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中国・海南島 旧日本軍による強制労働の実態黄開漢さん15歳のとき従事殴られ石20キロ運ぶ日本政府は間違い認めよ
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中国海南島元「慰安婦」アポを訪ねて生存4人“謝罪・補償早く” 90歳超えて日本軍の傷深く
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社会リポート宮古島市民いまも強く沖縄 ミサイル基地癒やしの島にいらぬ
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いま言いたい2018韓国問題研究所代表康宗憲さん歴史の真実見る勇気を
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「慰安婦」問題解決へ水曜デモ 韓国日本政府は被害者無視するな
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本と人と『すきな映画を仕事にして』中野 理惠(なかの りえ)さん
u セクハラ許す社会変えよう、大阪 被害者を孤立させない集会
u きょうの潮流
u 戦時性暴力阻もう
u LGBT「生産性ない」 人権否定の暴言 杉田議員と自民の危険な思考
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論壇時評 谷本諭 朝鮮半島 平和の激動 日本外交の針路問う
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今月の動向
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いま!注目 共産党 綱領から考える 北東アジア平和協力構想の提起 南北・米朝会談で“現実性”
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国民平和大行進 国際青年リレー行進 新庄 沙穂さん(22)の思い
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潮流
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沖縄戦終結73年/歴史見続けるシーサー/全身に弾痕/「命どぅ宝」/今、新基地反対の力に
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安倍政権「TV制圧」を斬る/「放送制度改革」の狙い告発/都内でシンポ
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繁華街で「バイバイ安倍さん」/女性たちが森友問題などでリレートーク/大阪
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「慰安婦」終わっていない/韓国大統領が日本に/「三・一式典」
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「慰安婦」から憲法考える/9条の大切さ学ぶ/相模原で集い
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「赤旗」創刊90周年/シリーズ戦争とどう向き合ってきたか/真実語り継ぎ歴史に刻む
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「慰安婦」問題/被害者の尊厳回復を/韓国、日本に期待/再交渉は否定
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2018外交展望/「トランプ第一」脱却を/政府元高官からも苦言次々
2018年12月28日
♪少女は静かに座っている/戦争の暴力に奪われた過去―。
「愛知教職員合唱団きぼう」のメンバーは26日、在韓日本大使館前で韓国の市民団体が毎週開催している「慰安婦」問題の解決に向けた水曜デモに参加し、「侵略と暴虐の歴史を忘れず、二度と繰り返さない」との思いを込めた創作曲「ソウルの少女」を歌いました。
曲のモチーフは、同デモが1000回目となったことを記念して、2011年に市民団体が建立した「平和の少女像」です。あいさつにたった団員は、「(近代の日本が行った)侵略と加害の歴史に正面から向き合い、反省を重ねると共に『同じ過ちは二度と繰り返さない』として行動する意思を持たなければ、みなさんと平和的・友好的な関係は結べない」と述べ、同曲に込められた思いを語りました。
「ソウルの少女」は、団員の伊藤武和さんが原詞を書き、団員たちが議論を重ね、完成させたものです。当初は、重いテーマで歌えないとの声もありましたが、学習会などで少女像に込められた思いなどを学び、日本政府への怒りや、「慰安婦」被害者に寄り添いたいという思いを共有し、歌詞をまとめていきました。
同日のデモは寒波のなか、中高生をはじめ数百人が集まりました。歌詞は韓国語も混じっており、歌い終わると参加者から温かい拍手が送られました。
(栗原千鶴)
2018年12月27日
1939年から45年まで中国の海南島を占領した旧日本軍は、現地住民を強制的に働かせて、軍用の橋や道路、飛行場の建設に従事させました。同島南部に住む黄開漢さん(92)に当時の強制労働の経験を聞きました。(中国海南省保亭リー族ミャオ族自治県=釘丸晶 写真も)
黄さんは15歳の時、日本軍によって橋の建設作業に従事させられました。黄さんが住む村(保亭リー族ミャオ族自治県加茂鎮什杏村)や周辺の村から集められた住民二十数名が作業。交代で駆り出され、1回につき2日ほど働かせられました。
黄さんはコンクリートの型枠を外す作業や石をかくはん機に運ぶ作業などをやらされました。作業には老若男女問わず従事し、石を運ぶ作業では1日に5回、1回に約15〜20キロの石を運ばなければいけませんでした。
川に潜って川底から砂や石を運び上げる作業をする人たちもいて、規定の分量を運び上げないと、監視者からこん棒でめった打ちにされ、川に流されました。黄さんはその光景を見て「非常に怒りを感じたが、まだ幼くてどうしようもなかった」と振り返ります。
他に6〜7人に手をつないで一列に並ばせ、電流を流す罰もありました。黄さんは「人が次々と倒れていった。死ぬ可能性もあり、大変危険だった」と話します。黄さん自身も草刈りの作業中に立ち上がって休もうとしたところ監視者に見つかり、ひどく殴られました。
黄さんが強く印象に残っているのは日本軍による公開処刑でした。日本軍の大隊長は集めた住民の前で、日用品を販売する雑貨店の店主をひざまずかせ、首を日本刀で切り落としました。「血しぶきが高くあがり、とても怖かった」
店主は日本軍を苦しめていた中国共産党のゲリラ部隊との関係を疑われ、見せしめのために処刑されました。
戦後もこの村で暮らす黄さんは「周りの同年配の人はみな同様の経験をしているが、だんだん少なくなってきている。生き残った最後の人間が伝えていかないといけない」と言います。
最後に黄さんはこう訴えました。
「国家の指導者たちが握手をして歓談し、賠償を放棄したとしても、個人には訴える権利がある。(日本での)徴用工や元『慰安婦』の敗訴は道理に合わない。二度と戦争を起こさないためにも日本政府は間違いを認め、歴史を正視すべきだ。そうしてこそ両国は初めて友好的に共に前に進むことができる」
2018年12月25日
中国最南端に位置する海南島は1939年から45年まで、日本軍に占領され、多くの女性が性暴力被害を受けました。同島で元被害者のアポ(現地語で「おばあさん」の意)たちを訪ねました。
(中国海南省=釘丸晶 写真も)
海南島南部の陵水リー族自治県に暮らす卓天妹さん(93)は寝たきりで朝起きるのにも人の助けがいります。食欲もなく、食べても吐いてしまうこともあるといいます。ベッドに横たわる卓さんの腕は痩せ細り長年の苦労を感じさせました。
卓さんは1940年、14歳で日本軍に捕まります。最初は掃除や洗濯などをさせられましたが、ある晩、酔った日本兵数人に台所で襲われました。それから、昼は日本兵のために家事をし、夜は性的暴行を受けました。45年の日本の敗戦後、やっとのことで家に帰ると、両親はすでに亡くなっていました。
同島南部万寧市に住む陳連村さん(92)は13歳の時、村の近くの小山で牛を放牧中に3人の日本兵に襲われました。牛の背中から引きずり降ろされ、銃剣で脅され、農作物を保管する小屋に連れ込まれて暴行を受けました。
3年後に再び現れた日本軍は、周辺の村にいる若くて容姿の優れた女性を「後勤服務隊」に強制的に編入。その実態は、昼は日本兵のために洗濯や食事の世話などの雑用をし、夜は性的暴行を受けるというものでした。陳さんは毎晩日本兵十数人から暴行されました。
陳さんは2017年12月、中国政府に対して外交保護権を行使し、被害者と遺族への早期の謝罪と賠償を日本政府に要求するよう求める請求書を提出しました。「公正な判断を取り戻したい」と訴えています。
海南島・北部、澄邁県の中心部から車で1時間。ガジュマルやゴム、バナナの木など南国の植物が生い茂り、放し飼いの黒豚や鶏が走り回る農村に暮らす王志鳳(おう・しほう)さん(92)と李美金さん(91)も戦時中、日本兵に性的暴行を受けました。
王さんは17歳の時、祖母の家から帰る途中で日本兵に捕まり、昼は塹壕(ざんごう)を掘らされ、夜は性的暴行を受けました。
李さんも16歳の時、村に来た日本兵に捕まり、飛行場で強制労働をさせられ、夜は日本兵の相手をさせられました。毎日夜中まで、時には朝まで暴行されることもありました。
日本の敗戦後、王さんも李さんも結婚し、子どもに恵まれましたが、当時の経験はずっと隠してきました。1990年代に入り「慰安婦」被害者の調査が行われ、初めて過去の経験を語り始めました。
海南島で確認されている元「慰安婦」は、今回訪ねた4人を残すのみになりました。
同島で戦争被害者の支援活動を続けている陳厚志さん(56)は「すでにみな高齢で健康状態も心配だ。社会的な関心を高め、戦争被害者を支援し、早期に日本政府からの謝罪と賠償を勝ち取りたい。日本政府は戦争を起こし中国を侵略して女性を日本軍の慰安婦とした事実を直視すべきだ」と話しています。
2018年12月25日
沖縄県宮古島市で、昨年11月に陸上自衛隊のミサイル基地建設工事が強行されてから1年がすぎました。防衛省は今年度中にも警備隊を配備する構えです。宮古島は地下水を水源として生きる島です。沖縄戦では日本軍の大量投入で、島が戦場となり、飢えとマラリアで多くの住民が犠牲になりました。市民には「癒やしの島にミサイル基地はいらない」との思いがいまも強くあります。
(山本眞直)
大型重機の土木作業音やダンプカーなど基地建設工事の騒音が、メロン畑のビニールハウス越しに響く野原地区。「戦争につながる自衛隊のミサイル基地は絶対に受け入れない」。この地区で農業を営む仲里成繁さん(65)の変わらぬ思いです。
「陸上自衛隊 新基地建設反対」とかいたのぼりを自宅の玄関前にたてる仲里さん。市民団体の「ミサイル基地いらない宮古島住民連絡会」共同代表です。
ミサイル基地は当初、島北側の福山地区に計画。しかし近くに島最大の生活水の取水地「白川田水源」があり、「生命の水源が汚染されかねない」と市民が強く反対。防衛省は福山への配備を断念しました。
ミサイル基地は約800人を常駐させ、警備隊と地対艦、地対空のミサイル部隊を配備する計画です。島東部(保良地区)の採石場にも弾薬庫、射撃訓練場などの整備を計画しています。
この間、隊庁舎、宿舎、燃料施設、保管庫(弾薬庫)などの施設建設が強行されてきました。自衛隊は、「島の地下水への影響はない、ヘリなども飛ばない」というばかりで、市民の不安や疑問にまともに答えず、自衛隊への不満が渦巻いています。
住民連絡会は情報開示請求で自衛隊資料を入手しました。資料から、大量のジェット燃料施設、弾薬庫の存在が判明。ボーリング調査データなどから、施設周辺地下の地質が軟弱地盤で空洞や断層があるなど崩れやすく不安定であることを確認。これらを住民に説明してこなかった自衛隊を追及しています。
この中で自衛隊は「飛ばない」としてきた軍用ヘリの飛行用燃料施設があること、離島奪還作戦訓練を「陸海空の自衛隊が共同で実施し、司令部も設置される」ことなどを認めています。
鹿児島県奄美大島で自衛隊が米海兵隊と行っている上陸演習を宮古島でも実施するのか、との問いには、「現時点ではない」と回答するばかりで、否定しませんでした。
野原地区で生まれ、日本軍「慰安婦」問題を考える宮古の会代表の上里清美さん(63)は宮古島の歴史をこう振り返ります。
―沖縄戦では人口5万人弱という小さな宮古島に、旧日本軍が3万人の兵士を投入。サトウキビ畑や民家を強制収容して3カ所に飛行場を建設。島が戦場となり、食料が底をつき飢えとマラリアで住民も兵士も犠牲となった。
―戦後は日本軍司令部のあった野原岳を米軍が占領し、レーダー基地に。復帰後は航空自衛隊がレーダーサイトとして継続使用。そして今度は陸上自衛隊がミサイル部隊を常駐させる…。
上里さんは強調します。「観光客が宮古空港に降り立ち、口にするのは『空気がいいね、空が全部見えるね』です。まったり感が人気の島に、生命の水を脅かし、軍用ヘリやオスプレイが飛び交い、戦争につながるような基地はいりません」
2018年12月17日
徴用工として第2次大戦中に強制労働をさせられた韓国人への賠償を新日鉄住金と三菱重工に命じる韓国最高裁の判決が相次いで出ました。安倍政権は強制労働ではないとして企業に一切支払うなと言っています。
今回の判決を、日韓の国交正常化に当たり結ばれた1965年の請求権協定に反すると非難する日本政府の主張は一方的です。原告2人は10代のとき、「2年間の訓練で技術習得後に技術者として就職できる」との募集広告を見て応募した。ところが外出は月1、2回の許可制で賃金は貯金され通帳も印鑑も寄宿舎の舎監が保管。逃げられないよう監視され、暴力も受けた。結局賃金は未払いのまま。これを強制労働と言わず何と言いますか。
21世紀に入り、人間の尊厳を中心にする考えが広まっています。国連人権理事会をはじめ国際機関では、徴用工問題でも日本軍「慰安婦」問題でも日本政府の対応は不十分だという評価が定着しています。被告の日本企業は被害者と向き合い、和解の道を探るべきです。
この問題で日本共産党の志位和夫委員長は、侵略戦争・植民地支配と結びついた人権問題として日本政府と該当企業に痛切な反省と公正な解決を求めました。穀田恵二衆院議員は国会質問で、河野太郎外相に「個人の請求権が消滅したとは申し上げない」と明言させました。韓国メディアは筋を通す共産党に注目しています。
安倍政権に限らず日本の歴代政権は、植民地支配が合法という立場を維持してきました。日本が朝鮮半島を植民地にした1910年の韓国併合条約は両国の合意の下で交わした文面になっています。でも実態は強制です。抵抗する勢力を日本が軍事力で制圧しました。戦時中に日本の軍事企業体が多くの朝鮮人を強制動員できたのも、朝鮮が植民地だったからです。日本の市民社会に歴史の真実を見る勇気をもってほしい。
今年は南北と米朝の首脳会談が行われました。朝鮮半島和解のプロセスに日本の政府と市民が全面的に関わってほしい。その中で歴史問題も解決されていくでしょう。
聞き手・隅田哲
カン・ジョンホン 1951年生まれ。在日韓国人2世。75年、留学先のソウルで国家保安法違反容疑で拘束、死刑判決を受ける体験をもつ(2015年再審で無罪確定)。同志社大学嘱託講師。著書に『死刑台から教壇へ』。
2018年12月15日
【ソウル=面川誠】日韓・韓日議員連盟合同総会に参加するため訪韓している日韓議員連盟代表団は14日、青瓦台の大統領府を訪問し、文在寅(ムン・ジェイン)韓国大統領と会談しました。日本共産党の志位和夫委員長は、代表団の一員として発言しました。(関連2面)
冒頭、文大統領は、日韓議連代表団を歓迎し、「歴史を直視し、未来志向で、平和と繁栄に向けて協力していきたい。不幸な過去を共に克服し、真の友達の関係を築いていきたい」と表明しました。
額賀福志郎日韓議連会長は、「安倍首相と意見交換を行い、共有したこと」として、「『慰安婦』問題で『和解・癒やし財団』が解散されたこと、『徴用工』問題で韓国大法院で(賠償命令の)判決が下ったことに、安倍首相も私も、韓国の今後の対応を憂慮している。韓国政府に適切な対応を期待する」と述べました。
文大統領は、「徴用工問題」について、「この問題では、労働者個人が日本企業に対して請求した損害賠償請求権まで消滅したのではないとみている。十分に時間をかけて、知恵を集めて解決したい。この問題で両国民の敵対感情を刺激しないよう、慎重で節制された表現が必要だ。両国間の友好な情緒を損なうことは韓日の未来の発展に役立たない」と語りました。
ここで発言を促された志位委員長は、「徴用工問題の本質は、植民地支配と結びついた人権侵害というところにある。だから、『植民地支配への反省』を明記した(1998年の)『日韓パートナーシップ共同宣言』の精神に立って、被害者の名誉と尊厳が回復されるよう、日韓がともに努力していくことが大切だ」と強調。さらに、「その際、(1965年の)日韓請求権協定によって、両国間の請求権の問題が解決されたとしても、被害者個人の請求権を消滅させることはないということは、日本政府も最近も国会答弁で公式に表明していることだ。(日韓)両国政府はこの点で一致している。この一致点を大切にして、被害者の名誉と尊厳の回復にむけた前向きの解決が得られるよう、日韓の冷静な話し合いが大切だと思う」と表明しました。
文大統領は、志位氏の発言に感謝の意を述べるとともに、「個人の請求権は消滅していないということは重要なことだ。この立場に立てば、円満な解決がはかられるのではないか」と応じました。
2018年12月14日
【ソウル=栗原千鶴】韓国で日本軍「慰安婦」被害者の支援を続ける市民団体「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」(元・韓国挺身隊問題対策協議会)は12日、ソウル市内の駐韓日本大使館前で定例の水曜デモを開催し、日本政府に「慰安婦」問題の解決を迫りました。
1365回目を迎えたこの日は、保健医療労組の役員ら約120人が参加。マイクを握ったナ・スンジャ委員長は、5日に被害者の1人、金順玉(キム・スンオク)さんが96歳で亡くなったことに触れ、「おばあさんは日本政府から謝罪の言葉を一つも聞くことがなかった」と力を込めました。韓国政府の役割にも言及し、「政府は被害者を無視してはならない」と語りました。
中高生や大学生も集まり、約300人が寒風の中、「日本政府は日本軍の性奴隷制の罪を認め、心からの謝罪と法的賠償を行え」「教科書に記録し、追悼碑と資料館をつくれ」などと唱和しました。現在、韓国政府に登録されている存命中の被害者は26人です。
