【政治考】
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2016年
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政治考/シリーズ市民と野党の共闘/総がかり行動/平和運動諸潮流が大合流/「未来への責任」と広く共同
政治考/シリーズ市民と野党の共闘/香川「確認書」/アレルギー解き壁なくす力に
政治考/野党共闘、参院選後も焦点/与党危機感次も大変だ
政治考/野党共闘、参院選後も焦点/違いを認め、一致点で共同
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政治考/シリーズ市民と野党の共闘/深化した市民運動の力
政治考/シリーズ市民と野党の共闘/共産党の存在と野党再生
「しんぶん赤旗」魅力と役割/野党・市民共同の機関紙/共闘の姿生き生きと
政治考/シリーズ市民と野党の共闘/政治との距離感縮まった
政治考/シリーズ市民と野党の共闘/自分のこと、日常の中に/共闘の姿もっと前面に
政治考/シリーズ市民と野党の共闘/「野合」どころか民主主義の基本
政治考/シリーズ市民と野党の共闘/二大政党制乗り越え、新たな対案模索
政治考/野党共闘/政権打倒へ可能性示す
政治考/戦争法廃止か明文改憲か/法施行めぐる対決局面
政治考/戦争法廃止か明文改憲か/野党共闘、想像以上の力=^経済失政、暴言・不祥事やまず
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政治考/情勢一変、北海道5区補選/支持率急落、政権に危機感/安倍首相自ら電話で檄
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政治考/情勢一変、北海道5区補選/「保育園」批判爆発/野党共闘、勢い増す
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野党共闘、警戒強める政権/今度の参院選、大きな節目に/上智大学教授、三浦まりさんの話
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野党共闘、警戒強める政権/「自公対市民″\図怖い」
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野党共闘、警戒強める政権/「野合」批判は通用しない/安倍暴走ストップで対抗軸に
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5野党合意/参院選構図が一変/安倍自公・補完勢力VS5野党と市民/政権、危機感丸出し
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民意に応えた5野党合意/投票促す効果も
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9条改憲にふみこむ首相/戦争法とつじつま合わせ
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9条改憲にふみこむ首相/立憲主義の破壊者が「改憲」論
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安倍首相、明文改憲前のめり/「日本会議」強力後押し/大臣の擁護義務を無視
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2015年
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政権脅かす新たな運動/立教大学名誉教授五十嵐暁郎さん談話
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「何でもあり」の暴走政治/「1強」というが…基盤ぜい弱、世論反発
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柔軟性失うモノカラー/「野党は共闘」への期待
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戦争法案、高まる反対世論/違憲論噴出、与党に焦り/自民幹事長演説に対し「憲法守れ」
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戦争法案、高まる反対世論/草の根で広がり/ネット拡散一気
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2016年
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政治考/シリーズ市民と野党の共闘/総がかり行動/平和運動諸潮流が大合流/「未来への責任」と広く共同
国民的結集の土台に
「空前」と言われる昨年夏以来の安保法制=戦争法反対の国民運動の広がり―。学生やママなどの新しい市民運動を含め国民的結集の土台にあったのは、戦争法反対、憲法擁護の大目標で一致する平和運動の諸潮流の大合流でした。「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」の結成(2014年12月15日)です。
(秋山豊、中祖寅一)
「これまで私たちは、横につながることができず、圧倒的な人びとを集めて政権を包囲する運動をつくれなかった。連帯できない運動の限界への理解と、安倍政権の暴走のもとで日本の憲法、平和、民主主義が最大の危機にあるという感性を共有し、未来への責任として私たちはその限界を乗り越えた」
連合参加の自治労や日教組などが加盟する「平和フォーラム」代表の福山真劫さんはこう語ります。
労働組合運動、平和運動の諸潮流には、それぞれ同一の目標を持ちながら、実際の運動の場面で行動を共にできない状態が長く続いてきました。
その壁を乗り越えるため、「平和フォーラム」が中心となってつくる「戦争をさせない1000人委員会」(2014年3月)、首都圏100を超える市民団体が加入する「解釈で憲法9条を壊すな!実行委員会」(同4月)、そして全労連や日本共産党が参加する「戦争する国づくりストップ!憲法を守り・いかす共同センター」(04年結成、14年5月改組)の三つの実行委員会が共同したのです。
「総がかり行動」の結成で、諸団体に結集する「力の統一」とともに、安倍内閣の立憲主義破壊に危機感を強める市民の新しい自発的運動が総結集する場がつくられました。実行委員会の共同方式は、労組や関連する政党間の対立≠運動に持ち込まない知恵でした。
昨年5月3日、戦争法案の閣議決定・審議入りを前に、横浜臨港パークは3万人を超す人であふれました。
10年以上にわたって5月3日の憲法集会を主催してきた一人、「9条壊すな!」実行委共同代表の高田健さんは「5・3集会をそれぞれ別にやってきたが、1万人以上集まったことはなかった。それが横浜に3万数千人集まり、民主(当時)、共産、社民、生活の4党の代表も集まった。これはいけると思った」と振り返ります。「誰にでも参加できる」「私にもできる」という敷居の低さが実感として広がりました。
実務分担して
「総がかり行動」主催の国会前行動は、定例日とされた木曜日を中心に波状的に行われました。自発的意志で結集する市民をはじめ「SEALDs」(シールズ=自由と民主主義のための学生緊急行動)が合流し、立ち上がった憲法学者や知識人も参加。7月には、「だれの子どももころさせない」の一言から広がった「安保法制に反対するママの会」が加わって、老若男女、保守・リベラルの枠組みも超えた結集が爆発的に進みました。
「憲法共同センター」の小田川義和さん(全労連議長)は述べます。
「これまでと違う攻撃の質を持った安倍政権に対する強い危機感、これまでのいきさつを横に置いて一緒にやらなければ展望は開けないと問題意識を共有しあった」
国会前に12万人、全国で200万人を結集した昨年8月30日の大行動も「総がかり行動」の呼びかけ、主催でした。
一連の行動では、下準備に加え、舞台や音響設備の設営、誘導、警備、警察との交渉など必要な実務を「総がかり行動」が手分けして分担。「何十年も市民運動を支えてきたたくさんの人たちが、力を合わせ黙々と働いた」(高田さん)のです。
数十人の医師らによる「救護班」も毎回つくられ、熱中症で体調を崩す人らを看護。「心肺停止」の危機的事態も発生しました。
「行ったら危険だ」と言われてもそれを承知で、「命をかけてでもその場に行き声を上げたい」と、妻とともに行動に参加した高齢の男性でした。救護班が介抱し、集中治療室に搬送されましたが、無事退院できました。
励ましあって
「1000人委員会」事務局長代行の清水雅彦日体大教授(憲法)は「シールズやママの会など、新しい層の役割も大きいが、『総がかり』の重要性をもっと評価すべきだ」と述べます。
「総がかり行動」が運動の全体を支える大きな土台(敷布団)となり、学生、ママなどの新たな運動(掛け布団)と相互に励ましあい、巨大な市民運動が形成されました。その市民運動が「野党の共闘」を求めたのです。市民運動の息吹を吸った野党(政党)がこれにこたえ、戦争法廃止・立憲主義回復の課題を中心に、大きな統一戦線をつくりつつあります。
「総がかり行動」は中央、国会前の行動として進みましたが、地方との連携も重視し、各地で新たな共同と結集を呼び起こしました。
現在では、県段階で33、地域では260近い「総がかり」的な取り組みが進みつつあります(憲法共同センター調べ)。
「総がかり行動」は戦争法廃止の2000万署名運動を提起し、署名数は1580万人分を集約しています。いま新たに、沖縄に連帯して辺野古新基地建設反対の運動を全国化する署名に取り組むことも決めています。
福山氏は述べます。
「経緯を乗り越え広く共同する、沖縄とも連携するし非正規労働者とも連携する、選挙もたたかう。この思想こそ『総がかり』がつくり出した成果であり、これでたたかえば必ず勝てるという確信が取り組みの最大の成果だ」
「総がかり行動」は、権力者の暴走を止めるとともに、憲法理念が花開く、新しい政治の実現を目指す人間の鎖でもあります。
小田川氏も述べます。
「市民と野党の共闘を軸に置き、それぞれの市民運動が結集することに安倍暴走ストップの力を見いだす。僕も福山さんも高田さんも、そこから下がる気はない。次の総選挙に向け、政策も含め野党共闘をより強く迫っていく」
( 2016年10月10日,「赤旗」)
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政治考/シリーズ市民と野党の共闘/香川「確認書」/アレルギー解き壁なくす力に
共産党綱領の生命力を考える/高まる関心、国民の中へ深く広く
野党と市民の共闘を進める日本共産党はどういう政党か―。いま日本共産党の「綱領」に関心が集まっています。7月の参院選で、共産党公認の田辺健一氏が野党統一候補となった香川選挙区で、民進党県連代表と日本共産党県委員長の間で交わされた「基本的事項の確認書」(6月3日)の持っている意義を考えます。
(中祖寅一)
「本参議院選挙を通して、安保法制の廃止及び憲法違反の閣議決定の撤回を目指す。同時にアベノミクスの失敗と弊害を追及し、安倍政権の打倒を目指す」。確認書は野党共闘の大義と一致点をこう明記。同時に、野党共闘で「有権者の正しい理解を得るため」とし、「両者は04年共産党綱領の趣旨に従い、改めて以下を確認する」としました(別項)。この「確認書」を主導したのは、参院選時に民進党香川県連代表だった小川淳也衆院議員。「確認書は一つの『お守り』だった」と振り返ります。
なぜ「お守り」か。
小川氏は、「共闘を進めるうえで、支持者・有権者の中にある共産党へのアレルギーを解く努力が必要だった」といいます。地方の保守的な政治環境もありました。
旧民主党時代の2013年2月、同党綱領改定作業で事務局長を務めた小川氏。「各党の綱領を調べ、そのなかで共産党綱領が非常に現実的に変化している」と認識しました。
そうした経緯を下地に、確認書では、象徴天皇制と私有財産制への態度、「1党独裁」の問題、安保・自衛隊政策と共闘の関係などを取り上げました。
「共産党への誤解を解く意味で、香川ローカルでも基本的事項を確認することが出発点になると考えた」と小川氏はいいます。
「確認書では、政策的一致点を示し、共産党がずっと掲げてきた独自政策を共闘には持ち込まないと明確にした。『ここまでするのか』と、驚きをもって再認識した」と語るのは、野党共闘を進める香川県「市民連合」代表で元香川大学学長の近藤浩二さん。「いよいよ統一戦線を本気で具体化するのだなと感じた」と語ります。
