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5月
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4月
◆ 韓国 尹錫悦大統領就任まで1カ月 自由言論実践財団理事長 李富栄氏に聞く
◆ おはようニュース問答 教科書の「強制連行」が変えられたけど
◆ ワールドリポート 米軍「基地村」女性の苦しみ 韓国 支援者を訪ねて
◆ 3月
◆ 高校教科書検定 「強制連行」に意見多数「政府見解に基づく」修正迫る
◆ 三・一独立運動記念日 ソウル 市民団体が集会 日本の弾圧の歴史 記録必要
◆ 2月
◆ きょうの潮流
◆ 「慰安婦」問題の政策問う 公開質問状の回答公表 正義連 ソウル市内で水曜集会
◆ 歴史に学び憲法生かそう 東京 「建国記念の日」反対で集会
◆ シリーズ 維新の会その実像は 政治路線・国会論戦にみる 自公の悪政 右からけん引
◆ ひたすら安倍氏に迎合 岸田首相 逆流許さないたたかい 待ったなし
◆ 1月
◆ 追悼 イトー・ターリさん 身体表現で闘い続けた生涯 美術批評 小勝禮子 寄稿
◆ 平和の根っこ 上映100作 改憲対抗 東京「憲法を考える映画の会」 花崎哲さん
◆ 日本軍「慰安婦」問題 「河野談話を継承」するなら心からの謝罪こそ 紙議員の質問に政府が答弁書
◆ きょうの潮流
5月
2022年5月4日
朝日新聞阪神支局の襲撃事件から35年となった3日、支局1階には祭壇が設けられ、朝から市民が訪れては献花し、殺害された小尻知博記者の遺影に手を合わせました。
千葉県立高校教諭の沼山尚一郎さん(58)は教員1年目だった1987年5月に事件を報道で知りました。その前の大学時代に小尻記者の取材を受けていたといいます。以来、ほぼ毎年この日に支局を訪れています。
「教師生活も締めくくりに近づいてきたが、生徒たちにこの事件のことを伝え続けていく」
芦屋市の元会社員、林康文さん(69)は「使命感を持った記者が見せしめのように命を絶たれた。世の中にいろいろな意見があるが、力で口を封じることがあってはならない。今の記者たちも勇気をもって伝え続けてほしい」と語りました。
宝塚市の女性(69)は日本軍「慰安婦」に関する市議会の意見書議決を目指す運動にかかわった際、自宅に脅迫のファクスや電話がかかったといいます。
「姿を見せずに黙らせようとすることの怖さが、今も心から抜けない。言論の封殺に怒りを覚える。そのことを忘れないよう、この日はここに来る」
新型コロナウイルス感染対策のため、従来行っていた支局3階の資料室の一般公開は今年も中止。メディアには公開され、銃弾で穴の開いた小尻記者の服や、体内から摘出された散弾粒などが事件の記憶を伝えていました。
憲法大集会では、メインステージのほか、憲法や貧困などの諸問題を語り合うトークイベント、女性がつながり声を上げようと呼びかけるステージなどが行われ、参加者が交流しました。
サブステージ「自由に話そう トークイベント」では、憲法、雇用・労働、外国人との共生、沖縄問題などのテーマで現状とたたかいを交流しました。
「#Me Too #With You 女たちよ つながろう〜女の生きづらさ話そうよ〜そして踊ろう!」では“性差別のモヤモヤ”を参加者が語り合いました。
「差別された経験を女が語ることで変えていける」(埼玉でフラワーデモを主催する女性)、「生理用ナプキンの無償提供など前進も生まれている」(元教員の女性)との発言も。
性暴力の鎖を断ち切ろうと各国で広がる「ブレークザチェーン」のダンスワークショップでは、男性も含めた参加者が音楽に合わせて踊り「自分の壊したい鎖は何か」を出し合いました。
司会の1人で新日本婦人の会会長の米山淳子さんはロシアのウクライナ侵略に触れ「各国で戦争反対の声があがった。命を奪うな、暴力を許すなと世界中の女性と連帯していこう」と語りました。
大学1年の女性は「横暴な父に疑問を感じ、本を読む中で『慰安婦』問題に関心を持ちました。権利を学びたい」と語りました。
4月
2022年4月15日
3月の韓国大統領選挙で勝利した尹錫悦(ユン・ソンニョル)氏の就任まで1カ月を切りました。李明博(イ・ミョンバク)、朴槿恵(パク・クネ)の両保守政権下で働いた国会議員らを各省庁の長官候補にすえるなど、政権の骨格も明らかになりつつあります。元国会議員で自由言論実践財団理事長の李富栄(イ・ブヨン)氏に、選挙結果をどうみるのか話を聞きました。(ソウル=栗原千鶴 写真も)
得票率0・7ポイントという僅差(きんさ)のたたかいとなりました。尹氏は安どのため息をついているでしょう。
北朝鮮に強硬な姿勢を見せた尹氏が当選しましたが、国民は戦争を起こすことまで容認したわけではありません。それは選挙が終わった後も、尹氏より現職の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の方が支持率が高いという結果にも表れています。
尹氏は、日本との関係を円満に保っていこうという立場です。しかし、日本の岸田政権には先例を思い出してもらいたいと思います。
2008年に発足した李明博政権も日本に好意的な意思を示していました。李氏は、米国と日本が求める韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を締結しようとしました。しかし、日本と秘密裏に交渉していたことが公になると韓国市民は、大規模なデモで抗議を始めました。李氏は6月の締結当日に予定を取り消し、8月には韓国大統領として初めて独島(日本名・竹島)を訪問しました。これは日本で抗議と混乱が起きました。
もう一つは15年9月です。朴槿恵氏が中国の抗日戦争勝利70年の記念式典に出席し、習近平国家主席、ロシアのプーチン大統領と並んで北京の天安門で軍事パレードを観覧しました。中国人民解放軍はどんな軍隊か。日中戦争で日本帝国軍を敗北させ、朝鮮戦争で米国を「敗北」させた軍隊です。
この行動に米国と日本は驚きました。その結果、朴氏はGSOMIAを締結し、最終的・不可逆的な「慰安婦」合意(15年12月)も屈辱的に締結することになりました。そして16〜17年の大規模なろうそく革命で権力から追放されました。
ウクライナの戦争がどのように終わるのか、世界の秩序に大きな影響を与えると予想されます。ウクライナ領土の一部を占領するようなことがあれば、ロシアは世界史を20世紀前半の帝国主義時代に戻したという非難を免れることはできないでしょう。
韓国も日本も、米国と中国の全方位的対決に便乗するよりは、国際貿易と文化で緩衝材となることが長期的に正しい選択になるのではないでしょうか。
1942年生まれ。92年から国会議員3期12年。韓国紙「東亜日報」元記者。70年代に民主化運動を率いて5回の投獄を経験。
2022年4月13日
晴男 高校で「日本史探究」とか「世界史探究」とか、新しい科目をやることになるんだね。
陽子 新しい学習指導要領になったからね。「主体的・対話的で深い学び」が強調されているのよ。
晴男 このあいだ新しい教科書の検定結果が発表されたよ。資料を見て考えたり、リポート作成や討論をしたりという「探究学習」の内容が盛り込まれた。
陽子 検定では政府の教科書への統制がいちだんと厳しくなったね。
晴男 戦時中に朝鮮から日本に連れてこられた人について「強制連行」とした記述が、「動員」「徴用」などに書き換えられた。
陽子 政府は去年の4月に、日本維新の会の議員の質問主意書に答えて、「強制連行」や「強制労働」、「従軍慰安婦」の「従軍」という用語は不適切だと閣議決定した。
晴男 検定基準では2014年から「政府の統一的見解」に基づいた記述にすることを求めているから、これを利用して「強制連行」や「従軍慰安婦」を教科書から消そうとしたんだよ。
陽子 でも、残した教科書もあるんだって。
晴男 例えば、「従軍慰安婦」という言葉を使った河野洋平官房長官談話の抜粋を載せた教科書に「政府統一見解に基づいた記述がされていない」という意見がついた。
陽子 出版社側は「従軍慰安婦」という言葉は残して、例の閣議決定のことを書き足したんだ。
晴男 「多数の朝鮮人を強制連行した」という記述を残して、閣議決定について注記で追加し、「強制連行にあたる事例も多かったとする研究もある」とした例もある。
陽子 その記述なら、言葉をめぐって政府が何をしようとしているかを教えることもできる。
晴男 編集者や執筆者の努力ともいえるよ。
陽子 佐渡金山の問題でも日本政府は強制労働の事実を認めようとしていないよね。
晴男 日本が侵略戦争・植民地支配のなかで行った行為を覆い隠そうという点で、教科書の問題と根は一緒だ。
陽子 過去をきちんと反省してこそ未来が開けるはず。事実をちゃんと認めて、子どもたちにも教えていかなきゃね。
2022年4月13日
子どもと教科書全国ネット21は11日、文部科学省が3月29日に公表した高校教科書の検定結果について鈴木敏夫事務局長の談話を発表しました。
昨年4月に「従軍慰安婦」「強制連行」などの用語を不適切だと閣議決定した「答弁書」に基づいて、「政府の統一的な見解に基づいた記述がされていない」との意見が過去最多の14カ所あったことを指摘。同時に、政府見解を書いた上でそれに批判的な記述を載せるなど教科書会社が「抵抗と工夫」をしている例を紹介しています。
「『答弁書』(政府見解)による教科書記述の書き換え強要は、一昨年の日本学術会議会員任命拒否などと通底」し、学問、言論、出版の自由に反する教育への不当な支配だと批判しています。
2022年4月7日