2018年12月8日
朝鮮半島から当時「満州」と呼ばれた中国東北部、さらに中国全土、東南アジアへと戦線を拡大していった戦前の日本が、イギリス領のマレー半島コタバルやアメリカのハワイを攻撃した、1941年12月8日から77年を迎えます。15年にわたる戦争はアジア・太平洋地域と日本に甚大な被害を及ぼし、敗戦によって「連合国軍」の占領下におかれた日本は、戦争犯罪人が処罰され、軍隊は解散、新しい憲法を制定しました。
戦争の悲惨さを直視し、平和への決意を新たに二度と悲劇を繰り返さないことを確認する日です。
最近地域の「九条の会」の集まりで、元内閣官房副長官補で安保法制=戦争法などに反対してきた、柳沢協二さんの講演を聞く機会がありました。戦争を体験した世代がいよいよ少なくなる中で、戦争を知らない親から、戦争や平和についてさらに実感が持てない子どもたちに、どう伝えるかが大切になっているという話です。柳沢さんと同世代の一人として、興味深く聞きました。
戦争は「自然災害」ではないのだから、人命を犠牲にする戦争は避け、話し合いで平和を実現することこそ、お互いの国にとって利益になることをわかってもらうしかないという講演内容は、一つの刺激になりました。
31年の「満州事変」に始まり、37年の日中全面戦争突入を経て、国際的批判に追い詰められて、戦線拡大で自らの主張を押し通そうとした戦争の誤りは明らかです。「15年戦争」とも「アジア・太平洋戦争」ともいわれる侵略戦争は、植民地とした台湾や朝鮮半島だけでなく中国大陸やアジア・太平洋の各地に大きな被害を引き起こし、多数の人命を奪いました。東京など日本各地の空襲や、せい惨な地上戦が繰り広げられた沖縄、広島・長崎への原爆投下など、むごたらしい犠牲を生みました。
亡くなった方だけでも、アジア諸国で2000万人以上、国内でも310万人を超えるとされています。中国からの強制連行や朝鮮半島からの徴用工問題、日本軍「慰安婦」問題、国内での原爆被爆者や空襲被害者の問題などは今なお責任が問われ続けています。
被害が甚大だったからこそ、戦争を体験した先輩たちは、二度と繰り返さないと誓ったのです。憲法の前文に書き込まれた「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにする」という言葉と、戦争放棄・戦力不保持・交戦権否認をうたった憲法9条は、戦後の出発点そのものです。
今年11月は、侵略を主導した戦争犯罪人が裁かれた「東京裁判」の判決から70年の節目でした。昭和天皇の責任が追及されなかったなど問題もありますが、戦後日本は判決を受け入れ、国際社会復帰の道が開かれました。
国際社会に背いて、侵略戦争と植民地支配を正当化することは、歴史の逆行に他なりません。
柳沢さんも言うように、戦争で事を構えれば、再び多くの犠牲をもたらすのは明らかです。軍拡や憲法破壊の政治を続けたあげく、9条改憲に乗り出した安倍晋三政権の危険性は明白です。
「12・8」から77年―。「安倍改憲」を阻止し、平和を生かす決意を新たにする機会にしましょう。
2018年12月2日
「ここまで続いたのは奇跡です。いろんな方の応援があればこそですね」。映画配給会社パンドラを設立して31年。ひたすら歩んできた道を記しています。
始まりは1987年、勤めていた映画社を退職し訪ねたニューヨークで映画「ハーヴェイ・ミルク」に出合ったことでした。射殺されたゲイの活動家を描くドキュメンタリー。感銘を受け「日本で上映を」と。帰国後、「体当たりで、しつこく『試写を見て』と電話したり、怖いもの知らずというか」。やっとのこと88年に公開。この出会いを「宝物」と言います。
以来、海外や日本の映画、約150本を手がけてきました。映画を買い付け、公開劇場を決め、字幕を付け、宣伝に頭を働かせ、観客に届ける―。作品と鑑賞者を結ぶ仕事は人には見えない苦労の連続です。
「作れば上映されると思っている人が多すぎますね。上映は日本の資本主義の構造に組み込まれることなのでしっかりした市場調査が必要です」。配給を引き受けたからには「作品の良いところを見つける努力」を続けます。「この感動をどう伝えようと毎日考えるのが楽しい。自分が感動するのが一番の原点ですね」
元従軍「慰安婦」の記録映画「ナヌムの家」公開(96年)では脅迫もありましたが「誰一人ひるまなかった」と社員へのまなざしの優しさ。視覚障害者向けの上映を実現したことも―。
「映画は子どもたちの情操を養います。学校での映画教室を復活してほしいですね」
(児玉由紀恵)
(現代書館・1500円)
50年、静岡県生まれ。共訳書『ディア アメリカ―戦場(ベトナム)からの手紙』ほか
2018年11月24日
韓国の大法院(最高裁)が新日鉄住金に韓国人元徴用工4人への賠償を命じた判決の意義と日本政府の対応について、長年元徴用工の代理人として裁判をたたかってきた山本晴太弁護士に聞きました。(聞き手・写真 日隈広志)
―判決をどのように受け止めていますか。
「やっと元徴用工の人たちの思いが韓国で大法院まで達した」。これが判決を聞いた時の感想です。
この裁判は、植民地支配下での奴隷的な強制労働といえる深刻な人権侵害を受けた被害者が救済を求めて提訴したものです。
「(感電死の危険のある)コークス(骸炭)を溶鉱炉に入れ溶鉱炉から鉄が出ればまた窯に入れるなどの労役に従事」「腹部を損傷し3カ月入院」「賃金を全く支給されなかった」「(逃走発覚時には)約7日間ひどく殴打され、食事も与えられなかった」「一切の休暇や個人行動を許されなかった」―。
判決はこのような実態を「日本政府の韓半島に対する不法な植民地支配および侵略戦争の遂行と直結した日本企業の反人道的な不法行為」と認定しました。その上で、原告が求めているのは未払い賃金などではなく、被告からの謝罪と反省を含めた「強制動員慰謝料」だとして賠償を命じたのです。
私は弁護士になりたての1992年、韓国南西部・光州の強制動員被害者の遺族会に呼ばれ、日本政府を被告とする裁判の準備のため、数人の弁護士とともに現地で聞き取り調査を行いました。
87年の韓国民主化以降、すでに強制動員の被害者らが声を上げ始めており、集合場所の体育館には名乗り出た被害者本人とその遺族が1000人も集まりました。「光州千人訴訟」と呼ばれたその裁判は最高裁で敗訴しましたが、日本による植民地支配の実態と、被害者がきわめて多数にのぼることを示すことができました。
それから約30年。被害者のほとんどが亡くなっています。直接本人の尊厳と名誉を回復するという点ではすでに手遅れですが、それでも判決はあのとき集まった1000人の思いも代弁したものだと思います。
―日本政府は判決を非難し続けています。
判決直後から、日本政府は韓国に対し、判決は「日韓請求権協定(65年締結)に明らかに反する」などと非難を浴びせています。請求権協定が第2条1項で、日韓両国とその国民の「財産、権利及び利益」とともに、両国と両国民の間の「請求権に関する問題」が、「サンフランシスコ平和条約第4条(a)に規定されたものも含め」「完全かつ最終的に解決された」と規定していることを理由にしました。
しかし、外務省の柳井俊二条約局長が「(請求権協定が)個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたものではない」(91年8月27日、参院予算委員会)と述べ、日本の最高裁も判決で「ここでいう請求権の『放棄』とは、請求権を実体的に消滅させることまでを意味しない」(2007年4月27日)と指摘するなど、請求権協定によって国家間の外交保護権は消滅したが、個人の請求権は消えていないと繰り返し表明しています。14日の衆院外務委員会での、日本共産党の穀田恵二議員の質問でも確認されました。
日本政府と最高裁は個人の請求権は消えていないが、裁判で行使はできなくなったと言っています。しかし世界人権宣言第8条など国際人権法の発展方向は、裁判を受ける権利を最大限保障することで人権保障を実現しようという考え方です。
日本政府がマスコミ向けに請求権協定を挙げて、あたかも個人の請求権も消滅したかのように「解決済みだ」と強調し続けるのは本音を隠すための「二枚舌」です。被害者の思いをあきらめさせようとする侮辱的な振る舞いだと言われても仕方がありません。早急に改めるべきです。
―日本による植民地支配は判決でどう論じられていますか?
大法院判決は、請求権協定の締結交渉で日本が一貫して植民地支配の不法性を否認し、請求権協定の基礎となったサンフランシスコ平和条約も日本の植民地支配の責任を追及していないと判断しました。だから不法な植民地支配に直結した慰謝料の請求権は請求権協定の適用範囲外だとして、請求権協定によって日韓両国の外交保護権も、個人の請求権も消えていないと結論付けたのです。
日本政府と最高裁、韓国政府と大法院の4者は、少なくとも「日韓請求権協定の下で個人の請求権は消えていない」との見解で一致しているのです。
今すべきことは、どうやって早急に被害者の人権を回復するかという冷静な議論です。これまで西松建設や三菱マテリアルなどの日本企業には、中国人被害者に対して強制連行の事実と責任を認めて謝罪し、その証しとして企業が資金を拠出して基金を設立し、被害者全体の救済を図ることで問題を解決した例があります。新日鉄住金も判決を受け入れるとともに、自発的に人権侵害の事実と責任を認め、その証しとして謝罪と賠償を含めて被害者と社会が受け入れることができる行動が求められています。
―いま問題の解決に向けて大事なことは何でしょうか。
過去に何があったのかということを全ての出発点にしないといけません。大法院判決の責任追及は新日鉄住金にとどまらず、過去の不法な植民地支配の責任を請求権協定の交渉過程でも認めなかった日本政府の姿勢、さらには植民地支配の責任そのものを不問に付したサンフランシスコ平和条約にも及びます。被害者全体の真の解決に向け、日本には過去の歴史に誠実に向き合い、韓国と話し合うことが求められているのではないでしょうか。
韓国の憲法前文を見ると、日本の植民地支配に対する民衆の抵抗の三・一独立運動(1919年)が明記され、その精神などを継承したのが現在の韓国だとしています。ここから判決は自国の憲法の忠実な実践だと見ることができます。
長い目で見れば、植民地支配は不法だという方向に進んでいます。紆余(うよ)曲折はありつつも、今回のような判決が積み上がり国際法も変えていくでしょう。
やまもと・せいた 1953年兵庫県生まれ、弁護士。「光州千人訴訟」、韓国人元日本軍「慰安婦」・女子勤労挺身(ていしん)隊員による「関釜裁判」、「韓国人元BC級戦犯公式謝罪・国家補償請求訴訟」などで原告を弁護。
2018年11月23日
日本共産党の志位和夫委員長は22日、国会内での記者会見で、韓国が、日本軍「慰安婦」問題に関する日韓政府間合意に基づいて設立された「和解・癒やし財団」の解散を発表したことへの受け止めを問われ、以下のように述べました。
一、日本共産党は、第27回党大会決定で、2015年12月の日本軍「慰安婦」問題についての日韓外相合意について、「この合意はあくまで問題解決の出発点であり、すべての『慰安婦』被害者が人間としての尊厳を回復してこそ真の解決となる。そのために日本政府は韓国政府と協力して誠実に力をつくさなければならない」と表明しました。
こうした立場にたって、日本政府は、合意をめぐる対立を解消し、すべての被害者の名誉と尊厳を回復するために、韓国政府と誠実な話し合いを行うことが必要です。
一、そのさい、安倍首相が、合意後の国会答弁(16年1月18日、参議院予算委)で、「性奴隷といった事実はない」などと「慰安婦」問題の核心を否定する発言を行ったことが、「慰安婦」被害者の批判を呼び起こし、問題解決を遠ざけたことは事実です。日本政府、とりわけ安倍首相が、「合意」で表明した「心からのおわびと反省の気持ち」にふさわしい行動をとってこそ、問題解決の道が開かれることを強調したいと思います
2018年11月22日
韓国の女性家族省は21日、日本軍「慰安婦」問題に関する2015年末の日韓政府間合意に基づいて設立された「和解・癒やし財団」について、「解散を推進し、このための法的手続きを踏む予定」だと発表しました。実際の解散は6カ月後から1年後になる見通し。
昨年5月に発足した文在寅(ムン・ジェイン)政権は、日韓合意の検証報告書を同年12月に発表し、「戦時の女性人権に関する国際社会の規範として位置付けられている被害者中心のアプローチが、慰安婦交渉過程で十分に反映されず、一般的な外交案件のように駆け引きの交渉で合意が行われた」と指摘。これを受け文大統領は、「この合意によって慰安婦問題が解決することはできない」との声明を発表していました。
陳善美(チン・ソンミ)女性家族相は21日の報道機関向けの文書を通じて、「『被害者中心主義』原則の下、和解・癒やし財団についての多様な意見取りまとめの結果などを土台にして、財団の解散を推進することになった」と述べ、「女性家族省は今後も、日本軍『慰安婦』被害者の方々の名誉・尊厳回復のための政策推進に最善を尽くす」と表明しました。
日韓合意は、日本政府が拠出する10億円を原資に、韓国政府が「慰安婦」被害者を支援する財団を設立し、被害者の「名誉と尊厳の回復、心の傷の癒やしのための事業を行う」ことを確認。これらの措置が履行されることを前提として、「慰安婦」問題が「最終的かつ不可逆的に解決される」としています。
韓国側は日韓合意の破棄や再交渉は求めず、財団の資金として日本政府が拠出した10億円の扱いについて「外務省が日本政府と協議を進める」としています。
2018年11月22日
日本共産党は2015年12月の日本軍「慰安婦」問題に関する日韓合意について、「あくまで問題解決の出発点であり、すべての『慰安婦』被害者が人間としての尊厳を回復してこそ真の解決となる」(17年1月、第27回党大会決議)と強調してきました。
日韓合意は、「全ての元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復、心の傷の癒やし」を「日韓両政府が協力」して行うとしています。21日に韓国政府が発表した「和解・癒やし財団」解散の方針は、合意の破棄や再交渉は求めていません。事態を打開し、問題の真の解決に向かうため、両国政府は真摯(しんし)に話し合う必要があります。
岸田文雄外相(当時)は合意発表の記者会見で、「安倍内閣総理大臣は、日本国の内閣総理大臣として改めて、慰安婦として数多(あまた)の苦痛を経験され、心身にわたり癒やしがたい傷を負われた全ての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを表明する」と述べました。
ところが安倍首相は合意直後16年1月の国会答弁で、「性奴隷といった事実はない」「軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述は見当たらなかった」と、「慰安婦」問題の核心を否定する発言を繰り返しました。「慰安婦」被害者らは、日韓合意が自分たちとの十分な相談なしで行われ、安倍首相の「おわびと反省」の言葉も外相による代弁だったことなどに不満でしたが、首相発言にさらに反発しました。
国際的にも、国連の女性差別撤廃委員会が、日本政府に対し「指導者や公職にある者が『慰安婦』問題に対する責任を過小評価し、被害者を再び傷つけるような発言をやめる」よう求め、人種差別撤廃委員会は、「被害者中心のアプローチで『慰安婦』問題の永続的な解決を確保すること」を勧告しています。
安倍首相は、10億円の拠出をもって「日本側は、約束したことを、全て誠意を持って既に実行している」(18年1月)と述べ、日本側が行うべきことは何もないと“解決済み”との姿勢を強調してきました。しかし、それでは問題解決しません。日韓合意で表明した日本政府の「責任」「心からおわびと反省」にふさわしい行動をとる責任があります。
安倍政権は、強制使役・性奴隷化という日本軍「慰安婦」問題の本質を認め、被害者に対する真摯な謝罪、事実の徹底した解明、過ちを繰り返さないための歴史教育などを行っていくべきです。過去の歴史と誠実に向き合う立場で、改めて韓国側と話し合うことが求められています。
2018年11月13日
アルゼンチンの軍事政権下で、約3万人の男女が“強制失踪”させられ、中には性暴力を受け続けた女性もいました。シンポジウム「正義を求める闘いとその記録 性暴力を人道に対する犯罪として裁く!」(アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」=wam=などが共催)から紹介します。
(手島陽子)
登壇したノラ・コルティーニャスさん(88)は、強制失踪者の母親グループ「5月広場の母」の一人です。1976年に軍事クーデターが起きたあと、反政府活動家を中心に若者たちが次々と失踪しました。77年、コルティーニャスさんの息子(当時24歳)は、帰宅途中に行方不明に。その夜、息子の家に軍と警察が強制捜査に入りました。コルティーニャスさんは息子を捜し歩きます。
「何が起きたかわからず、人々は恐怖におびえていました。ナチスのようなやり方でした。軍事政権は反対者を絶滅しようとしていたのです」とコルティーニャスさん。多くは勤労者と学生で、小さな子どもも連行されました。失踪者の30%は女性だったといいます。
「母親の胎内にいた赤ちゃんも犠牲となりました。母親のヴァギナにスプーンを入れて、電気ショックを与え、胎児への虐待が行われたのです」
失踪者の多くは、いまでも戻ってきません。遺体は発見されないように、多くが海に投げ捨てられたと言われています。
次に登壇したグラシエラ・ガルシア・ロメロさんは生存者の1人。ブエノスアイレスの路上で車に押し込まれ、ESMA(海軍技術学校)に連行されました。
「足かせと手錠をつけられ、頭に袋をかぶせられました。尋問、拷問、略奪が行われ、裸にされて高電圧をかけられた人もいました」。足蹴(あしげ)にされたり、さわりまくられたり、入浴をじっと監視されたり。ロメロさんは“544”と呼ばれました。
「私たちはほかの建物に移動させられ、ESMAのトップ・アコスタ(海軍少佐)が士官たちに命じて、組織的な性的暴行を行いました。私もアコスタにアパートや別荘に連れていかれ…」
やがて、ロメロさんは自宅に帰されましたが、監視され続けました。82年、マルビーナス(フォークランド)戦争でアルゼンチンが敗北し、民主化がはじまって、ようやく自由の身となりました。
軍政トップは刑事裁判で訴追されましたが、政府はたびたび軍事政権の関係者を免罪しようとしました。コルティーニャスさんたちは、事実を突きつけて責任者を裁くことを求め続けました。
「性被害者たちは最初、沈黙していました。夫にも子どもにも、性的暴行されたことを話せませんでした。(戦時性奴隷制度を告発して)ノーベル平和賞を受賞したナディア・ムラドさんの苦しみは、私たちが受けたことと信じられないほど似ています」(ロメロさん)
2005年、ロメロさんは、裁判の原告となりました。軍事政権下では、ほとんどすべての拘禁施設での性暴力が組織的なものであったことが、裁判を通して明らかとなりました。
