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【12月見出し】

*           第66回NHK紅白歌合戦/長崎、横浜など中継交え/吉永らが平和メッセージ

*           試写室15/テレビが描いたもの/戦後70年/評論家石子順/機銃掃射の強烈さ

*           試写室15/テレビが描いたもの/時代劇/作家鶴岡征雄/切れ目なく質高く

*           試写室15/テレビが描いたもの/挑む女性/詩人美異亜/決断して生きること

*           試写室15/テレビが描いたもの/企業ドラマ/ジャーナリスト諌山修/もの作りの熱い思い

*           試写室15/テレビが描いたもの/農村の再生/ライター荻野谷正博/確かな可能性示した

*           2015年政界語録/憲法学者「違憲です」

*           主張/個人消費の低迷/政治の抜本的対策が不可欠だ

*           国際コンクール「日本賞」50年/民主主義問う作品が評価/グランプリは「キミの心のブラック・ピーター=v

*           試写室15/テレビが描いたもの/若者たちへ/ライター口山衣江/生きづらさと交流と

*           放送この1年/NHK/「権力からの自立」遠く

*           NHK経営委、沖縄で「語る会」開く/視聴者から質問・要望次々

*           朝の風/TPPの危険性と巨大企業

*           これじゃ「軽減」詐欺/中身は4.4兆円大増税/消費税10%中止しかない

*           戦場で書く 火野葦平と従軍作家たち/渡辺考著/評者牛久保建男文芸評論家

*           戦争法廃止のアピール採択/ヒロシマ革新懇総会

*           「戦争法案審議」/テレビはどう伝えたか/「放送を語る会」が調査

*           おはようニュース問答/政府の番組介入をBPOが再び批判したね

*           テレビ局への圧力目に余る/メディア関係者らアピール

*           週間データ/語録/2015年12月7日〜13日

*           政権圧力「強い危惧」/NHKには放送倫理徹底勧告/BPO

*           NHK報道の問題点を指摘/秋田で学習会

*           土地購入計画を撤回/経営委が不明点指摘/NHK

*           波動/「意見書」の鋭い問いかけ/隅井孝雄

*           政府・自民党の放送介入を批判/BPO意見書の意義/元BPO統括調査役藤田文知さん

*           岸井氏攻撃許さない/意見広告めぐり声明/JCJ

*           相田洋の仕事/1/「母と歩いた道」/引き揚げ体験たどる

*           相田洋の仕事/2/自画像を撮る/敗戦後に生き方の原点

*           相田洋の仕事/3/公共放送として/視聴者の満足度に応え

【12月本文】

第66回NHK紅白歌合戦/長崎、横浜など中継交え/吉永らが平和メッセージ

 今年の「紅白歌合戦」は、大がかりな演奏が続きます。AKB48は引田天功の演出によるイリュージョンに挑戦。水森かおりは伝説の生き物をモチーフとした巨大衣装を披露します。小林幸子はニコニコ動画とのコラボレーションで新たな衣装伝説をつくります。
 福山雅治はパシフィコ横浜から、BUMP OF CHICKENは千葉市の幕張メッセから中継します。
 戦後70年企画が二つ用意されています。「紅組特別企画」として、MISIAが故郷・長崎の平和公園から、平和へのメッセージを歌いあげます。「原爆詩」の朗読をライフワークとする女優・吉永小百合が、「戦争を風化させてはいけない」の思いを込めて、VTRメッセージを寄せます。
 ゲスト審査員には、男子フィギュアスケートの羽生結弦、『火花』で芥川賞を受賞した又吉直樹ら、俳優、作家、スポーツ選手10人が選ばれています。

白組                                 紅組
郷ひろみ (28)  2億4千万の瞳               大原櫻子 (初)  
Sexy Zone
B ニッポンCha−Cha−Chaチャンピオン 伍代夏子 (22)  東京五輪音頭
三山ひろし (初) お岩木山                   乃木坂46 (初)   君の名は希望
SEKAI NO OWARI
Aプレゼント              E−girls BDance Dance Dance
徳永英明 
I  時代                       坂本冬美 (27  )  祝い酒
【特別企画】アニメ紅白
山内恵介 (初) スポットライト                  μ's (初) それは僕たちの奇跡
星野源 (初)   SUN                      AAA 
E   恋音と雨空
ゲスの極み乙女。 (初)私以外私じゃないの          島津亜矢 
A  帰らんちゃよか
ゆず 
E      かける                      藤あや子 (21)    曼珠沙華
氷川きよし 
O  男花                       miwa B fighting−φ−girls
細川たかし (39)心のこり                     和田アキ子 (39)   笑って許して
関ジャニ∞ 
C前向きスクリーム!                天童よしみ S      人生一路
三代目 J Soul Brothers 
C Summer Madness    NMB48 B 365日の紙飛行機
福山雅治 
G デビュー25周年スペシャルメドレー       水森かおり L   大和路の恋
いきものがかり 
G    ありがとう
【スペシャルコーナー】ザッツ・SHOWTIME〜星に願いを〜
TOKIO (22)AMBITIOUS JAPAN!           椎名林檎 
B    長く短い祭
嵐 
F New Year’s Eve Medley 2015
EXILE 
J EXILE 紅白スペシャル2015          AKB48 G 10周年記念メドレー
ゴールデンボンバー
C  女々しくて               Superfly (初) Beautiful
BUMP OFCHICKEN(初)    ray             西野カナ 
E       トリセツ
五木ひろし (45) 千曲川                     石川さゆり (38)津軽海峡・冬景色
V6 
A ザッツ!V6メドレー                      Perfume GPick Me Up
【特別企画】小林幸子「千本桜」
X JAPAN 
E メドレー〜We are X!〜
【紅組特別企画】MISIA オルフェンズの涙
美輪明宏 
C ヨイトマケの唄                     レベッカ (初)     フレンズ
SMAP (23)This is SMAPメドレー          今井美樹 
APIECE OF MY WISH
森進一 (48)おふくろさん                   高橋真梨子 
B五番街のマリーへ2015
近藤真彦 
Iギンギラギンにさりげなく            松田聖子 R 赤いスイートピー

 きょう31日(NHKテレビ、ラジオ
@ 後7・15)。名前のうしろの丸数字は出場回数。
(
2015年12月31日,「赤旗」)

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試写室15/テレビが描いたもの/戦後70年/評論家石子順/機銃掃射の強烈さ

 戦後70年の節目にテレビが捉えた「戦争と平和」。本紙「試写室」扱いでドキュメンタリーが13本、ドラマは「レッドクロス 女たちの赤紙」(TBS)など2本だった。
 TBS「千の証言 私の街も戦場だった」が強烈だ。米軍は爆撃だけでなく低空から戦闘機で機銃掃射もした。ガンカメラが加害者の眼となって撮影する!1秒70発の銃弾が尾を引いて地上で炸裂する。139市町村の犠牲者の顔が見えてくる。なぜ米軍機は執拗に機銃掃射をしたのかと追っていくが怒りがほしかった。
 原爆投下というアメリカの戦争犯罪に関わるドキュメント「きのこ雲の下で何が起きていたか」(NHK)は、2枚しか残っていない被爆直後の写真に映った被爆中学生から生き残った人を探していく。「いしぶみ」(広島テレビ)は、全滅した広島二中生徒の遺族の手記を綾瀬はるかが悲しみを抑えて朗読する。
 ドキュメント’15「戦争孤児たちの遺言」(日本テレビ)は戦争で親を失った孤児たちの悲惨な人生に焦点をあてた。「女たちの太平洋戦争」(NHK)は戦場にいった2万人ともいわれる従軍看護婦の悲劇を掘り起こした。「レッドクロス」は戦後中国大陸に残された赤十字看護婦たちの生と死をドラマ化した点に注目した。
 NHKのETV特集「障害者虐殺70年目の真実」は、ナチスによるユダヤ人大虐殺の前に障害者約20万人虐殺があった事実。医学界が率先したことで、現在の医師たちが遺族に謝罪する勇気を見せた。
(
2015年12月30日,「赤旗」)

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試写室15/テレビが描いたもの/時代劇/作家鶴岡征雄/切れ目なく質高く

 テレビ時代劇はNHKが大河ドラマをはじめ木曜時代劇、BS時代劇など一年を通して切れ目なく放映、健闘した。民放は寡作ながら、質の高いスペシャル版を3社で4本。製作本数は依然としてお寒い限りだが、時代劇人気復活の先鞭役を期待したい。以下、( )内は主演者と回数。
 TBS系「水戸黄門」(里見浩太朗)、朝日系は夢枕獏原作「陰陽師(おんみょうじ)」(市川染五郎)、フジ系は池波正太郎原作の「剣客商売 陽炎の男」(北大路欣也)と「鬼平犯科帳」(中村吉右衛門)の力作2本。唯一の新作が「陰陽師」。
 NHKは新作時代劇に積極的だ。
 木曜時代劇は葉室麟・原作「風の峠」(柴田恭兵・6回)、戦国武将・前田慶次が主人公の「かぶき者慶次」(藤竜也・11回)、畠中恵・原作「まんまこと〜麻之助裁定帳」(福士誠治・10回)、浅田次郎・原作「一路」(永山絢斗・9回)、宮部みゆき・原作「ぼんくら2」(岸谷五朗・7回)
 「一路」は、参勤交代行列を差配する家系の嫡男が父の急死で大役に挑む波乱万丈物語。19歳の若侍が捨て身の覚悟で八面六臂の大活躍をする感動編。
 BS時代劇は、池波正太郎原作「雲霧仁左衛門2」(中井貴一・8回)から、山本周五郎原作「子連れ信兵衛」(高橋克典・6回)まで、粒ぞろいの5編。
 時代劇の面白さは、人間の正体が丸裸になって見える点だ。ウソ偽りの多い世の中で、正義を貫く清らかな武士に出会えるのもお楽しみ。
(
2015年12月30日,
「赤旗」)

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試写室15/テレビが描いたもの/挑む女性/詩人美異亜/決断して生きること

 今年は、社会や職場や家庭などの問題に挑む女性のドラマにひかれた。
 離婚した企業法務専門の弁護士が、離婚相談室を設立する「全力離婚相談」(NHK、脚本・小松與志子、井出真理)。持ち込まれる問題を解決しながら疎遠となった娘との関係を育む。ここには、諦めなければ、壊れた関係も修復できるという思いがあった。
 人気小説家が、次作の重圧に負けゴーストライターを受け入れてしまう「ゴーストライター」(フジ系、脚本・橋部敦子)。他者に従って出した答えも自分の下した結論と、全てを受け止める主人公。認めるから過ちを正せることを描いた。
 どんなことも断れない派遣社員が、上司とランチ交換をする「ランチのアッコちゃん」(NHKプレ、脚本・泉澤陽子)。上司の健康を考えお弁当を作る主人公。思いやりは、心を成長させることを示した。
 「花咲舞が黙ってない」(日本系、脚本・松田裕子)では、銀行の不正や悪事に果敢に立ち向かう行員に感化され、変わっていく人々がいた。どんな厳しい環境も変えていけることを提唱した。
 問題から逃げずに対峙することで道は開けていく。生きることとは、決断をすることの繰り返しなのだろう。
 2015年戦争反対≠ニいろいろなところで女性が立ち上がった。現実社会の半歩先を描くというドラマ。来年から、どのような女性が登場してくるのか楽しみだ。
(
2015年12月26日,
「赤旗」)

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試写室15/テレビが描いたもの/企業ドラマ/ジャーナリスト諌山修/もの作りの熱い思い

 TBS系の連続ドラマ「下町ロケット」が終わった。視聴率は10話平均で18・5%、今年放送された週一のドラマでは最高の数字だった。最終回が40%を超えた一昨年の「半沢直樹」と同じ原作=池井戸潤、演出=福澤克雄のコンビとあって前評判は高かったがやはり強かった。
 次々に危機に襲われながら初の純国産ロケット打ち上げ、心臓病治療に欠かせない人工弁開発に取り組む町工場の男たち。頼れるのはものづくりで世の中の役に立ちたいという熱い思いだけ―これを正面から愚直に¢iえる姿勢が視聴者に共感された。
 同じ池井戸ドラマ≠ナ去年放送された「花咲舞が黙ってない」の続編(日本系)。杏扮する銀行臨店班の女子行員が不正を正すシリーズ。軽やかに、しかし手厳しく理不尽と闘う痛快さがうけた。
 企業の社会的責任が厳しく問われた一年だった。東芝の利益水増し決算(5月)、マンションの基礎工事データ改ざん(10月)、そしてワタミが女子社員の過労死事件で巨額賠償金(12月)…。コンプライアンス(企業倫理)が会社の死命を制しかねない時代を象徴するように、危機管理のプロを主役に立てた「リスクの神様」(フジ系)も登場した。
 非正規雇用が4割を超えたいま、正社員・派遣・パート・女性などの賃金、身分格差の矛盾が広がっている―。「雇用身分社会」の実態をリアルにえぐり出すドラマを、来年は見たい。
(
2015年12月26日,
「赤旗」)

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試写室15/テレビが描いたもの/農村の再生/ライター荻野谷正博/確かな可能性示した

 「農村」を舞台にした近年のドラマの多くは農業自体がテーマになっています。今年は存続が危ぶまれる「限界集落」の再生を描く作品が登場。
 「限界集落株式会社」(NHK)は、有機農業に挫折し、村も家族も捨て都会で暮らした男(反町隆史)が村に戻り、再び農業にとりくむ物語です。ドラマを動かすのは、経営コンサルタントを名乗る男(谷原章介)。村を救うには、株式会社をつくる必要があると説きます。物語の底には、大地に働きかけ、恵みをいただく作業への敬意がありました。
 「ナポレオンの村」(TBS系)は、やり手の公務員(唐沢寿明)が廃村寸前の村をアイデアと行動力で変えてゆく村おこし物語=Bかなり漫画チックでしたが、効率優先の敵役と対決し、「そこにしかない価値」を見つけてゆく展開に爽快感がありました。
 農村の困難の中に日本社会のゆがみを見る視点が作品の質を決めます。新自由主義的な競争原理とは異なった価値観が立ち上がってくるとがぜん深みが増します。農村には、声高に叫ばれる「強い、攻めの農業」とは違う、確かな可能性があることも示しました。多彩な農村ドラマがもっと生まれてほしい。
(
2015年12月25日,
「赤旗」)

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2015年政界語録/憲法学者「違憲です」

 「違憲です」
 衆院での戦争法案審議入りから2週間もたたない6月4日、衆院憲法審査会で与党推薦の参考人を含む3人の憲法学者がそろって、同法案を「違憲」と断じました。
 笹田栄司・早大教授、小林節・慶応大名誉教授に加え、自民党推薦の長谷部恭男・早大教授の3人です。「憲法9条に違反する」(小林氏)、「法的な安定性を大きく揺るがすもの」(長谷部氏)、「(憲法の枠を)踏み越えてしまった」(笹田氏)と述べ、その映像はテレビ報道で繰り返し放映されました。
 政府・与党に衝撃≠ェ広がり、マスコミも違憲の主張を強め、戦争法案廃案を求める国民世論はいっそう高まることになりました。その後も、元内閣法制局長官や元最高裁判事らが戦争法案の審議で参考人に呼ばれ、次々に「違憲」と指摘。アンケート調査でも9割超の憲法学者が違憲としました。
 3氏の「違憲」表明について安倍晋三首相は、12月27日放送のNHKスペシャルで、「自民党がお呼びした憲法学者の方が違憲であるという話をされたことは、大変、影響はあったのだろうと思います」と振り返りました。
(
2015年12月30日,
「赤旗」)

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主張/個人消費の低迷/政治の抜本的対策が不可欠だ

 一年でもっとも街がにぎわう年の瀬だというのに、消費がいま一つ盛り上がりを欠いているといわれます。暖冬で冬物衣料などの売れ行きが伸び悩んでいるだけではありません。昨年4月からの消費税増税の影響が残るうえに、2017年4月からの消費税再増税への警戒感もくすぶり、円安による食料品価格などの値上がりや依然鈍い賃金の引き上げも、消費の足を引っ張っているからです。国内総生産(GDP)で6割を占める消費が低迷したままでは景気はよくなりません。消費低迷の打破へ、消費税の増税中止など政治が抜本的な対策をとるべきです。

消費支出は3カ月連続減
 総務省が先週末発表した11月の家計調査報告(2人以上の世帯)によると、家計の消費支出は名目で前年同月比2・5%減少、物価上昇分を差し引いた実質でも2・9%の減少と、11月まで3カ月連続で前年を下回っています。消費支出は昨年4月の消費税の増税のあと今年3月まで1年間前年を下回り、その後一進一退を続けていましたが、9月以降明らかに減少に転じました。消費税増税の影響から立ち直れないうちに、消費に慎重な家計の節約志向の高まりの影響を受けたのは明らかです。
 費目別で見ても、外食など食料費や被服・履物、交通・通信、教養・娯楽など軒並みマイナスです。交際費や4月に軽自動車税が増税された自動車関係費などの落ち込みが目立ちます。
 円安による食料品などの価格上昇とともに消費に深刻な影響を及ぼしているとみられるのは、収入の伸び悩みです。同じ家計調査で勤労者世帯の収入の推移をみると、世帯単位の11月の実収入は名目で1・4%、実質で1・8%のそれぞれ減少です。実収入は3カ月連続の実質減少、世帯主の収入だけでは4カ月連続の実質減少です。大企業は大もうけしていても賃上げの動きは鈍く、そのため収入が落ち込み、消費の足を引っ張っているのは明らかです。
 安倍晋三政権は「アベノミクス」と呼ぶ経済政策で経済の「好循環」が始まっており、賃金も雇用も改善しているようにいいます。しかし、実際には大企業の大もうけはため込みに回り、賃金などにはほとんど回っていません。「改善」したという雇用も増えているのは賃金の安い非正規の労働者が多いので、全体としての収入の改善は微々たるものです。大企業のもうけを賃上げや安定した雇用拡大に回させる対策が不可欠です。
 勤労者世帯の収支でみて、世帯主の収入は減り続けている半面、配偶者の収入は8カ月連続の実質増加となっていますが、その平均はわずか5万7099円です。これでは世帯主の賃金が抑えられている分、配偶者が働いて多少埋め合わせているぐらいで、安定した雇用と賃金とはいえません。

消費税の再増税は中止を
 見過ごせないのは、収入が伸び悩む中、消費税の立て続けの増税が国民の消費意欲を冷やしていることです。最近のNHKの世論調査でも、再来年4月からの消費税増税に「反対」が43%と「賛成」の28%を大きく上回りました(「どちらともいえない」が27%)。国民の増税への不安は深刻です。
 国民の消費を喚起するために、政府がまずやるべきことは消費税の増税中止なのは明らかです。
(
2015年12月29日,
「赤旗」)

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国際コンクール「日本賞」50年/民主主義問う作品が評価/グランプリは「キミの心のブラック・ピーター=v

 NHKが創設した国際コンクール「日本賞」が今年、50年を迎えました。人間的な成長を題材に、世界各国の多彩な番組が出品されました。Eテレで31日に「すべて見せます」(後2・0)と題して、四つの最優秀賞作が紹介されます。

 日本賞には、55の国や地域から292の番組などが参加(ウェブサイトのコンテンツ=情報内容=を含めて)。幼児、児童(小学生)、青少年(中・高校生)、一般の四つの世代別にそれぞれ最優秀賞が決まり、その中からグランプリが選ばれました。
 橋本典明事務局長は話します。「若い世代の社会参加を呼びかけ、民主主義を問いかけるものが高く評価されました。おかしいことには『おかしい』と言っていく。主権者教育でしょうか。受賞は逃しましたが、難民問題を扱ったものが複数あったのも今の世界の状況を映しだしていると思いました」
 児童向けの最優秀賞は「市長室に乗り込め!」(台湾 25分)です。牛乳を飲もうキャンペーン≠フ見直しを、子どもたちが市長に訴えにいきます。
 青少年向けの最優秀賞は「独裁者の部屋」(スウェーデン 30分)。8人の若者が一つの部屋に閉じ込められ、独裁者のもとで暮らすという設定で番組は進行します。
 NHKの「デザインあ」(15分)が幼児向け部門で受賞しました。言葉を使わずに、視覚へ発信する斬新な映像手法が評価されました。

途上国に支援
 グランプリは、一般向けで受賞した「キミの心のブラック・ピーター=v(オランダ 56分)です。ブラック・ピーターとは、オランダのクリスマスに欠かせない存在。サンタクロースとともに歩く黒人従者のことです。黒塗りのメークをして、従者にふんします。植民地時代から続く人種差別の名残なのか、悪意のない伝統的な行事なのかを探っていきます。白人の女性ディレクターが制作。自らがロンドンの街中を黒人従者になって歩くと、石が飛んできました。
 「勇気を持ってチャレンジ(挑戦)し、自身の中の意識もあぶりだしていきます。オランダでは、差別かどうかが実際に論争になっているそうです」(橋本さん)
 日本賞の活動は、企画部門を設けるなど発展途上国の制作者への支援にも力を注いできました。橋本さんは17代目の事務局長です。「世界の教育番組を支え、成長させようと、先輩たちが等しい思いを持ってきたのかなと感じ、ささやかな誇りでもあります」
(
2015年12月28日,
「赤旗」)

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試写室15/テレビが描いたもの/若者たちへ/ライター口山衣江/生きづらさと交流と

 安定して働く場も人とつながる場も奪われた世代の実態を反映してか、今年は若者の生きづらさを描く番組が多かった。特にNHKのドラマ部門は、主人公たちが自分の背中を支えそっと押してくれる熟年層や老人たちと心を通わせ、新しい自分を見つけてゆく姿に寄り添っていた。
 「紅雲町珈琲屋こよみ」では76歳の珈琲屋の女主人が凛とした姿で若者を励まし、「ランチのアッコちゃん」「わたしをみつけて」は、派遣社員や准看護師という不安定な立場の女性が、上司のキリッとした仕事ぶりから、働くことと生きることの分かちがたい関係を学んだ。後者の最後、主人公が自分を捨てた親から拾ってくれた人へと想いを移し「私はここにいる」と言い切るラストが清々しい。「東京ウエストサイド物語」は夢を諦めかける娘を、母親が捨て身の姿で励ました。
 ドキュメント「私たちに戦争を教えてください」(フジ)は鮮烈だった。若者たちが戦争体験者に「なぜ」と問う眼差しが戦争の理不尽さを告発していた。70年のセレモニーに終わらせず、毎年扱って欲しいテーマだ。故・野坂昭如氏が「少年の頃、戦争が〈悪〉だなんて思いもしなかった」と語っていたが、今の若者たちが「なぜ」と問えるのは日本国憲法があってのことだ。
 その憲法を巡って社会が大きく動いたが、来年はこの芽が様々な分野で実を結び、テレビの世界でも柔軟につながり合う人々の姿に出会いたいと思う。
(
2015年12月24日,
「赤旗」)

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放送この1年/NHK/「権力からの自立」遠く

 戦争法案をはじめ、沖縄の基地問題、原発と報道の役割が深く問われた年でした。
 NHKはこの1年、籾井会長以下の執行部体制が続き、「政権擁護」報道の方向は変わっていません。
 放送の根幹である「権力からの自立」への籾井会長の無理解は、いっそうひどくなっています。4月に自民党が「クローズアップ現代」問題でNHKを呼び出すと、唯々諾々とこれに応じました。11月、NHKも構成員であるBPO(放送倫理・番組向上機構)が正面から政権の圧力を批判したのに、籾井氏は12月の記者会見で、「圧力ととらえるのは考えすぎ」と異を唱えました。
 国民運動を軽視する一方、安倍首相をかばうような報道の例は枚挙にいとまがありません。国会で共産党の志位委員長が戦後日本の再出発を定めたポツダム宣言について問うと、安倍首相は「つまびらかに読んでない」。ところがNHKはこれをニュースでは報じませんでした。
 放送関係者や市民でつくる「放送を語る会」は今年9月までの主要局の戦争法報道のモニター結果を発表しました。NHKについては「『政府広報』と批判されてもやむを得ない」と断じました。
 この現状を国民・視聴者の声で打ち破ろうと、NHK包囲行動が8月と11月にあり、東京の放送センターのほか、全国十数カ所の都市でも実施されました。
 戦争や原爆を直視した番組など「やはりHNKには良心的番組は多い」という声は根強くあります。NHKが現状をどう立て直し、公共放送としての信頼を回復するのか、まさに正念場です。
 (雄)
(
2015年12月23日,
「赤旗」)

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NHK経営委、沖縄で「語る会」開く/視聴者から質問・要望次々

 NHKの受信料支払い率が4割台と、全国一低い沖縄県。NHK経営委員会は12日、那覇市で「視聴者のみなさまと語る会」を実施、32人が参加しました。受信料制度をはじめ、インターネットでの番組配信や紅白歌合戦への注文など疑問や意見が出ました。

 沖縄では長い間、テレビは無料でした。
 戦後、アメリカの施政権下だったためNHKは放送できず、大河ドラマなどは民放の沖縄テレビと琉球放送が放送していました。1967年、NHKの前身・沖縄放送協会(OHK)が発足。72年の本土復帰でNHK沖縄放送局に改組します。受信料が導入されたのはそれからでした。
 この日の会で参加者からは「なんでテレビ見るのにお金必要なの、という思いがある」「放送法で受信機器を設置したら契約を、となっているのが分からない」といった疑問が出ました。
 板野裕爾放送総局長は「日本の受信料制度は世界に冠たるもので、特段の罰則はないのに(全国で)75%が払っている。視聴者の良識に支えられている制度です。沖縄に関するさまざまなニュースやドラマをつくって、お役に立てる放送局なんだと理解してもらえるよう努力したい」と説明。浜田健一郎経営委員長は「受信料の支払い率が低いのは、大小さまざまな島があるという地理的事情もあると思っている。地道に、ご理解いただく努力が基本です」との考えを示しました。
 「(番組の)ネット連動サービスを」という意見に、浜田委員長は「放送と通信の融合は世界の潮流。遅れることなく役割を果たしたい」と応じます。放送法は、インターネットでの番組配信を部分的にしか認めていません。石原進委員は「(ネット配信に受信料を使うため)時代の趨勢(すうせい)に合わせた受信料制度をどうするか検討しているところ」と踏み込んで説明しました。
 番組については「今年の紅白のテーマをなぜ戦後70年にしなかったのか」「テレビを聞いている視覚障害者がいることに配慮した番組作り」「沖縄の自立経済を促す番組をつくってほしい」など多様な要望が出ました。
 主に板野総局長が説明。紅白については「戦後70年は言っていないが、意識した企画は考えている。黒柳徹子さんを総合司会にしたのも戦後のテレビ史を代表する方だから。歌手のMISIAさんも戦後70年企画で出演します」。視覚障害者に対しては「言葉では分かりづらいという意見はほかからも聞いている。どういうやり方がいいのか考えたい」と答えました。経済番組については、細田聡一郎沖縄放送局長が「経済・文化・福祉などより取り上げないといけないと痛感した。沖縄の魅力を、BS(衛星放送)や国際放送を含めて発信したい」と応じました。
(
2015年12月21日,「赤旗」)

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朝の風/TPPの危険性と巨大企業

 社会経済学者の松原隆一郎氏が、遺伝子組み換え作物の危険性を指摘した鈴木宣弘著『食の戦争』の新聞書評を書いたら内容証明付きの手紙がきて糾問されたと述べている。(『群像』1月号)
 差出人はモンサント社関係者が絡む組織の構成員という。同社は米国政府に関与してTPPを推進する巨大バイオ企業だ。ベトナム戦争で使われた枯れ葉剤をつくった同社は、除草剤でも死なない作物を遺伝子組み換えでつくっている。
 NHKは「BS世界のドキュメンタリー」でフランス人ジャーナリストの追跡を放送した。同社の遺伝子組み換え作物を飼料にしたフランスの豚は下痢をして死んでいく。その作物を作るアルゼンチンの大規模大豆農場に隣接する村々では奇形や遺伝子異常をもつ子どもが生まれている。原因は同社の農薬だ。
 松原氏によれば、同社は伝統的な農場に弁護士を派遣して、おたくの花粉にうちの種子の遺伝子成分が入っていたといい、知的財産権の侵害で訴えるという。TPPが通ったら、遺伝子組み換えの表示義務は撤廃される恐れがある。安全が科学的に立証されたのに風評被害を起こすと訴えられて。科学的データなるものも同社の研究者が入る米国規制委員会のつくったものにすぎないのだが。
 (槐)
(
2015年12月21日,
「赤旗」)

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これじゃ「軽減」詐欺/中身は4.4兆円大増税/消費税10%中止しかない

 「これではオレ、オレ詐欺≠ネらぬ軽減詐欺≠セよ」。安倍政権与党の自民・公明両党が合意した消費税「軽減税率」に怒りの声が上がっています。1世帯当たり年4万円以上の大増税にもかかわらず、税負担が軽くなるような錯覚を覚えさせる「軽減税率」のカラクリとは…。
 北村隆志、山田健介記者

 2017年4月の消費税率の10%への引き上げの際、食品(外食、酒類を除く)の税率を8%に据え置く―。12日に与党が合意した「軽減税率」の中身です。
 消費税率を8%から10%へ引き上げると5・4兆円の増税に。「軽減税率」で1兆円ほど減っても4・4兆円の増税で、勤労者世帯では年間4万6000円の大増税です。(図)
 「低所得者」対策を看板にする「軽減税率」。1兆円にのぼる財源確保のため「4000億円の低所得者対策」をとりやめます。しかも、社会保障分野の切り捨て策は来年以降も目白押し。いったい何のための「軽減税率」なのか―。
 「選挙対策だよ」と吐き捨てるようにいうのは自民党元閣僚経験者。「来年の参院選は安保法制などもあり厳しい。公明党が離れたら大変になる。だから官邸が強引に、公明党の『軽減税率実現』の要求をのんだ。めちゃくちゃな話だ」と。
 NHK世論調査(14日)では、再来年4月からの消費税10%への増税に「賛成」が28%に対し「反対」は43%です。
 日本共産党の志位和夫委員長は12日、千葉県松戸市の演説会で訴えました。「大増税という毒薬を『軽減税率』というオブラートに包んで無理やりのみこませるもの。選挙目当ての最悪の党利党略です」「一かけらの道理もない、無謀きわまる消費税10%は中止せよ」
(
2015年12月20日,
「赤旗」)

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戦場で書く 火野葦平と従軍作家たち/渡辺考著/評者牛久保建男文芸評論家

赤裸々に「戦争」見つめた作家
 1938年は、戦争と文学を考える上で転機になった年だ。この年、南京作戦の蛮行を、石川達三が「生きてゐる兵隊」で暴きだした。あわてた軍部は、出征中に芥川賞を受賞した火野葦平に目をつけ、日本兵の野蛮なイメージを払拭すべく「麦と兵隊」をかかせた。この年から作家が多数戦地に派遣され、侵略戦争を美化する軍部のメディア戦略は本格化されていった。
 本書は、火野が残した20冊に及ぶ従軍手帳を手掛かりに、火野の作家としての戦中・戦後の歩みとともに、文学者たちと国家・戦争との関係を見つめ直していく。著者が、今日の問題として火野の歩みを人ごととせず考察していて感銘を与える。
 火野の作品には、勇猛な兵士の姿とともに、アジア民衆への共感があることはよく知られている。しかし軍の検閲で、彼の文学は「高度に管理され、統制されたテクスト」となった。一方で、「戦争は悲惨だ」と家族への手紙に記された偽りのない言葉に注目する。そこに、火野という作家を読み解く鍵があることが得心されるのである。
 火野は「アジアを解放」する「大東亜共栄圏」の精神に深く共鳴していた。フィリピンで「捕虜教育」「宣撫工作」に従事するが、抗日ゲリラは絶えず、無謀な作戦による兵士の無惨な死の現実の中で、戦争協力への意志は揺らがないものの、深い懐疑を抱くようになっていた。
 火野は戦後、戦犯作家という批判のなかで「自身の戦争をふりかえり」、敗戦の意味を考え続け、53歳で自死した。本書が明らかにしたのは、自分の「戦争」に赤裸々に向き合った一人の作家の姿である。

 わたなべ・こう 66年生まれ。NHKチーフディレクター
(
2015年12月20日,
「赤旗」)

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戦争法廃止のアピール採択/ヒロシマ革新懇総会

 革新懇の広島県組織「ヒロシマ革新懇」はこのほど、広島市内で第35回総会を開きました。「政治革新の『架け橋』となって戦争法廃止、安倍政権退陣を実現しよう」との総会アピールを採択しました。
 革新懇づくりのノウハウをまとめた冊子『革新懇つくりたい広げたい』を発行した神奈川革新懇の土屋啓五事務局次長が「激動の時代、新しい共同を」と題して記念講演。町内会単位の革新懇づくりに初めて成功した「岸谷地域革新懇」が約5600世帯の1%にあたる56世帯を全国革新懇ニュースの読者にしている取り組みを紹介しました。
 利元克巳事務局長は、この1年間で「ストップ!戦争法ヒロシマ実行委員会」「秘密法廃止!広島ネットワーク」「政府から独立したNHKをめざす広島の会」などが結成された新たな共同の広がりを紹介。広島市の8行政区すべてに地域革新懇を結成するなどの運動方針を提起しました。
(
2015年12月19日,
「赤旗」)

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「戦争法案審議」/テレビはどう伝えたか/「放送を語る会」が調査

NHK「政府寄り偏向報道」/NEWS23「注目に値する」
 安倍政権による戦争法(安保法制)の強行成立の過程を、テレビニュースはどのように伝えたのでしょう。市民や放送関係者、研究者でつくる「放送を語る会」は、5月の閣議決定から9月の国会会期末までの5カ月間、NHKと民放キー局の代表的なニュース番組をモニター調査し、結果を公表しました。

 「最大の問題」とされたのは「NHK政治報道の政府寄りの偏向」でした。「『政府広報』と批判されてもやむを得ない域」だと厳しく指摘しています。
 「二極化」が指摘されていた民放では、変化が見られました。
 政権を監視するジャーナリズムの姿勢で「批判的な報道を展開していた」のは、テレビ朝日「報道ステーション」と、TBS「NEWS23」でした。
 フジテレビ「みんなのニュース」は「安倍首相・政権寄りの姿勢が目立った」。日本テレビ「NEWS ZERO」は「前半と最終盤の印象がかなり違う」と指摘。前半は法案軽視でしたが、9月の最終盤では「批判的な立場を強めた」といいます。

番組特徴詳しく
 モニター調査は、各番組の特徴を詳しくのべています。
 「ニュースウオッチ9」は、
政権にとってマイナスになるような出来事や審議内容を極力伝えない傾向「政府広報」の印象を与える記者解説政府与党の主張に傾斜する審議の伝え方―があると分析。「政権側の主張や見解をできるだけ効果的に伝え、政権への批判を招くような事実や、市民の反対運動などは極力報じない」とまとめました。
 「ニュース7」も同様。また、キャスターが再三使った「今国会での法案成立」などの言い回しについては「政権の代弁とも取れる」との意見でした。

憲法の立場から
 「報道ステーション」は、レギュラーコメンテーターのうち3人の意見が「毎回、事態の動きと政権に対する鋭い批判を含んでいた」と指摘。「いずれのコメントも『安保法制反対』とは言っていない。あくまで憲法と民主制の維持の立場」からの発言で「説得力があった」と評しました。
 「NEWS23」はアンカーの岸井成格氏のコメントを通じ「終始一貫して『安保関連法案』批判の姿勢を貫いていた」。岸井氏の「この法案は国会の在り方を根本的に変えてしまうもの。違憲であるという声が日増しに大きくなる中、数の力で通そうというのは立憲主義の否定だ」という認識に基づき、「法案の狙いや問題点を明らかにする努力が見られた」としています。中でも40回放送されたシリーズ企画「変わりゆく国×安保法制」について「注目に値する」と評価しました。
 「みんなのニュース」は、7月20日に安倍首相を1時間半にわたり単独・生出演させるなど、「法案推進の宣伝役としての印象が強い」としています。
 「NEWS ZERO」は、「前半は法案重視の姿勢がそれほど感じられなかった」。しかし最終盤、「村尾信尚キャスターは、法案が対米従属の法律であると指摘し、法案のしわ寄せは自衛隊員に来ることを独自取材で明らかにするなど、法案への疑問を提示した」と報告しました。

調査対象の6番組

NHKテレビ
 「ニュースウオッチ9」
 「ニュース7」
日本テレビ
 「NEWS ZERO」
テレビ朝日
 「報道ステーション」
TBSテレビ
 「NEWS23」
フジテレビ
 「みんなのニュース」
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2015年12月17日,「赤旗」)

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おはようニュース問答/政府の番組介入をBPOが再び批判したね

 晴男 BPOが「再び政権批判」というので話題になってるね。
 秋平 NHKと民放連でつくっている第三者機関、放送倫理・番組向上機構だね。11日にBPOの放送人権委員会が、昨年のNHK「クローズアップ現代」に関する「決定」を出した中で、政府や自民党の番組への介入を改めて批判したんだ。
 晴男 「出家詐欺」報道の当事者からの訴えについては「人権侵害には当たらない」が、番組にはさまざまな虚構があったとして、NHKにさらに放送倫理を順守するように勧告した。

強い危惧を表明
 秋平 勧告は当然として、その決定の最後で自民党の番組介入や総務省の「行政指導」について、「報道内容を萎縮させかねない」と強い危惧を表明したんだ。
 晴男 「再び」というのは、11月にやはりBPOの厳しい政権批判があったからだね。
 秋平 放送倫理検証委員会の「意見」だ。このときも「クロ現」問題でNHKは「重大な倫理違反があった」と断じた上で、政府と自民党の番組への介入について「圧力」だと批判した。
 晴男 自民党が4月にNHK幹部を呼び出して「クロ現」問題で事情聴取したこと、高市総務相が「クロ現」問題でNHKに「行政指導」したことだね。「意見」は、政権側に対し「放送法が保障する『自律』を侵害」と厳しく指摘した。
 秋平 11月の「意見」直後の政権側の居丈高な対応はすごかった。安倍首相まで乗り出してBPOの意見に反発した。
 晴男 直後に右派団体が「産経」「読売」に1n広告を出し、TBSの「NEWS23」やキャスターを攻撃した。

攻撃はね返して
 秋平 団体メンバーは3年前の「安倍再登場」時の応援団だ。政権の後ろ盾あればこそだね。
 晴男 右派や政権側は、放送法4条の「政治的公平」「できるだけ多くの角度から」という文言をあげ、「違反したら指導する」と言ってるが。
 秋平 4条は放送法第1条の「表現の自由」を前提に、放送事業者が自主的に守る基準だ。
 晴男 いい番組をつくることは当然の前提だが、攻撃をはね返して「言論・表現の自由」を守り、発展させていくことが何より大切だね。
(
2015年12月16日,「赤旗」)

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テレビ局への圧力目に余る/メディア関係者らアピール

 テレビ放送に対する政権与党の圧力が目に余るとして、坂本衛(ジャーナリスト)、砂川浩慶(メディア総合研究所所長)、綿井健陽(ジャーナリスト)の3氏が15日、日本外国特派員協会で記者会見し、「放送法の誤った解釈を正し、言論・表現の自由を守る」ことを呼び掛けたアピールと賛同者39氏(同日現在分)を発表しました。
 アピールは、自民党が放送局幹部を「事情聴取」したことや、圧力を批判したBPO(放送倫理・番組向上機構)の意見書を受け止めない安倍首相らに対して「日本の『言論・表現の自由』をいちじるしく損なっている」と批判。政治権力の介入を戒めている放送法を正しく解釈して、「乱暴で根拠のない圧力を抑制すること」を強く求めています。
 会見で綿井氏は「放送の現場では自主規制や忖度(そんたく)がどんどん定着している」と指摘し、政権与党からの放送法改悪やBPOつぶしの動きに警鐘を鳴らしました。
 坂本氏は「人々に不可欠な民主主義の手続きをメディアが支えてきた。それを奪ったり規制をかけるのは間違い」とのべ、砂川氏は「民主主義国ではありえないことが起きている。総務省は自民党にこそ行政指導すべきだ」と訴えました。
 アピール賛同者には、是枝裕和(映画監督)、海南友子(同)、永田浩三(元NHKプロデューサー)、隅井孝雄(ジャーナリスト)、田島泰彦(上智大教授)、須藤春夫(法政大名誉教授)の各氏らが名を連ねています。
(
2015年12月16日,「赤旗」)

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週間データ/語録/2015年12月7日〜13日

 〈混乱は必至〉
 「(企業の現場では)大きな混乱は必至」(三村明夫日本商工会議所会頭)=7日、林幹雄経済産業相との意見交換で、消費税の「軽減税率」に関連して、中小企業の事務負担への配慮を要望。
 〈説明責任を〉
 「350億円という大規模なものであり、NHK執行部から国民にきちんと説明責任を果たしていただきたい」(高市早苗総務相)=11日の閣議後記者会見で、NHK関連会社9社による東京都渋谷区の土地購入計画について注文。
 〈時間をかけ〉
 「数千億円以上のカネがきょう、あすで出てくるはずがない。時間をかけて(財源検討を)やっていく」(麻生太郎財務相)=11日の閣議後記者会見で、消費税の「軽減税率」の対象を食料品全般とすると、必要な財源が膨らむことについてコメント。
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2015年12月15日,「赤旗」)

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政権圧力「強い危惧」/NHKには放送倫理徹底勧告/BPO

 BPO(放送倫理・番組向上機構)の放送人権委員会は11日、「出家詐欺報道に対する申立て」に関する委員会決定で、政府・自民党が番組を制作したNHKに圧力をかけた問題に触れ、「強い危惧の念」を持つと批判しました。
 NHK「クローズアップ現代」(昨年5月放送)で、出家詐欺をあっせんするブローカー≠ニ紹介された男性が、映像から本人だと特定されたとして人権侵害を申し立てたことへの決定です。
 委員会は「映像から男性を特定できるものはなく、人権侵害に当たらない」と判断。しかし実際の男性と異なる虚構を伝えたと指摘し、NHKに放送倫理の順守をさらに徹底するよう勧告しました。
 また、「クロ現」問題での自民党情報通信戦略調査会のNHK幹部への「聴取」や、高市総務相の「厳重注意」について、「民主主義社会の根幹である報道の自由の観点から、報道内容を萎縮させかねない」と「強い危惧の念」を表明しました。
 同委の坂井眞委員長(弁護士)は「政府は番組編集の基準を定める放送法4条を根拠に『厳重注意』をしたが、4条は放送番組に対し干渉・規律する権限を何ら定めていない」と強調しました。

元NHKプロデューサー・永田浩三武蔵大学教授の話
 番組には放送倫理上の重大な問題があり、NHKは自ら襟を正しなさいという内容で、その通りだと思います。また今回も政府・自民党に「黙っていてください」と書いたのは非常に重要です。本来言うまでもないことに言及しなければならない異常事態で、BPOは体を張って盾となっている。だからこそ現場は付け入るすきを与えてはいけないのです。
(
2015年12月12日,「赤旗」)

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NHK報道の問題点を指摘/秋田で学習会

 「マスコミ問題を考える秋田の会」が8日、秋田市内で学習会を開き80人が参加しました。
 「放送を語る会」の小滝一志事務局長が講演し、安保法案での報道について「一貫して安保法案に批判的報道を貫いた民間放送の報道があったのに対し、NHKは政権のマイナスになる国会論議や事実を伝えないという大きな問題点を残した」と指摘。その上で「テレビ報道は選挙で有権者の大きな判断材料になっているというアンケート結果もある。NHKをはじめメディアは、視聴者の関心に応える報道をすべきだ。公正な報道は、戦争法廃止、民主主義を取り戻すたたかいにとっても重要な課題だ」と強調しました。
 参加した女性は「日ごろからNHKの放送に疑問を持っていた。私たち視聴者が意見を届けること、声を上げることの大切さを感じた」と話しました。
(
2015年12月11日,「赤旗」)

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土地購入計画を撤回/経営委が不明点指摘/NHK

 NHKは9日、関連会社9社による東京都渋谷区の土地の共同購入計画を白紙撤回する方針を固めました。8日開かれた最高意思決定機関の経営委員会で、手続きなどに不明点があるとの指摘が出たことを受け、籾井勝人会長が取りやめる意向を理事に伝えました。
 関連会社のNHKビジネスクリエイトは11月、約350億円で放送センター近くの土地の優先交渉権を得ました。放送法の規定では、「重要な不動産の取得」に経営委の議決を義務付けていますが、NHK執行部は、NHKが直接購入するものではなく、手続き上問題はないと経営委で説明していました。
 しかし、浜田健一郎委員長は「手続きの正当性や購入価格を含めた取引の内容に不明な点がある」と指摘。NHKの監査委員会も、関係者のヒアリングに着手していました。
(
2015年12月10日,「赤旗」)

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波動/「意見書」の鋭い問いかけ/隅井孝雄

 放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会がNHK「クローズアップ現代」出家詐欺&道(2014年5月14日放送)に関して11月6日に出した「意見書」が波乱を呼んでいる。検証委は事実の歪曲など倫理違反があったと結論を出した。同時に、「総務大臣名による文書で厳重注意した」ことや自民党がNHK幹部を呼んで事情聴取したことは、放送の自律に対する介入であると批判した。
 これに対し高市早苗総務相は「放送法に抵触する点があったため、所管する立場から必要な対応を行った」と発言(11月10日)、安倍首相、菅官房長官、谷垣自民党幹事長も同じような意向を表明、BPOと対立している。
 BPOの意見書では放送法について、「放送の不偏不党、真実、自律を保障」することを政府に課しており(第1条)、「放送は事実を曲げない」などの編集基準(第4条)は、放送局が自ら律するための基準であり、国が番組に介入する根拠ではないと述べている。
 意見書のもう一つの論点は、「不祥事再発防止のため管理を強化、取材活動が萎縮しない配慮」を放送局側に求めていることである。その上で「クローズアップ現代」が放送した検証番組(4月28日)の中での国谷裕子キャスターの発言を引用、「自律的な検証の姿勢と真摯さは評価されるべきだ」と暖かな眼差しを示した。22年の歴史を持つ調査報道番組≠ェ、今後も知る権利に応える努力を継続することを私も強く望みたい。
 今回の意見書により直接政府が監督権限を持つ日本の放送制度が問われた。中国、ロシアを除く世界の各国の放送では「第三者委員会」が権限をもち、政治権力とは一線を画している。1965年以後半世紀にわたってNHKと民放の番組を「第三者機関」として見守ってきたBPOこそ、その役割を果たしてきたのではないだろうか。私見だが、現在政府が持っている免許権限と国会によるNHKの年度計画、予算審議の権限をBPOに移管すれば、欧米並みの自主的機関としての機能を十分果たしうる。日本の放送行政を抜本的に改革するための国民的議論が必要ではないだろうか。
 (すみい・たかお ジャーナリスト)
(
2015年12月07日,「赤旗」)

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政府・自民党の放送介入を批判/BPO意見書の意義/元BPO統括調査役藤田文知さん

 「政府・自民党は個々の放送番組に政治介入してはならない」。BPO(放送倫理・番組向上機構)が11月6日、このような見解を含む意見書を表明しました。この意義について、元BPO統括調査役の藤田文知さんに寄稿してもらいました。

 BPOとは、NHKと民放がつくる第三者機関です。公権力の介入を避け、番組・放送を検証して、放送界の自律を促すために存在しています。この日発表された意見書は、昨年5月放送したNHKの「クローズアップ現代」に対し、「過剰な演出があった」と指摘。「放送内容に重大な放送倫理違反があった」と結論付けました。
 意見書はまた、この問題で高市早苗総務相がNHKを厳重注意したことや自民党の調査会がNHK幹部を呼んで説明させたことを厳しく批判しました。BPOは発足以来12年になりますが、政府や自民党に真っ向から異議を唱えたのは初めてです。

放送局にも注文
 政府や自民党は時として、意にそぐわない内容が放送されたとき、「放送法違反だ」と声をあげます。今年4月、NHKが自民党の調査会に呼ばれたとき、テレビ朝日の関係者も呼ばれました。これは、「報道ステーション」のコメンテーターの政権批判にかかわるもので、いずれも個々の番組に対してのクレームです。
 政府・自民党は放送を批判する根拠として「放送法4条」をあげています。この条項には「政治的公平」「報道の事実をまげない」などが盛り込まれています。それに対し、意見書は「4条は放送事業者が自らを律する『倫理規範』であり、総務大臣が個々の番組に介入する根拠ではない」と反論しています。
 要するに放送法は、知る権利や表現の自由の確保のために放送を役立てることを目的としており、政府・与党が個々の番組に文句をつけるためのものではない、という意味です。
 重大な警告をしたBPOの意見書に政府・自民党が猛反発しています。菅義偉官房長官は「放送法の解釈を誤解している」と言います。しかし戦前の放送が政府の介入と統制で国策推進機関と化し、国民を戦争へかりたてたことへの反省から放送法が生まれた経緯を見れば、どちらが誤解≠オているかは明らかでしょう。
 見逃せないのは、メディアの反応です。BPOのニュースを報じた6日のテレビ朝日の「報道ステーション」は、NHK番組の倫理違反だけを伝え、BPOが自民党と政府批判をしたことには、一言も触れませんでした。いつもの「報道ステーション」なら「政府介入批判」は、ニュースの重点に置いたはずです。無言の政府・自民党の圧力を局側が忖度(そんたく)したのではないかと勘繰ってしまいます。
 意見書が発表された翌日付の新聞は、「産経」「読売」が「NHKに重大な倫理違反」を見出しに取ったのに対し、「朝日」「毎日」「東京」は「政府与党の番組介入は許されない」を見出しに取りました。
 政権与党のメディアへの介入は、それがテレビであろうと、何であろうと、すべてのジャーナリズム、すべての言論にかかわる根源的な問題です。BPOの意見書は、放送局側にも「干渉や圧力に対する毅然(きぜん)とした姿勢と矜持(きょうじ)を堅持できなければ、放送の自由も自律も侵食され、やがては失われる。これは歴史の教訓でもある」と注文をつけています。
 総務省はこれまでBPOの自律性を尊重し、個々の番組の介入を控えてきました。ところが、安倍政権になってから放送内容に対する干渉が増えています。政府自民党は、BPOの意見書の趣旨を受け入れ、メディアへの介入をやめるべきです。
 (ふじた・ふみとも=元BPO統括調査役)

報道への政府・自民党の動き
2014年
11月18日 安倍晋三首相が「NEWS23」に生出演。街の声に「(局が)選んでいる」と非難
   20日 衆院選を前に自民党がNHKと在京民放テレビキー局に選挙報道の公平中立を求める文書
   26日 自民党がテレビ朝日の「報道ステーション」に公平中立を求める文書
15年
3月27日 「報道ステーション」で元官僚の古賀茂明さんが「官邸の皆さんにバッシングを受けてきた」と発言
  30日 菅義偉官房長官が古賀発言を「事実無根。放送法という法律がある。テレビ局がどのような対応をするか、しばらく見守りたい」と発言
4月9日 NHKが「クローズアップ現代」のやらせ指摘を受けて設置した調査委が中間報告。「取材が不十分」と同日番組で謝罪
  17日 自民党の情報通信戦略調査会がNHKとテレビ朝日の関係者を呼び、事情聴取。聴取後、川崎二郎会長が「政府は停波の権限まである」と発言。BPOについても「お手盛り」と批判
  28日 NHKが調査報告書を公表。高市早苗総務相が「クロ現」について文書による厳重注意
6月25日 自民党文化芸術懇話会で「マスコミを懲らしめるには広告料収入がなくなるのが一番」などの発言
(
2015年12月06日,「赤旗」)

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岸井氏攻撃許さない/意見広告めぐり声明/JCJ

 TBSの報道番組「NEWS23」のアンカー・岸井成格氏による審議中だった戦争法案に関するコメントを、「放送法違反」とした意見広告が「読売」「産経」に掲載されたことについて、日本ジャーナリスト会議(JCJ)は5日、「岸井氏への不当な攻撃を許さない」との声明を発表しました。
 「(岸井氏の)コメントは、安保法に対する圧倒的多数の国民の反対の声を伝えたもので、放送法違反でも何でもない」と強調。「メディアの萎縮効果を狙ったもの」と批判し、掲載した「読売」などの「見識が疑われる」としています。
 NHKのやらせ番組をめぐり、自民党の調査会が同局幹部を呼び出したことなどを放送倫理・番組向上機構(BPO)が批判したことに関し、安倍政権が介入を正当化していると指摘。「不当な攻撃・介入を視聴者・読者・市民と共に総がかりではね返そう」と呼び掛けています。
(
2015年12月06日,「赤旗」)

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相田洋の仕事/1/「母と歩いた道」/引き揚げ体験たどる

 半世紀を超えてドキュメンタリー作りの第一線に立つ相田洋さん、79歳。NHK在職中は「核戦争後の地球」(84年)、「電子立国 日本の自叙伝」(91年)を手がけ、99年以降もフリーで腕をふるってきました。最新作は、「母と歩いた道」(BSプレ 6日 後0・0)です。

 ―相田さんは父の仕事の関係で朝鮮半島に生まれました。母親のフイさんは相田さんら3人の子を連れて戦後、中国から引き揚げました。その道を再びたどるドキュメンタリーです。
 2011年に亡くなった母の介護体験をもとにNHKスペシャル「母と息子 3000日の介護記録」(13年)を作り、本も書きました。毎日、毎日お尻をふいてやる。そんな介護の背景にはおふくろと私の長い関係があるわけで、本には母の戦争≠ニいう章を入れたんです。NHKエンタープライズのプロデューサーが興味を示してくれ、番組にしてみたらと。
 ―ご自身、大冒険の試みだったともおっしゃってますね。
 70年もたっていて、自分の記憶が正しいかどうかわからない、何の情報もない。ところが、取材を始めると考えていたより倍以上は撮れました。
 「人を得た」からです。中国人コーディネーターの李さんと運転手の趙さん。下見と本番の5週間、3人一緒でした。趙さんは私が住んでいた中国の延吉で生まれ、和龍の学校に行っていました。私たち母子が歩いた道を探すのに車を走らせながら、だれかれとなく声をかけてくれました。おふくろの写真を2人に見せたのもよかった。親孝行する人間には協力したいと思ってくれたんでしょう。
 ―お母さんは、引き揚げの体験を相田さんの妻・範子さんにも話されていたそうですね。
 子ども3人を生きて連れて帰ることができた。激戦地のフィリピンに出征していた父も生還した。家族全員そろったんです。1人でも欠けていたら、おふくろはしゃべっていたかどうか。戦争の体験を話せないで死んだ人はいっぱいいると思います。取材して形になっていくと、こんな生やさしい話じゃなかった、何か違うんじゃないかと複雑な心境になりました。戦中、戦後の混乱期になんとか生きてこられた、だから語る。今はそう考えています。
 (つづく)
(
2015年12月05日,「赤旗」)

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相田洋の仕事/2/自画像を撮る/敗戦後に生き方の原点

 ―「母と歩いた道」(NHKBSプレ 6日放送)は、ディレクター・相田洋さんの体験記。戦後、お母さんや2人の弟と中国から引き揚げました。番組は、相田さん自身が初めてテレビカメラを回して制作しました。
 前作の介護を記録したNHKスペシャル「母と息子 3000日の介護記録」(2013年)も僕が撮ったんですが、あれは放送しようと思って撮影していたわけではありません。
 これまでもカミさんと一緒に旅行するとカメラを持たされていた。すべて作品になるんです。カミさん主役のドキュメンタリー「イタリア旅行」なんてね。NHKエンタープライズのプロデューサーに「あの調子で撮ればいい」と言われました。僕の場面は、コーディネーターの李さんが映してくれました。

カメラは正面を
 NHK時代、共に仕事をした優れたカメラマンが4人いて、ドキュメンタリーの現場についてたたき込んでくれました。そのうちの一人が益子広司さんです。「乗船名簿AR―29」(1968年、芸術祭奨励賞)で一緒でした。南米へ移住する人々を乗せた船に一緒に乗り込んで取材したんです。益子さんは「相ちゃん、人間と建物は正面から撮らないとダメだ。すべて正面」と常々口にしていました。今回はまねして、益子さんの流儀です。
 ―セルフドキュメンタリー≠ニ銘打ち、まさに正面から自分のことを語った番組です。
 初めは抵抗を感じたんですよ。ドキュメンタリーとは、カメラと登場人物の対話で進んでいきます。ディレクターは脇から聞き手として登場する、声だけでいいと思っていました。自分の姿は最後に考えりゃ、いいやとね。ところがプロデューサーは「あなたの姿が大事だ。どうするんだ?」と盛んに聞いてくる。
 ―それで番組冒頭に出てくる自撮りとなったわけですね。
 亡くなったおふくろの部屋から、番組を始めたいと思いました。「母と息子 3000日の介護記録」は、あそこが現場なんです。おふくろの鏡台を動かしカメラを据えて。たいへんでした。「あれダメ、これダメ」とうるさいカミさんが留守の間に、1時間半撮影しました。鏡に映る自分の顔。「これがオレだ」と。使ったのは数秒でしたが。

浴槽の中で生活
 ―1945年8月の敗戦の日を吉林省和龍で迎えました。番組では、和龍での暮らしが生き方の原点になっていると率直に言います。
 敗戦で、僕たち母子は住んでいた家から出なければならなかった。公衆浴場跡で生活しました。それも浴槽の中で。僕は9歳でした。食うものはない、物は盗まれる、飢えてこじきのような生活でした。人間の欲や裏切り。助産婦の資格を持っていた母が朝鮮族の開業医のところで働き、親切にしてもらいました。
 テレビの仕事をするようになってから、和龍でのあの1年はいったい何だったんだと考えました。45年8月14日、満洲や中国の日本領事館に送った電報には、「居留民はできる限り定着の方針」と書かれていた。
 要するに捨てられたんだと。僕が作ってきたあらゆるドキュメンタリーの中に流れていることです。日本のエリートさんは国民に冷たい。広島・長崎の原爆、水俣病、エイズ、原発。どれも自分の体験と重なって見えます。
 (つづく)
(
2015年12月09日,「赤旗」)

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相田洋の仕事/3/公共放送として/視聴者の満足度に応え

 ―自身の引き揚げ体験をもとにしたドキュメンタリー「母と歩いた道」(NHKBSプレ 6日放送)では、過去の場面をイラストレーター・時川真一さんの絵で再現しました。
 あったかい絵でしたね。時川さんは中国に同行取材して、私の話を聞きながらスケッチをしたんです。日本に帰ってから、それをもとに描きました。時川さんの絵がなかったら、私の伝えたかったことの半分以上が伝わらなかったですね。
 ―100作を超えるドキュメンタリーを作ってきました。視聴者にとって忘れられない一つが「世界の科学者は予見する 核戦争後の地球」(1984年)です。ご自身の戦争体験からの発想でしょうか。

問うべきテーマ
 あれは小出五郎さんの企画です。残念ですが、昨年亡くなりました。彼は科学ジャーナリストで、放射能が生物にどんな影響を与えるかという問題意識を持っていました。スウェーデンの王立科学アカデミーが、世界の科学者100人に全面核戦争が起きたら人類や地球はどうなるかという研究を委嘱していました。結果を雑誌に発表したんです。小出さんはそれを番組にしようと提案しました。
 先輩の工藤敏樹さんが「広島、長崎、第五福竜丸と日本は3回も被ばくしている。核の恐ろしさを訴える最大の機会になる。これこそ公共放送たるNHKが世に問うべきテーマだ」と真剣に言いました。局内にさまざまな声もありましたが、なんとかこぎつけることになった。さて、だれが映像にするか。工藤さんは「相ちゃんなら何とかやるだろう」と、僕が指名されました。
 「人間が体験したこともない全面核戦争。どうするの?」と心配していたら、プロデューサーが「いざとなったら特撮はハリウッドに頼むよ。構成と編集だけ見てくれればいい」と言ったんです。
 ところがスタッフが映画会社に相談に行くと、東京の模型だけで数千万円かかると。僕は、いまさら降りるとは言えず、特撮も全部、自分たちでやることにしました。高層ビルが吹き飛ぶ、渋谷のNHK放送センターも吹き飛ぶ。核爆発で消えてしまう風景の数々をどうするか。CG(コンピューターグラフィックス)もない時代でしたから。

国際的にも注目
 ―芸術祭大賞、JCJ賞本賞をはじめ、イタリア賞グランプリも受賞し国際的にも注目されました。
 イタリア賞はスウェーデンの番組と最後まで競いました。あちらは生命の誕生がテーマでしたが、選ばれたのは「核戦争後の地球」です。現実感のある特撮と、広島の被爆者の証言が強い力になっていると評価されました。核は放射能によって人間の一生を破壊してしまう。何十年にもわたって傷めつけられ、死に至ることもある。核の本当の恐ろしさです。
 ―視聴者のみなさんへ一言お願いします。
 受信料制度は大事です。こんなにいい制度はありませんと。皆さんがお金を払ってくださって、ご自分の言いたいことが言える。たとえば「NHKはけしからん」と。そういう声があると、NHKは一生懸命になって直そうとします。良くなるんです。国営放送になったら、言いたいことも言えなくなってしまいます。
 後輩たちには満足度の高い放送を出さないといけないと、いつも話しています。長い間やってきて、誇っていいと思っているのは、たとえば、うどん屋のおやじさんから「番組見たよ。受信料を払う気になった」と言われたことです。これ、最高。僕はそういう哲学でやってきたんです。
 (おわり)
 ※「母と歩いた道」は、NHKBSプレで28日(前6・30)に再放送されます。

11日・12日に公開セミナー

 公開セミナー「相田洋〜人と作品」(主催・放送人の会など)が、東京・上智大学講堂で開かれます。番組を鑑賞し、相田さんの話を聞きます。11日(午後6・30)、12日(午後1・0)。先着100人。問い合わせは上智大学・音研究室。рO3(3238)3940
(
2015年12月10日,「赤旗」)

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【11月見出し】

*        NHKへの若者の視線は/経営委員と学生がミーティングin埼玉大

*        「NEWS23」と岸井氏攻撃の意見広告/安倍政権側のメディア抑圧が背景に/「読売」「産経」掲載

*        NHKはなぜ、反知性主義に乗っ取られたのか/上村達男著/評者戸崎賢二元NHKディレクター

*        試写室/ファミリーヒストリー林家正蔵/NHKテレビ後10・0/3代の確執に浮かぶ豊かな芸

*        橋下氏やっぱり院政?/あやしい「引退」

*        NHKの安倍政権寄り報道に抗議/「公共放送の使命果たせ」/各地の市民団体/茨城/奈良/兵庫/東海

*        科学/DNAから見えた日本人の起源/上/定説揺るがす発見

*        科学/DNAから見えた日本人の起源/下/地域で異なる特徴

*        おはようニュース問答/BPOが意見書で政権批判に踏み込んだね

*        放送の自主・自律こそ民主主義を保障する/BPO委員長川端和治さんに聞く

*        「字幕放送」前年上回る/総務省が実績公表

*        BPOの「意見」/政権のメディア圧力、厳しく批判/政権のねらいは放送の「取り締まり」/松田浩氏

*        BPOの「意見」/政権のメディア圧力、厳しく批判/放送界に高まる「言論の自由守れ」の声

*        潮流

*        NHKは権力監視を/横断幕掲げ宣伝/広島放送局前

*        与党の放送介入を正当化/BPOの意見にかみつく/首相

*        戦争法反対の世論/設問変えごまかす?/NHK調査

*        政権擁護報道に抗議/NHK大津放送局前

*        BPOの指摘に反論

*        BPOは見識ある対応/政権の放送介入批判/山下書記局長

*        「真摯に受け止め」/「クロ現」でNHK

*        自民の放送圧力批判/NHK番組、重大倫理違反/BPO

*        客室TV受信料支払い命令

*        NHK抗議行動/各地の取り組み/追加

*        NHK抗議行動/各地の取り組み

*        NHK「経世済民の男」を見て/ジャーナリスト隅井孝雄/庶民への眼差しは不鮮明21世紀経済の風刺感じる

*        潮流

*        レーダー/テレビのネット参入/政治動かす若者の姿を

*        本立て/自衛隊の転機 政治と軍事の矛盾を問う/柳澤協二著

*        NHK包囲行動/7日に東京・渋谷で

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【11月本文】

NHKへの若者の視線は/経営委員と学生がミーティングin埼玉大

掘り下げた報道を∞受信料なぜ払う
 若い世代はNHKに何を望んでいるのでしょう。NHK経営委員会は毎年、学生の意見を聞く「キャンパス・ミーティング」に取り組んでいます。年6回以上実施する「視聴者のみなさまと語る会」の一環です。17日、埼玉大学で開かれた語る会を訪ねました。
 (和田肇)

 関東近郊から学生24人が参加。3グループに分かれ、NHK経営委員や執行部と活発に意見を交わしました。経営委員は井伊雅子、長谷川三千子、室伏きみ子の3氏、執行部からは浜田泰人、今井純、安斎尚志の各理事が出席しました。
 Aグループには、2人の中国人留学生がいました。海外でNHKがどう見られているかが話題に。女子留学生は「日本語を勉強しはじめたとき、先生がNHKのニュースを見なさいと勧めてくれました」「私たちの学校では、インターネットを通じてNHKの番組が見られるようになっています」と、きれいな日本語で説明します。そして「NHKは外国人に日本の文化やサービスを知ってもらえる放送になれたらいい。(音楽グループの)嵐は中国でも人気です」と要望しました。
 なお、NHKは150カ国・地域の2億8千万世帯で視聴が可能とのことです。
 NHKへの要望として「パラリンピックやJリーグなど、日本のスポーツが盛り上がるような工夫を」「スマホで情報を取る人が増えている。NHKは深く掘り下げた報道を」などの意見が出ました。今井理事は「東京オリンピックに向けてスポーツの報道を増やしていきたい」と前向きに受け止めました。
 公共性への期待は他のグループでも同様。「教育番組など視聴率にかかわらず人々の成長のための放送ができる」といった点をNHKの魅力として感じています。
 受信料について活発な議論になりました。
 Aグループでは「なぜ見ない人まで払うのか」と疑問の声。今井理事は「広告料や有料放送といった放送への対価ではなく、受信料による公共放送という形で運営している」と説明しました。室伏経営委員は「国民みんなに見てほしい情報があります。受信するから払うではなく、公共放送を支えるという思いになってほしい」。
 どのグループでも「1人暮らしでお金がないのになぜ」「携帯のワンセグを使っていないのに、なぜ受信料の督促が来るのか」といった不満が出ました。
 「お金で代えられない情報がある」というBグループ。Cグループは「公平公正というが、基準はどこにあるのか」と込みいった議論になりました。

取材を終えて
 全体を通じて、NHK経営陣の受信料の説明が気になりました。放送の対価ではない、災害情報や教育番組など視聴率で計れない価値のある番組がある、という理屈で視聴者の理解を得られるのでしょうか。地元さいたま放送局が学生向けに作成した資料に至っては「法律できまっています」と居丈高とも取れる文章です。
 本来受信料とは、NHKが国家権力や大企業からの圧力を受けずに放送をするための特別な負担金です。NHKがそれにふさわしい放送をしていれば、視聴者はおのずとNHKを支えたいと思うでしょう。

【視聴者のみなさまと語る会〜NHK経営委員とともに】
 2008年の改定放送法で、NHK経営委員が、視聴者から直接意見を聞く機会を設けることが義務づけられました。各地で年に6回以上実施しています。語る会で出された意見や注文は、後日経営委員会で報告・論議されます。学生を対象とした語る会は、これまでにも東京芸術大、中央大、関西学院大などで開催されています。
(
2015年11月30日,「赤旗」)

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「NEWS23」と岸井氏攻撃の意見広告/安倍政権側のメディア抑圧が背景に/「読売」「産経」掲載

戦争法批判を敵視、放送法ねじ曲げ
 産経新聞14日付と読売新聞15日付が、TBSテレビの「NEWS23」と進行役の岸井成格氏を名指しで「放送法違反」として攻撃する1n紙面広告を出しました。広告主は「放送法遵守を求める視聴者の会」なる団体ですが、その背景には安倍政権側の一貫したメディアへの圧力・恫喝があります。
 (小寺松雄)

