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ポーランド 「ワルシャワ蜂起」75年 犠牲者を追悼 ファシズムへの抵抗たたえる
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「統一地方選挙必勝作戦」の目標を総達成し、歴史的選挙を勝ち抜こう
2019年12月16日
イタリアの首都ローマで14日、排外主義の極右政党「同盟」に抗議する「イワシ運動」に加わる市民が集会を開きました(写真、ロイター)。現地紙の報道によると、主催者は10万人以上が集まったと発表しました。警察発表は3万5000人です。
大学生から年金生活者、移民までさまざまな市民が参加し、イワシを描いたプラカードなどを掲げました。大学生のルカ・バイロニさん(18)はロイター通信に「ファシズムに反対するために参加しました」と語りました。
「イワシ運動」は、極右勢力の拡大を止めるためにイワシの群れのように広場を埋め尽くそうと11月に市民の呼び掛けで始まりました。
2019年11月10日
【ベルリン=伊藤寿庸】「ベルリンの壁」崩壊30年にあたる9日、ドイツ政府はメルケル首相、シュタインマイヤー大統領などが出席する公式行事を実施しました。ポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリーの首脳も招かれ、出席しました。
かつて壁で分断されたベルナウアー通りにある和解教会での中央式典に続き、夕方にはブランデンブルク門でのコンサートが行われます。
ポンペオ米国務長官は8日ベルリンでの演説で、「冷戦の勝利」をうたいましたが、9日を待たずに出国しました。
2019年11月19日
ドイツのベルリンを東西に隔てていた壁が開き、東ベルリン市民が自由に西側に旅行できるようになって今年で30年、ベルリンでは11月9日の壁崩壊の日をはさみ、さまざまな催しがありました。ドイツはこの日をどのように迎えたのでしょうか。(ベルリン=伊藤寿庸 写真も)
ベルリン東部の「シュタージ博物館」の受付には、訪れた人たちの長い行列がありました。シュタージは東西「冷戦」の最前線にあった東ドイツで、対外情報活動と国民監視・弾圧にあたった「国家保安省」です。
その元本部が博物館となり、弾圧犠牲者の横顔や尋問の手口などを詳しく紹介する展示があります。最大50万人近い密告者を組織して互いに監視させていた実態が明らかになっています。
10日、博物館の前庭にできた新たな屋外展示の前で歴史の証人としてガイドを務めていたのは、ティム・アイゼンロールさん(46)です。東ベルリンのツィオン教会を拠点として地下活動をしていた環境団体「環境図書館」の元活動家です。
当時東独政府は、環境汚染の情報を隠ぺいしていました。環境図書館は独自データを発表し、印刷物を通じて反政府派のネットワークづくりをしていたため、シュタージに目をつけられていました。
1987年11月、同図書館の事務所が大掛かりな家宅捜索を受け、現場にいた14歳のアイゼンロールさんも仲間とともに逮捕。シュタージ本部で8時間の尋問を受けました。「ナチ時代のレジスタンス闘士の本を読んでいたので、仲間の名前や組織の情報はいっさい明かさなかった」と語ります。
アイゼンロールさんはガイドとしてシュタージの過酷な弾圧を語ります。「東ドイツには権利も表現の自由も、自由な選挙もなかった。その体験に基づいて若者には、選挙に行き、市民社会の活発な一員となるよう呼び掛けている」
シュタージ博物館から約4キロ北の「ホーエンシェーンハウゼン記念館」にも、シュタージ弾圧の歴史の証人がいました。同記念館はシュタージ刑務所だった場所で、多くの囚人の収監、尋問の場所となりました。
元囚人でボランティア・ガイドを務めるルッツ・ヒルデブラントさん(72)は67年、19歳の時、東ドイツを支配していた社会主義統一党(SED)の党大会のポスターを破壊したこと、西側のテレビ放送を見たことを罪に問われ、30月の禁錮刑を受けました。
裁判もなく刑を言い渡す文書に署名させられました。弁護士を頼んで控訴し、1年後に「公開裁判」が行われました。「若者が西側のテレビを見るといかに危険か」を国民に宣伝するためでした。控訴審で刑期が20月に減刑され、68年8月に釈放されました。
ヒルデブラントさんは、「学校の生徒を案内すると、東ドイツ時代をほとんど学んでいないことが分かる。でも私の話に関心を持って、いろいろ質問してくる。若者たちには大きな希望を持っている」と語ります。
シュタージに関する文書は、本人や遺族による閲覧が可能です。ヒルデブラントさんも自分のファイルを確認したところ、600ページもありました。
東独時代を生きた人たちの中には、密告者の中に友人や家族の名前を見つけてショックを受ける人もいます。そのため閲覧請求をしない人も多い。
連邦シュタージ文書管理庁のロナルド・ヤーン長官はメディアにこう語っています。
「孫の世代の閲覧希望者が増えている。親の世代が触れようとしなかったことに目を向けている」(つづく)
第2次世界大戦でナチス・ドイツが敗北した後、ドイツは連合国の米英仏とソ連の4カ国に分割占領され、首都ベルリンも分割されました。1949年にソ連占領地域で成立したのがドイツ民主共和国(東ドイツ)で、90年の東西統一まで41年間続きました。
東ドイツでは、ソ連をモデルとした政治経済体制がつくられ、ソ連占領地域の共産党と社会民主党を合同させてつくった社会主義統一党(SED)の一党独裁体制が敷かれました。
経済停滞と民主主義抑圧から逃れようと国民の西側への脱出が続く中で東独政府は61年、西ベルリンの周囲と東西ドイツ国境に壁を建設。「壁」は民主化運動の高まりで、89年11月9日崩壊しました。
2019年11月21日
旧東ベルリンのツィオン教会で8日夜、旧東ドイツで生まれ育ったアーティストたちがスライドと詩の朗読、音楽を一体にした舞台を披露しました。
題名は「見張り塔からずっと」―米国の歌手ボブ・ディランの同名の歌と「ベルリンの壁」の監視塔を重ね、「壁」や「国境」についてメッセージを伝えました。過去の独裁と現在の「軍需産業の独裁」への批判が込められた熱演に、観客は立ち上がって拍手喝采を送りました。
夫とともに鑑賞したクリスティアンネ・ハイデンライヒさん(66)は「壁」崩壊当時、市民組織「民主主義を今」の一員でした。1989年11月4日、東ベルリンのアレクサンダー広場で開かれた大集会に、夫と6歳から13歳の4人の子どもを連れて参加しました。
「(東独で)何かより良いものを作ろうと思っていた。しかし皆が西に買い物に行くようになり、結局、西ドイツの下に組み込まれてしまった。今から思うとほかに道はなかった。ただ対等な統一ではなかった」と振り返ります。
統一後、夫婦ともに失業を経験しました。その後、夫が得た職はポーランド国境の町まで毎日往復4時間を通勤するというもの。「私は反抗期の子どもを抱え、働きながら一人で子育てをした」と苦労を語りました。
バルト海沿岸の町ロストクから来たクリストファー・ロルさん(42)は、統一後のドイツについて「今は金もうけのことばかりでとても幸せとは言えない。(急速に進んだ)東西統一が3年遅かったら違ったのではないか」と語りました。
4日にアレクサンダー広場で開かれたイベントを見に来ていた鋳物工場経営のラルフさん(61)は、「ドイツには多くの『パンドラの箱』がある。誰も開けたがらない箱だ」と言います。
「(西ドイツの)コール首相が、東ドイツ市民に西の通貨を与えると約束し、東の市民がそれに飛びついたのも、その一つだ。当時私たちは、よりよい社会主義を作ろうと思っていた。しかし当時の運動に参加した人たちは、今何の役割も果たしていない」
「統一」への割り切れない思いが、「東」の人たちの心の底に今も“おり”のように沈んでいるのが感じられます。
ミュンヘン発行の有力紙南ドイツ新聞は1日付のコラムで、「東独の人たちの自信は、ドイツの民主主義に生かされなかった」と論じました。
西独の官僚が統一を達成し、西のエリートが東に「入植」。東では脱工業化と民営化で大量失業が起きた。「歓喜に続いて憂鬱(ゆううつ)が訪れ、勝者は敗者に変わった」―。
「統一」の過程で何かが間違っていたのではないかという「自問」が「西」でも始まっていることがうかがえます。
2019年11月22日
ドイツ統一後、ベルリンの旧帝国議会議事堂を改修して作られた連邦議会。ここで8日、ベルリンの壁崩壊30年の討論が行われました。
与党キリスト教民主同盟(CDU)のブリンクハウス議員団長(51)は「西ドイツは、金やインフラよりも、東ドイツの人々の人生の断絶にもっと目を向けるべきだった。それが統一の過程の大きな誤りだった」と指摘しました。
CDUは、東西ドイツ統一当時のコール首相を輩出した政党です。
そのコール氏との間で東西統一などを交渉した旧東独最後の首相ロタール・デメジエール氏は、保守系有力紙フランクフルター・アルゲマイネで、「多くの東ドイツ人の胸に屈辱は深く刻まれている」と語りました。
同氏は「コール(首相)は東ドイツの人間は彼に従うべきだと考えていた」と述懐。コール氏に「(東ドイツ国民は)文字の読めない国から来ているわけではない。彼らの職歴を奪うことはできない」と反論したと振り返っています。
同氏によると、ドイツの80以上の大学の学長に東独出身者は一人もおらず、200人以上の大使の中でもほぼ皆無です。
討論で左翼党のグレゴール・ギジ議員(前党首)は、「人口17%の東独人で、政府の要職についているのは1・7%だけだ」と発言。人口比に応じた配分と、東西間の平等な賃金、労働時間、年金を要求しました。
旧東独では統一後、「信託公社」による東独企業の清算・売却で、大量の失業者が生まれました。西独のライバル企業に格安で売却されて、閉鎖された鉱山会社もありました。
南ドイツ新聞9日付は、統一の過程で生まれた怒りが、親から若者へと世代を超えて受け継がれていると指摘。喪失感や、自分たちの声が届かないという気持ちが、東の有権者を極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」に追いやっている、と分析しました。
AfDの連邦議会議員(東部ザクセン州選出)は8日の討論で、「信託公社による未曽有の略奪」などと語る一方で、「私の夢は、伝統に根ざし、(移民・難民に)ナイン(ノー)と言える、国境によって守られる統一ドイツ民族」と主張。ナチスを思わせる移民排斥と自国民中心主義を、他党は厳しく批判しました。
シュタージ博物館前の展示でガイドを務めたアイゼンロールさんは、「私は楽観的だ」と語ります。
「今日若者たちは、(議会で唯一、気候変動を否定する)極右の強まりに対抗して、気候変動の課題に取り組もうとしている。危険の高まりが、逆に若者が活発になる新しいチャンスを作り出している」
2019年11月25日
イワシの群れのように広場を埋め尽くそう―。イタリア北東部で、市民が一風変わった平和的な街頭デモを始め、全国的な動きになっています。極右政党「同盟」の勢力拡大の阻止が目的です。(桑野白馬)
14日、エミリアロマーニャ州の都ボローニャの広場に約1万5000人の市民が集まりました。イワシをかたどったプラカードを持ち、魚のかぶり物をしています。イワシはイタリア語でサルディーネ。近くでは同盟のサルビーニ党首が同党の集会に登場しています。
16日には、サルビーニ氏が演説のため訪れた同州モデナに7000人が集結。イワシの模型を持ち寄り、反ファシズム運動を象徴する歌「ベラ・チャオ」を唱和しました。30日には同国中部のフィレンツェで行動が予定されており、各地に広がりを見せています。
主催者の一人、マッティア・サントーリさん(32)は「同盟は人の感情に訴える極端な主張とうそで支持を集めている」と危機感を募らせていました。3人の友人と共にフェイスブックで、密集して集団行動をするイワシの絵を題材に「イワシ運動」を呼び掛けると、予想を超える人数が集まりました。「ボローニャで大勢の人が集まり、運動は拡大していくと確信した」と現地紙に語っています。
同盟は2018年6月、「五つ星運動」と連立政権を発足させますが、今年8月に崩壊。五つ星と民主党との連立政権が発足し、同盟は野党に転落しました。しかし、反移民政策を中心にイタリアの利益を最優先とするサルビーニ氏の主張への支持が増加。同盟は10月、50年にわたり左派が勝利してきた中部ウンブリア州選挙で勝利しました。来年1月実施のエミリアロマーニャ州選挙を見据え、危機感を募らせた市民が極右勢力に対抗するため街頭に繰り出しました。
民主党のザンガレッティ党首は運動の重要性を強調。「市民の偉大な力を尊重する」と述べています。
