【見出し】

　戦後７０年、今こそいのちを紡ぎ出す喜びと希望をと２６日、東京都内で、第２４回全国教育研究交流集会が開かれました。研究者や教師、教育関係者ら１００人余が参加。主催は、民主教育研究所運営委員会です。
　梅原利夫代表運営委員代行が基調報告しました。戦後７０年、新たな「安保法制」段階と国民的な反対運動の盛り上がりを指摘。安保法制を支える「人づくり」政策など安倍政権がすすめる教育政策の問題点と、それへのたたかいに触れつつ、民主主義教育の実践と理論の課題を深めようとよびかけました。
　憲法、環境、教育の三つの分野からの問題提起がありました。小沢隆一さん（東京慈恵会医科大学・憲法学）は、日本国憲法の制定を含む「戦後改革」は輝かしさと同時に「陰」の部分をもつと指摘。「陰」の部分の拡大を押しとどめてきた「平和と民主主義」の運動や教育問題について話しました。
　澤佳成さん（東京農工大学・環境哲学）は原発について▽輸出がもたらす世界的な構造的暴力▽平和的生存権を奪う公害としての原発事故▽経済的な基盤の弱い地域の周辺化―などと問題点を強調しました。
　馬場久志さん（埼玉大学・教育心理学）は国家・経済や社会秩序の維持発展のためという「論理」で、子どもと親、教師を追い込む教育施策の押し付けの広がりを批判。教育と学校のゆがみや矛盾をとらえられる感性をもつのは子どもたちだと語りました。
　若い世代からとして弁護士、ＳＥＡＬＤｓ（シールズ）の学生、教師が発言。会場全体で討論しました。２日目の２７日は七つの分科会が開かれます。
( ２０１５年１２月２７日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

試写室１５／テレビが描いたもの／平和と命／詩人秋村宏／安倍談話砕く２作品

　今年の８月、安倍首相が〝戦後７０年談話〟を出したが、それはわが国の侵略の歴史を認めない、心不在の作文であった。そのなかで見過ごせない言葉があった。〝あの戦争には何ら関わりのない、私たちの子や孫、そしてその先の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません〟の一文だが、ここには侵略戦争の本質、その歴史を知らせたくない意図がみえみえだった。
　けれどそのおもいを打ち砕くようなすぐれた作品に出会った一年であった。「いしぶみ～原爆死した中学生３２１人の記録」（広島テレビ）は、１９６９年のリメーク版だが、原爆に遭って全滅した広島二中の生徒の遺族の手記を、簡素な舞台で一人の語り部・綾瀬はるかが朗読し、池上彰のインタビューを加えて、死んだ人、生き残った人も苦しむ姿をいま描き、戦争の惨禍を訴えた秀作だった。
　「〝母子〟に捧げた人生　画家・四国五郎」（ＮＨＫ）は、詩人・画家である四国が、なぜ、〝母と子の姿〟を描いたのかを探った作品である。四国は広島に生まれ、敗戦でのシベリア抑留、弟の被爆死など、その苛酷な体験を、〝戦争、原爆はダメだ〟と、原爆の惨禍、平和運動ほかを、怒りややさしい愛をもった〝母子像〟を通して描きつづけ、広島の歴史を未来へ伝えようとした画家だった。佳作。
　二作品とも、平和やいのちの尊さを訴えつづけようという熱いメッセージをもち、勇気づけられた。
( ２０１５年１２月２４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

先の戦争考えること大切／天皇、誕生日で会見

　天皇は２３日、８２歳の誕生日を迎え、これに先立つ記者会見で、戦後７０年の節目の今年を「さまざまな面で先の戦争のことを考えて過ごした１年だったように思います」と振り返り、「先の戦争のことを十分に知り、考えを深めていくことが日本の将来にとって極めて大切なことと思います」と強調しました。
　４月にパラオを訪問。戦争で民間人も含め多くの犠牲者が出たことを、「平和であったならば、社会のさまざまな分野で有意義な人生を送ったであろう人々が命を失ったわけであり、非常に心が痛みます」と語りました。旧日本軍に徴用された民間船の船員が多数犠牲となったことにも言及。「制空権がなく、輸送船を守るべき軍艦などもない状況下でも、輸送業務に携わらなければならなかった船員の気持ちを本当に痛ましく思います」と声を震わせながら話しました。
( ２０１５年１２月２４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

放送この１年／戦後７０年／加害の歴史に迫れたか

　国内外で多大な犠牲者を出した太平洋戦争が終結して７０年。
　日本が先の戦争をどうとらえているのかを示す安倍首相の「７０年談話」は、国民に理解されたのか、国際社会で信用が得られるか注目されました。
　「談話」には「侵略」「反省」などの言葉がちりばめられていましたが、日本による植民地支配と侵略戦争だったことは明らかにされませんでした。ＮＨＫはこれを無批判に評価。民放はＴＢＳ系「ＮＥＷＳ２３」などが、首相みずからの言葉がない、侵略を認めていないと批判。この点でも、民放に比べてＮＨＫの政府寄りの姿勢が浮き彫りとなりました。
　当時を語ることができる世代が少なくなるなか、戦争の実態をテーマにした番組が多く制作された年でした。
　被爆体験の継承、戦争と障害者、従軍看護婦、若い俳優を激戦地で追体験させるなど、制作者の意欲が伝わってきました。
　しかし日本軍による侵略戦争を認めようとしない安倍政権の姿勢を反映してか、加害の実相に正面から迫るものは多くありませんでした。その中でも８月の「報道特集」（ＴＢＳ系）では、日本軍の重慶爆撃を取り上げ、日本が加害の歴史に向き合っていないと指摘しました。
　「ドキュメント’１５」（日本系）は「シリーズ戦後７０年」と題して、北海道から沖縄、海外まで取材し、戦争の悲惨さを訴える番組を提供。その１本「南京事件　兵士たちの遺言」では、元日本兵の証言をもとに中国大陸での日本軍の侵略を描き出しました。
　（森）
( ２０１５年１２月２３日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

自民「歴史本部」が初会合

　自民党は２２日、安倍晋三首相（党総裁）直属の「歴史を学び未来を考える本部」（本部長・谷垣禎一幹事長）の初会合を党本部で開きました。日清、日露戦争以降を中心に明治時代から現代までテーマを設定。「学術性、中立性、国際性」を基準に講師を選定し、年明けから月に１、２回のペースで講師を招いて開催することを確認しました。報告書などは作成しない方向です。
　谷垣氏はあいさつで、「戦後７０年談話で基礎はできている。謙虚に歴史を勉強していく場にしよう」と呼び掛けました。本部長代理の稲田朋美政調会長も「党が歴史観を発信することはやるべきではない」としつつ、「占領政策で何を得て何を失ったかをしっかり学ぶ必要がある」と語りました。会合では、出席者から「戦争を経験した人の声を次の世代に引き継げるよう配慮してほしい」との要望が出ました。講師選定基準に中立性を挙げたことに対し、「通説優先になる。両方（の意見を）聞くべきだ」との異論も出ました。
( ２０１５年１２月２３日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

歌壇／渦巻き現象から身を離して

　戦後７０年という語が特別の意味を帯びて聞こえた一年だった。年間を通覧しての感想は、『現代短歌』１月号特集「回顧と展望」に、「局部集中現象と自主規制」と題して拙文を書いた。おおよそそれに尽きるので、一部を紹介したい。
　内山晶太「『水仙』と『虚構』」（『歌壇』１２月号年間時評）は、石川遼一作品の「虚構」問題と服部真理子作品の「わかる／わからない」論議は２０１５年の「双璧をなすトピック」だったと回顧する。誰もが同意見だろう。しかし、論議の経過や内容そのものよりも、食傷気味になるまでに繰り返す現象の方が気になる、とわたしは指摘した。一昨年から昨年にかけての歌壇には渦巻きの中に引きずり込まれるように、同じ名前・同じ歌・同じキーワードを繰り返すという局部への関心集中現象が見られた。緊迫する政治状況を背景にしての歌壇内部から分泌される局部集中現象は何をものがたるのか。それで隠されたものは何か。
　日本人の、視野を遮断した身内感覚はよく言われるところだが、その傾向がいっそう募っている。一方、というより、だから戦争や検閲や政治など大事を対象とするとき、問題意識が地続きにならない。生活者としての、短歌作者としての、足元の日常を不問に付してしまう。
　歌壇内渦巻き現象からあえて身を引き離し、見通すという距離感が、いまの歌壇にはもっとも必要なことと思われる。
　今回が、本欄担当の最後となる。遺伝子治療や人工受精など生命の中枢にまで市場経済が浸透するグローバル化の現代、ことに３・１１以後の「自然」「人間」という問題意識は重要だろう。人知を超えた存在としての〈大いなるもの〉への畏敬を、歌人も歌も喪失しつつあるように思われる。
　（阿木津　英・歌人）
( ２０１５年１２月２２日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

朝の風／平和記念館計画の再起動を

　１２月４日、「東京都平和祈念館（仮称）」建設をすすめる会１５周年の集いが開かれた。
　この会はなぜ生まれたのか。戦争を語り継ぎ平和を築こうと、かつて東京都は都立の平和記念館建設を決めた。都議会各会派代表も参加した「東京都平和記念館基本構想懇談会」が、１９９３年に報告書も出した。
　ところが、戦争を美化したい一部の都議らが動き、１９９８年から平和記念館建設を事実上凍結させてしまった。
　それに抗して、東京大空襲被災者や遺族の方々の強い思いにも応え、平和記念館をぜひ実現したいと結成したのが、この会である。
　会結成から１５年、ねばり強く運動を続けてきたが、都民から集めた貴重な戦争と空襲関係資料もほとんど倉庫に眠ったまま、記念館建設は動いていない。
　そこで、戦後７０年の節目の年だからこそ、何とか建設計画を再起動させたいと、都知事・都議会に対して「東京都平和祈念館（仮称）」建設を求める新しい署名を集めて、新年の都議会第１回定例会までに提出しようと、この集会でも広くアピールした。
　あわせて１９９５年３月１０日に東京都平和の日記念式典で採択された「東京都民平和アピール」をあらためて広めることもよびかけている。
　（比）
( ２０１５年１２月２２日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

創立６０年、平和実現訴え／世界平和アピール七人委員会

　世界平和アピール七人委員会は２０日、創立６０年に関連して「武力によらない平和の実現を目指して」とするアピールを発表しました。
　アピールは、世界の不安定さにふれ、「報復の連鎖は、恐怖と無関係に生きることができる安全・平和な世界につながる道ではない」と指摘。武力によらない平和の実現を訴えています。
　戦後７０年の日本にふれて｢日本国憲法も国会も無視し､主権者の国民の意向と無関係に｣政治が強行される｢異常事態が続いている｣と強調｡こうした政治からの転換を求め､国民多数が自ら考え続け､発言､行動することを呼びかけています｡
　現在の委員は、武者小路公秀、土山秀夫、大石芳野、小沼通二、池内了、池辺晋一郎、高村薫の各氏。
( ２０１５年１２月２１日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

山口放送「奥底の悲しみ」／地域に眠る戦争の傷痕／佐々木聰ディレクターに聞く

引き揚げ者の悲劇、現代に
　地域に眠る戦争の傷痕を丹念に掘り起こした地方発のテレビドキュメンタリー番組が、これから全国各地で放送されます。山口放送制作の「奥底の悲しみ～戦後７０年、引揚げ者の記憶」。今年の民放連賞最優秀賞、日本放送文化大賞グランプリを受賞した力作です。佐々木聰（あきら）ディレクター（４４）に聞きました。
　（佐藤研二）

　「一人ひとりの証言は重く、衝撃的でした。自分は『戦争』を何も分かっていなかったことを思い知らされました」。佐々木さんは、取材に駆け回った１年間を振り返ります。

「特殊婦人」の記録
　出発は、山口県長門市の仙崎港。詩人・金子みすゞの生誕地でも知られる港町は終戦後、約４１万人の引き揚げ者を受け入れました。最初に、引揚援護局の記録に「特殊婦人」という言葉が記され、港に「婦人特殊相談所」が置かれていたことに注目します。
　「特殊婦人」とは、敗戦後の中国大陸や朝鮮半島で旧ソ連軍兵士らから性的暴行を受けた女性たちのことで、望まない妊娠に苦しんだ人もいました。「女学校の級友の３分の１が帰ってこなかった」「抵抗すれば殺された」「帰国する船から海に飛び込んだ人もいた」…。数々の証言が集められました。
　取材は福岡・博多港や長崎・佐世保港へ。福岡県二日市町（現筑紫野市）に開設された保養所では極秘裏に中絶手術が行われていたことにも光を当てます。当時、保養所の看護婦を務めていた女性は「一日も早く体をきれいにしてふるさとに帰してあげたかった」と語ります。

頭で理解できても
　「家族が連れて行かれ、殺されるということは一体どういうことか…。頭で理解できても心では受け止めることができなかった」と佐々木さん。当事者の親族から「思い出すのも嫌だ」と取材を突然拒否されたこともあったと言います。
　「それでも、僕らは想像するしかありません。戦争は女性や子どもら弱者が被害を受けただけでなく、日本にも性暴力の加害の歴史があったことを視聴者に知ってもらいたい。それが、つらく悲しい思いを話してくれた方々に報いることだと思うのです」
　番組は、夕方の情報ワイド番組内で放送した「引き揚げ特集」数本分をまとめたもの。シリーズはこれまで８回続けられ、大きな反響を呼びます。多くの体験手記が寄せられ、視聴率も上がりました｡｢みんな知りたがっていた｣ことでした｡
　佐々木さんは、中国山地で自給自足する老夫婦に１５年間密着した「ふたりの桃源郷」シリーズや、「過疎の島の介護日記」はじめ、放送各賞に輝いた数々のドキュメンタリー番組を生み出してきました。しかし、唯一手をつけてこなかったテーマが「戦争」でした。
　「自分がやらなくても」。そんな佐々木さんの姿勢を変えたのは、放送評論家の藤久ミネさん（本欄「波動」執筆者）からの叱咤（しった）激励だったと笑います。
　「『あなたがやらなくて誰がやる、逃げてはいけない』と。足を踏み入れた以上、伝えることをやめるわけにいきません。同じ県に暮らす人がどう生き、どう考えてきたか―その喜怒哀楽を共有するために、僕ら地域のメディアは存在しているのではないでしょうか」

グランプリ作品、全国各地で放送

　日本放送文化大賞グランプリ「奥底の悲しみ」の放送は、日本テレビ（１月１６日、後２・３０）、中京テレビ（１月３０日、前１０・２５）、読売テレビ（１２月３１日、前６・０）ほか日本テレビ系各局で。
　同ラジオ部門「ＨＡＰＰＹ　ＨＯＵＳＥ」（「ラジオの力」参照）は、エフエム東京（１２月２３日、後６・０）、エフエム愛知（１月１１日、後０・０）、エフエム大阪（１月１０日、前４・０）ほか各局で。
　※各地域の放送局名・時間は民放連ホームページで確認できます。
( ２０１５年１２月２１日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

選挙のページ／手をつなぎ平和をつなぐ／安保関連法に反対するママと有志の会＠兵庫阪本直さんの訴え

　神戸元町の街頭演説（１９日）での安保関連法に反対するママと有志の会＠兵庫の、阪本直さんの訴えを紹介します。
　◇
　戦後７０年を迎えた日本で、安保関連法が成立しました。危機感を感じた母親たちも、「だれの子どももころさせない」というスローガンのもと、ママの会を立ち上げました。
　法案はあっというまに採決されてしまいましたが、得たものもあります。平和を願う方々とつながりができたこと。眠っていた、平和に対する大切な気持ちを呼び起こされたこと。それは何かが発芽したような成果を感じています。
　私は、対テロ戦争での犠牲者が増え続けている現状を目の当たりにしながら、平和のために貢献しているなどと根拠なく胸をはれません。だれのこどもも殺させない。それは右や左、上も下も関係なく、ママやパパそして一人の人として、当たり前の願いだと思います。
　日本には国民主権、基本的人権、平和主義の原則に基づいた、ノーベル平和賞候補にもなっている憲法があります。それだけでなく、この国では戦争を体験された方々や、多くの先輩方の努力から、７０年間戦争をしない国を維持してこれたのだと、いまさらながら実感し、感謝しています。
　権力者が着々と戦争への準備を進めるなら、私たちは着々と隣の人と手をつないでいきませんか。有志連合軍が空爆を強化するなら、私たちは寒さに震える人たちへ、寄付や衣服を送りませんか。アメリカのいいなりとなった安倍政権が憲法を変えようとするなら、立憲主義を取り戻すため、市民側から政権交代を目指しませんか。先人たちがしてきてくれたように、私も次世代に平和をつなぐため､力を尽くしたいです｡
　来年参院選挙があります。あと７カ月、野党共闘のために、兵庫県のみんなで手をつなぎ、自分たちにもできる積極的平和主義を実現していきませんか。全国で安保関連法に反対する２０００万署名も集められています。どうかお力添えをよろしくお願いします。
( ２０１５年１２月２１日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

芸能テレビ／涙と笑顔、紅白歌合戦見どころ／戦後７０年の原点見つめて

　「目玉なしの紅白」といわれる今年のＮＨＫ紅白歌合戦。どうなる？
　西條正人記者

　２０１３年は「あまちゃん」コーナーや北島三郎さんの紅白引退、１４年は「アナと雪の女王」「妖怪ウォッチ」…今年は大ヒット曲がなく、例年のような〝目玉〟がないといわれます。
　が、先月２６日の出場歌手の発表会見は、涙と笑顔に包まれました。
　初出場のアイドルグループ・乃木坂４６は昨年、初出場濃厚と報じられたものの落選。苦杯をなめ、活動を一から見直しました。
　メンバーの桜井玲香さんは「みんなでいつか出演したい夢の舞台が紅白でした」とのべ、生駒里奈さんは「こんなにうれしいんだな…」と涙で言葉を詰まらせました。
　星野源さんは１２年末にくも膜下出血に倒れて、約１年間活動を休止。病床でＮＨＫ歌謡コンサートを見て「坂本冬美さんの歌を聞いて号泣した」と告白しました。どん底から復活。「憧れの場所に立つことができて、本当にうれしいです」
　ロックバンド「ゲスの極み乙女。」の休日課長さん（ベース）も、「やっと親孝行できたかな」と喜びをかみしめ、報道陣の涙を誘いました。
　＊　　　＊
　レベッカやＸ　ＪＡＰＡＮら１９８０、９０年代を彩ったスターの登場も話題です。４８回の連続最多出場を決めた森進一さんの紅白卒業、演歌の若手・三山ひろしさんと山内惠介さんの初出場は新旧交代の様相です。
　〝紅白博士〟こと合田道人さん（作家・歌手・音楽プロデューサー）は、こういいます。
　「昔の紅白は、全員が目玉でした。その年を代表する歌手が出ていたんです。近年は紅白で初めて耳にする曲も少なくありませんが、秋川雅史さんの『千の風になって』のような紅白発のヒット曲も出ています」
　鍵になるのは、ＮＨＫの３月放送のドラマ「紅白が生まれた日」（２９日再放送）です。終戦の年の大みそかに放送された伝説のラジオ番組「紅白音楽試合」の誕生物語。放送スタッフは、ＧＨＱの検閲を受けながら、戦争で傷ついた人々に歌や希望を届けようと奮闘しました。
　「『紅白が生まれた日』に出演した星野源さんとｍｉｗａさんが紅白で歌うのは素晴らしい。並木路子役で『リンゴの唄』を歌ったｍｉｗａさんには、本番でもそれを歌ってくれたらいいなと思います」（合田さん）
　＊　　　＊
　８日、ＮＨＫは「戦後７０年紅組特別企画」と銘打って、ＭＩＳＩＡ（ミーシャ）さんの出演を発表。被爆地である故郷・長崎からの中継を予定している彼女は、次のコメントを出しました。
　「世界はいまだ混沌（こんとん）の中にあります。２０１６年が平和で良い年となりますよう心を込めて歌います」
　合田さんはいいます。
　「原点に立ち返り、平和のメッセージを訴える紅白にしてほしい」
(２０１５年１２月２０日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

１５回顧／美術／戦争画通し時代考える

　今を戦前にしかねない安倍政治への怒りが沸き上がった一年でした。平和美術展、九条美術展をはじめ、日本アンデパンダン展や職美展、写真展「視点」、漫画家による「くまんばち展」などでは憲法違反の戦争法への怒りと平和への危機感が数多く表現されました。アンデパンダン展の戦争犠牲者を表す黒い柩のインスタレーションは強い印象を残しました。
　２００４年、九条の会設立に賛同して翌年結成された九条美術の会は、今年初めて東京都内で第４回展を開催。強い危機感から賛同者が集まり､会派を超えて､いまや１０００人を超える広がりになっています。
　戦後７０年の今年、戦争をテーマにした展覧会が各地で開かれました｡｢画家たちと戦争」展（名古屋市美術館）、「戦後７０年　無言館展　画布に遺した青春｣(富山県立近代美術館）、「戦争と平和　伝えたかった日本」展（ＩＺＵ　ＰＨＯＴＯ　ＭＵＳＥＵＭ）、「戦後７０年記念　浜田知明のすべて」展（熊本県立美術館）などです。
　東京国立近代美術館は所蔵品展の中で「特集：藤田嗣治、全所蔵作品展示。」を開催、戦後アメリカが接収し、返還された彼の戦争画１４点すべてを今回初めて公開しました。藤田の戦争画を当時の戦意高揚をねらうマスメディア戦略の一環として捉えるとともに、彼の戦争画の全体を通して時代と美術を考える機会となりました。
　現代美術家・会田誠さんが東京都現代美術館から作品を撤去するよう要請された件など、政治的メッセージを込めた作品にクレームがつく例が増えています。東京都練馬区のギャラリー古藤では展示先から撤去を求められた芸術作品を集めた「表現の不自由展」を開催。「九条守れ」の女性デモを詠んだ俳句の色紙や、昨年、東京都美術館で撤去や手直しを求められた彫刻家の作品が並び、注目を集めました。
　日本の美の系譜・琳派誕生４００年を記念して開かれた｢琳派　京を彩る｣展、生誕１００年の写真家・濱谷浩の回顧展、戦後フランスを代表するアーティスト「ニキ・ド・サンファル展｣､印象派の巨匠モネ展も好評でした。
　（日高ルミ）
( ２０１５年１２月１６日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

今年の漢字は「安」／「安保」・くらしの不安など反映

　漢字１文字で今年の世相を表す恒例の「今年の漢字」に「安」が選ばれ、京都市東山区の清水寺で１５日、森清範貫主が揮毫（きごう）しました。安倍自公政権が強行成立させた安全保障関連法（戦争法）をめぐり、広範な国民が自覚的、自主的に立ち上がったことや、マンションのくい打ちデータ流用などメーカーの不正が発覚し、くらしの安全が揺らいだことが反映しています。
　日本漢字能力検定協会（同市）が主催し、今回で２１回目。１２万９６４７票の応募があり、「安」は５６３２票を獲得。中国人観光客による爆買いや鹿児島県・口永良部島の噴火、パリでの同時多発テロなどを表した「爆」、戦後７０年の節目やラグビー日本代表など世界で活躍するアスリートなどから「戦」などが続きました。
　森貫主は「国内外の問題による、命に対する不安からこの字が選ばれたのではないか。来年は安心安全な社会をつくろうという思いが表れている」と話しました。揮毫された文字は、３１日まで清水寺本堂で公開されます。
( ２０１５年１２月１６日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

潮流

　たたかいの開始を告げたのは今年の憲法記念日でした。安倍政権による戦争法案の企てに立ち上がった空前の国民運動。憲法集会の熱気とＳＥＡＬＤｓが発足宣言した戦後７０年の５月３日は歴史の節目となりました▼国会論戦とともに、日を追うごとに列島に広がり、燃え盛る運動。若者の熱い訴え、ママたちの怒りの声。学者や弁護士が、識者や文化人が次々と立つ。国会を包み込み、反対を叫ぶ十数万の人びと。一人ひとりが平和への思いをたぎらせました▼かつてない国民の自発的な運動の盛り上がり。そのたたかいの軌跡は、本紙が編集した『この力が日本を動かす』（新日本出版社）にも描かれています。無法にふるまう政権に抗する国民の歩みは止められない、それを倒すまで▼今年の世相を表す漢字に「安」が選ばれました。筆を執った清水寺の森清範貫主は「命に対する不安から選ばれたのではないか。来年は安心安全な社会をつくろうという思いが表れている」と▼安保法＝戦争法、多発するテロ、地球規模の異常気象、貧困と格差の拡大…。いま私たちを取り巻く状況は命への不安感を募らせるものばかりです。しかしそれは、安心した生活や安全な社会を願う人びとの手で変えていくことができるはず▼「安」の字は、家の中で女性が安心している様子を表しています。そこには安らか、穏やかなという意味も。みんなが平穏に生をまっとうできる日本や世界をつくるためにも、それを脅かすものとのたたかいは終わりません。
( ２０１５年１２月１６日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

１５回顧／演劇／歴史に向き合う表現者

　戦争法案強行の動きに抗した国民的な運動の広がりの中で、演劇人は歴史的な運動を繰り広げました。
　「安保体制打破　新劇人会議」は６月、３６の劇団などが賛同して戦争法案反対の声明を記者会見で発表。賛同団体は１００以上に発展しました。演劇、舞踊、音楽などの舞台表現に関わる人たちは「安保法制と安倍政権の暴走を許さない演劇人・舞台表現者の会」を結成し、４０人が呼びかけ人となって９月に記者会見。賛同者は１２００人を超え、全国２０を超える駅頭で各地の劇団員が無言の意思表示―「サイレント・スタンディング」を行い注目を集めました。行動は今後も毎月１９日に行います。
　今年１８回目を迎えた「非戦を選ぶ演劇人の会」によるピースリーディングも含め、戦争法に反対する演劇人の運動の広がりは、戦前の痛苦の経験を踏まえた表現者としての誇りを感じさせる力強いものです。
　上演作品では、戦後７０年を迎え、歴史に向き合い、戦争と平和を考え、想像する力を喚起する作品が目を引きました。
　前進座の「南の島に雪が降る」は戦地ニューギニアでの稀有な体験をもとに戦争を風化させない気概に満ちた作品。憲法誕生の過程を描き、憲法の存在意義を改めて問いかけた青年劇場「真珠の首飾り」は、今日の時代状況を的確に捉えた好企画でした。
　劇団民芸「冬の時代」は大逆事件直後の思想家の状況に柔らかな光を当て希望を託した作品。劇団俳優座「フル・サークル」は、１９４５年の陥落間近のベルリンを舞台に、過去と向き合うことを緊迫感を持って問いかけました。こまつ座の「マンザナ、わが町」は人種・偏見を乗り越え、戦争を加害・被害の両面から捉え心を揺さぶりました。
　時の権力の横暴を民衆の視点から描いた舞台も力作がありました。文学座と劇団東演でそれぞれ上演された「明治の柩」は、足尾銅山の鉱毒根絶の運動に一生をささげた田中正造をモデルに国家のありようを問いました。劇団青年座「からゆきさん」は日露戦争前後のシンガポールの娼館を舞台に国家に見捨てられた民衆像を提示しました。
　日韓共作の「新・冒険王」（青年団）は、２００２年の日韓共催サッカーＷ杯時の安宿を舞台に、両国の若者のすれ違う意識を歴史問題も絡めて描き、独特の問いかけが心に残る作品でした。
　（寺田忠生）
( ２０１５年１２月１５日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

１５回顧／音楽／戦争反対つないだ響き

　音楽には政治を変えたいと願う人々の心をつなぐ力があると実感した１年でした。安倍政権による戦争法の強行に怒り、国会前へ詰め掛けた中高生たちはミュージカル「レ・ミゼラブル」の挿入歌「民衆の歌が聞こえるか」を歌い、世代を超えた大勢の人々が打楽器に合わせて戦争反対のコールを行いました。
　８月には同法強行阻止を掲げ「戦争法案に終止符を！　音楽人・団体の会」が結成され、呼びかけ人には、著名な作曲家、演奏家、学者、評論家ら９人が名を連ねました。急きょ開いた戦争法に反対するコンサートは、呼びかけに賛同する人々が会場を埋めました。
　戦後７０年の今年、戦争や被爆をテーマにした作品を取り上げた演奏会が注目されました。
　１１月、２９年ぶりに愛知で開かれた日本のうたごえ祭典は「被爆・戦後７０年」をテーマに全国から集まった参加者が平和への願いを込めた合唱を響かせました。被爆者の無念を作品に託した「炎の歌」全曲が作曲者・外山雄三さんの指揮で演奏され、参加した多くの中高生や青年は、原発事故で苦しむ福島と米軍新基地建設に反対してたたかう沖縄の人々の思いに応えて連帯していく意思を歌で示しました。
　九州交響楽団は定期演奏会で「原爆投下７０年『平和への祈り』」と題して、シュニトケのオラトリオ「長崎」や広島・長崎の原爆投下を題材にした三善晃の管弦楽曲「夏の散乱」などを演奏し、悲惨さや犠牲者への祈りを届けました。新国立劇場は「地域招聘公演」で長崎県オペラ協会の「いのち」を上演。原爆で妻を亡くした医師の回想を通して命の尊さを訴えました。サントリーホール夏の音楽祭ではドイツの作曲家ツィンマーマンの作品「ある若き詩人のためのレクイエム」を日本初演。音楽とともに流れるヒトラーやゲッベルスの演説や、目で追えないほどスクリーンにあふれかえる文字が、軽く扱われる言葉が氾濫する現代社会の問題を告発しました。
　生誕１５０年を迎えたフィンランドの作曲家シベリウスの記念コンサートも数多く開かれ、日本でも人気の高い作曲家のあらゆる分野の作品に触れる貴重な機会となりました。
　優れた音響で音楽家や愛好家に親しまれてきた津田ホール（東京・渋谷区）が３月末に閉館。１１月には芸団協の代表らが、首都圏の劇場やホールの相次ぐ閉鎖・改修による鑑賞の場の急減の打開を求めた記者会見を開き、今後の重要な課題を提起しました。
　（中村尚代）
( ２０１５年１２月１５日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦争・格差ない「未来」を／高校生ら１７００人、銀座パレード

　「戦争のない、格差もない『未来』を」―制服姿の高校生のコールが１３日、東京・銀座に響きました。小雨のなか全国から集まった高校生約９００人と父母・教員ら８００人、計１７００人のパレードは、高校生・戦後７０年「未来」プロジェクト実行委員会が主催し、「全国私学助成をすすめる会」が支援したものです。
　「平和が好き」「ぼくたちは殺したくない」「笑顔で堂々と学校に通いたい」「私学助成を増やしてください」などとアピール。沿道で「すごいな」と声を上げた男性（２６）は、「いまの奨学金は教育ローン。応援します」と話しました。
　パレードに先立ち日比谷野外音楽堂で開いた集会では、戦後７０年の今年、２０以上の都府県で１００人を超える戦争体験者から話を聞くなどのプロジェクトの成果を発表。
　広島の「平和の灯」と東北の「復興の灯」を携え、全国７コース・２５００㌔を２９７人で自転車リレーした一人、愛知県の高校２年の坂口花錬（かれん）さんは、「苦しいこともあったけど、やりとげたのはたくさんの仲間がいたから。これからも、全力で行動し、社会を変えていきたい」と語りました。
　舞台上に全国から寄せられた七十数万羽の折り鶴で「ＰＥＡＣＥ７０」の巨大な文字が作られ、参加者が７色のボードを掲げるなか、「高校生平和宣言」を発表。「経済的状況に関係なく、誰もが学び、夢を持つことのできる教育を、平和を、自分たちの手で創り出す！」と訴えました。
( ２０１５年１２月１５日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

シリーズ戦後７０年を考える／これが強制労働の現場／ハルビン師範大学専任講師菊池実さん

侵略を象徴する遺跡
　要塞遺跡は中国東北部での日本による侵略戦争の象徴です。１９４１年７月、関東軍特種演習のときは国境地帯に兵力が集中しました。憲兵隊は国境周辺に住んでいた中国人をスパイ容疑で逮捕し、人体実験の〝材料〟として７３１部隊に送りました。要塞地帯で起きた日本軍による暴虐です。
　４５年８月９日のソ連侵攻で､東寧や虎頭(ことう）の要塞が戦場となりました。要塞でたたかった日本兵をはじめ、なかに逃げ込んだ開拓団員や在留邦人は全滅に近い状態でした。遺跡は戦争の悲劇も物語っています。
　アジア各地に日本軍の戦争遺跡が残されています｡それらの調査･検証を通して戦争の実態を明らかにすることは、戦争体験者が少なくなる中で、ますます重要になっています。

　１９９３年に虎頭要塞を調査、２０００年の日中共同東寧要塞遺跡調査・日本側団長
(２０１５年１２月１３日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

シリーズ戦後７０年を考える／これが強制労働の現場／中国・東寧要塞跡

南北１１０キロ東西５０キロ／日本軍、住民追い出し２０万人動員
　中国に侵略し、１９３２年に傀儡（かいらい）国家「満州国」（中国東北部）をつくった日本軍。ソ連（現ロシア）との戦争に備え、中国人を強制労働させ、国境沿いに１７の軍事要塞（ようさい）を築きました。アジア最大といわれる東寧（とうねい）要塞の遺跡がある黒竜江省東寧県を訪ねました｡そこで行われていたことは…｡
　東寧県で本吉真希記者(写真も)

弱った労働者は犬のえさに

　ロシアと国境を接する山間部の小都市・東寧県。当時、ソ連軍の重要軍港だったウラジオストクまで約１５０㌔に位置しました。
　対ソ戦をにらみ日本軍は１９３２年、「満州国」を建国。３４年５月に国境要塞の築城を命じました。
　東寧要塞は翌月から工事が始まり、主要部は３７年末に完成しました。
　中国側の研究によると、日本軍は東寧要塞や周辺の飛行場､鉄道､道路の建設などに１７万～２０万人の中国人を強制労働させました。要塞近辺の住民を追い出し、家屋を焼き払って〝無人区〟をつくりました。全県で７０余りの村を破壊しました。（『中共東寧県地方史』）
　南北１１０㌔、東西５０㌔の東寧要塞。同要塞は２０以上の陣地がつくられましたが､現在､内部を見学できるのは勲山（くんざん）陣地だけです。急勾配の石段を上ると、山の中腹に岩盤を掘った要塞の入り口があります。
　なかに入ると空気がひんやりしています。通路はおとながすれ違うことができるくらいの幅。両側に弾薬庫、発電室、通信室、作戦指揮室、居室、炊事場などの跡があります。壁はコンクリートで固められていました。

細菌、毒ガスも
　山頂には砲台や塹壕（ざんごう）の跡がいくつも残っています。強制労働させた中国人の宿舎も復元されていました。宿舎のそばには、高さ２㍍ほどの壁に囲まれた場所がありました。
　東寧県文物管理所の宋吉富所長は「日本軍はここで軍犬を飼っていた。病気で弱った中国人労働者をえさとして投げ入れていた」と説明します。
　強制労働には｢満州国｣内や河北省、山東省から強制連行された中国人たちや、八路軍（中国共産党の軍）の捕虜が多数あてられました。栄養失調や過酷な労働で多くの中国人が亡くなりました。
　宋所長は「住民と区別するため、強制労働させている労働者は、片方の眉をそられたという証言もある」と語ります。
　戦後、中国で発見された日本軍の文書によると､同要塞で４３年９月､捕虜４３人が暴動を起こしました。３１人はソ連へ逃れたものの、２人が殺されました。捕まった１０人も足をのこぎりで切られ、殺されました。
　東寧要塞では日本軍の細菌弾や毒ガス弾も発見されています。
　東寧県要塞博物館の宋殿宝館長はいいます。
　「戦争は犠牲者しか生み出さない。要塞跡で過去の悲惨な歴史を学び、教訓にしてほしい」

氷点下３０度で食事は雑穀のおかゆだけ／犠牲者は墓標すらなく〝馬以下〟の扱い

　東寧県の中心街から約１０㌔離れた村。トウモロコシ畑の農道を車に揺られ、さらに徒歩で進むと小高い丘が開けます。強制労働させられた中国人の遺体を埋めた｢労工墳｣で、発見された数少ない場所の一つです。
　労工墳では９０年代から３度、発掘調査が行われました。約２万平方㍍の広さに１０００以上の盛り土があり、４０００人以上の遺体が埋められた、といいます。
　調査では、すねから下が切断された遺骨が４体発掘されました。
　日本軍の占領前から東寧に住み、日本軍の倉庫などで荷役をさせられた劉永才さん（８８）。認知症でいまは証言できませんが､以前､現地研究者の聴き取りで「この労工墳に遺体を運んだことがある」と語っていました。９９年の「赤旗」の取材では、食事はアワなど雑穀のおかゆだけ。氷点下３０度を下回る酷寒のなか、強制的に連れて来られた約６００～７００人の中国人労働者のうち、３～４割が命を落としたと証言していました。
　労工墳に墓標はありません。盛り土は７０年の風雨で削られ､草木が茂り､現在は見る影もありません。
　労工墳近くには沼田多稼蔵・陸軍中将が死んだ愛馬のために建てた「馬魂碑」があります。中国人の死後も尊厳を踏みにじった日本軍｡まさに〝馬以下〟の扱いでした｡

４０もの慰安所が設置された

　日本軍は３３年１月に東寧を占領。多いときで１３万人の日本兵が駐屯しました。占領に伴い、日本軍の慰安所が設置されました。
　中国側の調査では東寧に４０カ所近い慰安所が置かれ、約１０００人の「慰安婦｣がいました｡武力で脅されたり、だまされたりして連れて来られ、日本軍の性奴隷となったのは朝鮮、中国､日本の女性たちでした｡
　朝鮮半島出身の李鳳雲さん（９３）は現在、認知症で当時を語ることはできません。東寧県要塞博物館の資料によると、そのころ李さんは母親の病気で生活が困窮。仕事があるとだまされ「慰安婦」にさせられました。２０人以上の日本兵の相手をさせられた日もあり、子どもが産めない体となりました。
　親族によると､戦後､結婚した夫に暴力を振るわれ、周囲に離婚を勧められましたが「自分は汚れた体。もらってもらった身だから」と。中国の研究者に性暴力について証言した際、何日も苦痛から脱せず、悪夢で叫んでいたといいます。
(２０１５年１２月１３日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

新基地めぐる代執行訴訟／海上の「銃剣とブルドーザー」／翁長知事の意見陳述／要旨

　沖縄県民は自由・平等・人権・自己決定権をないがしろにされてきました。私はこれを「魂の飢餓感」と表現しています。
　沖縄は琉球王国時代に日本に併合され、第２次世界大戦では国内唯一の凄惨（せいさん）な地上戦が行われました。戦後、県民は収容所に入れられ、強制的に土地接収されました。住宅や人が住んでいても「銃剣とブルドーザー」で強制接収されました。
　沖縄が米軍に自ら土地を提供したことは一度もありません。そして戦後７０年、あろうことか、今度は日本政府が海上での「銃剣とブルドーザー」をほうふつとさせる行為で美しい海を埋め立てようとしています。私たちの自己決定権の及ばない国有地とし、普天間基地にはない軍港機能や弾薬庫が加わり、機能強化され、耐用年数２００年といわれる基地を造ろうとしています。
　沖縄には日本国憲法が適用され、昨年のすべての選挙で辺野古新基地反対の民意が出たにもかかわらず、政府は建設を強行しようとしています。
　裁判で問われるのは、単に公有水面埋立法に基づく承認取り消しの是非だけではありません。戦後７０年にもかかわらず、国土面積のわずか０・６％しかない沖縄県に７３・８％もの米軍専用施設を集中させ続け、今また２２世紀まで利用可能な基地建設が強行されようとしています。
　日本には、本当に地方自治や民主主義は存在するのでしょうか。沖縄県にのみ負担を強いる今の日米安保体制は正常といえるのでしょうか。国民の皆様すべてに問いかけたいと思います。
(２０１５年１２月１３日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

相撲博物館で「大相撲と戦争」展／将来奪われた力士たち／出征地が機密、戦死者数不明

　東京・両国国技館のなかにある相撲博物館で「戦後７０年　大相撲と戦争」展が開かれています。
　先の戦争では多くの力士や行事、呼び出し、床山たちが駆り出されました。その出征者数、戦死者数がどれぐらいになるのかは、「出征地が機密事項とされたため、多くの協会員の戦地での詳細はほとんど不明」です。
　戦後、美男力士として人気を集めた横綱吉葉山は、１９４２年５月場所に幕下優勝を果たし、翌場所の十両昇進を決めます。しかし、場所後の巡業中に応召されて中国大陸を転戦。行軍中に誤って薬を飲まされて命を落としそうになったり、退却中に銃撃されて左太ももに重傷を負ったりしています。
　横綱に昇進したものの、このときのけがが元で、故障続きで思うような活躍ができませんでした。

スパイ嫌疑
　本紙でも取り上げたことがあるアメリカ・コロラド州出身で将来が嘱望された豊錦は、戦争が始まると、アメリカ出身のためにスパイ嫌疑がかけられ、特高警察に監視されます。念願の新入幕を果たした４４年の５月場所に勝ち越しましたが、直後に応召。無事にもどってきたものの、二度と土俵に上がることはありませんでした。
　展示では「戦地でのけが、病気、体力の回復が見こめない、相撲界に希望が持てないなどの理由で引退、廃業する力士も多く、応召された若い力士は伸び盛りの時期や将来を奪われた」と指摘しています。

戦意高揚へ
　大相撲は、戦意高揚のためとして、戦争末期にも本場所が開かれます。国技館内には〝国民精神総動員〟などの横断幕が掲げられました。後楽園球場で開かれた４４年１１月場所では、スコアボードに〝進め一億火の玉だ〟の標語が貼り付けられました。
　雑誌の変遷も目を引きます。０８年に博文館から発行された『ベースボール』が、３年後に『野球界』と改称されます。野球専門誌ながら、大相撲の本場所前には相撲の特集も組まれました。野球が敵国スポーツとされると、４３年１月発行から『相撲と野球』、４４年１月には『相撲界』、その半年後には『国民体育』と改題されています。
　貴重な写真や展示品は、大相撲が戦争に翻弄（ほんろう）されてきた歴史と、平和な社会でしか相撲、スポーツの発展もないことを改めて物語っています。
　（金子義夫）

１８日まで展示
　入館無料。（土、日、祝日は休館）
( ２０１５年１２月１２日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦後７０年プロジェクト／高校生が集会／１３日都内で

　戦後７０年にちなみ、「戦争のない、格差もない『未来』を築こう」と、１年近くかけて全国的なプロジェクトにとりくんできた高校生が、願いを集め、社会にアピールする集会とパレードを１３日（日）に東京都内で開きます。主催は、高校生・戦後７０年「未来」プロジェクト全国実行委員会。
　広島の「平和の灯」と宮城県石巻の「復興の灯」を１４都道府県２８５人がつないだ全国自転車リレー、戦争体験を７０人の語り部から聞く、７０万羽の折り鶴アートなどに取り組んできた高校生が成果を披露します。
　正午から日比谷野外音楽堂で集会。午後１時４０分に高校生のチアリーディングや和太鼓、ブラスバンドを先頭に銀座パレードに出発します。
( ２０１５年１２月１１日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

東京から平和発信を／小竹議員が知事ただす／都議会

　日本共産党の小竹ひろ子東京都議は９日、都議会本会議で一般質問に立ち、東京から平和を発信する事業の推進について舛添要一知事にただしました。
　終戦の年は４歳で、宇都宮市で見た空襲の真っ赤な夜空や焼け野原が目に焼き付いていると述べた小竹氏。「東京都として平和について知り考える場を提供し、戦争の体験と戦争を繰り返さない決意を次代に引き継ぐべきだ」として知事の認識を問いました。
　舛添知事は「先の大戦で戦争の惨禍をこうむった歴史を持つ都民にとって恒久平和の実現は最大の願いだ」と答弁｡｢戦争の惨禍を再び繰り返さぬよう、平和国家日本の首都として、次世代に戦争体験や平和の大切さを伝えていく｣と述べました｡
　小竹氏は、２０２０年の東京五輪までを｢平和の５年｣として集中的に平和事業を展開し､平和や核廃絶､友好の立場を発信していくこととともに、東京空襲犠牲者名簿（８万人余）や都の所有する証言ビデオ、空襲資料の公開を提起しました。
　舛添知事は「開催都市として世界の都市と連携し、世界平和の実現に貢献していく」と答えました。
　小竹氏は、知事と各会派に向けて、戦後７０年を機に１日も早い東京平和祈念館、都立の戦争資料館の建設の実現をと呼びかけました。
　平和祈念館の建設や東京空襲犠牲者名簿の公開を求める遺族らが本会議を傍聴し、小竹氏と懇談しました。
(２０１５年１２月１０日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

日本記者クラブでの不破前議長の講演／『前衛』２月号に掲載

　日本共産党の不破哲三前議長が１１月２４日、日本記者クラブのシリーズ企画「戦後７０年　語る・問う」で行った講演は、『前衛』２月号に、「戦後政治史の中で自民党政治を考える」と題して掲載されます。来年１月８日発売の予定。
( ２０１５年１２月１０日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

２千万の「戦争いや」集め戦争法廃止させましょう／母親連絡会が「赤紙」宣伝

　アジア・太平洋戦争の開戦から７４年となる８日、日本母親大会連絡会は「１２・８平和を守る母親全国連鎖行動」をおこないました。戦時中の召集令状「赤紙」を模したビラを配布して、戦争法（安保法制）廃止を求める２０００万署名をよびかけました。

　東京では、日本母親大会連絡会と東京母親大会連絡会が、有楽町マリオン前とＪＲ御茶ノ水駅前で行動しました。のべ６３人が参加しました。
　買い物客が行き交うマリオン前で署名に応じた群馬県高崎市の星野稔さん（６１）と美智子さん（５８）夫妻は、「戦争する国づくりに反対。世の中が物騒になっているけれど唯一の被爆国である日本だからこそ外交による平和的解決を進めるべきだ」と話しました。
　東京都大田区の６０代の女性は、「国民の目、耳、口をふさぐ社会は怖いです。戦争法に反対。共産党には宣伝などを工夫して頑張ってもらいたい」と話しました。
　各団体の代表がリレートークしました。
　日本母親大会の小松久子事務局長は、「二度と戦争はごめんです。日本が戦後７０年、『戦争する国』にならず、殺し殺されることがなかったのは国民が憲法を守りぬいたからです。その力を発揮して戦争法を廃止しましょう」と呼びかけました。
　全労連の長尾ゆり副議長は、仏テロ事件にふれ、どんな理由があっても許されないと指摘。報復戦争では憎しみの連鎖を生み出すだけで、テロはなくせないと強調しました。「憲法９条こそが地球の平和にとって必要です。２０００万人の『戦争は嫌だ』という声を集めて戦争法を廃止に追い込みましょう」と話しました。
( ２０１５年１２月０９日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

ひと／国民平和大行進の映画を製作山口逸郎さん（８４）

　核兵器廃絶を求める国民平和大行進をテーマにした映画「一歩でも二歩でも」をプロデュースしました。
　「映画をつくるのは２６年ぶり」。いま８４歳。８０歳から３度、大行進に参加しています｡今年､東京から広島まで９１日間、約１０００㌔を歩きました。映画は、そのドキュメンタリーです。
　「平和運動を担っている人に出会える大行進の魅力を、多くの人に伝えたい。戦後７０年の今年に、それを果たしたかった」。４０年前にも、大行進の記録映画｢歩く｣を製作しています。
　１９歳で入った映画界。「平和を、生涯の作品の基本にしたい」。広島で被爆し、亡くなった佐々木禎子さんの映画｢千羽鶴｣（木村壮十二監督、１９５８年）の撮影に助監督として携わったことが原点です。「原爆、放射能の恐ろしさに衝撃を受けた。こんなひどいことは二度と許されない」
　戦中は「軍国少年でした」。生まれは東京都墨田区で、４人兄弟の末っ子。兄は全員兵隊として召集され、長兄はフィリピンで戦死しました。中学２年生のときに終戦を迎えます。「何があっても、戦争と原爆だけは絶対にダメ。そう思って生きてきた」
　今でも忘れられない戦争の記憶は、東京大空襲です。「空から降ってくる焼夷弾の光。迫ってくる炎。とにかく恐ろしかった」
　８５歳まで歩くことが目標です。「来年は、沖縄を出発し、九州に渡って広島まで歩きたい」
　文・前田　智也
( ２０１５年１２月０８日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

主張／「１２・８」７４年／敗戦７０年の年に決意を新たに

　日本が朝鮮半島や中国大陸への侵略に続いてマレー半島やアメリカのハワイを攻撃した、１９４１年のアジア・太平洋戦争の開戦から７４年の「１２・８」です。日本はそのわずか３年半余り後、一連の戦争に敗れ、降伏しますが、今年はその敗戦から７０年にもあたります。戦後の日本は「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにする」（日本国憲法前文）ことを決意して再出発しました。秘密保護法の全面施行や戦争法の制定など「海外で戦争する国」への策動が強まる中で、いまこそ平和への決意を新たにし、世論と運動を強める時です。

戦争繰り返さない思い
　敗戦７０年の今年、いくつもの映像や活字作品が戦争の悲惨さを伝えました。沖縄戦で戦闘に駆り出された少年たちを描いたドキュメントなど話題になったものも少なくありません。先日亡くなった漫画家の水木しげる氏が描いた、補給もなく餓死が相次いだ悲惨な戦場体験も読み継がれています。
　アジア・太平洋戦争による犠牲者は、それ以前からの一続きの戦争だった中国東北部への侵略や日中戦争を合わせてアジア諸国で２０００万人以上、日本でも３１０万人に上ります。国土は荒廃し家も工場も焼かれました。二度と戦争はごめんだ、殺し殺される事態は繰り返さないというのは敗戦を迎えた国民の切実な思いでした。
　さかのぼれば１９世紀末の清国（現在の中国）との戦争や２０世紀初めのロシアとの戦争を含め、日本は領土と権益を求めて侵略と戦争を繰り返してきました。安倍晋三首相は今年８月の戦後７０年にあたっての談話で、日露戦争を「植民地支配のもとにあった、多くのアジアやアフリカの人々を勇気づけました」と述べましたが、日本の戦争自体が朝鮮半島の植民地化を狙っていたのは明白です。
　その日本が３１年の柳条湖事件や３７年の盧溝橋事件を機に中国東北部から大陸全体へ侵略を拡大し、戦争の泥沼化や国際世論の反発などで追いつめられ、見通しもなく始めたのがアジア・太平洋戦争でした。安倍首相は談話で、経済のブロック化が進む中、外交的、経済的な行き詰まりを「力の行使」で解決しようとしたと人ごとのようにいいましたが、侵略戦争と植民地支配に突き進んだ加害者としての自覚や責任意識は感じられません。言葉だけの「反省」や「おわび」はむなしい限りです。
　かつては自民党の政権でも、小渕恵三首相は韓国や中国に対して植民地支配や侵略を反省し謝罪しました。侵略戦争を肯定・美化する勢力に支配される今の自民党と安倍首相にはその立場がありません。戦後の国際社会で通用する態度でないのは明らかです。

戦争法を廃止するために
　侵略戦争を否定しない安倍首相が､秘密保護法や戦争法を制定し､アメリカの戦争に参加する体制を築いているのは危険です。中東での「有志連合」の軍事攻撃を日本が支援する危険や国連の平和維持活動（ＰＫＯ）に参加して武力を行使する危険も浮上しています。
　日本が戦後７０年「戦争する国」にならず､｢殺し殺される｣ことがなかったのは、憲法の平和原則を国民が守り抜いてきたからです。その力を発揮して憲法を破壊する戦争法を廃止し、立憲主義と民主主義を取り戻すことが重要です。
( ２０１５年１２月０８日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

潮流

　英国首相チャーチルが戦争の勝利を確信し、米国務次官補のアチソンが「これ以上の愚策は想像もできなかった」と語った日本の真珠湾攻撃。元外務省高官の孫崎享さんは自著『日米開戦の正体』で、当時の発言を引きながら「史上最悪の愚挙」を描いています▼日本を破滅へと加速させた「１２・８」。それは、アジアで２０００万人以上の犠牲者を出した、日本の戦争の終わりを告げる号砲でもありました▼「演習ではない。本当の空襲だ」。そのとき、ハワイのパールハーバーは日曜の朝を迎えていました。奇襲によって目覚めた街はパニックと化し、数多くの軍艦とともに民間人を含む２４００人の命が奪われました▼同時に、アジア大陸の最南端でも戦端を開き、無謀な戦争を拡大していった日本。悲惨な末路は戦後７０年の今年、改めて多くのメディアで取り上げられました。その一方で日本の戦争犯罪を問うものはほとんどありませんでした▼自国の戦争責任を徹底して追及し、いまやＥＵ（欧州連合）の中心に座るドイツ。いまだに過去と向き合えず、近隣諸国から信頼を得られない日本。政治の姿勢が〝加害者〟としての罪をあいまいにしています▼「発言すべきことを発言できる社会を確保し、維持していく」。孫崎さんは真珠湾への道に突き進んでいった教訓をあげます。いま戦争法の廃止に立ち上がる若者や母親、そして多くの市民たち。彼らの声は、あの戦争によって傷つけられた人びとの苦しみや悲しみに寄り添っています。
( ２０１５年１２月０８日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

立憲主義を守る／戦争法強行後も続く出版

　安倍政権の暴走にたいし立憲主義の大切さを訴える本が次々出ています。戦争法の強行成立後も出版が続いています。
　山内敏弘著『「安全保障」法制と改憲を問う』（法律文化社・４０００円）は、法案の憲法上の問題点を批判的に検討します。また集団的自衛権行使を容認した昨年の閣議決定と、そのもとになった安保法制懇報告書もとりあげ、「なされた議論は憲法論としてはあまりにもひどい代物」「憲法を無視し立憲主義を侵害するもの」と批判。
自民草案を告発　集団的自衛権をめぐる世界と日本の論議の中で、安倍政権の主張は特異なものであることが分かります。立憲主義軽視の自民党改憲草案も告発しています。
　佐藤幸治著『世界史の中の日本国憲法　立憲主義の史的展開を踏まえて』（左右社・１０００円）は、６月に東京大学で行われた立憲デモクラシーの会主催のシンポジウムでの講演を基にした論考です。日本でも明治・大正期に立憲主義の導入・定着をはかる努力が行われて一定の水準に達したのに、その後、それらの成果が軍国主義の台頭とアジア太平洋戦争によって短期間に覆されてしまったことを紹介します。
　「強力な指導力」がもてはやされる最近の風潮に触れ、「人類にとって今一番必要なことは『自制力』の保持である」「特に『自制力』を失って大きな悲劇を経験した日本のわれわれは、人類の歴史と日本の近代史を重ね合わせながら、その歴史に深く学ぶ必要がある」と警告しています。
　樋口陽一著『「日本国憲法」まっとうに議論するために』（みすず書房・１８００円）は、２００６年版に加筆した改訂新版です。「国民」「憲法」「個人」など憲法の根本的な考え方を、近代の作家、夏目漱石や森鴎外らの随想も引用しながら自在に論じます。
若い世代に希望　自民党改憲草案は、まっとうな改憲論とは「正反対の方向を向いたもの」だと指摘。１９世紀後半の立憲主義のヨーロッパ基準をそれなりにみたしたという明治憲法からも遠ざかり、立憲主義の世界的な普遍性に背を向けたものであることを明らかにしています。
　法案審議中に首相がやじを飛ばすなどの異常な事態の中で、若い世代が自分たち自身で考え、発言しようとしていることは、まっとうな議論の土壌を育てるためにも心づよい、と希望を託しています。
　『法律時報』１１月号（日本評論社・１６１０円）は「戦後７０年と安保法制　『国際法の支配』と立憲主義」のテーマで特集。蟻川恒正「国際法の支配」、松井芳郎「『国際社会における法の支配』が意味するもの」、水島朝穂「『７・１閣議決定』と安全保障関連法」をはじめ憲法や国際法の研究者が多角的に論じています。安倍政権が「憲法ではできない」ことを「できる」と強弁し、国際法も都合よく引き合いに出しながら「法の支配」だと称して暴走する違憲違法ぶりを、浮き彫りにしています。
　（清水博）
( ２０１５年１２月０６日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

広げよう２０００万署名／私もサイン／岐阜市議（無所属クラブ代表）松原徳和さん／若者の声に応えたい

　戦後７０年、日本がどの国とも戦争せず、平和を維持できたのは、平和憲法の存在があったからです。父はシベリア抑留、母は岐阜空襲を経験し、命の大切さを教えてくれました。
　戦争の悲惨さを語れる両親が亡くなったいま、私は若者を戦地に行かせてはならない、目前の戦争法は絶対阻止しなければならないと決意し、６月議会で憲法違反の戦争法廃案求める意見書を共産党、無所属クラブ代表が共同提出して賛成討論をしました。
　否決されましたが、私は街頭に出て、共産党議員のみなさんと戦争法廃止を訴え、集会、デモに参加し、「アベ政治を許さない」を高々と掲げました。
　１８歳選挙権が成立し、若者や高校生が「選挙に行こう」「野党は共闘」と必死に呼びかけています。２０００万統一署名は、この切実な声に応えています。私も廃止まで全力で頑張ります。
( ２０１５年１２月０５日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

取材メモ／平和あきらめない

　○…「夏の花　平和を決してあきらめない」。大輪のヒマワリに彩られた冊子が編集局に届きました。全日本年金者組合福島県郡山支部が作成した、戦争体験を語り継ぐ手記集です。きっかけは今年１月、８０歳以上の組合員を招いた「長寿を祝う会」。戦後７０年の今だからこそ体験を残さなければとの思いからです。
　○…組合員でない人も含め１７人が手記を寄せたり、聞き書きをしたりしてまとめました。身内４人が戦死してしまったこと。終戦で「これで腹いっぱい食べられる」と思ったのに、空腹を満たすまでは数年かかったこと。極寒の戦場地での阿鼻（あび）叫喚の戦闘…｡どの体験からも「戦争は二度と繰り返してはならない」との強い思いが表出されます。
　○…イラク派兵のころから毎週土曜日、東日本大震災による中断以外は、支部で署名行動を続けています｡戦争法が強行された夏､市内のどこかで日々集会やデモがおこなわれ、国会周辺を１２万人が囲んだ８月３０日は駅前に３５０人が集まりました。小沼利正書記長はいいます。「これからが正念場。私たちは行動を続けます」
　（由）
( ２０１５年１２月０４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

代執行訴訟／翁長知事の陳述書全文

　沖縄県名護市辺野古の埋め立て承認取り消しの正当性をめぐり、県と国が争う代執行訴訟で福岡高裁那覇支部に提出した翁長（おなが）雄志知事の陳述書全文を順次紹介します。（本件陳述書は、３日付で掲載した知事の冒頭意見陳述とは別に、証拠として裁判所に提出した書面です）

１　知事に立候補した経緯と公約

　今年、日本は戦後７０年の節目の年を迎えました。我が沖縄県も２７年間の米軍統治時代を経て本土復帰を果たし、先人のたゆまぬ努力により、飛躍的な発展を遂げてまいりました。
　しかしながら沖縄県には、県民自らが持ってきたわけでもない米軍基地を挟んで「経済か」、「平和か」と常に厳しい二者択一を迫られ、苦渋の選択を強いられてきた悲しい歴史があります。
　保守の方々は、「生活が大切だ。今は経済だ。」と主張したのに対し、革新の方々は「命を金で売るのか、ウチナーンチュの誇りはどうするのか。」と批判し、県民同士がいがみあっていたのです。政治家の一家に生まれ育った私は、小さい頃からそのような状況を肌で感じており、将来は県民の心をひとつにして、この沖縄の政治状況というものを打破できないだろうかと考えるようになりました。ですから私の持論は、沖縄では保守が革新の敵ではなく、革新が保守の敵でもない。敵は別のところにいるのではないかということです。
　平成２４年、日米両政府から、普天間基地へのオスプレイ配備が発表されました。配備を強行しようとする政府に対し、平成２５年１月、オスプレイの配備撤回と普天間飛行場の閉鎖・撤去、県内移設断念を求め、県内４１市町村長と市町村議会議長、県民大会実行委員会代表者が上京し、政府に建白書を突きつけました。政治的な主義・主張の違いを乗り越え、オール沖縄で行った東京行動のような取組み、活動こそが、今、強く求められていると思っております。
　建白書を携えた東京行動から私が県知事へ立候補するまでの約２年の間に、普天間基地の県外移設を訴えて当選した県選出の与党国会議員が中央からの圧力により次々に翻意し、辺野古移設容認に転じました。さらに平成２５年の年末には、安倍総理大臣との会談後、仲井真知事が辺野古埋立申請を承認するに至るなど、県内移設に反対する足並みは大きく乱れました。しかしながら世論調査の結果を見ますと、普天間飛行場の辺野古移設に対する県民の反対意見は、約８割と大変高い水準にあり、オール沖縄という機運、勢いは衰えるどころか、さらに高まっていました。
　これは、県民が沖縄の自己決定権や歴史を踏まえながら、県民のあるべき姿に少しずつ気づいてきたということだと思います。
　そのような中、海底ボーリング調査など移設作業を強行する政府の手法は、これまで安倍総理大臣や菅官房長官が繰り返し述べてきた「誠心誠意、県民の理解を得る」、「沖縄の負担軽減」といった言葉が、空虚なものであることを自ら証明したようなものでした。
　日本の安全保障は日本全体で負担すべきであり、これ以上の押付けは沖縄にとって既に限界であることを政府に強く認識してもらいたいと考えています。
　私たちは、今一度心を一つにして、「オール沖縄」あるいは「イデオロギーよりはアイデンティティ」で結集して頑張っていかなければならない。
　沖縄が重大な岐路に立つ今、私の力が必要という声があるならば、その声に応えていくことこそ政治家の集大成であるとの結論を出し、那覇市長から沖縄県知事に立候補したものであります。
　沖縄県知事選挙にあたり、公約について以下を基本的な認識として訴えました。
　○建白書で大同団結し、普天間基地の閉鎖・撤去、県内移設断念、オスプレイ配備撤回を強く求める。そして、あらゆる手法を駆使して、辺野古に新基地はつくらせない
　○日本の安全保障は日本国民全体で考えるべきものである
　○米軍基地は、今や沖縄経済発展の最大の阻害要因である。基地建設とリンクしたかのような経済振興策は、将来に大きな禍根を残す
　○沖縄２１世紀ビジョンの平和で自然豊かな美（ちゅ）ら島などの真の理念を実行する
　○アジアのダイナミズムに乗って動き出した沖縄の経済をさらに発展させる
　○大いなる可能性を秘めた沖縄の「ソフトパワー」こそ、成長のエンジンである
　○新しい沖縄を拓（ひら）き、沖縄らしい優しい社会を構築する
　○平和的な自治体外交で、アジアや世界の人々との交流を深める

２沖縄について

（１）沖縄の歴史
　沖縄には約５００年に及ぶ琉球王国の時代がありました。その歴史の中で、万国津梁（しんりょう）の精神、つまり、アジアの架け橋に、あるいは日本と中国、それから東南アジアの貿易の中心になるのだという精神をもって、何百年もやってまいりました。
　ベトナムの博物館には６００年前に琉球人が訪れた記録が展示されていました。中国の福州市には、異国の地で亡くなった琉球の人々を埋葬している琉球人墓があり、今も地域の方が管理しております。また、琉球館という宿も残っております。それから、北京では国子監といいまして、中国の科挙の制度を乗り切ってきた最優秀な人材が集まるところに琉球学館というのがあり、そこで琉球のエリートがオブザーバーで勉強させてもらっておりました。このような形で、琉球王朝はアジアと交流を深めてまいりました。沖縄名産の泡盛は、タイのお米を使ってできています。タイとの間にも何百年にわたる交易と交流があるわけです。
　そういった中で１８００年代、アメリカ合衆国のペリー提督が初めて日本の浦賀に来港したのが１８５３年です。実は、ペリー提督はその前後、５回沖縄に立ち寄り、８５日間にわたり滞在しております。１８５４年には独立国として琉球とアメリカ合衆国との間で琉米修好条約を結んでおります。このほか、オランダとフランスとの間でも条約を結んでおります。
　琉球はその２５年後の１８７９年、日本国に併合されました。私たちはそのことを琉球処分と呼んでおります。併合後、沖縄の人々は沖縄の言葉であるウチナーグチの使用を禁止されました。日本語をしっかり使える一人前の日本人になりなさいということで、沖縄の人たちは皇民化教育もしっかり受けて、日本国に尽くしてまいりました。その先に待ち受けていたのが７０年前の沖縄戦でした。「鉄の暴風」とも呼ばれる凄惨（せいさん）な地上戦が行われ、１０万を超える沖縄県民を含め、２０万を超える方々の命が失われるとともに、貴重な文化遺産等も破壊され、沖縄は焦土と化しました。
　このように沖縄は戦前、戦中と日本国にある意味で尽くしてまいりました。その結果どうなったか。サンフランシスコ講和条約で日本が独立するのと引き換えに、沖縄は米軍の施政権下に一方的に差し出され、約２７年にわたる苦難の道を歩まされることになったわけであります。
　その間、沖縄県民は日本国憲法の適用もなく、また、日本国民でもアメリカ国民でもありませんでした。インドネシア沖で沖縄の漁船が拿捕（だほ）されたときには沖縄・琉球を表す三角の旗を掲げたのですが、その旗は何の役にも立ちませんでした。
　また当時は治外法権のような状況であり、犯罪を犯した米兵がそのまま帰国するというようなことも起こっていました。日本では当たり前の人権や自治権を獲得するため、当時の人々は、米軍との間で自治権獲得闘争と呼ばれる血を流すような努力をしてきたのです。
　ベトナム戦争のときには、沖縄から毎日Ｂ―５２が爆撃のために飛び立ちました。その間、日本は自分の力で日本の平和を維持したかのごとく、高度経済成長を謳歌（おうか）していたのです。

（２）沖縄の将来像
　私の知事としての県政運営方針は、「沖縄２１世紀ビジョン基本計画」を着実に１つ１つ進めていくことが基本となると思っております。
　この計画の特徴は、「強くしなやかな自立型経済の構築」と「沖縄らしい優しい社会の構築」を施策展開の基本として明示するとともに、基地問題の解決にも力を入れているところです。
　「強くしなやかな自立型経済の構築」を実現していく上で大きな力となるのが、うやふぁーふじ（先祖）から受け継いできた、沖縄の自然、歴史、伝統、文化、あるいは万国津梁の精神といった、いわゆるソフトパワーの活用です。アジアのダイナミズムというのは、今やヨーロッパ、アメリカをしのぐ勢いであり、既に沖縄はそのうねりに巻き込まれつつあります。かつて沖縄はまさしく日本の辺境、アジアの外れという場所でしたが、今はアジアの中心、そして日本国とアジアを結ぶ大変重要な役割を果たすようなところにきています。
　沖縄には、チャンプルー文化、いちゃりばちょーでー（一度出逢ったら皆兄弟）として知られる文化や生き方があります。これは小さな沖縄が周辺の国々に翻弄（ほんろう）されながらも一生懸命生き抜き、積み重ねてきた歴史から来るものであり、誇るべきものであります。
　自立型経済の構築に向けて、今一番勢いがあるのが、観光リゾート産業です。昨年、過去最高の観光入域客数を記録しましたが、外国人観光客、特に、中国や韓国、台湾を始めとするアジア各国からの観光客の大幅な増加が大きく貢献しています。外国人観光客の伸びは、今年に入っても衰えることなく、１００万人を超えています。
　また、航空・物流企業の努力により、アジアを結ぶ国際物流拠点としての地位もみえてきました。また、海底ケーブルをつなぎながら日本と台北、あるいはシンガポールそれからまた沖縄につなげるといったように、情報通信産業の拠点になる要素が出てまいりました。
　日本の排他的経済水域の面積は世界第６位ですが、東西約１０００㎞、南北約４００㎞の中に、有人島４０を含め１６０の島々が広がる沖縄県は、大いにそれに貢献しています。また、伊平屋島沖に熱水鉱床が発見されるなど、海底資源という意味でも沖縄は大きな可能性をもっており、そういったことに私たちはもっと目を向け、アジアと日本の架け橋としてどのような役割を果たしていくか考え、実行していく中で、沖縄のあるべき将来像というものが作れるのではないかと思っております。
　「沖縄らしい優しい社会の構築」につきましては、市町村で、協働のまちづくり、人と人が支え合って助け合っていく仕組みづくりに取り組んでいます。私が那覇市長のとき、那覇市でも協働のまちづくりに取り組みました。ボランティア、ＮＰＯ、あるいは民生委員・児童委員、自治会や企業の皆さんの中には、地域のため、他人のために頑張っている人がたくさんおられます。５００名を超える方々を協働大使に委嘱するとともに、活動拠点の一つとして、前の銘苅庁舎内に「協働プラザ」を設置しました。他の市町村も、那覇市に負けないくらい素晴らしいまちづくりに取り組んでいます。こういったものが、県民同士が支え合って助け合って生きていく沖縄らしい優しい社会の構築、沖縄全体の発展につながるものだと思っております。
　基地問題の解決を図ることは、県政の最重要課題です。基地の整理縮小を図ることは当然ですが、将来的には、平和の緩衝地帯として沖縄があってもらいたいと思っています。日本の防衛のためといって基地をたくさん置くのではなく、平和の緩衝地帯としての役割をこれから沖縄が果たしていき、アジアと日本の架け橋になることを夢見ながら今、私は県政に取り組んでいます。（つづく）

陳述書（目次）
１　知事に立候補した経緯と公約
２　沖縄について
　（１）沖縄の歴史
　（２）沖縄の将来像
３　米軍基地について
　（１）基地の成り立ちと基地問題の原点
　（２）普天間飛行場返還問題の原点
　（３）「沖縄は基地で食べている」基地経済への誤解
　（４）「沖縄は莫大（ばくだい）な予算をもらっている」沖縄振興予算への誤解
　（５）基地問題に対する政府の対応
　（６）県民世論
４　日米安全保障条約
５　前知事の突然の埋立承認
６　前知事の埋立承認に対する疑問―取消しの経緯
　（１）仲井真前知事の埋立承認についての疑問
　（２）第三者委員会の設置と国との集中協議
　（３）承認取消へ
　（４）政府の対応
７　主張
　（１）政府に対して
　（２）国民、県民、世界の人々に対して
　（３）アメリカに対して

３　米軍基地について

（１）基地の成り立ちと基地問題の原点
　沖縄の米軍基地は、戦中・戦後に、住民が収容所に入れられているときに米軍が強制接収を行い形成されました。強制的に有無を言わさず奪われたのです。そして、新しい基地が必要になると、住民を「銃剣とブルドーザー」で追い出し、家も壊して造っていったのです。沖縄は今日まで自ら進んで基地のための土地を提供したことは一度もありません。
　まず、基地問題の原点として思い浮かぶのが１９５６年のプライス勧告です。
　プライスという下院議員を議長とする調査団がアメリカから来まして、銃剣とブルドーザーで接収された沖縄県民の土地について、実質的な強制買い上げをすることを勧告したのです。当時沖縄県は大変貧しかったので、喉から手が出るほどお金が欲しかったと思います。それにもかかわらず、県民は心を１つにしてそれをはねのけました。そして当時の政治家も、保守革新みんな１つになって自分たちの故郷の土地は売らないとして、勧告を撤回させたわけです。今よりも政治・経済情勢が厳しい中で、あのようなことが起きたということが、沖縄の基地問題を考える上での原点です。
　私たちの先輩方は、基地はこれ以上造らせないという、沖縄県の自己決定権といいますか、主張をできるような素地を作られたわけであります。
　また、サンフランシスコ講和条約発効当時は、本土と沖縄の米軍基地の割合は、おおむね９対１であり、本土の方が圧倒的に多かったのです。ところが、本土で米軍基地への反対運動が激しくなると、米軍を沖縄に移し、基地をどんどん強化していったのです。日本国憲法の適用もなく、基本的人権も十分に保障されなかった沖縄の人々には、そのような横暴ともいえる手段に対抗するすべはありませんでした。その結果、国土面積のわずか０・６パーセントしかない沖縄県に、７３・８パーセントもの米軍専用施設を集中させるという、理不尽きわまりない状況を生んだのです。

（２）普天間飛行場返還問題の原点
　政府は、普天間飛行場返還の原点を、平成８年に行われた橋本・モンデール会談に求め、沖縄県が県内移設を受け入れた原点を、平成１１年に当時の県知事と名護市長が受け入れたことに求めています。
　しかしながら、普天間基地の原点は戦後、住民が収容所に入れられているときに米軍に強制接収をされたことにあります。
　政府は、県民が土地を一方的に奪われ、大変な苦痛を背負わされ続けてきた事実を黙殺し、普天間基地の老朽化と危険性を声高に主張し、沖縄県民に新たな基地負担を強いようとしているのです。私は日本の安全保障や日米同盟、そして日米安保体制を考えたときに、「辺野古が唯一の解決策である」と、同じ台詞（せりふ）を繰り返すだけの政府の対応を見ていると、日本の国の政治の堕落ではないかと思わずにはいられません。
　また、政府は過去に沖縄県が辺野古を受け入れた点を強調していますが、そこには、政府にとって不都合な真実を隠蔽（いんぺい）し、世論を意のままに操ろうとする、傲慢（ごうまん）で悪意すら感じる姿勢が明確に現れています。
　平成１１年、当時の稲嶺知事は、辺野古を候補地とするにあたり、軍民共用空港とすること、１５年の使用期限を設けることを前提条件としていました。つまり、１５年後には、北部地域に民間専用空港が誕生することを譲れない条件として、県内移設を容認するという、苦渋の決断を行ったのです。
　さらに、当時の岸本市長は、知事の条件に加え、基地使用協定の締結が出来なければ、受入れを撤回するという、厳しい姿勢で臨んでいました。
　沖縄側の覚悟を重く見た当時の政府は、その条件を盛り込んだ閣議決定を行いました。ところが、その閣議決定は、沖縄側と十分な協議がなされないまま、平成１８年に一方的に廃止されたのです。
　当時の知事、名護市長が受入れに際し提示した条件が廃止された以上、受入れが白紙撤回されることは、小学生でも理解できる話です。
　私は、政府が有利に物事を運ぶため、平然と不都合な真実を覆い隠して恥じることのない姿勢を見るにつけ、日本国の将来に暗澹（あんたん）たるものを感じずにはいられません。

（３）「沖縄は基地で食べている」基地経済への誤解　　
　よく、「沖縄は基地で食べているのではないか」とおっしゃる方がいます。
　その背後には、「だから少しぐらい我慢しろ」という考えが潜んでいます。
　しかしながら、経済の面で言いますと、米軍基地の存在は、今や沖縄経済発展の最大の阻害要因になっています。米軍基地関連収入は、復帰前には、県民総所得の３０パーセントを超えていた時期もありましたが、復帰直後には１５・５パーセントまで落ちており、最近では約５パーセントです。駐留軍用地の返還前後の経済状況を比較しますと、那覇新都心地区、小禄金城地区、北谷町の桑江・北前地区では、返還前、軍用地の地代収入等の直接経済効果が、合計で８９億円でありましたが、返還後の経済効果は２４５９億円で、約２８倍となっております。また雇用については、返還前の軍雇用者数３２７人に対し、返還後の雇用者数は２３５６４人で、約７２倍となっております。税収は７億９千万円から２９８億円と約３５倍に増えました。基地関連収入は、沖縄からするともう問題ではありません。経済の面から見たら、むしろ邪魔なのです。実に迷惑な話になってきているのです。
　日本の安全保障という観点から一定程度我慢し協力しているのであって、基地が私たちを助けてきた、沖縄は基地経済で成り立っている、というような話は、今や過去のものとなり、完全な誤解であることを皆さんに知っていただきたいと思います。基地返還跡地には、多くの企業、店舗が立地し、世界中から問い合わせが来ています。
　仲井真前知事のときに、普天間飛行場等の返還予定駐留軍用地が返されたときの経済効果を試算しました。現在の基地関連収入が５０１億円あります。
　返還後の経済効果を試算したところ、８９００億円との結果が出ました。約１８倍です。普天間飛行場やキャンプキンザーが返されたら、民間の施設がここに立ち上がって、ホテルなどいろいろなものが出来上がって、沖縄経済がますます伸びていくのです。基地があるから邪魔しているのです。ですから、基地で沖縄が食っているというのは、もう４０年、３０年前の話であって、今や基地は沖縄経済発展の最大の阻害要因だということをしっかりとご理解いただきたいと思います。

（４）「沖縄は莫大な予算をもらっている」沖縄振興予算への誤解　　　　
　沖縄は他県に比べて莫大（ばくだい）な予算を政府からもらっている、だから基地は我慢しろという話もよく言われます。年末にマスコミ報道で沖縄の振興予算３千億円とか言われるため、多くの国民は４７都道府県が一様に国から予算をもらったところに沖縄だけ３千億円上乗せをしてもらっていると勘違いをしてしまっているのです。
　都道府県や市町村が補助事業などを国に要求する場合、沖縄以外では、自治体が各省庁ごとに予算要求を行い、また、与党国会議員等を通して、所要額の確保に尽力するというのが、通常の流れです。しかし、復帰までの２７年間、沖縄県は各省庁との予算折衝を行えず、国庫補助事業を確保するための経験は一切ありませんでした。一方で沖縄の道路や港湾などのインフラは大きく立ち後れ、児童・福祉政策なども日本とは大きく異なるものであり、迅速な対応が要求されていました。
　復帰に際して、これらの課題を解決するために、沖縄開発庁が創設され、その後内閣府に引き継がれ、県や市町村と各省庁の間に立って予算の調整、確保に当たるという、沖縄振興予算の一括計上方式が導入されました。また、脆弱（ぜいじゃく）な財政基盤を補うため、高率補助制度も導入され、沖縄振興に大きな成果を上げつつ、現在に至っています。
　しかしながら沖縄県が受け取っている国庫補助金等の配分額は、全国に比べ突出しているわけではありません。
　例えば、県民一人あたりの額で見ますと、地方交付税や国庫支出金等を合わせた額は全国６位で、地方交付税だけでみると１７位です。沖縄は内閣府が各省庁の予算を一括して計上するのに対し、他の都道府県では、省庁ごとの計上となるため、比較することが難しいのです。ですから「沖縄は３千億円も余分にもらっておきながら」というのは完全な誤りです。
　一方で、次のような事実についても、知っておいていただきたいと思います。沖縄が米軍施政権下にあった２７年間、そして復帰後も、全国では、国鉄により津々浦々まで鉄道網の整備が行われました。沖縄県には、国鉄の恩恵は一切ありませんでしたが、旧国鉄の債務は沖縄県民も負担しているのです。また、全ての自治体で標準的な行政サービスを保障するため、地方交付税という全国的な財政調整機能があります。沖縄には復帰まで一切交付されませんでした。
　（つづく）
( ２０１５年１２月０４日，「赤旗」)

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潮流

　その人の演説会には住民がござを手に場所取りに走ったといいます。戦後の米軍政下で弾圧に屈せずたたかい抜いた瀬長亀次郎さん。しまくとぅば（島言葉）を交えた痛快な演説は、老いも若きも引きつけました▼当時、「銃剣とブルドーザー」によって次々と土地を奪われた沖縄。瀬長さんは占領地での略奪を禁じた国際条約を説明しながら激しく糾弾。しまくとぅばで「家や田んぼ、牛や馬やヤギ、すべて私たちのものだ」と語りかけ、県民を勇気づけました▼地元紙の沖縄タイムスが日曜日に掲載する「うちなぁタイムス」に紹介されています。記事の中で瀬長さんの次女、内村千尋さんは「うちなーんちゅの魂を表現していた。沖縄の『代弁者』という思いがあったはず」▼県民の魂を伝えてきた「瀬長節」はいま、「翁長節」へ。辺野古の埋め立てをめぐる国との訴訟。法廷に立った翁長知事は「自由、平等、人権、自己決定権をないがしろにされてきた魂の飢餓感」を、切々と訴えました▼虐げられてきた歴史を背負い、戦後７０年の今また、海上での銃剣とブルドーザーで沖縄の美しい海を埋め立て、基地をつくろうとするのか―。思いをこめた意見陳述は、世界一危険な普天間基地を長年放置しておきながら、それを理由に新たな犠牲を強いる日本政府への痛烈な批判でした▼県民一人ひとりが瀬長さんや翁長さんになったような不屈の闘争を続ける沖縄。それは日本の民主主義を守る全国の仲間とともに国の横暴を裁くたたかいです。
( ２０１５年１２月０４日，「赤旗」)

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沖縄・辺野古代執行訴訟／翁長知事の冒頭意見陳述

　２日、福岡高裁那覇支部で開かれた辺野古代執行訴訟の第１回口頭弁論での翁長雄志沖縄県知事の冒頭意見陳述（全文）は、以下の通りです｡

　沖縄県知事の翁長雄志でございます。
　本日は、本法廷において意見陳述する機会を与えていただきましたことに、心から感謝申し上げます。
　私は、昨年の県知事選挙で「オール沖縄」「イデオロギーよりアイデンティティー」をスローガンに、保守・革新の対立を乗り越えて当選を致しました。
　本件訴訟の口頭弁論にあたり、私の意見を申し上げます。
　◇
　歴史的にも現在においても沖縄県民は自由・平等・人権・自己決定権をないがしろにされてまいりました。私はこのことを「魂の飢餓感」と表現しています。政府との間には多くの課題がありますが、「魂の飢餓感」への理解がなければ、それぞれの課題の解決は大変困難であります。
　簡単に沖縄の歴史をお話ししますと、沖縄は約５００年に及ぶ琉球王国の時代がありました。日本と中国・朝鮮・東南アジアを駆け巡って大交易時代を謳歌（おうか）しました。琉球は１８７９年、今から１３６年前に日本に併合されました。これは琉球が強く抵抗したため、日本政府は琉球処分という名目で軍隊を伴って行われたのです。併合後に待ち受けていたのが７０年前の第２次世界大戦、国内唯一の軍隊と民間人が混在しての凄惨（せいさん）な地上戦が行われました。沖縄県民約１０万人を含む約２０万の人々が犠牲になりました。
　戦後は、ほとんどの県民が収容所に収容され、その間に強制的に土地を接収され、収容所からふるさとに帰ってみると普天間飛行場をはじめ米軍基地に変わっていました｡その後も､住宅や人が住んでいても「銃剣とブルドーザー」で土地を強制的に接収されました。
　１９５２年、サンフランシスコ講和条約による日本の独立と引き換えに、沖縄は米軍の施政権下に置かれ、日本国民でもアメリカ国民でもない無国籍人となり、当然日本国憲法の適用もなく、県民を代表する国会議員を一人も国会に送ったことはありませんでした。犯罪を犯した米兵がそのまま帰国することすらあった治外法権ともいえる時代でした。ベトナム戦争の時は沖縄からＢ５２爆撃機の出撃をはじめいろいろな作戦が展開されており、沖縄は日米安保体制と、日本の平和と高度経済成長を陰で支えてきたわけです。
　しかし、政府は一昨年、サンフランシスコ講和条約が発効した４月２８日を「主権回復の日」として式典を開催し、そこでは万歳三唱まで行われたのです。沖縄にとっては悲しい、やるせない式典でした。まったく別々の人生を歩んできたような気がします。
　１９５６年、米軍の施政権下で沖縄の政治史に残ることが起きました。プライス勧告といって、銃剣とブルドーザーで強制接収した土地を、実質的な強制買い上げをするという勧告が出されました。当時、沖縄は大変貧しかったので喉から手が出るほどお金が欲しかったはずですが、県民は心を一つにしてそれを撤回させました。これによって、基地のあり方に、沖縄の自己決定権を主張できる素地がつくられ、私たちに受け継がれているのです。
　沖縄が米軍に自ら土地を提供したことは一度もありません。そして戦後７０年、あろうことか、今度は日本政府によって、海上での銃剣とブルドーザーを彷彿（ほうふつ）させる行為で美しい海を埋め立て、私たちの自己決定権の及ばない国有地となり、そして、普天間基地にはない軍港機能や弾薬庫が加わり、機能強化され、耐用年数２００年ともいわれる基地が造られようとしています。今沖縄には日本国憲法が適用され、昨年のすべての選挙で辺野古新基地反対の民意が出たにもかかわらず、政府は建設を強行しようとしています。米軍基地に関してだけは、米軍施政権下と何ら変わりありません。
　米軍施政権下、キャラウェイ高等弁務官は沖縄の自治は神話であると言いましたが、今の状況は、国内外から日本の真の独立は神話であると思われているのではないでしょうか。
　辺野古新基地は、完成するまで順調にいっても約１０年、場合によっては１５年、２０年かかります。その期間、普天間基地が動かず、危険性が放置される状況は固定化そのものではないでしょうか？
　本当に宜野湾市民のことを考えているならば、前知事の埋め立て承認に際して、総理と官房長官の最大の約束であった普天間基地の５年以内の運用停止を承認後着実に前に進めるべきではなかったでしょうか。しかし、米国からは当初からそんな約束はしていない、話も聞いたこともないと言われ、前知事との約束は、埋め立て承認をするための空手形ではなかったのか、それを双方承知の上で埋め立て承認がなされたのではないか、いろいろな疑問が湧いてきます。
　日本政府に改めて問いたい。普天間飛行場は世界一危険だと、政府は同じ言葉を繰り返しているが、辺野古新基地ができない場合、本当に普天間基地は固定化できるのでしょうか。
　◇
　次に基地経済と沖縄振興策について述べたいと思います。
　一般の国民もそうですが、多くの政治家も、「沖縄は基地で食べているんでしょう。だから基地を預かって振興策をもらったらいいですよ」と沖縄に投げかけます。この言葉は、「沖縄に過重な基地負担を強いていることへの免罪符」と「沖縄は振興策をもらっておきながら基地に反対する、沖縄は甘えるな」と言わんばかりです。これくらい真実と違い沖縄県民を傷つける言葉はありません。
　米軍基地関連収入は、終戦直後にはＧＤＰの約５０％。基地で働くしか仕方がない時代でした。日本復帰時には約１５％、最近は約５％で推移しています。
　経済の面では、米軍基地の存在は今や沖縄経済発展の最大の阻害要因になっています。
　例えば、那覇市の新都心地区、米軍の住宅地跡で２１５㌶ありますが、２５年前に返還され、当時は軍用地料等の経済効果が５２億円ありました。私が那覇市長になって１５年前から区画整理を始め、現在の街ができました。経済効果としては５２億円から１６３４億円と３２倍、雇用は１７０名程度でしたが、今は１万６千名、約１００倍です。税収は６億から１９９億円と３３倍に増えています。
　沖縄は基地経済で成り立っているというような話は今や過去のものとなり完全な誤解であります。
　沖縄は他県に比べて莫大（ばくだい）な予算を政府からもらっている、だから基地は我慢しろという話もよく言われます。年末にマスコミ報道で沖縄の振興予算３千億円とか言われるため、多くの国民は４７都道府県が一様に国から予算をもらったところに沖縄だけさらに３千億円上乗せをしてもらっていると勘違いをしてしまっているのです。
　沖縄はサンフランシスコ講和条約で日本から切り離され、２７年間、各省庁と予算折衝を行うこともありませんでした。ですから日本復帰に際して沖縄開発庁が創設され、その後内閣府に引き継がれ、沖縄県と各省庁の間に立って調整を行い沖縄振興に必要な予算を確保するという、予算の一括計上方式が導入されたのです。沖縄県分は年末にその総額が発表されるのに対し、他の都道府県は、独自で予算折衝の末、数千億円という予算を確保していますが、各省庁ごとの計上のため、沖縄のように発表されることがないのです。
　実際に、補助金等の配分額でみると沖縄県が突出しているわけではありません。例えば、地方交付税と国庫支出金等の県民１人あたりの額で比較しますと沖縄県は全国で６位、地方交付税だけでみると１７位です。
　都道府県で国に甘えているとか甘えていないとかと、いわれるような場所があるでしょうか。残念ながら私は改めて問うていきたいと思います。沖縄が日本に甘えているのでしょうか。日本が沖縄に甘えているのでしょうか。ここを無視してこれからの沖縄問題の解決、あるいは日本を取り戻すことなど、できないと断言します。
　沖縄の将来あるべき姿は、万国津梁（ばんこくしんりょう）の精神を発揮し、日本とアジアの架け橋となること、ゆくゆくはアジア・太平洋地域の平和の緩衝地帯となること。そのことこそ、私の願いであります。
　◇
　この裁判で問われているのは、単に公有水面埋立法に基づく承認取り消しの是非だけではありません。
　戦後７０年を経たにもかかわらず、国土面積のわずか０・６％しかない沖縄県に、７３・８％もの米軍専用施設を集中させ続け、今また２２世紀まで利用可能な基地建設が強行されようとしています。
　日本には、本当に地方自治や民主主義は存在するのでしょうか。沖縄県にのみ負担を強いる今の日米安保体制は正常といえるのでしょうか、国民の皆さますべてに問いかけたいと思います。
　沖縄、そして日本の未来を切り拓（ひら）く判断をお願いします。
( ２０１５年１２月０３日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

辺野古代執行訴訟／問われる日本の民主主義

　沖縄県の翁長雄志知事による名護市辺野古の埋め立て承認取り消しの是非を争う辺野古代執行訴訟の審理が２日、福岡高裁那覇支部で始まりました。裁判で問われるのは、新基地ノーの圧倒的な民意を無視し、権力を総動員して辺野古に基地を押し付けようとするこの国の姿です。真の争点は日本の民主主義のあり方です。
　（尾崎吉彦、竹下岳）

基地強制、自己決定権ないがしろ／知事、沖縄の歴史を告発

　「歴史的にも現在も沖縄県民は自由・平等・人権・自己決定権をないがしろにされてきた」。翁長知事は冒頭の意見陳述でこう述べ、県民が望まない米軍基地を強制的に押し付けられてきた歴史を告発しました。

■原点
　戦後、ほとんどの県民が米軍の収容所に収容され、その間に強制的に土地を接収されてふるさとが普天間基地に変わっていたこと、その後も「銃剣とブルドーザー」で土地を奪われ続けたこと―。これが、沖縄の基地問題の原点です。
　知事は、今度は日本政府によって辺野古の美しい海が埋め立てられ、「普天間代替施設」と言いながら、軍港機能や弾薬庫などが加わり、耐用年数２００年の基地が造られようとする現状を、知事は「海上での銃剣とブルドーザー」だと厳しく批判しました。
　さらに、「昨年のすべての選挙で辺野古新基地反対の民意が出たにもかかわらず、政府は建設を強行しようとしている。米軍基地に関してだけは、米軍施政権下と何ら変わらない」と述べ、基地問題で県民の自己決定権が否定されていると糾弾しました。

■口実
　安倍政権は、辺野古新基地を正当化する口実として、「普天間基地の固定化を避ける」と繰り返します。これについて知事は「辺野古新基地建設は政府の計画通りに進んだとしても１０年、１５年、場合によっては２０年以上かかる。その間、普天間基地が動かず、危険性が放置される状況は固定化そのものではないか」とただしました。
　戦争中、日本のために１０万人もの県民が地上戦で亡くなり、日本国に尽くしたいと思っている沖縄の人々に戦後７０年も過重な基地負担を強い、その上、耐用年数２００年ともいわれる新基地建設を強行し、過重な基地負担を延長し続けることが、どういう意味を持つのか―。今回の裁判は、直接的には、知事による辺野古埋め立て承認取り消しの是非を争点にしていますが、「それだけではない」―。知事はこう述べ、「日本には、本当に地方自治や民主主義が存在するのか。国民の皆さますべてに問いかけたい」と訴えかけました。
　政府、裁判所のみならず、多くの日本国民に向けて発せられた知事のメッセージです。

提訴する資格に欠ける国の手法／法をねじ曲げ権力乱用

　今回の訴訟は、翁長知事が１０月１３日、仲井真弘多前知事による辺野古埋め立て承認を取り消したことに端を発しています。
　公有水面埋立法では、都道府県知事に埋め立ての承認権があります。権限を持つ知事が法の要件を満たさないと判断すれば、承認を取り消すのは当然です。
　そもそも、昨年の県知事選など県内のあらゆる選挙で、辺野古新基地反対を掲げた候補が圧勝しています。日本が民主主義国家であるなら、政府は提訴する以前に、民意に従って新基地計画を撤回すべきでした。
　しかも、提訴の手法そのものが何重もの法のねじ曲げと、悪用の上に成り立っており、法治主義を根底から破壊するものです。

■継続
　知事の埋め立て承認取り消しで、新基地建設工事は違法となりました。沖縄防衛局はこれを覆すため、承認取り消し翌日の１０月１４日、行政不服審査法（行審法）に基づき、承認取り消しの審査請求・執行停止を国土交通相に申し出ました。同法は行政処分から一般国民を救済するための制度です。それにもかかわらず防衛局は自らを「一事業者（私人）」と名乗り、〝被害者〟であるかのように救済を申し出ました。しかも、「辺野古が唯一の選択肢」である立場を共有する国交相がこの申し出を認めるという「一人芝居」を演じ、取り消し処分を停止。いつでも工事再開できる状態を一時的につくりだしたのです。
　一方、審査請求の結論は引き延ばしにして、違法状態のまま、新基地工事を継続するという異常事態を生み出しました。翁長知事は１日に提出した陳述書で「行政不服審査法の運用の悪しき前例になる」と批判しています。
　その一方、政府は地方自治法２４５条８の３項に基づき、取り消し処分を取り消す代執行手続きに着手しました。今回の訴訟も、その手続きの一部です。国が高裁で勝訴すれば、代執行を行うことができます。これにより、新基地工事の「違法」状態を解消しようという考えです。

■悪用
　ところが、代執行手続きを取ることができるのは、他に是正措置がない場合に限られています。国は行審法で執行停止して新基地工事を再開しておきながら、なぜ、代執行手続きを取る必要があるのか―。石井啓一国交相は１０月２７日の記者会見でこの点を問われても、何ら明確に答えることができませんでした。
　沖縄県が提出した答弁書は、この点について「原告（国）は、不当な目的で両手続きを段階的に併用する手段を選択した」と指摘。国家権力による「訴権の乱用」だと批判しました。一方、国側の準備書面は、代執行手続きを取る以前に、行審法を悪用していることには一切、言及していません。
　前出の答弁書は、「（国の提訴は）代執行手続きの申立権を濫用したものとして違法というべきであり、代執行手続の各要件を充足しているかどうかの審査以前に却下されるべきである」と指摘。提訴そのものが違法であると指摘しています。
　安倍政権には政治的にも、法的にも沖縄県を訴える資格はありません。被告はむしろ、安倍政権です。司法は安倍政権による二重三重の違法・脱法行為を厳しく断罪すべきです。

過去の米軍基地問題での職務執行命令訴訟

　これまで、米軍基地に関して行政機関の間での職務執行命令訴訟は２件あります。なお、今回の辺野古代執行訴訟は、現行制度の下では初の職務執行命令訴訟です。
　【砂川基地拡張】米軍立川基地の拡張に反対する東京都砂川町の町長が、米軍用地特措法に基づく土地収用手続きの公告縦覧を拒否。１９５８年、都収用委員会が町を提訴。
　【沖縄・米軍用地代理署名】沖縄県の大田昌秀知事が、米軍用地の契約を拒否する軍用地主に対する代理署名を拒否。９５年、国が県を提訴。
　代理署名裁判は、９５年１２月の第１回口頭弁論から３カ月後に高裁判決、８カ月後に最高裁判決が出ています（図）。今回の辺野古代執行訴訟の今後が注目されます。

辺野古代執行訴訟の経緯
２０１３年
１２・２７　仲井真前知事が辺野古埋め立てを承認
２０１４年
７・１　政府が辺野古臨時制限区域を閣議決定
１１・１６　「辺野古新基地阻止」を公約した翁長雄志氏が県知事選で圧勝
２０１５年
７・１６　県の第三者委員会が埋め立て承認の「法的瑕疵」を認定
１０・１３　翁長知事が埋め立て承認を取り消し
１０・１４　沖縄防衛局が承認取り消しの審査請求・執行停止を申し出
１０・２７　石井国交相が承認取り消しの執行停止、代執行手続き着手を決定
１０・２９　沖縄防衛局が辺野古の本体工事着工
１１・２　　翁長知事が国地方係争処理委員会に審査を申し出
１１・１７　政府が辺野古埋め立ての代執行求めて県を提訴
１２・２　福岡高裁那覇支部で第１回口頭弁論
( ２０１５年１２月０３日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

主張／辺野古新基地訴訟／日本の未来切り開くたたかい

　沖縄の米軍普天間基地（宜野湾市）に代わる名護市辺野古の新基地建設問題で、翁長雄志知事による埋め立て承認取り消しの撤回を求め、安倍晋三政権が起こした「代執行」訴訟の第１回口頭弁論が福岡高裁那覇支部で開かれました。翁長知事は意見陳述で、国土面積のわずか０・６％の沖縄に米軍専用基地の７３・８％が集中し、さらに来世紀まで使用可能な新基地建設が強行されようとしていると批判し、「日本には本当に地方自治や民主主義は存在するのか」と問いかけました。新基地建設の阻止は、日本の民主主義を取り戻す全国的意義を持ったたたかいです。

不当極まる「代執行」裁判
　もともと今回の提訴自体、沖縄県民の圧倒的多数の意思に反した新基地建設をなりふり構わず強行しようとしている安倍政権の民主主義じゅうりんの強権姿勢をあらわにした不当極まるものです。
　地方自治法に基づく「代執行」は、他に「是正」の手段（今回の場合、翁長知事による埋め立て承認取り消しの撤回）がない場合のやむを得ない最終手段として位置付けられています。
　しかし、安倍政権は、国民の権利救済が目的の行政不服審査法を悪用し、翁長知事の取り消し処分を執行停止にし、新基地建設工事を再開しています。これは、新基地建設を「唯一の解決策」とする安倍内閣の下、沖縄防衛局長が知事の取り消し処分の執行停止を申し立て、所管の国交相が認めるという〝自作自演〟の卑劣極まる無法な措置でした。
　そうした無法な「是正」措置を強行した安倍政権に、さらに「代執行」に向けた訴訟を起こす資格はありません。それは「法治主義の名の下に法を乱用してまで（沖縄の）民意を抑えつけ」るための許し難い「訴権の乱用」（県の答弁書）に他なりません。
　翁長知事は意見陳述で、沖縄の基地問題の原点として、約２０万人が犠牲になった凄惨な沖縄戦でほとんどの県民が収容所に入れられ、その間に米軍が県民の土地を強制接収し、普天間基地など広大な基地を建設したこと、その後も住民が住んでいる土地も「銃剣とブルドーザー」で強制接収し、新しい基地を造ったことを挙げ、「沖縄が米軍に自ら土地を提供したことは一度もない」と強調しました。
　戦後７０年、あろうことか今度は日本政府によって、「銃剣とブルドーザー」をほうふつとさせる行為で美しい辺野古の海を埋め立て、普天間基地にはない軍港や弾薬庫などの機能強化が図られ、耐用年数２００年ともいわれる最新鋭の基地が建設されようとしている―。この翁長知事の告発は県民共通のものです。

沖縄との連帯発展させ
　昨年の県知事選など一連の選挙で新基地反対の民意が明確になっているにもかかわらず、日米同盟最優先の立場から政府が建設を強行していることについて翁長知事が「米軍施政権下と何ら変わらない」「国内外から日本の真の独立は神話と思われているのではないか」と提起したのは当然です。
　新基地建設を阻止することは「沖縄、そして日本の未来を切り開く」（翁長知事）たたかいです。新基地建設を断固拒否する翁長知事を支え、沖縄に連帯するたたかいを今後も大いに発展させていこうではありませんか。
( ２０１５年１２月０３日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

あす新基地建設代執行裁判／「基地ノー」に込められた沖縄の歴史と県民の思い／裁かれるべきは安倍政権

　新基地建設のための沖縄県名護市辺野古の埋め立て承認を取り消した翁長雄志県知事から権限を奪おうと安倍政権が提起した代執行訴訟。２日に福岡高裁那覇支部で開かれる第１回口頭弁論で翁長知事自ら意見陳述に立ちます。裁判を起こされた日の会見での翁長知事の発言は、「県民の気持ちを政治が表すことになった意味では、私は沖縄県が大変強くなったのだと思う」―強大な国家権力に対峙し、一歩も引かず、県民とともにたたかい抜く覚悟の表明でもありました。その「県民の気持ち」とは、「沖縄の歴史を思い、今日の状況を思い、県民の誇りを大切にする中から豊かさを考えてもらいたい」ということでした。
　（岡素晴、柳沢哲哉）

戦後、土地を強制収用
　本部町の安田加さん（７６）は沖縄戦で父や妹を亡くし、大浦崎収容所（名護市）に入れられました。収容所があった場所は現在、米軍キャンプ・シュワブになっています。かやぶき小屋を建て、草を敷き、家族で寄り集まって寝ました。「おなかいっぱい食べられたことはなかったよ」と安田さん。収容所内では飢えとマラリアで、１日に何人も亡くなりました。安田さんの祖父も栄養失調で亡くなり、隣近所の人たちで土を掘り、埋葬しました。過酷な収容所生活の中、安田さんは海で獲ったカニやエビ、水草などで命をつなぎました。「沖縄戦を経験した私たちにとって基地は絶対に許せないもの」という安田さん。
　戦後、土地を強制収用して基地建設した揚げ句、耐用年数２００年といわれる新基地を造り、基地をずっと置き続けようとする日米両政府。「基地はいらないという県民の声に耳を傾けない政府に対する怒りが大きくなっています。政府が沖縄の声を聞き入れる状況にもっていきたい」と安田さんは話します。
　早朝からキャンプ・シュワブゲート前の新基地反対の座り込みに足を運び続けます。

もうだまされない
　「基地になる前の宜野湾集落（宜野湾市）は、碁盤目状に区切られたきれいな村でね。首里（現那覇市）まで続く松の街道があって、夏でも木の下にいると涼しいくらいだった」。戦前、同集落に住んでいた安里八重子さん（９４）＝宜野湾市＝は、小さなヤブツバキが咲きほこり、夜にはホタルも飛び交っていた当時の情景を思い浮かべて語りました。
　７０年前の沖縄戦、警察官だった夫の派遣されていた宮古島で戦争「終結」を迎えますが、宜野湾に戻って目にしたのは、家や土地がブルドーザーで押しつぶされた跡でした。
　住み家を追われ、各地の避難所や収容所などを転々としながら、やがて普天間基地から北で生活を再建したという安里さん。長年、自民党県連中部地区の婦人部長を務め、同党の選挙勝利に尽くしてきた一人ですが、いま辺野古の新基地建設に反対しています。
　「あんなきれいな海を埋め立て、基地を造るなんて。もともと、普天間はアメリカのものでも、誰のものでもない、私たちが住んでいた場所。基地は必要ないよ」。普天間基地の「危険性除去」を口実に「辺野古が唯一」と新基地建設に突き進む安倍政権に対し、危険な基地をどこか別の場所に移したところで「自分たちは幸せになれない」と言い切ります。
　「ずっと自民党にだまされ通しだったけれど、やっと目が覚めた。惨めな戦争はたくさん。もうだまされない」と、普天間基地の撤去で、若者の多くの雇用につながる将来の平和な街づくりを一心に願っています。

提出準備書面で告発
　県側弁護団が福岡高裁那覇支部に提出した準備書面には、銃剣とブルドーザーによって米軍に土地を取り上げられた歴史と沖縄県民の苦難が随所に出てきます。
　―沖縄における米軍用地は、住民を収容所に収容している間に集落や農地をブルドーザーで敷きならして接収することによって広大な基地を建設し、さらに対日平和条約により日本から沖縄が切り捨てられた後に、銃剣とブルドーザーによる集落や農地の強制接収という手段すらも用いて拡張されたものである。
　―沖縄が日本に復帰した後は、日本国が強制的手段を用いても米軍用地の使用権原を取得し、米軍に基地として提供をすることをつづけてきた。
　―戦後７０年にもわたって、広大な土地が米軍基地として使用され続けているが、これは事実上、戦争による占領が現在もなお継続していることを物語るものである。
　―住民の意思に基づかずに米軍基地が建設され、長年にわたって基地から生じるさまざまな問題に苦しんできたという歴史に鑑みれば、今度こそは県民の意思が率直に受け止められなければならない。
　そして、こう訴えます。「米軍基地は自治権を直接的に制約するものであり、そのために沖縄県の振興開発が著しく阻害され、環境行政、捜査権の行使が制約され、地域環境や住民の生活に深刻な被害・負担が生じているなかで、沖縄県の民意に反してさらに新基地を建設することは、自治権の侵害そのものであり、憲法９２条の保障する地方自治の本旨に悖るものである」
　形式的には、県は訴えられた側ですが、「新基地建設は、憲法違反ではないか」―こう問うことで、逆に裁かれるべきは安倍政権であることを端的に示しました。
( ２０１５年１２月０１日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

【11月見出し】

インタビュー戦後７０年／劇作家・演出家平田オリザさん／レジスタンスの時／しなやかな若者に希望

芸能テレビ／映画「サクラ花―桜花最期の特攻―」主演大和田健介さん／体に刻んだ戦争の恐怖

『アジア・太平洋戦争辞典』を編集して／研究の進展とり入れ解説／高岡裕之

野党共闘広げ戦争法廃止を／「安倍政権うちとろう」／小林節氏が講演／長野・松本

辺野古代執行訴訟／訴権の乱用、違憲は明らか／県の答弁書・書面が批判

憲法は戦後の出発点／学生・教員ら討論／吉田総長が講演／京都・立命大

８０人が心一つに／平和歌声フェス／静岡・伊東市

真実見つめ平和の礎に／戦時中の強制労働でシンポ／長野

全商連青年部協議会が総会／業者青年「平和でこそ繁盛」／結成から４０年

被爆・戦後７０年を合唱／日本のうたごえ祭典始まる／愛知

民主主義の目覚め正念場／憲法記念秋の集い／京都

中国脅威論と戦争法学習会／長野・松本

「９条の会」が軍馬の歴史展示／前橋

第１１回日本放送文化大賞／テレビ・奥底の悲しみ（山口放送）／ラジオ・ＨＡＰＰＹ　ＨＯＵＳＥ（福岡・クロスＦＭ）

まど／アインシュタインの宿題

戦争法廃止へ運動の強化を／日中友好協会第１回理事会

戦後７０年ラジオの歩み／復活のカギは地方と若者

法政大学学徒出陣資料展／遺品や当時の新聞など展示

朝の風／歴史認識と沖縄の平和フォーラム

地域発ラジオの力／未完の五線紙～戦没作曲家・紺野陽吉が託した音楽／山形放送報道部鈴木啓祐

戦後を考える講演会ひらく／愛媛大学学生祭

東アジア平和の枠組みを／九条科学者の会が講演会

経済・文化人、安保法制の問題点を検証／小林節氏が講演／浜松

ポーランド映画祭あすから２０日まで

憲法を基礎に学校つくろう／合同教研全道集会

手段選ばぬ政府を批判／新基地阻止、赤嶺議員が決意／ＢＳ番組出演

貧困・格差テーマ／２７日から沖縄で全国セミナー

平和・子育て・福祉充実の推進を／国の悪政の防波堤に／党埼玉県議団が予算要望／上田知事に

芸能テレビ／スポット／歌手普天間かおりさん／私の軸は〝平和〟

シリーズ戦後７０年を考える／７３１部隊は何をした／７０年前の姿現した遺構／中国・ハルビン

辺野古新基地／何でもあり／目に余る国の無法／生粋の自民、私も怒る／元自民党県連会長外間盛善さん

七十年の孤独／川野里子著／評者近藤みゆき実践女子大学教授

地域の人と夢・希望開く／障害者支援のまつり／岐阜・中津川

試写室／こころの時代私の戦後７０年　鎌田慧／ＮＨＫＥテレ８日前５・０

『検証安倍談話』出版記念会／志位委員長のあいさつ

潮流

『検証安倍談話』出版記念／村山元首相も発言／シンポ

木下そんきが選ぶうたごえの名曲／創造の源にある個性／小宮多美江

僕らの民主主義を考える／作家・高橋源一郎さん講演／京都

２０１５日本のうたごえ祭典ｉｎ愛知／「被爆・戦後７０年―今あなたとうたいたい」／２１～２３日

東アジア連帯へ議論／平和大会が国際交流分科会

志位委員長の韓国訪問／心通う交流／「国民連合政府」にも高い関心／「徹頭徹尾、平和主義者」―日本共産党の歴史と活動に広がる信頼

文化／ＩＺＵ　ＰＨＯＴＯ　ＭＵＳＥＵＭ「戦争と平和」展／「国策宣伝」に変容した報道写真

辺野古新基地問題を語る／日本総合研究所理事長寺島実郎さん／沖縄でなく米国と交渉を

朝鮮東学農民戦争を知っていますか？／宋基淑著、仲村修訳／評者小川輝光歴史教育者協議会会員・教員

【ＴoTＯＰ】

【１１月本文】

インタビュー戦後７０年／劇作家・演出家平田オリザさん／レジスタンスの時／しなやかな若者に希望

振り幅の限度こえた安倍政権
　戦争法（安保法制）の即時廃止を求める「自由と平和のための東京芸術大学有志の会」の呼びかけ人のひとりで、国会前デモにも参加してきた劇団「青年団」主宰、劇作家・演出家の平田オリザさん。なぜ声を上げたのか。思いを語ります。
　大塚武治記者

　私は、政治というものは（政策面で）極端に走らず、ある種の振り幅がある方が健全だと思っています。でも安倍内閣は、人権でも近隣外交政策でも、振り幅の限度をはるかに越え、ポイント・オブ・ノーリターン＝引き返せない状態に行っている。これはまずい。
　欧州に行くとよくわかるのですが、安倍さん(晋三首相)はベルルスコーニ(元伊首相)みたいに、極右、レイシスト(人種差別主義者)と見られています。中国や韓国の若者と話しても、「日本も日本文化も大好き。でもアベだけは嫌い」とみんなが言う。安倍さんは、日本外交と文化に、ものすごいマイナスを与えています。

根幹が劣化
　この夏、安倍政権下で起きた安保法の強行、東京五輪のエンブレムと新国立競技場問題の「３点セット」は、国の劣化をまざまざと見せつけました。
　安保法制なんて、素人目にも穴だらけのめちゃくちゃな法案をバーゲンセールみたいに袋詰めにして、「中身をわからなくしちゃえばいいや」と強引に通してしまった。
　モラルを含めた国のシステムの劣化が、三つの問題に通底しています。それを見て、多くの若者が「日本ってヤバくない？」と思ったのでしょう。
　今の大学生は生まれた時から不況ですから、誰もこの先の高度成長やアベノミクスなんて信じちゃいない。それでも、日本は安心・安全の国で、いざとなれば医療にかかれて最低限の保障はあると思っていた。ところが国の根幹が、実は相当むしばまれていた。
　今、大企業は（東京五輪の）２０２０年までに売れるだけ売って逃げきろうという姿勢です。国立大学の人文・教員養成系学部廃止・縮小方針もひどい。財界のごり押しでしょう。目先のもうけしか考えず、労働者は歯車でいい、地方は東京のために働けという発想ですね。
　今までは、そんなむちゃな政策や政治家が現れた時、自民党内に「まあまあ」といさめる人たちがいた。内閣法制局など官僚も「そこまで(の解釈)は無理です」と止めたし、ＮＨＫなど報道(の批判)もあった。今その全部が機能していない。
　私は大学の教員でもあるので、学生からよく、「東京五輪の後、日本はギリシャみたいになるんでしょうか？」と聞かれます。若者の絶望は深く、怒りは大きい。それが「取り戻さなきゃ」という運動の底にある。

信頼と連帯
　でも、私は全く絶望していません。
　たとえばＳＥＡＬＤｓ（シールズ）のメンバーは勉強熱心で柳のようにしなやかです。「こうでなければ」でなく、「あ、そういう考え方もありますね」と考えながら進んでいく。そこが強みです。
　一般の高校生や大学生も、話すと、私たちの若い頃と比べても、「社会に貢献したい」という気持ちが強い。希望を感じます。
　安倍さんは今わが世の春かもしれません。でも客観的には自民党を壊しています。米国の共和党が､｢ティーパーティー」という一種の極右の支持なしでは党の大統領候補になれず、候補になると今度は、その極右向け政策によって分厚い中道の支持層に見放されるというジレンマに陥ったように、自民党もそうなっていくでしょう。
　今はレジスタンスの時代｡共産党が｢国民連合政府」を提案しました。共産党には自分だけが正義だという主張ではなく、しがらみのために声を上げられない人たちに対しても、ぜひ信頼と連帯の気持ちを持ってほしい。
　私は、橋下徹さんが大阪府知事になる２年前から大阪大学の教員をしていましたから、よくわかります。橋下さんの独裁下での理不尽な命令にも、生活のために従わざるをえない公務員もたくさんいる。でも自分なりには抵抗しているんだという人も大勢いるのです。
　保守の人の中にも良識を持った人がいます。そういう人と連携するくらいの気持ちでなければ、政治は変わりません。

ひらた・おりざ＝１９６２年、東京生まれ。現在、日本劇作家協会副会長のほか、東京芸術大学ＣＯＩ研究推進機構特任教授、大阪大学コミュニケーション・デザインセンター客員教授など
(２０１５年１１月２９日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

芸能テレビ／映画「サクラ花―桜花最期の特攻―」主演大和田健介さん／体に刻んだ戦争の恐怖

　プロペラも車輪もなく、〝人間爆弾〟と呼ばれた特攻機・桜花（おうか）。映画「サクラ花―桜花最期の特攻―」（松村克弥監督）は、桜花を題材に戦争の悲惨さを刻みつけます。初主演の大和田健介さん（２５）に聞きました。
　湯浅葉子記者

　自力で長距離を飛べない桜花は、大型爆撃機で運ばれ、敵艦近くで切り離されます。その後、ロケット噴射で滑空し、操縦士ごと突撃。もはや飛行機ではなく人間が乗り込むロケット爆弾でした。
　「あまりの残酷さに衝撃を受けました。戦後７０年だからこそ、特に若い人たちに見てもらいたい。語り継がなきゃいけないことだと思うから」
　本作が焦点を当てるのは、特攻隊員と桜花を運ぶ大型爆撃機・一式陸攻の乗組員たちです。大和田さんが演じるのは、一式陸攻の新米乗組員・尾崎。桜花の訓練基地、茨城県・神之池基地に配属された彼に、１９４５年初夏、桜花作戦の命が下ります。尾崎ら７人の乗組員と、１７歳の特攻隊員を乗せた一式陸攻は沖縄へ出撃。しかし、桜花を搭載し重くて俊敏に動けない一式陸攻は格好のえじきです。米機の猛攻で乗組員が次々と殺され…。
　「彼は戦闘にたけた兵士というより、科学好きの青年です。特攻隊員ではないから生還できると聞いていたのに、生きて帰れない事実に直面し、恐怖が増してゆく。撮影に入る前は、過酷な戦時中の人物を演じられるのか、撮影に飛び込む恐怖がありました。でも撮影中は、役の気持ちを維持するのに必死で、初主演のプレッシャーや緊張もなくて。僕たちが疑似体験した戦争の恐怖を伝えたい一心でした」
　戦時中の手紙や手記、桜花特攻から生還した人物の証言などを基にした物語。新妻と幼子を残してきた者など、乗組員の人生が丁寧に描かれます。
　大和田さんの母方(女優の五大路子さん)の祖父は戦死、祖母は東京大空襲に遭っています。空襲の中を逃げ惑った祖母の話を聞いて育ちました。
　「祖母がこの映画を見て喜んでくれました。自分がずっと語ってきた時代のことを映画で表現してくれた、と」
　〝茨城の戦争秘史を映画に〟との思いに賛同する市民の協力で制作された本作。今後、全国での上映を予定しています。
　映画「恋空」（２００７年）でデビュー。連続テレビ小説「花子とアン」（１４年）で、白蓮の戦死した息子を演じたのをきっかけに、「戦時中に生きた人々に興味を持ち始めました」といいます。
　子どもの頃から、父で俳優の大和田伸也さんと、ホームビデオで映画を作って遊んでいた、という根っからの映画青年。日本大学芸術学部では監督コースを専攻し、「いずれは映画を撮りたい」と。
　「人の心を掘ってみたい。いろんな人の人生を知り、得たものを表現したいですね。そのためにも、一つひとつの出会いや時間を大事にしてゆきたいと思っています」

＊１２月４～６日、東京・ユーロライブで上映、順次全国の公共施設等で。℡０３(３８１８)６６９０映画センター全国連絡会議
(２０１５年１１月２９日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

『アジア・太平洋戦争辞典』を編集して／研究の進展とり入れ解説／高岡裕之

　アジア・太平洋戦争の悲惨な戦争体験は、戦後日本の平和と民主主義を社会の根底から支えてきた。しかし敗戦から年月を経るなかで戦争体験者は減少し、「戦争の記憶」の風化が指摘されるようになった。戦後７０年を迎えた現在、アジア・太平洋戦争の時代は遠い過去の「歴史」となりつつある。
　他方、歴史研究の領域では、１９８０年代より盛んとなった戦争責任・戦争犯罪研究、９０年代より活発化した総力戦体制研究や植民地･占領地研究などにより､従来の戦時期研究の枠組みが大きく変化した。その結果､アジア･太平洋戦争史研究は、大きな広がりと奥行きを持つようになり、今日では専門の研究者ですら、その全体像を把握することが困難になりつつある。
　本書は吉田裕、伊香俊哉、森武麿、私の４人が編集に携わり、３００人近い歴史研究者が執筆している。編集にあたっては、これまでの研究を総括するとともに、広く一般の人々がアジア・太平洋戦争の時代を考える上での手引きとなるような、総合的な歴史辞典とすることをめざした。

２５００項目収録
　約２５００項目を８００㌻以上にわたり平易に解説している。編集上の特色として、まず軍事・外交に関しては、アジア・太平洋戦争に関係する戦闘・兵器・軍人・軍事指導者や条約・外交官などを、連合国側をも含めて収録につとめた。その際、「動員」や「召集」といった基礎的な軍事用語についても採録の対象としたが、それは旧軍の軍事用語には「死語」となったものが多く、現在ではまずそれらを理解することが必要になっているという事情を考慮したためである。
　また、戦争を遂行した政治・経済体制に関連する項目を幅広く取り上げた。戦時下の政治・経済体制に関連する事実は膨大な数に上るが、本書ではそのうち、重要と判断した事項・人名を採録している。
　項目の採録範囲は、基本的に日中戦争から敗戦までとしたが、アジア・太平洋戦争を考える上で重要と思われるものについては、満州事変前後や戦後の出来事であっても項目を立てることにした。

思想・文化領域も
　さらなる特色として、戦時下の思想と文化に関する多くの項目を取り上げたことがあげられる。近年の思想史研究では、国体論や日本主義に関する新たな研究が進展している。また文化史研究では、映画や放送を含む各種メディアに関する研究が進む一方、美術・音楽・写真・スポーツなど多様な文化領域で、戦争と文化の関係が問い直されるようになっている。こうした研究の成果を取り入れることをめざした結果、実に多様な事項・人名が採録されることになった。
　研究者だけでなく、アジア・太平洋戦争に関心のある多くの人々に本書を活用されることを願っている。
　（たかおか・ひろゆき　関西学院大学教授）
( ２０１５年１１月２９日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

野党共闘広げ戦争法廃止を／「安倍政権うちとろう」／小林節氏が講演／長野・松本

　「憲法９条を守り広げる松本地域連絡会」が発足１１周年の２７日夜、長野県松本市で記念講演会を開き、父親が長野県出身という憲法学者の小林節氏（慶応大学名誉教授）の熱弁に、予想超す３００人が聞き入りました。
　小林氏は､｢戦後７０年戦争をしない日本は､世界史にまれな非戦の大国､世界の宝で､日本は争いの〝止め男〟の役割を果たさないといけない｣と強調｡
　「安倍首相の『積極的平和主義』は、ただの軍国主義で、集団的自衛権は海外派兵を禁止する憲法に違反する。政権交代すれば閣議決定をやり直せるし、廃止法案を通せる。選挙で安倍政権をうちとれば早い」と語りました。
　さらに「全国を回ると野党共闘の芽は出ていて、現場ほど動きが高くなっている。障害もあるが、これに対して私は〝あの安倍さんより共産党の方がいいでしょう〟と言っている。正しいことは追求すれば実現できる、夢を持ってたたかおう」と呼びかけました。
　「戦争法廃止、民主主義、立憲主義を取り戻す運動を大きく広めよう」とのアピールを確認。戦争法廃止「２０００万署名」実現の行動提起がありました。
　島田久雄さん（７１）＝松本市＝は、「参院選を含め野党が共闘することが大事だ。〝自分たちで政治を変えるんだ〟のメッセージが届いた」と述べました。
( ２０１５年１１月２９日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

辺野古代執行訴訟／訴権の乱用、違憲は明らか／県の答弁書・書面が批判

　沖縄県の翁長雄志知事が名護市辺野古の米軍新基地建設の阻止のために埋め立て承認を取り消したことを不服として、国が県を提訴した辺野古代執行訴訟が１２月２日、福岡高裁那覇支部（同県那覇市）で始まります。第１回口頭弁論を前に、国の訴状と県の答弁書・準備書面の提出で、双方の基本的な主張が出そろいました。

「法愚弄するもの」
　県は答弁書で、国の提訴自体の不当性を糾弾しています。
　地方自治法に基づく代執行手続きは、他に解決手段（今回の場合、新基地建設の再開）がない場合の最終手段として定められているにすぎません。ところが国は行政不服審査法を悪用して、沖縄防衛局長と国交相による審査請求・埋め立て承認取り消しの効力停止によって関連工事を再開しました。
　この点について県の答弁書は、「国の立場を利用した自己完結的な違法手続き」を経た上での提訴であることを指摘。「法治主義の名の下に法を乱用してまで（沖縄の）民意を抑えつけようとしている」と述べ、訴訟自体が「訴権の乱用」だと却下を求めました。
　高裁に対しても、「法の支配を実現することこそ裁判所の職責だ」と述べ、国（国交相）が国（防衛局）の言い分を聞くという審査請求・効力停止という違法行為を審理の対象とするよう要望しました。
　一方、国側は訴状で、こうした〝自作自演〟手続きについて一切ふれていません。県側代理人の加藤裕弁護士は「法を愚弄（ぐろう）するものだ」（２７日の会見）と批判しました。

新基地は不条理
　また、県は第１準備書面で、県民世論に反して自治権の及ばない領域（＝米軍新基地）を新たにつくることは「憲法９２条の地方自治の本旨を侵害するもので、違憲だ」と指摘。県が新基地建設に関わって違憲性に言及するのは初めてといい、戦後７０年経てなお基地返還が進まない沖縄に新基地を押し付ける不条理を批判するものです。
　これに対し、国は辺野古新基地が累次の日米合意の「集大成」であり、翁長氏の取り消しで「米国との間の外交上、防衛上…の計測不能の不利益がもたらされ」るなどと強調。「知事が国防や外交に関する重大事項について判断する権限はない」とも述べ、露骨な安保最優先姿勢を示しています。

国側の新論点は
　国側が新しく持ち出してきた論点が、１９６８年の最高裁判決です。同判決は、農業委員会が農地所有者の誤認があったとして買収・売り渡し計画を取り消したことに関わって出されたもの。取り消しの不利益と取り消さないことによる不利益を比べ、「公共の福祉の要請に照らし著しく不当」な場合のみ、行政庁は取り消しできるとしています。
　国側は同判決を引用して、辺野古の埋め立てによる自然破壊などより、新基地を造らずに普天間基地（宜野湾市）を「固定化」することによる不利益が大きいなどと主張しています。
　一方、県側は、同判決は処分の相手方が「国民」を前提としたもので、相手方が「国の機関」である今回の場合は適用できないと反論。同判決に照らしても、新基地を造らせないよりも造る不利益の方が大きく、埋め立て承認の取り消しは適法だと主張しています。
　（池田晋）

辺野古代執行訴訟をめぐる双方の主張

論点／訴訟の正当性
沖縄県　　違法な手段で民意を抑えつける訴訟提起そのものが「法の乱用」
安倍政権　翁長知事の承認取り消しは最高裁判例の要件を満たさず、違法

論点／承認取り消し
沖縄県　　最高裁判例に照らしても取り消しは適法
安倍政権　前知事の承認に瑕疵（かし）なし

論点／代執行の要件
沖縄県　　代執行以外の手段があり、要件満たさない
安倍政権　不服審査請求・効力停止には一切ふれず

論点／辺野古新基地の評価
沖縄県　　県民世論に反しての新基地建設は地方自治侵害で、憲法違反
安倍政権　日米合意の集大成で、建設中止で米国との関係が崩壊しかねない　
( ２０１５年１１月２９日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

憲法は戦後の出発点／学生・教員ら討論／吉田総長が講演／京都・立命大

　「平和と民主主義」について考えようと、京都市北区の立命館大学・創思館で２６日、「不戦のつどい」と題した学習会が開かれました。主催は、学生や教員などでつくる実行委員会。１４０人以上が参加しました。
　「戦後７０年と大学の未来」と題して講演した吉田美喜夫総長は、約６０００人の学生が勤労動員、学徒動員で戦争に関わったという立命館大学の歴史を振り返り、戦後の出発点で最も重要なのは憲法だと強調。「憲法の基本的な理念は平和と民主主義だ」として、憲法の理念が立命館大学の教学理念につながっていると述べました。
　吉田総長は、今夏の戦争法をめぐる運動が民主主義を考える機会になったと主張。ＳＥＡＬＤｓ（シールズ）などの活動に触れながら「大学が若者を育て、人類的な課題の研究をする場にしていく。これが大学の未来を保証することになる」と語りました。
　パネルディスカッションでは､｢ＳＥＡＬＤｓ　ＫＡＮＳＡＩ（シールズ関西）」の佐伯宗信さん、同大法学部の植松健一教授、諸富健弁護士が、戦争法をめぐる活動についてそれぞれ交流しました。
　戦争法廃止に向けた今後の取り組みについて、佐伯さんは「法案が通ってもやることは変わらない。政策判断をさせないプレッシャーをかけることが必要だ」と話し、諸富弁護士は「法案が通っても、廃止を求めて粘り強くたたかわなければいけない。市民が語れる場をつくることも大切だ」と語りました。
( ２０１５年１１月２８日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

８０人が心一つに／平和歌声フェス／静岡・伊東市

　「歌は心の友、歌声は平和の力」―。静岡県伊東市で１９日、「平和歌声フェス」が開かれました。
　被爆７０年、戦後７０年にあたり、市内の平和運動の担い手らが実行委員会をつくり、催しました。約８０人が参加し、「青い山脈」、「青い空は」、「原爆を許すまじ」などを楽しく元気に合唱しました。ラストには「しあわせの歌」を合唱し、平和を願う心が一つになりました。
　安倍政治を風刺したパフォーマンス「平成永田町百人一首」が笑いを誘い、つらい戦争体験談には胸をつまらせる人もいました。
(２０１５年１１月２７日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

真実見つめ平和の礎に／戦時中の強制労働でシンポ／長野

　「長野県強制労働調査ネットワーク」は２２日、聞き取りなど実態調査をもとにしたシンポジウムを飯田市で開き、県内のダムや発電所工事、鉄鉱山の作業などで戦時中広範に、朝鮮人や中国人、連合国捕虜など外国人が強制労働された実態が次々に明らかにされました。
　シンポは､戦後７０年､「真実を明らかにして、戦争を二度と起こさせない､平和の礎に｣（主催者）と、長野市（９月）、松本市（１０月）に続き３回目。今回は県南部を中心に報告を行いました。
　県最南端の天龍村平岡地籍に、日本発送電（当時）が熊谷組に造らせた「平岡ダム」建設工事の場合…。国内の労働力不足から、基礎工事には植民地下の朝鮮人労働者約２０００人に加え、英国・米国・オランダなど連合国捕虜が常時２００～３００人（５６人死亡）、中国人８８４人（６２人死亡、失明など２０人）があたりました。朝鮮人の賃金は低く、逃亡を試みると見せしめに暴力が加えられました。
　報告した「平岡ダムの歴史を残す会」の原英章氏は、元中国人労働者が語った、「雨や雪でも暖房もない」、「人間扱いされず、犬のように働かされた悲しみは一生忘れない」など、聞く者の胸をえぐる言葉を紹介。別の会員も、「戦後７０年になるが、平岡ダムの外国人強制労働の実態は、まだ完全にはっきりせず、知る人は少なくなっている」と、実態解明の緊急性を強調しました。
　県内他地域の報告では、〝自主渡航〟とされた朝鮮人も「監督に逆らったら、殴られた」など、実態は強制労働そのものであることが裏づけられました。
(２０１５年１１月２５日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

全商連青年部協議会が総会／業者青年「平和でこそ繁盛」／結成から４０年

　全商連青年部協議会（全青協）の第４０回定期総会が２１、２２の両日、東京都内で開かれました。「平和でこそ商売繁盛」の旗を掲げていっそう奮闘する決意にあふれました。
　全国から役員と代議員、評議員１６１人が参加しました。
　雨松真希人（あままつ・まきと）議長は、業者青年が戦争法や消費税増税の問題で声を上げることを訴え。中小企業振興条例が３５道府県１５０超の市町村で制定されていることを確信にし、「よりよい制度にしていくために自ら提案する強大な全青協をつくろう」とあいさつしました。
　下杉陽介事務局長は決議案を提案しました。結成４０年、戦後７０年の節目に、すべての民商が青年部をつくり、１万５０００人の会員をめざし、つながりを広げる仲間づくりの強化を強調。「総がかり行動実行委員会」の戦争法廃止２０００万人署名に応え、１０万人を集めることを呼びかけました。
　「オープンイベントを通じ、民商を周知させている」（茨城）、「広島バスツアーを企画し平和の大切さを感じた」（愛媛）など１７人が活動を紹介しました。
　日本共産党の池内さおり衆院議員が来賓あいさつ。「業者青年を苦しめ、新たな負担を強いるマイナンバー制度の廃止・中止を求め、みなさんとこれからの政治を切り開いていきたい」と決意を表明しました。
　２１日夜には４０周年記念レセプションが行われました。
　新役員には議長に雨松、事務局長に下杉の両氏を選出しました。（いずれも再任）

総会の発言から／戦争法廃止へ決意
　２年ぶりに増勢した全商連青年部協議会の総会。業者青年たちから「今の政治はおかしい。平和の取り組みを強めたい」との発言が相次ぎました。
　愛知県の山本裕喜さん（３０）＝水道工事＝は、沖縄の普天間基地や辺野古の海を見て「これは何かしなければならない」と思ったといいます。８月３０日の戦争法案反対国会前行動に４人で参加したことをいろんな場で話すと盛り上がり、愛知で平和の取り組みをする委員会を立ち上げました。戦争法の強行後に宣伝すると、１０人が参加してくれました。「どんどん呼びかけを続けていけば、知ってもらって共感する仲間が増えていくことを実感しました」
　「平和が前提だが、今の世界、武器を持たないといけない」との意見があると話す東京都の井賀奈保子さん（３２）＝学校教材販売＝は、話し合いを重ね「その声をつぶすのではなく、一緒に武器を持たなくてすむように考える機会をつくっていこうと決意を新たにしました」といいます。国会前行動や若者憲法集会、平和行進の取り組みへの参加を強めたいと発言しました。
　「今期の活動を振り返ったときに憲法と平和について考えることが多かった」というのは岐阜県の森田正樹さん（３５）です。戦争法案審議の過程で、部員から「憲法って何だ」「私たちは戦争に行くことになるのか」など疑問が多く出されたため、新聞で情勢を学習すると同時に、若者憲法集会に代表を派遣するなど全国の運動に呼応した取り組みをすすめてきました。「戦争になれば青年が銃を持つことになりかねません。民商の原点である『平和でこそ商売繁盛』の言葉を忘れず、憲法と平和を守る運動を続けていきたい」
( ２０１５年１１月２４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

被爆・戦後７０年を合唱／日本のうたごえ祭典始まる／愛知

　２０１５日本のうたごえ祭典ｉｎ愛知が２１日、「被爆・戦後７０年―今あなたとうたいたい」をテーマに開幕しました。愛知での開催は２９年ぶりです。名古屋市など４会場で合唱発表会が行われ、全国から参加した合唱団が力強い歌声を響かせました。
　戦後７０年の今年は、各地で戦争や平和をテーマにコンサートを開いてきた合唱団も多く、「戦争法が成立しても戦争反対の声をあげ続けていきたい」「平和への願いを込めて歌いたい」という思いが語られました。
　大阪の関西合唱団青年部Ｐｅａｃｅ＆Ａｍｕｓｅは、〝戦争はいらない〟と歌う「その手の中に」とゴスペルソングを熱唱。神奈川合唱団は、人権の尊さと日本国憲法の大切さを歌った「Ｈｕｍａｎ　Ｒｉｇｈｔｓ」をさわやかに演奏しました。
　夜の特別音楽会では、被爆者の無念な思いを作品に託した外山雄三さん作曲の交響曲「炎の歌」全曲が、外山さんの指揮とオーケストラ、２５０人の合唱で演奏され、会場は大きな拍手に包まれました。
　同祭典は２３日まで開催されます。
( ２０１５年１１月２２日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

民主主義の目覚め正念場／憲法記念秋の集い／京都

　「憲法記念　秋のつどい」が２１日、京都市中京区の、こどもみらい館で開かれました。京都憲法会議、自由法曹団京都支部、憲法を守る婦人の会の共催。
　山室信一・京都大学人文科学研究所教授が講演しました。山室氏は「戦後７０年の今年、歴史の転換点に立っている」と切り出し、「自由や民主主義の言葉は論壇で使われてきたが、夏を契機に一人ひとりが日常の生活で考えるようになった」と強調。その半面で「憲法９条や憲法そのものが空文化しかねない曲がり角に立っている」と述べ、戦後を確定した「ポツダム宣言」を詳しく解説しました。
　山室氏は「私たちが大きく目覚めたのは、民主主義は議場（議会の場）だけでなく、路上でも行われるということだ。お任せ民主主義から、自己決定が民主主義だと動いてきた」と指摘。その上で「新しい民主主義が始まったが、民主主義は永久運動だ。立ち止まれば相対的に退くことになる。ここからが正念場。人が集い意見を交わすことが最初の一歩だ」と述べました。
　「学者の会」呼びかけ人の高山佳奈子・京大教授、「京大有志の会」の岡田直紀・京大准教授、「ママの会」発起人の西郷南海子さん、龍谷大学の学生、京都市職労役員が訴えました。
　京都憲法会議事務局次長の大河原壽貴（としたか）弁護士が司会を務めました。
( ２０１５年１１月２２日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

中国脅威論と戦争法学習会／長野・松本

　長野県松本市の「戦争する国」ＮＯ！岡田の会は１７日、本郷の会と合同で、安保法制と「中国脅威論」を学ぶ学習会を行い、４０人が参加しました。
　岡田の会は８月、安保法制に反対する一点で岡田地域に住む大学教授や医師、市民団体のメンバーなど４７人がよびかけ人となり発足しました。
　今回は、９月の強行採決後２回目の学習会。国会審議で「日本を取り巻く国際情勢が変わった。中国が攻めてくるかもしれない」との説明は「本当なのか」を学ぶために企画し、久保享・信州大学教授（中国近現代史）が講師でした。
　久保氏は、戦後７０年、東西冷戦の時も多くの対立は交渉で解決したことを、いくつもの事例で示したうえで「世界のすう勢は武力でなく対話。安保法制は逆行している。日中関係の基本は対話で、安保法制は中国を刺激し、両国関係に深刻な影響をおよぼす」と、しめくくりました。
　今後、岡田の会では月１回のスタンディング宣伝と宣伝カーで街頭からの訴え、戦争法廃止の署名に取り組む計画です。
(２０１５年１１月２１日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

「９条の会」が軍馬の歴史展示／前橋

　群馬県前橋市の「かいがや９条の会」は、このほど開かれた桂萱（かいがや）地区文化祭で「地域から戦争を考える」をテーマに軍馬について調べた作品を展示しました。
　戦時中は「軍馬」供給のため家庭で馬を飼育させ、学校の庭に馬を集めさせて、検査員が軍馬として使用できる馬を鍛錬馬として選びました。桂萱村では村長が会長となり「軍用保護馬鍛錬班」をつくり馬の訓練を行っていました。全国で１００万頭、群馬では３８００頭の馬が戦場に送られましたが、１頭も戻って来ませんでした。
　同会では、戦後７０年の今年、過去の戦争で兵士と同じように戦場に送られた「軍馬」について調べてみようと、関係者を訪問したり、図書館で調べたりしました。模造紙１枚に調査結果をまとめた作品「戦争と軍馬」は、日清戦争から始まった日本の対外戦争と軍馬の歴史を紹介しています。
　展示を見た人たちからは「家で飼っていた農耕馬がつれて行かれたと親から聞いた」「桂萱地域でこれだけの調査をした団体はない」「戦争は悲惨だよね」などの感想が聞かれました。
(２０１５年１１月２０日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

第１１回日本放送文化大賞／テレビ・奥底の悲しみ（山口放送）／ラジオ・ＨＡＰＰＹ　ＨＯＵＳＥ（福岡・クロスＦＭ）

　日本民間放送連盟（民放連）が良質な番組を顕彰する第１１回日本放送文化大賞が１０日、発表されました。テレビは山口放送「奥底の悲しみ～戦後７０年、引揚げ者の記憶」、ラジオはＣＲＯＳＳ　ＦＭ（クロスエフエム＝福岡）「ＨＡＰＰＹ　ＨＯＵＳＥ」が、それぞれグランプリを受賞しました。
　「奥底の悲しみ」は、旧満州でソ連兵から性暴力を受けた女性の記録を掘り起こし、被害者の７０年間の苦しみを描いたドキュメンタリー。「ＨＡＰＰＹ　ＨＯＵＳＥ」は、２月に亡くなったロックバンド「シーナ＆ロケッツ」のボーカル・シーナさんへの思いを、夫でリーダーの鮎川誠さんが語ります。
　表彰式で、山口放送の佐々木聰(あきら)ディレクターは「証言を無駄にしないよう伝え続けたい」と述べ、クロスエフエムの栗田善太郎ディレクターは「鮎川さんと家族に伝えたい」と喜びを語りました。準グランプリは、テレビが毎日放送「映像’１５　家族づくり～子どもたちと里親の一年｣､ラジオが朝日放送「三木鶏郎に挑む！平成の仕事師たち」。
( ２０１５年１１月１９日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

まど／アインシュタインの宿題

　岐阜県の神岡鉱山の地下に重力波望遠鏡「かぐら」がほぼ完成しました。重力波の初検出をめざし、近く試験観測を開始します。１００年前に一般相対性理論が予言した重力波。検出は〝アインシュタイン博士からの最後の宿題〟です。
　○…かぐらは、レーザー光を使った１辺３㌔㍍の直角定規。激しい天体現象で生じる重力波による空間のわずかなゆがみをとらえます。計画を進めるのは今年のノーベル物理学賞を受賞する梶田隆章さん率いる東京大学宇宙線研究所です。
　○…神岡鉱山には、梶田さんが素粒子ニュートリノに質量があることをつきとめた実験施設「スーパーカミオカンデ」もあります。かぐら完成報告の記者会見で五神真・東大総長は、こうした大型の実験ができる背景について「戦後７０年、豊かであると同時に平和な社会を維持できたことで、基礎研究を力強く推進できている」と強調しました。
　○…物理学が解き明かす自然の法則。使い方次第で戦争の道具にも、人類の生活を豊かにする道具にもなります。アインシュタインは６０年前、もう一つの宿題を人類に残しました。核兵器放棄をはじめとする戦争の廃絶です。「それを選ぶなら、幸福と知識の絶え間ない進歩がある」と。二つの宿題はつながっています。
　（秀）
( ２０１５年１１月１８日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦争法廃止へ運動の強化を／日中友好協会第１回理事会

　日本中国友好協会（長尾光之会長）は１４、１５の両日、東京都内で第１回理事会を開催しました。中野晃一上智大学教授が「戦争法廃止と国民運動」について講演し、「戦争法」に反対する運動の中心になった「シールズ」、「ママの会」など、立憲主義を基調にしたかつてない国民運動の盛り上がりの背景と今後の展望について話しました。
　「戦後７０年」の安倍談話や「戦争法」廃止をめぐり展開している不再戦平和活動、中国への理解を深めるための「中国百科検定」、中国ツアーなどの交流活動の強化や、太極拳などの文化活動について討議。これらの活動と結びつけて積極的な組織強化・拡大に取り組むことを決定しました。
　また、「戦争法廃止をめざす決議」を採択。大阪知事選・市長選への支援募金を送りました。
( ２０１５年１１月１８日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦後７０年ラジオの歩み／復活のカギは地方と若者

　戦後、ラジオ放送はどんな道のりをたどり、これからどんな未来を迎えるのか。メディア総合研究所はこのほど、放送評論家で元文化放送ディレクターの松尾羊一さんを講師に迎えたシンポ「ラジオの戦後７０年」を都内で開きました。聞き手・進行役は放送作家の石井彰さんです。

　松尾さんは１９３０年、東京生まれ。戦後ラジオの出発を象徴するのは、敗戦を告げる天皇の「玉音放送」でした。中学校で教師たちとききました。「終戦」という言葉には、台風一過を表現するだけのような違和感があったといいます。
　石井さんが解説します｡｢天皇の談話には『残虐なる爆弾』という広島・長崎原爆への言及があった｡また〝侵略戦争は自分の本意ではなかった〟と弁解する部分もあった｣｢しかし後のドキュメンタリー番組やドラマでは『堪（た）え難きを堪え、忍びがたきを忍び…』の部分だけが強調されているのが残念だ」
　戦後７年間は放送局はＮＨＫだけでした。松尾さんは５３年、前年に開局した文化放送に入社。社会教養部に配属されました。行方不明になった出稼ぎ労働者を追った「ある捜索願い」などを制作、数々の賞を得ました。
　以後のラジオ界は、ワイド情報、深夜放送、双方向の番組が盛んになりました。ドラマも盛んでした。
　しかし松尾さんたちが「電気紙芝居」と呼んだテレビの発達に押されてスポンサーも減っていき、今ではすっかり「娯楽」の座を明け渡しています。
　「ラジオ復活のカギは地方と若者ではないか」と松尾さん。「地産地消の道の駅が成功しているように、手付かずの里山みたいなところがメディアの世界にもあるのでは」
　「ラジオを聞かない若い人は『更地』だ。新しい発想で番組をつくれば、耳だけで情報を得られる良さに気付いてくれるんじゃないか」
　松尾さんはこの夏、国会前にも出かけ、若者の集会を目のあたりにしました。「今の若い人の感覚は、手あかのついたことばでは説明できないくらい面白い。もしラジオで実況するならどんな形がいいか―。彼らの感性と理性に希望と期待を持ちたい」
( ２０１５年１１月１８日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

法政大学学徒出陣資料展／遺品や当時の新聞など展示

　「法政大学学徒出陣資料展」が１６日、東京・町田市の同大学多摩キャンパスで始まりました。
　戦後５０年に際し平和祈念碑を同大に建立した経済学部同窓会が、建立２０年・戦後７０年を記念して主催。当時の在学生の思いを学生に伝えたいと企画したものです。
　１９４３年以降、文科系学生の徴兵延期を廃止した学徒出陣により、法政大学でも多くの学生たちを戦場に送り出しました。
　資料展では、将来を嘱望されながらフィリピンに派兵されて戦没した経済学者・戸谷敏之、甲子園にも出場した有名な投手で特攻兵として亡くなった坪谷幸一ら、同大の卒業生や大学生をパネルで解説。遺書やハガキなどの遺品、当時の新聞や週刊誌などを展示しています。
　学内で配られたチラシを見て来たという社会学部３年生の女性は、「法政大学でも少なくとも２０００人以上の学生が出陣したと知り衝撃を受けました。具体的な数字や資料に触れられる貴重な展示ですね」と話していました。
　午前９時から午後５時まで。最終日の２１日は、同キャンパス内で「戦争と平和を共に考える集い」を開催し、記念講演会などを開きます。
( ２０１５年１１月１７日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

朝の風／歴史認識と沖縄の平和フォーラム

　正しい歴史認識の共有を基礎に平和の東アジアをめざす第１４回「歴史認識と東アジアの平和」フォーラムが１０月末から沖縄で開かれた。これは侵略戦争美化の教科書が使用開始された２００２年以来、日中韓３国の歴史研究者・教員・市民活動家が、毎年開催してきたものである。
　今年沖縄で開催したのは、アジアでの米軍再編戦略にもとづく辺野古新基地建設を強行する政府と、それを許さず沖縄をアジアの平和の拠点に変えようとする民衆運動とが、最も激しくぶつかっているのが沖縄だからだ。
　沖縄問題が韓国・中国でも深い関心をよび３国共通の課題と認識されていることは、フォーラムで韓中両国から沖縄に関する報告が複数出されたことにもあらわれている。韓国済州島の海軍基地建設反対闘争に関しても、沖縄と共通する問題として報告された。
　日本での戦争法に反対する運動のひろがりも韓中両国の人びとによく知られ、発言の端々で強い連帯のエールが送られた。また、戦争法の背後にある戦後７０年安倍談話と、その歴史認識の分析も共通課題となった。
　１４年の討議の積み重ねによって、３国の研究者・教員・市民の共通認識が深まり、かみあった議論ができる段階になったことを感じさせられた。
　（比）
( ２０１５年１１月１６日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

地域発ラジオの力／未完の五線紙～戦没作曲家・紺野陽吉が託した音楽／山形放送報道部鈴木啓祐

音が途切れた傷ましさ
　昭和２０年に旧満州で戦病死した無名の音楽青年・紺野陽吉の曲が古里の山形県白鷹町で初めて演奏されたのが２年前の４月。３２歳で生涯を閉じた青年の生誕百年にあたる年でした。
　戦後埋もれたままになっていた楽譜から音楽がよみがえり、古里で奏でられる。演奏会場で待ち構えていた私たちの前にリュックを背負った小柄な女性が姿を現しました。楽譜を発見した東京の音楽評論家・小宮多美江さんでした。
　昭和６年生まれの小宮さんはこの時８２歳。横浜大空襲も体験した小宮さんは演奏前のあいさつでこう呼び掛けました。「戦争が、花開こうとしていた日本の文化をいかに痛めつけたか考えてほしい」と。私たちはその呼び掛けに応じた一人で、番組の取材はここから始まりました。
　紺野が遺した曲は３曲ありました。バイオリンとチェロの「弦楽二重奏曲」に私たちは、白鷹町のまん中を流れる最上川を思い浮かべました。また、木管三重奏曲に小宮さんは、地元の祭りのリズムが隠されていると気づきます。いずれも親しみやすい曲でした。資料が少なく、取材は難しいものがありましたが、楽譜からよみがえった音楽にこだわり、青年の古里への思いをたどってみたのがこの番組です。
　実は、小宮さんが楽譜を発見したのは２０年も前のことでした。当時「しんぶん赤旗」のコラムで「紺野陽吉を知りませんか」と呼び掛けたものの、何の反応もなかったそうです。しかし、楽譜を埋もれさせたくないという小宮さんの思いに賛同する人たちが現れ、今年の春にはＣＤも発売されました。このＣＤ「～戦後７０年、五線紙から蘇（よみがえ）る～紺野陽吉の音楽」（発売元・ミッテンヴァルト）には、番組のタイトルにつながった未完成のままの曲「弦楽三重奏曲」が収録されています。
　小宮さんは「突然、音が断ち切られる。その傷ましさを感じてほしい」と解説文に記しています。どうして音が途切れたのか。その真実に近づこうとしました｡そして､演奏が途切れた後の「無音」が、番組でも戦争をいまに伝える大きな力となりました。（番組は今年の日本民間放送連盟賞番組部門ラジオ教養で最優秀賞を受賞しました）
( ２０１５年１１月１６日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦後を考える講演会ひらく／愛媛大学学生祭

　愛媛大学学生祭学術講演会「学生が考える戦後７０年―安保・憲法・原発・民主主義―」が１４日、松山市の同大学で開かれ、７０人が参加。安保法制反対運動の空前の高まりなどについて、学生、一般市民、学者がともに考えました。学生実行委員会の主催。
　愛媛大学法文学部の井口秀作教授が「『安全保障関連法』について」、明治学院大学の木下ちがや非常勤講師が「安保法制反対運動は何をもたらしたか」と題して講演。
　井口氏は「安倍内閣は、日本を取り巻く安全保障環境の変化を安保法制の必要性とし、ホルムズ海峡機雷掃海などを挙げたが、いずれもあり得ず、安保法制は必要ない。ＳＥＡＬＤｓの運動や共同・共闘の広がりは、新しい民主主義の可能性を示している」と力説。
　木下氏は「安保法制反対の市民運動の高まりは、３・１１以後の反原発官邸前行動の蓄積があったからこそ生まれた。この新たな市民運動と、沖縄や大阪での保守層と革新との共闘に見られる政治分野での共闘が合流して『２０１５年安保闘争』を生みだした」と希望を語りました。
( ２０１５年１１月１６日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

東アジア平和の枠組みを／九条科学者の会が講演会

　九条科学者の会は１４日、東京・中央大学後楽園キャンパスで「安保法制とこれからの日本　憲法９条と東アジアの平和の枠組み」と題して秋の講演会を開き、科学者や市民ら７０人余が参加しました。
　独協大学の大藤紀子教授と東京慈恵会医科大学の小沢隆一教授が講演。大藤氏は、「共生」の視点から憲法に定められている政教分離の原則の問題について提起。日本では原則が貫かれず、宗教的行為を「社会的儀礼的行為」や「習俗」として国が認めている現状を指摘し、「そこに異論をもつ少数者を排除しているのは問題。憲法の問題も、多文化多民族の世界の中でとらえ、共生というものを考える必要がある」とのべました。
　小沢氏は、９条の解釈がねじまげられ戦争法にいたった戦後７０年の歴史をふりかえり、「他国の国民や自国の国民の一部を捨て石にする抑止力論は科学的にも倫理的にも科学者として乗り越えるべきもの」とのべ、武力による抑止力論を批判。「平和主義が岐路にある中で、戦争法を廃止する政府をつくるため、科学者らが市民と力を合わせて政策の枠組みを練り上げていく必要がある」と訴えました。
( ２０１５年１１月１５日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

経済・文化人、安保法制の問題点を検証／小林節氏が講演／浜松

　浜松市内の経済人や文化人でつくる、はままつ「政経・文化」フォーラムが１２日、安保法制の講演会を初めて開催しました。初回は小林節・慶応大学名誉教授が講演し、会場いっぱいの市民１８０人が聞き入りました。
　フォーラムは５年前、会員相互の意識を高め地域社会に資することを目的につくられ、政治、経済、文化に関する講演会などを開催してきました。今回は、戦後７０年の節目にあたり、「憲法違反」との多数の声を聞かずに強行した安保法制の問題点などを連続して検証する企画です。
　代表の清川紘二氏（法政大学沖縄文化研究所代表幹事）があいさつし、「次世代にどのような社会を残すのか、一人ひとりに問われている」と述べました。
　小林氏は、安保法制の強引な制定は憲法９条と議会制度の破壊だと指摘し「独裁者になろうとしている安倍首相から憲法を取り戻そう」と訴え。日本共産党が国民連合政府を提案していることを紹介し、「野党共闘がどうしても必要。衆参議員選挙で勝利し、安保法制廃止と集団的自衛権の閣議決定を撤回させよう」と述べました。
　呼びかけ人には、光関連の電子部品製造で有名な浜松ホトニクスの顧問・鶴見哲久氏、天竜製鋸の前会長・高橋正尚氏、オオゼキ写真印刷の顧問・大関隆司氏など中小企業役員、市内に事務所をもつ大石康智・県弁護士会会長をはじめとする弁護士など、４０氏が名を連ねています。
( ２０１５年１１月１４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

ポーランド映画祭あすから２０日まで

　ポーランド映画の新旧２０作を上映して戦後７０年をたどる「ポーランド映画祭２０１５」が、東京・角川シネマ新宿で１４日から２０日まで開催されます。
　「灰とダイヤモンド」など戦争３部作に加え、日本初公開の｢サムソン｣（写真、１９６１年）を含むアンジェイ・ワイダの監督作品。同国映画で初めて米アカデミー賞を受賞した｢イーダ｣や、障害者の主人公を哀歓豊かに描いた「幸せのありか」、名門ウッチ映画大学関係者が５０～８０年代に送り出した作品など。同館℡０３（５３６１）７８７８
( ２０１５年１１月１３日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

憲法を基礎に学校つくろう／合同教研全道集会

　北海道の教職員や父母らが集まり、憲法を基礎に「子どもが主人公」の学校づくりを交流する合同教育研究全道集会が７、８の両日、江別市の札幌学院大学で開かれました。
　北海道文学館館長の池澤夏樹さんが講演しました。
　国語や数学、障害児教育など教科ごとの教育実践を交流した２４の分科会、１８歳選挙権や道徳教育など五つの討論会が行われました。
　「戦後７０年、憲法と平和を考える」のテーマ討論では、帯広農業高校の先生が、修学旅行を生かした平和学習について報告。「広島でも東京でも生徒たちから想像以上の反応があり、やりがいがある。教師自身も学んでいる」と話しました。
　他の教員たちも、戦争の記憶を子どもたちに伝える努力を発言。道教委が強行した政権批判のクリアファイル調査への批判も出ました。若手弁護士や、安保関連法に反対するママの会のメンバーも討論に加わりました。
(２０１５年１１月１２日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

手段選ばぬ政府を批判／新基地阻止、赤嶺議員が決意／ＢＳ番組出演

　日本共産党の赤嶺政賢衆院議員は１０日夜放映のＢＳフジ「プライムニュース」に出演し、沖縄県名護市辺野古での米軍新基地建設に向けた政府の卑劣な姿勢を厳しく批判し、「オール沖縄」の力で建設を断固阻止する決意を表明しました。
　番組直前に、衆院予算委員会で沖縄米軍新基地建設問題をただした赤嶺氏。政府が国民の権利を守るための行政不服審査制度を悪用する〝禁じ手〟まで使って、翁長雄志沖縄県知事による辺野古埋め立て承認取り消しを停止し、県の権限への介入も開始したことについて、「沖縄の民意が無視されつづけていることは異常。政府は何の痛みも感じていない」と糾弾しました。
　キャスターの反町理・フジテレビ報道局政治部編集委員が「県の民意と国の安全保障が食い違った場合は県の民意を優先すべきか」と問うたのに対し、赤嶺氏は「戦後７０年余も基地に苦しめられ、人権も虫けらのように扱われた沖縄の人々に対し、国の安全保障だから黙れというのでしょうか」「（政府は）基地をつくるためには手段を選ばない。そこに法治主義はありません」と語りました。
　視聴者からは、「辺野古への移設反対の場合、（宜野湾市の）普天間基地をどこに移せばいいのか」のメールが寄せられました。赤嶺氏は、来年１月の宜野湾市長選挙で「オール沖縄」が推すシムラ恵一郎候補が「それは政府が考えること」と述べていることを紹介。普天間基地閉鎖・撤去の必要性を力説しました。
( ２０１５年１１月１２日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

貧困・格差テーマ／２７日から沖縄で全国セミナー

　「戦後７０年　今問われる貧困・格差・不平等」をテーマに第４８回公的扶助研究全国セミナーが２７日から沖縄県内で開かれます。
　安倍自公政権による生活保護制度、公的扶助の仕組みが大きく変えられる中で、社会保障制度や貧困の実態、医療と福祉の連携などについて学ぶものです。
　日時＝２７～２９日
　会場＝沖縄県宜野湾市民会館、沖縄国際大学キャンパス
　問い合わせ＝ファクス０５０（３７３０）２１１６　ｚｅｎｎｋｏｋｕ＿ｋｏｕｆｕｋｅｎｎ＠ｙａｈｏｏ．ｃｏ．ｊｐ
( ２０１５年１１月１２日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

平和・子育て・福祉充実の推進を／国の悪政の防波堤に／党埼玉県議団が予算要望／上田知事に

　日本共産党埼玉県委員会と党県議団は９日、２０１６年度の県予算編成と施策について上田清司知事に要望しました。荻原初男県委員長と柳下礼子、村岡正嗣、秋山文和、金子正江、前原かづえの各県議、おくだ智子参院比例候補、伊藤岳参院埼玉選挙区候補が出席しました。

　要望は「戦後７０年、『戦争のできるくにづくり』をストップさせる県政を」を筆頭に、国の社会保障切り捨て政策から県民を守り、福祉を充実させることや医療、防災、地域経済、教育などの施策の推進を求めています。
　荻原氏は、共産党の「戦争法廃止の国民連合政府の提案」を紹介し「立憲主義を取り戻す一点で共同しましょう」と呼びかけました。
　上田知事は、一点だけでの政権づくりは困難ではないかとしつつ、憲法に基づいて政治を行う立憲主義の原理について「大事なことは大事」だと述べました。
　柳下氏は「国の悪政から県民を守る防波堤となり、安心して子育てできる埼玉に」と話すと、知事は、貧困・格差の解消には賃金水準の引き上げや所得再配分を機能させる必要があり、子育て支援を進めると述べました。
　金子氏は、市町村が要望の第一にあげている子ども医療費無料化制度の対象年齢拡大を求めました。
(２０１５年１１月１０日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

芸能テレビ／スポット／歌手普天間かおりさん／私の軸は〝平和〟

　年末、恒例のコンサートを開きます。例年とは違い「今年は戦後７０年ですから、平和のメッセージをお届けしたい」。
　今回はコンサートの中で、沖縄地上戦を生き抜いた女性に体験談を語ってもらうコーナーを企画しています。
　「戦争がない平和な暮らしをつむいでいくこと、次の日もおだやかに暮らしたいと思うこと、そういうことが大切だと改めて考えています」
　ラジオ福島「かっとびワイド　けんじとかおりのふれんどらじお」（金曜　後１・０）のパーソナリティーは１５年目です。４年前の３月１１日は、金曜日で生放送中でした。被災地で災害放送を経験。
　「沖縄生まれの私の中では〝平和〟が軸。東日本大震災も経験して、人とのつながりを大事に、人がワクワクするような歌をつくって幸せにしたい」
　（小）

※１２月３日「普天間かおりコンサート２０１５」｡上野・東京文化会館小ホール。午後６時半開演。
(２０１５年１１月０８日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

シリーズ戦後７０年を考える／７３１部隊は何をした／７０年前の姿現した遺構／中国・ハルビン

加害の事実認めない日本政府
　中国で人体実験や細菌戦を行った日本軍７３１（ななさんいち）部隊。日本政府は部隊の存在は認めながらも、加害の事実を認めません。戦後７０年の今夏、部隊跡地の発掘調査で細菌実験室や特設監獄が７０年ぶりに姿を現しました。７３１部隊は何をしたのか―。
　ハルビンで本吉真希記者(写真も)

中国人捕虜らで人体実験／ペスト菌注入、氷点下２０度で凍傷に

　黒竜江省ハルビン市郊外にある平房区。工場や住宅が立ち並ぶ緑多い町の中心部に、７３１部隊の跡地があります。
　７３１部隊(部隊長･石井四郎軍医中将)は､ペスト菌や炭疽（たんそ）菌などの細菌兵器を極秘に研究･開発｡データを得るために「マルタ（丸太）」と呼んだ中国人捕虜らを使い、人体実験を繰り返しました。遺体は焼却炉で焼きました。
　日本軍は敗戦直前、細菌実験室が入る「ロ号棟」（約１００㍍四方）や｢マルタ｣を収容した特設監獄を爆破。徹底した証拠隠滅を図りました。

日常茶飯事
　しかしこの夏、発掘調査を終えたそれらの遺構が、一般公開されました。これらの施設は日本軍が「特別軍事地域」を設定（１９３８年)して､そこに住んでいた農民らを追い出し､つくったものです｡
　細菌実験室や特設監獄では、何が行われていたのか―。戦後、中国の戦犯となった上田弥太郎・元７３１部隊雇員研究員は自筆供述書(５５年)でこう記しています。「体内にペスト菌を注入された中国人(は)苦痛のため、かっと眼を見開き、両手で空をかきむしり、絶えずうめき声を上げていた…。この瀕死（ひんし）の叫びを気にとめるものは誰もいなかった。こんなことは日常茶飯事（だからである）」（『証言人体実験―七三一部隊とその周辺』同文舘）
　凍傷実験も行われていました。戦後、ソ連の戦犯となった西俊英・元７３１部隊教育部長の尋問調書（４９年１２月２６日）にはこう記されています｡｢…零下二〇度以下(の屋外に)部隊の監獄から人々を引出し､素手にさせ､人工風によって手を凍らせていました。小さな棒をもって凍傷にかかった手を、小板を叩（たた）く様な音が出るまで叩き続けました」（『公判記録七三一細菌戦部隊』不二出版）

憲兵隊と結託しマルタ（人体実験材料）集め

　細菌兵器開発のため、少なくとも３０００人以上の「マルタ」と呼ばれた中国人らの命が奪われました。「マルタ」はどのようにして連れてこられたのか―。
　敬蘭芝さん（享年８４歳）の夫で抗日活動家だった朱之盈さんは４１年７月１７日、憲兵隊に逮捕されました。同日夜には､敬さんも連行｡夫は棒にくくりつけられ、皮膚がさけて血まみれになるほどの拷問を受けました。敬さんは７日間の拷問の末、釈放されましたが、夫は戻ってきませんでした。
　８６年に発見された牡丹江憲兵隊の文書（旧ソ連ＫＧＢ公文書館所蔵）で、敬さんは夫が「特移扱（とくいあつかい）」として７３１部隊に送られたことを知りました。
　「特移扱」とは、捕らえた中国人らを法廷で審理せず、憲兵隊司令部の許可で７３１部隊に送ることです。関東憲兵隊司令部が３８年に発した「特移扱」に関する通達に記されています。７３１部隊に〝実験材料〟となる人間を常に充当する仕組みでした。
　４３年の通達では「特移扱」の区別を①逆利用の価値がないスパイ②更生が望めない思想犯―などと規定｡中国､ソ連、朝鮮、モンゴルの人々が対象となりました。
　「特移扱」にされた中国人などの名前を記録した文書が９７年、黒龍江省の公文書館で見つかりました。発見したのは侵華日軍第７３１部隊罪証陳列館の金成民館長です。今年８月には別の文書から新たに４人の名前が判明。これまでの判明分をあわせ、名前のわかる被害者は１４８１人に上ります。
　金氏は指摘します。
　「これらの通達などの公文書は憲兵隊と７３１部隊が結託して、人体実験の準備と実施をしたことを裏付ける直接的な証拠になる。人体実験は人道の精神と国際条約に背く。生命の倫理と医学の原則にも反している」

細菌兵器を実戦で散布／極秘文書発見／６作戦で２万人死亡

　７３１部隊は人体実験で効果を確認した細菌を実戦で試しました。
　実戦で初めて腸チフス菌などをまいたのは、３９年のノモンハン事件（日ソ国境戦争）でした。さらに日本軍は７３１部隊などを中国各地に展開し、４０～４２年にかけ、中国の十数都市で細菌を散布しました。
　この事実を示す陸軍軍医学校防疫研究室の極秘報告書(金子論文)が４年前に見つかりました。
　金子論文は医学者の金子順一・元７３１部隊隊員が４８年、東京大学に提出した医学博士論文の一部です。中国での六つの作戦（４０～４２年）を取り上げ、散布したＰＸ（ペスト菌に感染させたノミ）の量と感染死亡者数を表にまとめています。死亡者数は二次感染を含めると約２万人に上ると書かれています。
　４１年１１月４日に細菌攻撃された湖南省常徳。市街地で発生したペストは翌年から農村部各地に伝播（でんぱ）しました。

遺体は真っ黒
　このとき感染した熊善初さん(当時１３歳)は早期の治療で助かりました。しかし家族８人のうち４人が急死。最初に感染した長兄は夜発病し、高熱や頭痛、両手足のけいれんを起こして夜明け前に亡くなりました。遺体は全身真っ黒になったといいます。
　熊さんら細菌戦被害者が訴えた裁判(別項)で日本政府は事実の認否をせず、細菌戦の事実を認めていません。
　金子論文を発見した奈須重雄氏（７３１部隊・細菌戦資料センター理事)は強調します｡
　「７３１部隊は細菌兵器の研究・開発と実戦使用を任務とした細菌戦部隊だ。金子論文はその事実と細菌戦で多くの市民が犠牲になったことを裏付けている」

米国が戦犯を免責

　石井四郎部隊長をはじめ、７３１部隊で人体実験を行った医師や医学者は戦後、アメリカへ実験データを提供。それと引き換えにアメリカは東京裁判で戦犯を免責しました。
　彼らの多くが医学界に復帰しました。

人体実験と細菌戦は裁判で認定

　９０年代に入り、７３１部隊の被害者と遺族は日本政府に謝罪と賠償を求め、東京地裁に提訴しました。いずれも日中共同声明（７２年）で「解決済み」などとして請求が棄却され、最高裁で敗訴が確定。しかし人体実験と細菌戦の事実は明確に認定されました。

金館長招きフォーラム／１４日、東京で

　侵華日軍７３１部隊罪証陳列館の金成民館長を招いて１４日、フォーラムと劇が開かれます。
　▽フォーラム｢７３１部隊遺跡の世界遺産へ向けて」（午後１時～４時５０分）▽劇「７３１の幻想」（午後６時～８時）▽会場：東京都大田区民ホールアプリコ・大ホール▽参加費２５００円（高校生以下無料）▽問い合わせ先：７３１部隊展実行委員会℡０８０(４４０７)９５５４
(２０１５年１１月０８日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

辺野古新基地／何でもあり／目に余る国の無法／生粋の自民、私も怒る／元自民党県連会長外間盛善さん

　安倍政権は一方的に知事の権限を奪う代執行手続きをするなど、高圧的に沖縄の行政権を奪おうとしています。どんなに県民が反対しても、辺野古に米軍新基地をつくるために手段を選ばないのが政府のやり方です。
　私は自民党県連の幹事長や会長もやってきて、安倍首相のお父さんの派閥にも属していました。そういう生粋の自民党の男がいま「沖縄は日米両政府の植民地か」といいたいぐらいに怒っている。安倍首相は、沖縄を一体何だと思っているのか。政権の暴走を許しちゃいけないですよ。
　政権があまりに独裁的なことをするならば、地方も立ち上がらないといけない。国の高圧的なやり方に裁判でもたたかい、国連にももっと訴えていくといい。翁長知事は本当によくやっていると思います。
　私は日米安全保障条約には賛成で、普天間基地の県外移設を主張してきました。ところが政府は沖縄の米軍基地をさらに強化しようという。国土の０・６％の沖縄に米軍基地の７４％を押し付け、さらに新基地までつくろうというのは、あまりにもひどい。
　私は太平洋戦争の時、国民学校１年生でした。「本土を守るため」といって沖縄は前線基地になり、県民は大きな犠牲をこうむった。戦争で私の父も兄も亡くなり、祖母と叔母は私の目の前で銃撃や艦砲射撃で死にました。県民全体では２０万余の人が亡くなった。

次の選挙で
　日本軍であれ米軍であれ、敵国はいざ戦争になれば、沖縄のような基地があるところを集中攻撃してきます。今はミサイルが飛んでくる時代ですよ。沖縄県民の全滅につながりかねない。
　戦後７０年、日本の平和と自由が保障されたのは憲法９条のおかげです。これを壊すことを許してはいけない。とりわけ、〝県外移設〟を訴えて当選しながら説明もなく公約を破った沖縄の自民党国会議員たちはみな潔く辞職すべきです。次の国政選挙では、本物の沖縄の政治家を送らねばならないと強く思っています。
(２０１５年１１月０８日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

七十年の孤独／川野里子著／評者近藤みゆき実践女子大学教授

短歌の過去・現在・未来を論じる
　歌誌『かりん』編集委員であり､短歌創作に評論に幅広く活躍しておられる著者が､また鮮烈な一冊を上梓された｡戦後７０年を期してまとめられたこの書だが、実際には７０年に収まらない、歴史的まなざしをもって、短歌の過去・現在･未来について論じている｡
　短歌は宿命を負った文学である。三十一文字という形式を枠組みとするそれは、古代の共同体と王権における国家イデオロギーやジェンダーイデオロギーを体現する「やまとうた」が積み重なり形成した分厚い地層を宿命として抱えている。近代短歌はその宿命によって、戦意高揚のための道具となるという最大の悲劇を経験したが、現代短歌の創作者はその悲劇とどう対峙したのか。古典和歌を研究する者としても、評者は常々その全貌を知りたいと思っていた。
　不明にして歌人論を断片的に知るだけであったのだが、今回の著書では、戦後日本の社会事象と不即不離の状況にあがきながら､｢私｣を追い求めた創作者たちの姿が著者独自の視点で論じられているのである｡桑原武夫の第二芸術論､戦後の廃墟に立つ葛原妙子､塚本邦雄と前衛短歌運動､女流の旗手､馬場あき子や山中智恵子が苗床とする古代・中世文学という「伝統」、「母」を脱ぎ去るまでの女流歌人たちと、あまたの文学行為の意義が、解き明かされていく。
　幻視される日本、共同体とは何か、故郷、ジェンダーなど、社会学的にも重要な視点を次々に構えた批評の展開に、読後は高揚感でいっぱいになった。戦後短歌史についての極上の評論でありかつ優れた戦後日本論である。ぜひ多くの読者と共有したい。

　かわの・さとこ　５９年生まれ。歌人。歌集『太陽の壷』『王者の道』ほか
( ２０１５年１１月０８日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

地域の人と夢・希望開く／障害者支援のまつり／岐阜・中津川

　岐阜県中津川市千旦林で３日、障害者を支援する毎年恒例の「第２４回飛翔の里、生活の家まつり」が開かれ、地域住民ら１０００人を超える人が参加しました。主催は社会福祉法人ひがし福祉会。
　実行委員長の棚橋尚子氏（６８）が「今年のスローガンは『地域に生きる』。障害のある仲間たちと豊かな生活をつくっていけるよう、みなさんの力添えをお願いしたい」と開会宣言。
　入場行進に合わせて､みこしや｢地域に出て働きたい」などの要求プラカードを掲げ、仲間たちが会場を一回りすると大きな拍手が湧き起こりました。
　理事長の鳥居広明氏（５７）は「障害者権利条約に学び、夢と希望を地域の人たちと切り開いていくために、戦後７０年、障害者と戦争の悲劇を直視し、命の重み、平和の大切さを感じながら頑張っていきたい｣と述べました｡
　「はたらく仲間（障害者）の会」会長の田上誠さん（３７）は「障害があっても自分にあった仕事をがんばって、中津川の環境をまもっていきたい。私たちぬきに私たちのことを決めないで」と誓いの言葉を述べました。
　ふれあいステージでは、リサイクルセンターの仲間による「飛翔太鼓」、「手のひらを太陽に」の合唱や劇、友情出演による消防音楽隊の演奏や幼稚園の踊りなど。みたらし団子、焼きそば、お好み焼きに列ができ、日用品バザーもにぎわっていました。
　初めて参加した山林弘子さん（７０）は「障害の方も随分認められるようになってよかった。来年も来たい」と語り、リサイクルブース担当の林秀和さん（３０）は「地域の人と頑張ることが一番」と笑顔でガッツポーズしました。
(２０１５年１１月０７日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

試写室／こころの時代私の戦後７０年　鎌田慧／ＮＨＫＥテレ８日前５・０

　ルポライター・鎌田慧のデビューは衝撃的だった。高度成長たけなわの１９７２年、自分が〝期間工〟としてトヨタ自動車の工場で働き、その時の体験を書いたルポ「自動車絶望工場」で、正社員でない臨時工の非人間的な労働現場の実態を告発。以来四十数年間一貫して、戦後の発展を底辺で支える日本人を見つめてきた。
　青森県六ケ所村。かつてこの村の住民は満州開拓に集団移住し、引き揚げ後は核燃料再処理工場建設のため追い出された―このドキュメントで彼は９１年に「毎日出版文化賞」を受賞しているが、番組冒頭でこの現場に立ち、国策が変わるたびに翻弄された村民の悲劇を語る。そして同じ青森の大間町で７年前から建設中の原発に、母子２代で抵抗する女性の姿で番組は締め括られる。
　冤罪､いじめ自殺､公害､そして原発―今年７７歳の鎌田は１３０冊近い著作で常に社会的弱者の立場に立って記録し続けてきた｡｢取材相手のいろんな人生から、絶望の奥にいつも希望が見える。それが信じられるからここまでこられた｣と彼は言う｡見事な作家人生だ｡
　（諌山修　ジャーナリスト）
( ２０１５年１１月０７日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

『検証安倍談話』出版記念会／志位委員長のあいさつ

　日本共産党の志位和夫委員長は５日夜、「村山首相談話を継承し発展させる会」が憲政記念館（東京都千代田区）で開いた『検証安倍談話　戦後七〇年　村山談話の歴史的意義』出版記念会に出席し、野党各党や各界代表とともにあいさつしました。あいさつの要旨は次の通りです。

訪韓で感じた「村山談話」の国際的意義
　日本共産党の志位和夫でございます。一言ごあいさつを申し上げます。
　私は、先月、韓国・ソウルの建国大学から招待を受けて、「戦後７０年　北東アジアの平和」というテーマで講演をする機会がありました。日韓関係について、戦前、戦後、未来という三つの角度からお話をいたしました。そのさいに「村山談話」が日本とアジア諸国との和解と友好のうえできわめて大きな役割を果たしてきたことをあらためて痛感いたしました。
　たとえば「植民地支配」の問題です。日本政府が「植民地支配」という言葉を用いて謝罪したのは、「村山談話」が初めてだと思います。この「村山談話」の内容は、１９９８年の小渕恵三首相と金大中大統領の「日韓パートナーシップ宣言」に受け継がれ、「日本が韓国に植民地支配を行ったことへの痛切な反省とお詫（わ）び」が明記されました。韓国でもあらためて痛感したことですが、この「宣言」は、日韓両国の歴史問題での合意文書としては最高の到達を示したものとされています。
　このように「村山談話」は、それが安倍内閣までは、歴代内閣の公式見解として踏襲されてきたのみならず、日韓、日中、日朝間の政府合意文書にも取り入れられ、国際的合意文書となっています。これを継承し、発展させることは、日本政府の国際的責任であり、そうしてこそ、アジア諸国との本当の和解と友好の道は開かれると考えるものです。

「安倍談話」――歴史への無反省を欺瞞の言葉でくるんだ「見本」
　「安倍談話」については、「植民地支配」「侵略」「反省」「お詫び」などの言葉がちりばめられていますが、一体だれが「植民地支配」「侵略」をやったのか、主語がありません。一体だれが「反省」「お詫び」をしたのか、過去の歴代内閣がやったことを引用しているだけで、安倍首相自身の言葉ではありません。事実上、「村山談話」を投げ捨てるにひとしいものといわなければなりません。
　私が、とりわけ強い憤りをもって聞いたのは、「日露戦争が、植民地支配のもとにあった、多くのアジアやアフリカの人々を勇気づけました」という一節です。日露戦争とは、何よりも韓国植民地化戦争でした。この戦争によって日本は韓国への覇権を手に入れ、不法・不当な韓国併合に突き進みました。いったいこの戦争が、韓国の人々にどういう「勇気」をあたえたというのか。韓国は「アジア・アフリカ」に入らないとでもいうのか。あからさまな植民地支配正当化論を許すわけにいきません。
　「安倍談話」は、歴史の検証に到底耐えうるものではありません。もしも歴史に残るとしたら、歴史への無反省を欺瞞（ぎまん）の言葉でくるんだ「見本」としてでしかないでしょう。このような談話で「村山談話」を「上書き」することは決してできません。

戦争法廃止の「国民連合政府」を実らせるために
　最後に、安保法＝戦争法の強行のもとで、私たちは､｢提案｣を発表し､この違憲立法は廃止しなければならない、そのために「国民連合政府」をつくろう、野党は選挙協力を行おうということをよびかけています。私は、この方向は､｢平和の理念と民主主義」をうたった「村山談話」の精神にも合致していると信じています。ぜひ実らせるために力をつくしたいと決意しております。（拍手）
( ２０１５年１１月０７日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

潮流

　この地に米軍基地などつくらせぬと座り込む沖縄のおじい、おばあを力ずくで引っこ抜く機動隊員。戦後７０年の平和の歩みを逆戻りさせてなるものかと国会を包み込むあまたの市民―▼今年もまた時代を切り取る数々の写真に心を打たれました。「記録し次の世代につなげるのが私の使命」。本紙日曜版にも登場した１０１歳の写真家、笹本恒子さんは自身の役割をそう語っています▼日本初の女性報道写真家として６０年安保のときもデモの現場に通っていたという笹本さん。今も足が元気だったら官邸前に行っていると。その安保闘争を記録した写真家として世界に名をはせたのが、濱谷浩です▼国会前や街頭の怒とうのデモ、警官隊との衝突で犠牲になった樺美智子さんが運ばれていく写真も。「私は戦前戦中戦後を生きてきた日本人の一人として、この危機について考慮し、この問題にカメラで対決することにした」。生々しい現場に身を置くことで「再び時代の渦に巻き込まれない姿勢」を示しました▼濱谷には、かつて国家宣伝のために自分の写真が利用されたことにたいする憤りと反省がありました。それが人間を時代の環境の中でとらえるという、その後の方向を▼風俗から雪国や｢裏日本｣の生活、戦後の「怒りと悲しみの記録」。いま、濱谷の生誕１００年を記念した回顧展が東京・世田谷美術館で開かれています。そこからは、人間が人間を理解するために時代と格闘してきた一人の表現者のメッセージが静かに伝わってきます。
( ２０１５年１１月０７日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

『検証安倍談話』出版記念／村山元首相も発言／シンポ

　「村山首相談話を継承し発展させる会」は５日、村山富一元首相らが編集した『検証　安倍談話　戦後七〇年　村山談話の歴史的意義』の出版記念シンポジウムを憲政記念館（東京・千代田区）で開きました。
　シンポジウムでは、同書の執筆者が安倍晋三首相の「戦後７０年談話」の問題点について発言。村山元首相も発言し、「安倍談話」で触れた過去の侵略戦争や植民地支配に関する「反省」や「お詫（わ）び」について、「私が、という（主語の）言葉がない」と述べ、首相自らの言葉としては語られていない問題を指摘しました。
( ２０１５年１１月０６日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

木下そんきが選ぶうたごえの名曲／創造の源にある個性／小宮多美江

　うたごえ運動の歴史はほぼ戦後７０年の長さに匹敵するのだから、その間に生み出されたものの大きさは簡単には計り知れない。このＣＤ「ふるさとの風」には、うたごえ運動で中心的役割を果たしてきた作曲家・木下そんきが、かれなりのスタンスで選んだ曲が集められている。
　まずは、林学、高平つぐゆき、寺原伸夫らの作が並ぶ。かれらの名を聞くと１９６０年代という同じ時代を筆者も共に過ごしたことが思い出され、それぞれの個性がうたごえ運動の創造的なゆたかさの源にあることもよく感じられてうれしい。
　いきなりにぎやかに始まるオーケストラのための「みんなが笑う日まで」（林学作曲、木下編曲）の演奏は、外山雄三指揮、新星日本交響楽団。同じく林学のチェロ二重奏による「ふくろうの歌」は、井上頼豊と苅田雅治の演奏。ピアノ五重奏のための小行進曲「青春の歌」は木下のはじめての器楽曲。
　「ふるさとの風」以下は木下作品がつづくが、そのなかで詩人永瀬清子が初めて作曲のための詩を書くなど、木下がまわりの人々をまきこんで運動を広げている一例と思えた。同じく「奈良の人たちにささげる歌を作りたい」との思いで作曲された「奈良の大仏っさん―心象五景」は東大寺の管長・清水公照に作詞してもらっている。そもそも「奈良蟻の会合唱団」が木下の歩み始めなのだから自然のなりゆきかもしれないが､｢奈良の奈良の（なーらのなーらの）大仏っさん」という歌い出しが、これを書いている間も私の耳をはなれない。
　聴き終わってあらためて「これらの作品を生の演奏会で」と思わずにいられないＣＤである。ジャケットの東大寺の甍の写真がその思いを倍加させる。
　（こみや・たみえ　音楽評論家）
( ２０１５年１１月０４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

僕らの民主主義を考える／作家・高橋源一郎さん講演／京都

　京都市教育研究集会（同実行委主催）が１０月３１日、京都市で開かれました。作家の高橋源一郎さんが「戦後７０年　ぼくらの民主主義なんだぜ」と題し講演しました。
　高橋さんは、共同体の成員が同じ権利をもつことが民主主義だと語り、政治的なことを決めるシステムというより、もっと根が深いと指摘しました。戦争法反対のＳＥＡＬＤｓ（シールズ）の活動について「周りの人を力づけた」とのべ、社会や共同体をめざめさせる力が必要とされていると語りました。
　改憲を心配する参加者の質問に、立憲主義の危機のなか多くの人が憲法の意味に気づいたとのべ、「日本人の意識の深くに平和主義がしみこんでいる」との学者の見方も紹介。「改憲できない上に、みんなの危機意識だけ燃え上がらせて、『憲法守らないやつはだめだ』となる可能性が高い」と答えました。
　シールズ関西の佐伯宗信さんがスピーチ。「たった１人の命・尊厳であってもないがしろにする社会に生きたくない。知らない誰かであっても幸せに生きてほしい」と語り、参加者は大きな拍手を送りました。
(２０１５年１１月０３日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

２０１５日本のうたごえ祭典ｉｎ愛知／「被爆・戦後７０年―今あなたとうたいたい」／２１～２３日

　２０１５日本のうたごえ祭典が２１日～２３日の３日間、愛知県の日本ガイシホールなどを会場に開かれます。愛知での開催は２９年ぶり。「被爆・戦後７０年―今あなたと　うたいたい」をテーマに全国から約８０００人が参加します。
　日本のうたごえ全国協議会副会長で、今回の祭典実行委員会の運営委員長を務める舟橋幹雄さんは、「戦争法が成立し、平和が脅かされている大きな節目の祭典。みんなで手を組んで跳ね返していく力にしたいと思います。ＴＰＰや消費税、子育ての問題など、暮らしが苦しくなっている今だからこそ、一人ひとりが豊かに、幸せに生きていけることを歌ではげましたい」と語ります。
　２２日に開かれる大音楽会のオープニングでは、歌と５００台の太鼓との共演で「あゆちの鼓動」を演奏し、被爆・戦後７０年の企画として広島・長崎、被爆者、新婦人愛知の人たちと参加者が一緒に「青い空は」を大合唱します。戦争を生き抜いたゾウを見ようと、全国の子どもが列車で名古屋の東山動物園を訪れる話を題材にした合唱構成「ぞうれっしゃがやってきた」は、５０００人の合唱を目指してとりくんでいます。
　各地のたたかいに連帯するステージも企画されています。辺野古の米軍新基地建設に反対する沖縄の人々や、東日本大震災による原発事故で苦しむ福島の人々から映像によるメッセージが会場に寄せられます。沖縄に住むシンガー・ソングライターのユキヒロさんは、自作の「ＨＥＩＷＡの鐘」を青年たちと合唱。原発事故で避難生活を余儀なくされている福島県南相馬市の小高中学校の卒業生と音楽教諭が、離ればなれになった仲間を思い創作した合唱曲「群青」を作曲者の小田美樹さんの指揮で歌います。
　作曲家・池辺晋一郎さんの指揮で「南極賛歌」「奪われし初恋」「アメイジング・グレイス」を合唱し、ウクライナ出身の歌手でバンドゥーラ奏者のナターシャ・グジーさんは女声合唱とともに「希望の大地」などを演奏します。
　２１日に開かれる特別音楽会では、被爆者の無念さを歌い上げる外山雄三さん作曲の交響曲「炎の歌」全曲が、外山さんの指揮とオーケストラ、２５０人の合唱で演奏されます。
　問い合わせ℡０５２（３５５）６１１９日本のうたごえ祭典ｉｎ愛知実行委員会

うたごえ祭典ｉｎ愛知日程２１日（土）
○合唱発表会
・一般の部Ａ　　　　　　午前１０時半　（日本特殊陶業市民会館）
・職場の部　　　　　　　午前１１時　　（尾張旭文化会館）
・小編成の部　　　　　　午前１１時　　（尾張旭文化会館）
・交流の部　　　　　Ⅰ　午前１１時　　（春日井市民会館）
・特別音楽会　　　　　　午後５時４０分（日本特殊陶業市民会館）
２２日（日）
○小音楽会　　　　　　　午後１時　　　（日本ガイシフォーラム）
○大音楽会　　　　　　　午後４時　　　（日本ガイシホール）
２３日（月）
○合唱発表会
・交流の部Ⅱ　　　　　　午前１１時　　（日本特殊陶業市民会館）
・女性の部　　　　　　　午前１１時　　（ウィルあいち愛知県女性総合センター）
・一般の部Ｂ　　　　　　午前１１時　　（名古屋文理大学文化フォーラム）
・オリジナルコンサート　午前１１時　　（名古屋文理大学文化フォーラム）
( ２０１５年１１月０２日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

東アジア連帯へ議論／平和大会が国際交流分科会

　２０１５年日本平和大会ｉｎ富士山の２日目となった１日、静岡県御殿場市内各地で分科会が開かれ、多彩なテーマで交流しました。国際交流分科会では日中韓の３人の研究者、市民活動家がパネリストとなり、「戦後７０年、アジアの中の日本―東アジアの平和に何が問われているか？」をテーマに議論が進められました。
　早稲田大学の劉傑教授（近代日本政治外交史）は、東アジアの歴史和解を政府レベル、国民レベル、知的レベルの三つに分け、なかでも知的レベルでの和解の重要性を強調。「過去の歴史について完全に一致した認識を共有することは難しくとも、共有できる部分を最大限広げていかなくてはいけない」「地域の安定・平和のために『共有できる知』が必要であり、それは政府レベルでは難しく、知識人、民間の力が必要だ」と語りました。
　韓国・参与連帯平和軍縮センター所長のイ・ミヒョン氏は、戦争法に反対する日本全国、国会前で続けられている抗議行動のように参加型の民主主義を発展させることが必要だとして、「日本でも韓国でも国会と市民社会がともに世論を動員して平和政策を確定するよう強く要求しなければならない」と語りました。
　日本平和委員会常任理事の川田忠明氏は、南シナ海問題について「圧力は解決への道筋を複雑化させるばかりか、新たなリスクを増大させる」と指摘。アメリカに追随する安倍首相の姿勢を「日本を偶発的な軍事危機にまきこみかねない」と批判しました｡川田氏は､日本の安全にとって必要なのは「抑止力」ではなく「外交力」だと強調しました。
　会場からの発言では、パネリストへの質問や各地の経験を交流。東京の男性は「日中韓連帯のために何をやるべきか」として、中国や韓国の友人をたくさんつくり、お互いに交流している経験を語りました。
( ２０１５年１１月０２日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

志位委員長の韓国訪問／心通う交流／「国民連合政府」にも高い関心／「徹頭徹尾、平和主義者」―日本共産党の歴史と活動に広がる信頼

　日本共産党の志位和夫委員長は、１０月２０日から２３日まで、韓国のソウルを訪問しました。志位氏の訪韓は今回で５回目。日本共産党の歴史認識や北東アジア平和協力構想、「国民連合政府」提案が注目されました。
　田川実・党国際委員会事務局長

