰安婦』の悲劇、第二次大戦中のその他の日本の戦争犯罪を軽視しているものもある」と批判。旧日本軍の関与を認め、おわびと反省を示した一九九三年の河野官房長官談話を「弱め、撤回する」動きが日本政府内にあったこともあげています。
一九九五年に「アジア女性基金」が創設されたことを評価しつつ、同基金が今年三月三十一日に解体されることを指摘しています。
日本政府に対し、@明確であいまいでない方法で認知し、謝罪し、歴史的な責任を公式に認めるA首相が公式声明で謝罪を表明するB「従軍慰安婦」はなかったという主張を明確に、公に否定するC現在と将来の世代に教育する―ことを求めています。
「慰安婦」問題の決議案は昨年九月、初めて下院外交委員会を通過しましたが、本会議での採決が行われず、廃案となりました。同決議をめぐっては、在米日本大使館がロビイストを使って、議会に働きかけていたことがわかっています。
( 2007年02月02日,「赤旗」) (Page/Top)
どうしても書いておかないと、気がすまない話があります。「従軍慰安婦」番組をめぐる裁判で判決がいい渡された日の、NHKの報道です▼東京高裁の判決は、おおよそ次のようにまとめられます。NHKは、取材に協力した人たちの期待と信頼を裏切り、もともとの趣旨と違う番組に変えてしまった。国会議員の発言を必要以上に重くうけとめ、彼らの意図をおしはかって修正を繰り返した。自主・独立の編集権をみずから放棄したに等しい▼NHK夜九時のニュースは、異様に映りました。勝訴した原告は、取材に協力したバウネットジャパン(「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク)。ところがニュースは、肝心の原告の表情を伝えません▼翌日の朝刊はたいてい、原告の東海林路得子さんや西野瑠美子さんの写真を載せ、喜びの声を伝えています。NHKは、原告の声を黙殺したうえで、「承服できない」との自身の考えを紹介し、安倍首相を登場させました。「(判決で)政治介入していないことが明確になった」と、安倍首相▼政治家との面会と番組づくりは「無関係」とする、NHKのいい分も認められたかのような報道です。しかし、判決は違いました。安倍氏らがこと細かく指図したとは認めなかったものの、発言が重みをもち、番組に影響を与えたいきさつをのべたのですから▼このニュースのような、NHKの報道姿勢が問われたのではなかったか。受信料支払いの義務づけを求めても、いまのままでは説得力に欠けます。
( 2007年02月02日,「赤旗」) (Page/Top)
「慰安婦」問題を扱った番組の改変をめぐり、取材協力のバウネットジャパンがNHKなどを訴えた訴訟の控訴審判決(一月二十九日)は一つの画期をなしました。NHKに自主自律を促し、取材される側の権利、制作現場の編集権を認めたのです。
判決はNHKが、安倍晋三官房副長官(当時)と面会したことと番組改変は「無関係」としてきた主張を退けました。NHKは、国会議員の発言を「必要以上に重く受け止め、意図を忖度(そんたく)して修正を繰り返した」と。
安倍首相は、「政治介入していないことが明確になった」と語ります。しかし、判決は直接的な介入は認められないとしたもので、発言が改変に影響を与えたことは暗に認めています。「意図を忖度」させることが政治介入であり、圧力を感じたからこそNHK上層部は、番組を改変したのです。
同時に判決は、NHKの政治におもねる姿勢を正面から批判しました。
「自主性、独立性を内容とする編集権を自ら放棄」しておきながら、取材対象者である原告に、「報道の自由」を主張することは当たらないと。
その理由として、普段は制作に立ち会わない放送総局長や国会担当局長が、現場の意向を無視して政治家の意に沿うように番組の修正を繰り返した経緯をあげます。「NHKは憲法で尊重され保障された編集の権限を濫用し、又は逸脱して変更を行ったものであって、自主性、独立性を内容とする編集権を自ら放棄したものに等しい」
制作現場での編集過程は「よりよい番組を作ろうとした純粋な姿勢に基づくものと評価され、この段階における編集の自由は尊重されるべきである」とする一方で、国会担当局長らによる修正は「本件番組の趣旨とはそぐわない意図からなされた編集行為で、原告らの期待と信頼に対する侵害行為」とも断じました。
これまで現場の意向を無視した業務命令の切り札となってきたのが「編集権」の論理でした。経営者が独占するとされた「編集権」が、制作現場にもあると判断した点で注目されます。
判決は、取材対象者に取材協力を続けるかどうかを決める「自己決定権」がある、とその保護を明記しました。番組の内容や変更についての説明義務、「取材対象者の番組内容に対する期待と信頼」も、「特段の事情が認められるときに限り法的に保護されるべき」だと。
もちろん、取材される側の「期待権」が、政治家等に悪用されてはならないことは言うまでもありません。
(板倉三枝)
( 2007年02月01日,「赤旗」) (Page/Top)
NHK問題を考える会(兵庫)の学習会「放送命令、受信料義務化はNHKと国民をどこへ?」が二十八日、神戸市元町商店街の神戸市立まちづくり会館でおこなわれました。
講師の醍醐聡・東大教授(受信料支払い停止運動の会代表)は、二〇〇一年の「慰安婦問題」の番組に対する安倍総理(当時官房副長官)らの政治介入がNHKの内部告発に端を発してから、政府の国営放送にしようとする動きと、聴取者のための公共放送にしていく動きがうきぼりになったとして、二つの流れを説明。知る権利、言論の自由、公共放送にふさわしい良い番組をつくらせるためにも、大きな運動が必要だと問題提起しました。
百三十人を超える人たちが参加し、立ち見や床に座る人もでる盛況でした。京都、大阪、和歌山からも参加がありました。
京都からきた女性は「番組制作をしばる法律ができたら怖いことがよくわかりました」と感想をのべました。神戸市東灘区の正田恵子さん(64)は「毎日NHKをみています、受信料も払っています。でも私たち視聴者がどんどん意見を出してNHKをよい公共放送にしないとなりませんね」と話していました。
(2007年01月31日,「赤旗」) (Page/Top)
NHKの番組改変をめぐる訴訟で、東京高裁が二十九日に出した判決の要旨は次の通り。
第1〈主文〉
1、@被告NHKは原告バウネットに対し、二百万円を支払えA被告NHKエンタープライズ21(NEP)及び被告制作会社ドキュメンタリージャパン(DJ)は、原告バウネットに対し、各自百万円を支払え。
第2〈事案の概要〉原告バウネットが中心になって慰安婦問題を裁く国際的な民衆法廷を開催し、NHKがETV2001シリーズ「戦争をどう裁くか〜問われる戦時性暴力」として放送したが、バウネットはNHKらの取材申し込みやその後の経過により、法廷の内容をつぶさに紹介する趣旨の放送がされると信頼(期待)を抱いた。にもかかわらず被告らが当初説明した番組の言動等により趣旨とは異なる番組を制作・編集・放送して、原告らの信頼、法的に保護された利益を侵害する共同不作為行為とし、損害賠償金を請求した。政治家または、右翼団体等の外部からの干渉により不法行為又は債務不履行を根拠に、損害賠償金の支払いを求めた。
前提事実(略)
第3〈判断の要旨〉
1、@番組NHKがNEPとDJと共同制作としてNHKが放送したA番組制作者の編集の自由と、取材対象者が取材に応ずるか否かの自己決定権の関係は、取材対象者が期待を抱く事情が認められるときは、番組対象者の編集の自由もそれに応じて一定の制約を受け、取材対象者の番組内容に対する期待と信頼が保護されるべきである。期待と信頼を侵害する行為は、法的利益の違法な侵害として不法行為となると解するのが相当であるB番組は、いわゆるドキュメンタリー番組ないしそれに準ずるような内容の番組となるとの認識に達して期待と信頼を被告らが抱いたことが認められる。
2、@ドキュメンタリー番組ないしそれに準ずるような内容の番組とは、相当程度乖離(かいり)したものとなっていると認められるA平成十三年一月二十四日のNHK教養番組部長試写の段階の番組内容は、原告らの期待と信頼を維持するものになっていた。同年一月二十六日に普段、番組制作に立ち会うことが予定されていない放送総局長の松尾、国会担当である総合企画室担当局長の野島が立ち会って試写が行われ、意見が反映された形で一回目の修正が行われた。番組放送前にもかかわらず、右翼団体等からの抗議等多方面からの関心が寄せられてNHKは敏感になっていた。予算につき国会での承認を得るために各方面への説明をする時期と重なり、NHKの予算担当者及び幹部は神経を尖(とが)らせていた。番組が予算編成等に影響を与えることがないようにしたいとの思惑から、説明のために松尾と野島が国会議員等との接触を図り、その際、相手方から番組作りは公正・中立であるようにとの発言がなされたというものであり、この時期や発言内容に照らすと、松尾と野島がを相手方の発言を必要以上に重く受け止め、その意図を忖度(そんたく)してできるだけ当たり障りのないような番組にすることを考えて試写に臨み、その結果、直接指示、修正を繰り返して改編が行われた。NHKの同月二十六日以降の編集(改編行為)は、当初の本件番組の趣旨とはそぐわない意図からなされた編集行為である。
3、放送番組の制作者や取材者は、番組の内容やその変更などについて、説明する旨の約束がある等、特段の事情があるときに限り、説明する法的義務を負うと解するのが相当である。被告らが説明義務を果たさなかった結果、その法的利益を侵害されたものというべきである。
4、NHKは、原告らに対して、期待と信頼を侵害したことによる不法行為責任を負う。NHKは、一月二十四日以降、次々と番組を改編し、説明義務を怠ったことによる不法行為責任も負う。NHKはDJ及びNEPを排除し、番組制作担当者の制作方針を離れてまで、国会議員等の意図を忖度して当たり障りのないように番組を改編したのであるからその責任は重大であることは明らかである。
( 2007年01月30日,「赤旗」) (Page/Top)
「慰安婦」問題を扱ったNHKの番組「ETV2001〜問われる戦時性暴力」(二〇〇一年一月三十日放送)の改ざんをめぐって、取材に協力した市民団体がNHKなどに賠償を求めた訴訟の控訴審判決が二十九日、東京高裁でありました。南敏文裁判長は、NHKに責任があるとし、原告バウネットジャパン(「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク)へ二百万円の損害賠償金を払うことを命じました。