抗議行動に特定の政党色は見当たりません。しかし、サルビーニ氏は参加者を「愚かな左派とその分派」と形容。ツイッターにイワシを食べる猫の画像を投稿し挑発しています。
2019年11月24日
旧東ドイツ出身の歴史家イルコサーシャ・コワルチュク氏(52)は、東独の反体制運動や一党独裁体制下の抑圧などを研究してきました。今年、新著『吸収合併―東独はいかにして連邦共和国の一部になったか』を発表。極右勢力の台頭などが起こっている旧東独部の歴史を「東からの視点」で批判的に振り返りました。同氏に書面でインタビューしました。
―新著には「東独の経済的吸収合併とその受益者」「東独文化の無価値化」などの章ががあります。なぜこの本を書こうと思ったのですか。
東西ドイツ統一について、東からの視点で批判的に書く必要を感じたからです。今も東と西の間には大きな溝があります。旧東独地域は人種差別とネオファシズムという大きな問題を抱えています。積極的な側面とともに、何が間違っていたのかを説明したかったのです。
―この30年間、東独の人々はどういう体験をしたのでしょうか。
東独の人々には、1990年に突然すべてが変わりました。西独の人々には、何の変化もありませんでした。統一は東独の人々が望んだことでしたが、その結果を予想していなかった。
問題は経済的、物質的というより、文化的なものです。東独の多くの人々は、人生の思想的意味を失いました。(「ベルリンの壁」崩壊の)89年以前のものがすべて無価値になり、「二級市民」となり、文化的な立ち位置を失った。この影響は巨大で、今後何世代もの間続くでしょう。
―旧東独で極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)が台頭しています。どう立ち向かうべきでしょうか。
東独社会の多くの人々が、「他者」とらく印を押せる人々を求めています。その人たちより上にいると感じることで、自らの失望を軽くするためです。AfDの台頭と、それが他の地域に広がることへの恐怖が、東独部への関心をもたらしています。
しかしこのような政治的潮流は、欧州の他の地域でも長らく強まってきていました。さらに、米国のトランプ大統領やブラジルなど世界的な現象です。これは反グローバリズム・反ヒューマニズム・反西欧・人種差別・民族主義・ファシズムの運動です。
それは抗議ではなく、民主主義と自由に敵対する運動だと明確に認識しなければなりません。民主主義者のすべてが団結して立ち向かわなければ、深刻な事態になります。
―「壁」崩壊は欧州にとってどのような意味があると考えますか。
「壁」の崩壊は正しく、必要な事でした。ただそのあとの政治が、常に正しかったとは言えません。路線の転換が必要です。何よりグローバル化や世界のデジタル化は、自由市場の力にゆだねるのではなく、規制が必要です。人類を支配する手段ではなく、われわれの道具としていくための哲学が必要となっています。
(おわり)
◇連載「『ベルリンの壁』崩壊30年」は、上が11月19日付、中が21日付、下が22日付のそれぞれ6面に掲載されています。
イルコサーシャ・コワルチュク氏 1967年東ベルリン生まれ。フンボルト大学で歴史を学び、ポツダム大学で博士号取得。連邦議会や連邦政府で、統一後の東独の問題に関する調査委員会などの委員を歴任。
2019年10月20日
「赤旗」は体制批判に貫かれています。すべてのジャーナリズムがそうあるべきですが、いまはメディアばかりの世の中です。メディアは媒体。単に仲介するだけです。考えない。調べない。ジャーナリズムの役割は常に「本当にそうか」と問いかけることです。「赤旗」はその姿勢を貫いているので頼りになります。
アホノミクスは、憲法を解体してファシズム帝国をつくるための経済づくりです。「赤旗」はその隠された意図を見抜いて批判しています。もっと突っ込んでやっていただきたい。
台風15号による千葉県の被災について、東京電力の人手不足や技術を保持する力の不足が事態を悪化させたと指摘していたのが良い切り口でした。独自の着眼点が面白い。その意味で「まともジャーナリズム」を貫いています。
当節は単純、短く、分かりやすくがメディアの合言葉のようになっています。かえって分かりにくい。「赤旗」はそういうことに翻弄(ほんろう)されず、書くべきことを分析的にきちんと書いています。結果的に分かりやすくなっています。
日本共産党の党員や支持者だけが読む機関紙というイメージを打ち破って一段と調査力を発揮し、多くの人に読まれる新聞になってほしいと期待します。
2019年10月11日
リヒャルト・シュトラウスは、ドイツの作曲家。オペラ「サロメ」「ばらの騎士」で知られる。彼の音楽の表現法は、心をわしづかみにするほど一気に聞き手を異次元空間に引き込む。今年は没後70年。
シュトラウスは1864年、ミュンヘンに生まれた。10代で交響曲を書き、20、30代に交響詩へシフトする。1905年にオペラ「サロメ」初演がブレイクし、オペラ作曲家として地歩を固めたのが40歳。49年に85歳で亡くなるまで、「サロメ」以前の2作を含む16のオペラを作った。だがナチスとの絡みから戦後、音楽以外の学術書でシュトラウスの記述は否定的だった。
いつの頃からだろうか。近年上演されるシュトラウスのオペラに、その斬新さが際立ってきた。彼のオペラの新しさはどこにあるのだろう。
彼のオペラはモーツァルトの影が見え隠れするものの、決定的に異なる点がその一つ。モーツァルトはフィガロやドン・ジョヴァンニなど男性を通して人間を問う。それに対して、シュトラウスはヒロインによって私たちの常識を揺さぶる。
「サロメ」(05年初演)は、少女のヌードと生首を愛でる猟奇性がスキャンダルになった。「ばらの騎士」(11年初演)は、貴婦人と少年の不倫の濃厚なベッド・シーンで始まる。ベルリンからドレスデンに鑑賞用の特別列車が出たほど話題を呼んだ。
原作者オスカー・ワイルドは、聖書の中の母親の言いなりになる娘にサロメの名を付け、自己の意思を持つ少女にした。シュトラウスの音楽はそこに強く共振する。
「ばらの騎士」について、『第三帝国のR・シュトラウス』の著者山田由美子は、ウィーンの上流社会の女性の行動規範の堅苦しさの「崩壊を自ら早めようとする動き」「爛熟(らんじゅく)し内部崩壊する西洋文明の断末魔」をオペラにしたとする。
なぜシュトラウスにそれが可能だったか。新しさの二つ目に、米国の音楽批評家アレックス・ロスの指摘がヒントになる。自ら台本を書いた最初のオペラ「グントラム」(1894年初演)は、ロスによればマックス・シュティルナーの著書『唯一者とその所有』を元にしたという。シュティルナーは青年ヘーゲル派哲学の代表者。同書に「自分が自由だと感じる者は、この世の何物にも抑圧されず恐怖することもない」(拙訳)と書くほど自由をほめたたえた人物だ。
ドイツ皇帝ヴィルヘルム2世と皇后は、「サロメ」「ばらの騎士」が不道徳だと激怒した。シュトラウスはそれを意に介さず、検閲にあらがい表現の自由を確保し、08年に就任して以来のベルリン宮廷歌劇場音楽総監督にとどまり続けた。
だが、そのシュトラウスも時代を甘く見た。33年、シュトラウス69歳の年。ヒトラーが首相に就いた。
イタリアの指揮者トスカニーニ、スペインのチェロ奏者カザルスは、自国ファシズムに毅然(きぜん)と立ち向かった。だがドイツでは、作家ケストナーが「転がる雪の玉」と評すほど33年に雪崩を打つ。それがヒトラーの全権委任法の成立だった。政権に就いて2カ月でワイマール憲法下、ドイツ国民はヒトラー独裁制の成立を許した。
ナチスはメディア戦略にたけた。当時の最先端機器ラジオの普及を図る一方、帝国音楽院を創設し、シュトラウスを総裁に据えて毎朝ラジオから彼の音楽を流した。シュトラウスの高い人気を利用した。
「皇帝」にあらがったように、「総統」にも自分の意志を貫けると思ったか。シュトラウスはユダヤ人シュテファン・ツヴァイク台本のオペラ「無口の女」を、ヒトラーに抵抗して、強引な駆け引きで上演にこぎつけた。しかし書きすぎた私信がヒトラーの手に渡り、第4回上演からドイツ全土で禁止されたうえ、総裁辞表提出に追い込まれた(35年)。
シュトラウスのオペラの持ち味は、旧弊を見抜き、新たな価値観の体現者として女性像を打ち立てたところだ。自由を尊び、批評性豊かなシュトラウスのヒロインは、いつの世もその時代を映し出し、生命力を発揮する。
(みやざわ・あきお 音楽評論家)
2019年9月20日
アウシュヴィッツ強制収容所から生還し、記録文学の名作『これが人間か』をはじめ、多くの著書を残したプリーモ・レーヴィ。今年はレーヴィ生誕100年にあたり、『プリーモ・レーヴィ全詩集 予期せぬ時に』(岩波書店)が刊行された。
ナチス・ドイツが第2次大戦中に行ったユダヤ人虐殺は600万人に上ると言われている。その地獄から奇跡的に救出された人々もいたが、深い傷を負った生存者が、そこでの経験を語ることは難しかった。
そうした中から、収容所の真実を世界に知らせなければという信念を持った作家たちが生まれた。今も広く読み継がれている『夜と霧』のヴィクトール・フランクル、小説『夜』でノーベル文学賞を受賞したエリ・ヴィーゼル、詩集『罌粟(けし)と記憶』のパウル・ツェラン、そしてプリーモ・レーヴィなどだ。
自らの痛みを代償にして著された書によって、私たちはあの信じがたい出来事と深く向き合うことができるようになったのである。
イタリアのトリノで生まれたレーヴィは、ユダヤ人差別に苦しみながら化学技術者として働いていたが、ナチスのイタリア占領にともないレジスタンス活動に参加する。だが1944年、仲間とともに逮捕され、アウシュヴィッツへと送られる。
最初の著書『これが人間か』(日本での出版時は『アウシュヴィッツは終わらない』)では、収容所での非人間的な扱いと、「選別」と呼ばれた生死の振り分けによって仲間たちが殺されていくさまを克明に描いた。
強制労働は「囚人」たちから生の希望を奪うに十分な苦役を与えたが、レーヴィは最後までその境涯に屈しなかった。若い肉体と、絶望にあらがう精神の豊かさがあったからだ。
どの著作にも彼の文学的素養がにじんでいるが、前掲書では『神曲』中の「オデュッセウスの歌」を若い囚人仲間に語り聞かす場面がある。ダンテの詩句を記憶の底から掬(すく)い取るようにして暗唱するレーヴィ。それは自分がまだ真っ当な人間であることを確認する行為でもあった。
トリノに帰還後、記録作品や小説の合間にレーヴィは詩を書き、96編の作品を残した。このたび刊行された『全詩集』は、それらを年代順に配し、彼の心の軌跡が見て取れるよう構成されている。訳者の竹山博英(ひろひで)氏が巻末に記した解説も、作品が書かれた背景の理解を助けてくれる。
晩年の詩では「生き残り」に胸を衝(つ)かれた。
あの時から、予期せぬ時に、/あの刑罰が戻ってくる、/そして話を聞いてくれるものが見つからないなら/心臓が焼け焦げる、胸の中で。/仲間の顔がまた見える/夜明けの光に照らされて、蒼白で/セメントの粉で灰色に染まり/霧の中で見分けもつかず/不安な夢でもう死の色に染めあげられている。/夜は顎を動かす/夢という重い石に押しつぶされて/ありもしない蕪をかみながら。
(後略)
「話を聞いてくれるものが見つからないなら…」は、すべての生存者をとらえた孤独だった。さらに、突然押し寄せてくる刑罰の記憶と死者。そのときレーヴィは彼らとともにうずくまり、人間の悲しみを見つめるほかなかった。心と体に刻まれた、死ぬまで消せない傷は「予期せぬ時」に口を開くのだった。
レーヴィは著書や講演で、若い世代に希望を失わないよう語りかけ、ファシズムの復活に注意を払うよう強く促したが、反面、詩はどれも意識の底から立ち上がる不安を記している。
他者に向かって希望を語ることは、あの苦役の日々に戻ることでもあった。そうした痛みをレーヴィは詩という器に封印し、理性への信頼を世界に向けて語り続けたのだった。
レーヴィの、生涯をかけた長い闘いは貴重な記録、文学として残された。今また硬直しつつある世界にあって、その意思を受け継ぐことが、私たちの希望を鍛えることになるだろう。
◇
しばた・さんきち 詩人、1952年生まれ。詩集『さかさの木』(壺井繁治賞)、『角度』(日本詩人クラブ賞)、『旅の文法』(小熊秀雄賞)ほか
プリーモ・レーヴィ 1919年、イタリア・トリノ生まれ。44年、アウシュヴィッツ強制収容所に送られる。45年、ソ連軍に解放され、10月イタリアに帰還。化学技師として働きながら、収容所での体験をもとに作品を発表。87年、自死。邦訳書に『休戦』『リリス―アウシュヴィッツで見た幻想』『溺れるものと救われるもの』ほか
2019年9月19日