　戦後７０年・日韓国交正常化５０年の今年、総合私大の建国大学が、記念事業の一環として志位氏の著書『戦争か平和か―歴史の岐路と日本共産党』の韓国版を刊行、あわせて講師として招待したもの。
　市中心部のキャンパスの入り口には、志位氏と党の名が入った歓迎と特別講演お知らせの横断幕が掲げられ、会場の国際会議室には学生や研究者ら２００人が集まりました。
　「戦後７０年　北東アジアの平和――歴史をふまえ未来を展望する」と題し志位氏は、戦前・戦後の日韓の歴史、そして未来に向けどう北東アジアの平和を築くかを熱く語りました。（要旨５面）
　日清、日露戦争をへて進めた戦前の日本による朝鮮半島の植民地化を告発し、その歴史をゆがめる安倍首相の「戦後７０年談話」を批判。日韓関係の改善、北東アジアの平和と協力には「歴史問題の解決がカギ」だと強調しました。
　講演を聞いた外交関係者は「日本の政治家からこのような体系的な歴史の話が聞けるとは」と驚きます。学生の一人は、「歴史は変えられないが正面から向き合うことはできるとの言葉はとてもいい。その精神でやれば友好が進むと思った」と語ります。

新聞各紙も注目した

　志位氏は、安倍政権が成立を強行した戦争法廃止の「国民連合政府」の提案を説明し、実現へ向けた決意も語りました。
　３０代の女性は「日本の国会前での若いママたちのデモが韓国でも報じられ、何が起きているのかと思っていました。日本での動きと、今後の展望が志位さんから直接聞けてよかった」と言います。
　新聞各紙も「戦争法は北東アジアの緊張を高め、周辺国の軍事力強化をもたらし、アジアと世界の平和を阻害する」（「京郷新聞」）、「植民地戦争を反省しない政府が憲法を変え、軍隊を海外に送ることほど危険なことはない」（「文化日報」）などの志位発言を掲載しました。両紙は、「国民連合政府」提案について、日本共産党が他の野党と話し合っていることも紹介しています。

「徹頭徹尾、平和主義者」―日本共産党の歴史と活動に広がる信頼

元大使の親身な紹介

　志位氏の訪韓で、大学での講演は３回目。北朝鮮と対立する韓国で各界と日本共産党の交流がすすむ背景には、党の歴史と活動への信頼があります。
　韓国で最大部数の「朝鮮日報」（２２日付、写真）。日本共産党が「結党以来、侵略戦争や植民地支配を一貫して批判してきた。北朝鮮の朝鮮労働党とは、（北朝鮮の）反人道的な行為を理由に、８０年代に関係を断絶している」と紹介しました。
　建国大学での講演会に参加した崔相龍（チェ・サンヨン）元駐日韓国大使は、祝辞の中でこう述べました。
　「わが国の国民が村山（元）首相の歴史認識を尊敬するように、本日お越しの志位委員長も、それに劣らず歴史問題において、われわれの立場を深く理解している方です」
　「学生のみなさん、共産主義といえば何をイメージしますか。まずは暴力革命だとか、こんなイメージがありませんか。志位委員長は徹頭徹尾、平和主義者です。政治は平和路線です」

「平和協力構想」に賛同

　志位氏はソウル滞在中の２３日、韓日議員連盟の金泰煥（キム・テファン）会長代行、姜昌一（カン・チャンイル）幹事長と会談しました。
　志位氏は日本共産党が提唱している「北東アジア平和協力構想」（別項）を説明。金氏、姜氏は「望ましい方向です」「良い考えです」と賛意を示し、「韓中日３カ国の協力が重要」と強調しました。志位氏も「可能なところから一歩一歩進めたい」と応じました。
　会談で志位氏は、産経新聞の前ソウル支局長が朴大統領の名誉を傷付けたとして在宅起訴された事件にも言及。「深く懸念しています。言論による体制批判には言論で応えるというのが民主主義社会のあるべき姿で、今回のようなやり方はとるべきではないと考えます」と表明し、金氏も「懸念を理解します」と応じました。

友好の集い出席
　志位氏は２１日、ソウル市内で開かれた「日韓親善友好の集いｉｎ　Ｓｅｏｕｌ」（日韓、韓日の両親善協会と在日本大韓民国民団が主催）に出席してあいさつしました。

　訪韓には、緒方靖夫副委員長、笠井亮衆院議員、森原公敏国際委員会副責任者、田川実同事務局長らが同行しました。

北東アジア平和協力構想
（１）域内の平和のルールを定めた北東アジア規模の友好協力条約を締結する（２）北朝鮮問題を６カ国協議で解決し、この枠組みを地域の平和と安定の枠組みに発展させる（３）領土問題の外交的解決をめざし、紛争をエスカレートさせない行動規範を結ぶ（４）日本の過去の侵略戦争と植民地支配の反省は不可欠の土台となる

日韓関係関連年表

１８９４～９５年　日清戦争　日本が大軍を派兵しソウル制圧
１９０４～０５年　日露戦争
１９１０年　「韓国併合」
１９３１年　満州事変
１９４５年　１５年戦争終結
１９４９年　日本外務省が「割譲地（旧植民地）」処理に関する極秘文書作成
１９５０年　日本外務省が「平和条約」に関する極秘文書作成
１９６５年　日韓基本条約締結
１９９３年　河野談話
１９９５年　村山談話
１９９７年　侵略戦争礼賛を教育に持ち込む教科書議連結成（安倍晋三事務局長）
１９９８年　日韓パートナーシップ宣言
２０１４年　日本共産党第２６回大会が北東アジア平和協力構想を提唱
(２０１５年１１月０１日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

文化／ＩＺＵ　ＰＨＯＴＯ　ＭＵＳＥＵＭ「戦争と平和」展／「国策宣伝」に変容した報道写真

震災復興、観光、五輪そして戦争…今と重なる時代の空気
　静岡県にある写真専門の美術館「ＩＺＵ　ＰＨＯＴＯ　ＭＵＳＥＵＭ」で戦後７０年特別企画展「戦争と平和　伝えたかった日本」が開催中です。日本が戦争になだれ込んだ時代に、情報の発信側はどんな日本像を伝えようとし、写真はどんな役割を果たしたのか―。
　金子徹記者

　同展は、１９３０年代から５０年代にかけての膨大な数の写真雑誌を中心に展示。報道写真がいかにプロパガンダへと変容したかをたどります。
　まずは、「報道写真」の訳語の生みの親を紹介。ドイツで活躍していた写真家の名取洋之助が３３年に帰国し、ドイツ語の「ルポルタージュ・フォト」を日本でも、と提案。美術評論家の伊奈信男が報道写真と訳しました。
　彼らが中心の制作集団・日本工房が３４年に創刊した季刊グラフ誌『ＮＩＰＰＯＮ』は、日本の文化を海外に宣伝するための雑誌。洗練されたデザインが持ち味です。名取は政府の外郭団体に接近し資金を獲得。次第に国策と一体化し、オリンピック招致の特集号も。
　その背景を、同館研究員の小原真史さんはこう語ります。
　「３０年代初頭から、日本は『満州事変』などの大陸進出による国際的イメージの悪化を懸念し、日本への観光客を呼び込むための事業を拡大しました。国際的に孤立するなか、関東大震災からの復興と観光日本を掲げ、オリンピックと万博の招致に力を注ぎました」
　さまざまな、日本のイメージ向上のための雑誌が展示され、侵略戦争を文化的イメージ宣伝でとりつくろおうとする苦心のあと、とも読みとれます。
　また､同じ３０年代の､国内向けに大陸への「夢」をかきたてるグラフ誌や、「大東亜共栄圏」向けのグラフ誌なども展示。写真によって伝えようとしたことと現実との差について、考えさせます。
　圧巻は、内閣情報部が３８年に創刊した『写真週報』。約３０万部の発行で回覧が奨励されていたため、数百万人の国民が目にしたといわれます。

狂信化の軌跡
　その表紙が展示室の壁一面を埋めるコーナーでは、おぞましいまでの戦意高揚の写真と精神主義的スローガンが配された表紙から、戦況の悪化とともに狂信的になっていく時代の｢空気｣が生々しく伝わります。
　小原さんは、『写真週報』についてこう指摘します。
　「活字に慣れていない人も含め､『カメラを通じて国策をわかりやすく国民に伝える』ことが目的でした。『読者のカメラ』という応募コーナーを設けてアマチュアも囲い込み、写真関連資材の不足を補おうともしました。毎号の広告では、インフレ回避と軍備拡充のために、消費を抑制させ貯蓄を奨励する国策の宣伝も担いました」
　終戦、そして冷戦へ。写真による「宣伝戦」は現代にも続くことを、展覧会は示唆します。
　大震災からの復興をうたったオリンピック招致､｢観光立国」のアピールなど、３０年代に通じるような側面のある現代に、歴史の意味と報道のあり方について考えさせる企画です。

１月３１日まで開催
　戦後７０年特別企画展「戦争と平和　伝えたかった日本」＝２０１６年１月３１日まで、静岡県長泉町東野クレマチスの丘３４７の１ＩＺＵ　ＰＨＯＴＯ　ＭＵＳＥＵＭ℡０５５(９８９)８７８０
(２０１５年１１月０１日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

辺野古新基地問題を語る／日本総合研究所理事長寺島実郎さん／沖縄でなく米国と交渉を

時代とずれる「安保」過剰依存／米「周辺国」では世界が相手しない
　沖縄県名護市辺野古に米軍新基地建設を強行しようとする安倍政権。翁長雄志知事の埋め立て承認取り消しにも、その効力を停止させ工事再開を急ぐ構えです。この問題をどうみるか。日本総合研究所理事長の寺島実郎さんに聞きました。
　田中一郎記者

　政府が今やるべきことは､沖縄と対立して､何が何でも基地建設を実現させることなのか。
　最近５年間をみると沖縄を取り巻く情勢は大きく変わりました。この変化を本土の人間こそしっかり理解しなければなりません。政府は、沖縄と対決するエネルギーを、米国に真剣に向き合うことにこそ向けるべきです。
　二つの変化があります。一つは、「オール沖縄」の県民意思が固まったことです。
　翁長知事を誕生させた沖縄の決意は、普天間基地を日本の別のところに移転するという程度の発想ではありません。沖縄を、基地を抱えた紛争の島でなく、東アジアの相互理解と協調を促す拠点に変えたい。その翁長知事の思いに県民は共感しています。
　翁長知事は、２１世紀の日本と東アジアの安全保障のあり方を問うているのです。
　もう一つの変化は、尖閣諸島をめぐる問題が先鋭化する中で、日米安保条約の本質が見えてきたことです。
　もし中国が尖閣諸島を攻撃したら、沖縄の米軍基地やオスプレイが守ってくれる。安倍政権はそう期待しています｡しかし､オバマ政権のスタンスは明快です。一つは、日本が尖閣の施政権を持っていることは認めるが、領有権にはコミットしない（態度を決めない）。二つめは、日米安保条約５条の責任（日本攻撃への共同対処）は果たすといいつつ、日中の領土紛争に巻き込まれ、米中戦争になるような事態は何としてでも避けたいということです。

〝あいまい作戦〟
　米国の東アジア戦略の本質は、東アジアにおける自国の影響力の最大化です。
　米中は戦略・経済対話を今年６月までで７回も積み上げています。
　日本に対しては「同盟責任を果たす」と言い続けて期待を高めるが、それは「米中軍事衝突」ではない。「除く戦争」というカードでサポートするという意味です。
　要するに、日本にも中国にも〝あいまい作戦〟で対応しています。私は「日米同盟さえあれば、米国が日本を守ってくれる」といった過剰期待、過剰依存では時代認識を正しく捉えられないと思います。
　安倍政権が安保法制を成立させ、沖縄と角を突き合わせて法廷闘争する、そんな構図こそ滑稽です。この５年間の変化を総括し、米国に正面から向き合い、在日米軍基地について真剣に議論する必要があると考えます。
　海外でのさまざまな反応を踏まえると、私は米国自身も変わり始めているように感じます。米連邦議会を通過した２０１６会計年度の国防権限法案から、普天間基地の移設先について､当初あった｢辺野古が唯一の選択肢」という条文が削除されました。
　ワシントンでは辺野古以外の案もありうると考え始めているのです。また、日本が安保法制で米軍をサポートしてくれるのは歓迎するが、日本の紛争に巻き込まれたくはない、という「二重の認識」が米国では定着しつつあります。

薄っぺらな認識
　冷戦が終わった直後、ドイツは米国と真剣に話し合い、在独米軍基地の思い切った縮小を実現しました。対照的に、日本はそのような交渉をするに至っていません。辺野古問題だけに立ち向かっても解答は必ずしも見えないでしょう。北の三沢基地(青森県)から沖縄の基地まで、議論のテーブルに載せ、日米でしっかり議論すべきです｡実現すべきは｢全体解の中での部分解」だと私は考えます。
　米国との亀裂をイメージさせることを言うべきでないという意見もありますが、逆です。米国の「周辺国」と位置付けられている限り、日本は世界からまともに相手にされません。そもそも、戦後７０年たっても外国の軍隊が「占領軍」の状況のまま存続していることに問題意識すら持たない国が独立国といえるのかと思います。
　米国における安倍政権に対する印象として、中国を危険な国と認識し、備えが必要であるという軍事中心の話が多いという指摘をよく耳にします。

沖縄方式に注目
　仮に襲いかかってきそうな隣人がいるとしても、賢く制御し、決定的衝突にならないようにしていくという話は一切ない。心の中では｢米中対立｣を祈っているようで、アジアの平和と繁栄をどう築くのかの展望は語らず、薄っぺらな世界潮流の認識に立っていると痛感します。
　沖縄では「辺野古しかない」という固定観念から脱して、保守勢力から共産党までが手を結んで翁長知事を誕生させました。私はこの「沖縄方式」には注目しています。
　いま共産党が提起している安保法制廃止の国民連合政府も、この沖縄方式の延長線上の展開でしょう。全面的に賛同するわけではないが、野党の現状の中で、今いちばん賢くしたたかに時代をつくろうとしているのが共産党かもしれません。

てらしま・じつろう＝１９４７年北海道生まれ｡三井物産常務執行役員など歴任｡現在､日本総合研究所理事長､多摩大学学長
(２０１５年１１月０１日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

朝鮮東学農民戦争を知っていますか？／宋基淑著、仲村修訳／評者小川輝光歴史教育者協議会会員・教員

民衆の視点から抗日の蜂起描く
　歴史教科書をひもとけば、１８９４年に朝鮮で起きた東学農民戦争が日清戦争の契機となったとある。しかし、役人の横暴に抗して始まった東学農民戦争が日本の侵略に反対する抗日戦争に発展し、その中で日本軍による徹底した虐殺が行われたことはまず書かれない。この本は、東学農民戦争に参加した農民の視点から、その全体像を描いた歴史物語である。
　なぜ朝鮮農民は蜂起し、近代装備の日本軍に竹やりと火縄銃で挑んだのか。中高生にも分かりやすい語り口で、多彩な登場人物を介し、その問いに答えが示される。主人公の若者の生活も描かれ、伝統と近代のはざまを懸命に生きる姿が印象に残る。近代化のうねりに民衆が向き合うその姿は、日本の秩父事件や中国の太平天国の乱とも重なる。
　翻訳出版の背景に二つの出来事があった。一つは韓国の民主化と歩調を合わせ、東学運動の再評価が進んだこと。もう一つは日本の大学で農民戦争の犠牲者の骨が発見された事件。以後、日韓の研究協力が進んだ。つまり、現代の民主主義と人権尊重の視点が､歴史に新しい光を当てた｡
　日本政府の歴史意識を示す安倍首相の戦後７０年談話は、日露戦争がアジアの人々を勇気づけたと断じた。しかし本書を読めば、朝鮮半島の植民地化が日清戦争時からすでに始まっていたこと、談話にはアジア民衆の視点が不在であることもよくわかる。
　書名の問いかけは「隠された事実を知っているか」であり、「アジア民衆の歩みに接する感度があるか」でもある。戦後７０年に、国会前集会など新たな社会運動の息吹を感じた今日ならではの読まれ方を､この本には期待したい｡

　ソン・ギスク　３５年生まれ。作家
( ２０１５年１１月０１日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

【１０月見出し】

強制労働の実態報告／朝鮮人など長野に３万人／松本でシンポ

第２次世界大戦終結７０年／中国・旧日本軍東寧要塞／侵略戦争の証拠突きつける

建国大学での志位委員長の講演／韓国側各氏のあいさつ・祝辞

戦後７０年北東アジアの平和―歴史をふまえ未来を展望する／建国大学での志位委員長の講演／その１

戦後７０年北東アジアの平和―歴史をふまえ未来を展望する／建国大学での志位委員長の講演／その２

志位委員長が訪韓／著書出版の建国大学が招待／講演や友好の集いに出席へ

〝歴史問題の解決がカギ握る〟／戦後７０年、北東アジアの平和語る／志位委員長が講演／韓国建国大

日本平和大会、今年の特徴は／日本平和委員会事務局長千坂純さんに聞く／なくそう日米軍事同盟・米軍基地

連合大会から／上／国民の声を受け

連合大会から／下／賃上げ・労働法制

怒りのうねり、結果に／神津新会長が強調／連合大会

〝安保法は暴挙だ〟／連合大会で古賀会長

戦後７０年、平和誓う／町など主催の集会／滋賀・日野

シリーズ現代の視点／東京大学名誉教授堀尾輝久さんに聞く／国民的「学びあい」―成熟する市民社

ここから日本を変える／シールズ渋谷街宣での大学生・高校生スピーチ

芸能テレビ／音楽／童謡と戦争／歴史掘り起こす

辺野古新基地埋め立て承認取り消し／翁長知事の会見要旨

日本・ベトナムの初合作映画「ベトナムの風に吹かれて」主演松坂慶子さん／平和へ手と手結ぶ交流を

憲法生きる社会へ行動／福島・女性９条＋２４条の会

侵略正当化の靖国神社に安倍首相が真榊奉納

願い込めきりえ展／１８日まで開催／名古屋

体験語り「戦争ダメ」／平和のつどい開く／自宅に焼夷弾直撃／女子も丸坊主…／岐阜市

おはようニュース問答／沖縄・翁長知事、歴史的決断に踏み切ったね

潮流

志位委員長、２０日から訪韓／建国大学で２２日に講演

戦争法廃止運動／役割を果たそう／滋賀県平和委つどい

戦争法廃止求め行動／〝平和・憲法壊さないで〟／北海道／秋田／福島／山形

埋め立て承認の取り消し／翁長・沖縄県知事の発言／要旨

後世に語り継ごう／「松川賞」の第１回授賞式

絵本作家田島征三さん／１９人の作家が共著『子どもたちへ、今こそ伝える戦争』／自由ない時代くる怖さ

１０ｓ２０ｓＹモード／高知で戦争体験聞き取り、記録集を発行／戦争になんか向かわせない

女子挺身隊訴訟／三菱は強制労働を謝れ／韓国の原告ら訴え／名古屋で集い

社会保障総改悪に反撃を／１５日から中央社保学校

第２次世界大戦終結７０年／朝鮮半島／今も残る支配の傷痕／１／「私の死を待っているのか」

第２次世界大戦終結７０年／朝鮮半島／今も残る支配の傷痕／２／「戦犯」にされ、謝罪もなし

第２次世界大戦終結７０年／朝鮮半島／今も残る支配の傷痕／３／被害者が生きているのに

第２次世界大戦終結７０年／朝鮮半島／今も残る支配の傷痕／４／二度と同じ被害生まない

戦後７０年考える講演会を開催／宮崎・高齢者大会

あいち赤旗まつり１１月１日開催／山下書記局長が講演

１５年民放連賞「マザーズ」など

虐殺生々しく／上等兵の日誌／遺族が公開

東京大学名誉教授姜尚中さん／『悪の力』を出版／正す「復元力」が人にはある

戦争を知らない私たち／地域の先輩から聞いた／東京大空襲で教え子全員失った…９条守ることは私の使命

米原子力空母横須賀交代配備／戦争の道具いらない／共産党・平和団体が抗議

【ＴoTＯＰ】

【10月本文】

強制労働の実態報告／朝鮮人など長野に３万人／松本でシンポ

　戦時中、長野県に連れてこられた中国人・朝鮮人の強制労働の実態を明らかにするシンポジウムが２５日、松本市で開かれました。松本市の三菱重工業半地下工場造りに駆りだされ、「松本と聞くだけでも、つらい」と語ったという中国人の話など、長年にわたり地道に続けられてきた、聞き取り・実態調査に基づく報告が行われました。
　「本土決戦と長野県」の全体報告では、終戦の１９４５年にかけ長野県へ軍関係施設の移転、軍需産業の疎開が相次ぎ、朝鮮人を中心に中国人・連合国捕虜を含む約３万人が、２０事業所で働かされたことを明らかにしました。
　名古屋から疎開した三菱重工の地下・半地下工場（松本市）や、平岡ダム（天龍村）、昭和電工工場（大町市）、松代大本営（長野市）の工事など、貴重な報告が続きました。
　木曽地域に現存する御岳・上松両発電所工事の報告者は、難工事にあたった間組社史にある「強制連行された朝鮮人・中国人」の記述にも言及。「１割以上が亡くなった。産業遺産として、この現場で何があったのか後世に伝えることが重要だ」と話しました。
　参加者の男性（７３）は、「歴史を忘れさせる動きがある。こうしたとりくみが広がり『国民的体験』となって、若い人に引き継がれてほしい」と語りました。
　同シンポは、「長野県強制労働調査ネットワーク」の戦後７０年にあたっての企画の一環で、長野市（９月）に次ぐもの。第３回は１１月２２日、飯田市で行います。
(２０１５年１０月２８日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

第２次世界大戦終結７０年／中国・旧日本軍東寧要塞／侵略戦争の証拠突きつける

建設に２０万人徴用／１０００人「慰安婦」に
　１９３１年の満州事変勃発後、旧日本軍が対ソ連戦に備えて造った１７カ所の要塞（ようさい）のうち最大といわれる東寧要塞。約２０万人の中国人を強制労働させたとされる要塞遺跡は、訪れた人たちに、日本の侵略が引き起こした歴史的事実を突き付けています。
　（東寧県〈中国黒竜江省〉＝小林拓也　写真も）

　中国東北部の東端、ロシア国境に接し、ロシアの工業都市、ウスリースクから５５キロの距離に位置する東寧要塞跡。２０以上の陣地から成り、幅１１０キロ、奥行き５０キロという巨大要塞です。
　１９３３年１月に東寧県を占領した旧日本軍は、３４年６月から要塞建設を始めました。中国側の研究によると、この巨大要塞や関連施設建設のため、４５年８月まで１７万～２０万人の中国人が徴用され、強制労働させられました。中国人たちは、要塞建設や道路整備など毎日２０時間近い労働による疲労や飢え、寒さが原因で、毎日数人が死亡。病気やけがで動けなくなる人も多くいました。

犠牲者を運んだ
　東寧県要塞博物館として公開されている勲山陣地に、地面を１㍍掘り下げ、高さ２㍍ほどの石とセメントでできた壁に囲まれた、約１００平方㍍の空間があります。現在は地面から伸びた木が生い茂っていますが、当時は旧日本軍が１００匹ほどのシェパード犬をこの中で飼っていました。
　日本兵は、まだ息のある病気などで動けない中国人を、この空間に投げ込みました。餌を与えられず腹をすかせた犬が彼らに襲い掛かり、骨だけになるまで食い尽くしました。
　強制徴用で犠牲になった中国人の具体的な人数や埋葬された場所はほとんど明らかになっていません。発見された数少ない場所の一つが、要塞の近く、トウモロコシ畑に囲まれた小高い場所にある「労工墳」です。２万平方㍍の広さに、１千以上の盛り土があり、４０００人以上の遺体が埋葬されたといいます。
　東寧県に住む劉永才さん（８８）は、１９３８年から終戦まで旧日本軍に徴用されました。当時、中国人の遺体をこの労工墳まで運んだと証言しています。７０年以上が過ぎ、風や雨で盛り土はなくなってしまいましたが、いまでも２０センチほど掘れば人骨が出てくるといいます。

世界中に事実を
　東寧県には多いときには１０万人の日本兵が滞在。当時、約４０カ所の「慰安所」があり、１千人近い「慰安婦」がいました。
　東寧県の老人ホームで暮らす李鳳雲さん（９３）は、平壌からだまされて連れてこられ、多いときには１日２０人以上の日本兵の相手をさせられました。戦後、結婚しましたが、子どもを産むことはできませんでした。いまは養子の男性（５９）が世話をしています。李さんは認知症で証言はできませんが、当時の記憶は体に染み付いており、いまでも夢を見てうなされるときがあります。
　東寧県要塞博物館の宋殿宝館長は「要塞跡は日本軍による中国侵略の揺るぎない証拠だ。歴史の悲劇を二度と繰り返させないために、世界の人々にこの事実を知ってほしい」と語ります。
( ２０１５年１０月２７日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

建国大学での志位委員長の講演／韓国側各氏のあいさつ・祝辞

　韓国・ソウル市内の建国大学で開かれた日本共産党の志位和夫委員長の講演会（２２日）での同大学の李良燮（イ・ヤンソプ）副総長の歓迎あいさつ、韓仁熙（ハン・インヒ）ＫＵ中国研究院院長の開会あいさつ、崔相龍（チェ・サンヨン）元駐日韓国大使の祝辞の要旨をそれぞれ紹介します。

歓迎あいさつ／李良燮建国大学副総長
　宋熹永（ソン・ヒヨン）総長に代わりお祝いの言葉を申し上げることができ光栄です。
　「戦後７０年　北東アジアの平和」というタイムリーで極めて重要なテーマで、日本の現役重鎮政治家の立場から踏み込んだ分析と的確な解釈から、北東アジアにおける平和に向けた取り組みを示してもらえると期待しています。
　今年は光復（植民地からの解放）７０周年、韓日国交正常化５０周年の年です。これを記念して、ＫＵ中国研究院と建国大学出版部は、委員長の著書『戦争か平和か』の韓国語版を出版しました。その縁が今回の特別講演につながりました。
　委員長は著書で、日本が戦争を追求する国ではなく、周辺国と人類のために平和を追求する国になることを切実に求めています。これは、私たちが過去の歴史から学ぶことができる最も重要な価値が、まさに平和であることを示しています。
　建国大学は、誠・信・義という学是の下に、教育を通じた国の再建に取り組んできました｡日本共産党も､絶えず革新し発展していく政党だと承知しています。
　ＫＵ中国研究院が、中国だけでなく北東アジア諸国との盛んな交流を通じて、研究院として発展するにあたって、志位委員長をはじめとする日本共産党のみなさまとのつながりは、大いに役立つと考えています。本日の特別講演が、長い縁の始まりとなることを願っています。

開会あいさつ／韓仁熙建国大学ＫＵ中国研究院院長
　建国大学ＫＵ中国研究院の特別講演を快諾してくださった日本共産党の志位和夫委員長に、心から感謝申し上げます。
　北東アジア地域における平和は、依然として平和が脅威にさらされています。韓日関係には依然として葛藤がつきまとっています。その土台には、平和というキーワードが関係しています。
　このような時、戦後７０年と北東アジアというテーマで志位和夫委員長を招請し、北東アジアの平和についての構想を聞くことのできる機会を得たことを大変うれしく思っています。
　韓半島を取り巻く北東アジアの平和は、この地域の相互協力と発展のための前提条件です。志位和夫委員長の講演を通じて、北東アジアの平和が定着し、韓日関係のさらなる協力と発展を図る貴重な機会になることを期待します。

祝辞／崔相龍元駐日韓国大使
　大韓民国を訪問してくださった日本共産党の志位和夫委員長を深く心から歓迎します。
　ＫＵ中国研究院は、実に意義深い決定をしました。志位委員長は日本の政界において、理論と実践の面で卓越した政治家です。
　志位委員長は日本の安倍首相と同じ年ですが、２人の政策討論を見て、志位委員長は政策討論の達人だという印象を受けました。
　わが国の国民が村山（元）首相の歴史認識を尊敬するように、本日お越しの志位委員長も、それに劣らず歴史問題において、われわれの立場を深く理解している方です。
　建国大学の学生のみなさん。共産主義といえば何をイメージしますか。まずは暴力革命だとか、こんなイメージがありませんか。志位委員長は徹頭徹尾、平和主義者です。政治は平和路線です。
　みなさんがお持ちの志位委員長の著書を読めば分かりますが、志位委員長は学生時代から平和に対する確固たる信念を持っていました。名前は和夫です。平和の和です。
　きょうのテーマは北東アジアの平和です。北東アジアの平和の核心は何だと思いますか。韓中日の協力です。韓中日の協力がなければ、北東アジアの平和はありません。韓中日協力について、志位委員長はどのような構想をお持ちなのか、私も聞きたいし、皆さんも聞きたいでしょう。
　今日のこの場は、志位委員長とご一行と、教授と学生が一緒に、歴史と平和について考える意義深い場です。
( ２０１５年１０月２４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦後７０年北東アジアの平和―歴史をふまえ未来を展望する／建国大学での志位委員長の講演／その１

　日本共産党の志位和夫委員長が２２日、訪問先の韓国の首都ソウル市内にある建国大学で、「北東アジアの平和――歴史をふまえ未来を展望する」と題して行った講演は次のとおりです。

　こんにちは。ご紹介いただきました日本共産党の志位和夫です。
　戦後７０年、日韓国交正常化５０年の節目の年にあたって、この講演の実現のために尽力していただいた建国大学の宋熹永（ソン・ヒヨン）総長、ＫＵ中国研究院・韓仁熙（ハン・インヒ）院長をはじめとするみなさんに、また、お集まりくださったみなさんに、心からの感謝を申し上げます。それから崔相龍（チェ・サンヨン）元駐日大使からは、私の名前の由来まで含めて温かいごあいさつをいただきました。心からの感謝を申し上げます。
　私たちの住む北東アジアの国ぐには、古くから相互往来の歴史と伝統を持ち、今日、経済的にも文化的にも、交流と相互依存の関係が発展しています。文化という点でも、日本国民はさまざまな形で韓国文化に接しています。私自身で言いますと、韓国の歴史ドラマが大好きです。「チャングムの誓い」「イ・サン」「トンイ」などが、ＮＨＫテレビで放映されました。私は録画してでもすべて見てきました。こうしたドラマを通じても、日本国民は韓国の文化、歴史への理解を深めてきたと思います。
　同時に、北東アジアの国ぐにの政治的協力という点ではどうでしょうか。この分野は、経済的・文化的な分野に比べて、大きな立ち遅れがあります。その原因はさまざまであり、この立ち遅れを打開するためには、双方の努力が必要だと考えますが、私は、日本の側の問題点としては、過去の歴史に対する姿勢という問題があると考えます。
　今日は、この問題に焦点をあてて、日韓両国の戦前の歴史、戦後７０年の歴史、そして未来に向けていかにして北東アジアの平和を築くかについて、私たちがどのように考えているかを、お話をさせていただきます。どうか最後までよろしくお願いいたします。

戦前――侵略戦争と植民地支配について

植民地支配の傷痕の深さ――過去の誤りに真摯に向き合ってこそ
　第一は、戦前の歴史――日本による侵略戦争と植民地支配の歴史についてです。
　私は、２００６年９月に、日本共産党党首としては初めての訪韓を行い、西大門刑務所歴史館を訪問し、朝鮮の愛国者に追悼の献花を行いました。韓国政界のリーダーの方々や、歴史学者、学生のみなさんと対話する機会をもつことができました。その後もたびたび訪韓し、各界のみなさんとの対話を重ねてきました。
　その全体を通じて痛感させられたのは、日本帝国主義による３６年間の植民地支配の傷痕、それへの怒りが、なお韓国国民のなかに深く存在しているということでした。植民地支配によって、国を奪われ、人間の尊厳を奪われ、言語や名前すら奪われたことへの痛みの深さは、特別のものがあると、強く感じました。同時に、韓国国民の多くが、日本との未来に向けた友好を切実に願っていることも感じました。
　歴史は書き換えることはできません。都合の悪いことを、消しゴムで消すこともできません。しかし向き合うことはできます。日本が、過去の歴史に真摯（しんし）に向き合い、この国の人々が被ってきた歴史的苦難を深く理解し、誤りを認め、清算してこそ、未来に向かって韓国のみなさんとの心を開いた交流は可能になる、これが私の実感です。私は、そうした真の友好にむけて、日韓両国政府の関係、両国国民の関係が前進するように力をつくすことをお約束するものです。

「５０年戦争」ともいうべき連続した侵略戦争の歴史
　日本は、１８６８年の明治維新の直後から、侵略の矛先をアジア諸国に向け、１９４５年の敗戦に至るまでの時期に、多くの侵略戦争を行ってきました。私たちが、その歴史をどのように認識しているかについて、お話をさせていただきたいと思います。
　まず、一連の侵略戦争の起点をどこにおくか。
　１９３１年のいわゆる「満州事変」――中国東北部への侵略戦争開始、１９３７年の中国への全面的な侵略戦争開始、１９４１年のアジア・太平洋戦争への拡大、そして１９４５年の敗戦にいたる、「十五年戦争」という捉え方は、すでに日本で定着した捉え方になっていると思います。
　しかし、その前は、平和な時代だったかというと、決してそんなことはありません。その前から日本は一連の侵略戦争を行い、それはアジアの諸国民に甚大な被害を与えるとともに、「十五年戦争」への道を開くことになりました。
　私は、日本が領土拡張と外国支配を目的とした本格的な侵略戦争に乗り出したという点では、１８９４～９５年の日清戦争と、１９０４～０５年の日露戦争、この二つの戦争が一大画期となっていると考えます。これを起点として、「５０年戦争」ともいうべき連続した侵略戦争の歴史が展開された――こう捉えますと、より広い視野に立って、歴史問題の全体像が捉えられるのではないかと思います。

日清戦争、日露戦争と、韓国・朝鮮の植民地化
　それでは、日清戦争とはどんな戦争だったか。
　この戦争が、それまでの清国による影響を排除して、日本が朝鮮を支配することを目的とした侵略戦争だったことは、否定しようもない歴史の事実です。１８９４年６月、日本は、東学農民革命の対応を口実に、朝鮮政府の要請もないまま、大軍を朝鮮に派兵し、ソウルを制圧します。そして朝鮮王宮を軍事占領して、国王と王妃を拘禁し、軍事的脅迫のもとで日本への協力を約束させたうえで、日清戦争を開始します。つまり日清戦争は、王宮軍事占領という、小規模ですが「日朝戦争」から開始されたことになります。
　１８９５年４月、日清戦争の結果、日本は、下関講和条約で、朝鮮半島からの清国の影響力の排除を約束させるとともに、台湾・澎湖列島と遼東半島を日本に割譲することを認めさせました。ただし、遼東半島については、ロシア・フランス・ドイツの要求によって清国に返還させられます。朝鮮での覇権を失うことを恐れた日本は、１８９５年１０月、日本による朝鮮支配に反対していた明成皇后（閔妃）を殺害するという暴挙を行いました。こうして、日本は、日清戦争によって、朝鮮の植民地化への最初の一歩を踏み出し、清国から台湾・澎湖列島を奪い取り、海外領土を保有する帝国主義国家となったのです。
　つづく、日露戦争とはどんな戦争だったか。
　この戦争の性格を一言で言えば、韓国と中国東北部の支配をめぐる、日露双方からの侵略戦争＝帝国主義戦争でした。日清戦争で、日本は朝鮮を支配下に置こうとしますが、結局はうまくいきません。逆にロシアの影響力が強まってきます。韓国からロシアの影響力を追い出して、今度こそ韓国をわが手におさめよう――日本にとっては、日露戦争とは何よりも韓国植民地化戦争でした。
　韓国は、この戦争に関わらないという態度をとったのですが、１９０４年２月、日本は、日露開戦と同時に、ソウルを軍事占領し、「日韓議定書」を強要して、日露戦争への協力を韓国に約束させます。そして、１９０５年９月、日露戦争の講和を決めたポーツマス条約では、韓国に対する日本の支配権を全面的に認めさせるとともに、南樺太を割譲させ、中国東北部の権益を奪うことを取り決めました。
　日露戦争の「勝利」の後は、日本の韓国に対する覇権は無制限になっていきます。１９０５年１１月、日本は「第二次日韓協約」＝「韓国保護条約」（乙巳条約）を押しつけ、外交権を完全に取り上げました。「保護条約」の「締結」は、伊藤博文が憲兵を引き連れて王宮に押し入り強引に調印させるという、野蛮きわまる軍事的強圧のもとに行われたものでした。
　文字通りの強盗的なやり方で、韓国の従属国化をはかった暴虐に対して、反日義兵闘争が韓国全土に広がります。日本は、韓国人民のたたかいを血の海に沈めて、１９１０年、「韓国併合条約」によって、韓国・朝鮮の植民地化を完成させました。
　こうして「韓国併合」は、日本軍による繰り返しの侵略、王妃の殺害、国王・政府要人への脅迫、民衆の抵抗の軍事的圧殺によって実現されたものであり、「韓国併合条約」は、日本が韓国に対して、軍事的強圧によって一方的に押しつけた不法・不当な条約です。私は、この疑いようのない歴史の事実をきっぱりと認め、両国・両国民の共通の歴史認識にすることが、未来にとってきわめて重要であると考えるものです。

「安倍談話」――歴史の事実を乱暴に歪曲する主張は許されない
　こうした日清戦争、日露戦争の性格は、韓国のみなさんにとっては常識に属することかもしれません。しかし、私が、あえてこの歴史の事実を強調したのは、いま日本で、この歴史の事実を乱暴に歪曲（わいきょく）する主張が公然と行われているからです。
　今年、８月１４日、安倍首相は「戦後７０年談話」を発表しました。「安倍談話」には、「侵略」「植民地支配」「反省」「お詫（わ）び」などの文言がちりばめられています。しかし、誰がそれを行ったのかの〝主語〟がありません。日本が「国策を誤り」「植民地支配と侵略」を行ったという、１９９５年の「村山談話」に示された歴史認識はまったく語られていません。さらに、「反省」と「お詫び」も過去の歴代政権が表明したという事実に言及しただけで、首相自らの言葉としては語らないという欺瞞（ぎまん）に満ちたものとなりました。
　それにくわえて、重大な表明がありました。「安倍談話」は、日露戦争について、次のように述べたのです。
　「日露戦争は、植民地支配のもとにあった、多くのアジアやアフリカの人々を勇気づけました」。
　私は、首相が平然とこう述べたことに、驚きとともに強い憤りを覚えずにはいられませんでした。いったい日露戦争が韓国の人々にどのような「勇気」をあたえたというのでしょうか。この戦争によって植民地化を押しつけられた韓国は、「アジア・アフリカ」の中に入らないとでもいうつもりでしょうか。
　日露戦争での日本の「勝利」は、その直後には、帝国主義列強の抑圧に苦しむ諸民族から歓迎を受けたという事実はあります。しかし、世界の人々は、真実をすぐに知ることになりました。それは、インドの独立・建国の父の一人、ジャワハルラル・ネールが、つぎのように述べているとおりです。
　「その（日露戦争の）直後の成果は、少数の侵略的帝国主義諸国のグループに、もう一国をつけくわえたというにすぎなかった。そのにがい結果を、まず最初になめたのは、朝鮮であった」。
　私たちは、明治以降の日本の侵略戦争を全面的に「名誉回復」しようという逆流を許さないことはもちろんですが、日清・日露戦争の正当化論のような、侵略戦争の部分的な「名誉回復」も決して許さない――そういう立場で奮闘する決意です。

独立と解放を求める韓国・朝鮮人民のたたかいと日本共産党
　植民地化は、韓国・朝鮮の人々に、長い苦難と犠牲を強いるものとなりました。同時に、独立と解放を求める韓国・朝鮮の人々の抵抗は切れ目なく続きました。なかでも１９１９年の「三・一運動」とよばれた大独立闘争は、２００万人あまりが参加し、朝鮮独立の意思を全世界に力強く訴えた、世界史的意義をもつたたかいとなりました。
　私が、紹介したいのは、当時の日本で、この朝鮮人民のたたかいに連帯したたたかいが存在していたということです。
　私は、９年前の初めての訪韓で、西大門刑務所歴史館を訪問したさいに、一つの歴史的文書のコピーをお渡ししました。今日もここに持ってまいりましたが、１９３１年３月１日付と、１９３２年３月２日付の日本共産党中央機関紙「赤旗」（せっき）です。「赤旗」は今日も続いておりまして「しんぶん赤旗」として大きく発展しています。
　ここには、「三・一運動」を記念して、朝鮮独立闘争への連帯を烈々と訴える論説が掲載されています。１９２３年の関東大震災のさいに多くの在日朝鮮人が虐殺された歴史を「恥づべき頁」だ、「この恥を雪（そそ）がなければならない」といって連帯を呼びかけています。次のようなスローガンが掲げられています。
　「朝鮮独立運動三・一記念日万才！」「日本、朝鮮、台湾、中国の労働者農民の団結！」「朝鮮農民に朝鮮の土地を返せ！」「打倒日本帝国主義！」「朝鮮、台湾、中国の植民地及び半植民地民族の完全なる解放！」。
　１９２２年に創立された日本共産党は、戦前、侵略戦争と植民地支配に命がけで反対し、日本帝国主義によって抑圧された諸民族との国際連帯を掲げてたたかった唯一の政党です。そのために多くの私たちの先輩たちは、弾圧され、命を落としました。私は、このたたかいは、２１世紀の未来にむけての日韓両国・両国民の友好にとっても、歴史的意義をもつものであると、確信するものです。

戦後７０年――歴史問題という角度から

戦後の自民党政治――過去の歴史にまともに向き合わない重大な弱点
　第二に、お話ししたいのは、戦後７０年の歴史についてです。
　日本の侵略戦争と植民地支配に対しては、明確な歴史の審判が下されました。日本が敗戦のさいに受諾したポツダム宣言には、日本の戦争は「世界征服」のための戦争――侵略戦争だったとの判定が明記されています。さらにポツダム宣言ではカイロ宣言の履行を義務づけていますが、カイロ宣言には、「朝鮮人民の奴隷状態」に留意し、「朝鮮を自由かつ独立のもの」とするとの規定があります。日本の戦争を侵略戦争と断罪するとともに、植民地支配の清算を求めたのがポツダム宣言だったのです。
　しかし、こうした宣言を受諾して戦後の再出発をしたはずなのに、戦後の自民党政治は、過去の歴史にまともに向き合おうとしない重大な弱点をもつものとなりました。
　まず侵略戦争に対する認識の問題です。歴代の自民党政府は、１９７０年代から８０年代くらいまでは、わが党が国会で政府に対して過去の日本の戦争の性格をただしても、「後世の歴史家が決めるものだ」といって逃げ続ける姿勢をとってきました。
　たとえば、日本と中国が国交を回復した翌年、１９７３年２月の国会で、わが党の不破哲三書記局長（当時）が、当時の田中角栄首相に対して、「あなたは過去の中国にたいする戦争について、これを侵略戦争と考えるのか、それとも別の戦争だと考えるのか」と質問しました。しかし、田中首相の答弁は、「過去の日本の戦争について聞かれても、……後世、歴史家が評価するものであるという以外にはお答えできません」というものでした。田中首相は、日中国交回復にあたって、中国で過去の戦争についての反省の言葉を述べてきたはずなのに、どんな性格の戦争だったかについては、口を拭って一切言おうとしなかったのです。同様の無責任な首相答弁は、１９８０年代の終わりくらいまで続きました。

植民地支配正当化論――日韓基本条約をめぐって
　それでは植民地支配に対する日本政府の認識はどうだったのか。率直に言って、侵略戦争に対する認識よりも、さらに遅れた認識が横行していました。
　戦後の日本政府の植民地支配に対する認識を最もよくあらわす二つの文書があります。ここに持ってまいりましたが、外務省が講和条約締結の準備過程で１９４９年に作成した「割譲地に関する経済的財政的事項の処理に関する陳述」と、１９５０年に作成した「対日平和条約の経済的意義について」という文書です。
　実は、当時、この二つの文書は「極秘」とされていました。半世紀以上も「極秘」とされ、２００５年に秘密指定解除となったものです。これらの文書では、朝鮮などの地域は「当時としては国際法、国際慣例上普通と認められていた方式により取得され（た）」ものだった、つまりまったく合法的なものだったとされています。さらに、朝鮮などの統治は「世にいう植民地に対する搾取政治」ではなく、「経済的、社会的、文化的の向上と近代化は専ら日本の貢献によるものであった」とされています。
　むきだしの植民地支配正当化論です。悪いことをしたという認識が少しもない。こういう認識で日韓国交正常化交渉を始めたわけですから、１９６５年の日韓基本条約に至る交渉過程、この条約をめぐる日本政府の認識には、大きな問題点があらわれました。
( ２０１５年１０月２４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦後７０年北東アジアの平和―歴史をふまえ未来を展望する／建国大学での志位委員長の講演／その２

　第一に、日韓交渉の過程で、日本政府代表から、「日本の朝鮮統治は、良い面もあった」「わが国は良いことをしようとした」などの「妄言」が繰り返し行われ、和解への重大な障害をつくりだしました。
　第二に、当時の佐藤栄作首相が、「韓国併合条約」について、「対等な立場、自由意思で締結された」という認識を繰り返し表明したことです。これは、日本が「併合条約」を野蛮な軍事的強圧のもとで押しつけたという歴史的事実を乱暴にねじまげるものでした。
　第三に、日韓基本条約には、植民地支配については一切言及されていません。第２条では、「韓国併合条約」等について「もはや無効」と宣言されました。しかし、この条項の解釈は、日韓両政府間で分かれました。日本政府は、「併合条約」等は、締結時から効力を発生し、有効だったが、１９４８年の大韓民国成立時に無効になったと解釈しました。これに対して、韓国政府は、「併合条約」等は、当初から無効であると解釈しました。すでに見た「韓国併合」に至る歴史的事実にてらすならば、「併合条約」は、当初から無効とみなされるべきだと、私たちは考えるものです。そういう方向で、両国政府間の解釈を一致させていくことが、日韓両国間に横たわる歴史問題を解決するうえで、いわば根本的な認識を共有するという点で、きわめて重要となると考えるものです。
　なぜ戦後の日本政治に、歴史問題に対するこうした弱点があらわれたのか。韓国のみなさんは、不思議に思われる方も多いと思います。
　ドイツの場合は、ヒトラー・ナチスに協力した指導勢力は処罰され、追放されました。しかし日本では、事情が大きく異なりました。侵略戦争と植民地支配を推進した指導勢力のうち、戦争犯罪人として裁かれたのはごく一握りの人々で、多くが「復権」し、戦後の日本政治の中枢を握ることとなったのです。こうした歴史的事情が、今日なお歴史問題での逆流が繰り返される根本に横たわっているのです。
　靖国神社の参拝問題、日本軍「慰安婦」問題、歴史をゆがめる教科書問題、過去の戦争や植民地支配を賛美する数々の暴言――これらが今日も続いている歴史的根源には、そうした問題があることを、私は、きびしく指摘しなければなりません。

前向きの変化――１９９０年代の「河野談話」「村山談話」
　日本国内外の批判と運動におされて、歴史問題に対する日本政府の姿勢は、１９９０年代に入って前向きの変化が起こります。
　１９９３年８月、日本軍「慰安婦」問題について、軍の強制を認め、「心からのお詫びと反省」を表明した、河野洋平官房長官の談話が発表されました。
　同年、８月、細川護熙首相は、記者会見で、過去の日本の戦争を「侵略戦争」とする認識を表明しました。
　続いて、１９９５年８月、村山富市首相は談話を発表し、日本が「国策を誤り」、「植民地支配と侵略」によって多大な損害と苦痛を与えたことを認め、「痛切な反省」と「心からのお詫び」を表明しました。日本政府が「植民地支配」という言葉を用いて謝罪したのはこれが初めてでした。さらに村山首相は、「韓国併合条約」について、国会答弁で、「対等平等の立場で結ばれた条約とは考えておりません」と表明しました。これらの言明は、内外で肯定的に評価されました。
　日韓両国の関係でも、前向きの変化が起こりました。１９９８年、金大中大統領が来日し、小渕恵三首相との間で、「日韓パートナーシップ宣言」が行われました。この「宣言」では、「日本の韓国に対する植民地支配への反省」という表明が、日韓両国の公式文書では初めて盛り込まれました。先ほどごあいさつをいただいた崔相龍大使には、当時、大きなご尽力をいただいたと聞いております。

逆流の台頭――歴史を偽造する極右勢力による政治支配を一日も早く終わらせる
　ところが日本政府のなかに歴史問題での前向きの変化が起こったまさにその時に、この変化に危機感を燃やした逆流が起こります。
　１９９３年８月、自民党内に、「歴史・検討委員会」という組織がつくられました。この組織は、２年後の１９９５年８月、『大東亜戦争の総括』という本を発表します。そこでは〝過去の日本の戦争は、アジア解放と日本の自存・自衛の戦争であり、正義の戦争〟だと結論づけられました。南京大虐殺や日本軍「慰安婦」問題も、すべてでっちあげだったとされました。
　この潮流は、こうした〝侵略戦争礼賛〟論を学校教育に持ち込もうと企て、歴史をゆがめる教科書づくりの運動を起こしました。１９９７年２月には、この運動を応援する国会議員の組織を発足させました。この国会議員の組織の事務局長に抜てきされたのが、当選４年目の安倍晋三氏だったのです。
　日本の政治の現状は、安倍晋三氏を先頭とする〝侵略戦争礼賛〟の異質の潮流が、政権と自民党をのみこんだ状態にあります。このような異常は一刻も放置できません。歴史を偽造する極右勢力による政治支配を一日も早く終わらせるために全力をつくす。これが私たち日本共産党の強い決意です。

未来にむけて――北東アジアの平和をどうやって築くか

戦争法（安保法制）を廃止し、「国民連合政府」の実現を
　第三に、お話ししたいのは、未来に向けて北東アジアの平和をどうやって築くかということについてです。
　９月１９日、安倍政権は、空前の規模で広がった日本国民の反対の世論と運動に背いて、安保法制――私たちが戦争法と呼んでいる一連の法案の採決を強行しました。私たちは、この戦争法ばかりは、政府・与党の「数の暴力」で成立させられたからといって、それを許したままにしておくことは絶対にできないものだと考えています。
　国会論戦を通じて、戦争法が、日本国憲法第９条を蹂躙（じゅうりん）して自衛隊の海外派兵を進め、日本を「戦争をする国」につくりかえる違憲立法であることは明瞭となっています。それを進めたやり方も、「憲法９条のもとでは集団的自衛権は行使できない」という６０年余にわたる政府の憲法解釈を一内閣の専断で覆すという、立憲主義を乱暴に破壊するものでした。
　日本の自衛隊は、戦後、一人の外国人も殺さず、一人の戦死者も出していません。これは、何よりも憲法９条の偉大な力によるものです。この平和の歩みを断ち切り、「殺し、殺される日本」につくりかえることは、絶対に認めるわけにはいきません。
　日本共産党は、戦争法が強行されたその日に、「戦争法廃止の国民連合政府」の「提案」を行いました。私たちの「提案」は、つぎの三つの柱からなっています。
　第一は、戦争法（安保法制）を廃止し、安倍政権打倒を求めるたたかいをさらに発展させようという、たたかいの呼びかけです。
　第二は、戦争法廃止で一致する政党・団体・個人が共同して「国民連合政府」をつくろうという、政府の提唱です。
　第三は、「戦争法廃止の国民連合政府」で一致する野党が、国政選挙で選挙協力を行おうという呼びかけです。
　この｢提案｣は、大きな国民的反響を広げつつあります。わが党と野党各党との話し合いも始まりました。戦争法案にたいして、野党５党――日本共産党、民主党、維新の党、社民党、生活の党は、結束して反対を貫きました。私は、この土台のうえに、誠実に話し合いを行うならば、野党間で合意が実現する可能性は大いにあると考えています。
　そして、「戦争法廃止、立憲主義回復、国民連合政府」という大義の旗を掲げ、野党が一致結束してたたかうならば、直面する国政選挙で勝利し、安倍政権を退陣に追い込み、それに代わる新しい国民の政府をつくる道が開かれうると考えています。
　いま日本は、戦後最大といってもいい歴史的激動のなかにあります。戦争法廃止を求めて、国民一人ひとりが、主権者として、自覚的・自発的に声をあげ、立ち上がるという、戦後かつてない新しい国民運動が広がっています。韓国のテレビ等でも紹介されていると聞きましたが、そのなかで若者が素晴らしい役割を発揮しているのは、日本の未来にとって大きな希望です。
　「国民連合政府」が実現し、この政府のもとで、日本国憲法の平和主義・立憲主義・民主主義を貫く新しい政治への一歩が踏み出されるならば、それは日本の政治に希望ある新局面をつくりだすだけでなく、アジアと世界の平和的未来への貢献にもなることは疑いありません。私は、この歴史的チャレンジを成功させるために、あらゆる知恵と力を注ぎたいと強く決意しています。

「北東アジア平和協力構想」――この地域に真の平和、安定、友好を
　それでは北東アジアの平和と安定をどうやって築くか。
　安倍首相は、戦争法を強行するさいに、ひたすら「抑止力強化」ということを繰り返しました。私たちの住む北東アジアには、さまざまな紛争と緊張の火種が存在します。しかし、そうした問題に対して、日本が「抑止力強化」の名で、もっぱら軍事で構えたらどうなるでしょう。相手も、軍事力の増強を加速することになるでしょう。そうした〝軍事対軍事〟の悪循環に陥ることこそ、最も危険なことではないでしょうか。どんな問題も外交的解決に徹する、そのために憲法９条の精神に立った平和の外交戦略を確立することこそ、いま日本に求められていることだと考えます。
　私たちは、その大きなヒントが東南アジアの国ぐに――ＡＳＥＡＮ（東南アジア諸国連合）が実践している地域の平和協力のとりくみにあると考えています。ＡＳＥＡＮは、ＴＡＣ（東南アジア友好協力条約）を締結し、この条約を土台にして「紛争を戦争にしない」――あらゆる紛争問題を話し合いで解決する重層的な平和と安全保障の枠組みをつくりあげています。ＡＳＥＡＮが現に実践している地域の平和協力の枠組みを、北東アジアにも構築しよう。こうした立場から、日本共産党は「北東アジア平和協力構想」を提唱し、その実現のために関係各国との対話を続けてきました。具体的には次の４点です。
　一つは、北東アジア規模の「友好協力条約」を締結する。二つは、北朝鮮問題は、困難はあっても「６カ国協議」の枠組みで解決する。三つは、この地域に存在する領土にかかわる紛争問題をエスカレートさせない行動規範を結ぶ。そして四つは、日本が過去に行った侵略戦争と植民地支配の反省は、地域の友好と協力のうえで不可欠の土台となる。これが私たちの提唱する「北東アジア平和協力構想」の中身です。
　私たちは、この「構想」こそ、安倍政権の戦争法に対する真の平和的対案であると確信するものです。この「構想」はまた、韓国の朴槿惠（パク・クネ）大統領が提唱している「北東アジア平和協力構想」、インドネシア政府が提唱している「インド・太平洋友好協力条約」の構想などとも方向性を共有し、響き合う内容となっていると考えます。
　この「構想」を実らせるうえで最大のカギの一つとなるのが、今日の講演の主題である歴史問題の解決にほかなりません。日本共産党は、戦後７０年の節目のこの年を、日本とアジア諸国との「和解と友好」に向かう年とするために、日本の政治がとるべきつぎの五つの基本姿勢を提唱しています。
　第一は、「村山談話」「河野談話」の核心的内容を継承し、談話の精神にふさわしい行動をとり、談話を否定する動きに対してきっぱりと反論することです。
　第二は、日本軍「慰安婦」問題について、被害者への謝罪と賠償など、人間としての尊厳が回復される解決に踏み出すことです。
　第三は、少なくとも首相や閣僚による靖国参拝は行わないことを、日本の政治のルールとして確立することです。
　第四は、民族差別をあおるヘイトスピーチを根絶するために、立法措置も含めて、政治が断固たる立場に立つことです。
　第五は、「村山談話」「河野談話」で政府が表明してきた過去の誤りへの反省の立場を、学校の教科書に誠実かつ真剣に反映させる努力をつくすことです。
　みなさん。この５項目ですが、いかがでしょうか。
　北東アジアに平和と安定を築く基礎となるのは信頼です。信頼がなければ心を開いた対話はできず、真の平和をつくりだすことはできません。そして、信頼は、歴史の真実に正面から向き合い、誠実かつ真摯に誤りを認め、未来への教訓とする態度をとってこそ、得ることができる。これが私たちの確信です。
　日本の政治がこうした理性ある方向に進み、北東アジアに真の平和、安定、友好をつくりだすために、力のかぎり奮闘することをお約束して、私の講演を終わります。ご清聴ありがとうございました。
( ２０１５年１０月２４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

志位委員長が訪韓／著書出版の建国大学が招待／講演や友好の集いに出席へ

　日本共産党の志位和夫委員長は２０日から韓国を訪問しています。それに先だつ１９日に党本部で記者会見した志位氏は、今回の訪韓について説明しました。
　今回の訪韓は、韓国の建国大学の招きで講演を行うためのもの。
　同大学は、ソウルと忠州市にキャンパスを持ち、約２万５０００人の学生・院生が在学する韓国有数の総合私大です。戦後７０年、日韓国交正常化５０年の今年、同大学の記念事業の一環として、志位氏の著書『戦争か平和か―歴史の岐路と日本共産党』の韓国版を刊行｡志位氏が「韓国語版序文」と「あとがき」を寄せました。講演は刊行と合わせて企画されました。
　講演は２２日午後、ソウル市にある同大学法学専門大学院の国際会議室で行います。
　この機会に志位氏は､日韓､韓日の両親善協会と在日本大韓民国民団が２１日にソウルで開く「日韓親善友好の集いｉｎ　Ｓｅｏｕｌ｣にも招待を受け､来賓として出席しました。

　訪韓には、緒方靖夫副委員長、笠井亮衆院議員、森原公敏国際委員会副責任者、田川実同事務局長らが同行します。

植民地正当化する外交文書告発／出発前会見
　志位氏は今回の訪韓を記者会見で説明する中で、朝鮮にたいする過去の日本の植民地支配をめぐる問題について、外務省文書を示して告発し、政府の姿勢を批判しました。
　志位氏が取り上げたのは、１９４９年１２月作成の「割譲地に関する経済的財政的事項の処理に関する陳述｣と､５０年５月作成の「対日平和条約の経済的意義について」という２文書。いずれも長く「極秘」扱いされ、２００５年にようやく秘密指定解除されました。
　二つの文書は、朝鮮などの地域について、「当時としては国際法、国際慣例上普通と認められていた方式により取得され（た）」ものであり、その統治は、「世にいう植民地に対する搾取政治」ではなく、「経済的、社会的、文化的の向上と近代化は専ら日本の貢献によるものであった」などとしています。
　志位氏は「ここには、むき出しの〝植民地支配正当化論〟が述べられている」と指摘しました。さらに志位氏は、この認識をベースに１９６５年に締結された日韓基本条約の問題点にもふれ、「日本政府は侵略戦争の反省以上に植民地支配の反省が遅れている。この問題の根っこには二つの文書があり、これを両国国民に隠したまま交渉していたのは日本外交の大問題だ」と強調しました。
(２０１５年１０月２５日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

〝歴史問題の解決がカギ握る〟／戦後７０年、北東アジアの平和語る／志位委員長が講演／韓国建国大

　【ソウル＝中祖寅一】日本共産党の志位和夫委員長は２２日、ソウル市内の建国大学で、「戦後７０年　北東アジアの平和―歴史をふまえ未来を展望する」と題して講演を行いました。正門をはじめ学内の数カ所に「志位和夫日本共産党委員長講演」「歓迎」の横断幕がかけられる中、会場にはアジア政治や歴史の研究者のほか、多くの学生が詰めかけ、志位氏の話に熱心に耳を傾けました。

　講演会では冒頭、李良燮建国大学行政対外副総長が、公務で欠席した宋熹永総長の祝辞を代読。元駐日韓国大使の崔相龍氏が「北東アジアの平和は、韓国、日本、中国の協力がなければ実現できません」とお祝いのあいさつをしました。

日韓関係の戦前・戦後
　大きな拍手で迎えられた志位氏は「日本と韓国の間では経済的、文化的交流が進展する一方、政治の分野で協力が遅れています。そこには過去の歴史に誠実に向き合うかどうかという問題が横たわっています」と切り出し、日韓関係の戦前・戦後・未来を、平和の観点から見つめたいと提起しました。
　志位氏はまず、戦前の問題として、「韓国併合」の歴史的過程について語りました。日清戦争、日露戦争が韓国の植民地化戦争であり、「韓国併合条約」（１９１０年）は軍事的強圧による不法・不当な条約だと強調しました。
　安倍晋三首相が「戦後７０年談話」で「日露戦争は、植民地支配のもとにあった、多くのアジアやアフリカの人々を勇気づけた」として、あからさまな植民地支配の正当化をしたと批判しました。
　戦後の歴史について志位氏は、植民地支配についての日本の認識と反省が、侵略戦争に対するものよりも遅れていると強調。１９４９年と５０年に作成された二つの外務省文書（２００５年に解禁）でむき出しの植民地支配正当化論が書かれていることを告発しながら、「こうした歴史認識の遅れの根本には、戦犯勢力が戦後の日本政治の中枢に復権した問題があります」と述べました。

歴史問題の変化と逆流
　同時に志位氏は、９０年代以降、日本の国内外の批判と運動におされて歴史問題に対する日本政府の姿勢に「前向きの変化」が起こったと指摘。「河野談話」や「村山談話」などが内外で肯定的に評価されたと述べました。
　この変化に対し政治の中で逆流が台頭、「その勢力の中心として抜てきされ、台頭してきたのが安倍首相であり、そのような〝侵略戦争賛美〟勢力に自民党全体がのみこまれた状態」だと説明。この異常は一刻も放置できないとして、「歴史を偽造する極右勢力による政治支配を一日も早く終わらせるため全力を尽くします」と決意を表明しました。

国民連合政府への挑戦
　「それでは未来に向け北東アジアの平和をどうつくるか」と問いかけた志位氏は、いま日本では戦争法廃止、安倍政権打倒のたたかいを発展させ、「国民連合政府」をつくる「歴史的なチャレンジに取り組んでいる」と紹介。国民連合政府が実現すれば、日本の政治に新局面を開くとともに、「アジアと世界の平和への貢献となります」と強調すると、会場からは拍手が起こりました。
　さらに日本共産党の「北東アジア平和協力構想」を紹介。ＡＳＥＡＮ（東南アジア諸国連合）の実践を参考にして、紛争を戦争にしない枠組みを北東アジアにもつくりたいとして、「この構想こそ安倍政権の戦争法に対する、真の平和的対案だと確信します」と力説。「提案を実らせるカギの一つが歴史問題の解決」だとして、戦後７０年にあたって日本の政治が取るべき基本姿勢について語りました。
　講演を聞いた外交関係者や学生からは、「非常に素晴らしい内容だった」、「踏み込んだ分析と的を射た解釈で、北東アジアにおける平和にむけた取り組みを示していただいた」などの感想が聞かれました。日韓のメディア各社が取材し報道しました。
( ２０１５年１０月２３日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

日本平和大会、今年の特徴は／日本平和委員会事務局長千坂純さんに聞く／なくそう日米軍事同盟・米軍基地

　「なくそう！日米軍事同盟・米軍基地２０１５年日本平和大会」が３１日から１１月１日まで静岡県御殿場市で開かれます。日本平和委員会の千坂純事務局長に、今年の特徴などについて寄せてもらいました。

　今回の特徴は、第一に、全国に大きく広がっている戦争法廃止を求める運動を交流し、発展させることです。特に、開催地にある東富士・北富士演習場での演習をはじめ、日米軍事同盟強化の状況を、全国からの報告でリアルに学び、交流します。
　第二に、沖縄県の翁長雄志知事が新米軍基地建設の埋め立て承認取り消しを決定したことにより、新たな局面を迎えた県民の新基地建設反対のたたかいを全国に広げる大会です。これと結び、基地のない日本をめざす運動を交流します。
　問題の根っこに日米軍事同盟（日米安保条約）があることが鮮明になっています。大会の第三の特徴は、日米軍事同盟をなくしてこそ憲法のいきる平和な日本とアジアをつくることができる展望を、学び、議論します。

充実した初日
　平和大会初日は充実した内容です。大きな目玉は、世界遺産で、日本の象徴である富士山のふもとを視察します。東富士演習場では、米海兵隊１５５㍉りゅう弾砲砲撃演習で残虐兵器・白リン弾が撃ち込まれました。海兵隊輸送機オスプレイの訓練や自衛隊の戦車砲撃演習が行われています。現地で〝まるで戦場だ〟の声が上がっている実態を参加者全員で視察・学習する企画です。
　これに続く全体集会では、憲法学者の清水雅彦さん（日本体育大学教授）や日本共産党の井上哲士参院議員が来賓あいさつします。元自衛官で自衛隊員だった兄が徒手格闘訓練で死亡した島袋恵祐さんの訴えをはじめ、全国の戦争法反対の運動を交流します。
　沖縄からの訴えをはじめ、現地の東富士・北富士演習場、オスプレイ配備が計画される横田（東京）、新たな原子力空母配備が強行された横須賀（神奈川）など、米軍基地強化反対の運動交流もあります。

多彩な分科会
　大会２日目は多彩なテーマの分科会です。
　「国際交流分科会」では、「戦後７０年、アジアの中の日本―いま東アジアの平和に何が問われているか？」がテーマです。韓国代表の参与連帯平和軍縮センター所長イ・ミヒョンさん、中国人研究者の劉傑さん（早稲田大学教授）、日本平和委員会常任理事の川田忠明さんが語り合います。
　このほか、戦争法と憲法、自衛隊、沖縄と米軍基地、オスプレイ、暮らしと安保、核兵器と安保、入門分科会、実弾砲撃演習交流会、映画「ザ・思いやり」上映と制作したバクレーさんとの交流企画などがあります。どれも、戦争する国づくりを許さないたたかいの参考になります。
　平和大会の最後は、パレードです。戦争法廃止、基地はいらないと思う人ならだれでも参加できます。いっしょにコールしましょう！
　◇
　申し込み・問い合わせ先＝中央実行委員会℡０３（３４５１）６３７７
( ２０１５年１０月２１日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

連合大会から／上／国民の声を受け

　連合は６～７日、東京都内で第１４回定期大会を開きました。連合は、安保法案や労働法制改悪に反対し、２年連続で賃上げ春闘に取り組みました。大会最終日、新会長に選出された神津里季生氏は、「普通の国民、普通の市民から『こんなことでいいのか』と怒りがわき起こっている。このうねりを何としても結果に結びつける。まともな政治を自分たちの手に取り戻す」と新任あいさつで強調しました。これをどう具体化していくか注目されています。
　大会討論でも、連合が今後も積極的な行動を続けることを求める声が相次ぎました。
　「連合のスタンスは注目されている。安倍政権は安保法案で反対の世論を押し切り、許せない。立憲主義をないがしろにし、改憲も目指している。必要な発信をしてほしい」（自治労）
　「終盤に行動提起したが、他団体との共闘は十分だったか。私たちは弁護士会とは共闘ができたが、他団体との共闘は必ずしも十分ではなかった。参院選につながっていくので考えたい」（連合北海道）
　◇
　先の通常国会で、連合は安倍政権との対決姿勢をとり、安保法案に反対する宣伝や集会に取り組みました。
　８月２３日には、結成以来、初めて政治課題で国会を取り囲む「安倍政権にＮＯ！　国民の声、怒りの大行動」を行いました。目標の１万人を上回る１万４０００人の組合員たちが参加しました。神津会長は大会後の会見で、「いま安保法制をきっかけに、普通の国民、普通の市民が『このままじゃいけない』と声をあげている。その意味では、連合の組合員も、普通の国民、普通の市民の集まりだ」と指摘しました。
　国会前では、マイクを握った自動車総連の代表が「戦後７０年、日本は周辺国との平和を礎に、経済、文化、生活を発展させてきた。われわれが積み重ねてきた歴史の重みを踏まえ、自動車総連は法案阻止を力強く訴えていきます」と強調しました。
　教職員の女性は「子どもたちが誰一人として、戦争で命を失うことがあってはなりません」と主張。ＮＴＴなどでつくる情報労連の代表は「安保関連法案は憲法違反であり、断固反対します。日本の平和と民主主義は、私たちが行動することで守らなければなりません」と訴えました。
　通常国会の最終盤では、連日、国会前でも安保法案阻止の独自行動を展開しました。
　◇
　こうした声の高まりのもとで、神津会長は大会レセプションで、「民主党が中心になって、国民の思いを受け止める形をつくっていただきたい。そういった思いを持っていることを普通の国民の立場として申し上げる」と呼びかけました。大会後の会見で野党共闘のあり方について問われ、「何かこの形でなくちゃいかんということではない。政党同士が話をしながら決めていく」と述べました。
　（つづく）
( ２０１５年１０月２１日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

連合大会から／下／賃上げ・労働法制

　「中小企業、非正規雇用などの底上げのため、賃上げを継続して結果を出す必要がある」（ＪＡＭ）
　連合大会の討論では、賃金底上げ、格差是正を引き続き求める声がだされました。
　連合は２０１４年、１５年の春闘を連続して、月例賃金引き上げ（ベースアップ＝ベア）に取り組みました。１５年春闘のベア２％という要求水準は、満額獲得しても物価上昇や消費税増税の影響による実質賃金の下落を回復できないという課題を残しました。
　神津里季生会長は、大会後の会見で「低きに張り付いていた賃金水準を引き剥がした」と指摘。同時に「世の中を全体としてみたとき、まだまだ底上げにはなっていない」と課題をあげました。
　また「労働分配率あるいは内部留保の問題など底上げを考えるときに、財源として取引先、グループ、系列とかに手厚くてしかるべきではないか。そこに力を入れていく」と述べました。賃上げのために内部留保の活用にふれたことは注目されます。
　１４年度の財務省「法人企業統計」によれば、資本金１０億円以上の大企業（金融・保険業を除く）の内部留保は２９９・５兆円。賃上げが経済の好循環を実現する決め手として重要性が高まっているなかで、連合が賃上げにこだわることは重要です。
　◇
　労働法制改悪をめぐっては、今回の労働者派遣法改悪について「生涯ハケンで低賃金」のキャッチフレーズで反対運動を展開しました。節目ごとに全国的なキャンペーンや国会前座り込みなどに取り組みました。
　労働政策審議会が行われた厚生労働省前や国会前で、連合が行動をおこない、時間を前後して全労連や全労協などでつくる「安倍政権の雇用破壊に反対する共同アクション（雇用共同アクション）」も宣伝しました。共通する要求で自然発生的な同時行動になりました。
　派遣法改悪案は強行成立させられたとはいえ、２回にわたって廃案に追い込み、先の通常国会でも採決が当初予定されていた施行日に間に合わなくなりました。
　安倍政権は今後、「残業代ゼロ」の高度プロフェッショナル制度創設や裁量労働制の拡大などを内容とする労働基準法改悪法案の成立、解雇の金銭解決制度導入などを狙っています。
　神津会長は会見で、「労働法制の問題は、私どもにとっては一丁目一番地だ。集会、国会前の座り込みだとか、デモも含めてやってきた。いまの社会状況、政治状況をみれば、社会に訴えていくことは極めて重要だ」と今後も運動を強めることを強調しました。
　川本淳会長代行は、「労働者保護ルールの改悪など圧倒的多くの働く者が反対している課題について、さまざまな議論をしたうえで、実施させないことをしていく必要がある」と指摘しました。
　雇用破壊を食い止め、大幅賃上げで労働者の生活を守り、経済の好循環をつくる―。すべての労働者の願いにこたえられるか問われています。
　（おわり）
( ２０１５年１０月２２日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

怒りのうねり、結果に／神津新会長が強調／連合大会

　連合は７日、東京都内で行われた第１４回定期大会で、新役員として、神津里季生会長（前事務局長、基幹労連）、川本淳会長代行（自治労）、逢見直人事務局長（ＵＡゼンセン）らを選出しました。
　新任あいさつで神津会長は「国民や普通の市民から『こんなことでいいのか』という怒りがわき起こっている。こうしたうねりを結果に結び付けないといけない。働く者のための政策を実現し、まともな政治を取り戻す」と強調。大会レセプションでは「民主党が中心となって、国民の思いを受け止める形をつくっていただきたい」と述べました。
　大会後の記者会見で、「安保法制をきっかけに普通の市民が声をあげている」と指摘。野党再編について問われ、「一強多弱ではなく、片方に受け皿があるということだが、何かこの形でなくてはならない、ということではない。政党同士が話をしながら決めていくということだ」としました。
　他団体との協力について問われた川本会長代行は「歴史や経過のある団体もときにはあるだろうが、すべての団体と議論はしていかなければならない。国民世論を二分するような課題や、圧倒的多くの働く者が反対している労働者保護ルール改悪について、議論をしたうえで、実施させないことをしていく必要がある」と指摘しました。
( ２０１５年１０月０８日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦後７０年、平和誓う／町など主催の集会／滋賀・日野

　滋賀県日野町で１８日、平和への誓いを新たにする集会が開かれ、町民７５０人が参加しました。主催は、町や遺族会、ＰＴＡ連絡協議会、地区労働組合協議会など１３団体による戦後７０年事業実行委員会と町文化振興事業団です。
　藤澤直広町長はあいさつで「実行委員会のみなさんの手で戦後７０年事業が実施されている町というのは、全国でもそんじょそこらにない。誇りに思っている」と述べました。また、「この国では安全保障法制（戦争法）をめぐって大変厳しい議論がされてきた。しかし､『憲法の理念に沿ってどうなのか』ということを私どもはしっかりと検証しなければならない｣と話しました｡
　日野中学校が修学旅行で訪れる、長崎市の田上富久市長が「Ｐｅａｃｅ　ｆｒｏｍ　日野町」と題して講演し、核兵器の廃絶を訴えました。
　戦争の記憶を伝える町民の手記３編が朗読されました。
( ２０１５年１０月２０日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

〝安保法は暴挙だ〟／連合大会で古賀会長

　連合は６日、東京都内で第１４回定期大会を行いました。
　古賀伸明会長は、先の通常国会について「この国の将来に重い影を落とした」と批判。労働者派遣法改悪は「無原則な派遣労働の拡大を許す」と指摘し、安保関連法は「立憲主義、民主主義を根底からゆるがす暴挙だ」として、「私たちのたたかいは続く」と強調しました。
　政権交代可能な政治勢力の結集の必要性を強調し、民主党への国民の信頼が戻っていないとしつつ、民主党が野党結集の軸になるべきだとしました。来年の参院選を「重要なステップだ」と位置づけました。来年春闘について、「賃上げを起点とする好循環を軌道に乗せるためにも、引き続き賃上げを求める方向で討論を深める」と強調しました。
　神津里季生事務局長は､｢一強多弱が矛盾を生んでいる。受け皿を明確にしなければならない｣と指摘しました｡
　討論では、「中小企業、非正規雇用などの底上げのため、賃上げを継続して結果を出す必要がある」（ＪＡＭ）、「昨年の集団的自衛権行使容認の閣議決定以来、集会やデモをしたが、他団体との共闘が十分ではなかった。参院選に向け考えたい」（北海道）などの発言がありました。
( ２０１５年１０月０７日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

シリーズ現代の視点／東京大学名誉教授堀尾輝久さんに聞く／国民的「学びあい」―成熟する市民社会

人権と主権者教育を軸に
　戦争法反対で大きく広がり法律成立後も続く国民的な運動。この動きをどう見るか、１８歳選挙権実施の中で今後の教育で考えるべきことは何か―教育学者の堀尾輝久・東大名誉教授に聞きました。
　（西沢亨子）

　私は６０年安保世代なんです。今回、「安保関連法案に反対する学者の会」の呼びかけ人の一人として国会前の行動にも参加しましたが、確かに、当時とは違いがあります。今回、法案が強行成立させられても、多くの人が「たたかいはこれから始まる」と考えました。そこは大きな違いです。参加者の層も幅広い。

新たな市民運動、歴史的な地点に
　自分の頭で考えて行動することを軸としつつ、運動を創り出し、声を合わせる。これは、幅広く、地域にも根付いた、国民的な「学びあいの運動」になっていると思います。
　誰かが「これはこうだ」と上から目線で話すのではなく、参加することで、お互いに学びあい、新しい自分を発見し、社会の矛盾を深くとらえるようになる、それが「学び」ですね。
　「民主主義ってなんだ」と問い、議員に任せればいいのではなく、単なる投票でもない、自分たちが声をあげることだ、と。一人ひとりの意見表明の権利、表現の自由の行使です。それがデモ（デモンストレーション）のもともとの意味ですね。
　今回の運動を通して、自分たちで考え、行動し、表現するという民主主義の原義が見えてきた。それに僕ら学者も参加し目の前で学びました。運動を通して学んだこと、深まった主権者としての自覚は法律が強行成立されても消えません。
　それだけ、市民社会が成熟してきたのです。戦後７０年を経て、いま、市民運動は２１世紀型市民革命の始まりといえる歴史的地点に立っていると思います。それは、「地球時代」の視点から憲法を自覚的に選び直す運動でもあります。立憲主義を基本とする国民連合政府を求める声もそのあらわれの一つです。
　学びとは自ら学ぶことだという筋がはっきり見えてきたのに対し、今後、学校教育では逆に統制圧力がより強まる危険性もあります。大学では、教員養成大学が真っ先に自由がなくなっています。軍学共同は大学自治の危機です。
　そうした状況で、１８歳選挙権が導入されるわけです。高校への圧力も強まるでしょう。この機会を、いかに国民主権の確立につなげていくか。教育の場で軸になるのは主権者教育です。政府も主権者教育自体を否定はできませんからね。

政府の前に憲法、憲法の前に人民
　そこで大事なのは、主権者教育と人権教育をセットで考えることです。単に投票をどうするかではなく、一人ひとりが人権の主体であり人権の主体として政治に参画する権利を持つという自覚を深めることです。
　そのためには、個人の尊厳を軸として人権を深くとらえることが欠かせません。憲法に書き込まれた人権はたたかいの歴史を通じて確立してきた普遍的な原理だということ、政府の前に憲法があり憲法の前に人民がいること、平和なくして人権はないこと、それらを考えることは、政治の問題であり、歴史をどう認識するかの問題でもあります。
　主権者教育は、決して狭い意味の政治の問題にとどまりません。主権者として目をひらく機会は身近にいろいろあります。授業料が払えず学校にこなくなった友人、いじめや無視…子どもたちはそういう経験をしています。そこに社会を考えるきっかけがある。
　「政治」を固定的にとらえてタブー視するのではなく、身近な問題から政治を考えることができます。教科書に書いてあることを教わるだけでなく、自ら主体的に学ぶ活動。そのなかでこそ、政治や歴史認識を深く学べると思います。

　ほりお・てるひさ　１９３３年生まれ。東京大学名誉教授。日本教育学会、日本教育法学会、総合人間学会の各会長を歴任。著書に『地球時代の教養と学力』『堀尾輝久対談集　自由な主体を求めて』『未来をつくる君たちへ』ほか
( ２０１５年１０月１９日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

ここから日本を変える／シールズ渋谷街宣での大学生・高校生スピーチ

　１８日、ＳＥＡＬＤｓ（シールズ＝自由と民主主義のための学生緊急行動）が呼びかけ、「野党は共闘」コールが東京・渋谷の街に響き渡った「安保法制に反対する渋谷街宣」。マイクを握り訴えた大学生、高校生のスピーチ要旨を紹介します。

身近な人と政治の話を／大学４年生元山仁士郎さん（２３）
　日本の政治がどこに進もうとしているのか、どうなってしまうのか、不安でここに立っています。安保法制は成立してしまいましたが、みなさんまだ（あの怒りを）忘れてないですよね。これからも忘れないでいきましょう。
　福島第１原発事故をきっかけに、自分たちが発した言葉が社会、政治を動かしています。この現象をもっと大きくして、継続していきましょう。
　政治はいつも、私たちの生活に忍び込んできます。それを許すのも許さないのも私たち一人ひとりなんです。自分の愛する日常を、生活を脅かされないために政治を語りましょう。政治の話を、身近な人と話していきましょう。未来を見据えてねばり強くやっていけば、必ず成果が出ます。頑張っていきましょう。

表現の自由発信しよう／東京芸術大学１年生ｈａｒｕさん（２０）
　昨日は渋谷にファッションショーを見に来ました。もうファッションや政治を語る人を分ける時代ではありません。私が初めて街頭宣伝を見たのは６月でした。ニュースを見てるだけではいても立ってもいられず来たことを覚えています。
　戦争の先にいいことはなにもありません。戦争は自国だけで起こるものではないからこそ、私たちは広い目で見る必要があります。
　この夏のデモや抗議行動が明確にしたのは、私たちが民主主義であり未来そのものだということです。
　私と同じすべての表現者の皆さん、表現の自由が奪われるのではないかとおびえるのではなく、発信していきましょう。向き合うことから逃げてはいけません。私たちのリーダーは安倍さんではありません。私たち自身です。

学校でデモが話題に／高校３年生りゅーきさん（１８）
　国会前抗議が落ち着いた後、学校で「またデモがあったら行こうかな」と言ってくれた人がいました。これは少し前にはなかったことです。強行採決後も、抗議の声は広がり続けています。
　僕も含めて、政治について一人ひとりが学び始めています。自分で考えて、自分の意見をもつ、それを発信する。これが重要なことです。
　僕は、次の選挙から選挙権を持ちます。無駄にしたくないし、他の人にも無駄にしてほしくありません。しっかりと政治と向き合いたい。だから僕はデモに行きます。
　ここからです。ここから日本が本当に変わっていくように、自分ができる精いっぱいのことを伝えていきます。

憲法の理念諦めない／シールズ関西・大学２年生齊藤凜さん（１９）
　安倍首相にとっては、武力を持って世界中の戦争に加担することのできる社会が理想の社会なのかもしれません。そんな社会を、憲法を壊して議会のルールも無視して自分が強引に達成させることで歴史に名前を残したいのかもしれません。
　しかし、７０年間かけて名前の残ることのない人々が平和で自由で民主的な社会の実現にむけて歩んできた長い道のりに思いをはせるとき、その尊い道がたった一人の権力者の利己的な理由によって遮断されることがあってはいけないと思います。
　私たちはたくさんの犠牲の上に得た日本国憲法を、まだ完全に達成したとはいえないその理念を、諦めることができません。この腐敗した政治を見て絶望を感じながらも理想を掲げることをやめてはいけないし、命ある限り理想の実現に前進する努力を諦めません。

希望ある社会を実現／大学４年生小林叶さん（２１）
　戦後７０年の歴史を変える法律が先月、可決されました｡しかし､そんなことには目もくれる余裕がないほど毎日を生きることに精いっぱいな人がいます。シングルマザーや派遣労働者、ご飯を食べることができない幼い子どもたち。彼らの切実な思いは、今日を生き延びることができるか、明日を無事に迎えることができるかではないでしょうか。
　安倍首相は日本を「１億総活躍社会」にしたいそうです。しかし、たった一人の人間の命を救うこともできない、希望を与えることもできない、そんな国の言うことを私たちはどうして信じることができますか。
　私たちが求めているのは、温かいご飯であり、進学できるチャンスであり、一人親でも子どもとゆっくり向き合える時間です。私が思い描くのは、誰もが生きていてよかったと思える社会です。

戦後１００年へ努力続ける／大学４年生福田和香子さん（２１）
　２年前のこの時期、私は秘密保護法に反対する意を示すため、初めて路上に立ちました。
　安保法の成立後、何が変わったのかと何度も聞かれ、結果や成果を求められました。私が声を上げたこんなわずかな期間で社会を大きく変えられるなら、世界中の差別や貧困、戦争も来年にはなくなるでしょうと答えました。社会はそう簡単に変わらないんです。
　声を上げることは特異なことではなかったはずです。いつもどこかで、誰かの不断の努力の積み重ねの上に私は立っています。いつかそのバトンは回ってきます｡私たちの番なんです｡
　私は３０年後、戦後１００年が当たり前のようにあることを望みます。そのための努力を続けていくことをここに誓います。
( ２０１５年１０月１９日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

芸能テレビ／音楽／童謡と戦争／歴史掘り起こす

　「我は海の子」「汽車ポッポ」「里の秋」「蛍の光」…これらの童謡は、もともと軍国主義的な歌でした。「汽車ポッポ」のサビは、〈バンザイ！　兵隊さん　兵隊さん　万々歳！〉。「蛍の光」の４番は、〈千島の奥も沖縄も　八洲（やしま）の外の守りなり　いたらん国にいさをしく　つとめよわが夫（せ）つつがなく〉。男性は国に尽くせ、という歌です。
　歌手の合田道人は、そんな童謡の歴史を掘り起こし､自ら歌ってＣＤ｢本当は戦争の歌だった童謡」として発表。解説に「戦後７０年、今の平和に感謝しながら聞いてほしい｣と記しています｡
　（正）
(２０１５年１０月１８日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

辺野古新基地埋め立て承認取り消し／翁長知事の会見要旨

取り消しの意義
　沖縄県の歴史的流れ、戦後７０年のあり方、そして国土の０・６％に在日米軍基地の７４％が集中する沖縄の過重な基地負担について、県民、国民の前で議論がされることに一つの意義があります。
　もう一つは、地方自治体が日米両政府という大きな権力を相手にすることが起きた時の日本の将来のあり方について、多くの国民に見てもらえるのではないかと思います。日本の民主主義に対して国民全体が考えてもらえるものになればいい。

普天間固定化という知事責任論について
　私はまさしくそれが日本の政治の堕落だと言っています。
　私に外交権があるわけではない。県内の教育や福祉の仕事は捨て、年中上京して他の市町村や知事に（基地移転先を）頼み歩くのが沖縄県知事の責務なのか。
　こんな話をする日本政府は堕落である上に、自分の意思で日本の政治を動かしているかどうかさえ試されます。日米地位協定、日米安保も含めて、基地の提供について日本政府が自主的に物事を判断しながらアジアのリーダー、世界のリーダーになろうとしているのか。
　品格のある民主主義国家として成熟した日本になって初めて、アジア、世界に日本が飛び出ていける。私も、日本国民の一人として、アジアの中心にある沖縄の特性を生かして平和の緩衝地帯としての、沖縄の未来を語りたい。
　あれだけの権力を持って姑息（こそく）な言葉を流すのは、やはり日本の政治の堕落だと言わざるを得ない。
(２０１５年１０月１８日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

日本・ベトナムの初合作映画「ベトナムの風に吹かれて」主演松坂慶子さん／平和へ手と手結ぶ交流を

認知症の母と暮らす実話／介護は〝異文化〟との触れ合い
　万葉集の朗読などで文化交流にも意欲的な松坂慶子さん。日本とベトナムの初合作映画「ベトナムの風に吹かれて」（大森一樹監督）で主演し、異国で認知症の母を介護する女性を演じました。「介護も〝異文化〟との触れ合い｣と語る心は…｡
　湯浅葉子記者

　原案はハノイ在住の日本語教師、小松みゆきさんの介護体験記『越後のＢａちゃんベトナムへ行く』です｡小松さんは、２００１年に認知症の母を新潟から呼び、２人で暮らし始めました。その笑いと涙の記録です。
　撮影前に３度、ハノイへ通い、小松さん親子に取材した松坂さん。
　「お母さんとの生活に、最初は戸惑ったそうです。でも、『母は認知症という魔法にかかってるんだ、異文化だと考えればいいんだわ、と思ったら、暮らしを面白がれるようになった』って。たくましくユーモアで切り抜ける姿がすてきでした。ですから私、今回は怖いもの知らずの２０代の気持ちで演じたんですよ」とほほ笑みます。
　松坂さんが演じるみさおは、ハノイの日本語教師。父が死に、認知症の母を新潟から連れて来ます。近所の交流が密で、何くれと助け合う大らかな街で、母は生き生きと暮らし始めます。しかし、母が事故で寝たきりになると、昼夜を問わない介護に疲弊して…。母娘の奮闘が力強く描かれます。
　「お母さんの世代は、戦争を体験し、耐えることも多かった世代です。自己表現や自己主張なんて許されなくて。そんなお母さんの、光の中にいるような満面の笑顔を見て、娘は『母を幸せにできて良かった』と思う。いとおしい思い出を共有し、共に生きる母と娘の姿に、とても共感しました」
　小松さんの母は昨年、９４歳で亡くなりました。映画は、戦争で親族を亡くし、辛酸をなめた農村女性としての母の姿も描きます。
　小松さんの母と同世代の母を持つ松坂さん。９６歳の母と３年前から、同居を始めました。
　「母はまだしゃんとしていますが、足が痛んだり、落ち込むことはあります。そういう時は、楽しい話で気分を切り替えてゆく。母がニコッとする話題を選ぶんです。この映画で学んだことですね」
　両国の戦後の歴史も、本作の軸です。

戦後の歴史
　第２次世界大戦後もベトナムに残り、現地の女性と家庭を築いた日本兵たち。しかし１９５４年、独立を目指したベトナムは南北に分断され、旧日本兵は帰国を促されます。その後、日本で新しい家族をつくる人も。劇中、夫を待ち続けるベトナムの妻子を、みさおと母が訪ねます。
　「ベトナムの奥さんは、一生一緒に暮らせると思ってらしたでしょうに。今年は戦後７０年で、戦争体験を聞いたり新聞で読む機会が増えました。多くの人の心にも届いた年だったと思います。戦争の悲惨さを知り、心に平和のとりでを築くことは大切ですね。やっぱり、平和に向かって進んでほしいから」
　「私ができることは、手と手をつなぐような草の根の文化交流」と話す松坂さん。１５年前から、学生や市民と共に、泉鏡花の「天守物語」の朗読劇などを海外で上演してきました。
　「最近は、万葉集の朗読にも取り組んでいます。万葉集は率直で天真らんまん、生命力があって好きです。名も無き方々も皇族の方々も、赤裸々に思いを歌っていて。台本カバーをコツコツ手作りするのも楽しい（笑）。一緒にやってきた仲間との〝クラブ活動〟は私の支えです」
　「好きなようにやってます」と朗らかに笑う松坂さん。松竹の看板女優として苦悩する時期もありました。会社や親の期待に応えようと､｢悩んでばかりいました｣｡そんな３０代、転機がありました｡｢死の棘」の撮影前、小栗康平監督にこう言われました。
　〈これからは、中身で勝負する女優にならなければいけないんじゃないですか〉
　その後に移り住んだニューヨークでは、「自分の頭で考え、語ることが大事だとたたき込まれました」。
　「あの頃から変わりましたね。自分らしくていいんだ、私の個性を愛し認めてあげようって。松竹の箱入り女優さんから、一人の元気な女の人でいいんだと思え、今はすっかり解放されました」

「運鈍根」で
　中学３年生でデビューし、来年で５０周年。
　「仕事が学校のようでしたね。その年代に合った成長の仕方をさせてくれて。最近は、自分が真ん中でやるのも楽しいけれど、横で見守るのも楽しい。走ってる時は自分しか見えませんが、今は、作品を見てくださる方々とキャッチボールをしているような、そんな共感を感じています」
　穏やかで、しなやかな芯のある女性です。
　「昔、ある方に言われたんです。つらい時は『運鈍根』ですよって｡運も大事だし､根性や根気も大事だけど、うまくいかない時は鈍感になるのも大事。人生は深くて面白いな、と思い始めているところです」

まつざか･けいこ＝１９５２年､東京都生まれ｡｢男はつらいよ　浪花の恋の寅次郎」（８１年）、「蒲田行進曲」（８２年）などで日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を連続受賞。「死の棘」（９０年）はカンヌ国際映画祭グランプリを受賞。「ベトナムの風に吹かれて」は新潟で上映中、１７日から東京・有楽町スバル座ほかで公開、順次全国で
(２０１５年１０月１８日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

憲法生きる社会へ行動／福島・女性９条＋２４条の会

　幅広い女性たちでつくる、ふくしま県女性「９条＋２４条」の会は１７日、福島市で「つどい２０１５」を開き約３００人が参加、憲法違反の戦争法は無効だとのアピールを採択しました。
　主催者あいさつで遠藤宮子同会代表は、戦争法案の強行採決など「いったいどこの国の政治なのか」と安倍政権を批判。「若者や若いお母さんたちなど、あらゆる人たちが声を出すようになり、世論調査でも反対が多くなっている。（戦争法を許さない）一点でみんなが手をつなぎ、はっきり自分の意見を言うことを実現していくことが大事だ」と強調しました。
　採択したアピールでは、「女性の力を大いに発揮して、憲法を守り抜き、憲法がいきる社会を実現させましょう。『戦争を放棄し平和を守る９条』と『個人の尊厳と男女平等を求める２４条』を大切な車の両輪として、冷静な目と熱い心を持って、一人ひとりが声を出し、行動していきましょう｣と訴えています｡
　つどいでは、安斎育郎氏（安斎科学・平和事務所所長）が「戦後７０年　平和・憲法・わたしたちの生活」と題して講演しました。
( ２０１５年１０月１８日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

侵略正当化の靖国神社に安倍首相が真榊奉納

　安倍晋三首相は１７日、過去の日本の侵略戦争を正当化する靖国神社（東京都千代田区九段北）へ、祭具である真榊（まさかき）を奉納しました。同日から始まった秋季例大祭にあわせたもので、「内閣総理大臣　安倍晋三」の肩書きで納めました。
　大島理森衆院議長、山崎正昭参院議長、塩崎恭久厚生労働相も真榊を奉納しました。
　靖国神社は、戦争を推進し東京裁判で「平和に対する罪」などで裁かれた東条英機元首相らＡ級戦犯を合祀（ごうし）しています。軍事博物館「遊就館」を中心に、過去の日本による侵略戦争を「アジア解放」の「正義の戦争」として美化する宣伝センターの役割を果たしています。こうした靖国神社への参拝や真榊奉納は、同神社と同じ立場に自らの身を置くことを示すものです。
　安倍首相は２０１３年１２月には同神社を参拝。首相に就任した１２年１２月以来、春と秋の例大祭での真榊奉納と、８月の終戦記念日の玉串料奉納を続けています。また、今年８月発表の「戦後７０年談話」では、１９９５年に当時の村山富市首相が戦後５０年の談話で示した「侵略」「植民地支配」という文言は盛り込んだものの、日本の行為や安倍氏自身の認識としては明示せず、「村山談話」の立場を事実上投げ捨てました。
　今回の首相の真榊奉納は、過去の日本の侵略戦争への安倍政権の無反省ぶりを改めて示すものです。

真榊
　「真榊（まさかき）」の「真」は美称。常緑樹の「榊」は祭具として神前に供えられるもの。榊の枝に白い紙でつくった「白幣（はくへい）」などをつけて祭祀（さいし）が行われてきました。現在では赤または緑・黄・赤・白・青の５色の絹で飾るなど、さまざまな様式のものがあります。神前に供えて神に祈願する祭具である「真榊」の神社への奉納は、宗教行為そのものです。
( ２０１５年１０月１８日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

願い込めきりえ展／１８日まで開催／名古屋

　第３９回愛知きりえ展（愛知きりえの会主催）が名古屋市瑞穂区の市博物館３階ギャラリーで開かれています。１８日まで。入場無料。
　今年は被爆、戦後７０年。広島の原爆ドーム、長崎の平和祈念像、沖縄のシーサーなど核兵器や平和をテーマにしたもの、静物や人物画など２１人の５３作品が展示されています。
　自身も出展している会役員の桜井久美子さんは「孫の成長と健康、戦争のない平和な世界を願って描きました。多くの人に鑑賞していただき、きりえの魅力を知ってもらいたいです」と話しました。
　全国きりえコンクールの入選作も展示されています。
(２０１５年１０月１６日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

体験語り「戦争ダメ」／平和のつどい開く／自宅に焼夷弾直撃／女子も丸坊主…／岐阜市

　岐阜市北西部で、戦争体験の話を聞き、戦後７０年を考え、未来について語り合う「平和のつどい｣が１１日､七郷公民館で行われ、予想を上回る６０人が参加しました｡主催は､岐阜西中学校区九条の会などでつくる実行委員会。
　７０年前の７月９日、約９００人の命を奪った岐阜空襲。この体験を語ったのは、岐阜市曽我屋（そがや）に住む鷲見宮男さん（８５）。ちょうどこの日、父が上官の命令で帰省し、「おまえら寝とるやつがあるか」とたたき起こされ、急いで逃げ、その数分後に焼夷（しょうい）爆弾が落ち、家が全焼した様子を語りました。戦後の食料もない厳しい時代を生き抜いた経験も語り、「戦争は絶対してはダメ。人生は一度しかない。命は大事にしたい」と話しました。
　分散会では、当時小学３年生だった女性（７９）が「ノミつぶしに明け暮れ、せっけんがなく灰で手を洗った。女子全員丸坊主だった」と語り、当時３歳だった男性（７３）は「記憶にはないけど、人から伝えられた話を語り継ぎ、戦争法反対の運動をすすめていきたい」と語りました。
　ほかにも「戦争法反対のレッドアクションで飛び入り参加した人がいた。安倍政権は退陣してほしい」、「９条ステッカーをもっと車に貼りめぐらせたい」、「政治の話ができるようになり、デモに参加して腹の底から戦争反対を叫べた」など、自ら変化していった様子も語られました。
　九条の会世話人の高橋弘さん（７８）は「安保法制反対で１２万人集まった。この流れはこれからも続く。平和のバトンを引き継ごう」と訴えました。
(２０１５年１０月１６日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

おはようニュース問答／沖縄・翁長知事、歴史的決断に踏み切ったね

　のぼる　沖縄県の翁長雄志知事が、名護市辺野古で強行されている米軍新基地の建設工事の根拠になっている承認をいよいよ取り消したね。
　ふゆみ　翁長さんの前に知事をしていた仲井真さんが普天間基地の「県外移設」という公約を破って、一昨年末に国の埋め立てを認めたものね。
　のぼる　埋め立ての承認とひきかえに安倍首相から振興予算の確保を約束してもらい、「いい正月が迎えられる」と言った仲井真さんの言葉は、県民の誇りを傷つけたと大きな怒りをよんだ。

間違いをただす
　ふゆみ　承認取り消しは、前知事の裏切りを県民自身の力で取り戻すものね。
　のぼる　歴史的決断だよ。「あらゆる手段で新基地阻止」を掲げて仲井真さんに圧勝した翁長さんが、就任１０カ月で公約を実行に移したんだ。
　ふゆみ　県の第三者委員会による検証を経て、承認に間違い（瑕疵〈かし〉）が見つかったからね。
　のぼる　間違いだと分かれば、正すのは当たり前だよ。
　ふゆみ　安倍政権は承認に「間違いはない」と聞く耳を持たず、さっそく取り消しを無効にするための対抗策をとってきたわね。
　のぼる　違法な行政処分から国民の権利利益を守るための行政不服審査法を、国が自分に従わない県を黙らせるために使うなんて、制度の目的とかけ離れているよ。

新たな政治闘争
　ふゆみ　翁長さんが取り消しを表明する前にもった集中協議の場でも、国は沖縄の声に一切耳を傾けなかったわ。
　のぼる　この異常な政権とは法廷闘争も含めて徹底的にたたかうしかないということだよ。
　ふゆみ　新しい段階の政治闘争そのものね。
　のぼる　日米安保の矛盾と苦しみが集中する沖縄が、そこまで踏み出さざるをえないということだ。戦争法の成立で負担は増えるばかりだ。
　ふゆみ　翁長さんは会見で取り消しの歴史的意義を問われ、沖縄の戦後７０年のあり方、過重な基地負担が「多くの国民の前で議論されることに意義がある」と答えていたわね。
　のぼる　国民の理解あってこそ沖縄が勝てる。まさに日本の民主主義の命運を問うたたかいだ。
( ２０１５年１０月１６日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

潮流

　古くから沖縄や奄美地方で流行してきた風土病に糞線虫症があります。熱い所に広く分布する糞線虫が小腸の粘膜に寄生。免疫力が下がると下痢や腹痛を起こし、死に至ることも▼今でも高齢者を中心に感染している人が少なくありません。その特効薬を開発し、多くの患者を救ったのがノーベル賞を受けた大村智さんでした。治療の道を開いたことで｢沖縄の恩人｣といわれている、と地元紙が伝えています▼この人はのちに沖縄の人びとに何と呼ばれるのでしょうか。前知事が承認した辺野古の埋め立てを取り消した翁長雄志知事。決定によって、安倍政権が強行してきた新基地建設は法的な根拠も失いました▼圧倒的な民意を背に歴史的な決断を下した翁長知事｡彼の系譜をたどると､戦後７０年の沖縄の叫びが聞こえてきます。沖縄戦で命を奪われた祖父と叔母の名は「平和の礎」に刻まれ、生き延びた父は戦後、散乱していた何万という遺骨の収集に奔走しました▼米軍統治下では立法院議員として沖縄の自治を返せと訴えた父。それを見て小６で政治家になると宣言した翁長さんは、小さい頃から基地を挟んで保守と革新が対立する姿に心を痛めていたといいます。いつかはそれを乗り越えたいと▼県民を一つに、心を一つに。強い思いを胸に新基地はつくらせないと腹を固めた翁長知事。政府はさっそく取り消しの無効を申し立てました。国民の声を次々と封殺していく独裁政治。日本の国に平和と民主主義を取り戻す、連帯のたたかいです。
( ２０１５年１０月１５日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

志位委員長、２０日から訪韓／建国大学で２２日に講演

　日本共産党の志位和夫委員長は、韓国の建国大学の招きで講演を行うため２０日からソウルを訪問します。
　同大学は、ソウルと忠州市にキャンパスを持ち、約２万５０００人の学生・院生が在学する韓国有数の総合私大。戦後７０年、日韓国交正常化５０年の今年、記念事業の一環として、志位氏の著書『戦争か平和か―歴史の岐路と日本共産党』の韓国版の刊行と講演を合わせて企画しました。
　志位氏の講演は２２日午後２時から、同大学法学専門大学院の国際会議室で「戦後７０年　北東アジアの平和」をテーマに行われます。同日はまた、丁相基・建国大学ＫＵ中国研究院碩座教授（元北東アジア協力大使）、韓仁熙・同研究院院長との座談会も予定されています。
　またこの機会に志位氏は、日韓、韓日の両親善協会と在日本大韓民国民団がソウルで２１日に開く「日韓親善友好の集いｉｎ　Ｓｅｏｕｌ」にも招待を受け、来賓出席します。
　志位氏には、緒方靖夫副委員長、笠井亮衆院議員、森原公敏国際委員会副責任者、田川実同事務局長らが同行します。
( ２０１５年１０月１５日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦争法廃止運動／役割を果たそう／滋賀県平和委つどい

　滋賀県平和委員会の結成６０周年記念のつどいが１０日、大津市で開かれ、約１００人が参加しました。６０年の歩みを振り返るとともに、戦争法廃止や沖縄・辺野古新基地建設反対のたたかいへの決意を新たにしました。
　中村久郎代表理事は「歴史に学び、日常の平和活動の大切さに確信を持って頑張ろう」とあいさつ。国際政治学者で日本平和委員会代表理事の畑田重夫氏が「『戦後７０年』、これからの平和運動」と題して講演しました。
　畑田氏は、来年夏の参院選を見据えた、戦争法廃止の新たなたたかいが始まっていると指摘。平和委員会が国民運動の中で積極的役割を果たそうと訴えました。また、「戦争常習国」アメリカの体質と軍事外交政策を解き明かし、在日米軍の各種演習や日米軍事一体化の展開への監視・反対行動を呼びかけました。
　講演に先立ち、玉井照夫さんと吉村克之さんのミニコンサートが開かれました。
(２０１５年１０月１４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦争法廃止求め行動／〝平和・憲法壊さないで〟／北海道／秋田／福島／山形

■北海道

青年がデモ
　札幌市で１１日、青年たちが戦争法廃止を求めるデモを行いました。「戦争したくなくてふるえる。」デモを呼びかけた高塚愛鳥（まお）さんや、この間のデモに参加してきた青年たちの有志が取り組んだもの。
　「ふるえて眠れ、自民党」の横断幕を掲げ、札幌市の中心部をドラムを鳴らしながら「安倍首相はさっさとやめろ」「戦争よりも災害支援」などとコールしました。
　一人一人が思い思いにスピーチし、２４歳の女性は「イラク戦争に協力・加担した日本が、検証も反省もせずに戦争法なんておかしい。戦後７０年続いた平和を壊さないで」と訴えました。

署名を訴え
　北海道憲法改悪反対共同センターは１３日昼、札幌市内で、戦争法廃止を訴える宣伝署名行動に取り組み、１０人が参加しました。
　共同センターの大地巌事務局長が、戦争法廃止を求め全国で運動が広がっていることを紹介し、「国民の願いを踏みにじった議員を追い詰めて戦争法を廃止させて、安倍政権の暴走をストップさせよう」と訴えました。
　札幌市の９２歳の女性は「海外で戦争できる法律なんてとんでもない。戦争中の悲惨な体験は二度とごめんです。廃止しかない」と署名しました。

９条の会で
　札幌市西区の「琴似」「山の手」の両９条の会はこのほど、地下鉄琴似駅前で戦争法の廃止を求める署名を呼びかけました。
　１０人が参加し、横断幕やプラカードを掲げ、「反対した野党が力を合わせて安倍政権を退陣させましょう」と訴えました。
　署名した８２歳の女性は「孫が戦争に行かされるのかと心配」、６２歳の男性は「あんなやり方で通すと思わなかった。独裁だ。共産党が野党協力を呼びかけたことはいいこと」と話しました。
　自転車を止め「絶対反対です。がんばってください」と激励する若い女性もいました。

■秋田

国道沿いに
　秋田県能代市の「総がかり行動能代実行委員会」と「安保法案阻止能代実行委員会」は１１日、プラスターやゼッケン、のぼりなどを持ち寄り国道沿いで街頭宣伝を行いました。
　日本共産党の藤本ゆり参院選秋田選挙区候補も参加し、「立憲主義、平和主義を取り戻すため力をあわせましょう」と国民連合政府実現と立候補の決意を語りました。
　行動に参加した加賀繁さんは「国民、憲法無視の強行採決に怒り心頭だ。数の力で何でもできるのであれば民主主義ではない。戦争法廃止、安倍政権打倒へのみんなの思いは、ますます高まっている」と強調。別の男性は「共産党が発表した国民連合政府の呼びかけには大賛成。若い藤本候補の立候補にも大いに期待している。安倍首相は、明らかに戦前の日本に逆戻りさせようとしている。他の野党も国民の声に応え、決断してほしい」と話しました。
　同行動は毎週日曜日に取り組まれています。

■福島

世論で廃止
　福島県の憲法守る白河共同センターは９日、白河市内で街頭宣伝し、戦争法を世論と「国民連合政府」で廃止させようと訴えました。
　マイクを握り「あきらめず平和と憲法守る運動を強め、野党は結束して連合政府をつくれと世論をひろげよう」と呼びかけました。
　帰宅途中の小学生たちが「戦争はんたーい」と何度も声をあげ、近寄ってきた年配の女性は「憲法９条をこわす安倍政権は許せない。がんばって」と激励しました。

■山形

シール貼り
　戦争法廃止山形県民運動実行委員会（仮称）は１３日、山形市内で宣伝・署名行動をしました。
　実行委員会の峯田博事務局長らが、憲法学者や元最高裁判所長官も戦争法は憲法違反としていることを示し、戦争法廃止の署名を呼びかけました。
　戦争法を今後どうするかのシール投票では、７０代の男性が立ち止まって実行委員会の人と対話し、廃止にシールを貼りました。
　６０代の夫婦もそろって廃止にシールを貼りました。両手に荷物を持った女性は、廃止を指さし、ご苦労さま、頑張ってと声をかけていきました。
(２０１５年１０月１４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

埋め立て承認の取り消し／翁長・沖縄県知事の発言／要旨

　防衛省沖縄防衛局に対する名護市辺野古での米軍新基地建設のための公有水面埋め立て承認の取り消しを発表した翁長雄志沖縄県知事の記者会見（１３日）での発言（要旨）は次の通りです。

知事コメント
　本日（１３日）、普天間飛行場代替施設建設事業にかかる公有水面埋め立て承認を取り消した｡県はさる７月１６日､埋め立て承認の法律的な瑕疵（かし）を検証する第三者委員会の検証結果報告を受け、関係部局において内容等を精査したところ、承認には取り消すべき瑕疵があるものと認められたことから、承認取り消しに向けた意見聴取および聴聞の手続きをおこなった。聴聞手続きにおいて沖縄防衛局長から、陳述書が提出されたが、聴聞の主宰者からの調書、報告書の内容についても十分に参酌して、予定される不利益処分について検討した。その結果、承認取り消しが相当であると判断をし、本日付けで沖縄防衛局長に対し公有水面埋め立て承認取り消し通知書を発出した。今後も辺野古に新基地を造らせないという公約の実現に向け、全力で取り組む考えだ。

質疑応答
　（承認取り消しの感想・受け止め）政府との（８月～９月の）１カ月間、集中協議で意見が一致せず、協議が終わったら工事を再開したので、手続きを開始して、本日承認取り消しを行った。今後、裁判を意識していくが、多くの国民や県民に法的にも政治的な意味でも理解をいただけるよう努力していく。
　（承認取り消しの意義）戦後７０年のあり方、沖縄の過重な基地負担や、地方自治体がここまで国に追い詰められており、日本の民主主義について国民全体が考える機会になればいいと思っている。
　（政府が自らを私人と同様の立場として不服審査請求することについて）国が私人として、そのような訴えをすることは条文上できないと思う。国（沖縄防衛局）の訴えを国（国土交通相）が判断することについて、多くの方々が疑問に思うのではないか。
　（本土の世論について）この１年間、（辺野古新基地問題について）世論調査のほとんどで、辺野古には基地をつくってはいけないというような本土の方々の理解が進んできたことは、大変心強い。
　（普天間基地をどうするか）普天間飛行場の原点は、戦後、県民が収容所に入れられている間に強制接収された。それ以外の基地もすべて強制接収されており、沖縄県民が差し出したものは一つもない。普天間の危険性を除去するために辺野古に移すということは、自分で土地を奪っておきながら、代わりのものも沖縄にさし出せという理不尽な話だ。
　（法廷闘争について）政府を相手にするので、そう簡単ではないことは分かっている。ただ、どういう状況であっても、新辺野古基地は造れないだろう。工事も難しく、沖縄県と名護市も決意をもって対応している。
　（新基地は）１０年でできると言っているが、普通にいっても１０年間は固定化することになる。５年以内（２０１９年までの）の運用停止が普天間の危険性の除去ということになると思う。
　万が一、基地ができたら、今後２００年間、沖縄県民の意思と関係なく、そこに大きな基地が出来上がり、自由自在に使われるようになる。（基地建設の口実として）中国の脅威がとりざたされているが、２００年間、そういった脅威は取り除かれないという認識なのか。
　（普天間基地固定化の責任は翁長知事にあるという喧伝〔けんでん〕について）それが日本の政治の堕落だ。私に外交権があるわけではない。年中上京して、他の市町村や知事に「頼むからうけてください」とお願いして歩くのが沖縄県知事の責務なのか。
( ２０１５年１０月１４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

後世に語り継ごう／「松川賞」の第１回授賞式

　福島市松川町で１９４９年発生した戦後最大の謀略事件「松川事件」と、被告全員の完全無罪を勝ち取った国民的運動を後世に語り継ごうと、ＮＰＯ法人福島県松川運動記念会（安田純治理事長）が創設した「松川賞」の第１回授賞式が１０日、福島市で行われました。
　第１回松川賞は▽研究論文・評論▽創作▽読書感想文▽語り継ぐ活動の４部門で募集。松川賞運営委員会の今野順夫委員長（福島大学元学長）ら各界の９氏で選考しました。
　受賞したのは、評論文「戦後７０年と松川事件―いま、それを語り継ぐことの意義」をまとめた福島県会津美里町在住の前田新さん（７７）と、読書感想文「伊部正之著『松川事件と平事件のナゾ』を読んで」を書いた福島大学４年の室井誠斗（まさと）さん（２１）の２人です。
　前田さんは「戦後７０年、戦争法強行や原発事故のなかで、松川事件と松川運動の意義は改めて私たちに力を与えている」、室井さんは「事件の奥深さ、国民の大きな運動があったことを知った。もっと知り、伝える活動をしたい」とそれぞれ話しました。
　松川事件は、東北本線金谷川―松川駅間で起きた列車転覆で国鉄や東芝の労組組合員２０人が犯人に仕立てられ、一審では死刑を含む全員有罪判決が下されたものの、６１年の差し戻し審仙台高裁判決で全員無罪、６３年に最高裁で無罪確定しました。
( ２０１５年１０月１２日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

絵本作家田島征三さん／１９人の作家が共著『子どもたちへ、今こそ伝える戦争』／自由ない時代くる怖さ

にがいユーモア「戦争賛成」
　１９人の子どもの本の作家たちによる絵入り本『子どもたちへ､今こそ伝える戦争』が出版されました。絵本作家の田島征三さんも戦争体験を執筆。戦後７０年のいま思うのは…。
　金子徹記者

　『ちからたろう』『とべバッタ』など力強い絵で子どもを魅了する田島さん。紙一重で戦火を生き延び、いまの活躍があります。
　「ぼくは幼いころを大阪府堺市ですごしました。ある寒い日、防火用水の水槽に厚い氷がはっていて、大きい子がそれを割ってわけてくれました。ぼくがその氷を抱えて歩いていたら、アメリカの戦闘機がやってきて機銃掃射し、抱えていた氷に入りました。すぐ後ろにも銃弾が来たけれど当たらなかった。アメリカ兵は子どもも殺そうとした」
　危険は家族にも。
　「うちのおやじも自転車で走っているところを機銃掃射され、溝に飛び込んで逃げた。どろどろになって帰ってきたことがあります｡機銃掃射では､戦闘機に乗っているアメリカ兵の顔が地上から見えるくらい近付いて狙ってくる。お互いによく見えているんです。戦争になれば、おとなも子どもも殺される」
　戦局が悪化し、一家で郊外に疎開。直後に堺市に大空襲が…。
　「住んでいた町は完全に焼失し、友だちも死にました」
　早乙女勝元さんの依頼で、東京大空襲を描いた絵本『猫は生きている』は、半世紀近いロングセラーです。

戦争法に反対
　「残酷な場面が多すぎるという批判もありました。でも、残酷なことが起こっているわけだから。早乙女さんが送ってきた資料を読むと、アメリカ軍の殺し方がひどい。ぼくの体験に空襲はないけれど、疎開が遅かったら空襲で殺されていたかもしれない。友だちが殺されたことを考え、怒りがわいた。２週間で描けた原動力は、戦争への怒りです」
　『子どもたちへ、今こそ伝える戦争』には自作の絵「戦争賛成」も収録。ギョッとするほどおぞましい。
　「戦争賛成」「若者よ戦場へ」「アイコクこども会」などのプラカードを掲げた群衆を描いた衝撃作です。ひときわ大きく描いた女性のむきだしの足には「アベ様命」の入れ墨が。時代批判をにがいユーモアで包んだ作品です。
　「『九条の会』の美術展のため描いた絵です。みんな戦争反対の絵を出すだろうから、逆手を使い、戦争賛成のデモ行進を描いた。戦争前夜や、戦争が始まってしまえばこうなるでしょうから」
　「自由に声をあげられなくなる時代がくるのは怖い。戦争法案に反対して１２万人が国会前に集まっても、マスコミの一部はちゃんと報道しなかった。しないのは、なかったことにしたいということです」
　戦争法は許せない。
　「１９６０年に新日米安保条約が成立したら、待ち構えていたようにアメリカはベトナム戦争を始めました。アメリカは、沖縄をはじめ日本各地の基地を好きに使って攻撃した。『安保』がなければベトナム戦争はできなかった。日本は間接的に協力した。どれだけのベトナムの子どもの命が奪われたか。アメリカや韓国の帰還兵の多くも精神を病んだ。戦争に巻き込まれた人たちはみんな不幸です」
　にもかかわらず、安倍自公政権は、自衛隊を海外で、アメリカの戦争に参加させる戦争法を強行しました。
　「物理的に仕事が忙しすぎて、戦争法反対の運動にあまり力を割けなかった自分が腹立たしい」
　「ベトナムの子どもたちを支援する野外展」や、米軍機墜落館野鉄工場事件を支援。反戦芸術家のもうひとつの「原点」は朝鮮戦争です。
　「甘いものに飢えていました。クギなどの金属を集めて売ると、お菓子が買えた。そんなクギ（を再加工した金属）で作られた武器が、朝鮮半島の人たちの体に突き刺さっていった。ベトナム戦争では、日本は国土をアメリカに貸して人殺しを手伝った。ぼくの人生の一方は芸術で、もう一方には戦争の加害者の側面がある。そんな自分が許せない」

心に響く絵本
　戦後７０年に…。
　「７１年後も７２年後も、日本がアジアでやった戦争を絶対に許さない気持ちを持ち続けたい。『安倍談話』は、日本の戦争問題は今年でおしまいだという。こんな考えの人たちに巻き込まれてはいけない。被害を与えた方は忘れても、受けた方は忘れません」
　日中韓の作家との共同の絵本に､『ぼくのこえが　きこえますか』（童心社)があります｡
　「絵本の力はバカにならない。『猫は生きている』の力は、早乙女さんの文章力がありました。『ぼくのこえが…』は抽象画や半具象の絵で仕上げた。でも、抽象画が言葉とかみあうと、心に響く。これは絵本でしかできないことです」

　たしま・せいぞう＝１９４０年大阪府生まれ。終戦を泉南郡で迎え、戦後は高知県で育つ｡双子の兄･征彦は染色家で絵本作家。新潟県十日町市に「絵本と木の実の美術館」を開設。廃校全体を美術作品にした「空間絵本」として注目されている。近刊絵本は『やぎのしずかのしんみりしたいちにち』
(２０１５年１０月１１日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

１０ｓ２０ｓＹモード／高知で戦争体験聞き取り、記録集を発行／戦争になんか向かわせない

「今と通じる」「残酷な実態に想像力深まった」
　高知県の若者たちが「日本が再び戦争に向かうことは絶対に止めたい」と、戦争体験の聞き取りや戦争法廃止へ、運動をくりひろげています。
　小川浩記者

　核兵器廃絶に向けて活動する平和団体「ピースパイオニアーズ」は、戦後７０年の節目に高知の戦争体験者への聞き取りなどをまとめた記録集『ＮＯ　ＷＡＲ　ＩＮ　ＯＵＲ　ＬＩＦＥ―戦争体験を永久に語り継ぐ』（５００円）を発行しました。
　同団体は、原水爆禁止世界大会に向けて２００２年に立ち上げたもの。県内に住む高校生から３０代前半の若者約２０人がメンバーで、平和学習や核兵器全面禁止の署名行動にとりくんでいます。
　高知大学の大学院生、河村めぐみさん（２４）は、戦争体験の聞き取りを担当しました。「戦争を知らない私たちは『戦争体験を聞ける最後の世代』だと感じます。被爆・戦争体験を聞き取り、冊子にして後世へ残していくのは意義あることだと思う」

教師として加担
　冊子には、高知県内の７人の戦争体験、反戦への思いがつづられています。聞き取りは、昨年１０月から始め映像で収録、文字に起こし、７月に完成しました。
　河村さんが聞きとった一人は、戦時中の１９４０年から３６年間教師をしていた女性（９５）です。
　戦前の教育で最も重視されていたのが「修身」という教科で、天皇崇拝、戦争賛美の内容だったといいます。退職後、戦争に加担した罪滅ぼしに、平和集会で戦争体験を語るなかで、「どうしておとなは戦争を止められなかったのか」と質問され、「胸が刺されたような思いがした」と率直に語ってくれました。
　この女性の話を聞いた若者たちは「戦争する国に向かう今と通じるものがある」と受け止めました。
　河村さんはいいます。「戦時中は、戦争を肯定することが当たり前で、自らもそれを信じ、教育の場で教えていたというのは、すごく恐ろしいこと。自分の住む地域に、戦争体験した方がいて、お話を聞くことができ、戦争という残酷なことへの想像力がより持てました。それが戦争法反対の取り組みへつながりました」

デモで反対の声
　戦争法案反対のとりくみが広がるなかで、「戦争法案に抗（あらが）う高知県学生の会」（ＰＥＤＡＬ＝ペダル）が、デモや集会などで、反対の声を上げてきました。
　ペダルは、戦争法の情報を発信、宣伝、アンケート活動、デモなどにとりくんでいます。
　メンバーの横川和音（かずと）さん（２４）は、「ＳＮＳとかで活動を始めると励ましや応援の声をもらいました。東京へ行って、全国の若者団体とも関わって、自分たちと同じ、問題意識を持っている人が、たくさんいるんだとわかって、すごく勇気づけられた」といいます。
　同じくメンバーの座間味希呼（ざまみ・きこと）さん（２３）は沖縄県出身。日本政府が「思いやり」予算まで支出する在日米軍によって沖縄県民が騒音や墜落の危険、米兵犯罪などの犠牲を強いられてきたことに憤ります。辺野古新基地の建設費も日本負担です。
　戦争法が強行されたのを受け、座間味さんはいいます。「日本がアメリカの戦争に深く関わっていく。いろんな形で米軍と一緒に戦争する可能性があります。戦争法の廃止へさまざまな活動をしていきたい」
(２０１５年１０月１１日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

女子挺身隊訴訟／三菱は強制労働を謝れ／韓国の原告ら訴え／名古屋で集い

　第２次世界大戦中に朝鮮半島からだまされて日本に連行され強制労働させられたことに謝罪・賠償を求めている名古屋三菱・朝鮮女子勤労挺身（ていしん）隊訴訟の原告が１０日、来日し、名古屋市内で同弁護団と支援者による集い「原告に笑顔を」が開かれました。会場が満席となる２００人の市民らが参加しました。
　原告のハルモニ（おばあさん）らは、「日本に来れば学校へ通え、家１軒分のお金がもらえる」などのうそにより、三菱重工などで無賃金の強制労働をさせられました。同訴訟は日本では敗訴していますが、韓国の光州高裁は今年６月、被告の三菱重工にたいし賠償を命じる判決を出しています。被害者が高齢になるなか、この判決に学ぼうと開かれた集いです。
　梁錦徳（ヤン・クムドク）さん（８４）が原告女性を代表しあいさつ。「名古屋の支援者に感謝の気持ちでいっぱい。安倍首相から謝罪の言葉を勝ち取るまでがんばりたい」と訴えると拍手に包まれました。
　「ハルモニとともにする市民の会」の李國彦（イ・クゴン）常任代表は「日本で敗訴した裁判は無駄ではなく、その結果が韓国高裁の勝訴に実を結んでいる」と強調。「韓国最高裁で三菱の敗訴が確定すれば、韓日政府が戦後７０年放置してきた問題が両国の外交課題にならざるを得ない。いま、夜が明けようとしている」と展望を語りました。一方、今回の提訴は強制連行のごく一部であり、裁判以外の方法での救済策が必要と指摘しました。
　妹が名古屋に強制連行された金中坤（キム・チュンゴン）さん（９２）も発言。「日本にあこがれ勉強しに東京に来たが、韓国で日本兵として徴用されるために帰国せざるをえなかった。入れ替わりに妹が名古屋に強制連行され、地震に遭い死んでしまった」と声を詰まらせ、日本の加害企業は責任を果たしてほしいとのべました。
　内河恵一弁護団長は、日韓間が難しい問題に直面する中で悲観的になりがちだがとしながら「歴史は必ず変わる。日本の植民地支配の被害を受けた人が補償される状況を生み出そう」と呼びかけました。
　日本共産党の本村伸子衆院議員があいさつしました。「赤旗」)
( ２０１５年１０月１１日，

【ＴoTＯＰ】

社会保障総改悪に反撃を／１５日から中央社保学校

　第４３回中央社会保障学校が１５～１７日、横浜市で開かれます。主催する中央社会保障推進協議会などは「戦争法廃止、社会保障総改悪に反撃するために、運動に役立つ企画がいっぱいです。職場・地域から誘い合って参加しましょう」と呼びかけています。
　１５日は、ジャーナリスト堤未果さんの講演「沈みゆく大国アメリカからの警告」と、沖縄タイムス東京支社報道部長宮城栄作さんの講演「戦後７０年『沖縄問題』の考え方」。
　１６日は、神奈川労連事務局長住谷和典さんの講演「最賃裁判と社会保障」と、一橋大学名誉教授渡辺治さんの講演「戦後７０年・岐路に立つ日本の平和・憲法・社会保障」。シンポジウム「社会保障解体を許すな！　安全・安心介護の実現を」では、基調講演を金沢大学教授横山壽一さん、コーディネーターを佛教大学教授岡崎祐司さんが務めます。
　１７日は、横須賀軍港をめぐるフィールドワークと、立教大学教授芝田英昭さんの社会保障基礎講座。
　会場＝ワークピア横浜（神奈川県労働福祉センター・横浜市中区）。参加費＝１日２０００円。問い合わせ＝中央社保協
　℡０３（５８０８）５３４４
( ２０１５年１０月１１日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

第２次世界大戦終結７０年／朝鮮半島／今も残る支配の傷痕／１／「私の死を待っているのか」

　日本の植民地支配下（１９１０～４５年）の韓国で強制連行などを受けた被害者が、戦後７０年たった今も日本政府に謝罪と賠償を求めています。被害者が高齢になるなか、早期解決を求める声は高まっています。
　（栗原千鶴）

　「解明されていない部分も多く、始まったばかりです｣｡許光茂(ホ・グァンム）さん（５１）は韓国・ソウルの政府機関「対日抗争期強制動員被害調査および国外強制動員犠牲者等支援委員会」の事務所で語ります。
　前身組織が２００４年に発足した同委員会は翌年から、日本による戦時中の強制動員の被害届を受け付け、丹念に事実を確認、認定してきました。現在、認定被害者数は５８万人に上ります。
　日本は１９３１年の満州事変以降、植民地だった朝鮮半島の人々を軍人・軍属、労務者、「慰安婦」などとして、次々と戦争に駆り出し、総人数はのべ７８０万人、朝鮮半島外に連行されたのは１２０万人超と言われます。

「計画的だった」
　日本の植民統治下にあった当時の朝鮮半島で「一業者や民間人がこれだけの人を連れ出すことはできなかったはず」と許さんは言います。「計画的、政策的、組織的、集団的、暴力的だったと考えています」
　強制動員のなかでも一番数が多かったのは労務動員です。日本の政府と企業は、戦争遂行による労働力不足を補うため朝鮮や中国の男女を強制連行。日本だけでなくサハリンにまで送り出しました。
　現在、韓国南西部・光州市に住む梁錦徳（ヤン・クムドク）さん(８４)もその一人。国民学校６年だった４４年６月、女子勤労挺身（ていしん）隊として三菱重工業名古屋航空機製作所に動員されました。
　「お金も稼げるし、学校にもいけると、日本人の校長先生と憲兵が言ったよ」と梁さんは振り返ります。戦後、給料は未払いのまま帰国しました。

９９円の手当のみ
　９９年、日本政府と三菱重工に対し、謝罪と賠償を求め名古屋地裁に提訴。最高裁で敗訴しましたが、国と企業が強制連行・強制労働させた事実と、両者の不法行為の責任は確定しました。
　それでも謝罪と賠償を拒否する日本政府と企業に「私が死ぬのを待っているのか」と梁さんは怒りを隠しません。政府から受け取ったのは厚生年金の脱退手当わずか９９円です。
　光州市に梁さんら被害者を支援する「ハルモニ（おばあさん）とともにする市民の会」が結成されたのは２００９年。同会顧問の金熙鏞（キム・ヒヨン）さん(５５)には、忘れられないハルモニの言葉があります。
　「市民の会ができて、生涯の怒りの半分が消えたよ。これで堂々と被害者だと言える」
　（つづく）
( ２０１５年１０月１０日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

第２次世界大戦終結７０年／朝鮮半島／今も残る支配の傷痕／２／「戦犯」にされ、謝罪もなし

　日本植民地下で多くの朝鮮人が軍人、軍属として侵略戦争に加担させられました。韓国政府によると、その数は約２７万人に上ります。
　「戦犯として死んでいった仲間の無念をはらしたい。それが生き残った私たちの責務です」

２３人に死刑執行
　戦後、朝鮮半島出身の１４８人が「日本人」としてＢＣ級戦犯に問われ、２３人が死刑を執行されました。ＢＣ級戦犯として死刑判決まで受けた李鶴来（イ・ハンネ）さん（９０）＝東京都西東京市＝は、いまも日本政府に謝罪と賠償を求め続けています。
　李さんは１７歳で陸軍軍属・捕虜収容所監視員の募集に「応募」。表向きは「応募」でしたが、実際は行政区ごとに割り当てがあり、強制徴用でした。
　１９４２年から４３年にかけて、日本軍がビルマへの補給路確保のためにつくった泰緬（たいめん）鉄道の建設現場に派遣されます。英国や豪州、オランダの捕虜とアジアの人々を動員して建設、多数の犠牲者を出した鉄道です。
　李さんは捕虜の管理業務に従事。上官の命令で、鉄道隊が必要な人数を用意しなければなりませんでした。「具合の悪い捕虜も派遣しなければならなかった。食料も医薬品も足りず、厳しい労働環境のなか伝染病などで多くの捕虜が死にました」。派遣前、２カ月あまりの軍事訓練を受けましたが、捕虜の扱いを定めたジュネーブ条約は一切教えられませんでした。
　終戦をタイで迎えた李さん。解放を喜んだのも、つかの間、ＢＣ級戦犯裁判にかけられます。捕虜虐待の容疑で死刑を言い渡されますが、４７年に懲役２０年の減刑となり、東京・巣鴨拘置所に送還されました。
　「拘置所で戦争と平和を探究し、やっと自分のしたことが分かった。私たちは被害者でありながら、加害者でもありました」

仲間が「靖国」に
　５０年代初めから、朝鮮半島出身のＢＣ級戦犯は釈放され、李さんも５６年に巣鴨拘置所を後にします。支給されたのは軍服とわずかな交通費。韓国に帰ることもできず、篤志家の厚情で仲間とタクシー会社を立ち上げ､必死に生きてきました｡
　日本人の戦犯に支給された恩給もありません。５２年にサンフランシスコ講和条約が発効すると、朝鮮人は「日本人」ではなくなったからです。
　李さんはいま５５年に日本で生活する韓国・朝鮮人の元ＢＣ級戦犯が生活権を求めて結成した「同進会」の会長です。会員は９０歳の李さんが最年少です。
　数年前、死刑となった仲間が靖国神社に祭られていることを知りました。「私たちに謝罪も補償もしないのに、靖国神社に祭っているなんて、驚きました。日本政府の態度は、あまりにも不条理ではありませんか。朝鮮人のＢＣ級戦犯に対して速やかに名誉を回復し、補償すべきです」
　（つづく）
( ２０１５年１０月１１日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

第２次世界大戦終結７０年／朝鮮半島／今も残る支配の傷痕／３／被害者が生きているのに

　「戦争は絶対にしてはならない。戦争が起きたら、すべてが死の方向に向かってしまう」
　ソウル市内で韓国挺身（ていしん）隊問題対策協議会（挺対協）が運営するシェルター「平和のわが家」で暮らす「慰安婦」被害者、金福童（キム・ボクトン）さん（８９）は力を込めます。

「慰安所」転々と
　自らの体験を語り、いまも世界で繰り返される戦争と、それに伴う人権蹂躙（じゅうりん）に抗議の声をあげ、行動しています。「過去の歴史が明らかになっているにもかかわらず、日本政府は責任を逃れようとしている。本当に悔しいよ」と怒りを隠しません。
　日本は１９３０年代から４５年まで、侵略した中国をはじめアジア・太平洋の国々に「慰安所」をつくりました。日本の植民地だった朝鮮、台湾の少女たちは強制的、あるいはだまされ連れていかれ、性暴力にさらされました。
　金さんは１４歳のとき、村の区長と班長が日本人と一緒に来て「娘を、軍服を作る工場に出せ。拒否すれば反逆者だ」と脅されました。しかし連れ出された先は、中国・広東の慰安所。日本軍の性奴隷とされ、１日に１５人ほどの相手をさせられます。週末は５０人を超えました。５年の間、インドネシアやシンガポールなどを転々としました。
　「慰安婦」被害者であることを名乗り出て２０年以上がたちます。挺対協が行う毎週水曜日の在韓日本大使館前での抗議デモに参加。この行動は今月７日で１１９９回となりました。
　「私たちは大使館前に、座りたくて座っているわけではない。終わらせるために座り続けているのです。過去に被害にあった人間が生きている、証拠はこれで十分でしょう。現政権は、きれいに清算する義務があるのではないでしょうか」と訴えます。
　日本軍「慰安婦」問題が顕在化するようになったのは９１年、金学順（キム・ハクスン）さんが名乗り出てからです。同年１２月には被害者３人が日本政府を相手取り謝罪と賠償を求め提訴します。

日本は解決急げ
　日本政府は被害者と国際世論に押され、実態調査を開始。９３年に「河野談話」を発表しました。談話は、▽慰安所と「慰安婦」が存在した▽慰安所の設置、管理等に軍が関与した▽「慰安婦」とされる過程が本人たちの意思に反し強制性があった▽慰安所では強制使役の下におかれた▽募集、移送、管理等は本人たちの意思に反して行われ強制性があった―という五つの事実を確認。「心からお詫（わ）びと反省の気持ちを申し上げる」と表明しています。
　金さんは訴えます。「日本政府は、一日でも早く解決すべきです。日本が本当に韓国との和合を望むのなら、この問題に真摯（しんし）に向き合うべきです」
　（つづく）
( ２０１５年１０月１２日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

第２次世界大戦終結７０年／朝鮮半島／今も残る支配の傷痕／４／二度と同じ被害生まない

　韓国政府が認定した日本軍「慰安婦」被害者は２３８人、今年はこれまでに８人が亡くなり、生存者は４７人になりました。平均年齢は８９・１歳です。
　被害者の１人、金福童（キム・ボクトン）さん（８９）は訴えます。「私たちは高齢で、死ぬまでの残り時間が少ない。日本政府には、せめて私たちが生きている間に解決してほしい」

日本は批判対象
　金さんは、日本政府の謝罪を求め、国際世論を高めようと国連人権理事会のあるスイス・ジュネーブやドイツ、ノルウェー、フランス、米国などで証言してきました。「外国に行くと日本政府がこの問題について、すでに解決したと思っている人が多い。話をするとみなさん驚いて、このままではダメだと多くの方が共感してくださいます」
　この間、女性に対する組織的な強姦（ごうかん）、性的奴隷、強制売淫、強制妊娠、強制不妊などの性暴力を、時効のない「人道に対する罪」と位置づけた国際刑事裁判所の「規程」が採択（１９９８年）されるなど、女性の国際的な人権保障は大きく発展してきました。「慰安婦」問題で、謝罪も賠償もしていない日本の態度は、たえず批判の対象にされるのは当然です。
　金さんは、「同じ思いをする女性が二度と生まれないように」との思いから、自らの体験を語ってきました。一方、話をする先々で、性暴力に遭った女性たちに出会いました。
　「女性に対する性暴力は世界中で行われたし、いまも行われています。被害者は、若いときは生活できても、老いることで働き口がなく、生計をたてることができないと訴えます。その姿を見て、自分と同じ被害者を助けることができないかと思い、韓国挺身（ていしん）隊問題対策協議会（挺対協）と相談して『ナビ基金』をつくりました」

若い世代に託す
　「ナビ」とは韓国語で空に羽ばたくチョウの意味。２０１２年に設立されました。日本政府から賠償を受け取った場合、全額が「基金」に充てられる予定です。それまでは趣旨に賛同する市民に寄付を募って運営します。現在は、コンゴとベトナムの被害女性に、定期的に送金しています。
　基金の賛同者には小学生から大学生まで、未来の世代も多数含まれています。金さんは若い世代に、自らの思いを託します。
　「戦争は絶対に起こしてはならない。起こってしまえば同じような被害を受ける人がでてきます。戦争がないことによって心置きなく生きて、学び、成長することができる。何があっても戦争だけはしてはいけないということを、学生たちには知ってほしいと思います」
　（栗原千鶴）
　（おわり）
( ２０１５年１０月１４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦後７０年考える講演会を開催／宮崎・高齢者大会

　宮崎県高齢者大会実行委員会は７日、宮崎市で第１４回高齢者大会を開催しました。
　同大会は「ウン知育教室」、「宮崎いきいき健幸体操を体験しよう」、「日本の年金制度と最低保障年金」の三つの分科会を開きました。
　全体会では、日本ペンクラブ名誉会員の南邦和氏を講師に「戦後７０年を考える　歴史認識・平和憲法・日韓関係」と題した講演会が開かれました。南氏は安倍首相の政治手法は「トリック（詐術）とレトリック（虚言）」と指摘し、戦後７０年の安倍談話には「私は」という主語がないことを批判。積極的平和主義と言うが、「戦争と平和は対極にある」と述べました。
　集会終了後、年金者一揆のデモが行われました。
(２０１５年１０月０９日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

あいち赤旗まつり１１月１日開催／山下書記局長が講演

　日本共産党の山下芳生書記局長を迎えた第３５回あいち赤旗まつりが１１月１日（日）午前１０時から、名古屋市緑区の大高緑地公園で開かれます。
　山下氏は中央舞台の記念式典（午後１時４０分から)で記念講演し､戦争法廃止の国民連合政府実現の展望を語り、来年夏の参院選勝利を訴えます。
　たけだ良介参院比例候補、すやま初美参院選挙区候補が決意表明します。本村伸子、島津幸広の両衆院議員、井上哲士参院議員も登壇します。
　青年議員らが語る青年企画「新しい運動と日本共産党」、平和の思いを合唱・詩・踊りで構成劇に仕立てた戦後７０年企画「憲法を守り、生かし、つなげる」、米軍辺野古新基地建設とたたかう沖縄の思いを歌い上げるシンガー・ソングライター・海勢頭豊（うみせど・ゆたか）さんのコンサートもあります。模擬店は約８０店。地元産品のほか、被災地支援として東北の特産品などが格安で販売されます。
　各地区委員会は「参院選勝利への総決起の場」として貸し切りバスを準備するとともに、党員や後援会員だけでなく、町内会やサークルを訪問、戦争法案反対、原発ゼロ集会などで知り合った人たちにも参加を呼びかけています。
　大高緑地公園には名鉄「左京山」駅下車、徒歩１０分。ＪＲ「大高」駅からシャトルバスが運行します。
　問い合わせは同実行委員会０５２（２６１）３４６１まで。
(２０１５年１０月０９日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

１５年民放連賞「マザーズ」など

　日本民間放送連盟（民放連）はこのほど「２０１５年民放連賞」を発表しました。最優秀賞のテレビドラマは中京テレビ開局４５周年記念ドラマ「マザーズ」（１４年１０月１８日放送）、エンターテインメントではテレビ東京「家、ついて行ってイイですか？」に決まりました。
　報道最優秀賞はテレビが山口放送「奥底の悲しみ～戦後７０年、引揚げ者の記憶」。ラジオが宮崎放送「機銃掃射に怯えた日々～昭和２０年宮崎の空の下で」でした。また教養番組最優秀賞は、テレビがテレビユー福島「ふつうの家族　ある障がい者夫婦の２２年」、ラジオが山形放送「未完の五線紙から　戦没作曲家・紺野陽吉が託した音楽」でした。
( ２０１５年１０月０７日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

虐殺生々しく／上等兵の日誌／遺族が公開

　戦後７０年の今夏、戦場の記憶を次の世代に引き継ぐために―と、日中戦争に従軍した兵士の日誌が遺族から寄せられました。薄茶色に変色したページには、兵士が撮影した捕虜虐殺の連続写真をはじめ、民間人殺害、民家焼き打ち、略奪などの記載が―。日中戦争に詳しい笠原十九司都留文科大名誉教授も「貴重な資料」と語ります。
　本田祐典記者

「正義感強い父も加害者に」
　日誌は、南京占領で中心的役割を担った部隊の一つ、陸軍第１６師団歩兵第９連隊の小林太郎上等兵（１９７２年、６１歳で死去）が残したもの。部隊に中国派遣命令が出た３７年８月から２年後の帰国まで約２００㌻に及びます。
　小林氏の次女、能崎（のざき）嘉子さん（６９）＝兵庫県＝が本紙に日誌を提供しました｡「家族がやった加害は、隠したいのが人情です。でも黙っていれば、なかったことになる。つらくても本当のことを言おうと思いました」
　小林氏は「とても几帳面な性格」（能崎さん）で、写真や日記帳などを戦地から持ち帰り、帰国後、一冊にまとめました。
　「南京占領」（３７年１２月）までの行軍や、旧陸軍の最大級の作戦「徐州作戦」での足取り（３８年５月）を記した日誌。「兵は刀にて頭を切る。土民は銃殺」。そんな記述があります。
　ここでいう土民とは民間人。兵の殺害は戦闘などで捕虜となった中国兵に対し行われています。民間人や捕虜の殺害は、当時の戦時国際法（１９０７年のハーグ陸戦条約、２９年のジュネーブ条約）でも禁じられています。
　日誌の記述だけみても民間人の殺害は１５人です。南京に向かう途中の３７年１１月２０日、中国兵のために炊事していた地域住民１３人を銃殺。ほかに、使役中に缶詰やタバコを「取った」として「死刑」（１２月２２日）。村の中に誰かが銃を隠していたからと、代表で「処刑」（３８年４月１０日）しました。
　戦闘以外での｢捕虜｣や「敗残兵」など中国兵の殺害は５９人。このうち、少なくとも３１人は武装解除されて無抵抗だったと記述から分かります。
　徐州作戦の最中だった３８年５月２７日には、現在の河南省商丘市付近で、銃を持たない炊事兵だったという捕虜を殺害し、３枚の連続写真に収めました。
　①後ろ手に縛られた男性②銃剣で突かれ、胸から血を流す③銃弾で割られた眉間から脳髄がしたたり落ちる―。
　こうした残虐な写真は本来、検閲で日本に持ち帰ることができませんでした。「飯ごうのフタの裏に米粒で張り付けてひそかに持ち帰ったと、父から聞きました」（能崎さん）
　捕虜殺害について日誌は、第１６師団の中島今朝吾師団長から「豚の様な奴（やつ）は遠慮なく殺してよいぞ」と促されたことも書いています（５月９日）。中島師団長は南京占領時の自身の日記でも「大体捕虜はせぬ方針なれば片端より之を片付くること」（３７年１２月１３日)としています｡
　能崎さんは高校生のときに初めて日誌を読み、加害に胸を痛めました。家族にとっては真面目で正義感の強い父親だったからこそ、戦争の恐ろしさを痛感したといいます。
　「安倍首相は日中戦争を侵略と認めようとしないけれど、父の日誌を見れば最初から侵略だったと分かります。父に代わって遺族に謝って回ることはできませんが、加害と向き合うことはできる。せめてこの日誌を、平和に役立てたい」

小林上等兵の日誌から（写真も）

１０月８日　今日、右岸でつかまえた敗残兵２名、銃剣にて…殺す
１１月２０日　トーチカより支那兵を出す。一個のトーチカに３人ヅツ、其の他指揮官一名計１６名。土民（炊事をして居た）男１３、女７名、計２０名。兵は刀にて頭を切る、土民は銃殺、女は逃がす
１１月２１日　無名部落にて泊る、敗残兵を５名殺す
１１月２３日　６時半、敵の左翼を攻撃す。５人の敗残兵を殺す
１１月２６日　敵の負傷者輸送の船群を発見。５名の連長及将校を捕す、これはしらべても何も言はぬので殺す
１２月１日　鉄路に沿ひ西方へ前進途中の部落で敗残兵を１５名殺す
１２月３日　鉄路上を後退する斥候がひっかかる。将校２名、兵２名…これを明朝殺すことにして寝る
１２月４日　午前７時出発。出発直前に昨日の４人を殺す、将校の１名は「中国兵万歳」と言って殺された
１２月１３日　午後２時半、中山門より南京へ入城す。城内の掃蕩をすませ宿舎に入る
１２月１４日　午前９時より大隊の予備隊として市内北部を掃蕩する
１２月２２日　日本語のよく話せる支那人が３人のクリーをつれて世話に来た。其の中の年若の奴手くせ悪く加給品の缶詰や煙草を取ったので、夜死刑にす
１２月２６日　材料の徴発に付近の大きな家へ行く。彼等（注＝使役していた中国人ら）室内の様子を知って居るので色々とよい品物を徴発す

４月１０日　○（注＝にー、日本兵が使った中国人の蔑称）が銃をかくしたので我々は村民全員北門外に集め一人一人槍問した。銃は宿舎近くの高梁のなかにあったが、誰も知らない。村民から一人の勇士が出て一同の犠牲となった。これは砲兵の将校が死刑にした。村民はこの犠牲者のために一同涙を出して泣いた
５月９日　７時出発、準備をととのへ大隊の主力の来るのを待つ、伝令来たりて後退。途中師団司令部と出合ふ。中島師団長閣下「豚の様な奴は遠慮なく殺してよいぞ」と笑って行かれた
５月１７日　突然前の部落に火がついて高梁の屋根がバチバチと燃え出した。これはあとで解ったが一少隊の損害大と知り左一線の３少隊が後方より部落の焼討を初めたためであった
５月１８日　葉庄へ最後の突入をした。然し支那兵は壕の中にすっこんで出ない。壕の上からデンガクザシ…皆突き殺したが顔を見ると仲々若い１７、１８程の少年兵が居た…全員で約３０名ばかりの死体である。次に燃えくずれた家屋を掃討すると…負傷者が澤山焼け死んでゐた
５月２７日　今日は久しぶりで敗残兵の死刑を行ふ。写真に写す。今日の敗残兵は炊事兵と言ふ認識票をもったもので釜をかついで武器なく腰に手榴弾を一人２個づつもってゐた。青龍刀をもった将校らしきもの一名、女子軍２名…共に殺す

※原則として記述のまま。一部で句読点を補い、省略した部分は…と表記

南京大虐殺
　１９３７年１２月上旬から翌年２月にかけて、南京を占領した日本軍が捕虜・住民多数を殺害し、略奪、放火、強姦（ごうかん）などを繰り返した事件。犠牲者数は東京裁判判決では２０万人以上とされ、日本の研究者らは残された資料や証言をもとに４万人から十数万人などと推計しています。
　日本政府自身も公式見解で、「多くの非戦闘員の殺害や略奪行為等があったことは否定できない」（外務省）と認めています。

徐州作戦
　１９３８年４月から６月にかけて、徐州（江蘇省）周辺の中国軍を包囲・せん滅しようとした一連の戦闘。
(２０１５年１０月０４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

東京大学名誉教授姜尚中さん／『悪の力』を出版／正す「復元力」が人にはある

犯罪、マネー資本主義、積極的平和主義…垂れ流されるさまざまな〝悪〟を考える
　姜尚中さん（東京大学名誉教授）が、世にはびこる「悪」について考えた『悪の力』（集英社新書）を出しました。１００万部のベストセラー『悩む力』に連なる、「力」シリーズ最新刊。広い視野から時代を見据えてきた論客は、いまの時代をどうみているのか。
　金子徹記者

　本書では、川崎市の男子中学生殺害事件など、社会を驚かせた犯罪などを切り口に、古今東西の文学に表された「悪」も参照しながら「悪」との向き合い方を考えています。
　「理解不可能な事件が起きると、みんな絶句してしまう。でも、もう少し深く、悪とは何かを聖書や文学作品を手掛かりに考え、いろいろな悪の姿を描いてみたかった」
　専攻は政治学・政治思想史。東京大学教授だった湾岸戦争（１９９１年）のころから、テレビや新聞などさまざまなメディアに登場し、積極的に発言するようになりました。
　「湾岸戦争のころは、映画のタイトルじゃないですが、『いま向こうにある危機』という感じでした。あれから四半世紀たち、いまの日本には、さまざまな面から『いまそこにある危機』という感覚が広がっていると思います。でも、悪にあらがう力も生まれています。一般の若者、大学生や高校生までが街頭に出る時代になりました。人間には、復元力があるのだと思います」

自分愛する能力
　本書では、マネー資本主義を痛烈に批判。
　「一番言いたかったのは、金融に特化したいまの資本主義自体が悪のシステムだということです。マネー資本主義がもたらす不平等や不公正が悪を培養し、世の中に悪を垂れ流している。マネーゲームが中毒症状のようにふくらんで、バブルがはじけると、そのしりぬぐいを庶民に押し付ける。これはもう病気だと思います」
　私たちはどうすればいいのか―。
　「もう一度、社会の共同体の体力を強くするしかないと思います。自己決定、自己責任の資本主義のなかで社会は弱体化してきました。でも、人間は結局、社会的存在なのです」
　「在日２世」です。出自に向き合い、家族や周囲のおとなたちとのつながりがあったからこそ、差別や苦労とも折り合えた体験があります。東大を退官後、地方の私立大学の学長も経験。学生たちと接し、見えてきたのは。
　「多くの学生が、生きがいを見いだせていないということです。学校側は学生に、グローバル化のなかで自己責任で、自己実現をはかりなさい、とハッパをかける。でも、多くの学生は大学に入る前から競争で傷ついている。そういうなかで学生たちは、生きていてよかったと思える生きがいが持てなくなっている。必要なのは、個々の孤立を深める自己責任論ではなく、世界と自分を愛する能力を育てることだと思います」
　戦後７０年の「安倍談話」にも強い懸念が。
　「同じ価値観を共有する国と同盟を強化し、『積極的平和主義』を掲げ、価値観が違う、異質な国と向き合うという。安倍首相のいう『積極的平和主義』は武力行使という意味ですから、『平和のための武力行使』をするということです。恐ろしいメッセージです。これもひとつの悪だと思います。確かに中国は人権上、いろいろ問題がある。しかし、異質な国々や人々とは共存しあっていくしか道はありません。それをせず、アメリカが先制攻撃をしたのがイラク戦争で、それがいまのシリア問題にまでつながっています。どう考えてもこの『談話』はおかしい。批判の声をあげるのは当然のことです」

安保法制に憤り
　安保法制の強行に憤ります。
　「安保法制は、憲法の安定性と連続性を損ないかねない問題を抱えています。為政者のさじ加減で憲法解釈を変え、違憲と指摘されている安保法制を強行採決したのは〝民主主義の存立危機事態〟であり、立憲主義の危機です。次の選挙で有権者はどういう審判をくだすのか。民主主義の未来が問われます」
　これからの日本は。
　「憲法は、英語では体質という意味があります。憲法解釈を変えたということは、日本が体質を変えたということです。アルカリ性が酸性に変わるように市民生活が変わる。それは本当にいいことなのだろうか？　すでにもう自衛隊は、国権の最高機関をスキップ（飛躍）して動きだしている。これまで異物であった自衛隊という『軍』と、市民社会が向き合う時代になってきます。海外派遣を拡大し、武器を買い、海外に駐留する自衛隊員をどんどん増やしていったら財政的に持つのかという懸念もあります」
　「在日」の視点から。
　「韓国では１９８０年、軍が自国民を殺す光州事件が起きました。軍が百万都市を包囲し、市民を虐殺した。韓国人は、文民統制の意味をよく分かっています。約２５年かけて、軍事政権を文民統制の国へ変えました。韓国では、軍が前面に出てくる時代はもう終わったと思います。では、日本はどうか。韓国とは逆に、これから軍が前面に出る時代になるのか。敗戦で、アメリカから与えられた戦後民主主義がいま、問われています。市民社会の実力が試される時代になっています」

かん・さんじゅん＝１９５０年熊本市生まれ。東京大学名誉教授。著書に『マックス・ウェーバーと近代』『オリエンタリズムの彼方へ』『在日』ほか、小説作品に『母―オモニ―』『心』
(２０１５年１０月０４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦争を知らない私たち／地域の先輩から聞いた／東京大空襲で教え子全員失った…９条守ることは私の使命

　戦後７０年を迎えたことし、「戦争を体験した地域の先輩から話を聞こう」と３日、東京都内で集会「戦争を知らない私たちが聞く『戦争体験』」が開かれ、参加者は熱心に聞き入りました。
　集会を企画した東京都葛飾区の建築事務所の象（しょう）設計執行役員の佐藤未来さん（４３）は「設計は暮らしのなかでこそ生かされる仕事。暮らしと平和は切り離せません。戦争を知らない世代の私たちだからこそ、体験を聞き、向き合いたい」と話しました。
　同区内に住む田近治代さん（８９）、富田芳子さん（７６）、斉藤昭一さん（８８）が戦争体験と平和への思いを語りました。
　戦時中に女性たちが着用を義務付けられていたもんぺを着て証言をした田近さんは、小学校の教員でした。１９４５年３月１０日の東京大空襲で教え子を全員失いました。
　「学籍簿も焼失し、手探りで探したけれど、誰にも会えなかった。この体験は私の原点になりました。再び戦争する国にしてはならない。日本国憲法９条を守る運動に生きることが私の使命です」と力強く語りました。
　富田さんは台湾で生まれ、４５年２月に命からがら長崎へ引き揚げました。「船は佐世保についたが、港は水死体でびっしりで海面が見えなかった」と当時を語りました。同年８月９日には原爆で被爆し、５８年後に当時の家や隣人を訪ねたときのことを話しました。
　戦争法については「国民を無視し、政治が勝手に決めてゆくおそろしい事態。若い人たちに政治に関心を持ち続けてほしい」とメッセージを送りました。
　海軍の戦闘機ゼロ戦の部品工場で働いていた斉藤さんは、東京大空襲や葛飾区立石（たていし）空襲などを目撃したり経験したりしました。
　「当時はリンチや暴力があたり前の時代。暴力を認める空気が戦争につながっている。あんなことは許してはいけない」と語りました。
( ２０１５年１０月０４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

米原子力空母横須賀交代配備／戦争の道具いらない／共産党・平和団体が抗議

　米原子力空母ロナルド・レーガンが横須賀基地（神奈川県横須賀市）に入港した１日、日本共産党や県内の平和、民主団体などが抗議の談話や声明などを発表しました。

平和的生存権脅かされ続ける／党神奈川県委・県議団・横須賀市議団が連名で
　日本共産党神奈川県委員会(田母神悟県委員長)､県議団(井坂新哉団長)､横須賀市議団(大村洋子団長)は連名で抗議声明を発表しました｡
　声明では､原子力空母ロナルド･レーガンの横須賀配備について､空母の母港化を半永久的に押し付け､首都圏３０００万人の命を原子炉事故の危険にさらし続けることであり､｢艦載機による耐えがたい爆音被害､米軍機墜落･落下事故､凶悪な米兵犯罪など県民の平和的生存権を脅かし続けることだ｣と批判｡強行された戦争法とあいまって､｢平時からの米海軍と海上自衛隊の統合部隊化、一体化を図り、海上自衛隊の空母打撃群やミサイル防衛との統合を狙っている」と告発しました。そのうえで広範な県民と力を合わせ、原子力空母の母港撤回とともに、戦争法廃止、集団的自衛権行使容認の閣議決定撤回のために全力をつくす決意を表明しています。

自衛艦が空母初先導強い憤り／安保廃棄・諸要求実現神奈川県統一促進会議事務局長宇佐美一平さん
　国民の反対を押し切り強行した戦争法は戦争するための法的枠組みです。米原子力空母ロナルド・レーガンの横須賀「母港」化は、戦争法と一体の軍事的体制づくりであり、横須賀を戦争の拠点として永久に使用しようとする日米両政府のたくらみにほかなりません。空母は戦争するための道具なのです。
　戦争法のもとで原子力空母が初めて自衛艦に先導され横須賀港に向かいました。強い憤りを覚えます。横須賀を戦争のために使わせてはなりません。憲法違反の「戦争法」を一刻も早く廃止するとともに、「母港」をやめさせなくてはなりません。

いっしょに配備撤回させよう／党参院神奈川選挙区候補あさか由香さん
　３８年前、空母艦載機の米軍ジェット機の墜落で、幼い兄弟と母親がやけどを負ってなくなりました。米空母が配備されれば、日本全国で艦載機による墜落の危険が高まります。私は空母配備に反対します。
　横須賀基地は、アフガンやイラク戦争で米軍の出撃拠点になりました。戦争法が通ったいま、自衛隊も米軍といっしょに戦争に乗り出していく危険が目前に迫っています。私は戦争法にも反対します。
　戦後７０年続いてきた平和主義を子どもたちの時代につなぎたい。ごいっしょに憲法を守り、戦争法を廃止し、原子力空母配備を撤回させましょう。（横須賀中央駅前での訴え）
(２０１５年１０月０２日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

【９月見出し】

３０

仕事の悩みなど語りあう／全労連東海・北陸ブロックサマーセミナー

論壇時評／田代忠利／新たな段階をむかえた平和と民主主義求める運動

歌うことで感謝したい／高橋エミさん来月地元でコンサート

キャンプ・シュワブ内での戦没者遺骨収集に道／赤嶺質問に関係者が歓迎の声／沖縄

危機に抵抗する短歌／歌人らが緊急シンポ／京都

文化通信／中国戦争被害訴訟弁護団が声明発表

詩壇／のちの時代のひとびとに

芸能テレビ／自国の戦争犯罪描くドイツ／顔のないヒトラーたち／ヒトラー暗殺、１３分の誤算

日本の歴史認識に懸念／北京で「中日関係」シンポ

新基地阻止へ決意／「世界中から関心を」／翁長知事が表明／国連人権理事会

クローズアップ／戦争中の「報国農場」語り継ぐ／東京農大の卒業生、教授、展示会や講演会開く

戦場体験語らず死ねない／平均９０歳超２０人が証言

波動／沖縄戦めぐる調査報道／藤久ミネ

２０

あす「満州事変」８４年／日本軍の謀略・独走から中国侵略／歴史の教訓省みない戦争法案の暴走

こころの時代「私の戦後７０年」／先人の体験学び「現代」を考える

インタビュー戦後７０年／脚本家ジェームス三木さん／憲法こそが最高の防衛策

インタビュー戦後７０年／写真家大石芳野さん／戦争の傷は終わりがない

風の色／はなわちえ／使命

戦時下の日記をいま読み返す／生活評論家吉沢久子さん（９７）／飢えと空襲、私も戦場にいた

戦後７０年／歴史向き合い平和の道を／日中関係未来開く

１３日「こころの時代」／私の戦後７０年

１０

若者を戦場に向かわせない／作品通じ戦争体験語り継ぐ／岐阜・児童文学者堀野慎吉さん

戦後７０年／今伝えたい／宮城県多賀城海軍工廠で働いていた菅原昭三さん（８７）／空前のたたかい私も

派遣法改悪案強行採決に抗議／中岡基明事務局長／橋場恒幸さん

戦後７０年の夏に／あすＮＨＫ（中国ローカル）「赤レンガ」／戦争に加担しない思い込め

加害者史観は未来志向の史観／「民衆談話の会」が活動報告集会

日本教育学会大会「戦争と子ども・教育」シンポ／子どもの体験、多角的に探る

日中関係改善へ明治大学で集い／１１～１３日

命と暮らし守る切実な思い／『平和万葉集』へ応募を／碓田のぼる

朗読劇に取り組む／まだ先に進める／十朱幸代さん

終戦直後の食事を体験／その雑炊は味が無かった／東京・墨田区

日米合同演習反対滋賀・あいば野集会／天台寺門宗管長・三井寺長吏福家英明さんメッセージ

芸能テレビ／戦後７０年／世代継承・調査報道・加害責任／見応えあった番組／須藤春夫

インタビュー戦後７０年／映画作家大林宣彦さん／身勝手な〝正義〟信じない／「戦争できる元年」止める

米軍が撮った空襲前後の日本／米公文書館フィルムを調査・出版／日本地図センター主幹研究員小林政能さんに聞く

潮流

各地で母親大会開く／大会を通じて反対行動参加／山口

平和願う子どもの感想も／埼玉・朝霞で「戦争展」開く

４００年前の朝鮮侵略／「文禄・慶長の役」のつめ痕／連行された陶工集団の影響は…／東京・高麗博物館

『女性白書２０１５』／女性差別撤廃条約批准３０年／婦団連

オバマ米大統領「日米協力の深化続く」

平和のための戦争展／今こそ実態知って／福島市飯野町で開催

私の一言／８・３０国会行動から／首相辞めさせたい／親子で戦争考えた／近代国家に反す

音楽／ツィンマーマン「ある若き詩人のためのレクイエム」（サントリー芸術財団サマーフェスティバル２０１５）

ひと／戦争体験を歌で語り継ぐシンガー・ソングライター清水まなぶさん

戦後・被爆７０年／怒り新たに／詩人会議が平和のつどい開催

潮流

見出し

【８月】　【ＴoTＯＰ】

３１

松尾羊一のドラマのドラマ／戦後７０年の８・１５特集／「戦争と女性」描く３作品

主張／戦争反対、９条守れ／列島揺るがす、この声を聞け

戦争と向き合った美術／戦地生き延び軍隊の理不尽描く／中国で軍隊生活した版画家・彫刻家浜田知明さん語る

戦争と向き合った美術／なにをどう描いたのか／戦後７０年、各地で展覧会

「植民地支配」「侵略」／自身の認識、安倍首相言明拒む／山下書記局長が追及

戦後７０年を考える集い／党大阪府委員会

ＧＨＱ「指令第一号」初展示

〝平和だから胸張れる〟／障害者協議会「戦後７０年」集い

国会議員駆けある記／紙智子参院議員／怒りと決意に震える夏

ＪＡＭが大会

平和を願って豊田で戦争展／愛知

論壇時評／榎本好孝／戦後７０年、歴史認識を問う／誇るべき日本の平和運動

歌壇／自ら考え選択するために

軍事パレードに日本政府関係者参加せず

「反省感じず」８８．７％／安倍談話で韓国有識者

発禁本、戦争の傷痕／県立長野図書館３０日まで企画展

文系の廃止・転換／日本学術会議第一部長小森田秋夫氏に聞く／学術に影響、放置できない

朝の風／安倍談話の飾り立てた言葉に

ひと／初の日越合作映画の監督大森一樹さん（６３）

首相、歴史認識の言明拒む／「安倍談話」欺まん浮きぼり／山下書記局長が追及／参院予算委

平和願う歌、沖縄に響く／全国教育のうたごえ祭典開催

安倍首相の戦後７０年談話に思う／真実を直視する姿勢で負の歴史に向き合ってこそ／井上勝生

波動／若者たちの「７０年談話」／河野慎二

地域発／京都・大善院／戦争孤児、二度と生まない／悲惨な歴史伝える「せんそうこじぞう」

いま注目の独立プロ映画／女優香川京子さん／映画監督神山征二郎さん

安倍首相戦後７０年談話／ＳＥＡＬＤｓ・筑波大院生諏訪原健さん／未来のため過去と向き合え

安倍首相戦後７０年談話／一橋大学教授（日本近現代史）吉田裕さん／戦争法案を正当化する狙い

安倍首相戦後７０年談話／村山談話投げ捨て／「侵略」「植民地支配」…言葉並べただけ

北東アジアの平和に憲法９条が寄与／韓国で平和共存フォーラム

軍隊は国民守らない／戦中、満蒙開拓青少年義勇軍で大陸に渡った高橋信吉さんが見たもの

「安倍首相談話」／日朝協会が抗議

主張／戦争法案廃案に／空前の国民的たたかい今こそ

戦争法案廃案へ／平和守る思いとたたかい／２／国公労連委員長宮垣忠さんに聞く／国民の奉仕者として

戦争法案廃案へ／平和守る思いとたたかい／１／日本医労連委員長中野千香子さんに聞く

力を合わせ戦争法案廃案に／女性の行動さらに／婦団連が「つどい」開く

仲代達矢さん戦争体験を語る／８・１５記念集会／佐賀

平和のための戦争展ひらく／滋賀・大津

２０

戦後７０年首相談話どうあるべきか／侵略戦争だったことは明確／恵泉女学園大学名誉教授内海愛子さん

安倍談話に厳しい視線／中国政府「ごまかすべきでない」

潮流

インタビュー戦後７０年／ＩＯＣ名誉委員・日本サッカー協会最高顧問岡野俊一郎さん／スポーツは戦争と対極

シリーズ戦後７０年を考える／８・１５侵略戦争の真実／あの時、日本は何をしたのか

歌手元ちとせさん／新アルバム「平和元年」／原爆で影になった女の子／みんなの心の引き出しに

にちよう特番／戦後７０年８・１５／誓う「戦争しない」／東京／徳島／静岡／和歌山／福島／石川

戦後７０年／戦争を考える本／その１

戦後７０年／戦争を考える本／その２

戦争とスポーツ／野球：栄冠は君に輝く／上／解放された球魂の響き

志位さん「戦争のない世界めざして」／ヤフー「戦後７０年企画１００年後のあなたへの平和のメッセージ」

戦後７０年談話・戦争法案／小池氏が批判／安倍政権の反省ない／歴史的事実にも反する／テレ朝番組

「安倍談話」こう聞いた／一橋大学名誉教授渡辺治さん／一橋大学教授（日本近現代史）吉田裕さん

国会議員１６１人、靖国集団参拝

過去の戦争「深い反省」／天皇、追悼式で初の言及

戦後７０年／戦争する国に戻させない／各市民団体が談話

ロシア、禁輸食品を大量廃棄／国民から「もったいない」の批判

第２次世界大戦終結７０年／アルプス地方、仏のレジスタンス／上／解放目前、ナチスの虐殺

第２次世界大戦終結７０年／アルプス地方、仏のレジスタンス／中／「自由の価値」を伝える

第２次世界大戦終結７０年／アルプス地方、仏のレジスタンス／下／女性たちのたたかい

戦後７０年／戦争を考える本／その１

戦後７０年／戦争を考える本／その２

国立歴史民俗博物館の資料展示「ドイツと日本を結ぶもの」／日独の類似と相違／交流の歴史をたどる

１０

潮流

公明党、自民に不満

地方発／「満蒙開拓」の記憶／風化させない／死の逃避行・収容所生活…悲劇語り継ぐ／長野

各地民放戦争関連番組

戦争法案は政策上も疑問／山崎拓氏「自民は大政翼賛会的」／日弁連シンポ

中国外務省、歴史の直視と反省求める

戦後７０年／今伝えたい／仙台の陸軍歩兵砲中隊兵士だった後藤東陽さん（９０）／国民守らぬ、それが軍隊

戦後７０年／今伝えたい／「札幌郷土を掘る会」小松豊さんと札幌の戦跡を巡る／加害の歴史に触れて

戦後７０年／今伝えたい／北海道室蘭市で空襲、艦砲射撃を体験三浦昌子さん（８９）／職務で犠牲になった同僚

「戦後７０年宣言」発表／未来拓く鍵に／東京・杉並区

戦後７０年の夏に／沖縄民放の受賞２番組／「裂かれる海」琉球朝日／「対馬丸撃沈」琉球放送ラジオ

戦争法案反対アピール／賛同３６００人超す／医師・歯科医師は廃案要求／保団連会見

〝戦争法案廃案を〟街に響く／各地でデモ・宣伝…／京都／兵庫／大阪・大東／和歌山／滋賀

戦後７０年／ヒロシマに心寄せて／ポーランド児童文学者ヨアンナ・ルドニャンスカさんに聞く

戦後７０年プロジェクト／平和つなぐ高校生／未来をキラキラに

元首相が談話に注文

「玉音放送」原盤公開

【７月】　【ＴoTＯＰ】

３１

春名参院候補、街頭で訴え／独裁政治を打ち倒そう／高知

岡崎空襲と戦争展／８月４日まで／愛知

試写室／玉音放送を作った男たち／ＮＨＫプレ８月１日後７・３０／狂気と未来への希望が交錯

いま声をあげるとき／戦争のこと平和のこと／香川京子さんに聞く

「戦後７０年企画」６０本超す作品／東京・池袋の新文芸坐で上映中

平和美術展８月１２日から／戦後７０年の願い集めて多彩に

〝どの作品にも反戦が〟／寂聴さんがあいさつ／長崎で来月末まで展示会

市民が「戦後７０年宣言」／歴史認識を問う全国報告会

戦後７０年・沖縄／伊江島の記憶／下／島ぐるみの土地闘争へ

村山氏が談話に苦言

北海道平和美術展／表現さまざまに／きょうから開催

戦争法案止める／行動各地で／山形／北海道／宮城

戦後７０年・沖縄／伊江島の記憶／中／銃口向けられ土地奪われた

戦後７０年・沖縄／伊江島の記憶／上／激しい地上戦、４７００人死亡

ひと／沖縄戦後７０年をテーマにした展覧会を企画・主宰西尾祐馬さん（２０）

戦後７０年に思う／演劇と戦争は相いれぬ／原爆の犠牲になった桜隊の俳優たち／桜隊原爆忌の会会長神山寛さんに聞く

戦後７０年に思う／２度の撃沈を生き延びて／歴史の真実が未来照らす／考古学者大塚初重さんに聞く

文芸時評／柴田三吉／戦争体験継ぐ「物語」の力／芥川賞「火花」に文学の熱

国民の願い胸に／衆院議員島津幸広／熱い運動で迎え撃とう

教育のつどい／戦後７０年、手をつなごう／仙台で来月１６日から

黒木和雄監督作品を一挙に／岩波ホール、８月１日～２１日

戦争法案廃案・安倍政権退陣求める／衆院段階上回るたたかいを／総がかり行動実行委員会が会見

〝安保法制なんとしてもつぶす〟／河野洋平氏のビデオメッセージ／京都弁護士会の集会／要旨

止めよう戦争法案／車いすで国会前訴え

戦争法案／安倍内閣包囲、廃案を／戦争しないこと考えて／悲惨な体験私までで／各地で行動

市民ら戦後７０年考える／「はだしのゲン」原画を展示／金沢

日本高齢者大会９月１５・１６日和歌山市／平和と社会保障守る／成功へ東京で集い

戦争法案廃案への展望を語る／志位委員長が講演／共同通信社・論説研究会

２０

戦争法案反対／各団体の抗議声明

よりよい教科書子どもらの手に／大阪でシンポ

止めよう戦争法案／日弁連シンポでの発言／浅田次郎さん／岡田武夫さん

戦争法案廃案へ展望を明らかに／『憲法運動』７月号

元米兵捕虜に初めて謝罪へ／三菱マテリア

戦争法案／暴挙許さない／映画人、賛同広がる

主張／戦争法案強行採決／意見も民意も踏みにじる暴挙

政治の責任で戦争被害解決／実行委が院内集会

ストップ戦争法案／若者の力、各地で躍動／なまら怒る／札幌

ストップ戦争法案／若者の力、各地で躍動／力を貸して／大阪

加害の歴史向き合う／強制連行中国人殉難者を追悼／三池炭鉱

潮流

芸能テレビ／被爆者の声をうけつぐ映画祭／原爆と原発の歴史鋭く／１８、１９日の２日間

戦争法案反対！／女性週刊誌があいつぎ特集

インタビュー戦後７０年／俳優奈良岡朋子さん／朗読舞台「黒い雨」出演／軍靴の音が近づいている

本と人と／『詩集どくだみ』山岡和範さん／戦争を封じる力確信して

放送９０年／歴史と課題／テレビとともに／黒柳徹子さん／１／戦争のこと必ず伺って

戦争法案ストップ／北海道集会に６０００人／未来を守ろう

止めよう戦争法案／仙台弁護士会元会長青木正芳さん（８０）／国の人権侵害に立ち向かう

ゆきとどいた教育、どの子にも／全国署名スタート／高校生「学ぶ権利平等」

１０

風の色／高橋真理子／変わらぬ星を見上げて

止めよう戦争法案／寸劇で本質つく／城北法律事務所記念集会／東京・豊島

戦争法案の危険、歴史の事実で示す／〝後方支援〟の民間船も攻撃対象／神戸「戦没した船と海員の資料館」

ドキュメント１５／９０歳のサッカー記者／日韓友好への情熱を／読売テレビ制作／日本テレビ系あす放送

止めよう戦争法案／北海道弁護士会連合会田村智幸理事長（５４）／謙譲よりも声上げるとき

１４日に空襲被害者集会／山下・田村智氏と実行委、懇談

日中戦争時、中国で反戦ラジオ放送した長谷川テル／平和への思い、娘の暁子さん語る／きょうつどい開催

中国政協主席、村山談話の順守求める

【6月】　【ＴoTＯＰ】

３０

戦争法案みんなの力で廃案に／外交努力こそ重要／奈良

自民訪中、政協主席と会談

朝の風／有刺鉄線と跳躍する女たち

インタビュー戦後７０年／経済評論家内橋克人さん／空襲体験、今もまざまざ

歴史問題「和解実現を」―中国外相

柳沢氏迎え講演会／「銃使わない」、日本ブランド／富山・保険医協会

世界から見た戦争法案の異常と危険／志位委員長の講演／外国特派員協会／その１

沖縄全戦没者追悼式での翁長知事の平和宣言

沖縄戦７０年／戦の恐怖、不安再び／戦争法も新基地もいらん／追悼する遺族の思い

沖縄戦７０年／今平和でしょうか／高校生が詩で訴え

沖縄戦７０年式典／戦争法案と新基地推進／安倍首相に県民の怒り

主張／沖縄「慰霊の日」／戦争の惨禍を再び起こさせぬ

朴氏「過去の傷癒やし信頼関係を」

アイヌ言葉、沖縄言葉も／日俳連が方言公演／２８日東京

２０

戦争法案／希代の悪法葬ろう／南関東３県共産党が署名提出

反対の声高まる／戦争法案廃案へ宣伝各地で／青年は反対だ／北海道

戦争法案阻止／市民が決起／若い人戦場に送りたくない／岡山

戦争ノー「新潟燃えてる」／新婦人がレッドアクション／「東京に帰り、私も頑張る」

朝の風／東西本願寺の願い

ドキュメンタリー「沖縄うりずんの雨」「戦場ぬ止み」を見る／屈辱受け戦い続ける不屈の人々の美しさ／柴田三吉

戦争法案に反対／「学者の会」アピール

〝米軍今も特権意識〟／事件・事故続発に抗議／那覇市議会

シリーズ戦後７０年を考える／遺骨に刻まれた沖縄戦／県民は新基地も戦争法案も許さない

この人に聞きたい／写真家田沼武能さん／その１／６６年、肖像を撮り続けて／顔は本質、人生写したい

ストップ戦争法案／翻訳家池田香代子さん／〝保守〟とも手つなぎたい

ウオッチ戦争法案／海外任務拡大／遺体、本国搬送も準備／防衛相が明言

うたごえは平和の力／あいち赤旗文化セミナー文化祭

ひと／全日本学生自治会総連合の委員長に選ばれた川崎洋平さん（２１）

組をみて／ＮＨＫスペシャル戦後７０年ニッポンの肖像　豊かさを求めて／ＮＨＫテレビ５月３０、３１日放送

１０

国会期成同盟建碑３０周年／大阪でつどい

戦後７０年に思う／戦没作曲家・紺野陽吉／もっと音楽をやりたかった／小宮多美江

「戦争法案阻止・党勢拡大大運動」をよびかける／日本共産党中央委員会幹部会

歴史学研究会大会から／植民地支配未清算など問う・近代史部会／「人文社会科不要論」を批判・特設部会

演劇／「廃墟」（劇団文化座＋劇団東演）／戦争の時代どう生きたか

潮流

今月のＮＨＫＥテレ「ハートネットＴＶ」／「シリーズ戦後７０年」三つのテーマで

１０

にちようシネマ館／おかあさんの木／日本

１０ｓ２０ｓＹモード／戦争と平和を音楽で／フェリス女学院大／企画した音楽芸術学科２年生堀口利沙さん

ニュルンベルク裁判／芝健介著／評者粟屋憲太郎立教大学・上海交通大学名誉教授

「戦争法案」今言わなければ／ファッション評論家ピーコさん／安倍さんの「平和」って何

「戦争法案」今言わなければ／思想家内田樹さん／「平和法案」名称いかさま

「戦争法案」今言わなければ／九大の生体解剖事件の真相を本にまとめた熊野以素さん／人の心を狂わせる戦争

「戦争法案」今言わなければ／劇作家永井愛さん／演劇人は非戦こそ選ぶ

主張／自衛隊「後方支援」／「戦闘にならぬ」は通用しない

戦争法案を批判／憲法集会も収録／『憲法運動』６月号

「戦争法案」今言わなければ／日本青年団協議会第３９代会長照屋仁士さん／青年は二度と銃取らぬ

日中交流で未来開こう／９月に東京でつどい

「戦争法案」今言わなければ／立教大学教授浅井春夫さん／戦争と福祉両立しない

第２次世界大戦終結７０年／人種差別団体を批判／極右に国をあげて反撃／ドイツ

【5月】　【ＴoTＯＰ】

３１

ちひろの〝子どもたち〟／戦後７０年、受け継がれる平和の思い／松本春野さん／俵万智さん

ちひろの〝子どもたち〟／戦後７０年、受け継がれる平和の思い／安曇野ちひろ美術館、特別企画展を開催中

戦争法案ストップ／国民は戦争望まない／市民団体・共産党、各地で宣伝

「ふじ学徒隊」描いた映画／戦後７０年でＤＶＤ化／沖縄

ルポ／沖縄の若者たち／下／見て、学んで、感じて

「赤旗」読んで戦争法案阻止しよう／本質をズバリ／共同の新聞／多彩な識者

女性週刊誌も戦争法案にノー

文化通信／「戦争いけない」／赤崎名城大教授

第２次世界大戦終結７０年／ドイツ学校、過去の克服授業／下／犠牲者の碑を巡り体験聞く

第２次世界大戦終結７０年／ドイツ学校、過去の克服授業／上／生徒の手で「つまずきの石」

戦争法案追い込もう／「いつもどこでも日米が軍事行動」／小森氏、法案を批判／和歌山で集会

小さくても元気な町に／訓子府・本別の両町長報告／札幌でシンポ／北海道

沖縄県民大会に３万５０００人／新基地ノー／決して屈しない／首相に強い憤り・翁長知事の訴え

第２次世界大戦終結７０年／植民地支配の実態／台湾にみる／５／「歴史に向き合い、反省示せ」

第２次世界大戦終結７０年／植民地支配の実態／台湾にみる／４／日本の侵略戦争に総動員

読書のページ／小説『人間のしわざ』刊行／神よ、なぜ戦争を放っておく／作家青来有一さん

インタビュー戦後７０年／元沖縄放送協会会長川平朝清さん（８７）／政府からの独立貫いて

「一字一句正しいのか」／首相補佐官がポツダム宣言〝否定〟

第２次世界大戦終結７０年／仏の女性レジスタンス／下／歴史の忘却、美化許さず

第２次世界大戦終結７０年／仏の女性レジスタンス／上／少女が降らせた「ビラの雨」

日本の戦争を「間違った戦争」とさえ言えぬ首相／戦争法案を提出する資格なし／志位委員長の発言／党首討論

２０日

水曜随想／参院議員仁比そうへい／「強行するな」の声広く

〝辺野古の米軍新基地建設反対〟／沖縄県民大会に連帯／愛知で集会・パレード

第２次世界大戦終結７０年／ナチスからの解放、今ドイツは／レジスタンス研究家ギュンター・ウェーナーさん

第２次世界大戦終結７０年／ナチスからの解放、今ドイツは／過去と向き合う博物館

首相訪米報告に対する赤嶺議員の質問／衆院本会

沖縄戦で犠牲の記者ら追悼式典戦後７０年

インタビュー戦後７０年／民主党顧問、元衆院議員藤井裕久さん／暴走に力あわせて立ち向かう

１７日に沖縄県民大会／新基地反対「オール日本」で／共同代表金秀グループ会長呉屋守将さん

第２次世界大戦終結７０年／ナチスからの解放、今ドイツは／強制売春問題／『強制収容所の売春宿』の著者・研究者ロベルト・ゾンマー氏に聞く

第２次世界大戦終結７０年／ナチスからの解放／今ドイツは／ロンドン経済政治学大学教授ゼンケ・ナイツェルさんに聞く

戦後７０年／対独戦犠牲者を追悼／メルケル首相が訪ロ

番組をみて／ＮＨＫスペシャル「日本人と象徴天皇制」／ＮＨＫテレビ４月１８、１９日放送

１０日

にちようシネマ館／１７才の別れ／日本

平和っていいね／戦争する国にしてはいけない／歌手加藤登紀子さん

歌手生活５０年加藤登紀子さん／よりよい未来へやりがいある時代／愛を植えるため音楽がある

憲法には愛がある／光がある／未来がある／沖縄大学客員教授（憲法学）小林武さん／安倍改憲に立ちはだかる民意

憲法には愛がある／光がある／未来がある／イラストレーター大島史子さん／敵意ないと示して戦争抑止

第２次世界大戦終結７０年／植民地支配の実態／台湾にみる／３／自治求め１４年間続いた運動

第２次世界大戦終結７０年／ポーランド国民記憶院所長ウカシュ・カミンスキさん／歴史に向き合い、記憶を継承

第２次世界大戦終結７０年／植民地支配の実態／台湾にみる／２／心身を患う、元「慰安婦」

第２次世界大戦終結７０年／植民地支配の実態／台湾にみる／１／霧社事件、武力抵抗の衝撃

試写室／母子像で平和を訴えた画家　四国五郎の生涯／ＮＨＫテレビ７日後３・１５／戦争・核への怒りと人間への愛

波動／機銃掃射の恐怖克明に／藤久ミネ

主張／憲法施行記念日／初心生かし壊憲阻むことこそ

潮流

【4月】　【ＴoTＯＰ】

３０日

日本共産党第８６回メーデー・スローガン

シリーズ戦後７０年を考える／西松建設、中国人強制連行・強制労働／〝時効で終わり〟は正義に反する／弁護士鈴木敏之さん

シリーズ戦後７０年を考える／西松建設、中国人強制連行・強制労働／絶え間ない意思疎通が両国つなぐ／曲啓傑さん（４８）

シリーズ戦後７０年を考える／西松建設、中国人強制連行・強制労働／牛馬以下の扱いだった

インタビュー戦後７０年／桜美林大学教授・元「朝日」コラムニスト早野透さん／「戦後」と同い年、僕の誇り

改善は歴史認識前提

第２次世界大戦終結７０年／元中国総領事王泰平さんに聞く／日本には試練でありチャンスでもある

休憩室／岩本多代さん／精神は成長期です

新基地作業即時停止を／日米政府のどんな強圧にも屈しない／沖縄・名護市議会が意見書可決

潮流

安倍政権の歴史認識について／志位委員長が記者会見

中国大使、７０年談話に「反省」盛り込む必要

バンドン会議安倍首相演説／首相、歴史と向き合えず／世界に侵略美化の姿さらす

真榊奉納問題／韓国「国際秩序否定」

侵略美化の靖国に真榊／７０年談話、「侵略」書かず／安倍首相

中国主席と会う用意

２０日

六本木も米基地いらない／撤去求めデモ行進／東京

御真影と学校　「奉護」の変容／小野雅章著／評者岩本努立正大学兼任講師

「侵略」言及しない方向／バンドン会議で首相

新基地建設への抗議行動／県内外から連日参加／沖縄・辺野古

拡大する灰色捜査／住民票、口座情報、ＤＮＡまで警察の情報収集／元北海道警釧路方面本部長原田宏二さん（７７）

「米国に日本の役割知らせる」／首相、公明代表に説明

戦後７０年に思う／ブドウ酒が兵器にされた時代／今井敬潤

インタビュー戦後７０年／俳優加藤剛さん／平和のために演じる使命／憲法は亡くなった人々の夢の形見

とめよう戦争立法／共産党に期待大！／今が憲法の一番の危機／俳優加藤剛さん

戦後７０年談話で北岡座長代理、「おわび」の文言否定的

村山元首相「文言踏襲を」

潮流

１０日

日米戦没者碑に供花／ペリリュー島で天皇、皇后

天皇夫妻がパラオに到着／戦没者追悼など

インタビュー戦後７０年／「マルサの博士」・中央大学名誉教授富岡幸雄さん／ゆがみただす、わが魂燃焼させて

変える選ぶ地方選／街頭編／戦争イヤ、共産党大きく／党候補の第一声聞いて／埼玉／神奈川／千葉

大学総長、卒業生に平和への思い／「悲劇なぜ」見つめて／「裸の王様」になるな／改憲の動きに警告

韓国人元ＢＣ級戦犯者ら集い／「名誉回復、解決を

被爆アオギリで上映

戦没者遺族に弔慰金

【3月】　【ＴoTＯＰ】

３１日

立憲主義守れ／「戦争立法」許すな行動予定

韓国「歴史認識示せ」

安保法制とんでもない暴挙／野中・古賀氏／ＴＢＳ番組

インタビュー戦後７０年／元自民党福島県連幹事長・元全国都道府県議長会会長植田英一さん（８９）／９条が日本の生きる道

沖縄防衛局申し立てへの／翁長知事のコメント

日本共産党議員の国会質問／村山談話は外交基礎／外相歴史認識を問う／穀田氏

南シナ海行動規範早期締結を／首脳会談で一致／中国・インドネシア

ベトナム解放４０年祝う／米侵略戦争勝利で行事／クアンガイ省

「戦争立法」に反対宣伝署名／福井・南越革新の会

「自由の抑圧」に抗し、民主主義の発展に尽力を／和歌山大・山本学長が式辞

私学の将来へ議論／全国私教連が大会／東京

中国公使参事官と山下書記局長懇談

開発より福祉と雇用／予算組み替え案発表／共産党都議団

「村山・河野談話」継承を／自公幹事長に中国政協主席

戦後７０年に思う／分断招いた日本の植民地統治／「在日を生きる」問い続け／詩人・金時鐘さんに聞く

日中韓外相記者発表の要旨

自公幹事長きょう訪中

メディアをよむ／須藤春夫／放送９０年、歴史省みる時

インタビュー戦後７０年／臨済宗相国寺派管長・金閣寺、銀閣寺の住職有馬頼底さん／憲法９条は仏教の精神

安保法制の企て阻止／発足１０周年の集い／九条科学者の会

ひと／「非行」少年や家族の支援を続けて３０年小柳惠子さん（７０）

２０日

第２次世界大戦終結７０年／アンネの最期の地で／独ベルゲン・ベルゼン強制収容所記念館の広報チーフステファニー・ビルブさん

新基地つくらせない／〝沖縄と全国の力で〟と集会／山下書記局長があいさつ／参院議員会館

二階・漆原氏「過去の談話、尊重し継承」

自民と対決する党を／和歌山で昼休みチョコット宣伝

潮流

ＮＨＫ日曜討論／市田副委員長の発言

日本は歴史直視を／全人代後の会見で注文／中国首相

歴史を塗り替えた日本列島発掘史／大塚初重著／評者勅使河原彰考古学者

談話に国連総長注文

内閣支持率８ポイント下落の４割台／自民議員「苦しい状況」／ＮＨＫ調査

「戦争する人づくり」批判／京都教職員組合が大会

私たちは声あげる／国際女性デー各地で旺盛に／「憲法生かす」集会アピール／三重

私たちは声あげる／国際女性デー各地で旺盛に／安倍政権にはレッドカード／福井

戦後７０年談話に懸念

「首相は『侵略』と言ってほしい」／戦後７０年談話で北岡氏

「黒澤明特集」２局で放送／生誕１０５年

１０日

各地で国際女性デー集会／〝展望を切り開こう〟／京都市内を行進

米議会での演説検討

主張／戦後７０年と大空襲／被害解決へ国は責任を果たせ

人形作家与勇輝さん／戦争は思い出すのも嫌だがつくらないと悔いが残る

インタビュー戦後７０年／元官房長官、元「新党さきがけ」代表武村正義さん／談話根幹見直しようがない

『決定版　東京空襲写真集』を刊行して／戦火の教訓を未来に託す／早乙女勝元

憲法会議結成５０年／改憲策動打ち破る年に／総会で方針

すべての戦争被害の解決を／空襲被害者ら集会／東京

「愛国心」強制許さない／道徳教科化反対の集会

おはようニュース問答／戦後７０年、空襲被害者を救済する年に

国際女性デー／畑野・紙議員が院内集会に出席

編集長が語る／経済／羽田野修一／資本主義分析など問題提起

岡田民主代表が復帰

ヘイトスピーチの根絶に必要なのは／共産党議員団懇談

主張／３・８国際女性デー／暴走許さぬ女性の思い示そう

９条考える機会継続を／九条の会徳島が総会

陸軍登戸研究所と戦後７０年／紙も戦争に利用された／風船爆弾と偽造紙幣／渡辺賢二

ビキニデー集会分科会／署名、ニューヨークへ／非核平和のアジア共同体を／原発ゼロへ運動交流／静岡

知りたい聞きたい／首相らの「靖国」参拝なぜ反対／侵略戦争美化につながる

戦後７０年談話、首相の論点／戦争の歴史そのものが欠落／中身ない「反省」

地方選、国民の願い示そう／共産党演説会各地で／戦争か平和か問われる年／井上参院議員／松山と新居浜

北海道帯広で演説会／十勝町村会長あいさつ／首長・農業関係者らが参加／幅広く案内

シリーズ戦後７０年を考える／空襲／国際法違反の無差別爆撃／今こそ伝えたい戦争の実態

平和守るため芝居つくる／仲代達矢さん語る／埼玉革新懇が集い

潮流

安倍暴走に批判／右翼政治みたい／痛みわからぬ／自民元幹部から次つぎ

【2月】　【ＴoTＯＰ】

憲法守る運動強化／福井で平和と文化の集い

共産党を応援します／元朝日新聞記者由本昌敏さん／戦争反対貫き最も愛国的／安倍政権の暴走止めたい

過去より「これから」

政治変える共同を／革新・愛知の会が総会

戦争の悲惨知らせる／香取・佐原母親大会開く／千葉

知事の改憲発言を批判／９条・立憲主義守る／党県委・明るい会コメント／神奈川

韓国外務省が「安倍談話」でけん制

福祉人材の待遇改善早く／松村議員が求める／都議会代表質問

７０年談話／有識者会議が初会合／歴史認識表現が焦点に

自民党運動方針案／「憲法改正推進」を柱に／賛同者拡大運動も

２５日

住民の声届く地方議会へ／共産党議員が質問／「堺をなくすな」が民意／栗駒市議に竹山市長答弁

被爆・戦後７０年テーマに学習会／岐阜・サロン９条

ひと／ダム反対を訴える石木川まもり隊代表松本美智恵さん（６３）

ＴＢＳ系３月９日「私の街も戦場だった」／戦後７０年番組／米の低空空襲の被害追う

メディアをよむ／須藤春夫／ＮＨＫ会長また問題発言

侵略戦争の実相伝えよう／女性「九条の会」が学習会

立憲主義守れ／「閣議決定」撤回行動予定

年金者党後援会決起集会を開催／東京

小樽で多喜二墓前祭／「戦争する国」許さぬ決意新たに

談話「細かな議論だ」

２０日

沖縄・翁長知事の所信表明／要旨

ステルス揚陸艦配備／基地配備反対を要望／日本共産党北部地区委／長崎

７０年談話、２５日検討着手／有識者会議の１６人発

この変化、次の躍進へ／労働者後援会が決起集会／紙参院議員が報告／長野市

戦争もうごめん／バレンタインデー宣伝／秋田・新婦人

被爆直後の広島を記録／原民喜の手帳、原爆資料館へ

主張／衆参代表質問／「この道」でない打開の道鮮明

戦後７０年に思う／劇団の歩みと戦争の痛み／「稲葉小僧」の初日を前に／佐々木愛

緒方副委員長、アジア政党国際会議の鄭義溶常設委共同議長と懇談

稲城で「九条」全体会

戦後７０年に思う／大戦終結の記憶にみる差異／歴史認識共有する対話を／久保亨

インタビュー戦後７０年／エッセイスト海老名香葉子さん／どんな戦争にも加担しない日本であってほしい

１５日

与党協議是非避ける

首相訪米予定／４月下旬から

戦争被害解決、戦後７０年にふさわしく／３・６大集会成功へ／実行委が共産党に要請

「いつか来た道」行かぬ決意／「建国記念の日」反対各地で／浜松／津／富山／金沢／福井

教科書チーム立ち上げ／自由法曹団「侵略美化ノー」／中学採択で

菅政権談話、首相も批判した／議論抜きの「戦後７０年談話」

事前検閲発言を批判

施政方針演説／「戦後以来の大改革」の名で大暴走宣言／志位委員長が会見

施政方針演説／〝白紙委任〟ではない／「戦後以来の大改革」、国民多数は反対

主張／首相施政方針演説／力で通す暴走を国民は許さぬ

潮流

首相施政方針／「大改革」の名で改憲主張／暴走メニューずらり

「建国記念の日」／アジアで平和の連帯を／各地で不承認のつどい／大阪／京都／神戸／和歌山／奈良

９条守ろう宣伝・講演／土崎九条の会８周年の記念／秋田

平和誓い百里初午まつり／茨城・小美玉

潮流

核兵器廃絶６・９行動／札幌市中心街／青森・八戸２市

１０日

「黒い雨」／国に指定地域拡大迫る／広島市と懇談／大平衆院議員

永久平和・繁栄のアジア共同体を／北京・東京との３都市連携、提案／ソウル市長が都内で講演

戦争体験者らが署名／憲法共同センター９の日大行動

潮流

１０ｓ２０ｓＹモード／日本兵は中国で何をしたのか？／東京ビデオフェス、高校生が大賞

インタビュー戦後７０年／俳優宝田明さん／憲法９条は世界の宝だ／安倍政権に危機感「戦争知らなすぎる」

国民に背向ける首相の国会答弁

戦争被害補償求める／「大集会」実行委員会が会見／来月６日開く

緒方副委員長、朱鋭・中国人民平和軍縮協会秘書長と懇談

日吉台地下壕と戦後７０年／横浜で「陸にあがった海軍」展／戦争語る貴重な文化財／亀岡敦子

シリーズ戦後７０年を考える／中国侵略／日本軍による虐殺の実態／生存者を訪ねて／湖南省・廠窖

「平和の碑・中国残留帰国者の墓苑」完成／〝長年の願いかなった〟／帰国者・支援者など祝賀会／山形

朝の風／南京での教育交流

私と「赤旗」／創刊８７周年／元朝日新聞大阪本社編集局長新妻義輔さん／「人間の声」聞こえる紙面

第２次世界大戦終結７０年／中国・湖南省、日本軍虐殺の現場を訪ねて／上／７０年以上残る傷痕

第２次世界大戦終結７０年／中国・湖南省、日本軍虐殺の現場を訪ねて／中／生存者が語る恐怖

第２次世界大戦終結７０年／中国・湖南省、日本軍虐殺の現場を訪ねて／下／「千人坑」動かぬ証拠

砲台の戦跡語り継ごう／国の史跡内定でシンポ／横須賀

沖縄・辺野古ルポ／上／基地いらぬ思いは一つ／浜辺のテント村で

沖縄・辺野古ルポ／下／豊かな海と故郷残す／基地ゲート前で

【1月】　【ＴoTＯＰ】

欧州と世界の安保／「対話と和解」必要／創設４０年で訴え／ＯＳＣＥ議長

２０１５焦点・論点／平和と発展に貢献したいと国連でスピーチ／東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構長村山斉さん