 「広告」が主に指摘しているのは、戦争法案が参院委員会で強行採決された9月16日、岸井氏が同番組で「メディアとしても廃案に向けて声をずっと上げ続けるべきだ」と述べたこと。これが「多くの角度から論点を明らかにする」などと定める放送法4条に違反するとして、総務大臣や放送局側に是正を求める署名を呼びかけています。通常、商業紙の1n広告には1千万円単位の金がいるとされます。
 「会」は今月に入って発足。呼びかけ人は上智大名誉教授・渡部昇一、作曲家・すぎやまこういち、経済評論家・上念司の各氏らいわゆる右派文化人の7人。上記3氏は2012年、当時野党だった自民党の安倍氏を「総理大臣に」と推す「民間人有志の会」発起人に名を連ねており、「広告」が安倍政権を後ろだてにしたメディア攻撃の一環であることは明らかです。(この間の安倍政権とメディアとの主な動きは別項)
 「広告」が取り上げている放送法は第1条で、政府からの独立を意味する「不偏不党」と、憲法21条にある「表現の自由」を規定しています。4条の「政治的に公平」「できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」などは、放送事業者が自律的に守る番組編集基準です。この基準は「表現の自由」を前提にしています。
 岸井氏の発言は「戦争法案反対」の国民多数の声を踏まえたもので、これを「違法」と言い立てることは、報道の自由を投げ捨てて、政権の言い分に従えということを意味します。国民世論を反映した言論を、ときの政権をバックに金にあかせて抑圧することこそ、放送法の精神に背くものです。
 報道への抑圧に屈しないメディア、放送事業者の真価が問われる事態です。報道の自主・自律を守り、権力からの介入・圧力を許さないという原点は、メディアだけでなく国民・視聴者の課題でもあります。

安倍政権とメディア/この間の主な動き

14年11月18日 総選挙を前に安倍首相が「ニュース23」に出演。「アベノミクス」へ不満を表明する街の声が紹介されると「おかしい。(局が)選んでる」と発言
  11月20日 自民党が在京テレビ局に選挙報道の内容に介入する申し入れ
15年4月17日 自民党がNHKを「クローズアップ現代」問題で、テレビ朝日を「報道ステーション」問題で呼び出し事情聴取。聴取後、川崎二郎・自民党情報通信戦略調査会会長は「政府は停波の権限まである」と発言。NHKと民放連で自主的に構成しているBPO(放送倫理・番組向上機構)についても「お手盛り」だと非難。同党幹部も「政府側の人間を入れる方法も」と発言
  4月28日 高市総務相が「クロ現」問題でNHKを「厳重注意」
  6月25日 自民党文化芸術懇話会で「マスコミを懲らしめるには広告収入がなくなることが一番」「沖縄の2紙はつぶさないと」などの発言
  11月6日 BPOが、総務相の「厳重注意」や自民党の放送局呼び出しに対し、「政権党による圧力」と批判する「意見」を公表
  14、15日 産経、読売がニュース23と岸井氏を攻撃する1n広告
(
2015年11月30日,「赤旗」)

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NHKはなぜ、反知性主義に乗っ取られたのか/上村達男著/評者戸崎賢二元NHKディレクター

衝撃の告発、根源的な危機問う
 NHKの政治報道に対する市民の批判はかつてなく厳しい。本書を読む市民は、批判の対象としたNHKの予想以上の異常な状態に驚くだろう。評者も報道を通じてある程度知ってはいたが、これほどとは思っていなかった。
 上村氏は2012年から3年間NHK経営委員を務め、籾井会長時代は経営委員長代行の職にあった。この時期に氏が体験した籾井会長の言動の記録は衝撃的である。
 自分に批判的な理事は更迭し、閑職に追いやる、気に入らないとすぐ怒鳴り出す、理事に対しても「お前なー」という言葉遣い、など、巨大組織のトップにふさわしい教養と知見が備わっていない人物像が描かれている。
 著者は、こうした言動を「反知性主義」と断じているが、会長批判に終始しているわけではない。安倍政権が、謙抑的なシステムを破壊しながら、国民の反対を押し切って突き進む姿も「反知性主義」であり、政権のNHKへの介入の中で起こった会長問題もその表れであるという。NHK問題の底流には日本社会の根源的な危機が存在している、という主張に本書の視野の広さがある。
 このような会長を選んでしまった経営委員会の一員としての反省を踏まえ、国会同意人事や会長選任のあり方、経営委員会の監視機能の強化など、NHKに関わる制度に関して具体的な改革の提案も展開されている。
 著者の提起には当然賛否がありうるが、本書に示された論点は、NHK改革を考える上でいずれも外すことができない。視聴者市民がNHK問題を考えるうえで極めて刺激的な一書といえる。

 うえむら・たつお 48年生まれ。早稲田大学教授
(
2015年11月29日,「赤旗」)

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試写室/ファミリーヒストリー林家正蔵/NHKテレビ後10・0/3代の確執に浮かぶ豊かな芸

 落語家・九代目林家正蔵家族の歴史をたどります。父は昭和の爆笑王・林家三平、祖父は七代目正蔵。祖父の名を継ぎながら正蔵は、祖父のことを知りません。父・三平が七代目のことをほとんど話さなかったからです。3代にわたる父と子の間に何があったのでしょうか。
 七代目は1895年、東京・三ノ輪(今の根岸)に生まれます。芸好きの桶職人が落語を志し、七代目正蔵となる物語に、当時の演芸界のにぎわいが垣間見えます。さらに戦争中の国策落語、禁演落語の苦難を林家の芸は記憶しています。
 自在な芸の七代目。しかし三平にとって落語家は「たまらなくいや」でした。落語家を目指すのは戦後の焼け野原の東京。客を心の底から笑わせる父のすごさを見てからでした。父の急死後、工夫を重ね、爆笑落語が誕生します。
 正蔵も父の仕事が「いや」でした。しかし、名前を呼ばれただけで笑いをとる父の芸を見て15歳で弟子入り。七代目と三平、三平と九代目の確執は似ています。父に学び父を超える。落語という芸の豊かさ、厳しさが浮かびます。
 (荻野谷正博 ライター)
(
2015年11月27日,「赤旗」)

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橋下氏やっぱり院政?/あやしい「引退」

 大阪維新の会幹事長の松井一郎大阪府知事は24日、NHKテレビの番組で、橋下徹大阪市長(大阪維新の会代表)の市長任期満了後について、国政政党「おおさか維新の会」の法律政策顧問として国政にも関与するとの考えを示しました。
 橋下氏は「大阪都」構想が5月の住民投票で否決され、政治家引退を表明。引退後については「法律政策顧問に挑戦していきたい」と語っています。
 松井氏は、戦争法をめぐって橋下氏が維新の党の独自案に「法律家」として関わっていたことを明かし、「法律顧問として、法律をつくる段階、条例をつくる段階でいろんな知恵を出してもらいたい」と述べました。結局、「院政」ということなのでしょうか。
 また番組内で「(橋下氏の政治家)復帰を望む声もある」と問われた松井氏は「いったんは休憩。私人に戻る」と述べる一方、「やるとしたら自分が先頭に立つタイプ。ぜひ復活してもらいたい」と、橋下氏の政治家復帰に含みを持たせました。「政治家引退」表明もあやしいものです。
 (笹)
(
2015年11月26日,「赤旗」)

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NHKの安倍政権寄り報道に抗議/「公共放送の使命果たせ」/各地の市民団体/茨城/奈良/兵庫/東海

 NHKの政権寄り報道に抗議する包囲行動が今月7日に東京はじめ全国各地でありました(8日付本紙既報)。茨城、奈良、兵庫各県と東海地域の行動を報告してもらいました。

茨城
 「NHK問題とメディアを考える茨城の会」のメンバー5人がNHK水戸放送局前で、「NHKの安倍政権擁護の報道姿勢がひど過ぎます」と訴えるチラシと、水戸局職員へ向けての呼びかけを配布しました。
 職員には「NHKの安倍政権べったりの報道を正せ」と訴えています。例として、8月30日に戦争法案反対の1000人を超す茨城県集会とデモがあったが、水戸局制作の「ニュース645」は全く無視したことをあげています。他の新聞などは相当の紙面を割いて報道したのに、全く無視した理由は何かと尋ねたのに対し、局は回答を拒否しました。チラシは、「これで公共放送の使命を果たしているのか」と訴えています。
 (会事務局長=大曽根紀雄)

奈良
 「NHK問題を考える奈良の会」の会員11人が、東京での行動に連帯して、NHK奈良放送局前、近鉄奈良駅広場でスタンディングアピール、リレートーク、チラシ配布にとりくみました。「籾井会長はただちに辞任せよ」「受信料支払い義務化反対」などと抗議の声をあげました。宣伝に足を止め、NHKの安倍政権擁護報道のひどさについて5分以上も話し込む人が何人もいました。
 会員の一人はトークで、籾井勝人会長が辞任するまで受信料支払いを凍結していて、NHKから裁判所を通して支払いの法的督促を受けたと紹介。脅しとも言えるNHKの強引な受信料取り立てに異議申し立てをしていると訴えました。
 (会世話人=齋藤紀彦)

兵庫
 「NHK問題を考える会(兵庫)」は、NHK神戸放送局前でスタンディングアピール行動に取り組みました。
 会共同代表の浪本勝年・元立正大教授は、NHKが客観的に安保法制成立に寄与したことや受信料義務化の動きを指摘。放送法に基づく公平な放送を求めました。
 県内各地から46人が参加。スピーチでは「伊方原発再稼働に反対する市民のデモをまったく報道しない」「TPP(環太平洋連携協定)の報道は不公正だ。商社やグローバル産業に光を当てる報道になっている」「職員のみなさんがぜひ立ち上がって」と次々と訴え。また「安倍政権は報道への介入をやめよ」「アベチャンネルにするな」とコールしました。
 (文責=編集部)

東海
 「NHKを考える東海の会」は全国行動前日の6日、NHK名古屋放送局長あての要請文を提出しました。会からは池住義憲代表ら3人が参加しました。
 名古屋局側は企画総務副部長らが応対。池住代表は、籾井会長就任以降のNHKのニュース報道は放送法の政治的公平の原則からはずれ、安倍内閣寄りが目立つと指摘。特に9月17日の参議院特別委員会での戦争法案審議の最後は混乱状態だったのに、NHKはいち早く「可決された」と報じたが、これは事実を伝えていないと抗議しました。また放送で安倍首相の登場が回数、時間とも多すぎると批判しました。
 局側は25日、池住代表に「個別の編集判断についてはお答えできない」との回答を寄せました。
 
(会運営委員長=岩田孝行)
(
2015年11月26日,「赤旗」)

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科学/DNAから見えた日本人の起源/上/定説揺るがす発見

 日本人の起源をめぐっては、日本列島にもともと住んでいた縄文人と大陸からやってきた弥生系渡来人が混血して形成されたとする「二重構造説」が定説となっています。しかし、最近のDNA研究からは、こうした考えと異なる日本人の成り立ちが見えてきているといいます。「生命の設計図」と言われるDNAから見えてきたものとは―。
 (間宮利夫)

 「私は今、二重構造説にかなり批判的なんです」。こう語るのは、国立科学博物館の篠田謙一・人類研究部長です。近著『DNAで語る日本人起源論』(岩波書店)で、二重構造説には本質的な問題点があると指摘しています。
 「従来の日本人起源論で一番違和感があったのは、おおよそ縄文の中期以降、日本全体の縄文人が一様になったとしている点でした。8年前に『日本人になった祖先たち』(NHK出版)を書いたときにも北海道と関東の縄文人のDNAの違いなどにふれていたのですが、その後DNAの塩基配列を解読する技術が格段に進歩し、日本人のDNAに関しても詳細なデータが集まってきました。その結果、一様な縄文人などいなかったと考えた方がいいという思いがより強くなってきたのです」

多様性高い集団
 DNAを使って人類の進化を探る研究は、母親から子孫に伝わるミトコンドリアDNAと、父親から子孫に伝わるY染色体、それに細胞の核にある全遺伝情報(ゲノム)を使って行われています。いずれも、子孫に伝えられていくうちに、その塩基配列は突然変異によって少しずつ変化していきます。
 変化の様子を集団ごとに比較することによって、相互の関係を知ることができます。最も早くから研究が始まり、現代人だけでなく古人骨を含め、多くのデータが蓄積されているのがミトコンドリアDNAです。
 「これまでの研究から、現代の日本人は人口比で1%以上をもつものに限っても20以上のグループ(ハプログループ)に分けられることがわかっており、非常に多様性の高い集団であることを示しています」

三つのルートで
 現生人類(ホモ・サピエンス)は20万年ほど前にアフリカで生まれ、6万年前ごろにアフリカを出て世界各地に広がったと考えられています。日本列島に現生人類が到達したのは、考古学的証拠から4万年前ごろの後期旧石器時代だったと考えられています。当時、地球は寒冷化していたため海面が大幅に低下し、北海道は大陸とつながっていました。
 「現代の日本人にみられるハプログループは、アジアの広い範囲の集団に共有されています。後期旧石器時代から縄文時代早期(1万年前ごろ)にかけて、シベリアから北海道、朝鮮半島から北部九州、琉球列島経由の主に三つのルートを通って日本列島へやってきた人たちが日本人の基層集団となったと考えられます」
 篠田さんは、基層集団から現代の日本人に受け継がれているハプログループの代表がM7aとN9bだと考えています。
 「この二つは周辺の一部地域を除いて日本列島以外ではほとんど見ることができませんが、どちらも2万年以上前に生まれたと推定されているので、後期旧石器時代から縄文時代早期にかけて大陸から日本列島へやってきた人々がもっていたハプログループと考えられます」
 M7aは共通祖先をもつM7bとM7cが大陸南部や東南アジア島しょ部に分布しているので南方から、N9bは沿海州の先住民に高い頻度でもつ集団があるので北方から、それぞれ日本列島に入ってきたとみています。
 「これまで解析が行われた縄文時代の全期間を通じて、ほぼすべての遺跡からN9bかM7aが検出され、N9bは北海道で最も比率が高く、南へ行くにしたがって低くなり、M7aは逆の傾向をもっていました。これらは、縄文人は旧石器時代にさかのぼる周辺の南北双方の地域から流入した人々が列島の内部へ広がっていって誕生したことを示しています」
 しかし、N9bとM7aをより細かく調べると、地域ごとに違うタイプが存在していることがわかってきたといいます。
 「このことは、最初に日本列島に入ってきて広がった人たちが、それほど混ざり合わず、その地域で新しいタイプに変化していったと考えた方が合理的です。二重構造説の、縄文人が日本列島の中で均質化していったというシナリオは、DNAからは描けません」
 縄文人のハプログループは地域的な違いがあることもわかっています。
 「縄文人からも多くのハプログループが見いだせるのは、さまざまな経路で大陸から人々がやってきていたからで、渡来系弥生人がやってくる前にも、大陸から日本列島への人の渡来が多くあったことを示しています」

ミトコンドリアDNA
 細胞内でエネルギーをつくりだしている小器官のミトコンドリアがもつDNA。約1万6500の塩基対で構成され、60億塩基対もある核のDNAに比べ解読が容易です。母親のものしか子孫に伝わらないので、その変異を比較することで、母系を通じた集団間の系統関係を知ることができます。

ハプログループ
 父親から息子に伝わるY染色体と、母親からしか子どもに伝わらないミトコンドリアDNAの各人がもつタイプのことをハプロタイプといい、共通の祖先をもつハプロタイプ同士の集合をハプログループといいます。
(
2015年11月16日,「赤旗」)

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科学/DNAから見えた日本人の起源/下/地域で異なる特徴

 前回(16日付)に続いて、DNAを使って日本人の起源を探っている篠田謙一・国立科学博物館人類研究部長の研究を紹介します。
 現代の日本人がもつミトコンドリアDNAのハプログループで最も多いのはDでした。東アジアを中心としたユーラシア大陸の東半分で最大の人口をもつハプログループです。
 Dは、D4など15のサブグループに分かれており、それぞれ2万8000年前から6000年前にかけて成立したと推定されています。それぞれ特有の分布をしているものも多いので、東アジアにおける集団の移動や成立を考える際に重要な情報を提供すると考えられています。

カギ握る「D4」
 篠田さんは、渡来系弥生人が日本人の起源に及ぼした影響を考えるうえで鍵を握っているのがD4だとみています。北部九州で発掘された渡来系弥生人のミトコンドリアDNAを分析した結果、D4が多数を占めていたからです。
 現代の日本人のD4の中で最も多いのがD4aです。約1万年前に成立したとみられ、朝鮮半島や中国東北部の集団でも多数を占めています。
 「D4aが縄文人から検出されていないことを考えると、この弥生人のもっているD4の多くはD4aと予想されます。本土(本州、四国、九州)日本人に関しては、二重構造説がいうように縄文人と渡来系弥生人によって、その遺伝的な枠組みがつくられたと考えてよいように思えます」
 本土日本では、弥生以降の歴史時代を通じて、在来の縄文系と渡来系弥生人の混血が進んだと考えられています。鎌倉時代の遺跡から出土した人骨のミトコンドリアDNAのハプログループの比率は、ほぼ現代の本土日本人と同じでした。
 「ミトコンドリアDNAのハプログループの変遷からは、中世が日本列島における混血の過程が完了した時期に一致する可能性が示されています」

「Y」はどこから
 二重構造説では、渡来系弥生人の影響がおよばなかった北海道と、およぶのが遅れた琉球列島では、在来の縄文人の影響が強く残ったことから、アイヌの人々と沖縄の人々が共通の形質をもつと考えています。
 「私自身、北海道の縄文期からアイヌ期までを通してミトコンドリアDNAの分析をしてきて、そうではないことに気づきました。アイヌの人々は、縄文人にはないハプログループYをもっていたからです。Yは本土日本と琉球列島の現代人も、古代人にもみられないハプログループです」
 Yは沿海州やカムチャッカ半島の先住民に広く分布するハプログループですが、北海道の縄文人にも見つからないので、二重構造説ではアイヌの人々に存在する理由が説明できません。
 最近、それを解く鍵となる事実が明らかにされました。5世紀から10世紀ごろにかけてサハリン南部から利尻・礼文島や北海道東北部に栄えたオホーツク文化を担った人々がYをもっていることが、北海道大学のグループの研究で明らかになりました。オホーツク文化の代表的な遺跡である網走市のモヨロ貝塚遺跡から出土した遺骨から、Yを高い頻度で検出したのです。
 「これまでの研究結果は、北海道の地域集団が沿海州の先住民と共通するいくつかのハプログループをもつ集団から出発し、オホーツク文化人の影響を受けて近世アイヌ集団の遺伝的な性格がつくられ、近世以降の本土日本人との接触のなかで現代に続く遺伝的な特徴を獲得したことを示していると考えられます」

高頻度「M7a」
 沖縄の人々を特徴付けるハプログループはM7aです。現代の沖縄の人々のもつハプログループの種類は本土日本人と共通していますが、頻度が異なっており、とりわけM7aは本土日本人が7%程度なのに対し、沖縄の人々では20%を超えています。
 これまで、篠田さんたちは、本土日本の縄文時代と弥生時代、平安時代に相当する「貝塚時代」や、鎌倉時代、室町時代に相当する「グスク(城)時代」の遺跡のミトコンドリアDNAを調べてきましたが、いずれの遺跡からもM7aが見つかっています。
 「M7aは南方起源と考えられており、本土日本の縄文人から現代人まで広く分布していることから、旧石器時代に南から北上して日本列島に広く分布していたものと考えてよいと思います」
 琉球列島の人々が北部九州の弥生人が用いた貝輪製品の材料となったゴホウラガイなどを運ぶ貝の道≠通じて九州と交流していたことがわかっています。
 「これ以降の時代の沖縄本島の遺跡からはD4が見つかっており、渡来系の弥生人を祖先にもつ人々がもちこんだと考えられます」
 グスク時代になると、それまで沖縄本島とは別の文化圏に属していた先島諸島の遺跡からもD4が見つかっています。
 「グスクの時代はDNAから見ても、今に続く琉球列島の形がつくられた時期だと言ってよいでしょう」
 沖縄本島や石垣島からは、北海道や本土日本ではほとんど見つかっていない後期旧石器時代の古人骨が見つかっています。このうち、2007年に発見された石垣島の白保竿根田原洞穴遺跡の旧石器時代の古人骨のミトコンドリアDNAが篠田さんたちの手で調べられています。
 「解析できたのは2体で、1体がB4、1体がRでした。いずれも南方起源と考えられるハプログループです。M7aをもっていた人もいただろうと思っているのですが、今のところ見つかっていません」
 後期旧石器時代の古人骨が見つかっている琉球列島ですが、その後、本土日本の縄文時代に相当する貝塚時代前期に至る1万年以上の間、古人骨の空白≠フ状態となっています。
 「最近、沖縄本島南部のサキタリ洞穴遺跡で空白を埋める古人骨が見つかっており、今後、後期旧石器時代と貝塚時代をつなぐ事実が明らかになるのではと期待しています」

二重構造説
 埴原和郎・東京大学名誉教授が人骨の形態学的研究にもとづいて1990年代に日本人の起源について提唱した仮説。東南アジア起源の縄文人が住んでいた日本列島に、北東アジア系の渡来系弥生人が流入して徐々に混血することにより、現代の日本人が形成されたとしています。
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2015年11月23日,「赤旗」)

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おはようニュース問答/BPOが意見書で政権批判に踏み込んだね

 秋平 BPO(放送倫理・番組向上機構)が6日に出した意見書で、安倍政権のテレビ介入を厳しく批判した。「(政府が)個別番組の内容に介入することは許されない」と言い切った。
 晴男 BPOはNHKと民放が2003年に設置した第三者機関だね。放送の自律と言論・表現の自由の確保、視聴者の基本的人権の擁護が主な目的となっている。

「クロ現」が発端
 秋平 今回のことの発端は、NHKが昨年放送した「クローズアップ現代」だ。出家詐欺のブローカーとされた男性と、多重債務者とされた男性が、事実とは異なっていた。しかも2人とも取材したNHK記者の知人だったという。
 晴男 BPOが「重大な放送倫理違反があった」と指摘したのは当然だ。さらに政府による放送内容への干渉を正面から批判したのは異例だし、画期的だ。
 秋平 そもそもなぜ憲法で「言論・表現の自由」が保障されているのか。放送でいえば、戦前・戦中のNHKラジオが、事実上の国営放送として国民の戦意高揚を推進してきた歴史への反省があるよね。
 晴男 放送法の「不偏不党」や「自律」は国家が放送局に権力からの独立を保障したものだ。一方、「政治的に公平」「報道は事実を曲げない」などは放送局が自ら守る規範なんだ。
 秋平 高市総務相が、放送法を根拠にNHKを「厳重注意」したのは的外れというわけだ。
 晴男 政権側は意図的に曲解しているのではないか。ただ、「やらせ」だけではなく、不正確な報道など、テレビへの国民・視聴者の不信は強い。政府の介入を許す下地をテレビ自身がつくってきた側面は否めない。

自主的に改善策
 秋平 番組内容については、なんといっても第三者機関であるBPOの役割が重要だ。自民党は「BPOは放送局の身内でお手盛りだ」「国の関与を」とまで言いだしている。このような言い分に、民放連の井上弘会長は10日に「各放送局はBPOの判断を尊重し、自主的に改善策を講じている」と表明している。
 晴男 放送の自主・自律の大切さ、権力からの番組内容への介入は許されないということをもっと広めていこう。

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2015年11月18日,「赤旗」)

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放送の自主・自律こそ民主主義を保障する/BPO委員長川端和治さんに聞く

 放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は、6日に公表したNHK「クローズアップ現代」に関する意見書の中で、高市早苗総務相のNHKへの「厳重注意」を「(放送への)政府の介入」と批判しました。安倍晋三首相は「法的に責任を持つ総務省が対応するのは当然」と開き直っています。同委員会の川端和治委員長に、意見書に込めた思いを聞きました。
 (和田肇)

 私たちは、テレビ番組の内容について問題があればテレビ局に是正を求める組織です。政府と関係はありません。意見書への政府の反応は知っていますが、直接何かを言う立場でもありません。
 今回、8年ぶりに大臣名での行政指導(厳重注意)が復活しましたので、言及しないわけにはいきませんでした(
1)。また自民党が番組の内容に問題があると放送局を呼び出したこと(2)に、法律上の権限がないことははっきりしています。政権与党が圧力をかけているのではないかと疑惑を抱かせる行為は自制すべきです。
 そもそも放送の役割とは何か。民主社会において伝える価値のあるあらゆる意見を、国民にまんべんなく届けることです。それによって国民は初めて正しい選択ができます。これは、表現の自由が保障されているからできることです。そして放送局が自主的・自律的でなければいい放送はできません。
 例えば独裁国家のように、国営のメディアが政府の見解だけを放送し、違う見解を弾圧したらどうなるか。国民は選択すべき情報をそもそも与えられないわけですから、民主主義が成立しない。選挙で多数を取ったとしても、国民は考える材料を与えられないで賛成していることになる。中学生でも分かる理屈だと思います。
 もっとも、放送が自主・自律を維持するには、不断の自己検証に加えて第三者の批評をあおぐ仕組みが必要です。それがBPOの存在意義です。権力を背景にすれば表現の萎縮につながりますが、私たちに権力はありません。厳しい批判もしますが、総務省の指導とは違う立場です。
 歴史的に見れば、表現の自由は非常に脆弱な権利で、いつでも侵害されてしまうものです。それを担う人はみな、擁護のためにたたかう。その気構えが必要ではないでしょうか。

 
1 意見書26n「行政指導という手段により政府が介入することは、放送法が保障する『自律』を侵害する行為そのものと言えよう」
 
2 自民党情報通信戦略調査会が4月、NHK「クローズアップ現代」とテレビ朝日「報道ステーション」について放送局幹部を呼び出し事情聴取した。

「クローズアップ現代」への意見
 2014年5月放送の「出家詐欺」が取り上げられた。詐欺のブローカーとされた男性と多重債務者の男性が相談する場面が隠し撮り風に撮影されたが、実際には記者が同席しており、記者と2人の男性は旧知の仲だった。NHKは「やらせはなかった」と報告した。放送倫理検証委員会は「重大な放送倫理違反があった」と指摘。NHKの「やらせ」の概念は「視聴者の一般的な感覚とは距離がある」とのべた上で「きちんと検証すれば、問題は演出と編集の点にだけあるのではなく、真実に迫るという熱意の欠如にあったことは明らか」と厳しく批判した。
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2015年11月17日,「赤旗」)

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「字幕放送」前年上回る/総務省が実績公表

 総務省は11日、2014年度テレビ放送の「字幕放送」などの実績を公表しました。
 総放送時間に占める「字幕放送」の割合は、NHK総合75・9%、NHKEテレ62・7%、在京キー5局57・5%、在阪4局52・5%、在名4局48・7%、東阪名除く全国民放ローカル局101社42・9%で、いずれも前年を上回りました。
 「手話放送」の割合は、NHK総合0・2%、NHKEテレ2・6%。在京キー5局、在阪4局、在名4局は0・1%でいずれも前年度並みでした。
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2015年11月16日,「赤旗」)

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BPOの「意見」/政権のメディア圧力、厳しく批判/政権のねらいは放送の「取り締まり」/松田浩氏

 NHK「クローズアップ現代」をめぐる放送倫理・番組向上機構(BPO)の報告書で際立ったのは、放送の自律機関としての同機構の高い見識と存在価値の確かさだった。
 特筆されるのは、高市総務相のNHKへの「厳重注意」文書に対し、「政治介入」として警告を発したことである。権力に弱い日本の放送メディアの歴史のなかで、画期的な快挙といっていい。

規定のすり替え
 それに引き換え、見逃せないのは権力むき出しの政権側の対応である。安倍首相は「放送法第4条は単なる倫理規定ではなく、法規であり、法規違反に担当官庁が法にのっとって対応するのは当然」とBPOを批判した。
 安倍首相の論の最大の問題点は、放送法の核心が政権の介入から放送の自由と自律を保障することにあることに目をつぶり、放送事業者の倫理規定として設けられた「放送番組編集準則」(第4条)を実効規定にすり替えることで、「放送の自律を守る放送法」を「政府が放送を取り締まる放送法」に百八十度転換させようとしている点にある。
 筆者はさきに、放送法制定過程で同法第4条を実効規定として運用することが憲法違反に当たるという当時のGHQ法務局の警告を受け、政府が「実効規定」構想を取り下げ、あらためて「倫理規定」として第44条(当時)を盛り込んだ経緯を示し、同条項を実効規定として扱うことの誤りを指摘した。(本紙6月17日学問文化欄)

政府自身の見解
 この際、政府自身が1968年1月に「臨時放送法制調査会」の要請に応じて提出した回答文書のなかで、「法が事業者に期待すべき放送番組編集上の準則(第4条=筆者)は、…一つの目標であって、…精神的規定の域を出ないものと考える。要は、事業者の自律にまつほかはない」と統一見解を明らかにしている事実も指摘しておこう。
 安倍政権はこれらの事実の数々に、はたしてどう整合性ある反論をもって答えることができるのだろうか。
 (メディア研究者、元立命館大学教授)

放送法第4条
 放送番組の編集にあたっての基準として次の4項を定めています。@公安及び善良な風俗を害しないことA政治的に公平であることB報道は事実をまげないですることC意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
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2015年11月13日,
「赤旗」)

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BPOの「意見」/政権のメディア圧力、厳しく批判/放送界に高まる「言論の自由守れ」の声

 放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会が6日に公表した「意見」は、安倍政権の相次ぐメディアへの圧力を「厳しく非難されるべき」だと指摘し反響を呼びました。いま、各界から「言論の自由を守れ」の声が広がっています。
 (佐藤研二)

 「放送行政に影響を与える政権与党が圧力をかけることは非常に不適切。表現の内容を理由に規制することになると憲法違反の問題が生じます」。BPO検証委の川端和治委員長は、6日の記者会見でこう述べました。

「クロ現」契機に
 川端委員長の発言は、やらせ演出≠ェ指摘されていたNHK「クローズアップ現代」の出家詐欺報道(昨年5月放送)に対して「放送倫理違反があった」とする意見を発表した席でした。意見では、NHKに深い自己検証を求める一方、高市早苗総務相が行った「厳重注意」や、自民党情報通信戦略調査会によるNHK幹部の事情聴取は、「放送の自由とこれを支える自律に対する政権与党の圧力そのもの」だと断じました。
 これに対して、安倍首相は10日の衆院予算委員会で「BPOは法的な機関ではないから、総務省が対応する」と反論。放送局の呼び出しも「NHK予算を承認する国会議員が事実を曲げているかどうか議論するのは当然」と言い放ちました。

民放連会長も
 同日、大阪市内で開かれた日本民間放送連盟(民放連)の全国大会で、あいさつに立った井上弘会長(TBS会長)は、6月に自民党「文化芸術懇話会」の出席議員らが「マスコミを懲らしめるには広告収入がなくなるのが一番」などと脅した問題に触れ、「報道機関の取材・報道の自由を威圧しようとする言動」だと批判しました。
 井上会長はBPOの役割について、政権与党側からあがる「国の関与が必要」「身内でお手盛り」などの声にもき然と反論しました。
 「BPOの目的を考えれば、『公権力から独立し、放送界が自主的に設置した第三者機関』という現在の形しかありえません」
 市民団体の「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」共同代表の湯山哲守さんは、BPOの意見を「政権からの圧力を厳しく弾劾した勇気あるもの」と評価し、こうのべます。「この問題を機に『クローズアップ現代』を現在の時間枠から外すとの報道もありますが、政権に物申す番組を弱体化させようとするなら、まさに『火事場泥棒』と言うべきでしょう」

放送倫理・番組向上機構(BPO)
 NHKと民放連による第三者機関。放送の自律を目指し、言論・表現の自由の確保、視聴者の基本的人権を擁護するため2003年に設置されました。放送界の自主的な取り組みは、1965年の放送番組向上委員会に始まります。07年、「あるある大事典U」のねつ造問題を機に、BPOの中に放送倫理検証委員会が設けられました。第三者性を保つため、委員は放送事業者の役職員以外で構成しています。
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2015年11月13日,
「赤旗」)

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潮流

 「なんとか自立したいが、自分に自信がもてない」。非正規で身も心もぼろぼろになるまで働き、最近その職場を辞めた20代の青年に話を聞く機会がありました▼朝早くから夜遅くまで安い賃金で働きづめ。社会保険にも入れてもらえず、失業手当も出ない。次は正社員としてまっとうに働きたいが、ハローワークの紹介先では採用されず、あとは同じようなブラックな仕事だけ。どうやって生きていけばいいのか…▼厚労省の調査で非正規社員の割合が初めて4割に達しました。増え続ける不安定な雇用。少し前の『週刊東洋経済』が刺激的な見出しの特集を組んでいました。「絶望の非正規」。企業が調整弁≠ニして都合よく使ってきたツケは社会全体に跳ね返っている、と▼非正規の海を漂流する残酷な現実。中年フリーター層の増加や心が病んでいく若者。マタハラや妊娠解雇で職場を追われる女性たち。見過ごせない数々の実態が働き手を守る仕組みがすぐに必要なことを訴えています▼ところが安倍政権は非正規雇用をさらにひろげ、次々と働く者の権利を奪おうとしています。改悪された労働者派遣法を取り上げたNHK「クローズアップ現代」も生涯ハケン≠ノ道を開いた不安を描きました▼技術力のアップに励みながら解雇された青年は「ただの捨て駒扱いだった」。過去最高益の企業が相次ぐなかで苦しみもがく労働者。日常の生活が人間を壊していく社会から、人間らしく働き生きられる社会に。手を携え反撃するときです。
(
2015年11月12日,
「赤旗」)

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NHKは権力監視を/横断幕掲げ宣伝/広島放送局前

 市民団体「政府から独立したNHKをめざす広島の会」(世話人共同代表=篠原一郎氏ら)は9日、広島市中区のNHK広島放送局前で宣伝し、山崎秋一郎局長らに籾井勝人会長の辞任・罷免などを求める申し入れ書を提出しました。
 16人が参加して「NHKを国策放送局にするな!」の横断幕を掲げ、「安倍政権擁護の報道やめよ! NHKは権力を監視するメディアになれ」と書いたビラを配りました。
 申し入れ書は、権力から独立した公共放送のあるべき姿を取り戻すよう要求。ビラを受け取った女性(70)は「公平に放送することが一番、大事なことだ」と語りました。
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2015年11月11日,
「赤旗」)

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与党の放送介入を正当化/BPOの意見にかみつく/首相

 安倍晋三首相は10日の衆院予算委員会で、NHKのやらせ番組をめぐり、自民党がNHK幹部を呼び出したことを放送倫理・番組向上機構(BPO)が批判したことについて、「NHKの予算を承認する責任がある国会議員が、事実を曲げているかどうか議論するのは至極当然だ。まったく問題ない」と語り、政府与党の放送介入を正当化しました。
 BPOの意見書はNHK番組「クローズアップ現代」のやらせをめぐって、自民党がNHK幹部を呼び出したこと、高市早苗総務相がNHKを厳重注意したことを「政権党による圧力そのもの」だと述べています。
 さらに、今年6月、自民党の勉強会で「マスコミを懲らしめるには広告料収入がなくなるのが一番」などの発言が相次ぎ、「メディアをコントロールしようという意図を公然と述べる議員が多数いる」と指摘しています。
 維新の党の今井雅人議員の質問に「納得できない」とのべた安倍首相は、「自民党の議連での議論と、番組について議論したものを混同するのは意図的な混同ではないかという人もいる。これはおかしい」と語り、政府や自民党によるマスコミ介入をまったく反省せず、BPOの意見にかみつきました。
 高市総務相も「放送法を所管する総務大臣としての責務を果たすために対応した」と述べ、介入は問題ないと語りました。
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2015年11月11日,
「赤旗」)

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戦争法反対の世論/設問変えごまかす?/NHK調査

 NHKは10日、11月世論調査(6〜8日実施)で、安保関連法(戦争法)が必要かと尋ねたところ「必要だ」が40%で「必要でない」が21%だと報じました。設問で賛否を問うのでなく「必要」かどうかを聞くことによって、反対世論が多数から逆転したかのような印象を流す結果となっています。

 同時期実施のJNN(TBS系)世論調査(7、8日)では、戦争法成立について「評価しない」51%で、「評価する」を上回っています。
 10日の「読売」が発表した同紙世論調査でも、戦争法成立を「評価しない」が47%で、「評価」は40%。8日放送のフジテレビ番組では、視聴者対象の調査で戦争法を「廃止すべき」が65・7%となり、「可決してよかった」34・3%を圧倒しました。
 NHKの10月世論調査では、安保法の成立を評価するかどうかを質問していました。「評価」39%で、「評価せず」が54%で圧倒していました。安保法について抑止力が高まる≠ニいう政府の説明に「納得できない」は59%と多数。戦争法反対の世論の流れを明確に示していました。今回の調査発表でこの設問の中身を変えたのです。
 「必要」かどうかを世論調査の設問にしていたのは、戦争法賛成の立場に立つ「産経」です。9月の産経FNN合同調査(19、20日実施)では、安保法制が「必要」69・4%に対し、「必要でない」は24・5%と少数になりました。しかし同じ調査では安保法成立の評価を聞くと、「評価しない」56・7%で「評価」は38・3%。強行成立前の8月調査では、「必要」が多数であっても、法案の今国会成立≠ノ「反対」が56・4%で圧倒しています。
 知ってか知らずか、「産経」の設問をまね、反対世論を小さく印象づけるNHK調査は、戦争法反対の多数世論をごまかす意図を疑わざるをえません。
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2015年11月11日,
「赤旗」)

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政権擁護報道に抗議/NHK大津放送局前

 NHK問題を考える滋賀連絡会は7日、大津市のNHK大津放送局前で、NHKの安倍政権擁護報道に抗議する行動に取り組みました。「NHKはアベ政権の手先になるな!」と書いた横断幕やプラカードを手に、約20人が参加しました。
 連絡会事務局の安倉弘志さんは、戦争法をめぐるNHKの報道姿勢を厳しく批判し、「本来のジャーナリストとしての役割、権力を監視するという立場に立ち戻らせていこう」とあいさつ。参加者がリレートークで訴えました。
 元国鉄労働者の男性は「国鉄分割・民営化の時、政府はマスコミを使って国鉄労働者を攻撃した。NHKをはじめとするマスメディアが庶民・労働者の立場に立って報道するよう声をあげていかなければ」と訴えました。
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2015年11月10日,
「赤旗」)

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BPOの指摘に反論

 菅義偉官房長官は9日の記者会見で、放送倫理・番組向上機構(BPO)放送倫理検証委員会が、NHKの報道番組でのやらせ疑惑浮上を受けてNHKに厳重注意した総務相を批判したことについて、「放送法を所管する立場から必要な対応を行った。同法の解釈を誤解しているもので、指摘は当たらない」と反論しました。
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2015年11月10日,
「赤旗」)

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BPOは見識ある対応/政権の放送介入批判/山下書記局長

 日本共産党の山下芳生書記局長は9日の記者会見で、NHK番組「クローズアップ現代」の過剰演出問題をめぐる高市早苗総務相によるNHKへの「厳重注意」や自民党によるNHK幹部の呼び出しを放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会が批判したことについて問われ、「BPOが権力からの干渉に厳しくくぎを刺したのは極めて見識のある対応だった」と語りました。
 自民党の谷垣禎一幹事長が9日の会見で「報道の自由があるから一切口をつぐんでいるのがいいとは思わない」と反論したことについて、山下氏は「放送法は、戦前の放送が戦争遂行の機関となった痛苦の反省を踏まえて、権力からの独立を何よりも大事にしている。やらせ問題などは自主的・自律的に是正していくのが大事であって、政府や政権与党が口をはさむというのは戦前の教訓を踏まえない誤った対応だ」と指摘しました。
(
2015年11月10日,
「赤旗」)

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「真摯に受け止め」/「クロ現」でNHK

 NHK「クローズアップ現代」などの出家詐欺報道で、放送倫理・番組向上機構(BPO)放送倫理検証委員会が「重大な放送倫理違反」と指摘したことを受け、NHKは6日、板野裕爾専務理事が記者会見し「真摯(しんし)に受け止める」とコメントしました。
 板野理事は、「事実に基づき正確に報道するという原点を再確認し、信頼される番組作りに当たっていく」とのべました。
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2015年11月08日,「赤旗」)

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自民の放送圧力批判/NHK番組、重大倫理違反/BPO

 放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会(川端和治委員長)は6日、昨年5月に放送したNHK報道番組「クローズアップ現代」などでの「出家詐欺」事件の報道について、「重大な放送倫理違反があった」とする意見を公表しました。
 番組で問題となったのは、出家詐欺をあっせんする「ブローカー」の活動拠点とするビルの一室に、多重債務者の男性が相談に訪れる約3分間の場面。同委の調べで、2人は10年来の知り合いで、周知の間柄だと判明しました。ビルの部屋も多重債務者側が用意したものでした。
 意見書は、情報提供者に依存した安易な取材や、許容の範囲を逸脱した撮影方法があったと指摘。「事実をわい曲してはならない」などと規定したNHKの「放送ガイドライン」にことごとく反し、「重大な放送倫理違反があった」と結論付けました。また、NHKが今年の4月に「やらせはなかった」とした報告書は「放送倫理の観点からの検証が不十分」と述べました。
 一方、「クロ現」問題で総務大臣が出した「厳重注意」や、自民党がNHK幹部を呼びだした事態に対しては、「放送法が保障する『自律』を侵害する行為」「政権与党による圧力そのもの」だと厳しく批判しました。
 川端委員長は記者会見で、「放送法の規定は政府が放送局の自律を保障するもので、総務省の行政指導は問題。政権党(による呼びだし)は法律上の根拠は何もなく、圧力をかけるのは不適切」と述べました。
(
2015年11月07日,「赤旗」)

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客室TV受信料支払い命令

 客室などにテレビを設置しているのに受信契約に応じていないとして、NHKが全国でビジネスホテル「ドーミーイン」を展開する共立メンテナンス(東京、東証1部)に、受信料の支払いなどを求めた訴訟の判決が、東京地裁でありました。永谷典雄裁判長は部屋ごとに受信契約に応じ、約6170万円を支払うよう命じました。(29日)
(
2015年11月01日,「赤旗」)

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NHK抗議行動/各地の取り組み/追加

 NHKの安倍政権擁護報道に抗議する7日の行動は、既報以外では次のNHK放送局前で実施されます。
 【広島】午前9時からビラ配布と局への申し入れ
 【水戸】午前9時半からビラ配布
 *なお名古屋放送局へは6日午後に「NHKを考える東海の会」代表が申し入れ
(
2015年11月05日,

【GoToTop】

NHK抗議行動/各地の取り組み

 安倍政権擁護報道のNHKに抗議する東京での7日の行動(実行委員会主催)に呼応する、各地の同日の取り組みを紹介します。
 【京都】正午〜午後1時、京都放送局前、スピーチやチラシ配布
 【滋賀】午後1時〜2時、大津放送局前でトークとコール
 【奈良】午後1時半、奈良放送局前でスタンディングアピール。2時半から近鉄奈良駅前でアピールとチラシ配布
 【大阪】午前11時半〜午後1時半、大阪放送局北・南玄関前で行動
 【兵庫】午後1時半、神戸放送局前でスタンディングアピール。連絡先・西川さん
090(5054)7171
 【福岡】前日の6日正午に福岡放送局前
(
2015年11月04日,「赤旗」)

【GoToTop】

NHK「経世済民の男」を見て/ジャーナリスト隅井孝雄/庶民への眼差しは不鮮明21世紀経済の風刺感じる

 NHKの「放送90年〜経世済民の男」という三本5回の特集ドラマを見た。辞書を引くと経世済民は世の中を治め、民の苦しみを救う≠ニある。時の総理が「経済再生」を呼号している最中、NHKが経済の歴史認識≠どのようにドラマ化するのか。とびきり腕利きの三人の脚本家が競作する「経済」ドラマだけに緊張気味に見入った。

 第1話はジェームス三木が描く歴史ドラマ「高橋是清」(8月22日、29日)。日露戦争、金融恐慌、関東大震災、満州事変という荒波を歩んだ破天荒な経済人だ。森有礼のひきで浪人生活を脱し、特許局の初代局長となるもあっさり離職、のち日銀入り、総裁を経て大蔵大臣、総理へと上りつめる。朝鮮半島、満州の権益の衝突である日露戦争の戦費調達や、昭和恐慌後の財政再建に驚異的な手腕を発揮した。そして軍事費削減を打ち出して二・二六事件の凶弾に倒れる経緯がスピード感を持って描かれた。しかし、彼が財閥系大企業を優遇し、対外進出のための軍事費に資金投入することで、軍国主義経済の基盤を固めながらも、反乱軍の標的になった歴史の皮肉に突っ込みが欲しい、と思った。

 第2話の「小林一三」(9月5日、12日)は森下佳子がコミカルタッチで異色経済人の生涯を描いた。うだつの上がらぬ銀行員が思わぬ経緯で鉄道経営に挑むまでが前編。後編は鉄道と住宅開発を一体化、遊園地、宝塚歌劇、百貨店、東宝グループと、娯楽を経営に結びつけて民衆を取り込む発想の広さを描く。戦時中小林は短期間商工大臣になるが、統制経済に抗して辞任に追い込まれた経緯ももりこまれた。三人の中では民衆の喜びを最も深く共有しようとした資本家像であり、だるまのキャラクター、少女歌劇の初舞台再現など、番組の構成演出も楽しめる要素たっぷりだった。
 第3話「鬼と呼ばれた男、松永安左ェ門」(9月19日)はベテランライター池端俊策が挑んだ。戦時中の電力国家統制をよしとせず表舞台から退いた松永。その彼が戦後の晩年、官僚の抵抗を排して電力民営化を実現させたエピソードに絞って描いた。サンフランシスコ条約締結が迫る中、電力再編成審議会の会長として、撤退直前のGHQを動かして、反対を押し切ったのだ。強引に敵を屈服させた手法は、ドラマとしては強烈な印象だった。しかし再編成された電力各社が地域独占の核となったその後の歩みは、日本列島にある種の傷痕を残したことも語る必要があったのではないか。

 破天荒な人生を生きながら政治のトップの座についたオダギリジョー(高橋)、経済人として成功するも、華やかなステージでタップを踏む阿部サダヲ(小林)、長く伸びた白い眉毛をトレードマークに政界を翻弄した吉田鋼太郎(松永)、それぞれが要求されたやや過剰な演技を実によくこなしていたのは印象に残る。脚本家と演出家は、それぞれの主演俳優をコミカルな演技で描くことで、シリーズの筋を通したのではないか。
 ドラマの中の主人公たちは、ある意味で時代を見通す眼力を持った人物たちであったが庶民への眼差しは三人三様。必ずしも「経世済民」が旗印に翻っているとはいえない部分もあった。しかし、全体として見れば、経済の21世紀の現状に対する風刺でもあると読み取ることができる。
 (すみい・たかお)
(
2015年11月05日,「赤旗」)

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潮流

保育士は5割、図書館職員は7割、ハローワークの職員は6割。先日のNHKスペシャル「暮らし直撃! 雇用激変 働くあなたは大丈夫?」で紹介された非正規で働く人の割合です▼昨年、ついに2000万人を超えた非正規労働者。番組冒頭、京都大学iPS細胞研究所の教職員の9割以上が非正規であることが伝えられます。「雇用が不安定だと、頑張りが続かない」と山中伸弥所長。もっともな嘆きです▼番組は、過酷な条件で働く正社員と低収入の非正規労働者という雇用の二極化が進み、「中間層の消滅」が始まっていると伝えます。スタジオ討論では、それぞれの立場から深刻な悩みが―。「一億総活躍社会」を掲げる安倍政権のスローガンが、いかに空疎で欺瞞に満ちたものか、おのずと浮かびあがりました▼しかし、問題提起が労働者派遣法の改悪の後というのがいかにもNHKらしい。労働者の代表である労働組合がスタジオにいなかったことも、画竜点睛を欠くものでした▼この労組の役割について、『ねっとわーく京都』(10月号)で京都放送労働組合の古住公義副委員長が説いています。同労組は、非正規の人たちの社員化、直用化、雇い止めストップなどの格差是正に数々の成果をあげてきました▼「正規・非正規を問わず、不本意なクビ切りを労働組合が認めてしまうのであれば、労働組合ではない。非正規問題に、まず既存の労働組合が本気で腰を上げることが大切」と古住副委員長。そこに解決の道筋が見えます。
(
2015年11月03日,「赤旗」)

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レーダー/テレビのネット参入/政治動かす若者の姿を

 いよいよ、テレビがインターネットの分野に本腰で乗り出しています。
 先頭を走るのが、「ネットの活用」を経営計画の重点に据えたNHKです。10月から、総合テレビの番組をネットに同時配信して、パソコンやスマホでも見られるようにする実験を始めました。放送後の番組を有料配信する「NHKオンデマンド」も、会員数約150万人を擁する規模に成長しています。
 一方の民放は、NHKの動きを「民業の圧迫」と警戒します。今月から、東京キー5局が共同でテレビ番組を無料で配信するテレビサイト「TVer(ティーバー)」を立ち上げました。約60の見逃し番組がパソコンやスマホで視聴できるサービスです。
 テレビ業界がこぞってネットに走るのは、急速な通信技術の発展とスマホの普及で、メディアとしてのテレビの地位が大きく揺らいでいるからに他なりません。NHKの放送文化研究所が実施している視聴者の意識調査の結果からも、若者を中心とした「テレビ離れ」の傾向は明瞭です。
 1日のテレビ視聴時間が「2時間以下」の人は5年前の35%から38%に増加する一方、「4時間以上」は40%から37%へ減少。85年の集計開始から続いていた「長時間化」傾向が初めて短時間化に転じました。
 「欠かせないメディア」は、若年層を中心にテレビよりもネットを支持。「テレビよりインターネットの動画の方が面白いと思う」と、20代の54%、16〜19歳では66%が回答しました。テレビ業界がネットに熱を入れても、要は番組の内容次第、というわけです。
 「TVer」に注文があります。意識調査では若年層の娯楽番組への接触が著しく減少しているのに、配信する番組はバラエティーばかり。1本ぐらいはドキュメンタリーや報道番組を加えてみてはいかがでしょうか?
 「NNNドキュメント」(日本系)や「テレメンタリー」(朝日系)、「サンデーモーニング」(TBS系)はじめ、各局とも毎年放送各賞を受賞している優れた番組を持っています。制作を手掛ける地方局の励みにもなるでしょう。何より、政治や社会を動かす流れをつくり出しているのは、ネットでつながる若者たちなのですから。
 (佐)
(
2015年11月02日,「赤旗」)

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本立て/自衛隊の転機 政治と軍事の矛盾を問う/柳澤協二著

 官邸で自衛隊のイラク派兵を指揮するなど40年間防衛官僚を務めた著者。退職後、集団的自衛権行使容認に真っ向から反対してきたことで知られます。本書では、自らの官僚人生を振り返りつつ、安倍政権の危うさを告発します。
 戦争法(安保法制)を強行する際に安倍政権が固執した「抑止力」について「冷戦時代の時代遅れの考え方」「思考停止」と批判。「海外に自衛隊を出す」という結論を先行させていた現役時代に触れ、「間違っていたのかもしれない」。誠実な姿勢が印象的です。
 (NHK出版新書 780円)
(
2015年11月01日,「赤旗」)

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NHK包囲行動/7日に東京・渋谷で

 NHKの安倍政権擁護報道に抗議する「NHK包囲行動」が7日に実施されます。東京では午後1時半に渋谷のNHK放送センター西門に集合。トーク、コールのあと、宮下公園北側(山手線そば)に移動、3時半デモスタート。主催は実行委員会。窓口は醍醐さん080(7814)9650。(他地域の行動は続報)
(
2015年11月01日,「赤旗」)

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月見出し】

*           試験に政権批判は「不適切」?!/設問、学内サイト削除/放送大学当局/出題教授「学問の自由に逆行」

*           自衛隊宣伝番組に警戒を/若者に親近感≠、えつけ/メディア総合研究所研究員加藤久晴さんが講演

*           宮城県議選、共産党躍進/安倍政権ノー、新たな共同/戦争法・TPP

*           戦争法・基地問題・税制…母親大会実行委が要請行動

*           戦争する国ノー/記念講演で学習/京都高齢者大会

*           おはようニュース問答/NHK受信料の支払い義務化検討だって?

*           「抑止力」を考える/恐るべき軍拡の道、危険極まる概念/「米軍との一体性」言うが…

*           メディアと安倍政権/権力の介入おおもと断たねば/市民団体が大阪で集会

*           安心して働ける社会に/働く女性の未来開く集い/神奈川

*           NHK問題を考える会総会/奈良

*           戦争法は安全と関係ない/平和のつどいで孫崎氏講演/名古屋

*           ニュースが政権寄り、批判精神欠落=^NHK幹部へOBが「手紙」/235人に発送

*           全受労団交時のNHK対応/不当労働行為認定/都労委

*           政権とメディア、テーマに集会/3日に大阪で

*           安倍改造内閣「評価しない」が上回る/各世論調査

*           水曜随想/衆院議員赤嶺政賢/245日国会で得た「希望」

*           NHK経営委員と語る会/受信料問題/政権との距離/ラジオ向け原稿を/多彩な意見/仙台

*           少子化¢ホ策は/政策語らず「カギは家族」/丸川環境相

*           政府・与党、臨時国会に「逃げ腰」/戦争法・TPP批判を警戒/野党一致で開催を要求

*           ひと/俳優仲間由紀恵さん/舞台「放浪記」主演/人生に咲く花£Tしたい

【GoToTop】

【10月本文】

試験に政権批判は「不適切」?!/設問、学内サイト削除/放送大学当局/出題教授「学問の自由に逆行」

 通信制大学の放送大学が、単位認定試験で出された問題文に安倍政権批判があるのは「不適切」として試験後、学内用ホームページに公表する際に、当該部分を削除していたことに批判の声があがっています。問題を出題した大学教授は「学問の自由に逆行する」と指摘しています。

 削除されたのは、7月に実施された「日本美術史」の問題文の冒頭です。戦時中、弾圧を受けたり、戦争に協力させられた日本の画家をとりあげました。
 問題文は「現在の政権は、日本が再び戦争をするための体制を整えつつある。平和と自国民を守るのが目的というが、ほとんどの戦争はそういう口実で起きる。1931年の満州事変に始まる戦争もそうだった。それ以前から政府が言論や報道に対する統制を強めていた事実も想起して、昨今の風潮には警戒しなければならない。表現の自由を抑圧し情報をコントロールすることは、国民から批判する力を奪う有効な手段だった」と記述されていました。
 受験した学生1人から「審議が続いているものを、多くの受験生の目に触れる試験で取り上げるのはどうかと思う。残念だ」という趣旨のメールが試験直後、大学に届いたため学内で検討し、文章の冒頭部分を削除しました。
 本紙の取材にたいして同大学の総務部長は「(文部科学省などの)機関から指導があったというわけではなく、大学の判断で削除した」と説明しました。
 放送大は10月23日、公式ホームページで学長声明を発表。放送法に基づき、政治的に公平であるべきなどを挙げ「多様な意見が存在する事柄について、担当の客員教授の考えのみが述べられており、このことについて本学としては、不適切と考えた」としています。
 問題を作成した佐藤康宏・東京大学教授は、「大学の裁量で規制をどんどん広げることができてしまう。学問の自由とは逆行する」と批判。「現代おきている問題に寄せて作成した導入部分を、『設問の趣旨とは関係ない』と判断されたのは作者として意に反する」と語りました。
 佐藤教授は、放送大の客員教授を今年度で辞任する考えです。
 元NHKプロデューサーの永田浩三・武蔵大学教授は「大学と放送という両面から見ても、おろかな行為」だといいます。
 永田氏は、放送法第1章1条にある放送の目的、「放送が健全な民主主義の発達に資するようにすること」が、重要だと指摘し、こう厳しく批判します。
 「放送法は、戦前・戦中に放送が国家の道具にされた反省をもとに作られました。放送を使って国民が恩恵を受けられるよう、憲法の精神を具現化したものであり、放送法を盾に弾圧するのは笑止千万です。政権におもねり、一部の批判の声におびえて問題文を削除するなんて、教育者としてもあるまじきことです」

放送大学
 1983年に設立された通信制大学。放送法の適用を受ける放送事業者でもある放送大学学園が設置。授業はラジオ、テレビ、インターネットの番組で受講します。単位認定試験は、各地にある学習センターで行われます。約9万人が学んでいます。
(
2015年10月30日,
「赤旗」)

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自衛隊宣伝番組に警戒を/若者に親近感≠、えつけ/メディア総合研究所研究員加藤久晴さんが講演

 メディア総合研究所研究員の加藤久晴さん(元日本テレビプロデューサー)がこのほど、テレビが自衛隊をどう扱ってきたかをテーマに都内で講演しました(主催・たんぽぽ舎)。3回にわたって戦争や原発とメディアの関係を考える講座を開いた最終回です。

 加藤さんは、「戦争法を国会で強行成立させるまでに、自公政権側はかなり周到に準備をしていたのではないか。最近に限って言えば、その始まりは2013年4月14日から10回放送されたドラマ『空飛ぶ広報室』(TBS系)だと思う」と指摘しました。
 「空飛ぶ…」は、エンドロールでも防衛省と航空自衛隊の「協力」が明示されました。女性記者と自衛官の恋物語を通して、自衛隊が普通の人たちの集団≠セと強調しました。

「憲法」問わず
 「終わった時、自衛隊の機関紙『朝雲』が『大ヒット』と報じました。自衛隊を宣伝するためにつくったドラマということだと思います。そして、政府や放送局、自衛隊は、世論がどう反応するかを見ていたのでしょう。ところが、憲法9条に違反する自衛隊を堂々と肯定的に描いたことへの批判は、あまりありませんでした。まともに反発されないということで、このあと自衛隊番組がものすごく増えます(表参照)」
 一連の番組の特徴として、@装備費の高さを強調A憲法9条との関係を説明する部分は一切なしB災害救助にあこがれて自衛隊に入隊したのに軍事訓練をさせられていることへの疑問も一切なし―などを挙げました。
 加藤さんは、今年に入っても「ナイナイのお見合い大作戦!自衛隊の花嫁スペシャルin沖縄」(TBS系)や、アニメ「GATE〜自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり」(TOKYO MX)など、自衛隊を宣伝する番組が相次いで放送されていると紹介。若者に自衛隊への親近感を抱かせる役割があるとのべました。
 加藤さんは自衛隊PRの背景にある軍事費の増加についても指摘しました。16年度の概算要求額は5兆911億円で、これまでの最高額になっています。加藤さんは、「政府に都合よく放送される自衛隊宣伝番組からは、国民をだまして、軍国主義にもっていこうという意図さえ感じられる」と批判します。

戦争法後押し
 今年、自衛官応募者は前年の2割減。防衛省が若者の獲得に必死になっていることも宣伝攻勢の要因になっているとみられます。
 60年代には、自衛隊と軍国主義を賛美したドラマ「列外一名」(日本テレビ系、64年)に対し、市民や労組の力で放送を中止させるなど、自衛隊番組を平気で垂れ流す放送局への批判がわき起こりました。
 「戦争法の強行成立に、今でも世論の反発が非常にあります。自民党は、この反発が来年の参院選まで続くのではないかと心配しています。これからも、戦意を高揚させるようなテクニックを持った番組が、ドラマやアニメなどいろんな形でつくられるのではないか。そうなる前に警戒を強め、出てきたときには抗議していくことが大事だと思います」(加藤さん)

13年に放送された主な自衛隊宣伝番組
*「赤丸!スクープ甲子園」(日本テレビ)
*「超潜入リアルスコープ」(フジテレビ)
*「Nスタ」(TBS)
*「サラメシ」(NHK)
*「ニッポンのミカタ」(テレビ東京)
(
2015年10月29日,
「赤旗」)

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宮城県議選、共産党躍進/安倍政権ノー、新たな共同/戦争法・TPP

 日本共産党が4議席から8議席に倍加し、自民党を過半数割れに追い込み、第2党に躍進した宮城県議選―。当選確実の報が入ると各事務所では「やったー」「勝ったー」と歓声が上がり握手と抱擁が続きました。

元町村会長「『国民連合政府』に万歳」
 選挙戦では、共産党が呼びかけた戦争法廃止の一点での「国民連合政府」への熱い期待が広がりました。
 大崎区で共産党初の県議誕生となる内藤たかじ候補当選確実の報が入り、沸き返った事務所で、鹿野文永元宮城県町村会会長は「内藤当選と戦争法廃止の『国民連合政府』にバンザイ」と音頭をとりました。栗田彰前大崎市議会議長は「戦争法がなければ今回の(内藤支援という)企てに加担することはなかっただろう」と述べ、笑いを誘いました。同区では保守系とされる元町長や地域団体代表が独自選対をつくり共産党を応援しました。
 各地の演説の反響でも自衛官の父親(60)が「賛成だ。自衛官の子どもを持つ親の思いは同じではないか」と述べ、高校生から「戦争に行くことになったら大変。早く政府をつくって」という声も聞かれました。
 開票の翌26日付のメディアも「反安保 共産が躍進 支援の渦急速拡大」(河北新報)、「安保法制への反対の訴えを中心に掲げ、『自共対決』を前面に打ち出した戦いが実を結んだ」(朝日新聞)と報道。自民当選者も「安保法制批判が根強くあった」(青葉区最下位当選の相沢光哉氏)などと認めています。
 戦争法を中心にしつつ、原発再稼働、環太平洋連携協定(TPP)、消費税増税という安倍自公政権の暴走政治全体に批判が広がりました。
 暮らしの問題では、共産党が県の1182億円のため込み金を使って県民・被災者に冷たい県政を転換しようという訴えに反響がありました。
 NHKテレビの開票速報に出演した村井嘉浩知事は「ため込み金があるという指摘があるが、集中復興期間が終了するのを前に課題が山積していて、そのためにとってある資金だ」という、苦しい説明を行い、共産党の指摘が効いていることが浮き彫りになりました。
 日本共産党の都道府県議数では、宮城県は長野県と同数となり、東京都、京都府に次ぐ全国3位となりました。

元自民党員やママ友ら勝手連
 今回、共産党を支援する勝手連≠ェ各地でつくられ、他党派を応援していた人も次々応援するようになったのが特徴です。
 得票を約1・6倍化し、前回31票差での落選の雪辱を果たした仙台市若林区では、前回最下位当選した自民候補の選対本部長を務めた自治会連合会会長が「バッジがないのに被災者をこまめに訪問し、地域のために一生懸命になっている福島かずえ候補こそ県議にふさわしい」と応援演説を各地で行いました。
 初の党県議議席を獲得した仙台市宮城野区では、各地域で党候補応援の勝手連≠ェでき、ママ友勝手連≠フメンバーは「戦争法強行を見て、私たちの安全を守るには共産党を伸ばすしかない。戦争法反対デモでいつも先頭に立っている大内真理候補しかない」と話しています。
 仙台市泉区でも、自閉症児親の会、反原発組織など幅広い団体から中島れん候補支援の動きが出て、前回の1・6倍の得票で同区で党の初県議誕生となりました。
 塩釜区(定数2)では、天下みゆき候補を応援する女性アピール賛同者が約700人に上り、自民2候補との激戦で議席を守り抜きました。仙台市青葉区でも、遠藤いく子候補応援の女性アピールが広がりました。
 三浦かずとし候補(石巻・牡鹿区)が復興を前に進める議席を守り、角野達也候補(仙台市太白区)が勇退する横田有史県議の議席を引き継ぎました。
 今回の県議選での共産党躍進は、安倍自公政権がすすめる暴走政治の打破の道筋を示し、実現のために誠実に努力する日本共産党の活動、多くの人の連帯が生み出したものです。
 共産党候補を支援した木村春雄元宮城県農協中央会会長は、かつて自民党籍があったことにも触れ「戦争法反対を『国民の誤解』扱いし、TPPで農業を危機に追いやり、地域社会を壊す。今の政権のやり方はひどすぎる。共産党は今回の躍進を参院選につなげてほしい。それが大切だ」と強調しました。
(
2015年10月27日,
「赤旗」)

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戦争法・基地問題・税制…母親大会実行委が要請行動

 第61回日本母親大会実行委員会は22日、東京都内で防衛省や財務省などの各省庁、NHKに対して要請行動をおこないました。首都圏を中心に、全国から約170人が参加。8月に神戸市で開かれた、同大会の決議の要求実現を求めました。
 防衛省への要請では、戦争法の廃止、米軍基地再編・強化の中止、沖縄・普天間基地の無条件撤去、名護市辺野古への新基地建設中止などを要請しました。
 大阪の代表は戦争法について「参院特別委員会の速記録にも聴取不能と書かれている中で、とても成立したとは思えない」と語り、愛知、京都、岡山各県の代表などは、米軍機による低空飛行訓練の実態を告発しました。
 「わが国の安全保障環境は厳しさを増している」との回答を繰り返す職員に、徳島実行委員長の有川マサ子さんは「私たちの生の声を受け止め、しっかりと反映していただきたい」と訴えました。
 財務省への要請では、消費税10%への増税撤回、大企業優遇税制の是正、家族従事者の働き分を認め所得税法第56条の廃止、軍事費の大幅縮小などを求めました。
 全労連の長尾ゆり副議長は「軍事費は増額され、5兆円を超える一方、社会保障は切り捨てられている。根拠のない『思いやり予算』は必要ない」と指摘しました。
 全商連婦人部協議会の井賀久恵副会長は「所得税法56条の廃止を求める意見書を全国426の自治体が採択している。不公平な税制を一刻も早く廃止してほしい」と話しました。
 坂井学財務副大臣が要請書を受け取り、「大臣に渡します」と答えました。
 要請行動に先立ち、参院議員会館で全体会を開催。「戦争法と私たちのくらし」と題して、元日本弁護士連合会会長の宇都宮健児氏が講演しました。
(
2015年10月23日,「赤旗」)

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戦争する国ノー/記念講演で学習/京都高齢者大会

 「21世紀 第15回京都高齢者大会」(主催=同実行委員会)が17日、京都市中京区のラボール京都で開かれ、300人が参加しました。四条大宮までデモ行進しました。
 全体会で、京都高齢者退職者協議会の谷内口浩二会長が開会あいさつ。
 来賓として、シールズ関西の長井優希乃氏、京都総評の梶川憲議長、日本共産党の倉林明子参院議員、新社会党府本部の池内光宏委員長があいさつしました。
 元朝日新聞大阪本社編集局長の新妻義輔氏が記念講演。
 新妻氏は、戦争法について「憲法9条を空文化し、戦争できない国から戦争できる国に百八十度転換するものだ」と批判。
 そのうえで「安保法案に反対した野党には政権交代を実現してほしい。間髪いれず出てきたのが共産党の『国民連合政府』だ。あれこれの政策ではなく国の土台にかかわる問題であり非常に意味のあること」と評価し、共感・期待が寄せられていると述べました。
 メディアの危機に触れ、NHKのニュース解説が「首相の代弁役」になっていると批判し、大手メディアも批判的視点が弱いと警鐘を鳴らしました。
(
2015年10月21日,「赤旗」)

【GoToTop】

おはようニュース問答/NHK受信料の支払い義務化検討だって?

 ふゆみ NHK受信料の義務化の動きがあるって聞いたけど。
 のぼる 正確にいうと受信料「支払い」の義務化だね。自民党小委員会がNHKと総務省に検討するよう提言したんだ。
 ふゆみ 今は義務じゃないってこと?

