暴走政権と対決/論戦で挑んだ150

1集団的自衛権/危険性あぶりだす

2秘密国会法/議会政治を破壌」

3医療・介護法/土壇場へ追い治め

4労働法制/政治動かした共同

5消費税・法人税/不公平厳しく告発

6教委改悪法/危険な狙いを暴露

【TOP

 

1集団的自衛権/危険性あぶりだす

会期150日間の通常国会が事実上閉会しました。「戦争できる国」へまい進する安倍自公政権。そうした中、いっそう鮮やかになった暴走安倍政権vs日本共産党という「自共対決」の様相を追いました。

「最高責任者は私だ」「憲法改正は必要ない」―-。国会開会後、歴代政府答弁も無視して、集団的自衛権の行使容認へ、独走≠オた安倍晋三首相5月には安保法制懇提言を受け、それが加速されました。

それに対し、首相のごまかしと集団的自衛権の危険性の本業を明らかにしたのが日本共産党議員団の国会論戦です。

 

多数の犠牲者

志位和夫委員長は集団的自衛権の行使容認で、「『戦闘地域』に行かない」「武力行使しない」というこれまでの海外派兵立法の二つの歯止めがなくなると正面から追及(528日衆院予算委)。「武力行使を目的とした戦闘に参加しない」とごまかす首相に、アフガニスタン戦争では武力行使目的でない「後方支援」によってNATO(北大西洋条約機構)諸国21カ国で1000人以上の犠牲者が出ている事実をつきつけました。

 

論戦はメディアでも注目されました。

「信濃毎日」は「集団的自衛権の行使とは米国の戦争のために日本の若者の血を流すということですね」との志位氏の質問を冒頭に引用し、「考えているのか命の重さと題する社説を掲載(1日付)。「朝日」はドイツ軍を例に、後方支援でも55人が死亡したことを明らかにするなど、メディアを通じても問題の核心が浮き彫りになりました(15日付)

また、井上哲士参院議員は、政府が海外での武力行使そのものである中東で停戦前の機雷除去も検討している矛盾を指摘(9日参院決算委)。「朝日」は井上氏の質問を紹介し、「武力行使の定義を二つに分けてしまう首相答弁は活動内容をあいまいにし、拡大させてしまう」と批判しました(19日付)

一方11日の日本共産党が参加できなかった党首討論では野党の腰砕けぶりが際立ちました。

 

一番の抑止力

今の政治状況を危ぐする自民党サポーターズの50歳女性から党本部に電話が寄せられました。「最近の安倍首相の暴走をくい止めるには、共産党が一番の抑止力です。自共対決がわかりやすくなっている。応接します」

228日。衆院憲法審査会委員の日本共産党の笠井亮議員の事務所に一通のファクスが届きました。差出人は自民党の船田元議員。そこには、改憲手続き法改定案のすり合わせの場として「各党協議会」を設置し37日に開催するとの記述がありました。

安倍政権が解釈改憲に向けて暴走する一方で、改憲派は明文改憲の道筋も整えておこう

と、翼賛的なやり方で、同改定案を成立させようというのです。

笠井氏は、憲法審査会の幹事懇談会で「議論が必要というなら、憲法審査会という正規の場で、会議録も残る形で、国民の前に開かれた形でやるべきだ」と船田氏のやり方に抗議。ところが、民主、みんな、維新、結い、生活などの各党は、与党との密室協議で改定案をまとめると、まともな審議もなしに一気呵成(かせい)に押し通したのです。衆院で4日間、参院で6日間の審議で成立が強行されました。

しかも衆参の審議では、日本共産党を除く全ての党が改憲の大合唱。「統治機構の改憲が

必要だ」(結い、みんな)、「自主憲法は、日本国と日本人の悲願」(維新)、「(集団的自衛権の行使をするなら)しっかりと改憲手続きを踏むべきだ」(民主)-

日本共産党の仁比聡平議員は、参院本会議の反対討論で、こう強調しました。

「憲法は国民のものであり、主権者の力で時の権力を縛るものであります。法律の条文だけはどんなに整えても、憲法破壊を許さない国民的世論の広がりがたちはだかるでしょ

う」

(つづく)

(20140622. 「赤旗) 

