2016けいざい四季報III

けいざい四季報2016V/上/世界経済/成長見通し下方修正続く

けいざい四季報2016V/中/国内景気/消費低迷、設備投資に影

けいざい四季報2016V/下/金融/破綻明白でも緩和推進

 

けいざい四季報2016V/上/世界経済/成長見通し下方修正続く

 世界経済の成長見通しの下方修正が続いています。英国の欧州連合(EU)離脱決定の影響が懸念されています。米国は、利上げの意欲を示しつつ、踏み切れずにいます。途上国では、新興国景気の減速に伴う原油価格の低迷で収入減に苦しむ産油国が減産で合意しました。

英大規模緩和
 経済協力開発機構(OECD)は9月21日、最新の世界経済見通しで、2016年の世界全体の国内総生産(GDP)伸び率が2・9%、17年は3・2%と、6月の前回予想からそれぞれ0・1ポイント引き下げました。
 英国のEU離脱決定に伴う先進国景気の減速が主因だとしました。英国はEU離脱決定の影響が16年は軽微にとどまるものの、17年には本格的に表面化するとし、前回から1ポイント低い1・0%に大幅下方修正しました。
 英イングランド銀行(中央銀行)は8月4日、英国のEU離脱決定に伴う景気の減速を食い止めるため、政策金利を0・25%引き下げ、過去最低の年0・25%としました。
 利下げは金融危機下の09年3月以来7年5カ月ぶり。英国債と英社債合計700億ポンド(約9兆3000億円)の購入も決定し、大規模な金融緩和に踏み切りました。

6連続見送り
 米連邦準備制度理事会(FRB)は9月21日、政策金利の据え置きを決定し、追加利上げを見送りました。昨年12月の利上げ以降、追加利上げ見送りは6会合連続です。
 イエレン議長は記者会見で「雇用改善と物価上昇のさらなる証拠を待ちたい」と述べる一方で、「利上げの根拠は強まっている」として、年内実施に意欲を示しました。
 FRBが9月7日発表した地区連銀景況報告は、7月から8月末までの米経済活動について「緩やかな拡大が続いた」との総括判断を示し、前回7月の報告と同様の見方を維持していました。大半の地区で経済が「緩やかに拡大」しましたが、2地区で横ばい、他の2地区で鈍化しました。
 経済成長の要となる消費は大半の地区で横ばい。自動車販売は幾分減速しましたが、高水準を保ちました。製造業は大半の地区でわずかに伸び、住宅・商業不動産は拡大しました。

原油減産合意
 石油輸出国機構(OPEC)は9月28日、原油の減産に合意しました。「2年間で2分の1以下になった原油相場」に危機感が広がり、減産合意が成立しました。ロシアも減産に同調する意向です。
 OPECは声明で、原油安の主因が米国のシェールオイル生産などにあるとしつつ、原油相場の影響で産油国の石油収入が「劇的に減少した」と指摘し、生産調整の必要性を強調しました。
 国際エネルギー機関(IEA)は9月13日、9月の石油市場月報で、供給過剰が「少なくとも来年前半まで続く」と予想し、原油安が長期化するとの見方を示していました。中国やインドなど新興国の景気減速が背景だと指摘しました。
 サウジアラビアをはじめとする産油国は、価格よりもシェアの維持を優先して産油量を維持していました。
 (つづく)

ポイント
@英国EU離脱の影響を懸念し成長予測、下方修正。英国は大規模な金融緩和へ
A米国は、利上げの意欲を示しつつ、いっそう明確な経済指標待ちで踏み切れず
B新興国景気の減速に伴う原油価格の低迷で収入減に苦しむ産油国が減産で合意

