【けいざい四季報2020年】

 

t  【T】

t  (1)世界経済 原油急落加わり複合危機

t  (2)コロナ禍 経済は急速冷凍状態に

t  (3)国内景気 生産も消費も激減の泥沼状態

t  (4)楽天 出店者に送料負担押し付け

t  【U】

t  (1)世界経済 各国とも急激に縮小

t  (2)高まる債務 第4の波 最も広範に

t  (3)国内景気 悪化鮮明 先行き不透明

t  (4)旅行需要 外国人消費額ほぼ蒸発

t  (5)家計 コロナ禍、変貌が鮮明に

t  【V】

t  (1)世界経済 コロナ禍で急激に景気悪化

t  (2)米中攻防 安全保障絡みハイテク分野で

t  (3)国内景気 個人消費冷え非正規に打撃

t  (4)景気偽装 消費税増税強行の失政

t  (5)GoTo トラベル効果は見えず

t  【W】

t  (1)世界経済 感染再拡大で不透明感

t  (2)国内経済 新型コロナの猛威続く

t  (3)脱炭素 原子力と石炭火発は維持

t  (4)雇用 コロナ禍で働き方変化

 

 

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【T】

 

(1)世界経済 原油急落加わり複合危機

2020331

 1月15日、トランプ米大統領と中国の劉鶴副首相は、米中貿易協議の「第1段階合意」協定文書に署名しました。2018年夏以降、激化した米中貿易摩擦は、緊張の激化が避けられました。

1時間の独演

 大統領選挙を控えたトランプ大統領は、署名式で中国の代表を1時間近くも脇に立たせたまま、「かつて誰も見たことがない世界最大の取引だ」と独演しました。

 米国は、昨年9月に発動した追加関税第4弾(1200億ドル)の関税率を15%から半減。他方、それ以前に課した第1〜3弾は据え置きました。中国は、農産品など2000億ドル(約22兆円)規模の米国産品を購入し、知的財産権保護、技術移転の強要禁止、金融サービス市場の開放、合意の確実な履行に向けた「紛争解決手続き」などが盛り込まれました。

 「第1段階合意」に先立つ13日には、米財務省は、中国が輸出で有利になる人民元安を誘導しているとする「為替操作国」の認定を外していました。

 米中貿易摩擦が和らいだのもつかの間でした。新型コロナウイルス感染の発生地となった中国では、今年に入り経済に深刻な影響が広がりました。1〜2月の生産、小売り、投資の主要経済指標は軒並みマイナスに転落しました。前年同期比で工業生産は13・5%減、小売売上高は20・5%減、固定資産投資は24・5%減でした。

アジアに打撃

 都市封鎖をはじめとした移動制限、工場閉鎖、物流の寸断などでかつてない事態に発展。みずほ総合研究所は「1〜2月の落ち込みの大きさを踏まえると、1〜3月期の実質GDP(国内総生産)成長率は、四半期のGDP成長率の公表が始まった1992年以来、初のマイナス成長になる可能性が高い」と指摘。その後回復に転じたとしても、通年での成長は大幅に減速することが見込まれています。中国の落ち込みは、同国との経済的結びつきが特に強いアジア地域に打撃を与えています。

 石油輸出国機構(OPEC)は3月5日、4月から6月末までの期間限定で世界需要の約1・5%に当たる日量150万バレルの追加減産で合意していました。ところが同日、6月末までとしていた減産拡大期間を今年末まで延長すると発表しました。新型コロナウイルスの感染拡大で下がり続ける原油価格を支える狙いでした。決めたばかりの合意を当日に見直すのは異例のことでした。

合意に至らず

 OPEC加盟・非加盟の主要産油国で構成する「OPECプラス」は6日、閣僚級会合をウィーンで開き、産油量の削減を協議しましたが合意に至りませんでした。OPEC加盟国が大幅な追加減産を求めたのに対し、ロシアなど非加盟国が「時期尚早」と反対しました。協議決裂を受け、原油相場は急落しました。原油価格の世界的指標の一つとされる米国産標準油種WTIは歴史的安値で推移しています。

 新型コロナウイルス感染拡大という衛生上の危機とそれにともなう経済活動の急停止、さらに原油価格の急落が加わり、株式市場の不安定さが拡大。今、世界経済は、複合危機に見舞われています。(つづく)

ポイント

(1)米中貿易協議は、「第1段合意」。大統領選挙を控えトランプ氏が署名式で独演

(2)コロナ発生で中国経済の主要指標は軒並みマイナス転落。アジア圏に影響拡大

(3)産油国の協議決裂し原油価格急落。コロナ感染、経済急停止と合わせ複合危機

世界経済の主な出来事(1〜3月)

1/13 米財務省が半期為替報告書で中国の「為替操作国」認定を解除

  15 米中が貿易協議「第1段階」の合意文書に署名

  21 中国、2019年の対中直接投資が5.8%増、過去最高と発表

2/6 中国、対米報復関税の一部の税率を半分に引き下げると発表

  13 中国、1月の新車販売台数が前年同月比18%減と発表

  14 米がEU大型民間航空機への追加関税を15%へ引き上げと発表

3/2 OECDが2020年の世界の成長率見通しを2.4%へ下方修正

  3 米FRBが臨時FOMCで、政策金利0.5%引き下げを決定

  15 米FRBが臨時FOMCで、政策金利1.00%引き下げを決定

  16 ダウ平均株価が2997.10ドル安、過去最大の下落

 

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(2)コロナ禍 経済は急速冷凍状態に

202041

 昨年末に中国で確認された新型コロナウイルスの感染は、今年に入り急速に世界に広がりました。

暴力的に拡大

 3月18日の会見でトランプ米大統領は、「感染が暴力的に広がっている」と危機感をあらわにし、「私は戦時下の大統領だ。われわれはたたかっている。とても厳しい状況だ」と叫びました。

 米連邦準備制度理事会(FRB)は、経済の急激な落ち込みに対応するため3月3日に続いて15日、政策金利のフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標を1・00〜1・25%から0・00〜0・25%へ1・0ポイント引き下げることを決定しました。

 パウエルFRB議長は、「旅行、観光、医療産業は、すでに事業活動が急落している。加えて、この大流行は、多くの国々で経済活動を制限している。これは、グローバル・サプライチェーン(世界的な部品供給網)に依存した米国の産業に困難を引き起こしている」と危機感を示しました。

マイナス成長

 経済協力開発機構(OECD)のグリア事務総長は、3月22日の声明で「感染被害を受けている国々での生産中止、世界に広がるサプライチェーンへの打撃、景況感の悪化にともなう消費の急激な落ち込みをもたらしている」と強調。ウイルスを封じ込めるための厳戒態勢が、「われわれの経済を、かつてない急速冷凍状態に追い込んでいる」としました。

 世界の金融機関で構成される国際金融協会(IIF)は、20年の世界経済成長率がマイナス1・5%に落ち込むとの見通しを示しています。日本はマイナス2・6%、米国がマイナス2・8%、ユーロ圏がマイナス4・7%になるとしています。

 国連貿易開発会議(UNCTAD)は、感染拡大が長期化した場合、海外直接投資が2020年から21年にかけて30〜40%落ち込むと予想しています。

 国際航空運送協会(IATA)は20年の世界の航空旅客収入は19年比で最大2520億ドル(約28兆円)減少すると見込んでいます。世界の観光産業も打撃を受けています。今年の国際旅客数は昨年より最大で4400万人減少する可能性があると国連世界観光機関(UNWTO)は予測しています。金額にして500億ドルに達します。

雇用不安対策

 雇用不安も広がっています。国際労働機関(ILO)は、世界で失業者が最大で2470万人増えるとの試算を示しました。

 経済危機に対応するため欧州連合(EU)は3月23日、EUの財政ルールの加盟国への適用を一時的に停止することで合意しました。各国が大規模な財政出動を行える余地を確保するためです。

 英国は、民間企業が雇用を継続した場合、賃金を1人あたり8割、最大月2500ポンド(32万5000円)まで政府が負担するとしています。米国は、総額2兆ドルをこえる経済対策を決めました。