韓国の米軍基地周辺には、「基地村」と呼ばれる場所があります。朝鮮戦争(1950〜53年)以降、米軍は主要都市に部隊を配備しました。米兵を相手にした「性産業」で働く女性やナイトクラブなどが集まり、基地村が形成されました。70年代には朴正煕(パク・チョンヒ)政権が、基地村女性に性病検査を行うなど性売買に関与。女性たちは精神的、経済的に苦しんできました。米軍基地を多数抱えていた京畿道の平沢市と議政府市に、かつての基地村女性を支える人々を訪ねました。
上空をひっきりなしに行きかうヘリコプター。降り立った先は平沢市内にある米軍基地キャンプ・ハンフリーです。1919年に植民地としていた旧日本軍が飛行場をつくり、解放後から米軍が使用しています。
同基地から歩いて5分ほどの住宅街に、「基地村女性平和博物館」があります。運営する「基地村福祉のための社団法人ヘッサル社会福祉会」のウ・スンドク代表が迎えてくれました。博物館は、基地村の歴史や支援の様子を知ることができます。「好きでない人とセックスしたいとは思わない。基地村で働かなければならなかった女性たちを、多くの人に理解してほしい」
借金や経済的困窮などさまざまな事情で性産業で働くことを余儀なくされました。日本軍「慰安婦」とされ、帰国後も家族に受け入れられず基地村に来た人もいるといいます。
同会は、基地村女性に演劇を通して心を癒やす取り組みを実践してきました。ウ氏は「舞台に上がるのも恥ずかしがっていた女性が尊厳を取り戻し、堂々とした姿に変わっていく姿は感動的でした」と振り返ります。
基地村女性に政府が深く関わり始めたのは70年代初めです。
独裁政権の維持に駐韓米軍を必要とした朴政権は、米軍の「性病管理」の要求を受け入れ、当時、売春がすでに違法だったにもかかわらず、全国の基地村に性病検査所を設置。毎週検査を行い、性病だと判定された人を法的根拠もなく隔離施設に送りました。
全国の基地村女性たち122人は2014年6月、国を相手取り「基地村米軍慰安婦国家賠償請求訴訟」を起こしました。女性たちの証言によると、政府は「ドルを稼ぐ妖精」「真の愛国者」などとほめたたえ、性売買を促したといいます。
裁判は一審、二審ともに一部で勝訴。しかし、大法院(最高裁)に送られて以降の4年間、動きがありません。支援者らは今年2月8日に声明を発表し、大法院は責任を果たすよう要求しました。
議政府市にある市民団体トゥレバンは、基地村女性の支援の草分け的存在です。米軍基地キャンプ・スタンレーのすぐ脇にある事務所は、政府が設置した性病検査所を改修して使用しています。
キム・ウンジン代表が、ナイトクラブがあった通りを案内してくれました。米軍再編で基地機能は移転しており、基地の後門は閉鎖されていました。「昔は休みの日になると、この門からたくさんの米兵が基地村にやってきました」
一時期は全国に3万人近い基地村女性がいたと推定されますが正確な数は把握されていないといいます。
同団体は現在、基地村女性の支援と合わせ、女性家族省の下で性暴力の相談センターを開設しています。相談にくるのはロシアやフィリピンなどからの移住女性が多いといいます。
「基地村女性の問題は、過去の問題ではありません。新しい大統領は女性家族省をなくそうとしています。連帯し、デモもして、女性たちの権利を守らなければいけません」
2022年4月3日
開催が延期されていた「表現の不自由展 東京」が2日、東京都国立市の「くにたち市民芸術小ホール」で始まりました。5日まで開催されます。
2021年6月に別会場で開催が予定されていた同展ですが、相次ぐ妨害行為による近隣への迷惑を理由に会場の貸し出しが不可となり延期されていました。
今回の「表現の不自由展 東京2022」では、「慰安婦」の被害を記憶する「平和の少女像」や原発問題をテーマにした「叫びと囁(ささや)き フクシマ:記録と記憶」など、16組のアーティストの作品を展示しています。
記者会見をした主催団体の岡本有佳共同代表は「開催できたことにうれしい気持ちでいっぱいです。地元の国立を中心とする市民、アート関係者のグループでつくった芸術展開催を実現する会と、市や施設の協力があってこそ。一つ一つの作品と向き合ってほしい。4日間、最後まで開催できるよう十分に対策をとっていきたい」とあいさつ。岩崎貞明共同代表は「作品を見たい人がいて、見せたい人もいる。その中で私たちはその場を提供するため、妨害行為に対応しなければならないのが現状です。作品を見る機会を奪うようなことはしてはならない」と話しました。
同展には1日あたりおよそ400人の来場が見込まれます。会場周辺では多数の警察官が配置されるなか、開催に反対する団体の妨害活動があり、それに対して「表現の不自由展」を支持する市民らが抗議を行いました。
3月
2022年3月30日
文部科学省は29日、2023年4月から主に高校2年生が使う教科書の検定結果を公表しました。戦時中に朝鮮から日本に連れてこられた人たちについて「強制連行」との言葉を使った教科書に対し、「政府見解に基づいた記述」を求める検定意見が多く付きました。
今回は、新しい学習指導要領で導入された「日本史探究」「論理国語」などの選択科目が初めて検定を受けました。
「日本史探究」「世界史探究」などでは、「(朝鮮からの)強制連行」という用語に、「政府の統一的な見解に基づいた記述がされていない」として修正させる検定意見が付く例が多数ありました。昨年4月に閣議決定した「強制連行」「強制労働」の表現は不適切との政府答弁書に基づくものです。多くの出版社は「動員」「徴用」などの言葉に修正しました。
「日本軍慰安婦」という用語を使った「日本史探究」の教科書には「日本軍と慰安婦の関係について誤解するおそれがある」との検定意見がつきました。出版社側は「日本軍」を削除する一方で、「1993年に政府は慰安所の設置・管理、慰安婦の移送への軍の直接的あるいは間接的な関与を認め」などと記述しました。
今回の検定では、普通科・専門学科などに共通の8教科で189点の申請があり、すべて合格。農業、工業などの専門教科は52点の申請があり、50点が合格。2点は申請取り下げになりました。新教科書では新型コロナウイルスや成人年齢引き下げなども取り上げられました。
今回の教科書検定で顕著となった「(朝鮮からの)強制連行」などの用語の削除は昨年来のものです。背景には政府と日本維新の会による教科書への攻撃があります。
昨年4月に、当時の菅義偉内閣は、戦時中に日本に連れてこられて働かされた朝鮮人について、「強制連行」「強制労働」と表現するのは不適切だとする答弁書を閣議決定しました。同答弁書は日本維新の会の馬場伸幸幹事長(現共同代表)の質問主意書に答えたものです。菅内閣は同時に「従軍慰安婦」という用語の「従軍」も不適切だとする答弁書も閣議決定しました。
その後、維新の国会議員が同答弁書に基づいて教科書記述の変更を迫り、文部科学省は教科書会社への「説明会」を開くなどして、事実上、記述の訂正を要求。出版社も応じざるをえませんでした。
このように日本軍の行為を歴史の教科書から抹消する動きは政府と維新が一体となって進めてきたものです。
一方で文科省は昨年6月、日本共産党の畑野君枝衆院議員(当時)の質問に対し、「政府の見解に触れた上で、異なる見解を記すことまで否定していない」と答弁。この結果、今回の検定でも政府の見解に触れた上で、「実質的には強制連行にあたる事例も多かったとする研究もある」と記述した教科書もあります。
2022年3月26日
開催が延期されていた「表現の不自由展 東京2022」の実行委員会は25日、衆院第2議員会館で記者会見を行い、4月2日から5日までの4日間、東京都国立市の「くにたち市民芸術小ホール」ギャラリーで展覧会を開くことを発表しました。
同展は2021年6月に東京での開催を予定していましたが、日本軍「慰安婦」の被害を記憶する「平和の少女像」や天皇の肖像を使った作品などをめぐって、妨害行為が行われたため、会場側から近隣への迷惑を理由に貸し出しが不可となり、延期していました。
実行委員会の岩崎貞明さんは今回の開催は、期間や人数制限など「コロナの影響で限定的な開催となった」と報告。
新たな会場が公共施設に決まった経緯について、実行委員会の岡本有佳さんは、大阪展では「安全の確保」を理由に、開幕直前に会場の府立施設の使用が取り消されたことに対して実行委員会が提訴し、会場の使用を地裁が認めたことが今回の開催にあたって大きな力になったと説明。「安全面や近隣住民への配慮も含めて、何度も会場側と協議を行いました。また、市民とのネットワークづくりも行い、芸術展開催を実現する会も立ち上げ、地元の市民とともに開催します」とのべました。
展覧会はインターネットの予約制となっています。
2022年3月2日
【ソウル=栗原千鶴】韓国の市民団体は1日、103年前の1919年3月1日に日本の植民地支配に抗議した三・一独立運動記念日にあわせ、ソウル市内で集会を開き、日本政府に植民地支配の過ちを認め謝罪するよう求めました。参加者は「私たちの力で歴史をつくろう」などと書いたプラカードを掲げました。
強制動員共同行動の金英丸(キム・ヨンファン)政策委員長は、日本政府が佐渡金山を国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産に登録しようとしていることを批判。「強制動員の歴史をきちんと書けば東アジアの平和実現が可能だ」とし、「ユネスコ登録に単純に反対するのではなく、日本の弾圧の歴史が正しく記録されなければならない」と述べました。
