「放送の自由」とは何か?NHK問題

2月】【3月】【4月】【5月】【6月】【7月】

8月】〜【12月】

*      【2

*      1/放送法第4条は倫理規定

*      2/政権が喜ぶ「政治的公平」

*      3/電波監理委員会の攻防

*      4/放送人の努力で築く

*      高市総務相に暴言で抗議/奈良革新懇

*      高市発言を機に思う/ジャーナリスト丸山重威/事実さえ伝えないNHK/安倍政権支配で「暗黒時代」再来

*      電波停止発言/総務相は発言撤回を/田村貴氏「表現の自由への介入」/衆院委

*      受信料問題など率直な意見/「現行制度はベスト」「信頼ある情報源に」/お茶の水大でNHK経営委と語る会

*      電波停止適用再言及

*      「停波」発言の高市大臣、安倍首相も追認/まさに権力介入/民放労連書記次長岩崎貞明さん

*      「停波」発言の高市大臣、安倍首相も追認/政権の意に反する放送どう喝

*      波動/放送に携わる者の矜持/河野慎二

*      主張/相次ぐ暴言・不祥事/憲法・生活壊す安倍政治が元凶

*      安倍政権NO/戦争法廃止1万人大行進/東京・渋谷

*      NHK前専務、籾井会長批判/重要議論滞る

*      2億円着服問題/NHK全役員が報酬を一部返納

*      受信料問題など率直な意見/「現行制度はベスト」「信頼ある情報源に」/お茶の水大でNHK経営委と語る会

*      市民の声きけ/NHKを検証/来月4日国会内集会

*      潮流

*      【3月】

*      総務相の電波停止発言/キャスター有志私たちは怒っている

*      潮流

*      高市氏「電波停止」発言/発言撤回と大臣辞任を/日本劇作家協会

*      停波発言/キャスターの抗議/会見での発言/アピール要旨

*      福島第1事故5年/原発、無謀の果て/廃炉、険しき道/近づけぬ原子炉建屋、溶融燃料どこに

*      試写室/NHKスペシャル私を襲った津波/NHKテレビ後8・0/CG映像と証言で新しい知見

*      NHKと市民/受信料支払い保留″ル判始まる/放送法違反、「籾井発言」問う/奈良地裁

*      改憲派「出前授業」に抗議/市民団体、さいたま市教委に

*      暴走ストップ/力合わせて/立教大学特任教授西谷修さん/国民的危機脱出のため

*      NHK予算案承認/3年連続全会一致崩れる/共産党など反対/衆院総務委

*      NHK予算案/「クロ現」名指し、異例の「意見」/総務相、「行政指導」強調

*      停波発言/高市氏に抗議、撤回要求/奈良県議有志の会

*      高市総務相「停波」発言/「言論・表現の自由の存否かかる」/ジャーナリスト5氏が再批判

*      「停波」大臣発言/3団体抗議声明

 

*      テレビ時評/NHKに求める自己検証/元NHKディレクター戸崎賢二

*      【4月】

*      NHK人事/専務理事など異例の大幅交代

*      おはようニュース問答/NHK予算審議で放送法が注目されたね

*      NHKは「アベちゃんねる」?/岐阜・大垣で講演学習会

*      おはようニュース問答/自民党改憲案「公の秩序」で人権制限されるよ

*      シンポ/健全なジャーナリズムで自由な放送を守ろう/安倍政権の強圧を批判

*      自民改憲案「Q&A」が告白=^「公益」優先、人権は制約/高村氏の言い訳、成り立たず

*      参院選の大争点/安倍改憲を許すのか戦争法の廃止か/志位委員長が主張/NHK「日曜討論」

*      ひと/「嵐」メンバー相葉雅紀さん/NHK「グッと!スポーツ」で司会/がむしゃらな人が好き

*      言論統制狙う安倍政権/市民団体が講演会/広島

*      波動/基地問題への問いは?/利元克巳

*      NHK経営委員長浜田氏退任へ

*      メディア考える講演会60人参加/大津

*      市民に開かれた放送局℃タ践/「学んで考えて行動する」/KBS京都労組35周年の集い

*      政権寄りNHK、真の公共放送に/茨城・講演会

*      熊本地震/「原発報道は公式発表≠ナ」/籾井NHK会長が指示/日放労は批判見解

*      トークとーく/「戦争法の廃止と立憲主義の回復を求める栃木県民ネットワーク」共同代表太田うるおうさん(63)/栃木・たのべ統一候補の擁立

*      NHK経営委員と語る会/籾井会長への批判相次ぐ/「トップとしては無理」/松山

*      5月】

*      変えるべきは憲法ないがしろの政治/志位委員長が主張/NHK憲法記念日特集

*      NHK「憲法記念日特集」/志位委員長の発言

*      公布70年、憲法はいま/13条・個人の尊厳と公共の福祉/「公益・公秩序」は人権を縛るもの/愛敬浩二

*      「憲法変えるな」多数に/安倍改憲に国民が危機感/各メディア調査に鮮明

*      放送人グランプリに国谷裕子さん

*      おはようニュース問答/NHK原発報道は「公式発表」うのみ?

*      籾井氏再任、断固ノー/市民26団体、NHKに要望書

*      NHK経営委員と語る会/受信料や会長発言に苦情/「監視・監督の立場で」と回答/函館

*      NHK理事・経営委員人事に見る籾井会長の思惑と狙い

*      文芸評論家、東京大学教授沼野充義さん/『チェーホフ七分の絶望と三分の希望』/薄味にひそむ情熱と思想

*      放送文化と人間らしさと/元NHK会長・市川森一脚本賞財団理事長福地茂雄さんに聞く

*      NHK「日曜討論」/藤野政策委員長の発言

*      税金集め方・使い方転換を/社会保障充実へ/藤野政策委員長/NHK討論

*      変えるべきは憲法無視の政治/「改憲許さない」/NHK討論で志位委員長が主張

*      放送文化と人間らしさと/元NHK会長・市川森一脚本賞財団理事長福地茂雄さんに聞

*      NHK経営委員と語る会/「国民こそスポンサー」/放送の自主自律求める声相次ぐ/長野市

*      NHK「日曜討論」/藤野政策委員長の発言

*      「1億総活躍プラン」/藤野氏、党の対案示し論戦/NHK「日曜討論」

*      読書のページ/本の窓/報道と官邸、異常の常態化

*      元米兵の事件に抗議/NHK沖縄OBの会が声明

*      潮流

*      NHK受信料支払い裁判弁論/奈良地裁

*      ひと/うたごえ喫茶「金城広子とその仲間たち」開催10周年金城広子さん(78)

*      NHK「日曜討論」小池書記局長の詳報

*      放送人グランプリ2016/受賞は「クロ現」国谷裕子さん/聞くべきことは聞き、伝えるべきは伝えて

 

*      6月】

*      おはようニュース問答/ギャラクシー賞「気骨」ある番組が受賞だね

*      ギャラクシー賞/テレビ部門大賞、「報道ステ」特集

*      ヤドランカさんをしのぶ/田代忠利/平和願う心に灯ともす歌声

*      いま、NHKで何が起こっているか?/広がる政治報道のゆがみ/元ディレクター戸崎賢二さんの講演

*      潮流

*      NHK籾井会長は辞任して/元職員、市民ら抗議集会/放送センター前

*      安倍暴走NO/政治チェンジ/党首討論で志位委員長/その1

*      安倍暴走NO/政治チェンジ/党首討論で志位委員長/その2

*      安倍政権と放送への圧力/上/あからさまに、そして密室で/現場からは苦悩の声

*      安倍政権と放送への圧力/中/「公平」「公正」を叫んで攻撃/多様な意見の表現こそ

*      安倍政権と放送への圧力/下/痕跡を残さない巧妙さ/ETV番組改変問題

*      (Go2Top

*      【7月】

*      安倍政権のメディア介入問う発言/権力からの独立が、いま放送に必要だ

*      NHK「徹底討論日本の政治はどう動く」/小池書記局長の発言

*      NHKは会長選考改革を/全国27市民団体共同で要請

*      首相が改憲推進姿勢

*      波動/NHKの異様な沈黙/河野慎二

*      NHK受信料の検討結果まとめ/総務省有識者会議

*      試写室/NHKスペシャル未解決事件ロッキード事件/NHKテレビ後7・30/国防の闇≠ノ迫り見応え十分

*      地域放送の役割考える/市民と言論シンポ/名古屋

*      田んぼで「真田丸」/青森・田舎館村

*      試写室/百合子さんの絵本〜陸軍武官小野寺夫婦の戦争/NHKテレビ後9・0

*      原爆死没者追悼式典/核兵器のない世界をともに/熊本市、100人が参加

*      あすから「平和のための戦争展」/埼玉

*      NHK会長選任/指名部会を設置

*      潮流

*      芸能テレビ/放送文化つくった二人逝く/永六輔さん/大橋巨泉さん/松尾羊一

*      本立て/老後親子破産/NHKスペシャル取材班著

*      8月】

*      NHKどこへ向かう/平和とメディア考える集会/JCJなどが名古屋で開催

*      戦後71年の夏/市原悦子さん/憲法守れ、声大きく/戦争の流れ止められなくなる前に

*      (PageTop)

*      12月】

*      試写室/NHKスペシャル自閉症の君が教えてくれたこと/NHKテレビ11日後9・0/「ハンディ」持つ人の深い洞察

*      NHK新会長決定にあたって/経営委員からの選任は異常/立教大学教授砂川浩慶さん

*      世論が批判、籾井氏退任へ/NHK新会長に上田氏/経営委

*      NHK会長選出、70年前は/元放送委員市吉澄枝さん(故人)の回想/上/国民主体の委員会、始動

*      NHK会長選出、70年前は/元放送委員市吉澄枝さん(故人)の回想/下/候補者あげ議論尽くして選ぶ

 

【2月】本文

1/放送法第4条は倫理規定

 高市早苗総務大臣は、8、9両日の予算委員会や記者会見で、政治的に公平でない放送局の電波を止めることができると発言しました。その言い分を糸口に、放送の自由の理念に迫ります。
 (田村三香子)

 放送法は1950年に、連合国占領下で制定されました。同時に成立した電波法、電波監理委員会設置法とあわせて、言論の分野で民主主義社会建設をしていくための、なくてはならない要素でした。眼目は、戦前、「電波は政府これを管掌す」とされていた国家権力のための電波を国民の手に取り戻し、放送の言論の自由を保障することにありました。

罰則は当然か
 第1条には「放送を公共の福祉に適合するように規律し、その健全な発達を図ることを目的とする」と言っているように、放送法における規律は、放送が国民のためになることや、健全な発達をすることを目的に設けられています。
 第3条は「放送番組は…何人からも干渉され、又は規律されることがない」と、放送の権力からの自由をうたっています。
 次の第4条では、放送事業者にたいして別項のような「番組編集準則」を守るべきだとしています。
 高市氏をはじめ、菅官房長官、安倍首相は、これらの項目を「法的規律」であると解釈して、違反すれば当然罰則があるといいます。この解釈は、放送法制の研究者の間では少数派です。
 通説は、第4条は放送事業者の「倫理規定」だとするのが当然としています。「番組編集準則は倫理的規定と解さない限り、合憲とはいえず、違反に対して法的制裁をともなう規範と解するなら憲法上の疑義が生じる」(鈴木秀美慶応大学教授、『月刊民放』2014年11月号)との指摘もあります。

自由への介入
 放送法4条違反を法的な規範の違反だと強調して電波を停止できるぞということは、放送法の趣旨の曲解であり、放送の自由への介入です。(つづく)

放送法第4条(番組編集準則)
@公安及び善良な風俗を害しないこと
A政治的に公平であること
B報道は事実をまげないですること
C意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
(
2016年02月17日,「赤旗」)

(Go2Top

2/政権が喜ぶ「政治的公平」

 「政権の考え方に沿うような、喜ぶような放送をすることが、政治的公平とは到底、思えません」
 こう言い切ったのは、「報道ステーション」の古舘伊知郎キャスターです。12日、高市早苗総務相の電波停止発言をめぐって語りました。

総務相の認識
 政治的な公平とは何でしょうか。
 高市総務相は9日の衆院予算委員会で、「憲法9条改正反対の見解が相当時間繰り返されたときも、電波停止になる可能性は否定できないか」と問われました。大臣は「繰り返し」「まったく公正でない」「改善措置がなされない」など条件を付けた上ながら、「罰則規定を適用しないということはない」と答弁しました。憲法9条改悪反対の見解を、再三の行政指導にもかかわらず続けた場合は電波停止がありうるというわけです。憲法9条擁護の意見を、報じすぎたら公平ではない―これが高市総務相の公平観です。憲法順守義務のある国務大臣として許されない憲法認識・平和認識です。
 高市答弁について、「総務大臣の責任において回答されたもの」と容認する安倍晋三首相も、同じ認識といっていいでしょう。

政府寄りには
 右派市民団体「放送法遵守(じゅんしゅ)を求める視聴者の会」も、テレビが戦争法反対の世論を肯定的に取り上げることを敵視しています。
 同会は昨年11月と今月、新聞に全面広告を出して、戦争法で反対の立場を鮮明にしたキャスターや、反対意見の報道だけに攻撃を集中。その一方で、環太平洋連携協定(TPP)やアベノミクスについて放送が政府寄りの報道しかしないことについては口をつぐんでいます。一見公平を求めているものの、実質的には「憲法9条を守れ」「戦争法反対」の言論封殺を狙うもの。この「公平」観は最終的に政権を喜ばせます。
 政治的公平は、国民が多様な情報を知る権利を実現するためにあります。政権の喜ぶ「政治的公平」で、国民に政権の真実の姿を報道できるのか。冒頭の古舘氏の言葉は示唆的です。
 (つづく)
(
2016年02月19日,「赤旗」)

(Go2Top

3/電波監理委員会の攻防

 放送の自由を目指した電波3法の一つに電波監理委員会設置法があります。どんなものなのでしょうか。
 1947年、連合国軍総司令部(GHQ)は「ファイスナーメモ」と呼ばれる文書を出します。GHQ民間通信局調査課長代理ファイスナー氏が書いたもの。政府や政党から独立した機関に放送を管理運営させる方針を示しました。

政府は否定的
 日本政府は最初から「内閣の力の及ばない自治機関ができることは、憲法上非常に疑義がある」(椎熊三郎逓信政務次官)と、否定的でした。
 その理由についてメディア政策史の研究者の内川芳美氏はこうのべています。
 「(当時の)吉田茂内閣が、国民の思想、情報、宣伝に重大な影響を持つ放送の監理行政を、内閣の統制の直接及ばない行政委員会方式にゆだねることを強く逡巡したためとみられる」(『マス・メディア法政策史研究』)
 GHQと日本政府は幾度か押し引きし、最後はマッカーサー最高司令官が吉田首相に書簡を出して、独立行政法人である電波監理委員会の設置法案を提出させます。審議中も政府の抵抗が見られたものの、50年6月1日、電波監理委員会設置法が施行されます。
 それもつかの間、52年7月31日、吉田内閣は電波監理委員会を廃止します。占領終結(同年4月28日)を待っていたかのように、です。以後、電波・放送行政は郵政相(現在の総務相)の所管になり、監督官庁の名のもとに、郵政省はたびたび、放送へ介入します。

現代的な役割
 電波監理委員会廃止から43年たった95年。来日したファイスナー氏(当時85歳)はシンポジウムで語りました。「私は自問自答します。これ(電波監理委員会廃止)を救えなかったのだろうか、と」。後悔の念のにじむ発言でした。
 今月12日。「報道ステーション」に出演した片山善博元総務相はのべました。「政治的公平性をいうのであれば、かつての電波監理委員会のような第三者委員会でもって客観的公平的にみていく、そういう仕掛けが必要だと思います」。電波監理委員会は、過去のものでない、現代的な役割をもつものなのではないでしょうか。(つづく)
(
2016年02月20日,「赤旗」)

(Go2Top

4/放送人の努力で築く

 独立行政委員会がないもとで、日本の放送は行政指導という名の政府の介入が繰り返されてきました。その一方、放送の独立性を確保するために放送事業者は努力をしてきました。さかのぼれば1965年、放送番組向上委員会が設立され、2003年には放送倫理・番組向上機構(BPO)が設置されます。
政府の介入批判 BPOは、NHKと日本民間放送連盟(民放連)による第三者委員会。目的は、放送の自律、言論・表現の自由の確保、視聴者の人権の擁護です。
 昨年11月、「クローズアップ現代」の「やらせ」報道に関して出した「意見」の中で、BPOは政府の放送への介入を批判しています。
 「意見」は、総務相がNHKに対して厳重注意した根拠とする放送法4条や5条は「放送事業者が自らを律するための『倫理規範』であり、総務大臣が個々の放送番組の内容に介入する根拠ではない」と断じています。放送事業者が自主的に原因を調査し再発防止を検討していると主張、「自律的な行動の過程に行政指導という手段により政府が介入することは、放送法が保障する『自律』を侵害する行為そのもの」とのべました。
 こんにちの高市総務相や安倍首相の発言を予見していたかのような格調高い放送の自由宣言です。
画期的な快挙=@この「意見」に寄せて、メディア研究者の松田浩さんは「際立ったのは放送の自律機関としての同機構の高い見識と存在価値の高さだった。権力に弱い日本の放送メディアの歴史のなかで、画期的な快挙といっていい」と称賛しました(「しんぶん赤旗」15年11月13日付)。
 放送労働者も、発言しています。
 日本民間放送労働組合連合会は、10日、高市発言について声明を出しました。「電波法の停波規定まで持ち出して放送番組の内容に介入しようとするのは、放送局に対する威嚇(いかく)・恫喝(どうかつ)以外の何物でもない」と糾弾しています。つづいて16日には、高市総務相に発言の撤回を求め、独立行政機関の設置を含む放送行政の見直しを訴える「要請書」を、総務相に提出しました。あわせて放送法4条に法規範性があると言えるのはなぜかなど、高市氏の発言の根拠を問う公開質問状も出しています。
 放送法1条に定められた放送の自由は、放送人の努力で築き上げる途上にあります。
 (おわり)
(
2016年02月21日,「赤旗」)

(Go2Top

「停波」発言の高市大臣、安倍首相も追認/まさに権力介入/民放労連書記次長岩崎貞明さん

番組の公平性、政府に判断資格なし
 高市総務相は、「政治的公平」を「ときの大臣が判断する」と言いました。しかし、一定の政治的主張に基づいて行動する政治家やその指示に従う官僚たちに、どうして放送の政治的公平を判断できる資格があると言えるのでしょうか。
 電波法の停波規定まで持ち出して放送番組の内容に介入しようとするのは、放送局に対する威嚇・どう喝以外の何ものでもありません。実際、番組内容を理由に政府が放送免許停止処分を出したことは過去に一件もありません。
 放送法の精神は、「放送番組編集の自由」を保障した3条にあります。そこでは「放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない」と定めています。これは、憲法21条「表現の自由」を実質化したものです。放送の内容は、放送局と視聴者の関係で質の向上が図られるべきものです。
 戦前の法制度には、政府の気に入らない放送は大臣の命令で電源を遮断する権限まで定められていました。その結果、「大本営発表」のような、政府や軍に都合のいい情報ばかりがラジオを通じて全国に伝えられ、国民が正しく判断できない状態のまま悲惨な敗戦を迎えました。この反省から戦後、放送の内容に政府が介入しないよう、放送法が整備されました。
 1950年の放送法・電波法の施行と同時に「電波監理委員会」という独立行政委員会が設置されました。これは政府から放送局に直接の影響が及ばないように設けられたものです。先進諸国では一般的ですが、日本はその2年後に制度を廃止し、郵政省(当時)が放送局に免許を直接付与する制度に変えてしまいました。
 総務省による行政指導に放送局が従わなかったとしても、不利益な扱いをすることは行政手続法(第32条2項)で禁じられています。しかし、総務省には放送免許の権限があるため、放送局は政府の顔色をうかがってしまうのです。
 第1次安倍政権の1年間では8件も行政指導が行われており、他の内閣と比べても突出しています。第2次安倍政権では、首相がお気に入りの放送局だけに出演するなど放送に対する圧力をさらに強めています。
 今回のような言動が政権担当者から繰り返される背景には、当事者である放送局から正当な反論、批判が行われていないことにも一因があります。民放労連は、政府への抗議と並行して、放送局は毅然(きぜん)とした態度で高市総務相発言の誤りを正すべきだ、と主張しています。同時に権力の介入を招かぬよう、番組の質向上のために放送局が不断の努力をすることはいうまでもありません。
(
2016年02月21日,「赤旗」)

(Go2Top

「停波」発言の高市大臣、安倍首相も追認/政権の意に反する放送どう喝

 高市早苗総務相は8日の衆院予算委員会で、総務相が政治的な公平性を欠く放送を繰り返したと判断した場合、放送法4条違反を理由に電波法76条に基づいて電波停止を命じる可能性に触れました。9日の同委員会では、憲法9条改定に反対する内容を相当時間繰り返して放送した場合も例外ではないことを示唆。安倍晋三首相は、高市総務相の答弁を追認しています。
 日本共産党の小池晃政策委員長は12日の記者会見で、「放送法は憲法21条の表現の自由に基づいて、報道機関に権力は介入してはならないということでつくられた法律だ」「高市総務相の発言は、まさに(権力の)介入だ」と批判しました。
 高市総務相が行政指導の根拠にしている放送法4条は、「政治的に公平であること」「報道は事実をまげないですること」などを定めています。これは放送局が守るべき「放送番組編集準則」です。憲法やメディア法の専門家の間では、同4条は放送局がめざすべき「倫理規定」とするのが通説です。
 10日に「高市総務相の『停波発言』に抗議し、その撤回を求める」とする中央執行委員会声明を発表した、日本民間放送労働組合連合会(民放労連)書記次長の岩崎貞明さんに寄稿してもらいました。
(
2016年02月21日,「赤旗」)

(Go2Top

波動/放送に携わる者の矜持/河野慎二

 政府の「電波停止」命令で、将来ある日突然、ある局のテレビが放送中止になるという事態が本当に起こるのか?
 それが決して架空の話ではないと、放送を所管する高市早苗総務相が国会で答弁し、波紋を広げている。
 同相は「放送事業者が極端なことをして、行政指導をしても全く改善されず、公共の電波を使って繰り返される場合、何の対応もしないとは約束できない」などと答弁し、「停波」命令の可能性に繰り返し言及した。
 折から、NHKと民放報道番組の看板キャスターが3月末で降板する。
 NHK「クローズアップ現代」の国谷裕子キャスターと、テレビ朝日「報道ステーション」の古舘伊知郎キャスターが3月で番組を去る。TBS「NEWS23」の岸井成格アンカーも4月からスペシャルコメンテーターに就任し、別の報道番組の担当になる。
 3氏は、政治の真実に斬りこむ資質では人後に落ちないだけに、政界からの風圧も強かった。
 高市氏は電波法76条による電波停止命令の根拠として「放送法4条違反」を挙げている。これは昨秋「読売」などの意見広告が「放送法4条の重大な違反行為」と岸井氏を攻撃した表現と一致するが、偶然なのか。古舘氏も国谷氏も政権の圧力と闘い続けてきた。
 「停波命令」という切り札は、キャスター降板以上の萎縮効果を期待できると、高市氏を駆り立てたのではないのか。
 高市発言について、岸
井氏は9日の「NEWS23」で「政府や行政が安易に放送に関与してくると、自由な議論を妨げることになる。それは絶対にあってはならない」とコメントした。
 12日の「報道ステーション」ではゲスト出演した片山善博氏(元総務相)が「放送界は、BPO(放送倫理・番組向上機構)を作ってチェックし、自主的にやっている。政府がどうこう言う問題じゃない」と指摘し、政府の介入を厳しく戒めた。
 BPOは昨秋、「放送に携わる者自身が干渉や圧力に毅然とした姿勢と矜持を堅持できなければ、放送の自由も自律も侵食され、やがては失われる」と警告している。放送に関わるジャーナリストはこの警告を肝に銘じ、高市発言問題の取材を強化してほしい。
 (こうの・しんじ ジャーナリスト)
(
2016年02月21日,「赤旗」)

(Go2Top

主張/相次ぐ暴言・不祥事/憲法・生活壊す安倍政治が元凶

 安倍晋三政権の閣僚や自民党の国会議員の暴言や不祥事が後を絶ちません。安倍首相の盟友、甘利明前経済再生担当相が「口利き」によるあっせん利得の疑惑で辞任したのをはじめ、高市早苗総務相の憲法を踏みにじる放送介入発言、福島原発事故の被災者を傷つけ撤回に追い詰められた丸川珠代環境相の発言など、まさに次から次にというありさまです。女性問題で議員を辞職した宮崎謙介前衆院議員や、オバマ米大統領を中傷した丸山和也参院議員の発言などもあります。これほど相次ぐのは異常であり、安倍政権と安倍首相の責任はあいまいにできません。

資質やゆるみですまぬ
 ことは閣僚や自民党議員の資質や緊張感の欠如などで済ますわけにはいかない問題です。甘利氏や高市氏など安倍首相に近い閣僚や政権の目玉≠ノ起用した閣僚から暴言や疑惑が相次いでいることも責任を浮き彫りにしています。
 見過ごせない特徴の一つは、憲法を軽視し、憲法を破壊する安倍政権の特徴が、一連の発言から浮き出ていることです。憲法21条が保障する言論・表現の自由に反し、政府が一つ一つの放送番組までチェックし、放送法違反を持ち出して電波を止めさせる、「停波」処分で放送局を威嚇する高市氏の発言はその最たるものです。
 高市氏には権力を振りかざし処分で脅す発言そのものが、言論・表現の自由を脅かしていることへの自覚がありません。安倍首相も高市氏を擁護しています。言論関係者や憲法学者が高市氏の発言を批判しているのは当然です。憲法解釈を一方的に変更し、戦争法で集団的自衛権の行使に道を開き、明文改憲の意向さえ隠さなくなった安倍政権の実態そのものです。
 同時に一連の発言が、国民の痛みを知ろうともしないで悪政を推進する、安倍政権の姿勢を示していることも重大です。「1_シーベルトの基準は根拠がない」と原発事故の被災者を傷つけた丸川氏の発言はもちろん、消費税の10%への引き上げに関連して複数税率導入で「混乱はある程度起きる」と言い放った安倍政権の副総理、麻生太郎財務相の発言も、国民の不安や痛みを知らないものです。
 安倍首相も経済運営の破綻をどれほど追及されても、「アベノミクス」の成果は出ていると自画自賛≠繰り返し、貧困と格差の拡大で苦しむ国民生活の実態に目を向けようとしません。島尻安伊子沖縄・北方担当相が担当閣僚なのに「歯舞群島」が読めなかったり、高木毅復興担当相が自らの疑惑をどんなに追及されても閣僚ポストにしがみついたりしているのも、国民の利益を優先しない政権の姿勢を浮き彫りにしています。

政権に自浄能力がない
 安倍政権の閣僚や自民党の国会議員による暴言などが後を絶たないなかで見過ごしにできないのは、政権の自浄能力のなさが事態に拍車をかけていることです。丸川氏や麻生氏も通り一遍の謝罪で事を済まそうとしていますが、甘利氏が自ら閣僚を辞任しただけであっせん利得の疑惑については解明しておらず、安倍首相も甘利氏任せを続けているのは、政権としての無責任さを象徴しています。
 安倍首相と政権が自浄能力を欠く限り暴言や不祥事はなくなりません。国民の追及が安倍首相に向かうのはいよいよ免れません。
(
2016年02月21日,「赤旗」)

(Go2Top

安倍政権NO/戦争法廃止1万人大行進/東京・渋谷

 「憲法守れ!」「野党は共闘!」。快晴の東京・渋谷区の中心街に、1万人の力強いコールがとどろきました。「安倍政権NO!0214大行進」(14日)の参加者の思いは…。
 加來恵子、竹原東吾記者

過去学んで未来つくりたい/ひなこさん(16)/T―nsSOWL、高校生
 国会を見ていると、戦争法が通ってからどんどん悪い方向に向かっているような気がします。まだ選挙権がないから、デモでいろんな人に安倍政権の危険性を知らせるしかすべがない。でも、できることからやらないと。
 日本は過去の戦争で他国の人にひどいことをし、つらい経験もしました。その反省から、戦争をしないと決めたはずです。過去を学んで未来をつくっていかなければならないからです。
 安倍政権は、スキャンダルも多すぎて、こんな人たちに政治は任せられないと思います。甘利さん(前経済再生担当相)の口利き疑惑や育休をとりたいといった議員の不倫など、議員としての自覚があるのか。まずは、人としてあるべき姿を見せてほしい。

民主主義取り戻さなくては/小河内大輔さん(45)/会社員
 安倍政権の乱暴な政治に怒っています。「改憲させない」という意思表示にきました。安倍政権が沖縄(の新基地建設)でやっていることは法の秩序を自ら乱すものです。経済政策も気合≠セけ。実質賃金は下がり、ちっとも良くなっていない。メディアを支配して、国民の権利・自由をむしばんでいます。
 丸川(珠代)環境相が年間被ばく線量1_シーベルトは根拠がない≠ニデマを流しました。辞職ものです。安倍政権から民主主義を取り戻す必要があります。いま抵抗しないといけない。僕たちが世論をつくっていかないといけない。それに対応しているのが共産党だと思います。「国民連合政府」に共感がもてます。

野党はまとまって対抗して/池川広太さん(25)/フリーター
 昨年、戦争法が通った時は、留学して日本にいませんでした。あの国会前が人で埋め尽くされた映像に驚きました。そこに参加できなかったのはもどかしかったです。
 若い人たちが、自ら運動をつくりだし、根付きました。そこに希望を見ました。その動きは野党を動かし、今回のデモにも議員が参加しています。
 歩くことは街の人に、政治家にアピールとなり、われわれもまた、このことを忘れず自身を鼓舞することになります。あきらめず陽気にやりたいです。
 公約したことと別の態度をとる政治家がいます。選挙が終わっても市民の目でおかしいいと思ったら、政治家に声を出し続けなければなりません。安倍政権に対して、野党はまとまってほしい。

原発再稼働ラッシュに怒り/戸原貴子さん(39)/主婦
 原発の再稼働に怒っています。3・11後は、原発がすべて止まっていた。(困ることはなく)原発そのものが必要ありません。にもかかわらず安倍政権は、再稼働ラッシュを続けています。
 このまま動き続けると、核のゴミがたまって、この子(芽衣子ちゃん・0歳)たちに「負の遺産」を残す。一刻も早く原発を停止して、原発をなくしてほしい。
 安倍政権は独裁的になっていると思います。国民の意見を聞かずに数の力≠ナ法案を通している。「自民党は嫌だな」と思っている人はいっぱいいると思います。選挙に向けて、野党が共闘して何とか受け皿≠つくってほしい。

 この日、関東地方は春一番が吹き、汗ばむ陽気に。休日でにぎわう繁華街で、3台のサウンドカーを連ねたデモの隊列が安倍政権NO≠アピールしました。
 「独裁やめろ」「戦争反対」―。音楽に合わせたリズミカルなコールが、道行く人びとの注目を集めました。
 参加した19歳の男子大学生は「安保法制に反対しているぞ、あきらめていない、許していない、たたかうぞ、って思いをアピールしたい」と語りました。
 主催は首都圏反原発連合(反原連)やSEALDs(シールズ)など25の団体でつくる実行委員会です。
 代々木公園で開かれた出発前の集会で、反原連のミサオ・レッドウルフさんが主催者あいさつ。「安倍政権は戦後70年で最悪の内閣だ。『野党は共闘』を実現し、勝つことを具体的な目標に定めよう」と呼びかけました。
 「個人の尊厳を踏みにじる政治家はいらない」(上智大学・中野晃一教授)、「大きな声でこぶしを振り上げ、怒りの声を表明していこう」(精神科医・香山リカさん)など熱いスピーチが相次ぎました。

力合わせ暴走政治に終止符を/5野党代表が訴え
 集会では五つの野党の代表が登壇し、「安倍政治を終わらせよう」と訴えました。日本共産党からは小池晃副委員長が参加。5氏が手を携え、アピールすると「野党は共闘!」のコールに沸きかえりました。
 小池氏は、安倍政権の政治姿勢について「国家を個人の上に置く、首相が憲法の上に自分を置く、放送の自由を圧殺する。これは民主主義の国ではない、独裁国家だ」と厳しく批判。「戦争法を廃止し、立憲主義を取り戻そう。来るべき参院選、すべての1人区で野党が力を一つに合わせて、自民党・安倍政権を打ち倒そう」と力強く呼びかけました。
 民主党の菅直人元首相、社民党の又市征治幹事長、維新の党の初鹿明博衆院議員、生活の党の樋高剛元衆院議員がそれぞれ訴えました。
(
2016年02月21日,「赤旗」)

(Go2Top

潮流

 高校生のころ、政治は身近なものだったろうか。思い起こせば部活や受験、異性とのことが日々の大半を占めていたような。恥ずかしながら政治について考える時間はほとんどなかったか▼「政治とは、難しいことでも、かっこ悪いものでもなく、自分たちが日本で生きるため、自分らしくあるため、家族や友だちを守るためにある」。戦争法に反対する高校生グループ「T‐ns SOWL」は、自分たちも主権者の一人であると強調します▼18歳選挙権が認められ、ぐっと身近になった政治。新たに選挙権を得る10代の若者3千人にNHKが調査したところ、戸惑いや不安を感じながらも次の参院選で6割が投票に行くと答えています▼調査では半数が今の日本の政治に関心があり、7割以上が不満をもっていることがわかりました。さらに9割近い若者たちが「今の政治が変わってほしい」と思っていることも▼にぎわう日曜の渋谷の街。高校生を先頭に戦争反対、安倍政権退陣≠フ声がひびきました。私たち高校生も主権者として政治に参加する自由と権利がある。全国いっせいに立ち上がった高校生。日本の政治にも春を呼ぶデモです▼そういえば、高校時代に「未見の我」という言葉を教わりました。内にある可能性の発見、新しい自分をつくりだしていく努力。人間解放の理想に燃えた青年マルクスも「人類の幸福と、われわれ自身の完成とは対立するものではない」と―。政治や社会に目を向けた若者が立つとき、歴史は動きます。
(
2016年02月22日,「赤旗」)