 各国・地域が検討している財政出動額は、年間で史上最大規模に膨らむ見込みです。

ポイント

 (1)FRBは金利引き下げ。旅行、観光、医療産業で急落。消費も急激に落ち込み

 (2)厳戒態勢で20年の世界経済成長率はマイナスの予想。海外投資も30〜40%減に

 (3)広がる雇用不安。EUが財政ルールを緩め、英国も賃金補償。米国は2兆ドルの対策

 

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(3)国内景気 生産も消費も激減の泥沼状態

202043

 安倍晋三政権が昨年10月に強行した10%への消費税率引き上げが日本経済の重しになっています。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で生産も消費も激減し、経済は泥沼状態に陥っています。

GDPが急減

 19年10〜12月期の国内総生産(GDP)改定値は1次速報値から下方修正され、年率7・1%と大幅な落ち込みを示しました。GDPの5割強を占める個人消費は前期比2・8%下落し、民間企業の設備投資は4・6%減でした。輸出も0・1%の減。消費税増税による個人消費の減少に加え、米中貿易摩擦の影響で、生産も輸出もマイナスとなってしまいました。

 19年10〜12月期GDP改定値の公表に合わせ、同年7〜9月期のGDPも改定されました。従来の公表値を0・1ポイント下方修正し、前期比0%増にとどまりました。消費税増税前から景気が停滞していたことが明らかになったのです。

格差が鮮明に

 消費税増税後、家計消費は4カ月連続で前年同月割れとなりました。19年のスーパー売上高は4年連続マイナス。大手百貨店の2月売上高は前年同月比18・4%もの大幅減となりました。2月の国内新車販売は前年同月比10・3%減と5カ月連続の減少でした。

 1月27日には山形市の百貨店「大沼」が自己破産を申請。同社によると「昨年の消費税増税以降は売上高の減少にさらに拍車がかかる事態となり、その結果、資金繰りも危機的状況に追い込まれ」たため、事業継続を断念したとしています。消費税増税が地方経済に押し付ける痛みは甚大です。

 法人企業統計では大企業の内部留保が460兆円を超え、過去最高額を更新しました。一方、大企業の従業員の賃金は横ばいです。毎月勤労統計では19年平均の現金給与総額は6年ぶりのマイナス。格差が鮮明になっています。

景気後退期に

 新型コロナウイルス感染の拡大による経済への影響も深刻です。3月の月例経済報告は景気判断からこれまで維持してきた「回復」の表現を削除。「景気は、新型コロナウイルス感染症の影響により、足下で大幅に下押しされており、厳しい状況にある」としました。エコノミストからはすでに景気後退期に入っているとの指摘が相次いでいました。「コロナ禍」を期に、政府も景気後退を追認した格好です。

 帝国データバンクのまとめによると、3月25日時点で新型コロナウイルスの影響を受けたとして業績予想の下方修正(連結、非連結)をした上場企業は111社で、減少した売上高の合計は約7684億4400万円となっています。

 政府の自粛要請により、各地の遊園地・テーマパークは休園、週末に臨時休業した百貨店などもあります。訪日外国人を対象とする百貨店での免税売上高が激減しています。大丸・松坂屋百貨店合計の免税売上高はこの2月前年同月比75%減、高島屋は69・9%減でした。

 航空業界にも影響が広がり、日本航空は国内線2割、国際線3割を減便しています。全日空は3月29日から4月24日まで、国際線58路線計2630便の運航を見合わせると発表。事業計画からは57%の減少です。

 安倍政権は社会保障の削減などを押し付けて国民から所得を奪ってきました。昨年10月に強行された消費税増税は日本経済をさらに悪化させるものでした。そこに新型コロナウイルス感染拡大が追い打ちをかけました。失政が日本経済の危機をさらに深刻にしています。

ポイント

 (1)19年10〜12月期のGDPは年7・1%減。消費税増税の悪影響が明らかに

 (2)大企業の内部留保が460兆円と過去最高を更新。賃金横ばいで格差鮮明

 (3)月例経済報告の景気判断から「回復」削除。新型コロナが景気悪化に拍車

国内景気の主な出来事

1/5 日銀「生活意識アンケート」で個人景況感が6期連続低下

  23 2019年のスーパー売上高が4年連続マイナス

  27 山形市の老舗百貨店「大沼」が自己破産を申請

2/7 19年の現金給与総額が6年ぶりマイナス

  10 公正取引委員会が楽天を立ち入り検査

3/1 19年10〜12月期の大企業の内部留保が過去最高を更新

  6 楽天が送料一律「無料」延期

  9 19年10〜12月期のGDP改定値で年率7.1%減に下方修正

  10 公取委が楽天への緊急停止命令を取り下げ

  19 2月訪日外国人数が58.3%減

  26 3月の月例経済報告で景気判断から「回復」を削除

 

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(4)楽天 出店者に送料負担押し付け

202044

 インターネット通販サイト「楽天市場」を運営する楽天が3980円以上の買い物で送料を一律「無料」にする施策(「送料無料ライン」)を強引に推し進めたことが小売業者の反発を招き、公正取引委員会が介入する事態に発展しました。

公取立ち入り

 楽天市場に出店する小売業者らが結成した「楽天ユニオン」は1月22日、楽天の送料「無料」化をやめさせるよう公取委に請求しました。送料負担を出店者に押し付けるのは優越的地位の乱用で独占禁止法違反だと訴えました。

 これを受けて公取委は同月29日までに調査を開始しました。独禁法違反に当たるかどうかを判断するため、複数の出店者から事情を聴くなどしました。公取委の杉本和行委員長は2月5日、「(独禁法)違反であれば厳正に対処する」と発言。同月10日、違反の疑いが強まったとして、公取委は楽天を立ち入り検査しました。

 楽天の三木谷浩史会長兼社長は同月13日の決算記者会見で、送料「無料」化を予定通り3月18日から実施すると表明しました。他方で「無料の言葉が独り歩きし反省している」と釈明。名称を「送料無料」でなく「送料込み」に変更すると発表しました。

緊急停止命令

 しかし公取委の菅久修一事務総長は2月19日、「形式的な表記ではなく実態から判断する」と述べ、名称の変更は楽天の施策が独禁法違反に当たるかどうかの判断に影響しないとの考えを示しました。さらに同月28日、公取委は送料「無料」化を3月18日から実施させないよう、東京地裁に緊急停止命令を申し立てました。同命令の申し立ては16年ぶりとなりました。

 公取委の菅久事務総長は3月4日、楽天は送料「無料」化の実施を取りやめるべきだとの認識を示しました。零細な出店者の反対を押し切って実施すれば「公正かつ自由な競争秩序が回復しがたい状況に陥る」と述べ、楽天の姿勢を痛烈に批判しました。

 追い込まれた楽天は送料「無料」化の一律実施を延期しました。同月6日、各出店者の選択で送料「無料」の適用が除外されるようにし、対応可能な出店者だけで18日から実施するという方針を発表しました。一方で一律「無料」化に固執し、「段階的に進めたい」との意向を表明。18日から「無料」化に参加する出店者には支援金を出すなどの優遇措置を実施し、参加しない出店者には新設する商品検索コーナーから排除するなど事実上の報復措置をとる考えを示しました。

手のひら返し

 公取委は同月10日、楽天が送料「無料」化の一律実施を見送ったことを受け、「一時停止を求める緊急性が薄れた」と判断し、緊急停止命令の申し立てを取り下げました。しかし独禁法違反の疑いに関する審査は継続すると表明しました。

 楽天は手のひらを返して「送料無料」の言葉を復活させ、同月18日、一部店舗での「無料」化と優遇措置、報復措置を実施しました。「無料」にしない出店者は不利益を被るため、楽天ユニオンは「事実上の強制執行」だと批判し、撤回を求めて運動を続けています。(おわり)

ポイント

 (1)楽天の送料無料強要は独占禁止法違反だと楽天ユニオンが公正取引委員会に告発

 (2)独禁法違反の疑いがあると指摘して公取委が東京地裁に緊急停止命令を申し立て

 (3)楽天が選択制で送料無料化を実施し従わない店舗には報復。楽天ユニオンは反発

 

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【U】

 

(1)世界経済 各国とも急激に縮小

2020630

 新型コロナウイルスの世界的流行が、各国の経済を急激に縮小させています。

景気後退入り

 米国の景気循環を判定する全米経済研究所(NBER)は8日、2月に景気後退入りしたと認定しました。

 米商務省が25日発表した1〜3月期の実質GDP(国内総生産)確定値は、年率換算で前期比5・0%減でした。下げ幅はリーマン・ショック直後の2008年10〜12月期(8・4%減)以来約11年ぶりの大きさ。