「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」(正義連)の李娜栄(イ・ナヨン)理事長は、韓国で「慰安婦」被害者を詐欺集団だなどと非難し、歴史を歪曲(わいきょく)する動きが出ていると指摘。「どのような攻撃にも屈せず、正義と真実を追求する水曜デモを守り、日本政府が世界の歴史にどのように記録されるかを見届けることが、三・一独立精神を受け継ぐことになる」と述べました。
参加者は、植民地支配からの完全な解放をめざし、東アジアの平和の実現を早めることなどとした決議文を採択しました。
2022年3月2日
『詩人会議』3月号は「学校」の特集である。千葉昌秋の詩「水漬くかばね」は、太平洋戦争開始後に入学した中学校での生活を回想する。毎日軍事教練で死ぬことを教えられたが、ある日、海辺で無惨な死体を見て、こんな状態になりたくない、生きようと強く思った。子どもの自然な心、生命力は戦争の思想と矛盾する。
おおむらたかじの詩「ストーブ・駅」は、60年前、待合室に薪(まき)ストーブの燃える雪国のローカル線終着駅で交わした会話を再現する。〈せんせ アンポハンタイ なぜですか/「私も戦争だけは嫌だからねえ」/オレたちもアンポハンタイ 嫌です戦争/けど 父はアカになるなって言います〉。戦前からの反共思想は戦後も残っていたのだろう。
エッセーでは、歴史教育者として教科書問題に取り組む石山久男、鈴木敏夫両氏の指摘が興味深い。家永教科書裁判の後、侵略加害の記述は前進したが、安倍政権以降、歴史の歪曲(わいきょく)は教科書検定にも及んだ。たとえば沖縄戦の「集団自決」で日本軍の強制という記述が削除され、「従軍慰安婦」から「従軍」が削除された。明らかな史実である旧日本軍の犯罪を国家ぐるみで覆い隠そうとしている。今の政府が旧日本軍と同じ方向を向いているからだろうか。
2月
2022年2月23日
岸田文雄政権が、米国に追随し、「戦争する国」づくりの新たな危険な道に踏み込んでいます。安倍元首相が「台湾有事は日本有事だ」との対中強硬論をふりまき、右派系論壇が「敵基地攻撃能力」の保有や大軍拡をあおるもと、対抗する論考に注目しました。
石井曉(いしい・ぎょう=共同通信専任編集委員)「台湾有事と日米共同作戦」(『世界』3月号)は、「台湾有事」に備えるとして、鹿児島、沖縄の南西諸島約40カ所に米軍の攻撃拠点を置く動きが強まっていると指摘。戦闘が発生すれば、安保関連法に基づき、米軍への給油や弾薬提供を自衛隊が行うことが可能であり、南西諸島が戦闘に巻き込まれる危険性が非常に高い、と警告します。石井氏のもとに、「(米軍は)南西諸島の住民の存在など、はじめから考えていない」(自衛隊幹部)、「安全保障関連法ができたから、台湾有事に日本が巻き込まれる危険性が増大したとも言える。反対派の主張にも一理あったということだ」(防衛省官僚)との声が届くなど矛盾は噴出。「米軍の要求を丸のみした南西諸島の軍事拠点化はやめなければならない」「命を守る政治の判断が問われている」と厳しく指摘しています。
文谷数重(もんたに・すうちょう=軍事ライター)「防衛費2%の無理と無駄」(『世界』同)は、防衛費を対GDP比で2%にするという自民党の主張は、「それ以外の予算支出を一律で25%削減」か「増税で五兆円を賄うか」せねばならず実現不可能と説きます。また、中国、北朝鮮、韓国と「敵対国の数をいたずらに増やし、対立を激化」させる日本政府の対応は、「敵対関係は最低限に整理」するという安全保障の考え方に反する「非現実的かつ非合理的」なものと批判。元自衛官ならではの着眼点と説得力です。
「軍事対軍事」のエスカレートへの警鐘は保守論壇にも見られます。
筒井清忠(帝京大教授)は、林芳正外相との対談「歴史が示す対中外交の教訓」(『Voice』3月号)で、「マスメディアが自ら強硬な姿勢を煽動(せんどう)し、政治家も選挙民の支持を得ようとそれに従って動く。その結果、大衆のあいだでも対外強硬的な意見が過熱化していった」と戦前の歴史を振り返り、「対立を上から絶対的に押さえつけるのではなく、さまざまな意見を共存させながら進めていく」べきだと述べています。
井上正也(政治学者)「台湾有事と日本有事のあいだ」(『中央公論』3月号)も「台湾有事は直ちに日本有事となるわけではない」といさめ、「日本は外交を主軸にすえて、台湾問題の平和的解決を模索する姿勢を崩すべきではなかろう」と説いています。
中国との外交は、国際法に基づき冷静に進めるべきです。
佐渡金山の世界文化遺産への推薦をめぐり、安倍元首相が韓国との「歴史戦をたたかえ」と息巻き、NHKもこの立場を肯定的に報じました。山口智美(米モンタナ州立大学准教授)は「『歴史戦』を問う」とのインタビューで、米国での日本軍「慰安婦」の碑や像の設置を日本政府が妨害してきたことを証言。自民党が「戦略的対外発信の予算」増額を求め「親日派、知日派を育成する」としていることが、政権の歴史認識に批判的な研究は認めないなど学問の自由を脅かす懸念を表明しています(神奈川新聞、2月12日付)。
植松青児(雑誌記者・編集者)「佐渡金山の世界遺産推薦問題に『歴史戦』とやらの余地はない」(『論座』2月7日)は、地元の歴史資料・文献をひもとき、強制労働や朝鮮人差別はなかったとの主張は通らないことを論証しています。こうした理性ある論を、NHKはじめメディアが一層取り上げることを期待します。
メディアを味方につけ「勢い」にのる日本維新の会をどう見て、どう立ち向かうか。平松邦夫(元大阪市長)「大阪と市民自治」(『世界』同)は、維新の会による「対立陣営を『敵』とみなし、全力で攻撃を加えていくという手法」が住民に深い分断をつくったと告発。維新の会の「改革」の実体は、公立病院や大学・研究機関の廃止・統廃合、教育への政治介入で学校現場に混乱と分断を持ち込んだことだと批判。「維新に投票している人も含めて、この地域の今と未来について語り合うこと、違いを超えてつながりあうことで、自治の力を取り戻すこと」に展望を見出しています。「市民の力を信じ」る、という平松氏の言葉に共感しました。(さかい・のぞみ)
・赤石晋一郎(ジャーナリスト)+本誌取材班「自民党『爆弾男』を告発する」(『文芸春秋』3月号) 自民党京都府連の役員室で「○○先生からだ」と1地方議員当たり50万円の現金が。これが国政選挙前の“恒例”に。広島の河井夫妻のように直接渡せば「買収」だが、国会議員から寄付を受けた府連がいわば「マネーロンダリング」(資金洗浄)をして地方議員に渡す、この仕組みを考案したのが現府連会長で「爆弾男」といわれた西田昌司参院議員であるという衝撃の告発です。
・金平茂紀「公務員個人の責任が問われぬ不条理」(『世界』3月号) 赤木雅子さんが国と佐川宣寿・元財務省理財局長を相手取って、夫・俊夫さんの自死の真相解明を求めた民事訴訟で、国側が「認諾」して争わないことに「国は汚い」という世論の批判が噴出。一方で、筆者は佐川氏への訴訟は継続中で、公務員として悪質で個人責任が問われるといいます。個人責任も認めた「画期的な判決」として、現職警察官の日本共産党の緒方靖夫国際部長(当時)宅への盗聴を違法と認めた東京地裁判決に言及しています。(編集部)
2022年2月23日
日曜早朝のNHKテレビ「目撃!にっぽん」で13日(前6・10)、「声をあげて、そして」と題してジャーナリスト・伊藤詩織さんを追ったドキュメンタリーを放送しました。5年前、実名と顔を公表して性被害を訴えた伊藤さん。番組はその1年半後から密着取材をしたものです。
TBS記者だった男性を相手に、警察へ被害届を出すも、「よくある話」と片づけられ、東京地検は不起訴に。伊藤さんは2017年、民事訴訟に踏み切ります。番組では触れられませんでしたが、男性は当時の安倍晋三首相に近い人物でした。
この間の葛藤は相当なもの。「終わりのないようなところへ向かっていて」とカメラに向かって語っていました。ネット上に流れる「うそつき」「売名行為」「死ねばよかったのに」の心ない言葉。伊藤さんはそれらを振り切るようにシエラレオネの女性器切除の当事者や、韓国の元日本軍「慰安婦」を訪ねインタビューします。
折れそうにもなる伊藤さんを突き動かしたのは、性被害を受けた女性たちからの手紙だったといいます。「ひとりぼっち」と思いながら声をあげましたが、性暴力根絶を目指すフラワーデモが全国に広がっていきます。
30分の短い番組の中に伊藤さんの気持ちが深く込められています。ラストで「声をあげたことを後悔していない」とほほ笑む姿をとらえます。宣英理ディレクターは昨年「クローズアップ現代+」でも、伊藤さんを特集しています。
2022年2月20日
4月から中学校や高校で使われる歴史の教科書などが政府の圧力によって書き換えられています▼「従軍慰安婦」という言葉から「従軍」が削除され、朝鮮人の「強制連行」が「強制的に動員」などに変えられています。教科書会社による訂正の形をとっていますが、事実上、政府により書き換えさせられたものです▼昨年4月、当時の菅義偉政権は「従軍慰安婦」の「従軍」という言葉や朝鮮人の「強制連行」「強制労働」という表現は適切ではないという答弁書を閣議決定し、教科書会社に圧力をかけました。「従軍」という言葉は「軍により強制連行された」という誤解を招くというのです▼佐渡金山の世界遺産推薦をめぐって強制連行の歴史を隠そうとする現岸田文雄政権の姿勢も前政権と同じ。「歴史戦」と称して日本の負の歴史をなかったことにしようという安倍晋三政権を引き継ぐものです▼先の政府答弁書は日本維新の会の馬場伸幸幹事長(現共同代表)が提出した質問主意書に答えたものでした。維新はその後、答弁書に基づいて教科書を書き換えさせようと国会で執ように取り上げています。歴史認識の問題でも維新は悪政をけん引しているのです▼侵略戦争への無反省は、憲法9条改悪・「戦争する国」づくりと一体です。維新は国会で、憲法を教える小学校の授業に対し「意図的に護憲を浸透させるもの」と介入を始めました。歴史の歪曲(わいきょく)が行き着く先は平和の破壊です。子どもたちのために史実に立った教育は不可欠です。