(Go2Top

受信料問題など率直な意見/「現行制度はベスト」「信頼ある情報源に」/お茶の水大でNHK経営委と語る会

 若い世代はNHKをどう見ているのでしょうか。18日にお茶の水女子大学(東京都文京区)で開かれた「NHKキャンパスミーティング」では、女子学生たちが、NHKの経営委員や理事に率直な意見をぶつけました。
 キャンパスミーティングは、NHK経営委員が視聴者から直接意見を聞く「視聴者のみなさまと語る会」の学生版。関東近郊から集まった約30人の学生が三つのグループに分かれて議論しました。
 その中の一つのグループでは、井伊雅子委員(一橋大学国際・公共政策大学院教授)が公共放送についてどう思うか聞きました。
 学生たちは「民放と違い広告収入がない分、スポンサーからの影響を受けない。国営ではないから国の意見にも左右されない。あくまでも中立の立場が大事」など、公共放送の大切さを相次いで語りました。

TVよりスマホ
 事前のアンケートでは、学生たちが一番多く情報を取得するメディアは、スマートフォン(57%)で、テレビ(35%)を大きく引き離しています。
 今井純理事(総務統括など担当)は、「インターネットのニュースがあれば、NHKのニュースはいらないですか」と問いかけました。
 これには学生たちは「ネットニュースは目次を見て興味がある記事だけを読むので、知識が広がらない」「ネットにはソース(情報源)がしっかりしていない記事が多くて信頼できない」などと答えます。手軽にスマホでニュースを読みつつも、信頼しているのはNHKのニュースという若者たちの姿が浮き彫りになりました。

税金化への懐疑
 後半は、受信料について論議。受信料の支払率は現在、約76%です。委員からは、税金にしてはどうかという考えもあると紹介されました。いま自民党が検討しているのは受信料の支払い義務化です。これについては、学生たちから懐疑的な意見が続出。
 「税金のようにしたら国営放送になってしまい、政府の圧力にも反発しにくくなる。今の受信料制度がベストだと思う」「テレビからしか情報を得られない人のためにも、公共的なものとして受信料を払う今のままがいい」「NHKは堅くてとっつきにくい。さらに『絶対に有料』となると、見る人がガンガン減るのでは」
 NHKへの要望として、「受信料に切り込む番組をつくってほしい」などの声が上がりました。
 三つのグループを回った室伏きみ子委員(お茶の水女子大学学長)は、「NHKのニュース番組に信頼を寄せてくださっていることが共通していました。NHKへの期待と注文を経営委員会の中でも共有したい」と語りました。
(
2016年02月24日,「赤旗」)

(Go2Top

市民の声きけ/NHKを検証/来月4日国会内集会

 安倍政権の異常なメディア支配やNHKの籾井勝人会長の退陣を求め、3月4日に緊急集会「政権べったり報道やめろ!NHK籾井会長NO!〜NHKは視聴者・市民の声を聴け」が東京で開かれます。主催はNHK包囲行動実行委員会。
 集会では、前NHK経営委員長代行の上村達男氏(早稲田大学教授)、メディア総合研究所所長の砂川浩慶氏(立教大学准教授)が講演。全国各地の視聴者・市民団体がリレートークを行い、活動や経験を交流します。
 場所は衆院第1議員会館大会議室(地下1階)。1時半開会(1時から玄関ホールで入館証を渡します)。
(
2016年02月24日,「赤旗」)

(Go2Top

受信料問題など率直な意見/「現行制度はベスト」「信頼ある情報源に」/お茶の水大でNHK経営委と語る会

 若い世代はNHKをどう見ているのでしょうか。18日にお茶の水女子大学(東京都文京区)で開かれた「NHKキャンパスミーティング」では、女子学生たちが、NHKの経営委員や理事に率直な意見をぶつけました。
 キャンパスミーティングは、NHK経営委員が視聴者から直接意見を聞く「視聴者のみなさまと語る会」の学生版。関東近郊から集まった約30人の学生が三つのグループに分かれて議論しました。
 その中の一つのグループでは、井伊雅子委員(一橋大学国際・公共政策大学院教授)が公共放送についてどう思うか聞きました。
 学生たちは「民放と違い広告収入がない分、スポンサーからの影響を受けない。国営ではないから国の意見にも左右されない。あくまでも中立の立場が大事」など、公共放送の大切さを相次いで語りました。

TVよりスマホ
 事前のアンケートでは、学生たちが一番多く情報を取得するメディアは、スマートフォン(57%)で、テレビ(35%)を大きく引き離しています。
 今井純理事(総務統括など担当)は、「インターネットのニュースがあれば、NHKのニュースはいらないですか」と問いかけました。
 これには学生たちは「ネットニュースは目次を見て興味がある記事だけを読むので、知識が広がらない」「ネットにはソース(情報源)がしっかりしていない記事が多くて信頼できない」などと答えます。手軽にスマホでニュースを読みつつも、信頼しているのはNHKのニュースという若者たちの姿が浮き彫りになりました。

税金化への懐疑
 後半は、受信料について論議。受信料の支払率は現在、約76%です。委員からは、税金にしてはどうかという考えもあると紹介されました。いま自民党が検討しているのは受信料の支払い義務化です。これについては、学生たちから懐疑的な意見が続出。
 「税金のようにしたら国営放送になってしまい、政府の圧力にも反発しにくくなる。今の受信料制度がベストだと思う」「テレビからしか情報を得られない人のためにも、公共的なものとして受信料を払う今のままがいい」「NHKは堅くてとっつきにくい。さらに『絶対に有料』となると、見る人がガンガン減るのでは」
 NHKへの要望として、「受信料に切り込む番組をつくってほしい」などの声が上がりました。
 三つのグループを回った室伏きみ子委員(お茶の水女子大学学長)は、「NHKのニュース番組に信頼を寄せてくださっていることが共通していました。NHKへの期待と注文を経営委員会の中でも共有したい」と語りました。
(
2016年02月24日,「赤旗」)

(Go2Top

電波停止適用再言及

 高市早苗総務相は22日の衆院予算委員会で、政治的に公平でない放送を繰り返す放送局に電波停止を命じる可能性を言及した(8日、同委員会)発言を野党議員から追及され、「適用はあり得ないとは申し上げられない」と、不当な見解を示しました。民主党の中島克仁議員に対する答弁。
 中島氏は「具体的にこの事例に踏み込む個別の番組があったのではないか」とただし、高市氏の発言が放送事業を萎縮させると批判しました。
(
2016年02月24日,「赤旗」)

(Go2Top

高市総務相に暴言で抗議/奈良革新懇

 平和・民主・革新の日本をめざす奈良の会(奈良革新懇)はこのほど、奈良県選出で自民党の高市早苗総務大臣に対して「放送法に基づく『電波停止』発言に厳重に抗議し大臣の辞任を求める」緊急申し入れをおこないました。
 申し入れ書には、放送法第4条違反を理由に放送事業者を行政処分にすることは、憲法で保障された言論、表現の自由を侵害する憲法違反であり、電波法を放送内容と関連させて論じること自体、許されないと強く非難しています。
 奈良革新懇が、生駒市の高市選挙区事務所に申し入れをおこない東京の議員会館にもファクスをおこないました。
(
2016年02月25日,「赤旗」)

(Go2Top

高市発言を機に思う/ジャーナリスト丸山重威/事実さえ伝えないNHK/安倍政権支配で「暗黒時代」再来

 「政治的公平性を欠く放送を繰り返した場合、テレビの電波停止を命じることもある」という高市早苗総務相の発言が問題化した。「政治的公平」でいえば、それを壊しているのは、テレビにやたら出て宣伝する首相と、どんどん政府寄りになるNHKがまず問題になる。

ニュースを検証
 放送関係者や市民でつくる「放送を語る会」が昨年11月に発表した「安保法案テレビニュース検証」は、事実を隠し判断材料を与えないまま強行政治を進める政権と、それに組み込まれたNHKを事実で示した。
 同会は昨年5〜9月、安保法の国会審議を中心にNHKと民放キー局の主要ニュース番組を記録、調査した。
 その結果、5月20日に安倍首相が「ポツダム宣言はつまびらかに読んでいない」と発言したり、8月5日、民主党・白眞勲参院議員の核や毒ガスの運搬についての質問に、中谷防衛相が「法文上は可能」と答弁したりした重要ニュースが、少なくとも当日は「ニュース7」や「ニュースウオッチ9」で報じられていなかった。
 特に、自衛隊文書をもとに「自衛隊は後方支援として戦闘中の米軍ヘリに連続的に給油することになるのか」とただした日本共産党の小池晃副委員長・参院議員の質問(7月29日)、自衛隊統幕長の訪米記録を暴露した同党の仁比聡平参院議員の質問(9月2日)や、憲法学者の廃案要求声明(6月3日)、広渡清吾・専修大教授らの「安保法案に反対する学者の会」の反対声明(6月15日)などが無視されていた。
 これらのニュースはNHK以外のテレビや新聞で伝えられた。だが、全国的に見ればどうだろう。民放ネットはたとえば「報道ステーション」があるテレビ朝日系が24局、「NEWS23」が放映されるTBS系が28局にとどまる。NHKの報道がないと国会質問も首相答弁も知らされないところも出てくる。
 昨年の新聞通信調査会の調査では、「信頼している」メディアのトップはNHKテレビで平均点70・2点で、61・0点の民放テレビを引き離した。新聞は69・4点。NHKは一般的に信頼されている。
 さらに、「民放はコマーシャルが多いし騒がしい」と、習慣的にNHKニュース以外見ないという視聴者も結構多い。
 国民の側から言えば、NHKテレビだけ見ていたのではいま起きている大事なことがわからない―などということでいいはずはない。

少数意見尊重を
 安倍政権は籾井勝人会長や経営委員の起用でNHK支配を狙い、今度は「停波」の脅しで民放も支配しようとする。事実さえ伝えない報道は、視聴者の目と耳を奪い、世論を動員していった「暗黒の時代」と変わらない。権力批判と少数意見の尊重なしに「公平・公正」はあり得ない。
 放送法は、「不偏不党」「真実及び自律の保障」で「放送による表現の自由の確保」をうたっている。NHK問題は日本の民主主義の大問題である。
 (まるやま・しげたけ 元関東学院大教授)
 

 「放送を語る会」のテレビニュース検証の詳細は、会ホームページの「モニター報告」と、同会編集のブックレット『安保法案 テレビニュースはどう伝えたか』(かもがわ出版)に掲載。
(
2016年02月25日,「赤旗」)

(Go2Top

電波停止発言/総務相は発言撤回を/田村貴氏「表現の自由への介入」/衆院委

 日本共産党の田村貴昭議員は23日の衆院総務委員会で、政治的公平性をめぐって放送局の電波停止に言及した高市早苗総務相の答弁を「憲法が保障する表現の自由、放送番組編集の自由に介入するものだ」と批判し、撤回を求めました。
 田村氏は、高市総務相が政治的公平性の適合性について、一つの番組のみでも判断しうると発言したことを指摘。自民党が2014年の衆院選直前、個別の番組をあげて放送局に「公平中立」を求める文書を送りつけるなど異例の対応をとったことをあげ、「これに大臣が呼応すれば、政権党の番組チェックの常態化につながり、放送業界に対する事実上の圧力になる」とただしました。
 高市総務相は「放送事業者は自主的な努力によって編集の努力をしている。それを尊重するのが放送法。法的な規制については慎重に運用する」などと答弁するにとどまりました。
 田村氏は「報道の自由を保障する観点から、放送法4条第1項は、放送局自身が自ら守るべき『倫理的規定』とするのが、憲法やメディア法の専門家の通説だ」と指摘。番組内容の政治的公平性については視聴者が判断するとして、大臣答弁と、それにもとづく政府統一見解の撤回を重ねて求めました。
(
2016年02月25日,「赤旗」)

(Go2Top

2億円着服問題/NHK全役員が報酬を一部返納

 NHKは23日、子会社のNHKアイテック(東京都渋谷区)で社員2人が約2億円を着服した問題を受け、指導監督責任を取って籾井勝人会長を含む全役員が役員報酬の一部を2カ月間、自主返納すると発表しました。関連団体の不祥事による全役員の自主返納は、過去に例がないといいます。
 着服したNHKアイテックの社員2人は9日付で懲戒解雇処分となっており、同社の社長も引責辞任が決まっています。籾井会長は「指導監督機能を十分に発揮できなかった責任がNHKにあると考えている。国民の皆さまには改めておわびする」とコメントしました。
(
2016年02月25日,「赤旗」)

(Go2Top

NHK前専務、籾井会長批判/重要議論滞る

 NHKの専務理事を17日に退任した塚田祐之氏が、今月9日に出席した最後の経営委員会でのあいさつで籾井勝人会長を強く批判していたことが分かりました。NHKが26日に公開した経営委の議事録で判明しました。
 NHK生え抜きの塚田氏は、2010年から理事、12年4月から専務理事でした。
 9日のあいさつでは、14年1月に籾井会長が就任して以降、会長の不適切発言などで「(経営委は)相次いで発生する問題、課題への対応に追われ続け、対症療法的な対応を迫られた」と述懐。その影響で重要な議論が滞ったとの認識を示し、「この2年間は一体何だったのか」「じくじたる思いがある」と語りました。
 また、NHKの経営と現場について「限界に近づいているのではないか」と危機感を表明。経営委に「公共放送の原点に立ってNHKのあるべき姿と体制を考えていただきたい」と要望しました。
(
2016年02月28日,「赤旗」)

(Go2Top

3月】本文

総務相の電波停止発言/キャスター有志私たちは怒っている

 放送法4条を口実に放送局の電波停止の可能性もあるとする高市早苗総務相の発言に対し、29日東京・千代田区で、テレビキャスターらが呼びかけ人となって「私たちは怒っている」と記者会見しました。呼びかけは青木理(おさむ)、大谷昭宏、金平茂紀、岸井成格(しげただ)、田勢康弘(所用で欠席)、田原総一朗、鳥越俊太郎の各氏(五十音順)です。
 発表されたアピールは高市総務相の発言について、「放送法の精神に反している」「放送法4条が戦争時の苦い経験を踏まえた放送番組への政府の干渉の排除や放送の自由独立の確保を企図している」と訴えています。アピールはまた、現在の放送を取り巻く環境が「『息苦しさ』を増していないか」と問い、「自主規制、忖度(そんたく)、萎縮が放送現場の『内部から』拡(ひろ)がること」を危惧しているとのべています。
 岸井氏は高市氏について、「憲法や放送法の精神を知らないなら大臣失格。曲解しているなら、言論統制に進みたいという意図で見過ごせない」といい、「政治的公平性は権力が判断するものではない。権力の暴走をチェックするのが政治的公平公正だ」とのべました。
 田原氏は「高市発言は全番組が抗議すべきもの。抗議するどころか、放送もしないのでは、政府は図に乗る。これをはね返して高市氏が恥ずかしいと思うようにしなければ」。
 鳥越氏は「高市発言は恫喝(どうかつ)。背景にはメディアや国民をなめきった安倍政権の姿勢がある。これはメディアと政権のたたかいだ」といい、「反転攻勢は起こる。声を上げていこう」と呼びかけました。
(
2016年03月01日,「赤旗」)

(Go2Top

潮流

 アメリカ西海岸で大がかりに展開する陸上自衛隊と米海兵隊の上陸訓練。NHKが取材して2月27日夜の「ニュース7」で報じました。安保法施行を前に≠ニ銘打った安倍政権御用達というべき企画です▼安保法(戦争法)の施行は今月29日。しかし、反対の世論は今も続き、野党5党が共同して衆議院に廃止法案を提出しました。現在、陸上自衛隊がPKO派兵されている南スーダンでは武力衝突も起きています。戦争法を改めて検証することがジャーナリズムには求められるところです▼戦争をする国へ。政権のメディア戦略が以前にも増して強引に。2月の国会で高市早苗総務相が「政治的公平性」を欠いた場合、電波停止を命じることがあると再三答弁しました▼テレビの報道・制作の現場に自主規制や忖度がますます広がりはしないか。日々の政治の動きや情報が正確に国民に知らされないまま、政権に都合のいい部分が流されていくことにもなりかねません▼放送に携わる者が黙っていてはいけない。昨日、7人のテレビキャスターらが高市総務相の発言に抗議する記者会見を開きました。「NEWS23」の岸井成格氏は自身に寄せられた応援署名≠持って登場。その数は2万5千人分だと。「毎日のように届き、勇気づけられます。ここで引き下がれない」▼名前は出せないけれどと、報道の職場で働く人々から連帯の声も集まっています。鳥越俊太郎氏が気合を入れました。「安倍政権とのたたかい。負けられないたたかいです」
(
2016年03月01日,「赤旗」)

(Go2Top

高市氏「電波停止」発言/発言撤回と大臣辞任を/日本劇作家協会

 日本劇作家協会(坂手洋二会長)は2月26日、高市早苗総務相の「電波停止」発言に対し、公権力のメディアへの介入・圧力に抗議し、発言撤回と大臣辞任を求める緊急アピールを発表しました。
 言論・表現・報道の自由は、「独裁国家での圧政への抵抗、言論弾圧への批判、戦時下でのメディア規制や大本営発表の危険性という歴史の中で確立されてきた」と指摘。放送法は「政府・公権力が特定の立場から放送に介入するのを防ぐ」ためのものだと強調します。
 高市氏の発言は、メディアに対する規制をことさらに強調し、「表現の自由を保障する現行憲法を軽視」するものだと批判。発言を撤回し、国会で「あらゆる表現者の自主自律を尊重する発言」をするよう求め、そうした自省と自覚がない場合は大臣を辞任するよう要求しています。
(
2016年03月04日,「赤旗」)

(Go2Top

停波発言/キャスターの抗議/会見での発言/アピール要旨

 2月29日、テレビキャスター有志らが呼びかけ人となって、高市総務相の「電波停止」発言に抗議する記者会見を開きました。会場に集ったキャスターたちの思いを伝えます。

矜持にかかわる/青木理さん
 青木理(おさむ)さんは「ジャーナリズムやメディアの矜持(きょうじ)にかかわる事件が起きた時には、組織や個人を超えて連帯して声を上げなくてはいけない時が絶対ある」。高市総務相の発言や岸井成格(しげただ)さんを個人攻撃する新聞広告をあげ、「このまま押し込められてしまうと、メディアは根腐れしかねないという危機感を抱いております」とのべました。

多大な影響が/大谷昭宏さん
 週末は被災地を取材しているという大谷昭宏さん。取材先で「除染は進んでいると報道させられに来ているんだろうといわれた」といいます。「われわれが(政権の)手先になっていると思われている事態がきている。阪神・淡路大震災の時にはなかったことです。ここで突っ張っておかないと、すでに多大な影響が出ているという、やむにやまれぬ思いでやってきました」

同調圧力が蔓延/金平茂紀さん
 金平茂紀さんは、「国境なき記者団」が発表した昨年の報道の自由度ランキングについて触れました。日本は180カ国中61位。「とても恥ずべき事態です」とのべた上で、「自主規制、忖度(そんたく)、過剰な同調圧力、それによる萎縮が、いまほど蔓延(まんえん)しているときはないのではないか。何も発言せずに、やがていい時期がくるという態度とは、一線を画したい」。

権利を阻害する/岸井成格さん
 岸井成格さんは、高市総務相が問題にした公平・公正の問題について繰り返しのべました。「政治的公平公正は、権力側が判断することではありません。権力をチェックし、暴走を止めること、本当のことを知らせることが国民の知る権利に応えることです。逆にいうと、政府・権力のいうことだけを流していれば、公平性に欠ける。国民の知る権利を阻害することになります」

全番組が抗議を/田原総一朗さん
 田原総一朗さんは高市総務相の発言を「非常に恥ずかしいもの」と一刀両断。「全放送局の全番組が断固抗議をするべきです」。ところが多くの番組が抗議もしなければ放送もしないと指摘します。「政府が図に乗り、テレビ業界は萎縮する。岸井さんら骨のあるコメンテーターが軌を一にして降板することが、高市発言を受けて辞める構造になりかねない」と危惧しました。

反転攻勢起こる/鳥越俊太郎さん
 高市発言は「背後に安倍政権の姿勢がある」というのは鳥越俊太郎さん。「安倍政権になってから、メディアのトップと首相の会食が増えている。政権をチェックするメディアが逆に政権からチェックされている」といい、「誰もチェックしない政権は戦前のようなことになる」と警鐘を鳴らします。「どこかで反転攻勢は起こる。ここぞという時には声を上げていきましょう」

アピール(要旨)

 2月29日にテレビキャスター有志が発表した、高市早苗総務相の「電波停止」発言に抗議するアピール(要旨)は次の通り。

 2月8日と9日、高市早苗総務大臣が、放送局が政治的公平性を欠く放送を繰り返したと判断した場合、放送法4条違反を理由に電波停止を命じる可能性について言及した。誰が判断するのかについては、「総務大臣が最終的に判断をする」と明言している。
 私たちはこの発言に驚き、そして怒っている。そもそも公共放送にあずかる放送局の電波は、国民のものであって、所管する省庁のものではない。所管大臣の「判断」で電波停止などという行政処分が可能であるなどいう認識は、放送法(第1条)の精神に著しく反するものである。さらには、「放送による表現の自由」は、憲法21条の条文によって支えられているものだ。
 放送法第4条の規定は、多くのメディア法学者のあいだでは、放送事業者が自らを律する「倫理規定」とするのが通説である。放送法成立当時の経緯を少しでも研究すると、この法律が、戦争時の苦い経験を踏まえた放送番組への政府の干渉の排除、放送の自由独立の確保が強く企図されていたことがわかる。
 現在のテレビ報道を取り巻く環境が著しく「息苦しさ」を増していないか。私たち自身もそれがなぜなのかを自らに問い続けている。自主規制、忖度、萎縮が放送現場の「内部から」拡(ひろ)がることになっては、危機は一層深刻である。私たちが、今日ここに集い、意思表示をする理由の強い一端もそこにある。
(
2016年03月05日,
「赤旗」)

(Go2Top

福島第1事故5年/原発、無謀の果て/廃炉、険しき道/近づけぬ原子炉建屋、溶融燃料どこに

 東京電力福島第1原発事故が発生してから5年。日々新たに発生する放射能汚染水への対応など、いまだ緊急事態が続いています。安全神話≠ノとりつかれた国と電力会社の無謀な原発推進の果てに、いったい何が起こり、これからどうなっていくのか。無残な姿をさらす1〜4号機の状況をみました。
 (「原発」取材班)

 収束とは程遠い事故現場。1〜4号機の建屋地下にたまる高濃度の汚染水、容易に人が近づけない過酷な放射線環境など、廃炉作業を阻む壁≠ェ幾重にも立ちはだかります。
 「40年ありきではなく、それに向かって最大限努力するということだ」。林幹雄経産相は今月6日、NHKの討論番組で、30〜40年といわれてきた廃炉の完了時期が遅れる可能性に言及。廃炉への道の険しさを示しました。

底突き抜け落下
 事故発生前、1〜3号機の炉心には計1496体(ウラン重量256d)の核燃料が入っていました。地震と津波で炉心の冷却機能が失われ、次々と炉心溶融が進行。溶融燃料(燃料デブリ)は原子炉圧力容器の底を突き抜け、水素爆発による建屋の損壊も発生し、大量の放射性物質が環境に放出される最悪の事態となりました。(事故の経緯=表参照)
 現在、燃料デブリがどこにどんな形で存在しているのか、状況把握にようやく踏み出したところです。
 昨年3月、宇宙線を使う透視技術で、1号機の炉心位置には燃料がなく、溶融して下部に落下したらしいことが判明。推定が初めて裏づけられました。
 翌4月には、格納容器内に初めてロボットを投入。搭載する線量測定器やカメラで1号機内部を調べ、底部にたまった水面の画像を初めてとらえました。ただ、放射線による監視カメラの故障や金網からの脱輪で、投入した2台のロボットは回収不能となりました。
 3号機では昨年10月、機器が水没している様子が小型カメラで確認されました。2号機では、格納容器につながる配管近くで毎時9・4シーベルトを計測し、内部調査を延期しました。
 原子炉建屋やタービン建屋の地下には現在、約6万dの高濃度汚染水がたまっています。燃料デブリを取り出すには、建屋への地下水の流入経路を特定・止水して汚染水を抜き取る必要があります。
 一方、1〜4号機の使用済み核燃料プールにあった計3106体の燃料のうち、取り出したのは4号機の1533体のみ。3号機は爆発でプール内に落下した20dの大型装置の取り出しを昨年8月に終え、来年度の燃料取り出し開始に向けて準備中。1、2号機は2020年度の開始予定です。
 1〜3号機の原子炉建屋は、いずれも放射線量が高く作業員が近づくのが困難です。なかには最大で毎時73シーベルト、5分間いるだけで人が死に至るような過酷な環境も、2号機格納容器内にあります。機器を遠隔操作しながらの困難な作業が待ち受けています。

困難極まる作業
 政府・東電は、デブリ取り出しについて、18年度上半期までに工法を確定し、21年に開始するとしています。格納容器の止水をあきらめて空気中で取り出す工法も検討します。
 核・エネルギー問題情報センターの舘野淳事務局長(核燃料化学)は、海側の地下トンネルの汚染水抜き取り完了など状況の改善がみられる一方、廃炉については「溶けた燃料が圧力容器内にとどまった米スリーマイル原発事故(1979年)でも取り出しに約10年かかった。福島の場合には、原子炉の底を突き破って落ちた燃料デブリが、かたまった状態なのか、粒子状なのかさえわからない。非常に困難だ」と指摘。最悪の場合、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故(86年)のように、燃料デブリを石棺≠ノ閉じ込めざるを得なくなる可能性も否定できないといいます。
 ひとたび重大事故が起これば気の遠くなるような時間と労力が後始末に費やされる―。原発の現実です。
 (汚染水問題を、後日、特集します)
(
2016年03月11日,
「赤旗」)

(Go2Top

試写室/NHKスペシャル私を襲った津波/NHKテレビ後8・0/CG映像と証言で新しい知見

 構造物が連なる市街地を巨大津波が襲ったとき、どのようなふるまいをするのか。新しい知見を加えてくれる得難いドキュメンタリーです。
 市民が撮影した膨大な映像とビッグデータをスーパーコンピューター「京」で解析、5年前の津波の動きをコンピューターグラフィックス(CG)で映像化します。現代技術の粋を集めた研究ですが、決め手は巻き込まれた人の証言です。
 岩手県釜石市の商店街。夫婦で津波と遭遇し、夫を亡くした女性が、癒やし得ぬ喪失感の中でつらい記憶を語ります。徐々に浸水してきた水が一気に量を増し、のみ込まれ、他方向からの水が重なり水底に吸い込まれる。CGは都市ならではの波の動きを解明します。
 宮城県東松島市。避難所の体育館を襲った津波が館内で渦を巻くメカニズムを再現します。当時高校1年の女性は舞台に逃れ幕につかまり助かりますが、フロアに残った祖父母は犠牲になります。今も「怖さと後悔」が消えないといいます。
 日本列島に生きる私たちには、二度と「想定外」とは言わない知恵が必要であることを教えてくれます。
 (荻野谷正博 ライター)
(
2016年03月11日,
「赤旗」)

(Go2Top

NHKと市民/受信料支払い保留″ル判始まる/放送法違反、「籾井発言」問う/奈良地裁

 「政権寄りの放送」に抗議してNHK受信料の支払いを保留する奈良県の男性に対し、NHKが未払い分を請求する裁判が4日、奈良地裁で始まりました。権力からの自律が履行されない場合、視聴者は支払いを拒むことができるのか―。公共放送のあり方を正面から問う裁判に、大きな注目が集まっています。

 奈良地裁で行われた第1回の口頭弁論には、関西一円から約60人の支援者が傍聴に駆けつけました。「被告」席に座った生駒市の宮内正巌さん(68)は閉廷後、「高市総務相の『電波停止』発言に、放送がいつか来た道に戻るのではないかと不安に感じる人も多いはずです。時宜を得た裁判だと思います」とあいさつしました。
 宮内さんの元に奈良簡易裁判所から督促状が送られてきたのは、昨年10月1日のことでした。NHKが34カ月分の未払い受信料4万3980円を払うよう申し立てたもの。もちろん、宮内さんには支払いを凍結する理由があり、訪問してきたNHK側にも説明してきたといいます。

公平さ欠く
 支払いを止めたきっかけは、2012年12月の総選挙でした。「当時のNHKの報道は、『自民か民主か』の二大政党への選択を迫るものばかり。あまりにも公平さを欠いていると、抗議の意志を示したかった」。しかし、総選挙後に誕生した安倍内閣はメディア支配を強め、籾井勝人氏をNHK会長に据えます。
 籾井会長は就任会見(14年1月)で「政府が右というものを左というわけにいかない」などの暴言を連発。その後のNHKの戦争法案報道などを見た宮内さんは、「『アベチャンネル化』を進めた籾井さんが、公共放送のトップに居座っていいのか。裁判でも問いただしていきたい」と意欲を燃やします。
 弁護団長を務める佐藤真理(まさみち)弁護士(市民団体「NHK問題を考える奈良の会」代表)は、「受信料は、視聴者が受信の対価として払う有償の双務契約だと解されます。つまり、NHKが放送法4条で定められている責務などに反した場合、契約者が支払いを拒否あるいは保留することができると考えています」。
 放送法4条は、放送事業者は番組編集にあたって「政治的に公平であること」「意見が対立している問題について多くの角度から論点を明らかにすること」などを求めています。佐藤弁護士は「NHKは単に放送事業者として4条の順守を求められているのではなく、個別の受信契約者に対しても義務を負っている」と指摘。今後の裁判で籾井会長らの「放送法違反」を追及していくとしています。
 NHKは06年から民事手続きによる支払い督促を強めています。NHKの資料によると、未払い者への督促申立件数は昨年12月までで7773件。そのうち3385件が訴訟に至っています。

全国に発信
 傍聴に駆けつけた市民団体「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」共同代表の醍醐聰さん(東京大学名誉教授)は、「放送法を正面から押し出した受信料裁判は、全国でも初めてではないか」と応援します。
 「NHKが放送法4条に基づいて公共放送らしい自律的な放送をやらない場合、最後の抗弁の手段として一時的に受信料の支払いを止める権利も契約の中にあるんだと訴える裁判は、大きな力になります。視聴者がNHKを変えていく運動を広げる上でも、この経験を全国に発信したい」
 (随時掲載)
(
2016年03月10日,
「赤旗」)

(Go2Top

改憲派「出前授業」に抗議/市民団体、さいたま市教委に

 さいたま市の公立中学校で、改憲を主張する団体による憲法などを題材にした「出前授業」が行われた問題で、市内の教育関係者などでつくる「子どもの権利・福祉・教育・文化さいたまセンター」は11日、稲葉康久教育長に、市教育委員会の対応を批判する抗議文を提出しました。
 「出前授業」は昨年10月、市立宮原中学校で日本青年会議所が行いました。生徒に「あなたは日本人について、これからどういう人であってほしいと思いますか?」などと質問し、憲法前文をつくらせるもの。NHK番組でも「改憲の立場に立つもの」として紹介されていました。
 抗議文は、中学校学習指導要領が憲法学習について、「我が国の政治が日本国憲法に基づいて行われていることの意義について考えさせる」としていることを紹介し、市教委が独立行政委員会として、毅然(きぜん)として教育の政治的中立性を擁護することを求めています。
(
2016年03月15日,「赤旗」)

(Go2Top

暴走ストップ/力合わせて/立教大学特任教授西谷修さん/国民的危機脱出のため

 安保法制廃止の野党共闘について、自民党はビラで「理念も政策もバラバラの数合わせ」「民共合作」と言って、「野合」批判をしています。自分たちはどうなのかと言いたい。

自公こそ野合
 公明党は最近でも「平和の党」とか言っていますけれど、権力のうまみを知って平和憲法の根幹を崩すような秘密保護法や安保法制を、自民党と一緒に通した。自民党は公明党の票がなければ議席が取れない。公明票に依存しながら、公明党を脅し、すかしながらやっている。ひたすら権力のためです。これこそ「野合」です。
 ではなぜ野党統一候補が必要なのか。それをやらないと自公連合の暴走を止められないからです。
 なぜ暴走というか。憲法に「国際紛争を解決する手段としては、永久にこれ(戦争)を放棄する」と書いてあるにもかかわらず、一昨年の「閣議決定」で集団的自衛権を行使して戦争ができるようにした。これまで政府見解でも「違憲」としてきたのに、クロをシロと読んでしまった。
 安倍政権になってからチェック機関であるべきNHK会長や、内閣法制局長官を代えました。それで「黒はシロと読める」という状態にして、NHKは「今日から黒は『シロ』と読めるようです」と黙って報道する。もはや暴走が暴走に見えない。それが暴走の内実です。
 憲法は戦後、日本が再び国際秩序に入るための、世界に対する一種の契約でもあります。憲法があったから日本は戦後、復興し、発展してきた。安倍首相の最終目標は改憲と言いますが、自民党の改憲草案はまさに戦時中の体制です。滅私奉公、死んで靖国にまつられるのが誇りだ…みんながそう思うのが彼らの言う「美しい国」です。
 戦後の世界体制が自公によって転覆されようとしている。これは国民的危機です。だから今は、それぞれ理念があってそれぞれ競い合うんだ、というときではないのです。自公の暴走を止められるかどうかの瀬戸際です。

市民からの声
 学生たちの「野党は共闘」というコールにあらゆる世代が声を上げました。「とにかく野党は一つになって、自公の暴走を止めてくれ」。政党間の利害があるのは分かりますが、そんなことを言っている場合じゃない。立憲主義のくいを打ち直して、しっかりと憲法に基づいた政治をする。その象徴として、安保法を廃止し、「閣議決定」を撤回する。市民団体としても、粘り強く根気強く野党に要求していったわけです。
 いま共産党は、ほかの野党と同じ土俵に立つという、まさに歴史的選択をしました。それはすごくいいと思う。長期的に見れば、特に若い世代で、共産党に対するイメージが変わると思います。
 聞き手 和田 肇
 写真 橋爪拓治

