2014とくほう・特報

2015年―被爆70年のNPT再検討会議へ/核兵器のない世界、署名が開く

「自公圧勝」報道の異常/自民議席減でも「大勝」派手に/二つの民意覆い隠す

「軍学共同」研究待った/米日政府の大学動員など加速/学者・学生ら反対運動

 

 

2015年被爆70年のNPT再検討会議へ/核兵器のない世界、署名が開く

 核兵器禁止条約の交渉開始を求める世界的な世論が高まっています。被爆70年の2015年に開かれる核不拡散条約(NPT)再検討会議に向けて、「核兵器全面禁止のアピール」国際署名が地域ぐるみ、自治体ぐるみですすんでいます。
 (秋山豊)

原爆展や被爆者の証言/青森市では

 署名と一緒に取り組まれているのが、原爆展です。青森県原水協と青森市原水爆禁止の会が11月に青森市内で開いた原爆展。青森県原爆被害者の会とともに青森市と市教育委員会が後援しました。
 被爆証言もあります。その一人が青森市で生まれ育った田中正司さん(87)です。陸軍兵として駐屯した広島で、18歳のときに被爆。爆風で吹き飛ばされ、ガラスが体に突き刺さりました。終戦後、青森に戻ると青森大空襲で自宅は焼失していました。
 「郊外の知人のもとに避難した母や兄弟に再会したときは、お互いよく生ぎでらなと思いました。原爆と戦争が何をもたらしたのか、しゃべんねばねえ。被爆者の高齢化が進むなか、自治体が運動を応援してくれるのはうれしい」
 証言を聞いた櫻井崇さん(76)は「核兵器廃絶の声を上げ続けなくてはいけません」。

市民と声あげ
 原爆展の傍らに置かれている署名用紙は、青森県原水協独自のものです。5月に作成。署名用紙には、鹿内博青森市長、森内勇外ケ浜町長、吉田満深浦町長、関和典西目屋村長らが賛同人として名を連ねます。
 独自の青森県版¥趨シについて、青森県原水協の猪股あや子事務局長は「自治体首長らの賛同が広がっていることを訴えれば、地域で広げる力になる」。実際に、「市長も賛同しているなら安心して署名できますね」と応じる住民もいます。
 その鹿内市長は、賛同人になった思いをこう語りました。
 「核兵器廃絶は市民の願いであり、行政の願いです。平和を求める市民活動を支え、協力するのは行政の長として当然です。核兵器廃絶を実現する日まで、自治体と市民が一緒に声を上げ続けなくてはいけません」
 同市内では、「NPT・世界大会代表派遣、署名推進実行委員会」が10月に結成されました。県全体では、人口1割にあたる12万人の署名をめざし、現在3万人以上を集めています。
 青森県原水協の谷崎嘉治会長は、決意しています。「行政との共同が強まれば運動の広がり方が違います。自治体との共同をいっそう強め、地域訪問にも力を入れて何としても署名を集めきりたい」

前回700万人以上を国連へ/全国で挑戦

 5年ごとに開かれるNPT再検討会議。15年のNPT再検討会議は、「核兵器のない世界」を実現するうえでどれほど重要なのか
 原水爆禁止日本協議会(日本原水協)の高草木博代表理事は、その重要性について指摘します。
 「10年のNPT再検討会議では『核兵器のない世界の平和と安全を達成する』ことに合意しました。15年の会議では、核保有国などがそれを実行するかが問われます。圧倒的多数の国が核兵器禁止条約の交渉開始を求めるなか、被爆国・日本から核兵器廃絶の行動と決意を世界に示す責任があります」
 さきに紹介した鹿内市長も、「戦後70年たっても核兵器がなくならないのは、核保有国が決断しないから」だと話します。
 鹿内市長は、核保有国などがふりまく「核抑止力論」についても批判します。「他の国が核兵器を持っているなら、自分の国だって核兵器を持ってもいいではないかという悪循環に陥ります。それでは、競争のように核兵器が増えてしまいます」
 15年のNPT再検討会議は、4月27日から5月22日まで、ニューヨークの国連本部で開かれます。4月26日には国際共同行動デーとして、日本をはじめ世界の反核・平和を求める人たちが集会を開き、ニューヨーク市内をパレード。日本原水協は草の根で集めた署名を国連代表に手渡します。
 10年の会議では、日本から約700万の署名が国連に提出されました。
 日本原水協は、1000人を超える代表団を派遣したいとして、「前回を大きく超える署名を集めて国連に届けよう」と呼びかけています。
 署名の取り組みが全国で最も進んでいるのが大阪です。100万人署名が目標です。特徴は、ピースチャレンジャー≠ニして、個人目標をたてて職場・地域で署名を広げています。
 大阪原水協の岩田幸雄理事長が意気込みを語ります。
 「私たちの運動が、核保有国ですら核兵器の非人道性を認めざるを得ないほど世論を広げています。世界の反核平和団体と連帯し、核保有国と日本政府を追いつめたい」
 さきの高草木代表理事が力を込めます。
 「被爆70年までに核兵器をなくすめどをつけなくてはいけません。被爆国日本が叫べば世界が動く。核兵器のない世界への決定的転換のために全力を尽くしたい」
(
2014年12月15日,「赤旗」)