 欧州連合(EU)統計局が9日発表した1〜3月期のユーロ圏実質GDP確定値は、前期比3・6%減でした。EU全体でも3・2%減。

 中国国家統計局が4月17日発表した1〜3月期の実質GDPは、前年同期比6・8%減。マイナス成長は四半期ごとの数値公表を始めた1992年以降で初めて。

 国際通貨基金(IMF)は24日、最新の世界経済見通しで、20年の成長率をマイナス4・9%と4月時点の予測(マイナス3・0%)から下方修正しました。新型コロナウイルス感染拡大が収束せず、景気回復が想定より鈍いと分析しました。

軒並みに緩和

 米国の中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)は10日、3月に復活させた事実上のゼロ金利政策を少なくとも22年末までは続けるシナリオを示しました。

 欧州中央銀行(ECB)は4日、新型コロナウイルス対策として導入した資産購入計画(パンデミック緊急購入プログラム=PEPP)の規模を6000億ユーロ(約73兆円)増額し、1兆3500億ユーロへ拡充する追加緩和を決めました。その実施期間も、少なくとも21年6月末まで6カ月延長します。

 中国人民銀行(中央銀行)は4月20日、銀行貸出金利の指標である最優遇貸出金利(LPR)1年物を0・20%引き下げ3・85%にしたと発表しました。引き下げは2月以来2カ月ぶり。金融緩和を拡大し、企業の資金繰りを支援します。

マイナス価格

 ニューヨークの原油先物市場で4月20日、標準油種WTIが1バレル=マイナス37・63ドルで引けました。1983年の上場以来、初めて。マイナス価格になったのは、4月21日が取引最終日の5月物。米国では貯蔵施設が満杯に近づいており、貯蔵費用を嫌う買い持ち側が売り急いだのです。

 特殊事情があったとはいえ、根本的には、供給過剰による価格低迷が続いていたところへ、新型コロナウイルスの世界的流行で世界の需要が激減したのが原因です。

 国際エネルギー機関(IEA)は4月15日の月例報告で、世界の石油需要が前年に比べ日量930万バレル減少すると予測。石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国は協調減産を追求し、最終的には4月12日、5月1日から2カ月間、日量970万バレル分を減産することで合意しました。6月6日には、協調減産を7月末まで延長。

 IEAは5月14日の月報で、石油需要予測を前年比日量860万バレル減とし、約70万バレル上方修正。欧米などで新型コロナウイルス感染拡大防止策を緩和する動きが出始めたのを反映しました。

 ニューヨークの原油先物市場は6月22日、経済活動再開、需給改善への期待から3営業日続伸。WTI7月物が1バレル=40・46ドルと、3カ月半ぶりに40ドル台を回復しました。(つづく)

ポイント

 (1)新型コロナウイルス流行で、各国の経済が急激に縮小。米国では景気後退入り

 (2)金融当局は緩和策を拡大。米はゼロ金利を長期継続。欧州は資産購入策を拡張

 (3)経済縮小による石油需要の急減少で原油価格が急落。史上初のマイナス価格も

世界経済の主な出来事(4〜6月)

4/12 産油国が世界の生産量の15%超の日量1500万バレル以上減産で合意

  17 1〜3月期中国GDPを前年同期比6.8%減と発表

  20 ニューヨーク原油市場でWTI5月物が史上初のマイナス価格

5/19 4月のEU新車販売台数を前年同月比76.3%減と発表

6/8 全米経済研究所が米国が今年2月に景気後退入りしたと認定

  9 1〜3月期ユーロ圏GDP確定値を前期比3.6%減と発表

  10 FRBがゼロ金利政策を22年まで維持する見通しを表明

  11 ダウ工業株30種平均が前日終値比1861.82ドル安の急落

  24 IMFが20年の世界の成長率をマイナス4.9%と予測

  25 1〜3月期米GDP確定値を年率換算で前期比5.0%減と発表

 

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(2)高まる債務 第4の波 最も広範に

202071

 6月に公表された世界銀行の「世界経済予測」の報告書は、新型コロナウイルス危機について、「平時に起きた世界経済への打撃としては、この100年間で最も深刻」と指摘しました。

成果消し去る

 コロナ危機への対応措置は、すでに脆弱(ぜいじゃく)な状態にあった世界経済に追い打ちをかけ、先進国と新興国・途上国の両方に深刻な不況を引き起こしています。同報告書の分析によれば、特に深刻な打撃を受けるのは新興国・途上国、中でも脆弱な保健制度しか持たない国、国際貿易や観光、国外からの送金への依存度が高い国、1次産品輸出に依存している国です。

 デイビッド・マルパス世界銀行グループ総裁は、「新型コロナウイルス感染症の世界的流行と先進国における経済活動の停止により、最大6000万人が極度の貧困に陥る可能性がある。これは近年に達成された貧困削減の成果のほとんどを消し去るものだ」と述べています。

返済の壁直面

 国際通貨基金(IMF)が6月24日改定した世界経済見通しでは、2020年の世界経済の成長見通しをマイナス4・9%とし、新興国・途上国の成長率については、マイナス3・0%と予測しました。感染対策への備えが十分にない新興国・途上国の影響はとりわけ打撃的です。

 世界銀行によると、現在は、「債務増大の第4の波」の時期にあたるといいます。第1波は1970年〜89年。第2波は90年〜2001年。第3波は02年〜09年でした。現在の第4の波は、10年に始まり、これまでのどの波と比べても、最も大きい、最も早く、最も広範に広がっています。

 国連貿易開発会議(UNCTAD)によると、途上国の民間と公的を合わせた債務残高は、18年に国内総生産(GDP)の191%に達しています。途上国が20年代に債務返済の壁に直面するとしています。

協調した対応

 コロナ危機に対し、国際社会の協調した対策が求められています。

 UNCTADは、新型コロナであえぐ途上国に2・5兆ドル(270兆円)の経済支援が必要だと強調しています。そのうち1兆ドルは、IMFの特別引き出し権(SDR)を活用して特別融資を実行し、さらに1兆ドルは途上国が有している今年の債務返済を免除し、残りの5000億ドルは、医療回復のための基金を積み立て、補助金として使うことを呼びかけました。この中で、資本の管理の必要性を強調していることは注目に値します。20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は4月15日、最貧国の有する公的債務について、その支払いを一時的に猶予することで合意しました。

 国際NGOのオックスファムが4月9日に発表した提言は、▽企業に対する金融支援は、雇用を維持することに使う▽政府は、救済したすべての企業に対して、役員会への出席など適切に監視する▽化石燃料を排出する企業は、救済されるべきではない▽株主の配当に上限を設ける▽最高経営責任者(CEO)と平均労働者の賃金の比率の公開し、最大比率を20対1に抑えること―などを提起しました。

 大資本の自由な活動に一定の枠組みを設ける提案として注目されます。(つづく)

ポイント

 (1)コロナ危機は新興国・途上国にとくに深刻な打撃。貧困削減の成果を消し去る

 (2)債務の増大の第4波は、最も大きく、最も広範に広がる

 (3)債務返済の一時的猶予でG20が一致。大資本の自由な活動に一定の枠組み設定も

 

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(3)国内景気 悪化鮮明 先行き不透明

202072

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、国内経済はかつてないショックに見舞われています。景気の先行きは不透明で、回復にはなお時間がかかる見通しです。

需要が消えた

 2020年1〜3月期の国内総生産(GDP)改定値は前期比実質マイナス0・6%と2期連続でマイナス圏に沈みました。自粛要請が本格化した4月以降のGDPはリーマン時を下回る2桁マイナスが予想されています。

 東京商工リサーチによると、6月30日現在の「コロナ関連破綻」は累計294件となり、2月の2件から急増しました。業種別では飲食が最多の46件で、宿泊39、アパレル36と続きます。訪日外国人旅行者の減少や外出制限が響き、需要が一気に蒸発しました。5月にはアパレル大手のレナウンが経営破綻するなど、影響は事業規模を問わず全国に拡大しています。

