2016けいざい四季報】

*      けいざい四季報2016U/1/英EU離脱/統合岐路に、見えぬ展望

*      けいざい四季報2016U/2/世界経済/成長率予測引き下げ

*      けいざい四季報2016U/3/国内景気/アベノミクスの破たん

*      けいざい四季報2016U/4/消費税増税/暮らしと経済の疲弊で再延期

 

けいざい四季報2016U/1/英EU離脱/統合岐路に、見えぬ展望

 英国が6月23日の国民投票で欧州連合(EU)離脱を決めました。拡大・深化を続けてきた欧州統合は岐路に立たされています。欧州第2の経済大国の選択は世界経済にも衝撃を与えています。

国民に強い不信
 離脱51・9%、残留48・1%。国民投票は大方の事前予想を覆す結果でした。離脱派といっても、単一の考えでまとまっているわけではありません。一つは、移民の増加が職を奪い、治安を悪化させているとの不満です。英国では、炭鉱、造船所など伝統的産業が衰退し、非正規雇用が増えています。格差と貧困への怒りが「人の移動の自由」を進めるEUに向かいました。
 選挙で選ばれないEU官僚が英国の主権を侵害しているとの批判も影響力を持ちました。EUには各国の直接選挙で議員を選ぶ欧州議会がありますが、権限が限定されています。
 もともと、英国にはEUと一線を画す傾向が強く、通貨も欧州単一通貨ユーロを導入せず、ポンドを守っています。英政府は、労働時間規制やパート労働者の差別禁止などEUのルールに抵抗してきました。金融取引税の導入も拒否しています。ロンドンの金融街シティーの意向です。
 EU離脱を主張してきた政治勢力は離脱後の展望を示していません。中心人物の一人、英国独立党のファラージュ党首は国民投票後、目的を果たしたとして早々に辞任を表明しました。離脱に投票した国民からも後悔や投票やり直しを求める声が上がっています。

金融市場に衝撃
 国民投票結果に真っ先に反応したのが金融市場です。6月24日の世界の株式市場は前日比でドイツ7%安、日本8%安、香港3%安と急落し、ニューヨークではダウ平均が610j安と4年10カ月ぶりの下げ幅となりました。
 英ポンドの為替相場は、対ドルで10%近く急落し、1972年の変動相場制移行後、最大の下落率を記録しました。比較的安全な資産とされる円が買われ、東京市場で一時1j=99円台の円高となりました。
 英国の離脱決定で経済の先行きが不透明になったため、金融市場でリスクを避ける動きが強まっています。英国では商業用不動産に投資するファンドの取引停止が相次いでいます。凍結されたファンドの運用額は全体の5割以上。英不動産ファンド市場はまひ状態で、不動産バブルが崩壊することが懸念されています。

離脱の道険しく
 今後は、英国がいつEUに離脱を正式に通告し、離脱手続きに入るかが焦点になります。EU残留を訴えてきたキャメロン英首相は国民投票後、辞任を表明。6月28日に開かれたEU首脳会議で同首相は9月に発足する新政権が離脱交渉にあたるとして通告を先送りしました。独仏などはすみやかに離脱手続きに入るよう求めています。
 EU基本条約では、通告から2年以内に離脱することが定められています。しかし、英国が1973年の欧州共同体(EC)加盟以来、40年以上にわたって築いてきた地位を清算するためには膨大な交渉と実務作業が必要となるため、離脱までの道は相当険しいものになりそうです。
 英国はEUを離脱しても欧州単一市場には残りたい考えですが、EU側は「人の移動の自由」を守ることを単一市場残留の前提だとしており、英国が独自に移民を規制することは認めていません。
 (つづく)

ポイント
@英国が国民投票でEU離脱を決定。首相が辞意、再投票要求など混乱広がる
A世界同時株安、ポンド下落など金融市場に衝撃。英不動産ファンド市場はまひ
B離脱通告は新政権に委ねる。交渉は険しい見通し。英は単一市場に残留を希望