今は「契約」義務
 のぼる 放送法では、テレビなどNHKを見られる機器を設置したら、受信「契約」を義務付けている。「契約」したら受信料を払うことになるんだけど。
 ふゆみ 「契約」義務を「支払い」義務にってよく分からない。なんで自民党はそんなこと言いだしたんだろう。
 のぼる 昨年度の受信料支払率は76%だった。4分の1近い世帯が受信料を払っていないというのは、負担の公平性が保てていないと言っているね。そもそもどうしてNHKは受信料を取っていると思う?
 ふゆみ 税金で運営すると戦前の「国営放送」のようになっちゃうからでしょ。その反省と受信料のおかげで、政府や財界、特定団体に左右されない質の高い番組を放送できる仕組みのはず。

信頼関係が根本
 のぼる 受信料支払いが義務じゃないのは、受信料はNHKと視聴者の信頼関係で成り立っているという考えからだね。本来、ジャーナリズムには権力を監視する役割が求められる。受信料はNHKが政府から独立し、自主・自立的に番組をつくる支えでもあるんだ。
 ふゆみ 義務化は視聴者との関係を無視することになるんだね。NHKといえば、昨年1月の籾井会長就任以降、安倍政権寄りの政治報道になっちゃって「アベチャンネル」とも言われてる。義務化よりやることがあるでしょ。
 のぼる その上、インターネットでNHKの番組を配信して、ネット利用者から受信料を取ろうという計画もある。訪問するのが難しいオートロックマンション対策として、マイナンバーの活用まで検討している。
 ふゆみ それはひどくない? パソコンやスマートフォン中心で、テレビを持ってない若い世代からも取るってこと?
 のぼる 自民党は不払い世帯への罰則も検討するよう求めている。
 ふゆみ 「支払い義務化」の狙いと問題点はたくさんあるんだね。
(
2015年10月21日,「赤旗」)

【GoToTop】

「抑止力」を考える/恐るべき軍拡の道、危険極まる概念/「米軍との一体性」言うが…

 安倍首相はじめ政府は戦争法強行の目的として、「抑止力」の向上を前面に掲げてきました。しかし、NHKが13日に発表した世論調査結果によると、国民の多数はその説明に反発しています。改めてこの問題について考えてみました。
 (小泉大介)

6割の人たちが「納得できない」
 NHK世論調査では、「安全保障関連法の成立によって抑止力が高まり、日本が攻撃を受けるリスクが下がる」という政府の説明に納得できるかとの問いに対し、「大いに納得できる」は6%、「ある程度納得できる」は28%にとどまりました。一方、「あまり納得できない」が34%、「まったく納得できない」は25%に達しました。
 安倍政権が昨年7月に集団的自衛権行使を容認する「閣議決定」を行って以来、呪文のように唱えてきた「抑止力」。その一般的な意味を辞書で調べると、活動をやめさせる力∞思いとどまらせる力≠ネどとなっています。しかし、軍事的にはそんな生易しいものではありません。
 「抑止というのはあからさまな暴力の話。敵が1発でも撃てばこちらは100発で撃ち返すというのが本質」「抑止を多少なりとも効かせようと思えば、恐ろしく軍備を増強しなければならない」
 ある軍事研究者がこう解説するように、「抑止力」とは危険極まりない概念です。これを本気で強化するということは、まさに日本という国の生きざまを根本から変えてしまうことを意味します。
 さらに、「抑止力」を発揮するために軍拡をすれば、「敵対国」にそれ以上の軍拡で対抗する口実を与え、軍事対軍事のエスカレーションも生み出してしまいます。これは学問的には「安全保障のディレンマ」と呼ばれ、常識ともいえる理解となっています。
 にもかかわらず安倍首相は、「抑止力」についてバラ色≠フ説明をするだけで、その本質や危険性について国民に何一つ語っていません。沖縄県名護市辺野古での米軍新基地建設も、「抑止力」の理屈で推し通そうとしており、その罪はあまりにも深く重い。

中国「脅威」論を振りまいた政府
 安倍首相が「抑止力」の柱に位置付けているのが、「米軍との一体性」です。ところが―。
 かつて自衛隊のイラク派兵を仕切った柳沢協二・元内閣官房副長官補は15日に都内で開催した会合で報告し、「(戦争法で)日米が一体であることが示されるから抑止力が高まるというが、これは何なんだ」と根本的な疑問を表明しました。
 同氏は、安倍首相訪米を控えた2013年2月、米軍準機関紙「星条旗」が尖閣諸島をめぐり、「無人の岩のために俺たちを巻き込まないでくれ」という論評記事を掲載したことを紹介しました。
 政府は戦争法強行成立のため、中国「脅威」論も振りまいてきました。しかし実際には、「(日米の)双方が感じる脅威には隔たりがある」(柳沢氏)というのです。
 なるほど、昨年4月に来日したオバマ米大統領は安倍首相との会談後の会見で、「日本の施政下にある領土は、尖閣も含めて安保条約第5条の適用対象となる」と述べつつも、「安倍首相との議論で私は、この(尖閣領有をめぐる)問題を平和的に解決することの重要性を強調した」「挑発的な行動はとるべきではない」と釘を刺しました。
 米政府は中東地域で「対テロ戦争」を継続・強化する一方、中国については「関与」政策を基本的に維持しているとみられます。日本が中国の「脅威」をもって「抑止力」を強化しても、肝心の米国にはしごを外される可能性があり、この点でも政府の言い分は破綻しています。
 柳沢氏は、戦争防止のためには経済などソフトパワーのさまざまな手段を発掘することが重要だと指摘した上で、こう力説しました。「軍事的抑止に頼らない思想のアセット(資産)をしっかりつくらなければならない」
(
2015年10月20日,
「赤旗」)

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メディアと安倍政権/権力の介入おおもと断たねば/市民団体が大阪で集会

沖縄の米軍新基地に反対する「辺野古基金」の共同代表菅原文子さん
 安倍政権のメディアへの介入を草の根の力で止めようと「メディアを考える大阪集会」(主催・NHK問題大阪連絡会、放送を語る会)が3日、大阪市内で開かれました。沖縄の米軍新基地に反対する「辺野古基金」の共同代表・菅原文子さん(73)の「民主主義をホンモノに」と題した講演を紹介します。

 この国が戦争する国に向かっているように、誰もが肌身で感じていると思います。集団的自衛権の行使容認や安保法制に続き、防衛装備庁もできました。いま、日本で何が起きているのか、この先どうなっていくのかということを考え、メディアだけの情報に頼らず、自分で情報を集め、専門家の著書など自ら学習することは、私たちの責任だと思います。
 日本の情報公開レベルは、発展途上国並みだそうです。メディアも一つの権力≠セからうのみにできない。悲しいかな経営者や編集者の意図が反映されてしまいます。民放はコマーシャルを出してくれるクライアントの意向をおもんばかります。NHKのニュースも政府のプロパガンダ(宣伝)が働いているようです。「権力は疑え」というのが私の持論です。
 ただ、どんな組織にも多面性・多様性があるので、「NHK」というだけで切ってしまうことには異議があります。夫・菅原文太はNHKの番組にたくさん出演してきました。「人と鯨がたどった道」(2006年)や、シリーズ「日本人は何を考えてきたのか 第2回 自由民権 東北で始まる」(12年)など、一緒にいい番組をつくってきたプロデューサーやディレクターは、まだまだいます。問題は、「いい番組」を視聴者がいちばん見てくれそうな時間帯では放送しないことです。
 NHKでは籾井(勝人)さんという、安倍首相が飛ばすドローン(遠隔操作される飛行機)みたいな会長が入り込んでいます。たとえ籾井さんが辞めても、安倍さんが政権にいる限り、また別のドローンを飛ばしてくるのに決まっています。だから、おおもとを断たなければいけない。
 次の選挙で、世界の標準並みの民主主義に日本を持っていかなくてはなりません。選挙について言えば、共産党が選挙協力などをして、国民全体のオールジャパンで野党による政権をつくると呼び掛けています。本当にいいことだと思います。
 夫は沖縄県知事選挙の翁長さんの応援で、政治の役割は二つあると言いました。一つは、国民を飢えさせないこと。もう一つは戦争をしないことです。これは政治家の役割であるとともに、主権者としての私たちの役割ではないでしょうか。

 すがわら・ふみこ 1942年東京生まれ。09年夫の菅原文太さんと山梨県で無農薬有機の農業生産法人を設立。昨年11月に死去した文太さんの遺志を受け継ぎ、原発や沖縄、平和問題に取り組む。沖縄「辺野古基金」共同代表。

NHK報道は「政権寄り」/「放送を語る会」の小滝氏が基調報告
 大阪集会では、市民団体「放送を語る会」の小滝一志事務局長が「安倍政権のメディア戦略」について基調報告しました。会が実施したテレビ各局の戦争法案報道のモニター調査(5月11日〜6月24日まで)をもとに、NHKの際立った「政権寄り」報道の実態を明らかにしました。
 例えば、NHK「ニュースウオッチ9」では計135分(20回)放送したのに対し、テレビ朝日「報道ステーション」は274分(19回)、TBS「ニュース23」は188分(27回)と健闘。内容も、「NHKは法案に批判的な言動や市民の抗議行動を伝えず、独自の調査報道もやらなかった」と小滝さん。
 NHKを市民の側に取り戻すために、視聴者運動のさらなる発展とともに、「政府・与党によるNHKへの干渉を絶つための放送制度改革」の必要性が訴えられました。
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2015年10月19日,
「赤旗」)

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安心して働ける社会に/働く女性の未来開く集い/神奈川

 「はたらく女性の神奈川県集会」が3日、横浜市で開かれ、約90人が参加しました。神奈川労連女性センターが主催したもの。

「女性の貧困」テーマに講演
 NHKディレクターの宮崎亮希(あき)氏が「女性の貧困」と題して講演。朝から晩まで最賃ぎりぎりのかけもちで労働する10代、20代の「生きていることに精いっぱいで抜け出せない」実態や「倒れたら子どもが餓死する」と語るシングルマザーの声を紹介しました。宮崎氏は背景に、低収入で不安定な非正規労働環境や福祉の不十分さがあると指摘しました。
 分科会「ワイワイトーク『安心して働き続けるために』」では、中華街萬珍楼で10年間、正社員だった中尾美紀さん(46)が発言しました。突如、一方的に休職を命令され、そのまま「休職満了で退職」させられて神奈川労連に相談。「復帰をめざし提訴したたかっている」と述べました。
 日本共産党の畑野君枝衆院議員、あさか由香参院神奈川選挙区候補、君嶋ちか子県議が参加しました。畑野氏は、新3本の矢で子育て支援を掲げる安倍内閣が、派遣法を改悪し、子ども・子育て支援新制度実施を機に保育料の大幅引き上げを起こしていると批判しました。
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2015年10月06日,
「赤旗」)

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NHK問題を考える会総会/奈良

 NHK問題を考える奈良の会は9月26日、総会と講演会を奈良市内でおこない、会場いっぱいの131人が参加しました。
 講演会では、西村秀樹氏(近畿大学人権問題研究所客員教授・元毎日放送記者)が「われわれは、過去とどう向き合い、今後どう進むべきか〜民間放送から考える」と題して、日本の新聞、放送の歴史と戦争責任や国家と放送管理制度などについて話しました。
 会場からは「テレビは今後どう変わっていくべきなのか」など質問が出されました。西村氏は「歴史の真実に正面から向き合うこと」と答え、会場に向かって「ニュースは編集されます。なんでも信じるのではなく、メディア・リテラシー(読み取る力)を身につけてください」と話しました。
 参加した奈良市の77歳の女性は「もっと歴史を勉強したいと思いました」と話しました。
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2015年10月03日,
「赤旗」)

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戦争法は安全と関係ない/平和のつどいで孫崎氏講演/名古屋

 名古屋市昭和区で9月27日、第9回昭和区平和のつどいが開かれ、500人の参加で名古屋柳城短期大学体育館がいっぱいになりました。昭和区九条の会など12団体でつくる実行委員会の主催。
 地元の太鼓グループ「鼓瑞」(こだま)の勇壮な太鼓演奏で開幕。開会あいさつで昭和九条の会代表世話人の小林武・沖縄大学客員教授が「若者が再び命を奪われないように、安倍政権が強行した戦争法は廃止しなければならない。集団的自衛権行使容認の閣議決定は政権を代え、撤回する必要がある。その実現は草の根からの国民の運動にかかっている」と訴えました。
 記念講演したのは元外務省国際情報局長の孫崎享(うける)氏。NHKなど大手メディアが安倍政権を批判しないことに警鐘を鳴らし、「戦争法は日本の安全とは全く関係がない。東アジアの緊張を高めるだけ。軍事でなく、話し合いによる平和外交に徹すべきだ」と強調しました。
 講演に先立ち、ひまわり保育園の保育士や園児による「ぞうれっしゃ」の歌、桜花高校インターアクトクラブのハンドベル演奏、70人による「ヒロシマの有る国で」の大合唱などがありました。
 会場席で一緒に歌っていた女性(64)は「戦争法成立後も若い人たちが戦争法廃止にむけて集会やデモをやっているのに励まされる。諦めたら安倍首相の思うつぼ。私も憲法を守るためがんばりたい」と話しました。
 つどい実行委員会の舟橋勝事務局長は「過去最高の参加者。初めての参加という人も多くいた。戦争法を廃止し憲法を守れとの区民の願いの反映だと思う」と述べました。
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2015年10月02日,
「赤旗」)

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ニュースが政権寄り、批判精神欠落=^NHK幹部へOBが「手紙」/235人に発送

 NHK全国退職者有志の代表が1日、NHK放送センター(東京都渋谷区)を訪れ、NHKの戦争法案などをめぐる報道が「政権寄り」だと幹部に訴えた手紙を視聴者部に手渡しました。手紙は「NHK役員および幹部職員の皆さまへ」と題し、籾井(もみい)勝人会長はじめ全理事、局長・部長ら235人に発送されています。
 手紙は、籾井会長就任後の政治番組やニュース報道が「政権寄りで批判精神が欠落してきている」と訴え。一連の戦争法案報道も「国民が判断できる情報を伝えることが出来たとは思えません」とのべています。
 とくに、NHK報道が国会を取り巻いた空前の市民運動を軽視したと指摘しています。その背景や具体的状況として、「国会周辺の抗議デモやシールズなど若者たちの動きを取材して、現場管理職がOKを出しても、上層部からのクレームで放送中止や延期があちこちで起こっている」という現場職員の証言を紹介。「政治権力に追随するのではなく、国民の知る権利に応える姿勢を明確にすることを期待します」と要望しています。
 全国退職者有志は昨年、NHK経営委員会に対して籾井会長の罷免を要望。その賛同者(OB)は、現在2000人を超えているとしています。
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2015年10月02日,
「赤旗」)

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全受労団交時のNHK対応/不当労働行為認定/都労委

 東京都労働委員会(都労委)は1日、全日本放送受信料労働組合(全受労)との団体交渉などでの日本放送協会(NHK)の対応が不当労働行為に当たると認定して、救済命令を出しました。
 全受労は、NHKと業務委託契約を結んで受信契約の取り次ぎや受信料集金に従事する地域スタッフでつくる労働組合です。
 NHKは、地方の営業センターと全受労の支部との団交時に、全受労の中央役員が出席することを拒否。全受労は不当労働行為にあたるとして2011年11月、救済申し立てをしていました。
 都労委は、団交について中央役員の出席を理由に拒否しないよう命令。全受労を労働組合法上の労働組合と認める資格審査決定書を出しました。
 記者会見で鷲見(すみ)賢一郎弁護士は、NHKが地域スタッフと委託契約を結んでいることを理由に「全受労は組合ではない」と同労組結成時から否定してきたと批判。「地域スタッフについて、改めて労働組合上の労働者と認めた画期的なものだ」としました。
 全受労の勝木吐夢書記長は「NHKによる管理がより強まるなか、私たちの働き方の実態をしっかりと見て、労働者であると認めてくれた。NHKは命令を受け止めてほしい」と語りました。
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2015年10月02日,
「赤旗」)

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政権とメディア、テーマに集会/3日に大阪で

 メディアを考える大阪集会「安倍政権のメディア戦略を斬る!」が3日(後1・30〜4・30)に開かれます。辺野古基金共同代表の菅原文子さんが講演し、放送を語る会事務局長の小滝一志さんが基調報告をします。主催は放送を語る会、NHK問題大阪連絡会。
▽場所 クレオ大阪西
▽参加費 千円、学生は500円
▽連絡先 090(5360)2743〈佐々木さん〉
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2015年10月01日,
「赤旗」)

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安倍改造内閣「評価しない」が上回る/各世論調査

 第3次安倍改造内閣について、NHK、日本テレビ両世論調査とも、「評価しない」との回答が「評価する」を上回りました。日テレ(9〜11日実施)では「評価しない」39・5%で、「評価する」29・1%を10ポイント近く上回りました。NHK(10〜12日実施)では「評価しない」が53%と半数を超え、「評価」は37%にとどまりました。
 内閣改造で、担当相を新設して経済政策の目玉としている「1億総活躍社会」についても、「期待しない」「期待できない」が日テレ47・6%、NHK38%で、どちらも「期待」を上回りました。
 改造効果は不発で、安倍内閣支持率は日テレの調査で、改造前とほぼ横ばいの39・1%で、「支持しない」43%が依然として上回っています。NHKでは、支持は増減なしの43%。不支持は1ポイント増の40%でした。
 「マイナンバー(共通番号)制度」については、日テレは56・5%が「反対」と回答し、「導入やむを得ない」は34・3%。NHKは「評価しない」が63%で、「評価」は28%。多数が不安・疑問視しています。
 安倍政権が強行採決した戦争法(安保関連法)について、NHK調査で「あまり評価しない」「まったく評価しない」が合わせて54%を超えました。「抑止力が高まり、日本が攻撃を受けるリスクが下がる」との政府の説明についても、「納得できない」と答えた人が約6割を占めています。
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2015年10月15日,「赤旗」)

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水曜随想/衆院議員赤嶺政賢/245日国会で得た「希望」

 今年の通常国会は、1月26日に召集された。当初の150日の会期が95日延長し、245日という戦後最長の国会となった。
 安倍首相は、集団的自衛権の行使容認を具体化した戦争法案(安保関連法案)を平和安全法案とネーミングし、戦争につながる政治を平和への道といいつづけた。NHKなどのメディアを動員し、同様のプロパガンダをつづけた。
 しかし、全ては、国民によって見破られ、破たんした。逆に安倍政治は、かつてない抗議の声に包囲された。「標的の村」や「戦場ぬ止み」(いくさばぬとぅどぅみ)の映画監督、三上智恵さんは、「国会前が『辺野古』にみえました。沖縄の人たちの抵抗の形がメジャーになってきたと思いました」と語っている。全く同感だ。これが今国会の最大の特徴だろう。
 9月16日の夜、憲法学者をはじめとする著名な学者の方々が、議員会館前路上で抗議行動を開催した。
 「例えこの法案が成立したとしてもわれわれは絶対あきらめてはいけません。今日のこの集会自体がわれわれの明日への希望の礎になっています。ごくごく普通の一般市民の方々がご自身の判断で、いかなる組織、いかなる団体に動員されることもなく、ご自身の判断でここに集まって抗議の声を上げておられるではないですか。これこそが、日本国憲法の精神が日本社会に本当に根付いたということを示しています」
 「ですから、例えこの法案が成立することがあろうとも、まだまだあきらめることはありません。明日へ向かって前へどんどん続けていきましょう」
 早稲田大学憲法学教授の長谷部恭男先生はこう訴えた。
 立憲主義の回復、戦争法廃止の国民連合政府構想はこれらの国民的大闘争のなかで培われてきたものだ。
 激しく対立していた自民党議員は、提案の威力に驚愕(きょうがく)し、「これでは共産党にやられてしまう」と悲鳴をあげた。安倍内閣打倒のたたかいの帰趨(きすう)をにぎるのが来年の参議院選挙だ。「これは楽しみだ」という人々がふえている。私たちが戦後最長の通常国会の闘争で獲得したのは「希望」だ。
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2015年10月14日,「赤旗」)

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NHK経営委員と語る会/受信料問題/政権との距離/ラジオ向け原稿を/多彩な意見/仙台

 NHK経営委員会は3日、仙台市で「視聴者のみなさまと語る会」を開きました。約50人の参加者からは受信料義務化や政権との関係、番組の質やアナウンサーの言葉遣いなど、多彩な意見が出ました。

 出席した経営委員は、本田勝彦委員長代行(日本たばこ産業顧問)、美馬のゆり委員(公立はこだて未来大学教授)の2人。執行部は吉国浩二専務理事、板野裕爾専務理事(放送総局長)、安斎尚志理事、西村睦生仙台放送局長の4人です。
 最初に質問が集中したのが受信料問題でした。自民党の小委員会で義務化が提言されたのを受け、執行部の認識や、値下げを求める意見が出ました。
 吉国理事は「今の放送法はインターネットについて規定されていない。その部分を考えていかないといけない。受信料は放送の対価ではないという議論もした上で、どういうやり方がいいか考えたい」と、インターネットへの課金が課題としました。一方、美馬委員は「義務化で何を失うのかも考えた方がいい」と慎重な考えでした。

安保法制めぐり
 籾井会長の資質や、安保法制をめぐる報道については、具体的な注文が相次ぎました。
 「安倍政権の放送への介入を許すなと言いたい。籾井会長は『政府が右と言うものを左とは言えない』と言った。政府の言うことを流すだけではジャーナリズムと言えない」「NHKに『アベチャンネルをやめよ』と約1000人が包囲した。2000人以上のOB有志が会長辞任を求めている。どうとらえているのか」「ニュースで安保法案の問題点を報じない。8月30日のデモは極めて小さな扱いだった。権力からの自立、権力の監督を求められる放送において、わけてもNHKは権力から独立し、国民の知る権利に応えることが求められている」

国民に情報示せ
 本田委員長代行は「不偏不党や表現の自由の確保は、執行部も十分にわきまえて行動している。番組基準を順守するよう経営委員会としても監督していきたい」と説明。美馬委員は「放送法」を読み返してきたとのべ、「国民に情報開示すること、いろいろな意見があることを示し、議論に参加することが民主主義国家をつくる」と指摘しました。
 また、主にラジオを聞いているという男性は「例えば『TPP』という主語がなかなか出てこないと、なんのニュースなのか分からない」と、ラジオ向け原稿の不備を指摘しました。これには板野放送総局長が「テレビ向けに作っている原稿の限界です。ラジオ中心に聞いている人のこともよく考えていきたい」と検討を表明。
 ほかにも「大河ドラマがマンネリ化しているのではないか」「民放と同じような番組が増えた。見たり聞いたりした後、豊かな気分になれるような番組を」「野球中継のカメラワークを工夫して」「高齢者だけでなく、若い人の問題を深く掘り下げた番組が少ない」など、ほとんどの意見にNHKを思う気持ちがこもっていました。
 経営委員会主催の「語る会」は、経営委員と会長ら執行部が出席して視聴者の意見を直接聞いています。2008年に始まり、全国各地で毎年6回以上実施。今回は第4回で、次回は11月17日に埼玉大学で開催します(大学生限定)。
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2015年10月12日,「赤旗」)

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少子化¢ホ策は/政策語らず「カギは家族」/丸川環境相

 改造6閣僚に安保・経済問題を聞いたNHK「日曜討論」(11日)で丸川珠代環境相は、子育て世代として司会者に出生率(新3本の矢で目標1・8)対策を問われ、「カギになるのは家族だ」と述べました。
 「妊娠したと同時に肩身の狭い思いをした。決して働きやすい環境ではない」との番組に寄せられた30歳女性の声に触れた司会者が「出生率をあげるためには何が必要か」と丸川氏に質問。自身も、晩婚・晩産で頼れる親族が少なく「子育ての手も介護の手もない」と述べつつ、「一番身近で見ている家族の手が一番の支え。やはり家族をどうやって増やしていくかというか、きちんと絆をもっていくかが、これからのカギ」だと自己責任を強調しました。
 安倍政権の掲げる女性の活躍≠ノも触れない丸川氏に、司会者が「その家族が実際なかなか増えていない。支援策としてはどうか」と再質問。保育・子育て支援策には触れず「何より地域の絆ですね。家族を周りで取りまいている地域の絆、しっかりまた強くしていくのは大事なこと」とくり返しました。
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2015年10月12日,「赤旗」)

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政府・与党、臨時国会に「逃げ腰」/戦争法・TPP批判を警戒/野党一致で開催を要求

 政府・与党は、10月下旬以降の安倍晋三首相の外遊日程を優先するとして、臨時国会開会に慎重な姿勢を示しています。これに対し、日本共産党、民主党、維新の党、生活の党、社民党など野党は、首相が強行した戦争法や環太平洋連携協定(TPP)の大筋合意をめぐる国会論戦から「逃げている」と批判し、一致して早期召集を迫っています。
 「首相の外交日程は最優先しなければならない。通常国会は戦後最長となる延長を行った」。菅義偉官房長官は8日の記者会見でこう語りました。11日のNHK日曜討論でも「11月中旬、総理は国際会議で2週間近く日程が埋まっている。それと暮れの予算編成」と説明。臨時国会召集に後ろ向きな姿勢を隠そうとしていません。
 首相は10月下旬に中央アジアを歴訪。11月中下旬には、トルコで開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議など複数の国際会議に相次いで出席します。外交日程の合間を縫って国会審議に十分対応するのは困難というのが政府の言い分です。
 しかし、戦争法の強行による立憲主義破壊の事態に、「安倍政権打倒」「戦争法廃止」の批判は広がっています。農業はじめ国内産業に大打撃を与え、国民生活に深刻な影響をおよぼすTPP合意をめぐっても批判の声が湧きあがっています。

開いたらまたデモ
 ある自民党幹部は「国会を開いてもいいことはない」と言い放ち、公明党幹部は「国会を開いたらまたデモをやられる。首相はそれが嫌なのだろう」とあからさまに語ります。国会を開けば、再び国会周辺でのデモ、集会が広がり、政権打倒へ野党結集が進むことへの警戒があります。
 政府は、通常国会で処理しきれなかった法案や、補正予算案など緊急案件を処理するため、秋に臨時国会を召集してきました。ましてや、内閣を改造し、「新3本の矢」として経済政策の新機軸を記者会見までして打ち出したのですから、国会に所信を問うのは当然の態度です。「1億総活躍」の中身も不明だと問題になっています。原発、新基地、マイナンバーと問題山積。政府の説明責任をあいまいにして逃げることは許されません。
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2015年10月12日,「赤旗」)

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ひと/俳優仲間由紀恵さん/舞台「放浪記」主演/人生に咲く花£Tしたい

 故・森光子さんが生涯愛し、国内の単独主演最多となる2017回を踏んだ舞台「放浪記」。作家・林芙美子役を引き継ぎます。
 芙美子は尾道から上京し、職を転々とします。恋をしては捨てられ、貧しさの中、報われない思いを詩や小説に切々とつづり、やがて名声を得て…。
 「(芙美子は)貧しさに対する怒り、悲しみ、いろんな思いを抱えながら、でも前に進みたいと一生懸命生きてらっしゃったんじゃないか」「その生きる≠アとは、きっと現代の方にも共感していただけると思います」と合同取材で語りました。
 「私も役者としてここでもう一歩大きくならなければ。ぜひ踏み出したいと思います」
 ○  ○
 15歳でデビューして20年。ドラマ「TRICK(トリック)」「ごくせん」の破天荒な役も、NHK「花子とアン」の品格漂う役も、「この人ならでは」の存在感を見せます。
 「20年間、いろいろなお芝居に携わらせていただきました。毎回難しいな、挑戦だなと思いますが、自分と違う人生を生きられるのはやはり、役者の醍醐味(だいごみ)です」
 心がけていることは、「心を込めて一つひとつのシーンを作る」こと。
 ドラマの撮影中は、ほぼ役のためだけに時間を費やすといいます。時代物では資料を読み込み、監督と意見をかわして、演技プランを練ります。
 時代の空気を体に感じ、先人の思いを実感することも。それは、明治期の歌人・柳原白蓮をモデルにした役を演じた「花子とアン」でも。
 そのことを以前、「彼女たちが自分たちの足で歩こうとしたからこそ、今の私たちの時代がある。男女平等、女性が働くという考えも、男尊女卑の時代に歩いた彼女たちから流れ出たものだとわかりました」と語ったことがあります。
 ○  ○
 「放浪記」の見せ場といえば、芙美子が見せる、でんぐり返し。作家として世に認められた喜びの表現です。今回も、演出家が「4回転半やりますか?」と冗談まじりに。
 「むちゃぶりだなと思いました(笑い)。もちろん、みなさんに楽しんでいただきたいのですが、このシーンに気持ちを込めることの方を大切にしたい。私の中からどんな感情が出るか。わくわくします」
 〈花のいのちはみじかくて 苦しきことのみ多かりき〉
 芙美子は人生の悲しみを詠みました。悲しいからこそわかる人の優しさやぬくもり。そんな人生に咲くものを探したい。
 「その時は大変だけれど、時を経れば、花のように思えることがきっとある。一生懸命に演じる中で、この作品に、美しい花を見つけていけたらなと思います」
 大塚武治記者

 なかま・ゆきえ=1979年、沖縄県出身。95年、ドラマ「日本一短い母への手紙2」でデビュー。大河「功名が辻」など主演多数。舞台「放浪記」(作/菊田一夫、潤色/三木のり平、演出/北村文典)は14日〜11月10日=東京・シアタークリエ
03(3201)7777。大阪、名古屋、福岡を巡演
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2015年10月11日,「赤旗」)

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【9月見出し】

*           小中一貫教育と統廃合考える/教育研究所がシンポ/新潟

*           NHK10月からの新番組/NHKスペシャルで二つの大型企画「新 映像の世紀」「アジア巨大遺跡」

*           松尾羊一のドラマのドラマ/夏の連続ドラマを見て/主題真正面に「夢」託す

*           NHK、政権の手先になるな!/戦争法報道姿勢に批判相次ぐ/「国民の声を伝えよ」/各地で運動広がる

*           芸能テレビ/前進座公演「如月の華」主演今村文美さん/役者にできる被災地支援≠ナす

*           民放連会長がNHKに要望

*           高齢者の貧困/実相伝え緊急性説く/吉永純

*           「信頼関係に基づいて話し合っていきたい」/志位提案で岡田民主党代表

*           放送各賞受賞番組を紹介/ザ・ベストテレビ/NHKプレ

*           NHK北海道発ドラマ、「農業女子」の哀楽描く

*           試写室/2030かなたの家族/NHKテレビ後9・0/近未来像から問う、人の関係

*           廃案!!戦争法案/私の主張/パート櫻井昌枝さん(50)宇都宮市/子どもの将来重ね合わせ

*           NHK本音のつぶやき=^公式ツイッター発信

*           第20回記念!!琉球フェスティバル2015/20日・東京で/世代を超えた魅力的な顔ぶれ/増渕英紀

*           NHKスペシャル緊急生討論/志位委員長の発言/その1

*           NHKスペシャル緊急生討論/志位委員長の発言/その2

*           女性自衛官、イラク派兵150人/これが「女性が輝く社会」?

*           NHK日曜討論/井上議員の発言

*           芸能テレビ/戦後70年/世代継承・調査報道・加害責任/見応えあった番組/須藤春夫

*           本立て/カラーでよみがえる東京 不死鳥都市の100年/岩田真治+NHK制作班著

*           戦争法案とめる!/最大規模12万人の国会包囲/国民が燃え上がった/作家・僧侶瀬戸内寂聴さん

*           放送をネットでNHK配信実験/来月から

*           潮流

*           休憩室/渋谷はるかさん/被爆者の言葉根付く

*           NHK包囲/8月25日、各地で連帯行動/管理強まる中NHK職員は

*           NHK包囲/8月25日、各地で連帯行動/政権寄り報道正せ/京都/大阪/広島

*           テレビ時評/8・30大行動/安倍政権の顔色うかがうNHK報道の異常

【GoToTop】

【9月本文】

小中一貫教育と統廃合考える/教育研究所がシンポ/新潟

 にいがた県民教育研究所は27日、新潟市でシンポジウム「小中一貫教育と学校統廃合を考える」を開き、40人が参加しました。県内で学校統廃合が進むことの関心の高さからNHKテレビが取材しました。
 山本由美・和光大学教授が「今なぜ小中一貫校か、全国実施の状況、失敗例も含めて」講演。6月の義務教育学校法改正により、小中一貫校が学校統廃合推進になり、すでに全国4位になっている新潟県の学校統廃合はさらにすすむと指摘。新自由主義政策が後期に入り、政府が教育内容に無限定に介入する表れだと解明しました。
 シンポジウムでは、三条市の濱田伸子さんは、中教審委員でもある国定勇人市長が、三条小を裏館小に統合するなど反教育的な学校支配をやっていることを明らかにしました。
 十日町市議の安保寿隆さんは、市議会で教職員の働く条件の改善を主張したことを指摘。魚沼市の大平恭児さんは、市の統廃合ありきの施策に反対する住民運動を紹介しました。
 参加者は、熱心に聞き入り、短時間ながら活発な質疑・討議が行われました。
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2015年09月30日,
「赤旗」)

【GoToTop】

NHK10月からの新番組/NHKスペシャルで二つの大型企画「新 映像の世紀」「アジア巨大遺跡」

小学低学年向け英語番組も
 NHKの10月期の番組改編率は、総合テレビで4%とラジオも含め例年と同程度です。
 NHKスペシャルでは二つの大型企画が始まります。「新 映像の世紀」は10月から来年3月にかけて6本シリーズでおくります。世界的に新たな映像が続々と発掘され、約90%が新しい映像です。人物に焦点を当て、第1集(25日、後9・0)は第1次世界大戦を取り上げます。
 もう一つは4回シリーズの「アジア巨大遺跡」。カンボジアのアンコールワット、ミャンマーのバガン遺跡、中国・秦の始皇帝陵、日本の縄文遺跡を10〜11月に紹介します。アジアの巨大遺跡から見えてくる価値観や精神を探ります。ナビゲーターは女優の杏。
 Eテレでは「いじめをノックアウトスペシャル」の第6回を10日(後7・0)に放送します。「あきらめない」をテーマに、AKB48の高橋みなみと中高生たちが「ラインでの悪口を止める方法」を語り合います。
 小学校1・2年生向けの英語番組「えいごでがんこちゃん」が始まります。放送20周年を迎える道徳教育人形劇「ざわざわ森のがんこちゃん」から発展しました。
 ラジオ@では、モデル・女優・歌手・母親としての顔を持つ桐島かれんが日常の幸せを発信する「かれんスタイル」(木、後8・05)がスタート。また30〜40代向けに1990〜2000年代のヒット曲を振り返る「ぼくらの青春」(金、後8・05)を放送します。
 28日から始まった連続テレビ小説「あさが来た」。初の試みとして第1週の6話を、NHKオンデマンド(インターネットによる動画配信サービス)で無料配信します。期間限定。
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2015年09月30日,
「赤旗」)

【GoToTop】

松尾羊一のドラマのドラマ/夏の連続ドラマを見て/主題真正面に「夢」託す

 当然のことですが、連続ドラマは完結して初めて作品の評価が決まるものです。
 出だしは好調でも途中で視聴率におもねてテーマがずれ、男女のラブストーリーに終わってしまうドラマは失格です。
 夏の連ドラでも社会派ふうな主題を見失った作品があり、残念でした。
 むしろ多少の甘さや奇想天外な運びが気になるにしても、真正面から主題に取り組んだ作品を評価したいのです。
 まず、古里再生で限界集落を守った「ナポレオンの村」(TBS)です。
 前例がない、予算がない、5時になれば窓口を閉めるお役所仕事。本来役人とは血税を有効に使う知恵のある「役に立つ人」(公僕)をいいます。
 ドラマの主人公(唐沢寿明)に市長は、限界集落に広大なゴミ処理場をつくる計画の実行を命じます。中央や地方の政治家と結託する陰謀を知ったスーパー公務員はまず村人たちの本音を聞き出します。限界集落を救うのは国や県からの不安定な助成金ではない、自覚した村人なのだ、と。
 観光名所やアドベンチャー・パーク、観光客相手のレストラン。そこに雇用も生まれ、移住者家族もやってきます。そんなウマイ話はない。しかし現に成功例もあります。
 島根県隠岐の離島海士町です。島民の奮起により、海産物のブランド化、移住者の雇用先、寮生活の大学受験塾にやってくる浪人学生など、従来の発想にない島おこしで見事に再生したのです。みんな島民自身の力です。
 一見楽観的なストーリーですが、要は任期が終わればいなくなるお役人や「政治屋」頼みでは解決しないということ。
 「民王」(テレビ朝日)も辛辣な政治風刺が効いたドラマでした。時の総理とバカ息子の人格が突然入れ替わり、字が読めないバカ息子総理は無知をさらけ出し、息子になった総理は若者の気持ちにサッパリです。
 邪道の「戦争法案」と、先の見えぬアベノミクス、東アジア敵視の外交政策。どれをとってもバカ息子的な姿勢に国民の大半がソッポを向いたのは当然です。
 その他では、だれが主役というわけではなく、部活の合唱部に集う部員全体が主役である集団劇として描いた青春学園もの「表参道高校合唱部!」(TBS)や、ど素人のドラマ・マネジャーとドラマに全く縁のない無名の若者が成長し、赤いジュウタンを踏む(世界映画祭)までを描いた「美女と男子」(NHK)がありました。
 現実があまりにも厳しいので、こうあって欲しいとドラマの世界に夢を託し、登場人物に感情移入する。それがドラマの王道だ、と思うのです。
 (放送評論家)
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2015年09月28日,
「赤旗」)

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NHK、政権の手先になるな!/戦争法報道姿勢に批判相次ぐ/「国民の声を伝えよ」/各地で運動広がる

 NHKは、戦争法成立に際し、徹底的に政府・与党の顔色をうかがい続けました。その報道姿勢を批判する声はさらに広がり、「NHK問題を考える会」が各地で相次いで結成されています。新しく活動を始めた滋賀、福岡、堺の取り組みを紹介します。

滋賀・福岡・堺から
 「NHK問題を考える滋賀連絡会」は8日、NHK大津放送局を訪れ、放送の自主自立を求め、政権寄りのニュース報道に抗議する文書を届けました。
 10日は、滋賀県労働組合総連合、平和委員会、革新懇のメンバーとともに、大津局前で抗議行動。「NHKはアベ政権の手先になるな!」などの横断幕やプラスターを掲げてコールしました。
 「NHK放送を考える福岡の会準備会」は10日、福岡放送局前に12人が集合。代表の5人が▽公共放送として政府から自主・自立した報道を求める▽政府および権力者に反対する国民の声や運動を伝える▽先の戦争の戦意高揚に加担して大本営発表をした反省と教訓に立ち、戦争国家の再来に加担しない―の3項目を要請しました。
 参加者の一人は「戦争法案ノーの声を報じた民放のニュースに比べて、NHKは冷めている。国民が法案の危険性を理解して、多くの人々が立ち上がってきた。公共放送であるNHKはこの点を重視すべきではないのか」と主張します。
 「NHK問題を考える堺の会」は13日、「公共放送NHKが危ない!」と題する集いと結成総会を開催、約80人が参加しました。参加者からは「NHKは『議論がかみあっていない』と繰り返し解説しているが、国民は戦争法案が憲法違反だと考えるようになっている」という意見が出ました。また「NHKは8月30日の集会に10クルーを取材に出したというが、ニュースの扱いは小さかった」という報告もありました。会事務局の森本典子さんは「籾井会長が職員の支持を必ずしも得ているとは思えない。NHK内部から、今の事態を変えるような動きをしていかないといけない。労働組合が市民と結びついて活動してほしい」と語ります。

職員有志も行動
 NHK内部でも、職員有志による学習会などが始まっています。元職員の一人は「まじめな職員は今のNHK報道にじくじたる思いを持っています。自分にできることを、と国会前行動に参加する現役職員も結構います」と話します。
 NHKを監視・激励する視聴者コミュニティの醍醐聰共同代表は「新しい運動の形が見えてきた」と指摘します。「視聴者や市民に背中を押されながらの運動です。NHKをどうしていけばいいのか、という市民の気持ちが広がっています。多くの人が声を上げるのは、期待の裏返し。政府に顔を向けるのか、国民に向けるのか、NHKは岐路に立っています」
 また、各地で運動が広がっているのは「予想外の動きだ」と語ります。「知らない人同士がインターネットなどで連絡を取り合って集まっています。各地で生まれているさまざまな『会』の力がこういうところにも表れているのでしょう」
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2015年09月28日,
「赤旗」)

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芸能テレビ/前進座公演「如月の華」主演今村文美さん/役者にできる被災地支援≠ナす

「大正の三大女流歌人」九條武子、関東大震災で救護所
 与謝野晶子、柳原白蓮と並び、「大正の三大女流歌人」と称される九條武子。前進座公演「如月の華―九條武子ものがたり―」は、困難を乗り越え、社会活動を続けた武子の40年の生涯を描きます。演じる同座の今村文美(あやみ)さんが魅力を語ります。
 大塚武治記者

 明治中期の1887年、本願寺門主の次女として生まれた武子は、23歳の時、男爵・九條良致(よしむね)と結婚しました。和歌や絵画に通じた文化人として知られます。
 「女性の地位向上や更生保護、震災の被災者救援と、弱者のために尽くした人でもあります。今こそ見ていただきたい作品です」と文美さん。
 物語は、武子が、亡くなる直前の義姉・籌子(かずこ)に女子大学設立の夢を託される場面から始まります。武子は遺志を継ぎ、「いたずらに女子の虚栄心を挑発する」と渋る文部省と粘り強く交渉し、実現に奮闘します。
 「武子さんは、女性にも学問が必要、これからは政治にどんどん参加していくべきだと行動します。そこには、女性も自立しなければと考えた父や兄、義姉の影響があったんでしょう。NHK『花子とアン』で話題になった白蓮は親友。そんな環境の中で感性を育み、たくましく行動していきます」
 結婚直後に英国留学に出たきりだった夫が11年ぶりに戻り、東京・築地本願寺で暮らし始める武子。関東大震災が襲います。武子は自宅を失いながらも、救護所を開きます。
 「震災孤児のために建てた施設で万引きを繰り返す少女に出会うのですが、抱きかかえるように励まし続けます。限りない慈愛に圧倒されます」
 ◇
 東日本大震災の後、歌手たちがギター片手に被災地を訪れて人々を励ましているのを知り、何もできないでいる自分に無力さを感じていたという文美さん。演劇人として何ができるかと考えていた時、同座が2年の構想を経て、今作を劇化しました。
 「90年前、身を捨てて救護に動いた人がいた。そのご生涯を、今こそ多くの方にお届けすべきでないかと。でも被災地での公演前は、みなさんに震災を思い出させてしまうのではと心配でした」
 実際、仙台公演では、震災の場面で女性の一人がサッと顔を覆いました。
 「そのお客様は帰らずご覧になり、最後は涙して精いっぱいの拍手を送ってくださったそうです。『震災を思い出したが、それ以上に言葉にならない感動をもらった』など、多くの感想をいただきました。会場を包んだ大きな拍手に、ああこれが私にできることなのかもしれないと思いました」
 「現実は厳しい。それでも一歩を踏み出す姿に、私自身が勇気づけられ、希望を感じます。武子という方に出会わせていただいた感謝の思いを込め、深く強く、役をつとめなければと思います」

*作・演出/志村智雄。10月5〜8日=東京・浅草公会堂。рO422(49)2633。読者割引あり。電話で「赤旗を見た」と言ってください
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2015年09月27日,
「赤旗」)

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民放連会長がNHKに要望

 日本民間放送連盟の井上弘会長は17日の会見で、NHKテレビのインターネット同時配信検証実験について「結果の公表を」と要望しました。実験は10月19日〜11月15日に実施されます。
 井上氏は「NHKは視聴料を徴収しているので、権利処理、端末対応、ニーズなどの結果の公表は義務だと思う」と述べました。
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2015年09月27日,
「赤旗」)

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高齢者の貧困/実相伝え緊急性説く/吉永純

 子どもの貧困をはじめ日本社会の格差と貧困が問題となって早10年近くとなる。子どもの貧困よりも量的質的により深刻ともいえる高齢者の貧困について、トータルにその実相や規模を伝え、原因や対策をわかりやすく解明した本の出版が最近になって相次いでいる。

働きづめでも年金月10万円
 NHKスペシャル取材班著『老後破産』(新潮社・1300円)は、現代日本の高齢者の貧困を活写し、可視化に成功している。同じタイトルの番組にも登場した田代さん(83歳)の部屋は、電気が料金滞納で止まっていて暗く、布団なども敷きっぱなしでゴミなどが散らかっている。ガスの火を頼りに唯一の食料である冷麦をゆでて食べる田代さん。年金支給日直前の手持ち金は、袋にためてあった1円玉だけだ。田代さんは、年金は月10万円だが、家賃が6万円であるため、生活費は到底足りない。「まさか、こんな老後を迎えることになるなんて、思いもしなかった」という。田代さんは旧制中学を出てから高齢期になるまで働きづめだったにもかかわらず、このような境遇に陥っている。
 また、要介護2で年金8万円の一人暮らしの80代の女性は「(国のやり方は)じわじわ真綿で首を絞められるようなやり方ですよね。どうせ殺すなら、一気に殺して欲しい。もう長生きしたいなんて思わない」という。私には高齢者のうめき声のように聞こえる。

生活保護以下5割を超える
 河合克義著『老人に冷たい国・日本』(光文社新書・760円)は、著者の30年に及ぶ地域調査を元に、老後破産の原因を実証的に解明している。一人暮らし高齢者の全数調査による説得力あるデータと、高齢者の貧困と孤立化に焦点を当てたわかりやすい指標によって、その実態を明らかにした。
 調査によれば、実質的に生活保護を下回る収入の一人暮らし高齢者は、東京都港区と山形県がともに56%台で5割を超えた。孤立という点では、正月三が日を一人で過ごした人は、山形県で26・7%、港区で33・4%に及ぶ。全国に共通の、寒々とした深刻な事態だ。
 藤田孝典著『下流老人』(朝日新書・760円)は、著者の12年にわたる困窮者支援から見えてくる高齢者の貧困を描いており、現場からの警告の書だ。
 著者によれば、下流老人とは「生活保護基準相当で暮らす高齢者およびその恐れがある高齢者」であるが、年収400万円でも将来、下流老人化する恐れがある。その原因は、医療費が高額となること、介護施設に入居できないこと、子どもがワーキングプアであり自立できないこと、熟年離婚などだ。
 いずれの書も、高齢者の貧困が日本社会の存続に関わる喫緊の課題であり、雇用、年金、医療、介護、生活保護など社会保障全体の立て直しが急務であることを明らかにしているといえよう。
 (よしなが・あつし 花園大学教授)
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2015年09月27日,
「赤旗」)

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「信頼関係に基づいて話し合っていきたい」/志位提案で岡田民主党代表

 民主党の岡田克也代表は26日、宮崎市で開かれた講演で、日本共産党の志位和夫委員長が呼びかけた「国民連合政府」構想について、「法律を白紙に戻すのはいいが、ほかの政策もあるので政権合意は簡単ではない」とのべる一方で、「選挙で両党の候補者が重ならないようにすることは重要だ。お互いの信頼関係に基づいて話し合いをしていきたい」とのべました。NHKが報じました。
 また、このあとの記者会見で岡田氏は、「共産党とは粘り強く議論していきたい。参議院選挙で野党が勝つという目標は同じなのでいい結論が得られることを期待している」とのべました。
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2015年09月27日,
「赤旗」)

 

放送各賞受賞番組を紹介/ザ・ベストテレビ/NHKプレ

 国内放送各賞でグランプリなど最高賞を受賞した番組を、NHK・民放の枠を超えて紹介する「ザ・ベストテレビ2015」が27、28日の2日間にわたって、NHKBSプレミアム(後0・0)で放送されます。日程と作品は次の通り。
 【27日】▽信越放送「SBCスペシャル 刻印〜不都合な史実を語り継ぐ」(民放連賞)▽NHK「BS1スペシャル 憎しみとゆるし マニラ市街戦その後」(ATP賞)▽NHK「ETV特集 薬禍の歳月〜サリドマイド事件50年」(放送文化基金賞)
 【28日】▽中京テレビ「NNNドキュメント マザーズ〜特別養子縁組と真実告知」(日本放送文化大賞)▽NHK「君が僕の息子について教えてくれたこと」(文化庁芸術祭賞)▽琉球朝日放送「QABドキュメンタリー 裂かれる海〜辺野古 動き出した基地建設」(ギャラクシー賞)▽NHK「NHKスペシャル 里海 瀬戸内海」(地方の時代♂f像祭賞)
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2015年09月26日,
「赤旗」)

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NHK北海道発ドラマ、「農業女子」の哀楽描く

 NHK北海道放送局は、道内の女性農業後継者団体をモデルにした単発ドラマを放送します。12月16日、BSプレの「農業女子 はらぺ娘(こ)」です。
 一昨年設立された「はらぺ娘」をモデルに、青木江梨花が脚本を担当。リーダーの菜摘を前田亜季、メンバーの由佳を芹那、唯をバービーが演じます。
 前田は「冬から長期ロケをしてきました。メンバーの方はみんな明るくて前向き。その姿を全国に届ける責任があります」と意欲を燃やします。
 あと2人はいずれも北海道出身。芹那は「酪農を継ぐ女性をどう演じるのか、最初は不安でしたが、俳優も農業もまっすぐに生きてゆくという気持ちは変わりません」。
 バービーは「栗山町出身で、農家は身近でしたが自分にはできない≠ニ思っていました。でも意外に土が似合うかも」と語りました。
 チーフプロデューサーは同局の金沢理卯。「農家の方々の悩み、楽しさをドラマ化して、北海道の素晴らしさを伝えたい」といいます。
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2015年09月26日,
「赤旗」)

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試写室/2030かなたの家族/NHKテレビ後9・0/近未来像から問う、人の関係

 電子機器とネットの発達で変化を続ける日々の生活。今から15年先の社会や人間は? コンピューター技術を駆使してその姿を見せ、どう思うかと問いかける。
 2030年。カケル(瑛太)はロボットの企画が仕事。会話する癒やし系ロボットとシェアハウスで1人暮らしだ。仲間の美冴(相武紗季)に「子づくりに協力して」と頼まれ、子ども? 家族って? と戸惑い、数年前に壊れた家族を訪ねる。
 「家庭」を取り戻そうとあがく父・透(松重豊)。妹の絵美衣(蓮佛美沙子)は社会的弱者の作業所を立ち上げるが、かつてのエリート根性を見透かされ仲間の反逆にあう。老人ホーム=永遠シティ=を経営する母・佳子(小林聡美)やそこに住む祖父母(山本学、渡辺美佐子)も久しぶりだ。筋肉補強器を使い、声の指令で調理も寿命計算までもしてくれる電子機器に囲まれ、老人は幸せそうだが…。
 家族だからではなく大切な人だから関係を築き直そうとするカケルの柔らかな表情がいい。15年という地続きの未来だけに一定の拒否感と現実感が楽しめる。脚本・井上由美子や演出・笠浦友愛の次代への意欲が窺える。
 (口山衣江 ライター)
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2015年09月26日,
「赤旗」)

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休憩室/高橋一生さん/ただ役としてそこに

 数々の時代劇に出演し、着物の所作が体にしみついてきました。10月6日放送のBSジャパン火曜スペシャル「山本周五郎 人情時代劇」(後9・0)の第1話「なみだ橋」に主演します。賭け事でお縄になった新吉役。見逃してもらう条件に、息子のふりをして盲目の老女・お兼(大谷直子)と生活することに。
 「どちらも想像できるようにして、見る人の知的な部分をくすぐりたいです。実はお兼は目が見えていたんじゃないかとか。それに新吉は気付くのかもとか」
 東京出身の34歳。児童劇団で芝居に目覚めました。中学3年生でアニメ「耳をすませば」の準主役声優に。NHK大河ドラマ「軍師官兵衛」や「民王」(テレビ朝日)など、ドラマ、映画、舞台で活躍してきました。「独りよがりになりそうなので、自分だけで役づくりはしません。『うわ、演技してるよ』って鼻につくので、僕はただ役としてそこに居たいんですよね。『お芝居うまいね』より、『なんかいいね』って言われたいです」
 最近、「自我を振り回すことがなくなった」といいます。「培ってきたものを虚構の世界に出して、いかに説得力を持たせるか。自分で納得してやれていればいいかな」
 記事・萩原真里
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2015年09月26日,
「赤旗」)

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廃案!!戦争法案/私の主張/パート櫻井昌枝さん(50)宇都宮市/子どもの将来重ね合わせ

 大半の人が「憲法違反だ」と言います。それを無視する安倍内閣の姿勢に怒り心頭です。先月30日、初めて国会前で「絶対廃案」と声をあげました。「民主主義ってなんだ」。シールズのコールが胸に響きました。帰宅後、廃案への思いを友人に伝えています。
 「日本は戦争するかも」「困るよ」「とんでもない」とメールが返ってきます。自民党の高村正彦副総裁は「徴兵制の導入は絶対ない」(NHK)と言いましたが、石破茂大臣はかつて容認しており、高村さんの発言は信用できません。
 宇都宮空襲の惨状や食糧難だった戦中、戦後の話を母から聞きました。「憲法9条は絶対に守らなければ」との信念はここからはぐくまれたと思います。
 自民党の憲法草案、衆議院選挙公約(2014年)全てを読みました。安倍政権は、国民に隠して事をすすめる「確信犯」です。
 子どもは、大学卒業した社会人なりたてです。子育て中の友人もいます。自分の信条と子どもの将来を重ね合わせ取るべき行動は、法案の成立を止めることです。
(
2015年09月17日,
「赤旗」)

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NHK本音のつぶやき=^公式ツイッター発信

 NHKは「日曜討論」(日、前9・0)などの主要番組の公式ツイッターを発信しています。NHK職員が140字以内で番組PRを中心にコメントするものです。
 ところが13日のこの番組(戦争法案賛成・反対2人ずつの論者が討論)の前後に、とんでもない偏向・歪曲(わいきょく)の公式ツイッターが流れました。

偏向発言を公式に
 まず開始直前、4人の出席者を紹介した後、「皆さんの意見はどの出演者にもっとも近いでしょうか。反対意見って理解しにくいのに、賛成意見はすごく頭に入やすい…(原文のまま)。両耳でしっかり聞くぞー」。
 だれが読んでも、ツイートした職員は法案に賛成という立場で、「反対意見は理解しにくい」と断じていると思うのが自然です。
 当然、このツイートには「担当広報の責任だけではない、NHKの基本スタンスが安倍広報になってる」などの抗議が寄せられました。
 するとこの公式ツイッターは、3時間後に「自分の意見と違う人の話は耳に入りにくく、同じ意見だと理解しやすいと言う意味で書いたのですが、『賛成』『反対』という言葉を使ってしまったので、法案に『賛成』『反対』のように誤解された方もいたようです」と言いわけしました。
 こういう時期に「賛成」「反対」がどういう意味を持つのかをまったく理解しなかったのか。担当者の「法案賛成」の心情、つまりNHKを支配している流れがもろにあらわれたといえるのではないでしょうか。

発言の意図を歪曲
 「日曜討論」をめぐるNHK公式ツイッターの重大問題は、これにとどまりませんでした。放送終了後には、番組に法案反対の立場で出席した木村草太・首都大学東京准教授(憲法学)について、こうツイートしました。「反対代表としてご出席頂いた木村氏が採決について『機は熟している』と言い切ったのが印象的でした」
 放送を見ていた人でなくとも、あれそんなはずは…と思うでしょう。
 実際、番組で木村氏は「時機自体は私は熟しているというふうに思います」と言った上でこう続けています。
 「この法案には違憲な部分がある」「少なくとも今国会で成立させるべきではないという意見は、どの世論調査でも大勢」「政府がまともに説明する気があるのか…それはなさそうだということがわかってきました」。最後に木村氏は明確に、「否決・廃案以外にはない、そういう判断ができる時期に来ている」と述べました。
 この発言を、木村氏は採決を急ぐ意向だったり、法案に賛成であるかのようにいうツイート担当者―。いったいどういう感覚なのでしょうか。
 もはや問題はNHK職員の日本語能力ではありません。安倍政権の顔色うかがいにとどまらず、政権追随・国策報道化への道を突き進むNHK首脳部の「本音」が、もはやツイート(つぶやき)の段階にとどまらず「公言」になっていることのあらわれといえないでしょうか。
 (小寺松雄)
(
2015年09月16日,
「赤旗」)

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第20回記念!!琉球フェスティバル2015/20日・東京で/世代を超えた魅力的な顔ぶれ/増渕英紀

 1974年に東京・日比谷野外音楽堂にて初めて開催され、以後ブランクを経て1996年に復活、今年で20回目を数えるという伝統の「琉球フェスティバル」が今年も20日に日比谷野音で開催される。
 若手からベテラン、大御所までが世代を超えて一堂に会するこの一大イベントは毎年出演アーティストが異なるというのが特徴。今年はさてどんな顔ぶれになるのか? が楽しみの一つでもある。というわけで、今年も大城美佐子、朝崎郁恵、古謝美佐子、ディアマンテス、パーシャクラブ、大島保克、よなは徹、金城みゆき&仲宗根創と、魅力的な顔ぶれが出そろった。

沖縄一の歌唱/民謡界の才人
 古謝美佐子は初代ネーネーズのリーダーとして知られるが、ソロになってからは、夏川りみや加藤登紀子もカバーしている名作「童神」を送り出して、人気を集めている。今や沖縄一といわれるその歌唱力は、今年も聴く人をうならせるに違いない。最近は宮里奈美子、比屋根幸乃、島袋恵美子と共に新たに4人組のヴォーカル・グループうないぐみ=i「うない」は沖縄方言で姉妹の意味)を結成して活動、ソロとの両方の活動で話題を呼んでいる。
 よなは徹は、若くして琉球古典芸能界、民謡界で活躍して数々の受賞歴や資格を持っている才人。三線もうまいが、笛、太鼓もうまい。それでいて津軽三味線奏者とコラボしたり、エレクトリックな民謡系バンドを結成したりと、常に新しいことにもチャレンジしている。この、古典をしっかり会得した上で、新しい試みもというスタイルこそは、今の沖縄音楽界で必要とされることかもしれない。

奄美から参加、国宝級大御所
 今回の出演陣の中でも最も注目したいのは、奄美大島から唯一人参加の朝崎郁恵。御年80歳という国宝級の大御所だ。奄美の唄は沖縄のソレとは全く異なる。音階も大和音階で、歌い方自体も違う。圧倒的にすごい声量、地をはうような低音がうねり、響き渡る。
 本土からはとっくの昔に廃れ、失われてしまった古い万葉言葉をルーツとする奄美言葉。その独特になまった奄美のシマグチ(方言)の響きが、いにしえの日本の原風景の記憶をよみがえらせてくれる。この日恐らく歌われるであろう、NHK・BSプレミアムで放映中の「新日本風土記」のテーマ曲「あはがり」は、絶対の聴きものだと思う。
 日比谷野音とあって、会場ではビールなどのアルコール類も販売される。昼下がりの休日に野外でビール片手にゆったり気分で生唄ライヴを楽しめるなんて、考えてみれば最高のぜいたくかもしれない。
 そういえば、毎週反安保法制のデモで揺れる国会議事堂は目と鼻の先。辺野古の新基地建設反対の声が圧倒的多数を占める沖縄の唄ライヴが、くしくもその国会議事堂のお膝元である日比谷野音で行われるというのも面白い。この日、霞が関に沖縄の生の声と唄がダイレクトに響き渡る。
 ◇
 ※第20回記念!!琉球フェスティバル2015 20日(日)午後4時開演、東京・日比谷野外大音楽堂(雨天決行)、問い合わせрO3(5453)8899M&Iカンパニー

 ますぶち・ひでき 1952年生まれ。音楽評論家、コラムニスト。著書に『日本のロック』
(
2015年09月15日,
「赤旗」)

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NHKスペシャル緊急生討論/志位委員長の発言/その1

政府・与党が今週中にも戦争法案の採決強行を狙う中、13日夜放送の「NHKスペシャル」で与野党10党の党首らが討論しました。日本共産党の志位和夫委員長は、「野党の結束したたたかいと、かつてない国民運動の力をあわせて、必ず廃案に追い込みたい」と決意を語りました。(詳報2・3面)
 志位氏は、衆参の審議を通じて戦争法案が
@憲法違反だということA国民の理解をついに得られなかったことB許しがたい自衛隊中枢の暴走―の三つの大問題がはっきりしたと強調しました。
 このなかで、集団的自衛権行使で安倍首相があげてきた「邦人輸送中の米艦防護」「ホルムズ海峡の機雷掃海」といういずれの事例も破綻したと指摘。集団的自衛権の行使は「相手国から見れば、事実上、日本による先制攻撃になる。国民の命を進んで危険にさらす。ここに集団的自衛権の本質がある」と強調しました。
 「戦闘地域」にまで自衛隊が行き、武器・弾薬の輸送、弾薬の提供、戦闘作戦行動に向けて発進準備中の航空機への給油・整備を可能にする米軍などへの「後方支援」=兵たんについて、与党側は「(リスクは)変わらない。やるのは当たり前」(自民党・高村正彦副総裁)などと発言しました。志位氏は、敵潜水艦を攻撃する米軍ヘリへの海上自衛隊ヘリ空母による給油を描いた海上自衛隊の内部資料を示し、「まさに米軍と一緒になって戦争するという以外の何ものでもない」と批判しました。
 さらに志位氏は、「(安保法制は)来年夏までに終了する」と米軍幹部に約束した河野克俊統合幕僚長の会談録(昨年12月)を示し、「約束できる立場でないものが、約束しているのは『軍の暴走』だ」と批判しました。高村氏は「約束していない。見込みを言っただけだ」と発言。はからずも、内部文書が真実であることを認めました。
 今国会での成立に固執する与党側に対し、民主党の岡田克也代表は「野党が協力して、あらゆる手段を使って採決を阻止していく」と表明しました。志位氏は必ず廃案に追い込むとの決意を述べるとともに、公聴会直後の採決をたくらむ与党に対し、「公聴会とセットで採決日程を出してくるのは暴挙だ。こういうやり方は絶対にやめるべきだ」と厳しく批判しました。

 

 日本共産党の志位和夫委員長は、13日夜放送の「NHKスペシャル 緊急生討論」に出演し、政府・与党が今週にも採決強行を狙う戦争法案について、与野党代表と討論しました。戦争法案をめぐる党首・幹部らのNHK討論は、5月3日、7月4日に続いて3回目です。

国会審議は尽くされたか?

憲法違反、国民の理解得られず、自衛隊中枢の暴走――三つの問題がはっきりした
 番組では、司会の島田敏男解説委員が「国民の理解を得る努力、国会の議論が尽くされてきたと思うか」と質問。自民党の高村正彦副総裁は「議論が完全に尽くされることはないが、だいぶ議論は熟してきた」、公明党の北側一雄副代表も「衆参で200時間審議をやり、論点も出尽くしている」と、あくまで成立させる立場に固執しました。これに対し、志位氏は次のように述べました。
 志位 3カ月の(衆参の国会)審議をつうじて、私は、三つの点がはっきりしたと思います。
 第一は、安保法案=戦争法案が憲法違反だということです。圧倒的多数の憲法学者、内閣法制局の元長官につづいて、最高裁長官を務められた山口(繁)さんが「憲法違反だ」と断じた。「合憲か、違憲か」という論争はもう決着がついたと(思います)。
 第二に、ついに安倍政権は国民の理解を得ることができなかった。直近のどの(世論)調査を見ても、6割以上が「今国会での成立に反対」と答えている。これに対して高村さんは、理解を得られなくても成立をはかる≠ニおっしゃったけれど、あまりに傲慢な態度だと私は思います。
 そして第三に、自衛隊の中枢の暴走ということが内部文書で明らかになってきた。
 これだけ問題点が噴き出してきたわけですから、私は、この戦争法案は廃案にするしかないと強く求めたいと思います。

法案を強行した後で審判を仰げばいいというのは順番が逆
 この発言について、志位氏と高村氏でつぎのようなやりとりになりました。
 高村 志位さんは傲慢な態度だと(言った)。国民の理解が必ずしも十分じゃなくても、採決しなければならないときはある。それが次の選挙で理解が得られなければ政権を失う。これがまさに民主主義だと。
 志位 それは順番が逆じゃないですか。本当に(戦争法案の)成立が必要だというんだったら、(衆院を)解散して審判をあおいだらいい。(法案成立を)やったあとで、あとで審判を仰げばいいなんて。
 高村 3回の(衆参の国政)選挙で、公約してやったんですよ。
 志位 この前は「アベノミクス」で(総選挙を)やったでしょう。
 高村 国政全部ですよ。
 志位 (首相は)それ(「アベノミクス」)で選挙をやったじゃないですか。
 司会の島田氏は「いまの志位さんのご指摘であった、理解が十分得られてない段階でも前に進むというのは、7月のこの番組でも高村さんはおっしゃったのを僕は覚えています」とコメントしました。
 他の野党は「国会で廃案にすべきだということで議論が尽くされた」(民主党・岡田克也代表)、「これだけ審議をしてもいまだに6割の人が反対している。国民の理解を得られていない」(維新の党・松野頼久代表)と発言しました。

何のための集団的自衛権か?

日本人の命を守る≠スめでなく、米軍と自衛隊が世界的規模で一緒に戦争するため
 これまでの政府の憲法解釈を百八十度覆した集団的自衛権の行使容認。国会審議で政府があげた具体的事例や要件について、それだけに限定されず、「総合的に判断する」と答弁していることが紹介されました。
 民主党の岡田氏は「戦争を始める要件が総合的な判断で政府に任せろといわれてもそれはできない」と主張。高村氏が「(行使の要件は法案に)厳格に書き込まれている」などと発言したことに、志位氏は次のように述べました。
 志位 政府は、集団的自衛権というのはあくまでも日本人の命を守るためのものだ≠ニいって、その事例として、二つを繰り返してきたわけです。
 一つは、「邦人を輸送する米艦の防護」とずっと言ってきたわけですが、しかし、(首相は)日本人が乗っていなくても、集団的自衛権の行使はありうる≠ニ、最近になって言い出した。
 もう一つは、「ホルムズ海峡の機雷掃海」ですが、これも当のイラン(政府)が「そんなこと(機雷敷設)はありえない」というなかで、(首相は)最近になって、特定の国を想定しているわけじゃない≠ニ言い出した。
 つまり、日本人の命を守るため≠ニあれだけ繰り返してきた事例は破たんしてきている。
 そうなっていきますと、集団的自衛権の行使の目的というのは、日本人の命を守る≠アとじゃない。米軍と自衛隊が世界的規模で一緒になって戦争することだと。これがはっきりしたというのが、国会論戦の到達点だと思います。

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NHKスペシャル緊急生討論/志位委員長の発言/その2

「抑止力」でバラ色になるか?

集団的自衛権行使は事実上の先制攻撃、相手の攻撃を呼び込み、国民を進んで危険にさらす
 集団的自衛権の行使にかんして自民・高村氏は、「北朝鮮という国が、実際にやる前の抑止力として必要だ。万万が一起こってはいけない。われわれはしっかり抑止力をもたなきゃいけない」と、何度も戦争法案による「抑止力」を強調。これに対し志位氏は次のように述べました。
 志位 高村さんは、(集団的自衛権行使容認で)「抑止力」を強くすればバラ色になるかのようなこと発言されますが、大森(政輔)元内閣法制局長官が、(9月)8日の(参院安保特別委員会の)参考人質疑でこう言っているんですね。
 「わが国が集団的自衛権の行使として……第三国に武力攻撃の矛先を向けますと、その第三国は、……わが国に対して攻撃の矛先を向けてくることは必定であり、集団的自衛権の抑止力以上に紛争に巻き込まれる危険を覚悟しなければならず、バラ色の局面到来は到底期待できない」
 つまり、集団的自衛権の行使というのは、わが国に対して武力攻撃をしていない国に対して、日本の側から武力の行使をすることになる。それは、相手国からみれば、事実上の問題として、日本による先制攻撃になる。相手国に、日本を攻撃する大義名分を与えることになる。ですから、国民の命を守るというよりも、進んで危険にさらす。ここに集団的自衛権の本質があると言わなければなりません。

「法律の専門家であっても、安全保障の専門家ではない」という非難に対して
 これに対し高村氏は「大森さんは法律の専門家ではあっても、安全保障の専門家では全然ない」などと主張。志位氏はこう批判しました。
 志位 大森さんは論理の問題としてそうなる(と言っている)。つまり、集団的自衛権というのは事実の問題として先制攻撃になる。仮に、国際法上、(集団的自衛権の行使として)違法性が阻却されるとしても、事実上の先制攻撃になれば、相手からの攻撃を呼び込むじゃないか、結局、紛争を呼び込んでしまうことになるじゃないか、こういう論理の問題としておっしゃっている。
 これに関して岡田氏も「北朝鮮が手を出していないときに、日本が米艦の防護ということで北朝鮮に武力行使をすると、そうなれば、日本にミサイルが飛んでくる可能性はそれだけ高まるというのは、だれが考えてもそうなるじゃないですか」と批判しました。

自衛隊の活動拡大でどうなる?

「非戦闘地域」の枠組みの撤廃――憲法違反の武力の行使そのものになる
 戦争法案は、従来の「非戦闘地域」の枠組みを撤廃、自衛隊が「戦闘地域」にまで行って米軍などへの「後方支援」=兵たんを行うことを可能にします。自民・高村氏は「防衛大臣に、安全確保義務で『戦闘が見込まれない地域(を指定する)』と定めているから、(危険性は)それほど高まらない」と述べました。これに対し志位氏は次のように批判、公明・北側氏を相手にやりとりになりました。
 志位 高村さん、7月(の討論番組)と同じことを言いましたね。「戦闘が見込まれない地域」を定めるんだというふうにおっしゃったけど、そんなこと、法案に書いてないんですよ。
 国会で私たちは聞きましたけれども、法案に書いてあるのは「(部隊による活動が)円滑かつ安全に実施することができるように実施区域を指定する」(国際平和支援法7条3)と。「それ以上の安全規定については法案の記述はございません」(中谷防衛相)と答弁しているんですね。
 これまでは少なくとも「非戦闘地域」という歯止めがありました。現に戦闘が行われていないだけではなくて、自衛隊の活動期間中に戦闘が行われない、これがきちんと認定できる地域と(いう枠組みだった)。こうであったとしても、イラク(自衛隊派兵)の実際は危なかったわけですね。
 ところがこのいわば「二線」を引いていたのを、「一線」にしてしまったら、いつでも(相手方の)攻撃の対象になる。「攻撃されたらどうするのか」と私が国会で聞きますと、(首相は)「武器の使用をする」と(答弁した)。そうしますとこれは戦闘になるわけですよ。これはまさに憲法9条が禁止した武力の行使そのものだと。これは憲法違反です。

「戦闘が見込まれない場所」など法文にはない――ごまかしは許されない
 北側 国会で、戦闘が発生しないと見込まれる場所を指定する、と答弁しているんです。ですから、実態的には何ら変わりがないんです。
 志位 それは答弁の話であって、法文にないんですよ。これまで、そういう戦闘行為が起こらない地域ということで「非戦闘地域」と言ってたものを、外してしまったわけですよ。外してしまっておいて「変わらない」っていうのは、こんなごまかしはありません。
 北側 憲法の問題と、安全確保の問題とをたてわけて議論してるんです。
 志位 憲法上もこれは憲法違反になるわけですけども、安全確保という点でも、これまであった「非戦闘地域」という歯止めを外したら、飛躍的に危険が高まるのは当たり前ではないですか。

活動内容がどう変わる?