自治労香川県本部委員長の森信夫さんは、「確認書を見て、共産党が綱領改定したときの不破哲三前議長の報告をホームページで読み見直してみた」といいます。「確認書の内容が詳しく語られており、確認書そのものが素直に理解できた。国民と一緒に議論し一歩ずつ変えていく、というメッセージが印象に残った」と感想を語ります。
怖い≠ェ安心≠ノ
「できあがった文書(確認書案)は、共産党綱領の内容そのものをとりあげ、それを問いかけるものだった。驚いた」
日本共産党香川県委員会の松原昭夫委員長の第一印象でした。
松原氏は「確認書ができて、民進党のみなさんが『(共産党の)田辺事務所にやってくるのに壁がなくなった』といわれた。共産党と席を同じくすることも、共産党の候補を支援してたたかうことも、安心してできる雰囲気になった」と振り返ります。
民進党香川県連の山本悟史幹事長は、確認書について、「共産党はどんな党?と聞かれたときの根拠だった。民進党の支持者の中では、『怖いと思っていたけど暴力革命ではないんだね』といって安心した人もいた」と語ります。
確認書が発揮した力は、日本共産党綱領の力そのものです。
安保法制=戦争法の廃止・立憲主義回復を求める野党共闘と「国民連合政府」構想は、党綱領で明記した統一戦線の方針に基づくものです。綱領の統一戦線の方針と民主的改革の道筋が一体となり、「確認書」としてあらわれたのです。
小川氏は、野党統一候補としてたたかった日本共産党の田辺氏の得票が10万票を超えたことについて、「いろいろな困難を乗り越え、そこに到達したことは意味がある」としつつ、「しかし民進党支持層、無党派層の大半の誤解やアレルギーを解くには至ってない」と指摘。「『確認書』によって、共産党の主張は『実はこういうことなのか』と驚きをもって迎えられた面もあるが、取り組みはまだ緒についたばかりだ」と述べます。
松原氏は、「改定した綱領の現実性が、有権者にはまだまだ届いていない。もっと深く広く、共産党の綱領や現実政治に取り組む姿勢を語っていかなければ」といいます。
小川氏は、日本共産党の当面の民主的改革=「ルールある資本主義」には理解を示す一方、「共産主義の理想や、安保廃棄・自衛隊解消の方針は、さらに一般有権者の疑問に真摯(しんし)にこたえていく責任がある」と指摘します。
そのもとでも小川氏は「次期衆院選挙は、参院選挙と意味合いが異なってくる。互いに(相違点を)乗り越え最大公約数を確認していく。ローカルだけでなく、中央レベルの議論をやらなければいけないし、やるべきだ」と前を向きます。
松原氏は「党の独自政策を確固として維持しつつ、共闘のなかでは、留保事項ははっきり留保することが現実的対応の中で重要だと感じている」と述べます。
香川県「市民連合」代表の近藤さんは、「大きな違いがあっても一致点を明確にして力を合わせる。まさに共闘とはそういうものだ」と指摘。衆院選へ向け、「共産党の現実的政策や共闘の姿勢をより多くの市民に知らせることは、単に民進党の『お守り』にとどまらず、全体の空気を変える」と語ります。
基本的事項の確認書
本参議院選挙を通して、安保法制の廃止及び憲法違反の閣議決定の撤回を目指す。同時にアベノミクスの失敗と弊害を追及し、安倍政権の打倒を目指す。そのために野党4党の共闘路線を重視し、有権者の正しい理解を求めるため、以下の両者は04年共産党新綱領の趣旨に従い、改めて以下を確認する。
(1)今日の日本社会に必要なのは社会主義的変革ではなく、資本主義の枠内での民主的改革であり、私有財産の保障が基本となる。
(2)平和外交を重視するが、日米安保条約の廃棄や自衛隊の解消という共産党の政策は野党共闘に持ち込まない。
(3)天皇制を含めた現行憲法の全条項を守る。天皇制のあり方は、国民の総意によって決せられるものである。
(4)一党独裁制を否定し、議会制民主主義及び選挙による政権交代制を堅持する。
(5)地方自治の確立、労働基本権の擁護、男女平等、信教の自由及び政教分離原則の徹底を図る。
( 2016年10月03日,「赤旗」)
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政治考/野党共闘、参院選後も焦点/与党危機感次も大変だ
日本共産党、民進党などの野党と市民が共闘した7月の参院選からまもなく2カ月。現在行われている民進党代表選で候補者が「綱領や政策が異なる政党と政権を目指すことはない」(蓮舫代表代行)などと発言しているのを受け、一部メディアはもっぱら「民共共闘 隔たり鮮明」(「読売」3日付)と今後の野党共闘を否定的に報じています。ところが、野党共闘は、選挙後ますます政治の焦点になっています。
結果が出ている
「われわれが批判をして『(民進党と共産党の)主義が違い、政策が違うのにけしからん』とか言っても、参議院(選挙)で現に結果が出ている」。参院選での野党共闘の効果をこう認めたのは、自民党最大派閥・細田派会長の細田博之総務会長です。4日、長野県軽井沢町で開いた派閥研修会のあいさつで、民進党が今後も共産党との選挙協力を続けるだろうと予想したうえで、「漫然とたたかったら大変なことになる」と危機感をあらわにしたのです。選挙後、野党共闘を強く意識していたのは、公明党とともに3分の2の議席を占めた自民党でした。
細田氏は、埼玉県内で開いた党衆院議員の国政報告会でも「定員1の県で(共産党の)候補が降りてしまった。民進党と協力するという選挙を始めたんですね。その結果、わが党は大変な苦戦を強いられ、11県で負けた。次の選挙は大変だとわかった」(「朝日」デジタル3日付)と述べ、野党共闘に対抗するために衆院小選挙区で得票率5割以上を目指すよう檄を飛ばしました。
こうした危機感は政権与党内の共通した見方のようです。
政治アナリストの伊藤惇夫氏はネット動画「日本の話題」の中で、自民党の選挙責任者が「もし衆院選でも野党統一候補が実現した場合、参院選の結果を当てはめてみると86人が落選する」と分析し、「政権与党が一番警戒しているのは実は共産党の動きだ」として、野党共闘を積極的に進めている共産党を意識していることを紹介しています。
厳しい戦い
野党統一候補の芝博一参院議員(民進党)が自民党に競り勝った1人区の三重選挙区では、自民党県連幹部が「再び野党共闘をやられれば打つ手がない。次も厳しい戦いを強いられる」(「朝日」三重県版8月12日付)と語る情勢。民進党代表選をテーマにとりあげた日刊スポーツ2日付のコラム「政界地獄耳」も「野党統一候補など野党共闘を最も恐れているのは自民党だ」と指摘しています。
野党共闘などについて論考を発表している五十嵐仁・法政大学名誉教授は「政権与党側にこれほどの危機感を生み出した野党共闘を『衆院選だから』ということでやめようというのはありえない話」としてこう指摘します。「民進党代表選候補の人たちは『国民の信頼を取り戻す』といっています。であれば、参院選に向けて共産党など野党や市民との間で交わした確認事項を守ることこそ、信頼を取り戻すことになります」
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政治考/野党共闘、参院選後も焦点/違いを認め、一致点で共同
「野党の共通政策」実現する確かな道
安倍政権が参院選後も危機感を強めている野党と市民の共闘。15日に新代表を選出する民進党代表選候補からも発言が出ています。
蓮舫代表代行「参院選での共産党を含む野党連携に一定の評価はある。衆院選で綱領や政策が異なる政党と政権を目指すことはない」
前原誠司元外相「参院選での野党共闘は一定の結果があったが、衆院選は政権選択選挙なので、(野党共闘を進めた)岡田克也代表の路線は一度リセットすべきだ」
玉木雄一郎国対副委員長「基本的な考え方が違う政党とは一線を画すのが大原則だ。中長期的には単独で政権を担える政党にならないといけない」(いずれも2日の候補者共同会見)
連合政権の基本
参院選での野党共闘は評価しつつも、政権のあり方が問われる衆院選は別問題とみる主張です。五十嵐仁・法政大学名誉教授は、「安保法制(戦争法)廃止・立憲主義の回復」の大義を実現するには参院選だけでなく衆院選でこそ求められると指摘したうえで、野党共闘のあり方について問題提起します。
「綱領や政策が異なっているからこそ、一致できる部分に限って行動するというのが統一戦線の基本です。連合政権についても同じです。別の政党ですから綱領や政策が異なっているのは当たり前ですが、そのような政党が共通の目標や一致する政策の実現を目指して手を結ぶのが連合政権ではないでしょうか」
実際、2009年に発足した鳩山連立政権は、綱領や政策が異なった民主党や社民党、国民新党による連立政権でした。いまの安倍政権も綱領などの異なる自民党と公明党による連立政権であり、世界では連立政権が当たり前になっていると五十嵐氏。「違いを認め、その中で一致点、共通点を探してともに力を合わせるのが基本の『キ』なのです」
日本共産党の小池晃書記局長は5日の記者会見で、民進党など4野党間で衆院選でも「できる限り」の協力を行うことを何度も確認し、野党の共通政策でも、「安保法制廃止・立憲主義の回復」「アベノミクスによる格差と貧困の拡大を是正する」「安倍政権の下での憲法改悪に反対する」ことなどに加え、15本の野党の共同提出法案や「市民連合」との間で確認した19項目の政策などを豊かに発展させていることを強調しました。
「共闘継続を」の声
五十嵐氏は「こうした共通点があるからこそ、参院選で共闘が実現したわけです。その力は市民の力。1人区での選挙協定や確認事項などによって積み重ねられた一致点は、政権を共にすることによってこそ実現できるものではないでしょうか」と問いかけます。
現場では、野党と市民との共闘は、「行き詰まる」どころか「この道しかない」という声が高まっています。共同通信社が行った民進党47都道府県連幹部による聞き取り調査によると、次期衆院選での野党共闘について、22都道県が「継続」を求め、「やめるべきだ」とした9府県を大きく上回っています。
野党共闘をめぐるこの間の主な動き
【2015年】
9月19日 安保法制=戦争法が強行成立。日本共産党が「戦争法廃止の国民連合政府」提案を発表
【2016年】
2月19日 共産、民主、維新、社民、生活の5野党党首会談で、安倍政権打倒を目指し国政選挙などで協力を行うなど4項目で合意
23日 党首会談合意を具体化する野党書記局長・幹事長協議がスタート。安保法制廃止以外の「共通政策」も協議することで合意
4月24日 衆院北海道5区補選で、野党統一候補の池田真紀氏が自民候補を追い詰める大健闘
5月13日 共産、民進、社民、生活の4野党書記局長・幹事長協議で、衆院選でも4党が「できる限り協力」するために努力することで一致
19日 4野党党首会談。参院全1人区で統一候補勝利に全力をあげ、衆院選についてできる限りの協力を行い、その具体化の加速で合意
31日 4野党で安倍内閣不信任決議案を共同提出(自公などが否決)
6月1日 4野党書記局長・幹事長協議で「共通政策」の柱を確認
7日 4野党が「市民連合」と政策要望書を交わす
7月10日 参院選投開票。32の1人区中11選挙区で野党統一候補が勝利
12日 4野党書記局長・幹事長会談で、参院選結果を受け、4野党が引き続き国会活動での協力を強め、さらに総選挙に向けた協議を進めていくことを確認
( 2016年09月08日,「赤旗」)
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政治考/シリーズ市民と野党の共闘/深化した市民運動の力
先の参院選で全国32の1人区すべてで共闘を実現し、11の選挙区で野党統一候補が勝利しました。共闘の実現に市民運動が果たした役割、日本共産党の存在意義について考えます。
(佐藤高志、中祖寅一)
「共産党を含めた野党共闘が実現した要因の一つは、民進党と共産党を接着する市民運動の力が働いたためだと思います」。先の参院選で力を発揮した野党と市民の共闘について都留文科大学の進藤兵教授(政治学)は、こう指摘します。
直接行動で示す
原発再稼働反対・脱原発、秘密保護法反対、集団的自衛権行使容認の「閣議決定」反対、安保法制=戦争法反対など、首相官邸前や国会前での市民の抗議行動は空前の広がりを見せました。乳飲み子を抱えた若い母親やOLなど、従来見られなかった幅広い市民が、政治への怒りを直接行動で示しました。昨年8月30日には国会前で10万人、全国では200万人が戦争法に対する怒りの声をあげ、戦争法案廃案を目指す国会での野党共闘が進みました。
戦争法が強行された即日(9月19日)、日本共産党が戦争法廃止の「国民連合政府」提案と野党の選挙協力を打ち出し、「野党は選挙で共闘を」という声が高まります。
