【けいざい四季報2020年】

 

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t  (1)世界経済 原油急落加わり複合危機

t  (2)コロナ禍 経済は急速冷凍状態に

t  (3)国内景気 生産も消費も激減の泥沼状態

t  (4)楽天 出店者に送料負担押し付け

 

 

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(1)世界経済 原油急落加わり複合危機

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 1月15日、トランプ米大統領と中国の劉鶴副首相は、米中貿易協議の「第1段階合意」協定文書に署名しました。2018年夏以降、激化した米中貿易摩擦は、緊張の激化が避けられました。

1時間の独演

 大統領選挙を控えたトランプ大統領は、署名式で中国の代表を1時間近くも脇に立たせたまま、「かつて誰も見たことがない世界最大の取引だ」と独演しました。

 米国は、昨年9月に発動した追加関税第4弾(1200億ドル)の関税率を15%から半減。他方、それ以前に課した第1〜3弾は据え置きました。中国は、農産品など2000億ドル(約22兆円)規模の米国産品を購入し、知的財産権保護、技術移転の強要禁止、金融サービス市場の開放、合意の確実な履行に向けた「紛争解決手続き」などが盛り込まれました。

 「第1段階合意」に先立つ13日には、米財務省は、中国が輸出で有利になる人民元安を誘導しているとする「為替操作国」の認定を外していました。

 米中貿易摩擦が和らいだのもつかの間でした。新型コロナウイルス感染の発生地となった中国では、今年に入り経済に深刻な影響が広がりました。1〜2月の生産、小売り、投資の主要経済指標は軒並みマイナスに転落しました。前年同期比で工業生産は13・5%減、小売売上高は20・5%減、固定資産投資は24・5%減でした。

アジアに打撃

 都市封鎖をはじめとした移動制限、工場閉鎖、物流の寸断などでかつてない事態に発展。みずほ総合研究所は「1〜2月の落ち込みの大きさを踏まえると、1〜3月期の実質GDP(国内総生産)成長率は、四半期のGDP成長率の公表が始まった1992年以来、初のマイナス成長になる可能性が高い」と指摘。その後回復に転じたとしても、通年での成長は大幅に減速することが見込まれています。中国の落ち込みは、同国との経済的結びつきが特に強いアジア地域に打撃を与えています。

 石油輸出国機構(OPEC)は3月5日、4月から6月末までの期間限定で世界需要の約1・5%に当たる日量150万バレルの追加減産で合意していました。ところが同日、6月末までとしていた減産拡大期間を今年末まで延長すると発表しました。新型コロナウイルスの感染拡大で下がり続ける原油価格を支える狙いでした。決めたばかりの合意を当日に見直すのは異例のことでした。

合意に至らず

 OPEC加盟・非加盟の主要産油国で構成する「OPECプラス」は6日、閣僚級会合をウィーンで開き、産油量の削減を協議しましたが合意に至りませんでした。OPEC加盟国が大幅な追加減産を求めたのに対し、ロシアなど非加盟国が「時期尚早」と反対しました。協議決裂を受け、原油相場は急落しました。原油価格の世界的指標の一つとされる米国産標準油種WTIは歴史的安値で推移しています。

 新型コロナウイルス感染拡大という衛生上の危機とそれにともなう経済活動の急停止、さらに原油価格の急落が加わり、株式市場の不安定さが拡大。今、世界経済は、複合危機に見舞われています。(つづく)

ポイント

(1)米中貿易協議は、「第1段合意」。大統領選挙を控えトランプ氏が署名式で独演

(2)コロナ発生で中国経済の主要指標は軒並みマイナス転落。アジア圏に影響拡大

(3)産油国の協議決裂し原油価格急落。コロナ感染、経済急停止と合わせ複合危機

世界経済の主な出来事(1〜3月)