半数は非正規

 雇用環境の悪化も鮮明です。5月の労働力調査によると、非正規の職員・従業員は前年同月比で61万人減り、そのうち7割超にあたる47万人を女性が占めます。完全失業率(季節調整値)は2・9%と3カ月連続で悪化。完全失業者数は前月比19万人増の197万人となり4カ月連続で増加しました。

 飲食業・宿泊サービス業における就業者数は前年同月比で38万人減。個人消費に依存する業種ほど外出規制の影響は甚大で、人件費を削る動きも顕著となっています。

 「潜在的失業者」とされる休業者は5月時点で423万人に達しました。4月の597万人から減少したものの依然高い水準で推移しています。そのうち約半数に上る209万人が非正規の職員・従業員です。事業補償や雇用維持への支援が遅れれば雇用環境のさらなる悪化は避けられません。

 コロナ禍の波は労働需要の減退にも波及しています。5月の有効求人倍率(季節調整値)は前月比0・12ポイント低下の1・20倍となり、過去2番目の下落幅を更新しました。新規求人(原数値)は前年同月比で32・1%減。産業別では宿泊業・飲食サービス業でマイナス55・9%と大幅に落ち込んでいます。

今後も厳しい

 全国中小企業団体中央会(中央会)による5月の中小企業月次景況調査で、景況判断指数はマイナス74・6と前月から1・7ポイント低下しました。リーマン・ショック発生時(08年9月)のマイナス69・0を下回る低水準です。

 中央会は、消費税増税や新型コロナ感染拡大を受け「中小企業者を取り巻く環境は厳しさを増して」おり、事態の長期化で経営が圧迫され「先行きを不安視している声も増えている」としています。

 各地の中小企業組合役員からは「コロナウイルス感染防止対策により営業活動も制限され、先行きの不安感が増している」(新潟県/鉄骨製造業)「宿泊業特有の高い固定費が経営を圧迫しており、今後も厳しい状況が確実視される」(群馬県/旅館・ホテル)といった先行きに対する不安の声が相次いでいます。

 (つづく)

ポイント

 (1)20年1〜3月期のGDP改定値がマイナス0・6%。コロナの影響鮮明に

 (2)5月有効求人倍率は前月比0・12ポイント低下の1・20倍。人件費を削る動きが顕在化

 (3)中小企業5月景況判断指数がマイナス74・6へ低下。先行き不安感根強く

国内景気の主な出来事

4/1 日銀短観で大企業製造業7年ぶりマイナス

  3 3月の景気動向調査企業の景況感、最大の下げ幅

  16 全国に緊急事態宣言発令

  23 4月の月例経済報告で景気全体の判断を「悪化」に

5/12 景気動向指数の「先行指数」が83.8と最大の下落

  22 日銀臨時会合が30兆円規模の中小企業資金繰り対策

  25 全国の緊急事態宣言解除

  28 日産、6712億円の赤字

6/5 消費支出が過去最大の11.1%減

  11 大企業景況感マイナス47.6に急落

  17 訪日外国人数が99.9%減

  30 5月有効求人倍率が1.20倍と前月から0.12ポイント低下

 

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(4)旅行需要 外国人消費額ほぼ蒸発

202073

 新型コロナウイルス感染症抑制のための対策は、宿泊業や運輸業に顕著な打撃を与えています。

輸送人員激減

 国土交通省の「交通政策白書」によると、4月に輸送人員が半分以下となった鉄道会社は、大手私鉄で全社、公営の約9割、中小私鉄の約7割にのぼります。

 また、乗り合いバスでは、約6割の事業者の運送収入が半分以下となり、輸送人員も半減。貸し切りバスでは、「ほとんどバスが動いていない」状態で、運送収入が7割以上減少した事業者が約9割にのぼります。

 航空での輸送人員は、国際線で97%減、国内線で86%減となっています。

 国際航空運送協会(IATA)は、2020年の世界の航空業界の損失見通しを843億ドル(約9兆円)としています。

実施1%未満

 日本交通公社の「JTBF旅行実態調査」(5月上旬実施)によると、4月から6月の期間の旅行の予定についての質問(複数回答)に、「いまのところ実施予定」と回答したのは、国内旅行、海外旅行ともに1%未満でした。

 「もともと旅行に行く予定はない」人が55・6%を占め、「既に中止・延期を決定」した人も、国内宿泊旅行で14・9%、海外旅行で3・3%でした。

 3月には、新型コロナウイルスの影響で旅行をとりやめた人が、国内旅行で75・9%、海外旅行で74・2%にのぼりました。

 国土交通省観光庁によると、5月の宿泊施設への延べ宿泊者数は、外国人が14万人で前年同月から98・6%減、日本人は767万人で81・6%減と激しい落ち込み。5月の客室稼働率は12・8%にすぎません。

訪日客99%減

 日本政府観光局によると2020年5月に日本を訪れた外国人客数は1700人で前年同月比99・9%減。4月の2900人をさらに下回り、統計をとりはじめた1964年以降、過去最少となっています。

 新型コロナウイルス感染症で、多くの国が海外渡航などの制限をしているためです。

 昨年5月には、277万人、4月には293万人の外国人が日本を訪れていました。

 観光庁によると、2020年1〜3月期の訪日外国人の旅行消費額は6727億円(1人当たり17万5000円)で前年同期の1兆1517億円から半減しました。

 4〜6月期は、前年同期の訪日外国人の旅行消費額1兆2673億円が、ほぼ「蒸発」することが予想されます。観光業などに与える打撃の大きさをあらためて示しています。

 (つづく)

ポイント

 (1)鉄道、バスなど運輸業の多くが乗客数半分以下。航空国内線でも約9割減

 (2)海外旅行、国内旅行は行けず。ほとんどの人が予定とりやめ

 (3)外国人の訪日ほぼゼロに。消費1兆円超が「消失」

 

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(5)家計 コロナ禍、変貌が鮮明に

202074

 家計の消費支出が激減しています。

「緊急事態」で

 総務省の「家計調査」によると、4月の実質家計消費支出は前年同月と比べ11・1%減少しました。減少幅は消費税増税前の駆け込み需要の反動が表れた2015年3月の10・6%減を上回り、比較可能な01年1月以降で最大の落ち込みになりました。

 前年と比べて実質家計消費支出が減ったのは7カ月連続です。安倍晋三政権が19年10月に強行した10%への消費税率引き上げに加え、新型コロナウイルスの感染拡大が影響しました。

 安倍政権は4月7日、東京など7都府県を対象に緊急事態宣言を発出。16日には対象地域を全国へ拡大しました。5月25日に全都道府県で解除されるまで、外出自粛、営業自粛が呼びかけられ、消費を下押ししました。

在宅で増加も

 全体として消費は減少したものの、増加した項目もあります。マスクなどを含む保健消耗品は前年同月比124%も増えました。背景としてコロナ感染への心配から需要が増えたのに加え、製造体制も強化されたため、供給が一時の品薄状態から安定したためとみられます。

 また、外出自粛や在宅勤務、在宅学習・講義などに対応した消費も増加しました。自宅での調理が増えたために、パスタや即席麺、電子レンジの消費が増えました。パソコンは前年同月比72%の増加です。3月は前年と比べて減少していました。進学した生徒や学生が、オンラインで授業を受けるために、パソコンを新たに購入したと考えられます。

外食産業悲鳴

 消費が極端に減少したのは、外出を前提とした支出です。通学定期は前年同月比88・1%の減少。文化施設入場料や遊園地入場・乗り物代は同9割以上減少しました。

 外食(食事代)は同63・3%減、店舗での飲酒(飲酒代)は同90・3%の減少でした。日本フードサービス協会の外食産業市場動向調査によると、4月は調査開始以来最低の売上高、5月はやや回復したものの前年と比べ、大幅減となりました。5月の売上高を業態別に見ると、ディナーレストラン同71・5%減、居酒屋同88・5%減などです。

 飲食店は個人経営が多く、多くの店で財務基盤があまり強くありません。民間信用調査会社の東京商工リサーチのまとめによると、「新型コロナ」関連の経営破たん(負債1000万円以上)は6月30日の段階で294件。そのうち飲食業は46件を占めます。