2022年2月17日
【ソウル=栗原千鶴】韓国の「慰安婦」被害者を支援する日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯(正義連)は16日、ソウル市内で水曜集会を開催しました。日本政府に公式な謝罪・賠償を求めるとともに、来月9日に投開票される大統領選の主要候補に送付した公開質問状の回答を公表しました。
正義連などが参加する被害者支援団体ネットワークは先月末、主要政党の候補者に対し質問状を送付。2015年12月に日韓外相が交わした「日韓『慰安婦』合意」への認識や「慰安婦」問題への今後の対応などについて問いました。
与党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)前京畿道知事は「合意」について、被害者中心の原則に立ったものではなかったと回答。当選した場合、「合意」をもとに日本政府が拠出した10億円を返還し、「日本政府の戦争責任、謝罪と反省を前提として『慰安婦』合意を補完し、法的効力を持つ合意文を交わす」と述べました。真相究明や再発防止のための教育も必要だと回答しました。
最大野党・保守「国民の力」から出馬する尹錫悦(ユン・ソクヨル)前検事総長と第2野党「国民の党」の安哲秀(アン・チョルス)代表は回答を拒否しました。
2022年2月16日
「慰安婦」や朝鮮人の「強制連行」に関する政府統一見解に基づく記述を強制する教科書介入や、日本学術会議会員の任命拒否などの教育や学問の自由を踏みにじる行為に対して怒りの声を上げる集会が15日に国会内で開かれました。子どもと教科書全国ネット21と「慰安婦」問題解決オール連帯ネットワークの共催。
関東学院大学の林博史教授は基調講演で、第2次世界大戦後の日本社会が戦争や植民地支配の責任を曖昧にした結果、現代の状況があると指摘。「政府が気に入らない研究者の声を拒否することが、安倍政権以降露骨に出ている。粘り強く声を上げ続けたい」と述べました。
「強制動員問題解決と過去清算のための共同行動」事務局の矢野秀喜さんは、佐渡金山の世界遺産推薦を岸田内閣が決めたことを取りあげ、「(佐渡金山に)朝鮮の人々を動員した歴史的事実がある上に、新潟県史にも強制労働の事実が書き込まれている」と強調。不都合な事実に触れない政府を批判しました。
教科書ネットの鈴木敏夫事務局長は「『慰安婦』や『強制連行』は国際的には評価が定まっている問題で、日本政府の人権意識の低さはあきれるばかりだ」と怒りの声をあげました。
日本共産党からは宮本岳志衆院議員、紙智子参院議員、畑野君枝前衆院議員が参加しました。
2022年2月15日
【ソウル=栗原千鶴】林芳正外相と韓国の鄭義溶(チョン・ウィヨン)外相は12日、滞在先の米ハワイで会談しました。韓国外務省の発表によると、両外相は朝鮮半島の平和プロセスの進展に向けて、北朝鮮との対話の必要性と日韓・日米韓の協力の重要性を再確認しました。日本の外務省も、北朝鮮への対応をはじめ、地域と安定にとって日韓・日米韓協力が重要であることを確認したと発表しました。
鄭氏は、「正しい歴史認識が未来志向的な韓日関係発展の根幹だ」と強調しました。アジア・太平洋戦争をめぐる両国の歴史認識は、これまでの声明や宣言でも共有されてきたと指摘。強制連行された徴用工や「慰安婦」被害者が受け入れられる解決策を探すために、外交当局間の協議を加速するよう要請しました。
佐渡金山の国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産登録の推薦に対しても、抗議の意志を表明。2015年の軍艦島登録の際に日本が自ら約束した、被害の全容を知らせる展示の設置などの後続措置を履行するよう促しました。
林氏は徴用工や「慰安婦」問題について「韓国国内の動きにより日韓関係は引き続き厳しい状況にある」と述べ、韓国側の対応を要求。佐渡金山をめぐっては「韓国側とも誠実に議論を行っていく」としました。
2022年2月13日
日本歴史学協会(若尾政希会長)は、このほど「建国記念の日」に際し声明を発表しました。
声明は、歴史教育をめぐり、閣議決定を経た内閣の答弁書によって、これまで学界で共有されてきた「従軍慰安婦」「強制連行」「強制労働」などの学術用語が教科書から削除を余儀なくされたことを「看過しがたい事態」と批判。歴史教育は事実に基づいた歴史研究の成果を踏まえ「自国中心の歴史認識を排し、適切な教育方法に基づいて」行われるべきであり、「政治や行政の介入により歪(ゆが)められてはならない」と主張しています。
2022年2月12日
歴史に学び憲法を守り生かそうと「建国記念の日」に反対する集会が11日、東京都内で開かれました(オンライン併用)。主催は歴史研究団体などでつくる「2・11連絡会」です。(各地で反対集会11面)
鈴木敏夫・子どもと教科書全国ネット21事務局長と、渡辺治・一橋大学名誉教授が講演しました。
鈴木氏は、中学・高校教科書の「従軍慰安婦」や「強制連行」などの記述について、2021年に政府が教科書会社に圧力をかけ「訂正申請」させた経過と実態を報告。次の検定を待たずに記述を訂正させたことで「教科書攻撃は新たな段階に入った」とし、「戦前の国定教科書に近くなっていく」と警鐘を鳴らしました。
渡辺氏は、国会の政党配置の変化と、バイデン政権による「日米軍事同盟強化」の圧力のもと、「敵基地攻撃能力」保有を積極的に検討し、自衛隊を明記した9条改憲を狙う岸田政権の策動の加速化を指摘しました。今まで以上に立憲野党を励ます市民運動の力が重要になっていると強調し、「敵基地攻撃能力」保有は「戦争への道」であることを広く訴えていくことなどを提起。「共闘をめぐる逆流やジグザグは必ず起きるが、憲法破壊の政治を止めるには、共闘の道以外にはない」と述べ、参院選で改憲勢力3分の2を阻止しようと訴えました。
首都圏青年ユニオンの原田仁希(にき)委員長が、コロナ禍の非正規労働者の実態と運動について、新日本婦人の会の平野恵美子国際部長がジェンダー平等への流れと日本の妨害勢力とのたたかいについて、それぞれ報告。誠実な歴史認識の向こうにアジアと世界の平和を見据え、憲法の理念が生きる社会をつくりだそうと呼びかける集会アピールを採択しました。
2022年2月11日
昨年の総選挙で議席を増やした日本維新の会が注目を集めています。コロナ対応で毎日のようにテレビに映る吉村洋文大阪府知事(同党副代表)に期待する人も少なくありません。しかし、実態はどうなのでしょうか。まずは政治路線から同党の実態を検証します。
「維新の政策『維新八策2021』を改めて確認してみましたが、弱肉強食を旨とする極めて野蛮な新自由主義路線と言わざるを得ません」。大阪府吹田市に住む神戸大学名誉教授の二宮厚美さんは言います。
典型が「雇用の流動化」=労働法制の規制緩和路線です。二宮さんは「この路線は非正規雇用の拡大など雇用の劣化と格差を広げた原因そのものです。しかし、維新はそれをさらに進めて従来の自民党政権の改悪でも実現できなかった『解雇紛争の金銭解決』、つまり、不当でも金さえ払えば解雇できる首切り解雇の自由化まで公約に盛り込んでいます」と指摘します。
今国会でも藤田文武幹事長が「どの党も労働市場改革を全く言わなくなった」と改悪の停滞を問題視。「(労働者)派遣法改正で悪い影響ばかり出ているというのは明らかに間違いだ」と述べ、解雇規制の緩和などを求めています。(1月25日、衆院予算委)
社会保障をめぐる政策では、自腹で受ける医療を増やして皆保険体制を崩す「混合診療の解禁」を明記。
ほかにも、毎月全国民への一律給付を行う「ベーシックインカム」制度の導入検討を掲げていますが、これは基礎年金や生活保護、児童手当などの解体と一体になっている「とんでもない代物です」(二宮さん)。
国会でも大阪で医療・保健行政を切り捨てコロナ対応を困難にしたことは棚に上げ、「いまの重症病床の逼迫(ひっぱく)は感染症法にこだわっているがゆえに生まれた人災だ」(2月2日同委、足立康史衆院議員)などと主張。昨年は病床削減推進法と高齢者医療費2倍化法に賛成し、コロナ禍の中でもさらに医療を破壊する悪法の成立に手を貸しました。
コロナ禍で、新自由主義の破綻が明らかになり、岸田文雄首相ですら「弊害」にふれざるをえなくなっているのに、維新は「総理は、新自由主義的な政策の是正を掲げ、改革に後ろ向きのように見える」(浅田均参院議員、1月21日本会議)と新自由主義政策の実行を迫り、まるで経営者団体のように「規制改革・構造改革に本腰を」(馬場伸幸共同代表、1月20日の衆院本会議)と主張しています。「成長戦略」として、米ウーバーのような危険な有償ライドシェアサービス(「白タク」)の解禁、企業の農地所有の解禁など規制緩和を要求。脱炭素社会を口実に小型原発の開発を迫っています。
個人情報の保護より利活用を優先する財界と国が主導するデジタル化には、「デジタル分野の与党との自負で政府の背中を押してまいりたい」(馬場氏、同)と表明。「全預貯金口座とマイナンバーのひもづけ義務化」を求める一方で、行政が保有するデータは「特段の理由がない限りオープンデータとする」(同党政策)と企業のもうけに使わせようとしています。