1/13 米財務省が半期為替報告書で中国の「為替操作国」認定を解除

  15 米中が貿易協議「第1段階」の合意文書に署名

  21 中国、2019年の対中直接投資が5.8%増、過去最高と発表

2/6 中国、対米報復関税の一部の税率を半分に引き下げると発表

  13 中国、1月の新車販売台数が前年同月比18%減と発表

  14 米がEU大型民間航空機への追加関税を15%へ引き上げと発表

3/2 OECDが2020年の世界の成長率見通しを2.4%へ下方修正

  3 米FRBが臨時FOMCで、政策金利0.5%引き下げを決定

  15 米FRBが臨時FOMCで、政策金利1.00%引き下げを決定

  16 ダウ平均株価が2997.10ドル安、過去最大の下落

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(2)コロナ禍 経済は急速冷凍状態に

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 昨年末に中国で確認された新型コロナウイルスの感染は、今年に入り急速に世界に広がりました。

暴力的に拡大

 3月18日の会見でトランプ米大統領は、「感染が暴力的に広がっている」と危機感をあらわにし、「私は戦時下の大統領だ。われわれはたたかっている。とても厳しい状況だ」と叫びました。

 米連邦準備制度理事会(FRB)は、経済の急激な落ち込みに対応するため3月3日に続いて15日、政策金利のフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標を1・00〜1・25%から0・00〜0・25%へ1・0ポイント引き下げることを決定しました。

 パウエルFRB議長は、「旅行、観光、医療産業は、すでに事業活動が急落している。加えて、この大流行は、多くの国々で経済活動を制限している。これは、グローバル・サプライチェーン(世界的な部品供給網)に依存した米国の産業に困難を引き起こしている」と危機感を示しました。

マイナス成長

 経済協力開発機構(OECD)のグリア事務総長は、3月22日の声明で「感染被害を受けている国々での生産中止、世界に広がるサプライチェーンへの打撃、景況感の悪化にともなう消費の急激な落ち込みをもたらしている」と強調。ウイルスを封じ込めるための厳戒態勢が、「われわれの経済を、かつてない急速冷凍状態に追い込んでいる」としました。

 世界の金融機関で構成される国際金融協会(IIF)は、20年の世界経済成長率がマイナス1・5%に落ち込むとの見通しを示しています。日本はマイナス2・6%、米国がマイナス2・8%、ユーロ圏がマイナス4・7%になるとしています。

 国連貿易開発会議(UNCTAD)は、感染拡大が長期化した場合、海外直接投資が2020年から21年にかけて30〜40%落ち込むと予想しています。

 国際航空運送協会(IATA)は20年の世界の航空旅客収入は19年比で最大2520億ドル(約28兆円)減少すると見込んでいます。世界の観光産業も打撃を受けています。今年の国際旅客数は昨年より最大で4400万人減少する可能性があると国連世界観光機関(UNWTO)は予測しています。金額にして500億ドルに達します。

雇用不安対策

 雇用不安も広がっています。国際労働機関(ILO)は、世界で失業者が最大で2470万人増えるとの試算を示しました。

 経済危機に対応するため欧州連合(EU)は3月23日、EUの財政ルールの加盟国への適用を一時的に停止することで合意しました。各国が大規模な財政出動を行える余地を確保するためです。

 英国は、民間企業が雇用を継続した場合、賃金を1人あたり8割、最大月2500ポンド(32万5000円)まで政府が負担するとしています。米国は、総額2兆ドルをこえる経済対策を決めました。

 各国・地域が検討している財政出動額は、年間で史上最大規模に膨らむ見込みです。

ポイント

 (1)FRBは金利引き下げ。旅行、観光、医療産業で急落。消費も急激に落ち込み

 (2)厳戒態勢で20年の世界経済成長率はマイナスの予想。海外投資も30〜40%減に

 (3)広がる雇用不安。EUが財政ルールを緩め、英国も賃金補償。米国は2兆ドルの対策

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(3)国内景気 生産も消費も激減の泥沼状態

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 安倍晋三政権が昨年10月に強行した10%への消費税率引き上げが日本経済の重しになっています。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で生産も消費も激減し、経済は泥沼状態に陥っています。