(14、15面に関連記事、4面に判決要旨)
控訴審で新たな争点となったのは、政治介入と番組改変の関係です。判決はNHK幹部が国会議員と接触し、議員から「番組は公正に」と言われ、それを「必要以上に重く受け止め、その意図を忖度(そんたく)して、当たり障りのないような番組にすることを考え」て修正を繰り返したとしています。改変と政治家との面会は「無関係」としてきたNHKの主張は退けました。NHKは即日、上告しました。
判決は、NHK幹部が試写を繰り返し、番組の修正に乗り出したことをあげ、「制作に携わる者の制作方針を離れた形で編集がなされていった」と指摘。その結果、放送当日になって日本軍兵士と元慰安婦女性二人の証言が削られました。
そこに至る背景として、判決は右翼団体からの抗議やNHK予算の国会審議を控えていたことからNHK幹部が「国会議員等との接触を図った」と述べています。
二〇〇四年の一審判決では制作会社だけが責任を問われ、NHKについては原告の請求を棄却しました。控訴審は、〇五年一月に結審の予定でしたが、NHKの長井暁デスク(放送当時)が政治介入を内部告発したことで、審理は延長。裁判の中で、NHK幹部と会って「公正に」と注文したのは、安倍晋三官房副長官(当時)だったことが明らかになりました。
判決を受け、弁護団長の飯田正剛弁護士は、「主張がほぼ全面的に認められた。政治家の圧力とは言っていませんが、NHKにジャーナリストとしての自律した行動を求めたことの意味は大きい」と述べました。
( 2007年01月30日,「赤旗」) (Page/Top)
宗教・宗派の違う宗教者でつくる「大阪宗教者九条の会」が結成二周年を迎え、二十七日、大阪市北区のカトリック北野教会で「日本国憲法と戦争・平和〜歴史の真実を学ぶ」と題した講座を開催しました。
五十人が集まるなか、カトリック大阪大司教区補佐司教の松浦悟朗さんが「私たちの責任として平和をつくっていきたい」と主催者あいさつ。
シャロンの花イエス・キリスト教会主任牧師の久保惠三郎さんは、南京大虐殺を描いた中国映画「南京1937」に日本軍の将軍役で出演したときの体験を報告。現在も侵略戦争を美化する風潮にたいし、個人の尊厳を踏みにじるものだと批判しました。
神戸女学院大学の石川康宏教授は従軍慰安婦問題で講演。終生つづく元慰安婦の苦しみを語りつつ、日本政府と日本軍がつくった女性暴行の制度である「従軍慰安婦」の実態を明らかにしました。
石川教授のゼミでこの問題を学ぶ学生が発言。韓国に行き元「慰安婦」の体験を直接聞いたことを通じて「真実を自分より下の世代にも伝えていきたい」と語りました。
(2007年01月28日,「赤旗」) (Page/Top)
来る二十九日、NHKの番組改変を巡る控訴審判決が東京高裁で言い渡される。問題の番組はETV2001シリーズ「戦争をどう裁くか」の第二夜「問われる戦時性暴力」(二〇〇一年一月三十日放送)で、「慰安婦」制度を「人道に対する罪」で裁いた二〇〇〇年女性国際戦犯法廷を取り上げたものだった。しかし、放送された番組は当初、法廷を主催した団体の一つで、取材に協力した「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(VAWW―NETジャパン・以下バウネット)に説明された内容とはほど遠い、被告や判決などの基本情報すら伝えない、むしろ「慰安婦」制度が裁かれたことを隠すかのような番組だった。
プロデューサー政治圧力を告発
なぜ、このような番組が放送されたのかを明らかにしたいと二〇〇一年七月二十四日、バウネットは「信頼利益の侵害」と「説明義務違反」を根拠に提訴したが、一審判決は「編集の自由の範囲内」としてNHKの異常な改変は不問に付され、番組制作を委託されたドキュメンタリー・ジャパンのみに、「信頼を与えた」責任を問うものだった。「編集の自由」がいかなる場合においても無制限に保証されることになれば、外部からの不当な介入を許し「放送の自律」を脅かすことに繋(つな)がりかねず、バウネットは直ちに控訴した。
控訴審の結審を控えた二〇〇五年一月にNHKチーフ・プロデューサー長井暁(さとる)氏が政治圧力問題を告発したのをきっかけに、控訴審の争点は政治介入と改変の関係に絞られていく。裁判ではNHKの野島直樹総合企画室国会対策担当局長(当時)・松尾武放送総局長(当時)・長井暁デスク(当時)・永田浩三チーフ・プロデューサー(当時)らの証人尋問が実現し、改変を巡る生々しい実態が浮かび上がっていった。
また番組改変の方針が@判決を消すA「慰安婦」の存在をなるべく消すB慰安所・「慰安婦」に対する日本政府及び日本軍の組織的な関与を消すCその後の日本政府の責任や対応を消すD女性国際戦犯法廷を肯定する表現を消すというものであったことも明らかになった。
「知る権利」は守られるのか
一方、NHKは安倍晋三氏ら複数の国会議員に番組について説明を行った理由について、予算説明で「古屋圭司議員など自民党総務部会所属の複数の議員を訪れた際に、『日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会』所属の議員らが、昨年十二月に行われた女性国際戦犯法廷を話題にしている」「予算説明に行った際には必ず話題にされるであろうから、きちんと説明できるように用意しておいた方が良いといった趣旨の示唆を与えられた」ことを明らかにした。
また、二〇〇一年一月二十九日に野島・松尾氏が官房副長官であった安倍晋三氏と首相官邸で会ったことや、その際、安倍氏から「NHKとして公正中立な番組を作りなさい。偏った形の番組を作ってはあいならん」という話があったこと、大掛かりな改変が行われたのは、安倍氏と面会した直後から放送数時間前までだったことなども明らかになる。安倍氏は当時、「慰安婦」問題を否定し、教科書の記述削除を主張していた「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」の前事務局長であり、安倍氏との面会が改変に多大な影響を与えたであろうことは推測に難くない。
高裁判決で政治家の介入と番組改変の関係がどこまで明確に認定され、NHK側の責任が問われるか、大いに注目される。この事件はメディアがその生命線である「表現の自由」と「放送の自律」をいかに自ら守ることができるかを問う問題でもあるが、それは同時に視聴者・市民の「知る権利」はいかに守られるかということでもある。視聴者ではなく、時の権力に顔を向けているNHKが、公共放送として真の再生に踏み出すために、また、NHKに対する不当な政治圧力に歯止めをかけるためにも、公正な判決が下されることを心から願っている。
(にしの るみこ 訴訟承継人・原告「VAWW―NETジャパン」共同代表)
( 2007年01月26日,「赤旗」) (Page/Top)
「平和をつむぐ1000人の女性展」が二十日、京都市伏見区の京(みやこ)エコロジーセンターで始まりました。
展示されている千人は、百五十カ国で平和や人権、環境、非暴力などの分野で草の根で活動している女性たち。「(二〇〇五年度の)ノーベル平和賞に千人の女性を」という運動に、世界中から推薦され選考された千人の女性の言葉や活動が、顔写真とともに紹介されています。日本から推薦された元「従軍慰安婦」の在日朝鮮人の女性ら六人はパネルにしてあります。
展示会を企画したのは子どもたちに人形劇などで環境の大切さを広めている環境NGOの日本環境保護国際交流会(事務局京都市)。事務局責任者の細木京子さんは「戦争は最大の環境破壊。さまざまな活動は平和な世界につながると思います。草の根で活動する女性たち一人一人の姿を知って何かを感じてほしい」と話していました。
展示会は三十一日まで。二十一日にはオープニングイベントが開かれます。
( 2007年01月21日,「赤旗」) (Page/Top)
安倍首相総理は「改憲を任期中におこないたい」「日本国憲法はアメリカから押し付けられた」「六十年たって古くなった」といいます。しかし日本の侵略戦争の反省が先ではないでしょうか。
私は、昨年夏、旧満州(中国東北地方)黒龍江省チチハル市の原野で、頭上を群れをなして舞うタンチョウヅルを見て、その美しさに感動しました。しかし、中国各地には先の侵略戦争で旧日本軍が遺棄した毒ガスが放置されたままです。
チチハルでは二〇〇三年になって工事現場から毒ガス入りドラム缶が発見され、知らずに触れた四十四人が被害を受け、一人は死亡。私は現地調査で八人から話を聞きました。チチハルの被害者たちは今年、日本に医療費や生活保障を求めて裁判を起こします。
映画「蟻(アリ)の兵隊」の奥村和一さんは、あの戦争が終わった後も中国山西省で蒋介石の軍に編入され中国共産党軍とたたかって捕虜になり、五百六十人もの仲間が戦死しました。今、日本政府を相手にたたかっていますが、日本政府は「自分たちが勝手に義勇軍になった」と責任を認めません。奥村さんは胃の一部がない体で「政府に責任を取らせるまでは死ねない」といいます。
シベリア抑留者も「慰安婦」も、安楽な老後を送るべき人たちがたたかいつづけています。戦争は一度したら傷は六十年たってもいえない。憲法九条はこうした痛苦の戦争体験から、国民の声として生み出されたものなのです。私は九条を守り抜くため頑張ります。
(参院議員)
(2007年01月19日,「赤旗」) (Page/Top)
自民党は十七日、安倍晋三首相(党総裁)になって初めての党大会を都内で開きます。大会で採択する二〇〇七年運動方針案は、「美しい国づくりに向けて」が表題。いっせい地方選、参院選を「『美しい国、日本』の実現を目指すわが党の信を問う極めて重要な戦い」と位置づけています。運動方針案を見てみました。
改憲を前面に
「憲法改正の実現を図るため、日本国憲法の改正手続に関する法律案の早期成立を目指す」。任期中の憲法改定を公言する安倍首相に呼応し、運動方針案で前面に出ているのは改憲に向けた強い執念です。
実際、自民党の中川秀直幹事長は改憲手続き法案について「憲法記念日までに必ず成立させる」(十二日)と期限を切って成立させる構えをみせ、民主党に呼びかけています。自民、民主「二大政党」でいかに改憲に向けた土俵をつくるかを強く意識したものです。
運動方針案は、「新憲法制定に向けての国民的論議を喚起する」とし、改憲手続き法案の成立を見込んで、「『憲法改正シンポジウム』の開催」も明記しました。
中川氏は、自身のホームページで、安倍首相が年頭の記者会見で憲法改定を参院選の争点にするとのべたことについて、「これこそが、安倍総理の信念の発露だ」「小泉総理にとっての郵政民営化に通じる」とのべています。「改憲・タカ派」を前面に掲げることで、政権の求心力を図る狙いです。