「安保関連法に反対するママの会@東京」の町田ひろみさん(保育士)は語ります。
「『安保関連法を廃止に』から始まったママの運動でしたが、与党・野党の議員と懇談を重ねる中で参加メンバーは、安保法制が沖縄の基地問題やTPP(環太平洋連携協定)など本当にいろいろな問題とつながっていることに気がつきました。選挙で勝って、政治を変えることがすべての解決に向かう一歩だと気がついたのです」
市民運動は、自らの要求実現のため、国会の力関係を変化させる方向に向かい、野党同士を「接着」する役割を果たしたのです。
進藤氏は「小選挙区や1人区という選挙制度では二大政治ブロック≠ノまとまっていく傾向がありますが、『二大政党』制ではなくて、野党の共闘による政権への対抗軸を求める声が運動の中から生まれてきたのは重要です」と指摘します。
提案能力が向上
「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」(略称=市民連合)が参院選をたたかう上で日本共産党、民進党、社民党、生活の党の4野党と「政策要望書」に基づき協定を結びました。安保法制の廃止や改憲阻止だけでなく、最低賃金引き上げ、住宅を含む社会保障の充実、脱貧困のための税制、脱原発など国民の暮らしにかかわる政策も入りました。
進藤氏は「市民運動が全国各地で広がるとともに、その政策提案能力が向上しました。そうした力もあって、政党が政策的な一致点を積み上げた」と共闘の深化に注目します。
元外務省国際情報局長の孫崎享氏は、「安保政策に隔たりのある民進党と共産党が話し合うだけではなかなかうまくいかないが、市民運動が、発火点、対話の中間項として、両者が歩み寄れる状況をつくった」と市民運動の役割を重視します。
( 2016年08月28日,「赤旗」)
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政治考/シリーズ市民と野党の共闘/共産党の存在と野党再生
「共産党は、しっかりした綱領を持っていて、安全保障の面でも、暮らし・経済の面でも深く分析し、問題の根っこをとらえたうえで政策提起できる力がある」。都留文科大学の進藤兵教授(政治学)は、日本共産党綱領で掲げる日本改革の方向とともに、共産党が野党共闘で柔軟な対応をとったことにも注目します。
現実的対応の党
日本共産党は、綱領では日米安保条約の廃棄や自衛隊解消を掲げつつ、その独自政策を安保法制廃止の共闘には持ち込まないことを確認し、選挙協力を進めた現実的対応をとっていると評価します。
元外務省国際情報局長の孫崎享氏は、政権与党の暴走に対し、野党らしい野党が一番要求されなければいけない時期に「野党第1党の民進党はじめ、野党が野党性を持てないできた」と指摘。「1980年ぐらいから米国と日本の支配層は、野党つぶしを意識的に追求してきた。共産党以外の野党、社会党や総評なども安保容認に取り込んできた」とし、「政策面で米国や財界に引き寄せられて、対立軸をつくれない野党勢力が、共産党と協力することによってはじめて野党性をもった方向に政策を転換できるチャンスになる」と述べます。
分断を打ち破る
孫崎氏は、長年の野党分断政策を打ち破っての歴史的な共闘の前進に期待を寄せ、「次の衆院選挙でも共闘を必ず実現してほしい。あるべき野党の塊≠実現できるかの岐路になると思う」と述べます。
また進藤氏は、「戦争法廃止という課題は非常に重要ですが、生活に身近な問題とあわせて訴えないと宙に浮いてしまいかねない」「東日本は西日本より比較的大規模農家や専業農家が多く、TPP参加への不安が強い。原発事故の影響も深刻です。だから、野党統一候補の訴えが良心的保守層も含めた広範な支持につながった」といいます。戦争法の問題に加え、地域の生活に根差した対抗軸を合わせて示す、「共通政策」の広がりが重要だったとの認識です。
米軍新基地建設、TPPや原発などの住民生活に密接な関連を持つ課題は、市民運動が一貫して追求してきたもの。安倍政権の主要政策でありながら、民意の上でも常に世論の多数の反対を受けてきました。
日本共産党はこれらの課題で、市民と一点共闘の連帯を積み重ねてきました。一点共闘の広がりが、幅広い野党共闘を創り出す土台になりました。
( 2016年08月28日,「赤旗」)
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「しんぶん赤旗」魅力と役割/野党・市民共同の機関紙/共闘の姿生き生きと
戦後最悪の安倍政権によって、憲法9条破壊の危険な情勢が進展する一方、戦後かつてない野党と市民の共闘が発展しているという、歴史的な大激動が日々展開しています。このなかで、「しんぶん赤旗」はどんな役割を果たしているのか、具体的な紙面で考えてみました。(随時掲載)
全国32の1人区すべてで野党統一候補が実現し、11選挙区で激戦を制して自民党に勝利した参院選。開票日(7月10日)の翌日、三重選挙区の野党統一候補・芝博一参院議員が事務所で「しんぶん赤旗」を広げながら、「(自分の記事が)載っとるやん」「史上初かも。『赤旗』に載るのは」と笑顔で記事を指している場面が民放テレビで放送されました。「『赤旗』を読まないとたたかえない」「共闘を求める市民の動きがよくわかる」―選挙前から、民進党や生活の党など共闘する国会議員、地方議員から「赤旗」購読の申し込みも相次ぎました。
「うれしい言葉」
「赤旗」は、文字通り野党と市民の共闘を進める「共同の機関紙」としての役割を果たしてきた新聞です。
参院選での野党と市民の共闘の前進は、安倍政権による異常な野党共闘攻撃・共産党攻撃に反撃するなかでかちとったもの。「赤旗」は、一般紙やNHKなどが垂れ流す安倍晋三首相らの言い分に対して、それがいかに市民・国民に対する攻撃かを明らかにし、野党党首らが市民と共闘する姿を生き生きと伝えました。
参院選後も、当選した野党統一候補の抱負を聞くインタビューを掲載。このなかで新潟選挙区の森裕子議員は「日本共産党が野党共闘を猛烈に引っ張ってくれたことが勝利の大きな要因の一つであったことは異論の余地がありません」と指摘。読者から「うれしい言葉でした」など反響があり、紙面を通してさらに絆が深まっています。
新たな前進ルポ
さらに、市民と野党の共闘が参院選後も新たな形として進展している姿をルポ「激変・新たな前進へ」として青森、宮城、福島、新潟、山梨、神奈川、香川などの選挙区を紹介。ルポは今後も続きます。
時の政治問題を多角的に考える「政治考」では、「市民と野党の共闘」をシリーズテーマに連打しています。「興味深い企画で何度も読み直しています」「参院選の結果を過小評価していた自分に気づきました。あせらず、止まらず、身近な人との信頼をつみあげましょう」などの感想が寄せられています。
( 2016年08月25日,「赤旗」)
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政治考/シリーズ市民と野党の共闘/政治との距離感縮まった
「政治と自分たちの距離感は縮まった。今までは、選挙で1票を投じる以外にかかわり方を知らなかった。(選挙で)こんなにもいろいろなことができるとわかったし、何より政治家が私たちの声でこんなに変わってくれるという実感も得た」
野党統一候補・芝博一氏が大激戦を勝ち抜いた参院三重選挙区。その当選のため、市民と野党の共闘の先頭に立って奮闘した「市民連合みえ」の岡歩美さんはこう言って目を輝かせます。
「お任せ」を脱皮
「市民と政治家が対等に意見を言える関係こそが、本来の政治だと改めて実感した。候補自身の考えも変わることで市民の側も変わった。市民には、何を言っても変わらないというあきらめがあったし、どこか『お任せ』のところがあった。けれど、候補の芝さんが変わっていく姿を見て、市民の側も自分たちの役割を実感できた。その相互関係がいい関係だと思いました」と語ります。
「選挙中、毎日、ずっと芝さんと一緒にいた」という岡さん。芝氏は神社の神主でもあり、政治信条のうえで共産党との共闘にはためらいもありました。どこへいっても共闘を示す市民連合のピンクのプラカードが揺れるのを見て、芝氏も「絶対に負けられない」「エネルギーをもらった」と変わっていきました。
選挙最終盤、芝氏が「一番変わったのは私です」と演説。多くの市民がいっそう奮い立ち、安倍政権総がかりの猛攻を打ち破ったのです。
次の衆院選に
岡さんは語ります。
「勝つことができて次につながった。これまで沖縄や大阪で、共闘して勝ったからこそ今の形がある。三重で勝ったことで次の衆院選につながればいい」
岡さんたちは、衆院選へ向け、三重県内にある五つの小選挙区ごとに市民連合を再編成し、選挙区ごとの野党共闘を進める計画を話し合っています。芝氏も、「衆院選でがんばらないと。野党は力を合わせないといけない」と発言しています。
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政治考/シリーズ市民と野党の共闘/自分のこと、日常の中に/共闘の姿もっと前面に
山形県で、舟山康江野党統一候補の勝利に奮闘した勝手連「舟山やすえを勝手に応援するかあさんたち」。呼びかけ人の一人で、2児を育てる農家の山本典子さん(45)は語ります。
「政治って、結局全部暮らしにかかわることなのに、なんか切り離されている。今まで政治は政党、私らは自分の暮らしを考えればいいと思ってしまっていたけれど、そういうわけにはいかない時代になってきた」、「(共闘選挙をたたかって)自分たちにも役割があるし、自分たちが選ぶことになるのだと、すごくよくわかった」
初めて選挙の応援弁士を務め、手作りの宣伝物もつくり、多くの激励が寄せられました。蚊帳の外≠セと感じていた政治・選挙との距離が縮まり、積極的に向き合う姿勢に変わりました。
「これは最初で、ずっと続けていくためのスタートです」と、次のたたかいへ思いを巡らす山本さん。「政治を自分のこととして考え、意思表示し、関心を持ち続ける。それは、ご飯や歯磨き、お風呂、仕事といった生活の一コマとして、日常の中に入ってくるものだと思う」と話します。
横の連携強めて
舟山氏の地元である山形県小国町をはじめ、3市5町からなる置賜(おきたま)地域で活動する「戦争やんだ!おきたまの会」の事務局長、菅原庄市さん(61)=農業=も語ります。
「置賜で、初めて政治、選挙運動の前面に市民運動が顔を出した。市民とか庶民っていう名前を立てて、各政党に対して、違う立場から物申すのは山形で初めての出来事ではないか」、「今後の課題は、政党が野党共闘の姿をもっと前面に出していくことに加えて、市民も横の連携をいっそう強めていくことが必要だ」
衆院小選挙区を中心とした議席の独占≠ェ暴走政治の「基盤」となっています。この虚構の多数≠頼みに安倍政権は、「世論の多数」が反対の政策を強行する少数独裁≠強めてきました。それにストップをかけるには、自民党が議席を独占してきた参院1人区や衆院小選挙区で、市民と野党が意見の相違を乗り越え、力を合わせるしかありません。
立憲主義破壊という政治の危機を前に進んだ市民と野党の共闘は、小選挙区制のもとでの抵抗戦術という意味も持ちます。
自民党議員の一人は参院選結果について、「表向きは与党圧勝だが、参院選1人区で12から13の重点区を指定して総力を投入したが、11選挙区で負けた。勝った気がしない」と語ります。
「勝ちじゃない」
自民党幹部は「うまくはいかないものだ。全然勝ちじゃない」と漏らし、安倍晋三首相は側近たちに「『勝ってなんかいないからな』と吐き捨てるように語った」と報じられています。
「強い」自民党をさらに上回る力を示したのが市民と野党の共闘でした。
三重では無党派の6割が、山形では無党派の7割が野党候補を支持。三重では改憲問題を重視するとした有権者の約8割が芝氏に投票しました。
選挙後、共闘の体験についての講演依頼も来ているという「市民連合みえ」の岡さんは、8月に入り、米軍ヘリパッド建設が強行されている沖縄県東村高江の現場を1人で訪ねました。抵抗闘争に参加し、おじい、おばあや、全国から集まってくる同世代の若者らと交流しました。
「大学のときから沖縄が大好きでよく来ていたけれど、辺野古のことも高江のことも知らなかった。安保法制を考えるうえでも、手続きがおかしいとか憲法違反だけでなく、日米安保の問題に目を向けないといけないと感じた」
共闘のこれからを見据え、こう語りました。
(中川亮、中祖寅一)
( 2016年08月14日,「赤旗」)
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政治考/シリーズ市民と野党の共闘/「野合」どころか民主主義の基本