迷路の先に鎮座する角の鋭い悪魔。もがき、何かから逃れようとするペガサス。悪という概念を表した絵は、それとのたたかいを訴えかけてきます▼戦後のルーマニアで版画界を代表したマルチェル・キルノアガ。「われわれの心の内にある悪と世界にある悪を理解することが、私の作品の最も深い動機となっている」。本人の言葉にあるように、束縛された社会で人びとの願いを描いた作品は当時の欧州で高く評価されました▼いま日本共産党本部前のビルにある「みずさわ画廊」で「ファシズム・戦争・飢餓に抗する美術」展が開かれています。キルノアガの他にも、30年ぶりの公開という松山文雄の「深海魚」、終戦直後の貧困や混乱を映した中島保彦の絵が並んでいます▼時代をさかのぼる作品を、なぜ改めて現在に示すのか。主催者の水沢武夫さんは「為政者が思うままに情報を操作し、国民を迷路に引き込む。それがリアルに感じられる世の中だからこそ、彼らの絵がよみがえってくる」▼画廊には「表現の不自由展・その後」の展示中止に抗議し、表現の自由を守り抜くことを求める日本美術会の声明も。そこには「いま行政がなすべきことは、自分たちにとって都合の悪いものを隠したりやめさせることではなく、発表された作品に対する自由な意見交換を保証するための公共の場を守り広げていくこと」だと▼表現の自由は、人間の精神の自由や国民の知る権利を守ることにつながります。悪から解放された世界をつくるためにも。
2019年9月4日
安倍首相は、参院選で国民が性急な改憲ノーの審判を下した後も、執念を燃やし続けている。自衛隊を9条に明記するという主張であるが、その大きな意図は、米軍に従って海外展開をする軍隊の創出とならんで、自衛隊違憲を説く憲法学説を排除しようとするところにある。
「憲法学者の7割が違憲説で、学校教科書の記述にも影響を及ぼしている」と、首相はことあるごとに憎悪を込めて言う。ここにおいて、戦前、国家権力が学説内容を禁圧した「天皇機関説事件」を想起し、同様の危険性を見ておくことが必須かと思う。
1935年、美濃部達吉に対する貴族院での糾弾演説を受けて、政府は氏の全著作を発禁とし、公職から追放した。さらに、貴族院議員辞職、不敬罪での告発、翌36年には右翼による襲撃へと進んだ。学説をめぐる論争ではもはやなく、まさしく政治上の「事件」として展開し、天皇機関説は完膚なきまでに排斥された。日本が日中戦争を始めたのはその翌37年である。
今、立憲主義を解さない安倍政権に「自衛隊明記」の改憲を許すなら、直ちに学説に関与し、教科書内容を統制する挙に出るであろう。憲法の名による自由の封殺である。ファシズムは、入り口を通してはならない。
(憲)
2019年8月3日
【ベルリン=伊藤寿庸】第2次世界大戦中の1944年8月1日にナチス・ドイツの占領に反対してポーランド人抵抗組織が立ち上がった「ワルシャワ蜂起」から75年の1日、ワルシャワでは犠牲者を追悼する公式行事が行われ、ファシズムへの抵抗をたたえて市民が街頭に繰り出しました。
蜂起が始まった午後5時、サイレンが鳴ると、歩行者も車も立ち止まり、1分間黙とうしました。市内の墓地では、ドゥダ大統領、モラウィエツキ首相が、蜂起の生存者とともに献花。ピウスツキ広場では、市民が集まって、国旗を掲げ、抵抗組織の歌を歌うなどしました。
ドイツのマース外相は、蜂起の生存者や遺族を前に、「犠牲者や家族の皆さんに敬意を表すために来た。ポーランド国民の皆さんに許しを請いたい」と述べました。また「ポーランドとの和解の印」として、ベルリンに、第2次大戦でのポーランド人犠牲者の記念碑を建設することを支持すると発言。「異なる歴史的記憶や体験が一つになるときに初めて、欧州の共通のアイデンティティーは完成する」と述べました。
ポーランドのチャプトウィチ外相は、ナチス・ドイツの蜂起鎮圧と大規模な破壊で、「ポーランドは民族的遺産の一部を失った」が、「ポーランドと国民が被った損害は、行った者によって補償されてこなかった」と賠償に言及しました。
「ワルシャワ蜂起」では、約5万人の抵抗組織「ポーランド国内軍」が乏しい装備でドイツ軍に対して武力攻撃を開始。ドイツ軍は63日間の鎮圧で、老人、女性、子どもを含む約20万人の兵士・市民を殺害し、ワルシャワの歴史的建造物を意図的に破壊し、市の85%ががれきと化しました。
2019年7月12日
同性どうしのカップルにパートナーシップの認定を行う自治体が増えるなど、多様な性のあり方を認め合う動きが広がっています。多様な性と権利保障について、日本学術会議副会長の三成美保さん(奈良女子大学副学長)に話を聞きました。
―同性婚を容認することを求める訴訟が全国4カ所で始まり、同性パートナーシップ条例・制度を持つ自治体は20を超えています。最近の動きをどう見ていますか。
歓迎すべき動きです。同性間の結婚を支持する割合が過半数を超えているとの調査結果もあります。愛する人と共同生活を行う権利をだれが奪えるでしょうか。しかも、その共同生活は他のだれの権利も侵害しません。同性間の結婚を禁じる合理的根拠はないのです。
同性パートナーシップ条例・制度の急速な広がりの背景には、来年の東京オリンピックがあります。オリンピック憲章は、性的指向による差別を禁止しているからです。
諸外国の例を見ると、自治体の同性パートナーシップ制度が、パートナーシップ法制定へと発展しています。その後、同性婚の容認が続きます。日本でも、同性パートナーシップ法制定への前進と合わせて、婚姻の性中立化(性別を問わないこと)が必須です。フランスと同様に、民法に「婚姻は二人の同性の者、異性の者が結婚することができる」という一文を設ければ、現行の憲法の枠内で同性間の結婚を認めることができると考えています。大事なことは選択肢を保障することであり、そのベースにあるのは個人の尊厳を保障するという観点です。家族をつくる自由も家族をつくらない自由も保障すべきです。
―民間の調査によると、LGBTを含む性的少数者=LGBT層=に該当する人は2015年7・6%、18年8・9%です。少数者という言葉は適切でしょうか。
8・9%というと、高校40人クラスで3〜4人のLGBTがいる計算になります。数の上では、LGBTはもはやマイノリティーとは言えません。しかし、当事者であることを隠さざるをえないとか、権利保障が不十分という点で、LGBTは社会的にはマイノリティーの立場にあります。
最近、SOGI(ソジ)という言葉もよく使われるようになりました。SOGIは、「性的指向」と「性自認」の頭文字であり、当事者を超えて、すべての人の性に関する属性を包括する表現です。
当事者の権利保障を問うときにLGBTの視点は必要であり、すべての人の性のあり方を考えるときにはSOGIの視点が有効です。これら二つをうまく組み合わせて使っていくことが大事です。
―奈良女子大学が、戸籍上は男性でも自身の性別が女性と認識しているトランスジェンダー女性を来年4月から受け入れる方針を明らかにしました。同じ国立のお茶の水女子大学に続く受け入れですね。
「学ぶ権利の保障」という観点から、女子校や女子大学へのトランスジェンダー女性の受け入れが進められるべきです。
EU諸国を中心に、性別を性自認にしたがって決定する方向へと動いています。しかし、日本では、戸籍上の性別の変更は非常に難しく、当事者に大きな負担を強います。03年の性同一性障害特例法は、性別変更には20歳以上であることや生殖不能・身体変更の手術が必要と定めています。これを改正して、年齢制限や手術の要件をなくせば、もっと早い段階で戸籍上の性別を変更できます。
WHO(世界保健機関)は、法的性別変更にあたって生殖不能や身体変更を強制することを禁じています。性別適合手術の強制は人権侵害なのです。現在、生殖不能が法的性別変更の要件とされているのは日本だけです。また、「性同一性障害」という用語は、WHOをはじめ、国際社会ではもはや使われておらず、「性別違和」や「性別不合」に変わりました。名称の変更と要件の緩和は急務です。
―国際社会の動きに照らすと、今後の日本の課題は何ですか。
国際社会は二極化しています。欧米諸国が権利保障、差別解消に向かっているのに対し、イスラム諸国を中心に差別を維持、むしろ拡大する傾向があります。中国やロシアは同性愛の表現規制を行うようになっています。国際社会が二極化するなかで、日本政府は、国連主導によるLGBT権利保障を積極的に支持しています。一方、日本は、国内における権利保障が不十分と国連から何度も指摘されています。
日本学術会議は、17年に提言「性的マイノリティの権利保障をめざして」を出しました。そこでも指摘していますが、日本の課題は、包括的な権利保障を行うための法律を制定することです。国連人権諸機関が日本政府に対して発した勧告を尊重し、性的指向の自由、性自認の尊重、身体に関する自己決定権の尊重などを含む包括的な根拠法の制定や関連法の改正が求められているのです。
目下、法律制定に向けた取り組みが進んでいます。与党はLGBT理解増進法、野党はSOGI差別解消法と方向性は異なりますが、ぜひ国会で議論を尽くし、一刻も早い法律の制定を期待しています。
みつなり・みほ 1956年生まれ。2016年から奈良女子大学副学長。編著に『LGBTIの雇用と労働』、『教育とLGBTIをつなぐ』、『同性愛をめぐる歴史と法』など
2019年7月3日
安倍晋三首相の「腹心の友」を優遇したとされる加計学園疑惑で、「総理の意向」があったと証言した元文部科学省事務次官の前川喜平さん(64)。6月から実名でツイッターを公開し、自己紹介文で「アベ政権の退陣を求めています」と宣言しています。元官僚トップがみた安倍政権の“正体”とは―。(聞き手・三浦誠 写真も)
―年金2000万円問題で、金融庁審議会の報告書を受け取らない安倍政権の姿勢をどう見ていますか。
「あったことを、なかったことにする」。この手法を安倍政権は繰り返してきました。加計学園疑惑では、「総理の意向」を記した文部科学省の内部文書を当初、「なかった」と言いました。
金融庁の報告書でも、麻生太郎金融担当相が、「なかった」ことにしようとしています。あまりにも国民をばかにしています。
報告書は、マクロ経済スライドで今後は年金が減っていくから老後の生活がまかなえなくなる―という内容です。この見通しは、金融庁の役人や審議会委員が誠実に検討した結果でしょう。
報告書を出すにあたって、官邸などに事前説明していると思いますよ。少なくとも麻生氏が、報告をうけて了承していたことは間違いない。麻生氏は記者会見で、「人生設計を考えるときに、100(歳)まで生きる前提で退職金を計算してみたことがあるか」「きちんとしたものを今のうちから考えて、頭に入れておく必要がある」と報告書の内容を認めていたのですから。
報告書を受け取らないだけでなく、年金財政検証の公表を参院選後にしようとするなど政府は逃げ回っています。自民党の三原じゅん子参院議員が「年金を政争の具にしないでいただきたい」と本会議で発言しましたが、年金は国民が注目している問題です。与野党間の争点にしなければおかしいでしょう。
―日本共産党の志位和夫委員長は党首討論(6月19日)で、マクロ経済スライドを廃止し、高所得者を優遇した保険料のあり方を正すことで1兆円の保険料財政を増やすなどの提案をしました。
志位さんは当然のことを提案されています。建設的な対案というだけでなく、一番まともです。
格差が拡大しているなかで、富裕層や大企業に対する負担を見直す必要があります。能力に応じて払うという応能負担と所得再配分を年金でも税金でもしないといけないのです。
―安倍首相は参院選で改憲を国民に問うと表明しました。
ツイッターで実名を出したのは、「安倍政権は危ない」ということを、自分の名前を出して世の中の人に伝えたいと思ったからです。
憲法の国民主権、平和主義、基本的人権の尊重という大事な原理を、安倍政権はひっくり返そうとしています。
大きな転換点が安保法制です。2014年に集団的自衛権の行使を認める違憲の閣議決定をし、それに基づき違憲の法案をつくりました。
参院本会議で強行採決される直前の15年9月18日に、私は国会前で抗議のデモに参加していました。当時は文部科学審議官で、翌年6月に事務次官になりました。デモにいったのがばれていたら、次官にはなっていなかったですね。安倍政権ですから。
一個人、一国民として「こんな立法は許せない」と。法案が法律になる前に、「おかしいでしょう、これ!」って言わなければ、という気持ちでした。憲法違反の法律を通すわけにいかないじゃないですか。
いまイラン情勢が緊迫しています。アメリカが「一緒に戦争してくれ」といってきたらどうするのか。日本はイランに対して何の恨みもないのに。集団的自衛権で日本が戦争に引き込まれるなんて絶対にあってはならない。
安倍政権の危険性はいままでの保守政権の比ではないですよね。私は自民党が変質したと言っています。かつては自民党にも護憲派がいたし、新自由主義に疑問をもつ議員もいました。いまは「アベ党」です。ものすごく強権的なファシズムに入ろうとしています。