 にしたに・おさむ 立教大学特任教授。思想史。著書に『不死のワンダーランド』『戦争論』『夜の鼓動に触れる』ほか。「立憲デモクラシーの会」呼びかけ人の一人。
(
2016年03月20日,「赤旗」)

(Go2Top

NHK予算案承認/3年連続全会一致崩れる/共産党など反対/衆院総務委

 NHKの2016年度予算案は22日、衆院総務委員会で採決され、日本共産党、民主党、維新の党、社民党が反対しましたが、自民党、公明党、おおさか維新の会が賛成して承認されました。籾井勝人会長が14年1月に就任して以降、3年連続で全会一致での賛成が得られない異常事態となりました。
 採決に先立ち、日本共産党の田村貴昭議員が反対討論に立ち、
@籾井会長の発言への視聴者、国民の批判が高まっているA相次ぐ不祥事の全容解明と説明が尽くされていないBリスクの高い海外の営利事業に対する2億円の出資―などの問題点をあげ、「予算の承認にあたっては、予算の立案・執行における経営姿勢が問われる」とのべました。
 委員会の質疑で田村氏は、子会社におけるずさんな経理、職員の危険ドラッグ使用やタクシー乗車券の不正使用をはじめとした不祥事が続発する状況について、「予算審議の入り口に立てない異常事態」だと指摘。とくに、子会社「NHKアイテック」の社員が架空工事の発注で2億円を横領していた事件をあげ、「NHKを含め、営利主義に立っているからではないか」と、打開策を提示するよう求めました。
 NHKの井上樹彦理事は「コンプライアンスの徹底や指導監督の強化を図っていきたい」と答えました。
 梅村さえこ議員は、NHKの信頼回復に向けて「役員や全職員が公共放送のジャーナリストとしての自覚に立ち、視聴者・国民との間で緊張感を持つことが問われている」とのべた上で、籾井会長に対し「視聴者・国民の信頼を得ると言いながら、まっすぐ声を聞く改革が見えてこない」「視聴者から会長に意見を言う場がほしいという声にどう答えるのか」とただしました。
 また、梅村氏は過去最大規模となったNHK予算について、受信料負担軽減の検討や、国民生活センターに寄せられている受信料の契約時の強引なやり方を改めるよう要求。官民ファンドへの2億円の出資は「NHKが商業主義に踏み込むもの」だとして反対するとのべました。
 予算案は24日の衆院本会議にかけられる見通しです。
(
2016年03月23日,「赤旗」)

(Go2Top

NHK予算案/「クロ現」名指し、異例の「意見」/総務相、「行政指導」強調

 22日、衆院総務委員会で2016年度NHK予算案が自民党などの賛成で可決されました。NHK予算には、高市早苗総務相の「意見」が付けられています。
 「意見」はNHK番組「クローズアップ現代」を名指しし、「総務大臣の行政指導を踏まえ、再発防止に向けた取組を引き続き着実に実施」することとしています。
 また、国際放送の充実に関し、「我が国の重要な政策及び国際問題に対する公的見解」を「正しく伝えることがこれまで以上に重要になっている」との認識から、「経済交流の発展…等に資するよう国際放送のより一層の充実・強化を図ること」とのべています。
 NHKの放送全体にかんする総務相の「意見」で、特定の番組について「行政指導」を持ち出して再発防止を求めることは前代未聞です。これは政権党に不利益な内容の放送をした番組への狙い撃ちにほかなりません。
 また、「政府の国際問題政策を伝え、経済的な海外展開の発展に資するようにせよ」というのは、放送の政権からの独立・自律とは相いれないものです。
 高市氏は、政治的公平を口実に電波の停止をちらつかせて放送事業者に脅しをかけました。自分の都合のいい内容は思うがままに放送をさせようとするのは、総務大臣の監督責任の重大なはき違えです。(関連4面)
(
2016年03月23日,「赤旗」)

(Go2Top

停波発言/高市氏に抗議、撤回要求/奈良県議有志の会

 奈良県議会議員有志の会は25日、「高市早苗総務大臣による電波停止発言に抗議し、撤回を求める抗議文」を高市氏へ送付しました。
 抗議文には、同氏の発言は、放送法や憲法21条の「表現の自由」の精神に著しく反するものであり、放送事業者を脅し、萎縮させるとして、強く抗議し、発言の撤回を求めますと記されています。
 同有志の会には、創生奈良の梶川虔二氏、阪口保氏、和田恵治氏の3人と日本共産党の山村幸穂氏、今井光子氏、宮本次郎氏、小林照代氏、太田敦氏の5人が参加しています。
(
2016年03月27日,「赤旗」)

(Go2Top

 

高市総務相「停波」発言/「言論・表現の自由の存否かかる」/ジャーナリスト5氏が再批判

 岸井成格氏、田原総一朗氏らテレビで活躍するジャーナリスト5人は24日、東京の日本外国特派員協会で記者会見し、放送法違反があれば放送局の電波停止がありうるとした高市早苗総務相発言に改めて抗議しました。
 出席は両氏のほか、鳥越俊太郎、大谷昭宏、青木理の各氏。
 毎日新聞特別編集委員、TBS「NEWS23」アンカーの岸井氏は、「高市発言は憲法と放送法の精神に真っ向から反する。高市氏がそれを知らなかったとすれば大臣失格、知っていて故意に曲解したのなら言論統制への布石だ」と、発言の撤回を求めました。そのうえで「ジャーナリズムは、政権がおかしな方向に進むときは、チェックし、ブレーキをかけるのが本来の役割だ。それを偏向だというならわれわれは真っ向から対決する」と語りました。
 田原氏はテレビ朝日「報道ステーション」の古舘伊知郎、NHK「クローズアップ現代」の国谷裕子、「NEWS23」の岸井各氏の3月末降板に触れ、「一種のマスコミの萎縮現象が起きている」と警鐘を鳴らしました。
 鳥越氏は「メディアが権力を監視することは当然だ。高市氏は無知なのか故意なのか、このことと『公正・公平な報道』をあえて混同している」と批判。さらに「メディアが権力を監視するという世界の大勢に反し、いまの日本では権力がメディアを監視するということになっている」と指摘しました。
 高市発言と安倍政権の改憲志向との関連を指摘する発言が続きました。大谷氏は「高市発言の先には憲法を変えたいという自民党政権の狙いがある。一つの番組がおかしいからと電波停止の脅しをかけるなどまさに独裁国家への道だ」と糾弾。青木氏も「憲法が保障する言論・表現の自由に対して、自民党改憲案は『公益』のためなら制限も当然といっている。まさに言論・表現の自由の存否をかけたたたかいだ」と訴えました。
(
2016年03月26日,「赤旗」)

(Go2Top

 

「停波」大臣発言/3団体抗議声明

 日本民間放送労働組合連合会(民放労連=赤塚オホロ委員長)は9日、「停波」発言を撤回しない高市早苗総務相に辞任を求める声明を出しました。「民主主義の根幹をなす『表現の自由』や立憲主義を否定する発言を繰り返」す高市総務相の速やかな辞任を求めています。
 また同日、法律家やジャーナリストらでつくる「Stop!秘密保護法共同行動」も声明を出しました。高市総務相の「停波」発言は「放送局の表現の自由を萎縮させ、民主主義を妨害するものであるから、即時に撤回すべきである」とのべ、辞任を要求しました。
 10日には、日本マスコミ文化情報労組会議(新崎盛吾議長)が声明を発表。高市総務相の「停波」発言について「メディアの現場で働く労働者として強く抗議」とのべ、「メディアの現場に広がりつつある萎縮や忖度(そんたく)の動きを加速させる意図を感じさせる」といい、「メディアへの政治介入や言論弾圧は決して許さない」と結んでいます。
(
2016年03月11日,「赤旗」)

(Go2Top

テレビ時評/NHKに求める自己検証/元NHKディレクター戸崎賢二

 3月はNHKにとって特別の月である。予算・事業計画が国会で審議されることが大きいが、もう一つ、毎年必ず放送記念日特集が放送されることにも注目したい。
 この特集は、NHK自身がテーマとされることが多く、いわば番組によるNHK自己検証の場ともなっている。
 今年は、二部構成で、二部で放送と通信をめぐる時代状況を取り上げたが、一部「激動の時代を越えて」では、久しぶりに戦争の時代の日本放送協会の歴史にふれ、政府の統制下で、国民にウソの情報を流したラジオの犯罪的な役割が語られた。
 この番組を見た時、つくづくNHKというのは複雑な組織だと思わざるを得なかった。
 政治報道が政権への批判精神を欠き、「アベチャンネル」などと揶揄される一方で、政治権力に屈服した歴史を反省する内容の番組が制作されているのである。
 □ ■ 
戦時中の証言
 もちろんこの特集には不満も残る。当時の権力と日本放送協会との関係をもっと分厚く語ってほしかった、という感想もなくはない。
 同じような内容を扱った「ETV特集」の秀作「戦争とラジオ」第1回(2009年8月16日)は、戦時中の雑誌に掲載された局員の座談会を再現し、放送局からも積極的に政府に協力していった経過がたどられていた。
 最後のコメントも、「(この歴史は)いま放送に携わる者たちに、なにをしてはならないか、を問いかけている」と厳しいものだった。
 これに比べれば今年の特集はやや物足りないが、それでも当時を知る高齢の元職員の重い証言を組み込んでいることは評価したい。
 93歳の元アナウンサーは、戦時中、政府に抵抗できなかったことについて、「やっぱり自主規制だった。すっかり心が凍り付いて、自分で凍結しちゃった」と振り返った。
 放送法成立当時入局した87歳の元記者は、先輩記者から「戦争中の過ちを繰り返してはならない。本当のことを伝えろ、政府にとって都合の悪いことだって伝えなきゃいけないこともある」と教えられたと語っている。
 □ ■ 
安保法施行で
 番組は最後に、1946年に会長に就任した高野岩三郎の言葉、「(ラジオは)太平洋戦争中のように、専ら国家権力に駆使され、所謂国家目的のために利用されることは厳にこれを慎み、権力に屈せず、ひたすら大衆に奉仕することを確守すべきであります」を紹介し、「歴史の中で築かれた理念をどう実現していくのか。問われています」と結んでいる。「理念」とは当然、「政府のためではなく大衆のための放送」、という理念であるはずである。
 先の高市総務大臣の「停波」発言は、放送に対する権力側の統制の意思をあからさまに示したものだった。NHK政治報道は、この発言を批判しないばかりか、安倍首相の高市擁護の答弁を長々と紹介した。(「ニュースウオッチ9」2月10日)
 高市発言に抗議するジャーナリストの記者会見なども全く伝えず取材もしていない。
 こう見てくると、今年の記念日特集の内容は、視聴者に対してというよりはNHK内部に向かって発せられているかのようである。
 安保法が施行されたいま、放送が再び日本の戦争を報道する事態が起こりうる。放送記念日だけでなく、NHKが戦時中の反省の原点に繰り返し立ち返り、自己検証を強めることは、視聴者市民の強い要求でもある。
 (とざき・けんじ)
(
2016年03月31日,
「赤旗」)

(Go2Top

【4月本文】

NHK人事/専務理事など異例の大幅交代

 NHK(籾井勝人会長)は12日、経営委員会の同意を得て、今月25日付で次のとおり理事を任命し、3人を専務理事に指名すると発表しました。理事の任期は2年。
 木田幸紀NHK交響楽団理事長を理事に再任し放送総局長に。新理事に根本佳則国際放送局長、松原洋一営業局長、荒木裕志報道局長、黄木紀之編成局長、大橋一三広報局長の5人を任命。木田氏と森永公紀、今井純両理事を専務理事に指名します。板野裕爾、福井敬両専務理事、井上樹彦、浜田泰人両理事の4人は24日で退任します。浜田理事は任期半ばの退任です。
 今年2月時点の4人の専務理事がいずれも退任など、異例の大幅人事となりました。
(
2016年04月16日,「赤旗」)

(Go2Top

おはようニュース問答/NHK予算審議で放送法が注目されたね

 のぼる 先月末に2016年度のNHK予算が国会で承認されたね。
 晴男 約7000億円の予算の96%が受信料で成り立っている。全会派そろって承認できるようNHKは努力すべきだが、3年連続で自民党や公明党などが賛成多数で押し切った形だ。

高市発言問題に
 のぼる 昨年まで日本共産党などの野党が承認しなかった主な理由は、籾井勝人会長の暴言だったけど、今回は?
 晴男 籾井会長のもとで商業化路線が強まり、子会社職員の横領といった不祥事が相次いだこともある。加えて、予算案の審議を通じて「放送法」が改めて焦点になったことにも注目したい。
 のぼる 高市早苗総務相が、放送法第4条にある「政治的公平」などの番組編集準則が守られない場合、放送事業者に「電波停止」を命じることもあると発言して大問題になったね。
 晴男 衆参の共産党国会議員団は、「高市発言」の撤回を求めて論陣を張った。3月31日の吉良よし子参院議員の質問は、放送法の生い立ちから説き起こした。
 のぼる NHKの前身「日本放送協会」が国民を戦争へとあおった反省にたって、放送法が戦後に制定されたことは、僕も知っているよ。
 晴男 吉良さんは、放送法が新憲法にあわせて表現の自由を守るために制定された経過や、当時の政府も4条については「精神的規定の域を出ない」と明言していたことも明らかにした。

言論統制の布石
 のぼる 岸井成格さんや鳥越俊太郎さんら著名なテレビキャスターが、2度にわたる記者会見で、高市発言を「憲法の精神に真っ向から反する言論統制の布石」だと厳しく批判していた。
 晴男 安倍内閣の狙いは放送の変質だ。NHKについては政権の意に沿った籾井氏を会長に据え、番組「クローズアップ現代」に問題があると幹部を呼び出した。今回の予算に付けられた「大臣意見」で、「クロ現」を名指しして再発防止を求めたことは異常だよ。
 のぼる まさにNHKは正念場。そんな時に、「アベチャンネル化」を危ぐする多くの市民から罷免を突き付けられている籾井会長のもとでは、予算も全会一致では承認されないわけだね。
(
2016年04月14日,「赤旗」)

(Go2Top

NHKは「アベちゃんねる」?/岐阜・大垣で講演学習会

 「NHKは『アベちゃんねる』か?」と題する講演学習会が3日、岐阜県大垣市で行われ、60人余が参加しました。主催は「平和・人権・民主主義を考える」西濃憲法集会2016実行委員会・ぎふコラボ友の会。
 講師は元NHKプロデューサーの津田正夫さん(72)。安倍政権の露骨なメディア攻撃、「クローズアップ現代」の攻防とNHKの衰弱、高市総務大臣の電波停止発言などに触れ、NHKの政権寄り報道を批判しました。
 津田さんは、18・19歳を対象にしたNHK世論調査(今年1月)で「今の政治は変わってほしい」が88%だったことを紹介。暴力や戦争を否定し、一人ひとりが主人公となって語り行動していくためにも、「言論・表現の自由」とは何かを問い直し、政府監理による「放送法」から、市民の手による「コミュニケーション基本法」へと移行することが、番組づくりでも活力ある地域社会の実現にもつながると強調しました。
 会場から「メディアの人の中にも頑張っている人がいる。私たちはどう対処したらいいのか」などの質問に、津田さんは「番組について、『よかった』、『おかしい』と意見を率直に言うことがとても大事」と答えました。
(
2016年04月08日,「赤旗」)

(Go2Top

おはようニュース問答/自民党改憲案「公の秩序」で人権制限されるよ

 のぼる 安倍晋三首相が憲法の条文そのものを変えてしまう明文改憲に、前のめりの姿勢を強めているね。
 みどり 「任期中に成し遂げたい」とまで言っているわね。明らかな憲法9条違反の戦争法を強行しておいて、「憲法改正」なんていう資格はないわ。
 のぼる まったくだね。それに自民党が掲げている「改憲草案」は「憲法改正」なんて言えるシロモノではないよ。
 みどり どういうこと。

人権保障骨抜き
 のぼる 憲法の根本である国民の人権保障を全く骨抜きにしている。「公益及び公の秩序」を理由に人権制限できるとはっきり書いてあるよ。
 みどり 人権は憲法が保障する一番大事な価値なのに、「公の秩序」が優先するなんて戦前に戻るみたいね。
 のぼる ところが自民党の高村正彦副総裁は与野党代表が出席したNHKの討論で、「公の秩序」は、今の憲法の「公共の福祉」と同じだと言い張ったんだ。
 みどり 「公共の福祉」と「公の秩序」とどう違うの。同じなら書きかえる必要ないわ。
 のぼる 大学で使っている憲法の教科書では「公共の福祉」とは、人権と人権がぶつかるときの調整の原理と説明してある。表現の自由といっても、真夜中の病院の前で拡声器を使って宣伝する「自由」は制限されるよね。それと同じだというんだけど。

言い分成立せず
 みどり でも自民党改憲案のQ&Aで「公の秩序」に書きかえた理由を「基本的人権の制約は人権相互の衝突の場合に限られるものではないことを明らかにした」とちゃんと書いてある。インターネット上では、高村さんの言い分は成り立たないってたくさんの意見が飛び交っているわ。
 のぼる そうなんだよ。自民党改憲案は「戦争する国」づくりのため「国防軍」を創設し機密の保持も認めている。そこでは、人権も「国家」のために道を譲れというわけさ。
 みどり 本当にぞっとするわね。
 のぼる 個人の尊厳を憲法で守るのが立憲主義だよ。こんな「憲法」なら、憲法が憲法でなくなってしまうよ。
(
2016年04月08日,「赤旗」)

(Go2Top

シンポ/健全なジャーナリズムで自由な放送を守ろう/安倍政権の強圧を批判

水島宏明さんが講演
 高市総務相が国会で「政治的に公平でない放送をする放送局の電波を止める可能性がある」と発言し、波紋が広がっています。メディア総合研究所(砂川浩慶所長)はこのほど、緊急シンポジウム「『政治圧力』とメディア〜危機に立つテレビジャーナリズム」を都内で開きました。
 水島宏明さん(元日本テレビ、4月から上智大学教授)が講演しました。「政府のやり口は、放送局にとっては死刑宣告のようなもの。テレビ報道の自由が死んでしまえば、被害を被るのは視聴者です」と安倍政権の強圧姿勢を批判。「一連の発言によって報道の側の内部崩壊が起きている」と述べました。
 高市発言をテレビ朝日とTBSは当日に放送したものの、NHKは2日後に解説なしで報じたと指摘。「歴史的な背景などを識者が解説するというのが本来の報道。それが民放2局だけということ自体が深刻ですが、問題は、報道現場で働く人たちに圧力を受けている自覚がないことです」と語ります。
 政府に批判的な報道をめぐって、安倍首相の応援団がつくる団体が放送局や放送倫理・番組向上機構(BPO)に抗議している現状を紹介。「高市発言とか放送法とか触ると、ちょっとやばいよ≠ニいう、なんとなくの自己規制で現在の状況に至っている」といいます。
 「政治的な圧力があるのかどうか、報道現場の人たちにヒアリングし、圧力の実態を可視化させる運動をしてもいいのではないか」と提起しました。

山田氏・言論への国の口出しダメ/赤塚氏・迫りくる壁に立ち向かう
 シンポジウムでは、水島さんと専修大学教授の山田健太さん、日本民間放送労働組合連合会の赤塚オホロ委員長が議論しました。
 山田さんは、「政府が求心力を高めたい時には、秘密保護法、緊急事態法、言論統制法という3法をつくることが古今東西、共通している」と指摘。放送制度を中心に日本の戦後を振り返りました。
 法制度のスタート時である1950年は、「政府の権限は電波が混信しないための『交通整理』だけ。放送法は倫理規範であり、国は言論表現活動に口出ししないことを旨としていた」と山田さん。「それが2004年以降は政府による行政指導が常態化し、13年には特定秘密保護法ができます。そしていまは報道現場を強くしばる言論統制法に近い状態です。3法がそろう前に状況を変えないと報道の自由はなくなります」と危惧しました。
 「放送法のような自由を保障する法律は、表現の可動域を広げるためにのりしろが広い」と指摘。「自民党が放送局に抗議し、幹部を呼び出すのは、このぼやっとした壁を意図的にはっきりさせ、それを手前側にずらすという違法な行為。それが報道現場を萎縮させています」
 赤塚さんは、「岸井成格さん、国谷裕子さん、古舘伊知郎さんという看板キャスターが同時期にやめるということも不気味」と話します。「第1次安倍政権の時から行政指導は増え、15年にはNHK『クロ現』問題で出されました。『今まで通り』のはずが、壁が手前に迫ってきて窒息しそうな状況です」
 山田さんは、放送局のありようも問いかけました。「安倍首相と会食してまで単独インタビューする必要があるのかなど、経営者も現場の記者も一人ひとりが議論して気持ちを変えていくしかない」
 「言論表現の自由の保障と健全なジャーナリズムがあって初めて、自由な放送ができる」と強調した山田さん。「政府に放送法をきちんと運用させ、自由な法制度を維持するためにがんばりたい」と語りました。
(
2016年04月07日,「赤旗」)

(Go2Top

自民改憲案「Q&A」が告白=^「公益」優先、人権は制約/高村氏の言い訳、成り立たず

 自民党の高村正彦副総裁が3日放送のNHK「日曜討論」で、「自民党改憲草案」(2012年4月)について述べた言い訳が、自民党自身の「改憲草案Q&A」からみても成り立たないことが浮き彫りになっています。
 高村氏は同番組で、同党改憲草案が「公益及び公の秩序」による人権制約を認めていることについて、「現憲法の『公共の福祉』を置きかえただけ」などと言い訳しました。
 「公共の福祉」とは、人権と人権が互いに衝突する場合にそれを調整する原理です。ところが、自民党が改憲案を説明するために作成した「Q&A」では「公共の福祉」について「その意味が曖昧で、分かりにくい」と非難。「公の秩序」に書きかえた理由について、「基本的人権の制約は、人権相互の衝突の場合に限られるものではないことを明らかにした」と告白しています。
 自民党改憲案には「国防軍」創設や「機密の保持」義務が明記されており、それらが「公益」として優先され、人権が制約されることは明らかです。
 日本共産党の志位和夫委員長は同番組で、高村氏の弁明に対し「(公の秩序による制約は)上からの国家目的のために人権を縛るというもので、まったく違う。立憲主義破壊だ」と批判しました。
 志位氏は、自民党改憲案について、
@戦力の不保持を定めた9条2項の削除と「国防軍」創設で海外での武力行使を無制限に可能とするA「緊急事態条項」創設で事実上の戒厳令を可能とする―ことも合わせて指摘し、「憲法が憲法でなくなるものだ」と糾弾。参院選で、安倍改憲を許すのか戦争法を廃止するのかが大争点になっていることを浮き彫りにしました。

 自民党改憲草案 13条 全て国民は、人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公益及び公の秩序に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大限に尊重されなければならない。
(
2016年04月05日,「赤旗」)

(Go2Top

参院選の大争点/安倍改憲を許すのか戦争法の廃止か/志位委員長が主張/NHK「日曜討論」

 参議院選挙まで3カ月余りとなった3日、日本共産党の志位和夫委員長はNHK「日曜討論」に出演し、与野党代表と論戦を交わしました。与野党の党首クラスがスタジオに勢ぞろいするのは今年になって初めて。番組は、「アベノミクス」、保育、雇用、消費税、戦争法、憲法、参院選などをめぐり激しい討論となりました。
 (志位委員長発言2・3面)

 安倍・自公政権が狙う憲法改定について問われた志位氏は、「自民党改憲案」が「憲法が憲法でなくなる」――憲法によって国民を縛る重大な内容になっていることを批判。「参院選では、『自民党改憲案』の是非が争点になります。立憲主義の全面破壊に進んでいいのか、『自民党改憲案』―安倍改憲を許していいのか、それとも安保法制=戦争法を廃止するのかが大争点となります」と主張しました。
 自民党の高村正彦副総裁は当初、「今度の選挙で憲法改正は主要な争点とならない」と弁明したものの、志位氏の発言に対し「(自民党の改憲草案が参院選での)一つの判断対象になる」と認めました。一方、「そんなもの(=改憲草案)が通るなんて未来永劫思っていない」などと述べました。
 志位氏は、自民党改憲案の重大問題として、
@9条2項を全面削除して「国防軍」を書き込み、海外での武力行使を際限なくやれるようにするA「緊急事態条項」を創設して事実上の「戒厳令」に道を開くB「公益及び公の秩序」のためには基本的人権を制約できる―という、立憲主義を全面破壊するものとなっていることを厳しく批判しました。
 これに対し高村氏は、「現憲法の『公共の福祉』を置き換えただけだ」と弁明。志位氏が「(現憲法の)『公共の福祉』とは、いろんな人権がぶつかりあったときに、それを調整する概念だ。(『自民党改憲案』の)『公益及び公の秩序』とは、上からの、国家目的のために、人権を縛るというものであり、まったく違う」と指摘すると、高村氏は反論不能に陥りました。
 共産、民進、社民、生活の野党4党が共同して国会に提出している安保法制(戦争法)廃止法案について志位氏は、安倍首相が法案強行の際、安保法制に対して「国民の理解が得られていない」ことを認め、「今後も丁寧に説明していく」と約束していることを指摘。「廃止法案をしっかり審議してください。国民の前で堂々と議論しようじゃないですか」と求めました。民進党の岡田克也代表も、「憲法違反のものが時間がたてば憲法に合致することにならない」と強調しました。
 消費税率10%への増税の「再延期」と結びつけた衆参同日選について志位氏は、「同日選は邪道であり、解散権の乱用です」と断じました。同時に、同日選になった場合でも、「野党として勝てる態勢をつくる必要があります」と強調。「参院1人区での野党の選挙協力の努力をやり、だいぶ進んできました。衆院小選挙区でも選挙協力をやり、そういう状況になった場合は、安倍政権を衆参ともに少数に追い込むという決意でのぞみたい」と表明しました。
(
2016年04月04日,「赤旗」)

(Go2Top

ひと/「嵐」メンバー相葉雅紀さん/NHK「グッと!スポーツ」で司会/がむしゃらな人が好き

 記者会見後の写真撮影では、少し照れながらポーズ。隣の家のお兄さん≠フような親しみやすさです。
 国民的人気アイドルグループ「嵐」のメンバー。5日から始まるNHKのスポーツ・エンターテインメント番組「グッと! スポーツ」(火、後10・25)で司会を務めます。
 オリンピックやパラリンピック、プロ野球や大相撲など幅広いスポーツのアスリートを迎え、「驚異の技」や素顔に迫るのが見どころ。第1、2回は卓球の石川佳純選手です。
 「僕はもともとスポーツをやるのも見るのも大好き。いわゆるスポーツ番組では聞けないところまで掘っていくので、今まで見たことがない選手の一面が見られると思います」
 自身がグッとくる瞬間もやはりスポーツ。甲子園の高校野球が好きで、毎年見に行くといいます。
 「向かっている姿勢、がむしゃらに頑張っている姿が好きです。勝ったの負けたのよりも、あきらめずにたたかっている姿が一番グッときますね」
 ○  ○
 あきらめずにたたかう姿≠ヘ、自身の歩みとも重なります。
 中学の時、SMAPとバスケットボールがしたいという動機でジャニーズ事務所へ入所。1999年、「嵐」としてデビューしますが3年後、ハワイでのファンミーティングを目前に肺気胸で緊急入院。ハワイには行けたものの、ステージに立てませんでした。
 それから12年後、デビュー15周年のハワイ・ライブ。当時を思い出し、声を詰まらせます。「こんなチャンス、ないと思ってた…」
 つらいとき、苦しいとき、いつも一緒にいてくれたのは、「嵐」のメンバーでした。2004年、「24時間テレビ27 愛は地球を救う」(日本系)で相葉さんが読み上げた手紙「嵐のみんなへ」には、こうあります。
 〈みんなには本当に感謝しています。これからも5人で力を合わせて頑張っていこうね。「トップになりたい」っていう夢…絶対かなえようね。嵐で良かった〉
 デビューから17年。「嵐」は大きく成長しました。
 ○  ○
 会見で自分の強みを聞かれ、「ゆるさでは(他のメンバーに)負けない」と笑いを誘った相葉さん。「アスリートに聞きたいことは?」という質問に、「何をモチベーションにしているか」と答えました。
 「限界を超えて練習をしているわけじゃないですか。僕もスケジュールが詰まってきてコンサートで体力がなくなってきたとき、ここからどうやって力を出そう、と思うことがあります。限界を迎えたとき、何にすがるのか。根本にあるものを聞いてみたいです」
 毎日腕立てと腹筋を100回やっています。「それをやると強くなった気になる…」
 トレードマークの笑顔が広がりました。
 板倉三枝記者

あいば・まさき=1982年、千葉県出身。96年、ジャニーズ事務所に入所。99年、「嵐」でデビュー。ソロでは「天才! 志村どうぶつ園」「相葉マナブ」などに出演。主演映画「MIRACLE デビクロくんの恋と魔法」、連続ドラマ「ようこそ、わが家へ」。「グッと! スポーツ」はNHK総合で毎週火曜、午後10時25分
(
2016年04月03日,「赤旗」)

(Go2Top

言論統制狙う安倍政権/市民団体が講演会/広島

 高市早苗総務相の「電波停止」発言や看板キャスターの相次ぐ降板を検証する講演会「政府の判断でテレビ放送がとめられる?」が3月30日、広島市中区の広島弁護士会館であり、85人が参加しました。
 日本ジャーナリスト会議(JCJ)広島支部、広島マスコミ九条の会、政府から独立したNHKをめざす広島の会、秘密法廃止!広島ネットワークが共催。専修大学の山田健太教授が「放送法とは何か〜安倍政権のマスコミジャックと高市発言の狙い」と題して講演しました。
 山田氏は、メディアの人権侵害に対する批判を逆手にとって、政権がメディアを規制する行政権限を拡大させてきた歴史に触れ、「2004年ごろから政権批判を偏向報道だと攻撃する傾向が強まってきた」と解説。安倍政権が戦争する国づくりのために狙っている言論統制に警鐘を鳴らしました。
(
2016年04月02日,「赤旗」)

(Go2Top

波動/基地問題への問いは?/利元克巳

 山口県岩国市の米軍岩国基地は来年、神奈川県厚木基地の空母艦載機を受け入れる予定で急ピッチで工事が進む。建設ラッシュだ。これによって極東アジア最大の基地に生まれ変わろうとしている。
 中国地方で放送しているNHKテレビの「フェイス」が、「基地のまち≠ヘ問いかける」(2月19日放送)と題して、岩国基地について取り上げた。
 10年前、新たな部隊の受け入れを問う住民投票で有効投票の90%が受け入れに反対だった。しかし、今年1月に行われた市長選のNHKの出口調査では、空母艦載機部隊の移転計画に賛成が60%あったという。
 番組は、住民意識の変化の背景を追った。国から支給される米軍再編交付金が、医療費の大幅な軽減、子どもの場合は無料化となり、「これまで基地は仕方がないと思っていたが、基地がありがたい」という若い母親。また、10年前は基地強化に反対していた女性も、基地反対の元市長のもとで岩国市庁舎建設の国の補助金35億円が凍結されたのを見て、「住民にはどうにもできないと感じた」。一方、爆音訴訟原告は「事故、事件のリスク(危険)が増える」と訴えた。大学在学中、建設中の校舎に米軍機が墜落したのを目の当たりにしていた。
 基地を抱える自治体の岩国への視察が相次いでいる様子も映し出した。市は「基地と町が共存する。いわば岩国モデル」を売り込んでいるのだ。市議会議長は「国防の一翼を担っている。それに見合う国からの手当てはもらっている」と平然としている。さらにほかの5人の自治体議長とともに首相官邸へ出向き、菅官房長官に「沖縄の負担軽減のために協議を」と申し入れた。市議会議長は、基地のある自治体議長会議で、沖縄負担軽減を理由に基地依存を強めるべきだとも発言している。
 番組に違和感を感じた。交付金頼みの地域の厳しい実情にふれはするが、沖縄の負担軽減のためには本土への受け入れもありだと容認している。基地問題を正面から問いかけはしない。戦争法のもとで、基地がもたらすさらなるリスクにもメスを入れることがマスコミの役割ではないのか。
 (としもと・かつみ 広島マスコミ9条の会)
(
2016年04月03日,「赤旗」)

(Go2Top

NHK経営委員長浜田氏退任へ

 政府は19日、NHK経営委員会の浜田健一郎委員長(68)=ANA総合研究所会長=が6月に退任する同意人事案を国会に提示しました。経営委は人事案が国会で同意されれば、委員長職務代行者の本田勝彦日本たばこ産業顧問ら現委員を含む12人全員で次の委員長を互選します。
 人事案では、美馬のゆり公立はこだて未来大教授、室伏きみ子お茶の水女子大学長も退任します。
(
2016年04月21日,「赤旗」)

(Go2Top

メディア考える講演会60人参加/大津

 NHK問題を考える滋賀連絡会は16日、大津市内で講演会を開きました。元NHK報道カメラマンの小山帥人(おさひと)氏が「日本のメディアに何が起きているか」と題して講演。市民約60人が耳を傾けました。
 小山氏は、NHKの誕生から戦前の政府による国策機関化、戦後の政治介入と抵抗の歴史、安倍内閣の「アメとムチ」によるメディア戦略について語り、「電波は公共の財産であり、放送の主権は市民・視聴者だということを原点にして、声をあげるべき時はあげていこう」と訴えました。
 講演会の後、「会」は2016年度の総会を開き、NHKの政権べったり報道への抗議など活動方針を決め、役員を選出しました。
(
2016年04月20日,「赤旗」)