先の参院選で、戦後初めて取り組まれた、野党と市民の共闘選挙。全国32の1人区すべてにその枠組みが広がり、野党統一候補が激戦の末、11の1人区で自公連合を打ち破るという画期的な成果をかちとりました。野党統一候補の得票を衆院小選挙区に当てはめると、すべての選挙区で自公連合を上回る県もあります。自民党幹部の一人は、「衆院小選挙区で野党共闘になれば(自公は)80は落とす」と党内で語っています。市民と野党の共闘は日本の政治に何をもたらしたのか。シリーズで考えていきます。
「野党共闘は、民主主義の基本的な形だと思います。政策的一致点が少ない人たちが、それでも一致点を求めて集まる」
安全保障関連法に反対する学者の会の発起人で哲学者の内田樹氏はこう述べます。先の参院選で安倍政権は「政策の違うものが選挙協力をおこなうことは野合だ」と激しく攻撃しました。
一致点見つけて
「哲学者のオルテガ・イ・ガセットは『民主主義とは反対者とともに統治すること』といっています。政策的に意見が違っても、一致できる点があれば、そこを共通理解の基盤にして、ものを創り出していく。これは民主主義の基本です」
内田氏は、民主主義における政治活動は「多数派形成」ととらえられがちだが、意見の違いをなくすという以前に、意見の違いを前提に一致点を見つけ、合意形成するコミュニケーション技術が重要だと強調。「その技術のない民主主義は民主主義ではない」と述べます。
「日米同盟強化」の名のもとに、憲法を無視し自衛隊を海外で米国の戦争に参加・協力させる安保法制=戦争法。野党共闘は、戦争法廃止・立憲主義回復、安倍政権の暴走ストップを大義に成立しました。
しかし「日米同盟強化」について、民進党や生活の党と日本共産党とでは立場が違います。共闘を求めた市民の側にも、さまざまな意見があります。
対立越えて発展
日本の政治のあり方をめぐる基本的な「対立」を乗り越え、野党共闘は成立・発展しています。安全保障政策はどんなに重要でも、日米同盟のためだからといって憲法を壊していいのか、近代立憲主義という政治の根本原則を無視する政治は許されない、という一致点が確認されました。
内田氏は、「自他の政治的相違点を言い立て、異なる点が一つでもあれば一緒にやれないというのは、一種の政治的反知性主義だ」と指摘。「異論と共生し、ひとつでも共通点があれば話し合い、合意形成できる。当面の暫定的な目的実現へ、どうすればいいか、具体的で現実的な議論ができる。高度な政治技術と多面的な交渉能力も要求されます。そのような場を立ち上げることが、民主主義においては最も重要です」と述べます。(2面につづく)
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政治考/シリーズ市民と野党の共闘/二大政党制乗り越え、新たな対案模索
「(共闘に参加する政党の間で)日米安保体制の評価をめぐる対立は残るでしょう。しかしその対立を理由に、共闘が分断されることは望みません」
東京大学社会科学研究所の宇野重規教授(政治学)は述べます。
「(安保体制で)対立があることを否定するべきではなく、否定できないからこそ一つの政党にはなれず、『共闘』にならざるをえないのです。一つにはなれないが、今の日本社会のままではいけないというところで手を結び、別の日本の像を具体化する共通の作業を進めていく。それが共闘の望ましい姿です」
日本像を具体化
宇野氏は、1990年代以降、小選挙区制を基礎にした保守二大政党制が志向されたが、日本の政治は二大政党制にはおさまらず、安保体制をめぐる対立軸もなくなっていないと指摘。そのもとで安倍自公政治に強い批判が出るもと、再び連合政治が見直されるべきだと述べます。
「小選挙区制を基礎とした保守二大政党制で問題を解決できるという時代は終わりました。安倍自公政治がますます独裁的色彩を強めるのはよい未来像ではない。他方、もういちど雑多な勢力を集めてガラガラポンとすればよいとはならない」と強調。「野党共闘を通じて、もう一つの日本像を具体化するしか、日本社会を支える道はありません。これは歴史の一歩前進であり、共闘は新たな社会像の模索の場として大きな歴史的使命を負う」と述べます。
東北勝利に注目
新たな日本社会の姿を模索する「場」としての野党共闘―。宇野氏がそこに期待する中身は、政権の恣意(しい)的な安全保障政策によって自衛隊が海外の前線に送られる立憲制の危機への抵抗と同時に、社会経済政策の転換の提示だとします。
宇野氏は東北地域での共闘の勝利に注目します。アベノミクスの「果実」は地方に全く届かず、復興は遅れ、原発事故はなかったかのように無視され、環太平洋連携協定(TPP)で農業をはじめ地域の基幹産業が全面的に破壊される危機感が広がる実情は、共闘発展の大きな土壌となりました。参院選では、東北6県のうち5県で野党統一候補が勝利する圧勝でした。
宇野氏は、「『このままでは衰退の一方だ。立ち上がらないといけない』と、地方からいろいろな政治の組み合わせを実験する動きが出てきた。これは『安倍以降』を考えるうえで最も重要な動き」と指摘。「アベノミクスの矛盾は地方で最も深刻であり、少子化や地方創生の代替案模索のプロセスとして考えると、地方・地域から新しい共闘の文化を広げていくことが重要です」と語ります。
(中祖寅一)
( 2016年08月09日,「赤旗」)
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政治考/野党共闘/政権打倒へ可能性示す
32の参院1人区でたたかわれた歴史的な市民と野党の初の共闘選挙。勝利した11選挙区をはじめ、安倍政治への批判の受け皿となった野党共闘は、どのような可能性を示したのか―。
「共闘が勝因」
民進党の岡田克也代表の地元・三重選挙区で激戦を制した芝博一氏。開票から一夜明けた11日、民放テレビで激戦を振り返るなか、事務所で選挙結果を伝える「しんぶん赤旗」を広げる場面が映し出されました。「(自分の記事が)載っとるやん」「史上初だ」と記事を指さしました。共闘が新しい政党間の信頼関係をつくり出していることを示す1シーンです。
自民党は岡田代表の地元でのたたかいを「天王山」などと位置づけ、安倍晋三首相はじめ政権・与党幹部を連続投入して、激しい押し上げをはかりました。伊勢新聞は「市民団体を介した野党候補の一本化」「共産との共闘が勝因」と強調しました(11、12日付)。
安倍首相が3度も選挙区入りするなどして、激烈な競り合いとなった長野選挙区―。信濃毎日11日付は「『改憲阻止』野党共闘結実」との見出しを掲げ、野党統一候補の杉尾秀哉氏が「県内77市町村の76・6%に当たる59市町村でトップだった。衆院小選挙区別得票でも杉尾氏は全て最多」と指摘しました。県内の1〜5区の全ての衆院小選挙区で、野党統一候補の得票が自公連合を上回ったとの指摘です。市民と野党の結束で「政治を変える」可能性が現実的に開かれる可能性を示しました。
与党揺るがす
野党共闘の威力≠ヘ与党を震撼させています。開票を受け、ある与党幹部は「(1人区で)数議席は取ると思っていたが、まさか11も負けるとは思っていなかった」と語りました。福島選挙区で落選した岩城光英法相は12日、敗因を分析し、「安倍政権を打倒する意味での野党共闘は、それなりの成果をあげると思う」と述べました。
他方、激戦の末、当選した民進党議員の一人は「1人区での勝利は、共産党の英断と奮闘のおかげだ。本当に感謝している」と語ります。
東北6県では5県で野党統一候補が勝利。東北6県のブロック紙・河北新報11日付は「東北 与党惨敗1議席 野党共闘、5県で奏功」の大見出しを掲げ、「野党共闘 無党派に浸透 東北6選挙区 5〜7割占める」としました。
震災復興の遅れ、農漁業を破壊する環太平洋連携協定(TPP)、アベノミクスの「成果」がまったく届かない―。「河北」12日付は、「政治の光が陰り、しぼむ人々の暮らし。野党共闘が花開く土壌は東北地方に広がっていた」と書いています。
( 2016年07月13日,「赤旗」)
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政治考/戦争法廃止か明文改憲か/法施行めぐる対決局面
29日の戦争法施行を前に、安倍晋三首相は野党提出の戦争法廃止法案に対し、「廃止すると、せっかく強化された日米同盟の絆が大きく損なわれる。わが国の安全保障に対して極めて重大な影響を与える」(25日の参院予算委員会)とかたくなに拒否しています。一方で、立憲主義破壊に対する厳しい批判に挑戦するかのように、明文改憲発言を繰り返しています。戦争法強行で極限まで高まった憲法との矛盾。安倍首相は攻撃的姿勢を強め戦争法施行日を迎えようとしています。
(中祖寅一)
改憲・右翼団体「日本会議」と一体の議員連盟、日本会議国会議員懇談会(平沼赳夫会長)は22日、国会内で開いた総会で「緊急事態条項」創設を優先課題とする運動方針を決めました。
安倍首相自身、かつて同議連役員を務めていました。自民党大会(13日)が行われた都内ホテルでは日本会議地方議員連盟の会合が開かれ、党大会終了後にこの会合に安倍首相が参加しています。
人権抑圧の危険
自民党改憲草案(2012年4月)に盛り込まれた「緊急事態条項」は、「外部からの武力攻撃」に際し、内閣と首相に権限を集中し、内閣の発する政令で人権制限を可能とするものです。「お試し改憲」などではなく、戦争法と一体での「戦争する国づくり」の一環。戦争法体制のもとでの「緊急事態条項」は、有事=緊急事態を口実に乱用され、戦前のような人権抑圧をもたらす重大な危険があります。
安倍首相は「在任中に(明文改憲を)成し遂げたい」とまで明言しました(2日)。日本会議系の首相側近議員らは、首相の18年9月までの総裁任期を延長するよう主張しています。
ラストチャンス
自民党関係者の一人は「安倍首相は(7月の参院選に総選挙をぶつける)ダブル選を狙いながら、憲法改正を一つの争点にする。改憲はこのタイミングでやっておかないと先々まで手が付けられなくなる」と指摘します。
さらに「北朝鮮の核開発や中国の南シナ海での人工島建設、各国でのテロなどの動きもあり、これらを理由付けにして憲法改正に乗り出す。安倍首相と日本会議の意思はそこにある。今度の選挙がラストチャンスだ」と述べます。
しかし、内閣支持率下落や野党選挙協力が前進するなか、ダブル選と明文改憲へ踏み出すというシナリオは狂い始めています。
自民党の憲法改正推進本部の関係議員は、「安保法制廃止の声に対し、明文改憲を争点化すれば対立が非常に先鋭化する。選挙になれば厳しい」「表立って語らず、選挙で勝てば改憲を進めるというのが首相の本音ではないか」と語ります。
( 2016年03月28日,「赤旗」)
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政治考/戦争法廃止か明文改憲か/野党共闘、想像以上の力=^経済失政、暴言・不祥事やまず
安倍晋三首相は、昨年末ひそかに行った情勢調査から、「ダブル選挙なら圧勝」という結果を受け、夏の参院選挙に衆院解散・総選挙を重ねるダブル選の戦略を描いてきました。「圧勝」を背景に明文改憲に乗り出す狙いです。自民党関係者の一人は「いま状況が変わってきた」と述べます。
甘利明前経済再生相の口利き疑惑辞任、新婚宮崎謙介衆院議員の不倫辞職など、相次ぐ閣僚・議員の暴言、失言、失態。日銀マイナス金利が裏目に出て、円高・株安と経済失政への不安増大。保育園落ちた<uログ・待機児童問題をきっかけとする貧困・格差への不満爆発。内閣支持率の下落―。政権と自民党執行部には危機感が強まっています。
おごり・たるみを注意しても、それでも不祥事は止まりません。
昨年、戦争法案の審議中に「(反対の)報道機関を懲らしめろ」「沖縄の2紙はつぶせ」などと暴言を吐き再三批判を受けた大西英男衆院議員が、再び低劣な暴言――。24日の派閥の会合で、衆院北海道5区補選の応援に入った際、札幌の神社の巫女(みこ)から「自民はあまり好きじゃない」と言われ、「おい、巫女さんのくせになんだと思った」「巫女さんを誘って、札幌の夜、説得しようと思った」と語ったというのです。自民、公明両党内からも「不適切だ」と批判が噴出しています。
自民党関係者の一人は、「保育所問題でも対応が後手に回り、リスク管理がうまくいっていない。考えられないような不祥事が次々と出てくる」と、憔悴(しょうすい)した表情です。
市民と連携進む
戦争法廃止を目指す野党共闘合意に基づき、参院1人区32のうち10選挙区で統一候補擁立が決まりました。さらに広がりを見せ、選挙協力態勢も進みつつあります。学生、学者、ママなど市民連合の連携、後押しも広がっています。
ある議員は「(衆院補選の)北海道5区で負ければリスクが高いとしてダブル選へ慎重論が出る」と述べます。別の議員は「厳しい結果なら、なおさらダブル選の可能性は高まる。参院単独でやれば厳しい。野党共闘は想像以上の力を見せている」と述べます。