世界経済の主な出来事(4〜6月)
4/3 「パナマ文書」に10カ国の現旧指導者・関係者の名
  15 G20財務相・中央銀行総裁会議が共同声明。税逃れに制裁も
  15 中国1〜3月期GDP、前年比6.7%増。7年ぶり低い伸び
  17 主要産油国会合が増産凍結の合意を見送り
  27 FRBが利上げを見送り
5/10 ICIJが「パナマ文書」の21万法人のデータを公開
  24 ユーロ圏が緊縮政策を条件にギリシャ追加支援を決定
  27 G7サミット首脳宣言で世界経済の「下方リスク」に言及
6/15 FRBが利上げを見送り
  24 英国民投票でEU離脱を決定
  24 世界同時株安
  28 米1〜3月期GDP、年率1.1%増に上方修正
(
2016年07月13日,「赤旗」)

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けいざい四季報2016U/2/世界経済/成長率予測引き下げ

 世界銀行は、2016年の世界の成長率予測を引き下げました。特に、資源輸出に依存する新興国・途上国が顕著です。

4回連続見送り
 米連邦準備制度理事会(FRB)は6月15日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利を0・25〜0・5%に維持し、追加利上げも見送りました。昨年12月の利上げ開始以降、追加利上げ見送りは4会合連続。イエレンFRB議長はFOMC後の記者会見で、「最近の経済指標は強弱入り交じっており、慎重に政策調整を進めるのが適切だ」と説明しました。
 米商務省が6月28日発表した1〜3月期の国内総生産(GDP)確定値は、前期比年率換算1・1%増と、5月の改定値(0・8%増)から上方修正されました。個人消費の伸びが縮小した一方、企業の設備投資と輸出が上方修正されました。景気鈍化の懸念が後退したものの、英国民投票の欧州連合(EU)離脱決定で市場に先行き不透明感が広がり、追加利上げの判断は難しくなっています。
新たな資金供給 EU統計局が6月7日に発表した1〜3月期のユーロ圏GDP確定値は、前期比0・6%増となり、5月の改定値(0・5%増)から小幅上方修正されました。EU全体は改定値(0・5%増)と変わらず。それぞれ前期の0・3%増、0・4%増を上回り、回復傾向が加速しています。
 欧州中央銀行(ECB)は、デフレを強く警戒しています。6月2日、主要政策金利を0%、上限金利の限界貸出金利を0・25%、下限金利の中銀預入金利をマイナス0・40%と、いずれも過去最低で据え置きました。金利据え置きは、前回4月に続き2会合連続。また6月22日、3月の理事会が決めた新たな資金供給策を開始しました。期間は4年で、銀行が融資を増やせば、ECBの優遇金利を適用します。
 英国民投票のEU離脱決定を受け、ECBは6月24日、「必要ならばユーロや外国通貨の資金供給を行う用意がある」との声明を発表しました。

新興国では減速
 世界銀行は6月7日、最新の世界経済見通しを発表し、16年の世界の実質成長率予測を1月時点の2・9%から2・4%へ下方修正しました。修正幅が大きかったのは新興・途上国の資源輸出国で、1・2ポイント引き下げ、0・4%としました。
 中国国家統計局が4月15日発表した1〜3月期のGDPは、前年同期比6・7%増にとどまりました。7年ぶりの低い伸びで、減速に歯止めがかかっていません。
 ブラジル地理統計院が6月1日発表した1〜3月期のGDPは、前年同期比で5・4%減でした。マイナス成長は8四半期連続。資源安を背景に投資が低調で、消費も冷え込んでいます。ただ、マイナス幅は縮小傾向にあります。
 ロシア連邦統計局が5月16日発表した1〜3月期のGDPは、前年同期比1・2%減でした。ただ、昨年10〜12月期の3・8%減からはマイナス幅が縮小しました。
 南アフリカ統計局が6月8日発表した1〜3月期のGDPは、前期比年率換算で1・2%減でした。昨年10〜12月期の0・4%増からマイナス成長に転落しました。政府や国際機関の予測によると、資源安や干ばつ、弱い輸出需要、政治不安などのために、16年は09年以来の低成長が見込まれています。
 (つづく)