しかし、これは憲法改悪に反対し平和を求める国民多数との矛盾を広げることになります。中川氏は「共産党も、憲法問題は信念の決戦と受け止めているのだろう。自共は信念対信念の一大論戦を展開することになるだろう」とものべ、敵がい心をあおっています。
日米同盟強化
アメリカとの関係ではどうか。
運動方針案は「世界とアジアのための日米同盟」を強調し、「米軍再編」問題で、全国で広がる基地強化や日米の軍事一体化に反対する自治体ぐるみの運動や世論を無視し、「日米安保体制を強化し、米軍再編を推進する」と宣言。集団的自衛権の行使につながる「ミサイル防衛」を「強化する」とものべています。
運動方針案は、焦点のイラク問題について言及していません。アメリカが兵力を増強しようとするなか、安倍首相はイラク戦争を日本政府が支持したことは正しかったといまだに強調しています。憲法で禁じられている集団的自衛権の行使容認へ向けた検討を行うことに再三言及しています。十二日にも北大西洋条約機構の北大西洋理事会で演説し、「自衛隊が海外での活動を行うことをためらわない」とのべました。
運動方針案がいう「世界とアジアのための日米同盟」とは、世界中で軍事活動をためらわない同盟強化路線にほかなりません。憲法改悪の狙いもそこにあります。
靖国参拝継承
運動方針案は、「靖国神社の参拝を受け継ぎ」と参拝継承を明記しました。
安倍首相は、「植民地支配と侵略」への「おわびと反省」を示した「村山談話」や、「従軍慰安婦」問題で旧日本軍の関与と非人道的な実態を認めた「河野談話」を認めざるをえなくなり、アジア外交の立て直しに向け、中国、韓国との首脳会談を行いました。しかし、政権中枢の「靖国」派からは「河野談話」見直しなどの逆流がつくられつつあります。方針案の「参拝継承」明記で、こうした逆流が勢いづくことになりかねません。
いま、安倍首相が自らの言明を守るのかどうかが首相自身の行動で試されています。そのさなかに、自民党が運動方針案に靖国参拝を引き継ぐと明記したことで、周辺諸国から重大な懸念を呼び起こすことにもなります。
(つづく)
( 2007年01月16日,「赤旗」) (Page/Top)
第1章
戦後五十周年にあたっての「村山談話」
第二次世界大戦終結から五十年の一九九五年八月十五日に、当時の村山富市首相が発表。この中で、「わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました」とし、「心からのお詫(わ)びの気持ちを表明」しました。談話は、「侵略戦争」という言葉を避けた点では不十分でしたが、ともかく「植民地支配と侵略」が日本の誤った「国策」で進められたことを認め、「反省」の意思を示した点では、それまでになかったものでした。後継内閣も継承。就任前、再検討を示唆していた安倍晋三首相も、日本共産党の志位和夫委員長の質問に「継承する」と表明しました。
「従軍慰安婦」問題での「河野談話」
第二次世界大戦中の旧日本軍によるいわゆる「従軍慰安婦」問題について、日本政府が一九九一年十二月から調査した結果を、九三年八月四日に発表した際の官房長官談話。このなかで、従軍慰安婦は「旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した」こと、「慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった」ことなどを認め、「歴史研究、歴史教育を通じて…永く記憶にとどめ、同じ過ちを繰り返さない」と約束しました。この談話に対し、自民党の「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」などが猛攻撃、事務局長だった安倍晋三氏も「談話の前提は崩れた」と攻撃しました。しかし、首相就任後、安倍氏は談話を「受け継ぐ」と答弁しました。
「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」
前身は、一九九七年二月に結成された「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」。同会は、日本の侵略戦争を美化し、とくに従軍慰安婦問題を否定する立場から歴史教科書を書き直させることを目的に設立されました。発足当時の代表と事務局長は中川昭一現自民党政調会長、安倍晋三現首相です。二〇〇四年、会の名前から「若手」を削除し、現在の名称になりました。昨年十二月には会の中に従軍慰安婦問題を検証する小委員会を設置し、従軍慰安婦募集と移送についての旧日本軍の関与と強制性を認めた一九九三年の河野官房長官談話を否定して新たな政府談話を発表させようとしています。メンバーには、下村博文官房副長官や山谷えり子首相補佐官ら首相側近が名前を連ねています。
日中、日韓首脳会談で合意された、歴史認識の基本を共有する仕事
二〇〇一年四月に、侵略戦争を美化する「新しい歴史教科書をつくる会」主導の中学校用歴史教科書が検定合格となり、中国、韓国と外交問題になりました。
昨年十月の日中首脳会談で、歴史の共同研究を進めることが合意され、十二月に、日中歴史共同研究委員会の第一回会合が北京で開かれました。日中平和友好条約締結三十周年にあたる〇八年中に研究成果が発表される予定です。
日本と韓国の間では、〇二年五月に日韓歴史共同研究委員会が発足し、研究が開始されています。韓国側は研究結果を歴史教科書に反映させるよう主張し、日本側は検定制度を理由に拒否するという状況もありましたが、〇五年六月の研究報告書では、近現代史で双方の意見が対立したものの、「日韓関係史研究の第一段階を画した」と評価。同月の首脳会談で、第二期歴史共同研究委員会を発足させ、傘下に教科書委員会を設置することで合意。昨年の首脳会談では、その合意を再確認しました。
集団的自衛権の行使
「集団的自衛権」とは、自分の国が攻撃されていない場合でも、密接な関係のある外国が攻撃を受けた場合、いっしょに武力で攻撃できる権利≠ニされています。日本はこの権利は保有するが行使はできないというのが、歴代政府の憲法解釈でした。しかし、アメリカが、集団的自衛権の行使をくりかえし要求してきたことに応え、安倍首相は、憲法解釈を変えてある程度その行使ができるようにし、さらに憲法そのものを変えて天下御免で行使しようとしています。その目的は、米軍が地球規模でおこなう戦争に、自衛隊が何の制約も歯止めもなく参加できるようにすることです。
改憲手続き法
与党と民主党は九条改憲の条件づくりを目的に、憲法九六条で定められた憲法改正の手続きを整備するために、昨年五月、それぞれの法案を国会に提出しています。臨時国会では継続審議となっています。憲法九六条は、憲法「改正」について「各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議」し、「特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票」で「過半数の賛成」を得て初めて承認されると定めています。
与党案、民主党案とも改憲勢力に有利な制度にする点では本質的な違いはなく、昨年十二月には修正≠ナ大筋合意しています。安倍首相は改憲手続き法案の通常国会での成立を期すと宣言。また、改憲を夏の参院選の争点にする考えを示しています。
「ネオコン」グループ
米国における「新保守主義者(ネオ・コンサーバティブ)」。このグループはもともとは民主党に属していましたが、七〇年代後半に共和党に移り、現ブッシュ政権の中枢に登用されました。強大な軍事力で「民主主義」=米国の価値観を世界に広めるべきだと主張。単独行動主義路線や先制攻撃戦略、イラク侵略・占領、中東「民主化」政策などは、ネオコンの考えに基づいたものです。ウルフォウィッツ国防副長官、ファイス国防次官、ボルトン国連大使(いずれも前職)が代表格でしたが、イラク侵略の泥沼化と並行して風当たりが強まり、ブッシュ政権二期目にはウルフォウィッツ氏らが政権から外され、昨年十一月の中間選挙での共和党敗北を受けボルトン大使も辞職しました。
六カ国協議
北朝鮮の核問題解決のため、韓国、北朝鮮、日本、中国、アメリカ、ロシアの六カ国によって二〇〇三年八月から開始された多国間協議。〇二年一月にはアメリカがイラン、イラク、北朝鮮を「悪の枢軸」と非難し、翌年三月にはイラク戦争を開始するなかで、北朝鮮核問題については周辺諸国の努力もあって外交的解決をめざす枠組みがつくられました。〇五年九月には朝鮮半島非核化とその後の平和体制の基本を確認した共同声明を採択。しかしアメリカによる対北朝鮮金融制裁で協議は中断され、〇六年十月には北朝鮮が核実験を実施しました。同十二月に再開された協議では、共同声明に立ち返った朝鮮半島非核化への真剣な努力が各国に期待されています。
憲法二五条に保障された生存権
憲法二五条は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と「生存権」を規定し、これを保障・拡充することは国の責務であると明記しています。これは、「人間の尊厳にふさわしい権利」を提起した世界人権宣言を先駆的に定めたものであり、国民が生活の改善や社会保障の拡充を求めていく大切なよりどころです。一九五七年に朝日茂さんが生活保護基準の改善を求めて起こした裁判に対し、東京地裁は、憲法二五条にいう最低限度の生活水準とは「健康で文化的な水準」を維持することであり、予算の有無で決定されるものではないとしました。
「偽装請負」を合法化する方向での労働者派遣法の改悪
偽装請負とは、請負(委託)契約の形式をとりながら、実態としては労働者派遣であるものをいい、違法です。請負と派遣の違いは、請負の場合には派遣先(発注者)と派遣元(受託者)の労働者との間に指揮命令関係が生じないというのがポイントです。労働者派遣法では、受け入れ期間に制限がない業務でも、三年(製造業は当面一年)を超えて継続して派遣労働者を受け入れる場合、派遣先企業は雇用契約を申し込まなければなりません(請負契約にはこうした義務がない)。日本経団連の御手洗会長は、これでは「コストは硬直的になってしまう」とのべ、この規制を撤廃し、請負であっても指揮命令を可能にする方向で労働者派遣法などの改悪を要求しています。
最高裁大法廷判決