【TOP

2、秘密国会法/「議会政治を破壌」

「議会政治の破壊にほかならない問題だ。あなたがたは、その重大性を分かって答弁しているのですか」

答弁に立てず右往左往する発議者、全く緊迫感のない与党議員を前に日本共産党の仁比聡平議員が声を震わせました。政府の秘密保護体制に国会を組み込む秘密国会法案(情報監視審査会の設置)を審議した20日の参院議院運営委員会。昨年暮れの臨時国会最終盤に秘密保護法反対で論陣を張った仁比議員の姿が再現されました。

同法は戦後初めて常設の秘密会を衆参両院に設置。秘密保護法を前提に国会の委員会や国会議員が秘密をもらさない仕組みをつくるものです。

「政府を監視する役割を国会が自ら放棄し、政府の秘密を国民の目から隠す秘密の、共犯者≠ノなってよいのか」。問題点を鋭く突く仁比氏の論戦は審議をたびたびストップする事態に追い詰めました。

 

廃止法案提出

先の参院選で躍進した日本共産党は、権利を得た議案提出権を活用17日に、社民党、無所属議長とともに秘密保護法廃止法案を参院に提出しました。

秘密会常設で国会を秘密保護体制に組み込もうとする与党の暴走に対し、希代の悪法たる秘密保護法を根本から断つという方策を、廃止法案で国民の前に提示。山下芳生書記局長は「秘密保護法は廃止が国民多数の願いであり、廃止法案を国会で成立させることこそ国会の仕事だ」と力を込めました。

秘密国会法で与党は数を頼りに暴走しました。「昨日の答弁は訂正する」(公明の大口善徳衆院議員)、「法案が通った後、協議して決める」(自民の上月良祐参院議員)など、支離滅裂な答弁を重ねながら、衆参の質疑をそれぞれ7時間で打ち切り採決を強行、成立させたのです。

 

暴走に批判も

同法が参院で審議入りしたのは事実上の会期末を翌日に控えた19日。19202日しか審議時間がないため参考人の意見を聞くどころか招致することすらできず、参考人質疑は中止という異例の事態になりました。あまりの拙速ぶりに、与党議員から「継続審議にすべき案件だ」との声が漏れました。

新聞各紙も「国会監視名ばかり」(「毎日」20日付)「特定秘密 把握できない仕組み」(「東京」21日付)「審議も実効性も不十分」(「朝日」同)と断じました。

こうした与党の暴走と対決しようにも日本共産党以外の野党は足場が定まりません。みんな、維新、結いは衆院本会議で賛成しましたが、維新、結いは参院本会議採決を棄権。みんなは参院でも賛成しました。民主は、衆院段階で廃止法案でなく監視機構の対案を提出。悪法を根本からただすという足場は示せませんでした。

(つづく)

(20140623. 「赤旗)

 【TOP

3医療・介護法/土壇場へ追い治め

(廃案まで)あと一歩まで追い込むところまできた」一医療・介護総合法案をめぐる審議について野党幹部は、日本共産党の小池晃参院議員の追及を振り返って括りました。

160万人の要支援者が利用する訪問・通所介護を保険給付から外すなど医療・介護の制度を根底から覆す悪法に対して日本共産党は、法案のデタラメぶりを徹底的に明らかにし、成立断念の土壇場まで政府・与党を追い詰めました。

 

答弁全面撤回

「撤回します」反省します」。田村憲久年生労働相は10日の参院厚労委員会で、前代未聞の答弁撤回と謝罪に追い込まれました。

法案に盛り込まれた介護保険利用料の引き上げ(2割負担)について政府は、年金収入280万円の世帯では支出を引いても60万円が余るので負担は可能だ≠ニ説明してきました。ところが、小池氏から根拠がないと追及されると、これまでの説明を全面撤回2割負担の論拠は完全に崩壊したのです。

社会保障審議会介護保険部会の委員でもある「認知症と家族の会」の勝田登志子副代表理事からは「審議会で真摯に議論していた資料が間違っていたのなら審議会に差し戻すべきだ」と批判されました。

全参院議員に配布された法案説明文書に、まったく無関係の法律の一文が紛れ込む重大ミスも加わって、審議が1週間以上もずれ込む事態に。会期末間際になって与党は、数を頼んで押し通すことしかできませんでした。

衆院でも日本共産党の高橋ちづ子議員は、必要な人は専門的サービスを引き続き受けられる≠ニいう論拠を突き崩しました。田村厚労相は、専門サービスを受けられるのはごく一部だけと認め、大多数が専門的サービスから排除されることが明らかとなりました。