 内閣府の5月の「景気ウオッチャー調査」には、レストランの経営者から、「店舗をどこまで維持できるのか、かなり切迫した状況」(東北)「新型コロナウイルスの影響で、売り上げは前年度の3分の1ぐらいしかない。このままだと店はつぶれるしかない」(南関東)、「弁当や総菜を出し、従業員を減らす等の対策をしているが、店の存続の瀬戸際である」(九州)、といった悲鳴が上がっています。政府の経済対策には、中小業者への持続化給付金や家賃支援などが盛り込まれました。いっそうの拡充とともに、一刻も早く現場へ届けることが必要です。 (おわり)

ポイント

 (1)営業自粛と外出自粛で4月の家計消費支出は01年1月以降最大の下げ幅に

 (2)在宅の増加に対応した「巣ごもり需要」が鮮明に。デジタルや食料品が増

 (3)外出が前提の店舗での食事や飲酒などが壊滅的に減少。政治の対応が必要

 

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【V】

(1)世界経済 コロナ禍で急激に景気悪化

2020929

 世界各国が4〜6月期の国内総生産(GDP)を相次いで発表する中、新型コロナウイルスの感染拡大による急激な景気悪化が鮮明となっています。

2期連続減少

 米商務省が7月30日発表した4〜6月期の実質GDP速報値は、年率換算で前期比32・9%減となりました。下げ幅は四半期で統計を取り始めた1947年以降最大。マイナスは2四半期連続。

 欧州連合(EU)統計局が7月31日発表した4〜6月期のユーロ圏実質GDP速報値は、前期比12・1%減でした。下げ幅は1995年の現統計開始後最大。EU27カ国全体では11・9%減(前期は3・2%減)。いずれも2四半期連続のマイナスでした。

 オーストラリアやニュージーランドも2四半期連続のマイナスで、景気後退入りが確認されました。

 アジア開発銀行(ADB)は9月15日、今年のアジア太平洋46力国・地域(日本など除く)のGDPが前年比0・7%減との予想を発表しました。マイナスは1962年以来。

石油産業苦境

 供給過剰による石油価格の低迷に加え、新型コロナウイルスの感染拡大による経済活動の停滞で石油需要が急減し、石油産業が打撃を受けています。

 4〜6月期決算は、英BP、英・オランダ系ロイヤル・ダッチ・シェル、米シェブロン、米エクソンモービルの欧米石油大手4社がそろって赤字でした。4社の赤字の合計は443億ドル(約4兆7000億円)にも達しました。

 また、米国のシェール・オイル産業も苦境に陥っています。米法律事務所ヘインズ・アンド・ブーンのまとめによると、4〜6月の石油・ガス関連企業の経営破綻は29社で、前期から倍以上に急増しました。

 石油各社は生産を大幅に縮小し、米国の原油生産量は6月以降、日量約1100万バレルと、縮小前に比べ15%程度減少しています。しかし、シェール開発の先駆者である大手のチェサピーク・エナジーさえ耐えきれず、6月下旬に破綻しました。

IT追い風も

 他方、一部のIT(情報技術)企業には、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う“在宅需要”の拡大が追い風になっています。GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)と総称される米IT大手4社は7月30日、4〜6月期の決算を発表。グーグル持ち株会社のアルファベットを除く3社が増収増益となりました。

 特に、アマゾン・ドット・コムは、主力のインターネット通販の売り上げが大幅増となり、売上高、純利益ともに過去最高を更新しました。売上高は前年同期比40%増の889億1200万ドル(約9兆3000億円)。アップルは4月に店舗閉鎖の影響を受けたものの、5、6月に販売が回復し、11%の増収。フェイスブックも11%の増収を確保。ただ、アルファベットは広告収入が減少し、初めて減収に陥りました。

 新型コロナウイルスの感染拡大で経済活動が停滞する中、成長を続けるIT企業に投資資金が集中しています。8月19日の米株式市場でアップル株価が上昇し、米企業で初めて時価総額が一時2兆ドル(約212兆円)を超えました。

 米企業の時価総額は、GAFAにマイクロソフトを加えたIT大手5社が上位を独占しています。

 (つづく)

ポイント

(1)4〜6月期GDP発表で2期連続マイナス成長が相次ぎ、景気の急悪化が鮮明

(2)価格低迷に加え、新型コロナウイルス禍で石油需要が急減し、石油産業に打撃

(3)一部IT企業には“在宅需要”の拡大が追い風。米企業時価総額の上位を独占

世界経済の主な出来事(7〜9月)

7/1 NAFTAに代わる新協定発効

  7 欧州委がユーロ圏GDP予想を前年比8.7%減へ下方修正

  13 G7財務相会合が低所得国の債務返済の一時猶予徹底を確認

  15 産油国が減産規模を日量770万バレルへ縮小

  18 G20財務相・中銀総裁会議が追加コロナ対策の用意を表明

  30 米商務省発表の4〜6月期GDPが前期比年率換算32.9%減

8/14 米大統領がTikTokの米国事業の90日以内の売却を命令

  19 米株式市場でアップル株の時価総額が一時2兆ドル超え

9/10 欧州中銀が大規模緩和を維持

  15 アジア開発銀がアジアのGDPを0.7%減と予想

  16 米FRBがゼロ金利を2023年末まで維持する見通しを表明

 

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(2)米中攻防 安全保障絡みハイテク分野で

2020930

 米国と中国のハイテク分野での攻防が激化しています。トランプ米政権は、国家主導の中国経済の台頭に脅威を感じ、安全保障を前面に出して、中国の経済活動を力で抑え込もうとしています。

輸出禁止措置

 米国は、中国通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)に対する新たな輸出禁止措置を9月15日に本格導入しました。米技術を使って生産した外国製半導体を同社に供給することが極めて困難になり、取引のある日本や台湾、韓国の企業には大きな影響が及びます。

 世界の半導体メーカーは設計や製造装置を米国製に依存しており、ファーウェイの外部調達網はほぼ断たれることになりそうです。

 ファーウェイは、次世代通信規格「5G」の基地局やスマートフォンで世界的に高いシェアを持っています。今年4〜6月のスマホの世界出荷台数では、首位の韓国サムスン電子を抜き初の首位に立ちました。ところが、米制裁で半導体の調達が困難になります。ファーウェイの郭平会長(輪番制)は米国の制裁で同社のサプライチェーン(部品供給網)が打撃を受けていると認めています。

強硬策で支持

 大統領選挙を控えたトランプ政権は対中強硬策を強めることで、支持を広げることを狙っています。ポンペオ米国務長官は7月23日、カリフォルニア州のニクソン大統領記念図書館で「共産中国と自由世界の未来」と題した演説を行いました。

 2019年10月にペンス副大統領が行った演説では、中国に対して関係構築を呼び掛ける内容でした。ポンペオ長官は今回、中国共産党と自由・民主主義国家を明確に対比させ中国政府を批判。強硬姿勢を強めました。

 ポンペオ長官は、新型コロナウイルスへの対処、香港やウイグル人への弾圧、不均衡貿易、軍事力強化などをあげて「自由世界はこの新しい専制国家に勝利しなければならない」と述べました。米国防総省が1日に発表した中国の軍事動向に関する年次報告書でも中国の軍民両用技術の動向に警戒感を示しました。

利用者に波及

 米中間の対立が生活に身近なアプリの利用者に波及しています。

 トランプ米大統領は8月14日、安全保障が脅かされる恐れがあるとして、短編動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」を運営する中国の字節跳動(バイトダンス)に対し、ティックトックの米国事業を90日以内に売却するよう正式に命じました。

 米政府の懸念を解消するため、親会社のバイトダンスが米ソフトウエア大手オラクルと提携交渉を進めており、トランプ大統領がこれを承認すれば、今回の措置は解除される見通しです。しかし、新会社の出資をめぐり米国と中国側で解釈の違いが表面化しています。

 米商務省は9月18日、ティックトックと対話アプリ「微信(ウィーチャット)」の新規ダウンロードや更新を20日に禁じると発表しました。ティックトックは声明で「米政府への提案で、既に前例のないレベルの透明性と説明責任を約束している」と強調しました。

 その後、ウィーチャットについては、サンフランシスコの連邦地裁が20日までに運用禁止を命じた大統領令を一時差し止める判断を下しています。ティックトックについても、ワシントンの連邦地裁が27日、米国での配信禁止措置を暫定的に差し止める命令を下しました。

 (つづく)