一九七六年の学力テスト問題での判決。ここには弱点も含まれていますが、国家と教育のあり方について注目すべき論点がありました。憲法二六条を子どもの学習する権利ととらえ、教育は「本来人間の内面的価値に関する文化的営み」であり、教育内容に対する国家的介入は抑制的であるべきであることを憲法の要請として明らかにしました。また、法令にもとづく教育行政機関の行為であっても「不当な支配」になりうるとし、国が教育内容を何でも決められるという見解をしりぞけました。政府は、この最高裁判決を基本法改悪正当化の根拠にしようとしましたが、それが判決の趣旨をゆがめるものであることが、わが党の追及で浮き彫りになりました。
「やらせ質問」の告発と追及
二〇〇六年九月の教育改革タウンミーティング(青森県八戸市)で文部科学省・内閣府が、教育基本法改定に賛成する会場質問をひそかに依頼していました。日本共産党が十月末の衆院教育基本法特別委員会で暴露したのをきっかけに政治問題化しました。
共産党は、別の会場でのタウンミーティングで「やらせ」があり、文科省の教基法担当幹部が直接「やらせ」に関与していたことや、別の教育改革フォーラムでの集団「やらせ」も暴露。教育基本法改悪の大義のなさを明らかにしました。
政府は教育改革以外も含む過去のタウンミーティング全百七十四回を調査、「やらせ」が十五回、内容を指定しない「さくら」質問が百五回あったことを発表しました。
混合診療解禁
「必要な医療はすべて保険でおこなう」という公的保険の原則を崩し、保険診療と保険外診療の併用を認めることです。「患者の選択」などを口実に、二〇〇六年の健康保険法改悪で制度化され、保険外の患者負担が高度医療技術や病室料金などに広く適用できることになりました。これでは、新しい技術や新薬を利用できるのはお金のある人だけという「治療の格差」「いのちの格差」をつくり出しかねません。混合診療解禁は、医療を営利企業のもうけの場にしようというアメリカや財界の要望に沿ったものです。しかし、医療関係者の反対や日本共産党の追及で政府も「必要な医療は保険で」と言わざるを得ず、具体化を許さないことが重要になっています。
市場化テスト法
市場化テスト法は、行政機関と民間企業で、公共サービスの担い手を競争入札で決める制度を導入するもの。すべての公共サービスを対象に、民間企業からの提案を受けて政府は毎年「公共サービス改革基本方針」を作成します。日本経団連が要望し、昨年五月に自民、公明、民主の賛成で法律が成立。安倍首相は「市場化テストの積極的な実施」を強調し(臨時国会所信表明演説)、ビジネス誌が「百年に一度 五十兆円のチャンス」と書くように大企業のもうけの対象として狙われています。来年度は、年金保険料の収納事業、ハローワークの人材銀行、パスポートや国民健康保険の窓口業務、地方税や国保料の徴収業務など二十七事業で実施しようとしています。
アジア政党国際会議
アジアの合法政党が与野党の区別なく一堂に会する会議。二〇〇六年九月のソウル会議には、三十六カ国から九十政党の代表が参加しました。アジアはかつて戦争や対立が多発し、現在でも宗教や歴史の多様性も大きい地域ですが、アジアに広がる「平和の流れ」にそって、他の地域にはない、政党間の協議機構として発展しています。第一回は二〇〇〇年にマニラで、その後は二年ごとにバンコク、北京、ソウルで開催。バンコク会議には緒方靖夫国際局長、北京会議には不破哲三議長(当時)、ソウル会議には志位和夫委員長が参加し、会議の成功に貢献するとともに、各国の政党代表と幅広い交流をおこないました。ソウル会議には、日本から自民、公明、民主、社民の代表も参加しました。
非同盟諸国首脳会議
大国主導の軍事同盟に加わらず、世界平和と民族自決権の確立、公正な世界秩序の樹立などをめざす国々の首脳が集まる国際会議。第一回会議は一九六一年、旧ユーゴスラビアで開かれました。この運動は、アフリカ諸国の独立を促すなど多くの成果をあげ、ソ連崩壊後も、イラク戦争など米国の横暴があらわになるなかで、世界平和と国際ルールの尊重を訴え、重要な役割を果たしています。〇六年九月にキューバで開かれた第十四回会議は、非同盟運動の目的の第一に多国間主義の促進・強化、国連の中心的役割の強化を掲げ、単独行動主義や覇権主義をきっぱりと批判しました。加盟国は現在百十八カ国で、第一回会議の五倍近くに発展しています。
( 2007年01月16日,「赤旗」) (Page/Top)
「慰安婦関係調査結果発表に関する河野洋平内閣官房長官談話」を否定し、歴史の事実をねじまげる策動が強まっています。「埼玉県平和資料館」(同県東松山市)の展示内容をめぐって、上田清司知事が「『従軍慰安婦』がいたという証拠はない」という談話を発表し、展示内容の見直しを指示しました。これに対して「生き証人」から、「真実は一つ」と反論の声があがっています。
埼玉県で「従軍慰安婦」問題が浮上したのは、昨年六月の埼玉県議会定例会における上田知事の答弁でした。自民党県議が「埼玉県平和資料館」に「戦後復興から現代まで、とくに世界の平和に貢献してきたはずの日本の紹介がない」と、展示内容の見直しを迫りました。
上田知事は見直すことを言明。同年七月に「慰安婦はいた。慰安所もあった。しかし、軍が徴用した『従軍慰安婦』がいたという証拠はない。『従軍慰安婦』という言葉を使うことは慎むべき」という談話を発表。その後「埼玉県平和資料館」運営協議会が開かれました。
昨年十一月十六日に開かれた運営協議会では、「平和資料館の展示のあり方について」が議題となり、@常設展示の見直しA戦後日本の国際平和貢献―について論議しました。
証明書扱った
「『河野談話』は本当のことだ」というのは、埼玉県さいたま市に住む旧日本軍の元憲兵だった市川一郎さん(86)。「私は憲兵隊の庶務として実際に『従軍慰安婦』を管轄し、慰安婦に兵隊の相手をさせることができる券(証明書)を扱った。『河野談話』を見直すべきではない」と断言します。
「平和資料館から『従軍慰安婦』について証言を頼まれて十五分の一般公開用と、三十分の永久保存用をビデオに撮った」といいます。「あのビデオは今もあるのでしょうか」という市川さん。一九九三年ごろから全国を回って「従軍慰安婦」問題について講演。体験に基づいた真相を証言してきました。「命の危険を感じたこともあった」そうです。
二〇〇五年に本紙が連載し、その後、党出版局から発行された『元日本兵が語る「大東亜戦争」の真相』にも登場。「慰安婦」係は「憲兵隊庶務が担当した」とのべて、慰安婦が軍の管轄下に置かれて管理されていた実態を語りました。
命の限り語る
市川さんは、一九四四年、関東軍憲兵隊学校を卒業し、旧満州(現中国東北部)のチチハル隊傘下の白城子(はくじょうし)分隊で上等兵として着任しました。「憲兵は天皇の軍隊を守るのが任務。戦務、警務、庶務の三つの部署があり、庶務が担当したのが『慰安婦』係だった」。
白城子では「慰安婦」を相手にするには部隊が発行した「証明書」が必要でした。「兵隊は黒、下士官は青、将校は赤の色分けした証明書をもらって慰安所に行った。軍隊内に性病などがまん延しないために慰安所が設けられた」といいます。
慰安婦は、兵隊から受け取った「証明書」に氏名、生年月日、本籍地を書きました。この「証明書」を憲兵が回収。「憲兵の任務は同じ慰安婦に頻繁に通う兵隊はいないかを監視すること。慰安婦と懇ろになって兵隊からの情報漏えいはしていないかを探るため」だったと市川さんはいいます。
「戦争は人間を鬼畜同然にする」という市川さん。「生きているものとして、命の限り真実を語り継いでいきたい」と述べています。
「河野談話」
一九九三年に当時の河野洋平内閣官房長官が「従軍慰安婦」問題についての政府の基本的立場を示した談話。
▽慰安所は、当時の軍当局の要請で設置された▽設置、管理及び慰安婦の移送については、旧日本軍が直接あるいは間接に関与した▽慰安婦の募集は、軍の要請を受けた業者が主としてこれにあたったが、甘言、強圧など、本人の意思に反して集められた▽当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけ、心からおわびと反省の気持ちを申し上げる。
( 2007年01月15日,「赤旗」) (Page/Top)
結局は、から騒ぎに終わったのだが、村上春樹がノーベル賞をとるかもしれないという風説は、それだけ現在の村上が、国際的に注目を浴びていることのあらわれであったろう。その余波かもしれないが、受賞をあてこんだかもしれない本が、このところ出版されている。
排除されたもの
その中で、宮脇俊文著『村上春樹ワンダーランド』(いそっぷ社・一六〇〇円)のような作品ガイドや、アメリカにおける村上作品の翻訳者、ジェイ・ルービン著『ハルキ・ムラカミと言葉の音楽』(畔柳和代訳、新潮社・三〇〇〇円)のように、(もともとアメリカの読者に向けて書かれた本であるために)伝記的事実の理解に資する本もある。こうした、批評の側面とともに紹介の色を濃くしたものだけでなく、本格的な作品論ともいえるものが登場していることも、今の状況の特徴である。
そうした中で注目すべきなのが、国際交流基金が企画した、村上作品の翻訳者を集めて日本で行われたシンポジウムの記録をベースにした、『世界は村上春樹をどう読むか』(文芸春秋・一七一四円)である。「書き手の潜在意識、意識の深層がポップカルチャーでできているということは世界共通になってきているのかな」という柴田元幸の発言や、「何らかの形で政治的挫折感を味わった、そういう若者にとくに受け入れられている気がしています」という四方田犬彦のことばなどが、それぞれの問題意識とかかわって、国際的な文脈で村上作品を考えようとする動きを作っていく。
それは、川端康成や谷崎潤一郎が、「エキゾチシズム」としての日本という読まれ方をしたのとはちがう、日本文学の受けとめ方になっている。もちろん、それを日本文化の進出という、ピカチュウの人気なみのレベルで考えるわけにはいかない。村上作品の翻訳が、南アジアや西アジア、アフリカやブラジル以外のラテンアメリカでは現在まで現れていないことの持つ意味についても、四方田は「端的にいって勝ち組の国家や言語だけではないのか。ここに排除されているものは何なのか。誰なのか」と、ワークショップの参加者に呼びかける。
冷静な認識も
また、村上作品に中国人は登場しても韓国人がほとんど登場しないことの意味を、朝鮮半島の分断という現実が村上作品の特徴である「人間存在そのものが記号化、抽象化され」ることを拒んでいるところにみるという川村湊が『村上春樹をどう読むか』(作品社・二〇〇〇円)に書き下ろした「はじめに」での指摘や、『海辺のカフカ』を論じて、〈精神のある人間として呼吸する女たち〉の精神の殺戮(さつりく)が作品の基本設定であり、〈「従軍慰安婦」問題〉に向き合うことから生まれるトラウマからの「癒(いや)し」を与える作品であると批判する小森陽一著『村上春樹論』(平凡社新書・七八〇円)にも、村上作品への冷静な認識が現れている。そうした歴史とのかかわりで村上を論じる視点の登場も、注目すべきことである。