最後に発言したベロニカ・トラスさんは、市民団体「メモリア・アビエルタ」の代表です。圧政の下で人権団体が残してきた記録や被害者たちの記憶を、保存し広げる活動をしています。「日本で、従軍慰安婦の記憶にたいして、敵対する勢力がおり、戦時性奴隷制度の認識を広げることがいかに困難かを聞いています。私たちの記録は軍政下の危険な状況の中で集められ、その後の裁判などで、どれほど深刻なことが起こっていたかを社会全体に喚起する役割を果たしました」と語りました。
「性暴力を受けた時に女性の中に何が起きるのか、何が刻まれるのか知ってほしい」とロメロさんは訴えます。
「破壊の戦略として性暴力が用いられました。それを肉体的、精神的に回復することはとても難しかった。告発するときには、羞恥(しゅうち)心、罪の意識、恐怖心に襲われました。日本でも、責任を追及する方法はあると思います」
2018年11月11日
日本軍「慰安婦」問題の記事をめぐり、桜井よしこ氏らから名誉を毀損(きそん)されたとして、元朝日新聞記者の植村隆氏が名誉回復を求めた「植村裁判」。植村訴訟札幌弁護団は9日、札幌地裁の不当判決に抗議の声明を発表しました。
声明は、判決が「ねつ造」の事実を認め、桜井氏も植村氏の名誉毀損を認めたのに、「『ねつ造』したと信じたことには理由がある」と判断したことについて「論理の飛躍がある」と批判。桜井氏が植村氏を取材しないばかりか、訴状や論文の誤読などずさんさが明らかになったのに、判決は、桜井氏がジャーナリストであることを無視し、取材方法と誤解を免責したのは到底許されないと指摘しています。
原告と弁護団は、控訴し、植村氏の名誉回復のために全力でたたかうとしています。
植村裁判を支える市民の会も同日、控訴審でこれまで以上の力を結集してたたかうとの声明を出しました。
2018年11月10日
日本軍「慰安婦」の報道をめぐって「捏造(ねつぞう)記事」などと激しい攻撃を受け、名誉を毀損(きそん)されたとして、元朝日新聞記者の植村隆氏が文芸春秋社や西岡力氏(現麗澤大学客員教授)らを訴えていた裁判で、札幌地裁(岡山忠広裁判長)は9日、原告の請求を棄却する不当判決を出しました。
1991年に「朝日」に掲載された植村氏の記事をめぐり、週刊誌などで桜井よしこ氏らが「ねつ造」と決めつけたことで、雑誌やインターネット上で植村氏への攻撃が拡大。講師をしていた大学や家族への脅迫にまでエスカレートしました。
判決は、桜井氏の「ねつ造」との表現で植村氏の名誉を毀損したことを認めたものの、桜井氏が日本政府を訴えた「慰安婦」女性の訴状や、植村氏の妻が太平洋戦争犠牲者遺族会の幹部の娘であることで、植村氏の記事が公正さを欠いたと疑問を持ち、「ねつ造」と信じたことには理由があると切り捨てました。名誉毀損での慰謝料請求を求めた原告側の訴えを退けました。
裁判後、記者会見した植村氏は「判決は到底承服できない。高裁で不当判決を打ち砕いて、『ねつ造記者』ではないことを証明していく」と力強く語り、集まった多くの市民から拍手が上がりました。
2018年11月4日
今回の韓国最高裁の判決は、長い間たたかってきた被害者をはじめ支援者らの運動の成果です。
この問題は、すべての被害者が亡くなれば終わるというものではありません。21世紀になって、世界では植民地支配の責任を問う被害者とその子孫たちの声がいっそう高まっています。
2001年に南アフリカで開かれた植民地主義や人種主義、奴隷制などを議論したダーバン会議では、500年近く前の問題が話し合われました。イギリス政府は、反植民地独立運動「マウマウ団の乱」での弾圧について、公式謝罪がなかったものの、遺憾の意を表明し、被害者に補償金を支払いました。
日本では今回の判決が、1965年の日韓請求権協定を壊すものであるとか、韓国の司法を疑うような、否定的に論じる言論や専門家が多いです。しかし、いまこそ植民地支配の被害者をないがしろにしてきた現在までの日韓関係を見直し、再出発する絶好の好機です。
なぜ徴用工問題がいまだに解決していないのか、なぜ2015年に日韓両外相が結んだ「慰安婦」問題の解決に向けた「日韓合意」がうまくいっていないのか―。それは加害者である日本政府や日本企業の責任が不明確であることから、被害者たちが納得していないからです。
多くの日本の人に、こうした植民地支配および戦争の被害がどういうもので、現在までに被害者がどのような人生を歩んできたのか知ってほしいです。
日韓両国がともに被害者を中心に考え、解決に向けて知恵を出し合うときです。
2018年10月28日
セクハラを許さず、被害者を孤立させない社会をつくろうと「おんな・こどもをなめんなよ!の会」が主催する集会が27日、大阪市で開かれ76人が参加しました。
岡野八代同志社大学大学院教授は、自民党の杉田水脈議員による「LGBTは生産性がない」発言は、憲法で保障された国民の人権を抑圧するものだと指摘。その発言を許し、女性への差別や暴力を許容する安倍政権に立ち向かっていかねばならないと話しました。
方清子さん(日本軍「慰安婦」問題・関西ネットワーク)は、韓国では「慰安婦」が実名で名乗り出たことがきっかけとなり、性暴力被害者と市民が運動をつくってきたことを報告。日本の若者と韓国の「慰安婦」の交流についても紹介しました。
グループ討論では、「民主主義が破壊されるような政治と、セクハラ問題は深く関わっているとわかった」「男女が平等な社会でないと男性も生きにくいと感じた」「岡野さんの話を聞き、杉田発言が当事者にとってどれだけショックか実感した。怒りを忘れないようにしたい」などの意見が出されました。
2018年10月13日
生きているとはどういうことか。それを大本とする生命科学の研究に光を当てた今年のノーベル医学・生理学賞。受けた本庶佑(ほんじょ・たすく)さんの著書『ゲノムが語る生命像』は示唆に富んでいます▼昨日の本欄にも通じますが、遺伝情報の解明で地球上の生物は一つにつながっていることが事実となった。われわれは一つの生命体から何十億年もかかって進化してきた一族の一員である。そして、進化の過程の多様性こそ生命体の本質だと説きます▼人類が肌の色や民族のちがいを強調し、命さえ奪い合ってきた愚かさを教えてくれます。性暴力の根絶を訴えノーベル平和賞を受賞した2人の背景からも少数民族の迫害や民族紛争がみえてきます▼口にするのもおぞましい民族浄化や戦時下の集団レイプは、差別化をはじめ優位性の誇示や恐怖心を植え付けて支配しやすくする手段とされてきました。まさに「戦争の兵器」として▼戦前の日本軍慰安婦問題も根っこは同じです。過去の話ではありません。今もヘイトスピーチによる人種差別、女性や性的少数者をおとしめる発言が政権与党から相次いでいます。人びとの間に格差をひろげる社会はこうした意識を助長します▼「人間社会において個性と多様性を尊重することが、種の存続にとってもきわめて重要」と本庶さん。動物としてのヒトが社会生活を営み、他を脅かすことなく、それぞれが幸福な生活を送るにはどうしたらいいのか。未来を開く鍵は進化を含めたわれわれ自身の歴史のなかにある、と。
2018年10月12日
【北京=釘丸晶】中国で昨年、旧日本軍による「慰安婦」被害者を題材にしたドキュメンタリー映画として大ヒットを記録した「二十二」(郭柯〈かく・か〉監督)の興行収入など約1000万元(約1億6300万円)が上海師範大学教育発展基金会に寄付されることが分かりました。同基金内に「慰安婦研究と援助」特別プログラム基金が設けられます。同映画の公式微博(中国版ツイッター)で8日に発表されました。
発表によると寄付の目的は元「慰安婦」たちの生活援助や研究・調査のため。寄付金は総額1008万6003・95元になり、郭監督のほか、同作スポンサーで女優の張キン芸(ちょう・きんげい)さんなどが寄付。映画公開のための経費としてクラウドファンディング(インターネットを介した資金調達)で3万2099人から集められた金額も寄付に当てられます。
「二十二」は戦時中に日本軍から性暴力を受けた被害者22人を取材したドキュメンタリー。昨年8月、中国国内で公開上映されました。中国メディアによるとドキュメンタリー映画で初めて興行収入が1億元を突破。最終興行収入は1億5000万元を超えました。
2018年10月11日
陽子 今年のノーベル平和賞は、紛争下での性暴力の根絶を訴え、行動してきた2人が受賞したね。
晴男 コンゴ民主共和国で医師として性暴力被害者の救済に取り組んできたデニ・ムクウェゲさん(63)と、過激組織ISに性的暴力を受けた体験を語り世界に行動を促してきたナディア・ムラドさん(25)だね。
陽子 コンゴは1990年代から大規模な内戦が起き、戦闘員らにレイプされた女性が急増した。ムクウェゲさんは20年近くにわたり、被害女性らの治療や支援を続けてきたというわね。
晴男 ムラドさんはイラク北部の少数派ヤジディ教徒だけど、2014年に村がISの侵略を受けたときに拉致され「性奴隷」として繰り返し暴力を受けた。16年の国連本部での演説でその体験を語りながら、女性への暴力を容認してはならないと訴えた。
陽子 ノーベル賞委員会は授与理由を「性暴力という戦争犯罪に焦点を絞り、なくそうと努める重大な貢献をした」と発表したわ。ひどいことだけど、紛争地ではレイプは女性を恐怖で支配し、地域社会を破壊する武器としてもちいられ続けてきたわ。
晴男 旧ユーゴ戦争では武器としての性暴力が問われた。その後、98年の国際刑事裁判所の設立を定めたローマ規定や08年の安保理決議でも性暴力は戦争犯罪と定められた。しかし紛争下での性暴力は続いてきたんだ。
陽子 だからこそ委員会は問題の深刻さを改めて訴え、根絶への行動を促すために2人を選んだ。国連のグテレス事務総長は2人の受賞は「恥の烙印(らくいん)を押され、隠され、忘れ去られてきた世界中の無数の被害者の存在を認めるものだ」と指摘したわ。
晴男 今年は性被害の告発運動「#MeToo(私も)」が世界中に広がった年だ。紛争地だけでなく、多くの人々が性被害の深刻さを身近な問題として認識し始めた。両氏の受賞は性暴力根絶の運動を後押しすることになるね。
陽子 戦時下の性暴力というなら、旧日本軍の「慰安婦」問題は避けて通れない。日本政府はこの問題にきちんと向き合わないとね。
2018年10月10日
今年は、韓国の主要都市で大型国際美術展があわせて開催される年だ。9月に光州と釜山の二つのビエンナーレを訪れ、韓国美術界の空気の変化を感じたので、その様子を報告しておきたい。
「光州ビエンナーレ」は、アジアにおける国際美術展の草分けである。民主化運動の歴史ある都市として人権や民主主義を訴える姿勢に特色がある。今回は「想像された境界」をテーマに、43カ国から165作家が出品している。11人にも及ぶキュレーター(芸術監督)が企画したセクションが七つ以上もあり、それぞれ独立した展覧会のようだ。
たとえば、ビエンナーレ展示館の冒頭「想像された国家/モダン・ユートピア」は、ブラジル建築の柱を再現したL・マイラなど、第三世界に見られた近代国家の理想的イメージを回顧する。続く「境界という歓迎に直面して」で、インドネシアにいるアフガンからの難民に取材したT・ニコルソンの映像と立体など、アジアの複雑な移民の問題に光をあてる。
光州事件のインタビュー映像を見せるK・アッティアは、旧国軍病院の当時拷問のあった精神病棟でも室内に木柱を展示していた。また、前回から会場となった新しい国立アジア文化殿堂では、軍事境界線近くの村で滞在制作した映像作品、A・V・ロハス《星たちの戦争》が出迎えてくれる。後半の山場「生存の技術‥集結する、持続する、変化する」では、多くの韓国作家が取り上げられ、日本の壷井明も原発事故の絵画と「従軍慰安婦」のインスタレーションで注目を集めていた。最後の「北朝鮮美術‥社会主義リアリズムのパラドックス」は、現代北朝鮮の精緻な水墨・彩色画を並べて大きな話題であった。
「釜山ビエンナーレ」は、毎回美術館を舞台としたオーソドックスな作品展示に特徴がある。開館したばかりの釜山現代美術館と旧韓国銀行ビルが会場だ。展示監督にC・リクペロ、キュレーターにJ・ハイザーを迎え、34カ国から66作家が参加する。「たとえ離れていても」をテーマに、冷戦時代の記憶、民族の分断に対する問題意識がより鮮明だ。たとえば、離散家族の番組を放映したテレビ局のスタジオを再構成するイム・ミヌク、中国・日本・中央アジアに離散した民族の民謡を対比するチュ・ファンなど、韓国の歴史をふり返る作家も多い。
日本の田村友一郎は、横須賀の駐留米軍によって生まれたジャンパー「スカジャン」を掲示する。また平壌の万寿台創作社に労働者像の彫刻制作を依頼したO・ラリック、プロパガンダのイメージを引用して壁画を作るレスター&ルントら、北朝鮮に関わるプロジェクトが象徴的に配される。北の闇市でも人気のチョコパイを来場者が受け取って食べるチョン・ミンジョンの参加型作品は、体制を超えて人がつながる可能性を示す。国境線の揺らぐ東アジアの地図を描くJ・スヴェノンソンの平面作品には希望が託されていた。
4月の南北首脳会談以後、朝鮮半島をめぐる情勢は大きく変化しつつある。韓国での南北融和に向けた期待の高まりが、展覧会を通しても十分に伝わってきた。韓国の美術界は、分断を克服する新しい時代の到来を見つめている。
(たけい・としふみ 美術評論家)
両展とも11月11日まで開催
2018年10月4日
吉村洋文大阪市長は2日、60年以上続く同市と米サンフランシスコ市の姉妹都市関係を解消するとサ市長に通知しました。理由は米市民団体が建立した旧日本軍「慰安婦」像を昨年11月にサ市が市有化したことです。
「慰安婦」像の碑文は、アジア太平洋戦争で女性たちが「日本帝国軍によって性的に奴隷化された」などと記述。吉村市長は碑文を「不確かで一方的な主張」として、サ市長にくり返し書簡を送り、市有化した像を撤去しないなら姉妹都市関係を解消すると明言していました。
サ市では2013年、「慰安婦制度は必要だった」などとする当時の橋下徹大阪市長の発言に対し、同市議会が発言撤回を求める決議を全会一致で採択。市民による「慰安婦」像設置の動きが起こりました。15年末に就任した吉村市長も橋下氏と同じ立場の主張をくり返し、聞き入れられないと姉妹都市解消を述べたて、旧日本軍が女性たちに性行為を強制した「慰安婦」制度の事実をゆがめた議論を振りまいてきました。
安倍首相もサ市の「慰安婦」像市有化を「極めて遺憾」と述べ、市有化しないよう日本政府として同市に申し入れたと昨年11月の国会で答弁しました。
今年3月、サ市を訪ね市民団体と交流した渡部結日本共産党大阪府委員会国政対策委員長は語ります。「姉妹都市関係は親善交流を強めるためのものです。吉村市長の考えをサンフランシスコ市と市民に押し付けるために姉妹都市関係を利用するのは、吉村氏による市政の私物化にほかなりません。日本政府に対して真相解明を求めるならまだしも、サンフランシスコ市と市民に矛先を向ける吉村市長の姿は国際社会から到底受け入れられません」
2018年10月3日
2日に発足した第4次安倍改造内閣の新閣僚の横顔を紹介します。(閣僚名簿順、留任閣僚を除く。敬称略)
初入閣。元大蔵相・坊秀男衆院議員の秘書、和歌山県議会議員、海南市長を経て、02年に初当選。今年3月の森友疑惑に関する佐川前理財局長への証人喚問では「政治家の関与はなかった」と“やらせ質問”。
西日本豪雨の際に首相らが出席して批判を浴びた「赤坂自民亭」は、自身の発案で13年に始まったもの。ブログで「(報道陣から)大雨の質問はなかった」と言い訳しました。
神道政治連盟の国会議員懇談会、日本の領土を守るため行動する議員連盟(会長・山谷えり子参院議員)に名前を連ねています。
衆院和歌山2区、当選7回、66歳、無派閥。
初入閣。2012年の総選挙で初当選。17年総選挙の「毎日」アンケートで、9条をはじめとする憲法改定に「賛成」と明言。自身のホームページでも、柱の一つに「自衛隊を憲法に明確に位置づけ」を挙げています。
「毎日」アンケートでは、非核三原則のうち「持ち込ませず」の見直しについて「議論すべきだ」、核武装について「今後の国際情勢によっては検討すべきだ」とも答えています。
「神道政治連盟国会議員懇談会」会員です。
衆院岡山2区、当選3回、53歳、石破派。
安倍首相が自民党総裁に返り咲いた2012年総裁選で推薦人となり、首相補佐官、総裁特別補佐官を歴任するなど安倍首相を支えてきました。
17年5月、安倍首相が自衛隊明記の9条改憲を表明すると、自民党憲法改正推進本部事務局次長として党内をまとめる先頭に立ち、テレビ討論などで教科書に自衛隊違憲論が掲載されていることを批判し安倍改憲推進の論陣を張りました。
カジノ議連(国際観光産業振興議員連盟)のメンバーとして、多くの国民が反対する賭博場・カジノの合法化を目指しています。
衆院埼玉8区、当選6回、52歳、細田派。
第1次安倍内閣で首相補佐官(経済財政担当)を務め、第2次内閣での復興相をへて再入閣した首相の側近。自民党憲法改正推進本部の事務総長として今年3月、9条に自衛隊保持を明記するなどの条文案をとりまとめた中心人物の一人です。
利用者負担増や給付削減が続く介護保険制度の導入(2000年度)や、年金制度改悪も旧厚生政務次官として推進。超高額薬を生む算定制度の見直しが求められる一方、16年には製薬産業政治連盟からパーティー券を計40万円分購入してもらっています(総務省届け出分)。
衆院福島2区、当選8回、67歳、岸田派。
初入閣。安倍政権の農協「改革」チームの座長や、農水副大臣を歴任。2012年の総選挙では環太平洋連携協定(TPP)への交渉参加反対を掲げながら、16年のTPP交渉参加は「大きな意義があった」と態度を一転させました。日本の農林漁業を破壊に導く一人です。
日本の過去の侵略戦争を正当化する議連「日本会議国会議員懇談会」、刑法が禁じるカジノの合法化を推進するカジノ議連(国際観光産業振興議員連盟)に所属しています。
衆院北海道2区、当選6回、67歳、二階派。
初入閣。90年の総選挙で初当選。04年、米国の大学院を卒業したとの学歴が虚偽だったとして文部科学副大臣を辞任。選挙公報にも同様の記載をしていました。
17年総選挙の「毎日」アンケートで、沖縄県名護市辺野古への米軍新基地建設で「沖縄県が譲歩すべきだ」と回答。憲法9条については「改正して、自衛隊の役割や限界を明記すべきだ」と答えました。「神道政治連盟国会議員懇談会」の会員です。
衆院福岡5区、当選8回、74歳、麻生派。
2006年の第1次安倍内閣で外務副大臣、12年には自民党安全保障調査会長などを経て初入閣。自衛隊海外派兵を主導する自民党国防族の代表格の一人です。10年に発足したカジノ議連(国際観光産業振興議員連盟)の幹事長を務め、カジノ実施法の強行成立(7月20日)を後押ししました。
03年の衆院選で、毎日新聞の「日本の核武装構想について」の見解を聞くアンケートで「国際情勢によっては検討すべきだ」と回答しています。
衆院大分3区、当選8回、61歳、麻生派。
初入閣。2015年に衆院厚生労働委員会委員長として労働者派遣法改悪法を職権で強行審議、採決を強行。「海外派遣自衛隊員を支援する国会議員の会」に参加し、憲法違反の戦争法の旗振り役を務めます。