主張／「被爆７０年」の新年／「核兵器ない世界」への転機に

主張／２０１５年の経済／貧困と格差拡大はね返す年に

インタビュー戦後７０年／美術家奈良美智さん

安倍暴走とめよう／「女性の共同広く」／婦団連総会

日本は近隣摩擦解消を／「戦後７０年」、米高官語

シリーズ戦後７０年を考える／今も苦しむ軍「慰安婦」たち／関西学院大学元教授野田正彰さんにきく

１０日

第２次世界大戦終結７０年／トビアス・バスキ氏に聞く／なぜ東南アジア諸国間に戦争がないのか

おはようニュース問答／戦後７０年「談話」逆流の台頭許さない

おはようニュース問答／戦後７０年、平和の日本・アジアをつくる年に

マスメディア時評／歴史の教訓をどう踏まえるか

シリーズ戦後７０年を考える／ドイツ／ベルリン州政治教育センター、ヨアヒム・メアフォートさん

十五年戦争期の京大学生運動／岩井忠熊著／評者広川禎秀大阪市立大学名誉教授

主張／戦後７０年の年明け／歴史に向き合い未来開く責任

シリーズ戦後７０年を考えるドイツ／ザクセンハウゼン強制収容所記念館

メディアをよむ／仲築間卓蔵／ちょびひげサザンの警鐘

「ハートネットＴＶ」シリーズ戦後７０年／Ｅテレ５、６日／障害者や高齢者福祉を考える

【ＴoTＯＰ】

【９月本文】

３０ 仕事の悩みなど語りあう／全労連東海・北陸ブロックサマーセミナー

　第２４回全労連東海・北陸ブロックサマーセミナーが９月１９日から２１日まで、愛知県南知多町で開かれました。東海・北陸の７県を含む１都８県から１０５人の青年労働者が集まり、学習交流をおこないました。
　「シゴトーーーク」と題し、職場の悩みや仕事のやりがいについて話し合いました。「休みがとれない」「賃金が安すぎる」など共通する悩みが多く出されました。実際に労働相談を担当している相談員のアドバイスも受け解決方法などを話し合いました。
　戦後７０年企画として知多半島の戦跡を巡るツアーを企画。米軍の空襲で大きな被害にあった半田市内の軍用機の製作所跡、防空壕（ごう）などに行き、講師から戦争の実態を聞きました。
　最終日には会場前の砂浜に「憲法９条を守ろう！」と「９」の人文字をつくって参加者全員でアピールしました。
(２０１５年０９月３０日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

論壇時評／田代忠利／新たな段階をむかえた平和と民主主義求める運動

　安倍自公政権による戦争法（安保法制）成立の強行は、平和と民主主義、立憲主義をもとめる運動が新たな段階に進む条件を生みだしています。

本当の民意が可視化された
　長谷部恭男（早稲田大法学学術院教授）（東京新聞１８日付）は、「最後は政権を変えるしかない」として、安保法制廃止法案を成立させ、集団的自衛権行使容認の閣議決定を元に戻すよう主張します。長谷部氏は何万人もが自発的に反対行動をしてきたことをその展望の根拠にあげ、「まだまだあきらめたものではない」、「次は選挙にも行って、おかしな政権を倒さないといけない」とよびかけています。
　五十嵐仁（元法政大学教授）「自民党の変貌」（『世界』）は、いまの自民党は元幹部が危惧するほど「社会の右側に集まっている一部の民意を代表するだけの部分政党に変貌」したと指摘します。五十嵐氏はその「カラクリ」として小選挙区制をあげますが、集会やデモ、世論調査によって「本当の民意」が可視化され、自民党支配の「虚構」が「崩れ始めた」と断言します。
　五十嵐氏は議席や得票を増やしている日本共産党に注目し、「安倍政権の強硬急進路線による政治的受益者が共産党であるという点は、安倍首相にとって誤算であるにちがいない」と分析します。そして野党が安倍政権への対抗と政策転換の方向性を明確にし、地域から国政にいたる幅広い共闘を構築して首相を退陣させるよう提起しています。
　日本共産党の志位和夫委員長は１９日、提案「『戦争法（安保法制）廃止の国民連合政府』の実現をよびかけます」を発表しましたが、こうした国民の期待に応えるものです。

「反知性主義」政権への警鐘
　広渡清吾前日本学術会議会長は地方公聴会で、安倍政権を「反知性主義」と特徴づけました。それは戦後７０年の安倍首相談話に現れています。三谷太一郎（東京大学名誉教授）「主体性を欠いた歴史認識の帰結は何か」（『世界』）は、「侵略や植民地支配についての明確な認識が不鮮明化している」と批判します。その例は、日露戦争が植民地支配のもとにあったアジア、アフリカの人びとを勇気づけたという記述です。日露開戦直後から日韓議定書のような朝鮮植民地化への枠組みがつくられていった事実に反するからです。
　後の世代に謝罪を続けさせてはならないという個所について三谷氏は、過去の過ちに直接関与していない世代も「責任を負い、謝罪を免れない」といいます。しかしそれは「国民の道義を高めこそすれ、傷つけるものではないはずだ」と、前向きにとらえます。安倍首相の狭量さとは対照的です。
　戦争法にかかわる点では、安倍首相にたいし東京新聞１８日付で、保阪正康氏（ノンフィクション作家）が「自分の信念はあっても、歴史認識が著しく欠けている」、高村薫氏（作家）が「学問とか知識とか歴史に対する尊敬がなさ過ぎる」と批判しています。
　山口繁元最高裁長官は、憲法解釈変更による集団的自衛権行使の容認を違憲と断じました。山口氏は朝日新聞３日付で「時の政権の意見や目先の利害にとらわれた憲法解釈をしてはいけない」と内閣法制局を叱責し、東京新聞４日付で政府による解釈変更では恣意的な政治から国民を守れなくなると批判しています。憲法解釈の蓄積や学問的到達点を無視することの危険性は明らかです。
　おそらく意図的な言葉の誤用例が「積極的平和主義」です。貧困や差別のような構造的暴力のない「積極的平和」を提唱したヨハン・ガルトゥング氏（国際ＮＧＯ「トランセンド」代表）は朝日新聞８月２６日付で、「積極的平和は平和を深めるもので、軍事同盟は必要とせず、専守防衛を旨とします。平和の概念が誤用されています」と抗議しています。また安保法制は日本の安全を脅かすとして、「北東アジア共同体の創設」を提案しています。
　なお日本の平和運動は「具体的な政策を考えてこなかった」とのべていますが、「北東アジア平和協力構想」を提唱している日本共産党にはあてはまらないことを一言しておきます。
　（たしろ・ただとし）

今月の動向
・音楽雑誌『ローリングストーン』が特集｢安倍さん､民主主義って何ですか?｣で、ＳＥＡＬＤＳのメンバーらのインタビューなどを掲載。表紙を飾る横山健氏の巻頭インタビューの見出しは「安倍さんが言う〝美しい日本〟と俺らの思う〝美しい日本〟は違う」。
・『現代思想』は臨時増刊号で総特集「安保法案を問う」を組み、４３人の論考を掲載。(編集部)
( ２０１５年０９月３０日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

歌うことで感謝したい／高橋エミさん来月地元でコンサート

　戦後７０年。その６８年を〝敗戦の落とし子〟と言われて生きてきた高橋エミさん。地元でのコンサートを１０月６日に開きます。
　今年はドキュメンタリー映画「薩チャン正ちゃん　戦後民主的独立プロ奮闘記」が公開され、高橋さんが１２歳のとき出演した映画「キクとイサム」に改めて光が当たりました。
　日本人女性と米黒人との間に生まれた姉弟が、差別や偏見にめげず東北の寒村で生きていく、今井正監督の指折りの作品。「薩チャン正ちゃん」では、今井監督が、キクと弟イサムの別れのシーンに心を砕く姿が印象深く伝えられています。
　「キクという人間が映画の中にいるけど、現実の私は、その後を歩んでいる。このドキュメンタリーを見ながら不思議な感覚でした」と高橋さん。成人してから「キクとイサム」を見たのは、２９歳でデビューしてまもない頃｡｢すごく考えさせられた」と言います。
　高橋さんは、敗戦後２年目の１９４７年、日本人女性と日本に駐留していた米軍の兵士との間に生まれました。帰国した父の顔は知らないまま、祖母の手で育てられました。
　「キクとイサム」で、キクは「黒んぼ」といわれ「なして人間には白いのと黒いのとあるんだべ」とつぶやきます。ブラックアフリカン系の父の肌を受け継いだエミさん自身の子どもの頃の体験でもあります。
　「でも泣き顔で帰ることは決してなかった。やられたらやっつけて、たとえ泣いても乾いた顔でないと家に入れない。祖母がそう育てたんですね」
　女性脚本家の草分け、水木洋子さんが高橋さんを気に入り、「この子でなければ書かない」と粘り抜いた話が知られています。
　「歌が好きなら、その道で」と水木さんの援助も受け、高校に通いつつ作曲家のレッスンを続け、７６年、ＬＰレコード「旅立の詩」でデビューしました。
　「水木先生に、『キクとイサム』を引きずったままでは絶対にダメと言われました。生半可な姿勢で歌手にはなれない、死ぬまでやっていくんでしょ、と。素のままで通用するようになったら一番強いのよ、と言われたものです」
　〈私は歌うことで感謝したい〉。チラシにそう記しています。叱咤し続けた水木さんや今井監督ら亡き人々や支えてくれた地元の人々への思いでしょう。
　「日本人なんだから」とかつては拒んでいたジャズも歌い、アルトテナーで響かせる「ブルース」は胸をうちます。持ち歌の「生きる！」は〈戦争に負けて私は生まれた〉と歌います。「戦争なんてあっちゃいけないのよ、絶対に」と言う言葉に力がこもります。
　（児玉由紀恵）

　＊１０月６日午後６時半、東京・北区・北とぴあ。問い合わせ℡０３(３９２７)８９０９
( ２０１５年０９月２９日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

キャンプ・シュワブ内での戦没者遺骨収集に道／赤嶺質問に関係者が歓迎の声／沖縄

　米軍基地になり、戦後７０年たっても遺骨収集ができず、冷たい土に埋もれたままの戦没者。１１日の衆院厚生労働委員会での日本共産党の赤嶺政賢議員の質問で、沖縄の戦没者遺骨収集問題が動き始めました。

　赤嶺氏は、遺骨収集をおこなっている「ガマフヤー（壕＝ごう＝を掘る人の意）」の活動を紹介しながら、遺骨収集事業は、遺族に遺骨を返すことと同時に、いかに無謀で人命も人権も無視した残忍な戦争であったかという戦争の実相が見えてくると指摘。
　遺骨の状況や遺留品、戦争の遺物など発見された状況や物をしっかりと記録すること、地面を掘り返す際のていねいな作業などを提起しました。そのうえで、多数の遺骨が残されていると思われる米軍キャンプ・シュワブ内での遺骨収集をおこなうよう求めました。
　終戦直後、米軍は１６地区に３０万人を収容所に入れました。テントでムシロを敷いて寝た収容所も少なくなく、食糧も不十分で、多くの人がマラリアなど病気で亡くなりました。今は、米軍キャンプ・シュワブになっている大浦崎収容所もその一つです。

厚労相に要求
　赤嶺議員は、名護市が編さんした証言集を引き、キャンプ・シュワブ内で亡くなった人の遺骨収集を求めました。
　赤嶺議員　「基地の中であってもちゃんと調査をして遺骨を収容すべきだ」
　塩崎厚労相　「ご指摘のキャンプ・シュワブ等米軍基地内の遺骨収集につきましては、まず関係者の証言などの遺骨情報の有無を沖縄県から伺うこととしたい。仮に情報がある場合には、外務省、防衛省などと連携をして、基地内の遺骨収集について米軍側に対して要望を行うことについて検討したい」
　赤嶺議員は｢政府として責任を持って収容すべき遺骨があれば､米軍基地の中であろうとやらなきゃいけないという認識でよいか｣と念を押し､塩崎厚労相は｢おっしゃるとおり｣と答弁しました｡
　「ガマフヤー」代表の具志堅隆松さんは、「よく質問していただいたと思います。はるか遠くの外国ではなく、沖縄県内の手の届きそうなところに遺骨が眠っているのに、基地のフェンスに阻まれ、７０年も放置されてきました。基地のなかの遺骨収集はハードルが高いと思っていましたが、道が開けたことはうれしい」と歓迎します。
　宜野座村では、体育館建設に先立って調査（１９８３年）したところ１６１体の遺骨が掘り出されました。大浦崎収容所は、早くに米軍基地にされていることから、ほかの収容所以上に遺骨が残されている可能性が高いとみられます。

人道上の問題
　｢一日に十名前後の死者が出たといわれ､戦後､二､三年たっても辺野古の森には何百と墓碑が立っていた｣(｢辺野古公民館だより９２年１２月号｣)という証言もあります｡
　具志堅さんは、「遺骨を持ち帰ることができなかった人が、その後、生活が落ち着いて遺骨を探しに行こうとしても基地になってしまっていたというケースもあったと思います。遺骨を遺族のもとに返すことは、人道上の問題です。人権の一部といってもいいでしょう。遺骨を引き取っていない遺族を捜しています。情報をお寄せいただきたい」と話しています。
( ２０１５年０９月２９日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

危機に抵抗する短歌／歌人らが緊急シンポ／京都

　「時代の危機に抵抗する短歌」と題して歌人などによる緊急シンポジウムが２７日、京都市内で開かれました。戦争法の強行採決など憲法を揺るがす事態が起きているときに文学、短歌に何ができるのかを考えようとよびかけました。会場いっぱいの１３０人余が発言に聞き入りました。
　日本歌人クラブ会長の三枝昂之（たかゆき）氏は講演で、戦前・戦中、戦後占領下での苛烈な検閲や新聞雑誌の自主規制、歌人の自己規制を多くの例をあげ、歴史から学ぶ大切さを指摘。「占領期の自主規制はつらいものがあった」とのべました。
　「歌人は表現者。レトリック以上に、一般の人にいかに現在の危機、言葉の危機を届けるかが問われている」と訴えるのは、安保法制に反対する学者の会よびかけ人で、朝日歌壇選者の永田和宏氏です。「強行採決後もたたかいはこれからだと若者たちが元気だ。これはすばらしい。いま歌人に何ができるか本気で考えて行動するとき」と強調しました。
　中堅歌人による鼎談（ていだん）「戦後７０年の軋（きし）みのなかで」が行われ、熱心に討論しました。
( ２０１５年０９月２８日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

文化通信／中国戦争被害訴訟弁護団が声明発表

　日本の侵略戦争によって被害を受けた中国人が日本の裁判所に訴えた賠償請求訴訟を担った９弁護団は１２日、戦後７０年を迎えるにあたっての声明を発表しました。
　多くの判決で加害・被害の事実が認定されている意義を指摘し、加害者が真摯に反省し謝罪すれば被害者も受け入れ、「平和友好の礎ともなりうる」としています。訴訟を通じて日中両国市民の相互理解と信頼が深まり、裁判後も連帯して行動していることを指摘し、そうした実践こそ「国家間の平和と安定を図る推進力」だと強調しています。
　日本政府がなすべきことは「過去の侵略戦争の事実を客観的に認識し、誤りを認め、深く反省し､被害者に対し､誠実に謝罪すること」だと求めています。
( ２０１５年０９月２８日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

詩壇／のちの時代のひとびとに

　『詩人会議』９・１０月号に連載されたインタビュー「徐京植さんに聞く　詩の力について」は過去に学びつつも直面する現代の危機に詩人はどう立ち向かうのかを問う、熱のこもったものだった。
　徐氏と聞き手の秋村宏・同誌編集長がそれぞれ数冊の好きな本を持ち寄って話すという企画らしい。２人が重複して持参した詩集に５０年前に刊行された『ブレヒト詩集』（野村修訳・飯塚書店）があった。それに感銘を受けた若き徐氏とそれを作った若き編集者秋村氏が半世紀ののち同じ本を携えて会ったことになる。
　徐氏は言う。「５０年前とは、ほんとうは昨日のことなのだ」「断片化された時間感覚に抵抗することがぜひ必要であり、それにはやはり詩が大切だ」と。自分が身を置く時代を外から曇りない目で見るには長い歴史的視点が必要で、戦後の廃虚に差し込んだ光を忘れてはならないと。彼が朗読したブレヒトの詩は「のちの時代のひとびとに」だった。自分たちこそブレヒトが夢を託した「のちの時代」の人間であると再確認するように。少人数ながら朗読会付きインタビューで、茨木のり子、ハイネ、小熊秀雄、許南麒なども朗読された。
　安倍首相の戦後７０年談話に「おわび」を入れることに反対して稲田自民党政調会長は「未来永劫おわびしなければならないのか」との旨を主張、談話にはひそかにその趣旨が導入された。「昨日」の過去を「永劫」の前に消し去ろうとする傲岸さ。
　同誌１０月号の「現代詩時評」で草野信子が小６の作文を紹介している。〈どうして戦争が始まったのか知りたいです〉。今それに直面している。「のちの時代のひとびと」が私たちを見つめている。
　（上手　宰・詩人）
( ２０１５年０９月２８日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

芸能テレビ／自国の戦争犯罪描くドイツ／顔のないヒトラーたち／ヒトラー暗殺、１３分の誤算

顔のないヒトラーたち・妨害はねのけ真実に迫る若い検察官／ヒトラー暗殺、１３分の誤算・村々に広がるナチ、ドキュメント風に
　戦後７０年の今年。ヒトラーの戦争犯罪、暗黒時代を告発したドイツの二つの劇映画が１０月、日本で公開されます。
　山本長春記者

　「顔のないヒトラーたち」（ジュリオ・リッチャレッリ監督）は３日公開。１９６３～６５年のアウシュビッツ裁判を題材に、西ドイツ（当時）の若い検察官の苦闘を描きます。強制収容所で虐殺に加担した元親衛隊員らを起訴。裁判では１７人が有罪になりました。
　１０月１６日公開は、オリヴァー・ヒルシュビーゲル監督の｢ヒトラー暗殺､１３分の誤算」。３９年、ミュンヘンで起きた暗殺未遂事件がテーマです。逮捕されたのは、ナチスの台頭に危機感を抱く３６歳の男性家具職人。終戦直前に処刑されました。
　「二つとも衝撃的な映画です」と語るのは映画評論家の石子順さん。
　「ナチ党員は１０００万人ともいわれ、戦後も市民の顔をして影響力を持った。『顔のない…』では、当初は功名心だった若い検察官が、ドイツ人の戦争犯罪に衝撃を受け、検察内外の妨害をはねのけ真実に迫る。見る者の心を揺さぶります」
　「ヒトラー暗殺…」について、望田幸男・同志社大学名誉教授（ドイツ近現代史）は言います。
　「地方の村々にまでナチスの影響が広がっていく状況変化の描写は、ドキュメント的で興味深い。同時に、普通のドイツ人のなかにも、ナチスへの抵抗が根強くあったことを知らせる上で劇的な効果があります」
　映画製作の背景は―。
　「ドイツは、ニュルンベルク国際裁判直後から、自国の刑法でナチスの犯罪を裁くことを続けています。欧州の世論が戦争犯罪を曖昧にせず、各国の信頼を得るうえでも、ドイツは徹底したナチス犯罪の追及が求められました」（望田さん）
　石子さんは、自国の戦争犯罪や抵抗運動を撮り続けるドイツ映画界の姿勢を指摘します。「ヒトラー～最期の１２日間～」（２００４年、オリヴァー監督）、「白バラの祈り」（０５年）などに続き、昨年の「シャトーブリアンからの手紙」を挙げます。
　「フランスのレジスタンスに対しナチスが共産党員らを処刑した犯罪を、ドイツ人監督が描きました。国外での加害責任にも向き合う姿勢に胸が震えました」

日本映画は…
　同じ敗戦国でも日本は―。「戦争犯罪の追及は東京裁判だけで、後は日本の政府は知らんふり。ドイツとは根本的に違います」と望田さん。
　今年、日本でも「野火」「おかあさんの木」など反戦映画が話題に。一方で天皇の戦争責任を免罪する「日本のいちばん長い日｣が公開されました｡石子さんは、「日本では侵略戦争、加害責任を真正面から描いた映画ができないのは残念な状況です。今回のドイツ映画は『歴史をみつめないと未来はない』と教えています。日本映画も批判精神の伝統を生かし強くなってほしいですね」。
(２０１５年０９月２７日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

日本の歴史認識に懸念／北京で「中日関係」シンポ

　【北京＝小林拓也】中国中日関係史学会主催のシンポジウム「回顧と展望―戦後７０年目の中日関係」が２２日、北京市内で開かれ、中国の研究者や日本からの参加者らが意見を交わしました。
　あいさつした中日関係史学会名誉会長で中国文化部元副部長の劉徳有氏は、安倍晋三首相の「戦後７０年談話」や戦争法成立などを念頭に、「最近、日本で現れた一連の動きを目にして、長年見守ってきた中日関係の今後の成り行きについて考えざるを得ない」と懸念を表明しました。その上で、「両国の大局から考えれば、日本側が歴史を尊重し、『掛け違えたボタンをかけ直し』、会談を通じて問題の平和的解決をはかり、中日関係が安定的かつ健全で正常な軌道に戻ってほしい」と日本政府に求めました。
　シンポでは、日中関係学会会長で元駐中国日本大使の宮本雄二氏のメッセージが読み上げられました。宮本氏は「日本は中国とアジアを侵略したのであり、朝鮮半島を植民地支配した」と指摘。「そのことにたいする深い反省と、被害を受けた人たちに対する心からのおわびの気持ちは当然持つべきだ」と表明し、「安倍談話」など日本政府の歴史認識を暗に批判しました。
( ２０１５年０９月２４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

新基地阻止へ決意／「世界中から関心を」／翁長知事が表明／国連人権理事会

　【ジュネーブ＝洞口昇幸】沖縄県の翁長雄志知事は２１日、スイス・ジュネーブの国連欧州本部の人権理事会で発言し、同県名護市辺野古での新基地建設の阻止に向けた決意を改めて表明しました。翁長氏は「自国民の自由、平等、人権、民主主義、そういったものを守れない国が、どうして世界の国々とその価値観を共有できるのでしょうか」と訴えました。
　（発言全文・関連２面）

　国連人権理事会で日本の都道府県知事が発言するのは初めて。各国政府代表や非政府組織（ＮＧＯ）の代表が耳を傾けるなか、翁長氏は英語で発言しました。
　「沖縄の人々の自己決定権がないがしろにされている辺野古の状況を、世界中から関心を持って見てください」と訴え、戦後７０年たっても米軍基地から派生する事件・事故、環境問題が、県民生活に大きな影響を与え続けていると紹介しました。
　翁長知事は「昨年、沖縄で行われた全ての選挙で示された民意」を日本政府は一顧だにしないと指摘。「私は、あらゆる手段を使って新基地建設を止める覚悟です」と決意を表明しました。
　翁長知事は人権理事会での発言後、記者団とのやりとりのなかで、苦難の歴史を背景とした県民の切実な声を「日米両政府とも、耳を傾けることがない」と批判。「私たちが間違っているのか、日本政府・アメリカ政府の〝民主主義〟が間違っているのか、みんなで見て聞いて判断をしていただきたい」と国際社会に呼び掛けました。
　翁長知事は「日米両政府という大きな権力に、私たち小さな沖縄県が理不尽な状況を強いられている。それを私たちは看過するわけにはいかない。持てる力を持って私たちの正当な権利、正義を訴える」と述べました。
( ２０１５年０９月２３日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

クローズアップ／戦争中の「報国農場」語り継ぐ／東京農大の卒業生、教授、展示会や講演会開く

農業の国際貢献は戦争と両立しない
　東京農業大学（東京都世田谷区）はアジア・太平洋戦争末期、学生を満州（中国東北部）の「報国農場」で実習させ、終戦直前からのソ連軍侵攻（１９４５年８月９日）で多数の犠牲者を出しました。戦後７０年の今年、東京農大の教授や当時の実習生らが実相を語り継ごうと、活動を始めました。
　（山本健二）

　東京農大の国際農業開発学科が、夏休みに神奈川県伊勢原市の農場で開いた実習合宿。１日夜、合宿中の講義として約１６０人の実習生を前に、同大学卒業生の村尾孝さん（８６）＝京都市＝と小川正勝さん（８７）＝東京都昭島市＝が、戦時中の満州での実習生活や逃避行について講演しました。両氏は、国際農業開発学科の前身ともいえる専門部農業拓殖科の同期生で、大学が満州の湖北につくった「報国農場」の実習生でした。
　報国農場は、食糧増産の目的で主に当時の府県が１９４３年から設置。大学で設置したのは東京農大だけでした。

冬は凍土
　満州・湖北の農場は４４年、ソ連との国境近くの湿原地帯に設置。面積は７０００㌶と広大でしたが、夏は湿地、冬は凍土となる荒れ地でした。
　４５年４月、入学間もなく農場の実習に参加した村尾さん。開拓のため馬にすきを引かせたり、ラッパで集合をかけたりする役目を務めました。
　ソ連軍侵攻の際、いっしょに生活した開拓団の住民と農場を離れます。敗走する日本の関東軍が民家などに放った火やソ連軍機の機銃掃射に追われました。飢えと疲れで、かろうじて動く指を見ながら「おれ、まだ生きているなと思いながら山中を逃げた」といいます。
　１カ月間、約５００㌔の逃避行の末、日本軍の少尉から敗戦を知らされます。村尾さんは「軍国少年の私は、日本の敗戦を聞いても『負けるわけがない』と思った」と述べました。その後、ソ連軍の捕虜収容所を転々としますが、友人と脱走して難民生活を送りました。
　一方、小川さんは、村尾さんより２カ月おくれて満州へ渡りました。農場について「バラックの建物が十数棟並ぶだけの、何もない風景だった」と振り返りました。
　小川さんは４５年９月に牡丹江の捕虜収容所へ送られ、ソ連軍から過酷な労働を強いられました。
　２人は翌年帰国しますが、農場の運営・実習に携わった約１１０人の教員・学生のうち５８人が帰国前後に死亡。死因は、栄養失調による衰弱や赤痢などの病気、過酷な難民生活などでした。
　村尾さんは「再び戦争する世の中になって、若い皆さんを戦場に送るわけにはいかない。その思いで話しています」と結びました。
　２人の話に耳を傾けた１年の男子学生(１９)は｢将来は海外に渡り､現地の人々に農業の技術を伝えたい｡同時に､戦争で大変な思いをした先輩のことは後世に伝えたい｣と話していました。

資料収集
　村尾、小川両氏に講演を依頼したのは小塩海平（４９）、足達太郎（５１）の両教授です。両氏はこの夏、当時の実相を伝える展示会「東京農業大学満州報国農場の記憶」の企画を立ち上げました。世田谷キャンパスにある「食と農」の博物館内に会場を構え、小川さんが使ったリュックサック、農場で使ったものと同じ型のすきなど２０点を展示しています。
　小塩氏は、１０年ほど前から農場の生還者から当時の状況を聞き取り、資料を収集する活動を続けています。「皆さんは軍人のような恩給もなく、大学からも冷遇されてきた中、自身の体験を多くの人に伝えようとしている。学生には私と同じように彼らの話から平和や命の大切さを感じてほしい」と話します。
　小塩、足達両氏には、農業分野での国際貢献は、戦争する国づくりとは両立しない―との思いがあります。
　足達氏は言います。「米国の戦争に日本が協力すれば、海外の卒業生が再び危険に遭う可能性もある」
　◇
　展示会は、３０日（水）まで、東京農大世田谷キャンパスに隣接する「食と農」の博物館１階で開催。午前１０時～午後５時（月曜休館）。
(２０１５年０９月２２日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦場体験語らず死ねない／平均９０歳超２０人が証言

　「あの戦場体験を語り継ぐ『老若』の集い―戦後７０年の今とこれからを考えるために」が２０日、東京都千代田区の日比谷公会堂で開かれました。
　主催は戦場体験放映保存の会・元兵士の会で４回目。保存の会は、個人の戦場体験を記録・収集し、史料として広く共有するとりくみを続けています。
　実行委員長の板橋孝太郎さん（２４）は、２００人を超える証言を聞いてきたとのべ、「体験を聞くことで何か新しい行動につながるきっかけになれば」とあいさつしました。
　「語らずに死ねるか！」と題し、平均年齢９０歳を超える２０人が１人数分ずつ体験を証言。中国での３０００㌔の徒歩行軍、フィリピン、ビルマ戦線などでの悲惨な実態や特攻体験、シベリア抑留、沖縄戦、東京大空襲など多岐にわたりました。口々に「地獄のような戦争は二度とあってはならない」「戦争へと国民を引っ張っていこうとする一団がいる。絶対に許してはならない」などと訴えました。
　猪熊得郎さん（８７）が証言者を代表してあいさつ。「戦争を知らない政治家によって再びきな臭い状況になっている。平和を願う気持ち、戦争を許さない誓いが幸せを守る。若いみなさん、しっかりと生きてください」と呼びかけました。
　歴史社会学者の小熊英二さん、文芸評論家の川村湊さん、毎日新聞記者の栗原俊雄さんらが参加したシンポジウムで、どう体験を継承していくかなどを話し合いました。
( ２０１５年０９月２１日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

波動／沖縄戦めぐる調査報道／藤久ミネ

　戦後７０年―沖縄では今年も１００体を超す遺骨が新たに発掘されたという｡１４歳以上の中･女学生など多数の民間人を巻き込んだ惨劇には、いまだ不明部分も多く、〝戦後〟の究明と調査研究の続行を必要とする。ＥＴＶ特集「書きかえられた沖縄戦」（８月１５日放送）はその秀れた一例である。
　番組では沖縄県公文書館にある戦闘参加者名簿の撮影が初めて許可され、研究者が取材した音声テープも新たに加わって、ほぼ全県民が兵員として参戦させられた全貌がより明らかになった。
　とくに音声テープから聞こえてくるのは洞窟壕の惨状だ。火炎放射器の焔を受けて「逃げきれないでしょう、おじさんが生きて焼ける。パチパチパチして、何十人もこんなして戦死なさって」とか、壕の中で「子供泣かすなと…もう殺すしかないですから、口におしめ押し込んで…」、「アメリカの艦砲（射撃）が落ちてきました。人間の肉切れ、手足の千切れが散ってきて飛び上がる」などなど根こそぎ動員された住民の戦闘参加者たちの声々が心に痛い。
　取材者たちは戦後７０年にして、これら兵士でも軍属でもなくて否応なく戦闘に巻き込まれた１０万を超えるともいわれる死者たちを追跡する。そして軍人軍属に準ずる戦闘参加者として、国の救護法の対象とすべく、救護法申請申立書に「壕の提供による死亡」との記載が３割に及ぶという事実をつきとめる。
　国の遺族救護法は、軍人軍属及び公務中の特別な被害者に認定されない限り、広島・長崎の被爆者の多くも東京大空襲被害者にも適用されていない。しかし当時、厚生省派遣の政府職員は沖縄の特殊事情をよく理解していたようだ。救護法による補償対象に認定されるように、死因欄に「壕を提供して死亡」と、戦闘参加者名簿を書き直していたことが明らかになった。もちろん〝島民によかれ〟との温情配慮だ。恩恵に浴した島民もいるが、米軍より直接の加害者だった日本軍の〝救護〟を拒否する島民も多いそうだ。
　本土による沖縄への差別と加害とが、沖縄戦の凄絶な悲劇を加算したことを忘れないためにも、この調査報道番組は緻密で説得力に富む示唆を与えてくれた。
　（ふじひさ・みね　放送評論家）
( ２０１５年０９月２１日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

２０ あす「満州事変」８４年／日本軍の謀略・独走から中国侵略／歴史の教訓省みない戦争法案の暴走

　安倍晋三政権が戦争法案の成立を狙うなか、８４年前に「１５年戦争」の発端となった「満州事変」が勃発した９月１８日を迎えます。日本軍の謀略と独走によって中国東北部への侵略戦争が開始された日を前に、同法案の採決強行を狙うことは、歴史の教訓を省みない暴走といわなければなりません。

　「満州事変」は１９３１年９月１８日、奉天（現在の瀋陽）近郊・柳条湖での南満州鉄道（満鉄）の線路爆破事件をきっかけに日本の関東軍が起こしました。２１日には日本の植民地下にあった朝鮮駐留の朝鮮軍も関東軍と謀って中国東北部に越境攻撃をしました。

関東軍による「計画的行動」
　満鉄の爆破は「中国軍の行為」という宣伝とは逆に、関東軍によって早くから綿密に準備された謀略でした。外務省文書が「鉄道爆破事件を虚構して軍事行動開始」、「奉天林総領事、内田満鉄総裁…我軍の計画的行動と外相に報告」（『日本外交年表竝（＝並びに）主要文書』）と断定して明記しています。
　政府は事態の不拡大の声明をしたものの、関東軍はそれを無視して軍事・交通の要地・錦州を空爆、北部満州の中心地ハルビンの占領によって主要都市を支配。３２年３月１日に関東軍が実質支配する「満州国」を建国しました。
　当初、国際連盟などの反発を恐れていた政府でしたが、軍部の独走を容認する姿勢に転換。昭和天皇は翌３２年１月、首謀者である関東軍の板垣征四郎参謀（Ａ級戦犯）にたいして、「関東軍の将兵は果断神速」「勇猛力闘をもってその禍根を抜きて皇軍の威武を中外に宣揚せり、朕（ちん）深くその忠烈を嘉（よみ）す」と暴挙を称賛する勅語を出しました。
　「満州事変」により「高揚した日本国内の戦争熱の前に、政党主導の軍縮時代は事実上終わりを告げた。満州事変は、結果として日本の政治の方向性を変えさせた」（山田朗編『外交資料　近代日本の膨張と侵略』）という国内政治の変動を生みました。
　「満州国」は「五族協和」「王道楽土」のスローガンとは裏腹に、独立は名ばかりで日本の中国侵略のためのかいらい国家でした。板垣参謀や石原莞爾作戦参謀らは「満蒙問題」解決の「唯一の方策は之を我が領土となすにあり」（石原「満蒙問題私見」）といっていました。
　「満州国」づくりのため関東軍は、清国の廃帝・溥儀（ふぎ）を擁立。「満州国」から「外国の目」をそらすため、日中両軍の衝突に至った「上海事変」（３２年１月）まで引き起こしました。
　日本の中国侵略は「満州事変」で終わらず、「第二の満州国」をめざす「華北分離工作」が続きました。３７年の盧溝橋事件で日中全面戦争を開始、南京大虐殺事件などの戦争犯罪を起こしました。中国との戦争の泥沼化から抜け出すために軍事資源を求めてアジア・太平洋での侵略戦争へと突き進みました。

戦争の認識すら語れぬ安倍首相
　安倍首相は戦後７０年の「安倍談話」で、歴代内閣が認めてきた「植民地支配と侵略」への反省を認めない欺瞞（ぎまん）的な態度をとりました。「満州事変」にみる日本の戦争への認識すら語ることのできない安倍首相のもと、米軍指揮下の自衛隊の独走も内部文書で明らかになるなか、戦争法案を強行することが許されないことは、歴史の教訓からいっても明らかです。
　（山沢猛）
( ２０１５年０９月１７日，「赤旗」)

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こころの時代「私の戦後７０年」／先人の体験学び「現代」を考える

　ＮＨＫＥテレ「こころの時代」（日、前５・０）で、シリーズ「私の戦後７０年」が始まりました。風雪を生き抜いて、今も第一線に立つ人々にじっくりと話を聞く企画です。

　総合テレビなどで戦後７０年を銘打った大型番組が並ぶ中、地味でも一味違ったものを視聴者に届けようと、企画が出発しました。
　舟迫将信（ふなば・まさのぶ）チーフプロデューサーは「心の戦後７０年をたどることで日本人が何を失い、何を得てきたのかを見てみたいと思いました」と話します。
　６回の特集です。８月３０日の第１回は、沖縄・佐喜眞（さきま）美術館館長の佐喜眞道夫さんと在日朝鮮人作家・徐京植（ソ・キョンシク）さんとの対談。美術館が所蔵するドイツの芸術家ケーテ・コルビッツの版画や彫刻を鑑賞して、語り合いました。第１次大戦で息子を失ったコルビッツ。自身の体験を版画の連作「戦争」に表しました。連作の中の１作「母親たち」は、戦争から子どもたちを守ろうとスクラムを組む母親たちの表情が刻まれています。

平和への叫び
　舟迫さんは「実際に話をされたのはお２人ですが、コルビッツを加え、時空を超えた３人の鼎談（ていだん）というイメージで作った」といいます。
　徐さんの２人の兄は１９７０年代、韓国の軍事政権に弾圧され、獄につながれました。普天間基地に突き出るように建つ佐喜眞美術館を見て、徐さんは「平和の叫びが基地へ向かって放出している｣と語ります｡
　第２回はシルクロード研究の第一人者として知られる加藤九祚（きゅうぞう）さんが登場しました。朝鮮半島に生まれ、１０歳のときに兄を頼って単身で日本へ。日本陸軍兵士に志願して出征。旧満州で終戦となりますが、シベリアへ抑留されます。戦争の体験が、シルクロード研究に向かわせます。９３歳です。
　舟迫さんは、加藤さんの考えを次のように代弁します。「シルクロードは武器でつながっているのではなく、生活や人と人との心でつながっている。戦争しないことだと」
　現在、第３回の日本画家・堀文子さん（９７）の取材が続いています。堀さんは、１９３６年の２・２６事件で出動する軍部の様子を目撃しました。戦後、堀さんは戦争に利用されない生き方を強く望んだといいます。
　「命をテーマに描かれてきました。政治とかマスコミとか、今が戦前と似ていると憂えていらっしゃる。ディレクターは、絵に向かう堀さんの姿を撮影したいと考えています。ご高齢でハードルが高いですが、なんとか実現したいです」と舟迫さん。

番組の源流は
　番組の源流は、ＮＨＫラジオの「宗教講座」にさかのぼります９０年前、放送開始した年に始まりました。８２年、教育テレビ「こころの時代」がスタートします。
　「宗教の解説番組ではありません。先人がいかに悩み、苦しんできたか、かっとうの部分をていねいに聞いてきました。その生き方を延々と学びます。行きつくのはエゴを捨てる、自分の利益だけを優先するのではないという、ところでしょうか。国や家柄に縛られない、解き放たれた新たな自分を見つけることにもつながると思います」
　◇
　※第２回「加藤九祚さん」は１９日（後１・０）に再放送。第３回「堀文子さん」は１０月１１日に放送します。
( ２０１５年０９月１７日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

インタビュー戦後７０年／脚本家ジェームス三木さん／憲法こそが最高の防衛策

憲法制定過程描いた舞台「真珠の首飾り」再演
　青年劇場が再演中の舞台「真珠の首飾り」は、日本国憲法の草案ができる過程を米国のＧＨＱ（連合国軍総司令部）側から描いた作品です。１７年前に書いたのはジェームス三木さん。「再演しなければならないという危ない状況になりました」と語ります。
　大塚武治記者

〈ＧＨＱ民政局のメンバーが憲法草案づくりに奮闘します〉
　敗戦後に日本政府がつくった憲法草案は明治憲法とほとんど変わらず、「日本は君主国とす」と明記されたものでした。それを不満としたマッカーサー総司令官が、民政局のメンバーに命じ、原案を作らせました。
　２２歳で最年少だった故ベアテ・シロタ・ゴードンさんが焼け跡の図書館を回って世界中の憲法を集め、それを基に原案が作られました。戦争放棄や基本的人権をうたう今の憲法は、世界中の憲法のいいとこ取りをしたものなんですよ。
〈安倍政権は憲法の理想から、どんどん離れていると怒ります〉
　「周辺事態」「存立危機｣と聞くたび､いつか来た道に向かうようで恐ろしくなります。
　日本はかつて戦争を「事変」と言い換えて侵略しました。満州（中国東北部）をぶんどり、東南アジアなどに攻め入りました。
　「敵」をつくり、「危ないぞ､攻められるぞ｣と不安をあおり、戦争へと進む。昔も今も権力者が使う手です。
　満州生まれの僕は当時小学生で、完全に洗脳されていました。「鬼畜米英」「特攻隊、体当たり」と叫び、１０代で戦死しようと本気で考えました。

「攻めない」宣言
〈日本国民を軍国主義から解放した日本国憲法。その理念こそ、これからの日本と世界に必要だと話します〉
　日本は軍隊を持たないし、戦争もしない。憲法前文は、世界に向けたあいさつ文です。世界の良識を信頼した勇気ある宣言です。
　「あなたを攻めません」と言えば、周りの国は安心します。逆に「憲法を改正して周辺事態に備える」と言えば相手は身構えます。「攻めない」と宣言することは、最高の防衛策でもあります。
〈作品のタイトルに、真珠＝憲法という思いを込めました〉
　１０３条の憲法は１０３粒の輝く真珠。日本国民はその首飾りをもらったんです。憲法が生まれて６８年、日本は戦争で外国人をひとりも殺していません。こんなすばらしいことがあるでしょうか。
　芝居の最後、憲法になりかわって､｢どうか私をほめてください。守ってください」と書きました。静かに、でも強く憲法を守れと言い続けたい。

じぇーむす・みき＝１９３５年生まれ｡脚本家｡「真珠の首飾り」（演出／板倉哲）は２０日まで＝東京・紀伊国屋ホール、２４日＝大田区民プラザ、２５日＝かめありリリオホール。℡０３(３３５２)７２００
(２０１５年０９月１３日，「赤旗」)

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インタビュー戦後７０年／写真家大石芳野さん／戦争の傷は終わりがない

写真集『戦争は終わっても終わらない』出版
　写真家の大石芳野さんが、写真集『戦争は終わっても終わらない』（藤原書店）を出しました。１９７０年代から今年までの作品のなかから、日本の戦争にかかわる写真１９２点を選びだし、収録しています。いま、伝えたいことは…。
　金子徹記者

〈広島、長崎の被爆者、東京大空襲を生き延びた人、中国残留婦人など海外の例、そして沖縄。日本の戦争は何をもたらしたのかを、人々の肖像と証言から伝える写真集です〉
　これまでずっと、戦争で心身に深い傷を負った人たちのお話を聞いたり写真を撮らせていただくなかで、胸のなかにお会いした一人ひとりがいる感じになっています。いま、日本は一見平穏そうにみえますが、本当に平和かというと疑問を感じる状況になってきました。あの人たちのあまりに重い体験をいまここで『再燃』させないと、体験がその人のなかだけで終わってしまう。それではいけないと、この本をまとめました。
〈それぞれが、何度も訪ねて交流を深めてきた人たちです〉
　戦争で傷を負った人は、それを言葉にするとつらい体験を追体験するような圧迫感があると思います。だから話したくないという方もいらっしゃるけれど、何度も会うなかでお話をうかがえたりします。たくさんある話から、写真に添える数行のキャプションで伝えるべき内容を抽出する作業は少々苦労しました。
〈写真を撮り始めた時の関心は民俗でした〉
　普通の暮らしが、いったん戦争が始まると破壊される。民俗的関心から行った７２年の沖縄で、戦争の深い傷を知り、戦争を後回しにできなくなりました。

与党に見せたい
〈『戦争は終わっても終わらない』というタイトルも印象深い〉
　この言葉は以前からよく使っていました。取材するたびに思ったのは、一人ひとりの内側に戦争はまだ重く残っているということでした。長年の私のテーマとなりましたが、あの戦争から７０年たって、安保関連法案が強行採決されようとしている。若い人や子どもの将来はどうなるのでしょう。また、あの苦しみや悲しみが繰り返されるのでしょうか。
〈安倍政権に憤りが〉
　秘密保護法、武器輸出の解禁、安保関連法案と、やりたい放題の与党の議員は、この本を見てほしい。ここに写っている人たちが戦争でどれだけ傷つき、どんな思いで戦後を生きてきたか。安倍首相は矛盾だらけの説明をするのでなく、ここに写っている人たちに目を向けてほしい。同じ時代を生き、苦しんでいるこの人たちに知らん顔していいの？

おおいし・よしの＝東京都出身｡２００１年、『ベトナム　凜と』で土門拳賞、『福島　ＦＵＫＵＳＨＩＭＡ　土と生きる』でＪＣＪ賞。『カンボジア苦界転生』『子ども　戦世のなかで』ほか
(２０１５年０９月１３日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

風の色／はなわちえ／使命

　人の生命は尊い。そんな当たり前のことが当たり前ではなかった当時を語る人たちは、口々に自分たちが見た光景は地獄だったと言います。思い出したくもない重い記憶。でも彼らは、肉声で伝え続けてくださいます。それが使命だと。
　みなさん一様に「生きている」ことを「生かされている」と表現し、自分の中で戦争はまだ終わらない、自分は死ぬまで戦争を憎むと、強い口調で話を結ぶ姿が印象的です。
　第２次世界大戦の折、ボルネオに出兵した経験を持つわたしの祖父は、７年ほど前に膵臓癌を発病し、入院しました。自分の死期を悟りながら過ごす日々の中で、今まであまり語ることのなかった戦争の話を、しばしば口にしていたのをよく覚えています。
　多くの仲間が目の前で命を落としたこと。捕虜になり船で運ばれた時の恐怖。終戦後も夢枕にたびたび戦友が現れたこと。銃を握りしめ続けた右手は中指の先が少し曲がっていました。「おじいちゃん、早く家に帰ろう」とわたしが手を握った少し後、祖父は９２歳の生涯に幕を下ろしました。
　「戦争で人をたくさん殺したから、バチが当たって癌になったんかなぁ」とぼやき、「バチが当たるならもっと早く当たってるよ」と娘たちにからかわれていた祖父。戦後７０年たってもなお、祖父は記憶を背負い続けて生きてきたのだと胸が締め付けられました。もう二度と、こんな重い記憶を背負う人がいない世の中を、わたしたちもまた、守り続けていく使命を担っているのだと思います。
　（津軽三味線奏者）
(２０１５年０９月１３日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦時下の日記をいま読み返す／生活評論家吉沢久子さん（９７）／飢えと空襲、私も戦場にいた

憲法覆す戦争法案、本当にイヤ
　心豊かで前向きな暮らしぶりが、多くの人に支持されている生活評論家の吉沢久子さん（９７）。自らの体験をもとに、戦争法案は「絶対に許せない。二度と戦争はいやです」と訴えます。
　秋野幸子記者

　世の中の動きがきなくさくなってきたからか、寝ているときに空襲警報が鳴る夢を見て、驚いて目を覚ますようになりました。７０年以上たっても、恐怖心を覚えているんですね。
　戦後７０年の今年、今までで一番多くの取材を受けました。夏に検査入院をしたばかりで、多少の無理はしましたが、今こそ伝えなければ、という思いで話させていただきました。
〈戦争中に１０代から２０代の時期を過ごしました。助手をしていた文芸評論家の古谷綱武氏（後の夫）に頼まれ、戦争末期の１９４４年１１月から終戦（４５年８月１５日）の翌月まで、東京での暮らしを日記につけていました〉

明日も見えない
　戦争中は、だれもが生きることに精いっぱいで、明日どうなるかさえわからない毎日でした。ひもじさと昼夜を問わない空襲に、疲れ果て、いら立っていました。
　戦争で初めて飢えというものを知りました。最小限の配給さえなく、自分でなんとかするしかない。カボチャやサツマイモは茎も葉っぱも全部食べ、お茶がらも、庭の草さえも食べました。
〈４５年５月の日記には「夜９時警戒警報。すぐ空襲警報になる。外に出たらまっすぐ頭上に見える１機が火を噴いて落ちてきた。次々に山梨方面から来るＢ２９らしき機体が、頭上のあたりで爆弾を落とし始めた」と記されています〉
　日常生活に入ってきた空襲は、常に人を不安にさせ、投げやりにさせました。一緒に夕飯を食べた友人が、その日の深夜、焼夷（しょうい）弾で亡くなってしまったこともありました。
　女は「銃後を守れ」と言われたけれども、ごはんを炊いたり赤ちゃんのおむつを洗ったりする一人ひとりの暮らしに戦争が入りこんできて、「自分も戦場にいるのだ」と実感させられる日々でした。
　赤紙一枚で夫や息子や兄弟が引っ張られていく。大切な人を失っても、生活は何も保障してもらえない。どんな命令にも従うしかない。戦争とは、そういうものです。
　戦争中の生活は思い出すのもいやでしたが、１２年ほど前から毎年８月１５日に自分の日記を読み返しています。自衛隊の海外派兵や、憲法９条を変えようとする動きへの危機感がきっかけでした。
　戦争を知らない人が多くなりました。安倍（晋三）首相だって戦争の実態を知らない。本当にひどい目にあった人間は、簡単に戦争に参加しようと考えないと思います。過去をよく知ってほしい。過酷な生活を強いられた日々や、亡くなっていった人たちのことを伝えるのは、私の義務だと思っています。
〈終戦の日は街頭で玉音放送を聞きました〉

初めての参政権
　やっと終わったという喜びと同時に、私は一体何をやってきたんだろう、この戦争は何だったんだろうと、涙が出てきました。結婚するはずだった大切な人も、戦争に奪われてしまったのですから。
　戦後、二度と戦争はしないと誓った憲法を初めて知ったときは、うれしかった。女性にも参政権が与えられ、初めての選挙は、本当に踊るような気持ちで投票所に行きました。
〈政府が違憲の戦争法案を強行しようとすることに、強い憤りを感じています〉
　今、これだけ反対の運動が広がっているのに、なぜ強引に進めなければいけないのですか。憲法がくつがえされるようなことは、本当にいやです。
　同時に、全国各地で若い人や子どもを連れたお母さんなどがたくさん集まり、「戦争反対」の声を上げていることを、とてもうれしく思っています。
　戦争中は、自宅でも怖くて本音が言えなかった。女性は選挙権もなく、何か意見を言えるような立場ではありませんでした。
　私は今、発言できる機会には必ず「戦争はいやです」と言っています。どんな事情があっても、二度と戦争はいやです。
　今年も８月１５日は日記を読み、すいとんを作って食べました。戦争は、私たちのごく普通の生活にある、ささやかな幸せさえ奪ってしまいます。限られた私の持ち時間、声が続く限り、戦争の愚かさと「戦争はいやだ」の思いを、訴え続けていきます。

よしざわ・ひさこ＝１９１８年東京生まれ。文化学院、東京栄養学院などで学ぶ。暮らし、食文化、老年の生き方について執筆活動などを続けている。『９７歳のおいしい台所史』（集英社）『２７歳の空襲日記』（文芸春秋）など著書多数
(２０１５年０９月１３日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦後７０年／歴史向き合い平和の道を／日中関係未来開く

　日中の民間交流を進めてきた団体や個人の有志による｢戦後７０年･日中関係の未来をひらくつどい｣が東京･明治大学で開かれました。
　１２日はパネルディスカッションがおこなわれ、パネリストの松村高夫慶応大学名誉教授（歴史学）は、細菌兵器を開発し少なくとも３０００人の中国人を人体実験で殺した日本軍７３１部隊について、いまだに事実を認めない日本政府を批判。元外交官の浅井基文氏は、日本人の間に広がる中国脅威論を克服しなければいけないと訴えました。
　ドイツ法が専門の広渡清吾前日本学術会議会長は、安倍晋三首相の戦後７０年談話のあいまいさを批判。「ドイツはナチズムの誤りを近代にまでさかのぼり反省している。日本も近代の歴史に向きあい、憲法９条のもとで平和の道をいくべきだ」とのべました。
　作家の浅田次郎氏は清王朝の歴史について講演し、「いま日本と中国の近代史を見直すいい機会だ」とのべました。歴史教科書問題での討論や映画上映も行われました。日本共産党の穀田恵二衆院議員らが来賓のあいさつをしました。
　前日の１１日には、『悪魔の飽食』で７３１部隊を描いた作家の森村誠一氏と同作を合唱組曲にした作曲家の池辺晋一郎氏が対談。合唱も披露されました。つどいは１３日まで開かれます。
( ２０１５年０９月１３日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

１３日「こころの時代」／私の戦後７０年

　ＮＨＫＥテレ「こころの時代」（日、前５・０）が「シリーズ私の戦後７０年」を特集しています。１３日は第２回「こころの壁を超える」。文化人類学者の加藤九祚（きゅうぞう）さんが登場します。
　加藤さんはシルクロード、中央アジア研究の第一人者。９３歳の今も現役です。朝鮮半島で生まれ、１０歳のときに日本で働く兄を頼って移住。日本陸軍に志願します。旧満州で終戦を迎え、シベリアに抑留されました。仲間の間で起きた過酷な事件が、後に加藤さんをシルクロードの研究に向かわせる契機となりました。
( ２０１５年０９月１２日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

１０ 若者を戦場に向かわせない／作品通じ戦争体験語り継ぐ／岐阜・児童文学者堀野慎吉さん

　岐阜県関市に住む児童文学者、堀野慎吉さん（６６）は、戦後７０年を迎えたいま、文学作品を通じて「二度と子どもや若者たちを、戦場に向かわせてはならない」と強い願いを込めて語り継いでいます。
　岐阜市で開かれた「岐阜・九条の会」の例会（１日）に招かれた堀野さん。「僕らは団塊の世代。戦争体験者が少なくなる中で、われわれが平和のバトンを引き継いでいく使命がある」と語ります。
　堀野さんは今夏、『野球選手は南の海に散った～近藤清の青春～』を出版しました。戦前、夏の甲子園を制覇した岐阜商業（現・県岐阜商）の近藤清が特攻隊員として戦死するまでの２４年の生涯を追ったものです。岐阜商レギュラー９人のうち５人が戦死しました。
　堀野さんがプロジェクターを使って写真、遺書などを見せながら解説すると、参加者の目頭は熱くなり、涙なしには見られなくなります。
　「近藤の写真には、野球をしている穏やかな顔と、軍服姿の鋭い目つきの顔があった。２４歳の近藤を見ると、自分は２４歳のとき何をしていたのか、問いかけられているようだった」と明かす堀野さん。戦争法案反対の世論を重ね合わせて短歌を詠みました。「青春の蹉跌という本なつかしく、高揚の時代再びきたりて」
　堀野さんは、「戦争法案反対のたたかいが、これまでの労働組合や学生、活動家の組織のデモから、いまはシールズなどの学生やママさんたち広範な層に広がり、自分たちの意思で動いている。戦争法案廃案を求める８・３０集会は国会で１２万人にも広がり、岐阜でも１０数カ所同時に行われ、たくさんの人でいっぱいだった。本当に力が高揚している。もう一度力を思い切り出して、頑張ってみようという人が自分も含め大勢になったことは、次につながる。私も７０歳になるまでの４年間、全力でがんばりたい」と結びました。
　堀野さんの連絡先＝０８０（１６０８）２３０２。
(２０１５年０９月１０日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦後７０年／今伝えたい／宮城県多賀城海軍工廠で働いていた菅原昭三さん（８７）／空前のたたかい私も

　太平洋戦争末期に、宮城県多賀城海軍工廠（こうしょう＝軍事工場）で働いていた菅原昭三さん（８７）に聞きました。
　（高橋拓丸）

　１９４４年９月、１６歳のときに学徒動員で多賀城海軍工廠に行き、「ゼロ戦」の機銃を作る作業を毎日していました。寄宿舎は急造のバラック２階建てで、寒さがひどかったのを覚えています。

機銃掃射受けて
　翌年５月ごろ、空襲が激しくなってきて、突貫工事でつくられた高城の山のトンネル工場へ移りました。宿舎は、松島海岸の松島ホテルでした。
　終戦間際の８月１０日、夜勤あけの仲間数人と宿の前にいると、誰かが「船が燃えているぞ」と叫ぶので塩釜市の方向を見ると、海上から黒煙があがっていました。そこに突然、ごう音とともに２機編隊のグラマン戦闘機の機銃掃射。とっさに松の根もとに伏せたのですが、左足にむちで強くたたかれたような衝撃があり「あ、やられた！」と思いました。同時に耳元でもヒュヒュッと弾丸の音を聞きました。
　体を起こしてみると、左足のふくらはぎがえぐれてザクロのようになっていました。股間もヒリヒリするのでズボンを引っぱってみたら、ピカピカの弾がのぞいていました。木に当たってはねかえった弾だったと思います。触るとやけどするような熱い８㍉機関銃弾でした。

病院に置き去り
　憲兵２人が駆けつけ、弾を大事そうに包んで持ち帰りました。車で病院へ搬送される途中にまた戦闘機が現れたときは、運転手も看護婦も、私と付き添いの同級生を置いて逃げ出しました。
　病院についても薬がほとんどないため、消毒して包帯をまいて終わりでした。入院中、空襲警報が毎晩あり、患者も医者も事務員も防空壕（ごう）へ避難し、私１人が残されました。私は防空壕の場所も分からず松葉づえで歩き、ふてくされて畑に寝転んで、警報解除まで星空をむなしく眺めるだけでした。
　ひどく情けなく悲しかったけど、同時に「これが戦争なんだな」とも実感しました。他人の苦しみに配慮したりかまったりする余裕が、誰にもなかったんです。
　安倍首相は、あまりにひどいアメリカ追随と数の力で戦争法案を通そうとしているけど、反対する世論も大きくなっています。
　６０年安保闘争は労働組合が中心でしたが、戦争法案反対のたたかいは学者、文化人、宗教団体、自発的な青年や学生、そして家庭の主婦まで、空前のたたかいに発展しています。
　政治が大きく動く時代にきていると思います。私ももうすぐ９０歳。まだまだ頑張ります。
(２０１５年０９月１０日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

派遣法改悪案強行採決に抗議／中岡基明事務局長／橋場恒幸さん

　９日、参院本会議で労働者派遣法改悪案が可決されたことに対して、労働組合、違法派遣とたたかう労働者の抗議の声を紹介します。

「みなし制度」葬らせるな／全労協中岡基明事務局長
　安倍政権がこの労働者派遣法改悪案を何がなんでも強行しようとするのは、１０月１日施行の「みなし制度」を葬り去るためです。
　雇用が安定するためには、まず直接雇用で無期雇用であることが必要で、賃金や労働条件の差別があってはいけません。しかし、この法案によって、派遣は全面自由化され、派遣労働者は低賃金のまま「生涯ハケン」に縛り付けられます。直接雇用の大原則が覆されます。
　派遣労働者の当事者も改悪反対の声をあげています。私たちの先輩たちが戦後７０年で築いてきた平和と労働条件を覆すたくらみを許してはなりません。
　強行採決で、安倍政権は馬脚をあらわしました。この怒りを大きなたたかいに転化し、戦争法案廃案のたたかいと一体に広げていきます。

派遣の基本骨抜き許せぬ／大日本印刷関連子会社に職場復帰を求める橋場恒幸さん
　私も審議を傍聴しましたが、厚生労働大臣が何度も答弁不能になるのを目の当たりにして、やっぱり問題だらけの法案だと確信しました。しかも９月１日施行のはずだったのに、施行日にも審議が続いていました。それほど問題が噴出していた法案だったのに、ここまで無理やり成立させるのか。派遣労働者を愚弄（ぐろう）しているとしか思えません。
　派遣労働は｢臨時的･一時的」に限るという基本的なところを崩して、骨抜きにすることなどあってはならないことです。派遣先の雇用責任など何も保証されない法案なのに、「正社員を増やす」などとまるでつじつまの合わない答弁でごまかすなど､絶対に許されない｡廃案しかありません。
( ２０１５年０９月１０日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦後７０年の夏に／あすＮＨＫ（中国ローカル）「赤レンガ」／戦争に加担しない思い込め

　この夏、各局が特色のある「戦後７０年番組」を競う中、ＮＨＫ広島放送局はドラマ「赤レンガ」を制作しました。脚本と演出を担当する同局の大橋守ディレクター（５０）は、これまで３本の戦争・原爆関連のドラマを送りだしてきました。「被爆者の数だけドラマがある」と意欲を燃やします。
　（佐藤研二)

　ドラマの舞台となる「赤レンガ」とは、戦時中に軍服や軍靴を製造・修理していた旧広島陸軍被服支廠のこと。大橋さんは、被爆後も残った建物の保存運動を知り、赤レンガで働く女性の恋物語として紡ぎ出しました。
　「被服支廠は、市井の女性たちが軍国主義の担い手として協力した場所です。戦争に加担せざるを得なかったために成就しなかった恋愛を、戦争を知らない若い世代がどう想像するのか、今日のテーマと照らし合わせながら描きました」

役者の人生借り
　戦争中、「鬼畜米英」と呼ばれた日系人のジェームスを愛してしまった月子は、原爆の惨禍を体験する中で、彼の愛を受け入れることができませんでした。７０年後、月子と出会って初めて「ヒロシマ」を知ったジェームスの孫・アニーは、「平和をつくるために自分にできることは何か」と模索し始めます。
　声を大にして｢平和｣を問いかける作品に、大橋さんは「本当に恐る恐る」取り組んだと言います。月子役の奈良岡朋子さんも、ジェームス役の宝田明さんも、それぞれ戦争で辛酸をなめてきた人。
　「奈良岡さんは東京大空襲の地獄絵図の中を生き抜き、宝田さんは旧満州（中国東北部）でソ連兵に狙撃されました。そんな方がたの人生をお借りして脚本を書くことは、僕自身、とても恐ろしいことでもあります。しかし、『恐る恐る』の気持ちを隠さず誠実に作らないと、責任がとれないと思いました」

原爆に向き合い
　大橋さんは、２０１２年に広島局へ赴任後､積極的に｢原爆｣と向き合いました｡東京の小学５年生が広島の中国残留孤児の祖父を訪ねる｢基町アパート｣（１３年８月）、高齢化する被爆者の体験伝承事業に挑む大学生を描いた「かたりべさん」（１４年８月）、人生に悩む女性とタイムスリップした戦艦大和の料理人との恋を軸に反戦を訴えた「戦艦大和のカレイライス｣(１４年１０月､脚本は會川昇)―。
　｢でも､東京では軽めの恋愛コメディーを作っていたので､広島に来た当初は『大丈夫か､オレ!』と､ビビりました｣と笑います｡逆に｢知らなかった」ことを率直に受け止め、物語の主人公とともに少しずつ理解を深めていく道を探ります。初めて広島に来てとまどう「基町アパート｣の少年は､まさに大橋さん自身の姿でした。
　「７０年前の８月６日の惨劇は、知れば知るほどしんどいわけです。見たくない気持ちがあってもおかしくない。しかし、気を付けなければ再び戦争に加担させられてしまう危うい現状もあります。毎日のように起こる、戦争と平和に思いをはせる世の中の動きをどうすくい取っていくか、ドラマの種は尽きることがありません」
　「赤レンガ」は１１日（後７・３０）に中国地方ローカルで放送。

奈良岡朋子、宝田明が共演
《あらすじ》米在住の日系４世・アニー（プリシラ・アーン）は、祖父のジェームス（宝田明）が死の間際までひそかに愛した女性・月子（奈良岡朋子）の存在を知ります。日本に向かったアニーは、月子が戦時中に働いていた旧広島陸軍被服支廠の建物で彼女と出会います。月子の苦しみと祖父との別れの真実を知ったアニーは、ある決意をします。
( ２０１５年０９月１０日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

加害者史観は未来志向の史観／「民衆談話の会」が活動報告集会

　安倍晋三首相の戦後７０年談話とは別に、平和への思いを込めた市民一人ひとりの「民衆談話」を発表する「民衆談話の会」が８月２３日、さいたま市で活動報告集会を開きました。
　同会共同代表の松永優氏があいさつ。同１４日に発表された安倍談話について「戦争への反省の気持ちがまったく込められていない。形だけで実質が伴っていない、空疎なもの」と批判しました。
　賛同人である門奈直樹立教大学名誉教授は、民衆談話の根底にある加害者史観に共感したことをあげ、「政治責任、歴史責任を問う加害者史観を自虐史観と呼ぶ人がいるが、それは間違い。加害者史観は世界からの信頼を獲得し、過去を克服する未来志向の展望史観だ」と語りました。
　参加者の自由討論では、「安倍談話への対抗意見を打ち出した後、どう活動を続けていくかが肝心」「日本人は堅い話を日常でしない。家庭で戦争について話し合えるような流れをつくることが大切」「日本は戦争被害について声を上げていないから、加害責任にも向き合えていない」などさまざまな意見が出されました。
( ２０１５年０９月０９日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

日本教育学会大会「戦争と子ども・教育」シンポ／子どもの体験、多角的に探る

日本、ドイツ、エジプトの戦時・戦後
　日本教育学会の第７４回大会（８月２８～３０日、お茶の水女子大学）が開かれ、戦後７０年の節目にあたり、「戦争と子ども・教育」をテーマの一つにすえ、シンポジウムが行われました。

戦中と戦後の価値観ないまぜ
　司会者で大会実行委員会委員長の米田俊彦お茶の水女子大学教授は「戦争と平和の問題に対し、歴史研究から、戦争と子どもたちにかかわる知見を多角的に得たい。第２次世界大戦の経験の仕方によって異なる戦後が重層的にあることを踏まえたい」と企画の趣旨を説明。３人の歴史研究者がそれぞれ、日本、ドイツ、エジプトについて報告しました。
　学童疎開史や戦争孤児史など戦争と子どもの関係史の研究を蓄積してきた逸見勝亮北海道大学名誉教授は、戦時に子どもだった自身の１９４５年から５０年代の体験に触れながら、戦後、子どもたちは学校でも地域でも戦中の価値観と戦後の価値観の「ないまぜ状態」に置かれていたと振り返りました。

子どもの視点で戦争体験見直す
　戦中の子どもたちが教えこまれた「教育勅語」や教材を講義で取り上げると、「（今の）学生は『こんなことが信じられていたのか』と憤るし、その感覚は正しいが、当時の教育の仕組みを理解する必要がある。今の子どもたちも教科書を疑わない時期があると思う。今後の課題だ」とのべました。
　ドイツ近現代史が専門の芝健介東京女子大学教授は、ドイツで１９３０年から４５年生まれの「戦時子ども世代」に光が当てられるようになったのは２００５年以降だと報告。戦時期に兵士だった世代が退場するにつれ、子どものまなざしから戦争体験を見直す視点が出てきたと指摘。「ドイツ社会のさまざまな階層の子どもたちの経験が包括的に分析され、出来事に直接コミットできない点で、いずれの立場でも戦時子どもは常に犠牲者だったと言われている」とのべました。戦時子ども世代は、ナチ時代の親の活動に向きあおうとしない傾向があることも指摘しました。
　ナチ犯罪者の訴追を正当とみなすドイツ人は、４５年秋には７８％だったのが、５０年には３８％と半分以下に落ち込んだと紹介。「過去の忘却が圧倒的になっていたが、５０年代後半に入ると過去は清算されていないという批判の目が形成され、以後さまざまな議論を伴いながら、過去に向き合うことが戦後の重要な政治文化、文化的アインデンティティーになっていった」と述べました。

植民地下の影響、今の教育格差に
　エジプト近現代史研究の池田美佐子名古屋商科大学教授は、戦争の結果としての植民地化と現代の教育格差について報告しました。エジプトでは日本より早い１９世紀初頭に近代教育が導入されたものの、１８８２年から８０年間にわたりイギリスに軍事占領され、近代教育の流れが停滞。「英統治期は、知識層の増加による民族運動の興隆が警戒され、統治に必要なエリート以外の一般国民には最低限の教育しか行われなかった」と指摘しました。
　１９５６年の英軍の完全撤退後、公教育の急速な量的拡大が進められたものの質が追いつかず、公立と私学との教育格差が広がっていると現代の問題点を指摘しました。
　日本の植民地支配を研究する駒込武京都大学教授は「戦争では同じ世界を生きながら、迫害する側とされる側の間に巨大な現実の落差がある。教育はその落差を見えなくする働きもするし、克服する働きもする。両方のリアリティーを掘り下げて考えていく必要がある」とまとめました。
　(田中佐知子)
( ２０１５年０９月０９日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

日中関係改善へ明治大学で集い／１１～１３日

　日中関係を市民の力で改善しようと「戦後７０年・日中関係の未来をひらくつどい」が１１日から１３日まで、東京・明治大学リバティータワーで開かれます。主催は同実行委員会。
　１１日は、旧日本軍７３１部隊を描いた『悪魔の飽食』の作者・森村誠一氏と同作を合唱曲にした池辺晋一郎氏が対談します。１２日は実行委員会代表呼びかけ人の松村高夫(慶応大学名誉教授)､広渡清吾(元日本学術会議会長)､浅井基文（元広島平和研究所所長）の３氏によるパネルディスカッション、作家の浅田次郎氏の記念講演｡１３日は､憲法９条や学術交流についてのパネルディスカッション、漫画展「私の八月十五日」について作家の石川好氏らのトークなど。各日、合唱や映画上映もあります。１日券９００円､通し券２０００円｡詳細はｈｔｔｐ：／／ｗｗｗ．ｍｉｒａｉ－ｈｉｒａｋｕ．ｏｒｇで｡
( ２０１５年０９月０８日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

命と暮らし守る切実な思い／『平和万葉集』へ応募を／碓田のぼる

　『平和万葉集』巻四の刊行が企画され、広く作品応募が呼びかけられています。これは作品の優劣を問うものではなく、現在を生きる私たちの、平和を守り、命と暮らしを守る切実な思いを短歌として表現し、結集しようとするものです。
　いま安倍内閣は圧倒的な国民の意志をふみにじり、「戦争する国」へと進む危険きわまりない「戦争法案」を国会でおし通そうとしています。しかし、戦後７０年を迎えた日本の草の根民主主義は、去る８月３０日の１２万人の国会包囲デモに象徴されるように、画期的な力を示して発展しつつあります。この巨大な運動は、戦争を絶対に許さず、平和と民主主義を守ることこそ、真の人間的な道であるとする歴史の証言者となるものです。
　このような情勢こそ、『平和万葉集』への出詠をうながさずにはおかないものです。
　敗戦直後の『アララギ』に載った次の歌は、私の心に今も住み続けています。
　牡丹江の河に棄てたる幼な子の溺るるさまを君泣きていふ
　中川尚志
　子を棄てる親の心、泳ぐすべも知らず悲鳴をあげながら水にのまれていく子の姿を目撃している親の心―。それはもはやこの世のものではありません。戦争がつくり出したこの世の地獄で、人の心が鬼にさせられている、まざまざとした情景です。人として生きるものが、戦争を憎むのは当然のことです。
　『平和万葉集』巻一が企画され、刊行されたのは、戦後４０年の節目をはさんだ１９８６年でした。核軍拡が進み、このままでは地球が「核の冬」に覆われ、人類が死滅するなどの予見さえ出されていた頃です。
　巻二は昭和が平成に変わり、ベルリンの壁が崩壊した１９８９年の刊行でした。そして巻三は、戦争の世紀とも言うべき２０世紀の最後の年、２０００年の刊行でした。国会では憲法調査会が設置され、改憲勢力は憲法９条改悪の意図を露骨にしてきた年です。
　巻三の刊行から１５年がたちました。『平和万葉集』三巻は、いずれも重要な歴史の時点で刊行されてきました。今回の第四巻は、かつてない情勢の中で、言葉の力で、短歌によって、時代の証言者になろうとするものです。
　（うすだ・のぼる　歌人）

　＊応募は１人２首（１首のみは不可）。既発表作品可。１０月３１日締め切り。応募用紙請求先〒１７０-０００５　東京都豊島区南大塚２の３３の６の３０１　新日本歌人協会気付『平和万葉集』刊行委員会℡０３(６９０２)０８０２

　＊『平和万葉集』作品募集記念講演会　１９日（土）午後１時。東京・日本出版クラブ会館（神楽坂駅７分）
( ２０１５年０９月０７日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

朗読劇に取り組む／まだ先に進める／十朱幸代さん

　十朱幸代さんが二つの朗読劇に取り組んでいます。司馬遼太郎原作の「燃えよ剣」と有吉佐和子原作の「華岡青洲の妻」。名作に登場する女性たちの一生を描いたものです。

　「燃えよ剣」のヒロイン・お雪は、新選組副長の土方歳三が愛した女性。架空の人物です。一昨年、２カ月にわたって上演。今回、あらためての登場となります。再演というのは十朱さんには珍しい。
　「トコトン突き詰めてやるものですから、自分には再演というのはないと考えていました。でも『燃えよ剣』は毎回面白くなって、まだ隙間がある、まだ先に進めるんじゃないかと思うんですね」
　非情な男・土方、彼を真っ白な心で包み込むお雪。両者を演じます。
　「土方と会わなければ、つつましやかにひっそりと生きたような女性です。自立してゆるぎないものを持っていた人だとも感じました。男の役は初めてだったので初めは不安でしたが、土方がだんだんいい男に見えてきて楽しくやらせていただきました」
　「華岡青洲の妻」は、江戸時代の外科医をめぐって、嫁しゅうとめが激しくかっとうする物語。テレビドラマや舞台で、嫁の加恵を演じてきました。舞台ではしゅうとめの於継役は、尊敬する山田五十鈴さんでした。
　今回の台本を手がけ演出をした笹部博司さんは「女性による女性への憧憬を描いた作品。山田五十鈴さんと杉村春子さん。お二人の於継を実際に目にしてきた十朱さんのドキュメントとして作りあげたい」と構想します。

本音と魅力と
　「於継をやらせていただくとは想像もできなかった。賢くて美しい人ですが、嫁には本音が出てきます。人間くさいところが魅力的です」と十朱さん。
　６年前、足首を痛めて手術｡１年半療養し､半年間は車いす生活を送りました。歩けるようになるだろうかと、不安でした｡舞台に立ちたい｡リハビリを続けて２０１２年､一人芝居｢キャサリン･ヘプバーン」で本格的に仕事を再開します。ハリウッドの大女優だったヘプバーンの晩年を車いすに座って演じました。

しっかり見る
　「ゆっくり歩くって難しいこともわかりました。私はせっかちで、しゃべりも動きも早くなりがちなんですね。聞いていただきたいセリフがあると気持ちが先走ってしまう。振り返ってみると、山田（五十鈴）先生の動きはたっぷりして、きれいでしたね」
　１９５８年、テレビドラマ｢バス通り裏｣でデビュー｡第一線に立ち続けてきました。
　「映画を見たり、本を読んだり。女優は自分のためにとても時間をかけます。現実のものをしっかりと目を開いて見ることが必要かと」
　十朱さんにとって、戦後７０年はどう映っているでしょうか。
　「東京から奈良へ疎開して、終戦は４歳のときでした。ちっちゃくて、あまり覚えていないんですが、親たちはたいへんだったと思うんですよ。私の年代は、戦争をしない国として、たいへんいいところを生きてくることができました。でも、このごろは危険を感じています。戦争がない日本を維持できるようにと願っています」

公演日程
　＊燃えよ剣▽９月１２日　後３・０　東京・ひの煉瓦ホール▽１８日　後３・０　神奈川・逗子文化プラザ▽１９日　愛知・春日井市東部市民センター▽２７日　宮城・蔵王町ふるさと文化会館▽１０月６日　奈良・大和高田さざんかホール▽８日　北海道・七飯町文化センター▽９日　北海道・池田町田園ホール▽１１月１１日　後２･０　東京･三越劇場
　＊華岡青洲の妻▽１１月５日　後３・０　東京・パルテノン多摩▽８日　兵庫県立芸術文化センター▽１２日　後２・０　東京・三越劇場▽２１日　新潟りゅーとぴあ
( ２０１５年０９月０７日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

終戦直後の食事を体験／その雑炊は味が無かった／東京・墨田区

　戦後７０年の今年、戦争体験を引き継ぎ、平和と戦争について考えるとりくみが各地でおこなわれました。東京都墨田区は、終戦直後に庶民が食べていた食事を再現し、食べてもらう企画にとりくみました。参加した若者といっしょに考えました。
　（原田浩一朗）

「これしかなかったら…」
　墨田区役所の２階にある「茶屋カフェあづま」。都内に住むユウスケさん（２５）とマユさん（大学１年）がやってきたのは、イベント最終日の８月３１日でした。
　８月１７日からこの日まで、ランチを注文した客に、再現メニューの「雑炊」が小鉢でついてきます。
　マユさんが注文した夏野菜とひよこ豆のキーマカレー、ユウスケさんが注文した焼き鳥重が運ばれてきました。トレーに載る黒いプラスチックの小さなわん。透明な汁の底にコメとムギが沈んでいます。
　「エッ。おコメの方がずっと少ない」「いまの食事との落差がすごいね」などといいながら、それぞれスプーンで口に運びます。「うーん。まずいとは思わないけど、おいしくない。全然味がない」（マユさん）、「お湯を食べている感じ。これしか食べられなかったら、つらい」（ユウスケさん）。
　「調味料はありません。出汁（だし）も、もちろんありません。原料はコメとムギと水だけ。コメ２にムギ８の割合です」。説明してくれたのは、再現メニューづくりにカフェのメンバーとしてかかわった岸由紀さんです。企画を立案した墨田区産業観光部観光課の相談をうけ、調査と試作を重ねました。「一番苦労したのは、現在の材料でつくると、おいしくなりすぎることでした」といいます。

コメも塩も、砂糖もない
　再現メニューづくりを監修した、墨田区在住の飯田佐紀子さん（８４）は、再現した雑炊に添えたカードで次のように語っています。
　◇
　あのときは、もう本当に毎日飢えていました。食べていたのは、雑炊とか、すいとんとか。あとはさつまいも。
　雑炊だってコメ２・ムギ８くらいの感じで、それも量が少ないから、水でふくらます。それだけ食べて、おなかを満たす。すいとんは、小麦のカスみたいなやつで作る。今はもうどこにも売っていないですね。
　そして何より調味料がない。塩がない、砂糖がない。
　今回再現した雑炊も、はっきりいってあのころに比べればとってもおいしい。
　◇
　飯田さんは、１９４５年３月１０日の東京大空襲で、墨田区横網町公園に避難して助かりました。同公園には東京大空襲と関東大震災（２３年９月１日）の犠牲者を追悼する東京都慰霊堂があります。
　「当時私は女学生。焼け落ちる自宅をここから見ていました。戦争だけは絶対ダメ」―。１日、町会の老人クラブ会長として秋の法要の来訪者に蜂蜜水を振る舞いながら語ってくれました。

総動員法・闇市・インフレ
　それにしても、終戦直後になぜ激しい食糧難になったのか。
　マユさんとユウスケさんは、高校用の日本史教科書をはじめ、当時の事情を調べました。それによると―。
　１９３７年に始まった日中戦争が長期化すると、日本政府は国家総動員法を制定（３８年）。議会の承認なしに物資や労働力を戦争遂行に動員できるようになりました。
　４０年から４１年には、砂糖、木炭、米、衣料などが次々に切符制・配給制になり、農家には米の供出が義務付けられました。
　４１年１２月８日、アジア・太平洋戦争に突入すると、日本政府はあらゆる生産能力を軍需目的に集中。働き盛りの男子が戦地に送られ、労働力不足が深刻になります。
　戦前、日本は植民地だった朝鮮や台湾、「満州」（中国東北部）などからの移入・輸入に食糧を依存していました。戦局の悪化につれ海上輸送は途絶。
　戦争の見通しが絶望的になっても「本土決戦」を叫んだ日本政府は、４５年６月公布の義勇兵役法で、おおむね１５歳から６０歳までの男子、１７歳から４０歳までの女子を軍隊に根こそぎ動員。国内農業は破壊されます。
　８月１５日の敗戦で国家の権威は失墜。闇取引が増え、農家からの食糧供出量は激減する一方、数百万人の海外からの引き揚げ者で人口は増大しました。
　１人１日２合１勺（３１５㌘）にまで減らされていた食料配給は遅配がつづき、栄養失調で亡くなる人も続出しました。
　紙幣の価値は百数十分の１に暴落。都会の人々は農村部に出かけて衣服や家財を食料と交換して食いつなぎました。
　２人がいいます。「結局、食糧難は、戦争のせいだったんですね」「戦争法案には絶対反対だけど、また一つ反対の理由が増えました」
( ２０１５年０９月０７日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

日米合同演習反対滋賀・あいば野集会／天台寺門宗管長・三井寺長吏福家英明さんメッセージ

　６日の日米合同演習反対あいば野集会に寄せられた天台寺門宗管長・三井寺長吏の福家英明さんのメッセージを紹介します。

　今、安倍首相や与党は、国民の多数が反対しているにもかかわらず、衆議院に続いて、参議院でも、憲法９条をないがしろにして、安保関連法案を強行採決しようとしています。
　私たちは、６月２３日、沖縄戦「慰霊の日」に、天台寺門宗・三井寺として、「戦後７０年を迎える憲法に関する声明」を発表しました。声明では、安倍政権が進める安保関連法案が、戦後７０年にわたって国際的に保持してきた平和国家としての自らの評価を否定し、「戦争をする国」への危険な一歩を踏み出すことになると、警鐘を鳴らしました。また、２１世紀において、「次の戦争」が起こらないよう平和憲法を堅持し、さらには、安保関連法案の廃案を求めました。そのさなかに、あいば野演習場で行われる日米共同訓練は、まさに戦争の訓練であり、安保関連法案の先取りといえるでしょう。若者を殺し殺される危険な戦争に巻き込むわけにはいきません。
　日本には憲法９条があります。戦争はもうしない、人を殺さない、これは第一番。９条こそ仏教の教えと合致します。
　８月３０日の国会前１２万人包囲行動につづいて、本集会が安保関連法案を廃案に追い込む大きな力になることを期待します。
( ２０１５年０９月０７日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

芸能テレビ／戦後７０年／世代継承・調査報道・加害責任／見応えあった番組／須藤春夫

　戦後７０年を迎え、テレビは「戦争」をどう伝えたでしょうか。安保法案審議や安倍晋三首相の７０年談話など、国民が「戦争」を強く意識する状況にこたえ、見ごたえのある番組が多かったといえます。その特徴をまとめてみました。
　まず戦争体験者が減少するなか、若い世代を意識して戦争を語り継ぐ企画が目につきました。
　８月１５日放送の「私たちに戦争を教えて下さい」（フジ系）は、人気の若手俳優５人がそれぞれ戦争体験者を訪ね、戦争の悲惨さ、平和の尊さを学んでいきました。
　同日放送の「戦後７０年　千の証言　私の街も戦場だったⅡ」（ＴＢＳ系）は、ファッションデザイナーの森英恵が、孫でモデルの森泉に学徒出陣の体験を話す内容などです。これらの番組は、若者が戦争体験者から直接話を聞き、疑問をぶつけるなかで、戦争の本当の姿を自分のものにする可能性を示唆しています。次の世代に語り継ぐ土台が生まれつつあります。
　二つめはテレビ局独自の調査報道が満州事変、太平洋戦争の埋もれた事実を明らかにし、軍国主義の非人道性や人間の尊厳を奪う戦争への理解を深めてくれました。
　８日放送のＮＨＫスペシャル「特攻　なぜ拡大したのか」は、無謀な特攻攻撃が特攻機のほか人間魚雷や特攻ボートなど歯止めなく拡大した理由を暴きます。日本軍幹部たちの証言を収めた音声テープを入手、特攻を進めた軍部の体質を明らかにしました。
　１５日放送のＮＨＫのＥＴＶ特集「書きかえられた沖縄戦」は、琉球政府が作成した沖縄戦の死亡者名簿のうち３割近くが戦闘参加者として書き換えられていた背景に迫りました。援護法の対象になるように、との配慮が、結果的に死の真相を隠すことになりました。
　戦後の復興は破壊と殺りくの戦争被害を消し去ります。戦争責任を逃れるため、意図的な証拠の隠滅もありました。７０年を経た今でも戦争の隠された部分は大きく、テレビの調査報道がいっそう求められているのを実感します。
　三つめは、日本が戦争で侵した加害の実態と責任を正面から問う番組がほとんどないなかで、ニュース枠では注目すべき放送がありました。
　１５日放送の「報道特集」（ＴＢＳ系）「終戦の日スペシャル　加害と被害」です。日本軍の重慶爆撃と、連合国軍の空襲で破壊されたドイツ・ドレスデンの現地を取材し、空襲で生き延びた人へのインタビューなどから日本とドイツの加害と被害の向き合い方の違いを明らかにしました。
　ドイツ連邦軍歴史博物館の展示は、ナチス・ドイツの加害から始まり、その後にドレスデンの空襲被害という構成。日本の重慶爆撃で被害を受けた中国人女性は、日本は謝罪も補償もなく加害の歴史に向き合っていないとインタビューに答えます。「報道特集」のジャーナリズム精神が加害問題に光をあてたといえます。
　（すどう・はるお＝法政大学名誉教授）
(２０１５年０９月０６日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

インタビュー戦後７０年／映画作家大林宣彦さん／身勝手な〝正義〟信じない／「戦争できる元年」止める

　数々の映画で、古里の文化や原爆と戦争の記憶を語り継いできた、映画作家の大林宣彦さん。戦争法案に反対する映画人のアピールの呼びかけ人でもあります。
　湯浅葉子記者

　日本人の誰もが、自覚しなければならないことですが、僕たちは〝反対派〟じゃありません。〝反対派〟は、憲法９条に反対している安倍（晋三首相）さんの方です。〝主権〟はあくまで〝在民〟なんですから。安倍さんが僕らを理解するのが筋道。憲法９条というのは敗戦後、日本の形を世界に約束したもの。この憲法があったからこの７０年、いとおしいほどの平和を築けた。政府を暴走させないための憲法を、国民に無断で変えようとするなど憲法違反ですよ。
　僕は戦中戦後の、価値観が混とんとなる中を生きてきたから、物事を総論で考えます。今も世界で戦争があり、アメリカも中国も軍隊を持っている。だから日本も外国で戦争できる軍隊を持ちましょう、というのは各論では是に見えるかもしれない。でも、過去の戦争から学び、総論で考えれば、あんな戦争は繰り返しちゃいけないと分かる。

正気で生きよう
　〈１９３８年、広島県尾道で生まれました〉
　わが家は代々医者でした。当時、田舎の病院は文化の中心で、警察署長からやくざの親分までがわが家に集まり、天下国家を論じていた。ただ時に、身をひそめて「日本は負けそうだ」と話してる。胸を張って戦争反対と言ってるお兄ちゃんがいたと思ったら、翌日には監獄に入れられている。
　そんな中で母ちゃんや姉ちゃんたちが年中詠んでくれたのが、与謝野晶子の日露戦争に行った弟を思って歌った詩（「君死にたまふことなかれ」）です。
　女たちが軍国少年の僕を哀れみ、でも「戦争に行っちゃだめよ」とは決して言えないからそうやって言い聞かせていたのでしょう。幼くても、しっかり覚えてしまいました。
　敗戦時は７歳でした。進駐軍が来る前の日､一張羅を着せられ､短刀を前にした母と朝まで話しました。負けたら男は撲殺され、女は強姦(ごうかん)されると信じていたので、そうなる前に、母ちゃんが僕を殺して死ぬんだなと。実際の米兵は優しくて、チョコレートだチューインガムだ、でしょう。「アメリカは良い国で日本は間違っていた」と、世の中はそれまでとガラッと変わりました。
　敗戦で学んだのが、〝正義〟は信じないということ。〝勝った国の正義が正しいというのが戦争だ〟と思い知らされたからです。僕たちは、〝敗戦少年世代〟です。日本の歴史の中で初めて、平和をつくることを託されておとなになった世代。これからは、身勝手な〝正義〟ではなく〝正気〟で生きよう。それが敗戦少年の僕のフィロソフィー（哲学）です。
　しかし、敗戦直後から日本人は戦争を忘れさせられてきました。科学者や映画人が撮った被爆の記録が占領軍に接収されたり、１９４７年には東京大空襲の慰霊碑建立も占領下で不許可になった。今こそ敗戦の日に立ち返り、二度と戦争はしないと決めた憲法のありがたさを、国民も政府も、心から実感しなきゃいけません。
　〈戦争法案に反対する若者たちに励まされています〉
　子どもは未来を生きる未来人です。これからどうなるのかと、一番世の中を見ている。
　僕は、町田市（東京）で２０年近く行われている創作童話のコンクールで審査員を務めています。昨年度の小学校高学年の部のグランプリ作品が興味深い。
　飲めば何でも言うことを聞く〝ＯＫドラッグ〟が街に出回り、最後は国会で、「外国を攻撃しよう」「ＯＫ、ＯＫ！」と盛り上がり、ボクも戦争に行くというお話です。
　ボクらは今〝戦前〟に住んでます、と彼らは言う。選挙権を持つ日も近いということで若い人の意識が変わった。ボクらの未来は、ボクらが守ると。選挙に行くなど国民が国政に参加するのは〝主権者〟の義務ですから。

良く効く映画を
　〈「野のなななのか」（１４年）では終戦後も北海道で続いたソ連との戦争を､｢この空の花　長岡花火物語」（１２年）では長岡空襲を題材に、戦争と戦後の敗戦後史を描きました〉
　僕は医者の道にゆかず、映画の世界に来た人間です。だから良く効く薬のような映画をこしらえようと考えてきた。僕は映画を作るというより、映画を使って何をやるかを考えている人間。若い人にばかり〝未来〟を任せては申し訳ないです。
　長岡（新潟県）は１９４５年８月１日に、焼夷（しょうい）弾攻撃にさらされて市の８割が消滅しました。毎年その同じ時刻に追悼の花火、白菊を上げて平和を祈ります。それに感銘を受けて、「この空の花」を作りました。
　長岡は、真珠湾攻撃を指揮した山本五十六（連合艦隊司令長官）の故郷でもあります。先月１５日に、ハワイの真珠湾で長岡の花火が初めて打ち上げられました。日米の戦没者の追悼と世界の平和を願ってのものです。僕も参加しました。７０年たってここまできた。その７０年目が、戦争ができる元年になるなんてとんでもない。
　国民の８割が戦争を知らぬ時代だからこそ､戦争を伝え､学ぶのが平和への道筋です。

　おおばやし・のぶひこ＝１９３８年、広島県生まれ。映画作家。７７年に映画「ＨＯＵＳＥ／ハウス」で商業映画にも進出。「転校生」「時をかける少女」「さびしんぼう」の〝尾道三部作〟ほか、「青春デンデケデケデケ」（芸術選奨文部大臣賞）など
(２０１５年０９月０６日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

米軍が撮った空襲前後の日本／米公文書館フィルムを調査・出版／日本地図センター主幹研究員小林政能さんに聞く

悲惨な戦争、若い人たちに／東京大空襲前後／広島原爆投下前後
　一般財団法人・日本地図センターは、アメリカの公開資料から探した空中写真をまとめた『１９４５・昭和２０年　米軍に撮影された日本　空中写真に遺された戦争と空襲の証言』を出版しました。調査・編集に携わった小林政能さん（主幹研究員）に聞きました。

　第２次世界大戦では米軍による広島・長崎への原爆投下や各地への空襲で大きな被害が出ました。戦後７０年の節目にあたり、あらためて戦争の被害を視覚化して、平和の大切さを問いかけたいと思い企画しました。
　当時、米軍は空襲の前に周到に調査し、どこに何があるかを把握していました。１９４４年１１月１日から偵察を始めています。使われたのはＢ２９を改造し、６台のカメラを備えた写真撮影用の偵察機Ｆ１３です。高射砲の届かない高度９千～１万㍍から日本各地を空撮していました。
　この写真企画は構想から１０年、調査には６年かかりました。膨大な資料の中からフィルムを探し出すのは容易ではありません。米国のワシントンにある公文書館に毎年２週間ずつ通いました。
　空襲前後の写真を比べると被害は一目瞭然です。東京大空襲の場合、３月８日の写真では黒い家並みがありますが、４月２日の写真では一面灰色の焼け跡です。
　空襲被害の全体像を知るために、斜めの角度から撮影した写真をデジタル加工して、平面の写真とつなぎ合わせる工夫もしました。これまでの被災地図では不明瞭だった被災範囲が、写真で正確にわかりました。
　今回、広島・長崎の新たな空撮写真も公表しています。
　これらの写真はどれも動かしがたい事実です。空襲前の黒い家々では、たくさんの人が日常生活を送っていました。それが原爆とか、東京大空襲とかで、たった１日でなくなってしまい、多くの人が犠牲になってしまう。それが戦争なんだということを若い人たちにわかってほしいのです。
　戦災にあった方が高齢になり亡くなっていくなかで、戦争のことを次の世代にどう伝えていくのか―難しくなってきています。それだけに、この写真を見て戦争の悲惨さを考えてほしいと思います。
( ２０１５年０９月０５日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

潮流

　自民、公明の与党が今国会の成立に執念を燃やす戦争法案をめぐるたたかいは、いまヤマ場に。そのなかで立ち上がり、反対の声をあげる若者や学生の言葉から▼「戦後７０年という大事な節目なのに悲しみと怒りを覚えます。あの時、おかあさん、何やっていたの、なんで止めなかったのって将来子どもにそう聞かれて、黙る私でいないようにしたい」。浜松の平和集会で訴えた大学生の渡部清花さん（２４）▼長崎の原口菜々子さん（２３）は被爆地から平和を発信しようと結成した「Ｎ-ＤＯＶＥ」（エヌダブ）のメンバー。「国を動かすのは政府ではなくて国民。自分の未来を政府に委ねないで切り開こう」▼世代を超え、１２万の人びとが国会周辺を埋め尽くした８・３０行動で訴えたシールズ関西の寺田ともかさん（２２）。「この法案を許すことは、私にとって自分が責任のとれないことを許す、ということ。それだけは絶対にできません。私はこの国の主権者であり、この国の進む道に責任を負っている人間の一人だから」▼高校生が立ち上げた「Ｔ-ｎｓ　Ｓｏｗｌ」（ティーンズ　ソウル）のあいねさん（２年）は「一個人として行動したいと思った時に、たまたま高校生だった」と。「今後何十年先に何が起こるか分からないなかで、安保法案というのは危険だと思ったから行動した」▼これからの日本をつくっていく若人たちの姿は「大きな希望」（山田洋次監督）になっています。あすは学者とともに新宿の街で未来への言葉を紡ぎます。
( ２０１５年０９月０５日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

各地で母親大会開く／大会を通じて反対行動参加／山口

　山口県下松市で８月３０日、第６１回県母親大会が開かれ、子ども連れのお母さんなど老若男女の約７００人が集いました。
　全体会で藤井之子実行委員長は「今日は戦争法案反対の国会・全国大行動が取り組まれているが、『生命を育て生命を守ること』をスローガンに掲げる私たちも大会を通じて行動に加わりたい」とあいさつしました。
　コメディアンの松元ヒロ氏が記念講演。戦争法案やアベノミクスを推しすすめる安倍政権をユーモアたっぷりに批判し、会場は共感の笑いに包まれました。自身が憲法になりきる芝居「憲法くん」で憲法前文を熱くそらんじると、ひときわ大きな拍手が送られました。
　子育てや医療・介護、労働、戦後７０年など１０テーマの分科会で学習と交流を深めました。
(２０１５年０９月０４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

平和願う子どもの感想も／埼玉・朝霞で「戦争展」開く

　埼玉県朝霞市立図書館でこのほど、「第１０回朝霞平和のための戦争展」が開かれました。
　「戦後７０年、あらためて戦争を考える　被害者として加害者として」がテーマ。「戦争の原因と口実」のコーナーでは、日清・日露戦争、満州事変など「自国民の保護」「自存自衛」などを名目に日本が侵略戦争を進めていった事実を紹介しました。
　多くの市民が訪れ、子どもたちから「せんそうのない国でみんながしあわせにくらせるようにしたいです」（９歳）、「一度戦争を体験した国だからこそ、もう二度としてほしくない」（１１歳）などの感想が寄せられました。
　会場の入り口には、市内在住の元人形作家の園サトルさん（８２）の憲法の前文と条文を縫い付けたキルトが飾られました。
(２０１５年０９月０４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

４００年前の朝鮮侵略／「文禄・慶長の役」のつめ痕／連行された陶工集団の影響は…／東京・高麗博物館

　東京都新宿区の高麗博物館で企画展「４００年前の朝鮮侵略―文禄・慶長の役のつめ痕と文化的影響―」が開かれています。１５９２年から７年に及ぶ豊臣秀吉の朝鮮侵略について、朝鮮側の被害の実態や、日本軍が連行した陶工集団の実情を調査し、「文禄・慶長の役」とは何だったのかを問うています。
　企画を担当した同館理事の李素玲さんは在日２世です。韓国と日本で学校教育を受けた李さんは、「両国の歴史的な認識の違いや、日本人の朝鮮観はどこからきているのかを突き止めたかった」と話します。
　九州の「有田焼」や「平戸焼」は、連行された朝鮮の陶工集団が創始したといわれています。そこで活躍した「高麗媼」「百婆仙」と呼ばれる２人の女性陶工の１００年にわたる生涯をたどり、窯元だった夫の死後は、指導者として陶工集団を率いた実力や故郷への思いも紹介しています。
　「戦後７０年、私たちが生きた苦しさと、４００年前に異郷へ連れてこられた２人の女性が生きた時代の苦しさは共通する部分があります。それでもたくましく生きた彼女たちの人生を知ってほしいと思います」
　１１月２９日まで。入館料４００円。正午～午後５時(月曜・火曜は休館)℡０３(５２７２)３５１０
　◇
　＊講演会「『秀吉の朝鮮侵略』と２人の女性陶工」＝１０月１０日（土）午後２時、高麗博物館。講師・李素玲さん。参加費１０００円（予約必要）
( ２０１５年０９月０４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

『女性白書２０１５』／女性差別撤廃条約批准３０年／婦団連

　日本婦人団体連合会（婦団連）が編集する『女性白書２０１５』が発行されました。（写真）
　ことしは、第二次世界大戦の終結から７０年、日本が女性差別撤廃条約を批准してから３０年の節目の年です。同白書のテーマは、「戦後７０年、女性差別撤廃条約批准３０年、憲法・平和・人権」です。安倍政権がすすめようとする「戦争する国づくり」への「女性の活用」は許さないという世論と運動が広がるもと、同白書は、各分野の歩みと現状、課題と展望を特集しています。
　同白書は「はじめに」で、「女性の平等な権利の実質的な保障は法制度整備だけでは実現できないという共通認識のもと、国連は『平等・開発・平和』を目標とする『国連女性の１０年』（１９７６年～８５年）に取り組んだ」と指摘。７９年に採択した女性差別撤廃条約は、その最大の成果と強調しています。
　８５年の同条約批准は、「日本のジェンダー平等の歴史の画期をなす出来事」としながら、条約批准から３０年たってもすすまない現状を総括しています。「男女雇用機会均等法、男女共同参画社会基本法などの一定の法制度整備がありましたが、多くの女性労働者が生活と仕事の両立に苦闘し、出産や介護を機に退職する実態は変わりません。非正規労働で働く女性は過半数をこえました。女性の貧困が深刻化しています」
　総論として、「戦後７０年　憲法とジェンダー平等」（弁護士の杉井静子さん）、「女性差別撤廃条約批准３０年」（国際女性の地位協会会長の山下泰子さん）を掲載しています。
　「女性の現状と要求」として、働く女性、社会保障、くらし、子ども・教育、平和と民主主義の各分野からのリポートがあります。
　Ａ５判。税別３２００円。問い合わせ先＝婦団連℡０３（３４０１）６１４７
( ２０１５年０９月０４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

平和のための戦争展／今こそ実態知って／福島市飯野町で開催

　平和のための戦争展（８月２８～３０日）が、福島市飯野町で行われ、訪れた人が戦争法案や沖縄新基地建設に反対する写真・資料などの展示物に見入り盛況でした。飯野町九条の会の主催です。
　同会事務局の伊藤敏寛さんは「戦後７０年の今年は今まで以上に内容を充実させた」と言います。
　日中・太平洋戦争の歴史や住民から提供された遺品、シベリア抑留コーナー、沖縄新基地建設反対運動関連の写真や資料などが壁に沿ってぐるっと展示されていました。フロア中央部には憲法と戦争法案コーナーがあります。
　北海道から６年前に同町へ移住し、昨年から平和戦争展に関わっている三崎かおるさん（６４歳、アーティスト）は会場レイアウトの責任者。「見やすさを心がけ、癒やし系の作品も所々に配しました。体験者の高齢化が進んでおり、今こそ多くのみなさんに戦争の実態を知ってほしいという気持ちが一番です。大多数の人が戦争法案に反対しているが、その思いを口に出し、行動で示すよう後押しできればと思っている」と話していました。
(２０１５年０９月０３日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

オバマ米大統領「日米協力の深化続く」

　【ワシントン=時事】オバマ米大統領は、日本が第２次大戦の降伏文書に署名してから７０年となった２日、声明を出しました。日米関係について「かつての敵対国が不動の同盟国となり、共通の利益や普遍的な価値を促進するため力を合わせている。日米の協力は今後も深化し続けると信じる」と強調しました。
　大統領はこの中で、「戦争の終結は米国と日本の関係において新たな時代の始まりを告げた」と指摘。さらに「４月の安倍晋三首相訪米で言及したように、戦後７０年の日米関係は和解の力を示す模範となっている」と重ねて明言しました。
　首都ワシントンでは２日、対日戦勝記念式典が開かれ、日本とたたかった退役軍人らが献花して戦没者を追悼しました。
( ２０１５年０９月０４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

私の一言／８・３０国会行動から／首相辞めさせたい／親子で戦争考えた／近代国家に反す

首相辞めさせたい／山崎英喜さん（３４）＝福島県郡山市、会社員
　ここで集まって、民意を可視化したいと思い、福島から来ました。いろんな政策がアベだとだめ。戦争法案以外にも、原発事故、アベノミクスの失敗…。アベを辞めさせたい。

親子で戦争考えた／飯島美和子さん（４４）＝東京都世田谷区、会社員
　このまま戦争へ向かっていくのは困る。今年は戦後７０年で、子どもと一緒に、戦争の映像をみて考えました。戦争は絶対反対です。子どもを守る会で、原発反対の取り組みに参加してきました。原発推進の姿勢は、戦争法案につながっているのだと思います。

近代国家に反す／竹尾征倫（まさひと）さん（４０）＝東京都中野区、会社員
　毎週金曜日は来られる限り国会前に来ています。違憲の法案を成立させたくない。立憲主義を守りたい。立憲主義に反する安倍政権のやり方は近代国家がやってはいけないことです。法案自体ももちろん、反対だけど、やり方が許せません。
( ２０１５年０９月０２日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

音楽／ツィンマーマン「ある若き詩人のためのレクイエム」（サントリー芸術財団サマーフェスティバル２０１５）

人類の所業根底から問う
　２０世紀の「レクイエム」の一つが日本初演された。戦後７０年。日本人の胸にも鋭く響いた。
　サントリーホール夏の音楽祭の一コマ、「ザ・プロデューサー・シリーズ」で、今年の総合プロデューサー・長木誠司は、１９６９年ドイツのツィンマーマン作曲「ある若き詩人のためのレクイエム」を取り上げた。指揮に大野和士を選んだ。
　大野は音楽監督を務める東京都交響楽団を率い､森川栄子と大沼徹のソリスト､ジャズ･コンボ(スガダイロー･クインテット)､四方に配置した新国立劇場合唱団ほか一手に掌握した｡
　場内に張り巡らされたスピーカーからは、有馬純寿が駆使する８トラック・テープで、ヒトラー、ゲッペルスの演説、法王ヨハネス２３世の講話など飛び出す。長谷川初範、塩田泰久が日本語で毛沢東語録、ドイツ基本法を語る。場内はドイツ語、ラテン語、ハンガリー語、ロシア語ほか、言葉にあふれ返る。
　大スクリーンの字幕が錯綜した展開を演出して功を奏す。一度に四つの文章が別々のスピードで動き、蛇のように這うことも。文字が追えない。単語が点滅して読めない。そこにこの音楽の狙いがあるようだ。一方的で意味不明のコミュニケーション不在。上っ面な言葉の氾濫を告発して鋭い。
　１９６８年プラハの春を象徴するドゥプチェクの演説や、ビートルズ「ヘイ・ジュード」もコラージュされ、ヒューマンな世界も映し出す。壮大な音響が人類の所業を根底から問いただして生々しい。
　（宮沢昭男・音楽評論家）
　８月２３日、東京・サントリーホール
( ２０１５年０９月０２日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

ひと／戦争体験を歌で語り継ぐシンガー・ソングライター清水まなぶさん

　「真実を過去に学び、未来をつかみとってほしい」と、歌と語りで愛と平和を考える「回想プロジェクト」を立ち上げ、全国の学校などで講演。満蒙開拓団や原爆など、自ら聞き取った戦争体験者の声を歌にし、命の尊さ、平和への願いを語り継いでいます。
　「歌うときはなるべく人の顔を見ないんです。泣いてる人を見ると、歌えなくなるからね」と照れ笑い。「戦争に無関心だったけど、つらい、悲しいことだと知った」「命を大切にしたい」と、若い世代に共感を広げています。
　２０００年にデビュー後、ラジオやテレビなどで多彩に活動。０６年、亡き祖父に感謝し、その戦争体験に曲をつけた「回想」を発表すると、大きな反響がありました。「音楽に色が出てくる」ことに周囲から意見もありましたが、「感じることを表現するのは間違いじゃない。信念を通そうと思いました」。
　地元長野県を中心に戦争体験者を取材。だれもが「戦争などあってはならない」と口をそろえます。「聞けば聞くほどこんなおろかなことはない。兵隊だけでなく家族、恋人、あらゆるところに悲しみがありました」。生まれた６曲をＣＤに。戦後７０年の今年、県内全市町村で戦争体験を聞き取ることが目標です。
　戦争を実際に体験していない身で、戦争を伝えることに悩んだことも。「お年寄りに『頼むで。心を伝えてよ』と応援されて、力をもらっています」
　文・写真　寺田　可奈
( ２０１５年０９月０２日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦後・被爆７０年／怒り新たに／詩人会議が平和のつどい開催

　詩人会議は８月２３日、東京・池袋で「２０１５年詩人会議平和のつどい　生きる希望の詩を！」を開催し、８０人が参加しました。
　小森香子運営委員長が「戦後７０年、被爆７０年、怒りを新たにする年だと思います。全国各地で若者たちも〝戦争したくなくて震える〟〝平和したくて震える〟と言いながらデモをしている今日この頃です。私たちの平和の声を広げていく熱い思いの、新しいステップを踏み出す日にしましょう」と開会のあいさつをしました。
　ポエム・マチネ、武蔵野、千葉、横浜の各詩人会議、草加・すずらんによる、詩や散文の朗読、風刺コントなど多彩な声の共演の間に、池田里奈さんのフルート、築秋雄さんの奄美島唄ロックが演奏されました。
　安仁屋眞昭さん（王府おもろ第１５代伝承者）は沖縄の古代の歌おもろを披露。「古代歌謡と沖縄の現実」と題して、沖縄が武器を持たなかった歴史から、親族が２０人亡くなった沖縄戦、毎週参加している辺野古の基地反対の抗議活動について語りました。
　「米軍基地は強制的に私有地を接収したが、辺野古の美しい海を埋め立てられれば、それは国有地となってしまい、沖縄の自己決定権が奪われる。いまの無法な基地をいかになくしていくかを、本土のみなさんといっしょに考えたい」と呼びかけました。
　戦争反対、戦争法案阻止の思いが会場にあふれた集会でした。
( ２０１５年０９月０１日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

潮流

　「とてもテニスが出来ません」。戦前、遺書を残し自ら命を絶った名テニスプレーヤーがいます。佐藤次郎さん。四大大会で５回の４強入りはいまだ日本人最多を誇ります。１９３４年４月、デビスカップに向かう船上からマラッカ海峡に身を投じました。２６歳、直前に婚約したばかりの痛ましさです▼その遺書が今年６月末、日本テニス協会でみつかっています。３枚の紙にしたためられた文面には慢性の胃腸病で集中できず、期待される成績を上げられない悲壮な思いがにじんでいました｡｢この醜態さ、何と日本帝国に対して謝ってよいか分かりません｡その罪､死以上だと思います」▼当時、日本は十五年戦争に足を踏み入れていました。国の名誉がかかるデビスカップの欠場は許されず、｢帝国｣の期待に応えられないことが、重くのしかかっていました▼戦後７０年、今夏は戦争を振り返る機会が多くありました。スポーツがそれに押しつぶされ、多くの選手が命を落とした事実を本紙連載｢戦争とスポーツ｣が伝えています▼テニスも例外ではありません。佐藤さんの死の５年後には、海外への大会派遣が中止され、４２年には協会も解散を余儀なくされています。いま日本で戦争に道を開こうとする、きな臭さが漂う中、これらの史実が語りかける意味は小さくありません▼佐藤さんら先人を阻んだ四大大会決勝進出の壁は昨年、錦織圭選手が破りました。３１日開幕の全米オープンでふたたび勇姿を追いかけたい。平和の重みをかみしめながら。
( ２０１５年０９月０１日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

【本文】

【８月】

３１ 松尾羊一のドラマのドラマ／戦後７０年の８・１５特集／「戦争と女性」描く３作品

　戦後７０年の節目は自民党・公明党による「戦争法案」の危機感もあって、８・１５をめぐる特集は質・量ともに例年をはるかに凌駕する映像でわれわれに迫りました。
　戦場体験をもつ９０歳前後の元兵士たちが一斉に重い口を開き、学徒出陣や勤労動員で戦場や軍需工場に駆り出された若い世代も戦争末期の悲惨な状況を語り、とくに印象的だったのは女性たちと戦争という視点から戦時生活を振り返り、一億総特攻の時代に触れた企画が目立ったことでした。
　３本のＮＨＫ作品にしぼりますと、まずドラマ「一番電車が走った」があります。無残な広島の実写映像の遠景に電車が走っています。被爆からわずか３日後です。しかも運転手や車掌は女学生です。戦争末期、広島の市電は男たちは召集や徴用にとられ女学生が運転し、仲良しグループの中には８月６日、運転中に被爆したものもいます。
　彼女たちや軍需工場の女学生は苛酷な労働から女の力と知恵を知り、働く女性の権利として戦後を拓いたのです。
　一方、戦場と向き合った従軍看護婦の記録は民放でもＴＢＳが２夜にわたりドラマ化（「レッドクロス」）しましたが、ＮＨＫスペシャル「女たちの太平洋戦争」は日本赤十字社の業務報告書をもとに描いていました。
　生き残った彼女たちの証言でビルマ（現ミャンマー）やフィリピンの激戦地では麻酔剤なしの手術など、目を覆う悲惨な光景が語られます。敵味方を問わぬ白衣の天使の理想が幻想に過ぎず、非人間的な現実に苦悩するばかりでした。
　「武士の娘　杉本鉞子とフローレンス」（ＢＳプレミアム）は英文で書いた『ア　ドウター　オブ　ザ　サムライ』（武士の娘）が長くアメリカでベストセラーになった秘話。若くして渡米した長岡藩の家老の家に生まれた娘、鉞子に寄り添うフローレンス。２人はお互いの生き方を尊敬しあい、生死を共にします。戦時中の日本に永住し、鉞子と生きるフローレンス。２人を結ぶ強い絆の原点とは何か。
　サムライのプライドと開拓者精神のピュリタニズム（清教徒主義）が流れる２人を結ぶ生涯は感動的です。
　戦争に至る偏狭なナショナリズムとは無縁な２人の生き方が暗示する崇高な倫理観。それは国家と国家が対峙する間にこそ欠かせない絆のはずです。日本ではあまり話題にならないこのエピソードは７０年特集の大きな収穫でした。
　戦後７０年は、夏の映像ジャーナリズムでは常に傍流だった「戦争と女性」というもう一つの新しい視座を確立しました。来夏も期待したいものです。
　（放送評論家）
( ２０１５年０８月３１日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

主張／戦争反対、９条守れ／列島揺るがす、この声を聞け

　「戦争法案、絶対廃案！」「安倍政権はただちに退陣！」―。地鳴りのようなコールが何度も繰り返され、色鮮やかなプラカードが揺れます｡国会議事堂の正門前は､身動きできぬほどの人波で埋まり、雨天を吹き飛ばす勢いの熱気で満ちあふれました。国会周辺で１２万人が参加、全国１０００カ所以上で繰り広げられた「戦争法案廃案！安倍政権退陣！８・３０国会１０万人・全国１００万人大行動」。戦後史に刻まれる、文字通り空前の規模となりました。日本列島に響きわたる「戦争法案廃案」の声を聞き、安倍晋三首相は戦争法案強行をきっぱり断念すべきです。

「黙ってはいられない」
　国会前は何時間も前から多くの人たちが続々と駆けつけ、行動開始前には車道も参加者で埋まりました。「未来へ平和のバトンをわたそう」と書かれたＴシャツを着た女性、「だれの子どももころさせない」と訴えるプラカード。父親に手を引かれた男の子が「戦争行きたくない」のプラカードを持ちます。一人ひとりの思いが切々と伝わります。参加者の多くが共通して口にするのは「安倍首相のむちゃくちゃなやり方に黙っていられない」気持ちです。
　安倍政権が戦争法案の衆院可決を数の力で強行し、参院で審議が始まって１カ月、審議がすすめばすすむほど、自衛隊をアメリカの戦争に参戦させる法案の危険性が鮮明になり、「国民の命を守る」という安倍首相の口実がまったく成り立たないことがいよいよ浮き彫りなってきています。国会論戦で、安倍首相や閣僚は、法案についてきちんと答弁できず、法案を審議する特別委員会での審議中断は７７回を数える異常事態となっています。政府自体がまともに説明できないボロボロの法案は廃案にすべきなのに、安倍政権は、参院での早期採決、衆院での再議決まで狙う、国民世論に完全に逆行する姿勢をあらわにしています。
　「戦争させない・９条壊すな！総がかり行動実行委員会」が呼びかけた３０日の行動は、安倍政権の国民無視の暴走を絶対に許さない、全国規模での巨大な意思表示です。東京では、多くの参加者が国会を包囲しただけでなく、官庁街の霞が関や日比谷まであふれました。全国的には大阪市の扇町公園２万５０００人をはじめ大小あわせた多彩な行動が１０００カ所を超えました｡全国いっせいに｢強行採決絶対反対！」などのコールが続いた光景は、まさに圧巻です。
　国会前で、日本共産党の志位和夫委員長が「ここが正念場です。絶対に止めようではありませんか」と力強く呼びかけ、民主、社民、生活の党首と手をつなぐと、「頑張って！」と大きな声援が飛び、激励の拍手がどっとわきました。戦争法案を廃案に追い込むために、国会の中と外で力を合わせてたたかいぬくことが、いよいよ重要です。

未来をかけ廃案必ず
　平和と憲法の危機に全国津々浦々で、世代を超えてこれほどの規模で立ち上がったことは、戦後７０年、日本の民主主義が社会に深く根を張り成長していることの証明です。国民の声を無視して戦争法案をあくまで強行することは独裁政治にほかなりません。安倍政権をさらに追い込むたたかいを、大いに広げ、戦争法案を必ず廃案にしようではありませんか。
( ２０１５年０８月３１日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦争と向き合った美術／戦地生き延び軍隊の理不尽描く／中国で軍隊生活した版画家・彫刻家浜田知明さん語る

　戦争で人生も芸術も変えられた…。９７歳の版画家で彫刻家の浜田知明さんの回顧展が、熊本県立美術館で開催されています。浜田さんの熊本市内の自宅を訪ね、軍隊経験と美術への思いを聞きました。

　東京美術学校の卒業の年に入隊し、中国大陸で過酷な軍隊生活を経験。それが戦後の作品の重要な主題となります。軍隊の非道を、詩情も漂わせつつ告発した連作「初年兵哀歌」は国際的にも高く評価されました。
　「僕は自分が日本軍の兵士であることが嫌でした。日本軍が中国で、悪いことをしたのも見てきた。やはりこれは残したい、自分たちがやったことを描いてみようと思った」
　現在も素描や彫刻を制作。展覧会場では、長距離の行軍や日本軍の蛮行を伝える近作も展示中です。
　「戦争でなければ、とても行けないところを歩く。ひとりがやっと通れる道を馬を連れて通る。大砲を分解して馬に乗せていますから、一頭でも谷に落ちたら大砲が使えない。緊張します。砲身だけで１００㌔を超えるのにまともな食糧がなく、馬も本当にかわいそうでした。初年兵は、一時休止したら馬の脚をさすり、水くみへ行く。戻るともう出発準備です。早く日本に帰って絵が描きたかった」

女性暴行した戦友
　素描「忘れえぬ顔」は、浜田さんが中国大陸で目撃した現地の女性を描いたもの。窓から脅えた顔をのぞかせていた若い女性は、家に侵入した浜田さんの戦友に暴行されました。浜田さんは、その男を殺したくなったといいます。
｢その男は熊本の人です｡帰国しても自分がしたことを話していないでしょう。もちろん家族には話さない。だから国民は軍が悪いことをしたと知らない。戦争の被害は語られますが、軍のやった悪いことは語られてこなかった。でも､やられた方は忘れません｣
　罪を認めない政治を見つめます。
　「軍の悪を認めると歴史に傷がつくと思う人がいますが、やったことは消せない。安倍首相は日本軍の罪を認めたくないようですが、日本の新しい出発は、迷惑をかけた近隣諸国に謝ることから始まります」
　「愛国心」を押し付ける教育にも強い懸念が。
　「昔は『愛国心』をあおり、よその国の人をさげすみ、戦争になった。いまの子どもたちに教えるべきは『愛国心』ではなく、人間の良心です」
　無言館に作品が展示されている画学生には、親友だった人も。戦争を生き延びて、人生も芸術も変わりました。
　「戦争に行かなかったら抽象画を描いていたかもしれない。美術学校に行っていたころはエコール・ド・パリ（パリ派＝パリに集まった画家たち）やシュールレアリスム（超現実主義）の時代だったからです。戦争に行き、帰ってきたら、やはり自分の描きたいものは戦争だと。使命感というよりは、人間として腹が立ったことを、軍隊の理不尽さに借りを返すような気がありました」

　「戦後７０年記念　浜田知明のすべて」展＝９月１３日まで、熊本県立美術館℡０９６(３５２)２１１１
(２０１５年０８月３０日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦争と向き合った美術／なにをどう描いたのか／戦後７０年、各地で展覧会

戦争画・戦意高揚の「大作」次々／戦没画学生・家族、恋人、故郷を描き残して
　戦後７０年の節目に、美術と戦争がテーマの展覧会が各地で開催されています。そこから浮かび上がるのは…。
　金子徹記者

　戦時下では、著名な画家がこぞって戦意高揚のために、戦争を題材とした作品を発表しました。戦争画です。典型作は戦後アメリカが一時接収。後に１５３点が「無期限貸与」という名目で返還されました。
　それを所蔵する東京国立近代美術館は、所蔵作品展で順次、数点ずつ公開。いまは藤田嗣治の大作や御厨純一の絵など１２点を展示中です。
　戦争画で特徴的なのは画面の大きさです。藤田のパノラマ大画面作品を筆頭に、空中戦から肉弾戦までを「帝国臣民」を奮い立たせるように描きます。鶴田吾郎や中村研一など油彩画の重鎮の〝活躍〟が目立ちます。
　巨大な日本画で戦意高揚にくみしたのは川端龍子です。大政翼賛会と情報局の後援での百貨店展や、主宰団体展で超大作を展示。そうした絵はいま、自身の記念館で公開中です。機体が半透明の日本軍機が大陸をわが物顔で飛ぶ「香炉峰」や、特攻精神を称揚するかのような「水雷神」など。川端が戦争をどうとらえ、どう向き合ってきたのかがうかがえます。

対照的な作品
　では、実際に前線に送られた若者たちはどのような絵を描いたのか。戦没画学生の絵を集める無言館が〝証言者〟です。危険の少ない場所で戦意を高揚した画家は大画面を駆使。対照的に、戦没画学生は小画面に家族や恋人や故郷など、本当に大切なものを描きました。
　「裸婦」のモデルとなった恋人に、〝生きて帰ってきたら必ずこの絵の続きを描くから…〟と言い残して出征し、フィリピンで戦死した２７歳の日高安典。〝せめてこの絵具を全部使い切ってから征（ゆ）きたい〟と両親に言い、「自画像」を残して沖縄で戦死した２７歳の渡辺武。かわいがってくれた祖母を丹念に描き、フィリピンで戦死した２２歳の蜂谷清…。切実な思いのつまった絵の数々が、心を揺さぶります。
　無言館の所蔵作品は、富山県立近代美術館でも公開中です。太田章の｢妹・和子の像」など１５５点が展示されています。

意欲的な企画
　ほかにも、戦後７０年にちなんだ意欲的な企画がいくつもあります。
　三重県立美術館で開催中の「２０世紀日本美術再見　１９４０年代」展は、建築や工芸も視野に入れ、戦中と戦後を連続的にとらえようとするもの。
　名古屋市美術館で開催中の「画家たちと戦争　展」は、香月泰男や松本竣介（「立てる像」）など、戦争によってその芸術が大きな影響を受けた１４人の画家たちの表現の軌跡をたどります。

東京国立近代美術館の現在の所蔵作品展は９月１３日まで。℡０３(３２１４)２５６１
「激動の時代を描く龍子の１９３０～１９４０年代」展＝１１月３日まで、東京・大田区立龍子記念館℡０３(３７７２)０６８０
「２０世紀日本美術再見　１９４０年代」展＝９月２７日まで、三重県立美術館℡０５９(２２７)２１００
｢画家たちと戦争　展｣＝９月２３日まで、名古屋市美術館℡０５２(２１２)０００１
「戦後７０年　無言館展　画布に遺した青春」＝９月３日まで、富山県立近代美術館℡０７６(４２１)７１１１
無言館℡０２６８(３７)１６５０
(２０１５年０８月３０日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

「植民地支配」「侵略」／自身の認識、安倍首相言明拒む／山下書記局長が追及

「安倍談話」の欺まん、あらわに
　安倍晋三首相はなぜ、自分の言葉で「植民地支配」「侵略」への反省と謝罪を語らないのか―。日本共産党の山下芳生書記局長は２４日の参院予算委員会で、安倍首相の「戦後７０年談話」について、首相自身の歴史認識をただしました。首相は日本による「植民地支配」「侵略」を認めることを拒否。徹底して逃げ回り、審議はたびたび中断しました。

　「談話」では、「侵略」「植民地支配」「反省」「お詫(わ)び」などの言葉は盛り込まれたものの、主語がなく、日本が「植民地支配と侵略」を行ったとの歴史認識は示されていません。山下氏はここをただしました。
　山下　首相は日本が「植民地支配」を行ったと認識しているか。
　首相　（植民地化については）２１世紀構想懇談会の報告書に記載されている。この報告書の上にたって談話を出した。
　首相は、自らの言葉で「植民地支配」について語ることを拒みました。
　「村山談話」以降も、橋本龍太郎氏や小渕恵三氏ら歴代首相は、日本が朝鮮半島を植民地支配したという認識をはっきり示しています。山下氏は、この事実をあげて首相の認識をただしましたが、首相は「談話が全てだ」との答弁に終始しました。
　「侵略」についてはどうか―。
　山下　日本が中国、アジア、太平洋地域にたいして行った戦争を「侵略」と認めるのか。
　首相　どのような行為が侵略かどうかは、歴史家の議論にゆだねるべきだ。
　山下氏は、「『歴史家の議論』で逃げるのは欺まんだ。『安倍談話』は『村山談話』を投げ捨てるに等しい」ときびしく批判しました。
　日本の戦争を「侵略戦争」と断じた「ポツダム宣言」についても安倍首相は、「日本はポツダム宣言を受け入れ敗戦した」と述べるだけ。自らの言葉でその認識を語りません。山下氏は「ポツダム宣言を踏まえて、日本国憲法の第９条や基本的人権が明記された。今、安倍政権がそれを覆し、日本を再び『海外で戦争ができる国』につくり変えようとしている」と強調。戦争法案の撤回を求めました。
(２０１５年０８月３０日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦後７０年を考える集い／党大阪府委員会

　日本共産党大阪府委員会は２８日、大阪市内で「戦後７０年を考える大阪のつどい」を開き、２２０人が参加しました。
　穀田恵二国対委員長が講演。戦争法案をめぐる党議員の国会論戦を紹介し「政府の答弁はボロボロ。法案が成り立たないところまで追い込んでいる」と強調しました。日本の加害責任に触れない戦後７０年の安倍首相談話を批判し、「戦後のありようが問われている」と述べました。
　木戸衛一大阪大学大学院准教授が戦後のドイツと日本の違いを述べ、「日本が誇れるのは憲法９条。いま９条が世界から注目されている」と述べました。
　元大阪空襲訴訟原告団の安野輝子さんら４人が発言。安野さんは「空襲被害者への謝罪も償いもしていない国が次の戦争の用意をしている。許してはならない」と述べました。
　会場から手をあげた中学３年生の女子は９条を世界でも実現してほしいと語り、３０日の国会前行動に参加すると発言。大きな拍手がわきました。
　参院大阪選挙区候補の、わたなべ結氏が廃案まで全力をあげる決意を述べました。
(２０１５年０８月３０日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

ＧＨＱ「指令第一号」初展示

　外務省は２７日、戦後７０年の節目に当たり、東京・麻布台の外交史料館で、１９４５年９月２日に連合国軍総司令部（ＧＨＱ）から日本政府に手渡された「指令第一号」の原本を初めて展示すると発表しました。同日に調印された「降伏文書」の原本も展示します。期間は３１日から９月１２日まで。
　「指令第一号」は、日本軍の戦闘停止と武装解除の手続きなどを規定した「一般命令第一号」を順守させるよう指示する内容。
( ２０１５年０８月３０日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

〝平和だから胸張れる〟／障害者協議会「戦後７０年」集い

　「戦後７０年と障害者」をテーマに、日本障害者協議会（ＪＤ・藤井克徳代表）は２８日、東京都内で集会を開き、全国から約５００人が参加しました。
　精神科医で戦後６０年以上たってから発症した沖縄戦由来のＰＴＳＤ（心的外傷後ストレス障害）をみつけた蟻塚亮二さんが「沖縄戦の心の傷が今に問うもの」と題して基調講演。障害者、沖縄、福島は同じように差別を受けてきたと述べ、戦後７０年は何だったのか考えようと提起しました。
　パネルディスカッションでは、３人の戦争体験障害者が平和への思いをそれぞれ語りました。
　聴覚障害のある東京の水野ミサさん（８９）は、戦中、ろう者としての差別体験を振り返り、「手話通訳の制度を発展させたい」と訴えました。
　戦後まもなく、小２のときに不発弾爆発で両目両手首を失った大阪の藤野高明さん（７６）は「戦後も戦争は続いた」と強調。「戦争になれば障害者は肩身が狭くなる。胸を張って堂々と発言できるのは平和だからだ」と語りました。
　東京都内の肢体不自由児学校の元教員、松元昌介さん（７９）は、都が育鵬社の歴史と公民教科書を採択したことに触れ「日本の戦後教育の中で築いてきたものが壊されそうになっている」と危惧しました。
( ２０１５年０８月２９日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

国会議員駆けある記／紙智子参院議員／怒りと決意に震える夏

　終戦記念日の８月１５日は、毎年、札幌で宣伝を行っています。今年の終戦記念日は戦後７０年、しかも戦争法案が国会で質疑が行われている最中。小池晃さんの入手した自衛隊の内部文書の追及に、激震が走った直後の街頭宣伝になりました。
　憲法違反の戦争法案は許せないという怒りは、個性あふれる形で広がっています。
　首都圏で学生たちがつくったＳＥＡＬＤｓ（シールズ）の行動はメジャーになりましたが、札幌では青年たちが「戦争したくなくてふるえる」デモに立ち上がり、いまは「平和したくてふるえる」デモに発展。「ママの会」も全国に拡散。札幌では「だれの子どもも殺させない！」とパレード。「戦地に行くより遊園地！」「武器を持たずに、手をつなごう！」「戦車ではなく、三輪車！」など、子どもも一緒に声を合わせられるように工夫されたコールに、共感が広がっています。
　「戦争か平和か」のせめぎあい、ここからが正念場です。安倍政権の暴走する姿への怒り、暴走を必ず止めるとの決意で震えます。
(２０１５年０８月２９日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

ＪＡＭが大会

　製造業の中小企業の労働組合を中心に集まるＪＡＭ（連合加盟）は２７、２８の両日、静岡県熱海市で第１７回定期大会を開きました。
　眞中行雄会長は、「派遣法改悪など労働者保護ルール改悪は、国民世論を巻き込んで阻止しなければならない」と強調。安保法案に対しては「国民の半数以上が反対しているにもかかわらず、強行しようとしている」と批判し、「戦後７０年の節目にあたる今年、平和の尊さを後世に継承しなければならない」と訴えました。
　春闘について眞中会長は、中小企業には円安による原材料高騰などの厳しさがあったとし、「（ベースアップの）流れを２０１６年、１７年と確実に続けないと、経済好循環にならない」と強調しました。
　討論では、悪質企業が巧妙な手口で会社を買収し、その職場にある労働組合をつぶそうと攻撃してきていることなどが報告されました。
　新たに宮本礼一会長、河野哲也書記長が選出されました。
( ２０１５年０８月２９日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

平和を願って豊田で戦争展／愛知

　愛知県豊田市で２２、２３両日、「戦後７０年―平和な未来を子どもたちへ」と平和を願う戦争展が開かれ、１１００人が会場を訪れました。市内の平和委員会や新婦人、戦争を記録する会など実行委員会主催。２８回目。
　戦争体験を聞く会では、侵略戦争で中国戦線に従軍した元兵士、トヨタ本社工場に模擬爆弾が投下されたときに工場地下にいた人など６人が証言。参加者から「初めて聞く話で驚くことばかり」の声があがりました。
　展示コーナーでは、６５０人の戦死者を出した挙母地域、米軍の攻撃を受けたトヨタ自動車と戦争のかかわりの資料や戦争遺品が展示されました。
　長峯信彦愛知大学教授が「武力では平和は守れない」と題して講演しました。
　参加者から「他市では平和イベントの開催や後援をしている。豊田市は知らん顔。おかしい」「安倍さんの政治、本当にあぶない」などの声が寄せられました。
(２０１５年０８月２８日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

論壇時評／榎本好孝／戦後７０年、歴史認識を問う／誇るべき日本の平和運動

　８月１５日、日本はアジア・太平洋戦争の敗戦から７０年を迎えました。安倍晋三首相がその前日に発表した戦後７０年「談話」では、戦後５０年の村山富市首相「談話」が示した、日本が「国策を誤り」「植民地支配と侵略」を行ったという歴史認識は全く語られませんでした。
　改憲・集団的自衛権行使容認派の中曽根康弘元首相が「大勲位の遺言」（『文芸春秋』）で、先の戦争を「誤った戦争」とし、アジア諸国民に対しては「ある面、侵略戦争」だったと語っているのとは対照的でした。「歴史を正視し得ない民族は、他の民族からの信頼も尊敬も得ることはできない」という同氏の指摘は、「安倍談話」への批判になっています。

「反軍事の精神」守り続けた国民
　安倍政権が戦争法案を推進する下で、米国の歴史学者ジョン・ダワー氏が「朝日」４日付で「世界中が知っている日本の本当のソフトパワーは、現憲法下で反軍事的な政策を守り続けてきたこと」だと語っていることは注目すべきです。ダワー氏は「戦後日本で私が最も称賛したいのは、下から湧き上がった動きです。国民は７０年の長きにわたって、平和と民主主義の理念を守り続けてきた。このことこそ、日本人は誇るべき」だと強調します。
　ダワー氏は「憲法がひねり潰されそうになっている今、過去のように国民から大きな声が上がるかどうかが問題」だと語っていますが、「アベ政治」に対し「まつろはぬ（服従しない）者たちの連帯は、すでに驚くほどの広がりと深まりを見せている」のです（中野晃一・上智大学教授「〝感じの悪い〟政治との訣別」）（『世界』）。
　中野氏は、戦争法案に反対するたたかいの広がりと深さを象徴するＳＥＡＬＤｓ（シールズ＝自由と民主主義のための学生緊急行動）の中心メンバーに共通するのは「従来の平和運動や市民運動に関わってきた親や先生たちの背中を見てきたということ」だと指摘。「平和運動の先輩たちの精神を、彼らは確実に受け継いで」おり、「まつろはぬ者たちのうねりは、戦後、市民が育んできた平和主義をその強力な推進力とし、今やアベ政治を洗い流そうとしている」と強調しています。
　高橋若木（大正大学講師）「『立憲主義』を掲げたストリートの運動が、街に新しい風景を生んでいる」（『ＳＩＧＨＴ』）が、ＳＥＡＬＤｓの登場によって「自分の頭で考える優秀な若者は反対すべきときに明確な反対ができる人なんだというイメージ」が生まれ、「中立を装えばクールに見える時代は終わりました」と述べていることも重要な指摘です。

集団的自衛権は消滅すべき規範
　戦争法案に対する本質批判も相次いでいます。
　『別冊法学セミナー・安保関連法総批判―憲法学からの「平和安全」法制分析』は、森英樹名古屋大学名誉教授ら９人の憲法学者が同法案を「徹底分析」。この中で、愛敬浩二（名古屋大学教授）「総論・安保関連法案のねらいと法案論議の問題点」は、法案を、日米両政府が４月に合意した新たな「日米軍事協力の指針」（新ガイドライン）の「実施法」と指摘。同法によって、新ガイドラインのいう「切れ目のない」対応が可能になり、「米国がどんな場所でどんな理由で開戦しようが、米軍に対する後方支援を要求されれば、日本政府は唯々諾々と自衛隊を提供して、誠心誠意『ご奉仕』できることになる」と批判しています。
　最上敏樹（早稲田大学教授）「国際法は錦の御旗ではない」（『世界』）は、「国際立憲主義」の立場から、法案で行使可能になる集団的自衛権は「国家の武力行使の機会を拡大する『権利』であるという点」で「『消滅』に向かうべき（国際）法規範」だと指摘。「二国間軍事同盟で自国の安全を保つという発想は、旧態依然としているだけでなく、いつまでも永続する保証はないし、世界全体の未来に対する展望にも欠けている」とし、「集団的自衛権行使のやみくもな追求は、国内的に立憲主義の破壊であるだけでなく、国際立憲主義への挑戦でもある」と批判しています。
　（えのもと・よしたか）

今月の動向
・俳優の宝田明氏やアニメーション映画監督の高畑勲氏らによる「私の７０年談話」（『女性自身』１８・２５日合併号）、憲法学者の木村草太首都大学東京准教授と１０代の女性たちが語り合う「１７ｓで考えよう“戦後７０年”」（『セブンティーン』）など、女性誌が引き続き戦後７０年や戦争法案をテーマにした企画を掲載
・永井和（京都大学教授）「『慰安婦』問題―破綻した『日本軍無実論』」（『世界』）　「戦地公娼施設論｣や｢強制連行はなかった論」など「日本軍無実論」の主張を批判（編集部）
( ２０１５年０８月２６日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

歌壇／自ら考え選択するために

　どの分野の戦後７０年企画も、従来の記念的回顧企画とはちがって、何かしら切実な感じが動いているのを覚える。
　『短詩形文学』８月号ではそんな特集の一つとして、１９９６年、東京大学で行われた佐々木潤之介講演記録「民衆史を学ぶということ」（『歴史を学ぶということ』収録）を掲載した。このおよそ２０年も前の講演に、深く考えさせられた。
　「そう遠くない時期」に「とくに若い人たちの力量が問われる事態がおこるように思えて」ならない、そのとき「事態をどのように歴史的に理解することができるかが」大きな問題になる、という。「人びとは危機の状況にあるときに、歴史を求める」。それは変動期にあって自分たちの生き方や現実の諸問題への対応を、これまでの延長ではなく、みずから考え、選択しなければならないからだ、理想社会を構想し、その構築のために過去を振り返るのだ、と。
　中部短歌会発行歌誌『短歌』８月号時評では、菊池裕が『短歌研究』８月号特集〈戦後七十年をふりかえる〉を読んで、歌壇の７０年を振り返る。私見と断りつつ「戦後短歌史のエポックメーキングな出来事は前衛短歌運動とサラダ現象だけである」とし、短歌の口語化、現代語化は「不可逆の匂いがする」と述べる。同感者も多いかもしれない。
　しかし、思うに、つねに前面で議論されてきた短歌口語化の影で、その文学的内容の地盤沈下についてはほとんど問題になってこなかった。短歌ばかりではない。あらゆる場面での幼稚化劣化、地盤沈下が進んでいる。
　佐々木潤之介のいうような過去の振り返り方をするなら、宮内省派歌人の奉ずる古今集をこきおろし、「文学としての歌」をもとめた正岡子規こそが思い出されるのである。
　（阿木津　英・歌人）
( ２０１５年０８月２６日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

軍事パレードに日本政府関係者参加せず

　【北京＝時事】日中関係筋は２４日、抗日戦争勝利７０年を記念して９月３日午前に北京で行われる軍事パレードに、木寺昌人駐中国大使や駐在武官（防衛駐在官）ら日本政府関係者は参加しないと明らかにしました。
　安倍晋三首相は、９月３日やその前後に訪中しないことを決定。中国共産党・政府は当日、軍事パレードに続いて午後に記念レセプションを開催しますが、これに木寺大使らが参加するかどうかは未定といいます。
　日中関係筋は一方、安倍首相が８月１４日に発表した戦後７０年談話に対する中国政府の反応に関し、「おわび」や「侵略」など四つのキーワードが盛り込まれたことで「前向きに受け止めている」と述べました。また、木寺大使が中国外務省高官から「厳正な立場の表明」を受けましたが、「抗議ではない」との認識を示しました。
( ２０１５年０８月２６日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

「反省感じず」８８．７％／安倍談話で韓国有識者

　日本の民間非営利団体「言論ＮＰＯ」は２４日、安倍晋三首相による戦後７０年談話に関し、日中韓３カ国の有識者を対象に実施したアンケート調査の結果を発表しました。韓国では、談話が「侵略戦争について反省した内容だと感じなかった」「どちらかというと感じなかった」が計８８・７％に上り、「十分感じた」「どちらかというと感じた」はわずか２・５％でした。
　これに対し中国では、６４・７％が反省を感じなかったと答える一方、感じたとの回答も２０・８％に上りました。
　また、安倍談話を「評価している」「どちらかといえば評価している」と回答したのは、中国で２１・４％に上り、言論ＮＰＯは「肯定的に捉える層が一定数存在する」と分析。
　韓国では前向きな評価が５・７％にとどまる一方、「評価しない」「どちらかといえば評価していない」が８３・１％に上りました。
　アンケートは１８～２２日に実施。計８０３人が回答しました。
　（時事）
( ２０１５年０８月２６日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

発禁本、戦争の傷痕／県立長野図書館３０日まで企画展

　戦後７０年特別企画として県立長野図書館（長野市）は３０日まで、戦前・戦中に発行・発売禁止（発禁）、閲覧禁止となった本を中心に、「発禁１９２５―１９４４　戦時体制下の図書館と知る自由」展を開いています。権力側が言論・表現・出版に加えた深い傷痕を目の当たりにできる展示に、三重や長崎からの来館者もあります。
　地下倉庫から偶然見つかった図書・資料の発見が企画につながりました。同館の「出版物差押通知接受簿」には、科学的社会主義の本はもとより、一般の新聞、雑誌も頻繁に登場し、発禁・検閲の広がりを示しています。
　また、「○○ページ削除」と指示を受けた『日の出の子達』は、盧溝橋事件を侵略行為としたことが理由とされ、戦争の本質を隠そうとする検閲の実態を浮き彫りにしています。
　２５日、緊急に開かれた「展示資料を読み解く会」では、「満州事変」、日中戦争と戦争が全面化するにしたがって、政府による検閲が強化されていったことも明らかにされました。
　企画にあたった平賀研也館長は「戦前の図書館は〝消していく装置〟の一部だった。この反省の上に、今の図書館が立っている。表現の自由、知る自由を市民に体感的に分かってもらえる機会になれば」と語っていました。
( ２０１５年０８月２６日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

文系の廃止・転換／日本学術会議第一部長小森田秋夫氏に聞く／学術に影響、放置できない

　日本学術会議は、下村博文文部科学相が国立大学に対し、人文・社会科学や教員養成系の学部・大学院の廃止や「社会的要請の高い分野」への転換を求める通知を出したことについて、学術の発展をゆがめるなどとして批判する幹事会声明を出しました（７月２３日）。同会議第一部長（人文・社会科学分野）の小森田秋夫・神奈川大学教授に、この問題をどうとらえ、どうのぞんでいくのかについて聞きました。

　日本学術会議は、２１０人の会員と約２０００人の連携会員とからなっています。国の組織ですが、日本の科学者を代表する機関として政府から独立して活動しています。
　今回の文科相の通知は、人文・社会科学系にとどまらず、自然科学も含めた学術の発展や、私立大学も含めた大学のあり方に重大な影響を与えかねない問題として放置できないと考えています。
　いま、世界の科学者は、地球環境の持続可能性を追求する研究プロジェクト「フューチャー・アース」に取り組んでいます。社会が解決を求めるさまざまな課題に立ち向かうために、自然科学と人文・社会科学が連携して取り組むことがますます必要になっています。同時に人間と社会のあり方を相対化し、批判的に省察する人文・社会科学の固有の役割も重要です。

弱まる歴史省察
　たとえば、戦後７０年の節目に、日本がなぜ無謀な戦争に突っ込んでしまったかが議論になっていますが、人文・社会科学が軽視されるということは、自らの歴史を広い視野に立って冷静にふり返り、批判的に省察する日本社会自身の力が弱まることを意味します。
　また、昨今「グローバル人材」の養成が強調されていますが、日本社会の抱える問題をグローバルな文脈で理解し判断する力は、英語を駆使して国外で活躍する人材ばかりではなく、また理系・文系を問わずすべての学生に求められるべきものです。その土台は、人文・社会科学に支えられた豊かな教養です。
　確かに、大学は「社会的要請」にいかに応えるかについていっそう自覚的になることが求められていると言えるでしょう。問題は、「社会的要請」とは何か、ということです。（３面につづく）
　聞き手　深山直人

文科相の通知
　下村文科相は６月８日の通知で、２０１６年度から６年間の中期目標を決めるにあたって、人文社会科学系や教員養成系の学部・大学院の「廃止や社会的要請の高い分野への転換」を求めました。６月末に各大学は中期目標素案を文科省に提出。ＮＨＫのアンケートによると何らかの見直しを予定している大学が８３％にのぼっています。
( ２０１５年０８月２６日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

朝の風／安倍談話の飾り立てた言葉に

　８月１４日夜、テレビで安倍晋三首相の戦後７０年談話をきいたが、すぐこれは官僚の作文だな、と思った。
　文句を言われないように「侵略」ほかの言葉を散らしてはいたが、本人の意志（戦争法案強行）を隠した心不在の文章だった。
　反射的に、読み終わったばかりの『吉野弘エッセイ集　くらしとことば』（河出文庫）が頭に浮かんだ。吉野氏（１９２６～２０１４年）は「夕焼け」や「祝婚歌」の詩で知られている詩人だが、ラジオ、新聞、雑誌などに発表された短いエッセー四十数編を収録した本である。
　暮らしのなかの身近な出来事、事物についての鋭い観察が、隣人にでも話しかけるような態度で平易に記され、優しさ、あたたかさが行間からにじみでている。安倍談話とは正反対だ。
　例えば「加害者は加害者であることに気付いていません。……他人に害を加えているのに、当人が気付いていなければ加害行為は繰り返されていきます」（「加害者・被害者」）や「言葉というのは心のことなんだな」（「会釈・挨拶・いい会話」）などは、談話の飾り立てた言葉の核心への批評だ。
　戦前回帰をもくろむ思想は、暮らしをみつめる深い目のまえでは、その正体がみえてしまうのである。
　（樫）
( ２０１５年０８月２５日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

ひと／初の日越合作映画の監督大森一樹さん（６３）

　高校時代から自主映画を制作し、今や日本を代表する映画監督の一人です。
　「僕の計算では、自ら監督を務めた作品は、２８本目になるはずです」
　その最新作が史上初の日本ベトナム合作映画、松坂慶子主演の「ベトナムの風に吹かれて」。ハノイ在住の日本人女性が認知症の母親を引き取り、現地で介護した実話の原作を基にしています。９月に新潟、１０月１７日から全国で劇場公開。
　「映画は双方の国の認知症や介護の問題も扱っていますが、僕個人は、ある意味で戦後７０年の映画だと思っています。日本とベトナムの長い付き合いを俯瞰できたらいいなと」
　１９６０年代後半、「いっぱい映画を観て、あんな映画を自分でも撮りたいと思いましたね」。「初めは８ミリでした」
　とはいえ、京都府立医科大学へ進学し、卒業後は、医師免許も取りました。
　「当時、映画監督になれる人は限られていて、職業になると思いませんでしたから、好きは好きで脇に置いて、と考えました」
　しかし、自主制作の映画がヒットし、本格的にプロの道へ。医学生としての体験を生かした「ヒポクラテスたち」（１９８０年）も高い評価を受けました。
　人柄は気さくで、作風はサービス精神旺盛と評されます。猛暑の中、野外での撮影に快く応じてもらえたのも、その表れでしょう。
　大阪芸術大学で後進の指導にもあたっています。
　文　北川　俊文
( ２０１５年０８月２５日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

首相、歴史認識の言明拒む／「安倍談話」欺まん浮きぼり／山下書記局長が追及／参院予算委

「侵略」「植民地支配」
　日本共産党の山下芳生書記局長は２４日の参院予算委員会で、安倍晋三首相による「戦後７０年談話」をとりあげ、安倍首相の歴史認識をただしました。首相は「『談話』に示している通り」「歴史家の議論に委ねる」と繰り返すだけで、自身の歴史認識として、日本による「植民地支配」「侵略」を認めることをかたくなに拒否。山下氏は「７０年前の痛苦の反省、歴代内閣が認めてきた侵略と植民地支配を『談話』でも首相自身の言葉でもはっきり認めない。これは欺瞞だといわなければならない」と厳しく批判しました。
　（関連２・ハイライト３面）

　１４日に発表された「談話」では、「侵略」「植民地支配」「反省」「お詫び」などの言葉は盛り込まれたものの、主語がなく、日本が「植民地支配と侵略」を行ったとの歴史認識は示されませんでした。「反省」と「お詫び」も歴代政権による表明を記載するのみでした。
　「安倍首相は、日本が植民地支配を行ったことを認めないのか」―。山下氏は、橋本龍太郎首相（当時）の国会答弁や小渕恵三首相（同）による「日韓共同宣言」などを取り上げ、「村山談話」後の歴代政権が、日本が朝鮮半島を植民地支配したという認識をはっきり示していることを紹介。日本が、朝鮮の植民地化を武力を背景に進め、国、言語、名前すら奪う苦痛を与えた史実にふれ、これに対する首相の認識をただしました。
　首相は「２１世紀構想懇談会の報告書には、日本が台湾や韓国を植民地化したことが記載されている」「一部分だけを切り取って議論するのは、幅広い国民とメッセージを共有する観点から適切ではない。談話が全てだ」との答弁に終始。自らの言葉で「植民地支配」の経過も中身もまったく語りませんでした。
　日本が中国、アジア、太平洋地域に対して行った戦争はどうか。山下氏は、「侵略」だったと認めるのかと首相の認識をただしました。
　首相は「どのような行為が侵略かどうかは、歴史家の議論に委ねるべきだ」と強弁しました。山下氏は、小渕首相（当時）による「日中共同宣言」などを示し、「『歴史家の議論』で逃げるのは欺瞞だ。『安倍談話』は『村山談話』を投げ捨てるに等しいものだ」と批判しました。
　日本の戦争を「侵略戦争」だったと断じた「ポツダム宣言」についても、「日本はポツダム宣言を受け入れ敗戦した」と述べるだけで自らの言葉でその認識を語らない安倍首相。山下氏は「ポツダム宣言を踏まえて、日本国憲法の第９条や基本的人権が明記された。今、安倍政権がそれを覆し、日本を再び『海外で戦争する国』につくり変えようとしている」と強調。戦争法案の撤回を求めました。
( ２０１５年０８月２５日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

平和願う歌、沖縄に響く／全国教育のうたごえ祭典開催

　「２０１５全国教育のうたごえ祭典ｉｎおきなわ」（主催＝同実行委員会）が２２、２３両日、戦後７０年の節目に沖縄県で開催されました。教職員を中心に父母や子どもたち、市民も参加する祭典で、２日間でのべ１２００人が参加しました。
　全国教育のうたごえ協議会の藤村記一郎議長は「現政権は憲法９条の解釈を変え、沖縄県民の意思表示を無視し名護市辺野古に基地を造ろうとしています。こうした中で、子どもたちの幸せと平和を願う歌声を沖縄に、全国に響かせます」と話しました。
　２３日の大音楽会は浦添市で開催。浦添市少年少女合唱団や市内の保育園児も出演。１９４４年８月２２日に撃沈された学童疎開船「対馬丸」の犠牲者を追悼し、戦争の悲しさとむなしさを訴える合唱組曲「海のトランペット」（池辺晋一郎氏曲）も披露されました。
　「ぞうれっしゃがやってきた」の大合唱では、同合唱団とともに浦添市の小学校３校の児童もステージに立ち、愛知県蒲郡市吹奏楽団と浦添市吹奏楽団が伴奏で元気な歌声を響かせました。
　前日の２２日は、合唱発表交流会が那覇市で行われました。
　来年は、福島県で開催されます。
( ２０１５年０８月２４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

安倍首相の戦後７０年談話に思う／真実を直視する姿勢で負の歴史に向き合ってこそ／井上勝生

　安倍首相の戦後７０年談話の日露戦争の位置づけが、批判を呼んでいる。
　「植民地支配のもとにあった、多くのアジアやアフリカの人々を勇気づけました」
　談話のこの一節はアジアの人々、とくに朝鮮の人々の心を逆なでしたと思う。

一世代越える「強占支配」と
　日露戦争直後の１９０５年、朝鮮は強制的に保護国にされた。５年後の「韓国併合」によって朝鮮は３６年間、日本の支配に入れられた。韓国では「一世代を越える強占支配でした」と言われる。言語、姓、歴史も否定され、抗日運動は苛酷に弾圧された。
　知日家で日本を見聞していた金大中元大統領は、自伝で日本の朝鮮からの経済的搾取は傷痕として残っていないが、文化の被害は「いまなお深い傷跡として残」る、これを日本人の大部分は知らないと、日本訪問時に文化人たちに心から訴えたと述べている。
　日本の朝鮮支配体制は、米軍政に受けつがれ、朝鮮の解放後も残った。敗戦直後、ソウルの朝鮮総督府と日本軍が、沖縄の米軍に朝鮮への進軍を「交信の洪水」と記されたほど打電し、要請した史実も米陸軍公文書から紹介されている（Ｂ・カミングス『朝鮮戦争の起源』）。日本は、植民地支配の深い傷が韓国に残ったことにも、無関係ではない。
　日清戦争についても隠されていた史実が次々に明らかにされている。１８９４年７月、日本軍は早朝、銃撃戦の上、朝鮮王宮を占領した。日清戦争は日本が武力で仕掛けた。
　日清戦争中には、在野の平等思想である東学に集まった農民軍数十万名が朝鮮全土で抗日蜂起する。日本軍大本営は電信で、東学農民を「ことごとく殺戮すべし」と命じた。農民軍は南西海岸端まで日本軍に抗戦し、数万名の死者を出してせん滅された。日清戦争も実は日本の侵略戦争であった。朝鮮の被害は知られているより根深いのである。

寛容に感謝ですまされない
　安倍談話が、旧敵国の「寛容」に感謝するという一節も問題があると思う。中国や欧米が恩讐を越えて日本人を助けたり支援した。その寛容に感謝すると。
　だが戦争はあまりに苛烈だった。今でもアジアの人々の多くは日本に痛憤の言葉をのみこんでいる。受け止められない悲嘆は屈辱を増すだけなのだ。感謝するではすまされない。
　有名なドイツのヴァイツゼッカー演説も旧敵国がドイツ人を助けた克己心の困難に思いを及ぼすという、安倍談話にあまりにもそっくりの一節がある。しかし彼は次のようにつづける。
　「（旧敵国人に）ドイツ人が二度と再び暴力で敗北に修正を加えることはない、という確信がしだいに深まっていく必要がありました」。ドイツ人は老幼とも艱難を心に刻みつづけ、新憲法第１条（第２項）を「記しました」。「能うかぎり真実を直視しよう」と。
　私は農民軍せん滅戦争の現地を韓国の研究者と幾度も訪ね、討論し、史実を求めてまわった。私の歴史認識は不十分なところが多かったが、負の歴史と向き合おうという姿勢があれば、隣国の人々は言うべきことをきちんと言い、誠意をもって向き合うのだった。
　あらためてヴァイツゼッカー演説を読んで、長大な安倍談話にはない文章に気づいた。
　ドイツ人の市民、軍人、宗教者、労働者のレジスタンス、そして共産主義者のレジスタンス―「これらのレジスタンスの犠牲者を思い浮かべ、敬意を表します」と。
　ドイツ大統領演説の思いの深さをあらためて感じた。

　いのうえ・かつお　４５年生まれ。北海道大学名誉教授。『明治日本の植民地支配』ほか。
( ２０１５年０８月２４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

波動／若者たちの「７０年談話」／河野慎二

　安倍首相が１４日に発表した戦後７０年の談話。世論に押されて、植民地支配、侵略、痛切な反省、お詫びというキーワードはちりばめたものの、一般論や引用にとどまり、村山談話の解体同然の内容となっている。
　「朝日」が１５日の社説で「この談話は出す必要がなかった。いや、出すべきではなかった」と酷評したのは、至極当然と言うべきだろう。
　テレビはどう伝えたか。筆者が注目したのは１４日のＴＢＳ「ＮＥＷＳ２３」である。
　記者が安倍談話と村山談話をフリップで比較し、分かりやすく解説。村山元首相が「シンプルに反省し、謝罪している」のに対し、安倍談話には従来の経過の表明にとどめ、首相自らの言葉がない。
　アンカーの岸井成格氏は｢主語をあえてぼかし､『事変、侵略、戦争』と分けて使っている。満州事変は侵略ではない、日支事変は日中戦争のスタートではないと受け取れる」と、国民をあざむき、だます安倍首相の手法を批判した。
　さらに「先の戦争を美化したとは言わないが、日本だけが悪いんじゃないと、自民保守派の認識を前面に出した談話だ」と核心を衝くコメント。
　他局に比べ優れているのは、平成生まれの若者が提言する「私たちの戦後７０年談話」の企画取材だ。ジャーナリスト志望の高校生やソマリア支援ＮＧＯ活動などに取り組む１２人の若者がグループごとに沖縄や長崎を訪れ、戦争体験者を取材する。東京では中国や韓国、独仏の留学生らと対話を重ねる。
　マラソン討議でまとめた若者たちの「７０年談話」を、１４日にスタジオで１２人が読み上げる。
　「日本はアジア太平洋諸国へ植民地支配と侵略で甚大な被害を与えた」　「国内外の傷は、戦後７０年の今も消えていない。尊い命のバトンを引き継ぐ私たちは、市民交流などを通じ一歩ずつ理解を深めて行く」
　「戦争の悲劇を繰り返してはいけないという強い思いを新たにし、日本と世界の平和実現のために行動し続けていく」
　岸井氏が「国会の審議も大事だ。注目していきたい」と締めくくった。
　安倍談話報道を一過性で終わらせず、戦争法案廃案に向けた関連取材の強化が求められる。
　（こうの・しんじ　ジャーナリスト）
( ２０１５年０８月２４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

地域発／京都・大善院／戦争孤児、二度と生まない／悲惨な歴史伝える「せんそうこじぞう」

駅で雨露しのぎ栄養失調でなくなった子も
　戦後７０年の今年、京都市下京区の真宗仏光寺派・大善院に、戦争孤児を供養・祈念する「せんそうこじぞう」が設置されました。戦争で家族を失いながらも、懸命に生きた孤児たちの歴史や思いを伝える「平和の象徴」としてつくったもの。「ふたたび戦争孤児をつくらない」のメッセージを託します。
　関西総局・笹川神由記者

　「戦災の少なかった京都駅とその周辺には、空襲で被災した阪神地方などから５千人近い戦災孤児たちが集まり、生活していました」。こう語るのは、戦争孤児について研究している立命館宇治中学・高校教諭の本庄豊さん（６０）です。
　２０１３年、同市西京区の児童養護施設・積慶園で戦災孤児の写真が見つかり、その孤児が京都駅に住んでいたことが判明しました。「雨や夜露をしのぐために駅構内で寝泊まりしていたことから、孤児たちを『駅の子』と呼ぶ人たちもいました」（本庄さん）

遺骨を発見
　大善院の佐々木正祥住職（６１）の叔父の元禧（げんき）さん（故人）は戦後、孤児を保護した施設・伏見寮（同市伏見区）の元職員でした。元禧さんは、栄養失調などで亡くなった寮の孤児８人の遺骨と遺髪を実家の大善院に預け、本堂で保管してもらっていました。
　約１０年前、住職の妻の美也子さん（６０）が偶然、木箱に納められた遺骨と遺髪を発見。戦災孤児であること以外の事情が不明なため、佐々木住職が本庄さんに調査を依頼したところ、遺骨、遺髪は生後３カ月から１６歳までの子どもたちのものだということが分かりました。
　寮の元職員や関係者らが集まり、１３年、１４年と追悼法要を行いました。その中で、戦後７０年にあたり、多くの人に戦争孤児の歴史を伝えていこうと石像の設置を企画しました。
　石像は高さ９０㌢。戦争孤児と子地蔵をかけ合わせ「せんそうこじぞう」。防空ずきんをかぶり優しくほほ笑みます。

抱える地球
　デザインは本庄さんの教え子、立命館宇治高３年生の白井有紀さん（１７）です。「二度と世界で戦争を起こさないように、戦争孤児を生まないように」という願いを込めました。
　大きい「こじぞう」は母親で、おなかに抱えた地球は「妊婦が大切に抱える赤ちゃん」をイメージ。５体の小さい「こじぞう」は、戦災孤児、広島・長崎の原爆による孤児、沖縄戦の孤児などを意味します。
　白井さんは「亡くなった孤児だけでなく、戦後、一生懸命生き抜いた孤児の存在も知ってほしい」といいます。
　台座の表題は奥出廣司さん（７６）が担当しました。奥出さんは元孤児で、伏見寮に保護されていました。「つらい思いをして亡くなった子どもたち、どうか成仏してください」と一文字、一文字に思いを込めました。
　６歳のときに京都市内で終戦を迎え、たどり着いた京都駅で３カ月間過ごした奥出さん。物乞いで空腹をしのぎ、ときには生のサツマイモを駅のトイレで洗って食べました｡｢飢え死にだけはしたくない｣と､生きることだけを考える毎日でした。
　孤児というだけで差別を受けるなど、過去のつらい体験を人に話すことをはばかってきた奥出さん。「若い人に戦争の悲惨さを知ってもらうために」と、本庄さんから依頼を受け、生徒たちに体験を話しました。
　奥出さんは、国会で審議されている戦争法案について危惧しています。「安倍晋三首相は、戦争を経験しておらず、その恐ろしさをわかっていない。戦争は必ず孤児を生む、おろかで悲惨なものだ。繰り返してはならない」

　問い合わせ先＝せんそうこじぞうの会℡０７５（３５１）４８８３（大善院内）　ホームページあり
(２０１５年０８月２３日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

いま注目の独立プロ映画／女優香川京子さん／映画監督神山征二郎さん

信念曲げないすばらしさ／女優香川京子さん
　私が独立プロの作品に出演したのは、家城監督の「ともしび」（１９５４年）が最初でした。出演作は自分で選びたかった私は、「新東宝」入社３年目の５２年、フリーになっていました。
　「ともしび」は貧しい農村が舞台。栃木の部屋村（現・栃木市）で撮影したのですが、普通の農家に泊めていただきました。男の俳優さんもスタッフと一緒になってカメラやライトを運ぶのを手伝ったり、お金がなくてもいい作品をつくろうとみんなで協力していらっしゃって、とてもすてきだと思いました。
　私は貧しい農家の娘・きみの役で、くわの使い方を随分練習した記憶があります。きみは一生懸命働いても弟に教科書も買ってやれません。女教師役を演じた「人間の壁」（５９年・山本監督）にも、安い文房具を買いに行こうとして列車にひかれる教え子が登場します。
　社会の矛盾、世の中にはこんなに苦しんでいる人たちがいると、独立プロのお仕事を通じて、教えられました。女優も社会のことに関心を持たなくてはならないと。大手の作品だけに出ていたら、わからなかったでしょうね。
　「愛すればこそ」（５５年）に出演したのも、お手伝いしたい気持ちからです。独立プロの監督さんたちは、ご自分たちの信念を曲げない。そこがすばらしかったです。
　独立プロではないですが、今井監督の「ひめゆりの塔」（５３年）は私の代表作になりました。
　当時、沖縄は米軍の占領下で、本土の人たちは沖縄戦の現実をほとんど知りませんでした。私も、年の違わない女学生たちの悲劇にショックを受けました。撮影は東京と千葉。移動のシーンは夜中に行われました。冬でしたが、「伝えなきゃ」という使命感で風邪ひとつひきませんでした。
　戦争が始まるのはアッという間です。そして戦後７０年たっても傷は癒えません。また戦争の時代が来ようとしていることに、いてもたってもいられない気持ちです。今こそ、これらの映画を見てほしいですね。

反戦平和を底流に娯楽性も／映画監督神山征二郎さん
　独立プロこそ私の映画作りの原点です。草創期の新藤、今井、山本と吉村公三郎の４監督が私の先生でした。私たちの年代がその精神を受け継ぐ第３世代だと思っています。
　忘れもしません。１９６５年、独立プロの近代映画協会に入り新藤監督の「悪党」で見習い助監督になりました。今も「愛（まな）弟子」と自任しています。新藤監督の「原爆の子」「裸の島」は私のお手本です。
　今井さんで思い出深いのは、８２年のリメーク版「ひめゆりの塔」です。今井さんと共同監督で、沖縄ロケでは２人で午前と午後にわかれて撮りました。大先輩なのに私の演出に一切口を挟まない。筋を通す方でした。
　山本監督とはご一緒できませんでしたが、教わることが多かった。８３年、私の「ふるさと」がモスクワ国際映画祭に出品される際、入院中の山本さんを見舞いました。その夏亡くなられ本当に残念でした。山本さんの「戦争と人間」３部作は戦争の本質を鋭く突いた名作です。
　独立プロの魅力は、政治的な主張を鮮明にして社会問題に迫ることです。反戦平和が底流にあり、かつ娯楽性も重視しました。
　この精神を引き継ごうと、私は、戦後５０年企画で「月光の夏」などを手がけました。当時すでに改憲の動きが強まっていましたが、いま安保法制で再び戦争への危険が増しています。独立プロの先人たちの思いを引き継ぐことには大きな意義があると思いますね。

＊東京・新文芸坐で２３日に「ひめゆりの塔」などの上映と香川京子さんのトークショー、２４日に「月光の夏」などの上映と神山征二郎監督のトークショー
(２０１５年０８月２３日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

安倍首相戦後７０年談話／ＳＥＡＬＤｓ・筑波大院生諏訪原健さん／未来のため過去と向き合え

　とても不誠実な談話です。安倍さんの一面的な歴史の見方を示し、真摯（しんし）な謝罪がない。「心に留めなければ…」と言いつつ、日本の加害の歴史への配慮が足りません。
　安倍さんは子や孫に謝罪し続ける宿命を背負わせてはいけないと言いますが、むしろ今回の談話によって、私は肩身が狭くなったように感じます。
　過去の戦争は、私たちと無関係ではありません。いまも多くの人の心身を苦しめ、沖縄の米軍基地や在日外国人差別などの問題とつながっています。未来をつくるには、過去と向き合わなければなりません。
　終戦時に海軍予科練にいた祖父は「何があっても戦争に頼ってはいけない」と何度も私に話しました。私は祖父の言葉と、日本の加害の歴史を心に留めるようにしてきました。
　戦争を本当に反省するなら、安保法案で武力に頼るべきではありません。ところが談話は最終的に「積極的平和主義」、つまり安保法案などで国際貢献すると表明しました。しかも、米国など価値観を共有する国々と手を携えて…と言います。これでは過ちをくり返すのではないかと、恐ろしいです。多様な価値観を持つ国々と対話を重ね、外交で平和な未来をつくろうという姿勢が見えません。
(２０１５年０８月２３日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

安倍首相戦後７０年談話／一橋大学教授（日本近現代史）吉田裕さん／戦争法案を正当化する狙い

　安倍談話が「侵略」「植民地支配」「反省」「お詫（わ）び」という四つの言葉を使ったものの、主語がない言い方や、歴代内閣の立場を紹介する形をとっているのは、「侵略の定義は定まっていない」などという自分の戦争観を隠そうとしたためです。
　侵略戦争や植民地支配への根本的反省を欠きながら、子や孫の世代に「謝罪を続ける宿命を背負わせてはならない」というのも、謝罪はもうこれで終わりという意思表示であり問題です。
　首相の歴史認識の地金が出ていると思われるところがあります。一つは日露戦争を、「植民地支配のもとにあった多くのアジアやアフリカの人々を勇気づけた」というくだりです。「満州」と朝鮮の支配権をめぐる日露の戦争を「アジア・アフリカの人々を勇気づけた」というのは植民地支配を肯定するものです。もう一つは、記者の質問に答えて「具体的にどの行為が『侵略』かは歴史家の議論に委ねる」とのべたことです。侵略戦争だと見ていない本音が出たと見るべきです。
　安倍首相は全国戦没者追悼式（１５日）の式辞で、細川内閣以来歴代首相が言及してきたアジア諸国への加害責任にふれませんでした。３年連続です。首相の歴史認識がここでも問われます。
　戦争への反省を「積極的平和主義」に結び付けているのは、戦争法案の正当化を狙ったものでしょう。
(２０１５年０８月２３日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

安倍首相戦後７０年談話／村山談話投げ捨て／「侵略」「植民地支配」…言葉並べただけ

　安倍晋三首相が１４日に発表した７０年談話。戦後５０年の村山富市首相談話（１９９５年）が示した立場を事実上投げ捨てたものです。その中身は―。

　談話は、「侵略」「植民地支配」「痛切な反省」「お詫（わ）び」という言葉が入っているものの、それを日本の行為として示さなかったり、「歴代内閣の立場」として説明したりして自分の言葉として語りませんでした｡｢侵略」については「事変、侵略、戦争。」と言葉を並べただけです。
　村山談話は「わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました」とのべています。
(２０１５年０８月２３日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

北東アジアの平和に憲法９条が寄与／韓国で平和共存フォーラム

　【春川（韓国）＝栗原千鶴】韓国、日本、中国の識者や市民らがアジアの平和問題を討論する「北東アジア平和共存フォーラム」が２２日、韓国北部の春川市内で開かれ、日本国憲法９条の重要性や北東アジアにおける平和共同体構築の可能性、安倍政権による「戦争できる国づくり」に対する懸念などを語り合いました。主催は翰林（ハルリム）大学、翰林聖心大学、東アジア平和研究所。
　「九条の会」事務局長の小森陽一氏は、改憲派の動きを歴史的に解明し、９条に対する国民世論の変化などを紹介。「『九条の会』を全国に作っていく活動が世論を変える一つの力になった」と語りました。
　中国・北京大学教授の金景一氏は、「９条は７０年間、北東アジアの平和を守る重要な役割を果たしてきた」と評価。「日本で憲法を守る勇気ある行動を聞き感動した。日中韓が力をあわせて、北東アジアに平和の枠組みをつくることが大切だ」と話しました。
　韓国元副首相兼統一院長官の韓完相（ハン・ワンサン）氏は戦後７０年の安倍談話について、東アジアの関係を悪化させただけだと指摘。「安倍首相は歴史修正主義と軍国主義を放棄し、侵略と植民地支配をした過去の歴史を正直に認め、心からの謝罪とそれに値する具体的な措置を取らなければならない」と強調しました。
　フォーラムでは、ノーベル平和賞に９条を推薦するとする春川市民４千人の署名が「憲法９条にノーベル賞を」実行委員会に手渡されました。東アジア平和研究所所長の尹載善（ユン・ジェソン）翰林聖心大学教授が、署名に取り組んだ経緯を説明。「春川市民も平和賞を渡すことに共感している」と語りました。
( ２０１５年０８月２３日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

軍隊は国民守らない／戦中、満蒙開拓青少年義勇軍で大陸に渡った高橋信吉さんが見たもの

開拓民を置き去りにわれ先に逃げ去った
　７２年前の１９４３年に中国大陸に渡り、九死に一生を得て戦後、故国の土を踏んだ高橋信吉さん（８８）＝栃木県鹿沼市＝に、体験と今の思いを聞きました。
　（青野圭）

　高橋さんは１９２７年、鹿沼町（現鹿沼市）の農家に９人きょうだいの５番目として生まれました。１６歳の時、若者を開拓民として旧満州（中国東北部)に送り出す｢満蒙開拓青少年義勇軍」の訓練生になりました。

お国のためと
　応募した一番の理由は「お国に奉仕したかった」から。高橋さんが尋常小学校に入学した年、国語の教科書が、それまでの「ハナ　ハト　マメ　マス」から「ススメ　ススメ　ヘイタイ　ススメ」に変わりました。
　軍国主義教育でお国に命をささげる、りっぱな「軍国少年」に育っていました。「２年間の訓練生期間を終えると、２０町歩（１９・８㌶）の土地がもらえる」という話も魅力でした。国内ではとても望めない特典でした。
　訓練生の生活は「３分の１が生徒で、３分の１が銃を手にした軍人、３分の１が農民だった」と高橋さん。府県ごとに中隊（部隊編成の単位、本部を持つ最小単位）をつくりました。
　栃木県出身者２３５人の中隊は、北緯５０度の北、ソ連（当時）との国境だった黒竜江から徒歩１５分ほどの旧満州国黒河省（現黒竜江省）の大額訓練所に入りました。現地に着くと「地元の人を刺激しないように」と、名前が義勇「軍」から満州開拓青年義勇「隊」に変わりました。訓練所の２～３㌔後ろには、約１０００人の関東軍（日本軍）がいました。

木銃の兵隊も
　４５年８月９日、「赤い星のマークをつけた飛行機（ソ連軍機）」が飛んできて攻撃が始まりました。訓練生は、直ちに各地の関東軍に配属されました。当地の関東軍は「北満第一の要塞」といわれた精鋭でしたが、配属されてみると、高射砲も戦闘機もありません。
　「軍は、われ先にと逃げちゃいましてね。とくに高級将校なんて、飛行機で東京に帰っちゃった。残された兵隊の中には、木銃といって木で作った訓練用の銃しか持っていない者もいました。ソ連軍とは、まともに戦闘もできなかった。一方的にやられました」
　東満州を中心に日本人開拓民がたくさんいましたが、軍が置き去りにして逃げたから、『大地の子』（山崎豊子著）で描かれたような残留孤児がたくさんうまれたと怒ります。「軍隊は国民を守らない。庶民は捨て石です。戦争を始める時は『平和を守るため』『国民を守るため』といって殺すんです。人を殺して正義なんてない」

戦争法案だめ
　高橋さんたちは８月１５日に武器を捨て、ソ連軍の捕虜に。９月になると船に乗せられました。黒竜江を南東に下れば日本でしたが、船は対岸に渡り、ライチーハ（現ロシア領）の収容所に送られました。シベリア抑留から帰国できたのは３年後の４８年９月でした。
　鹿沼町からは、高橋さんのほかに、１４歳の少年３人が義勇軍に参加しました。無事に帰ったかどうかはいまも不明です。高橋さんはいいます。「戦後７０年の間に総理大臣は何人もかわりましたが、安倍晋三氏は戦後最悪です。戦争をやりたくてしかたがないのでしょう。戦争法案はだめです、絶対に」
( ２０１５年０８月２２日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

「安倍首相談話」／日朝協会が抗議

　安倍首相による「戦後７０年談話」について日朝協会はこのほど、「戦争する国づくり」宣言ともいうべき「談話」に断固抗議するとした声明を発表しました。
　声明では、朝鮮半島を侵略し、植民地支配した「この歴史を美化することは絶対に認められない」と批判。
　「談話」を発表した記者会見で、戦争法案を強行する姿勢を示したことにふれ「このことは、『談話』が平和の構築を目指すものではなく、『戦争法案』を進めるものであり、日本国民としては到底認めることはできない」としています。
( ２０１５年０８月２１日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

主張／戦争法案廃案に／空前の国民的たたかい今こそ

　「戦争法案を廃案に」の一点で国民のたたかいが、空前の規模で日本列島を覆っています。参院安保法制特別委員会では、日本共産党をはじめ野党の追及に安倍晋三政権の閣僚らは答弁不能に陥り、たびたび審議が中断する事態です。マスメディアの世論調査では５～６割が法案に反対し、安倍内閣支持率も低迷するなど、国会論戦と国民的運動が安倍政権を追い込んでいます｡戦争法案阻止へ､８月下旬にむけ一連の国民的行動をさらに大きく飛躍させましょう。

「列島騒然」の状況に
　「戦争させない・９条壊すな！総がかり行動実行委員会」は３０日に「戦争法案廃案！　安倍政権退陣！　国会１０万人・全国１００万人大行動」を呼びかけています。
　ＳＥＡＬＤｓ（シールズ＝自由と民主主義のための学生緊急行動）は２３日、大規模な「表参道デモ」を計画し、あわせて「若者中心に全国でうまれた抗議行動を一斉にこの日に行えたらと思います。北海道から沖縄まで、各自の地元でデモや街宣アピールをしましょう。これは若者から全世代への呼びかけです」と訴えています。若者憲法集会実行委員会も同日、「戦争法案つぶすデモ＠吉祥寺」に取り組みます。
　２４日には「戦争法案に反対する宗教者・門徒・信者全国集会」が実施されます。日本弁護士連合会は２６日に「安保法案廃案へ！　立憲主義を守り抜く大集会＆パレード」を計画し、「法曹・学者・学生・市民　総結集」を打ち出しています。この日は「安全保障関連法案に反対する学者の会」も連帯して行動します。
　これらの呼びかけにこたえて、全国で集会やデモ、アピール行動など多彩な運動がおこなわれます。東京での集会やデモを大きく成功させるとともに、全国津々浦々で総決起し、空前の規模の国民的運動で「列島騒然」の状況をつくりましょう。
　この間、国会論戦や野党共闘のもとで、労組や団体は、共同の力、草の根の力を大きく発揮してきました｡各地の｢九条の会｣が､保守といわれる方々もふくめた憲法を守れとの一人ひとりの思いを結び合わせ、立ち上がっています。
　青年・学生、子育て世代、学者・研究者、弁護士などが、自らの問題として自主的・自覚的に行動をはじめ、共同の輪があらゆる階層、あらゆる世代に広がってきました。
　このもとで自民党の県議や市議が戦争法案廃案を主張し、ストップをさせる団体や｢会｣をつくるなど新たな動きも始まっています。
　戦争法案廃案のたたかいのなかで、「民主主義って何だ！」という若者のコールがわきおこっています。安倍政権の暴走で、平和、自由や民主主義、基本的人権という国の根本が脅かされることへの強い怒りです。国民的規模での運動の発展は、戦後７０年、国民主権の原則が脈々と受け継がれ、しっかりと根を下ろし、大きな力を発揮していることを示しています。

世論広げる先頭に立ち
　国民的エネルギーを、８月下旬の一大国民的運動へと、総結集する時です。日本共産党は、２３日から３０日までを「戦争法案阻止　全国いっせい宣伝週間」と位置づけています。戦争法案の「合理化論」を打ち破り、廃案の展望をしめし、国民的運動の発展のために全力を尽くものです。
( ２０１５年０８月２１日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦争法案廃案へ／平和守る思いとたたかい／２／国公労連委員長宮垣忠さんに聞く／国民の奉仕者として

　国家公務員は戦時中、戦争を遂行するためにあらゆる協力を強いられた苦い経験があります。「国家公務員をふたたび戦争の奉仕者にさせない」を合言葉に、戦争法案に反対する国公労連の宮垣忠委員長に聞きました。
　（堤由紀子）

協力させられた
　明治憲法下では、私たち国家公務員は天皇の官吏であり、使用人として侵略戦争に全面的に協力させられました。その仕事は多岐にわたりました。
　労働行政は本来、働く人の権利を守るのが仕事です。ところが１９４４年の国民徴用令により、国民を労務動員する役割を担いました。最初の発動は、８５０人もの国民を中国大陸方面の陸軍関係建設作業に徴用（強制的な動員）したものでした。学徒勤労令では中学生以上の学生を工場作業などに徴用しました。
　軍用資源秘密保護法により、気象情報が規制されました。台風の進路や地震､津波の被害も｢軍事機密｣とされました｡１９４４年の東南海地震や翌年の三河地震も秘密にされ、犠牲になった学童疎開の子どもたちの親にさえ、知らされませんでした。天気予報が４年近く公表されなかったことで、災害による多くの犠牲者を生みだしました。
　戦費調達のために「年金制度」をつくり、厚生行政は国民から保険料を強制的にとりたてました。裁判所は行政の下に置かれ、天皇制国家や戦争に反対する人を犯罪者として処罰する役割を担いました。

憲法を尊重する
　日本国憲法により、私たちの役割は大きく変わりました。第１５条では、公務員は天皇の奉仕者ではなく、国民全体の奉仕者と定められました。第９９条では、憲法を尊重し、擁護する義務を負うことになりました。
　基本的人権を尊重し、憲法にもとづいて国民の安全・安心を守るのが私たちの仕事となったいま、憲法違反の戦争法案を許すわけにはいかないのです。そもそも憲法を擁護する義務を負う政府自身が、明らかに憲法に違反する法案を提出すること自体が、あり得ないことです。
　国民を戦場へと駆り立てるだけでなく、私たち自身も駆り出される危険性があります。いまのＰＫＯ協力法でも、選挙の執行･監視や医療の提供､生活関連物資の配布などさまざまな仕事を求められており、協力隊員の任命を拒否することはできません。戦争法案が成立すれば、多くの公務員がより危険な地域に行かざるを得なくなります。
　戦争法案のその先には、憲法改悪が待ち構えています。私たちはそこまでを見据えて、息の長い運動にとりくんでいます。
　賃上げよりも増員の要求が強く出るほど、職場は大変です。まとまって話をする余裕さえない中で、戦争法案や憲法についてどうわかりやすく伝えていけるかが、最大のポイントだと思います。職場をはじめ家族や友人と話題にできるようにと、職場討議資料「憲法ＶＳ戦争」を４号まで発行し、ＤＶＤも作っています。
　当面は３０日の「国会１０万人全国１００万人」行動に最大限の力を注ぐこととあわせて、署名に集中的にとりくんで自公の国会議員への要請行動をします。
　国民が幸せに暮らせるように奉仕する仕事に専念できるよう、私たちは戦争法案に反対します。
( ２０１５年０８月２２日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦争法案廃案へ／平和守る思いとたたかい／１／日本医労連委員長中野千香子さんに聞く

白衣を戦争で汚さない
　「ふたたび戦場の血で白衣を汚（けが）さない」―。日本医療労働組合連合会（日本医労連）は、医療・介護労働者の原点に立ち返り、「戦争法案を必ず廃案に」ととりくみをすすめています。中野千香子委員長に思いを聞きました。
　（堤由紀子）

　私たちが戦争法案に反対する理由は、いくつもあります。
　その一つは、他国の戦争に参加する戦争法案は、国民の命と健康を守るという医療・介護労働者の使命に反するものだからです。
　戦後７０年、国民の不断の努力で平和を守ってきたのに、他国の戦争に巻き込まれ、殺し、殺される国になるのが戦争法案です。ひとたび戦争が始まれば、一般の国民が受けられる医療は非常に貧しいものになります。平和でこそ、その人らしく命を輝かせることができるのであって、その手助けをするのが私たちの仕事なのです。
　二つ目が、先の大戦でもその前の戦争でも常に有無を言わせずに戦場に駆り立てられ、戦争に協力させられてきた苦い経験を繰り返したくないからです。傷ついた兵士を治療して、ふたたび戦場に送り出すような仕事は二度としたくない。だから運動の原点は「ふたたび白衣を戦場の血で汚さない」なのです。

民主主義の否定
　もう一つ、私自身がすごく腹立たしく思っていることがあります。戦争法案を成立させたいがために大幅に会期延長した結果、廃案になるはずだった数々の悪法まで延命させられたことです。どれも国民は反対しているのに「選挙で信任されたから」とまったく聞こうとしない、民主主義を否定する姿勢に怒っています。
　国民を二重にも三重にも裏切るような戦争法案は、絶対に許してはなりません。
　若い世代やママをはじめ、全国で「戦争法案反対」と声をあげる人たちにとても励まされます。医労連の加盟組織の大会の帰り道、たった一人で「アベ政治を許さない」とプラカードを掲げて抗議する人がいました。「周りからどう思われようが、私は反対」という意思表示に、改めて身が引き締まりました。
　現場はあまりに忙しいこともあって、反対の声は広がってはいるものの、多くの医療・介護労働者はまだ戦争法案を身近に感じ切れていない実態があります。医師がおこなっていた医療行為の一部を看護師にゆだねる「特定行為」が秋から始まります。こうした自身に迫ることさえ知らない人が多いくらい忙しいので、無理もありません。また、「戦争に行かされるのは国立病院や日赤でしょ」と思っている人もいます。
　従軍看護師の服装と白衣を半分にした看護師の戦争反対の横断幕、号外やビラなどさまざまな形で目にふれ、考えてもらう機会にしてほしいと思います。