安倍政権への批判の強まりと野党共闘、市民の連携の前進のもとで、安倍首相のダブル選戦略はジレンマを抱えつつあります。
「読売」憲法世論調査(3月)では、8年ぶりに憲法改正に「反対」が多数となり、「賛成」を逆転。自民党関係者は「安保法制をめぐる世論の動きが反映した」とみます。
「選挙で決着を」
閣僚経験者の一人は、「改憲というと誰もが9条を思う。『やりやすいところから』といっても結局9条だ。抵抗が大きく、改憲でダブル選はきつい。かといって増税延期だけでは大義にならない」と述べます。党内からは「改憲を争点にすれば、町内会や商店街など古い自民党支持層、保守層にもためらいが生まれるだろう」との声も漏れます。
戦争法廃止か明文改憲か。国民と安倍政権の対決は鋭さを増しています。
元外務省国際情報局長の孫崎享氏は、「アメリカの戦略のために自衛隊を海外で使うことを許すのか。米国務省の統計でも2000年に500人程度だったテロ犠牲者は、14年には3万人になっている。危険は自衛隊員だけでなく一般市民の問題だ」と指摘。「政治が憲法秩序の外に出て行く。そういう状態をどうするかは最終的には主権者である国民の意思にかかっている。選挙で決着をつけるしかない」と語ります。
( 2016年03月28日,「赤旗」)
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政治考/情勢一変、北海道5区補選/支持率急落、政権に危機感/安倍首相自ら電話で檄
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安保法制=戦争法廃止などを共通目標にした日本共産党、民主党、維新の党、社民党、生活の党の5野党の選挙協力が進む一方、内閣支持率が急落しています。夏の参院選を前に「自公対5野党・市民」の対決となっている衆院北海道5区補欠選挙(4月12日告示・24日投票)でも政権・与党に激震が続いています。
引き締めに躍起
「アベです」「どちらのアベさんですか」「総裁の安倍晋三です」
こんな電話が、北海道5区内の自民党地方議員に軒並みかかってきている―同党地方議員がこぼしています。
安倍首相自ら電話をかけ、「本当に厳しい選挙。和田義明候補をよろしく」と選挙の引き締めに躍起です。和田氏は、故・町村信孝元衆院議長の娘婿で、その後継候補として出馬表明しています。
閣僚経験者の一人は「北海道5区は危機感が深い。もともと北海道で自民党は強くはない。野党共闘と市民の連携の中では相当厳しい。しかも共産党の支持率が高くなっている」と警戒。自民党関係者の一人は「直近の情勢調査で、対立候補との差が数ポイントになっている。ダブルスコア以上で『楽勝』と言っていたが、状況が変わってきた」と打ち明けます。
自民党執行部は「応援に人を出せ」と通達も発出。町村氏が率いた派閥(現・細田派)を中心に、数十人の国会議員と100人以上の秘書団の派遣要請も出ているといいます。
しかし、ある関係者は「他人の応援をしている余裕はない。(国政選挙で)5野党一本化が進んで一騎打ちとなるところは、厳しいたたかいだ」と表情を固くします。
分析できぬ原因
いま安倍政権が慌てているのは報道各社の世論調査です。「毎日」7日付調査で内閣支持率は前月比で9ポイント急落し42%。逆に不支持率は8ポイント増の38%となりました。共同通信の2月20、21両日の調査で支持率が7ポイント急落したのに続きました。
「(下落の)原因が明確に分析できていない」。政府関係者の一人はこうこぼし、言葉を続けました。「甘利前経済再生担当相の口利き疑惑や閣僚の失言、宮崎議員の不倫辞職など一連の不祥事のうえ、日銀のマイナス金利が裏目に出て、株価の下落など経済政策の混乱という印象も与えた」。政府関係者は「(参院選に向け)野党共闘が進み、1人区は激戦になってくる。野党が不満の受け皿になれば内閣支持率にも影響は出る」と述べます。
安倍首相は13日の自民党大会で「今年のたたかいは、自民・公明連立政権対民共勢力とのたたかいになる」「平和安全法制を廃止したら日米同盟の絆は大きく損なわれてしまう」と語気を強めました。危機感の表れです
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政治考/情勢一変、北海道5区補選/「保育園」批判爆発/野党共闘、勢い増す
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衆院北海道5区内の新篠津村。自民党の和田義明補選候補の支持に動いた新党大地の後援会が、2月中旬に解散しました。「鈴木宗男さんはTPP(環太平洋連携協定)に反対してきたのに、TPP推進の自民党に選挙協力するのは納得できない」という理由です。
大地取り込むも
北海道の地方政党・新党大地を率いる鈴木宗男元衆院議員は昨年末以来、たびたび安倍首相と面会し、5区補選で自民党支持に回る動きを示してきました。鈴木氏の長女で2014年の総選挙で民主党から北海道比例1位で当選した貴子氏は、民主党が共産党を含む野党共闘を進めることに「反発」し、2月末に離党を表明。民主党サイドは、比例議席を返上するよう求め、反党行為として除籍とする方針を示しています。自民党関係者は「執行部や官邸は、鈴木氏が支持に回って楽勝などと言っていたが、そんなに甘くはない。もともと新党大地は衰えているし、今度の鈴木氏側の動きは有権者に理解されるのか」と述べます。
さらに安倍政権と自民党が危機感を強めているのが、保育所の待機児童問題をめぐる国民的批判の噴出です。
「保育園落ちた日本死ね!」というブログへの書き込みをめぐり、民主党の山尾しおり議員から待機児童解消問題の深刻さを突きつけられても、安倍首相は「匿名なので確かめようがない」と突き放し、自民党議員は「(書いたのは)誰だ、それ」とヤジを飛ばしました。(2月29日の衆院予算委員会)
書き込みの背後にある抜き差しならない切迫感と絶望感を全く受け止めず、強いものに優しく弱いものに厳しい自民党政治への批判が噴出。5日には、「保育園落ちたのは私だ」と同じ苦しみを抱える母親たちが国会前でプラカードを掲げました。日本共産党の田村智子、吉良よし子両参院議員も駆けつけ、ツイッターやフェイスブックで共感が爆発的に拡大しました。
内閣支持率急落が重なったこともあり、安倍政権は11日、大慌てで「1億総活躍プラン」に保育士の待遇改善を追加することや、待機児童問題で特命チームを設置することを決めました。ヤジを飛ばした一人の平沢勝栄議員もテレビ番組で謝罪しました。
現状認識が欠落
11日の参院本会議では、吉良氏への答弁で原稿を棒読みする安倍首相が「子どもが生まれたのに『保健所』に預けられない」と保育園を「保健所」と読み間違え、議場が騒然となる場面もありました。後手後手の対応は深刻な現状認識の欠落を印象付けています。
また安倍首相は内閣支持率の急落が発表された7日の参院予算委で、この間繰り返し明言してきた憲法9条改定について「国民的理解や支持は広がっていない」とトーンを大きく落とすなど慎重姿勢≠アピールしています。
自民党は、国民的怒りを背景に進む野党共闘に「民共合作」批判の特製ビラも準備するなどしています。しかし、戦争法廃止に加え個人の尊厳を守る政治を中心に共通政策を広げ、安倍政権打倒の大義ある共闘を広げる動きは勢いを強めています。
(中祖寅一)
( 2016年03月14日,「赤旗」)
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政治考/野党共闘、警戒強める政権/今度の参院選、大きな節目に/上智大学教授、三浦まりさんの話
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市民の声、その力があったからこそ、野党がここまで動いたと思います。平和と安保法制廃止を求める強い声に応えて野党が動いたのであり、その野党の動きが「野合」であるはずがありません。
与党は強い警戒をしており、私たちが勝利することは簡単ではありません。勝利には、本気で結束してたたかうことが必要です。そのために私たちは声を上げ続けます。
アベ政治を許さないことと同時に、オルタナティブ(代案)を示し、前向きなアピールを積極的にしていかなければいけないと思います。今度の参院選という一度の選挙は、平和と立憲主義の破壊を許すかどうかがかかっていると言えるほど、大きな節目となります。
( 2016年03月07日,「赤旗」)
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政治考/野党共闘、警戒強める政権/「自公対市民″\図怖い」
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安保法制=戦争法廃止などを共通目標にした日本共産党、民主党、維新の党、社民党、生活の党の5野党の選挙協力合意に対し自公政権側に衝撃が走っています。
安倍晋三首相は2日の自民党額賀派パーティーで「自公対民共、この対決になっているのではないか。だからこそ私たちは決して負けるわけにはいかない」と対決≠強調。「せっかくできた平和安全法制、そして『日米の絆』。これを壊そうとしているのは、民主党と共産党だ。だからこそ私たちは決して負けるわけにはいかない」とも述べました。戦争法が日米軍事同盟強化の「絆」であることの告白です。
自民党の稲田朋美政調会長も2日、参院宮城選挙区(改選数1)の選出議員のパーティーで「民共合作。いま自民党が相手にしているのは、ひ弱な野党ではなくて、共産党という確かな野党だ」と警戒感をあらわにしました。共産党を標的≠ノすることで、5野党共闘の分断をはかろうとする、姑息なやり方です。
しかし、宮城選挙区では、5野党党首合意(2月19日)に基づき、民主党公認の桜井充議員に候補者を一本化する政策協定の調印式が行われました。4日の5野党書記局長・幹事長会談では、桜井氏を「5野党統一候補」とすること、他の1人区でも調整・一本化することが確認されました。共闘は分断されるどころか、前進しています。
選挙に詳しい自民党関係者の一人は語ります。
「昨年の夏のようにシールズや若い母親など市民が前面に出て、市民中心の選挙運動になってくると、自公対市民≠ニいう構図になる。それが怖い。その怖さがあるからこそ、野党共闘の準備ができないうちに、という解散風も吹いてくる」(2面につづく)
( 2016年03月07日,「赤旗」)
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政治考/野党共闘、警戒強める政権/「野合」批判は通用しない/安倍暴走ストップで対抗軸に
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東北地域の自民党関係者は参院選の選挙区について、「東北6県(青森、岩手、秋田、宮城、福島、山形)はみな1人区。野党がまとまり一騎打ちになればどこも厳しい」と述べます。
別の自民党関係者は、「1人区はどこも地方の農村地域だ。安保法制よりTPPが厳しい対立になる」と危機感を示します。
島根・鳥取や高知・徳島のように県をまたいで一つの選挙区に「合区」となったところでは、広大な地域での活動になり、知名度対策の遅れなどもあるとして野党共闘に警戒が強まっています。市民との連携も含め野党側が共闘すれば、「かなりの機動力になる。保守的地域といえども侮れない」と述べる関係者もいます。
2日の自民党額賀派のパーティーで自民党の谷垣禎一幹事長は、「野党がまとまろうとするのはある意味自然だが、共産党の力を借りて行動するような野党が多数を占めても日本の政治の安定にはつながらない」と、野合#癆サを繰り返しました。2月28日には同党の茂木敏充選対委員長が岐阜市内での講演で、「自民・公明の安定政権を選ぶのか、民共合作の革新勢力に国をゆだねるのか」と述べました。
これに対して、「憲法九条を守る首長の会」の川井貞一会長(元宮城県白石市長)はきっぱり言います。「私たちも活動してきたが、シールズや母親の会、草の根の運動が後押して野党連合ができた。これは民主主義の原点です。それに対して自公が何を言おうと、はたして市民の声をくんでいるのか。そんなのはネガティブキャンペーンにすぎない」
自民党議員からさえ「(共闘に対し)野合と批判しているが、野党なのだから『安倍暴走ストップ』で十分対抗軸になる」という声も出されます。自民党ベテラン議員の一人は「自民党は、野党が弱いというだけで消極的支持が集まっているにすぎない。安保法制は国民に理解されていない。野党共闘がしっかりした受け皿になれば、自民党のほうも緊張してくる」と語ります。