「日本会議国会議員懇談会」、「神道政治連盟国会議員懇談会」に所属しています。
1975年から松戸市役所に勤務し、96年の総選挙で初当選。01年から小泉内閣で内閣府大臣政務官を務め、自民党政務調査会副会長を歴任。
衆院千葉6区、当選7回、68歳、竹下派。
初入閣。愛媛県議を6期・21年務めた後、04年参院選で初当選。元国土交通副大臣、参院議院運営委員長。2015年の安保法制=戦争法の審議で、野党の「戦争法案だ」「徴兵制につながる」との指摘に対し、「情緒的な議論だ」「このような議論が国民の理解を妨げた」と発言しました。
13年、米紙に掲載された「慰安婦」の強制性と日本政府の責任を否定する意見広告に賛同。「神道政治連盟国会議員懇談会」の会員で、「日本会議国会議員懇談会」にも名を連ねています。
参院愛媛選挙区、当選3回、63歳、細田派。
富山県議を経て2005年に小泉内閣の下で農林水産副大臣に起用され、17年に安倍首相補佐官に就任、初入閣。
16年には環太平洋連携協定(TPP)会合前に日本養鶏協会の栗木鋭三会長から現金を受け取っていたとして市民団体「政治資金オンブズマン」らから政治資金規正法違反の疑いで当時の森山裕農林水産相らとともに告発されました。
17年の衆院選で、沖縄県名護市辺野古の新基地建設をめぐる考えを聞く毎日新聞のアンケートで「沖縄県が譲歩すべきだ」と回答しています。
衆院富山2区、当選8回、67歳、岸田派。
初入閣。学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐり「総理のご意向」と書かれた内閣府文書の存在を証言した文部科学省の前川喜平前事務次官に対し、「違和感がある」と個人攻撃。インターネットの動画サイトで中継された党首討論で、国会議員の身分を隠して党首への中傷発言を投稿したと報道され、政治家としての品格を疑う声が出ています。
「神道政治連盟国会議員懇談会」、「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」に所属し、靖国神参拝を繰り返しています。
衆院香川1区、当選7回、60歳、岸田派。
初入閣。05年総選挙で郵政民営化に反対した自民党議員の「刺客」として出馬し、初当選。10年、参院にくら替え。
自民党改憲案起草委員会のメンバー。12年、同党の改憲案についてツイッターで、「権利は天から付与される、義務は果たさなくていいと思ってしまうような天賦人権論をとるのは止(や)めよう、というのが私たちの基本的考え方」だと発言。
憲法25条に基づく生活保護制度について、「『権利』ばかりを主張する」「個人の勤労意欲、家族の絆を喪失させる」などと執拗(しつよう)に攻撃しています。
衆院静岡7区当選1回、参院比例、当選2回、59歳、二階派。
千葉県議などを経て1996年に初当選し、第2次安倍内閣では文部科学副大臣を務めました。
13年には、福島第1原発事故で発生した指定廃棄物の処理について「原発事故で人の住めなくなった福島の東京電力の施設に置けばいい」と発言。16年には自民党の会議で「(慰安婦は)職業だった」などと発言、その日のうちに撤回しました。「慰安婦」をめぐって旧日本軍の関与を認めた河野談話の見直しへの支持も表明しています。
「日本会議国会議員懇談会」、「神道政治連盟国会議員懇談会」、カジノ議連(国際観光産業振興議員連盟)のメンバーです。
衆院千葉8区、当選7回、68歳、二階派。
2018年9月29日
LGBT(性的少数者)には「『生産性』がない」などという杉田水脈衆院議員の重大な人権侵害の一文を掲載した『新潮45』が休刊に追い込まれました。最新号にも杉田氏を擁護する論客の「反論」を掲載した揚げ句の事実上の廃刊です。
しかし、杉田氏が所属する自民党は同氏に何の処分も与えず、同党本部前での5000人規模の抗議やメディアの批判が強まった後の8月3日、公式ウェブサイトにようやく掲載した見解で、杉田氏の「個人的な意見」だと擁護。「理解不足と関係者への配慮を欠いた表現がある」「十分に注意するよう指導した」と説明しただけ。杉田氏も「真摯(しんし)に受け止め、今後、研さんに努めてまいりたい」とコメントしながら、謝罪や撤回もせず、記者会見にも応じていません。
二階俊博幹事長は記者会見(7月24日)で「人それぞれ政治的立場はもとより、いろんな人生観もあり」と容認。安倍晋三首相は総裁選中のTBS番組(9月17日)で「まだ若いですから、しっかり注意しながら仕事してほしい」と不問に付しました。しかし問題は、杉田氏を2017年総選挙で公認した同党と党総裁の安倍首相の責任に直結します。
みんなの党や日本維新の会などを渡り歩き、14年総選挙で次世代の党公認で出馬し落選した杉田氏に注目したのは安倍首相でした。杉田氏は17年9月29日、ツイッターで「自民党からの(総選挙)出馬が決定いたしました。最後に背中を押していただいたのは桜井よしこ先生です」と明かしました。桜井氏は、その経緯を同日のネット番組でこう紹介しています―。
「杉田水脈さんが希望の党から猛烈なアタックを受けても『いやです』って断ったんです。そしてなんと、自民党から出馬することになりました」「安倍さんが『杉田さんはすばらしい』というので、萩生田(光一幹事長代行)さんが一生懸命お誘いして…」
他党の落選候補をわざわざ“一本釣り”した狙いは何か。日本軍「慰安婦」や南京大虐殺の史実を否定し続けてきた杉田氏は、次世代の党所属当時の14年10月31日の衆院本会議で、安倍首相の「ジェンダーフリー」は「結婚や家族の価値を認めない」「文化の破壊につながる」との主張を持ち上げつつ、男女平等は「反道徳の妄想」だとの主張を展開しました。安倍氏はそんな右翼的傾向を買ってスカウトしたのです。
杉田氏は当選後、神道政治連盟国会議員懇談会と日本会議国会議員懇談会に加盟。いずれも改憲右翼団体と連携し、安倍首相が会長や特別顧問など要職を務めてきた議連です。
杉田氏のLGBT攻撃は「ナチスの優生思想にもつながりかねない」(「毎日」7月25日付社説)とまで批判されましたが、同氏はツイッターで、「大臣クラス」を含む党内の先輩から「間違ったこと言っていないんだから、胸張っていればいいよ」などの声をかけられたとして、「自民党に入って良かったなぁ」と感激を示していました(7月22日付投稿。すでに削除)。靖国派が幅を利かす安倍政権と同党こそ杉田氏の異常な主張を鼓舞する本丸なのです。
LGBTの人たちの人権を侵害し、創刊33年の月刊誌の事実上の廃刊の原因となった杉田氏の問題を放置する自民党と安倍首相の責任が厳しく問われています。
2018年9月28日
韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は26日、国連総会の一般討論で演説し、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が非核化を決断したことに対し、「国際社会が北朝鮮の新しい選択と努力に応える番だ」と訴えました。国際社会が「(非核化を)正しい判断であると確認」し、「北朝鮮が恒久的で堅固な平和の道を引き続き歩めるよう導くべきだ」と強調しました。
文大統領は、今年、3回の南北首脳会談と米朝首脳会談が行われ、朝鮮半島情勢が大きく変わったと指摘。今月開催された3回目の南北首脳会談では、朝鮮半島を核兵器と核脅威のない平和な地にすることに改めて合意し、「(金委員長が)寧辺核施設の永久廃棄を含む追加的な非核化措置を取る用意があると表明した」と紹介しました。
その上で、「朝鮮半島では65年間、戦争状態が続いており、戦争終息が非常に切実だ」として、「今後、非核化のための果敢な措置が関連国の間で実行され、終戦宣言につながることを期待する」と表明しました。
また、「朝鮮半島の非核化と平和定着の過程は、北東アジアの平和と協力秩序をつくっていく過程でもある」と説明、北東アジアで共栄の未来をつくっていく道でもあると述べました。
一方、文大統領は、韓国が「日本軍慰安婦」被害を直接、経験した国として、国際社会で、女性に対するあらゆる差別と暴力に断固として対応していくとも語りました。
2018年9月16日
9月20日の自民党総裁選をひかえて、この夏は右派系メジャー3誌が足並みをそろえて「安倍総裁三選待望」ムードをあおりまくった。全誌を買ってきて並べてみると、おそろしく異様なビジュアルで驚いた。
『正論』10月号は橋下徹「安倍さん、さあ憲法改正でしょ」を表紙のトップに押し出し、本文でも特集として「(安倍)三選の意義」を展開。安倍首相が8月12日に長州「正論」懇話会(『正論』誌の読者会)で講演した「憲法改正案 提出宣言」全文を掲載し、「改憲」のための安倍三選であることを強く印象づけた。ほかに産経新聞論説委員の阿比留瑠比(あびるるい)「安倍総理 戦後最大の戦い」では、「安倍首相の時代に改憲ができなければ、おそらくその後もずっと憲法は今のままだろう」とあおる。
同誌の特集ではほかに竹田恒泰が「旧宮家復活」を、宮家邦彦が「スパイ防止法制定」をと、安倍三選にかこつけてそれぞれ任意の関心事を実現してくれと安倍にリクエストする場と化しているのも興味深い。
一方『WiLL』10月号が組んだ特集は「これが石破茂だ!」で、産経新聞の阿比留瑠比がこちらにも登場し、「叛旗(はんき)を翻して『冷遇するな』とは……」と、安倍とりまき主導の自民党党内人事に苦言を呈した石破を批判するという小文を寄せている。ほかに山岡鉄秀「国を滅ぼす危険人物」、永田二郎「絶対総理にしてはいけない男」など、石破に対する異様な危機意識のたかぶりが、傍目から見ているとドン引きしてしまうほどだ。
特筆すべきは、金美齢の「国家存亡の秋(とき)こそ安倍晋三」で「国際会議に出席すれば、安倍晋三の周りに各国首脳が集まり、助言を求める。こんなリーダーが日本に現れるとは夢にも思わなかった」と書いているのだが、ヨイショのしすぎで事実認識が混乱しているのか、「夢」を見ながら原稿を書いているのか……としか言いようがない。
『月刊Hanada』10月号の安倍ヨイショぶりも強烈で、「総力大特集 結論!安倍以外に誰が」の看板のもと、小川榮太郎が「ポスト安倍、『七つの条件』」を寄稿、安倍以降の「日本の新たな総理大臣像」を設定してみせた上で、やっぱり安倍スゴイと持ち上げてみせる手法だ。「必須条件は愛国者」「東京裁判史観克服が前提」など歴史修正主義への傾斜も強いところも特徴だ。
同誌は、過去に掲載された安倍ヨイショ論文を集めて『安倍総理と日本を変える』という別冊まで発売。安倍晋三本人を筆頭に、櫻井よしこ、小川榮太郎、長谷川幸洋、阿比留瑠比、金美齢に津川雅彦(故人)と、安倍とりまき文化人で固めたすさまじいものだった。
それにしても、これら3誌の安倍ヨイショの基調は、とにかく「三選」で改憲を!に尽きる。安倍なくして改憲発議はムリと踏んでいるのか、安倍が首相の間に国民投票への道すじをつけてほしいという熱烈な願望が伝わってくる。
そもそも安倍は、1990年代後半からことあるごとに右派系論壇誌が登場の場を与えて育成してきた政治家でもある。歴代首相の中でも、こうした雑誌に登場した回数は突出している。(能川元一「『歴史戦』の誕生と展開」、山口智美ほか『海を渡る「慰安婦」問題』)
野だいこ文化人をかきあつめての「ヨイショ」「ヨイショ」の大合唱―こうしたメディアを駆使しての世論工作は、憲法改悪「国民投票」にむけたキャンペーンのありようを予想させるものでもあろう。
(はやかわ・ただのり 編集者)
2018年9月16日
青年が平和や社会問題について合宿で学習・交流し「たまご」から「ひよこ」へと成長することを目的としたワークショップ「ピースエッグ2018」が15日、岡山県備前市で始まりました。3日間の日程です。主催は日本平和委員会と岡山実行委員会。今年のテーマは「向かい合う」です。
初日に行われた分科会では、(1)暴力とジェンダー(2)未来の作り方(3)わたしの働き方(4)子どもの権利条約から考えよう(5)はじめての日本国憲法など六つのテーマで討論。
暴力とジェンダーの分科会では、日本軍の「慰安婦」制度と日本社会の性暴力について考えました。「女性活躍というけど、職場の管理職は男性が多い」「安倍政権は、女性活躍といいながら、女性に働けというし、子どもを産むことを求めているなど、全て女性に求めている」との声もあがりました。
2日目は、沖縄の基地を見てきた青年が基地問題の報告を行います。また、NPО法人ホロコースト教育資料センターの石岡史子代表が「なぜホロコーストを記憶するのか」を語ります。3日目は、班ごとに学んだことを発表します。
2018年9月9日
憲法成立当時を庶民の視点で描くミュージカル「憲法のレシピ」が14〜17日に大阪市で上演されます。
同公演は、平和など憲法に込められたメッセージを伝えたいと2008年に始まった大阪憲法ミュージカルの6回目。弁護士が呼びかけ、日本軍「慰安婦」など、これまでさまざまなテーマを取り上げました。
今回は終戦直後の大阪を舞台に戦争孤児や闇市で生きる人たちの生活や新憲法への思いを描きます。オーディションに応募した7歳から70歳代までの市民85人が出演します。
「どんな理由があっても戦争はただの暴力や」―。上演を目前にした8日、稽古場に熱のこもった台詞(せりふ)が響きます。
安倍晋三首相が秋の臨時国会に9条改憲案を出す姿勢を示す中での取り組み。呼びかけ人の1人、中島宏治弁護士(52)は「憲法は『戦争したくない』などの思いがあってできたもの。9条をつくった理念を見直すミュージカルをたくさんの人に見てほしい」と語ります。ヒロインの美古都役(ダブルキャスト)を演じる吉川未紀さん(21)は「戦争が必要と言う人もいるが賛成できない。見た人がそれぞれ考える機会になれば」と意気込みを話しました。
会場は大阪ビジネスパーク円形ホール。各日2回公演。一般前売り3500円ほか。
問い合わせは090(8933)0916。
2018年8月31日
大阪府の日本共産党西・港・浪速地区委員会は30日、山下よしき党副委員長・参院議員と語り合うつどいを大阪市港区で開きました。
山下氏は冒頭、来月実施される沖縄県知事選に、「オール沖縄」の候補として玉城デニー氏が立候補表明したことにふれ、辺野古新基地建設阻止へ勝利に全力をあげると決意表明。山下氏の「きょうはいろんな声を聞かせてください」との呼びかけに参加者から質問や意見が次々と出されました。
吉村洋文大阪市長の学力テスト結果を教員のボーナスなどに反映させるとの発言について「首長が点数で選別するべきでない」との意見に山下氏は「競争や序列化ではなく分かる喜びを感じられる教育環境をつくるのが政治の責任だ」と強調。日本軍「慰安婦」の日韓合意についての質問には「合意は一歩前進。加害国として真相究明と被害者が納得できる解決方法を考える必要がある」と述べました。
最後に山下氏は「市民と野党の本気の共闘をすすめ安倍政権を倒すため共産党が伸びることがどうしても必要です」と力を込めました。
2018年8月17日
戦争の加害を感じとれる場所を訪ねて、加害について考えます。今回はアクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(wam(ワム))です。(手島陽子)
東京都新宿区にあるアクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(wam)。日本軍による戦時性暴力の実態を豊富な資料とパネルで明らかにする資料館です。
これまでの特別展では、フィリピン、台湾、インドネシア、中国、東ティモール、沖縄など、各地・各国の「慰安婦」被害の実態を取り上げてきました。朝鮮半島の被害者については、第3回特別展で「置き去りにされた朝鮮人『慰安婦』」を取り上げています。現在は、「日本人『慰安婦』の沈黙〜国家に管理された性〜」を開催。好評につき、来年2月末まで会期を延長しました。
日本人「慰安婦」がたくさんいたことは知られていますが、実態は正確には把握されていません。名乗り出た元「慰安婦」として知られているのは、故・城田すず子さん1人です。
城田さんは1921年に東京・深川のパン屋の一家に生まれ、家の破産で、神楽坂の芸者屋へ子守に出されます。父の借金のために「水揚げ」されたあと、横浜の遊郭に売られ、17歳で台湾の慰安所に売られました。土日は、1人の女性が10人以上の兵隊の相手をしなければなりませんでした。その後は、サイパン、トラック島、パラオなどを転々とし、慰安所の帳場やおかみさんを任されたこともありました。
「城田さんは、『慰安婦』の苦しみを目の当たりにしてきました。戦後40年もたった頃、彼女たちがしきりと夢に出てきたといいます。彼女たちのために祈りたいと、鎮魂碑の建立を思い立ち、実現させました」。こう話すのは、同資料館・名誉館長の池田恵理子さん。
日本人「慰安婦」のほとんどは沈黙してきました。アジア各国の女性たちは騙(だま)されたり、強制連行されて慰安所に監禁されたりして、被害を受けました。一方、日本人「慰安婦」の場合は、遊郭などで働いていた人が多く、家族への風評や自分への偏見を避けるために、過去を隠して生きてきたことも一因です。「彼女たちも、公娼(こうしょう)制度の下、自分の意思に反して売られた人身売買の被害者なのですが…」と池田さん。日本に古くからある性被害を恥として女性の責任と見なす風潮の下で、声をあげにくい状況になっている点も大事だと指摘します。「#Me Too運動が世界に広がっているのに、日本の女性の動きはまだわずかです。日本社会の特質を読み解く上でも、この特別展は意義深いと考えています」
展示は、公娼制度から、日本陸軍がどのように慰安所をつくらせるに至ったかが、イラストなども使って、わかりやすく解説されています。複数の日本人「慰安婦」たちの人生も、ジャーナリストなどの聞き取りを元にパネルになっています。また、ソ連軍による性暴力の被害者の声や、戦後、米兵用に日本政府がつくった慰安所・RAAの実態にも触れています。
「各地の公立の平和資料館では、右翼や政治家の圧力の下で、日本軍の加害を展示から取り下げるところが増えている」と池田さんはいいます。「来館者は学生からお年寄りまでさまざまですが、修学旅行の自由時間に来てくれる中学生もいて、感激したことがありました。戦争の被害とともに加害を学ぶことで『戦争とは何か』に迫り、思考する力が育つのではないか…と思っています」
アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(wam)
東京都新宿区西早稲田2の3の18 AVACOビル2F 電話 03(3202)4633
2018年8月16日【国際】
【ベルリン=伊藤寿庸】日本軍「慰安婦」国際メモリアルデーの14日、ベルリンのブランデンブルク門前で、「慰安婦」問題の解決、戦時性暴力の阻止を訴える行動が行われました。在独韓国人の団体コリア協議会、日本人女性で作る「ベルリン女の会」、キリスト教団体、人権団体などが主催しました。
参加者は、手作りの「少女像」をいすに座らせ、「戦時性暴力と世界の紛争を終わらせよう」「性奴隷に対する謝罪と補償を」などの横断幕、「慰安婦」被害者の写真を掲げてアピールしました。