(Go2Top

市民に開かれた放送局℃タ践/「学んで考えて行動する」/KBS京都労組35周年の集い

 KBS京都放送労働組合が結成35周年となりました。勢いがある活動は全国で注目されています。
 ベースアップなど働く条件の向上、非正規労働者の正社員化や雇い止めの撤回、憲法9条を守る署名集め、戦争法反対の取り組みを続けてきました。市民と一緒に番組を作り、著名な講師を招いて学習会やシンポジウムも開催。「市民に開かれた放送局、学んで考えて、行動する」を実践してきました。

危機から再建へ
 しかし、初めから順調だったわけではありません。1993年、会社自体が経営危機で廃局寸前にまでなります。ファイナンス(資金調達)会社によって放送局がまるごと競売申請され、郵政省(現・総務省)は1年間の限定免許しか認めませんでした。
 原因は、会社に146億円の根抵当権が設定されていたことにあります。背後に悪徳な人物と大手銀行が存在していました。KBS労組は、会社更生法で再建を目指します。

雨の日も街頭に
 日本民間放送労働組合連合会(民放労連)の支援も受けました。「京の放送の灯を守ろう」と視聴者に訴え、94年に40万人署名を達成。京都地方裁判所が会社更生手続きの開始を決定します。組合は、会社の利益に加えてボーナス原資の半額を弁済に回すことを提案。昨年、弁済が終わって再建が実現しました。
 再建達成と組合結成35周年を祝う集いが3月に京都市で開かれ、100人を超える人々がそろいました。
 元組合員の大西準子さんは、「『放送の灯』署名を集めようと雨の日も街頭に立ったことを思い出します」。
 市民が番組作りをする「アクセスクラブ」に参加する太田垣幾也さんは、「KBS京都は東京キー局の傘下ではなく、独立したステーションとして存在します。名実ともに市民のための放送局となるように活動を充実させたいです」。
 NHK労組(日本放送労働組合)の中村正敏委員長があいさつしました。「民放労連、新聞労連ともいよいよ連帯が必要になりました」

政権にあらがう
 KBS労組から報告がありました。
 組合結成以来、長年にわたって書記長を務め、今は副委員長の古住公義(こすみ・ひさよし)さんは、「差し迫っての重要課題として、放送への圧力を強めている安倍政権にあらがっていきたい」。
 昨年、選出された小泉達郎委員長が決意を込めました。
 「組合が再建を目指して立ち上がった21年前、私は11歳でした。市民のみなさんと共にたたかった輝かしい歴史と理念はこれからも残ります。あこがれの労働組合として存在し続けられるよう、受け継いでいきたいと考えています」
(
2016年04月20日,「赤旗」)

(Go2Top

政権寄りNHK、真の公共放送に/茨城・講演会

 「NHK問題とメディアを考える茨城の会」の第2回総会を兼ねた講演会が17日、水戸市内で開かれました。
 総会の冒頭、同会の田中重博代表世話人(茨城大学名誉教授)がメディア支配に躍起になっている安倍政権を批判。「アベチャンネル≠ニ化したNHKを真の公共放送に変えていこう」とあいさつしました。
 記念講演した元NHKプロデューサーで、武蔵大学教授の永田浩三さんは、安倍首相の「戦後70年談話」をNHK政治部の女性記者(解説委員)が持ち上げ♂説した昨年8月14日の報道について、「NHKが安倍政権に制圧された日」と指摘。戦争法や原発に反対するデモや集会を取材しても、それを放送しないNHKの姿勢について、安倍政権のメディア支配戦略と密接な関係があると告発しました。
 そのうえで、永田さんは「NHKは国民の知る権利にこたえ、受信料は健全な公共放送に資するべきだ」と強調しました。
(
2016年04月24日,「赤旗」)

(Go2Top

熊本地震/「原発報道は公式発表≠ナ」/籾井NHK会長が指示/日放労は批判見解

 熊本地震におけるNHKの原発報道について、籾井勝人会長が局内の災害対策会議の場で政府機関や九州電力の「公式発表」をベースに報じるよう指示を出していたことが明らかになりました。26日の衆院総務委員会で奥野総一郎議員(民進党)の質問に答えたものです。
 委員会で籾井氏は、20日に開かれた対策会議で「原発に関しては、周辺のモニタリングポスト(放射線量を定点観測する装置)の数字や原子力規制委員会の見解等々を伝えていこう」と指示したと明言。
 理由については、「不必要な不安や心配を根拠もなしに出していくのは変でないか」「原子力規制委員会がこれは安全であると、あるいは(稼働を)続けていいのであれば、そのコメントを伝えていくということ」などと答えました。
 NHK職員でつくる日本放送労働組合(中村正敏委員長)は、25日に委員長見解を発表。「見解」は、震災報道では行政の公式発表を伝えるのは当然だとしたうえで、「もし行政の判断や活動に問題がある場合には批判をするのも当然の役割」だと指摘しています。
 籾井氏は2014年1月の会長就任会見で「政府が右というものを左というわけにはいかない」などと発言。以来、視聴者団体やNHKのOBなどから辞任・罷免要求が出されていました。
(
2016年04月28日,「赤旗」)

(Go2Top

トークとーく/「戦争法の廃止と立憲主義の回復を求める栃木県民ネットワーク」共同代表太田うるおうさん(63)/栃木・たのべ統一候補の擁立

「野党はまとまって」の思い伝わった
 参院栃木選挙区(改選定数1)では、戦争法廃止と立憲主義回復で一致する市民と野党が、元NHK宇都宮放送局長の、たのべたかお氏(56)を統一候補として擁立してたたかうことになりました。統一に尽力した「戦争法の廃止と立憲主義の回復を求める栃木県民ネットワーク」共同代表の太田うるおう氏(63)に思いを聞きました。
 (栃木県・団原敬)

 私の信条は「人が殺しあってはならない」です。4人の孫がいます。安保法制(戦争法)に反対するママの会の合言葉「だれの子どももころさせない」という主張に共感します。平和憲法で守られてきた今を、次世代につながなければなりません。
 県弁護士会は、会館の外壁に「平和憲法を守ろう」との垂れ幕をかけ、県民にアピールしています。県弁護士会が県平和センターや県労連などとも協力し、宇都宮市で昨年8月に開いた「平和憲法を守り戦争法案に反対する栃木県パレード」には2000人が参加しました。県弁護士会の集会としては過去最高の集まりでした。
 法律が制定された後も根強い廃止の運動が取り組まれるようになったのは、秘密保護法以来です。秘密保護法と戦争法の「廃止」の声は当然で、憲法の精神を守る大義あるたたかいです。
 参院栃木選挙区では、日本共産党、民進党、社会民主党、新社会党の4党各県代表と「県民ネットワーク」が「共闘協定書」に調印し(3月25日)、たのべたかお候補の一本化で合意しました。
 5野党党首合意(2月19日)に元気をもらいました。志位和夫委員長が、昨年に提唱した「国民連合政府」の政権構想をわきにおき、戦争法の廃止と集団的自衛権行使容認の閣議決定撤回など4項目での合意をめざした「柔軟な対応」を評価したいと思います。
 ちょうど県内でも、戦争法廃止を求める2000万署名行動が広がり、多くの団体や個人から「戦争法反対で市民団体と政党が一点で協力する必要がある」との声があがっていたときでした。
 5野党党首合意と共産党の決断は、私たちの背中を押してくれました。私は、「県ネットワーク」の要請をうけ、統一候補の擁立に野党が動くよう求める要請書を起草しました。「まとまってほしい」との一心を込めました。各党の県事務所も回りました。思いが伝わり、県内の4党が誠実に話し合いをすすめてくれたことに感謝しています。
 昨年、裁判所からの帰りを含め、何度か官邸前行動に参加しました。シールズなど若者の活動にふれ、頼もしいかぎりです。高校生や大学生のアイデア、エネルギーと市民運動、労働組合運動がリンクし、さらに野党と大同団結するなら、安倍内閣の暴走政治を止められます。
 憲法明文「改正」まで踏み込んだ安倍内閣の打倒をめざして、まずは参院選で、共産党などの野党と市民が大きな勝利を勝ち取らなければなりません。力を合わせましょう。

 おおた うるおう 鹿児島県生まれ。東京大学法学部卒。84年宇都宮市に法律事務所を開設。栃木県弁護士会元会長
(
2016年04月29日,「赤旗」)

(Go2Top

NHK経営委員と語る会/籾井会長への批判相次ぐ/「トップとしては無理」/松山

 NHK・籾井勝人会長の任期(3年、来年1月まで)の最終年度に入りました。しかし、罷免や辞職を求める視聴者の声や、籾井氏を選任したNHK経営委員会への不信は収まっていません。9日にNHK松山局で開かれた「視聴者のみなさまと語る会」でも、厳しい声が相次ぎました。

 「語る会」は、2008年に放送法が改定されたのを機に、NHK経営委員会が視聴者の意見を直接聞く場として設けられたもの。全国各地で毎年6回以上開かれます。今回は公募の視聴者33人が参加しました。
 「経営」に関するテーマで、ある参加者の男性は「(籾井)会長の話をしないわけにはいかない」と語気を強めました。

品格のない会長
 「お山の大将の印象で、やはり品格に欠ける。そういう国民の声はたくさんある」と指摘。籾井氏を会長に選んだ経営委員会の「責任」やチェック機能の有無をただしたうえで言いました。「過去に罷免はあったのか」
 会長を罷免する権限は経営委員会にあります。浜田健一郎委員長(ANA総合研究所会長)は、「過去に罷免したケースはない」と説明しました。
 別の男性参加者からも、会長について辛口の意見が出されました。「会長の問題発言は『政府が言うんだからしょうがない』から始まった。国会答弁も『放送法に基づいて…』と棒読み状態。それぐらいの答えしかできない人がトップでは無理だと思う」
 浜田委員長は、「今出された懸念は国会でもたびたび質問を受けている。経営委員会としても残念なことだと思う」と陳謝。経営委員会は、籾井会長に対し公共放送のトップとしての責任を自覚するよう「注意や申し入れをしてきた」と言います。

次期会長選考は
 また、来年1月の任期切れを視野に、「7、8月ぐらいから、次期会長の選考のための指名部会を立ち上げていくと思う」との見通しを語りました。
 監査委員を務める森下俊三経営委員(阪神高速道路会長)は、「不適切なことがあればチェックしている」と言いましたが、「(籾井会長の)言動については、個人の発言の自由があるので、それで罷免することにならない」と回答。次期会長像については、「NHK改革を進めるときに、違う立場の人が入った方が進みやすい」と、籾井氏に引き続き「民間出身会長」を中心にした選任を示唆しました。
 語る会終了後の会見で浜田委員長は、次期会長の選考について「6月に経営委員の入れ替わりがあるので、(会長選考は)新しい体制の大きなテーマになる」と述べました。また、NHK予算が国会で全会一致での承認とならなかったことについて、「NHKは受信料で成り立つ組織なので、できるだけ多くの賛成で成立させるほうがいい。大変残念なことだ」と語りました。
(
2016年04月28日,「赤旗」)

(Go2Top

5月】

変えるべきは憲法ないがしろの政治/志位委員長が主張/NHK憲法記念日特集

 日本共産党の志位和夫委員長は3日放送のNHK番組「憲法記念日特集」に出演し、安倍晋三首相が参院選の争点に掲げる憲法問題などについて与野党党首らと討論しました。(詳報2・3面)
 自民・高村正彦副総裁が「時代が変わっていくたびに憲法を変えるのは当たり前」などと主張したのに対して志位氏は、「日本国憲法は世界でも極めて先駆的な内容を持っている」と強調。9条という世界で最も先進的な恒久平和主義の条項や、30条にわたる豊かで先進的な人権条項をもつことをあげて、「変えるべきは憲法ではない。憲法をないがしろにする政治を変えるべきです」と主張しました。
 さらに志位氏は、自衛隊が戦後1人の外国人も殺さず、戦死者を出していないなど日本の平和の歩みを保障したのが憲法9条であり、「憲法9条は『日本の宝』であって、将来にわたって守り抜くべきです。この理想に向けて現実を一歩一歩、変えていくのが、政治の役割だと思います」とのべました。
 「自民党改憲案」が憲法9条2項を削除し、「国防軍」の創設を明記していることについて高村氏は「自衛隊も国際的には軍として扱われている」と主張。志位氏は、9条2項の改定は、「自衛隊の存在をただ書くということにとどまらない」、「海外派兵、集団的自衛権、国連軍への参加が無条件に許され、無条件に海外での武力行使ができるようになる。そういう道はとってはならない」と批判しました。
 これに関して公明党の北側一雄副代表は「自衛隊が憲法9条違反なのか共産党ははっきりいっていない」と攻撃。志位氏は「自衛隊は憲法9条2項に明らかに違反する、違憲だと言っています。ただ、この矛盾を一挙に解消することはできない。国民の合意で、憲法9条という理想に向かって、一歩一歩段階的に解決していくことが必要です」と日本共産党の立場を解き明かしました。
 参院選で改憲問題の位置づけについて志位氏は、安倍改憲による戦争と独裁の道か、それとも安保法制を廃止し、立憲主義を回復するという希望ある道を進むのか、二つの選択が問われると指摘。「これだけ立憲主義を破壊する暴挙に次ぐ暴挙をやっている政権に憲法をいじる資格はない、これに反対するという点で(野党は)一致できるんじゃないかと思っております。野党共闘の主題としても訴えていきたい」とのべました。
(
2016年05月04日,「赤旗」)

 

NHK「憲法記念日特集」/志位委員長の発言

 日本共産党の志位和夫委員長は3日放送のNHK番組「憲法記念日特集」に出演し、安倍晋三首相が参院選の争点に掲げる憲法問題などについて与野党党首らと約2時間にわたって討論しました。司会は、三宅民夫、松村正代両アナウンサー。

憲法改定は必要か

極めて先駆的な内容をもつ日本国憲法――変えるべきは憲法ないがしろの政治
 番組では、改憲の必要性について各党に事前に聞いた態度をフリップに提示。「改正の必要」は自民党、公明党、おおさか維新の会、日本のこころを大切にする党。「条件付きで必要」は民進党、新党改革。「必要でない」は日本共産党、社民党。「どちらともいえない」は生活の党でした。自民党の高村正彦副総裁は「世界中で、70年間まったく憲法をいじらない国なんて私はあまり知らない。時代が変わっていくたびに、それに合わせて憲法を変えるというのは、ごくごく当たり前だ」と主張。公明党の北側一雄副代表も「一昨年に国民投票法が改正され、具体的に憲法改正できる環境になってきた。具体的なテーマの下にしっかり論議をしていくことが大事だ」といずれも改憲を当然視しました。志位氏は、次のように発言しました。
 志位 「憲法の全条項を守り、平和的民主的諸条項の完全実施をめざす」というのが私たちの立場です。
 日本国憲法というのは、世界でも極めて先駆的な内容を持っていると思います。問題は、それをないがしろにする政治が横行しているところにあると思うんですね。
 憲法9条という、世界で最も先進的な恒久平和主義の条項を持っているにもかかわらず、安保法制=戦争法を強行し、(9条を)蹂躙(じゅうりん)する出来事が起こりました。
 それから、憲法は30条にわたる、豊かで先進的な人権条項を持っているんですね。これには政治的権利だけではなくて、生存権、あるいは勤労の権利など、経済的権利も含まれているんです。ここまで進んだ憲法を持っているというのは、G7(主要7カ国)の諸国の中でも日本とイタリアぐらいなんですね。それなのに、社会保障を切り捨てる、あるいは雇用のルールを破壊する、これが起こっているわけですね。
 変えるべきは憲法ではない。憲法をないがしろにする政治を変えるべきです。
 三宅 いまの憲法は十分先進的だと。
 志位 先進的だと(思います)。非常に先進的な憲法です。
 民進党の岡田克也代表は、改憲の必要性は認めつつも、「安倍首相が憲法の成り立ちそのものを否定する発言をしているのはおかしい」と批判しました。

「改憲必要なし」の世論の増加

改憲の本丸が「海外で戦争する国」づくりにあることを国民が見抜き始めている
 2012年12月の第2次安倍政権発足後、4年連続で行ったNHKの憲法意識調査で変化がありました。「憲法改正する必要がある」は13年の42%から今年4月の最新調査では27%に減少。一方、「改正する必要がないと思う」は16%から31%に増加したのです。
 番組で紹介されたこの調査結果について与党側は、「平和安全法制ができて、集団的自衛権の一部を限定的に行使することができるようになったことで、(改憲の)喫緊の必要性が減じたといえるかもしれない」(自民・高村氏)、「憲法改正を一般的に必要か必要でないかという問いがちょっと疑問だ」(公明・北側氏)などと問題をすり替えました。志位氏は、自公とその補完勢力が強行した安保法制=戦争法を告発しながら、憲法世論の変化を指摘しました。
 志位 私は、この間、安倍政権が、安保法制――私たちは戦争法と批判していますが、これを強引に押し通した。このことによって、改憲派の(ねらう憲法)改定の一番の本丸が憲法9条にあるという正体が明らかになってきたというところに、こういう変化が起こってきている原因があると思います。
 安保法制というのは、憲法9条を破る、自衛隊の海外派兵の仕掛けがたくさん盛り込まれています。「戦闘地域」まで出て行っての兵たんやら、あるいは集団的自衛権の行使やら、海外での武力行使を解釈改憲というやり方でまず突破したわけです。つぎは明文改憲だと(いうことになる)。
 そうなると、結局、憲法改定の目的は、「海外で戦争できる国」づくりにあるのではないかという本質を、多くの国民のみなさんが見抜き始めている。
 しかも、そのやり方が、戦後60年余にわたる、「9条の下では集団的自衛権の行使はできない」という(政府の)憲法解釈を百八十度覆すという、立憲主義の破壊というやり方がやられた。立憲主義の破壊という内閣の下で、憲法改定するのは危ないと(いう世論が広がった)。
 「そういう指摘に対しどうか」と司会に促された自民・高村氏は、「もし立憲主義違反ということになれば、憲法を変えようという議論が出てくるのが当たり前だが、そうならない」と発言。憲法によって権力を縛るという立憲主義を「理由」にして、改憲論議に結び付ける暴論を展開しました。

「自民党改憲案」

憲法によって権力を縛るのでなく、憲法によって国民を縛るもの
 安倍首相が改憲について国会答弁や記者会見で「参院選でしっかり訴えていく」「私の在任中に成し遂げたい」と明言するなど安倍改憲≠ェ議論のテーマに。自民党が12年4月にまとめた憲法改正草案について高村氏が「国家権力が国民を縛るようなところはない」と言い訳し、公明・北側氏は「野党時代に自民党がつくられたもの。オーソライズされているとはまったく思わない」と発言。これにたいして志位氏は、「自民党改憲案」の危険をきびしく告発しました。
 志位 安倍首相は、自民党は憲法改正草案を決めている。これを次の国政選挙でお示ししていきたい≠ニ、答弁しているんですよ。ですから私は、「自民党改憲案」を許してよいのかどうかが、(参院選の)大争点になると思う。
 「自民党改憲案」では、憲法9条2項を全面削除して、「国防軍」を書き込むと(しています)。こうなりますと海外での武力行使を無制限にできるようになります。
 それから、「公益及び公の秩序」の名で基本的人権の制約ができるということが書いてある。
 それから、「緊急事態条項」を新設して、「緊急事態」の名で首相に権力を集中する。そして、(国などが)国民に対して指示ができるようになる。こうなりますと、基本的人権の停止ということになってまいります。
 ですから、憲法によって国家権力を縛るのではなくて、憲法によって国民を縛る。まさに立憲主義を破壊する。これを許してよいのかということが問われてくると思います。

安倍首相が主導して改憲をすすめようとしている
 それでも自民・高村氏は「安倍総理が(改憲論議を)引っ張っていることはない」「本来、(国会の)憲法審査会で(改憲の)発議をする」などと自民党がたくらむ明文改憲が安倍首相主導でないことを強調しました。この議論に対して、志位氏はつぎのようにずばり指摘しました。
 志位 総理は、国会の場で、憲法9条の問題について、「憲法学者の7割が違憲だという状態で良いのか」と、こういうことをおっしゃる。あるいは、「緊急事態条項」について、「これについては重要な課題だ」ということをおっしゃる。そしてさっき言ったように、「自民党改憲案」について、「自民党は改憲案を決めている」、これを「国政選挙でお示ししていきたい」と(いう)。どこをどうするとは言わなくても、「お示ししていきたい」とおっしゃっているんですね。
 ですから、まさに安倍首相が主導して、改憲をやろうとしているわけです。

 

9条とどう向き合うか

9条が果たしてきた偉大な役割――将来にわたって守り抜くべきだ
 番組では、「憲法9条改正は必要か」と事前に各党に聞いた回答がフリップで提示されました。「必要でない」は、共産、民進、社民、新党改革。「必要」は、こころ。「条件付きで必要」と「必要でない」との間におおさか維新。「どちらともいえない」は生活。自民、公明は「この選択の枠には収まらない」という理由で「欄外」でした。しかし与党側は具体的に問われると、「自衛隊を憲法学者の6割から7割が憲法違反だといわれている文言でいいのかといったら、変えた方がベターだが、喫緊の課題かどうかといったら必ずしもそうではない」(自民・高村氏)、「自衛隊の存在とか役割を憲法上明記した方がいいという議論はあってもいい」(公明・北側氏)と9条改憲を露骨に示しました。9条について志位氏は明快に述べました。
 志位 私は、憲法9条が果たしてきた偉大な役割、これへの認識をしっかり持つべきだと思うんですね。
 自衛隊は戦後、1人の外国人も殺さず、戦死者を出していない。これはやはり9条が存在し、そしてそれを守る国民のたたかいが存在したためであって、まさにそういう平和の歩みを保障したのが9条だと思います。
 9条というのは、日本に対する国際的信頼の源にもなっていると思うんですよ。アフガニスタンとパキスタンの国境近くで、医療活動を長くやってこられた中村哲さんが、「9条のおかげで地元住民の信頼感を得られる。親日感情が得られる。自分たちは守られていると感ずる」とおっしゃっておられます。そういう国際的信頼の源にもなってきた。
 ですから、憲法9条は「日本の宝」であって、将来にわたって守り抜くべきだと(思います)。そして、憲法9条と現実との間で矛盾があるのだったら、この理想に向けて現実を一歩一歩、変えていくのが、政治の役割だと思います。
 民進・岡田氏は「自民党憲法改正草案の一番の眼目は、集団的自衛権の行使を限定なく認めるということだ。絶対に認めてはならない」と強調。社民党の吉田忠智党首は「9条は人類の究極の目標、日本の宝。変えるべきではない」と主張しました。

9条2項の改定

海外派兵、集団的自衛権、国連軍参加――無条件で海外での武力行使が可能に
 「自民党改憲案」が憲法9条2項を削除し、「国防軍」の創設を明記していることに自民・高村氏は「自衛隊も国際的には軍として扱われている」「『国防軍』で(合意が)得られるんであれば、それは結構なこと」と述べました。志位氏は、憲法9条2項を削除する危険を具体的に告発しました。
 志位 憲法9条の2項の改定が何をもたらすかという点が非常に重大だと思うんです。それは、自衛隊の存在をただ書くということにとどまらない。
 これまで政府は、自衛隊は、「わが国の自衛のための必要最小限度の実力組織であって、憲法9条2項が禁ずる戦力にあたらない」と言ってきたわけです。そして、そういった「自衛隊の存在理由」から「派生」する問題として、三つのことが許されないといってきたわけですね。
 第一は、武力行使を目的にした海外派兵は許されない。
 第二は、集団的自衛権(行使)は許されない。
 第三は、武力行使を伴う国連軍への参加は許されない。
 こう言ってきたわけです。
 ですから、9条2項を変えて、「自衛隊」を書きこんだ途端にこの三つが無条件で許されるようになる。つまり海外派兵、集団的自衛権、国連軍への参加、これが無条件に許されるんだと(いうことです)。無条件に海外での武力の行使ができるようになるというのが、9条2項の改定の意味だということで、私たちは絶対にそういう道はとってはならないと言いたいと思います。

憲法9条と自衛隊

国民多数の合意で、一歩一歩段階的に、9条の完全実施(自衛隊解消)をめざす
 志位氏の後に発言した公明・北側氏は、「自衛隊について憲法9条違反なのかどうか、はっきりおっしゃっておられないのは共産党だけ」などと発言。志位氏と北側氏の間でやりとりになりました。
 志位 (憲法違反だと)言っております。
 北側 明確におっしゃってください。
 志位 言っております。私たちは、自衛隊というのは憲法9条の2項に明らかに違反する。違憲だと考えております。ただ、この矛盾を一挙に解消することはできない。国民の合意で、憲法9条という理想に向かって、一歩一歩段階的に問題を解決していくことが必要だと(言っています)。
 北側 私がおうかがいしたいのは、憲法違反という立場であるということをまずおっしゃっていただきたいんですよ。
 志位 憲法違反と言ったでしょ。
 北側 そのうえで、いろいろおっしゃるのは結構なんですが。
 志位 私は、憲法違反だということをはっきり言ったでしょ。ただそれ(憲法と現実の矛盾)を解決する方法は、国民の合意で一歩一歩やっていく必要がある。
 私たちは、日米安保条約は、国民多数の合意でなくしていくべきだと考えております。しかし、安保をなくしたときに、一緒に自衛隊を解消するということは言っておりません。なぜかと言えば、安保条約をなくしたいという方でも、自衛隊については意見が分かれるわけです。
 私たちは、安保条約をなくした日本が、アジアのすべての諸国と平和的な関係を結ぶ。アメリカとの関係でも友好条約を結ぶ。そして、日本を取り巻く平和的環境が十分に成熟する。そして国民の多数――圧倒的多数が、「もう自衛隊なしでも安心だ」という合意が成熟して、はじめて9条の完全実施に進もうというふうに言っております。私たちはそうはっきりと言っております。
 この問題に関しては、自民・高村氏も「(2項の)『陸海空その他の戦力はこれを保持しない』。この文言をそのまま読んだら、私だって自衛隊合憲だとなかなか胸張って言えない」と言わざるをえませんでした。

集団的自衛権

政府が持ち出した「合憲化」論が成り立たないことは、国会論戦ではっきりした
 戦争法のなかでも憲法違反の核心部分である集団的自衛権の問題が議論になりました。
 自民・高村氏は、憲法9条のもとで米軍駐留が認められるかどうかを争った1959年の砂川事件最高裁判決で「自衛の措置」に触れていることだけを強調し、集団的自衛権行使を正当化。「憲法9条と集団的自衛権をめぐる議論はすでに決着済みか」の司会の問いには「(戦争法は)200時間ぐらい議論し、与党2党と野党3党の賛成を得て(成立)した。国会の中の議論は決着した」と発言。志位氏は次のように発言しました。
 志位 私は、国会の論戦を通じて、政府・与党が持ち出してきた集団的自衛権の合憲化論はもう成り立たないということがはっきりしたというのが、到達点だと思います。
 主にあなた方は、二つのことを持ち出してきました。
 一つは、1959年の最高裁砂川事件判決です。ところがこの判決は、在日米軍の合憲性を争ったものであって、日本の集団的自衛権というのは問題になっていないということは、(横畠内閣)法制局長官も答弁でお認めになりました。
 それからもう一つは、72年のいわゆる政府見解ですけれども、これは当時の国会で野党の議員の「なぜ集団的自衛権は行使できないのか、文書で明確に示されたい」という求めに応じて出されたものであって、その全体のひとつながりが、なぜ集団的自衛権は行使できないのかの論理を示したものです。
 国会の議論のなかでも元(内閣)法制局長官などの証言で、「前後の脈絡に照らしても、これはもう圧倒的に、これをもとに集団的自衛権を合理化することはできない」ということは、議論の中でずいぶんはっきりした。
 そして何より大事なことは、この二つが成り立たないということがはっきりして、国民の多数は(戦争法案に)反対したわけです。つまり、「たくさん議論した」というけれども、国民を納得させることも、説得することもできなかったことは事実なんです。
 日本共産党とともに戦争法廃止法案を共同提出している野党も「これは憲法違反。もう一回白紙に戻すべきだ」(民進・岡田氏)、「安保関連法が具体的に施行・実施されることになると、これはもう違憲」(社民・吉田氏)、「違憲である以上、すぐさま廃止を」(生活・主濱了副代表)と主張しました。
 一方、おおさか維新・片山虎之助共同代表は、「集団的自衛権は限定的に認める」と廃止法案反対の立場をとり、自公の補完勢力ぶりを示しました。自民・高村氏が、「どこの世論調査も廃止法案には反対だっていうのが多い」と述べたのに対し、志位氏は「世論調査では、廃止すべきだというのが多数の世論調査もあります」と反論しました。

「緊急事態条項」

内閣に権力を集中、三権分立も基本的人権も停止――独裁政治に道を開く毒薬
 改憲論議の論点をめぐって議論になりました。自民・高村氏は「緊急事態の中でどうしても憲法改正によらなければいけないものを提示したい」、公明・北側氏も「緊急事態の問題はぜひ憲法審査会でも政党間でも論議を深めていきたい」と発言。民進・岡田氏は「安倍総理は、憲法改正に慎重な人たちを無責任だと攻撃している。これでは、ちゃんとした腰を据えた議論はできない」と述べました。「緊急事態条項」を憲法のなかに書き込むべきだとする与党の主張に対して、志位氏は厳しく批判しました。
 志位 これは、「自民党改憲案」の「緊急事態条項」を見る必要があると思うんです。
 それを見ますと、戦争とか大規模災害などのさいに、内閣総理大臣の判断で国会にもはからずに「緊急事態の宣言」ができる。そして「内閣は法律と同一の効力を有する政令」を定めることができる。そして国民は「国その他公の機関の指示に従わなければならない」。つまり、三権分立を停止する。そして内閣に権力を集中する。そして国民の基本的人権を停止する。これは、独裁政治への道なんですよ。
 そして、これを災害を理由に言われる。しかし、災害対策は、災害対策基本法という法律が整備されているんです。私は、憲法は人権をきちんと保障する。そして緊急時の対応は法律で行う。これが今の枠組みですが、これを崩しちゃいけないと(考えます)。
 一時にせよ、「(国家)緊急権」を持たせて、いわば立憲主義の縛りを解いてしまう。そして権力を自由にしてしまうということは、非常に危険な毒薬≠セと思っております。

参院選での位置づけ

安倍政権のもとでの憲法改定は許さない――野党共闘の主題として訴えていきたい
 参院選での改憲問題の位置づけについて自民・高村氏は「これからも訴えていく」と発言。志位氏は次のように述べました。
 志位 これは安倍首相自身が、「憲法改正勢力で3分の2を得たい」と、そして「任期中に憲法改正を果たしたい」と、そして「自民党としては改憲案をお示ししていきたい」と、おっしゃっているわけですから、憲法改定の是非は(参院選の)大きな争点になると思います。
 私たちは、「自民党改憲案」=安倍改憲ですね、この道で、戦争と独裁への道を進んでいいのか、それとも安保法制を廃止する、そして立憲主義を回復するという希望ある道を進むのか、この二つの道の選択が問われると思います。
 そして4野党は、「安保法制の廃止と集団的自衛権行使容認の閣議決定の撤回を共通の目標とする」ということで合意しております。
 そして、安倍政権のもとでの憲法改定については、これだけ立憲主義を破壊する暴挙に次ぐ暴挙をやっている政権に、憲法をいじる資格はないということで、これに反対するという点でも、おそらく一致できるんじゃないかと、思っております。これを大いに野党共闘の主題としても訴えていきたいと考えております。
 他の野党も「安倍総理の眼目は9条改正で限定なき集団的自衛権の行使を認める。それを絶対に阻止しなければいけない」(民進・岡田氏)、「戦争法廃止、立憲主義を守る立場で野党でしっかり連携してたたかう」(社民・吉田氏)と主張しました。
(
2016年05月04日,「赤旗」)

(Go2Top

 

公布70年、憲法はいま/13条・個人の尊厳と公共の福祉/「公益・公秩序」は人権を縛るもの/愛敬浩二

 人権制約原理として、日本国憲法が定める「公共の福祉」をめぐって、4月3日のNHK「日曜討論」の席上、論争があった。「自民党改憲案」が「公共の福祉」を「公益及び公の秩序」(以下、「公益・公秩序」と略す)に変えていることについて、日本共産党の志位和夫委員長と、自民党の高村正彦副総裁との間で行われたものだ。
 志位氏が、「公共の福祉」は人権と人権が衝突したときの調整原理であるが、「公益・公秩序」は、国家目的のために人権を縛るもので、両者はまったく異なると批判したところ、高村氏は「公益・公秩序」は「公共の福祉」と同じ意味であり、後者が日本語としてわかりにくいので、前者への変更を提案していると答えた。

自民党改憲草案Q&Aで明らか
 しかし、この応答を真面目に受け止めることはできない。自民党の『日本国憲法改正草案Q&A』は、「公共の福祉」を「公益・公秩序」に改正する目的は、
@意味の曖昧さの解消と、A基本的人権の制約は「人権相互の衝突の場合に限られるものではない」ことを明らかにすることにあると、はっきりと述べているからだ。よって、高村氏は嘘をついているか、不勉強であるかのどちらかである。
 「公共の福祉」と「公益・公秩序」のどちらが、日本語として意味がより明確か、という議論をしても無意味である。どちらも同じ程度に不明確だと答えるのが、正解といえよう。しかし、法律論としてならば、どちらが明確なのかは、はっきりしている。「公共の福祉」のほうである。
 「公共の福祉」という概念は、日本国憲法制定後の約70年間に及ぶ違憲審査制の運用の中で、その意味内容が少しずつ明確化されてきた。一例を挙げよう。
 団体Aが集会を開くため、C市の市民会館の利用を求めたところ、Aと政治的に対立する団体Bが、「Aの利用を認めたら、20台の街宣車で乗り付けて、拡声器で大騒ぎしてやる」とC市を脅したとしよう。この場合、C市は、Aの集会を認めると、Bの行動によって市内の平穏が害されるので、それを防ぐため、Aに対して、市民会館の利用を不許可とすることが許されるだろうか。
 「公共の福祉」の下では、「許されない」というのが正解である。この結論は、学説のみならず、最高裁判決も原則として受け入れている。
 では、「公益・公秩序」の下ではどうだろうか。『Q&A』は、「公の秩序」とは「平穏な社会生活」のことであり、「個人が人権を主張する場合に、人々の社会生活に迷惑を掛けてはならないのは、当然」であると述べている。
 高村氏の説明ではなく、『Q&A』が「自民党改憲案」に関する党としての公式の説明であるとすれば(そうでなければ、一種の怪文書である)、「公益・公秩序」の下で、Aの集会の自由が制約される可能性は著しく高いといえよう。

戦後のたたかい染み込んだ言葉
 「公共の福祉」それ自体は確かに、曖昧な言葉かもしれない。しかし、この言葉には、人権侵害を受けた人々が日本国憲法を武器にし、自らの尊厳をかけてたたかってきた戦後史が染み込んでいる。明文改憲という高いハードルを越えてまで、「公共の福祉」を「公益・公秩序」に変えたいと「自民党改憲案」が考えるのは、戦後日本における人権獲得の歴史を否定したいからである。
 私の議論は大げさだろうか。そう思った人はぜひ、「自民党改憲案」の前文を読んでいただきたい。そこで憲法制定の目的とされているのは、諸個人の人権の保障ではなく、「天皇を戴く国家」を「末永く子孫に継承すること」である。

第13条【個人の尊厳・幸福追求権・公共の福祉】
 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

 あいきょう・こうじ 1966年生まれ。名古屋大学大学院教授(憲法学)。著書に『改憲問題』、『3・11と憲法』(共著)ほか
(
2016年05月03日,「赤旗」)

(Go2Top

 

「憲法変えるな」多数に/安倍改憲に国民が危機感/各メディア調査に鮮明

 安保法制・戦争法で乱暴に憲法9条を破壊し、さらに「任期中の改憲」を公言する安倍晋三首相のもと、国民の中で憲法変えるな≠フ声が高まっています。例年行われるメディアの憲法に関する意識調査でも、改憲に「反対」の声が増加し、逆転する状況が生まれています。

 NHKが2日に発表した憲法に関する意識調査では、「憲法改正」について「必要ない」が昨年の25%から31%に増加。「必要ある」は28%から27%に減少しました。第2次安倍政権発足後の2013年には「必要ある」は42%に達していたのに対し、「必要ない」は16%でした。「必要ない」は今年、この5年間で最も多くなったとしており、安倍政権のもとでの改憲への国民の危機感の高まりが鮮明となっています。「必要ない」の理由として最も多いのは「戦争放棄を定めた憲法9条を守りたいから」で70%でした。
 朝日デジタルによると「朝日」が3〜4月に実施した世論調査でも、憲法を「変える必要はない」が昨年3月調査の48%から55%に増加。「変える必要がある」は昨年の43%から37%に減少しました。
 改憲推進の論調を掲げる「読売」が1月下旬〜2月下旬に実施した世論調査(3月17日付)では、改憲を「しない方がよい」が50%を占め、「する方がよい」の49%を上回り、08年以来8年ぶりに反対が逆転しました。
 憲法9条についてはより鮮明で、「朝日」調査で「変えない方がよい」が昨年の63%から68%に増加、「変える方がよい」は27%でした。
 朝日デジタルの記事は「第2次安倍政権が発足した後の2013年3月以降の推移をみると、『変えない』の増加が目立つ。今回は男女ともに『変えない』が昨年より増え、20代以外のすべての年代で『変えない』が増加した」としています。
(
2016年05月03日,「赤旗」)

(Go2Top

放送人グランプリに国谷裕子さん

 放送関係者でつくる一般社団法人「放送人の会」は12日、「放送人グランプリ2016」に、NHK「クローズアップ現代」で今年3月まで23年間キャスターを務めた国谷裕子さん(59)が決まったと発表しました。
(
2016年05月13日,
「赤旗」)

(Go2Top

おはようニュース問答/NHK原発報道は「公式発表」うのみ?