(いわぶち つよし・文芸評論家)
( 2007年01月14日,「赤旗」) (Page/Top)
日本共産党が四日、党本部で開いた第三回中央委員会総会での志位和夫委員長の幹部会報告と結語は次のとおりです。
はじめに――会議の目的について
みなさん、あけましておめでとうございます。CS通信をご覧の全国のみなさんにも、心からの新年のあいさつをおくります。私は、幹部会を代表して、第三回中央委員会総会への報告をおこないます。
今年は、いっせい地方選挙、参議院選挙と、二つの重大な全国選挙が連続する年となります。日本の進路にとっても、わが党の前途にとっても、まさに勝負の年であります。この激戦をかちぬくためには、従来の延長線上ではない構えと規模のとりくみが必要となります。一月四日という、文字どおりの正月早々から、こうした選挙勝利をめざす全国会議を開くのは、わが党の歴史のなかでも初めてのことでありますが、全党が心を一つにスタートダッシュするために必要だと考えて、お集まりいただきました。
幹部会報告は、つぎの三つの主題でおこないます。
第一は、大会から一年、内外情勢の進展のなかで日本共産党が果たしている先駆的役割を明らかにするとともに、二つの全国的選挙戦をたたかう政治的構えを確立することであります。
第二は、二大選挙のうち、まず突破すべき関門であるいっせい地方選挙について、地方政治の新しい特徴と政治的対決の中心点を解明することであります。
第三に、「支部が主役」の選挙戦をかちぬくために、どういう政治的構えで、どういう仕事を、どうやってやりきるかについて、問題提起をしたいと思います。
一、内外情勢の進展と日本共産党――大会から一年、選挙戦を展望して
まず、内外情勢の進展と日本共産党の役割について報告します。
自民党政治の三つの異常をただし、情勢を前向きに動かす
昨年一月の第二十四回党大会は、「自民党政治の三つの異常な特質」――過去の戦争への無反省、対米従属、大企業中心主義の異常を全面的に分析・告発するとともに、この異常の打開と日本の政治の根本的改革をめざすわが党の立場を明らかにしました。
それから一年。党大会の分析と提起は、世界と日本の情勢の劇的な展開のなかで、大きな生命力を発揮しています。自民党政治は「三つの異常」のどの分野でもいよいよゆきづまりと矛盾を深め、ほころびや破たんが生まれ、「政治の流れの変化」がおこっています。そして日本共産党の奮闘が、情勢を前向きに動かす力となって働いています。
過去の戦争への無反省――今後の問題として首相に二つの点をもとめる
第一に、過去の戦争への無反省という異常についてです。
この問題をめぐっては、靖国神社への六年連続参拝によって日本外交を最悪のゆきづまりにおいこんだ小泉前首相に代わって、安倍新首相が誕生し、前首相の愚かな路線をひきつぐのかどうかが問われました。
わが党は、国会質疑で、安倍首相の歴史認識について、正面からただしました。安倍氏が、首相就任前までとってきた行動は、「靖国」派そのものでしたが、首相という国を代表する職責についた以上、個人的な歴史観を優先させて、アジア諸国との友好を損なうことがあってはならないと、前向きの対応をもとめました。質疑のなかで、安倍首相は、戦後五十周年にあたっての「村山談話」、「従軍慰安婦」問題での「河野談話」を継承することを、公式に言明しました。こうした流れのなかで、日中首脳会談が再開されるなど、外交面での一定の積極的な変化がおこりました。
同時に、これは問題の解決ではありません。その出発点にすぎません。私たちは、今後の問題として、つぎの二つの点を首相にもとめるものです。
一つは、みずからの公式の言明を、行動で裏切ってはならないということであります。昨年十二月に入って、自民党議員でつくる「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」が、「河野談話」の見直しをめざして会合を開きました。この「議員の会」には、中川昭一政調会長、下村博文官房副長官、山谷えり子首相補佐官ら、首相側近が顧問に名をつらねています。首相は、みずからの政権中枢から「靖国」派による逆流がつくられつつあることを放置すべきではありません。
いま一つは、日中、日韓首脳会談で合意された、歴史認識の基本を共有する仕事に真剣にとりくむということであります。私は、昨年九月に、初の韓国への訪問をおこないましたが、そこでも両国国民間の歴史認識の大きな落差を感じました。韓国では若い世代も日本による植民地支配時代の歴史的事実を詳しく知っているのに対して、日本ではあまりに事実が知られていません。日中でも、日韓でも、両国政府間で、さらには両国国民間で、歴史認識の基本を共有することは、二十一世紀に東アジアに真の平和と友好を築いていくうえで、その土台ともいうべき重要な課題であることを強調したいのであります。
日本共産党は、この間、歴史問題での逆流を克服し、アジア諸国との真の友好の関係を確立するために、一貫して努力をはらってきました。これは結党いらいどんな困難にも屈せず反戦平和をつらぬいた政党ならではの奮闘であります。この奮闘が情勢を前向きに動かす力となって働いたことを、大いに全党の確信にしようではありませんか。
アメリカいいなり――改憲の道は国民との矛盾を広げ、世界の流れに逆行する
第二に、異常なアメリカいいなり政治は、安倍内閣でさらに危険な道にふみこみつつあります。
安倍首相は、二期六年という任期中に憲法改定を実現すると宣言しました。期限を区切っての改憲の宣言は、戦後の自民党内閣でもはじめてのことです。
同時にその狙いが明瞭(めいりょう)になりました。首相は、改憲の目的は、集団的自衛権の行使のためだと公言しました。まず憲法解釈を変えてある程度その行使ができるようにし、さらに憲法そのものを変えて天下御免で行使できるようにする――これが首相の公言するプログラムであります。こうした野望にむけた第一歩として、海外派兵を自衛隊の「本来任務」に格上げする自衛隊法改悪が「防衛省」法とセットで強行されました。これらの一連の動きは、「米国とともに海外で戦争をする国」づくりという憲法改定の行き先を明瞭にしめしています。
この動きの危険性を直視しつつ、つぎの二つの点をとらえて、憲法擁護、平和擁護のたたかいをさらに発展させることが大切であります。
一つは、平和を希求する国民との矛盾の広がりであります。草の根の「九条の会」の数は、昨年一年間で、四千から、毎月約二百の新たな結成がつづき、昨年十一月には五千六百を超えたと発表されました。「九条の会」が職場に広がってきていること、経済界、文化人、宗教者などこれまでにない幅広い層を結集して前進していることが、新しい特徴であります。五月三日、十一月三日など節目の日には、全国各地で合計数万人規模での憲法擁護の集会がもたれました。
今年は、日本国憲法施行六十周年の記念すべき年であり、憲法改悪反対の一点での国民過半数結集をめざす運動の一大飛躍が強くもとめられます。そのさい、自公両党が民主党と共同で成立を狙っている改憲手続き法を許さないことは、直面する重大な焦点であることを、強調しておきたいと思います。
「米軍再編」の名による基地強化・日米軍事一体化に反対する運動も前進しています。沖縄で計画されている新基地のV字形滑走路の双方向使用問題、岩国基地周辺でのNLP(夜間離着陸訓練)基地建設問題など、政府が国民にウソをついて基地強化を強要していることが明らかになったことは、住民の怒りの火に油をそそいでいます。岩国での住民投票の勝利につづき、横須賀でも住民投票条例をもとめる四万の署名が寄せられました。沖縄でも、知事選挙で基地強化反対を正面から掲げる候補者が大健闘し、「基地のない沖縄」を切望する県民世論の根強い広がりをしめしました。多くの関係首長が保守の人々もふくめて頑強に反対をつらぬき、一部の首長が住民の意思を裏切るなどの曲折がおこっても、それをのりこえて住民ぐるみの運動が前進しています。どこでも日本共産党がたたかいのよりどころになって奮闘しています。今年は、「米軍再編」への巨額の税金投入も国政の焦点となりますが、このたたかいを国民的運動に発展させるために力をつくそうではありませんか。
いま一つは、憲法改定や軍事同盟強化への熱中が、二十一世紀の世界の流れにまったく逆行するということであります。この間、世界で現実におこった出来事をみれば、一方で、アメリカによるイラク侵略戦争と占領支配が、いよいよ破たんを深め、「内戦化」ともよばれる事態をひきおこしました。米国・中間選挙でブッシュ共和党が大敗北し、ラムズフェルド国防長官など開戦を主導した「ネオコン」グループの重要メンバーが失脚し、アメリカはイラク政策の見直しを余儀なくされています。どんな超大国でも軍事の力だけで世界を支配することはできない。このことが世界の前で明らかになりました。
他方で、北朝鮮による核実験という危機がおこりましたが、この問題にたいする国際社会の対応は、わが党がいち早く主張した方向――一致結束して平和的・外交的解決をもとめるという方向に動いています。六カ国協議の議長国の中国、さらにアメリカが、それぞれ活発な外交努力を展開し、六カ国協議の枠組みでの解決への努力がはじまりました。交渉の前途には困難や曲折も予想されますが、この枠組みでの外交的解決が、朝鮮半島の非核化にむけた唯一の道理ある道だということは、国際社会の共通認識になっています。
イラク問題と北朝鮮問題は、この双方で、日本共産党が打ち出した主張が、国際社会の大勢と響きあい、道理あるものであったことを証明しています。すなわち、二十一世紀の世界は軍事ではなく、外交こそが重要な意味をもつ時代となっているのであります。こうした世界の現状にてらしても、軍事同盟強化に熱中し、恒久平和主義という理想を先駆的に体現した日本国憲法第九条を捨てさることが、いかに世界の流れに逆行するかは明らかではありませんか。(拍手)
大会決定では、新しい綱領での帝国主義論の発展をふまえて、第二期ブッシュ政権について、複眼的な分析をおこないました。米国が、一方で、イラクにみられるように軍事的覇権主義に固執しながら、他方で、対東アジア外交にみられるように、国際問題を外交交渉によって解決する動きがおこっているという分析であります。この分析の正確さは、この一年のアメリカの行動自身によって裏づけられました。