スト権確立して
　秋闘バッジも「戦争ＮＯ！　いのちが大事」という戦争法案に特化したものにしました。さらに統一ストライキ権確立項目で、戦争法案と憲法改悪阻止もかかげました。それほど強い気持ちでとりくまなければ廃案に追い込めません。
　加盟組織や医療・福祉関係団体などに呼びかけて、「医療・介護・福祉従事者は『戦争法案』に反対です」という意見広告運動もスタートしました。職場で話題にしていただくように、１人１００円以上のカンパを呼びかけています。
　国会前の抗議行動にはなかなか行けなくても、何かの形で意思表示したいとの思いを大切にしたい。集団的自衛権の行使容認を閣議決定し、戦争法案まで提出した安倍政権の悪事を決して忘れず必ず廃案にして、その先の改憲策動を止める力へ発展させる決意です。
( ２０１５年０８月２１日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

力を合わせ戦争法案廃案に／女性の行動さらに／婦団連が「つどい」開く

　日本婦人団体連合会（婦団連）は１８日、東京都内で「２０１５年戦争はごめん　女性のつどい」を開きました。各分野から１００人以上が参加。女性の力で戦争法案を廃案に追い込む決意を固めあいました。
　主催者あいさつに立った柴田真佐子会長は、「今、若者、子育て中の母親が立ち上がり、全国各地で女性のレッドアクションが広がっている」と強調。「戦争法案廃案への決意を新たに、安倍政権を追い詰めるため、さらにたたかいを前進させよう」と呼びかけました。
　九条の会事務局長の小森陽一・東京大学大学院教授が「戦後７０年と憲法｣と題して講演｡
　小森氏は、戦争法案反対の運動について、あらゆる勢力の共同の力が示されるとともに、個人が自分の意思で、新たな行動力と組織力を発揮して立ち上がっていると強調しました。
　「戦争法案廃案・安倍内閣退陣　８・３０国会１０万人　全国１００万人大行動」を「各団体の力を発揮し、それぞれの地域で共同を広げるなかで成功させ、戦争法案を必ず廃案に追い込もう」と訴えました。
　参加者から「駅前で宣伝を続けているなかで、世論の変化を実感している」など廃案に向けた取り組みなどが報告されました。
( ２０１５年０８月２０日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

仲代達矢さん戦争体験を語る／８・１５記念集会／佐賀

　戦争させない佐賀県１０００人委員会は１５日「戦後７０年８・１５記念集会」を佐賀市内で開き、約７００人が参加しました。
　役者が語る「戦争と平和」として俳優の仲代達矢氏が講演。「太平洋戦争で９歳のときに父を亡くしました。７０年間、平和でいられたことは幸せなことだが、キナ臭い時代になってきた。内閣総理大臣を含め、戦争を知らない世代が増えてきた」と自らの体験を交えて話しました。
　仲代氏の弟夫妻（仲代圭吾、美都両氏）がシャンソンを熱唱。集会の最後に戦争法案に反対する決議をあげました。
　医療系学校をめざしている２０代女性は「医療関係者が戦地に送られれば人を殺すために医療をすることになる」と不安を語りました。
　初めて参加した男性（２２）は「仲代達矢さんの戦争体験を聞いて恐ろしくなった。戦争させないために小さいことから行動していきたい」と述べました。
(２０１５年０８月１９日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

平和のための戦争展ひらく／滋賀・大津

　滋賀県大津市で１６、１７の両日、「戦争展―戦後７０年　平和のために」が開かれました。安倍政権が「戦争する国」づくりへひた走る中、かつての１５年戦争を問い直し、日本国憲法に沿って平和への歩みを進めていこうと、滋賀・九条の会や革新の会しが、県労連、憲法を守る滋賀共同センターなどの実行委員会が主催しました。
　訪れた人たちは、滋賀の人々が送られた戦場や県内の空襲被害、沖縄の辺野古新基地建設反対のたたかいを紹介したパネル、戦場の兵士から家族に送られたはがきなどに見入っていました。会社員の女性（３４）＝大津市＝は「戦争に至ったあの時代と、今がよく似ている気がします。国民の反対の声を押し切って戦争法案を強行すべきでない」と語りました。
(２０１５年０８月１９日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦争とスポーツ／野球：栄冠は君に輝く／下／生命の賛歌いつまでも

　１９４６年８月１５日、戦後最初の大会が始まりました。戦争によって中断を余儀なくされ、５年ぶりの復活でした。
　これに先立って、予選には大会最多の７４５校が参加。場所は西宮球場でした。この時、甲子園球場は占領米軍の娯楽施設として接収されたままでした。
　小倉中（現福岡県立小倉高校）は北九州代表となり、２回戦で東京高等師範附属中と対戦し、敗れました。この時、準優勝した京都二中（今大会出場の鳥羽高はその流れをくむ）は、第１回大会（１５年）の覇者でした。
　この２校も小倉中と同じく、野球用具を保管し、いち早く練習を再開していました。
　―（東京高等師範）附属中は、運動具店からボールやバットを大量に買い入れ、学校および学校近くの部員の自宅に分散して収納した。
　―京都二中は、たくさんのボールが無傷のままに終戦を迎えた。戦後、野球部の復活のとき、部長が「この日を信じて、大切に保管されてきた」と銀紙に包んだボールを見せてくれた（『野球と戦争』山室寛之著、『高校野球１００年史』森岡浩著）。

甲子園に戻る
　翌年の大会は甲子園球場に戻りました。連続出場した小倉中は勝ち進み、決勝で岐阜商業を６―３で破り、初の全国制覇を果たしました。
　福嶋一雄投手の変幻自在な投法がさえわたりました。
　「古本屋で偶然見つけた若林忠志（阪神タイガース）の『投球法』を学んだ。コントロールをいかにつけるか、打者の打ち気をどう外すか、打たせて取るにはどうするかを考え､練習に生かした｣
　福嶋投手の合理的で科学的な思考とその自在な投法は、戦後の自由な精神のもとで培われました。
　４８年４月に学制改革がありました。６・３・３制が採用され、これまでの中学校は高等学校に変わりました。
　春の選抜までは全国中等学校優勝野球大会でしたが、夏は名称を変え全国高等学校野球選手権大会となりました。
　大会は３０回を数え、新学制のスタートとも重なり、記念大会として盛り上がりました。
　選抜で準優勝した新制小倉高は、夏の連覇に挑みます。福岡県予選の６試合で１点しか献上しなかった実力は、甲子園でも存分に発揮されました。
　１回戦から準決勝までどこにも得点を与えず、決勝に臨みました。相手は桐蔭高（和歌山）。旧制の和歌山中で、戦前の第７回、８回大会で優勝していました。
　両投手の投げ合いになりましたが、小倉高は六回裏、満塁から死球で１点をもぎ取り、逃げ切りました。全試合完封勝利は、戦前の海草中（和歌山）の嶋清一投手に並ぶものでした。
　迫真のゲームが野球ファンを魅了し、新制高校野球を軌道に乗せました。
　連覇を果たした小倉高の原勝彦主将に深紅の大優勝旗が手渡されました。「８日間　預けただけの優勝旗」と原は詠みました。

新憲法が反映
　その時、「栄冠は君に輝く」が演奏されました。３０回大会を記念して公募し、５２００余の作品のなかから選ばれた大会歌でした。〝生命の祭典〟への熱情が応募数に集注しました。
　前年の４７年５月、新憲法が公布されました。前文に「主権が国民に存する」と宣し、基本的人権の尊重と恒久平和を根本原則としました。その精神が歌詞にも反映されていました。
　戦前の「大君」＝天皇の「君（くん）」から決別し、国民主権の「君（きみ）」を主人公に転換させたのでした。
　現在、小倉高のグラウンドの一隅に､｢ああ栄冠はわれに輝く」と刻した石碑があります。創立８０周年に、連覇を記念して大会歌のフレーズを模して建立されました。しかし、これを過去の記憶にとどめてはなりません。
　生命の尊厳と平和を願う歌として、「栄冠は君に輝く」はこれからの大会とともに歌い継がれてほしい。戦後７０年、高校野球１００年の節目に、その意味を深くかみしめつつ。
　（広畑成志）
　（この項おわり）
( ２０１５年０８月１９日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦争法案ノーいま言いたい／よっぽどの危機なんです／名古屋キリスト教協議会議長松浦剛牧師

　あまり政治的なことに口出ししない牧師が、このような欄に登場するのは、多くの人に「よっぽどの危機なんだ」と思っていただきたいからなんです。
　名古屋キリスト教協議会は、およそ１００あるプロテスタント教会のほかに、ＹＭＣＡや系列学校などの関連団体で構成され、立場の違いを尊重しています。私が最年長だということもあるのでしょう、１年前から議長をやっています。
　協議会は今まであまり声明文をださないできました。しかし、安倍政権が集団的自衛権行使容認を閣議決定し、「戦争できる国」へ動きを強めているのを見て、声をださざるをえない段階に達したと判断し、５月２１日付で議長・書記連名の「戦後７０年に際しての声明」を安倍首相に送付しました。

言葉の力に頼れ
　軍事力によって平和を実現しえないことは、世界の現実を見るなら明らかです。「積極的平和主義」というなら、軍事力や戦争協力によらず、力の論理によらず、平和を告げる言葉の力に頼り、信頼関係を築きあげていくべきでしょう。
　国と国とが武力をもって対峙（たいじ）する戦争の時代はもはや過ぎ去りつつあります。現在の課題は各地で続発する局地的な紛争やテロリズムと向き合うことです。差別、貧困、人権の蹂躙（じゅうりん）、地球環境といった諸課題を根本から掘り下げ、解決していく知恵が求められています。平和憲法をもつ日本だからこそ、世界に貴重な貢献を果たしうるのではないでしょうか。
　この声明は、７月の総会で承認していただきました。みなさんも同じ思いだったんでしょう｡｢大変勇気づけられた」とおっしゃる方もいました。

ぜひとも廃案に
　安保法制案が衆院を通りましたが、国民はまったく納得していないと思いますよ。
　各党のＴＶインタビューを見ていたら、共産党の志位委員長や社民党の吉田党首が強い口調で最大の危機感を表明し、必ず廃案にしようとの思いが伝わってきました。憲法９条を守るために、ぜひ野党は頑張ってほしいですね。
　最近、ふつうの市民が立ち上がって意思表示をされています。宗教者も声明を発表したり、街角に立ったりすれば、「そこまで異常な状態なんだ」と思ってもらえるのではないかと期待しています。ぜひとも廃案にしましょう。
　聞き手　今村一路
(２０１５年０８月１９日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

２０ 戦後７０年首相談話どうあるべきか／侵略戦争だったことは明確／恵泉女学園大学名誉教授内海愛子さん

謝罪し個人補償に踏み出せ
　安倍晋三首相が出そうとしている「戦後７０年談話」。植民地支配と侵略に反省とおわびを表明した「村山談話」の核心を引き継ぐのかどうか。国際法や現代史の学者ら７４人が、侵略戦争と植民地支配を「潔く認めよ」という声明を発表（７月１７日）しました。賛同者の内海愛子・恵泉女学園大学名誉教授（日本・アジア関係論）に聞きました。
　神田晴雄記者

　戦後７０年、植民地支配と侵略への「反省」と「謝罪」は、「安倍談話」に不可欠です。侵略の歴史を裁いた東京裁判の判決を受け入れて日本は国際社会に復帰したのですから。言葉だけの「反省」ではなく、「村山談話」がその後のアジア歴史資料センターの設立につながったように、具体的な「事業計画」が必要です。
　「安倍談話」には、個人補償を解決する仕組みを立ち上げることを期待したい。「決着済み」と繰り返さず、被害者が苦しんでいる現実を目の前にして、解決の道筋を見いだしてほしい。
　日本政府は中国、韓国人への個人補償には背を向けていますが、米英など連合国の捕虜に対しては賠償を支払っています。連合国にとって日本の捕虜虐待は許せない戦争犯罪と認識されており、ポツダム宣言にも「われらの捕虜を虐待した者を含むいっさいの戦争犯罪人を厳重に処罰すべし」（第１０条）と明記されています。
　戦争裁判でも捕虜虐待が厳しく裁かれ、サンフランシスコ平和条約でも１４カ国約２０万人の元捕虜に少額ですが賠償金を支払いました。日本の在外資産を処分した約５９億円です。
　先月は三菱マテリアルが企業として初めてアメリカ人捕虜に強制労働の謝罪をしました。なぜ、中国、韓国の被害者にはできないのでしょうか。
　中国、韓国はサンフランシスコ平和条約の署名国ではありません。その後の日華条約、日中共同声明では賠償は放棄されました。日韓条約では経済協力方式で有償無償５億㌦を支払いました。これで個人請求権がなくなったと日本は解釈し、被害者の補償要求を「決着済み」と拒んできました。しかし、韓国の司法は個人の請求権が残ると解釈し、賠償を求める徴用工への訴えを認めました。
　あいまいな謝罪と反省は被害者の心に届きません。はっきりと歴史事実をふまえて謝罪し、それを受けて補償を行うこと、その事実を記録し、伝えていくことが、東アジアの「和解」のために必要ではないでしょうか。

学者の声明「戦後７０年総理談話について」（抄録）

■「村山談話」を「全体として継承する」という意味を、具体的な言語表現で明らかにするよう要望する。
■日本が中国や東南アジア、真珠湾を攻撃し、諸国の国民を死に至らしめた戦争がこの上ない過誤であったことは、否定しようがない。台湾や朝鮮を植民地として統治したことは、紛れもない事実。歴史においてどの国も過ちを犯す。日本もこの過ちを潔く認めるべきだ。
■１９３１～４５年の戦争が日本による違法な侵略戦争だったことは、国際法上も歴史学上も国際的に評価が定着している。

声明の主な賛同者
三谷太一郎（東京大名誉教授　日本政治外交史）
入江　昭（ハーバード大名誉教授　アメリカ外交史）
緒方貞子（元国連難民高等弁務官　国際関係史）
原　彬久（東京国際大名誉教授　国際政治）
半藤一利（現代史家）
保坂正康（同）

村山談話（１９９５年８月１５日）（抄録）

　わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に多大の損害と苦痛を与えました。…この歴史の事実を謙虚に受け止め、改めて痛切な反省の意を表し、心からのおわびを表明します。
(２０１５年０８月１６日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

安倍談話に厳しい視線／中国政府「ごまかすべきでない」

村山談話〝引き継いだ印象なし〟／識者から〝失望、歴史に傍観的〟
　「失望」「誠意の欠如」。
　安倍晋三首相が１４日に発表した「戦後７０年談話」に内外から厳しい批判の声があがっています。中国政府は同日夜、張業遂・筆頭外務次官が木寺昌人駐中国大使を外務省に呼び「厳しい立場」を伝達する異例の対応。戦後５０年に談話を発表した村山富市元首相は同日、「安倍談話」が「村山談話」を引き継いでいる印象は「ない」と断言し、「植民地支配や侵略をしたことが大変悪かったと率直に謝る文になっていない」と批判しました。

自らの言葉で語らず
　批判の焦点は、首相が「侵略」「植民地支配」「痛切な反省」「おわび」などの言葉を、自らの言葉として語らず、主体を明確にしなかったことに向けられています。
　戦後５０年の「村山談話」と戦後６０年の「小泉談話」は、ともに「わが国は、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々にたいする多大の損害と苦痛を与えた」と明確に述べていました。「安倍談話」との違いが明瞭です。

「巧妙に避けようと」
　中国の華春瑩外務省副報道局長は、「日本はあの軍国主義侵略戦争の性質と責任に対してはっきりかつ明確な説明をおこない、被害国国民に真摯なおわびを行い、重大な原則的問題でごまかしをすべきでない」とコメントを発表。朴槿恵韓国大統領は１５日の演説で、「安倍談話」に触れ、「今後、日本政府は歴代内閣の歴史認識を継承すると公言したことを、一貫して、誠意ある行動で裏づけ、近隣諸国と国際社会の信頼を得なければならない」とくぎを刺しました。
　１５日付韓国各紙社説は、「村山談話の表現を使いつつも、誠意ある謝罪を巧妙に避けようとした」（朝鮮日報）などと論評。中国紙も「『村山談話』と比べて明らかに後退」（国営新華社、１５日配信の論評）と断じています。
　日本の民放各局が１４日夜の番組で指摘したのも、侵略や植民地支配を日本がやったこととしてとらえることも、これにたいする反省とおわびも語らない首相の姿勢でした。
　ＴＢＳ系「ＮＥＷＳ２３」では岸井成格キャスターが、「談話」が触れた「侵略」などのキーワードは、「主語をあえてぼかした」と批判。「日本だけが悪いのではないという自民党保守派の認識を全面に打ち出した印象が強い」と断じました。
　テレビ朝日系「報道ステーション」では、作家・評論家の保阪正康氏が「談話」について、「失望した」と明言。「全体として歴史の問題をとらえるときに、どこか傍観的で地に足が付いていない」と語りました。
　「朝日」１５日付社説は「それ（＝歴史認識）を私物化しようとした迷走の果てに、侵略の責任も、おわびの意思もあいまいな談話を出す体たらくである」と批判しました。
　（関連２・３面）
( ２０１５年０８月１６日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

インタビュー戦後７０年／ＩＯＣ名誉委員・日本サッカー協会最高顧問岡野俊一郎さん／スポーツは戦争と対極

敵でなく仲間できる平和活動
　戦後の日本スポーツ界で数々の重責を担い、世界との橋渡し役になってきた岡野俊一郎さん（８３）。戦後７０年に平和を願う気持ちが一段と強まっています。その思いは―。
　勝又秀人記者

　安保法制をめぐるいまの動きを見ていると、戦前の雰囲気と似てきていると感じます。その一つが、仮想敵国をつくることです。戦前の日本は米国、英国、ソ連を仮想敵国に見立てていました。
　私は１９３１年生まれです。子どもながらも当時の世相の影響を強く受けていました。小学生時代に読んだ冒険小説は、日本人が仮想敵国とたたかい、活躍するものばかり。架空の勇者、本郷義昭による軍事探偵シリーズは、多くの子どもたちの心をとらえ、愛国心を燃え立たせました。どれも相手は米英ソでした。
　中学２年生のとき、富士山のふもとにある演習場で、米軍に対して自爆する訓練を受けました。両腕に爆雷を持ってたこつぼに身を潜め、戦車がきたらその下に飛び込むというものでした。「一人十殺｣が目標｡この訓練が終わった１０日後に、敗戦の日を迎えました。
　仮想敵国を持つことは悲しいことです。なぜなら、相手も日本を仮想敵国にするからです。

異文化尊重して
　スポーツは戦争と対極にある「ユニバーサル・カルチャー」（共通文化）です。会った瞬間から一緒にプレーができます。「敵」でなく「仲間」ができる平和活動なのです。
　スポーツのおかげで世界を回りましたが、痛感したのは日本の孤立でした。日本はアジアの先進国として多くの点で尊敬されている半面、友だちがいません。
　世界には２００を超える国・地域があります。その多くが言語、宗教、経済的な問題でグループを形成し、助け合っています。
　欧州にはＥＵがあり、アジアにはＡＳＥＡＮ（東南アジア諸国連合）などがあります。アフリカ大陸やアメリカ大陸も複雑ですが、言語や宗教などによって、支え合うグループが大別されます。
　残念ながら日本には、どこにも友だちがいません。一番近くて、文化的にも関係が深い韓国と中国は、日本を友人と考えていません。
　「のど元過ぎれば熱さを忘れる」のことわざの通り、日本人は過去を水に流して忘れようとする傾向にありますが、不幸な過去を心に刻み込む人たちもいるのです。
　それは国や民族によって固有の思考方法があるからです。この事実を理解し尊重することが、いかに重要かを意味しているのではないでしょうか。

今、９条堅持するとき

　戦争が生むのは憎しみと悲しみだけです。勝った方も負けた方も傷つきます。殺されるのは個人ですが、その周りには多くの関係者がいて、怒りと悲しみを増幅させるのです。
　憲法９条は、その反省から「日本は絶対に戦争しない」と誓っています。それを解釈であれ、変えるのは大問題です。安保法制のような解釈改憲のつけは、私たちの世代でなく､若者や子ども､孫の代にふりかかります。
　原発もそうです。原発は大量の核のごみをつくります。その放射能のなかには、半分に減るまでに何万年もかかるものもあります。これまた問題を孫子の代に先送りしてしまっています。
　戦後７０年。世界の平和と日本の将来をどう考えるのかが、すべての国民に問われています。とくに戦前のある時期と似通ういま、平和憲法を堅持すべきだと、強く感じています。
おかの・しゅんいちろう＝１９３１年８月２８日、東京都生まれ。５０年、東大サッカー部に入部。６４年東京五輪と６８年メキシコ五輪で日本代表コーチをつとめ、７０年に代表監督就任。８９年日本オリンピック委員会（ＪＯＣ）専務理事。９０年に国際オリンピック委員会（ＩＯＣ）委員。９８年に日本サッカー協会会長に。現在は　ＩＯＣ名誉委員と日本サッカー協会最高顧問
(２０１５年０８月１６日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

潮流

　果てしなくひろがる大平原。地平線を真っ赤に染める夕日。終戦の夏、ソ連との国境に近い農場に勤労動員として送られた１５歳の中学生たち。彼らには過酷な道のりが待ち受けていました▼８月９日、ソ連軍侵攻。置き去りにされた１２０人の日本人中学生は爆撃の中を必死に逃げます。荒野をさまよい、捕虜となり栄養失調の体で放り出され、餓死寸前でたどりついた寒村。そこで中国人に救われます▼侵略者の憎い日本人を助ける必要はないという村人を説得する村長。彼は「中国の村人が日本人を助けたことによって、これからの世代にどんな新しい歴史が生まれるのか楽しみにしている」と。公開中の映画「ソ満国境　１５歳の夏」です▼映画では原発事故で避難生活を強いられる福島の中学生が中国東北部を訪ね、当時のことを取材します。松島哲也監督は本紙日曜版のインタビューに「テーマの一つは日中友好」と答えています▼みずからの体験が原作になった田原和夫さんは、人として語り継ぐべきことがあるといいます。国の犠牲になった人びとや国境をこえた友情と絆。そこには戦争への痛切な反省と和解の道筋が示されています▼戦後７０年の安倍談話。主体のないキーワードをまぶすだけで、戦争の過ちや侵略した国々へのおわびを自身の言葉で語りませんでした。「私たちの子や孫、その先の世代の子どもたちに謝罪を続ける宿命を背負わせてはならない」。口にするあなたこそが、和解の壁になっていることがまだ分からぬか。
( ２０１５年０８月１６日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

シリーズ戦後７０年を考える／８・１５侵略戦争の真実／あの時、日本は何をしたのか

　日本がひきおこしたアジア太平洋戦争の終結（１９４５年）から今年は７０年。まもなく終戦の日（８月１５日）を迎えます。あの戦争はどういう戦争だったのか―。朝鮮半島から女子勤労挺身（ていしん）隊として日本に強制動員された韓国の女性と、中国東北部に進駐した元日本兵の証言からみてみました。
　本吉真希記者

１４歳で日本に強制動員された韓国の元女子勤労挺身隊梁錦徳さん／殴られ、罵倒されて給料も払われず…
　１９２９年、日本の植民地支配下の朝鮮半島で生まれた梁錦徳（ヤン・クムドク）さん（８５）。国民学校６年生だった４４年６月、女子勤労挺身隊として日本に強制動員されました。
　日本の政府と企業は戦争遂行による労働力不足を補うため、朝鮮や中国の男性を日本に強制連行しました。
　戦争末期には、約４千人ともいわれる朝鮮の１０代少女をだまし、日本の軍需工場で働かせました。当時１４歳の梁さんもその一人でした。
　「挺身隊として日本で働けば、金もたくさん稼げるし、女学校にも入れる」
　国民学校の日本人校長と憲兵は甘言で生徒たちをだまし、梁さんら１０人を指名しました。後日、両親が反対していることを告げると、校長は「行かなければ警察がおまえの父親を捕まえる」と脅しました。
　連れて行かれた先は、三菱重工業名古屋航空機製作所の道徳工場（名古屋市）でした。厳しい監視下で巨大な飛行機部品を塗装しました。ペンキがよく目に入り、そのためいまでも目が痛みます。
　一番つらかったのは、トイレの列に並んでいたときにあとから来た日本人に「朝鮮人汚い、後ろに行け」とののしられたことです。我慢できず失禁し、作業に戻るのが遅れて班長に頬を殴られました。
　４４年１２月の東南海地震では同郷の６人を失いました。夜中の空襲では幾度も恐怖のなか必死で走りました。
　日本が敗戦した４５年１０月、朝鮮に帰国しました。給料は未払いで、韓国社会からは日本軍「慰安婦」と誤解されました。挺身隊だったことを隠して結婚した夫には、そのことがばれて「汚れた女」と罵倒されました。
　「周囲の冷たい視線を恐れながら、生きてきた。心にくぎを刺されたような痛みだ」と声を詰まらせます。
　名古屋では８６年から市民らが、挺身隊の被害者を捜し出す活動を始めます。その後「名古屋三菱・朝鮮女子勤労挺身隊訴訟を支援する会」を結成。共同代表の高橋信さん（７２）はいいます｡｢国と三菱重工がハルモニ（おばあさん）の青春と人生を奪い、戦後、謝罪も賠償もせずに放置してきた事実を許せない」
　梁さんは９９年、弁護士と市民の支援を受け日本政府と三菱重工業に謝罪と賠償を求め、名古屋地裁に提訴しましたが、敗訴。高裁も日韓請求権協定（６５年）で〝個人の請求権は裁判上訴えることはできない〟と、原告７人の請求を棄却（２００７年）しました。
　最高裁では上告棄却で敗訴が確定（０８年）しましたが、高裁判決が認めた▽国と企業の強制連行・強制労働の事実▽両者の不法行為責任―は確定しました。
　「一番つらくて悔しいのは安倍（首相）が真実を隠すことだ」と怒りの涙を流します。
　韓国の大法院（最高裁）は１２年、「請求権協定で個人の請求権は消滅していない」という判断を初めて出しました。これを受け梁さんら５人は韓国で提訴。地方法院（地裁）に続き、今年６月の高等法院（高裁）でも勝訴しました。
　「高橋さんたちが自分の姉妹のように被害者を捜し出してくれた。そこからすべてが始まった。本当に感謝です」と梁さん。しかし三菱重工業が大法院に上告し、現在、係争中です。

中国で〝三光作戦〟に参加した元日本軍兵士西尾克己さん／罪のない農民撃ち殺し集落焼き払った
　「私はケシの植えつけ、アヘンの買いつけに没頭し、地元住民の怨嗟（えんさ）の的となった日本兵でした」
　１９４３年３月、当時２３歳だった西尾克己さん（９５）＝岐阜県＝は特務機関の要員に選ばれ、国際条約で禁じられていた麻薬の一種であるアヘンの製造に従事しました。
　日本は国策として「満州国」（中国東北部）の農村部でアヘンを生産させ、都市部で販売。中国人に吸引させ、収益を占領地支配の財政や軍事費にあてました。
　もともと西尾さんは１８歳で満蒙開拓青少年義勇軍に加わり、農民として生きていこうと中国へ渡りました。３年後の４１年、現地で召集され、満州第２独立守備歩兵第７大隊に所属しました。
　戦線の拡大で部隊が河北省に南下する行軍中、八路軍（中国共産党軍）の情報を聞き出そうと罪のない農民を撃ち殺しました。「農民じゃない。八路軍の手先だ」と自分を納得させました。農民として生きるはずが、中国で加害行為を重ねることになったのです。
　戦後、シベリアに捕虜として５年、中国に戦犯として６年抑留され、５６年に帰国しました。３６歳でした。
　中国の元戦犯らで結成した「中国帰還者連絡会」に参加し、加害の事実を証言してきました。それでも語れない事実があります。〝殺し尽くし、焼き尽くし、奪い尽くす〟という日本軍の「三光作戦」です。後世に残そうと２００４年に書いた記録によると―。
　西尾さんは４２年３月、熱河省で八路軍が集落に隠した兵器や、住民の食糧を略奪。農作物の栽培まで妨害しました。
　日本軍の命令文書に「放火」の文字はありませんでしたが、兵士らは上官の命令で目にとまる集落を焼き払い、住民の嘆願も聞かず火を放ちました。「人間としての感覚」が消えていきました。
　八路軍と現地住民の強いつながりを断つため、民衆を追い出し、居住も耕作も認めない「無住地帯」をつくりました。西尾さんの中隊はある地域に５度、侵攻。「地区内に居住する者は射殺すべし」と命令を受けました。
　他国民の土地を奪い、人をあやめた戦争犯罪。その苦しみを戦後、ずっと背負って生きてきました。
　「本当にむごいことをした。過去を検証し、正しい歴史観を持つことが戦争を遠ざける。加害から目をそらしてはならない」

日本軍の謀略で始まった
　日本軍は１９３１年、謀略により「満州事変」を起こし、３２年にかいらい国家「満州国」を建国。３７年には北京郊外での日中両軍の衝突（盧溝橋事件）を機に大軍を派兵。中国への全面戦争を開始しました。
　戦略資源の獲得のため、４１年にマレー半島、ハワイ真珠湾に奇襲攻撃を行い、戦火はアジア・太平洋全域に広がりました。
　日本軍は各地で虐殺・暴行・略奪を繰り返し、アジアの人々など２０００万人以上の命が奪われました。
(２０１５年０８月１６日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

歌手元ちとせさん／新アルバム「平和元年」／原爆で影になった女の子／みんなの心の引き出しに

　戦後７０年の今年、歌手の元（はじめ）ちとせさんがカバーアルバム「平和元年」を発売しました。戦争による犠牲を「『忘れない～繰り返さない』　平和への思いを込めて歌い継ぐ」と、平和を願う歌の数々を元さん一流のボーカルで歌いあげています。「平和元年」への思いを聞きました。
　小川浩記者

　「平和元年」のタイトルには、自身の名字である「元」を使い、「このアルバムから平和を考えるスタートになったら」という願いを込めています。
　「戦争体験を語り継いでくれる方が少なくなっているので、少しでも歌でまとまった形にできたら、と思ったんです」
　題字は、女優の吉永小百合さんが書きました。１９８６年から続く、吉永さんの原爆詩の朗読会に、坂本龍一さんとともに戦後６０年、６５年の節目に出演して歌った縁があります。
　「何十年も平和を訴え続けてきた方なので、ご一緒できてとてもうれしく思っています」
　今回のアルバムは、全１２曲。ベトナム戦争中の６７年に発表した、ピート・シーガー作詞・作曲の「腰まで泥まみれ」（日本語詞・中川五郎）。太平洋戦争前夜の若者の心情を描いた、あがた森魚（もりお）作詞・作曲の「最后のダンスステップ」。谷川俊太郎作詞、武満徹作曲「死んだ男の残したものは」などが収録されています。

被爆者の叫び
　その中で、元さんが特に思い入れがある楽曲は、「死んだ女の子」です。原爆による犠牲を忘れないでほしい、平和な世界をと願い続ける「死んだ女の子」からの叫びのような歌です。
　トルコの抵抗詩人ナジム・ヒクメット作詞のこの歌は、ビキニ環礁への水爆実験への怒りを契機に生まれ、「原爆を許すまじ」を作曲した木下航二さん作曲のものが、うたごえ運動などで歌い継がれてきました。
　戦後６０年の２００５年、指揮者の外山雄三さんが作曲したものに坂本龍一さんが編曲。「坂本龍一と元ちとせのコラボレーション」としてニューヨークでレコーディング、発表されました。同年８月６日、元さんは広島の原爆ドーム前で「死んだ女の子｣を歌い､テレビで放送されました。
　元さんのメジャーデビューは０２年。「死んだ女の子」との出会いは、デビュー前です。「第一印象は、なんで怖いタイトルなんだろう、と。歌詞の持っている強さ、怖さをどう表現すればいいか、まだ私の中に生まれていませんでした」

よみがえった
　気持ちが熟したのは、０２年夏が過ぎたころ。イベント出演で初めて広島の原爆資料館に行ったときでした。
　「熱線によって石の階段に人の影が焼き付いているのを見ました。『死んだ女の子』がよみがえってきて、きちんと歌えるようになりたいって、その場所で思いました」
　２３歳だった元さん。ガレキの中をさまよう被爆者を再現した人形や、ボロボロになった服の展示を目の当たりにします。
　「衝撃を受けました。ぜんぜん知らずに生きてきた自分が恥ずかしいと思いました」
　「原爆ドームを見た時も、経験された方々があれを残し続けてきたという意味が、どれだけ大きいかということを思いました。遺族はつらかったと思うんですけど、二度と原爆を経験してほしくないという、みんなの強い思いが、何十年も伝えてきてくれたんだなあと思いました」
　元さんの歌う「死んだ女の子」は、「忘れんなよ～」という天から降ってくるような声と共に、イントロが始まります。
　「歌詞にある『炎がのんだの　あたしの髪の毛を　あたしの両手を…』といった言葉は、強く聞こえると思います。でも、それぐらい心にしみてほしい。人の心の引き出しに強く残してほしい」
　戦後７０年の間には、戦争放棄をうたう憲法９条を骨抜きにしようという動きが常にありました。自身にとって憲法９条とは―。
　「戦後から今日まで、戦争しないで私たちを守ってきてくれた先人たちの気持ちは、無駄にできないと思います。たくさんの人たちが平和を願っているわけですから、それをきちんと受けとめてほしい」

娘にも届いた
　２人の子どもの母親。故郷、鹿児島県の奄美大島で暮らしながら歌手活動を続けています。今回のアルバムのテーマには、母親だからこその思いが強く込められています。
　「娘が生まれてすぐくらいに、『死んだ女の子』を坂本龍一さんとレコーディングしました。その彼女が、小学校３年生のある日、夏休みの作文に『戦争は嫌だ』という内容を書いてくれました。歌のお守りは、届くものなんだなあって、自信を彼女からもらいました。少しずつでも、伝わっていくという希望があるんだなあって」

はじめ　ちとせ＝１９７９年１月、鹿児島県奄美大島生まれ。母親のすすめで三味線を習う。自ら島唄を習い始める。高校３年で「奄美民謡大賞」の「民謡大賞」を史上最年少で受賞。２００２年２月、メジャーデビューシングル「ワダツミの木」が大ヒット。今年は、９月３０日、名古屋ブルーノート。１０月１日、ビルボードライブ大阪。１０月９日、ビルボードライブ東京。いずれもワンマンライブを予定
(２０１５年０８月１６日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

にちよう特番／戦後７０年８・１５／誓う「戦争しない」／東京／徳島／静岡／和歌山／福島／石川

　８月１５日の正午。サイレンが響き、「二度と戦争はしない」と誓う人々の姿がありました。戦後７０年。戦争法案に反対する国民のたたかいが広がるなかでの「８・１５」。列島各地の表情を追いました。

【学ぶ】／東京
　東京都港区で「平和を考える集い」が開かれました。「港区平和青年団」の７人の高校生が、戦争体験の聞き取りなどで得た平和への思い、戦争の悲惨さを報告しました。
　千保木蘭さん（３年）は「市民をむしばむ戦争は絶対に繰り返してはいけない。平和を未来につなげたい」と語りました。佐藤宝さん（２年）は「戦争が当たり前の時代があったと知った。戦争に突き進んだ背景を学びたい｣｡秋山裕香さん（１年）は長崎の被爆者の話を聞き、「胸がえぐられるほど心が痛んだ。原爆の悲惨さを伝えていく」と話しました。

【踊る】／徳島
　徳島市の眉山山頂のパゴダ平和記念塔前では、徳島市阿波おどり振興協会所属の「無双連」が、正午に合わせて戦没者を追悼する阿波おどりを披露しました。
　太平洋戦争で戦死した２万９７４９人の徳島県人のうち、最も多い６２１６人がミャンマー（旧ビルマ）で亡くなりました。記念塔は、県ビルマ会が１９５８年に戦没者を悼み、恒久平和を願うシンボルとして建てたもの。
　阿波おどりは、日中戦争が始まった１９３７年から８年間、中止になりました。

【刻む】／静岡
　思想信条を超え子々孫々の平和を願って作られた「９条の碑」が静岡県藤枝市で、約９０人を前にお披露目されました。昨年６月から募金を集めました。高さ約３㍍。憲法９条が刻まれています。
　静岡「９条の碑」建設の会代表の清水泰さん(７１)＝前焼津市長＝は、「安倍首相のもとで９条が壊され、国民を戦争に駆り出そうとしている。私たちは、９条を大切にすることが必要です」とあいさつ。建立場所が未定のため、制作した杉村孝さん(７７)の工房に仮設されています。

【鳴る】／和歌山
　和歌山ユネスコ協会は、和歌山市の岡山時鐘堂のほか市内３６寺で「平和の鐘｣を鳴らしました｡
　孫といっしょに鐘をついた芝本睦雄さん(７０)は「かわいい孫が戦争にいくことのないように」と願い、県平和委員会の松田健司さん(６３)は「いま戦前に似た世の中だといわれています。なんとしても平和を」と決意を込めました。前市長の大橋建一さん(６９)は「若い人たちに戦争の悲惨を伝えなければと思います」と話しました。

【知る】／福島
　太平洋戦争当時の写真、福島市渡利地区に投下された模擬原爆の実物大模型などを展示した「２０１５ふくしま平和のための戦争展」（～１６日、実行委員会主催）が市内で開かれています。
　高校１年生の大内佑哉さん(１６)は「授業では分からない福島のことを初めて知りました」と話していました。
　実行委員会事務局長の菅野家弘さんは、「参院で審議されている安保関連法案反対に寄与すれば幸いです」と多くの来場を願っています。

【立つ】／石川
　石川県河北郡内灘町では「うちなだ・戦争ほうきの会」が色とりどりのほうきを手に「戦争放棄」を訴えました。７月から週２回、地元で交通量の多い交差点を選んで宣伝しています。この日、ドライバーから「おれも同じだ」との大声援も。
　同地では、１９５０年に始まった朝鮮戦争の際、「金は１年、土地は万年」のスローガンをかかげて在日米軍の試射場接収に反対する「内灘闘争」が巻き起こりました。戦後の基地反対運動のさきがけとして知られます。
( ２０１５年０８月１６日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦後７０年／戦争を考える本／その１

　戦後７０年の今年、戦争を考える本が相次いで刊行されています。歴史、文学などさまざまなテーマで戦争とは何かを問いかけています。

地域のなかの軍隊８　日本の軍隊を知る　基礎知識編／荒川章二、原田敬一ほか編／多様な視角の素材提供
　本書は「多様な視角から地域史のなかにおける軍隊のありようを浮き彫りに」する狙いで、「北海道・東北」から「九州・沖縄」「植民地」と続けて刊行されているシリーズの第８巻です。「軍隊という制度」「軍人のありかた」「軍隊での生活」の三つに分けて、明治時代から敗戦までの日本の軍隊の実像に豊富なデータをもとに迫っています。
　徴兵制の実態に迫った項では、徴兵拒否の事例が全国で一貫して続き、「警察署や市町村役場が、軍の指導のもと、彼らの行方をどこまでも厳しく捜索、追求した姿」をも明らかにしています。「軍事郵便」について記した項も興味深く、現代の視点で軍隊を考えるための素材が提供されています。

戦後７０年・残される課題　未解決の戦後補償Ⅱ／中山武敏、松岡肇、有光健ほか著／膨大な被害放置の異常
　日本軍「慰安婦」や強制連行・強制労働などの被害者が日本の政府や企業を相手に、謝罪と賠償を求める訴訟が９０年代以降相次ぎました。本書は国内外の被害者が訴える戦後補償裁判の経過や問題点を明らかにします。
　海外の被害者には、訴訟以前に国が締結した条約や協定を盾に日本政府は補償を拒否。空襲や沖縄・南洋諸島の地上戦に巻き込まれた日本人民間被害者には、〝戦争では国民が等しく被害を受けるのだから我慢すべきである〟とする「受忍論」を盾に背を向けます。
　膨大な被害を放置したまま、新たな被害を生む戦争法の成立をねらう安倍政権の異常さがいっそう浮き彫りになります。

ニュルンベルク裁判／アンネッテ・ヴァインケ著、板橋拓己訳／戦争指導者裁いた法廷
　第２次大戦中のナチ・ドイツによる戦争犯罪を裁いたニュルンベルク裁判は、それまでの戦争で問われなかった政府・軍などの指導者の責任を追及しました。「平和に対する罪」「人道に対する罪」など新しい罪の規定が盛り込まれ、ドイツと軍事同盟を結んでアジア太平洋諸国を侵略した日本を裁く東京裁判にも適用されました。
　本書は、主要犯罪人２４人を裁いた国際軍事法廷だけでなく、人体実験をした医師、強制労働や外国資産略奪に関わった産業界・金融界の代表者らを裁く１２の継続裁判について叙述します。国連のジェノサイド条約や国際刑事裁判所の設置など、ニュルンベルク裁判が戦後の国際社会に与えた影響にも触れます。

戦争と平和　〈報道写真〉が伝えたかった日本／白山眞理、小原真史著／戦争に利用された写真
　１９３０年代、ドイツ語のルポルタージュ・フォトを訳した〈報道写真〉という言葉が生まれ、組み写真を多用した企画などで、社会に大きな影響力を及ぼすようになります。この時代から戦後の５０年代まで、当時のグラフ誌などに掲載された〈報道写真〉と写真家たちの軌跡を写真と資料で追います。
　３４年創刊の民間対外文化宣伝グラフ誌『ＮＩＰＰＯＮ』には女優・原節子などの写真が掲載されました。同年、政府外郭団体の国際文化振興会が創設され、海外向け出版物のために名取洋之助、木村伊兵衛、土門拳らの写真が取り上げられました。戦時体制のなか戦争に利用される〈報道写真〉の姿を明らかにします。

記憶と認識の中のアジア・太平洋戦争／成田龍一、吉田裕編／「戦争像」「和解」考える
　安倍首相「戦後７０年談話」が政治問題化しているように、日本の侵略と植民地支配をめぐる歴史認識が問い直され、せめぎあっています。戦争体験者がいなくなり、体験者に直接話を聞いた世代も減る中で、どう「戦争像」を引き継ぎ、戦争責任を果たし、｢和解｣していくか―歴史家の９本の論文を収めます。
　対外的には東京裁判判決を受諾し「必要最小限の戦争責任」を認めて米国の同盟者となる一方、国内では戦争責任を事実上否定する二重基準を指摘（吉田）。中国・南北朝鮮を排除したサンフランシスコ講和条約と「冷戦」体制が、日本が戦争責任を曖昧にし植民地支配の清算を先送りするのを可能にした（内海愛子など）構造が浮かびます。

「北支」占領　その実相の断片／田宮昌子著、加藤修弘解題／兵士遺品からみる占領
　日本軍の中国侵略が泥沼化していた１９４０年代、同じ旅団に配属され中国の山西省盂県を中心とした作戦に従軍した３人の三重県人の遺品と住民の証言などから、日本軍の占領の実相に迫ります。
　その一人、著者の父方の伯父にあたる田宮圭川は４１年末に機関銃隊小隊長として配属され、後に沖縄に派遣されて戦死します。沖縄に向かう際に生家に発送した写真アルバムは、日本軍占領下の｢日常｣を明かします。
　現地の風物や自身を記録した写真は誇らしげで日本軍の苛烈な作戦や過酷な支配への疑問はみえません。本書は日本軍による住民の被害と対比させながらそれと隔たった当時の従軍兵士の意識を明らかにし、戦争をする社会の姿を映し出します。
( ２０１５年０８月１６日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦後７０年／戦争を考える本／その２

せんそうしない／ぶん・たにかわしゅんたろう、え・えがしらみちこ／おとなの責任鋭く問う
　この絵本を手にする人に、表紙に描かれた少年と少女のまなざしがまっすぐに向かってきます。
　その帯には、本文には出てこない次の詩が記されています。〈ちきゅうに　いきる／いきものの　なかで／／せんそうを／はじめるのは／にんげんだけ／／それも　おとなだけ〉
　戦争する国づくりが進められようとしている今、おとなの責任が鋭く問われる気がしてきます。
　淡彩で明るい絵。〈すみれと　ひまわり　せんそうしない〉〈ひとが　ひとに　ころされる／しぬより　さきに　ころされる〉と全文ひらがなの選び抜いた言葉による詩。平明さを突き抜けて思索へといざなわれます。

朝顔の日／高橋弘希著／銃後の悲哀、静かな筆致
　日米開戦の１９４１年、青森の山深いサナトリウムで療養する肺結核の妻と、足しげく見舞う凜太の日々を静かな筆致でつづる小説です。治療薬もなく、徐々にむしばまれていく妻の命をいとおしむように見つめる凜太もまた、いつ召集令状が届くかわからない身であり、中国戦線に従軍していた友人は戦死します。
　たちこめる戦争の暗い影の中にきらりと光る瞬間をちりばめ、生の喜びを実感させます。凜太のおみやげの赤と青のガラスのコップを「朝顔が咲いたみたい」と言う妻の言葉が、奪われていく暮らしの幸せを象徴します｡デビュー作『指の骨』で南方戦線の飢餓と傷病に苦しむ日本兵を描いた著者が、銃後の悲哀に迫った２作目です。

原爆孤児　「しあわせのうた」が聞える／平井美津子著／孤児支えた運動、丹念に
　原爆のむごさを描いた絵本『おこりじぞう』で知られ、１５年前に死去した作家の山口勇子は、自身が被爆者でした。彼女が中心になって、原爆で親を失った子どもに月々の養育費と手紙を届ける「精神養子運動」が行われました。１９５２年から６４年のことです。
　本書は、原爆孤児の悲惨な実態と山口らの運動、思いを丹念に取材した記録です。
　孤児を腹の底から笑わせたいという願いを込めた献身的活動や「精神親」からの愛のこもった手紙に支えられ、笑わなかった孤児たちは前を向いていきます。成長した孤児の中からは体験の語り部や平和運動に尽力する人も現れます。「再び原爆孤児をつくるまい」と訴えます。

あんずの木の下で／小手鞠るい著／障害児の疎開に光当て
　戦時中、障害がある子どもは、「ごくつぶし」「非国民」と呼ばれ、学童疎開の対象外とされました。
　１９３２年に日本で初めて設立された肢体不自由児の小学校、光明学校（現・東京都立光明特別支援学校）の校長は、太平洋戦争末期の４５年５月、５０人以上の障害児を長野の温泉町に疎開させました。本書はその実録です。
　疎開は約４年間に及びました。終戦後も校舎や寄宿舎の再建が後回しになったからです。そんな状況でも子どもたちは美しい自然に触れ、生きる希望を取り戻します。
　差別や偏見の多かった時代に、温かく迎え入れた人々への感謝をつづる生徒の詩が心を打ちます。
( ２０１５年０８月１６日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦争とスポーツ／野球：栄冠は君に輝く／上／解放された球魂の響き

　高校野球１００年、戦後７０年の節目の夏。連日、球音が響き、歓声がこだましています。戦後すぐの大会で優勝するなど、古豪と呼ばれる福岡県立小倉高校。私の母校でもある同校の戦前戦後の足跡に光を当ててみたいと思います。
　戦後の中等野球の復活は素早いものでした。
　終戦翌日の１９４５年８月１６日、後に日本高等学校野球連盟会長となる佐伯達夫氏は、大阪朝日新聞社を訪ねました。
　「（敗戦の大混乱のもとで）青少年をそんな迷路に追い込んではならない。健全な身体にこそ、健全な精神は宿るというが、それには何よりも野球だ。…青少年に光明を与えるため、一日も早く中等学校野球大会を再開してほしい」（『佐伯達夫自伝』）
　同社は当初、世情の混乱に再開をためらったものの、秋に実施した中学野球の調査を見て驚きました。各地で野球部が復活していたからです。
　その一つに、小倉中（旧制）がありました。
　戦時中、食糧事情の悪化から、グラウンドはサツマイモ畑になっていました。同年１１月、占領米軍がやってきて、そこを「将兵の厚生活動に使用する」とブルドーザーでならしていきました。
　その様子を教室の窓から眺めていたのは、のちに同校野球部のエースとして活躍する福嶋一雄さん（８５）でした。
　「まるで戦車のような巨大なブルドーザーだった。広い敷地がわずか１日でさら地になった。こんな国と戦争をやったのか。勝てるわけがない」

後輩達のため
　しかし、米軍は整地したグラウンドを使わず、幸運にも学校に戻されました。
　さらに、銃器庫から野球の道具が出てきます。占領軍の命令で、教練や軍事演習に使用した三八式銃などを撤去。その奥からボール３ダースとバット数本、キャッチャーミット、マスクなどが見つかりました。
　４２年春、小倉中野球部は「戦局悪化」を理由に対外試合をやめていました。勤労動員で授業閉鎖が続き、４４年には廃部になっていました。
　「…後輩達のため軍の目を盗み、愛宕山に掘られた防空壕に密かにバットやボールを隠蔽（いんぺい）したと聞いた」。『倉高野球　１００年の軌跡』にはこう記されています。
　手に持つ銃剣がバットに替わる―。さっそく野球部の勧誘が始まり、練習が始まりました。ほとんどが三角ベースの野球しかやったことがなかったものの、裸足で、素手で、喜々としてボールを追い、日没までバットを振りました。
　捕手で２年後、主将になる原勝彦さん（８５）が述懐します。
　「丸いキャッチャーミットとマスクが残っていた。先輩の思いが、ありがたかった。飯もまともに食えず、弁当も持たず、空腹を抱えても、夢中で練習をした。戦争で野球ができなかった先輩の分も…」
　こうした例が、松江中や山形中など、全国各地にありました。なかには配属将校に見つからないようにと、学校長自らが指示して、野球道具を奉安殿（天皇の真影を安置している堂）などに隠すケースなどもあったといいます。
　イモ畑のグラウンドも次々と〝解放〟されました。これを見た朝日新聞社は４６年１月２１日、「夏に大会を復活する」との社告を出しました。

終戦１年後に
　新学期を迎えると北から南から地方予選が始まりました。そして終戦から１年、西宮球場で開かれた復活大会に球音が戻り、万余の観衆が歓呼の声をあげました。
　さらに２年後、大会の歌「栄冠は君に輝く」が発表されました。
　「♪雲は湧き　光あふれて　天高く　純白の球　今日ぞ飛ぶ　若人よ　いざ　まなじりは歓呼に応え　いさぎよし　ほほえむ希望　ああ　栄冠は君に輝く」
　ここには、解放され燃え立つような〝球魂〟の響きがあります。
　（広畑成志）
　（つづく）
( ２０１５年０８月１６日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

志位さん「戦争のない世界めざして」／ヤフー「戦後７０年企画１００年後のあなたへの平和のメッセージ」

　「Ｙａｈｏｏ（ヤフー）」の「戦後７０年企画　１００年後のあなたへの平和のメッセージ」で日本共産党の志位和夫委員長のメッセージがインターネットに掲載されています。メッセージを紹介します。

　日本共産党の志位和夫です。
　１００年後の日本へのメッセージということですが、１００年前の世界はどんな世界だったのかということを考えてみますと、ちょうど第１次世界大戦のさなかでした。
　この時代には、戦争は一般的に国家の合法的な権利とみなされていて、違法なものではありませんでした。いわば切り取り勝手の、戦国時代のような世界だったのです。
　それが２回の世界大戦の惨禍を経て、戦争の違法化がずっと進んできました。１９２８年のパリ不戦条約、そして１９４５年の国連憲章。戦争は違法なものとなり、戦争をしてはいけないということが人類のルールとなりました。
　ですから、１００年という単位をとって考えますと、平和の方向に向かって世界は大きく動いたということになります。
　そして、この戦争の違法化という流れの中で、日本国憲法第９条というのは、戦争放棄とともに、一切の戦力を持たないということを決めたという点で、世界で最も進んだ、私は、世界に誇る宝だと考えております。
　次の１００年ということを考えた場合に、戦争はたしかに違法なものとなりましたが、世界から戦争がなくなっているわけではありません。
　現実には、まだ戦争はたくさん起こります｡ですから次の１００年は、この地球上から現実に戦争をなくす１００年にしていきたい。「戦争のない世界」への１００年にしていきたいと思います。日本国憲法第９条というのは、その一番の羅針盤になるのではないでしょうか。
　第２次世界大戦後、７０年の年です。自衛隊がつくられてから半世紀がたちました。しかし、日本の自衛隊は一人の外国人も殺さず、一人の戦死者も出していません。憲法９条の偉大な力が働いています。
　この憲法９条は、未来にわたって守り抜き、そして、憲法９条の理想が全世界のものになる時代をつくりたいと思います。そのために力を合わせていこうじゃありませんか。
( ２０１５年０８月１６日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦後７０年談話・戦争法案／小池氏が批判／安倍政権の反省ない／歴史的事実にも反する／テレ朝番組

　日本共産党の小池晃副委員長は１５日未明、テレビ朝日の「朝まで生テレビ」に出演し、１４日発表した安倍晋三首相の戦後７０年の談話や戦争法案について議論しました。
　小池氏は、安倍首相の「７０年談話」について「『侵略』、『おわび』などの言葉は入っているが、その意味は今までとまったく違う」と批判。日本が「国策を誤って植民地支配と侵略を行った」という歴史認識が「村山談話」（１９９５年）の核心だと指摘した上で、「今回の安倍談話では『侵略、植民地支配』は一般論として否定しているだけ。『反省とおわび』も、過去の政権の表明として紹介しているだけで、安倍首相自らの言葉として語っているものではない」と指摘し、「村山談話」とは似て非なるものであることを指摘しました。
　自民党の山本一太参院議員は「同じ言葉を繰り返す必要はない」と主張。小池氏は「反省とおわびを首相が自分の言葉で語らないだけでなく、翌日には安倍政権の閣僚が靖国神社を参拝しようとしている。安倍談話が本当にあの戦争を反省しているのであれば、なぜ閣僚らが靖国参拝を行うのか」と反論しました。
　小池氏はさらに安倍談話が「日露戦争は、植民地支配のもとにあった、多くのアジアの人々を勇気づけた」と述べていることに対して「あまりに乱暴な表現だ」ときびしく批判。「日露戦争は、韓国の全面的な植民地支配のための戦争だった。『日韓議定書』も『日韓協約』も日露戦争の過程で強要され、韓国併合にいたる歴史があった。（安倍談話で）アジア全体がこれを歓迎したというのは歴史的事実にも反する」と批判しました。
　小池氏が参院安保法制特別委員会で追及した自衛隊の内部文書に関しても話題になりました。小池氏は、戦争法案の出発点には日米新ガイドライン（防衛協力指針）があると述べ、「文書には、新ガイドラインには、現行法と戦争法案でできることが区別なく記載されているとはっきり書いてある。さらに自衛隊と米軍が『軍軍間の調整所』を常設するなど、国会で議論していないことが自衛隊の中で進んでいる」と批判。元外務省局長の孫崎享（まごさき・うける）氏も「今度の法案は、アメリカのイラクやアフガンでの軍事作戦を、日本が肩代わりするためのものだ」と批判しました。
( ２０１５年０８月１６日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

「安倍談話」こう聞いた／一橋大学名誉教授渡辺治さん／一橋大学教授（日本近現代史）吉田裕さん

　安倍晋三首相が１４日に出した戦後７０年談話の問題点について識者に聞きました。

欺瞞と矛盾に満ちたもの／一橋大学名誉教授渡辺治さん
　安倍晋三首相の７０年談話は、焦点となっていた「侵略」「植民地支配」「お詫び」などの文言はちりばめたものの、「村山談話」に示されていた、過去の植民地支配と侵略に対する反省と謝罪の表明を大きく後退させました。戦争法案と相まって、アジア諸国に日本の進路への疑いと危惧を増幅させるものとなりました。安倍内閣が、これまでの保守政権ができなかった、「戦争する国」への転換を強行していることを反映したものです。
　同時に、注目すべきは、安倍首相が７０年談話で達成しようと狙っていた、「村山談話」の核心を公式に全面否定しようという意図も、戦争法案阻止の国民の運動の力で、達成できなかったことです。
　安倍首相は、戦争法案、沖縄の辺野古新基地建設、そして戦後７０年談話による歴史の改竄という課題を一体として実現を目指してきました。アメリカに追随した「大国化」のためにはこの三つが不可欠だからです。ところが安倍内閣には重大な誤算が生じました。安倍首相がもっぱら気にしていた外国の意向ではなく、国内の戦争法案阻止の運動の高揚が、安倍政権による戦後７０年の否定、「戦争する国」づくりの一環としての、７０年談話への危惧と警戒を呼び起こしたのです。
　戦争法案の衆院採決強行による支持率の低下、与党公明党の中からも法案への批判が強まるなか、１１日には国会で自衛隊統合幕僚監部の内部文書が暴露されたうえ、１３日には沖縄で米軍のヘリが墜落事故を起こして政権は窮地に立たされました。
　戦争法案の成立のためにはこれ以上の支持率低下は許されず、あれほど嫌がっていた「侵略」「植民地支配」をちりばめ、最後まで渋った、先の大戦への「痛切な反省」「お詫びの気持ち」を「今後も揺るぎないもの」として受け継ぐと言わざるを得なくなりました。村山談話を消し去り、新談話を、国民意識の改変、教科書統制の梃子とするというねらいは挫折したのです。
　かといってこの談話は、アジア諸国からも「戦争する国」に危惧を持つ国民からも支持や共感を受けるものではありません。追い詰められた安倍内閣と同じく欺瞞と矛盾に満ちたものとなりました。
　安倍談話にかわる、戦後７０年の国民の側からのアジアと世界への最大のメッセージは何でしょう。それは戦争法案を廃案にすることです。世界の人々に、過去の植民地支配と侵略戦争に対する日本国民の反省と平和の意思を伝え、この国の目指す進路が安倍政権の路線とは正反対のものであることを誤解の余地なく示すことです。
　（聞き手・中祖寅一）

根本的反省と謝罪を欠く／一橋大学教授（日本近現代史）吉田裕さん
　安倍晋三首相が発表した「戦後７０年談話」には「侵略」や「植民地支配」「反省」「お詫び」という文言はありますが、自分の言葉としては語っていません。あくまで間接的な言及・引用になっています。これでは、首相自身の歴史認識が伝わってきません。
　言葉の問題は重要ではないといっていた当の本人が、右の文言を「談話」にあえて入れざるを得なかったのは、首相自身の歴史認識に対する内外からの批判と戦争法案審議への影響を恐れたからでしょう。
　むしろ、談話から透けて見えてくることは、安倍首相がかつての日本の戦争を侵略戦争とみなし、植民地支配の問題も含めて反省し、謝罪をするという考え方を持ってはいないということです。
　とくに問題と感じるのは、日本の植民地支配への認識がぬけ落ちていることです。日露戦争は満州・朝鮮の支配権をめぐる戦争であり、朝鮮半島の植民地への第一歩でした。その勝利を「アジア・アフリカの人々を勇気づけた」というのは植民地支配を否定する立場とは矛盾します。
　歴史和解の問題については、中国や韓国を軽視し、特に日韓関係についてはまったく触れていません。談話の前提となった、戦後７０周年談話に関する有識者会議の報告書には、日韓の和解が進まないのは、韓国側が感情的に対応するからだといわんばかりの表現がありましたが、首相も同様の認識なのでしょう。今後の日韓関係を考えると非常に深刻な問題になると思います。
　戦争や植民地支配の歴史についての反省を「積極的平和主義」やアメリカの同盟と結びつけていることも問題です。この談話が現在審議中の戦争法案の正当化に最終的になっているからです。
　子や孫に「謝罪を続ける宿命を負わせてはなりません」という表現は、自分たちの世代で戦争責任、戦後補償の問題に決着をつける決意を示した文章と読めないこともありません。しかし、侵略戦争や植民地支配に対する根本的な反省を欠いている以上、今後、謝罪のメッセージを発信し続ける意思はない、という打ち切り宣言にしか聞こえません。
　（聞き手・若林明）
( ２０１５年０８月１６日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

国会議員１６１人、靖国集団参拝

　自民党、民主党、維新の党、次世代の党などの国会議員でつくる「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」は終戦記念日の１５日、東京都千代田区にある同神社に集団で参拝しました。
　日本の「侵略」と「植民地支配」に反省とおわびを表明した〝村山談話〟（１９９５年）の立場を投げ捨てるにひとしい安倍晋三首相の「戦後７０年談話」（１４日）が出た直後の靖国集団参拝。国会では戦争法案が審議され、国民的批判が日に日に高まるなか、この日参拝した議員は代理を含めて１６１人に上りました。
　参拝議員のなかには、戦争法案に反対する学生らを「自分中心、極端な利己的考え」と中傷して厳しい批判を浴びている武藤貴也衆院議員（自民）や、戦争法案を審議する参院安保法制特別委員会の佐藤正久・自民党筆頭理事（元陸上自衛隊イラク先遣隊長）も含まれています。
　参拝した１６１人のうち国会議員本人は６７人。内訳は自民５７人、民主３人、維新４人、次世代２人、諸派・無所属が１人となっています。昨年の終戦記念日には代理を含め１９４人が参拝しましたが、今年は３３人減少しました。
( ２０１５年０８月１６日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

過去の戦争「深い反省」／天皇、追悼式で初の言及

　政府主催の全国戦没者追悼式が１５日、東京都千代田区の日本武道館で開かれ、「おことば」のなかで天皇は過去の戦争に対し「深い反省」を述べました。天皇が戦没者追悼式で「反省」といった表現を使ったことはなく、戦後７０年の節目にあたり異例といえる認識を示しました。
　天皇は、過去の戦争で命を失った遺族を思い「深い悲しみを新たにする」と表明。戦後７０年にふれるなかで、日本の復興、発展は「国民のたゆみない努力と平和の存続を切望する国民の意識に支えられ」、平和と繁栄を築いてきたと述べました。
　天皇はそのうえで、「過去を顧み、先の大戦に対する深い反省とともに、今後、戦争の惨禍が再び繰り返されないことを切に願う」としています。
　「大戦に対する深い反省」の文言は今回加えられ、「反省」とともに、戦争の惨禍を繰り返さないことを願っています。
　日本国憲法は前文で「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意」すると宣言しています。
( ２０１５年０８月１６日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦後７０年／戦争する国に戻させない／各市民団体が談話

　戦後７０年の８月１５日を迎えるにあたって、市民団体は反戦・平和の談話などを発表しました。
　全国保険医団体連合会理事会は、「戦後７０年　日本の医師・歯科医師として　反戦・平和への決意」を出しました。戦時下に非人道的医療、医学研究が行われた事実を直視し、それらを引き起こした戦争とそれを許した社会への絶えることのない検証と反省が必要だと強調。医師らは戦後、憲法の下で国民皆保険を創設し、国民の命と生活を守る国づくりを行ってきたとして、戦争法案を廃案にするまでたたかう決意を表明しています。
　京都障害児者の生活と権利を守る連絡会は、「わたくしたちの７０年談話」として、関係者１１人の談話を発表。「戦争は障害者を排除し、障害者を生み出す」と述べています。
　１９２７年生まれの一谷孝さん（京都府視覚障害者協会会員）は「戦争では、人の命を軽視し、健康な人、若い人が重宝がられ高齢者や障害者、女性が差別される」と指摘。日本障害者協議会の藤井克徳代表は、ナチスが優生学思想に基づき知的障害者と精神障害者を安楽死させたことを紹介します。
　佛教大学の鈴木勉教授は、軍事費の大増強には「必ず大増税と猛烈な福祉カットが伴う」として戦争だけでなく貧困・抑圧の廃絶を決意しています。

天理教信者が廃案求め声明／有志の会
　天理教の信者有志でつくる天理教平和の会は１５日の終戦記念日にあたり、「戦争法案」の廃案を求める声明を発表しました。
　声明は、「憲法９条は平和の砦（とりで）」と強調。天理教信者がかつて侵略戦争に協力させられたことへの深い反省を述べた上で「こうした苦い経験を繰り返さないため、日本を再び戦争する国にすることをねらった『戦争法案』の阻止のため天理教信者も平和を願う国民の皆さんとともに声をあげよう」と訴え。安倍内閣に「戦争法案」の廃案を強く迫ることや、全国各地に広がる運動への積極的な参加を呼びかけています。
( ２０１５年０８月１５日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

ロシア、禁輸食品を大量廃棄／国民から「もったいない」の批判

　【モスクワ＝時事】ロシアのプーチン政権が、ウクライナ危機後の対ロシア制裁の報復として、欧米産農産品を禁輸して１年が経過しました。書類偽造やラベル張り替えによる密輸が横行する中、政権は「見せしめ」のため押収した大量の農産品を廃棄。食べ物を粗末にするＰＲに、国民からは「もったいない」「恥だ」との批判も出ています。
　農産品廃棄は、大統領令に基づき、６日に開始し、初日だけでも約３００㌧を処分。ロシア・メディアは、大型トラックから労働者が桃やチーズなどを次々と処分場に投げ捨てる映像や写真を報道しました。
　農産品を禁輸したものの国産品への代替が進まず、食品価格は上昇しています。廃棄処分は、我慢する国民の感情を逆なでしました。市民活動家は「大統領令を撤回し、国民の１５％に上る貧困層を援助すべきだ」と署名運動を展開。
　批判の声は、第２次大戦中にナチス･ドイツに約９００日間包囲され、食料難を耐え抜いたサンクトペテルブルク（旧レニングラード）で大きい。地方議員は「農産品を老人ホームに送るべきだ」と提案。あるジャーナリストは「レニングラード出身者は食べ物を粗末にしないはずだ」と述べ、同郷のプーチン大統領を痛烈に皮肉りました。
( ２０１５年０８月１４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

第２次世界大戦終結７０年／アルプス地方、仏のレジスタンス／上／解放目前、ナチスの虐殺

　第２次世界大戦中、ナチス・ドイツ占領下のフランスを解放に導いたレジスタンス（対独抵抗運動）―。数あるレジスタンス組織の中、主に森林や山岳地帯に定住し、ゲリラ戦を展開した「マキ」と呼ばれる組織がありました。大戦末期、ナチスによるマキと近隣住民の虐殺の舞台となった仏南東部ベルコール山地を訪ねました。
　（グルノーブル〈仏南東部〉＝島崎桂　写真も）

　アルプス山脈のふもとに位置する都市グルノーブルから車でおよそ１時間。標高１０００㍍級の山岳地帯に位置するベルコールは、古くから「天然の要塞」として機能してきました。
　マキを構成したのは、レジスタンスの主軸を担った共産主義者や、ナチスへの協力を拒んだ多くの青年に加え、王政主義者やキリスト教徒、ユダヤ人など多様な人々。マキに関する雑誌の編集を手掛けるアラン・ラファンさんは、「マキは宗教的、政治的立場の違いを超えた『反ナチスの連帯』だった」と指摘します。
　「ベルコールのマキは、連合軍のフランス解放作戦の一環として組織されました」
　ラファンさんがこう語るように、フランスの亡命政府「自由フランス」や連合軍は１９４２年、ドイツ軍に対抗するため、ベルコールを利用した「山岳作戦」を立案します。

山岳地帯の保全
　同作戦は、ベルコールの平野を航空基地として利用し、レジスタンスへの武器投下や連合軍の空挺（くうてい）部隊受け入れを企図したもの。作戦成功のため、マキはベルコールの保全を担いました。
　マキはその後、約１年半にわたりドイツ軍の侵入を抑えました。しかし、ベルコールに最初に降り立ったのは、連合軍ではなくドイツ軍の空挺部隊でした。
　ノルマンディー上陸作戦からおよそ１カ月半後の４４年７月２１日、さらなる戦況悪化を恐れたドイツ軍はベルコール襲撃作戦を開始。ドイツ軍８０００人と、レジスタンス掃討を担った親ナチス民兵団（ミリス、フランス人で構成）５００人の大部隊がベルコールを包囲、空挺部隊を送り込みました。
　対するレジスタンス側は、マキや近隣住民を中心とした約３９００人。圧倒的な戦力差と、地上と空からの挟み撃ちによりマキは３日間で壊滅します。
　その後、ドイツ軍は住民を虐殺し、町を焼き尽くすなどベルコールを徹底的に制圧。一連の戦闘は、レジスタンス６３９人、市民２０１人が犠牲となるレジスタンス史でも有数の悲劇として幕を閉じました。後に南仏全土を解放に導くプロバンス上陸作戦（４４年８月１５日）のおよそ３週間前の出来事でした。

一つの形として
　当時の遺物を多数所蔵するベルコール・レジスタンス博物館のピエールルイ・フィレ研究員は語ります。
　「レジスタンスの歴史では、共産主義者やドゴール主義者（ドゴール元大統領の思想と行動を元にしたナショナリズム）のように政治信条を掲げた人々のたたかいが有名ですが、マキのように、より実際的な軍事作戦に従事した人々もいました。その意味でマキは、自由のためにたたかったレジスタンスの『もうひとつの形』といえるでしょう」
　同氏はマキやベルコールの悲劇と併せ、「戦争の悲惨さを伝える重要性」を指摘します。
　ベルコールは現在、登山者やスキー客でにぎわう観光地としてにぎわっていますが、今も、虐殺の犠牲者の追悼碑や、惨劇を示す碑文が数多く残されています。（つづく）

フランスのレジスタンス
　第２次世界大戦中、ナチス・ドイツの占領を受けたフランスで、ナチスと対ナチス協力政権「ビシー政権」に対し行われた国内外の抵抗運動。ドゴール元大統領が設立した「自由フランス」や、非合法下にあった仏共産党主体の「フランス義勇軍」など複数の組織が存在しました。活動家の多くは一般の市民や労働者で、その活動は、反政府ビラの配布や供給網分断のためのスト、武装してのゲリラ戦など多岐にわたりました。
( ２０１５年０８月１４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

第２次世界大戦終結７０年／アルプス地方、仏のレジスタンス／中／「自由の価値」を伝える

　第２次世界大戦末期、連合軍の作戦の一端を担ったフランス南東部ベルコールのレジスタンス組織「マキ」は、ナチス・ドイツ軍の攻撃を受け壊滅しました。しかし戦闘を生き延びた元マキザール（マキに参加した人）もいます。マルク・セラトリスさん（９２）は１９９０年代から自らの体験を証言する活動に参加しています。
　ナチスとの停戦協定を結び、対独協力を決めたビシー政権は１９４３年、ナチスの要請を受け、強制労働局（ＳＴＯ）を通じたフランス人労働者のドイツ移送を開始します。

ナチスには反対
　ＳＴＯから招集を受けたセラトリスさんは、レジスタンス活動への参加を決意。南仏を拠点としていた組織「フラン・ティルール」に接触し、マキへの参加を勧められます。２１歳の時でした。
　「それまでもナチスには反対でしたが、マキに参加することで本格的なレジスタンス活動に加わりました」
　こうして「いつ戻れるかもわからない地下活動」が始まりました。セラトリスさんの部隊は空き屋となった羊小屋を改良し、約４０人が共同生活を送りました。食料は当時、配給制が敷かれるほど不足していました。マキザールは正規の配給証を持たず、「何も食べられない日がたびたびあった」といいます。近隣住民の食料支援が支えでした。
　ベルコールへのドイツ軍の侵入に備え、戦闘訓練を繰り返す日々が１年以上続いた後の４４年７月２１日、ドイツ軍がベルコールに侵攻。３日間の戦闘の後、マキとベルコールは壊滅し、セラトリスさんは山中に身を隠します。ドイツ軍を撤退させる連合軍のプロバンス上陸作戦（４４年８月１５日）までの約３週間、「雑草などを食べて」飢えをしのぎました。

憎しみ全くない
　「戦後２０年近くは、ドイツ語を聞くのもつらかった」―ナチスによる母国の占領やマキでの過酷な経験、多くの友人の死は、セラトリスさんの心に深い傷を残しました。ただ「今ではドイツへの憎しみは全くない」といいます。きっかけは、職場でのドイツ人との交流でした。
　戦後、セラトリスさんが勤めた工場には、戦時中に連合軍の捕虜となり、戦後もフランスに残った元ドイツ兵らが働いていました。
　「組合活動を通じて親交を深めるうちに、彼らは私にとって、もはや『ドイツ人』ではなく『職場の同志』になっていました」
　セラトリスさんは自らの体験を語り、将来の世代に「自由の価値」を伝えています。
　「マキザールとしての冒険や武勇伝を語るつもりはありません。それよりも、偉大な自由の価値を守り、ナチスやビシー政権のファシズムに対抗するため、多くの若者が何を思い、どう生きたか。その経験を伝えていこうと思っています」
　（グルノーブル〈フランス南東部〉＝島崎桂　写真も）
　（つづく）
( ２０１５年０８月１５日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

第２次世界大戦終結７０年／アルプス地方、仏のレジスタンス／下／女性たちのたたかい

　フランス南部のアルプス地方でナチス・ドイツとたたかったレジスタンス。そこには多くの女性も参加していました。「女性がいなければレジスタンスは成り立たなかった」―グルノーブルでレジスタンスに参加したアルフレッド・ロランさん（８８）はそう語ります。
　ロランさんは１６歳の時、当時非合法下の仏共産党が始めたレジスタンス組織「フランス義勇軍（ＦＴＰＦ）」に参加。ドイツ軍への補給を遅らせ、分断するため、物資を積んだ電車を脱線させたり、工場を閉鎖したりする活動に従事しました。

警戒のすき突く
　「（活動）準備の過程では、主に女性がレジスタンス間の連絡を担いました。警察やドイツ兵たちは、女性がそうした危険な行動を取るとは思っておらず、警戒が薄れていました」（ロランさん）
　教職に就きながらレジスタンスに参加したドニズ・ムニエさん（９７）も、女性のレジスタンス活動は主に、「武器を持たないたたかい」だったと振り返ります。ビラ配布のほか、ユダヤ人やレジスタンスの秘匿、彼らの食料を確保するための配給証の偽造なども行いました。
　ムニエさんも、レジスタンスの印刷工をかくまうことから活動を始め、後に連絡係を担いました。途中、フランス警察に逮捕、拘束されますが、釈放後も監視の目を逃れ、反ナチス・反ビシー政権のビラの作成・配布に従事しました。
　戦後も女性の権利拡大に尽力し、現在、南東部イゼール県の「元レジスタンス活動家協会（ＡＮＡＣＲ）」で共同代表を務めています。２０１４年には、「全ての女性レジスタンスを代表し」、フランスの最高勲章、レジオンドヌール勲章を受章しました。

今も絶えぬ意思
　こうした女性の協力も加わり、フランスを解放に導いたレジスタンスですが、戦争への怒りや社会的公正を求める意思は、今も絶えません。
　「フランスや欧州では今も、ユダヤ人やムスリムへの差別など、深刻な排外主義が残っています。身近なところでは、労働分野での根強い男女差別もあります。より公正な社会の実現のため、こうした差別が持ち上がるたびに声を上げ、行動する必要があります」
　ムニエさんは自らの体験を証言する活動を通じ、レジスタンスが守った「社会的公正や人間の尊厳」の重要性を今も訴えています。
　（グルノーブル〈フランス南東部〉＝島崎桂　写真も）
　（おわり）
( ２０１５年０８月１６日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

国立歴史民俗博物館の資料展示「ドイツと日本を結ぶもの」／日独の類似と相違／交流の歴史をたどる

　日本とドイツの交流の歴史をたどる資料展示「ドイツと日本を結ぶもの―日独修好１５０年の歴史」が、千葉県佐倉市の国立歴史民俗博物館（歴博）で開かれています。
　（澤田勝雄）

　ドイツと日本はともに第２次世界大戦で壊滅的な敗北を喫し、連合国に占領された後、経済復興をとげたという歴史があります。また、プロイセンを中心とするドイツ帝国の成立が、日本で廃藩置県が断行された１８７１年（明治４年）であったように、近代国民国家形成の時期で軌を一にしています。

似た歴史の印象、お互いに親近感
　企画に関わった久留島浩館長は「一般的には、似た歴史があるという印象を持たれており、お互い親近感を持っているようです」と話します。
　日独外交の黎明期は、王国プロイセンが使節を日本に送り、徳川政権と修好通商条約を結んだことが始まりです。この時の外交文書、贈答品のほか、仲介者となったドイツ人医師・シーボルト父子のこと、プロイセン使節団に同行した画家がとらえた幕末の江戸・長崎の風景、江戸の浮世絵師が描いたプロイセン人などの珍しい絵画を展示。１８６２年の「徳川家茂将軍の遣欧使節団に託したプロイセン国王あて信任状」の初展示もあります。
　明治維新後、日本はドイツを「お手本」とし、憲法や政治制度、軍事、医学、文化など多分野で人的交流が盛んにおこなわれました。１９世紀にはドイツにジャポニズム・ブームが起き、日本からの美術展・演劇公演が評判になります。
　しかし、両国が後進的な資本主義国家であったことから、中国市場をめぐって利害が対立。１９４０年に日本と軍事同盟を結んだナチス・ヒトラー政権も、３０年代前半には日本の満州国建国を承認せず、中国・蒋介石軍がドイツの支援した武器で日本軍と戦っていた時期がありました。

過去に向き合うドイツの姿注目
　久留島館長は「歴史資料に即して考察すると両国の政治的関係には距離があったことに留意すべきです」「皮肉なことに、両国が親密な関係になるのは、１９３８年以降、敗戦までの数年間でした」と言います。
　こうした過程を、ヒトラー・ユーゲント(青少年団)の来日や日本側青少年団の渡独などの交流、雑誌・切手などの「プロパガンダ」宣伝の展示で示し、「日独防共協定」「日独伊三国同盟」の条約原本など全体約２００点の資料で振り返っています。
　久留島館長は「両国の単純な比較や短絡的な評価を求めているわけではない」としながらも、こう指摘します。「今年１月に亡くなったワイツゼッカー元ドイツ大統領は『過去に目を閉ざす者は現在にも盲目となる』と演説しました。さらにドイツでは、ナチス・ドイツに責任を負わせるだけでなく、ナチス・ヒトラーに対抗的だったとされる国防軍の『犯罪』をめぐって論争が起きています。『どのように過去と対決してきたか』が問われ続けていることに注目したい。原発全廃に踏みきるなど環境・エネルギー問題でも、日本国民として、ドイツに学ぶことが少なくない」

＊「ドイツと日本を結ぶもの」
　９月６日（日）まで、月曜休館。国立歴史民俗博物館（千葉県佐倉市城内町１１７）。一般８３０円。問い合わせ℡０３（５７７７）８６００ハローダイヤル
( ２０１５年０８月１２日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

１０ 潮流

　最近めっきり、人気がなくなったアベさん。その支持率を下げる原動力になった草の根で広がる空前のたたかいの息吹が、そのまま持ち込まれました▼２日から９日までの原水爆禁止世界大会です。核兵器も原発もいらない。核兵器も戦争もいや。子どもをまもりたい。世代をこえ、分野をこえて共通した怒りは、「アベ政治を許さない」▼青年・学生が、抱っこバンド姿の赤いシャツのママが、自分の言葉でたたかいの意義を語る。みごとです。思っているだけでは変わらない、思いを声と行動にして▼「北海道、鳥取…どこでも行動する若い人の発言に励まされた。〝いまほど危険な時代はないけど、日本で初めての民主主義のチャンスだ〟との京都の学生の発言はメモしました」。興奮ぎみに話すのは、愛媛民医連事務局長の片岡朗さん（５５）。「主権者としての自覚です。アベさんは戦後７０年の節目に、戦争か平和か、とんでもないことを仕掛けたけど、未来のために大きなきっかけをつくってくれた」と▼「核兵器の非人道性のようにわかりやすい悪と、何重にも巧妙に隠された原発の悪。アメリカの戦略に振り回されるアベ政権を私たちで必ず倒したいと改めて思った」。滋賀で憲法と平和の頭文字をとった「しーこぷ」という団体で、戦争法案を廃案にしろとデモする２８歳の女性の感想です▼「戦争と原爆被害の生き証人」として訴えた谷口稜曄さんの不屈さに学び、誓い合いました。安倍政権との夏のたたかいに勝利することを。
( ２０１５年０８月１０日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

公明党、自民に不満

　戦争法案の参院審議が正念場となる中、安倍晋三首相側近や自民党議員から問題発言が相次ぎ、公明党が不満を募らせています。
　「与党で協議を尽くしたことをないがしろにする言動は厳に慎むべきだ。足を引っ張るのは許されない」。山口那津男代表は６日、広島市内で記者団に対し、礒崎陽輔首相補佐官が「法的安定性は関係ない」と発言したことなどを改めて批判しました。
　戦争法案優先のため公明党としては、礒崎氏本人や首相が陳謝したことで幕引きを図り、続投を容認しました。しかし、直後に自民党の武藤貴也衆院議員が戦争法案に反対する学生団体を「戦争に行きたくないというのは利己的」と非難し、暴言が連続。公明党側が「自民党は自ら火に油を注いでいる」と、いら立つ事態となっています。
　世論の多数が反対する違憲の戦争法案に賛成し、強行採決で衆院を通過させた自公両党に吹き付ける大逆風。２日の仙台市議選で公明党は五つの選挙区のうち四つで前回よりも得票を減らしました。党幹部の一人は「こうした選挙の傾向は全国に広がる可能性がある」と表情を曇らせます。支持母体の創価学会も危機感を抱き、戦争法案の衆院通過後の最高幹部会で、「法案の説明を国民にしっかりと行ってほしい」と党側に注文を付けました。
　安倍首相の戦後７０年談話をめぐっても、公明党の意見がくみ取られるのか、はっきりしません。「わが党を軽んじているのではないか」。来夏の参院選への影響を恐れて、暴言連続の首相官邸や自民党に不満を募らす公明党。内閣支持率低下のなか連立にきしみが生じかねない状況です。
( ２０１５年０８月１０日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

地方発／「満蒙開拓」の記憶／風化させない／死の逃避行・収容所生活…悲劇語り継ぐ／長野

　アジア・太平洋戦争で、長野県は全国的にも突出した数の「満蒙開拓団」、「満蒙開拓青少年義勇軍」を送り出しました。戦後７０年、「再び戦争の悲劇を繰り返すな」。各地に広がる戦争法案反対のうねりの中、「満蒙開拓」とは何だったのか改めて問い直されています。
　（小池光栄）

「記念館」入場者７万人にせまる
　長野県南部の阿智（あち）村にある「満蒙開拓平和記念館」。猛暑の中でも、入場者が絶えず、体験者の「語り部」活動が注目されています。
　６日に体験を語った中島千鶴さん（８３）は、８歳（１９４０年）の時、長野県から一家１０人で「満州」にわたり、開拓団の５年間を含め中国生活は４５年間におよびました。「寒く、厳しく、つらい思いだった」。８月９日のソ連侵攻後の〝逃避行〟、収容所生活…。中国人一家に救われて生き延び、１７歳で結婚し、家庭を持ちました。
　日本に永住帰国できたのは、終戦から４０年、５２歳（１９８５年）の時でした。「日本から見放されていた」と語る中島さん。「すっかり忘れてしまった言葉に苦労しながら」、清掃会社で必死に働き、生活を維持してきました。
　「日本も中国も祖国です。二度と戦争を起こさないよう、皆さんお願いします」。補聴器を気にしながら、大阪の高校生に渾身（こんしん）の語りを続けました。
　記念館は２０１３年４月に開館。当初予想を上回り、７日、入館者は７万人目前になりました。体験者を訪ねてきた三沢亜紀事務局長は、「歴史を風化させ、なかったことにはしたくありません。個人の記憶を社会的歴史に広げる場にしていきたい」。
　阿智村では数十年ぶりとなった、戦争法案反対の「村デモ」（７月１７日）では、「繰り返すまい、満蒙開拓」のコールが響きました。

戦争法案廃案へ意見書全会一致
　長野県南部の泰阜（やすおか)村の臨時議会は､「終戦とともに死の逃避行をせざるを得なかった悲惨な歴史を経験しています」と、戦争法案「廃案を強く求める」意見書を全会一致で可決（７月２７日）しました。議員提案に加わった日本共産党の林銀一村議は、「全会一致とは驚きだった」と、感動を語りました。
　人口約５０００人の村は「満蒙開拓」に協力して、１１７４人が「分村」移民に送りだしましたが、半数を超える６３８人が犠牲となり、村に帰ることができませんでした。
　着の身着のまま〝逃避行〟の末たどりついた泰阜村出身者を、温かく守り育ててくれたのは、中国・方正県の人たちでした。「語り部」をした中島さん（泰阜村出身）も、同地で恩を受けた一人です。
　泰阜村は、方正県と友好提携を結び交流、「平和を内外に発信して」（意見書）きました。
　「戦後７０年、わが村では戦後が、まだ終わっていない」（林議員）
　村は１０月、３９人の中学生全員も参加して、「満蒙開拓」を含む戦争犠牲者の追悼行事を行います。「村の歴史を忘れてはいけない。語り継いでいく」と。

「満蒙開拓」
　天皇制政府は、アジア・太平洋戦争開始翌年の１９３２年に「満州国」をつくり、軍事目的を主眼に、１９３６年８月、「国策の基準」に基づく「満州農業移民」１００万戸（５００万人）計画を決定。行政、教育者、政治家、マスコミなど一体で推進しました。終戦で、ソ連軍侵攻に伴う混乱と〝死の逃避行〟などで全国からの約２７万人のうち約８万人もが犠牲になりました。長野県は、国策を〝積極的に〟遂行した結果、高等小学校卒業者対象の「満蒙開拓青少年義勇軍」と合わせ、全国で最も多い約３万３千人（『長野県満州開拓史』）を送り、無数の悲劇をつくりだしました。
(２０１５年０８月０９日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

各地民放戦争関連番組

　キー局以外の民放テレビの主な戦争関連番組を紹介します。
（８月、日本民間放送連盟資料から）
【岩手放送】戦後７０年被爆者の戦い（２２日　後２・０）
【秋田テレビ】秋田・土崎空襲の真実をアメリカ証言から探る（１５日　後０・０）
【山形放送】子どもたちの「戦争」は始まった（１５日　後４・０）
【名古屋テレビ】平和、次世代へ～戦後７０年の名古屋から（１５日　後０・０）
【中京テレビ】あの日のこと、伝えたい（１５日　前９・２５）
【山陽放送】岡山・香川　戦争の記憶を継ぐ（１５日　後３・３０）
【山口放送】回天に散った学徒兵の軌跡（１２日　前９・３０）／ある中国残留婦人の帰国（１３日　前９・３０）
【テレビ西日本】戦争を知りたい若者たちへ（１５日　後４・０）
( ２０１５年０８月０９日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦争法案は政策上も疑問／山崎拓氏「自民は大政翼賛会的」／日弁連シンポ

　「今を戦前にしないために」と日本弁護士連合会は８日、戦後７０年記念シンポジウムを東京都内で開き、３５０人が参加しました。パネリストの元自民党副総裁の山崎拓氏が「今の自民党は大政翼賛会的になっている」と直言し、会場をわかせました。
　司会でニュースキャスターの村尾信尚さんが、戦争法案にかかわって「国際情勢をどう見るか」と質問。
　自民党の防衛政策を担った山崎氏は「『中国の脅威』論が参院で出ているが、それがなぜ自衛隊を地球の裏側に出す話になるのか。憲法違反であり、防衛政策上とるべき対応なのか、非常に疑問がある」とのべました。また「わが国を守ることは今の専守防衛でできる」と断言しました。
　憲法学者の南野森（しげる）九州大学教授が「私のような憲法学者と自民党で防衛庁長官を務めた山崎さんと意見が一致するのは不思議だ」と発言すると会場から笑い声が。
　南野氏は「自民党の中は大政翼賛的で主戦論一色かもしれないが、安倍首相の〝おかげさま〟で、国民の中に立憲主義が広まった。心配だが希望的観測も持っている」と発言しました。歴史学の加藤陽子東大教授も発言しました。
　戦後７０年談話について、山崎氏は「（安保法制で）安保政策を根本的に変え、（談話で）歴史認識を変えると、本当に国策を誤ることになる」とのべました。
( ２０１５年０８月０９日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

中国外務省、歴史の直視と反省求める

　【北京＝小林拓也】中国外務省の華春瑩副報道局長は７日、安倍晋三首相が１４日に公表する予定の「戦後７０年談話」に関してコメントを出し、「日本軍国主義が引き起こした戦争への直視と深刻な反省を促す」と表明しました。その上で、「戦争の性質と戦争責任の問題に対し、明確で正確な情報を出してほしい」と求めました。
　華副局長は「中国を含めたアジア諸国や国際社会は、日本の指導者が発表する談話に高度に注目している」と指摘。日本政府に対し、「実際の行動でアジア隣国や国際社会の信頼を得るべきだ。そうしてこそ、日本はアジア隣国と真の和解を実現し、その基礎の上に未来志向の関係を実現できる」と強調しました。
( ２０１５年０８月０９日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦後７０年／今伝えたい／仙台の陸軍歩兵砲中隊兵士だった後藤東陽さん（９０）／国民守らぬ、それが軍隊

　太平洋戦争の末期に、仙台市の陸軍に所属していた後藤東陽さん（９０）＝「みやぎ憲法九条の会」共同代表＝に聞きました。
　（高橋拓丸）

　１９４５年２月、１９歳のときです。国鉄職員だった私は、召集されて仙台の陸軍歩兵砲中隊に入隊しました。
　初年兵教育には、柱に縛り付けたワラ人形を突く銃剣術がありました。これがなかなかうまく刺さらない。すると上官に殴られて「ワラ人形だと思うな！　支那人だと思って刺せ！」と怒鳴られるんです。
　戦地帰りの先輩からは「そのうち一緒に戦地に行ったら、本物をつかまえて刺させてやるから楽しみにしてろ」とまでいわれました。
　でも、それが軍隊なんです。そうやって良識や常識を壊して、普通の社会人たちを人殺しの集団に変えるんです。

空襲で救助せず暴動を防ぐ警備
　仙台空襲（１９４５年７月１０日未明）の日、榴ケ岡（つつじがおか）の宿舎にいた私は夜中にたたき起こされ、広場に集められました。間もなく飛行機と焼夷（しょうい）弾のごう音が聞こえ、仙台駅周辺が燃えているのが見えました。
　決死隊への志願を上官が募ったのですが、みんな爆弾がボンボンと落とされているところになんか行きたくありません。はじめは誰も立候補しなかったのですが、「市民を救うためだ。ここで行かなくてもいずれ戦地に行くのだから同じことだ」という思いで志願しました。
　てっきり市民の救助や消火活動などをするものだと思っていたのですが、実際に言い渡された任務は、暴動を防ぐ警備でした。｢そんなばかな｡同じ日本人が被害を受けているのになんなんだ｣とあきれたものです。
　空襲後も３日間ほど、警備を命じられました。焼け野原を歩きながら、しみじみと「国土を守れとはいうが、国民を守ろうとはしない。それが軍隊なんだ」と思いました。
　自分の国がとても野蛮なものに感じられ、「日本は勝つべきではない」とさえ思いました。こんな国がほかの文明国を支配したら、世界が不幸になってしまうと感じたんです。

戦争法案反対の若者の声心強い
　戦後７０年というけど、戦争を経験した者にとっては去年や一昨年の出来事と変わりません。街頭に遺体が重なり、遺体のこげる臭いが立ちこめていた光景は、今もはっきりと覚えています。
　安倍首相の進める戦争法案などは、日本を破滅に導くものとしかいいようがありません。「限定的」や「後方支援」など、戦場をゲームのように捉えるごまかしは、本当に腹立たしい。
　戦争する国づくりに反対する若者の声が非常に強まっていることは、長年まいてきた種が芽吹いてきたようで、心強く感じます。この動きをさらに広げるため、私も努力します。
(２０１５年０８月０８日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦後７０年／今伝えたい／「札幌郷土を掘る会」小松豊さんと札幌の戦跡を巡る／加害の歴史に触れて

　札幌市豊平区月寒にある戦跡を、民衆史や戦跡などを調査している｢札幌郷土を掘る会｣の小松豊さんと一緒に訪れました。
　（北海道・越智朋子）

　戦後７０年、全国で戦跡は取り壊されたり、埋め立てられるなど年々少なくなっています｡｢身近な場所にある戦跡にふれることで何のための戦争だったのかを知るきっかけになります｣と小松さん｡
　月寒地区には、住宅街の中に、陸軍歩兵第２５連隊本部の土台や出兵する多くの兵士を見送ってきた営門の松の木などが今も残されています。
　同連隊は広大な敷地を持ち、運動場跡地は月寒高校、射撃場跡地は月寒公園や団地になっています。
　１９３２年に連隊の鯰江（なまずえ）部隊という部隊が営門を出発し、札幌駅経由で軍港だった小樽港から「満州」に向かいました。
　小松さんは「当時の小樽新聞に札幌駅まで約７㌔の沿道に日の丸を振り、『万歳』と叫ぶ市民がびっしりといたことが書かれています」と話します。
　日本軍が中国東北部に攻め込み、かいらい国家「満州国」を建設。この日本の侵略に反対する中国の抗日兵を「匪賊（ひぞく）」として皆殺しにする討伐作戦を立てました。その作戦に参加するために鯰江部隊は出発したのです。
　小松さんは「日本は被害国でもあり加害国でもあります。日中全面戦争のさきがけになった柳条湖事件のように国策の名のもとになんでもやれてしまう。戦争法案が通れば、昔のように再び、殺し殺される日本になってしまいます。私は教員だったのですが、教え子たちを決して戦場に行かせたくありません」と思いを語りました。

陸軍歩兵第２５連隊
　旭川の第７師団の一連隊で１８９６年、野戦独立隊として月寒地区に置かれ、のちに連隊として改編。１９４０年に樺太に移駐。日露戦争への従軍や朝鮮北部、樺太のほか、１９０３年から４２年間、中国に出撃し、中国人・日本人ともに多くの犠牲者を出しました。
　◇
柳条湖事件
　１９３１年の「満州事変」の発端となった事件。同年９月、日本の関東軍が中国東北部の奉天（現・瀋陽）近郊の柳条湖で南満州鉄道の線路を爆破。関東軍は、これを中国軍の仕業だとして、大規模な侵攻を始めました。
(２０１５年０８月０７日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦後７０年／今伝えたい／北海道室蘭市で空襲、艦砲射撃を体験三浦昌子さん（８９）／職務で犠牲になった同僚

　太平洋戦争末期、北海道室蘭市が空襲、艦砲射撃の被害を受けていた当時、日鉄輪西製鉄所で電話交換手として働いていた三浦昌子さん（８９）に聞きました。
　（北海道・越智朋子）

　１９歳の時でした。７月１４日、仕事をしているといつもより緊迫したように思えたのですが、空襲警報が鳴りました。すぐに交換室のカーテンを閉め、たたみを三角に立てその隙間に同僚が隠れました。
　カーテンの隙間から外をのぞくと真っ黒でカラスみたいな軍機が１機見えて、さらにどんどん増えてきたので怖くなって慌てて防空頭巾をかぶり、隠れました。
　恐怖のあまり何時間たったのか、どうやって帰ったのか記憶にありません。

「今日は帰って来れないかも」
　上司からはいつも「電話交換手は何があっても持ち場を離れてはいけない」と言われていました。翌日、家を出る時に「今日はもう帰って来れないかもしれない、さようなら」と言って家を出ました。親は涙を流していたように思います。
　交換室に着くと、「ドーンドーン」と大きな音がしました。その音がどんどん近付いてきて、振動と音が足元に及び、おなか、全身に響くようになりました。
　それでも何が起こっているかわかりませんでした。交換室の警備をしている男性が「艦砲射撃だ、逃げろ」と叫びました。
　私たちが逃げないので男性はスコップを持ち「そんなに死にたいのか。それなら俺がぶっ殺してやる」とすごみました。
　私を含め４人が防空壕（ごう）へ走りだしました。
　私ともう１人が同じ防空壕、もう１人が違う防空壕へ。班長だった横山サツ子さん＝当時（２２）＝は途中で、忘れ物があると交換室へ引き返しました。
　私たちは、防空壕の前の防空壁に隠れ、横山さんを待っていました。突然、防空壕の奥まで吹き飛ばされ、天井から土が落ち、急いで崩れていない隣の防空壕に移りました。
　何時間たったのかようやく静まったので恐る恐る外に出て、横山さんたちの名前を叫びながら交換室に戻りました。
　もう１人は無事。横山さんがいなかったので交換室から防空壕への道をたどると身覚えのある防空頭巾を見つけました。
　横山さんは、交換室と防空壕の間の盛り上がった土の中で息絶えていました。会社から「なくすな」とくぎを刺されていた重要書類を取りに戻って、急いで防空壕に向かって走っていた時に砲撃で吹き飛んだ土に埋もれ、窒息したようです。
　横山さんは責任感が強くて美人で、後から「俺、横山さんのこと、好きだったんだよな」と話す軍隊の人もいるなど、人気があった人でした。

戦争の恐ろしさ知らぬ安倍さん
　私は「これが戦争か」と思い知らされました。
　あの日見た赤い夕焼けが異様に赤く見えて恐ろしく、今でも目に浮かびます。
　安倍さんが戦争する国にしようとしていますね。安倍さんは戦争の恐ろしさを知らなすぎます。戦争をする国にしたら安倍さんを恨みますよ。今、いろんな人たちが声を上げていることがうれしいし、さらに広がってほしいと願っています。

室蘭艦砲射撃
　１９４５年７月１５日朝、米海軍機動部隊が日本製鋼所室蘭製作所、日鉄輪西製鉄所を標的に攻撃。全部で砲弾は８６０発､工場以外に住宅街も攻撃され、死者数４２７人､けが人１０９人の犠牲者が出ました｡
(２０１５年０８月０１日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

「戦後７０年宣言」発表／未来拓く鍵に／東京・杉並区

　東京都杉並区の市民が自分たちの言葉でつづった「杉並市民による戦後７０年宣言」を７日に発表しました。
　宣言文は、侵略戦争の加害の事実に一人ひとりが向き合っていくなかに「未来を拓（ひら）く鍵がある」と指摘。米軍基地や歴史教科書問題、外国人の市民権などさまざまな課題について、「一人ひとりが主権者として当たり前に尊重され、安心して暮らせる社会をつくろう」と呼びかけています。
　武蔵大学教授の永田浩三さん、元教員の小林久枝さん、小関啓子さん、在日韓国人の梁東準（ヤン・トンジュン）さんら９人の実行委員会でつくった原案をもとに、市民集会やインターネットなどで意見を募り、練り上げたといいます。
　永田さんは「こういう世の中をつくりたいとわれわれ自身（市民）に向けて宣言したもの」と語りました。
( ２０１５年０８月０８日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦後７０年の夏に／沖縄民放の受賞２番組／「裂かれる海」琉球朝日／「対馬丸撃沈」琉球放送ラジオ

　昨年沖縄で放送され、今年全国的な賞を受賞したドキュメンタリー番組が二つあります。どちらもこれまで自身の思いを語れなかった人々に光を当てました。
　（萩原真里）

辺野古の現状伝える／「裂かれる海」琉球朝日
　琉球朝日放送の「裂かれる海～辺野古　動き出した基地建設」（１２月２９日放送）は、名護市辺野古に米軍基地をつくらせないとたたかう沖縄の人々を取材しました。米軍基地建設を進める政府が、本土と沖縄の間の溝だけでなく、沖縄の人々同士をも対立させている現実を報道。第５２回ギャラクシー賞のテレビ部門大賞を受賞しました。
　制作スタッフはほぼ毎日辺野古に通い、地元の人々に密着。大型車両の前に立ちはだかって、「私は血の混じった水を飲んで沖縄戦を生き延びたんだよ。基地をつくるなら私をひいてから行って」と訴えるおばぁ（８５）の思いを伝えました。一方で、兄弟であっても意見の分かれる基地問題については話せないなど、県民の複雑な思いも見つめます。
　授賞式で棚原大悟ディレクターは、「辺野古はとても小さな集落ですので、基地に対しての立場がどうであれ、カメラの前では話をしてくれない方が多い｡今回は､辺野古の現状を伝えるためであればと、口を開いてくれた方がたくさん登場しています｣と語ります｡
　番組は、仲井真前知事を３０００億円の沖縄振興予算で懐柔し、「辺野古新基地容認」へと公約を覆させた政府を鋭く批判。沖縄の人々の怒りで、新基地反対の翁長雄志知事が誕生した瞬間を生き生きと描きました。仲井真前知事の退任日、県庁には抗議にかけつけた県民と拍手する職員が混在。番組は「混沌（こんとん）とした沖縄を表しているようです」と伝えました。
　島袋夏子ディレクターは、放送後の反応の大きさについて、「テレビの役割はまだまだ大きいと言えます。これからも少しずつ記録して、多くの方々に知ってもらいたいです」と話しました。

戦争の傷に寄り添う／「対馬丸撃沈」琉球放送ラジオ
　もう一つの受賞作は、琉球放送のＲＢＣｉラジオスペシャル「学童疎開船・対馬丸撃沈７０年」（９月１５日放送）です。１９４４年８月２２日、那覇港から長崎へ向かっていた貨物船「対馬丸」が、悪石島沖で米軍の魚雷攻撃を受け沈没した事件に焦点を当てました。乗客１７８８人のうち、１４８５人が死亡。疎開のため７８０人の学童が乗っていました。生き残った人々が今も心の傷に苦しむ姿を伝え、放送文化基金賞ラジオ部門奨励賞を受賞しました。
　島袋千恵美ディレクターは、固く口を閉ざしてきた生存学童の男性（８０）をはじめ、漂流から６日目に助かった女性（７９）のつらい体験を取材。亡くなった子どもたちの遺影や遺品を展示する対馬丸記念館（那覇市）の館長や、対馬丸の悲劇を舞台で演じた子どもたちの気持ちも聞きます。戦争を後世に伝えようと模索する人々の思いとともに、戦争が人々の心に残した深い傷に寄り添いました。
　島袋さんは、「当時１９歳だった私の父は、対馬丸に乗るのを直前に祖父に反対されてやめ、命をつなぎました。凄惨（せいさん）な沖縄戦を生き延びた父から受け取った命のバトンを、私はこれからどうつないでいくか。先日、２人の子どもを対馬丸記念館に連れて行きました」と語ります。
　琉球放送は番組の受賞を記念して、１７日（後８・０）に再放送します。
( ２０１５年０８月０８日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦争法案反対アピール／賛同３６００人超す／医師・歯科医師は廃案要求／保団連会見

　全国保険医団体連合会は６日、国会内で記者会見し、「過去の過ちに学び、歴史の惨劇を繰り返さない」と、理事会（２日）で決議した「戦後７０年　日本の医師・歯科医師として　反戦・平和への決意」などを報告しました。
　「決意」は、人の命を救うべき医療者が、殺りくとそのための再生産に加担させられた歴史に言及。安保関連法案に反対し、「この夏、全国各地で行動を起こし、廃案にするまでたたかい続ける」としています。
　住江憲勇会長があいさつ。７月１日、全国の医師・歯科医師に呼びかけた安保関連法案反対の緊急アピールに、著名な医療人をはじめ３６００を超える人が、「憲法違反の法案に、懸念と怒りをもって名を連ねている」と紹介しました。
　飯田哲夫副会長が、日米防衛協力のための指針（ガイドライン、４月改定）と今回の法案のもと､｢国内でも民間を含めた医療者が戦争に協力させられる仕組みが準備されつつあることに目を向けてほしい」と発言。戦時体制の中では、戦争に関わる人の診療が優先となり、民間人が追い出されるなど日常診療・医療が妨げられる恐れがあるとのべました。
　全国自治体病院協議会の邉見（へんみ）公雄会長がゲストとして参加。軍医だった父がフィリピンで戦死し、１歳半で母親と旧満州（中国東北部）から日本に逃れた痛苦の体験と、反戦平和、憲法９条への思いを語りました。
( ２０１５年０８月０７日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

〝戦争法案廃案を〟街に響く／各地でデモ・宣伝…／京都／兵庫／大阪・大東／和歌山／滋賀

京都／一歩も引かぬたたかいを
　「戦争立法ＮＯ！　京都アクション」は４日夜、京都市内で、戦争法案の廃案を求めるデモ行進を行い、６５０人が参加しました。
　京都市役所前から四条河原町まで「戦争法案必ず廃案」「安倍政治は許さない」と唱和しながらアピールしました。
　弁護士や学生、医療労働者らがスピーチ。
　京都弁護士会副会長の福山和人弁護士は「立憲主義の最大の危機として、一歩も引かないたたかいを続けてきた。弁護士会の命運をかけたたたかいだ」と訴えました。
　「ＳＥＡＬＤｓ　ＫＡＮＳＡＩ」（シールズ関西、自由と民主主義のための関西学生緊急行動）の伊藤翔子さん（２１）は、自民党・武藤貴也衆院議員の「戦争行きたくない」は「極端な利己的考え」との暴言に対し「平和を愛し、戦争を拒むことがどうしてわがままか。政府がやることは、いまを生きる人の命も、これから生まれてくる命も争いに巻き込まれることから防ぎ守っていくことではないのか」と批判しました。
　憲法研究者の奥野恒久龍谷大学教授は、礒崎陽輔首相補佐官の「法的安定性は関係ない」との暴言について「安全保障のためなら憲法違反は関係ないというのが安倍政権の本音だ」と述べました。

兵庫／若者の命と未来守ろう
　憲法改悪ストップ兵庫県共同センターなどは４日夕、神戸市の元町商店街東口で戦争法案の廃案を求め、「若者の命と未来を守ろう」「この法律はおかしい。安倍さんの政治はおかしいという声を広げよう」などと訴えました。
　ツイッターをみて参加し、リーフレットを配っていた女性（５２）は「今がんばらないとやばいと感じています。相手が数の力で強行するなら、こっちも数で対抗しないと」と話していました。
　署名をした神戸市灘区の男子高校生（１８）は戦争法案の説明を聞き、「そんな法律なんですか。戦争はなくして、みんな仲良くした方がいい」と話していました。
　署名をしながら「絶対に廃案にさせないといけない。〝６０日ルール〟は使わせないよう、もっと野党にしっかりしてもらわないと」という女性に、共同センターのメンバーが「国民の世論と運動で、だんだん追いつめています」と応じると、女性は「そうですね。がんばりましょう」と話していました。

大阪・大東／声を上げて頑張りたい
　大阪府大東市の「野崎駅周辺９条の会」など野崎駅界わいで活動する草の根団体が中心となり、「戦後７０年、野崎から平和を考えるつどい」を１日に開き、１１３人が参加しました。
　つどいでは、渡辺武大阪城天守閣元館長が「大坂夏の陣４００年と戦後７０年を考える」として「大坂夏の陣図屏風（ずびょうぶ）」を映像で紹介しつつ凄惨（せいさん）を極めた「夏の陣」の詳細を解説。「夏の陣」を境目に「武器を納め、いくさをしない」平和な時代が２５０年続いたことを紹介し、戦後７０年、憲法のもとで平和が保たれたが、「いま、戦争法を許すなら、江戸時代の人にも笑われる」と述べました。
　参加者から、「庶民がいつも犠牲になる戦争とダブった」「凄惨な『夏の陣』がえん戦気分を広げ、平和な徳川時代の開始となったことが分かった。戦後（憲法）９条ができて市民が喜んだことと重なる」「今は声を上げることができる、今こそ頑張りたい」などの声が寄せられました。
　実行委員会では「私も戦争法に反対」の意見広告を募集し、３０６人の賛同が寄せられ、意見広告のチラシ９０００枚を新聞折り込みなどで配布しました。

和歌山／全県規模で運動広がる
　和歌山県の「戦争立法に反対する共同闘争本部」がよびかけた戦争法案の廃案をめざす「全県　団体・地域代表者会議」が３日、和歌山市で開かれました。
　「安保県民の会」の中谷弘子議長は開会あいさつで、安倍政権の支持率急落を指摘し、廃案に追い込もうとよびかけました。
　情勢報告した日本共産党の下角力県委員長は、知れば知るほど国民の反対が広がり、自民党内に早く参院の採決をという声もあることを紹介し、「８月のたたかいが大きなヤマ場になる。廃案の展望は広がっている」と強調。運動強化を訴えました。
　「憲法９条を守る和歌山弁護士の会」の芝野友樹弁護士は、同会が１万人アクションを検討していることを紹介。各郡市・団体から「創価学会の人から『公明党にだまされた』という声がでている」「白浜花火大会で青年がアピール行動し大きな反響があった」「ワカモノ憲法集会で何かしたいと声があがりＪＲ和歌山駅前でアピール行動をした。２０人くらいかと思ったら８０人集まってびっくり」など運動の広がりが報告されました。

和歌山／独自ビラ作製
　和歌山県の「９条守れ『戦争法案』反対　海南海草共同センター」は、戦争法案に反対する独自ビラを２万７０００枚作製し、炎天下のなか、海南市・海草郡への全戸配布（一部新聞折り込み）に奮闘しています。
　同センターは６月に海南・海草地方の１７団体で結成。連日宣伝カーを走らせ、９月５日午後４時から海南市燦々（さんさん）公園で市民集会・パレードを計画しています。
　作製したビラは、Ａ３サイズのカラー両面で、戦争法案によって自衛隊員が「殺し殺される」危険性が高まることや、アメリカ言いなりに戦争に参加することなどをイラストも使って告発。
　同地方の人々がビラに登場し、「（和歌山大空襲の後かたづけに通い）お城の堀でたくさんの人が死に、死体は焼き終わっていましたが、黒い物が残り、ひどい臭いが残っていました」など戦争体験を語り、子育てするお母さんたちが「自衛隊だけでなく、子どもも戦場に行くことになって、そこで相手を殺しても、逆に殺されても悲しすぎる」と戦争法案の廃案を訴えています。

滋賀／ポスター作製
　滋賀県の日本共産党湖南地区委員会（石堂淳士委員長）はこのほど、戦争法案の廃案を訴えるポスター（Ａ１判）２０００枚を作製し、街頭に張り出しました。
　ポスターは、１口５００円のカンパに応じた１０１１人の氏名（匿名を含む）が掲載され、「ストップ！　戦争法案」「私たちは、憲法９条を守り　戦争する国づくりに反対します」と書かれています。
　石堂委員長は「戦争法案を食い止めるために、『何かしたい』という市民の思いがたくさん寄せられました。カンパしてくれた人にポスターを届けると、『待ってました』という人もいました」と話します。
(２０１５年０８月０６日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦後７０年／ヒロシマに心寄せて／ポーランド児童文学者ヨアンナ・ルドニャンスカさんに聞く

伝えていくべき記憶
　戦争と平和の問題を子どもたちに語り続け、国際的なコルチャック賞にも輝くポーランドの児童文学者・ヨアンナ・ルドニャンスカさんが、戦後７０年の今年『ヴォイナ（戦争）という名前の女の子の話』という本を出しました。ワルシャワの自宅でその思いを聞きました。
（ジャーナリスト　大内田　わこ＝写真も）
　私の新しい本はヴォイナ（戦争）という名前の、戦争をカッコいいと思っていた女の子が主人公です。戦争が始まり、軍人だった父親は戦場に行き、母と弟と毎日おなかをすかす生活の中で、初めて戦争を実感します。そこへ原爆が落とされて九死に一生を得た彼女は、戦争とは起こしてはならないものなのだということを知り、名前をボクイ（平和）に変え、平和を願うようになるという話です。

孫らの心に響く
　この本を書いているとき、８歳になる孫のヤネックに読んであげました。翌日また読んでほしいと訪ねてきました。被爆した大勢の人たちの死体が川を流れていったという場面が、頭にこびりついたようでした。学校の子どもたちにも読んであげる機会がありました。１２歳ぐらいでしたが、とても心に響いた様子で、恐ろしがっていました。
　子どもたちはプロパガンダ（宣伝）に弱く、戦争のゲームも好きです。放っておくと、戦争はクールと思ったりします。私たちおとなは、戦争は決して素敵なものではないのだということを、事あるごとに伝えなければと思います。
　日本でこの本が読まれるようになれば、とてもうれしいです。私の中にはいつもヒロシマがあります。私は１９４８年、戦後の生まれです。なのに、私の脳裏には廃虚となったワルシャワの街があります。そして焼け野原となったヒロシマの街がそれと重なるのです。ヒロシマのことはいろいろと学びました。山口仙二さんなど被爆者の方の証言を読んだり、ポーランド語に翻訳された『はだしのゲン』も読みました。私の中で、忘れてはならないというのではなく、伝えていくべき記憶となっているのです。

歴史を隠さない
　私たちは今、長い平和の時間を生きています。でも実は世界のあちこちで戦争は起こっているし、それがだんだん近くなっているような気さえします。戦争というのは人類が出合ったもののなかで、最悪のことだと思います。繰り返してはなりません。そのためには、私たち人類が体験したことを、歴史を語り継ぐことです。
　それは、自分が何者であるかを知ることにもつながります。もちろん、若いドイツ人が彼らの祖父や祖母がヒトラーの時代にやったことに、責任を持つべきだなどとは思いません。しかし、どうしてそういうことが起きたのかということを知っていなければならない。歴史を隠せば罪がたまって発酵し、また悪いことが起こります。より良い未来のためです。
　私の友人のオランダ人に「日本の車には絶対乗らない」と言う人がいます。彼女は中国で、日本軍の捕虜収容所に入れられていた。その時のつらい記憶があるからだと言います。日本はヒトラーのドイツと同じような戦争をした。それなのに、いまだ中国にも韓国にも謝っていないし、侵略の事実すら認めていない。それはとても悲しいことです。

友好関係を築く
　ポーランドは、ナチスに攻められた国です。私の母は１６歳で、叔母は１４歳の時、国内軍の兵士として、ナチスとたたかいました。でも、戦争が終わって、ポーランドの司教たちはドイツに手紙を送りました。それには｢私たちは許します｡あなたたちも許してください」と、書いてありました。私たちは被害者であったけれど、最初の一歩を踏み出したのです。ドイツもまた、過去をきちんと清算し近隣諸国との友好関係を築いてきています。
　私は日本もぜひ、この教訓に学んでほしいと思います。

ヤヌシュ・コルチャック賞
　ユダヤ人の小児科医で児童文学作家のヤヌシュ・コルチャック（１８７８～１９４２年）を記念して、ポーランド政府が１９７９年に設けた国際的な賞。同氏が提唱した子どもの権利や福祉のために貢献した作家などに贈られます。『窓ぎわのトットちゃん』の黒柳徹子さんも受賞しています

　ヨアンナ・ルドニャンスカ　１９４８年ワルシャワ生まれ。３人の子育てを終えて数学者から作家に転身。第１作『竜の年』でヤヌシュ・コルチャック賞を受賞。『場所』『ブリギーダの猫』などホロコーストの問題を扱った作品も多く、日本語に訳されている。現在『ヒロシマの夢』というタイトルの作品を執筆中。
( ２０１５年０８月０４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦後７０年プロジェクト／平和つなぐ高校生／未来をキラキラに

　戦後７０年の今年、高校生が「アジア太平洋戦争」に向き合い、平和な「未来」を自分たちの手でつくりあげたいと、仲間を募りながらプロジェクトに取り組んでいます。
　（原田浩一朗）

　題して「高校生・戦後７０年『未来』プロジェクト」。愛知県内の私立高校を中心に約５０校の高校生が参加する「愛知県高校生フェスティバル実行委員会」が発案し、５月に名古屋市で開いた「全国高校生サミット」で呼びかけました。北海道から熊本県まで１２０校以上が参加を表明しています。
　大東学園高校（東京都世田谷区）２年で学年代表委員長の緒方ひめのさんは、「全国高校生サミット」に参加しました。イラク支援ボランティアをつづける高遠菜穂子さんからイラク戦争の話を聞き、「平和が当たり前だと思っていたけど、当たり前にしてはいけない。戦争のことをもっと知りたい」と感じました。
　緒方さんのよびかけで、同校の２年生がプロジェクトへの参加を決めました。２学年代表委員副委員長の齋藤裕紀（ゆうき）さんは、「他人の目を気にすることってあると思うけど、自分たち自身にかかわることがいろいろ起きている。黙っていないで、いいたいことをいっていこう」と訴えます。
　愛知県高校生フェスティバル実行委員会の実行委員長の日比野和真（かずま）さん（名古屋経済大学高蔵高校３年）は呼びかけます。「ちょうど１８歳選挙権が実現したところです。私たち高校生も、主権者として選挙権を行使していきたい。このプロジェクトに参加してください。連絡をまっています」

７０にこだわって
　「未来」プロジェクトは、「平和」をテーマに、「７０」という数字にこだわった取り組みをします。
　①「高校生自転車ピースリレー」
　広島で、核兵器廃絶を願いともし続けられてきた「平和の灯（ともしび）」と、東日本大震災の被災地・宮城県石巻市でともし続けられる「石巻の灯火（ともしび）」の火をカンテラに移し、高校生が自転車リレーで全国７ルートをつなぎ、各地で火を分けていきます。
　７月２７日に岩手県花巻市、８月７日に広島市をそれぞれ出発。８月２９日に名古屋市で最終ゴールを迎えます。（図）
　主な中継地点では、その地域の高校生や戦争体験者などとの交流を企画しています。
　②「７０万羽の折り鶴アート」
　全国から７０万羽の折り鶴を寄せてもらい、平和の思いを込めた折り鶴アート（１０㍍×４・５㍍の壁画）を作成します。完成作品は、１２月１３日に東京・日比谷公園での集会で披露する予定です。
　③「７０人の語り部から聞く戦争体験」
　戦争体験者が高齢化しています。戦争体験を聞き、次世代に受け継いでいきます。
　④「めざせ、７０校！　文化祭戦後７０年企画」
　文化祭、修学旅行、講演など、学校ぐるみ、クラスで、あるいは有志で「平和」をテーマにした企画にとりくみ、インターネットなどで全国に発信します。

全国を自転車でリレー
　「自転車ピースリレー」は７月２７日、全国の高校生が討論する全国高校生交流集会が開かれた岩手県花巻市からスタート。２日に東京に到着しました。
　（記事１４面）
　東北ルート、広島ルート、東海道ルートの主要３ルートを通しで走る４人のうちの１人の坂口花錬さん＝名古屋経済大学高蔵高校２年＝は、出発式でこう決意表明しました。
　「『火』は、平和に似ていると思います。守ろうとしなければすぐに消えてしまう。今の社会は少し暗いなと思っています。
　だけど、一つだけ将来をキラキラにできる方法があると思います。私たち高校生が平和を考え平和のために自ら行動していくことです。そうすれば、ぜったいに未来は、社会はキラキラにすてきになっていくと思います。応援よろしくお願いします」

著名人から賛同メッセージ
　同実行委員会は、全国の私立高校生を中心にした実行委員会と、賛同し応援する父母、教職員などの協力で運営されています。
　実行委員会は、各界の著名人に企画を紹介し、賛同を求める手紙を出してきました。
　７月２７日現在、映画監督の山田洋次氏、大林宣彦氏、俳優の吉永小百合さん、作家で僧侶の瀬戸内寂聴さんなど、７５人から賛同のメッセージが寄せられています。

【問い合わせ先】
愛知事務局　０５２(８８１)４３４６（愛知私学会館内）
東京事務局　０３(３２６４)８０１１（全国教育文化会館内）
メールアドレス　ｓｅｎｇｏ７０ｐｒｏｊｅｃｔ＠ｙａｈｏｏ．ｃｏ．ｊｐ
プロジェクト公式サイトは、ｈｔｔｐ：／／ｗｗｗ．ａｓｋ－ｎｅｔ．ｊｐ／７０ｔｈ／
( ２０１５年０８月０３日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

元首相が談話に注文

　福田康夫元首相は３１日、兵庫県淡路市で講演し、安倍晋三首相が８月に発表する戦後７０年談話について「日本は戦後の清算をしていない。７０年何をやってきたのか、残念至極だ。談話では過去を清算するようなものを出してほしいと期待している」と述べました。
( ２０１５年０８月０１日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

「玉音放送」原盤公開

　宮内庁は１日、戦後７０年に当たり、昭和天皇が１９４５年８月１５日正午にラジオで国民に終戦を伝えた「玉音放送」の原盤（玉音盤）と、そこからデジタル録音した音声を初めて公開します。
　昭和天皇が終戦を決断した「御前会議」が開かれた皇居の防空壕（ごう）についても、５０年ぶりに写真や図面などの資料を公開。いずれも宮内庁のホームページに掲載しています。
( ２０１５年０８月０１日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

【７月】

３１ 春名参院候補、街頭で訴え／独裁政治を打ち倒そう／高知

　日本共産党高知地区委員会は２９日、春名なおあき参院比例候補を先頭に、高知市で、「戦争法案を許さない」と街頭宣伝しました。猛暑の中、県庁前やスーパー前など８カ所で行いました。
　春名氏は、安倍政権が日米安保条約と自衛隊があったおかげで一人も戦死者を出さなかったと説明していることに対し、「何度も自衛隊が派兵される中、戦死者が出なかったのは憲法９条があったため。憲法９条こそ抑止力だ」と強調しました。
　「法的安定性は関係ない」との礒崎陽輔首相補佐官の暴言について、「憲法なんてどうでもよい」という安倍政権の本音が出たものだと指摘。「戦後７０年談話、ＴＰＰ（環太平洋連携協定）、原発再稼働など、国民の意にそわない政治ばかり。『アベ政治を許さない』の声を大きくし、独裁政治を打ち倒そう」と呼びかけました。
　高知大学がある朝倉では学生や通行人から手が振られ、多くのエールが送られました。
飲み物を差し入れた女性（７１）は「春名さんを国会へ送り、安倍政権を打倒したい」と語りました。
(２０１５年０７月３１日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

岡崎空襲と戦争展／８月４日まで／愛知

　愛知県岡崎市の図書館交流プラザりぶらギャラリー１０３号室で「２０１５戦後７０年～岡崎空襲と戦争展」が開かれています。「戦後７０年　岡崎空襲と戦争展実行委員会」の主催。８月４日（火）まで。入場無料。
　１９４５年７月１９日未明から米軍の空襲をうけ、死者２０７人、行方不明者１３人、被災者３万２０６８人、岡崎市中心部の主な施設がなくなりました。
　会場には戦争の遺品や写真など約１００点を展示。８月３日には戦争体験を語る会や平和アニメ映画の上映会が行われます。
(２０１５年０７月３１日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

試写室／玉音放送を作った男たち／ＮＨＫプレ８月１日後７・３０／狂気と未来への希望が交錯

　１９４５年８月１４日、日本はポツダム宣言を受諾、降伏。その内容を国民に伝える昭和天皇の詔書を翌１５日、天皇自身がラジオで朗読（玉音放送）するまでを描きます。脚本、演出・佐藤善木。
　主人公は下村宏（柄本明）。朝日新聞副社長、日本放送協会会長を歴任するなど多彩な経歴の持ち主です。終戦の年の４月、鈴木貫太郎首相（上田耕一）に請われ、内閣情報局総裁として入閣します。任務は絶望的な戦争を終結することです。下村は、そのためにも天皇のラジオ出演が不可欠と訴え、実現にこぎつけます。本土決戦を叫び、放送を阻止しようとする畑中少佐（高橋一生）ら反乱軍との緊迫の対峙（たいじ)｡狂気と、未来への希望が交錯します。
　戦争は終えることがいかに難しいかがわかります。しかし天皇も含めた戦争指導者が、なぜ終結の決断を引き延ばし、多くの国民を死に追いやったのか、そこへの切り込みは弱い。さらにラジオ＝日本放送協会が戦争で果たした役割への批判はうかがえますが、自己反省までには行き着きません。戦後７０年。何が戦争という狂気を生んだのか、描くべきことは多い。
　（荻野谷正博　ライター）
( ２０１５年０７月３１日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

いま声をあげるとき／戦争のこと平和のこと／香川京子さんに聞く

　俳優として６５年の足跡をきざんできた香川京子さん。戦後７０年の夏に、戦争と平和についての思いを語りました。

　終戦を迎えたのは１４歳のとき、疎開先の茨城の潮来（いたこ）で女学校に通っていました。空襲にも遭わず、親せきが戦死したわけでもなく、そんなにたいへんな思いをしたことはないんです。それでも１０月に東京へ帰って、池袋の駅を降りたら一面焼け野原、何にもないのでショックでしたね。

「ひめゆりの塔」に
　私が戦争の悲惨さ、平和の大切さを強く感じるようになったのは、今井正監督の映画「ひめゆりの塔」（１９５３年）に出演させていただいたのが最初です。デビューから３年目、ひめゆり学徒隊の女学生役でした。
　今井正監督は「沖縄戦の悲劇を日本中の人に知ってもらいたい」というお気持ちで「ひめゆりの塔」を撮られました。出演者の１人だった私にも大きなものを残してくれた忘れられない映画です。
　戦後３５年の８０年には、中国残留孤児を紹介する民放の番組で、北京に孤児だった方を訪ねました。ＮＨＫのドラマ「約束の地」（８３年）では、被爆した主人公の役でした。渡辺美佐子さんたち女優さんが、被爆された方々の詩を朗読する「夏の雲は忘れない」にも一度だけ参加させていただいたことがあります。
　仕事を通して体験して、どれもひとごととは思えないんですね。戦争は殺し合いです。殺さないと、自分が殺される。戦闘だけではなくて、飢え死に、マラリアなどの病気で亡くなった方もいらっしゃいます。生き残っても心の傷は残ります。早く戦争が終わっていれば、ひめゆりの悲劇もなかったし、広島や長崎の原爆もなかったでしょう。国は国民の幸せを守ると口では言っていても、いざとなったら守ってくれません。それが戦争です。自由にものを言ったり、国と違うことを言ってはいけなかった。
　ひめゆり学徒隊の方たちとお付き合いするようにもなりました。学徒隊のおひとり、与那覇百子さんと一緒に、各地の学校などで沖縄戦のことをお話ししたことがあります。「なぜ、戦争を止めることができなかったの？」と尋ねられました。「もしも戦争が起こりそうになったら、ちゃんと声をあげなくては」と思っていたけれど、その日がこんなに早く来るとは思わなかった。黙っていられなくて、お話ししたり、映画人九条の会にも参加しています。

沖縄の声を聞いて
　沖縄戦では４人に１人が亡くなりました。なのに沖縄にまた基地をつくるといいます。沖縄の人たちの反対の声を聞くことはできないんでしょうか。
　最近、「沖縄うりずんの雨」というドキュメンタリー映画を観（み）て、沖縄戦から始まった、沖縄の人々の苦悩の深さに心が痛みました。
　いま、私は語り部としていろいろなところへ出かけています。去年、ソウルの国際女性映画祭に参加しました。私が出演した「ひめゆりの塔」「おかあさん」「モスラ」などを上映して、お話をさせていただいたんです。子どもたちが「モスラ」の歌を口ずさみながら帰っていったという話を聞いて、映画でつながっていける、映画っていいなと改めて感じました。
　聞き手　渡辺俊江
( ２０１５年０７月３１日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

「戦後７０年企画」６０本超す作品／東京・池袋の新文芸坐で上映中

　東京・池袋の新文芸坐では、「戦後７０年企画」として３部構成で６０本以上の作品を上映中です。
　第１部「映画を通して検証する　戦後日本の歩み、１１の断面」＝８月８日まで｡｢日本の悲劇｣（木下恵介監督）「映画　日本国憲法｣(ジャン・ユンカーマン監督）など。６日は､｢新藤兼人平和映画祭｣として､同監督の｢原爆の子｣｢一枚のハガキ｣の上映とトークショー。
　第２部「映画を通して検証する　日本の戦争　今こそ、反戦平和の誓いをこめて」＝１２～２５日。「真空地帯」（山本薩夫監督）、「私は貝になりたい」（橋本忍監督）、「海軍特別年少兵」（今井正監督）など２７本。トークショーも。
　第３部は９月に予定。
　問い合わせ・新文芸坐℡０３(３９７１)９４２２
( ２０１５年０７月３１日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

平和美術展８月１２日から／戦後７０年の願い集めて多彩に

　戦後７０年のことし、思想・信条・流派の違いを超え、平和への願いを集めて開かれてきた平和美術展が改めて注目されています（主催・美術家平和会議）。絵画、彫刻、写真、書、生け花など多彩な作品が出品されます。
　写真は、今回の実行委員長、ねなしかづらさんの「であい」。ことしの同展ポスターです。１０年前、書家・ねなしかづらさんの参加で書道コーナーを創設。ことし、書家では初の実行委員長になりました。「戦争がさらに近づいていると感じます。たくさんの方に見ていただき、平和の大切さを再確認してほしい」と語ります。
　海外や、日本在住の外国人作家たちが出品する「国際コーナー」も。日本原水爆被害者団体協議会の協力を得て、亡くなった被爆者を描き、展示する「被爆者肖像画」（この絵は同展終了後、遺族に贈られます）などは、同展ならではの企画です。
　１５日午後２時から、「平和美術展と私」と題して、６人の作家によるギャラリートークが行われます。１５日午前、１６日午後、各展示コーナー別の交流会が開かれる予定です。
　◇
　「第６３回平和美術展」８月１２～２０日（１７日休館）。東京都美術館（ＪＲ上野駅公園口７分）。入場料・７００円。連絡先・同展事務局℡０３（３９３１）２０８９吉田巳蔵方。会期中℡０８０（２０５８）８５３４米村
( ２０１５年０７月３１日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

〝どの作品にも反戦が〟／寂聴さんがあいさつ／長崎で来月末まで展示会

　戦後７０年、被爆７０年の節目を迎える被爆地・長崎市の長崎県美術館で、作家、僧侶として平和の尊さを訴え続けてきた瀬戸内寂聴さん（９３）の作品、ゆかりの品々を展示する特別展が開かれています。８月３１日まで。主催は、長崎新聞社と同美術館。
　初日の２５日、開場式が行われ、あいさつに立った瀬戸内さんは、長崎での開催への喜びをのべるとともに、「最近の国の状態は再び戦争がありそうな不安な感じがします。私が書いてきた４００冊以上のどの小説・随想にも根本的に戦争反対が込められていると思います。死ぬまで戦争しちゃいけないということを叫び続けていきたい」と語りました。
　特別展は、瀬戸内さんの著書のほか水上勉さんら多くの作家からの書簡など全部で約２００点を展示。「寂聴さんの生き方に学ぼうと思って」と、諫早市から訪れた高橋ユリエさん（９３）は「広島出身で、私も、いとこや何人もの親類を原爆で失いました。二度と戦争だけはという気持ちは寂聴さんと同じ」と話していました。
(２０１５年０７月３０日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

市民が「戦後７０年宣言」／歴史認識を問う全国報告会

　安倍晋三首相が発表する予定の「戦後７０年談話」とは別に、各地の市民団体が侵略戦争を直視し、平和への決意を表明する「戦後７０年市民宣言」を発表しています。２９日、衆院第１議員会館で「戦後７０年市民宣言　～安倍首相の歴史認識を問う～全国報告会」が開かれました。
　北海道、埼玉、東京、富山、愛知、大阪、広島で「市民宣言」を出している市民団体の各代表が報告しました。
　「民衆が戦争に動員され、加担していった歴史を考えていかなければいけない情勢だ」（埼玉）、「戦争を起こした責任と、戦後、責任を放置してきた事実がある」（愛知）、「原爆という無差別殺りくに対し、米国へ責任を問いたい。加害と被害の戦争責任は絡み合っている」（広島）などと語りました。
　内海愛子恵泉女学園大学名誉教授は、報告を聞き、「加害者としての責任、植民地支配をどう清算するのかが重要なキーワードです」とのべました。
( ２０１５年０７月３０日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦後７０年・沖縄／伊江島の記憶／下／島ぐるみの土地闘争へ

　伊江島の家を奪われた人たちは、米軍があらかじめ張っていたテントで寝泊まりしました。雨が降ると、テントの中は水浸しになりました。米軍は、１人あたり１日２１円という救済費を支給しましたが、留置場の１人１日３０円にも満たない、生活できないものでした。

「屈辱に満ちた日」
　阿波根昌鴻（あはごん・しょうこう）さんは、武装米兵によって真謝（まじゃ）地区の家々を壊された１９５５年３月１４日を、自著『米軍と農民』に「屈辱に満ちた日」と記しています。
　島民は同年４月３０日、中学校の校庭で村民大会を開き、即時、柵の撤去、爆撃演習の中止、損害賠償を求める決議をしました。１０月中旬には、村役場に村議会議員、土地委員、真謝・西崎両地区の幹部数人が集まって協議。土地委員長は「議会も土地委員会も一昨日初めて知って驚いた。これは村の大問題だ」とあいさつしました。こうして、米軍の土地取り上げに対して、全島民の運動に発展していきました。
　平安山良有（へんざん・りょうゆう）さんは、「戦争中、島民は全員、島を追われ、収容された慶良間（けらま）では、食べるものがなく、ソテツを食べました。それも十分にはないため、草でも何でも食べました。島のみんなはそういう体験をしているので、真謝だけの問題ではないと受け止めたのです」と語ります。

半年間訴えて回る
　５５年３月、真謝地区の代表が那覇の琉球政府前で座り込みを行い、７月２１日以降は、本島各地で乞食（こじき）の格好をして行進を行いました。「乞食をするのは恥ずかしい。しかし、土地を取り上げ、われわれに乞食をさせる米軍はもっとはずかしい」と書いたのぼりをもって半年間、訴えて回りました。
　この訴えは大きな反響を呼び、訴えを聞いた人たちが涙し、家に戻って米や食料を持ってきて、差し出す人が相次ぎました。
　これが、後に沖縄中を巻き込んだ島ぐるみの土地闘争につながっていきました。
　阿波根さんは、日記にたたかいの日々を克明に記録していたといいます。しかし、展示品の中には見当たりません。
　資料館「ヌチドゥタカラの家」の謝花（じゃはな）悦子館長は、「阿波根は、本当によくメモをする人で、ちらしの裏や割りばしの入っていた袋にもびっしりメモしていました。記録類は、現在、デジタル化し、永久保存するため、調査会に委託しています。いつごろ完了するのか見通しを聞きましたが、まだ、手のついていないのが一山あるということでした。４、５年はかかるかもしれませんね」といいます。
　平安山さんも謝花さんも、今年５月に那覇市で開かれた「戦後７０年　止めよう辺野古新基地！　沖縄県民大会」に参加しました。大会に参加して、こういうたたかいを続ければ県民は必ず勝てる、と確信した謝花さん。「阿波根と伊江島の人たちが築き上げた土地を守る闘争の中に、今日の辺野古新基地建設阻止の運動を発展させる上で参考になることが、多々あるように思います」
　（おわり）
( ２０１５年０７月３０日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

村山氏が談話に苦言

　村山富市元首相は２９日、日本外国特派員協会で記者会見し、安倍晋三首相が８月上旬にも発表しようとしている「戦後７０年談話」について、「なぜ談話を出す必要があるのか」と苦言を呈しました。
　村山氏は、戦後５０年の村山首相談話（１９９５年８月１５日）について、「過去の歴史に対する認識をきちんと示し、悪かったことは悪かったとおわびする。そして、過ちを二度と繰り返してはならないという思いを明確にして、これからの方針を示したものだ」と強調。「アジアの中で孤立した国になってはいけないと考え、戦後５０年の節目に締めくくりの意味で談話を出した」と振り返りました。また、「首相個人の談話ではなく閣議で決めて、政府の談話として出したもの」と強調しました。
　その上で、安倍首相が村山談話を「すべて継承するわけではない」と述べていることについて、「なぜ７０年談話を出す必要があるのか。出すのならば歴史問題を踏襲した形できちっとしたものを出す必要があるといった意見もある」と指摘。「安倍首相は、できれば歴史問題については触れたくないという気持ちがあるのかもしれない」と語りました。
( ２０１５年０７月３０日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

北海道平和美術展／表現さまざまに／きょうから開催

　「北海道平和美術展」が札幌市の市民ギャラリー（南２条東６）で２９日から始まります。４０回目を迎える今回は、絵画、書、彫刻、工芸、幼稚園からの出品など１１３人、２８１点の作品が展示されています。
　８月２日は午後１時から札幌郷土を掘る会の小松豊さんが「手稲鉱山と札幌の朝鮮人強制連行・強制労働」と題して講演します。
　事務局長の伊藤恵美子さんは「４０回目と戦後７０年ということもあり作品数がいつもより多いです。表現の自由は平和でないと守れない。私たちの美術展は作風も主張もバラバラで受け取る人が自由に受け取って個性を楽しんでもらいたい」と話しました。
　美術展は２日（日）まで（午前１０時～午後６時、最終日は４時）。
(２０１５年０７月２９日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦争法案止める／行動各地で／山形／北海道／宮城

シール投票／廃案が圧倒／山形
　山形県の戦争法案成立阻止県民運動実行委員会は２７日、ＪＲ山形駅で戦争法案の廃案を求める署名行動を行い、昼の３０分間の行動で４９人から署名が寄せられました。
　１２歳の男子中学生は、「たくさんの反対を押しきっての採決はおかしい」と署名。マンガで戦争法案を告発する宣伝物をもっと欲しいとたずねる男子高校生のグループもいました。急ぎ足でカートを引いていた女性も立ち止まって「これ（戦争法案）だけはやめてほしい」と署名しました。
　シール投票も実施。「廃案にすべき」「今の国会で成立させるべきでない」「今の国会で成立させるべき」の３択で対話を繰り広げました。「成立させるべき」を選んだ人はゼロ。「廃案」が５０で圧倒的多数、「見送るべき」は３でした。

母の声から集会が実現／北海道
　「戦争法案を必ず廃案に」と道内各地で共同が広がっています。
　富良野市では２５日、原水爆禁止富良野地区実行委員会、富良野地区連合、ふらの９条の会が共同して「戦争させない富良野集会」が開かれました。二十数年ぶりの共同開催です。
　子を持つ若い母親から「平和な社会を守ったよと伝えられる母親になりたい」との声に応えて実現したもの。１１５人が参加し、８５歳の戦争体験者や青年、母親、労働者らが「戦争法案反対」を訴え、デモ行進。日本共産党の米沢義英上富良野町議も参加しました。
　函館市では２４日、「やめるべ戦争函館金曜行動」が行われ、６０人が参集しました。
　北海道教育大学函館校の教授や中小業者社長、弁護士らが中心となり、個人・団体を問わず「戦争法案に反対する」一点で一致して廃案までがんばろうと始まったものです。
　参加した若い主婦は「安倍首相は子どもを戦場に送ろうとしている。こんな国は愛せない」、学生は「安倍さんの集団的自衛権の例え話は全くおかしい」と話しました。日本共産党の市戸ゆたか市議は「世論をさらに広げ最後まで頑張ろう」と訴えました。

２００人超集い／運動今こそ／宮城
　宮城県大崎地域で、大崎教職員九条の会が呼びかけ、８団体が連絡会を結成して２５日、「戦争法案反対大崎のつどい」を開き、２００人を超える市民が会場狭しと集いました。
　自由法曹団の小野寺義象弁護士が、「日本国憲法と戦争法案を考える」と題して講演。戦争法案の本質が日本の自衛隊をアメリカの戦争に参戦させることにあると指摘し「安倍政権の思惑が狂い始めている今こそ、全国で国民運動を燎原（りょうげん）の火のように広げよう」と呼びかけました。
　「戦後７０年、近代立憲主義をいち早く唱えた吉野作造誕生の地、ここ大崎に生きるものとして、憲法を踏みにじる戦争法案を廃案に追い込もう」とアピールを決議、デモ行進しました。
(２０１５年０７月２９日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦後７０年・沖縄／伊江島の記憶／中／銃口向けられ土地奪われた

　伊江島の資料館「ヌチドゥタカラの家」の入り口の壁には、血痕の付いた赤ちゃんの服が掛けられています。「この資料館ができたときに、阿波根（あはごん）は真っ先に持って来られました。自宅で保管していたのです。固く絞られていたのを、ちぎれないように慎重に伸ばしました」と館長の謝花悦子（じゃはな・えつこ）さんはいいます。

赤ちゃんの着物を
　そのいわれは―。
　あるとき、阿波根昌鴻（しょうこう）さんは、日本軍の隊長のいる壕（ごう）に来るよう命じられました。「あんたはスパイとして殺される寸前だった。だが、あんたはどう見てもスパイをするような人間じゃない。私のもとなら殺されることはない。それで連れてこいと命令した」と隊長は阿波根さんに言いました。阿波根さんは、伊江島でただ一人の外国帰りだったため、スパイとみられ、殺されかかったのでした。
　阿波根さんは、しばらく隊長のいる壕にいましたが、あまりに激しい米軍の攻撃に、奥さんが、ここにはいられないというので、隊長に断って別の壕に移りました。
　移った壕では、日本軍が子どもを探して片付けようとしているという情報が伝わってきました。そのため、乳飲み子を抱えた女性が、子どもを殺されることを恐れて壕を出ました。
　心配になった阿波根さんは、後をついて行きました。数百㍍も行かないうちに２人の日本兵が現れました。
　日本兵は、銃剣で女性の手をたたき、赤ちゃんをたたき落としました。赤ちゃんは即死で、お母さんもショック死しました。
　「阿波根は、女性の手に残っていた赤ちゃんの着物をはずして持ち帰ったのです。米軍の砲弾の中で、命の危険も顧みずに、です。阿波根の深い思いがあったのだと思います」
　伊江島を追われた島民が戻ることを許されたのは、１９４７年３月。復興が始まったのも束の間、米軍は５４年６月、真謝（まじゃ）区の４戸を立ち退かせました。

島民の苦難始まり
　平安山良有（へんざん・りょうゆう）さんは、「このときは、基地の中でも農耕をさせる、損害も補償するとのことだったので、とくに反対運動を起こすことはなかった。土地を取り上げられた４戸が生活に困らないように、みんなで支えることにしていた」といいます。
　この４戸の立ち退きは、島民の苦難の始まりでした。米軍の射撃演習の目標をつくるために農作物がブルドーザーですきとられ、スイカ畑が演習の爆弾で焼かれました。９月末には、１５３戸の立ち退きが命じられました。
　５５年３月１１日、約３００人の武装した米兵が真謝地区に突入。米兵が農民に銃口を向ける中、ブルドーザーで民家を取り壊し、火をつけて焼きました。
　平安山さんは言います。「私は、数日後にその現場を見ました。妻から聞いたのですが、妻のいとこの家では、子どもが熱を出して寝ているから少し待ってくれと嘆願したのに聞き入れられず追い出され、家財道具も放り出されました。あまりにも非人間的な仕打ちです」（つづく）
( ２０１５年０７月２９日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦後７０年・沖縄／伊江島の記憶／上／激しい地上戦、４７００人死亡

　辺野古新基地建設ストップへ沖縄県で広がる「島ぐるみ」のたたかい。この県民あげてのたたかいの源流の一つとして語られるのが、１９５０年代に米軍によって土地を取り上げられた伊江島の農民が生死をかけて抵抗した闘争でした。
　（尾崎吉彦）

　平安山良有（へんざん・りょうゆう）さん（８４）。沖縄本島北部の本部港（本部町）からフェリーで３０分の伊江島の西側、米軍基地のそばで農業を営んでいます。
　１９５０年代、故・阿波根昌鴻（あはごん・しょうこう）さんとともに伊江島の「土地を守る会」を結成し、米軍の土地取り上げにたいする非暴力の抵抗に取り組みました。
　１９４５年の沖縄戦のときは、国民学校の４年生でした。４３年に伊江島飛行場の建設が始まり、工事に村人全員が動員されました。４４年１０月１０日の米軍の空襲は、沖縄全県で大きな被害がでましたが、伊江島は、とくにひどい空襲を受けました。真謝地区（現在、米軍基地になっている）にあった平安山さんの家は被災を免れましたが、その後も空襲が続き、自宅で暮らすことはできず、一家は壕（ごう）に入りました。

４人に１人が死亡
　「軍が入っていない小さな壕でした。父は、戦争は軍隊がするもので、農民がするものではないと言っていました。それで、兵隊と一緒の壕を避けたようです。ずっと後で知りましたが、民間人が軍と一緒にいた壕では、『集団自決』など、悲惨な事件が起きています」。
　４５年４月１６日に米軍が伊江島に上陸。激しい地上戦が繰り広げられ、６日間の戦闘で住民を含め４７００人余が死亡。島民の４人に１人が、空襲と艦砲射撃、「集団自決」、餓死などで亡くなったといわれています。
　島を制圧した米軍は島民を全員捕まえ、捕虜として慶良間（けらま）、渡嘉敷島、名護市辺野古などの強制収容所に送りました。島民が伊江島に戻れたのは２年後で、その間に、米軍は基地の建設を行いました。
　帰島したとき、島の中心の城山（ぐすくやま）には木一本生えていませんでした。米軍の艦砲射撃がいかに激しかったかを物語ります。
　「島の復興は、遺骨を拾うことから始まりました。数年たっても崖下や草の茂みから年に１体、２体と遺骨が出てきました」と平安山さんは言います。

土地守るたたかい
　伊江島にある反戦平和資料館「ヌチドゥタカラの家」。８４年の開館から現在まで３１年間、ほとんど休館することなく、伊江島の戦中・戦後を伝え続けています。
　伊江島での土地を守るたたかいの中心的存在であった阿波根さんの遺品をはじめ、米軍の土地取り上げと農民の窮状を訴える行進の際に身にまとった、ぼろぼろの服や、沖縄戦で使われた砲弾・薬きょうなど、数多くの資料が展示されています。
　（つづく）
( ２０１５年０７月２８日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

ひと／沖縄戦後７０年をテーマにした展覧会を企画・主宰西尾祐馬さん（２０）

　「歴史の風化を放っておくわけにはいかない」。在学する沖縄県立芸術大学の学生たちと、沖縄戦後７０年を考える展覧会を企画･主宰しました｡
　当初は「戦争を体験していない僕らが扱うことにためらった｣と｡しかし集団的自衛権や愛国心を助長するメディアの風潮に不穏な空気を感じ、「閉口してはいけない」と強い義務感に駆られました。
　「われわれのリアル展」と題した展覧会では「Ｒｅｄ　Ｓｕｎ」シリーズを発表。白いキャンバスの中央に赤い風船、隣には鉄条網で覆われた扇風機。日の丸を想起させる風船は米軍機を意識したプロペラの風にあおられます。「米国政府の意のままに揺れ動く日本政府の虚構性を表した」。アクリルケースの中で腐敗していくトマトや、ショートケーキで歯を磨く映像など、思考を呼び覚ます作品が並びます。「身近な素材を用いることで政治に関心を持つ導入になれば」。柔軟で鋭い感性には驚かされます。
　兵庫県出身。高校の修学旅行で訪れたフランス国立近代美術館で、２０世紀を代表する彫刻家、コンスタンティン・ブランクーシの独創的な抽象表現に感銘を受け、美術の道を志します。２０１２年に県立芸大彫刻専攻に入学。精力的に展覧会を開きます。
　将来の目標は？「美術には世界を変えられる潜在的な力がある。現代美術家として僕がそれに寄与できれば」。物静かなたたずまいに秘めた情熱と大志を感じました。
　文・写真　星野　淳
( ２０１５年０７月２７日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦後７０年に思う／演劇と戦争は相いれぬ／原爆の犠牲になった桜隊の俳優たち／桜隊原爆忌の会会長神山寛さんに聞く

　広島に投下された原爆の犠牲者の中に移動演劇隊・桜隊の９人がいました。戦後、その死を悼む桜隊原爆忌が俳優たちによって毎年営まれています。俳優で桜隊原爆忌の会会長の神山寛さんに思いを聞きました。
　（隅田哲)

　桜隊は１９４５年６月に東京から広島に疎開し、中国地方で芝居を巡演していました。８月６日朝の原爆投下時、広島市内の事務所兼寮にいた桜隊のメンバーは、丸山定夫、園井恵子、仲みどり、森下彰子、羽原京子、小室喜代、笠絅子、高山象三、島木つや子の９人でした。

どれだけ豊かに花を咲かせたか
　爆心地から約７５０㍍。桜隊の建物は倒壊し、火炎に包まれました。脱出できたのは丸山、園井と高山、仲の４人。あとの５人はこの場所で亡くなりました。丸山たちも高熱や皮下出血など放射線による急性症状のため２０日以内で亡くなりました。
　当時４０歳の丸山は桜隊の中心で、築地小劇場を経て新築地劇団を結成するなど新劇で活躍するだけでなく、映画にも出演して存在感のある演技が定評でした。３１歳の園井は宝塚歌劇団の男役スターとして活躍し、退団後は稲垣浩監督の映画「無法松の一生」に出演して名声を高めていた矢先でした。丸山や園井たちが原爆に遭わなかったら、戦後どれだけ豊かに花を咲かせていたことでしょう。
　桜隊はなぜ広島にいたのか。戦時中、報道や文化分野を統制していた内閣情報局は１９４１年、「日本移動演劇連盟」をつくりました。各地で戦意高揚の芝居を上演するため演劇人に協力させる組織でした。軍国主義の当時、自由に演劇はできませんでした。国の方針に従わない劇団は強制的に解散させられました。芝居で生きていくには国に従うことを余儀なくされた時代でした。
　丸山らは自分たちの劇団苦楽座をいったん解散させて苦楽座移動隊をつくり４５年１月、移動演劇連盟に加盟しました。６月に名前を桜隊に変え広島に向かいました。「満州開拓」という国策を題材にしつつ、封建的な農村を舞台に結婚の自由を描いた三好十郎の「獅子」を上演し、成功させましたが、自由に演劇ができる日をどれほど待ち望んだことでしょう。

演劇人の教訓を戦争法案阻止へ
　桜隊原爆忌が始まったのは１９７５年からです。それまで犠牲者の親族や関係者で法要が続けられてきましたが、この年に桜隊原爆忌の会がつくられました。結成を担ったのは、原爆投下時広島を離れていた桜隊の隊員や丸山らと親交のあった演劇人たちです。歴代の会長は、藤原釜足、佐々木孝丸、小沢栄太郎、滝沢修、浜村純、中村美代子。みな故人となりました。
　以来、核兵器廃絶と平和の願いを込め、東京・目黒の五百羅漢寺で近年は毎年８月６日に開いています。追悼だけでなく、桜隊に関する催しや朗読劇などもしています。
　私は２年前から会長を務めていますが、桜隊のことを知ったのは約５０年前です。先輩の俳優で丸山の盟友だった永田靖が追悼の碑をつくる運動をしているときでした。原爆の非道さと桜隊のことを忘れてはいけないという気持ちから原爆忌にかかわっています。
　平和でこそ自由に演劇ができます。二度と戦争をしてはいけないし、残虐な核兵器は廃絶しなければならない。戦争に導く政治を許してはならない。桜隊の犠牲から演劇人がくみとるべき教訓だと思います。だからこそ今、安倍内閣が成立をねらう戦争法案を阻止しなければなりません。同時に日本が過去にした戦争の歴史を若い世代にも伝えていく必要があります。演劇と戦争は相いれないのです。

　かみやま・ひろし　１９３２年生まれ｡５５年劇団俳優座入団｡朗読劇「戦争とは…２０１５｣(３０日～８月２日､俳優座)に出演｡
( ２０１５年０７月２７日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦後７０年に思う／２度の撃沈を生き延びて／歴史の真実が未来照らす／考古学者大塚初重さんに聞く

　考古学者の大塚初重さんは、いまでは数少ない戦争体験者です。「建国神話」を信じ、「神風が吹く」と信じていた少年は戦後、日本の古代史を実証的に明らかにする道に進みました。
　（西沢亨子）

軍隊賛美の空気
　僕が生まれたのは昭和元年、太平洋戦争が始まった年は１５歳です。振り返ってみると、その頃の世の中の空気は、戦時下というよりは軍隊賛美という感じでした。戦車が通るのを見て血沸き肉躍る思いでね。朝日新聞社の飛行機・神風号が長距離飛行に成功した（１９３７年）のを記念して、ボーイスカウト何千人かで靖国神社の大村益次郎（日本の近代軍制の創始者）の像から靖国通りを行進したのも覚えてますよ。
　今の北朝鮮みたいなものでしょう。新聞に載った大元帥陛下（天皇）の写真を年寄りは手を合わせて拝んでました。小学校から旧制商業学校まで天照大神や神武天皇の建国神話を歴史として教えられ｢神国日本｣の不滅を信じていました。

吹かない「神風」
　「あやしいぞ」と思いはじめたのは、中国に渡る輸送船が２回撃沈され、それでもまた乗せられたあたりからです。１９４５年の４月、一等兵曹として海軍気象部に所属し上海に渡ることになりました。１回目は、佐世保を出て済州島沖に仮泊中です。約５００人がすし詰め。本来、荷物を積む船底に３００人ほどが詰め込まれ、僕はその中２階のようなところで寝ていました。深夜、米潜水艦の魚雷が突っ込んできて船の前部に当たり、積んでいた魚雷が誘爆。階段が吹っ飛び船底から甲板に上がれなくなってしまった。
　甲板まで４㍍以上。目の前に下がっていたワイヤーに飛びつきました。そしたら、５、６人が僕の体にしがみついてきた。必死でそれを蹴飛ばした。下は火の海です。自分は、生きたいために何をしたのか。忘れません。板につかまって海を漂い、気づくと済州島の浜、島民に助けられました。３２人の仲間のうち２０人が死にました。
　ところが救援艦で門司に戻ると、「もう一度行け」。翌日船に乗せられ、港を出て４時間後には機雷にふれて撃沈。ボートの縁につかまって漂流し救助されました。
　３回目は博多港を出て、１００％死ぬと思っていたのが、釜山についてね。５月２７日に上海の陸軍飛行場に着くと高射砲がずらっと並んでいる。「さすがは大陸の日本陸軍」と近づくと、丸太を黒く塗ったものでした。
　「神風なんて吹かない」「真実の歴史を学ぶ必要がある」―８月１５日がくる前にそう思っていました。

事実で裏付ける
　捕虜生活の後に帰国し、明大の夜学部に学び、縁もあって研究者の道を歩いてきました。土を掘りながら自分の手で歴史の事実を明らかにしていると思うと、戦死した仲間を思い涙がこぼれました。
　考古学は発掘で裏付けられた事実から、人間がいかに生きてきたか実証的に明らかにするものです。群馬の榛名山麓では、田んぼが５０㌢くらい火山灰で埋まって、その灰を掘って、わきに火山灰の山ができている遺跡がある。村人が懸命に噴火とたたかった跡です。先人のたたかいの連続線上にわれわれはいると実感します。
　足跡からも、例えば田んぼで３人が同じ方を向いた足跡から、これは親子だとか稲刈りだろうとか労働形態もわかってくるんです。
　過去を客観的に見つめることが、未来を考えるために絶対に必要です。
　考古学では、つねに知識が塗り替えられます。一時は否定されたことが、新たな発見で、「やはりこれでいい」となることもある。
　前方後円墳というのは古代日本独特のものですが、韓国の全羅南道には前方後円墳が１４基もあるんです。埋葬されているのは百済の有力者か日本の王か。日韓の考古学者で議論がありますが、研究の進展でいずれ明らかになり、新たな歴史が見えてくるでしょう。

　おおつか・はつしげ　１９２６年、東京生まれ。明治大学名誉教授。登呂遺跡をはじめとして多くの遺跡を発掘。日本考古学協会会長、山梨県立考古博物館館長など歴任。近著に『古代天皇陵の謎を追う』
( ２０１５年０７月２０日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

文芸時評／柴田三吉／戦争体験継ぐ「物語」の力／芥川賞「火花」に文学の熱

　戦後７０年の８月号。各文芸誌は戦争の問題をどうとらえているか。期待して手にしたが、特集を組んだのは『すばる』と『民主文学』の２誌だけだった。

特集は２誌のみ／充実の『すばる』
　鼎談１本、対談３本を掲載した『すばる』は充実した内容だ。赤川次郎＋高橋源一郎の対談は、父母の世代が体験した戦争をどう受け止めたかを軸に語り、庶民がこうむった傷を、物語として提示する必要を説く。それは、資料では見えない真実を前に押し出すことだろう。高橋氏は「僕たちは戦争に行った人たちの話をダイレクトに浴びて育った」と言い、赤川氏も「私たちは物語を聞いているわけです。その物語は、ちゃんと人間が生きているんです」とこたえる。
　石内都＋青来有一の対談では原爆の悲惨が語られる。石内氏は被爆者の遺品を撮影し、物がはらむ物語を喚起してきた写真家だ。「ワンピースの彼女やスカートをはいていた彼女たちのために美しく撮ってあげよう」という言葉が胸に残る。また今日マチ子・小林エリカはともに３０代の漫画家、作家。アンネ・フランクを通して戦争を内面化してきた両氏も、その過程で物語の大切さに気づいたという。戦争の記憶から遠くなりつつある、若い世代が示す、他者の傷への想像力に希望を持った。

独裁的な政権に鋭い批判向ける
　『民主文学』の鼎談「戦争と文学」（岩渕剛・能島龍三・原田敬一）は、独裁化する政権への鋭い批判がある。さらに、ゲーム化された戦争を楽しむ若者たちの感覚、公共施設等の、権力への「忖度」による自主規制の問題に迫る。７月１６日、与党は「戦争法案」を衆議院で強行採決したが、人の未来に傷を生むこの法案こそ、国民の力を集めて廃案に追い込まなければならない。
　創作では小池昌代「板の顔」（『群像』）が、虚構の強度で印象深い。顔に奇形を持って生まれた美久は、母親とともに生家を追われて東京に出る。彼女は奇怪な絵を描く老画家のモデルを務めながら成長するが、画家の死によってホテルの住み込み清掃人となる。高層階から見る東京は原発事故で衰退している（美久の奇形もその事故が原因）。
　単なる近未来小説と違うのは、醜さの意味を主題にしている点だ。体よりも心に問題を持つ彼女に医師は「今はみんなが、少しずつ、おかしい（略）あなたの抱える苦しみは、それ自体に内在する疾患ではなく、また機能障害でもない。それによって派生する関係の苦しみが大きい」と諭す。徐々に呪縛から解かれていく美久。だが彼女が生きる世界の荒廃は止まらない。
　『民主文学』では、山城達雄「葉叢の瞳」に詩的な喚起力があった。アメリカ人と結婚し、沖縄から渡米した久子は、通いはじめた教会で沖縄戦に従軍した神父と出会う。彼は伊江島の戦闘で、大樹の梢にひそむ人間の目を見たと言う。彼女が帰省して調べると、その人物こそ、ガジュマルの木の上に２年間隠れていた〈茂治おじさん〉だと分かる。激しい戦闘中に出会った目と目。帰国してからも戦争後遺症で苦しんだ神父とあわせ、戦争がもたらした傷を象徴的に描く。

必死な姿を描き芸人の情染みる
　今月は第１５３回芥川賞が発表され、又吉直樹「火花」、羽田圭介「スクラップ・アンド・ビルド」が受賞した。又吉氏は、若手芸人の生き残りをかけた必死な姿を描き、羽田氏は、失業した若者が祖父の介護をする日々を描く。
　「火花」は、常識を覆す〈お笑い論〉におかしみがあり、芸とは何かということを考えさせる。後半は情緒過多、奇抜なラストに違和も残るが、芸人たちの純情が胸にしみた。「スクラップ…」は〈死にたい〉が口癖になった祖父を、できるだけ早く、自然に死なせてやろうとする若者のアイロニカルな奮闘で、日常の観察も詳細だ。だが老いた人にもあるはずの、内面の豊かさは見えてこない。そこを描かなければ老いの悲しさ、奇行だけが際立ち、生の深みに届かないだろう。「火花」の方により文学の熱があった。
　（しばた・さんきち　詩人）
( ２０１５年０７月２８日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

国民の願い胸に／衆院議員島津幸広／熱い運動で迎え撃とう

　「火に油を注ぐ」―まさに今の状況です。幾重にも憲法を踏みにじる戦争法案の衆議院での強行採決で、日本中が怒りで燃え上がっています。
　「私がとりあげた赤ちゃんを戦場に送りたくない」。私といっしょに街頭宣伝した産科医の女医さんが訴えました。「戦争に行かせるために保育をしているのではない」「従軍看護師になるために勉強しているわけではありません」「教え子を再び戦場に送らない」…。怒りは、これまで政治に縁のなかった人たちも含め、あらゆる階層、年代に広がっています。
　とりわけ若い世代の行動は心強い。国会周辺に集まってくる若者はもちろんですが、街頭宣伝でも、若い人が立ち止まって真剣に話を聞いてくれます。携帯電話やスマホで写真を撮る、ガッツポーズでこたえてくれる青年も。
　野党の共同もすすんでいます。私も１８日の静岡市での集会で、民主党、社民党の国会議員とともに訴えましたが、各地で合同の街頭演説がおこなわれています。国会では「強行採決許さない」の一点での野党共同がすすめられ、国会周辺で開かれる行動でも各党の議員がそろって激励あいさつしています。
　梅雨が明けて本格的な夏の暑さがはじまりました。政治日程でも、原発の再稼働、沖縄・辺野古新基地建設、戦後７０年の「安倍談話」、労働者派遣法の改悪をはじめ、国民の怒りを燃え上がらせる〝油〟が目白押しです。
　戦後最悪の法案を廃案にするため、戦後最大の熱い世論と運動で迎え撃ちましょう。
(２０１５年０７月２４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

教育のつどい／戦後７０年、手をつなごう／仙台で来月１６日から

　「みんなで２１世紀の未来をひらく教育のつどい―教育研究全国集会２０１５」（「教育のつどい２０１５」）が８月１６日から１８日までの３日間、仙台市内で開かれます。全日本教職員組合（全教）や民主教育研究所、新日本婦人の会など２４団体でつくる実行委員会は２３日、東京都内で記者会見し､｢教育のつどい２０１５」の概要を発表しました。宮城県内で開くのは初めてです。
　今回の主テーマは、「戦後７０年、手をつなごう、子どもたちに平和な未来を手わたすために」「平和を守り、真実をつらぬく民主教育の確立／教え子を再び戦場に送るな」。教職員や父母、市民、研究者らが参加し、全国の教育実践・運動を交流、語りあいます。
　１日目は、午後１時から３時３０分まで開会全体集会が開かれます。金平茂紀さん（ＴＢＳ「報道特集」キャスター)が｢世界の取材現場から―子どもと戦争」と題して講演。その後、七つの教育フォーラムが行われます。
　２、３日目は、各教科や課題別の２８の分科会と特設分科会「東日本大震災からの復興をめざして」が開かれます。リポート総数は３５８本（２１日現在）。
　資料代１０００円（３日間）。問い合わせは「教育のつどい２０１５」実行委員会事務局℡０３（５２１１）０１２３（全教内）
( ２０１５年０７月２４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

黒木和雄監督作品を一挙に／岩波ホール、８月１日～２１日

　東京・神保町の岩波ホールでは、「戦後７０年特別企画」として、公開中の「沖縄　うりずんの雨」に続き、８月１日から３週間、黒木和雄監督作品を一挙上映します。
　黒木監督は、心身に刻まれた戦時下の記憶をもとに創作を重ね、２００４年に発足した映画人九条の会では呼びかけ人に。０６年に７５歳で急逝しました。
　次の４作を入れ替えで上映。
　原爆投下までの２４時間の長崎の人々の営みをみつめた「ＴＯＭＯＲＲＯＷ／明日」（１９８８年）▽宮崎県の農村で、米軍機に奇襲された友人を救えなかった悔恨を抱いて生きる少年が主人公の「美しい夏キリシマ」（０２年）▽原爆投下後の広島で生き残った後ろめたさから幸せになることを拒む娘が、亡霊の父に励まされる「父と暮せば」（０４年）▽特攻兵への閉ざされた愛の行方が悲しくも美しく描かれる｢紙屋悦子の青春｣(０６年)
　午後６時半の回には、戦争の時代を描きながら、風化に警鐘を鳴らす「ぼくのいる街　写真集『銀座と戦争』より」（８９年）が劇場初公開されます。
　問い合わせは、岩波ホール℡０３（３２６２）５２５２
( ２０１５年０７月２４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦争法案廃案・安倍政権退陣求める／衆院段階上回るたたかいを／総がかり行動実行委員会が会見

　戦争法案の廃案を迫って国会前座り込みなどを行ってきた「総がかり行動実行委員会」は２３日、東京都内で記者会見し、参院段階でのたたかいの展望・決意を語るとともに、８月のとりくみについて発表しました。

　「戦争する国づくりストップ！憲法を守り・生かす共同センター」の小田川義和氏、「解釈で憲法９条を壊すな！実行委員会」の高田健氏、「戦争をさせない１０００人委員会」の福山真劫氏が共同して訴えました。
　「参院段階の取り組み」では、「自公政権が参院で強行採決できない状態、６０日ルールによる再可決ができない状態」をつくりだすことが必要で、衆院段階を上回る「廃案と安倍退陣」のたたかいをしたいとしました。「総がかり行動実行委員会も大きな運動の流れの中の一つだと認識し、野党、他団体との連携を強化する」としました。
　小田川氏は、「世代、分野、地域を超えて大きな運動がつくられてきた。とくに女性、青年・学生の自発的な地域のとりくみが国会行動と響き合って、大きなたたかいになっているのが特徴だ」と語りました。
　８月は、沖縄・辺野古新基地反対や原発再稼働反対、戦後７０年談話などの課題でもヤマ場を迎えます。各氏は、そうした運動とも連携しながら安倍政権を退陣に追い込みたい、と語りました。
　具体的には、大規模集会では、今月２６日（日）午後２時からの国会包囲、２８日（火）夜の日比谷集会と国会デモが予定されています。８月は、毎週木曜日の国会行動を継続しながら、論戦など参院情勢をみながらとりくみを追加していきたい、としています。
( ２０１５年０７月２４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

〝安保法制なんとしてもつぶす〟／河野洋平氏のビデオメッセージ／京都弁護士会の集会／要旨

　「この法律をなんとしてもつぶす。その作業を一緒にやりたい」―元自民党総裁、元衆院議長の河野洋平氏は２２日、京都市内で開かれた京都弁護士会の市民集会「戦後７０年と安全保障法制を考える」にビデオ映像で出演し、こうのべました。河野氏の発言要旨を紹介します。

　安保法制の話は、合憲か違憲かという議論があります。土台がはっきりしていなくて、その上に家を建てるのは難しいよと自民党幹事長にも申し上げました。
　自民党側は合憲だというけれど、ちっとも説得力がない。いま法律案を国会で審議している最中なので、最高裁が合憲、違憲といえない。法制局長官はひとつの行司役です。ところが、安倍さんという総理大臣が内閣法制局長官を人事異動して、自分の主張とあった人をもってきた。
　歴代内閣法制局長官は違憲ですよという。憲法学者の大部分は違憲だという。それを合憲だという。これはまずいな、と私は思っています。
　安倍さんは、いろいろ説明を繰り返されるけれど、あまりに主観に基づきすぎて、聞けば聞くほど、あまり説得力がない。だから、新聞の世論調査も、最初は説明が十分でないからわからない。それが、説明を聞けば聞くほどわからない。時間がないから決着をつけましたというけど、「時間がない」のは、アメリカで「夏までに」と言ってきたからです。
　国会の外はたいへんな人が集まって反対の声をあげています。京都大学（有志の会）が詩のようないい声明を出され、全国の若い人たちにも反対が広がっています。国会の建物のなかだけが賛成だというような民意とのかい離がひどくなると、政治はこれでいいのという話になりかねません。
　政治の質が変わった。極論をすれば、今の政治は恐怖政治です。反対できない。なぜできないかというと、党の方針に従わない者は、次の選挙で公認されないかもしれないという恐怖心があります。内心おかしいと思うんだけど、上から抑えることになって、民主政治では最も悪い状況です。自民党のなかの人たちが、もう少し大きい声を出してほしい。
　安倍さんは、積極的平和主義というけれど、よくわからない。ほんらいの積極的平和主義とは、非核三原則で核を持てるけど持ちません、武器の輸出はしません、憲法９条をしっかり持っている。これが積極的平和主義です。
　宮沢内閣の時にカンボジアにＰＫＯ（国連平和維持活動）で自衛隊を出しました。残念ながら文民警察官が１人亡くなりました。私は官邸にいましたが、１人の命というのは、家族も両親もいる。国の命令によって、出て行った先で死ぬということは、責任を感じなければならない。人命は地球よりも重い。リスクを楽しんでいるようなことは、私は理解できません。
　この法律をなんとしてもつぶす。その作業をいっしょにやりたい。立憲主義、民主主義を殺してはいけないから、がんばらなければいけない。ぜひ心ある方々にがんばってほしい。
( ２０１５年０７月２４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

止めよう戦争法案／車いすで国会前訴え

　参院で審議入りする戦争法案を廃案に追い込もうと、東京肢体障害者団体連絡協議会は２３日、国会前宣伝と、議員要請行動に取り組みました。車いすの６人も駆け付けました。
　高橋八重子さん（６５）＝大田区＝は議員会館前でマイクを握り、「戦時中、障害者はお国の役に立たない『非国民』とののしられ、『家を出るな、道を歩くな』と当たり前のようにいわれました」と指摘。「戦後７０年しかたっていないのに、私たちの国は、また戦争への道を突き進もうとしている」と批判しました。
　宣伝後、参院議員会館を訪れ、各党議員に要請。兼平勝子さん（６９）＝品川区＝は、「戦争は、命を奪い障害者を生み出す。平和でなくては、私たちは、安心して暮らせません。孫や子のため、戦争の火種を残せない」と訴えました。
　松田春廣さん（９０）＝武蔵野市＝は、戦時中、障害がありながらも〝天皇陛下の命令〟で徴兵検査を受けさせられたといいます。「安倍内閣は、憲法を変え、また戦争をやろうとしている。日本の憲法をしっかり、守ってほしい」と力を込めました。
( ２０１５年０７月２４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦争法案／安倍内閣包囲、廃案を／戦争しないこと考えて／悲惨な体験私までで／各地で行動

○神戸／弁護士らパレード
　戦争法案の廃案を求め、弁護士９条の会や憲法共同センターなどが主催するパレードが２１日正午すぎ、神戸市でおこなわれ、９０人が参加しました。
　兵庫県憲法会議代表幹事の和田進神戸大学名誉教授は、政府のメディア支配による逆宣伝が強まる懸念と、原発再稼働、辺野古の新基地建設、７０年談話とともにＴＰＰ強行など社会全般にかかわる問題を指摘し、「運動を高めるなかで、安倍内閣打倒に向けがんばりたい」とのべました。
　津川知久兵庫労連議長は、安倍内閣の支持率低下と動揺が始まったことを紹介し、運動の強化を訴えました。
　「戦争を　押し付けられるのは嫌だ！！｣と書いた自作のプラカードを掲げ参加した農業ＮＰＯで働く加西市の橋岡将基さん(３３)は｢このままでは､とんでもないことになる。中国や北朝鮮が攻めてくるという話もあるが、どうすれば戦争をしないですむのか、考えないといけないと思います｣と話していました｡

○滋賀／看護師らが知事に署名
　滋賀県の看護師らでつくる「再び白衣を戦場の血で汚さない医療従事者の会」（高見百代代表）は２２日、三日月大造知事（日本赤十字社滋賀県支部長）に「安全保障関連法案に反対し、廃案を政府に求める」要請署名５１８人分を提出しました。署名は、県内の医療従事者とその家族から１０日間余りで集められました。
　高見代表は「看護は平和が前提です。戦争になると、兵士を治しても戦場に送ってしまう。戦死するかもしれないという中で看護することは矛盾に感じる」と訴えました。大津赤十字病院の看護師は「戦時中、大津日赤は陸軍と海軍の病院に転用され、入院していた患者は帰らされた。有事になると、救急を中心とした基幹病院としての役割が果たせなくなることを危惧する」と話しました。
　秘書課の担当者はメモを取り､｢知事に伝える」とこたえました。
　日本共産党の節木三千代県議が同席しました。

○和歌山／廃案を訴え市民が署名
　「戦争立法に反対する和歌山県共同闘争本部」は２１日、ＪＲ和歌山駅前で戦争法案の廃案を訴えました。
　参加者らは、衆議院での戦争法案の強行採決後、どの世論調査でも安倍内閣の支持率が急落していることを指摘。「安全保障関連法案に反対する学者の会」のアピールに学者・研究者１万１２１８人、市民２万２７７９人が賛同するなど反対運動がさらに広がっていることを示し、「圧倒的な世論で安倍政権を包囲し、廃案に追い込みましょう」と署名への協力を訴えました。
　勤め帰りの市民らが応じていました。

○奈良／「自分のこと」青年たち宣伝
　民青同盟奈良県委員会と日本共産党の青年後援会は２０日、近鉄西大寺駅前で戦争法案反対の緊急宣伝をおこないました。
　民青の白川史恵県委員長が「友人や同級生、兄弟姉妹、これから生まれてくる子どもたち、私たちにとって大切な人が戦争に参加し、何の罪もない人々を殺し、殺される国になることに反対します」と話しました。
　白川さんが「みなさん、自分のことと思って考えてください」と訴えると、近くのオープンカフェでお茶をしていたカップルが話に耳を傾け、足を止めて訴えを聞く青年の姿もありました。
　同盟員らが、「戦争に行きません　命のための宣言署名」を集めていると「署名あるならするよ」と声をかけてきた奈良市の男性が「国民をバカにしている、腹が立つ」と話しました。

○大阪・大東／駅周辺の会が強行採決抗議
　大阪府大東市の｢野崎駅周辺９条の会｣と｢憲法と平和を愛し野崎駅周辺で共同する会(略称･野崎駅周辺の会)｣は２１日､ＪＲ野崎駅前で戦争法案の衆議院強行採決に抗議し､緊急宣伝を行いました｡１４人が参加し､安倍内閣の暴挙を糾弾しました｡通算１３４回目の行動です｡
　参加者は横断幕を掲げ２００枚の独自ビラを｢戦争法案は廃案に｣｢安倍内閣をやめさせよう｣と声をかけて配布｡６人がマイクを握り､｢国民に追い詰められた中の強行です｣｢審議が進むほど国民の理解が進み反対が広がっています｣｢立憲主義を守らせよう｣と訴えました｡
　｢がんばって｣と握手する人や､車を降りてビラを受け取りに来る人がいました｡
　また､８月１日に野崎人権文化センターで大阪城天守閣元館長渡辺武さんを招いて開く｢音楽と講演のつどい｣への参加を呼びかけました｡

○大阪・寝屋川／市駅を埋める３５０人のコール
　「戦争法案」は廃案に！　緊急寝屋川市駅大集合が２０日、大阪府寝屋川市で行われ、３５０人が京阪寝屋川市駅前を埋めました。市内各校区９条の会、新婦人、民商、寝屋川労連など１０団体が集結しました。
　葦田正幸ねやがわ９条連絡会代表が「戦争法案はいくら丁寧に説明しても国民の理解は深まらない、何としてもストップを」とあいさつ。日本共産党の宮本岳志衆院議員が国会情勢報告をしました。
　参加者は「若者が殺し殺される戦争法は絶対に許せない」（２５歳の大学院生）、「４年間のシベリア抑留からやっと引き揚げてきた。悲惨な体験は私までで十分、若い人と手をつないでがんばりたい」（９１歳の戦争体験者）、「今、声をあげなければ戦争する国になってしまう。国民をなめるなと言いたい」（中学生を持つ母親）と次々に訴えました。
　最後に「アベ政治を　許さない」のポテッカー（ポスターとステッカーの合成語）を全員でかかげ、「若者を戦場に送るな」「安倍政治はいやや」のコールを駅前ロータリーに響かせました。

○大阪／非核政府の会抗議声明発表
　政府与党の衆院本会議での戦争法案の強行採決に１７日、非核の政府を求める大阪の会が抗議声明を発表しました。
　「戦後７０年被爆７０年のこの年に、自民・公明両党が平和を願う国民の思いを乱暴に踏みにじり、国民主権をないがしろにする暴挙を行ったことに対して満身の怒りを込めて抗議し、同法案の廃案を強く求める」とのべています。
(２０１５年０７月２３日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

市民ら戦後７０年考える／「はだしのゲン」原画を展示／金沢

　広島の原爆投下とその後の人々の暮らしを描いたアニメ『はだしのゲン』の原画などを展示し、戦後７０年を考える展示会が１８～２０日、金沢市内の町屋カフェ「茶論・花色木綿」で行われました。戦跡の調査や戦争に関する資料調査を続ける市民グループ「平和工房江沼の郷」（加賀市）が企画したもの。
　アニメ版『はだしのゲン』を制作する際に使われたセル原画の一部１９点を展示。各国語に翻訳されたコミック版の『はだしのゲン』もあり、戦争中の新聞や雑誌なども展示されています。
　展示を見た金沢市の女性（４８）は「原爆で黒こげになった被害者の様子を描いたものなど、ありのままに戦争の悲惨さが伝わってきた。二度と繰り返してはいけないと強く思った」と感想を語っていました。
　展示会は２５日、２７日（午後１時～５時）も行われます。８月も資料展示や戦争体験者の経験を聞く会などを予定。問い合わせは「茶論・花色木綿」０７６（２５６）１９４２。
(２０１５年０７月２３日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

日本高齢者大会９月１５・１６日和歌山市／平和と社会保障守る／成功へ東京で集い

　「まちから村からの連帯でひとりぼっちの高齢者をなくそう」を合言葉に、第２９回日本高齢者大会（主催＝同実行委員会）が９月１５、１６の両日に和歌山市内で開かれます。今年のテーマは「戦後７０年　憲法をいかし、格差のない公正な社会を」です。東京都の三多摩高齢期運動連絡会はこのほど、国分寺市内で「日本高齢者大会の成功をめざす三多摩のつどい」を開きました。
　ことしの大会は延長国会のさなかに開かれます。つどいで講演した中央実行委員会の鐘ケ江正志事務局長は「戦争法案を阻止する大きな意義を持つ大会です」と強調。安倍政権が戦争法案と一体で進める社会保障の解体で８月から一定以上の所得や預貯金がある人などの介護保険利用料がはねあがることを批判。民間研究機関・日本創生会議の首都圏問題検討分科会が高齢者の地方移住を提言したことも問題だと指摘。「大会を成功させ、高齢者が住み続けられる地域をつくろう」と訴えました。
　同連絡会は２３区連絡会と共同して２泊３日のバスツアーなどを組み、全自治体から代表参加をめざしています。各地の高齢期運動連絡会は介護保険改悪を具体化させないことなど、高齢者の要求をまとめて自治体要請を行っています。
　府中市の高齢期運動連絡会の武田正実会長(８７)は、毎年１０月に「高齢期問題を考える府中のつどい」を開いていると報告。昨年は市長がメッセージを寄せ、老人クラブ連合会会長、日本共産党と公明党の市議など１４１人が参加しました。「大会の参加予定は例年の３倍です。地域の運動を交流したい」と話しました。
　同連絡会の小嶋満彦代表委員は「戦争体験者が多くいる高齢期運動の出番です。私たち自身が築き上げた平和と民主主義を守るために力をつくそう」「社会保障解体の暴走をくいとめるために団結しよう」と大会成功を訴えました。
　◇
　日本高齢者大会の問い合わせは、日本高齢者大会中央実行委員会へ。℡０３（３３８４）６６５４
( ２０１５年０７月２３日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦争法案廃案への展望を語る／志位委員長が講演／共同通信社・論説研究会

　日本共産党の志位和夫委員長は２２日、共同通信加盟社・論説研究会で講演し、「これからのたたかいで戦争法案を廃案にすることは可能だ。参院での論戦、野党共闘、国民との共同で、何としても廃案を勝ち取りたい」と今後のたたかいの展望を語りました。同研究会には、全国から共同通信加盟各社の論説委員などが集まりました。
　志位氏は、国会論戦で明らかになった戦争法案の問題点を「違憲性」「対米従属性」「歴史逆行性」の三つの角度から鋭く告発。党の「北東アジア平和協力構想」を紹介し、「これこそ戦争法案に対する、憲法９条を生かした真の平和的対案です」と強調しました。
　志位氏は戦争法案廃案に向けた三つの展望を語りました。
　第一は、「法案には『自然成立』はない」ということです。
　志位氏は、一部メディアのなかに、「６０日ルール」を強調し、「安保法案は成立へ」などと「成立」を当然視して報じる動きを批判。予算案や条約と異なり法案には「自然成立」がないこと、政府・与党が戦争法案を成立させるには参院での強行採決か、衆院で強行再議決しかないと指摘。強行採決を許さない国民世論が圧倒的多数となり、内閣支持率をさらに下落させる状況をつくれれば、安倍政権は立ち往生し、採決不能に追い込むことは可能だと力をこめました。
　第二は、戦争法案反対の国民の運動が空前の広がりを見せているということです。
　若者の行動、憲法学者、研究者、歴代元内閣法制局長官などの反対の声の画期的な広がりにふれた志位氏は、「いま広がりつつある国民運動は、その広さでも、深さでも、一人ひとりが創意性・自発性をもって参加しているという点でも、戦後７０年の国民運動でも空前のものとなっています。９条を守るということとともに、民主主義、立憲主義を守り、独裁政治を拒否するという点でのエネルギーがきわめて大きいことを感じます」と強調しました。
　第三は、安倍政権そのものが大きく行き詰まっていることです。
　安倍首相がテレビ番組に出演し、戦争法案について、「模型」まで使って、「戦争」を「火事」にたとえて説明していることに言及。「『火事』なら火を消せば済むが、『戦争』では武力行使をすれば反撃される。こんな話しかできないということは、首相が戦争法案について説明する能力がないことを自ら告白しているようなものです」ときびしく批判しました。
　さらにこの夏、安倍政権が、沖縄新基地問題、原発再稼働、環太平洋連携協定（ＴＰＰ）、歴史認識問題などあらゆる問題で、国民との矛盾を大きく広げざるをえないことを指摘し、「夏のたたかいはまさに正念場。国民とスクラムをくみ、党の総力をあげて、廃案のために全力をつくしたい」と決意を語りました。
　志位氏は、講演後、参加者との懇親会に参加し、親しく懇談しました。
( ２０１５年０７月２３日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

２０ 戦争法案反対／各団体の抗議声明

　政府与党が衆院特別委と本会議で戦争法案の強行採決を行ったことに対し、各団体から抗議声明や共同声明が相次いでいます。
　全国革新懇は、「強行採決への怒りが列島をおおっている」としてたたかいの先頭に立つ決意を表明。
　改憲問題対策法律家６団体連絡会は、「反民主主義、反立憲主義手法による戦争法案の強行採決」に強く抗議。
　憲法会議は、「憲法も民意も踏みにじる戦争法案の衆院強行採決を糾弾します」としました。
　平和を願い戦争に反対する戦没者遺族の会は、「かけがえのない肉親を戦争で奪われた戦没者遺族として、戦争する国づくりを拒否」するとしています。
　治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟は、違憲の法案を「数だけを頼りに強行採決することは、国民主権と数の暴力による憲法そのものの破壊行為」と批判しています。
　日本アジア・アフリカ・ラテンアメリカ連帯委員会は、安倍自公政権の日本を「海外で戦争する国づくり」に変える策動を、阻止する決意を表明。
　非核の政府を求める会常任世話人会は、「核兵器保有大国アメリカの核兵器使用戦略、核戦争に直接巻き込まれる危険性が高まる」と批判します。
　婦人民主クラブは、「憲法が生きる平和な日本を築く」決意を表明しています。
　生協労連中央執行委員会は、「豊かな暮らしを送るためには、平和な世の中でなければならない」として、「戦争反対」の意思表明を呼びかけています。
　全国老人福祉問題研究会は、戦争推進、格差・貧困の拡大政策から「命と暮らし」を最優先する政策転換を求めています。
　ＦｏＥ　Ｊａｐａｎ、ラムサール・ネットワーク日本など環境６団体は、「自然環境と生物多様性、そして人々の生活環境に対する最大の脅威」とする共同声明への賛同を呼びかけています。
( ２０１５年０７月１８日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

よりよい教科書子どもらの手に／大阪でシンポ

　４年ごとの中学校教科書の採択が各地で行われるのを前に大阪教育文化センターは１１日、「戦後７０年、教科書はどうなる？　よりよい教科書を子どもたちに手渡すために」と題したシンポジウムを大阪市内で開きました。５１人が参加しました。
　大阪歴史教育者協議会の小牧薫さんが昨年１月の教科書検定基準の改悪による記述への影響や侵略戦争美化、憲法敵視の育鵬社の教科書の問題点、出版ユニオンの清水正文事務局長が記述の萎縮、自主規制問題を報告。府立高校教諭の飯田光徳さんが２０１３年の実教出版の『高校日本史Ｂ』採用への府教委からの圧力の実態、４年前に育鵬社の公民教科書を採択した東大阪市の中学校教師の田中博和さんが授業の実践を紹介し、同センターの山口隆事務局次長がたたかいの展望について問題提起しました。　
　「昨年末から取り組んでいる育鵬社教科書反対の一点でのアピール賛同署名が６０００人を超えた」（東大阪市）など４地域が運動を報告しました。
(２０１５年０７月１７日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

止めよう戦争法案／日弁連シンポでの発言／浅田次郎さん／岡田武夫さん

　日本弁護士連合会が１５日夜に開いたシンポジウム「安全保障法制の問題点を考える」での浅田次郎さんと岡田武夫さんの発言（要旨）を紹介します。

安倍首相、国民への侮辱だ／日本ペンクラブ会長・作家浅田次郎さん
　日本の言論の自由が危うくなっていると思いまして、今日は締め切りをほっぽらかして、いろんなところでしゃべっております。
　私たちは７０年間戦争しなかったことを誇りに思うべきです。今回の法案は、憲法の拡大解釈をとっくに限界を超して、これを合憲とするのは誰が考えても詭弁（きべん）です。
　憲法が冒とくされているんです。どうしてもやるなら、順序は改憲が先。そうでなかったら、法治国家と言えない。日本が法治国家としての基礎すら失いつつあると、私が一番感じたことです。
　安倍さんは、どうして国民の了解を得ないままにアメリカと約束したのか。これは、事の賛否にかかわらず、国民への侮辱です。ことごとく順序が全部違います。暴挙といわれる根拠は、この二つにあると思います。

人間の尊厳ともに守ろう／日本カトリック司教協議会会長・東京教区大司教岡田武夫さん
　強行採決が行われ、大変残念に思い、大変不安に思います。憲法学者の９割以上が反対しているのに、なぜ通すのか全く理解できません。
　戦争しない、隣人を愛する、敵を敵でなく、同じ人間として大切に思うようにというのが聖書全体を貫いています。２月に戦後７０年の司教団のメッセージを発表し、日本国憲法の精神は、福音的でイエス・キリストの教えそのものだと率直に表明しました。
　一人の国民、キリスト教徒として、憲法の理想を守り、多くの人に伝えていかなければなりません。いろいろな主張、宗教の違いを超え、人類共通の目標、生命の尊重、人間の尊厳を守り続けるために、みなさん力を合わせて、歩んでまいりませんか。
( ２０１５年０７月１７日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦争法案廃案へ展望を明らかに／『憲法運動』７月号

　『月刊憲法運動』（憲法会議刊）７月号（写真）が好評です。
　戦争法案のうそ・ごまかしを明らかにし、廃案にむけた展望を明らかにしています。
　「憲法の眼」は山下芳生日本共産党書記局長（憲法会議代表委員）の「日本列島騒然のたたかいで戦争法案を必ず廃案に」です。
　川村俊夫憲法会議代表幹事の「戦後７０年の岐路に立って―憲法９条に関する政府解釈変遷の軌跡」は後編。
　新しい共同のもと３万人が参加した５・３憲法集会の記録「下」は、呼びかけ人、政党代表、沖縄からの訴え、リレートークの概要を収録しています。
　吉田典裕出版労連副委員長「２０１４年度・中学校教科書検定の概要―育鵬社公民教科書の日本国憲法記述を中心に」を掲載しています。
　同時発行の「憲法しんぶん」７月号は、各地・団体の運動や高知市での憲法審査会公聴会（１面）、特別委員会での戦争法案の破たんぶり（２面）を報道。
　『月刊憲法運動』７月号は定価４００円（送料７０円）、憲法しんぶんは３０円（送料６２円）。申込先＝憲法会議　電話０３（３２６１）９００７、ファクス０３（３２６１）５４５３
( ２０１５年０７月１７日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