ドイツの女性人権団体「テール・デ・ファム」(女性の土)のゴドゥラ・コサック議長は、「コソボやコンゴなどでの武力紛争の中で、女性が必ず被害を受けている。これは女性を辱めることで、社会の根幹を破壊する戦術として行われている」と発言しました。
韓国からフンボルト大に留学中の尹(ユン)ドンビさん(24)は、「慰安婦問題は、私にとって韓日問題というより、性暴力の問題。犯罪を行った者が謝罪するのは当然です」と語りました。
集会に先立ち、キリスト教団体「ドイツ・東アジアミッション」、コリア協議会、ベルリン女の会、「テール・デ・ファム」、アムネスティ・インターナショナル女性人権侵害アクショングループなどの16団体が連名で、慰安婦問題での歴史的事実を認め、被害者への謝罪と補償を求める安倍首相宛ての公開書簡を在独日本大使館に提出しました。応対した大使館員は「受け取ったことを公表しないでほしい」と発言して参加者の怒りを呼びました。
2018年8月16日【国際】
台北にある日本の対台湾窓口機関「日本台湾交流協会」の前で14日、台湾の市民が集会を開き、日本政府に「慰安婦」問題を認め、謝罪するよう求めました。
台湾メディアによると、集会の中で、黒いTシャツを着て白いマスクを着けた59人の市民が8分14秒、無言の抗議をしました。59人は旧日本軍の「慰安婦」だったと名乗り出た台湾の女性の数を表しています。
集会を呼びかけた婦女救援基金会の黄淑玲(こう・しゅくかん)理事長があいさつし、「国際『慰安婦』人権運動は、国際平和と男女平等、全ての性暴力の廃止を求めるものだ。アマ(台湾で「おばあさん」の意味)たちが亡くなっても、運動は消えることはない。日本に『慰安婦』記念館を設立し、被害者に謝罪するよう日本政府に呼びかける」と訴えました。
フィリピンの首都マニラ中心部の公園で14日、3人の日本軍「慰安婦」被害者が参加して日本政府の公式謝罪を求める集会が開かれました。支援団体の活動家ら数十人が、「慰安婦は二度といらない」「侵略戦争反対」などと書かれた横断幕を掲げ、市民に支援を呼び掛けました。ロイター通信が伝えました。
支援団体の女性は、「こんなことが起こったことを若いフィリピン人に知らせることが非常に大事だ。被害者の心の傷は癒えていない」と語りました。
フィリピン政府の「国家歴史委員会」は、被害者の数が約1000人だと発表しています。
2018年8月15日
韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、今年初めて法定記念日となった「日本軍『慰安婦』被害者記念の日」の14日、中部・天安で行われた政府主催の式典で演説し、「被害者らの堂々とした勇気ある行動で、この意義深い場が用意された」と述べ、被害者をたたえました。
(栗原千鶴)
文氏は、「慰安婦」問題は、日本の植民地支配から解放された後も、隠蔽(いんぺい)・否定され、国家すら被害者を無視したと指摘しました。
「これを改めたのは、国家ではなく被害者自身だった。被害者は沈黙を破り、講演の場や法廷に立ち、韓国や日本、世界各国で被害の実相を証言し、訴えた」と強調。こうした行動が、戦争中の女性の人権と性暴力犯罪に対する国際社会の関心を高め、大きく進展させたと称賛しました。
文氏は、「慰安婦」問題を「日韓両国の歴史問題にとどまらず、戦時下の女性への性暴力問題、人類普遍の人権問題」と定義。2015年末の日韓合意には言及せず、「この問題が韓日間の外交紛争につながらないように願う」と表明しました。そのうえで、「両国間の外交的な手法で解決される問題だとも考えていない」と述べ、「われわれ自身や、日本を含む全世界が、女性への性暴力や人権問題について深く反省し、二度と繰り返してはならないという確固たる教訓とすることで、初めて解決できる」と力説しました。
また、政府が被害者の名誉と尊厳の回復のために、被害者との意思疎通を通じ、誠意を尽くすと約束。記録の発掘、保存、教育など体系的で積極的な努力を行うと表明しました。
この日は、全国で行動が取り組まれ、被害者が共同生活を送る「ナヌムの家」では、李容洙(イ・ヨンス)さんがあいさつ。「27年間(ソウルにある)日本大使館前で謝罪と賠償を叫んできた。私は91歳だが、200歳まで生きて、絶対にこの問題を解決する」と語りました。
2018年8月11日
韓国の女性家族省は10日、「慰安婦」問題の体系的な研究をすすめ、国際研究の中心的な役割を果たすための「日本軍慰安婦問題研究所」をソウル市内の韓国女性人権振興院内に設立し、開所式を行いました。所長には、慶北大学法科大学院の金昌禄(キム・チャンロク)教授が就任しました。
研究所は、国内のさまざまな民間機関や博物館などに散らばっている「慰安婦」関連の記録物を調査しデータベース化することや、特別に価値が高い資料は「国家記録物」の指定を受けられるよう支援する計画です。
いままで発掘された日本や中国、東南アジアの資料も調査、保存方法を検討しています。歴史的意義の大きい資料はウェブサイトに掲載し、閲覧できるようにします。また、被害者や活動家から聞き取りをした内容を翻訳し出版したり、シンポジウムを開催したりしていく予定です。
鄭鉉栢(チョン・ヒョンベク)女性家族相は9日、「将来の世代が歴史を正しく理解し、過去の過ちが繰り返されないよう教訓を得るには、これまでの研究成果を総括し、今後の研究を体系的に進めることが重要だ」と強調しました。
10日の開所式では「戦争と女性の人権、平和の問題は日本政府と共に追求し、解決しなければならない問題。日本政府とはこうした問題を今後、議論しながら解決していくよう努力したい」と語りました。
◇
所長を務める金昌禄教授の話 まずは研究所の旗をたて、小さな一歩を踏み出すことができた。資料を体系的に収集、整理するなどして、世界に発信していきたい。韓国ではこれまで、「慰安婦」問題の解決に向け、30年近い運動と努力が行われてきた。その過程で、「女性の人権と平和」という新たな価値を作り上げることができたと思う。これまでの努力を土台とし、研究・調査を通じて、より普遍的な人権と平和の問題を研究し、発展させていきたい。(栗原千鶴)
2018年8月9日
南北、米朝首脳会談で、米朝の敵対関係を終わらせ朝鮮半島の永続的な平和をつくり、朝鮮半島全体の非核化を目指すと確認され、平和のプロセスが始まっています。元外務審議官で、駐仏、駐韓大使も歴任した小倉和夫さんに、平和のプロセスに日本としてどのようにかかわっていくのか聞きました。
(聞き手・中祖寅一 写真・山形将史)
朝鮮半島の非核化と永続的な平和の実現、緊張の根本にあった朝鮮戦争の継続を中心とする米朝、南北の敵対関係を終結させる。これは国連軍の目的や在韓米軍の存在、ひいては日米安保体制のあり方にも影響する非常に大きな広がりを持ちます。
これをどのようなタイムスパン(時間幅)で考えるかが、問題の性質、考え方を決めるうえで重要です。
短期的に考えると、非核化がすぐに進むのか、拉致など人権問題の解決や軍事バランスの変化など、リスクを強く考えなければならない。
しかし非核化の具体的プロセスが不明確であるとか金正恩(キムジョンウン)国務委員長が信用できるのかなど、ある意味で短期的問題に焦点を当てるより、もう少し広く世界的かつ長期的な文脈で問題を考える必要があります。私は、リスクを踏まえつつも、いまが「チャンス」と考えてはどうかと思っています。それはこれを契機に、朝鮮半島問題を通じて日本の国際的な姿勢、あり方を考える機会にすべきだと思うからです。
非核化合意について「力の外交の勝利」という見方がありますが、それだけでは今後も国際社会一般で「力の外交」の傾向が強まることにもなりかねません。むしろ米朝合意の背景に、中国の台頭、戦争回避の世論などさまざまな要素を含む「時代の流れ」ともいうべき国際的流れがある。また、両国の国内政治が押し出したという面もあります。「力の勝利」というのはあまりにも一面的だし、トランプ大統領や金正恩氏の個人的性格にすべて還元するのも狭すぎます。
米朝が、敵対関係の緩和と朝鮮半島の非核化を合意したのは、リスクはあっても、朝鮮半島をめぐる軍事的衝突の回避と、経済発展の促進について関係国が足並みをそろえること以外に、問題解決の道はないという認識を共有したものと理解できます。
そのうえで、日本海を囲むように日本、韓国、北朝鮮、中国、ロシアによる経済開発を進めながら、南北の緊張を低減させ、地域フォーラムをつくっていく。それができれば、極東における多国間の信頼関係を醸成するチャンスが生まれるでしょう。
日米安保による抑止と同時に、まさに抑止機能の一環としてもそういう環境づくり、雰囲気づくりを進め、日朝平壌宣言などを踏み台にし、北東アジアでの相互不可侵の政治合意、規範づくりに向かうという提案も検討できるでしょう。長期的には、そういう方向に道が開かれることが望ましいと思います。
今後の日本と韓国の協力関係を考えるうえでも、朝鮮半島を分断している軍事境界線は、日本にもあるという問題を考える必要があります。見えない分断線が日本の中にもあるのではないでしょうか。
韓国系の在日、北朝鮮系の在日が存在し、日本の世論も北寄りの人、南寄りの人という分断があります。朝鮮半島の分断は日本国内の世論の分断、在日朝鮮人のコミュニティーの分断にもつながっています。
私は、朝鮮半島の緊張緩和は、実は日本国内の朝鮮半島出身者との共生問題とも関連しており、日本社会そのもののあり方からいっても緊張緩和は望ましいと思うのです。
私は日本人の韓国に対する嫌悪感情が非常に激しいことを心配しています。特異なヘイトスピーチだけでなく世論調査でも一般の人の中にも「嫌韓」が多い。「慰安婦」問題での軋轢(あつれき)や北朝鮮の拉致や核問題があることも影響しているのでしょうが、緊張緩和していけば、日本人の朝鮮半島全体に対する見方も少しずつ変わっていくでしょう。
逆に、朝鮮半島で生きている何千万という人、その一人一人の人民、国民が何を考え、何を思い生きているかを、日本国民も考えてほしいと思います。文在寅(ムン・ジェイン)大統領、金正恩国務委員長が何を考えているかも大事ですが、国民と国民、人民と人民という発想、国民同士の交流が今後どうあるべきかを改めて考えるときです。
今後の北東アジアの平和を考えるうえで大きな問題は日中関係です。
日中関係は1894〜95年の日清戦争にとどまらず、663年の白村江のたたかい以来、豊臣秀吉の朝鮮半島進出時の中国との戦争など、唐、元、明、清の中国王朝と日本は戦争をしています。それら過去の戦争はだいたい朝鮮半島への覇権争いから発生しています。第2次大戦にいたる「満州事変」(1931年)は、背後に朝鮮半島の植民地化問題があって、それから満州(中国東北部)、中国本土への侵略拡大となっていったのです。
今回、朝鮮半島の緊張緩和のもとで、中国の影響が朝鮮半島にいっそう浸透してくるのをどう考えるのか。南北が対立しているこれまでの状況と異なり、緊張が緩和してくる。中国が経済・政治大国として台頭しており、北のみならず南に対しても経済協力を行い、さまざまな影響力を及ぼすことは十分考えられます。
そうなると、在韓米軍の存在目的は、現在は北への抑止ですが、戦争状態が終結したとき、どういう役割を日本が期待するのか。在韓米軍は中国に対する抑止になるという人もいれば、韓国の抑止にもなるという人までいます。この問題は、沖縄の在日米軍にもいずれは波及する。この点でも、朝鮮半島問題は、広く長い歴史のコンテクスト(文脈)で考える必要があり、北東アジアの新しい平和ビジョンを考えるうえでも避けて通れません。
その時、南北融和を目指す朝鮮半島にとって、日中が対立を深め、半島への影響力を競うという構図は、朝鮮半島の人々自身に迷惑がられることにもなりかねません。
他方、台頭する中国は経済とともに軍事面で台頭し、しかも軍事の増強に十分な透明性があるわけでもない。「抑止」という言葉がいいか悪いかは別として、突発的なことにならないように抑止ないし用心することは必要です。
ただ、どのように抑止するか。軍事力がゼロというわけにはいかないが、相手との信頼関係をつくることが、抑止にとって実は大きなポイントです。単に軍事的な抑止を強めればいいというわけではない。信頼関係を醸成しておけば、軍事の意味も変わってきます。日米同盟が中国抑止の力を持つことも必要ですが、本当の抑止とは中国との間の信頼関係を樹立していくことによってこそ達成できるでしょう。
そのために日本が外交的な主体性を持ち、米中など大国に振り回されない生き方が求められるのではないでしょうか。
おぐら・かずお 1938年生まれ。駐韓大使、駐仏大使、外務審議官などを歴任。現在、日本財団パラリンピックサポートセンター理事長、国際交流基金顧問。
2018年8月5日
原水爆禁止世界大会国際会議(2〜3日)では、日本の労組や女性団体から発言がありました。
日本婦人団体連合会(婦団連)の柴田真佐子会長は、国際民主婦人連盟執行委員団体として、核兵器禁止条約参加とヒバクシャ国際署名の取り組みを呼びかけてきたと紹介。朝鮮半島の非核・平和の動きを後押しするため日本政府に対し、「『慰安婦』問題の解決を含む植民地支配の清算など日朝間の諸懸案を包括的に解決し、国交正常化に努力し、非核化に積極的に関与すべきです」と述べました。
新日本婦人の会中央常任委員の河村玲子さんは、核兵器禁止条約に続いて米朝首脳会談が実現し、非核・平和の世界・北東アジアへの希望を開く情勢を確信にしようと強調。安倍政権に9条改憲反対やセクハラのない社会を迫る運動を広げていると紹介し、「あらゆる運動を結集して一日も早く安倍政権を退陣させ、命を大切にする政治を実現させるときです」と述べました。
全労連の長尾ゆり副議長は、「核兵器禁止条約と憲法9条にこそ世界と日本の平和の希望があり、被爆者の深い願いが込められています」と指摘。ヒバクシャ国際署名と安倍9条改憲阻止3000万人署名は、安倍政権を倒して非核・平和の政府を実現する力になると述べ、「核兵器も戦争もない社会を子どもたちに手渡したい」と述べました。
2018年7月31日
原水爆禁止2018年世界大会(8月2日〜9日、広島市、長崎市)に、全日本民医連の立川相互病院(東京都立川市)など健生会グループから20人の職員が参加する予定です。今年春に同病院に入職した江波戸美里(えばと・みさと)さん(22)は、初めて世界大会に参加します。
(原田浩一朗)
廃絶への展望学びたい 戦争のこと知り対話へ
27日夕、立川相互病院の施設を会場に開かれた「納涼平和フェスタ」(健生会、三多摩健康友の会などの共催)で、江波戸さんは、他の世界大会参加予定者とともに、元気よく決意表明し、送り出す職員や友の会会員らの大きな拍手に包まれました。(写真)
「以前から、世界大会にはぜひ参加したいと思っていました」という江波戸さん。広島を訪問するのは中学校の修学旅行で原爆ドームや原爆資料館を見学して以来です。
原爆の熱線でご飯が真っ黒い炭になったお弁当、石の階段にうっすらと残る、人が座っていた影…。「私、気持ちが入り込み過ぎて、すごく怖くなるんです。正直、視野に入れたくない、と思ってしまいます」と打ち明けます。「だけど、昨年の核兵器禁止条約の採択を受けて、核兵器を廃絶する展望を学びたい」
江波戸さんは学生時代、2015年5月の核不拡散条約(NPT)再検討会議が開かれるアメリカ・ニューヨークに、新日本婦人の会多摩支部の代表としていき、浴衣姿で核兵器廃絶を求める署名を訴えました。
市民はとてもフレンドリーで、向こうから「何を訴えているの」と尋ねてきてくれる人が多かったといいます。制服を着た警察官からこう言われました。「パールハーバー(真珠湾)を先に攻撃したのは日本だ。知っているか? それと、日本軍慰安婦の問題は早く解決した方がいい。だけど、この署名には協力するよ」
「さまざまな立場、考え方の人でも、核兵器廃絶には賛同してもらえる。それと同時に、歴史を学び、戦争の被害のことも加害のことも知って、いろんな人と自信をもって対話できるようになりたい」――。世界大会参加を前にした江波戸さんの決意です。
2018年7月27日
LGBT(性的少数者)のカップルについて「生産性がない」(『新潮45』)という杉田水脈衆院議員の主張は、「ナチスの優生思想にもつながりかねない」(「毎日」25日付社説)と批判される危険なものです。
そもそも、子どもを産むかどうかは、LGBTに限らず、あらゆるカップルのさまざまな事情で決まることで、杉田氏の暴言は子どもを産まない、産めないすべてのカップルの人権を否定する侮辱的攻撃です。また、同性以外のLGBTのあいだでは出産は可能で、LGBTに対する無知さえ露呈しています。
国連は人権理事会などでLGBTの人権保護を重視しています。ナチスドイツなどによる同性愛者弾圧の歴史を繰りかえさせない取り組みとともに、今日でも各国で差別的扱いを受けているLGBTの権利保障が急務になっているからです。
杉田氏は次世代の党所属当時の2014年10月31日の衆院本会議で、「ジェンダーフリー」は「結婚や家族の価値を認めない」「文化の破壊につながる」と攻撃する安倍晋三首相を持ち上げつつ、「男女平等」は「反道徳の妄想」だと否定する驚くべき主張を展開していました。
そんな杉田氏に目をつけて17年10月の衆院選の中国比例ブロックで擁立したのが自民党でした。同年9月29日のツイートで杉田氏は、右派論客の桜井よし子氏の後押しで自民からの出馬を決めたとしつつ、安倍首相が「杉田氏はすばらしい」と語ったと明かす桜井氏の動画までリツイートしていました。安倍首相に共鳴する異常な杉田氏を擁立した張本人は、安倍氏自身だったのです。
杉田氏は、自身の暴言について反省するどころか、ツイッターで、「大臣クラス」を含む自民党内の先輩から「間違ったこと言っていないんだから、胸張っていればいいよ」「杉田さんはそのままでいい」などの声をかけてもらったと自慢し、「自民党に入って良かったなぁ」と投稿しています。(その後「殺人予告」を理由に投稿を削除)
杉田氏は日本会議関係者の会合で頻繁に講演していますが、その日本会議は「夫婦別姓」が「家族の絆」を破壊し、「国の基本を揺るがす」と攻撃してきました。日本会議とともに行動する議員連盟=日本会議国会議員懇談会には、副会長や特別顧問を務めてきた安倍首相や閣僚とともに、杉田氏ら自民党議員らが多く参加しています。同党の改憲草案(12年公表)が第24条で義務付ける「家族」内の相互扶助は、日本会議の要求に沿ったものです。
「入ってよかった」と杉田氏が実感を込める自民党。安倍首相が総裁として率いる同党こそ、杉田氏のLGBT敵視の危険な思考を支える根源なのです。
「私たちが対峙(たいじ)しなければならないのは、ウソも100回叫べば真実になるという中国や韓国の報道活動、政治宣伝」「河野談話が反日の格好の情報発信源」(2014年2月3日の衆院予算委員会)
「女性が輝けなくなったのは、冷戦後、男女共同参画の名のもと、伝統や慣習を破壊するナンセンスな男女平等を目指してきたことに起因します。男女平等は、絶対に実現し得ない、反道徳の妄想です」(同年10月31日、衆院本会議)
「科研費を使って韓国の団体と一緒になって反日プロパガンダをやっている」「これは本当にゆゆしき問題」(18年2月26日、衆院予算委員会第4分科会)
2018年7月25日