5野党は、4日の書記局長・幹事長会談で、戦争法廃止以外の「共通政策」づくりを進めることを確認しています。「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」との対話も再開されます。共闘の大義の厚みと幅は拡大しています。
(中祖寅一、中川亮、前野哲朗)
( 2016年03月07日,「赤旗」)
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5野党合意/参院選構図が一変/安倍自公・補完勢力VS5野党と市民/政権、危機感丸出し
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安保法制=戦争法の廃止や国政選挙での協力などを確認した日本共産党、民主党、維新の党、生活の党、社民党の5野党党首会談の合意(19日)を受け、5野党が具体化の協議を進めています。「戦後政治史の一つの転機になる」(TBSテレビ番組「NEWS23」キャスターの岸井成格氏)と評される国政選挙での本格的な野党共闘―。参院選の構図そのものが一変しようとしています。
「共産党が、候補者調整をして選挙協力をするという報道があった。…与党VS野党連合となると、単純な足し算では説明のつかない様相になるだろう」。参院長野選挙区(改選定数1)をたたかう自民党の若林健太議員は自身のブログにこう記しました。5野党の選挙協力合意について自民党関係者は「菅義偉官房長官をはじめ官邸は相当な危機感を持っている」と語ります。
首相も「警戒」
現に安倍晋三首相は、野党統一候補が挑む4月の衆院北海道5区補選で「十分警戒しながら対処しなければならない」と下村博文党総裁特別補佐に対応策を指示しました。
自民党の谷垣禎一幹事長は22日の記者会見で「(日本共産党などとの選挙協力は)民主党にとっては自殺行為だ」と批判しましたが、即座に撤回。「自らの存在意義を否定する行為だ」と言い換える慌てようです。
「自民1強」と騒がれながら、むき出しの野党共闘攻撃。1月の東京・八王子市長選で広範な市民団体、日本共産党などの応援を受けてたたかった五十嵐仁・元法政大学教授は「谷垣氏の慌てようこそ、今回の5野党党首会談合意の政治的な意義と効果を如実に示しています」と指摘します。「安倍政権の暴走を支える側からすれば、もっともできてほしくない合意ができてしまった。政権打倒の合意ができたのだから、当然安倍政権は危機感を抱くわけです」
対決軸を示す
23日から始まった5野党書記局長・幹事長の協議では、「安保法制の廃止と集団的自衛権行使容認の閣議決定撤回」を各党の選挙公約にすることで一致。それ以外の政策面での共通項についても協議し、政権問題も話し合うことが確認されました。「『野合』批判もあるだろうが、『立憲』という大義は小異を捨てるに値する。憲法論議を真摯に深めるためにも、損なわれてしまった土俵を修復することが先決ではないか」(「朝日」24日付「天声人語」)と5野党党首会談合意に注目する報道もあります。
「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」の中野晃一上智大学教授は、「野党共闘ができれば、安倍政治の暴走を止めるという明確な対決軸を国民に示すことができます。32ある参院選の改選1人区は『オール野党と市民』対与党の対決が象徴的になり、選挙全体が安倍政権の暴走を許すのかどうかということが争点になっていく」と指摘します。
安倍自公・補完勢力VS5野党と広範な市民≠フ対決構図が、本格的な野党共闘で生まれつつあるのです。
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民意に応えた5野党合意/投票促す効果も
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「野合」と攻撃
菅義偉官房長官は5野党党首会談の合意について、「政策の異なる政党間の選挙協力を進める。ましてや政権構想もないとすれば、そうした行動は有権者からどのように映るか極めて疑問」(23日の会見)と攻撃し始めました。
公明党の山口那津男代表も「政策的な立場の違いもあり、その後どうするかという展望も不透明な中で、果たしてどれほどの大義名分があるのか」(23日の会見)と批判を強めています。
政府・与党が野党共闘について「野合」と攻撃をしていることに元法政大学教授の五十嵐仁氏は、「戦争法廃止に向け与党議席を減らし、安倍政権を打倒するという明確な一致点がある」「自公はどうなのか。意見の違うところがあっても協力しているではないか」と反論します。
東京新聞は24日付社説で「憲法違反と指摘される安全保障関連法の成立強行や企業寄りの経済政策など、安倍晋三首相率いる自民党政治は、看過できないところまできている。安倍政治に歯止めをかけるという大義の下、野党は勢力を結集すべきだ」と呼びかけました。
5野党党首会談前に行われたTBS系列のJNN世論調査(6〜7日)では「自民党と公明党に対抗するため野党は統一候補を立てるべきだ」は57%と過半数。政権寄りのメディアでも「野党はできるだけ候補を統一したほうがよいと思う」が52・7%(「産経」・FNN合同調査23日付)です。今回の5野党党首会談の合意はまさに国民の声に応え、新たな政治局面を切り開くものです。
野党5党が統一候補を擁立した場合、2014年総選挙の得票で試算すると、32ある参院選1人区のうち、岩手、秋田、福島、新潟、長野、三重、滋賀、沖縄の8選挙区で野党が議席を得ることになります(時事通信試算)。前回の13年参院選で31あった1人区で自民党が29議席を獲得した状況から大きく変化します。五十嵐氏は分析します。
「現在参院での与野党間の議席差は与党135議席、野党107議席で28議席。参院の過半数は122議席ですから、15議席ひっくり返せば与野党が逆転します。複数区での野党の健闘や比例代表での善戦なども加えれば、選挙結果は大きく変わります」。1人区での野党共闘の力が、参院選の複数区、比例代表に影響を及ぼす見方です。
共産党躍進を
「とりわけ大きな『伸びしろ』があるのは共産党です。前回13年参院選と同様の8議席を獲得しただけで5議席増になります。13都道府県の複数区で共産党候補が13人当選する可能性だってあるのではないか。共産党が前回以上に伸びれば、野党共闘と合わせて、与野党間の議席差はひっくり返せますし、それが政治を変える大きな力になっていく」(五十嵐氏)
安倍首相は、参院選で改憲問題を争点化し、自公とその補完勢力で改憲発議に必要な3分の2議席を確保しようとしています。ところが、野党共闘の奮闘によって、3分の2どころか、過半数にも達しない局面をつくり得るのです。
政治変わる、今度こそ
戦争法廃止、集団的自衛権行使容認の閣議決定撤回という政治的合意に基づく野党の選挙協力は、国民の世論と運動に根ざしたものです。
「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」の中野晃一上智大学教授は、野党共闘によって切り開かれる新たな局面を強調します。
「それだけ重要な選挙なんだ≠ニ国民の関心も強まり、投票率も上がるのではないでしょうか。とくに、これまで『どうせ自分が選挙に行っても自民党が勝つだろう』『変わらないだろう』とあきらめていた人が、今回は投票に行こうという気持ちに向かうのでないでしょうか」
野党共闘が投票行動に大きな影響をもたらす―「多くの選挙区で共産党も含めて野党共闘が行われれば、それなりにインパクトがあり、投票率を押し上げる効果が期待できる」「与野党が伯仲した、緊張した政治状況を生み出すことも考えられる」(岩渕美克日本大学教授、「東京」23日付)との分析もあります。
五十嵐氏は「2016年はまさに政治決戦の年となり、日本の新しい政治を切り開いた『平成維新』の年として歴史に刻まれるにちがいありません」といいます。
5野党党首会談での確認事項
@安保法制の廃止と集団的自衛権行使容認の閣議決定撤回を共通の目標とする
A安倍政権の打倒を目指す
B国政選挙で現与党およびその補完勢力を少数に追い込む
C国会における対応や国政選挙などあらゆる場面でできる限りの協力を行う
( 2016年02月27日,「赤旗」)
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9条改憲にふみこむ首相/戦争法とつじつま合わせ
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安倍晋三首相が国会答弁で、戦力不保持を規定した憲法9条2項の改定=削除に連日言及しています。自ら、昨年9月の戦争法=安保法制の強行で、憲法で権力を縛るという立憲主義を破壊しながら、9条の条文そのものを変えようというのです。
メディアも批判
3日の衆院予算委員会で安倍首相が、7割の憲法学者が自衛隊に違憲の疑いを持っている状況を引き合いに出し、「憲法違反の疑いを持っている状況をなくすべきだ」と9条改憲を発言したことに、全国紙・地方紙が批判の社説を掲げました。
「首相の改憲論 あまりの倒錯に驚く」(「朝日」6日付)、「ご都合主義の改憲論だ」(東京・中日新聞4日付)。
9条改憲を迫った自民党議員への答弁とはいえ、なぜ今9条2項改憲なのか。
「甘利経済再生相の辞任で内閣支持率低下は避けられないと思っていたが、逆に上昇した。(衆参)ダブル選へ意欲を強めている」「年末の日韓『慰安婦』合意では、右派から突き上げも受けており、それへの対応という面もある」
自民党関係者からは、安倍首相が9条改憲を打ち出す危険な状況についてのさまざまな「解説」も聞かれます。「安保法制に『違憲』の批判があるのに対し改憲で対抗する。首相の性分だ」と述べる関係者もいます。
護憲か改憲かの違いを超え戦争法反対・立憲主義回復を求める国民的共同が広がるなか、改憲を打ち出すことで野党や世論の分断を狙う意図も透けて見えます。
明文改憲について前のめり姿勢を強める安倍首相が核心である9条改憲へ踏み込む根底には何があるのか、右崎正博独協大学教授(憲法学)は次のように指摘します。
「2014年の『閣議決定』と昨年の戦争法で、従来の政府見解を覆し、集団的自衛権の行使をはじめ海外での武力行使を認めるさらなる解釈改憲・立法改憲を強行しました。ますます憲法9条とつじつまが合わなくなったのを一挙に打開するため、改憲案では『国防軍』を創設するとまでいっています」
世論とも隔たり
年明けの世論調査では戦争法「反対」は多数で、国民世論との矛盾も深刻です。戦争法廃止・立憲主義回復へ、参院選挙で政策の違いを横において野党共闘を求める市民の声も拡大しています。
自民党の稲田朋美政調会長は3日の衆院予算委員会で、「(改憲は)やりやすいところからやるという議論もあるが、9条2項などのように本質的な議論をする」と述べています。本質的な議論に向かわざるを得ないという「本音」です。
( 2016年02月09日,「赤旗」)
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9条改憲にふみこむ首相/立憲主義の破壊者が「改憲」論
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安倍晋三首相や自民党の稲田朋美政調会長は、自衛隊を憲法に位置づける角度で9条改憲を強調します。
「憲法学者の7割が自衛隊の存在自体が憲法(9条2項)違反であると解釈している以上、当然、集団的自衛権も憲法違反になっていく」「しかしながら…いまや自衛隊に対する国民の支持はゆるぎない」(安倍首相、3日)
「合憲」論の根拠
しかし、安倍首相が同じ答弁の中で、自衛隊について「自衛権の行使を裏付ける必要最小限度の実力組織」と述べたように、自衛隊は9条2項が禁じた「戦力」にはあたらないとして「合憲」とされてきました。
自衛隊が「戦力」ではないとされる最大の根拠が、集団的自衛権の行使をはじめ海外での武力行使はできないというルールでした。国民の多くも、それを前提に自衛隊を受け入れてきました。
こうした政府解釈や国民意識の前提を、戦争法で乱暴に破壊し、自衛隊「合憲」論の根拠≠自ら壊したのが安倍政権です。だからこそ、保守派も含む広範な国民が立憲主義破壊に対する空前のたたかいに立ちあがっているのです。
世論は9条支持
もともと安倍首相が「憲法解釈の変更」によって海外派兵に突き進んだのは、9条改憲反対の世論の壁があるからです。昨年、NHKが行った「憲法改正」についての世論調査では、憲法9条が「戦後果たした役割」を「評価する」とした人は79%に上りました。その他マスメディアの調査でも「9条改正」に「反対」が6割を超えています(「朝日」15年5月2日)。国民は、9条を支持しています。