 のぼる 熊本地震後、日本で唯一稼働している川内原発(鹿児島県)の停止を政府に求める声が高まっているね。
 ふゆみ 地震を引き起こした活断層を南西に下った先に川内原発がある。震源域が広がる指摘もあるなかでは当然よ。

局内に会長指示
 のぼる スッキリしないのは、NHKの震災報道だ。原子力規制委員会や政府の「安全」だという説明ばかり流して、独自の取材や解説が一切なかった。地図にも鹿児島県地域や原発を示していなかったんだ。
 ふゆみ NHKの籾井勝人会長の意向が働いたんだと思うわ。
 のぼる 局内にそういう指示を出したんだね。
 ふゆみ 20日に開かれた震災関連の局内対策会議で、原発報道は規制委員会など政府機関や九州電力などの「公式発表」をベースに報じるよう命じていた。国会で問われた籾井会長は、発言を認めたうえで「不必要な混乱を避けるため」だと弁解している。
 のぼる 政府や電力会社の言い分は事実かどうか、検証するのがメディアの役割じゃないか。福島第1原発事故直後には、放射性物質拡散予測のデータや、「メルトダウン」の実態が隠された。
 ふゆみ 逆に、安倍政権は批判的なメディアの口をふさごうと必死よ。高市総務相の公平でない番組を流すテレビ局には総務相の判断で停波もありうる≠ニいう国会答弁などは脅しの最たるものだわ。
 のぼる NHK「クローズアップ現代」の「出家詐欺」報道が問題になったとき自民党はNHK幹部を呼び付け、総務相は行政指導をした。キャスターの国谷裕子さんも3月で降板させられた。

国連調査も警鐘
 ふゆみ 先月、「表現の自由」を調査するため来日した国連人権理事会のデービッド・ケイ特別報告者は、記者会見で「日本のメディアの独立性が脅威にさらされている」と警鐘を鳴らした。
 のぼる 9日には、全国の視聴者・市民運動の26団体が、来年1月に任期が切れる籾井会長を再任しないようNHK経営委員会に申し入れたよ。
 ふゆみ 「政府が右というものを左というわけにいかない」などと、自ら放送の独立性を放棄するトップの選任を、二度と許してはいけないわ。

(
2016年05月11日,「赤旗」)

(Go2Top

籾井氏再任、断固ノー/市民26団体、NHKに要望書

 NHKの籾井勝人会長の罷免を求めてきた全国の視聴者・市民団体の代表は9日、NHK経営委員会の浜田健一郎委員長(ANA総合研究所会長)と各委員に対し、「次期会長の選任にあたって選考過程の抜本的な改革」を求める要望書を提出しました。
 会長の任免権を持つ経営委員会は、籾井会長の任期が来年1月までなので、「次期会長」を選考する「指名部会」をこの夏にも立ち上げるとしています。要望書では、
@籾井会長の再任は絶対にしてはならないA選考にあたっては、視聴者・市民の意思を反映する公募制、公選制の検討B資格の要件に「政治権力からの自主・自立を貫ける人物」といった条項を加える―の3点を求めています。
 要望書には「放送を語る会」や「日本ジャーナリスト会議」、各地の「NHK問題を考える会」のほか、NHK全国退職者有志を含む26団体が名を連ねています。
 また、「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」(湯山哲守・醍醐聰共同代表)は同日、籾井会長が熊本地震関連の局内会議で「原発については公式発表をベースに伝える」ことを指示した件について抗議し、「発言の撤回と即刻の罷免」を求める文書を合わせて提出しました。
(
2016年05月10日,「赤旗」)

(Go2Top

NHK経営委員と語る会/受信料や会長発言に苦情/「監視・監督の立場で」と回答/函館

 「語る会」は放送法の規定で毎年6回以上、各地で開かれます。今回は初の試みとして、参加者をABC3グループに分けて活発に討論。取材陣にはAグループの議論が公開されました。
 特徴的だったのが、受信料契約や徴収方法についての批判が多く出されたことでした。「夜遅くに何度もブザーを押す」「サラ金以上に徴収が厳しい」などの体験が次々と語られました。「NHKの経営方針として、受信料を集めるプレッシャーをスタッフにかけているのではないか」という指摘も。

外部法人へ委託
 NHKの今井純専務理事は、受信料契約や徴収の外部法人への委託を進めるなかで、「苦情が多いのは事実。指導に力を入れている」と説明。一方で、「公平負担」強化のため、2017年度までに支払率80%(15年度見込みで77%)の達成を目指しているとのべました。
 別の参加者は、「(籾井勝人)会長が受信料を税金のようなかたちで(徴収する)との考え方もある≠ニ言っていた。税金になると徴収の負担が抑えられるのでは」と質問しました。
 経営委員会の上田良一委員(前三菱商事副社長)は、「NHKは国営放送ではない」と指摘。「国の力で受信料を徴収することになると、国の影響が放送局に及んでくる。ジャーナリズムというのは、国家権力に追随するような形は望ましいものではない」
 暴言や失言が止まらない籾井会長への不信、公共放送へのあり方についての疑問もやみません。ほかの参加者は「会長の『政府が右というものを左というわけにいかない』という発言は、公平・公正の観点からいかがなものか」。
 別のグループから、国連人権理事会のデービッド・ケイ特別報告者が「日本メディアの独立性が脅威にさらされている」と警鐘を鳴らしたこと、昨年7月に戦争法案を強行採決した国会委員会をNHKが中継しなかったことについて、質問・意見が出されたとの報告がありました。

議事録の閲覧を
 事前に参加者に実施したアンケートでも「会長発言について、経営委員会で議論が行われているのか」「もう少しまともな人を会長にしてほしい」「現政権から見えない圧力はないのか」などの質問が寄せられています。
 上田委員は、籾井会長への批判に答えて「大変遺憾。(会長を)監視・監督する立場の経営委員会がしっかり見ていきたい」と回答。権力からの「圧力」について、今井理事は「介入を受けることはない」と否定しました。
 議論をまとめた経営委員会の美馬のゆり委員(公立はこだて未来大学教授)は、「経営委員会の議事録は公開されている。その中でわれわれがどうコメントし、執行部を監視・監督しているのか、ぜひ見てほしい」と呼びかけました。
(
2016年05月19日,「赤旗」)

(Go2Top

NHK理事・経営委員人事に見る籾井会長の思惑と狙い

 NHKの体制が理事、経営委員とも大きく代わり、今後の運営をめぐって関心が高まっています。
 籾井勝人会長は4月に大幅な理事入れ替えに踏み切りました。会長・副会長以外に今年2月段階で10人いた理事中、6人が交代。その理由について4月12日の経営委員会(12人、浜田健一郎委員長)で籾井会長との間で議論になりました。
 13日公表の議事録によると、委員から「昨年退任した人が今回専務理事で戻ってきたのはなぜか」「理事に技術畑の人がいないのは問題だ」などの声があがりました。しかし結果として籾井氏側が押し切った形で了承されました。
 退任理事には、NHKの土地取得計画について籾井会長の意向に反対したとされる2人も含まれています。各種報道では、籾井氏の思惑が強く反映した人事とされています。
 一方、NHKの運営方針や会長を決める権限をもつ経営委員会(12人、政府が任命し国会が承認)も、大幅に入れ替わります。
 浜田委員長は6月で退任。政府は他の退任者や空席だった委員とあわせ、5月に5人の人事案件を国会に提示し、いずれも賛成多数で承認されました。
 日本共産党は再任の上田良一委員・監査委員は、この間のNHK子会社の不正問題などで監査の役割を十分果たしていなかったとして反対。宮原秀夫・元大阪大学長ら4人は日本共産党を含む賛成でした。
 NHK会長任期は3年で、来年1月に籾井氏の任期が切れるため、浜田氏は「新委員長のもとで後継会長指名部会を立ち上げる」としています。籾井氏が再選をめざすかどうかは不透明です。
(
2016年05月18日,「赤旗」)

(Go2Top

文芸評論家、東京大学教授沼野充義さん/『チェーホフ七分の絶望と三分の希望』/薄味にひそむ情熱と思想

ロシア、東欧文学研究の第一人者/権力者への批判は知識人の役割
 文芸評論家で東京大学教授の沼野充義さんが『チェーホフ 七分の絶望と三分の希望』を出しました。ロシア、東欧文学研究の第一人者がいまなぜチェーホフを選んだのか。そして、現代日本をどうみているのか。
 金子徹記者

 ロシアの作家・チェーホフ(1860〜1904)。「かもめ」「三人姉妹」「桜の園」などの戯曲や珠玉の短編小説が現代でも人気です。400n近い本書は、作家の人となりと作品の魅力、謎めいた思想に迫ります。

真夜中にも灯
 「ドストエフスキーに比べると、チェーホフは薄味です。チェーホフの魅力はおとなにならないと分からない。壮大なビジョンを示すドストエフスキーと比べ、チェーホフは、情熱がないとか無思想だといわれることもある。でも、よく読めば実は情熱もあるし思想もあるんです」
 身長182a。41歳で女優と結婚するも、仕事の都合で離れて暮らし、愛の手紙を連打。生涯に書いた手紙の総数は6000通。短編小説を1年で100本書いたことも。若くして不治の病にかかりながら医者としても働いて…。
 「異常な生産性ですね。写真のイメージから色恋とは無縁な人とみられがちですが、誤解です。実際はもてて色恋をよく分かっていた。勤勉でエネルギッシュな作家でした」
 副題「七分の絶望と三分の希望」は、チェーホフ文学の立ち位置を暗示。
 「現代の日本も世界もむちゃくちゃになりつつあり、まともな人なら絶望したくなる状況です。しかし、それでも三分の希望≠ヘきっとある。チェーホフは、晩年になるほどペシミスティック(悲観的)になりますが、100%ではない。暗い真夜中だけど、遠くに灯(ともしび)が見える、遠いけれど、ちゃんとある、そんな希望を描きました。難病にかかりながら、これだけのものを書き続けるのは、希望がなければできません」
 ノンポリ(無思想)とみられがちですが。
 「必ずしもそうではありません。政治的な発言を避ける生き方をしたので、ノンポリに見えますが、政治的意識は非常に高かった。ゴーリキー(社会主義者の作家)を擁護したり、社会的活動もいろいろしています。本心の見えにくい人ですが、社会に対する真剣な責任感は常にある。その言説全体が、良質なアイロニー(皮肉)を失った全体主義的な社会への解毒剤になっています」
 スラブ文学研究者、翻訳家、教育者で、新聞では文芸時評も。
 「浮気な人間なんで(笑い)、好きな作家はいろいろです。文学は、おもしろいものを好きなように読めばいい。ひとりの作家に集中していれば、もう少し立派な学者になれたかもしれませんが(笑い)。たとえるなら、ドストエフスキーは巨木で、チェーホフはキノコ。巨木は偉いが、好きなのはキノコです」

「反知性主義」
 昨年、文部科学省が国立大学に人文系学部の廃止・改組を要求。
 「政界、財界の必要に応じた社会的要請のなかで、必要のない学問は切る。確かに私がチェーホフを研究したって財界は潤わない(笑い)。政界、財界に、うるさいことをいう人文系は、いらない? あからさまな反知性主義です」
 安保法制に反対する学者の会などに名を連ねます。
 「ロシアの言論統制はすごいですが、NHKを見ても分かるように、日本もひどい状態です。マスコミが自立性をもって、どれだけ権力を批判する自由が確保できるかが焦点です。知識人の役割も、権力者に批判的なスタンスをとることだと思います」

ぬまの・みつよし=1954年東京生まれ。『屋根の上のバイリンガル』『徹夜の塊―亡命文学論』『徹夜の塊―ユートピア文学論』、訳書にスタニスワフ・レム『ソラリス』『新訳 チェーホフ短篇集』ほか多数
(
2016年05月15日,「赤旗」)

(Go2Top

放送文化と人間らしさと/元NHK会長・市川森一脚本賞財団理事長福地茂雄さんに聞く

NHKの人たちは自信持ち自律組織としていい番組を
 元NHK会長の福地茂雄さんは現在、市川森一脚本賞財団理事長や新国立劇場顧問を務めています。福地さんに放送文化とのかかわりについて聞きました。
 (渡辺俊江)

生活も芸術もひっくるめて
 ―放送文化についてはどうお考えですか?
 私はビール屋で、NHKの放送事業や新国立劇場などの舞台芸術文化にも携わり、勉強してきました。共通するのはこれらは生きるためには、あってもなくても、いいんですよ。でも人間が人間らしく生きようと思えば必需品です。
 放送文化には、あらゆるものがひっくるめられています。大きく分けると生活文化と芸術文化ですよ。地震速報、料理、ニュースは生活文化で、歌や演劇、演芸は芸術文化ですよね。生活文化は命を預かるもの、芸術文化は人間らしさをアピールするものです。
 ―2008年からNHK会長を1期3年務められました。
 NHKが民間放送と根本的に違うのは、視聴者のみなさん一人ずつの受信料でまかなわれていることです。いろんな考え方の人がいらっしゃるので、放送法の立場で不偏不党の放送が大切です。NHKは国からの税金は一銭ももらっていない自律した存在です。そういう姿勢があり、NHKにしかできない番組を作る。その中で、受信料を下げよという意見が出てくる、単に下げろというのは失礼だと思っています。
 ―報道プロジェクト「あすの日本」は、新しい試みでした。NHKスペシャル「無縁社会」(2010年)もその一つです。
 「組織の中に横ぐしを入れなさい」と言ってきました。NHKは政治部、社会部、経済部と独立している。物理的な壁はもちろんのこと、心の壁をつくっちゃだめだと言った記憶があります。人間というのは、どうしても心の壁をつくりたがる。おれの縄張りだと。今の時代、じゃまなんです。
 壁をつくると情報も細切れになってしまいます。「あすの日本」は、各部から人を出して一緒になって番組を作り、報道もしました。私は特定の政治家とのしがらみはありません。職員は仕事がしやすかったでしょうね。
 経営委員会は会長が入れない仕組みです。会長の仕事として、次のトップをだれにするかということがあるはずなのに、意見を言う機会もなければ、議決権もない。経営委員会が決めます。時の政治に左右されないというと、うそでしょう。

若い脚本家へ期待を込めて
 ―NHK会長を退任された後、2012年に市川森一脚本賞財団の理事長に就任されました。
 市川さんは大河ドラマ「黄金の日日」(1978年)、「山河燃ゆ」(84年)を書かれました。「夢暦 長崎奉行」(96年)、「蝶々さん」(2011年)は、小説も面白いなと読ませてもらいました。市川さんは長崎・諫早のご出身で、私は長崎大学なもんでゆかりがあります。
 脚本賞は今年で4回目です。若い方々が出てくるのはいいことで期待しています。
 ―そういう活動は、社会への貢献ということでしょうか?
 そこまで大げさなことではありません。恩返しです。自分の人生ですから。
 よく見ているのは「NHKスペシャル」「歴史秘話ヒストリア」、衛星の映画ですね。「クローズアップ現代」は、国谷裕子キャスターが一つの問題を掘り下げてやるのがいいと思いました。NHKの人たちは自信を持ち頑張ってほしい、いい番組を作ってほしい。心から願っています。

市川森一脚本賞
 脚本家・市川森一さん(1941〜2011年)にちなんで、新進脚本家に送られる賞。第1回は大島里美さん(「恋するハエ女」)。第3回は該当者がなく、奨励賞を宇田学さん(「悪夢」。現在は日曜劇場「99・9」を執筆)らが受賞。
 市川さんは
@脚本の文化的価値を訴えて保存を提案(国会図書館に脚本アーカイブズとして実現)A若手の脚本家の養成Bドラマの基本は脚本家とプロデューサーの共同作業と位置付ける―三つの活動に取り組みました。市川さんの意思を受け継ぎ、ドラマ制作者や愛好者から寄せられた基金で財団を設立しました。310人の個人会員のほか、法人会員も。

 ふくち・しげおさん 1934年、福岡県生まれ。アサヒビール社長・会長。2006年に相談役。08〜11年にNHK会長。
(
2016年05月15日,「赤旗」)

(Go2Top

NHK「日曜討論」/藤野政策委員長の発言

 日本共産党の藤野保史政策委員長は、15日のNHK「日曜討論」に初めて出席し、震災や消費税増税問題などをめぐり与野党の政策責任者と討論しました。

熊本地震対策/命と健康を守ることは緊急課題
 冒頭、発生から1カ月となった熊本地震への政府の対応がテーマとなりました。
 自民党の稲田朋美政調会長や公明党の石田祝稔政調会長は「先手先手で取り組んでいる」と述べました。民進党の山尾志桜里政調会長は与野党なく一致協力していきたいと述べつつ、補正予算案に被災者生活再建支援金の拡充が取り入れていないことは「残念だ」と語りました。
 藤野氏は「2回にわたり被災地に入り、避難所や車の中でぐったりされている方を何人も見て、命と健康を守ることは引き続き緊急課題だと感じています」と述べ、温かい食事などを求めた政府の通達を政府が責任をもって実現することや、復旧事業は全額国庫負担にするなど地元負担ゼロのメッセージを出すことを要求しました。
 また、被災者生活再建支援金の上限を現行300万円から500万円に拡大する法案を野党が提出していることを紹介し、「ぜひここはご一緒に実現しようと与党の皆さんには呼びかけたい」と語りました。補正予算案について「被災地の支援に限っているということであれば協力したい」と表明しました。
 自民・稲田氏は、支援金の給付拡大について「できうる限りの対応を考え、検討したい」と応じました。

アベノミクス/物価上昇と消費税8%で不況に
 安倍政権の経済政策アベノミクスへの評価に議論が移りました。野党がアベノミクスは失敗と指摘したのに対して、自民・稲田氏は史上最高の企業収益や有効求人倍率の上昇などの数値を並べ、「明るい兆しが出ている」と主張しました。
 藤野氏は「雇用は良くなったと言うが増えたのは非正規雇用が圧倒的だ」と反論。大企業収益は史上最高となり内部留保は300兆円を超える一方で実質賃金は4年連続マイナスだと指摘し、「個人消費が冷え込んで貧困と格差が広がっているのが実態だ。トリクルダウンは完全に破綻している。むしろ、アベノミクスの物価上昇と消費税8%増税のダブルパンチで『アベノミクス不況』が始まった」と語りました。
 公明・石田氏は、総雇用者所得は増えているなどと述べ、これを正規雇用への流れにつなげたいと語りました。
 藤野氏は「大企業がもうかっても賃金に反映していかない。やはり正規が増えないと駄目だし、働き方を変えることとセットでやっていかないといけない。与党は労働基準法や雇用を規制緩和しているが、これでは逆行だ」と批判しました。
 司会者が「ポイントは所得格差の現状だ」と述べ、世帯所得の分類で最多が200万〜300万円の14・3%、次が100万〜200万円の13・9%という数字を紹介し、「現状をどうとらえるか」と問いました。
 自民・稲田氏は「可処分所得を生み出すためにも実質賃金を上げることが重要だ」と語りました。
 藤野氏は「いま必要なのはトリクルダウンではなくてボトムアップだ」と述べ、家計を温めることが格差の是正、中間層の応援になると強調。具体的には正社員を増やして賃上げを進める、長時間労働を規制してブラック企業をなくしていく、最低賃金を中小企業に手当てしながら今すぐどこでも1000円に、そして1500円を目指していくことを提案し、「大企業がまず豊かになるのではなくて、働く人が安心して暮らせる社会をつくっていく。そのことが結局は経済の好循環につながっていく」と語りました。
 公明・石田氏は「大企業のトリクルダウンがないというのは大事な問題だ」と述べざるを得ませんでした。

消費税増税/10%への増税はきっぱり中止を
 消費税率10%増税が議論となり、自民・稲田、公明・石田両氏は、予定どおり2017年4月から引き上げる方針に変わりないと語りました。
 民進・山尾氏は軽減税率に「反対」を表明する一方で、引き上げを延期するなら「アベノミクスの失敗を認めて退陣すべきだ」と語りました。稲田、石田両氏は「複数税率は(消費税増税を決めた)3党合意に書いてあった」と反発し、山尾氏との間で争いとなりました。
 藤野氏は「10%に上げるのはとんでもない。延期や先送りではなくてきっぱり中止すべきだ」と主張。社会保障の財源についても、大企業や富裕層に応分の負担を求めるなど税金の集め方を変えれば財源をつくれると述べ、税金の使い方の改革も求めました。
 これに対し公明・石田氏は「実質どういう形でやるのか。法人税率を上げるのか」と質問してきました。
 藤野氏は「研究開発減税とか海外の利益を受け取る配当利子の減税だとか、さまざまな政策減税で実質的な負担率(実効税率)は大企業はかなり低くなっています。見かけの法人税よりも実際に払っているものは低くなっているわけですから、もうけに応じて負担させるべきです」と答えました。
 自民・稲田氏は、消費税と切り離して社会保障の財源をつくるべきだという社民・吉川元政策審議会長の提案や、大企業の内部留保の活用という藤野氏の提案、子どもや若者への支援は究極の経済政策だという民進・山尾氏の提案などについて「とても重要だ」と述べました。
 藤野氏は最後に、「税金の集め方、税金の使い方、そして働き方を変えていくことを一体で進めていくことで希望ある未来が開けてくると思います」と語りました。
(
2016年05月16日,「赤旗」)

(Go2Top

税金集め方・使い方転換を/社会保障充実へ/藤野政策委員長/NHK討論

 日本共産党の藤野保史政策委員長は15日のNHK「日曜討論」で、消費税率10%増税の中止を求めるとともに「税金の集め方や使い方を変えれば、社会保障の財源はある」と主張し、社会保障の充実と経済の好循環をつくる道を示しました。(関連5面)
 番組では2017年4月に予定されている消費税増税がテーマになり、自民党の稲田朋美政調会長は、リーマン・ショックや東日本大震災並みの事態がない限り予定通り引き上げるのが方針だと述べ、「いまの経済はリーマン・ショック並みの状況ではない」と語りました。
 これに対し、藤野氏は「消費税は低所得者に重くのしかかる最悪の不公平税制だ」と批判するとともに、前回の8%への増税で個人消費の落ち込みが長引いていると政府自身が認めていることを示し、「10%増税なんてとんでもない。延期や先送りではなくて、きっぱり中止すべきだ」と強調しました。
 社会保障の財源を問われた藤野氏は、大企業が史上最高益で300兆円超の内部留保をため込んでいることや、富裕層がまともに税金を払っていないことが世界的に問題となっていることを指摘。「負担能力に応じた税金の集め方」への改革と、軍事ではなく社会保障や若者・子育て優先の「税金の使い方」への改革で財源はつくれると提唱しました。
 社会保障といえば「負担・コスト」と考える見方に対しても「発想の転換が必要だ」と述べ、「介護制度を充実すれば介護離職も減ります。社会保障の経済波及効果は大きい。社会保障の充実と経済の好循環をつくることが政治の役割だ」と強調しました。
(
2016年05月16日,「赤旗」)

(Go2Top

変えるべきは憲法無視の政治/「改憲許さない」/NHK討論で志位委員長が主張

 安倍晋三首相が明文改憲を参院選の争点に掲げるもとで迎えた憲法記念日(5月3日)。同日放送のNHK番組「憲法記念日特集」に日本共産党の志位和夫委員長が出演し、与野党党首らと討論しました。そのポイントは―。(詳報は、「赤旗」日刊紙4日付、党ホームページに掲載)

世界でも先駆的な条項
 自民党の高村正彦副総裁は「時代が変わっていくたびに憲法を変えるのは当たり前」、公明党の北側一雄副代表は「具体的に憲法改正できる環境になってきた」と、それぞれ改憲を当然視しました。
 志位氏は「日本国憲法は、世界でも極めて先駆的な内容を持っている」と強調しました。
 戦争放棄とともに戦力を持たないと定めた憲法9条は、世界で最も先進的な恒久平和主義の条項です。
 また30条にわたって豊かで先進的な人権条項をもっています。政治的権利だけでなく、生存権、勤労の権利など経済的権利も含まれています。ここまで進んだ憲法を持っているのは、G7(主要7カ国)の中でも日本とイタリアぐらいです。
 志位氏は「変えるべきは憲法ではない。憲法をないがしろにする政治を変えるべきだ」と主張しました。

9条は守るべき国の宝
 討論の中で、憲法9条とどう向き合うかがテーマになりました。
 この問題で大事なのは、9条が果たしてきた偉大な役割をどう認識するのか、です。
 自衛隊は戦後1人の外国人も殺さず、戦死者を出していません。9条が存在し、それを守る国民のたたかいがあったからです。日本の平和の歩みを保障したのが、9条です。
 アフガニスタンとパキスタンの国境近くで医療活動などを続けてきた中村哲さん(ペシャワール会現地代表)は「9条のおかげで、地元住民の信頼感を得られる。親日感情が得られる。自分たちは守られていると感ずる」と語っています。9条は、日本に対する国際的信頼の源にもなっています。
 志位氏は「憲法9条は『日本の宝』であって、将来にわたって守り抜くべきだ。この理想に向けて現実を一歩一歩、変えていくのが、政治の役割だ」と強調しました。

「国防軍」明記の自民案
 「自民党改憲案」は、9条2項を削除し、「国防軍」の創設を明記しています。高村氏は「自衛隊も国際的には軍として扱われている」として、この改定を正当化しました。
 しかし歴代政府は、戦力不保持をうたった9条2項があるから、
@武力行使を目的にした海外派兵A集団的自衛権行使B武力行使を伴う国連軍への参加―はいずれも許されないという立場をとってきました。9条2項を削除すれば、この三つが無条件に認められることになってしまいます。
 志位氏は「海外派兵、集団的自衛権、国連軍への参加が無条件に許され、無条件に海外での武力行使ができるようになる。絶対にそういう道はとってはならない」と批判しました。

違憲の自衛隊どう解決
 討論の中で北側氏は「自衛隊が憲法9条違反なのか共産党ははっきりいっていない」と攻撃してきました。
 しかし、これは見当違いの批判です。日本共産党は、自衛隊を違憲だと主張し続けてきました。ただ、この矛盾を一挙に解消することはできません。国民の合意で、9条という理想に向かい、一歩一歩段階的に解決していくことが必要です。
 日本共産党は日米安保条約をなくす方針を掲げています。しかし安保条約と一緒に自衛隊をなくすとは提起していません。安保条約に反対でも、自衛隊については意見が違うという人もいるからです。
 志位氏は「安保条約をなくした日本が、アジアの全ての国と平和的な関係を結ぶ。米国とも友好条約を結ぶ。そして日本を取り巻く平和的環境が十分に成熟し、国民の圧倒的多数が『もう自衛隊なしでも安心だ』という合意が成熟して、はじめて9条の完全実施に進もうと言っている」と日本共産党の立場を丁寧に語りました。

参院選で安倍改憲問う
 参院選では、安倍改憲による戦争と独裁の道か、それとも安保法制を廃止し、立憲主義を回復する希望ある道を進むのか、二つの選択が問われます。
 志位氏は「これだけ立憲主義を破壊する暴挙に次ぐ暴挙をやっている政権に憲法をいじる資格はない、これに反対するという点で(野党は)一致できるんじゃないかと思う。野党共闘の主題としても訴えていきたい」と述べました。
(
2016年05月15日,「赤旗」)

(Go2Top

放送文化と人間らしさと/元NHK会長・市川森一脚本賞財団理事長福地茂雄さんに聞く

NHKの人たちは自信持ち自律組織としていい番組を
 元NHK会長の福地茂雄さんは現在、市川森一脚本賞財団理事長や新国立劇場顧問を務めています。福地さんに放送文化とのかかわりについて聞きました。
 (渡辺俊江)

生活も芸術もひっくるめて
 ―放送文化についてはどうお考えですか?
 私はビール屋で、NHKの放送事業や新国立劇場などの舞台芸術文化にも携わり、勉強してきました。共通するのはこれらは生きるためには、あってもなくても、いいんですよ。でも人間が人間らしく生きようと思えば必需品です。
 放送文化には、あらゆるものがひっくるめられています。大きく分けると生活文化と芸術文化ですよ。地震速報、料理、ニュースは生活文化で、歌や演劇、演芸は芸術文化ですよね。生活文化は命を預かるもの、芸術文化は人間らしさをアピールするものです。
 ―2008年からNHK会長を1期3年務められました。
 NHKが民間放送と根本的に違うのは、視聴者のみなさん一人ずつの受信料でまかなわれていることです。いろんな考え方の人がいらっしゃるので、放送法の立場で不偏不党の放送が大切です。NHKは国からの税金は一銭ももらっていない自律した存在です。そういう姿勢があり、NHKにしかできない番組を作る。その中で、受信料を下げよという意見が出てくる、単に下げろというのは失礼だと思っています。
 ―報道プロジェクト「あすの日本」は、新しい試みでした。NHKスペシャル「無縁社会」(2010年)もその一つです。
 「組織の中に横ぐしを入れなさい」と言ってきました。NHKは政治部、社会部、経済部と独立している。物理的な壁はもちろんのこと、心の壁をつくっちゃだめだと言った記憶があります。人間というのは、どうしても心の壁をつくりたがる。おれの縄張りだと。今の時代、じゃまなんです。
 壁をつくると情報も細切れになってしまいます。「あすの日本」は、各部から人を出して一緒になって番組を作り、報道もしました。私は特定の政治家とのしがらみはありません。職員は仕事がしやすかったでしょうね。
 経営委員会は会長が入れない仕組みです。会長の仕事として、次のトップをだれにするかということがあるはずなのに、意見を言う機会もなければ、議決権もない。経営委員会が決めます。時の政治に左右されないというと、うそでしょう。

若い脚本家へ期待を込めて
 ―NHK会長を退任された後、2012年に市川森一脚本賞財団の理事長に就任されました。
 市川さんは大河ドラマ「黄金の日日」(1978年)、「山河燃ゆ」(84年)を書かれました。「夢暦 長崎奉行」(96年)、「蝶々さん」(2011年)は、小説も面白いなと読ませてもらいました。市川さんは長崎・諫早のご出身で、私は長崎大学なもんでゆかりがあります。
 脚本賞は今年で4回目です。若い方々が出てくるのはいいことで期待しています。
 ―そういう活動は、社会への貢献ということでしょうか?
 そこまで大げさなことではありません。恩返しです。自分の人生ですから。
 よく見ているのは「NHKスペシャル」「歴史秘話ヒストリア」、衛星の映画ですね。「クローズアップ現代」は、国谷裕子キャスターが一つの問題を掘り下げてやるのがいいと思いました。NHKの人たちは自信を持ち頑張ってほしい、いい番組を作ってほしい。心から願っています。