日本共産党国会議員団の男女平等推進委員会(委員長=高橋千鶴子衆院議員、委員は全議員)は24日、国会内で会合を開き、先の通常国会での各分野の取り組みを報告しあい、今後の活動について議論しました。
各議員は、担当する(1)国際関係、慰安婦(2)民法(3)性暴力、セクハラ、DV(ドメスティック・バイオレンス=家庭内暴力)(4)子どもの貧困・虐待(5)女性の政治参画推進(6)ママパパ議連(7)男女雇用機会均等法―などについてそれぞれ報告しました。
財務省の福田淳一前事務次官によるセクハラに関する「野党合同ヒアリング」や、超党派での性暴力被害者支援法案の共同提出、衆参で「セクハラ禁止規定を」などの質問が取り組まれたと報告。国政・地方の選挙で男女の候補者数を「できる限り均等」とすることをめざす「政治分野における男女共同参画推進法」(5月成立)をめぐっては、衆参内閣委員会で党としての意見表明をしたことの意義も確認しました。
また、日本軍「慰安婦」問題では、事実を突き付けて歴史逆行を許さないたたかいに引き続き取り組もうと呼びかけました。
今後は、各団体との懇談や政府の取り組みをただすことなどを行っていくとしました。
2018年7月25日
6月12日の米朝首脳会談を受け、7月の論壇誌では、朝鮮半島の平和への激動の意義を語り、日本外交の針路を問う論考が目立ちました。
ジャーナリストの平井久志氏は、『世界』8月号誌上での李鍾元(リージョンウォン)・早稲田大学大学院教授との対談「米朝首脳会談後の東アジア」で、米朝首脳会談への「失望感」をあおる一部メディアの論調に対し、両国が70年近く続いた敵対関係を離脱し、新しい関係に向かうことを確認した意義は「もっと大きく評価していい」と指摘。トランプ大統領が将来的な在韓米軍の縮小に言及するなど、この会談が東アジアの秩序再編の始まりとなりうることを強調します。
そのうえで、平井氏は、今後、日本政府は歴史問題も含めた北朝鮮との関係正常化に取り組み、そのなかで拉致問題も解決するスタンスをとる必要があると提起。これまで「圧力」一辺倒で「対話はだめ」と言い張りながら、トランプ大統領の態度を見て立場を急転させた安倍政権の迷走ぶりに苦言を呈します。李氏も、長年米国に依存してきた外交面での「思考停止」から脱するときだと呼びかけています。
李南周(イナムジュ)(聖公会大学教授)「朝鮮半島の大転換、本格的な推進段階へ」(『世界』)は、南北首脳会談と米朝首脳会談により、朝鮮半島における敵対関係の清算は、「準備段階」から「本格的な推進段階」に到達したと分析。その変化の土台に、朝鮮半島における戦争の危機の打開と社会の民主的改革を一体に求めて韓国国民が立ち上がった「キャンドル革命」の力があることを、この間の経過や6月の韓国統一地方選挙の結果にふれながら明らかにしています。
『文芸春秋』8月号の日朝問題特集には、田中均・元外務審議官が「小泉訪朝の教訓を無駄にするな」を寄稿。米朝首脳会談の合意が示す方向性は日朝平壌宣言の考え方と一致しているとし、パフォーマンス優先ではなく、同宣言に基づく国交正常化交渉の再開と、その枠組みでの拉致問題解決を提言しています。
『週刊エコノミスト』(7月10日号)のコラム「闘論席」では、元経済産業省官僚の古賀茂明氏が、北東アジアで「古い対立図」は根底から崩れ、新たな秩序の形成に向けた関係国の駆け引きが始まったと強調。「受け身」の立場で「古い対立図」に固執する安倍政権のもと、日本外交が「大きな潮流の変化から完全に取り残されてしまう」ことへの不安を語っています。
北東アジア情勢の激的な変化を前に、ひたすら米国に追随し、自主的な平和の戦略を持たない、旧来型の外交路線の限界が急速に露呈してきたといえます。
財務省前事務次官のセクハラ事件の発覚や、世界的な「#Me Too」運動の高揚を受け、今月は、『世界』8月号、『現代思想』7月号、『ジャーナリズム』7月号などでいっせいにセクハラ・性暴力に関わる特集や対談記事が組まれました。
セクハラ・性暴力の背景にある男性優位の思想や、政官界・企業・メディアのなかにある性差別容認の体質を告発しながら、世界経済フォーラムの「2017年・ジェンダーギャップ指数」で日本が114位となっていることなど、日本社会の後進性に目を向けるのが各誌の論考の共通した特徴です。
岡野八代(同志社大学教授)・牟田和恵(大阪大学教授)「フェミニストたちの歴史をつなぐ」(『現代思想』)は、「慰安婦」問題をめぐって歴史修正主義の立場を隠そうともしない安倍首相の姿勢や、「弱い立場の人」の声を押しつぶして次々悪法を強行する安倍政権の手法と、一連のセクハラ事件には「同じ構造」があると指摘。安倍政権のいう「女性活躍」とは、彼らが考える「国益」にかなう限りのものにすぎず、政権を脅かすような「女性活躍」は一顧だにされないと喝破します。女性の人権をないがしろにし、告発に立ち上がった人たちを黙殺・敵視する姿勢をとりながら、口先だけ「女性活躍」を叫ぶ政権の欺まんをついた直言です。
(たにもと・さとし)
野党の森友・加計問題での政権追及を「国民は高く評価」しており、「批判に終始することなく、現状を改善する方策を示し、それを実行するだけの政党だと国民に信じてもらえる道のり」が必要だと提言しています。
田中角栄元首相の秘書を経て政界入りした中村氏が「安倍家の都合で、官庁の規律が歪(ゆが)み、国策が捻(ね)じ曲がり、逮捕者や自殺者まで出た」と述べ、来年の参院選で「32ある1人区で勝ち、野党が参議院で多数を握れば暴走は止まります」としています。
2018年7月15日
6月12日の米朝首脳会談から1カ月がたち、米朝間の実務者協議も始まり世界が注目しています。戦争と敵対から平和と繁栄へ、新たな平和プロセスが始まっています。
「南北、米朝会談を通じて、朝鮮半島での平和体制の構築と半島全体の非核化、67年間続く朝鮮戦争終結への展望が示されたことは、歴史的に見て巨大な一歩です」
歴史学者の栗田禎子さん(千葉大学教授、元中東学会会長)は一連のプロセスについてこう述べます。
「今回の展開の根底には1990年代以来アメリカによって繰り返されてきた戦争に反対する世界の民衆の動きがあります」「その動きが朝鮮半島で現れ、『私たちはここで戦争を起こすことを許さない』という声が地域の政治を塗り替え、政治のプロセスを大きく変える方向で力を発揮しました」
平和プロセスの先の地域の安全保障体制をどうするか。9日に横浜市の神奈川大学でシンポジウム「米朝首脳会談とは何だったのか」が開かれ、日韓の専門家が討論。韓国側参加者の発言が注目されました。
「今後の北東アジアを展望する」の部で、韓国の李(リ)貞K(ジョンチョル)・崇実大学校副教授は、今後、朝鮮半島で「共同安保体制」を推進することを提起。「南北が対峙(たいじ)状態を克服できる信頼構築措置を形成していく」としました。
李氏がいう「共同安保体制」は、欧州安保協力機構(OSCE)のように対立する国々が参加して対話・情報公開を通じて信頼醸成をはかり、軍事衝突を未然に回避するシステムです。
東京・なかのZEROホールがいっぱいとなった11日の日本共産党創立96周年記念講演会。「いま日本共産党綱領がおもしろい――激動の情勢のもとでの生命力」と題して講演した志位和夫委員長は「日本共産党は、南北、米朝――二つの歴史的な首脳会談と、それによって開始された平和のプロセスを心から歓迎する」と表明したうえで、平和プロセスが進展すれば北東アジア地域全体の平和体制をどうするか、多国間の安全保障メカニズムをどう構築するかが課題になると提起しました。
「日本共産党は、この問題への答えとなる提案をすでに4年前に明らかにしています」「この地域に関係する6カ国が北東アジア版のTAC――友好協力条約を結び、平和、協力、繁栄の北東アジアをつくろう――これが私たちの『北東アジア平和協力構想』であります」「私たちは、開始された平和プロセスが進展すれば、こうした構想が現実のものとなる可能性が大いにあると考えています」
栗田さんは「これまでは、いくらそういう構想を語っても『北東アジアでは無理だ』といわれたでしょうが、歴史的な南北の歩み寄りで現実性が出てきたといえます。軍事的緊張が高まっていた北東アジアで友好協力条約ができたら画期的です」と語ります。
日本共産党創立96周年記念講演会で志位和夫委員長は、米朝首脳会談の歴史的意義について「何よりも重要なことは、対立から対話への局面の大転換が起こった、それによって米国、北朝鮮、韓国、日本、全世界の人々が戦争の脅威、核戦争の脅威から抜け出す扉が開かれた」ことにあると語りました。
対話解決
昨年来の米朝の緊張の激化で、北東アジアは世界を巻き込む核戦争の危機を引き起こしていました。この危機から抜け出すために各国の国民が求めたのが「対話による解決」でした。
歴史学者の栗田禎子さんは「対話による解決」を主導した韓国・文在寅(ムンジェイン)政権の動きについて「朴槿恵(パククネ)政権を倒した民主化運動の結果成立した政府だからこそこうした流れを作れたのでしょう」と語ります。
栗田さんは「キャンドル革命は平和への強い思いに支えられていました。大国主導でなく、地域の内側から平和を実現する非常に目覚ましい動きです」と指摘。朝鮮戦争終結は、在韓米軍撤退や日米同盟に基づく在日米軍基地の見直しなど、地域全体の情勢が大きく変わる契機にもなるとします。
2011年の中東での民主化革命の根底にも、アメリカの戦争への抗議や「内側から変革することで大国が中東に手出しできない環境を作り出そうとする思いがありました」と世界的な流れを語ります。
心一つに
神奈川大でのシンポでも、大国主導の秩序への警戒感が示されました。゙(ジョ)良鉉(ヤンヒョン)(韓国)国立外交院・外交安保研究所教授は、北東アジアの外交戦略をめぐり「域内諸国が心を一つにし、大国(米中)に振り回される状況を最大限警戒するべきだ。日韓関係は、2国間関係というより地域の安定という観点から公共財的側面があります」と指摘。「日本は国際的な多角的枠組みで役割を果たすべきです。米国との同盟は重要で中国の動きを警戒するのも大事だろうが、日中関係を安定化させる方向に進むべきです。地域の秩序が流動的となる中、日本外交の強靱(きょうじん)性を育てないといけない」と発言しました。
問い直す
栗田さんは、今回のプロセスを日本にとってはある意味で「日清・日露戦争以来の朝鮮半島への侵略・植民地支配の責任を問い直すチャンス」と言います。
「米国との軍事同盟一辺倒で、『慰安婦』問題をはじめ歴史問題でアジアとのあつれきばかり引き起こしてきた安倍政権を退陣させ、これから100年、200年アジアで生きていくビジョンを持った政権を考えることが国民的にも重要です」
志位委員長は記念講演会で、平和プロセスが進展し、北東アジアを戦争のない地域とする方向に進んだら「日本の情勢にも新しい大展望が開けます」と強調。「朝鮮半島が非核・平和の半島になり、さらに6カ国がTACを結んで北東アジア地域全体が戦争の心配のない平和の地域になったらどうなるか。日米安保条約と在日米軍基地ははたして必要なのか。その存在が根本から問われることになるでしょう」と述べました。
その上で、志位氏はこう呼びかけました。
「開始された平和のプロセスを成功させる、その先には、日本共産党綱領が日本改革の大目標としている『国民多数の合意で日米安保条約を解消し、本当の独立国といえる日本をつくる』という大展望がいよいよ開かれる――私は、このことを強調したいと思います」「こうした大展望をもちながら、開始された平和の流れを前に進めるために、力を合わせようではありませんか」
(中祖寅一、日隈広志)
日本共産党提案の「北東アジア平和協力構想」(2014年)
◆域内の平和のルールを定めた北東アジア規模の「友好協力条約」の締結をめざす
◆北朝鮮問題を「6カ国協議」で解決し、この枠組みを地域の平和と安定の枠組みに発展させる
◆領土問題の外交的解決をめざし、紛争をエスカレートさせない行動規範の締結をめざす
◆日本が過去に行った侵略戦争と植民地支配の反省は、不可欠の土台となる
軍事的手段・軍事的抑止力にもっぱら依存した安全保障という考え方から脱却し、対話と信頼醸成、紛争の平和的解決など、平和的アプローチで安全保障を追求する――「平和的安全保障」という新しい考え方に立ち、軍拡から軍縮への転換をめざし、平和の地域共同体を北東アジアでもつくりあげるために、関係諸国が対話と協力の促進に力をつくすことを呼びかける。(第26回党大会決議、2014年)
朝鮮を天皇の「属国」視 吉野誠
2018年7月10日
征韓論 国体論に基礎もつ侵略論
近代日本と朝鮮半島の関係は、幕末維新期における征韓論の高揚にはじまる。
吉田松陰によれば、建国ののち皇統が絶えることなく継続するところに日本の優秀性があり、天皇を中心とした体制こそ日本の本来のあり方、「国体」である。朝鮮半島の諸国はもともと天皇に服属するはずの存在であって、征韓は国体を回復する不可欠の一環である。たまたま取りやすい土地があるから奪ってしまおうといった次元のものではなく、日本人たるもの代を継いで追求すべき崇高な事業だということになる。
不服従を責め貢物を求める
征韓論とは、国体論によって基礎づけられた朝鮮侵略論であった。明治維新が天皇の権力奪還として実現すると、征韓の主張が力を増すのは必然である。
江戸時代に対朝鮮外交の実務を担ってきた対馬藩藩主も、維新政府に迎合し、武家政権期には幕府(将軍)が朝鮮国王と対等の礼をもって外交をおこなってきたが、維新によって「朝廷御直交」つまり朝廷(天皇)が直接に朝鮮と交際することになるのだから、「名分条理」(守るべき道義・物事の道理)を正さなければならないと強調した。
ここで「条理」に基づく正しい日朝関係とは、どのようなものなのか。外務官吏が作成した報告書には、政府内外にある朝鮮論のひとつが、次のように紹介されている。王政復古して「大号令」が天皇から出されるようになった以上、朝鮮は昔のように「属国」とし、臣下の礼をとらさねばならない。服従していないことを責め、貢物を持ってこさせるべきである―。征韓論とはなにかを、端的に示すものである。
明治元(1868)年に命令を受けて対馬藩は使節を朝鮮に送ったが、警戒した朝鮮側から書契(外交文書)の受け取りを拒否された。紛糾がつづくなか、明治6(1873)年になると、西郷隆盛が自ら使節として朝鮮へ行くと言い出し、政府内部で征韓論争がおこった。西郷の真意が征韓戦争の発動にあったのか、平和的な使節派遣にあったのかについて、見解が分かれている。
三条実美太政大臣にあてた手紙で西郷は、「名分条理を正す」ことこそ「討幕の根元」「御一新の基」だったはずで、それがかなわないなら単なる「物好きの討幕」だったことになるなどという部下たちから、台湾への出兵問題で突き上げられ困っているのだと強調する。そのうえで朝鮮問題に言及し、始めから「親睦」などを求めたわけではなく、「方略」(計略)があったはずであり、ぐずぐずしているわけにはいかないのだと述べている。
植民地支配の清算は未決着
真意がどこにあったかはともかく、使節就任の同意を得るために掲げたのが、「名分条理」の貫徹ということであった。それは維新政府にとって「正論」であるがゆえに、西郷に言われると正面から反論しにくい。それを見越し、西郷は切り札として持ち出しているのである。その理屈からすれば、談判による解決といっても、目指すのは決して対等な関係の構築などではなかったことになろう。
西郷らを追い出して成立した大久保利通政権は、明治9(1876)年、軍事力を背景に、不平等条約(日朝修好条規)の締結を強制し、書契の授受をめぐる紛争を決着させた。この条約は、形式の上では両国の「平等」をうたっており、朝鮮は天皇に服属すべきだという征韓論が直接・間接に朝鮮外交を制約した時代は、ひとまず終了したといっていい。
しかし、こののち日本が早期に朝鮮侵略を国是化していくうえで、征韓思想はおおきな影響を与える。隣国より優位に立とうとするのは普遍的な現象だが、かくも容易に侵略に対する「国民的な合意」ができてしまうのは、やはり普通のことではない。
日清・日露戦争をへて韓国併合となるのが明治43(1910)年。敗戦によって植民地支配の放棄を余儀なくされたのが「明治78年」であるが、その処理の過程が生み出した南北分断はいまだに続いている。南半部の韓国とは日韓条約を結んで国交を成立させたものの、従軍慰安婦問題にみるとおり植民地支配の清算は簡単ではない。北半部に住む人々に対しては、謝罪も賠償もされないままになっている。これが「明治150年」の日本と朝鮮半島の関係の現状である。
◇
(「『明治150年』を考える」は、5月2日、5月23日、6月13日付で掲載しています)
よしの・まこと 1948年生まれ。東海大学名誉教授。『明治維新と征韓論』
2018年7月2日
1958年に1人が広島から東京へと歩き始めた国民平和大行進は、ことしで60年となりました。今年も核兵器廃絶の願いを全国につないでいます。国際青年リレー行進で京都府内を歩いた新庄沙穂さん(22)の平和への思いは―。(加來恵子)
沙穂さんは、高校生の頃から原水爆禁止世界大会に参加し、2015年からは国際スタッフとして関わっています。夢は「核兵器のない世界を実現すること」。
高校生の頃から、戦争や原爆について本格的に学び、日本の加害責任についても考えてきました。
2016年に大学を休学し、フィリピンに語学留学した時のことです。
フィリピンの友人が「僕のおばあちゃんは慰安婦で、日本兵に殺された」と話し、そのお墓に連れていってくれました。
謝ってほしいのではなく、こうした事実があることを伝えたかったのだと―。「加害の実相を学んできたつもりでしたが、心に突き刺さり、日本人であることを強く意識させられた瞬間でした」
沙穂さんが戦争について関心を持ち始めたのは、小学校5年生の社会科の授業から。それまで毎日が平和で世界はハッピーだと思っていました。
教科書には見開き2ページに、戦争や原爆投下で多くの人が亡くなったことが書かれていました。「なんでこんなに多くの人が亡くなっているのに、たった2ページなの」と疑問を抱きました。「その答えは中学になればわかるよ」と先生に言われ、中学、高校と過ごしましたが、学校では答えを見つけることができませんでした。
答えを探しに高校生の時に広島、長崎を訪れました。そこには、教科書2ページには収まりきらない現実がありました。核兵器を世界からなくそうと、被爆者は人生をかけて活動していました。
「学ぶべきは広島にある」と思い、広島の大学に入りました。
毎年のように、原水爆禁止世界大会のスタッフとして参加してきた沙穂さん。大学卒業を前に、「核兵器をなくすために自分にできることは何だろう」と考えました。
それで思いだしたのが、昨年通し行進者として歩いた五十嵐成臣さんが語った「平和行進やめられないんだよね」という言葉でした。
「やめられない通し行進って何?」と、今年歩くことにしました。
実際に、6月21日から26日まで京都府内を歩いてみると、いろんな年代の人が話しかけてくれます。「10人の人と歩いたら、10種類の人生があり、その人たちと出会えたことは奇跡だと思う」と実感しました。