元米兵捕虜に初めて謝罪へ／三菱マテリアル

　三菱マテリアルは１５日、戦後７０年の節目に当たり、太平洋戦争中に同社（当時三菱鉱業）が経営していた秋田県の鉱山などで旧日本軍の捕虜となった米兵約９００人に労働を強いたとして、初めて謝罪することを明らかにしました。１９日にロサンゼルスで式典を開き、同社役員が元米兵捕虜の代表や遺族らに謝罪する予定。
　一方、三菱マテリアルは中国で、戦時中に日本に強制連行されて過酷な労働を強いられたとして、元労働者から賠償を求められ係争中。
( ２０１５年０７月１７日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦争法案／暴挙許さない／映画人、賛同広がる

　「たたかいはこれから。世論をこんなにも無視した暴挙を国民が許すはずはない」―アピール「私たち映画人は『戦争法案』に反対します！」への賛同者が映画各界や愛好者に広がり、４４６人にのぼることが１６日、発表されました。
　（賛同者メッセージ１１面）
　呼びかけ人の池谷薫、神山征二郎、高畑勲、降旗康男、ジャン・ユンカーマンの５人の監督と、金丸研治・映演労連委員長、事務局の高橋邦夫・映画人九条の会事務局長が会見にのぞみました。
　「戦後７０年たって権力者が大きなうそをついている。その化けの皮がはがれてきたというのが現状だと思う」（池谷氏）、「９条に風呂敷をかぶせて議会の絶対多数で踏みにじるのは許せない」（降旗氏）、「首相は、国民の理解が不十分などと言っているが、国民は十分わかってきている」（神山氏）など、怒りの発言が続きました。
　「大勢順応のズルズルはだめです。日本は９条にしばられて平和外交を積み重ねることが大事」（高畑氏）、「平和憲法を守ったうえで積極的平和主義を」（ユンカーマン氏）、「戦前の映画法のもとで国策映画に協力させられた教訓を思い、映画産業で働く労働者も廃案を求め続けたい」（金丸氏）―。
　呼びかけ人には、山田洋次監督も加わり、賛同者は、俳優の大竹しのぶ、野際陽子、吉永小百合の各氏のほか、脚本家、評論家、プロデューサーら多彩な人たちに及んでいます。
( ２０１５年０７月１７日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

主張／戦争法案強行採決／意見も民意も踏みにじる暴挙

　文字通りの歴史的暴挙に、はらわたの煮えくり返る思いです。憲法の平和原則を乱暴に踏みにじる戦争法案を、日に日に高まる国民の反対の声を押しつぶし、国会での徹底審議を求める野党の声にも耳を貸さず、与党の自民・公明だけで、衆院の特別委で採決を強行する―まさに二重、三重、四重、五重の憲法破壊です。憲法も民意も踏みつけにする戦争法案の衆院通過の強行は、絶対許すわけにはいきません。

日に日に広がる反対の声
　「戦争法案、絶対反対」「安倍政治を許さないぞ」
　採決強行を狙う安倍晋三政権の策動で緊迫する中、国会や首相官邸周辺は、国民の強い怒りの声に包まれました。採決前夜の東京・日比谷野外音楽堂の集会には勤め帰りの労働者や市民が場外まであふれ、国会に向けたデモ行進は深夜に及びます。当日も早朝から国会周辺には市民が詰め掛け、抗議の声を終日響かせました。
　戦争法案反対の声は、労働者や市民、青年、学者、法律関係者、文化人など国民各層、全国津々浦々に広がっています。どの新聞社、どの放送局の世論調査でも、戦争法案は憲法違反だ、法案は成立させるべきではないという声が半数を超えます。法案の審議が進むごとに賛成が減り、反対が増えています。安倍政権は国民に十分説明していないという声は８割を超します。安倍内閣支持率も支持と不支持が逆転しはじめました。
　安倍首相自身、締めくくり総括質問への答弁で「国民の理解は進んでいる状況ではない」と答えざるをえなかったのに、なぜ採決を強行し、成立を急ぐのか。圧倒的多数の反対の声を踏みにじって採決を強行するのは国民の声の圧殺であり、それ自体憲法の国民主権の原則に反します。特別委員会での採決は許されず、戦争法案を本会議に上程し、衆院を通過させるなどというのは論外です。
　与党の自民、公明は特別委で１００時間以上審議したといいます。しかし、法案審議にあたって安倍政権の態度は、憲法学者などの「憲法違反だ」という指摘に対しても、決めるのは政治家の責任だと突き放すなど不誠実なものです。野党の議員が追及した審議に必要な資料の提出や統一見解の要求にもまともに答えず、安倍首相は最初から「決めるときは決める」と、採決強行が前提の強権姿勢でした。
　だいたい、憲法違反の法案を｢合憲｣と見せかける理屈など出てくるはずがありません。安倍政権は集団的自衛権の行使を「合憲」だといいはるために、集団的自衛権行使とは関係ない最高裁判決しかもちだすことができませんでした。従来の政府見解で「行使は違憲」としてきた憲法解釈を変更したのは｢安全保障環境｣が変わったからだといいはりました｡しかし､｢どう変わったのか｣と追及されれば、答えられません。安倍政権の主張は完全に破綻しています。

憲法違反の法案は廃案に
　戦争法案がアメリカの戦争と一体化する兵たんでも集団的自衛権の行使でも憲法違反であることは明白になりました。憲法違反の法案を、数の力で押し通すことに一片の道理もありません。憲法の平和原則も国民主権も踏みにじる法案は廃案にするしかありません。
　戦後７０年の年に憲法の平和的民主的原則を守りぬく､正念場です｡
( ２０１５年０７月１６日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

政治の責任で戦争被害解決／実行委が院内集会

　空襲被害者など民間人の補償・救済を求める「戦後７０年・戦争被害のすべて解決を！」実行委員会（中山武敏実行委員長)は１４日､院内集会を開き、約２００人が参加しました。
　同実行委員会は､｢空襲被害者等援護法(仮称)｣制定の運動や集会に取り組んでいます。
　小林節慶応大学名誉教授（副実行委員長）が講演。「誤った国策の結果、民間人が大量に犠牲になってしまった。いま、政治が救済すべき」だと指摘し、簡易な認定・給付の制度づくり、超党派の議員連盟の再結成などを提案しました。
　東京、大阪、名古屋、長崎、宮崎、沖縄の空襲被害者や沖縄戦、南洋戦被害者、被爆者が実態を語り、「生きているうちに立法化をしたい」と話しました。
　日本共産党からは高橋千鶴子衆院議員、田村智子参院議員が参加しました。
　同実行委員会は８月１４日午後６時３０分から台東区民館で集会「時代は動いている　―戦争被害のすべて解決のときだ―」を行います。
( ２０１５年０７月１５日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

ストップ戦争法案／若者の力、各地で躍動／なまら怒る／札幌

　札幌市の道庁前で１３日昼、青年たちが、戦争法案に抗議する「強行採決なまら（とても）ムカつく」街頭スピーチを行いました。
　６月の「戦争したくなくてふるえる。」デモ発起人の高塚愛鳥（まお）さんらが企画したもの。会社員や主婦が聞き入り声援も飛びました。
　青年たちはマイクで「戦後７０年、おとなたちのおかげで平和が守られてきた。次は未来の子どもたちのために私たちが守りたい」など思いを訴えました。
　フリーターの稲場千夏さん(２０)は「武器でつくれる平和はない。そんなお金があるなら、貧しい子どもたちや奨学金で苦しむ学生たちを救ってほしい。多くの人が反対しているのに強行採決しようとしているなんて、国民をバカにするのもいいかげんにして」と怒りをぶつけました。
　１歳の娘と滝川市から来た髙橋江海子さん(２３)は「フェイスブックで知って来た。自衛隊員や子どもたちを戦争に行かせたくない」と話しました。
( ２０１５年０７月１４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

ストップ戦争法案／若者の力、各地で躍動／力を貸して／大阪

　「戦争法案を今すぐ廃案に」と、１０～４０代の市民でつくるＳＡＤＬ（民主主義と生活を守る有志）が１２日、大阪市中央区の、なんば高島屋前で、学者や野党議員らを交えた街頭宣伝「今すぐ廃案『戦争法案』緊急アピール」を行いました。６００人が集まり、１時間半の宣伝中に２０００枚のビラを配りました。
　ＳＡＤＬの栄裕矢さん(２２)は「戦後７０年築いてきた平和を次の世代に引き継ぐため、力を貸してほしい」と涙ながらの訴え。関西大学の高作正博教授（憲法学）は、安倍政権を念頭に「考えの違う人々が共生するためのルールである民主主義や立憲主義を否定する人が政治家をやってはいけない」と強調しました。
　共産、民主、社民各党の議員、元議員が壇上にそろい、順にスピーチ。共産党から辰巳孝太郎参院議員と石川たえ府議が参加しました。
　通りがかりに足を止めた女子学生(２０)は「法案を詳しく知らなかったが、今声を上げられない子どもたちのためにも無知で無関心ではいけないと思った」と語りました。
( ２０１５年０７月１４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

加害の歴史向き合う／強制連行中国人殉難者を追悼／三池炭鉱

　三井三池炭鉱関連施設（福岡県大牟田市など）の世界遺産登録が注目を集める中、太平洋戦争末期に同炭鉱宮浦坑に強制連行され、過酷な労働で命を落とした中国人殉難者４４人を追悼する第３回「慰霊祭」が１２日、同坑跡に建てられた慰霊碑前でありました。日本中国友好協会の大牟田・熊本両支部と福岡県連合会が主催し、碑建立の２０１３年から毎年開かれているもので７０人が参列しました。
　戦後７０年の今回、中国駐福岡領事館から参列した韓昇良理事は、「産業革命遺産として登録されたのは結構ですが、加害の事実も忘れることができません」とする総領事メッセージを代読。日中両国の平和・発展のためには過去を真摯（しんし）に受け止めることが必要と語りました。
　福岡県連の一番ケ瀬宗幸会長は、強制連行の事実を認めず謝罪・補償を拒否し続ける日本政府や三井鉱山（現日本コークス工業）など加害企業の姿勢を批判。日本共産党大牟田市議団の橋積和雄団長は「安倍政権は侵略の歴史をなかったかのようにうそぶき、いま再び戦争できる国へ突き進もうとしている。戦争法案を廃案にすることこそ殉難者の無念に応える私たちの責任です｣と力を込めました｡
　中国からの留学生で久留米大学大学院２年の方家さん（２５）は「日本で私がこうして勉強できるのは、両国友好へ運動を続けている人たちがいるおかげ。二度と悲劇を繰り返さないために、両国の歴史をお互いが理解し合えるよう力になりたい」と話していました。
( ２０１５年０７月１４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

潮流

　「政府が少子化対策なんて言っても、妊娠すれば会社で嫌みを言われ、預ける保育園は見つからず…。まるで産むやつが悪いと言われている気分です」▼保育園を探す保活中の女性から何度も聞いた声です。不安定雇用や低賃金、長時間労働など子育て環境は厳しい。昨年の新生児は過去最少の約１００万人で４０年前の半分でした▼戦争法案を審議中の国会で「少子化が進む中、どのように自衛隊員を確保するのか」という質問を耳にしました。今年度に新採用された自衛官と同じ数を２５年後に採用するには、新生児の３０人に１人が入隊する計算になると述べ、自衛隊の奨学金制度＝貸費制の拡大の検討も必要になるのではないかと指摘していました▼自衛隊に入る意思がある大学（院）生への奨学金制度。卒業後、一定期間自衛隊に勤務すれば返済不要です。すでにアメリカでは貧困家庭の若者に奨学金や経済援助を持ちかけ、イラクなどの戦地に送るやり方が常態化していると聞きます▼本紙既報のように、自衛隊の海外任務の拡大とともに、防衛大学校卒業生の入隊辞退率が上昇しています。今後いっそう志願者は減り、退職者が増えるのではないか。貧困に苦しむ若者を「安定した仕事」「奨学金がある」と勧誘して志願させる「経済的徴兵制」の強化も現実味をおびてきます▼政府・与党が今週にも戦争法案の衆院通過を狙うもと、廃案を求める運動がいっそう広まっています。戦後７０年の夏、命と平和と憲法を守るたたかいの正念場です。
( ２０１５年０７月１４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

芸能テレビ／被爆者の声をうけつぐ映画祭／原爆と原発の歴史鋭く／１８、１９日の２日間

　被爆者の声をうけつぐ映画祭２０１５が１８日と１９日に、武蔵大学江古田キャンパス（東京都練馬区）で開催されます。
　同映画祭は、被爆体験の映像での継承を目的に０７年から始まり、今年で９回目。戦後７０年の今年は、原爆と原発の歴史に鋭く迫った８作の映画・証言映像が上映されます。
　「ヒロシマが消えた日」「引き裂かれた長崎」は、原爆投下から数カ月後の広島と長崎の記録。米軍が派遣した調査団が、原爆による影響や人々の生活を、カラーフィルムで記録したドキュメンタリーです。映画評論家の石子順さんの講演つき。
　ほかに「チェルノブイリ　２８年目の子どもたち」、「飯舘村　わたしの記録」、日本の原発政策に迫った「日本と原発」など。１９日のシンポジウム「被爆者の声をどのように継承するのか」には、永田浩三（武蔵大学教授）、斉藤とも子（女優)､有原誠治（映画監督）らの各氏が登壇します。問い合わせは℡０３（５４６６）２３１１共同映画
(２０１５年０７月１２日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦争法案反対！／女性週刊誌があいつぎ特集

　芸能人の話題などを多く扱う女性週刊誌が相次いで、戦争法案批判の記事を載せ、話題になっています。そのワケは―。
　北村隆志記者

　「読者からは（戦争法案の）記事を支持する声がほとんどです」
　そう語るのは『週刊女性』の寺田文一編集長です。
　『週刊女性』（１４日号）は、「『戦争法案』とニッポンの行方」と題して１０㌻大特集を組みました。「戦後７０年―。あなたの子どもがアメリカのために殺し、殺される国になる！」「わけのわからない言葉が飛び交う法案の中身はというと、平和や安全とはアベコベの内容ばかり」と戦争法案反対の立場から「徹底追及」しています。
　特集には、日本共産党の志位和夫委員長も登場。「世論調査をやっても、女性の反対がかなり多い。…みなさんにどんどん声をあげていってほしいですね。女性が動けばこの法案を止められますから！｣と語っています｡
　特集は大反響。インターネットでは、超人気タレントを扱った記事と同じぐらいの２０００近いリツイート（引用）がありました。
　他方、『女性自身』（６月２日号）も「あなたの子供が〝アメリカの戦争〟に命を捨てる！」と３㌻の特集。その後も、安倍政権を批判する記事を連打し、最新の７月２１日号では、人気企画「シリーズ人間」で、毎週金曜日に国会前で戦争法案反対の声を上げているＳＥＡＬＤｓ（シールズ、自由と民主主義のための学生緊急行動）のメンバーをとりあげました。
　「毎日」（６日付）の世論調査では、女性の６１％が戦争法案に反対。男性（５５％）を上回っています。
　「いのちの危険に気づいた女性たちの声が、大手女性週刊誌をも動かしている」と語るのは「明日の自由を守る若手弁護士の会（あすわか）」共同代表の黒澤いつきさん（３４）です。
　「子育て世代の母親たちに多いのは『安倍さんの話はどこかおかしいけど、どこがおかしいのか知りたい』という声です。女性週刊誌の記事はその疑問に答えている」と指摘。「自民党議員のメディア規制の声に負けず、これからも女性週刊誌には大いにペンをふるってほしい」とエールを送ります。
(２０１５年０７月１２日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

インタビュー戦後７０年／俳優奈良岡朋子さん／朗読舞台「黒い雨」出演／軍靴の音が近づいている

今の政治、戦争へ導いているみたい／機銃掃射の中生き延びた、その意味考える
　俳優で、劇団民藝代表の奈良岡朋子さんが今夏も、ライフワークの朗読ひとり舞台「『黒い雨』―八月六日広島にて、矢須子―」（原作／井伏鱒二）に臨みます。自身の空襲体験にも触れながら、「今の日本は、軍靴の音がどんどん近づいている」と危ぶみます。
　大塚武治記者

〈物語は、原爆投下から４年後の広島。年ごろの矢須子は被爆のうわさを立てられ、縁談がまとまりません。親代わりの叔父は疑いを晴らそうと、被爆時の日記を清書します。でも願い空しく、矢須子に原爆症が表れ―〉
　井伏作品といえば、どこかユーモアがあって、ほんわかあったかな印象です。でも『黒い雨』は違います。
　何の罪もない矢須子と叔父夫婦が、原爆のために小さな幸せを壊されていく。なぜこんなことに？　と、ズシンと重く響きます。
　残酷な現実をリアルに描きだす、まるでノンフィクションです。井伏さんの「書かなければならない」という思いを感じます。
　ですから朗読する時は、「役者・奈良岡」でなく、「人間・奈良岡朋子」として心で読みます。私自身が体験した戦争というものに突き動かされながら、感情を抑え、たくまずに。そうして、井伏さんの心をお客様に届けたいと思っています。

電信柱から
〈８５歳の奈良岡さん｡東京･上野の高等女学校３年だった４５年、空襲にあいました。父と兄が不在で、徹夜のバケツリレー。家の一角は何とか消火したものの、辺りは焦土と化しました〉
　翌日、「学校に行かなきゃ」と焼け野原をトボトボ歩いていきました。昨日まで生きていた人も動物もみんなゴロゴロ転がって、電信柱に人の足がぶら下がっている。高台から見ると、校舎の窓が全部焼け焦げていました。「ああ、やられた…」。ぼうぜんとして涙も出ませんでした。本所辺りの友人が大勢亡くなったと、戦後知りました。
　「もう東京にはいられない」と、母と一緒に父の故郷・弘前（青森県）へ疎開しました。満員の汽車は窓から人があふれ、トロトロ走りました。そこに米軍機がダダッと機銃掃射をかけてきた。私は車内で身を伏せて助かりましたが、外につかまっていた人はバタバタ撃ち落とされました。落ちた人を置き去りにし、汽車は走りました。
　いまだに覚えているのは、弘前の学校に転校して校門をくぐった時に見た満開の桜です。根元には、いっぱいの緑の草。「ああ、草も木も生きている、私も生きているんだ｣｡あの気持ちは生涯忘れないと思います。
　私は７０歳過ぎまで、ほとんど戦争体験を語りませんでした。口にするたび、生々しく光景を思い出し、息が苦しくなるからです。
　でも戦争体験者が減る中、自分が生かされた意味を考えるようになりました。私は何百万の亡きがらの上に生きている、生きて、体験を伝えなければと。

役者として
〈安倍政権が成立を狙う「戦争法案」。新劇人会議の呼びかけた反対声明に、現在、劇団民藝など演劇４８団体が賛同しています〉
　戦争の本当の恐ろしさを知らず、おんば日傘で育った者たちが日本を戦争へ導いているように思えてなりません。国会中継を見ても、彼らがあまりに人間の命を軽く考えていることに憤りを覚えます。自分たちは戦場に行かないから、平気なのでしょうか。
　「俺たちが与党だ」と有無を言わさない強引さ、首相自らヤジを飛ばすこと…。あまりにひどい。アメリカの戦争を支援しにいけば必ず攻撃され、自衛隊員に犠牲者が出るでしょう。そうなってからでは遅いんです。
　そうならないよう、野党の人、共産党の人にがんばってほしい。
〈俳優活動への思いにも重なります〉
　鉄道員だった私の叔父は戦前、日本共産党員でした。ある日、家で細胞会議をやっていた時、特高（特別高等警察）に踏み込まれ、捕まりました。叔父に最後に会ったのは、獄中から運び出された病院です。叔母は、叔父が獄中にいる間に生まれた赤ん坊を抱いて行きました。叔父は拷問されて傷だらけ。息絶える間際で、話すこともできませんでした。
　反戦を唱える者が「アカ」と攻撃され、命を奪われた時代。それでも戦争に反対した人がいました。
　私は役者として、仕事で世の中を変えたいと考えてきました。
　老女の役とナレーションを務めた映画「おかあさんの木」（磯村一路監督、公開中）は、戦争中、７人の息子全員を軍隊に取られた、農家のお母さん（鈴木京香）の話です。
　お母さんは「お国のためだ」と言われて耐えるけれど、本当はつらい。息子が出征するたび、キリの苗木を１本ずつ庭に植え、毎日無事を祈ります。でも息子たちは次つぎ戦死して帰ってきません。
　かつて、本当に無数の「お母さん」がいました。もう二度とそんな世の中にしてはいけません。
　人間は、誰もが生きるために生まれてきます。自然に任せ、一歩一歩死へと近づきながら、その生を生きていく。それを奪う権利は、国にも政治家にもありません。

ならおか・ともこ＝１９２９年、東京生まれ。４８年に民衆芸術劇場の研修生となり、５０年、劇団民藝創立に参加。ひとり舞台「黒い雨」（上演台本／笹部博司、演出／丹野郁弓）は、２２～２３日＝東京・紀伊国屋サザンシアター、８月１６日＝川崎市アートセンターほか各地で。℡０４４(９８７)７７１１
(２０１５年０７月１２日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

本と人と／『詩集どくだみ』山岡和範さん／戦争を封じる力確信して

　広島から原爆の非道を訴えた詩人・峠三吉と親交があった著者が、戦後７０年の今年に編んだ詩集です。著者自身の戦争体験や戦後日本の歩み、現代への思いを描き出しています。
　〈あの侵略戦争を大人は／なぜ反対しなかったのかと／戦後の子どもたちは親を責めたが／学校で『君が代』を歌うようになって／そんな声も聞かなくなった〉（「ある日のつぶやき」）
　再び国民を戦争に駆り立てる動きに警鐘を鳴らします。「今を生きている自分の不安や怒り、それらを詩にして訴えていきたい」
　１９４６年に進学のため広島へ。学内詩誌に書いた自分の詩が峠三吉の目に止まり、峠のサークル詩誌『われらの詩』に参加しました。
　「米軍占領下で言論が統制され、反戦平和を口にすることもできない時でした。それでも峠さんは『にんげんをかえせ』という詩を発表し、原爆を告発しました。その勇気は私の胸に刻まれています」
　峠との出会いで政治と文学のかかわりに関心を持ち、以後反核、反戦平和の思いを詩にし続けてきました。
　「僕は、戦争を仕向ける動きを封じ込める力が国民にはあると確信しています。なくては困る」
　〈日かげの中でひかりを求め／赤い地下茎でつながっている〉は表題作の一節。「地味で見向きもされないけれど、白い花を咲かせるドクダミに自分が重なり、愛着を感じます」
　やさしい語り口調のなかに、芯の強さが感じられます。（大幡るい）
　（コールサック社・１５００円）

　３１年生まれ。元小学校教諭。詩集『貧者の求愛』『日陰に咲く』ほか。
( ２０１５年０７月１２日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

放送９０年／歴史と課題／テレビとともに／黒柳徹子さん／１／戦争のこと必ず伺って

「徹子の部屋」生感覚で１万回
　テレビ女優第１号として、草創期からレギュラー番組を持ち続けている黒柳徹子さん。「徹子の部屋」は５月の放送で１万回を超え、ギネス世界記録に認定されました。日本で放送が始まって９０年の今年、テレビとともに歩んだ道のりを語ってもらいました。
　（和田肇）

　ちょうど４０年、「徹子の部屋」（テレビ朝日、１９７６年～）をやってきました。その間、１万人のゲストが、何回も来られている方がいらっしゃるにしても、当日休まれた方が一人もいらっしゃらなかったんです。本当にありがたいと思います。
　それからスタッフ。生放送と同じように、編集で切ったりしないという形で番組を作っていますので、事前にゲストとスタッフが打ち合わせをしていないといけません。スタッフが全く変わらず、熱心に打ち合わせをしてくれていることにも感謝しています。
　ただ４０年のうちに、私と仲の良かったお友達がかなり亡くなってしまったのは残念です。追悼番組を放送するとき、こんなにたくさんの方が亡くなったのか…と。そういうこともありますけど、勉強もいっぱいしたし、人間ってすごいなと思うこともありました。すてきな４０年だったと思います。

戦中戦後の大スターも
　何を質問するか、事前に決めているわけではありません。その日の着物であったり、様子であったり、その日にならないと分からないことってあるじゃないですか。
　だけど、絶対に聞いておこうというのはあります。戦争のことがそうです。どんどん戦争をご存じの方が亡くなっているので、とにかく伺っておこうと思っています。先日は野村昭子さん（８８歳、６月２３日放送）に伺いました。終戦の日、東京の街を歩く中で重要書類を燃やしているところを見たそうです。野村さんは私よりちょっと年上なのね。だから戦争のこともちょっと詳しい。
　戦中戦後の大スターからも聞いています。長谷川一夫さんとか池部良さんとか。二枚目で、戦争とは無関係のような役をおやりになっていたのに、実はみんな、ものすごい体験をお持ちでした。
　池部さんは初め、「話なんてない」とスタッフに言ってらしたんです。でも何かあるでしょうと聞いてみました。戦争中、２０歳ちょっとで兵隊に行っていた。将校で２０人くらいの部下がいたんですって。高峰秀子さんから慰問袋が来て、上官から殴られたそうです。「有名女優から慰問袋をもらうなんてなんだ」と。顔が曲がるぐらい殴られたって話でした。
　終戦の時どこにいらしたんですか、と伺ったら「太平洋の真ん中にいた」って。乗っていた輸送船が撃沈されて、みんなが海に飛び込む中で甲板に出てみたら部下２０人がいた。「待っていることなんてなかったのに」と言ったら「いえ待っていました」と。そして重い刀を置いて、落ちていたピストルを腰に差して「行くぞ」と海に飛び込んだ。もうだめかと思いながら泳いでいると、年上の部下の一人が「上官殿、刀を持っております」。置いてきた刀を持っていてくれた。「その時、僕は泣いたよ」って。その後、南方の島で日本兵の餓死死体を見たり、ミミズを食べたりして森林を逃げのびたり。しゃれた映画スターが、そんな苦しい思いを持っているなんて夢にも思いませんでした。
　銀幕の大スターの長谷川一夫さんなんて、戦争の話なんてないと思っていたんです。そうしたらいい話をしてくださいました。
　同じ部隊に、人を「さん」付けで呼ぶ要領の悪い人がいて、その人のおかげでみんながビンタされたりした。長谷川さんもダメだなって思って教えたりしたんですって。
　ある時、縄を持ってこいと命令された。縄なんてないから、わらで縄をなうのだけど、長谷川さんはやったことがない。どうしようと思っていたら、その人がものすごく上手だった。だから「君の分が終わったら僕にも」と話しかけました。そしたら、「これ長谷川さんのよ」と言ってくれたんですって。
　見下していた相手が自分のために縄を作ってくれたと。長谷川さんね、泣いていらっしゃいました。何十年もたっているのに。どんな方にも話があるんだと思いました。戦争の話が聞けたのは、番組をやっていて本当によかったことです。

永久的平和得られたら
　私はそんなに政治的発言とかはしていないですけれど、やっぱり平和がどんなに大事かということはいつも話すようにしています。
　私がＮＨＫに入ってすぐのとき、アメリカのＮＢＣテレビからテッド・アレグレッティーさんが技術指導で来ていました。その時「テレビは今世紀最も大きなメディアになるだろう。国が良くなるのも悪くなるのも、テレビによってだと思う。テレビをうまく使えば、永久的平和をもたらすと思う」と講演されました。
　永久的平和がテレビによって得られるんだったら、とてもすばらしいことです。日本は戦後７０年、戦争をしないできました。これから先も、みんなが平和でいられるように。若くて戦死した人たちの命がどんなにもったいなかったか。そういうことを考えますと、とにかく戦争をしない。お願いですから、ずーっとこのまんま、平和でいられるように。みんながそう思えば、そうなるんじゃないかと思います。

　連載「放送９０年　歴史と課題」は、４月４、１１日付に放送作家の石井彰さん、同２２、３０日付にジャーナリストの吉永春子さんが登場しています。
( ２０１５年０７月１２日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦争法案ストップ／北海道集会に６０００人／未来を守ろう

　北海道弁護士会連合会と道内の四つの弁護士会が１１日、札幌市で、集団的自衛権・「安保立法」ストップの「わたしたちは戦わない！（ＮＯ　ＷＡＲ）」北海道集会を開きました。炎天下に旭川、釧路、函館などから６０００人を超える（主催者発表）人たちが集結しました。
　連合北海道、道労連に加わる労働者をはじめ、青年、女性らが思い思いのプラスターなどを手に駆けつけました。道弁連の田村智幸理事長があいさつし、「戦後７０年、憲法を守ってきた。憲法を守ろうという私たちの声を国会に届けよう」と呼びかけました。
　青年、宗教者、学者がスピーチ。元自衛官が登壇し「戦闘に前方も後方もない。自衛隊員の血が流れます。自衛隊員は安倍首相のおもちゃじゃない」と訴えると、参加者は共感の拍手で応えました。
　ツイッターで知り参加した田口裕貴さん（２２）は「北海道からこんなに大きな声を上げられてうれしい。どうあがいても憲法違反の法案。何としても止めたい」と話しました。
　集会後、オレンジ色のＴシャツを身につけた弁護士らを先頭にサウンドカーも登場。「ＮＯ　ＰＥＡＣＥ　ＮＯ　ＬＩＦＥ」「戦争しないで未来を守ろう」とコールしながら中心街をパレードしました。
　日本共産党の紙智子参院議員、畠山和也衆院議員のほか、民主党、社民党、新社会党の代表が参加しました。
( ２０１５年０７月１２日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

止めよう戦争法案／仙台弁護士会元会長青木正芳さん（８０）／国の人権侵害に立ち向かう

　歴代会長有志２７人の連名で、憲法違反の戦争法案に反対する声明を先月発表した、仙台弁護士会の青木正芳元会長に話を聞きました。
　（高橋拓丸）

　弁護士は基本的人権の擁護と社会的正義の実現を使命としています。絶えず人権問題について目を光らせ活動することが責務です。

松川事件で無罪を
　１９４９年の松川事件のとき、仙台弁護士会の弁護士たちは冤罪（えんざい）を確信しました。そして、被告人の政治信条に関係なく頑張ろうと、３０人以上の弁護士で十数年間取り組み、１９６３年の最高裁での無罪判決にたどり着きました。仙台弁護士会には「これは大変な人権侵害だ。人権を救済するため、弁護士として立ち上がらなくては」と判断したときには総力をあげて取り組む歴史があります。
　政府が提出した今回の法案は、国民の基本的人権を奪う、国の基本法である憲法に違反する、許せない法案です。与党が選んだ憲法学者でさえ、違憲であると国会で明らかにしました。はっきりと意思表示が必要だと思い、前会長の齋藤拓生氏が中心となって歴代会長に呼びかけ、２７人の声明になりました。
　日本は戦後７０年以上、ひとりも戦死させず、他国でひとりも殺しませんでした。太平洋戦争で戦死者を大勢出したことと、他国にも多大な侵害を与えたことの反省が、交戦権はもたないという憲法を決めたからです。
　しかし、安倍政権は憲法を無視し、集団的自衛権の行使を容認する閣議決定をし、安全保障関連法案を国会に提出しました。真意は、アメリカの戦争への加担を法的に裏付けようというものです。市民の基本的人権の立場に立って、廃案にしなくてはいけません。

協力広げ廃案に
　６月１９日に日本弁護士連合会が、全国５２の弁護士会会長すべての一致で同法案に反対する意見書を発表しました。４月に行われた今年の定期総会でも、基本的人権を守り立憲主義を守るために、法案は廃案にしなければならないと決議しています。
　仙台弁護士会では若手弁護士が中心となって街頭で連日、法案反対の行動をしています。若手だけでなく私たちも声明で意思表示し、大きく市民に訴えていきます。歴代会長１３人が集まり、中心市街地で宣伝行動もしました。
　他県の弁護士会にも呼びかけ、縦と横、内と外すべてに訴えて理解と協力の輪を広げ、法案を廃案にするよう取り組んでいきます。

松川事件
　１９４９年、福島県の東北本線金谷川―松川駅間で起きた列車転覆事件。国鉄と東芝の労組員２０人が起訴されました。検察による証拠の隠匿やねつ造などが裁判のなかで明白になり、被告となった労働者と民主勢力の無罪を求める訴えは全国的な運動に発展。一審、二審とも死刑を含む有罪判決になったものの、６１年の仙台高裁差し戻し審で全員に無罪判決。６３年の最高裁判決で冤罪が確定しました。
(２０１５年０７月１１日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

ゆきとどいた教育、どの子にも／全国署名スタート／高校生「学ぶ権利平等」

　「どの子にもゆきとどいた教育を保障し、お金の心配なく学べる社会に」と求める「ゆきとどいた教育を求める全国署名」のスタート集会が１０日、東京都内で開かれました。３５０人が参加。「４０７万」「１０５万」など署名目標を書いたボードを手に都道府県の代表が登壇し、決意を語りました。

　父母や教職員らでつくる「ゆきとどいた教育をすすめる会」は、昨年度までの２６年間で４億３５００万人余から署名を集め、地方議会での請願採択や地域の人々との共同を広げるなかで、さまざまな要求を実現させてきました。今回の署名では、教育予算の増額や３５人学級の前進、私学助成拡充、「高校無償化」復活などの要求をかかげます。
　高校生や教職員が発言｡東京の私立高生は、全国の高校生が「平和」でつながる「高校生･戦後７０年『未来』プロジェクト」のとりくみとともに、今回は５万を目標に署名活動をすすめ戦後７０年にちなんだＤＶＤもつくりたいと決意を表明。「学ぶ権利は平等です。私たち一人ひとりができることを一緒にすすめましょう」と呼びかけました｡
　全教の坂本次男執行委員が基調報告をしました。２月の衆院予算委員会で安倍首相から「３５人学級の実現に受けて鋭意努力していきたい」と答弁を引き出したのは、長年にわたる署名運動の成果だと強調。医療・福祉・教育などの国民生活を犠牲にする財政制度等審議会の建議を許さず、「父母・生徒・教職員・地域住民が一体となって、すべての子どもたちの学び・成長を社会全体で支える大きな世論を形成しよう」と訴えました。
　同会代表委員の三輪定宣さんが講演しました。
( ２０１５年０７月１１日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

１０ 風の色／高橋真理子／変わらぬ星を見上げて

　戦後７０年。この間、人類はかつて経験したことのない速度で、街の景色や生活、価値観の変化を体験しています。一方、そんな地上を見守るかのように、星空は変わることなく私たちの頭上にいつもあります。
　プラネタリウム番組「戦場に輝くベガ～約束の星を見上げて｣(著作･制作=山梨県立科学館､企画･脚本=跡部浩一､高橋真理子)は､星が武器になった時代の星と人の物語。陸上爆撃機｢銀河｣を天文航法で導く若き偵察員・和夫と、高度方位暦の計算をする女学生・久子。離ればなれの二人をつないだ約束の星・ベガは、今でも変わらず夜空に輝き私たちに何かを伝えている、という内容です。
　和夫はサイパン攻撃からの帰りに満天の星空に包まれながら「自分が攻撃した敵にさえ、どうしても会いたい大切な人がいる」と気づきます。沖縄戦出撃の前夜、久子にあてた最後の手紙に「星が武器としてでなく、希望の光として輝ける日がくることを祈っています」と遺言を残すのです。当事者の多くの証言をもとに、この物語はつくられました｡｢戦争には勝ちも負けもない､どちらも失うものばかりだ｣という和夫のセリフも､体験者の言葉です｡
　今年、この番組が、広島や沖縄など全国のいろいろな場所で上映されます。詳細は番組公式ページにありますので､ご覧いただき､上映企画もしていただければと願っています｡｢平和を愛する諸国民の公正と信義」を信頼してきた日本の貴重な歴史を覆すことのないよう、星が私たちに与えてくれる「想像力」を駆使したいものです。
　（宙先案内人）
(２０１５年０７月０５日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

止めよう戦争法案／寸劇で本質つく／城北法律事務所記念集会／東京・豊島

　「戦後７０年　今こそ平和憲法とともに立つ～私たちは海外戦争法に断固反対します」との集会が３日夜、東京都豊島区で開かれ、約６００人が参加しました。東京北部地域に根ざす城北法律事務所事務局員有志による「劇団キンキュウジタイ」の寸劇「城北家　存立危機事態」には笑いや大きな拍手が起こりました。
　「オレ、仕事やめる。自衛隊やめる」「どうして急に？」―。池袋に住んで５０年、父さんが自衛隊員という「城北家」が〝舞台〟です。
　「重要影響事態、存立危機事態、国際平和共同対処事態…。これどう違うの？」「なんとか口実つくって、戦争する国になろうってことなのよ」
　本質をつくかけあいとなったのは、「５Ｗ１Ｈ」。
　「いつ？」「いつでも」
　「どこで？」「世界中どこでも」
　「だれが？」「自衛隊とアメリカ軍が」
　「どうして？」「わが国の安全を維持するというための名目で」
　「どのように？」「切れ目なく」
　「なにをする？」「国連決議がなくても軍事行動を展開する」
　「Ｊリーガーになれないならサッカークラブやめる？」。最後に、理想を持ち、そこに近づけることが大事と呼びかけ、「戦争法制反対」などみんなでコールしました。
　この日の集会は、創立以来、池袋の地で、働く人と地域住民の権利と生活、平和憲法と民主主義を守る活動を続けてきた城北法律事務所創立５０周年記念企画。琉球新報東京支社の島洋子報道部長が「言論弾圧と戦争法制」と題して講演。伊藤塾塾長・日弁連憲法問題対策本部副本部長の伊藤真弁護士が「戦争で平和をつくれるの？～安保法制は憲法違反！」と題して講演しました。
　集会では「戦争法制ＮＯ！」「平和憲法ＹＥＳ！」を訴えるアピールを確認しました。
( ２０１５年０７月０５日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦争法案の危険、歴史の事実で示す／〝後方支援〟の民間船も攻撃対象／神戸「戦没した船と海員の資料館」

　「後方支援」＝「兵たん」を行う民間船も攻撃対象になり、犠牲者が生まれる―安倍政権が今国会で成立を狙っている戦争法案の危険性を歴史の事実が示す資料館が、神戸市にあります。
　（兵庫県・秋定則之）

　日本共産党の志位和夫委員長は、政府が「後方支援」と呼ぶ活動は国際的には武力行使と一体不可分の「兵たん」で戦争行為の一部だと、国会論戦や党首討論で、その違憲性を浮き彫りにし、安倍首相を追及しました。日米新ガイドラインでは、「中央政府及び地方公共団体の機関が有する権限及び能力並びに民間が有する能力を適切に使用」とされ、自衛隊だけでなく自治体、民間も戦争協力が求められ、米軍の起こす戦争に巻き込まれていきます。

民間船舶と船員、徴用され犠牲に
　第２次世界大戦では、武器・弾薬・燃料・兵員などを戦場へ輸送し、石油や天然資源を日本へ運ぶため、多数の民間船舶と船員が徴用され、犠牲になりました。
　神戸市中央区にある「戦没した船と海員の資料館」は、日本が東南アジア全域と太平洋地域へ侵略を進めた１９４１年のアジア・太平洋戦争開戦から４５年の期間に、犠牲となった民間の船と海員の記録を収集し展示しています。戦没船の写真約１５００枚や、写真が残っていない船の銘板が壁一面を埋め、任務や戦没地、犠牲者数を記しています。戦没船は７２４０隻。船員の犠牲者は６万６０３人、船員、乗員合わせて２３万１６００人に上ります。（同資料館リーフレット）
　貨物船は軍艦とは違い、船体も弱い上に武装もわずかです。十分な護衛もないまま戦場へ向かい、魚雷や爆撃で簡単に撃沈させられました。多くの船と犠牲者は引き揚げられないままになっています。

船員不足で動員１４歳９８７人が犠牲
　戦争が進むにつれ、徴用した船が次々と失われ、政府は「戦時標準船」規格を定め民間に船を造らせました。最後には、水に浮かんで動くものはすべて動員されました。
　船員の犠牲者も増えていき、船員の不足を補うため、「戦時特例」で養成期間を大幅に短縮しただけでなく、国民学校高等科２年（現在の中学２年生）を卒業した子どもたちを海員養成所で教育し、船員として動員しました。戦争末期の４４年には、修業期限を２カ月に短縮し、わずか１４歳の少年たちがベテラン船員に交じって乗船しました。乗船してすぐに撃沈され、少年９８７人が犠牲になりました。戦没船員６万６０３人のうち、２０歳未満の青年は１万９０４６人、３割以上に上りました。
　「兵たんが、格好の軍事目標になるということは、軍事の常識」という志位委員長の指摘は、民間にもあてはまることを歴史が示しています。
　同館主任スタッフの岡村世紀一さん（７４）は「戦後７０年。多くの人に見て、聞いてもらい、それぞれが判断してほしい」「校外学習を引率する先生も、戦争を知らない世代です。後世のために間違いのない確かなものを残しておきたい」と語りました。

戦没した船と海員の資料館
　神戸市中央区海岸通３の１の６、全日本海員組合関西地方支部２階。入館無料。開館時間＝午前１０時～午後５時（入館は４時半まで。土・日・祝日は休館）。０７８(３３１)７５８８

戦没船員（年齢別）
年齢　　　　　人数　　　比率(%)
１４　　　　　　　　９８７　　１.６３
１５　　　　　　　２，８６５　　４.７３
１６　　　　　　　３，１８２　　５.２５
１７　　　　　　　３，９６６　　６.５４
１８　　　　　　　４，２０４　　６.９４
１９　　　　　　　３，８４２　　６.３４
２０歳未満小計　１９，０４６　　３１.４３
２０以上３０未満　１６，６０１　　２７.３９
３０以上４０未満　１３，１８８　　２１.７６
４０以上５０未満　　８，５３３　　１４.０８
５０以上　　　　　３，２３５　　５.３４
合計　　　　　６０，６０３　　　１００
　（戦没した船と海員の資料館作成の資料から）

戦没船（隻）
官・民一般汽船　　３，５７５
機帆船　　　　　　２，０７０
漁船　　　　　　　１，５９５
合計　　　　　　　７，２４０

犠牲者（人、概数）
海員　　　　　　　６０，６００
民間人　　　　　　５９，２００
軍人　　　　　　１０１，０００
捕虜　　　　　　　１０，８００
合計　　　　　　２３１，６００
　（戦没した船と海員の資料館作成の資料から）
( ２０１５年０７月０５日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

ドキュメント１５／９０歳のサッカー記者／日韓友好への情熱を／読売テレビ制作／日本テレビ系あす放送

朝鮮への出征、仲間の戦死
　日本テレビ系ドキュメント’１５では、「シリーズ戦後７０年」の企画を続けています。５日は読売テレビ制作の「９０歳のサッカー記者～日韓　歴史の宿命」（深夜０・５５）を放送。日本で現役最高齢のサッカージャーナリスト・賀川浩さん（９０）がたどった足跡から、平和の尊さを問い直します。
　（佐藤研二）

　番組は、賀川さんが今年１月にＦＩＦＡ（国際サッカー連盟）から長年の功績をたたえる会長賞を受賞する場面で始まります。クリスチアーノ・ロナウドやメッシらスターと並んだ賀川さんは「一番年寄りを選んだ」とはにかみます。

過去と痛み描く
　戦後の間もないころから日本サッカーの魅力を伝え続けてきた老ジャーナリストは戦時中、学徒動員で特攻隊に入隊。出撃寸前で終戦を迎えました。そんな重い過去と心の痛みを淡々と描きます。
　取材を担当した山川友基ディレクターは、１３年前の日韓Ｗ杯時にも賀川さんを取り上げましたが「自身の戦争体験は話してくれなかった」と振り返ります。藤田和昭プロデューサーは「戦争体験者が高齢化するなか、『いま言わないと』という思いにかられたのではないでしょうか｣｡
　１９２４年、神戸市で生まれた賀川さんは、３６年のベルリン五輪に出場した日本代表にあこがれたサッカー少年。県の強豪・第一神戸中学（現神戸高校）に進学し、日本が植民地支配をしていた朝鮮半島の学校とも全国大会で争いました。
　しかし、太平洋戦争開戦後にグラウンドは軍事教練場と化し、学生たちは特攻兵器と化しました。「僕らは中型練習機で手っ取り早く突っ込めという方に回された」と賀川さんが語る出征先は朝鮮半島。辛くも生き残ったものの、多くの仲間が戦地で散っていきました。
　「亡くなった先輩も含めて、たくさんの人が戦争のためにサッカーをやめてしまうことになった。弾が体に入ったまま帰ってきた先輩、ビルマでの敗走で精も根も尽きてしまった人…。そういう積み石の上に立って今日があるわけです」
　ベルリン五輪代表からも多くの戦死者を出すなか、賀川さんとスタッフはキム・ヨンシクという選手に注目し、彼の故郷の韓国へと向かいます。朝鮮半島出身の「日本代表」キム選手は戦争を生き延び、解放後は韓国代表選手に。５４年には監督としてスイスＷ杯初出場に導きました。
　関係者の証言を集めるなか、サッカー日韓定期戦を実現させるなど、両国の友好に情熱を注いできたキム選手の人柄が浮かび上がります。スイス大会予選の日本戦でのメモにはこう書かれていました。「強力な闘志と明晰（めいせき）な頭脳、日々の進歩と構想する力を持て」と。
　７４歳で生涯を閉じたキム選手の墓には「日本選手」の文字も刻まれています。その墓前に賀川さんは語りかけました。「フットボール選手は地域の代表であり、民族の代表であり、世界的なものだということを自ら実践して、スポーツマインドの大切さをいつも説かれていました」

嫌韓の現状危惧
　山川さんは「世界を自由に行き来できるサッカーの面白さ、尊さを賀川さんから教えてもらった」と語ります。しかし、日韓Ｗ杯で培われた両国の友好が崩れ、政治や社会に「嫌韓」が持ち込まれる現状を危惧します。
　「表面的に韓国を嫌うのは、真剣に体を張って交流した体験がないからです。戦後７０年、日韓関係が見えにくくなっているから不安になる。賀川さんやキムさんの小さな歴史を知って学ぶことも、将来を見通す方法の一つではないでしょうか」
( ２０１５年０７月０４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

止めよう戦争法案／北海道弁護士会連合会田村智幸理事長（５４）／謙譲よりも声上げるとき

　政府は、安保関連法案について述べるときに必ず持ち出すのは、安全保障環境の変化で、具体的には中国、北朝鮮などに対し、アメリカと共同して抑止する力を高めることが必要だということです。
　しかし、これまでも米ソ冷戦下、世界戦争の危機だったキューバ危機、ベトナム戦争など相次ぎました。私は１９８０年に大学に入学しましたが、当時の東西対立は深刻で、国際的な緊張感を肌身で感じていました。国際情勢の変化というのは、今回に限ったことではないと思います。
　抑止力については、集団的自衛権を容認することで抑止力を高めて国民の生命や財産の保護をするという論と、緊張関係をかえって高めてリスクが増えるという論があります。どちらにしても、法律家の立場からするとそれはあくまで法の枠内で考える必要があり、それが立憲主義です。仮に国際情勢、抑止力を前提に考えるのだとしても国の基本法である憲法の規範を踏み越えてはいけないのです。
　自民党の高村正彦副総裁は「憲法学者は９条２項の字面に拘泥する」と言いましたが、言葉で一致点を見いだして最大公約を積み重ねていくのが民主主義でもあり、物事の進め方です。
　高村さんは弁護士ですから法規範の枠内でなければいけないことは百も承知なのに、整合性のない解釈をすることは罪が重い。
　安倍首相は昨年の選挙で大勝したことで世論が味方についていると思っていますが、投票率は低いわけで、安倍首相を多くの人が支持しているんであれば、あんなに投票率が低いわけがありません。
　戦後７０年、国是としてきたものを一内閣が虚構の数を頼りに強引に変えてしまうことに対して、あきれてしまいます。
　◇
　法案を止めるのには、一人ひとりが「おかしい」と怒りの声を上げて行動することしかないと思います。
　弁護士たちの自衛に対する考えもそれぞれですが、立憲主義、平和主義の見地で議論を積み重ね、全弁護士会で圧倒的多数の弁護士が、集団的自衛権容認の閣議決定と関連法制に反対する立場で運動の輪を広げています。
　私自身も憲法を暮らしに生かすということが大事だと考えていますし、法律家はみんな、憲法を愛しています。その思いで若手は、憲法カフェや高校での出前授業に熱心に取り組み、７０、８０代の方でもビラまきに参加するなど、各世代の活動が積み重なって弁護士会として７月１１日の大集会が開催できると思っています。
　今、声を上げる時期が来ています。日本人特有の一歩引く、はっきりとものを言わない「謙譲の美徳」があって、それにつけ込まれてしまっている気がします。でも、歴史的な岐路に立っている今、「謙譲の美徳」を脇に置いておいて声を上げてほしいです。
　聞き手　北海道・越智朋子
　◇
　北海道弁護士会連合会主催の大集会＆パレード「わたしたちは戦わない！ＮＯＷＡＲ」７月１１日（土）午後２時、中島公園自由広場。３時からパレード。
(２０１５年０７月０３日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

１４日に空襲被害者集会／山下・田村智氏と実行委、懇談

　全国各地の空襲被害者らでつくる「戦後７０年・戦争被害のすべて解決を！実行委員会」の代表らが６月３０日、国会内で日本共産党の山下芳生書記局長、田村智子参院議員と懇談しました。
　実行委の人たちは、空襲被害者への救済と国による被害実態調査などを内容とする「空襲被害者等援護法（仮称）」制定を目指す運動や、戦争被害の解決を求める集会（７月１４日、８月１４日）の取り組みを報告。実行委員長の中山武敏弁護士は「戦争被害者が一つになって大きくまとまろうとしている。集会を成功させ、立法化（同援護法制定）にむけて運動を広げたい」と抱負を語りました。
　山下氏は、国会で審議中の戦争法案に対し多くの青年が反対の声をあげ運動が広がっていることを紹介し「戦争被害者を今後一人もださないというみなさんの取り組みを若い人が受け継ぎつつあります。日本共産党としても集会の成功などで力を合わせたい」と語りました。
　７月１４日の集会は、衆院第１議員会館で開かれ、小林節・慶応大学名誉教授（副実行委員長）が講演します。
( ２０１５年０７月０３日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

日中戦争時、中国で反戦ラジオ放送した長谷川テル／平和への思い、娘の暁子さん語る／きょうつどい開催

「戦争だめ」大きな声を
　日中戦争のさなか、中国で日本軍兵士に向け反戦のラジオ放送をした日本人女性がいました。「貴重な血を無駄なたたかいのために流さないでください」と呼びかけたその女性は、長谷川テル。戦後７０年の節目にテルをしのび、日中不再戦と両国の友好を誓うつどいが１日、大阪市で開かれます。つどいに先立ち、テルの娘、長谷川暁子さん（６９）＝堺市＝が平和への思いを語りました。
　（前田美咲）

　暁子さんは、中国で生まれ育ち、日中国交正常化を機に１９７９年に初来日しました。９２年に日本国籍を取得し、関西の大学で中国語講師をしています。
　「第２次安倍政権ができて２年の間に、日本はどんどん平和から遠ざかっている。戦争で一番被害を受けるのは普通の人です。今、大きな声で『戦争はだめ』と言わないといけない」と語ります。

抗日運動に参加
　テルは、１９３７年に２５歳で中国へ渡り、中国人の夫・劉仁と抗日運動に加わりました。国際語エスぺラントを学んでいたテルは「エスペラントが人類の文化と平和の、野蛮な破壊者に対する国際的な武器」と記すなど、平和と国際協調を希求し、日本の起こした戦争が侵略戦争だと見抜いていました。
　日中戦争下、武漢と重慶で、３年間に２１８回の反戦ラジオ放送を行い、日本兵に「ここにあなた方の敵はいません。貴重な血を無駄なたたかいのために流さないでください」と訴えました。
　日本では「祖国日本に弓引く売国奴」と報じられ、実家には石が投げ込まれたといいます。

反戦訴える勇気
　テルは、生後１０カ月の暁子さんと、暁子さんの兄（当時５歳）を残し４７年に死去。暁子さんに母の記憶はありませんが､｢あの時代に堂々と反戦を訴えた勇気を、一人の人間として尊敬している｣とほほ笑みます｡
　「長谷川テルがかわいそう」―。中国・ジャムスに眠る両親の墓参りをした昨年、暁子さんは今までにない感情に包まれました。「母が命をかけた日中の友好がこんなに冷え切ってしまい、日本は戦争に向かおうとしていることが、無性に寂しくなったんです」
　２０１２年に自伝を出版し「これで『長谷川テルの娘』から卒業して静かに暮らそう」と思っていた暁子さん。同じ年に第２次安倍政権が生まれ、「戦争する国づくり」に突き進むのを見て、考えが変わりました。
　「あの時代、思っていることを口に出せる人は少なかった。テルのことを多くの人に知ってもらい、今度はみんなで大きな声を上げましょう」

日中不再戦／平和・友好のつどい／大阪で開催

　テルをテーマにした「日中不再戦・平和友好のつどい」が１日、大阪市中央区のドーンセンター（地下鉄天満橋駅５分）で開かれます。主催は日中友好協会大阪府連合会。
　朗読劇「戦時下反戦放送・長谷川テルの生涯と遺児　暁子」の上演ほか。朗読劇には、日中友好に自信をなくした暁子さんを、テルが励ます場面があります。山本恒人府連副会長（大阪経済大学名誉教授）は、「私たちも、いまの日中関係に自信をなくすときがあります。テルと暁子さんの語り合いに自分たちを重ね、一緒に不安をはねのけていけたら」と語ります。午後６時半開会。
( ２０１５年０７月０１日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

中国政協主席、村山談話の順守求める

　【北京＝小林拓也】中国共産党序列４位の兪正声・全国政治協商会議（政協）主席は６月２９日、訪中した自民党アジア・アフリカ問題研究会（ＡＡ研）の野田毅会長らと北京の人民大会堂で会談し、安倍晋三首相が夏に発表する戦後７０年談話を念頭に「村山談話の順守を受け入れてもらわなければ困る」と求めました。
　兪主席は、フィリピンなどと領有権を争う南シナ海問題に関し「日本とは関係のない問題だ。日本がどちらかの味方に付くのは友好の妨げになる」と不満を表明。「中国だけに厳しく言うのは公平性を欠くのではないか」と述べました。
( ２０１５年０７月０１日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

【6月】

３０ 戦争法案みんなの力で廃案に／外交努力こそ重要／奈良

　「戦後」を７０年で終わらせていいのか、安倍政権の９条壊しにＮＯ！―。憲法９条守れ！奈良県共同センターは２６日、森英樹名古屋大学名誉教授をまねいて奈良市内で学習会を開催しました。
　同センターの代表世話人の佐藤真理弁護士が「森先生の話を糧に、とにかく学んで、そして広げ、訴えていく、それを広げていただきたい」とあいさつしました。
　森教授は、「日本は加害の歴史に公的に立ちかえる機会がない」と指摘し、敗戦国であるドイツと日本の「戦後」を比較し、過去に目を閉ざす安倍政権が戦争法案を出す怖さを訴えました。
　戦争法案阻止の展望について森教授は、「攻められたらではなく、攻められないための外交努力をしていくことが重要だ」と話し、戦後７０年の節目に出てきた戦争法案を「絶対に戦争しない・させない」の分厚い世論で包囲していかなければならないと訴えました。
(２０１５年０６月３０日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

自民訪中、政協主席と会談

　【北京＝時事】自民党アジア・アフリカ問題研究会（ＡＡ研）の野田毅会長らの訪中団は２９日、北京の人民大会堂で共産党序列４位の兪正声・全国政治協商会議（政協）主席と会談しました。安倍晋三首相が夏に発表する戦後７０年談話などが取り上げられるとみられます。
　野田氏は昨年５月に訪中した際も兪氏と会談しました。会談の冒頭、兪氏は昨年と比べ改善の進む日中関係に触れ「状況が変わった。このような環境の下で対話ができることを本当にうれしく思う」と述べました。
　中国は７０年談話に関し、「侵略」や「おわび」を明記した１９９５年の村山首相談話などと比較し、内容を注視する姿勢を示しています。
( ２０１５年０６月３０日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

朝の風／有刺鉄線と跳躍する女たち

　沖縄で増田常徳展「７０年の旋律」が開かれている（佐喜眞美術館、７月２０日まで）。アウシュビッツや原爆ドームなどを描き人間の不条理の闇を追究してきた増田だが、一連の作品なかで、戦後７０年の沖縄の現実を直視した１０作品の迫力に胸を打たれた。
　そこで沖縄を象徴するのは有刺鉄線だ。画面を二分した作品「７０年の旋律―ＯＫＩＮＡＷＡ」は、右画面に石こうで創った老人の上半身を描いているが、右目はふさがれ左目はくりぬかれ、口は針金で縫われ、抗議すらできない無残な姿をさらしている。有刺鉄線が１本、両画面を横断しているが（左画面では実物の鉄線に変化)､左側全体は白に塗られ、大きな×印が描かれる｡｢立ち入り禁止｣の沖縄だ。見て快い作品ではない。だが増田は見る者が「癇に障る｣｢拒否反応を起こす」作品が大事だと言う。
　高さ約２㍍、幅５㍍の大作｢光明(嘆きの群像)｣も忘れ難い。十余体の全裸の後ろ姿の女性がいっせいに空中に跳躍している。沖縄戦で断崖から身を投じた悲劇を知る者は当然、跳躍の後の落下を想像し粛然とするが、しばらく凝視していると不思議にも、落下した女たちが神々しく天に向かって浮遊していく。
　増田の深い鎮魂の思いが切々と胸に迫る作品だ。
　（鶫）
( ２０１５年０６月２９日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

インタビュー戦後７０年／経済評論家内橋克人さん／空襲体験、今もまざまざ

安倍首相は「戦争知らない軍国少年」／上目遣いのメディアでいいのか
　日本の経済、社会をするどく分析し、国民の目線から提言をしてきた経済評論家の内橋克人さん。自らの戦争体験もふまえ「いま」を語ります。
　山本長春記者

〈内橋さんは５月、呼びかけ人である「鎌倉・九条の会」で講演しました。１５００席の会場が満席でした〉
　多くの方が安倍政権に危機感を感じていらっしゃる。私は、安倍晋三首相やその親衛隊のみなさんを「戦争を知らない軍国少年」と呼んでいます。彼らは「アメリカによる押し付け憲法だ」「戦後レジームからの脱却」などと叫びます。しかし憲法の平和的生存権、基本的人権は、日本人の学者がもとをつくりました。
　朝鮮戦争が起きた１９５０年、アメリカはダレス国務省顧問を送り、日本の再軍備、それも３０万人から３５万人規模を要求しました。警察予備隊はできましたが、憲法９条を守れと抵抗したのは日本人です。戦後７０年は日本人自身がつくってきた。それが「戦後レジーム」なんです。安倍さんはそこがわかっていない。極めて幼稚で愚かです。

平和つなぐ役割
〈戦争法案反対の声が全国で広がっています〉
　すごい熱気を感じますね。戦争体験者とそうでない人とでは危機感が違うでしょう。でも戦後世代も体験者の話を聞くことで、平和の尊さを受け継いでいけます。それに努めるのが、生き残った者たちの役割だと思います。国会議員の８割が改憲論者ですが、国民の中では３割弱にすぎない。沖縄の辺野古基地反対とアベノミクスの破たんが安倍政権のアキレス腱（けん）です。戦後７０年の今年は瀬戸際です。草の根の力に期待します。
〈自身も、１９４５年の３月１７日、６月５日の神戸大空襲を体験しました。中学入学前後のことです〉
　３月の大空襲のときは、たまたま盲腸で入院中でした。防空壕（ごう）で私のいつも座っていた場所にいた近所のおばちゃんは、焼夷（しょうい）弾の直撃を受け亡くなりました。それからの私は「死にたがる子」といわれるようになりました。空襲にも逃げない、防空壕でもわざわざ危ない位置に座る。身代わりで人を亡くしたことは、子どもながらつらかったのでしょう。６月の大空襲では、焼夷弾の嵐の下を逃げ惑い、目にした光景は今も消えません。鷹取駅近くの川の合流点では遺体が塊になってぐるぐる漂っていました。
〈その後、兵庫県内に疎開することに―〉
　疎開先の学校で、神戸の空襲を話しました。すると放課後、担任と配属将校から詰められました。「流言飛語という言葉、知ってるか！」と。当時の私は知りませんでしたが、根拠のないうわさ話で、戦意を衰えさせるなという意味です。それでも、私は子どもながらに口答えしました。「お二人は、神戸で何が起きているかご存じですか」。２人は顔を見合わせた後、「知らんはずないやろ」と。知っていながら…。その時の怒りは今も消えません。

経済の骨格破壊
〈安倍政権のアベノミクスについて内橋さんは、戦後７０年の中で位置付けます〉
　安倍さんの経済政策に欠落していることが三つあります。ひとつは、貧富の差を調整するための所得再分配政策。累進課税や、憲法が保障する、最低限度の生活を営むための医療・福祉の充実です。二つ目は、共生セクターです。世の中、競争一辺倒ではいけない。協同組合のような共同する力が必要です。そして三つ目は社会的な共通資本を大事にすることです。
　ところが、安倍さんは、低所得者ほど負担が重い消費税増税を強行し、逆に財界には法人税を減税してやる。「岩盤破壊」だと称して農協の解体を狙う。年金積立金管理運用独立行政法人（ＧＰＩＦ）といって、国民の年金保険料からなる巨額な資金を株価つり上げのために投入する。時の政権による公的資源の私物化そのものです。アベノミクスは、戦後築いてきた経済の骨格を砕く総仕上げではないでしょうか。

言うべきを言う
〈内橋さんは元神戸新聞記者で、現在も客員論説委員です。いまのマスメディアの姿勢を厳しく問います〉
　私は、言うべきを言う、戦前の不屈のジャーナリスト・桐生悠々に少しでもあやかろうと記者の道を選びました。先輩記者から「記者三訓」をたたきこまれました。「自分の目で確かめろ」「上を向いて歩くやつに仕事師はいない」「攻める側にカメラをすえるな」の三つの戒めです。
　戦争末期、神戸新聞でも特高（特別高等警察）が編集局長の隣に座り、そのうち局長席に座るようになりました。いま、本当のジャーナリストなら安倍政権を厳しく批判せずにいられないでしょう。上目遣いのメディアをみていると、ほんとうに悲しい。強権に対峙（たいじ）し、化けの皮をむく作業を命懸けでやっているでしょうか。

うちはし・かつと＝１９３２年神戸市生まれ。神戸新聞記者をへて評論活動に。『新版　匠の時代』（全６巻）、『内橋克人　同時代への発言』（全８巻）、『大震災のなかで　私たちは何をすべきか』（編著）など著書多数。ＮＨＫ放送文化賞などを受賞
(２０１５年０６月２８日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

歴史問題「和解実現を」―中国外相

　【北京＝時事】中国の王毅外相は２７日、北京で開催中の「世界平和フォーラム」で講演し、日中関係について「歴史の被告席に座り続けるのか、過去に侵略した国との和解を実現するのか、これが日本が解決しなければならない重大な問題だ」と述べ、安倍晋三首相が夏に発表する戦後７０年談話を念頭に日本をけん制しました。
( ２０１５年０６月２８日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

柳沢氏迎え講演会／「銃使わない」、日本ブランド／富山・保険医協会

　富山県保険医協会（矢野博明会長）は２３日、元内閣官房副長官補の柳沢協二氏を迎えて「戦後７０年　日本の進路を問う講演会」を開きました。１４０人が参加しました。
　柳沢氏は、日本の防衛には、憲法９条で７０年間培ってきた「銃を使わない」「殺さない」という日本ブランドこそ活用すべきで、抑止力の強化はかえって危険だと強調。戦争法案反対の世論を大きく広げて、法案成立を阻止しようと訴えました。
　参加者の一人が、戦闘地域に物資を届けることになれば戦闘部隊の指揮下に入り自衛隊の判断で輸送を中断できないとの柳沢氏の朝日新聞での発言を、国会で安倍首相が「間違っている」と批判したことをどう思うかと質問。柳沢氏は、「戦闘地域に弾薬を運ぼうとしたら前線部隊の指揮下に入らないと危険だと言うのは軍事の常識だ」とのべ、安倍首相の認識が誤っていることを強調しました。
(２０１５年０６月２７日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

世界から見た戦争法案の異常と危険／志位委員長の講演／外国特派員協会／その１

　日本共産党の志位和夫委員長が２３日、日本外国特派員協会で行った講演と記者との一問一答を紹介します。発表にあたって、修正・加筆を行っています。

　今日は、ご招待いただきまして、まことにありがとうございます。日本共産党の志位和夫でございます。
　この間、安倍政権は、「平和安全法制」の名で１１本の法案を国会に提出し、激しい論戦が行われてきました。私たちは、憲法９条を全面的に破壊する戦争法案が正体だと、追及してきました。
　今日は、「世界から見た戦争法案の異常と危険」と題して、冒頭、若干の時間をいただいて、お話をさせていただきたいと思います。

国会論戦を通じて戦争法案の違憲性は明らかとなった

　戦後、日本の自衛隊は、半世紀余にわたって、一人の外国人も殺さず、一人の戦死者も出してきませんでした。ここには憲法９条の偉大な力が働いています。そして、この憲法のもとで、政府が、戦後一貫して、「海外での武力行使は許されない」という憲法解釈をとってきたことも重要な要因として働いています。
　戦争法案は、この国のあり方を根底から覆すものです。それは「海外で戦争する国」づくり、「殺し、殺される国」づくりを進めようというものにほかなりません。私たちは、安倍首相との国会での論戦で、憲法に反する三つの大問題を明らかにしてきました。
　第一は、米国が、世界のどこであれ、アフガニスタン戦争、イラク戦争のような戦争にのりだしたさいに、自衛隊がこれまで「戦闘地域」とされてきた地域までいって、弾薬の補給、武器の輸送などのいわゆる「後方支援」＝兵站（へいたん）を行うことになるということです。「戦闘地域」での兵站は、相手方から攻撃目標とされ、武力行使に道を開くことになります。
　第二に、ＰＫＯ（国連平和維持活動）法の改定が、たいへんな曲者（くせもの）であります。ＰＫＯとは関係のない活動に参加し、形式上「停戦合意」がされているが、なお戦乱が続いているようなところに、自衛隊を派兵し、治安活動をさせる仕掛けを新たにつくろうとしています。安倍首相は、私の質問にたいして、アフガニスタンに展開し、約３５００人もの戦死者を出したＩＳＡＦ（国際治安支援部隊）のような活動への参加を否定しませんでした。戦乱が続いている地域での治安活動は容易に武力行使に転化します。
　第三は、日本がどこからも攻撃されていなくても、集団的自衛権を発動し、米国の戦争に自衛隊が参戦し、海外での武力行使にのりだすことになるということです。私たちは、これは、一内閣の専断で、従来の憲法解釈を百八十度転換する立憲主義の破壊であり、憲法９条の破壊であるときびしく批判してきました。
　以上のべた点から、私たちは、この法案の違憲性は明らかだと確信しています。
　そのうえで、今日は、世界から見て、安倍政権が進めている戦争法案が、どんなに異常で危険なのかという角度から、さらにお話をしたいと思います。

「非国際性」――地球の裏側まで派兵を、世界に通用しない理屈で合理化

　世界から見ますと、戦争法案とその推進勢力には、三つの異常と危険があります。
　第一は、「非国際性」です。すなわち、地球の裏側までの自衛隊の派兵をもくろみながら、世界に通用しない理屈でそれを合理化しようとしていることです。
　たとえば、「戦闘地域」での兵站について、安倍政権はどう説明しているか。戦闘部隊に対する補給・輸送などの兵站が、武力行使と一体不可分であり、戦争行為の不可欠の一部であることは、世界の常識であり、軍事の常識です。
　しかし、それを正面から認めてしまうと、その途端にこの法案が憲法違反であることを自ら告白することになってしまいます。そこで政府は、それをごまかすために、世界のどこでも通用しない概念、議論を用いてきました。

「後方支援」「武器の使用」「武力行使との一体化」――すべて世界に通用しない概念
　端的にお話ししましょう。日本政府が使っている言葉で、英語に翻訳できない、概念すらない三つの言葉があります。英語に翻訳できないと私が言って、（同時通訳者の）高松（珠子）さんに訳してもらうのは、たいへんに申し訳ないのですが（笑い）、高松さんは上手にやってくれると思います。（笑い）
　一つは、「後方支援」という言葉です。これは日本政府だけの造語なのです。ご承知のように英語では、「ｌｏｇｉｓｔｉｃｓ（ロジスティクス）」＝「兵站」となります。しかし政府は、決して、「兵站」という言葉を使おうとしません。「兵站」には、「前方」、「後方」という概念は含まれていません。「後方支援」という言葉は、日本の自衛隊が行うのは、あくまでも「後方」で行う「支援」であって、「前方」には行かないというゴマカシの言葉なのです。
　二つ目は、「武器の使用」という概念です。政府は、「（自衛隊は）武器の使用はするが武力の行使にあたらない」（笑い）ということを繰り返します。安倍首相は、「戦闘地域」で自衛隊が兵站を行うさいに、相手方から攻撃されたら「武器の使用」をするということを認めました。しかし、「武力の行使」ではないと（笑い）、かたくなに繰り返すのです。
　そこで私は、外務省に、「『武器の使用』という国際法上の概念があるのですか」とただしました。外務省から返ってきた答えは、「国際法上は、『武器の使用』という概念そのものがございません」というものでした。「武器の使用は武力の行使にあたらない」というのは、世界のどこでも通用しない議論なのです。
　三つ目は、「武力行使との一体化」という概念です。政府は、「他国の武力行使と一体でない後方支援は武力の行使にあたらない」と言っています。そこで私は、先日の党首討論（６月１７日）で安倍首相に聞きました。「武力行使と一体でない後方支援という概念が、国際法上あるのですか」。首相は、「国際法上、そういう概念はありません」と答えました。この概念が世界で通用しないことを認めたのです。
　ちなみに、昨年７月に行われた集団的自衛権行使容認の「閣議決定」の日本政府による英訳（仮訳）で、「武力行使との一体化」をどう訳しているのかを見てみましたら、「Ｉｔｔａｉｋａ　ｗｉｔｈ　ｔｈｅ　Ｕｓｅ　ｏｆ　Ｆｏｒｃｅ」と、「一体化」については何とローマ字を当てていました（笑い）。「一体化」という概念を訳すことは誰にもできないのです。（笑い）

集団的自衛権容認の根拠――「安全保障環境の根本的変容」の実例を示せず
　世界で通用しないという点では、集団的自衛権の行使についての政府見解も同様であります。
　政府は、集団的自衛権発動の要件として、「日本と密接な関係にある他国に対する武力行使が発生し、日本が『存立危機事態』に陥る」ことをあげています。そして、政府は、こうした憲法解釈の変更を行った唯一最大の理由として、「安全保障環境が根本的に変容した」ことをあげています。
　そこで、わが党議員団が国会でただしました。「『安全保障環境が根本的に変容した』というが、他国に対する武力攻撃によって、政府の安保法案が言うような『存立危機事態』なるものに陥った国が、世界に一つでもありますか」。外務大臣が答弁しましたが、「実例をあげるのは困難です」（笑い）というものでした。
　一つも実例があげられない。すなわち憲法解釈を変更した理由――戦争法案の「立法事実」が根底から崩れたというのが、この間の論戦の到達点であります。
　憲法９条のもとでは、もともと自衛隊の海外派兵というのは不可能なのです。それを取り繕おうとするから、政府は、世界のどこにもない架空の概念をつくりだすという矛盾に陥っています。自衛隊の世界的規模での派兵を企てながら、世界のどこにも通用しない詭弁（きべん）でそれを合理化することは、許されるものではありません。
　私は心配になります。地球の裏側で、米軍と自衛隊が共同で軍事行動している。そのときに自衛隊が、「このような後方支援は武力行使と一体化するのでできない」と米軍に言ったとします。しかし米軍のほうは「一体化」という英訳そのものがないのですから（笑い）、理解ができないでしょう。日本政府が弄（ろう）している詭弁は、自衛隊をたいへん困った立場においやることにもなるでしょう。

「対米従属性」――米国の無法な戦争に参戦する危険

　第二は、「対米従属性」――すなわちこの法案を推進している勢力が、異常なアメリカ追随を特徴としているという問題です。
　政府は、集団的自衛権の発動の要件として、「わが国と密接な関係にある他国への武力攻撃が発生」したことをあげています。私は、この場合、ここでいう「他国への武力攻撃」がいかにして発生したか、ここから問題にしなければならないと考えています。
　すなわち、「他国」が先制攻撃を行い、その結果として戦争状態が生まれたのか――この場合には「他国」は侵略国となります。それとも、「他国」に対する武力攻撃から戦争が開始されたのか――その場合には「他国」は犠牲国となります。私たちは、ここに追及すべき大問題があると考えて、国会で質疑を行ってきました。
　私は、安倍首相に聞きました。「米国が先制攻撃の戦争を行った場合でも、武力行使の『新３要件』を満たしていると政府が判断すれば、集団的自衛権を発動するのですか」。それに対して首相は、「違法な武力行使をした国を日本が自衛権を発動して支援することはない」と答弁しました。
　しかしここで問題となってくるのは、日本政府が、米国の違法な武力行使を「違法」と批判できるかどうかということです。
　戦後、米国は、ベトナム侵略戦争、イラク侵略戦争をはじめ、数多くの先制攻撃の戦争を実行してきました。１９８０年代に米国が行ったグレナダ侵略（８３年）、リビア爆撃（８６年）、パナマ侵略（８９年）に対しては、国連総会が圧倒的多数で米国の武力行使を国連憲章と国際法に違反するものとして非難する決議を採択しています。
　それでは、日本政府が、戦後、米国の武力行使に対して、「国際法違反」として一度でも反対したことがあるか。私が、国会でただしますと、首相は、しぶしぶ「一度もありません」と答弁しました。一度も「ノー」と言ったことはないのです。３度にわたる国連総会での対米非難決議にさいしても、日本政府は、「反対」「棄権」の態度を取り、一度も賛成をしませんでした。
　このような異常なアメリカ追随の国というのは、私は、主要国の中で他に例を見ないと思います。このような政府が、そしてそういう行動に対して今にいたるも反省のない政府が、「違法な武力行使をした国を支援することはない」といって誰が信用できるでしょうか。これまでは米国の要求があっても、「憲法上、集団的自衛権は行使できない」として断ることもできたでしょう。しかしこの法案が成立すれば、そうはいきません。先制攻撃を一貫して国家の基本戦略としている米国に求められるまま、集団的自衛権を発動することになる危険があります。
　世界にも類のない異常なアメリカ言いなりの政府が、集団的自衛権行使を可能とすることの危険は、きわめて深刻だといわざるをえません。

「歴史逆行性」――過去の日本の戦争を反省しない勢力が戦争法案を推進する危険

　第三は、「歴史逆行性」――すなわち過去の日本の戦争を「間違った戦争」と言えない安倍政権が戦争法案を推進する危険であります。
　今年は、戦後７０年です。この節目の年に、日本が過去の戦争にどういう基本姿勢をとるかはきわめて重大な問題です。
　私は、５月２０日の党首討論で、安倍首相に対して、１９４５年８月に日本が受諾した「ポツダム宣言」を引用して、「過去の日本の戦争は『間違った戦争』との認識はあるか」とただしました。安倍首相はかたくなに「間違った戦争」と認めることを拒み続けました。くわえてこの党首討論のなかで、安倍首相が「（ポツダム宣言を）まだつまびらかに読んでいない」（笑い）と答弁したことが、内外に衝撃を与えました。
　党首討論の後、安倍政権はこの問題についての答弁書を「閣議決定」しました。そこにはこう書かれています。「首相は当然、ポツダム宣言を読んでいる」（笑い）。「読んでいる」ということを「閣議決定」するというのもおかしな話ですが、「読んでいる」というのだったら、あのときの答弁は何だったのかということになります。
　第２次世界大戦後の国際秩序は、日本とドイツとイタリアが行った戦争は、侵略戦争だったという判定の上に成り立っています。ところが安倍首相は、「侵略戦争」はおろか、「間違った戦争」と認めることすらしないのです。
　日本の過去の戦争への反省のない勢力が、憲法９条を壊して「海外で戦争する国」への道を暴走する。これほどアジアと世界にとって危険なことはないといわなければなりません。

戦争法案阻止へ、国会論戦と国民運動で圧倒的多数派をつくるために力つくす

　昨日（６月２２日）、政府・与党は、国会の会期を９５日間、９月２７日まで、史上最長の延長を強行しました。
　この法案の帰すうがどうなるか。その最大のカギを握っているのは国民の世論です。国民の文字通りの圧倒的多数がこれに反対の意思表示をした場合には、いかに与党が国会で多数を持っていたとしても、容易には強行することはできません。
　私たちは、国会論戦と国民運動の両面で、そうした圧倒的な国民的多数派をつくるために力をつくしたいと決意しています。
　ご清聴、ありがとうございました。（拍手）

参加者との一問一答

アフガン・イラクに派兵された自衛隊員の自殺をどうみるか？
　問い　自衛隊は、これまで海外で一人も殺していないというお話がありましたが、一方で海外派兵から戻った自衛隊員が多数自殺をするという事態が起きています。なぜ高い自殺率になっていると思いますか。
　志位　自衛隊員の自殺者の問題については、私も国会の質疑で取り上げました。アフガニスタン戦争とイラク戦争に派兵された自衛官のうち、帰国後に５６人が自ら命を絶っているということが、政府から明らかにされました。
　政府は、「派兵と自殺との因果関係を特定するのは困難な場合が多い」としています。ただＮＨＫは、イラクの現地に派遣された医師が、隊員の精神状態を分析した内部資料を報道しました。内部資料では、睡眠障害や不安など心の不調を訴えた隊員は、どの部隊も１割以上、中には３割を超える部隊もあったとしています。これは非常に深刻な問題だと私は考えています。
　米国の場合は、イラク戦争とアフガン戦争の帰還兵のなかでの自殺が一大社会問題になっています。米国政府によると、１日平均２２人、年間８０００人もの帰還兵が自殺しているとのことです。戦場で殺されることへの恐怖とともに、戦場で相手の命を奪ったこと――無辜（むこ）の市民を殺してしまったからＰＴＳＤ（心的外傷後ストレス障害）になり、自ら命を絶つケースも少なくないと伝えられています。戦争でつねに犠牲になるのは未来ある若者であり、こういう負担と犠牲を日本の若者に強いることは許されないと、私は強くいいたいと思います。

首相になったら最初の訪問国にどの国を選ぶか？
　問い　政治家として長年活躍しておられる志位さんが、もし首相になったら、最初にどの国を訪問しますか。
　志位　私たちが政権を担った場合に、最初になるかどうかはわかりませんが、アメリカ合衆国は必ず訪問しなければなりません。
　といいますのは、私たちは、日本国民多数の合意を得て、日米安保条約を廃棄し、それに代えて日米友好条約を締結することを党綱領に明記しています。２１世紀の世界を見渡してみた場合に、軍事同盟というのは圧倒的な少数派となっています。米ソ対決時代＝２０世紀の遺物である軍事同盟はもうやめて、その代わりに真の意味で対等・平等に立った日米友好条約を結びたいというのが、私たちの大方針です。
　共産党というと「反米主義」と考えている人も多いと思いますが、私たちは決して「反米」ではありません。米国の誤った政策にはきびしく反対しますが、「独立宣言」に発する偉大な民主主義の歴史と伝統に対しては深い敬意を持っています。私たちは、太平洋をはさんだ重要な隣国であるアメリカと、真の対等・平等・友好の関係を結びたいと願っています。そうした日米関係の大転換をはかることが、私たちが政権を担った場合の最初の大仕事になるだろうと考えています。
( ２０１５年０６月２６日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

沖縄全戦没者追悼式での翁長知事の平和宣言

　２３日の沖縄全戦没者追悼式での翁長雄志知事の平和宣言は、次の通りです。

　７０年目の６月２３日を迎えました。
　私たちの郷土沖縄では、かつて、史上稀（まれ）に見る熾烈（しれつ）な地上戦が行われました。２０万人余りの尊い命が犠牲となり、家族や友人など愛する人々を失った悲しみを、私たちは永遠に忘れることができません。
　それは、私たち沖縄県民が、その目や耳、肌に戦（いくさ）のもたらす悲惨さを鮮明に記憶しているからであり、戦争の犠牲になられた方々の安らかであることを心から願い、恒久平和を切望しているからです。
　戦後、私たちは、この思いを忘れることなく、復興と発展の道を力強く歩んでまいりました。
　しかしながら、国土面積の０・６㌫にすぎない本県に、日米安全保障体制を担う米軍専用施設の７３・８㌫が集中し、依然として過重な基地負担が県民生活や本県の振興開発に様々な影響を与え続けています。米軍再編に基づく普天間飛行場の辺野古への移設をはじめ、嘉手納飛行場より南の米軍基地の整理縮小がなされても、専用施設面積の全国に占める割合はわずか０・７㌫しか縮小されず、返還時期も含め、基地負担の軽減とはほど遠いものであります。
　沖縄の米軍基地問題は、我が国の安全保障の問題であり、国民全体で負担すべき重要な課題であります。
　特に、普天間飛行場の辺野古移設については、昨年の選挙で反対の民意が示されており、辺野古に新基地を建設することは困難であります。
　そもそも、私たち県民の思いとは全く別に、強制接収された世界一危険といわれる普天間飛行場の固定化は許されず、「その危険性除去のため辺野古に移設する。」、「嫌なら沖縄が代替案を出しなさい。」との考えは、到底県民には許容できるものではありません。
　国民の自由、平等、人権、民主主義が等しく保障されずして、平和の礎（いしずえ）を築くことはできないのであります。
　政府においては、固定観念に縛られず、普天間基地を辺野古へ移設する作業の中止を決断され、沖縄の基地負担を軽減する政策を再度見直されることを強く求めます。
　一方、私たちを取り巻く世界情勢は、地域紛争やテロ、差別や貧困がもととなり、多くの人が命を落としたり、人間としての尊厳が蹂躙（じゅうりん）されるなど悲劇が今なお繰り返されています。
　このような現実にしっかりと向き合い、平和を脅かす様々な問題を解決するには、一人一人が積極的に平和を求める強い意志を持つことが重要であります。
　戦後７０年を迎え、アジアの国々をつなぐ架け橋として活躍した先人達の「万国津梁（ばんこくしんりょう＝世界の架け橋）」の精神を胸に刻み、これからも私たちは、アジア・太平洋地域の発展と、平和の実現に向けて努力してまいります。
　未来を担う子や孫のために、誇りある豊かさを創りあげ、時を超えて、いつまでも子ども達の笑顔が絶えない豊かな沖縄を目指します。
　慰霊の日に当たり、戦没者のみ霊（たま）に心から哀悼の誠を捧（ささ）げるとともに、沖縄が恒久平和の発信地として輝かしい未来の構築に向けて、全力で取り組んでいく決意をここに宣言します。
( ２０１５年０６月２４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

沖縄戦７０年／戦の恐怖、不安再び／戦争法も新基地もいらん／追悼する遺族の思い

　戦後７０年の節目に開かれた「沖縄全戦没者追悼式」。参列者らは、凄惨（せいさん）な沖縄戦のつらい記憶をたどりながら、戦争法案と辺野古新基地建設を強引に推し進める政府に対する強い不安を語りました。

　○…那覇市の大城キクさん（８１）は、沖縄戦で祖母と弟、妹を亡くしました。３歳の妹をおんぶしながら本島南部を逃げ回っているとき、米軍の機銃掃射が直撃。背中の妹は左脚がもげ、即死でした。キクさんは「私は妹のおかげで直撃を免れて助かった。私も脚をえぐられたが、塩と肉脂を傷口に塗ったおかげで腐らなかった」と左脚をさすりました。
　夫の善栄さん（８１）は、沖縄戦で親戚５人を亡くしました。遺骨は見つからず、それぞれ年の数だけ小石を拾い集め、骨壷（こつつぼ）に納めました。「親戚は『兵隊さんと一緒なら助かる』と教えられて南部に逃げた。しかし米軍のスパイ扱いにされて殺された」。善栄さんは続けます。「辺野古に基地を造るということは他国と戦争すること。戦争につながる戦争法案も新基地も反対だ」
　○…父を亡くした宜野湾市の宮城シゲ子さん（７７）の頭部には、目の前で米軍の銃弾が破裂した際の生々しい傷あとが残っています。「爆撃の音や弾薬のにおい、機銃掃射の恐怖が忘れられない。いくさは、人間から人間性を奪うもの。絶対に繰り返してはならない」
　○…父と兄を亡くした糸満市の新垣和子さん（７５）。幼い記憶ながら、母と森の中やガマの奥に逃げ込んだ日の恐怖が脳裏に焼き付いています。「戦争につながる基地は造らせないでほしい」と声を震わせました。
　○…南風原（はえばる）町の金城シゲ子さん（８５）は、１５歳のときに父を防衛隊にとられ、米軍の砲弾で亡くしました。３６歳でした。母親は５歳のときに病死。妹と２人で学童疎開船に乗り、終戦は宮崎県で迎えました。「一内閣で戦争することを勝手に決めてはいけない。歴史を風化させないためにも、子どもたちに平和を伝えていかないと」
( ２０１５年０６月２４日「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

沖縄戦７０年／今平和でしょうか／高校生が詩で訴え

　「戦後７０年沖縄全戦没者追悼式」で朗読された詩は次の通りです。

「みるく世がやゆら」／与勝高校三年　知念　捷

みるく世がやゆら
平和を願った　古（いにしえ）の琉球人が詠んだ琉歌（りゅうか）が　私へ訴える
「戦世（いくさゆ）や済（し）まち　みるく世（ゆ）ややがて　嘆（なじ）くなよ臣下（しんか）　命（ぬち）ど宝（たから）」
七〇年前のあの日と同じように
今年もまたせみの鳴き声が梅雨の終りを告げる
七〇年目の慰霊の日
大地の恵みを受け　大きく育ったクワディーサーの木々の間を
夏至南風（かーちーべー）の　湿った潮風が吹き抜ける
せみの声は微（かす）かに　風の中へと消えてゆく
クワディーサーの木々に触れ　せみの声に耳を澄ます
みるく世がやゆら
「今は平和でしょうか」と　私は風に問う

花を愛し　踊りを愛し　私を孫のように愛してくれた　祖父の姉
戦後七〇年　再婚をせず戦争未亡人として生き抜いた　祖父の姉
九十才を超え　彼女の体は折れ曲がり　ベッドへと横臥（おうが）する
一九四五年　沖縄戦　彼女は愛する夫を失った
一人　妻と乳飲み子を残し　二十二才の若い死
南部の戦跡へと　礎へと
夫の足跡を　夫のぬくもりを　求め探しまわった
彼女のもとには　戦死を報（しら）せる紙一枚
亀甲墓に納められた骨壺（こつつぼ）には　彼女が拾った小さな石

戦後七〇年を前にして　彼女は認知症を患った
愛する夫のことを　若い夫婦の幸せを奪った　あの戦争を
すべての記憶が　漆黒の闇へと消えゆくのを前にして　彼女は歌う
愛する夫と戦争の記憶を呼び止めるかのように
あなたが笑ってお戻りになられることをお待ちしていますと
軍人節の歌に込め　何十回　何百回と
次第に途切れ途切れになる　彼女の歌声
無慈悲にも自然の摂理は　彼女の記憶を風の中へと消してゆく
七〇年の時を経て　彼女の哀（かな）しみが　刻まれた頬を涙がつたう
蒼天（そうてん）に飛び立つ鳩（はと）を　平和の象徴というのなら
彼女が戦争の惨めさと　戦争の風化の現状を　私へ物語る

みるく世がやゆら
彼女の夫の名が　二十四万もの犠牲者の名が
刻まれた礎に　私は問う
みるく世がやゆら
頭上を飛び交う戦闘機　クワディーサーの葉のたゆたい
六月二十三日の世界に　私は問う
みるく世がやゆら
戦争の恐ろしさを知らぬ私に　私は問う
気が重い　一層　戦争のことは風に流してしまいたい
しかし忘れてはならぬ　彼女の記憶を　戦争の惨めさを
伝えねばならぬ　彼女の哀しさを　平和の尊さを

みるく世がやゆら
せみよ　大きく鳴け　思うがままに
クワディーサーよ　大きく育て　燦燦（さんさん）と注ぐ光を浴びて
古のあの琉歌（うた）よ　時を超え今　世界中を駆け巡れ
今が平和で　これからも平和であり続けるために
みるく世がやゆら
潮風に吹かれ　私は彼女の記憶を心に留める
みるく世の素晴らしさを　未来へと繋（つな）ぐ

○みるく世がやゆら＝平和でしょうか、という意味。
○「戦世や…」の琉歌＝叙情短詩形の歌謡。「戦争の時代は終わった。平和の世にやがてなるのだから、嘆くな臣下たちよ、命こそ宝」という意味。
○クワディーサー＝シクンシ科の大高木。和名モモタマナ（桃玉名）。公園や校庭によく植えられ、木陰は憩いの場となります。
( ２０１５年０６月２４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

沖縄戦７０年式典／戦争法案と新基地推進／安倍首相に県民の怒り

　「帰れ！」「何しにきた！」。２３日正午すぎ、沖縄県糸満市の平和祈念公園で開かれた戦後７０年沖縄全戦没者追悼式。あいさつに立った安倍晋三首相は、出席者から次々と罵声を浴びせられました。
　「平和宣言」を読み上げる翁長雄志知事には絶え間ない拍手と声援。首相は名護市辺野古の新基地建設強行に対する県民の生々しい怒りにふれることになりました。
　首相はあいさつで「辺野古」に言及せず、国会審議に関わる発言もありませんでした。戦争法案に関わる国会審議に影響を及ぼさないよう、計算を働かせたとみられます。
　ただ、その言葉はあまりにも空疎でした。
　首相は７０年前の沖縄戦で２０万人もの人命が失われたことに言及した上で、こう言いました。「この７０年間戦争を憎み、ひたすら平和の道を歩んできた私たちの歩みに誇りを持ち、これからも世界平和の確立のため、不断の努力を行っていかなければならない」
　平和国家・日本の象徴である憲法９条を根底から破壊し、米国とともに海外で武力行使する国にする戦争法案を押し通そうとするために、国会の会期９５日延長を議決した翌日です。驚くべき二枚舌と言わざるをえません。
　首相は続けて、こう言いました。「この３月に西普天間住宅地区の返還が実現した。今後も沖縄の負担軽減に全力をつくしていく」
　県民の８割以上が反対する新基地建設を強行しておいて、「負担軽減」など口にする資格もありません。
　付言すれば、西普天間住宅地区を含む「嘉手納基地より南」の基地が整理・縮小されても、「米軍専用施設面積の全国に占める割合はわずか０・７％しか縮小されず、返還時期も含め、基地負担の軽減とはほど遠い」―。首相の前に翁長知事が読み上げた｢平和宣言｣で指摘されています。
　戦争法案と基地強化の両面で進む安倍政権による「戦争する国」づくりと、悲惨な沖縄戦を経て平和を希求する「沖縄の心」は、根本的に相いれません。この点を理解しない安倍首相の姿勢は、県民の怒りをさらに広げることになるでしょう。
　（竹下岳）
( ２０１５年０６月２４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

主張／沖縄「慰霊の日」／戦争の惨禍を再び起こさせぬ

　きょう沖縄は、「慰霊の日」を迎えます。７０年前の１９４５年、「ありったけの地獄を集めた」と形容される沖縄戦で日本軍の組織だった抵抗が終わった日とされます。沖縄戦最後の激戦地、摩文仁の丘にある平和祈念公園（糸満市）では、県主催の「戦後７０年沖縄全戦没者追悼式」が開かれます。式典に出席する安倍晋三首相は、戦争法案を画策し、日本を再び「戦争する国」にしようとしています。沖縄の「慰霊の日」に込められた「戦争による惨禍が再び起こることのないよう」（県条例）にするとの県民の切なる思いを踏みにじることは許されません。

「沖縄らしさ」の原点
　「艦砲ぬ喰ぇー残さー」（艦砲の喰い残し）
　４５年４月、米軍が沖縄本島に上陸した地点の一つ、読谷村の海岸線に、こう題する歌の碑が立っています。「艦砲ぬ喰ぇー残さー」とは、「鉄の暴風」と呼ばれた米軍艦の激烈な艦砲射撃をくぐり抜け、生き延びた人々のことです。
　歌は、姉妹４人の民謡グループ「でいご娘」が７５年にレコーディングし、沖縄で大ヒットしました。今年５月１７日、約３万５千人が参加した「戦後７０年　止めよう辺野古新基地建設！　沖縄県民大会」で「でいご娘」が歌い、改めて注目されています。
　歌には、次の一節があります。
　「我親喰ゎたるあぬ戦／我島喰ゎたるあぬ艦砲／生まり変わてぃん忘らりゆみ…／恨でぃん悔やでぃん飽きじゃらん／子孫末代遺言さな」（わが親をくらったあの戦／わが島をくらったあの艦砲／生まれ変わっても忘れられようか…／恨んでも悔やんでまだ足りない／子孫末代まで遺言しよう）
　県民の約１２万２千人（軍人軍属含む、県推計）、ほぼ４人に１人が犠牲になった沖縄戦を生き残った者の苦しみ、平和への叫びが伝わってきます。
　沖縄の地元メディア、琉球新報と沖縄テレビが５月末、県民対象の戦後７０年合同世論調査を実施しました。それによると、米軍普天間基地（宜野湾市）の県内移設に反対が８３・０％に上ります。
　集団的自衛権の行使を可能にする安保関連法案（戦争法案）の今国会成立を図る安倍首相の方針にも７３・２％が反対しています。
　琉球新報は「県民の軍事基地への反発、平和希求への思いの強さなど、『沖縄らしさ』の全ての原点は沖縄戦体験にある」と指摘しています（４日付）。
　普天間基地は、米軍が沖縄戦のさなか、県民の土地を強奪して建設したものです。昨年１１月の県知事選で選ばれた翁長雄志知事が、県民の土地を奪い、塗炭の苦しみを強いて造った普天間基地が危険になったからといって、名護市辺野古という新たな代替地を沖縄に求めるというのは「政治の堕落」と批判し、県民の共感が広がっているのは当然です。

戦場を呼び込ませず
　戦争法案をめぐり、集団的自衛権の行使など海外の米国の戦争に自衛隊が参加すれば、日本に対する攻撃を呼び込むことになり、米軍基地が集中する沖縄は真っ先に戦場になるという県民の危機感も高まっています。
　取り返しのつかない戦争の惨禍を再び起こさせないため、米軍新基地建設をやめさせ、戦争法案を必ず阻止しなければなりません。
( ２０１５年０６月２３日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

朴氏「過去の傷癒やし信頼関係を」

　【ソウル＝時事】韓国の朴槿恵（パク・クネ）大統領は２２日、日韓国交正常化５０周年記念行事に出席するため訪韓した額賀福志郎日韓議員連盟会長の表敬を受けました。朴大統領は「５０周年を契機に、過去の傷を癒やしつつ、新しい日韓の発展のために、信頼の外交を展開していかなければならない」と強調しました。額賀氏が記者団に説明しました。
　朴大統領はその上で、「（安倍晋三首相の）戦後７０年談話に注目している」と述べ、戦後５０年の村山富市首相談話など歴代内閣の歴史認識が盛り込まれるか注視する考えを示しました。
　また、朴大統領は、日韓外相が２１日に「明治日本の産業革命遺産」の世界文化遺産登録への協力で合意したことを歓迎。「こうした形をつくっていくことにより、いろいろな課題解決にプラスになるだろう」と述べました。
　額賀氏は「互いに率直に話し合って日韓関係を発展させていきたい」という安倍首相のメッセージを伝えました。
( ２０１５年０６月２３日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

アイヌ言葉、沖縄言葉も／日俳連が方言公演／２８日東京

　テレビドラマで方言指導をしている俳優らによる公演「ふるさとの言葉で語る～北から南から　昔むかしあったとさ」が２８日に東京で開かれます。主催は、日本俳優連合（日俳連）の「ドラマの方言を考える会」。
　２００６年から毎年開催され、今年で１０回目。さまざまな地方出身の俳優が、ふるさとに伝わる民話や伝説などを方言で語ってきました。
　戦後７０年の今回は、北海道、会津、博多、京都、沖縄など１１のお国言葉が集結。アイヌ言葉やうちなー口（沖縄言葉）を通して、戦争や平和、憲法などについて考えていきます。
　出演は、冨田祐一、河原田ヤスケ、隈本吉成、松原未知ほか。
　２８日（日）午後１時半、５時の２回公演
　会場＝東中野「ポレポレ坐」、ＪＲ総武線東中野駅西口徒歩１分
　入場料一般２５００円、小学生以下５００円
　問い合わせ℡０３（５９０９）３０７０（日俳連）
( ２０１５年０６月２０日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

２０ 戦争法案／希代の悪法葬ろう／南関東３県共産党が署名提出

　日本共産党の神奈川、千葉、山梨の３県委員会は１８日、「戦争法案」に反対する請願署名の国会提出行動に取り組みました。椎葉かずゆき参院比例候補と浅野ふみ子参院千葉選挙区候補はじめ、全２３地区中１９地区の７１人が参加。署名を小池晃参院議員、畑野君枝、斉藤和子両衆院議員に手渡しました。志位和夫委員長秘書も同席しました。
　小池氏が、１７日の党首討論などこの間の国会論戦と、自民党内でも「戦争法案」に疑問の声があがっている情勢を報告。安倍政権を追い詰めているのは国民の運動と世論の力だと述べ、「戦後７０年守ってきたものをひっくり返し、日本の未来を変えてしまう希代の悪法を葬り去るため、党派を超えて力を合わせましょう」と呼びかけました。
　参加者からは「１９ある党支部が各１００人分の目標を立て、きのうまでで１８００人分集まった」「教員時代の教え子から『私も反対です』とメールが届くなど、関心の高さを感じる」などの経験が報告されました。
( ２０１５年０６月１９日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

反対の声高まる／戦争法案廃案へ宣伝各地で／青年は反対だ／北海道

　北海道憲法改悪反対共同センターと北海道憲法会議は１６日、札幌市で戦争法案に反対する署名宣伝を行いました。
　共同センターの大地巌事務局長が「戦後７０年、憲法９条のもと、日本は平和的に経済活動や外交を行ってきた。その９条を壊すのが戦争法案です」と署名を呼びかけました。
　１４日に東京で行われた若者憲法集会に参加した民青同盟北海道委員会の伊藤ナシカ副委員長は「戦争に行かされるのは私たちです。多くの青年たちが反対の声を上げています。安倍首相は国民の声を聞くべきです」と訴えました。
　祖父母から戦争体験を聞いて「戦争はダメだと思った」という女性（３６）や「安倍さんは独裁者みたい。戦争なんて絶対反対よ」と憤る７０代の女性など次々に署名し、宣伝の片付け中にも「まだいいですか」と署名をする人もいました。
(２０１５年０６月１８日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦争法案阻止／市民が決起／若い人戦場に送りたくない／岡山

　「ＳＴＯＰ戦争法岡山の会」は１５日夕、岡山駅前で戦争法案に反対する宣伝をしました。以前より署名をする人が増え、４０分間で７０人分の署名。日本共産党の森脇久紀県議と林潤岡山市議がスピーチをしました。
　２人の子どもを連れた女性（３９）は「法案が通ったら戦地に派遣されることになる。徴兵制になる前に子どもを守りたい」。友達と一緒に署名した女性（４６）は「前の戦争でも戦場に行かされたのは若い男の人たち。戦場に送ることは絶対に止めたい」と語りました。
　女性（２１）は「大反対！　家族みんな反対しています。いつのまにか外堀を固められて、気づいたら徴兵制になる」と署名しました。
　男性（４２）は「安倍首相は憲法９条を無視している。政府が守らなくてはいけないのに。今年は戦後７０年。あの悲惨な戦争を二度と繰り返してはいけないとみんな思っていますよ」と話しました。
(２０１５年０６月１７日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦争ノー「新潟燃えてる」／新婦人がレッドアクション／「東京に帰り、私も頑張る」

　新日本婦人の会新潟県本部は１４日、新潟市中央区の大通りで戦争法案阻止のレッドアクションを行いました。赤沢富美子会長ら２５人が参加しました。
　会員らが「安倍内閣の戦争法案は、日本に対する武力攻撃がなくても集団的自衛権で武力行使をして、アメリカの起こす戦争に日本が加担する危険なものです。戦後７０年、憲法９条を守り抜いてきた私たちは、戦争する国づくりを絶対許しません。『若者を戦地に送らない』と声をあげ、いっしょに廃案に追い込みましょう」と訴えました。
　宣伝場所では、東京から実家に来たという３０代の男性が写真をツイッターで発信していました。男性は「戦争法案は絶対許してはいけない。新潟は燃えていますね。私も東京に帰ったら廃案めざし、頑張っていきたい」と語りました。
(２０１５年０６月１６日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

朝の風／東西本願寺の願い

　横浜市の日本共産党栄区後援会のニュース「いたちかわ」５月号に、先の市議選に立ち健闘した加藤勝広氏が「宗教界からも『平和』を求める声があがっています」と、真宗大谷派（東本願寺）発行の同朋新聞４月号の記事「戦後７０年　私たちが求める平和とは」を紹介している。大谷派は５月２１日、戦争法案に反対する里雄同派宗務総長談話を発表した。（本紙５月２４日付）
　その〝お東〟に対して、〝お西〟西本願寺（浄土真宗本願寺派）はどうか。〝お西〟の有志が中心の「念仏者九条の会」は、６月１日、安倍首相あてに戦争法案の審議に対し、「日本が世界各地での戦争に参加してゆく道を開くもの」とする抗議文を送付。また〝お西〟の石上同派宗務総長に新安保法制に反対する宗派声明を出すことを求めた要望書も提出した。（仏教タイムス６月４日号）
　１年前、その〝お西〟の第２４代門主を退任した大谷光真師が自著『世のなか安穏なれ』の中公文庫版を、老生に贈ってくれた。その「あとがき」で師は、原発を「もう一度、考え直す必要を痛感」すると同時に、憲法の平和理念について「捨てる方向に進んでいることは、憂慮に絶え」ないと、警鐘を鳴らしている。前門主の思い、ご門徒衆に届かんことを。
　（許）
( ２０１５年０６月１６日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

ドキュメンタリー「沖縄うりずんの雨」「戦場ぬ止み」を見る／屈辱受け戦い続ける不屈の人々の美しさ／柴田三吉

　沖縄を描いたドキュメンタリーを２本見た。どちらも、沖縄が押しつけられた現実を正面からとらえ、そこで暮らす人々に寄り添う独自な視点があった。

主権もつ国なら置かせない代物
　「沖縄　うりずんの雨」のジャン・ユンカーマン監督は米国出身で、「チョムスキー９・１１」「映画　日本国憲法」などで戦争と平和の本質に迫ってきた。本作では〈沖縄戦・占領・凌辱・明日へ〉と、時間軸に沿った構成で、あの地上戦から辺野古新基地建設問題までを描く。
　特徴的なのは、元兵士、市民、政治家、歴史学者など、日米の１８人にインタビューをし、時代背景となる映像を重ねることで、証言の肉付けをしていることだ。たとえば、沖縄戦を生きのびた日本兵と米兵が語る恐怖と悲惨。言葉と映像によって、戦場の真実が再現され、その傷が癒やされることのなかった、戦後７０年があぶり出されていく。
　占領後の沖縄と米軍の関係は、支配する側と支配される側に固定される。支配される人々の屈辱を想像できない米軍の傲慢さ。司令官から一兵士まで、沖縄は自分たちのものだという錯覚を持ち、深刻な事故や事件を起こしてきた。兵隊たちは沖縄をつかのまの休息地と考え、酒色に溺れ、１９９５年には痛ましい少女暴行事件を引き起こした。
　服役して帰国した事件の犯人の元海兵隊員は、いまも許しを請いながら生きているが、彼が語る当時の状況から米軍のすさんだ姿が見えてくる。まさに沖縄はアメリカと、この地を捨て駒にした日本政府によって凌辱されてきたのだ。元米政府高官ハルペリン氏は、〈残された基地は、主権を持つ政府なら、決して自国内には置かせない代物だった〉と語る。

尊厳踏みにじる米軍と日本政府
　一方、三上智恵監督「戦場ぬ止み」は、辺野古の新基地反対運動に密着している。三上氏は高江ヘリパッド反対運動を取材した「標的の村」を制作し、基地問題の実態を伝えてきた。
　キャンプ・シュワブゲート前、大浦湾での抗議行動には、ときに数千人が参加する。そこに集まる人々のなかには、戦争の傷を語り続ける〈おじぃ・おばぁ〉がいる。親世代の体験を受け継ぐ息子、娘、その子どもたちがいる。なかでも、火炎放射器の炎を浴びながら生き残った〈文子さん〉の言葉は胸に迫る。１０年に及ぶ反対運動を続けてきた彼女は、当時の恐怖を語ったあと、腕や足の傷跡を見せながら、〈沖縄から日本を変えたい、９条こそが大切でしょう〉と語る。
　人間の尊厳を踏みにじる米軍と、日本政府に対する必死の戦い。だが２作品とも、沖縄の人々のエネルギッシュでいきいきした姿が見えてくる。自他に語りかける言葉には、ときおり深いユーモアがにじむ。長い年月、理不尽な状況と戦い続け、屈服しなかった人々の姿は、時の恩寵を受けたかのように美しい。ゆえに、励まされ、勇気づけられるのは私たちの方だ。
　子どもたちから老人まで、彼らの言葉を一言漏らさず聴き取りたい。その表情を胸に留めたい。そこから、私たちが真に大切にすべきものが見えてくる。

　しばた・さんきち　詩人。１９５２年生まれ。詩集『わたしを調律する』ほか｡詩集『角度』で第４８回日本詩人クラブ賞受賞。
( ２０１５年０６月１６日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦争法案に反対／「学者の会」アピール

　安全保障関連法案に反対する学者の会が発表したアピール「『戦争する国』へすすむ安全保障関連法案に反対します」の全文は次のとおりです。

　「戦争しない国」から「戦争する国」へ、戦後７０年の今、私たちは重大な岐路に立っています。安倍晋三政権は新法の「国際平和支援法」と１０本の戦争関連法を改悪する「平和安全法制整備法案」を国会に提出し、審議が行われています。これらの法案は、アメリカなど他国が海外で行う軍事行動に、日本の自衛隊が協力し加担していくものであり、憲法九条に違反しています。私たちは憲法に基づき、国会が徹底審議をつくし、廃案とすることを強く求めます。
　法案は、①日本が攻撃を受けていなくても他国が攻撃を受けて、政府が「存立危機事態」と判断すれば武力行使を可能にし、②米軍等が行う戦争に、世界のどこへでも日本の自衛隊が出て行き、戦闘現場近くで「協力支援活動」をする、③米軍等の「武器等防護」という理由で、平時から同盟軍として自衛隊が活動し、任務遂行のための武器使用を認めるものです。
　安倍首相の言う「武力行使は限定的なもの」であるどころか、自衛隊の武力行使を際限なく広げ、「専守防衛」の建前に反することになります。武器を使用すれば、その場は交戦状態となり、憲法九条一項違反の「武力行使」となることは明らかです。６０年以上にわたって積み重ねられてきた「集団的自衛権の行使は憲法違反」という政府解釈を安倍政権が覆したことで、米国の侵略戦争に日本の自衛隊が参戦する可能性さえ生じます。日本が戦争当事国となり、自衛隊が国際法違反の「侵略軍」となる危険性が現実のものとなります。
　私たちは、かつて日本が行った侵略戦争に、多くの学徒を戦地へ送ったという、大学の戦争協力の痛恨の歴史を担っています。その歴史への深い反省から、憲法九条とともに歩み、世界平和の礎たらんと教育研究活動にたずさわり、再び戦争の惨禍を到来させないようにしてきました。二度と再び、若者を戦地に送り、殺し殺される状況にさらすことを認めることはできません。
　私たちは、学問と良識の名において、違憲性のある安全保障関連法案が国会に提出され審議されていることに強く抗議し、それらの法案に断固として反対します。

■呼びかけ人（＊は発起人、５０音順）
　青井　未帆（学習院大学教授）
＊浅倉むつ子（早稲田大学教授）
　淡路　剛久（立教大学名誉教授）
　池内　　了（名古屋大学名誉教授）
　石田　英敬（東京大学教授）
　市野川容孝（東京大学教授）
　伊藤　　誠（東京大学名誉教授）
　上田　誠也（東京大学名誉教授）
　上野　健爾（京都大学名誉教授）
＊上野千鶴子（東京大学名誉教授）
　鵜飼　　哲（一橋大学教授）
＊内田　　樹（神戸女学院大学名誉教授）
　内海　愛子（恵泉女学園大学名誉教授）
　宇野　重規（東京大学教授）
　大澤　眞理（東京大学教授）
　岡野　八代（同志社大学教授）
　小熊　英二（慶応大学教授）
　戒能　通厚（早稲田大学名誉教授）
　海部　宣男（国立天文台名誉教授）
　加藤　　節（成蹊大学名誉教授）
　金子　　勝（慶応大学教授）
　川本　隆史（国際基督教大学教授）
　君島　東彦（立命館大学教授）
　久保　　亨（信州大学教授）
　栗原　　彬（立教大学名誉教授）
　小林　　節（慶応大学名誉教授）
　小森　陽一（東京大学教授）
　齊藤　純一（早稲田大学教授）
　酒井　啓子（千葉大学教授）
＊佐藤　　学（学習院大学教授）
　島薗　　進（上智大学教授）
　杉田　　敦（法政大学教授）
　高橋　哲哉（東京大学教授）
　高山佳奈子（京都大学教授）
　千葉　　眞（国際基督教大学特任教授）
　中塚　　明（奈良女子大学名誉教授）
　永田　和宏（京都大学名誉教授）
　西川　　潤（早稲田大学名誉教授）
　西崎　文子（東京大学教授）
　西谷　　修（立教大学特任教授）
　野田　正彰（精神病理学者）
　浜　　矩子（同志社大学教授）
　樋口　陽一（憲法学者）
　広田　照幸（日本大学教授）
＊広渡　清吾（専修大学教授）
　堀尾　輝久（東京大学名誉教授）
＊益川　敏英（京都大学名誉教授）
＊間宮　陽介（青山学院大学特任教授）
　三島　憲一（大阪大学名誉教授）
　水島　朝穂（早稲田大学教授）
　水野　和夫（日本大学教授）
　宮本　憲一（大阪市立大学名誉教授）
　宮本　久雄（東京大学名誉教授）
　山口　二郎（法政大学教授）
　山室　信一（京都大学教授）
　横湯　園子（前中央大学教授）
　吉岡　　斉（九州大学教授）
　吉田　　裕（一橋大学教授）
　鷲谷いづみ（中央大学教授）
　渡辺　　治（一橋大学名誉教授）
　和田　春樹（東京大学名誉教授）
( ２０１５年０６月１６日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

〝米軍今も特権意識〟／事件・事故続発に抗議／那覇市議会

　那覇市議会は１５日、相次ぐ米軍人・軍属等による事件・事故への抗議決議・意見書を全会一致で可決しました。
　抗議決議・意見書は、５月２４日に那覇市の国際通りで男性が米海兵隊キャンプ・ハンセン所属の３等軍曹に顔を殴られ全治２カ月の重傷を負い、現金を奪われた事件に対し､｢断じて容認できない」と糾弾しています。
　沖縄県では、米軍人・軍属等による酒気帯び運転や追突事故が相次ぎ、５月３０日からの８日間で７人が逮捕される異常事態が続いています。意見書は、その背景として、昨年１２月に米軍が軍人・軍属の勤務時間外行動指針（リバティー制度）を変更し、飲酒制限を大幅緩和したことを指摘。「戦後７０年が経過した今でも日米地位協定に守られている米軍の特権意識が事件・事故を誘発している」と批判しています。
　那覇市議会は同日、那覇空港で３日に発生した航空自衛隊と民間航空機との重大トラブルに厳重抗議する意見書も全会一致で可決しました。
( ２０１５年０６月１６日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

シリーズ戦後７０年を考える／遺骨に刻まれた沖縄戦／県民は新基地も戦争法案も許さない

家族の元へ帰れず今も
　辺野古新基地建設をはじめ、米軍基地の重圧を拒否する沖縄県民。原点には、アジア太平洋戦争末期に起きた沖縄戦があります。県民の４人に１人が命を奪われました。７０年後のいま、沖縄の人たちは何を思うのでしょうか。
　本吉真希記者､写真も

遺骨収集３３年・ガマフヤー代表具志堅隆松さん／軍に壕追い出された犠牲者多い
記憶たどり７０年ぶりに妹と〝再会〟保志門繁さん／「長い間よくねんねんこしてたね」

　日本軍の組織的戦闘は１９４５年６月２３日に終わりました。沖縄では、毎年その日を「慰霊の日」とし、非戦を誓っています。
　住民の犠牲は９万４千人に上りました。遺骨を遺族の元に帰したいと、遺骨収集をしている人たちがいます。
　具志堅隆松（ぐしけん･たかまつ)さん(６１)＝那覇市＝もその一人。沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」（「ガマ（洞窟）を掘る人」の意）の代表です｡幼いとき､母親から沖縄戦について、こんな話を聞きました。
　「『お母さん､お母さん』ていいながら､みんな死んで行きよった」
　母の言葉はいまも胸に残ります。「母親の元に帰りたいというのは、死んでも同じだと思うんです｡だったら､かなえてあげたい」

これが真実
　休日に仲間と遺骨を掘り続けて３３年です。遺骨収集を通して見えてきたものは―。
　「激戦地だった（本島の）南部に行けば行くほど、住民の遺骨は小さな岩陰や草木の茂みから見つかります。なぜかといえば、日本軍が安全な壕（ごう）内を占拠し、住民を砲爆撃のなかに追い出したからです。これが沖縄戦の真実です」
　その南部に位置する八重瀬町新城（あらぐすく）でこの春、遺骨の収集作業をしました。保志門（ほしかど）繁さん（８４）＝浦添市＝の依頼でした。
　保志門さんの７０年前の記憶をもとに、砲弾の破片が当たり即死した数え５歳だった妹、節子ちゃんの遺骨を探すため、森に入りました。生い茂る草木をカマやナタで切りながら進みます。
　捜索３日目。雨が時折降るなか保志門さんは、１時間かけ急勾配の山中をロープを握り､下りていきました｡
　「あれだけの傾斜を体を支えてでも連れて行きたいというのが、私たちみんなの思い。ご遺族はどんな小さな骨でもいいから帰ってきてほしいと願っています」
　捜索４日目。保志門さんが埋葬したと記憶していた大きな岩の根元から、節子ちゃんと思われる子どもの頭蓋骨の一部が発見されました。
　遺骨を両手で包み込んだ保志門さん。「長い間、よくねんねんこしていたね。ありがとう、ありがとう」と語りかけました。

死者を冒涜
　遺骨が遺族の元へ戻るのはまれです。いまも年に８０～１００体の遺骨が見つかっていますが、ＤＮＡ鑑定で家族の元へ帰れた沖縄戦の犠牲者は、日本兵の４例だけ。具志堅さんは「国は自ら起こした戦争の犠牲者の遺骨すら、帰す努力をしていない」と憤ります。
　「遺骨を実際に見て考えてほしい。なぜここで殺されなければいけなかったのか、自分たちが二度と同じ目に遭わないという担保を手にしているのか、ということを」
　米軍新基地建設に向けた工事が強行される名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブ。ここにはかつて、米軍が住民約２万人を移送した強制収容所がありました。飢えとマラリアで多数の死者が出たといわれ、いまも遺骨が残されています。
　「そういう場所に新たな戦争のための基地を造る。まさに死者への冒涜（ぼうとく）です。私たちは辺野古に基地は造らせない。この沖縄で日本の民主主義を示し、実現させていきたい」

死と隣り合わせ、「後方」も戦場／「『９・２９県民大会決議』を実現させる会」相談役玉寄哲永さん

　今月８１歳を迎える玉寄哲永（たまよせ・てつえい）さん＝那覇市＝。「敵が迫っているから南部へ行け」という日本軍の指示で、爆弾が落ちるなか南へ、南へと家族で逃げました。しかし逃げた先々は「毎日が死と隣り合わせでした」。
　本島南端の浜で岩陰に身を潜めていたときです。１人の日本兵が父親に軍刀を振り上げ、弟のおじやを奪いました。代わりに「貴様らこれを使え」と「自決」用の手りゅう弾２個を渡されました。
　砲弾の破片で母は右わき腹を負傷、数え３歳の弟、祐○（ゆうき）ちゃんは右太ももをえぐられました。終戦後の９月、やせ細った弟は「にーにー（お兄さん）、お菓子」と母の背で息絶えました。
　「戦場で死人の臭いをかいできた｣という玉寄さん｡あるとき銀バエが真っ黒な塊になって舞い上がりました。「日本兵らが『自決』していた。地獄だね」
　日本軍は住民に対しても捕虜になることを許しませんでした。住民は日本軍の命令・強制・誘導によって「集団自決」（強制集団死）を強いられました。
　この事実をめぐり２００７年、文部科学省は高校の日本史教科書から「軍命令」の記述を削除させました。「軍隊は住民を守らない」ことを当時の第１次安倍政権は、覆い隠そうとしました。
　この事態に沖縄は１１万人を超える県民大会を開きました（０７年９月２９日）。「史実をゆがめるなと心を一つにした」と玉寄さん。大会の副実行委員長を務めました。
　いま日米両政府は「辺野古が唯一の解決策」と新たな米軍基地を押しつけています。「県民無視の強引さは、教科書問題と根は同じです。辺野古の問題は県民が決める。これは沖縄の人権を切り開く運動です。戦争につながる日米安保も、基地もいりません」
　集団的自衛権行使や、「後方支援」の名で自衛隊の戦地派兵をねらう安倍政権。玉寄さんは「軍国への第一歩」と危機感を募らせます。「自分の体験からしても『後方』は戦場になるんです。７０年前の混乱の時代に戻してはならない」
　摩文仁の丘に建つ「平和の礎（いしじ）」に、弟の名も刻まれています。慰霊の日にはその名前をなぞり、平和を誓います。
　玉寄さんの家族は捕虜となり、戦場を逃げ惑う日々は終わりました。収容所で母は「もう逃げんでいい」といいました。「このときが平和への始まりで、生きる始まりだった」

県民の４人に１人が死亡

　米軍は１９４５年３月２６日、慶良間（けらま）列島に上陸。４月１日には沖縄本島へ上陸しました。空襲や艦砲射撃を無差別に加え、その激しさから「鉄の暴風」と呼ばれました。
　他方、日本政府は「国体護持」（天皇制存続）のため、沖縄を「捨て石」にしました。
　日本軍は「軍官民共生共死の一体化」を指示。住民や生徒を防衛隊や学徒隊として根こそぎ動員しました。避難先の壕などから住民を追い出し、壕に泣きやまない幼子がいれば〝敵に見つかる〟などといって殺害。方言を話す住民多数をスパイ視して虐殺しました。
　９月７日に沖縄守備軍が降伏調印し､沖縄戦は正式に終結しました｡死者は日米で２０万人を超え、朝鮮人軍夫や日本軍「慰安婦」も犠牲になりました。
(２０１５年０６月１４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

ストップ戦争法案／翻訳家池田香代子さん／〝保守〟とも手つなぎたい

　安倍首相は米国で、戦争法案を通すと約束しました。ひどい国会軽視です。〝国会で議論する前にもう約束しちゃったもん〟といって、たくさんの法案を一括で国会にボンッと出したのです。
　奇策で押し通そうとするのは、まっとうな方法では国民に認めてもらえないからです。国会質疑でも質問者にまともに向きあわず、ずれたところで持論を展開し、最後は強行採決してしまおうというわけです。
　まさにいま、独裁への道を進行中という感じがします。ナチスも議会制民主主義のもとで、あの手、この手を使って誕生しました。それを目の当たりにしているようです。
　この問題では、先入観を捨てて、どんな人とでも手をつなぎたい。私が関わるインターネットテレビの企画で４人の元自民党国会議員が語りましたが、〝保守〟の人も強い危機感を持っています。共闘は不可能ではありません。沖縄や大阪のたたかいにも、学びたいと思います。
　政治家は、死に物ぐるいで戦争法案を止めてほしい。そのためにも、私たち市民が反対の声を大きくして政治家をがんがん突き上げ、共闘の場に引き上げていく。「私たちがついているから大丈夫」と示したい。
(２０１５年０６月１４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

この人に聞きたい／写真家田沼武能さん／その１／６６年、肖像を撮り続けて／顔は本質、人生写したい

　日本写真家協会会長を２０年間務めるなど、日本を代表する写真家のひとりで、日曜版では、黒柳徹子さんとのユニセフ活動報告でおなじみの田沼武能さん（８６）。６６年の写真家人生です。
　大塚武治記者

〈このほど人物写真の集大成となる写真集『時代を刻んだ貌（かお）』（クレヴィス）を出版。横山大観、高村光太郎、岡本太郎、黒澤明、森光子…。２１歳から撮り続けた文化・芸能人ら２４０人の肖像です〉
　肖像写真を撮るようになったきっかけは、師・木村伊兵衛の紹介です。１９５０年に『芸術新潮』が創刊され、先生が僕を推薦してくれたんです。嘱託社員になり、文芸誌『新潮』のグラビアも撮り始め、著名な作家や文化人のご自宅やアトリエを訪ねました。
　志賀直哉さんのお宅は､東京･青山にありました。先生は部屋で奥さんに注射を打ってもらうと庭に出て、スズメにエサをやり始めました｡撮ろうとすると､心優しい先生は、「待ってくれたまえ」。スズメがエサを食べて完全にいなくなるまで待たされました。
　永井荷風さんのお宅は質素そのものでした。三畳間の畳は擦り切れ、小さな手あぶり用火鉢が一つ。ズボンのボタンが外れたままで、正座されていました。奥の部屋に万年床が見えて、背景に入れようとしたらハッと気づかれ、ふすまをパンと閉められちゃった。

寝る間惜しんで
〈後に、世界の子どもや武蔵野の写真で有名になる田沼さん。２０代半ばで人気写真家となったのは、著名人の素顔が見えるような肖像写真でした〉
　古代ローマの哲学者キケロは、「顔は精神の門にしてその肖像」と言っています。僕は顔を撮ることで、その人の本質―考えや心構え、人間史というものを写したいと考えてきました。撮影が決まると、寝る間を惜しんで著書を読み、作品を見ました。その人のことを何も知らずに、本質には迫れませんものね。
　素顔といえば、雪の研究者、中谷宇吉郎教授には撮影を重ねる中で仲良くしていただき、正月は毎年お宅で一杯やるのが楽しみになりました。先生の水墨画展に行った時、一高の同窓生、十河信二さん（元国鉄総裁）や安倍能成さん（元文部相、学習院院長）らが現れ、肩を組んで校歌を歌う場面が撮れたこともあります。
〈撮影では、合間にしてくれる話が面白かったと振り返ります〉
　浅草のつげぐし職人のおやじさんは､｢自分が親から習ったのは、〝職人が一人前だと思ったらそこで終わり〟ということだ」と言いました。今でも大事にしている言葉です。
　思えば、先生方にとって、僕は孫世代。まるで孫に語るようにしてくれた話は、人生の宝、教科書です。僕の１０代は戦争一色。勤労動員でほとんど学べませんでしたから。

戦争は狂った世界
〈２９年、東京・浅草の写真館の６人きょうだいの４番目に生まれました。建築家志望で大学予科受験の浪人中だった４５年３月１０日未明、ドドド、ドーンと地響きがして向かいの家に焼夷（しょうい）弾が落ち、火を噴きました。数時間で１０万人が死亡した東京大空襲です〉
　家族を先に逃がし、おやじと僕はバケツで消火にあたりました。でも火の手が強過ぎ、強風で、かけた水が戻ってくるんです。
　おやじと自転車に２人乗りで逃げました。周りは全部火の海。隅田川の白鬚橋を渡ると、鐘紡の工場がすごい勢いで燃えていました。
　これ以上進もうにも熱風で息ができない。隅田川そばの空き地で夜を明かしました。
　地獄絵でした。川にたくさんの死体が浮き、道端に焼け焦げた死体がゴロゴロ転がる。焼死臭が漂う。背中に死んだ子どもをおぶったまま女性が倒れていましたが、どうすることもできませんでした。
　たどり着いたわが家は全焼でした。家の前の防火用水桶に〝お地蔵さん〟が…。目を凝らすと、焼け死んだ子どもでした｡猛火の中､母親がどうしようもなくて、水に入れたんでしょう｡水が蒸発し､手を合わせるように…。今も思うんです。お地蔵さんは、子どもの化身なんだろうと。
　あの時の光景が、僕のジャーナリストの原点になっているのかもしれません。
　戦後７０年がたち、戦争が美化され、何か格好いいものに思わされています。ゲームでは死んだ人間がパッと生き返る。でも現実は違う。戦争は殺し合いです。大勢殺した人間が勲章をもらう狂った世界です。そんなことが起きては困るんです。
　８月、日本写真保存センターが、原爆投下から３カ月間に撮った写真約６０点で写真展を開きます。写真でこそ伝わる真実があります。写真は人間の記録遺産です。（つづく)

たぬま・たけよし＝１９４９年にサンニュースフォトに入社し、木村伊兵衛に師事。７２年フリーに。日本写真著作権協会会長。９０年、紫綬褒章、２００３年、文化功労者に顕彰される。写真集に『武蔵野』、『人間万歳』、『トットちゃんと地球っ子たち３０周年　黒柳徹子ユニセフ親善大使訪問記録』ほか
(２０１５年０６月１４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

ウオッチ戦争法案／海外任務拡大／遺体、本国搬送も準備／防衛相が明言

　中谷元・防衛相は１２日の衆院安保特別委員会で、戦争法案が成立すれば、海外での任務の拡大に伴い、「新しいリスクも起こりうる」と明言しました。その上で、隊員の死亡に備えて遺体の輸送準備を行うなど、すでに海外での殉職を想定していることを初めて明らかにしました。維新の党の足立康史議員に対する答弁。事実上、隊員の戦死を想定した答弁で、波紋を呼びそうです。
　中谷防衛相は「（安保法制において）自衛隊を海外に派遣するにあたり、不測の事態に対応するためにあらゆる準備をしている。事故・事件も含めて、隊員の死亡を伴う事案が万が一に生じた場合、ご遺体を本国まで輸送するのに必要な用意も含め、さまざまな準備は行っている」と述べました。
　２００３年のイラク戦争後に自衛隊が派兵された際にも、隊員の戦死を見越しての遺体搬送の準備はされていました。元統合幕僚長の先崎（まっさき）一氏は昨年４月のＮＨＫ番組で「自衛隊員が死亡した場合に備えて、遺体をどのように運ぶのか詳細に手順を検討し、宿営地まで約１０個近く棺（ひつぎ）を持ち込んだ。国主催の葬儀も考えられていた」と証言しました。ただ、これらはいずれも極秘に検討されていたといいます。
( ２０１５年０６月１３日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

うたごえは平和の力／あいち赤旗文化セミナー文化祭

　愛知県内で「しんぶん赤旗」読者の出会い、交流、学びの場として活動している、あいち赤旗文化セミナー実行委員会は６日、名古屋市東区の民主会館で「うたごえは平和の力」をテーマに文化祭を開きました。
　同セミナーは開講して１９年目。今年は、ドイツ語教室、うたごえ教室、資本論講座など１４講座を開講しています。
　同セミナーのパソコン教室の講師をつとめていた日本共産党の柴田民雄名古屋市議が主催者あいさつし、戦争法案など安倍政権の「戦争する国づくり」を批判し「平和でこそ歌や演劇など文化が楽しめる。文化に携わるものが先頭にたって、平和な日本をめざし運動を広げよう」と訴えました。
　今回のメーン企画は今年１１月に「日本のうたごえ祭典」が愛知で開催されることから、祭典運営委員長の舟橋幹雄さんが「被爆・戦後７０年『うたごえは平和の力』を高くかかげて」と題して講演しました。
　会場には美術や切り絵、俳句教室の受講生の作品を展示。文化祭ではハーモニカ教室受講生の演奏など各教室の発表がありました。
　受講生の男性（６７）は「無趣味だったので定年退職後の余暇を楽しもうとセミナーに参加した。友だちもできてうれしい」と話しました。
(２０１５年０６月１２日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

ひと／全日本学生自治会総連合の委員長に選ばれた川崎洋平さん（２１）

　「さまざまな大学とつながり、誰もが学び成長できる学園と社会をつくりたい」。学生自治会の全国連合体・全日本学生自治会総連合の大会で今年度の委員長に選ばれました。日本福祉大学（愛知県美浜町）の４年生です。
　世界でも異常な高学費、卒業時に数百万円の借金となる奨学金、残業代未払いなどの「ブラックバイト」。多くの人に学生の深刻な実態を知らせ、「高等教育の無償化、給付制奨学金の実現につなげたい」と語ります。
　「学生自治会って、すごいな」と思ったのは１年生のとき。先輩から、名鉄と粘り強く交渉し、特急券の必要ない特急車両の運行や駅にエレベーターを設置させた話を聞き､｢力を合わせて要求を実現する魅力にとりつかれた」と笑います。最近も大学と交渉し、全トイレの洋式化、障害者専用トイレの増設、エレベーター新設を実現しました。
　「二度とペンを銃に持ちかえない」。全学連結成の原点を大切に、安倍政権の「海外で戦争する国」づくりを阻止する運動を強めています。今年は戦後７０年、被爆７０年。８月の広島・長崎で開かれる原水爆禁止世界大会で全国学生交流会を計画しています。「多くの学生の参加を呼びかけています」
　講義以外は自治会活動とアルバイト。「１時間余の通学電車内で音楽を聴くのが唯一の癒やし」。卒業後は高齢者福祉分野の仕事に就く予定です。
　文　村上　志郎
( ２０１５年０６月１１日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

組をみて／ＮＨＫスペシャル戦後７０年ニッポンの肖像　豊かさを求めて／ＮＨＫテレビ５月３０、３１日放送

アベノミクス礼賛を想起／国民・労働者の視点が希薄
　２日間にわたって放映されたＮＨＫスペシャル。とくに第１回「〝高度成長〟何が奇跡だったのか」には、強い違和感を覚えざるを得ませんでした。
　第１回の内容は、なぜ高度成長は起こったのか、という問題意識のもとに高度成長の真の姿を明らかにするという触れ込みでしたが、実際には高度成長を「立案」した財務官僚の下村治氏をはじめとする政府官僚や当時の池田勇人首相によって実行された政策と、それを受け止めた企業によって、成し遂げられたというものでした。つまり官僚と政治家による産業政策の成功物語として描かれているのです。
　しかし高度成長を可能にした重要な要因として、冷戦体制のもとでアメリカへの輸出に依存した問題や二重構造（大企業と下請け企業）による生産コスト低減などの問題を無視しています。また労使協調的な労働組合のもとで実現した長時間労働（「モーレツ社員」と形容された）が、労働時間規制の空洞化によって、のちに過労死を生み出したことにも一切ふれていません。このように高度成長を実現させた重要な要因を無視し、官僚や政治家が高度成長を立案し実行したという物語は、現代のアベノミクス礼賛を想起させます。
　第２回は、「〝バブル〟と〝失われた２０年〟何が起きていたのか」と題され、バブルに踊った人たちと長期停滞のなかで起きた企業倒産やリストラを描いています。
　興味深いのは、１９９０年代前半に経済同友会が雇用のあり方をめぐって議論していたということです。そこでは小泉構造改革で規制緩和の旗振り役を務めたオリックスの宮内義彦氏が「生産性を上げるためには雇用に手をつけざるを得ない」などと語っています。
　日経連が長期雇用の正社員を絞り込む提言「新時代の日本的経営」を出したのが９５年ですから、財界はバブル崩壊直後から、雇用のあり方を議論し、正規社員を減らす議論をしていたということになります。その後の事態は、正規社員を抑制し、非正規社員を増大させ、格差と貧困を生み出していったのです。経営者の議論を紹介するだけでなく、宮内氏のような議論が格差と貧困を生み出したということを示すべきです。
　２回の番組は、総じて経営者や政治家、官僚の行動を中心にしたもので、労働者や国民からの視点が希薄なように感じました。これは、現在のＮＨＫの方向を示唆しているように思いました。
　（藤田実　桜美林大学教授）
( ２０１５年０６月１１日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

１０ 国会期成同盟建碑３０周年／大阪でつどい

　「国会期成同盟発祥の地」建碑３０周年のつどいがこのほど大阪市北区の太融寺（たいゆうじ）で開かれ、約７０人が参加しました。歴史研究団体などでつくる実行委員会の主催。
　明治時代に国会開設や憲法制定、地方自治を求めて広がった自由民権運動の中で、１８８０年に全国の有志が太融寺に集まり、国会期成同盟の結成大会を開きました。国会開設の請願書提出を決定し、自由民権運動が飛躍した場として知られています。太融寺には１９８５年に碑が建立され、黒田了一元大阪府知事による撰文（せんぶん）が寄せられています。
　大阪歴史学会の藤本清二郎代表委員が、「明治時代に国会開設を要求し、実現した歴史に思いをはせ、今日の課題を考えることが大切だ」と開会あいさつし、参加者が碑に献水（けんすい）を行いました。
　自由民権運動や日本国憲法についてドキュメンタリーをつくっているＮＨＫプロデューサーの塩田純氏が記念講演し、自由民権期の憲法草案が戦後の民間人たちの憲法草案に影響を与えたことを紹介しました。
　『立憲政体改革の急務』を著し、明治憲法を批判した淡路島の自由民権家・島田邦二郎の子孫である島田耕さんがあいさつしました。
(２０１５年０６月１０日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦後７０年に思う／戦没作曲家・紺野陽吉／もっと音楽をやりたかった／小宮多美江

　戦後７０年。戦没画学生と同じように、戦争で命を絶たれた若い作曲家がいた。名の出る前に亡くなった彼らの音楽が今に生かされ、ひとびとに聴かれるようになるのはごくまれなことである。
　戦没作曲家・紺野陽吉の遺稿、三つの室内楽曲の存在を私が知ったのは、敗戦５０年の１９９５年８月だった。それから丸２０年かかったが、このほど一枚のＣＤ「戦後７０年、五線紙から蘇る～紺野陽吉の音楽」を出すことができた。残された楽譜を生かし、若い演奏家たちの好演を得て、「木管三重奏曲」「弦楽二重奏曲」「弦楽三重奏曲」の３曲が入っている。

なつかしい日本感じさせる旋律
　どこかなつかしい川、田や畑、里山の春、秋、そして日本の心を感じさせる紺野の音楽にふれると､｢戦争さえなかったら｣の思いに至る。流れるような旋律はどこか民謡を思い出させ、リズミカルなところにくれば、にぎやかな祭りの渦に誘いこまれる。それが紺野陽吉音楽の魅力である。
　紺野陽吉は、山形県西置賜郡白鷹町に１９１３（大正２）年、３代続いた医家の次男として生まれ、敗戦後の１９４５年１０月、旧満州海林（現中国東北部）で戦病死した。
　１９３１年旧制長井中学を卒業した紺野は、医学のための学費をヴァイオリンの購入にあてて上京したという。東京での音楽活動で分かったのは、コンセール・ポピュレールおよび立教大学交響楽団の、いずれも第二ヴァイオリンの席を占め、いくつかの演奏会に出演しているということだけである。
　前者は、「アルルの女」や「カルメン組曲」など〝クラシック音楽をなじみやすく〟の姿勢で多くの聴衆を集めていた。後者は、当時各大学にあったオーケストラのひとつで、戦前の音楽生活の記録として案外見落とされてきたところでもある。

出征前に託した自作の楽譜から
　出征前の限られた時間のなかで紺野陽吉は作曲家清瀬保二宅を訪れ、自作の楽譜を託した。「弦楽三重奏曲」が未完の草稿だったことを考えると、名を告げるだけで立ち去ったと察するほかない。
　しかし、「木管三重奏曲」のフルート、クラリネット、ファゴットという珍しい編成は、少し前に書かれた清瀬保二の作品にもあって、わずかに清瀬とのつながりを思わせる。
　聴いて楽しい「木管三重奏曲」は、つい先日も紺野のふるさと白鷹町の音楽ホール「あゆーむ」で、同町出身のファゴット奏者が横浜の仲間とともに再演している。
　すでに数年をかけて行われてきた「紺野陽吉ふるさと演奏会」によって、地元のひとたちは紺野作品になじみはじめている。これまでさまざまな形で力を貸してくれた方々は、戦争が奪ったものの大きさ、悔しさを後世に伝えなければの思いを一層強くしておられると思う。
　私自身、横浜大空襲に遭ったゆえにふるさとを離れたことを思いださずにいられないと同時に、ここまで私をつき動かしてきた原動力は、「もっともっと音楽をやりたかった」との紺野陽吉の思いにほかならないと承知している。
　ＣＤでは、「弦楽三重奏曲」第３楽章をまずは未完のまま、そののちに、横浜在住の作曲家安藤久義により補作された楽章で、全曲をきけるようにしている。
　（こみや・たみえ　音楽評論家）
　ＣＤの問い合わせ先℡０９０（２４０７）４０６４（ミッテンヴァルト）
( ２０１５年０６月１０日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

「戦争法案阻止・党勢拡大大運動」をよびかける／日本共産党中央委員会幹部会

２０１５年６月９日
　安倍政権は、憲法９条を踏みにじり、日本を「海外で戦争する国」につくりかえる戦後最悪の法案――戦争法案を国会に提出し、「夏までに成立させる」ことをねらっている。戦争法案の成立を許さないたたかいは、戦争か平和か、日本の国のあり方、日本の命運を左右する歴史的なたたかいとなっている。日本共産党は、国会論戦と国民的共同で安倍政権を包囲し、この企てを阻止するために、党の総力をあげてたたかいぬく。
　参議院選挙、総選挙に続き、いっせい地方選挙でも、わが党は、前後半戦を通じて躍進し、党史上はじめてすべての都道府県議会に議席を獲得した。一連の選挙戦でのわが党の躍進、戦争法案をめぐるわが党の国会論戦は、広範な国民のなかで、〝安倍暴走政治との対決者〟としての日本共産党への注目と期待を高めている。いまほど、国民の期待に応え、情勢を切り開くことができる、強く大きな党をつくることが求められている時はない。
　中央委員会幹部会は、６月１０日から９月３０日までを期限とする「戦争法案阻止・党勢拡大大運動」にとりくむことをよびかける。

一、戦争法案阻止のために、党の総力をあげてたたかおう

　「大運動」の第一の課題は､戦争法案阻止のために､国会内外で党の総力をあげてたたかうことである。

国会論戦を通じて、戦争法案とその推進勢力の三つの危険性が浮き彫りに
　わが党のこの間の国会論戦を通じて、戦争法案とその推進勢力のもつ深刻な問題点と危険性が浮き彫りになった。
　（１）第一は、「違憲性」――憲法を蹂躙（じゅうりん）する違憲立法であるということである。
　戦後、日本政府の憲法９条解釈に関するすべての見解は、一貫して、「海外での武力行使は許されない」ことを土台として構築されてきた。ところが、昨年７月１日の「閣議決定」と、それを具体化した戦争法案は、集団的自衛権の行使を容認し、日本に対する武力攻撃がなくても、他国のために武力行使する＝海外で武力行使をすることに道を開くものとなっている。それは、一内閣の専断で、従来の憲法解釈の根本を百八十度転換する立憲主義の破壊であり、憲法９条の破壊にほかならない。
　戦争法案は、①集団的自衛権行使とともに、②これまで政府が「戦闘地域」としてきた場所にまで自衛隊を派兵し、武力行使をしている米軍等への補給、輸送など「後方支援」＝兵站（へいたん）をおこなうこと、③形式上「停戦合意」がつくられているが、なお戦乱が続いている地域に自衛隊を派兵し、治安維持活動にとりくむことなど、憲法を踏み破って海外での武力行使に道を開くいくつもの危険な仕掛けが盛り込まれている。
　わが党の追及に、安倍首相は、「戦闘地域」で自衛隊が攻撃されたら「武器を使用する」ことを認め、アフガニスタンに展開し多数の犠牲者を出した国際治安支援部隊（ＩＳＡＦ）のような活動への自衛隊の参加も否定しなかった。
　自衛隊は、１９５４年の創設以来、一人の外国人も殺さず、一人の戦死者も出さないできた。この歴史を覆し、憲法を壊し、「殺し、殺される」日本をつくる。このような暴挙は断じて許すわけにいかない。
　（２）第二は、「対米従属性」――この法案を推進している勢力が、異常なアメリカ従属を特徴としていることである。
　わが党が、国会質疑で、「米国が、先制攻撃の戦争を行った場合でも、集団的自衛権を発動するのか」とただしたのに対し、安倍首相は、「違法な武力行使をした国を、日本が自衛権を発動して支援することはない」と答弁した。
　しかし、問題は、日本政府が、米国の違法な武力行使を「違法」と批判できるのかということである。米国は、戦後、国連憲章と国際法を蹂躙して、数多くの先制攻撃の戦争を実行してきた。ところが、わが党の追及に、首相は、「日本は米国の武力行使に国際法上違法な行為として反対したことは一度もない」と認めた。このような国は、世界の主要国のなかでも日本だけである。
　さらに、ベトナム戦争への本格的介入の口実とされた「トンキン湾事件」、イラク戦争の口実とされた「大量破壊兵器」が、いずれも米国政府による「ねつ造」だったことが明らかになっても、安倍政権には、これらの戦争を支持し協力してきたことを検証し反省する立場がまったくないことも、わが党の論戦によって浮き彫りとなった。
　このような、異常なまでの対米追随の政府が、集団的自衛権の行使に踏み出すことがいかに危険か。米国が無法な先制攻撃の戦争に乗り出した場合にも、無法と批判できず、米国から言われるままに集団的自衛権を発動することになることは明らかである。米国による無法な戦争への参戦――ここに集団的自衛権の一番の現実的危険がある。
　（３）第三は、「歴史逆行性」――過去の日本の戦争を「間違った戦争」と言えない安倍政権が、戦争法案を推進する危険である。
　今年は、戦後７０年であり、この節目の年にあたって、日本が、歴史問題にどういう基本姿勢をとるかは、極めて重要な問題である。わが党は、党首討論で、安倍首相に対して、日本が１９４５年８月に受諾表明した「ポツダム宣言」を引用して、「過去の日本の戦争は『間違った戦争』との認識はあるか」とただした。首相は、かたくなに「間違った戦争」と認めることを拒み続けた。くわえて、首相が「（ポツダム宣言を）つまびらかに読んでいないので論評は差し控えたい」と答弁したことが、内外に大きな衝撃を与えた。
　戦後の国際秩序は、日独伊３国の戦争は侵略戦争だったという判定の上に成り立っている。ところが、首相は、「侵略戦争」はおろか、「間違った戦争」とも認めない。日本自身の過去の戦争への反省のない勢力が、憲法９条を破壊して、「海外で戦争する国」への道を暴走する。これほど、アジアと世界にとって危険なことはない。
　こうしてわが党の論戦は、戦争法案の違憲性とともに、この法案を推進する勢力の異常な対米従属性、歴史逆行性を浮き彫りにするものとなっている。
　（４）わが党の国会論戦には、多くの国民をはじめ、知識人、ジャーナリスト、宗教家、市民運動家など、保守の方々も含め、かつてない幅広い人びとから、大きな反響と共感が寄せられている。それは、戦争法案に不安をつのらせている広範な国民と響きあい、反対の声を広げ、たたかいを発展させるうえでの貢献となっている。
　衆参の党国会議員団は、引き続き、法案の問題点をえぐり、危険性を明らかにする論戦に力を尽くし、廃案をめざして奮闘する。法案阻止のために、「今国会での成立に反対」など、一致点にもとづく野党間の共同を含め、あらゆる可能性を追求する。

「戦争法案反対」の一点での壮大な国民的共同のたたかいを広げよう
　戦争法案を阻止できるかどうかは、「戦争法案反対」の一点での壮大な国民的共同のたたかいを広げ、圧倒的多数の国民のなかに反対の世論をつくり、日本列島騒然という状況をつくることができるかどうかにかかっている。
　（１）すでに、国民的批判と反対の大きなうねりが起こりつつある。どの世論調査をみても、法案に「反対」し、今国会での成立に「反対」する声が、「賛成」を上回り、国会審議がすすむにつれてその差は広がっている。
　これまでになく幅広い国民の運動が、中央段階でも、全国各地でもすすんでいる。憲法擁護の運動団体が従来の垣根を越えて共同し、日弁連や各地の弁護士会が活発な運動を展開し、憲法学者をはじめ多くの知識人が反対を表明し、若者たちが国会行動にとりくみ、保守層や改憲派のなかからも反対の声が次つぎとあがるなど、多くの団体・個人が声をあげ、行動に立ち上がっている。
　国会でも、衆議院憲法審査会で、与党推薦の参考人を含め、参考人として招致された３人の憲法学者全員が、戦争法案は「憲法に違反する」との意見表明を行うという劇的な事態が生じた。
　大阪における「大阪市廃止・解体」構想の企てに対し、住民投票でノーの審判を下したことは、大阪の自治と暮らしの前途を開く重要な結果であるとともに、安倍政権による改憲策動への痛打となった。
　（２）立憲主義を否定し、民主主義を無視した強権的な法案推進の姿勢への批判が高まっている。国民の多数が「今国会での成立」に反対し、８割が政府の説明が「不十分」というもとでも、「夏までに成立」などと、法案を強行成立させようとしていることは、民主主義を真っ向から否定する暴挙である。また、１１本もの法案を短時間で一括審議するなど、国会でのまともな審議を封じようとしている点も、民主主義の常識では許されない態度である。安倍政権が頼りにしている「国会内での多数」は、民意をゆがめる小選挙区制中心の選挙制度がもたらした「虚構の多数」にすぎない。国民多数の声を踏みつけにして、法案を強行することは、断じて許されるものではない。
　（３）戦争法案をめぐる情勢は、国民のなかに平和を求める理性の声が日に日に広がる劇的変動のなかにある。
　国会の力関係では与党は多数を占めている。戦争法案の帰すうは予断をもっていうことはできないが、国民世論が変化し、保守層を含めた幅広い人たちが行動に立ち上がり、安倍政権が追いつめられ、孤立しつつあるという激動的な情勢が切り開かれつつあることは疑いない。この前向きの情勢の変化に深い確信をもち、わが党の国会論戦の到達点を全党がつかみ、たたかいに立ち上がろうではないか。

党の真価を発揮し、草の根から戦争法案阻止の大きなうねりを
　戦争法案を阻止するたたかいは、侵略戦争に命がけで反対し、反戦平和を訴え続けた党としての存在意義が問われるたたかいである。日本列島津々浦々で国民的運動を起こし、広げるうえで、草の根に組織をもつ党の真価の発揮のしどころである。
　次の点に留意して、たたかいをすすめよう。
　（１）法案の本質的危険性を国民全体の認識にするために党の役割を果たそう。
　多くの国民が戦争法案と安倍政権の強行姿勢に不安をつのらせ、安倍政権の「平和安全」などという偽りの宣伝や、一部の大手メディアの露骨な〝政権寄り〟の報道にもかかわらず、戦争法案反対の世論が広がり続けている。国民のなかに、国会論戦で明らかになった戦争法案の本質的危険性が広がれば、さらに大きく、強い反対世論を形成することができる。法案の本質的な危険性を、急いで、大規模に、国民のなかに広げることは、わが党が果たすべき重要な役割である。
　すべての党員が、時間を惜しまず、志位委員長の国会論戦ＤＶＤ（ダイジェスト版も作製予定）を視聴し、国民のなかに広げよう。志位委員長の論戦を収録したパンフレット『戦争法案の核心をつく』を学習し、思い切って普及しよう。中央として、国会論戦の内容を国民に届ける「しんぶん赤旗」号外を発行する。
　（２）草の根から「戦争法案反対」の共同を広げよう。
　わが党は、戦争法案の問題を、いっせい地方選挙の大争点として訴え、法案の閣議決定にあたっては、全国２万４千カ所でいっせい宣伝にとりくむなど、全国各地で奮闘してきた。この奮闘は、世論の変化をつくる大きな力となっている。
　引き続き、こうした党独自の活動を強めるとともに、幅広い人びととの「戦争法案反対」の一点での共同を全国津々浦々から広げることが重要である。
　すべての支部が、職場・地域・学園で、宣伝や署名、幅広い人びととの対話と共同、ミニ学習会をはじめ、多彩な活動にとりくもう。
　党機関は、党独自の活動を推進するとともに、弁護士会、知識人、市民団体など戦争法案に危惧をいだいている多くの団体・個人との対話と共同を広げよう。地方議員団は、宣伝や署名、学習会など、党独自のたたかいの先頭に立つとともに、議会での意見書採択をはじめ他党派との共同、多様な団体・個人との対話と共同にとりくもう。

（３）各分野のたたかいを発展させ、安倍政権打倒の世論と運動を大合流させよう。
　沖縄の米軍新基地建設強行に反対するたたかい、労働法制の大改悪を許さないたたかい、消費税増税路線の中止を求めるたたかい、社会保障の削減に反対し充実を求めるたたかい、原発再稼働やＴＰＰに反対するたたかいなど、どの分野でも、反対の世論が国民多数に広がり、政治的立場や労働組合のナショナルセンターの違い、保守と革新の垣根を乗り越えた国民的な共同が広がっている。そして、どの分野のたたかいでも、戦争法案と同じように、安倍政権の強権的なやり方への批判と怒りが渦巻いている。
　各分野のたたかいをさらに発展させ、安倍内閣打倒の世論と運動に大合流させよう。戦争法案を廃案に追い込もう。

二、党員拡大を根幹にすえた党勢拡大の新たな高揚をつくりだそう

　「大運動」の第二の課題は、党員拡大を根幹にすえた党勢拡大の新たな高揚をつくりだすことである。

「大運動」での党勢拡大の目標について
　（１）「大運動」での党勢拡大の目標は、次のとおりとする。

　○党員拡大を党勢拡大の根幹にすえ、すべての支部が、「大運動」期間中に新しい党員を迎える。全党的には２万人を超える党員拡大をめざす。そのさい、党の「世代的継承」の問題を全党あげての課題に位置づけ、すべての地区が、１０代、２０代の青年・学生党員と、労働者の党員を増やす目標と計画をもち、それぞれの分野で毎月新入党員を迎える。迎えたすべての党員の新入党員教育を修了する。
　○「しんぶん赤旗」読者拡大では、全党的には一刻も早く前回参議院選挙時を回復・突破することをめざし、「大運動」期間中に昨年の総選挙時を回復・突破することを目標とする。この目標は、全国すべての支部が１カ月に日刊紙１部、日曜版２部以上を増やせば達成可能な目標である。もとより、すすんだ支部はより積極的な目標をかかげて奮闘する。どこでも切実な課題となっている配達・集金体制の改善の努力を粘り強くすすめながら、読者拡大の飛躍をはかる。

　（２）「大運動」の目標達成のために、すべての支部が「政策と計画」をもち、充実させる。
　「党勢倍加」と「世代的継承」の「二大目標」（第２６回党大会決定）達成にむけ、「大運動」の積極的な目標と計画を決める。戦争法案阻止の署名・宣伝・共同など、職場・地域・学園で多数派を結集するたたかいをすすめる。来年の参議院選挙での「８５０万票、得票率１５％以上」に見合う得票目標・支持拡大目標を決め、とりくみを開始する。
　この６～７月に多くの都道府県・地区委員会が党会議を予定し、大多数の支部が支部総会を開催する。党会議と支部総会を、「総合計画」「政策と計画」を決め、年間の党活動の節目、「大運動」の跳躍台として成功させよう。
　自ら掲げた目標は必ずやり遂げる――そういう党を、この「大運動」を通じてつくりあげようではないか。

党勢拡大で新たな高揚をかちとる重大な意義について
　いま、党勢拡大で新たな高揚をかちとる重大な意義について、次の三つの角度から深くつかむことをよびかける。
　（１）第一に、戦争か平和か、戦後最大の歴史的岐路にあるいま、反戦平和を貫いた９３年の歴史をもち、「国民の苦難軽減」を立党の精神とする日本共産党が、国民的闘争を担いうる強く大きな党に成長することが切実に求められている。
　安倍政権の暴走とのたたかいのなかで、「暴走をストップできるのは共産党」「政権を担ってほしい」など、かつてない広範な人びとが、たたかいのよりどころとしての日本共産党に期待を寄せている。そうした期待を受け止めることのできる強大な党をつくることは急務である。戦争法案の本質をズバリ解明し、国民の声とたたかいを伝える「しんぶん赤旗」を読み、読者を広げることは戦争法案阻止の確かな力となる。
　国民の期待にこたえ、激動的情勢を切り開くことができる、強く大きな党をつくるために、新たな決意で奮闘しよう。
　（２）第二に、いま党勢拡大の高揚をつくりだすことは、〝第３の躍進〟を来年の参議院選挙でさらに大きく発展させる最大の保障となる。
　わが党は、一昨年の参議院選挙、昨年の総選挙と、国政選挙で連続して躍進し、今年のいっせい地方選挙でも重要な躍進をかちとった。総選挙を総括した３中総は、この躍進が、これまでの反共戦略の全体を打ち破ってかちとった躍進であると位置づけるとともに、日本の政治の新しい段階――本格的な「自共対決」の時代を開くものと意義づけた。そして、来年の参議院選挙で、比例代表選挙で「８５０万票、得票率１５％以上」という新しい目標の実現に正面から挑戦することをよびかけた。
　この間の全党の党建設の努力は、躍進をかちとるうえでの重要な要因となった。同時に、私たちは、一連の選挙を通じて、「党の自力の問題は、引き続き私たちの活動の最大の弱点」（３中総決定）であることを、痛切に実感してきた。とりわけ、いっせい地方選挙では、全国各地での選挙総括の最大の問題として、自力の弱点、「世代的継承」の実現が、身近で切実な問題として掘り下げられている。この問題点の克服なしに、わが党のさらなる躍進の保障はない。
　いま、党の自力の問題を打開するかつてなく大きな条件が広がっていることに着目し、深い確信をもつことが重要である。この間のわが党の全国的選挙での連続躍進は、党と国民の関係に劇的な前向きの変化をつくりだしている。わが党の国会論戦、たたかいの前進のなかで、日本共産党にたいする新たな注目と関心が一気に広がっている。ここに確信を持ち、新たな峰に挑戦しようではないか。「大運動」で党勢拡大の目標を必ずやりぬき、参議院選挙勝利の最大の保障を築こうではないか。
　（３）第三に、「大運動」を、２０１０年代の「成長・発展目標」達成にむけ、党建設の「二大目標」に正面から挑戦する新たな一歩として位置づけよう。
　「成長・発展目標」達成の最大の保障は、党建設の「二大目標」をやりあげることである。「党勢倍加」「世代的継承」は、民主連合政府実現という綱領的展望にとって決定的意味をもつ大志とロマンにみちた目標である。
　第２６回党大会後、昨年の「躍進月間」で６割の地区が青年・学生党員を迎え、７割の地区が職場党員を迎えるなど、新たな努力が始まったが、本格的な前進・発展への軌道にのせるとりくみはこれからである。
　全国的選挙での党の連続躍進と、安倍暴走政治とのたたかいを通じて、職場と青年・学生のなかに党をつくる新たな条件と可能性が広がっている。「１８歳選挙権」が実施されるもとで、大学生・高校生への働きかけをいっそう重視しよう。「大運動」のなかで、労働者と１０代、２０代の青年・学生とともに、たたかいを広げ、一緒に学び、全党の力で結びつきを生かした働きかけを強め、党に迎え入れよう。この分野での前進のカギとなるのは、党機関の長が先頭に立って機関全体がイニシアチブを発揮することである。
　「科学的社会主義セミナー」での不破哲三・社会科学研究所所長の講演『マルクスと友達になろう――社会を変える学び』（民青同盟からパンフレット発行予定）の学習・普及を重視し、民青同盟への親身な援助と発展に力をつくそう。

三、「大運動」をどのように成功させるか

たたかいの高揚のなかで、「支部が主役」で党勢拡大の独自追求を
　戦争法案反対のたたかいの高揚をつくりだすことと一体に、「支部が主役」で、党員拡大と「しんぶん赤旗」購読をよびかける意識的・計画的な独自追求をすすめよう。
　すべての支部が支部会議を開き、幹部会決議を討議・具体化し、激動の情勢にふさわしく視野を広げ、党員拡大と「しんぶん赤旗」読者拡大の対象者を明確にし、足を踏み出そう。「戦争法案と日本共産党を語る集い」などをくりかえし開き、たたかいを広げる力にするとともに、入党と購読をよびかけよう。志位委員長の国会論戦ＤＶＤとパンフレット、「入党のよびかけ」、「購読申し込み用はがき」、戦争法案反対の「しんぶん赤旗」号外、「ストップ戦争法案」ポスター（２種類）、「しんぶん赤旗」ポスターなどの資材を活用し、党員と読者の拡大を飛躍させよう。
　「党生活確立の３原則」（支部会議への参加、日刊紙の購読、党費の納入）を全支部と党員のものにしよう。

党地方議員（団）が「大運動」を　けん引する積極的役割を
　いっせい地方選挙では地方議員と候補者が先頭に立って、重要な躍進を切り開いた。２８００人を超えるに至った党地方議員（団）が、戦争法案反対をはじめ公約実践の活動に大いにとりくむとともに、党勢拡大でも自らの自主目標をもって支部とともに行動し、成果をあげて支部を励ます、けん引力としての役割を発揮しよう。そのさい党機関は、３００人を超える新人議員への親身な援助を強めよう。

支部を援助する党機関の臨戦態勢の強化を
　「大運動」の成功は、どれだけの支部、どれだけの党員が、この運動に自覚的に参加できるかどうかにかかっている。戦争か平和かの歴史的岐路にあるいま、多くの党員が「じっとしていられない」という思いをもっている。
　党機関は、特別の臨戦態勢を確立し、文字通りすべての支部、党員に声をかけ、「大運動」に立ち上がるよう、知恵と力をつくそう。
　県委員会は、来年の参議院選挙の選挙区予定候補をすみやかに決定し、「大運動」の先頭に立てるようにしよう。

東日本大震災被災地３県の地方選挙を重視して
　４年前、東日本大震災でいっせい地方選挙を延期して行った被災地３県（岩手、宮城、福島）の地方選挙が６月から１１月にかけて行われる。その規模は、首長選挙では岩手県知事選挙をはじめ１１自治体、議員選挙は３県の県議選、３県の県都の市議選をはじめ６１市町村（３県全体の４８％）になる。
　被災地３県の地方選挙は、いっせい地方選挙の締めくくりの選挙であり、①安倍政権の被災地切り捨て政治に反対し、復興と暮らしのかかった選挙、②戦争法案など安倍政権の暴走に対する審判を下す選挙、③来年の参議院選挙での「８５０万票、得票率１５％以上」の獲得をめざして躍進の土台をつくる選挙として全国的意義をもつ。
　３県すべてで全員当選をかちとるために、全国からの支援を心からよびかける。

すべての党組織と党員が、革命政党としての気概を発揮し、心一つに奮闘を
　「大運動」にとりくむ６月から９月の時期は、戦後最悪の安倍政権による戦後最悪の戦争法案を阻止できるかどうかがかかった歴史的時期である。またこの時期は、来年の参議院選挙を展望するならば、引き続く躍進の土台を築けるかどうかの重要な時期となる。
　すべての党組織と党員が、革命政党としての燃えるような気概を発揮し、心を一つに奮闘し、掲げた目標を必ずやりとげようではないか。
( ２０１５年０６月１０日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

歴史学研究会大会から／植民地支配未清算など問う・近代史部会／「人文社会科不要論」を批判・特設部会

　歴史学研究会の大会が５月２３・２４の両日、東京で開かれ、古代史から現代史までの各部会で議論が交わされました。「歴史学の役割が改めて問われている」（久保亨委員長）なか、「戦後７０年からの問い直し」をテーマにした近代史部会と、歴史教育の問題に焦点を当てた特設部会での報告を紹介します。
　（西沢亨子、米重知聡）

植民地支配未清算など問う／近代史部会
　近代史部会では、戦後の日本が未解決のまま今日まで積み残してきた課題として、象徴天皇制、植民地支配の未清算、植民地認識についての三つの報告がされました。
　そのなかで太田修同志社大学教授は今年で締結５０年となる日韓条約をとりあげました。日韓の国交を樹立した１９６５年の日韓条約は、日本の「経済協力」と引き換えに韓国が財産請求権を放棄し、戦後補償問題を「完全かつ最終的に解決された」としています。
　太田さんは、日韓条約がなぜ日本の植民地支配の責任を問うものにならなかったかと問題提起。公開要求運動によって新たに公開された外交文書を示しながら、経緯に迫りました。
　日本政府は、植民地支配について〝当時としては適法で国際的犯罪視されるいわれはない〟〝日本は韓国の近代化に貢献した〟とし、責任を認めて賠償することを一貫して拒否していたと指摘。当初は、日本人が韓国内に残した財産請求権と韓国側の対日請求権との「相互放棄」による決着をめざしたものの交渉が進まず、「過去の償いということではなしに」「経済協力にすりかえる」ものとして経済協力方式が考え出されたことを示しました。
　その上で、６０年代に経済協力方式が確定した要因として、①植民地支配の責任を不問に付すという考え方②韓国への経済援助が共産主義を抑えるのに有効との認識③米国が日韓にそれを求めた―をあげ､｢植民地主義の土台の上で､反共主義､経済開発主義が『過去の清算』を覆い隠し、責任と補償を回避する法と論理がつくられた｣と指摘しました｡
　神戸女学院大学の河西秀哉准教授は「戦争責任論と象徴天皇制」と題して報告しました。敗戦に際し昭和天皇が退位しなかったことで戦後の節々に浮上した退位論・責任論が象徴天皇制の内実にどう影響したかを検討。象徴天皇に道徳性・人格者であることが求められるようになったと指摘し、それが現天皇像にも反映しているとのべました。
　立命館大学の佐藤量専門研究員が「満州」体験者の中の都市住民の「記憶」と変遷について、同窓会誌に注目して報告しました。

「人文社会科不要論」を批判／特設部会
　特設部会では「地域から世界へ―危機の時代の歴史教育を考える」のテーマで４人が報告に立ちました。
　政府の「大学改革」で国立大学の「人文社会科不要論」が出されていることについて、三谷博・東京大学名誉教授は､｢大学は実務的知識だけが学べればいいとするが、実務直結では知識の陳腐化は早い。学ぶ力、観察する力、説得する力を養うのが最も重要」「理系は『未知の発見』が使命だが、歴史は『時間の旅』であり、『今』を相対化する『時間の旅』が与える多様性は、理系にも役立つ」と説明。世界史と日本史の統合や、「２０世紀、日本以外の近隣アジアの国がどんな経験をしたかの知識が欠けている」として初歩的な知識の必要性を説き、暗記ものでない歴史教育のあり方を提唱しました。
　また、国際基督教大学（ＩＣＵ）の高澤紀恵教授は、同大学教養学部での実践事例を挙げ、日本・西洋・東洋史の枠組みを超えた教員の連携などカリキュラム上の工夫を紹介。「歴史学は時間の相のもとで世界を読み解く学問であり、現在についての批判的思考力を養う」と述べました。人文科不要論については､｢政府の言う社会的要請とは、産学共同のような経済活動への貢献のみを指す」と述べ、知識を一元化する動きを批判しました。
　福島成蹊高等学校（福島市）の福田和久さんが震災・原発事故災害を現代史学習に取り入れた実践を報告しました。
　日中韓共通教材作成に取り組む齋藤一晴さんが、歴史認識の共有について到達点と課題や影響を報告しました。
( ２０１５年０６月０９日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

演劇／「廃墟」（劇団文化座＋劇団東演）／戦争の時代どう生きたか

　とにかく重量感のある３時間であった。父と子、あるいは、子ども同士、お互いにこれほどまでに多くのことばを発して対立し自己主張をすることができるのか？　と思わせる。三好十郎が戦後間もない１９４７年に書き上げた作品を、演出の鵜山仁は緊張関係を持続しエネルギーに満ちた舞台に構築した。
　敗戦直後、焼け野原の廃墟にすむ歴史学者・柴田欣一郎の一家。欣一郎（能登剛）と長男の誠（藤原章寛）、次男の励二（南保大樹）、次女の双葉（古田美奈子）が中心人物。父は「国民１人分の戦争責任」を背負い、大学を休学し闇物資にも手を出そうとしない。誠は労働組合の活動家として父の歴史観に批判的であり、励二は特攻隊崩れで虚無的になり自分の身をもてあましていた。双葉は人間を許し信じようとする。さらに、この家に身を寄せる、せい子（名越志保）、冨本三平（沖永正志）もからんで、物語は展開されていく。劇団をこえた俳優たちの感情の高まりが激しくぶつかり溶解していくさまは魅力的だ。焼け跡の表出、建物の傾きなどのセット（美術＝乗峯雅寛）は秀逸。
　作家自身が「私という作家が一番正面切って日本の敗戦という事柄に対した作品」と語ったというが、たしかに、戦争の時代に生きた人間にとって、どのように生きたかが問われたはずである。戦後７０年という節目の年に上演に取り組んだ意義の大きさを感じた舞台であった。両劇団の共同企画に拍手である。
　（鈴木太郎・演劇ライター）
　１日まで文化座アトリエ。１２～２３日、東京・東演パラータ
( ２０１５年０６月０９日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

潮流

　千人針に慰問袋、米や燃料の配給切符、紙製の衣服､｢何がなんでもカボチャを作れ｣と記された『戦時農園講義録』､防空訓練で使われた防毒マスクと警報機…▼東京の台東区立下町風俗資料館では、戦後７０年を記念して、戦時下の暮らしを伝える多様な資料を展示しています。日中戦争が激化する中、１９３８年に施行された国家総動員法によって、日々の衣食住すべてが戦争に巻き込まれていく様子が迫ってきます▼再現された灯火管制下の部屋は、電灯のかさに黒い布をかぶせ、窓一面に白い紙の目張り。座っていると、国家に光を奪われていく不安と、もしこうこうと明かりをつけたら非国民として糾弾されるに違いないという恐怖にとらわれます▼当時の婦人雑誌には、古着を仕立て直して機能的な服を作る特集が掲載され、型紙の付録も。乏しい配給を補うため家庭菜園の野菜を使った料理の紹介もあります。メディアがどのようにして女性を戦時体制へと動員していったかがわかるとともに、極限の生活の中でも懸命に生きた人々の姿が彷彿とします▼同館はまた、戦前の実物大の長屋を常設しており、失われたものの面影を伝えています。共用の路地と井戸端は子どもの遊び場であり、七輪を出せば台所の延長となり、夏には縁台で夕涼みをする大切な交流の場でした▼この町並みと生活は４５年の空襲で焼き尽くされてしまいます。かけがえのない暮らしを二度と奪われてはならない。展示物に込められた人々の思いが語りかけます。
( ２０１５年０６月０８日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

今月のＮＨＫＥテレ「ハートネットＴＶ」／「シリーズ戦後７０年」三つのテーマで

児童養護施設・精神障害者・ハンセン病
　ＮＨＫＥテレ「ハートネットＴＶ」（後８・０）は、「シリーズ戦後７０年」で、６月に三つのテーマを取り上げます。第１回「障害者はどう生きてきたか」、第２回「高齢者とどう向き合ってきたか」に続くものです。
　第３回は「家なき子たちの戦後～戦争孤児から虐待まで」（２日）。戦後作られた戦争孤児のための「児童養護施設」はその後、家庭を失ったり、非行や不登校、虐待の問題を抱える子どもたちを受け入れてきました。どうしたら子どもの利益を最優先にした児童福祉に立ち返れるのかを考えます。
　第４回は「精神障害者の戦後～病院か地域か」（３日）。日本では１年以上長期入院している精神障害者が２０万人に上ります。背景には、患者の人権より治安を重視し、精神障害者を「隔離収容」してきた戦後の歴史があります。精神障害者もそうでない人も、どうしたらともに地域で暮らせるのか考えます。
　第５回は「ハンセン病の戦後～人間回復への道」（４日）。ハンセン病の患者は戦前から強制隔離政策によって、全国の療養所に収容され、結婚する場合には断種手術を強制されるなど人権侵害にさらされてきました。患者による国家賠償訴訟で国の隔離政策が断罪されたのは２００１年のことです。隔離収容の歴史と課題を見つめ未来へのヒントを探ります。
( ２０１５年０６月０１日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

にちようシネマ館／おかあさんの木／日本

　大川悦生の現代民話を磯村一路が監督した静かで痛切な反戦映画。
　１００年ほど前の長野県。村の郵便配達のおとうさんが早く亡くなり、おかあさんのミツ（鈴木京香）が７人の男の子を育てました。戦争が始まって一郎、二郎が兵隊に行くとおかあさんはキリの木を一本一本植え無事を祈って声をかけます。２人が戦死しても戦争は続き三郎、四郎も戦場へ。五郎が出征する駅で｢行くな!｣と止めて警察に引っ張られ─。
　立派に育てたわが子が｢お国のために｣と奪われる憤り｡待つ母の苦しみ｡役所が７本の木を伐採しようとする現代。「あの木を切ってはいかん」との声が、戦争はいかんと響きます。戦後７０年に母親の訴え。
　（石）
(２０１５年０６月０７日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

１０ｓ２０ｓＹモード／戦争と平和を音楽で／フェリス女学院大／企画した音楽芸術学科２年生堀口利沙さん

学生がコンサート／「汽車ポッポ」は出征兵送る歌だった
　フェリス女学院大学の学生たちが、戦後７０年の節目に戦争や平和と音楽のかかわりをテーマにしたコンサート「戦争と音楽～闇から光へ～」を催します。その思いは―。
　小川浩記者

　「平和とか、戦争について音楽を通して考える機会をつくりたいと高校生時代から考えていました。第２次世界大戦終結から７０年の今年、実現できてうれしいです」
　「戦争と音楽」を企画したフェリス女学院大学音楽芸術学科２年生の堀口利沙さん（２０）はそう語ります。
　「戦争と音楽」の企画は、次代を担う音楽家や音楽業界をめざす学生たちの出発点にしてほしいと開かれる「レインボウ２１　サントリーホールデビューコンサート２０１５」で、採用されたものです。

〝闇〟と〝光〟
　出演は、同大学演奏学科の在学生･卒業生です｡広報や演出もサントリーホールと連携しながら、音楽芸術学科の在学生が手がけます。
　世界で戦争や紛争が絶えず、多くの市民が犠牲になっていることに心を痛めていた堀口さん。戦後７０年のこの機会に戦争の悲惨さ愚かさを伝えたいと企画を提案しました。同大学でこの企画が通り、学生、教員らが協力し練り上げていきました。
　演奏プログラムは、前半を〝闇〟として、戦意を高揚するような作品や戦死したり抑圧を受けた作曲家の作品を｡後半は､〝光〟として平和・追悼の思いを込めた作品を演奏します。
　堀口さんも演奏曲を提案。その中からパブロ・カザルス編曲のカタルーニャ民謡「鳥の歌」がプログラムの最後に演奏されます。
　「鳥の歌｣は､チェリストのカザルス（１８７６～１９７３年）の故郷スペイン・カタルーニャ地方の民謡です。カザルスはフランコ独裁政権に抗議し演奏活動を停止した政治的信念をもつ人物。９４歳のときに国連平和賞が授与され、その際に国連本部で演奏したのが「鳥の歌」でした。
　堀口さんは、企画を練り上げるなかで多くのことを学んだといいます。童謡の「汽車ポッポ」「里の秋」「われは海の子」が、戦前は軍国主義的な内容をもっていたことも初めて知りました。
　「汽車ポッポ」の元歌は戦前、「兵隊さんの汽車」として出征兵士を見送る内容でした。
　堀口さんはいいます。
　「今年、敗戦から７０年です。戦時中に利用された曲や戦死した作家の作品を聞いて、戦争のむなしさを想像してほしい。平和や追悼の思いが込められた曲を聞いて、みなさんに問いかけたいです。このコンサート後も心にとめて、戦争をなくすために、これからどのように生きていくか自分も考えていこうと思っています」

戦時の歌詞そのまま歌う／Ｃｈｉｌｄｒｅｎ’ｓＳｏｎｇｓａｔＷａｒｔｉｍｅ
　女声アンサンブル「フェリス・フラウエンコーア」が歌う「Ｃｈｉｌｄｒｅｎ’ｓＳｏｎｇｓａｔＷａｒｔｉｍｅ（戦時の唱歌）」では、戦後に歌詞の書き換えや削除が行われた唱歌を戦時中のままの歌詞で歌います。編曲したのは、たかの舞俐さん（同大学准教授・作曲家）。「汽車ポッポ」の元歌、「兵隊さんの汽車」の前奏に映画「地獄の黙示録」からヒントを得てワーグナー「ワルキューレの騎行」を用いました。戦死した息子のために毎日お経をあげていた祖母の思い出も織り込んでいるとのことです。

○フェリス女学院大学プロデュース「戦争と音楽～闇から光へ～」　サントリーホール＝東京・港区赤坂＝主催。同ブルーローズで９日午後７時開演
(２０１５年０６月０７日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

ニュルンベルク裁判／芝健介著／評者粟屋憲太郎立教大学・上海交通大学名誉教授

戦犯裁判を歴史的脈絡に据えて
　戦後７０年を迎えて、内外でさまざまな報道や研究が発表されている。これらのうち戦争責任や戦争犯罪裁判をめぐる現代史研究も多く公表されている。そのうち第１次資料を駆使した本書がいちばんの力作である。
　ニュルンベルク裁判とは、一般にドイツ敗北後の１９４５年１０月に開廷され、翌年９・１０月に判決が下された米、英、仏、ソ４国による国際軍事裁判をさすものと思われがちである。著者は、同裁判終了後の米軍政府の単独の１２の継続裁判の役割を重視している。ニュルンベルク裁判は１３あったとして、ニュルンベルク継続裁判の綿密な分析を示していて説得的である。
　本書の最大の成果は、「世紀の裁判」「文明の裁き」などと形容されながらも、十分な実態把握がなされたといいがたい「ニュルンベルク裁判の全体構造と展開を、歴史的脈絡に据え直して具体的に捉え返」すことにある。
　このため本書の第１章は、「忘れられた戦犯裁判」として第１次大戦後のヴェルサイユ講和条約によって開かれたドイツ側の「自主裁判」であったライプツィヒ裁判の具体的分析を提示している。同裁判は結果的には「茶番」に終わったが、著者は同裁判についても、以後につながるメリットを指摘していて複眼的である。
　著者は、第６章「ニュルンベルク裁判以後のナチ犯罪裁判」で、連合国各国でなされた裁判の概要も紹介し、ドイツの「自主裁判」の実態を指摘し、最終章では「西ドイツにおけるニュルンベルク判決の受容」について、近年にいたる変化も提示している。本書は東京裁判の分析にも有益で高く評価できる。

　しば・けんすけ　４７年生まれ。東京女子大学教授。
( ２０１５年０６月０７日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦争法案を批判／憲法集会も収録／『憲法運動』６月号

　『月刊憲法運動』（憲法会議刊）６月号（写真）が好評です。
　新しい共同で行われた「５・３憲法集会」での志位和夫日本共産党委員長、長妻昭民主党代表代行、大江健三郎さん、樋口陽一さんのスピーチを収録しています。
　戦争法案の国会審議が始まり、全国で反対運動が起きています。今号は戦争法案をさまざまな角度から分析、批判しています。
　「憲法の眼」は隅野隆徳専修大学名誉教授の「戦争法制に対処するためにこそ、日本国憲法の原点の確認を」。
　憲法会議の緊急勉強会（５月１０日）での森英樹名古屋大学名誉教授の講演「戦争する国づくり、戦争法案をめぐる情勢と課題―戦争法案の閣議決定・国会審議を目前にして」、渡辺治一橋大学名誉教授のコメントを掲載しています。
　「戦後７０年の岐路に立って―憲法９条に関する政府解釈変遷の軌跡（上）」（川村俊夫憲法会議代表幹事）の論文も載せています。
　同時発行の「憲法しんぶん」６月号は、全国各地の５・３憲法記念日の活動を紹介。戦争法案閣議決定・国会上程にあたっての憲法会議の抗議声明を全文紹介しています。
　『月刊憲法運動』６月号は定価４００円（送料７０円）、憲法しんぶんは３０円（送料６２円）。申込先＝憲法会議　電話０３（３２６１）９００７、ファクス０３（３２６１）５４５３。
( ２０１５年０６月０４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

「戦争法案」今言わなければ／ファッション評論家ピーコさん／安倍さんの「平和」って何

　すごく恐ろしい人が総理大臣になっていると思うの。安倍さんはよく「総合的に判断する」と答弁するけれど、判断するのはその時の政府で、今でいえば安倍さんでしょ。野党に痛いところを突かれれば感情的になり、やじまでとばし、国会を無視して自分の思い通りにしたい人が判断する。ファッショね。
　武力行使の新３要件でいう「明白な危険」てなに？　「必要最小限」てなに？　いかようにも言えるし、「例外」はどんどん広がる。専守防衛のはずの自衛隊が地球の裏側にまで行く。

戦争したいの？
　安倍さんの言う平和って、なんなんだろうね。「南シナ海で埋め立てしている国がある」なんて言って、まるで中国を名指しして、戦争したいと言っているようなものじゃない。
　私が生まれたのは敗戦の年の１月、横浜です。５月に空襲され、親たちが逃げ回って助かった。３歳ぐらいまでは、焼け跡のバラックに住んでいました。駐留軍もたくさんいたし、傷痍軍人はお金の無心をしていたし、友達のお父さんが戦病死したり、戦争未亡人も大勢いた。そういう時代だったわね。
　今度の法案では、自衛隊が弾薬まで提供できるようになっているでしょ。弾薬を製造して大もうけしたい人たちがいるのよ。戦争の裏には金もうけがあり、もうける人たちは兵隊にはならない。まず戦争に行かされるのは若い人たちよ。
　法案が通れば、自衛隊員から戦死者が出て、志願する人は少なくなるだろうから、やっぱり徴兵制が出てくると思う。防衛予算もどんどん増やして、ますます年寄りのために税金を使わなくなるでしょうね。今だって、医療費を値上げしたりして、長生きさせないようにしているんだから。

きちんと考えて
　私は｢戦争反対｣ときちんと言おうと思ってテレビやラジオの仕事をしてきたし、今もそう思っています｡ただ､政治について話せる番組は、どんどん少なくなっています。
　２１世紀になれば、戦争がない世界になると思っていたのにね。ずるずるここまで来てしまったけれど、本当に今、私たち一人ひとりがきちんと考えて、この法案に反対しなければいけないと思います。
　聞き手　田中佐知子

　高校卒業後、アパレル会社、文化服装学院を経て、衣装デザイナーとして芸能界へ｡著書に『片目を失って見えてきたもの』『ピーコ伝』ほか｡
( ２０１５年０６月０７日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

「戦争法案」今言わなければ／日本青年団協議会第３９代会長照屋仁士さん／青年は二度と銃取らぬ

　私たち日本青年団協議会は、戦後７０年の節目となる５月の第６５回定期大会で、「被爆・戦後７０年　不戦の誓い―『青年は二度と銃を取らない』思いを今こそ―」とする特別決議を採択しました。

特別決議で誓う
　特別決議は先の第２次世界大戦で、沖縄で国内唯一の地上戦が繰り広げられ、「鉄の暴風」と呼ばれた艦砲射撃による住民の犠牲、皇民化教育と軍民一体化政策によって起きた軍命による「集団自決（強制集団死）」、「国体護持」のために子どもを含む多くの住民が犠牲になった「沖縄戦」について触れています。
　「沖縄戦」に特に言及しているのは、私が沖縄県出身だからというわけではなく、日青協の共通認識としてまとまったものです。
　さらに国内各地での空襲や広島、長崎への原爆投下などの犠牲の上に、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義をうたった日本国憲法が制定されたことを明記しています。
　私たちは｢憲法改正｣や新たな安保法制の動きが着々と進められていることに対し、日本が戦争に加担する歴史を繰り返しはしないかと危惧を抱いています。
　特別決議は、「戦争は決してゲームではない。人と人とが、時には家族を、時には仲間を、ときには愛する人をも憎しみ合い、傷つけ合い、殺し合う人類の歴史の中で最もむごたらしいもの」と強調しています。
　そして、日本国憲法の理念の尊重、正しい歴史教育の実現とともに、悲惨な戦争の歴史を二度と繰り返さないために、青年が二度と銃を取らないことを固く誓っています。

他国学ぶことを
　沖縄は、長きにわたって国策によって翻弄され続けてきました。戦後も米軍統治下に置かれ、復興が遅れたために現在も「戦後」は続いていると感じます。新基地建設を「粛々と」進める政府の動きと沖縄で起きている現状に対し、全国の若者はもっと目を向けてほしいと思います。
　広島、長崎に原爆が投下された要因として、軍需工場が多くあったことが挙げられています。戦争の本質を見たときに、沖縄に集中する米軍基地はまさに同じではないかと強い懸念を抱いています。
　軍事的対応ではなく、他国の歴史や文化、伝統芸能などを若者レベルで交流し合い、学び、行動に移していくことこそ、１０年後、２０年後の平和な未来につながっていくと確信しています。
　聞き手　沖縄県・星野淳

　てるや・ひとし　１９７６年生まれ。沖縄県出身。県青年団協議会会長、南風原町議、日本青年団協議会第３９代会長。２００７年に１１万６０００人が集まった「教科書検定意見撤回を求める沖縄県民大会」では、青年代表として訴えました。
( ２０１５年０６月０４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

「戦争法案」今言わなければ／思想家内田樹さん／「平和法案」名称いかさま

　安倍首相は「戦争法案」に前のめりになっています。非常に急いでいる。マジシャンが観客を目くらましにかけているうちに、見えないところで大仕事を終わらせるのに似ています。それだけ法案の内容に自信がないということです。
　「平和法案」というネーミングは明らかにいかさまです。どういう条件をクリアしたら「戦争ができるか」を決める法律なんですから「戦争法案」以外の何ものでもありません。一内閣が武力行使以外に国益を守る方法がないと判断すれば、好きなときに、好きな場所に派兵できる。もう日本国憲法どころか日米安保条約さえ空文化するということです。

海外派兵は失敗
　戦後の日米関係は力関係の違いで三つの時期に分けられます。最初はアメリカが圧倒的に強く、日本が何を言っても相手にされなかった時期。そのあと日本が国力を増してくると日本はいくぶん言葉づかいに慎重になった。中曽根首相は日本列島を「不沈空母」と形容したり「ロン・ヤス関係」を強調しましたが、それはアメリカに対する忠誠心を公式に言葉にすることを求められる段階にまで日本が達したということです。
　そして、今が第３期です。アメリカが相対的に弱くなって、日本との軍事的同盟関係が「のどから手が出るほど」欲しい。だから、多少の暴走には目をつぶる。安倍首相の一連の発言が戦後すぐのものなら問答無用で公職追放されたでしょう。アメリカはもう「世界の警察官」としてふるまうだけの体力がない。過去７０年のアメリカの海外派兵はほとんど失敗しました。国内でも厭戦気分が高まっている。かつて七つの海に君臨した大英帝国は戦後国力の低下に伴って、版図を一気に縮小しました。その時、アメリカに権限の一部を委譲した。いまそれと同じことをアメリカは日本に対して考えている。自分たちの「仕事」を日本に肩代わりしてほしいのです。

米国と利害一致
　安倍首相の対米従属は、アメリカの戦争を一部肩代わりする代償に、大日本帝国に似た統治システムに日本を「脱却」させようとするものですが、その「取引」にアメリカは応じようとしている。国民は厭戦気分でも、アメリカの産軍複合体は戦争をしないと既得権益が守れない。だから、「誰か別の国の兵士」がアメリカのために死んでくれることを願っている。そのアメリカの虫のいい要請と、日本を戦前の体制に戻したい安倍周辺の利害が一致したということだと思います。
　聞き手・写真　渡辺健

　うちだ・たつる　１９５０年生まれ。神戸女学院大名誉教授。専門はフランス現代思想。合気道七段の武道家。『街場の共同体論』『若者よ、マルクスを読もう』など著書多数。
( ２０１５年０６月０６日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

「戦争法案」今言わなければ／九大の生体解剖事件の真相を本にまとめた熊野以素さん／人の心を狂わせる戦争

　私は大阪の府立高校で長く社会科教師をしていました。生徒たちに憲法や平和について語る時、心によみがえってきたのは伯父の言葉でした。

おぞましい事件
　伯父の鳥巣太郎は戦前、九州大学医学部の助教授をしていました。そこで、終戦間際の１９４５年春、おぞましい事件が起こりました。軍と医学部の組織犯罪としての九大生体解剖事件です。４回の生体実験が行われ、米軍捕虜８人が殺されました。鳥巣は生体実験に抵抗したものの、戦後に行われた戦犯裁判で、「首謀者」の１人として死刑判決を受けました。しかし、伯父の抵抗の事実を知る伯母が、再審査を請求して減刑を勝ち取ります。満期出所して家族の元に帰り、町医者として生きます。
　伯父は私をかわいがってくれました。法学部１年の時体を壊して伯父のもとで療養することになりました。憲法の教科書を読んでいた私に、伯父は、「憲法の解釈はただ一つだ。あの憲法を作った日の気持ちに立ち返って考えればすぐわかる」と強い調子で言いました。「日本は永久に戦争を放棄したのだ」とも。
　伯父との交流は晩年まで続きましたが、伯父の思いの奥には常に生体解剖事件があると感じていました。戦犯裁判で真相が明らかにされなかったこの事件は急速に忘れ去られていきました。伯父も２２年前に他界しました。
　ところが７年前、私は伯父に再会しました。「九条世界会議・大阪」の「医師九条の会」のブースで流された生体解剖事件のドキュメンタリーの一場面です。絞首刑を宣告された瞬間の伯父の映像でした。その時、私は、伯父が語りかけていると感じました。「忘れるなよ。戦争をしちゃいかんのだ。戦争のできる国にしちゃいかんのだ」。

悲劇掘り起こす
　私は国会図書館にあった米国が公開した戦犯裁判記録や再審査資料等をもとに、事件の真実を明らかにする仕事に挑みました。平時であれば、善良な医師として生きたであろう人々が、恐ろしい戦争犯罪に加担していく、戦争の狂気がもたらした伯父たちの悲劇。この事実を歴史の闇に葬ってはならない。再び「戦争のできる国」になろうという逆流が渦巻く今こそ、明らかにしなければならないという思いで本にまとめました。戦争がどれほど人の心を狂わせるものであるかを若い世代に知っていただきたいと思います。
　現在、国会で安保法制の名の下に９条の禁じる「武力行使」を可能にする法案が審議されています。再び軍靴の足音が近づいてくる。絶対に止めなければ！
　聞き手・写真　武田恵子

　くまの・いそ　１９４４年生まれ。大阪府立高校社会科教師を務めたのち、「九条の会・豊中いちばん星」呼びかけ人。豊中市議（無所属）。近著に『九州大学生体解剖事件　七〇年目の真実』（岩波書店）
( ２０１５年０６月０４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

