2016けいざい四季報】

*        けいざい四季報2016T/1/世界経済/株安・原油安…波乱の年明け

*        けいざい四季報2016T/2/中国経済/成長の減速…世界に波紋

*         けいざい四季報2016T/3/国内景気/消費低迷が企業業績に悪影響

*         けいざい四季報2016T/4/M&A/金融緩和で合併・買収過熱

 

 

 

けいざい四季報2016T/1/世界経済/株安・原油安…波乱の年明け

 世界の金融市場は年初、株安や原油安で激しく動揺し、波乱の年明けとなりました。米国経済には減速の兆しが表れており、2015年12月、9年半ぶりに利上げしたものの、追加利上げは見送られています。欧州経済は緩やかに回復とされるものの、回復が鈍化。欧州中央銀行(ECB)は追加金融緩和を実施しました。中国経済の減速が顕在化し、中国需要の低迷で、資源国に影響が出ています。

利上げ見送り
 米商務省が2月26日発表した15年10〜12月期の実質国内総生産(GDP)改定値は、季節調整済み年率換算で前期比1・0%の増加。速報値から上方修正されたものの、2期連続で低下しました。
 米連邦準備制度理事会(FRB)が2日発表した12地区連銀景況報告によると、米国経済は1〜2月、多くの地区で拡大しました。ただ、3地区では「横ばい」か「小幅減速」でした。金融市場の混乱に伴う消費控えやドル高、世界の景気減速による輸出の低迷なども確認されました。
 FRBは16日、連邦公開市場委員会(FOMC)で追加利上げを見送りました。1月に続き2会合連続。政策金利も0・25〜0・5%に据え置きました。イエレンFRB議長は記者会見で、「国際的な経済・金融情勢がリスクになっている」と説明。公表された委員らの利上げ見通し(中央値)は、12月時点の年4回から年2回へ半減しました。

追加金融緩和
 欧州連合(EU)統計局が2月12日発表した15年10〜12月期のユーロ圏実質域内総生産(GDP)は、年率換算で前期比1・1%の増加。7〜9月期の1・2%と比べ、小幅鈍化しました。EU全体のGDPも0・3%増と前期の0・4%増から小幅減速しました。中国や新興国の景気減速を背景に、ユーロ圏の生産にも陰りが出ています。
 ECBは10日、定例理事会で追加金融緩和を決定しました。政策金利をゼロ%へ引き下げ、ECBへ預けられた市中銀行の余剰資金に対する「中銀預入金利」もマイナス0・30%からマイナス0・40%へ引き下げました。マイナス金利拡大は、昨年12月以来。域内の国債などを買い入れる量的金融緩和も、毎月の買い入れ額を800億ユーロとし、200億ユーロ増やしました。
 同時に、ドラギECB総裁は定例理事会後の記者会見で、「銀行システムに影響を及ぼさずに、どこまでもマイナス金利を拡大させることはできない」と述べ、マイナス金利による利下げの限界を示唆しました。

マイナス成長
 資源価格の低迷が新興国の景気に打撃を与えています。
 ロシア連邦統計局は1月25日、15年の実質GDP(速報値)が前年比で3・7%減と発表しました。6年ぶりのマイナス成長。主力輸出品で歳入の半分を占める原油の価格下落が響きました。ブラジル政府が3日発表した15年のGDPは前年比3・8%減で、マイナス成長となりました。やはり6年ぶり。鉄鉱石の価格低迷が大きく影響しました。
 世界銀行は9日、最新の世界貿易に関する報告書で、15年の世界全体の輸入が1・7%増と、14年の3・0%増から伸びが鈍化と発表しました。資源価格の下落と中国の景気減速が連鎖し、新興国の輸入低迷につながったと分析。原油など資源価格の下落で資源国の中国などからの輸入が減少し、中国の生産の落ち込みが同国の輸入減少を招き、悪循環に陥ったとの見方を示しました。(つづく)