東京進出を狙った昨年の都議選では、都営地下鉄民営化に加え「都営住宅は全て民間売却又は民間委託」と打ち出し、大阪でも進めてきた「何でも民営化」路線をあらわにしています。
二宮さんは言います。
「こうした政策や行動を維新は選挙でほとんど語ってもいないし、とりあげられてもいません。ただただ吉村氏のコロナ対応パフォーマンスと『改革』のポーズで人気を集めてきたのです。広く国民に実態を伝えることが非常に重要です」
「戦争する国」づくりの問題をめぐっては、自公政権以上に“右翼的立場”から悪政をけん引する役割を果たしています。
特徴としてあらわれているのが軍拡です。維新は、基本政策に「領域内阻止能力(敵基地攻撃能力)の構築について、積極的な検討を進める」と明記。加えて、「防衛費のGDP(国内総生産)1%枠を撤廃し、テロやサイバー・宇宙空間への防衛体制をさらに強化する」と主張するなど際限ない軍拡路線をむき出しにしています。
馬場氏は、国会やテレビ番組でも「もはや台湾有事は『いつ起きるか』という次元」(1月20日の衆院本会議)と危機感をあおり、「抑止力として反撃する能力をもつことは絶対に必要だ」(1月9日のNHK「日曜討論」)と公言。「台湾有事は日本有事、すなわち日米同盟の危機に直結する」などと安倍晋三元首相と同様のフレーズを振りかざしながら、相手を殲滅(せんめつ)する全面戦争に道を開こうとしています。
五十嵐仁法政大学名誉教授は、「維新は『現状打破』『改革姿勢』をアピールすることで補完勢力としての本質を隠しています。その危険性は、翼賛体制を引っ張り、誤った方向へ世論を誘導していく『けん引役』です」と指摘。「北朝鮮のミサイル実験や米朝対立を背景にした台湾有事の危険性などが指摘される中で、国民に安全保障への不安が広がっています。維新はこうした不安に乗ずる形でさらに危機感をあおり、戦争へ結びつく危険な道に国民を誘導しています」と強調しました。
憲法審査会をめぐっては、自民党中心の「与党側」の幹事懇談会に維新も参加し、憲法審の毎週開催を主張しています。衆院本会議の代表質問では、「自民党が素案として示している緊急事態条項創設や9条改正についても、党内議論を進める」と発言。「安倍元総理が在任中、2020年までの施行という期限を示して国民的な憲法議論を促したように…」と言いながら、岸田首相に対し、「(改憲の)具体的スケジュールを明示し、憲法審での精力的な議論をリードしていくべきだ」(馬場氏、1月20日)と迫りました。ここでも安倍氏と同様の主張で早期改憲をあおっています。
五十嵐氏は、「軍拡と連動した改憲を狙う『右側』からの支持を引き付けているのが維新です」と語ります。
2日の衆院予算委員会では、山本剛正議員が日教組の教育研究集会での憲法教育にかかわるリポートを取り上げ、「意図的に子どもたちに護憲を浸透させようと各地で授業を進めている」と名指しで攻撃。「総理はご自身の任期中に憲法改正の実現を目指しているが、間違った教育が(によって)、憲法を国民の手に取り戻すことができない、遠ざかってしまっているという認識はあるか」などと迫り、改憲という政治的意図をもって、教育内容に不当な圧力を加える異常な姿をあらわにしました。
歴史問題でも保守系団体の主張を代弁するかのような姿勢です。「佐渡島(さど)の金山」(新潟県)の世界文化遺産の推薦をめぐり、松井一郎代表は「夕刊フジ」の連載(3日)の中で、「一時は『推薦見送り方針を検討』と報じられたが、地元や自民党保守派の反発を受けて、岸田首相が『聞く力』を発揮した。これは当然のことだ」と発言。戦時に佐渡金山で朝鮮人の強制労働が行われていたことは、自治体の公的な歴史文書にも記されている歴史的事実にもかかわらず、松井氏は「『強制労働』とはいえない」と主張し、保守系団体と同じように政権をつきあげています。
維新はこれまでも「慰安婦」問題への旧日本軍の関与を認めて謝罪した「河野談話」を「虚構まみれの作文だ」(馬場氏、2021年12月9日、衆院本会議)などと否定し、被害者を侮辱する歴史修正主義発言を繰り返しています。
五十嵐氏は、「自民党でも言わないような極端な発言を平気でできるのが維新です。そうした本質を丁寧に明らかにすることが必要です」と強調。「一方で、野党は、国民の不満や不安の原因を根本的に解決するための正しい出口を示すことが求められます」と語りました。
維新はジェンダー平等の実現にも背を向けています。政策提言「維新八策2021」で男女共同参画(ジェンダー・イクオリティ)の項目を設け、その中で「選択的夫婦別姓」の創設を主張しました。ところが、その中身は「同一戸籍・同一氏の原則を維持」し、「旧姓使用にも一般的な法的効力を与える」ものとしています。
「同一戸籍・同一氏の原則を維持」するということは、結婚したら夫婦は同じ姓を名乗らなければならないという“強制的夫婦同姓”の現状は変えないということです。旧姓使用に「法的効力」を与えて利便性を一定高めたとしても、どちらかが生来の姓を失うという、個人の尊厳への侵害は避けられず、「同姓か、別姓かを選べるようにしてほしい」という願いに反しています。
同党の足立康史幹事長代理(当時)は昨年10月14日、選択的夫婦別姓制度の早期実現を求める院内集会で、「100%の別氏(別姓)は当分できない」と冷たく言い放ちました。この発言に対し、集会参加者からは「すでに通称使用しており、通称使用の拡大で事足りるものではない」などの批判が相次ぎました。
これまでにも維新は、党ぐるみで女性蔑視をくり返してきました。維新創設者の橋下徹氏は大阪市長当時の13年、「従軍慰安婦が必要だったのは誰だって分かる」と発言しましたが、維新は訂正も撤回もしていません。19年には「あいちトリエンナーレ」をめぐり、松井一郎代表が「慰安婦の問題というのは完全なデマ」と暴言を吐きました。17年衆院選で「8割の女はハエ」「女は頭がおかしくないと出産しない」などと述べた人物を候補に擁立したこともあります。
維新の内部からも不満がもれています。同党の石井苗子議員は2日、参院内での超党派の女性議員による「クオータ制実現に向けての勉強会」で、党内の実情について「女性の意見を聞いたりしない。全部男が決める」「(総選挙で)41人当選したが、女性は4人しかいない」などと述べました。
維新は日本の政治の中でどんな役割を果たしてきたのでしょうか。
神戸大名誉教授の二宮厚美さんは「一番は自民党政治を右から補完・補強する役割だ」と言います。
創設者の橋下徹氏が政治家になった2008年は、前年に第1次安倍政権が倒れ自民党の支配が全国でも大阪でも終わろうとしていた時代です。そのときに自民党府連の推薦をえながら、派手なパフォーマンスで府知事に当選し、その後の民主党政権期にも、教育改悪などで自民党の悪政の先行実験を行いながら安倍氏と結びつき、2度目の安倍政権につなげる準備をしたのが橋下氏だったと振り返ります。そして第2次安倍政権で、維新は国会でも「共謀罪」法など違憲立法に次々賛成、賭博場であるカジノの推進法を共同提出するなど「文字通り安倍自民党政治の伴走者、補完勢力、先兵としての役割を果たしてきた」と言います。
「この間も安倍・菅政権がコロナ対応などの失政で支持を失い自民党政権が危機に陥る中で有力な対抗勢力となりつつあった野党共闘を攻撃する先兵となり、同時に反自民ポーズで行き場のなくなった票の受け皿になることで逆に自民党政治の補修をはかる役割を果たしてきました。むしろ悪政をあおり、ひっぱっている本質が明らかになれば少なくない支持者は離れるのではないでしょうか」
2022年2月10日
自民党の杉田水脈(みお)衆院議員が、日本軍「慰安婦」問題などを扱ったジェンダー研究を誹謗(ひぼう)中傷したことに対し、研究グループの4人が、名誉毀損(きそん)で提訴した国会議員の科研費介入とフェミニズムバッシングを許さない裁判(フェミ科研費裁判)の最終弁論が9日、京都地裁で開かれ、結審しました。
原告の一人である牟田(むた)和恵大阪大学教授は意見陳述で、杉田氏が自らの政治姿勢をアピールするという自己利益のために都合良く自分たちの研究を使い、「その生贄(いけにえ)にされた私たちは黙っていられない」と強調。インターネット上で人を傷つけることが相次いでいる問題を指摘し「裁判所が毅然(きぜん)とした判断をしてくれることが社会に警鐘を鳴らすことになる」と訴えました。
閉廷後に開かれた支援集会で弁護団は、憲法や心理などを専門とする6人の研究者から裁判に関する意見書が提出されたことを紹介しました。
裁判を傍聴してきたジェンダー問題を研究する大学院生から「先生が尋問されている姿は苦しかったが、たたかっている姿を見て励まされてきた」と発言しました。
判決は5月25日。
2022年2月5日
「佐渡島の金山」(新潟県)の世界文化遺産への登録推薦をめぐって、安倍晋三元首相が“歴史戦をたたかえ”と号令をかけ、岸田政権が追従し、公共放送であるNHKの番組が、これを垂れ流す―。歴史の事実に向き合おうとしない危険な動きについて、識者に聞きました。
太平洋戦争中に佐渡金山で朝鮮人労働者が強制労働させられたことは、地元の自治体が公刊した県史なども認めている歴史の事実です。戦時、朝鮮半島から日本に約80万人が強制動員されました。佐渡金山には1500人を超える朝鮮人労働者が動員されたとみられます。
佐渡金山に動員された朝鮮人は相愛寮に収容されました。その「煙草(たばこ)配給台帳」やその他の資料から、強制動員された500人以上の朝鮮人名簿を作成できます。また、1945年になって佐渡金山に徴用された慶尚北道の100人の名簿も残っています。現場から逃走すれば検挙されました。8月15日の解放後の朝鮮人1140人分の未払金の供託史料も残っています。