安倍首相が考えている改憲には「緊急事態条項」が盛り込まれています。「緊急事態」を宣言すると内閣が立法権限を持ちます。ドイツでヒトラーの独裁に道を開いた要因のひとつは、大統領緊急令を連発したことです。国会という国民の代表が物事を決めるのではなく、独裁者が決める―ヒトラーが生まれたようなことが、日本でおこる危険性があります。
憲法を破壊してはいけないというところで、野党は連携してほしい。「お前は共産党のシンパになったのか」と言われることがあります。別に共産党のシンパになったわけではなく、安倍政権に対して「おかしいでしょう」という人は応援しなくてはならないと思っています。野党統一候補であれば、共産党公認でも応援しますよ。共産党はよくがんばっています。この先も粘り強く、市民と野党との連帯を追求してほしいですね。
―若い世代に、自分の政治的意見を持つことの大切さを訴えておられます。
主権者が政治を考えなくなると独裁への道が開かれます。私は学校でもっと政治教育、つまり主権者教育をすべきだと考えています。ドイツには「ボイテルスバッハ・コンセンサス(合意)」という政治教育のガイドラインがあります。1976年にボイテルスバッハという町に教育者や学者が集まって作りました。
三つの原則からなっており、第一は「圧倒の禁止の原則」です。教師が自分の見解を生徒に押し付けてはいけないと。ただ教師が自分の政治的見解を述べることは許されるという前提です。第二は「論争性の原則」。実際の政治や学問の上で論争がある場合は、両方を伝える、理解させます。第三は、「生徒志向の原則」です。生徒自身が自分のこととして当事者意識をもって考えるようにすることです。生徒自身が自分の頭で考え批判的な精神の持ち主になることが大事なのです。
日本では18歳選挙権の導入にあわせて、4年前に文科省が政治教育についての通知を出しました。通知は、教師に「政治的中立性」を強く求め、自分の政治的見解を述べてはいけないとしています。これは萎縮効果を非常に強く持っています。政治的問題を扱うと、「右翼政治家から攻撃されるのではないか」と萎縮してしまうのです。
文科省が「政治的中立性」を求める背景には、日本会議のような団体をバックにした右翼政治家の存在もあります。彼らはちょっとでも安倍政権の政策を批判すると「反日」「偏向」とか言い出す。政権側が「政治的中立性」という言葉を乱用し、教育の世界で活発な政治教育が行われることを阻害しています。
―官僚時代の座右の銘は「面従腹背(めんじゅうふくはい)」でしたね。
国家公務員でいた38年間は、自分の内心の声を表で言うことができなくて。とくに安倍政権で国民の側にたって仕事をしようとすると、表面では従いながら腹の中で背く「面従腹背」にならざるをえなかったのです。
役所を辞めたいまは曹洞宗の開祖、道元の言葉である「眼横鼻直(がんのうびちょく)」が座右の銘です。「目は横、鼻は縦についている」ということで、当たり前のことを当たり前に認識するという意味です。「あったことをなかった」とは言わないということです。(笑)
いま「目は縦だ」とだまされている人が多い。自分の見たことをそのまま受け止め、自分の頭で考えれば、だまされないですよね。
まえかわ・きへい 1955年、奈良県生まれ。東大法学部卒業。79年、文部省(現・文部科学省)入省。13年、初等中等教育局長。14年、文部科学審議官、16年、文部科学事務次官。17年に退官。現在、現代教育行政研究会代表。
2019年6月26日
あのヒトラーが法廷に引っ張り出されたことがありました。1931年のベルリン、暴力と破壊でドイツ市民を恐怖におびえさせたナチス突撃隊が起こした殺人事件の証人として▼召喚したのは若き弁護士ハンス・リッテン。当時、ヒトラー率いるナチ党は国政選挙で躍進中でした。リッテンは彼らの無法や暴力行為が計画的に行われている証拠を示しながらヒトラーに詰め寄りました▼突撃隊はスポーツ隊だと言い張り、殺人という言葉が使われることを拒絶し、彼らは祖国を守ろうとしたと激高するヒトラー。しかし、翌日の新聞には「リッテン勝利」を伝える記事が躍ったといいます▼後の独裁者はこの時の屈辱を忘れず、自分を追い詰めた弁護士を決して許しませんでした。大規模な政治弾圧が始まるとリッテンも捕らえられ、監獄でひどい拷問や虐待にあい、命を奪われます▼いま劇団民藝が都内で公演する「闇にさらわれて」。息子を救うため命がけで奔走した母イルムガルト・リッテンを日色ともゑさんが演じています。ナチの不正義とたたかったイルムガルトの手記『黒い灯』(野上弥生子訳)を読み、女性の内側に潜む激しい思い、母としての深い愛情を表現したいと▼強権と憎しみが支配した時代。リッテンは収容所で衛兵に囲まれながら詩を朗読します。「私を縛って真っ暗な土牢の中に閉じ込めてもまったくの無駄骨折りというものだ/なぜなら私の思想だけは戒めを引きちぎり壁を打ち破ってとびだすから/思想は自由だ」
2019年6月4日
フランシスコ・ローマ法王は2日、少数民族ロマの人々に対して長年行われてきた差別や迫害にカトリック教会が関わってきたことを認め、謝罪を表明しました。訪問先のルーマニア中部ブラジで、ロマの人々と面会した際に述べました。
法王は「ロマの人々が経験してきた差別、隔離、虐待の重みに私の胸は押しつぶされている。歴史は、カトリック教会を含むキリスト教がこうした悪行に関わってきたことを明らかにしている」と発言。「教会と神の名において、あなたがたからの許しを請いたい」「無関心は偏見を生み、怒りを助長する」と語りました。
ルーマニアの国会議員でロマ人のダミアン・ドラジチ氏は英BBCに「ロマの人々にとって歴史的な瞬間だ。法王の言葉がきっかけになって、私たちに対する人々の態度や固定観念が変わることを望む」と歓迎しました。
ロマの人口は推定1000万〜1200万人。そのうち約600万人が欧州連合(EU)諸国内に住み、欧州最大の少数民族です。
ロマの人々は欧州では数世紀にわたって、領土からの追放や社会的排除など差別や迫害の対象とされ、カトリック教会もそれに加担しました。ナチス・ドイツはロマの人々も絶滅対象とし、ユダヤ人とともに強制収容所に送って殺害しました。
2019年5月1日
きょうは第90回の節目のメーデーです。本来なら、1920年の第1回メーデーから数えて100回となるはずでした。しかし、二・二六事件の起きた1936年から敗戦の45年までの10年間、日本軍国主義の下でメーデーは禁止されました。40年には、全ての労働組合が解散させられ、「大日本産業報国会」という戦争協力機関がつくられました。「平和なくして労働組合運動なし」―痛苦の教訓を忘れてはなりません。
安保法制=戦争法の強行、「専守防衛」の建前すら投げ捨てる大軍拡、沖縄・辺野古での米軍新基地建設の推進、メディア支配、そして9条改憲―。ウソと強権の暴走政治を続ける安倍晋三首相の野望は、新しい軍国主義とファシズムへの国家改造に他なりません。
8時間労働制を求める労働者の国際連帯の日として始まったメーデーは、日本では生活と権利の向上とともに平和と民主主義を高く掲げた国民的デモンストレーションとしてたたかわれてきました。
民主主義の基本が破壊され、「戦争する国」への暴走が加速している今、メーデーと労働組合運動の真価が問われています。メーデーから続く「5・3憲法集会」へと、「安倍9条改憲阻止」へ取り組みを大きく進める時です。
8時間労働制をはじめ労働者を保護する法制自体も「働かせ方大改悪法」の施行により、正念場です。過労死水準の残業時間の合法化、「労働生産性の向上」を狙って労働強化とリストラをあおる政府・財界からの攻撃を、職場から阻止することが必要です。「残業代ゼロ制度」の持ち込みを許さず、法定上限を下回る「36(さぶろく)協定」(労使協定)を締結し、時間外労働を規制することが不可欠です。
そのためにも職場で組合員が多数派になることが重要です。職場での学習・討議と一体で組織を大きくする上で、メーデーや憲法集会などは、絶好の機会です。一人でも多くの職場の仲間、とりわけ若い世代に参加を呼びかけ、たたかいの大義と団結の力の素晴らしさを実感してもらいましょう。
同時に、労働法制をどうするかという問題では、政治のあり方が問われます。カール・マルクスは『資本論』の中で19世紀のイギリスの工場法をめぐって労働時間の短縮についての攻防を描きました。これは、今日にも通じます。政治を変える労働者・国民のたたかいを広げることが求められます。
「8時間働けばふつうに暮らせる社会」をつくることは、個人消費を拡大し、国民の暮らしの向上に基礎をおく安定した健全な経済発展の道にもつながります。
沖縄と大阪の衆院補選で、自民党は敗北しました。7月には参院選がたたかわれます。「安倍政治にサヨナラ」をしてこそ、平和と民主主義、生活と権利が守れます。市民と野党の「本気の共闘」で自民・公明と補完勢力を少数に転落させ、野党連合政権へ展望を開こうではありませんか。
最低賃金引き上げなどを求めるアメリカの労働者や、大企業・富裕層優遇に反対するフランスの労働者の運動、スペインやポルトガルでの「新自由主義」「緊縮政策」転換を求めるたたかい―。世界の労働者・国民と連帯し、新しい日本への道を切り開きましょう。
2019年4月29日
今年は1919年に中国で起きた五・四運動から100年の節目の年です。中国の権益を侵す日本に対し、北京大学の学生が抗議のデモを行ったことを契機に、日本製品のボイコット運動や工場のストライキなど中国全土の抗議行動に発展。その後の日本の侵略に反対する中国の闘争にも大きな影響を与えました。100年前の学生たちに思いをはせながらデモの道のりをたどりました。(北京=釘丸晶 写真も)
デモ行進が始まった当時の北京大学の校舎は、赤レンガで造られており、「紅楼」と呼ばれています。北京大学の学生は1919年5月4日、ここから天安門までデモ行進し、他大学の学生と合流して抗議集会を開きました。
集会で使われたのぼりなどは紅楼の一室で作られました。
現在は「北京新文化運動記念館」として無料公開されています。4月23日からは五・四運動の特別展示も始まり、当時の新聞や写真が解説付きで展示されています。
訪れた日は、多くの学生が見学していました。展示を熱心に見ていた大学1年生の男性は「当時の学生は信念があった。今の学生にも信念が必要だ」と話しました。
紅楼を出て、五・四運動を記念して名付けられた「五四大街」を西に向かい、故宮(紫禁城)東側の城壁沿いに南下すると、学生らが抗議集会を開いた天安門前に着きます。
北京大学をはじめ13大学の学生約3000人が集まり、のぼりやプラカードを手に、パリ講和条約の調印拒否、日本が中国に突きつけた「21カ条要求」の撤回、親日派閣僚の罷免などを求めました。
その後もたびたび歴史の舞台に登場してきた天安門。89年の民主化運動の際には、天安門広場で学生が「五・四運動の精神を発揮しよう」と書かれた横断幕を掲げました。
学生の抗議のデモ隊は天安門から各国の公使館区域である東交民巷(とうこうみんこう)に向かい、英国、フランス、イタリア、米国の4カ国の公使に面会を求めました。米国公使館の書記官だけが対応し、学生らは嘆願書を手渡しました。
かつて各国の在外公館のあった東西1552メートルの通りには現在、最高人民法院、北京市公安局など公的機関が置かれ、当時と同じように市民を威圧しているように見えました。
その後、一部のデモ隊が過激化し、親日派の閣僚とされた交通総長・曹汝霖(そう・じょりん)の私邸「趙家楼」に向かいました。曹氏は、パリ講和条約で山東省の権益に関し、日本の意思に沿って解決するよう進言したとされています。デモ隊は、趙家楼に火を放ち、その場に居合わせた駐日大使・章宗祥を負傷させました。
政府は学生ら32人を逮捕しましたが、学生らの釈放を求めて抗議行動は全国に拡大。労働者が学生に同調してストライキを組織し、特に経済の中心であった上海での労働者のストは政府を震え上がらせました。
50年代に取り壊された趙家楼の跡地には、ホテルが建てられています。門には五・四運動のレリーフが飾られていました。
学生が始めた大規模な運動は政府を動かし、逮捕された学生の釈放、親日派閣僚の罷免、中国代表団によるパリ講和条約の調印拒否などを勝ち取りました。中国社会科学院世界歴史研究所研究員で中国日本史学会名誉会長の湯重南さんは本紙に、「学生運動と労働者の運動が結びつき、重要な歴史の起点となった。五・四運動は新民主主義革命のスタート、中国現代史の端緒、歴史の転換点になった」と強調しました。
2019年4月8日