ポイント

 (1)米、スマホの世界出荷台数1位のファーウェイに輸出禁止措置。取引企業に影響

 (2)大統領選挙を控え、安全保障を前面に対中強硬姿勢示す。軍民両用技術に懸念

 (3)生活に身近なアプリ利用者にも影響。資本提携交渉や裁判所の場にまで広がる

 

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(3)国内景気 個人消費冷え非正規に打撃

2020101

 新型コロナウイルスの感染拡大により、国内景気は厳しい情勢が続いています。

GDP減最悪

 2020年4〜6月期の国内総生産(GDP)改定値は、前期比実質7・9%減、年率で28・1%減となり、リーマン危機時を上回る戦後最悪を記録しました。感染の終息が見通せない中、倒産や人員削減を選択する企業が相次いでいます。

 民間信用調査会社の東京商工リサーチによると、9月29日現在、「新型コロナ」関連破綻(負債1000万円以上)は2月からの累計で536件発生。6月に単月最多の103件を記録して以降減少傾向にあったものの、9月単月で95件と、再び増加基調に転じています。

 業種別では、飲食業が最多の82件。次いでアパレル関連59件、宿泊業48件と続きます。負債100億円以上の大型倒産も3件発生しており、影響は事業規模を問わず全国に拡大しています。

 背景にあるのは個人消費の低迷です。内閣府は個人消費について、9月の月例経済報告を下方修正。8月の「このところ持ち直している」との表現に「一部に足踏みもみられる」を付け加えました。緊急事態宣言が5月25日に解除されたものの、感染拡大を懸念し、外食などを控える消費者が増えているとみられます。

雇用環境悪化

 雇用環境の悪化も鮮明です。厚生労働省が把握しているだけでも、9月25日現在、コロナ感染症に起因する解雇者数は見込みを含め6万923人を記録。増え方も加速しており、8月末に5万人を超えてからわずか3週間強で1万人以上膨れ上がりました。

 雇用悪化の影響は非正規労働者に集中しています。7月の労働力調査によると、役員を除く非正規の職員・従業員数は前年同月比131万人減となり、比較可能な2014年1月以降、最大の下落幅を更新しました。男女別では、男性50万人減に対し、女性は81万人減と61%を占めます。非正規雇用の多い女性にしわ寄せが集中している実態が浮き彫りとなりました。

 7月の有効求人倍率(季節調整値)も1・08倍と14年4月以降6年3カ月ぶりの低水準を記録。労働力需要の減退も一段と鮮明になっています。

先行き不安視

 全国中小企業団体中央会が公表した8月の中小企業月次景況調査には、先行きを不安視する声が多数寄せられました。「受注が戻らなければ人員削減も考えなければならない」(岐阜県/紙加工品)、「終息したとしても仕事量が戻らないじゃないかと不安の声も出だし従業員の給料カット、人数を減らすと言う声も出ている」(兵庫県/印刷業)など、状況は深刻です。企業の経営悪化が長期化することで、雇用環境の持ち直しも一段と遠のくことが危惧されます。

 菅義偉首相は看板政策として、国民監視を強める恐れのある「デジタル庁」の創設を宣言。国民に対しては「自助」を強調し、コロナで疲弊した国民への支援策には後ろ向きの姿勢を示しています。(つづく)

ポイント

(1)20年4〜6月期GDP改定値が戦後最悪を記録。コロナ感染症の影響が鮮明に

(2)コロナ関連破綻が累計536件発生。9月単月で95件と、再び増加傾向にある

(3)コロナ解雇6万人超。増加ペース加速。飲食業を中心に非正規雇用に打撃集中

国内経済の主な出来事(7〜9月)

7/7 消費支出が実質で前年同月比16.2%減。過去最大の下落幅を記録

  22 「Go To トラベル」キャンペーン開始

  30 内閣府、景気が2018年10月をピークに後退入りしたと認定

8/19 7月の輸出額、前年と比べて19.2%減

  25 7月の外食売上高15%減

9/1 7月の非正規雇用者数が前年同月比131万人減

  8 4〜6月期の国内総生産、年率28.1%減に下方修正

  16 菅義偉政権が発足

  18 訪日外国人数が99.7%減

  23 1〜8月の休廃業、23.9%増

  23 コロナ解雇6万人超す

 

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(4)景気偽装 消費税増税強行の失政

2020102

 安倍晋三前政権が、景気後退局面で強行した消費税増税により、日本経済は出口の見えない厳しい状況が続いています。

18年10月が山

 有識者が景気の「山」と「谷」を判断する内閣府の景気動向指数研究会は7月30日の会合で景気の「山」を暫定的に2018年10月としました。景気拡大局面が18年10月に終了し、その後、景気は後退していたと認定。安倍前政権が振りまいてきた景気拡大論が偽装したものであることが明らかになりました。

 景気の拡大期間は71カ月にとどまり、戦後最長だった「いざなみ景気」(02年2月〜08年2月)の73カ月に届きませんでした。その上、この間の経済成長率は年平均1・1%程度にとどまっており、「いざなぎ景気」(1965年11月〜70年7月)の11・5%や「バブル景気」(86年12月〜91年2月)の5・3%と比較し、はるかに低水準でした。

専門家も疑問

 景気が後退しているにもかかわらず、19年1月には当時の茂木敏充経済財政担当相が「戦後最長となったとみられる」と発言。安倍前首相も「戦後最長」の景気拡大だと繰り返し、偽りの景気回復論を国民に振りまいてきました。しかし米中貿易摩擦や中国経済の減速などにより、その後に公表された経済指標は悪化が目立ち、民間エコノミストからも政府の景気認識に対し疑問の声が上がりました。

 にもかかわらず、19年10月、政府は消費税率10%への引き上げを強行しました。

 増税の結果、個人消費は減少。数値の動向から機械的に算出する景気動向指数の基調判断では19年8月以降で「悪化」という判断が示されました。一方で政府は公式な景気認識を示す「月例経済報告」で新型コロナウイルス感染拡大の影響が出る前の今年2月まで景気動向指数とのずれがありながらも「回復」という表現を維持しました。

減税求める声

 安倍前政権による2度の消費税増税は内需を冷え込ませました。さらに新型コロナウイルス感染症の拡大により日本経済は危機的状況に直面しています。

 物価変動の影響を除いた実質国内総生産(GDP)は3四半期連続でマイナス成長に陥りました。9月8日に発表された20年4〜6月期のGDP(季節調整済み)改定値は、実質で前期比7・9%減。この成長ペースが1年間続いた場合の年率換算では28・1%減でした。リーマン・ショック後の09年1〜3月期(年率17・8%減)を超える戦後最悪の下落幅を記録しました。

 民間信用調査会社の東京商工リサーチの発表によると、今年1月から8月の休廃業・解散企業は3万5816件で前年同期に比べ、23・9%も増えました。倒産は5457件に上ります。

 消費税率10%引き上げから1年経過した現在、全国各地で減税を求める声が強まっています。内閣府の景気ウオッチャー調査には「消費税の引き下げ等の新たな景気対策を講じなければ、景気回復は見込めない」(衣料品専門店)、「現金給付や消費税減税等の対応を急いでほしい」(コンビニ経営者)といった意見が寄せられています。(つづく)

ポイント

(1)景気動向指数研究会が7月会合で景気の「山」を2018年10月と認定

(2)政府は偽りの景気回復論を振りまき、19年10月に10%への消費税増税を強行

(3)今年1月から8月の休廃業・解散企業は3万5816件、倒産は5457件

 

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(5)GoTo トラベル効果は見えず

2020103

 新型コロナウイルスが収束した後に実施するとされていたGo To トラベル事業は、新型コロナウイルスが再拡大するもと、8月上旬の開始予定も前倒しし、東京を除外して7月22日から実施されました。

恩恵は大手に

 Go To トラベル事業は、給付金の予算が1兆1248億円、事務費の予算が2294億円に達します。

 観光庁の宿泊旅行統計調査によると、国内における8月の日本人のべ宿泊者数は2605万人(前年同月比51・5%減)。7月の2135万人(前年同月比47・9%減)から470万人の増加です。8月は前年からの減少幅も7月と比べて大きくなりました。

 国土交通省は、8月末までにのべ約1339万人がGo To トラベルを利用したとしますが、8月の宿泊者数の増え方は開始前の6月、7月と変わらず、効果は見えません。(グラフ)