ポイント
@米国経済に減速の兆し。2015年12月の利上げの後、追加利上げは見送り
A欧州経済は回復が鈍化。追加金融緩和したものの、マイナス金利拡大に限界
B資源価格低迷が新興国経済に打撃。中国の景気減速と連鎖し、貿易に悪循環

世界経済の主な出来事(1〜3月)
1/4 上海市場で株価急落。取引停止
  16 アジアインフラ投資銀行が開業
  19 15年の中国GDP発表。前年比6.9%増。25年ぶりの低成長
  25 15年のロシアGDP発表。前年比で6年ぶりのマイナス成長
2/12 15年10〜12月期のユーロ圏GDP発表。前期と比べ小幅減速
  26 15年10〜12月期の米国GDP発表。2期連続で低下
3/3 15年のブラジルGDP発表。前年比で6年ぶりのマイナス成長
  9 世銀報告書、資源価格の下落と中国の景気減速の連鎖を指摘
  10 欧州中銀が追加金融緩和。中銀総裁がマイナス金利の限界示唆
  16 中国全人代が第13次5カ年計画など採択して閉幕
  16 米FRBが1月に続き2会合連続で追加利上げを見送り
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2016年03月23日,「赤旗」)

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けいざい四季報2016T/2/中国経済/成長の減速…世界に波紋

 中国の2015年実質国内総生産(GDP)は前年比6・9%増と、25年ぶりの低い伸びになりました。政府は16〜20年の第13次5カ年計画を決定。高度成長が望めなくなったもとで国家建設目標の達成をめざします。
 民間シンクタンク、日本総研が算出した需要項目別の寄与度は、国内投資の総量を示す総資本形成が2・5%(14年3・4%)、純輸出がマイナス0・2%(0・2%)、最終消費が4・6%(3・7%)でした。消費が景気を下支えする一方、生産の鈍化と輸出の減少が深刻です。特に15年の輸出は前年比1・8%減。内需の落ち込みにより、輸入は13・2%減の大幅減でした。

過剰生産能力
 中国政府は08年のリーマン・ショック後、4兆元(当時の為替レートで約53兆円)の大規模な財政支出を行って景気を立て直しました。しかし、これが過剰投資を生み、成長が伸び悩むもとで過剰生産能力となっています。鉄鋼、アルミなどの生産設備の稼働率は60%台。今年1〜2月の鉱工業生産は前年同期比5・4%増で、7年ぶりの低い伸びでした。
 16日に閉幕した全国人民代表大会(全人代=国会に相当)で李克強首相は、過剰生産能力の解消を強調しました。しかし、重工業の巨大国有企業のリストラは、大量の失業者を生みかねません。政府は1000億元(約1兆7500億円)の再就職支援予算を組んで雇用対策にあたります。

輸出国に打撃
 国際通貨基金(IMF)の試算によると、中国の経済成長が1%減速した場合、アジアの経済成長率は1年後、0・33ポイント、アジア以外の地域は0・17ポイント押し下げられます。
 中国の輸入は米国に次いで世界2位。内閣府の報告書「世界経済の潮流」2015年
Uによると、世界の資源消費に占める中国のシェアは鉄鉱石57・4%、石炭50・6%、銅56・5%(いずれも14年)。中国製造業の不振は世界の資源輸出国に大きな打撃を与えます。また、各国の輸出に占める中国の比率はオーストラリア33・7%、韓国25・4%、日本18・3%(いずれも14年)です。中国の輸入減は各国の輸出産業にはね返ります。

新5カ年計画
 今回、全人代で採択された第13次5カ年計画は、「二つの100年」の国家目標達成を前面に掲げました。「中国共産党創立100年にあたる2021年までに小康社会(ゆとりある社会)の全面的建設を完成し、GDPを2010年比で倍増する」「中華人民共和国建国100年にあたる2049年までに社会主義現代国家の建設を達成し、中等先進国の水準に達する」という長期目標です。
 全人代への政府活動報告は、「経済は規模が大きくなるほど成長が難しくなる」として、安定成長や「産業構造の高度化」への転換を強調しました。
 新5カ年計画は、年平均6・5%以上の成長目標を掲げました。今後の経済発展については、イノベーション(技術革新)の強化、都市と農村の調和、環境の改善、「シルクロード経済圏」の構築、貧困克服などの方針を盛り込みました。16年については6・5〜7%の経済成長を目標としました。
 (つづく)