高橋氏は「社会保障を本人と家族の責任においやり、『介護の社会化』という理想も投げ捨て、憲法25(生存権)を否定する法案は廃案にすべきだ」と力をこめました。

 

論拠は総崩れ

論拠は総崩れでポロポロ、具体化すればするほど国民との矛盾は避けられず、たたかいはこれからです。

法案成立を受けて厚労省は指針作成に入りますが、確固とした論拠も示さず2割負担を強行することはできません。田村厚労相は、日本共産党の追及に引き続き専門的サービスは受けられる≠ニ繰り返しました。こうした言明を守らなければ責任が問われます。

18日の本会議で反対討論にたった小池氏はこう結びました。「再び社会保障の大削減路線に踏み出した自民党に国民から厳しい審判が下されることは間違いなく、こんな政治に未来はありません」

(20140624. 「赤旗)

【TOP

4労働法制/政治動かした共同

「全労連と連合などナショナルセンターの違いを超えた国民共同のたたかいの成果です」。通常国会の事実上の最終日となった20日の日本共産党国会議員団総会。志位和夫委員長がこう述べると、「よし!」の掛け声と拍手が起きました。安倍政権が雇用破壊の第一弾として成立を狙った労働者派遣法改悪法案が審議入りもできず廃案―一連の労働法制改悪の出鼻をくじく快挙でした。

法案は、「派遣は一時的・臨時的なものに限る」という大原則を投げ捨て、「生涯ハケン」「正社員ゼロ」に道を開く歴史的大改悪です。

 

幅広い団体と

日本共産党は、ただちに大改悪反対のアピールを発表し、労働・法曹界など幅広い団体と共同を広げ、国会で徹底追及しました。法案に盛り込まれた派遣事業者に対する罰則規定の重大ミスも発覚するなか、「審議入りの条件はない。撤回すべきだ(小池晃参院議長)と迫り、野党の共同も広がって廃案へと追い込んだのです。

日本共産党が昨年の参院選躍進で得た議案提案権を生かして提出したブラック企業規制法案は、全会一致で継続審議となりました。

同時に、現実政治を動かす力となったのが賃金に定額の残業代を含めておき、何時間働いてもそれ以上の残業代を払わない「固定残業代制」の問題です。

吉良よし子参院議員が「ブラック企業に都合よく使われている」、小池議員が「過労死の温床だ」と連続追及。厚労省は吉良質問の3日後、求人広告業界などに固定残業代制の虚偽。誇大広告の是正を文書で求め、全国で実態調査を行い是正指導しました。小池質問の4日後には、全国のハローワークで求人票の実態調査を行い、残業代不払いを招くような求人を出していた企業に是正指導しました。

 

過労死対策を

安倍政権が「残業代ゼロ」制度で労働時間の規制撤廃を狙うなか、法律で初めて過労死を位置づけ、国に対策を求める「過労死防止対策推進法」が全会一致で成立しました。

法案は昨年、与野党の意見が合わず暗礁に乗り上げましたが、高橋ちづ子衆院議員が国会に提起することが重要だと呼びかけ、昨年の臨時国会で全野党で法案を提出。これに励まされた家族らも運動を広げる中、与党との協議が再び行われ、一致をみたのです。トヨタ自動車の堤工場(愛知県)で働いた夫の健一さんを過労死で亡くした内野博子さん(44)は「人の命を軽視する労働規制緩和の歯止めになってくれたらと期待します。

(つづく)

(20140626, 「赤旗)

【TOP

5、消費税・法人税/不公平厳しく告発

41日、安倍政権は消兼税増税(税率8%)を強行しました。

安倍晋三首相は通常国会を好循環実現国会≠ニ位置付け、三本の矢≠ナ企業収益も

上がり賃金も上がるとバラ色に描いて宣伝しましたが、実際はどうだったか。増税前日の331日。参院決算委員会で日本共産党の田村智子議員は、「国民の暮らしにもたらす激痛は17年前(の増税時)の比ではない」と質問1997年から現在までの平均賃金(年間)69万円も減り、貯蓄なし世帯が3倍にも増えた事実を突きつけると、安倍首相は「景気、経済の成長に打撃を与えるのは事実。可処分所得も減っている」と認めざるをえませんでした。

5年間もゼロ

井上哲士参院議員は69日の決算委員会で、トヨタ自動車が2008年から5年間、法人税

(国税分)を払っていなかったことや、他の大企業も軒並み税金をまけてもらっていたことを告発。「庶民には消費税を増税してなぜ大企業には減税なのかJと追及しました。安倍首相は「どんと税金を払ってもらえるようになって良かった」と、トヨタ社長の会見そっくりの答弁。まわりをあきれさせました。