解釈改憲による戦争法が国民から「違憲」と批判されて、明文改憲を持ち出しても通りません。
しかも9条2項を削除し、戦争法を「追認」するかのように自衛隊を世界標準の軍隊=「国防軍」とするのが自民党改憲案です。同改憲案では集団的自衛権の行使も、海外での武力行使も無制限に可能とされます。
そもそも立憲主義の破壊者に、「憲法改正」を語る資格はありません。自衛隊「合憲」論を利用した、海外派兵体制の完成に向けた改憲論も成り立ちません。
(中祖寅一)
強い焦りのあらわれ/独協大学教授・憲法学右崎正博さんコメント
そもそも最高法規である憲法を無視し、自衛隊の創設や1990年代以降の海外派兵など違憲の法律、事実を長期間つみかさねてきた張本人は、歴代自民党政権です。それを無視して「矛盾解消」の改憲というのはもってのほかです。
同時に、安倍首相がいう自民党改憲案は、天皇の元首化や「公の秩序」優先で人権を制約するなど、近代立憲主義の諸原則を無視したもので、まともな改憲案とはいえません。
ここにきて、再び明文改憲が前面に押し出されているのは、高い支持率に支えられている面がある一方、相当な焦りもあるのではないか。
仮に自民党が次の参院選挙で改憲発議に必要な3分の2の議席をとったとしても、改憲案を煮詰め、発議し、国民投票にもっていくには数年の期間が必要です。その中で、相当な国民的議論をしないといけないが、戦争法反対の世論は強く、9条改憲についても国民の多数は反対しています。
来年、消費税10%への増税を強行すれば景気がさらに悪化し「アベノミクス」がさらに失速するなど、安倍政権が求心力をなくしていく可能性が高い。そうなるとみんなふっとんでしまう。そんな強い焦りがあるように思えます。
衆院予算委員会での安倍晋三首相の発言
3日 「(自民党改憲草案で)第9条第2項を改正して、自衛権を明記し、また新たに自衛のための組織(国防軍)の設置を規定するなど、将来のあるべき憲法の姿を示している」
「先の総選挙においても憲法改正を目指すことは明確に示している」「(国会発議を)国会議員がしなくていいのか。それは責任の放棄ではないか」
4日 「(9条2項は)変えていくということでお示ししている」「思考停止になってはならない」
5日 「(9条2項を)変えるという憲法改正草案を出している。自民党総裁としては同じ考え方だ」「実力組織である自衛隊の存在をしっかり明記する」
( 2016年02月09日,「赤旗」)
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安倍首相、明文改憲前のめり/「日本会議」強力後押し/大臣の擁護義務を無視
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安倍晋三首相の憲法改悪に向けた前のめりの姿勢が加速し続けています。
世界中で協力
年頭会見(4日)、10日のNHK番組での発言に続き、補正予算審議でも「来るべき選挙でも政権構想の中で憲法改正を示す」(12日)と踏み込み、21日の参院決算委員会では、「どの条項を改正すべきかという現実的な段階に移ってきた」と答弁。22日の施政方針演説でも「逃げることなく答えを出していく」と言い放ちました。国務大臣の憲法尊重擁護の義務(憲法99条)を全く無視しています。
戦争法強行でアメリカの戦争に世界中で協力する体制整備に乗り出し、憲法9条との矛盾が極限に達する中、憲法の条文そのものを変える明文改憲の姿勢を強めているのです。
自民党の稲田朋美政調会長もBS番組の収録で、9条2項を明示して「立憲主義という点からも空洞化している。変えるべきだ」と発言(22日)。戦争法で自ら立憲主義を破壊しつつ、「空洞化」を強調して明文改憲へと突き進もうとしています。
自民党関係者の1人は「首相は『1票の格差』是正の衆院選挙制度改革を急げと党の尻をたたいている。(衆院選と参院選の)ダブル選の環境整備の一つだが、ダブルで勝てれば改憲に踏み出す」と指摘します。
緊急事態条項
明文改憲のテーマとして繰り返し言及されるのが「緊急事態条項」。自民党改憲草案では、有事に内閣が「法律と同一の効力を持つ政令を制定」できるとし、国民の服従義務も定めるなど、人権保障をはじめとする憲法の制限を突破する仕組みづくりです。
この「緊急事態条項」創設を強力に後押ししているのが、改憲右翼団体の「日本会議」です。
15年4月、新会長に就任した田久保忠衛氏(杏林大学名誉教授)は「日本会議」の機関誌『日本の息吹』同年7月号のインタビューで、戦争法強行に突き進む安倍首相を「天が下し給うたリーダー」と礼賛。「安倍総理のうちになんとしても憲法改正を」「皆さんと共にこの決戦に臨んでいきたい」として、天皇の元首化、憲法9条改定に加え、「外国からの攻撃、大震災、内乱、テロ、サイバー攻撃など緊急事態に際して、一時的に内閣総理大臣に権力を集中する」の「3点の憲法改正を急がねばならない」と迫っています。
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草の根″動強める
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『日本の息吹』の最新号(2月号)は、浜谷英博・三重中京大名誉教授の「憲法改正――国家緊急事態条項の創設を急げ」という一文を掲載しています。
大震災を口実
東日本大震災で「災害緊急事態の布告が見送られた最大の理由は、一部の国民の権利を制限してでも被災地域の緊急支援を実施しようとする強い意思を、政権自体が自信を持って示せなかった」ことだとし、「その背景には憲法における緊急事態条項の欠落がある」と強調。「国家緊急事態条項の創設に向けた審議の促進と憲法改正の実現は焦眉の急である」と主張しています。
その浜谷氏もまた、日本会議の椛島有三事務総長らとともに改憲勢力が立ち上げた「民間憲法臨調」の運営委員を務めてきた人物です。
一方、安倍首相も稲田氏も、「日本会議」と一体の「日本会議国会議員懇談会」の役員を歴任してきました。
改憲団体「美しい日本の憲法をつくる国民の会」が昨年11月10日、日本武道館で「今こそ憲法改正を! 1万人大会」を開き、安倍首相も同大会に寄せたビデオメッセージで「自民党憲法改正草案」を売り込み、「憲法改正に向けともに着実に歩みを進めてまいりましょう」と述べました。
共同代表の一人、桜井よしこ氏は大会でのあいさつで、「大規模な自然災害に対しても、緊急事態条項さえない現行憲法では、国民の命を守り通すことは困難です」と強調しました。安倍首相は、その翌日(11月11日)の国会閉会中審査で「緊急事態条項」創設に意欲を示しました。
同会の共同代表には「日本会議」の田久保会長が就任。さらに「日本会議」前会長の三好達氏も共同代表に名を連ね、事務局長には「日本会議」の椛島事務総長が就任するなど「日本会議」と一心同体の、改憲推進の草の根団体です。
署名運動展開
さらに同会は、1000万人の賛同者拡大を目標に、9条改憲などの賛同署名運動を全国的に展開しています。同会のつくった署名用紙では、▽天皇元首化▽9条2項に自衛隊の規定を設ける▽「家族」条項の新設▽緊急事態対処規定の新設▽96条の改憲要件緩和▽前文に伝統・文化を盛り込む―などとしています。自民党改憲草案とほぼ重なる内容です。各地の神社内で初詣の参拝客を対象にした署名集めも行っています。
また、署名用紙には「国民投票の際、賛成投票へのご賛同の呼びかけをさせていただくことがあります」と記載。今後、国会が改憲発議した後に行われる国民投票時の「働きかけ」名簿として使われる可能性もあります。署名用紙には電話番号の記入欄がつけられています。
日本会議系の改憲シンポジウムなどでは、この間、憲法守れの「九条の会」の活動の広がりへの「対抗」がたびたび強調されてきました。
安倍政権と「日本会議」が共同しつつ、明文改憲の草の根″動を強めています。それを上回る批判と反撃を広げることが必要です。
【改憲めぐる発言】
安倍晋三首相
■「(改憲については)参議院選挙でしっかりと訴えていく」「そうした訴えを通じて国民的な議論を深めていきたい」(4日、年頭記者会見)
■「緊急時に国家、国民がどのような役割を果たしていくべきかを憲法にどのように位置づけるかは極めて重く、大切な課題だ」(11日、参院予算委員会)
■「(改憲は)正々堂々と議論し、逃げることなく答えを出していく」(22日、施政方針演説)
自民・稲田朋美政調会長
■「(憲法で9条2項が)一番空洞化している条項」「9条2項は変えるべきだ」「(緊急事態条項については)いかなる場合に人権を制限できるかしっかり議論しなければいけない」(22日のBS朝日番組の収録で)
( 2016年01月27日,「赤旗」)
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2015年
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安倍政権復帰から3年/政権脅かす新たな運動/立教大学名誉教授五十嵐暁郎さん談話
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小選挙区制のもとでは、ムードで票が動き、それが大量議席となって現れることがあります。民主党が国民の失望を買って政権から脱落したこととあわせ、ナショナリズムをあおる安倍晋三首相の手法が功を奏して、自民党に大量の議席が転がり込みました。安倍政権が違憲の安保法制の強行まで突き進んだ要因として、有権者の2割程度の支持で選挙区を制する小選挙区制の効果があることは間違いありません。
ただ、安倍政権の基盤はけっして強くありません。しかも、今までにない新たな層が政権に対抗する運動の主体となって現れはじめました。これは政権にとって大きな脅威だと思います。
新たな運動の主体は、個人がメッセージをだして集まる市民型の団体です。みな自分たちの中に秘めたる思いを持って参加し、そのなかから、本当に心揺さぶられる言葉も生まれてきます。
この声が、どこまで浸透し、今後どこまで広がるかわかりません。だからこそ、政権側には恐ろしい。仮に、この声が選挙に結びついたら、票差が覆る選挙区がいくつも生まれる可能性があります。
「安保法制に賛成した○○候補を落としたい」。この声を別の候補に集中させ、数%票を動かす、あるいは、数%投票率をあげる、これだけで選挙結果はガラリとかわります。
カギは、野党勢力が結集して、市民運動と一緒になって無党派層を動かせるかどうかです。小選挙区制の導入で無党派層は増えていますが、この層は政治的意識が低いわけではありません。自分の狙いが有効な方法で実現できることがわかれば動きます。
国民が主権者であることを権力に突きつけるのが民主化運動です。民主化運動はアジアの中で次々起こりました。日本版民主化運動が安倍政権のもとで、できるかどうか。今その萌芽が生まれていると思います。
( 2015年12月27日,「赤旗」)
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安倍政権復帰から3年/「何でもあり」の暴走政治/「1強」というが…基盤ぜい弱、世論反発
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26日で政権復帰から3年を迎えた安倍政権。「経済最優先」でスタートした同政権は、秘密保護法の強行(2013年12月)、集団的自衛権行使容認の「閣議決定」(14年7月)に続き、戦争法を強行成立(9月)させ、日本の政治に立憲主義破壊という異常事態をもたらしました。
どんな政権であっても、憲法の枠内で政治を行うことが立憲主義の原則です。その原則さえも踏み越える安倍政権は、「法の支配」をないがしろにする独裁政治そのもの。近代以前に政治を逆戻りさせる暴走です。
予想を覆された
沖縄県民の圧倒的民意と選挙での審判を無視して強行する名護市辺野古での米軍新基地建設。TPP(環太平洋連携協定)交渉では、重要5品目を「除外」するよう求めた国会決議も無視して「大筋合意」(10月)を押し付けようとしています。
川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働を強行(8月)したうえ、核保有国インドへの原発輸出に伴う日印原子力協定原則合意も強行しました(12月)。唯一の被爆国の首相として常軌を逸する行動です。
マスメディア関係者から「核保有国との原子力協定はさすがにやらないと見込んでいた。予想を覆された。何でもありだ」という声があがります。
退潮傾向は歴然
立憲主義破壊という異常事態をもたらした安倍暴走政治ですが、それでは強力な基盤を持つといえるのか―。