紙巻きタバコの有害性が明らかになる一方で、加熱式タバコが広がっています。「健康リスクが未解明」などを理由に、加熱式タバコが法律や条例でも特別扱いされています。書籍『新型タバコの本当のリスク』の著者・田淵貴大(たかひろ)さん(大阪国際がんセンターがん対策センター疫学統計部副部長)に聞きました。(徳永慎二)
―加熱式タバコは有害成分を大幅に減らしているから 加熱式に切り替える人が少なくないのですが…。
田淵 確かに、フィリップモリス社の加熱式タバコ、アイコスのパンフレットには「紙巻きタバコに比べ有害成分量を90%低減した」と書かれています。他社でも同様です。それで一般の人の多くが健康被害がほとんどないと誤解しています。ここには、タバコ会社の巧妙な印象操作が影響しています。
「90%低減」は「九つの有害成分」を比べただけです。加熱式タバコには、それ以外にも多くの有害物質が含まれているので、9種類だけ比べているのはフェアではありません。
―といいますと。
田淵 同社は2012年、米国食品医薬品局(FDA)にアイコスの販売承認を申請しました。FDAが求めたのは、93種類の有害物質でしたが、報告したのは40種類です。残り53種類のうち50種類が発がん性物質です。
未知の物質も加熱式タバコに多く含まれています。紙巻きタバコと比べて、22物質が3倍以上、7物質が10倍以上含まれていることがわかりました。これらの物質の有害性は、十分には解明されていませんが、複合的な作用によって有害となる可能性もあります。
FDAの諮問委員会は18年1月、加熱式タバコは紙巻きタバコに比べてリスクが低いとはいえないと結論付けました。現段階で米国ではアイコスは販売されていません。
前出のパンフには小さな字で「90%低減」の表現は「本製品の健康に及ぼす悪影響が、他製品と比べて小さいことを意味しない」と書かれています。
―アイコスの販売世界シェアの96%を日本が占めるというのはどういうことでしょう。
田淵 それだけ日本は、タバコに寛容ということでしょう。
根底にはたばこ事業法で「たばこ産業の健全な発展」や「財政的収入の安定的確保」をうたっていることがあります。たばこ産業株式会社(JT)株の3分の1は財務省が保有しています。JTは長年、財務省からの天下り先となっています。加熱式タバコも同法におけるタバコ製品として、販売が簡単に認められたのです。
宣伝も、多くの国が、タバコの宣伝・広告を禁止していますが、日本では自主規制にとどまっています。
―以前にも、現在の加熱式タバコと同様の製品が販売されたことがあると聞きました。
田淵 そうです。1988年に米国のタバコ会社が「プレミア」という加熱式タバコを販売し、1年で撤退しています。その後も2度名前を変えて登場します。
フィリップモリス社は98年「アコード」(日本では「オアシス」)という加熱式タバコを発売したものの、2006年に販売を中止しています。
今の加熱式タバコの広がりは、健康意識の高まりのなかで「健康リスクの低減」という宣伝が、浸透したということではないでしょうか。
―どう対応すればいいでしょうか。
田淵 「リスクが分からないから禁止すべきでない」ではなく、「リスクがないと分かるまでは禁止する」という予防原則の立場が大切です。
加熱式タバコは有害なタバコ製品です。法律や条例で、特別扱いするのではなく、紙巻きタバコと同様に規制するべきです。
2019年4月30日
「国史は、皇紀九四五年に百済から王仁が文字と暦とを伝えたとしていますが、文字も暦もない千年も前に行われた神武天皇の即位式が、現在の二月一一日に当る正月元旦だと、どうして解(わか)ったのか不思議ですね。しかし、こういうことは大人になれば解ります」
近本洋一「逆立ちした塔―伊勢神宮と保田與重郎(やすだ・よじゅうろう)・三島由紀夫・中野重治」(『すばる』)には、皇紀2600年に中学生だった建築家の川添登が、当時先生から聞いたというそんな言葉が紹介されている。この「大人になれば解ります」の「大人になる」とは、虚構の「ごまかしを受け入れられること」、すなわち「何も知らない『子ども』がイニシエーションにより集団の暗黙の了解を共有する」ことを意味している。文化人類学者マイケル・タウシグの「公然の秘密」と「否認の務め」という概念を引きながら、近本はそれをこう解説している。
「ある社会において何かが《公然の秘密》となっていることがある。つまり何かについての虚構が“信じられている”ことになっているが、誰もがそれが虚構だという真理を知っていることがある。その時に『それは嘘(うそ)だ』という暴露を行うことは決して『それが嘘だということが真理になる』という結果をもたらすことにならない。そこでは、その暴露行為、あるいは露呈した虚構に対し『なるほど嘘かもしれない、しかしそれなら真理はより深く隠されているということだ』という心理的反応、すなわち《否認の務め》が作動してしまい、暴かれた虚構の内実が一層深く隠された位相へ置き直されるのだ」
虚構=秘密に疑いをもち、暴くことが、逆に虚構にリアリティーを与え、強化することにつながってしまう。暴露を通じて人々は虚構にいっそう深く拘束され、支配されることになる。ごまかしと知りつつ、それを信じるとは、そのような倒錯した事態を指すといえる。日本社会は、たえず暴かれることで現前する天皇制という「公然の秘密」をその核心に置いた部族社会にほかならない。そして、このような日本社会の存在様式を可視化したのが、「死と破壊に条件づけられた同一性の永遠の循環」を反復する伊勢神宮の式年遷宮であると近本は言う。
いま日本で進行中の「退位」と「改元」をめぐる狂騒と向き合い、思考するための重要な視点が提示されている。
同じく信じていないが虚構を受け入れることで「大人」になる儀式(神前結婚式と披露宴)の異様さに焦点をあてたのが古谷田奈月「神前酔狂宴」(『文芸』)である。明治の軍神を祀(まつ)る神社の結婚式場が舞台。乃木希典(まれすけ)がモデルと思しき椚(くぬぎ)萬蔵、東郷平八郎がモデルの高堂伊太郎は、明治天皇の下、戊辰戦争から日露戦争を戦い、ともに軍神となった。しかし天皇に殉じて祀られた椚と、そもそも神社に祀られることに反対していた高堂とのあいだには微妙な温度差が横たわる。それはいまなお椚神社と高堂神社、椚会館と高堂会館のあいだの抗争、覇権争いにまで尾を引いている。
物語は、派遣社員として高堂会館で働きはじめた2人の青年の視点から、「伝統主義による女性差別と商業主義による男性差別、この二つをかけ合わせて粉飾した現代の婚礼」の矛盾と愚かしさを容赦なくえぐり出す。
たなかもとじ「大地の歌ごえ」(「赤旗」2018年9月1日〜19年3月21日)の連載が完結した。福島第1原発事故で富岡町からいわき市、さらに東京へ避難した一家族が、苦難に押しつぶされることなく、危機を一つ一つ乗り越えていく。原発もまた、天皇制と同じく「公然の秘密」によって支えられたシステムだ。安全ではないことを誰もが知っているのに、暗黙の秘密にして、人々は知らないふりをする。里美たち一家は、暗黙の秘密を共有する日本社会そのものに翻弄(ほんろう)される。これこそまさにいま現実で起きている悲劇にほかならない。
天皇制と同じく、原発もまた民衆を支配し、日本社会をコントロールするために欠かせない権力の道具なのである。枚数が尽きたが、ユネスコ世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産」の“茶番”を迷宮的にたどった山形暁子「軍艦島へ」(『民主文学』)が爽快だ。
2019年4月24日
安倍政権は政権浮揚に天皇の代替わりや改元を利用しています。追随するメディアが多い中で、問題の本質に迫った論考が高村薫(作家)「ショー化した『元号』長期政権 驕(おご)りの果て」(『サンデー毎日』4月28日号)です。高村氏は、記者会見での首相の「日本の国柄をしっかりと次の時代へと引き継いでいく」という発言は個人の政治的決意なので、「新元号の発表にこれほどふさわしくない言明もあるまい」と批判し、「令」の字も命令や使役を表すため「一定の政治的偏向を感じる」と警戒しています。
命令への服従が教育に持ち込まれていることを証言したのが、前川喜平(現代教育行政研究会代表)「組織より個人の尊厳を第一に、面従腹背のすすめ」(『エコノミスト』4月9日号)です。前川氏は、政権が進める道徳教育は、自己犠牲・自己抑制をたたえる傾向や全体主義的・排外主義的傾向が強く、「非常に危険」と指摘します。また教育政策の狙いが、金もうけのうまい人を作って経済を成長させ、税金は軍拡にあてる「現代版富国強兵」にあると解明します。前川氏は「安倍政権は、戦後築き上げた民主社会と平和国家を崩壊させかねない。私は本気で心配しています」と危惧しています。
学生には自己犠牲が経済的にも強いられています。大内裕和(中京大教授)「学生が勉強できる大学へ」(『世界』5月号)によると、社会構造の変化で学生がアルバイトを「辞めようと思っても辞められない」状況が生まれています。
第一は学生の急速な貧困化です。月10万円以上仕送りした親の割合が1996年の65・6%から2018年は28・4%に減り、5万円未満が7・0%から23・0%に増えました。アルバイトの多くが生活費を稼ぐためのものになりました。第二は正規雇用労働者の減少です。正規が行っていた責任の重い労働をアルバイトが担っています。大内氏は、学生たちには学べるだけの経済的・時間的余裕を提供する必要があり、「努力すれば何とかなった」経験を持つ年長世代が現在の学生の困難を理解するよう求めています。
伊東光晴(京都大名誉教授)「アベノミクス 病理の淵源」(『世界』同)は、安倍政権の最大の特徴を「財界の意をくむ政治である」と断言します。伊東氏は、不本意ながら非正規で働く労働者は潜在的失業者であって、それを含めれば失業率は13%だと主張し、「正規雇用者の賃金を出すのならば、いくらでも人は集まる。人手不足の真の意味は、低賃金で働く人が不足しているということにすぎない」と力説しています。
リチャード・カッツ(『週刊東洋経済』特約記者)「日本の最低賃金は低すぎる」(同誌4月6日号)は、時給1000円を超える最低賃金の早期実現を提唱しています。最低賃金引き上げは「貧困や格差の改善に役立つだけでなく、所得増を通じて個人消費を活性化する」と、経済効果の面からも重視しています。
セクハラを告発する「#MeToo運動」の中で、「ニューロセクシズム」という用語が批判的に使われています。これは男女の行動や思考の違いは、ほとんどが脳の性差によるという説です。「脳科学本 求められるわけは」(「朝日」4月7日付)は、夫婦間のすれ違いを「脳の性差」で説明する黒川伊保子編著『妻のトリセツ』(講談社)を批判しました。
四本(よつもと)裕子東京大准教授は、同書は「最新の研究成果を反映していない」と前置きし、男女の脳の特性を比較して平均値に差が出ても個人にまで一般化できないし、脳は個体差が大きく環境や教育などから影響を受けるため、「ひとつの因果関係だけでは説明できない」と注意を呼びかけます。「ニューロセクシズム」は「近年学術界で問題視されている」とのことです。
人間は因果関係を見出して知識を増やしてきましたが、菊池聡(さとる)信州大教授は「わずかな知見を元に、身近な『あるある』を取り上げて一足飛びに結論づけるのは、拡大解釈が過ぎる」と行き過ぎを戒めています。
(たしろ・ただとし)
・西郷南海子(みなこ=京都大院生)「タテカンの空間論」(『世界』5月号) 京都市の景観政策に従いタテカンの設置を禁止した京大の規定について、タテカンが生む「今日も誰かが何かをやっているという、大学の街の空気」は失ってはならないものだと考察。
・末吉竹二郎(国連環境計画・金融イニシアティブ特別顧問)「脱炭素に背を向けると企業は生き残れない」(『週刊東洋経済』4月6日号) パリ協定を機に国も企業も再生可能エネルギーへの移行を急速に進めている世界の状況を紹介したうえで、日本では政府が、「今は昔」のエネルギー基本計画を墨守していると批判。
・橋本健二(早稲田大教授)「『新たな下層階級』出現」(「毎日」4月3日付夕刊) 「アンダークラス」(主婦らを除く非正規労働者)という新たな下層階級を定義し、放置すれば日本社会は崩壊すると警告。
2019年4月28日