 また、Go To トラベルは大手旅行サイトを通じた予約が主流で、補助の上限額1泊2万円を利用するには1泊4万円の部屋となるなど、大手の旅行会社と旅館が恩恵を受けやすくなっています。

航空回復せず

 9月22日までの連休は、国内の航空便がほぼ満席になる時間帯もあり、高速道路の渋滞や各地で行列ができました。新型コロナウイルス感染症の拡大が予想される冬を前に、これまで旅行などを控えてきた人たちが、つめかけました。

 Go To トラベル事業の開始前でも、自粛生活からの息抜きとして、レジャーへの要望が高まっていました。新型コロナウイルスへの対策として、近場の屋外で楽しめる場所に、乗用車で行く傾向があります。

 航空への需要は、連休などの時期を除いて回復していません。

 国土交通省の航空輸送統計によると、7月の国内航空旅客数は300万人で前年同月比66・9%減。国際航空旅客数は、5・7万人で前年同月比97・3%減と厳しい状況が続いています。

外国人戻らず

 外国人の観光客は依然、戻っていません。日本政府観光局によると2020年8月に日本を訪れた外国人客数は8700人で前年同月比99・7%減。11カ月連続で前年同月を下回りました。

 新型コロナウイルス感染症で、日本への上陸拒否、検疫強化の対象となる国がほとんどで、多くの国が海外渡航などの制限をしているためです。

 昨年7月には299万人、8月には252万人の外国人が日本を訪れていました。

 観光庁の訪日外国人消費動向調査は、2020年4〜6月期、7〜9月期とも中止になりましたが、99%よりも大きい減少が予想されます。2019年7〜9月期の訪日外国人の消費額は1兆1818億円。この額が「蒸発」しました。

 (おわり)

ポイント

(1)新型コロナ再拡大のもとでGoToトラベル事業開始。効果は見えず

(2)コロナ本格流行予想の冬を前にレジャー客増える。航空客は回復が見通せず

(3)訪日外国人客数99・7%減。外国人観光 消費は依然として「蒸発」したまま

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【W】

 (1)世界経済 感染再拡大で不透明感

20201223

 中国の景気回復の一方、欧米などで新型コロナウイルスの感染が再拡大しており、世界経済は不透明感が強まっています。

独り勝ち状態

 中国国家統計局が10月19日発表した7〜9月期の国内総生産(GDP)は、前年同期比4・9%増でした。2期連続プラスで、4〜6月期の3・2%増から加速。各国がコロナ感染拡大の影響でマイナス成長に沈む中、主な国では唯一、景気回復が進んでいます。

 中国税関総署が12月7日発表した貿易統計によると、11月の貿易収支は754億ドル(約7兆8500億円)の黒字で、統計で確認できる1981年以降で最大。マスクなど新型コロナウイルス関連の外需にも支えられ、輸出の伸びが輸入を大きく上回りました。

二番底に警戒

 米連邦準備制度理事会(FRB)が12月2日公表した地区連銀景況報告によると、「大半の地区の景気は控えめから緩やかに拡大した」一方、コロナ感染が再拡大する中、4地区が実質ゼロ成長となりました。

 米連邦公開市場委員会(FOMC)は12月16日、事実上のゼロ金利政策と量的緩和策の維持を決定。会合後の声明は「景気は改善が続いたが年初の水準を大きく下回っている」としました。

 欧州連合(EU)統計局が10月30日発表した7〜9月期のユーロ圏実質GDP(域内総生産)速報値は、季節調整済みで前期比12・7%増となりました。

 しかし、ユーロ圏では、コロナ感染再拡大に伴う厳しい外出制限や店舗営業規制で、景気の二番底が警戒されています。欧州中央銀行(ECB)は12月10日開催した定例理事会で、追加の金融緩和を決定。国債や社債などの購入枠を拡大し、企業や家計の資金繰り支援を強化。また、企業向け融資を一段と促すため、銀行に超低金利で資金を貸し出す制度を拡充しました。

GAFA規制

 情報技術(IT)巨大企業への規制の動きが強まっています。米下院司法委員会は10月6日、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)と呼ばれる4社がそれぞれの分野で競争を阻害しているとする報告書を公表しました。

 米司法省と11州が10月20日、検索サービスで競争を阻害しているとして、グーグルを反トラスト法(独占禁止法)違反でワシントンの連邦地裁に提訴。テキサス州など10州が12月16日、コロラド州など38州・地域も12月17日、グーグルを独禁法違反で提訴しました。

 また、米連邦取引委員会も12月9日、フェイスブックを独禁法違反でワシントンの連邦地裁に提訴。ニューヨーク州など48州・地域の司法当局も同様の訴訟を起こしました。

 仏情報保護当局、情報処理・自由委員会は12月10日、グーグルとアマゾンに対し制裁金計1億3500万ユーロ(約170億円)の支払いを命じたと発表。インターネットサイト閲覧履歴「クッキー」を利用者の同意なしに広告目的でスマートフォンなどに保存させたことが国内法違反に当たるとしました。

 欧州連合(EU)欧州委員会は12月15日、巨大IT企業への規制を強化する新ルール案を公表。他社サービスを排除したり、自社サイトを利用する他社のデータを活用したりして、市場競争をゆがめた場合、全世界の売上高の最大10%に相当する制裁金を科します。最終的には事業分割も命じることができる内容です。

 

ポイント

(1)コロナ感染拡大で各国がマイナス成長の一方、主な国で中国が唯一、景気回復

(2)コロナ感染の再拡大で、欧米で景気の二番底の懸念。中銀は引き続き金融緩和

(3)情報通信大手企業に独禁法違反の疑い。欧米でGAFA4社に対し規制の動き

世界経済の主な出来事(10〜12月)

10/6 米下院司法委がGAFAが競争を阻害しているとする報告書

  12 OECDが巨大IT企業課税の「ブループリント」を公表

  19 7〜9月期の中国GDP発表、2期連続のプラス成長

  20 米司法省と11州がグーグルを独禁法違反で連邦地裁に提訴

11/5 FRBがゼロ金利と緩和を維持

12/1 中国、輸出管理法を施行

   1 OECDが2021年の世界経済成長見通しを下方修正

   9 米連邦取引委員会がフェイスブックを独禁法違反で提訴

  10 欧州中銀が追加金融緩和を決定

  10 仏情報保護当局がグーグルとアマゾンに制裁金を命じたと発表

  15 EU欧州委が巨大IT企業への規制を強化する新ルール案公表

  16 FRBがゼロ金利と緩和を維持

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(2)国内経済 新型コロナの猛威続く

20201224

 新型コロナウイルス感染症が猛威を振るう中、国内経済は深刻な状況が続いています。

反動でプラス

 2020年7〜9月期の国内総生産(GDP、季節調整済み)改定値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比5・3%増でした。1年ぶりのプラス成長です。しかし、それはコロナ禍で戦後最悪の落ち込みとなった4〜6月期の反動が影響したためです。

 12月の月例経済報告では、内需の柱である個人消費が「一部に足踏みもみられる」という言葉を付けたし、下方修正されました。景気ウオッチャー調査の街角の景況感を示す現状判断指数は、4月以来7カ月ぶりに悪化し、基調判断の下方修正を迫られました。

 民間信用調査会社の東京商工リサーチによると、12月22日現在の新型コロナ関連破綻(負債1000万円以上)は2月からの累計で814件。業種別では飲食業が138件、次いでアパレル関連が79件、宿泊業は60件に達しました。

 休廃業・解散した企業は1〜10月で4万3802件。調査開始以降最多だった18年を大幅に上回るペースで推移しています。コロナの影響による解雇や、雇い止めは7・7万人に上ります。

実体から乖離

 国内景気が落ち込む一方、株価は高騰しており、実体経済から大きく乖離(かいり)しています。3月19日に1万6553円まで下落していた日経平均株価はその後上昇し、2万6000円台とバブル崩壊後約29年半ぶりの高値となっています。

 背景には、政府や日銀の財政出動や金融緩和の実施があります。資金が大企業や富裕層にも流れ、異常な「カネあまり」が起き、株式市場に流れ込みました。さらに、日銀は直接株式市場に資金を投入する異常な「公的マネーによる株価対策」を行ってきました。