「戦争法案」今言わなければ／劇作家永井愛さん／演劇人は非戦こそ選ぶ

　安倍首相は初め、憲法改正手続きを定めた９６条の要件を緩めることで改憲を狙ったのですが、あまりに評判が悪く、集団的自衛権を閣議決定で認めてしまうという〝超ウルトラＣ〟のルール違反で突破し、戦争法案へと突っ走っています。
　この戦争法案は事実上の９条破棄と言っていいくらい、日本を根本からつくりかえてしまうものです。こんな方法が通用し、しかも公明党が平然と協力していることに、驚き、憤っています。

際限ない軍拡へ
　国会の議論を見ていると、政府側からそもそも何のためにこの法案が必要なのか、まともな理由がほとんど語られていません。安倍首相は〝日米同盟が機能すれば抑止力は高まる〟と、中国などを念頭に置いた発言をしています。
　でも、中国や韓国との関係を悪化させ、緊張を激化させてきたのは、安倍首相自身ですよね。中国が軍事力を強め脅威になっているから、日本もアメリカと軍事的連携を強めなければという論理は､結局､抑止力は有効ではなく、際限なく軍拡を続けていくだけだということを証明しています。
　軍事的危機をどう回避するかは、軍事力以外で語られなければならないし、人間の知恵、知性の発揮のしどころであって、その方向に国をもっていく外交努力、研究にこそ力を尽くすべきです。

どんな言葉なら
　日本では、会社でも学校でも、話し合って解決するより力で押さえつけるほうが有効だと信じられる土壌があり、このなかで誕生してしまったのが安倍政権です。実生活では力の支配に対して沈黙することが当たり前になっている人たちに、どんな言葉が届くのか。憲法の改悪や、戦争法案を阻止しようとする人たちは、しっかりと現状認識した上で働きかけていく必要があるでしょうね。
　安倍政権の報道介入に対しては、海外メディアが厳しく批判していますが、国民の側に立って権力を監視する本物のジャーナリズムの必要性を、いまほど痛感することはありません。
　私たち演劇人は２００３年のイラク戦争を機に「非戦を選ぶ演劇人の会」を結成し、７月には戦争法案をテーマにした１８回目のピースリーディングを開きます。今、日本がどういう岐路に立っているのか、多角的に検証できればと思います。
　聞き手　寺田忠生

　ながい・あい　１９５１年、東京都生まれ。「二兎社」主宰。日本劇作家協会前会長。ピースリーディング「明日、戦場に行く」は７月１５～１６日、東京・全労済ホール／スペース・ゼロ。
( ２０１５年０６月０４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

主張／自衛隊「後方支援」／「戦闘にならぬ」は通用しない

　「戦争法案」について日本共産党の志位和夫委員長が連続して行った国会質問が、メディアの報道やインターネットなどでかつてない反響を呼んでいます。その一つに、石川県の女性が志位氏の質問（５月２７日、衆院安保法制特別委員会）の一部を丹念に書き起こし、その転載(シェア)が異例の広がりをみせているフェイスブックの投稿があります。この投稿が再現したのは、志位氏が自衛隊の行う｢後方支援｣の本質を告発した場面です｡志位氏はこの日､「後方支援」は「戦闘にならない」「武力行使と一体ではない」という政府の立論を根本から突き崩しました。

「自己保存型」の矛盾
　「戦争法案」は、武力行使をしている米軍などに対し自衛隊が補給や輸送などの｢後方支援｣を行うことを定めています（重要影響事態法案、国際平和支援法案）。この中には、自衛隊の活動は「非戦闘地域」に限るという従来の「歯止め」をなくし、戦闘が発生する可能性のある地域（戦闘地域）でも「後方支援」をできるようにする重大な変更が盛り込まれています。志位氏の追及に、安倍晋三首相は、自衛隊が「戦闘地域」で相手方から攻撃される可能性を「１００％ないと申し上げたことはない｣と述べ､攻撃されれば武器を使用することも認めました。そうなれば戦闘になることは明白です。
　ところが、首相は戦闘になることをかたくなに認めず、自衛隊は「自己保存型の武器の使用しかできない」と弁明しました。政府はこれまで、自衛隊員の生命・身体を防護するための武器使用は「自己保存のための自然権的権利というべきもの」であり、憲法９条が禁じる「武力の行使」に当たらないとしてきました。首相の答弁はこの政府見解に基づくものです。
　こうした理屈は、実態上も、国際法上もまったく通用しません。
　志位氏は、「非戦闘地域」とされたイラク・サマワに派遣された自衛隊が対戦車弾や無反動砲などで重武装していたことを指摘し、「戦闘地域」にまで行けばさらに強力な武器を持っていくことにならざるを得ず、こうした武器を使って反撃することは戦闘以外の何物でもないと迫りました。
　しかも、外務省自身、志位氏に提出した文書で「国際法上、自己保存のための自然権的権利というべき武器の使用という特別な概念や定義があるわけではない」と答えています。国際法上は、「武力の行使」と「武器の使用」を分けた議論など存在しないのです。
　自衛隊の「後方支援」、国際的には「兵たん」と呼ばれる活動の本質も明らかになりました。
　政府は、「後方支援」は「現に戦闘行為が行われている場所｣(戦闘現場）では実施しないから米軍などの武力行使とは一体にならず、憲法上問題ないとしています。

世界と軍事の非常識
　しかし、志位氏が示した米海兵隊の教本は、「兵たんは戦闘と一体不可分」「全ての戦争行動の中心構成要素」と強調しています。戦時国際法（ジュネーブ条約追加議定書）上も攻撃の目標になります。武力行使と一体にならない「後方支援」などというのは、世界の非常識、軍事の非常識です。
　「戦争法案」は、武力の行使を禁止した憲法９条をじゅうりんする違憲立法です。廃案にする以外にないことは明瞭です。
( ２０１５年０６月０３日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

日中交流で未来開こう／９月に東京でつどい

　民間交流によって再び戦争をしない日中関係を築こうと、９月１１日から１３日に東京・明治大学を会場に「戦後７０年・日中関係の未来をひらくつどい」が開催されます。両国の民間交流を進めてきた団体や個人の有志が実行委員会を立ち上げ、このほど会見で発表しました。
　旧日本軍の人体実験を描いた小説『悪魔の飽食』の作者・森村誠一さんと、同作を合唱曲にした作曲家・池辺晋一郎さんとの対談、日本ペンクラブ会長で中国を舞台にした著作も多い浅田次郎さんの講演、ちばてつやさんらが敗戦の日を表現する「８月１５日の漫画展」についてのトークなどを予定しています。
　実行委員会事務局長の南典男さん（中国人戦後補償弁護団幹事長）に続き、代表呼びかけ人があいさつしました。姫田光義・中央大学名誉教授は、合唱団をつくり、日本の戦犯者が中国での罪を悔いる過程を歌で表現している活動に触れ、「隣国を敵視して日本の平和はあり得ない」と強調。俵義文・子どもと教科書全国ネット２１事務局長は、東アジアに共同の歴史認識をつくるために尽力したいと話しました。
　広渡清吾・元日本学術会議会長は、首脳・閣僚の定期協議や青年の交流を定めた仏独協力条約の意義を指摘し、安倍政権の戦争法案を批判。「そうした日中の条約を促すような市民の交流が大事だ」と話しました。浅井基文・元広島平和研究所所長は、「今ほど中国を正確に理解することが大切なときはない。この催しを理解のきっかけにしてほしい｣と訴えました｡
　同日、プレイベントとして毛里和子・早稲田大学名誉教授が、「２０１５年・日中関係の未来と現在について」と題して講演しました。
　代表呼びかけ人には東郷和彦、石川好氏らも名を連ねています。問い合わせはファクス０３（３３５４)９６５０､またはメール２０１５．ｍｉｒａｉ．ｈｉｒａｋｕ＠ｇｍａｉｌ．ｃｏｍで。
( ２０１５年０６月０３日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

「戦争法案」今言わなければ／立教大学教授浅井春夫さん／戦争と福祉両立しない

　戦争と福祉は対極にあって、戦争はもっとも非福祉的な行為です。安倍政権が海外で戦争する国づくりをねらう今、福祉関係者が声を上げなければならないと、「戦争と福祉をみんなで考える会」（ｈｔｔｐ：／／ｓｆｍｋ．ｓａｋｕｒａ．ｎｅ．ｊｐ／）を立ち上げました。
　福祉の理念を実現するためには、いのちの尊厳が守られることが前提です。暮らしの中に笑顔がある日常の営みを守り続けることが福祉の役割で、「福祉」存立の前提条件を崩壊させるのが戦争です。
社会保障は削減　戦後の出発点として福祉は、〝戦争の後始末〟を担いました。戦争孤児のための児童養護施設、戦争で夫を亡くした寡婦と子どものための母子生活支援施設、傷痍軍人のための身体障害者福祉施設などによって、戦争犠牲者のためのケアと救済の制度として再出発しました。
　海外で戦争する国づくりは、戦争と福祉の負の歴史を再び繰り返すことになります。
　安倍政権は戦争法案を成立させようとしていますが、こうした動きと表裏一体で、介護保険や医療制度などを改悪して、２０２０年までの毎年、３千億～５千億円もの社会保障費を削減することになっています。歴史を振り返っても国が戦争に向かって進むときは、社会保障費が削られて軍事に使われます。
　福祉の発展を阻害する戦争法案を断固として拒否します。

大砲につぎ込む
　「大砲かバターか」という言葉がありますが、戦争体制をすすめるために、安倍政権はいま、「大砲のために、質の悪いマーガリンで」という路線を進んでいると思います。
　「高品質のバターはお金持ちがお金を出して買いなさい、質の悪いマーガリンは貧しい人にも提供しましょう。国のお金は大砲につぎ込みますよ」と。オスプレイ１７機の購入に、３６００億円をつぎ込む予定です。
　こうした現実のもとで、福祉分野それぞれの課題を持ちより、思いや願いをつなげながら若い人たちとともに、戦争法案に反対する流れをつくっていきたい。
　戦後７０年を節目に、安倍首相が「安倍談話」を出すことを踏まえ、民衆側の「私の談話」をまとめ出版する企画をすすめています。
　民衆一人ひとりがそれぞれの「談話」を語りながら連携して、戦争法案反対の運動をすすめていく決意です。
　（聞き手・写真岩井亜紀）

　あさい・はるお　１９５１年、京都府生まれ。立教大学コミュニティ福祉学部教授。専門は児童福祉論、セクソロジー（人性学）。著書は『脱「子どもの貧困」への処方箋』、共著『戦争と福祉についてボクらが考えていること』など。
( ２０１５年０６月０２日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

第２次世界大戦終結７０年／人種差別団体を批判／極右に国をあげて反撃／ドイツ

　ドイツでは、ナチスからの解放７０年の５月、各地で二つの陣営のデモが対峙（たいじ）しました。昨年秋以来、全国で勢力を伸ばしてきた極右組織「西洋のイスラム化に反対する愛国的欧州人」（ペギーダ）のデモと、それに反対する対抗デモです。
　（ベルリン＝片岡正明　写真も）

　ベルリンでは１１日、それぞれが３００人ほどのデモを実施。シュツットガルトでは１８日、ペギーダのデモ隊３００人を対抗デモの３０００人が圧倒しました。

市民不安あおる
　２５日にはペギーダが、発祥の地ドレスデンで対抗デモを上回る２５００人を集めました。しかし一時はここで３万人を集めた勢いは失われています。
　ドイツでは昨年、主に東欧諸国からの移民が４３万人、中東・アフリカやアフガニスタンなどからの難民が２２万人と急増。ペギーダは〝移民・難民に仕事が奪われる〟と市民の不安をあおりました。
　「ペギーダのデモは、ドイツの経済・社会政策に不満を持つ人たちが政治的エリートに反発するものとして始まりました」―ドイツの極右・ネオナチ研究者、ベルリン自由大学のハヨ・フンケ名誉教授（７０）はいいます。
　「現実の政治を動かせない彼らはスケープゴート（身代わり）として、イスラム教徒を攻撃するのです。従来の極右や人種差別主義者が参加し、ペギーダは過激化しました。従来のネオナチのデモよりも幅広い人たちを集めているのは危険です」

全国で集会無数
　ペギーダに対し、全国で無数の対抗デモ・集会が行われ、「人種差別反対」「ナチスを許すな」と声をあげています。
　１１日のベルリンの対抗デモに参加したドリアンさん（２０）は、「人種差別、排外主義的な右翼思考は、憎しみを引き起こし、難民に対する犯罪につながりかねない。許すわけにはいきません」と語りました。
　ドイツの政治家もペギーダに、ナチにつながる端緒として厳しく対応しています。
　欧州議会のシュルツ議長（独社民党出身）は４月１２日、独東部テューリンゲン州のブーヘンワルト強制収容所の解放７０年記念で、「克服したとわれわれが思ってきた（ナチ時代の）人種差別主義、反ユダヤ主義、国粋主義、不寛容の悪魔が戻ってきた。われわれは（ナチ時代の）犠牲者に敬意を表し、悪魔とたたかう」と決意を表明しました。
　これまでもペギーダ批判を表明してきたメルケル独首相は、ナチス解放７０年のビデオ・メッセージで「移民の人を歴史から隔離するのではなく、ともに受容していくことが必要だ」と述べました。
　ナチス・ドイツ政権下でのレジスタンス研究家、ギュンター・ウェーナーさんは「ナチ解放７０年の今年だからこそ、ナチのような人種差別は許さないという市民的勇気が必要です」と述べます。
　前述のフンケ氏は「対抗デモは右翼ポピュリズムに対し、難民への対応を理性的に提示し、ペギーダを食い止めています。それはメディア、政府を動かし、ペギーダ批判に貢献している」
( ２０１５年０６月０１日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

【5月】

ちひろの〝子どもたち〟／戦後７０年、受け継がれる平和の思い／松本春野さん／俵万智さん

思い発信する大切さ学んだ／ちひろの孫、絵本作家松本春野さん
　ちひろは、私が生まれる前に亡くなりました。私は、ちひろ美術館で育ち、世界の絵本を見て絵本が好きになり、自分が一番好きなことを仕事にしました。
　ちひろは晩年、ベトナム戦争に抗議し、『戦火のなかの子どもたち』を描いています。この本で、絵本作家の先輩・ちひろから、自分の思いを責任をもって発信することの大切さを教えられました。
　かわいい子どもの絵が描きたい。そのために、子どもが幸せになれる社会をつくっていく。そういう精神が、ちひろにはあったと思う。命の大切さを一枚の絵で伝え、思想を表した。私も思いを発信する時、ちひろが頭をかすめます。

まつもと・はるの＝１９８４年生まれ。『モタさんの〝言葉〟』『ふくしまからきた子』『絵本おとうと』など

技術だけじゃない愛感じる／歌人俵万智さん
　親子３代のファンです｡母が､ちひろさんの絵が好きで、絵本をよく読んでくれました。母は整理好きなのに、ちひろさんの絵が表紙の雑誌『子どものしあわせ』は捨てられないと言っていました。
　私の『サラダ記念日』には、こんな歌もあります。
　二階から見る母の傘ぽっと赤　いわさきちひろの絵になっている
　ちひろさんの絵には、技術だけではない子どもへの愛情を感じます。自分が子どもを産んでからは、ちひろさんが赤ちゃんを、生後何カ月か、違いを描き分けていると納得しました。
　私の一番のお気に入りは『りゅうのめのなみだ』です。息子にも、いろいろ読んでやりました。すると息子は、絵本の人物としゃべるんです。竜に話しかけていましたね。
　『戦火のなかの子どもたち』も印象深く、子どもの表情に胸がしめつけられます。

たわら・まち＝１９６２年生まれ。８７年、第一歌集『サラダ記念日』がベストセラーに。翌年、現代歌人協会賞を受賞。近著に『旅の人、島の人』など
(２０１５年０５月３１日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

ちひろの〝子どもたち〟／戦後７０年、受け継がれる平和の思い／安曇野ちひろ美術館、特別企画展を開催中

　長野県の安曇野ちひろ美術館で、３部構成の戦後７０年特別企画「Ⅰ　ちひろ・非戦の誓い」「Ⅱ　戦争を描いた日本の絵本展」「Ⅲ　ちひろ美術館コレクション　世界の絵本画家から未来を生きる子どもたちへ」が開催中です。親子で戦争と平和に思いをはせる、よい機会になりそうです。
　金子徹記者

　かわいい赤ちゃんや子どもの絵で、多くの人たちに愛されている、いわさきちひろ（１９１８～７４年）。「Ⅰ　ちひろ・非戦の誓い」では、アメリカによるベトナム侵略への抗議が込められた、ちひろ晩年の代表作『戦火のなかの子どもたち』（７３年）の原画や不使用の絵、練り上げる過程がうかがえる試作本など約８０点を展示しています。

砕かれた希望
　会場では、ちひろの言葉をパネルで掲示。そのひとつは―。
　「青春時代のあの若々しい希望を何もかもうち砕いてしまう戦争体験があったことが、私の生き方を大きく方向づけているんだと思います。平和で、豊かで、美しく、可愛いものがほんとうに好きで、そういうものをこわしていこうとする力に限りない憤りを感じます」
　第Ⅱ部では、９１年以降に刊行された日本の絵本のなかから戦争を題材にした１２冊を選んで展示。長谷川義史さんや黒田征太郎さんらの、約７０点の絵本原画が並びます。
　第Ⅲ部は、平和への願いが込められた世界の絵本画家の原画３６点に、画家たちのメッセージも添えて展示しています。

共産党に入党
　ちひろは終戦後、疎開先の長野県で日本共産党の演説会に参加。「なんて本当のことをいうのだろう」と４６年に入党し、日本共産党宣伝芸術学校に入学のため、単身、上京しました。（松本善明著『妻ちひろの素顔』）
　ちひろは５０年、自分より七つ半年下の青年党員・松本善明さんと結婚。後に夫は弁護士となり、６７年には衆院議員に。多忙な２人は互いを尊重し、支えあいました。
　「夫がいて子どもがいて、私と主人の両方の母がいて、ごちゃごちゃのなかで私が胃の具合が悪くなって仕事をしていても、人間の感覚のバランスがとれているんです。そのなかで絵が生まれる｣｢大人というものはどんなに苦労が多くても、自分のほうから人を愛していける人間になることなんだと思います」（いわさきちひろ）
　没後７年、ちひろの絵が国会論戦でとりあげられたことも。自民党議員が教科書に、ちひろの絵が載っていることを問題視。当時の鈴木善幸首相は、ちひろの絵を見て「たいへん和やかな、非常にいい、明るい感じを受けます。さすがに文部大臣賞をもらっただけのことはある」と答弁しました。（『妻ちひろの素顔』）

戦後７０年特別企画
　７月１４日まで、安曇野ちひろ美術館　℡０２６１(６２)０７７２
　ちひろ美術館・東京では、内容を変えて同趣旨の展覧会「非戦７０年　ちひろ・平和への願い」を開催（８月５日～１０月２５日）℡０３(３９９５)０６１２
(２０１５年０５月３１日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦争法案ストップ／国民は戦争望まない／市民団体・共産党、各地で宣伝

３メートルの大看板設置／共産党高知地区委
　高知県の日本共産党高知地区委員会は、「戦争法案を止めてほしい」「憲法を守ってほしい」という地域の声を受けて２７日、戦争法案ストップの大看板の第１号を党事務所に設置しました。高さ３㍍もある２種類の看板で「若者を戦場へ送るな！」「マジで戦場のオレ、ありえない！」とアピールしています。
　すでに県内の南国、高吾（こうご）、幡多（はた）の各地区委員会や各支部、後援会から５０枚の注文があり、さらに、大きい看板２０枚、高さ１・８㍍の小さい看板１００枚が県内各地に設置される予定です。
　佐藤彰地区委員長は「戦争法案の正体を多くの人に知ってもらいたい。殺し殺される戦争へは誰も行きたくない。この看板から、戦争する国づくり反対の一点で共闘し、安倍政権のたくらみを打ち破る風を起こしたい」と語りました。

軍事には、理性と外交／春名参院比例候補が訴え／島根
　日本共産党の春名なおあき参院比例候補は２８日島根県入りし、ＪＲ大田市駅前で戦争法廃案を訴えました。
　春名氏は戦争法案について、志位和夫委員長の国会質問にもふれ「『後方支援』で、人道復興支援以上の武器をもって戦闘地域に行けば人を殺し、殺される事態が想定される」と指摘。イラク戦争当時、自衛隊派兵の実務を担った元内閣官房副長官補の「確実に死者が出る」との声を紹介しました。
　「国民を欺いて若者の血を流す、こんな道を絶対許すわけにはいかない」「軍事に対し、理性と外交、道理で解決するのが政治の役割。紛争があっても戦争にしない、ここに力を尽くすのが憲法９条をもつ日本政府の一番の仕事です」とのべ、廃案に力を合わせようと呼びかけました。
　市内の男性（８４）は「同級生が志願し、亡くなっている。戦争はいけん。なぜ（法案成立を）急ぐのか」と話しました。
　春名氏は大田市での県地方議員団会議であいさつ。夜は出雲市のトーク集会に出席しました。

北九州・戸畑革新懇／あらゆる形で世論の喚起を
　北九州市の戸畑革新懇話会は２８日、戦争法案を阻止しようと、戸畑区中本町のスーパー前で街頭宣伝を行いました。
　宣伝には８人が参加。「今こそ、力をあわせて戦争への道をストップさせよう」と訴えました。
　同革新懇は２２日に開いた会合で、戦争法案の廃案に向けて、のぼり旗の活用やポスターの張り出しなど、あらゆる形で世論喚起に取り組むことを決めました。６月２日には「戦争法案ストップ戸畑共同委員会」を結成して運動をさらに広げます。

長崎・共同センター／急いで決める政府おかしい
　憲法改悪阻止長崎県共同センターは２７日、戦争法案に反対する宣伝を長崎市でしました。
　１８人が参加。「殺し殺される戦争法案は許さない」と署名への協力を呼びかけました。
　署名した長崎市の男性（２７）は「国民が望んでいないことを急いで決めようとしている。おかしい」とのべました。女性（３７）は「戦後７０年で変えなくてもいい憲法解釈を何で変えてまで、新しい法律をつくらなければならないのか」と話しました。

広島・党県委／県内の大学で大反響を呼ぶ
　日本共産党広島県委員会が県内すべての大学で「若者を戦場に送るな！」と訴える約２週間の宣伝行動に、学生たちの大きな共感が寄せられています。
　２７日の比治山大学（広島市）の早朝宣伝では２人に１人がビラを受け取りました。２８日の広島市立大学（同）での対話アンケートでは、「平和のために何が必要か」の設問に、ほぼ全員が「武力に頼らない外交」を選択しました。
　党県青年学生対策委員会の田中奏（かな）事務局長は「対話すると、９割の学生が法案の中身を知りません。対話することが大事です」と言います。宣伝行動は２９日も、７カ所で計画しています。

高知・新婦人／戦争知る８０代「繰り返すな」
　新日本婦人の会高知県本部は２８日昼、高知市の商店街で「戦争法案に反対する」署名を呼びかけました。多くの高齢者が署名し、４０分で５５人分を集めました。
　８０代の女性は「戦争を知っている。二度と繰り返してはいけない」と署名。別の女性は「戦争を体験した親に『大変だった』と聞いた。戦争なんてとんでもない」と語りました。
　新婦人の小泉美恵さん（６３）は「多くの人は反対していますが、戦争法案はわからないと通り過ぎる人もいます。私たちの声を届ける活動を広げ、戦争法案の危険性を伝えていきたい｣と語りました｡
(２０１５年０５月２９日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

「ふじ学徒隊」描いた映画／戦後７０年でＤＶＤ化／沖縄

　太平洋戦争末期の沖縄戦で傷病兵の看護などに当たった女子学徒らの姿を描いた短編ドキュメンタリー映画「ふじ学徒隊」が、戦後７０年となるのを機にＤＶＤ化され、制作した「海燕社」が２８日、那覇市内で発表しました。
　会見に同席したふじ同窓会の新垣道子会長（８９）は「戦争を分からない子どもたちもいる。学徒隊のことを県外や国外の人にも広く知ってもらいたい」と語りました。
　ふじ学徒隊として動員されたのは、那覇市の私立積徳高等女学校の４年生２５人。地上戦が激化し、１９４５年６月に解散命令が出されましたが、捕虜になるより自決を強いたケースが多いなか、隊長が「生き残って親元に帰れ」と命じたとされます。戦死者は３人にとどまりました。
　野村岳也監督（８２）は「学徒たちの戦後は、なぜ救い出されたのかを問うことから始まった。一人ひとりの歴史にも思いをはせ、多くの人に繰り返し見てもらいたい」と話しました。
　ＤＶＤは６月２０日から各地の映画館のほか、インターネットなどで販売します。問い合わせ先＝０９８（８５０）８４８５。
( ２０１５年０５月２９日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

ルポ／沖縄の若者たち／下／見て、学んで、感じて

　もっと多くの人に基地のこと沖縄のことを知ってもらおうと、悩み行動している若者たち｡一人ひとりが､さまざまなきっかけで社会のことに関心を持ち、日々成長しながら新しい問題にも挑戦している姿が見えました。

同世代に関心広げたい
　「基地建設反対が県民の多数にもかかわらず、強行する安倍政権はおかしいと思う」。関西の大学に通う平良美乃さん（２１）は沖縄県浦添市出身。教育実習で沖縄に帰ってきていました。
　数年前から、原発など、社会のことについて声には出さないけれど、「何か変だな」と不安に感じていました。意識的に考えるようになったのは、辺野古への米軍基地建設が大きな問題に浮上してからです。
　「沖縄が大好きだし、基地問題を知ったときに『これは自分の問題だ』と強く思ったんです」。いまは沖縄の歴史や憲法、民主主義についても学んでいます。
　日本が戦争をする道に進んでいるのではないかと危惧する平良さん。「戦争を経験していない私たちが、どのように同世代に関心を持ってもらえるのか。そういう人たちに考えるきっかけをつくれたらいいな」

全国で気持ちひとつに
　選挙をきっかけに、気持ちを新たにした青年がいます。辺野古への見学ツアーを企画したり、キャンプ・シュワブゲート前での座り込みにも参加しているという吉居俊平さん（２２）です。
　名護市内にすむ大学４年生。福岡県出身で、５年前から沖縄で暮らしています。「高校生のときから、沖縄に米軍基地が集中していることは『おかしい』と思っていました」
　そんな思いで沖縄に来て数カ月がすぎたとき、米軍基地があることや、米軍機が大きな音を出して飛んでいくことに、「どこか慣れ始めている自分がいたかもしれない」といいます。
　「自分にとって大きなきっかけだった」というのは、昨年１月の名護市長選挙。そのエピソードを聞かせてくれました。
　「選挙権を持っているおとなたちが、基地のない平和な世界をつくる責任がある」
　この言葉は、選挙中に、友人が語ったものです。「この『おとな』には自分も入っている。自分たちが頑張れば、社会をより良くしていけるんだと感じました」
　沖縄はいま、辺野古への新基地建設を許さない「オール沖縄」で県民がひとつになっています。「この沖縄県民の思いを、県外で生まれた人間として、『オール日本』への思いに広げていきたい」といいます。
　戦後７０年。本土復帰から４３年。沖縄はずっと「平和で民主的な沖縄」をめざしてたたかってきました。
　普天間基地も見学したという、佐賀県から沖縄県民大会に参加していた女子高生（１６）は、「地元に帰ったら、沖縄で見て、学んで、感じたことを、必ずみんなに伝えます」と話します。
　県民大会であいさつした、翁長雄志知事の結びの言葉が強烈でした。「ウチナーンチュ、ウシェーティナイビランドー（沖縄の人をないがしろにするな）」
　先人たちの思いは確実に、次世代へ、全国へと広がっています。
　（おわり）
( ２０１５年０５月２９日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

「赤旗」読んで戦争法案阻止しよう／本質をズバリ／共同の新聞／多彩な識者

本質をズバリ／多角的追及に反響
　「『平和安全法制』なんてふざけている」「戦後最悪の法案だ。さっそく街頭宣伝で問題を訴えた」―安倍政権が今国会成立を狙う戦争法案のニュースや特集記事を読んだ読者の方から「何としても廃案を」の決意が次々寄せられています。
　「赤旗」は、政府・与党による戦争法案づくりの段階から「徹底批判！　戦争立法」と題しキャンペーンをはってきました。全国紙の一部が政府の言い分に立って法案解説するなか、「米国の起こすあらゆる戦争に自衛隊がいつでも、どこでも参戦・軍事支援する戦争法案がその正体だ」と多角的に告発。たとえば、武力行使をしている米軍などへ自衛隊が弾薬提供や発進準備中の戦闘機への給油まで軍事支援できるようにする問題を取り上げた連載には、国会関係者から「法案で『武力行使の一体化』がここまで変質しているとは思わなかった。法案の見方を変えざるをえなかった」との感想も寄せられています。
　弁護士、憲法学者の取材を通じ、戦争法案が、憲法９条破壊の戦後最悪の法案であることを鮮明にし、党派を超えた解釈・明文改憲反対の論陣をはっているのも「赤旗」。戦争法案の国会審議で安倍首相らが持ち出すごまかしも鋭く批判しています。
　５月２０日付の「いつでも　どこでも　米のどんな戦争にも参加　日本の若者の血を流す」の見開き特集は、「これでわかる戦争法案」のタイトルで学習用パンフレットとして発行されることになりました。

共同の新聞／広がりを継続的に
　日増しに高まる「戦争法案阻止」の声。国会周辺や全国各地でおこなわれる集会やデモ、抗議行動を継続的に報道して、国民的な共同とたたかいを呼びかけているのが、「しんぶん赤旗」です。２４日付は１面トップで、戦争法反対の世論と運動が広がっていることを報道。戦後最悪の法案を打ち砕く国民共同の新聞として役割を果たそうとしています。
　全国版・地方版に各種の行動計画を掲載。「戦争法案の審議入りに抗議する国会前行動を『赤旗』の告知記事で知って、奈良県から駆けつけた」という人もいます。審議入り当日、ＮＨＫは本会議の代表質問を放送しませんでした。「赤旗」は衆議院のホームページからネット中継されることを報道。読者から「『赤旗』に感謝です」のメールが寄せられました。
　国会周辺では、毎週木曜日の午後６時半から国会前行動が設定されているほか、６月１５日から２４日までの平日は連続座り込み行動が計画されています。６月１３日には「ＳＴＯＰ安倍政権！大集会」が東京都内でおこなわれます。
　若者たちも立ち上がっています。６月１４日に都内でおこなわれる若者憲法集会の成功に向け、全国で宣伝・対話行動がおこなわれています。｢赤旗｣は若者の声を取材して、「韓国の友人に『日本は徴兵制がなくていいな』といわれた。９条を変えたくない。戦争はイヤ」などの声を紹介｡｢『赤旗』を読むと元気になる」と、うれしい反響も編集部に届いています。

多彩な識者／思いの丈を紙面で
　「若い人たちが戦場に行かされる、殺し殺されるということを自分の問題として真剣に考えてほしい」「戦争するための法整備を進めることは、憲法９条形骸化を決定的なものにします」
　女優の高田敏江さん、イラク支援ボランティアの高遠菜穂子さんなど、各界の多彩な識者が戦争法案反対で思いの丈を語る「『戦争法案』　今言わなければ」が好評です。
　法案の構造的問題を明らかにした憲法学者の山内敏弘さんや青井未帆さん、憲法裁判をたたかってきた若手とベテランの弁護士・川口創さんと新井章さんなど、それぞれの立場から戦争法案とのたたかいを呼びかけています。これからも多彩な方に登場してもらう予定で、朝から法案反対の熱い思い、たたかう勇気をお届けします。

日曜版／党派を超えて続々登場

　国会審議が始まった「戦争法案」。危険な問題点を分かりやすく伝えるとともに、反対の一点で党派を超えた人が続々、登場します。３１日号では、問題点をズバリついた志位和夫委員長の代表質問を詳しく紹介するとともに、ジャーナリストの鳥越俊太郎さんなどが登場。これまでも、自民党千葉県連元会長の実川幸夫さんや民主党顧問の藤井裕久さんなどが反対の声を上げています。
　党首討論で大問題となった安倍首相の歴史認識問題。シリーズ「インタビュー　戦後７０年」では、美術家の奈良美智さんや元官房長官の武村正義さん、臨済宗相国寺派管長の有馬頼底さん、俳優の加藤剛さんなどが過去の戦争などについて語っています。
　毎号の「ひと」には、ＮＨＫ連続テレビ小説「まれ」で主演する女優の土屋太鳳さんなど話題の人が登場。シリーズ「この人に聞きたい」や同「私と介護」も好評です。

多彩な話題役立つ情報
　暮らしに役立つ情報も充実。行政が国民に知らせない〝お得情報〟をお届けする「お役立ちトク報」は、読者から「本当に助かった」などのハガキが寄せられています。
　政治や社会の焦点の問題から、料理や健康、暮らしのことまで読み応えある記事が満載です。
( ２０１５年０５月２８日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

女性週刊誌も戦争法案にノー

　「あなたの子供が〝アメリカの戦争〟に命を捨てる！」―。三大女性週刊誌の一つ『女性自身』（光文社）６月２日号がこうした大見出しで、戦争法案を批判する特集をしています。
　見出しで「『国民の命と生活を守る』ために集団的自衛権行使も、他国軍を地球規模で支援も」と法案の中身を述べ、「安倍首相が、ついに〝暗黒の扉〟を開いた」と指摘しています。
　記事では、野党の一部から戦争法案といわれるなど「国会は大荒れ必至の様相だ」と述べながら、政府がいう武力行使の「具体的な基準が明記されていない」と疑問を提示。
　識者からの「アーミテージ元国務副長官が、テレビインタビューで『日本の自衛隊が米国人のために命を懸けることを宣誓した』と発言している。これが今回の安保法制の本質」（森田実氏）、「米国はベトナム戦争で、散々懲りたはずなのに、数十年経過するとまた戦争をやる国。日本が他国との戦争に引きずりこまれない保証はない」（江川紹子氏）という声を紹介。
　「今からでも遅くはない。多くの女性が立ち上がれば、戦争法案も覆る可能性がある」（森田氏）の声をうけて「戦後７０年、私たちは今重大な岐路に立っている」と結んでいます。
( ２０１５年０５月２７日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

文化通信／「戦争いけない」／赤崎名城大教授

　青色発光ダイオード（ＬＥＤ）の開発者で、ノーベル物理学賞を受賞した赤崎勇・名城大教授（８６）は１５日、京都大学の名誉博士号授与後の記者会見で「どんな理由があっても戦争だけはしてはいけない」と発言しました。
　戦時中、特攻隊の基地があった鹿児島県知覧町（現・南九州市）出身の赤崎さんは、「戦後７０年という特別な年に、名誉ある賞（博士号）をいただいたのも何かの縁かな」とのべ､「学徒動員から鹿児島市内の家に帰ると、爆撃でやられていた。敗戦直前に（米軍から）銃撃を受けたこともある」と体験を語りました。
( ２０１５年０５月２７日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

第２次世界大戦終結７０年／ドイツ学校、過去の克服授業／下／犠牲者の碑を巡り体験聞く

　ベルリン北西部、テーゲル湖にあるシャルフェンベルク島ギムナジウム（中高一貫校）では、市内各地にあるナチスの犠牲者の碑を巡り、碑のいわれを調べ、発表する授業をしています。現代史の授業の一環です。

○趣旨調べ分かる
　昨年１１月に行った授業では、１０年生（日本の高校１年生に相当）がいくつかのグループに分かれて、１５の碑を訪ねました。
　障害者の安楽死を推進したナチの部局があった場所、欧州で殺されたユダヤ人の碑（ホロコースト・メモリアル）、同性愛者の碑、ナチスによって「劣等人種」と差別されたシンティ・ロマの碑、ナチスによる焚書（ふんしょ）の碑、レジスタンスの碑、ソ連軍の碑―。写真を撮り、資料を集め、碑がどういう趣旨で建てられたのか調べます。
　授業を受けたビンセント君(１５)は「抽象的な碑も多く、一見、何の記念碑なのかよく分からないものもあるのですが、調べていくと意味が分かってきます。ユダヤ人追放の列車の碑を調べたときは、ユダヤ人追放がこんなにむごくやられたのかと改めて驚きました」と述べます。
　調べた結果はクラスで発表します。小学生を招いて碑のいわれを説明する授業もあり、その時には生徒もさらに積極的になります。
　戦争当時同校の在校生だった先輩からも当時の様子を聞きました。ナチスによって左翼系やユダヤ人の生徒が追放されたこと、戦争の後半には連合軍の空爆がひどくなり、対空砲陣地をつくるために、学校が軍に接収されたこと―。生々しい話は、大いに生徒たちの関心を集めました。

○家族の話驚いた
　同校では１２年生になると、ナチ時代や第２次世界大戦中の家族の様子を聞き取りする歴史の授業があります。自分の家族、祖父母、曽祖父母から、当時をどう生きたのか、じかに質問します。
　歴史教師のダニエル・カウフマンさん(３３)は「孫が電話しても話したくないと電話を切る人もいますが、よく聞いてくれた、せっかくだから孫によく話したいという人もいます。祖父母から話を聞けない人は両親と話します」といいます。
　祖父がナチ親衛隊だった―。ユダヤ系の家族で迫害を受けていた―。ショッキングな事実が明かされることもあります。
　ベニー君(１６)は「おばあさんから空爆から逃げた経験や、ソ連軍が進駐してきて村で婦女暴行が多発したことなどを聞きました」と語りました。
　英語と歴史を教えるテイロ・ウェデマイアーさん(５９)はいいます。
　「今、生徒たちはスマホやパソコンからさまざまな情報を得ていますが、時に、ホロコーストを否定するようなビデオや、政治的意図でナチの罪を軽く見せようとするビデオにつながることがあります。だからこそ、正しい知識を興味を持って学ぶことが大事です」
　この授業を通じてたどり着いた思いを、ビンセント君はこう語ります。
　「ナチスのやったことについて、戦後生まれの僕たちに罪はないけれど、将来こういうことを二度と起こさない責任があります。そしてナチのような犯罪を繰り返さないことは、ドイツだけではなく、米国や日本、世界の人たちの責任でもあると思います」
　（ベルリン＝片岡正明　写真も）
　（おわり）
( ２０１５年０５月２６日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

第２次世界大戦終結７０年／ドイツ学校、過去の克服授業／上／生徒の手で「つまずきの石」

　ドイツではナチスの過去を学び克服するために学校でさまざまな授業が行われています。ベルリンの二つの学校を訪ね、その取り組みを２回にわたってリポートします。
　（ベルリン＝片岡正明）

　カチン、カチンとつちの音が響きます。１９日、ハンナ・アーレント・ギムナジウム（中高一貫校）の生徒によって名前がわかったユダヤ人犠牲者エリー・クノーラさんの「つまずきの石」が歩道に据えられました。

○「祖父母調べて」
　この日のために、イスラエルから訪れたナフション・クノーラさん（６２）は「エリーは祖父の兄にあたります。ナチの犠牲となり、失われていた家族の輪がこれで復活しました」と語りました。
　「つまずきの石」プロジェクトは、ナチ政権下で殺された人の名前、生年月日、死亡した年月日と場所を銅板に刻み、その人が生前に暮らしていた場所の前に設置するというもの。ドイツ各地の街の歩道に埋められた、１０㌢四方の銅板が「つまずきの石」です。
　ハンナ・アーレント学校の生徒たちは、ナチ犠牲者の生きた軌跡を探し当てる取り組みを進めてきました。この日の「石」は、生徒たちによって埋められた３０個目の「石」でした。
　授業の一環として「つまずきの石」プロジェクトに参加したきっかけは、２００３年に始まったイスラエルの学校の教師、生徒との交流でした。イスラエル側の歴史教師から、かつてドイツに住んでいた母方の祖父母について調べてほしいと頼まれたのです。以来、インターネットだけでなく、ベルリンやブランデンブルク州の公文書館を訪れ、六つの家族について時間をかけて調べてきました。
　歴史教師のハイディ・ゾーさん（６１）は、「一つの家族を調べるのに１年はかかります。例えば、ベルリンからナチの強制収容所に送られた一つの列車に乗っていたのは数千人です。数千人から関係のある名前を見つけることができるかどうか」と述べます。
　ワンゼービラ（ユダヤ人虐殺を決めたワンゼー会議で有名な建物）の公文書館に出かけ、一日がかりで資料を集めたことも。ドイツ公文書館職員の協力を得てオランダまで足を運び、そこのユダヤ人博物館で、依頼を受けていた犠牲者のカバンを発見。その中に入っていた本人自作の詩集と写真から家族の構成や当時の思いなど新たな事実が明らかになったこともありました。

○「私たちの責任」
　ゾーさんは「子どもたちは、調べる中で、誰がどの強制収容所で死に、誰が生き残り、自分たちが会ったイスラエル人の親になったかというような個別の体験を通じて、ナチスの全般的な残虐さ、その思想の危険さを理解することができます」と語ります。
　また同学校は、１０年生（日本の高校１年生）と１２年生（高校３年生）のときに、ドイツやポーランドなどの強制収容所も訪問。犠牲者とナチ犯罪者の危険性を示す資料や写真を集めて、展示会を開催しています。
　１９日の「つまずきの石」設置の授業に参加したマリアンさん（１６）は「教室の授業で学んではきましたが、実際に、犠牲者の家族に来てもらって、石を据えることで、ここで生きていた人のことが本当にあったんだと実感できます」と述べました。
　生徒の一人、エブロ・ドラクさん(１７)はいいます。
　「つまずきの石や強制収容所訪問など、情報がなければ知ることはなかった。ナチの犯罪の知識を持ち、伝えることは、私たちの責任だと思います」
　（つづく）
( ２０１５年０５月２５日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦争法案追い込もう／「いつもどこでも日米が軍事行動」／小森氏、法案を批判／和歌山で集会

　「憲法９条を守るわかやま県民の会」は２３日、「５月の風に　Ｗｅ　Ｌｏｖｅ　憲法」を和歌山市で開き３００人余が参加しました。
　「県民の会」の坂本文博氏は開会あいさつで「アメリカの戦争に切れ目なく参加する日米防衛新指針を実行に移す国内法の整備が今回の戦争法案だ」とのべ、法案阻止を訴えました。「９条の会・わかやま」の江川治邦氏（元和歌山ユネスコ協会事務局長）が連帯あいさつしました。
　講演した小森陽一氏（東京大学大学院教授、九条の会事務局長）は、戦争法案について「いつでも、どこでも、あらゆる軍事行動を自衛隊がアメリカといっしょにできるようにする法案だ」と批判。国際平和支援法について「ねらいは外国軍隊などを協力支援することで、いままでの時限法と違い『いつでも』できる恒久法にした」とのべ、重要影響事態安全確保法で「周辺事態」や「非戦闘地域」を削除し「どこでも」できるようにしたと指摘し、ＰＫＯ協力法や武力攻撃事態等対処法の改悪で先制攻撃など「あらゆる軍事行動」が可能になったと告発しました。
　小森氏は、戦後７０年の歴史や九条の会の運動をふりかえり、「いまここが正念場です」と世論を変える運動の展開を訴えました。
(２０１５年０５月２６日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

小さくても元気な町に／訓子府・本別の両町長報告／札幌でシンポ／北海道

　札幌市で２３日、訓子府（くんねっぷ）町の菊池一春町長、本別町の髙橋正夫町長（十勝町村会会長）を招いて「真の『地方再生』と地域の未来」を考えるシンポジウムが開かれました。ＮＰＯ法人北海道地域・自治体問題研究所の創立５周年を記念したもの。
　両町長は増田寛也元総務相らの「地方消滅」論を批判し「小さくても輝く自治体」について語りました。
　菊池町長は農業を柱にした産業振興と町づくりの取り組みを紹介し、「ＴＰＰが締結されると、農業生産額１２０億円の訓子府でＴＰＰの影響額は約３４億円で地方自治体の存亡にかかわる。（道は）カジノにお金を出す方針だが、賭博より基幹産業である農業にお金を出すのが当たり前だ」と強調しました。
　また、少子化に向き合い、臨時職員の保育士の正規雇用化や児童センター建設などで、子どもの数が増えてきたことを報告し、小さくても住民が生き生きしている自治体に学ぶ時だと述べました。
　髙橋町長は、地方活性化のために１８町村が『オール十勝』で各町の特性を生かしながら連携して、町づくりをすすめようと協議していることを紹介。
　「今、平和が危ないという問題がある。戦後７０年、平和であったからこそ元気な町づくりができた。本別町は大空襲を受けており、戦争を語り継ぐ町づくりをしている。『戦争で命を落とすことがあってはならん。でも、平和のためには体を張って頑張らなくてはだめだ』というのが親の教えだった。未来を担う子どもたちのためにも頑張っていきたい」と報告しました。
(２０１５年０５月２６日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

沖縄県民大会に３万５０００人／新基地ノー／決して屈しない／首相に強い憤り・翁長知事の訴え

　私たちは屈しない―。１７日、那覇市で「戦後７０年　止めよう辺野古新基地建設！沖縄県民大会」（主催・同実行委員会）が開かれ、３万５０００人（主催者発表）の参加者がゆるぎない意思を改めて示しました。
　藤川良太記者

　炎天下、会場の「沖縄セルラースタジアム那覇」は外野席まで参加者でいっぱい。「辺野古新基地ＮＯ」と書かれたメッセージボードがいっせいに掲げられると会場は海をイメージした大会カラーの「青」で染まりました。
　翁長雄志沖縄県知事のあいさつ(別項要旨)の一節一節に参加者は大きな拍手と声援でこたえ、激励しました。
　「島ぐるみ会議」共同代表の平良朝敬氏（かりゆしグループ最高経営責任者）、「辺野古基金」共同代表の呉屋守将氏（金秀グループ会長）、稲嶺進名護市長らが次々に登壇。「新基地建設をオールジャパンの力で食い止めよう」（呉屋氏）などと呼びかけました。
　映画監督のオリバー・ストーン氏がメッセージを寄せ、ジャーナリストの鳥越俊太郎氏は「県外からの気持ちを込め、辺野古新基地建設反対のメッセージを確認したい。今の安倍政権は民意をまったく顧みない独裁政権だ」と批判しました。
　「決して屈せず、新基地建設を断念させるまでたたかう」との決議を採択した大会。子ども２人を連れ夫と参加した八重瀬町の長浜和歌子さん（３１）は「沖縄は選挙で何度も民意を示しました。民主主義国家のはずなのにそれが無視され続けています。子どものためにも新基地を止めたい」と話しました。

首相に強い憤り／翁長知事の訴え
　私は県民の負託を受けた知事として、県の有するあらゆる手法を用いて辺野古に新基地は造らせない。この公約実現に全力で取り組んでいくことを改めて決意いたします。
　総理や官房長官との会談内容が注目され、本土の理解が深まったことに大変意を強くしています。しかし、沖縄の民意を伝えたのに安倍総理は日米首脳会談で辺野古への基地建設を発言しました。強い憤りを感じます。安倍総理は「日本を取り戻す」というが、そこに沖縄が入っているかと強く申し上げたい。「戦後レジームからの脱却」と言いますが、沖縄に関しては戦後レジームを死守している。沖縄基地（問題）の解決なくして日本を取り戻すことはできません。
　政府は普天間基地の危険性除去が原点だと言います。しかし、さらなる原点は普天間基地が戦後、米軍に強制接収されたことです。沖縄は自ら基地を提供したことは一度もありません。県民の土地を奪っておきながら、「辺野古が唯一の解決策」「嫌なら沖縄が代替案を出せ」。こんなことが許されるでしょうか。私はこれを日本の政治の堕落だと言っているのです。
　自由と人権、民主主義の価値観を自国民に保証できない国が世界の国々とその価値観を共有できるでしょうか。辺野古基地建設を阻止することが普天間基地（問題）を唯一解決する政策です。ウチナーンチュ、ウシェーティナイビランドー（沖縄をないがしろにしてはいけませんよ）。
(２０１５年０５月２４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

第２次世界大戦終結７０年／植民地支配の実態／台湾にみる／５／「歴史に向き合い、反省示せ」

　日本国内の一部に、〝日本は台湾に多くのいいことをした。台湾の人は日本統治時代をすばらしかったと思っており、日本に感謝している〟などの主張が根強くあります。

統治美化誤り
　これに対し、台湾の近現代史に詳しい台湾国立政治大学台湾史研究所の薛化元所長は「日本によるインフラ建設や台湾の人材育成は、台湾の戦後の経済発展に大きな貢献をしたのは事実だ」としながら、それだけを強調する見方を批判します。
　薛所長は「自ら植民地にされることを望む人民はいない。日本は台湾を経済的に搾取した。台湾人は抑圧され、差別的待遇を受けた。台湾人は当然、不満を持っている」と指摘。「簡単に『日本の植民地統治は良かった、台湾人は感謝している』というのは間違いだ」と強調しました。
　東アジアの近現代史の中で、台湾は翻弄（ほんろう）されてきました。日清戦争（１８９４～９５年）終結の下関条約で、清国は台湾を日本に割譲。台湾はいわば清国から捨てられました。
　５０年間の日本統治を経て、１９４５年１０月２５日に中国国民党政府の中華民国に復帰。多くの台湾の人々は祖国復帰を歓迎しました。
　しかし、期待は失望に変わります。薛所長は国民党政府の政策について、「台湾人への差別的待遇は残り、政治的権利も与えられなかった。しかも、就業状況や食料状況は悪化した。政府内の腐敗もひどく、台湾人は、祖国に戻っても何も変わらないどころか、むしろ悪くなったと感じた」と解説します。
　４７年２月に政府への抗議運動を武力弾圧した二二八事件が発生しました。
　台湾全土では、８７年まで約４０年間、戒厳令が敷かれ、「白色テロ」と呼ばれる反体制派への弾圧が続きました。この中で、抗日運動をたたかった人々も検挙・処刑されたといいます。
　「比較の問題で、国民党政府のひどさに対し、時がたつにつれ、台湾人は日本を懐かしく思うようになった」と薛所長は言います。

責任免れない
　その上で、「台湾人の日本に対する感情が比較的良いからといって、日本が植民地統治の歴史的責任から免れるわけではない」と指摘。日本政府と日本国民に対し、「日本の帝国主義の歴史の反省は、５０年間の台湾の植民地統治への反省を避けて通れない。台湾の植民地統治に対する日本の反省は不十分だと感じる。日本は植民地の歴史に向き合い、反省を態度で示し、問題を処理すべきだ。この点で台湾の人々は満足していない｣と訴えました｡
　（台北＝小林拓也）
　（おわり）

二二八事件
　１９４７年２月から３月に台湾で起きた、国民党政府への抗議運動に対する武力弾圧事件。２月２８日に台北で始まった抗議運動が台湾全土に拡大。蒋介石国民政府主席は３月８日、中国本土から軍を台湾に派遣し、無差別掃射などの虐殺を台湾全土で続けました。犠牲者は約２万人と推測されています。
( ２０１５年０５月１１日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

第２次世界大戦終結７０年／植民地支配の実態／台湾にみる／４／日本の侵略戦争に総動員

　「満州事変」（１９３１年）や日中全面戦争（３７年）で日本が侵略戦争に突き進む中、植民地である台湾も日本の戦争に巻き込まれていきました。台湾国立政治大学歴史学部の藍適斉助教授は「日本統治の最後の１０年間は、植民地統治の上に戦争が加わり、台湾人の生活にさらに大きな影響を与えた」と指摘します。

「皇民化政策」
　台湾人を戦争に向けた「国民総動員体制」に組み込むため、日本政府は台湾で「皇民化政策」を進めました。
　台湾総督府は各地に日本語講習所を設立し、日本語教育を進める一方、それ以外の言語を抑圧しました。姓名を日本式に変更させる「創氏改名」も推進しました。ただ、同じ日本の植民地だった朝鮮と違い、台湾では強制されませんでした。
　日本の国家神道を浸透させるため、台湾各地に神社を建設。台湾人を動員して参拝させました。一方で、台湾の伝統的な民間宗教を抑圧し、多くの廟（びょう）が取り壊されました。結婚式も神社で日本式に実施するよう奨励。家の中で、「天照大神」の札をまつるよう強要しました。
　４２年には台湾で「志願兵」制度を開始。４５年４月から全面的な徴兵制となりました。
　台湾人の志願兵は約２万人。さらに運搬や道路工事などに従事する軍夫、通訳、軍医、看護師など「軍属」も合わせると、戦争に参加した台湾人は２０万人以上に上ります。
　彼らは中国戦線や東南アジア各地、ラバウル、ソロモン諸島など南太平洋の島々にも送られました。そのうち３万人余りが戦死しました。

故郷でも冷遇
　戦後、やっとの思いで生き残り、戦地から故郷の台湾に戻った人たちにも悲劇が待っていました。日本の敗戦で、日本政府は台湾から撤収。５０年間の植民統治が終わり、国民党の中華民国が台湾を統治することになりました。
　戦争に参加した台湾人にとって、いままでの〝敵国〟が自分たちの政府になったのです。国民党政府は「日本に協力した敵」として彼らを冷遇しました。一方、日本政府は戦後、台湾人を補償対象から除外し、遺族年金や恩給などの支払いをしませんでした。
　藍助教授はこう強調します。「彼らは日本統治時代に成長し、戦争に従事し、戦後は歴史から忘れられた存在になった。日本統治の影響を最も強く受けた人々だ。日本政府は彼らに対する責任を負わなかった。日本社会は、まだ終わっていない問題として認識してほしい」
　（台北＝小林拓也　写真も）
　（つづく）
( ２０１５年０５月１０日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

読書のページ／小説『人間のしわざ』刊行／神よ、なぜ戦争を放っておく／作家青来有一さん

　長崎市在住で、土地に根差した作品を書いてきた芥川賞作家の青来有一さんが新著『人間のしわざ』を出しました。館長を務める長崎原爆資料館で、小説への思いを聞きました。
　金子徹記者

　新著は２０１２年に発表した「人間のしわざ」と、１３年に発表した「神のみわざ」の２編を収録。世界の紛争地帯で取材し、無数の死体を撮影してきた中年の戦場カメラマンを軸にした物語です。残虐な光景の数々に直面してきたことで心が不安定になったカメラマン。帰国時に、学生時代に気持ちを寄せていた女性と再会し、溺れるように関係を深めますが…。
　「冷戦が終結し、世界の紛争が終息に向かうのかと思ったら、終わらない。世界で戦争が続いている状況を、戦場カメラマンを通じてとらえようとしました」

法王の言葉
　印象深い書名は、１９８１年、ローマ法王ヨハネ・パウロ２世が長崎市を訪問した際の発言がもとになっています。法王は、集まった信者に「戦争は人間のしわざ」と語りました。
　「この言葉がずっとひっかかっていたのですが、ようやく意味が分かりました。神様は戦争を起こしたり原爆を落としたりしない、戦争は人間のしわざなのだということです。しかし、ではなぜ神様はそれを放っているのだろうという疑問が残った。そのひとつの答えとして、今回の小説を書きました」
　人間の蛮行に向き合う主人公。「書いていてつらく、ぬかるみのなかにいるようだった」とも。
　「虚構の人物を作り、自分に経験のないことに、なるべくリアリティーをもたせるため、インターネットなどで調べて書きました。このやり方はもう限界かと思った。本作の後は語り口を、等身大の自分を中心に変えました。自分にとっての転換点になった作品です」

わざと崩す
　今年でデビュー２０年。生まれ育った長崎市で、カトリック信者の殉教と原爆とを二つの大きなテーマとして小説を書いてきました。
　「もともと作家になろうというつもりはなく、市の職員として働きながら、２０代半ばからＳＦやファンタジーなどを書いていました。長崎の土地をはっきり出し、カトリックと原爆というテーマで自分に引き付けて書いたデビュー作『ジェロニモの十字架』で新人賞をいただいたので、〝これなら読んであげる〟と言われた気がして、結果として一貫してこのテーマで書いています」
　『爆心』（０６年）では、市井の人々の日常のなかに原爆の記憶がよみがえる様子を描き、高い評価を得ました。
　「『爆心』は完全なフィクションとして取り組みましたが、最近は、わざともたつく文体にしたり、リズムを崩したりして戦争の時の深い混乱のなかの意識を表そうとしています。従来の、起承転結のはっきりした小説とは違ったものに、いまは取り組んでいます」
　「戦後７０年がたち、戦争のリアリズムは薄れつつあります。日常生活では、世界で起きていることに関心をもたなくても生きていけるけれど、実際に戦争は世界でおこなわれていて実態はこういうものだと、触れ、考える機会は大切だと思います」
　被爆２世です。
　「長崎では７０年間、特別な時間が流れ、被爆者は苦しみを抱えてきました。被爆体験は、被爆者だけのものではありません。人間全体の問題にしていかなければ」

せいらい・ゆういち＝１９５８年長崎市生まれ。９５年、「ジェロニモの十字架」で文学界新人賞を受賞しデビュー。２００１年、「聖水」で芥川賞、０７年、『爆心』で伊藤整文学賞と谷崎潤一郎賞。筆名は「セーラームーン」とは無縁で、デビュー作の主人公と重ね合わせた名前
(２０１５年０５月２４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

インタビュー戦後７０年／元沖縄放送協会会長川平朝清さん（８７）／政府からの独立貫いて

沖縄放送界のパイオニア
　公共放送「沖縄放送協会（ＯＨＫ）」設立から、沖縄の本土復帰（１９７２年）にともなうＯＨＫ解散まで５年間、会長を務めた川平朝清さん（８７）。沖縄放送界のパイオニアです。沖縄への思い、放送のあり方について聞きました。
　小川浩記者

　ＯＨＫは６７年１０月に設立され、川平さんは、経営委員会から会長に任命されます。４０歳でした。放送を学ぶためのＧＡＲＩＯＡ（占領地救済政府基金）の奨学金でアメリカへ留学した経験や、民放の「琉球放送」で編成部長、報道制作部長、常務を歴任したキャリアを買われました。

反米より反米軍
　住民の要求で、日本政府が放送局をつくりましたが、運営母体をどういう形にするか問題になったときのことです。
　「琉球政府が融資する放送公社案が出ました。それでは､〝官営放送局〟になってしまうと思い、琉球政府の行政主席・松岡政保（せいほ）さんに公社ではなく、放送協会にして経営委員会をつくり、政府の介入を防ぐよう求め、松岡さんは受け入れてくれました。それに本土復帰後、スムーズにＮＨＫ沖縄局になるためにも公共放送がいいわけです」
　公共放送案を進言したのは、留学先で学んだアメリカの通信法が「行政府からの独立」を掲げていたからです。
　局内の自主規制の風潮を払しょくすることにも力を注ぎました。
　「米軍のＢ５２爆撃機が沖縄の基地からベトナム戦争へ出撃していたころ、『殺し屋Ｂ５２出撃』というニュース見出しを記者がつけたと、役員が私のところに駆けこんできました。私は自分たちから規制するべきではないとそのまま放送させました」
　ＯＨＫは、副会長はじめ編成、報道、技術分野の幹部や放送経験者の出向をＮＨＫから受け入れていました。「本土のＮＨＫから観察されている感覚はありましたが、琉球政府の宣伝機関にならないという思いはいつも持っていました」
　アメリカ留学では、放送の知識だけではなく、伴侶も得ました。
　「沖縄で妻は、米軍基地の中で教師をしていました。沖縄の反米軍感情は高まっていたものの、周囲の人たちは、アメリカ人女性との結婚に好意的でした。妻が街中を歩いても危険を感じることはありませんでした。沖縄人は、反米ではなく反米軍なんです」
　沖縄の辺野古への米軍基地建設に強い危機感を持っています。
　「辺野古新基地ができれば耐用年数は２００年といわれています。２００年も、自民党は、沖縄に基地を押し付けたままにしておくつもりです。志位委員長はじめ辺野古のことについて国会で取り上げている共産党の国会議員さんには感謝しています」

安保見直すべき
　現在住んでいる神奈川県にも米軍基地があります。
　「基地問題は、沖縄だけではない。安倍晋三首相が、『戦後レジーム（体制）からの脱却』と言った時、一瞬、喜んだ。日米安保条約というレジームを脱却するのかと思ったら、そうではなかった。米軍基地問題の根本にある日米安保条約は見直すべきです」
　ＯＨＫがＮＨＫに吸収合併され、７２年からＮＨＫ本局で経営主幹に。ＯＢとして、ＮＨＫの籾井勝人会長には、「放送法を一言一句きちんと読んだのでしょうか」と批判は痛烈です。
　「いい番組も作っていますから、いいスタッフはいるわけです。中にいるスタッフを激励して支えていくことは必要です」と後輩たちには温かです。

かびら・ちょうせい＝１９２７年８月、台湾台中市生まれ。４６年１２月、沖縄に帰国。琉球放送に入社。沖縄放送協会会長、ＮＨＫ役員を歴任。現在、昭和女子大学名誉理事。息子は３人。長男はジョン・カビラさん、次男は川平謙慈さん（在米）、三男は川平慈英さん
(２０１５年０５月２４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

「一字一句正しいのか」／首相補佐官がポツダム宣言〝否定〟

　礒崎陽輔首相補佐官（自民党参院議員）は２０日放送のＢＳ番組で、日本が受諾し戦後日本の始まりとなったポツダム宣言（１９４５年７月２６日）について、「一字一句正しいことが書いているかどうかは私はどうかと思う」「少し精査してみないと何とも言えないのではないか」と述べ、宣言を否定するような立場を示しました。
　２０日の党首討論で、日本共産党の志位和夫委員長に対し安倍晋三首相は、日本の過去の戦争を「世界征服」「侵略」と規定した「ポツダム宣言」について「私はまだつまびらかに読んでいない。論評は差し控えたい」と答え、戦後政治の原点の否定ともなる立場を示しました。礒崎氏の発言は、この首相答弁を受けたもの。

山下氏が批判
　同番組で討論した日本共産党の山下芳生書記局長は首相発言について、「読んでいないとなると、首相どころか政治家として務まるのか。ましてや、『戦後７０年談話』を出す資格があるのかと言わざるを得ない」と批判しました。
　ところが、礒崎氏は「ポツダム宣言を（日本が）全体として受諾しているのは明確な事実だ」としつつ、同宣言について「戦争していた相手の国が、その時はお互いに悪く言っていた」と居直りました。山下氏は、礒崎氏の発言に対し「一字一句とか細かい問題ではない。日本の行った戦争が間違った戦争かどうか、戦争の善悪（の問題）だ」と批判しました。（関連４面）
( ２０１５年０５月２２日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

第２次世界大戦終結７０年／仏の女性レジスタンス／下／歴史の忘却、美化許さず

　アンジェル・ベティニさんは戦後間もなく、共に「ビラの雨」を降らせたイブ・ベティニさんと結婚します。１９９０年代から、元レジスタンス（対独抵抗運動）活動家としての証言活動を開始。数年前に夫を亡くした後も、「平和を守るため」と、子どもたちに優しく語り続けています。

父の予見通り
　ベティニさんがファシズムへの危機感を抱いたのは、３０年代初頭。スペイン系移民だった父親の影響が大きかったといいます。
　スペインでは当時、後の独裁者フランコ将軍が勢力を拡大。人民戦線政府の共和国派と、ドイツ、イタリアなどファシズム陣営の支援を受けたフランコ派の反乱軍によるスペイン内戦（３６～３９年）が迫っていました。ベティニさんの父親は、日々スペインから入ってくるニュースに懸念を強めていました。
　「父はとても聡明な人で、いつも私に社会的公正のためにたたかう必要性を説いていたの。スペインでファシズムが台頭する中、『この先、世界的な戦争が始まる』と不安を語っていたわ。不幸にも、その予見はあたってしまった」
　ベティニさんはスペイン内戦勃発後、共和国派の支援活動をしていた共産主義青年同盟に加盟。レジスタンスから平和活動に至る第一歩を踏み出しました。子どもたちに向けた証言活動では、こうした積極的な取り組みの重要性を訴えます。
　「平和を乱す体制に対して、たたかい続けることを忘れてはいけません。受け入れがたいことは受け入れず、拒否することが大事です」

「記憶」を詩に
　同じ思いは、ナチスやビシー政権を美化、肯定する歴史修正主義にも向かいます。
　「過去に何が起きたかを子どもたちに伝えることが、私の義務だと思っています。歴史の忘却を認めてはいけません。その上で、いつも子どもたちにお願いしています。『今何が起きているのかをしっかり考え、行動してほしい。そして絶えず、平和に至る道を選び続けてほしい』と」
　２００４年、ある学校で証言をした際、ベティニさんは教員から「記憶」をテーマにした詩の作成を依頼されました。ベティニさんは、決して美化してはならない記憶を、その詩に書き込みました。
　「頭の中を駆け巡るいくつもの記憶／最も鮮明なのは、ユダヤ人の友人が移送された時のこと／ペタン政権下、フランス警察の手で／彼女たちはドイツに送られた／そして、誰一人帰ってこなかった」
　（トゥールーズ＝フランス南西部＝島崎桂）
　（おわり）
( ２０１５年０５月２２日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

第２次世界大戦終結７０年／仏の女性レジスタンス／上／少女が降らせた「ビラの雨」

　第２次世界大戦中、ナチス・ドイツに占領されたフランス―。ナチスからの解放を担ったのは、市民や労働者、共産主義者を中心としたレジスタンス（対独抵抗運動）でした。仏南西部トゥールーズに住むアンジェル・ベティニさん（９３）は、最初期のレジスタンス活動家の一人。当時の体験を聞きました。
　（トゥールーズ＝フランス南西部＝島崎桂　写真も）

　フランスは１９３９年９月、ドイツによるポーランド侵攻を理由に対独参戦を決めますが、翌４０年６月１４日、パリが陥落します。独仏両国は休戦協定を結び、フランスではペタン元帥を国家主席とする対ナチス協力政権「ビシー政権」が誕生。ペタンは同１０月、新政権の宣伝のため、各地での遊説を開始します。ベティニさんが１８歳の時でした。

逮捕覚悟して
　「ペタンが来る」の知らせを受け、ベティニさんら３人の共産主義青年同盟員は、「反ペタン」のビラを作成し、ペタンの隊列にふりまく計画を立てます。当時、共産党は非合法で、青年同盟も非合法状態、彼らはひそかに会合を重ねました。
　「逮捕は覚悟していました。でも、恐怖心はなかったの。私たちには平和への理想があったし、何よりも、ナチスと妥協したペタンが許せなかったから」
　４０年１１月５日、ペタンの隊列がトゥールーズ中心部のアルザス・ロレーヌ通りに差し掛かった時、通り沿いの建物の屋上から数百枚の反政府ビラが降り注ぎました。ビラには「若者は裏切り者ペタンを認めない」の文字。翌日付の各紙には「ペタン元帥に若者からの手紙」などの見出しが躍りました。
　「まだ『レジスタンス』という言葉が生まれる前の出来事よ」―わずか３人の少年少女による「ビラの雨」は、後にナチスを打倒し、フランスを解放に導くレジスタンスの「反撃の狼煙（のろし）」となりました。
　しかしその３週間後、ベティニさんらは逮捕され、４年間にわたる強制収容所での生活が始まります。ベティニさんは、トゥールーズで拘束された最初で最年少のレジスタンスでした。計４カ所の収容所を転々とする中、「人生で最も耐え難い出来事」が起こります。
　「４２年、ビシー政権は、国内で収容されていたユダヤ人のドイツへの移送を決めました。私がいた収容所では、移送を阻止するため、多くの女性が素手で看守に立ち向かったわ。でも、阻止することはできなかった。私たちにできたのは、（ビシー政権が嫌っていた仏国歌）『ラ・マルセイエーズ』を歌いながら、移送を見送ることだけ。移送された女性は、誰一人として戻ってこなかった」

経験語り継ぐ
　この痛苦の経験が、自らの体験や平和の尊さを未来を担う若者に語り継ごうという、ベティニさんの決意となっています。
　２０１０年には、証言活動やレジスタンスとしての功績が認められ、フランスの最高勲章、レジオン・ドヌール勲章を受章。０３年には、彼女のたたかいを描いた舞台も制作されました。
　そのなかで主役の女性が歌います。
　「私はアンジェル、１８歳／雪のように白い肌の下、血のように赤い怒りを秘めていた／そんな私は体制が望まない危険分子／収容所の有刺鉄線が、私の翼を傷つける」
　（つづく）

アンジェル・ベティニさんの略歴
１９２２年　　　スペイン系移民の家庭に誕生
１９３６（１４歳）靴職人の見習いとして働き始める
１９３７（１５歳）共産主義青年同盟に加盟
１９４０（１８歳）ペタンの隊列に「ビラの雨」を降らせる
１９４４（２２歳）強制収容所から解放
１９４５（２３歳）イブ・ベティニさんと結婚
１９９０年代　　元レジスタンスとして、証言活動を開始
２０１０（８８歳）レジオン・ドヌール勲章を受章
( ２０１５年０５月２１日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

日本の戦争を「間違った戦争」とさえ言えぬ首相／戦争法案を提出する資格なし／志位委員長の発言／党首討論

　日本共産党の志位和夫委員長が２０日に行った安倍晋三首相との党首討論は次のとおりです。

志位・過去の日本の戦争は「間違った戦争」との認識はあるか／首相・（答弁できず）
　志位　今年は、戦後７０年です。この節目の年にあたって、日本が、そして総理自身が、どういう基本姿勢をとるかは、たいへん重大な問題であります。
　戦後５０年の「村山談話」では、「わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩ん（だ）」と述べ、過去の日本の戦争に対して「間違った戦争」という認識を明らかにしております。
　総理に端的にうかがいます。過去の日本の戦争は「間違った戦争」という認識はありますか。
　ことは日本自身が行った戦争の善悪の判断の問題です。歴史の研究の話ではありません。日本の平和と安全に責任を持つ政治家ならば、当然判断しなければならない問題です。「間違った戦争」という認識はありますか。端的にお答えください。
　首相　今年は、戦後７０年の節目の年であります。７０年前、戦争は終結をしました。しかし、さきの大戦において、多くの日本人の命は失われたわけであります。同時に、アジアの多くの人々が戦争の惨禍に苦しんだ。日本はその後の歩みのなかで、まさに塗炭の苦しみを味わったといってもいいと思います。
　戦争の惨禍を二度と繰り返してはならない。われわれはこの不戦の誓いを心に刻み、戦後７０年間、平和国家としての歩みを進めてきたわけであり、その思いにまったく変わりはないわけでございます。そして、だからこそ、地域や世界の繁栄や平和に貢献をしなければならないと、こう決意をしているわけでございます。
　当然、また、「村山談話」、あるいは「小泉談話」、節目節目に出されているこの政府の談話を、私たちは全体として受け継いでいくと、再三再四申し上げてきたとおりでございます。（議場がざわめく）
　志位　私が聞いているのは、何も難しい問題じゃないんです。過去の日本の戦争が、「間違った戦争」か、「正しい戦争」か、その善悪の判断を聞いたんですが、まったくお答えがありませんでした。

志位・「ポツダム宣言」の認識を認めないのか／首相・つまびらかに読んでいないので論評は差し控えたい
　志位　この問題は、すでに７０年前に歴史が決着をつけております。
　戦後の日本は、１９４５年８月、「ポツダム宣言」を受諾して始まりました。「ポツダム宣言」では、日本の戦争についての認識を二つの項目で明らかにしております。
　一つは、第６項で、「日本国国民ヲ欺瞞シ之ヲシテ世界征服ノ挙ニ出ヅルノ過誤」を犯した勢力を永久に取り除くと述べております。日本の戦争について、「世界征服」のための戦争だったと、明瞭に判定しております。日本がドイツと組んで、アジアとヨーロッパで「世界征服」の戦争に乗り出したことへの厳しい批判であります。
　いま一つ、「ポツダム宣言」は第８項で、「『カイロ』宣言ノ条項ハ履行セラルベク」と述べています。
　「カイロ宣言」とは、１９４３年、米英中３国によって発せられた対日戦争の目的を述べた宣言でありますが、そこでは「三大同盟国は、日本国の侵略を制止し罰するため、今次の戦争を行っている」と、日本の戦争について「侵略」と明瞭に規定するとともに、日本が「暴力と強欲」によって奪った地域の返還を求めています。
　こうして「ポツダム宣言」は、日本の戦争について、第６項と第８項の二つの項で、「間違った戦争」だという認識を明確に示しております。
　総理におたずねします。総理は、「ポツダム宣言」のこの認識をお認めにならないのですか。端的にお答えください。
　首相　この「ポツダム宣言」をですね、われわれは受諾をし、そして敗戦となったわけでございます。そしていま、えー、私もつまびらかに承知をしているわけでございませんが、「ポツダム宣言」のなかにあった連合国側の理解、たとえば日本が世界征服をたくらんでいたということ等も、いまご紹介になられました。
　私はまだ、その部分をつまびらかに読んでおりませんので、承知はしておりませんから（議場がざわめく）、いまここで直ちにそれに対して論評することは差し控えたいと思いますが、いずれにせよですね、いずれにせよ、まさにさきの大戦の痛切な反省によって今日の歩みがあるわけでありまして、われわれはそのことは忘れてはならないと、このように思っております。
　志位　私が聞いたのは、「ポツダム宣言」の認識を認めるのか、認めないのかです。はっきりお答えください。
　首相　いま申し上げましたようにですね、まさに「ポツダム宣言」を私たちは受け入れて、これがまさに戦争を終結させる道であったということであります。この、われわれは受け入れることによって、終戦を迎え、そして、まさに日本は平和国家としての道をその後、歩き始めることになったということではないかと思います。

志位・日本の戦争の善悪の区別さえつかぬ首相に、米国の戦争の善悪の判断ができるわけがない
　志位　私は、「ポツダム宣言」が認定している「間違った戦争」という認識を認めないのかと聞いたんですが、認めるとおっしゃらない。これは非常に重大な発言であります。
　戦後の国際秩序というのは、日独伊３国の戦争は侵略戦争だったという判定の上に成り立っております。ところが総理はですね、「侵略戦争」はおろか、「間違った戦争」だともお認めにならない。
　総理がいま進めようとしている集団的自衛権の行使とは、日本に対する武力攻撃がなくても、アメリカが世界のどこであれ、戦争に乗り出したさいに、その戦争に自衛隊を参戦させるというものであります。しかし、米国の戦争の善悪の判断が、総理にできますか。日本が過去にやった自らの戦争の善悪の判断もできない総理に、米国の戦争の善悪の判断が、できるわけないじゃないですか。（「そうだ」の声）
　戦争の善悪の判断ができない、善悪の区別がつかない、そういう総理が、日本を「海外で戦争する国」につくり変える戦争法案を出す資格はありません。撤回を強く求めて終わります。（大きな拍手）

ポツダム宣言から
　六、吾等ハ無責任ナル軍国主義カ世界ヨリ駆逐セラルルニ至ル迄ハ平和、安全及正義ノ新秩序カ生シ得サルコトヲ主張スルモノナルヲ以テ日本国国民ヲ欺瞞シ之ヲシテ世界征服ノ挙ニ出ツルノ過誤ヲ犯サシメタル者ノ権力及勢力ハ永久ニ除去セラレサルヘカラス
　八、「カイロ」宣言ノ条項ハ履行セラルヘク又日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国並ニ吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルヘシ

「カイロ宣言」（１９４３年１２月１日）から
　「三大同盟国ハ日本国ノ侵略ヲ制止シ且之ヲ罰スル為今次ノ戦争ヲ為シツツアルモノナリ右同盟国ハ自国ノ為ニ何等ノ利得ヲモ欲求スルモノニ非ス又領土拡張ノ何等ノ念ヲモ有スルモノニ非ス」
　「日本国ハ又暴力及貪慾ニ依リ日本国ノ略取シタル他ノ一切ノ地域ヨリ駆逐セラルヘシ」
( ２０１５年０５月２１日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

２０ 水曜随想／参院議員仁比そうへい／「強行するな」の声広く

　戦争放棄をうたう憲法９条のもと、国民投票による憲法改正さえ行わずに、どうして日本を「海外で武力を行使する国」に変えられるというのか。どうして日米安保条約を、防衛協力指針改定の政府合意だけで、平時から戦時まで切れ目ない世界の本格的軍事同盟に一変できるというのか―安倍内閣による戦争法案の国会提出強行は、それ自体が戦後最悪の憲法破壊です。
　同時にこの立憲主義を踏みにじる解釈・立法改憲の暴走は、「時代に最もそぐわないのは憲法９条」と唱えた第１次安倍政権以来、憲法改悪を阻んできた国民大多数の反対を前にした〝焦り〟にほかなりません。そして安倍総理がいくら「専守防衛は変わらない」「平和国家としての歩みは変わらない」と繰り返しても、平和憲法との根本矛盾は言い逃れようもないのです。
　これからは「戦闘地域」にまで自衛隊を派兵し「武器・弾薬の提供」もするのだといいますが、「アフガン・イラクのとき、憲法９条が明文で禁じる武力行使と一体になるから『できない』と言ってきたことが、なぜできるというのか」と迫るわが党に、安倍政権は「『支援の内容は問わない』と安倍内閣として判断したからだ」と開き直りました。
　辺野古基地建設の強行で壊されている大切なサンゴ礁を調査するために作業を一時中止せよとの沖縄県知事の権限に基づく命令をこともあろうか停止したとき、「停止の根拠だという行政不服審査法は、国の権力の乱用で国民の権利が侵されているとき、国民の側からの申し立てを認めるもの。それを民意を踏みにじる強権手段にするなどもってのほかではないか」との私の質問に､総理は｢国も一私人として不服申し立てできると考えます」と答えて自民党席からも失笑が広がりました。
　安倍政権が「夏までに」と強行すればするほど、その独断ぶりは国民に広く知られることになるでしょう。今こそ立つとき。多数を占める「反対」「今国会で強行すべきでない」の声を５月、６月、７月と大きく広げ圧倒的世論で安倍政権を立ち往生させましょう。戦後７０年、被爆７０年の夏を胸を張って迎えようではありませんか。
(２０１５年０５月２０日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

〝辺野古の米軍新基地建設反対〟／沖縄県民大会に連帯／愛知で集会・パレード

　「辺野古の米軍新基地建設反対」「『戦争法案』を阻止しよう」―。１７日、名古屋市中区の繁華街に市民の声が響きわたりました。「戦後７０年、止めよう辺野古新基地建設！　沖縄県民大会」に連帯して開かれた「とめよう！辺野古の新基地建設　美ら海を守ろう５・１７あいち集会」です。あいち沖縄会議や命どぅ宝あいちなど７団体が呼びかけたもの。
　辺野古の青い海をイメージした青色のバンダナやスカーフ、Ｔシャツを着た２００人が参加しました。
　司会をした沖縄県の伊江島出身の小山初子さんは「戦後７０年。沖縄は日米両政府から基地を押し付けられてきた。沖縄と共同して『人殺しのための基地はいらない』の声を愛知からあげよう」と訴えました。
　リレートークでは、辺野古基地建設反対の座り込み行動に参加してきた瀬戸市に住む山田秀子さんが「故郷の沖縄から基地をなくすため何回も辺野古に行っている。安倍政権の『戦争法案』など『戦争する国づくり』の動きの中、基地問題は日本全体の問題。基地をなくす運動を広げよう」と話しました。
　「『オール沖縄』の声に共鳴して連帯を深め、辺野古新基地建設反対の声を大きくしていこう」の集会アピールを採択。集会後、エイサーの太鼓を鳴らしながらパレードし、沿道の商店や買い物客らに「辺野古新基地建設反対」「安倍政権の暴走を止めよう」とアピールしました。
(２０１５年０５月２０日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

第２次世界大戦終結７０年／ナチスからの解放、今ドイツは／レジスタンス研究家ギュンター・ウェーナーさん

独裁に抗した人々／生きざま伝えたい
　ドイツでナチスが支配した１９３３～４５年の１２年間には、さまざまな形で抵抗した人たちがいました。ベルリンで独裁とたたかったレジスタンスの人たちについて研究し、２００２年に活動家の人名事典を出したギュンター・ウェーナーさん（８２）に聞きました。
　（ベルリン＝片岡正明）

　ナチスがゲシュタポ（秘密国家警察）などを通じて、レジスタンスの活動家について集めた資料は膨大です。今も新しい事実が次々に出てきます。このナチ独裁に抵抗した人たちの思いを次の世代に伝えたい。そういう思いからずっと研究を続けてきました。
　最近、資料を見つけまとめつつあるのは、これまでほとんど知られていなかった「社会労働党」という小さな政党グループについてです。ゲシュタポの資料の中から偶然みつけました。
　この党は３３年にヒトラーが権力掌握をすると偽の解散宣言を出し、１４日後に活動を再開しました。３０カ所以上で３６年まで活動し、その後は多くの活動家がスペイン内戦（３６年７月～３９年３月）に参加しました。

○青年の抵抗
　私が初めて研究に取り組んだレジスタンス活動家は、１３年生まれのハインツ･カペレ氏でした｡青年の抵抗組織をつくった人物です。３８年にベルリン・オリンピック(３６年)でのヒトラーの演説がいかにウソで満ちているか、戦争が近づく危険性を訴えたビラを１万２０００枚つくり、工場や電車で配布しました。印刷工場に働く仲間の助けを得て､手書きでなく､印刷したビラであったことがナチスを怒らせました。
　本格的な武器を持ち、反抗しようとしていたグループもあります。「赤いオーケストラ」とナチスから名づけられたグループには、ラジオ局で働く女性や空軍大佐もいて、ドイツ軍の輸送計画などをソ連軍に伝えました。４１年にドイツ軍がソ連を攻撃したときには、どこが攻撃されるかも事前に伝えていました。７０余りの企業に抵抗組織を持ち、２台の戦車まで準備していました。
　もちろん、キリスト教徒や普通の市民のレジスタンスもたくさんあります。軍需工場で働いていた人の中には、銃弾工場でわざと酸を多めに入れて、使い物にならないようにしたり、４２年に出るはずだった新しい機関銃の開発を遅らせて４４年まで引きのばしたりした人たちがいました。

○人口の２％
　当時のドイツの人口は８０００万人くらいですが、そのうち２％がレジスタンスに加わっていたといわれます。大都市ではもっと多く、ベルリンでは名前がわかっているだけで、約２万人が参加しました。そのうち約７０００人が処刑されました。
　ナチスの親衛隊（ＳＳ）とゲシュタポはレジスタンスを恐れ、巧妙な監視体制をとり、活動家を次々と逮捕、多いときには１カ月で３０００人に上りました。
　でもどうして、そんな危険にもかかわらず、レジスタンスは続いたのでしょう。それは彼らが、ナチス迫害の残忍さと思想の危険性に気づいていたからです。
　レジスタンスの記憶を若い世代に伝え、民主主義を信じて力を合わせようと訴えることがわれわれの義務だと思います。
( ２０１５年０５月１９日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

第２次世界大戦終結７０年／ナチスからの解放、今ドイツは／過去と向き合う博物館

　第２次世界大戦の終結とナチスからの解放７０年の今年、ベルリンのドイツ歴史博物館で、「敗戦、解放、新たな始まり」と題する展示会が開かれています。１０月２５日までの日程。中高生のグループなどが大勢、展示会を訪れています。
　（ベルリン＝片岡正明　写真も）

○写真と数字
　展示場に入ると、まず目に入るのがさまざまな写真です。解放された強制収容所の収容者の喜びの顔、ナチに強要され兵士となった子どもの困惑した顔、空爆で破壊され尽くしたニュルンベルクの街など。そして、１１カ国の戦争の終わりを告げるラジオニュースの声が耳に入ります。
　次の展示では、数字で戦争の規模が示されます。欧州での戦争死亡者４５００万人、強制収容所から解放されたユダヤ人４０万人、強制労働から解放された人７００万人、故郷を失った人４０００万人―。１２カ国、３６人の戦中から戦後の人生をたどり、戦争がどう影を落とし、社会がどう変わっていったかを浮き彫りにしています。
　展示責任者のマヤ・ペアーズさんは、「戦後７０年で戦争を体験した人が本当に少なくなる中、ドイツだけでなく、ヨーロッパの各国で、戦争とその後がどうだったかを示したい」と言います。

○解放と戦後
　ドイツの展示では、精神障害者の姉をナチに殺された女性が戦後、殺害の事実を国に調べさせた過程を示す資料や、民間人殺害の犯罪に加担しながら沈黙を守りブレーメン州の警察長官になった人物などが、資料とともに紹介されます。
　オランダのユダヤ人家族は、ベルゲン・ベルゼン強制収容所に収容されていましたが、ソ連軍が迫る中、すし詰めの列車で移動させられました。両親は列車の中で、死亡しましたが、２人の娘は生き残りました。
　ソ連の展示では、ドイツ軍が、ソ連軍が戻った時に利用させないように破壊しつくした町の写真や、ドイツで捕虜になり、敵の協力者として今度はソ連の収容所に送られたソ連軍兵士の資料が示されています。
　フランスの展示では、ナチかいらい政権でのナチ協力とそれに抵抗するレジスタンス、戦後、いかに主権を回復したかが示されています。
　展示会を見に来たベルリンの労働者カーチャさん（３０）は、「ある意味で戦後も戦争が続いていたということがよく分かります」。
　英国から来た大学生のエミリーさん（１９）は、「欧州の多くの国で戦後に起きたことはあまり知らなかった。一つひとつの国が、どうなっていったかという歴史が展示してあるのがいい」と感想を話しました。
　展示会の期間中、歴史家の講演会や討論会、当時を生きた体験者の証言などの催しも企画されています。
　ペアーズさんは、「二度とナチのような犯罪を繰り返さないということは、一つの国だけで行動しないということでもあります。周りの国のいろいろな視点からも歴史を見ることが大事です」と語ります。
　「次々と戦争体験者が亡くなる中、いかに過去を伝えるかは大きな課題です。過去の記憶に対する働きかけ、若い世代に伝えていくことは、私たち博物館の義務でもあります」
( ２０１５年０５月１８日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

首相訪米報告に対する赤嶺議員の質問／衆院本会議

　日本共産党の赤嶺政賢議員が１５日の衆院本会議で行った安倍晋三首相訪米報告に対する質問（要旨）は以下の通りです。

　政府が昨日、閣議決定した「平和安全法制」は、アメリカが世界で行う戦争に際して、いつでもどこでもどんな戦争でも、自衛隊が参戦するためのもので、憲法を蹂躙（じゅうりん）する「戦争法案」です。撤回すべきです。

国民主権を否定
　総理は、米議会演説で「この夏までに成就させる」と述べました。閣議決定も国会提出もしていない法案の成立を米議会で誓約したのです。国民主権と議会制民主主義を否定するものです。
　総理は、昨日の記者会見で「もう二度と戦争の惨禍を繰り返してはならない。この不戦の誓いを将来にわたって守り続けていく」と述べました。村山談話以降、歴代政府が示してきた、「植民地支配と侵略」がアジア諸国の人々に多大の損害と苦痛を与えたことへの言及はありません。
　戦後の日本は、侵略戦争への反省の上に、政府の行為によって再び戦争の惨禍を起こさないことを世界に誓い、再出発しました。戦争放棄、戦力不保持、交戦権否認を憲法９条に明記し、徹底した非軍事・平和主義を定めたのです。「同盟の抑止力・対処力を強化する」ことは、これに真っ向から反するものです。

地球規模に拡大
　総理は、米議会で「戦後世界の平和と安全は、アメリカのリーダーシップなくしてありえなかった」と述べました。ベトナム戦争やイラク戦争をはじめ、世界の紛争に軍事介入し、国連憲章に基づく平和秩序を揺るがしてきたのが、アメリカのリーダーシップです。歴代政府は、米軍に基地を提供し自衛隊を海外に派兵し、戦争に協力・加担してきました。
　憲法９条がある下で自衛隊が創設されたのは、日本の再軍備を求めるアメリカの要求があったからです。その後の自衛隊の育成・増強は、米軍の任務を肩代わりし補完する形で進められたのです。
　歴代政府は、自衛隊の違憲性を言いつくろうために、自衛のための必要最小限度の実力組織は憲法に違反しないと弁明してきました。ところが、１９９０年代以降、アメリカの新たな要求で、ペルシャ湾への掃海艇派遣に続き、インド洋でアフガニスタンへの空爆を行う米軍艦船への給油支援、戦地イラクで軍事掃討作戦を行う武装米兵の輸送と、無法な戦争と占領に加担しました。これが、戦後の日米軍事同盟の歴史です。
　今回の日米新ガイドラインは、日米軍事同盟を「日本防衛」はおろか、従来の「周辺事態」を大きく踏み越え、文字通り地球規模に拡大するものです。平時から有事に至るあらゆる段階で、日米が政策面・運用面での調整を行い、共同計画を策定するとしています。現行安保条約の内容を大きく踏み越える軍事協力の拡大をなぜ政府が勝手に取り決めることができるのか。宇宙・サイバー空間、武器輸出での日米協力まで盛り込んだことも、日米安保の重大な拡大です。
　政府は、米軍をはじめとする多国籍軍支援の恒久法をつくろうとしています。「戦闘地域」での軍事支援、治安維持活動、機雷掃海などの海外での武力行使に公然と踏み込み、従来の憲法解釈をことごとく捨て去ろうとしています。

基地ない沖縄を
　沖縄の米軍基地問題について、総理はオバマ大統領に、沖縄県の翁長知事が反対していることを伝えた上で、「辺野古が唯一の解決策との政府の立場は揺るぎない」と強調しました。県民がどれだけ反対しようとも新基地建設を強行する決意を示したものです。
　日米共同声明は「日本における安定的で長期的な米軍のプレゼンス」に言及。戦後７０年経て辺野古新基地を建設し、未来永劫（えいごう）、沖縄を米軍基地に縛りつけることは許されません。
　沖縄が本土に復帰して４３年。復帰にあたって県民が願ったのは「基地のない平和で豊かな沖縄」です。政府がやるべきは、占領下の土地強奪によってつくられた米軍基地の縮小・撤去です。新基地建設断念、普天間基地の無条件閉鎖・撤去を要求します。
( ２０１５年０５月１９日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

沖縄戦で犠牲の記者ら追悼式典戦後７０年

　太平洋戦争末期の沖縄戦で犠牲になった新聞記者ら１４人を追悼する式典が１７日、戦後７０年に合わせて那覇市の「戦没新聞人の碑」前で開かれました。報道関係者ら約１５０人が参列し、「二度と戦争のためにペンを取らない」と誓い献花しました。
　沖縄では県民４人に１人が犠牲になる苛烈な地上戦が繰り広げられました。碑には当時の地元紙「沖縄新報」１０人、共同通信と時事通信の前身「同盟通信」２人、朝日新聞１人、毎日新聞１人の名が刻まれています。
　犠牲者の一人、毎日新聞の下瀬豊さんの次女永田栄子さん（６９）は式典で、下瀬さんがフィルムを届けに糸満市摩文仁の壕（ごう）から海へ向かい消息を絶ったことに触れ、「父は今も海の底に眠っております。戦争はあってはならないと強く思います」と声を震わせました。
( ２０１５年０５月１９日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

インタビュー戦後７０年／民主党顧問、元衆院議員藤井裕久さん／暴走に力あわせて立ち向かう

　鳩山由紀夫内閣の財務相などを歴任した民主党顧問の藤井裕久元衆院議員（８２）が、憲法解釈を変更し日本を「戦争する国」に変える法案に「絶対反対」と、その思いを語りました。
　田中倫夫記者

　戦争は勝っても負けても一般の人はみな被害者です。絶対に繰り返してはいけない。
　私は、安倍内閣が憲法解釈を変えて集団的自衛権を認め、日本を再び「戦争をする国」に変える法制には絶対反対です。日本が戦後７０年、営々として続けてきた「平和主義」を根底からひっくり返すことになるのです。
　集団的自衛権の特質の一つは、ともにたたかう軍事同盟として共通の「仮想敵国」を持つことです。もう一つはアメリカが中東などで戦争したとき、日本は自衛隊を派遣して協力しなければならなくなる。他国の戦争に参戦することになります。
　これを平然と強行する安倍政権はあまりにも異常です。現政権は私がいた当時の自民党とは明らかに違う。この政権の暴走に、いま本当に力をあわせて立ち向かう時だと思います。総選挙で議席を一番増やしたのは共産党です。この問題で大いに頑張ってほしい。
　　　体験した僕らが戦争語らなくちゃ

　安倍首相が「戦争する国」への道を進む根底に偏った歴史観と偏狭なナショナリズムがあると思います。二つの言葉が象徴的です。
　一つは２０１３年４月の国会で安倍首相が「侵略の定義は定まっていない」と答弁したことです。戦後７０年の首相談話でも、歴代首相談話で明記されてきた「植民地支配と侵略」という言葉をかき消そうとしています。
　私が幼稚園の年少組のとき日中戦争が始まり、その年（１９３７年）の１２月、日本軍は当時の首都、南京を攻略し翌年には南の広東まで占領しました。北京郊外の盧溝橋事件を口実に南まで占領する。明らかに侵略でしょう。
　しかも「侵略」の定義は国連で議決されているのです。１９７４年に日本も賛成して侵略の定義に関する国連総会決議が採択されました。「国家による他の国家の主権、領土保全もしくは政治的独立に対する、又は国際連合の憲章と両立しないその他の方法による武力の行使」とされています。
　「侵略」「植民地支配」を認めた村山内閣の閣議決定には自民党の閣僚らも賛成しました。自分たちも賛成してきたのに今さら何をいっているのかと思います。
　もう一つ安倍首相の言葉で許しがたいのは「戦後レジーム（体制）からの脱却」です。ポツダム宣言を受け入れた「戦後」は自民党も含め国民がつくってきたものです。それを「脱却」して戦前に戻りたいのでしょうか。

政権の末期症状
　戦争や集団的自衛権についての安倍首相の言葉を聞いていると本当にわかっていない、と思います。
　終戦の年、私は都心から郊外に学童疎開し、頭上でＢ２９に日本の戦闘機が体当たりするのを見ました。上の世代には実際に戦争に行き、特攻隊を見送って自分は生き残った人がいる。そんな体験をした僕らは戦争の話をしなきゃいけない。しなきゃ死ねないと思っています。
　戦前の教訓を見ても格差社会は現状打開のための戦争を志向します。いまの安倍政権の大きな間違いは、集団的自衛権と格差社会です。これを突き進むと戦争になります。
　いま安倍首相にたいしメディアが「右にならえ」をしています。先日も自民党がテレビ局を呼びつけて圧力をかけました。最近メディアにたいしこんな態度をとる首相はいません。しかし、メディアに圧力をかけないともたない政権は本当は強くないのです。末期症状だと思っています。

ふじい・ひろひさ＝１９３２年、東京生まれ。大蔵省主計官などを経て、自民党参院議員・衆院議員に。細川内閣蔵相、民主党幹事長、鳩山内閣財務相。１２年に政界引退し民主党顧問。著書に『政治改革の熱狂と崩壊』など

(２０１５年０５月１７日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

１７日に沖縄県民大会／新基地反対「オール日本」で／共同代表金秀グループ会長呉屋守将さん

　１７日に「戦後７０年　止めよう辺野古新基地建設！　沖縄県民大会」が那覇市の沖縄セルラースタジアムで開かれます。３万人以上の参加で、日米両政府に辺野古新基地ノーの民意を示します。大会共同代表の一人、金秀グループの呉屋守将会長に思いを聞きました。

　私たちが４月９日に呼びかけた辺野古基金はおかげさまで１億４千万円を超えました。７割は県外からです。
　この運動は二つの意味があります。
　浄財をお寄せいただく中で皆さんに〝反辺野古〟の思いを共有いただき全国に伝わります。そして集めた基金を計画的、戦略的に活用することで、より有効な反辺野古のアピールができます。
　基金の共同代表には映画監督の宮崎駿氏、ジャーナリストの鳥越俊太郎氏にも就任いただきました。これは日本の平和と民主主義を守る運動です。私たちは本土の皆さんと一緒にたたかってオール沖縄からオールジャパンにしたい。〝辺野古〟問題は福島の原発問題とともにこの国が抱えてきた矛盾を凝縮したものだと思います。それに焦点を当て解決する運動は日本の民主化に大きな道筋を開くものだと考えます。

本当の国造り
　祖国と言うのは、自分たちで汗をかいてつくりあげるものだと実感しました。与えられるものではなく、われわれから求め、一つ一つ汗をかき、足にマメをこさえながらやっていく。それこそが本当の国造りだと思います。
　私は高校生のころ、とても復帰なんてできると思いませんでした。米軍政下でわれわれを守る法律も権利も何もない。そんな私も本土に〝留学〟して学生運動にかかわり祖国復帰を叫びました。多くの県民が立ち上がる姿も学びました。
　当時も経済界は復帰をめぐって真っ二つに割れた。しかし最後は県民一丸となって実現させました。復帰した祖国の現状にがっかりはしたけれど、それはその後の県民の運動の橋頭堡(きょうとうほ)になりました。
　今は、憲法や法律があり、県知事にもさまざまな権限がある。本土の皆さんも沖縄の状況をかなり分かってきています。たたかいの展望は開けている。勇気１００倍です。
　学生のころ西洋史の先生に言われたことを、今、鮮明に思い出しています。〝西洋は血を流してまでして民主主義を勝ち取った。君たちにその覚悟はあるのか〟と。私は年が年だから、子や孫のためなら体を張ってでもできることはすべてやります。それが、この世に生きるわれわれの役割だと思います。
(２０１５年０５月１７日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

第２次世界大戦終結７０年／ナチスからの解放、今ドイツは／強制売春問題／『強制収容所の売春宿』の著者・研究者ロベルト・ゾンマー氏に聞く

犠牲者賠償へ幅広い運動起こる
　ホロコーストや強制労働の問題で過去の克服の取り組みを進めてきたドイツですが、残された問題に強制収容所の強制売春問題があります。この問題を研究し、ドイツの責任を追及してきた研究者、ロベルト・ゾンマー氏に聞きました。
　（ベルリン＝片岡正明　写真も）

　ナチス・ドイツの強制収容所での強制売春問題は、日本と韓国の間の「慰安婦」問題とはやや色合いを異にします。
　ナチス政権での売春は２通りあります。一つは、親衛隊（ＳＳ）とドイツ軍兵士のための売春宿でした。
　西側、例えばフランスなどでは、既存の売春宿を接収したり、ホテルに新たに設けたりしましたが、基本は既存の制度の利用でした。東側のスラブ民族が住む国では、ＳＳや兵士のためにドイツ人女性を連れてきて、売春をさせるのが普通でした。
　ポーランドの女性が売春させられたこともありましたが、それは非ドイツ系の、例えばウクライナ人のＳＳが相手でした。ナチスは厳しい人種差別政策を持ち、ドイツ人とスラブ系女性との関係は嫌ったのです。

収容所の中に
　現在、問題になっているのは、強制収容所の収容者のために、強制収容所内につくられた売春宿です。ヒムラー親衛隊長官が１９４３年に命令してつくったものです。
　収容所の中には、軍需工場などがあり、収容者はそこで働かされていました。収容者に働く意欲をもたらすために、売春が手段として使われたのです。
　アウシュビッツやブーヘンワルト、ダッハウ、マウトハウゼンなど１０カ所の収容所に売春宿がつくられ、女性専用の収容所ラーベンズブリュックなどから女性が連れてこられました。
　２００人以上の女性が働かされました。女性たちは、飢えと疫病の中で死んでいくか、食事とベッドが保障されている売春宿で働くかの選択を迫られ、多くの人は生き延びるための選択をしたのです。
　売春宿では、平日は午前８時から午後１０時まで、土日は終日働かされました。男性１人に対して１５分間で相手をし、最大で１日に１５～１６人を相手にしました。男性収容者は当時のお金で２ライヒスマルクを払い、その一部は女性に渡されたといいます。
　しかし、だからといって、女性たちは任意で売春をしたのではない。あくまで生きるために、強制させられたのです。
　長い間、この人たちの問題は取り上げられませんでした。お金をもらっていたから、ナチスの罪への賠償の対象とはならないという理屈がまかり通っていました。

長くタブーに
　ドイツではこの問題はタブーになっていたし、ポーランドやソ連でも賠償を求めることは難しかったのです。ポーランドはカトリック社会で、売春をしていたと明かすことは非常に勇気がいることでした。ソ連では、ナチスと接触したとして、粛清の対象にさえなるからです。
　それでも１９９０年代からこの問題が次第に明らかになっていき、今、ナチスのすべての犠牲者に賠償をすべきだとして、さまざまな非政府組織や左翼党、９０年連合・緑の党、社会民主党の政治家などが運動を起こしています。
( ２０１５年０５月１４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

第２次世界大戦終結７０年／ナチスからの解放／今ドイツは／ロンドン経済政治学大学教授ゼンケ・ナイツェルさんに聞く

過去の克服が国の証し
　第２次世界大戦の終結とナチスからの解放７０年は、ドイツでどのようにとらえられているのか―。ドイツと英国の大学で世界史、軍事史を教えてきたゼンケ・ナイツェル氏（現在、ロンドン経済政治学大学教授）に聞きました。
　（ベルリン＝片岡正明）

　ナチスからの解放７０年を迎えた今年、ドイツは戦後のどの時よりも、自らを肯定的にとらえています。

修正主義許さず
　ドイツは（ホロコースト見直しなどの）修正主義を許さず、過去を克服する情け容赦ない取り組みで、すべての犯罪を明らかにするという立場で歴史に向かい合ってきました。その結果、欧州でかつて〝殺人国〟とされてきたドイツの国民も、今はナチスの犠牲になった国々にも受け入れられています。
　私は今、ロンドンで歴史を教えていますが、シンガポールや中国の学生から、ドイツは自動車も素晴らしいが、過去の克服の取り組みはもっと素晴らしいと声をかけられたことがあります。ドイツではまさに、過去の克服の取り組みが、国家・社会の証しとなり、個人の生活にも影響しています。
　ドイツで今、「西洋のイスラム化に反対する愛国的欧州人」（ペギーダ）の策動や、極右による難民住宅放火などの事件があります。ワイマール共和国（１９１９～３３年）でヒトラーが権力を掌握した過程を思い起こさせると警告する人もいます。しかし私は、危険だが〝ヒトラーの再来〟というのは過剰な反応だと思います。
　ワイマール共和国の民主主義は、最初からボロボロに切り裂かれた状態でした。第１次世界大戦後も、それまでの政治制度はあまり変わらず、王政復古主義者が横行し、古い政党が自分たちの思うようにしようとしていました。
　そして何よりも、超インフレと「大恐慌」がワイマール共和国を終わりに追い込みました。人々は危機を乗り越えるために、強い指導者を求めた。それに乗じてヒトラーは政権を掌握したのです。
　第２次世界大戦が終結した４５年は、第１次世界大戦終結の１８年とはまったく違っていました。ナチス・ドイツの完全な敗北、そしてまったく違う時代が来ることは誰にもわかっていました。

敵対から連合へ
　ドイツ連邦共和国（当時の西ドイツ）を支えたのは、経済成長だけではありません。（敵対という）力の関係をやめて、他国とともに欧州の連合づくりという共同事業に着手したことも、ドイツを支えました。その構造の中に組み込まれることで、考え方も影響を受けたのです。
( ２０１５年０５月１３日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦後７０年／対独戦犠牲者を追悼／メルケル首相が訪ロ

　【ベルリン＝片岡正明】ドイツのメルケル首相は１０日、旧ソ連の対ドイツ戦勝７０年の記念行事に合わせてモスクワを訪れ、ロシアのプーチン大統領とともに、ナチス・ドイツとの戦争で犠牲になった数百万人の旧ソ連兵士を追悼し、献花しました。
　メルケル首相は、ロシアのウクライナへの軍事介入に抗議し、９日にモスクワで行われた対ドイツ戦勝７０年パレードは欠席しましたが、ナチスの加害責任には向き合う姿勢を示しました。
　会談後の共同会見で、プーチン大統領は、「われわれはドイツとではなく、ナチスとたたかった。ドイツはナチスの最初の犠牲者だ」と表明。メルケル首相は、「ドイツの歴史的責任のためにここに来た。独ソ戦での数百万人の犠牲者を否定するわけにはいかない。たとえ今、（ウクライナ問題で）意見が大きく違ったとしても歴史を尊重し、ドイツが世界にいかに苦しみを与えたかを自覚しなければならない」と強調しました。
　両首脳は会談で、ウクライナ東部で散発的な戦闘が続き、和平に向けた大きな前進がない現状についても意見を交換しました。
　メルケル首相は、２月の停戦合意が守られていないことや、ロシアによる国際法違反のクリミア半島併合を批判。「困難な状況は外交的に解決しなければならない。それが独ソ戦の苦い教訓だ」と語りました。
( ２０１５年０５月１２日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

番組をみて／ＮＨＫスペシャル「日本人と象徴天皇制」／ＮＨＫテレビ４月１８、１９日放送

戦争責任追及の問題意識見られず
　第１回では、天皇制が「統治から象徴へ」転換する過程が扱われている。この象徴天皇の誕生が戦後７０年の原点と言う。いくつかの問題を感じる。
　第一に、象徴という概念が議論されるが、象徴天皇の成立による政治構造の根本的転換の意味がおさえられていない。「神から象徴」への変化は、天皇主権から国民主権への原理的な転換であり、天皇は、「国政に関する権能を有しない」（憲法第４条）形式的な存在になった。
　第二には、この点が明確になっていないが故に、新憲法施行後の昭和天皇の政治的行為の問題が天皇の努力として扱われ、その反憲法的性格が曖昧にされている。片山内閣時に外相芦田均を呼びつけ、「西側と協調」すべきとのべたり、アメリカにひそかに沖縄に関するメッセージ（アメリカの占領と長期の租借要請など）を送ったりしているが、このような行為は新憲法下の象徴天皇としては許されるものでない。
　第三は、昭和天皇の戦争責任への掘り下げが弱いことである。当時の国際社会における昭和天皇への戦争責任追及は厳しく、東京裁判の免責はアメリカの高度の政治的判断の結果である。天皇の政治利用が日本統治に必要という判断である。そのため、国家の最高責任者であった天皇の責任は追及されず曖昧にされた。このことが、戦後日本社会の「過去の克服」が遅れている最大の要因である。この点の問題意識が全くみられない。
　第２回は、主に明仁天皇の皇太子時代から今日の問題に焦点が当てられている。天皇夫妻が「四つの日」（６月２３日の沖縄戦における組織的抵抗の終焉、８月６日の広島原爆投下、９日の長崎への原爆投下、１５日の終戦）を大事にしているとされるが、歴史に向き合い、平和への関心を持とうとする彼らなりの気持ちをうかがい知ることができる。総じて明仁天皇は、現憲法の象徴天皇のあり方を追求しているといえる。こうした明仁天皇の姿勢は、改憲により、国防軍を創設し、天皇の元首化を目指す安倍内閣の改憲戦略と矛盾することになる。これからの日本の政治と社会のあり方を考えさせられる番組である。
　（山田敬男＝やまだ・たかお　労働者教育協会会長・現代史家）
( ２０１５年０５月１４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

１０ にちようシネマ館／１７才の別れ／日本

　１７才の少女が戦争に駆り立てられ多くの友を失った―戦後７０年の節目に訴える沖縄戦の惨状です｡３００回以上も講演してきた宮城巳知（みち）子さんが語ります。
　１９４５年３月、沖縄に迫った米軍に対し、宮城さんら県立首里高等女学校生６１人は、「瑞泉学徒隊」に編成され、日本軍負傷兵の看護にあたります。艦砲射撃、機銃掃射に逃げ惑い戦場を転々。壕（ごう）の近くで砲弾の破片が、たまたま体をよじった宮城さんをかすめ後ろの〝せっちゃん〟を直撃します。結局、生き残ったのは２８人だけでした。
　宮城さんの語りは淡々としていますが、今も友への愛惜、戦争への怒りは深く重い。齊木貴郎監督。
　（山）
(２０１５年０５月１０日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

平和っていいね／戦争する国にしてはいけない／歌手加藤登紀子さん

　平和への願いを歌に託してきた歌手・加藤登紀子さんがデビュー５０周年を迎え、インタビューに答えました。
　「百万本のバラ」との出合いや各国を旅した経験を振り返りながら、「日本は戦後７０年、戦争をしない国として世界から信頼されてきました。戦争をする国になることは、世界への大きな裏切りです」と「戦争立法」への動きを批判しました。

歌手生活５０年加藤登紀子さん／よりよい未来へやりがいある時代／愛を植えるため音楽がある

憲法９条は平和を維持する切り札
　今年、デビュー５０年の歌手・加藤登紀子さん（７１）。国を超え、ときを超え、歌で時代を語り継いできました。６月の「百万本のバラコンサート」を前に、歌手生活５０年の思いを聞きました。
　板倉三枝記者

　―６５カ国以上を旅してきました。最初の海外ツアー（１９６８年）が旧ソ連。６月のコンサートでは、そのとき訪ねた音楽の国ラトビアから交響楽団を招きます。メーンは「百万本のバラ物語」です。
　私の代表曲でもある「百万本のバラ」の原曲は、第２次大戦後、ソ連に併合されたラトビアで生まれました。元は子守歌だったのが８２年、ロシア語で「百万本のバラ」となり、大ヒットします。
　作曲したライモンズ・パウルスは、ラトビアを代表する作曲家で独立運動の先頭に立ってきた志士です。８９年、ベルリンの壁が崩壊した後、バルト３国（ラトビア、エストニア、リトアニア）の人たちが「人間の鎖」で三つの首都をつなぐ大運動を起こしました。
　「百万本のバラ」は、ソ連からの独立を願う人々のシンボルになりました。今回は、そんな歌の歴史を語りとコーラスでつづり、平和のメッセージにしたいと思っています。

戦後と重なる
　―加藤さんの人生は戦後７０年と重なります。父親が「満鉄」に勤めていた関係で４３年、旧「満州」のハルビンで生まれました。
　日本は悲惨なときを迎えていました。でも母は「あなたはいいときに生まれたわ」と言うんです。この頃、やっとその意味がわかってきました。私は父と母にとって、絶望の時代に産み落とされた希望の種だったのだと。生まれてくる命こそ未来。どんな大変な時代でもそこから生きようとすることで、未来が始まるんです。
　父が出征していたので終戦は母と姉、兄と迎えました。戦後、収容所に入れられ、そこにソ連兵がやってきたとき、母は私をおんぶして立ち向かったそうです。どんな相手とも一対一で向き合う。そんな母の人生哲学に支えられて、私はのびのび育ってきました。
　その母が１００歳になりました。介護されるようになっても生きることに強い意志を持っています。少しずつ歩けなくなっていく母と、歩き始めて人生を上っていく私の孫を見ていると、人の歴史が交差しているのを感じます。
　自分に与えられた一生の時間の中で、何ができるのか。未来に生きるものたちに良い未来を手渡すために、果敢に理想に燃えながら生きる。人として生きるとは、そのことに尽きるように思います。

大きな裏切り
　―安倍政権は今国会で、「戦争立法」の成立を強行しようとしています。
　大変な戦争を経験してきた人類が、戦後は悲しい体験を土台に、もう少し崇高な生きものになろうと励んできたはずなのに、なかなかそうならない。特にアメリカが、大量破壊兵器を名目にイラクに殴り込みをかけたことで、どれほど世界が混乱の中に落ち込んでしまったか。
　世界がアメリカの間違いに気づいてきたときに、日本はアメリカと同じような国になろうとしています。世界の流れを読み誤っています。戦争の武器をつくることを国の産業の中心に据えているアメリカと、憲法で平和原則を持つ日本の外交戦略は、絶対違うものであるべきです。
　日本は戦後７０年、戦争をしない国として世界から信頼されてきました。戦争をする国になることは、世界への大きな裏切りです。
　憲法９条は、日本が平和を維持してきた切り札です。私は「憲法９条にノーベル平和賞を」という運動を応援してきました。私が訪ねた国々が戦火にまみれるのを見るのはつらい。９条を全世界の憲法にすべきだという思いを世界の人と共有したいですね。
　―平和への願いを歌にのせ、過去と未来をつないできました。
　私はシリアやレバノン、イスラエルにも行きましたが、訪ねたときは比較的、平和が保たれていました。そのとき平和というのは、人々が望み、それをもたらそうと努力すれば実現できるのだと実感しました。平和は人の意志なんです。
　南アフリカ共和国の大統領だったネルソン・マンデラが、憎しみを持って生まれてくるものはいない、憎しみは人の心に植え付けられていくものだと語っています。だとすれば愛も植え付けていかなきゃいけない。そのために音楽があると思います。
　言語や国の違いを超えて一つになれるのが音楽です。音楽家こそ、いろんな束縛から自由に発言したり、表現できなければいけないと思っています。
　原発事故の起きた３・１１は、日本の国にとって「革命」だったと思います。原発が原爆の予備軍としてつくられてきた歴史とか、国が隠していたいろんなことが、白日の下にさらされました。
　国は、必死で今までの体制を死守しようとしていますが、こんなに答えが見えている時代はなかったのではないでしょうか。私たちが方向転換の鍵を握る、すごくやりがいのある時代だと思います。

「百万本のバラコンサート」
　６月５日＝埼玉・越谷サンシティホール、６日＝山形･シベールアリーナ､７日＝神奈川・よこすか芸術劇場ほか、三重､大阪､長崎､東京を巡演｡℡０３(３３５２)３８７５トキコ・プランニング

かとう・ときこ＝１９４３年、中国・ハルビン市生まれ｡東大在学中の６５年､歌手デビュー。「ひとり寝の子守唄」「知床旅情」でレコード大賞歌唱賞受賞。元ＵＮＥＰ（国連環境計画）親善大使
(２０１５年０５月１０日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

憲法には愛がある／光がある／未来がある／沖縄大学客員教授（憲法学）小林武さん／安倍改憲に立ちはだかる民意

　戦後７０年の今年、日本国憲法は６８歳の誕生日を未曽有の危機の中で迎えました。これまで憲法は、平和と人権を守る土台であり続けてきました。
　国民の大切な宝物であるだけでなく、粗末にしてきた政府にとっても、実は国際的信用をつなぎとめるのに不可欠なものでした。これをかなぐり捨てるのが安倍政権です。
　自民党政権は何度も改憲を狙ってきましたが、安倍政権の違いは、歴史修正主義の立場であることです。日本の侵略戦争の歴史を塗り替える「戦後レジーム（体制）からの脱却」の一環として、安倍氏のいう「みっともない憲法」を破棄するというのです。そこには、改憲するにしてもわきまえるべき最小限の道理がみられません。
　まず首相自らが改憲を唱えるのは、憲法９９条の憲法尊重擁護義務の明らかな違反です。しかし首相は意に介しません。次に狙ったのは、改憲手続きを定めた９６条の改定でした。自分の都合のいいように改憲のハードルを下げようとしたのです。
　それが国民の批判でつまずくと、集団的自衛権の行使容認という、憲法改定に値する根本的転換を閣議決定でやってしまった。
　これらはすべて、憲法が国家権力を拘束するという立憲主義の根本を覆すものです。沖縄の米軍新基地建設問題でも、民意に従わず、立憲主義に背く政府の姿勢は共通しています。
　しかし安倍改憲の危険性は、その弱点でもあります。改憲への賛否を超え、立憲主義擁護の一点で手を結ぶ動きが起き、安倍政権を包囲し始めています。
　例えば、全員加入の職業法律家団体である日本弁護士連合会が集団的自衛権に反対し、若手弁護士も声をあげています。こうした結束が各界で広がり、必ず安倍改憲を止めることができると確信します。
(２０１５年０５月１０日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

憲法には愛がある／光がある／未来がある／イラストレーター大島史子さん／敵意ないと示して戦争抑止

　「あすわか」のメンバーに高校の同級生がいて、自民党の改憲草案と集団的自衛権を解説するリーフレットのイラストを担当しました。リーフは５０万部超発行されました。その反響で驚いたのは、憲法は〝国民ではなく権力側を縛るもの〟という立憲主義が知られていないことです。
　集団的自衛権の行使容認には反対です。自衛隊員の生命が危険にさらされるのではと心配です。本当に日本を守るため、戦争を抑止するためには、軍事的な活動で諸外国を警戒させるよりも、敵意がないことを示すことが大切だと思います。
　憲法９７条が好きです。基本的人権は「人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果で…過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利」だとしています。
　有権者が関心を持つだけでも、現実政治を変える大きな力になります。自民党草案が〝過去の試練〟だったと笑える希望ある未来にしていきたいと思います。
(２０１５年０５月１０日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

憲法には愛がある／光がある／未来がある／気軽に学ぶ「憲法カフェ」／闇夜を照らす電光９条

　戦後７０年の節目の年の憲法記念日（５月３日）―。安倍晋三政権が「戦争立法」と同時に明文改憲を急ぐ中で迎えます。首相は、「戦争立法」を５月中旬にも国会提出し、来年夏の参院選後に明文改憲の発議を目指すとも表明しています。未曽有の憲法危機のもと、創意工夫をこらして憲法を守る取り組みが広がっています。

気軽に学ぶ「憲法カフェ」／弁護士小谷成美さん
　誰もが立ち寄れる街のカフェで、気軽に憲法を学ぶ「憲法カフェ」。全国でゆるりと広がっています。
　「憲法には『愛』という文字がある。○か、×か？」
　日曜日の昼下がり、大阪市の阪急中津駅近くの、壁も床もオレンジ色に統一されたカフェで憲法の話が始まりました。説明役の小谷成美弁護士（３８）の問いに、参加者が手をあげます。正解は「○」。憲法前文に「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」という表現で登場します。
　架空の王国を舞台にした紙芝居では、権力者が国民を縛る憲法から国民が権力者を縛る憲法へと、立憲主義が確立された歴史をひもときます。
　集団的自衛権について小谷さんは「他人のけんかを買いに行くのと一緒。米国の戦争に参加した国では国内でテロが起きている」と警鐘を鳴らしました。
　この日の参加者は、小学６年生から９０代まで１５人の老若男女。インターネットで調べて来た人、地域の老人クラブの会長、元日本軍士官、集団的自衛権に賛成の人も。
　ネットで知って奈良県から息子と来たのは山田和雄さん（４１）。「集団的自衛権は日本が守られるイメージでした。でも、米国の意図で国民の命が危なくなるのはよくないと思い直した」
　一緒に来た茂和君（１１）は、会場で配られた資料で憲法を初めて読みました。「憲法が２回つくられた（明治憲法と現行憲法）ことを紙芝居で知った。もっと勉強したい」
　「憲法カフェ」は、若手弁護士でつくる「明日の自由を守る若手弁護士の会」（略称あすわか）の取り組み。２０１３年１月から現在までに、全国で６００回以上開かれています。「あすわか」は２６人で始め、いまでは会員４００人以上に。
　小谷さんは語ります。「憲法を、特別な場所でされる特別な話ではなく、生活の中のどこにでもあるものにしたい」

闇夜を照らす電光９条／かわぐち九条の会嶋田耕作さん
　通勤客らが家路を急ぐＪＲ川口駅（埼玉県）。東口の２階テラスに出ると、「輝く憲法九条」の文字が夜景に浮かび上がります。約３００個のＬＥＤ電球で手作りした電光掲示板。「欧州車のライトよりまぶしい」などとネットでも話題に。
　掲示板を手に肉声で訴えるのは、かわぐち九条の会の嶋田耕作さん（７９）。この日は知人の辻貞子さんも、嶋田さん製作の「原発ゼロ！！」の掲示板を持って立ちました。原発部品メーカーで働いていた男性が近寄り、自然エネルギーや憲法９条で議論になりました。
　嶋田さんは川口生まれ｡激しい空襲を受け､焼夷(しょうい）弾で麦畑がメラメラ燃えたことを覚えています。中学の授業で憲法の話を聞き、「これで戦争がなくなる」と思いました。医療機器メーカーなどに勤め、退職後、近年は母校の小学校で理科支援員として教壇に立っています。
　憲法９条の電光掲示板をつくったのは１０年ほど前。材料費は本体約７千円。電源はバイクのバッテリーで、１０時間は使えます。
　安倍首相が外遊で集団的自衛権行使容認を叫び始めた昨年１月。「一人ひとりの国民が発言しなければ」と駅前に｡平均週４回､訴えています。次第に、目で合図する人や声をかける人が。会うたびに話をする若い女性やスケッチをくれた人も。
　「新しい掲示板も作りたい。要望に応じて作りますので、全国各地で活用してもらえれば、うれしいですね」

日本共産党の綱領から
　現行憲法の前文をふくむ全条項をまもり、とくに平和的民主的諸条項の完全実施をめざす。

　藤川良太、田中一郎、坂口明記者が担当しました。
(２０１５年０５月１０日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

第２次世界大戦終結７０年／植民地支配の実態／台湾にみる／３／自治求め１４年間続いた運動

　〝台湾は５０年間にわたる日本の植民地統治を通じて近代化し、恩恵を受けた〟とする議論があります。
　台湾の中部・南投市にある国史館台湾文献館で日本統治時代について研究している陳文添研究員は「日本統治時代に台湾が近代化したのは否定できない事実だ。同時に、植民地の重要な機能は統治国への貢献であり、そのための近代化だった」と指摘します。

差別的な待遇
　その上で、陳氏は「当時、日本統治をすばらしいものだと受け止めていた台湾人は多くはなかった」と強調。その大きな理由は、台湾の人々への差別的待遇でした。
　例えば、同じ仕事をしていても報酬に差がありました。台湾に住む日本人は台湾人よりも約６割増しの報酬を受け取っていました。
　また、台湾人には重い地方税が課せられていました。日中戦争開戦の１９３７年からは税負担はさらに重くなり、陳氏は「本土に住む日本人よりも重い負担だったとされる」といいます。
　教育の面では、日本人児童は「小学校」へ、台湾人児童は「公学校」へ通うのが原則になっていました。しかも１４年以前は、台湾人公学校卒業後に進学できる中学校はありませんでした。そのため中高等教育を受けるためには日本本土に留学するしか道はありませんでした。

政治参加なく
　台湾の近現代史に詳しい台湾国立政治大学歴史学部の藍適斉助教授は「最大の差別的待遇は、台湾人が政治参加できないことだった。台湾人は自身に関わる政策を決める権利も、意見を述べる権利もなかった」と、台湾の人々に政治的権利がなかった点を強調します。
　日本の台湾統治を担った台湾総督府は行政、立法、司法から軍事までを掌握する強い権限をもっていましたが、台湾人は重要な地位に就くことはできませんでした。
　日本本土では、１８９０年に国会が開設され、１９２８年から２５歳以上の男子による普通選挙が実施されましたが、台湾の人々には選挙権がなく、自らの代表を国会に送ることができませんでした。
　この状況下、台湾の知識人は、植民地の自治を要求。植民地住民から議員を選出する台湾議会の設置を求める運動を２１年に始めました。東京の台湾留学生を中心にした運動は３４年まで１４年間続き、帝国議会に対し、請願書を計１５回提出しました。最も規模が大きく、最も期間が長い運動で、「代表的な反植民地闘争と位置付けられている」（藍助教授）といいます。
　（台北＝小林拓也　写真も）（つづく）
( ２０１５年０５月０８日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

第２次世界大戦終結７０年／ポーランド国民記憶院所長ウカシュ・カミンスキさん／歴史に向き合い、記憶を継承

戦争の経験忘れた世界、それが本当に恐ろしい
　戦後７０年、歴史の継承が大きく叫ばれています。自国の歴史と真摯に向き合い、国民に真実を知らせる仕事に取り組む、ポーランドの国家機関・国民記憶院を訪ねウカシュ・カミンスキ所長に、記憶の継承の持つ意味について聞きました。
　（ジャーナリスト　大内田わこ、写真も）

　―具体的にはどんなお仕事をなさっているのでしょうか。
　簡単にいえば、過去の清算です。戦後すぐにつくられた「ナチス犯罪追及委員会」を受け継ぐ形で大きく発展させ、いっそう幅広い活動を展開しています。２３００人の職員がおり、１５０人余りの歴史家の協力も得ています。

冊子や展示に
　私たちは、ただ歴史を検証したり追及するだけでなく、その結果を、冊子にして発行したり、展示会を開いたりもしています。これは年間４００回ぐらいの割合です。海外に住むポーランド人はもちろんのこと、そこの国の人びとに、ポーランドの歴史や今日をよく理解してもらうために、その国の言葉にして展示する場合もあります。小さな子どもからおとなまでの歴史教育に力を入れています。
　―私は日本でみたテレビのドキュメント番組で、あなた方の組織の存在を知りました。ポーランドのイエドバブネという村でポーランド人がユダヤ人を虐殺したという、できればふたをしたくなるような問題にも果敢に挑戦されて、真実を明らかにされたことにとても感動を覚えました。
　イエドバブネの問題にぶつかった時、私たちはまだ活動を始めたばかりで、建物もまだちゃんとしていないという状態でした。しかし、この組織が創立されたときから、私たちはすでに大変難しい問題を扱わなければならないということは、自覚していました。殺されたり、行方不明になったりした人たちの遺体を掘り起こし、真実を調べ、すべてを明らかにすることはきわめて困難なことだからです。
　イエドバブネも検察を中心とした調査が始められ、当時のことを知る村の人びとの調査もやりました。この事件について知りえた事実は２冊の冊子として刊行しました。

加害の事実も
　―タブーといわれるものへの挑戦だったと思いますが、国民の側の受け止めはどうでしたか。
　当時はかなりの批判もありました。長年、自分たちはナチスの戦争の被害者であると思ってきたポーランド人が、加害者になったわけですから。でも、１０年たってみて私は改めて、どんな問題でも事実と突き合わせ、その結果を社会に提示するということの持つ意味の大きさを痛感しています。それによって結果として国民の信頼を得ることができたのではと思うのです。歴史を見ないふりをしたりごまかしたりしないで、大胆に取り組んだという意味で、ポーランドは、いいモデルを示したのではないかと思います。
　―ここでの活動は、現場にはどのように生かされているのでしょうか。
　現場の先生用の資料を出しています。写真をたくさん使ったものや、ドキュメント風に作ったＣＤなどを無料で提供しています。もちろんそれを使うかどうかは自由です。また、年に何回かは教師の集団研修もやります。
　学校の生徒たちのコンクールというのもあるんですよ。全国各地の生徒たちが集団で自分の町や村の歴史を研究する、歴史とふれあうわけですね。そういう子どもたちの手助けになるような歴史番組をつくってテレビで放映したり、インターネットで流したりもします。過去をきちんと理解しないでは、現在というものをつくっていくことができないと思うので、特に子どもたちの教育には力を入れています。
　―戦後７０年、いま改めて記憶を継承していく意味をどのように考えますか。
　何度もいいますが、歴史をきちんと見つめないと、歴史は繰り返すわけです。現在、技術がこれだけ発達しているなかで、繰り返されたときの恐ろしさは、想像を絶するものがあります。今たくさんの若い世代の人たちが、戦争を知らない平和な時代に育っています。この世代に、平和の意味、重要性、価値観など伝えようとするとき、これが失われた時にどうなるか、という以外に方法はありません。
　〝アウシュビッツよりも恐ろしいことが一つだけある〟と言った人がいます。それは何かと言うと〝世界がアウシュビッツを忘れてしまった日のことだ〟と言うのです。同感です。第２次世界大戦の経験を忘れ去ってしまった世界というのは本当に恐ろしいものだと思います。
　今、私たちはグダニスクというところに第２次世界大戦の祈念館を建設中です。戦時下を生きた人々の苦難の歴史に視点を当てた博物館になるはずです。

隠せばもどる
　―日本の政府はいまだに過去の戦争のきちんとした総括も、近隣諸国との和解もできずにいます。そんな国のありようはどのように映りますか。
　私は２００６年に日本へ行きました。そして靖国神社にも行き、ショックを受けました。第２次世界大戦についての教科書の記述も友人に翻訳してもらって読みました。私は歴史を隠してはいけないと思っています。それは必ず元に戻るからです。ローマ時代ならいざ知らず、２０世紀に被害を受けたたくさんの人びとや、関わった人たちが生きている今、私たちはそれを見たり聞いたりしないわけにはいかないのです。歴史はちゃんと見れば、私たちを助けてくれます。この立場に立ってこそ周りの人たちともよい関係をつくることができると思います。
　ただそういう社会、ウソで成り立っている社会というものは非常に弱いもので、必ず崩れるものです。日本の中にも歴史をきちんと見て考えている方々がいるはずです。必ずその力が強くなっていくはずだと、私は思います。

国民記憶院
　１９９８年、ポーランド議会下院が「国民記憶院―ポーランド国民に対する犯罪訴追のための委員会」設立に関する法律を採択して発足、２０００年から活動を開始しました。研究・教育のほか犯罪訴追の機能を持っています。ナチス・ドイツの占領下、ソ連軍の支配下、また戦後、政権がソ連に追従していた時代の犯罪などを対象としています。
　◇
イエドバブネ事件
　ポーランド北東部の村・イエドバブネで１９４１年７月１０日に起きたユダヤ人集団虐殺事件。長年、ナチス・ドイツの犯行とされてきましたが、近年、同じ村のポーランド住民によるものだという疑惑が浮上。国民記憶院による調査がなされ、２００２年に報告書がだされました。ポーランド政府が公式に謝罪し、追悼式典が毎年行われています。
( ２０１５年０５月０６日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

第２次世界大戦終結７０年／植民地支配の実態／台湾にみる／２／心身を患う、元「慰安婦」

　韓国と同じように日本の植民地だった台湾でも、第２次世界大戦中に多くの女性が日本軍「慰安婦」にさせられました。１９９２年から元「慰安婦」の調査・支援をしている「台北市婦女救援基金会」によると、台湾の被害者は２０００人以上とみられています。
　婦女救援基金会は、いままでに５８人の元「慰安婦」生存者を確定。多くが、看護師や食堂従業員の仕事で稼げるなどとだまされ、日本軍がいる東南アジアなどの慰安所で日本兵の相手をさせられました。

強制的な状況
　基金会の康淑華執行長は「元『慰安婦』は、海外に送られたため、現地の言葉もわからず、台湾に戻ることもできなかった。これは強制的な状況といえる」と語ります。
　現在、元「慰安婦」のうち存命なのはわずか５人。みな９０歳前後で、心身が弱っており、メディアの取材を受けることはできない状態だといいます。
　基金会提供の資料によると、そのうちの１人、陳蓮花さん（９１）は娘夫婦と暮らしています。１９４３年、１９歳の時に「フィリピンで看護師にならないか」とだまされ、フィリピンで「慰安婦」をさせられました。
　米軍がフィリピンを制圧したときは、日本軍と一緒に山中を逃げ回りました。周りの人が病気や米軍の掃射に倒れ、一緒にいた２０人の「慰安婦」のうち生き残ったのは陳さんら２人だけでした。
　台湾に戻り、結婚しましたが、過酷な経験で生殖能力が失われており、２人の養女を育てました。
　１９９９年、基金会などの支援で、９人の台湾人「慰安婦」が日本政府の謝罪と賠償を求め、東京地方裁判所に提訴。しかし２００５年の最高裁判決で敗訴が確定しました。
　基金会は１９９６年から、元「慰安婦」に１人月６０００台湾㌦（約２万３０００円）の生活補助金や医療費などを提供しています。多くの被害者が、「日本軍に協力し、貞操を失った」と批判されるのを恐れ、家族にも経験を秘密にしていました。基金会は、ヨガなどの運動や絵画、写真撮影などを通じて、元「慰安婦」が生きている間に平穏に過ごせるよう心理的援助も重視してきました。

失望と怒りが
　基金会の康執行長はこう強調します。「被害者が一貫して求めてきたのは日本政府による真の謝罪と賠償だ。しかし安倍政権成立後、日本で『河野談話』を否定し、『慰安婦』という歴史を隠そうという動きが強まっている。私たちは失望し、怒っている。日本が今後どのような態度をとるのか注目している」
　（台北＝小林拓也）
　（つづく）
( ２０１５年０５月０５日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

第２次世界大戦終結７０年／植民地支配の実態／台湾にみる／１／霧社事件、武力抵抗の衝撃

　今年は、日清戦争（１８９４～９５年）の講和条約、下関条約の調印（４月１７日）から１２０年です。同条約で台湾と澎湖（ほうこ）諸島は日本に割譲、その後５０年間、日本の植民地となりました。台湾を訪れ、日本の植民地支配の実態を探りました。
　（台湾南投県霧社＝小林拓也　写真も）

　台湾中西部にある第３の都市、台中からバスで２時間、途中から３０分ほどカーブの多い山道を進み、着いた所が霧社です。
　１９３０年１０月２７日早朝、武装した約２００人の先住民が、運動会のために霧社公学校に集まった女性や子どもを含む日本人約１４０人を惨殺する事件が起きました。
　台湾での日本統治に対する組織的な武力抵抗は１９１５年を最後に途絶え、台湾統治が安定しているとみられていた時期の事件発生に、日本政府は大きな衝撃を受けました。

軍隊など派遣
　台湾を統治する台湾総督府は、直ちに数千人規模の軍隊と武装警官を派遣。先住民は山間部でゲリラ戦を展開したものの、日本側の圧倒的な武力の前に約２カ月で鎮圧されました。
　決起に参加した先住民は、霧社地域の１１集落のうち六つの約１３００人。日本側の攻撃で約７００人が死亡しました。決起のリーダーだったモーナ・ルダオも自殺しました。
　霧社にはモーナ・ルダオの墓があり、その前には「霧社山胞抗日起義記念碑」と台座に「抗日英雄」と書かれたモーナ・ルダオの像が建てられています。さらに山奥に入った、モーナ・ルダオの集落があった場所付近にも「抗日英雄」記念碑が建てられており、決起のリーダーが台湾の英雄になっているのがよくわかります。

先住民の不満
　事件の背景にあったのは、木材の運搬や建設工事などの労役に従事させられた先住民の不満です。労役は過酷で、報酬も不当なものでした。
　また先住民統治のため、日本の警官が先住民女性と結婚する例が多くありましたが、警官らは日本本土に妻子がいることが多く、数年後に女性が置き去りにされる事例が頻発。これは先住民にとっては大きな屈辱でした。
　台湾の近現代史に詳しい台湾国立政治大学台湾史研究所の薛化元（せちかげん）所長は「先住民が日本の統治に不満を持つのは当然だ。日本が先住民の文化や習慣を理解せずに抑圧したため、先住民は武力で抵抗した」と解説します。
　台湾の人々は、日本の統治をすんなり受け入れたわけではありません。割譲当初、各地の民衆が日本軍に抵抗。武力での抵抗が終わっても、議会設立要求など政治的権利や待遇改善を求める運動が続きました。霧社事件は、台湾の人々の一連の抵抗運動の一つと位置付けられます。
　（つづく）

明治政府初の海外出兵
　１８７１年１１月、暴風雨に遭い台湾南部に漂着した６６人の琉球住民のうち５４人が先住民に殺害される事件が起こりました。日本政府は清国に抗議。清国は、台湾の先住民には清国の統治が及ばないと回答しました。
　これを受けて日本政府は７４年５月、西郷従道（隆盛の弟）率いる３６５０人の軍隊を台湾南部に派遣。近代的兵力で先住民を制圧しました。明治政府最初の海外出兵です。日本では「征台の役」、台湾では「牡丹社（ぼたんしゃ）事件」と呼ばれています。
　台湾南部屏東（びょうとう）県の戦場跡には、日本が台湾を植民地にした後に建てた「西郷都督遺跡記念碑」跡があります。付近には、琉球住民５４人の墓と「日本軍本営跡記念碑」もあります。本営跡の説明には「『牡丹社事件』は日本の台湾侵略の野心を暴露した」と書かれています。
( ２０１５年０５月０４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

試写室／母子像で平和を訴えた画家　四国五郎の生涯／ＮＨＫテレビ７日後３・１５／戦争・核への怒りと人間への愛

　広島を代表する画家・詩人である四国五郎さんが〝母と子の姿〟を、なぜ生涯のテーマにしたかを探った作品。非戦の強い意志に心うたれ、番組制作者の意欲を感じる。
　四国さんは１９２４年に広島の三原市に生まれ、昨年、８９歳で亡くなられた。子どもの頃から絵がうまく、神童といわれた。やがて出征、シベリア抑留、仲のよかった弟の被爆死、看護した母の死。苛酷な経験が、〝畜生ッ！　戦争、原爆はダメだ！〟の怒りとなって絵にむかわせた。
　被爆体験がないにもかかわらず、原爆の惨禍、平和運動、勤労動員、ベトナム戦争、広島の復興、記憶の風化への危機感ほかを､〝母子像〟を通して描きつづけた。そこには激しい怒りと人間へのやさしい愛があり、広島の歴史をどう未来に伝え残すかというおもいがある。そしてご子息・光氏や画家・千馬博子、ガタロ両氏が、人がらや絵の内容について語っていて、その真意を知ることができる。
　いま、誰にでもわかりやすい絵で反戦、反核を訴えつづけた一人のすぐれた画家から学ぶものは多い。
　（秋村　宏　詩人）
　※ＮＨＫ広島が制作。中国地域で４月１０日に放送されました。
( ２０１５年０５月０６日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

波動／機銃掃射の恐怖克明に／藤久ミネ

　「機銃掃射」という言葉をご存知だろうか。
　戦時における加害の歴史だけでなく、戦中の被害体験さえ十分に語り継がれぬまま､最近は〝戦争立法〟推進論議が姦しい｡
　戦後７０年の今年――各局が多く東京大空襲を語っていたなかで、同じ３月９日夜、「私の街も戦場だった」（ＴＢＳ系）によって、全国津々浦々を襲い人々を苦しめた｢機銃掃射｣の実態と恐怖とが克明に報道された。
　機銃掃射とは、戦闘機に備え付けられた機関銃による銃撃のことで、パイロットが引き金を引いている間中、弾丸は発射され続けるから、一秒間に最大７０発以上の弾丸壊滅が、雨あられと地上に降り注ぐ。屋根すれすれに飛ぶ攻撃機に追われ狙撃される人々は、怪鳥に襲われたかのように逃げ惑った。その恐怖は、狙撃者が近いだけに空襲よりも一層恐ろしく、かつ都会だけでなく、宮城県石巻市の農村や福島の浪江町、千葉の鴨川シーワールド一帯、さらに九州の薩摩川内市から屋久島の小学校に及ぶ南九州一帯を特に激しく襲っている。人々を満載した鉄道列車が絶好の狙撃対象になった｡番組では､列車がＪＲ中央線湯の花トンネル付近で、機銃掃射により壊滅した惨状を劇化して、恐怖を強く印象づける構成が効果的だった。
　機銃掃射の映像は、すべて戦闘機の翼に格納されたガンカメラによって撮影されており、そのカラー映像の鮮明度はすばらしい。パイロットの仕事ぶりをチェックする意図もあっての記録らしいが、その全記録がアメリカ国立公文書館に保存されている。
　それを発掘し、狙撃の時期や地名が特定されていないフィルムの内容を研究・調査して当時の実態を明らかにしたのは、大分県の「豊の国宇佐市塾」という市民団体の人々であって、公的機関ではない。
　日本では戦後、占領軍の到着以前に、戦中の諸記録をすべて焼却し、その煙は数日間都内に漂っていたとの話も残っている。今に続く歴史認識の欠如、とりわけ検証を嫌い、抹殺によってなかったことにする感覚はなお脈々と続いている。
　それを雄弁に物語ったのは、かつての敵国で、敵性語として追放した英語で、訥々と連帯を訴える首相の表情であった。
　（ふじひさ・みね　放送評論家）
( ２０１５年０５月０４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

主張／憲法施行記念日／初心生かし壊憲阻むことこそ

　戦後７０年の憲法記念日を迎えました。日本国憲法は、アジア・太平洋戦争での日本の敗戦から約２年後の１９４７年５月３日に施行されました。侵略戦争を反省し、国民主権、恒久平和、基本的人権の尊重などを原則にした憲法は、戦後７０年、憲法施行から６８年のいま、その解釈を踏みにじる解釈改憲でも、条文そのものを変えてしまう明文改憲でも､かつてない〝憲法破壊〟の攻撃にさらされています。日本を｢海外で戦争する国｣に変えてしまう〝壊憲〟の企てを、憲法の初心に立ち返り、力を合わせて阻止することが求められます。

正しいことを先立って
　「こんどの憲法では、日本の国が、けっして二度と戦争をしないように、二つのことをきめました」「みなさんは、けっして心ぼそく思うことはありません。日本は正しいことを、ほかの国よりさきに行ったのです」。６８年前の憲法施行の直後、当時の文部省が教科書として配布した『あたらしい憲法のはなし』の一節です。
　その２年前まで日本が繰り広げた侵略戦争で日本国民とアジア諸国民に甚大な被害を与えたことを反省し、憲法は前文で「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにする」決意を明らかにしました。９条で戦争を放棄し、戦力は持たないと決めたことが、『憲法のはなし』でいう「二つのこと」です。
　戦後７０年、日本はこの憲法の下で自ら戦争を起こしたことはありません。朝鮮戦争で機雷掃海に駆り出された日本人の戦死や、アメリカの戦争に協力しイラクに派兵された自衛隊員の帰国後の自殺などはありましたが、日本の自衛隊として一人の戦死者も相手国の犠牲者も出していません。憲法の平和原則が支えとなり、日本への国際的信頼を広げてきたのです。
　いま安倍晋三政権が進める、「集団的自衛権行使」の憲法解釈を変更し、アメリカが起こすどんな戦争にも自衛隊が参加する「戦争立法」の企ては、憲法前文と９条の平和原則を乱暴に踏みにじるものです。憲法記念日を前に安倍政権はアメリカと戦争で協力する新「ガイドライン」で合意し、まだ国会にも提出されていない「戦争立法」の成立を約束しました。憲法の平和原則はもちろん、主権と民主主義を破壊するものです。
　安倍政権が進める、沖縄県民の「島ぐるみ」の反対を押し切った米軍新基地建設や原発の再稼働、消費税増税や労働法制の改悪など暮らし破壊の数々の暴走も、憲法を破壊するものです。安倍政権と自民党は憲法そのものの明文改憲にも乗りだし、改憲案をまとめようとしています。いままさに憲法破壊政治との対決の正念場です。

国民がしっかり守り抜く
　「この憲法は、みなさんのつくったものです」「みなさんは、国民のひとりとして、しっかりとこの憲法を守ってゆかなければなりません」。『あたらしい憲法のはなし』はこうも指摘しています。
　改憲派は憲法を押し付けられたものだといいますが、戦後７０年、国民が改憲なしで、なんの不都合も感じなかったことが、憲法の国民への定着を証明しています。
　戦後７０年を「改憲の年」にするのは許されません。平和といのち、人権を守り抜くために、この憲法を守り生かしていく決意を新たにしようではありませんか。
( ２０１５年０５月０３日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

潮流

　戦後の自民党政治を特徴づけるとき、よく「対米従属」という言葉を使います。日本は独立した国なのに従属といえるか。学生時代、そんな議論を交わした覚えもあります▼訪米中の安倍首相を見ていると、やっぱりこの言葉がぴたりと当てはまります。なにしろアメリカのために、自国の国民多数が反対し、まだ国会に提出さえしていない「戦争立法」を夏までに成立させると誓ってしまうのですから▼ＴＰＰの妥結や辺野古の米軍新基地建設もしかり。見ているこっちが恥ずかしくなるほどの追従ぶり。「日本の独立と主権をないがしろにする異常な対米従属の姿勢を示す」（志位共産党委員長）と評されるのも当たり前です▼「我々の自由世界との関係において、米国との提携こそ最も重要である。両国間の協力の絆は、いよいよ強固でなければならない」。５８年前、安倍首相の祖父・岸信介が同じ米議会で行った演説です。今回の安倍演説もそれを意識したものでした▼国を揺るがすほどの反対運動を力で抑えつけ、岸首相が結んだ日米安保条約。それこそが、今につづく従属の源流です。戦後７０年たっても祖父の亡霊にしがみつく孫。その頭には、国民の安全や沖縄の平和、侵略や植民地支配によって苦しめられたアジアの人びとに寄せる思いはありません▼米議会の両院がそろう演壇で、顔を上気させながら得意げに英語で訴えた安倍首相。国民のくらしや命を守ることもしない日米同盟がもたらすものは「希望」どころか「絶望」です。
( ２０１５年０５月０１日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

【4月】

３０ 日本共産党第８６回メーデー・スローガン

　日本共産党は２８日、５月１日に開催される第８６回メーデーにあたり、次のスローガンを発表しました。

☆　「海外で戦争する国」への暴走ストップ！　「戦争立法」を許すな。「秘密保護法」を廃止せよ。
　憲法９条を守ろう。

☆　「正社員ゼロ」「残業代ゼロ」への道＝労働法制大改悪を阻止しよう。過労死ゼロへ、残業時間の上限を法定せよ。人間らしく働ける雇用のルールを確立しよう。
　中小企業への抜本的支援とあわせ、だれでも時給１０００円以上、全国一律最低賃金制を確立しよう。男女の賃金格差をなくせ。
　大企業の内部留保を活用し、大幅賃上げと安定した雇用の拡大で経済の好循環を。

☆　消費税大増税路線を中止せよ。医療・介護、年金・社会保障を拡充せよ。財政危機の打開は、富裕層・大企業の応分の負担と国民所得増で。

☆　農林水産業と食の安全、医療と雇用を土台から破壊し、経済主権をアメリカに売り渡すＴＰＰ（環太平洋連携協定）交渉から撤退せよ。
　家族農業と農協をつぶす「農業改革」反対。

☆　東日本大震災からの復興に全力をあげよう。被災者の生活と生業の再建に公的支援の拡充を。「安心して住み続けられる故郷」を取り戻そう。

☆　原発再稼働を許さず、「即時ゼロ」を。輸出の強行反対。
　福島原発事故の収束に全力をあげよ。政府と東電の責任で徹底した除染と全面賠償を。労働者の健康を守り、待遇の抜本的改善を。

☆　政党助成金の廃止、企業・団体献金の禁止を。小選挙区制を撤廃し、民意を反映する選挙制度へ抜本改革しよう。

☆　辺野古新基地建設反対、普天間基地無条件撤去。
　日米安保条約を廃棄し、米軍基地のない日本を。対等・平等の日米友好条約を結ぼう。
　北東アジアでも平和の地域共同体を。

☆　「戦後７０年」――歴史を偽造し、過去の侵略戦争を賛美する安倍首相の暴走を許すな。

☆　「被爆７０年」――核兵器禁止条約の国際交渉をすみやかに開始せよ。アメリカの「核の傘」から離脱し、非核の日本を。

☆　国民的共同を広げ、安倍政権を打倒しよう。
　暮らしと民主主義の守り手、反戦と平和の党＝日本共産党の前進で、新しい日本への流れを。
( ２０１５年０４月２９日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

シリーズ戦後７０年を考える／西松建設、中国人強制連行・強制労働／〝時効で終わり〟は正義に反する／弁護士鈴木敏之さん

原告勝訴の広島高裁判決を書いた元裁判長
　私は判決で、「その実態は奴隷的労働というに等しく、著しい人権侵害を伴うものであった」「戦後も後遺症や病気に悩まされ、経済的困窮を余儀なくされた」と実態を明らかにしました。
　私たち３人の裁判官は、裁判上明らかになった事実を積み重ねてゆけばゆくほど強い衝撃を受け、事実の重みを実感しました。
　一方、西松建設は強制連行・強制労働に関する資料に虚偽を記載したり、終戦後に国家補償金を得るなどしていました。
　〝時効だから終わり〟という西松建設の主張を認めていいのかどうか、徹底的に反芻(はんすう)しました。その結論として「損害賠償義務を免れさせることは著しく正義に反し、時効の援用は権利の濫用（らんよう）で許されない」と判断しました。最高裁もこの判断は認めたと思います。
　裁判官を退官し、弁護士になった直後の２０１２年１０月、初めて記念碑前の集いに招かれました。碑を仰ぎ見たら高裁判決と碑がつながり、感慨深くなって涙がこぼれそうになりました。
　草の根で裁判を支援し、和解事業を成し遂げたみなさんの信念に頭が下がります。正義を求める粘り強い努力が、事件の解決を大きく進めたと思います。
(２０１５年０４月２６日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

シリーズ戦後７０年を考える／西松建設、中国人強制連行・強制労働／絶え間ない意思疎通が両国つなぐ／曲啓傑さん（４８）

殴打され死亡した曲福先さんの遺族・西松安野友好基金運営委員会委員
　「受難之碑」の訪問は７度目ですが今回、初めて碑に刻まれたおじの曲福先の名前に触れました。おじの残酷な死を受け入れるのに時間がかかりました。
　記念碑には、連行された３６０人全員の名前を刻んでいます。過去を記録して忘れないという意味が込められています。
　歴史を変えることはできませんが、絶え間ない意思疎通で歴史問題は解決できます。私たちの和解事業が中国と日本の友好の懸け橋になってほしいです。
(２０１５年０４月２６日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

シリーズ戦後７０年を考える／西松建設、中国人強制連行・強制労働／牛馬以下の扱いだった

危険な作業、カビはえた食事、暴行死、病気も放置…／粘り強く事実認めさせ和解、賠償実現
　戦後７０年の節目の年に、私たちが向き合うべき歴史問題に中国人強制連行・強制労働があります。日本がアジア諸国と和解し、友好に向かうために忘れてはならない問題です。広島県の安野（やすの）発電所建設の場合を見ると―。
　本吉真希記者

　広島県山間部の安芸太田町。いまも電気を送り続ける中国電力安野発電所（水力）があります。アジア太平洋戦争末期の１９４４年８月、発電所の建設に中国人３６０人が強制連行され、過酷な労働を強いられました。
　当時、中国人は１日１２時間超の２交代で約８㌔の導水トンネルを掘る作業に従事。頭上から水が滴り落ちるなか、朝鮮人がダイナマイトで爆破した砕石をトロッコで運び出す危険なものでした。

２９人が死亡
　食事は１食につき饅頭（マントウ）１個か茶わんすり切り１杯のコーリャン飯。カビや砂が混じっていることも。薄手の上着とズボンだけで雪の積もる冬を越しました。
　当時１８歳の曲福先さんは４５年３月ごろ高熱を発し、朝食も取れない状態で仕事に就かされました。日本発送電（当時）から建設を請け負っていた西松組（現西松建設）の現場監督から殴る蹴るの暴行を受け、その夜、死亡しました。
　「病気になっても医者にみせず、収容所の寝床に放置されていた」。当時を知る８５歳の栗栖薫さんは「人間としての扱いではなかった」と告発します。
　日本の政府と企業による犯罪行為で、２９人が死亡しました。（原爆の死者５人を含む）

真の日中友好、民間交流積み重ねた先に／記念碑建立
　「牛や馬以下の扱いだった」と当時の辛苦を訴えた呂学文さん（２００３年、８２歳で死去）。呂さんらは９３年から再三来日し、西松建設に謝罪と補償を求めてきました。しかし西松建設はかたくなに拒否。生存者３人と遺族２人が９８年、西松を相手に広島地裁に提訴しました。
　地裁では原告が敗訴（０２年）しましたが、広島高裁で逆転勝訴（０４年）。最高裁は「日中共同声明で裁判上の個人請求権は放棄された」として、再び原告敗訴の判決（０７年）。しかし「上告人（西松建設）を含む関係者（日本政府）において、被害の救済に向けた努力が期待される」と異例の付言がつきました。加害と被害は事実として確定しました。
　違法献金事件で批判されていた西松建設は０９年１０月、付言を踏まえて被害者と和解しました。
　和解（骨子別項）に基づき、日中双方参加の「西松安野友好基金運営委員会」を設立。被害者と西松建設の連名で「安野　中国人受難の碑」を建てました。捜し出した２４８人の受難者・遺族に補償金を支給し、６回に分け希望者１７３人が安野を訪問。昨年１０月の和解事業報告書の発行をもって主な事業が終了しました。
　基金運営委員会委員長の内田雅敏弁護士は「事実の認識と承認こそ、和解を成り立たせる土台｣だと話します｡
　２０年を超える活動で実態を明らかにしてきた市民団体「広島安野・中国人被害者を追悼し歴史事実を継承する会」。同会事務局長の川原洋子さんは「同じ過ちを繰り返さないよう、毎年行う記念碑前の集いやフィールドワークを通して次の世代に歴史を継承していきたい。草の根の民間交流を積み重ねた先に、日中友好はある」と確信します。

和解の骨子
①事実と歴史的責任を認め、深甚な謝罪をする
②受難者・遺族に和解金２億５０００万円を支払う
③後世の教育のため記念碑を建て、追悼の集いを開き、受難者らを招く

○中国人強制連行問題／政府・軍・企業一体の犯罪
　日本は戦争拡大で労働力が不足し、１９３９年から終戦まで朝鮮人約７０万人（日本政府調べ）を強制連行しました。
　それでも足りず、政府は企業の要請に応え、「華人労務者内地移入に関する件」（４２年）を閣議決定。日本軍が中国の兵士や農民らを捕まえ、強制連行しました。政府、軍、企業が一体となって行った戦争犯罪です。
　日本外務省の「華人労務者就労事情調査報告書」（４６年）によると、３万８９３５人の中国人が連行されました。炭鉱、港湾、発電所など３５企業が経営する１３５事業場で重労働を強いられ、死者は６８３４人（５９年、厚生省）に上りました。
　働かせた企業は、中国人らに賃金も十分な食事も支給しませんでした。にもかかわらず終戦直後、賃金や経費の一部を国が補償するという、国家補償金を不当に取得しました。
(２０１５年０４月２６日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

インタビュー戦後７０年／桜美林大学教授・元「朝日」コラムニスト早野透さん／「戦後」と同い年、僕の誇り

戦争で一人も殺さず、殺されなかった
　元「朝日」コラムニストで桜美林大学教授の早野透さんに、「戦後７０年」への思い、日本を「戦争する国」にする安倍内閣の「安保法制」などについて聞きました。
　田中倫夫記者

　ぼくは１９４５年生まれで、「戦後」と同い年です。このことに誇りを持ってきました。
　東京大空襲の時は母親のおなかの中でした。父は出征していて、神楽坂あたりに住んでいた母は火の海の中、一人で一晩中逃げ回り、小石川植物園まで逃げて助かったそうです。今にして思えば、よくぞ助かってくれた。そうでなければぼくはこの世に出てこれなかった。だから、ぼくの身体には、戦争はダメだ、この「戦後」の平和を終わらせてはいけないという思いが染み付いています。ぼくは「戦後」がいとおしいのです。
　「戦後７０年」、戦争で一人も殺さず、殺されなかった。それは自民党政権だって誇りにしていい話です。
　ところが、それがおかしくなってきた。安倍首相はそろそろ「戦後」から脱却しようとか、「日本を世界の中心で光り輝く国にする」「列強をめざす」なんて言っています。
　いま安倍政権がめざす「集団的自衛権行使容認」の「安保法制」は話が込み入っていて、庶民には訳がわからない。存立危機事態、重要影響事態、武力攻撃事態…ナントカ事態というのがやたらにある。「平和」なら９条だけですむのに、これは、あれれという間に、今までできなかったとんでもないことをできるようにするという政府・与党の作戦です。
　米軍との共同作戦を定めていた「周辺事態法」を変え、日本の「周辺」をこえ、世界のどこでも行けることになる。アメリカが別の国と戦争をやったら助っ人にいく。他国に出かけ戦争すれば、それは「侵略」でしょう。要は「戦争をする国」への転換であり、いずれアメリカとともに「いつでもどこでも」戦争することになります。

自民おかしい
　もうひとつ心配なのは、突然でてきたシビリアン・コントロール（文民統制）を取り払う動きです。
　戦前の歴史をひもとけば軍部が国政で横柄な態度をとり始め、そのうち軍人が総理大臣になり軍国主義化がどんどん進んだ。文官優位は戦前の体制からのひとつの反省でした。武官の権限拡大には戦前回帰を感じます。武器輸出禁止三原則も骨抜きにされ、名前とは反対の輸出三原則になった。一気呵成（かせい）にもろもろのことが同時進行しています。
　ぼくは最近、インターネットのテレビ局「デモクラＴＶ」で「保守心髄」という番組を始めました。最近の自民党はおかしい、本来の保守とはどういうものだったのか問い直したいと、自民党や保守系の政治家、元政治家に話を聞く企画です。
　やってみると驚きました。元防衛庁長官で自民党元幹事長の山崎拓氏は「安倍首相は軍国主義志向だ。戦前回帰だ」「今まで日本は軍事力を外に向けないことになっていた。安倍さんの『積極的平和主義』は、軍事力で世界に『貢献』していこうというものだ」というのです。自他共に認める改憲派、タカ派の人も、軍事力行使は自国防衛のみと考えていたんですよ。
　安倍首相は戦後７０年談話で、戦後５０年の「村山談話」の「侵略」と「植民地支配」への「反省とおわび」を消そうとしている。しかし、この談話は自民党と社民党、さきがけの連立政権で、タカ派大臣も閣議で賛成しています。自民党はそれまでの首相答弁で「侵略」を認めるのに躊躇（ちゅうちょ）していたのに、村山首相という人を借りてけりをつけたのです。また元に戻すんですか。

生活の中から
　安倍首相は次の参院選で勝ち、衆参で３分の２をとり改憲に進む考えです。次の参院選はものすごく重要です。そこへの折り返し点が今年の「戦後７０年談話」と「安保法制」です。
　ですから、ここは共産党に頑張ってほしいと思います。衆議院で議席が増え、新人議員が質問デビューして活躍している。若い力を感じるのは、やはり共産党です。憲法、安全保障、戦争と平和の問題はもちろんですが、生活の問題を重視してほしい。これからは介護も福祉も切り捨てられていく。９条改悪を阻止する力は、生活の中から生まれます。生活と憲法をあわせた、理念と現実を合わせた取り組みを期待したい。共産党は人々の苦しみ、悩みを吸い上げていく能力を持っているはずですから。

はやの・とおる＝１９４５年生まれ。東京大学卒。６８年朝日新聞社入社。政治部次長､編集委員､コラムニストを歴任。２０１０年から桜美林大学教授
(２０１５年０４月２６日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

改善は歴史認識前提

　【ジャカルタ＝時事】中国の王毅外相は２３日、インドネシアのジャカルタで取材に応じ、今後の日中関係について「未来を切り開くにはまず歴史を直視できなければならないというのがわれわれの立場だ」と繰り返し強調、本格的な関係改善には安倍政権の歴史認識が前提になるとの考えを改めて示しました。
　王外相は「（戦後７０年となる）今年は重要な年だ。日本にとって重要な機会であり、同時に厳しい試練でもある」と主張。安倍晋三首相が今夏に発表する戦後７０年談話を念頭に、「日本が隣国の懸念を重視し、歴史を直視する積極的なメッセージを対外的に発信することを望む」と要求しました。
( ２０１５年０４月２６日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

第２次世界大戦終結７０年／元中国総領事王泰平さんに聞く／日本には試練でありチャンスでもある

　第２次世界大戦終結７０年の今年、日中は歴史問題をどう解決したらいいのか、１９７２年の日中国交正常化にも関わり、札幌、福岡、大阪の中国総領事を歴任した王泰平さんに聞きました。
　（北京＝小林拓也　写真も）

　１９７２年の中日国交正常化の際に発表された「共同声明」で、日本側は「過去において日本国が戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し、深く反省する」と表明しました。双方は和解に達し、両国関係は新たな章を開きました。

中国人民の感情忘れてならない
　４０年以上たった今日、歴史問題をめぐるいざこざは依然として存在しています。この責任は中国側にはありません。
　８０年代以降、日本国内で歴史教科書改定問題、政治家の靖国神社参拝、南京大虐殺の否定など軍国主義の侵略が引き起こした事件を抹殺・歪曲（わいきょく）する動きが出てきました。これらは、中日関係の政治的基礎に挑戦し、中国人民の感情を著しく傷つけ、中国政府と人民は反応せざるを得ませんでした。
　日本の政治家は中国人民の感情を忘れてはいけません。加害国が被害国人民の感情に配慮しないばかりか、被害者の傷口に塩を塗り続けるのなら、両国間の溝は深くなるばかりです。
　歴史を正確に認識し向き合うことが、日本がアジア諸国と和解し、アジアの大家族に戻る必要条件です。戦後７０年の今年、日本にとっては試練であり、チャンスでもあります。日本政府は、真剣に考え、誠意をもって向き合い、適切に問題を処理し、国際社会の忠告を聞き流すことがないようにすべきです。
　安倍晋三首相は８月に「戦後７０年談話」を発表する予定です。談話は、①過去②戦後日本が歩んだ平和発展の道の世界への貢献③「積極的平和主義」の宣伝―の３段階になるようです。

うわべだけなら古い道へ疑念が
　戦後日本のアジアと世界への貢献は、日本が平和発展の道を歩んだからです。しかしこの平和発展の道は、歴史の教訓を正確にくみとり、平和憲法を守ってきた結果です。さらに言えば、日本共産党などの革新政党と多くの日本国民が苦しみながら努力して勝ち取った成果です。安倍首相はこのことを認識すべきです。
　もし「安倍談話」が、軍国主義の歴史問題について、うわべだけですませ、過ちを覆い隠し、一方で「積極的平和主義」を強調するならば、憲法を変えて軍拡を進め、海外派兵の推進という動向を人々に思い起こさせ、日本が戦後の平和発展の道を抜け出し、古い道を再び歩むのではないかという疑問を抱かざるを得ません。
　「安倍談話」が「村山談話」（９５年）の中にある「植民地支配、侵略、反省、おわび」の四つのキーワードをどう扱うのかが、焦点になっています。
　安倍首相は、「村山談話」や、「慰安婦」問題で旧日本軍の関与と強制性を認めた「河野談話」（９３年）について、抽象的に肯定し、具体的に否定するという態度をとっています。８月に発表される「安倍談話」がこのような調子になるのならば、誠意にかけた談話であるとみなされます。そういう談話は、ごまかしてその場をやり過ごすものでしかありません。

　１９４１年生まれ。６５年、北京外国語大学を卒業し、中国外務省に入省。６９年から「北京日報」の特派員として日本に滞在し、日中国交正常化にも関わりました。駐札幌、福岡、大阪中国総領事を歴任。
( ２０１５年０４月２３日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

休憩室／岩本多代さん／精神は成長期です

　こんなふうに年を重ねられればいいなあ。ＮＨＫテレビのドラマ「紅雲町珈琲屋こよみ」（２９日　後７・３０）で、富司純子さんふんする店主の主人公の幼なじみ役。２人が語らう場面に人生の哀歓が漂います。
　「富司さんは両足がしっかり大地についた方。私は毎回、手探りです。恥も含めて自分の生きてきた中のどこかをちょっと取り出してやっているんじゃないでしょうか。
失敗したり間違ったり。でも傷ついた人間だからこそ、前を向いて生きていける。そういうドラマです」
　いま、取り組んでいるのは女優たちによる朗読「夏の雲は忘れない」。広島、長崎の被爆体験をもとにした公演です。女優１６人が「会」を作り、各地の人々と一緒になって７、８月の舞台を準備中。
　「被爆なさった方々の痛みをどう受け止められるか。お話をうかがったり、歴史の勉強をしたり。言葉の重みをひしひしと感じながら続けさせていただいてます。戦後７０年、絶対に忘れてはいけないことだと思っています」
　グッと力を込めました。「十分、年をとっているんですよ。今の自分をしっかり受け止めて」。そう言って、フーと表情がなごみました。「精神は成長期ですね」。７５歳です。
　記事・渡辺　俊江
( ２０１５年０４月２５日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

新基地作業即時停止を／日米政府のどんな強圧にも屈しない／沖縄・名護市議会が意見書可決

　沖縄県名護市議会は２４日、臨時議会を開き、同市辺野古への米軍新基地建設をめぐり、翁長雄志知事が沖縄防衛局に出した作業停止指示の効力を一時停止した林芳正農林水産相の決定に抗議し、防衛局に作業を即時停止することを求める意見書を、賛成多数（賛成１５、反対１１)で可決しました｡
　意見書は、防衛局の申し立てを、同じ国の機関が審査して中立・公平が保たれるのか疑問だとして、「法の逆用、悪用で法治国家として到底許されない決定だ」と抗議しました。
　意見書はまた新基地建設の中止、普天間基地は無条件で閉鎖・撤去を盛り込んだ「建白書」実現を求める沖縄の断固たる民意は、昨年の名護市長選と同市議選、県知事選、県議補選、衆院選の四つの小選挙区の結果で明確に示されていると強調しました。
　その上で「戦後７０年、うちなんちゅ（沖縄県民）の尊厳をかけた新基地建設反対、平和で誇りある豊かな沖縄をめざす翁長知事と県民の民意は、日米両政府のどんな強圧をもっても断じて屈することはない」と述べ、沖縄の民意を踏みにじる政府の姿勢に抗議し、新基地建設の断念を強く求めています。
( ２０１５年０４月２５日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

潮流

　インドネシアの国民がサッカーの代表戦などでよく口ずさむ歌があります。快活なメロディーに気持ちを奮い立たせるような歌詞。「ハロハロ・バンドン」です▼第２次大戦直後に独立宣言。しかしそれを許さない宗主国オランダから攻撃されます。迫る軍を前に泣く泣く美しいバンドンの町に火をつけ、撤退。「友よ、町を奪い返そう」との歌に植民地支配にあらがう決意を込めました▼独立象徴の地で、民族自決権を求めてアジア・アフリカの国々が集まったのが「バンドン会議」の始まりでした。反共の立場に立つことでアメリカから後押しされた日本も参加。アジアに惨禍をもたらした国の代表は「黙って、そっとつま先歩きで」会場に入ってきたといいます。（『バンドン会議と日本のアジア復帰』）▼安倍首相がバンドン会議６０周年の首脳会議で演説しました。戦後７０年談話が注目されているなか、日本が過去に犯した植民地支配と侵略戦争への反省やおわびは一切なし▼口にした｢先の大戦の深い反省｣も自分の思いではありません。痛めつけたアジア諸国を前にして、あくまでゆがんだ歴史認識を押し通そうとする不遜さがにじみ出ます▼侵略を美化する靖国神社に真榊を奉納し、同じ立場に身を置くことを表す首相。相次ぎ参拝する閣僚。世界にさらす無反省な姿は和解と友好を遠ざけています。ともに生き、ともに平和と繁栄を築こうと会議で呼びかけた安倍さん。みずからの存在が、その妨げになっていることに気づきませんか？
( ２０１５年０４月２４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

安倍政権の歴史認識について／志位委員長が記者会見

　日本共産党の志位和夫委員長は２３日、国会内の記者会見で、バンドン会議記念６０周年首脳会議での安倍晋三首相の演説など、安倍内閣の歴史認識についての受け止めを問われて、次のようにのべました。

「村山談話」の核心的命題をことごとくいわない姿勢がはっきり出た
　安倍首相の演説についていえば、私は、植民地支配終結と民族自決権を高らかにうたったバンドン会議の６０周年という非常に重要な国際会議の場で、日本の首相が、過去の日本の歴史に対して、どういう基本認識を持っているかが問われたと思います。
　演説のなかで首相は、「村山談話」の一番核心的な命題をことごとくいいませんでした。すなわち、日本が過去、「植民地支配」と「侵略」を行ったこと、そのことに対する「痛切な反省」と「おわび」――一番の核心的命題をことごとくいいませんでした。「反省」という言葉が一言入っていますが、これも自分の反省ということをのべたわけではありません。かつてバンドン会議で、日本が反省の意をのべたという、過去の事実について言及しただけで、自分の――日本の首相としての反省をのべたわけではありません。
　「植民地支配」、「侵略」、「反省」、「おわび」――こういう「村山談話」の一番の核心的命題をことごとくいわないという姿勢がはっきり出た発言だったと思います。

こうした姿勢での「戦後７０年談話」なら有害無益
　そして民放番組で、首相は、「戦後７０年談話」では、「村山談話」でのべた一つひとつのことをいちいち書く必要はないといいました。そういう談話だったら必要ないということを言明しました。
　しかし、「戦後７０年談話」で問われるのは、日本がかつて行った「植民地支配」と「侵略」への「痛切な反省」と「おわび」という、この一番の核心的命題を引き継ぐのか、それとも放り投げてしまうのか、これがまさに「戦後７０年談話」で問われるわけです。ですから、過去いったことはもう書く必要はないというような「戦後７０年談話」だったら有害無益であって、出すべきではないと、はっきりいっておきたいと思います。
　首相は、かつていったことを繰り返す談話だったら必要ないといいましたが、それ（「村山談話」の核心的命題）をきちんといわない談話は、まさに必要ありません。

閣僚の靖国参拝――侵略戦争を美化して恥じない国と世界に発信
　口が裂けても、「植民地支配」と「侵略」、それに対する「反省」と「おわび」ということは、いわないということがはっきりしたのが、この間の一連の首相の発言です。
　そして、同時期に、閣僚が靖国参拝を行ったわけです。これは、日本は過去の戦争を反省しない国だと、侵略戦争を美化して恥じない国だということを世界に発信したということにほかなりません。（関連２面）
( ２０１５年０４月２４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

中国大使、７０年談話に「反省」盛り込む必要

　中国の程永華駐日大使は２２日、東京都内で講演し、安倍晋三首相が今夏に発表する戦後７０年談話について、「かつての戦争被害国に対する配慮や反省を示せるかどうか、そういう角度から関心を持って見守っている」と述べ、日本として先の大戦への反省を盛り込む必要があるとの考えを示しました。また、「具体的にどの言葉を入れるか、中国側から要求しているわけではない」とも語りました。
　中国が主導するアジアインフラ投資銀行（ＡＩＩＢ）に関しては、「（日中両国は）ともに、地域の経済振興や発展に、手を携えて協力していかなければならない」と指摘。程大使は日本の参加について「中国の立場からは歓迎する。日本はアジアで重要な国だ」と語りました。
( ２０１５年０４月２３日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

バンドン会議安倍首相演説／首相、歴史と向き合えず／世界に侵略美化の姿さらす

　１９５５年のアジア･アフリカ会議で採択されたバンドン１０原則は､国連憲章の平和､基本的人権､主権平等､紛争の平和的解決の原則を踏まえ､民族自決の原則をいっそう明確にしたものでした｡それは､その後の植民地の一掃と民族独立の流れを強くすることに貢献してきました｡２００５年の５０周年記念首脳会議､今回の首脳会議のいずれも､｢バンドン精神｣の再確認が焦点とされてきました｡
　過去の侵略と植民地支配によって、特にアジア諸国に多大な犠牲を強いた日本にとって、当然、過去の侵略戦争と植民地支配への歴史認識が問われる場となるはずです。
　だからこそ、０５年の会議では、小泉純一郎首相（当時）が、演説の冒頭から、日本の植民地支配と侵略によってアジア諸国の人々に多大な損害と苦痛を与えたことを強調し、「痛切な反省と心からのおわびの気持ちを常に心に刻みつつ」と述べたのでした。この認識は、戦後６０年の小泉首相談話（０５年８月１５日）にも反映されました。
　ところが、安倍首相は２２日の６０周年記念首脳会議での演説で、日本による植民地支配と侵略の事実には言及せず、「おわび」にも一言も触れませんでした。
　それどころか、首相は、演説の前日には過去の日本の侵略戦争を美化し、正当化する靖国神社に真榊（まさかき）を奉納しています。靖国神社への真榊奉納は、日本の首相が同神社と同じ立場に身を置くことを意味します。
　植民地解放と民族自決の実現を高らかにうたった歴史あるバンドン会議の記念首脳会議で、安倍首相は、植民地支配と侵略の事実に正面から向き合おうとせず、侵略戦争を美化する姿をさらすことになりました。
　（山田英明）

歴史認識にかかわる首相の主な談話・発言

戦後５０年／村山富市首相談話
　植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。（中略）この歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのお詫（わ）びの気持ちを表明いたします。（１９９５年８月１５日）

戦後６０年／小泉首相のアジア・アフリカ首脳会議での演説
　我が国は、かつて植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。こうした歴史の事実を謙虚に受けとめ、痛切なる反省と心からのお詫びの気持ちを常に心に刻みつつ（略）（２００５年４月２２日）

戦後７０年／安倍首相のアジア・アフリカ首脳会議での演説
　〝侵略または侵略の脅威、武力行使によって、他国の領土保全や政治的独立を侵さない〟〝国際紛争は平和的手段によって解決する〟。バンドンで確認されたこの原則を、日本は、先の大戦の深い反省と共に、いかなる時でも守り抜く国であろう、と誓いました。（２０１５年４月２２日）
( ２０１５年０４月２３日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

真榊奉納問題／韓国「国際秩序否定」

　【ソウル＝時事】韓国外務省報道官は２１日の定例記者会見で、安倍晋三首相の靖国神社への真榊（まさかき）奉納について「国際秩序を否定する行為だ」と批判しました。外務省はこれまで首相の真榊奉納に対し、批判する「論評」を出してきましたが、この日は質問に答えて言及するにとどめました。日本への一定の配慮とみられます。
　また、今夏の戦後７０年談話に「侵略」や「おわび」などの文言を盛り込まない考えを安倍首相が示したことに対し「首相が歴代内閣の談話と歴史認識を継承する立場を公言してきた点に注目している」とくぎを刺しました。さらに「終戦７０年、韓日国交正常化５０年の象徴的な年に、７０年談話はもちろん、アジア・アフリカ会議（バンドン会議）や米議会演説などで、そのような歴史認識をはっきり表明することを期待する」と強調しました。
( ２０１５年０４月２２日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

侵略美化の靖国に真榊／７０年談話、「侵略」書かず／安倍首相

　安倍晋三首相は２１日、過去の日本の侵略戦争を正当化する靖国神社（東京・千代田区九段北）へ、真榊を奉納しました。同日から始まった春季例大祭にあわせたもので、「内閣総理大臣　安倍晋三」の肩書で納めました。
　靖国神社は、東条英機元首相らＡ級戦犯を合祀しているだけでなく、軍事博物館「遊就館」を中心に日本の侵略戦争を美化する宣伝センターの役割を果たしています。そこへの参拝や真榊奉納は同神社と同じ立場に身を置くことを示すものです。
　安倍首相の真榊奉納について、菅義偉官房長官は２１日の記者会見で、「首相の私人としての行動であり、政府として見解を申し上げることはない」と擁護。塩崎恭久厚労相も同日、靖国神社に真榊を納めました。
　安倍首相はまた、２０日のＢＳ番組で、今夏に発表する戦後７０年談話に「侵略」や「おわび」などを盛り込むかどうかについて「（村山富市首相談話などと）同じことなら談話を出す必要がない。（過去の内閣の歴史認識を）基本的に引き継いでいくと言っている以上、これをもう一度書く必要はない」と述べ、７０年談話から「植民地支配と侵略」という歴代談話の核心を削除する姿勢を改めて強く示しました。アジア諸国だけでなく欧米から強い反発を招くことは必至です。（関連２面）

真榊
　「真榊（まさかき）」の「真」は美称。常緑樹の「榊」は祭具として神前に供えられるもの。榊の枝に白い紙でつくった「白幣（はくへい）」などをつけて祭祀（さいし）が行われてきました。現在では赤または緑・黄・赤・白・青の五色の絹で飾るなど、さまざまな様式のものがあります。神前に供えて神に祈願する祭具である「真榊」の神社への奉納は、宗教行為そのものです。
( ２０１５年０４月２２日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

中国主席と会う用意

　安倍晋三首相は２０日夜、ＢＳフジ報道番組で、２１日からのインドネシア訪問に合わせた中国の習近平国家主席との日中首脳会談について「何も決まっていないが、自然な形でそういう機会が設けられるなら、お目にかかる用意がある。意思の疎通をすることは必要だ」と述べました。
　戦後７０年談話に「侵略」や「おわび」などを盛り込むかどうかについて「（過去の談話と）同じことなら談話を出す必要がない。（歴代内閣の歴史認識を）引き継いでいくと言っている以上、書く必要はない」と述べました。
　沖縄県の翁長雄志知事が首相との会談で、米軍新基地建設反対の沖縄の民意を米国のオバマ大統領に伝えてほしいと言われたことについて「（翁長知事と）会談したことをお話しするかもしれない。そういう状況があるということは話しをしようと思う」と語りました。
( ２０１５年０４月２１日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

２０日

六本木も米基地いらない／撤去求めデモ行進／東京

　東京都港区の米軍麻布ヘリ基地(赤坂プレスセンター)の撤去を求める集会が１７日夜､隣接する青山公園で開かれ､雨降る中を約１３０人が参加しました。主催は麻布米軍ヘリ基地撤去実行委員会で､今年で４８回目です｡
　主催者あいさつで川崎悟実行委員長は、横田基地などから麻布まで米軍ヘリが超低空飛行を繰り返している実態を報告。「戦後７０年、異常な在日米軍の駐留をなくし、対等な日米関係の実現をめざそう」と訴えました。
　横田基地もいらない！市民交流集会実行委員会の盛岡暉道弁護士、東京地評の寺下章夫事務局次長らが連帯のあいさつをしました。
　日本共産党の池内さおり衆院議員、白石たみお都議、風見利男、大滝実、沖島えみ子の各港区議が参加。池内氏は「日本のどこにも基地はいらない。この声を広げぬき、ヘリ基地撤去を勝ちとりましょう」と話しました。
　集会後、参加者は基地周辺など区内を「六本木に米軍基地は、いらないぞ」と唱和しながらデモ行進しました。
( ２０１５年０４月１９日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

御真影と学校　「奉護」の変容／小野雅章著／評者岩本努立正大学兼任講師

近代天皇制における役割を解明
　御真影とは天皇・皇后の肖像写真。戦前の学校儀式時に子どもたちに最敬礼をさせ、また登下校時にこれを格納した奉安殿に拝礼することを強いて、無意識のうちに「天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス」（明治憲法）の精神を強く植え付けた。その一方で、学校管理者には、教育勅語発布の翌年の１８９１年１１月に、御真影は教育勅語謄本と共に「最モ尊重ニ奉置セシムヘシ」という文部省訓令を出して厳重な保管を義務付けた。
　本書は、御真影政策はなぜ考えられるようになったのかの根源的な考察からはじめ、普及と奉護問題の発生、学校儀式と御真影の神格化、奉安殿の普及、児童生徒の命より重視された御真影の疎開の模様、沖縄戦下の御真影奉護隊の苦闘、敗戦と戦後の御真影・奉安殿の処理など近代天皇制において御真影の果たした役割を文献、公文書などを博捜して解明する。特長の一つは従来の御真影研究の特長と到達点を細大漏らさず紹介していることで、今後の御真影研究は本書を踏み台にしなければ前に進めないであろう。
　１９２０年代に単なる事故死を御真影奉護のための死とする美談が醸成されていく事例の紹介と分析がほしい｡が､戦後、政界・行政側で御真影政策への批判と総括がされず（軍装はふさわしくないとして回収されただけ）、戦後に出された御真影下付の通牒は「現在においても有効で」「御真影は象徴天皇制へと転成した天皇の『分身』としての役割を…担い続けている」とする指摘は重い。御真影を〈ごしんえい〉と読めない学生が多数（３０名中読めたのは１名）の戦後７０年の本年。本書は御真影研究の金字塔だと思う。

　おの・まさあき　５９年生まれ。日本大学文理学部教授。
( ２０１５年０４月１９日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

「侵略」言及しない方向／バンドン会議で首相

　安倍晋三首相は２２日、インドネシアの首都ジャカルタで開かれるアジア・アフリカ会議（バンドン会議）６０周年記念首脳会議に出席し、演説します。戦後７０年の節目を踏まえ、先の大戦への反省を表明するものの、「侵略」や「おわび」には言及しない方向です。
　演説の内容は、首相が夏に発表する戦後７０年談話にもつながるとみられ、中国と韓国も注目しています。
　２００５年４月のバンドン会議５０周年記念の首脳会議では、当時の小泉純一郎首相が演説し、戦後５０年の村山談話の表現を受け継ぎ、「植民地支配と侵略」に対する「痛切なる反省」と「心からのおわびの気持ち」を表明。この文言は戦後６０年の小泉談話でも踏襲されました。
　今回の演説で「おわび」に言及する可能性について、政府高官は「（安倍首相は）今までだって言っていない。（演説は）反省、和解、国際貢献の流れだ」と否定的な見方を示します。
( ２０１５年０４月１９日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

新基地建設への抗議行動／県内外から連日参加／沖縄・辺野古

　政府･沖縄防衛局による米軍新基地建設に向けた海底ボーリング(掘削)調査が強行されている沖縄県名護市辺野古｡その一方で市民による海上や米海兵隊キャンプ･シュワブゲート前での反対･抗議行動は連日続けられ､県内外から多くの人たちが訪れ､行動に参加し､激励しています｡
　鹿児島市の牧師・阿野敏郎さん（５７）は１６日、「戦後７０年の節目の年に沖縄の痛みを知り、学びたい」と牧師会の仲間３人と参加しました。
　沖縄ハワイ協会会長で大田昌秀県知事時代に知事公室長を務めた高山朝光さん（８０）＝那覇市＝は「（基地返還について）日本政府には交渉できるだけの本気度が無い。大事なのはアメリカを動かすことだ。基地を造らせないよう頑張りましょう」と激励しました。
　沖縄の基地問題は海外メディアも注目しています。ＢＢＣ（英国放送協会）のルパート・ウィングフィールド・ヘイズ特派員は同日午前に抗議船に乗り込み、大浦湾で行われている新基地建設の現場を取材しました。
　「辺野古の問題は移設問題というだけでなく、日本と沖縄、日本とアメリカの問題。沖縄の戦後７０年の歴史も含め、皆さんの思いを伝えたい」。安倍晋三首相が訪米する前に放送する予定です。
　広島の被爆者で、長年原爆の語り部を続けてきた米澤鐵志さん（８０）＝京都府＝は北谷（ちゃたん）町での講演後、１２、１３の両日、ゲート前の行動に参加。たびたび沖縄を訪れ、行動に参加しているという米澤さんは、「原爆は一瞬だったが、沖縄戦でも十何万人もの無辜（むこ）の人々が殺された。広島、長崎、沖縄はつながっている」と話します。
　「沖縄の基地は、住民を収容所に押し込めたまま、勝手に取り上げて造られたもの。これは強盗と同じではないか。即時全面返還すべきです」
( ２０１５年０４月１９日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

拡大する灰色捜査／住民票、口座情報、ＤＮＡまで警察の情報収集／元北海道警釧路方面本部長原田宏二さん（７７）

市民に知らせ歯止めかけよう
　秘密保護法、盗聴法拡大、「司法取引」など、市民を監視したり萎縮させ、警察の権限強化につながる動きが強まっています。その危険性を元警察幹部で北海道警の裏金を告発した原田宏二さんに聞きました。
　（聞き手・矢野昌弘）

　いま、戦後７０年の談話がニュースですね。侵略戦争だと謝りたがらない人がいるでしょう。警察もそれと似たところがあるんです。

公安警察が息吹き返し
　戦後すぐは、戦前の警察国家への反省から、自治体警察でした。それが朝鮮戦争や東西冷戦で変わります。
　警察法改正(１９５４年)で、表向きは都道府県警だけども、全国の本部長人事や予算を警察庁のキャリア官僚が支配する、国家警察を指向しだした｡そして､特別高等警察(特高)の流れをくむ公安警察が息を吹き返し､力を持つようになった｡
　その仕上げは、秘密保護法でしょう。取り締まりを主に担うのは公安警察、中でも外事警察です。秘密保護法は間違いなく警察権限強化法です。
　同法には、秘密を扱う人物の身辺調査を「行政機関の長」の判断で行う｢適性評価｣があります。
　これが拡大解釈され、原子力や防衛産業など、あらゆる分野の個人情報を警察が集める法的根拠にされないか、危ぐしています。

「令状主義」なし崩しに
　日本の刑事司法では、逮捕、捜索、差し押さえなどの強制捜査は、裁判官の令状が必要です。それがいま「令状主義」がなし崩し。法的根拠のない事実上の強制捜査が横行しています。
　警察は令状なしに「任意」で住民票から口座情報まであらゆる個人情報を集めることができます。
　究極の個人情報、ＤＮＡのデータベースづくりは法整備することなく、「任意」で集めている。監視カメラ映像による捜査、ＧＰＳ端末（衛星利用測位システム）での〝尾行〟、Ｎシステムの〝検問〟もそうです。運用実態すら明らかでない。
　私に言わせると、これは「グレー（灰色）ゾーン捜査」。「グレー」が、どんどん広がっている。歯止めをかける必要があります。
　警察の三大腐敗は、冤罪（えんざい）、裏金、警官犯罪です。共通するのは、コンプライアンス（法令順守）の欠如です。隠蔽（いんぺい）体質も深刻だし、誤りを認めない。
　日本共産党の緒方靖夫国際部長（当時）宅盗聴事件では、警察は認めないまま、うやむやにしました。今度は対象を広げて、自前の施設で盗聴できる法案を国会に提出しました。
　司法取引も問題です。銃刀法が９３年に改正（拳銃等を提出して自首した場合には刑を減免)された時です｡警察は拳銃の押収実績を上げるため暴力団と取引し、首なし拳銃（拳銃だけを出させ、不法所持を見逃す）の摘発を繰り返しました。
　警察がどんな捜査をしているか、市民に知られていません。自分の身に降りかかってはじめて「警察がこんなことを」と驚く。いま、考えるべき時です。

　はらだ・こうじ　１９３７年生まれ。５７年に道警に入職。警察庁に出向、山梨県警、熊本県警の捜査二課長などを経て、９５年に道警釧路方面本部長（警視長）で退職。２００４年に道警の裏金を証言。著書に『警察内部告発者』（講談社）、『警察崩壊』（旬報社）など。『犯罪捜査学入門（仮題）』（講談社）を出版予定。
( ２０１５年０４月１６日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

「米国に日本の役割知らせる」／首相、公明代表に説明

　安倍晋三首相は１５日昼、公明党の山口那津男代表と首相官邸で約１時間会談しました。この中で首相は２６日からの米国訪問について、米上下両院合同会議での演説などを念頭に「日本の役割、存在感を米国の人に知ってもらう機会をつくりたい」と述べ、戦後７０年の両国の歩みを踏まえ、日米同盟の重要性を米国民に訴える考えを示しました。
( ２０１５年０４月１６日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦後７０年に思う／ブドウ酒が兵器にされた時代／今井敬潤

　朝の連続テレビ小説「マッサン」。好評で視聴率も高かったというが、その中に非常に興味深いシーンがあった。北海道余市のマッサンのウイスキー工場に、兵器製造に不可欠であった酒石(酒石酸)を採取するためブドウ酒をつくるよう海軍から要請が入る場面だ。
　ブドウの果汁には酒石酸という有機酸が特異的に含まれ、ワインの発酵・貯蔵中に発酵桶の壁に結晶として生じ、酒石と呼ばれる。市販酒ではこれがクレームとなることがあるため、出荷後のワイン中に析出しないよう瓶詰め前に処理されることが多い。

果樹制限
　さて、日中戦争が泥沼化し､アジア･太平洋戦争に突入した日本は戦時統制経済を強め、「食糧増産」が叫ばれるなか、１９４１年４月には果樹増殖禁止令が出され果樹栽培は大きく後退することになっていく。長野県では果樹栽培者は非国民扱いされ、警察の取り締まり、翼賛壮年団による整理抜根など厳しい排除運動が実施された記録がみられ、果樹生産の制限が徹底的に行われたことがわかる。
　このような中で、４４年初めに軍需省からの要請で、同年度分として割り当て済みの果樹園整理のうち、ブドウのみ整理対象から除外する旨の通知がくだされた。それは、海軍が急きょ導入した音波探知機の装置に、酒石が原料のロッシェル塩（酒石酸カリウムナトリウム）が必要となったからである。ロッシェル塩は大きい結晶を作り、強力な圧電効果（別項）を有するため、音波を敏感にキャッチする聴音材になった。
　４２年６月のミッドウェー海戦で大打撃を受けた日本海軍は、すぐさまドイツからロッシェル塩を用いた対潜水艦探査技術を導入し、４３年初頭から水中聴音機の量産体制に入ることになった｡ときの東条内閣は､ロッシェル塩製造に必須の酒石の大量入手のため、ブドウ酒の増産を決議している。