「歩かなければ、ただの道でしかなかったのに、“平和のために私が歩いた道”になりました。核兵器をなくせると信じて歩いた道に変わりました。またこの道を通る時には、核兵器をなくすと信じて歩いた道だと必ず思い出します」
平和行進では、国際青年リレーに参加する海外からの青年を支援するカンパを呼びかけます。
「カンパを呼びかけるのは心苦しい。だけど、このカンパの先に出会いがあります。集まった金額以上に、海外の青年が日本で多くのことを学び、各国に帰って草の根の運動を広げるという価値あるカンパ」だと語ります。
そのカンパも京都で3万8506円が集まりました。「この6円っていう単位がうれしい。組織されたパーティーでのお金集めではない、市民が支えている平和行進だと思えるの」
8月に開催される原水爆禁止世界大会で、世界の草の根運動を行っている人と交流し、各国で直面している課題も含めて交流し、平和への逆流に対して「しんどい」と思っている人も、希望や展望を持って帰れる場所です。
「国籍が違う草の根で頑張っている人と、もっと交流してほしい。その橋渡しをことしもします。原水爆禁止世界大会でお会いしましょう」
2018年6月25日
史上初の米朝首脳会談で世界中に名が知れたセントーサ島。平和へと向かう歴史的な舞台となった地はシンガポールの観光地ですが、日本人には忘れてならない歴史があります▼第2次大戦中、日本軍がシンガポールを占領したのは1942年2月。その数日後、戦時国際法に反して多数の中国系住民を虐殺しました。現地で「大検証」と呼ばれる事件です。セントーサ島の沖合も殺害現場の一つでした▼島北東部の海岸は華僑の死体が多く流れ着いた場所で、虐殺の碑があります。占領下で日本軍の「慰安所」が設けられ、島には朝鮮半島からだまされ連れてこられた女性たちがいました。陸軍の通訳だった永瀬隆さんが証言しています▼近衛連隊の歩兵大隊が島にいて、隊長は「朝鮮の慰安婦が配属されるが、日本語教育をしてくれ」と。永瀬さんは自分の仕事ではないと思ったものの、島の王様気取りだった隊長の言に従ったといいます▼日本語を教えた女性のひとりはこんな話を。「昭南島(シンガポール)の陸軍の食堂で働く約束で支度金百円をもらって軍用船で来た。ところが着いたとたん、おまえたちは慰安婦だといわれた」▼シンガポールの中心地には「血債の塔」が立ち、政府主催の追悼式が毎年2月に開かれます。血債とは血塗られた負債。アジアに平和を築く出発点は日本が過去に侵略し、不幸をもたらした地でもありました。歴史の事実を認め、その反省の上にアジアとの友好を育む。日本政府が果たすべき責務はここにも。
2018年6月21日
太平洋戦争で住民をまきこんだ唯一の地上戦となった沖縄戦。県民の4人に1人が犠牲となりました。23日は沖縄戦終結から73年。激戦地の一つ、県南部の八重瀬町にある、全身を弾痕で刻まれた石彫大獅子(シーサー)。住民の守り神≠ノうがたれた弾痕は旧日本軍のものと言われています。物言わぬ生き証人から伝わったのは―。
(山本眞直)
「耐え難い」役を
石彫大獅子は、同町富盛地区の小高い森に1689年(尚貞王21年)に火除けの獅子として設置され、「富盛のシーサー」(沖縄県の有形民俗文化財)として320年以上にわたって地域を見守ってきました。
しかし沖縄戦では「耐え難い」役を背負されました。
それを象徴する写真があります。八重瀬町の前身、東風平町の町史「戦争体験記」(1999年3月発行)の巻頭写真です。
沖縄守備軍(第32軍)の防衛線となった八重瀬岳(標高160b)をめぐる米軍との激戦で、「富盛のシーサー」を盾に日本軍と対峙(たいじ)している様子を収めた米軍撮影の写真です。白い点々は日本軍が撃ち込んだ機銃掃射の弾痕です。
米軍の海と空からの無差別爆撃、日本軍との本格的な地上戦で、住民を巻き込んだ総動員戦による八重瀬町民の犠牲は人口の半分に当たる5000人に。町民の2人に1人が命を奪われるという凄惨(せいさん)な「戦場」でした。
沖縄戦で多大な犠牲を許してしまった「富盛のシーサー」。その無念を薄め、いつしか県民の守護神としての威厳をとりかえしています。
「捨て石」の犠牲
「富盛のシーサー」には平和ツアー、中高生によるフィールドワークなどが訪れます。そこでのガイド、沖縄戦体験者が、沖縄を本土防衛、天皇制維持のために編み出した県民総動員による「捨て石作戦」の仕組み≠語ります。
八重瀬町ガイドの会の男性(80)もその一人。7歳で沖縄戦に巻き込まれた経験から、富盛のシーサーもその犠牲者との思いを実感しています。「避難壕(ごう)では軍が好位置を占め、鬼畜米英のデマを流しながら、壕に従軍慰安婦を連れ込み、島民の怒りをかった。米軍が迫ると島民は軍から壕追い出しを受け、母が率いる祖母、弟の4人は艦砲弾の飛び交う戦場をさまよった」
八重瀬町は今、地上戦の悲惨を町民の体験談で残すための聞き取り作業を進めています。それを担当する若い学芸員が力を込めて言いました。
「富盛のシーサーはあの激戦のなか弾痕でハチの巣状態だが、原形をしっかり保ち、八重瀬の歴史を見続けている奇跡の獅子だ」
戦争止める人間
戦後、過酷な米軍政とたたかい日本復帰を勝ち取り、日米両政府による名護市辺野古・大浦湾での新基地建設強行に断固としてノーをつきつける県民のゆるぎない意気込み。
八重瀬町では「新基地建設許さない島ぐるみ会議 八重瀬の会」の動きが活発です。
沖縄戦終結から73年。県民は沖縄戦の体験から「命どぅ宝」(いのちこそが宝の意味)を信条にしてきました。「戦争をおこすのも人間だが、戦争を止める努力ができるのも人間」という言葉が「富盛のシーサー」を見ながらよぎりました。
2018年6月1日
日本婦人団体連合会(婦団連)は31日、男女平等と女性の地位向上を求めて取り組んだ署名を国会に提出するとともに、省庁要請を行いました。
署名は、選択的夫婦別姓制度の導入など、民法の改正▽「慰安婦」問題の解決▽個人通報による救済を認める女性差別撤廃条約選択議定書の批准▽家族従業者の人権を認めない所得税法56条の廃止―を求めるものです。
柴田真佐子会長は、セクハラや女性差別をなくすために運動を広げてきたことを紹介しジェンダー平等社会の実現へ署名の重要性を強調しました。
「働き方改革」一括法案は格差を固定化すると批判し、「1日も早く安倍内閣を退陣させ、国民の声が届く政治を実現しよう」と呼びかけました。
衆院第2議員会館の会議室に約20万人の個人・団体から集めた署名を積み上げ、日本共産党の高橋千鶴子、畑野君枝、本村伸子の各衆院議員に手渡しました。畑野氏は、政策などの決定現場に女性が少ないことを指摘し、「女性がきちっと決定の現場に参加できるようにしたい」と強調しました。
署名提出後、厚生労働省、法務省、内閣府などに対して賃金差別禁止や長時間労働の是正、セクハラ防止対策の強化、待機児童の解消などを求めました。
2018年5月20日
安倍政権の「放送制度改革案」が急浮上しているなか、19日、「アベの『テレビ制圧計略』を斬る!」と銘打ったシンポジウムが東京都内で開かれました。
立教大学社会学部メディア社会学科・砂川ゼミと、NHKとメディアの「今」を考える会の主催で126人が参加しました。
同大教授でメディア総研所長の砂川浩慶氏が「テレビメディアの現状と安倍放送改革案」と題して基調講演。安倍政権が掲げる「ハードとソフトの分離」について、「インターネットで、ウラをとらないデマ、ヘイト(差別扇動)が地上波で流されることになる」と指摘、「安倍首相の本音は番組に直接介入ができるようにすることではないか」とのべました。
元琉球朝日放送記者兼番組ディレクターでジャーナリストの大矢英代さん、元NHKディレクターで、アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館(wam)名誉館長」の池田恵理子さんが発言、砂川氏と討論しました。
大矢氏は、沖縄では地元紙や地元民放を「偏向報道」などと攻撃する人もいますが、論理立てて「偏向」と説明できる人はいないと紹介。「いい番組があったら、電話ではなく、形に残るファクスや手紙で激励してほしい」と話しました。池田氏は、安倍首相もかかわったNHKの「慰安婦」番組改変事件にふれ、「メディアをコントロールして、自分たちの思うがままにしたいという狙いがだんだんわかってきた」と指摘。ジャーナリストを支援して育てることの必要性を強調しました。
2018年4月8日
「バイバイ安倍さん」とアピールする女性宣伝が7日、大阪市の繁華街・道頓堀橋で行われました。60人以上が参加し、「憲法こわすな」「森友公文書改ざん 責任は首相、あなたです」などのプラカードや横断幕をかかげ、「安倍9条改憲NO!3000万人署名」への協力を呼びかけました。
主催は「女性にっとワーク@おおさか」。総がかり行動などでつながった女性たちが、「憲法が生かされる政治を求めてゆるやかにつながって声をあげていこう」と発足させました。「にっと」は「編む」「笑う」の二つの意味がこめられています。
初行動のこの日、リレートークで働き方、朝鮮学校への補助金廃止、沖縄の基地、日本軍「慰安婦」などの問題で安倍政権と維新府・大阪市政を告発。「安倍政権は退陣を」「女性への差別、性暴力をなくすために声をあげていこう」と呼びかけました。
サックス奏者のMASAさんが演奏で宣伝を盛り上げ、中国人男性が「9条を知っている」と3000万人署名に応じました。
2018年3月23日
日本軍「慰安婦」問題解決全国行動は22日、参議院議員会館で院内集会「『日韓合意』は解決ではない 政府は加害責任を果たせ」を開きました。
阿部浩己神奈川大学法科大学院教授が「日本軍慰安婦*竭閧ニ国際法の現在〜日韓『合意』を再考する〜」と題して講演しました。
阿部教授は、国家による重大な個人の人権侵害について、過去に重大な人権侵害の事実があったときに、それが適切に解決されていないならば現在も進行中だと考えるように変わってきたことを紹介。国家間の合意は個人に固有の権利を消滅させることはできず、被害者が納得する補償措置もとられていない日韓「合意」は「最終的かつ不可逆的な解決」などではありえないことを指摘しました。
今年1月、韓国政府が日本軍「慰安婦」問題にたいする新方針を発表しましたが、安倍首相は「日韓合意は国と国との約束だ。これを守ることは国際的かつ普遍的な原則だ。韓国側が一方的にさらなる措置を求めることは、全く受け入れられない」と発言。この問題をめぐって全国行動が出した声明について梁澄子共同代表が報告し、「『日韓合意』は解決ではない! 政府は加害責任を果たせ」との声明と賛同署名を、集会に参加した外務省と内閣府の担当官に手渡しました。
今月7日から9日までソウルで開かれた第15回日本軍「慰安婦」問題解決のためのアジア連帯会議に参加した柴洋子さんが同会議について報告しました。
2018年3月15日
国連女性差別撤廃委員会は14日までに、韓国についての「総括所見」を発表し、その中で日本軍「慰安婦」問題をめぐる韓国政府の取り組みについて評価と勧告をおこないました。
「総括所見」は、日本と韓国が2015年12月に交わした「日韓合意」について、韓国外務省の作業部会が見直し結果を発表した昨年12月以降に、韓国政府によって実施された措置を歓迎。さらに、日本政府が「合意」に基づいて拠出した10億円を被害者らへ支給するため、韓国政府が設立した「和解・癒やし財団」に対し、被害者らに反対の声があることに留意するとしています。
そのうえで、韓国政府に、@「日韓合意」の実施に当たり、被害者や家族の見解を十分考慮するA公正かつ適切な補償金の迅速な提供を含む、被害者らの真実、正義、賠償を求める権利を完全に確保する―ことを勧告しました。
2018年3月5日
政治・経済
◆社民党大会で又市征治参院議員を新党首に選出 社民党第16回定期全国大会は、新党首に又市征治氏を選出。前日に、日本共産党の志位和夫委員長と、立憲民主、民進、自由の各党党首が来賓あいさつし、又市氏は就任会見で「野党共闘を前進させる」と表明(25日)
◆6野党が18年度政府予算案の組み替え動議 日本共産党、立憲民主党、希望の党、無所属の会、自由党、社民党が、裁量労働の全般的な再調査や政府の生活保護基準見直しの再考などを求めて組み替え動議を衆院に共同提出(28日)
◆大企業の内部留保が過去最高 財務省の2017年10〜12月期法人企業統計調査で大企業の内部留保が419兆円に増え過去最高を更新(1日)
◆安倍首相が裁量労働拡大部分の削除表明 安倍首相が参院予算委員会で「働き方」一括法案から「裁量労働にかかわる部分を全面削除する」と表明。日本共産党の志位委員長は会見で「6野党の結束したたたかいと国民世論の大きな成果」と述べ、一括法案そのものの提出断念を要求(1日)
社会・国民運動
◆スルガ銀行に融資返済停止を通知 女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」オーナーらが建設資金の融資を受けたスルガ銀行横浜東口支店に、76人分の返済停止通知書を提出。運営の「スマートデイズ」(東京都)がサブリース賃料の支払いを停止している問題で(27日)
◆のぞみ台車枠厚さが基準未満 新幹線「のぞみ」の台車に亀裂が見つかった問題でJR西日本は、製造元の川崎重工業が台車枠の製造過程で底を削り、鋼材の厚さが基準より薄かったと発表。保有する川重製台車のうち100台で基準未満を確認、交換へ(28日)
◆リニア談合で大手ゼネコンの元幹部ら逮捕 リニア中央新幹線建設工事で大手ゼネコン4社が談合したとされる事件で、東京地検特捜部が独占禁止法違反の疑いで、大成建設元常務と鹿島の担当部長を逮捕(2日)
国際
◆国家主席の任期廃止 中国共産党中央委員会は、憲法で定める国家主席と副主席の任期制限(最長2期10年)を廃止する改定案を発表。改定案は5日からの全人代で審議・可決される見通し(25日)
◆米移民救済措置、当面維持へ 米トランプ政権が撤廃を決めた、不法移民の子どもを強制退去から除外する救済措置「DACA(ダカ)」について、米連邦最高裁が、撤廃差し止め命令の見直しを求めた政権の申し立てを却下。3月の期限切れ以降も当面維持される見通しに(26日)
◆「慰安婦」終わっていない、韓国大統領が演説 日本による植民地支配からの解放を目指した三・一運動(1919年)を記念する式典で、文在寅(ムン・ジェイン)韓国大統領が演説し、「慰安婦」問題で「加害者である日本が『終わった』と言ってはならない」と言及(1日)
◆プーチン大統領が新たな核システムを発表 ロシアのプーチン大統領はモスクワで年次教書演説を行い、新たな戦略核システムを導入すると発表。米トランプ政権による「核態勢の見直し」(NPR)に対抗するとし、核廃絶へと向かう世界の動きに真っ向から逆行(1日)
2018年3月2日
韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は1日、ソウル市内で開催された日本による植民地支配からの解放を目指した三・一独立運動(1919年)を記念する式典で演説しました。文氏は、「人類普遍の良心として、歴史の真実と正義に向き合うべきだ」と語り、日本に対し、真摯(しんし)な反省の態度を示すよう求めました。
文氏は、「慰安婦」問題の解決について、「加害者である日本が、『終わった』と言ってはならない」と述べ、「不幸な歴史であればあるほど、歴史を記憶し、その歴史から学ぶことだけが本当の解決だ」と指摘しました。
さらに、日本に特別なことは要求していないとし、「私は日本が苦痛を与えた隣国と本当に和解し、平和共存と繁栄の道をともに歩んでいくことを願う」と語りました。
また竹島(韓国名・独島)について、「朝鮮半島侵奪の過程で、最初に占領された領土」であり、「韓国固有の領土」だとの認識を示しました。そのうえで「日本が事実を否定することは、帝国主義侵略に対する反省を拒否することに他ならない」と批判しました。
「#MeToo」運動をはじめ、世界で性暴力や性差別をなくすうねりが広がる中、「フェミニズム」にいま再び注目が集まっています。「全ての性の平等と解放」を願う次世代のフェミニストたちに会いに行きました。
(吉本博美)
20〜30代が中心の社会派アート集団「明日少女隊」。2015年に結成し、夫婦別姓や慰安婦など性をめぐる問題を幅広く取り上げて、作品展示やワークショップを行います。都内大学で哲学を学ぶ佐多稲子さん(24)=活動ネーム=。「ジェンダー格差は日常の端々にある。大学には女性教員が少なくマッチョな構造です。今ある問題に体を動かして取り組みたかった」。か弱いウサギに蚕を混ぜた蛍光ピンクのマスクは抵抗≠フ一種といいます。
署名運動開始
明日少女隊は、『広辞苑』のフェミニズム、フェミニストの記述に「全ての性の平等を目指す思想」との趣旨が反映されるよう、昨年5月から署名運動を開始しました。
同辞典第6版のフェミニズムは「女性の自己決定権を主張し、男性支配的な文明と社会を批判し組み替えようとする思想・運動」、フェミニストは「女権拡張論者。俗に、女に甘い男」との記述でした。
佐多さんは、「男と女という二項対立も議論されるべきとの声もあります。LGBTや性別が決まっていない人もいる。構造の中にいたら気づかないこともあるから、相対化する視点を伝えたかった」。
佐多さんたちは、「広辞苑キャンペーン」をSNSやポップな映像作品で宣伝。英語版でも発信しました。6432筆(2月16日時点)の署名が寄せられています。
1月12日に発刊された広辞苑第7版は10年ぶりの改定でした。フェミニズムは「性差別からの解放と両性の平等とを目指す思想・運動」と変更。「両性に限られたけど、前進です」と佐多さん。一方、フェミニストは「女に甘い男」から「俗に」が削除。「性の平等と関係なく、日本だけの特異な表現にすぎない」と批判します。「いま世界で若い世代のフェミニズムが盛り上がっています。場所にとらわれない横の連帯を築きながら、今後も署名を集めていきたい」。
できることを
現在ドイツで働きながら大学院でフェミニズムを学ぶ女性(24)。学生団体SASPL、SEALDsの一員として活動する中で問題意識を持ちました。きっかけは、注目を集めた女性メンバーへの異常なバッシングでした。「何もかもセクシズム(性差別主義・女性蔑視)にまみれて、普通の生活を送れなかった。自称リベラルの人も『女は仕方ない』と、がくぜんとしました。フェミニズム理論と経験がつながり、自分にできることをやろうと思った」
女性は、家父長制が根強く残る、男性優位の日本社会に危機感を持ちます。「女はこうあるべきだという固定観念が強い。『カワイイ』がステータス。女は陳列棚に並んでいる商品かのような社会の意識がなければ、そうはならない。だけど、どんな格好をするのも自分のためであり、権利じゃないですか」
整えた髪型と、痩身礼賛、脱毛奨励。丁寧な言葉づかいや、しとやかな所作―。女性に求める暗黙の基準はきりがありません。
「『いい女』になるとご飯代タダとか、昇進につながる。男のポイントを稼ぐことで自分が楽になるからやっちゃう現実もある。だけど『本当はいや』という子だっている。自分を無意識に抑圧することが日常すぎて、おかしいという意識も消えかかっています」