佐渡金山が強制労働の現場だったという韓国側の主張は歴史的事実です。問題は、こうした事実を日本政府が否定していることにあります。
日本政府は「韓国側の主張については日本側として全く受け入れられない」(木原誠二官房副長官)として、強制労働の事実を否定する姿勢をとっており、そこにこそ、この問題の本質があります。
歴史とは事実を前提に向き合うものです。また、ユネスコも言っているように歴史の全体と向き合わなければ恣意(しい)的なものになります。世界遺産登録にあたっても、江戸時代だけを取り上げて観光スポットにしようというのではなく、負の歴史を含めた全体像が示されなければなりませんし、そうしてこそ世界文化遺産としての価値も深まります。
長崎の軍艦島の世界遺産登録の際、日本政府は朝鮮人強制労働者を含む犠牲者を記憶にとどめる措置をとるとしながら、その約束を果たしていません。
安倍晋三元首相らが「日本の名誉と誇りを守るために歴史戦を戦え」などとのべ、それを受けるように、政府が歴史戦チームを立ち上げるとの報道がありました。それは結局のところ、強制連行の歴史をなかったことにしようというものです。
しかしそれは、よくないだけでなく、どだい無理です。歴史の事実は、なかったことにはできないからです。日本政府のそうした姿勢は日韓の友好関係を阻害することにしかなりません。
ドイツが戦後、近隣国に対しナチス・ドイツの誤りを認めたように、日本も事実を認識して話し合うことが近隣国との友好につながります。
(西沢亨子)
歴史とジャーナリズムは兄弟姉妹の関係にあります。ジャーナリズムの語源は、フランス語のジュールつまり「その日その日」から来ています。毎日の日記の積み重ねが歴史の山脈を形成します。そして日々の出来事の検証を行うのがジャーナリストであり、歴史家の役割の一端を担うのです。だが、それはたやすくはありません。間違いは起き、新たな資料によって塗り替えられることもあります。ジャーナリストも厳しい検証・批判の対象にさらされるのです。報道はいつも中間報告だという畏れを忘れてはなりません。
そんな中、佐渡金山の世界文化遺産登録をめぐるNHK岩田明子解説委員の「シブ5時」での発言は、歴史に対して不誠実と言わざるを得ません。
何が問題だったのでしょうか。岩田氏はさまざまな課題が指摘される佐渡金山の登録申請の背景として、第2次安倍政権発足以来の「歴史戦チーム」の存在を称(たた)えました。歴史に関わる問題を「戦い」ととらえることは愚かです。歴史に向き合うとは、ファクトに基づいた対話であり、知を競う共同作業。自己愛やご都合主義とは無縁のものです。
以下は岩田氏の解説の大意です。「歴史戦チームは、政権の歴史認識に基づいて歴史的事実を集めて検証を進め、官房副長官補を筆頭に歴史認識が絡む外交交渉を担いました。世界文化遺産に関しても2015年に日本の産業革命遺産に登録したときに、日本社会の立場を伝え、国際社会で反論するための資料を準備しました。…当時韓国側は反対運動を展開しました。紆余(うよ)曲折を経て日韓の交渉がまとめられた裏には、歴史戦のチームも貢献したと言えます…」
「政権の歴史認識に基づき事実を集め」とは異常です。『政権の歴史認識』がまず先にあり、それに合う事実を集めるなどというのは、歴史修正主義そのものです。岩田氏と安倍元首相との距離の近さに驚きはしません。ですが歴史の歪曲(わいきょく)を許すような発言は許しがたく、公共放送NHKの責任も重大です。
金学順(キム・ハクスン)さんが日本軍「慰安婦」だったと名乗り出てから31年。安倍氏は、「慰安婦」問題や南京大虐殺などに対して否定的な立場をとり続けてきました。歴史戦チームの活動は、産経新聞による朝日新聞バッシングや日本維新の会の吉村大阪府知事が大阪市長時代に行った「平和の少女像」否定の発言にもつながり、世界に根深い亀裂をもたらしています。NHKが日々現代史をテーマにした力のこもった番組を放送してきていることは確かです。戦後の歴史認識がどのような歩みをたどり、深まってきたのか、岩田氏や「シブ5時」の編集部には学んでほしいと思います。
(和田肇)
佐渡金山の世界文化遺産推薦をめぐって、安倍晋三元首相の“歴史戦をたたかえ”という“号令”を垂れ流したのは、NHKテレビ1月27日の「シブ5時」です。
安倍氏の“号令”は、「夕刊フジ」(1月26日発行)のインタビューで、韓国が「強制労働があった」と主張していることに対して、安倍政権時代の2015年、長崎市・端島炭鉱(軍艦島)の時も、官邸に「歴史戦チーム」をつくり、対峙(たいじ)したとして、「いまこそ、新たな『歴史戦チーム』を立ち上げて、日本の誇りと名誉を守り抜いてほしい」と語ったもの。
「シブ5時」では、岩田明子解説委員が、「歴史戦チームというのは政権の歴史認識にもとづいて歴史的事実を集めて検証を進め、国際社会の理解を得るための特命を帯びたチーム」と紹介。15年の軍艦島登録について、「このチームも貢献した」と評価しました。そのうえで、「韓国側が展開する主張に対して、(岸田政権が結成する)歴史戦チームがいかに機能するか、そして推薦に向けた岸田総理の決断に注目」とのべました。
政権寄りどころか、歴史を偽造する立場に立って解説を垂れ流すことは、公共放送のあり方として厳しく批判されなければなりません。
2022年2月4日
「敵基地攻撃」と「歴史戦」を叫ぶ安倍晋三元首相にひたすら迎合し付き従う岸田文雄首相―。憲法9条破壊と歴史修正は「軍国主義復活」という共通の根を持つ一体のものです。危険な逆流を許さぬたたかいは待ったなしです。
安倍元首相は昨年11月の講演で、敵基地攻撃能力の保有をめぐり、「敵基地攻撃能力」という表現は「適切ではない」「敵基地だけに限定せず、『抑止力』として打撃力を持つ」と発言。米国が攻撃を受けたとき「反撃能力によって相手を殲滅(せんめつ)」するが、これこそ「抑止力」だと主張しています。相手を殲滅する全面戦争準備の議論です。
日本共産党の志位和夫委員長は、1月20日の代表質問で、「総理は安倍元首相が主張する『打撃力』という議論をきっぱり拒否できますか。総理が検討するという敵基地攻撃能力とは、結局、ここに行きつくのではないですか」と、岸田文雄首相に厳しく迫りました。岸田首相は、安倍元首相の発言について「政府としてコメントすることは控える」と答弁を回避。明確に否定しませんでした。
岸田首相は、昨年12月の臨時国会で歴代首相として初めて所信表明演説で「敵基地攻撃能力」という言葉を使い、「あらゆる選択肢を排除せず現実的に検討する」と踏みこみ、1月17日の施政方針演説では、同じフレーズを繰り返したうえ「スピード感を持って防衛力を抜本的に強化」とつけ加えました。
現在の「敵基地攻撃能力保有」の動きの源流は、2020年9月11日に、退陣直前の安倍元首相が談話を発表し、「迎撃能力を向上させるだけで本当に国民の命と平和な暮らしを守り抜くことができるのか」として、抑止力強化の新方針を打ち出す必要性を主張したところにあります。自民党も「相手領域内で弾道ミサイル等を阻止する能力の保有」を打ち出していました。
安倍元首相は同談話で「今年(2020年)末までに」と、ポスト安倍政権を縛る文言を入れていました。しかし、ポスト安倍となった菅義偉政権は同年12月18日の閣議決定で「抑止力の強化について、引き続き政府において検討を行う」とするにとどめ、「敵基地攻撃能力」の検討への言及を避けました。
それから4カ月後、岸田文雄元政調会長が、自身のツイッターで「敵のミサイル発射能力そのものを直接打撃し、減衰させることができる能力を保有することが必要」と投稿。永田町では、自民党総裁選(昨年9月)を見据えて、安倍氏をはじめ党内保守派にアピールしたものと受け止められました。
自民党総裁選で岸田氏は、政策発表会見(同13日)で「敵基地攻撃能力」の保有について「有力な選択肢」と発言。安倍元首相が進めてきた「自由で開かれたインド太平洋構想」の継承も宣言し、自身の総裁任期中に改憲を目指すとまで明言したのです。
安倍氏が叫ぶ敵基地攻撃能力保有と改憲実現に、忠実に応えてきたのが岸田氏です。
佐渡金山の世界遺産登録の推薦をめぐり、安倍元首相をはじめとする“歴史修正主義”の主張に迎合する岸田首相の姿勢が鮮明となっています。岸田内閣は1日、ユネスコへの推薦を閣議了解しましたが、その背景には安倍氏をはじめ保守系自民党議員グループの強い圧力があります。
佐渡金山は歴史遺産として価値あるもので、地元・新潟県を中心に推薦を求める運動が続けられてきた一方、戦時中に朝鮮人の強制労働が行われた現場であり、その記録が不十分なもとでの遺産登録に韓国政府が強く抗議してきました。
戦時に佐渡金山で朝鮮人の強制労働が行われていたことは歴史的事実です。新潟県が編さんした『新潟県史』には「強制連行された朝鮮人」のページがあり、「昭和14年(1939年)に始まった労務動員計画は、名称こそ『募集』『斡旋(あっせん)』『徴用』と変化するものの、朝鮮人を強制的に連行した事実においては同質」と明記。佐渡金山の一部があった元相川町が編さんした『相川の歴史』にも「佐渡鉱山の異常な朝鮮人連行」について描かれています。
ところが昨年12月28日に文部科学省の文化審議会が世界遺産登録を目指す国内候補に佐渡金山を選び、韓国政府が撤回を要求すると、安倍氏をはじめとする日本会議系の自民党議員が強く反発。1月18日には安倍氏が顧問を務め、安倍氏側近議員らが結集する「保守団結の会」が、速やかにユネスコに対する推薦をするよう政府に求める決議をあげます。翌19日には同会に所属する高市早苗政調会長が、記者会見で「堂々と推薦を行わなければならない。日本国の名誉にかかわる問題だ」と突き上げました。