戦闘に向かう航空機への給油も可能に――「武力行使ではない」など絶対に通らない
 戦争法案による自衛隊の「後方支援」=兵たんは、武器・弾薬の輸送、弾薬の提供を可能にするなど、活動内容も大きく広がることが国会審議で明らかになりました。「リスクは当然高まるのでは」との島田氏の問いかけに、自民・高村氏は「いや、変わらない。日本の平和と安全に重要な影響を与える事態のとき、動いてくれるところにお手伝いをするのは当たり前のことだ」と発言。志位氏は次のように発言しました。
 志位 「非戦闘地域」という歯止めが外れるだけではなくて、活動内容という点でも、武器・弾薬の輸送、そして弾薬の補給ができるようになる。くわえて、戦闘作戦(行動)のための発進準備中の航空機に対する給油ができるようになるんですよ。
 (資料を掲げて)これは、海上自衛隊が作った(重要影響事態と国際平和共同対処事態の際の実際の運用を踏まえた)イメージ図ですが、米軍ヘリが敵潜水艦を攻撃し、このヘリが海上自衛隊のヘリ空母に来て給油をして、また攻撃する。これを繰り返しやる。これができますか、と聞きましたら(政府は)「可能だ」というんですよ。これは、まさに一緒になって戦争をするという以外の何ものでもないですよ。これをやっておいて、これは武力の行使とは別ですということは絶対に通りませんよ。
 まさに活動内容という点でも、武器・弾薬の輸送だけでなく、こういう給油の活動、これは(大森)元内閣法制局長官が、国会での証言(9月8日の参院安保特別委員会の参考人質疑)で、これはもう憲法違反だから、やめるべきだと、何度も何度も、当時の政府に、周辺事態法のときにいった話だ≠ニ(述べている)。憲法違反そのものです。

米国の「ニーズ」の有無の問題ではない――憲法違反になると法制局として言い続けた
 この発言について、志位氏と高村氏でつぎのようなやりとりになりました。
 高村 大森さんは、当時、「これはアメリカからの要求がないということで、検討しなかったものでございます」と、そういうふうに答弁していました。
 志位 (大森氏は)最後は、(アメリカからの)ニーズ(がない)ということで納めたんだけれども、法制局としては、参事官を通して、繰り返し、繰り返し、これは憲法違反になるということを、政府に言っていたという証言を、8日にされました。この証言は非常に重いですよ。
 高村 彼は、そのように思いますといっている。
 志位 参事官から「報告を受けた」とおっしゃっている。

自衛隊中枢の暴走

「(安保法制は)来年夏までには終了する」と米側に約束――統幕長の国会招致を求める
 自衛隊の活動拡大に関して志位氏は、「どうしてもいっておきたい問題がある」として、日本共産党が国会質問で繰り返し追及してきた、統合幕僚監部の内部文書で明らかにされた自衛隊中枢の暴走問題について取り上げました。
 志位 一つ、ここでどうしても言っておきたい問題があります。自衛隊の活動の拡大ということがいわれている。その自衛隊が、国民と国会を無視して暴走しているという問題があるんですよ。
 (内部文書を示して)ここにも、今日、持ってまいりましたけれども、河野(克俊)統幕長が去年12月に訪米して、米軍の幹部と会談した会談録です。「安保法制について予定通りに進んでいるか」と米側に問われて、「来年夏までには終了するものと考えている」と(答えている)。これは去年の12月17日ですよ。総選挙の投票日の3日後ですよ。第3次安倍政権が誕生する1週間前ですよ。
 この段階で、アメリカにこういう約束をしている。これは大問題ではないですか。幕僚長の国会招致が必要だと思いますが、いかがですか。

「『見込み』を言っただけで『約束』ではない」(高村氏)――会談録を事実上認める
  この発言を受けて志位氏と高村氏との間で激しいやりとりに。民主・岡田氏も高村氏に批判を加える場面となりました。
 高村 何にも約束していないでしょ。見込みを聞かれて、見込みを言っただけでしょ。
 志位 事実上の約束です。
 高村 何の約束もしていないでしょ。
 志位 事実上の約束です。
 高村 約束できる立場ではないですよ。
 志位 「来年の夏までに終了する」と。これを約束しているんです。
 高村 見込みを言っているだけです。
 岡田 そうおっしゃるんなら公電を出してくださいよ。公電あるはずでしょ。
 高村 じゃあそれは、委員会なりで要求してくださいよ。
 志位 そういうことをおっしゃるんでしたら、ちゃんとこの文書を出してください。国会に。国会に出していないんですよ。
 岡田 そうだ。
 高村 だから、そうじゃない。約束しているという言葉じゃない。
 志位 相手に問われて、どうなってるんだ、ちゃんとできるかといわれて、夏までに終了させると、これはもう約束です。
 高村 させるではない。終了すると考えていると読んだじゃないですか。もう一回読んでください。
 志位 「終了すると考えている」と、そういうふうに答えれば約束そのものですよ。
 高村 なんで約束ですか。約束できる立場ではない。
 志位 相手からそういうふうに問われている。
 岡田 だから出してくださいよ。
 志位 約束できる立場でないものが約束しているというのは、「軍の暴走」なんです。
 政府は、この会談録について、「同一文書の存在は確認できなかった」として事実関係を認めず、真相を隠し続ける態度をとっています。ところが、このやりとりを通じて、高村氏は、「『見込み』を言っただけで『約束』ではない」と「反論」しただけで、会談録に記載されたことが事実だということを事実上認めてしまっています。
 重要影響事態法について、維新・松野氏は「(危険性が)まったく変わらないのであれば、なんで地理的概念を外したんですか」と主張。高村氏は「外したも外さないもない。地理的概念だと誤解している人がたくさんいる」と発言しました。これに対し岡田氏が「インド洋や中東までいかないといっているでしょ」と述べ、志位氏は「(当時政府は)地球の裏側には行けないと答えていますよ」と指摘しました。

今後の審議・採決にどうのぞむ?

野党が結束し、かつてない国民運動と力をあわせ、必ず廃案に
 与党側は、週内に参院での採決に踏み切る構えをみせました。民主・岡田氏は「野党は協力して、あらゆる手段を使って、採決を阻止していく、そのことを確認した」、維新・松野氏も「憲法違反の法案を衆議院では強行採決をすでにしているから、その状態ではとても認められないという立場だ」と発言。志位氏は次のように述べました。
 志位 野党7党(6党・1会派)で法案の成立を阻止するために、あらゆる手段を行使して結束してたたかうということを、この間の党首会談で確認したことは、たいへんに大事だと思っております。野党の結束したたたかいで阻止したいと思います。
 同時に、国会を取り巻く国民の声に耳を傾ける必要がある。日本列島津々浦々で、燎原の火のように、かつてない国民運動が起こっている。その中で若い人たちが声をあげて立ちあがっているというのは、日本の未来にとって本当に大きな希望だと私たちは思います。今週はずっと連日のように国会抗議行動が取り組まれますから、ぜひ国会を包囲して、その力で、院内外の力を合わせて、必ず廃案に追い込みたいと決意しております。

公聴会の直後に採決など国会のルール違反――公聴会を受けて審議を続けるべきだ
 自民・高村氏は「あらゆる手段とは何だろうと思っているが、なんでもやる。ゲバ棒を持ってきてやるなんていうことはわれわれは言いませんけど、そこまでやらないだろうと思いますが」などと発言。志位氏は次のように述べました。
 志位 先ほど高村さんが、野党があらゆる手段をつかうということについて、どういう手段なんだということをおっしゃっておられました。私たちは、もちろん暴力なんかとんでもありません。物理的な行為でどうこうすることを考えているわけじゃない。
 ただ言っておきたいのは、15日に中央公聴会、16日に地方公聴会でしょう。公聴会というのは国民から広く意見を聞いて、審議を充実させると、そのためにやるんですよ。その直後に採決というのは、これは国会のルール違反ですよ。なんのために公聴会やるのか(ということになる)。
 公聴会とセットで採決日程を出してくるというのは、本当に暴挙であって、公聴会に来て下さる方への失礼極まりない態度だと思うんですよ。ですからこういうやり方は絶対にやめるべきだと。きちっと審議を続けるべきだと思います。

( 2015年09月15日,「赤旗」)

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女性自衛官、イラク派兵150人/これが「女性が輝く社会」?

 「これまでに海外派遣された女性自衛官は520人」。戦争法案を審議している参院安保法制特別委員会(8月21日)で初めて明らかにされた事実です。このうちイラク特措法に基づく派兵が約150人と最多を占めていることがわかりました(表)。防衛省が本紙の取材に回答しました。

海外任務拡大へ
 防衛省によれば、イラク特措法に基づく派兵以外に、「海賊対処法」に基づくソマリア沖派兵が60人に達しています。現在の派遣部隊では初めて、女性自衛官が水上任務についています。
 海上自衛隊はすでに艦船30隻に女性居住区域を設置しています。2016年度の軍事費概算要求に、イージス艦にも女性居住区域を設ける計画が盛り込まれています。
 南スーダンのPKO(国連平和維持活動)には過去最多の13人が派遣されています。
 「国際協力の分野における女性の活躍が不可欠である」。8月21日の同特別委員会で、安倍晋三首相は「女性が輝く社会づくり」と称して、女性自衛官の海外任務拡大の考えを示しました。
 なぜ、女性自衛官が必要なのか。本紙の情報公開請求に対し防衛省が開示した「防衛力の在り方検討のための委員会」の配布資料に、「防衛省における男女共同参画について」と題した資料(2013年5月)があります。
 そこで「女性自衛官活用を推進する必要性」として、防衛省は「我が国の少子高齢化が進み、隊員の募集環境が改善されない」ことをあげています。少子高齢化に伴い、男性のみでは担いきれなくなってきた自衛隊の任務を、女性にも負担させようとする思惑です。女性自衛官の現員数は近年増加傾向。同資料内には「託児施設の新設」とあり、子育て中の女性の確保と勤務継続の狙いも示されています。

深刻な性的被害
 女性自衛官が海外派兵された際に起こりうる問題について、京都女子大学の市川ひろみ教授は、米軍の女性兵士たちの事例から指摘します。「海外派兵されれば、隊員は自軍のキャンプという閉ざされた空間のなかで過ごします。いつ攻撃されるかわからず、ストレスも高まり、強姦(ごうかん)など深刻な性的被害が頻発します。イラクやアフガン戦争に派兵された米軍女性兵のうち約4割が軍隊内で性的被害に遭っているという研究もあります」
 さらに米軍女性兵士の任務について、医療活動・運搬・死体の後片付けのほかに、前線で直接戦闘を行う部隊に弾薬や食糧の供給、戦艦・戦闘機の給油をする「兵たん活動」があると指摘します。敵からの攻撃対象となりやすいものです。
 現在の紛争地は前線と後方の境がなく、市街地でも突然銃撃戦が始まり、女性兵士が応戦するケースも明らかにされています(NHK出版『母親は兵士になった』)。海外で米軍の兵たん支援を行う「戦争法案」では、女性自衛官もこうした状況におかれる可能性も考えられます。
 「戦闘支援や応戦で『自分が殺した』と精神的に自身を追いつめる」と市川氏は指摘。「母親である女性兵士の中には、帰還後に自分の子を愛せなくなり、育児放棄など虐待してしまうというケースも多くあります」と問題点を語ります。
 「女性の輝く社会づくり」と首相が美化する女性自衛官の海外派遣拡大≠ナすが、大きな危険をはらんでいます。
 (吉本博美)

女性自衛官の海外派遣数
イラク特措法                          約150人
PKO(国連平和維持活動)法に基づく国連PKO等  約130人
国際緊急援助活動法                     約100人
テロ対策特別支援法                     約80人
海賊対処法                           約60人
 (防衛省回答をもとに作成)
(
2015年09月13日,「赤旗」)

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NHK日曜討論/井上議員の発言

日本共産党の井上哲士参院議員は6日のNHK「日曜討論」に出席し、参院での審議が大詰めを迎えている戦争法案について、各党参院議員と議論しました。井上氏は、8月30日の国会包囲行動に12万人が参加したことなどを挙げ、「法案への『理解』が進めば進むほど国民の反対の声が広がり、行動が広がっているのが現状だ」と指摘。民主党の大野元裕・「次の内閣」防衛相らも同様の認識を示しました。(井上氏発言4面)
 井上氏は加えて、共産党の仁比聡平議員が暴露した内部文書で、自衛隊トップの河野克俊統合幕僚長が昨年総選挙直後の訪米で米軍幹部に「夏までの法案成立」に言及していたことが明らかになったことをあげ、その徹底究明を求めました。
 自民党の佐藤正久・国防部会長は「(法案への理解は)まだ十分ではない」と認める一方、「今国会内できちんと結論を出したい」として、成立強行を図る考えを示しました。
 安倍晋三首相が集団的自衛権を行使する「存立危機事態」を認定する要件として挙げていた「邦人輸送中の米艦防護」について、中谷元・防衛相が「日本人がいるかどうかは絶対条件ではない」と答弁したことについて、各党の議論が集中しました。
 井上氏は「(集団的自衛権の行使について)『総合的判断』という言葉があったが、あいまいで政府の判断に委ねられるということが浮き彫りになった。もともと集団的自衛権は『他国防衛』であり、憲法違反なのに、限定的なら許されるという解釈改憲のために『存立危機事態』という考えをむりやりつくった」と指摘し、「それに対して憲法学者が声を上げてきましたが、ついに最高裁元長官の山口(繁)さんも違憲だと述べました」と強調しました。
 国会最終盤の対応と維新などの野党が提出した修正案が議論となり、井上氏は「憲法違反の法案をつくらせないことが、何よりも大事だ」と述べ、戦争法案の廃案に向けて奮闘する決意を表明しました。

 

 27日の国会会期末まで3週間となった6日、NHK「日曜討論」で戦争法案について10党の参院議員が議論しました。日本共産党の井上哲士議員は「憲法違反の戦争法案は廃案しかない」と主張しました。

理解が進むほど国民は反対/自衛隊暴走にも不安広がる
 司会者から、戦争法案に対する国民の理解について問われた自民党の佐藤正久・国防部会長は「十分ではない」と述べつつ、「政府は問題点にしっかり答えている」と強調しました。井上氏は自衛隊の内部文書を暴露した共産党の質問にもふれながら、こう答えました。
 井上 12万人の(8月30日の)国会前集会、私も参加しましたけど、ものすごい熱気でした。理解が進めば進むほど国民の反対の声が広がっている。そして、学生・若者、ママたち、学者など、いてもたってもいられないという行動が広がっているのが現状だ。それに加えて、アメリカ軍と一体となった自衛隊の暴走にも不安の声が広がっています。先週、私たちは自衛隊トップの(河野克俊統合幕僚長の)昨年末の訪米記録の内部文書を明らかにしましたけど、総選挙直後、まだ与党協議も始まっていないのに「夏までに法案が成立する」とか、沖縄知事選の結果にかかわらず新基地建設するとかを表明している。これは驚くべき内容だ。この問題の究明は法案審議にとっても不可欠であり、この点でもさらに審議が必要です。

軍事的な悪循環起こすより9条に基づく平和外交こそ
 戦争法案の必要性について、与党側は中国、北朝鮮「脅威」論を前面に出してきました。井上氏は憲法に基づく平和外交の重要性をのべました。
井上 参院の審議に入って、与党側から中国脅威論をあおる質問が相次ぎました。共産党の議員が日中はお互い貿易最大相手国であることをあげ、(岸田文雄)外相に「中国は脅威か」と聞くと、「脅威とは考えていない」と答弁しました。脅威があるから法律ではなくて、むしろ法案を通すために脅威をあおっている。私たちは軍事的な悪循環を起こすようなやり方ではなくて、憲法9条にもとづく平和の外交こそがこの問題の対案だと考えています。

存立危機事態、要件あいまい/元最高裁長官も「違憲」と批判
 集団的自衛権を行使できる「存立危機事態」の要件について、政府が繰り返しあげてきた「日本近海で邦人輸送中の米艦防護」という事例が成り立たなくなっている問題が議論になりました。自民党の佐藤氏は「国民が犠牲になるまで守ることができなくていいのかという安倍首相の問題意識を示したものだ」と述べ、現実性のない観念的な事例であることを事実上、認めました。井上氏は、こう批判しました。
 井上 国会での議論で、総合的判断という言葉がありましたが、結局(要件が)あいまいで政府の判断にゆだねられるものだということが浮き彫りになりましたね。もともと総理が具体例としてあげてきた米艦防護の例もそうですし、ホルムズ海峡の機雷掃海の件も、およそ立法事実として成り立たなくなってきていますよ。もともと集団的自衛権は「他国防衛」であり、憲法違反なのに、限定的なら許されるという解釈改憲をするためにこの「存立危機事態」という考えをむりやりつくった。だからこそ、いろんな問題がでてきていると思います。それに対して憲法学者が声をあげてきましたけど、ついに、元最高裁長官の山口(繁)さんも違憲だと述べました。(集団的自衛権の行使が憲法上許されないとした)「72年見解」の枠のなかで、行使できるというのは論理矛盾でありナンセンスだと、ここまでいわれています。政府は最高裁こそ憲法の番人だといってきましたが、その元長官がここまで言われているわけですから、私はこういう法案は廃案しかないと思います。
 「(存立危機事態での武力行使は)必要最小限の武力行使という憲法の精神にのっとったもの」との佐藤氏の発言に、井上氏は反論しました。
 井上 日本が攻められていないのに、他国に対する武力攻撃を排除するわけですから、必然的に海外派兵につながってくる。総理は「一般に海外派兵は憲法上禁止されている」と言いますが、それは法案に明記されていません。そして、一般ですから例外はあると。それは政府が判断をするわけですから、実際上は歯止めがありません。先日(8月12日)、沖縄で米軍のヘリが墜落する事故がありました。アメリカの特殊作戦部隊に日本の自衛隊の特殊作戦部隊が「研修」と称して、ヘリに乗っていたことが明らかになりました。イラク戦争やビンラディン殺害事件など、国際法違反の作戦に参加していたような特殊作戦部隊との訓練が行われている。これはまさに「専守防衛」と相いれないことを示していると思います。

非人道的兵器も輸送可能の危険なフリーハンド与える
 戦争法案では、従来の海外派兵法で「非戦闘地域」に限っていた自衛隊の活動範囲を「戦闘地域」まで広げ、武器の輸送や非人道兵器を含む弾薬の輸送、提供ができるようになります。
 井上 もともと輸送などの兵たん活動は武力行使と一体不可分なのに、政府は「後方支援」という名前に変えて、他国の武力行使と一体でなければいいんだという、国際法で通用しない主張をしてきました。しかも、今回支援内容が大きく拡大します。私は(国会で)輸送の問題を質問しました。クラスター弾や劣化ウラン弾、これは在日米軍も保有していますが、この輸送ができるのかと聞くと、法律上はできるという答弁でした。その後、批判が広がり、輸送も含めて考えてないという答弁に変えました。しかし私の質問には、移譲、つまり譲り受けに当たらない形であれば輸送は条約上否定されないと答えているのです。結局、時の政府の判断でこういう非人道的兵器も輸送できるようにする、危険なフリーハンドを与えることは絶対あってはならないと思います。

違憲の法案は修正ではなく廃案にする以外にない
 今国会の成立について、自民党の佐藤氏は「国会の会期内に結論を出していきたい」と表明。井上氏は「廃案しかない」と強調しました。
 井上 憲法違反の法案ですから、対案とか修正ではなくて、私たちは廃案だと考えています。(法案修正で)国会の関与を強めることはどの問題でも大事だと思いますが、この法案も衆議院であれだけ国民の反対の声があったのに与党が多数で強行しましたから、国会だけで歯止めになるのかと。もともと、国会が多数で決めたとしても、これはやってはいけないよというたがをはめているのが憲法です。憲法違反の法案をつくらせないということが、なによりもいま大事なことであり、廃案しかないと思っています。
(
2015年09月07日,「赤旗」)

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芸能テレビ/戦後70年/世代継承・調査報道・加害責任/見応えあった番組/須藤春夫

 戦後70年を迎え、テレビは「戦争」をどう伝えたでしょうか。安保法案審議や安倍晋三首相の70年談話など、国民が「戦争」を強く意識する状況にこたえ、見ごたえのある番組が多かったといえます。その特徴をまとめてみました。
 まず戦争体験者が減少するなか、若い世代を意識して戦争を語り継ぐ企画が目につきました。
 8月15日放送の「私たちに戦争を教えて下さい」(フジ系)は、人気の若手俳優5人がそれぞれ戦争体験者を訪ね、戦争の悲惨さ、平和の尊さを学んでいきました。
 同日放送の「戦後70年 千の証言 私の街も戦場だった
U」(TBS系)は、ファッションデザイナーの森英恵が、孫でモデルの森泉に学徒出陣の体験を話す内容などです。これらの番組は、若者が戦争体験者から直接話を聞き、疑問をぶつけるなかで、戦争の本当の姿を自分のものにする可能性を示唆しています。次の世代に語り継ぐ土台が生まれつつあります。
 二つめはテレビ局独自の調査報道が満州事変、太平洋戦争の埋もれた事実を明らかにし、軍国主義の非人道性や人間の尊厳を奪う戦争への理解を深めてくれました。
 8日放送のNHKスペシャル「特攻 なぜ拡大したのか」は、無謀な特攻攻撃が特攻機のほか人間魚雷や特攻ボートなど歯止めなく拡大した理由を暴きます。日本軍幹部たちの証言を収めた音声テープを入手、特攻を進めた軍部の体質を明らかにしました。
 15日放送のNHKのETV特集「書きかえられた沖縄戦」は、琉球政府が作成した沖縄戦の死亡者名簿のうち3割近くが戦闘参加者として書き換えられていた背景に迫りました。援護法の対象になるように、との配慮が、結果的に死の真相を隠すことになりました。
 戦後の復興は破壊と殺りくの戦争被害を消し去ります。戦争責任を逃れるため、意図的な証拠の隠滅もありました。70年を経た今でも戦争の隠された部分は大きく、テレビの調査報道がいっそう求められているのを実感します。
 三つめは、日本が戦争で侵した加害の実態と責任を正面から問う番組がほとんどないなかで、ニュース枠では注目すべき放送がありました。
 15日放送の「報道特集」(TBS系)「終戦の日スペシャル 加害と被害」です。日本軍の重慶爆撃と、連合国軍の空襲で破壊されたドイツ・ドレスデンの現地を取材し、空襲で生き延びた人へのインタビューなどから日本とドイツの加害と被害の向き合い方の違いを明らかにしました。
 ドイツ連邦軍歴史博物館の展示は、ナチス・ドイツの加害から始まり、その後にドレスデンの空襲被害という構成。日本の重慶爆撃で被害を受けた中国人女性は、日本は謝罪も補償もなく加害の歴史に向き合っていないとインタビューに答えます。「報道特集」のジャーナリズム精神が加害問題に光をあてたといえます。
 (すどう・はるお=法政大学名誉教授)
(
2015年09月06日,「赤旗」)

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本立て/カラーでよみがえる東京 不死鳥都市の100年/岩田真治+NHK制作班著

 人力車が通りを走っていた明治時代から戦後の復興、東京五輪まで、変わる東京の表情をめずらしいカラー写真で見せてくれます。
 撮影場所を馬車鉄道の「上野行」の看板と背景の店の名前から銀座と割り出したり、路面電車と交差する高架の汽車の形から東海道線と判明したので日比谷交差点から見た有楽町と特定したり。モダンガールが着ているワンピースの色は白黒映像の「明度」や黒い帽子との組み合わせからピンクと推定。記録映像をカラー化してみせるその苦心談も読ませます。
 (NHK出版 1600円)
(
2015年09月06日,「赤旗」)

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戦争法案とめる!/最大規模12万人の国会包囲/国民が燃え上がった/作家・僧侶瀬戸内寂聴さん

 予想通り、いや予想以上に8月30日のデモは国民のただならぬ熱意が燃え上がって、国会10万人、全国100万人の壮大なデモが日本国中に展開された。体調が不安定な私は、それでも、当日、車椅子で出かけようとひそかに思っていた。しかし、原稿や対談がいくつも重なり、腰が曲がってしまって、車椅子にも乗れなくなったので、残念ながら家でニュースを待っていた。
 テレビはNHKはもちろん、どこも積極的な報道はなかった。いらいらしていたら、デモに出た編集者がメールをくれて、「今日は国会前のデモに参加していましたが、なんと演説している若者が『瀬戸内寂聴いわく若者は恋と革命だ!♂エたちも恋と革命やるよ!』と言っておりましたよ」と教えてくれた。
 未来は若者のものだ。若い人たちがいきいきして立ち上がってくれたことが何よりうれしいし、日本はまだイケルぞ!!と張りきってきた。シールズの誕生も、そのいきいきした行動も頼もしい限りである。

 メールはまだ続き、「小学生が太鼓を叩(たた)いていたり、たくさんの風船で『安倍やめろ!』という垂れ幕を空に浮かばせている人もいて、国会前が今日はカルチェラタンでした!」と報告してくれてあった。
 それに続き、何人もから、デモに出席した報告がメールで入ってきた。藤原新也さん(作家、写真家)も「デモに出てきた!」と知らせてくれる。藤原さんには若い優秀な男女が熱心なファンとしてついているので、きっと彼らも藤原さんを守りながら行動していってくれるだろう。
 テレビは申しあわせたようにしんとしていて腹が立った。
 デモが終わった翌日、つまり31日は、朝刊のどれにも、特に「赤旗」には、おびただしいデモ参加者の劇的な写真がいくつも出ていてわくわくした。NHKで内閣官房長官が、「戦争法案ではない。国民は誤解している。誤解をとくよう説明する」と言っていた。どう誤解しているのか伺いたいものだ。民意を無視し通す政治家たちが民意の誤解をどう解きほぐす能力があるのだろう。
 時は刻々動いている。すべてのものは変化しつづける。国民の意識が動いていく。動いてゆく民意の行方を素早く正確に把握するのが政治家の役目である。
(
2015年09月06日,「赤旗」)

【GoToTop】

放送をネットでNHK配信実験/来月から

 NHKは3日、テレビ放送のインターネット同時配信の検証実験を10月19日から11月15日まで実施すると発表しました。期間中、総合テレビが東京・神奈川・埼玉・千葉で放送している内容を、インターネットで午前7時から午後11時まで配信し、各種の検証をします。モニターは1万人以内を募集します。
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2015年09月06日,「赤旗」)

【GoToTop】

潮流

 戦争法案が何をもたらすか。それを考える手掛かりの一つに自衛隊のイラク派兵(2003〜09年)があります。建前は「非戦闘地域」での活動でした。しかし実態は戦場≠サのものでした▼バグダッド空港などで米兵輸送を担った航空自衛隊。当時、航空支援集団司令官として指揮した織田邦男氏が、日本国防協会主催の講演(09年)で実情を明かしています▼現地指揮官から電話があり、攻撃を受けているバグダッド空港の上空にいる空自輸送機を着陸させてよいかどうか判断を求められました。現場に判断を任せたところ、輸送機は着陸。上空にいた他の多国籍軍機との空中接触を避けるためだったといいます▼バグダッド空港で離陸許可を待っていると、空自機の「機上を4発ロケット弾が飛んだ」。15分後に空自機が飛んだのと同じ経路を飛んだ英軍機が攻撃を受けたことも▼織田氏は、こうも証言します。「棺桶も持って行き、実際に人が死んだときに、どのように出迎えて、どう追悼するのかという段取りも検討しました」。棺については、元統合幕僚長の先崎一氏もNHK番組(昨年4月)で「約10個近く準備」したと語っています▼「非戦闘地域」での活動といいながら、実際は「戦死」と隣り合わせだったイラク派兵。戦争法案は、海外での活動範囲を「戦闘地域」にまで広げます。安倍政権が信奉する「日米同盟」のために、イラク派兵時以上に自衛隊員の命が危険にさらされる。関係者は切実な思いで事態を見つめています。
(
2015年09月06日,「赤旗」)

【GoToTop】

休憩室/渋谷はるかさん/被爆者の言葉根付く

 スペイン生まれの「お針子」の少女がおとなになり、スペイン内戦、第2次世界大戦の渦の中を生きてゆく。海外ドラマ「情熱のシーラ」(NHKテレビ 日曜 後11・0)で、主人公・シーラの声を演じています。
 「結婚に失敗して、流産も経験して、それでもたくましく成長し、激動の時代を生きるシーラにひっぱられていますね」
 スペイン、モロッコ、ポルトガルを駆け巡るシーラ。
 「役になりきるために1話分の台本を7、8時間読みこんで、自分の声と、シーラ役を務める役者さんの演技をシンクロさせています」
 小中高と演劇部。大学でも演劇を専攻しました。文学座所属ですが、劇団の垣根を越え30代の舞台女優7人で2年前に「On7(オンナナ)」を結成。10日から舞台「その頬、熱線に焼かれ」(東京・こまばアゴラ劇場)では広島の被爆者役です。ケロイドの治療のために渡米した「原爆乙女」の物語。演じるにあたり、被爆した女性の苦しみを聞きました。
 戦争の犠牲になりながら懸命に生きる女性の役が続きます。「『憎むべきは戦争そのものなんだ』という被爆者の方の言葉が、今、私の中にしっかり根付いています」
 記事 小川 浩
(
2015年09月05日,「赤旗」)

【GoToTop】

NHK包囲/8月25日、各地で連帯行動/管理強まる中NHK職員は

 市民の包囲行動を知るNHK職員は少なからず存在します。安保法案反対のデモや集会に参加したという職員の話も聞こえてきます。
 NHKのニュース・報道は安倍政権寄りだが、番組には良心的なものがあることは、多くの視聴者の一致した意見です。
 籾井会長のもとで、番組制作現場への管理体制が強化されています。とくに政治・社会、歴史問題にかかわるテーマを取り上げる企画に対しては、上層部からの注文が増え、チェックがいっそう厳しくなりました。加えて、新聞社への放送前試写はブロックされる傾向です。政権の意向をくむNHK幹部らが、視聴者から番組を遠ざけたいとしていることがありありです。
 しかし、制作スタッフらは「手も足も出ないわけではないので、粘り強く取り組んでいく」「しっかりした番組を作り、放送にこぎつけるようにしたい」と考えています。
 (江)
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2015年09月03日,「赤旗」)

【GoToTop】

NHK包囲/8月25日、各地で連帯行動/政権寄り報道正せ/京都/大阪/広島

 安倍政権寄りのニュース・報道を続けるNHKに対し、団体の枠を超えて市民の抗議が強まっています。8月25日には1000人が東京・渋谷の放送センターを包囲。大阪、京都、広島でも連帯の包囲行動に取り組みました。各地の模様をリポートしてもらいました。

NHKを憂える運動センター・京都事務局長中川勉
 京都放送局前に14人が集まって、正午から宣伝を開始しました。
 JCJ(日本ジャーナリスト会議)の隅井孝雄さん、弁護士・中島晃さんなど7人がリレートーク。「受信料払っている私たちにも会長を選ぶ一票を」「憲法を大切にした報道をしていないのではないか」「川内原発再稼働後の事故を伝えていない」と訴えました。元中学校教師の人見吉晴さんが「脱走兵」を独唱。日本では沢田研二さんやクミコさんが歌っている反戦歌です。
 宣伝には道行く人も振り返ります。籾井会長辞任を要求する署名に応じる人や、車からの声援もあり、立ち止まって聞き入る姿も目に入りました。NHK職員が「ごくろうさま」と励ましに近づいてくれたのも印象に残りました。

放送を語る会大阪世話人服部邦彦
 東京の包囲行動に呼応して「大阪でも要求と抗議の行動を」と2人の女性がネットで呼びかけました。それに応え、激しい雨風の中、大阪放送局の前に二十数人が集まりました。ツイッター、新聞記事を見て参加した方や、青年の姿もありました。京都や奈良など遠方から駆けつけた人もいます。
 悪天候のため放送会館敷地内での行動を要望しましたが、NHKは了承せず、敷地外での行動を余儀なくされました。門前や最寄りの地下鉄駅前で防水カバーをしたプラスターを掲げ、ゼッケンをつけて宣伝を行いました。
 「籾井会長やめよ」「アベチャンネルにするな」と呼びかけながら放送会館を回り、NHKの政権寄りの姿勢に強い抗議の意思を突きつけました。

NHKを考える広島の会事務局太田武男
 広島は台風15号に直撃された。朝9時に代表8人がNHK広島放送局を訪れ、7項目を文書で申し入れた。籾井会長解任をはじめ、国民の集会・デモの報道や国会中継の充実に加え、地元視聴者と話し合う場を設けるよう求めた。応対した広報部に「これは全国行動ですか」と尋ねられた。
 籾井会長のもとで、NHKの政治報道やニュース、解説は戦争法案への翼賛色を濃くする。軍都の歴史と原爆惨禍の体験を持つ広島は「9条原点の地」といえ、私たちはNHK報道に危機感を深め、行動してきた。
 ビラは2日後の27日に、「ストップ!戦争法ヒロシマ実行委」の街頭宣伝で配った。戦争法案やNHK問題への関心は高く、高校生や若い人も受け取ってくれた。
(
2015年09月03日,「赤旗」)

【GoToTop】

テレビ時評/8・30大行動/安倍政権の顔色うかがうNHK報道の異常

 「安保法案反対最大デモ」と注目された8月30日の戦争法案反対「国会10万人、全国100万人大行動」。この歴史的大事件をテレビ、とくにNHKはどう報じたか。参加者ならずとも関心を持つところです。際立ったのは、NHKの他メディアと比べて異常なまでの「安倍政権の顔色うかがい」ぶりでした。
 当日夕、日本テレビ系の「真相報道バンキシャ!」は「安保法案成立阻止を 国会周辺で大規模な集会」というタイトル。集会そのものを若者の声を軸にストレートに報じました。「30日、この日の大きな出来事は何か」というオーソドックスな視点といえました。
 □  ■ 
思惑ありあり
 一方、NHK「ニュース7」は、当日の番組表では「安保法案反対の集会」をトップに掲げてはいました。ところが番組での集会の扱いは、タイのテロ事件、スズキ自動車の経営動向に続いて3番目。しかもタイトルは「安保法制」というくくり方でした。
 まず衆参両院での法案審議時間を並べ、政府自民の「採決日程」展望、それから東京や全国の集会・デモの紹介という順序でした。その後再び政府・与党に話を転じて「今国会成立」という意向を伝えた後、8分間の放送の最後を、自民・谷垣幹事長の「野党の言い分はためにするひぼうだ」「この国会でなんとしても成立を」という発言で締めくくりました。この日の集会そのものをストレートに伝えたくない∞政府・与党の顔を立てなければ≠ニいう思惑がありありとにじみ出る報道ぶりでした。
 NHKの「安倍政権の顔色うかがい」ぶりは翌31日も露骨でした。朝、昼のニュースでは8・30大行動はまったく放送せず。夕方の情報番組「ニュースシブ5時」では、集会参加の40代、50代女性の思いに触れたものの、そのあとに解説委員が登場しました。
 □  ■ 
政府の言い分
 解説委員は「私も昨日の集会をのぞいてみた」と前置き。「この法案の見方は立場によって百八十度変わる」と一般論を口にしつつ、アナウンサーからの「不安の声が強いようですが」の問いかけに、政府はこう言っているという説明を長々と述べました。多くの視聴者は、集会をのぞいたというなら、そこで見聞きしたことと、あなたのとらえ方を伝えてよ。それがジャーナリストの責務でしょ≠ニ言いたくなったことでしょう。
 ちなみに31日TBS「NEWS23」の膳場貴子キャスターは、自ら集会会場を回って何人もの参加者にインタビューしていました。
 NHKの「政府の顔を立てる」姿勢は、31日夜の「ニュースウオッチ9」でも顕著でした。集会場面は一瞬で、あとは「今国会で成立を」という自民役員会、自民と次世代の党などとの「修正協議」報道に時間をついやしました。
 同夜のテレビ朝日「報道ステーション」、TBS「NEWS23」はいずれも海外メディアの報道ぶりも伝え、参加者の声をリアルに紹介していました。民放との対比も含め、NHKニュース報道の特異な立ち位置が改めて浮き彫りになりました。
 (小寺松雄)
(
2015年09月02日,「赤旗」)

【GoToTop】

【8月】

*           NHKに抗議/25日包囲行

*           ひと/7月で2000号、民放連機関紙「民間放送」編集長西野輝彦さん(53)

*           試写室/NHKスペシャル女たちの太平洋戦争/NHKテレビ後10・0/従軍看護婦が見た生き地獄

*           戦争とスポーツ/大相撲/上/日系米国人力士の悲劇

*           戦争とスポーツ/大相撲/中/動員で50キロやせた横

*           戦争とスポーツ/大相撲/下/戦勝、背負わされた土俵

*           番組をみて/日本人は何をめざしてきたのか 格差と貧困の戦後史/NHKEテレ7月25日

*           戦後70年企画「テレビが伝える戦争の記憶と記録」/番組上映会と公開セミナー/放送ライブラリー

*           鉄人衣笠のフルスイング/8月6日、背番号は86/市民と歩んだ広島カープの原点

*           【暮らしの目線】

*           暮らし目線のチカラ/山秋真/1/珠洲の人びと

*           暮らし目線のチカラ/山秋真/2/原発の金はいらん

*            

*           おはようニュース問答/「戦後70年」力のこもった番組放送したね

*           論戦ハイライト/歴史認識/山下氏が気迫の追及/安倍首相、核心一切語らず/参院予算委

*           主張/安倍首相歴史認識/侵略認めない「反省」は欺瞞

*           NHKを市民包囲=^アベチャンネル≠ノするな

*           戦争法案審議どう伝えた/NHKは「政府寄り」/放送を語る会が中間報告

*           テレビ時評/NHKを包む市民の怒り/元NHKディレクター戸崎賢二

*           潮流

*           NHK日曜討論/小池副委員長の発言

*           戦争法案/立法事実もボロボロ、国民の力で廃案に/NHK「日曜討論」で小池氏

*           安倍首相の政治団体・政党支部/年108回624万円飲み食い/税金・献金原資に

*           私学補助率引き上げを/私大教連が教研集会/新潟

*           政府から独立したNHKを/広島の会が申入書を提出

「広島御幸橋写真」に思う/関千枝子

【8月本文】

NHKに抗議/25日包囲行動

 NHKは政権べったりの報道をやめよと抗議する「NHK包囲行動」が25日(火)午後6時半から、東京都渋谷区のNHK放送センター前で行われます。
 主催は、NHK報道に関心を持つ団体、個人でつくる実行委員会。当日は放送センター西口に集合した後、正面玄関、西門、東門などを包囲。各所でリレートークとコールを行います。
 主な訴えの内容は「NHKは戦争法案に加担するな」「国会審議をまともに報道せよ」「国民の抗議の声を伝えよ」「政権に不都合なことを隠すな」「権力を監視するメディアになれ」「籾井会長はただちにやめろ」などです。
 問い合わせEメール=shichosha_kangeki@yahoo.co.jp
(
2015年08月15日,「赤旗」)

【GoToTop】

ひと/7月で2000号、民放連機関紙「民間放送」編集長西野輝彦さん(53)

 放送関係の勉強会や記者会見場には必ず姿を見せ、制作者たちの話に耳を傾けます。「編集長とはいえ、取材からデスク、雑用まで何でもやりますよ」
 全国のテレビ・ラジオ局206社が加盟する日本民間放送連盟(民放連)が毎月3回発行。タブロイド判4nの紙面には「業界人が最低限知っておくべき森羅万象が詰まっている」と語り、そのニュース価値を決めるのが「編集長としての最大の醍醐味です」。
 業界のPRにとどまらず、ジャーナリズムの視点で現状を伝える編集方針は、1951年の創刊時から変わらないと言います。
 「戦争中のNHKが大本営発表を垂れ流した反省から、戦後の民主化で電波が民間にも開放されました。『民放は夢のある民主的な媒体』だとアピールするため、先輩たちが知恵を絞って作りあげた紙面です」
 編集長に就任した2011年4月は、東日本大震災の直後でした。駆け付けた仙台の放送局で目にしたのは、避難所となったスタジオでニュースを送り続けるスタッフたち。「ローカル局の厳しい現実と使命感をどれくらい伝えられたのか。一生忘れられません」
 86年民放連事務局入社。山田太一ドラマ「ふぞろいの林檎たち」を見て「テレビの素晴らしさに目覚めた」のが志望の動機だとか。同時に社内外でも知れたアイドル研究家。「おニャン子クラブに会えたことが記者としての原風景で…」。思い切り頬が緩みました。
 文 佐藤研二
(
2015年08月14日,「赤旗」)

【GoToTop】

試写室/NHKスペシャル女たちの太平洋戦争/NHKテレビ後10・0/従軍看護婦が見た生き地獄

 男たちと同じように「赤紙」一枚で召集され、戦場に送られた従軍看護婦の衝撃的な記録である。日赤本社に残された200冊の業務報告書と、とくに犠牲者の多かったビルマ(現在のミャンマー)、フィリピン戦線からの生還者たち(ほとんどが現在90歳代)の証言に基づく。
 看護婦たちの多くが少しでもお国の役に立ちたいと願う10〜20歳代前半の女性だった。病院に彼女たちが現れると戦傷病兵は、母親や妻を思い出して必ず涙ぐんでいたという。しかし連合軍の反攻が激化し、旧日本軍の弱点だった補給体制の不備が露呈して武器弾薬ばかりでなく医薬品も底をついてしまった。その後の戦場で彼女たちが見た生き地獄―。それは番組を見てください。
 実は従軍看護婦の正確な数はつかめていない。番組は、日中戦争から太平洋戦争にかけて総数5万人というが、帰国かなわず何人が戦場で涙をのんだのか。「あんな思いは二度としたくない」と声を震わす、しわを刻んだ彼女たちの顔を見ると「安倍さん、これでもまだ戦争法案やめないの!」と叫びたい気持ちでいっぱいだ。
 (諌山 修 ジャーナリスト)
(
2015年08月13日,「赤旗」)

【GoToTop】

戦争とスポーツ/大相撲/上/日系米国人力士の悲劇

 戦後70年を迎え、戦争がスポーツに及ぼした影響がさまざま報じられています。当時、スポーツはその活動が制限され、選手の多くが戦禍に巻き込まれました。その実相の一端を相撲、野球、サッカーなどにみてみました。

 将来を期待された若い力士が、その夢を絶たれました。日系2世という、それだけの理由で敵性人として特高警察に監視され、懲罰的に戦場に送られました。
 豊錦(とよにしき)=本名・尾崎喜一郎=。戦前に活躍した米国コロラド州出身の日系2世力士です。入門時の身長は約190a。手足が長く、体は高地での農作業で鍛えられてきました。
 「1937年3月に彼が17歳で来日したとき、双葉山や、のちの横綱前田山、横綱玉錦もうちにこないか≠ニ誘いました。みな、弟子としてほしがったそうです」
 フリーディレクターの小笠原和子さんは証言します。小笠原さんはかつてテレビのニュース特集番組で豊錦を紹介し、その後もコロラドの生地などを訪ねて調査を進め、近く本にまとめようとしています。
 「推測ですが、喜一郎さん(豊錦)の郷里のコロラド州デンバーは標高が約1マイル(1600b)あります。そこで父親と一緒に農作業をしながら育ってきた。強い心肺機能もそこで養われてきたのではないでしょうか」(小笠原さん)

38年に初土俵
 結局、大部屋のほうが安全だという周囲の意見で出羽海部屋に入門します。
 双葉山が連勝を続け、横綱に昇進した38年の春場所、豊錦は初土俵を踏みます。以来長い手を生かした突き出しなどで順調に番付を上げていきました。負け越しは一度もなく、43年春場所に新十両昇進。米国出身で初の関取でした。十両わずか3場所で44年夏場所、ついに新入幕。相撲好きだった父の夢に向かって大きく踏み出しました。しかしその道は直後に絶たれました。
 41年、日本が真珠湾を攻撃し、米国と開戦すると、米国籍の豊錦は敵国人∴オいされます。特高警察が監視を強め、押しかけて日本国籍に変えるよう迫ってきました。
 日系アメリカ人の記録をまとめたカメラマンの大谷勲氏は著書『他人の国、自分の国』で、両親が生活し、自分が生まれ育った米国を簡単に投げ出すことはできないと豊錦が悩んでいたことを紹介。その豊錦に対して師匠(出羽海梶之助)が、「(警察から)日本に忠誠を誓わない敵国外人を、いやしくもわが帝国の国技に参加させておくことは、帝国国民の士気高揚の妨げになると言われてな」と、日本国籍に変更するよう説得したことを明らかにしています。

懲罰的な配置
 やむなく日本国籍を取得したものの、新入幕の44年の夏場所で勝ち越した直後に兵役検査を受け、ただちに召集されました。
 体の大きな力士は、一般の兵役は無理ということで郷里にもどされたりするのが普通です。同じ出羽海部屋の力士だった作家の小島貞二氏は、前線への配置は懲罰的措置だったと、著書『本日晴天興行なり』で指摘しています。
 終戦翌年の46年6月、戦地から戻った豊錦は、大阪・阿部野橋市場の一角で行われた準本場所の千秋楽のあと、師匠に力士廃業を申し入れ、受理されました。その理由について、「相撲と通訳をしたい」と希望したものの、周囲で認められなかったという指摘もあります。
 このとき、26歳。8年の力士生活のなかで1回の負け越しもないまま、前途有望な若者が日本の大相撲界を去りました。
 (金子義夫)
 (つづく)
(
2015年08月12日,「赤旗」)

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戦争とスポーツ/大相撲/中/動員で50キロやせた横綱

 第27代木村庄之助の熊谷宗吉(くまがい・そうきち)さん(89)は、終戦直前は立浪部屋に所属する3段目格の行司でした。本場所の合間に東京で軍事工場に徴用され、そのあと青森の連隊に召集されました。
 「弘前の山奥で、銃などまったくない。手ぬぐいを銃の型に持ってエイヤーとやる訓練ばかり。食べ物もほとんどない。大変だったのはお相撲さんでした」
 終戦直後、山形県鶴岡で松根掘りの勤労奉仕をやっていた部屋から「巡業をやるから戻ってこい」という連絡を受けて合流。横綱・羽黒山を見て驚きました。
 「140`あった横綱が90`しかなかった。当時横綱を負かすなど大物食い@ヘ士の三根山も140`から95`になってました」
 当時は140`といえば大型力士です。それだけに熊谷さんは、力士のほっそりした体に衝撃を受けました。
 「羽黒山は軍の命令で各地の慰問に動員されました。国内に残った力士も、勤労奉仕と食糧難でいつもおなかをすかせていました。相撲どころではなかった」

熱戦に「処分」
 戦争のなかで大相撲界は戦時体制に深く組み込まれていきます。
 1939年5月、相撲協会会長に竹下勇・海軍大将がつきました。初めての軍人会長でした。41年2月、「帝国在郷軍人会大日本相撲協会分会」を結成(会長・九州山)。43年2月には両国国技館で「大日本相撲協会勤労報国隊」が結成されます。
 日本の軍隊が侵攻しているところで、慰問巡業や「満州場所」「北京場所」などが開催され、横綱双葉山はじめ横綱、大関らがひんぱんに動員されました。
 山本五十六連合艦隊司令長官の戦死が発表された43年夏場所の10日目。事件≠ェ起きました。
 東前頭10枚目の青葉山と西前頭17枚目の竜王山の一戦は、2度水入りの熱戦。それでも勝負がつかず引き分けました。これにたいして軍神去る日に敢闘精神が欠如している≠ニして、両力士が出場停止処分にされてしまったのです。

空襲後も利用
 後援者から「撃ちてし止(や)まむ」と縫いこまれた化粧まわしを贈られた元関脇の豊島(とよしま)が、45年3月10日の東京大空襲で命を失いました。10万人といわれた犠牲者のなかには、元小結の松浦潟(まつらがた)など有力力士も含まれていました。
 風船爆弾の製造工場として軍に接収されていた国技館をはじめ、両国周辺の相撲部屋もほとんど焼け落ち、相撲界は本拠を失います。
 しかし、協会は警視庁と協議し、夏場所を「士気高揚のため開催する」ことを決定。東京は健在なり≠内外に誇示するため、本場所は絶対開くべしという軍部の強い主張によるもので、1カ月遅れの6月に非公開で7日間開催されました。
 その場所の双葉山は顔に腫れ物ができ、照国は元気なときから41`もやせ、笠置山に至っては77・6`と、少年時代よりもやせ細っていました(『昭和の大相撲』)。
 「相撲は絶対なくならない。裸でおこなう力を尽くす平和なスポーツだから」と信じていたという熊谷さん。野球やテニスなどが敵性スポーツとして迫害されるなかで、大相撲と力士は、終戦ぎりぎりまで動員され、利用されました。
 (つづく)
(
2015年08月13日,「赤旗」)

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戦争とスポーツ/大相撲/下/戦勝、背負わされた土俵

 双葉山といえば、戦前から戦中にかけて活躍した名横綱です。
 1936年春場所7日目から39年春場所3日目までの69連勝が有名ですが、記録はそれにとどまりません。そのあとも29連勝、21連勝、42年から44年にかけては36連勝を記録。このときの相撲が双葉山の全盛期という評価もあります。戦争真っただ中の活躍はわが皇軍に敵なきがごとく、双葉山に敵なし≠ニ持ち上げられました。
 しかし最初の連勝が69でストップした大きな原因は、38年夏場所後の朝鮮巡業でアメーバ赤痢にかかったことが原因でした。
 軍国日本の守護神のごとく双葉山は勝たねばならない≠ニあおられた双葉山は、戦争についてほとんど語っていません。

今日の土台に
 しかし戦争と結び付けて勝利を義務づけられたプレッシャーは、想像を超えるものがあったはずです。
 終戦後は相撲協会役員、理事長として弟子の育成と大相撲改革に尽力。今日の発展の土台をつくってきました。
 「終戦後、土俵に上がることがなかったのは残念ですが、いち早く相撲の復興を目指して努力してきた。それが今日の大相撲の隆盛の土台をつくってきたといっても過言ではありません」。元NHKアナウンサーで長年相撲放送を担当してきた杉山邦博さん(85)はこう評します。
 戦前、郷里の北九州市小倉で、母親に連れられて巡業に来た現役の双葉山をテント越しに見たのが、杉山さんの相撲の原点です。
 45年3月の東京大空襲で両国のほとんどの相撲部屋が焼失してしまったため、力士たちは神奈川の湘南や千葉、埼玉などから満員電車に乗って両国に通い、稽古に励みました。
 羽黒山、名寄岩、前田山らが土俵を引っ張り、戦地から復員してきた吉葉山、千代の山、栃錦らが後に続きました。
 「双葉山は伝承文化としての大相撲の本質を守りながら、後世につなげ、今日に伝えてきた」と、杉山さんは話します。
 第27代木村庄之助の熊谷宗吉さん(89)は、終戦で力士たちがぞくぞく東京に戻ってきたものの、腹が減って稽古どころではなかったと証言します。
 「腹は減る。金はない。でも苦労しているのは相撲取りだけじゃない。いい相撲を取ってお客さんに喜んでもらう。それには稽古をやるしかないと、底力を発揮してきました」
 軍部に利用され、戦争に協力させられてきた大相撲は戦後、自主的なスポーツ組織として再出発しました。

ファンと交流
 いま、元力士たちは本場所が始まると、入り口でチケットを切り、場内整備係として動き回り、握手会に参加するなど、ファンを広げるさまざまな活動に参加しています。
 熊谷さんは、そうした取り組みは大切なことと評価しながら「力のこもったいい相撲でお客さんに喜んでもらう。相撲繁栄の道はそれしかありません」といいます。
 「それにしても」と熊谷さん。「いま、国会で安保法制が審議され、殺し殺されることが話題になっています。でも私は、庶民は殺される一方だと思いますよ。戦争は二度とやるべきではありません。私はいままでこういう発言をしたことはありませんが、もう70年もたってるんだから言わせてもらいます」
 結びの一番で北の湖や輪島、千代の富士などの対戦を裁いてきた元木村庄之助の言葉が重く響いてきます。
 (金子義夫)
 (この項終わり)
(
2015年08月15日,「赤旗」)

【GoToTop】

番組をみて/日本人は何をめざしてきたのか 格差と貧困の戦後史/NHKEテレ7月25日

憲法との対比描く意欲的構成
 戦後70年、私たちは、貧困とどう向かい合ってきたのか? 貧困はなくなったのか? 戦後の貧困の歴史を憲法との対比で描き出すという構成は意欲的で見ごたえがあった。
 戦後、憲法25条に生存権が明記され、1950年に新しい生活保護法が制定された。しかし57年に、結核患者だった朝日茂さんが「生活保護費が低すぎる。健康で文化的な生活は維持できない」と人間らしい生活を求めて闘った裁判は、生活保護法が生存権を保障するものではないことを明らかにし東京地裁で勝利。裁判の支援は全国の労働者のたたかいへと広がった。公文昭夫氏(当時総評社会保障部)が語る「全国一律の最低賃金制度と生活保護制度は車の両輪」の意味は深い。
 71年に江口英一氏(経済学者)が東京・中野区の全世帯調査から、生活保護未満収入の世帯が26・2%(この中で生活保護受給は10%未満)だと明らかにした。働いても食べられない「ワーキングプア」という言葉がこの調査から生まれた。それから半世紀、労働者の賃金は上がらず、労働者派遣法の改悪で「生涯派遣」へと働く未来が閉ざされようとしている。私たちに課題を突きつけているといえる。
 朝日健二氏(朝日茂さんの裁判を継承)が語る「あの時代と同じことが起こっている。現在は貧困層の実態は変わらないが、富裕層の富が増えている。格差が広がっている。勝負の時だ」の言葉は重い。ただ、番組で国民のこの分野でのたたかいが紹介されていないことは残念だ。
 今、生活保護費の削減に抗して全国で「生活保護費削減は違法。生存権を守れ」の裁判闘争が起きている。戦争する国へ、社会保障費を削減する安倍政権NO!のたたかいは日本列島を揺るがしている。
 
(前沢淑子 中央社会保障推進協議会事務局次長)
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2015年08月10日,「赤旗」)

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戦後70年企画「テレビが伝える戦争の記憶と記録」/番組上映会と公開セミナー/放送ライブラリー

 約3万本の放送番組を収蔵する施設「放送ライブラリー」(横浜市)では、戦後70年企画「テレビが伝える戦争の記憶と記録」と題した番組上映会と番組制作者による公開セミナーが、以下の日程で開かれます。

【番組上映会】  〔8月11日=戦争への道程とその検証〕
NHK「皇帝の密約 埋もれた満州国″ナ高機密」(87年)北日本放送「赤紙配達人 ある兵事係の証言」(96年)NHK「ドキュメント太平洋戦争(4)責任なき戦争 ビルマ・インパール」(93年)テレビ朝日・日本映像記録センター「あの涙を忘れない!日本が朝鮮を支配した36年間」(95年)テレビ朝日「終りに見た街」(原作脚本・山田太一、82年)
 〔12日=被爆地・広島と長崎〕
広島テレビ「ドキュメンタリー 碑」(69年)中国放送「原爆プレスコード」(80年)NHK「長崎の鐘は鳴り続ける 平和を叫びつづけた男 永井隆」(2000年)長崎放送「ゆるすまじ 山口仙二 その生の記録」(99年)日本テレビ「明日 1945年8月8日・長崎」(脚本・市川森一、88年)
 〔14日=戦争の傷痕
T山口放送「いま松花江に生きる 中国残留婦人」(87年)日本海テレビ「クラウディアからの手紙」(98年)日本テレビ「忘れられた皇軍」(63年)RKB毎日「絵描きと戦争」(81年)TBS「私は貝になりたい」(脚本、構成・橋本忍、主演・フランキー堺、58年)
 〔15日=戦争の傷痕
U信越放送「少年たちは戦場へ送られた」(2010年)青森放送「恨(ハン)の海 裁かれる浮島丸事件・その真実は…」(94年)テレビ西日本「あゝ鶴よ ノモンハン50年目の証言」(89年)NHK「和賀郡和賀町〜1967年・夏」(67年)日本テレビ・テレビマンユニオン「波の盆」(脚本・倉本聰、監督・実相寺昭雄 83年)

【公開セミナー】 〔13日、午後2時〕パネリストは阿武野勝彦(東海テレビ)、村上雅通(元熊本放送)、桜井均(元NHK)の各氏。司会は放送作家・石井彰氏。午前10時から各パネリストの制作番組を上映します。

 入場料無料。セミナーの申し込み、問い合わせは放送ライブラリー
045(222)2828。各番組上映時間はライブラリーのホームページに掲載しています。
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2015年08月03日,「赤旗」)

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被爆者として見つめた戦後70年/作家林京子さん/声あげる若者、民主主義の希望

 長崎での被爆体験を下敷きにした小説で知られる作家の林京子さん。憲法をないがしろにする、戦争法案を今国会で制定しようとする安倍政権・与党の動きに強い懸念を抱いています。
 金子徹記者

 林さんは1945年8月9日、勤労動員されていた長崎市の三菱兵器工場で被爆しました。長崎高等女学校3年生のときでした。
 「5月から動員され、324人の3年生が女の先生3人と働きました。小説を書き始めてから調べてみると、原爆投下後、9月末までに52人の生徒が原爆死していました。3人の先生も亡くなりました」
 当時、原爆の脅威は伏せてあり、工場から爆心地へ向かって逃げていました。
 「爆心地の松山町の方に近づくにつれ、家も樹も無く、全裸の焼けただれた人たちが土の上にゴロゴロ横たわっている。これは何だろう、どうして服を着ていないんだろう、と疑問ばかり。町は動く物のない、みごとな赤土のグラウンドに変わっていました。亡くなった方には申し訳ないけれど、逃げながら、自分が生きていることがうれしかった」
 安倍政権が強行しようとしている戦争法案には―。
 「ここからが戦場でここまでは安全などと、戦場に線がひけるのでしょうか。サッカーではありませんしね。平気で黒を白と発言するような政治家にたいして、本当に不信感をもっています。安倍首相が最初に国民でなく、アメリカに法案の成立を約束した時には愕然(がくぜん)としました。国民を甘くみている」
 大学生を中心に、若者が戦争法案に反対する声をあげ始めたことに励まされています。
 「学生が個人として行動しているのがうれしい。東京だけでなく、札幌など各地で声をあげているのを知り、拍手しました。やっと若者たちの声が出た。戦後70年、民主主義が生きている。若者に根付いている。政治へは絶望感がありますが、あきらめてはいけない。あげるべき声はあげなければ、と思います」
 憲法への、強い思いを抱いています。
 「私は戦後70年を、ひとりの被爆者として、また、ひとりの勤労動員された学徒としてみてきました。国家でも思想でもありません。平和憲法が私の戦後の出発点です。それは、戦争中の動員学徒としての辛酸や敗戦、食うや食わずの戦後をつぶさにみてきた上での思いです。憲法9条は絶対に守るべきです」

広島に原爆が投下された1945年8月。吉岡幸雄さんは、広島県松本工業(商業)学校に通っていました。8月はじめ、クラスの約50人が2組に分かれ、5、6の両日、建物を壊す「建物疎開」に行くことになりました。
 それぞれの組のリーダーには級長だった吉岡さんと副級長がなりました。どちらの組がどちらの日に行くかはジャンケンで決めました。
 勝った吉岡さんの組が5日、副級長の組は、原爆が投下された6日に行きました。作業場所は、爆心地から800bほどの広島県庁。原爆は副級長ら同級生の命を一瞬にして奪いました。
 「自分が殺した」。吉岡さんは戦後、ずっと自分を責め続けました。夏場は、ケロイドを隠すため長袖シャツを着用。季節の変わり目には下痢が襲い、年中、頭痛や体のだるさで苦しみました。何度も、自ら命を断とうとしたことがありました。学校の同窓会にも30年間、顔を出しませんでした。
 労働組合運動に参加するなかであの戦争が侵略戦争だったことを知った吉岡さん。被爆体験の証言や被爆者運動をおこなうようになりました。
 「同級生は歴史の真実を知らぬまま無念のうちに死んだ。戦争を二度と繰り返させず、世界から核兵器をなくしていかなければならない」

 はやし・きょうこ=1930年長崎市生まれ。75年、「祭りの場」で群像新人文学賞と芥川賞を受賞。83年、『上海』で女流文学賞、84年、『三界の家』で川端康成文学賞、90年、『やすらかに今はねむり給え』で谷崎潤一郎賞、2000年、『長い時間をかけた人間の経験』で野間文芸賞
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2015年08月02日,「赤旗」)

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鉄人衣笠のフルスイング/8月6日、背番号は86/市民と歩んだ広島カープの原点

 広島カープは、被爆70年の節目となる8月6日の阪神戦に、同球団の選手・監督がおそろいの背番号でのぞみます。
 本拠地で行われるピースナイター。背中に「HIROSHIMA 86」、胸に「PEACE(平和)」と書かれたユニホームを着用します。帽子には平和の象徴である白いハトが描かれます。
 広島・原爆の日に地元で試合をすること自体、少し複雑な思いがします。私の現役時代(1965〜87年)は、その日は広島ではなく、相手本拠地に遠征していたからです。
 8月6日は広島市民球場が条例施行規則によって「休場日」と定められ、使用できませんでした。それだけでなく、原爆被害にあわれた方々の心情を考えると、その日に野球をしている場合ではなかったのだと思います。
 2011年に地元で開催できるようになるまで、長い歳月が必要でした。しかし、そうしている間に原爆被害の記憶が薄れてきています。
 7月下旬にNHKが発表した原爆に関する世論調査では、広島市民の約3分の2が原爆の問題をふだん「話し合わない」といいます。20代と30代では約4分の3です。最近は教科書で戦争や被爆の記述が少なくなり、体験を聞く機会も減っているのではないでしょうか。

野球できる喜び
 18歳で広島に入団した私は、地元の人たちから原爆被害について教えられたものです。街や食堂などで知りあった方、見知らぬ人が「あのとき、川に人があふれた」「1枚のコンクリート壁が私を救ってくれた」と話してくれました。当時はまだ被爆者の方が健在で、さまざまな話が聞けました。
 以来、40歳までの23年間を広島で過ごした私にとって、原爆が投下された8月6日午前8時15分の黙とうは特別なものです。
 ピースナイターの開催にあたって、エースの前田健太投手(27)は「カープは地域のみなさんとともに歩んできた球団。その日に野球ができる喜びを感じながら、忘れてはならない思いを全国に伝えていきたい」と語りました。球団の成り立ちを理解した言葉です。
 カープは一貫して、市民の希望の灯≠ニして存在し続けました。「選手たちががんばっているから、おれたちもがんばる」―。多くの市民を励ましてきた歴史があります。
 親会社を持たない球団として1950年に創設。直後に深刻な資金難に陥りました。市民は被爆からの復興のシンボルであるチームのためにすぐさま募金を始めました。存続に道を開いた「樽(たる)募金」として、いまも語り継がれています。
 昨夏、広島市北部を襲った土砂災害でも、球団と選手会が合同で市と被災者に1000万円ずつの寄付金と義援金を渡し、市民球団の真価を発揮しました。
 節目の年のピースナイターでは、選手に二つの期待をしたい。
 一つは希望の灯≠ニしての自覚と誇りを胸に刻んだプレーです。ファンや市民に希望をもたらすものは、勝ちだけに限りません。スポーツマンシップもそうです。正直でクリーンに、明るく。それこそ、市民が誇れる球団の大事な要素です。
 もう一つは、野球ができる喜びを感じながらのプレーです。
 私もふくめて戦後生まれの選手たちは、好きな野球に好きなだけ打ち込むことができました。しかし、戦中は野球がしたかったのに戦地に駆り出され、無念の死をとげた先輩たちも少なくありません。
 平和の尊さと市民球団の誇りをかみしめることで、一球一打に心がこもるようになります。焼け野原から立ち直った市民とともに歩んだ球団の原点が、そこにあるような気がします。
 (衣笠祥雄 野球評論家)
(
2015年08月02日,「赤旗」)

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暮らし目線のチカラ/山秋真/1/珠洲の人びと

 ある朝テレビをつけると、馴染みある風景が目に飛びこんだ。もしや珠洲の塩田?
 今期のNHK連続テレビ小説は能登が舞台。主人公の家族は塩づくり職人と暮らす設定だ。日本で唯一、能登半島の突端・珠洲で受け継がれる揚げ浜式の塩田でロケも当然か。
 珠洲と出合った1992年、塩田は一軒きり。私の友人の同級生の家だった。その縁で知った直伝の味わい方は「珈琲にひとつまみ」。揚げ浜の塩は奥が深いと感じた。
 塩田の前を何度も車で走った。友人が進学のため市外で寮生活を始める春、免許をとって日の浅い私が輪島まで下手な運転をした。彼女の入寮準備のためだった。
 「選挙も大事やけど、うちらの買い物も大事と思わん?」―彼女の言葉を忘れない。
 当時、珠洲は原発計画で揺れていた。彼女の家は、原発をつくる際、全戸移転の地区にあった。「能登はやさしや土までも」の土地で市民が二分され、選挙は常に激戦。93年市長選挙は特に熾烈を極めた。その渦中に彼女は高校を卒業し進学したのだ。
 入学式には私が出席した。彼女とふたり、石川県を縦断して民宿で前泊。わずか4歳年上の私に保護者役は無理もある。だが彼女の父親は昼夜を問わず選挙に奔走。母親も選挙で駆け回り、弟たちの世話や義母の看護にも追われていた。
 この選挙は、原発を進めたい現職候補が逃げ切った。だが票数が合わず、2千人を超える珠洲の有権者が裁判を起こし、無効となった。それから7年の膠着を経て計画は凍結した。その歳月は彼女に何をのこしただろう?
 「一票の重みを感じながら育った。自分の父親がおらんかったら原発は建っていたかも、と思うほど熱意を燃やしとったから。私も選挙は、子ども連れて、マジメに行っとる」
 今も暮らし目線で淡々と話す彼女に、後ろ姿で伝えた珠洲の人びとの底力を感じた。
 (ノンフィクションライター)
 (金曜掲載)
(
2015年08月07日,「赤旗」)

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暮らし目線のチカラ/山秋真/2/原発の金はいらん

 この夏、カヤックを初めて漕いだ。間近に見た透明な海に、無数の魚や海草が泳ぐ。ここ山口県上関町の祝島周辺を、なるほど「奇跡の海」と呼ぶわけだ。
 カヤックに乗るのは初めてじゃない。2011年、田ノ浦でも乗った。当時、祝島の人びとは、毎日交代で対岸の田ノ浦へ通っていた。船で凪なら直線距離約4`。浜の少し沖でとめ、浜まで2人乗りカヤックやいかだを使う。これに乗せてもらったのだ。
 田ノ浦の海は09年から埋め立ての危機にあった。上関原発の予定地だからだ。非暴力直接行動で「原発はいらない」と訴えることが続いていた。中心は、住民の9割ほどが約30年も計画に抗う祝島の人々。田ノ浦へ向かう作業台船を見つけると、まず早船が、続いて他の船も駆けつけてお帰り願う。私は早船に乗せてもらい密着取材した。早船の船長は仕事する間もない忙しさ。
 「今や私が大黒柱よ。我ながら、よう仕事を持っとったことや」―ある船長の妻が呟いた。彼女の仕事は美容師と味噌づくり。老親の介護も担う。それに海上へ向かう夫の弁当作りが加わった。自身が田ノ浦へ行くときは、支援者への差し入れも夜なべで用意。ムードメーカーの彼女は、泣き言や愚痴は言わない。だが、首と肩は岩のように硬く張っていた。
 彼女たちに臨戦態勢を強いた埋め立て工事は、東電の福島第1原発事故を受け一時中断。安堵はしたが、事故による犠牲を思うと素直に喜べない。
 あれから4年。埋め立て工事は今も「中止」にならず、埋め立て免許は有効期限を3年近くすぎても宙ぶらり。
 2年近く続いた原発ゼロの状況が終わった今日、彼女たちの言葉を反芻する。原発のため海を売れと金を積んで迫られながら、こう言って拒んでいた。「海と山があれば、なんぼでも生きていける。原発の金はいらん」。金があっても海山なしに人は生きられない―海と生きる暮らしで得た自信と確信だ。
 (ノンフィクションライター)
 (金曜掲載)
(
2015年08月14日,「赤旗」)