国民に消費税増税を押し付けた安倍政権は、企業向けの復興特別法人税を4月から前倒しで廃止、個人への復興特別税は継続しました。復興のためにみんなで分かち合うといいながら、国民には増税、大企業には減税というのは、公平・公正とはいえない

佐々木憲昭議員が逆立ちした税制を衆院予算委員会(23)で批判しました。

「安倍内閣は結局、財界・大企業の要望を受け入れ、そのまま実行している」「いったいどっちを向いて政治をしているのか」とただした佐々木氏。首相は「経団連に言われてやっているのではない」と言い訳にまわりました。

佐々木氏は、減税した大企業から自民党がしっかり献金をもらい続け「『好循環』は財界と自民党の間だけ」と指摘。いま政府がやるべきことは、低賃金の不安定雇用を増やしてきた労働法制の改正や、中小企業への直接支援で最低賃金を引き上げることだと迫りました。

質問力を評価

データや国民の声を駆使した佐々木氏の質問力にNPO法人が高い評価を与えました。

このNPOは衆参予算委且会での国会議員の質問力を、国会議員、関係省庁の職員、政策専門家、有権者による評価で得点化70人の議員中佐々木氏は上位の7位にランク。「十分な準備を行い自ら問題意誰を持って質疑に妬んだことがうかがえる」とのコメントが付けられました。

くつづく)

(20140627.「赤旗」)

【TOP

6、教委改悪法/危険な狙いを暴露

「教科書採択など教育に首長の意向が持ち込まれる危険を追及したのは日本共産党だけ。他党は教育委員会の『責任の明確化』を求めるばかりで、逆に危ないと感じた」

自民、公明などの賛成で成立した教育委員会改悪法の国会審議を5回傍聴したという和田哲子さん(東京都狛江市在住)は語ります。

中立性脅かす

同法が衆院で審議入りした415日の本会議。日本共産党の宮本岳志諸点は「首長が教育に介入することを容認し、教育の政治的中立性を脅かす」と批判。その狙いが、侵略戦争美化の教科書採択を広げることや、学力テストの結果公表などで競争教育を推進することにあると指摘しました。

政府が教育の政治的中立性の侵害の「懸念はあたらない」とごまかしたことに対し、田村智子参院議員は、首長が定める教育政策の方針「大綱」の記載内容を具体的に追及しました。これに下村博文文科相は、教科書採択など教育委員会の専権事項でも「首長が(大綱に)勝手に暮くのは可能」と述べ、同法の危険性を浮き彫りにしました。

同法は、歴史を偽り偏狭な「愛国心」を子どもに教えようというもので、安倍首相の「戦争する国」づくりの一環です。そんな暴走に、他の野党はどのような態度を示したのか。

民主党と日本維新の会は、政府案よりも踏み込んで教育委員会を廃止し教育を直接支配する法案を提出(衆院で廃案)。暴走と対決するどころかあおりました。これは民主党を支持してきた日教組の主張とも相いれず、同党議員からは廃案に安堵(あんど)の声が漏れるほどでした。

日本共産党の論戦は、安倍政権の狙いと教育現場の実態との間に深い矛盾があることもはっきり示しました。下村文科相は宮本氏の追及で、「慰安婦」制度への旧日本軍の関与を認めた河野談話の継承を述べざるをえず、現在の教科書が「(愛国心を盛り込んだ改正)教育基本法にのっとった記述になっていない」とした自らの発言も事実上撤回しました。

深刻な影響も

田村氏は、同法に先行し首長関与を強めてきた大阪市で問題が続出し、教育に深刻な影響

を与えていることを指摘しました。同時に、埼玉県鶴ヶ島市の教育委員会の例など、市民の参加と共同で市の実態に応じた教育改革を進めている取り組みを紹介し、教育委員会を活性化させる対案を示しました。

12日、同法が参院文科委員会で可決された後の国会内での集会。審議を傍聴した参加者

からは、可決への怒りとともに次のような発言が続きました。

「教育委員会がどう役割を果たすようにするべきなのか、これほど深く考えたことはなかった」「今後のたたかいの方向・希望が見えた

(おわり)

(この連載は国会取材団が担当しました)

(20140628,「赤旗)

【TOP