GDPが急減

 19年10〜12月期の国内総生産(GDP)改定値は1次速報値から下方修正され、年率7・1%と大幅な落ち込みを示しました。GDPの5割強を占める個人消費は前期比2・8%下落し、民間企業の設備投資は4・6%減でした。輸出も0・1%の減。消費税増税による個人消費の減少に加え、米中貿易摩擦の影響で、生産も輸出もマイナスとなってしまいました。

 19年10〜12月期GDP改定値の公表に合わせ、同年7〜9月期のGDPも改定されました。従来の公表値を0・1ポイント下方修正し、前期比0%増にとどまりました。消費税増税前から景気が停滞していたことが明らかになったのです。

格差が鮮明に

 消費税増税後、家計消費は4カ月連続で前年同月割れとなりました。19年のスーパー売上高は4年連続マイナス。大手百貨店の2月売上高は前年同月比18・4%もの大幅減となりました。2月の国内新車販売は前年同月比10・3%減と5カ月連続の減少でした。

 1月27日には山形市の百貨店「大沼」が自己破産を申請。同社によると「昨年の消費税増税以降は売上高の減少にさらに拍車がかかる事態となり、その結果、資金繰りも危機的状況に追い込まれ」たため、事業継続を断念したとしています。消費税増税が地方経済に押し付ける痛みは甚大です。

 法人企業統計では大企業の内部留保が460兆円を超え、過去最高額を更新しました。一方、大企業の従業員の賃金は横ばいです。毎月勤労統計では19年平均の現金給与総額は6年ぶりのマイナス。格差が鮮明になっています。

景気後退期に

 新型コロナウイルス感染の拡大による経済への影響も深刻です。3月の月例経済報告は景気判断からこれまで維持してきた「回復」の表現を削除。「景気は、新型コロナウイルス感染症の影響により、足下で大幅に下押しされており、厳しい状況にある」としました。エコノミストからはすでに景気後退期に入っているとの指摘が相次いでいました。「コロナ禍」を期に、政府も景気後退を追認した格好です。

 帝国データバンクのまとめによると、3月25日時点で新型コロナウイルスの影響を受けたとして業績予想の下方修正(連結、非連結)をした上場企業は111社で、減少した売上高の合計は約7684億4400万円となっています。

 政府の自粛要請により、各地の遊園地・テーマパークは休園、週末に臨時休業した百貨店などもあります。訪日外国人を対象とする百貨店での免税売上高が激減しています。大丸・松坂屋百貨店合計の免税売上高はこの2月前年同月比75%減、高島屋は69・9%減でした。

 航空業界にも影響が広がり、日本航空は国内線2割、国際線3割を減便しています。全日空は3月29日から4月24日まで、国際線58路線計2630便の運航を見合わせると発表。事業計画からは57%の減少です。

 安倍政権は社会保障の削減などを押し付けて国民から所得を奪ってきました。昨年10月に強行された消費税増税は日本経済をさらに悪化させるものでした。そこに新型コロナウイルス感染拡大が追い打ちをかけました。失政が日本経済の危機をさらに深刻にしています。