綱領と大会決定は、アメリカの動向をリアルにとらえ、原則をつらぬきながら、柔軟な対応を可能にするうえで大きな生命力を発揮しています。わが党のアメリカ対外政策の分析の先駆性は、日本政府が、アメリカの軍事的覇権主義への追従だけに熱中し、その外交的対応が目に入らない、アメリカいいなりなのに、アメリカのことはよく分からない――それとの対比でも、鮮やかな対照をなしています。
大企業中心主義――貧困打開、生活防衛の国民的大運動をよびかける
第三に、大企業中心主義の異常について、大会決定では、「貧困と社会的格差の新たな広がり」の告発と打開をよびかけましたが、この問題は一大社会問題となりました。この問題の根源に、財界・大企業の横暴と、それを応援する自民党政治の責任があることも、少なくないメディアが公然ととりあげるようになりました。
ここで強調したいのは、いま、貧困の深刻な広がりに目をむけ、その打開のために奮闘することは、国民の苦難の軽減のために献身するというわが党の存在意義にかかわる問題になっているということです。
昨年、NHKテレビは、二度にわたって「ワーキングプア」の特集番組を放映し、大きな反響を呼びました。まじめに働いても生活保護水準以下の生活しかできない貧困層が激増し、十世帯に一世帯、四百万世帯を超えて広がっています。もはや貧困は、一部の国民の問題ではありません。病気、介護、老いなどの身近な出来事がきっかけで、国民のだれにもおこりうる問題となっています。また貧困は、若者、女性、高齢者、自営業者・農漁民など、国民のすべての階層をとらえて進行し、日本社会をむしばんでいます。
こうした現状をふまえ、この中央委員会総会として、憲法二五条に保障された生存権をまもる国民的大運動――全国の草の根から、社会的連帯で貧困を打開し、生活を防衛する国民的大運動をおこすことを心からよびかけるものであります。(拍手)
党として生活相談、労働相談にとりくみ、民主的諸団体・市民団体とも連携を強め、貧困への不安と怒りを運動化し、貧困打開のとりくみに力をつくしたいと思います。これは日本の情勢を根底から変える可能性をはらむたたかいです。そして、この運動を担える党、草の根から現に担っている党は、日本共産党しかありません。わが党の果たすべき役割と責任はきわめて重大であります。
国民の暮らしをめぐる政治的たたかいとしては、今年は、つぎの二つの問題が熱い焦点となってきます。
第一は、「庶民に増税、大企業に減税」という「逆立ち」税制をただすたたかいです。昨年、今年と、高齢者世帯を大増税と負担増の大波が襲い、日本列島で怨嗟(えんさ)の声がおこっています。そのさなかに安倍内閣が「初仕事」にしようとしていることは、昨年十二月の政府税調の答申にしめされたように、所得が減って苦しさをます庶民には増税と負担増をつづけながら、バブル期を上回る空前の利益をえている大企業には新たな大減税をほどこし、一握りの大資産家への特別減税を温存することです。この道は消費税増税につながる道にほかなりません。庶民から吸い上げ、大企業にばらまく「逆立ち」税制で、貧困と格差に追い打ちをかけることが許されるのか――このことがいま問われています。
第二は、人間らしい労働のルールを求めるたたかいです。この間、わが党は、国民運動との連携で、「サービス残業」是正の通達につづいて、「偽装請負」でも是正の通達を出させる大きな成果をかちとりました。労働現場と国会論戦が連携して、職場から無法を一掃するたたかいが前進しています。
これにたいして、財界と政府は、「ホワイトカラー・エグゼンプション」――事務職(ホワイトカラー)労働者の残業代をゼロにするという労働法制の大改悪法案を通常国会にも提出しようとしています。さらに日本経団連会長は、「偽装請負」を合法化する方向で労働者派遣法の改悪を要求しています。わが党は、職場の無法の一掃、労働条件改善をめざすたたかいを発展させるとともに、無法を合法化する労働法制の大改悪を許すな、この旗を掲げて、多くの労働者・国民とともにたたかいぬくものであります。(拍手)
( 2007年01月06日,「赤旗」) (Page/Top)
憲法9条はすべての基礎、木戸/歴史の確かな流れ感じる、山下
近畿各府県をかけめぐる日本共産党の山下よしき参院比例候補と大阪大学大学院国際公共政策研究科の木戸衛一助教授が、憲法と日本の政治、さらに国際政治の動向について縦横に話し合いました。木戸氏は「阪大・9条の会」の事務局も担当しています。二〇〇四年の大阪赤旗まつりでのシンポジウムに出演して以来、山下氏とは二年ぶりの再会となりました。
山下 あけましておめでとうございます。木戸先生には三年前の大阪の赤旗まつりで憲法を守る運動を前進させるうえで大変力になるお話をしていただきました。
憲法をめぐって今年は正念場に
木戸 私も山下さんに久しぶりにお目にかかれて大変うれしいです。ただ、あえて失礼を申しあげると、いまの日本の状況を見れば、とても「おめでとう」とはいえないですね。というのも、教育基本法の改悪が強行され、戦争国家化がさらに一歩進みました。まさしく数の暴力ですね。それも、国会のなかだけの話です。日本各地で、どれだけ多くの国民が改悪反対の真剣な叫びをあげたか…。まさに今年は憲法をめぐって正念場の年だと思います。
山下 そうですね。小泉(純一郎)さんから安倍(晋三)さんに代わって、憲法を五年以内に変えると期限を切って公言する内閣が発足しました。一方で、木戸先生がかかわっておられる「阪大・9条の会」など草の根の憲法九条を守る運動が大阪や全国で大きく広がってます。
木戸 この国の首相は、ある種の「愉快犯」から「確信犯」に代わりましたね。国会のなかだけみると事態は深刻ですが、向こうの側にも矛盾があります。
前の政権は新自由主義・市場原理主義一辺倒で、「官から民へ」の名のもとに、従来の自民党がそれなりにもっていた平等意識を否定し、本来の支持基盤を掘り崩していったわけです。そして、あの卑屈な対米追従は、彼らのナショナルな自尊心を傷つけました。今度の首相は、「軍国主義のゾンビ」(ゾンビ=生き返った死体)みたいな人ですから、「日米同盟」を声高に叫んでも、そう簡単にはいかない。
山下 「軍国主義のゾンビ」ですか。
木戸 戦犯容疑者の祖父を敬愛してやまない彼の言動は、特権階級意識に満ちています。その世界観は、十九世紀の帝国主義そのものです。先の戦争について、安倍首相はあくまで「自存自衛の戦争、聖戦だった」と思っています。つまり、アメリカに非を求めている。ということは、これまで共犯関係にあった新自由主義と新国家主義が、相互矛盾を露呈し始めたのだと思います。
山下 木戸先生がおっしゃった軍国主義的なものが安倍さんには以前からずっとあるわけですね。しかし総理になったあとの言動をみると、歴史は無駄に流れてないなと感じます。
日本共産党の志位(和夫)委員長が先の国会で歴史の事実をふまえて、安倍首相に歴史認識をただしました。安倍さんは「国策をあやまって侵略と植民地支配にすすんだことを反省し謝罪する」という村山談話も、「従軍慰安婦」についての河野談話も「踏襲します」と初めていいました。
木戸 安倍内閣の中で日本会議と神道政治連盟という二つの超国家主義団体の議連に属していない自民党の閣僚はたった一人です。その点で「ネオ・ファシスト内閣」だと思います。志位さんとのやりとりなんですけど、別のところで「歴史的な談話だ」という答え方をしていると思います。つまり、これらの文書は過去の話にすぎないという「同志」たちへのメッセージが込められているわけです。
山下 靖国問題をめぐって、この間アメリカでも「日本の戦争は正しかった」とする靖国神社の立場が広く知られるようになってきたことがあります。本心はどうあれ、安倍さんがこれまでの主張を表立って口にすることができなくなった背景には、アジアだけではない世界の目があると思います。世界には「ゾンビ復活」を簡単には許さない力がある。
不満抑えるため敵をつくる必要
木戸 世論調査によると、八月十五日のあとで、日本国内では首相の靖国参拝を支持する人が、支持しないという人よりも多かったですね。そこには中国や韓国の批判に対して「きぜんとした態度を示した」というゆがんだ排外主義が反映されていると思いますね。
こういう世論の動向をみて感じるんですが、新自由主義で格差が広がる、それで切り捨てられた人たちの不満を暴発させないために、「敵」をつくる必要がある。一つは外に対してで、もっともわかりやすいのは北朝鮮ですね。もう一つは「内なる敵」を狙い撃ちする。例えば、福祉に依存せざるを得ない社会的弱者の方たちです。グローバル化の大競争時代で日本ががんばっているときに、そんな連中はお荷物だ、と。本当にひどいと思うのは障害者自立支援法ですね。
山下 ひどいですね。
木戸 それから安倍さんは、ジェンダーバッシングの急先鋒(せんぽう)でした。いわば自己主張をする女性は「美しい国」にふさわしくない、と排除するわけです。このように社会的不満のはけ口として権力がつくった内外の「敵」に襲いかかるというのは、すごく危ないと思います。
山下 だからこそ、歴史の事実をしっかり踏まえることが大事だと感じます。昨年の八月十五日、私は街頭から日本がたたかった戦場はどこだったのか、と問いかけました。確かに広島、長崎に原爆を落とされたし、各地で空襲をうけました。しかし、それは戦争の最後の段階で、そこに至るまでに、日本の軍隊がどこまで攻めて行ったのか、わたしはスマトラ、ジャワなど地名を読み上げるんです。こんな遠いところまで行っているのに、「自存自衛の戦争だった」という論理は絶対に通用しません。
「アジア解放の戦争だった」ともいうけれど、戦争が終わってサンフランシスコ講和会議に参加した国の中で、日本のおかげで独立できましたと感謝した国が一つでもあるか、ないと。そういう事実を踏まえると「正しい戦争だった」という靖国神社の主張のいつわりは、だれが考えてもわかることです。そこに首相が参拝することは、戦後政治の出発点を否定することになると話すと、街頭でも受けとめてくれます。
木戸 そうですか。私が小学生だった一九六○年代、父親によく上野の美術館に連れて行かれました。そのとき、かならず傷痍(しょうい)軍人の姿を見たんですね。たいてい二人一組で一人はアコーディオンを弾いて、もう一人は土下座をしているんです。その光景は、ショッキングな原体験でした。