安倍自民党は現在衆院で291議席をしめ、メディアは安倍自民党を「1強」などと報じます。しかし、14年末の総選挙で有権者全体に対する自民党の得票割合(絶対得票率)は17%にすぎません。
そもそも自民党は歴史的に深刻な退潮のなかにあります。
自民党結党直後の1958年総選挙の絶対得票率は44・17%。有権者の半数近くが投票していました。それが、現在では5人に1人の支持も得ていないのです。
自民党が国民から退場を迫られた09年総選挙時の比例票(1881万票)を、その後の国政選挙で超えたことはありません。得票率でも惨敗した09年以下の状況です(表)。退潮傾向は歴然としています。
さらに、安倍政権が進めている戦争法や秘密保護法、原発再稼働、消費税増税、沖縄米軍新基地建設など主要政策には、世論の多数が反対の意思を示し続けています(表)。地方を中心に食と農業を破壊するTPPにも強い反発があります。
「これまで自民党は、相当多様な人材が党内で十分議論することができた。最近心配なのは、党内に十分な議論がない。(このままでは)支持はだんだん少なくなっていく」
戦争法成立後、河野洋平・元自民党総裁は日本外国特派員協会での講演(10月)で、こう述べました。
( 2015年12月27日,「赤旗」)
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安倍政権復帰から3年/柔軟性失うモノカラー/「野党は共闘」への期待
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自民党の歴史的退潮―柔軟性失うモノカラー
立憲主義破壊の暴挙に自民党内からほとんど批判の声はあがらず抑制する力もない―。
河野洋平氏(元自民党総裁)は、その理由として、自ら導入に関わった小選挙区制をあげ、「これが悪かったという気持ちを持ち続けている」と講演で語りました。
同じ党から1人しか立候補できない小選挙区制の導入で、党所属の国会議員は選挙の公認権などを握る党執行部の意向に沿うことしかできなくなったのです。「派閥」にかつての力もありません。
自民党関係者の一人は、「自分の考えを言わない政治家が増えている。昨年の消費増税見送り解散に反対した税調の有力議員も、公認取り消しで脅されて、結局屈服させられた」と述べます。
最近でも「軽減税率」導入をめぐり安倍晋三首相と党内の意見が対立≠オたとき、増税派で「軽減」に慎重だった谷垣禎一幹事長が首相の意向に「屈服」(自民党議員)しました。「幹事長もかつてのような強い権限はない。『自民1強』というより『官邸1強』だ」(自民党関係者)といいます。
政治学者の北岡伸一氏は著書『自民党 政権党の38年』のなかで、自民党内における派閥間競争の中で優位に立つために「派閥指導者たちは、国民の期待の発見と実現に力を入れた」と指摘しています。「(その結果)緩やかに国民の期待を吸収し、…国民の倦怠(けんたい)が爆発しない程度の政権交代を党内で行って、長期政権を維持した」としています。
派閥間競争の中で、政策に一定の幅を持っていたからこそ、自民党は「強かった」という見方です。
小選挙区効果によって自民党が虚構の多数議席を占めるもと、国民の批判に耳を傾けず、侵略戦争への反省を投げ捨て、立憲主義・民主主義の基本原理まで破壊する「アベ政治」に対し、反対の声も出せず「モノカラー(単色)」に沈み込む自民党。「強い」どころか批判を吸収する柔軟さを失って、世論から孤立を深めていく危機的状況にあります。
全国に広がりつつある「野党は共闘」への期待
政治的に脆弱(ぜいじゃく)で自らの政治的墓穴を掘るかのように、安倍政権の暴走は「憲法守れ」の巨大な人間の鎖を生み出しました。
戦争法強行から3カ月。20日には「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」(略称・市民連合)が結成されました。
夏の市民運動の盛り上がりの中で「野党は共闘」という声が広がり、この声を受け止めて日本共産党が提案(9月19日)した、▽戦争法廃止の「国民連合政府」▽野党選挙協力の方針は、衝撃をもって受け止められ、波紋を広げました。
「市民連合」は、安倍暴走ストップの政治的力を議会に打ち立てようと、来夏の参院選で32の1人区に野党共闘を求め、反対多数の世論を受け止める「受け皿」づくりを提起しました。
23日には熊本で、弁護士の阿部広美さんが野党統一候補として出馬表明し、注目を集めています。戦争法反対の運動のリーダーの一人として地域で奮闘してきた阿部さん。県内50団体のネットワークを基礎に、日本共産党、民主党、維新の党、社民党、新社会党の野党5党が共闘体制を確認しました。
こうした強力な市民運動を基礎とした野党共闘の動きは、さらに全国各地に広がりつつあります。これを「究極の談合」などとする与党幹部の攻撃が相次いでいますが、恐れ≠フあわれです。
自民党関係者の一人は「自分たちの基盤がそれほど広くなく、野党が連合して有権者から受け皿として認められたら、意外に簡単にひっくり返る可能性があることを、執行部はわかっている。安倍政権の強さは民主党の弱さ、野党が連携できないことの裏返しだ」と述べます。
(佐藤高志、中祖寅一、前野哲朗が担当しました)
安倍政権の軌跡
12年
12・16 衆院選挙投開票。民主党は惨敗し、自民党が単独過半数を獲得
26 第2次安倍自公政権が発足
13年
3・15 安倍首相がTPP交渉参加を正式表明
12・6 憲法の大原則に反する秘密保護法が成立
26 安倍首相が政権発足後初めて靖国神社に参拝
14年
4・1 国民の反対を押し切り消費税率8%引き上げを強行
同 「武器輸出三原則」を撤廃し、武器輸出を推進する「防衛装備移転三原則」を閣議決定
11 原発を「重要なベースロード電源」と位置づけた、新たなエネルギー基本計画を閣議決定
7・1 集団的自衛権行使容認を閣議決定
4・3 「残業代ゼロ」法案を閣議決定
15年
5・14 戦争法案を閣議決定
6・22 自民、公明が戦後最長の国会会期延長を強行
8・11 川内原発の再稼働強行
14 戦後70年談話を閣議決定
28 農業組織の解体に道を開く農協「改革」法成立
9・11 「正社員ゼロ」社会に道を開く改悪派遣法の採決を強行、成立
19 憲法違反の戦争法の採決を強行、成立
10・4 環太平洋連携協定(TPP)交渉の閣僚会合が「大筋合意」を発表
27 国交相が、翁長雄志沖縄県知事による名護市辺野古での米軍新基地建設のための埋め立て承認取り消しの効力停止を決定
12・12 日印原子力協定の締結に原則合意
( 2015年12月27日,「赤旗」)
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戦争法案、高まる反対世論/違憲論噴出、与党に焦り/自民幹事長演説に対し「憲法守れ」
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危険な正体、志位氏追及で浮きぼり/憲法学者の「違憲」発言が衝撃
5月26日に衆院で戦争法案の審議が始まって2週間―。この間、岸田文雄外相の答弁の食い違いや自民・公明与党の強硬な委員会運営などで、審議が中断、途中散会、流会が繰り返されました。衆院で圧倒的な議席数の優位を持つ与党にとって、想定外の厳しい展開となっています。
(政党取材班)
「抑止力で日本国民を守る法整備」―自民党は7日、青年局・青年部の全国一斉街頭行動で、戦争法案の理解≠求めました。東京・新宿駅西口で谷垣禎一幹事長は「『戦争法案』とデマを流す人もいる」と反対世論を意識。演説中には「憲法守れ」「戦争反対」のプラカードを掲げた反対派の市民が集まり、騒然となる場面もありました。
日本共産党の志位和夫委員長の衆院安保法制特別委員会での連続追及は、「海外で戦争をする国」をつくる戦争法案の危険な正体と違憲立法の問題を明瞭にしました。
答弁行き詰まり
この論戦を裏付けるように4日の衆院憲法審査会では3人の憲法学者全員が戦争法案に「違憲」の宣告。与党が推薦していた早稲田大学の長谷部恭男教授も「集団的自衛権が許されるという点は憲法違反だ」と明言しました。5日の特別委では、中谷元・防衛相が答弁に行き詰まり、「憲法を法案に適応させた」という逆立ち発言も飛び出して、糾弾の声が高まる展開です。
「『違憲』と言われた影響はかなり大きい」。特別委の自民党委員からは深刻な受け止めの声が漏れます。同党関係者は「執行部が対応、火消しに追われて大変だが尾を引く問題だ。大臣の答弁も苦しくなっており、理解が得られるか厳しい」と焦りを隠しません。メディア関係者からも「政権の正統性が問われる事態」「公明党は憲法上の無理を自覚して、解釈ねじ曲げを受け入れているだけに相当痛手だ」という声が出されます。
破綻済みの主張
こうしたなか自民党は、「決して憲法違反だとか立憲主義の逸脱ということはない」として戦争法案を正当化する文書を同党所属国会議員に配布しました。1959年に安保条約の違憲性について争われた砂川事件最高裁判決を持ち出し、「集団的自衛権を行使することはなんら憲法に反するものではない」などと破綻済みの主張を繰り返しています。
しかし、7日朝のテレビ番組では保守系の評論家から「あまりにも数をかさに問答無用でやろうというやり方は、いくらなんでもちょっとなという感じがする」という厳しい苦言も。「読売」8日付世論調査では、戦争法案について「国民に十分説明していると思うか」について「そう思わない」は80%で、「十分に説明している」14%を大きく上回っています。今国会での成立「反対」は59%で、前回5月調査より11ポイントも増えました。
( 2015年06月09日,「赤旗」)
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戦争法案、高まる反対世論/草の根で広がり/ネット拡散一気
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「違憲」の一言で対話に
戦争法案反対の動きは、保守層も含め、草の根でいっそう広がりを見せています。
6、7の両日、全国各地で戦争法案反対の宣伝・署名が取り組まれました。憲法会議の平井正事務局長は、各地の取り組みの報告から、「戦争法案の説明が難しいという悩みもあったが、『憲法違反』の一言で一気に対話に入っていける状況になってきた。潮目の変化に確信が広がっている」と語ります。
若手弁護士調査
秘密保護法や集団的自衛権行使の解釈改憲に反対する若手弁護士でつくる「明日の自由を守る若手弁護士の会」は、菅義偉官房長官が「違憲でないという著名な学者もたくさんいる」(5日)と述べたのに対し、フェイスブック上で批判の発信を企画。独自に調査した結果「違憲でない」と明言しているのは西修、百地章、八木秀次の3氏であることを確認しました。
3氏は、安倍首相に近い、改憲・右翼団体「日本会議」系の憲法学者です。これに対し、戦争法案の速やかな廃案を求める声明を発表した憲法研究者らへの賛同が190人近くに増えていることと対比し、両者をてんびんにかける図をフェイスブック上で発信しました。
同会共同代表の黒澤いつきさんによると、発信は「3日間ほどで7万人以上に広がった」といいます。いつもは平均して5000人ほどの拡散状況であり、今回は通常の10倍以上の広がりです。
「共感は広がるものだなと改めて実感している。この間も、憲法カフェ開催の依頼は増え続けているうえ、『私にも何かできないか。私にできるアクションは』という相談メールも来ていて、連帯の裾野の広がりを感じる」と黒澤さん。
衆院憲法審翌日
衆院憲法審査会で「違憲」宣告が出された翌日の5日。東京大学で安倍政権の解釈改憲に反対する学者らでつくる「立憲デモクラシーの会」の講演会が開かれました。会場となった東京・本郷の同大法学部講堂には立すいの余地がないほどの聴衆が詰めかけ、急きょ第2、第3会場が設けられました。若い世代の参加が多いことも目を引きました。
基調講演した佐藤幸治京都大学名誉教授は、未曽有の戦争の悲劇を詳しく跡付けたうえで、「熟慮の時間があれば日本人は自ら同じ道を選んだはず」として、「『押し付けられた』といって、その根幹を変えてしまうような議論をいつまで続けるのか腹立たしく思う」と述べました。
行政改革や司法制度改革などで政府委員も務めた保守的な立場の佐藤氏。戦争法案に直接の言及はなかったものの、安倍政治を厳しく批判する樋口陽一東大名誉教授らとともに壇上に並び、政治の現況について気持ちをこめて発言する姿に、共感の拍手がわき起こりました。
( 2015年06月09日,「赤旗」)
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