ポイント
@中国の2015年実質成長率は6・9%で25年ぶりの低さ。生産と輸出が不振
AIMF試算によると中国の減速がアジアと世界に波及。輸出入減が各国に打撃
B新5カ年計画で年平均6・5%以上の成長目標。技術革新、調和など質を重視
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2016年03月24日,「赤旗」)

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けいざい四季報2016T/3/国内景気/消費低迷が企業業績に悪影響

 日本経済の悪化基調が鮮明となり、アベノミクス(安倍晋三政権の経済政策)の破たんがあらわになっています。

金融緩和推進
 日本銀行が1月29日の金融政策決定会合で、2月16日からのマイナス金利の導入を決めました。「異次元の金融緩和」をさらに推し進めようとするものです。日銀が大量の有価証券を買い入れて、民間銀行にお金を供給すれば、物価が上昇し、貸し出しも増えて景気が良くなるこのアベノミクスの「第1の矢」が完全に行き詰まったことを示すものです。
 金融決定会合では9人の委員中4人が反対しました。複数の委員が「金融機関や預金者の混乱・不安を高める」と警告。「日本銀行のみが最終的な国債の買い手となり、市場から財政ファイナンスとみなされる恐れがある」などの懸念も示されました。

マイナス成長
 2015年10〜12月期実質国内総生産(GDP)改定値は前期比0・3%減、年率換算1・1%減でした。安倍政権発足後の3年間で5回目のマイナス成長です。深刻なのは個人消費です。改定値で前期比0・9%減と、速報値の0・8%減から下方修正されました。
 2月の消費動向調査では消費者心理の明るさを示す消費者態度指数が2カ月連続で悪化。3月の月例経済報告では個人消費を7カ月ぶりに下方修正し、全体の景気判断も5カ月ぶりに下方修正しました。
 個人消費の低迷を受け、大企業の業績も下向きです。15年10〜12月期の法人企業統計では、金融機関を除く全産業の経常利益は前年同期比で、16四半期ぶりの減益でした。売上高も減少。経常利益と売上高がそろって前年割れとなるのは4年ぶりです。
 1〜3月期の法人企業景気予測調査によると大企業全産業の景況判断指数は3四半期ぶりにマイナスを記録しました。4〜6月期の見通しも大企業から中小企業までいずれもマイナスでした。
 経済同友会の3月の「景気定点観測アンケート調査」によると、景気は「緩やかに後退している」との回答が前回調査(15年12月)より4倍以上増えた一方、「緩やかに拡大している」との回答は半減しました。

賃上げ不可欠
 個人消費が低迷する背景に、家計の冷え込みがあります。1月の家計調査で2人以上の世帯のうち勤労者世帯の実質実収入は5カ月連続で減少。15年の毎月勤労統計によると実質賃金指数は4年連続で前年割れです。
 自動車、電機など金属大手の企業が労働組合の春闘要求に一斉回答した内容は、多くの企業でベースアップ(ベア)幅を昨年より縮小させました。3月決算の営業利益が過去最高を見込むトヨタ自動車はベアを前年の半分以下に抑えました。
 景気を良くするためには賃上げが不可欠です。国際通貨基金(IMF)は報告書で「デフレ脱却には賃金上昇が必要だ」と強調。日本政府は労働者の賃金上昇に向け、さらに取り組む必要があると指摘しました。
 大企業支援で「経済の好循環が実現する」と法人実効税率の引き下げなどに取り組んできたアベノミクスの失敗は明瞭です。
 (つづく)

ポイント
@日銀がマイナス金利政策を導入。異次元金融緩和の破たんを示す
A消費低迷で15年10〜12月期GDPはマイナス成長。企業景況も悪化
B春闘回答でベア低迷。大企業支援では賃上げしないことが明らかに