酒石動員
　４３年５月、海軍から依頼を受けた甲府市のサドヤ醸造場に全国のブドウ酒醸造業者から酒石が収集され、精製がなされた。同醸造場内にはロッシェル塩工場があり、ここで生産が行われた。４４年３月のこととして、『ぶどう酒物語』（山梨日日新聞社）には、「〈ブドウは兵器だ〉のポスターが生産地の各要所にはられた」とある。埼玉県でも、同様のポスターが各醸造所に貼られ、額に入れ掲げられた所もあったと言われている。
　当時ブドウの主要生産地であった山梨県、長野県、大阪府では、軍需物資としての酒石の供出が確認できる。ちなみに、当時のブドウ生産量は少なかった北海道余市においても同様なことを当地の郷土誌にみることができる。
　第２次世界大戦末期の短期間のことであるが、全国各地のブドウが｢総動員｣され、ロッシェル塩の原料の酒石を採取するためだけの品質不良のブドウ酒製造に用いられたのである。日本の果樹栽培と利用の歴史を語る上でも特記すべきことである。ワインを前に戦後７０年の年に考えたい。

圧電効果
　水晶や特定のセラミックに圧力を加えることで電圧が発生する現象。

　いまい･きょうじゅん１９４９年生まれ。大阪府立大学大学院客員研究員（果樹園芸研究）｡『栗』（法政大学出版局）ほか｡
( ２０１５年０４月１４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

インタビュー戦後７０年／俳優加藤剛さん／平和のために演じる使命／憲法は亡くなった人々の夢の形見

　「戦争を伝え、憲法を守ることは俳優の使命」と語る俳優・加藤剛さん（７７）。俳優としての原点と、憲法、未来の子どもたちへの思いを聞きました。
　大塚武治記者

　戦後７０年、今が憲法にとって一番の危機だと思います。
　歴史の歯車を逆に回す動きを何とか止めたくて、毎日寝る前に、今日は何ができたか、あすは何ができるかと考え、眠れないことがよくあります。
　いろいろ解釈を変えて９条を骨抜きにしよう、戦後つくってきた民主主義のしくみを壊してしまおう。国を動かしている人たちが、なぜそんな世の中にしたいのか、戦争を体験した僕にはまったく理解できません。本当の戦争というものを知らないからでしょうか。

肉親が犠牲に
　――加藤さんは１９３８年、静岡の御前崎の浜辺の町で、７人きょうだいの６番目として生まれました。
　上空を、東京方面を爆撃しにいくＢ２９がよく飛んでいきました。近くに焼夷（しょうい）弾が落とされて家畜が死に、空中戦で日本の戦闘機が撃墜され…。恐ろしい光景が目に焼き付いています。
　身内も亡くしました。
　実の兄のように慕っていた軍医の義兄は、北マリアナ諸島のテニアン島玉砕で頭を撃たれて即死しました。指揮刀を握ったままだったそうです。戦死公報を受け取った、妻である一番上の姉は、その場で気絶しました。
　戦後は、食糧難と物資不足がいっそうひどくなりました。二番目の姉が結核を患い、嫁ぎ先から戻り、離れに隔離されました。良い薬も適切な医療もありません。医師にみとられることもなく、父が見守る中、亡くなりました。２８歳でした。
　亡くなる時、家族に菌がうつらないようにと、父はアルコールで姉の顔をふきながら、「ごめんね、ごめんね」と泣いていました。優しかった姉と、死にゆく娘を見守るしかなかった父の気持ちを思うと、今も涙が出ます。
　誰もが生きたかった、みんなが幸せに暮らせる世の中を望んでいたに違いありません。
　戦争が終わった時の、「もう枕元に防空頭巾を置いて寝なくていいんだ」といううれしさ、「戦争はやめることができるんだ」という発見。平和憲法は、人類が到達した最高の英知であり、亡くなった人々の夢の形見だと思います。
　――俳優として、平和を伝える数々の作品に出演してきました。原点は２４歳の時、初出演したテレビドラマ「人間の條件」（原作／五味川純平、６２年、全２６回）。戦争の中でも人間としての良心を貫こうとして死ぬ青年・梶を演じました。
　五味川先生は、彼に「梶」という姓だけで、名前をつけませんでした。僕は、「梶は戦争に行って亡くなったすべての人の象徴なのだ」と思いました。
　スタッフや共演者に軍隊経験者が多く、「俺たちが伝えなければ」という使命感にあふれていました。１年間の撮影を通じて、戦争というものの本質を教わった気がします。
　「人間の條件」で、平和な世の中をつくり、戦争に反対することが、僕の俳優という仕事の基本になりました。以来、どの作品に出ても、平和のために自分は何ができるかと考えてきました。
　――舞台でライフワークにしてきたのは、コルチャック先生の役です。ポーランドで孤児院を開き、子どもの自治による教育を実践した実在のユダヤ系の医師です。後にナチスの犠牲に。
　コルチャックは、２００人余りの子どもたちと、収容所のガス室で命を絶たれました。でも彼の思いは、子どもの生きる権利をうたった「子どもの権利条約」の中に取り入れられています。
　舞台では、３歳の子とも共演しました。こんな子たちがガス室に送られて人生を断たれたのだと思うと、胸が裂かれる思いでした。
　――いまの情勢を危ぶみます。
　日本はまだ本当の意味で「独立国」といえないと思っています。日本中にこれだけ多くの米軍基地があり、とくに沖縄の現状を見れば、とても独立国とはいえないと思うのです。

真の独立国へ
　外国の基地が一つもなく、戦争に巻き込まれることもない。そんな日本になって初めて、真の独立国です。そうしなきゃいけません。
　でも事態はまるで逆方向に進められています。秘密保護法の強行、「後方支援」の縛りを緩めて海外派兵を自由にできるようにすること…。来年の参院選後に改憲を発議し、国民投票で問うとまでいっています。恐ろしくなります。
　自分にできることは小さいですが、「戦争の一番小さな目撃者」として、体験を語り継ぎたい。平和な世の中をつくるという俳優の使命をまっとうし、「これからの子どもたちは、すばらしい世の中を生きていけるぞ」と思って逝きたい。
　衆院選挙では、戦争に反対し、憲法を守ろうとする共産党が躍進してうれしかった。今度の選挙でも、ぜひ大躍進を遂げてください。
　一人ひとりの心の中にある「戦争はいやだ」という気持ちがつながって、憲法を守る大きな力になることを願ってやみません。

かとう・ごう＝１９６４年、俳優座入団。テレビドラマ「大岡越前」、映画「砂の器」、舞台「波・門・心　わが愛」３部作などに出演
(２０１５年０４月１２日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

とめよう戦争立法／共産党に期待大！／今が憲法の一番の危機／俳優加藤剛さん

「戦後７０年」３面
　俳優・加藤剛さんが、「インタビュー　戦後７０年」で憲法への思いや俳優の原点を語りました。
　戦争で近親者を亡くした体験から、「平和憲法は、人類が到達した最高の英知であり、亡くなった人々の夢の形見だと思います」「平和な世の中をつくり、戦争に反対することが、僕の俳優という仕事の基本」と話す加藤さん。
　現政権の進める「戦争立法」や改憲の動きに、「今が憲法にとって一番の危機だ」とのべ、戦争に反対し憲法を守る日本共産党に、「今度の選挙でも、大躍進を遂げてください」と期待を寄せています。
(２０１５年０４月１２日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦後７０年談話で北岡座長代理、「おわび」の文言否定的

　安倍晋三首相が夏に発表する戦後７０年談話に関する有識者会議の北岡伸一座長代理は１０日、東京都内のシンポジウムで、７０年談話について「（戦後）５０年と７０年で言うことが多少違ってくるのは当然だ。謝罪するためのものであってはならない」と述べ、戦後５０年の村山富市首相談話にある「おわび」などの文言を踏襲することに否定的な考えを示しました。
　北岡氏は「メディアの関心は村山談話のキーワードが入るかどうかばかりにある。『侵略』『植民地』『痛切な反省』『おわび』、それ（にこだわるの）は矮小（わいしょう）ではないか」と述べました。他方、１９３１年の満州事変を「明らかに侵略だ」と強調すると同時に、「侵略の事実があったか、どれほど違法か、それを談話に書くか、謝罪するかはそれぞれ別の問題だ」と語りました。
　北岡氏は３月９日に、「日本の歴史研究者に聞けば、９９％は（侵略戦争だと）いうと思う」「私は首相に『日本は侵略した』とぜひ言わせたい」と発言していましたが、態度を変化させました。
( ２０１５年０４月１２日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

村山元首相「文言踏襲を」

　【ロンドン＝時事】９日付の英経済紙フィナンシャル・タイムズ（電子版）は村山富市元首相のインタビューを掲載しました。村山氏は、安倍晋三首相が今夏に発表する戦後７０年談話について、「戦後５０年の村山談話で明記した表現を弱めたり、『侵略と植民地支配』の問題に触れなかったりすれば、韓国や中国はまた日本に対する不信と懸念を抱くだろう」と述べ、村山談話の文言の踏襲を求めました。
　村山氏は自身が５０年談話を出した狙いについて、「韓国人や中国人に謝罪するか、謝罪をしたかどうかが問題ではない」と指摘。無謀な戦争を起こした結果、日本人自らも空襲や原爆などで被害を受けた事実を認識し、過ちを繰り返さないことが重要だと訴えました。
( ２０１５年０４月１１日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

潮流

　酷寒の満州から赤道直下の島々へ。サンゴ礁に囲まれ、七色に輝く海と青い空。「きれいだな」。あまりの美しさに、派遣されてきた関東軍の兵士から思わず声がもれました▼大半が２０代前半だった彼らに課された任務は、守備隊として一日でも長く米軍を引き留めること。バンザイ突撃などせず、陣地戦に徹して持久戦に持ち込む。フィリピンや本土防衛のための時間稼ぎ、捨て石となれ―。それが大本営の命令でした▼カニの爪に似た長さ９㌔、幅３㌔の小島。そこでくりひろげられた死闘は、４倍もいた米兵さえ「人肉粉砕機に放り込まれた」というほど凄惨を極めました。「敵の死体の上に味方が倒れ、その上にまた敵の兵隊が倒れてきた」▼２カ月余で日本兵１万人が犠牲になり、米兵９千人が死傷した殺し合い。それがパラオ・ペリリュー島の死闘でした。当時の昭和天皇は「ますます奮闘するように」と激励し、壊滅するまでペリリューの状況を聞くのが日課のようだったといいます▼戦後７０年にあたって天皇夫妻が〝玉砕の島〟を訪ねました。「太平洋に浮かぶ美しい島々で、このような悲しい歴史があったことを、決して忘れてはならない」。生き延びた土田喜代一さんは「ペリリューのことが世に知れたのが一番うれしい」▼あの悲惨さをよみがえらせる危ういたくらみが、戦争を美化する勢力によって進められている昨今。元兵士はこう振り返ります。「戦争は二度と再びやるもんじゃねえ、国民を泣かせることだよ、国民を」
( ２０１５年０４月１１日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

日米戦没者碑に供花／ペリリュー島で天皇、皇后

　【ペリリュー島（パラオ）＝時事】戦後７０年の戦没者慰霊のためパラオを訪問中の天皇、皇后は９日午前（日本時間同）、太平洋戦争の激戦地となったペリリュー島を訪れ、日米双方の慰霊碑に供花しました。
　最も激烈だったペリリュー島の戦いでは、日米合わせて約１万２０００人が亡くなりました。帰り際にはペリリュー州知事らに一人一人あいさつ。戦没者の遺族や生還兵らに言葉を掛けました。
　その後、米軍が上陸して激戦が繰り広げられた通称「オレンジビーチ」の近くにある米陸軍８１歩兵師団慰霊碑を訪問。白い花輪をささげて黙とうしました。現地でツアーガイドを務める菊池正雄さんの案内でオレンジビーチを眺め、最後に並んで頭を下げました。
( ２０１５年０４月１０日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

天皇夫妻がパラオに到着／戦没者追悼など

　天皇夫妻は８日午前、戦後７０年の戦没者追悼と友好親善でパラオを公式訪問するため、羽田空港発のチャーター機で同国へ向け出発、同日午後、パラオ国際空港に到着しました。追悼を主目的とした外国訪問は戦後６０年のサイパン以来２度目。
　羽田空港内で行われた出発行事で、天皇はパラオのペリリュー島で激しい戦闘が行われたことに触れ、「太平洋に浮かぶ美しい島々で、このような悲しい歴史があったことを、私どもは決して忘れてはならないと思います」と述べました。
( ２０１５年０４月０９日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

インタビュー戦後７０年／「マルサの博士」・中央大学名誉教授富岡幸雄さん／ゆがみただす、わが魂燃焼させて

近著『税金を払わない巨大企業』に取材殺到／「戦争くり返さない」と税制に取り組み７０年
　「マルサの博士」としておなじみの中央大学名誉教授（商学博士）の富岡幸雄さん（９０）。戦後、国民本位の公正な税制のため論陣を張ってきました。原点には、学徒動員での戦争体験があります。その思いを聞きました。
　山本長春記者

　富岡さんの近著『税金を払わない巨大企業』（文春新書）が衝撃を与えています。企業の実名を挙げ告発しました｡ソフトバンク（持ち株会社）の場合、もうけ（税引き前純利益）は７８９億円なのに納めた法人税などはわずか５００万円。（２０１３年３月期、表参照）
　「マスメディアが殺到し、ロイター通信まで取材にきました。安倍晋三首相や財界は、日本の法人税は高すぎるといいますね。それは表向きの税率（法定税率）で、当時は国税、地方税合わせ３８％。ところが、納税額をもうけで割った実効税負担率でソフトバンクの場合、なんと０・００６％です。巨大企業ほど優遇税制の恩恵を受けているからです」
　例として富岡さんが挙げるのが、他社からの受取配当金が課税対象外になっている問題｡大銀行、大企業ほど株を大量に持っています。トヨタ１社の受取配当金は、１３年３月期までの６期通算で約２兆３千億円もあるのに無税です。さらに租税特別措置、研究開発減税など大企業に有利な税制が目白押しです。
　「大企業への課税が空洞化しています。それなのに安倍さんは法人税をさらに減税しようとしている。一方で民主党政権が置き土産にした消費税８％を昨年強行し、１０％への増税まで断言している。大企業減税のしりぬぐいを国民に押し付けていると思いませんか」
　◆◆◆
　富岡さんは、現在の山梨県大月市生まれ。小さな雑貨商の跡取り息子でした。向学心旺盛で、旧制横浜高等商業学校（現横浜国立大学経済学部)に進学｡太平洋戦争末期の１９４４年１２月、２年生で学徒出陣し中国戦線に。
　「１９歳でした。徴兵年齢が１年繰り下がったのです。でも国のためにこの命はささげようと思いました。前線で陸軍少尉への昇進が決まった時、これで俺の命も終わりだなと覚悟しました。指揮官ほど狙われやすい。それが、直前に終戦になり、まさに九死に一生を得ました。復員の途中見た、焼け野原の広島や東京の光景は目に焼き付いています。多くの戦友、学友が帰れなかった。結局われわれは侵略軍の一員にされたのです。悲惨な戦争を二度と起こさせてはならない、そのためには経済、財政など日本を内側から強くしなければ、と思いました」
　郷里の大月で税務署に就職。大企業が集中する日本橋税務署勤務の時は、脱税摘発で件数、税額とも日本一に。戦後の税制改革で、申告納税制度になった時期に出した『租税節約の話』（５９年）は、日本初の節税本でした。
　「職場では戦前の感覚で徴税は力ずくで、という意見がまだ強かった。民主的な申告納税制度をどう普及するかと考えるわれわれとの論争です。そこに節税の本を出したものですから当局はびっくり。懲戒処分にしようとしたが、いくら調べても問題点がない（笑い）」
　◆◆◆
　富岡さんが、日本の税制のゆがみに一段と危機感を抱いたのは、中曽根内閣が売上税の導入を狙った時です。
　「戦後の民主的税制は、所得税制など直接税中心、負担能力に応じて税金を負担する応能負担の原則を基本にしています。売上税のような大型間接税は低所得者ほど負担割合が重く、認められない。残念ながらその後、竹下内閣による国民だましの老獪（ろうかい）な手段により、消費税が導入され、税制のゆがみはいっそうひどくなりました。大企業はグローバル化を理由に海外に逃れ、ますます国に税金を払わないようになり、財政危機を招いています」
　それだけに、「いま正しい租税理念の原点に立ち返ることが大事だ」と強調します。
　「税制は民主国家のバックボーンです。社会の公正さの鏡です。人間も背骨が曲がっていては長生きできません。大企業を優遇している税制のゆがみをたださないと。理想論だという人がいますが、それが学者の本来の仕事ではないですか。私は、税制に７０年間関わり満９０歳になりましたが、税制公正化へのたたかいにわが魂を燃焼させたい」
　安倍内閣の集団的自衛権行使容認の動きにも警鐘を鳴らします。
　「眼目は改憲、９条見直しです。それを許さないためにも、来年の参院選、この春の地方選が大事です。共産党にもがんばってもらわないと」

とみおか・ゆきお＝１９２５年山梨県生まれ。中央大学法学部卒、同大学院修士課程修了。国税庁職員をへて中央大学商学部教授。現在、日本租税理論学会理事、富岡総研代表など。『マル査の博士大いに怒る』『税務会計学原理』など著書多数

実効税負担率の低い大企業／上位５社､２０１３年３月期
　　　　　　　　　　　　　税引き前純利益(Ａ)百万円　法人税など(Ｂ)百万円　実効税負担率(Ｂ÷Ａ)％
①三井住友ＦＧ　　　　　　１４７，９８５　　　　　　　　　　　　３　　　　　　　　　０.００２
②ソフトバンク　　　　　　　７８，８８５　　　　　　　　　　　　５　　　　　　　　０.００６
③みずほＦＧ　　　　　　　２４１，８９７　　　　　　　　　　　２２６　　　　　　　　　０.０９
④三菱ＵＦＪＦＧ　　　　　１８８，６９９　　　　　　　　　　　５７７　　　　　　　　　０.３１
⑤みずほコーポレート銀行　２５７，７７３　　　　　　　　　　６，７１４　　　　　　　　　２.６０
注)『税金を払わない巨大企業』から作成｡ＦＧはフィナンシャルグループ｡申告方式の区分は単体申告｡法定正味税率は３８.０１%の時期
(２０１５年０４月０５日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

変える選ぶ地方選／街頭編／戦争イヤ、共産党大きく／党候補の第一声聞いて／埼玉／神奈川／千葉

　日本共産党を大きく伸ばしてこそ政治を変えられる―。道府県議選、政令市議選が告示された３日、各地で日本共産党の候補者の第一声に耳を傾けた人たちの思いを聞きました。

子どもたちのために／埼玉・所沢
　やぎした礼子埼玉県議候補の訴えを聞いた佐藤創さん（３７）
　「やぎしたさんの第一声に小池さん（晃・党副委員長）も来るというので、妻と来ました。これまでは、こうした場に参加することにためらいもあったんですけど…」
　集団的自衛権行使容認の「閣議決定」と、それを具体化する法案提出の動きなど戦争する国づくりに突き進もうとする安倍政権への危機感が、４人の子どもの父親である佐藤さんを駆り立てます。「子どもたちのことを考えると、何かしなければと」
　子育てする中で、認可保育園増設などに熱心に取り組む日本共産党に信頼を寄せるようになりました。
　友人・知人の中には「自民党はイヤだけど、入れるところがない」と話す人が少なくないといいます。こうした人たちに共産党の政策を語ると、党が視野に入ってくると強調します。

安倍政権に危機感／神奈川・藤沢
　加藤なを子神奈川県議候補の訴えを聞いた飯田玲子さん（８２）
　戦時中、集団疎開を経験した世代として、集団的自衛権行使容認を閣議決定し、「戦争する国」づくりにひた走る安倍政権に強い危機感を感じています。
　今回、初めて応援弁士としてマイクを握り平和を守る日本共産党候補への支持を訴えました。
　多くの子どもたちが親元を離れて疎開し、寂しい思いや飢えを経験しました。親を亡くし、布団の中で涙する友達や浮浪児になって厳しい生活を強いられる子どもたちをたくさん見てきました。
　「戦争で犠牲になるのは子どもです。戦後７０年たって、そんな時代が再び来ることがあってはなりません」と語気を強めます。
　「私たちの思いを託すことができるのは、『戦争する国』づくりに真正面から反対する共産党の候補です」

絶好のチャンス／千葉・船橋
　丸山慎一千葉県議候補の訴えを聞いた鈴木祥子さん（３９）＝自営業＝
　「共産党のことは、相当好きです」と言う鈴木さん。選挙は日本共産党の政策を伝える絶好のチャンスと考えています。「政治を変えるために、有権者の悩みや疑問に丁寧に対話していきたい」と意気込みます。
　「共産党は、本当にぶれません。党の分析力や情報力はすごい。党の運営を自分たちのお金でやっているから理想的だと思います」と話します。
　他党に投票するつもりだという人にも、共産党の政策を訴えています。「フェイスブックで政策チラシを掲載したり、大激論しました」
　これまでも日本共産党を応援してきましたが、まわりに支持を表明することはありませんでした。
　「党名を口に出すことができなかったけど、共産党のことを知るにつれて変わりました。いまは、『共産党を支持している』と自信を持って言えます」と、力を込めました。
( ２０１５年０４月０４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

大学総長、卒業生に平和への思い／「悲劇なぜ」見つめて／「裸の王様」になるな／改憲の動きに警告

　新年度になり、街なかや電車などで、フレッシュな姿を見かけますが、この人たちを送り出した大学の卒業式での祝辞には、熱い思いが込められていました。いくつかを紹介すると―。

　○…「今年は、戦後７０年という特別な年です」とのべた法政大学の田中優子総長は、同大が、卒業生在学中に「学徒出陣」をテーマにしたシンポジウムと展覧会を開催したことにふれ、「戦争中は学校が閉鎖され、大学生は兵士としてかり出されました。総長である私が、『お国のため』と称してあなたがたを戦場に送ることを想像してみてください。それは現実に起こったのです」と話しました。
　田中氏は、「若者に過酷な道を歩ませた責任の重みを忘れることなく、この悲劇をもたらしたものをしっかりと見つめる」と誓った前総長の「平和の誓い」を受け継ぎ、次の総長に手渡すと決意を表明。「自分だけでなく社会全体の理想の未来を思い描き、それに向かって日々の仕事を全うすること」を呼びかけました。
　○…京都大学の山極壽一総長は、「忘れてはならないことは、自分と考えの違う人の意見をしっかりと聞くことです。しかも複数の人の意見を踏まえ、直面している課題に最終的に自分の判断を下して立ち向かうことが必要です」と強調。「自分を支持してくる人の意見ばかりを聞いていれば、やがては裸の王様になって判断は鈍ります」と注意を促しました。
　○…「安倍首相の憲法改正の意欲は並々ならぬものがありまして」と改憲の動きに警告を発したのは、同志社の大谷實総長です。
　自民党の憲法草案が憲法に規定された「個人の尊重」という文言は改められて、「人の尊重」となっているのは、「個人主義を助長してきた嫌いがあるので改める」というものだとして、「これまで明確に否定されてきた全体主義への転換を目指している」と強調。「個人主義こそ民主主義、人権主義、平和主義を支える原点」「遅かれ早かれ憲法改正問題に直面することと存じますが、熟慮に熟慮を重ねて、最終的に判断していただきたい」と要望しています。
( ２０１５年０４月０３日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

韓国人元ＢＣ級戦犯者ら集い／「名誉回復、解決を」

　韓国人元ＢＣ級戦犯者「同進会」が１日、結成６０年の記念の集いと写真展を国会内で開催しました。会長の李鶴来（イ・ハンネ）さん（９０）は、「戦後７０年、日韓国交正常化５０年の今年、長年の懸案をなんとしても解決したい」と訴えました。
　第２次大戦中に日本軍に動員され、戦後、ＢＣ級戦犯として「有罪判決」を受けた韓国・朝鮮人は１４８人。うち２３人が死刑となりました。生還者は１９５５年に同進会を結成。戦犯者とその遺族らに対し、日本政府からの謝罪と補償を求めて働きかけ続けています。
　李さんは、「日本政府は自らの不条理を是正し、司法の見解を受け止め速やかに立法措置を講じ、名誉を回復すべきだ」と語りました。
　来日した韓国同進会の会長を務める姜道元（カン・ドウォン）さん（７６）は、父親がＢＣ級戦犯として処刑されました。「このような悲劇が繰り返されてはならないと決心している」と語ります。
　元ＢＣ級戦犯だった祖父の姿を見て育った朴承夏（パク・スンハ）さん（３４）は「過去のことを清算できないのに、未来は考えられないと思う」と話しました。
　超党派の議員７人が参加し、日本共産党の池内さおり衆院議員は、解決に向けて努力する決意を表明しました。李さん、姜さんは、立法措置を求める請願署名を議員に手渡しました。
( ２０１５年０４月０２日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

被爆アオギリで上映

　徳島大学常三島キャンパスに広島市の「被爆アオギリ」の苗木を植えたのを記念してこのほど、映画「アオギリにたくして」の上映会と「戦後７０年、引き継ぐべき被害と加害」と題したパネルディスカッションが行われました。
　被爆アオギリの苗木の植樹を呼びかける徳島映画センターの四宮洋右代表は「アオギリを通じて戦争体験を伝えたい。全自治体、全学校での植樹をめざす」と語りました。
(２０１５年０４月０１日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦没者遺族に弔慰金

　戦後７０年に当たり、戦没者らの遺族に特別弔慰金５０万円を支給する改正戦没者遺族特別弔慰金支給法が３１日、参院本会議で全会一致で可決、成立しました。施行日は４月１日。
　恩給法の公務扶助料や遺族年金などを受け取っていない戦没者らのきょうだいや子で、最も関係の近い１人が対象。額面２５万円の国債（５年償還）を２回に分けて支給します。
　弔慰金は戦後２０年の１９６５年から１０年ごとに支給しており、２００５年より１０万円増額しました。対象者は約１２３万人で、平均年齢は８２歳。
( ２０１５年０４月０１日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

【3月】

立憲主義守れ／「戦争立法」許すな行動予定

　■神奈川県厚木市で講演会「戦後７０年『戦争する国づくり』とのたたかい」　４月１８日（土）午後２時、文化会館４階集会室Ａ・Ｂ（小田急線本厚木駅１３分）。講師＝新谷昌之さん（県労働者学習協会副会長）。主催＝平和・民主・革新をめざす厚木懇談会（厚木革新懇）、午後３時１０分から第１１回総会。連絡先０４６（２２８）４８１７上野昭紀さん
(２０１５年０３月３１日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

韓国「歴史認識示せ」

　【ソウル＝時事】韓国の尹炳世（ユン・ビョンセ）外相は２９日、ＫＢＳテレビに出演し、安倍晋三首相が４月末に米連邦議会の上下両院合同会議で行う演説について「歴史認識を明確に表明し、韓国など周辺国や国際社会に新しい日本の姿を示すよう期待する」と注文を付けました。
　尹外相は、安倍首相の米議会演説と戦後７０年談話に触れ、「この機会を逃せば日本の指導力が大きく損なわれる」と指摘。一方で、「歴史問題を北朝鮮核問題や経済協力など（日韓）両国が利益を共有する問題に結び付けたくない」と協力も進める考えを明らかにしました。
　５月にモスクワで行われる旧ソ連の対ドイツ戦勝７０周年記念行事に北朝鮮の金正恩（キム・ジョンウン）第１書記が出席する可能性に関しては、「徐々に高まっている」との見方を示しました。
( ２０１５年０３月３０日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

安保法制とんでもない暴挙／野中・古賀氏／ＴＢＳ番組で

　自民党幹事長経験者の野中広務、古賀誠の両氏は２９日放送のＴＢＳ番組「時事放談」で、安倍政権が進める集団的自衛権行使容認の安保法制の与党合意について「とんでもない法制化」「暴挙」などと強く批判しました。
　野中氏は「自衛隊を海外に出し、活動範囲を広げたら必ず戦死者が出る」「大変大きな過ちを犯そうとしている｣と指摘｡先の戦争の犠牲を知る一人として「亡くなった人に申し訳ない。本当に戦後７０年は何だったんだと。悔しくて、悔しくて、夜も寝られないほど悔しい」と語りました。
　古賀氏も「集団的自衛権の議論から大きく踏み越えている」と批判。「『限定的』と議論してきたが、とんでもない法制化が進められようとしている」と警鐘を鳴らしました。
　さらに野中氏は「こういう暴挙に与党の責任を果たす立場でやらなければ、７０年前の犠牲は何のためにあったのか」と苦言を呈しました。古賀氏も「自民党の先生方、なんで黙っているんだ。良質な保守派がいっぱいいるはずだから、ここで声を出さなければ日本の平和はどうなっていくのか」と与党内に奮起を求めました。
( ２０１５年０３月３０日，「赤旗」)
【ＴoTＯＰ】

インタビュー戦後７０年／元自民党福島県連幹事長・元全国都道府県議長会会長植田英一さん（８９）／９条が日本の生きる道

軍隊で戦争を体験、平和では共産党と考え同じ
　全国都道府県議長会会長、自民党福島県連幹事長を歴任した植田英一さん（８９）に、「戦後７０年」への思いを聞きました。
　田中倫夫記者

　私は大正１４年に生まれ、１１月で９０歳になります。軍隊を経験した最後の世代です。
　父親は支那事変（日中戦争）で戦死しました。高校の時、（軍事）教練の教官に「父親が立派に戦死しているのに、おまえはなんだ」とよく殴られました。理不尽極まりない。
　昭和２０年２月に会津若松の陸軍歩兵第２９連隊補充隊に入り、４月に「護仙隊」として仙台に配置されました。そこで敗戦を迎えました。
　軍隊では心身ともに戦争の厳しさを体験しました。日本でもアジアでも多くの無辜（むこ）の犠牲者を出しました。あのような戦争は二度とやってはならない。世界は平和でなければならない。日本はそのモデルにならないといけない。これが私の戦後一貫した考え方です。

右傾化ひどい
　憲法をいろいろ議論するのはいいと思います。でも安倍さん（晋三首相）の目的は、憲法９条を改めることでしょう。これはだめです。日本は元も子もなくなりますよ。まだ日本は平和のモデル国家にはなっていません。
　安倍さんにもの申す人が今の永田町の自民党にはいない。なんたることか。安倍内閣はあまりにも右傾化しています。
　今の世界は危機と平和が拮抗(きっこう)しています。私は徹底して戦争放棄を貫くべきだと思います。集団的自衛権の行使を認めるなどとんでもありません。戦争放棄以外に人類の生きる道はない。内閣総理大臣はそれぐらいの考えでなければなりません。
　先の戦争を「植民地支配と侵略」と認めた「村山談話｣は正しい｡悪いことをしたら謝るしかない。それは何も相手に屈服することじゃありません。謝ることで、相手を救うことができるんです。そういうのが日本のとるべきスタイルじゃないかと思います。
　日米安保で日本が守られていると思ったら､大きな間違いです｡日米安保で戦争がなくなるというのも間違いです。アメリカはイラクやアフガンで戦争をして、テロはますますひどくなりました。アメリカいいなりで本当にいいのかを考え直さないといけない時代に来ています。
　私は当初、原子力の力を平和産業に使えば、生産性が上がるのではと思っていました。しかし原発は次から次へと事故を起こす。東京電力は追及されても誠実さがなく、これではダメだと思うようになりました。

ＴＰＰに危惧
　福島第１原発事故のせいで、福島の農家は大変な被害を受け、飯舘村でも優秀な酪農家が避難しています。私も酪農家なのでそのつらさはよくわかります。いまは、「福島県内の全原発の廃炉を求める会」の党派を超えた運動に協力しています。
　私は以前は、日本の農業は世界に通用する品質を持っているので、ＴＰＰ（環太平洋連携協定）もいいかなと思っていました。でも最近、みているとおかしい。日本の農産物がどんどん切り捨てられようとしています。アメリカに日本農業はぶっ壊されつつあるのではないでしょうか。
　私が師事した故・湊徹郎衆院議員（自民党中曽根派）は、「農業は農作物を作るだけでなく、国土を保全し、環境を守る役割がある。外国に行って農村を見れば、政治がうまくいっているか否かがわかる｣といっていました。日本農業を見ていると、日本もこのままでは崩壊してしまうのではないか、と危惧します。
　共産党が選挙で伸びているのは、昔のイメージが薄れ、政党助成金を拒否しているからだと思います。自分で金を集めるのが政党の基本です。私利私欲でなく、国民の立場で考えると、原発や平和の問題では自民党も共産党もありません。県議時代、共産党議員と出張先で夜酒飲んで話すと、「何だ、考えは同じじゃねえか」と笑い合ったこともあるんですよ。（笑）

うえだ･えいいち=１９２５年福島県生まれ｡旧制岩瀬農業学校卒｡陸軍上等兵｡酪農に従事｡田村町議､郡山市議を経て､８７年から県議４期｡自民党県連政調会長、同幹事長、県議会議長、全国都道府県議会議長会会長を歴任
(２０１５年０３月２９日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

沖縄防衛局申し立てへの／翁長知事のコメント

　沖縄県の翁長雄志知事は２３日、同県名護市辺野古の米軍新基地建設の作業を３０日までに停止するよう指示しました。これに対して沖縄防衛局が２４日、指示の執行停止を林芳正農水相に申し立てました。これに伴い、農水相が知事に求めた意見書（２７日提出）の概要（知事コメント）の大要を紹介します。
　
　意見書の内容だが、
　①沖縄防衛局は指示により行政処分を受けたと申し立てているが、指示の法的位置づけは行政指導である。
　②沖縄防衛局は一般の国民同様の立場で処分を受けたと申し立てているが、そもそも、この申立制度は、国民に対して広く行政庁に対する不服申し立ての道を開くことを目的としており、国自体が不服申し立てを行うことが予定されていない。さらに法自体が、審査する立場にある国が、別の国の機関から申し立てを受けることを想定していないので、沖縄防衛局は申請人としての性質を持たない。
　③沖縄防衛局は、地方自治法第２５５条の２を根拠としているが、岩礁破砕等の許可制度は法定受託事務であり、県の手続きに不服があるなら、地方自治法第２４５条の８にある、代執行等で行うべきである。
　以上から、この申し立て自体が成立し得ないことから、それを認めて執行停止することは認められないと意見した。
　　◇
　仮に、この申し立てが成立したとしても、次の理由から、県の行った措置は適法である。
　④岩礁破砕の定義からも、常識的にも、最大４５㌧ものコンクリート製構造物の設置は、船舶の投錨（びょう）に類する軽微な行為ではないこと、岩礁破砕に該当し得ることは明白である。
　⑤事前協議について、県は、取扱方針に明文で記載されている内容を説明し、岩礁破砕行為でない投錨程度の軽微なものは申請が必要ないとしたものを、沖縄防衛局は、あたかもアンカーと称すれば、いかなる巨大なものであっても申請が必要ないとの説明を受けたかのようにすりかえ、さらに申請書からも削除させたかのように主張している。
　しかし、沖縄防衛局は、当初、浮標のアンカーには１６０㌔程度のものを使用し、一方、許可申請書内では汚濁防止膜のアンカーとして、およそ１５㌧のコンクリート製構造物を記載していることからすると、コンクリート製構造物の設置に関しては、適切に許可申請の要否を判断できていたと考えられる。
　さらに、中谷防衛大臣の国会答弁でも、昨年１０月の台風時にフロートが流されたことを受け、アンカーを重くすることを環境監視等委員会に説明したとあることから、４５㌧ものコンクリート製構造物の設置は、当初から計画されていたものではないと考えられる。
　⑥現在実施されているボーリング調査にまで停止を求めていることに対しては、指示は、許可区域外において無許可で行われている巨大コンクリート製構造物の投下行為が行われている蓋然（がいぜん）性が認められること、及び、許可区域外の工事の停止と調査を求める指示に対して十分な対応をしてこなかったことを理由として、コンクリート製構造物の投下行為と一体となる工事の停止と調査を行わせるよう求めるものである。
　⑦浮標等のアンカーについて、沖縄県内で国の機関を事業者とする他の同種事案においても岩礁破砕等の手続きの対象とされていないと主張しているが、その情報は、許可を必要とするべき漁業権内の海域であるかどうかなど、何も示されておらず、沖縄防衛局の資料でも最大８㌧となっており、２０㌧や４５㌧ものコンクリート製構造物とあまりにもかけ離れている。
　県外の事例も示されているが、漁業権が設定されている海域なのかどうかなど、必要な根拠は何も示されていない。
　⑧アンカーの設置面積を約３００平方㍍とし、許可を受けた区域が約１６０㌶、施行区域は約５６０㌶と比較して、比例原則に反して著しい権限乱用と主張しているが、総面積約３００平方㍍、臨時制限区域の外周、約１０㌔にわたって数十個のコンクリート製構造物を設置する行為を軽微とするなら、水産資源の保護培養、漁業秩序の確立という法の趣旨を明らかに軽視するものに他ならない。
　　◇
　沖縄防衛局は、指示により工事が停止されることに関する損害として、普天間飛行場の返還の遅れに直結する、日米関係にも問題が生じると主張するが、
　⑨戦後７０年を経た今もなお、国土面積の約０・６％しかない本県に約７４％の米軍専用施設が存在する状況は、異常としか言いようがなく、その米軍基地が沖縄経済発展の最大の阻害要因であることは明確である。
　日本の安全保障が大事である。それは私も等しく共有する思いだが、負担を沖縄県民だけが背負うのではなく、日本国民全体で考えるべきである。
　そのような歴史をたどってきたからこそ、沖縄の県民は先の県知事選において、３６万票という民意となり、移設による負担の継続ではなく、米軍基地負担を否定する道を選んだのである。
　普天間飛行場を抱える宜野湾市民の意思も、約３千票の差を持ってこれが支持されていることも忘れないでいただきたい。
　それにもかかわらず、政府の一方的論理によって、辺野古移設を「唯一の解決策」であると決めつけて、普天間飛行場の負担の大きさを執行停止の理由として述べることは、悲しいことだが、沖縄県民の痛みを感じない、感じようとしない政府の姿勢があることを本土のみなさまに知っていただきたい。
　⑩国の言い分はあまりに抽象的な主張であり反論の必要に欠けるが、基地の移設について日本の国内法に基づいた正当な許可手続きを経て実施させることが、なぜ、日米関係の悪化につながるのか私には理解できない。
　また、日米関係が悪化するから、日本国内法に基づく必要な許可を得ないままに作業を続行させて良いというのであれば、それは主権を持つ一つの独立国家の行動ではないと断じざるを得ない。
　⑪そもそも、幾度となく、情報提供や調査協力の要請を行うとともに、コンクリート製構造物の設置行為が岩礁破砕行為に該当するのであれば、必要な手続きをとるべきであることをも伝えてきたが、沖縄防衛局は、許可の申請や協議を行うことなく、工事を続行し続けてきた結果、県自身で調査活動を行わざるを得ない状況に陥ったのである。
　このような意見をもって、沖縄防衛局の申し立ては、不適法であって却下されるべきであり、また、仮に申し立て自体が適法であったとしても、明らかに執行停止の要件を欠如するものであるから、速やかに棄却されるべきである。
( ２０１５年０３月２９日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

日本共産党議員の国会質問／村山談話は外交基礎／外相歴史認識を問う／穀田氏

　穀田恵二議員は２７日の衆院外務委員会で、２１日に開催された日中韓外相会談での共同報道発表で「歴史を直視し、未来に向かう」と明記されたことに関して岸田文雄外相の歴史認識をただしました。
　穀田氏は、植民地支配と侵略に反省とおわびを表明した「村山富市首相談話」（１９９５年）で示された「国策を誤り」「植民地支配と侵略」という核心部分は、９８年の日韓共同宣言や日中共同宣言、２００２年の日朝平壌宣言など北東アジア主要国との「宣言」に引き継がれたことを指摘しました。
　穀田氏は「まさに村山談話の核心部分は、日本が歴史認識の問題に対処する上での外交の基礎となってきた。これほど重いものという認識はあるのか」と指摘しました。岸田氏は「歴代内閣の歴史認識を全体として引き継ぐと申し上げている。ご指摘の点（『国策を誤り』『侵略』『植民地支配』）も含めて引き継いでいる」と答えました。
　穀田氏は「北東アジアの平和と安定のために必要な信頼関係は、歴史の真実に正面から向き合ってこそ得ることができる」と強調し、これを提唱した日本共産党の「北東アジア平和協力構想」を紹介。安倍首相が今夏に発表する予定の「戦後７０年談話」が歴史認識の核心部分を曖昧にし、後退させるものならば「百害あって一利なしだ」「そんな談話は絶対に出すべきではない｣と強調しました｡
( ２０１５年０３月２９日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

南シナ海行動規範早期締結を／首脳会談で一致／中国・インドネシア

　【北京＝小林拓也】中国の習近平国家主席は２６日、「ボアオ・アジアフォーラム」にあわせ訪中したインドネシアのジョコ・ウィドド大統領と北京で会談し、中国と東南アジア諸国連合（ＡＳＥＡＮ）との間の南シナ海行動規範（ＣＯＣ）の早期締結をめざすことで一致しました。
　会談後発表した共同声明で、南シナ海問題について、「双方は、協議と対話を通じ、平和的方法で南シナ海の争いを解決する切実な必要性を強調した」と表明。２００２年に合意した南シナ海行動宣言（ＤＯＣ）を全面的に履行し、法的拘束力のあるＣＯＣの早期締結に尽力すると改めて確認しました。
　中国外務省の華春瑩・副報道局長は同日の記者会見で、中国とＡＳＥＡＮのＤＯＣ履行とＣＯＣ締結に向けた第１３回合同作業部会を３０、３１日にミャンマーのヤンゴンで開催すると発表。協議の進展が注目されます。
　また共同声明は、中国が主導するアジアインフラ投資銀行（ＡＩＩＢ）について「地域の協力や経済発展を促進する重大な意義がある」と評価。「ＡＩＩＢがインフラ投資の有効なプラットフォームとなるよう関係各国と共に努力する」と宣言しました。
　インドネシアは昨年１１月にＡＩＩＢへの参加を表明。ＡＩＩＢの東南アジア代表事務所を首都ジャカルタに置くよう求めています。
　会談で習主席は、ＡＩＩＢやシルクロード基金を利用して、インドネシアの港湾や高速鉄道、空港建設などへ積極的に参加したいと要望。ジョコ大統領は、インフラ建設などへの中国企業の参加を歓迎すると応えました。
　また習主席は、第２次世界大戦後７０年の記念活動を共同で開催することを要請。ジョコ大統領は「戦後７０年を契機として、各国は暴力の停止を呼びかけ、対話を通じて問題を解決しなければならない」と訴えました。
　ジョコ大統領は、４月下旬にインドネシアで開かれるアジア・アフリカ会議６０周年記念行事への習主席の出席を要請しました。
( ２０１５年０３月２８日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

ベトナム解放４０年祝う／米侵略戦争勝利で行事／クアンガイ省

　【クアンガイ（ベトナム中部）＝松本眞志】ベトナムで米国による侵略戦争に勝利してから４０周年を記念し、かつてベトナム共和国（南ベトナム）領だった各省の解放を記念する行事が催されています。クアンガイ省では、２４日に解放記念日を祝いました。
　式典では、クアンガイ省人民委員会のレ・ビェット・チュウ議長は、同省解放の意義について、「その後の南部解放全体とベトナム南北統一に大きな貢献をした」と強調。戦争中、多大な被害を受けたにもかかわらず、国民の努力で現在では経済が大きく発展したと語りました。
　メーンステージに設置された大型スクリーンには南ベトナム解放民族戦線の旗が映し出され、同戦線の兵士に扮（ふん）した若者によるダンスなどが披露されて当時のたたかいをしのばせました。
　ベトナムでは、１９７３年の米軍撤退後、７５年３月１０日に当時のベトナム民主共和国（北ベトナム）軍が南部解放をめざして南ベトナムに進行し、解放民族戦線と共同して「ホー・チ・ミン作戦」を開始しました。南部各省は北から順次解放され、４月３０日には南ベトナム政府の首都だったサイゴン（現ホーチミン市）が陥落。この日をもって、ベトナム軍民数百万人、米軍兵士約５万人の犠牲を出した長期の戦争が終結しました。
( ２０１５年０３月２８日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

「戦争立法」に反対宣伝署名／福井・南越革新の会

　福井県南越革新の会は２１日､越前市のＪＲ武生駅前で集団的自衛権の立法化と自衛隊の海外派兵に反対する宣伝署名行動に取り組みました｡好天のもと６人が参加し横断幕をかかげ､短時間でしたが３１人分の署名が寄せられました｡
　会の金森洋司氏がハンドマイクで訴え｡｢安倍内閣がすすめる集団的自衛権による法制化は戦争立法であり､憲法９条に違反するものです｡この法案の目的はアメリカがおこす戦争に日本の自衛隊をいつでも､どこでも､派兵するものであり､戦後７０年続いた日本の平和主義を根本から破壊し､戦争国家に転換させるもので許されません｡徴兵制復活にもつながってしまいます｣と署名を呼びかけました｡
　署名に応じた７０代の女性は｢憲法９条を無視して自衛隊を海外に派兵するのはおかしいです｡戦争は反対です｡平和を守ってほしい｣と話しました｡
(２０１５年０３月２７日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

「自由の抑圧」に抗し、民主主義の発展に尽力を／和歌山大・山本学長が式辞

　和歌山大学の山本健滋学長は２５日、同大卒業式で民主主義の発展を訴えました。
　山本学長は、「今日『学ぶ自由』への抑圧の危惧を強く持つ」とのべ、公民館だよりに掲載されるはずだった俳句「梅雨空に『九条守れ』の女性デモ」が政治的争点にふれるとして不掲載になったことや、各地の美術館、博物館でも同様の干渉があり、バッシングの中で朝日新聞元記者が大学を追われたことなどを紹介。「私たちが今日享受している『自由』は、１９４５年８月の敗戦を経て制定された『日本国憲法』によって実現されました」と指摘し、戦後７０年という区切りの年に進む憲法改悪や戦争する国づくりに警鐘を鳴らしました。
　また、２０１４年度で退任する山本学長は「自由への侵害は、個人の幸福と社会における民主主義を阻害・抑圧することを学んできました」と自身の研究生活を振り返り、卒業生らに「自らの幸福を追求するとともに、『自由の抑圧』に抗し、民主主義の発展に尽力していただきたいと思います」とよびかけました。
( ２０１５年０３月２７日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

私学の将来へ議論／全国私教連が大会／東京

　全国私立学校教職員組合連合（全国私教連）は２１、２２の両日、東京都内で第４３回定期大会を開きました。
　永島民男委員長はあいさつで、私学助成運動が切り開いた就学支援金制度のもと私立高校の生徒数が増えているが、教員の補充は非正規雇用教職員が中心で働かされ方が問題になっていると強調。こうした中で、「組合加入はこの５年間で最高の水準に達し、組合への期待が高まっている」とのべました。
　今年は戦後７０年、私学振興助成法制定４０年の年だとして、「安倍内閣のもとで集団的自衛権をはじめ平和の問題、中教審答申が示す教育改革の問題が大きくなっている。私立学校の将来を展望する議論をしよう」と呼びかけました。
　代議員の報告では、刻々と変わる新規組合員数を報告する生き生きとした組織拡大の取り組みが語られました。身分問題や権利侵害とのたたかいでの勝利や、私学助成制度の改善の実現、教育研究集会で教職員をつないだ取り組みなど、組合が動くことで状況を変えた発言が続きました｡一方で､新たな常勤講師の雇い止めや権利侵害の問題なども報告され、私学教育を守る決意が語られました。
　すべての運動を組合の拡大強化に収れんすること、節目の年に見合った私学の教育運動を大きくすすめることなどの運動方針を確認しました。
　日本共産党の畑野君枝衆院議員が来賓あいさつしました。
( ２０１５年０３月２５日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

中国公使参事官と山下書記局長懇談

　日本共産党の山下芳生書記局長は２４日、中国大使館の薛剣（せつ・けん）公使参事官・政治部長の訪問を受け、党本部で懇談しました。
　薛氏は着任のあいさつをしつつ、現在、日中関係が大事な時期にあり、歴史問題などの複雑な要素もあるなかで、両国関係改善に向けての協力を求めました。
　山下氏は日本共産党が第３回中央委員会総会で、戦後７０年の今年、日本政治がとるべき五つの基本姿勢を提唱していることを紹介。日本とアジアの国々が「和解と友好」へと向かう年になるよう力をつくしたいとのべました。
　懇談には、日本共産党から森原公敏国際委員会副責任者が、中国大使館から林○（りん・れい）参事官らが同席しました。
( ２０１５年０３月２５日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

開発より福祉と雇用／予算組み替え案発表／共産党都議団

　日本共産党東京都議団（吉田信夫団長、１７人）は２３日、都庁で記者会見し、都の２０１５年度一般会計予算案に対する組み替え案を発表しました。不要不急の大型開発を削減し、都民のくらしや少子高齢化対策などを拡充するもので、２５日の予算特別委員会に提出します。
　舛添要一知事の予算案は、福祉、雇用、中小企業対策などで都民要求をある程度反映した拡充があるものの、大型開発を重視し、安倍政権の暴走政治から都民を守る施策は貧弱です。
　会見には曽根はじめ副団長ら１０氏が出席。組み替え案を説明した曽根氏は「国が消費税増税や社会保障切り下げ、負担増を進める中で、都として都民負担を軽減し、都民要望の施策を提案するこの組み替え案こそ、都民の願いに応えるものです」と語りました。
　組み替え案は、外郭環状道路や新客船ふ頭整備など４６事業（２２６５億円）を削減。一方、都民の切実な要望に応える１２４施策（１１０７億円）を予算化しました。組み替え案の規模は一般会計（６兆９５２０億円）の約３・３％分です。
　福祉では、高すぎる国民健康保険料（税）や介護保険料などの負担を軽減し、公立保育所と特別養護老人ホームの整備を促進、介護職・保育士の処遇改善などを行います。
　ブラック企業対策など若者支援や小規模企業振興プランの策定、戦後７０年にふさわしい平和事業の拡充、３５人学級の拡大、都営住宅の新規建設再開、住宅耐震化への助成などを拡充・提案します。

予算組み替え案骨子
①くらしの応援、福祉・医療の充実をすすめる
②若者の雇用や中小企業を応援する
③平和・教育・文化・スポーツを充実する
④都民の防災、環境対策をすすめる
⑤生活密着型事業を増やし、不要不急の大型開発は見直す
( ２０１５年０３月２４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

「村山・河野談話」継承を／自公幹事長に中国政協主席

　【北京＝小林拓也】中国共産党序列４位の兪正声・全国政治協商会議（政協）主席は２３日、訪中した自民党の谷垣禎一、公明党の井上義久両幹事長らと北京で会談し、「戦後７０年は、一つのチャンスだ｡日本側は正しい歴史認識を持ってほしい」と述べ、「村山談話」と「河野談話」を継承するよう求めました。
　日中関係について、兪氏は「改善に向かっており、まだ勢いは弱いが、方向性は正しい」と最近の日中関係を評価しました。
　会談後、記者会見した谷垣幹事長は、中断している日中与党交流協議会について「中国側に前向きな姿勢が表れていた」と、再開に期待を示しました。
( ２０１５年０３月２４日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

戦後７０年に思う／分断招いた日本の植民地統治／「在日を生きる」問い続け／詩人・金時鐘さんに聞く

　済州島４・３事件の苛酷な体験を『朝鮮と日本に生きる―済州島から猪飼野へ』（岩波新書）にまとめた在日の詩人、金時鐘さん。戦後７０年の日々を聞きました。
　（平川由美）

　私は南労党（南朝鮮労働党）の党員として済州島４・３事件に関わり、苦難の極にあった故郷と老いた父母を捨て、日本に流れついて在日朝鮮人となった者です。「共産暴動」の烙印を押され、封印されてきた、この事件の真相を書き残しておきたいと思いました。

５万人を超す済州島民虐殺
　１９４５年、日本の敗戦による解放の日、私は数えで１７歳でした。朝鮮半島は米ソの分割占領下に置かれ、故郷の済州島も米軍に占領統治されます。４８年４月３日、祖国の南北分断に反対する人民蜂起が起こり、鎮圧に投入された軍や警察、右翼団体によって５万人を超す島民が虐殺されました。武装ゲリラはごくわずかで、多くが無辜の農民でした。それを皆殺しにしたのは、植民地期に日本がつくった朝鮮総督府下の親日派の連中です。解放の夢もつかの間、主人が変わっただけだった。帝国主義日本が米軍にすり替わっただけ。日本の植民地統治の業の深さを思います。
　米軍と民衆が直接衝突した済州島４・３事件は、アメリカの不正義を浮き彫りにする歴史的事件でもあります。第２次世界大戦後、アメリカは途切れることなく戦争をしてきた。ベトナム戦争、湾岸戦争、イラク戦争…。覇権のためには手段を選ばない暴圧が、この小さな島で露呈しました。
　日本に逃れてきたのは２１歳の時です。「共産暴動」の指名手配犯になった私を、父があらゆる手を尽くして逃がしてくれた。「死んでも私の目の届くところでは死んでくれるな。お母さんも同じ願いだ」と。父は私の代わりに１カ月近く勾留され、それが原因で亡くなりました。
　翌年の５０年に朝鮮戦争が勃発し、本当につらかった。自分ひとり逃げを打ったという負い目から、在日朝鮮人の運動体で活動しました。朝鮮戦争は北朝鮮と、日本を出撃基地としたアメリカの戦争でしたから、反基地闘争に駆けずりました。
　休戦後、正義だと信じていた北朝鮮の実態を知るに及び、北へ帰る望みもついえ、日本で生き通すことが自分の詩の命題だと心を決めました。かつて一度は決別した日本語で書いていくしかない、と。
　日本の植民地統治下、私は熱烈な皇国少年でした。日本の小学唱歌や童謡に親しみ、ハングルは一文字も書けなかった。解放後、壁に爪を立てるようにして母国語を覚えました。
　自分をいびつに育てた、皇民化教育による日本語とどう対決していくのか。日本が中国侵略から太平洋戦争へとなだれこむ３１年以降、叙情歌が盛んに歌われたことを見ても、日本的叙情から切れること、感傷を排した批評を持つことが必要だと考えました。

私をくるむ民衆を頼りに
　詩人にとって、自分を十重、二十重にくるんでいる民衆だけが頼れるものです。喉元まで突き上げる思いを抱えて生きる大勢の人々とつながり、兼ね合う時、自分の持っていない言葉が新たに湧き起こってきます。
　「在日を生きる」とは、日本で生きることの意味を問い続けて、私が言い出した言葉です。祖国が分断して７０年。南は反共を国是とし、北は韓国を国家として認めていない。その中で思想信条の違いはあっても、一つどころを同じく生きてきたのは、在日しかいない。国際情勢抜きには南北の融和は成立しないけれど、在日は同族同士の融和を先駆けて実践できる存在です。壁を越え得る実存が私たちにはある。
　越えるとは、新しい視野が開けることです。本当のことを知らせる責任のある者として、「記憶せよ、和合せよ」と呪文のように自分に言い聞かせています。

　キム・シジョン　１９２９年釜山生まれ。奈良県在住。詩集『新潟』『猪飼野詩集』『光州詩片』『失くした季節』ほか。評論集『「在日」のはざまで』ほか。
( ２０１５年０３月２３日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

日中韓外相記者発表の要旨

　【ソウル時事】２１日の日中韓外相の共同記者発表の要旨は次の通り。
　尹炳世韓国外相　会合を契機に、かなりの間断絶された３カ国協力体制の復元が加速するよう努力を強化する。３カ国首脳会談が最も早い都合の良い時期に開催できるよう努力していくことで合意した。３カ国外相は歴史を直視し、未来に向かって歩む精神を基に、２国間関係や３カ国協力の強化のために努力していくことにした。北朝鮮の核兵器開発に対する確固たる反対を再確認し、国際的な義務と約束が誠実に履行できるよう協力を強め、意味のある対話が再開できるよう努力する。今年は第２次大戦終戦７０周年で、日韓国交正常化５０周年だ。会談は今後の道しるべになる。
　岸田文雄外相　３年ぶりの日韓中外相会議に充実した共同発表文を出せたことをうれしく思う。日韓国交正常化５０周年に朴槿恵大統領とお目にかかれ光栄だった。日韓中の実務協力は着実に進展してきた。３外相で防災、環境、青少年交流、テロ対策、中東、アフリカなど幅広い分野での協力について有意義な議論を行った。
　北朝鮮の核開発を容認できないことを３カ国で再確認したほか、朝鮮半島の非核化を実現するため、協力を確認した。私から安倍政権の最重要課題である拉致問題について協力を求めた。今年が被爆７０年に当たるのを踏まえ、核兵器のない世界に向けた道筋を示すことの重要性を指摘した。日韓中首脳会談の早期開催で一致したことを歓迎する。開催に向けた努力を一層進めたい。
　王毅中国外相　３カ国協力が再び正常な軌道に戻った。３カ国協力のプロセスが妨害されないよう、協力が健全に発展できるかを考えねばならない。３カ国は地域と世界の経済の発展に貢献するべきだ。３カ国は東洋文明に属しており、人類の進歩に役割を果たすべきだ。
　しかし、現実は中日、日韓関係が歴史認識で困難にぶつかり３カ国協力も大きく妨害された。このような状況をこれ以上続けるわけにはいかない。戦後７０年が過ぎたが、３カ国にとっては歴史問題はまだ過去形ではない。依然として現在進行形だ。歴史を直視して未来を切り開くことこそが正しい態度だ。これは共同発表文に記載している。これは会談の最も重要で意義のある成果だ。
( ２０１５年０３月２３日，「赤旗」)

【ＴoTＯＰ】

自公幹事長きょう訪中

　自民党の谷垣禎一、公明党の井上義久両幹事長は２３日、中国を訪問します。２５日まで滞在し、共産党中央対外連絡部（中連部）幹部らとの会談を予定しています。２００９年を最後に途絶えていた「日中与党交流協議会」を再開し、対中関係の改善を後押しするのが目的。
　「（日中間の）パイプの数を増やし、太くしていく作業をしなければいけない」。谷垣氏は２０日の記者会見で、訪中の意義を強調しました。
　中国側は谷垣氏らとの会談で、安倍晋三首相が今夏発表予定の戦後７０年談話を取り上げるとみられ、谷垣、井上両氏は１９日、首相官邸で安倍首相と対応を協議。談話については有識者会議で検討中と説明することを確認しました。
( ２０１５年０３月２３日，「赤旗」)
【ＴoTＯＰ】

メディアをよむ／須藤春夫／放送９０年、歴史省みる時

　今年の放送記念日（３月２２日）は放送開始９０年にあたります。ＮＨＫはキャッチコピー「もっと届け、大切なこと。公共放送　進化中！」を掲げ、関連番組やイベント、キャンペーンを展開中です。
　戦前唯一の放送機関だった日本放送協会の名称、財産を戦後に引き継いだＮＨＫは、９０年記念日行事に積極的です。しかし、戦後生まれの民放は特段の取り組みをしていません。戦後７０年を経てＮＨＫ、民放の併存体制が定着しましたが、放送界全体でそれを受けとめていない状況があります。
　放送９０年の歴史は、太平洋戦争の敗戦を境に断絶があります。
　戦前の日本放送協会は、政府の統制下におかれ準国営放送局として戦争遂行の宣伝機関を担ってきました。このように、戦前の放送史には反省すべき深刻な問題を含んでおり、９０年の時間の連続性だけを強調して祝うわけにいきません。
　戦後の放送は新たな放送制度による再出発となりました。「表現の自由の確保」によって「健全な民主主義の発展に資する」ものと放送法に位置づけられました。ＮＨＫのほかに民放が置かれたのも、多元的な放送を行うことで言論表現の多様性を実現する目的があったからです。放送の自由の獲得は、放送が国家権力から独立してこそ可能になります。そのことは、戦前の反省がもたらした大きな知見です。
　しかし、戦後７０年を経た今、ＮＨＫ、民放には厳しい批判の目が向けられています。中でもＮＨＫ籾井勝人会長の政府寄り発言や民放キー局幹部の安倍晋三首相との度重なる会食は見過ごせません。自ら政府権力にすり寄る姿勢にほかならず、放送の自主自立への認識が欠落しています。
　放送９０年を契機に放送界全体が歴史を真摯（しんし）に学び、「権力の監視機関」として国民の負託に応えてほしいものです。
　（すどう・はるお＝法政大学名誉教授）
(２０１５年０３月２２日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

インタビュー戦後７０年／臨済宗相国寺派管長・金閣寺、銀閣寺の住職有馬頼底さん／憲法９条は仏教の精神

集団的自衛権とんでもない

　臨済宗相国寺派管長で世界遺産、金閣寺、銀閣寺の住職もつとめる有馬頼底（らいてい）さん（８２）が「インタビュー　戦後７０年」で憲法、「集団的自衛権」などへの思いを語りました。
｢戦争の否定が仏教の原点｣と語る有馬さん。憲法解釈を変え「集団的自衛権」を行使し、「どこでも自衛隊が出て行くようになれば、平和国家という戦後日本への信頼が根本から壊れる｣と厳しく批判｡さらに、日本共産党について「安倍さんにへつらわず、正面からはっきり主張し、アカンものはアカン、と言っている」「その姿勢に期待しています」と語りました。

戦争に道開く安倍さんあきません／へつらわない共産党に期待
　京都市上京区の相国寺（しょうこくじ）に有馬頼底氏（臨済宗相国寺派管長)を訪ね､インタビューしました。
　松宮敏樹記者

　日本が戦争に負けた１９４５年、私は大分県日田市の岳林寺で小僧をしながら旧制中学に通っていました。学校といっても軍需工場で働くだけ。毎日、歩兵銃の修理などをしていました。
　８月１５日は駅前で防空壕(ごう)を掘っていると「天皇陛下の放送がある」というのでみんなで聞きました。先生が「戦争に負けた」と声を出したら、兵隊が「日本が負けるとは何ごとか」といって先生になぐりかかったのを覚えています。私はただぼうぜんとしていました。

謝罪が前提
　私の父（有馬正賴男爵）は軍人でシベリア抑留から帰ってきたらほとんど廃人のようになっていました。多くの部下を死なせて自分は戻ってきた｡一日中､川の流れをただ眺め、３、４カ月して亡くなりました。
　悲惨な戦争で、日本国民はたくさんの命を奪われました。それとともに忘れてはならないのは、あの戦争は、日本が他国を侵略して起こした侵略戦争であり、日本は加害者だったということです。朝鮮や中国、東南アジアで多くの人を殺した。
　私は、戦後、中国に何回も｢平和祈願｣ということで行きました。あるとき、重慶の手前の宜昌（ぎしょう）で、日本からいっしょに行った人が断崖の下をみながらオイオイと泣きだしたんです｡聞くと､｢戦争中､私は隊長としてこの場所に来た｣と｡下から上がってくる中国の兵士にたいし、崖の上から毒ガスを投下し､｢バッタのように人を殺した｣という｡｢何ということをしたのか｣と泣いていました｡
　それを聞いたとき、「こういうことを日本人はもっと知らないといけない」と思いました。どれだけ日本がひどいことをしたか、実態を知らせることが最近ますます弱くなっていると思います。
　「いつまで侵略を謝るのか」という人もいるけど、期限なんかありません。日本の反省と謝罪が前提にあって、韓国や中国などとの関係が深まるのです。
　今の憲法は、戦争を繰り返してはならないという反省のなかで生まれました。憲法９条のおかげで日本は戦後、戦争で殺したり殺されたりしなかった。それを忘れたらあかん。
　憲法９条は仏教の精神に通じています。
　仏陀（ブッダ）はもともとインドの王子でした。父王の命で戦争に行く。しかし、殺りくを繰り返す戦争に疑問を持ち、出家して、悟りを開きました。つまり戦争の否定が仏教の原点です。
　仏教には｢五戒｣があり、一番は「不殺生戒」です。仏教では「山川草木悉皆成仏」（さんせんそうもくしっかいじょうぶつ）といいます。山も川も草木も人もみな仏様が宿っている。むやみに奪ってはいけない。戦争で人を殺すなどあってはならない。
　いま、安倍首相が憲法の解釈を変えて、集団的自衛権を使うと言いだしました。とんでもないことです。
　中東からの石油が止まると日本があやうい。だから自衛隊を派遣し、武力行使もできる―という。そんなのへ理屈です。石油が来なくなるから戦争するなんて、国際的に通るはずがない。どこでも自衛隊が出て行くようになったら、憲法９条を持つ平和国家という戦後日本への信頼が根本からこわれてしまいます。
　生命の尊さ、人間の尊厳を大切にするという仏教の精神からみると、「アベノミクス」や、原発問題、沖縄の米軍基地問題でも、安倍さんのやり方はあきませんなあ。
　「アベノミクス」は「経済優先」で格差を拡大しました。私はブータンにも行きましたが､そこでは｢国民の幸福」を尺度に考えています｡経済も大切やが､国民が幸福にならなかったら仕方がない。
　原発も人間がつくったものです。人間がつくったものが、人間の命を縮め、人間を滅ぼしていく。これは絶対よくない。再稼働なんて絶対やったらいかん。
　沖縄の仲井真弘多（ひろかず）前知事には驚きました。私は前からよく知っていますが、「新米軍基地はいらない」と私にも言っていたのに、コロっとひっくり返りましたなあ。県民の声を裏切ってしまった。自民党は、〝金さえ出せば沖縄は言うことを聞く〟と思っているんでしょう。それが問題です。

地方選でも
　生命の尊さ、人間の尊厳をくつがえそうとするのは許せない、とわれわれが言わなんだらどうするんですか。
　マスコミも安倍さんにたいしてはっきりものを言わない。言論がおかしくなれば、戦争への道を開くことになります。
　そんな状況だから、「赤旗」さんには大いにがんばっていただきたいんです｡いま､政党の中でも、まともなことを言っているのは共産党だけです。共産党は、安倍さんにもへつらわない。正面からはっきり主張して、アカンものはアカンのや、と言っていただいてます。私はその姿勢に期待しているんです。
　総選挙では躍進しましたなあ。春の地方選挙でもおおいにがんばってください。
　私は、もう８２歳になりました。いつ死んでも思い残すことはありませんが、そう思うと気楽になって、当分死にませんなあ。（笑い）

ありま・らいてい＝１９３３年東京生まれ。大分県日田市の臨済宗岳林寺にて得度。６８年、京都の相国寺塔頭大光明寺住職。８８年から京都仏教会理事長。９５年、臨済宗相国寺派七代管長に就任し、金閣寺、銀閣寺の住職も兼ねる。『禅僧が往く』など著書多数
(２０１５年０３月２２日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

安保法制の企て阻止／発足１０周年の集い／九条科学者の会

　発足１０周年を迎えた九条科学者の会は２１日、東京都内で「安倍改憲の本格化と科学者の役割」をテーマに記念の集いを開き、科学者や市民ら約１２０人が参加しました。
　九条の会事務局長の小森陽一東京大学教授と、日本学術会議元会長の広渡清吾専修大学教授が講演。小森氏は、安倍首相のいう「切れ目のない安全保障」とは、いつでもどこでも自衛隊が武力行使できるようにするというものであり、それに対抗して「切れ目」をつくってきたのが、草の根の九条の会の運動だと指摘。「さまざまな専門領域をもつ学者・研究者が安倍政権の『戦争法制』の問題点を指摘する声明をだすなど、科学者九条の会ができる最も効果的な運動をしてほしい」と呼びかけました。
　広渡氏は「戦後７０年」をテーマに日本とドイツを比較しました。ドイツでは、直接戦争に関わらなかった世代にも、歴史を学び一定の行動をなすべき「戦後責任」が認識されていると紹介しました。
　一方、日本は、新憲法を中核とする戦後社会を安倍政権が解体しようとしていると指摘。２０日に与党が合意した安保法制が実現すれば、「９条の明文改憲とほとんど変わらない。この企てを阻止するため力を尽くそう」と訴えました。
( ２０１５年０３月２２日，「赤旗」)

ひと／「非行」少年や家族の支援を続けて３０年小柳惠子さん（７０）

　埼玉県上尾市の自宅には電話が３台。全国から寄せられる「非行」少年や家族からの訴えに、無料で支援を続けて３０年になります。
　「娘が狭いキャビネットに閉じこもり出てこない」「今、息子が暴れている」…。緊急要請があれば雨でも夜中でも自転車で駆けつけ、本人や家族の話をじっくり聞きます。「子どもは自分の置かれた環境の中でけなげに生きている。その発信を周囲のおとなが受け止めてほしい」
　今は「『非行』を考える全国交流集会」（２１日～千葉県柏市）の準備に大忙し。１５回目となる集会の初回から運営に関わり「悩んでいる人が思い切り語り合える場になれば」と話します。
　東京都十条生まれ。祖父が保守系議員を務める家庭に育ちました。「初めての反抗は大学進学の時です」といたずらっぽい笑顔に。通っていた女子大付属校の先生や両親の猛反対にあいながらも、念願の社会福祉を学びました。
　卒業後は教護院（現在の児童自立支援施設）に職を得ました。「非行」や虐待で親元を離れ入所する少年と起居を共にし、育て上げた子どもは１５年間で１０８人にのぼります。「みんな純粋でやさしい子ばかり。私もここで３人の子の母として育てられました」。今は５人の孫に恵まれます。
　戦後７０年の時の重みは、自身の年齢と重なります。「同世代の人が無念にも赤ちゃんのまま亡くなったことが私の原点。憲法９条を何よりも大切にしたい」
　文　徳間　絵里子
( ２０１５年０３月２１日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

第２次世界大戦終結７０年／アンネの最期の地で／独ベルゲン・ベルゼン強制収容所記念館の広報チーフステファニー・ビルブさん

ナチスの犯罪と向き合って若い人に悲惨な生涯伝える
　『アンネの日記』の著者として知られるユダヤ人少女アンネ・フランクが、１５歳の短い命を落とした地、ドイツのベルゲン・ベルゼン強制収容所跡を訪ねました。過去の悲劇を伝え、歴史の継承につとめる同収容所記念館の広報チーフ、ステファニー・ビルブさんに、アンネの最期について話してもらいました。
　（聞き手　ジャーナリスト・大内田わこ）

　――１９４４年の秋、アンネ・フランクと姉マルゴットが、アウシュビッツ（ポーランド）から送られて来た時の、ベルゲン・ベルゼンは、どんな状態だったのでしょうか？
　一言で言えば、まさに混乱状態だったと思います。当時、至る所でヒトラー・ドイツの戦争が行き詰まり、連合軍に攻められていました。それでナチスは、ポーランドにつくったたくさんの強制収容所から、まだ働けると思える多くの人々を、国内の強制収容所へと移送しました。
　ベルゲンもその一つです。もともと１万人ぐらいを収容する戦争捕虜用の収容所だったのが、４３年からナチスの強制収容所として使われるようになってから、収容者の数もどんどん増えています。戦争末期の４５年３月は、１カ月だけで１万８千人もの人が移送されました。

飢餓も常態化
　――アンネ姉妹は、４４年１０月末にアウシュビッツを出て４日がかりでベルゲンへ着いています。その旅は、貨車にすし詰め状態の上、食べ物はおろか水さえ満足に与えられなかったと聞きます。その頃ベルゲンは、もう霜柱が立つような気候ですよね。衰弱した彼女たちにとってさらにつらい状態が待ち構えていたのですね。
　アウシュビッツからの、アンネを含む３千人の女性たちが到着したとき、すでに囚人を収容した木造のバラックは飽和状態でした。それで新たにテントを建てることになったのですが、床はむき出しの土の上にわらを敷いただけ、もちろんベッドもありません。雨が降れば、すぐにぬかるむ状態でした。
　その上、アンネたちが着いてまもない１１月８日、ベルゲンは大きな嵐に見舞われます。テントは吹き飛ばされ、行き場を失った女性たちは結局、過密状態だったバラックの中に押し込められることになるのです。食料は同じ分量のものを２倍３倍の人数で分けることになるわけですから、飢餓状態も常態化していたと言えます。
　――そんな中で、チフスに。
　そうですね。彼女たちがいつ亡くなったのか、はっきり分かっているのは３月ということだけで、日にちは分からないのです。ここは４５年３月１５日に、イギリス軍によって解放されたのですが、連合軍の接近を知ったナチスが、逃亡するとき重要な資料のほとんどを焼いてしまったものですから。
　ただ、解放後、生きてここを出ることができたアンネの友達（ヤニー・プリレスレイベル）の証言によると、病人用のバラックに移されていた姉妹を見舞ったら、いるはずのベッドに２人はいなかった。すぐに意味を悟って探し、バラックの前の死体の山に２人を見つけ、そこから引きずり出して、集団の墓地とされていた露天の場所まで運んで葬った、と語っています。
　――そうですか…、その年には、ものすごい数の人々が亡くなったそうですね。
　３月だけで、１万８千人が亡くなり、その多くがチフスか餓死です。ここにはガス室はなく、小さな焼却炉が一つあったのですが、死者の数があまりにも多く、焼くこともできなくなり、大きな穴を掘ってそこを墓場としたのです。
　ですから、この跡地を歩かれると分かりますが、あちこちに、２０００、５０００など数字を書いた塚があります。それぐらいの数の方たちがそこに眠っているという証しです。跡地にはアンネ姉妹のお墓のように、いくつかの墓標がありますが、それは後に建てられたものです。
（ベルゲン・ベルゼンは、後にニュルンベルク国際軍事裁判で「巨大なる恐るべき死体置き場」と呼ばれ、ナチスの犯罪の証拠とされました）
　――若い人の訪問も多いですか？
　特に学校の授業の一環として、たくさんの生徒たちがやって来ます。彼らは、ここへ来るまでにもうすでにアンネ・フランクのことは、『日記』を読んだりしてよく知っているのですが、ここへ来て、アンネがカオス（混乱）状態の中で死んでいったということを知るのです。そしてまた、彼女が多くの悲惨な生涯を終わった人々のなかの１人であるということも学びます。
　――アンネを通してナチスの犯罪についても学んでいくわけですね。
　私も１６歳のときに『日記』を読みました。自分と同じぐらいの年齢なのにとてもおとなという感じを持ちました。彼女の日常、２年間という長い時間を、隠れ家で息をひそめて生きなければならなかった少女がいたということにとてもショックを受けました。なぜ、どうして？　ユダヤ人だというだけで。そういう疑問や関心から、ホロコースト（大虐殺）やわが国の歴史、特に国家社会主義の問題が私の勉強のテーマとなりました。

心痛めること
　――それでこのお仕事を。
　２０００年からここで。やりがいのある仕事です。心を痛めることもたくさんあります。例えば、生存者の方のお話をうかがうときです。４０人あまりの方から貴重な体験を聞きました。また、アンネの最期を語る時なども勇気がいります。
　今、こういうタブレット（液晶画面を持つ携帯パソコン）を使って、収容所の説明をしています。ここは病気のまん延で、手が付けられない状態だったため、解放したイギリス軍がバラックなどすべてを焼き払いました。ですから訪れた人は広い跡地に立った時、当時の様子をイメージするのが、なかなか難しいのです。やってみると、若い人たちにとても人気です。彼らは扱いも上手です。私などより。（笑い）
　――日本は、戦後処理の問題を含めてドイツに学ぶべきところがたくさんありますね。
　私には忘れられない思い出があります。大学のゼミ（歴史学部）で、それぞれの国の国歌を歌おうということになった時、日本の留学生くみこが歌えない、歌いたくないと言ったのです。私にはすぐ、それが歴史問題だと分かりました。ドイツも日本も過去の問題を抱えた国です。ただドイツは過去ときちんと向き合い、反省し、周りの国とも仲良くやってきています。その経験を私は誇りに思います。確かに時間がかかることでしょうが、日本のこれからにとっても、それはとても大事なことではないでしょうか。
( ２０１５年０３月１６日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

新基地つくらせない／〝沖縄と全国の力で〟と集会／山下書記局長があいさつ／参院議員会館

　沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設に反対する沖縄県民に連帯する「沖縄県民の民意を踏みにじるな」院内集会が１７日夕、参院議員会館で開かれました。約３００人が参加。新基地建設にむけた工事を強行する安倍政権に沖縄と全国の力でノーをつきつけよう、との発言が続くたびに会場は拍手でわきました。
　集会では、さきの衆院選で「オール沖縄」候補として自民を破った４議員が発言し、「参院予算委で基地問題の論戦をした」と紹介された日本共産党の山下芳生書記局長があいさつしました。
　山下氏は、「普天間基地の危険性を除去するための移転」という安倍内閣の言い分を批判。「痛みを同じ県民に押し付けることはできない」という沖縄県民の切実な声を紹介しながら、「痛みは移転でなく、取り除くべきです」と強調しました。「沖縄県民との連帯を強めて、かならず勝利しましょう」と訴えると、大きな拍手がおきました。
　主催は、超党派でつくる沖縄等米軍基地問題議員懇談会。「オール沖縄」候補として衆院沖縄１区で当選した日本共産党の赤嶺政賢衆院議員は、「沖縄に基地をつくらせないたたかいは、絶対に負けるわけにはいかない。みなさんと一緒にがんばりましょう」と訴えました。
　沖縄からかけつけたヘリ基地反対協議会の共同代表・安次富浩氏が報告しました。「戦後７０年にわたるつらい思い。もうがまんできない。米軍基地も自衛隊基地もいらないというのが、率直な思いだ」とのべ、辺野古での非暴力のたたかいと、それを暴力的に抑えつける安倍政権を告発しました。
　本土からのアピールとして、３団体の代表が発言。安保破棄中央実行委員会の東森英男事務局長は、１６日まで行った辺野古座り込み行動などを報告し、全国の波状行動と署名活動で「オール日本」のたたかいに運動を広げたい、と話しました。
　院内集会には、日本共産党から山下氏のほか、畠山和也、島津幸広、堀内照文、清水忠史、田村貴昭、真島省三の各衆院議員と仁比聡平参院議員が参加しました。
( ２０１５年０３月１９日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

二階・漆原氏「過去の談話、尊重し継承」

　自民党の二階俊博総務会長と公明党の漆原良夫中央幹事会長は１７日、月刊誌「Ｖｏｉｃｅ」（４月１０日発売）での対談で、安倍晋三首相が今夏発表する戦後７０年談話について、過去の首相談話を尊重し、継承すべきだとの立場を示しました。
　二階氏は「過去の発言を日本国総理大臣として尊重して引き継いでいく。当たり前過ぎることだ」と指摘。談話作成に際しては「与党と調整するのは当たり前だ」との考えを示しました。
　漆原氏も「キーワードにはこだわらない」としつつ、「村山談話、小泉談話がきちっと継承されていることが大事だ」と語りました。
( ２０１５年０３月１９日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

自民と対決する党を／和歌山で昼休みチョコット宣伝

　和歌山県と和歌山市の日本共産党労働者後援会は１３日、和歌山市で「昼休みチョコット宣伝」にとりくみました。
　宣伝は、日本共産党の姿が市民に見えるようにしようと毎週金曜日の昼休み、和歌山市の公園前交差点で実施しているものです。
　ノボリやプラスターを持った参加者らは、「政治とカネ」の問題で、金権腐敗の根源である企業・団体献金の全面禁止を提案するとともに「身を切る改革というなら政党助成金を廃止すべきです」と訴えました。
　また戦後７０年、戦争か平和か、日本の進路が問われる節目の年に、海外で戦争する国づくりをすすめる安倍政権の暴走を批判。自民党と正面から対決する日本共産党をいっせい地方選で躍進させて安倍政権にノーの審判をと訴えました。
(２０１５年０３月１７日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

潮流

　戦地で死んだ仲間の認識票を引きちぎり無念の思いを持ち帰る。よく戦争映画で見かける場面です。身元がわかるようにと軍人が身につける認識票は皮肉をこめて「ドッグタグ」と呼ばれることも▼最近読んだ本に、この認識票が出てきました。この２０年の自衛隊の変容を示す逸話として。幹部の自衛官に見せられ、いつも身につけるようになったと。自衛隊を取材してきた毎日新聞記者の瀧野隆浩さんが『出動せず』で書いています▼９０年代以降、海外に派遣されるようになった自衛隊の任務は飛躍的に増え多様化している。そして自衛隊は「死」を組織として取り込んでいった。それを知ってほしいと、瀧野さんは著書の中で述べています▼いま安倍政権は公明党と一緒になって「戦争立法」をつくろうとたくらんでいます。これまでの政府の解釈さえひっくり返し、いつでも、どこでも、あらゆる形で自衛隊が米国の戦争に加担する。まさに死と直面する事態です▼そんな国づくりを許さない、戦後日本の平和な歩みを支えてきた憲法九条を必ず守る―。全国の熱い息吹を交わした「九条の会」の討論集会。１人で始めた会が何倍にもなった、さまざまな団体と共同して宣伝にとりくんでいる、保守や若者にも声をひろげている。草の根の運動です▼各地の成果をさらに。九条の会のアピールにあります。「結成から１０年を経過した私たち九条の会にとっても真価が問われる正念場」。戦後７０年の今こそ、日本と世界に九条を輝かすとき、だと。
( ２０１５年０３月１７日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

ＮＨＫ日曜討論／市田副委員長の発言

　日本共産党の市田忠義副委員長は１５日のＮＨＫ「日曜討論」で、１３日に衆院を通過した２０１５年度予算案の参院審議や「政治とカネ」の問題などについて各党の参院責任者らと議論しました。

予算案

国民に害悪もたらす予算／共産党は組み替え案出し論戦
　予算案について、自民党の溝手顕正参院議員会長は「国民生活の安定のため、できるだけ早く予算を通したい」と発言。民主党の羽田雄一郎参院幹事長は「雇用、格差問題を議論しなければならない」と語りました。市田氏は次のように述べました。
　市田　今度の予算案は、社会保障拡充のためにと言って消費税増税をしながら、年金も医療も介護も生活保護も切り捨てる。第二には、財政再建と言いながら、史上最高の利益をあげている大企業に２年間で１・６兆円も税金をまけてやる。第三に、３年連続軍拡予算で、補正予算と合わせると（軍事費は）５兆円超えるわけです。これは本当に国民にとって害悪をもたらすだけの予算で、われわれは組み替え案を出しました。法人税（減税）１・６兆円のばらまきはやめる。社会保障をもっと拡充する。まともな雇用のルールを確立する。こういう組み替え案にもとづく論戦をやりたい。沖縄の新基地建設問題もあるし、あとで議論となる「戦争立法」の問題もあるでしょう。骨太の議論を正面からやっていきたいと思っています。

「政治とカネ」

企業・団体献金には賄賂性／パーティー券含め一切禁止を
　安倍首相をはじめ閣僚らが国の補助金を受けた企業から献金を受け取るなど「政治とカネ」をめぐる問題が噴出していることについて議論となり、市田氏は次のように主張しました。
　市田　二つ大きな問題があると思うんです。企業・団体献金ですけれども、補助金を受けている企業・団体が政党に献金してはならないというのは、賄賂性をおびている、カネの力で政治を動かすというものだからです。もらう方も、１００万、２００万円くれる企業がどういう企業かも調べずに、ばれたら「知らなかった」と。「知らなかったらすむんだったら、おまわりさんいらないじゃないか」と国民はそこに怒っているわけです。
　何よりも企業・団体献金とは、本来的に見返りを期待するから出すわけで、賄賂性を帯びているわけです。だから企業・団体献金はきっぱり即時に禁止する、パーティー券も含めて一切禁止するということが何よりも大事です。
　政党助成金の問題は、だいたい国民の血税で政党の運営をやるなんて本来間違っていると思うんです。自民党の財政の６割、民主党は８割、維新も７割が政党助成金なんです。やはり自前で、国民に依拠して自らの財政を確立する。企業・団体献金もらうわ、こっちで政党助成金ももらうと、こんなやり方をやっていたら国民から不信を招くし、政治を堕落させる、ゆがめる。やはり根本原因はそこにあると思います。
　溝手氏（自民）は、「企業・団体献金を禁止する動きにはついていけない」と述べ、企業・団体献金に固執する姿勢を示しました。維新の党は、パーティー券購入を野放しにする自らの立場には触れずに「企業・団体献金の禁止」を主張。社民党、次世代の党も「企業・団体献金禁止」の立場を示しました。
　維新の片山虎之助・参院議員会長はまた、政党助成金について「額をもっと下げていかないと。国営政党みたいなことになったら困る」「個人献金の文化を育てないと（いけない）」と述べました。市田氏は再び発言しました。

政党助成金もきっぱり廃止を／「やろうと思えばすぐやれる」
　市田　個人献金の習性がないとおっしゃったけど、わが党は個人献金だけでやっているわけです。やろうと思えばやれるわけで、やはり自主的な財政を確立すべきだと思うんですね。
　政党助成金ができてから２０年たつけど、共産党以外の党に６３１１億円配られているわけです。このため年末になると政党の離合集散がおこるわけでしょう。「今、わしは何党かねと、秘書に聞き」というくらい、どこの党かわからないようになっている。これは政治的退廃の極みだと思うんです。企業・団体献金と一緒に政党助成金もきっぱり廃止するという立場にたたないといけない。
　法律での議論を待つんじゃなく、やろうと思えばすぐやれるわけですから。各党が決断して、今日から明日からもらわないと宣言すべきだと、率直に問題提起しておきたいと思います。

安保法制

どんな戦争にも自衛隊が海外へ／「戦争立法」の法制化やめよ
　次に集団的自衛権行使容認の「閣議決定」（昨年７月）を具体化する安保法制について議論となりました。溝手氏（自民）は、公明党と続けている協議について「ご理解を得て与党間で合意できる」と語りました。羽田氏（民主）は「『閣議決定』は立憲主義から言っておかしい。まずこの撤回を」と主張しました。
　市田氏は次のように指摘しました。
　市田　一番の危険性がどこにあるかというと、アフガン戦争やイラク戦争の時にも日本の自衛隊を派兵しました。しかし少なくとも、「戦闘地域にはいかない」「武力行使はしない」という歯止めがあったのに、それを全部取り払い、戦地にも出かけて（米軍などへの）軍事支援も行う。今度、「周辺事態」という概念までなくして、地球の裏側まで行っちゃう。それからアメリカの先制攻撃の侵略戦争であっても、集団的自衛権行使する。一言でいうと、いつでも、どんなところにも、どんな戦争にも、自衛隊が海外に出て行き軍事支援することができる。これは憲法９条を根本から否定するものであって、われわれは「戦争立法」と呼びたいと思うんですけど、そういう立法化はやめるべきだと思います。
　多くの国民は、３１０万人の日本国民、２０００万人のアジアの人々を犠牲にしたああいう戦争はやってはならないという思いをもっているわけです。そういう時に、再び「海外で戦争する国」になってはならないと強く訴えていきたいと思っています。

参院選挙制度改革

現行定数で１票の格差是正し選挙制度は比例代表中心に
　参院での「１票の格差」を違憲状態として解消するよう求めた最高裁判決をふまえ、各党間で協議を続ける参議院の選挙制度改革について、溝手氏（自民）は「今国会中に成案を得ることを目標としたい」と語りました。市田氏は次のように語りました。
　市田　最高裁判決を重く正面から受けとめるべきだと思うのです。３１回実務者協議が行われたのです。何も合意がないかというと、２０回目の協議の時に大事な合意があるのです。一つは最高裁判決にもとづいて検討するというのと、（もう一つは）定数は現行定数で１票の格差を是正する抜本的な改革を行うということが合意されているんです。この合意にもとづいて、知恵を出し合って粘り強く、結論を出していくべきです。選挙制度というのは、どの党にとって有利か不利かではなくて、国民の投票が議席に鏡のように反映されるというのが一番望ましいわけで、それはやはり比例代表を中心にした選挙制度だとわが党は考えています。
　同時に地域性も必要だという点でいえば、西岡武夫・元議長が９ないし１１のブロックの比例代表でと（提案した）。これはたたき台になると思うので、こういう方向で大いに議論してまとめていくことが大事じゃないかと思っています。

「戦後７０年談話」

「村山談話」の核心引き継がず世界から孤立する方向だ
　安倍首相が発表するとしている「戦後７０年談話」について、溝手氏（自民）は、「安倍首相がする談話ですから、思いのたけを出していただくことは結構だ」と述べ、羽田氏（民主）は「村山談話、河野談話を踏襲すべきだ」と発言しました。市田氏は次のように語りました。
　市田　安倍首相は「村山談話」を全体としては引き継ぐとおっしゃるんですけど、「村山談話」の核心部分である「国策を誤って」「植民地支配と侵略を行ったことを反省しおわびする」を引き継ぐかと何度問われても、「引き継ぐ」とはおっしゃらない。事実上、過去の侵略戦争を肯定する立場に立っておられるわけで、いわば戦後、世界政治、日本政治の出発点を根本から否定すると（いうことです）。そんな談話は絶対に出すべきではない。アジアだけでなくて世界から孤立する、そういう方向は絶対にやってはならないというのがわが党の立場です。
( ２０１５年０３月１６日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

日本は歴史直視を／全人代後の会見で注文／中国首相

　【北京＝小林拓也】中国の李克強首相は１５日、全国人民代表大会（全人代＝国会に相当）閉幕後、北京の人民大会堂で記者会見し、「日本の指導者が歴史を直視し続ければ、中日関係の改善と発展の新たな契機となり、経済貿易関係の発展に良い条件ができる」と述べ、日本政府が侵略の歴史を認識するよう促しました。「侵略戦争はわれわれに大きな被害をもたらしたが、最終的には日本の民衆も被害者だ」と強調しました。
　李氏は「現在の中日関係は困難だ」とし、侵略について正確な歴史観を持つ重要性を強調。「一国の指導者は、先人の犯罪行為がもたらした歴史の責任を負わなければならない」と訴えました。「戦後７０年談話」の発表を目指す安倍晋三首相に対し、「植民地支配と侵略」への「痛切な反省と心からのおわび」を示した「村山談話」を継承するよう求めた形です。
( ２０１５年０３月１６日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

歴史を塗り替えた日本列島発掘史／大塚初重著／評者勅使河原彰考古学者

画期になった遺跡から読み解く
　１８歳で帝国海軍の軍人として出征し、上海で捕虜生活を経験した著者は、復員すると科学的な原始・古代史研究として、考古学の道を歩むことを選択した。その著者が戦後７０年におよぶ日本考古学で画期となった１３遺跡を取り上げ、その発掘史を語った。
　第１章「列島の黎明期」は、岩宿遺跡での旧石器遺跡の発見と登呂遺跡での弥生時代の農耕村落の発掘という、戦後の日本考古学を象徴する二つの出来事を軸に、武井遺跡では日本の旧石器研究６０年の成果、夏島貝塚では占領下での縄文文化起源の探究、荒神谷・加茂岩倉遺跡では大量の青銅器の発見をもとに、弥生時代の地域間の交流を語る。
　第２章｢権力の誕生｣は､平原墳丘墓で出土した大量の鏡から大陸の門戸としての伊都国の役割、ホケノ山古墳の年代論から纒向古墳群の中に列島の政治情勢の変革と巨大前方後円墳・箸墓古墳の出現の意味を読み解く。椿井大塚山古墳では三角縁神獣鏡を手がかりに大和王権の成立基盤、稲荷山古墳では１１５文字の鉄剣銘文から大和王権と東国との関係を説き、三昧塚古墳と龍角寺古墳群の調査成果から、東国での一地域の支配者像と地域像を明らかにする。最後の虎塚古墳では未開口の石室の発掘と壁画の発見という、著者の未曽有の体験とその公開の意義を熱く語る。
　遺跡の発掘調査の成果から歴史を読み解くという、考古学研究の醍醐味を時々のエピソードと最新の研究成果を加味して分かりやすく解説した好著である。また、旧石器ねつ造と高松塚古墳の壁画劣化の問題に紙幅を割き、その背景を解説してくれているのも、読者にはありがたい。

　おおつか・はつしげ　２６年生まれ｡明治大名誉教授｡『邪馬台国をとらえなおす』
( ２０１５年０３月１５日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

談話に国連総長注文

　【ニューヨーク＝時事】国連の潘基文（パン・ギムン）事務総長は１１日、日本人記者団との会見で、安倍晋三首相が今夏発表する戦後７０年談話について、「アジア太平洋地域における、より一層の平和と友好関係のために、日本政府が前向きで未来志向の展望を示すことを期待している」と述べました。事務総長は「日本政府が未来志向の展望を宣言することは極めて重要だ。アジアと世界の人々は、そうした声明を期待していると思う」と強調しました。
( ２０１５年０３月１３日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

内閣支持率８ポイント下落の４割台／自民議員「苦しい状況」／ＮＨＫ調査

　ＮＨＫの世論調査（３月６日から８日）で、安倍内閣を「支持する」と答えた人は先月より８ポイント下落して４６％でした。４割台の支持率は昨年７月（４７％）、１１月（４４％）、１２月（４７％）以来。一方、「支持しない」と答えた人は８ポイント増えて３７％でした。
　自民党の谷垣禎一幹事長は１０日の記者会見で､｢政治とカネ」の問題で追及をうけたことが「ボディーブローのように効いている｣と述べました｡
　自民党議員の一人は、「補助金企業からの献金問題が大きく広がったし、下村文科相の問題は説明できておらず苦しい状況だ。かといって安倍首相も擁護してきたので、やめさせるわけにもいかず悪い循環になっている」「中川農水政務官の問題も相当イメージを悪くした。自民党がおごり、タガが外れていると見られている」と唇をかみます。
　調査では、企業・団体献金に対する規制を、法律で厳しくする必要があるかどうかという問いに、「必要がある」が５８％と「必要はない」の１１％を大きく上回りました。
　集団的自衛権の行使に向けて法整備を進める安倍内閣の方針には「賛成」が２２％、「反対」が３８％でした。
　戦後７０年の今夏に安倍首相が出す予定の談話について、歴代内閣の談話で表明された「過去の植民地支配と侵略に対する痛切な反省」を盛り込んだほうがよいと思うかという問いに対しては、「盛り込んだほうがよい」が３５％、「盛り込まないほうがよい」が１７％でした。
( ２０１５年０３月１２日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

「戦争する人づくり」批判／京都教職員組合が大会

　京都教職員組合は７日、京都市左京区で第７７回定期大会を開きました。
　運動の重点として、「戦争する国づくり」・憲法こわし、安倍政権の「教育再生」を許さず、憲法を守り生かす運動をすすめること、大幅賃上げと人間らしい労働の実現、組織拡大・強化などを確認し、新役員を選出しました。
　あいさつした河口隆洋委員長は、安倍政権が集団的自衛権行使の具体化と明文改憲で「戦争する国づくり」を加速させていることを告発。さらに、「道徳の教科化」などで「戦争する人づくり」をすすめる学校・教育への改変がたくらまれていると批判し、「戦後７０年を新たな戦前にしないために『教え子をふたたび戦場に送るな』の教職員組合運動の原点に立った取り組みが強く求められる」と訴えました。
　全日本教職員組合の蟹澤昭三副委員長、京都総評の梶川憲事務局長、日本共産党の大河原としたか参院京都選挙区候補（弁護士）があいさつしました。
　選出された新役員は次の通りです。（敬称略、新以外は再任）
▽委員長＝河口隆洋▽副委員長＝中野宏之、安嵜正（新）▽書記長＝中久保弘志
(２０１５年０３月１１日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

私たちは声あげる／国際女性デー各地で旺盛に／「憲法生かす」集会アピール／三重

　国際女性デー三重県集会が８日、津市のサンワーク津で開かれ、県内各地から約１２０人が参加しました。
　新日本婦人の会三重県本部顧問の山田玉世さんが講演し、戦後７０年の女性運動の実践例として、東京大空襲の惨状や疎開生活、戦後の三重県での老人医療費無料化運動などこれまでの自身の人生を語りました。
　三重県原爆被災者の会事務局長の坂牧幸子さんが被爆体験を語って核兵器のない世界の実現を訴えました。
　「県民本位のやさしい三重県政をつくる会」から知事選に立候補する、ふじい新一氏が来賓としてあいさつし、暮らしを守る県政への転換へ、共同を呼びかけました。
　参加者は「安倍政権の暴走をとめ、憲法を守り生かす政治への転換をはかりましょう」との集会アピールを全員で採択しました。
(２０１５年０３月１１日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

私たちは声あげる／国際女性デー各地で旺盛に／安倍政権にはレッドカード／福井

　国際女性デーの８日、「女の平和の行動」(実行委員会主催)として集会とパレードが福井市内で取り組まれ、赤い衣装をまとった女性ら約４０人が集まり、アピールしました。
　田島ちゑこ・新日本婦人の会福井県本部会長があいさつし、「戦後７０年、被爆７０周年、女性が参政権を勝ち取って７０年。歴史の節目で女性がアピールします」とのべました。参加者から「安倍政権にレッドカード」との掛け声が飛びました。
　「私たちは（戦前と違い）大きな声で『戦争反対、９条守れ、安倍やめろ』といえる」「庶民いじめの政治をみんなでとめよう」などの発言も。沖縄県名護市出身の中野久子さん（６５）は「辺野古の海を守ろう」と呼びかけました。
　パレードでは「私たちは子や孫を戦場に送りません」「９条を守ろう」と訴えました。
(２０１５年０３月１１日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

戦後７０年談話に懸念

　村山富市元首相は９日、安倍晋三首相が今夏発表する戦後７０年談話について、「（過去の談話を）薄めたり言い方を変えたりすると誤解を招く。不信を買う。日本が孤立する」と述べ、自身が戦後５０年に出した村山談話の趣旨が変えられることへの懸念を示しました。東京都内で記者団の取材に応じました。
　村山氏は、「村山談話のキーワードは『国策を誤った』とか『植民地支配』とか『侵略』だ」と強調。日本が植民地支配や侵略によりアジア諸国に被害を与えたのは「歴史的事実」と明言した上で、「悪かったことは謙虚に認め、過ちは繰り返さないと決意を表明するのは当然だ。その前段を曖昧にすると、後で何を言っても信頼されない」と指摘しました。
( ２０１５年０３月１１日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

「首相は『侵略』と言ってほしい」／戦後７０年談話で北岡氏

　安倍晋三首相が今夏発表する戦後７０年談話に関する有識者会議座長代理の北岡伸一国際大学長は９日、東京都内のシンポジウムで先の大戦に言及し「侵略して悪い戦争をして、たくさんの中国人を殺して誠に申し訳ないということは、日本の歴史研究者に聞けば９９％そう言う。私は安倍さんに日本は侵略したと言ってほしい」と述べました。
　また、北岡氏は「戦後７０年たって、謝罪の方が（談話の）中心にくるかどうかがキーだと言うメディアには私は違和感を覚える」と語りました。
( ２０１５年０３月１１日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

「黒澤明特集」２局で放送／生誕１０５年

　日本映画専門チャンネルと時代劇専門チャンネルは、「戦後７０年共同企画」として３月から「監督　黒澤明の仕事」を編成します。今月は黒澤生誕１０５年です。
　日本映画専門ｃｈでは現代劇１９作品を１４日から、時代劇専門ｃｈでは時代劇１１作品を１５日から順次放送していきます。
( ２０１５年０３月１１日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

10日

各地で国際女性デー集会／〝展望を切り開こう〟／京都市内を行進

　３・８国際女性デー京都集会が８日、京都市で行われ、１４０人が集いました。参加者は戦後７０年の節目の年に、戦争する国づくりに突き進む安倍政権を許さず、憲法を生かし、平和を守り、ジェンダー平等を実現しようと決意を固め合いました。
　フォトジャーナリストの森住卓さんが、福島と沖縄・辺野古の現状をリポート。「平和と民主主義をめぐるたたかいの最前線にある沖縄で展望を切り開くのは、福島の状況を切り開く上でも、とても大事なこと。全国的なたたかいにすることが求められている」と語りました。
　会場から２人が発言。福島県から京都に母子避難している菅野千景さん(４９)は「補償がほしいのではなく、原発事故の責任の所在と原因をはっきりさせたい」と集団訴訟をたたかう思いを語り、沖縄県出身の矢ケ崎響さん(３９)は「相手は非力な住民の運動を恐れている。非力を武器に、弱さを力にがんばっていこう｣と語りました｡
　集会後、参加者は市役所前から四条河原町まで行進。７千人で国会を包囲したヒューマンチェーン運動にならい赤い服や飾りを身につけたり、女性デーのシンボル・ミモザの花を振ったりして、繁華街の買い物客らにアピールしました。
(２０１５年０３月１０日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

米議会での演説検討

　安倍晋三首相は、４月下旬からの大型連休中に訪米する際、米議会で演説を行う方向で検討しています。実現すれば、１９６１年に池田勇人元首相が下院で行って以来５４年ぶりとなります。
　日本の首相による米議会での演説は、安倍首相の祖父の岸信介元首相も５７年に上院と下院でそれぞれ実施。これまで日本の首相が行った例がない米上下両院合同会議での演説も模索しており、日本政府は米議会に水面下で働き掛けています。
　議会演説では、平和国家としての日本の立場は今後も不変であるとアピールする方針。演説は安倍首相が８月に発表する戦後７０年談話に反映されるとの見方もあります。
( ２０１５年０３月１０日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

主張／戦後７０年と大空襲／被害解決へ国は責任を果たせ

　アジア・太平洋戦争末期の東京大空襲からきょうで７０年です。１９４５年３月１０日未明、米軍Ｂ２９爆撃機約３００機が投下した大量の焼夷弾で東京の下町一帯は火の海にされ、約１０万人の命が奪われました。米軍の民間地域への無差別空襲は東京だけでなく全国の都市などを焼き払い、甚大な犠牲を生みました。生き延びた人たちも心や体に深い傷を負い苦難の人生を強いられました。日本政府はいまだに民間人の犠牲者・被害者への補償を拒み続けています。「命あるうちに解決を」。高齢化する被害者らの悲痛な叫びに、国は今こそこたえるべきです。

「防空法」が悲劇拡大
　アジア･太平洋戦争は､日本の無法な侵略によって引き起こされ、アジア各地に多大な犠牲と被害を強いましたが、戦争末期の日本各地への米軍の無差別空襲は、軍人ではない一般市民・労働者の住む地域を標的にした非人道的な作戦でした。広島と長崎への原爆投下と並んで、国際法に違反する行為であることは明らかです。民間人の空襲犠牲者は原爆犠牲者などを含めると約５０万人にのぼります。
　米軍の日本空襲が本格化したのは４４年秋からですが、当初は高高度から軍事施設を狙う爆撃が中心でした。しかし東京大空襲以降、夜間に低高度から大量の焼夷弾を投下して民間地域を焼き尽くす「じゅうたん爆撃」へ転換しました。米軍は日本の木造家屋密集地域を「効率的」に燃やす研究を重ね、そのために開発した焼夷弾を市民の頭上に降り注ぎました。
　さらに犠牲を拡大したのは戦時下の日本政府が「防空法」で民間人に「逃げるな。火を消せ」と厳罰つきで強制したことです。焼夷弾にはまったく無力な消火活動にたずさわって逃げ遅れ、命を奪われた例は枚挙にいとまがありません。イギリスのロンドン空襲では地下鉄駅が市民に避難所として開放されましたが、日本は地下鉄入り口が閉鎖されただけでなく、地下鉄構内にいた乗客までが地上に追い出されました。
　大阪大空襲で国の責任を問う被害者の起こした裁判は、原告が敗訴したものの、大阪地裁と同高裁は、防空法によって空襲から国民が事前に避難することを困難にされ、危険な状況に置かれた事実を認定し判決に明記しました。犠牲を広げた国の責任は免れません。
　空襲で全身に大やけどを負い、爆撃で手や足を失った被害者、肉親の遺体すら分からず孤児になった多くの遺族らの７０年は言葉にならないほどの苦難の歩みでした。軍人・軍属には補償の仕組みがあるのに、民間人はなんの補償もなく放置されてきたのは理不尽です。ドイツなどは軍民区別なく戦争被害者への補償をしています。日本政府は民間人被害者を差別する異常な姿勢を改めるべきです。

戦争犠牲者二度と生まぬ
　全国の空襲被害者・遺族らが求める、国の責任で被害を救済する「空襲被害者等援護法（仮称）」の制定は待ったなしです。被害の実態調査や追悼施設整備なども国の責任で行われることが必要です。
　被害者・遺族がつらい体験を語り続けるのは、戦争の惨禍を繰り返してはならないという揺るぎない決意からです。戦後７０年、戦争被害者と国民が力を合わせ「戦争する国」づくりを許さない草の根の世論と運動を強める時です。
( ２０１５年０３月１０日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

人形作家与勇輝さん／戦争は思い出すのも嫌だがつくらないと悔いが残る

明治、昭和の生活描写がライフワーク
　まるで生きているような愛らしい人形を次々と作り出す人形作家の与勇輝（あたえ・ゆうき）さん。戦後７０年の節目に、戦争体験を振り返りながら、子どもたちへの思いを語りました。
　金子徹記者

　「いまも作りたいものはいっぱいあるけれど、なかなか進まず仕事がたまってしまっています。人形を、いじくりまわしていると、きりがなくて。作りかけの人形たちが、『早く仕上げてくれ』『しっかりしろ』といっている声が聞こえます。人形と、話をしながら作っています」
　アトリエは、制作中の人形や、素材となる古い布などで埋め尽くされています。服も小道具も、すべてが手作りです。
　「なかなかぴったりの布が見つからない。特に和服の人形は、完成までに時間がかかり、人形を待たせてしまいます」
　「立たなければ人形じゃない」と、すべての人形を支えなしに自立するように制作。詩情をたたえた人形には、海外にもファンが多くいます。

空襲も鮮明に
　１９３７年生まれ。ライフワークは、明治から昭和前期の庶民の生活を表現することです。
　「子どもだったけれど、戦争中の記憶ははっきりしています。戦中戦後は食べ物がなく、いつも腹をすかせていました。親が畑で作ったさつまいもがごちそうでした。川原の土手にも食べられるものを植えていた。よその家の柿をとって追っかけられたりもしました。当時は配給制だから砂糖なんてめったに食べられず、甘いものに飢えていました」
　生まれは神奈川県川崎市｡空襲の記憶も鮮明です｡
　「空襲は、思い出したくもない。空襲警報が鳴ると、夜眠くても起こされて。明かりをつけたらいけないので、暗やみのなかを手を引かれて防空ごうに入りました。穴蔵のなかで、警報が解除されるまで１時間か２時間、じーっとしている。土の壁の臭いをいまでもよくおぼえています。僕の住んでいた地域は燃えなかったけれど、多摩川の川向こうは燃えていたし、川崎の市街も燃えた。荷物を抱え、逃げていく人たちを見ました。そういう体験があるから、僕はいまでも暗やみは嫌です」
　防空頭巾をかぶった子どもや、もんぺ姿の少女など、戦時下の子どもたちの姿も人形に。入隊する息子を囲む家族を表した「召集令状」など胸に迫る作品もあります。
　「神社で壮行会をやって、駅までみんなで送りました。七つか八つのころは、『日の丸』の旗を学校でよく作らされました。絵と工作が好きだったのにクレヨンが無い。親に泣いて頼んだけれどなかなか買ってもらえなかった。僕も、もう少し年上だったら兵隊にされていた。まだ小さかったから助かったのです」
　戦争のことは思い出すのも嫌でした。しかし、「作っておかなければ悔いが残るだろう」と考えるようになり、自分の記憶を人形にしています。
　「靴磨きの少年や、親を亡くした浮浪児などを作りました。実際にあの時代を体験した人がみれば、あんなもんじゃない、とてもひどい状態だったというでしょう。だから、また戦中戦後の子どもたちの人形を作らないといけないかな、と思っています。あのころを記憶しているのはもう僕らだけなのだから、もうちょっとやってみようと、こだわりがあります」

子どもの将来
　明治から現代まで、子どもを題材にした作品が多い与さん。子どもたちの将来に思いをはせています。
　「ニュースをみていると、中東や紛争地帯の子どもたちがかわいそうでなりません。世界中で、何の罪もない子どもたちがつらい目にあっている。それを伝えようとしたジャーナリストの後藤健二さんも殺されてしまった。とても残念です。これからの子どもたちの将来のために何をしたらいいのか、おとなは考えないといけません」
　なぜ人形制作を続けるのか。
　「小さいころから、絵を描くことと物を作ることが好きでした。これまでに作った人形は９００体くらいになります。時間があれば、ずっと手を動かしています。僕から人形をとったら何もないですよ。展覧会で、人形を見ている人の顔がほころぶ。人形を自分に重ねたりして喜んでもらえる。それが一番うれしいです」

あたえ・ゆうき＝１９３７年川崎市生まれ｡本名同じ。９３年、山梨県に作品を常設展示する河口湖ミューズ館・与勇輝館が開館｡同館では１８日まで、与勇輝喜寿記念展第二部「夢想の世界」を開催中（掲載写真は同展出品作）
(２０１５年０３月０８日，「赤旗」)

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インタビュー戦後７０年／元官房長官、元「新党さきがけ」代表武村正義さん／談話根幹見直しようがない

「村山談話」決定の当事者／国策を誤り、植民地支配と侵略、反省とお詫び／安倍首相の外交、改憲に危惧
　「インタビュー　戦後７０年｣｡今回は細川内閣で官房長官、村山内閣で蔵相（当時、現財務相）をつとめ、「村山談話」の閣議決定に関わった武村正義さん（元「新党さきがけ」代表）に聞きました。
　田中倫夫記者

　私は小学５年生のとき、滋賀県の田舎で敗戦を迎えました。近所に陸軍飛行場があり、戦争末期には操縦者の米兵の顔がわかるほどグラマンが低空で飛来し、屋根に薬きょうがばらばら落ちてきたのを覚えています。
　戦後すぐに憲法が施行され、新しい民主主義教育が始まりました。しかし、高校に入ったころから朝鮮戦争になり、ガラッと流れが変わりました。「再軍備」も叫ばれ、世情騒然。私も生徒会長就任あいさつで「吉田内閣打倒！」と叫んだりして、無期謹慎処分になりました。それでも「処分反対」を叫んでまたビラをまきに学校へ行きました。
　戦後７０年を考えると、日本は一度も戦争に参加せず、平和主義をどうにか貫いてきました。先の大戦で日本は軍事大国になり、世界を相手に戦争をし、最後はぼろぼろに負けました。そんな大失敗のあとの７０年ですから、国としても、人間としても反省するのが当たり前でしょう。
　その点で、今年、安倍晋三首相が「戦後７０年」で出そうとしている談話の内容が大変気になります。
　私は村山内閣のときに蔵相、また「さきがけ」の党首として、「村山談話」（「戦後５０周年の終戦記念日にあたって」１９９５年８月１５日）についての与党党首会談に出ました。当時自民党総裁の河野洋平さんと社民党党首の村山富市（首相）さんと私の３人で、２回ぐらい文言のチェックなど意見交換し、閣議決定しました。
　「談話」は、「国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ」「植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の苦痛と損害を与えた」と認めました。そのうえで「痛切な反省」「心からのお詫（わ）び」を明らかにしました。実にすっきりしています。この根幹は見直しようがありません。

１００年の反省を
　「いつまで戦争の反省を繰り返すのか」という批判もありますが、あの戦争の大失敗は少なくとも１００年ぐらいは反省し続けないといけない。加害者の日本側がいくら忘れようとしても、被害者のアジアの人々にとっては、祖父母の時代の話でまだ生々しいのです。前向きな言葉はいいでしょうが、７０年前の歴史の反省はきっちり前提にしてものをいわないといけない。そういう言葉を外したり、中途半端な表現に変えたりすれば、世界中から批判を受けます。
　安倍さんは「戦後レジーム（体制）からの脱却」といい、憲法の生い立ちも気にしています。憲法は確かにＧＨＱ（連合国軍総司令部）が主導してできた経緯があります。でも、最後は日本の国会で決まったのです。大事なのは中身です。７０年たってしっかり国民に定着しています｡国民主権､平和主義、議会制民主主義などは、変える必要がない大原則です。私は憲法を時代の変化で見直すこと自体は否定しませんが、基本原則は変えてはならないと思います。
　私は自民党衆院議員を８年やったとき、安倍さんのお父さんの晋太郎さんの安倍派に属していました。お父さんと比べると、首相にはどうも柔軟さが感じられません。

一歩が百歩に
　とくに心配なのが安全保障に対する考え方です。
　武器輸出三原則を、武器の輸出禁止から輸出奨励に変えてしまった。ＯＤＡ（政府開発援助）大綱も、「非軍事」といいつつ、軍隊の後方支援や輸送の分野に援助できるように穴をあけた。その動きの中心に集団的自衛権の行使があります。
　安倍さんは、以前はこれを９条改正でやろうとしていた｡しかし､難しいからと、憲法改定のハードルを低くするための９６条改定を言いだす。それも反発されると閣議決定で解釈を変えてしまう。一番安易な道を選んでしまった。こんな大きな、国のありようを変える問題を、もっとも簡単な解釈改憲で、身内だけの賛成で決めていいはずがありません。
　集団的自衛権の行使を認めるということは、日本が攻撃されていないときに、よその国にでかけて戦争するということです。いろんな条件を付けても、一歩が百歩になってしまう危険性が大いにある。かつての道を繰り返すのでは、と危惧します。戦争を経験していない世代が政治家でもほとんどとなり、戦争への深刻な反省から出発したはずの「戦後日本」が揺らいでいると心配しています。

共産党を評価
　日本共産党は衆院選で議席を増やしましたよね。私が所属してきた政党と比べても、共産党の方はまじめに根気よく活動されている。それが国民の支持を受けたのでしょう。多くの政党の政策の軸があいまいになっている中で、共産党は政策も旗幟（きし）鮮明でプラスの印象を与えている。「共産党には賛成しないが政策は評価する」という人は結構多いですよ。昔に比べると、私も一致するところが多くなったかな（笑）。プラス面を伸ばしていってほしいですね。

たけむら・まさよし＝１９３４年滋賀県生まれ。東京大学卒業、旧自治省入省。７４年、滋賀県知事に初当選し３期務める｡８６年衆議院議員に自民党公認で初当選し､４回当選。９３年「新党さきがけ」代表、内閣官房長官、９５年大蔵大臣
(２０１５年０３月０８日，「赤旗」)

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『決定版　東京空襲写真集』を刊行して／戦火の教訓を未来に託す／早乙女勝元

　ことしは戦後７０年、歴史的な節目であると同時に、この国の進路が重大な岐路を迎えている。

「銃後」家族の無念の声継承
　戦争のさまざまな実体験者は高齢化し、直接の語り継ぎはもはや限界で、まもなく文字や映像で若い世代が追体験する時代に入る。米軍爆撃機Ｂ２９による東京大空襲の惨禍も例外ではない。にもかかわらず、どれほどの人が一夜にして１０万人もの生命が失われた「炎の夜」をご存じだろうか。
　大空襲の３月１０日（１９４５年）のみならず、連日連夜の空襲で無念の死に至った人たちは、男たちを戦場に送った「銃後」の留守家族で、主として女性や子ども、高齢者たちだった。その声なき声を次世代に継承しようと、民立民営の東京大空襲・戦災資料センター（江東区北砂）が、開館から１３年。全国からの修学旅行生たちの平和学習の場と共に、これまでに多くの戦災資料が寄せられ、多角的な研究と解明が行われてきた。
　特に一目でそれとわかる惨禍の写真は、当時一般人がフィルムを入手できなかっただけに、貴重である。警視庁カメラマン石川光陽氏が系統的な記録を残していたのは知られているが、実はそのほかにも空襲下の状況をリアルに伝える写真が、東方社、日本写真公社などに存在していた。
　元情報局職員だった方のご遺族から、大空襲前後の多量の写真を、オリジナルネガごと提供されたときなど、思わず指先が震えたものである。

風化許さない想像力を培う
　東京大空襲・戦災資料センターでは、数年前からそれらの写真の共同研究を進めてきた。アメリカ軍による東京空襲が軍需目標のみならず、学校や病院、教会に寺院、商店街など、民間人とその居住地を焼きつくす無差別爆撃だったことの実態を読みとることができる。
　東京空襲を撮影した１４００点余を日付・場所を特定して網羅集成した本書を私の監修とセンターの編で刊行した。撮影者情報や詳細な解説に加え、「本土空襲地域別死者数」「東京都被災地図」など豊富な資料を収録して、東京空襲の全貌を明らかにすることができた。
　Ａ４判５００㌻余の大冊だが、永久保存版として、実体験者がこの世を去った後あとまで、戦火の風化を許さぬ想像力を培い、戦争になったら、女性や子どもがどうなるのかの教訓を、未来に託してくれることだろう。歴史の事実から目を背け、過去の戦争の美化と愛国心教育が忍びよる現在、これからの歴史・社会・平和の教育などで役立ててほしい。
　（さおとめ・かつもと　作家）
( ２０１５年０３月０８日，「赤旗」)

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憲法会議結成５０年／改憲策動打ち破る年に／総会で方針

　１９６５年に誕生して５０年を迎えた憲法改悪阻止各界連絡会議（憲法会議）は７日、東京都内で第５０回全国総会を開きました。さまざまな改憲攻撃を退けてきた憲法運動の教訓を力に、戦後７０年のことしを安倍政権の改憲策動を打ちやぶる歴史的な年にしよう、と呼びかける運動方針を採択しました。
　提案に立った平井正事務局長は、憲法を踏みにじり、集団的自衛権行使容認を具体化する法整備を狙うなど「戦争する国」づくりをすすめる安倍政権の野望に対し、自民党重鎮からも危惧の声が上がっていると指摘。あわせて、憲法会議が支える九条の会の活動が発展するなど、草の根で運動と共同を広げる役割を担ってきたと力を込めました。
　平井氏は、結成５０年の新たな歴史を開く挑戦として、５月３日に開かれる憲法集会の成功や、学習、署名宣伝の強化を強調。「憲法を生かし、世界平和のために憲法９条を輝かす年にしよう」と呼びかけました。
　討論では、中央団体や各地の代表が多彩な活動を報告しました。
　全労連の長尾ゆり副議長は、全国憲法キャラバンに取り組んだ際、懇談した自治体首長から「戦争放棄を掲げる憲法を変えることは、明治憲法に戻すということだ」などの発言が寄せられたと語りました。
　大阪の代表は、昨年だけでも実行委員会形式のパレードに７回取り組んだと報告。大阪弁護士会が主催した集団的自衛権行使容認反対の集会は６０００人が参加したことを紹介しました。
　憲法会議の隅野隆徳代表委員があいさつ。日本共産党の穀田恵二国対委員長が国会情勢を報告しました。
　来賓として「秘密保護法廃止へ！　実行委員会」の角田富夫氏、「許すな！　憲法改悪・市民連絡会」の高田健氏があいさつしました。
( ２０１５年０３月０８日，「赤旗」)

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すべての戦争被害の解決を／空襲被害者ら集会／東京

　空襲被害者など民間人の戦争被害の解決を求めて「ふたたびこの国を火の海にさせないために！戦後７０年・戦争被害のすべて解決を！大集会｣(実行委員長･中山武敏弁護士）が６日、東京都台東区の浅草公会堂で開かれ、約８００人が参加しました。
　（関連１４・１５面）

　高橋哲哉東京大学大学院教授は記念講演で、「村山談話」にある〝国策の誤り〟に触れ、「政府が曖昧にしてきた歴史認識と戦争被害に対する姿勢を問い、政府は国策の誤りに責任を負うべき」だとのべました。
　東京、大阪、名古屋、長崎、沖縄の空襲被害者や被爆者が登壇し語りました。
　名古屋市の杉山千佐子さん（９９）は「防空法でがんじがらめにされ逃げられなかった。私は顔の半分、片腕、足を失った。国はこれ以上、犠牲者をほったらかしにしないでください」と訴えました。
　長崎県佐世保空襲犠牲者遺族会の臼井寛会長は「被害者の高齢化により風化されつつある。悲惨な空襲の事実を、遺品とともに後世に残したい」。
　東京空襲犠牲者遺族会の星野弘会長（８４）は、「このままでは死ぬに死にきれない。命ある限り全力を尽くします｡民主主義､平和主義を守るために力を貸してください｣と呼びかけました｡
　副実行委員長の小林節慶応大学名誉教授は、まとめのあいさつで「いままでこの世界を知らず、人生観が変わるほどのショックを受けている。多くの人に広げる必要があるし、同時に記録もしていかなければなりません」とのべました。
　日本共産党の田村智子参院議員があいさつしました。
( ２０１５年０３月０８日，「赤旗」)

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「愛国心」強制許さない／道徳教科化反対の集会

　安倍内閣が狙う道徳の教科化に反対し、憲法を敵視する教科書採択を阻止しようと呼びかける集会が５日、東京都文京区で開かれました。「安倍教育政策ＮＯ・平和と人権の教育を！ネットワーク」が呼びかけました。
　鶴田敦子元聖心女子大学教授が講演し、道徳の教科化のための学習指導要領改定案について、「愛国心」など国家による価値観の押し付けだと指摘。高校にも新教科「公共」の導入が浮上しており、「国防軍の兵士をつくる、ブラック企業でも黙って働く労働者をつくるのが狙いです」と批判しました。
　「子どもと教科書全国ネット２１」の俵義文事務局長は、中学校教科書採択をめぐる情勢について報告。「侵略戦争賛美の教科書押し付けは、戦後７０年を迎えて国際的にも矛盾は避けられない。安倍内閣の暴走に反対する世論や運動と連帯してたたかいを広げよう」と訴えました。
　高校教員らが修学旅行に行けないなど子どもの貧困や、自衛隊駐屯地での高校生の「防災訓練」について報告し、子どもと教育を守る取り組みを呼びかけました。
( ２０１５年０３月０７日，「赤旗」)

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おはようニュース問答／戦後７０年、空襲被害者を救済する年に

　のぼる　もうすぐ東京大空襲から７０年だね。
　藤乃　１９４５年３月９日深夜から１０日未明に米軍機がやって来て、東京の下町に住む１０万人以上が犠牲になった。
　のぼる　焼け野原になったんだよね。市民を無差別に爆撃するなんて許せない。

犠牲者５０万人超
　藤乃　東京だけではなく、戦争末期には４００以上の市区町村が空襲にあったんだよ。
　のぼる　命を奪われた人は５０万人以上だと聞いたことがある。
　藤乃　生き延びた人は空襲で孤児になったり、傷を負ったりして、苦しみは現在まで続いているんだ。
　のぼる　政府は被害者に補償をしてきたの？
　藤乃　それが全くなかったんだよ。軍人や軍属には５０兆円を超える補償があるのに対し、民間人には補償や援助がなかったのさ。
　のぼる　そんな不公平があるんだ。
　藤乃　ドイツでは軍人や民間人の区別なく補償しているのよ。国が起こした戦争なのだから、被害を受けたみんなが補償を受けるのは当然ではないかい？

受忍論の克服を
　のぼる　「受忍論」というのを聞いたことがあるけど…。
　藤乃　根強くある「国家の非常事態である戦争では、生命・身体・財産に被害を受けても我慢しなければならない」というものなの。これを政府は克服しなければ。
　のぼる　空襲被害者たちは、「戦後７０年の今年が最後のチャンス」として、「空襲被害者等援護法（仮称）」の立法化に向けて動き出して、集会や署名を始めているよ。市民の戦争被害が救済される年にしたいね。
　藤乃　被害者から聞いた、「戦後はまだ来ていない」という言葉が忘れられない。東京大空襲の資料を保管・展示している「東京大空襲・戦災資料センター」では、４月１２日まで写真展をやっているよ。
　のぼる　そうなんだ。今度行ってみよう。戦争を知る良い機会だね。
　藤乃　本当の意味で「戦後を迎える」とともに、日本が再び戦争する国になることを許さないたたかいが大事だね。
　のぼる　そうだね。平和な日本を望む人たちと力を合わせて、安倍政権の暴走を止めたいね。
( ２０１５年０３月０７日，「赤旗」)

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国際女性デー／畑野・紙議員が院内集会に出席

　「戦後７０年、前へ！」と題して国際女性デー院内集会が６日、参院議員会館で開かれました。
　男女格差指数が世界１４２カ国中１０４位と指摘された日本で、女性議員を増やそうと「クオータ制を推進する会｣が主催したもの｡２月に発足した「政治分野における女性の参画と活躍を推進する議員連盟」に所属する各党の国会議員などが意見交換しました。
　日本共産党から畑野君枝衆院議員と紙智子参院議員が参加。畑野議員は総選挙の結果、日本共産党の女性国会議員の比率が衆参両院合わせて３割を超えたと報告し、「地方でも引き続きがんばっていきたい｣とのべました｡
　紙議員は「女性が政治に進出するためにはさまざまな条件を確保しなくてはいけません。日本社会全体で女性がもっと前進できるようにがんばりたい」と話しました。
( ２０１５年０３月０７日，「赤旗」)

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編集長が語る／経済／羽田野修一／資本主義分析など問題提起

　今、ピケティの『２１世紀の資本』が話題ですが、『経済』の特集「２１世紀の資本主義」（１月号）も広く注目されました。格差と貧困の拡大が進む資本主義の限界、資本主義社会の発展段階をどう捉えたらよいか、資本主義分析の課題や変革の展望などについて問題提起をしています。
　読者の皆さんは資本主義社会の解明と未来社会の展望を模索しており、科学的社会主義の出番の時です。ちなみに、３年前の『経済』１２年２月号で、１９１３～２００９年の「トップ１％の所得シェア」のグラフを示し、８０年代半ば以降、世界で所得格差拡大が進んだのは「新自由主義的資本蓄積様式」の表れだと分析しました。
　４月８日発売の「マルクス経済学のすすめ」特集（５月号）は、ブラックバイトの問題から、資本主義社会のしくみや働くことの意味などを考えます。新入生や新社会人の皆さんが手に取り、マルクスとの出会いとなることを願っています。
　◆　　　　　■
　『経済』は、日本の資本主義が直面する諸問題の分析や理論的解明に取り組みます。異次元金融緩和で株高をあおる一方、軍国主義復活の道を暴走する、「アベノミクス」の正体を暴いています。
　直近の３月号、４月号は、安倍政権の掲げる「女性の活躍」論や「産業再生」「地方創生」論に関わるテーマで、読めば興味や関心が広がると思います。今後、医療介護の大改悪（６月号）をはじめ、労働問題や農業問題なども準備しています。
　◆　　　　　■
　今年は戦後７０年。８月号以降で、戦前の植民地支配の問題、戦後日本資本主義の歩みや構造変化の解明などに挑戦します。
　『経済』は今年、復刊２０年を迎えます。これまで不破哲三さんが連載した「エンゲルスと資本論」「レーニンと資本論」「マルクスと資本論」「資本論はどのようにして形成されたか」は、レーニンやマルクスへの通説的理解を一変させました。今後も「時代の課題に挑む科学的社会主義の経済誌」として挑戦を続けたいと思います。
　（新日本出版社　定価１０３０円）
( ２０１５年０３月０７日，「赤旗」)

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岡田民主代表が復帰

　左目の網膜剥離の再発で入院していた民主党の岡田克也代表が６日、党務に復帰しました。記者会見した岡田氏は、安倍晋三首相に対して３月中の党首討論に応じるよう要求。「安保法制や戦後７０年談話、歴史認識などをしっかり議論したい」と述べました。
　岡田氏は、５月の大型連休前に再手術が必要といい、「むちゃはせず、余裕を持った日程でやっていきたい」と語りました。
　一方、自身が代表を務める政党支部が国の補助金交付企業の献金を受領したことに関しては、「誠に申し訳ない」と陳謝。その上で、企業・団体献金の全面禁止は「自民党は容易にのめない話」と指摘し、当面は現行の政治資金規正法の運用を厳格化し、個人献金を奨励する方策を講じつつ、将来の全面禁止を目指す意向を示しました。
( ２０１５年０３月０７日，「赤旗」)

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ヘイトスピーチの根絶に必要なのは／共産党議員団懇談

　日本共産党国会議員団は６日、国会内で、ヘイトスピーチ（差別扇動行為）に抗議している団体「Ｃ．Ｒ．Ａ．Ｃ．（クラック）」の人たちと懇談し、ヘイト根絶にむけて何が必要かなどの意見を聞きました。
　日本共産党から、小池晃副委員長（参院議員）、仁比聡平、田村智子両参院議員、池内さおり衆院議員が出席しました。共産党は民族差別をあおるヘイトスピーチを根絶するために、立法措置を含めて、政治が断固たる態度をとることを政策にしています。
　参加した野間易通（やすみち）さんは、ヘイトスピーチをする人たちが「弱者が不当に得をしている」などと主張していることを指摘。「商店は嫌がらせを受けても、被害届を出したがらない」などの対策の難しさを語りました。
　野間さんは「ヘイト規制は逆手にとられないよう、ヘイトスピーチがマイノリティー（少数弱者）に対する差別扇動だと明確にすることが大切だ」と強調しました。
　青木陽子さんは、北海道の地方議員などによるアイヌ差別発言を指摘し、「公人のヘイトは早急な対策が必要です」と訴えました。
　小池副委員長は「私たちは戦後７０年の今年、アジアの友好と和解のため五つの基本姿勢を提唱し、ヘイト根絶をその柱のひとつにしています。これからも意見交換しましょう」と話しました。
( ２０１５年０３月０７日，「赤旗」)

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主張／３・８国際女性デー／暴走許さぬ女性の思い示そう

　３月８日は国際女性デーです。平和とくらし、女性の権利を求めて世界各地で取り組まれてきた、１００年以上の歴史をもつ女性の共同行動の日です。その時どきの女性の願いとたたかいを結集させてきたこの日、全国で、東京で、女性たちの多彩な行動が今年もくりひろげられます。

声上げ行動に立ちあがる
　戦後７０年の今年の国際女性デーは、改憲に執念を燃やす安倍晋三政権の｢戦争する国｣づくりの暴走と、国民、女性のたたかいとの大きなせめぎ合いの中で迎えます。
　安倍政権は、集団的自衛権の行使容認の「閣議決定」を具体化する安全保障関連法案の準備を急ピッチですすめています。女性デーと同じ８日に開く自民党大会で、来年の参院選後の改憲案提出にむけ「憲法改正を推進する」運動方針を決めようとしています。
　マスメディアの世論調査では、集団的自衛権にもとづく自衛隊海外派遣に反対が５３・２％を占めています（時事通信２月調査)｡多くの国民、女性が不安と怒りを抱き「戦争する国づくりノー」の声を上げ行動に立ちあがっています。
　１月１７日、集団的自衛権の行使容認・改憲反対をかかげた「女の平和」国会ヒューマンチェーンには､｢子どもたちが戦争に巻き込まれるのを黙ってみていられない」「殺し殺されることはイヤ」のそれぞれの思いを〝赤〟の色で示そうと、赤い服や小物を身に着けた約７千人の女性たちが国会を包囲しました。「何か行動したい」という多くの女性たちが、新聞やＳＮＳを見て駆けつけました。
　女性のくらしと権利、男女平等をめぐっても、切実な願いと政治への怒りは高まるばかりです。安倍政権は「女性の活躍」といいながら、パートタイム労働者や派遣労働者の差別禁止・均等待遇には背を向け、労働者派遣法や労働時間法制の改悪を強行しようとしています。消費税増税による家計負担増や、業者の営業困難もさらに深刻です。間もなく４年を迎える大震災被災地のくらしと生業の再建もすすんでいません。福島を切り捨て、原発再稼働を急ぐ動きに女性の怒りが高まっています。
　世界の女性と連帯して、草の根からの女性の願いと要求を国際女性デーに結集しましょう。それは、「戦争する国づくり」を許さない国民的なたたかいの一つの結節点として、安倍政権を包囲する大きなうねりをつくりだしていくことになります。
　国際女性デー中央大会（東京）では、同志社大学教授の浜矩子さんを迎え、「幸せになるための経済学　反アベノミクスのすすめ」と題した講演に、期待と注目が集まっています。大会後のパレードは、いま平和を願う女性たちのシンボルカラーとなっている〝赤〟のファッションアイテムを身に着けて、主権者として輝く女性の熱い行進となることでしょう。

平和、平等、権利で共同
　戦後７０年の今年は、女性参政権獲得７０年であり国連の女性差別撤廃条約を日本政府が批准してから３０年です。歴史の節目に女性の行動が社会を動かしてきました。
　平和と憲法を守る大きな正念場の今年の国際女性デーが、日本における平和、男女平等と権利の運動のあらたな共同の前進をつくる取り組みとして大きく成功することを心から期待します。
( ２０１５年０３月０７日，「赤旗」)

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９条考える機会継続を／九条の会徳島が総会

　九条の会徳島は１日、第１０回総会を徳島市で開き「身近に９条を考える機会を広める」活動計画を決めました。
　呼びかけ人で元徳島新聞論説委員長の岸積氏は「改憲策動に対し、国民の抵抗戦線をつくるため、知恵を出し合おう」とあいさつしました。
　吉成務事務局長は、今国会での集団的自衛権行使の法整備を阻止しようと、毎月９日の宣伝や５月３日の街角トーク・講演会とともに、戦後７０年を市民の立場で検証する取り組みをすすめようと提起しました。
　各地域・団体の九条の会が、宣伝や講演会などの活動を交流。西部みんなの九条の会の近藤和典代表は、下校時の高校生に駅前で行った憲法アンケートを紹介し「若い世代に憲法を語る機会になる。やわらかく宣伝する方法として続けていく」と語りました。
　吉野川市のアルバイトの男性（３２）は「各地での取り組みを励みに、自らの活動をがんばりたい」と話しました。
(２０１５年０３月０６日，「赤旗」)

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陸軍登戸研究所と戦後７０年／紙も戦争に利用された／風船爆弾と偽造紙幣／渡辺賢二

　「紙と戦争って関係あるの」と聞かれてみなさんはどう考えますか。実は、大いに関係があるのです。

「薄くて強い」伝統技法活用
　その一つが風船爆弾です。今から７０年前の３月、福島県勿来、茨城県大津、千葉県一宮の発射基地から多数の紙気球がアメリカに向けて打ち上げられました。和紙をコンニャクのりで貼ってつくった１０㍍の気球に水素ガスを充填し、８０００㌔㍍も離れた場所まで届く兵器として飛ばされました。
　この兵器を開発したのが第九陸軍技術研究所（秘匿名、登戸研究所）でした。この研究所は新宿にあった陸軍科学研究所の実験場として１９３７年から活動を開始し、３９年頃からは秘密戦兵器を次々と研究・開発・製造しました。４３年に戦局が悪化するとアメリカ向けの決戦兵器の開発に乗り出しました。
　その際に目をつけたのが和紙でした。昨年、世界無形文化遺産に選定された埼玉県秩父地方で生産する楮をすいてつくる伝統的な和紙（細川紙）の技術を活用しようと考えたのです。
　薄くて強い生紙（すいたままの和紙）をつくり、それを付近で生産されるコンニャクをのりにして貼り合わせると空気は抜けないし、水をはじくことに着目しました。さらに、アメリカに到達するためには二昼夜半かかります。夜になると気温が低下し落下するのを防ぐため、気圧計が察知すると砂袋を落として高度を維持する装置を開発しました。
　重い爆弾は搭載できないので、牛疫ウイルスなどの細菌兵器も開発しました。そして４４年１１月から打ち上げることとなり、そのため全国の和紙生産職人が動員されました。とりわけ、愛媛・高知などの四国地域は主要な気球紙の生産地となりました。１０㍍の気球に貼り合わせる作業には全国各地の女子中学生が動員されました。
　完成した気球は発射基地に運ばれ、４５年４月２９日まで９３００発もの風船爆弾が発射されました。国際法上違法な細菌兵器の準備も進んでいましたが、アメリカの報復を怖れ焼夷弾を搭載しました。風船爆弾は１０００発近くアメリカに届き、オレゴン州で不発弾にふれ５人の男子中学生と女性１人が爆死しました。

経済かく乱と軍需物資獲得
　登戸研究所でもう一つ紙を兵器化したものに偽造紙幣があります。
　中華民国では国家がつくる紙幣（法幣）制度が始まったのは新しく、しかもアメリカ、イギリスの技術援助なしではできませんでした。そこで偽造紙幣を大量につくって軍需物資を獲得すると同時に経済をかく乱しようとしたのです。
　ところが、その紙幣の原料は麻系統で日本には少なく、また一番多く製造されている中央銀行券は透かしに孫文の横顔を描いてあって偽造が大変難しいものでした。そこで民間製紙会社の高い技術力をかりて偽造紙幣を製造することになったのです。最終的には１０圓札で４０億圓もの大量の偽造紙幣をつくりました。
　現在、明治大学平和教育登戸研究所資料館（川崎市多摩区）では「紙と戦争」という企画展を行っています。風船爆弾の和紙の資料や、偽造紙幣の製紙を民間企業に依頼していた資料などを展示しています。資料館を訪れ、紙と戦争の関わりを考えてみてください。
　（わたなべ・けんじ　登戸研究所保存の会共同代表）

　＊企画展「紙と戦争」　２１日まで、明治大学平和教育登戸研究所資料館（小田急線生田駅１０分）。日、月、火は休館。℡０４４（９３４）７９９３
( ２０１５年０３月０３日，「赤旗」)

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ビキニデー集会分科会／署名、ニューヨークへ／非核平和のアジア共同体を／原発ゼロへ運動交流／静岡

　静岡市と焼津市で２月２８日に開かれたビキニデー全国集会。さまざまなテーマで八つの分科会に分かれ、活発に討論しました。

一人でも多く集める／署名、ニューヨークへ
　分科会「ＮＰＴから世界大会へ―核兵器全面禁止の行動を」には、会場からあふれる１６０人が参加。「船がでるまで『核兵器全面禁止のアピール』署名を広げよう」などの発言が続き、各地の活動を交流しました。
　日本原水協の高草木博代表理事は「核保有国と核依存国の運動が立ち上がり、国際政治と一緒に動けば世界は変わる。懸命に署名を訴えている理由はここにある」と力をこめました。
　１月にＮＰＴニューヨーク代表団への参加を決めた神奈川の女性は、メールや郵便で知人に署名用紙を送って協力を呼びかけていると発言。分厚い封筒で７０人を超える署名が返送されるなど、この１カ月半で約２００人の署名が寄せられたといいます。
　「あと６０００人の署名を集めたい」と語る京都の女性は、教会や寺などに署名を呼びかけていると報告。区役所、教会、レストラン、めがね屋、理容室など、４０カ所で原爆展を開いていることを紹介しました。
　アメリカフレンズ奉仕委員会のジョゼフ・ガーソンさんが発言しました。

対抗の悪循環断とう／非核平和のアジア共同体を
　分科会「非核平和のアジアを」には、約４０人が参加しました。「非核平和のアジアの実現には、東アジアでの世論づくりが重要だ」との日本平和委員会の千坂純事務局長による問題提起を受け、討論しました。
　韓国・参与連帯のイ・ミヒョン氏が特別報告をし、日米韓が軍事情報共有を進め、ミサイル防衛システムを展開して、北朝鮮と中国、ロシアに対抗する図式が東アジアにあると指摘しました。日本原水協の土田弥生事務局次長も「核には核で」という対抗の悪循環をやめさせなければならないと述べました。
　そのほか、「安倍首相の戦後７０年談話を許せば、中国、韓国の人たちとの溝がますます深くなる」といった指摘や「北東アジアに平和の地域共同体をつくるということを具体的な目標に入れて運動することが重要だ。各国の平和運動の交流を進めよう」といった提案も。このほか、名古屋市で日韓の高校生の交流を５年連続で行っていることが紹介されました。

福島の４年間を検証／原発ゼロへ運動交流
　分科会「福島第一原発事故から４年―被災地のたたかいを全国に」では、まもなく４年を迎える福島の現状と賠償打ち切りの動きを強める加害企業・東京電力への怒り、原発の再稼働を許さずゼロにさせる運動などを交流しました。
　福島県南相馬市の渡部チイ子氏（６２）と林克・静岡県労働組合評議会議長が特別報告をしました。
　渡部氏は、避難指示が解除されずに受け継がれてきた農業は営めなくなり、家族は離ればなれで過去も未来も奪われた小高地区の悲痛な叫びを訴えました。「福島県は今も１２万人が避難を強いられている。先の見えない仮設住宅から自殺者が相次ぎ、原発事故関連死も増える一方です。国と東京電力の一方的な賠償打ち切りは許しません」と述べました。
　林氏は、東海地震の震源域の真上にある世界一危険な中部電力浜岡原発（静岡県御前崎市）の再稼働を許さない運動を紹介。全国トップクラスの日照時間を生かした太陽光発電など自然エネルギーへの転換の必要性を語りました。
　全体討論では、「賠償の線引きなど、あらゆる分断をのりこえるため力をあわせよう」「何世代にも続く放射線被害をなくすため、原発も核兵器もなくそう」などの発言が続きました。
( ２０１５年０３月０３日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

知りたい聞きたい／首相らの「靖国」参拝なぜ反対／侵略戦争美化につながる

　日本共産党はなぜ首相や閣僚の靖国神社参拝に反対しているのですか。（男性）

　靖国神社は１９４５年の日本の敗戦まで陸・海軍省が管理し、戦死者を祭神とする特殊な神社として、国民を侵略戦争に動員する重大な役割を担いました。戦後、一宗教法人となりましたが、付属の軍事博物館（遊就館）の展示に見られるように、いまだに日本の過去の侵略戦争を「自存自衛」で正しい戦争だったと国民に宣伝する運動体となっています。
　このような施設に首相や閣僚が参拝することは、たとえ「国のために命を捧（ささ）げた犠牲者に尊崇の念を示すため」などと言っても、「日本の戦争は正しかった」という立場に自らを結びつけることにならざるを得ません。
　現に、日本軍国主義の侵略戦争で大きな犠牲を出した中国や、日本の植民地支配を受けた韓国からは、首相らの靖国参拝に対して厳しい批判が上がっており、歴史認識問題はこれらの国々との間で最大の外交問題となっています。
　日本共産党はこのような問題から、さらに政教分離の立場から、首相や閣僚の靖国参拝を厳しく批判してきました。とくに戦後７０年の今年、日本とアジア諸国との「和解と友好」に向かう年となるよう「日本の政治がとるべき五つの基本姿勢」を提唱し、その中で「国政の場にある政治家が靖国神社を参拝することは、侵略戦争肯定の意思表示を意味するものであり、少なくとも首相や閣僚による靖国参拝はおこなわないことを日本の政治のルールとして確立すること」を呼びかけています。
　もちろん、戦死者の遺族をはじめ一般の人々が靖国神社を参拝することは信教の自由であり、首相や閣僚の参拝とはまったく別の問題です。

　ご質問は、メールｈｅｎｓｙｕｋｏｅ＠ｊｃｐ．ｏｒ．ｊｐ　またはファクス０３（３３５０）１９０４までお寄せください。
( ２０１５年０３月０３日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

戦後７０年談話、首相の論点／戦争の歴史そのものが欠落／中身ない「反省」

　安倍晋三首相が今夏に発表する「戦後７０年談話」は、戦後５０年の「村山富市首相談話」の核心的内容を引き継がないのではないか―。この問題が安倍首相自身の言葉から浮かびあがっています。

五つの論点
　安倍首相は２月２５日、首相官邸で開いた「戦後７０年談話」に関する有識者会議の初会合で、「７０年談話」の「論点」として５点をあげましたが、「村山談話」の核心部分である「植民地支配と侵略」、「痛切な反省」と「心からのお詫（わ）び」というキーワードが何もありません。
　５点とは、①２０世紀の世界と日本の歩み、２０世紀の経験からくむべき教訓②戦後日本の平和主義、経済発展、国際貢献の評価③米国、豪州、欧州の国々、特に中韓をはじめとするアジアの国々などと歩んできた和解の道④２１世紀のアジアと世界のビジョン、日本の貢献⑤日本がとるべき具体的施策―です。過去の歴史に言及しても「２０世紀の世界と日本の歩み」などとあいまいで、戦争の歴史そのものが論点から欠落しています。
　安倍首相は有識者会合で、「先の大戦への反省、戦後７０年の平和国家としての歩み、その上に、これからの８０年、９０年、１００年がある」と述べました。しかし、「侵略」や「植民地支配」という言葉を使わずに「反省する」といったところで、それはまったく中身のない「反省」です。
　そもそも安倍首相は１月２５日のＮＨＫインタビューで、「植民地支配と侵略」への「痛切な反省と心からのお詫び」という「キーワード」を引き継ぐのかと問われ、最後まで「引き継ぐ」とは言わず、さらに「キーワードを同じように使うことではないのか」と問われると、「そういうことではない」と明言しています。

批判は必至
　この点で、有識者会議の座長を務める西室泰三日本郵政社長は、初会合後、記者団に「（過去の談話の）キーワードを入れろ、入れないと指示する気はまったくない」と語っています。
　首相が「植民地支配と侵略」への「反省とお詫び」などの文言を避ける立場に立った「談話」を発表するなら、侵略戦争を否定する戦後国際秩序を覆す試みとして内外から厳しい批判を受けることは必至です。
　（山田英明）
( ２０１５年０３月０３日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

地方選、国民の願い示そう／共産党演説会各地で／戦争か平和か問われる年／井上参院議員／松山と新居浜

　日本共産党の井上哲士参院議員は１日、愛媛県議選松山市・上浮穴郡区で議席死守をめざす田中かつひこ候補、新居浜市議選をたたかう岡崎ひろし、井谷ゆきえ両候補の必勝に向け、松山、新居浜の両市の演説会で訴えました。
　井上氏は、安倍政権の数々の暴走にふれ、「戦後７０年の今年、戦争か平和かが大きく問われる」と強調。いっせい地方選挙後に「海外で戦争する国づくり」の法整備が狙われていると指摘し、「どの暴走も道半ばで決着はこれから。日本共産党を伸ばすことが暴走ストップの確かな力になる」と力を込めました。
( ２０１５年０３月０２日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

北海道帯広で演説会／十勝町村会長あいさつ／首長・農業関係者らが参加／幅広く案内

　演説会では、十勝町村会の高橋正夫会長が「戦後７０年、憲法の下で築いてきた平和が一番危ない状況だ。しっかり声を出しスクラムを組んで頑張ろう」とあいさつしました。
　十勝地域区の山川秀正候補、帯広市区の佐々木とし子候補が決意表明しました。
　党地区委員会は、志位委員長来訪が決まった２月１日から約１０万のビラなどで宣伝し、市町村長、市町村議会、商工会、農協、町内会、企業など約１０００団体に案内。党の演説会が職場で話題になったり、地区委員会に「共産党支持者ではないが参加できるか」という電話もかかってきました。演説会開始１時間前の開場時間にはすでに長蛇の列ができました。
　家族４人で参加した乳業メーカー社員の目黒将一さん（４３）は「ＴＰＰに負けられない。十勝ブランドを守りたい。十勝みんなの声です。志位委員長の話を力に必ず阻止したい」と話していました。
　同日、十勝地域区の他党の現職道議４陣営も決起集会を開くなど、選挙戦は激しくなっています。
( ２０１５年０３月０２日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

シリーズ戦後７０年を考える／空襲／国際法違反の無差別爆撃／今こそ伝えたい戦争の実態

　太平洋戦争末期に全国で４００を超える市町村が被害を受けた米軍による日本への空襲。一夜で約１０万人が犠牲になったといわれる１９４５年３月１０日未明の東京大空襲で明らかなように、街ごと焼き払う無差別爆撃でした。その実態は―。
　本吉真希記者

逃げまどう人々を炎が橋ごと包んだ／１４歳で東京大空襲を体験した狩野光男さん（８４）

　橋上から東京スカイツリーが間近に望める言問（こととい）橋＝東京都台東･墨田区＝｡橋とその周辺では東京大空襲で、推定７０００人が犠牲になったといわれています。橋のたもとに残る黒いシミは、人間の油が燃えた跡だといいます。
　７０年前の３月１０日未明、約３００機の米軍Ｂ２９爆撃機が東京下町に襲来。逃げ惑う人々に焼夷（しょうい）弾を雨のように落としていきました。
　当時１４歳だった狩野光男（かのう・てるお）さん（８４）＝東京都＝は両親と幼い妹２人、同居の女性２人の７人で隅田公園に逃げました。
　公園のすぐそばに架かる言問橋では怒号や悲鳴が響いていました。川の両側から避難してきた人たちが橋の中央でぶつかり、身動きが取れなくなっていたのです。北西の強い風にのって「火が橋の上を川のように走っていった」と狩野さんは語ります。火は家財道具や人々に燃え移り、橋は炎に包まれました。
　隅田公園にも火の手が迫ると、群衆がいっせいに逃げ始め、大混乱に。そのとき握っていた父の手が離れてしまいました。
　狩野さんは逃げる人で埋まった船着き場の石段に身を潜めました。「火は川面をなめ、川のなかにいた人の上半身を焼いていきました」
　夜が明けて目に飛び込んできたのは黒焦げやピンク色、マネキンのような死体。「人間の尊厳など全くなかった」といいます。
　空襲で一緒に逃げた両親と２人の妹、同居の２人は亡くなり、狩野さんは戦災孤児となりました。
　亡くなった同居人の静江さんは結婚１週間で夫が召集されました。いつも口にしていたのは「戦争しない国ってあるのかしら」という言葉でした。
　狩野さんは戦後、戦争放棄をうたった憲法９条を見て、亡き静江さんに報告しました。「静江さんがいっていた国ができたよ」
　戦後、映画看板の絵描きを生業にしてきた狩野さん。２００４年、初めて小学生を前に自身の空襲体験を絵にして証言しました。そのとき「自分の役目は絵で伝えること」だと確信。以来、他の空襲被害者の体験も描き、その数は１００枚を超えました。
　安倍政権が戦争の道を突きすすむなか、狩野さんは訴えます。「いま体験を伝え広げていかないと悔いが残る。少しでも多くの人に戦争とは何かを考えてほしい」

国民の退避禁じた防空法／弁護士、大阪空襲訴訟弁護団大前治さん

　空襲はアメリカによる国際法違反の無差別爆撃です。しかし日本政府の責任も重大です｡｢空襲は怖くない。逃げずに火を消せ」という防空法制で被害を拡大させました。
　１９３７年に制定された防空法は、４１年１１月の改定で退去禁止と消火義務が追加され、違反者の処罰も規定されました。翌１２月には都市からの退去を全面禁止する通達も出されました。戦時刑事特別法（４２年３月）では防空を妨害した者の最高刑を死刑としました。
　政府発行の国民向け冊子『時局防空必携』では「命を投げ出して御国を守ります」という「防空精神」を植えつけました。
　日本本土への初空襲は４２年４月１８日です。中型のＢ２５爆撃機が東京、神奈川、名古屋、神戸の軍事施設や住宅地を爆撃し、民間人が犠牲となりました。
　翌日の各紙は「慎しめ詮索や憶測　軍を信頼・職場を守れ」という政府発表を掲載。空襲被害は徹底的に隠され「空襲は怖くない」と宣伝されました。
　その後も新聞には「焼夷弾は手袋をはめて投げ出せばよい、熱くも何ともない」という内務省防空指導課長の談話や、「逃げるな守れ」という見出しが躍りました。
　日米開戦前は「頑丈なものを造れ」とされていた防空壕（ごう）も、通達で「簡易なものでよい。床下に穴を掘るだけでよい」と方針変更されました。そのため空襲時に生き埋めとなる被害が続出しました。
　学童以外の疎開も抑制されました。隣組を通じて避難を許さない監視体制が築かれ、空襲時に避難する者は「非国民」とされました。「逃げようと思わない」「逃げたくても逃げられない」という状況がつくられたのです。
　防空法制は情報統制と一体化していました。そこから見えるのは、国民が「戦争は怖い」と気づく前に戦争が準備される恐ろしさです。同じことが特定秘密保護法で起きないか心配です。
　空襲被害者が日本政府に謝罪と賠償を求めた大阪空襲訴訟（最高裁で敗訴確定）の一審と控訴審の判決は、防空法制により国民が危険な状態に置かれた事実を認めました。被害者救済の法律制定に向け、この判決を生かしていきたいです。

おおまえ・おさむ＝共著書に『検証　防空法―戦時下で禁じられた避難』（法律文化社）

被害者への補償拒み続ける政府／全国空襲被害者連絡協議会運営委員長星野弘さん

　日本政府は「戦争の犠牲は国民が等しく我慢しなければならない」という「戦争被害受忍論」を盾に、空襲被害者の救済を拒み続けています。全国空襲被害者連絡協議会運営委員長の星野弘さん（８４）の思いは―。
　◇　　　◇
　国は空襲の犠牲者に対し、一銭も補償をしていません。だから空襲体験者にとってはいまだに、戦後は終わっていないのです。
　東京の空襲被害者は２００７年３月、国に謝罪と賠償を求めて集団提訴しました。最高裁で敗訴しましたが、東京高裁は判決（１２年４月）で、国会が「立法を通じて解決すべき問題」と指摘しました。
　立法化とは、国が戦争の被害実態を明らかにし、責任を認めることです。安倍政権の危険な動きを食い止めるためにも重要です。
　私たちは原爆被爆者をはじめ、民間の戦争被害者すべての関係団体と共同し「空襲被害者等援護法（仮称）」の制定を求め、とりくんでいます。私たちの長年の願いを一歩でも前進できるよう頑張っていきたい。

すべて解決を６日に大集会
　「戦後７０年・戦争被害のすべて解決を！大集会実行委員会」は６日、「ふたたびこの国を火の海にさせないために！」を東京都台東区の浅草公会堂で開きます。

東京に平和発信の祈念館を
　「『東京都平和祈念館（仮称）』建設をすすめる会」は戦争の記憶を記録し、語り伝えていく公的施設の建設を求め、署名活動などにとりくんでいます。
　東京都は１９９４年、祈念館建設の基本計画を発表しましたが、建設は凍結されています｡都が収集した資料約５０００点は倉庫に保管されたままです。
　同会世話人の高岡岑郷（しんごう）さん（８０）は「都は２０２０年の東京五輪・パラリンピックで世界に平和を発信できるよう、戦後７０年を機に前進してほしい」と語ります。
(２０１５年０３月０１日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

平和守るため芝居つくる／仲代達矢さん語る／埼玉革新懇が集い

　埼玉革新懇（平和・民主・革新の日本をめざす埼玉の会）は２８日、さいたま市の埼玉会館大ホールで「お話と音楽のつどい」を開きました。音楽プログラムのアンサンブル・グループ「空谷足音（くうこくそくおん）」の演奏に続き、俳優の仲代達矢さんの講演「人は愛すべきもの、役者を生きる」を会場いっぱいの１３００人が聞き入りました。
　聞き役の俳優、有馬理恵さんが「戦後７０年の今、何を思いますか」と問うと、８２歳の仲代さんは「どうにか戦争で一人も死なせず、相手も殺さないで７０年たちましたが、何かやばい気持ちになってきた。（これからも）戦争なしでやっていけないのか」と話し、新劇に携わる者として「平和を守るためにあしき体制に対して、たたかっていく芝居や映画をつくっていきたい」と表明しました。
　出演した「人間の條件」や「椿三十郎」「乱」などの映画の裏話を語って会場を沸かせた仲代さん。講演の終わりに、『地球の日』著者の朝倉ゆうま氏の「自分以外の人々を許そうとすることで平和はきます」という随想を紹介し、平和を築く努力を呼びかけました。
　主催者代表の生田功子実行委員長が「平和や民主主義を守るためにスクラムを組んで安倍政権を止めよう」と語り、「戦争する国づくり」を阻止する取り組みを訴えました。
( ２０１５年０３月０１日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

潮流

　太平洋に浮かぶ真珠の首飾り。かつて、『宝島』の作者スティーブンソンがそう呼んだマーシャル諸島。サンゴ礁の美しい島々は先の戦争で激戦地となり、戦後は核の恐怖にさらされました▼１９４６年から５８年の間にアメリカはこの地で６７回もの核実験を行いました。島々は汚染され、いまも多くの島民が被ばくの後遺症に苦しみ、ふるさとにも戻れません。６１年前の３月１日、ビキニ環礁で爆発した水爆によって「死の灰」を浴びたロンゲラップ島も、その一つです▼「それは私たちの伝統的な暮らし、文化、環境、そして人体の破壊の始まりだった」｡今年の｢３・１ビキニデー」の集まりで、同島を代表して来日したピーター・アンジャインさんは、そう口にしました▼日本でも第五福竜丸をはじめ、たくさんの漁船が被ばく。大規模な被災は日米の政治決着で隠されてきましたが、最近になって市民運動や日本共産党の要請によって新たな記録や資料が公開されました▼それによると、被害を受けた日本漁船の総数は１４２３隻にも及んでいました。被災の全容解明とともに被害者の救済が急がれます▼今年は広島・長崎の被爆から７０年。４月には核不拡散条約(ＮＰＴ)再検討会議がニューヨークの国連本部で開かれます。核兵器のない世界をめざして、署名の一筆一筆に託された人びとの思いを届け、核兵器廃絶への扉を開こう。国内外から集ったビキニデー行動もその熱意にあふれます。核に苦しめられてきた人類の願いを実現する年に。
( ２０１５年０３月０１日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

安倍暴走に批判／右翼政治みたい／痛みわからぬ／自民元幹部から次つぎ

　「保守政治というより、右翼政治みたいな気がする」（河野洋平元自民党総裁）、「先人が長い時間をかけて積み重ねてきたことへの謙虚さを、もう少し持ってほしい」（古賀誠元自民党幹事長）――。自民党中枢にいた元幹部が、民意に背く安倍政権の暴走政治に相次ぎ批判の声を上げています。

　安倍晋三首相が今夏発表する「戦後７０年の新談話」。これまで「河野談話」（１９９３年）、「村山談話」（９５年）にあった「植民地支配と侵略」「慰安所における強制」への反省など、その核心部分をあいまいにした「新談話｣にしようとしています｡
　河野氏は名古屋市内での講演（２月２４日）で、「日本の歴史認識が１０年刻みに変わることはありえない」、「歴代の自民党のリーダーが抑制的にやってきたいろいろな問題について、これでいっせいに抑制を解き放って走りだすように見える」と述べ、安倍政権を批判しました。
　沖縄県民と翁長雄志知事の反対を無視して名護市辺野古への米軍新基地建設をすすめる安倍首相。野中広務元自民党幹事長はＴＢＳ系番組（２月１５日放送）で、「翁長知事、沖縄県民に対する態度は絶対に許せない」と抗議。「本当に悔しい。自民党がこんなにも沖縄を差別するのか、本当に残念に思っている」と憤りました。
　山崎拓元自民党副総裁と古賀氏は週刊誌（『週刊朝日』３月６日号）のインタビューで、それぞれ安倍首相を批判しました。山崎氏は集団的自衛権行使について「戦後７０年の外交安保政策の大転換を閣議決定でなし崩しにやるべきではない」と指摘。さらに、「『戦後以来の大改革』などと言って、タブーを破った快感に酔いしれて、個人の名誉心でやっている」と痛烈に批判しています。
　古賀氏は自民党内の状況について「集団的自衛権の行使をなぜ今、問う必要があるのかなど、根っこの議論が何一つない。非常に憂慮すべき状況だ」と語っています。
　自民党元幹部の一連の発言は、安倍政権が戦後の保守政治が掲げてきた諸原則すら否定する、特異な立場に変質していることを示しています。
( ２０１５年０３月０１日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

【2月】

憲法守る運動強化／福井で平和と文化の集い

　戦後７０年の節目で平和と文化の豊かな発展を願う集い（実行委員会主催）が２２日、福井県坂井市の高椋公民館で開かれ、約２３０人が参加しました。
　佐野周一実行委員長はあいさつで、安倍政権の「海外で戦争する国」づくりにふれ、「平和か戦争かの分岐点に立たされる一年になる」として、平和憲法を守る運動の継続強化を呼びかけました。
　県内で活動する７人のリレートークが行われ、ジャーナリストの伊藤洋子さんは、日本の進むべき道として「競争ではなく協調の社会をめざすべき。食とエネルギーの自立、地産地消を」とのべました。
　文化活動に取り組む荒川勝巳さんは、原発反対をテーマにした企画展が県立音楽堂の会場使用を拒否されたものの、「表現の自由」を求める抗議活動であらためさせた経験を紹介し、「侵害には、みんなで共同してあたろう」と呼びかけました。
　フォークシンガーの男性は、傷ついたコウノトリを子どもたちと助け、コウノトリが住める自然環境を取り戻していった営みを歌い、サーファーで海女の女性は海岸の清掃ボランティアを紹介しました。
　集いの後半は、太鼓やピアノの演奏、合唱、朗読などが披ろうされ、うたごえでは会場が一つになりました。
　参加者からは「平和や自然、個人の尊厳を守る地域の幅広さ、底力を感じた」との感想が寄せられました。
(２０１５年０２月２８日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

共産党を応援します／元朝日新聞記者由本昌敏さん／戦争反対貫き最も愛国的／安倍政権の暴走止めたい

　元朝日新聞記者の由本昌敏さん（７４）は昨年秋、愛知県春日井市の日本共産党地域後援会長を引き受け、柳沢けさみ県議候補の勝利をめざして奮闘しています。共産党への思いを聞きました。
　（吉岡淳一）

　安倍首相は数の力で国民の反対を押し切り、秘密保護法、原発再稼働、集団的自衛権を押し通す。民主主義と相いれないじゃありませんか。
　先ごろ亡くなった元ドイツ大統領のワイツゼッカーさんは戦後４０年に際し、「過去の歴史に目をつぶる者は現代に盲目となる」と訴えました。安倍さんは、戦後７０年談話表明などに見られるよう、過去の歴史を書き換え、美化し、戦争への反省姿勢が見られない。平和の中に戦争の炎をボーボーと燃やそうとしている。共産党にはストップをかけてもらいたいですね。

建設的提案を
　共産党が衆院選で２１議席に増え、議案提案権を活用して政党助成金の廃止法案を提出しましたね。他党が財界から政治献金＝ワイロをもらい、助成金まで受け取る中で、一服の清涼剤に等しい素晴らしいことです。国民の目線で建設的な提案をもっともっとしてもらいたい。そのためにも議席を５０、１００と増やさないとね。
　ぼくが共産党の後援会長を引き受けたのは、安倍政権の暴走を止めたいこともあるけれど、この季節に合わせて言えば、「手折らるる人に薫るや梅の花」。つまり頼られたから応じた、何かのお役に立てればということ。自民党などからはそんな依頼も無かったしね。

伝える努力を
　総選挙では支持の訴えもしましたし、「しんぶん赤旗」を増やす地域訪問もしましたよ。会長を引き受けた以上は当然だと思って。
　戦争反対を貫き、平和を希求してきた共産党には、手が結べる人たちと連帯することを望みます。共産党こそ最も愛国的じゃないですか。ただ、なかなか訴えていることが伝わらない。おじいちゃん、おばあちゃん、子どもにだって分かりやすいよう伝える努力が必要、ユーモアの気持ちも忘れないでほしいね。
　いま安倍政権の暴走、亡国の動きに抗していますが、もし共産党が政権の座について民意をないがしろにし、暴走するようになったら、私は会長を辞め、反共産党の旗を振りますよ。ジャーナリスト、平和を愛する国民の一人として当たり前だものね。
(２０１５年０２月２８日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

過去より「これから」

　政府は２７日、安倍晋三首相が今夏にも発表する予定の「戦後７０年談話」に関する有識者会議「２１世紀構想懇談会」の初会合（２５日開催）の議事概要を公表しました。焦点となっている歴史認識に関する発言よりも、「これからの日本は何を目指すのか」という首相の問題意識に沿った意見が目立ちました。「植民地支配と侵略」への「痛切な反省」と「心からのおわび」などの文言は、議事概要には見られませんでした。
　議事概要によると、首相が議論の重点となる五つの論点を示した後、１６人の委員がそれぞれ意見を述べました。
　示された意見は、「過去ではなく未来を見て、明るくなるような夢のある議論をしたい」「自衛隊やＮＧＯがどんな貢献ができるのかを含め、対外的な日本の役割を議論したい」など、過去の反省よりも、これからの日本のあり方に重点を置く意見が目立ちました。委員の一人は､｢可能な限り史実に忠実になり、公平かつ誠実な態度で歴史に向き合っていく必要がある」と指摘しましたが、こうした歴史の直視を求める意見は少数でした。
( ２０１５年０２月２８日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

政治変える共同を／革新・愛知の会が総会

　革新・愛知の会（平和・民主・革新の日本をめざす愛知の会）の第３５回総会が２１日、名古屋市熱田区で開かれ、４３団体７４人が参加しました。安倍政権の暴走ストップへ、草の根から各分野で共同を強め、国政を変える統一戦線の流れを各地で広げていくことを決めました。
　村上俊雄事務室長は消費税増税や原発再稼働反対、憲法９条を守る共同運動の広がり、安倍政権の支持基盤の崩れの状況を報告し、「地域・職場、青年分野で、新たな革新懇結成、会員拡大に取り組み､安倍政権の暴走ストップの運動を広げよう｣と呼びかけました｡
　討論で、青年ネットの青年は「５月に名古屋市で青年革新懇全国交流会が開かれる。主な企画が決まり、宣伝を強め多くの参加で成功させたい。全国交流会を契機に青年ネットを多くの自治体で結成したい」と抱負を語りました。
　名古屋市の港区革新懇は「開店休業状態だったが、昨年５月に再結成集会を開いた。この１年間、重点的に学習会をおこなってきた。リニア新幹線問題、県や名古屋市の大型開発問題についておこなった」。瑞穂区革新懇は「結成１０年になる。毎月８㌻のニュース発行を続けてきた。現地に行って平和を学ぶ見学旅行も毎年行っている。長野県の松代大本営跡地、学徒出陣した学生の遺品が展示されている無言館などに行ってきた。今年は戦後７０年。愛知県内の戦跡巡りを計画している」と発言しました。
　総会に先立ち、全国革新懇事務室の増村耕太郎氏が「沖縄県知事選、総選挙がひらいた情勢と革新懇運動」と題して講演しました。
(２０１５年０２月２７日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

戦争の悲惨知らせる／香取・佐原母親大会開く／千葉

　千葉県香取市で２２日、第１９回香取・佐原母親大会（同実行委員会主催）が開かれ、１２０人が参加しました。
　郷土玩具「佐原張子（さわらはりこ）」の製作者で伝統工芸士の鎌田芳朗氏が「平和への思い　佐原張子と共に平和をつなぐ軸足として」と題して講演。宇井成一市長があいさつしました。
　鎌田氏は､自身の戦争体験を語り､｢戦後７０年しかたっていないのにまた昔と同じようなことがやられようとしている｡戦争の悲惨さを知らせていこう｣と呼びかけました｡
　大会では、戦争も核兵器もない平和で豊かな社会の実現を求める大会アピールを採択しました。
(２０１５年０２月２７日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

知事の改憲発言を批判／９条・立憲主義守る／党県委・明るい会コメント／神奈川

　神奈川県の黒岩祐治知事が２４日の県議会本会議での答弁で、現行憲法を「見直すべき」だと発言したことに対して、日本共産党県委員会（田母神悟委員長）と「平和で明るい神奈川県政をつくる会」（明るい会、鴨居洋子代表委員）は２５日、コメントをそれぞれ発表しました。
　共産党県委員会は、紛争の平和的解決が求められ憲法９条の重要性が増しているときに、その流れに逆行する黒岩知事の発言は看過できないと指摘。「日本と世界の平和な未来のために、憲法改定を許さない広範な人々とあらゆる努力を続けていく」としています。
　明るい会は、改憲を是とすることは「日本を『戦争できる国』に変えること｣だと批判｡戦後７０年の今こそ、憲法９条の意義を再確認して立憲主義を堅持し､｢憲法が暮らしの中に息づき、県民の権利が保障される県政にまい進すべき」だとしています｡同会は､県知事選（３月２６日告示、４月１２日投票）に岡本一候補＝無所属新、日本共産党推薦＝を擁立しています。
( ２０１５年０２月２７日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

韓国外務省が「安倍談話」でけん制

　【ソウル＝時事】韓国外務省報道官は２６日の記者会見で、安倍晋三首相が発表する戦後７０年談話に関する有識者会議がスタートしたことに関連し、「歴史に対する反省と謝罪、これを教訓にするという歴代内閣の歴史認識が、これまで（日韓）両国関係発展の土台になってきた」と述べ、こうした内容が談話に盛り込まれるべきだとの考えを改めて強調しました。
　報道官は「談話にどのような歴史認識が盛り込まれるかが、今後日本という国家が進む方向性を示す」と指摘しました。
( ２０１５年０２月２７日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

福祉人材の待遇改善早く／松村議員が求める／都議会代表質問

　日本共産党の松村友昭東京都議は、２４日の都議会代表質問で、舛添要一知事に、都民のくらし・福祉を拡充し、平和への取り組みを進めるよう迫りました。

◇都民福祉
　松村氏は、福祉人材の待遇改善は急務と強調し、都が新設する給与補助制度では介護士の給与アップが各事業所で４人しか認められず、現行の補助額より減額される保育園もあると指摘、補助の大幅な拡充を求めました。
　また、国民健康保険料（税）の値上げで滞納世帯が増加し、保険証の取り上げが増えていると指摘。都民の負担軽減のための支援策を要望しました。
　松村氏は地域の住民も使える事業所内保育園の設置について、都として大学にも設置を働きかけ、積極的に取り組むよう提案。梶原洋福祉保健局長は、事業所内保育園の整備費補助について、今年度から「既存施設の改修にかかる経費も含め、都が全額補助する」と答えました。

◇街づくり
　松村氏は、欧米の取り組みにも学び、東京にあった人と環境に優しい都市づくりに取り組むよう提案。舛添氏は、３環状道路などの整備を強調する一方、公共交通の整備にも言及しました。
　松村氏は、都の再生可能エネルギーの普及を進めるため、ＮＰＯや住民と連携して大規模団地や地域ごとにエネルギー自給地域をつくり広げていく取り組みを求めました。
　長谷川明環境局長は答弁で「都民・民間事業者・区市町村などと連携しさまざまな観点から再生可能エネルギーの導入拡大に努める」と述べました。

◇中小企業
　松村氏は、２０２０年東京五輪の関係事業に都内の中小企業が参入、受注できるよう求めました。
　山本隆産業労働局長は、１５年度に中小企業団体と連携して協議会を立ち上げ、「大会関連の受注機会の獲得などに向けた取り組みに着手する」と答えました。

◇平和発信
　松村氏は戦後７０年の節目の年に当たり、２０年前に採択した「都民平和アピール」の精神や平和と友好を掲げるオリンピック憲章の立場から都が平和と核兵器廃絶、友好の立場を発信するよう提案。
　舛添氏は「都民にとって世界中の人々の相互理解に立脚した国際秩序の形成と恒久平和の実現は最大の願い」と述べ、２０年東京五輪の開催都市として「世界の都市と連携し、世界平和の実現に貢献していく」と表明しました。
(２０１５年０２月２６日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

沖縄・読谷村発、連帯バス辺野古行／村ぐるみ会議、新基地阻止へ／きっかけは母の一通の手紙

　村ぐるみの運動で米軍基地に奪われた土地の返還を勝ち取ってきた沖縄県読谷村（よみたんそん）から、名護市辺野古の新基地建設を許さないと、「辺野古新基地建設を阻止する読谷村民会議」が結成され、現地のたたかいを支援する動きが始まっています。自治会や老人クラブなど住民団体と連携した県内初の取り組みへ村を動かしたのは、村在住の母親が村長に送った一通の手紙でした。
　（岡素晴）

　手紙を出したのは、３児の母で保育士の城間真弓さん(３６)。「子どもの未来を守るのは私たち親の責任。命に代えてでも戦争につながる基地建設を止めたい」と、夫の盛松さん(３５)とともに昨年１１月から、日風喜（ひびき）くん(９)、日花（ひな）ちゃん(７)、心花（ここな）ちゃん(５)を連れて毎週のように辺野古の座り込みへ通っています。

夜陰の強行に
　以前は、集団的自衛権の行使容認など安倍政権の戦争する国づくりへ危機感を募らせながらも、「政治にどうやって意思表示したらいいのか分からなかった」という真弓さん。沖縄の基地建設反対などのたたかいを描いたドキュメンタリー「標的の村」鑑賞や県知事選を通じ、「おばぁたちから聞いていた戦争体験が自分とリンクしているんだという意識を強く持つようになった」と話します。
　手紙を出そうと決意したきっかけは、ことし１月初旬に沖縄防衛局が夜陰に乗じて強行した新基地建設のための工事資材の搬入でした。またしても繰り返された暴挙に、真弓さんは村役場を訪れ、石嶺伝実（いしみね・でんじつ）村長あての手紙を託します。２４時間の監視態勢を強いられ、疲労と緊張が蓄積する現状に胸を痛め、「現地のたたかいだけでは限界がある。何とか自治体をあげた支援を」との思いからでした。
　村は呼びかけに応え２月２日、村長と村選出県議を共同代表に、９団体で構成する村民会議を発足。毎週金曜に新基地建設反対の座り込みが続く米軍キャンプ・シュワブの第１ゲート前へバスの運行が始まりました。
　当初は「言い出した本人だから、バスがガラガラだったらどうしよう」と不安もありましたが、村民会議のバスには毎回３０人以上が乗車し、辺野古を訪れています｡真弓さんは｢人づてに『辺野古に行きたかったので読谷からバスが出ることになってよかった』という声を聞きます。自分が行動することで多くの人が賛同してくれる」と喜びをかみしめるように語りました。
　２０日、３度目の運行となったバスでゲート前に駆け付けた三橋雅子さん(７９)は「ずっと心待ちにしていたんですよ」と打ち明けました。報道で辺野古の現状に気をもみながらも、車の運転免許を持っていないため、現地へ足を運ぶことがかなわなかったという三橋さん。「さすがは村ぐるみで基地反対運動をたたかってきた歴史のある読谷村です。これからも友人を多く誘って毎週参加したい」と話していました。

土地取り戻す
　７０年前、米軍に占領された読谷村は、面積の９５％が基地に強制接収されました。村民会議立ち上げに参加した一人で、占領当時を知る男性(６９)は「昔は基地の中に読谷村がぽつぽつ点在するような状態だったが、行政と村民が一体となった抵抗で現在の３６％まで村の土地を取り戻してきた」と振り返ります。
　安倍政権は、新基地建設を強行するため、シュワブ･ゲート前の座り込みテントを強制排除する動きまで見せています｡男性は「戦後７０年も沖縄に苦しみを与えてきた基地を再び強化しようというのは絶対に容認できない。『オール沖縄』で新基地建設を食い止めるため、読谷村のような取り組みが多くの自治体に広がってほしい」と力を込めました｡
( ２０１５年０２月２６日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

７０年談話／有識者会議が初会合／歴史認識表現が焦点に

　安倍晋三首相が今夏発表する戦後７０年談話に関する有識者会議は２５日午後、首相官邸で初会合を開きました。首相は冒頭、「２０世紀の教訓を踏まえ、２１世紀のアジアと世界のビジョンをどう描くか。未来の土台は過去と断絶したものではあり得ない」と表明しました。有識者の意見を参考に、談話を出す方針ですが、首相は歴代内閣が積み重ねてきた歴史認識の表現に否定的な姿勢を示しており、どう書き込むかが焦点となります。
　首相は「先の大戦への反省、戦後７０年の平和国家としての歩み、その上に、これからの８０年、９０年、１００年がある」と指摘。「これから日本がアジア太平洋地域、世界のためにどのような貢献を果たすべきか、どのような国を目指すのか、について考えたい」と述べました。
　会議の名称は「２０世紀を振り返り２１世紀の世界秩序と日本の役割を構想するための有識者懇談会」（２１世紀構想懇談会）。メンバーは歴史学者や経済人、外務省ＯＢなど１６人となっています。初会合では、西室泰三日本郵政社長が座長に、北岡伸一国際大学長が座長代理に互選されました。
　戦後５０年の村山富市首相談話は「植民地支配と侵略」への「痛切な反省」と「心からのおわび」を表明し、戦後６０年の小泉純一郎首相談話もこの表現を踏襲しました。安倍首相は歴代内閣の歴史認識を「全体として引き継ぐ」と繰り返すだけで、核心的な「植民地支配と侵略」などの文言を避けようとしています。
( ２０１５年０２月２６日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

自民党運動方針案／「憲法改正推進」を柱に／賛同者拡大運動も

　３月８日の自民党大会で決める２０１５年の同党運動方針案が明らかになりました。「憲法改正推進」を柱に掲げ、改憲原案の作成や改憲に向けて国民運動の推進を強調するなど、これまで以上に明文改憲を強く打ち出しています。
　方針案では冒頭、「立党６０年の節目を迎え、我々が改めて胸に刻まねばならないのは、日本の文化・伝統・国柄に立脚し憲法改正を党是として出発した保守政党としての矜持（きょうじ）」だと強調。「憲法改正に関する国民各層の理解を得つつ、衆議院・参議院の憲法審査会や各党と連携し、憲法改正原案を検討、作成することを目指す」としました。時期は明示していませんが、安倍晋三首相は来年の参院選後に改憲発議に踏み出す意向を示しています。
　改憲機運の盛り上げを目指す自民党の取り組みとして、「都道府県、選挙区支部主催の憲法改正研修会を今後も積極的に主催」「各種団体の協力、憲法改正推進本部と組織運動本部の連携のもと、憲法改正賛同者の拡大運動を推進する」としています。
　また運動方針案は、「戦後７０年の節目」に「改めて靖国神社参拝を受け継ぐ」と明記しました。昨年に続き侵略戦争肯定の立場を党として確認する内容です。「７０年新談話」については、「首相の専権事項」とする首相側の意向を反映してか、方針案では触れていません。
　集団的自衛権行使容認については、昨年７月の「閣議決定」に基づき「切れ目のない安全保障法制の速やかな整備に力を注ぐ」とし、日米同盟の抑止力を高める日米防衛協力の指針の見直し、友好国との防衛協力の推進を掲げました。
( ２０１５年０２月２６日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

２５ 住民の声届く地方議会へ／共産党議員が質問／「堺をなくすな」が民意／栗駒市議に竹山市長答弁

　堺市議会本会議が２３日開かれ、今期で勇退する日本共産党の栗駒栄一市議が代表質問に立ちました。
　栗駒議員は、橋下徹大阪市長が、「大阪都」構想で堺市を廃止し、特別区への再編を示唆していることについて「大阪市を廃止・分割することは堺市民にとってもマイナスになる。堺市を巻き込むことになれば、堺市民にとって百害あって一利なしだ」と指摘。竹山修身市長は「市民は『堺は一つ。堺をなくすな』との思いで自治都市堺を守った。それが民意だ。これからも市民とともに堺を守り、発展させていきたい」と答えました。
　栗駒氏は、今年は戦後７０年の節目であり、市として憲法９条を守る積極的な取り組みが求められると主張。竹山市長は「戦争体験世代が少なくなってきており、戦争の記憶を風化させず、平和の願いを伝える取り組みを進めていきたい」と答弁しました。栗駒氏は、「平和と人権資料館」に憲法の前文と第９条、アジアへの侵略の反省と謝罪を示した「村山談話」の内容がよくわかる展示をすべきだと強調しました。
　栗駒氏は、さらに企業立地促進条例により、シャープ堺工場と関連会社に来年度も１５億円の減税が予想され、障害者短期入所事業所運営補助事業に回せば約４４倍の予算を計上できることなどを示し、減免中止を検討するよう要望。介護保険制度について、消費税増税などによる生活苦の中で「市民要求に応え、自治体が独自に減免の努力をすることは当然だ。低所得者への独自軽減をぜひ実施していただきたい」と求めました。
(２０１５年０２月２５日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

被爆・戦後７０年テーマに学習会／岐阜・サロン９条

　岐阜県のサロン９条は１７日、第２５２回例会として、日本原水爆被害者団体協議会（日本被団協）事務局次長の木戸季市氏を迎え、「被爆・戦後７０年を迎えて」をテーマにした学習会を岐阜市内で開きました。
　木戸氏は、核不拡散条約（ＮＰＴ）再検討会議ニューヨーク行動、国連ロビー原爆展などの報告も行い、「アメリカでも原爆投下を正しくないと認める人が増えてきた」と述べ、「アメリカの小学校で講演すると真剣なまなざしで聴いてくれる」と語りました。
　参加者は「戦争で命を守るために命かけてたたかったので、被爆したこともしょうがないという人もいるけど、そうではないと思います」と意見を述べました。
(２０１５年０２月２５日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

ひと／ダム反対を訴える石木川まもり隊代表松本美智恵さん（６３）

　「私たちが伝えることで、多くの人が税金はこんな使い方をされているんだと実感できると思うんです」と穏やかな口調で話します。
　長崎県と佐世保市が利水と治水を名目に、川棚町・石木川に建設を計画している石木ダム。人口減少傾向の佐世保市の過大な水需要予測、河川改修をすれば防げる川棚川の洪水、多様な生態系の破壊、そして、人権問題｡｢戦後７０年、６０人も住んでいるところを強制収用したという事例はないのでは。こんなことを許したら、私たちの人権も奪われかねません」と話します。
　横浜で教員をした後、結婚して埼玉に移り住み、２００８年夏、佐世保市に引っ越してきて、石木ダムのことを知りました。
　「水問題を考える市民の会」ができ、最初の集会で聞いた２人の若い住民の「必要のないダムのために私たちのふるさとが奪われようとしている」との訴えに衝撃を受けました。こんなに「自分たちのふるさとを守りたい」と訴えているのに、佐世保市民として知らん顔はできない、との思いで､０９年７月､｢石木川まもり隊」をつくり、ホームページを立ち上げ、石木ダムのことを市民に知らせるなどの活動を始めました。
　「建設予定地は、夏にホタルが飛び交い、貴重な淡水魚もいる美しい場所です。活動を後押ししたのは住民の思い。声を上げることで世論が変わっていく。あきらめず、自分のこととして支えたい｣と語ります｡
　文　村﨑　利幸
( ２０１５年０２月２５日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

菅官房長官が反論

　菅義偉官房長官は２４日の記者会見で、国連安全保障理事会の公開討論で、中国の王毅外相が歴史認識をめぐって安倍政権へのけん制とみられる発言をしたことに関し、「日本は戦後７０年にわたり、先の大戦の深い反省の上に立って平和国家として世界の平和と繁栄に貢献してきた。ここについては多くの国際社会から理解を得て評価されている」と反論しました。
( ２０１５年０２月２５日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

韓国「７０年談話注視」

　【ソウル＝時事】韓国外務省報道官は２４日の記者会見で、安倍晋三首相が今夏に発表する戦後７０年談話を検討する有識者会議のメンバーが決まったことに関し、「有識者会議をはじめ、関連動向を鋭意注視していきたい」と述べました。
　また、安倍談話の内容について、「歴代内閣の歴史認識を継承すると公言してきたのだから、村山談話、小泉談話の歴史認識よりも後退してはならない」との考えを改めて示しました。
( ２０１５年０２月２５日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

東京空襲写真展きょうから開催

　「戦後７０年にふりかえる　東京空襲写真展」が２５日から４月１２日まで、東京都江東区の東京大空襲・戦災資料センターで開かれます。
　警視庁のカメラマンだった石川光陽氏の記録写真など約１３０点を展示。記念講演会は２月２８日午後２時から。先着５０人。
　写真展は水曜～日曜日の正午から午後４時まで（３月９日〈月〉、１０日〈火〉は開館）。一般３００円。中・高校生２００円。小学生以下無料。問い合わせ同センター℡０３（５８５７）５６３１まで。
( ２０１５年０２月２５日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

７０年談話座長、村山談話言及せず

　政府が８月に発表する戦後７０年談話を検討する有識者会議座長に内定している西室泰三日本郵政社長は２３日の衆院予算委員会で、会議の運営について「物心ついて、戦前、戦中の苦しい時期を実体験している。そういう意味で年寄りとして貢献はできる。それ以外での私が積み上げてきた経験も生かしていける」と述べました。民主党の小川淳也氏への答弁。
　西室氏は過去の侵略と植民地支配へのおわびを明記した１９９５年の村山富市首相談話については「会議が始まっていないので、予断を持って政治信条を発表することは絶対にできない」と言及を避けました。
( ２０１５年０２月２４日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

ＴＢＳ系３月９日「私の街も戦場だった」／戦後７０年番組／米の低空空襲の被害追う

　ＴＢＳテレビは３月９日、太平洋戦争時の米国小型戦闘機による「低空空襲」を追った「私の街も戦場だった」（後９・０）を放送します。
　戦後７０年の大型番組で、俳優の佐藤浩市が案内役を務めます。
　米機の低空空襲については、最近そのカラー映像が発掘され始めています。米軍機の翼などに設置されたカメラによるもので、多くは機銃の引き金を引くと同時に録画が開始される仕組みです。
　映像を分析したところ、都市部だけでなく地方の小さな村も含めて日本全土が空襲に遭ったことが分かりました。日本側に残っていない空襲の記録も多数見つかっています。
　戦時のようすを知る人々も取材。当時２０歳の人でも今は９０歳ですから、実体験を語り継ぐぎりぎりの年代です。攻撃側の米国人の思いにも迫ります。
　番組はドキュメンタリー部分のほか、事実を基にしたドラマも送ります。列車が被害に遭った最悪の空襲は、中央本線の東京・高尾山麓の湯の花（いのはな）トンネル付近で起こりました。列車に乗り合わせていた姉妹の運命を、杉咲花、福田麻由子、奥貫薫らが再現します。
　佐藤のテレビ番組案内役は初めて。「戦後７０年というのは、日本が７０年間戦争をしてこなかったわけで、素晴らしいこと。これから先いつまでも『戦後』といわれるように、過去を見つめる機会をつくり続けていくしかないと思います」と語りました。
　山岡陽輔プロデューサーは､｢戦争の悲しさ､愚かさを戦争体験者の子どもの世代に託していきたい。佐藤さんはその代表にふさわしい人だと思っています｣と述べました｡
( ２０１５年０２月２３日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

メディアをよむ／須藤春夫／ＮＨＫ会長また問題発言

　ＮＨＫの籾井勝人会長が５日の定例記者会見で、またも問題発言をしました。
　戦後７０年の節目に「慰安婦」問題を取りあげる可能性を記者から問われ、「政府の正式なスタンスがまだ見えないので、われわれが放送するのが妥当かどうかは慎重に考えないといけない」と答えたのです。ＮＨＫの番組は「政府の意向」に沿うとの表明であり、放送の自主・自律を否定するとんでもない発言です。
　籾井会長は１年前の就任会見で「政府が右と言うことを左と言うわけにはいかない」と発言。公共放送のトップを担う資質に強い疑念と批判をあびました。今回の発言もそれと同根です。もはや会長の任に堪えないのは明白です。
　日本ジャーナリスト会議と放送を語る会、「ＮＨＫを監視・激励する視聴者コミュニティ」は、この発言が報じられると直ちに会長の辞任と経営委員長に対して会長罷免を求める申し入れを行いました。「視聴者コミュニティ」は、経営委員会が会長を罷免しないのであれば、経営委員長が辞任することを求めています。
　これまで経営委員長は、国会審議の場などで会長の問題発言をかばい続け、管理監督を明言してきました。しかし、会長は相変わらず妄言を繰り返しています。
　籾井会長の１年を検証した毎日新聞の記事(４日付)によると、すでにＮＨＫ内部には政権におもねる籾井会長の言動をそんたくする風潮が強まっているそうです。心ある職員が格差､貧困､原発などの社会問題を浮き彫りにする番組を作り続けているものの、その役割を果たし続けることができるのか、危機感を覚えると指摘しています。
　複数の職員の証言では、与党の方針に異をとなえる内容を自主規制する傾向も強まっているといいます。
　ＮＨＫの自主・自律の回復には、一刻も早い籾井会長の退場が欠かせません。
　（すどう・はるお＝法政大学名誉教授）
(２０１５年０２月２２日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