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「自公圧勝」報道の異常/自民議席減でも「大勝」派手に/二つの民意覆い隠す

 自民党が改選時比で4議席減らし、公明党と合わせても現状維持にとどまった総選挙。ところが、全国紙は「自公大勝」(「朝日」15日付)、「自公圧勝」(「読売」同)、「自公3分の2超圧勝」(「産経」同)などと「圧勝」報道を続けています。一方で、野党のなかで唯一議席も得票も大幅に伸ばした日本共産党の躍進について、1面の見出しにも出さない全国紙(「朝日」「日経」)もありました。これで公正な報道といえるのでしょうか。

 ジャーナリズム論が専門の野原仁岐阜大学教授は「いちばんひどかったのが『朝日』でした。『自公大勝3分の2維持』『アベノミクス継続』という見出しもさることながら、満面の笑みの安倍首相の写真を掲載することで、安倍政権信任というイメージを読者に与える意図を露骨に感じました。『毎日』(『自民微減』、最終版は『横ばい』と報道)以外の各紙はとにかく『圧勝、安倍信任』という結果の一面を大々的に報じることで、共産党が21議席に躍進した事実を矮小化しているのでないかと思います」と指摘します。
 ちなみに、政党間の力関係を端的に示す比例代表選挙で自民党の得票率は33%です。全有権者に占める同党の得票数(絶対得票率)は約17%にすぎません。安倍政権「圧勝」などという全国紙の報道は事実の報道とはいえません。
 新聞ジャーナリストの阿部裕氏は、「勝敗の基準について『単独過半数』『自公で安定多数』などの安倍首相の発言に引きずられ、『圧勝』『大勝』と表記した。本来ならば現有議席の増減を基準にすべきで、自民党は議席を減らしたのだから『微減』『横ばい』が正しい評価です」とのべ、あわせて大政党に有利に民意をゆがめる小選挙区制の欠陥を指摘します。
 さらに、自民党が在京テレビキー局にたいし、選挙報道で出演者の選定、街頭インタビューなど番組の表現方法までたちいった異例の要請をしたことに「各メディアに対するこうした自民党の圧力の事実を全国紙がきちんと報道しない体質も大いに問題です」と批判します。
 共同通信社出身で元関東学院大学教授の丸山重威氏は「選挙の争点では、与党のいう通り『アベノミクス』を中心に据え、改憲推進の2年間の安倍政治と憲法が争点なのに、ほとんどクローズアップしていない。書いたのは『東京』くらいです」といいます。

共産躍進も
 今回の結果に示された民意の特徴の一つは、安倍政権に最も厳しく対決した日本共産党が改選8議席から21議席と2・6倍に躍進したことです。他の野党は、民主が11議席増になったものの党首が落選して辞任表明する、維新の党は議席減で共同代表が「これは完敗」と表明する、極右の改憲政党・次世代は17減の2議席に激減しています。
 ところが、「自公圧勝」のはでな報道の半面、15日付1面見出しで「共産躍進」と報じている全国紙は「毎日」「産経」と一段見出しで「読売」です。
 この問題で16日付のブロック紙「東京」が3面企画「小選挙区で異変」で、「自民 沖縄、山梨『空白県』」「共産 前回より230万票増」と両党を対比的に報道しましたが、「こうしたフォローは大事」と先の阿部氏はいいます。