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おはようニュース問答/「戦後70年」力のこもった番組放送したね

 陽子 戦後70年の夏、各局ともに力のこもった番組を放送したね。
 みどり 綾瀬はるかさんの朗読は、涙が止まらなかったわ。
 陽子 ドキュメンタリーの「いしぶみ」(日本系、8月1日放送)ね。原爆で全滅した広島二中一年生の遺族の手記を読んだ。わが子の最期をつづった親の悲しみは、胸に迫って離れないわ。
 みどり NHKスペシャル「きのこ雲の下で何が起きていたのか」(6日)でも、8月6日の犠牲者で最も多かったのが、12、13歳の子どもたちだったことを明らかにしていた。

元看護婦の証言
 陽子 「女たちの太平洋戦争」(NHK、13日)は、東南アジアへ送られた元従軍看護婦たちの証言をリポートした。
 みどり 「戦争とは」と問われて、「無益なこと」「止めることができていれば」と悔いている姿が印象的だったね。
 陽子 被爆者の平均年齢が80歳を超えたなか、戦争体験者がカメラの前で証言できるギリギリの年。80年はない≠ニいう制作者の必死さが伝わってきたわ。
 みどり ドラマでは、被爆3日後に広島市電を再開させた物語「一番電車が走った」(NHK、10日)が感動的。
 陽子 中国大陸に送られた従軍看護婦を描いた「レッドクロス 女たちの赤紙」(TBS系、1日)もよかった。

知らない世代に
 みどり 私たち戦争を知らない世代に見てもらう工夫も見逃せないよ。
 陽子 どんなこと?
 みどり 「いしぶみ」は、46年前に杉村春子さんの朗読でつくられた名作「碑」を、映画監督の是枝裕和さんが今日的な視点でリメークしたの。松坂桃李さんら若手俳優が、戦争体験者を訪ねる「私たちに戦争を教えてください」(フジ系、15日)も説得力があった。
 陽子 こうした作品を見ると、戦争がいかに民間人を巻き込むか、戦地では「兵たん」が真っ先に狙われたかがわかる。
 みどり 歴史から学べば、いまの戦争法案はとんでもないわ。多くの人に見てもらえたら…。
 陽子 NHKや民放などでつくる「放送ライブラリー」(横浜市)では、過去の戦争関連番組を600本以上保存し、無料で公開しているよ。ぜひ、利用してほしいね。
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2015年08月26日,「赤旗」)

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論戦ハイライト/歴史認識/山下氏が気迫の追及/安倍首相、核心一切語らず/参院予算委

 24日の参院予算委員会で日本共産党の山下芳生書記局長は、安倍内閣が閣議決定した戦後70年談話(8月14日)をめぐって、安倍晋三首相自身の歴史認識を厳しく追及しました。安倍首相は「歴代内閣の立場は揺るがない」といいながら、「わが国」が「国策を誤り」「植民地支配と侵略」を行ったという村山富市首相談話(1995年)の核心をなす文言はもちろん自らの認識をかたくなに口にしようとしませんでした。

植民地支配、歴代内閣はきちんと認識/山下・日本の植民地支配認めないのか/首相・21世紀懇談会報告書に記載
 山下氏は、安倍談話の問題点として「『侵略』と『植民地支配』を行ったのは誰なのか、主語がない」と指摘。「『植民地支配』というなら、どの国が、どの国を支配したのかが肝心要だ」として、次のようにただしました。
 山下 首相は、日本が植民地支配を行ったと認識しているのか。
 安倍首相 (首相の諮問機関である)21世紀構想懇談会の報告書では、日本がかつて台湾や韓国を植民地化したこと、戦争への道をすすむなか1930年代後半以降、植民地支配が過酷化していったことが記載されている。
 安倍首相は、自身の認識をいくらただされても、自らの言葉で「植民地支配」について語ることを拒絶しました。山下氏は、村山談話以降、歴代の自民党首相が日本の「植民地支配」に言及していることを指摘(別項)。「首相自身に(日本が『植民地支配』をしたという)認識はないのか」と重ねてただしました。
 しかし、安倍首相は「歴代内閣の立場は揺るぎないものと明確にしている」などと繰り返すだけ。野党議員からは「逃げるな」「首相の認識はどうなんだ」などの声があがり、審議がたびたび中断しました。
 山下氏は「『引き継ぐ』といいながら、日本が朝鮮半島を植民地支配したという核心部分については一切語らない。一番大事な点は引き継いでいないことがはっきりした」と批判しました。

日露戦争は朝鮮半島植民地化のポイント/山下・朝鮮半島の人々に何をもたらしたか/首相・史実にある通り。一つ一つの議論さしひかえる
 さらに、山下氏は、朝鮮半島の植民地化の経緯について安倍首相の認識を追及。朝鮮半島の植民地化を進めるうえで日露戦争が重要なポイントであったことを強調しました。
 日露戦争が開始された1904年、日本は韓国・朝鮮の首都を軍事占領し、日露戦争への協力を約束させます。翌05年には、日露戦争の「勝利」をテコに「第二次日韓協約(韓国保護条約)」を押し付けて外交権を完全に取り上げました。10年には、韓国・朝鮮人民の抵抗を抑圧し、「韓国併合条約」によって植民地化を完成させます。
 山下氏は、日本が朝鮮の王妃・閔妃(みんぴ)を殺害(1895年)したり、韓国統監・伊藤博文が憲兵を引き連れて宮廷に押し入り、強引に「保護条約」を調印させた傍若無人なやり方を紹介しました。
 山下 日露戦争が朝鮮半島の人々に何をもたらしたのか。
 首相 史実にあるとおり。一つ一つの歴史的な事実について議論することは差し控える。
 首相は、自らの言葉で「植民地支配」の経緯も、その中身も語ろうとしません。山下氏は「植民地支配によって、国を奪い、言語を奪い、名前すら奪ったことを日本国民は忘れてはならない。それを両国の共通の歴史認識とすることが、未来にとって重要だ」と強調。「『歴代内閣の立場は揺るぎない』としながら、『植民地支配』を語らない。これは欺瞞だ」と批判しました。

中国・アジア太平洋地域へ侵略戦争拡大/山下・中国等への戦争は「侵略」か/首相・歴史家の議論にゆだねる
 日本は朝鮮半島を植民地支配したことを足場に、中国、アジア太平洋地域に侵略を拡大していきました。
 山下 拡大した戦争は「侵略」だったのか。
 首相 どのような行為が侵略にあたるか否かについては歴史家の議論にゆだねるべきだ。
 小渕首相と江沢民中国国家主席(いずれも当時)が発表した「日中共同宣言」(1998年)でも、「双方は、過去を直視し歴史を正しく認識することが、日中関係を発展させる重要な基礎であると考える」と述べたうえで、日本側は村山談話を「遵守」するとし、「中国への侵略によって多大な災難と損害を与えた責任を痛感し、これに対し深い反省」を表明しています。
 ところが首相は、この認識も認めようとせず、「歴代内閣の立場は今後も揺るぎない」と口ではいいながら、具体的な戦争についての認識を問われると「歴史家の議論」で逃げる欺瞞的な態度が浮き彫りになりました。山下氏は「『安倍談話』は、『村山談話』以降の歴代内閣が表明した立場を事実上投げ捨てるものに等しい」と糾弾しました。
 侵略戦争を行った日本は、「ポツダム宣言」を受け入れ、終戦を迎えます。その「ポツダム宣言」に何とあるか。日本の戦争を「世界征服」のための戦争、すなわち侵略戦争だったと明確に述べています。
 山下 この規定を認めないのか。
 首相 日本はポツダム宣言を受け入れて、敗戦した。
 答弁をはぐらかし、最後まで「侵略」を認めない首相。山下氏は「日本はアジアでも世界でも孤児になる。70年前の教訓、痛苦の反省を踏みにじる戦争法案の撤回を強く求める」と厳しく指摘しました。

■歴代内閣の表明

 村山富市首相
 「わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。私は、未来に誤ち無からしめんとするが故に、疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのお詫(わ)びの気持ちを表明いたします。また、この歴史がもたらした内外すべての犠牲者に深い哀悼の念を捧(ささ)げます」(1995年8月15日、「戦後50年談話」)
 橋本龍太郎首相
 「韓国併合につきましては、昨年11月、村山前総理が金泳三韓国大統領にあてた書簡におきまして、韓国併合条約における植民地支配のもとにおいて朝鮮半島地域の方々に耐えがたい悲しみと苦しみを与えたことにつきまして、深い反省と心からのお詫びの気持ちを抱いていることを表明されたと記憶いたしております。私としても同様であります」(96年2月16日、参院予算委員会)
 小渕恵三首相
 「(小渕首相は)わが国が過去の一時期、韓国国民に対し植民地支配により多大の損害と苦痛を与えたという歴史的事実を謙虚に受け止め、これに対し、痛切な反省と心からのお詫びを述べた」(98年10月8日、「日韓共同宣言」)
 小渕首相
 「双方は、過去を直視し歴史を正しく認識することが、日中関係を発展させる重要な基礎であると考える。日本側は、1995年8月15日の内閣総理大臣談話を遵守し、過去の一時期の中国への侵略によって中国国民に多大な災難と損害を与えた責任を痛感し、これに対し深い反省を表明した」(98年11月26日、「日中共同宣言」)
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2015年08月25日,
「赤旗」)

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主張/安倍首相歴史認識/侵略認めない「反省」は欺瞞

 戦後70年にあたっての「談話」で「侵略」「反省」などの言葉をちりばめるだけで日本が「侵略や植民地支配」を行ったという歴史認識は示さず、「反省」や「おわび」も自らの言葉で語ろうとしなかった安倍晋三首相が、参院予算委員会での日本共産党の山下芳生書記局長の質問でも首相談話や有識者懇談会の文言を繰り返すだけで、自分の言葉では答えようとしない無責任な答弁を繰り返しました。いくら口先で「侵略」や「反省」とはいっても、自らの言葉でそれを認めないのでは欺瞞です。「侵略」の事実を認めないで「反省」や「おわび」は成り立ちません。

自らの言葉で語らない
 山下氏は質問で、戦後70年にあたって安倍首相の「談話」が、「侵略」や「植民地支配」「反省」「おわび」などの文言はちりばめられているが、「侵略」と「植民地支配」はだれが行ったのか主語がない、戦後50年にあたっての村山富市首相の談話で示された日本が「国策を誤り」「植民地支配と侵略」を行ったという歴史認識は見られないことを批判しました。また「反省」や「おわび」も歴代政権が表明したという事実だけで、安倍首相自らの言葉では語られていないことを指摘し、首相自身の認識を聞きたいと迫りました。
 驚いたのは安倍首相の答弁です。首相は質問に答えようとはせず、談話のもとになった有識者懇談会の報告書を長々と引用し、さまざまな立場の人が参加した懇談会の報告書は「歴史の声」だから、それにもとづいて「談話」を作成したと、こんどは「談話」の引用を繰り返すばかりです。山下氏が首相自身の言葉で答えるように再三迫っても報告書と「談話」の文言を繰り返すばかりです。答弁に血の通った言葉はありません。まさに無責任のきわみです。
 有識者懇談会の報告は「日本は、満州事変以後、大陸への侵略を拡大し」と明記しています。ところが安倍首相の「談話」は、「事変、侵略、戦争」と羅列するだけで、侵略に具体的ではありません。山下氏が、懇談会の報告にもとづくというが、なぜ報告書の中身さえ書いていないのかと追及しても、首相からの答弁はありません。
 「村山談話」だけでなく、それ以降の橋本龍太郎首相や小渕恵三首相も、朝鮮半島への植民地支配や中国への侵略拡大を認めてきました。そうした事実を、安倍首相はなぜ「談話」に書かないのか。山下氏の繰り返しての追及にも、安倍首相は懇談会の報告書や「談話」の抽象的な文言を引用するだけで、具体的に答弁しません。「安倍談話」の立場が、「村山談話」をはじめ歴代首相が繰り返し表明してきた立場を完全に投げ捨ててしまっていることは明らかです。

歴史の誤り繰り返さぬ
 戦前、朝鮮半島の植民地化を「併合」、中国東北部への侵略拡大を「事変」などとごまかした日本の天皇制政府と軍部は、ついに世界を相手にしたアジア・太平洋戦争に突入し、2000万人を超すアジアの人びとと310万人以上の国民を犠牲にしました。歴史の真実を認めない態度は歴史の誤りを繰り返すことにしかなりません。
 「安倍談話」の欺瞞をきびしく批判し、過去の戦争を「侵略」と認めない誤りを徹底的に追及することは、日本を再び「戦争する国」にしないためにも重要です。
(
2015年08月25日,
「赤旗」)

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NHKを市民包囲=^アベチャンネル≠ノするな

 戦争法案への怒りはNHKにも―政府べったり報道をやめよと25日、東京・渋谷区のNHK放送センターを包囲する抗議行動が行われ、集まった約千人(午後7時時点)が声を響かせました。NHKに関心のある個人・団体がつくった実行委員会の主催です。
 参加者は3カ所の出入り口を中心に「アベチャンネル≠ノするな」などと書いたプラカードを掲げてアピール。合わせて「政府広報はやめろ」「戦争法案に加担するな」とコールしました。
 主催者の一人、醍醐聰元東大教授(NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ共同代表)は「番組を見て意見を言うのが基本ですが、NHKの対応はあまりにしゃくし定規。目に見える行動を、と企画したら大変な反響でした」と話しました。街頭での抗議行動に初めて参加したという会社員の女性(33)は「NHKは戦争法案反対の運動などをあまり放送していない」と批判しました。
 この日は広島、大阪、京都でも抗議行動がありました。事前に奈良(19日)、岐阜(22日)で申し入れやビラ配布が行われています。また行動に先立ち、視聴者団体が籾井会長らの罷免要求署名をNHKに届けました。累計約7万7千人分に上っています。
(
2015年08月26日,
「赤旗」)

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戦争法案審議どう伝えた/NHKは「政府寄り」/放送を語る会が中間報告

報ステ・ニュース23「市民のデモ報じる」
 安倍政権が戦争法案の成立に執念を燃やす中、放送関係者と市民でつくる「放送を語る会」は、テレビが戦争法案の国会審議をどう伝えたかをモニターし、このほど中間報告を発表しました。
 モニター期間は戦争法案閣議決定前の5月11日から6月24日まで。対象番組はNHK「ニュース7」「ニュースウオッチ9」、日本テレビ「NEWS ZERO」、テレビ朝日「報道ステーション」、TBS「ニュース23」、フジテレビ「みんなのニュース」。
 検証の視点は@戦争法案の掘り下げと検証を批判的に行ったかA法案に反対する声や運動をきちんと伝えたかB独自の調査報道があったか―。
 5月14日の法案閣議決定については、「ニュースウオッチ9」は政府案に沿って解説しただけで国民が抱く不安に応えていなかったと指摘。「ニュース23」では岸井成格アンカーが、法案は事実上の憲法改正であると本質を指摘していたと注目しています。
 5月20日の党首討論は、「ニュースウオッチ9」が安倍首相の答弁と各党党首の質問の時間配分が政府寄りだったと指摘。またポツダム宣言についての日本共産党・志位委員長の質問に対し、安倍首相が「つまびらかに読んでいない」と答えた重大な問題を放送しなかったと批判。これに対し「報道ステーション」は逃さず報じたと紹介しています。
 また6月4日の国会の憲法審査会で、3人の憲法学者全員が戦争法案は違憲だと断じたことに対し、「ニュースウオッチ9」は自民党の内部事情や政局報道にとどまっていたと指摘。一方「報道ステーション」と「ニュース23」は立憲主義が尊重されていないと伝えており、「キャスターらがジャーナリストの役割を果たした」と評価しました。
 また、学生グループSEALDs(シールズ)など高まる市民の反対運動については、「NEWS ZERO」「みんなのニュース」はほとんど報じなかったと指摘。NHKの2番組も国会審議の添え物としか思えない軽い扱いをしているが、「報道ステーション」と「ニュース23」は首相官邸前のデモや各地の集会を報じていたとしています。
 報告は以上のことをふまえ、特にNHKの戦争法案報道について「公共放送としてのありようが問われている」と結んでいます。
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2015年08月26日,
「赤旗」)

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テレビ時評/NHKを包む市民の怒り/元NHKディレクター戸崎賢二

 本日8月25日18時半から、東京のNHK放送センターを包囲する市民の大規模な行動が予定されている。大阪、京都、広島でも呼応するアクションがあるという。NHKに対して、一般市民がデモで抗議するなど前代未聞のことだ。
 呼びかけのチラシには「政権べったりの報道をやめろ、怒りの声でNHKを包囲しよう!」の文字がある。この訴えは、集会でもネットでも広く共感を呼び、次々に拡散されて行った。おそらく今夜の行動は空前の規模になるだろう。

批判の根拠は
 市民の怒りには根拠と道理がある。
 NHKの安保法案報道の際立った特徴は2点に集約される。
 第一は、政権にとってマイナスになるような審議内容、反対の言論、行動などは極力伝えない傾向である。
 審議の初期では、ポツダム宣言を読んでいない、とする安倍首相答弁(5月20日)、日本に対して攻撃の意思がない国に対しても武力行使の可能性を排除しない、という中谷防衛大臣の答弁(6月1日)、などが当日の「ニュースウオッチ9」では報じられなかった。
 最近では、「後方支援」で核兵器の輸送も法理上あり得る、という防衛大臣答弁(8月5日)、法案成立を前提にした防衛省内部文書について防衛大臣の答弁が発覚時と違うこと、共産党小池副委員長の継続する追及(8月19日)、などが伝えられなかった。
 このほか、安保法案に対する全国の大規模な反対行動、若者たちの反対行動も無視されるケースが多かった。法案を批判する識者、論者のコメントも皆無に近い。
 NHK政治報道の特徴の第二は、政権の主張を効果的に伝達する姿勢である。
 たとえば、国会審議の報道では、一回の質問―安倍首相答弁、という強固な編集パターンが見られ、常に安倍首相の言葉で終わっている。その答弁の矛盾を突く討論の継続はカットされることが多い。
 その結果、NHKニュースでは、「国民の命と安全を守る法整備」とか「必要最小限の武力行使で憲法に違反していない」といった首相のメッセージが、繰り返し印象的に伝えられることになった。

政府の代弁か
 「ニュースウオッチ9」は、野党の追及もとりあげ、反対デモの映像も適度に組み込んでいるので、一見バランスが取れているかに見える。しかし、長期に検証してみると、NHKの政治報道には、政府の主張の伝達が使命だとする内々の意思があるかのようだ。
 NHKの番組には優れたものがあって、なお視聴者の信頼は高いが、その信頼に乗じて、偏向した政治報道が続いているのである。
 おそらくNHK内の主犯格は報道局政治部と、その出身者が枢要な地位を占める幹部たち、そしてなお居座り続ける会長といったところだろう。
 安保法案に反対する市民がこのことに気づき、鋭く批判し始めたのは当然のことだった。
 市民の行動は、こうしたNHK内の一部勢力から、政府から独立した公共放送、という本来のNHKを取り戻す闘いでもある。
 (とざき けんじ)
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2015年08月25日,
「赤旗」)

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潮流

 高校生が見た夢の話から。日本兵として戦場にいる自分が腹を撃たれ、そこで目が覚めました。テレビで戦争特集番組が続き、平和について考えていた中でのことだといいます▼NHKや民放の番組は、女性や子どもが深い傷を負った事実に迫りました。広島の原爆犠牲者で、いちばん多かったのは中学生だったこと、戦死した従軍看護婦の人数は今もわからず。法令を変更し14歳以上が徴兵され、少年ゲリラに仕立てられました▼戦争法案の国会論戦の真っただ中です。テレビが伝えた戦争の歴史を見ると、安倍首相の「徴兵制はとらない」「後方支援だから安全」の答弁には何ら裏付けはありません▼NHKの番組には優れたものがあっても、ニュースは安倍政権寄りだと視聴者の批判は高まるばかり。この機に市民団体の「放送を語る会」が、戦争法案をめぐるテレビニュースのモニター報告を発表しました▼これまで集団的自衛権などでもテレビ報道を検証。今回は、NHKのニュースは「安倍首相発言のコピー」となり、多様な批判的言論を伝えていないと実証的に指摘しました。「戦後未曽有の平和の危機」にジャーナリズムの役割を発揮する覚悟を求めての中間報告です▼明日25日、市民が「怒りの声でNHKを包囲しよう!」と一大行動に出ます。東京・渋谷のNHK放送センターの門前に集合です。大阪や京都では、呼応する取り組みがあります。みなさまのNHK≠ヨ要望します。7時のニュースで堂々と生中継してはいかが。
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2015年08月24日,
「赤旗」)

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NHK日曜討論/小池副委員長の発言

 日本共産党の小池晃副委員長・政策委員長は30日のNHK「日曜討論」で、経済政策や戦争法案をめぐって与野党の政策責任者と議論しました。

投機マネーが株価乱高下招いた/実体経済を立て直す政策を
 冒頭、先週に起きた株価の乱高下をはじめ経済政策について議論となり、自民党の小野寺五典政調会長代理は「決して日本経済が厳しくなっている状況ではない」と発言。「農協」改革などをあげて「(アベノミクスの)『第三の矢』である規制改革を進めるのが大事だ」と述べました。公明党の石井啓一政調会長は「わが国のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)は堅調だ」と話しました。
 小池氏は次のように発言しました。
 小池 金融緩和で膨れあがった投機マネーが(株価の)乱高下をおこしているわけですから、私は危険な状態だと思います。「ファンダメンタルズは良い」って、安倍首相も、先ほど与党からもありましたが、そんな楽観が許されるのかと。
 それから、やはり官製相場なんです。日本の株式市場に巨額の日銀マネーをそそぎこみ、年金資金を使いこんで株価をつりあげてきた。これに失敗したら、そのつけを国民にまわすなんてことは絶対に許されないことです。
 首相官邸の執務室に株価ボードを置いているそうですけど、株価ありき、株価第一という経済政策でいいのだろうか。やはり基礎的な国民の暮らし、所得を増やして消費をしっかり温めるということをやらずに株価だけでやってきているから、こういう不安定なことになるわけです。
 こういう危険な事態を抜け出すためにも、暮らしと経済、実体経済を立て直す経済政策への転換が必要だということを警告していると思います。

個人消費冷え込みでGDP低下/アベノミクスの失敗は鮮明
 4月から6月の国内総生産(GDP)が個人消費の落ち込みなどによってマイナスとなったことが議論になり、小野寺氏は「この時期は非常に天候が悪かったとか、消費者の買い控えのタイミングがあった」と発言しました。
 小池氏は反論しました。
 小池 アベノミクスは失敗だということがはっきりしたと思います。
 GDPを見ると、総理は、消費税増税による「ワンショットの影響」が1年続くからと言ってたけれど、1年すぎた今年の4月から6月も(GDPが)マイナスになっているわけです。これを天気のせいにしてはいけない。やはり個人消費が冷えこんでいるわけです。
 その理由は何かと言えば、賃金が物価上昇に見合わずに実質賃金が低下するだけじゃなくて、6月は名目(賃金)も下がったからです。これはやはり深刻な事態だと思う。それから求人票がいくら積み上がっても、劣悪な求人、賃金が低い非正規雇用が多い。結局、就職者だって増えないわけです。
 今の経済の状況は、大企業が史上空前の利益をあげながら賃金が減り続けるという事態になっているわけで、ここをたださないといけないわけです。アベノミクスで「この道しかない」と言ったけど、この道には先がないということがはっきりしたと思います。
 先ほど、小野寺さんは、だから「第三の矢」だとおっしゃるんだけど、それでやろうとしていることは、例えば労働者派遣法の改悪で、こんなことやれば、ますます非正規雇用が増えるわけです。TPP(環太平洋連携協定)は農業を破壊するわけです。消費税を10%にする―こんなことやれば日本経済は壊滅です。私は「この道」を転換しないといけないと思います。

立法の根拠が総崩れ/戦争法案は廃案にするしかない
 次に戦争法案をめぐって議論となり、司会の島田敏男解説委員は初めに小池氏に、国会の議論の状況について意見を求めました。
 小池 参院の議論で、法案が本当にボロボロになってきていると思います。
 まず「存立危機事態」の根拠です。総理は、日本人を運ぶ米艦船への攻撃を理由にしてきたんですが、中谷(防衛)大臣は日本人は乗っていなくてもいいと言いだしました。
 衆院では「ホルムズ海峡の機雷除去」を繰り返していたんですが、イラン情勢が改善し、参院ではもう口にしなくなってきている。立法の根拠=立法事実が崩壊した。総崩れになってきている。
 それから後方支援になんの限定もないということがはっきりしてきました。なんでも運べるわけです。武器も弾薬も運べる、弾薬の提供もできる、ミサイルだって運べるし、核兵器だって法律上排除していない。結局、他国の武力行使と一体化するということがはっきりしてきました。
 それから、私は自衛隊統幕の内部文書を示しましたが、ここでは自衛隊が米軍の指揮下で暴走していることがはっきりしてきました。米軍と自衛隊の「同盟調整メカニズム」に「軍軍間の調整所」を設けるとか、一回も政府が説明してきたことのないようなものがいっぱい入っているわけです。野党の追及で、この間、77回審議がとまっています。
 これはもう、廃案にするしかないという段階にきたと言わざるを得ません。
 これに対し小野寺氏は「小池さんの話は『日本人を守る』という議論がほとんど抜けている」と反発。小池氏は次のように指摘しました。
 小池 だから、その説明が全然でたらめだと言っているんです。最初は「日本人を守る」と言っていたのが、日本人が乗っていなくても『存立危機事態』になると言いだしている。きわめて無責任な議論だと思います。
 私が示した統幕の文書だって、例えば米艦船に日本人が乗っているようなシチュエーションはいっさい書かれていない。書かれているのは、たとえば南スーダンの自衛隊PKO(平和維持活動)で、この法案が成立したら、来年の2月、3月から「駆けつけ警護」をやるとか、実際、日本を守ることと全く関係のない中身ばかりが説明されているわけです。
 結局、「日本を守る」を口実にしながら、アメリカと一体になって中東やアフリカに出て行き、肩をならべて戦争をする、それが今度の法案です。新ガイドライン(日米防衛協力の指針)で決めたことはそういうことでしょう。それを具体化するのがこの法案だと、はっきり書いているわけですよ。
 政府は誠実な説明をしていない。だから国民はこれだけ不信感を募らせているのではないでしょうか。

「60日ルール」は立憲主義の否定/修正は与党の強行に免罪符
 野党の修正案の扱いや、法案が参院に送付されてから60日以内に議決されない場合に、衆院の再議決により成立させる「60日ルール」など、今後の国会審議についても議論に。島田氏は「参院の出口に向けての着地の姿。どのような展開を見すえますか」と小池氏に問いました。
 小池 私は「着地」はさせない立場です。
 これは憲法違反なんで、圧倒的多数の憲法学者、歴代内閣法制局長官がみんな憲法違反だと言い、世論調査でも(多数が)そう言っている。修正したって憲法違反は憲法違反です。
 私は、修正は与党の強行に免罪符を与えるだけになってしまう危険があると思うんです。
 「60日ルール」という話がでてくること自体が大問題で、これ結局、参院は否決をしたという扱いになるんです。これだけの重大問題、従来の憲法解釈を根本転換するものを一院だけで決めるということです。こんなことが許されるわけがないじゃないですか。
 こんなことやれば、私は、立憲主義、法の支配を否定する独裁政治になると思います。
 国会の中では与党が多数かもしれないけど、民主主義の力で止めなければならない段階にきたと思います。今日、国会前で大集会も呼びかけられています。ぜひ、テレビをごらんのみなさんに、この集会に来ていただき、国民主権なんだから「この声を与党は聞け」「政府は聞け」という国民の声をご一緒にあげていただいて、この希代の悪法を廃案に追い込むために私たちは頑張りたいと思います。
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2015年08月31日,

【GoToTop】

戦争法案/立法事実もボロボロ、国民の力で廃案に/NHK「日曜討論」で小池氏

 日本共産党の小池晃副委員長・政策委員長は30日のNHK「日曜討論」で、戦争法案について「参院の審議でボロボロになってきている」と述べ、法案阻止を掲げてこの日「国会10万人・全国100万人大行動」が行われることも紹介して「国民の力で廃案にする」と語りました。
 小池氏は、安倍首相が昨年の「閣議決定」の際、集団的自衛権行使の例として挙げた「避難する邦人を輸送する米艦の防護」について中谷元・防衛相が「邦人が米艦船に乗っているかどうかは絶対的な条件ではない」と答弁するなど、立法の根拠=立法事実が総崩れになっていることを指摘しました。さらに、核兵器の運搬も可能になるなど自衛隊の「後方支援」に何の限定もないことや、小池氏が暴露した自衛隊内部文書で「米軍指揮下の自衛隊の暴走」が明らかになったことなどを挙げて、「廃案にするしかない」と語りました。
 自民党の小野寺五典政調会長代理は「日本人を守るという議論が抜けている」と反論しました。小池氏は「その説明が全然でたらめだと言っている。最初は(米艦船に乗っている)日本人を守ると言っていたのが、日本人が乗っていなくても『存立危機事態』になると言い出している。無責任な議論だ」と批判しました。
 さらに、自衛隊内部文書でも、日本人が乗っている米艦船の防護のような事例は一切書かれておらず、南スーダンの自衛隊PKO(平和維持活動)の拡大などばかりが説明されていることを指摘。「結局、『日本を守る』を口実にしながら、アメリカと一体となって中東やアフリカに出て行き、肩を並べて戦争をする、それが今度の法案だ」と強調しました。
 小野寺氏は「法律自体を考えれば、確かに(小池氏の指摘する)そういう議論がないわけではないが、『存立危機事態』は日本人と日本を守るために必要だということが前提になっている」と弁明し、公明党の石井啓一政調会長も「何でも運べると言うが、事実上想定されていないと総理も答弁している」と強弁しました。小池氏は「法律に何が書いてあるかが一番大事なことだ。法律には何も書かれていない」と批判しました。(発言詳報4・5面)
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2015年08月31日,

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安倍首相の政治団体・政党支部/年108回624万円飲み食い/税金・献金原資に

 「戦争法案」、原発再稼働など、暴走を続ける安倍晋三首相(衆院山口4区)。夜には、財界人やマスコミ関係者らとの会食が目立ちますが、今夏3回目のお国入り≠した12日には、後援会などの会合に出たあと、下関市内の鶏料理専門店で県議ら後援者と食事しました。安倍首相の政治団体の「飲み食い」を調べてみると―。

 首相が支部長を務める「自民党山口県第4選挙区支部」の2013年の政治資金収支報告書によると、組織活動費の「交際費」などの名目で、地元下関市や北九州市などの料亭やレストラン、くじら料理店などへの支出が計56回、155万503円にのぼります。
 今回、利用した鶏料理専門店には、13年4月20日に14万円、同8月13日に2万2850円の支出が記載されています。
 一方、首相の資金管理団体「晋和会」の同年の政治資金収支報告書によると、組織活動費の「行事費(本会 会合費)」として、東京・赤坂のすし店や、同・六本木の焼肉店、同・永田町の料亭などに、計52回、469万2053円の支出があります。
 選挙区支部と晋和会あわせて1年間に108回、約624万円。3・4日に1回の飲み食いです。
 どういうお金で飲み食いをしているのか―。
 選挙区支部は、ニトリホールディングス300万円、商品先物取引の豊商事50万円など、3756万円の企業・団体献金を集めたほか、自民党本部からの寄付1200万円(政党助成金)がおもな収入です。(図参照)
 一方、晋和会の収入の大半は、「朝食会」の名目で開催する資金集めパーティー。都内のホテルで計6回開き、約8580万円を集めています。第1次安倍政権時代、安倍氏の意向でNHK経営委員長に送り込まれた古森重隆氏が会長を務める富士フイルムが300万円分、日本医師連盟が200万円分のパーティー券を購入するなど、形を変えた企業・団体献金です。支出は会場借り上げ料など約862万円で、利益率がほぼ9割というぼろもうけぶりです。
 3・4日に1回の飲み食いの原資は、企業・団体献金と国民の税金である政党助成金ということになります。
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2015年08月30日,
「赤旗」)

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私学補助率引き上げを/私大教連が教研集会/新潟

 日本私立大学教職員組合連合(野中郁江中央執行委員長)は29日、新潟市内で、第26回全国私立大学教育研究集会を開き、大学・短大の教職員165人が参加しました。
 集会では、水島朝穂・早稲田大学教授が記念講演。水島氏は「集団的自衛権は国際的な戦争の違法化の中で化石のようなもの。『安全保障環境が変わった』というのは集団的自衛権を合憲とする理由になりえない。NHKのアンケートでも合憲と答えた憲法学者は6・6%しかいなかった。法案は廃案しかない」と述べました。
 基調報告にたった田中直書記長は、日本国憲法にもとづく戦後の教育方針を議論した教育刷新会議が、官公私学の平等、私学の財政面の強化を建議していたことを強調。格差社会の中で、私学の学生の就学困難を指摘し、国立・私立の違いにかかわらず、学生が安心して勉学に励むことができるように、現在10・3%まで低下した私立大学の経常費補助率を、50%をめざして引き上げることを求めました。
 集会は、31日まで。大学自治、私大政策、不当解雇など七つのテーマの分科会にわかれ、報告と討論がおこなわれます。
 30日夕方には、「全国100万人大行動」に連帯して、新潟駅前で戦争法案反対の宣伝をおこないます。
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2015年08月30日,
「赤旗」)

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政府から独立したNHKを/広島の会が申入書を提出

 NHKが国民を戦争へ駆り立てた過去の過ちを繰り返さないよう求める「政府から独立したNHKをめざす広島の会」(世話人共同代表=篠原一郎氏ら3人)は25日、広島市中区のNHK広島放送局に申入書を提出しました。
 8人が同放送局を訪れ「最近、安倍首相など政権幹部のテレビ露出度が異常に高く、『政府広報』の様相を一段と招いている」として、籾井(もみい)勝人会長の辞職・解任を要求。申入書は、戦争法案の国会審議や原発の再稼働、米軍基地の問題などで政権に不都合なことも報道するよう求めています。
 篠原氏は意見交換する場をと要望しました。
(
2015年08月27日,
「赤旗」)

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「広島御幸橋写真」に思う/関千枝子

 6日の夜放送されたNHKスペシャル「きのこ雲の下で何が起きていたのか」は、衝撃的な番組だった。松重美人カメラマン(中国新聞)の「原爆投下直後の広島御幸橋」。私はこの写真を何百回も見ているが、最新技術で解析した画面には驚いた。真ん中辺りで写っている女性が抱えているのが死んだ赤ちゃんで、現場にいた女学生がこの解析を見て、この若い女性の叫び声を思い出し証言するさま、息をのんだ。
 番組で一点だけ残念なことがあった。投下直後の写真はすべて米軍に没収され、1952年まで闇の中にあったと言っていたことだ。これでは日本の写真家たちがすべて写真を米軍に差し出したようだが、朝日新聞のカメラマンたちがネガを隠した話は有名だし、松重さんもそんなことはしていない。
 この写真の初出は、1946年7月6日の「夕刊ひろしま」(中国新聞の別会社の夕刊紙、当時、商業紙が朝夕刊両方出すことは許されず、各社別タイトルの夕刊紙を出していた)にこの写真が大きく載っている。同紙は、アメリカの雑誌がこの写真を載せたからと嘘(うそ)っぽい説明をしているが、占領軍の検閲をかいくぐるための苦肉の策だろう。本紙の中国新聞でなく「夕刊ひろしま」にしたのも「知恵」だと思う。私は当時広島の女学校3年生で、御幸橋での2枚の写真を見て、すごいと思ったのをよく覚えている。
 私はNHKがこの事実を知らないのかと思い電話してみたが、NHKは「夕刊ひろしま」のことを知っていた。占領軍の検閲という当時の状況を知らせたかったからで、初出のことなど必要ないという返事だった。しかし私は1946年にこの写真を世に出したのは、被爆地の新聞社の心意気、新聞の歴史に残る「快挙」と思う。
 この番組がまた放送される時は、歴史的な1946年7月の「夕刊ひろしま」をぜひ見せてほしいと思うのだが…。
 (ジャーナリスト)
(
2015年08月19日,
「赤旗」)

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【7月】

*          違憲の戦争法案は撤回・廃案に/志位委員長が主張/NHKスペシャル

*          違憲の戦争法案、廃案しかない/志位委員長の発言/NHKスペシャル「与野党代表に問う」

*          違憲表明「憲法学者の一部」/公明・北側氏

*          自民会合暴言/広がる批判/安倍首相謝罪なし/沖縄2紙つぶせ∞県民金目当て

*          おはようニュース問答/百田暴言は安倍首相にも責任あるね

*          「政権こそ偏向」「県民と歩む」/言論弾圧・沖縄侮辱に怒り続々/国会で緊急抗議集会

*          違憲の戦争法案廃案しかない/志位委員長が主張/NHK与野党討論

*          戦争法案/世論が包囲/安倍政権強行採決許すな

*          徹底批判!戦争法案/対米従属が本質/無法な戦争に参戦・支援

*          鼓動/「新国立」計画見直しへ/世論に押され安倍政権、一転/アーチ含め見直しを

*          戦争法案審議中継と公共放送NHKの責務

*          戦争テーマに8月の民放番組/朗読/特攻兵/赤紙/若者

*          戦争法案採決は論外/その2/国民の声聞かないのか

*          戦争法案採決は論外/その1/違憲明白、廃案以外道なし

*          戦争法案採決は論外/説明不足の論点80個超/明日の自由を守る若手弁護士の会倉持麟太郎さん

*          【黒柳徹子】

*          放送90年/歴史と課題/テレビとともに/黒柳徹子さん/1/戦争のこと必ず伺って

*          放送90年/歴史と課題/テレビとともに/黒柳徹子さん/2/クイズ番組で歴史学ぶ

*          放送90年/歴史と課題/テレビとともに/黒柳徹子さん/3/手を取り合い番組づくり

*          放送90年/歴史と課題/テレビとともに/黒柳徹子さん/4/テレビは無くならない

*          【問い直す戦後70年】

*          芸能テレビ/問い直す戦後70年/その1/映画/この夏じっくり考えたい

*          芸能テレビ/問い直す戦後70年/その2/TV/原爆、特攻、従軍看護婦

*          試写室/玉音放送を作った男たち/NHKプレ8月1日後7・30/狂気と未来への希望が交錯

*          政権寄りNHKに疑問・批判/広がる視聴者運動/新たに埼玉・愛知で「会」

*          試写室/一路/NHKプレ31日後8・0/孤立無援、捨て身の参勤交代劇

*          レーダー/NHK「ニッポンの肖像〜政治の模索」/対米従属、金権腐敗の「戦後保守」に切り込まず

*          テレビ時評/NHKの政治報道に物申す/NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ共同代表醍醐聡

*          まど/創価学会員の思い

*          潮流

【7月本文】

違憲の戦争法案は撤回・廃案に/志位委員長が主張/NHKスペシャル

 戦争法案をめぐって国会が緊迫しているなか、日本共産党の志位和夫委員長は4日夜放送のNHKスペシャルに出演し、与野党代表と論戦を交わしました。志位氏は、「『憲法違反』が明瞭になった法案は、どんなに審議時間を重ねても『合憲』にはならない。まかり間違っても与党が数の暴力で通すことは絶対あってはならない」と主張し、戦争法案の撤回・廃案を強く求めました。

無法な戦争への参戦
 番組は冒頭、「安保法案は違憲か、合憲か」がテーマになりました。
 志位氏は、@「戦闘地域」での兵站、A戦乱が続いている地域での治安活動、B集団的自衛権行使という、憲法9条を壊す三つの大問題を指摘。「5〜6割の国民が『違憲』といっている法案を通すことは許されない」と強調しました。
 志位氏は、集団的自衛権行使について、「最大の問題は、(武力行使の)『新3要件』を満たしているかどうかの判断が、時の政権の裁量に任されていて、無制限に広がることにある」と指摘。国会審議を通じて、米国が無法な先制攻撃の戦争を行った場合でも、言われるまま、集団的自衛権を発動することが浮き彫りになったとして、「ここに集団的自衛権行使の一番の現実的な危険がある」と強調しました。
 自民党の高村正彦副総裁は「日米同盟を強化しないでどうやって日本の平和を守るのか」と発言。志位氏は「(自公政権は)『日米同盟の強化』の名で違法なイラク戦争を支持したことへの総括も反省もやっていないではないか」ときびしく批判。討論を通じて、政権・与党の異常な対米従属の姿勢が浮き彫りになりました。

リスクは決定的に高まる
 さらに番組では、「自衛隊の活動拡大で、自衛隊員・国民のリスクが増大するかどうか」がテーマになりました。
 志位氏は「(政府法案のいうように)『非戦闘地域』という枠組みを撤廃し、『戦闘地域』での支援活動を可能にすれば、相手方から攻撃を受ける。攻撃を受けたら『武器を使用する』と首相も認めた。そうなれば戦闘になる。自衛隊が『殺し、殺される』という事態となる。自衛隊員から戦死者が出る。あるいは他国の民衆を殺すことになる。この両面でリスクは深刻なものになる」と警鐘を鳴らしました。
 自民・高村氏は、「防衛大臣は『任務の期間中、戦闘行為が行われないと見込まれる地域』を設定することになっている」と繰り返しましたが、志位氏は「そんなことは法案に書いていない。(反対に)それを外してしまう(のが政府法案)。ごまかしてはいけない」と反論。「今だってリスクはある。管理すればいい」と繰り返す公明党の北側一雄副代表に、司会の島田敏男解説委員も「分かりにくい」と苦言を呈しました。

9条を生かした外交戦略こそ
 安倍首相が掲げる「積極的平和主義」について問われた志位氏は、「軍事対応が突出しすぎて、外交戦略がない」と批判。「憲法9条を生かした外交的解決に徹するという姿勢が大事です」と述べ、日本共産党が提唱する「北東アジア平和協力構想」を力説しました。
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2015年07月06日,「赤旗」)

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違憲の戦争法案、廃案しかない/志位委員長の発言/NHKスペシャル「与野党代表に問う」

 日本共産党の志位和夫委員長は、4日夜放送のNHK番組「NHKスペシャル」に出演し、安倍政権と与党が衆院通過をねらう戦争法案について、与野党代表と討論しました。

政府提出法案の問題点は?

憲法9条を壊す三つの大問題――国民の5〜6割が「違憲」とする法案強行は許されない
 番組では、6月上旬のNHK世論調査で、戦争法案の今国会での成立について「賛成」が18%に対し、「反対」が37%にのぼったことが紹介されました。与党側は「日本の平和と安全に不可欠な法案だ。いつまでも(採決を)延ばしていいというわけではない」(自民・高村正彦副総裁)などと発言。これに対し志位氏は、司会の島田敏男解説委員から「共産党は全面的に反対ですか」と聞かれ、こうのべました。
 志位 はい、全面的に反対です。
 私たちは、今度の法案というのは、憲法9条を壊す三つの大問題があるということを、国会で追及してまいりました。
 第一は、武力行使をしている米軍等へのいわゆる「後方支援」――兵站(へいたん)ですが、これまでは「非戦闘地域」でしかできなかった。これが、これまで「戦闘地域」といわれた地域でもできるようになる。これは武力行使に道を開いてまいります。
 第二は、PKO法(国連平和協力法)の改定ですが、これはたいへんな曲者(くせもの)で、形式上は「停戦合意」ができているけれども、なお、戦乱、混乱が続いているような地域に、自衛隊を派兵し、治安活動をさせる。そうしますと、約3500人もの戦死者を出しているISAF――アフガニスタンの治安部隊(国際治安支援部隊)、こういう活動への参加を首相は否定しませんでした。
 そして第三に、日本がどこからも攻撃されていないのに、集団的自衛権を発動して、海外での武力の行使に乗り出す。これは憲法違反であることは明瞭です。
 多くの方々が、5割、6割の国民が「違憲」といっているものを、これは通すのは許されないと、強く言いたいと思います。
 民主党の岡田克也代表は「一番の問題は憲法解釈を変えて集団的自衛権を行使するところにある」、維新の党の松野頼久代表も「根本的な問題はまず憲法違反である」とのべました。

集団的自衛権行使をどう考える?

「新3要件」の判断は無限定に広がる――米国の無法な戦争への参戦が一番の現実的危険
 戦争法案で重大な問題となっている集団的自衛権行使と憲法との関係が議論になりました。「安倍内閣が容認をした集団的自衛権の限定的な行使は、合憲か違憲か」との問いに、各党が「札」をあげて表明。自民、公明両党は「合憲」の「札」をあげたのに対し、共産、民主、維新、社民、生活、元気の各党は「違憲」の「札」をあげました。
 与党側は「(武力行使の)『新3要件』は、非常に厳格な要件でつなげている。あくまで自国防衛を大前提にした要件になっている」(公明・北側一雄副代表)などと発言。これに対し志位氏は次のようにのべました。
 志位 私は、この(法案の)最大の問題は、(武力行使の)「新3要件」を満たしているかどうかの判断が、時の政権の裁量にまかされており、無制限に広がっていくと、こういうところにあると思います。
 私は、国会で、「米国が先制攻撃の戦争をやった場合でも、集団的自衛権を発動するんですか」とただしました。総理の答弁は「違法な武力行使をした国を支援することはない」というものでした。
 しかし問題は、米国の違法な武力行使を日本政府が「違法」と批判できるのか。ここにあります。戦後、米国は、ベトナム侵略戦争、イラク侵略戦争、数限りない先制攻撃の戦争を実行してきました。しかし日本政府は、戦後、ただの一度も米国の戦争に「ノー」と言ったことはない。これは総理も国会で認めました。そうなってきますと、こんな異常なアメリカ言いなりの国というのはない。
 米国が無法な先制攻撃を行った場合でも、言われるまま、集団的自衛権を発動して、武力の行使をやることになる。ここに私は、集団的自衛権行使の一番の現実的な危険があると思います。

「日米同盟」の名で米国の侵略を支持、参戦してきたことへの反省はないのか
 志位氏の発言を受け、自民・高村氏は「日米同盟を強化しないでどうやって日本の平和と安全を維持できるのか。例えば北朝鮮ははっきりとした脅威だ。核もミサイルも開発している。それを止めるのは抑止力以外ない。話せばわかる国じゃない」と発言しました。
 志位氏は次のように反論しました。
 志位 「日米同盟の強化」(の名)で、(自公政権は)たとえば違法なイラク戦争を支持し、参戦した。この総括をやってないじゃないですか。「大量破壊兵器」を理由に戦争に突っ込んだ。この総括をあなたがた(政権・与党は)やっていない。
 北朝鮮の問題はもちろん解決が必要です。しかし私は、国際社会の包囲の中で、6カ国協議という枠組みの中で、外交で解決する努力が必要であって、軍事をやってくるからこっちも軍事だと、軍事対軍事≠ノ陥るのが一番危険だといいたいですね。
 「日米同盟」の名で(米国の)侵略を支持してきたじゃないですか。ベトナム戦争、イラク戦争。これへの反省はないんですか。
 志位氏の批判に対し、与党側からは反論はなし、公明党の北側氏は「日米同盟があるから、わが国は守られている」と軍事同盟に固執しました。一方、民主党の岡田氏は「日米同盟は非常に重要だ。ただ日米同盟による抑止力と、憲法9条の平和主義、この二つで70年間の平和が保たれた」とのべました。

維新「対案」をどうみる?

憲法違反の集団的自衛権行使になる――政府案反対の一点で野党協力を強めたい
 維新の松野頼久代表は、同党が10日までに国会提出しようとしている戦争法案の「対案」について「個別的自衛権のちょっと拡大だ」と説明しました。「維新案」は、武力行使を認める要件に「我が国に対する外部からの武力攻撃が発生する明白な危険があると認められるに至った事態」をあげています。
 志位氏は次のようにのべました。
 志位 私は、個別的自衛権と集団的自衛権を分かつ最大の基準というのは、日本に対する武力攻撃が発生しているか否かにあると思います。
 維新の党の「案」というのは、日本に対する武力攻撃が発生していなくても、武力の行使ができると。「明白な危険」の段階でできると(いうものになっている)。「危険」と言うのは『広辞苑』で引きますと、「危害が生ずるおそれ」なんですよ。つまり「おそれ」の段階で武力行使ができるとなりますと、これは個別的自衛権では説明はできない。集団的自衛権(行使)ということになる。ですから、私は、憲法違反になると思います。
 ただ同時に、私は、この野党の間では、国会会期延長のときに、党首会談をやりまして、この延長には反対という点を確認しています。ですから安倍政権の横暴な国会運営、あるいは政府の法案に反対するという一点では、野党の協力は強めたい。この点では、国民もそのことを願っていると思うし、私たちも最大限野党間の協力を強めていきたいと。これは変わりありません。
 「維新案」については自民・高村氏は「まとめたことは大変評価している」とのべる一方で、「維新の案は国際法的には集団的自衛権」と指摘しました。

自衛隊・国民のリスクは高まるか?

自衛隊員の戦死者が出る、他国の民衆を殺す――両面でリスクは深刻なものとなる
 戦争法案は、米国が、世界のどこであれ、戦争に乗り出せば、自衛隊が従来活動を禁止されてきた「戦闘地域」にまで行って、米軍や他国軍の「後方支援」=兵站を行うことを可能にします。自衛隊の活動拡大で、自衛隊員・国民のリスクが増大するかどうか―。自民、公明はリスクが「高まらない」との「札」をあげたのに対し、野党8党は全員が「高まる」の「札」をあげました。
 自民・高村氏は、「(法案では)防衛大臣に安全確保義務が課せられている。(自衛隊が)任務の間について、戦闘行為が行われないと見込まれる地域(実施区域)を決める」などと主張しました。志位氏は次のように批判し、高村氏との間で議論になりました。
 志位 (高村氏は)「(自衛隊が)活動期間中、戦闘行為が行われないと見込まれる地域を実施区域にする」と(言ったが)、そんなことは法律に書いていないですよ。法律にはどこにも書いていない。
 法律に書いてあるのは、これまではたとえばアフガン戦争、イラク戦争で自衛隊を派兵したわけですけれども、「非戦闘地域」でしか活動ができないという枠組みがあったわけですよ。これを撤廃して、「戦闘現場」でなければ、これまで「戦闘地域」と呼ばれていたところまで出て行って支援活動をやると(いうことです)。
 そうなりますとどこが変わるかというと、相手側から攻撃される可能性が現実に出てくるわけですよ。「攻撃されたらどうするのですか」と、総理と国会でずいぶん議論しました。そうしたら「武器の使用をする」と認めましたよ。「武器の使用」を自衛隊が一度したら、相手側はさらに攻撃してくる。それで戦闘になるじゃないですか。憲法9条に違反する武力の行使になる。自衛隊員が「殺し、殺される」という事態になるのです。
 これで(自衛隊員の)戦死者が出る。あるいは他国の民衆を殺すことによって、日本が憎悪の対象になる。この両面でリスクは本当に深刻なものになると思います。

「戦闘が行われる見込みがない地域」――法案に書いていない、外したのが今回の法案
 志位氏のこの発言を受け、志位氏と自民・高村氏の間で、次のようなやりとりになりました。
 高村 (自衛隊の)任務というのは1週間とか2週間とかそういう任務が非常に多いわけですよ。それを実施する間じゅう、戦闘が行われる見込みがない地域ということで防衛大臣がはっきり定めるのですよ。
 志位 だからそれが法律に書いてないのです。
 高村 「安全確保義務」が書いてあるから。
 志位 書いていないです。「その期間中に(戦闘が)見込まれない地域」なんて法律に書いてないです。ごまかしてはいけない。
 このやりとりに司会の島田氏は「高村さんは、条文には書いていないけれどもそういう考え方という補足をしたということですね」と確認。高村氏は「『安全確保義務』が書いてある以上、そうすることはあたりまえなのです」とのべ、法案には「活動期間中、戦闘行為が行われないと見込まれる地域」と明記されていないことを認めました。これを受け、ふたたび志位氏と高村氏とのやりとりになりました。
 志位 これまでは、「非戦闘地域」というのは、「現に戦闘が行われておらず」、そして「(自衛隊が)活動を実施する期間のあいだ、戦闘が行われないと認められる地域」と、二つかかっていたわけですよ。それを外してしまうわけですから。
 高村 非常に長い間で、それを定めることは現実的にほとんど無理であるということがわかったのです。だから小泉さん(元首相)が変な答弁をしなければならないようなことが起こったのです。
 志位 「活動の期間中に戦闘が起こると見込まれない地域」なんていうことは法律に書いていない。書いていないことをごまかしてはいけません。

一発も銃弾を撃たなかったことは大きな資産――日本人全体が新たなリスクにさらされる
 「リスク」をめぐっては、公明・北側氏が「リスクは今だってある。それをいかに軽減、管理していくか」などとのべたのに対し、司会の島田氏も「分かりにくい」と発言。野党側は「リスクが高まるときちんと認めるべきだ」(民主・岡田氏)、「活動範囲がひろがれば当然リスクは高まる」(維新・松野氏)などと批判しました。
 高村氏は「木を見ないで森を見るとリスクも減る」などとしかいえなくなり、志位氏はこうのべました。
 志位 私は、この「リスク」という問題を考えるさいに、紛争地でボランティアの活動をやっていらっしゃる方々が共通して言うのは、日本の自衛隊は、これまで一発も外国人に向けて銃弾を撃っていない、一人も殺していない。これがたいへん大きな資産になっているということを、おっしゃるんですよね。それがあるおかげで、海外でのボランティア活動もやりやすいと(言っている)。
 これが、なぜそういうふうになってきたかといえば、集団的自衛権は行使できないと。それからいわゆる「後方支援」――兵站活動をやった場合であったとしても、「非戦闘地域」でしかやれないと。この枠がかかっていたから、一発も撃たず、一人も殺さずにすんだんですよ。
 私は、この枠組みを外してしまって、実際に、「殺し、殺される」という関係になったら、これは、世界の民衆の日本を見る目が変わってしまう。さまざまな憎悪の対象に日本がされる。その点では、世界で活動している日本人全体が新たなリスクにさらされる(ことになる)。ここも考えなければならない大問題だと思います。

目指すべき国のあり方は?

「北東アジア平和協力構想」――憲法9条を生かした平和の外交戦略こそ必要
 安倍首相の掲げる「積極的平和主義」と、めざすべき国のあり方についてが議論となり、志位氏は次のように語りました。
 志位 安倍さんは「積極的平和主義」とおっしゃるんですが、私は、軍事対応が突出しすぎて、外交戦略がないと、そういうふうに見ています。
 たしかに、この北東アジアの地域には、さまざまな紛争や緊張の火種がある。しかし、相手が軍事できた、それに対して軍事で構えると、そうしたら相手もさらに軍事力の増強を加速する。軍事対軍事≠フ一番危険な悪循環に陥ると思うんですね。
 私は、どんな問題でも憲法9条の精神を生かした、外交的解決に徹するという姿勢が大事だと思うんです。
 私は、そのヒントは、東南アジアのASEAN(東南アジア諸国連合)の国々にあると考えています。ASEANの国々がつくっている、TAC――東南アジア友好協力条約。あらゆる紛争課題を、平和的な話し合いで解決するという条約を結び、これを域外に広げています。
 私たちは、こうした東南アジアでつくられているような平和の地域協力の枠組みを、北東アジアでもつくろうじゃないかと、「北東アジア平和協力構想」というのを提唱しておりますが、ぜひそういう外交戦略が、今の日本には必要だと(思います)。9条をいかした外交戦略が必要です。

国会への対応をどうするか?

「憲法違反」の法案はどんなに審議しても「合憲」にならない――撤回、廃案を求める
 最後に、戦争法案をめぐる国会対応が議論になりました。民主の岡田氏は「もう一回法案を出しなおす」べきだとのべ、維新の松野氏は「(衆院で再議決する)60日ルールをまずやめる」べきとのべました。自民の高村氏は「十分審議をするということだ」と発言。志位氏はつぎのようにのべました。
 志位 私は、「憲法違反」ということが明瞭になった法案は、どんなに審議時間を重ねても「合憲」にならないと思います。
 ですから私は、この戦争法案は撤回、廃案にすべきだということを強く求めていきたいと思います。
 まかり間違っても、与党が数の暴力でこれを通すということは、絶対あってはならないということを強く言いたいと思います。
(
2015年07月06日,「赤旗」)

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違憲表明「憲法学者の一部」/公明・北側氏

 「(戦争法案を違憲と言うのは)あれは憲法学者の一部じゃないですか」。4日放送のNHKスペシャルの与野党討論で、公明党の北側一雄副代表はこう言い放ちました。「多くの学者が違憲と言っている」と述べた維新の党の松野頼久代表に対する発言です。
 戦争法案に対して、6月4日の衆院憲法審査会で自民党推薦を含む3人の憲法学者が「違憲」と指摘。衆院安保法制特別委員会(6月22日)に参考人として出席した2人の元内閣法制局長官も「違憲、撤回を」「従来の憲法解釈の範囲といえない」と語りました。
 憲法学者3人の発言直後、菅義偉官房長官が「全く違憲でないという著名な憲法学者もたくさんいる」と述べたことにたいし、憲法学者らが相次いで戦争法案は違憲との態度を表明。「合憲」の学者を数えるほどしか挙げられない菅氏は「数ではない」と逃げました。
 戦争法案の速やかな廃案を求めた声明に賛同する憲法学者はすでに230人を超え、「廃案に」との声は多くの学者、法律家、弁護士、文化人などにも広がっています。戦争法案は違憲≠ヘすでに決着済みです。
 それにもかかわらず性懲りもなく「(違憲と言うのは)憲法学者の一部だ」という北側氏。番組では、その後、速やかに話題をすりかえる同氏の様子が映し出されました。
(
2015年07月06日,「赤旗」)

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自民会合暴言/広がる批判/安倍首相謝罪なし/沖縄2紙つぶせ∞県民金目当て

 日本共産党の志位和夫委員長は26日、記者会見し、「言論の自由への挑戦であり、安倍首相は自民党総裁として、きちんと事実を調査し、国民に謝罪すべきだ」と語りました。
 志位氏は、一連の発言について@メディアの報道の自由、言論の自由に対する乱暴極まる挑戦A沖縄県民に対するこのうえない侮辱―という二つの問題点を指摘しました。
 そのうえで「政権与党として、自民党が負うべき重大な責任」として、▽百田氏のような人物を講師として呼び、発言を聞きながら何らいさめずに野放しにした▽「広告料収入をなくせばいい」「マスコミを懲らしめる」と発言したのは自民党議員自身だった―ことを指摘。「この問題はあいまいにできない大問題だ。政権与党の焦りとおごり、この二つがないまぜになって表れていると思う。自民党総裁でもある安倍首相に、きちんとした対応を求めたい」と表明しました。
(
2015年07月05日,

 暴言が飛び出したのは、安倍晋三首相を支持する自民党若手議員が同党本部で開いた会合「文化芸術懇話会」(6月25日)。首相側近の加藤勝信官房副長官や萩生田光一総裁特別補佐ら約40人が参加しました。
 出席議員からは、「マスコミを懲らしめるには、広告料収入がなくなることが一番。経団連に働きかけてほしい」などの声があがりました。
 講師として招かれた作家の百田尚樹氏は、安倍政権が進める米軍新基地建設に批判的な沖縄の地元紙、琉球新報と沖縄タイムスを念頭に「本当に沖縄の二つの新聞はつぶさないといけない」。米軍普天間基地(宜野湾市)の成り立ちについても「もともと田んぼの中にあり、周りは何もなかった。基地の周りにいけば商売になると、みんな何十年もかかって基地の周りに住みだした」と発言。基地の周りに住むのは金目当て≠ニ県民を侮辱しました。
 百田氏は安倍首相と親交があり、2013年にNHK経営委員に送り込まれたことでも知られます(今年2月で退任)。
 戦争法案には、今国会成立に否定的な声が8割超。沖縄新基地建設には党派を超えた「オール沖縄」の反対が強まっています。政権の焦りが暴言の背景です。
 新聞・通信・放送130社でつくる日本新聞協会(会長=白石興二郎読売グループ本社社長)は「表現の自由、報道の自由を弾圧するかのような動きに断固反対」とした編集委員会声明を発表。日本民間放送連盟も井上弘会長(TBSテレビ会長)名で「容認しがたい」とコメントしました。
 沖縄では、翁長雄志知事が「がくぜんとしている」と批判。普天間基地を抱える宜野湾市議会は全会一致で抗議決議を可決しました。(29日)
 自民党は同会代表の木原稔青年局長を1年間の役職停止、暴言をはいた3議員を注意処分にしましたが、その一人の大西英男衆院議員は30日、また「懲らしめなければいけない」と発言しました。そもそも安倍首相自身に国民への反省、謝罪の言葉がありません。
(
2015年07月05日,「赤旗」)

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おはようニュース問答/百田暴言は安倍首相にも責任あるね

 晴男 6月25日に自民党若手議員が開いた「文化芸術懇話会」の問題は、日に日に怒りが高まってるね。
 秋平 議員の「マスコミを懲らしめる」発言といい、講師の作家・百田尚樹氏講演での「沖縄の2紙はつぶさないと」といい、まさに言論の自由封殺、じゅうりんだ。
 晴男 各メディアをはじめ世論はこぞって一連の発言を糾弾してるし、安倍首相・自民党総裁にも批判を向けている。

「お友達」を任命
 秋平 忘れてならないのは、百田氏はつい最近まで安倍首相が任命したNHKの経営委員だったという点だ。
 晴男 経営委員といえばNHKの最高意思決定機関のメンバーだ。
 秋平 百田氏は2012年には、当時野党だった安倍氏を「もう一度首相に」と応援団に加わった。その年の暮れに首相に返り咲いた安倍氏は、13年秋に「お友達」の百田氏をNHK経営委員に任命したんだ。
 晴男 経営委員というのはそれなりの資格が必要だろう。
 秋平 放送法では「公共の福祉に関し公正な判断」ができる者と定めてる。NHKの準則でも経営委員には「健全な民主主義の発達に資する」ことを求めてる。
 晴男 ところが百田氏は直後の14年都知事選で右派候補を応援して、「南京大虐殺はなかった」などの暴論を連発した。これで経営委員の資格はないという声が一気に高まったよね。
 秋平 そのとき安倍内閣は「経営委員でも思想信条は自由だ」と擁護した。その安倍政権でさえ、百田氏を再任させるのは得策ではないとみたのか、任期切れの今年2月には再任しなかった。

本質理解しない
 晴男 今回の百田発言は、「言論の自由」という憲法の理念、現代社会の根本原則を、まっこうから否定している。
 秋平 ところが安倍首相は、ことの本質をまったく理解しようとしていない。「懇話会」問題がとりあげられた26日の国会答弁では、「いちいちの会合での発言を私が示す立場にない」とか「私的な勉強会だ」といってかばった。
 晴男 安倍内閣が戦争法案を押し通そうとしているなかで起こった。安倍首相と自民党をとことん追い詰めていこう。
 〔2015・7・1(水)〕
(
2015年07月01日,「赤旗」)

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「政権こそ偏向」「県民と歩む」/言論弾圧・沖縄侮辱に怒り続々/国会で緊急抗議集会

沖縄2紙代表など報告/「安倍首相は謝罪を」山下書記局長があいさつ
 安倍晋三首相に近い自民党議員の勉強会で暴言が相次いだ問題で、「言論の弾圧を許すな! 怒りの緊急集会」が30日、国会内で開かれ、報道・出版関係者や市民らが怒りの拳をあげました。作家の百田尚樹氏から「つぶさないといけない」と、どう喝の対象となった沖縄2紙の代表が報告に立ち、県民に寄り添った報道を続ける覚悟を語りました。(関連4面)

 呼びかけは野党国会議員。日本共産党、民主、維新、社民、元気の5党と無所属から国会議員34人、マスコミ関係者、弁護士や市民ら約300人が参院議員会館に詰めかけました。
 沖縄の地元紙、琉球新報の島洋子東京支社報道部長は、「私たちの報道を『レッテル貼り』している議員は、沖縄の人にも失礼ではないか」と自民議員を批判。「沖縄の地元紙として政府寄りではなく、沖縄に偏向≠オた報道をしていきたい」と語りました。
 沖縄タイムスの宮城栄作東京支社報道部長は、米軍の理不尽な事件・事故に怒る県民に押されて自社論調が磨かれてきたと述べ、「そんな歴史を知らずに『つぶそう』と思ってつぶせるか。われわれの報道は県民世論に突き動かされ、世論を反映させているだけ。安倍政権の考え方こそ偏向だ」と反論しました。
 日本共産党の山下芳生書記局長は、勉強会での発言は「言論の自由への挑戦であり、沖縄県民への侮辱そのものだ」と指摘。安倍晋三首相自身の謝罪を求めて、「みなさんと一緒にたたかい抜く」と決意を語りました。
 民主党の枝野幸男幹事長は「立憲主義だけでなく、民主主義も危機にあることが明らかになった。党派を超えて頑張っていく」とあいさつしました。社民党の吉田忠智党首は「平和と民主主義が問われる局面だ」と語りました。
 新聞労連の新崎盛吾委員長は、保守的新聞社まで声をあげはじめていることを紹介し、「ようやくメディアが声をあげはじめた」と報告。出版労連の樋口聡中央執行委員、民放労連の岩崎貞明書記次長、元NHKプロデューサーの永田浩三武蔵大教授も発言に立ちました。
(
2015年07月01日,「赤旗」)

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違憲の戦争法案廃案しかない/志位委員長が主張/NHK与野党討論

 戦争法案をめぐる緊迫した国会情勢のもとでおこなわれたNHKスペシャルの与野党代表討論(4日)。日本共産党の志位和夫委員長は「まかり間違っても与党が数の暴力で通すことは絶対あってはならない」と、法案の撤回・廃案を求めました。討論のポイントは―。

集団的自衛権行使の危険/政府判断で無限定に拡大/無法な米国の戦争に参加
 冒頭、法案への態度について、与党側は「いつまでも(採決を)延ばしていいわけではない」(高村正彦・自民副総裁)などとのべ、採決を強行する姿勢です。
 志位氏は「法案には、憲法9条を壊す『三つの大問題』があると追及してきた」と、そのポイント(別項)をあらためて説明。世論調査で5、6割の国民が「違憲」と答える法案を通すのは許せない、と強調しました。
 ここで司会者は「安倍内閣が容認した集団的自衛権の限定的行使は、合憲か違憲か」と各党に問い、自民、公明両党は「合憲」、共産、民主、維新、社民、生活、元気の各党は「違憲」と回答しました。
 集団的自衛権について、志位氏は「(法案の)最大の問題は(集団的自衛権発動の)判断が、時の政権の裁量に任され、無制限に広がっていくところにある」と強調しました。
 集団的自衛権行使を想定するのは米国の戦争への参戦。米国はベトナム戦争、イラク戦争など先制攻撃の戦争を繰り返してきました。しかし国会審議で日本政府は一度も米国の戦争に「ノー」と言っていないことが明白に。
 志位氏は「米国が無法な先制攻撃を行った場合でも集団的自衛権を発動し(米軍とともに)武力行使する。ここに集団的自衛権行使の一番の現実的危険がある」と指摘しました。
 あくまで「日米同盟強化で平和と安全を守る」と主張する高村副総裁。志位氏は「『日米同盟の強化』の名で(自公政権が)違法なイラク戦争を支持してきたことへの総括も反省もない」と批判し、安倍政権の異常な米国いいなり姿勢を浮き彫りにしました。