「教えるとは希望を語ること。学ぶとは誠実を胸にきざむこと」。フランスの詩人、ルイ・アラゴンの「ストラスブール大学の歌」の一節です。教育とは何かを考えるとき、今も光が当てられる言葉です▼1943年、ストラスブール大学の教授や学生が殺され、数百人が逮捕されました。ナチスの弾圧によるものです。事件への怒りを込めてアラゴンが書いたのがこの詩でした▼独裁や圧政のもとでは学びたいことを自由に学ぶ権利、学問の自由が奪われます。それは教育が統制された戦前、戦中の日本を見ても明らかです。権力者は自分に都合のいい「学問」しか認めないからです。現在の日本で学問の自由は守られているでしょうか▼あからさまな弾圧こそないものの、平和教育や歴史教育に対し「偏向している」などと政治家が介入する例は各地にあります。大学では大企業や国家のために役立つとされた研究にだけ多額の予算が配分され、役に立たないとされた分野は劣悪な研究条件下に置かれています。文系学部縮小の動きもあります▼小中学校では「学力向上」として学力テストの点数をあげることが最優先課題のようにされて、「点数アップ」に役立たないことは軽視される傾向も。そんな政策を進める人たちに、はたして誠実さはあるのでしょうか▼学問の価値は役に立つかどうかだけでは測れません。まして国に都合の悪い学問を抑圧するなどあってはなりません。希望を語り合うためには学びたいことを学べる自由が必要です。
2019年4月19日
ギリシャ議会は17日、第2次世界大戦中にナチス・ドイツに占領された際に受けた被害について賠償金をドイツ政府に求める決議を可決しました。ギリシャ政府は近く、外交文書をドイツ政府に送付します。ロイター通信によると、ドイツに対する戦時賠償問題でギリシャ議会が公式な決定を行ったのは初めてです。
決議は「要求が満たされるよう(ドイツに対し)あらゆる法的、外交的な行動を適切に起こすこと」をギリシャ政府に求めています。請求額には言及していませんが、ギリシャ議会の専門委員会は2016年、占領時の被害額は、現在の価値に換算して3000億ユーロ(約38兆円)超に上るという試算を発表しています。
チプラス首相は「極右、国粋主義、人種差別主義が欧州を脅かしている。まさにその時に賠償を求めることはギリシャにとって歴史的、道徳的な義務だ」と強調。「よりよい未来を切り開くために、過去の未解決の問題を解決する必要があるし、ドイツも同じように行動する必要がある」と述べました。
ドイツ政府報道官は17日、「賠償問題は法的にも政治的にも最終決着がついている」と語り、対ギリシャ戦時賠償は解決済みとする従来の見解を繰り返しました。
ナチス・ドイツは1941〜44年にかけてギリシャを占領。約1000の村が破壊され、飢餓などで多数が死亡しました。またレジスタンス(抵抗運動)への報復として住民を多数殺害しました。(島田峰隆)
2019年4月12日
ともすると、失言や暴言のたぐいは個人の資質に流されることが多い。しかし、この政権でやまないそれは、歴史や憲法をことごとく無視してきたから▼それを証明した本が戦争法の強行のあと、大学教授らによって編まれました。ナチスの手口を学んだらどうか、ポツダム宣言をつまびらかに読んでいない…。彼らのそれは個人主義や民主主義、平和主義といった戦後の概念を根底から覆すものでした(『これでいいのか! 日本の民主主義』)▼桜田義孝五輪相が自民党議員の名をあげて、「復興以上に大事」と発言しました。「あんまりだ」「泣けてくる」「復興五輪といいながらなんだ」。きのう月命日だった被災地は怒りや悲しみをあらわにしました▼「忖度(そんたく)」発言で国交副大臣が辞めたばかり。国民のことより自分たちの仲間や利益が大事という露骨な言い草も、さんざん私的なことに政治を動かしてきた首相のもとでは当たり前の帰結か▼この政権は社会の進歩を妨げ、個人の尊厳をふみにじる言葉をくり返してきました。「LGBTは生産性がない」「セクハラ罪っていう罪はない」「それで何人死んだんだ」「がっかりした」―。傷つく相手や存在のことなど、考えようともせずに▼先の本は、こうしたアベ政治に反対する人たちの声を未来に希望を与える言葉として対置しています。憲法や平和、人権や多様な生き方を守りたい。それは、よりよい社会や生活をもとめる人びとから発せられたものです。民衆の力もまた、言葉だと。
2019年3月19日
婦人民主クラブは16日、東京都内で「創立73周年記念のつどい」を開きました。
主催者あいさつした櫻井幸子会長は、1946年の結成以来、激動の情勢のなか、平和と暮らし、子どもの幸せを守り、女性の地位向上をめざす活動を続けてきたと強調。「憲法を守る立場の総理大臣が憲法改悪を公言する異常な状況のもと、私たちのたたかいは正念場を迎えている」と述べ、憲法を守る市民と野党の共闘を広げ、平和と民主主義が生きる社会を実現させようと呼びかけました。
来賓あいさつした日本婦人団体連合会の柴田真佐子会長は、「平和、ジェンダー平等を求めて、ともに運動をすすめましょう」と訴えました。
東京大学・大学院の石田勇治教授が「ナチスの『手口』と緊急事態条項―今、ヒトラー独裁成立の歴史から私たちは何を学ぶか」と題して講演。「大統領緊急令」の乱用や包括的な「授権法」を使って無制限の立法権を行使した歴史を紹介し、自民党改憲案「緊急事態条項」の危険性を指摘しました。
バイオリン奏者の早川愛美さんが、「ふるさと」などを演奏し、爽やかな音色で魅了しました。
参加した70代の女性は「ナチスのやり方に日本の政治が近づいているようで怖い。戦争を繰り返さないよう、平和を守る運動を続けたい」と話しました。
2019年3月9日
8日、東京都千代田区で開かれた「2019年国際女性デー中央大会」に、日本共産党の志位和夫委員長がメッセージを寄せました。全文を紹介します。
世界と日本で女性たちのたたかいの伝統を受け継いできた3・8国際女性デーにあたって、ご参加のみなさんに心からのお祝いと連帯のごあいさつをおくります。
今年は、1979年に国連の女性差別撤廃条約が採択されてから、40年の節目の年です。世界と日本の社会進歩にとって、男女平等と女性の権利は重要な課題であり、女性差別撤廃条約は世界を変える大きな役割を果たしてきました。先進国のなかで女性への差別が深刻な日本で前進をかちとることは、重要な課題となっています。
この1年、女性のみなさんのたたかいは、安倍9条改憲ストップ、核兵器廃絶、職場の平等と人間らしい働き方、消費税10%中止、くらしと営業を守り、子育て支援や教育、福祉充実をめざして、全国各地でねばりづよく取り組まれてきました。若い女性を先頭に、セクハラや女性蔑視など、差別の是正に声をあげ、行動によって、社会を動かしています。
そして私たちは、共同のたたかいをすすめるために努力してきました。国会内での共闘、市民と野党の共闘は、着実に前進しています。民法改正、財務省セクハラ問題、女性の政治参加、「働き方改革」、保育や介護の充実、原発廃止、被災者支援など、女性の切実な要求にかかわる多くの課題で、共同行動をひろげることができました。
4月には統一地方選挙、7月には参議院選挙がおこなわれます。強権とウソでしかこの国を統治できない安倍政権の破たんは明瞭です。新しい軍国主義とファシズムへの国家改造をねらう安倍首相の歴史逆行の暴走を許さず、市民と野党の共闘の前進、そして私たち日本共産党の躍進によって安倍政治を終わらせ、野党連合政権にむけた第一歩を踏み出すために、全力をつくす決意です。
2019年3月2日
日本共産党中央委員会が1日、静岡県焼津市で開かれた「被災65年2019年3・1ビキニデー集会」に送ったメッセージ(全文)を紹介します。
被災65年2019年3・1ビキニデー集会に参加された全国のみなさんに、心からの連帯のあいさつをお送りします。
今年の集会は、これまでにもまして意義深いものとなっています。
65年前、アメリカが南太平洋のビキニ環礁で行った水爆実験は、第五福竜丸をはじめ1400隻もの漁船が被爆をするなど、甚大な被害をもたらしました。ヒロシマ、ナガサキにつづいて三度、核兵器の被害をうけたことに多くの国民がたちあがり、原水爆の禁止をもとめる広大な署名運動が発展し、翌年には第1回の原水爆禁止世界大会が開催されました。ビキニデーは運動の原点です。
いま世界では核兵器禁止条約が近い将来にも発効する見通しとなっています。核兵器を法的に「禁止」し、「廃絶」への展望をしめしたこの画期的条約を生みだした根本には、被爆者や核実験被害者を先頭にした世論と運動がありました。しかし、核保有国や核兵器に依存する同盟国らは、この流れを押しとどめようと躍起になっています。米ロによる新たな核軍拡計画も許されません。
参加者のみなさん。これをうちやぶって前進するカギは、市民の声と行動をさらに発展させることです。来年2020年は被爆75年であり、ヒバクシャ国際署名が世界数億を目標とする年でもあります。いまこそ原水爆禁止運動の原点を思い起こし、世界でも、日本でも共同をさらにひろげ、「核兵器のない世界」への扉をひらこうではありませんか。
ビキニ被災が私たちに教えているのは、日本政府の被爆国にあるまじき態度を変えていくことの重要性です。
日本政府はビキニ被災当時、反核世論のたかまりを恐れたアメリカの意をうけて、わずかな「見舞金」で幕引きをはかりました。被害の全容解明はたな上げにされ、多数の被災者が補償も救済もないまま放置されました。政府は直ちにこの非を認め、補償と救済をはからなければなりません。
アメリカの核戦略に追随する姿勢は今も変わっていません。安倍政権はアメリカの「核の傘」に依存し、核兵器禁止条約に反対しつづけています。昨年来の朝鮮半島の劇的な変化にもかかわらず、9条改憲や大軍拡、沖縄辺野古への米軍新基地建設をすすめ、新たな批判がひろがっています。アメリカいいなりの「戦争する国」づくりの破綻は明瞭です。
安倍政治の暴走を許せば、新たな軍国主義とファシズムの歴史逆行を招きかねません。4月には統一地方選挙、7月には参議院選挙がおこなわれます。日本の命運がかかった一大政治戦です。みなさんとともに市民と野党の共闘を発展させ、また、私たち自身も躍進をし、安倍政治を終わらせる決意です。そして、核兵器禁止条約に署名、批准する政府を実現しようではありませんか。
この集会が運動発展の契機となることを願って、連帯のメッセージといたします。
2019年2月27日
1年ほど前、政治学者ローレンス・ブリット氏の「ファシズムの初期症候」がネット上で「安倍政権にそっくり」だと話題になりました。「強情なナショナリズム」「人権の軽視」「団結のための敵国づくり」「軍事の優先」「性差別の横行」「マスメディアのコントロール」「身びいきの横行と腐敗」など14項目があげられていました。さらに濃さをます「ファシズム的空気感」。これに抗する論考に注目しました。
「初期症候」の一つにもあげられていた「マスメディアのコントロール」。権力の中枢である官邸が、東京新聞記者の質問を事実上封じるような申し入れを内閣記者会や東京新聞あてに行いました。「当該記者による度重なる問題行為」とのべ、内閣記者会に「問題意識の共有」を求めたのです。きわめて異常な動きに対して、南彰(新聞労連中央執行委員長)「記者の連帯がなぜ必要か」(『世界』3月号)は、安倍政権の記者の質問封じの実態を明かします。
いま、放送法の枠外にあるネットメディアを使い、首相の礼賛と政権の主張が垂れ流される状況が生じています。政権にとって不都合な厳しい質問を封じる―「質問できない国」への道は、まさにファシズム的です。氏は新聞労連の大会決定に基づき、社の枠や意見の違いをこえ、公の取材機会の確保によって情報を開示させることを提言し、「記者側がネットワークで対抗し、共通の土俵をつくっていかないといけない」と強調します。
ホワイトハウスがCNN記者の記者証を取り上げた際、政権と緊密なFOXも含めて異議を唱え、ホワイトハウス記者協会が記者の復帰を求めた対応を例にとり、日本の足元の状況を改善していく参考になると語っています。政権に対するウオッチドック(番犬)の機能を取り戻すことが切実に求められています。
「初期症候」としての「軍事の優先」を批判する論考も相次ぎました。昨年、「自衛隊を憲法に書くだけで何も変わらない」といっていた安倍首相は今年、にわかに“自衛官募集に6割以上の自治体が協力しない状況に終止符を打つために、自衛隊の存在を憲法に明記する”といいだしました。9条改憲のねらいの一つが、自治体から若者の名簿を強制的に召し上げ、戦争に駆り立てることを告白するものです。
井筒高雄(ベテランズ・フォー・ピース・ジャパン共同代表)「加憲で自衛官の士気は高まるか?その実際を現場目線で検証する」(『Journalism』2月号)は、「戦争の現実味を帯びた自衛隊の最大のネックは隊員の高齢化」と現状を報告。「有事の際に大量の国民を動員して軍の規模を一気に拡大させるという前提にたてば、もっとも効果的な政策判断は9条を改正し、憲法上の『制約』をなくし、憲法18条で禁止されている『苦役』から『徴兵制』や『徴発』、『徴用』を外して合憲化すること」―との警鐘は、元自衛隊員の告発だけに説得力があります。
安倍内閣が閣議決定した「防衛計画の大綱」と「中期防衛力整備計画」に警鐘をならす論考も目立ちました。東京新聞社会部取材班「戦略なき軍拡」(『世界』同)は、トランプ米大統領にいわれるがままに兵器を買い続け、予算不足で国内の防衛企業に支払い延期を要請するなどの実態を暴き、「防衛費の流れを追うことで、改憲より以前に現実の防衛政策が『戦争のできる国』へ向けて動きだしている」ことを浮かび上がらせています。