 その結果、株価上昇で大企業の創業者など大株主が富を膨らませました。日本の富裕層35人の資産額は20兆円を超えます。

GoTo批判

 政府の観光業支援策である「Go To トラベル」による混乱が広がっています。

 8月上旬の開始予定を前倒しし、東京を除外して7月22日から実施。開始前から、税金を投じて行うべき事業なのかと指摘されてきました。

 同事業における利用実績は、7月22日から11月15日の推計で利用人泊数が少なくとも約5260万人泊。割引支援額が3080億円を超えます。

 感染拡大の恐れや、利用者・宿泊施設の間で生じる「格差」などに対し、批判が続出。医療現場や政府の分科会からも、運用の見直しや停止を求める意見が寄せられていました。

 菅義偉首相は、「Go To トラベル」に固執し続けていましたが、ようやく14日に全国一斉停止を発表。しかし、28日からの停止です。

 コロナの打撃を受けている観光業や旅行業、飲食業への直接支援こそ求められています。「Go To」事業の中止は必要なものの、菅政権の場当たり的な対応による弊害が、利用者や業者に及んでいます。(つづく)

ポイント

(1)7〜9月期GDPの改定値が5・3%。前期の反動で1年ぶりにプラスへ

(2)日経平均株価が2万6千円台。バブル崩壊後最高値を更新。実体経済と乖離

(3)「Go To トラベル」への批判が広まり、菅首相が全国一斉停止を発表

国内経済の主な出来事(10〜12月)

10/1  消費税率10%引き上げから1年

   22 9月の百貨店売上高前年同月比33.6%減

   30 大企業の内部留保12年連続で最高額を更新。459兆円に

      有効求人倍率9カ月連続悪化

11/17 日経平均株価の終値が2万6000円台。約29年半ぶり

   18 7〜9月期の日本人国内旅行消費額、前年同期比56.3%減

   26 休廃業・解散数1〜10月で4万3802件。最多を大幅に上回るペースで推移

12/8  街角の景況感7カ月ぶりに悪化

   14 「Go To トラベル」28日からの全国一斉停止を発表

   16 訪日外国人数、入国制限緩和後も前年同月比97.7%減

   18 コロナ関連解雇7.7万人超

   22 コロナ関連破綻814

 

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(3)脱炭素 原子力と石炭火発は維持

20201225

 菅義偉首相は10月26日の所信表明演説で「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」として「脱炭素社会の実現」を表明しました。

 そのために、「省エネルギーを徹底し、再生可能エネルギーを最大限導入するとともに、安全最優先で原子力政策を進める」と述べています。

 コストが上がり続ける危険な原子力発電の推進は大問題です。かねて政府は、脱炭素のための原発活用を主張してきました。危険な原発の再稼働は許されません。

30年以上稼働

 また、「長年続けてきた石炭火力発電に対する政策を抜本的に転換」することを表明しました。炭素を大量排出する石炭火発の早急な停止が期待されました。しかし、政策はこれまでと同様、高効率な石炭火力発電所の新規建設・置き換えで非効率なものを減らそうというものです。石炭火力発電所は、建設から30年以上稼働します。石炭火力発電所が2020年から30年間以上稼働すると、脱炭素の政府目標である2050年以降も大量の炭素を排出します。

新成長戦略で

 経団連は、11月17日に発表した新成長戦略で「脱炭素社会への移行に不可欠な革新的技術の開発・普及を産業政策の中軸と位置付けて国家プロジェクトを立ち上げ、産学官の総力を挙げて取り組みを進める」と要求しました。

 そして、「長期かつ大規模の国費投入を行っていくべきである」として、「大容量・低価格で安全な次世代蓄電池の導入や、安価な水素の大量供給および産業プロセス・発電等も含む需要側技術の開発、電化・水素化を進めてもなお排出されるCO2を固定・再利用するためのCCUSの商用化等がテーマとして考えられる」と具体的な要求項目をあげています。

 一方、再生可能エネルギーについては、政府が「漫然と政策的なプレミアムを上乗せする施策を講じてきた。しかし、その国民負担は既に年額2・4兆円まで膨らんでおり、到底持続可能とは言えない」と支援策を攻撃しています。

財界要求通り

 12月15日に閣議決定された20年度第3次補正予算案は、経団連の要求がそのまま盛り込まれています。

 蓄電池技術による電化、水素社会の実現、二酸化炭素の固定・再利用などの研究開発に10年間支援するものです。

 その基金として、政府予算から2兆円という膨大な金額を支出。基金を受けた国立研究開発法人の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から民間企業等へ委託、補助を行います。

 しかし、蓄電池への充電も、水素燃料の生産も、電力消費を増大させます。発電所で炭素の排出量が増えれば、脱炭素はできません。結局、脱炭素は再生可能エネルギーによる発電をいかに飛躍的に充実させるかにかかっています。(つづく)

ポイント

(1)菅首相が所信表明演説で脱炭素を表明。依然、原子力と石炭火力発電を維持

(2)経団連は脱炭素に乗じて蓄電池などの研究開発への国家プロジェクトを要求

(3)菅政権は経団連の要求通り、巨額の予算を国家プロジェクト基金に計上

 

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(4)雇用 コロナ禍で働き方変化

20201226

 新型コロナウイルス感染症の長期化により雇用分野に不安感が広がっています。

影響は広範囲

 総務省が25日公表した11月の完全失業率(季節調整値)は2・9%で、前月から0・2ポイント低下し、2%台に戻りました。しかし前年同月で比較すると、完全失業者数は10カ月連続で増加しています。就業者数、雇用者数ともに8カ月連続で前年同月から減少しています。

 非正規雇用への影響も深刻です。11月の非正規の職員・従業員数は前年同月比で62万人減少しました。そのうちの59%が女性です。減少幅は縮小傾向にあるものの女性の割合は依然高止まりしています。

 民間信用調査会社の東京商工リサーチによると、上場企業の早期・希望退職募集は12月上旬90社に上りました。募集社数はリーマン・ショック直後に次ぐ高水準です。コロナ禍の影響は広範囲に及んでいます。

 ところが菅義偉内閣は、中小企業向けの支援策「持続化給付金」の受け付けを来年1月で打ち切ります。飲食店などを中心に倒産・廃業が相次ぎ雇用にも影響が出るなか、政府の支援策は実態に逆行しています。

テレワーク増

 感染防止策として職場以外で働くテレワークの利用が拡大し、さまざまな問題点が浮上しています。

 厚生労働省が11月に公表したテレワーク実態調査では、経験者の約30%が「仕事と仕事以外の時間の切り分けが難しい」と回答していました。

 厚労省の有識者検討会は23日、テレワークのあり方に関する報告書を公表。働き手が自己申告した労働時間が実際と異なっていても、使用者責任は問われないことを明確化するよう求めています。事実上、企業の労働時間管理を緩める措置です。先の厚労省調査でも約10%の経験者が「働いた時間よりも実際には短く報告することが多い」と回答。自己申告は、ずさんな時間管理を生み、逆に長時間労働を助長する危険があります。

働き方改革II

 政府・財界はコロナ禍をテコに「フェーズIIの働き方改革」の構築を狙っています。

 経団連は「新成長戦略」の中で、時間・空間にとらわれない働き方を提唱。副業・兼業に加え、テレワークやリモートワークといった遠隔勤務の普及を掲げました。働いた時間ではなく生み出す価値で評価・処遇されるべきであるとして、新たな労働時間法制を提起しています。

 しかし、財界の要望に沿ってこれまで政府がおこなってきた労働法制の改悪によって、非正規・不安定雇用が拡大しました。モノのように「使い捨て」「使いつぶす」ブラック企業が横行してきたのが実態です。コロナ危機は、これら非正規雇用労働者やフリーランスを直撃しました。とりわけ若者や女性が犠牲となっています。

 労働法制の規制緩和路線を抜本的に転換し人間らしい雇用のルールをつくることこそ必要です。(おわり)

ポイント

(1)11月非正規雇用が対前年同月比62万人減。上場企業90社が早期・希望退職募集

(2)テレワークが拡大。厚労省が労働時間管理をめぐる使用者責任の緩和を提起

(3)政府・財界がコロナ禍をテコに「フェーズIIの働き方改革」の構築を狙う

 

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