女性は渡欧後、「フェミニズムと性」をテーマに執筆活動や講演を行っています。「誰かが言わないとずっとこのままだから。戦前の銃後の女性たち、ウーマン・リブ運動など、その当時で声をあげた人たちがいたから、私もいる」
言葉を再定義
性暴力被害者としても性教育、セカンドレイプ、コンセント(同意)について啓発します。「露出した格好が悪い」「夜に外出するな」との被害者へのバッシングには「加害者の行動が100%悪い。常識です。彼らをのさばらせたいのか」と指摘。「性被害者は時代の被害者ともいえます。教育や慣習が与える影響は大きい。ドイツの子たちは何かあればすぐに指摘するし、人権意識が高い。子どもの頃から服装やおもちゃとか、ジェンダーの境目がゆるい。意見も大切にされていると思う」
「社会の定義を疑い、自分で言葉を再定義することでもっと生きやすい社会になると思う。男も性暴力に合うし、泣くなとかフェアじゃない。どうしたら皆が自分を解放して生きられるかを考えています。言いたいことがんがん言って、黙らなくていいよと伝えていきたい」
2018年2月18日
自民党が、両性の平等や個人の尊厳を定めた憲法24条の改悪を狙うなか、「慰安婦」問題から憲法を考える集いが17日、相模原市内で開かれました。「慰安婦」問題とジェンダー平等ゼミナール代表で元日本共産党参院議員の吉川春子さんが講演しました。主催は「慰安婦」問題を考える市民の会。
吉川さんは、日本軍が1931年から敗戦までの15年間、アジア・太平洋各地で多くの女性を性奴隷とした「慰安婦」問題について解説。「女性の性が最大限犠牲になるのが戦争」「憲法9条は女性の人権保障規定」だと話しました。
日本人「慰安婦」についても紹介。戦前の家父長制度下、女性は無権利状態におかれ、貧困家庭の少女たちが遊郭に売られ、遊郭が「慰安所」の供給源になっていたとして、「家父長制が『慰安婦』制度を可能にした」と話しました。
自民党が改憲草案24条で「個人」から「家族」を社会の基本単位に書き換えようとしていることについて「明治憲法と全く同じだ」と批判しました。
吉川氏は、世界や日本で性犯罪被害者が続々と声をあげている運動を歓迎し、「慰安婦」や憲法などと一体で考えていくことが重要だと強調しました。
2018年2月14日
安倍晋三首相は13日の衆院予算委員会で、平昌冬季五輪のレセプションに出席した際、北朝鮮の金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常任委員長と会話したことを明らかにしました。自民党の柴山昌彦筆頭副幹事長への答弁。
首相は「拉致、核・ミサイル問題を取り上げ、日本側の考えを伝えた。特に全ての拉致被害者の帰国を含め、拉致問題の解決を強く求めた」と語りました。日韓首脳会談では、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領に、日本軍「慰安婦」問題や北朝鮮への対応について日本の立場を伝え、2015年の日韓合意の履行を求めたと述べました。
昨年1月に東京MXテレビが放送した沖縄へのヘイト(憎悪)番組「ニュース女子」。BPO(放送倫理・番組向上機構)が昨年12月、「重大な放送倫理違反があった」との意見書を提出したことを受け、MXに抗議を続けてきた市民が、改めて「沖縄報道を問う」シンポジウムを先月、東京で開きました。170人が参加しました。
(田村三香子)
MXへの抗議を続けている主催団体「沖縄への偏見をあおる放送をゆるさない市民有志」の川名真理さんが、これまでの経過を報告。「MXを許していないといい続け、BPOの意見書を引き出させたのは、みんなの力ではないか」とのべました。「(番組を持ち込んだ)DHCは見解は変わらないといっています。私たちは番組内での謝罪と訂正を求めていきます」
元MX社員で、いまはネットテレビ「アワープラネットTV」代表の白石草(はじめ)さんは、「『ニュース女子』はおととし3月、(古舘伊知郎、国谷裕子、岸井成格各氏の)キャスター交代のタイミングで、深夜帯から午後10時の時間帯に移ってきた番組」と指摘。「『報道ステーション』をつぶしにいきます≠ニいう浜田麻記子DHCシアター社長(当時)の掛け声に象徴されるように、既存のテレビやジャーナリズムに対する挑戦と受け止めるべき。沖縄問題以外にも、従軍慰安婦問題など、毎回問題のある内容を放送している。地上波でこのような番組が続けば、民主主義の破壊につながる」と、訴えました。
ジャーナリストの安田浩一さんは、「『ニュース女子』問題は、報道の問題にしてはいけない。うそ・でたらめを許さないという事柄です」といいます。2013年、東京・銀座で行われた普天間基地へのオスプレイ配備反対を求める建白書デモの時、当時那覇市長だった翁長雄志県知事がたたかうとはらを固めたわけはと問うた安田さん。「それはヘイトデモをする人を見たからではなく、何事もなかったかのようにしていた人々の姿を見たからです」。「沖縄の問題は日本社会の問題。私たちのこととして問われ続けています」と付け加えました。
作業療法士で、沖縄で基地反対運動に取り組む男性が駆け付けました。「救急車を妨害した」とのデマを消防署に問い合わせた事実で反論し、沖縄のヘイト「論客」たちがいまなお弄(ろう)している番組同様の言論を紹介。「ニュース女子」について「求めているのは、番組がちゃかした私たちに明確に謝罪し、番組を打ち切ること。そして名誉を回復してほしい」と話しました。
「ニュース女子」問題
東京のローカル放送局・東京MXテレビが昨年1月2日に放送した情報バラエティー番組「ニュース女子」で、沖縄・東村高江の米軍ヘリパッド建設反対運動について、「日当で雇われている」「暴力をふるっている」などのデマを流しました。番組を制作したのは、MXの最大スポンサーである化粧品会社・DHCの子会社DHCシアター(当時)。完成品を納入するいわゆる「持ち込み番組」でした。
「ニュース女子」問題についてのBPO意見書
BPO(放送倫理・番組向上機構)の放送倫理検証委員会は昨年12月、独自に行った現地調査も踏まえ、番組内容の真偽を検証。「本件放送には複数の放送倫理上の問題が含まれており、そのような番組を適正な考査を行うことなく放送した点に、東京MXには重大な放送倫理違反があった」との結論を出しました。
【ソウル=栗原千鶴】「慰安婦」問題の解決を目指す水曜集会が7日、ソウル市内の日本大使館前で行われ、開幕が2日後に迫った平昌冬季五輪を契機に、「慰安婦」被害者の人権を回復する人権外交を展開するよう文在寅(ムン・ジェイン)政権に迫りました。開会式に参加する日本の安倍晋三首相に対しても、被害者への公式謝罪を求めました。
1992年から、毎週水曜日に開かれているこの集会は、この日1321回を迎えました。冷たい風が吹く中、100人以上が参加。「日本政府は公式謝罪を」「被害者の名誉と人権の回復を」などと書いたプラカードを掲げ、気勢をあげました。
主催した韓国挺身(ていしん)隊問題対策協議会(挺対協)の尹美香(ユン・ミヒャン)共同代表は、韓国政府に対し、「五輪の開会式に参加する安倍首相と、米国などの国際社会に向けて、性奴隷の被害者であるアジアの女性の人権を回復させるよう働き掛けなければならない」と要求しました。
全国教職員労働組合のチョ・チャンイク委員長は、「子どもたちに歴史を話すとき、日本帝国主義の侵略の痛みは欠かせない。日本軍性奴隷制の問題は、市民のキャンドル集会から誕生したと自任する文政権が、命がけで解決しなければならない歴史的な課題だ」と力を込めました。
集会に初めて参加した37歳の女性=京畿道龍仁市在住=は「安倍さんは、何をしに韓国にくるのでしょうか。これ以上被害者を傷つけないでほしい。形だけの謝罪ではなく、被害者の心に響く、心からの謝罪を要求します」と語りました。
集会参加者は声明を確認。日本政府に真相の究明や、被害者に対する公式謝罪と法的賠償、また再発防止の明確な措置を要求。韓国政府に対しても2015年に日韓外相が結んだ「韓日合意」を破棄し、「静かな外交」から「積極的な外交」に転換し、「慰安婦」問題の解決に向けて努力するよう求めました。
2018年1月25日
アジア諸国民と日本国民に甚大な被害をもたらした日本の侵略戦争。戦争で何が起きたのか、あの戦争は何だったのか―その真実を語り継ぎ歴史に刻むことは、反戦・平和の旗を掲げるものの使命です。広島・長崎での被爆体験や東京大空襲、各地の空襲、戦時下の国民の生活、戦場で兵士の悲惨な体験や旧日本軍による侵略と加害の実相―。「赤旗」は当事者でしか語れない生々しい体験を読者の手記、元兵士の証言など、戦争を語り継ぐ企画に多様な形で伝えてきました。
(佐藤つよし、西口友紀恵)
南京大虐殺・「慰安婦」…/元日本兵が加害を証言
社会面で旧日本軍の侵略・加害の実態、非人道性を告発した元兵士24人の証言をまとまった形で連載したのは、1981年8月から11月にかけての「証言 帝国軍隊」「続証言 帝国軍隊」でした。
78年に最初の「日米軍事協力のための指針」(ガイドライン)がつくられ、有事立法策定が論議されるなど、米軍の実施する戦争に日本を協力させる動きが急激に強まった時期です。
83年、当時の中曽根康弘首相は「日米は運命共同体」を唱え、「日本列島不沈空母化」や宗谷、津軽、対馬の「3海峡封鎖」を打ち出しました。この「戦争態勢準備」の策動は、侵略戦争美化・旧帝国軍隊美化の潮流と表裏一体で進んでいました。
兵士の証言の連載をまとめた『証言 帝国軍隊』(新日本新書、82年4月)のあとがきは、「この流れに抗し、平和を守るためには、侵略戦争の実態、とくに旧日本軍は中国や東南アジアで何をしたのか、帝国軍隊はどのような軍隊だったのか、改めて明らかにすることが必要でした」と強調しました。
旧日本軍による犯罪的行為を否定し、日本の戦争責任をあいまいにする「靖国派」の潮流への反撃として2005年8月から12月にかけて社会面に25回連載したシリーズが「元日本兵が語る『大東亜戦争』の真相」です。南京大虐殺、日本軍「慰安婦」問題、731関連部隊での生体実験や刺突訓練など、侵略戦争の実態を多岐にわたって明らかにしました。
戦時下の凄惨な体験/読者の手記として特集
小道に横たわり「水、水を」と弱々しくつぶやく黒焦げの人々、皮膚が垂れ下がり手を半ば上に上げ幽霊のように歩く一団など、原爆投下直後の凄惨な情景―。
1980年8月6日から社会面に連載した「8・15を語り継ぐ 読者の手記」の初回は、当時福岡市に在住していた男性の広島での被爆体験「廃墟の町」でした。手記はこうむすばれています。「こんな残虐な兵器をなんのために、だれのために、どうしてつくらなければならないのか。人類の正義と良心にかけて核兵器廃絶を叫びたい」
この年の手記は中国での日本軍による残虐行為、南方の島で食料が欠乏するなか周りの兵士が病気や飢えで死んでいった体験など、20回にわたり掲載されました。
読者の手記は、まだ8nだてだった終戦から20年の65年8月から、70、75年の5年ごと節目で募集、取り上げられてきました。
終戦35年は79、80年の2年つづけて社会面で特集。「婦人とくらし」欄(現・「くらし・家庭」欄)では80年4月20日から特集「ふたたびたどるまい戦争への道 ファシズムと女性」、6月7日から土曜連載「戦争と女性」を掲載しました。
その後も、8月15日「終戦の日」を前後して、社会面などで手記や証言を、毎年のように特集してきました。
「集団的自衛権行使容認」の閣議決定(2014年7月1日)、戦争法=安保法制の強行(15年9月19日)と米国とともに戦争をする国づくりと憲法9条改悪に暴走する安倍政権のもとで、14年から始まったのが「証言 戦争」です。
昨年8月14日から10月17日まで、13回掲載したシリーズでは、投稿や資料の募集に、全国から約40通の情報が寄せられ、34通が、自らの戦争体験や両親の世代の体験でした。「二度と戦争をしてはいけない」「憲法9条と平和を守りたい」という強い思いが伝わってきました。
◇
「赤旗」が、日本の侵略戦争と植民地支配に正面から向き合い、報道できるのは、1922年に創立された日本共産党の、侵略戦争と植民地支配に命懸けで反対してきた歴史があるからです。
日本の侵略戦争の敗戦から70年がすぎ、直接戦争を体験した世代が少なくなっています。一方で、若い世代をふくめ体験者の証言を集め、後世に語り継いでいこうという取り組みも全国で広がっています。戦争体験を継承する報道は、創刊以来90年、反戦・平和を貫いてきた「しんぶん赤旗」にとって、これからも欠かすことのできない大切な仕事です。
編集局編著書、韓国で評判/日本の良心∞望みを発見
昨年7月に韓国語版が発行された赤旗編集局編『語り継ぐ日本の侵略と植民地支配』(新日本出版社、2016年3月刊)が韓国内で評判を呼んでいます。
同書は14年から15年にかけて「しんぶん赤旗」日刊紙・日曜版に掲載された日本の戦争を考える企画から「侵略戦争と植民地支配の真実についての特集記事を再構成しまとめたもの」(まえがき)です。30代、40代を含む戦後生まれの記者が取材・執筆しました。
「T部 侵略戦争と植民地支配の実態」「U部 無謀な戦争で日本国民が犠牲」の2部構成。T部では、日清・日露戦争からアジア・太平洋戦争への戦争の拡大の流れとともに、「南京大虐殺」「731部隊」「日本軍『慰安婦』」など焦点の問題、旧日本軍による侵略被害をめぐるアジア各地からの現地ルポを扱っています。
韓国語版は、韓国の建国大学校KU中国研究院の海外名著翻訳叢書の第1弾として出版されたもの。同研究院の韓仁照院長が、推薦の言葉を寄せました。韓院長は、日本の「侵略」によるアジア人の傷痕の治癒について、「何よりも日本政府の心のこもった謝罪が前提になければならない」と述べ、日本の現政権勢力がまだ謝罪≠竍反省≠キる意思がないことを指摘。被害を受けた当事国よりも日本国内部から問題点を指摘することが非常に重要だとして、韓国語版の出版について「日本人によって日本のアジア侵略問題を追跡したということで大きな意味がある」と評価しました。
韓国のメディアでも「加害国である日本から、それも戦後世代の記者たちが自国の恥部を自らあらわにして告白したという点で一縷の望みを発見できる」(韓国経済)、「日本の政治家の妄言に憤怒しても、植民地支配を心から反省して軍国主義を警戒する良心的な日本人が少なくないことを忘れてはいけないということを訴えている」(東亜日報)と取り上げられました。
2018年1月10日
韓国の康京和外相は9日、「慰安婦」問題をめぐり日本と韓国が2015年12月に交わした「日韓合意」への対応方針について記者会見しました。日本政府に再交渉は求めないと表明する一方、「『慰安婦』被害者がいちずに望むのは、自発的な真の謝罪だ」と語り、「日本が真実をありのままに認め、被害者の名誉と尊厳の回復、心の傷の癒やしに向けた努力を継続するよう期待する」と述べました。(関連2面)
康氏は会見で、「この合意では真の解決にはならない」としつつ、「両国公式の合意だったという事実は否定できない」と言明。日本政府が合意に基づき拠出した10億円については、韓国政府の予算で負担し、基金の今後の処理については、日本政府と協議すると述べました。
この10億円は、合意によって韓国が設立した「和解・癒やし財団」に日本政府が拠出したもので、同財団が、被害者らへ現金支給などを行ってきました。合意時点で存命だった47人のうち36人が受け取ったか、受け取る意思を示しました。しかし被害者の中には「お金がほしいわけではない」「安倍首相は、日本が戦争中、何をやったのか真実を話してほしい」と受け取りを拒否、返還を求める声も上がっていました。
康氏は、直属の作業部会を設置し、合意の結ばれた経緯などを検証。昨年12月に、合意の過程で被害者の声が反映されなかったと作業部会が結果を発表したのを受け、被害者らと面談をしてきました。文在寅大統領はこの結果を受け、後続措置をとるよう関係部署に指示していました。
2018年1月4日
「トランプ・ファースト」外交からの脱却―。これが2018年の日本外交の最大の課題と言えます。
国際社会で孤立
地球温暖化対策のパリ協定離脱、北朝鮮への軍事攻撃示唆、エルサレムのイスラエル首都認定などで、国際社会はおろか、米政府内でも孤立を深めているトランプ大統領。一方、安倍晋三首相は一昨年秋、世界の首脳に先駆けてトランプ氏を訪問し、昨年は公表されているだけで22回の会談を行うなど、歴代政権でも突出した日米「首脳外交」を展開しています。
その背景には、外務省がこれまで培ってきた「知日派」人脈の大半がトランプ政権から離れてしまったため、首脳間の信頼関係≠ノ頼らざるをえなくなった事情があります。このため、日米関係は戦後最悪の対米追随政権である安倍官邸に牛耳られ、沖縄県名護市辺野古での強権的な新基地建設や、米国製武器の大量購入などが推し進められるようになったとみられます。
とりわけ危険なのが、北朝鮮の核・弾道ミサイル開発への対応です。いったん米朝が戦端を開けば、最悪で数百万規模の死傷者が発生するとされており、ティラーソン国務長官など米政府内でも外交交渉による解決を求める声が強まっています。
しかし、トランプ氏は北朝鮮に軍事攻撃の選択肢を誇示し、安倍首相もこれに追随する姿勢を取り続けています。
こうした状況に対し、日米同盟を基軸とした外交・安全保障を支えてきた外務省・防衛省の元高官からも苦言が相次いでいます。
北朝鮮の核問題を主要議題とした6カ国協議の初代日本代表を務めた藪中三十二・元外務事務次官はトランプべったりの安倍外交に「不安を抱かざるを得ない」と指摘。加えて、トランプ氏には軍事行動と電撃的な米朝首脳会談の両方の可能性があると指摘し、このままでは、日本が「置いてきぼり」「交渉の蚊帳の外」に置かれる危険があると述べています。(『核と戦争のリスク』朝日新聞出版)
また、旧日米ガイドライン(軍事協力の指針)策定などに関わった秋山昌廣・元防衛事務次官は「政府の制裁強化・圧力一辺倒は、日本に対する北からのミサイル攻撃の可能性が出てくる」「日本の役割は、この地域の平和と安定を保障する国際システムを構築することに全力を挙げて外交活動を展開すること」を求めています。(ブログ)
イスラエルの首都認定問題も悩ましい課題です。日本政府は昨年12月21日の国連総会・緊急特別会合で米国非難決議に賛成しました。従来の立場からみて当然の対応ですが、トランプ政権はエルサレムを首都とする対応を何ら変えていません。トランプ政権べったりの姿勢を変えない限り、安倍政権は今後も、この問題で苦しい対応を迫られることになりそうです。
激震の日韓関係
韓国は昨年末、2015年12月にかわした旧日本軍「慰安婦」に関する日韓合意の検証結果を公表し、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が「この合意では慰安婦問題を解決できない」と表明しました。
日本政府はただちに抗議。2月に行われる平昌冬季五輪への安倍首相の出席見送りも浮上し、今春にも実施を目指している日中韓首脳会談も見通せなくなるなど、日韓関係に激震が走りました。
韓国政府は今月初旬にも新たな対応策を示すとしていますが、日本の植民地支配の中で起こった「慰安婦」問題の最終的解決には遠い現実が浮き彫りになりました。日韓関係をどう再構築するのか。当面の重要課題です。