市川森一脚本賞
 脚本家・市川森一さん(1941〜2011年)にちなんで、新進脚本家に送られる賞。第1回は大島里美さん(「恋するハエ女」)。第3回は該当者がなく、奨励賞を宇田学さん(「悪夢」。現在は日曜劇場「99・9」を執筆)らが受賞。
 市川さんは
@脚本の文化的価値を訴えて保存を提案(国会図書館に脚本アーカイブズとして実現)A若手の脚本家の養成Bドラマの基本は脚本家とプロデューサーの共同作業と位置付ける―三つの活動に取り組みました。市川さんの意思を受け継ぎ、ドラマ制作者や愛好者から寄せられた基金で財団を設立しました。310人の個人会員のほか、法人会員も。

 ふくち・しげおさん 1934年、福岡県生まれ。アサヒビール社長・会長。2006年に相談役。08〜11年にNHK会長。
(
2016年05月15日,「赤旗」)

(Go2Top

NHK経営委員と語る会/「国民こそスポンサー」/放送の自主自律求める声相次ぐ/長野市

 視聴者がNHKの経営委員に直接意見をのべる「視聴者のみなさまと語る会」が、21日、長野放送局で開かれました。25人が参加し、きたんのない発言が出されました。

 「視聴者のみなさまと語る会」は、今回で62回目。長野での開催は2回目です。
 発言では、「国民のための放送を」「政府の圧力に屈するな」と、放送の自主自律を求める意見が目立ちました。
 口火を切ったのは、「NHK会長や経営委員を視聴者の選挙で選べるようにするべきだ」と訴える男性。その理由について、「NHKは国有放送ではなく公共放送。国民がスポンサーだ。ところが会長は首相の一存で決まるとも聞いている」といい、「真実が何か、私たちの目で確かめたい。戦前は鬼畜米英として私どもは戦争に突撃していった。そのおかげで私は原爆に遭った。原因はマスコミが国民の本当の希望ではない方向に進むことだ」とのべました。
 別の男性はやはり戦前に触れ、「昭和の初め、治安維持法が改悪、軍機保護法が施行される軍国主義の時代になると、NHKはそのお先棒を担ぐようになった。NHKは国民の受信料で成り立っているのだから、スポンサーは国民であって政府ではない。国民に真実を知らせることが大事だ」と話しました。
 会長らの選出について、本田勝彦委員長職務代行者(日本たばこ産業顧問)は、「現在の放送法の下で、経営委員は国会の同意を得ることになっている。国民全体の意見を反映して選ぶことができていると思う」と答えました。経営委員会の大きな仕事の一つである会長任命については、「重要な役職なので、慎重に決めたいと考えている」としました。
 最近の動きについて、「クローズアップ現代」のキャスター降板を念頭に置いたと思われる発言がありました。「最近、政府からの干渉が強すぎるのではないか。キャスターが、任期満了なのかそういうこと(圧力)でやめたのかわからないが、国に屈することなく堂々と対応してほしい」との意見が出されました。これに対し、執行部の安斎尚志(ひさし)理事は、「キャスターの変更は圧力ではなく、何年も前から検討していたことで、キャスター委員会の議論の結果」と説明しました。
 報道の自由について本田氏は、「何人にも干渉されず、公平公正、自主自律の原則のもと、国民の安全・安心を守る多様な情報を提供することが必要。現場も努力してくれていると思う」。坂本忠宣理事も「自主自律の堅持が、信頼される公共放送の生命線という認識だ」と発言しました。
 このほか参加者から、「NHKは自主規制をする雰囲気があるのではないか」「国会周辺の抗議デモを取り上げてほしい。権力から放送に圧力がかかっているのではないか」などの意見や質問が出されました。
(
2016年05月25日,「赤旗」)

(Go2Top

NHK「日曜討論」/藤野政策委員長の発言

 日本共産党の藤野保史政策委員長は22日のNHK「日曜討論」で、景気の現状とアベノミクス、「ニッポン1億総活躍プラン」などについて各党の政策担当者と討論しました。

景気・アベノミクス/落ち込む中間層家計の応援こそ
 初めに1〜3月期のGDP(国内総生産)が実質プラス0・4%(年率1・7%)となったことについて各党が発言しました。自民党の逢沢一郎・一億総活躍推進本部長は「穏やかな回復基調だが、期待していたほどの力強さはない」と述べ、民進党の長妻昭代表代行は「とくに個人消費が伸びていない。現状は相当深刻だ」と語りました。
 藤野氏は、個人消費の2年連続マイナスは戦後初めてだと指摘し、「単に(消費税)増税の悪影響というにとどまらず、増税をきっかけとして経済の悪循環が始まっている」と語りました。
 自民・逢沢氏は「消費税増税の影響が残っていないといえばうそになる」と述べるとともに、漠然とした将来不安があるとしました。民進・長妻氏は「格差の拡大が経済の足を引っ張っている。しかし『1億総活躍プラン』には格差の『か』の字もない」と批判。逢沢氏は「『1億総活躍プラン』は究極の成長戦略。将来不安を払拭して経済成長につなげたい」と語りました。
 藤野氏は、個人消費の2年連続マイナスの一方で大企業の利益は3年連続で史上最高であることを指摘し、「トリクルダウンはまったく起きていない」と強調。とくに中間層の暮らしが厳しくなっていることを示し、「これでは経済が良くなるわけはありません。大企業から先に良くなるアベノミクスから家計を応援する方向に転換しないといけない」と語りました。

1億総活躍プラン/保育士待遇改善、給付奨学金ぜひ
 政府の「1億総活躍プラン」に盛り込まれた同一労働同一賃金にテーマが移り、自民・逢沢氏は「同一労働同一賃金のガイドラインをつくって、例示をしっかりつくりあげていきたい」と述べました。
 これに対して藤野氏は、安倍政権がこれまで行い、これからもやろうとしている労働法制の規制緩和を見直さなければ「本当の意味での労働環境の改善はできない」と主張しました。
 民進・長妻氏は、個別法の改正にとどまらない同一労働同一賃金の全体の法律をつくる必要とともに、企業の内部留保を賃金に回すことを前提に考えなければならないと述べました。公明党の石田祝稔政調会長は「この問題、反対の人はいない。野党も法改正にご賛同いただけるだろう」と語りました。
 同プランの保育士給与の月額6000円増などの待機児童対策について、民進・長妻氏は「不十分だ」と述べ、保育士の給与5万円アップの法案を野党が提出していることなどを語り、根本的な改革を強調しました。社民党の福島みずほ副党首は、国有地の活用による保育所の増設や野党共同提出法案の実現を訴えました。
 藤野氏は、野党共同提出の法案について「これは超党派でぜひ実現したい」と強調。あわせて日本共産党が保育士給与を5年かけて10万円まで引き上げていく提案を別途行っていることも紹介し、保育士の待遇改善と社会的地位の向上、認可保育所の抜本的な増加を「緊急にやる必要がある」と語りました。
 自民・逢沢氏は「保育士の処遇改善の方向はその通り。努力したい」と応じました。
 同プランで給付型奨学金の導入が結論先送りとされたことについて、公明・石田氏は「先送りは誤解。最終結論はまだ出していない」と弁解しました。
 藤野氏は、いま学生の2人に1人が奨学金を利用しているが、実態は「学生ローン」だと述べ、平均300万円、大学院まで行けば1000万円の借金を抱えている現状を示し、「こういう国には未来はない」と告発。月額3万円、年間36万円を70万人に支給するという党の提案を紹介し、「この財源は約2500億円です。これは政府の姿勢で出せるレベルだと思います。先ほど『投資』という言葉がありましたが、何倍、何十倍、あるいは金額に換算できないほどの効果があります」と語りました。
 民進・長妻氏も、日本は先進国の中で教育の自己負担が一番重い国だと述べ、給付型奨学金の創設を求めました。自民・逢沢氏は「世代内の公平感もクリアしながら日本型給付をつくりたい」と述べるにとどまりました。

消費税10%増税/消費に一番打撃/増税は中止せよ
 最後に消費税10%増税が議論となり、自民・逢沢氏は「最終的には安倍総理が適切に判断する」としながら、「個人的には(税率を)上げるべきだ」と述べ、公明・石田氏も「経済対策をしっかりやりながら、法律どおりやる(上げる)べきだ」と語りました。一方、民進・長妻氏は「今の経済の状況は相当悪い。(増税を)先送りして経済を立て直す必要がある」と述べ、社民・福島氏も「増税反対」を主張。両氏とも、消費税率引き上げを延期した場合、責任をとって安倍首相は退陣すべきだと語りました。
 藤野氏は、個人消費が2年連続マイナスの中で「消費に一番打撃を与える消費税増税はとんでもない。中止すべきだ」と主張しました。さらに、社会保障のためには消費税が必要だとして増税した結果、個人消費が痛めつけられGDPも停滞するという失敗から学ぶ必要があると強調。「大企業には4兆円も減税しているわけですから、行き過ぎた減税をやめる。こういうところから能力に応じて負担してもらえれば財源はしっかり生まれてくる」と語りました。
(
2016年05月23日,「赤旗」)

(Go2Top

「1億総活躍プラン」/藤野氏、党の対案示し論戦/NHK「日曜討論」

 日本共産党の藤野保史政策委員長は22日、NHK「日曜討論」に出席し、政府が18日に発表した「1億総活躍プラン」の柱とされる同一労働同一賃金や保育士の処遇改善、同プランで先送りされた給付型奨学金について、党の抜本的対案を示して各党代表と論戦を交わしました。(詳報5面)
 同一労働同一賃金について藤野氏は、安倍政権が昨年、正規社員を非正規社員へ置き換えやすくする労働者派遣法の改悪を行ったことや、今国会に労働基準法改悪案=「残業代ゼロ法案」を提出していることなどを指摘し、「過去、将来にわたって労働法制の規制緩和をすると言っていることをどう見直すのかが問われる。そこを見直さなければ本当の意味の労働環境の改善はできない」と主張しました。
 同プランが保育士の給与を月額6000円引き上げるとしていることに対して藤野氏は、緊急に5万円引き上げる法案を野党共同で提案していることを紹介し、「これは超党派で実現したい」と強調。保育士の処遇改善と社会的地位の引き上げとともに認可保育所を増やすことが緊急の根本課題だと指摘しました。また、政府が進める企業主導型保育について、「資格のない『保育士』を雇えるような規制緩和をやって子どもを(保育所に)詰め込もうとしている。親の期待に応えられない」と批判しました。
 給付型奨学金について藤野氏は、今の奨学金の実態は「学生ローン」だと指摘し、「学生の皆さんは、大学で学ぶだけのために、これだけの借金を強いられている。こういう国に未来はない」と述べました。そして、月額3万円、年間36万円を70万人に支給する給付型奨学金の党の提案を紹介し、「この財源は2500億円ぐらいです。政府の姿勢で出せるレベルです。ぜひ、こういう方向に転換したい」と強調しました。
(
2016年05月23日,「赤旗」)

(Go2Top

読書のページ/本の窓/報道と官邸、異常の常態化

 社団法人日本民間放送連盟(民放連)職員を経て今は立教大学で教える砂川浩慶氏が『安倍官邸とテレビ』(集英社・720円)を出しました。政権与党からメディアへの政治介入の歴史を洗い出し、事態がどこまで進んでいるかが端的につかめます。
 取材を受けるテレビ局の選別、総選挙報道への「お願い」、前代未聞のテレビ局呼びつけ、高市早苗総務相の「停波」発言、「私にも表現の自由がある」と広言する安倍首相の「表現の自由」についての無理解…。著者は異常の常態化≠危惧します。
 昨年7月21日のこと。NHKは「安保法制、来週から参議院で審議入り」のニュースの中で、車からフジテレビに出入りする安倍首相とこれを送り迎えする日枝久同社会長の映像をテロップ抜きに流しました。「読売」の記者からこの不可解な映像を教えられた著者は、「蜜月なのはNHKだけじゃない」と言いたかったのではないかと記しています。この事実を示すとNHKの「旧知の職員」は否定も肯定もせず、こうのべたと書いています。
 「籾井会長の就任以来権力監視というジャーナリズムの基本が欠落したニュースが増えているのはわれわれも実感している」
 再生への道を、著者は取材にこうのべました。「まず参議院選挙で争点を提示するというテレビ局の役割を果たしてほしい。視聴者の信頼回復を」
 (神)
(
2016年05月22日,「赤旗」)

(Go2Top

元米兵の事件に抗議/NHK沖縄OBの会が声明

 「過重な基地負担解消・新基地建設反対 NHK沖縄OB有志の会」は20日、元海兵隊員による遺体遺棄事件に抗議する声明を発表しました。
 声明は「沖縄は、戦後ずっと、米兵や米軍関係者による事件に苦しめられてきました。しかし、日米両政府は、常に口先だけの対応に終始し、抜本的な解決策を講じることはありませんでした」と日米両政府を批判し、「米兵・米軍関係者の犯罪の撲滅とともに米軍基地が集中する沖縄の異常な状況の解消を痛切に求める」と述べています。
(
2016年05月22日,「赤旗」)

(Go2Top

潮流

 NHKのテレビ小説「とと姉ちゃん」のヒロインのまっすぐさが心地いい。女学校卒業を控えて大半の級友たちが嫁入り≠意識する中、生計を立てるために働く道を探ります▼出合ったのが雑誌『青鞜』。女性解放を訴えた平塚らいてうの「元始、女性は太陽であった」の一文が背中を押してくれます。時は1936年(昭和11年)。軍部による二・二六事件が発生し、主人公の進路が気になるところです▼ドラマでは、ラジオが「軍民一体の態勢を」と政府や軍の発表をそのまま告げました。戦争へと駆り立てていった放送の歴史の一端がのぞきます▼今、NHKの籾井勝人会長が熊本地震にかかわる会議で「原発報道は政府発表で」と指示したことは重大です。実際に、NHKニュースが伝えてきたのは「原発には異常はありません」▼市民が参加する放送を語る会や日本ジャーナリスト会議が会長発言は「命とくらしを危険にさらす可能性がある」と強く抗議し辞任・罷免を要求。来年1月の会長の改選にあたっては「籾井氏の再任は絶対にしてはならない」と市民団体とNHK退職者有志らが加わり、経営委員会に申し入れをしました▼NHK問題を考える市民団体は16都府県に広がっています。国連人権理事会の特別報告者デービッド・ケイ氏は日本の表現の自由をめぐる状況に懸念を示し、原発報道についても政府の言うままを伝える動きを批判して、次のように提起しました。「メディアの変化の実現は市民がやらなければならない」
(
2016年05月22日,「赤旗」)

(Go2Top

NHK受信料支払い裁判弁論/奈良地裁

 NHKが放送法の精神をふまえていないとして受信料の支払いを凍結している生駒市の宮内正厳氏に対して、NHKが受信料の未払い分を払うよう簡易裁判所に申し立てを行ったことで開かれた裁判(放送受信料請求事件の第2回口頭弁論)が13日、奈良地方裁判所大法廷で行われました。70席の傍聴席を上回る152人の支援者が駆けつけました。
 宮内氏の弁護団(佐藤真理弁護団長)は、NHKの衆院選などの報道内容が事実上、安倍政権の宣伝機関になっていると指摘。公共放送にふさわしいNHKになるまで、放送法にてらして「一時的に受信料支払いを留保する権利がある」と主張しました。
 次回の裁判にむけて裁判の継続を求める被告弁護団に対し、裁判官は弁論を終結し、判決言い渡し期日を指定しようとしました。これに対し被告弁護団は、裁判の公正さを欠くとして同裁判の裁判官を担当から外すことを求める「忌避(きひ)」の申し立てを行いました。
 裁判終了後、報告会で宮内氏は「NHKを真の公共放送に戻したい」と訴えました。
 「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」の醍醐聰共同代表は「本格的な議論をしていくことが必要なのに、これで裁判を打ち切ることはありえない」と指摘し、参加者を激励しました。
(
2016年05月21日,「赤旗」)

(Go2Top

ひと/うたごえ喫茶「金城広子とその仲間たち」開催10周年金城広子さん(78)

 東京の中野区で2006年5月に一夜限りと銘打ち開催したうたごえ喫茶は、好評を博して2回、3回と続きました。「いつの間にかの10年です。歌をリードしてくださる司会のお二人、うたごえを愛する地域の方々に、感謝申し上げるのみです」。自身も、愛猫の「ミニーちゃん」とともに中野区の住人です。
 会のおわりに歌う「今日の日はさようなら」は格別。「今日もよかった、いろいろあったとしても!って。みんな声を張り上げて、人間の純粋さが現れるんです」。笑顔で手をつなぐ様子を演じます。
 生まれは大阪。沖縄出身の両親のもとで育ち、16歳で歌手を目指して上京しました。「美空ひばりさんが憧れでした」。21歳からうたごえ喫茶の有名店「ともしび」で、ウエートレスとピアノ伴奏、そして歌手として活躍します。
 50歳で独立してからは、先生役として首都圏のいくつもの歌サークルに呼ばれ、生徒は現在、二百数十人です。
 NHK番組「日曜美術館」を見ては、芸術家の生きざまに勇気をもらうと話します。「やりたいことを死ぬまで『まだまだ』と追いかける。その情熱が数百年後にも伝わることに感動します」
 夢は数年に1度のコンサートを続けること。「みなさんと一緒に歌い続けたい」
 10年目記念の「うたごえ喫茶」は「RAFT」(中野1の4の4)で、30日(月)に開催。問い合わせ=03(3365)0307
 文 笹島 みどり
(
2016年05月21日,「赤旗」)

(Go2Top

NHK「日曜討論」小池書記局長の詳報

 日本共産党の小池晃書記局長は29日のNHK「日曜討論」で、伊勢志摩サミットとオバマ米大統領の広島訪問への評価、消費税増税再延期などの問題をめぐり、各党の幹事長(代理・代行)らと議論を交わしました。

オバマ氏広島訪問/前向きの一歩だが、核のない世界へ政策転換を
 オバマ大統領の広島訪問について、自民党の棚橋泰文幹事長代理は「歴史に残る。安倍外交の成果だ。日米が協力して核なき世界をめざす」と発言しました。
 小池氏は「現職の米大統領が被爆地広島を訪問したことは前向きの一歩」と評価すると同時に、「演説で『私の生きている間は(核兵器廃絶は)実現できない』と述べたことについては同意できない。段階的アプローチに縛られている。被爆者の願いにも背くものだ」と指摘。「大事なことは、今度の前向きの一歩を『核兵器のない世界』につなげることだ」として核兵器禁止条約の国際交渉を始めることを強調し、「米国政府も日本政府もこれに背を向けてきた。政策転換を強く求めていきたい」と語りました。

日米首脳会談/女性遺体遺棄事件――基地あるがゆえの犯罪、縮小・撤去を
 日米首脳会談で沖縄県での元米海兵隊員による女性遺体遺棄事件が話し合われたことについて、自民・棚橋氏は会談で首相がオバマ氏に強く抗議したと語りましたが、対策については「日米でよりよく協議して再発防止を追及することだ」と述べるだけでした。
 小池氏は、首脳会談でオバマ氏から謝罪の言葉がなかったことや、首相が基地撤去はおろか日米地位協定の改定すら提起しなかったばかりか、辺野古新基地建設が唯一の解決策だと述べたことを厳しく批判。「基地あるがゆえの犯罪です。『再発防止』はこれまで何度も言われたが、事件は後を絶たない。米軍基地の縮小・撤去、日米地位協定の抜本的見直しをやらなければ問題は解決しない」と主張しました。
 民進・福山哲郎幹事長代理も、地位協定改定を首相が会談で提起しなかったことを批判。自民・棚橋氏は、地位協定の改定を求めたのかという民進・福山氏の質問に「あうんの呼吸があった」と答えて失笑を買いました。

サミット・世界経済/アベノミクスの失敗を世界経済のせいにする無定見・無責任
 サミットで首相が世界経済の現状について「リーマン・ショック前と似た状況にある」との認識を示したことが議論となりました。民進・福山氏は「唐突感がある」と述べ、「世界経済は緩やかに回復している」とした月例経済報告との矛盾を指摘しました。棚橋氏は首脳宣言の「世界経済の見通しに下方リスクが高まっている」という部分を読み上げ、最大限の危機感を表していると語りました。
 小池氏は「棚橋さんが読まれた前のところに『世界経済の回復が続いているが』と書いてある。これが基調です。棚橋さんは日本経済が良いが世界経済が悪いと言いたいのでしょうが、逆です。世界は回復しているのに日本が悪い」と反論しました。
 そして、消費税8%増税の影響で個人消費が戦後初めて2年連続で落ちたことなどを挙げ、「リーマン・ショックという言葉を使うならば『アベノミクス・ショック』です。アベノミクス、消費税増税の大失敗を世界経済のせいにするのは本当に無定見・無責任、恥ずべき発言だ」と批判しました。

消費税増税再延期/きっぱり断念し負担能力に応じた税制を
 首相が消費税増税を2年半延期するとの方針を麻生副総理らに伝えたことが議論となりました。
 民進・福山氏は「アベノミクスは失敗したので増税延期をいうのなら国民は一定理解するだろうが、日本経済が良いが増税を延期するといっても国民は納得しない」と述べました。公明・斉藤鉄夫幹事長代行は再延期について「党として話をうかがっていない。与党の中でしっかり議論しないといけない」と語りました。
 小池氏は「消費税増税で日本経済・国民生活を破壊しながら、その責任を認めず、アベノミクスはうまくいっているが世界経済が悪いから増税は先送りして2年半たったらやるという。こういう人たちに政権を任せるわけにはいかない。安倍首相の退陣・内閣総辞職が必要です」と強調しました。
 そして「2度も延期せざるを得ないということは消費税増税路線が破綻したということです。これは断念すべきです」と主張し、負担能力に応じた税制、大企業や富裕層の税逃れの防止の必要を訴えました。
 民進・福山氏や社民党の又市征治幹事長は、会期末(6月1日)直前になって安倍首相が方針転換したことを批判し、国会での審議を要求。福山氏は民進党提出の消費税増税延期法案の審議を求めました。
 自民・棚橋氏は「法案をもっと早く出すべきだ」と見当違いの批判をしたため、小池氏は、会期末直前に与党の中さえまとめずに増税再延期を言いだしたことが問題だと指摘し、「支離滅裂。無責任すぎる」と批判しました。

内閣不信任案/憲法無視、TPP、原発…山のようにある理由
 野党は内閣不信任案を出すのかという司会者からの質問に対し、民進・福山氏は「30日に党首会談を開くが、まず予算委員会、党首討論を開いて審議すべきだ」と述べました。社民・又市氏も「(増税の)約束を果たせなかったのだから総辞職するのが筋だ」、おおさか維新・馬場氏も「国会への説明がないと信任というわけにはいかない」と主張しました。
 これに対して自民・棚橋氏は「安倍政権への誹謗(ひぼう)しかない。われわれはこうするというのがない」と見当違いの反論を行い、公明・斉藤氏は「不信任の理由はない。粛々と否決する」と語りました。
 小池氏は「まず総辞職をする。これが筋です。不信任の理由はないと斉藤さんはいいましたが、山のようにある。憲法無視、国会決議違反のTPP(環太平洋連携協定)、原発再稼働、そして消費税の問題だ」と強調。これまで国会で「こんな経済情勢で消費税増税できるのか」と追及してきたのに対し、首相は繰り返し「増税の方針に変わりはない」と答弁してきたことを指摘し、「こんな土俵際(会期末)ぎりぎりまできて、自らの失政にほおかむりする。こんな無責任な政治を許すわけにはいかない。安倍政権は倒さなければならない」と語りました。
(
2016年05月30日,「赤旗」)

(Go2Top

放送人グランプリ2016/受賞は「クロ現」国谷裕子さん/聞くべきことは聞き、伝えるべきは伝えて

 放送界の重鎮らでつくる「放送人の会」(今野勉会長)が、その年の優れた番組や個人を表彰する「放送人グランプリ2016」の贈賞式が21日、東京都内で開かれました。NHK「クローズアップ現代」のキャスターを23年間務めた国谷裕子(くにや・ひろこ)さんがグランプリを受賞しました。

 「クローズアップ現代」は、あらゆるテーマを掘り下げる報道番組。国谷さんは番組が始まった1993年から一人でキャスターを務め、時には政府にも厳しく迫りました。贈賞は「日々のテーマはキャスター自身が深く学び、理解しなければ務まるものではありません」と、その「偉業」をたたえたものでした。
 国谷さんは「勉強も大変でしたし、テーマも難しい。最後まで苦しかった」と振り返りつつ、「聞くべきことは聞く、伝えるべきことは伝えてきました」と、目を少し潤ませて語りました。

準グランプリは「南京事件 兵士たちの遺言」
 準グランプリを受賞したのは、日本テレビ「NNNドキュメント’15 シリーズ戦後70年『南京事件 兵士たちの遺言』」。1937年の中国・南京戦を体験した元日本兵の陣中日記に焦点を当て、事件の真相に迫ります。
 選考委員の堀川とんこうさん(演出家)は、「報道全体が萎縮している現在、これを放送することには大変な緊張や障壁があったと思います。数々の難関を突破したことに涙しました」
 日本テレビ報道局の清水潔さんは、「戦争がなぜ起きたのか忘れてはいけない」と、1年かけて企画を練ってきたと言います。「私たちは、ひたすら本を読み、資料を探し、チェックを重ねてきました。放送後のリアクションはものすごく、その9割が『よく放送してくれた』と高い評価をしてくれました」

特別賞に大沢悠里さん
 特別賞はTBSラジオ「大沢悠里のゆうゆうワイド」のパーソナリティーを30年間務めた大沢悠里さん。「ラジオで生きていくことは本当に大変。昔のラジオの隆盛を少しでも戻すよう、業界の先輩として頑張っていきたい」とのべました。
 その他の受賞者・作品は次の通り。
優秀賞=手塚孝典(信越放送)、NHKスペシャル「新・映像の世紀」企画賞=NHKEテレ「100分de名著」奨励賞=テレビ朝日「人生の楽園」第2回大山勝美賞=中島由貴(NHKエンタープライズ)、岡野真紀子(WOWOW)

国谷さんあいさつ/自問し続けた23年間

 「クローズアップ現代」はNHK全体のチームでできている番組です。あらゆるセクションからテーマが提案され、記者が地をはうような取材を続けます。熱意を持った方々から、この番組で出してよかったと思われるキャスターであり続けるのは、正直大変でした。
 なぜ、私はここにいるのだろうか、自分はどんな付加価値を番組に付けられるのだろうか、と問い続けてきた23年でした。一つだけ貢献できたのは、映像で表現されていないところを提案したり議論のきっかけにしたことで、重層的な番組になっていったのかなと振り返っています。
 私が番組の冒頭で話す前説は、23年前は40秒ほどでしたが、最後の方は2分半に及ぶこともありました。それだけ時代が難しく、社会が複雑になったと感じています。キャスターとしてやらなければならないことは、聞くべきことは聞く、伝えるべきことは伝えること。どこまでできたかわかりませんが、一生懸命やったと思います。
(
2016年05月29日,「赤旗」)

(Go2Top

【6月本文】

おはようニュース問答/ギャラクシー賞「気骨」ある番組が受賞だね

 のぼる この4月から、NHK「クローズアップ現代」の国谷裕子さんやテレビ朝日系「報道ステーション」の古舘伊知郎さん、TBS系「NEWS23」の岸井成格さんら「ニュースの顔」が消えて、少し寂しいよ。

物申す面々降板
 ふゆみ 安倍政権にはっきり物申すキャスターたちが同時に降板したのは、決して偶然なことではない。でも、放送界が気骨のある番組を表彰するという形で、「圧力」に対抗しているわ。
 のぼる というと…。
 ふゆみ 優れた放送番組や個人を表彰する「ギャラクシー賞」(主催・放送批評懇談会)のテレビ部門で、「報道ステーション」の二つの特集「ノーベル賞経済学者が見た日本」(3月17日放送)と「独ワイマール憲法の教訓=v(同18日)が大賞を受賞したの。
 のぼる 古舘さんこん身のリポートだったね。自民党の改憲草案にある「緊急事態条項」と、かつてヒトラーがワイマール憲法の「国家緊急権」を悪用して独裁政権を構築した経緯とを重ねて警鐘を鳴らしていた。
 ふゆみ 2日に開かれた贈賞式で、丹羽美之選考委員長は3人のキャスター交代劇に触れて、「自由にものが言えない時代にテレビが逆戻りしてしまう不安が大きくなった。言うべきことをきちんと言える番組を応援したい」と明言している。
 のぼる ほかにどんな番組が受賞したの?
 ふゆみ テレビ部門の優秀賞に日本テレビ「NNNドキュメント’15〜南京事件 兵士たちの証言」、ラジオ部門の大賞には九州朝日放送「憲法で巡る日本の旅」がそれぞれ選ばれた。国谷さんは特別賞を受賞した。

視聴者から激励
 のぼる 「南京事件」は、元兵士の証言や資料を丹念に集めて日本軍の虐殺行為を証明した力作だ。でも、右派勢力からの中傷や嫌がらせなどはなかったのかな?
 ふゆみ 視聴者の反響の8割以上が「よく報じてくれた」だったそうよ。清水潔ディレクターは「忖度のそ≠フ字もない番組をつくってみたかった」と胸を張っていた。「報ステ」に対しても、ほとんどが激励の声だって。
 のぼる 僕ら視聴者ができることは、優れた番組には「よかった」と激励を届けることだね。

(
2016年06月08日,「赤旗」)

(Go2Top

ギャラクシー賞/テレビ部門大賞、「報道ステ」特集

 優れた放送番組などに贈られる第53回ギャラクシー賞(放送批評懇談会主催)が2日発表され、テレビ部門の大賞はテレビ朝日「報道ステーション『特集 ノーベル賞経済学者が見た日本』『特集 独ワイマール憲法の教訓=x」に決まりました。
 特別賞はNHK「クローズアップ現代」で長くキャスターを務めた国谷裕子さんに贈られました。個人賞は俳優・遠藤憲一さん、DJパーソナリティ賞は荻上チキさん(TBSラジオ「荻上チキSession22」)がそれぞれ受賞しました。
 他部門の大賞は次の通り。▽ラジオ=九州朝日放送「憲法で巡る日本の旅」▽報道活動=山陽放送「地域スペシャル メッセージ」
(
2016年06月04日,「赤旗」)

(Go2Top

ヤドランカさんをしのぶ/田代忠利/平和願う心に灯ともす歌声

 赤旗まつりに1984年以来6回出演した旧ユーゴスラビアのシンガー・ソングライター、ヤドランカ・ストヤコビッチさんが5月3日、ALS(筋萎縮性側索硬化症)のためボスニア・ヘルツェゴビナのバニャ・ルーカ市の病院で死去しました。65歳でした。
 小木曽陽司赤旗まつり実行委員長は、「あなたの勇気とやさしい歌声は、これからも平和を願う世界の人びとの心に灯をともし続けると信じています」という弔辞を送りました。
 私はヤドランカさんの通訳(セルビア・クロアチア語)を務めました。深々としたアルトから澄んだ高音まで自在に声をあやつり、人間への信頼を歌で表現しました。
 〈船をつなぐ碇のように、人びとをつなぐ見えない絆がある〉(「見えない絆」)、〈私は信じる。愛は決して絶えることなく、誰かがすべての戦争を永遠の結婚式に変えてしまうことを〉(「信じているの」)
 ■ ■
 サラエボ大学で美術を専攻した画家でもありました。豊かな発想と鋭敏な感性の持ち主でした。ユーゴのラジオで日本語で読まれた俳句を聞き、音の連なりがすばらしいと曲にしました。初来日のとき浮世絵美術館に連れて行くと、突然涙を流しました。見ていたのは、多くの通行人が橋の上で夕立に遭い、あわてて駆け出す絵でした。「どうしたの」と聞くと、「表情が全部違う。信じられない」というのです。筆も立ち、地元紙に訪問記を書きました。赤旗まつりの聴衆の歓迎ぶり、広島の平和公園など、様子が目に浮かぶような記事でした。
 ■ ■
 ヤドランカさんは1988年から2011年まで日本で暮らしました。コンサートや個展を開き、テレビ番組のテーマ音楽を作り、NHK「みんなのうた」でも歌いました。ボスニアは民族が共存していたころ、多様な文化の中から優れた芸術家を輩出していました。彼女の親族、友人も民族はさまざまです。ですから民族紛争にたいへん心を痛めていました。故郷の人びとが彼女の歌と絵で穏やかな心を取り戻してほしいと願っています。
 (たしろ・ただとし 党出版局長・国際委員会委員)
(
2016年06月03日,「赤旗」)

(Go2Top

いま、NHKで何が起こっているか?/広がる政治報道のゆがみ/元ディレクター戸崎賢二さんの講演

抗議の声上げ、運動を
 暴言が止まらない籾井勝人会長が居座り続けるNHKに、市民・視聴者はどのように対抗≠キればいいのでしょうか。元NHKディレクターの戸崎賢二さんは、5月22日に川崎市内で開かれた「川崎母親大会」で、市民がNHKに物申す効果的な方法を提示しました。

 「いま、NHKで何が起こっているか?」と題した分科会会場は、100人を超す女性たちでいっぱい。講師を務めた戸崎さんは冒頭、参加者に「NHK検定」クイズを出しました。
 第1問は「NHKの組織の性格」で、
@国営企業A半官半民の企業B民間企業C特殊な法人。第2問は「NHKの財政」で、@大部分を受信料でまかない、不足分を国庫から支出A半分を受信料、半分を国庫Bほとんど全て受信料―。
 正解は1問目が
Cで、2問目がB。「国営」と答えた少なくない参加者に、戸崎さんは「NHKは約7000億円の収入ほぼ全てを受信料でまかなっているので、払っている私たちには大きな権利があることを、まず確認してください」。