世界経済の主な出来事(7〜9月)
7/13 1〜6月の中国輸出が前年同期比7.7%減。輸入10.2%減
  15 4〜6月期の中国GDP伸び率が前期から横ばい
  21 欧州中銀がマイナス金利据え置きなど金融政策現状維持
  27 米FRBが追加利上げ見送り
8/2 IMFが対日審査年次報告書で消費と民間投資の弱さを指摘
  4 英中央銀行が金利を0.25%引き下げ。過去最低の年0.25%
  24 ILOが若者雇用状況報告書。16年の失業率が前年比0.2ポイント増
  31 カナダ財務相がアジアインフラ投資銀行への参加を表明
9/4〜5 20カ国・地域首脳会議
  21 OECDが16年の世界のGDP伸び率予測を0.1ポイント引き下げ
  21 米FRBが追加利上げ見送り
  28 OPECが減産で合意
(
2016年10月20日,「赤旗」)

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けいざい四季報2016V/中/国内景気/消費低迷、設備投資に影

 9月の日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(短観)で大企業製造業の業況判断が2四半期連続で横ばいとなりました。3カ月後の業況判断の見通しも横ばいです。エコノミストからは「底ばい」との指摘もあります。大企業全産業の2016年度設備投資計画は前年度比6・3%増と前回調査とほぼ変わりません。円高を背景に企業が先行きを慎重に見ていることがうかがえます。

内部留保が増
 16年4〜6月期の国内総生産(GDP)改定値は実質で前期比0・2%増にとどまりました。企業の設備投資が0・1%の減となったことが要因の一つです。9月の月例経済報告では設備投資について、それまでの「持ち直しの動きがみられる」から、「持ち直しの動きに足踏みがみられる」と表現を下方修正しています。
 その一方で大企業はためこみを増やしています。財務省の法人企業統計では15年度の大企業の内部留保は313兆円と過去最高に上りました。
 大企業が設備投資をためらう背景に個人消費の弱さがあります。4〜6月期のGDPで個人消費はプラスだったものの0・2%にとどまります。総務省の家計調査によると消費支出は「うるう年効果」を除けば、最新結果の8月分まで12カ月連続で前年同月を割り込んでいます。

賃金伸び悩み
 個人消費が低迷するのは賃金の伸び悩みと物価上昇が最大の要因です。勤労者世帯の名目実収入は8月こそプラスになったものの、7月まで3カ月連続で前年同月を下回りました。
 アベノミクス(安倍晋三政権の経済政策)の「異次元の金融緩和」にもかかわらず、消費者物価指数は下落しています。しかし下がったのは家電や電気・ガソリンなどが中心。毎日購入する食料品は天候不良などの影響で値上がり傾向が続きます。

対策借金頼み
 安倍晋三政権が参院選直後に28兆1000億円もの経済対策を閣議決定しました。参院選中には自分たちの都合のいい指標を使って「アベノミクスで好循環が生まれ始めた」「道半ばだ」と宣伝していました。しかし、選挙が終わると政権発足以来最大規模の経済対策を打ち出さざるをえないことが経済の悪化を証明しています。
 しかも経済対策の財源は借金頼みです。6兆円の財政投融資を行います。財政投融資は財投債という国債を発行し民間企業に低利で貸し付けるものです。経済対策の第1弾となる第2次補正予算では2兆7500億円もの建設国債が追加発行されます。
 内容も不要不急の大型公共事業が中心。JR東海が自社事業として取り組んできた中央リニア新幹線に公的資金を投じ、大阪延伸を予定より繰り上げることなどが盛り込まれています。自衛隊強化のための兵器購入も行います。「経済対策」とは名ばかりで、国民の懐を温めず、国の借金を増やし、「戦争する国づくり」をすすめるものです。
 (つづく)

ポイント
@大企業製造業の景況感は2四半期連続横ばい、先行きも低迷。背景に円高進行
A個人消費は依然として低迷。賃金の伸び悩みと食料品価格などの高騰が背景に
B安倍晋三政権が28兆円超の経済対策を閣議決定。アベノミクス破綻を示すもの