沖縄完勝も
 沖縄県の四つの小選挙区では、安倍首相が「大変残念な結果」(15日)といわざるを得なかったように、米軍新基地反対の候補者が全員勝利し、県民を裏切った自民党候補が全員落選したことも、画期的な民意の表れでした。ところが15日付1面では、「東京」が「小選挙区 自民 沖縄で全敗」と報じただけでした。
 野原氏は「沖縄の結果を1面で扱わないのは、全国紙が『中央の視点』からしか物事を捉えない証左ではないか」といい、丸山氏は「沖縄で『反自民』の統一ができ、全員勝利した意味は大きい。全国的にきちんと取り上げるべきです」と指摘します。阿部氏は「沖縄の未来は県民が決めるという自己決定権、主権者の勝利こそ、本土のメディアが沖縄から学ばなければならない最も重要な教訓です」と強調します。
 (山沢猛、若林明)
(
2014年12月18日,「赤旗」)

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「軍学共同」研究待った/米日政府の大学動員など加速/学者・学生ら反対運動

 アメリカや日本の軍事組織が武器開発、軍事研究に大学や研究機関を巻き込む「軍学共同」の動きが強まっています。最近の日本ですすめられている「軍学共同」の特徴と、その危険性に反対する研究者たちの活動を紹介します。
 (若林明)

 東京大学や大阪大学など4大学が来年6月にアメリカの国防総省高等研究計画局(DARPA)の主催するロボットコンテスト「ロボティクス・チャレンジ」(DRC)に参加します。
 これらの大学や研究機関は9月30日に災害対応用のロボット研究・開発のために、経済産業省所管の独立行政法人である新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と研究を受託する契約を結んでいます。東京大学の広報課は、「当該事業実施のうえでの参加要件」になっているとDRCへの出場を明言します。

安倍政権で増加
 アメリカのDARPAは、米軍の軍事技術の優位性を維持し、安全保障を脅かす「技術的脅威」を防ぐことを目的とした組織です。これまでも防空ミサイル精密誘導などの研究・開発をおこなってきました。
 アメリカでは、第2次世界大戦後、軍事専門の研究所で武器開発をおこなうと同時に、大学などの基礎研究部門を常に注視し、軍事に応用できそうな研究があると共同研究を申し込み、軍事に利用してきました。
 アメリカの軍事産業に詳しい西川純子独協大学名誉教授は「最終的に兵器を製造するのは軍事企業です。DARPAはどんな研究が軍事的に必要かを調査、判断し、どこに開発を委嘱するかを決める機関です」と語ります。
 日本版のDARPAといえるのが「防衛技術のフロントランナー」を自称する防衛省(東京都新宿区市谷)の技術研究本部です。
 第2次安倍晋三政権の成立(2012年12月)以降、この技術研究本部と大学や研究機関との「研究協力」は急激に増加しています。(表参照)
 防衛省は、14年6月に「防衛生産・技術基盤戦略」をまとめました。そのなかで、どの分野で、どの企業・大学等が防衛装備品に適した「防衛生産・技術基盤」を持っているかを把握し、評価を行う、そして、防衛装備品に応用可能な民生技術を積極的に活用するとしています。また、「防衛省独自のファンディング(出資)制度」を検討するといい、2015年度概算要求の安全保障技術研究推進制度で、大学などから成果を取り込む競争的資金がもりこまれました。
 安倍政権は軍事技術開発に大学・研究機関を利用しようとしています。防衛省の技術研究本部との「研究協力」は、安倍政権の「戦争のできる国づくり」の一環です。
 技術研究本部と独立行政法人・海洋研究開発機構(神奈川県横須賀市)の「自律型水中無人探査機のシステム化技術の研究協力」は、「対潜水艦、対機雷戦を想定している」と、若宮健嗣防衛大臣政務官(当時)は国会で認めています。(日本共産党の笠井亮衆院議員の14年4月16日の質問)
 池内了名古屋大学名誉教授(宇宙物理学)は「無人の遠隔操縦の爆撃機の海中版です。研究機関が開発をすすめる自律型の水中無人探査機のシステム化技術を対潜水艦、対機雷に応用しよう考えているのでしょう」と指摘します。