高まる自衛隊・国民のリスク/一人も他国民殺してない日本の大きな資産を失う
 自衛隊の活動拡大で、自衛隊員・国民のリスクが増大するかどうか―。自民、公明両党はリスクが「高まらない」、野党8党は「高まる」と答えました。
 これまでの派兵法では、自衛隊は「非戦闘地域」だけで活動するという枠組みがありました。戦争法案はこれを撤廃し、「戦闘地域」での米軍支援活動を可能にします。安倍首相は、そこで自衛隊が攻撃を受ければ、「武器を使用する」と認めました。
 志位氏は「そうなれば『殺し、殺される』という事態になる。戦死者が出る。他国の民衆を殺すことで日本が憎悪の対象になる。(自衛隊と国民の)両面でリスクは本当に深刻なものになる」と強調しました。これをめぐり高村氏は「任務の間、『戦闘行為が行われないと見込まれる地域』を自衛隊の活動実施区域に決める」などと弁明。「法案に書いてない」と指摘する志位氏とやりとりに―。
 高村 (防衛大臣の)「安全確保義務」が(法案に)書いてある。
 志位 「その期間中に(戦闘が)見込まれない地域」なんて書いてない。ごまかしてはいけない。
 司会者が「条文には書いていないが」とのべ、確認を求めると、高村氏は「『安全確保義務』が書いてある以上、そうすることはあたりまえということ」と発言。法案に明記されていないことを認めました。
 さらに、志位氏は、海外紛争地でボランティア活動をしている人が自衛隊はこれまで一発も外国人に銃弾を撃たず一人も殺していない。これが大きな資産≠ニ共通してのべていることを紹介。自衛隊が「殺し殺される」ことになれば「世界で活動する日本人全体が新たなリスクにさらされる」と強調しました。

自民が持ち出す「抑止力」/「軍事対軍事」が一番危険/9条生かす平和外交こそ
 論戦で追い込まれた高村氏が、持ち出したのは「抑止力」。北朝鮮の核やミサイルをあげ、戦争法案を「抑止力」と主張します。
 志位氏は「北朝鮮問題は解決が必要だが、国際社会の包囲のなか、6カ国協議という枠組みの中で外交解決する努力が必要だ。軍事対軍事≠ノ陥るのが一番危険だ」と反論。安倍首相の「積極的平和主義」についても「軍事対応が突出しすぎて外交戦略がない。どんな問題も憲法9条の精神を生かした外交的解決に徹する姿勢が大事だ」と強調しました。
 さらに、東南アジア諸国連合(ASEAN)にある平和の地域協力の枠組みを北東アジアでも構築しようという日本共産党の「北東アジア平和協力構想」を紹介し、「外交戦略が今の日本には必要だ」と訴えました。

法案の三つの大問題
 
@米軍への「後方支援」=兵站(たん)で自衛隊が「戦闘地域」まで行き、武力行使に道を開くA「停戦合意」はあっても戦乱が続く地域に派兵し危険な治安活動をするB日本が攻撃されていないのに集団的自衛権を行使し海外で武力行使する。
(
2015年07月12日,「赤旗」)

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戦争法案/世論が包囲/安倍政権強行採決許すな

 戦争法案の国会提出から約2カ月。審議すればするほど世論調査で「法案反対」の数字が増え、ついに安倍内閣不支持が支持を上回りました(6日)。それでも今月中旬に衆院で採決強行をもくろむ安倍政権与党。法案成立阻止へ―さらに大きな声を広げ、追いつめるときです。

 この2カ月の世論の変化は劇的です。毎日新聞(6日付)では法案反対が53%→58%、賛成が34%→29%に。読売新聞(6日付)でも法案の今国会成立に反対59%→63%、賛成30%→25%に。他のメディアも同じ傾向です。
 「安倍首相はとくに若い世代に反対が広がっているのに衝撃を受けている。あわててインターネットの企画に出演して法案の説得に乗り出したが、ヒット数はイマイチだった」(自民党関係者)
 4日放送のNHK与野党代表討論。日本共産党の志位和夫委員長が自民・公明与党を徹底追及し、最後に強調しました。
 「憲法違反が明瞭になった法案はどんなに審議時間を重ねても『合憲』にならない。撤回、廃案にすべきだ。数の暴力で通すことは絶対あってはならない」

(
2015年07月12日,「赤旗」)

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徹底批判!戦争法案/対米従属が本質/無法な戦争に参戦・支援

 安倍晋三首相が「実現」を対米公約し、戦後最長の国会会期延長で衆院での採決強行が狙われる戦争法案。米国の無法な戦争に参戦・支援する対米従属性をむきだしにしています。

米戦争に反対なし/政府の危険性
 「日米同盟強化をしないでどうやって日本の平和と安全を維持できるのか」
 4日放送のNHK討論番組で、自民党の高村正彦副総裁はこう言い放ちました。
 日本共産党の志位和夫委員長が、「米国が無法な先制攻撃を行った場合でも、言われるまま、集団的自衛権を発動して、武力の行使をやることになる。ここに集団的自衛権行使の一番の現実的な危険がある」と批判したことを受けての発言です。
 志位氏が、米国の数々の無法な戦争に日本政府が一度も「反対」したことがないと事実を突きつけても、なおも「日米同盟強化」を言い募る高村氏―。戦争法案に固執する安倍政権の異常な対米従属の本性が現れました。
 米国は、1983年のグレナダ侵略、86年のリビア爆撃、89年のパナマ侵略はじめ数多くの先制攻撃と侵略を繰り返してきました。日本政府はこれに全部「賛成」「支持」「理解」を示してきたのです。
 イラク戦争では、当の米国自身がイラクによる大量破壊兵器の保有≠ノついて事実認識に誤りがあったと認めています。しかし、日本政府はその反省も検証もしていません。
 米国の侵略について誤りを指摘、批判できない国が、米国との協力で集団的自衛権行使に乗り出したらどうなるか。まさに集団的侵略となる―。ここに現実の一番大きな危険があります。

平和憲法より優先/ガイドライン
 4月末に締結された日米新ガイドライン(軍事協力指針)は、「日米同盟のグローバル(地球規模)な性質」を掲げ、「日米同盟の継続的な強化」をうたっています。
 同指針は、「後方支援」=兵たん、戦闘捜索・救難、国連PKO(平和維持活動)での緊密な協力、海賊対策、機雷掃海、アセット(装備品)防護など、戦争法案に盛り込まれたメニューを全面的に先取りしました。
 カーター米国防長官は「日米が世界中のどこでも、ともに行動できるようになる」「(同盟の枠組みは)地域から地球規模へと焦点が移った、大きな変化だ」と称賛しました。
 ガイドラインはさらに、「全ての政府機関を含む政府全体にわたる同盟内の調整を確保するため、あらゆる経路を活用する」とし、政府全体を日米「同盟」にふさわしく「調整」する、「国家改造」の意図を隠しません。また「平時から利用可能な同盟調整メカニズム」の設置を決め、軍事面で平時からの日米の統一的な指揮命令体制の構築を図ります。
 地球規模での日米軍事協力とは、日米安保条約第6条にある「極東」範囲をはるかに凌駕するものです。ガイドライン自体は政治合意≠ノ過ぎませんが、安保条約の枠組みを超えた「日米同盟」を事実上の「最高法規」として扱い、憲法を無視して米国との全面的な戦争協力に突き進む―。底知れぬ従属性が示されています。

法案の骨格が示す/無限定な参戦
 戦争法案の骨格・内容は、まさにアメリカの戦争への切れ目のない全面的な協力体制となっています。
 世界中で米軍の戦闘を支援するための海外派兵恒久法(国際平和支援法)を創設しました。周辺事態法の改定による重要影響事態法とあわせ、二重の枠組みで米軍支援の自衛隊派兵を可能にします。
 従来は活動できなかった「戦闘地域」まで踏み込んで行き、そこで米軍の武力行使を支援。さらに弾薬提供、戦闘発進中の戦闘機給油まで実行します。米軍の戦闘員を捜索・救助するために自衛隊が「戦闘の現場」にまで突入。これまでのイラク戦争や湾岸戦争のような戦争にも参加可能としており、過激組織ISへの空爆支援も可能になります。
 集団的自衛権を行使して米国の戦争に参戦するために、自衛隊法や武力攻撃事態対処法にその根拠を創設します。米国への攻撃の結果、日本に軍事的危機が生じていない場合にも、日本の武力行使を可能とするなど、戦争法案はまったく無限定な参戦体制となっています。
 さらに「平時」から米艦を防護するために自衛隊法の武器防護規定を拡大し95条の2を新設します。自衛隊が米軍の空母などを中心とする部隊(ユニット)のボディーガードとして、艦隊の一部を構成するものです。そこで戦闘が始まれば、集団的自衛権行使に切り替えて戦闘参加します。
 戦争「終結」後も、治安維持や人道支援の名目で紛争鎮圧に介入するため、PKO(国連平和維持活動)法を大幅改定。自衛隊のPKO活動にも検問、警護任務を追加し任務遂行の武器使用を容認します。さらに国連の統括しない「連携平和安全活動」を創設するなど、従来のPKO法がまったく変質し、危険性を高めています。従来のISAF(国際治安支援部隊)などへの参加を可能にし、多国籍軍の一翼を担って、他国の紛争に武力介入することになります。

安倍首相、積年の「対等な同盟」
 集団的自衛権を行使可能にし、日米同盟を「対等な同盟」に近づける―。安倍首相の積年の「思い」です。
 安倍首相は2004年の著書『この国を守る決意』で、「日米安保条約を堂々たる双務性にしていく」「双務性を高めるということは、具体的には集団的自衛権の行使だ」と明言。「軍事同盟というのは血の同盟=vだとして、アメリカが攻撃されたときに自衛隊が「血を流す」ことを強調しました。
 05年の「日米同盟の変革」と題するシンポジウムで、「国民の意識も進歩したとはいえ、海外での紛争に米国と肩を並べて武力行使をするという意識には至っていない。その前の段階で日米協力において法的な障害、憲法解釈に関する障害を取り除いていく、そこから始めていく」と述べています。
(
2015年07月10日,「赤旗」)

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鼓動/「新国立」計画見直しへ/世論に押され安倍政権、一転/アーチ含め見直しを

 政府が東京五輪・パラリンピック主会場となる新国立競技場の建設計画を見直す方針を固めたのは、総工費が計画募集時の2倍の2520億円にも膨れ上がるなどのずさんさに対する国民、建築家、スポーツ界などからの批判を無視できなくなったものです。NHKの世論調査でも「納得できない」が81%と圧倒的多数が反対です。
 安倍首相は10日にも「(デザインを変更すれば)五輪に間に合わない」として強行する姿勢を見せていました。しかし、戦争法案への批判と相まって内閣支持率と不支持率が逆転。与党幹部から「国民に説明がつかない」(二階俊博総務会長)との声があがるなど、現行計画を強行すれば政権批判に拍車をかける危機感が募っていました。
 総工費膨張の大きな原因は2本の巨大なアーチ構造にあります。豪華な巨大計画を採用したのは、安倍内閣が「日本全体を活性化する好機とする」(成長戦略)として、五輪に乗じて「国土強靱(きょうじん)化」の名で大開発や大企業支援を進める狙いがあるからです。総工費が膨れ上がっても、環境破壊だと指摘されても、抜本的見直しができないのは、そのためです。
 見直し案として、建築資材の見直しや工期延長などが浮上しています。しかし、小手先の見直しで問題は解決しません。アーチ構造を含めて抜本的見直しをしてこそ、総工費も工期も削減・短縮でき、五輪開催に間に合わせることが可能なことは専門家からも指摘されている通りです。
 戦争法案と同じく、民意無視で独裁・専制政治を進める安倍内閣の姿勢が厳しく問われています。
 (深山直人)
(
2015年07月17日,
「赤旗」)

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戦争法案審議中継と公共放送NHKの責務

 NHKは戦争法案が衆議院を通過した16日、「本会議中継せず」の予定を昼すぎに急きょ変更して、本会議の各党討論などを中継しました。

中継なしで抗議
 NHKは前日の15日、安倍首相も出席した安保法制特別委員会の締めくくり総括質疑を中継しませんでした。NHKは「数字は明らかにしないが、多数の抗議が寄せられた」(広報)と認めています。
 15日の事態に対しては、多くの著名人も抗議を表明。神戸女学院大名誉教授の内田樹氏はツイッターで「NHKは報道機関として歴史的汚点を残すことになりました。多くの職員が恥じ入っていることでしょう」と発信しました。
 ほかにも、「これほど国民の関心が高い法案を無視して、公共放送≠ニ言える?」(文筆家・乙武洋匡氏)、「NHK国会中継がないこと、残念。ネットで見るノウハウを持たない方もたくさんいらっしゃいます」(脳科学者・茂木健一郎氏)などの声が飛び交いました。
 「15日の委員会ばかりか、16日の本会議も中継しないのか」との国民・視聴者の怒りと抗議の結果、NHKを「16日本会議中継」に追い詰めたといえます。
 しかし問題は、「衆院通過」直後のNHKニュースが、「法案成立の公算が大きくなった」とのテロップや解説を繰り返し流したことです。

審議の展開無視
 戦争法案は参院の審議がこれからであり、衆院を通過したからといって、自動的に成立するわけではありません。何より戦争法案反対の国民世論は根強く、とくに「今国会成立」にはどの世論調査でも6割以上の国民が反対しています。
 議会の仕組みも無視して「成立公算大」を前面に押し出すのは、国民に「反対をあきらめろ」と言っているに等しいものです。参議院の存在と審議の展開をまったく無視した「世論誘導」は、国民世論や議会制民主主義の否定につながるものです。
 NHKが「順守する」と表明している放送法は、その目的に「放送が健全な民主主義の発達に資する」ことを掲げています。国民・視聴者の受信料で成り立っているNHKが、いかに国民世論を正面から受け止め、公共放送の職責を果たしていくのかが、いま鋭く問われています。
 (小寺松雄)
(
2015年07月17日,
「赤旗」)

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戦争テーマに8月の民放番組/朗読/特攻兵/赤紙/若者

 民放の「戦争・原爆・平和」をテーマにした、8月のおもな番組を紹介します。(NHKは11日付)

日本系
 「いしぶみ〜忘れない。あなたたちのことを」(1日、後1・30)原爆投下後の広島の惨状を伝えた1969年放送のドキュメンタリー「碑」を、映画監督・是枝裕和がリメーク。故・杉村春子さんが担った「遺族の手記」の朗読を、広島市出身の綾瀬はるかが引き継ぎます。広島テレビ制作。
 「教科書で学べない戦争」(4日、後9・0)櫻井翔と池上彰がパイロットの墓場≠ニ呼ばれたパプアニューギニア・ラバウルで、朽ちたゼロ戦や遺骨捜索を取材。元特攻隊員に「本当に志願だったのか」と疑問をぶつけます。

朝日系
 「妻と飛んだ特攻兵」(16日、後9・0)終戦4日後の8月19日、旧満州の飛行場から特攻隊員の夫とともに戦闘機で飛び立った女性を描いた、実話をもとに制作したドラマ。堀北真希・成宮寛貴が夫婦を演じます。

TBS系
 「レッドクロス〜女たちの赤紙」(1、2日、後9・0)70年前、赤紙を受け取って戦場に赴いた「従軍看護婦」たち。一人の女性の目を通し、凄惨(せいさん)な戦地の実像と、戦争にほんろうされた生きざまに迫るドラマ。松嶋菜々子主演。
 「私の街も戦場だったU」(15日、時間未定)戦争を知らない世代の著名人が、祖父母や知人から戦争体験を聞き、家族の歴史をひもときます。司会は久米宏と綾瀬はるか。実物大の特攻兵器や戦時中の一般家屋や防空壕(ごう)も再現します。ゲストは瀬戸内寂聴。

フジ系
 「私たちに戦争を教えてください」(15日、時間未定)青春時代を戦争の真っただ中に生きた元兵士や元女学生の話に、5人の若手俳優が耳を傾けます。小栗旬、松坂桃李、福士蒼汰、有村架純、広瀬すずが、それぞれのテーマにそってハワイ、ペリリュー島、沖縄、広島、国内の基地跡を訪問します。

日本系日曜深夜/ドキュメント15
 「『平和宣言』70年」(2日)政治の影響を受けながらも、核兵器廃絶を訴えてきた広島の平和宣言。安保法制議論が渦巻くいま、人々が宣言に託す思いとは。広島テレビ制作。
 「封印された不法妊娠」(9日)日本の植民地≠ゥら引き揚げ時、性被害にあい妊娠し、禁止されていた中絶手術を受けた女性がいました。戦争が弱い立場の国民を苦しめた現実を見つめます。福岡放送制作。
 「海の記憶 父からの伝言」(16日)太平洋のトラック諸島で軍に徴用され、撃沈された民間輸送船「愛国丸」。船とともに沈んだ父に息子が思いをはせます。
 「樺太に散った北のひめゆり=v(30日)終戦後もソ連軍の攻撃から住民が逃げ惑った北方の島々。樺太では、電話交換手の9人の若い女性たちが自決した悲劇がありました。札幌テレビ制作。
(
2015年07月15日,
「赤旗」)

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戦争法案採決は論外/その2/国民の声聞かないのか

 政府・与党は戦争法案について、「いつまでもだらだらとやるべきじゃない。『決めるときは決める』ことが必要だ」(菅義偉官房長官)、「もう論点は出尽くしている」(自民党・谷垣禎一幹事長)などと強弁し、15日に採決を強行する姿勢です。しかし、直近のどの世論調査でも「今国会の成立反対」「議論が尽くされていない」の声とともに、そもそも法案が「憲法違反」との意見が圧倒的多数。こんな状態での採決は、国民世論無視の暴挙以外の何ものでもありません。

内閣支持率にも反対の声飛び火
 今月に入って報道各社の全国世論調査では、内閣不支持率が支持率を上回る事態が相次いでいます。7月6日の「毎日」では、不支持率が5月から7ポイント増の43%で、第2次安倍内閣発足後初めて支持・不支持が逆転。その後も、12日にNNN(日本テレビ系)、13日にNHK、14日に「朝日」で、次々と支持・不支持が逆転する結果が出ています。戦争法案の反対世論の急拡大が、内閣支持率にまで飛び火している形です。
 どの世論調査でも、法案の「今国会成立反対」は6割前後で、「賛成」の2〜3倍に達しています(グラフ)。政府の説明が「不十分」との声も8割超で、高止まりのまま。「憲法違反」との指摘も半数に達している調査結果が多く、「(国民の)理解が進んできた」(13日、安倍晋三首相)といえる根拠など一つもありません。

審議に不可欠な情報も開示せず
 菅官房長官は14日の会見で「引き続き、懇切丁寧に(国会に)説明する」などと述べています。
 しかし、国会審議の前提となる資料提供をめぐるこの間の政府のやり方は、国会軽視の態度そのものです。
 国会から提出を求めている統一見解のうち、14日時点で26件中11件が未提出。関連資料も26件中12件が提出されていません。
 審議に不可欠な情報を隠し、最低限の情報開示すら怠っています。日本共産党の穀田恵二議員は10日の委員会で、陸上自衛隊イラク派兵の実態を克明に記録した文書がありながら、政府が国会議員の資料要求に対しては黒塗り≠ナ提出していることを指摘。黒塗り≠解除した文書の提出にいまだ応じていません。
 14日の審議強行で、総審議時間は106時間52分(野党欠席時間除く)になりました。しかし、どんなに審議時間を重ねても違憲の戦争法案は「合憲」にはなりません。6日に沖縄県と埼玉県で行われた地方参考人会では、与党推薦の参考人からも慎重な審議を求める意見(沖縄)や「まだまだ議論が必要なのは明らか」(埼玉)などの意見が相次ぎました。ただすべき論点は山積しています。
(
2015年07月15日,
「赤旗」)

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戦争法案採決は論外/その1/違憲明白、廃案以外道なし

 政府・与党は戦争法案の15日採決に向け、強硬姿勢を強めています。しかし、審議すればするほど法案の違憲性は明確になり、反対・慎重審議を求める世論が急増しています。どこをどう見ても採決の環境は整っておらず、廃案以外に道はありません。

 「憲法違反」「違憲の疑い」―。戦争法案を審議する衆院安保法制特別委員会や衆院憲法審査会で、多くの参考人がこう指摘しました。5月26日の審議入り以来、二つの違憲性が浮かび上がっています。

海外での武力行使/否定する政府の論拠は崩壊
 戦争法案は、従来の海外派兵法にあった地理的な制約を外し、「戦闘地域」まで踏み込んで米軍への補給・輸送などの支援を行うことが大きな柱です。
 安倍晋三首相は、こうした活動は憲法で禁じる「海外での武力行使」に当たらないと説明してきましたが、この論拠は総崩れになっています。首相は、補給や輸送などは武力行使とは異なる「後方支援」であると説明します。これに対して日本共産党の志位和夫委員長は6月17日の党首討論で、これらの活動は武力行使と一体不可分の「兵たん」活動であり、国際法上も攻撃目標になると指摘。首相は、「後方支援」は「国際法上の概念ではない」と認めました。
 「自己保存(正当防衛)のための武器使用」についてはどうか。日本共産党の穀田恵二議員は10日の衆院安保法制特別委員会で、イラク派兵の教訓と経験を記した自衛隊の内部文書を暴露。相手が発砲していなくても「危ないと思ったら撃て」との指導までされていたことをあげ、「自己保存」の武器使用など通用しない状況だったと指摘しました。
 それでも、従来の派兵法では自衛隊の活動を「非戦闘地域」に限るという枠組みがありました。戦争法案ではこれを撤廃し、「戦闘地域」でも活動を可能にしています。これについて大森政輔・元内閣法制局長官は「『非戦闘地域』は、憲法上禁じている『他国の武力行使との一体化』に関する判断を、現場の自衛官にさせないために設けた。これをなくすのは非常に危険だ」と指摘しています。(13日の記者会見)

集団的自衛権行使/政府、合憲性の説明不能に
 多くの憲法学者が、集団的自衛権の行使を容認している戦争法案を「違憲」だと断じています。その最大の根拠は、「集団的自衛権の行使は憲法上許されない」としてきた過去の政府見解との「論理的整合性」が全く説明できていないという点です。
 「整合性」をとるために政府・自民党が持ち出したのは、1959年の砂川最高裁判決です。ただ、同判決は「自衛の措置」に言及してはいますが、旧日米安保条約の下での米軍駐留の合憲性を認めたのが趣旨です。「集団的自衛権の合憲性を射程範囲内としていないことは法曹界、憲法学会で全く異論がない」(前出の大森氏)ものです。
 そもそも、「自衛の措置」に集団的自衛権を含めること自体が誤りです。宮崎礼壹(れいいち)元内閣法制局長官は、「集団的自衛権の本質は『他国防衛』だ。自衛権という名前こそついているが、自国への直接の侵略という意味の自衛とは異質の概念だ」と指摘しています。(6月22日、衆院安保特)
 もう一つは、72年政府見解の改変です。同見解は「国の存立を全うする」ための「自衛の措置」を認めていますが、集団的自衛権の行使は「憲法上、許されない」と結論づけています。
 安倍政権は「安全保障環境が根本的に変容」(6月9日の見解)したとして、「国の存立を全うする」ために集団的自衛権の行使が必要な場合もある、と説明しています。
 これに関して日本共産党の宮本徹議員、赤嶺政賢議員が衆院安保特で、「安全保障環境がどう変容したのか」と相次いで質問しました。これは法案提出の根本的な動機(立法事実)に関わる問題ですが、政府は何一つ、具体的な事例を示すことができませんでした。
(
2015年07月15日,
「赤旗」)

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戦争法案採決は論外/説明不足の論点80個超/明日の自由を守る若手弁護士の会倉持麟太郎さん

 私はさいたま市での衆院安保法制特別委員会(6日)に参考人として出席し、これまでの国会審議で議論されていない論点が40個以上もあると指摘しました。その後も、全く触れられていない論点、説明不十分な論点を調べてリストを作っていますが、その数は80個以上にものぼっています。
 こうしたなかで採決すれば、違憲である法案内容とともに手続き面でも民主的正当性を欠くことになります。
 安倍首相からはまともに説明する姿勢は見えません。「夏までの法案成立」という米国との約束重視、国民と法の支配の軽視であり、権力者としての節度が欠如しています。
(
2015年07月15日,
「赤旗」)

 

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【放送90年】

放送90年/歴史と課題/テレビとともに/黒柳徹子さん/1/戦争のこと必ず伺って

「徹子の部屋」生感覚で1万回
 テレビ女優第1号として、草創期からレギュラー番組を持ち続けている黒柳徹子さん。「徹子の部屋」は5月の放送で1万回を超え、ギネス世界記録に認定されました。日本で放送が始まって90年の今年、テレビとともに歩んだ道のりを語ってもらいました。
 (和田肇)

 ちょうど40年、「徹子の部屋」(テレビ朝日、1976年〜)をやってきました。その間、1万人のゲストが、何回も来られている方がいらっしゃるにしても、当日休まれた方が一人もいらっしゃらなかったんです。本当にありがたいと思います。
 それからスタッフ。生放送と同じように、編集で切ったりしないという形で番組を作っていますので、事前にゲストとスタッフが打ち合わせをしていないといけません。スタッフが全く変わらず、熱心に打ち合わせをしてくれていることにも感謝しています。
 ただ40年のうちに、私と仲の良かったお友達がかなり亡くなってしまったのは残念です。追悼番組を放送するとき、こんなにたくさんの方が亡くなったのか…と。そういうこともありますけど、勉強もいっぱいしたし、人間ってすごいなと思うこともありました。すてきな40年だったと思います。

戦中戦後の大スターも
 何を質問するか、事前に決めているわけではありません。その日の着物であったり、様子であったり、その日にならないと分からないことってあるじゃないですか。
 だけど、絶対に聞いておこうというのはあります。戦争のことがそうです。どんどん戦争をご存じの方が亡くなっているので、とにかく伺っておこうと思っています。先日は野村昭子さん(88歳、6月23日放送)に伺いました。終戦の日、東京の街を歩く中で重要書類を燃やしているところを見たそうです。野村さんは私よりちょっと年上なのね。だから戦争のこともちょっと詳しい。
 戦中戦後の大スターからも聞いています。長谷川一夫さんとか池部良さんとか。二枚目で、戦争とは無関係のような役をおやりになっていたのに、実はみんな、ものすごい体験をお持ちでした。
 池部さんは初め、「話なんてない」とスタッフに言ってらしたんです。でも何かあるでしょうと聞いてみました。戦争中、20歳ちょっとで兵隊に行っていた。将校で20人くらいの部下がいたんですって。高峰秀子さんから慰問袋が来て、上官から殴られたそうです。「有名女優から慰問袋をもらうなんてなんだ」と。顔が曲がるぐらい殴られたって話でした。
 終戦の時どこにいらしたんですか、と伺ったら「太平洋の真ん中にいた」って。乗っていた輸送船が撃沈されて、みんなが海に飛び込む中で甲板に出てみたら部下20人がいた。「待っていることなんてなかったのに」と言ったら「いえ待っていました」と。そして重い刀を置いて、落ちていたピストルを腰に差して「行くぞ」と海に飛び込んだ。もうだめかと思いながら泳いでいると、年上の部下の一人が「上官殿、刀を持っております」。置いてきた刀を持っていてくれた。「その時、僕は泣いたよ」って。その後、南方の島で日本兵の餓死死体を見たり、ミミズを食べたりして森林を逃げのびたり。しゃれた映画スターが、そんな苦しい思いを持っているなんて夢にも思いませんでした。
 銀幕の大スターの長谷川一夫さんなんて、戦争の話なんてないと思っていたんです。そうしたらいい話をしてくださいました。
 同じ部隊に、人を「さん」付けで呼ぶ要領の悪い人がいて、その人のおかげでみんながビンタされたりした。長谷川さんもダメだなって思って教えたりしたんですって。
 ある時、縄を持ってこいと命令された。縄なんてないから、わらで縄をなうのだけど、長谷川さんはやったことがない。どうしようと思っていたら、その人がものすごく上手だった。だから「君の分が終わったら僕にも」と話しかけました。そしたら、「これ長谷川さんのよ」と言ってくれたんですって。
 見下していた相手が自分のために縄を作ってくれたと。長谷川さんね、泣いていらっしゃいました。何十年もたっているのに。どんな方にも話があるんだと思いました。戦争の話が聞けたのは、番組をやっていて本当によかったことです。

永久的平和得られたら
 私はそんなに政治的発言とかはしていないですけれど、やっぱり平和がどんなに大事かということはいつも話すようにしています。
 私がNHKに入ってすぐのとき、アメリカのNBCテレビからテッド・アレグレッティーさんが技術指導で来ていました。その時「テレビは今世紀最も大きなメディアになるだろう。国が良くなるのも悪くなるのも、テレビによってだと思う。テレビをうまく使えば、永久的平和をもたらすと思う」と講演されました。
 永久的平和がテレビによって得られるんだったら、とてもすばらしいことです。日本は戦後70年、戦争をしないできました。これから先も、みんなが平和でいられるように。若くて戦死した人たちの命がどんなにもったいなかったか。そういうことを考えますと、とにかく戦争をしない。お願いですから、ずーっとこのまんま、平和でいられるように。みんながそう思えば、そうなるんじゃないかと思います。

 連載「放送90年 歴史と課題」は、4月4、11日付に放送作家の石井彰さん、同22、30日付にジャーナリストの吉永春子さんが登場しています。
(
2015年07月12日,
「赤旗」)

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放送90年/歴史と課題/テレビとともに/黒柳徹子さん/2/クイズ番組で歴史学ぶ

 「世界ふしぎ発見!」(TBS、1986年〜)に出るまで、クイズ番組に出たことがないんです。クイズっていうのは、できないと頭が悪いんじゃないの≠チて思われちゃう可能性があるので。私ちょっと常識的なこと…例えば10円玉の裏に何がかいてあるかなんて分からない。だから出ないできたのね。

それらしい3択が苦手
 そうしたら「ふしぎ発見」のプロデューサーが「これはみんなで勉強していく番組です。知っているからできるという問題じゃないんです」と。私、学校で歴史と地理をちゃんとやってこなかったものだから、勉強できるならいいなと。それで事前にテーマだけ教えてください、勉強しますからって言ったら、教えるというので引き受けました。
 いざやってみたら結構できたんです。そうしたらスタッフがテーマを漠然としか教えなくなってきた。「クリミア戦争」とかって。範囲が広すぎて勉強のしようがない。仕方がないのでナイチンゲールのことを勉強したんです。そうしたら、当日スタジオの入り口に「ナイチンゲール」とお題が張ってあった。ラッキーでした。
 ところが最近ね、彼らは私の弱みを見つけたの。私、3択に弱いんです。スタッフの作ったうその答えにすぐ乗ってしまう。おかげでパーフェクトがすごく減ったんです。
 でもクイズのおかげで本もたくさん読んで、頭の中で点になっていた歴史がつながってきました。私、マリー・アントワネットとモーツァルトの時代の音楽を音楽学校の卒論にしたから、その2人については詳しかったんですけど、後は歴史のことは何も知らなかったんです。番組に出て、だんだん縦糸と横糸がつながるように、少しずつ分かってきました。30年やってきてよかったと思います。

音楽番組で質問されて
 TBSでは「ザ・ベストテン」(78〜89年)という音楽番組の司会もしてきました。歌番組ですが、8月に広島から中継で原爆の話をしたりしました。
 差別についても話しました。ラッツ&スターがまだシャネルズと言っていたころ、子どもが「どうして黒人のくせに香水の名前をつけているんですか」と質問したんです。
 私は「『黒人のくせに』というのは人を傷つける言葉です。外見で『何々のくせに』と言うのはやめてください」と話しました。横にいた久米宏さんが「黒柳さんが泣いているから、もうやめてくださいね」と言ってくれたのを覚えています。
 (つづく)
(
2015年07月14日,
「赤旗」)

【GoToTop】

放送90年/歴史と課題/テレビとともに/黒柳徹子さん/3/手を取り合い番組づくり

 1953年にテレビの放送が始まる前に、私はNHKの放送劇団に入って養成されていました。テレビ女優の第1号なんですけど、絵本を読めるお母さんになりたくて入ったんです。そのころ、だいたいの家にテレビはありませんでした。当時の値段は25万円くらい。大学出たての人のお給料が、ひと月9千円から1万円くらいでしたから。
 私が子ども番組の司会をやることになったとき、父と母と、NHKの向かいにある喫茶店で待ち合わせしたんです。そのお店にはテレビがあったので。放送を終えて、母に「どうだった」と聞いたら「うーん、よかったわよ。だけどあなたどうしてキツネのお面をかぶっていたの」。お面なんかかぶっていない。そう言ったら「あーら、かぶってたわよ」。
 考えてみたら、当時のテレビはひどく画像が悪かった。走査線という線がはっきり横に走っているので、目や口が切れ長になり、鼻は前に飛び出し、髪の毛のコントラストが強く、なんだかキツネのように映ったんですね。

初めてだから「命がけ」
 よかったのは、スタッフも出演者も、みんなが初めてのことだから命がけでやっていたということです。一心同体にならないと、30分の番組が終わりまでたどりつけません。森繁久彌さんや森光子さん、沢村貞子さんといった先輩の方々と、よーいドンで手を取り合って走りました。上下関係なく、森繁さん、と呼びながらお友達のようにしてきました。
 初めのころ、「終」と書いた紙がスタジオのあちこちに落ちていました。もうこれ以上続けられないというとき、誰かが「終」をカメラに出す。「しばらくお待ちください」となって番組が終わるんです。
 森繁さんが刑事役で左卜全さんが死体役、私が娘役というドラマがありました。棺桶(かんおけ)に入っている左さんを前に森繁さんが推理するのですが、途中で左さんが終わったと思って棺桶から出て行っちゃった。で、次に棺桶が映ったら「死体がない」。スリラーじゃないんですから。いくら森繁さんが上手にやろうと思ってもダメで。「終」を出しました。
 にっちもさっちもいかないというのをいっぱい見ました。みんな死に物狂いで、夜も寝ないでリハーサルをやったのに。その後、民放が当時の失敗を集めたようなドラマを作りましたけれど…。みんな必死で放送を成り立たせようとやっていたのを、芝居にするとわざとらしくなっちゃう。面白くなかったです。

特別賞受賞、非常に名誉
 そうしてテレビの第一線でやってきたことを評価されて、2010年に日本女性放送者懇談会から40周年特別賞をいただけたのは、非常に名誉なことでした。女性は厳しいですからね。
 (つづく)
(
2015年07月15日,
「赤旗」)

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放送90年/歴史と課題/テレビとともに/黒柳徹子さん/4/テレビは無くならない

 個性が強いから、とテレビが始まった1953年の1年間、テレビもラジオも降ろされていた時期がありました。要するに演出家から、声が目立つ、しゃべり方が変わっている、早い、なんて毎日言われたんです。しまいにはスタジオに行くと「来ちゃったの」と言われて…。

大事な個性生かす演技
 次の年の54年。ラジオドラマ「ヤン坊ニン坊トン坊」でNHK初めてのオーディションがありました。子どもの男の子の声をおとなの女の人がやるというのは、今では当たり前ですけれど、当時誰もやっていなかったんです。原作者の劇作家・飯沢匡(ただす)先生が、子どもが演じると新しい歌もあるし、ナマだし、スタジオで宿題をやっているのを見るのもふびんだと。おとなの女の人で男の子の声が出る俳優が絶対いるにちがいないとお考えになったんです。
 私はトン坊に受かりました。初めて飯沢先生にお会いしたとき、言いました。「私、みんなに個性が邪魔と言われているので、なるたけ個性は無くすようにします。日本語もちゃんとしゃべります」
 そうしたら飯沢先生はね、「いや君の個性が欲しいんです。変えちゃいけませんよ。そのままでいてください」とおっしゃったんです。そのころ、NHKに職員が2千人くらいいたかもしれないけれど、誰も私にそんなこと言ってくれなかった。あのとき先生に会っていなかったら、何をやっても間違っているとかいけないとか変だとか言われて、きっとどうしていいか分からない人になっていたでしょう。誰か一人でも、自分を認めてくれる人を見つけること。これはとても大事です。
 「赤旗」といえば、日曜版に連載をしていたんですよ(1975〜78年「黒柳徹子の一生懸命対談」)。あのころ、「赤旗」にはあんまり芸能人が出ていなかったでしょ。私がお願いしたら、渥美清さんとか高倉健さんとか、対談に出てくださいました。そのとき記者の方が「芸能人って僕たちと一緒なんですね」って。芸能人は偉そうだと考えていたのかも。一流といわれる人ほど人間的だと、私は思っています。

物に対する関心が大切
 テレビは絶対にいい物を放送しなきゃだめです。テレビを見て、ほお〜っ、こんなことあるんだ、っていう番組を。ドキュメンタリーでもなんでも、テレビから吸収できるいい物があれば、テレビは無くならない。
 「徹子の部屋」50年まで、あと10年はテレビに出ようと思っています。それから先、100歳まで仕事ができたらね、芝居でも映画でも、なんでもできる物をやりたい。やっぱり、物に対する関心を失わないのが大切なことだと思います。
 (おわり)
(
2015年07月17日,
「赤旗」)

 

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芸能テレビ/問い直す戦後70年/その1/映画/この夏じっくり考えたい

 終戦70年のこの夏、戦争を問い直す映画の新作公開や再上映が相次ぎます。いくつか紹介します。

 【新作】
 ▽「野火」(塚本晋也監督)戦争文学の代表作、大岡昇平の同名小説を、監督自身が主役で映画化しました。太平洋戦争末期のフィリピン・レイテ島。結核を患う田村1等兵(塚本)は所属部隊からも野戦病院からも追い出され、ジャングルをさまよいます。孤独と飢え、人間性を失っていく敗走兵たちの惨状を描きます。(25日から東京・ユーロスペースほか順次全国で。87分)
 ▽「ひとりひとりの戦場 最後の零戦パイロット」(楠山忠之監督)ドキュメンタリー。8月で99歳になる原田要さんが、ゼロ戦に搭乗した戦場体験を証言。現在、幼稚園を経営し、「戦争をとめられるのはお母さんの心」と語ります。真珠湾攻撃で不時着したパイロットの消息、初の東京空襲なども追跡。(8月15日から東京・ユーロスペースほか順次全国で。117分)
 ▽「筑波海軍航空隊」(若月治監督)茨城県友部町(現笠間市)にあった同航空隊から沖縄戦に出撃した特攻隊員を描くドキュメンタリー。出陣学徒を速成で教育訓練し60人の学生が犠牲に。元特攻隊員の「よくぞ戦争なぞ起こしたなと、本当にそう思いますね」という言葉が重い。航空隊の旧司令部庁舎を保存し戦争記録を伝える市民の取り組みも紹介。(8月1日から東京・ヒューマントラストシネマ有楽町ほか順次全国で。99分)
【日本で初の劇場公開】
 ▽「天皇と軍隊」(渡辺謙一監督)2009年、フランスで制作されたドキュメンタリー。憲法9条と自衛隊との矛盾、主権在民と天皇制との矛盾など、戦後政治の根本問題を証言などで明らかにします。歴史家のジョン・ダワー、憲法学者の樋口陽一、「九条の会」事務局長の小森陽一各氏も登場しています。(8月8日から東京・ポレポレ東中野ほか順次全国で。90分)
 【再上映】
 ▽「黒木和雄監督4作品+α一挙上映 戦争レクイエム」井上ひさし原作の話題作「父と暮せば」(04年、99分)をはじめ、「TOMORROW/明日」(1988年、105分)、「美しい夏キリシマ」(02年、118分)、「紙屋悦子の青春」(06年、113分)など。(8月1日〜21日、東京・岩波ホール)
 ▽「蟻の兵隊」(池谷薫監督)06年制作のドキュメンタリー。中国山西省の残留日本兵を捉えた注目作。(31日まで東京・ポレポレ東中野で上映中。101分)
 ▽「人間の條件」(小林正樹監督、仲代達矢主演)全6部作(59年〜61年)一挙上映。(8月1日〜7日。東京・丸の内ピカデリー2)
 ◇
 新作「ソ満国境 15歳の夏」(8月1日公開)などは別途紹介します。
(
2015年07月26日,「赤旗」)

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芸能テレビ/問い直す戦後70年/その2/TV/原爆、特攻、従軍看護婦…

 8月放送のNHK・民放の「戦争・原爆」をテーマにした主な番組を紹介します。
 [NHKスペシャル]
 ▽「きのこ雲の下で何が起きていたか」(6日、後7・30)原爆投下直後の広島。2枚の記録写真を、被爆者の証言をもとに立体映像化。
 ▽「特攻〜なぜ拡大し続けたのか」(8日、後10・0)新たな発掘資料などから軍部の意思決定のプロセスを追います。
 ▽「あの子≠訪ねて〜長崎・山里小学校 被爆者の70年」(9日、後9・0)長崎原爆の被爆体験を手記にした37人の子どもたちの足跡をたどります。長崎放送局制作。
 ▽アニメドキュメント「あの日、僕らは戦場で〜少年兵の告白」(11日、後7・30)元少年兵たちの証言や未公開の資料から、子どもが戦争に利用されていった歴史を伝えます。
 ▽「女たちの太平洋戦争〜日赤報告書が語る戦場の現実」(13日、後10・0)アジア・太平洋に派遣された3万人もの「従軍看護婦」。200冊の業務報告書と証言から戦争の実像を描きます。
 [NHKドラマ]
 ▽「一番電車が走った」(10日、後7・30)被爆から3日後に広島の街を走った路面電車の実話をもとにドラマ化。出演・阿部寛ほか。
 [Eテレ]
 ▽「知的障害者30人の戦中戦後記」(19、20日、後8・0)伊豆大島の施設を軍に追い出され、山梨に疎開した30人の知的障害者。1年余で10人の命が消えました。
 ▽「戦争と障害者/ナチスは何を行ったのか」(25、26日、3回目は未定、後8・0)20万人以上の障害者や遺伝病患者を強制断種、虐殺したドイツを日本の障害者運動のリーダーが訪ねます。
 [民放]
 ▽「いしぶみ〜忘れない。あなたたちのことを」(日本系、1日、後1・30)1969年放送の原爆ドキュメンタリーを是枝裕和がリメーク。
 ▽「レッドクロス〜女たちの赤紙」(TBS系、1、2日、後9・0)赤紙を受け取って戦場に赴いた従軍看護婦(松嶋菜々子)の目を通し、戦地の実像に迫ります。
 ▽「教科書で学べない戦争」(日本系、4日、後9・0)櫻井翔と池上彰が、パプアニューギニア・ラバウルで、朽ちたゼロ戦や遺骨を捜索、元特攻隊員を取材します。
 ▽「私の街も戦場だったU」(TBS系、15日、時間未定)戦争を知らない世代の著名人が、家族の歴史をひもときます。ゲストは瀬戸内寂聴。
 ▽「私たちに戦争を教えてください」(フジ系、15日、時間未定)5人の若手俳優(小栗旬、松坂桃李、福士蒼汰、有村架純、広瀬すず)が元兵士らを訪ねます。
 ▽「妻と飛んだ特攻兵」(朝日系、16日、後9・0)終戦から4日後、旧満州の飛行場から特攻隊員の夫(成宮寛貴)と共に戦闘機で飛び立った妻(堀北真希)の実話をもとにドラマ化。
 [日本系ドキュメント15]▽「『平和宣言』70年」(2日)、「封印された不法妊娠」(9日)、「海の記憶 父からの伝言」(16日)、「樺太に散った北のひめゆり=v(30日)
(
2015年07月26日,「赤旗」)

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試写室/玉音放送を作った男たち/NHKプレ8月1日後7・30/狂気と未来への希望が交錯

 1945年8月14日、日本はポツダム宣言を受諾、降伏。その内容を国民に伝える昭和天皇の詔書を翌15日、天皇自身がラジオで朗読(玉音放送)するまでを描きます。脚本、演出・佐藤善木。
 主人公は下村宏(柄本明)。朝日新聞副社長、日本放送協会会長を歴任するなど多彩な経歴の持ち主です。終戦の年の4月、鈴木貫太郎首相(上田耕一)に請われ、内閣情報局総裁として入閣します。任務は絶望的な戦争を終結することです。下村は、そのためにも天皇のラジオ出演が不可欠と訴え、実現にこぎつけます。本土決戦を叫び、放送を阻止しようとする畑中少佐(高橋一生)ら反乱軍との緊迫の対峙(たいじ)。狂気と、未来への希望が交錯します。
 戦争は終えることがいかに難しいかがわかります。しかし天皇も含めた戦争指導者が、なぜ終結の決断を引き延ばし、多くの国民を死に追いやったのか、そこへの切り込みは弱い。さらにラジオ=日本放送協会が戦争で果たした役割への批判はうかがえますが、自己反省までには行き着きません。戦後70年。何が戦争という狂気を生んだのか、描くべきことは多い。
 (荻野谷正博 ライター)
(
2015年07月31日,「赤旗」)

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政権寄りNHKに疑問・批判/広がる視聴者運動/新たに埼玉・愛知で「会」

 NHKの政権寄り報道に疑問や批判が集まるなか、新たな視聴者運動が各地で動きだしています。今月17日にはさいたま市で「NHK問題を考える会・さいたま」が、26日には名古屋市で「NHKを考える東海の会」が発足。いずれも座席が足りなくなるほどの参加者で、怒りあふれる発言が目立ちました。
 (和田肇)

 約70人が集まったさいたま市。主催者は「独裁的な国会運営の安倍政権に、NHKは取り込まれたような報道だ。放送法にのっとった報道をさせよう」と力を込めます。
 元NHKプロデューサーの永田浩三さんが講演。参加者からは「政府報道の垂れ流しだ」といった怒りや、「北風の中にいるNHK内の良心的な人に、応援の声を届けよう」など熱心な声が相次ぎました。

国策放送ノー
 事務局長の山中静夫さんは「公共放送NHKを国策放送にさせてはいけません。安保法制反対のデモや集会などに出向いて、会への参加を呼び掛けてきました」と語りました。
 東海の会には約90人が参加。代表に選ばれた池住義憲・元立教大学教授は、民主主義のためにはメディアが有権者に正確な情報を与えなければならないと指摘。「NHKがどういう放送をすべきか、東海の会でもよくウオッチし、考えていこう」と訴えました。
 講演は元NHK社会部記者で名古屋放送局副局長も務めた大木圭之介さん。参加者からはNHKの戦争報道への疑問や受信料への不満が出ました。
 大木さんは、各地の「会」が地元のNHK地方局へ働き掛け「地方局が自分たちに近いメディアになるよう考えてみたらどうか」と助言しました。

声を届けよう
 籾井(もみい)勝人会長が誕生した昨年1月以来、「NHKを考える会」が新しく北は秋田から南は屋久島(鹿児島)まで、11カ所で誕生しました。25年前に発足した「放送を語る会」や、ETV番組改変事件(2001年)をきっかけにできた「NHK問題京都連絡会」(05年)などを含め、20近い視聴者団体が活動しています。いずれも「視聴者の声を放送局に届けよう。よい番組に激励を。問題点は抗議を」が方針の一つ。元NHK職員も積極的にかかわるようになっています。
 京都連絡会の長谷川長昭事務局長は「視聴者運動は、欧米では当然でしたが日本では欠けていました。メディアを支配する安倍政権の危機的状況の中で、機運が盛り上がっています」。さらに「権力を監視するのはメディアですが、メディアが責任を果たしているかを監視するのは視聴者の役割です」と強調しました。
(
2015年07月31日,「赤旗」)

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試写室/一路/NHKプレ31日後8・0/孤立無援、捨て身の参勤交代劇

 一路(永山絢斗)は19歳、参勤交代行列を差配する「道中御供頭」役小野寺家の嫡男。突如、急死した父に代わって、江戸行軍の指揮を命じられた。だが作法は何一つ知らない。叔父・小野寺惣十郎(梶原善)は経験豊富なのだが見て見ぬふり。孤立無援、出立の日は刻々と迫っていた。
 原作・浅田次郎、脚本・渡邉睦月、演出・石原興ほか。全9回。
 殿は西美濃7千5百石の旗本・蒔坂左京大夫(渡辺大)。後見人・蒔坂将監(佐野史郎)は参勤交代に乗じて、お家乗っ取りの陰謀を企んでいた。
 一路は、先祖が眠る浄願寺で住職・空澄(上條恒彦)に出会い、父の遺言だという祖先伝来の「行軍録」を手渡された。古式ゆかしい参勤交代の決まり事を綴った家宝だった。
 中山道をゆく旅程は12日間、1日たりとも江戸入りが遅れれば徳川家への反逆とみなされお家断絶の厳罰。一路は、許嫁とも別れ、60人の陣容の先頭に立つ。
 次々に襲い掛かる困難に立ち向かう一路の捨て身の生きざまがいい。戦のなかった徳川幕府265年、おもしろくてためになる時代絵巻となりそうだ。
 (鶴岡征雄 作家)
(
2015年07月30日,「赤旗」)

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レーダー/NHK「ニッポンの肖像〜政治の模索」/対米従属、金権腐敗の「戦後保守」に切り込まず

 NHKスペシャルは18、19日、「戦後70年・ニッポンの肖像〜政治の模索」を放送しました。与党が戦争法案衆院通過を強行採決した直後でしたが、番組は戦争法案とはいわば無関係の戦後保守政治の概括という内容でした。
 第1夜は、戦後政治が保守の二大路線の「せめぎ合い」だったという説明です。「安全保障は米国に任せ、まず国民の豊かさを追求する=吉田茂」と「国家としての自立℃タ現を最優先する=岸信介」の2人の首相に代表される―という図式でした。
 しかしこの構図の強調は、戦後保守政治の本質をあいまいにしかねません。吉田は1951年の日米安保条約締結に示されるように、日本国民の真の独立に背を向け、国民生活全体を対米従属下に押し込めました。
 また1960年の安保改定の本質を見るならば、岸を「国家自立」の枠で描くことの不正確さは明らかです。安保改定が日米共同作戦を義務付け、経済での対米協力を定めたことに示されるように、岸は自立とは対極の対米従属路線を敷いた政治家です。
 第2夜は、1970年代以降の政治について田中首相時代(1972〜74年)を強調することから始まります。特に田中政治を「高度成長の成果を地方に分配する」という高い評価でまとめようとするものでした。
 しかし「日本列島改造」を軸とする田中政治が、大企業・ゼネコン奉仕であったこと、そのなかで金権腐敗の土壌をつくったことは明らかなのに、番組はこの面にはほとんど目を向けません。
 田中が提唱して挫折し、90年代に強引に導入された小選挙区制をどうとらえたか。コメンテーターは「中選挙区で、自民が3人出ても政策は同じだ」と小選挙区制を後押し。番組としても、民意が議席に反映しないこの制度への批判的分析はありませんでした。
 全体として見れば、「対米関係の従属性」への切り込みなし、自民政治の特徴である金権腐敗に目をつぶり、小選挙区制の当然視―。戦後政治の視点としてはきわめて妥当性を欠くもので、保守政治をおさらいしたという印象だけが強く残りました。
 (雄)
(
2015年07月29日,「赤旗」)

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テレビ時評/NHKの政治報道に物申す/NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ共同代表醍醐聡

 安保法案に関する最近のNHKのニュース解説の異常さに唖然(あぜん)としています。安倍政権に不都合な事実は伝えない、国会審議の中身をまともに伝えず、独自の調査報道もせず、安倍首相の心中の代弁、審議の出口に焦点を当てる解説があまりに多いからです。
 7月15日の「ニュース7」に登場した政治部A記者は、この日、与党が採決を強行した理由を聞かれ、「60日ルールに保険を掛ける意味があった」と語りました。その後、番組は「これで法案は今国会で成立する見通しになった」と伝えました。

放送法に違反
 「60日ルール」とは参議院で法案が60日以内に採決されない場合、衆議院で3分の2の賛成で再可決すれば法案は成立するという決まりのことです。しかし、野党が結束して参院での徹底審議を求めているさなかに、衆院通過で法案は決まりかのような解説をするのは、「政治的に公平であること」を求めた「放送法」第4条に違反する偏向解説ではありませんか?
 さらに驚いたのは、その日の「ニュースウオッチ9」に登場したB記者が、国民の理解が進んでいない中で与党が採決に踏み切った理由を聞かれ、安倍首相が米議会で夏までに法案を成立させると演説したことが「対米公約」となっているからだと解説したことでした。
 まだ国会審議も始まっていない時期に、安倍首相が米議会で演説したことを「対米公約」と持ち上げ、国会の審議日程を制約するかのような解説をするのは、立憲主義を冒涜(ぼうとく)するものです。
 24日の「クローズアップ現代」に登場したC記者は、衆院の質疑は「入り口の憲法論議」が多く、並行線で終わったと解説しました。そうでしょうか?
 違憲なら、法案を提出した政府の立法行為自体が違法・無効となりますから、国谷キャスターが指摘したように、「憲法論は根本的で本質的な論点」です。
 しかも、衆院の質疑は法律論で終わったわけではありません。日本共産党の本村伸子議員は、「後方支援活動」の一部として法案が認める弾薬、発進準備中の米軍等の戦闘機への給油は武力行使との一体化にほかならず、憲法に違反すると追及しました。
 これに対する中谷防衛相の答弁は、空中給油は日本の主体的な運用で行うから一体化ではないという、木を見て森を見ないものでした。

国策放送の道
 また日本共産党・穀田恵二議員は陸上自衛隊がまとめたイラク復興支援行動の総括文書をもとに、派遣前に隊員は各種の射撃訓練をしていた、「危険と思ったら撃て」と指導した指揮官が多かったなどを挙げ、今回の法案で自衛隊の任務を治安維持活動等にまで広げると、隊員が殺し合いの武力衝突に巻き込まれる危険がいっそう高まるとただしました。
 しかし、安倍首相の答弁は、「サマワから外れた場所にも安全な場所がある」という意味不明のものでした。
 こうした質疑の内容を伝えず、まるで「引き分け」かのように解説するのは、窮地に立たされた政府に不都合な実態にふたをするものではありませんか?
 以上のような事実を辿(たど)ると、NHKの国策放送化の「主犯」は政治部であると思えます。
 (だいご・さとし)
(
2015年07月28日,「赤旗」)

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まど/創価学会員の思い

 「理解できない」のは与党支持者も例外ではないようです。
 ○…公明党の北側一雄副代表が戦争法案について、NHK討論で「国民の理解が深まるよう全力で努めていきたい」とのべた19日、北側氏の地元大阪では「戦争法案、絶対廃案」「国民なめんな」の声が響きました。御堂筋の8200人にふくれあがったデモのなかに、宗教団体・創価学会の三色旗を表すプラカードを持った人たちの姿がありました。
 ○…和歌山県岩出市から家族を連れて参加した男性(54)=建設業=の手には、「バイバイ公明党」のプラカードが。創価学会員だという男性は、「今まで公明党を応援してきたが、もうやめる」と話します。選挙のたびに友人・知人らに「平和の党」を掲げる公明党の支援を呼びかけてきたという男性。「今回、法案に賛成したのはどうしても納得できない。公明党は支援者の声を聞いていない」と語気を強めました。
 ○…生まれたときから創価学会員だという男性(42)=大阪市・飲食業=は語りました。
「池田(大作)先生の教えは戦争反対■創価学会の理念は『平和』なんです。この法案は理念に反している。僕らは、平和の理念を守るためにたたかっているだけ」。北側氏らに、この声は、どう届くのか。
 (笹)
(
2015年07月27日,「赤旗」)

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潮流

 70年以上も前の放送の実際を筆者は知るわけではありませんが当時、NHKは大本営発表を流し、戦意高揚をあおりました。負けて撤退しているのを「転進」とアナウンス、全滅を「玉砕」と言い換えて、国民に「挙って国防」をすりこんだのです▼いま、NHKはその道を再び歩もうとしてはいないか。夜7時や9時のニュースを見ているとそんな気配すら感じます。戦争法案の必要性を一方的に主張する安倍首相を前面に押し出しています▼政権への後方支援≠煬かしません。「平和と国民の安全のために」とアピール。「今国会で成立の公算大きい」とたたみかけます。「安全保障を担う」として自衛隊特集を連打。派兵を想定しての実戦訓練や覚悟を強調します▼NHKは「国民の理解が少ない」と繰り返しますが、国民の間では理解が進み、知れば知るほど「戦争法案を評価しない」の意見が広がっています。NHKの世論調査では61%にもなりました▼政治報道への批判は鳴りやみません。NHK問題を考える市民の会も次々にできて、7月には埼玉と名古屋で結成。さらに新しい動きが加わろうとしています。関東在住の30代の女性がNHKへの抗議行動を呼びかけました▼きょうから参議院で論戦が始まります。衆議院の委員会中継をしなかったNHKには抗議が殺到。翌日、苦情の声に押されて急きょ、法案採決の本会議を生放送した、てん末があります。公共放送をただそうと国民の厳しい目が注がれています。
(
2015年07月27日,「赤旗」)

【GoToTop】

 

【6月】

*          芸能テレビ/ラジオ放送90年/声優若山弦蔵さん/82歳の現役DJ/僕の声でぬくもり届けたい

*          NHK経営委員と語る会/籾井会長への抗議やまず/罷免しない経営委にも批判/宇都宮

*          NHK/政権追随に高まる批判/早大教授(会社法)上村達男さん/武蔵大学教授永田浩三さん

*          翁長知事と首相・官房長官会談/テレビはどう伝えたか/「放送を語る会」報告書から

*          放送ライブラリー戦後70年企画/番組上映会・公開セミナー「テレビが伝えた沖縄戦の傷痕」

*          自民党の報道干渉は違憲/「放送の自律」が基本原則/放送法制定の経緯から検証/松田浩

*          安倍政権とテレビ/圧力許さない/5/NHKの自主・自立へ/市民に勢い、応じる職員も

*          NHK「日曜討論」/小池政策委員長の発言

*          潮流

*          「戦争させない」国会前座り込み/「行動が世論変える」/だから私は駆けつけた

*          「花燃ゆ」奥御殿&メへ/田中麗奈、松坂慶子7月から/文から美和へ新たな人生

*          「戦争する国」にさせない/風雨のなかで千人がコール/国会前

*          番組をみて/NHKスペシャル沖縄戦全記録/NHKテレビ14日放送/地獄の戦場%ヒきつける

*          潮流

*          NHK日曜討論/山下書記局長の発言

*          戦争法案、国民が止める」/行動、地域発/自由民権発祥の地、立つ・高知/県民集会、各界連帯・群馬

【6月本文】

芸能テレビ/ラジオ放送90年/声優若山弦蔵さん/82歳の現役DJ/僕の声でぬくもり届けたい

ラジオと歩んだ日々
 今年はラジオ放送が始まって90年になります。82歳のラジオDJで、映画「007」シリーズのショーン・コネリーの吹き替えで知られる声優・若山弦蔵さんにラジオへの思いを聞きました。
 小川浩記者

 65年近い芸歴を持つラジオ育ちの表現者です。
 1952年、NHK札幌放送劇団の試験に合格し、団員になります。半年間は、研究生。朝9時から夕方5時まで、けいこでした。月給4000円で番組1本に出ると手取り80円。たばこ1箱が約40円の時代でした。
 「(同期の)牟田悌三さんと喫茶店のコーヒーとトーストを半分ずつ分けあい、2時間も3時間も青臭い演技論を議論しました。秋の『あ』と朝の『あ』は違うんだと言われましたが、当時はわからないままでした」
 演技が認められ、57年に上京。新聞に「悪役の有望な新人が現れた」と書かれました。
 「ラジオドラマは作品を声だけで表現する。僕のような放送劇団育ちもいるし、新劇俳優、色物の人、歌舞伎役者もいた。他流試合のようでした。どんな大スターでも食ってやろうといつも思っていました。その代わり、こっちが失敗したら明日はないぞ、という思いでした」

顔見えなくても
 DJ全盛の時代になり、69年4月、TBSラジオの深夜放送「パックインミュージック」でDJデビュー。1970年3月までの1年間、音楽評論家の八木誠さんとコンビを組みました。
 「八木さんは、ポップスのオーソリティー(大家)でした。言われたのは、『生の音を聞かなきゃダメだよ』と。なるほどなあと思って、武道館へ通い、何でも聞きました」
 73年からは、TBSラジオ「若山弦蔵の東京ダイヤル954」(前身は「おつかれさま5時です」)を一度も休まずに95年まで22年間務めました。その後、TBSラジオの音楽番組「バックグラウンド・ミュージック」(〜2009年3月)も担当しました。
 「面白かったのは、ラジオを聞いている人たちとの一体感ですね。曲のリクエストのはがきが来て、こちらが反応する。顔は見えませんが、つながりを感じていました」
 2009年からは月1回、「土曜ワイドラジオ東京 永六輔その新世界」の中でDJをしています。時に、永六輔さんと政治談議も。
 「(首相の)安倍さんという人は、戦争したら勝ち残れると思っているんでしょうかね。戦後の食糧難は、身に染みて体験しています。銀行員のおやじは社員食堂で出る食べ物を僕らに持って帰り、昭和21年2月に栄養失調と過労で死にました。あの時代を繰り返してはいけない。憲法9条は変えたくないですね。僕の声と選曲で、一時でもぬくもりを感じていただけたら、それに勝る幸せはありません」

わかやま・げんぞう=1932年、樺太大泊町生まれ。NHK札幌放送劇団時代、ラジオドラマ「パイロットファーム」に主演し、文部省芸術祭団体奨励賞を受賞。主演多数。朗読CDは「蟹工船」。週1回、東京都内にある「点字図書館」で朗読を録音
(
2015年06月07日,「赤旗」)

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NHK経営委員と語る会/籾井会長への抗議やまず/罷免しない経営委にも批判/宇都宮

 NHK経営委員が全国で視聴者の意見を聞く「視聴者のみなさまと語る会」が5月23日、宇都宮市で開かれました。25人の視聴者が参加。暴言を繰り返すNHKの籾井勝人会長と、3度の「厳重注意」を出しながら会長を罷免しない経営委員会への批判が相次ぎました。

 口火を切った男性は、「就任直後から公共放送の会長とは思えないような発言をされて、最近ではハイヤーの公私混同問題もある。会長としての適格性をどのようにお考えなのか」と質問。
 上田良一経営委員(前三菱商事副社長)は、「言動が国民のみなさまに大きな反響を呼ぶ事態は非常に残念に思っている。経営委員としては会長の監視・監督をする立場にあるので、しっかりコミュニケーションを取りながら対応していく」とのべました。
 安倍首相の「お友達」とされる中島尚正経営委員(海陽学園海陽中等教育学校長)も、「公共放送を理解していただくためには、国民から全幅の信頼を受けるように努力することが大事。それが十分ではないと感じている」と答えました。

実行こそ大切
 別の男性は「経営委員会の議事録を読んでいるが、1年たっても籾井さんは変わっていない。籾井さんは経営委員を軽視しているし、経営委員は形骸化している」と指摘。上田委員が「3回の注意と2回の申し入れをした」と答えると、男性は「経営委員会が罷免権を行使しない限り、やりつくしたとは考えていない」と重ねて批判しました。
 籾井会長の一連の言動とNHKへの不信が主要な原因で、NHK予算の国会承認が2年連続で全会一致にならなかったことを追及する声も上がりました。
 「今回の予算は参院の委員会では(賛否同数で)委員長の決定でやっと通った。NHKはこれで、われわれの事業計画・予算はよしとされたという認識でいるのか」(男性)
 上田委員は「全会一致にならなかったのは非常に残念だが、予算・計画の中身はしっかりしたものができた」と応じました。
 「語る会」は参加者に事前アンケートを実施。会長については、「何度も注意を受けているのに続投させているNHKに自浄能力はないのか」などの声がつづられています。
 「クローズアップ現代」問題についての声も目立ちます。「非常に残念。信頼回復に全力を注いでほしい」「総務省から出された厳重注意の行政指導文書をなぜ受け取ったのか」などの意見も。
 会場で、ある男性は「NHKは100n近い立派な放送倫理基準をつくっているが、姿勢をいくら言っても、実行しなければただの紙きれだ。実際何をしているのか」と質問しました。
 田野辺隆男宇都宮放送局長は「クローズアップ現代の問題については、先週の火曜日に職員ほぼすべてが参加して勉強会をした」と明かしました。
 「NHKのニュースは民放に比べて政権寄りだ」と指摘した男性もいました。
 板野裕爾専務理事は「政権寄り」との声には直接答えず、「放送法に基づいて運営されているNHKだということをご理解いただきたい」と言い訳に終始しました。

立場ふまえず
 「語る会」終了後、上田委員は報道陣の質問に答えて、「籾井会長とはほぼ毎日、一緒に昼食を取っている」「議事録抜きで忌憚(きたん)のないご意見を交換する場も個別に設けている」と発言しました。
 上田氏は経営委員(12人)の中から選ばれる監査委員(3人)の一人で、「役員の職務の執行を監査する」(放送法43条)役割があります。
 会長に厳しい目を向けるべき立場にありながら、会長との親しい関係を強調する上田氏の見識が問われます。
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2015年06月06日,「赤旗」)

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安倍政権とテレビ/圧力許さない/4/「籾井会長」選出の背景/元NHK経営委員長代行が語る「無念」

 放送法を踏みにじる暴言を繰り返すNHKの籾井勝人会長はなぜ選ばれ、辞めさせることができないのでしょうか。5月24日に「放送を語る会」が東京で開いたフォーラムに、2月まで経営委員会の委員長代行を務めた上村達男さん(早稲田大教授)が出席。「私にも責任がある」と、籾井会長を選出したいきさつを証言しました。

 上村さんは、「政府が右と言うものを左と言うわけにいかない」など籾井会長の一連の暴言を「放送法違反」だと断じました。委員在任中は、そんな会長に苦言を呈し続けました。
 「籾井氏は一連の発言は撤回したものの、『個人的見解は変わらない』と繰り返しています。放送法違反の見解を個人的に持っている籾井会長を、なぜ選んだのか。もう少し何かできなかったのかとも思います」
 NHKの会長は、定数12人の経営委員のうち9人以上の賛成で選任されます。籾井氏は2013年12月に任命されました。しかしその直前まで全委員が一致して推した案は、「当時の松本正之会長の再任だった」と言います。

財界∴マ員が推す
 11年1月に就任した松本会長はJR東海出身です。しかし、在任中に放送された震災・原発番組などに自民党や財界が反発。歴史番組には右派勢力も加わった「反日」「左翼偏向」のキャンペーンが張られました。松本会長の任期切れが迫る13年11月、安倍内閣は経営委員に百田尚樹氏(作家)や長谷川三千子氏(埼玉大名誉教授)ら「お友達」4人を送り込みます。
 外堀を埋められた松本会長は、12月5日に退任を表明。「それまでNHK西門に押し掛けていた右翼の街宣車が一斉にいなくなった」と上村さん。後任の会長候補として財界出身の経営委員が推したのが籾井氏でした。
 「ある委員が籾井氏の名を出したのは12月13日。その日の『読売』朝刊1面に『籾井氏有力』という記事が出ました」
 結果的に候補は籾井氏一人。「『経済人として立派で国際経験が豊富』と推薦された人を、候補者としてすら否定する材料は、その時点でありませんでした」。1週間後の20日に、形の上では全員一致で籾井氏が任命されました。
 安倍内閣の強い意向でNHK会長に収まった籾井氏は、14年1月の就任記者会見でいきなり「政府が右と…」と発言。会見の後、経営委員会の中でも「けしからん」という雰囲気が盛り上がっていたと振り返ります。
 「しかし、批判的だった人も途中から『会長は単純だから、扱いようでは何とかなる』という雰囲気になっていきました。罷免の動議が否決されれば信任されたことになる。政府が籾井さんを支えようとしていることがヒシヒシと伝わるとき、罷免動議を出しても通るというタイミングはありませんでした」

事実上の政府任命
 上村さんは今回の会長騒動を通じて、問題の根本に会長の任免権を持つ経営委員を選出する仕組みの「根幹が崩れている」と指摘します。
 「経営委員は国会の同意人事で、全党の一致で承認することが慣例です。時々の政府の意向によって人事が左右されないという共通理解を曲げ、事実上の政府任命人事に変質させてしまった。結果的に経営委員会が『(籾井会長は)与党の意向なんだ』という流れになったと思います」
 退任後も「日々自問している」という上村さん。「現場で苦労されている職員が、その思いを述べられない状況の中、発言することが私にとっての一つの責任です」と語りました。
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2015年06月03日,「赤旗」)

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NHK/政権追随に高まる批判/早大教授(会社法)上村達男さん/武蔵大学教授永田浩三さん

 「政府が右と言うことを左とは言えない」と就任会見で語ったNHKの籾井(もみい)勝人会長。「戦争法案」の報道でも政府の姿勢におもねる傾向が見られ、国民の批判が高まっています。どこに問題があるのか、2人のNHK関係者に意見を聞きました。