ポイント
@米国は追加利上げ見送り。英国のEU離脱決定で追加利上げの判断より困難に
A欧州は景気回復傾向が加速。欧州中銀はデフレを警戒し、新たな資金供給策も
B世界銀行は世界経済見通しを下方修正。資源輸出新興国・途上国の下げ幅が大
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2016年07月14日,「赤旗」)

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けいざい四季報2016U/3/国内景気/アベノミクスの破たん

 3年半におよぶ安倍晋三政権の経済政策(アベノミクス)が国民の暮らしを圧迫し、日本経済を悪化させています。各経済指標が実情を浮き彫りにしています。

消費2年連続減
 日本銀行の6月全国企業短期経済観測調査(短観)によると、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)は、大企業製造業が横ばいとなったほかは、中小企業、中堅企業とも軒並み悪化しました。
 総務省の5月の家計調査によると、1世帯(2人以上)当たりの消費支出は28万1827円となり、物価変動の影響を除いた実質で前年同月比1・1%減と、3月以来3カ月連続で減少。うるう年の効果でプラスに転じた2月の特殊要因を考慮すると、実態として9カ月連続の減少です。
 内閣府が発表した2015年度の国内総生産(GDP)は、実質で前年度比0・8%増と、低成長でした。個人消費は同0・2%減と、2年連続マイナスでした。戦後初めてのことです。
 5月の景気ウオッチャー調査でも、街角の景況感を示す現状判断DI(指数)が前月比0・5ポイント減の43・0と、2カ月連続で悪化しました。
 苦しい国民生活と、消費の冷え込みが招いた日本経済の悪循環が止まりません。アベノミクスの破綻は明らかです。

大企業のみ潤う
 一方、アベノミクスは、大企業を潤わせています。財務省が6月1日発表した16年1〜3月期の法人企業統計調査によると、大企業(資本金10億円以上)の内部留保は前年同期比2・9%増の301・2兆円。3四半期連続で300兆円を超えました。
 自動車大手8社の16年3月期連結決算は6社が増収増益です。なかでも、トヨタ自動車は、売上高が28兆4031億円と2年連続で過去最高を更新。税引き後の純利益も、2兆3126億円と3年連続で過去最高となりました。

消費税増税延期
 安倍首相は6月1日、「世界経済が直面するリスクについて備えなければならない」と述べ、消費税率10%への増税を「19年10月から」に再延期することを表明しました。日本経済の行き詰まりを招いた自らの経済政策の失敗を、世界経済のせいにしようとしています。
 英国の国民投票で欧州連合(EU)からの離脱が多数となり、6月24日の日経平均株価の終値が前日比1286円33銭安の1万4952円02銭と暴落。下げ幅は過去8番目の大きさでした。東京外国為替市場では円相場が急騰。一時約2年7カ月ぶりに1j=99円台をつけました。
 その後、金融市場は沈静化したものの、アベノミクスが演出した円安・株高の効果も薄れつつあります。
 (つづく)

ポイント
@2015年度実質GDP前年度比0・8%と低成長。個人消費は2年連続減
A大企業の内部留保は3四半期連続で300兆円超える。国民には還元されず
B英国の欧州連合(EU)離脱の国民投票結果を受け、株価暴落、円急伸

国内経済の主な出来事
4/2 シャープと台湾の鴻海(ホンハイ)がシャープ買収契約締結
  20 三菱自動車が燃費不正問題で軽自動車生産を停止
5/10 「パナマ文書」に日本企業・個人400以上
  11 トヨタ自動車16年3月期決算発表。純利益が3年連続過去最高
  20 2015年度の実質賃金指数が前年度比0.1%減。5年連続減
  26〜27 主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)開催
6/1 安倍晋三首相が消費税10%増税の再延期を表明
  1 1〜3月法人企業統計で大企業内部留保が3期連続300兆円超
  2 「骨太の方針」「ニッポン1億総活躍プラン」などを閣議決定
  8 15年度実質GDP前年度比0.8%増、個人消費2年連続減
  24 英国のEU離脱の国民投票結果を受け、株価暴落、円急伸
(
2016年07月15日,「赤旗」)