いま、日常生活のなかでそういうものが見えない。戦争が表面的にはリアリティーを失うなかで日本の世論は、非常に情緒的になっていると思います。「9・11」後のアメリカと小泉訪朝後の日本はよく似ています。自分は善良な被害者で、相手は邪悪で制圧の対象だという雰囲気ですね。それだけに、憲法九条は本当に大事です。あらゆることの基礎だと思います。
実態を反映する内閣支持率低下
山下 先生が編著者になっておられる『「対テロ戦争」と現代世界』を読みました。ブッシュ大統領の演説が紹介されているんですが「世界はアメリカの側につくか、テロリストの側につくかのどちらかだ」と、すごいことをいっていますね。しかし五年たってイラク戦争への審判は完全に下ったと思います。
日本でもついこの前、「郵政民営化に賛成か、反対か」で総選挙がやられた。小泉「構造改革」で一番犠牲になった若者たちが小泉自民党に投票しました。「おれたちは努力しても先が見えないのに、公務員は優遇されている」と。しかし、それで暮らしはよくなったのか、というと「ワーキングプア」といわれるほど悪くなっている。安倍内閣の支持率が落ちた理由は、復党劇はきっかけに過ぎず、国民の暮らしの実態を反映していると思います。
木戸 アメリカでさえ風向きが変わってきているのに、なぜ日本はここまで無反省でいられるのでしょう。その点も含めて、日本の大手メディアは、ほとんど意図的に国民を思考停止にさせ、ミスリードしようとしているのではないか。教育基本法改悪反対の国民の声を無視するなど、権力をチェックするどころか、ほとんど政府や自民党のいい分をそのまま垂れ流している体たらくです。
山下 そこに「しんぶん赤旗」の役割がありますね。同時に、私はよく、いまのメディアでさえ取り上げざるを得ない、騒然たる状況をつくろうやないか、と話しています。
(略)
山下よしき 1960年香川県生まれ。鳥取大学農業工学科卒。95年に参院大阪選挙区で初当選。参院国対委員長、経済産業委員、災害対策委員を歴任。現在、党中央委員、党大阪府委副委員長。家族は妻、大学2年、高2、5歳の息子。
木戸衛一 1957年、千葉県生まれ。東京外国語大学ドイツ語学科卒。2000年から01年まで、ドイツ・ライプツィヒ大学客員教授。現在、大阪大学大学院国際公共政策研究科助教授。編著に『「対テロ戦争」と現代世界』(御茶の水書房)、『ラディカルに〈平和〉を問う』(法律文化社)など多数。
(2007年01月05日,「赤旗」) (Page/Top)
歴史問題――問題の解決は、これからが大切になってくる
奥原 今日は、「『三つの異常』と世界の流れ」というテーマでお話をうかがいたいと思います。一年前の党大会決定では、「自民党政治の三つの異常」――過去の戦争への無反省、対米従属、大企業中心主義の異常を告発し、それを改革する日本共産党の立場を明らかにしました。それから一年。日本の現状はどうなのか。これを世界の流れとのかかわりでお話しいただければと思います。
志位 「三つの異常」という問題を、「国民との矛盾」という視角とともに、「世界の流れとの矛盾」という二重の視角でとらえると、ものごとが立体的に見えてくるし、未来ある流れがどこにあるかもはっきりうきぼりになります。今日は、おもに世界とのかかわりで、お話しさせていただきたいと思います。
米国議会の「従軍慰安婦」問題決議――日本政府は国際公約を誠実に実行すべき
奥原 まず、第一の異常――侵略戦争の正当化という問題はどうでしょう。
志位 この問題では、現在、百九十二の国連加盟国のなかで、第二次世界大戦の侵略国家の行為を正当化しようという潮流がいまだにはびこっている国というのは、文字どおり日本一国だけだと思いますよ。
この問題では、小泉首相から安倍首相に代わって、日中、日韓首脳会談が再開されるなど、一定の外交での前向きの変化がおこりました。しかし、これは問題解決の出発点であって、問題が解決したわけではありません。
たとえば、アメリカでは、「従軍慰安婦」問題について、日本政府に責任を認めるよう求める決議案がこの一月から始まる米国議会に再び提出されるといいます。この決議は、昨年九月、下院外交委員会までは通過しましたが、日本政府のロビー活動で本会議での採択が妨害されたことが明らかになり、アメリカで問題になっています。
奥原 日本政府は、大物ロビイストに「月六万j」もの大金を払っていると報道されましたね。
志位 ええ。安倍首相は、「従軍慰安婦」への日本軍の関与と責任を認めた「河野談話」を継承すると言明したわけですから、こういう恥ずかしい妨害活動はやめて、この恐るべき犯罪を「歴史教育」を通じて現在と将来の世代に教えるという「河野談話」の国際公約を誠実に実行すべきです。
歴史認識の基本を共有する仕事――未来にむけた友好にとって不可欠
志位 もう一つ、日本政府は、日中、日韓首脳会談で合意された、歴史認識の基本を共有する仕事に真剣にとりくむべきだということを、強くいいたいですね。
私が、昨年九月に韓国を訪問して痛感したことの一つは、日韓両国民の間に、歴史認識の基本のところで、大きなギャップが存在することです。ソウルの延世大学の学生・院生のみなさんとも交流する機会がありましたが、一九一九年の三月一日に朝鮮全土でおこった独立運動――「3・1独立運動」のこと、そのリーダーとして十八歳の若さで弾圧で命を落とした柳寛順(ユ・グアンスン)という少女のことなど、植民地時代の民族の苦難とたたかいの歴史は、若いみなさんもみんなよく知っています。
奥原 植民地支配といっても、日本ではあまり事実が知られていませんね。
志位 そうですね。認識のギャップがあります。未来にほんとうに、日本とアジア諸国の友好を築こうとしたら、歴史認識について、すべてを一致させることはできないとしても、基本の問題については、両国政府、両国国民間で、共通の認識が必要だと思います。そのさい、両国にそれぞれ平和と良心の勢力があったということを知り合うことも大事だと思います。その点では、侵略戦争と植民地支配に命がけで反対をつらぬいた日本共産党の歴史は、日本とアジア諸国の友好のかけ橋になるということも感じました。
世界の流れは軍事同盟から平和の共同体に
奥原 第二の異常――「アメリカいいなり政治の異常」の問題に話をすすめます。安倍内閣は自分の任期中に憲法改定を達成したいと公言しました。この改憲は、アメリカの要求に応じて、アメリカの戦争に、日本が直接参加していくためのものです。究極のアメリカいいなり政治だと思いますが、これも世界から見ると異様なことですね。
志位 ええ。いまの世界の国々を見て、軍事同盟を強化し、海外に軍隊を派兵する態勢を強化することに熱中している国はほかにあるでしょうか。なかなか見当たりませんね。安倍首相などがすすめる憲法改定の目的というのは、アメリカと一緒に海外で戦争をする国づくりにありますが、この方向は、世界の流れにてらしてみますと、まったく見当ちがいの、逆さまの方向です。
奥原 世界の流れにまったく合っていないと。
志位 そうです。私は、昨年の世界の平和をめぐる動きで、三つほど注目してみてきた動きがあります。
アメリカ――イラクへの軍事的覇権主義と、北朝鮮への外交的対応
志位 第一は、アメリカがどうなっているかという問題です。
昨年は、一方で、イラク戦争の大破たんがはっきりした年となりました。アメリカは当初、「イラク戦争は二週間で終わる」といっていたのが、太平洋戦争(一九四一年十二月〜四五年八月)がたたかわれた年月を超える長期戦になって、ぬきさしならない状況に陥ってしまった。
奥原 去るも地獄、残るも地獄という状況ですね。
志位 アメリカは、イラクで二重の大失敗をしました。そもそも国連憲章を無視して無法な侵略戦争を始めたことが大失敗でした。さらにそれにつづく占領支配が、まさに「地獄の門を開ける」(アラブ連盟のムーサ事務局長)大失敗となりました。イラクにはシーア派とスンニ派という二つのイスラムの宗派があるわけですが、スンニ派の抵抗を抑えるために、シーア派の人たちを軍や警察に組み入れるということをアメリカはやったわけです。宗派間対立をテコにして占領統治をすすめるという一番悪いやり方をやってしまった。これがイラクを「内戦状態」といわれるところまで引き込みました。
奥原 昨年秋、ブッシュの与党・共和党が中間選挙で大敗しました。
志位 アメリカ国民にも見放されました。その後、超党派の「イラク研究グループ」の報告書が出ました。この報告書にはいろいろ問題点が多いけれど、ともかく二〇〇八年までの米軍の戦闘部隊の段階的撤退という方向を出しました。ところが、その後のブッシュ大統領を見ていますと、最初は報告書を評価するような発言をしたけれども、結局は、この報告書すら拒否する、「米軍の増派の検討も選択肢だ」ということを言い出しています。ここまで破たんしても、一国覇権主義、軍事的覇権主義にしがみつくという姿が、イラクではつづいているわけです。
同時に、他方で、もう一つ注目すべき動きは、アメリカの東アジアにたいする対応なのです。昨年、北朝鮮で核兵器問題をめぐる危機がおこりました。それでは、アメリカは北朝鮮にたいして、イラクと同じように戦争をしかけるやり方をするかというと、ここでは別の対応をとっているわけですね。
奥原 こちらでは外交解決にかなり熱心に動いている印象です。
志位 そうですね。北朝鮮の核実験にさいして、わが党は、これに厳しく抗議するとともに、解決の方法としては、国際社会が一致して、平和的・外交的に解決することが大切だと主張しました。この方向がアメリカも含めて国際社会の一致になっていくわけです。国連安保理でも、この方向での決議が採択され、中国が唐家〇国務委員を先頭に積極的外交を展開しましたが、アメリカもライス国務長官を先頭に活発に外交的解決の努力をするわけです。北朝鮮との関係で六カ国協議再開という合意を取り付け、協議は再開されました。
その後の展開は、なかなか簡単ではありませんが、しかしアメリカは東アジアにたいする対応という点でいうと、全体として軍事の選択肢でない対応、外交的戦略をもってのぞむということが前面に出てきているのです。
奥原 アメリカも軍事一本やりではいかなくなっている。
志位 ええ。一方でイラクでみられるように軍事的覇権主義にしがみついていますが、しかしそれが破たんと孤立を深めるもとで、軍事一本やりでは対応ができなくなり、東アジアにたいしては外交的戦略をもってのぞんでいる。一年前の党大会では、アメリカの動きをこういう角度から「複眼」で分析しました。その後の展開は、大会の分析通りになっていると思います。
アメリカですら、軍事一本やりではうまくいかない、外交戦略ももって対応しなければ、というのがいまの世界なのに、それが目に入らないのが日本政府です。日本政府は軍事的対応だけがアメリカのすべてだと思い込んで、アメリカの悪いところにだけ追随する。外交的対応のほうはついていけない。