成果は公表せず
 民間企業と大学・研究機関が協力する産学連携では、一定の期間が経過すると研究成果を公表することが契約に明記されます。研究成果を広く共有することが、学術や産業の発展に必要だからです。しかし、「軍学共同」の場合、防衛省が了解しない限り、研究成果は公表できません。
 防衛省の技術研究本部と大学・研究機関との「協定」には「有効期間」を5年間と決めています。ところが、「研究協力」で得た発見の「知的財産権」の扱いは、「当該条項に定める期間又は対象事項が全て消滅するまで、その効力を存続する」としています。つまり、協定自身は5年で効力を失っても、研究の成果の扱いについて技術研究本部と協議することになり、期限が決まっていません。研究成果が国民に知らされることを厳しく制限しています。
 池内氏は軍学共同がすすむことについて「科学者が人を殺すための研究に携わる。研究現場にそれに関連するお金が流れ込んでくる。国民の知らないところでそういうことがすすめば国民は科学を信頼しなくなります」といいます。

戦争に加担しない/学者・学生ら反対運動

 戦後、憲法9条のもとで、侵略戦争への反省から、日本の「軍学共同」はきわめて抑制されてきました。日本の科学者を国内外で代表する日本学術会議は1950年4月、「戦争を目的とする科学の研究には絶対に従わない決意の表明」を発表し、67年に再度「軍事目的のための科学研究を行わない声明」を発表しています。
 80年代後半に、各大学や研究機関で非核平和宣言の運動が広がります。その成果が各大学などの平和宣言・平和憲章です。核廃絶を求める世論に押され、五つの国立大学を含む24の大学・研究機関が「宣言」を出しています。例えば、新潟大学の非核平和宣言では「軍事関係機関やそれに所属する者との共同研究及びそれらからの研究資金の受け入れは行わず」と明記しています。
 新潟大学では、核兵器の廃絶を求めて行われていた「広島・長崎からのアピール署名」の運動をきっかけに、教職員が中心となって、大学での非核平和宣言への賛同署名を始めました。当時教職員の半数を超える1600人以上の賛同を得ました。
 赤井純治新潟大学名誉教授は「教員・学生が自主的につくった平和講座が、今では正式な大学の教養課程の講義になっています。現在も非核平和宣言の再確認署名に取り組み、学生を中心に1700人の賛同を得ています」といいます。
 池内・赤井両氏を含む48人の学者・研究者が2014年7月、「軍学共同反対アピール署名」を呼びかけました。東京大学職員組合は同月に「東京大学における軍事研究禁止の原則の堅持を訴える声明」を発表し、11月に自主セミナー「軍事と民間技術・大学研究」を開催。さらに、来年1月21日に「急進展する、軍学共同」として都内で池内氏の講演を予定しています。
 遠藤基郎東京大学職員組合委員長は「軍事研究なんかやりたくないというのが教員の本音です。しかし、文教予算削減で、研究費が極端に減らされている中で、軍事研究に関わる誘惑は強くなっています」とその危険性を指摘します。
 赤井氏は、学生・市民も含め、軍学共同反対の署名を広げてほしいといいます。「講義の中で、軍学共同の動きを紹介すると『戦争の加担など言語道断』など多くの学生は反応してきます。各大学で大きな声を集められれば、大学当局も簡単には軍学共同には進めないと思います」と強調します。

防衛省技術研究本部の「研究協力」
締結年月    協力相手                研究分野
2006年6月   独立行政法人(独法)情報処理推進機構  情報セキュリティ
 08年2月  独法海上技術安全研究所         艦船分野
 08年2月  東京消防庁               通信分野
 10年9月  国立東京工業大学            パワーアシスト技術
 11年6月  私大東洋大学              生体信号処理技術
 12年6月  国立横浜国立大学            群制御及び協調制御技術
 12年11月 私大慶応義塾              プロペラの機能を低下させるキャビテーション
 12年12月 第2次安倍政権成立
 13年3月  独法理化学研究所            化学剤遠隔検知
 13年4月  独法宇宙航空研究開発機構        宇宙利用
 13年6月  国立九州大学              IED対処技術分野(爆薬検知技術)
 13年10月 独法水産総合研究センター水産工学研究所 広帯域音響信号分析
 14年3月  独法宇宙航空研究開発機構        航空宇宙
 14年3月  独法海洋研究開発機構          海洋分野、自律型水中無人探査機
 14年3月  独法情報通信研究機構          電子情報通信
 14年3月  私立千葉工業大学            ロボット技術分野
 14年3月  私立帝京平成大学            SPRを用いた分析の精度・検出限界(爆薬検知技術)
(
2014年12月24日,「赤旗」)

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