柳沢協二(元防衛官僚、元内閣官房副長官補)「力に歯止め 政治が関与を」(「朝日」8日付)は、「いずも」の空母化をすすめることで、「台頭する中国への対応で米国に見捨てられないよう、米国が関わる紛争に日本が巻き込まれる仕組みを作った」と告発。米中の力関係が変化する時代に、「大国関係の安定による『望ましい安全保障環境』を作る責任が政治に問われます。安易に抑止力に丸投げするなら、防衛力は際限なく拡大せざるを得ません」と結論づけます。
安倍首相による9条改憲がねらう、新しい軍国主義とファシズムを許さない世論と運動をさらに大きく広げるときです。(つつみ・ふみとし)
・吉見俊哉(東京大学教授)「偉大なる反面教師・アメリカ」(『Voice』3月号) 新自由主義によって大きな分裂を生んだアメリカの迷走ぶりをふり返り、新自由主義を徹底するアベノミクスの先には、米国のような「分裂社会」が待ち受けていると警告し、対米追従主義からの決別を提案。
・山口二郎(法政大学教授)「統計不正でまたも露呈した安倍政治の“虚偽体質”」(『週刊東洋経済』23日号) アベノミクスの成功という主観的願望が統計不正を招いたのではないかと指摘し、主観が客観を制圧する安倍政治は国を滅ぼすと警告。(編集部)
2019年2月19日
日夜を分かたぬ奮闘に心から敬意を表します。
「統一地方選挙必勝作戦」はあと11日、道府県議・政令市議選の告示まであと38日となりました。文字通り3月1日を投票日に見立て、選挙本番を一回たたかうような猛奮闘で、「必勝作戦」の目標を総達成することを心から訴えます。
「家計消費は持ち直している」「今世紀最高水準の賃上げ」「総雇用者所得は増えている」など消費税増税の論拠を総崩れに追い込んだ志位委員長の予算委員会質問が、大きな反響をよんでいます。9条改憲の理由として、安倍首相が「6割以上の自治体が自衛官募集に協力しない」などと述べたことは、自治体から若者の名簿を召し上げ、戦場に強制動員することが改憲のねらいの一つであることを自ら告白するものです。
「消費税10%中止」を選挙の大争点に押し上げ、わが党の躍進で増税を止めようではありませんか。新しい軍国主義とファシズムへの国家改造を許さず、安倍政権もろとも9条改憲の企てを葬り去ろうではありませんか。
メディアは消費税増税でも、自衛官募集の名簿提供でも、本質を突く報道をしていません。地方政治の現状と党議員団の値打ちとともに、国政問題での党の値打ち、わが党ならではの提案を徹底して押し出し、綱領・歴史・理念なども語っていくことがいよいよ重要です。宣伝、対話・支持拡大でも、党勢拡大でも、「比例を軸」に、自らの力で党躍進の風を起こそうではありませんか。
この間の全党の頑張りで、宣伝、支持拡大、党勢拡大のテンポは上がっています。各地の演説会の多くが満席になり、熱気と決意に満ちた演説会となっています。
同時に、「必勝作戦」の目標との関係では残る期間での大飛躍が必要です。11日間は、道府県議選の選挙期間を上回り、本気になれば飛躍をつくることは可能です。全支部・全党員の総決起をはかり、読者、後援会員、支持者へ担い手を広げに広げて、目標をやりぬこうではありませんか。
演説会を跳躍台に、事前、当日・事後のとりくみで「一体作戦」を貫き、全有権者規模の宣伝・対話を爆発させ、党押し出しポスターを一刻も早く張り出し、党員と「赤旗」読者の拡大をあらゆる機会に追求し、「必勝作戦」の二つの課題をやりぬきましょう。
「日曜版見本紙100万部作戦」と一体に、「赤旗」読者、後援会員、支持者への「折り入って作戦」を強力に推進し、「集い」を推進軸に、選挙の担い手を大きく広げましょう。
「必勝作戦」の討議・具体化を最後の一支部までやりとげ、全支部・全党員の総決起をはかる手だてを一日一日うちきりましょう。
全党のみなさん。「必勝作戦」をなんとしても成功させ、この歴史的な選挙戦の勝利をつかみとろうではありませんか。私も全力を尽くす決意です。
2019年2月17日
1カ月後に迫った統一地方選と、続く夏の参院選で日本共産党の躍進、市民と野党の共闘勝利をめざして16日、全国各地で党幹部を迎えた演説会が開かれ、「安倍政治はもう終わりにしよう」と熱気に包まれました。志位和夫委員長が北九州市、小池晃書記局長が東京都武蔵村山市、市田忠義、山下よしき、田村智子各副委員長がそれぞれ京都府宇治市、兵庫県西宮市、大阪市で、府県議・市議候補、参院候補らとともに訴え。演説会を節目に、党組織・党支部による宣伝・対話や入党、「しんぶん赤旗」を増やす取り組みも行われました。(関連3・4・5面)
北九州市のソレイユホールで志位和夫委員長を迎えて開かれた演説会は、2階席まで満員となり、参加者の熱気にあふれました。志位氏は、目前に迫った統一地方選と参院選の連続する選挙は「日本の命運を分けるたたかいになります」と強調。「安倍政権とのたたかいは7年目に入りましたが、つくづく感じるのは、これ以上この政権を続けさせたら、日本の政治も、経済も、社会も壊されてしまうということです。もう終わりにしましょう。市民と野党の共闘の勝利、共産党の大躍進で、連続選挙を『安倍政権サヨナラ選挙』にしていきましょう」と熱く訴えました。
志位氏は、「10月からの消費税10%への増税は大争点」と語り、衆院予算委員会で行った安倍首相との論戦をパネルも示しながら詳しく報告しました。安倍首相が家計消費でも実質賃金でもマイナスであることを認め、「380万人の就労者増」の中身も高齢者、学生などが生活が苦しくなり働かざるを得なくなっていることが明らかになったとして、消費税10%増税の根拠は総崩れになったことを強調しました。
そのもとでも、安倍首相が破産した議論を繰り返しているとして、「論戦でどんなに破産しても、悔い改めることはない。首相の辞書には『反省』という言葉はありません。ならば選挙で決着をつけようではありませんか。共産党の躍進で消費税10%を必ず中止に追い込みましょう。消費税に頼らないまともな道に切り替えましょう」と力を込めました。
もう一つの大争点が、安倍首相による憲法9条改悪を許さないことです。
「なぜ憲法9条に自衛隊を書き込むか」。志位氏は、安倍首相が、昨年は「自衛隊を憲法に書くだけ。何も変わらない」と語っていたが、今年に入り、違うことを言い出したと指摘。「自治体が自衛隊に協力しない現状を変えるために、憲法に自衛隊を書き込む」と言い出したことについて、「改憲の狙いがどこにあるか馬脚をあらわした」と述べました。
9条改憲の狙いが、海外での無制限の武力行使を可能にするとともに、自衛官募集のために自治体から若者の名簿を強制的に召し上げる―若者を戦場に強制動員することにあることが明らかになったと厳しく告発。「首相の改憲への執念は絶対に軽くみてはいけない。新しい軍国主義とファシズムへの国家改造の野望を許すなということを心から訴えたい」と述べ、「この問題も選挙で決着をつけようではありませんか。共産党の躍進で、安倍政権を大敗させ、安倍政権もろとも9条改憲の企てを葬り去ろう」と訴えました。
このなかで志位氏は、日本共産党の「北東アジア平和協力構想」を紹介。憲法9条を生かした平和外交にとりくんできた党の躍進を心をこめて呼びかけました。
沖縄米軍基地問題も大きな争点だと語った志位氏は「追い詰められているのは安倍政権です」と強調。志位氏の衆院本会議での代表質問への答弁(1月31日)で、安倍首相が大浦湾側にある軟弱地盤の存在を認め、玉城デニー知事に地盤改良のための設計変更申請を行う方針を明らかにしたことを指摘。安倍首相が答弁のなかで「一般的で施工実績が豊富な工法」で地盤改良工事は可能だと答弁したことは「全くのウソだ」と批判しました。
軟弱地盤は海面から90メートルに達し、7・7万本の杭(くい)を打たないといけないとして、「前例がなく、工事可能な作業船すらない」と告発。地盤改良は技術的に不可能であり、デニー知事が許可することも決してないとして、「新基地建設は二重に不可能です。沖縄県民が結束し、全国が連帯すれば辺野古新基地は決してつくれない」と強調し、24日投票の辺野古新基地建設のための埋め立ての賛否を問う県民投票で、「圧倒的な民意を示すことは巨大な力になります。全国の連帯を」と呼びかけると、大きな拍手が起きました。
志位氏は、福岡県政も、福岡市政、北九州市政も、共産党を除く「オール与党」であり、対決構図は「自公対共産党」だとして県議選で2議席を必ず守り、5議席への躍進をめざすとともに、参院選比例では仁比そうへい参院議員をはじめ7人全員の当選と、福岡選挙区で、かわの祥子候補の勝利を訴えました。
志位氏は、県政の争点について第一に、ムダな大型開発優先から、県民の命と暮らしを守る県政に転換することだと強調しました。
自公県政は水が余っているのに四つのダム建設に6000億円もつぎ込み、総額2000億円以上といわれる「下関・北九州道路(第二関門橋)」を推進していると告発。「防災のため」「関門橋が老朽化した」などの理屈がどれもなりたたないと指摘し、「いまなら間に合います。共産党躍進で無謀なムダ遣いを止めましょう」と訴えました。
党県議団・北九州市議団が「暮らしと防災」の四つの提案を行っていることを紹介。とくに高すぎる国保料の引き下げのため、国政と自治体の双方から力をつくす決意を表明。県議団・市議団の連携した取り組みのなかで、北九州市では国保料を1人8000円引き下げさせたこと、共産党をのばせば国保料引き下げの道が開かれると述べました。
第二の争点は、福岡を米軍の出撃拠点にさせてはならないことです。志位氏は、日米両政府が航空自衛隊築城基地などを、米軍普天間基地の「能力を代替」することで合意したと指摘し、滑走路の延長などの計画を進めていると告発。「福岡を米軍の出撃拠点にするな、この願いを共産党に」と訴えました。
志位氏は、前回県議選でゼロから2議席に躍進した党県議団が、県民の声を県政に届け、県政を動かしてきたと指摘。小中学校で教員の非常勤比率が高く、早期退職が相次ぐ下で拡充を求め、教員の新規採用を2倍以上にしたと紹介しました。2年連続した豪雨災害で、県議団が被災者支援に全力を尽くす中で、無党派の市議や、首長からも信頼が寄せられていることを紹介。「県民の命綱の議席」だとして、「2議席を必ず守り抜き、5人の県議団への躍進を」と訴えました。
統一地方選をたたかう地方議員・候補が登壇し、たかせ菜穂子県議(小倉北区)が「国いいなり、大企業奉仕の県政を変えよう」と呼びかけました。
仁比参院議員は、安倍政権が航空自衛隊築城基地の米軍基地化を狙い、改憲に執念を燃やしていると述べ、「いよいよ大勝負」として連続選挙での勝利を訴え、かわの候補は「党躍進で消費税増税を阻止しよう」と呼びかけました。
九州国際大学の神陽子准教授が連帯あいさつし、「野党共闘の実現でよい社会の実現を」と語りました。
2019年2月16日
12年ぶりとなる連続選挙が目前です。統一地方選挙告示は6週間をきりました。職場支部と労働者党員のみなさんが、春闘にとりくみながら選挙をたたかい、選挙戦でそれぞれが役割を担って奮闘されていることに心より敬意を表します。同時に、まだ選挙に立ち上がれていない職場支部が足をふみだすことは、選挙勝利にとって不可欠です。
労働者階級の党である、日本共産党の職場支部と労働者党員のみなさんが、歴史的選挙に勇躍して決起され、勝利するためのけん引車として奮闘されることを心から訴えるものです。
今度の連続選挙は、日本の命運を分けるたたかいです。安倍晋三首相は、9条改憲の野望をあからさまに、繰り返し語っています。日本を再び「戦争する国」「労働組合が否定される国」にしてはなりません。新しい軍国主義とファシズムへの道を絶対に許してはなりません。
いまこそ、政治を変えて、職場を変えましょう。
――消費税10%への増税をやめさせ、大幅賃上げで景気回復をはかる
――労働時間短縮で「8時間働けばふつうに暮らせる社会」をつくる
――安倍政権の暴走にストップをかけ野党連合政権を
連続選挙のたたかいは、多くの労働者の願いにこたえる道です。
「“教え子を再び戦場に送らない”は私の生涯のスローガン」(教職員)、「病院でギャンブル依存症の苦しみを見ている。カジノを導入する政治は許せない」(医療)など、連続選挙の意義を、みずからと職場に引き寄せてつかみ、勝利めざす活動に立ち上がる職場支部が広がっています。
最初の関門である統一地方選挙は、参院選の前哨戦として激烈な党派間のたたかいとなっています。「住民福祉の機関」という自治体本来の役割を取り戻すとともに、安倍自公政権に地方から審判を下す選挙です。わが党が前回躍進した議席を確保し、さらに前進するには、職場支部がすべての労働者を視野に働きかけるとともに、地域の結びつきや「全国は一つ」であらゆる結びつきに訴えることがどうしても必要です。