安倍氏本人も同20日の安倍派総会で「論戦を避ける形で登録を申請しないのは間違っている」と発言。同24日の衆院予算委員会では高市氏が「必ず今年度に推薦すべきだ」とたたみかけました。
さらに27日には安倍氏が自身のフェイスブックで「歴史戦を挑まれている以上避ける事は出来ません」と投稿したのです。
「歴史戦」とは、日本軍「慰安婦」や南京大虐殺、戦時下の朝鮮人強制労働の実態をめぐり、その事実を認め真摯(しんし)な謝罪を求める内外の世論に対し、これを「虚偽」として葬り去ろうとする右派の「たたかい」を右派自身が表現した言葉です。
岸田首相や外務省は、日韓の外交関係を悪化させる懸念や、加盟国の反対があれば推薦が受け入れられないことなどから、推薦について慎重姿勢と報じられてきました。しかし、岸田首相は、結局、圧力に迎合し「推薦」を閣議了解。官邸内に世界遺産登録のための作業部会―韓国の主張に「反論」する「歴史戦チーム」をつくることを決めたのです。
歴史は客観的事実に基づき、冷静に向き合うべきもので“戦場”にすることなど許されません。
1月
2022年1月29日
イトー・ターリさんは、その生涯のほとんどをパフォーマンス・アーティストとして生き、レズビアンであることを、40歳を過ぎての恋愛から自覚して、パフォーマンス《自画像》(1996年)によってカミングアウトする。
この公演は国内外で26回も繰り返すほど、ターリにとって大きな転機となった。
しかし筆者が2020年の本紙連載「アートとジェンダーをめぐる旅」の第1回(8月7日)で紹介したとき、すでに彼女は筋萎縮性側索硬化症(ALS)という難病を抱えていた。20代から身体表現を志して1982年に単身オランダに渡り、86年に帰国してからも、国内外のパフォーマンス・フェスティバルで発表を続けていた。
女性であり、レズビアンであるという二重のマイノリティー性を抱えたターリが関心を向けたのは、自身と同じく、社会の中で見えないことにされていることや人たちであった。
韓国で出会った旧日本軍「慰安婦」、沖縄の基地と性暴力、福島の放射能汚染、ターリはそれらを次々とテーマにし、「ラディカルな闘い」であるパフォーマンスを続けたのである。
しかし10年くらい前からターリの身体を襲った不調により、徐々に自由に動くことができなくなっていった。その間ターリが何を考え、どう行動したかは、自身の連載ブログに綴(つづ)られている。(「わたしの言葉を。」vols.1―7、ラブピースクラブ)
ターリは自分を襲った病に絶望することなく、居住する市に対して身体障がい者の「移動支援」を陳情して勝ち取り、障がいを持つ高齢者の「重度訪問介護」の必要性を訴えた。それは自分のためだけではなく、同じ立場に置かれた高齢障がい者全体のためでもあった。
そして2021年4月の最後の公演まで、ターリはパフォーマンスの表現をあきらめなかった。残念ながら、ターリが望んだ「身体との旅」は突然打ち切られてしまったが、イトー・ターリというたぐいまれな表現者がいたことは、人々の心に深く刻まれている。あなたを忘れない。
(こかつ・れいこ)
◇
パフォーマンスアーティストのイトー・ターリさんは昨年9月22日、ALSのため死去。70歳。
2022年1月24日
戦争美化の中学教科書がはじめて検定合格した2001年の翌年から、アジア諸国民の共通の歴史認識を基礎に平和を構築することをめざし、日中韓3カ国の研究者・教育者・市民らが「歴史認識と東アジアの平和」フォーラムを毎年開催してきた。21年11月には3カ国をオンラインで結び第19回フォーラムを実施した。
アジアの現状と課題から「新型コロナの時代に東アジアの平和と生命の尊厳を考える」を主テーマとし、子どもと教科書全国ネット21を中心にした日本実行委員会は4報告を出したが、いずれも主テーマを具体化し問題提起性に富むものだった。
第1は、日本と東アジアにおける平和の危機と新自由主義がもたらす危機を全体的に分析し、教育の課題としても提起した。第2は、コロナ感染拡大が女性を直撃した実態と、女性が自立しやすい社会づくりのためのさまざまな連携を提起した。第3は「慰安婦」問題の授業で、戦後日本がこの問題をどう扱ってきたかにも目を向ける重要性を指摘した。第4は、大学の朝鮮史ゼミ生が日韓関係を解き明かした本を著し、若者の反響が広がったことから学ぶ報告だった。韓国、中国の報告も含め、近く日本語版の報告集もまとめられるという。
2022年1月22日
「憲法を考える映画の会」(東京都国分寺市)は、2013年4月から昨年末まで、79回、100作品以上を上映してきました。発起人の花崎哲さんは「単なる映画の鑑賞会ではなく、憲法を話し合う場にしたい。岸田政権の改憲の動きに対抗する市民運動を盛り上げたい」と話します。(遠藤寿人)
上映会は2カ月に1回。憲法記念日(5月3日)前には「憲法映画祭」などを開きます。
花崎さんは「社会問題に関心を持っているけど、集会などにはなかなか行かないような人に参加してもらいたい。映画だと敷居が低く、誘いやすく集まりやすい」といいます。
憲法、人権、ファシズム、安全保障、日本軍、沖縄、原爆、「慰安婦」、原発などのテーマを扱った新旧作品を取り上げてきました。
上映作品の中から花崎さんが選ぶ印象深い3作は、新自由主義の問題点を突いた「ショック・ドクトリン」(2009年)、なぜナチスの台頭を許したのかを描く「ありふれたファシズム 野獣たちのバラード」(1965年)、「慰安婦」問題の論争をまとめた「主戦場」(2018年)です。
上映後、参加者と短時間の話し合いをもちます。映画監督や出演者などとのトーク企画も工夫しています。
「話し慣れている人よりも、あまり発言しないような人の話のほうが新鮮だったりします」と花崎さん。「総選挙結果にがっかりしながらも、参院選を前に、何とかしなきゃいけないと思いながら、どうしていいか分からない人もいます。社会が息苦しくなっていることなどをそれぞれ語ってくれます」
花崎さんは教育映画の制作に携わっていました。1982年、中曽根康弘内閣の軍拡路線に対抗して、反戦を考える映画会を実施。2012年、改憲に執着する安倍晋三内閣になり、その動きを止めようと「憲法を考える映画の会」を立ち上げました。
同会では少人数の「映画と話し合いの会合」が広がることを望んでいます。「憲法を考える映画のリスト 2021年版」を発行。164作品を紹介しています。
「この映画はどこで借りられるの」「お金はどれくらい」といった疑問に答えるため、作品のあらすじ・解説に加え、映画の手配(連絡)先や貸出料金を記載しています。
岸田内閣は敵基地攻撃能力の保有に踏み出そうとし、9条改憲に前のめりになって、大軍拡路線を進めようとしています。
花崎さんは「若い人に若い世代の人が作った『ちむぐりさ 菜の花の沖縄日記』や環境活動家のグレタ・トゥンベリさんの作品を見てもらいたい」といい、「映画を見て、考え、話すことから始め、自分たちの声を力のあるものにする。憲法を自分たちのものとして勝ち取るために映画を『武器』として運動で利用してもらいたい」と力を込めます。
2022年1月20日
日本共産党の紙智子参議院議員が提出した「日本軍『慰安婦』問題に関する質問主意書」(2021年12月17日)に、政府は岸田文雄首相名で、閣議決定した答弁書を送付しました(12月28日)。紙議員が「日本軍『慰安婦』問題は日本政府が解決しなければならない女性に対する人権問題」であるとして、A4判5ページにわたり具体的に質問したのに、答弁書は質問をはぐらかしたり、項目によってはまったく答えませんでした。(山沢猛)
答弁書は、軍「慰安婦」問題に関する政府の基本的立場は、1993年8月4日の内閣官房長官談話(=「河野談話」)を「継承している」こと、また「慰安婦問題を含め、先の大戦に係る賠償並びに財産及び請求権の問題につき、日本国との平和条約(昭和二十七年条約第五号、=サンフランシスコ講和条約のこと)、二国間の平和条約(=日韓基本条約を含む)その他関連する条約等に従って誠実に対応してきているところである」と答えました。
「慰安婦」問題を含め、国と国の条約に基づいて対応しているので問題はないとの見解を述べています。しかし、岸田首相自身、2015年12月28日の「日韓両外相共同記者発表」では、当時の外相として、「慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から、日本政府は責任を痛感している。安倍内閣総理大臣(=当時)は、…心からおわびと反省の気持ちを表明する」と公に発言しました。
だとするならば、首相になった現在、改めて日本軍「慰安婦」にされた人々に日本政府として軍が関与した責任を認め、心から謝罪すべきです。たとえ国家間で請求権の問題が解決されたとしても、個人の請求権を消滅させることはできません。このことは日本政府自身が繰り返し言明してきたことです。答弁書は国と国との条約と被害者個人への謝罪・賠償を混同しています。
今回の紙質問主意書は、前回の質問主意書(昨年6月15日)に対する答弁が質問に答えていないために、内閣官房が入手した「長崎地裁と長崎控訴院における国外移送誘拐被告事件判決概要」(法務省からの文書)について、政府がないといっていた「『強制連行を示す文書』を入手したと考えられるが、それに間違いはないか」と詳しく質問しました。
答弁書はこれに対し「先の答弁書(昨年6月25日)七及び九についてでお答えしたとおりである」とのみ回答しました。