侵略戦争の実相伝えよう／女性「九条の会」が学習会

　翻訳家の池田香代子さんや脚本家の小山内美江子さんらがよびかけ人をつとめる女性「九条の会」は２１日、東京都武蔵野市で学習会「日本は過去とどう向き合ってきたか」を開きました。
　明治大学教授の山田朗さんが講演しました｡安倍晋三首相が､｢戦後７０年談話｣で､侵略戦争と植民地支配への｢痛切な反省｣と｢心からのお詫(わ)び｣を表明した｢村山談話｣を変えようとしていると指摘しました｡
　中国、韓国などアジア諸国との関係を改善するためには「歴史の何が事実かという〝共通の土台〟をつくることが大事だ」と強調した山田さんは、「戦後７０年たち、戦争経験者が少なくなる中で、侵略戦争と植民地支配の実相や、日本の加害行為を事実として次の世代に伝えていくことが大切です」と語りました。
　国連ＮＧＯ国内婦人委員会の江尻美穂子委員長は閉会のあいさつで、安倍政権の歴史認識の危険性を指摘し、「子どもたち、孫たちのために憲法９条をもっと根付かせるように、運動を広げましょう」とよびかけました。
( ２０１５年０２月２２日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

立憲主義守れ／「閣議決定」撤回行動予定

　■茨城県牛久市でピースカフェ　２２日（日）午後１時～３時、牛久コープ２階第２会議室。テキスト＝宮地正人東京大学名誉教授「第２次世界大戦をどうみるか」（『前衛』１月号特集「戦後７０年をどう迎えるのか」）。参加費１００円。主催＝憲法９条牛久の会
(２０１５年０２月２１日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

年金者党後援会決起集会を開催／東京

　東京年金者日本共産党後援会は１７日、渋谷区内で、後援会総会といっせい地方選勝利のための決起集会を開きました。
　金子民夫会長が「戦後７０年の節目の年、安倍政権の暴走が続くなか、地方から審判を下そう！　年金を守る共産党の全員当選へ、全力をあげよう」とあいさつ。田中寛治全国後援会事務局長が激励・連帯のあいさつをしました。
　植木こうじ都議が、１７議席に倍増した都議団の都民の運動と結んだ奮闘で、認可保育園や特別養護老人ホーム増設、中小企業支援、非正規労働者の正規雇用化、職員定数増など都政を変えてきていることを紹介しました。
　田中正也渋谷区議が共産党の６人全員当選をめざす決意を表明しました。
(２０１５年０２月２１日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

小樽で多喜二墓前祭／「戦争する国」許さぬ決意新たに

　日本共産党員で､｢蟹工船」などの作品で知られるプロレタリア作家・小林多喜二の墓前祭が、没後８２周年の命日にあたる２０日、北海道小樽市で行われました。小樽をはじめ、札幌、旭川、函館など各地から８０人が墓前に集い、赤いカーネーションを供え、安倍政権による「戦争する国」づくりを許さない決意を新たにしました。
　小樽多喜二祭実行委員会の菊地よう子実行委員長代理（日本共産党道議候補）は、「戦後７０年。平和のために命をかけてたたかった多喜二の生涯は、今も私たちを励ましています。戦前に逆流させる動きを決して許してはなりません。平和への思いを新たに前進したい」とあいさつしました。
　日本共産党北海道委員会の青山慶二委員長は「憲法９条をなきものにすることが安倍首相の最大の野望です。侵略戦争と植民地支配に命をかけて反対した歴史と誇りに立って、極右勢力による政治支配を終わらせるために全力を挙げます」と決意をのべました。
　治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟北海道本部の宮田汎会長は「多喜二の思いをしっかり受け継いでいこう」と呼びかけました。
( ２０１５年０２月２１日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

談話「細かな議論だ」

　自民党の谷垣禎一幹事長は２０日の記者会見で、安倍晋三首相が今夏に発表する戦後７０年談話に関し「いわゆるキーワードが何だとか言って非常に細かなところから議論に入っていく感じがするが、必ずしも議論の仕方として得策ではない」と指摘しました。戦後５０年の村山談話に明記された「植民地支配と侵略」などの文言を継承するよう求める公明党などの主張を念頭に置いた発言です。
　その上で、談話の内容について「未来に向け、日本がどういうメッセージを出していくかが大事だ」と述べ、未来志向の内容にすべきだとの考えを示しました。
( ２０１５年０２月２１日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

２０ 沖縄・翁長知事の所信表明／要旨

　沖縄県議会２月定例会の開会にあたって翁長雄志知事が１９日に行った所信表明演説（要旨）を紹介します。

　私は、先の県知事選において基地問題の解決や沖縄のソフトパワー（自然や伝統文化など多くの人を引き付ける独自の力）を活用した県勢発展などを公約に掲げ、当選させていただきました。県民の期待に添うべく公約の実現に向けて全力で取り組んでまいります。
　特に米軍普天間基地の「移設」については、「建白書」の精神に基づき、辺野古の新基地建設に反対します。来年度を、公約で掲げた新たな施策に着手するなど、「誇りある豊かさ」の実現に確かな道筋をつける年にしたいと考えております。
　今後の沖縄振興に向けた取り組みで、県民の英知を結集して策定された沖縄２１世紀ビジョンの示す将来像の実現に向け、沖縄がもつソフトパワーを生かし、「経済発展」「生活充実」「平和創造」の三つの視点から施策を展開してまいります。
　平和創造では、基地問題の解決に全力を尽くし、豊かな生活に導く跡地利用を推進するとともに近隣諸外国との平和交流を積極的に促進してまいります。
　私は、日米安全保障体制の必要性は理解しておりますが、戦後７０年を迎える今もなお、国土面積の約０・６％である沖縄県に約７４％の米軍基地が存在する現状は理不尽であります。そして、その米軍基地は沖縄経済発展の最大の阻害要因となっております。
　私は、過重な基地負担の軽減を図るため、基地の整理縮小をはじめ、日米地位協定の抜本的な見直し、騒音問題や米軍人軍属による犯罪など基地から派生する諸問題の解決に取り組んでまいります。
　私は、多くの県民の負託を受けた知事として、辺野古に新基地は造らせないということを県政運営の柱にします。辺野古の新基地建設事業にかかる公有水面埋め立て承認に関しては、法律的な瑕疵（かし）の有無を検証する第三者委員会の報告を踏まえ、埋め立て承認の取り消し、撤回について検討します。
　オスプレイについては、県民の民意とは異なる配備に反対し、日米両政府に配備撤回を求めてまいります。基地問題の解決へ向けて米国ワシントンＤＣに駐在員を配置し、情報収集と情報発信に努めます。
( ２０１５年０２月２０日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

ステルス揚陸艦配備／基地配備反対を要望／日本共産党北部地区委／長崎

　日本共産党長崎県北部地区委員会（石川悟委員長）のメンバー５人は１９日、最新鋭揚陸艦グリーン・ベイの佐世保米軍基地配備について、朝長則男佐世保市長に宛て、反対の表明などを要望しました。
　要望は、①グリーン・ベイ佐世保配備に反対を表明する②集団的自衛権行使容認の「閣議決定」撤回と法整備作業の中止を政府に求める③「戦争する国づくり」の国策協力は改める―の３点。石川氏が要望書を読み上げ、末竹健志副市長に手渡しました。
　山下千秋市議は「単純な交代配備ではない。オスプレイを３機搭載できる準揚陸艦の機能を備えた艦船が配備された」と指摘し、佐世保米軍基地の増強は、沖縄・辺野古新基地建設との関連があることを強調。「日米共同の戦争の足場にさせられる。佐世保市民も願っていないこと」として、何でも国策に協力する姿勢を改めるよう、ただしました。
　末竹氏は「通常の艦の交代として捉えている｣とのべる一方､オスプレイに対しては「配備が正式に決まったら、政府にどういう運用をするのか説明を求めたい｣と話しました｡
　石川氏は「戦後７０年の節目のときに、地方自治体として物をいっていくべきときではないか」とのべ、配備に反対するよう再度求めました。
( ２０１５年０２月２０日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

７０年談話、２５日検討着手／有識者会議の１６人発表

　菅義偉官房長官は１９日の記者会見で、安倍晋三首相が今夏に発表する戦後７０年談話について検討する有識者会議の初会合を２５日に開催することを明らかにしました。西室泰三日本郵政社長、北岡伸一国際大学長ら１６人のメンバーも併せて発表。首相は同会議での議論を踏まえて談話をまとめる意向です。
　会議の名称は「２０世紀を振り返り２１世紀の世界秩序と日本の役割を構想するための有識者懇談会」（２１世紀構想懇談会）。メンバーの内訳は学者１０人、経済界３人、マスコミ２人、ＮＰＯ１人。座長に西室氏、座長代理に北岡氏が互選される見通しです。西室氏は有識者会議「新日中友好２１世紀委員会」の日本側座長。
　メンバーには、集団的自衛権行使容認に道を開いた政府の有識者懇談会の座長代理を務めた北岡氏のほか、中西輝政京大名誉教授、宮家邦彦立命館大客員教授ら、首相の外交・安保観に近いと目される学者が入りました。
　その他のメンバーは次の通りです。
　飯塚恵子読売新聞アメリカ総局長▽岡本行夫岡本アソシエイツ代表取締役▽川島真東大大学院准教授▽小島順彦三菱商事会長▽古城佳子東大大学院教授▽白石隆政策研究大学院大学長▽瀬谷ルミ子日本紛争予防センター理事長▽西原正平和・安全保障研究所理事長▽羽田正東大副学長▽堀義人グロービス経営大学院学長▽山内昌之東大名誉教授▽山田孝男毎日新聞政治部特別編集委員
( ２０１５年０２月２０日，「赤旗」)

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この変化、次の躍進へ／労働者後援会が決起集会／紙参院議員が報告／長野市

　長野市内で１４日、日本共産党長水地区の労働者後援会決起集会が開かれました。この日、長野市で開催された農業シンポジウムの合間をぬって紙智子参院議員が駆けつけ、党躍進で変化している国会の様子をリアルに報告しました。「この変化を全党員のものに」と、会場から７人が発言しました。
　「和田あき子県議と一緒に訪問・対話した。顔を見るなり、今までとまるで態度が変わって、『ここしかないでしょ』と、党のビラを指さす労働者がいた。総選挙躍進で確実に変化している」（ＪＲ後援会）、「人質殺害報道の朝、２０年前の教え子が『やっぱり先生の言っていた通り、日本は戦争しない国でなければいけない』と『赤旗』購読を申し込んできた。職場に他候補の関係者がいて、リーフを配っている。自分もすぐ支持拡大をしたい、資材がほしい」（私学後援会）など、思いを込め実践と決意を交流しました。
　医療後援会から「職場の過半数を労組に組織し、労働条件改善へたたかっている。県議選の支持拡大も職場労働者の過半数を目標に決めた」、高校後援会からは「総選挙でテレデータ対話して変化を実感。集まれない仲間に伝えたら、『行けなくてゴメン。自分も職場で１５票よんだ』と返事があった。みんながんばる気持ちだ。戦後７０年、歴史をつくっていく」と、発言がありました。
　「今までで一番感動した集会」との感想が寄せられました。
(２０１５年０２月１９日，「赤旗」)

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戦争もうごめん／バレンタインデー宣伝／秋田・新婦人

　新日本婦人の会秋田県本部は１４日、秋田市のＪＲ秋田駅前仲小路アーケードで核兵器禁止のバレンタインデー宣伝署名を行い、１０人余が参加しました。
　手づくりのハート形プラカードを首からかけ、通行中の人たちにビラを配布。「今日は、大切な人へ愛を届ける日です。今年は被爆７０年、戦後７０年になります。核兵器も戦争も二度とごめんです。唯一の被爆国、日本の国民が全世界へアピールするチャンスです。みなさんの平和を願う愛を、一筆に託してください」と訴え、署名への協力を呼びかけました。
　「ＮＰＴ（核不拡散条約）再検討会議が行われる国連本部に届ける国際署名です」との説明を聞いた女性は、「がんばってください」と笑顔で激励し署名。呼びかけに自分からすすんで駆け寄り、署名する人たちなども見られました。
(２０１５年０２月１９日，「赤旗」)

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被爆直後の広島を記録／原民喜の手帳、原爆資料館へ

　被爆作家で詩人の原民喜（はら・たみき）が広島で被爆した直後の悲惨な状況を記した手帳が１８日、広島市中区の広島平和記念資料館（原爆資料館）に寄託されました。手帳は代表作「夏の花」の基になっており、市民団体が戦後７０年の今年、同じく被爆した詩人の峠三吉と栗原貞子の資料と共に、国連教育科学文化機関（ユネスコ）の世界記憶遺産への登録申請を目指しています。
　手帳は縦１３㌢、横７㌢で、「８月６日８時半頃　突如　空襲　一瞬ニシテ全市街崩壊」と書かれています。「コハ今後生キノビテコノ有様ヲツタヘヨト天ノ命ナランカ」と悲劇を後世に伝えていく決意もつづられています。
　世界記憶遺産登録には保管の仕方も条件になっているため、市民団体「広島文学資料保全の会」が民喜のおい原時彦さん（８０）に寄託を依頼。同会は「にんげんをかえせ」の言葉で知られる峠の「原爆詩集」の直筆最終草稿と栗原の詩「生ましめんかな」などが書かれたノートとともに、６月までの申請を目指します。
　時彦さんは「手帳から被爆の実態を多くの人々に知ってもらいたい」と話しました。手帳を受け取った志賀賢治館長は「７０年前の被爆の惨劇をくぐり抜けた貴重な資料だ。特別展示などの活用も検討したい」と語りました。
( ２０１５年０２月１９日，「赤旗」)

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主張／衆参代表質問／「この道」でない打開の道鮮明

　安倍晋三首相の施政方針演説にたいする衆参両院の各党代表質問を聞きました。昨年末の総選挙後初めての党首クラスの国会論戦です。「戦後以来の大改革」「この道しかない」と暴走加速を宣言する安倍首相をただすとともに、具体的対案を示し政治の大本の転換を迫ったのが、日本共産党の志位和夫委員長（衆院）と山下芳生書記局長（参院）の質問でした。国民の切実な願いに根ざした提起にたいし安倍首相はまともに答えようとしません。民意に耳を貸さず暴走を重ねる安倍「亡国」政権の行き詰まりがいよいよ鮮明です。

重要課題まともに答えず
　志位、山下両氏が取り上げたのは、暮らしと経済、外交、憲法と平和、沖縄新基地、歴史認識、震災復興、農業など日本が現在直面し、その打開が切実に求められている国政の最重要問題です。
　テロを繰り返す過激武装組織ＩＳにどう対応するのか。志位氏は、ＩＳを武装解除・解体に追い込むうえで、国連中心に国際法と国際人道法を厳格に守り行動することの重要性を強調しました。日本人人質事件をめぐる日本政府の対応を冷静に検証することを求めたのも、悲劇を二度と繰り返さないために必要だからです。
　しかし､首相は｢テロに屈する｣の一言で検証にまともにこたえない姿勢をあらためません｡国民の安全を守るうえで無責任です｡
　暮らしと経済の問題はどうか。「大企業がもうかれば、その恩恵がいずれ庶民の暮らしに回る」という安倍政権の経済政策は完全に行き詰まり、格差拡大だけをもたらしたことはもはや明らかです。
　志位氏が提起した経済政策の三つの転換①消費税１０%を中止し､｢消費税頼み｣をやめる②社会保障費の自然増削減路線の中止③雇用のルール破壊をやめ､人間らしく働けるルールをつくる―は､国民の暮らしを守る確かな道となるものです｡ところが首相の答弁は､この提起を真面目に検討もせず､消費税増税も社会保障費削減も容赦なく実施する立場を示し､労働法制大改悪についても｢過労死が蔓延することは考えられない｣などと開き直りました｡暮らしの実態を見ようとしない首相に経済のかじ取りは任せられません｡
　沖縄の米軍新基地建設についても、県民の声を「真摯に受け止める」というのは言葉だけで、あくまで新基地建設を押し付ける姿勢です。
　戦後７０年の今年、志位氏が首相に「植民地支配と侵略」への痛切な反省と心からのおわびという核心的内容の継承などを求めたのは、この姿勢の堅持こそがアジア諸国との「和解と友好」の土台になるものだからです。しかし首相は、靖国神社参拝は「国のリーダーとして当然」などと侵略戦争美化姿勢の正当化に終始しました。世界の流れに逆らう安倍首相に政治を担う資格はありません。

希望ある政治実現こそ
　山下氏は、被災者支援、「原発ゼロ」の決断、環太平洋連携協定（ＴＰＰ）からの撤退などを求めましたが、安倍首相はまともに受け止めようとしません。
　さまざまな問題で破綻し行き詰まっている政治を、「この道しかない」と突き進むだけの安倍政権に国民は希望をもてません。民意に反し、暴走する安倍政権を追い詰める国民的共同を広げることが急がれます。
( ２０１５年０２月１９日，「赤旗」)

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戦後７０年に思う／劇団の歩みと戦争の痛み／「稲葉小僧」の初日を前に／佐々木愛

　今年が戦後７０年目の年であるせいか、年が明けてから幾度となく〝よく劇団を７０年も続けてこられましたねえ…〟と、声をかけていただく事があった。

満州巡演中にむかえた敗戦
　太平洋戦争の最中に誕生した私たちの劇団文化座が、当時日本の植民地だった満州を巡演中にソ連の参戦、敗戦を体験し、１年間の難民生活の後、命からがら帰国したことをご存知の方々からの言葉だった。
　私の両親（佐佐木隆と鈴木光枝）を中心に１９４２年（昭和１７年）に結成された劇団文化座は、松竹傘下にある新派の井上正夫演劇道場から袖を分かって出発した劇団だった。―戦争一色の時代だからこそ、国策劇ではない、庶民の生活を描きたい―という夢を持って…。ところが、劇団疎開を命じられる中、１９４５年６月、旧満州にわたり、敗戦、引き揚げとなったのであった。
　満州に行くとき満２歳足らずで東京の親戚にあずけられた私が両親と再会したのは、満３歳を過ぎてからのこと。戦後、その家の玄関に立ったボロボロの身なりの２人を指して、叔母が叫んだ声が今も耳に残る。〝愛ちゃんの本当のお父さんとお母さんが帰ってきたわよ！〟と。叔母は、すでに自分たちが親代りの覚悟を決めていたのだった。
　今度劇団アトリエで上演する「稲葉小僧」は、そんな時代のお話だ。そして、文化座が帰国後の翌年、初めて取り組んだ作品なのだ。
　敗戦後の旧満州で生活し、侵略戦争の後の無惨さを嫌というほど体験した父は、帰国後の日本になかなかついていかれなかったようで、戦後第１回目の新劇合同公演が日本の芝居でなく「桜の園」であったことにも大いに憤っていた。浦島太郎のようになって、日本の現実にも、演劇界の動きにも戸惑って、ただ怒り狂っていた父の佐佐木隆は、上海帰りのやくざ者、稲葉小六に自分の滑稽な姿を重ねたのかもしれなかった。
　街の小さな医院で、１人の男の子の生命を救うために登場するこのドラマの登場人物たちは、それぞれが直前に戦争を体験している人たちばかりだ。一見人情喜劇に見えるこの作品も、時代を重ねて見てみると、登場人物たちの行為や言葉の端々に大きな戦争の背景が見えてくる。

歴史を語って魂伝えてゆく
　「どうして７０年も劇団が続きましたか？」という最初の問いに戻るとすれば、両親の時代から次の世代へと、文化座が戦争の痛みを語り継いできているからかもしれないと思えてきた。
　先日亡くなったドイツのワイツゼッカー元大統領は「過去に目を閉ざすものは現在にも盲目となる」との言葉を残したが、母の鈴木光枝は〝終戦〟という言葉は決して使わなかった。「終戦ではありません、敗戦です……」と。
　その敗戦の痛みをかかえながら、たくましくも涙ぐましいほどまっとうに生きようとする人々の、人情味あふれる「稲葉小僧」に取り組む若い劇団員たちに劇団の歴史を語り魂を伝えてゆくことが、今の私の大きな仕事のように思えている。
　＊「稲葉小僧」　作＝三好十郎、演出＝原田一樹。出演は藤原章寛ほか。２５日～３月１日、東京・文化座アトリエ℡０３（３８２８）２２１６

　ささき・あい　１９４３年生まれ。劇団文化座入団後、６１年初舞台。文化庁芸術祭賞、紀伊国屋演劇賞など受賞。８７年から劇団文化座代表。現在、新劇俳優協会会長
( ２０１５年０２月１８日，「赤旗」)

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緒方副委員長、アジア政党国際会議の鄭義溶常設委共同議長と懇談

　日本共産党の緒方靖夫副委員長は１７日、党本部でアジア政党国際会議（ＩＣＡＰＰ）の鄭義溶（チョン・ウィヨン）常設委員会共同議長・事務局長の来訪を受け、懇談しました。
　鄭氏は、昨年９月にスリランカで開かれたＩＣＡＰＰ総会への志位和夫委員長の参加と発言に謝意を表明し、今後のＩＣＡＰＰの活動計画について説明しました。
　緒方氏は、昨年の総会で採択されたコロンボ宣言が重要な意義を持つこと、同宣言に明記された核兵器廃絶の項目について、国連にも伝えていることを紹介しました。
　また、緒方氏は、日本共産党が戦後７０年の今年、日本とアジア諸国との「和解と友好」のために、日本がとるべき五つの基本姿勢を提唱していることを紹介し、内容を説明しました。
　両氏は、ＩＣＡＰＰの今年の取り組みの焦点などについて、幅広く意見交換しました。
　懇談には、日本共産党から田川実国際委員会事務局長が同席しました。
( ２０１５年０２月１８日，「赤旗」)

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稲城で「九条」全体会

　東京都稲城市でこのほど、「憲法九条を守る稲城市民の会」（大石忠雄代表世話人）は第９回全体会を開催しました。
　今年度の活動方針として、１０周年記念誌発行の提案がありました。討議では「憲法９条を守る一点の共同で会員を増やそう」などの活溌な意見が出て、情勢をめぐる討論も盛り上がりました。
　明治大学講師の渡辺賢二氏が「戦後７０年と憲法」をテーマに問題提起。参加者から「今年も大いに９条を守る活動を前進させてゆこう」「元気をもらい勇気が出た」と感想が寄せられました。
(２０１５年０２月１７日，「赤旗」)

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戦後７０年に思う／大戦終結の記憶にみる差異／歴史認識共有する対話を／久保亨

　第２次世界大戦の終結から７０年にあたる今年、ヨーロッパでは、ドイツを含む各国首脳が同じ場所で平和を誓いあう光景が見られるはずである。それは、戦後ドイツがナチズム批判の徹底と被害者への補償に努めてきて、初めて可能になった。アジアではどうか。

日本に限られた８月１５日の意味
　大戦終結と戦後をめぐる記憶にはさまざまな差異が存在することに注意しておく必要がある。欧米諸国の多くは、ベルリン郊外でドイツ軍が降伏した１９４５年５月８日を「ヨーロッパ戦勝記念日」（Ｖ-Ｅデー）としている。一方、日本では天皇のラジオ放送があった８月１５日の印象が強い。しかしアメリカは、日本に対する戦勝記念日（Ｖ-Ｊデー）を東京湾の艦上で降伏文書が調印された４５年９月２日とし、中国は南京で在華日本軍が降伏した９月３日をそう呼ぶ。もっとも中華人民共和国にとっては、４９年１０月１日の建国記念日のほうが位置づけは高い。
　他方、４５年の８月を日本とは違う意味で思い起こす国々も存在する。ベトナム民主共和国臨時政府は同年８月１６日に樹立され、インドネシアの輝かしい独立は８月１７日に宣言された。日本の植民地支配から解放された日として８月１５日を記憶する台湾、韓国、朝鮮もそれに近い。ただし台湾では４７年に国民党政権への反感が爆発した二・二八事件が起き、朝鮮半島では４８年に南北に別々の政権が樹立された。４５年に比べ、４７年や４８年の意味が格段に大きい。さらに４７年に国連がパレスチナ分割を決議した西アジア地域などの状況まで考えるならば、「戦後７０年」として「８月１５日」に特別の意味を付与しようとする意識自体が、日本に限られたものであることを自覚すべきである。

沖縄にとっては「７０年」ではない
　同じ日本国内にあっても本土の戦後と沖縄の戦後には隔絶した段差がある。５２年４月２８日、平和条約が発効し本土だけが独立を回復した。その後も２０年間米軍統治下に置かれた沖縄にとって、「戦後７０年」という言い方はもはや欺瞞に近い。「平和国家日本」という表現も、朝鮮戦争時やベトナム戦争時の米軍基地国家日本の姿を思い浮かべれば、素直に受け入れられるものではない。その現実に向きあう沖縄が２０１４年１２月の総選挙で示した強固な意志には、改めて心すべきものがあった。
　とはいえ戦後世界に関する歴史認識をすりあわせていく作業は、さまざまな形で進められている。日、中、米など各地の研究者が共同で推進してきた日中戦争に関する国際共同研究は、今年の末、第６回目を台北で開くことになっている。８月に中国の山東省済南を会場にアジアで初めて開かれる国際歴史学会議でも、世界大戦に関する大きな分科会が予定されている。歴史教科書をめぐる対話も続いている。こうした試みを積み重ね、日本が侵略戦争と植民地支配への反省を絶えず示していくならば、日本と世界の人々が歴史認識を共有する部分を広げていくことも可能になるであろう。

　くぼ・とおる　１９５３年生まれ。信州大学教授。歴史学研究会委員長。著書に『戦間期中国〈自立への模索〉』『中国経済史入門』ほか。
( ２０１５年０２月１７日，「赤旗」)

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インタビュー戦後７０年／エッセイスト海老名香葉子さん／どんな戦争にも加担しない日本であってほしい

東京大空襲で家族失う／今も大切にしている両親の手紙
　落語家の林家一門のおかみさんでエッセイストの海老名香葉子さん。東京大空襲で家族を失い、戦後も苦労の連続でした。二度と戦争を経験させたくない。憲法９条のおかげで平和に暮らせる―その信念はゆるぎません。
　小川浩記者

　海老名さんは、戦争が激しくなった１９４５年、東京から静岡県沼津に疎開していました。小学校５年生でした。この年３月１０日の東京大空襲。下町を中心に無差別に焼夷（しょうい)弾が落とされ､東京が火の海になりました。海老名さんは表情を曇らせます。
　「空襲のことは、疎開先で聞きました。心配で夜中のいてつくような寒さの中、けもの道を歩いて山に登りました。東京の方の空がぼーっとした赤い色に染まっていました。手をついて正座し、家族みんなが無事でいますようにと祈りました。燃えさかる火に囲まれ、どんなに熱くて苦しかったことか…」
　祈りは届きませんでした。墨田区本所の実家は焼け、両親など家族６人を失いました。海老名さんは戦後、戦災孤児となり、親せきの家を転々としました。
　「焼け野原ですから、食べるものがなく苦しかった。ふすま粉や雑草を探して、食べたんですよ」
　千葉の親せきの家へ行く途中、サツマイモ畑を見つけ、空腹にがまんできず、畑に入ったことがあります。すると、どこからともなく母の声やみんなの声が聞こえてきました。
　「香葉子がんばってね！」。その声で悪いことはしまいと心に誓いました。
　家族のなかで大空襲の中を生き残ったのは、３番目の兄だけでした。海老名さんは、戦後の混乱で居場所が分からなくなった兄を捜しに、大空襲で焼けた実家跡をたびたび訪れました。
　終戦から１年後のある日、実家跡近くの鉄工所のおじさんから兄の居場所を教えてもらい、神田の闇市で奇跡の再会をしました。
　実家跡に通うなか、もう一つの奇跡が起こりました。
　空襲で亡くなった父は、釣り竿(ざお)職人で知られていました。その父のお客さんだった落語家の三代目三遊亭金馬さんが実家跡に「金馬来たる　連絡乞（こ）う」の立て札を残してくれていたのです。海老名さんは､｢小さな寄席の表看板に偶然、金馬師匠の名前を見つけ、楽屋を訪ねたら、金馬師匠に奇跡的に会えたんです」
　それがきっかけで、兄とともに金馬師匠に引き取られました。１５歳の時です。
　海老名さんが、戦災孤児から立ち上がることができたのは、疎開先にくれた両親の手紙です。今も大切に持っています。
　「父は〝とうちゃん、とうちゃん、とうちゃんって３回呼んでごらんなさい〟とすみ字で書いてあります。だから､さびしくなると『とうちゃ～ん、とうちゃ～ん、とうちゃ～ん』と声に出して呼びました。安堵（あんど）するんです。父が暗示をかけたんですね。今でも口にすることがありますよ。親の年をはるかにこしているのにね。親の情です」

９条は証し
　母も言葉を残してくれました。
　「『笑顔でいれば､みんなに好かれるのよ』と。その言葉はいまでもしっかり覚えています。小さな時から泣き虫でしたからね」
　金馬師匠の縁で５２年、１８歳の春に初代三平と結婚しました。ところがまたもや試練が｡８０年､がんで夫の三平さんが亡くなりました。一門のトップが亡くなり、一門解散の危機に｡落語協会会長(当時）の五代目柳家小さん師匠に一門結束のお願いに上がりました。小さん師匠に「よっぽど支えてやらないと大勢の面倒は見られないよ｣と言われ､海老名さんは「命かける思いで『はい』と申し上げて許可をいただきました｣｡すぐに理事宅をあいさつまわりし、一門は存続できました。
　「両親の愛で守られているという思いがいつもあります｡だから､つらいことがあっても､がんばってこれた｣
　人気落語家・初代林家三平の妻で林家一門のおかみさん、そして４人の子どもの母として、戦後を生きてきた海老名さん。多忙の中でも、東京大空襲の遺族として体験を伝える講演活動を続けてきました。
　「戦争は絶対にしてはいけない。どんな戦争にも加担しない日本であってほしい。憲法９条はその証しです。なくしちゃいけない。９条の『武器を持っちゃいけない』というところが良いですね。戦争はむごいんだよ、苦しいんだよ、と伝えていかなくちゃいけない。一人の死でも泣くじゃないですか。悲しみを想像してほしいと思います」

「時忘れじの集い」を主催
　海老名さんは２００５年から、東京大空襲の犠牲者を「供養」し〝あの忌まわしい戦争を風化させない〟､と東京･上野公園で｢時忘れじの集い｣を主催しています｡１１回目の今年は３月９日に開催します。
慰霊碑「哀しみの東京大空襲」供養式　３月９日午前１０時から、上野公園内の東叡山現龍院「哀しみの東京大空襲」慰霊碑前（寛永寺輪王殿脇）
平和の母子像「時忘れじの塔」記念式典　同日午前１１時３０分から、上野公園内いこいの広場「時忘れじの塔」前（清水観音堂脇）

えびな･かよこ=１９３３年､東京都生まれ。エッセイスト。著書に『うしろの正面だあれ』『おかみさん』など。長男は九代目林家正蔵、次男は二代目林家三平
(２０１５年０２月１５日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

１５ 与党協議是非避ける

　安倍晋三首相は１４日午後、８月に発表する戦後７０年談話の作成について「菅義偉官房長官を中心に有識者の話をうかがいたいと思う。どういうスケジュールで進めていくかは検討中だ」と語りました。公明党が求める与党協議の是非に関しては言及を避けました。視察先の宮城県気仙沼市で記者団の質問に答えました。　
( ２０１５年０２月１５日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

首相訪米予定／４月下旬から

　安倍晋三首相は、今年前半で検討していた訪米について、４月下旬からの大型連休中とする日程で調整に入りました。２００６年の小泉純一郎首相以来の公式訪問となり、オバマ大統領と会談し、同盟関係の一層の強化を確認します。首相は、今年が戦後７０年に当たることを踏まえて政策スピーチも行う考えです。
　日米両政府は、首相と大統領の首脳会談に合わせて共同文書の発表を検討。日米は現在、軍事協力の指針（ガイドライン）再改定、環太平洋連携協定（ＴＰＰ）について協議しており、文書には安全保障、経済をはじめ幅広い分野での日米協力の在り方を盛り込みたい考えです。
( ２０１５年０２月１５日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

戦争被害解決、戦後７０年にふさわしく／３・６大集会成功へ／実行委が共産党に要請

　空襲被害者など民間人の戦争被害の解決を求めて３月６日に東京で開く「ふたたびこの国を火の海にさせないために！　戦後７０年・戦争被害のすべて解決を！大集会」の実行委員の人たち（実行委員長・中山武敏弁護士）が１３日、日本共産党本部を訪れ、集会成功へ協力を要請しました。
　日本共産党から山下芳生書記局長、浦田宣昭国民運動委員会責任者、田村智子参院議員、宮本徹衆院議員らが出席、懇談しました。
　全国空襲被害者連絡協議会の星野弘運営委員長（８４）は「多くの人に戦争や空襲の実態を伝え、戦後７０年にふさわしい解決への道を切り開きたい」と、表明しました。
　日本原水爆被害者団体協議会の木戸季市（すえいち）事務局次長（７５）は「国民は等しく我慢せよという『受忍論』の壁を破り、国に責任を果たさせたい」と話します。
　高岡岑郷（しんごう）同実行委員会事務局長は「被害者は置き去りにされ苦しんできた。集会を『空襲被害者等援護法（仮称）』の本格的な出発点にしたい」とのべました。
　山下氏は「まさに政治の責任が問われている。立法化に向け、超党派で動かしていきたい。集会成功のために私たちも力を尽くします」と語りました。
( ２０１５年０２月１４日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

「いつか来た道」行かぬ決意／「建国記念の日」反対各地で／浜松／津／富山／金沢／福井

■浜松／思想信教の自由を
　静岡県浜松市中区で１１日、「建国記念の日」に反対する「第３５回思想と信教の自由を守る県西部集会」が開催され、１２０人が参加しました。主催は政教分離の会、憲法９条を守る会、日本キリスト教団など２２団体で構成する実行委員会です。
　古関彰一・独協大学名誉教授が講演。日本は過去の侵略戦争の戦争責任を認めないまま現在まできていると説明し、安倍政権がすすめるアメリカと一緒に海外で戦争する国づくりは、同時に、侵略戦争すら否定する危険な情勢となっていると指摘｡｢正しいことは必ず実現する。私たち一人ひとりができることをしよう｣と語りました｡
　小林眞・遠州教会牧師は「憲法９条が形骸化され思想と信教の自由が危機を迎えている。悲惨な戦争を再び繰り返させないため、共に力をあわせよう」と呼びかけました。
　参加した鈴木淳一さん(８０)＝磐田市＝は｢侵略戦争を否定して､戦前の軍国主義の時代に戻そうとする安倍政権をストップさせないと。国民をだまして進めるのは特に許せない｣と話していました｡

■津／元陸自隊員が講演
　三重県津市のアスト津で１１日、「『建国記念の日』を考える集い」が開かれました。県歴史教育者協議会を中心とする実行委員会の主催。県内外から集まった参加者で会場はいっぱいになりました。
　陸上自衛隊に入隊した経験を持つ泥憲和氏が「戦争する道に進んではならない」をテーマに講演しました。
　泥氏は、フィリピン・ミンダナオ島のイスラム勢力と政府との武力紛争を和平に導き、アフガニスタンで元兵士の武装解除を完了させるなど、日本の国際支援の成果を詳しく紹介し、「憲法９条を持つ日本だからこそできた平和貢献活動」だと強調しました。
　一方で泥氏は、安倍政権が、北朝鮮のミサイル問題などで意図的に「危機論」を流して集団的自衛権行使にひた走り、日本を「戦争する国」にするだけでなく、憲法の「平和をもたらす力」を失わせようとしているとして厳しく批判しました。
　泥氏は、こうした安倍政権の暴走に元自衛隊幹部など「軍事のプロ」からも反対の意見が出され、各地で若者が「自分たちに関わる問題」として声を上げてきていることも指摘し、「憲法９条や平和を守る運動を進めてきた皆さんの力があってこそ」だと参加者を激励しました。

■富山／改憲派とも対話を
　「紀元節」復活反対、平和と民主主義を守る県民集会が１１日、富山市で開かれ、約９０人が参加しました。主催は、歴史教育者協議会など１２団体で構成する実行委員会。
　東京学芸大学名誉教授でソウル大学教授も務めた君島和彦さんが、「歴史の歪曲（わいきょく）・美化は、戦争への道」と題して講演。君島さんは、自身が代表執筆者となっている実教出版の高校日本史教科書への攻撃や天皇制と一体の「紀元節」の偽造に触れた後、歴史・社会を「『された』側の視座」から見ることの必要性を提起しました。対「テロ」戦争を正義とし異論を許さない一面的見方でなく、歴史的にとらえ直すこと、戦争は「平和」の名で行われてきたことを指摘。「積極的平和主義」は殺し殺される道であり、憲法９条と象徴天皇制を否定し、戦争へ突き進む安倍政権に対抗するため、改憲賛成派・危険と思っていない人との対話を広げようと強調しました。
　講演で紹介された「戦争へなだれし日にも聞かされしこの道しかないはいつか来た道」（「朝日歌壇」）がいう「戦前」にさせてはならないという思いが参加者に広がりました。

■金沢／戦後７０年運動広く
　石川憲法会議など５団体は１１日、「建国記念の日」に反対し、平和と民主主義を考える集いを金沢市内で開きました。県内で教育運動や平和な世界をつくる活動に尽力してきた大森定嗣、東孝二、土田光孝各氏が講演し、来場者約９０人と戦後７０年にあたって平和運動をさらに広げていくことについて交流しました。
　大森氏は、安保闘争を通じて沖縄の米軍基地への関心を強め、現地の人たちと連帯を築いてきたことを報告。「戦後７０年の今年を安保撤廃や核廃絶の運動を再び盛り上げる１年に｣と呼びかけました｡
　東氏は、民間の教育運動に全力をあげてきた経験を語り、「政治主導で国のための人材を育てる今の教育は本来の教育とはかけ離れている。市民主体の教育のあり方を今一度再考すべきだ」と指摘しました。
　土田氏も、地元紙に歴史や戦争の経験をゆがめる論評が掲載されるなど右傾化の動きが強まっていることを紹介し、平和と民主主義の大切さを語り広げることの重要性を強調しました。

■福井／安倍政権暴走批判
　「建国記念の日」に反対する福井県集会が１１日、福井市の県教育センターで開かれ、約１２０人が参加しました。
　茂呂信吾弁護士が講演し、集団的自衛権行使容認の閣議決定は立憲主義と憲法９条を破壊するものだと指摘。安倍首相が憲法改正の発議と国民投票の実施を来年の参院選後と描いていることに注意を喚起し、反対世論を広げるうえで「自衛隊や安保条約の存在を肯定する立場でも、集団的自衛権行使には反対しうる｣と強調しました｡
　茂呂氏は、日本が７０年間戦争せずにきた大本に憲法９条の力があることを指摘し、「日本国憲法のかかげる平和主義がこれまで以上に求められる時代だ」とのべました。
　参加者から「憲法の大事さは、生活と結びつくことでわかる。それが危ない方向に対する抑止力になる」との意見が出されました。
　集会では、安倍政権が進める、集団的自衛権行使容認や沖縄・辺野古への新基地建設、「教育改革」に反対する県内の取り組みが報告されました。
(２０１５年０２月１３日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

教科書チーム立ち上げ／自由法曹団「侵略美化ノー」／中学採択で

　全国約２１００人の弁護士で構成する自由法曹団は１２日、東京都文京区の団本部で、教科書問題学習会を開催し、教科書問題対策プロジェクトチーム（「教科書ＰＴ」）を立ち上げました。今年は４年ごとに行われる中学校教科書採択の年です。学習会には東京、神奈川、埼玉、千葉などから３０人余が参加しました。
　社会科教科書については、日本の戦争責任を矮小（わいしょう）化するなど多くの問題のある教科書の採択を増やそうという策動が強まっており、自由法曹団の今村幸次郎幹事長が「戦後７０年、憲法が問われています。歴史修正主義、改憲、侵略戦争美化への教科書つくりかえなど、安倍政権の暴走を食い止めよう」とあいさつしました。
　「子どもと教科書全国ネット２１」の俵義文事務局長が昨年１月の社会科教科書検定基準改定の問題点を指摘。「〝政府見解などに基づいた記述にせよ〟とされたことで、『憲法上、集団的自衛権の行使は容認できる』となりかねない」と語りました。
　同氏は、安倍政権の「教育再生」ノー、侵略戦争を美化する「新しい歴史教科書をつくる会」系教科書ノーの世論を地域から広げていこうと話しました。「教科書ＰＴ」チームリーダーの小林善亮弁護士が「現状や情報を集めて、集中した取り組みをしよう。『戦争できる国づくり』の動きを知らせる地域での学習会を開いていこう」と提起しました。
( ２０１５年０２月１３日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

菅政権談話、首相も批判した／議論抜きの「戦後７０年談話」

　安倍晋三首相が８月に発表するとしている「戦後７０年談話」について、公明党から「与党のコンセンサス」を求める声が出る一方で、首相の側近からは「首相の専権だ」という独断的な発言も出ています。
　ところが安倍氏はかつて自身のメールマガジンで、民主党・国民新党の連立政権だった菅直人政権が「与党内の議論抜きに」談話を決定したことを批判的にとりあげていました。
　菅政権が閣議決定したのは「韓国併合１００年にあたっての談話」（２０１０年８月）。日本による韓国の植民地支配について「（韓国の人々の）意に反して行われた」と認めたものです。
　これに対し、安倍氏はメールマガジンで「菅民主党内閣の暴走！日韓併合１００年総理談話」との見出しを掲げ、「今日、与党内の議論抜きに日韓併合１００年についての総理談話が閣議決定されましたが、愚かで間抜けな人物が総理になってしまったと改めて思わざるをえません」と書いていました。
　「首相の専権」という主張が乱暴であることは、過去の安倍氏自身の発言に照らしても明らかなようです。
　（前）
( ２０１５年０２月１３日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

事前検閲発言を批判

　公明党の漆原良夫中央幹事会長は１２日の記者会見で、戦後７０年首相談話をめぐり、与野党との協議を求める意見を自民党の萩生田光一総裁特別補佐が「事前検閲」と指摘したことについて、「『検閲』という言葉は国民に悪いことを連想させる。言葉遣いが正しいかどうか問題だ」と批判しました。
　協議の進め方に関しては「コンセンサスを得る方法はいろいろある。どのような形であれ官邸から考えは示されるだろう」と述べ、柔軟に対応する意向を示しました。
( ２０１５年０２月１３日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

施政方針演説／「戦後以来の大改革」の名で大暴走宣言／志位委員長が会見

　日本共産党の志位和夫委員長は１２日の記者会見で、安倍晋三首相の施政方針演説の感想を問われ、「『戦後以来の大改革』という名で、雇用、社会保障、農業など国民の暮らしを守るルールを根こそぎ壊す。憲法の問題では、解釈改憲と明文改憲の両面で憲法９条を壊していく。大暴走宣言がされた。正面から対決し、国民的対案をしっかり示して論戦をしていきたい」と語りました。
　志位氏はこのなかで、首相が演説で「格差」という言葉にふれなかったことについて所感を問われ、「『アベノミクス』の考え方は〝大企業がもうかれば、そのうち庶民にまわってくる〟というトリクルダウンです。これは、完全に破綻しています。『アベノミクス』がもたらしたものは、景気悪化と格差の拡大だけだという事実が示しているから、語る言葉がないのでしょう」と述べました。
　安全保障・外交で志位氏は、今国会の最大の争点となる集団的自衛権行使容認の「閣議決定」の法制化、国民の懸念と批判が広がっている「戦後７０年談話」、沖縄県民から「ノー」を突きつけられた辺野古新基地建設をあげ、「いろいろ暴走がちりばめられていますが、（国民の）批判に対する説明が何もない」と厳しく批判しました。
　その上で、「その極めつけが憲法の問題です。『戦後以来の大改革』のなかで、これが（首相の）一番いいたいことだと思います。一体どういう立場で、何をやるのか、何の説明もない。説明抜きの暴走が（施政方針演説の）全体の特徴だと思います｣と語りました｡
( ２０１５年０２月１３日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

施政方針演説／〝白紙委任〟ではない／「戦後以来の大改革」、国民多数は反対

　「戦後以来の大改革」。これが安倍晋三首相の施政方針演説における最大のキーワードです。そこには、二つの特徴がみられます。

　一つは、「大改革」の中身は国民が求めているものではなく、大企業のもうけを最優先にした自民党政治のさらなる暴走だということです。

大企業を優遇
　農業生産法人の要件緩和を含む「農業改革」や環太平洋連携協定（ＴＰＰ）の早期妥結、混合診療の導入による「医療改革」、法人税減税など大企業を優遇する施策を次つぎと打ち出し、その「断行」を宣言しました。いずれも財界・大企業が政権に実行を迫っているものばかりです。
　景気悪化と格差拡大を招き、その破綻がはっきりした「アベノミクス」（安倍首相の経済政策）が「確実に成果をあげている」と強弁する一方で、介護報酬の引き下げや「残業代ゼロ・過労死促進」につながる労働改悪など、国民生活を壊す施策を「社会保障の充実」と称して提示しました。
　もう一つの特徴は、平和憲法のもとでの歩みを「改革」の名で否定したということです。
　首相は、国民の不安と批判が高まる「安全保障法制の整備」や戦後７０年談話、沖縄新基地建設に関してまともな説明をすることなく、進めていく考えを表明。演説の最後には唐突に「憲法改正」まで持ち出し、「大改革」をやり遂げようと呼びかけています。

説明抜き宣言
　深刻なのは、首相が「『安定した政治の下で、この道をさらに力強く前進せよ』。これが総選挙で示された国民の意思だ」と語り、「改革」にあたって、あたかも国民から白紙委任を得たかのように振る舞っていることです。さらに、「批判だけを繰り返しても何も生まれない」とのべたことは、異論に耳を傾ける姿勢がまったくないことを示しています。
　しかし、安倍首相がやろうとしている政治には、国民多数が反対しています（グラフ）。「この道しかない」と説明抜きの〝暴走突破〟を宣言するしかないところまで、安倍政権は追い詰められているのです。
( ２０１５年０２月１３日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

主張／首相施政方針演説／力で通す暴走を国民は許さぬ

　安倍晋三首相の第３次政権発足後初の施政方針演説を聞きながら、怒りが湧き上がる思いでした。演説は多くの農業関係者の反対を力で押さえ込む「農政改革」の強行や原発再稼働、「アベノミクス」の推進、消費税の増税、社会保障や労働法制の改革、沖縄での米軍新基地の建設など盛りだくさんです。安保法制の整備や憲法の改定まで「戦後以来の大改革」の名で持ち出しています。それらがすべて昨年末の総選挙で示された｢国民の意思｣にもとづくというのですから恐れ入ります。安倍政権が力で押し通そうという暴走を､国民は決して許しはしません｡

選挙は白紙委任でない
　新政権発足後の所信表明演説を行ってこなかった首相は、施政方針演説の冒頭、「この道を、さらに力強く、前進せよ」というのが総選挙で示された国民の意思だと強弁しました。総選挙での審判をたてに､内政･外交など､｢戦後以来の大改革」を進めていくという、まさに国民への総攻撃宣言です。
　総選挙で自民・公明の与党が議席を維持しても、その結果が安倍政治を積極的に信任したものでも、安倍首相に白紙委任を与えたものでもないのはいまさらいうまでもないことです。自民党は政党の力関係を示す比例代表選挙ではわずか有権者の１７％しか得票していないのに、小選挙区と合わせ議席全体では６１％を確保しました。選挙制度のゆがみによるものであり、その結果で国民の信任を得たといいはることはできません。
　首相は「国民の意思」といいますが、首相が進めようとしているのはどの問題も、国民のなかで批判が渦巻いている大問題です。国民の不安や批判に向き合う姿勢は首相にありません。首相は「３本の矢」の経済政策は「確実に成果をあげている」といいますが、最近の「読売」の世論調査でも安倍政権のもとで景気回復を「実感していない」という答えが７９％です。この声をどう聞くのか。
　首相の演説は、「農政改革」を「農家の所得を増やすための改革」といいはり、「読売」の調査でも国民の５２％が反対している原発再稼働を電気料金の抑制のためであるかのようにいい逃れ、沖縄での米軍新基地建設は県民の負担軽減のためであるかのようにごまかす、まさにウソとペテンに満ちたものです。原発事故で脅かされる国民の生存と電力会社の経営をてんびんにかけることは許されません。沖縄に最新鋭の米軍基地を押し付けながら「負担軽減」などとはよくいえたものです。ウソでごまかさなければならないほど評判の悪い政策なら、強行ではなく、中止・撤回こそ政府の責任です。

「戦後７０年」踏みにじる
　安倍首相が、今度の国会で焦点になる集団的自衛権行使容認などの安全保障法制の見直しについてまともに説明しなかったのは、まさに都合の悪いことは国民に語らない、非民主的な姿勢そのものです。首相は今年が「戦後７０年」であることにかこつけて「積極的平和主義｣の推進を語っていますが､日本が再び｢戦争する国｣になることは戦後の反省とは正反対です。「被爆７０年」を口にしながら首相は決して核廃絶とはいいません。
　戦後の歴史に反し国民の意思を踏みにじる暴走が、国民との矛盾を深めるのは確実です。国民のたたかいがいよいよ重要です。
( ２０１５年０２月１３日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

潮流

　ドーム屋根の壮麗さが目を引くベルリン大聖堂。第２次世界大戦で大きな被害を受けましたが、年月をかけて現在の姿を取り戻しました。復興の象徴となった場所で、ドイツ・ワイツゼッカー元大統領の追悼式は行われました▼国内外から尊敬を集めた人らしく、大勢の各国首脳らが参列。死を悼む声はドイツ市民だけでなく、世界中にひろがります。ガウク現大統領は「人々が過去を直視し、未来を見据えられるようにした」と功績をたたえました▼真実を重ねた言葉の力を信じた人でした。あの終戦４０周年の名演説も、ナチズムの暴力支配によって苦しめられた無数の犠牲者を、悲嘆のうちに思い浮かべたものでした▼「過去に目を閉ざす者は現在にも盲目となる。非人間的な行為を心に刻もうとしない者は、また同じ危険に陥りやすい」。この言葉もまた、人間として心からの和解をもとめるにはどうすればいいか。それを問いかけたものでしょう▼同じ責任を背負いながら、こうも違うものか。比ぶべくもありませんが、安倍首相の施政方針演説を聞きながら思ってしまいます。戦後７０年の節目にあたる国会で「日本は変えられる」「戦後以来の大改革」とたんかを切るばかり。過ちをどう反省し、そこから何を学び生かすか。そんな姿勢はまったくみられませんでした▼内外の声に耳を傾け、若い人たちに寛容と共生を説いたワイツゼッカー。生前、来日したときの演説でこんな言葉も残しています。「過去を否定する者は過去をくり返す」
( ２０１５年０２月１３日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

首相施政方針／「大改革」の名で改憲主張／暴走メニューずらり

　安倍晋三首相は１２日、衆参両院で施政方針演説を行い、「戦後以来の大改革」の掛け声で、国民の暮らしを守るルールを壊し、憲法改悪を行う姿勢を示しました｡首相は､集団的自衛権行使容認の「閣議決定」を受けた安全保障法制の整備に加え、「憲法改正に向けた国民的な議論を深めていこう｣と主張｡解釈改憲とあわせて明文改憲にまで踏み込みました。日本共産党の志位和夫委員長は同日の記者会見で、施政方針演説について「戦後以来の大改革」という名の大暴走宣言だと厳しく批判し、論戦で対決していくと表明しました。（関連２・３・要旨４・５面）
　首相は、改憲とあわせて、国会の選挙制度について「定数削減を実現させよう」と呼びかけるなど、あからさまな民意切り捨ての立場を示しました。
　また、首相は、さまざまな分野で「改革断行」を宣言しました。農業では、全国農業協同組合中央会（ＪＡ全中）の指導・監査権を廃止し、ＴＰＰ（環太平洋連携協定）は「早期の交渉妥結を目指す」として、日本農業をアメリカと大企業に売り渡す考えを改めて表明。患者申し出による保険のきかない診療の拡大や「生涯ハケン」「残業代ゼロ」につながる労働法制の改悪、原発再稼働などを宣言しました。
　経済政策では、「この２年間、全力で射込んできた『３本の矢』の経済政策は確実に成果をあげている」として、法人税の引き下げなど大企業を応援する施策に固執。一方で、２０１７年からの消費税率１０％引き上げに言及し、介護報酬引き下げをはじめ社会保障の切り捨てを進める姿勢を示しました。
　さらに、首相は「強い意志を世界に向けて発信する」と戦後７０年の新談話発表に意欲を示しました。「基軸は日米同盟」などとして、日米ガイドライン（軍事協力の指針）の見直し、沖縄新基地建設推進を表明しました。
( ２０１５年０２月１３日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

「建国記念の日」／アジアで平和の連帯を／各地で不承認のつどい／大阪／京都／神戸／和歌山／奈良

　近畿各地で１１日、「建国記念の日」不承認・反対のつどいなどが開かれ、歴史をふりかえりつつ、安倍政権による「戦争する国」づくりを許さない決意を新たにしました。

▼大阪／「道徳」教育強化に警鐘
　大阪市では、「建国記念の日」反対大阪連絡協議会が「府民のつどい」を開き、３００人以上が参加しました。平和憲法の歴史的意義を理解し、アジア諸地域の人たちと連帯して、平和と民主主義の発展のため何ができるか発信していきたいとの集会宣言を採択しました。
　大阪民衆史研究会の島田耕さんが開会あいさつし、都留文科大学文学部の伊香俊哉教授が「歴史に学んで日中関係を考える」と題して講演しました。
　３人が意見発表。出版労連大阪地協の代表は、教科書制度改悪と「道徳」の強化について報告し、文科省の「審査要綱」の改定で「教科書は限りなく『国定教科書』になる危険性が高まった」と警鐘を鳴らしました。大阪歴史科学協議会の代表は、侵略・加害の表現をなくしたピースおおさかの展示リニューアルの問題点を報告。大阪市役所労組の代表は大阪市を廃止し、五つに分割する「大阪都」構想を批判しました。
　落語家の桂春蝶さんが口演しました。

▼京都／〝新たな戦前〟許さない
　京都市では、「『建国記念の日』不承認　京都府民のつどい」（同実行委員会主催）が行われ、１６０人が参加しました。
　主催者あいさつした京都教職員組合の河口隆洋委員長は、「イスラム国」人質事件を口実に、憲法を変えて自衛隊の海外出動への道を開こうとする安倍政権の暴走を許さず、「戦後７０年を新たな戦前としないことを確認し合う場にしましょう｣と呼びかけました｡
　「子どもと教科書京都ネット２１」の大八木賢治事務局長が基調報告を行い、日本の侵略戦争を美化するような教科書の採択を狙う動きを許さない運動を強めていきたいと語りました。
　東京外国語大学大学院の中野敏男教授が講演しました。
　中野氏は、日本の「戦後」の核心部には植民地支配と侵略戦争の責任の未清算と責任者たちの権力の継続があり、戦後７０年の今日、その現在に至るまでの権力構造を問い直し、戦争責任の清算をする必要があると訴えました。

▼神戸／改憲めぐる情勢を交流
　神戸市では、２・１１「建国記念の日」不承認兵庫県民集会が開かれ、１２０人が参加しました。
　石川康宏神戸女学院大学教授が講演。国民主権など日本国憲法制定の経過と戦後政治、現憲法を否定する安倍流改憲論とともに、天皇の元首化や、戦争放棄の条項を削除し国防軍創設など自民党改憲案を示し、憲法をめぐる情勢を解明しました。
　石川氏は、日本国憲法の到達点と先駆性を強調。総選挙結果や若い世代の自発的運動など新しい政治を模索する動きと変化に見合った新しい働きかけを呼びかけました。
　実践報告では、毎月のＪＲ神戸駅前での朝宣伝や憲法カフェなど、明日の自由を守る若手弁護士の会の活動。住民投票を視野に入れた全行政区でのセンターづくりと著名人８人の憲法アピールへの賛同をひろげる憲法共同センターのとりくみ。「地域の若者を戦場に送らない」という合意と意見書を求める自治体キャラバンの兵庫県高等学校教職員組合が報告しました。

▼和歌山／日本軍の残虐行為告発
　和歌山市では、「平和・人権・民主主義２・１１和歌山市集会」が開かれました。
　講演した京都市在住の俊正和寛氏（７８）は、工兵隊として中国に送られた父の従軍日記が三十数年前に見つかったことをきっかけに、自分の目で戦跡を訪ね、侵略戦争の実態をつかみたいと思うようになったと自己紹介。日記に、あらゆるものを略奪する侵略軍の蛮行や「日本ピー、朝鮮ピー、支那ピーという言葉が何度も出てくる」と慰安所・慰安婦について記述されていることを示すとともに、広徳で鄭書琴さん（侵略当時１２歳）らに聞いた「銃剣で赤ちゃんを刺し、剣は背中を貫いた。串刺しになった赤ちゃんは、持ち上げられてもてあそばれた」など日本軍の残虐行為を告発しました。
　俊正氏は、「日本が正しい歴史認識を持ってほしい」という中国で交流した人々の声を紹介し、過去に学ぶ大切さを訴えました。

▼奈良／「永遠の０」の手法分析
　奈良市内では１０日、第４９回「建国記念の日」に反対する奈良県民集会が開かれ、６２人が参加しました。
　日本近代文学研究者の秦重雄氏が「百田尚樹作『永遠の０』を検証する」と題して講演をおこないました。
　秦氏は、読者を引き付けた「決めゼリフ」や登場人物たちの行動が、戦中戦後の日本で可能だったかを当時の軍隊や価値観を元に検証しました。秦氏は「成立条件が存在しない、小説として最も大切なリアリティーが消えている」と分析しました。
　秦氏は、「『美しい国を守るためなら、死んでも惜しくない』『みんな国のために懸命にたたかったのね』という登場人物のセリフに、作者の直接的なメッセージが込められている」と話しました。
　参加者からは「百田氏のような作家がどうして出てくるのか」など質問が出され、秦氏が答えました。
　最後に集会決議を全会一致で採択しました。
(２０１５年０２月１２日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

９条守ろう宣伝・講演／土崎九条の会８周年の記念／秋田

　秋田市の土崎九条の会は８日、８周年記念講演会を同市内で開き、６０人余が参加しました。
　元横手市長で秋田九条の会代表委員の千田謙蔵さんが講演。終戦前夜の土崎空襲や戦後の墨塗りされた教科書など、戦争の経験を風化させず語り継ぐことの大切さを強調しました。
　千田氏は「安倍政権の集団的自衛権行使容認の『閣議決定』は、憲法違反の手段。国民の反対の声を無視して、戦後、平和憲法が築き上げてきた財産を投げすて、海外で戦争できる体制をつくろうとするもので、立憲主義にも反する危険なもの」と批判。
　「憲法９９条で天皇や国務大臣、国会議員や裁判官その他の公務員が憲法を守るべく義務付けられているのはなぜか」と問い、国民主権の意味をあらためて考え、孫や若者を戦場に送らないためにも「不戦の誓い」＝憲法９条を守りましょうと訴えました。
　参加者は「戦後７０年のいま、なぜ、また武力に頼ろうとするのか。戦争では何も解決しない」「安倍首相は世界の中心でふたたび輝く国になるなどと言うが、世界の隅っこからでもいいから、愛と平和を叫び続けることが大事です」と話しました。
(２０１５年０２月１２日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

平和誓い百里初午まつり／茨城・小美玉

　茨城県小美玉（おみたま）市にある航空自衛隊百里基地に隣接する百里平和公園で１１日、恒例の「百里初午（はつうま）まつり」が盛大に開かれ、県内外から多くの人たちが集いました。
　地元の百里基地反対同盟の梅沢優さん（６５）は歓迎あいさつの中で、軍拡路線を強める安倍政権を批判するとともに、同基地と「共用」化された茨城空港に就航し、経営破綻したスカイマーク社の利用促進策を打ち出した県政の責任を厳しく指摘しました。
　「自衛隊は憲法違反」とたたかってきた百里基地訴訟の内藤功弁護団長は、戦後７０年の今年、安倍内閣の集団的自衛権行使容認の「閣議決定」や「イスラム国」、沖縄の反基地闘争など激動の情勢のもとで「平和へのたたかいは困難もあるが、展望もある」と強調。「百里闘争の歴史と憲法の持つ力をしっかり確認し、戦争は許さないという決意を固め合いましょう」とよびかけました。
　平和･民主団体､労組の役員があいさつ。日本共産党の江尻加那、上野高志両県議がそれぞれ、ともにたたかう決意を述べました。
( ２０１５年０２月１２日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

潮流

　もし憲法９条がなくなったら―。そんな設定で日本の近未来を描いた漫画が話題を呼んでいます。雑誌『ビッグコミック』で連載している「隊務スリップ」です▼アメリカに追随して恨まれ、東京が核テロに。軍が台頭し、街に失業者があふれ、徴兵制が復活されていく。ギャグで包んでいますが、作者の新田たつおさんは「９条は絶対に必要との思いを込めた。関心のない若い人に読んでほしい」（東京新聞）と語っています▼「特定内緒話保護法」「武器輸出三倍速」「集団的袋叩き権」…。痛烈な風刺が利いた漫画は、いまの日本に漂う危険な空気を映し出し、警鐘を鳴らします。いつか来た道を再びたどらないように、と▼「イスラム国」による日本人殺害事件を機に、一部メディアが憲法や９条を攻撃しています。「命の危険にさらされた日本人を救えないような憲法なんて、もういらない」（産経新聞）という、信じられないものまで▼テロには屈しないと、勇ましいばかりの安倍政権も「海外で戦争する国」づくりをさらに推し進めようとしています。危ない地でも９条が日本人を守ってきた、テロと報復戦争が犠牲者をひろげてきた、そうした事実さえ見ないでひた走ろうという動きです▼共産党の志位委員長は全国遊説の皮切りで呼びかけました。「憲法９条擁護、改憲阻止のゆるぎない国民的多数派をつくり、戦争への道を必ず阻止しよう｣｡戦後７０年、日本に平和をもたらしてきた９条をめぐる攻防。負けるわけにはいきません。
( ２０１５年０２月１２日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

核兵器廃絶６・９行動／札幌市中心街／青森・八戸２市

札幌市中心街
　原水爆禁止北海道協議会（道原水協）は６日、雪まつりでにぎわう札幌市中心街で「核兵器全面禁止のアピール」署名を呼びかける６・９行動を行いました。「核兵器のない世界を」と訴えるビラを配り、「世界で唯一、被爆した日本が核兵器廃絶の運動の先頭に立ちましょう」「被爆７０年、あなたの声を国連に届けましょう」と署名を訴えました。
　「広島、長崎を繰り返してはダメです」と署名した青年をはじめ、「ニューヨークで行われる核不拡散条約（ＮＰＴ）再検討会議に行く際の旅費にしてください」と募金する女性や、雪まつり見物に来たオランダ人男性らが次々と署名に応じました。

青森・八戸２市
　核兵器廃絶や被爆者援護を掲げ、宣伝・署名を呼びかける「６・９」行動が６日、青森、八戸の２市で行われました。
　青森市新町商店街では青森市原水爆禁止の会の９人が「核兵器全面禁止のアピール」署名を呼びかけました。
　「みなさんの運動に感激しています」と激励する人や、「今年は戦後７０年だよね」と対話しながら署名する人もいました。
　署名した女子高校生(１８)は､｢授業でヒロシマ・ナガサキのこと、核兵器の恐ろしさを知りました。今、私が平和で暮らせることを感謝するようになりました。世界から核兵器も戦争もなくなってほしいです」と声を寄せました。
　八戸市では、参加者３人が２５人分の署名を集めました。
(２０１５年０２月１１日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

「７０年談話」でけん制

　民主党の岡田克也代表は１０日の党常任幹事会で、安倍晋三首相の戦後７０年談話をめぐり、自民党の萩生田光一総裁特別補佐が与野党との事前調整は不要との認識を示したことについて、「内閣が勝手に（談話を）出して済む話ではない。野党も含め、いろんな意見を聞いて、日本全体として受け入れられるものを出していかないといけない」と述べ、萩生田氏をけん制しました。
( ２０１５年０２月１１日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

１０ 「黒い雨」／国に指定地域拡大迫る／広島市と懇談／大平衆院議員

　日本共産党の大平喜信衆院議員は９日、広島への原爆投下後に放射性物質を含む「黒い雨」が降り注いだ問題で、実態調査を行い援護策の対象地域の拡大を国に求めている広島市から説明を聞くため、同市役所を訪れました。近松さと子党市議らが同席しました。
　原爆被害対策部長らが応対し、市や県による実態調査の結果（２０１０年）として、「黒い雨」の降雨範囲が国の指定地域の約６倍におよび、指定地域から外れた住民が「心身健康面が被爆者に匹敵するほど不良」にあると説明しました。
　しかし、県と広島市など３市５町による指定地域拡大の要望に対し、国は「（同調査が）合理的根拠とはならない」と拒んでいます。
　国から委託された「黒い雨体験者の健康不安相談」について、杉浦信人調査課長は「（相談者から）拡大してほしいという要望が多かった」「『国が調査を』という声もある」と紹介。「健康上のデータなどを積み重ねて、国に訴える根拠、資料（作成）を今やっている」と述べました。
　大平氏は、国の指定地域こそ合理的根拠がないと指摘。「戦後７０年の節目に、この問題の解決を願う被爆者の方々の訴えをたくさん聞いた。国会論戦で政府に迫っていきたい」と語りました。
(２０１５年０２月１０日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

永久平和・繁栄のアジア共同体を／北京・東京との３都市連携、提案／ソウル市長が都内で講演

　都市問題を視察するために来日した韓国の朴元淳（パク・ウォンスン）ソウル市長は３日、東京都内で講演し、自らの市政運営の実践や、北東アジアの平和にむけたソウル、北京、東京の３都市が連携することの重要性などを語りました。主催は早稲田大学韓国学研究所と早稲田大学アジア太平洋研究センターで、市民や学生ら約２００人が参加しました。
　（栗原千鶴　写真も）

　朴氏は「戦後７０年、日韓国交正常化５０年となる今年、最初の海外訪問で日本にきたことは非常に深い意味を持つと思っています」と切り出しました。

未来の道ともに
　ヨーロッパが第２次世界大戦や数世紀にわたった戦争から、和解の道を進んでいることに触れ、「韓国と日本、中国を始め、北東アジアの国民がともに幸せになる夢、アジアの人々全体が永久平和と繁栄の共同体を成し遂げる夢を、われわれはもてないでしょうか」と問いかけました。
　そのために「ソウル、北京、東京の３都市がトライアングル体制を構築すること」を提案。「過去を振り返り、和解し、未来に一緒にすすみましょう。直面する都市化の問題、気候変動などを、ともに解決し、持続可能な未来への道を歩んでいきましょう。子孫が戦争とテロの脅威のない国でくらしていく道筋をつけなければなりません。知恵を集めていきましょう」と語ると大きな拍手が送られました。
　２０１１年に市民運動出身者として初めて市長となった朴氏は、当選した際、「市民が市長だ」との言葉を掲げました。市民の声に耳を傾け政策に反映する「聴策討論会」や専門家と討論する「熟議」を開催するなど、市民とのコミュニケーションを強め、合意をつくってともに進めていく「疎通行政」の実践を語りました。
　ソウル市の人口は現在、約１１００万人。全国の約４分の１です。乱開発による環境汚染や持続可能なエネルギーの問題、高齢化、少子化、青年の失業、福祉の充実、格差拡大などの課題を抱えていますが、これは大都市に共通した問題でもあります。
　東京都とソウル市は、１９８８年に友好都市として提携しました。昨年７月には、東京都知事がソウルを訪問し、交流と協力に関する合意書をとりかわしています。

都市を出発点に
　朴氏は、両都市が「安全対策や災害救助活動をともに行い、観光・文化分野で交流や協力をし、大気汚染の改善や気候変動問題などに共同で対処するなど、これまでにない、積極的で活発な疎通と交流が短期間に行われている」と紹介。「都市同士、市民同士の重層的な連帯と協力は、国の外交が超えられなかった問題を解決していく出発点となるだろう」と力説しました。
( ２０１５年０２月１０日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

戦争体験者らが署名／憲法共同センター９の日大行動

　全労連や新日本婦人の会などで構成する「戦争する国づくりストップ！　憲法を守り･いかす共同センター｣(憲法共同センター)と東京共同センターは９日、東京・池袋駅前で、安倍政権の憲法改悪に反対する「９の日大行動」に取り組みました｡５４人が参加。戦後７０年への思いを語る戦争体験者らが、集団的自衛権行使容認に反対する署名に応じました。
　各団体の代表が宣伝カーから訴えると、「親戚がガダルカナル島で戦死した。砂まで食べたが飢えをしのげなかったらしい」と話す男性(７６)＝埼玉県所沢市＝が足を止めました。「戦争が終わってみんな喜んだ。それなのに安倍首相は、戦後７０年たった今、戦争する国をつくろうというのか。戦争を繰り返してはいけないよ」といって署名しました。
　「国民を戦争にひきずりこもうとする安倍首相に怒りがこみあがる」と話す女性(７７)＝東京都練馬区＝が署名しました。「戦時中、親と離れて東京から山形に疎開しました。あのときの思いを子どもたちにはさせたくない」
　女子大生(２２)＝同東大和市＝は「『イスラム国』のテロは絶対に許せない。だからって戦争しようという安倍首相は間違っている」と署名しました。
　日本共産党の吉良よし子参院議員が訴えました。
( ２０１５年０２月１０日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

潮流

　戦後７０年の節目の年。戦争体験者が亡くなっていく中で、悲惨な戦争の記憶をどう保存し、継承していくのか。折しも二つの文学作品に出合いました▼一つは高橋弘希『指の骨』。３５歳の著者のデビュー作です。太平洋戦争時のニューギニア島を舞台に、補給をたたれ、飢えと傷病にさいなまれて死んでいく兵士たちの姿を乾いた筆致で描きました。無残な死に向かう兵士それぞれに、懐かしい故郷と穏やかな暮らし、大切な家族のあったことがしのばれる場面は、光のように戦争の非道さを照らし出します▼表題｢指の骨｣は､戦死した兵士の遺骨とするために指を切り落としたことから。史料を基に圧倒的な想像力を駆使して戦場を表現し、読者に戦争を追体験させる本作は、若い世代への記憶の継承の可能性を示します▼『詩人会議』３月号の巻頭詩｢鬼火｣も､戦争を知らない世代、５２歳の木島章の作品です。被爆した長崎で死んだ幼子を背負い、はだしの足に血をにじませて火葬場に歩いてきた少年。詩人は、ジョー・オダネルの報道写真「焼き場に立つ少年」を見据え、言葉を刻みつけます▼〈直立不動のまま燃え盛る炎を凝視する少年／十歳にも満たないあどけない顔からは／いっさいの表情が消え（中略）彼もまた燃えていた〉▼詩は、二度と戦争はしないという誓いで結ばれ、平和の願いを読者に手渡します。〈ふたたび少年に重い荷を背負わせてはいけないと／七十年たった今も、／ときおり里山で鬼火の行列を見る人がいるという〉
( ２０１５年０２月１０日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

１０ｓ２０ｓＹモード／日本兵は中国で何をしたのか？／東京ビデオフェス、高校生が大賞

疑問が発端／加害に迫る
　プロ・アマ不問のビデオ映像祭「東京ビデオフェスティバル（ＴＶＦ）２０１５」で、名古屋市の同朋（どうほう）高校放送部の作品が最優秀のビデオ大賞に輝きました。１５分３１秒の映像を通して高校生が伝えたいものは―。
　本吉真希記者

　ＴＶＦはＮＰＯ法人「市民がつくるＴＶＦ」の主催で、年に１度の開催。国内外からドキュメンタリーやドラマ、アニメの２１７作品が寄せられました。
　１７～８２歳の３０作品が事前に優秀賞と佳作に選ばれ、公開審査で大賞が決められました（１月１７日）。審査員は映画作家の大林宣彦さんやアニメ映画監督の高畑勲さんらです。
　大賞に選ばれた同朋高校放送部（宮城道良顧問）の作品は「アジア太平洋戦争、中国の２つの戦場」。なぜ住民虐殺や拷問が起きたのか検証しています。

事実ぶつけ考え合って
　同校放送部は先輩の代から６年かけ、沖縄戦に従軍した元兵士たちに取材してきました。今回その蓄積を検証したところ、一つの共通点が見つかりました。それは中国山西省から沖縄に転戦した兵士たちが複数いたことです。「（彼らは）中国ではどんなことをしていたんだろう」―。
　この疑問から作品作りがスタート。生きたまま中国人を殺す｢刺殺訓練｣について語る元兵士の証言をきっかけに、加害の実態を探っていきます。
　取材を進めるなかで生まれた「なぜ？」を掘り下げ、わかってきた事実を校内の生徒にぶつけます。生徒たちがともに考えていく姿が映し出され「対話型が興味深い」との評価を受けました。
　選考は〝戦後７０年〟がキーワードに。２時間以上の公開審査で、大林監督は「若い人たちが歴史、戦争に向き合った作品で未来がある」とのべました。高畑監督は「いま日本はどういう方向に行こうかという時期。そういう意味での象徴として、この作品を推したい」と語りました。

自分の意見伝える意味
　大賞が決まった直後、緊張して「のどが渇いた」とお茶を口にした３年生の鈴木将敏さん（１８）。ディレクターを務めました。「これまでの３年間が報われた」とほっとした表情を浮かべました。
　作品は７人の部員が中心となって制作しました。当初は鈴木さんと、刺殺や拷問の様子をイラストで表現した川瀬貴博さん（１８）以外は「あまり乗り気じゃなかった」といいます。テーマが｢戦争｣だったからです。
　しかし取材を重ね、５０時間を超える証言を文字に起こしていくなかで「ほぼ９０％自分たちの知らなかったこと。これは後世に残していかなきゃいけないと、みんながまとまった」と鈴木さんは振り返ります。
　「いままでは事実を客観的に見ることを主にして、作品作りをしてきた」という川瀬さん。「今回、自分の意見を持って、それを映像にして発信することに意味を感じた」と語ります。
　作品は次のナレーションで締めくくられています。
　「戦争を直接経験していない私たちには、実感が湧いてこないかもしれません。しかし戦争が起こったらどうなるのか、想像することはできます。そのためにも戦場では何があったのか、過去の出来事を学ぶことが必要ではないのでしょうか」
　このほか太平洋戦争で戦死した大叔父の事実をひもとく作品や、沖縄戦を取り上げた大学生らの作品が入賞しました。作品はＴＶＦのホームページで見られます。
(２０１５年０２月０８日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

インタビュー戦後７０年／俳優宝田明さん／憲法９条は世界の宝だ／安倍政権に危機感「戦争知らなすぎる」

ソ連兵に腹撃たれ生死さまよった／満州での体験語り継ぐ
　映画「ゴジラ」の主演で知られる俳優の宝田明さん。旧満州（現・中国東北部）から引き揚げた戦争体験があります。各地の講演などで「憲法９条は世界の宝」と訴えています。その思いを聞きました。
　山本長春記者

　背筋をピーンと伸ばし歯切れよく語る宝田さん。８０歳という年齢を感じさせません。昨年１２月、ＮＨＫテレビに出演し、「戦争は絶対起こしてはいけない」と語り、話題になりました。
　「反響の大きさに驚きました。『よくぞ言ってくれた』と。僕が普段思っていることを淡々と述べただけなんですが、きちんと受け止めてくださった方が大勢いらっしゃる。日本の社会は健全だし、日本も捨てたもんじゃないと思いましたね」

非戦闘員の兄まで身も心も壊された
　宝田さんは、１９４５年８月の終戦を旧満州・ハルビンで迎えました。当時１１歳で父親は旧満鉄（南満州鉄道）の技師。長兄と次兄が出征中、姉は牡丹江におり、家にいたのは両親、宝田さん、３番目の兄、弟の５人でした。ソ連軍が侵攻してきて、市街を支配しました。
　「僕たちの社宅にもソ連兵２人が侵入してきた。〝マンドリン〟と呼ばれていた自動小銃の銃口を僕のこめかみに突きつけました。くいしばっても歯がガタガタ…。その時の恐怖は忘れられません」
　ソ連軍は、武装解除した関東軍兵士たちをハルビンから列車でシベリアに連行。「兄たちもそこにいるのでは…」。駅に宝田さんが見に行ったときです。
　「ソ連兵が、ダダダダッと撃ってきたんです。家に逃げ帰ると体中血だらけ。腹を撃たれていた。元軍医が銃弾を取り出し、一命をとりとめました」
　翌年１１月、日本への引き揚げが決まりました。ところがソ連軍の強制労働に出されていた、３番目の兄が戻ってこない。いよいよハルビンをたつ時が…。一家は胸を引き裂かれる思いで、列車に乗り込みました。言葉を詰まらせ語る宝田さん。
　「兄は中学生で満州に一人残されました。コーリャン（中国の穀物）などで食いつないで南下し、密航船を雇って日本に上陸したそうです。さらに僕らがいた新潟県の今の村上市まで歩いて。再会した時、髪はボウボウ、顔も体も傷だらけ。兄とは分かりませんでした。母や僕と抱き合って泣き合いましたね。兄は地元で就職しますが、家を飛び出し音信不通に。戦争は非戦闘員だった兄のような人を、身も心もボロボロにしてしまった」

「ゴジラ」に込めた被爆国日本の思い
　憲法をきちんと学んだのは高校生になってからです。
　「９条の『戦争を放棄する』『戦力は保持しない』という平和主義には、まったく違和感がなかったですね。平和な国をめざすために何かしたい。日本が中国でしたことはきちんと謝り、中国語をもっと勉強して日中の平和・友好の懸け橋になろうと考えました」
　初主演が５４年公開の映画「ゴジラ」です。
　「製作の田中友幸さん、監督の本多猪四郎さんをはじめ、俳優もみな戦争体験者。当時、第五福竜丸がビキニの水爆実験で被災し、『ゴジラ』は、核に対する恐怖を訴えるためつくられました。被爆した日本だからこそできた映画ですね」
　平和の懸け橋になりたいという思いは、俳優になっても変わりませんでした。
　「同じ引き揚げ者には、大スターだった山口淑子さん（李香蘭）や、大先輩の森繁久彌さん、三船敏郎さんもおります。私も加えて４人で訪中し〝中国・満州を語る〟という企画を計画しました。残念ながら日程が合わず実現しませんでした」

口を閉ざしたまま一生終えたくない
　全ての人に娯楽を提供する俳優という仕事柄、戦争に触れるのを控えてきた、という宝田さん。最近、積極的に語り始めたのは？
　「強い危機感をもったからです。とくに安倍政権が、集団的自衛権の行使だ、憲法解釈の変更だ、と突き進んでいる。これでは国全体が戦争への路線を走ってしまう。安倍さんらは、『世界の平和を守る』『戦争をする訳ではない』などと言いますが、戦争をあまりにも知らなすぎます。８０歳を迎え、僕ら戦争体験世代が、９条を守れと訴えていかなければならないと思って」
　宝田さんは、若い世代にも体験を伝えています。
　「先日も地元の東京・北区で保育所の父母会に呼ばれました。みんな話を真剣に聞いてくれました。私たちの悲惨な体験を子どもたちにさせたくありません。戦争は国家が犯す大罪です。戦争を起こすことも、加担することもしないようにしたい。戦争はいやだという、太く確かな思いをしっかり受け継いでいきたい。口を閉ざしたままで一生を終えるのはいやですから」

たからだ・あきら＝１９３４年、朝鮮生まれ。東宝ニューフェイス６期生で５４年、映画デビュー。「ゴジラ」で初主演以降、映画、テレビなどで活躍。ミュージカル俳優の草分けで、最近では「葉っぱのフレディ」に出演。近著に『平和と命こそ』（共著、新日本出版社）
(２０１５年０２月０８日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

国民に背向ける首相の国会答弁

　通常国会は６日までに、衆参予算委員会での補正予算審議・集中審議が終わりました。「イスラム国」問題、安全保障、憲法、アベノミクス、米軍基地、社会保障、原発―どのテーマをとっても、安倍晋三首相の答弁の異常さが際立ちました。

人質事件／「テロに屈せず」と検証拒否
　過激組織「イスラム国」による日本人殺害事件。日本共産党の小池晃参院議員が、「イスラム国」対策で２億㌦支援を表明したエジプトでの首相演説について、「拘束された日本人に危険をもたらすと考えていたのか」と質問（３日）したのに対し、安倍首相は「質問はまるでＩＳＩＬ（イスラム国）を批判してはならないような印象だ。それはまさにテロリストに屈することだ」と政府対応への疑問を「テロへの屈服」にすりかえ、異論をはねつけました。

安全保障法制／地球上どこでも派兵
　加えてひどいのは、同事件を口実に、首相は「自衛隊の持てる能力を生かし、（海外の日本人の）救出に対応できるようにすることは国の責任だ」と、集団的自衛権行使容認を具体化する安全保障法制の推進姿勢を鮮明にしていることです。
　米国などの同盟国による先制攻撃をきっかけに集団的自衛権を行使する可能性についても、首相は「全ては（昨年７月の）『閣議決定』の３要件に当たるかどうかで判断すべきもの」と排除しない考えを強調。行使の地理的範囲について「どこだから当てはまらない、近くなら当てはまるということではない」と述べ、地球上どこでも派兵可能にすべきとの考えも示しました。
　首相は、自衛隊による米軍・多国籍軍の後方支援を可能にする海外派兵恒久法を制定する考えも提示。
　さらに、今回の案件は、秘密保護法の指定対象になること、また「スパイ防止法」も今後検討していくことを表明しました。

沖縄・米軍基地／選挙の民意まるで無視
　「（普天間基地の）辺野古への『移設』は沖縄の負担軽減に十分資する」（１月３０日）
　沖縄県民あげて反対している名護市辺野古への米軍新基地建設問題。民意を踏みにじり新基地建設に突き進もうとする安倍政権の姿勢をただした日本共産党の赤嶺政賢衆院議員への答弁です。
　県民は、昨年１１月に翁長雄志知事を誕生させた後、総選挙では、小選挙区で「オール沖縄」の候補者を全勝させ、新基地建設反対の明確な意思を示しました。〝普天間基地の危険性除去〟〝他に道はない〟との安倍政権のごまかしを見抜いたうえで下された判断です。
　それにもかかわらず壊れたレコードのごとく同じことを繰り返す首相。翁長知事との面会さえ言明せず、対話で打開する姿勢も示せません。

憲法・歴史認識／改憲に強い執念示す
　シリアでの日本人殺害事件をめぐる質疑のなかで、次世代の党の和田政宗参院議員が「外国で拉致・拘束された日本人をいかなる場合でも救出できるよう、憲法９条を改正すべきだ」と求めたのに対し、首相は、待ってました、といわんばかりに、自民党改憲草案の実現に強い執念を示しました。
　戦後７０年談話をめぐっても、植民地支配と侵略に反省とおわびを表明した村山富市首相談話（１９９５年）を「全体として受け継ぐ」といいながら、「国策を誤り」などの談話の核心をなす文言をかたくなに口にしようとしません。

アベノミクス／大企業のもうけ最優先
　「われわれはトリクルダウンを期待している政策を行っているわけではない」
　首相は、大企業優先の政策を続けながら、それをごまかす答弁を繰り返しています。しかし、首相自身が〝大企業がもうかれば国民にもおこぼれがある〟というトリクルダウン理論にしがみついているのは明らかです。
　日本共産党の井上哲士参院議員は「史上最高利益を上げている大企業に減税しても賃上げには回らず、内部留保や株主配当に回るだけだ」と批判。首相は「企業が収益力を高めより積極的に賃上げに取り組むように促す」と、相変わらず大企業優先の経済政策に固執しています。

社会保障／手当たり次第に削減
　首相は「財政再建」を口実に社会保障への攻撃を強めています。今夏に策定する「財政健全化計画」に関して、「歳出の最大の項目は社会保障分野だ」と社会保障をやり玉にあげ、「社会保障の自然増を含め、聖域なく、徹底的な重点化、効率化を図っていく」と述べました。（１月２９日、衆院予算委員会）
　２０１５年度予算案では７０～７４歳の医療費自己負担増をはじめ、介護報酬削減、年金の実質削減など手当たり次第に負担増と給付減を盛り込んでいます。
　介護報酬の削減については、全国で１４０万人を超える削減反対署名が寄せられているにもかかわらず「全体としてみれば、施設側がマイナス改定に耐えうると考えた」と強弁。現場の訴えに耳を貸さない姿勢です。

原発／福島の苦しみ、人ごと
　発生からまもなく４年になる福島原発事故。今でも収束の見通しはたたず事故原因の究明はされていません。
　しかし首相は「原発ゼロと言うわけにはいかない」「地元の理解を得ながら再稼働を進める」（１月２７日、衆院本会議）と明言。国民多数の反対の声に背を向けています。
　日本共産党の高橋千鶴子衆院議員が福島県内の原発全基廃炉について「福島の声だ」として迫りましたが、首相は「事業者が判断を行うもの」と人ごとのような冷たい答弁。自身が福島で行った総選挙での第一声で、原発に全くふれなかったことを問われると「時間の関係がある」と述べ、事故に苦しむ県民の願いに応える姿勢をみじんもみせませんでした。
( ２０１５年０２月０８日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

戦争被害補償求める／「大集会」実行委員会が会見／来月６日開く

　第２次世界大戦の敗戦から７０年を迎えることし、民間人の戦争被害者の補償を求め「ふたたびこの国を火の海にさせないために！　戦後７０年・戦争被害のすべて解決を！　大集会」の実行委員会（実行委員長・中山武敏弁護士）が６日、東京都千代田区で記者会見をしました。
　政府は、軍人・軍属に対して補償しているのに対し、民間人は置き去りにされたままです。
　同副実行委員長の小林節慶応大学名誉教授は、「市民は身を守るすべもなく空襲の標的になりました。戦争で人生を狂わされ、無補償のままでいいはずがない。これは人権問題です」とのべました。
　全国空襲被害者連絡協議会の星野弘運営委員長は、「今年が最後のチャンス。集会に多くの人が集まり、戦争の真実や私たちの要求が広がっていくよう取り組んでいきたい」と決意をのべました。
　「大集会」には、法律家や学者、作家など各分野から１１６人（５日現在）が呼びかけ人になっています。
　呼びかけ人を代表して発言した、日本原水爆被害者団体協議会の田中熙巳（てるみ）事務局長は「力を合わせて、政府の『受忍』政策を改めさせたい。国会に私たちの声が届くような大きな集会にしたい」と語りました。
　「大集会」は３月６日午後６時３０分から、東京都台東区の浅草公会堂大ホールで。資料代５００円。
( ２０１５年０２月０７日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

緒方副委員長、朱鋭・中国人民平和軍縮協会秘書長と懇談

　日本共産党の緒方靖夫副委員長は４日、党本部で来日中の中国人民平和軍縮協会の朱鋭秘書長と懇談しました。
　朱秘書長は、今年は第２次世界大戦終結７０周年、中国にとっては抗日戦争勝利７０周年の重要な節目の年であり、歴史から教訓を引きだし、未来への展望を開くことが必要と強調しつつ、日本の平和運動との協力を希望しました。
　緒方副委員長は、戦後７０年・被爆７０周年の年にあたり、党が提唱している日本の政治が取るべき五つの基本姿勢と北東アジア平和協力構想の内容を述べ、内外で活動を強化していく方針を説明。核兵器禁止条約の交渉開始を求める活動や核不拡散条約（ＮＰＴ）再検討会議をめぐる情勢を紹介しつつ、協力を進めたいと述べました。
　懇談には、日本共産党から川田忠明平和運動局長・書記局員、小島良一国際委員が、中国側から陳暁涵弁公室主任、中国大使館の林れい参事官らが同席しました。
( ２０１５年０２月０５日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

日吉台地下壕と戦後７０年／横浜で「陸にあがった海軍」展／戦争語る貴重な文化財／亀岡敦子

　戦後７０年の今年、１月３１日から神奈川県立歴史博物館で特別展「陸にあがった海軍―連合艦隊司令部日吉地下壕からみた太平洋戦争」が始まりました。歴史と実績のある歴史博物館での展示は、私たち「日吉台地下壕保存の会」の会員にとっては、夢のようにうれしいニュースです。
　日吉台地下壕に関する専門家による最新の学術調査や、幅広い分野の資料展示がされることは、私たちの活動をどんなにか押し上げてくれるでしょう。展示は「Ⅰ日吉に海軍がやってくる　Ⅱ日吉にきた海軍とその施設　Ⅲ日吉と特別攻撃隊　Ⅳ日吉と戦艦大和の最期　Ⅴ本土空襲、そして終戦へ　Ⅵ海軍生活」の６部構成で、写真パネルや遺物の湯飲みまで展示されており、日吉が立体的に取り上げられています。年齢もさまざまな来場者はみな熱心に展示を見ていて、身の引き締まる思いがしました。

２．６㌔の地下壕
　横浜市港北区日吉には、約１３万坪の緑豊かな慶応義塾日吉キャンパスが広がっています。ここは１９３４年予科校舎として開校しましたが、日中戦争、太平洋戦争がはじまるにつれ学園の戦時色は濃くなり、４３年秋からの学徒出陣と学徒勤労動員で校舎から学生の姿は消えました。そこに慶応義塾と賃貸契約を結んだ海軍が入り、ついには伝統的に海上の旗艦で指揮を執っていた連合艦隊司令部までが陸に上がり、４４年９月には大学寄宿舎は司令本部となったのです。
　同時に地下にはおよそ２・６㌔におよぶ堅牢なコンクリート製の巨大地下壕が突貫工事で造られ、通信や暗号解読などに多くの将兵が従事していました。戦争最後の１年間のレイテ沖海戦、硫黄島戦、戦艦大和の沖縄出撃、沖縄戦などの作戦指令は日吉から出され、特攻隊員の最後の通信の多くも地下壕の通信兵が受けたそうです。

〝学びの場〟に
　８９年４月、慶応義塾教職員と地域住民有志１００人が集まり、「日吉台地下壕保存の会」が発足しました。以来２５年間、紆余曲折はありましたが、地道に活動を続けてきたと自負しています。見学者の案内、会報発送、聞き取りや文献調査などからの知識の蓄積と共有、展示会や講演会の開催などが主な活動です。ほかに戦争遺跡保存全国ネットワークの会員として、全国シンポジウムを３回開催しました。
　幸いにも日吉台地下壕の大部分は、慶応義塾構内にあったため当時とあまり変わらず残されていますが、一昨年、民有地にある地下壕の一部が宅地開発により破壊されました｡私たちは､なんとも形容のできない無力感におそわれました。
　７０年の歳月をくぐり抜けて現存している全国の戦争遺跡を、誰もが訪れることのできる学びの場としたいと、強く思いました。これからの活動の大きな課題です。戦争の語り部としての戦争遺跡は、大事に次の世代に引き継がなければならない貴重な文化財です。
　（かめおか・あつこ　日吉台地下壕保存の会副会長）

　＊「陸にあがった海軍｣展　３月２２日まで｡神奈川県立歴史博物館(横浜市中区､みなとみらい線馬車道駅１分）℡０４５(２０１)０９２６
( ２０１５年０２月０４日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

シリーズ戦後７０年を考える／中国侵略／日本軍による虐殺の実態／生存者を訪ねて／湖南省・廠窖

川が真っ赤に染まった
　戦後７０年。「日本は正しい戦争をやった」という議論もあるなか、あらためて「あの戦争は何だったのか」を考えることが求められます。１９３１年から１５年に及んだ日本の中国侵略。そのなかで日本軍は何をやったのか―。虐殺が行われた現場、中国南部の湖南省南県廠窖（しょうこう）鎮を訪ねました。
　廠窖鎮で本吉真希記者（写真も)

住民集めて機銃掃射／全伯安さん（８８）／黄暁山さん（８８）

　廠窖鎮の面積は東京・山手線の内側よりやや狭い５０平方㌔㍍。大小の河川や湖沼が点在する田園風景が広がっています。
　その廠窖鎮で７２年前、日本軍による虐殺事件が起きました。
　日本軍は中国侵略の際、侵攻した村々で住民を巻き添えにし、残虐な行為で人々の命を奪い、生活を破壊しました。廠窖虐殺事件は、日本軍による江南殲滅（せんめつ）作戦（４３年５月５日～６月１０日）の初期に起きました。虐殺を目撃した住民によると、大規模な虐殺が起きたのは４３年５月９～１１日です。
　９日朝９時ごろ、長江（揚子江）の支流で幅５０㍍ほどの川は、日本軍から逃れる民衆の小舟でいっぱいでした。そこに日本の軍用機が襲来し約５分間、爆弾を投下。その後、機銃掃射しました。

捕虜も民間人も
　１６歳だった全伯安さん（８８）は、１㍍ほど伸びたソラマメの畑に身を潜めていました。目撃した惨状をこう記者に証言します。
　「空襲で粉々にされた舟の板や死体、衣服が川いっぱいに散らばった。死んだ人の血で川は真っ赤になった」
　川辺には現在「血水河遺跡」と彫られた碑が建てられています。
　自宅から２㌔離れた場所に避難していた黄暁山さん(８８)。９日午前、自宅に戻ると、日本兵４人が国民党軍の兵士１６人を捕まえていました。日本兵は黄さんの家のハトを煮焼きして食べたあと、捕虜にした１６人の首を軍刀で切り､殺害しました｡
　翌１０日昼ごろ、日本軍は隣家の男性と黄さんを捕まえ、エンジン付きの小型ボートに乗せました。途中、２０歳くらいの女性を捕まえ、兵士４人が強かんし、川に投げて殺しました。
　黄さんは恐ろしくなり｢家に帰りたい｣と懇願、上陸を許されました｡しかしそこでは､中国人約３００人に日本兵が４丁の機関銃を向けていました。一部の中国人が逃げようとしたとき、機関銃が火を噴き、バタバタと人々が倒れました。「そのときいた中国人のなかに軍服を着た中国兵は見なかった」と黄さんは振り返ります。

腹と左胸に傷跡深く・郭鹿萍さん（８９）／言葉にできない陵辱・江幺妹さん

　郭鹿萍さん（８９）は７日朝、避難のため父親と自宅から３㌔離れた村へ逃げました。
　しかし９日、その村に日本兵１３人が来て郭さんら四十数人の男性を十数人ずつ３組に分け、上着を脱がせた右腕を縄で縛ってつないで、次々と刺殺。郭さんも腹と左胸を銃剣で刺されました。
　夕方、意識が戻ると辺りは血にぬれた死体だらけ。父親も殺されていました。
　郭さんはいいます。「当時はどこも惨状ばかりでした。七十数年がたつけれど、いまも時々目に浮かぶ。心の痛みは言葉で表現できません」
　日本兵による女性への性暴力も―。
　江幺妹さんは家に押し入ってきた日本兵に服を脱がされ、隣の家に連行されました。日本兵はその家の１５～１６歳の少年に江さんを強かんするよう命じました。少年は恐怖で体を震わせ、何もできませんでした。
　それを見ていた１人の日本兵が江さんの下半身に棒を突き刺し、暴行し続けました。江さんは３０分あまり苦しんだ末に気絶。下に敷かれた布団は血で赤く染まりました。
　江さんら生存者に体験を聞いたのは、昨年１２月中旬です。その１７日後の１月５日、江さんは亡くなりました。９６歳でした。

民謡に残る痛み
　廠窖鎮にはこんな民謡が戦後、歌い継がれています。
　「甸安河（でんあんが）、甸安河／日本の侵略者が来て惨禍に遭った／数千の同胞がみな殺された／死体一つ、また一つ／５里（２・５㌔）の川は血の海となり／野良犬は橋がなくても渡ることができた」
　川一面に遺体が浮かんだ、廠窖虐殺事件の痛ましさを歌ったものです。

現地で発掘調査／子どもの遺骨も

　廠窖虐殺事件の現場の一つ、「永固○千人坑遺跡」の石碑が立つ場所では、遺骨の発掘調査が行われていました。
　これまでに発掘された遺骨はいったん、埋め戻されました。しかし表面の土が風雨に打たれて削れ、頭蓋骨と体の一部の骨が露出していました。
　子どもの遺骨も見つかりました。銀で作った子どもの足飾りが骨に巻かれた状態で出土しました。足飾りはこの土地の習慣でした。
　虐殺事件の調査は７２年から始められました。元教員で自身も被害者である李波さん（７５）を中心に、約２０人の調査員が２年かけて生存者への聴き取りを行いました。
　その結果、廠窖虐殺事件の犠牲者は、民衆も含め計３万人余と推定しています。性暴力を受けた女性は２０００人を超え、被害女性の約６５％が殺されたとみています。
　李さんは「当時の中国人にとって日本軍はまさに東洋の鬼だった」と語ります。
　李さんが危惧するのは、安倍晋三首相の侵略戦争肯定・美化の姿勢や、「海外で戦争する国」を目指す集団的自衛権行使容認の動きです。
　「安倍首相の言動は日本人民をもう一度、戦争の深いふちに押し込む行為で許しがたい。日本の軍国主義を復活させないよう共同してたたかいましょう」

一兵卒にまで「殲滅思想ノ徹底」

　廠窖虐殺事件が起きた江南殲滅作戦の目的は「敵の撃滅」だと、作戦を視察した支那派遣軍参謀（当時）の三笠宮崇仁は大本営に報告（４３年５月３０日）しています。（『歩兵第二百十六聯隊戦史』）
　実際、作戦を担った第１１軍（司令官・横山勇中将）は作戦完遂のため、一兵卒に至るまで「殲滅思想ノ徹底」を図っていました。（『戦史叢書　昭和十七、八年の支那派遣軍』）
　「『殲滅』とは『皆殺し』の意」と語るのは、南京大虐殺に詳しい笠原十九司・都留文科大名誉教授です。
　廠窖虐殺事件については次のような記述があります。
　「（５月）十日未明から三仙湖市北東方において…空中目視一、五〇〇名を下らない敵を包囲殲滅した。敵は兵器、弾薬を遺棄し、算を乱して敗走した」（同）
　敗残兵にふれていることについて、笠原さんはこう読み解きます。
　「国民党軍の敗残兵が一般民衆のなかに逃れた場合、日本軍は住民を『敵地』の民衆として殲滅の対象にし、特に青壮年男子を敵と見て殺しました。南京事件の民衆殺害と同じです。武器を持たない非戦闘員の殺害は国際法違反です」
(２０１５年０２月０１日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

「平和の碑・中国残留帰国者の墓苑」完成／〝長年の願いかなった〟／帰国者・支援者など祝賀会／山形

戦争繰り返さぬ思い込め
　日中友好協会山形県連合会が、中国残留帰国者の長年の夢として実現をめざしてきた「平和の碑・中国残留帰国者の墓苑」が昨年１１月に建立され、完成祝賀会が１日、山形市内で開かれ、中国帰国者と家族、支援者など約１００人が完成を祝いました。
　（山形県・片桐春一)

　日中友好協会山形県連合会の加藤實会長（７９）が、「用地取得をはじめ多くの関係者の理解と協力で完成しました。帰国者の半世紀の苦労を思うと何としても実現したいという願いがかないました。皆さんとともに喜びたい」とあいさつしました。
　中国残留帰国者山形の会代表で、建設委員長の佐藤安男さん（７８）は、「長年の願いがかないました。皆さんのご協力に感謝します。碑は戦争を二度と繰り返さないという思いが込められています。平和の大切さを後世に伝えていきます。日中友好が末永く続くよう願っています」と謝辞を述べました。
　帰国者２世の男性（５０）は、「私は４歳のとき帰国したと聞いていますが当時のことは覚えていません。両親は大変な苦労をしたようです。碑と墓苑の完成を両親がとても喜んでいます。いま日本と中国間でいろいろな問題が出ていますが、お互いを尊重し合って時間をかけて話し合い解決すべきです。中国と日本が仲良くできるよう努力してほしい」と語りました。
　来賓の日中友好協会の田中義教理事長､中国｢残留孤児」国家賠償訴訟原告団の池田澄江団長、日本共産党の渡辺ゆり子県議が祝辞を述べました。
　碑・墓苑建設に尽力した山形市大字柏倉総代の高橋嘉一郎元日本共産党山形市議があいさつ、同党の阿曽隆市議、明源寺住職柏倉玄神氏らが紹介されました。
　市川昭男山形市長からメッセージが寄せられました。

中国残留帰国者
　日本の中国侵略の国策の下、現在の中国東北部（旧「満州」）に、「満蒙開拓団」などとして渡り、戦後の混乱の中ですぐには日本に戻れず、その後、日本に戻った人たち。
　◇
平和の碑・中国残留帰国者の墓苑
　帰国者たちの高齢化が進み、「死んでも行く所がない」と不安を抱えていた帰国者たちの思いに応えようと日中友好協会山形県連合会と帰国者有志、支援者らが、共同募苑と平和の碑建設に取り組んだもの。１０００平方㍍の敷地に個人の墓（現在３６区画、今後増設可能）、敷地中心部に平和の碑を建立しその土台部分に共同墓を設置、「平和の碑」が建設されました。県内外の約１０００人から募金が寄せられ、用地確保などで多くの人から協力が寄せられています。
(２０１５年０２月０４日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

朝の風／南京での教育交流

　昨年末、歴史教育者協議会の教育交流で南京を訪問した。南京大虐殺の記念館と遺跡を訪ね、当地の金陵中学での歴史授業を見学し意見交流を行った。
　授業では日本の中国侵略戦争と南京虐殺について日本、中国、米英側の要因も含め多面的に考察していた。そのうえで金陵中の抗戦史にも時間をさき、校地が国際安全区の中にあり、当時の教職員が南京市民を日本軍の暴虐から守るために奮闘したこと、その記念碑が学校創立１２０年の２００８年に建てられたことが教えられ、歴史を身近に感じさせようと工夫されていた。
　最後に、南京でもしばしば公演している紫金草合唱団など、南京虐殺を二度と繰り返さず日中の友好を深めようとしている日本人の運動があることも紹介して授業を終えた。
　日本側からも、戦争の悲惨さを教えるだけでなく平和のための連帯の歴史を教えることの重要性を提起した。授業参観に来た南京市や江蘇省の教師からも強い賛意が示され、孫文と日本の友人たちのことを教えている例が報告された。平和と友好こそ私たちの唯一の選択肢だとの発言にも大いに励まされた。
　その背景には、大虐殺の現地で日中友好不再戦の両国民衆の活動の積み重ねがあり、市の行政もそれを支えてきたようだ。
　（比）
( ２０１５年０１月１２日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

私と「赤旗」／創刊８７周年／元朝日新聞大阪本社編集局長新妻義輔さん／「人間の声」聞こえる紙面

　「ジャーナリズムの分裂は戦争の前兆だ」という言葉があります。政権の応援団にかじを切った新聞・雑誌で｢国益を損ねた｣との主張をみかけます｡権力を監視し､言わなければならないことを言うのがジャーナリズムです｡｢なんであの時代に抵抗しなかったのか｣と言われないように｡
　「しんぶん赤旗」は庶民の目線で権力に向き合い、強い正義感と同時に優しい視線があり、紙面から「人間の声」が聞こえます。「９９％の貧しい者の側」の立場に徹した視点で迫っているので、問題の核心が浮き彫りになっています。
　注目しているのは「歴史の目」です。そのひとつが連載「第２次世界大戦終結７０年　安倍首相と逆流の系譜」です。憲法にてらしあわせて検証、評価する姿勢が新聞づくりの太い底流となっていることも心強く思います。
( ２０１５年０１月３１日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

第２次世界大戦終結７０年／中国・湖南省、日本軍虐殺の現場を訪ねて／上／７０年以上残る傷痕

　中国南部の湖南省南県廠窖（しょうこう）鎮で１９４３年５月、中国を侵略した日本軍による虐殺事件が起こりました。中国側の調査によると、５月９～１１日のわずか３日間で、民間人も含め３万人以上が犠牲となりました。事件の現場を訪ねました。
　（廠窖鎮〈中国湖南省南県〉＝小林拓也　写真も）

　郭鹿萍さん（８９）の左目の近くには青いあざがあります。７２年前、日本兵に殴られた痕です。
　当時、郭さんは父親と一緒に、自宅から３㌔ほど離れた、医師で地元の名士だった李さんの家に避難しました。５０人以上の人が集まっていました。
　４３年５月９日午前９時ごろ、１３人の日本兵が李さんの家に来ました。日本兵は五十数人を庭に集めました。

銃床で殴られ
　郭さんは部屋の中のベッドの下に隠れていました。日本兵が家の扉を閉めたとき、家に火をつけるかもしれないという恐怖に駆られ、あわてて飛び出してしまいます。そこを日本兵に見つかり、顔を銃床で殴られました。顔のあざはこの時のものです。
　日本兵は、男性と女性に分け、四十数人の男性の上着を脱がせ、十数人を１組にして、右腕を縄で縛ってつなげました。郭さんの組は１５人。日本兵は、近くの私塾に連れていき、壁を背にしてひざまずかせました。
　２人の日本兵が銃剣を持って警戒し、別の１人の日本兵が銃剣で端から順番に刺し始めました。どうすることもできず、４人くらいが刺された後、郭さんはあきめて目をつむりました。郭さんは最後の１５番目でした。そのうち腹に激痛が走り、気を失いました。
　夕方に意識が戻ると、周りは血の海でした。銃剣が貫通した郭さんの腹から、大量の血が噴き出ていました。左胸付近も４カ所刺されていました。
　自分の隣に倒れていた男性は腹から腸が出ていましたが、まだうめき声をあげていました。しかし、郭さんが右腕の縄を解いているうちに、その声は聞こえなくなりました。

父親は殺され
　日本兵が戻ってくることを恐れ、郭さんは３０㍍ほど離れたソラマメ畑まではっていきました。ソラマメ畑も日本軍の飛行機による機関銃掃射などによる死体だらけ。郭さんは２人の死体の間に隠れました。
　動くことができず、ソラマメの葉についた水滴をなめてのどの渇きをいやし、まる２日間そのまま過ごしました。
　２日後の１１日夕、地元の人が通りかかり、郭さんを李さんの家まで運んでくれました。父親は日本兵に殺されていました。
　語り終えた郭さんはこう訴えました。「畑の中も川の中も死体だらけで、血で真っ赤に染まっていた。７０年以上たってもあの情景が目に浮かぶ。中国と日本は二度と戦争してはいけない」
　（つづく）

廠窖虐殺事件
　中国を侵略した日本軍が１９４３年５月９～１１日に湖南省南県廠窖鎮で起こした虐殺事件。中国側の調査によると、南北１０㌔、東西５㌔の５０平方㌔の範囲で３万人以上が死亡。当時、日本軍は長江（揚子江）の水運を確保するための江南せん滅作戦を展開。湖北省南部から湖南省北部の国民党軍をせん滅する過程で、民間人も無差別に虐殺したとみられています。
( ２０１５年０２月０１日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

第２次世界大戦終結７０年／中国・湖南省、日本軍虐殺の現場を訪ねて／中／生存者が語る恐怖

　中国湖南省南県廠窖（しょうこう）鎮で１９４３年５月に起きた日本軍による「廠窖虐殺事件」の生存者は現在３０人余り、多くが８０歳以上です。１月５日、生存者の一人、江幺妹さん（享年９６歳）が息をひきとりました。
　江さんは昨年１２月、家族に支えられながら家の外に座り、最後の力をふりしぼって自らの経験を語りました。
　日本軍が廠窖に来たとき、江さんは生後１カ月になったばかりの次女と家の中にいました。３人の日本兵は江さんの服をはいで全裸にし、隣の家に連れていきました。
　台所に布団を敷き、その家の１５歳くらいの少年に江さんを強姦（ごうかん）するよう命じました。少年は江さんに覆いかぶさりましたが、恐怖で震えて何もできません。怒った日本兵は、木の棒を江さんの下半身に突き刺し、３０分以上苦痛を与えました。激痛で江さんは気絶。布団は血で真っ赤になりました。
　いまも後頭部と左わき腹に傷痕が残っている任徳保さん（８８）も体験を語りました。
　日本兵は家に入ると、銃剣で任さんの頭を殴り、わき腹を刺しました。翌月に出産予定の母親は、大きなおなかでベッドで横になっていました。日本兵は母親の腹を２回刺し、母親と胎児を殺しました。

胎児突き刺し
　さらに日本兵は母親の腹を切り裂き、胎児を取り出して銃剣の先に刺して高く掲げました。周りで仲間の日本兵たちが笑いながら拍手しました。
　元高校教師の李波さん（７５）は、１９７０年代に総勢２０人で生存者の聞き取り調査を実施。李さんが紹介した惨状の一部は―。
　▽ある家に数十人が避難していました。そこに日本兵が来て、女性たちを強姦しようとしました。抵抗されたため、怒った日本兵は、家に火をつけて数十人の女性を焼き殺しました。日本兵は、残りの二十数人の男性を縛って池に追い込み、全員水死させました。
　▽汪宏奎さんは事件当時６０歳を超え、耳があまり聞こえなかったため、日本兵が何かを尋ねても答えることができませんでした。怒った日本兵は汪さんの舌とあごを軍刀で切って殺しました。
　▽日本兵は目の悪かった肖長清さんを捕まえ、両手を縛り、両目を銃剣でくりぬいて殺しました。

父と川に落ち
　李さん自身も生存者の一人で、父に背負われて逃げるときに、一緒に橋から川に落ちた光景を鮮明に覚えています。李さんはこう指摘します。「日本軍は女性や子ども、お年寄りも無差別に虐殺した。虐殺の方法も人間性を失った残虐なもので、まさに鬼だった」
　（廠窖鎮〈中国湖南省南県〉＝小林拓也　写真も）
　（つづく）
( ２０１５年０２月０２日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

第２次世界大戦終結７０年／中国・湖南省、日本軍虐殺の現場を訪ねて／下／「千人坑」動かぬ証拠

　１９４３年５月に日本軍による虐殺事件が起きた湖南省の廠窖鎮では、こんな歌が歌い継がれています。
　「甸安河、甸安河（廠窖鎮にある川の名前）、死体は触れ合うように並び、５里（２・５㌔）の川は血の海になり、野良犬は橋がなくても渡ることができた」

赤く染まった
　廠窖鎮の中心部にある川辺に、「血水河」という石碑が立っています。地元の人が日本軍から逃げるために川に数百の小舟を浮かべたとき、数十機の日本軍の飛行機が来襲し、爆弾と機関銃で虐殺。当時、岸から虐殺現場を目撃した全伯安さん（８８）は、日本軍の虐殺は５分ほど続き、幅５０㍍ほどの川は死体で埋まり、水は血で真っ赤になったと語りました。
　中国側の調査では、南北１０㌔、東西５㌔の５０平方㌔の範囲での３日間の虐殺で、犠牲者３万人以上、強姦（ごうかん）された女性２０００人、焼かれた家屋３０００棟、焼かれた船２５００艘（そう）の被害が出ました。犠牲者のうち、廠窖鎮に住んでいた人が７０００人以上、湖北省などからの避難民と廠窖鎮周辺から逃げてきた人が１万８０００人以上、国民党の兵士が５０００人以上だといいます。
　廠窖鎮には、日本軍に虐殺された中国人の死体が数百体から１千体以上埋められている「千人坑」と呼ばれる場所が数カ所あります。日本兵が住民を池や川に追い込んで虐殺した場所や、生存者が犠牲者の死体を埋葬した場所などが「千人坑」になり、虐殺の動かぬ証拠となっています。

むき出しの骨
　そのうちの一つである「永固○千人坑」は１９８４年の発掘調査で、３０平方㍍の範囲から折り重なった大量の人骨が発見されました。埋め戻して、竹を植えましたが、いまも土の上に頭蓋骨と人骨の一部がむき出しになっています。
　地元政府はこの場所を記念館として公開することを決定。本格的な発掘作業が始まっています。昨年１２月には、７人の調査員が畑で長い棒を土に突き刺して、犠牲者の人骨を探していました。
　虐殺事件の生存者の全伯安さんはこう強調します。「１９３１年の柳条湖事件から始まった日本の中国への侵略でどれだけの中国人の命が奪われたのか。虐殺の証拠があり、生存者もいる。日本政府は侵略の事実を認識し、反省してほしい。その上で、中日の国民は二度と戦争が起きないよう、平和を追求し、交流を続けていきたい」
　（廠窖鎮〈中国湖南省南県〉＝小林拓也　写真も）
　（おわり）
( ２０１５年０２月０３日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

砲台の戦跡語り継ごう／国の史跡内定でシンポ／横須賀

　旧日本軍が明治期に、神奈川県横須賀市に建設した猿島砲台、千代ケ崎砲台跡が国の史跡に内定したことを受けて１日、同市で記念シンポジウムが開かれました。横須賀市と同市教育委員会の主催で、約２５０人が参加しました。
　横須賀市近代歴史遺産活用事業推進協議会の山本詔一会長が、「初めて近代の要塞跡が国の史跡に指定された。当時の戦跡を残し、語り継ぐ動きが広がってほしい」と開会あいさつしました。
　軍事史学会副会長の原剛氏が基調講演。東京湾口の防衛目的で築かれた猿島、千代ケ崎の砲台は、第２次世界大戦の際に本土決戦の防衛施設として重視されたなど、戦跡の歴史を語りました。
　猿島砲台跡、千代ケ崎砲台跡の保存や活用について３氏がパネル討論。日本では建造物を史跡に指定する動きが、世界と比べて遅れている現状などが指摘されました。
(２０１５年０２月０３日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

沖縄・辺野古ルポ／上／基地いらぬ思いは一つ／浜辺のテント村で

　安倍政権は、沖縄・名護市辺野古への米軍新基地建設のためのボーリング調査として、宝の海・大浦湾に巨大なコンクリート塊を沈める作業を強行し続けています。「基地はいらない」と示し続けた民意にそむく暴挙の連続です。「オール沖縄」のたたかいは本土との連帯も強め、短期間に昨年より新たな広がりと強さで展開されています。辺野古からリポートします。
　（阿部活士）

　干潟の残る浜辺にある「辺野古テント村」。サンゴやジュゴンのえさになる海草・藻場をはじめ大浦湾の貴重な自然を守る〝拠点〟です。昼ごろになると、にわかに忙しくなります。「沖縄『建白書』実現　島ぐるみ会議」が運営する「辺野古バス見学会」の大型バスが那覇から到着するからです。

北海道からも
　１月２６日には、「本当にきれいな海ね」といいながら、５０人が降りてきます。「北海道医労連第７回平和ツアー」と書かれた大型バスも到着。総勢１３人の２０代。「夏だ。暑い」
　３０日には、沖縄県内の小・中学校を退職した女性校長や副校長らがマイクロバスで到着。「二度と沖縄戦のように、戦争で焼け野原になるのはいやです。基地はつくらせない。思いは一つです」と話すのは、城間春江さん（７７）。
　テント村のガイド役・篠原孝子さんが、那覇市からの参加者に説明します。「肉眼でも大型な船が見えますね。海上保安庁の巡視船です」
　｢こわい｣と話す若い母親｡｢第２次世界大戦の沖縄戦はこんなイメージかな｣との声も｡

豊かな海壊す
　「１３隻もいました。サンゴの密漁取り締まりでもこんなに集まりません。私たちはサンゴを守るために活動しているのに、それを邪魔する海保。なんでしょうね」と篠原さんが話すと、思わず「ひどいね｣との声がでます｡
　じっと説明を聞いていた上運天（かみうんてん）恵さん（４９）は「ジュゴンが生息する豊かな海を壊す計画に反対の意思を示したい思いがずっと胸に刺さっていた」といいます。昨年９月から辺野古バス見学会があると知って、仕事のないときはずっと通ってきました。帰りのバスが出る午後４時までテント村とゲート前で抗議行動に参加。「なぜきれいな海を埋め立てるのか、わからない。戦後も７０年たって、戦争するための基地をつくるという安倍首相がわからない。普天間基地や嘉手納基地…基地は全部いらない」
　辺野古バス見学会は、那覇市、宜野湾市、うるま市などにも広がっています。
　参加者のなかには、翁長県政の埋め立て承認検証を後押しする現地集会を開こうとの声も出ます。「１日でも２日でも基地機能を止めるほどの力を日米両政府に見せたい」と語る参加者もいます。
　安倍政権にさらに強い県民の意思を示す大規模な県民集会を４月に開こうとの意見が続出しています。（つづく）
( ２０１５年０２月０４日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

沖縄・辺野古ルポ／下／豊かな海と故郷残す／基地ゲート前で

　国道３２９号沿いに両側をフェンスで囲った広大な米海兵隊基地、キャンプ・シュワブ。ゲート前抗議行動には、「初めて参加」という若い世代がいます。

「目が覚めた」
　１月２４日土曜日の午前中、行き交う車に「新基地反対」のミニプラスターを掲げて、懸命に手をふる女性がいました。読谷村の保育所で働く與那覇沙姫（よなは・さき）さん（３０）です。
　「先輩の保育士のフェイスブックをみて、辺野古でおきていることは〝ただごとじゃない〟と思った。やっと目が覚めた。仕事のない土日は遊びたいけど、ここに来ようと思って。気持ちはめいっぱいです」
　その〝ただごとでない〟こととは―。
　「辺野古にくると、世界で起きていることがアメリカの戦争や沖縄の米軍基地につながっていると分かりました。負の連鎖です。日本は平和だと思ったけど、平和ではなかった。平和を願って、私も行動します。とりあえず、家族を巻き込もうと、今度は母親を連れてきたい」

キリスト者も
　抗議行動には、キリスト者も数多く参加しています。
　中城（なかぐすく）村の仲松かおりさん（５４）は、宜野湾市にある米軍普天間基地のゲート前で毎週月曜日に集う「ゴスペル（賛美歌）を歌う会」の仲間と来ました。「基地は戦争につながります。沖縄戦を経験した親の世代から戦争は絶対にダメだと教わってきた」と。
　日本キリスト教団の牧師もいます。「平和のために働くのが牧師の役目、公務です」と話すのは、石川教会の宇佐美節子さん（５９）です。「安倍政権は基地はこれ以上いらないとまとまった『オール沖縄』に追いつめられているので、強行的に出ているのでしょう。日米同盟を大事にして日本の沖縄を切り捨てようとしていることに、私たちは怒っているのよ。日本は民主主義の国家ではないと」

ＳＮＳで発信
　インターネットのＳＮＳを活用して、辺野古のたたかいを発信する若者もいます。東京で原発反対の首相官邸前抗議行動に参加するＡＴＳ（アツシ）さん（２３）です。ゲート前では、マイクも握りました。
　「僕のできることはナマ配信することです。テレビも大手新聞も取り上げないからこそ、それぞれが発信するメディアなんです。作業をやめさせるまで、横につながってたたかいましょう。安倍政権がやろうという原発再稼働も新基地建設も命にかかわる問題です。命が大事。ジュゴンがすむ豊かな生態系、海って人間のためだけなのっていいたい。人殺しの道具の基地をつくるより、豊かな自然、故郷を次の世代に残したほうがいい」（おわり）
( ２０１５年０２月０５日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

1月

欧州と世界の安保／「対話と和解」必要／創設４０年で訴え／ＯＳＣＥ議長

　欧州安全保障協力機構（ＯＳＣＥ）は１５日、ウィーンで今年１年間の活動を話し合う常設理事会を開きました。今年の議長国セルビアのダチッチ副首相兼外相は理事会で、ウクライナ紛争とフランスでの新聞社襲撃テロは「欧州と世界の安全保障にとって深刻な脅威」だと指摘し、「対話と和解」の必要性を訴えました。

　ダチッチ氏は、対話と信頼醸成というＯＳＣＥの規範と原則を思い起こすよう呼び掛け、「隣人との友好的な関係は、何もせずに得られるものではない。育むべきものだ。いっそうの努力、相互理解、忍耐強さが求められる絶え間ないプロセスだ」と強調しました。
　今年はＯＳＣＥの前身となる全欧安全保障協力会議（ＣＳＣＥ）の創設から４０周年。ダチッチ氏は４０年間にわたる活動を振り返り、ＯＳＣＥの活動が政治・軍事、経済、人道の面で広がってきたと評価する一方で、こう警告しました。
　「第２次世界大戦の終結とナチズムの敗北から７０年がたったにもかかわらず、過激な思想と（民族、宗教、性的指向などを理由にした）憎悪犯罪は無くなっていない。人権、寛容、非差別とともに、対話、信頼醸成、連帯、協力の重要性を引き続き指摘することはわれわれの責務だ」

現場支援を重視
　今年、ＯＳＣＥが力を入れようとしている活動は、「現場に足を運ぶこと」です。ＯＳＣＥは現在、ウクライナ紛争の監視活動や紛争当事者間の対話促進など、１５カ国で中立の立場から紛争解決や紛争後の復興活動を現場で支援しています。
　ダチッチ氏は直属の特別部会を率いて、これらの現場を訪問する計画です。「長引く紛争を（解決に向けて）動かす余地はある。小さくても具体的な歩みが、当事者間の信頼を促進し、問題の本質に取り組む道を開く」としています。
　ＯＳＣＥの現場活動に対する態度は、受け入れ国によってさまざまです。消極的な国もあり、とりわけ中央アジア諸国はＯＳＣＥの活動を縮小したがっているといいます。
　こうした現状についてダチッチ氏は、「未解決の紛争を平和的なプロセスに乗せるためのカギは、当事国が握っている。紛争の平和的解決に向けた（ＯＳＣＥとしての）集団的な支援が必要だ」と強調。「今年は大事な年になる。いまのＯＳＣＥの経験を、より効果的で具体的な（紛争解決の）手段と活動に発展させていく」との展望を示しています。
　（面川誠）

欧州安全保障協力機構（ＯＳＣＥ）
　１９７５年、米国とソ連（現ロシア）をそれぞれ中心とする「東西ブロック」間の対話促進、信頼醸成、武力紛争防止のために、米ソを含む東西欧州３５カ国が創設した全欧安全保障協力会議（ＣＳＣＥ）が前身。ソ連崩壊後の９５年、欧州安全保障協力機構（ＯＳＣＥ）に名称を変更。現在、５７カ国が加盟。軍事・政治だけでなく、経済・環境、人権・人道も含めた三つの側面から成る協調的安全保障を促進。事務局はウィーン。
( ２０１５年０１月１９日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

２０１５焦点・論点／平和と発展に貢献したいと国連でスピーチ／東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構長村山斉さん

基礎科学は〝平和の開拓者〟／国は敵対でも研究者は共同
　「基礎科学は、すべての国の人々を一つにする。人類にとって真の〝ピースメーカー〟（平和の開拓者）だと信じています」。米ニューヨークの国連本部で昨年１０月、「平和と発展のための科学」というテーマでスピーチした村山斉・東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構長(５０)。美しい星空を見上げて宇宙の神秘を考えることから惑星・地球の平和と発展に貢献したいと訴えた、そのココロとは―。

　――政治・外交分野では敵対している国の人が、基礎科学の研究で一緒に仕事することがよくあるのですね。
　村山　私は、欧州原子核研究機構（ＣＥＲＮ）の科学政策委員会のメンバーです。ＣＥＲＮでは、インドとパキスタン、イスラエルとイラン、ロシアとウクライナの人たちが、一緒に仕事をします。友好的な関係の国々からも戦争中の国々からも何千人もが集まって実験装置をつくっています。ヒッグス粒子を発見した実験もそうです。ＣＥＲＮは一つの平和のシンボルです。
　研究者は、科学が平和に結びつくことを意識するというより、むしろ平和を享受しています。敵対国でもＣＥＲＮにくれば一緒に仕事ができると。
　東西冷戦時代もそうでした。西側がＣＥＲＮをつくった数年後、対抗する研究所を旧ソ連がつくりました。でも１０年ほどたつと、敵対するはずだった二つの研究所が共同研究を始め、何十年も協力を続けています。
　研究者はみんな当然のことだと意識せずにそういう方向にいく。むしろ、研究所を見学に訪れた一般の人にとって衝撃ではないですか。日本だったら終戦前は英単語を口にすることですら「敵性語」だとされたわけですから。敵対する国の人が一緒に研究しているなんてありえないよと。
　研究者の個人レベルでは、敵対国の人と共同で論文を書くことは普通です。

国交できる前に
　――こうした流れが太くなれば国同士の戦争がなくなりますか。
　村山　中東ヨルダンにある放射光施設「セサミ」計画には、イスラエルもパレスチナもイランも参加しています。敵対する国同士がお金を出し合って新しい加速器をつくり、一緒に使おうというのです。国交もないのにトップ同士が話しあっているわけです。本当にすばらしいことだと思います。そんな例はたくさんあります。
　ＣＥＲＮでも第２次大戦後の設立当初、ドイツ人は嫌われていたそうです。しかし大きな施設や装置を一緒に建設しているうちに敵対心が薄れたと、イスラエル人が言っていました。国交ができる前に共同研究の枠組みはできていたのです。
　もともとＣＥＲＮは第２次大戦後のヨーロッパを統合する、平和を実現するということが念頭にあってつくられた組織です。ヨーロッパ共同体という意識が生まれる前にこういうことが先駆けでできていたことが、ヨーロッパの平和の機運をつくる一環になったのではないでしょうか。
　――ＣＥＲＮは軍事研究に関与しないと宣言しています。東京大学も同じですね。
　村山　研究を非軍事に限っているから平和につながっているか、あまり実感はありません。ただ私は、原爆の設計をしている米国の研究所に行ったことがあります。そこでは軍事研究の区画には、機密事項を扱う資格のない私たちは入れません。素粒子や原子核を研究する区画に入るときでさえ、携帯電話やパソコンを持ちこめませんでした。安全な人間と危険人物かもしれないという区別が常にされている。普通の大学や研究所の環境との違いを強く感じました。
　研究の発展のためには、自由がないと新しいアイデアや研究テーマは生まれてこないですから、自由を保障する意味で非軍事であることは確かに大事なことですね。

戦争の爪痕衝撃
　――国連のスピーチで家族のことや自分の体験に引きつけて平和について語りました。
　村山　祖父母は第２次世界大戦中、ソウルで暮らし、父もそこで生まれました。終戦が近づくと反日感情が強まり、家の表札を「村山」ではなく「金」と書いていたそうです。終戦後、日本への引き揚げ船に乗る直前、混乱のなかで９歳だった父ははぐれて取り残されそうになりました。運よく見つかりましたが、もし残留孤児になっていたら私は存在しませんでした。
　私は１１歳から４年間、分断国家だった西ドイツのデュッセルドルフに住んでいました。１９７８年、修学旅行で分断されたベルリンへ行きました。西ベルリンは活気ある近代都市でしたが、東ベルリンへの検問を過ぎると地雷原と監視塔があり、東から西に人が逃げないようにしている。町は、第２次大戦の廃虚が並んでいる状況でした。戦後３３年たっても、これだけ戦争の爪痕が残っているのかとショックでした。
　米国での研究生活では、宇宙の神秘を解きたいという共通の目的で、自殺テロを目撃したイスラエル人、イスラム革命から逃げたイラン人、亡命したユダヤ系のロシア人など、紛争や迫害にあった友人と一緒に研究しました。
　――科学のワクワクする気持ちは、世界の発展のカギだとおっしゃいましたね。
　村山　発展というのは、人類の置かれている状況が、現在のような人道的に許しがたいものから、よりよい納得できる状況に改善させることだと考えています。そのためには科学的知識が必要です。
　私たち日本人は、福島の原発事故から科学と社会のあり方を学ばねばなりません。米国の友人たちは、人間活動が地球温暖化をもたらし自然災害の元になっている事実を受け入れなければなりません。
　私たちが地球という小さな岩の上に住む生物だという、大きな視点をもって見るだけで議論が変わってくる。手を取り合って行動できると思うのです。

友好関係のタネ
　――紛争が絶えない世界でどのように平和に貢献したいですか。
　村山　宇宙の研究について、途上国の学生に講義をしています。途上国であれ発展した国であれ、科学は万国共通語ですから、文化も言葉も関係なく話せます。
　ＣＥＲＮに訪れる毎年数千人の高校生や先生たちは、世界中の研究者が平和的に研究して宇宙の深遠な疑問を解こうとしている姿に驚きます。その興奮はどんどん伝染していきます。日本にも同じような国際組織ができればいいですね。
　次世代超大型望遠鏡ＴＭＴ計画にはインドや中国も参加しています。そういう計画が国としての友好関係のタネになって育つのが望みです。同じ方向に向いた瞬間、手は横にあるわけですから。
　聞き手　中村秀生

むらやま・ひとし　１９６４年、東京都生まれ。東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構（カブリＩＰＭＵ）機構長、米カリフォルニア大学バークレー校教授。専門は、素粒子理論（超対称性理論、ニュートリノなど）。東京大学で理論物理学の博士号取得後、東北大学助手などを経て、２００７年にＩＰＭＵ初代機構長に就任。『宇宙は何でできているのか』『宇宙になぜ我々が存在するのか』『宇宙を創る実験』など著書多数。
( ２０１５年０１月０５日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

主張／「被爆７０年」の新年／「核兵器ない世界」への転機に

　第２次世界大戦終結と日本のアジア・太平洋戦争での敗北から７０年の今年は、敗戦間際の１９４５年８月、アメリカが広島と長崎に原爆を投下した「被爆７０年」でもあります。原爆は多くの人命を奪い、放射線による被害は、戦後も長く被爆者を苦しめてきました。被爆者の平均年齢は８０歳に達します。４月末からは国連本部で５年ごとの核不拡散条約（ＮＰＴ）再検討会議が開かれます。なんとしても今年を｢核兵器のない世界｣への転機としなければなりません。

人道的に許されない兵器
　世界には今日、依然として１万６０００発もの核弾頭が存在し、人類の生存を脅かしています。その一部（１００発）が爆発しただけでも、放射能などの被害に加え、爆発による粉じんがひきおこす気候変動が世界の農業に大きな影響をあたえ、２０億人が飢餓にひんするとの研究報告もあります。
　日本が総選挙中の昨年１２月、オーストリアのウィーンで開かれた「核兵器の人道的影響についての国際会議（第３回）」には国連加盟国の８割をこえる１５８カ国が参加し、無差別的な破壊力をもつ核兵器が「人道的に受け入れがたい結果」をもたらすと強調し、廃絶にすすむことを訴えました。会議はこれまで｢国家安全保障｣の問題として議論されてきた核兵器を｢人道上｣の問題として追及し、廃絶への扉を開こうという試みです。核保有国は参加を拒んできましたが、強まる世論で、今回はアメリカとイギリスが参加しました。
　会議では、被爆者の発言が多くの政府代表の心を動かし､｢被爆７０年」に具体的な前進をはかるべきだとの機運を広げました。潘基文国連事務総長が昨年の原水爆禁止世界大会へのメッセージで「被爆者の尽力のおかげで核兵器使用のもたらす壊滅的な人道的影響が理解され（た）」とのべたように、長年の被爆者の訴えが国際政治を動かす流れへと発展しています。
　いまだに多くの核保有国は、核兵器で相手を威嚇・攻撃する「核抑止力」論にたって、核戦力を持ち続けようとしています。「核兵器のない世界」は「ステップ・バイ・ステップ」（段階的）でこそ実現できるなどと主張し、核兵器禁止条約をはじめ、核兵器廃絶を目標にした交渉に反対しています。こうした勢力を包囲し、障害をのりこえる国際世論を築くことがいっそう重要になっています。
　被爆国の政府として本来「核兵器のない世界」実現の先頭に立つことが求められる日本政府は、アメリカの「核抑止力」「核の傘」が必要だという立場をとり、核兵器禁止条約の交渉開始を求める国連での決議にも棄権をつづけています。海外で「戦争する国」をめざす安倍晋三政権の暴走をくいとめるうえでも、被爆国にあるまじき姿勢を正すことが必要です。

被爆国の政党として
　昨年９月に開かれたアジア政党国際会議（ＩＣＡＰＰ）第８回総会は、日本共産党の提案で「核兵器禁止条約についてのすみやかな交渉開始」を呼びかけました。日本原水協がよびかけた「核兵器全面禁止のアピール」署名も増え続けています。
　日本共産党は「被爆７０年」の今年、こころざしを同じくする諸国政府や国連、内外の反核平和運動と共同し、核兵器廃絶に向けた転換の実現へ力を尽くす決意です。
( ２０１５年０１月０３日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

主張／２０１５年の経済／貧困と格差拡大はね返す年に

　年末の総選挙と予算編成の越年というあわただしさのなかで、新しい年を迎えました。安倍晋三政権がすすめる経済政策「アベノミクス」で暮らしはよくならなかった、昨年４月からの消費税増税でますます苦しくなったというのが、国民の圧倒的な実感です。新年こそ国民の暮らしにとってよい年に―。そのためには、国民に暮らし破壊と景気悪化、貧困と格差の拡大しかもたらさない「アベノミクス」をはね返し、暮らし優先に転換する年にしたいものです。

貧困がかつてない水準
　第２次世界大戦の終結とアジア・太平洋戦争での日本の敗戦から７０年を迎える今日、敗戦直後の貧しい生活を昔話ですまさせないような貧困と格差の拡大が、国民のもとに押し寄せています。
　昨年末ひとつの数字が話題になりました｡内閣府が発表した国民経済計算の確報で､２０１３年度の家計貯蓄率がマイナス１･３%と｢マイナス｣になったのです｡家計貯蓄率とは家計の所得のうちどれだけ貯金に回したかです｡マイナスというのは貯金に回すどころか､取り崩したということです｡内閣府はほぼ同じ条件で比べられる１９５５年以来初といいますが､事実上戦後初です｡国民が直面する貧困はかつてない水準です｡
　この数字だけではありません。昨年１年間貧困と格差の拡大を示す統計の発表が相次ぎました。厚生労働省の国民生活基礎調査によると、「貧困線」とされる年収１２２万円以下の世帯は１６・１％と過去最悪です。なかでも１８歳以下の子どもの貧困率は１６・３％にのぼります。パートや派遣など非正規で働く労働者は２０００万人を超え、年収２００万円以下の「ワーキングプア」（働く貧困層）は８年連続１０００万人に達しました。日本の「富裕層」は１００万世帯を突破したのに、金融資産がまったくない世帯は３０％を突破したという数字もあります。
　富めるものと貧しいもの、大企業と中小企業、都市と地方などあらゆる面で格差が拡大しています。親の資産や所得による格差が固定化する傾向も顕著です。大企業や大資産家を肥え太らすだけで国民の暮らしは顧みようともしない「アベノミクス」が、こうした事態に拍車をかけているのは明白です。
　「先進国クラブ」ともいわれる経済協力開発機構（ＯＥＣＤ）は昨年、日本を含む加盟国で貧困層と富裕層の格差が過去３０年で最大になっており、所得格差が拡大するほど経済成長が低下するとの報告書を発表しました。大企業をもうけさせれば雇用も賃金も消費も拡大するという「アベノミクス」は、国際的な常識に照らしても通用しません。

国民の運動と手を結んで
　日本国憲法はすべての国民に「法の下の平等」や「生存権」を認めています。貧困や格差の拡大は、絶対に放置できないものです。格差拡大を批判したフランスの経済学者ピケティ氏の著作が昨年日本でも出版され、評判を呼んでいるのもうなずけることです。
　貧困と格差拡大をはね返すために、大企業を肥え太らせるだけの「アベノミクス」の中止を！
　昨年末の総選挙で大きく躍進した日本共産党の力と国民の運動を結んで、今年こそ大企業本位ではなく暮らし第一の経済を切り開く年にしようではありませんか。
( ２０１５年０１月０４日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

インタビュー戦後７０年／美術家奈良美智さん

ＮＯ　ＷＡＲ（反戦）が僕の根幹

日本の平和が続くか不安。だから今、思いをかたちにした
　「３･１１｣(福島第１原発事故)後､「ＮＯ　ＮＵＫＥＳ(反核)｣のプレートを持つ少女の絵で話題となった美術家の奈良美智さんが､反戦をテーマにした作品集『ＮＯ　ＷＡＲ!』を出しました｡世界的に注目される美術家は､なぜ今､反戦なのか…。
　金子徹記者

　「ＮＯ　ＮＵＫＥＳ」の少女の絵はインターネットを通じて広まり、奈良さんも使用を認めたため、原発ゼロを求める官邸前行動や各地の集会、デモで多くの参加者がこの絵を掲げました。
　「官邸前に何度か行き、自分の絵をみたときは恥ずかしかったです（笑い）。あれは１９９８年に描きました。それがタイの反核デモで使われてから広がったみたいです」
　新作を含む作品集『ＮＯ　ＷＡＲ！』には７２点を収録しました。
　「『ＮＯ　ＷＡＲ（戦争反対）』は特別なことじゃないんです。『ＹＥＳ　ＷＡＲ（戦争賛成）』なんていう人は、世界中でも２％もいないんじゃないかな。これまで描いた絵を見直して、『ＮＯ　ＷＡＲ』は自分の根幹だと気付きました。日常で感じることや喜怒哀楽はすかさず絵に表れる。世界の情勢への思いも、知らないうちに絵に出る。それに気付いて調べ直したら、反戦にかかわる絵が本１冊になるだけあり、びっくりしました」
　作品集はポスターを束ねたようなつくり。壁に飾ったり配ったりもできます。
　「平和のために、すぐに何かしたかった。コストを下げて安い値段でとにかく早く出したかったのです。本のように綴（と）じず折り込みチラシの束のようにしたのは、本棚にしまうのでなく開いた状態でいつでもみられるといいと思ったから。本当は無料で配りたいくらいです（笑い）」
　「戦争や災害では、子どもや弱い者にしわよせがくる。いつもそこに目がいきます。世界で起きる紛争などを思うと、日本もいつまでこの平和が続くか不安になる。だからいま、戦争反対をかたちにしようと思ったのです」

自分なりのリアリティーで世界の悲惨さを広げて見る

　「ＮＯ　ＮＵＫＥＳ」の少女の絵は、自身にも重要な作品でした。
　「描いたきっかけは、当時のアメリカの核兵器の問題とかいろいろあったけれど、一番は、８１年に日本の写真雑誌に載った写真です。顔にピースマークのペイントをして平和運動に参加している、高校生くらいのアメリカの女の子の写真でした。スリーマイル島の原発事故後の反核運動の写真だったと思います」
　当時を「社会のことをシャットアウトしていた｣と振り返ります｡
　「自分の興味のある絵のことだけに気持ちを向けていました。そんなときにあの写真をみて、後ろから殴られたようなショックを受けました。絵を描く初心を思い出したというか。それからは、絵のなかに反核とか反戦とか、自分の思いが表れるようになりました」

ベトナム戦争反対体で覚えた抵抗歌
　反戦、反権力の意識の根っこには、１０代の音楽体験があります。
　「小学生のころから寝不足になるくらい深夜放送を聴いていました。自分の反戦、反権力の考え方にはそういう音楽の影響がかなりあると思います。音楽は体で覚え、骨までしみこんでいる感じです。部屋に『反体制』という文字をはっていた兄がいて、フォークやプロテストソング（抵抗歌）を聴いていた。その影響もあります。日本の音楽業界は商業主義に流されがちだけれど、アメリカでは商業主義に流されない音楽がはっきりとあって、有名な歌手でも反戦歌を歌う。（息子の）ブッシュ大統領の時代には、彼を名指しで攻撃する歌がいっぱいありました。ああいう曲は本当に気持ちいい」
　少年時代、テレビでみたベトナム戦争の映像も衝撃的でした。
　「リアルタイムでみた映像の力はすごかった。そのころのアメリカの反戦ロックは子どもの僕に、『これだ！』と思えて、あこがれました。集団のなかのひとりでいるのでなく、自分の意思を発言できる、そういう人になりたいと中学生のころから思っていました」

ドイツから見えた日本のあいまいさ
　大学卒業後、ドイツに１２年間留学。帰国後は、先鋭的な美術家として一躍注目の存在に。展覧会には、数万人規模の観客が集まるようになりました。
　「ドイツの美術学校にいたとき、湾岸戦争への抗議のため学園祭が中止になったことがありました。学園祭は自分を売り出す絶好の機会なのに、戦争への抗議の意思を示すために中止した。これは衝撃でした。年に１回の発表のチャンスの代わりに『湾岸から撤退しろ』というようなスローガンを学校に掲げたりしました。ドイツでは、教えられることがすごく多かった。戦後補償の徹底の仕方でも、国だけでなく民間企業も戦争被害者への補償をしています。歴史についても、ドイツ人は客観的、論理的に振り返ります。それに比べると日本はあいまいだと感じます」

戦争体験なくても向き合って考える
　戦争や災害などで迷子になる子どもを題材にするなど、鋭い問題意識を胸に制作してきた奈良さん。世界各地の戦争やテロ、日本の原発事故などに対し、「自分なりのリアリティー」をもって向き合おうと心がけています。
　「僕は戦争のない時代に生まれ、日本が発展する時代に少年期を過ごしてきたから、本当の悲惨さを経験していないという後ろめたさがあります。それでも自分なりのリアリティーをもって、自分の分かり得る悲惨さを広げてみる、そういう見方をいろんな分野でやっています」
　カンバスだけでなく封筒の裏や段ボールにまで絵を描くのは…。
　「モノを安易に捨てられないんです。子どものころは、まだモノがあふれた時代じゃなかったし裕福な地方じゃないので紙でも端切れでも取っておくんです。習字の練習は新聞紙でしたし、おばあさんたちは布切れをとっていた。いまのリサイクルですね。漂白された紙よりも、リサイクルの素材の方が優しく感じるんです。まっさらなものって、苦手なんですよ」

なら・よしとも＝１９５９年青森県生まれ。ニューヨーク近代美術館などで作品所蔵。２０１３年、芸術選奨文部科学大臣賞受賞。「ここより北へ　石川直樹＋奈良美智展」＝２５日～５月１０日、東京都渋谷区神宮前・ワタリウム美術館℡０３（３４０２）３００１
(２０１５年０１月２５日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

安倍暴走とめよう／「女性の共同広く」／婦団連総会

　日本婦人団体連合会（婦団連、２３団体９０万人）は２４日、東京都内で第４１回総会を開き、安倍内閣が進める「戦争する国」を許さず、平和とジェンダー平等の実現へむけて女性の共同を広げる活動方針を決め、アピールを採択しました。
　柴田真佐子会長は主催者あいさつで、今年は戦後７０年、女性参政権獲得７０年、女性差別撤廃条約批准３０年の節目の年だと強調。集団的自衛権行使容認に反対する２度の女性銀座パレードや「女の平和」国会包囲行動など大きく広がった「戦争する国」づくりを許さない共同をさらに広げようと語りました。安倍内閣が進める労働法制改悪は女性の低賃金と非正規化、貧困をさらに深刻にすると批判し、「女性が真に輝く社会に向けて女性の共同を広げよう」と呼びかけました。
　榎本よう子事務局長が議案説明で、▽憲法を守り、平和と民主主義をめざす▽人間らしく働ける社会の実現をめざす▽憲法を生かし、いのちと暮らしを守る▽憲法と女性差別撤廃条約に基づくジェンダー平等をめざす―ことを提案しました。
　討論では、「『女の平和』連帯行動を呼びかけて全国各地に広がった」（新日本婦人の会）などの発言が続きました。
　桜美林大学の藤田実教授が講演。国際婦人年連絡会の紙谷雅子世話人、日本共産党の畑野君枝衆院議員が来賓あいさつしました。
　選出された新役員は次の通りです。
　▽会長＝柴田真佐子▽副会長＝伊藤啓子、大石邦子、笠井貴美代、久保田みき子、伍淑子、櫻井幸子、長尾ゆり（新）、堀江ゆり▽事務局長＝榎本よう子（敬称略、無記載は再任）
( ２０１５年０１月２５日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

日本は近隣摩擦解消を／「戦後７０年」、米高官語る

　【ワシントン＝時事】米国家安全保障会議（ＮＳＣ）のメデイロス・アジア上級部長は２１日、ワシントンで開かれた会合で、安倍政権の戦後７０年の取り組みに関し「われわれは日本が影響力を持ち、信用でき、積極的な米国の強いパートナーであってほしいと思っている。歴史問題に効果的に取り組み、（近隣諸国との関係を）回復することによってのみ、そのような日本は達成できる」と述べました。
　戦後７０年を機に、歴史認識をめぐる周辺国との摩擦解消に努めるよう求めた発言です。
　メデイロス氏は「先の大戦への反省」に言及した年頭記者会見での安倍晋三首相の発言を取り上げ、「とても重要で意義深い。首相と日本がこの重要な年に歴史問題にどう対処するかについて価値あるシグナルを送っており、温かく歓迎する」と表明。その上で「１年間を通じて（発言の趣旨を）実現することを望む」と強調しました。
( ２０１５年０１月２３日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

シリーズ戦後７０年を考える／今も苦しむ軍「慰安婦」たち／関西学院大学元教授野田正彰さんにきく

被害者を精神鑑定した関西学院大学元教授（精神医学）野田正彰さんにきく／ナチ収容所生還者と同じ／事実認めることが真の謝罪
　戦後７０年―。日本軍「慰安婦」問題で安倍晋三首相は、軍の強制性を否定し、「性奴隷はいわれなき中傷｣と開き直っています｡しかし性奴隷とされた女性は、戦後も重い精神的後遺症に苦しんできました｡その実態を中国･海南島の被害者らを精神鑑定してきた関西学院大学の野田正彰元教授(精神医学)に聞きました。
　本吉真希記者

　野田さんは２００７年３月と６月に海南島を訪れ、生存者６人の精神鑑定を行いました。６人は海南島裁判（別項）の原告です。
　「最悪の精神状態にあった」と野田さんがいう譚亜洞(たん･あどう）さん（１９２５年７月生まれ、２０１０年９月死去)｡１６歳のころ日本軍に徴用され、駐屯地で働かされ、性暴力を受け続けました。譚さんの体験は…。
　―兵士の相手をするのを嫌がると谷へ突き落とされ、左の骨盤を骨折。戦後も腰は大きく左へ曲がったまま。
　―四つ足の牛のような姿勢をとる拷問を受け、姿勢が崩れるたびにこん棒で打ちのめされた。
　―軍慰安所で逃走に失敗した少女の虐殺を見せられた。日本兵は妊娠しているその少女の腹を銃剣で切り裂き､胎児を取り出した｡
　「日本兵は徹底して死の恐怖を植えつけた」と野田さん。「いかなる助けも支えもない時間の継続は、生き残った少女たちの精神を変えた｣と指摘します｡終戦後、日本が復興に向かう一方で、被害者には耐え難い戦後が始まりました。
　譚さんは野田さんにこう証言しました。
　「昼間突然、拷問や強かんの場面が浮かぶ。そんな日は夜も悪夢にうなされる。道端の木が何か叫んでいるように見える。腹を裂かれて殺された少女の夢をよく見る。悪夢で叫んで跳び起きると、冷や汗がべっとりと出ている。…いまの娘たちと同じように私も歌ったり、おしゃべりをして生きたかった」

人格の変化
　他の被害者も同様の精神的障害がみられました。１４歳で日本軍の駐屯地に拉致・監禁され、強かんされた陳亜扁（ちん・あへん）さん（２７年１２月生まれ）は、次のように語りました。
　「夜、突然緊張し、後ろで音がしたりすると、自分を連れ去る人が来ているような気がする。心臓が躍り、食事ができなくなり、そんな夜は寝られない」
　野田さんは、６人すべてが重いＰＴＳＤ（心的外傷後ストレス障害）に苦しみ、うち５人は､ナチス･ドイツの絶滅収容所の生還者にみられる「破局的体験後の持続的人格変化」を伴っていると診断しました。
　野田さんはこれらの被害事実を詳細に記した精神鑑定書を東京高裁に提出しました（０７年８月)｡鑑定書の意義について「慰安婦」問題は過去の問題と主張する日本政府に対し「戦後こんなにも被害が継続していることを証明した」と語ります。

高裁も認定
　東京高裁判決（０９年３月）は５人について「『破局的体験後の持続的人格変化』に罹患（りかん）している｣と認定しました｡
　被害者らは戦後、下腹部の痛みと炎症にさらされ、周囲に「日本の女｣と軽蔑されました｡野田さんは「苦しみのなか、やっと生きてきた」といいます。そんな彼女たちをさらに苦しめているのが、日本で繰り返される「慰安婦」の事実否定です。被害者らは「自分が生きてきたことを全否定されるような気持ちになる」と抗議してきました。
　野田さんは加害国の政府の責任についてこう訴えます。
　「国の責任で調べ、事実を認識し、明らかにする｡それを報道し､子どもたちに教える。これこそが真の謝罪です。それがあって初めて、困難を耐え抜いた人生の意味を被害者が追認できるのだと思います」

海南島裁判＝２００１年７月、日本政府に謝罪と賠償を求め、被害女性８人が東京地裁に提訴。最高裁まで争いました｡１０年３月、最高裁で原告の請求は退けられましたが、地裁と高裁で認定された事実は認められました。
　高裁判決は「当時１４～１９歳の女性で…軍の力により威圧・脅迫して自己の性欲を満足させるために凌辱（りょうじょく）の限りを尽くした軍人らの加害行為は、極めて卑劣な行為であって厳しい非難を受けるべき」だと断罪。「（深刻な被害が）既に癒やされたとか、償われたとかいうことはできない｣としました｡
(２０１５年０１月１１日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

１０ 第２次世界大戦終結７０年／トビアス・バスキ氏に聞く／なぜ東南アジア諸国間に戦争がないのか

インドネシア戦略国際問題研究所研究員
　東南アジアでは戦後７０年間に、東南アジア諸国連合（ＡＳＥＡＮ）が創設され、平和な環境づくりがすすめられてきました。背景に何があるのか。インドネシア戦略国際問題研究所（ＣＳＩＳ）のトビアス・バスキ政治国際関係部研究員に聞きました。
　（ジャカルタ＝松本眞志　写真も）

　第２次世界大戦後の７０年間、東南アジア諸国の間では、ＡＳＥＡＮを中心に、平和的方法で問題の解決をはかってきました。
　米国によるベトナム侵略戦争やベトナムのカンボジア侵攻、インドネシアのスカルノ政権によるマレーシアとの対決政策といった例はあります。加盟国間で領土問題を抱えているところもあります。
　しかし、戦争で問題に決着をつけるとか、武力で他国を屈服させるといった考えは基本的に排除されてきました。

「兄弟げんか」
　東南アジア諸国間で、大きな戦争が起きないのはなぜか。第１に、東南アジア諸国間の紛争は「兄弟げんか」のようなものだからです。東南アジア諸国には、第２次世界大戦で日本の侵略と占領を経験し、戦後の独立でも苦労したという共通の基盤があります。
　第２に、互いに戦争を遂行する軍事力をもっていないからです。軍事力は純粋に国防のためであり、他国を征服して打ち負かすというものではありません。
　第３に、戦争を起こす動機が独立後、歴史的に存在してこなかったからです。東南アジアの国境の基本的枠組みは、この地域を支配した欧米諸国が決めたもので、私たちが征服や侵略で得た国境ではありません。それは欧米諸国の成り立ちと根本的に違うところです。
　北東アジアに目を移すと、日本と米国との軍事同盟がどうなるのかわかりませんが、日本の政治家に過去の戦争について反省のない人がいるというのは非常に残念なことです。

歴史の真実を
　これはドイツと違います。ドイツでは、ナチスのやったことを反省し、ドイツが変わる努力を見せているので周辺国は安心しているのです。
　歴史は正しく教える必要があると思います。日本の教育で過去の戦争の歴史の真実を正しく教えていないというのは残念なことです。過去に何が起きたのかを突き止めることは大事です。
　北東アジアでＡＳＥＡＮのような平和機構をつくろうとすれば、歴史を客観的に評価していく作業が重要になると思います。

　１９７８年生まれ。インドネシア戦略国際問題研究所の政治国際関係部研究員。インドネシア国内や国際政治における政治・宗教・国家の統一性、民主化問題、信教の自由からの人権問題などを研究。
( ２０１５年０１月０９日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

おはようニュース問答／戦後７０年「談話」逆流の台頭許さない

　晴男　安倍首相が、戦後７０年の歴史的節目の今年発表するという「７０年談話」が問題になっているね。歴史問題にきちんと向き合っているのかとの厳しい見方が国内外から上がっている。

「どう踏襲する」
　秋平　５日の年頭記者会見だね。「７０年談話」にかかわって記者から、アジア諸国に対する日本の「植民地支配」と「侵略」への反省とおわびを表明した「村山談話」（１９９５年）の表現を含め「どう踏襲するのか」と質問が出た。ところが安倍首相は「村山談話を含め、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいく」としか答えなかった。
　晴男　メディアは「村山談話を踏襲」と報じたけど、「植民地支配」と「侵略」というのが「村山談話」の核心部分だよね。それには触れず、「全体として引き継ぐ」なんて答えていないのに等しい。安倍首相の姿勢は不誠実きわまりないよ。
　秋平　まったくだ。安倍首相は国会答弁で、過去の侵略戦争の認識を具体的に問われると「侵略の定義は定まっていない」と言い放っている。靖国神社参拝という「村山談話」の精神を根本から踏みにじる行動を平然と行っているしね。

海外は見ている
　晴男　海外は安倍首相の姿勢をよく見ているね｡中国外務省の報道局長は｢日本の指導者が過去の侵略の歴史でどのような対外的な信号を発し､どのような態度を取るのか注視している｣と述べた｡韓国の外交安保首席秘書官も｢どんな宣言を出すのか注意深く見守る｣と語っている｡
　秋平　目を見張ったのは、５日の米国務省のサキ報道官の発言だね。安倍首相の年頭会見を受けて「村山元首相と河野元官房長官の（談話で）示した謝罪が、日本が近隣諸国との関係を改善するための努力のなかで重要な１章を刻んだ」と語った。後日、「歓迎」と態度を変更させたけど、米側として安倍首相の歴史認識に懸念を示していることを示している。
　晴男　ファシズムと軍国主義による侵略戦争の断罪の上に立つ戦後世界秩序を否定するものは、世界とアジアで生きていけないということだ。
　秋平　今年は過去の侵略戦争を肯定・美化する逆流の台頭を許さない年にしないとね。
( ２０１５年０１月０９日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

おはようニュース問答／戦後７０年、平和の日本・アジアをつくる年に

　藤乃　今年は第２次世界大戦終結から７０年の節目だわ。
　晴男　１９４５年５月にドイツが降伏し、８月にアジア太平洋戦争で侵略を重ねた軍国主義の日本が無条件降伏して、終わったんだったね。

平和秩序へ努力
　藤乃　戦後世界の平和秩序形成に向けたさまざまな努力が行われてきたわ。その年の１０月には国家間の紛争を平和解決する目的で国際連合が発足した。
　晴男　５５年には大国主導の軍事同盟にかかわらずに国連憲章に基づく世界秩序を目指す、アジア・アフリカ首脳会議などの非同盟運動も始まった。
　藤乃　和平への努力も結実したわね。昨年６月には、第２次大戦のヨーロッパ戦線での帰趨（きすう）を決めた連合軍のノルマンディー上陸作戦７０年式典に、敵同士としてたたかった米英ロシアと独の首脳らが一堂に会したんだよ。
　晴男　ナチス・ドイツの行為にたいする明確な否定が、国家の指導者の共通の土台にあるからね。敵同士だった国で戦没者の追悼ができるなんて、和平の象徴だ。日本を含むアジア・太平洋地域ではそこまでは至っていないね。
　藤乃　歴代の自民党政権はこの戦争を「侵略」と決して認めず、アジア諸国への謝罪・補償もまともに行っていないからね。
　晴男　さらに安倍政権は、侵略戦争賛美の靖国神社参拝に固執、解釈改憲で集団的自衛権の行使容認の閣議決定を具体化する法律を制定しようとしている。

対話の枠組みを
　藤乃　国連憲章第１章にあるように、戦後国際秩序の土台は侵略戦争の否定なのにね。今日の安倍政権の立場では東アジアできちんとした外交関係は築けないわ。
　晴男　とはいえアジアでも対話によって「紛争を戦争にしない」枠組みの基礎ができつつあるね。東南アジア諸国連合（ＡＳＥＡＮ）が国連憲章より徹底した武力行使放棄を定めた東南アジア友好協力条約（ＴＡＣ）を持っている。
　藤乃　北東アジア諸国がＴＡＣ型の条約を締結し「二度と戦争をしない」と誓った憲法９条の精神にのっとり平和の日本をつくる一年にしていきたいわね。
( ２０１５年０１月０８日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

マスメディア時評／歴史の教訓をどう踏まえるか

　第２次世界大戦の終結とアジア・太平洋戦争での日本の敗北から７０年となる２０１５年の幕開けです。歴史の節目の年明けにあたり、ほとんどの全国紙と地方紙が新年の社説で「戦後７０年」を中心テーマに掲げたり、議論の切り口にしたりしています。昨年末に発足した第３次安倍晋三政権の｢歴史認識｣をめぐって国内外で大きな注目が集まり、不信と警戒も高まっているさなかでもあります。過去の戦争とどう向き合い、未来にどうのぞもうとするのか。マスメディアの基本的な立場も浮き彫りにしています。

首相の「歴史認識」めぐり
　新年の各紙社説は「戦後７０年」を共通タイトルに歴史、政治、経済などさまざまな問題を論じていますが、「朝日」（３日付）は「忘れてはならないこと」、「毎日」（４日付）は「歴史と政治　自分史に閉じこもるな」で、安倍政権の過去の戦争にたいする認識や外交姿勢について問題を提起しました。
　一昨年の秘密保護法、昨年の集団的自衛権行使容認の閣議決定の賛否についてのマスメディアの立場の違いが、「歴史認識」でもあらわになっているのが特徴です。
　「朝日」は、安倍首相が戦後７０年で新たな談話を出すというが、「戦争責任を素通りしてしまったら、どうなるか」と問い、日本の植民地支配と侵略に痛切な反省とおわびを表明した「村山談話」（１９９５年）の「価値を台無しにすることは許されない」と強調。「毎日」も「首相の周辺には、戦前への反省を『自虐史観』と排する人が少なくない。こうした考え方は、日本が少しずつ積み重ねてきた『和解』への努力を踏みにじるものだ」と指摘します。両社説ともに過去の戦争の反省にたち、「平和主義の歩みこそ、日本は誇り、守っていかねばならない」（「朝日」）「誇るべきは戦後の歩み」（「毎日」）としていることも大切な視点です。
　これにたいし「読売」（３日付）は「誤解正す対外発信力を高めたい」などとのべ、安倍首相について「戦後体制を否定する『歴史修正主義者』ではないか、との極めて偏った見方」が欧米「一部メディアなど」にあることの方を問題視します。しかし、侵略戦争を美化する靖国神社参拝を一昨年に強行し、いまだに無反省なのが安倍首相です。第２次大戦における日本やドイツの侵略国の行為を正当化しようとする安倍首相の立場こそ、世界のなかで異質な存在であることは明らかです。この安倍氏を擁護する立場では、いくら「未来志向」といってもアジアや世界に受け入れられないどころか、未来を閉ざすことにしかなりません。
　昨年７月に第２次安倍政権が、憲法解釈を乱暴に変更し強行した、集団的自衛権行使容認の閣議決定に賛成した「読売」（１日付）が「安全保障法制の整備を確実に進めなければならない」とあおったり、「産経」（１日付）が、日本の「自立」のために改憲を「躊躇（ちゅうちょ）せずに決断」することをけしかけたり（論説委員長の論評）するなど、引き続き安倍政権の暴走を加速させる立場を強めていることは、「言論・報道機関」としての資格が根本から問われるものです。

翼賛報道への責任と反省は
　侵略戦争を美化・正当化しようとする安倍政権にたいして、従来の自民党支持層からも強い警戒と批判の動きが出て、自民党元幹部らが「安倍政権では危ない」と声を上げる状況です。安倍政権が「戦争する国」づくりに向けた動きを強め、改憲姿勢を露骨にするなかで迎えた今年は、戦後７０年という「歴史の節目」にとどまらず、戦後史の大きな転換の年となる様相を呈しています。
　日本の新聞は、戦前・戦中を通じて国民に真実を伝えず、「守れ満蒙　帝国の生命線」などと侵略戦争を推進するお先棒をかついだ深刻な歴史があります。「東京」（「中日」）（１日付）が、その過去に触れ「新聞の痛恨事は戦争を止めるどころか翼賛報道で戦争を煽（あお）り立てたこと」とのべ、「国民の側に立ち、権力を監視する義務と『言わねばならぬこと』を主張する責務」を強調したことは重いものがあります。
　第２次大戦で敗北したナチス・ドイツの新聞がすべて廃刊になったのにたいし、日本の新聞は戦後も同じ名前で存続するなど、戦争をあおった責任や反省を明確にしていません。いま戦争か平和かの歴史的な岐路に立つなかで、７０年前までと同じ過ちを繰り返さないのか。マスメディアの責任が鋭く問われています。
　（宮澤　毅）
( ２０１５年０１月０６日，「赤旗」)

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シリーズ戦後７０年を考える／ドイツ／ベルリン州政治教育センター、ヨアヒム・メアフォートさん

ナチスの反省、政治教育の原点
　ヒトラー政権が誕生したのは１９３３年１月。前年１１月の総選挙でナチス党が第１党になった結果でした。ナチスは政権につくや、国会議事堂炎上事件などを理由に共産党弾圧を開始。急速に独裁体制を固めました。
　こうした歴史への反省から戦後の西ドイツでは、国民の政治教育、歴史教育が重視されるようになりました。その推進役の一つが連邦政府と州政府の「政治教育センター」です。５２年に設立された「連邦祖国奉仕センター」が６３年に今の名称に代わりました。
　侵略戦争の反省に基づき、政治的・歴史的知識を国民が身につけることを公教育の一環として明確に位置づけ、促進する仕組みがつくられています。ベルリン州政治教育センターのヨアヒム・メアフォート氏に話を聞きました。

　私たちのセンターは①教材提供②事業支援③他団体と協力した取り組み―の三つをしています。センターが指定した教材は、定価の５～１０％で提供します。１９８９年の「ベルリンの壁」崩壊などをテーマにしたカードゲームもあります。学校教員以外の関心ある市民でも買えます。
　事業支援では、例えば〝戦後７０年でこんな事業をしたい〟と教会や労組などが申請してくれば、それを審査し、承認すれば財政支援を含めた協力をします。年５万～６万ユーロ（９００万円弱）の予算です。
　他団体との協力の一例は、ベルリン自由大学と共催した連続講演会です。「ナチス時代の報道機関」「旧東独反対派の活動」などのテーマで開いています。講演と討論が各１時間で、一般市民も参加します。
　学校では模擬選挙も実施します。（キリスト教民主同盟や左翼党など）現存する政党名を使い、選挙運動や投票をします。
　ベルリン州センターの職員は８人。年間予算は１００万ユーロ（約１億５千万円）です。労働者が政治教育の催しに参加するので休暇が欲しいと言えば、企業は反対できません。これは連邦特別休暇法など国の法律で定められています。
　ヒトラーのＮＳ（国家社会主義）の過去があったことが、今の政治教育の大きな契機です。ドイツが欧州に大きな悲劇を引き起こしたことが明らかになり、それが再発しないように、何らかの方法で歴史と向き合わなければならない。それが政治教育の出発点です。
　紆余（うよ）曲折はありましたが、一つの転機となったのが７６年に合意された「ボイテルスバッハ・コンセンサス」（注）です。
　ナチスの問題は〝あれは悪かった〟と確定しています。この問題は出発点となる本質的要素ですが、それだけでなく、ベルリンの政治、西独や東独の歴史、日本を含む諸外国のことなど、政治教育の課題は、さまざまです。論争問題では私たちの立場は示しません。
　ドイツでは教育は各州が責任を負います。各州の政治教育センターも独自の権限を持ち、連邦政治教育センター（ＢＰＢ）の下部組織ではありません。
　旧西独地域で政治教育を疑問視する声はありません｡旧東独では､旧体制時代に体制支持を強いた「国家市民教育」を想起するとの批判もあります。しかし政治教育は、ナチス、ファシズム、不寛容、人種差別、独裁に反対するというもので、特定の政策、宗教、党派を支持するといったものではありません。

（注）ボイテルスバッハ・コンセンサス…①期待される見解で生徒を圧倒しない②論争問題は論争があるものとして扱う③個々の生徒の利害・関心を重視する―の３原則
(２０１５年０１月０４日，「赤旗」)

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十五年戦争期の京大学生運動／岩井忠熊著／評者広川禎秀大阪市立大学名誉教授

戦争とファシズム断罪の信念
　安倍内閣による改憲の現実的脅威が強まるなかで、日本の戦争とファシズムに抗した思想、運動への関心も高まっている。本書は、未曽有の侵略とファッショ体制に抗し、自由を守ろうとした京都大学学生とその周辺の人々の抵抗の歴史をたどり、今日の危機に立ち向かう人々の糧となることを期待してまとめられた書である。
　著者の岩井忠熊氏は、１９４３年に京大文学部史学科に入学し、その年に学徒出陣、九死に一生を得て、戦後大学に復学し、日本近代史研究の分野で多くの業績をあげた研究者である。著者にとって戦争体験の意味は重く、その学問的姿勢や天皇制批判につながり、本書にも戦争とファシズム断罪の信念が脈打っている。
　本書は、第１章「二〇世紀日本の戦争と平和」、第２章　「京都大学とは」、第３章「学生運動の登場」、第４章「京大学生運動の展開と弾圧」、第５章「人民戦線の周辺」となっている。著者は、学問の自由擁護の滝川事件と京大内外の学生運動にページを割いてその歴史的意義を説く（第３・４章）。つづいて３０年代の反ファッショ運動の創意的な合法性確保の史実なども発掘しつつ、治安維持法による犠牲者の広がりに弾圧の凶暴化を説き、その犠牲が戦後民主主義に生かされると展望する（第４・５章）。
　今日、スターリン体制の否定的影響の全貌も明らかにされつつある。本書は、犠牲を恐れない京大学生や周辺の諸抵抗、さらには戦時下の抵抗の全体像を歴史のなかに正確に位置づける課題がますます大きくなっていることを示しているといえよう。

　いわい・ただくま　２２年生まれ。立命館大学名誉教授。『｢靖国｣と日本の戦争』ほか。
( ２０１５年０１月０４日，「赤旗」)

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主張／戦後７０年の年明け／歴史に向き合い未来開く責任

　２０１５年の新しい年の門出です。日ごろのご購読とご支援に感謝し、新年のごあいさつを申し上げます。日本共産党は昨年末の総選挙で画期的に躍進し、衆参両院で３２人の議員団に前進しました。暴走を加速する第３次安倍晋三内閣と対決し、対案を掲げて、国民的共同を大きくすすめるため、さらに力を尽くす決意です。
　今年は、アジア・太平洋地域で侵略を重ねた軍国主義の日本の敗北から７０年です。歴史に真摯に向き合い、痛苦の教訓にたって未来を切り開けるかどうか。節目の年に政治の姿勢が問われています。

戦後の原点に逆らう暴走
　１９４５年の８月、アジア・太平洋戦争での日本の無条件降伏により、第２次世界大戦は終結しました。ドイツの降伏は先立つ５月です。この年は、アメリカ、イギリスなど連合諸国と世界の民主勢力が、日独など侵略国家を破った記念すべき年として世界史に刻まれています。６月に国際連合が発足し、世界の平和秩序形成に道を開いた年とも記録されています。
　昨年６月、第２次大戦のヨーロッパ戦線での帰趨を決めた連合国軍のノルマンディー上陸作戦７０年式典には敵同士としてたたかった米英ロシアと独の首脳らが一堂に会しました。欧州ではこのような記念日に各国首脳が顔を合わせ、戦争犠牲者の追悼ができる―。矛盾を抱えながらも、ドイツ自身を含めナチス・ドイツの行為にたいする明確な否定が国家の指導者の共通の土台にあるからです。
　アジア･太平洋地域はどうか｡日本の侵略戦争と植民地支配によって３１０万人の日本国民とともに２０００万人を超すアジアの人々を犠牲にしたにもかかわらず､日本を含むアジア･太平洋の首脳が過去の戦争での式典に集まることなど考えられない状況です｡
　なぜか。日本は降伏のさい「世界征服の挙に出づるの過誤を犯さしめたる者の権力及勢力は永久に除去」とするポツダム宣言を受諾し、戦争指導者を断罪した東京裁判も受け入れました。しかし歴代自民党政権は、この戦争を「侵略」と認めることを避け続け、アジア諸国への謝罪・補償もまともに行っていません。過去の戦争を直視しない自民党政権の姿勢が、アジア諸国との和解や対話のうえで障害になってきたからです。
　今日事態をさらに深刻にしているのが､歴代自民党政権とも異質な､侵略戦争を正当化する立場の安倍首相が政権についていることです｡侵略戦争賛美の靖国神社参拝を強行し､米政府からも｢失望｣を表明される安倍首相では､中国や韓国とのきちんとした外交関係も築けません｡侵略戦争の断罪の上に築かれた戦後国際秩序を根本から覆す安倍政権のもとでは､日本がアジアでも世界でもまともに生きていけないのは明らかです｡

憲法９条を輝かせてこそ
　戦後の再出発にあたって日本は「二度と戦争をしない」ことを誓い憲法９条を決めました。９条は世界への公約です。９条を壊し日本を「戦争する国」にすることを狙う安倍政権の暴走を阻むことは国際的にも重要な使命です。
　日本共産党は戦前も戦後も、文字通り命がけで反戦平和を掲げてきました。戦後７０年の節目、この党とともに、「戦争する国」づくりを阻止し、希望ある平和な未来を切り開こうではありませんか。
( ２０１５年０１月０１日，「赤旗」)

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ドイツ／ザクセンハウゼン強制収容所記念館

侵略問い続けて

　２０１５年は第２次世界大戦終結から７０年。日本では安倍内閣の下、侵略戦争美化の動きが強まっていますが、日本と並んで侵略戦争を強行したドイツは、その歴史にどう向き合っているのか｡現地を訪ねました｡
　ベルリンで坂口明記者

　戦後７０年間、ナチス政権による侵略戦争の歴史に直面する取り組みを強めてきたドイツ。戦争の歴史を刻む施設が、歴史教育で重要な役割を果たしています。その一つが、首都ベルリンの北にあり、強制収容所体制の中心となったザクセンハウゼン強制収容所の記念館・博物館です。
　ベルリンの通勤電車の終点、オラニエンブルク駅。氷点下５度近い極寒の中、冬山ハイクに行くような防寒服姿の若者が続々と降り、徒歩約２０分の収容所跡に向かいます。
　主要施設は、高い塀が囲う一辺１・４㌔弱の正三角形の土地。面積８０万平方㍍、東京ドーム１７個分の広さです。強制収容所の有名な標語「働けば自由になる」を掲げた「Ａ塔」の鉄の門をくぐった見学者は、順路表示もない広大な施設に、音声ガイド機を付けて散っていきます。

祭典の影で
　囚人労働で収容所の建設が始まったのは、ベルリン・オリンピックが開かれた１９３６年夏。華やかな祭典の影で、侵略戦争を支える大量弾圧体制づくりが進んでいました。
　同収容所の特徴を記念館広報部長のホルスト・ゼフェレンス博士が語ります。
　「それまでの収容所は既存施設の再利用でしたが、ザクセンハウゼンは全く新しい設計で、それ以後の収容所のモデルとして建設されました。正三角形にしたのは、Ａ塔の監視塔から機関銃１丁で１万人を支配できるからです。しかし、この形では囚人の急増に対応できず、結局モデルになりませんでした」
　今は調理場、人体実験棟、監獄などが残り、展示室になっています。併設の強制労働工場の隣にはガス室跡が。どれだけ安く大量殺人ができるか、特許のない薬剤を使った実験が行われたといいます。
　この収容所には多数の著名な囚人が放り込まれました。その一人がマルチン・ニーメラー牧師。〝ナチが共産主義者を連れ去ったとき、私は沈黙していた。社会民主主義者を閉じ込めたとき、何も言わなかった。…彼らが私を逮捕したとき、抗議できる人は誰もいなくなっていた〟の詩で有名です。その詩の通り、共産党員、社民党員、ユダヤ人らが次々と収容され、最終的に２０万人以上が抑留されました。

　ナチス…アドルフ・ヒトラーが率いた極右政党、国家社会主義ドイツ労働者党（ＮＳＤＡＰ）の略称。「ＮＳ」とも略される

過去と向き合わないと民主主義の発展はない

　１９３９年のポーランド侵攻開始の口実とされたグライウィッツ事件でも、ここの囚人にポーランド軍風の服を着せ、ドイツを攻撃したとみせる、でっち上げが行われました。
　ナチス時代、主要な収容所は３０カ所、それに付属する小規模収容所は１０００カ所以上も。ドイツでは今、８主要収容所跡が記念館となっています。

自発的学び
　ザクセンハウゼンの記念館はブランデンブルク財団の管理下にあり、財団の年間予算は５００万ユーロ（７億５千万円）。「その半分ずつを連邦政府と州政府が出し、公教育の歴史教育の一部となっています」（ゼフェレンス氏）
　「先生が高校生を引率しているようなグループが多いが、授業の一環ですか」と尋ねると､こんな答えでした｡
　「強制されると人は学ばないので、訪問が法的に義務付けられていることはありません。学級で来る時も、あくまで自発的に、有志として来ます」
　同氏は最後に、こう語りました。
　「否定的な側面も含め自国の歴史全体に向き合い、暗黒の部分も否定しないことは、今の民主主義社会を発展させることに役立ちます。これを日本の皆さんに伝えたい」

おもなできごと

１９１８年　ドイツ１１月革命で皇帝退位
　　　　ワイマール共和国が成立
　３２年　国会選挙でナチスが第１党に
　３３年　ヒトラーが首相になり政権掌握。国会炎上事件で共産党弾圧開始
　３６年　ベルリン・オリンピックザクセンハウゼン強制収容所建設開始
　３９年　ドイツがポーランド侵略
　　　　英仏が対独宣戦布告し、第２次世界大戦勃発
　４２年　ユダヤ人移送・虐殺計画を決定（ヴァンゼー会議）
　４３年　独軍がスターリングラード攻防戦でソ連に敗北
　４４年　ヒトラー暗殺未遂（７月２０日事件）
　４５年　ヒトラーが自殺。ドイツが無条件降伏。米英仏ロが分割占領
　４９年　ドイツ連邦共和国（西独）、ドイツ民主共和国(東独)が成立
　６１年　東独が「ベルリンの壁」構築
　６３年　連邦祖国奉仕センターが｢連邦政治教育センター」に
　８９年　「ベルリンの壁」崩壊
　９０年　ドイツ再統一

戦争の記録、街中に

　ベルリンにはヒトラー政権の侵略戦争や弾圧を記録する施設が、それぞれ由緒ある場所に多数あります。
（Ａ）「テロのトポグラフィー（地誌学）」は、戦争と恐怖政治（テロ）を進めたナチス幹部の責任を追及する博物館。親衛隊(ＳＳ)・ゲシュタポ（秘密国家警察）本部の跡地に新設されました。ユダヤ人追放・大量殺害計画を執行したアイヒマン元ゲシュタポ・ユダヤ人問題課課長が、１９６１年の裁判で行った証言などの音声記録も。「自分は命令に従っただけ」との釈明が怒りを買います。
（Ｂ）中心部のブランデンブルク門近くにユダヤ人犠牲者の記念碑と情報センターが。高さの異なる碑が２７１１本並びます。地下に記念館があります。
（Ｃ）抵抗運動記念館は、１９４４年７月２０日の軍高官らによるヒトラー暗殺・政変をめざした「ワルキューレ作戦」などの記録を展示。関係者が射殺された軍事務所跡にあります。
（Ｄ）ベルリン南西のヴァンゼー会議記念館は、４２年にナチス指導部がユダヤ人移送・虐殺計画を決めた場所（写真は、同会議が開かれた部屋）。ヒトラーの肉声も含め、同計画関連の生資料を展示しています。
（Ｅ）ベルリン東部のドイツ・ロシア博物館は、４５年５月にドイツ降服文書が署名された場所(写真は､その部屋)｡東部戦線の実態が分かります。
（Ｆ）観光客が集まる博物館島の広場には、青年共産党員バウムらの抵抗をたたえる碑が。４２年５月、ヒトラー政権は、ソ連侵攻を正当化するため、ソ連非難の展覧会を、ここで開きます。バウムらは、それに抗議して虐殺されました。

徹底的「非ナチ化」

　戦後のドイツでは非軍事化、非集中化、民主化とともに「非ナチ化」を徹底する方針（「四つのＤ」）がとられました。非ナチ化は次第に法制化され、今では、こんな状態です。
　ナチス礼賛は刑法１３０条の民衆扇動罪に問われます。▽「ハイル・ヒトラー」と手を挙げるナチ式敬礼をする▽ナチスのシンボルであるカギ十字（ハーケンクロイツ）を掲げる─などは違法です。
　ヒトラー著『わが闘争』は出版禁止です。（ただし２０１５年に著作権が切れる）
　ナチズムの戦争犯罪に時効はありません。（１９８０年成立の法律に基づく）
　ネオナチ政党のドイツ国家民主党（ＮＰＤ）を禁止するかどうかの裁判が連邦憲法裁判所で継続中です

ベルリン州政治教育センター、ヨアヒム・メアフォートさん

周辺国との平和外交

　ドイツ（旧西ドイツ）は北大西洋条約機構（ＮＡＴＯ）の一員ですが、侵略した周辺諸国との平和外交を早くから進めてきました。
　ウィリー・ブラント首相（１９６９～７４年在任）は戦時中ナチスに国籍を奪われて北欧で活動した抵抗運動の闘士。しかし首相になると７０年にポーランドの首都ワルシャワのユダヤ人ゲットー跡でひざまずいて黙とう。過去のユダヤ人虐殺を謝罪しました。
　リヒャルト・ワイツゼッカー大統領（８４～９４年在任）は「過去に目を閉ざす者は未来に対しても盲目となる」などの演説で知られます。
(２０１５年０１月０４日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

メディアをよむ／仲築間卓蔵／ちょびひげサザンの警鐘

　総選挙での日本共産党の大躍進。新しい政治がすぐそこにきている気配です。そんな空気は、年末年始の番組にも。「紅白歌合戦」でサザンオールスターズのサプライズ出演が話題を集めました。桑田佳祐さんが、ちょびひげをつけて登場。独裁者ヒトラーのように見えます。
　歌は「ピースとハイライト」。知っておくべき現代史を教科書で教えてもらえないことへの疑問が吐露されました。「解釈改憲」への抗議ともとれる歌詞に目をみはった人は多いでしょう。琉球大学の高嶋伸欣（のぶよし）名誉教授はインターネットのブログで「サザンの今回の行動は、私たち〝ゆでガエル〟になりかかっている者への警鐘でもあるように思えます」と。
　ＮＨＫアーカイブスは「戦後７０年　吉永小百合の祈り」でスタートしました。焦点をあてたのは、吉永さんが３０年近く続けてきた原爆詩の朗読です。吉永さんは、東京大空襲の３日後に誕生。インタビューで「生まれてすぐに防空壕（ごう）に入ったというのを母から繰り返し聞かされました。ずっと戦後であってほしい」と切々と語る姿が感動的でした。
　ＮＨＫスペシャルのシリーズ「戦後７０年ニッポンの肖像」のプロローグも、見ごたえがありました。戦後７０年の歩みを映像でたどりながら、タモリ、堺雅人、中園ミホ、半藤一利の各氏がコメント。新憲法公布を祝賀運動会で歓迎する国民の映像に、当時の空気が伝わってきます。
　注目したのは番組終盤のＮＨＫ世論調査。「今後、日本が最も大切にすべき社会は？」の問いで最も多かった答えは「戦争のない平和な社会」でした。２位を大きく引き離しています。この結果がシリーズの基調となることを期待したい。
　今年は戦後７０年の節目の年。何かと批判の多いＮＨＫですが、どんな番組を見せてくれるか注目です。
　（なかつくま・たくぞう＝元ワイドショープロデューサー）
(２０１５年０１月１１日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

「ハートネットＴＶ」シリーズ戦後７０年／Ｅテレ５、６日／障害者や高齢者福祉を考える

　福祉問題を考えるＮＨＫＥテレの「ハートネットＴＶ」は、５、６日に「シリーズ戦後７０年」（後８・０）を放送します。
　戦後７０年を迎え、日本社会は超高齢化や貧困・格差、障害のある人たちへの差別などさまざまな福祉の課題にぶつかっています。日本の福祉は７０年前の終戦に出発点があると位置づけ、福祉の過去をひもとき、未来へのヒントを探ります。
　第１回は、障害のある人たちの歩みを振り返ります。戦争中、障害者は「穀（ごく）つぶし」「非国民」などと呼ばれました。戦後は傷痍（しょうい）軍人たちの患者運動など当事者の訴えによって、公的な福祉が始まっていきます。
　その後、教育や働く場の獲得など、当事者の声が障害者の権利を少しずつ切りひらいてきました。日本の障害者運動をリードしてきた日本障害者協議会代表・きょうされん専務理事の藤井克徳さんとともに障害者福祉の戦後を振り返ります。
　第２回は、日本が高齢化とどのように向き合ってきたのかについて振り返ります。
　１９７３年、７０歳以上の人は無料で医療を受けられる老人医療費無料化が始まりました。もともと貧困と多病に苦しんでいた岩手県沢内村が、村民の生命を守るための独自の政策として実施し、全国に広がったものでした。
　当時沢内村では、無料化とともに高齢者の健康管理を徹底して行うことで、村民の健康を守りながら医療費を抑えるという成果を挙げていました。沢内村の取り組みから、高齢化にどう向き合っていけばよいのかを探ります。
　出演はサヘル・ローズさん、諏訪中央病院名誉院長の鎌田實さん。
( ２０１５年０１月０３日，「赤旗」)

【ＴＯＰ】

【見出し】

【シリーズ戦後70年】

【12月見出し】

【１２月本文】

列島だより／高知／牧師招き考える会

民主主義教育実践こそ／研究者や教師ら討論

試写室１５／テレビが描いたもの／平和と命／詩人秋村宏／安倍談話砕く２作品

先の戦争考えること大切／天皇、誕生日で会見

放送この１年／戦後７０年／加害の歴史に迫れたか

自民「歴史本部」が初会合

歌壇／渦巻き現象から身を離して

朝の風／平和記念館計画の再起動を

創立６０年、平和実現訴え／世界平和アピール七人委員会

山口放送「奥底の悲しみ」／地域に眠る戦争の傷痕／佐々木聰ディレクターに聞く

選挙のページ／手をつなぎ平和をつなぐ／安保関連法に反対するママと有志の会＠兵庫阪本直さんの訴え

芸能テレビ／涙と笑顔、紅白歌合戦見どころ／戦後７０年の原点見つめて

１５回顧／美術／戦争画通し時代考える

今年の漢字は「安」／「安保」・くらしの不安など反映

潮流

１５回顧／演劇／歴史に向き合う表現者

１５回顧／音楽／戦争反対つないだ響き

戦争・格差ない「未来」を／高校生ら１７００人、銀座パレード

シリーズ戦後７０年を考える／これが強制労働の現場／ハルビン師範大学専任講師菊池実さん

シリーズ戦後７０年を考える／これが強制労働の現場／中国・東寧要塞跡

新基地めぐる代執行訴訟／海上の「銃剣とブルドーザー」／翁長知事の意見陳述／要旨

相撲博物館で「大相撲と戦争」展／将来奪われた力士たち／出征地が機密、戦死者数不明

戦後７０年プロジェクト／高校生が集会／１３日都内で

東京から平和発信を／小竹議員が知事ただす／都議会

日本記者クラブでの不破前議長の講演／『前衛』２月号に掲載

２千万の「戦争いや」集め戦争法廃止させましょう／母親連絡会が「赤紙」宣伝

ひと／国民平和大行進の映画を製作山口逸郎さん（８４）

主張／「１２・８」７４年／敗戦７０年の年に決意を新たに

潮流

立憲主義を守る／戦争法強行後も続く出版

広げよう２０００万署名／私もサイン／岐阜市議（無所属クラブ代表）松原徳和さん／若者の声に応えたい

取材メモ／平和あきらめない

代執行訴訟／翁長知事の陳述書全文

潮流

沖縄・辺野古代執行訴訟／翁長知事の冒頭意見陳述

辺野古代執行訴訟／問われる日本の民主主義

主張／辺野古新基地訴訟／日本の未来切り開くたたかい

あす新基地建設代執行裁判／「基地ノー」に込められた沖縄の歴史と県民の思い／裁かれるべきは安倍政権

【11月見出し】

【１１月本文】

インタビュー戦後７０年／劇作家・演出家平田オリザさん／レジスタンスの時／しなやかな若者に希望

芸能テレビ／映画「サクラ花―桜花最期の特攻―」主演大和田健介さん／体に刻んだ戦争の恐怖

『アジア・太平洋戦争辞典』を編集して／研究の進展とり入れ解説／高岡裕之

野党共闘広げ戦争法廃止を／「安倍政権うちとろう」／小林節氏が講演／長野・松本

辺野古代執行訴訟／訴権の乱用、違憲は明らか／県の答弁書・書面が批判

憲法は戦後の出発点／学生・教員ら討論／吉田総長が講演／京都・立命大

８０人が心一つに／平和歌声フェス／静岡・伊東市

真実見つめ平和の礎に／戦時中の強制労働でシンポ／長野

全商連青年部協議会が総会／業者青年「平和でこそ繁盛」／結成から４０年

被爆・戦後７０年を合唱／日本のうたごえ祭典始まる／愛知

民主主義の目覚め正念場／憲法記念秋の集い／京都

中国脅威論と戦争法学習会／長野・松本

「９条の会」が軍馬の歴史展示／前橋

第１１回日本放送文化大賞／テレビ・奥底の悲しみ（山口放送）／ラジオ・ＨＡＰＰＹ ＨＯＵＳＥ（福岡・クロスＦＭ）

まど／アインシュタインの宿題

戦争法廃止へ運動の強化を／日中友好協会第１回理事会

戦後７０年ラジオの歩み／復活のカギは地方と若者

法政大学学徒出陣資料展／遺品や当時の新聞など展示

朝の風／歴史認識と沖縄の平和フォーラム

地域発ラジオの力／未完の五線紙～戦没作曲家・紺野陽吉が託した音楽／山形放送報道部鈴木啓祐

戦後を考える講演会ひらく／愛媛大学学生祭

東アジア平和の枠組みを／九条科学者の会が講演会

経済・文化人、安保法制の問題点を検証／小林節氏が講演／浜松

ポーランド映画祭あすから２０日まで

憲法を基礎に学校つくろう／合同教研全道集会

手段選ばぬ政府を批判／新基地阻止、赤嶺議員が決意／ＢＳ番組出演

貧困・格差テーマ／２７日から沖縄で全国セミナー

平和・子育て・福祉充実の推進を／国の悪政の防波堤に／党埼玉県議団が予算要望／上田知事に

芸能テレビ／スポット／歌手普天間かおりさん／私の軸は〝平和〟

シリーズ戦後７０年を考える／７３１部隊は何をした／７０年前の姿現した遺構／中国・ハルビン

辺野古新基地／何でもあり／目に余る国の無法／生粋の自民、私も怒る／元自民党県連会長外間盛善さん

七十年の孤独／川野里子著／評者近藤みゆき実践女子大学教授

地域の人と夢・希望開く／障害者支援のまつり／岐阜・中津川

試写室／こころの時代私の戦後７０年 鎌田慧／ＮＨＫＥテレ８日前５・０

『検証安倍談話』出版記念会／志位委員長のあいさつ

潮流

第１１回日本放送文化大賞／テレビ・奥底の悲しみ（山口放送）／ラジオ・ＨＡＰＰＹ　ＨＯＵＳＥ（福岡・クロスＦＭ）

試写室／こころの時代私の戦後７０年　鎌田慧／ＮＨＫＥテレ８日前５・０

文化／ＩＺＵ　ＰＨＯＴＯ　ＭＵＳＥＵＭ「戦争と平和」展／「国策宣伝」に変容した報道写真

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