国内経済の主な出来事(7〜9月)
7/12 日銀生活意識アンケートで31.6%が景況感悪化と回答
  20 2016年上半期の訪日外国人数が過去最高の1171万人
  29 GPIFが2015年度運用で5.3兆円の赤字と発表
8/2 安倍政権が28兆1000億円規模の経済対策を閣議決定
  9 ユニーがコンビニ1000店を2019年2月期までに閉鎖と発表
  18 東京市場で約2カ月ぶりに1j=99円台の円高
9/1 大企業の内部留保が2015年度313兆円。過去最高を更新
  8 4〜6月期実質GDPが前期比0.2%増
  21 日銀が「総括的な検証」と「新しい枠組み」を決定
  28 年収200万円以下のワーキングプアが3年連続1100万人超
(
2016年10月21日,「赤旗」)

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けいざい四季報2016V/下/金融/破綻明白でも緩和推進

 日銀は9月21日の金融政策決定会合で「量的・質的金融緩和」(異次元の金融緩和)の「総括的な検証」と「金融緩和強化のための新しい枠組み」を発表しました。破綻が明らかになった異次元緩和を正当化し、さらに続けます。

異常の長期化
 異次元緩和は2013年4月、「デフレ脱却」を掲げて始まりました。日銀が大量の国債を民間金融機関から買い入れ、お金を供給すれば、2年程度で年2%の物価上昇が実現し、景気も回復するというシナリオを描いていました。しかし、3年半続けても物価はマイナス。景気も良くなりません。「新しい枠組み」は「2年程度」としていた達成時期を取り下げました。「2年」はとうに過ぎていますが、目標を達成できなかったことをようやく認めました。ただ、今度は達成時期を「できるだけ早期」とし、2%の物価上昇を実現するまで、異次元緩和を際限なく続けることを宣言しました。異常な政策が長期化します。
 「総括」は2年で達成できなかった背景をまとめた文書です。日銀が挙げているのは
@原油価格の下落A消費税率引き上げ後の需要の弱さB新興国経済の減速―など「外的要因」です。政策に対する反省はありません。マイナス金利政策は継続します。

国債購入限界
 日銀は「新しい枠組み」の政策を「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」と名付けました。これまでは国債購入によって年間80兆円のお金(マネタリーベース)を民間金融機関に供給することを金融緩和の主要な手段としていました。今後もマネタリーベースを増やし続けるものの、政策の中心を金利に移すこととしました。2月から行っているマイナス金利政策に加え、国債の買い入れ方法を調整することで金利を操作するといいます。
 背景には、日銀による国債の大量購入が限界に近づいていることがあります。
 政府が発行した国債は、大手金融機関が落札しますが、そのほとんどを日銀が買い取っています。日銀が保有する国債は既発債のほぼ4割を占めています。日銀が購入できる国債は1〜2年以内に金融市場からなくなってしまうと予想されます。金融緩和を続けようにも日銀が国債を買えなくなる事態が近づいています。

危険な穴埋め
 日銀が保有する国債は9月末時点で長期、短期あわせて398兆円(うち長期国債341兆円)。日本の名目GDP(国内総生産)500兆円の8割です。政府の借金である国債を日銀が大量に抱え込むことは事実上、財政赤字の穴埋め(財政ファイナンス)となる危険性があります。日銀が政府の借金を直接引き受けることは財政法で禁止されています。歯止めのないインフレを招き、国民生活と国家財政を破綻させかねないからです。
 日銀は、国債の直接引き受けではないので「財政ファイナンスではない」としています。しかし、7月に開いた金融政策決定会合では、9人の政策委員のうち2人が「財政健全性に与える悪影響」を理由に追加緩和に反対しました。国際通貨基金(IMF)も日本の金融緩和依存に懸念を示しています。
 (おわり)

ポイント
@日銀が物価目標達成時期について「2年」を外し「できるだけ早期」とする
A政策手段の中心をマネタリーベースから長短金利に。マイナス金利は継続
B日銀の国債保有は既発債の4割。日銀内でも財政に与える悪影響に懸念の声
(
2016年10月22日,「赤旗」)

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