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けいざい四季報2016U/4/消費税増税/暮らしと経済の疲弊で再延期

 安倍晋三首相は6月1日の記者会見で「これまでのお約束とは異なる『新しい判断』」と述べて、2017年4月に強行を狙っていた10%への消費税率引き上げを19年10月まで2年半先送りすることを表明しました。もともと10%への消費税率引き上げは15年10月に強行を狙っていたものであり、増税「先送り」は2度目となります。

貧困と格差拡大
 会見で安倍首相は「世界的な成長の減速」などを上げ、「危機を回避するため」「内需を腰折れさせかねない消費税率の引き上げは延期すべきだ」と説明しました。しかし14年4月に5%から8%への消費税率引き上げを強行したことをはじめとするアベノミクス(安倍政権の経済政策)が国民生活と日本経済を疲弊させたことと、増税中止を求める国民世論や日本共産党の批判の前に、増税できなくなったというのが真相です。
 安倍政権のもとで貧困と格差は広がり、日本経済は危機に陥っています。労働者の実質賃金は5年連続でマイナス。名目賃金が伸び悩んだことに加え、アベノミクスの「異次元金融緩和」で物価が上昇したためです。国内総生産(GDP)の6割を占める個人消費は2年連続でマイナスとなりました。戦後初めてのことです。

社会保障先送り
 自民・公明両党は消費税率引き上げの先送りを理由に社会保障の拡充を先送りしようとしています。安倍晋三首相は6月19日のNHK党首討論で「消費税の引き上げを延期する以上、全てのメニューを行うことはできません」と述べました。政府が10%への消費税増税とセットにしている「社会保障拡充策」は、国民年金受給資格期間の短縮や65歳以上の低所得者の介護保険料軽減、低年金者への給付金などです。「優先順位」をつけるとしていますが、「すべてはできない」とも口にしています。
 しかし、これらは国民が長く求めてきたもので、政府もその必要性を認めています。これら三つを実現するために必要な財源は毎年8000億円程度。消費税率を10%に引き上げなくても可能です。
 社会保障財源を消費税に頼る限り、「社会保障の拡充」か「消費税増税」かの「悪魔の選択」が国民に迫られ続けます。

三つのチェンジ
 消費税増税をはじめ国民から搾り取り、日本経済を危機に陥れたアベノミクスから決別する時です。日本共産党が参院選で提起したように格差をただし、経済に民主主義を確立する「三つのチェンジ」が必要です。
 第一は「税金の集め方」のチェンジです。消費税10%は先送りではなく、きっぱり中止することが必要です。富裕層や大企業に応分の負担を求める「消費税に頼らない別の道」で財源をつくることは可能です。
 第二は「税金の使い方」のチェンジです。税金は社会保障や若者、子育てなどを最優先にします。認可保育所の増設や保育士の待遇改善で「保育園に落ちない日本」をつくることが求められています。大学の学費も10年間で半減し、給付制奨学金の創設も目指します。
 第三は「働き方」のチェンジです。残業時間を法律で規制し、「過労死」をなくすことが必要です。非正規雇用から正社員への流れをつくるための雇用のルールの強化を図ります。中小企業対策を行いながら最低賃金を引き上げて、今すぐどこでも時給1000円、そして1500円を目指します。(おわり)

ポイント
@10%への消費税率引き上げ再延期はアベノミクスが国内経済を疲弊させた結果
A消費税率引き上げ「再延期」を口実に安倍政権は社会保障拡充の先送りを画策
B国民と経済を疲弊させたアベノミクスからは決別を。「三つのチェンジ」こそ
(
2016年07月16日,「赤旗」)

 

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