政府が人事で独立性を壊した/元NHK経営委員長代行・早大教授(会社法)上村達男さん
 私はことし2月まで3年間、NHKの経営委員を務めました。在任中、籾井勝人会長の発言がたびたび問題になりました。籾井会長は、個人的信条だと釈明しましたが、個人的信条が放送法に違反する人にNHK会長の資格はありません。
 籾井会長は、国会での対応と、NHKに帰って来てからの対応とがあまりに違いました。国会ではメモを読むだけです。自分がやったことをどう思うのかと聞かれてもメモを読んでいる。「メモがないとすぐはみ出しちゃう」と言ってました。しかし自分に対するチェックが働かない場となると、メモなしでやりたい放題でした。
 市民団体からは抗議や罷免要求が寄せられました。私が重く受け止めたのは1500人ものOBからあがった会長辞任要求でした。これは現職の声を代弁していると思ったからです。
 12人いる経営委員の過半数が解任動議に賛成すれば会長を罷免できます。ですからいつも賛成しそうな人の数を意識していました。解任動議は否決されれば「信任」と扱われるので、簡単には解任動議を出すわけにはいきませんでした。
 NHK再生の道の基本は、経営委員の選び方にあると思います。経営委員は政府の任命人事ではなく、国会の同意人事です。それが2013年は、政府から提案された5人が安倍首相に近い≠ニ批判され全党一致ではありませんでした。
 菅義偉官房長官は「(首相が)信頼する方にお願いするのは当然だ」とのべましたが、国会同意人事と政府任命人事の違いをわきまえない発言です。なぜ経営委員が国会同意人事かといえば、時々の政府の意向に左右されてはいけない独立性のある人事だからです。
 経営委員会が会長を選びますが、書類とその場でのやりとりだけでは本当に最適任かはわかりません。推薦者の推薦を信頼するしかありません。
 政府任命人事の実質を有する経営委員の構成になれば、ガバナンス(主体的意思決定システム)が機能しづらくなる。安倍政権は人事でガバナンスを壊したのです。
 聞き手 神田晴雄記者

永田町依拠、国民見ていない/元NHKプロデューサー・武蔵大学教授永田浩三さん
 NHKは安全保障関連法案の国会審議の初日、衆議院本会議の中継をしませんでした。日本が戦争に向かうか否かを左右する大事な論戦の舞台です。視聴者からは、多くの抗議が寄せられました。
 5月28日の衆院特別委員会では民主党の辻元清美議員の質問にヤジが飛びました。飛ばしたのは安倍首相です。キャメロン英首相やオバマ米大統領が同じことをしたら大事件です。でもNHKはほとんど静観しました。
 中継はNHKにとって便利で有効な伝達手法です。論評はほとんど必要ない。特別委員会での共産党の志位和夫委員長と首相の論戦の中継では、法案の問題点がくっきりあぶりだされました。答弁は矛盾、迷走を繰り返し、政府案がボロボロであることが伝わってきました。
 ところがこれがニュースになると、首相が理路整然としっかり答えているように見えます。論戦で何が問題となっているのか、政府与党はきちんと答えているのか、厳しく問うことはしません。
 第2次安倍政権以降のメディアへの過剰な締め付けや、要請、介入が影を落としています。特に与党・自民党が放送内容について事情を聞くためテレビ局の幹部を呼びつけたことは異常な行為で、「表現の自由」を保障した放送法に反する干渉です。本来はそれをはね返すNHKでなければいけません。
 実際は、自民党が全ての放送をチェックすることは不可能です。安倍さんの顔色を見て、安倍さんの言うことだけを伝えておけば文句は出ないだろうというのが報道現場の習い性になっているようです。自己規制です。
 背景には「どうせ数の論理で通るのだから」というシニシズム(冷笑主義)があるように思います。「国会で論戦があろうが国会の外で人々が声を上げようが意味がない」と。永田町の中だけに依拠して国民の側を見ていません。
 NHKは予算の面でも労働条件でも特権的立場にあります。「放送が健全な民主主義の発達に資するようにすること」(放送法第1条)が職責であり、国民の知る権利にこたえないのは、視聴者を裏切る背任行為です。
 聞き手 板倉三枝記者
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2015年06月14日,「赤旗」)

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翁長知事と首相・官房長官会談/テレビはどう伝えたか/「放送を語る会」報告書から

独自の調査、大きく不足/民放は検証や政権批判も
 沖縄県名護市辺野古への米軍新基地建設問題で、翁長雄志(おなが・たけし)沖縄県知事は4月5日に菅義偉(すが・よしひで)官房長官、同17日に安倍晋三首相と会い、沖縄の思いを伝えて建設反対を主張しました。二つの会談をテレビはどう報じたか。放送関係者と市民でつくる「放送を語る会」が、NHKと民放の計7番組を調査し、報告書を出しました。
 (モニター期間は3月30日〜4月17日)

 菅氏が会談で「粛々」と口にし、翁長氏が「問答無用の姿勢だ」と反論した模様はほとんどの番組が伝えました。報告書は「NEWS23」の岸井成格キャスターが、翁長氏が菅氏を米軍支配の象徴だった「キャラウェイ高等弁務官」になぞらえた点に注目。日米政府に沖縄の民意を尊重するよう求めました。
 安倍首相との会談については「ニュース7」は沖縄局と政治部の記者がそれぞれの立場で解説。「ニュースウオッチ9」は事実の伝達だけでした。
 「報道ステーション」は、政府の沖縄県が基地を受け入れた≠ニいう主張を検証。2006年の小泉内閣の決定などをあげて政府の主張の不当さを明らかにしました。
 「NEWS ZERO」の辺野古報道は計5回で、うち3回は30秒前後でした。
 全体として、記者会見や政治家の動きを中心にした報道が支配的でした。その中でも「報道ステーション」「NEWS23」は、政治家の発言だけでなく、コメンテーターによる批判的視点も一部提示していました。一方、NHKは「客観」報道にとどまりました。
 また報告書は「独自の調査報道が大きく不足していた」と指摘。沖縄のメディアの情報に比べ、「本土のテレビニュースの情報の不足」があると苦言を呈しています。

 モニター対象番組=NHK「ニュース7」「ニュースウオッチ9」、日本テレビ「NEWS ZERO」、テレビ朝日「報道ステーション」、TBS「NEWS23」、フジテレビ「みんなのニュース」「みんなのニュース・ウイークエンド」
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2015年06月13日,「赤旗」)

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放送ライブラリー戦後70年企画/番組上映会・公開セミナー「テレビが伝えた沖縄戦の傷痕」

 横浜市にある放送ライブラリーは、戦後70年企画の第1回として番組上映会&公開セミナー「テレビが伝えた沖縄戦の傷痕」を開催します。
 ☆番組上映会(16日〜7月5日)
 沖縄県やキー局の民放、NHKの、沖縄戦と沖縄の戦後を伝えた作品を上映します。入場自由。
 Aプログラム(16、18、20、23、25、27、30、7月2、4日 午前11時から)
@「草の根は叫び続ける〜中村文子1フィートの反戦」(琉球放送)
A「ドキュメント’10 沖縄・43年目のクラス会 変わらぬ怒りと苛立ち」(日本テレビ)
B「ETV2000 シリーズ太平洋戦争と日本人4 未来世を生きる〜沖縄戦とチビチリガマ」(NHK)
C「終戦45年ドラマスペシャル 白旗の少女」(フジテレビ)
 Bプログラム(17、19、21、24、26、28、7月1、3、5日 午前11時から)
@「ちむぐりさ〜戦後60年 戦争の記憶」(名古屋テレビ、琉球朝日放送)
A「むかしむかし この島で」(沖縄テレビ)
B「報道ドラマ 生きろ〜戦場に残した伝言」(TBS)
 ☆公開セミナー「制作者に聞く!番組制作の現場から」。放送作家の石井彰さんの司会で、沖縄の地元局とTBSのプロデューサーを招き、メディアの役割や沖縄の抱える課題を考えます。(7月4日、午後2時から、午前は番組上映)。
 申し込み・問い合わせは〒231―0021 横浜市中区日本大通11 横浜情報文化センター 電話045(222)2828。
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2015年06月08日,「赤旗」)

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自民党の報道干渉は違憲/「放送の自律」が基本原則/放送法制定の経緯から検証/松田浩

 安倍内閣のサギをカラスと言いくるめる≠スぐいの改憲手法が、放送分野でもまかり通っている。気がかりなのは、本来、国民の「知る権利」に責任を負うべきメディアが、この憲法違反の政権党の報道干渉に一丸となって立ち向かう姿勢をみせていないことだ。
 自民党の一連の対応がなぜ憲法の精神に背く暴挙なのかを改めて論証したい。
 自民党は昨年末の総選挙以来、街頭の声やゲストの発言回数まで事細かに政治的公平を求めた「要請」文書をテレビ局に送り付け、さらに放送番組に関して局幹部を呼びつけて事情聴取するなど、数々の報道干渉行為を重ねてきた。
 根拠としているのは、「政治的公平」や「報道は事実をまげないですること」などを掲げた放送法第4条の「放送番組編集準則」である。例えばテレビ朝日「報道ステーション」の場合、コメンテーターが「官邸の皆さんにはものすごいバッシングを受けた」と発言したのが「虚偽の報道に当たる」という。だが、同条項を根拠に行政処分までうんぬんするその法解釈自体が根底から間違っている。
 なぜなら、放送法の基本原則は放送法第3条(「放送番組は…何人からも干渉され、又は規律されることがない」)が規定した「放送の自律」だからだ。放送事業者の精神規定にすぎない4条の条項を持ち出して政権党が政治的圧力をかけるなど憲法違反も甚だしい。

「表現の自由」に反するとの勧告
 放送法に「放送番組編集準則」が盛り込まれたそもそもの経緯≠ェ、そのことを明白に立証している。
 放送法の制定作業は、占領下、新憲法に即応する形で進められた。芦田内閣が当初用意した放送法案の第4条には、現行の「報道は事実をまげないですること」と同じ趣旨の規制条項が数項目盛り込まれていた。これに対し連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)の法務局が「憲法21条(表現の自由)に反する」と全面削除を強く求め、政府もこれを受け入れて関連条項を全面削除した。放送法制定史に残る有名な「GHQ法務局の放送法案修正勧告」である。
 そのうえで、政府は最終的に「政治的公平」と「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」の2項を加え、憲法21条に抵触しない倫理規定≠フ形でNHKの番組基準を定めた第44条3項(民放にも準用)に組み入れた。これが「放送番組編集準則」の起源なのだ。

改めて問われる権力監視の役割
 GHQ法務局の「修正勧告」は、いま読み返しても極めて示唆に富んでいる。
 「この条文〔第四条〕には、強く反対する。何故ならば、それは憲法第二一条に規定せられている『表現の自由の保障』と全く相容れないからである。現在書かれているままの第四条を適用するとすれば…政府にその意志があれば、あらゆる種類の報道の真実あるいは批判を抑えることに、この条文を利用することができるであろう。この条文は、戦前の警察国家のもっていた思想統制機構を再現し、放送を権力の宣伝機関としてしまう恐れがある」(内川芳美『マス・メディア法政策史研究』1989年)
 なんと、今日の事態を見通していたかのような見事な警告≠ナはないか。
 政権党による事情聴取や文書「要請」が政治的圧力となり威嚇効果を発揮するのは、政府が放送行政権(免許権)を握り放送局の死活を制する立場にあるからだ。世界では韓国を含め大半の民主主義国がこの弊害を防ぐため放送行政を政府から切り離し、独立規制機構の仕組みを採っている。
 安倍政権のあざといばかりのメディア戦略の狙いが、改憲に向けての世論作りにあることを見落としてはならない。権力監視のメディアの役割が、改めていま問われているのである。

 まつだ・ひろし 1929年生まれ。「日経」記者を経て立命館大、関東学院大教授(メディア論)を歴任。『ドキュメント放送戦後史』『NHK〜危機に立つ公共放送』ほか。
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2015年06月17日,「赤旗」)

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安倍政権とテレビ/圧力許さない/5/NHKの自主・自立へ/市民に勢い、応じる職員も

 市民や放送関係者の間で、NHK籾井勝人会長の罷免を求める声は強まり、安倍政権の放送への介入に真正面から対抗する勢いを見せています。

 四つの団体が呼びかけて全国7カ所のNHK局舎前で宣伝行動に取り組みました(別項)。戦争法案の衆議院代表質問があった先月26日のことです。
 「NHKで働くみなさんへ〜政府からの自主・自立を求める視聴者・市民の訴え」と題したリーフレットを配布。NHKの放送現場で仕事をする人々とともに安倍政権が戦争法案を持ち出したことで「日本が戦争に巻き込まれる危険がないのか―、ジャーナリズムの役割が今まさに問われています」(リーフから)と、政府のNHKへの介入に抗して、自主・自立を貫く行動を呼びかけました。

事態打開目指し
 NHKで仕事をする人々とつながり、今の事態を打開しようというねらいです。リーフは60〜80%の人が受け取り、4700枚を配布。各地の取り組みが、放送を語る会事務局に報告されました。
 〈東京〉ハンドマイクでリレートークし訴えた。「もう1部ください」「ごくろうさん」と声をかける人がいた。
 〈大阪〉配布を聞きつけて局舎から出てきた人もいて対話した。リーフを読んで引き返してきた人に、「私は何をしたらいいのか」と尋ねられた。
 〈名古屋〉社宅にも配布した。
 〈京都〉顔見知りの職員が声をかけてくれた。
 〈神戸〉関連会社の職員から翌日、反応があった。
 〈福島〉NHKOBのゼッケンを付けて配布した。
 宣伝のあと、東京・渋谷の放送センターでNHK労組(日放労)と懇談の場を持ち、名古屋では日放労中部支部に50枚のリーフを渡しました。

リーフの活用を
 マスコミ問題を考える秋田の会のメンバーは、NHK秋田放送局に「戦争法案を審議する国会の模様をきちんと中継してほしい」と要望しました。
 放送を語る会事務局長の小滝一志さんは「NHKの門前で宣伝するのは昨年1月以来、2度目です。リーフは2倍の1万枚作製しました。NHKの多くの人が受け取ってくれ、郵送してほしい、活用したいという声も届いています。やったかいがあります」と話します。
 NHK問題に取り組む市民団体が増え続けます。秋田、茨城、埼玉、所沢、東京、神奈川、岐阜、滋賀、京都、大阪、奈良、兵庫、広島、鹿児島県屋久島に広がりました。このほかに前橋、山梨、和歌山でも結成の動きがあります。中部では市民が放送人9条の会などとともに活動しています。

*5月26日のNHK局舎前宣伝行動
 東京、大阪、名古屋、奈良、京都、大津、福島で実施。5月20日に広島、27日に神戸でも。訴えたのは、放送を語る会、日本ジャーナリスト会議(JCJ)、マスコミ九条の会、アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(Wam)。12団体、29人、NHK退職者70人が賛同者として加わっています。
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2015年06月17日,「赤旗」)

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NHK「日曜討論」/小池政策委員長の発言

 日本共産党の小池晃政策委員長は14日のNHK日曜討論で、戦争法案と年金情報流出問題について与野党の政策責任者と議論しました。

 最初に、衆院憲法審査会(4日)で参考人の憲法学者3氏全員が戦争法案を「違憲」としたことについて問われました。自民党の高村正彦副総裁は「相当影響はある」と述べつつ、「憲法の番人は最高裁だ。必要な自衛の措置は何かということは国会と内閣に委ねられている」と述べました。民主党の長妻昭代表代行は、政府・与党が戦争法案「合憲」の根拠として持ち出した最高裁砂川判決(1959年)について「曲解していると言わざるを得ない。集団的自衛権が日本にあるとは言っていない」と批判しました。
 小池氏は次のように述べました。

戦争法案

憲法上の根拠は土台から崩れた
 小池 憲法審査会で3名の方の「違憲」表明ももちろんのことですが、200人を超える憲法研究者が「これは違憲だ」「廃案だ」とおっしゃっている。今回の法案の憲法上の根拠は土台から崩れたと思っています。
 高村さんは、自衛のための措置を考えるのは政治家だとおっしゃったが、その政治家が「自存自衛の戦争」だといって、あの侵略戦争に突き進んだ歴史に対する反省が感じられない。立憲主義というのは、政治家が何でも勝手に決めるのではなく、憲法によって拘束されるわけで、それが立憲主義です。自民党は、これまで自分たちが知恵を借りてきたような憲法学者の声にも耳を傾けようともしない。これはあまりに傲慢(ごうまん)で、あまりに危険な態度だと思います。こういった声をしっかり受け止めて、われわれは(法案は)違憲であるということをしっかり国会でも議論していきたいと思います。

砂川判決はわが国の集団的自衛権に触れていない
 司会者から、砂川判決以後も1972年の政府見解が集団的自衛権の行使を「憲法上許されない」としてきたことを指摘され、高村氏は「砂川判決は個別(的自衛権)も集団(的自衛権)も言っていない。集団が当然あるとかいっていないのはその通りだが、集団は排除していない」と強弁しました。司会者は「苦肉の策」で砂川判決を出してきたようにみえると述べました。公明党の石井啓一政調会長は「現在の安全保障環境に(72年見解の)基本的論理をあてはめた」と発言しました。
 小池氏はこう述べました。
 小池 「安全保障環境が変化した」ことで憲法解釈が変わっていったら、これは時の政権の思うまま、立憲主義の否定になる。そもそも、(昨年)7月の「閣議決定」は砂川判決を使わず、72年見解でやったわけです。しかし、72年見解は、結論は集団的自衛権行使できない(ということ)です。だから、あまりにも無理があるということでもたなくなったから、もう一度砂川判決を持ち出した。しかし、これは米軍駐留が憲法9条に違反するかどうかの判決ですから、わが国の集団的自衛権のあり方には触れてない。先ほど高村さんも「集団的自衛権とは言っていない」と認めたし、判決の、いわば傍論部分(判決理由を構成しない部分)であるということもお認めになった。
 何よりも、この判決が出てから54年間、政府は集団的自衛権行使できないと言い続けてきた。それを今になって、あの判決は集団的自衛権の行使も容認しているという、こんな材料しか結局持ち出せないところに、「憲法解釈の変更」のでたらめさがはっきり出ています。
 高村氏が「法案には集団的自衛権とは書いていない。ただ、われわれは集団的自衛権だと思っている」と語ったのに対し、小池氏が「砂川判決はわが国の集団的自衛権には触れていないですよね」と問い詰めると、高村氏は「個別も集団も触れていない。自衛権一般に触れている」と認めました。

「おかしい」という世論は当然。廃案にするしかない
 戦争法案に関して、政府が国会審議の中で「十分に説明している」が7%なのに対し「十分に説明していない」が56%と圧倒的多数で、今国会での成立についても反対37%が賛成18%を大きく上回ったNHK世論調査(6月)が示されました。高村氏は「説明したいが、(野党が)審議に十分応じていただけない」と野党に責任転嫁しました。公明党の石井氏は「安全保障の問題だから専門用語が多くて考え方も難しい」と弁明しました。
 小池氏は反論しました。
 小池 専門用語が多いから分からないのではない。今の憲法は、武力による威嚇や武力行使を放棄するだけではなく、戦力の保持も交戦権も否認しているのだから、集団的自衛権の行使ができるわけがないんです。
 「限定」しているといっても、どこをどう「限定」しているのか全く分からない。(政府・与党の説明を)聞けば聞くほど、これは無限定≠ナすよ。安全保障環境がどう変化したんですかと国会で聞いても、まともに答えられない。他国が攻撃されたことで国の存立が脅かされるというのは、世界のどこかで今まで起こったんですか(ということも)答えられない。国民の中で「おかしい」「非常に説明も無責任だ」という声、批判が広がっているのは当然です。会期延長はとんでもない話です。この国会で成立させるなど、絶対に許してはいけないし、国民の疑問にしっかり応える議論を私たちはやっていきたい。この法案は憲法違反ですから廃案にするしかないと思います。

年金情報流出

社保庁改革検証しマイナンバー制度は中止を
 最後に、日本年金機構から125万件の個人情報が流出した問題が問われました。高村氏は「機構も厚労省も弁護する余地はない、しっかり対策していく」と述べました。小池氏は次のように指摘しました。
 小池 年金機構、厚労省の責任は明確ですから、徹底的に解明しなければならない。二次被害が出ないようにするのは与野党を超えた課題だと思います。
 日本年金機構が社保庁改革でできるときに、私たちは個人情報保護は大丈夫なのかと指摘しました。例えば非正規雇用が5割を超え、外注事業が大事な業務でも増えていることも含めて、社保庁改革に対する徹底した検証が必要です。
 もう一つは、マイナンバー(共通番号)制度です。マイナンバー(の下で情報漏れ)になったら、所得税、住民税、医療保険料、銀行預金口座、メタボ検診のデータと(被害は今回の)比じゃないですよ。政府は、システムが違うから大丈夫だというけれど、年金も「大丈夫だ」「遮断されています」といったものが漏れたわけです。そもそも共産党は、このマイナンバー制度について、プライバシーの問題だけでなくて、社会保障費の削減目的だから反対といってきましたが、少なくとも10月1日からの個人通知、そして来年1月からの実施は中止すべきだと思います。
 高村氏は、マイナンバーの運用開始について「予定通り準備を進めたいが、特に年金への活用については、ある程度国民が納得することなしに強引にやることは難しい」と語りました。
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2015年06月16日,「赤旗」)

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潮流

 戦争法案をめぐる国会内外の動きから目が離せません。4日の衆院憲法審査会では3人の学者が「憲法違反だ」と発言。続いて12日、元自民幹部ら4人が「反対」を表明。この土曜、日曜には全国各地で市民の反対集会が開かれました▼「関ケ原の戦い」とは本紙読者の声です。しかし、NHKはニュースでわずかにふれるか、無視するものも。安倍政権寄りの報道がすぎると批判されてきたNHK。政権に不利なことは伝えない姿勢がありありです▼籾井NHK会長は「政府の意を伝える」のが信条。政府自民党は「クローズアップ現代」のやらせ疑惑≠ノかこつけて事情聴取という形でNHKに介入してきました。政権による露骨な干渉です▼公共放送の役割を論議した番組(5月)に注目しました。各国の番組制作者とともに、NHKの現役も参加。ベトナム戦争やイラク戦争報道にかかわって、政府の圧力をはね返し自主自立が貫けるかがテーマの一つでした▼イギリスの放送局BBCの職員は、英国軍を「わが軍」と呼ぶことはなかったと発言。NHKのスタッフも同意します。番組は「仮に国民の大多数が戦争に賛成したとき、公共放送はどうあるべきか」を問いかけました▼公共放送の使命は政権の宣伝機関ではなく、政治や社会の真実に迫ることです。NHKはこの間、限られた中で沖縄戦、基地問題を取り上げたものや、原発問題を継続して追った意欲作も発信してきました。戦争法案と対峙しての報道でこそ真価を発揮してほしい。
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2015年06月16日,「赤旗」)

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「戦争させない」国会前座り込み/「行動が世論変える」/だから私は駆けつけた

 「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」が呼びかける連日の国会前座り込み行動は19日も豪雨の中800人が参加して行われました。雨の日も暑い日も、これまでに国会に駆けつけた人たちの思いは―。

 安保闘争以来初めて36団体が戦争法案反対で一致した安保体制打破新劇人会議。その一つ、人形劇団ひとみ座の伊東史朗元代表が雨のなか、マイクを握りました。「いいかげんな法案を通していいと思っているのか、自民党と公明党の議員に考えてもらいたい」
 そして、NHK連続人形劇「ひょっこりひょうたん島」で自身が演じたドン・ガバチョ大統領のメッセージ≠紹介しました。「私は日本という国を尊敬していました。70年間戦争をしない国だったからです。今まさに外国にまで出かけていって戦争しようという法案を国会で通そうとしていることに怒っています」
 悲惨な戦争の体験から告発した人もいました。神奈川土建の組合員、真喜志康正さん(72)です。両親は太平洋戦争の激戦地、サイパンで呉服屋を営んでいました。北端の断崖から飛び降りる列を待っているときに米軍の捕虜になり、助かったといいます。
 「戦争のむごさを母から聞きました。無謀な戦争でした。両岸に米軍の艦隊がびっしりいるなか夜に逃げ回り、万歳といって崖から多数の住民が飛び降りました。集団自決や子どもを泣かさぬよう殺す親もいたといいました。戦争に真っ先に駆り出されるのはわれわれ職人です。職人は平和であってこそ初めて人の役に立てる。世論をもっともっと大きくして安倍内閣を打倒するまでみんなで力を合わせたい」
 地元で戦争法案反対の運動をしている人も駆けつけました。
 毎週駅頭で宣伝している埼玉県朝霞市の朝霞九条の会の横井泰夫さん(71)は、盛り上がる先週の宣伝を報告しました。
 「1時間で160人が戦争法案反対のビラを受け取りました。秘密保護法のときの4倍です。九条の会には毎年100〜200人が加入し、元自衛隊幹部も会員です。私たちの行動が世論を変えています」
(
2015年06月20日,
「赤旗」)

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「花燃ゆ」奥御殿&メへ/田中麗奈、松坂慶子7月から/文から美和へ新たな人生

 NHK大河ドラマ「花燃ゆ」は7月12日から奥御殿編≠ノ入ります。主演の井上真央に加え、毛利家の正室・都美姫(とみひめ)役の松坂慶子、次期藩主の正室・銀姫役の田中麗奈が登場します。
 1864年の禁門の変(7月5日放送)で夫・久坂玄瑞(東出昌大)を亡くした文(ふみ=井上)。なぜ、夫は死ななければならなかったのか。ずっと受け身だった文は自ら動き始めます。毛利家の奥御殿に女中として入り、名を美和と改め、藩政の内側を知ることに―。
 井上は「奥御殿には、静かな怖さがあります。笑いながら厳しいことを言うので、演じながらぞくっとしました」と笑います。
 大河での松坂といえば「篤姫」の教育係役が印象的でした。今回は、毛利家当主・敬親(たかちか=北大路欣也)の妻。「都美姫はどちらかというと保守的な人です。美和と出会って最初はびっくり。だけど彼女の話を聞いていくうちに、なるほどと目を開かされていきます」と説明。さらに「本当の美和の人生が始まります。ここからが花燃ゆ≠ナす」。
 銀姫は、長府藩主の次女として生まれ、敬親の養女となります。やがて夫の元徳(もとのり=三浦貴大)との間に長男・元昭を出産。養育係に美和を任命しました。演じる田中は3年ぶりの時代劇。「女性らしい枠に収まっていない姫です。時代の移り変わりを思い描きながら、広がりを演じられるようにしたい」
 女同士の確執も描かれますが、井上は「でも根底では、女性は平和を願っています。そこを意識しながら関係を築いていきたい」と強調しました。
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2015年06月20日,
「赤旗」)

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「戦争する国」にさせない/風雨のなかで千人がコール/国会前

 「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」が呼びかける連続座り込み行動が18日、行われました。強風と小雨のなか、国会前にのべ千人が駆けつけ、「戦争する国にはさせないぞ」などとコールしました。
 熊本県益城(ましき)町からつえをついて参加したのは池嶋繁さん(74)です。「NHKがデモを報道しないので直接来ました。数が多くて頼もしい」
 三井寿美子さん(64)と夫の秀俊さん(68)は長野県箕輪町から「1歳の孫に戦争をさせない社会を残したい」と参加しました。
 長崎高教組の岡山英生さん(45)は、「災害復興をしたい」と自衛隊に入る生徒がいると話します。「教え子を戦場に送る法案を何としても止めたい」
 国会に来るのは社会見学以来だと話す埼玉県の保育士、福田翼さん(26)は「同じ思いで座り込む人がたくさんいて心強いです」
 千葉県船橋市の小谷野悟さん(20)は、大学進学を経済的理由であきらめたばかりです。「戦争に駆り出すのではなく、政治は若者の夢を応援してほしい」
 憲法共同センターの米山淳子さん(新日本婦人の会事務局長)など3団体の代表や女性9条の会呼びかけ人の江尻美穂子さんがあいさつしました。日本共産党の清水忠史、堀内照文両衆院議員と辰巳孝太郎参院議員があいさつ。民主党、社民党の国会議員も駆けつけました。
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2015年06月19日,「赤旗」)

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番組をみて/NHKスペシャル沖縄戦全記録/NHKテレビ14日放送/地獄の戦場%ヒきつける

 太平洋戦争最後の、そして最大の激戦地となった沖縄戦―12万人を超す県民が犠牲となったこの悲劇はいろんなかたちで語り継がれてきたが、番組は新たに発掘した日米双方の軍関係の資料や生存者の証言などを手がかりに、米軍が撮影した膨大なフィルムを使って70年前の戦場を徹底的に再現した。
 大本営にとって沖縄戦は本土決戦¥備のための時間稼ぎであり、県民を捨て石として戦わせてでも長引かせるのが狙いだった。女学生で編成された救急看護の「ひめゆり部隊」はよく知られているが、沖縄戦を迎えるにあたって、中学生を含む2万人を超える14歳以上の男子が「防衛召集」という名目で根こそぎ動員されたという記録も今回発掘された。何しろ住民の死者の方が戦死した軍人の数よりはるかに多かったのである。軍民一体のかけ声の下、女性でも弾薬運びや地雷埋設をやらされ、ガマという洞窟や地下壕の中で集団自決を迫られる。地獄としかいいようのない戦場である。
 米軍撮影の1分あまりの白黒フィルムがある。向こう側の台地を走って逃げる住民の列とそれを画面手前から狙撃する米兵。曳光弾が次々に命中し、住民がバタバタ倒れる。「凄絶」としかいいようのないこの沖縄戦の記録は、ひとたび戦争となれば人間の命がいかに無残に、粗末に扱われてきたかという冷厳な歴史を、「戦争法案」を前にした今、われわれに突きつけている。
 (諌山 修 ジャーナリスト)
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2015年06月19日,「赤旗」)

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潮流

 四半世紀前の番組が胸に刺さりました。NHKアーカイブスで再放送された「ドキュメント 太平洋戦争 大日本帝国のアキレス腱〜太平洋・シーレーン作戦」。当時の戦争指導者が、日本の国力を度外視して、いかに戦線を拡大し、破たんを招いたか。海上輸送に焦点をあてた番組です▼資源の少ない日本にとって、頼みの綱は南方からの資源輸送ルートでした。しかし護衛艦もないまま単独航行をさせられていた日本の輸送船は、アメリカの潜水艦などによって次々沈められます。日本の戦争指導者が、潜水艦から輸送船を守るために重い腰をあげたときは、もう手遅れでした▼当時の映像に、南方から日本に持ち込もうとしていたコメが、米軍によって海中に捨てられている様子が残っていました。船は小型の木造船。大型船の大半を失った日本は、何の装備もない木造船まで輸送船として動員したのです▼「兵庫民報」21日号が、神戸市にある「戦没した船と海員の資料館」の特集を組んでいます。1941年から45年の間に徴用され、海の藻屑と消えた戦没船の総数は7240隻▼驚くのは犠牲になった船員の年齢です。戦没船員6万903人のうち、10代の船員が3割近く。国民学校高等科を終えたばかりの14歳の即席の船員も含まれています。引き揚げられないまま太平洋の海に眠る少年たちの無念を思うと、胸が詰まります▼戦時になれば民間船ですら攻撃される。自衛隊の「後方支援」=兵站がいかに危険か、いうまでもありません。
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2015年06月30日,「赤旗」)

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NHK日曜討論/山下書記局長の発言

 日本共産党の山下芳生書記局長は28日のNHK「日曜討論」に出演し、戦争法案について各党の幹事長らと討論しました。

自民党の言論弾圧

勉強会での発言は報道の自由を規制する暴論、沖縄への侮辱だ
 最初に、25日に開かれた自民党議員の勉強会で、言論弾圧をあおる暴言や沖縄県民への侮辱が相次いだことについて問われました。
 自民党の谷垣禎一幹事長は当初、「党の姿勢を誤解させるような発言だった」と述べるにとどまりました。これに対して山下氏は厳しく指摘しました。
 山下 出席議員や講師の作家(百田尚樹氏)から、マスコミに対する言論規制を求める暴論が相次ぎました。こういう勢力に安保関連法案=戦争法案を扱う資格はないといわざるをえません。戦争法案は憲法9条を踏みにじって、日本を海外で戦争する国につくりかえる、違憲立法にほかなりません。だから審議が進めば進むほど、国民の反対の声が広がっていく。こういう法案は撤回・廃案するしかない。
 「誤解を与えた」と繰り返し謝罪を口にしない谷垣氏に、山下氏はさらに迫りました。
 山下 一連の発言は言論の自由への挑戦であり、沖縄県民に対する侮辱です。谷垣さんも事実確認をされた。そうだとすると、安倍総理は自民党総裁として国民と沖縄県民に謝罪すべきだと思いますよ。それをやらないのですか。
 谷垣 私は党の責任者として、たいへん申し訳なかったという気持ちを踏まえて(勉強会出席者への)処分をいたしました。
 谷垣氏は「申し訳なかった」と謝罪をせざるをえませんでした。安倍晋三首相の責任については最後まで避けました。
 野党各党からも、「出席した加藤勝信官房副長官が、(百田氏の発言を)『拝聴に値する』と述べた。首相の責任は大きい」(民主党・福山哲郎氏)、「数におごっている」(維新・柿沢未途氏)、「猛省を促したい」(次世代・松沢成文氏)など批判が相次ぎました。

集団的自衛権

一内閣の解釈で憲法を踏み破ることは立憲主義の否定
 続いて、歴代政府が憲法上、できないとしてきた集団的自衛権の行使を容認したことについて、「憲法違反」との指摘が相次いでいることが議題になりました。
 福山氏は、安倍首相が1959年の最高裁砂川判決を集団的自衛権行使容認の根拠だと発言していることを批判。谷垣氏は、「砂川判決の読み方にはいろいろな考え方がある」とした上で、「日本が本当に危なくなったら、何もできないはずはないという基本論理は、(現在の)内閣法制局の見解にも入っている」と正当化しました。山下氏はこう指摘しました。
 山下 憲法9条1項で戦争放棄、2項で戦力の不保持・交戦権の否認を明記しています。その下で、歴代政府は「自衛隊は自衛のための必要最小限度の実力であり、戦力にあたらないから憲法違反ではない」という説明をし、付随して「海外での武力行使は許されない、集団的自衛権の行使も許されない」という憲法解釈を踏襲してきました。72年の政府見解も、憲法9条の下で集団的自衛権の行使はできないことを説明するために当時の政府が出した見解です。ところが、全く同じ見解を、憲法9条の下でも集団的自衛権の行使ができるという説明に使いだした。こんなご都合主義はありません。一内閣の解釈で憲法を踏み破るようなことは、法的安定性どころか立憲主義の否定です。

外相は存立危機事態の具体例示せず――憲法解釈変更の理由なし
 さらに、こう続けました。
 山下 砂川判決から、集団的自衛権の行使を容認するような帰結は出ようがない。判決は自衛権についてふれてはいますが、「わが国が、自国の平和と安全を維持し」と、はっきり書いてあります。「わが国」「自国」とあるのですから、「他国防衛」のための集団的自衛権容認の解釈の余地はないとはっきりいっておきたい。
 それでも谷垣氏は「(集団的自衛権の行使容認には)憲法9条改正が理想的だが、戦略環境の変化を考えると、解釈の変更もやむをえない」として、安全保障環境の変化を口実に挙げました。山下氏は反論しました。
 山下 「安全保障環境が変化した」というのが、半世紀にわたって集団的自衛権の行使はできないとしてきた憲法解釈を百八十度変える唯一の理由なのです。
 わが党の議員が国会で、「国際情勢が根本的に変容したというけど、他国に対する武力攻撃で、自国の存立が脅かされる存立危機事態に陥った国が世界で一つでもあるのか」と質問しましたが、1週間検討した結果、岸田文雄外相は一つも具体例を示せませんでした。これは立法事実そのものがない、憲法解釈を変更する理由がないということではありませんか。

憲法違反の戦争法案

230人を超す憲法学者が廃案を要求、聞く耳は持たぬという態度は傲慢・不遜
 さらに、多くの憲法学者や元内閣法制局長官らが、戦争法案は「憲法違反」だと指摘していることについて問われました。
 山下 (政府の姿勢は)冒頭の自民党の会合と共通するものがありますよ。異論や批判に耳を貸さない態度が問われていると思います。歴代の内閣法制局長官や、230人を超える憲法学者が、この戦争法案は違憲だとして廃案を求めているわけです。これに対して、「決めるのは学者でない」などという態度は傲慢(ごうまん)かつ不遜(ふそん)だといわなければなりません。しかも、自民党の勉強会の講師や、自民党政権の法制局長官といった方々もこのような意見をされています。これに聞く耳持たずの態度は、改めるべきです。

審議をすればするほど戦争法案の違憲性ははっきりしてきた
 最後に、安倍首相が戦争法案について、「決めるときには決める」と述べて今国会成立の考えを明言したことについて問われました。番組では、6月5〜7日実施のNHK世論調査を紹介。政府が法案について「十分説明している」は7%、今国会成立を求める人も18%です。
 谷垣氏は「誠心誠意、理解を得たい」としつつ、「決めるときに決めるというのはそのとおりだ」として、今国会成立に固執しました。山下氏はこう批判しました。
 山下 集団的自衛権以外でも、審議すればするほど違憲性がはっきりしてきています。たとえば、従来は行けなかった「戦闘地域」に自衛隊を送って、(米軍への)武器弾薬の輸送など「後方支援」=兵たんをするということですが、そうなれば当然相手から攻撃され、武器を使用すると安倍総理は認めました。(志位和夫委員長が)それでは(憲法が禁じる、海外での)戦闘になると指摘したのに対し、(総理は)「自己保存のための武器の使用は武力の行使に当たらない」、「他国の武力行使と一体化しない」などと弁明しましたが、このような概念は国際法上、存在しないことは政府も認めました。もう破綻した議論です。
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2015年06月29日,「赤旗」)

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「戦争法案、国民が止める」/行動、地域発/自由民権発祥の地、立つ・高知/県民集会、各界連帯・群馬

 国民の圧倒的多数の世論と運動で戦争法案をなんとしても阻止しよう―。国会会期延長が強行されて初の日曜日となった28日、全国各地で一点共闘で結集した集会やパレードが取り組まれ、廃案にむけた行動が広がっています。(関連4・15面)

自由民権発祥の地、立つ/高知
 「戦争法案を市民の行動で止めよう」と高知市の中央公園で開かれた集会には、約1500人が参加。高知憲法アクションなど10団体が主催し、戦争法案反対の一点で県内すべての勢力が初めて結集、廃案へたたかうとのアピールを採択しました。
 呼びかけ人の一人で、四万十市前市長の田中全さんがあいさつし、「今、政府が恐れているのは国民の声、われわれの行動だ」と強調。「自由民権運動の発祥の地、高知県民が立ち上がり、最後までたたかおう」と訴えました。
 「政治集会に参加するのは45年ぶりだ」。壇上で元NHK記者の川田雅敏氏がこう振り返ると、元裁判官の溝渕勝氏も集会で発言するのは初めてと明かし、「憲法改正が難しいからと、解釈ごときで変えるのはとんでもない」と批判しました。
 「戦争法案は明確に憲法違反だ」と高知大学の小幡尚教授。市民運動の近藤智子さんは「潮目は変わった。この流れを大きな潮流に」と訴えました。
 連合高知、県労連が主催団体に並ぶのも初めて。県労連の田口朝光委員長が「手を握り合おう」と連合高知の折田晃一事務局長に呼びかけ、握手すると、拍手がわきました。
 日本共産党、民主党、社民党、新社会党の代表も初めてそろいました。日本共産党の春名なおあき参院比例候補は「勝負を決めるのは世論です。さらに共同を広げ、廃案に追い込もう」と訴えました。

県民集会、各界連帯/群馬
 高崎市の群馬県民集会には、1000人が参加しました。
 「戦争する国づくりストップ!憲法を守り・いかす群馬県共同センター」を代表して、群馬県平和委員会の小田暁夫会長が主催あいさつし、「戦争法案をくい止めるたたかいは、憲法に盛り込まれた民主主義の諸原則を守り抜くたたかいと一体だ」と世論をさらに広げようと訴えました。
 日本共産党の梅村さえこ衆院議員がかけつけて「大幅会期延長は、自民、公明の政権党を私たちの国民運動が追い詰めている結果だ」と強調しました。
 県知事候補の、はぎわら貞夫氏=無所属新・共産党推薦=、群馬弁護士会の橋爪健会長、「戦争させない1000人委員会・群馬」の共同代表で、民主党の角田義一元参院副議長、元陸自・レンジャー隊員の井筒高雄氏が連帯あいさつしました。
 橋爪氏は「法案は憲法第9条を空文化するもので、戦争の悲惨な経験を繰り返さないという平和国家としての歩みを根底から変えてしまうものです。廃案に追い込もう」と呼びかけました。
 戦争法案の廃案を訴えるアピールを採択後、参加者らは市内をデモ行進しました。
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2015年06月29日,「赤旗」)

【GoToTop】

 

【5月】

*          NHK・テレ朝聴取/「政権党の言論介入」/吉良氏が批判

*          番組をみて/NHKスペシャル総理秘書官が見た沖縄返還/NHKテレビ9日放送

*          テレビ時評/戦争法案めぐり判断停止/ジャーナリスト加藤久晴

*          報道への圧力に抗す/JCJとマスコミ9条の会/東京でシンポ

*          放送人グランプリ2015/TBS「サンデーモーニング」/権力におもねらず、存在感

*          【国のためか】

*          放送90年/国のためか、国民のためか/NHK会長ただす/国会で共産党

*          放送90年/国のためか、国民のためか/元NHK職員堤園子さん(90)/記者おらず配信や政府発表ばかり

*          放送90年/国のためか、国民のためか/戦前・電波は国のもの/戦後・「権力に屈しない」が原点

*          【圧力許さない】

*          安倍政権とテレビ/圧力許さない/1/NHK籾井会長/視聴者の批判聞かず居座り

*          安倍政権とテレビ/圧力許さない/2/「クロ現」問題/「過剰演出」の隙、付け込む政府与党

*          安倍政権とテレビ/圧力許さない/3/報道ステーション/権力批判の立場堅持できるか

*          安倍政権とテレビ/圧力許さない/4/「籾井会長」選出の背景/元NHK経営委員長代行が語る「無念」

*          「戦争法案」今言わなければ/女優高田敏江さん/戦争しない道これからも

*          NHK「日曜討論」/小池政策委員長の発言

【5月本文】

NHK・テレ朝聴取/「政権党の言論介入」/吉良氏が批判

 自民党がNHKとテレビ朝日を呼んで放送内容について事情聴取した問題で、日本共産党の吉良よし子参院議員は12日、総務委員会で「政権政党による言論の自由・表現の自由へのあからさまな介入だ」と批判しました。放送局側にも権力の介入を許さない報道姿勢を求めました。
 吉良氏は、自民党の聴取について「政府の権限を振りかざして放送事業者を威嚇したものだ。新聞各紙も『圧力』『介入』と批判している」と指摘しました。高市早苗総務相は、出席官僚の「政治介入に当たるものではなかった」という発言を紹介。これに対し吉良氏は、放送内容について「何人からも干渉され、規律されることがない」という放送法3条を示し、「法に抵触する行為は望ましくないとの立場に立つべきだ」と所管大臣としてあるべき対応を求めました。
 吉良氏はまた、自民党に呼びつけられた事実を一切報じなかったNHKの姿勢を取り上げ、放送局も「自らを律することで、権力の介入を防ぐべきだ」と訴えました。権力との関係において「事実報道をしないことは、政府与党のやり方を無批判に受け入れること。沈黙は報道機関の自殺行為だ」と強調。籾井勝人会長は、放送内容は現場に任せていると述べた上で「吉良議員のご意見で参考にできるものは参考にしたい」と応じました。
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2015年05月13日,
「赤旗」)

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番組をみて/NHKスペシャル総理秘書官が見た沖縄返還/NHKテレビ9日放送

基地、核持ち込み、日米安保の矛盾浮き彫り
 沖縄が日本に返還されたのは1972年5月。当時の首相、佐藤栄作の秘書官・楠田實が残した政府中枢の膨大な資料をもとに、アメリカとの返還交渉の内実を明かしていきます。「返還協定」が「核付き」「日本の沖縄化」と批判されたこと、その批判が当たっていたことを改めて思い出させる内容でした。
 65年、佐藤は日本の首相としては初めて沖縄の地を踏みます。そのときの佐藤演説には、楠田が書いた草稿にはない文言が盛り込まれました。それはアジアの安全保障にとって沖縄の米軍基地の役割の強調でした。番組は、この文言にそって返還交渉が進んだことを示します。
 返還交渉で最も鋭く問われたのは、核兵器の位置づけでした。佐藤は、国民の「反核」感情の高まりの中、「非核三原則」(持たず、作らず、持ち込ませず)を表明していました。沖縄に核兵器を残すことを認めることはできません。沖縄に先立つ「小笠原返還交渉」で三木武夫外相は「核持ち込み許さず」の姿勢を貫きます。アメリカ・ニクソン政権は沖縄への核持ち込みと、本土の米軍基地を沖縄なみに自由出撃できるようにすることを求めます。それに抵抗する楠田たちの思いも資料に残されていました。しかし「複雑な政治判断の積み重ね」のすえに自由出撃、沖縄基地の無期限使用を認め、「核持ち込み密約」さえ結び沖縄返還は実現します。佐藤は楠田に「たいへんなことに手を付けてしまった」ともらしたといいます。
 沖縄の矛盾、日本全体の安保体制の矛盾の根っこが、沖縄返還交渉の中にありました。当時の政治が安全保障政策と沖縄の存在に与えた「誤った方向付け」が、40余年後の今を縛っています。しかし「条約の壁」を打ち破り、返還を勝ち取ったことは重要です。その原動力が沖縄県民の島ぐるみのたたかいであったことに、番組は少しでも触れるべきでした。
 (荻野谷正博 ライター)
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2015年05月23日,
「赤旗」)

安倍政権とテレビ/圧力許さない/1/NHK籾井会長/視聴者の批判聞かず居座り

 安倍政権の意を受けて誕生したNHK・籾井勝人会長が暴言を繰り返し、「不祥事」を口実にした政権与党の介入も強まる一方です。今年で90周年を迎える「放送」に、戦後最大ともいえる危機が迫っています。国民のための放送にするには何が求められているでしょうか。
 (随時掲載)

 NHKが15日に公表した経営委員会の議事録(4月28日開催)が波紋を広げています。自身のハイヤー私的利用問題などで委員会から3度目の「厳重注意」を受けた籾井勝人会長が、「納得できない」と反論。浜田健一郎・経営委員長らとの激しい応酬が記録されています。

経営委員会で逆ギレ
 籾井 ここであらためて厳重注意を受けるいわれはない。
 浜田 結果責任だ。
 籾井 会長がハイヤーの請求書がきたかどうかなど、民間会社では確認しない。
 浜田 NHKは民間ではなく、高い公金意識が求められる特殊法人だ。
 昨年の就任会見で「政府が右と言うものを左と言うわけにいかない」など、暴言のたびに厳重注意を受けてきた籾井会長。これまでは一定の「反省」のポーズは示してきましたが、3度目は逆ギレする異常事態です。注意と同時に、2年連続でNHK予算の国会承認が全会一致に至らなかったことを踏まえ、「公共放送のトップとしての責任を再確認」することを求める経営委員長コメントも出されました。
 放送関係者や市民でつくる「放送を語る会」事務局の小滝一志さんは、「これほど批判を浴びながら会長に居座ったままとは、一体どういう神経の持ち主なのか」とあきれます。
 「放送を語る会」はじめ、全国の視聴者・市民団体が共同で取り組む「籾井会長の罷免を求める」署名は、5月中旬現在で7万4千人分を超えました。NHKに直接寄せられた籾井会長に関する意見は、今年の3月中旬までに約5万2300件。そのうち約7割が批判的意見でした。
 NHK経営委員会が直接視聴者の意見を聞く「視聴者のみなさまと語る会」の各会場でも、籾井会長の言動に厳しい意見が相次いでいます。先月18日に北九州市内で開かれた会合で、男性参加者は「あまりにもNHKに問題が多過ぎる。しっかりせえと言いたい!」とくぎを刺しました。
 ところが、こうした参加者の声は、籾井会長には全く届いていませんでした。3月25日の衆院総務委員会。日本共産党の梅村さえこ議員が「『語る会』で出された声を会長としてどう受け止めているのか」とただすと、籾井会長は「理事から報告を受けても詳細を知っているわけではない」と答弁しました。

政権の委員送り込み
 批判意見に聞く耳を持たない一方、「クローズアップ現代」問題を理由にした政権与党からの呼びだし≠ノはやすやすと応じる…。事ここに至っても、会長の任免権を持つ経営委員会は「注意」を繰り返すだけで引導を渡す気配はありません。
 「背景には、安倍政権によって送り込まれた委員が一定数を占める状況があります」と小滝さんは言います。
 「籾井会長に苦言を呈してきた上村達男・経営委員長代行(早大法学部教授)が2月に退任してから、委員会自体が機能不全のような状態に陥っていると感じます。さらに署名を届け、粘り強く罷免を要請していきたい」
 小滝さんら「放送を語る会」は24日、上村達男氏を講師に招いたフォーラム「NHKの危機 いま何が問われているか」を東京都渋谷区の千駄ケ谷区民会館で開きます(午後1時半開会)。
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2015年05月21日,
「赤旗」)

テレビ時評/戦争法案めぐり判断停止/ジャーナリスト加藤久晴

 戦争法案(安保法制)が閣議決定された14日、ニュースやワイドショーでは各テレビ局とも同法案について取りあげていた。しかし、内容に関しては頼りない限りであった。
 まず、NHKは朝7時のニュースから「安保法制の焦点」と題して、政治部記者に法案の中身を解説させていたが、これは政府見解をなぞるだけだった。

政府広報番組
 こうした傾向は、NHKの他の番組にも共通していて「ニュースウオッチ9」(午後9時)でも、やっぱり政治部記者が安倍首相記者会見での発言内容を紹介したが、論評は一切無し。わずかな時間だが官邸前の抗議デモを映し、参加者の声も拾っていたが、おざなりで単なるアリバイショット扱いだ。
 あろうことか、NHKは午後11時30分からの「ニュースWEB」でゲストコメンテーターに中谷防衛大臣を呼んでしゃべらせている。むろん、反論のコメントは一切無し。これは、もはや報道番組ではなく、政府広報番組そのものではないのか!?
 人選に問題があるケースはほかにもあり、例えばテレビ朝日の「スーパーJチャンネル」(午後4時50分)では、何と元防衛大臣の森本敏氏を呼んで政府寄りのコメントをさせていた。しかも、反論は一切無し。
 テレビ朝日は、先頃の政権からの恫喝(どうかつ)が効いているのか戦争法案の報道に関しては弱腰が目立つ。14日の「報道ステーション」(午後9時54分)にしても、腰が引けている構成が見てとれる。法案についての主要な話題は、これまでの周辺事態法などの安保関連法案と比較して、審議時間が短いという問題だった。この件について古舘氏とゲストがやりとりをしていたが、これはつまり、法案の中身を問題にするのではなく、手続き論に逃げたことを意味するのではないか。
 この日、もっともまっとうな放送をしていたのがTBSだった。「Nスタ」(午後3時53分)では、最初に官邸前の抗議行動を映し、「いま官邸周辺では、多くの市民が駆け付け反対の声をあげています」というアナウンサーの前振りで安倍首相の記者会見に入るという、意欲的な構成だった。

法案を疑問視
 また「ニュース23」(午後10時54分)は、全体として法案を疑問視するタッチでナレーションを展開。各地の抗議デモや、東京・大阪・沖縄の3カ所から法案を批判する街の声も少なからず紹介。コメンテーターの岸井成格氏も「法案をめぐる議論に疑問を持っている」と断言。また、JNNの調査では法案反対が50%に達している、とアナが報告した。官邸キャップもスタジオで、このままでは日本国自体の戦争になるのではないか、と不安を表明するなど、この日の「ニュース23」は非常に力がこもった作りであった。
 しかしこれは例外で、テレビ全体では戦争法案については判断停止状態にあるのではないか?
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2015年05月22日,

報道への圧力に抗す/JCJとマスコミ9条の会/東京でシンポ

 「アベ政治を許しているのはダレだ メディアの責任が問われる」と題するシンポジウムが19日、東京都千代田区のエデュカス東京で開かれ市民やジャーナリストら約150人が参加しました。主催は日本ジャーナリスト会議(JCJ)とマスコミ9条の会。
 シンポでは、5人のメディア関係者がパネリストとして登壇し、報道に圧力を強める安倍政権のもとでの現状やたたかいについて報告しました。
 新聞労連委員長の新崎盛吾氏は「秘密保護法でネタ元が口をつぐむケースが増えている」と指摘。圧力に抗するためには、「読者が共感できる事実をしっかり報道することが大切」と語りました。
 出版労連教科書対策部長の寺川徹氏は、安倍政権の教科書介入の実態を報告。元NHKディレクターの永田浩三氏は、安倍政治に迎合するNHKの姿勢を批判しました。
 テレビジャーナリストの金平茂紀氏は、安倍首相と新聞社の幹部が会食を繰り返していることなどをあげ、「癒着がすすむと腐敗し、体制のチェックをするメディアの役割が果たせない」とのべました。
 琉球新報・東京報道部長の島洋子氏は、沖縄の辺野古新基地に反対する県民のたたかいを全国紙が大きく扱っていないことなどを指摘。「(政府がふれられたくないような)埋もれた問題を紙面化して、読者に喜んでもらいたい」と意気込みを語りました。
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2015年05月21日,
「赤旗」)

放送人グランプリ2015/TBS「サンデーモーニング」/権力におもねらず、存在感

 優れた番組を表彰する「放送人グランプリ2015」の贈賞式が16日、東京都内で開かれました。主催は、テレビ制作者やOBが中心となってつくる「放送人の会」(今野勉会長)。各賞の選考委員からは、「政権与党の番組介入」への危機感と、制作現場への期待が語られました。
 グランプリを受賞したのは、TBS「サンデーモーニング」出演者とスタッフ。1987年に始まった長寿ニュース情報番組です。
 メーンキャスター・関口宏さんの穏やかな仕切りで、時の政治課題など各分野をコメンテーターとともに丁寧に解き明かしていきます。「メディアの報道姿勢の変容が危惧される昨今、確かな存在感を示している」ことが高く評価されました。
 選考委員長の堀川とんこうさん(演出家)は、自民党がNHKとテレビ朝日の幹部を呼んで脅したり、番組出演中の安倍首相が街頭取材に文句を付けるなか、「萎縮と自粛が起きているメディア状況」に警鐘を鳴らします。
 「『サンデーモーニング』にグランプリを差し上げることで、私たちのテレビジャーナリズムに対する姿勢と思いを込めました」
 あいさつに立った関口さんは、「番組をスタートしたときは、『真ん中に』が合言葉でしたが、気が付くと、『左』の方に誰もいなくなっちゃって。世の中が少しおかしくなってきたのかなと感じています」。西野哲史プロデューサーも「世の中にとって大事なことを愚直に伝えていく姿勢に変わりありません」とのべました。
 選考委員の鈴木典之さん(放送批評家)は、「言論の自由を保障する放送法があるのに、政治の介入は誠にもってとんちんかんなこと。権力におもねったり浮足立つことなく、いぶし銀の底光りを放つ存在でありつづけてほしい」と激励しました。
 各賞の受賞者(作品)は次のとおり。
 
準グランプリ 小柳ちひろ(「テムジン」ディレクター、NHKBS―1「女たちのシベリア抑留」)
 
企画賞 八木康夫(TBSプロデューサー、「日曜劇場 おやじの背中」)
 
同 NHKEテレ「パリ白熱教室」
 
優秀賞 山形放送ラジオスペシャル「花は咲けども〜ある農村フォークグループの40年」
 
同 古立善之(日本テレビディレクター、「世界の果てまでイッテQ!」)
 
大山勝美賞 訓覇(くるべ)圭(NHKプロデューサー)
 
同 塚原あゆ子(「ドリマックス」プロデューサー)
(
2015年05月20日,「赤旗」)

 

放送90年/国のためか、国民のためか/NHK会長ただす/国会で共産党

 日本共産党の吉良よし子参院議員は、NHKの戦時海外放送の教訓を踏まえ、籾井会長にこうただしました。
 「NHKが報道機関であるなら、トップである会長は、政府の姿勢をそんたくするのではなく、自局のジャーナリストの自主性を重んじて彼らを守る姿勢を表明すべきではないでしょうか。NHKは受信料で支えられた公共放送です。国民の知る権利への奉仕という責務は格段に大きい」(3月31日、参議院総務委員会)
(
2015年05月17日,「赤旗」)

放送90年/国のためか、国民のためか/元NHK職員堤園子さん(90)/記者おらず配信や政府発表ばかり

 私は44年に入局し、報道部の資料室で働きました。職場にいるのは女性と中高年男性。当時のNHKに放送記者はいませんでした。放送内容は「同盟通信」の配信記事を言い換えたり、大本営発表や空襲警報発令の通達がほとんどでした。
 「玉砕」のニュースを発表する時は「海ゆかば」、戦果を伝える時は「軍艦マーチ」を流していましたね。
 広島に原爆が投下された時、海外放送を傍受していた外信部では「あれはアトミックボム(原子爆弾)だ」と言っていました。でも大本営発表は「新型爆弾」でした。
 最初は「若干の損害」と報じていた記憶があります。完全に権力の報道機関でした。
(
2015年05月17日,「赤旗」)

放送90年/国のためか、国民のためか/戦前・電波は国のもの/戦後・「権力に屈しない」が原点

 戦後70年の今年は放送90年の節目の年でもあります。戦時下、ラジオ(放送)は何を伝え、何を伝えなかったのでしょうか。そしてテレビが主役となった戦後は―。その足跡をたどり、教訓を見つめました。
 板倉三枝記者

戦前/電波は国のもの/ラジオが国民を戦争に駆り立てた

 戦前は、無線電信法第1条に「無線電信及ビ無線電話ハ、政府コレヲ管掌(かんしょう)ス」(1915年制定)とあるように、電波は政府のもの≠ナした。
 25年、東京、大阪、名古屋で放送開始。翌年、社団法人「日本放送協会」に統合されます。今のNHKの前身です。
 33年版の『ラジオ年鑑』(日本放送協会編)に「時局とラジオ」と題した日本放送協会の指針とされる巻頭論文が掲載されました。
 〈ラヂオは全機能を動員して、我が生命線としての満蒙(まんもう)の正当なる認識の徹底につとめ、外に向っては、我が正義に立脚せる国策を世界に宣示し、内は時局に際して国民の覚悟と奮起を促し、世論の帰趨(きすう)を指示する…〉

軍人が講演
 ラジオは国民を戦争に駆り立てる道具でした。31年、「満州事変」を起こし、かいらい国家を立ち上げた日本は、国際連盟から非難されると連盟を脱退。孤立した日本が広報強化のため海外放送を始めるのは35年です。
 同年鑑に掲載された「放送記録」を見ると、現役軍人による時局問題の講演、講座が並んでいます。子ども向け番組にも陸軍大将の「お話 新しく生まれた兵器」などが登場。
 聴取加入数は、26年の33万8204が、32年に100万を突破。同年鑑には「満州事変等ラヂオの威力を発揮すべき機会に遭遇して突破」とあります。日中戦争後は、「挙(こぞ)って国防 揃(そろ)ってラヂオ」の標語入りポスターが張られ、戦争の拡大と共に加入を増やしていきました。
 日本放送協会編『20世紀放送史』によると、「放送報国」という言葉を放送協会の小森七郎会長が使うのは、太平洋戦争突入の41年12月8日です。小森会長は全職員に「放送報国の大使命に全力を挙げよ」と訓示。報国とは国家のために尽くすという意味です。

天気予報も
 報道統制が強化され、開戦の日を境に、戦況に関しては、大本営(天皇に直属する最高の統帥機関)が許可したもの以外は、一切報道禁止に。天気予報も、敵の空襲に利用されてはいけないという理由で禁止されました。
 ニュースは国策通信社の「同盟通信」に依存していました。当時の報道部副部長柳澤恭雄氏が、戦後出版した『検閲放送』の中で書き記しています。〈検閲がきびしいと自己規制をともなう。…削られそうな部分を、先回りして自分で削っておく〉〈聖戦完遂、滅私奉公などの戦時下の激励文句をニュースの中に加えた〉
 戦意高揚に貢献した番組は「国民合唱」です。日本放送協会が編集する雑誌『放送』(42年3月号)の「放送局だより」に、「合唱によって個々の報国の誠を一億の火の玉にまで昂(たか)めることができます」とありました。

戦後/「権力に屈しない」が原点/民衆にマイクを開放した街頭録音/安倍政権の介入に広がる市民運動

 戦後のNHKの原点とは何か。「眼目は放送の政府からの独立」とメディア研究者の松田浩さんは言います。

主権者意識
 新生NHKの初代会長となった高野岩三郎氏(社会統計学者)は就任あいさつで、国家権力に利用されたラジオの歴史に触れながら、権力に屈せず大衆のために奉仕せよ∞大衆とともに歩み、大衆に一歩先んぜよ≠ニ説きました。
 新しい息吹の番組も次々誕生。代表格がマイクを民衆に開放し、街頭で社会や政治への意見を聞く「街頭録音」と投稿をもとに時代を風刺する「日曜娯楽版」でした。
 「戦後の放送の課題は民衆の声を代弁し、主権者意識を人々の中に培うことでした。ものを言わなかった民衆がものを言うようになり、作る側も聞く側も自由と民主主義を実感した」と松田さんは語ります。
 放送法をはじめとする電波3法が50年6月に施行されました。政府から独立して放送行政を行う電波監理委員会を設置。放送法には「番組編集の自由」が明記されました。「戦前の放送が政府の介入と統制によって国家の国策推進機関と化し、国民を誤った方向へ導いたことへの反省が込められていました」
 しかしアメリカの占領政策の転換を背景に民主化は挫折。電波監理委員会もわずか2年で廃止されます。以来、自民党による放送への介入事件が後をたちませんが、「一度としてNHKはそれを政治による干渉と認めたことがない」と松田さん。
 記憶に新しいのが、2001年のETV番組改変事件です。日本軍「慰安婦」を扱った番組が、安倍晋三官房副長官(当時)らの介入で大幅に改ざんされました。

新たな胎動
 今また安倍政権が放送局を呼びつけるなど介入を強めています。根拠にしているのは「報道は事実をまげないですること」などをうたう放送法第4条です。松田さんは「第4条はメディア自身の倫理規定です。その倫理規定を使って、放送法の基本原則である『放送の自律』を権力が侵すのは本末転倒」と話します。
 新たな胎動も。安倍政権に追随する籾井勝人NHK会長の辞任・罷免を求める市民運動が大きな広がりを見せています。
(
2015年05月17日,「赤旗」)

【GoToTop】

安倍政権とテレビ/圧力許さない/3/報道ステーション/権力批判の立場堅持できるか

 自民党がテレビ朝日の幹部を呼んで事情聴取をしたのは、4月17日のことでした。3月の「報道ステーション」で、コメンテーターの古賀茂明氏が「官邸から番組に圧力があった」と発言し、それを問題にしたのです。
 事情聴取の中で、自民党とテレビ朝日との間でどんなやりとりがあったかは両者とも明らかにしていません。聴取の後に自民党情報通信戦略調査会の川崎二郎会長が会見して、「政府にはテレビ局の停波の権限がある」と述べました。つまり放送免許を取り上げることが可能だと脅しをかけました。
 この間、テレビ朝日は「極めて不適切だった」と謝罪するばかりです。早河洋会長も吉田慎一社長も「圧力めいたものは一切ない」と口をそろえます。
 しかし、昨年の総選挙前の11月24日に「報道ステーション」がアベノミクス批判をしたところ、その2日後、自民党が「公平に」と指示する文書を出していたことが今春になってわかりました。テレビ朝日はそのことを認めたものの、それ以上の言及はしていません。

番組審議会で意見
 これにたいして4月24日、同局の番組審議会では意見が続出しました。「なぜ、自民党からの呼び出しに応じたのか」「自民党のために話を聞いて、国民には出さないというのは悲しい」「圧力めいたものがあれば公表し、放送界全体として抗議もやらなければいけない」
 日本民間放送労働組合連合会(民放労連)も4月28日、「不当な政治圧力から放送の自由を守れ」と声明を出しました。
 あるテレビ朝日OBは、「安倍政権にとって『報道ステーション』は、目の上のたんこぶだと思う。首相はメディアの幹部と会食したりゴルフをしたり。圧力をかけるのは自民党の役目になっている。メディア、とくに世論形成に大きく影響するテレビが政権の意向に沿ったものになっていくと恐ろしいことになる」と指摘します。
 これまで「報道ステーション」は、沖縄の基地、日本軍「慰安婦」、秘密保護法などの重要問題を、時には政府への批判を込めて取り上げてきました。
 春の番組改編を機に3月末、コメンテーターが交代。ゲストコメンテーターが、「リベラルな改憲は必要。国を守るための国軍を創設」と発言しました。政権寄りにカーブを切ろうとしているのでしょうか。

萎縮してしまうか
 さきほどのテレビ朝日OBは、戦争法案を閣議決定した14日の放送に注目しました。
 「安倍首相の記者会見の模様を伝えました。昨年の選挙で安保関連法案、つまり戦争法案が支持されたと安倍さんが言ったことに対して、番組は『選挙で首相が訴えたのはアベノミクスだけだ』と反論しました。安倍さんはデマゴーグ、うそをついて扇動する。それに反論した。そういう意味で『報道ステーション』を見直しました」
 萎縮してしまうのか、権力批判の立場を堅持できるのか、放送現場でせめぎ合っていることがうかがえます。

「報ステ」をめぐる動き
3月27日 コメンテーターの古賀茂明氏(元経産省官僚)が番組の中で、「菅義偉官房長官はじめ官邸からバッシングを受けてきた」と発言。
  30日 菅官房長官が会見で「(古賀氏の発言は)事実に反する。極めて不適切。放送法という法律がある。テレビ局の対応を見守りたい」
4月17日 自民党の情報通信戦略調査会が、NHKとテレビ朝日の幹部を呼びだし事情聴取。NHKの「クローズアップ現代」、テレビ朝日の「報道ステーション」を問題視した。
(
2015年05月28日,「赤旗」)

【GoToTop】

安倍政権とテレビ/圧力許さない/2/「クロ現」問題/「過剰演出」の隙、付け込む政府与党

 1993年に始まったNHK「クローズアップ現代」は、放送3500回を超える社会派ドキュメントです。昨年7月には菅義偉官房長官を招いて、解釈改憲による集団的自衛権行使容認をただしました。その番組が一転、NHK攻撃の材料に使われています。

 問題になっているのは、昨年5月14日に放送された「追跡出家詐欺=v。多重債務者を出家させ、戸籍上の名前を変えることで、金融機関からさらなる融資を引き出す詐欺の実態を追いました。
 番組では、詐欺ブローカー(仲介人)と活動拠点を突き止めたとして、ブローカーと多重債務者が相談する様子を外部から隠し撮り風に撮影。相談後、外に出た多重債務者を記者が追いかけ突撃取材≠行う場面もありました。
 今年3月、ブローカーとされた人物が「依頼されて演技した」と週刊誌に「やらせ」疑惑を告発します。NHKも内部調査に乗り出しました。4月28日に出された最終報告書によると、ブローカー、多重債務者ともに記者と以前からの知り合いで、活動拠点とされたビルも誤りでした。隠し撮り風の撮影は「過剰な演出」と批判しましたが、記者は演技を依頼していないとして「やらせ」ではないと結論付けました。

視聴者への裏切り
 「クロ現」立ち上げからプロデューサーや編集責任者としてかかわってきた永田浩三さん(武蔵大学教授)は、相談場面について「隣のビルから窓越しに望遠レンズで撮影し、室内の音声はクリアに拾え、雑音もない。しつらえた映像だとテレビ編集者はすぐに分かります。実は記者は部屋の中にいて、出演者に指示もしていた。これを『やらせ』と言わずしてどうするのか」と憤ります。
 特に「病が深い」というのは、その場面を見たプロデューサーや編集責任者が異を唱えなかったこと。「なぜOKにしたのか。隠し撮りでなければ視聴者が危険な話だ≠ニ分かってくれないと思っていたとしたら、ばかにしている。番組を支持してくださる視聴者への裏切り行為です」
 「クロ現」で特に大事にしてきたのは事実を丁寧に伝えることでした。「テレビ的な『分かりやすさのわな』に陥ってはダメです。どう伝えるか、スタッフがみな知恵を出し合い切磋琢磨(せっさたくま)する。互いに意見を言い合うのが『クロ現』の現場でした」
 さらに心配なこととして「自己保身の体質」を付け加えます。「最終報告は『やらせはなかった』との結論を出すために作られたようなもの。責任を記者に押し付け、その他の関係者はどうしたのか。報告書からは、不透明な現場であったと感じざるを得ません」