前回答弁書の「七及び九について」では「その後も(=「河野談話」後も)新しい資料が発見される可能性はあることから、…関係省庁等に対して内閣官房に報告をするよう求めている」「収集した資料は内閣官房副長官補付において保管し、関係業務の用に供している」と答えています。この答弁が質問に答えていないため、再度質問したのに、前に「お答えしたとおりである」というのは不誠実極まりないものです。
長崎控訴院の判決は、「いわゆる上海事件の勃発により多数帝国海軍軍人の駐屯」を見たので、「単に女給又は女中として雇うもののように欺罔(ぎもう)し勧説誘惑して」「十五名を順次乗船させ、もって同女等を帝国外に移送したものである」と述べています。
判決は、女性をだまして上海に連行した「慰安所」業者らを有罪にしています。事実をいつわる欺罔は強制性を表し、その上での移送は連行(本人の意志にかかわらず、どこかへ連れて行くこと、『新明解国語辞典』から)にあたり、「強制連行」そのものです。
答弁書は質問に答えず、これまでの資料には「いわゆる強制連行を直接示すような記述は見当たらなかった」と繰り返しました。
「河野談話」は、日本軍「慰安婦」問題に「国際的にも関心が寄せられており、政府としても、今後とも、民間の研究を含め、十分に関心を払」うと述べています。「河野談話」の元になった一つである同日の内閣官房内閣外政審議室名で出された「いわゆる従軍慰安婦問題について」では、慰安婦の出身地として確認できた国と地域は「日本、朝鮮半島(=北朝鮮を含む)、中国、台湾、フィリピン、インドネシア及びオランダ」とされていました。その後の民間の調査で「ミクロネシア(=西太平洋の一部)、東ティモールなど」にも日本軍「慰安婦」被害女性が存在していることがわかっています。
これらの国と地域の被害女性たちが日本政府に謝罪と解決を求めています。岸田内閣による被害者たちへの対応が問われています。紙議員がさらに質問主意書で「民間からの情報提供の申し出に対する政府の対応」を聞きましたが、答弁書は何も答えませんでした。これで「河野談話を継承」などといえるのでしょうか。
2022年1月19日
韓国の国家人権委員会(人権委)は17日、「慰安婦」被害者を支援する団体が毎週ソウルで開催している「水曜集会」を妨害する右翼団体に対して、警察は人権侵害の行為を制止し、集会を積極的に保護するよう勧告しました。
韓国からの報道によると人権委は、水曜集会が持つ歴史的な意義を考慮すると強調。「二つの集会が同じ場所で同時に行われる場合の調整に関する問題ととらえるのではなく、正義と真実を追求し、不正に対する責任を求める世界最長の集会をどのように保護するべきかを重点に置くことが人権の基本原則に合致する」としました。
人権委はまた、警察に対し、右翼団体の集会を時間と場所を変更するよう積極的に促すよう求めました。
同集会をめぐっては、右翼団体が参加者に対して人権侵害やヘイトスピーチなどを行っており、主催者側の「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」(正義連)など5団体が今月5日、警察による積極的な保護を求め、人権委に救済を申し立てていました。
2022年1月8日
韓国の「慰安婦」被害者らを支援する韓国の市民団体「正義記憶連帯」(正義連)など5団体は5日、ソウル市内で記者会見を開き、水曜デモの現場で侮辱と名誉棄損を行っている極右団体を警察が放置しているとして、国家人権委員会に救済を申し立てました。
正義連の李娜栄(イ・ナヨン)理事長によると、極右団体はこの間、正義連が毎週水曜日に開催してきたデモの現場を先取りし、「慰安婦」被害者を「うそつき」などと侮辱してきました。直接的・間接的に人権侵害が続いているにもかかわらず、警察は積極的に制止していないと主張しました。
李氏は会見で「極右団体が日本軍性奴隷制自体を否定し、被害者と参加者らを侮辱し、名誉毀損(きそん)を犯すのを見て、いま全国に問題を知らせるべきだと考え、この場に立った」と明らかにしました。
2022年1月7日
激しい風雨が吹き荒れても、どんな誘惑の手にも揺るがず、岩のように生きてみよう―。立ち上がった韓国の民衆が歌う「岩のように」です▼不屈のたたかいがあるところ力強くこだまする歌声はこの集会にふさわしい。いまから30年前の1992年1月8日、当時の宮沢喜一首相の訪韓直前に日本大使館前で始まった水曜集会です。日本軍「慰安婦」問題への謝罪と賠償を求めるデモでした▼「17歳の春を返せ」。その前年、金学順(キム・ハクスン)さんが被害者として初めて実名で名乗り出ました。怒りがわきあがるさなかの訪韓。日本の首相として「心の痛むことであり、申し訳なく思っている」と謝罪の意思は示したものの、補償にはふれませんでした▼その後も誠実に向き合ってこなかった日本政府。謝罪どころか、事実さえ受けとめようとしない政権も。そのなかで水曜集会は、世界でも類を見ないほど長きにわたって続けられてきました▼いまや世代をつなぐ参加者たちを文在寅(ムン・ジェイン)大統領はこうねぎらいました。「勇気を出してこの問題を世に知らせ、1525回の集会に至るまで長い間行動をともにしてきたみなさんは本当にご苦労された」▼集会が始まったころ、日本で講演した金学順さんはこんな訴えを残しています。「日本には多くの朝鮮人を殺し、朝鮮という国をなくそうとした歴史があります。いま軍事大国になってどこで何をしようとしているのか。そういうことは本当にやめてほしい」。それはいまの政権にもまっすぐに突き刺さります。
2022年1月6日
韓国の市民団体「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」(正義連)は5日、ソウル市内で「慰安婦」問題の解決に向けた水曜集会を開催しました。参加者は「公式な謝罪と法的賠償を」などと書いたプラカードを掲げ抗議。1992年1月8日に始まった同集会はこの日、30年を迎えました。
被害者が映像でメッセージを送りました。李容洙(イ・ヨンス)さんは、雨の日も雪の日も集会に集まった人々に感謝を表明。李玉善(イ・オクソン)さんは、日本政府に「うそを言わず、正直に話すべきだ。それが反省というものだ」と語りました。
正義連は声明で「30年がたったにもかかわらず、日本政府が謝罪どころか後退ばかりを繰り返している」と批判。さらに「ついには戦争国家として新たに立つために憲法改正を推進している」と告発しました。
一方、国内の保守派は同集会の妨害を繰り返しています。現地メディアによると、この日も、水曜集会が予定されていた場所を占拠して集会を開き、「慰安婦」被害は「詐欺だ」などと気勢を上げました。
正義連は「極右歴史否定勢力が水曜デモの場所を奪い取り、差別と嫌悪発言をまき散らしている」と批判しました。
2022年1月4日
「ジェンダー平等を求める日本共産党の政策を見たとき、これこそ求めていたものだと確信しました」。党の街頭演説に偶然足を止め、その後入党した長崎県の20代の言葉です。自分の性別に違和を持ち、生きづらさを感じてきたこの若者は、誰もが性別や性自認によって差別されない社会をめざす党に出会い、「気持ちに光が差し込んだ」と言います。
昨年の総選挙では、ジェンダー平等が大きな争点となりました。全国紙など7媒体で、見出しや本文に「衆院選」と「ジェンダー」の言葉を含む記事や報道は、選挙中213本にのぼり、前回2017年の総選挙時のわずか5本から、約43倍に増えたと報じられました(「毎日」電子版12月19日付)。
誰もが性別にかかわらず個人の尊厳を大切にされ、自分らしく生きられるジェンダー平等社会は、全ての人にとって希望に満ちた社会です。日本が世界でも異常に立ち遅れているのは、政治に大きな責任があります。
日本共産党は総選挙でジェンダー政策を重要な柱にしました。生涯賃金で約1億円にも及ぶ男女賃金格差の是正、選択的夫婦別姓やLGBT平等法の実現、痴漢をはじめとする性暴力・ハラスメントの根絶、リプロダクティブ・ヘルス&ライツ(性と生殖に関する健康と権利)の視点に立った政治、意思決定の場への女性の参加を増やす―これらの訴えは論戦をリードするとともに、若い世代を中心に熱い共感を呼びました。
市民連合と野党4党が結んだ総選挙の共通政策にもジェンダー平等が大きく位置付けられました。
自民・公明政権の継続を許した選挙結果は残念ですが、選挙での論戦と広がった共同は、確実に未来に生きるものです。
昨年は、ジェンダー平等をめぐる前向きな変化が相次ぎました。女性差別発言をした森喜朗・東京五輪組織委員会会長が世論に包囲されて辞任に追い込まれました。札幌地裁では、同性婚を認めない現行制度は憲法違反とする画期的判決を出しました。
一方、選択的夫婦別姓導入に自民党内の一部勢力が頑強に反対したり、教科書の日本軍「慰安婦」に関する記述を攻撃したりする動きが強まりました。戦前の家父長制の時代の古い価値観を今日まで引きずっている自民党や日本維新の会などによる抵抗も、激しさを増しています。
しかし、ジェンダー平等を求める人びとの願いと行動は、世界の流れとも呼応し、決して弱まることはないでしょう。始まった変化をさらに大きく広げる時です。
「女性の声が届かないゆがんだ民主主義を根底から変え、女性を犠牲にして回す経済を問い直す。(共産党の)本気のメッセージを受け止めた女性たちにとって、総選挙は自分の人生と政治が結びついた瞬間でした」。本紙日曜版2日・9日合併号に作家の北原みのりさんが寄せたコメントです。多くの人々の人生に、希望の灯をともす取り組みが求められています。
今年7月、創立100年となる日本共産党は結党時から男女平等を掲げてきました。政権交代への足がかりをつくろうと挑む7月の参院選で、この党の躍進を何としても勝ち取る決意です。