政府広報化した
 では、公共放送NHKが国民の知る権利にきちんと応えているのか。戸崎さんは「政府が右というものを左というわけにいかない」と語る籾井会長体制のもと、「ニュース番組は政府広報化している」と断じます。
 たとえば、昨年の戦争法案報道。戸崎さんが加わる市民団体「放送を語る会」が、各局のニュース番組を分析したところ、独自の調査報道で健闘した「報道ステーション」(テレビ朝日)や「ニュース23」(TBS)に対し、NHKの「ニュースウオッチ9」には厳しい評価が下ったといいます。
 「一言で言えば、政権側の主張や見解をできるだけ効果的に伝え、政権の批判を招くような事実や、批判の言論、市民の反対運動などは極力報じない、という際立った姿勢でした」
 視聴者のNHKに寄せる信頼に乗じる形で、政治報道のゆがみが広がっているとして、「実際にニュースを見て批判の声をあげることが大事」だと強調しました。
 参加者からは「抗議の電話やメールは効果があるのか」「上層部に届くのか」などの質問が出されました。
 戸崎さんは、福島原発事故の実態を科学者とともに解明したETV特集「ネットワークでつくる放射能汚染地図」シリーズが、視聴者の大きな反響で放送にこぎつけた例を紹介。そのうえでこう語りかけました。

1枚のはがきで
 「安倍政権の意向を忖度(そんたく)するNHK上層部に対して、現場の担当者が、たった1枚のはがきを武器にたたかうこともあります。視聴者の声を隠すほど、NHKはまだ腐っていません」
 一方で「激励や抗議だけでは足りない」といいます。「籾井体制に抵抗する市民の運動が起こっています。NHK問題を考える市民団体は全国で26に増え、『真に公共放送にふさわしい人を会長に』と申し入れました。できれば『川崎の会』がつくられるといいですね」と要望しました。
(
2016年06月01日,
「赤旗」)

(Go2Top

潮流

 放送各賞発表のシーズンです。古舘伊知郎キャスターがリポートした報道ステーション「ドイツ・ワイマール憲法」特集がギャラクシー賞大賞。特別賞は「クローズアップ現代」のキャスターだった国谷裕子さんへ▼戦争法が強行成立され、メディアへの圧力が取りざたされる中、自由にものが言える社会であってほしい。贈賞式では選考した側と受賞した側、双方の意思がにじむ発言が続きました▼参院選で野党共闘が実現して、政権与党との論戦に注目したいところです。しかし、22日の公示後、テレビの党首討論の予定は1回限り。自民党から「首相の出演を限定する」通告が放送局にあったと伝えられます▼選挙と政権党との関わりで思い出すのは、2014年の衆院選。TBS「NEWS23」に出演した安倍晋三首相が、アベノミクスを疑問視する街頭インタビューに文句をつけました。直後に自民党は、在京テレビ各局へ選挙報道に干渉する文書を送付します。「放送を語る会」のモニター調査によると、選挙報道が激減しました▼NHKは文書を受け取ったかどうかも答えず、籾井勝人会長が記者との懇談会で「あの通りだと思う」と発言。「原発報道は公式発表で」と指示する会長のもとで、NHKニュースの政権追随が加速しています▼高市早苗総務相の停波発言やテレビ局幹部を呼びつけての厳重注意など、放送・言論の自由への介入が目に余る安倍政権をこのまま許していいのか。今度の選挙は、報道機関にとっても正念場です。
(
2016年06月18日,
「赤旗」)

(Go2Top

NHK籾井会長は辞任して/元職員、市民ら抗議集会/放送センター前

 NHKの「政府広報化」する報道に抗議するとともに、籾井勝人会長の辞任を要求し、職員を励まそうと14日昼、東京・渋谷のNHK放送センター西口門前で集会が開かれました。他の2カ所の門前でも宣伝しました。
 NHK退職者や放送関係者をはじめ市民らでつくる「NHK報道を市民の手にネットワーク」が主催。同日午後のNHK経営委員会を前に、150人が参加しました。
 リレートークで元NHK経営委員の小林緑さん、元日本テレビプロデューサーの仲築間卓蔵さんら8人が発言。小林さんは自らの体験も踏まえ「経営委員や会長は目に見える形で選挙をするよう変えていくことが必要です」と訴えました。
 元NHKディレクターで「女たちの戦争と平和資料館」の池田恵理子さんは、「会長の一連の発言はNHKは政府の広報番組だということを認めているに等しい。ジャーナリズムの自殺行為です」ときびしく批判しました。
 NHKOBで日本映画・テレビ美術監督協会顧問の小池晴二さんは「NHKを二度と国策放送にしてはならない」。日本ジャーナリスト会議の河野慎二さん(元日本テレビ)は、「即刻辞任をしていただきたい。職場からその声を上げれば必ず退陣せざるを得ない状況がつくられる」。
 配布された「NHKで働くみなさんへ」のチラシは、会長の辞任要求と再選阻止のとりくみ、政府からの自主・自立を貫く報道姿勢、政治社会の真実に迫る番組をと呼びかけています。
(
2016年06月15日,
「赤旗」)

 

(Go2Top

安倍暴走NO/政治チェンジ/党首討論で志位委員長/その1

 参院選公示を前に、日本共産党の志位和夫委員長は各テレビ局やインターネット番組、日本記者クラブ主催の「党首討論会」などで与野党党首と論戦を交わしました。NHK「日曜討論」(19日)を中心に論戦のポイントを見てみると―。
 坂本健吾、竹原東吾、田中一郎記者

参院選の争点/「安倍政治」の全てが問われる
 参院選の争点について安倍晋三首相は、「アベノミクス」の「前進か後退かを選択する選挙」だと発言しました。
 安倍政権は3年前の参院選でも2年前の総選挙でも「アベノミクス」一本でたたかい、多数の議席を得ました。しかし、選挙が終わった後にやったのは、秘密保護法と安保法制=戦争法の強行という憲法を壊す政治でした。「こんなことを3度も繰り返させるわけにはいかない」と指摘した志位氏。安保法制と安倍改憲、「アベノミクス」、環太平洋連携協定(TPP)、原発、沖縄米軍基地問題など「『安倍暴走政治』の全体にノーの審判を下し、チェンジの意思を突きつける選挙にしていきたい」とのべました。
 参院選では32の1人区すべてで野党統一候補が実現しました。志位氏は「野党共闘の勝利と共産党の躍進を必ず勝ち取りたい」と力を込めました。

アベノミクス/破綻鮮明、暮らし応援へ転換を
 「アベノミクスは失敗していない」と繰り返す首相。しかし、首相が「アベノミクス」の「成果」として挙げた雇用や賃金などの数字は、自らに都合のいい数字を並べただけ。実態を見ると、「アベノミクス」の失敗が浮き彫りになっています。(表)
 「(安倍首相は)いろんな数字をあげるが、二つの大事な数字を言わない」と志位氏は指摘しました。
 一つは、働く人の実質賃金が5年連続でマイナスとなり、5%も目減りしたこと。もう一つは、日本経済の6割を占める個人消費が、戦後初めて2年度連続(2014、15年度)でマイナスになったことです。
 世論調査で「アベノミクス」を「見直すべきだ」と答える人が6割を超える(グラフ)など、国民は「アベノミクス」の破綻を見抜いています。志位氏は「大企業応援から暮らし応援へ経済政策の抜本的な転換が必要だ」と訴えました。

消費税10%/延期ではなくきっぱりと断念
 実質賃金も消費も落ち込む中、首相は消費税10%への増税の再延期を表明せざるを得なくなりました。
 消費税8%への増税前の国会で志位氏は「暮らしに大打撃を与え、景気悪化の悪循環を引き起こす」として、中止を求めました。しかし、首相は「景気は回復している」と言って増税を強行。2年度連続で個人消費がマイナスに陥るという、かつてない異常事態を引き起こしました。
 志位氏は「失政の責任を認め、消費税10%への引き上げは先送り実施ではなくて、きっぱり断念すべきだ。『消費税にたよらない別の道』で、財源を確保する道に転換すべきだ」と主張しました。

社会保障/「三つの税逃れ」ただし財源に
 社会保障の財源を消費税に求める安倍政権。志位氏は、そのやり方から決別し、「三つの税逃れ」をただして、「消費税にたよらない別の道」で財源をまかなうべきだ、と提起しました。
 「三つの税逃れ」とは―。
 【大企業の税逃れ】 研究開発減税などの優遇税制で、法人税の実質負担率が中小企業の20%に対し、大企業は12%。大企業に、せめて中小企業並みの負担を求める。
 【富裕層の税逃れ】 株取引などの優遇税制を改め、大もうけしている富裕層に応分の負担を求める。
 【タックスヘイブン(租税回避地)の税逃れ】 税金ゼロのケイマン諸島に日本から74兆円もの証券投資がある。これらをただすため、タックスヘイブン税制を強化する。国際協調でタックスヘイブンをなくしていく。
 「税逃れ」の是正について、志位氏は首相に3点をただしました。@日本の株主が50%超の株式を持つ子会社に限っている「タックスヘイブン税制」を強める意思があるかA日本の株取引の税率は20%で、世界標準の三十数%と比べて軽すぎる。世界標準に引き上げる意思はあるかB大企業のほうが中小企業より税負担率が低い不公正をただす意思があるか―です。
 首相は答えず、「志位さんは企業を目の敵にしている」などと見当違いの発言。志位氏は「企業を目の敵になどしていない。中小企業より大企業の方が税負担が軽いのを、まともにしたらどうかと言っている。レッテル貼りはやめていただきたい」と反論しました。
(
2016年06月26日,
「赤旗」)

(Go2Top

安倍暴走NO/政治チェンジ/党首討論で志位委員長/その2

安保法制廃止の野党共闘/大義で一致、「共通政策」も豊か
 志位氏は「野党共闘の中身はとても豊かになっている」と語りました。
 野党共闘は「安保法制の廃止、立憲主義を取り戻す」という大義で一致。同時に、▽「アベノミクス」による貧困と格差を是正する▽TPPや沖縄の問題にみられる強権的な政治は許さない▽安倍政権のもとでの憲法改定は許さない―などの「共通政策」も確認。15本の議員立法を共同提案し、「市民連合」と野党4党は、19項目にわたる政策協定にも調印しています。
 世論調査でも、野党が自民党に対抗できる勢力になることを「期待する」人が約6割に上ります。(グラフ)

安倍改憲/国民縛る「自民草案」許さない
 19日夜の「ネット党首討論」で首相は、参院選後の国会で改憲論議を進める考えを明言しました。
 首相は「この選挙においても、憲法改正を目指していくことを選挙公約に書いている」と発言。参院選の結果を受け、「どの条文を変えていくか、条文の中身をどう変えていくのかの議論を進めていきたい。次の国会から憲法審査会を動かしていきたい」とのべました。
 志位氏は、自民党の改憲案の危険を告発し、「この『自民党改憲案』を許していいかどうかは、今度の選挙の大争点だ」と強調しました。
 自民党改憲案は、9条2項を削除し、「国防軍」を明記し、海外での武力行使を無条件に可能とするものになっています。「公益及び公の秩序」の名で、国民の基本的人権を制約できるものとなっています。「緊急事態条項」を創設し、戦争や大規模災害のとき首相に独裁的な権力を集中していく仕組みもつくります。
 志位氏は「憲法が憲法でなくなる。憲法によって国家権力を縛るのではなく、憲法によって国民を縛りつけるものに大変質させるものだ」と批判し、参院選で「『改憲ストップ』の審判を下していただきたい」と訴えました。

野党は政権合意がない?/参院選の障害にしてはならない
 日本記者クラブの党首討論会(21日)では、野党でどんな政権をつくるのか≠ェ関心を呼びました。
 志位氏は、「安保法制を廃止し、立憲主義を取り戻すためには、それを実行する政府が必要です」と語りました。野党共闘で安倍政権を打倒した後にどんな政権をつくるかは必ず問われる問題です。日本共産党は「戦争法廃止の国民連合政府」をつくろうと呼びかけていますが、まだ野党間の合意になっていません。
 志位氏は「合意がなくても、参院選の(選挙協力の)障害にしてはならない」とキッパリ。夏の参院選でたとえ野党が多数を得たとしても、自民・公明が衆院で多数を占めている以上、政権交代は起きません。政権が問われる選挙は次の衆院選です。志位氏は「総選挙までに私たちとしては、話し合いを行って、前向きの結論を得たい」と表明しました。

「税収21兆円増えた」?/谷底≠ニ比べた過大広告の宣伝
 民主党政権時代の2012年度に比べ、国と地方を合わせた税収が21兆円増えた、消費税増税分の8兆円を除いても13兆円増えた―。首相は各地で演説しています。
 しかし、12年度は、08年のリーマン・ショックによる税収減と11年の東日本大震災による税収減という二重の打撃を受けていた時期。トヨタも08〜12年度の5年間は、法人税を1円も納めていませんでした。
 日本記者クラブの党首討論会で志位氏は、「巨大な外的要因をまったく考慮せず、数字だけを比較するやり方がフェアな政策論争と言えるでしょうか。このような手法は慎むべきではないか」と求めました。
 記者クラブ代表は「21兆円の税収は、志位さんがおっしゃったように、もっとも日本経済が谷底だった2012年(との比較)の数字だ」とのべ、「アベノミクスがすべての果実を生み出したという宣伝は過大広告。あまりにもおとなげない」と批判しました。

違憲の自衛隊解消は将来展望/いま問われているのは海外派兵
 日本記者クラブの党首討論会では、野党共闘にからんで、自衛隊に対する日本共産党の立場についての質問が相次ぎました。
 「自衛隊は憲法違反の組織」と明瞭に答えた志位氏。「憲法違反の自衛隊が存在するのは一つの矛盾です。矛盾をつくったのは自民党政治です。この矛盾を引き受けて、憲法9条の完全実施に向けて国民とともに進もう。これが一番責任ある態度だ」と強調しました。
 日本共産党は、この矛盾を解消する将来展望として、すべての国と平和的な関係をつくって、国民の合意で段階的に自衛隊の解消をはかるという方針を示しています。
 志位氏は「いま問われることは、自衛隊をなくすかどうかではない。自衛隊を海外の戦争に出してよいのかどうかです」とズバリ。「専守防衛」の志を持った自衛官、被災地で頑張っている自衛官…。志位氏は次のようにのべました。
 「米国がやってきたベトナム戦争やイラク戦争のような無法な戦争に駆り立ててよいのか。『殺し、殺される』戦場に送っていいのか。これがいまの自衛隊問題の中心だ。この点で『やっちゃだめだ』という点で野党が結束していると申し上げたい」
(
2016年06月26日,
「赤旗」)

(Go2Top

安倍政権と放送への圧力/上/あからさまに、そして密室で/現場からは苦悩の声

 安倍政権に率直な物言いをしてきたニュースキャスターらが、今年3月にそろって降板し、政権からの圧力が疑われています。どんな圧力なのか、根拠とするものは何なのか。放送人たちの発言から、放送への圧力について考えます。
 (田村三香子)

 2014年11月20日、自民党が在京テレビ局を呼んで、発言回数など細部にわたって番組の「公正中立」「公平」を求める文書を手渡しました。今年2月には、高市総務相が「時の政権が公平かどうか判断して電波を止めることが可能」と繰り返し発言しました。
 これらのあからさまな政権からの圧力の中、三つのニュース番組のキャスターが交代しました。

懇談の場を利用
 「NEWS23」キャスターだった岸井成格(しげただ)さんは、「私への圧力はなかった」と発言してきました。6月に東京都で行われた集会でも、同様のことをのべ、その後、こう続けました。
 「政治部記者と政権党幹部が懇談する場で岸井批判があがる。これが営業サイド、編成サイドに影響があったのだろうなと」
 これは、昨年6月の自民党「文化芸術懇話会」での同党大西英男議員の発言を想起させます。大西議員はこう言いました。「マスコミを懲らしめるには、広告収入がなくなることが一番」
 密室の懇談が圧力に利用されるのは、今に始まったことではありません。1968年、TBSテレビ「ニュースコープ」の田英夫キャスターが降板したときのことです。自民党の電波問題関係の族議員が今道潤三TBS社長と懇談、その席で「なぜ、田君に、ああいう番組をやらせたんだ」という発言があり、「まあ、いろんな形で一種の圧力を受けたことは事実でしょうねえ」(田英夫氏の証言、『世界』2016年5月号)。
 このような密室の懇談が、安倍政権下では特に目立つようになりました。いまは「自主規制、忖度(そんたく)、過剰なコンプライアンス遵守(じゅんしゅ)が横行して、言論・表現の自由がまさに自壊しかかっている」(TBSの金平茂紀キャスター、前出『世界』)という状況に至っています。

人事、営業盾に
 現場から苦悩の声があがっています。2月29日、高市総務相の電波停止発言に岸井さんらキャスターが抗議したとき、こんな声が紹介されました。
 
「原発」「沖縄」「領土と歴史認識」「安保」といった日本の針路に関わる国民の最も関心を寄せるイッシュー(問題)に対して、自由闊達(かったつ)な議論を封じる有形無形の圧力を感じる。…問題なのは、それらの圧力が番組の企画、取材、編集の場に立ち会ったこともない部署や人物から、突然降りてくることである。
 
「安全保障関連の提案が通りにくくなった」。…なぜ通らないのか、どうすればいいのか、議論しようとすると、人事を把握している人間から「そういうことをすると、どうなるか…」ということをほのめかされます。
 人事を人質に、報道内容を操る―。会社幹部が営業を盾に圧力をかけられるのと似ています。
 「報道ステーション」を降板した古舘伊知郎さんも、「圧力に屈して辞めていくということでは、決してない」(「朝日」5月31日付)と語りながら、続けてこういいます。
 「…考え方が違う人は『偏っている』と言う。…だれかから文句を言われる前に、よく言えば自制、悪く言えば勝手に斟酌(しんしゃく)したところがあったと思う」
 (つづく)
(
2016年06月22日,「赤旗」)

(Go2Top

安倍政権と放送への圧力/中/「公平」「公正」を叫んで攻撃/多様な意見の表現こそ

 「公平」「公正」。最近、報道を攻撃するときに共通して使われる言葉です。自民党が2014年の総選挙に際してテレビ各局に出した要請文書では、短い中に「公平」の言葉が7回、「公正」が6回も繰り返されています。

官邸に気を使う
 この文書によって、現場はどのようになったのでしょうか。
 2月に開かれた記者会見で岸井成格(しげただ)キャスターらが公表した現場の言葉。昨日付で紹介したほかにも次のような声が寄せられています。
 
この文書を受けて街録(街頭録音)を削りましたし、デモの批判的な映像も自粛しています。…デモを警戒している官邸に気を使ったのです。ニュースの選択の段階で気を使い、無くなった項目は山ほどあり、数をあげたらきりがないほど、気を使っています。
 
国論を二分する政治課題であれば、政府案の問題点を追及することはメディアの役割です。そのことと、「政治的公平」とは別次元の話です。
 
ナレーションを書く時にも、「中立公正」でいようと心を砕きますが、さりげなく政権側の主張をプラスされて書き換えられます。「中立」の基準が、少しずつずれていっているように感じます。
 「公平」「公正」の名のもとに、報道現場の言論は、息が詰まりそうな現状であることが示されています。

批判的側面から
 では、「公平」「公正」とは、どうあるべきなのでしょうか。
 「公正(フェアであること)」について、NHK「クローズアップ現代」のキャスターだった国谷裕子さんが興味深いことを書いています。
 「聞くべきことはきちんと角度を変えて繰り返し聞く、とりわけ批判的な側面からインタビューをし、そのことによって事実を浮かび上がらせる、それがフェアなインタビューではないだろうか」(『世界』2016年5月号)
 ほかの雑誌ではこう語っています。「すべての人に等しく聞くべきことは聞く。これを、フェアであるための自分のルールとしてきたのです」(『婦人公論』16年5月10日号)
 別の角度からこんな意見もあります。
 岸井さんは5月に行われたシンポジウムで、「公平・公正は、国民が判断するもの」とし、「それは弱い人の立場に立つこと。権力は情報も独占できる」とのべています。
 改変されたNHK番組「ETV2001〜問われる戦時性暴力」のプロデューサーだった永田浩三武蔵大学教授。6月の集会でこう話しています。「公平・公正は、反対と賛成の真ん中をとればいいのではないはずです。放送の基本は、声をあげられない人たちのためにあります」
 放送が国家の統制下にあり戦争への先導役を務めていたときには、国家に批判的な言論や社会的弱者の声を放送することは許されませんでした。これらの多様な意見を放送で表現することが、視聴者・国民にとっての放送の「公平」「公正」です。(つづく)
 *(下)は29日付の予定です。
(
2016年06月23日,「赤旗」)

(Go2Top

安倍政権と放送への圧力/下/痕跡を残さない巧妙さ/ETV番組改変問題

 安倍首相と放送への圧力との関係で、忘れてならないのが、日本軍「慰安婦」問題を取り上げた2001年1月のETV番組の改変事件です。
 事件のあらましはこうです。同番組の放送前日、NHKの松尾武放送総局長と野島直樹担当局長が永田町に呼ばれ、自民党議員に説明し、意見を聞きます。議員とは、安倍氏、中川昭一氏らでした。この面談の後、松尾・野島両氏の指示で番組が改変され、最終的には、通常より4分短く切り刻まれた異常な番組が放送されました。
 安倍氏は放送内容への政治介入だとの告発について、こう答えています。「偏った報道と知り、NHKから話を聞いた。中立的な立場で報道されねばならず、反対側の意見も紹介しなければならないし、時間的配分も中立性が必要だと言った。国会議員として言うべき意見を言った。政治的圧力をかけたこととは違う」(「朝日」2005年1月12日付)

「勘ぐれ、お前」
 安倍氏との面談の内容について、朝日新聞と松尾氏のやり取りがあります。
 ――具体的にここをはずせとか
「そういうことは向こうは知らない。うわさで知っているだけ。先生はなかなかあたまがいいからストレートには言わない。『勘ぐれ、お前』みたいな。安倍さんをかばうつもりはないが」(「朝日」同年7月25日付)
 同じ紙面で、松尾氏の証言として、中川氏からの言葉は「いってみれば力によるサゼスチョンだ」「脅しと思った」という発言が載っています。政治家本人たちが何と言おうと、まぎれもない政治的圧力と言えます。
 ここでも出てきた、密室での圧力。そして、注目すべきは「勘ぐれ、お前」のせりふです。
 当時同番組のプロデューサーだった永田浩三武蔵大学教授は指摘します。「憲法は検閲を禁止しています。安倍氏は当時官房副長官。変えてしまえといえば事前検閲になる。ぎりぎり手前が『勘ぐれ』です」(6月に都内で行われた学習会)
 岸井成格毎日新聞特別編集委員は、「NEWS23」をめぐる状況を語る中でいいました。「圧力をかけた痕跡は残さない。『不満はいったが判断したのは放送局だよ』という。巧妙です」(6月に開かれた集会)。権力者であればこそ可能な圧力のかけ方です。

削られた「証言」
 先のETV番組でNHK幹部が、政権党幹部からの圧力に屈して放送された番組で、削られたものは何か。元日本軍「慰安婦」の女性たちの証言であり、加害兵士の証言でした。逆に加えられたのは、「慰安婦」問題で昭和天皇を裁く女性国際戦犯法廷に批判的な学者のインタビューです。安倍氏のいう「中立性」の名のもとに、葬り去られたのは、もっとも大切にされるべき被害者の尊厳と日本の犯した罪の真実です。
 こうした圧力を跳ね返すにはどうしたらいいのか。もっとも確実なのは、巧妙に圧力をかける者たちを権力の座から退かせることです。「アベ政治を許さない」活動は、放送の自由を取り戻すこととつながります。
 (おわり)
 (田村三香子)
(
2016年06月29日,「赤旗」)

 

(Go2Top

7月】

安倍政権のメディア介入問う発言/権力からの独立が、いま放送に必要だ

放送倫理・番組向上機構委員長代行是枝裕和監督/東京大学名誉教授醍醐聡さん/元NHKプロデューサー永田浩三さん
 参院選では安倍政権のメディア介入も問われています。高市早苗総務相の、放送内容が「政治的不公平」と判断した場合は「電波停止」もありうる、との発言は、言論・表現の自由を保障した憲法をじゅうりんする重大発言です。どう考えればいいのでしょうか。
 板倉三枝記者

 6月15日、安保法制に反対する「一票で変える女たちの会」は、放送倫理・番組向上機構(BPO)委員長代行の是枝裕和監督をゲストに招きました。聞き手は、テレビマンユニオンの坂元良江さんです。
 「放送法は、表現の自由につながる制作現場を公権力の介入から守るための盾」だという是枝さん。「憲法と同様、放送法にある『不偏不党』や『自律』の保障は、公権力が放送局に保障しているものなのに政治家も放送人も理解していない。完全に読み間違えられている」と話しました。
 放送法は1950年に施行されました。戦前のNHKが国家権力に利用され、国民を誤った方向へ導いた反省から誕生。「放送の自由と自律」が大原則であることは、綱島毅・電波管理庁長官(当時)が、法案提出にあたり国会で趣旨説明しています。「第1条に、放送による表現の自由を根本原則として掲げまして、政府は放送番組に対する検閲、監督等は一切行わないのでございます」(50年1月24日)
 是枝さんは、「『不偏不党』の本来的精神は、真ん中≠意味するニュートラルでなく、権力からのインディペンデント(独立)です」と指摘。「『公平性』とは質的なもので、(放送する)秒数を同じにしたからいいだろうというのは、つくっている側の怠慢。思考停止以外の何物でもない」と語りました。
 

 「公平性」については安保法制に批判的な報道を敵視する「放送法遵守(じゅんしゅ)を求める視聴者の会」と研究者有志の公開討論(6月16日)でも議論になりました。あくまで「時間的公平」にこだわる「視聴者の会」。それに対し、東京大学名誉教授の醍醐聡さんは、重要なことは「報道の質」だと強調しました。
 国際NGO「国境なき記者団」による報道の自由度ランキング(2016年)で日本は72位に下落。4月に国連から調査にきた「表現の自由」特別報告者デビッド・ケイ氏も日本のメディア状況に疑問を投げかけます。「日本には報道の自由を保障する誇り高い憲法がある。しかし報道の独立性は深刻な脅威にさらされつつある」(日本公式調査暫定報告書から)
 

 権力の介入に抗するにはどうしたらいいのか。18日、元NHKプロデューサーの永田浩三さん(武蔵大学教授)が、「NHK報道を市民の手にネットワーク」主催の集会で自らの経験を語りました。15年前、日本軍「慰安婦」を扱った番組で、安倍晋三官房副長官(当時)らが政治介入。番組は大きく改ざんされ、裁判になりました。
 「パナマ文書では、国境を超えて世界のジャーナリストが果敢に立ち向かいました。今われわれがやるべきことは、そういう連帯した何かではないかと思います」
 放送法の条文解釈を意図的にねじ曲げ、「公平性」を口実に介入を強める安倍政権。一方、介入とたたかわず、高市発言に沈黙を続ける放送局。
 ある民放の記者は記者の取材に対し、こう言います。「メディア、特にテレビが報道すべきことを報道していないことに危機感を持っています。報道現場は、報道局幹部がたたかわずに萎縮し自粛すると、その何倍もの大きさで現場の隅々まで自粛するのが現状です。でも何とか放送しようと心ある記者やディレクターが頑張っていますので、皆さんとともに権力を監視していきたい」
(
2016年07月10日,「赤旗」)

(Go2Top

NHK「徹底討論日本の政治はどう動く」/小池書記局長の発言

 日本共産党の小池晃書記局長は11日夜、NHKスペシャル「徹底討論 日本の政治はどう動く」に出席し、自民、公明、民進、おおさか維新の各党代表と討論しました。

参院選結果をどう受け止めるか―政治を変える希望を灯した野党共闘

 番組ではまず、参院選結果をどう受け止めるかについて各党が発言しました。小池氏は、「市民と野党が力を合わせてたたかった歴史的な選挙でした」と強調。32の1人区のうち11選挙区で野党統一候補が勝利したことは「政治を変える希望をともした、かけがえのないものです」と述べました。同時に日本共産党が、改選3議席を6議席に前進させ、比例代表で前回の515万4千票を601万6千票に伸ばしたことは重要であり、「躍進の流れをさらに強めていきたい」と語りました。
 1人区のたたかいがテーマになり、民進党の枝野幸男幹事長は、「従来自民党が強いといわれていた東北地方を中心に一定の成果を挙げることができた」「強化していって、しっかりとした受け皿をつくっていかねばならない」と発言。これに対し自民党の茂木敏充選対委員長は「野合」だと非難し、「われわれは21勝11敗。野党共闘は厳しかったのではないか」などと述べました。

民主主義の新段階
 小池氏は、「11勝は大きい。力を集めたから勝てたことは間違いない」と強調。無党派層の多くが野党統一候補に投票したことにふれ、「今までは野党がばらばらで1票を投じても生きないんじゃないかと考えられていたかもしれない。それが、自分の1票によって政治を変えることができるという希望を広げたという点では、日本の民主主義が新たな段階に進んだといっていいと思います」と強調しました。
 公明党の斉藤鉄夫選対委員長は、共産党は「民進党の自由と民主主義という基本的価値観と相いれないのではないか。基盤が同じでない」と中傷。おおさか維新の会の馬場伸幸幹事長も「民共連合は同床異夢」と攻撃しました。
 枝野氏は、「(野党は)立憲主義、安保法制に限らず、格差の拡大に対して暮らしをしっかり下支えをしていくなど具体的な政策もかなりの部分で共有ができた」と反論。「政党が違う以上、考え方が違うのは当然です。そのなかでどういうことが共通できるのか国民のみなさんにしっかりとお示しをして、その結果、1人区では11勝つという結果を出せた。民進党だけではとてもこんな結果は出せなかった」と述べました。

立憲主義取り戻す
 小池氏は、「自由と民主主義を共有しているからこそ一緒にやっている。安倍政権は、『私が最高責任者だ』といって従来の自民党の憲法解釈さえひっくり返す、これは民主主義じゃない、独裁政治です。それに対して、民主主義、立憲主義を取り戻す。同時に、さまざまな政策課題で一致点が広がるなかで、われわれは共闘している」と反論しました。

憲法問題について―憲法の大原則を否定する自民改憲案

 憲法問題では、安倍晋三首相が11日、「自民党の案をベースに3分の2を構築していく」と述べたことが紹介され、自民・茂木氏は、「憲法審査会で議論を進めるなかでコンセンサスを築いていきたい」と発言。斉藤氏は「憲法審査会で虚心坦懐(たんかい)に議論していくべきだ」、馬場氏も「わが党は憲法改正の条文を提案している。各党も出したらいい」と応じました。
 枝野氏は「憲法の基本三原則、平和主義、基本的人権の尊重、国民主権を否定している自民党の草案を前提にしたのでは議論にならない」と批判しました。

国家が国民を縛る
 小池氏は、「自民党の改憲案は、憲法9条2項を削除して国防軍を創設し、地球の裏側まで何の条件も付けずに戦争ができるようにする。緊急事態条項の名で事実上の戒厳令を敷いて憲法停止状態をつくる。基本的人権を侵すことのできない永久の権利と定めた憲法97条を丸ごと削除し、公の秩序すなわち政府の都合で基本的人権を制約できるようにする」と指摘。「憲法は国家権力を縛るものなのに、自民党改憲案は国民を縛る。憲法の大原則、基本原理を丸ごと否定するものです」と批判し、「選挙中は議論を逃げておいて、3分の2を取ったからやるなんて絶対許されません」と述べました。

問われているのは自衛隊の海外派兵
 これに対し茂木氏は「共産党は自衛隊が違憲だと言うんだったら、憲法審査会で議論をされたらいかがですか」などと発言しました。
 小池氏は「今度の選挙は、熊本の地震、東日本大震災で大きな役割を果たしている自衛隊を海外の戦争に出していいのか、このことが問われた選挙じゃないですか。争点そらしをやっちゃだめですよ」と批判。NHKの世論調査で、「改憲が必要だ」と答えた人が39%から33%に6ポイント減る一方、「必要ない」という人が25%から32%に7ポイント増えていることをあげて、「安倍政権のいろんなやり方、自民党の改憲草案を見て、これは危ないんじゃないかと見る方が増えてきている。ここはしっかり受け止めたほうがいいと思います」と述べました。

消費税増税延期と社会保障について――消費税頼みから脱して税逃れをただせば財源はある

 消費税10%の先送り表明を受けて社会保障「拡充」策が議論となり、茂木氏は、自公が公約してきた無年金や低年金者対策などについて、「全て実施するよりも優先順位をつけながらやっていきたい」と発言。斉藤氏は「消費税を社会保障財源とするのは世界的な流れ」と述べました。
 小池氏は、「消費税頼みでは財政再建も社会保障の充実もできないことがこの間の教訓です。税金は消費税だけじゃない。法人税もあるし、所得税もある。税逃れのタックスヘイブン(租税回避地)をただしていく。そこで財源をつくることを考えるべきです。社会保障は消費税とリンクさせる考えから抜け出さない限り未来がない」と強調しました。
 枝野氏も「消費税だけに社会保障を依存するのは限界がある。消費税が上げられている一方で他の税目が減税になっている。しっかり見直していく必要がある」と述べました。

大企業も中小企業並みの負担を
 小池氏の発言に対して斉藤氏は「世界とのバランス、競争上、法人税や所得税をこれ以上あげられるのか」と主張しました。
 小池氏は、実際の税の負担率をみると、中小企業は利益の20%なのに対し大企業は12%だと指摘し、「せめて中小企業並みに大企業が法人税を払えば6兆円の財源ができる。負担能力に応じて取ろうではないかというのが私たちの提案です」と発言。自公がいう部分的な社会保障の「充実」策は、8000億円程度あればできると指摘し、「安倍政権になってから法人税の減税を3兆円やっている。これから1兆円もやる。これをやめればいい。それで十分財源はできる」と重ねて指摘しました。