国内経済の主な出来事(1〜3月)
1/8 東京株式市場の日経平均株価が戦後初めて年初から6営業日続落
 29 2015年の自動車国内生産台数が2年ぶりのマイナス
 29 日銀がマイナス金利導入を決定
2/9 長期金利の指標となる10年物国債の利回りが初のマイナスに
 23 毎月勤労統計で15年の実質賃金指数が4年連続で前年割れ
 25 シャープが台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下入りを決定
3/1 1月の家計調査で2人以上世帯の消費支出が実質で5カ月連続下落
 8 15年10〜12月期実質国内総生産改定値で前期比0.3%減
 16 金属大手の企業が春闘要求に集中回答。ベア昨年のほぼ半分
 23 3月の政府月例経済報告で景気判断を5カ月ぶりに下方修正
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2016年03月25日,赤旗」)

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けいざい四季報2016T/4/M&A/金融緩和で合併・買収過熱

 国家の枠を超えた企業の合併・買収(M&A)が過熱しています。2015年の世界のM&Aの規模は4兆6200億j(約515兆円)となり、8年ぶりに過去最高を更新しました(調査会社ディールロジック調べ)。
 日本企業による海外企業のM&Aも件数・金額とも過去最高を更新しました(M&A助言会社レコフ調べ)。長期不況と少子化で国内市場が縮小するなか、海外で利益をあげようとしています。

保険が目立つ
 特に保険業界の動きが目立ちます。
 損保では、東京海上が6月に米HCCインシュアランス買収(9410億円)を発表。対抗するように、三井住友海上火災は9月に英アムリン買収(6420億円)を発表しました。損保ジャパンも13年に英損保を傘下に入れています。
 生保では、日本生命が5月にナショナルオーストラリア銀行の生保事業買収(2040億円)を発表。7月には明治安田生命が米スタンコープ・フィナンシャル・グループ(6280億円)を、8月には住友生命が米シメトラ・ファイナンシャル買収(4700億円)を発表しました。日本生命は9月に三井生命も傘下に入れています。
 明治安田生命は米企業買収について、日本と違い「(米国は)人口増加と堅調な経済成長を背景に中長期にわたり安定成長が期待」できるとしています。
 みずほ銀行が、英ロイヤル・バンク・オブ・スコットランドの北米の融資関連事業を3560億円で買い取るなど、15年のM&Aの買収金額トップ20件のうち10件を金融業界が占めました(レコフ調べ、国内企業による国内企業の合併・買収含む)。
 製造業では、キヤノンが監視カメラ世界首位のスウェーデン企業アクシスを完全子会社化(約3340億円)。ブラザー工業は英産業用印刷機メーカーのドミノ・プリンティング・サイエンシズを買収(1890億円)しました。

内部留保使い
 M&Aの原資は内部留保です。法人税減税などでため込まれた資金は、賃上げや設備投資ではなくM&Aに回っています。世界的な低金利政策で資金調達が容易になっていることも過熱の一因です。生産拠点の海外移転で国内の産業空洞化が深刻化しています。

外資に身売り
 外資による日本企業買収も進んでいます。経営危機に陥ったシャープは、台湾・鴻海精密工業に6500億円で身売り(その後、鴻海が減額提案)。日本の大手電機メーカーで初めて外資傘下に入る見通しです。
 粉飾会計で揺れる東芝は、家電部門を中国・美的集団に売却することで大筋合意しました。東芝は、米原子炉メーカー・ウエスチングハウスの巨額買収の失敗が、粉飾の一因になったと指摘されています。M&Aの危うさを示しています。
 (おわり)

ポイント
@国家の枠を超えた企業の合併・買収が過熱。日本でも過去最高を更新
A日本の保険業界が競うように海外企業買収に走る。製造業でも相次ぐ
B外資も日本企業買収。シャープは大手電機メーカーで初の外資傘下へ
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2016年03月26日,赤旗」)

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「赤旗」)

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