ポイント

 (1)19年10〜12月期のGDPは年7・1%減。消費税増税の悪影響が明らかに

 (2)大企業の内部留保が460兆円と過去最高を更新。賃金横ばいで格差鮮明

 (3)月例経済報告の景気判断から「回復」削除。新型コロナが景気悪化に拍車

国内景気の主な出来事

1/5 日銀「生活意識アンケート」で個人景況感が6期連続低下

  23 2019年のスーパー売上高が4年連続マイナス

  27 山形市の老舗百貨店「大沼」が自己破産を申請

2/7 19年の現金給与総額が6年ぶりマイナス

  10 公正取引委員会が楽天を立ち入り検査

3/1 19年10〜12月期の大企業の内部留保が過去最高を更新

  6 楽天が送料一律「無料」延期

  9 19年10〜12月期のGDP改定値で年率7.1%減に下方修正

  10 公取委が楽天への緊急停止命令を取り下げ

  19 2月訪日外国人数が58.3%減

  26 3月の月例経済報告で景気判断から「回復」を削除

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(4)楽天 出店者に送料負担押し付け

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 インターネット通販サイト「楽天市場」を運営する楽天が3980円以上の買い物で送料を一律「無料」にする施策(「送料無料ライン」)を強引に推し進めたことが小売業者の反発を招き、公正取引委員会が介入する事態に発展しました。

公取立ち入り

 楽天市場に出店する小売業者らが結成した「楽天ユニオン」は1月22日、楽天の送料「無料」化をやめさせるよう公取委に請求しました。送料負担を出店者に押し付けるのは優越的地位の乱用で独占禁止法違反だと訴えました。

 これを受けて公取委は同月29日までに調査を開始しました。独禁法違反に当たるかどうかを判断するため、複数の出店者から事情を聴くなどしました。公取委の杉本和行委員長は2月5日、「(独禁法)違反であれば厳正に対処する」と発言。同月10日、違反の疑いが強まったとして、公取委は楽天を立ち入り検査しました。

 楽天の三木谷浩史会長兼社長は同月13日の決算記者会見で、送料「無料」化を予定通り3月18日から実施すると表明しました。他方で「無料の言葉が独り歩きし反省している」と釈明。名称を「送料無料」でなく「送料込み」に変更すると発表しました。

緊急停止命令

 しかし公取委の菅久修一事務総長は2月19日、「形式的な表記ではなく実態から判断する」と述べ、名称の変更は楽天の施策が独禁法違反に当たるかどうかの判断に影響しないとの考えを示しました。さらに同月28日、公取委は送料「無料」化を3月18日から実施させないよう、東京地裁に緊急停止命令を申し立てました。同命令の申し立ては16年ぶりとなりました。

 公取委の菅久事務総長は3月4日、楽天は送料「無料」化の実施を取りやめるべきだとの認識を示しました。零細な出店者の反対を押し切って実施すれば「公正かつ自由な競争秩序が回復しがたい状況に陥る」と述べ、楽天の姿勢を痛烈に批判しました。

 追い込まれた楽天は送料「無料」化の一律実施を延期しました。同月6日、各出店者の選択で送料「無料」の適用が除外されるようにし、対応可能な出店者だけで18日から実施するという方針を発表しました。一方で一律「無料」化に固執し、「段階的に進めたい」との意向を表明。18日から「無料」化に参加する出店者には支援金を出すなどの優遇措置を実施し、参加しない出店者には新設する商品検索コーナーから排除するなど事実上の報復措置をとる考えを示しました。

手のひら返し

 公取委は同月10日、楽天が送料「無料」化の一律実施を見送ったことを受け、「一時停止を求める緊急性が薄れた」と判断し、緊急停止命令の申し立てを取り下げました。しかし独禁法違反の疑いに関する審査は継続すると表明しました。

 楽天は手のひらを返して「送料無料」の言葉を復活させ、同月18日、一部店舗での「無料」化と優遇措置、報復措置を実施しました。「無料」にしない出店者は不利益を被るため、楽天ユニオンは「事実上の強制執行」だと批判し、撤回を求めて運動を続けています。(おわり)

ポイント

 (1)楽天の送料無料強要は独占禁止法違反だと楽天ユニオンが公正取引委員会に告発

 (2)独禁法違反の疑いがあると指摘して公取委が東京地裁に緊急停止命令を申し立て

 (3)楽天が選択制で送料無料化を実施し従わない店舗には報復。楽天ユニオンは反発

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