奥原 アメリカいいなりなのに、アメリカのこともよく分かっていない。(笑い)
志位 日本共産党のほうが、アメリカの動向をよく分かっている(笑い)。どんな超大国でも軍事の力だけで世界を思いのままにはできない。それはイラクで証明されました。そのときに憲法を変えて、アメリカと一緒に海外で戦争をする国づくりをすすめるというのは、どんなに愚かなことかは明らかです。
軍事同盟は、 過去の時代の遺物になろうとしている
奥原 そういう自民党政治が、絶対視しているのが日米安保条約です。しかし、軍事同盟というのは、いまでは世界の流れの中ではかなり陳腐なものになりつつあるのではないですか。
志位 そうですね。私は、ここにいまの世界を見るさいの第二の注目点があると思います。二十一世紀の世界を見ますと、世界の軍事同盟が、解体、弱体化、機能不全に陥っているという状況があります。米ソ対決の時代というのは軍事同盟が花盛りで、アメリカはアメリカ中心の軍事同盟を世界中に張り巡らす、ソ連はソ連で対抗する、その対抗で世界が窒息状態という時代がありました。ところが、一方のソ連が解体して、ワルシャワ条約機構という軍事同盟がなくなりました。
アメリカの方も、東南アジアにあった東南アジア条約機構(SEATO)はベトナム侵略戦争での米国の敗退をへて解体し、中東にあった中央条約機構(CENTO)はイラン革命を契機に解体し、オセアニアにある太平洋安全保障条約(ANZUS、オーストラリア、ニュージーランド、アメリカで構成)は、ニュージーランドが非核政策をとることで、三国軍事同盟としては事実上機能停止になる。南北アメリカ大陸にはリオ条約という軍事同盟がありますが、ラテンアメリカで民主的変革がすすむもとで、これは機能していません。NATO(北大西洋条約機構)は、イラク戦争にさいして、フランス、ドイツ、カナダなど主要国が戦争反対にまわって分裂状態になり、「NATOの漂流」ともいうべき状況にあります。
アジアに残っている軍事同盟としては、日米と米韓の軍事同盟がありますが、米韓軍事同盟は、大規模な在韓米軍撤退という動きがすすめられ、有事のさいの指揮権を米軍から韓国軍に移すということがいま問題になるなどの状況があります。軍事同盟の枠はあっても、より自主的な方向にすすもうという動きだと思います。
そう見てくると、世界の軍事同盟の中で、これをひたすら強化する方向に熱中し、地球的規模に拡大していこうなどという動きをみせているのは、日米軍事同盟だけです。世界のなかでただ一人、流れに逆らってがんばっている。(笑い)
奥原 唯一といってもいい異常な姿ですね。
志位 世界の流れを見れば、軍事同盟は、二十世紀という過去の時代の遺物になりつつあるのです。
世界の各地域に、自主的な平和の共同体が広がっている
志位 それでは軍事同盟のあとに何ができているか。私は、一言でいって、世界は、「アライアンス」――軍事同盟の時代から、「コミュニティー」――共同体の時代に変わりつつあると思います。軍事同盟が解体した後に何が生まれているかを見ますと、世界の各地域で、自主的な平和の共同体が生まれ、発展する姿があります。
たとえば東アジアでは、ASEAN(東南アジア諸国連合)が中心になって、東南アジア友好協力条約(TAC)が素晴らしい勢いで広がっています。TACは、ASEAN十カ国のほかに中国、韓国、日本、モンゴル、ロシア、インド、パキスタン、ニュージーランド、パプアニューギニア、オーストラリアが加入して、世界人口の53%を擁する、めざましい発展をとげています。
それから、上海協力機構(SCO)です。昨年六月開かれた創立五周年にあたっての首脳会議の共同宣言を見ますと、国連憲章にもとづく平和秩序をつくる、多様な文明間の相互尊重、平等な交流、調和的共存をはかる、といった理性的な方向が合意になっています。SCOには、中国、ロシア、中央アジア諸国、南アジア諸国が参加して、ユーラシア大陸の中心部分の広大な国々を擁する機構として発展しています。
南米では、南米諸国共同体(CSN)が生まれています。これは南米十二カ国のすべてが加入しています。昨年十二月には、ボリビアで第二回首脳会議がおこなわれて、「コチャバンバ宣言」というのが出ていますが、ここでは「多様性と差異のもとで独自性と複数主義を備えた新しい統合モデル」をめざすとしています。統合の原則としては、多国間主義の強化、国連の原則と目的の順守、民族自決権の尊重、紛争の平和解決などが、明記されています。
この南米諸国共同体が、たいへん面白い動きをはじめています。二〇〇五年の五月に、南米・アラブ諸国首脳会議を開催し、アラブの諸国と協力と友好の関係をつくっています。さらに〇六年の十一月、アフリカ連合(AU)と南米諸国共同体の首脳会議がナイジェリアで開催され、「アブジャ宣言」がかわされ、国連憲章と国際法の尊重、多国間主義による平和構築などを確認しています。南米諸国共同体は、つぎはアジア諸国との首脳会議を準備していると報じられています。
つまり、平和の地域共同体が、世界各地に、それこそ世界をおおう形でできて、それぞれが連携しあうネットワークをつくりはじめている。その全体の合言葉は、国連憲章にもとづく平和秩序をつくる、公正で民主的な経済秩序を築いていく、軍事的にも経済的にも一国覇権主義は許さない。これらが合言葉になって、新しい世界の平和のネットワークがつくられつつあるのは、たいへん未来ある動きだと思います。
( 2007年01月01日,「赤旗」) (Page/Top)
安倍・自公政権は、支持率急落に閣僚辞任という大ダメージを抱えて年を越しました。タカ派・改憲内閣の姿をあらわにする一方で、もろさが露呈しました。いっせい地方選挙、参院選挙が連続する二〇〇七年は、安倍政権と自民党政治の大本が問われ、政局波乱、政治の激動も予想される情勢です。
「年が変われば機運も変わる」(自民党の片山虎之助参院幹事長)と念じるしかないほど安倍政権は深刻です。政治資金の虚偽報告で辞任した佐田玄一郎行革担当相の後任を早々と決めたものの、「公共事業にまつわる疑惑閣僚がまだまだいる」(国会関係者)との指摘もあります。七月の参院選を待たずして自民党内部から「内閣危機説」が強まりそうです。
草の根の反対
政権のほころびは、自ら進める外交・内政政策と無縁ではありません。
国民多数の反対を押し切って改悪教育基本法を成立させた安倍首相は年頭所感の柱に「憲法改正」をあげました。自民党は十七日の党大会で採択する運動方針案に、改憲手続き法案の「早期成立」と日米安保体制強化・米軍再編推進を明記。海外での武力行使を可能にする集団的自衛権の行使=九条改悪を狙っています。
しかし、改憲・軍事同盟強化の道は、外交交渉で紛争解決をめざす世界の流れに逆行するばかりでなく、草の根で広がる憲法改悪反対の国民世論との矛盾を広げざるをえません。「米軍再編」の名による基地強化押し付けも、基地を抱える自治体の住民ぐるみの運動は政権にとって大きなアキレスけんです。
歴史認識をめぐって安倍首相は、「植民地支配と侵略」への「おわびと反省」を示した「村山談話」(一九九五年)と「従軍慰安婦」問題での「河野談話」(九三年)の継承を明言しました。首相はその言明をどう行動で示すのか――アジア諸国から厳しい目が向けられています。
実感と合わず
内政はどうか。博報堂生活総合研究所が昨年末まとめた調査によると、今年、「景気がよくなる」と答えた人は29・9%で、昨年比15・8ポイントの大幅減です。政府のいう「景気回復」は国民の実感から依然かけ離れたままです。
大企業・大資産家に一兆円の減税、庶民には定率減税全廃などで一・七兆円もの増税を強いる〇七年度予算案には「景気の先行きに陰りがでる懸念をぬぐい切れない」(「信濃毎日」、〇六年十二月二十一日付社説)との指摘が相次いでいます。しかし、安倍政権に国民の苦境打開策はみられません。
二十五日開会予定の通常国会は冒頭から、暮らし・雇用問題が問われます。働いても生活保護水準以下の生活しかできない貧困層(ワーキングプア)は「政治全体に対して人々が爆発することもありうる」(「朝日」〇六年十二月二十七日付)問題になっています。政府は、残業代なしで何時間も働かせる「ホワイトカラーエグゼンプション」(労働時間規制の除外)の導入など労働法制改悪法案の国会提出を狙っていますが、与党内では参院選でのサラリーマン層の反発を恐れ、異論も出ています。
勝負の年、共産党全力
いっせい地方選挙、参院選挙を各党は「天下分け目」(自民)、「最大の政治決戦」(民主)と位置付け、激烈な組織戦を展開しています。自民党は支持基盤の崩れを宣伝・組織活動で乗りきろうとし、公明党は与党として悪政を推進した逆風に直面。一方、民主党は「二大政党の対決」と叫ぶものの、地方政治では多くの自治体で「オール与党」の仲間です。
こうした政党状況のなかで、「たしかな野党」としての日本共産党の存在がますます輝いています。
日本共産党は今年を「勝負の年」として新年早々から第三回中央委員会総会を開き、二大選挙の前進へ向けてスタートします。自民党政治と正面から対決し、平和と暮らしを壊す悪政に真正面から立ち向かうとともに、自民、民主の双方から持ち込まれてくる「二大政党づくり」の動きを本格的に押し返し、自民党政治を大本から変える力をつけようとしています。通常国会でも、相次ぐ悪法に、論戦でも議会運営でも真正面から立ち向かおうとしています。
2007年の主な政治日程
1月4日 日本共産党3中総
安倍晋三首相が年頭記者会見、伊勢神宮参拝
9日 首相が欧州4カ国を訪問(13日まで)
14日 東南アジア諸国連合(ASEAN)プラス3(日中韓)首脳会議と東アジアサミット(フィリピン・セブ、15日まで)
15日 民主党大会(16日まで)
17日 自民党大会
25日 第166通常国会召集予定
2月3日 社民党全国代表者会議
4月8日 いっせい地方選(前半戦)投票
22日 統一補選投票(参院沖縄・福島選挙区)
いっせい地方選(後半戦)投票
5月1日 テロ特措法の基本計画の期限切れ
6月6日 主要国首脳会議(サミット、独ハイリゲンダム、8日まで)
23日 通常国会会期末予定
7月22日 参院選投票(?)
31日 イラク特措法期限切れ
9月8日 アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議(シドニー、9日まで)
12月末 教育再生会議が最終報告書を策定
2008年度税制「改正」大綱とりまとめ
( 2007年01月01日,「赤旗」) (Page/Top)