自民党が事情聴取
 番組は、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会が審議を始め、放送人権委員会も審理入りを決めています。
 「クロ現」は安倍政権に、介入の口実を与えました。与党自民党は、4月17日と5月21日の2度にわたりNHK幹部を呼び出し事情聴取。高市早苗総務相は4月28日、「厳重注意」の行政処分をしています。
 これを懸念する声が出ています。
 立教大学の砂川浩慶准教授(メディア論)は「そもそも表現の自由をベースにする放送局に行政処分を乱発すべきではありません。しかも、NHKの最終報告と同じ日に行政処分を出したのは拙速です。事前に調整していたということで、最終報告の吟味をしていない。本来、放送の問題は事業者が自主・自律的にただすべきであって、そのためにBPOがあります」と批判します。さらに「自民党が事情聴取したことの方が、より罪は重い。本来、総務省は放送を守るべき立場。表現の自由を脅かしかねない自民党をこそ、行政指導すべきです」。
(
2015年05月27日,「赤旗」)

【GoToTop】

「戦争法案」今言わなければ/女優高田敏江さん/戦争しない道これからも

 先日、町内の年配の人たちで集まっておしゃべりをしたんです。これまで政治の話はしたことがない方たちが、異口同音に「絶対、戦争法案は許せない」と言うんです。みなさん、戦争体験者です。
 もう自衛隊を辞める人も出るだろう、死者が出るようなことになればなおさらで、徴兵制が現実問題になるんじゃないか、という話にもなりました。私の孫も体は丈夫ですから、真っ先に引っ張られるんじゃないかと思ったらぞっとしました。若い人たちが戦場に行かされる、殺し殺されるということを自分の問題として真剣に考えてほしいと思います。

空襲で焼かれて
 10歳のとき前橋で空襲に遭いました。広島への原爆投下の前日の8月5日です。空襲を心配していた父の考えで、たまたま赤城山の中腹に避難していて助かりました。
 B29がピューという音を立てて焼夷弾を次々落とし、街が真っ赤に燃えました。2日後、山から下りると、焼け焦げた死体がトタン板でいくつも運ばれていました。友だちのお母さんは、防空壕の中で蒸し焼きになって亡くなりました。
 なにも食べるものがなく、私は赤痢にかかり生死をさまよいました。幸い、疎開していた医師の力で一命をとりとめました。
 いま、中東の避難民の子どもたちを見ていると、そのころの自分とダブります。あの思いを、二度と誰にもさせたくない。戦争は、破壊以外のなにものでもありません。
 安倍さんは、法案を国会に出すときに、国民の命と平和な暮らしを守るため≠ニか、いろんな理由をおっしゃいましたね。それを聞いていて、いまのままでいいじゃない、なんで変えなきゃいけないのか、と思いました。私には理由がわかりません。

憲法9条の力で
 1985年からヒロシマ・ナガサキの悲劇を伝える朗読舞台に参加し30年になります。2008年からは「夏の雲は忘れない」というタイトルで、女優たち16人が手弁当で続けてきました。舞台を見た子どもたちは、「今度は自分たちがみんなに伝えていきたい」と感想文に書いてくれます。
 戦後70年間、日本が戦争をすることなくここまで歩んできたのは、憲法9条という人間の英知の力です。私は人間の善を信じます。戦争を絶対しない道をこれからもずっと歩み続けてほしい。
  聞き手 寺田忠生

 たかだ・としえ 1935年生まれ。群馬県出身。NHK連続テレビ小説「まれ」に出演中。「夏の雲は忘れない」2015全国縦断公演は、東京・成城ホール(7月3〜4日)ほか各地で。
(
2015年05月26日,「赤旗」)

【GoToTop】

NHK「日曜討論」/小池政策委員長の発言

 後半国会の大きな焦点のひとつである労働者派遣法改悪案(「正社員ゼロ」法案)と労働基準法改悪案(「残業代ゼロ」法案)を中心に、雇用・働き方がテーマとなった24日のNHK「日曜討論」。日本共産党の小池晃政策委員長は、労働者派遣法改悪案の廃止と、長時間労働の規制に向けて政党・立場の違いを超えて尽力する考えを表明しました。

労働者派遣法改悪案

正社員がどんどん減る。政党の違い超え廃案を
 すべての業務で派遣期間の制限(原則1年、最長3年)を撤廃する派遣法改悪案について、自民党・田村憲久政調会長代理は「非正規から正規の働き方に変えていく。その道筋として派遣を使っていく」、公明党の古屋範子副代表も「正社員化への道を開く後押しをしていく。必要な改正だ」などと主張。小池氏はこう表明しました。
 小池 労働者派遣制度の大原則は、「常用雇用代替の禁止」、すなわち正社員を派遣社員に置き換えてはいけないということです。今回の最大の問題は、同一業務で原則1年、最長3年というこの期間制限をやめてしまうことです。人を代えれば、同じ部署でずっと派遣労働者を使える。結局、正社員がどんどん減ってしまう仕組みになってしまいます。
 安倍首相は、「企業が世界一活躍しやすい国をつくる」と言っていますが、裏を返せば、「労働者が一番苦しめられる国」になりかねない。これは、歴史的な派遣法の根幹を変えるような大改悪です。労働団体も立場を超えて反対だといっており、政党の立場を超えて、なんとしても廃案にするために頑張りたいというのが思いです。

派遣先企業に義務課していない
 他の野党からも「一生派遣のままの労働者が増える」(民主・山井和則衆院議員)「非正規労働者の低賃金や低処遇の状態がずっと続く」(維新・今井雅人政調会長)などの批判が相次ぎました。
 田村氏は、派遣元による教育訓練・キャリアアップの義務付けなど、「正規社員として雇ってもらう道をつくっている」と強調。これに対し小池氏は次のように批判しました。
 小池 この法案が通ると、派遣社員が正社員になれるかのようにいわれますが、雇用安定措置となっているのは、一つは派遣先企業に直接雇用を「依頼」する、お願いするというものです。もう一つは、別の派遣先を「提供」する。結局、派遣先企業には正社員募集についての情報提供ぐらいしか義務化されていない。「派遣切り」は派遣先企業がやるわけで、そこに対して雇用を守る義務が全く課されていないのがこの法案の特徴です。
 キャリアアップといいますが、派遣社員が正社員になれないのはキャリアがないからじゃないですよ。正社員と同等以上のキャリアを持っているのに、それが差別されているからです。いまやるべきは、きちんと正社員化することです。ところが今度の法律はそれが閉ざされている。3年たったら過半数労働組合の意見を聞くだけです。同意もない。しかも、衆議院の審議では、意見を聞く努力さえすればいい、結局聞かなくてもいいと。これでは何の歯止めにもならないということになるじゃないですか。

女性の雇用改善にも逆行する
 非正規雇用労働者の多くを占める女性の雇用改善もテーマとなり、田村氏は、「男性の長時間労働を減らしていく。こういうモデルを早くつくらないと駄目だ」などと主張しました。
 小池氏は司会者から女性の雇用改善を進めていく上で法案をどう評価するか問われ、次のようにのべました。
 小池 (雇用改善の)逆行だと思います。そもそもジェンダー(社会的性差)平等にかかわるILO(国際労働機関)条約で、日本は、雇用職業の差別待遇、あるいは母性保護に関する条約、パートタイム労働条約などをほとんど批准していません。その上、女性の半分以上が非正規雇用となっています。
 そういう中で安倍政権は、派遣法も含めて、ただでさえ不十分な女性労働者、非正規労働者を守るルールを、「岩盤規制」だといって攻撃し、「ドリルで穴を開ける」といっているわけで、これでは女性の雇用環境がますます悪化すると思います。
 賃金格差、昇進格差、パワハラ、セクハラ、マタハラはしっかりなくしていく。「同一労働・同一賃金」、「均等待遇」、そして「間接差別の禁止」、こういう原則でのルール作りがやっぱり必要です。
 いま安倍政権がやろうとしているのは、「残業代ゼロ」法案や派遣法改悪などで、こういうルールを全部、最後のとりでを壊してしまうというやり方です。

「非正規は安上がり」の仕組みこそ解決を
 非正規雇用労働者が正社員並みの仕事をしながら低賃金に抑えられているもとで、切実な願いとなっている「同一労働・同一賃金」の実現について、田村氏は「産業界・労働界全般とゆっくり話をさせていただかないとそう簡単には変わっていかない」などと後景においやる考えを述べました。これに対し、小池氏は次のように指摘しました。
 小池 「労使で」と言っていては進みません。やはり国のルールなんですから。
 なぜ非正規が広がるかというと、安上がりで首切りがしやすいからです。これを防ぐためには、「同一労働・同一賃金」を実現し、安上がりという仕組みを変えることをやらないといけない。いろんな障害があるからというが、やっぱりこの問題を解決しないといけないと思います。

「残業代ゼロ」法案

過労死が続出する。成果でというなら時間規制こそ必要
 労働時間規制をなくす「残業代ゼロ」法案について田村氏は、「対象者は成果を定量的にはかれる人だ。健康確保措置を義務付ける」と説明しました。
 小池氏は次のようにのべました。
 小池 健康確保措置があるといわれますが、三つのうちの一つを選べばよくて、一つは年間104日以上の休日をとればいいということで、これは土日だけです。祝日も正月も盆も全部働く。24時間働いてもいい。これでどうして健康が守られるのか。
 「成果で賃金」と言われるけど、成果主義賃金はもういくらでも広がっています。今度の法律だって成果で賃金払う制度とは書いていないわけです。
 最大の問題は、成果ではなくて時間規制をなくすということです。成果で賃金を払う働かせ方ほど、時間規制が大事です。成果を求める一方で時間制限がなくなったら、成果が出るまで働かせるということになる。結局、過労死が続出するということになるじゃないですか。過労死をなくそうと全会一致で法律(過労死等防止対策推進法)をつくっておきながら、なぜ長時間労働を広げるようなものをつくるのか。全く矛盾していると思います。
 山井氏は「ブラックな働かせ方を合法化する」、今井氏は「総労働時間の上限やインターバル措置をやるべきだ」、社民党の福島瑞穂氏は「残業代不払い、過労死が増える」とのべました。

歯止めにならない健康確保措置
 田村氏は「健康管理時間を超えたら健康診断などを義務化するので健康は一定程度確保できる」と言い訳。小池氏は次のように反論しました。
 小池 健康管理時間は、一月当たり100時間をこえた労働者が指導の対象になるというものですが、100時間というのは「過労死ライン」を超えています。こんなものは命を守る何の歯止めにもなりませんよ。
 田村 前提が長時間働いたら成果が出るという働き方の人じゃないんです。
 小池 健康管理の問題ですよ。
 田村 1075万円の年収という制約があるんです。
 小池 そういう人に過労死が多いんですよ。
 他の野党から「残業代ゼロは拡大される」(山井氏)などと指摘が出され、小池氏はこうのべました。

共同で長時間労働規制の実現を
 小池 「小さく産んで大きく育てる」と竹中平蔵さん(パソナ会長)、経団連も(対象者は)10%だと言っていますよ。(対象を)広げようとしているじゃないですか。
 この問題で野党で一致できると思うんです。例えば、長時間労働の是正。残業時間の上限を法定する。あるいはインターバル規制をやる。残業代ゼロ法案ではなくて、こういう法律こそ必要だと思いますから、長時間労働を規制する法案を国会に出して、これを実現したいと思います。
(
2015年05月25日,「赤旗」)

【GoToTop】

 

【4月】

*          【歴史と課題】

*          放送90年/歴史と課題/1/ラジオを聴こう/石井彰さん/上/頼りになるメディアとして

*          放送90年/歴史と課題/2/ラジオを聴こう/石井彰さん/下/新しい風が吹いてきた

*          放送90年/歴史と課題/3/私のラジオ・テレビ人生/吉永春子さんにきく/上/社会への関心を追究したかった

*          放送90年/歴史と課題/4/私のラジオ・テレビ人生/吉永春子さんにきく/下

*           

*          外部委報酬は5600万円

*          NHK番組/出演男性が訂正求める

*          やらせ疑惑来週報告

*          自民党、テレ朝・NHKを聴取へ/報道に露骨な圧力

*          地方選前半戦/日本共産党、改選比でも増

*          NHKやらせ疑惑/BPOの救済、男性申し立て

*          自民の放送介入に抗議/KBS京都労組が緊急行動

*          NHK辺野古報道は不公平/視聴者団体代表らBPOに審議要望

*           

*          自民、「停波」の脅し/川崎氏の発言要旨

*          自民、「停波」の脅し/テレビ局聴取後に/BPO政府関与言及/川崎氏

*          自民、NHK・テレ朝聴取/政治圧力の批判のなか

*          自民TV幹部聴取/「放送の自由」への圧力/志位委員長が会見

*          ハイヤー問題で籾井会長に注意/NHK経営委

*          「クロ現」やらせ否定/過剰演出認める/NHK調査委

波動/テレビ支配と対決のとき/河野慎二

【4月本文】

放送90年/歴史と課題/1/ラジオを聴こう/石井彰さん/上/頼りになるメディアとして

 2015年3月、日本の放送の歴史は90年を迎えました。もちろんテレビはなかったので、放送はラジオからのスタートです。
 1925年3月22日午前9時30分「JOAK…、こちらは東京放送局です」と、記念すべき第一声を発した京田武男アナウンサーは東京日々新聞の運動部記者でした。

関東大震災背景に
 ラジオが始まった時代的な背景には放送開始の2年前に起きた関東大震災があります。
 「一四万人を超える死者、行方不明者を出したマグニチュード七・九の大地震は、人々にラジオさえあれば流言飛語による人心の動揺を防げたであろう≠ニいう思いを起こさせ、放送事業開始の要望が急速に高まっていく」(竹山昭子『ラジオの時代』世界思想社)
 阪神大震災や東日本大震災では、いつでもどこでも、また停電中でも聴くことができるラジオの役割が、大きな注目を集めました。
 筆者は東日本大震災の1カ月後に訪ねたラジオ局で、何通ものデマメールを見ました。発信者はすべて匿名か即席のラジオネームで「友人に聞いたのですが」「親類の話によれば」という前振り付きで、外国人による犯罪が多発していると書かれていました。むろん放送はされていません。
 関東大震災時に在日朝鮮人や中国人などが自警団などによって虐殺されたのは、決して遠い過去の出来事ではありません。残念ながらネットメディアには誤報やデマが存在します。だからこそ放送=ラジオやテレビの役割は、ますます大切になってきているのです。
 東日本大震災では被災地に多くの臨時災害FMが作られ、大事な地域生活情報を伝えました。それでも継続した運営は難しいのが現実です。災害時に頼りになり信頼されるメディアとして、ラジオがその役割に応えていくには、ふだんから多くの人たちに聴かれていなければなりません。

米・英では日常的
 ところが、近年ラジオを聴く人たちは大きくその数を減らしています。最新の調査では首都圏でラジオを聴いている人の割合は、NHK・民放、AM/FMすべての局を合わせても、わずか5・8%しかありません。(15年2月ビデオリサーチ首都圏ラジオ聴取率調査から)
 かつては一家団欒の中心にラジオがありました。銭湯を空っぽにしたと言われたラジオドラマ「君の名は」や、1960年代後半に若者たちを夢中にさせ社会現象まで巻き起こした深夜放送のような、熱いエネルギーは現在のラジオにはありません。
 特にラジオというメディアそのものを知らない若者が増えています。パソコン、携帯電話、スマホと次々に登場する新しいメディアによって、ラジオは高齢者や一部のラジオファンのひそやかな楽しみとして生きていくしかないのでしょうか?
 そんなことはない、とラジオの仕事をしている筆者は胸を張って言いたいのです。日本と同じようにニューメディアが発達しているアメリカやイギリスでは、多くの人たちが日常的にラジオを聴いているからです。
 日本のラジオだけが低迷しているのには理由があります。そこさえ変えていけば、まだまだラジオは生き残るどころか、多くの人に聴かれ、信頼されるメディアとして百年後を迎えられるはずです。
 この続きは後編で(11日付に掲載予定)。
(
2015年04月04日,「赤旗」)

【GoToTop】

外部委報酬は5600万円

 NHKの籾井勝人会長は2日の参院予算委員会で、籾井氏が昨年発足させた「関連団体ガバナンス調査委員会」(委員長・小林英明弁護士)の弁護士報酬が高すぎるとの指摘が出ていた問題をめぐり、事務スタッフの給与なども含めた弁護士側への総報酬額が約5600万円だったと明らかにしました。
 ガバナンス調査委員会は、子会社の不祥事問題を受け、昨年3月から9月まで活動しました。民主党の福山哲郎氏は予算委で「5カ月余りの報酬としては高い。受信料が適切に使われているか検証が必要だ」と指摘しました。
(
2015年04月03日,「赤旗」)

【GoToTop】

NHK番組/出演男性が訂正求める

 NHKの「クローズアップ現代」などでのやらせ疑惑が指摘されている問題で、「出家詐欺のブローカー」とされた飲食店店長の男性(50)=大阪府内在住=が1日、NHKの聞き取り調査に応じた上で、放送内容は事実ではないとして、訂正するようNHKに申し入れたことを明らかにしました。
 男性によると、知人からNHK記者を紹介され、記者の指示に従って、自身はブローカー役、知人が多重債務者役となって演技しました。
 NHK広報局は「男性とそれ以外の関係者の話などに食い違いがあり、引き続き取材のプロセスを確認する作業を行っている。事実関係がまとまった時点で何らかの形で公表したいと考えている」とコメントしました。
(
2015年04月03日,「赤旗」)

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やらせ疑惑来週報告

 NHKの籾井勝人会長は2日の参院予算委員会で、報道番組「クローズアップ現代」のやらせ疑惑に関し、「来週には把握できた事柄を何らかの形で報告したい」と語りました。
 また、第三者による委員会でも調査する方針を示しました。民主党の福山哲郎氏への答弁。
 同番組で「出家詐欺のブローカー」とされた男性がNHKに訂正を求めていることについて、籾井氏は「番組で取材した別の男性の話とかなり食い違いがある。先入観を持たずに調査を進める」と述べました。
(
2015年04月03日,「赤旗」)

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放送90年/歴史と課題/2/ラジオを聴こう/石井彰さん/下/新しい風が吹いてきた

 日本のラジオだけが低迷してきた理由は、いくつかあります。
 1953年、テレビ放送開始。59年民放ラジオ広告費がテレビに抜かれます。それでもラジオは独自の道を歩み発展してきました。

広告費が半減して
 ところが92年広告費の前年比割れを起こして以来、右肩下がりで広告費が減り始め、最盛時の91年2406億円が、2013年には約半分の1243億円にまで減りました。
 その結果、ラジオに携わる人員と制作費が年々削減されていき番組の質が劣化して、聴く人も減り、さらに広告費が減る、という悪循環に陥りました。これにたいして有効な対策を講じられなかったのが、ラジオが低迷した最大の理由です。
 二つ目は、アメリカのラジオを真似して60年代に始まった「生放送、長時間、パーソナリティー中心」のワイド番組が、50年以上たった今でも番組編成の中心で、新しい番組スタイルを開発してこなかったことです。
 忙しい現代人がラジオをながらで聴くことは難しくなりました。
 三つ目は、ラジオ局の数がアメリカやイギリスに比べ少なく、どこの局を聴いても、パーソナリティーだけは違っても、同じような音楽がかかり、代わりばえのしない話題が語られていることです。
 アメリカには1万5千以上の局があり、カントリー、ロック、スポーツ専門局など、多様なプログラムを楽しめます。日本は、NHKを含め102のAM/FM/短波放送と287のコミュニティーFMしかありません。
 またかつてラジオを彩ったラジオドラマ、ドキュメンタリー、シャンソン、ジャズなどの多様な番組は、ほとんど姿を消しました。多くのラジオ局があり個性ある番組を放送してこそ、多くの人に聴いてもらえるのです。

多彩な番組作りも
 でもラジオに新しい風が吹き始めました。パソコンやスマホでラジオを聴く人が増え、radikoプレミアムに加入すれば(月額350円)、加盟する全国72のAM/FM/短波の番組をどこに住んでいても聴くことが可能になりました。
 昨年は山形放送、山梨放送、東海ラジオ、南海放送、FM福岡などが、素晴らしいラジオドラマやドキュメンタリーを制作放送しました。またNHKの地方局が独自に、ラジオドキュメンタリーを再び作り始めました。
 さて日本社会は大きく変化しています。その一つが単身世帯の大幅な増加です。すでに推計で最多の33%となり、高齢者だけでなく若者から中高年まで幅広い世代で、一人暮らしが増えています。
 一人暮らしに訪れる孤独感や焦燥感をやわらげ癒やしてくれるのは「あなた」に語りかけてくれるラジオです。災害時だけでなく日常の中でも、いまラジオが求められています。
 NHK放送文化研究所の調査で、ラジオを聴く習慣がない約千人に一週間ラジオを聴いてもらうと、約7割が調査期間終了後も、ラジオを聴いていたことがわかりました。ラジオを知らないから聴く人が少ないのです。
 また2014年民放ラジオ広告費は01年からの減少が止まり、1272億円と前年比2・3%増えました。
 音声だけのラジオは聴く人が「自由に想像して楽しむ」ことができる素敵なメディア。
 さぁあなたもラジオを聴いてみませんか。
(
2015年04月11日,「赤旗」)

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メイコのラジオ3話/中村メイコさん/3/限りない愛を込めて/私はラジオみたいな人間

 《メイコさんが出演されたラジオ番組は数えきれないほどたくさんあります》
 映画で出発してラジオ、テレビ、舞台と、芸能にかかわるすべてのことをやってきました。ラジオのお仕事は大好きですよ。台本のあるドラマも、自分の考えで自分の言葉でしゃべるのも、どちらも大好きです。
 ラジオの魅力というのは、人間以外のものになれるでしょ。鳥になったり、ビールびんになったり、空の雲になったり。それがとってもロマンティックで、雄大ですね。
 《子どものころ入院し、ラジオで徳川夢声さんや村岡花子さんの番組を聴いて過ごされたとか》
 ええ、ちょっと目を痛めたときですね。ラジオを聴いていて、子ども心に、もしこのまま目が見えなくなっても、ラジオのお仕事で生きていこうと思いましたね。
 夢声さんは活弁、作家、俳優となんでもおできになりました。いろんなことを教えてくださり、思い出は限りなくあります。お仲人までしていただき、公私にわたって長い長いお付き合いでした。
 《ベッドの上でマイクに向かわれたこともあったとか》
 わが家で録音してもらったんです。TBSラジオの連続ドラマ「パパ行ってらっしゃい」ですね。私はいくつもの役をやらせていただきました。1958年、番組が始まったばかりのころ、私は長女・カンナの出産を控えていて、生まれてから、しばらくは動けないだろうと、その間の分をベッドの上で録ったんですよ。
 《お気に入りのラジオ番組は?》
 森繁久弥さんと加藤道子さんの「日曜名作座」が好きで、よく聴いていましたね。勉強させていただきました。
 ラジオは、おうちでお仕事をなさりながら、たくさんの方が聴いてらっしゃるんですよね。働きながら聴ける。そこが大きな魅力じゃないでしょうか。
 私も2歳半からずっと働き続けて、主婦も母親もやりながら、このお仕事を続けているので、私は本当にラジオみたいな人間なんだなと思っています。
 分身というか体の一部みたいな、長い道連れみたいなものですね。(おわり)
 *@は3月19日付、Aは26日付に掲載
(
2015年04月02日,「赤旗」)

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自民党、テレ朝・NHKを聴取へ/報道に露骨な圧力

 自民党は17日の情報通信戦略調査会(会長・川崎二郎元厚生労働相)の会合にテレビ朝日とNHKの幹部を呼び、最近問題となったそれぞれの報道番組の内容や経緯などについて事情を聴くことになりました。
 テレビ朝日は先月27日放送の「報道ステーション」で、番組に出演した元経済産業官僚の古賀茂明氏が菅義偉官房長官らに「バッシングを受けてきた」などと発言。NHKは「クローズアップ現代」で制作側による「やらせ」の疑惑が指摘されています。
 自民党は昨年11月には「アベノミクス」を取り上げた「報道ステーション」の内容が偏っているとして、文書で「中立」を求めたことが明らかになり、報道への圧力だと批判を浴びています。17日の事情聴取も、政権党から番組への直接介入の危険があります。
(
2015年04月16日,
「赤旗」)

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地方選前半戦/日本共産党、改選比でも増

 いっせい地方選前半戦の41道府県議選、17政令市議選で日本共産党が獲得した議席数は、4年前のいっせい地方選で獲得した前回議席数、今回のいっせい地方選告示直前の改選議席数とそれぞれ比べて、どちらも大きく伸ばしました。
 NHK発表(13日、改選時議席と今回当選議席との比較)で見ると、道府県議選で自民党は改選1196議席から1153と43議席減。同じく民主党は276議席から264。公明党は169議席で変わらず。維新は62議席から70。日本共産党は75議席から111に伸ばしました。
 17政令市議選では自民党が改選308議席から301。民主党は146議席から126で、公明党172議席から174、維新59議席から84。日本共産党は103議席から136と、各党のなかでもっとも伸ばしました。
(
2015年04月15日,
「赤旗」)

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NHKやらせ疑惑/BPOの救済、男性申し立て

 NHKの報道番組「クローズアップ現代」でやらせがあったとされる問題で、「出家詐欺のブローカー」として報道された大阪府の男性(50)が21日、放送倫理・番組向上機構(BPO)放送人権委員会に人権侵害の救済を求める申し立てをしたことを明らかにしました。
(
2015年04月23日,「赤旗」)

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自民の放送介入に抗議/KBS京都労組が緊急行動

 民放労連・KBS京都放送労組は21日、京都・四条烏丸で、自民党のテレビ局ヘの「停波」発言に抗議する緊急宣伝活動に取り組みました。300枚のチラシを配り、「言論統制につながる」と市民に訴えました。
 「停波」発言とは、自民党情報通信戦略調査会の川崎二郎会長によるもの。17日にNHKとテレビ朝日の幹部を呼んで番組について事情を聴取した後、「テレビ局に対して停波の権限がある」とのべ、放送局への免許停止をちらつかせました。
 同労組は、この発言はテレビ局への介入になり、放送局の幹部から働く人にいたるまで萎縮をもたらすおそれがあり、国民の知る権利にも影響を及ぼすと判断。市民に積極的に知らせることにしたものです。
 チラシを受けとった市民からは、「安倍首相のもとで自民党はひどすぎる」「安倍政権はこれから戦争をする国にしようとしている。そのために言論を抑えようとしているのではないか」「放送局もしっかりものを言ってほしい」「番組でももっと深く取材して」「がんばって」などの声が聞かれました。
(
2015年04月22日,「赤旗」)

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NHK辺野古報道は不公平/視聴者団体代表らBPOに審議要望

 沖縄・名護市での米軍基地建設をめぐるNHKの報道に瑕疵(かし)があるとして、各地の「NHK問題を考える会」の代表や研究者ら97人が20日、NHKと民放でつくる放送倫理・番組向上機構(BPO)に対し、NHK報道の不公平・不作為を正すための審議を求める要望書を提出しました。
 それによると、辺野古沖の米軍基地建設に関するNHK報道には
@反対する沖縄の民意を伝えないA海上保安庁、沖縄防衛局の「過剰警備」の実態を伝えないB翁長雄志県知事との対話を拒み続けたのは政府側だという事実をあいまいにし、ゆがめたC「発表報道」への偏り、適切な課題設定と情報提供の放棄―という「黙過できない重大な瑕疵、放送倫理からの逸脱、報道番組としての質の劣化」があると指摘しています。
 要望書には、ジャーナリズム研究者の桂敬一氏、NHKを憂える運動センター・京都の隅井孝雄共同代表、NHKを監視・激励する視聴者コミュニティの醍醐聰共同代表らが名を連ねています。
 醍醐氏は「やらせ問題ばかりに関心が集まっていますが、もっと大事な国政の問題について十分な判断材料を視聴者に提供しているのか、という疑問があります。報道機関の使命について、BPOも正面から考えてほしい」と語りました。
(
2015年04月22日,「赤旗」)

【GoToTop】

自民、「停波」の脅し/川崎氏の発言要旨

 自民党情報通信戦略調査会の川崎二郎会長が17日、記者団に語った内容は次の通り。
 *(テレビ朝日の「報道ステーション」とNHKの「クローズアップ現代」では)放送法の(禁じる)真実ではない放送がされていたのではないか。
 *われわれは放送法に照らしてやっている。真実を曲げた放送がされるならば、それは法律に基づいて対応させてもらう。独占的に電波を与えられて放送を流すテレビ局に対して、例えば停波の権限まであるのが放送法だ。
 *(報道ステーションの中で)名誉を傷つけられた菅義偉官房長官が放送倫理・番組向上機構(BPO)に訴えることになれば、それは正規の方法だ。BPOが「お手盛り」と言われるなら、少し変えなければいけないという思いはある。テレビ局がお金を出し合っている機関ではチェックができないならば、独立した機関の方がいい。
(
2015年04月19日,「赤旗」)

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自民、「停波」の脅し/テレビ局聴取後に/BPO政府関与言及/川崎氏

 自民党の情報通信戦略調査会の川崎二郎会長は17日、テレビ番組に関してNHKとテレビ朝日から事情を聴いた後、政府には「停波の権限がある」と語り、放送局への免許停止をちらつかせて威嚇しました。

 また同氏は、NHKと民放でつくっている放送倫理・番組向上機構(BPO)について、「お手盛り」ではなく「独立した機関の方がいい」と語り、政府関与の検討を打ち出しました。川崎氏の発言は、放送局の許認可権をかざして個別番組に圧力をかけて露骨に介入するだけでなく、放送と表現の自由への抑圧となっています。
 川崎氏は、「やらせ疑惑」が指摘されている昨年5月放送のNHK「クローズアップ現代」と、3月のテレビ朝日「報道ステーション」で古賀茂明氏が菅官房長官に言及した部分について、放送法4条にある「報道は事実をまげないですること」を念頭に、「真実でない放送」で放送法違反だとの認識を示しました。
 一方、同法は3条では「放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない」と定めており、自民党の事情聴取調査と川崎氏の発言は、政権党の番組への「干渉」になり、放送法に抵触します。
 また放送界が自主的につくった第三者機関であるBPOの改組や政府関与を検討するとの意向も、放送法の精神に反します。放送法第1条は「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによって、放送による表現の自由を確保する」という原則をうたっており、川崎氏の発言は、政府権力からの自立という放送法の原点を踏みにじるものです。

政権党介入、毅然と防げ/法政大学名誉教授須藤春夫さんの話
 政権与党の自民党が、個別番組の問題について放送局幹部を党本部に呼び出し事情聴取するのは異常な事態だ。
 「放送法に照らしてやっている」ので「圧力にあたらない」というが、政権与党は放送免許の許認可権限に影響を及ぼす立場にあり、番組の内容について問いただす行為自体が政治的圧力そのものである。
 安倍政権と自民党は、これまでも報道番組の内容が「公平を欠いていた」として一部のテレビ局に党幹部への取材拒否や、選挙報道に際してNHKと在京民放テレビ5社に「公平中立」を文書で要請するなど、言論・表現の自由、番組編集の自由に重大な侵害を行ってきた。
 今回の措置は、個別の番組内容を取りあげ関係者を呼び出しておりこれまでにない圧力と萎縮効果がある。
 「戦争する国づくり」の暴走を続ける安倍政権が、平和を希求する国民世論の高まりに危機感をもち、メディアへの介入をますます露骨にした現れといえよう。
 17日の事情調査後、自民党情報通信調査会長の川崎二郎衆議院議員は、NHKと民放連で作るBPOが、「やらせ」や政治的圧力があった問題について十分チェックできないなら政府が関与する仕組みを含めた組織の再検討や電波の停波にまで言及した。
 放送の自主・自律を無視した更なる圧力だ。国家権力を監視する放送が、今こそ求められている時期はない。政権与党の介入を防ぐ毅然(きぜん)たる態度が必要である。(メディア論)
(
2015年04月19日,「赤旗」)

【GoToTop】

自民、NHK・テレ朝聴取/政治圧力の批判のなか

 自民党は17日、情報通信戦略調査会(会長・川崎二郎元厚生労働相)の会合を党本部で開きました。テレビ朝日とNHKの幹部を呼び、それぞれ最近の報道番組の内容に問題があったとして事情を聴取。政権党による特定の番組への圧力として批判が高まるなかで実施されました。
 川崎氏は冒頭、「二つの案件とも真実が曲げられて放送された疑いがある。NHKとテレビ朝日が自律性を持って対応していくのが基本だが、どういう形で対応したか聴きたい」と語りました。
 自民党が問題視しているのは、3月27日放送のテレビ朝日「報道ステーション」で、コメンテーターだった元経済産業官僚の古賀茂明氏が自身の番組降板に関して菅義偉官房長官らから「バッシングを受けてきた」と発言した部分。NHKに関しては、多重債務者による「出家詐欺」を取り上げた昨年5月の「クローズアップ現代」の番組で「やらせ」があった疑いが指摘されています。
 会合で、テレビ朝日の福田俊男専務は「30日の放送で、27日の放送内容や官房長官の記者会見を放映しバランスを取った」と釈明。NHKの堂元光副会長は、局内のやらせ問題の調査委員会がまとめた中間報告を説明し、「外部有識者も含めて検証を進め、放送倫理・番組向上機構(BPO)に報告したい」と語りました。調査委は今後、小委員会で議論します。
 会合には礒崎陽輔首相補佐官や佐藤勉国対委員長も出席。
(
2015年04月18日,「赤旗」)

【GoToTop】

自民TV幹部聴取/「放送の自由」への圧力/志位委員長が会見

 日本共産党の志位和夫委員長は16日の記者会見で、自民党がテレビ朝日とNHKの番組内容を聴取するために17日の党の会議にそれぞれの幹部を呼ぶことについて受け止めを問われ、「政権与党、衆参で最大の議席を持つ自民党がそういう行動をとることが『放送の自由』への圧力、介入です。結果的な萎縮を招きかねません。そのような対応をとるべきではない」と指摘しました。
(
2015年04月17日,「赤旗」)

【GoToTop】

放送90年/歴史と課題/3/私のラジオ・テレビ人生/吉永春子さんにきく/上/社会への関心を追究したかった

 吉永春子さん(1931年生まれ)は、TBSで長くラジオ、テレビの記者やプロデューサーを務めたあと、プロダクションを立ち上げました。その人生を振り返るとともに、さまざまな危機を抱える放送界の今後について語ってもらいました。

 《20代まではラジオだけの時代だったわけですね》
 1945年春、広島の三原で、敵機が本土にやって来るというラジオニュースを聴きながら、負けたらどうなるか、そればかり考えていました。
 そんな時、広島市に住む叔母がやってきて「戦争で死んだら終わりよ」と諭すように言いました。その言葉はずっと私につきまといました。

戦後の変化驚き
 原爆のうわさはすぐ私たちの耳に入ってきました。終戦の放送は、広島県立女子師範学校の動員先の工場のようなところで聴きました。もうこれで空襲におびえることはない、という晴れやかな気持ちでした。
 戦後の変わりようは驚くばかりでした。疎開で三原に来ていた先生たちが夜遅くまで勉強会を開いてくれました。そのとき手にしたのが宮本百合子の本で、むさぼるように読みました。戦争中も自分の志を曲げなかったことに驚きました。
 その後私は東京の高校に転校、早稲田大学を出た1955年に、東京放送、今のTBSに入社しました。社会への関心を放送という新しい分野で追究したかったのです。
 《記者生活はまずラジオ報道からでした》
 女性がニュース部に入ってきたのは初めて。私はひたすら録音機を担いで、取材に走り回りました。
 60年安保のころはもちろん連日国会です。国会周辺で、中年の男性がたびたび学生と小声で話していることに気付きました。何をしているのだろうと思っているうちに、警官隊と学生の衝突がありました。その後しばらくして、友人が「全学連」の背後に大物がいるらしいと教えてくれました。すぐに調査と取材を進め、「ゆがんだ青春」(注1)の放送にこぎつけました。
 放送のインパクトは大きく、中傷する声もあり、私も疲れましたが、やがて元気を取り戻して、戦後の諸事件に取り組むことになりました。ラジオドキュメンタリーで松川事件を取り上げ、テレビに移って下山、帝銀事件を取材しました。

七三一部隊報道
 その後の大きな仕事が「七三一部隊」(注2)です。当時の関係者が逃げ回る中、秋元寿恵夫医師が「あなたがやり通すなら」と取材に応じていただき、75年に放送することができました。この問題で事実上初のテレビ報道でした。
 この番組は米ワシントン・ポスト紙にも取り上げられ、海外でも反響が広がりました。ただ残念なことに、このころからテレビ界全体でドキュメンタリー番組は縮小していきました。(「下」は29日付に掲載の予定)

 注1【ゆがんだ青春】63年2月に放送された録音構成番組。当時の「全学連」指導部にいたニセ「左翼」集団の主要メンバーが、右翼の大物から金をもらい、国会乱入などの戦術指導を受け、就職の世話までしてもらっていた実態を暴いた。
 注2【七三一部隊】関東軍防疫給水部本部の別称。1938年、中国東北部(満州)ハルビンに本部が置かれた。石井四郎軍医中将を部隊長に、ペストやコレラなどの細菌兵器を極秘に研究・開発し、中国で使用。幼児、婦女を含む捕虜らを人体実験し、約3000人の命を奪ったとされる。
(
2015年04月22日,「赤旗」)

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放送90年/歴史と課題/4/私のラジオ・テレビ人生/吉永春子さんにきく/下

「ニュース報道」で権力監視を
 1980年以降は朝と午後のワイドショーを担当、その中でもニュース性を強めるよう努めました。

兵器追い米国へ
 91年1月、退職を前にして米国へ。取材目的は湾岸戦争で使用される兵器でした。最新兵器製造会社は取材拒否でしたが、政府高官の一人が取材に応じてくれました。彼は「長い間、戦争をしていなかったので、たまっていた兵器の掃除になった」と言い放ちました。米国のしたたかさを痛感しました。今も新たなテーマの取材を少しずつ進めています。
 この年にTBSを定年退職。すぐ「現代センター」を立ち上げ、幸いTBSのレギュラーのドキュメンタリーを制作することができました。今も番組制作は続けています。
 今年になって強く印象に残ったことの一つは、翁長沖縄県知事が4月17日に安倍首相と会談した際の冒頭の言葉です。「沖縄は自ら基地を提供したことは一度もありません。普天間飛行場やそれ以外の基地も、戦後に銃剣とブルドーザーで強制接収されたのです」
 さらに3月の「報道ステーション」での、古賀茂明氏の「菅官房長官らからのバッシング」発言とその波紋です。古賀氏は司会者を振り切ってでも訴えておきたかったのでしょう。これを恫喝するように4月17日、自民党はテレビ朝日幹部を呼び出しました。
 政権側はこうしたメディアへの抑圧の一方で、自衛隊の海外での活動を大幅に広げていこうとしています。

いまが頑張り時
 ぼんやりしてはいられません。毎日、政権の変動を監視していかねばなりません。その経過と事実を国民が知るのは、「ニュース報道」しかないといっても過言ではありません。メディアの頑張り時が、今でなくていつだというのでしょう。
(
2015年04月30日,「赤旗」)

【GoToTop】

ハイヤー問題で籾井会長に注意/NHK経営委

 NHK経営委員会(浜田健一郎委員長)は28日、籾井(もみい)勝人会長が私的なゴルフに使用したハイヤー代をNHKが一時立て替えていた問題で、籾井会長がハイヤーの手配を頼んだ秘書らへの適切な指示を怠ったとして籾井会長に注意しました。放送法に基づくもので、籾井会長の言動に対する注意は3度目です。
 NHKは同日、ハイヤー問題に関し秘書室長に訓告などの処分をしたと発表しました。
(
2015年04月30日,「赤旗」)

【GoToTop】

「クロ現」やらせ否定/過剰演出認める/NHK調査委

 「出家詐欺」を取り上げたNHKの報道番組「クローズアップ現代」でやらせがあったと指摘された問題で、NHKの調査委員会(委員長・堂元光副会長)は28日、過剰演出や事実確認があったとする報告書を出しました。一方、事実の捏造(ねつぞう)につながるやらせはなかったと結論付けました。
 報告を受けNHKは、担当した大阪放送局報道部の男性記者(38)を停職3カ月とするなど関係者15人の懲戒処分を決めました。籾井(もみい)勝人会長ら役員4人は、報酬の一部の自主返納を申し出ました。
 番組は昨年5月に放送。問題となったのは多重債務者がブローカーを訪ね、相談する現場を記者が取材したとされた場面。報告によると、多重債務者とされた男性は記者と8年前から面識があり、撮影前に打ち合わせもしていた。調査委は、相談後の男性を追いかけてインタビューしたシーンなどは、放送ガイドラインを逸脱する過剰な演出だったと指摘しました。
(
2015年04月29日,「赤旗」)

【GoToTop】

波動/テレビ支配と対決のとき/河野慎二

 テレビ局が官邸の圧力を告発したコメンテーターを番組から追放し、自民党がそのテレビ局に「停波」の脅しをかける。まさに異常事態だ。
 自民党は17日、テレビ朝日とNHKの幹部を党本部に呼び出し、個別の番組について異例の事情聴取をした。
 自民党が問題としたのは、テレビ朝日の「報道ステーション」でコメンテーターの古賀茂明氏が「菅官房長官からバッシングを受けた」と発言したことと、NHK「クローズアップ現代」の「やらせ」問題の2点。
 聴取の冒頭、川崎二郎自民党情報通信戦略調査会長は「真実が曲げられて放送された疑いがある」と述べた。
 ターゲットは、テレビ朝日だという。「自民党幹部が『NHKはどうでもいい。狙いはテレ朝』と述べた」と、朝日新聞は18日、伝えた。
 事情聴取の中でどんなやり取りがあったのかは藪の中だ。テレ朝専務もNHK副会長も「説明にきた」と述べるに留め、詳細は口を閉ざした。
 テレ朝の「報ステ」に対しては昨年秋、自民党が「公平中立」を求める文書を出していたことが10日、判明した。アベノミクスに関する報道が「公平ではない」と圧力をかけたのだ。個別番組に、自民党が介入の文書を出すのは前代未聞だ。聴取後、川崎氏が政府には「停波の権限まである」と凄んだのは、テレ朝征伐≠ノ並々ならぬ執念を示したものだ。
 同氏は、放送界が自主的に作った第三者機関であるBPOの改組や政府関与にまで言及した。放送法を踏みにじる暴言は許されない。
 毎日新聞の岸井成格特別編集委員がTBS「サンデーモーニング」(19日)で「テレビ朝日もNHKも断るべきだった。川崎氏は放送法をはき違えている」と一喝した。正論である。
 安倍政権は、NHKを籾井会長に平定させ、政府批判色の強い民放の報道番組を退治することでテレビ支配の野望の完成を企てる。
 テレ朝への圧力は、メディア全体の支配を目論む安倍戦略の攻勢の一環である。テレ朝の対応を高みの見物視するのではなく、メディアが一丸となって、安倍政権のメディア支配と対決すべき秋である。
 (こうのしんじ ジャーナリスト)
(
2015年04月27日,「赤旗」)

【GoToTop】

 

【3月】

*          NHKと市民/上/署名活動、シール投票/知恵を出し合い変えていく/京都から

*          NHKと市民/下/政府の関与をなくすため/視聴者の声、反映する構造に/ジャーナリスト隅井孝雄

*          【中村メイコ】

*          メイコのラジオ3話/中村メイコさん/1/放送90年特集ドラマ/戦争の時代や喜劇王のこと

*          メイコのラジオ3話/中村メイコさん/2/「日曜娯楽版」/政治批判ユーモラスに

*          メイコのラジオ3話/中村メイコさん/3/限りない愛を込めて/私はラジオみたいな人間

*           

*          NHKトップ失格/公金意識の欠如/元NHK経営委員国立音楽大学名誉教授小林緑さん

【3月本文】

NHKと市民/上/署名活動、シール投票/知恵を出し合い変えていく/京都から

 NHKの籾井(もみい)勝人会長の辞任を求める視聴者の声が、絶えることなく続きます。市民が参加できる公共放送のあり方を考えようと機運が盛り上がっています。

 市民団体の「NHKを憂える運動センター・京都」は毎月1回、京都市内の四条河原町でNHKの籾井会長らの辞任を求める署名活動に取り組んでいます。11回目の2月20日は、交代でマイクを持って呼びかけました。
 「きょうの昼のNHKニュースでは、集団的自衛権行使にかかわる安保法制懇について取り上げました。密室協議で、自民と公明とのすり合わせばかりに時間をさいていました。これでいいのでしょうか」(湯山哲守さん=元京都大学講師)
 「就任会見で、『政府が右というものを左とはいえない』などと発言する籾井さんは、公共放送のトップにふさわしくないでしょう」(大平勲さん=国民救援会京都府本部会長)
 通りかかった人の「NHKは見てないし」という声が聞こえてきました。
 長谷川長昭さん(非核の政府を求める京都の会)がすぐに「事件や災害が起こると、NHKのテレビやラジオのスイッチを入れることが多いです。NHKはやっぱりだいじな情報源ではないでしょうか。私たちの受信料でなりたっている公共放送でもあります」とマイクで語りかけます。
 署名簿を持った倉本頼一さん(立命館大学非常勤講師)が籾井会長の顔写真を示して「この顔に見覚えはありませんか」と声をあげました。
 若い男女が「ああ、あの問題の会長のことやな」と応じます。
 「NHKは好きやけど、会長はダメ」と署名に応じた人もいます。
 マイクを手に人見吉晴さん(元中学校教師)が、「脱走兵」を歌うと、行き交う人々が注目。沢田研二訳詞で戦争を拒否する男のことを歌った曲です。
 この日、初めてシール投票をすることになりました。テーマは「最近のNHKニュースについてどう考えますか」。
 シール投票は目を引き、ちょっと立ちどまった人に話しかけることもできました。NHKのニュースは「政府に批判的だと思う」が2人、「公平だと思う」が7人、「政府寄りだと思う」が51人という結果が出ました。籾井会長辞任を求める署名には29人が応じて、これまでの合計は1万1千人になりました。
 運動センターは、昨年3月に発足。籾井会長辞任を要求する1点で集まりました。討論会や学習会を開催。昨年11月、浜矩子・同志社大学教授の講演会には450人が参加して盛況でした。
 人見さんは「民主主義とは、民が行動して実現することだと思います。自分たちが知恵を出し合い、変えていく。放送法には『放送が健全な民主主義の発達に資するように』と書いてあります。運動センターの活動を通して学び、話し合っていく中で民主主義を培っていきたい」。
 運動センター事務局長の中川勉さんは「NHKを安倍政権の意のままにしたくない。NHKの危機は日本の危機なんです。市民の手に取り戻す運動です」と力を込めます。

籾井会長と市民団体の動き

昨年
1月25日 籾井NHK会長が就任会見で「政府が右と言うものを左とは言えない」
  30日 放送を語る会が籾井会長に抗議、辞任を要求
2月21日 七つの市民団体が籾井会長辞職勧告。辞任を求める署名運動を始める
8月21日 NHK退職者有志が会長辞任を要求

今年
2月5日  籾井会長が定例記者会見で「政府のスタンスが見えないので慎重に」
  10日 メディア関係者・市民団体がNHK経営委員会に会長罷免を要求。7団体の会長辞任を求める署名は7万2千に。
  18日 籾井会長が、民主党国会議員の会合に出席。「政権がかわって『村山談話はいらない』というかもしれない」と発言
(
2015年03月04日,「赤旗」)

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NHKと市民/下/政府の関与をなくすため/視聴者の声、反映する構造に/ジャーナリスト隅井孝雄

 2月20日、京都の「NHKを憂える運動センター・京都」という市民団体が四条河原町でNHKについてシール投票を行った。NHKニュースについて聞いたところ、政府に批判的2人、公平7人、政府寄り51人という結果だった。これまでに築かれた信頼感が失われつつあるように思える。

会長の品格は
 NHKの会長に籾井(もみい)勝人氏が就任して1年、公共放送にふさわしい人選だったのかがいまだに問われている。最近でも戦後70年の番組で慰安婦問題をどう取り上げるかを質問された際「政府のスタンスがまだ見えない。放送するかどうかは慎重に考える」と発言(2月5日)して批判をうけた。また民主党に年度方針の説明に訪れた(2月18日)際、「理事全員に辞表を出させたことの是非」を問われ、議員と怒鳴りあい、会長としての品格が問われた。
 国会や、NHK経営委員会に提出された会長辞任を求める市民からの署名は、「放送を語る会」の集計によると7万2388筆にのぼる(2月7日現在)。NHKに公正な報道を求める市民グループは秋田、茨城、岐阜、奈良など各地でも新たに生まれ、12都府県、17団体に達した(3月現在)

BBCの場合
 NHKとほぼ似た構造を持つイギリスBBCは、政府との距離を保ち、独立していることで知られている。2016年末に10年期限の特許状が更新されるため、そのあり方をめぐっての論議が始まっている。監督機関であるBBCトラストのローナ・フェアヘッド議長が2月3日、「受信料を払い、BBCの番組を愛する真のオーナーである国民が議論に参加する必要がある」として、広く意見を募集すると発表した。
 NHK経営委員会にあたるBBCトラストは政府から完全に独立、BBC本体の会長選出に政府が関与することはあり得ない。その上でBBCの運営に視聴者が参加する仕組みを拡大しようとしているのだ。また番組監視や市民の意見反映のための「視聴者の声」(VLV)、「新聞と放送の自由を守る市民運動」(CPBF)など全国的な市民組織が1970年代以降活発な行動を展開している。

全国センターを
 日本で望まれるのはNHKの人事や番組への政府の関与をなくすため、独立した委員会機構の元に置くことだ。受信料で支える市民、視聴者の意向を年間方針や番組編成に反映させ参加度を拡大するなど、構造の抜本的な変更も必要とされる。とりあえず、会長や経営委員の選出に受信者が投票権を持つことを検討してはどうか。また市民運動をより強力に展開するためには、イギリスのような全国的なセンターが求められていると思う。
 (寄稿)
(
2015年03月05日,「赤旗」)

 

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メイコのラジオ3話/中村メイコさん/1/放送90年特集ドラマ/戦争の時代や喜劇王のこと

 80年近くの芸歴を持つ女優の中村メイコさん。ラジオにも早くから出演してきた貴重な存在です。今週、放送90周年を迎えるのを機に、「メイコのラジオ3話」と題して語っていただきました。第1回は、きょう19日、NHK@で放送のオーディオドラマ「ニッポン・ローリング・デイズ〜浅草レビュー青春物語」をめぐる話の数々をお届けします。

 《メイコさんの最新作です。ラジオ放送が始まったころ喜劇や芸能に夢をかける若者たちの物語。戦争へと向かう時代でもありました。メイコさんふんする柴田春子が、当時のことを話す場面から始まります》
 私自身、幼かったとはいえ戦争を経験して、戦後のたいへんさも経験しました。父や母の古き良き時代のこともいっぱい知っています。出番は短いですが、春子さんの役には、そういう年代が持っているペーソスみたいなものがうまく出ればいいなと思いました。
 《喜劇王といわれたエノケンこと榎本健一さんの話が、今回のドラマで語られています。メイコさんは、実際のエノケンさんとたびたび共演しました》

2歳8カ月で
 私のデビューは2歳8カ月のとき、エノケンさんも出演なさっていた映画「江戸っ子健ちゃん」(1937年)です。70年に亡くなる直前まで本当に長いお付き合いでした。
 エノケンさんが、私がかなりおとなになってからおっしゃったことがあります。
 「メイコちゃん、人生の究極の場面をまじめに演じると、なぜかお客さんは笑ってくれるよ。それが喜劇だね」と。うんとおなかがすいて倒れそうになったとか、人間がいちばん生理的につらいときのことを、そのまま表現するんですね。
 《エノケンさんが歌う「ダイナ」も出てきます》

「ダイナ」歌う
 エノケンさんと舞台でご一緒して歌ったことがあり、大好きな曲です。1920年代のアメリカのポピュラーなジャズ、恋人のことを歌っています。
 エノケンさんは時代劇から現代劇までいろんなことをなさっていました。「ダイナ」もいろんなふうに変えて歌われていました。私の場合は、5、6歳のころでしたから、お人形を抱っこして歌いました。
 ♪ダイナ 私のお人形…
 《「ダイナ」を、メイコさんは家でも聴いていました。父は作家の中村正常さん、母・チエコさんは築地小劇場の元女優です》

特攻隊の慰問
 父も母も戦争反対者で、モダンな人でしたから、わが家に流れているのはアメリカのジャズが多かったですね。
 「ダイナ」、そして「マイ ブルー ヘブン」(「私の青空」)も小さいころから、なじんでいました。
 父は、あの時代に戦争文学を書くのがいやで、作家としてのペンを捨てた人でした。小学生だった私が、特攻隊の慰問に行くことになって、軍からは軍歌を歌ってくださいと言われました。父は「難しい歌詞の軍歌はメイコには理解できないだろう。理解できないものを歌っても、人の心を打てない。あなたは小さいけれど、アクトレス、つまり女優なんだから、自分が理解できるものを歌いなさい」と言ったんです。「では、エノケンさんと歌っていた『ダイナ』がいいかな」と答えたら、父が苦笑いして「あれは敵国のアメリカの歌だから、ちょっとまずいだろう」と。
 それで童謡の「赤とんぼ」「おててつないで」を歌ったと記憶しています。
 ※次回は26日付に掲載します。

 なかむら・めいこ 1934年、東京生まれ。NHKテレビ「紅白歌合戦」の紅組司会(59〜61年)、大河ドラマ「篤姫」、映画「学校V」などで活躍。著書に『大切なこと、ちょっと言わせてね メイコ流・人生のお作法』(大和書房)ほか多数。NHK放送文化賞受賞。
(
2015年03月19日、「赤旗」)

【GoToTop】

NHKトップ失格/公金意識の欠如/元NHK経営委員国立音楽大学名誉教授小林緑さん

 あきれてものがいえませんね。一番の問題は公金意識の欠如です。私用でハイヤーを使ってはいけない、ということになっているのに、そんなことどこ吹く風で会長はそれを命ずる。部下もおかしいと思うことなく手配する。NHKという巨大組織の腐敗した部分が、ハイヤー問題というわかりやすい形で噴出した気がします。
 私は6年間、経営委員を務めました。会長は、政府の方から根回しがあった人を追認するだけ。私たちが選んだという感覚は全くありませんでした。公募で会長を選び、面接試験までするBBC(英国放送協会)とは大きな違いです。
 籾井会長は就任会見で、慰安婦制度はどこの国にもあったと発言し、世界から猛烈な批判を浴びました。後で発言を取り消しましたが、1年たっても本質は変わっていません。こういう人が公共放送のトップにいることが本当に恥ずかしい。
(
2015年03月29日,「赤旗」)

【GoToTop】

メイコのラジオ3話/中村メイコさん/2/「日曜娯楽版」/政治批判ユーモラスに

 《戦後の1947年にNHKで始まった「日曜娯楽版」は、一世を風靡したラジオ番組として今に伝わります》
 「日曜娯楽版」は、一般の方が投書なさった面白いお話を、三木鶏郎さんが2〜3分のコントにされて、三木のり平さんらコメディアンが演じていた番組ですね。鶏郎さんは作詞・作曲家、放送作家でもありました。私も鶏郎さんとのご縁で、コントや歌をやらせていただいていました。10代でしたから、最年少だったんです。
 スタジオは和気あいあい。当時は生放送でしたから、直前に台本のサシカエがあったり、台本が途中までしかできていなかったりして、ワイワイワイとやってましたね。
 NHKのプロデューサーは丸山鉄雄さんで、頑固一徹、いい意味の職人でいらっしゃいましたね。寡黙で多くは語らないけれども、すごく迫力のある方でした。
 番組には痛烈な政治批判が込められてもいましたね。世の中の状況に対する皮肉をナンセンスでユーモラスな雰囲気の中で伝えようとしていました。
 《5年近く続きますが、52年6月に幕を閉じてしまいますね》
 「日曜娯楽版」がなくなってしまったのは、自民党(当時は自由党)から「こんなのをやっちゃいかん」といわれたことで、やめになったわけですから。それ以来、政府関係のことにふれるのはご法度みたいな、あんまり批判しちゃいけないみたいなことが、ずーっと流れているんじゃないでしょうかね。
 
最終回は4月2日付に掲載します。
(
2015年03月26日,「赤旗」)

【GoToTop】

 

【2月】

*          3/立ち上がる市民、各地で団体結成/「政府広報放送」だめ

*          4/須藤春夫さん/「経営計画」を読む/「進化」宣言に疑問

【2月本文】

3/立ち上がる市民、各地で団体結成/「政府広報放送」だめ

 籾井(もみい)勝人NHK会長の暴言で始まったこの1年、「NHKを市民の手に取り戻そう」を合言葉に、市民・視聴者団体の運動が大きく前進しました。
 昨年2月末から7団体で取り組んだ籾井会長や百田尚樹・長谷川三千子両経営委員の罷免を求める署名は、1月11日までに7万1192人分に達しました。これまで9回にわたってNHK経営委員会に提出しています。
 署名の集約を担当するのは、NHK関係者や市民でつくる「放送を語る会」。同会事務局の小滝一志さんは、「NHKや各メディアは『もはや過去の問題』だという態度ですが、視聴者の批判や怒りはまだまだ続いています」と言います。

途切れぬ署名
 小滝さんのもとには、年が明けても署名用紙が途切れることなく届きます。街頭での署名活動では「NHKのニュースがおかしい」「安倍首相の顔ばかり出てくる」などの声が寄せられています。「怒りの背景には、籾井会長の暴言だけでなく、実際に番組にも影響しているのではないかという不信が大きく作用している」と分析します。
 実際に「放送を語る会」が実施した番組モニター調査からも、番組への影響が懸念されるデータが出ています。昨年5月から7月にかけての「集団的自衛権報道」の検証では、いくつかの民放がジャーナリズム本来の目的に沿った番組を多く放送していたのに対し、NHKの看板ニュース番組は「際立って政府広報的」と断じています。
 市民団体の結成も相次ぎます。自民党議員の圧力で日本軍「慰安婦」番組が改変された事件の発覚を機に、兵庫や大阪、京都で結成された「NHK問題を考える会」は、昨年1年間で新たに7県で結成されました。
 兵庫の会事務局の西川幸さんは言います。「市民運動が発展してきたとはいえ、まだまだ力不足。全国47都道府県にあるNHK放送局すべてに意見が届けられるよう、市民組織のネットワークづくりが必要です」。兵庫の会では、全国に散らばる会員に、地域の「会」をつくるよう働きかけてきました。
 呼び掛けに応えたのが茨城県。1月31日に「NHK問題とメディアを考える茨城の会」(代表世話人=田中重博茨城大名誉教授)の発足集会が開かれました。
 同会の大曽根紀雄事務局長も、元兵庫の会の会員です。大曽根さんは、2012年秋の自民党総裁選報道や、その後の「二大政党報道」に疑問を感じ、「不偏不党の看板を投げ捨てるもの」だとする抗議文をNHKに送付しました。その過程でアドバイスを受けた「兵庫の会」に茨城県内の仲間11人と入会し、今回の茨城での「会」立ち上げとなりました。

黙っていては
 「黙っていては、ますますNHKが国策放送になってしまう。自分たちのできることから始めようと発足しました」と大曽根さん。呼び掛け人の大川レイ子さんも「受信料で成り立つNHKは、私たち国民の財産。私たちの声を茨城のNHKに伝えたい」。
 一方、NHKの退職者有志が提出した「籾井会長の罷免を求める声明」の呼び掛け人・賛同者は、現在2000人。全OBの約2割に相当します。前出の小滝さんもNHKのOB。「番組改変事件に続き、NHKを良くしようと願う運動の第2の波≠ェ起きていると実感します」と話しています。(つづく)
(
2015年02月01日,「赤旗」)

【GoToTop】

4/須藤春夫さん/「経営計画」を読む/「進化」宣言に疑問

 NHKが2015〜17年度の経営計画を発表しました。籾井(もみい)勝人会長のもとで初の経営計画ですが、公共放送の存在意義に疑問を感じさせる内容です。
 過去の経営計画では、公共放送が果たすべき使命の達成には「公平・公正、自主・自律、不偏不党を貫く」と明記されていました。しかし、今回は公共放送の「原点」を堅持するとしながらも、「公平・公正で正確な報道」のみの記載しかなく、肝心の権力からの自立に強い意志を感じません。
 安倍政権による会長選任過程への露骨な介入や籾井会長の就任会見における放送倫理への不見識な発言など、いまのNHKにもっとも求められるのは、権力からの自主・自律を確立し視聴者の信頼を回復することです。これまでの経営計画には必ず明記されていた権力から距離をおく姿勢が、籾井体制のもとで欠落しているのは重大な問題といえます。

国際放送強化
 次は経営計画にある「5つの重点方針」のうち、「国際放送の強化」と「インターネットの活用などによる新放送・サービスの提供」についてです。
 国際放送の強化は歴代自民党政権がNHKに求め続けてきました。現在、総務省には「NHK海外情報発信強化に関する検討会」が設置されています。ある委員はこの委員会設置の背景には、「中韓によって間違った史実が反日工作として世界に喧伝(けんでん)されていることに対し日本が有効な反論をできていないことに留意する必要がある」と発言しています。
 籾井会長は就任会見で国際放送について「政府が右と言うことを左と言うわけにはいかない」と述べているだけに、NHK海外放送の強化が政府の宣伝機関になりかねません。国際放送強化の重点化は、12〜14年度計画から始まり、NHKの総収入が減少するなかでも13、14年度の国際放送関係費予算を増額、てこ入れが図られてきました。

ネット進出は
 NHKは独自に国際放送の強化に関する諮問委員会を設置(13年)しています。答申には「日本の視点の発信に際して、編集権の政府からの独立を確保すること、プロパガンダ的な放送は行わない」と明示されており、これを堅持すべきです。
 インターネットの活用は籾井会長が就任当初から意欲を示していました。若い世代を中心にネットの利用が急増、ネット分野に進出することでテレビ、ラジオ離れに歯止めをかけるねらいがあると思われます。ネットの活用で公共放送の枠を破り「公共メディア」に進化すると宣言していますが、多様な情報端末を取り込んで何を伝えるかは抽象的な記述ではっきりしません。情報やコンテンツ制作への傾斜は、放送ジャーナリズムの役割を後退させないか心配です。
 受信料制度の改革も打ち出していますが、受信料は視聴者が公共放送を財政的に支え権力や資本から自由な放送を保証する制度という確認が大事です。視聴者はNHKの主権者としてNHKを民主的にコントロールする立場にあり、その仕組み作りの国民的議論も始める時期です。
 (法政大学名誉教授)
 (おわり)
(
2015年02月03日,
「赤旗」)

【GoToTop】

 

 

【1月】

*          1/元NHKディレクター戸崎賢二さん/政府監視が重大局面

*          2/職員ら語る現場のいま/息苦しい管理体制

1月本文】

1/元NHKディレクター戸崎賢二さん/政府監視が重大局面

 籾井(もみい)勝人会長就任1年、NHKをめぐる攻防が続きます。取り込もうとする安倍政権に対して、市民のためのメディアであるべきだと訴える人々の動きが強まっています。放送90年の機に、4回連載で公共放送のあり方を考えます。第1回は、元NHKディレクターの戸崎賢二さんに寄稿してもらいました。

 思想家田中正造の明治42年(1909年)7月の日記に次のような言葉がある。
 「あなた方見て居れば政府は悪事を為さず。見るの力は法律よりも強し。」
 数々の政府の「悪事」と生涯闘い続けた正造は晩年、政府の手を抑える究極の力が民衆による「監視の力」であるという認識に到達していた。
 今年、安倍政権は原発再稼働、武器輸出、集団的自衛権行使へ向けての法整備、といった政策のうえに、さらに憲法改悪への動きを加速するだろう。民衆による「政府の監視」がこれまでとは比較にならないほど重大な局面を迎えている。
 この監視を本来任務とするのは当然のことながらジャーナリズムである。そのことを考えると、NHKの当面の最大の課題がネットサービスや4K開発などではなく、これからの政府の行為を批判的に監視できるかどうかにあるのは明らかだ。

政治部圧力?
 はたしてこの期待は満たされるだろうか。
 昨年、籾井会長就任以降、NHKの政治報道には安倍政権批判の要素を極力抑制し、政権の主張を国民に効果的に周知するという傾向がしばしば見られた。
 集団的自衛権閣議決定のニュースでは、政府と自公の政治家を何回かスタジオに招いたのに対し、批判する市民の動きや識者の声をほとんど報じなかった。3月に開催された上関原発反対、川内原発再稼働にたいする山口、鹿児島各県での空前の大集会を、地域メディアは揃(そろ)って報じたが、NHKだけが取材もせず、市民から厳しく批判された。
 こうした傾向の背景になにがあるのか。NHK内部からの声を聞く限り、筆者は政権寄りの報道局政治部あるいは政治部出身の幹部の圧力を疑っている。
 政治がらみの番組では、安倍政権に批判的な内容は政治部から横やりが入ることがあるという。安倍政権を刺激しないように、自粛し、自主規制する動きが強まるのは自然なことだ。
 11月末放送予定だったNHKスペシャル「子どもの未来を救え〜貧困の連鎖を断ち切るために」が、選挙が決まったあと、選挙後の放送に変更された。これも政権のクレームを恐れてのこと、という見方が局内にある。
 NHKが視聴者の受信料のみで成り立つ仕組みは、この放送局が政府から独立して存在することを前提にしている。そのたてまえが侵食されているならば、法はどうあれ、視聴者は受信料を支払う理由を失う。NHK内の人びとは今このことを銘記すべきである。

厳しい批判を
 たしかに、NHKには、NHKスペシャルから朝ドラまで、視聴者に支持される番組が多い。しかし、視聴者は今このことを理由にNHK全体を評価してよいかどうか問い直す必要に迫られている。
 番組への信頼に乗じて続けられる政治報道に絞って厳しい批判の眼(め)を向けなければ、巧妙な形で国策放送局化が進むだろう。
 政府をもっとも監視しなければならない時代に、そうなれば国民の損失は測り知れない。
(
2015年01月30日,「赤旗」)

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2/職員ら語る現場のいま/息苦しい管理体制に

 「アベノミクス推進」「集団的自衛権、沖縄辺野古への基地移転を着実に進めたいとしています」。元日のNHKテレビ「ニュース7」でアナウンサーが告げました。これに安倍晋三首相の昨年末の映像を付けて、政権の取り組みを強調しました。年間企画と銘打った大型番組は、戦争が終わって各地を回る昭和天皇のにこやかな姿を映しだしましたが、戦争責任にはいっさいふれることはありませんでした。戦後70年の今年、民放テレビが侵略戦争について問う姿勢を見せたのとは、対照的な立ち位置を示しました。

提案が通らず
 今、NHKの内部で何が起こっているのか。
 「番組提案が通らない」「提案を自粛してしまう」「見えないところで事態が進んでいる」
 制作現場の第一線に立つディレクター、プロデューサーの声です。しかし「それが籾井(もみい)勝人会長になってガラッと変わったということではない」といいます。別の部署からは「会長が何か言ったり、チェックするわけではない」とも聞こえてきます。
 昨年、籾井会長は就任会見で「慰安婦はどこの国にもあった」「政府が右と言うことを左と言うわけにはいかない」と発言しました。職員たちの間でも大きな問題になり、集会も開きました。しかし、それらの動きが本格的な運動にはなっていません。
 NHK内部で広がっていく、ものを言えない空気。大きな契機になったのはETV番組改変事件です。2001年に放送。日本軍「慰安婦」を取り上げましたが、当時、官房副長官だった安倍氏が圧力をかけて作り変えられました。01年に市民が裁判に訴え、05年には番組放送当時の制作デスクが政治圧力を内部告発しました。
 NHKの中では、政権批判や歴史問題などを扱う企画提案が通りにくくなり、現在では「ETV特集」などで制作局長が試写を直々に行う体制が敷かれています。
 「上の人は政権のことを気にし、現場がその意向をくんでとなる。息苦しい管理体制になっていったのを感じる」(ドキュメンタリーのプロデューサー)
 「現場から発想することができない。工場で一律の製品を作るのと同じ」(情報番組のディレクター)

打開への希望
 籾井会長からさかのぼって財界出身のトップが3代続いているのも影を落としています。いずれも安倍首相につながる人物です。
 東海道新幹線やリニアなどJRを宣伝する番組がふえ、ニュースでトヨタやドコモの商品が大々的に取り上げられ、大企業の宣伝番組のようになっています。
 「多くの管理職が意識しているのは会長のバックにいる安倍政権。これでは実質的に国営放送ではないか。しかし、市民の代弁者であるべき公共放送であり続けることの意味をちゃんと考えている職員はいる。死滅してはいない。そこに希望がある」「個人でものを言えばつぶされるが、今こそ組合の本来の意味を考えるべき」
 管理職の職員は「どのように視聴者との信頼関係を築いていくのか。公共放送としてジャーナリズムを鍛え続け、政治や社会の課題に突っ込んでいく必要がある」と語ります。
 (つづく)
(
2015年01月31日,「赤旗」)

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