日本経済をどうするか―国民の暮らしを下支えする政策に転換を

 経済対策について茂木氏は「成長分野をつくっていかなくてはいけない」、斎藤氏は「新たなモノを作り出す構造改革が必要だ」と主張。これに対し枝野氏は「将来の不安や実質的な賃金、こうした部分をどう下支えしていくのか。ここがないと消費の拡大につながらない」とのべました。
 小池氏は「買いたいものがないから個人消費が冷え込んでいるんじゃない。買えない。所得が減っている。実質賃金が低下しているわけです。国民の暮らしを下支えする経済政策に転換しなければいけない」と強調。最低賃金を中小企業支援とセットで大幅に引き上げていくこと、大企業の300兆円の内部留保を賃金などに還元させること、社会保障も充実させることによって地域経済を支え、雇用を生み出すことになると強調し、「成長と分配は二律背反じゃない。きちっと分配政策をやっていくことが、力強い政策になる。経済に民主主義を取り戻すことが経済成長になる」と強調しました。
 茂木氏も「賃上げをきちんと進めることによって可処分所得を増やせば、ほしいものも買えるようになる」と否定できませんでした。

これからの日本の政治について―与党に対し野党がしっかり立ち向かう

 これからの日本の政治に何を望むか、がテーマになり、「自民党支持ですが、野党がもっとしっかりしないと」という視聴者の意見が紹介されました。
 小池氏は「今度の選挙で選挙協力がこれだけ行われたことは、しっかりしろという声に応える一つの大きな挑戦だったと思います」と述べた上で、「新しい国会は、一緒にたたかった仲間がいるわけで取り組み方も質的に変わってくるのではないかと期待しています。ここまで多くの議席を占めた与党に対して野党がしっかり正面から立ち向かう姿をしっかり国民にお示ししていきたい」と述べました。

安保法制の廃止を
 最後に、当面の政治の状況にどう向き合うのかについて各党が発言しました。
 小池氏は「今度の選挙で訴えた公約の実現のために全力をあげることに尽きます。同時に、その公約のなかで一番は安保法制の廃止です。憲法をきちんと守るまっとうな政治に取り戻すことが何よりも求められていると思います。立憲主義の回復という旗をしっかり今度の国会でも訴えていきたい」とのべました。
(
2016年07月13日,「赤旗」)

(Go2Top

NHKは会長選考改革を/全国27市民団体共同で要請

 来年1月に任期が切れる籾井勝人NHK会長の後任選考が本格化するのを前に、全国27の市民・視聴者団体は11日、NHK経営委員会(石原進委員長)に対し、「真に公共放送にふさわしい会長が選ばれるよう、選考過程の抜本的改革を求めます」との要請文を共同で提出しました。
 要請したのは、放送を語る会やNHKを監視・激励する視聴者コミュニティ、日本ジャーナリスト会議ほか、全国で活動するNHK問題を考える視聴者・市民団体。
 NHK会長は、経営委員12人のうち9人以上の賛成で任命されます。同委ではこの夏にも選考のための指名部会を立ち上げ、候補者をあげていくとしています。
 要請文では、
@籾井現会長の再任は絶対にしてはならないA公募制・推薦制の導入など、選考過程に視聴者・市民の意思を広く反映させるB会長の資格要件に「NHKのジャーナリズム機能についての見識を持ち、政治権力からの自主・自立を貫ける人物」といった条項を加える―の3点を求めています。
 また、NHKの今年度予算が国会で承認された際、付帯決議に「公共放送の会長にふさわしい資質・能力を兼ね備えた人物が適切に選考されるよう、選考の手続きの在り方について検討すること」とした文言が2年続けて加えられたと指摘。「籾井会長の選任過程を問題視したものであることは明らか」だとのべています。
(
2016年07月13日,「赤旗」)

(Go2Top

首相が改憲推進姿勢

 安倍晋三首相は10日、NHKのインタビューで、参院選後の「憲法改定」のとりくみに関して聞かれ、「これからは、いよいよ憲法審査会に議論の場が移り、そこでどの条文をどのように変えていくかということに、集約されていくのだろうと思っている」と語り、改憲発議をめざし衆参両院での改憲論議を推進する姿勢を示しました。安倍首相は選挙中の街頭演説では、憲法問題について一言も語っていません。
 また沖縄選挙区で、現職大臣が落選したことについて安倍首相は「大変残念だ」と表明。米軍新基地建設問題などで「政府方針に『NO』が示されたという見方もできるが」と問われましたが、「普天間基地の固定化は、誰も望んでいないわけでありまして、早期の移転を進めていきたいと思う」と述べました。
(
2016年07月11日,「赤旗」)

(Go2Top

波動/NHKの異様な沈黙/河野慎二

 ジャーナリストの鳥越俊太郎氏が野党統一候補として東京都知事選に出馬し、31日の投票日に向けて、元防衛相の小池百合子氏、自公推薦の増田寛也氏と三つ巴の激戦を展開している。
 待機児童対策、防災対策、東京オリンピック問題などは3氏に共通するが、鳥越氏だけにあって他の2候補に無いのは、安倍政治の流れを変え、平和と憲法を守ろうとする政治姿勢である。
 テレビはこの知事選をどう伝えているか。民放は積極的に報道しているが、異様なのは固く沈黙するNHKの対応だ。
 鳥越氏は19日、「参院選では3分の2を取られたが、ここで流れを断ち切って、東京は違うぞと証明しよう」と決意を表明。国会前集会でも「安倍政権で日本の空には、暗雲が広がっている。私は一に平和、二に憲法、三に脱原発を実現」と演説した。「報道ステーション」など民放の夜のニュースが録画で伝えた。
 鳥越氏は告示後の第一声で「私は人の話を聞く耳を持っています」とアピールした。都知事に不可欠の「聞く力」は、毎日新聞記者やテレビキャスターなど、51年間のジャーナリスト生活を通じて鳥越氏自らが培い、鍛え上げてきた。
 鳥越氏は自身がキャスターを務めたテレビ番組で、被害相談を放置した警察の怠慢を暴いた「桶川ストーカー殺人事件」を報道し、2001年の日本記者クラブ賞を受賞している。常に弱い人の立場に立ち、耳を傾ける姿勢を貫いてきたスタンスに揺らぎはない。
 18日には、TBSの元ニュースキャスターで参院選長野選挙区で当選した杉尾秀哉新参院議員が応援に駆けつけ、鳥越氏を「正義と信念の人」と支持を呼びかけた。
 民放は、情報番組やワイドショーなどでも、都知事選に多くの時間を割いているが、不可解なのはNHKの対応だ。20日の「ニュースウオッチ9」が、6人の候補の活動を短時間、型通りに紹介した以外、告示日を除けば選挙戦はまともに報道していない。何らかの圧力があったのか。それとも官邸の意向を忖度でもしたのか。
 投票日まで1週間。首都の顔は、日本の顔でもある。テレビは争点の明確化へ、取材をさらに強化すべきだ。
 (こうの・しんじ ジャーナリスト)
(
2016年07月25日,「赤旗」)

(Go2Top

NHK受信料の検討結果まとめ/総務省有識者会議

 総務省の有識者会議は22日、将来のNHK受信料について「公平負担を確保し、国民・視聴者にとって納得感のあるものとする観点から検討が必要」などとした検討結果を取りまとめました。スマートフォンなどへの動画配信が普及する一方、若者のテレビ離れが進むなどの環境変化を踏まえたもので、意見公募を経て、最終決定されます。
 NHKに対しては、番組の放送と同時のインターネット配信を本格実施することを求めましたが、受信料の「義務化」には踏み込みませんでした。またグループ内で不祥事が多発したことを受け、理事会を議決機関にして重要事項を決定できるようにし、ガバナンス(内部統制)を強化することなども「検討が必要」としました。
(
2016年07月24日,「赤旗」)

(Go2Top

試写室/NHKスペシャル未解決事件ロッキード事件/NHKテレビ後7・30/国防の闇≠ノ迫り見応え十分

 大事件を再検証し、新しい光を当てる「未解決事件」シリーズ―第5弾は40年前、日本中を震撼させた「ロッキード事件」である。
 旅客機・トライスター売り込みをめぐり、右翼の大立者・児玉誉士夫、政商・小佐野賢治といった伝説的なフィクサーの名前が飛び交う。そして当時今太閤≠ニも闇将軍≠ニも呼ばれていた田中角栄元首相が、商社・丸紅のルートで5億円の賄賂を受け取ったとして逮捕・起訴され有罪判決を受けた。あの大事件の一部始終が、検察の視点で描く再現ドラマとして展開される。(配役は田中=石橋凌、東京地検特捜部・吉永主任検事=松重豊など)
 検察はロッキード社から21億円といわれる工作費を受け取っていた児玉の本当の役割は、日本が自力開発を考えていた対潜水艦哨戒機として、ロッキード社製のP3Cを売り込むことにあったとみていたようだ。しかし検察の捜査ではその事実は解明されないままP3Cは、事件発覚の翌年自衛隊に導入され、これまでに100機を納入、1兆円を稼いだと番組は最後に明かす。見応え十分の力作である。
 (諌山 修 ジャーナリスト)
(
2016年07月23日,「赤旗」)

(Go2Top

地域放送の役割考える/市民と言論シンポ/名古屋

 名古屋市東区で16日、メディアやジャーナリズムの課題を市民の目線で考える「市民と言論シンポジウム」が開かれ、約40人が参加しました。市民とメディア研究会・あくせす、日放労中部支部など8団体でつくる実行委員会の主催。15年目を迎え、32回目です。
 主催者あいさつに立った実行委員の脇田康子さんは「メディアに対し、おかしいことはおかしいと言って、みんなで一緒に考えていくことが大切。今日はローカル放送の価値と役割を考えていきたい」と話しました。
 NHK名古屋放送局チーフディレクターの鎌倉英也氏が「ローカル放送がなくなる日!?〜地域放送の役割を考える」と題して講演。NHK名古屋放送局が制作した「長良川河口堰(ぜき)〜公共事業は誰のものか」を視聴したのちに意見を出し合いました。
 鎌倉氏は「全国ネットでは、地域の本当の問題が浮かび上がらない。河口堰など公共事業は一度始まってしまえば、多額の税金が投入される。地方から全国に発信することで、風穴をあけることができる」と話しました。
 大学のゼミの一環で参加した女子大学生(3年)は、「ローカル放送は、県外の人にも地域の問題を知らせる大事な役割を持っている。全国放送ばかりになってはダメだと思う」と語りました。
(
2016年07月20日,「赤旗」)

(Go2Top

田んぼで「真田丸」/青森・田舎館村

 色が違う稲を使って田んぼに絵を浮かび上がらせる、青森県田舎館(いなかだて)村の田んぼアートが見ごろを迎えています。今年のテーマは、NHK大河ドラマの「真田丸」。石田三成と真田昌幸を表現しています。7色の稲で構成されており、多くの観光客でにぎわっています。
 (工藤祥三通信員)
(
2016年07月20日,「赤旗」)

(Go2Top

試写室/百合子さんの絵本〜陸軍武官小野寺夫婦の戦争/NHKテレビ後9・0

反戦貫いた女性、薬師丸が好演
 戦争はとめることができると信じてスウェーデンで諜報活動に挺身した実在の陸軍武官夫妻。初のドラマ化。作・池端俊策、原案・岡部伸「消えたヤルタ密約緊急電」、演出・柳川強。現地ロケ。
 第2次世界大戦中、陸軍武官・小野寺信(香川照之)は、妻・百合子(薬師丸ひろ子)と共に、ストックホルムに駐在して、機密情報の収集に当たっていた。百合子の仕事は暗号文作成と解読。
 祖国をドイツに占領されたポーランド軍情報将校・ペーター・イワノフ(イヴォ・ウッキヴィ)はスウェーデンに身を隠していた。
 小野寺は、イワノフの協力で得た極秘情報を日本の参謀本部へ打電する。が、なぜかことごとく無視される。
 45年4月、「ヤルタ会談ニテソ連参戦決定ス」の重大情報も握りつぶされた。結果、米軍によって広島、長崎に原爆が投下された。
 戦後、百合子はムーミン・シリーズの翻訳者となり、信は沈黙を破って、軍部の誤りを白日のもとに晒した。
 わが子と別れ、欧州で母国の人々の命を守るために献身的に闘った百合子。戦争を厭う理知的な女性を薬師丸が高貴に演じている。
 (鶴岡征雄 作家)
(
2016年07月30日,「赤旗」)

(Go2Top

原爆死没者追悼式典/核兵器のない世界をともに/熊本市、100人が参加

 「被爆71年熊本県原爆死没者追悼慰霊式典」(実行委員会主催)が26日、熊本市でありました。被爆者や遺族ら100人が参加し、あらたに亡くなった80人が加わり2174人になった死没者に献花を行い、追悼しました。
 長曽我部久実行委員長(県原爆被害者団体協議会会長)が開会あいさつ。遺族を代表して朝長民子さん(県被爆者遺族会会長)は「私たち家族の悲劇を再びつくらないためにも、世界に実相(ありのまま)を伝えていきたい」と語りました。
 来賓あいさつで原水爆禁止熊本県協議会の畠田ミツ子理事長らが、「核兵器のない世界をめざし、ともに歩みたい」と誓いました。
 式典で参加者は、NHK熊本児童合唱団の「原爆を許すまじ」や「五木の子守唄」などの合唱や、琴奏者の「なだそうそう」の追悼演奏に聞き入りました。
 日本共産党からは、上野美恵子、那須円、山部洋史の3熊本市議らが参加しました。
(
2016年07月29日,「赤旗」)

(Go2Top

あすから「平和のための戦争展」/埼玉

 「2016平和のための埼玉の戦争展」が30日から、JR浦和駅西口前のコルソ7階ホールで始まります。
 高校生や大学生が県内在住の戦争体験者にインタビューした内容をまとめた「1000歳からの平和メッセージ」や、原爆投下直後の広島を再現したジオラマなどを並べ、「戦争ってなんだ?」「憲法ってなんだ?」など七つの質問に展示で答えます。
 イベントルームではピーストークなどが行われ、日本平和委員会代表理事の内藤功弁護士や元参院議員の吉川春子さん、元NHKプロデューサーの永田浩三さんらが講演します。
 実行委員会は「今年は日本国憲法が公布されてから70年。改めて憲法について学び、武力以外で平和をつくる展望をともに考えていきましょう」と呼びかけています。
 期間は30日(土)〜8月1日(月)の午前10時半〜午後6時(1日は午後3時半)まで。入場無料。問い合わせは048(825)7535機関紙協会埼玉県本部
(
2016年07月29日,「赤旗」)

(Go2Top

NHK会長選任/指名部会を設置

 NHKの石原進経営委員長(JR九州相談役)は26日、NHK会長を選任するための指名部会を同日付で設置したことを明らかにしました。
 指名部会は、来年1月24日に任期が満了する籾井勝人会長の続投の是非を議論し、交代させる場合は次期会長の人選を進めます。石原氏は籾井会長について「候補者の一人として業績を評価した上で、委員の考えを集約したい」と述べました。
(
2016年07月28日,「赤旗」)

(Go2Top

潮流

 NHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」。主人公の雑誌づくりのモチーフとなったのが、日本で最初に「商品テスト」を手がけた『暮しの手帖』です。1954年、ソックスから始まったテストは、高度経済成長に伴い冷蔵庫やクーラーまで対象にしました▼「商品テスト」は絶対ヒモつきであってはならない、と雑誌に広告を載せないことが原則。結果は商品名をあげて公表するため、テストは徹底しています。トースターのテストで焼いた食パンは4万3088枚。ミシンのテストでは、各機種1万b、布を縫うのに足かけ3年かけています▼故・花森安治編集長いわく、「〈商品テスト〉は、消費者のためにあるのではない」「生産者に、いいものだけを作ってもらうための、もっとも有効な方法なのである」(「商品テスト入門」)▼商品の洪水の中で見る目を鍛えよ、というのは幻想。メーカーが毒になる品を作らなければ、それで事はすむのだと▼花森さんが生きていたら、今の「ポケモンGO」騒動をどう見たか。画面上に現れる架空の生き物「ポケモン」を捕獲するスマホ向けゲームで、配信が始まるや否やトラブル続出。予見された事態で、海外ではポケモン捕獲のために他人の家に侵入した少年が射殺される事件まで起きています▼〈ゼニさえもうかれば、国民の健康もモラルも、知ったことじゃない、というゼニモウケ・アニマルの面目まる出しである〉(『花森安治 灯をともす言葉』)。使い方注意≠ナ済むのか。立ち止まって考えたい。
(
2016年07月29日,「赤旗」)

(Go2Top

芸能テレビ/放送文化つくった二人逝く/永六輔さん/大橋巨泉さん/松尾羊一

人生や庶民の生の声を番組に
 永六輔(享年83)、大橋巨泉(同82)があいついで亡くなりました。その功績はラジオ・テレビという戦後の新しい電波による放送文化の可能性と限界をそれぞれ意識して、言葉による文化として共感をあたえたところにあります。
 まずは永六輔さんです。
 永さんは、早稲田の学生時代からNHKの人気番組「日曜娯楽版」の常連投稿者として聴取者から知られておりました。その縁で放送作家の三木鶏郎にスカウトされ、作詞家や放送作家から司会の道へ進みました。さらに無名の地方文化を「歩く発信人」として絶妙な語り口で披露し、また波乱にみちた人生体験をもつゲスト(例えば松島トモ子やきたやまおさむなど)を「永六輔、その新世界」(TBSラジオ)を拠点に紹介しました。
 「ラジオはナマだ!」。これが永さんの信条です。一方で、「こんにちは赤ちゃん」などを名歌詞で大ヒットさせ、正直決してうまくない歌でも、野坂昭如と歌ったり、作詞家として中村八大(作曲家)や坂本九と組んで数々のヒット曲を生んだのはご存じでしょう。
 大橋巨泉さんといえばテレビの人気の深夜番組「11PM」です。それまでテレビでタブー視されていたマージャンや競馬など、いわば庶民のホンネである裏文化を好んで話題にしました。ついで「クイズダービー」「世界まるごとHOWマッチ」「巨泉×前武ゲバゲバ90分」などの高視聴率番組を企画しました。
 しかし、ラジオやテレビが国家権力からねらわれる可能性が現実味をおびる晩年の昨今、お二人は声をそろえ、「戦争法」に前のめりの安倍政権が描く危険な未来を憂えて世を去りました。メディアの自己規制、変質の怖さを知る最後の体験世代だったのです。
 (まつお・よういち=放送評論家)
(
2016年07月31日,「赤旗」)

(Go2Top

本立て/老後親子破産/NHKスペシャル取材班著

 親の介護で離職、重い医療費や介護費用に追い詰められる非正規雇用の子。独立できない子と家計を支える高齢の親。老後親子破産予備軍が広がっています。生々しい実態に迫ったNHK番組「親子共倒れを防げ」をまとめたもの。
 家族で暮らすゆえに周囲が困難を把握しにくく、本人もSOSを発信しづらいことが浮かび上がります。家族と同居する日中独居の高齢者は、家事援助の介護サービスが利用しづらい現状も。親子世帯に支援を行き渡らせる必要性を訴え、対策に取り組む地域を紹介します。(講談社 1300円)
(
2016年07月31日,「赤旗」)

(Go2Top

8月】

NHKどこへ向かう/平和とメディア考える集会/JCJなどが名古屋で開催

 「平和を語る八月名古屋集会」が15日、名古屋市東区で開かれ、市民やメディア関係者ら100人が参加しました。日本ジャーナリスト会議(JCJ)東海など8団体でつくる実行委員会の主催。平和とメディアのあり方をテーマに毎年8月に開催され、今回で42回目。
 JCJ東海の高野春廣氏があいさつし、「参院選で市民と野党が団結できたのは何物にも替えがたい体験。市民が政治を変えるという空気のなかで、メディアの報道は少なかった。今日はNHKについて考えたい」と話しました。
 放送を語る会運営委員で元NHKディレクターの戸崎賢二氏が講演しました。「安倍政治とテレビ報道の危機 公共放送NHKはどこに向かうのか」と題して、NHKと民放の参院選報道を報告。NHKが政権を批判する言論や運動を極力報じない姿勢だったことをあげ、「経営委員に首相派が任命され、批判報道を放送しようとすると、どこかの段階で待ったがかかる」と指摘。しかし、「内部に抵抗が生まれ、良心的な番組制作を目指す懸命の努力がある。そういった人たちをぜひ応援してほしい」と話しました。
 実行委員会に入る「愛知県民の手による平和を願う演劇の会」が9月16・17日に公演予定の演劇「化石山」の公開稽古を行いPRしました。
(
2016年08月17日,「赤旗」)

(Go2Top

戦後71年の夏/市原悦子さん/憲法守れ、声大きく/戦争の流れ止められなくなる前に

 先の大戦が終わって71年目の夏。約30年間、戦争童話を朗読してきた俳優の市原悦子さんは、危機感を感じています。安倍政権が安保法制に続き、平和憲法を変えようとしているからです。「戦争を伝え、憲法を守りたい」。今、市原さんは強く思っています。
 大塚武治記者

〈各地に招かれ、戦争童話を朗読する機会が増えています〉
 10月から暮れにかけては毎週、朗読する予定です。行くと、「うちの村にはこんな戦争中の童話がある。ぜひ読んでください」と頼まれることもあります。戦争体験を伝えなければと。みなさんの強い思いを感じます。
〈幼い時期を戦後の食糧難の中で過ごしました。その体験が生きる上での原点です〉
 私は終戦から3年後の1948年に疎開から千葉市に戻り、中学の演劇クラブに入りました。
 軍国主義一色の中で青春を過ごし20代と若かった顧問の岩上廣志先生は、演劇を通して教育にあたったといいます。「一人ひとり違っていいんだ。みんな主役だよ」って。歌う人、衣装を縫う人、絵を描く人…。みんなを平等に愛してくれました。一人ひとりが輝けばいいんだと。先生は、敗戦を迎えて、憲法と教育基本法ができた時、希望の光を見たといいます。
 ずっと後になって、先生のお兄さん2人が戦死していたと知りました。先生の中に、戦争への怒りがあったんですね。
 当時のこんな光景も目にやきついています。校長先生が腕まくりをして、校庭の周りのドブさらいをしていました。学校で一番、えらい人がこんなことをするんだと。13歳の私は何ともいえない安心感につつまれたことを忘れません。
 岩上先生は88歳の今も、つえをつき、国会前に通っています。改憲や原発、教育を昔に戻そうとする動きが許せないのでしょう。
 私は、NHKの元兵士の証言記録などのドキュメンタリー番組を録画し、くぎ付けになって見ています。戦争を体験した人の声は貴重です。戦争が始まると、いかに止められない流れになるか。人を狂わせるか。80〜90代の元兵士の「いまだにうなされる」という言葉、助からない兵士を薬殺した元看護師の苦しみの顔。本当の戦争を知る人の話を聞くと、たたき起こされるように目が覚めます。これらの作品のますますの放送をお願いします。
 ぼんやりしていたら大変なことになります。関心のない人もまだまだ多い。もっといろんなところで、「憲法を守れ」という声がふつふつと湧いてほしい。みんなが声をあげれば変わっていくと思うんです。
(
2016年08月14日,「赤旗」)

(Go2Top

試写室/NHKスペシャル自閉症の君が教えてくれたこと/NHKテレビ11日後9・0/「ハンディ」持つ人の深い洞察

 自閉症の作家として話題になった東田直樹さん。日常会話は不得手だが、文字盤を使って発語し、自分の気持ちを表現できる。その特異な能力で、13歳の時に綴ったエッセーは、翻訳され、世界30カ国で読まれている。
 番組は、現在24歳になった東田さんに取材し、謎の多い自閉症という世界に迫る。ディレクターの丸山拓也はガンに侵され闘病中の身であった。ハンディを持つ者同士のやりとりは、真摯で緊張感に満ちている。
 「死を前に価値観が変わった」という丸山に対し、東田さんは「人の価値観は簡単に変えられない。積み重ねた人格のようなものだ」と答えた。深い思索と洞察力、そしてそれを言葉にする高い知性の持ち主だとわかる。
 交流のあるアイルランドの作家、ミッチェル(10歳の自閉症の息子を持つ)、認知症が進行する北九州に住む祖母に会う姿も映し出される。ミッチェルの息子と東田さんが、会話はないが、別れに握手する場面は感動的だ。
 東田さんはハンディを持つ者にしか見えない世界を提示する。不幸だと決めつける健常者の誤解が、この番組で解かれるだろう。
 (岡崎武志 ライター)
(
2016年12月10日,
「赤旗」)

 

NHK新会長決定にあたって/経営委員からの選任は異常/立教大学教授砂川浩慶さん

 6日に開かれたNHK経営委員会は、上田良一委員を次期NHK会長に選任しました。籾井勝人現会長から上田氏への流れをどう見るか、砂川浩慶(ひろよし)立教大学教授に寄稿していただきました。

 籾井現会長はひどかった。就任会見での数々の暴言、その内容は実質的にはついに撤回されなかった。ハイヤーの個人使用、民主党議員との罵(ののし)りあい、関連会社を通じた土地取得などなど、枚挙にいとまがないほどに次から次へと問題を起こした。人事権を振りかざし、就任直後に白紙の辞表を理事に求め、数少ない子飼いとみられる理事の首も切った。
 肝心の放送番組、特にストレートニュースはひどかった。NHKOBを中心とする「放送を語る会」の地道な調査で、特定秘密保護法、参議院選挙で報道量が激減したことが明らかになった。安倍政権の意を体した「伝えない公共放送」との批判を浴びた。唯一の功績は、政権に近い公共放送のトップが選ばれると「権力監視」というメディアの最大の役割が失われることを実証したことか。このような状況で注目された、新会長の選任であった。
 結果は4代続いての財界出身者。しかも、現役の経営委員でかつ、常勤の監査委員だ。放送法は経営委員会と会長以下の執行部を分けて規定している。経営委員会に外部からのチェックを期待し、会長以下の執行部は内部出身者を想定しているからだ。経営委員が会長になったのでは、制度趣旨にも反している。異常事態なのだ。「監査委員会は、役員の職務の執行を監査する」(放送法43条)と位置づけられているが、批判が強かった籾井会長に対して監査委員会は機能しておらず、その点からも疑問が多い。
 国会の総務委員会で経営委員会に対して「会長選考に対して、手続きの透明性を一層図りつつ、選考の手続きの在り方について検討すること」が決議されている。選出手続きにおいても、今回の手続きは、「公募・推薦制」も含めた透明性に欠けるといわざるをえない。
 視聴者にとって、最も大事なことは番組がよくなること。NHKは、放送法で「公共の福祉のために、あまねく日本全国において受信できるように豊かで、かつ、良い放送番組」(15条)を放送することを目的として設立された。そのイメージは籾井体制で崩れ、アベチャンネル、御用放送との批判にさらされた。この回復をどう進めていくのか。外部登用が続く異常事態をしっかりとみていきたい。
(
2016年12月08日,「赤旗」)

 

 

世論が批判、籾井氏退任へ/NHK新会長に上田氏/経営委

 NHKの最高意思決定機関である経営委員会(委員長・石原進JR九州相談役)は6日、籾井勝人会長(73)が任期満了となる来年1月24日に退任し、後任に三菱商事出身でNHK経営委員を務める上田良一氏(67)が就く人事を決めました。NHK経営委員が会長になるのは異例です。
 経営委員会は12人で構成。各委員が推薦書を提出する形で会長人事について協議を進めてきました。6日の委員会では、会長選任に必要な委員9人以上が上田氏の就任に賛同したもようです。
 籾井氏は、2014年1月の就任記者会見で「政府が右と言っているものを左と言うわけにはいかない」と発言し、公共放送のトップとしての資質を厳しく問われました。その後も、私的に利用したハイヤー代をNHKに支払わせようとするなど、物議を醸す言動を繰り返してきました。籾井氏は再任に意欲を示していましたが、視聴者・世論の批判は収まることなく、1期で退任することになりました。
 上田氏は一橋大学を卒業し、1973年に三菱商事に入社。最高財務責任者(CFO)や副社長を歴任。NHK経営委員には13年6月に就きました。唯一の常勤委員で、同年7月からは監査委員を兼務しています。
(
2016年12月07日,「赤旗」)

NHK会長選出、70年前は/元放送委員市吉澄枝さん(故人)の回想/上/国民主体の委員会、始動

22歳、宮本百合子と一緒に
 NHK経営委員会による次期会長選任が大詰めを迎えています。公共放送NHKが、敗戦の教訓をふまえて再出発した70年前の1946年に立ち戻ってみましょう。当時、各界から選ばれた十数人が委員となって、民主的なシステムでNHK会長を選んでいました。

 委員のうちの一人は最近までお元気でした。今年5月に93歳で亡くなった市吉澄枝さんです。東京で長く税理士の仕事を続け、税理士九条の会発起人などを務めました。
 市吉さんの自分史『まなび 愛 ひたむきに』(2015年、生活思想社)をひもといてみます。
 少女時代、兄の影響もあって社会科学に関心を持ち、友人と読書会を開くなど活発に過ごしました。終戦の年の1月、突然、特高警察に「治安維持法違反」で逮捕され、読書会のことなどを調べられました。
 8月の終戦でようやく釈放され、神奈川の実家に。釈放された共産党員らが東京・国分寺に住んでいて、そこに手伝いに行っていたこともあって入党、宮本百合子(日本共産党員作家)ともここで知り合いました。
 秋から党本部の婦人部に勤務します。実家にまだ入党を知らせてなかったので、宮本百合子に相談して「槇ゆう」というペンネームで活動しました。

政府主導ではなく
 党を代表する形で、46年1月の「各党の婦人政策を聞く」など、NHKラジオの討論に3度出演しています。
 連合国軍総司令部(GHQ)の対日政策は各方面に及びました。放送分野では45年12月、NHK(1926年設立)の民主化をめざし、次のように提起しました。「世論を表現すべき重要な機関である放送の管理運営」について、「すべての面で公共機関として確立するために委員会を作る」という内容です。政府主導でない国民主体の委員会構想でした。

青年分野の代表で
 委員会の構成についても、広く国民に目を向け、「社会の各分野を代表する民間人を」と当時の逓信院を指導しました。
 こうして46年1月、17人の顧問委員会(のちの放送委員会)がスタート。滝川幸辰(京都帝大法学部長)、宮本百合子、荒畑寒村(評論家)らの著名人とともに、青年分野の代表として瓜生忠夫(青年文化会議)、槇ゆう(日本共産党婦人部員=市吉)の2人が入りました。市吉さんは22歳でした。
 のちに市吉さんは自身の委員就任について、NHK関係者に「(宮本)百合子さんが推薦なさったんだろう」と語っています(1986年の「聞き書き」)。
 市吉さんはこの委員会の位置づけについて「NHK会長候補の選出、NHK再組織案の作成、放送基本方針の立案」とまとめています。さらに「政府言いなりの放送を国民のものにするための重要な任務を持った委員会」と積極的にとらえていました(『まなび 愛 ひたむきに』)。
 (小寺松雄)
 ( 2016年12月01日,「赤旗」)

 

 

NHK会長選出、70年前は/元放送委員市吉澄枝さん(故人)の回想/下/候補者あげ議論尽くして選ぶ

再出発した公共放送の中で
 1946年1月にスタートした顧問委員会(その後の放送委員会)は、新生NHKの会長選任という大仕事にとりかかりました。委員各人が計40人ほどの候補を出し、投票で最終的には3人にしぼりました。3月の総会(このときから放送委員会に改称)で、経済学者・高野岩三郎を会長に選びました。
 86年の「聞き書き」によると、宮本百合子や市吉さんは、3人のうち「高野さん(を推そう)と私たちは決めていた」。
 市吉さんは戦中・戦後の無理がたたって体をこわし、47年に入ると療養生活を送りました。委員会については「2回か3回ぐらいしか、出てないんじゃないか」(「聞き書き」)と残念さをにじませています。NHKによると46年半ばの放送委員は15人ですが、槇(市吉)さんはすでに退任しています。

放送委員会の業績
 放送委員会の業績について、放送研究者の松田浩氏は著書『NHK(新版)』(2014年、岩波新書)で次のようにのべています。「放送基本原則草案」(46年9月)、「放送委員会規約」(47年10月)、「放送法案要綱」など数々の立案提言をNHK、逓信省、GHQに対して行った―。
 さらに松田氏はこう記しています。「しかし、これらは、NHK上層部などから、ほとんど無視に近い扱いを受けた。彼らは、米占領政策の変化の風向きを敏感に感じ取っていた」「一九四九年四月の高野岩三郎会長の死を境にして同年五月、解散を決め幕を閉じている」
 市吉さんは46年に結婚、50年代から税理士の勉強を始め、66年に税理士登録をしました。68年に公認会計士をしていた夫・庸浩さんが急病死。その後、税理士活動や子育ての中で、東京税理士新人会の会長を務めました。「平和を守る税理士の会」「税理士九条の会」などにも参加しました。
 2010年に開かれた「税理士九条の会」後の懇談の場で、弾圧の体験とともに放送委員の経験を少し話しました。それがきっかけで同年8月、放送関係者が市吉さんに当時のことを聞く集いを開いています。

学び行動につなぐ
 市吉さんの終戦翌年の経験は、短期間ではありましたが貴重なものでした。国民すべての放送局として再出発した70年前のNHK。現在のNHKはそこからどんな教訓をくみとっているのでしょうか。議論を尽くして、会長にふさわしい人を民主的に選ぶことの大切さが改めて浮かび上がってきます。
 

 長男・伸行さんは、市吉さん著『学び 愛 ひたむきに』のあと書きで、こう母を語っています。「社会に目覚め、それが原動力になって学び、そして行動につながっていきました」「年長の方から可愛(かわい)がられ、同志と共に活動し、年少の方から慕われ、幸せな人生だったと思います」
 (おわり)
 *市吉さんは今年5月、93歳で死去。
(
2016年12月03日,「赤旗」)

 

(Go2Top

 

 

 

 

 

 

(Go2Top