すべての職場支部が、ただちに支部会議をひらき、連続選挙の歴史的意義を語り合うとともに、「党旗びらき」で提起された「統一地方選挙必勝作戦」――3月1日までに、(1)勝利に必要な宣伝・組織活動をやりきる(2)党勢拡大で前回選挙時を回復・突破する――を討議・具体化し、足をふみだすことを呼びかけます。
○「850万票、15%以上」に見合う支持拡大目標を決め、(1)職場のつながり、全国のつながりに支持を訴える(2)党員の居住地での活動に協力する(3)県・地区の政治目標実現のために、職場支部の実情に即して、党機関とよく相談し配置につく――この三つの分野で力を発揮しましょう。「マイ名簿で対話した経験の交流が、職場での対話にふみだす力になった」「地域のポスター作戦に参加して有権者の変化を感じた」「出勤前の宣伝参加が地域支部から歓迎されている」。各地で経験が生まれており、できることから始めましょう。
○演説会で若い世代の労働者が入党しています。労働者の政治的関心が高まる選挙の時こそ党勢拡大のチャンスです。労働者後援会を再開・強化し、職場支部と後援会員の力を総結集して演説会、「集い」を広く労働者に案内し、入党と「しんぶん赤旗」の購読を働きかけましょう。
2019年2月13日
日本共産党福岡県委員会は11日、福岡市で田村智子副委員長を迎えて演説会を開きました。県議会での党5議席以上の獲得、福岡市議7区全員当選など統一地方選躍進と参院選勝利に向け、会場いっぱいの参加者で熱気があふれる演説会となりました。
田村氏は、消費税増税や大軍拡など安倍政権の暴走政治の破綻や、野党共闘での党の役割を縦横に語り、会場からは「その通り」の声が上がりました。「共闘前進のカギは統一地方選での党の躍進」と強調。国民多数の力で資本主義を乗り越えた未来社会を目指す党の姿を語り「連続する選挙で必ず勝利して安倍政治を倒し、希望ある政治の扉を開こう」と力を込めました。
仁比そうへい参院議員が、憲法改悪を狙う安倍首相を批判。「力を合わせて、新たな軍国主義とファシズムの復活を絶対に許さない共同を広げていこう」と訴えました。
かわの祥子参院福岡選挙区候補が、航空自衛隊築城基地の米軍基地化阻止と沖縄との連帯を訴え「定数3を勝ち抜き政治を変える」とのべました。統一地方選候補を代表し、立川ゆみ県議候補(福岡市東区)、中山いくみ福岡市議(早良区)が決意表明しました。
野党共闘の実現を訴える木村公一牧師があいさつをしました。
2019年1月24日
全国労働者日本共産党後援会は22日夜、東京都内で統一地方選挙と参院選躍進にむけた決起集会を開き、全国から150人が参加して選挙勝利の決意を固めあいました。
開会にあたってあいさつした全国労働者後援会の小田川義和代表委員は、労働者の要求実現の最大の障害となっている安倍政治にピリオドを打つために、全国の労働者後援会が心ひとつに力を合わせようと訴えました。
日本共産党の小池晃書記局長があいさつし、消費税10%への大増税中止、「戦争する国づくり」を許さないたたかい、沖縄への連帯、「原発ゼロの日本」をめざすたたかいという四つの争点について語りました。
昨年の臨時国会で悪法が次つぎと数の力で強行されましたが、それは安倍政権の強さでなく国民に正々堂々と政策を語れない弱さのあらわれだと指摘。28日から始まる通常国会でも野党がしっかり結束し、正面から論戦に挑んで安倍政権を追い込み、選挙で決着をつけたいと表明しました。
小池氏はまた、6野党・会派の書記局長・幹事長会談で25日の野党・会派の党首会談開催が決まったと報告し、1人区で本気の共闘が実現し、勝利すれば、複数区、比例区でも自公を追い詰める流れが必ず生まれてくると強調。今年の連続選挙で必ず勝利し、新しい軍国主義とファシズムへの暴走を許さず“安倍政治サヨナラ”の年にしようと呼びかけました。
5人が決意を表明。大阪の代表は、今年の選挙で維新政治を終わらせ、カジノ反対の議会をつくると発言。沖縄の代表は、4月の衆院沖縄3区補選でも必ず勝利するとのべ、自治体労働者後援会の代表は、公務労働を住民の手に取り戻すために全力をあげると語りました。
全国労働者後援会の仲野智事務局長が行動提起し、(1)労働者後援会の臨戦態勢の確立と全後援会員の決起(2)3月1日を投票日にみたて、全労働者を対象にした宣伝・組織活動(3)「集い」の開催(4)後援会員、「しんぶん赤旗」を増やす(4)後援会ニュースの発行―などを呼びかけました。
閉会にあたり中村尚史代表委員が、党の「教職員提言」が各地で共感を呼び、党への支持が大きく広がる条件が生まれていると強調しました。
地域衰退 何か変えたい
2019年1月22日
欧州連合(EU)からの離脱(ブレグジット)期限を3月29日に控え、混迷を深める英国。2016年の国民投票では、大都市部が残留を選択したのに対し、経済が停滞している旧重工業地帯では離脱票が上回り、「ブレグジット・タウン」と呼ばれました。離脱票が69%に達した英中部のドンカスター市を訪ね、住民に今の思いを聞きました。
(英中部サウスヨークシャー州ドンカスター=伊藤寿庸 写真も)
ドンカスター中心部から約12キロのハットフィールド・ステインフォース炭鉱。日本でも公開された映画「ブラス!」のロケ地でしたが、15年に閉山。この地域に数多くあった炭鉱がすべて姿を消しました。構内はほぼ更地となり、立て坑のエレベーターシャフトとコンベヤー、れんがの建物1棟だけが残っています。
強権弾圧の歴史
近くに、1984〜85年の炭鉱ストを記念する全国炭鉱労組の石碑がありました。「決して忘れない、決して許さない」の言葉に、当時のサッチャー首相の強権的弾圧に敗れた苦渋がにじみます。
ドンカスター都市圏に属する小さな町ステインフォース(人口7000人)。父も兄も夫もみな炭鉱労働者だったシーナ・ムーアさん(59)は、強固なEU離脱派です。
「私は、民主主義を信じている。この30〜40年、仕事もなく、何の未来も感じられなかった人たちが、何かを変えようと離脱に投票した。国民投票を取り下げるのはファシズムだ」
町には、鶏肉処理工場(従業員650人)、縫製工場(同300人)がありましたが、EUの補助金でそれぞれフランス、トルコに移転したといいます。町の図書館、子どもの遊び場、プール、陸上競技場、サッカーやクリケットのグラウンドはみな廃止されました。「若者たちの居場所がない」とシーナさん。
炭鉱をやめてから、炭鉱労働者年金基金の仕事をしている兄のレスリーさん(65)は、英国の欧州単一市場への加入(1975年)で、「政府はロンドンの金融業と引き換えに、英国の低・中熟練労働の産業を売り渡した」と手厳しい。
電気切り食費に
地域のフードバンク(貧困層に食料などを援助する組織)を支援する慈善団体を仲間と立ち上げ、毎年寄付をしています。レスリーさんは「こんな豊かな国で、フードバンクに頼らなければならない人がいることがおかしい」と憤ります。ソーシャルワーカーのシーナさんによると、電気を切って節約し、食費に充てている家、携帯電話を持たない家もあるといいます。
炭鉱を中心に人々が助け合ってきた地域社会が消え、弱肉強食の「新自由主義」がとってかわりました。今ある雇用は、仕事がある時だけ呼び出され、働いた分だけしか給料が払われない不安定雇用が多く、「労働者の権利なんてなくなってしまった」とシーナさんは嘆きます。そして「半分以下の賃金で働く東欧の労働者が(EUの東欧拡大で)大量に入ってきたのは問題だ」と話します。
こう主張する離脱派について仕事にも収入にも恵まれているロンドンや南部の残留派の人たちが「無教養」「差別主義者」とレッテルを貼ることには、2人とも憤りを隠せません。
「祖父は(英国で激しい差別に遭った)アイルランド移民だった。炭鉱ではフランス、ドイツ、イタリア、ハンガリー、ポーランドなどの労働者が同じ賃金で一緒に働いた。私たちは差別主義者じゃない」「ここの状況をなんにも知らない。知ろうともしない。ロンドン中心主義だ」―。
「都会の中産階級」へのほとばしる不信感に、英国社会の深い亀裂を見る思いでした。
あふれる反骨の精神
2019年1月24日
英中部ドンカスター都市圏に属する小さな町、ステインフォースのスーパーに買い物に来たリンダ・クロスさん(64)は、英国の欧州連合(EU)離脱を問う2016年の国民投票で「残留」に投票しました。
彼らがつぶした
「いろんな問題が起きると思って『残留』にしたけど、その通りになっている。でももうどうでもいい。メイ首相は今になって野党の話を聞くと言いだしたが手遅れだ」
「合意なし」離脱では混乱が予想されるが、と尋ねると「保守党の言うことなんか誰も信じない。彼らが炭鉱を全部つぶしたんだ」。反骨精神があふれます。
「大きな声では言えないけど、サッチャー(元首相)が死んだとき、炭鉱労働者はパーティーを開いたんだよ」
「反骨」は野党にも向けられています。「離脱派」で、夫が炭鉱労働者だったシーナ・ムーアさんは、1984〜85年の炭鉱ストを労働党が支援しなかったことに反発して離党。党首がコービン氏になって再入党し、2017年の総選挙では熱心に活動しましたが、最近また離党しました。労働党が「徐々に『残留』に傾いている」からです。
コービン氏が「合意なし」離脱をやるなとメイ氏に迫ったことには、「合意があろうがなかろうが、離脱すべきだ」と怒り心頭。「裏切られた」とのメッセージが飛び交っているといいます。
ドンカスターの町は、駅に隣接してショッピングモールができ、再開発が進んでいます。かつて工場だった敷地にアウトレット店や中古車販売店がえんえんと並ぶ光景はどこか寒々しい。
市場で50年近く鮮魚店を営むナイジェル・ベリーさん(60)は、英独立党(UKIP)の地元の小さな自治体の議員で筋金入りの離脱派です。
民主主義の問題
「民主主義の問題だ。われわれは政府を変えることができる。しかし選挙で選ばれていない欧州委員会を変えられない。これは間違っている」。売り場の空きが目立つ市場で「スーパーやオンライン通販は、小さな市場には打撃だ。でも頑張っているよ」と語りました。
不動産業を営むキム・ストーンズさんは、英国人の両親のもとデンマークで生まれ、二つのパスポートを持つ「残留派」です。
“移民は福祉目当てで来ている”との声には、「ポーランドやルーマニアなどの移民労働者は、英国人がやりたがらない仕事をやっている」と語ります。「彼らがトイレ・バス・キッチン共同の部屋から出発し、働きながら一軒家を借りるまでステップアップしているのを私は一番よく知っている」
一方で「何世代も顔見知りだった社会に、一挙に大量の外国人が住み着いたときの住民の感情は理解できる」と言います。
現状については「国民の中に団結がないのが悲しい。2度目の国民投票をやるときは、討論のための十分な準備が必要だ」と語りました。
小池書記局長が訴え 千葉市緑区
2019年1月21日
告示まで2カ月余りに迫った統一地方選と7月の参院選と連続する選挙を日本共産党の躍進、市民と野党の「本気の共闘」の勝利で「安倍政権サヨナラ選挙」にしようと20日、千葉市緑区のJR鎌取駅前で、小池晃書記局長を迎えた新春街頭演説が行われました。(関連2面)
駅前のデッキに集まった聴衆が熱心に聞き入り、小池氏が大型開発優先、福祉・くらし切り捨ての県政・市政を転換して、くらしに希望を取り戻すとともに、参院選の比例で、しいばかずゆき候補をはじめ7人全員当選と、千葉選挙区(改選数3)で浅野ふみ子候補を勝利させ、新しい軍国主義とファシズムへの道を止めようと訴えると、大きな拍手に包まれました。
小池氏は「県政も、市政も、住民に冷たい。ないのはお金ではなく、住民の痛みをわが痛みとする心だ」と批判。住民不在の県政、市政を支える自民・公明ときっぱり対決しているのが共産党だとして、「共産党の躍進で、市政も、県政も、国政も変えよう」と呼びかけました。
江田ちよ県議候補、かばさわ洋平市議、しいば候補、浅野候補が、市政と県政、国政を変えるために勝利する決意を表明しました。
2019年1月18日
全国都道府県委員長・地区委員長会議で志位和夫委員長が16日に行った討論のまとめは次の通りです。
2日間の会議、おつかれさまでした。
私は、常任幹部会を代表して、討論のまとめを行います。
歴史的な連続選挙を勝ち抜く決意が語られた
2日間の討論で、57人の同志が発言しました。全体として、きわめて豊かで充実した討論になったと思います。
全国では、リアルタイムで1万2948人が視聴しました。340通の感想文が寄せられています。感想文では、統一地方選挙と参議院選挙の連続選挙の歴史的意義をとらえ、必勝への熱い決意があふれるように語られています。
2日間の討論では、報告を正面から受け止め、連続選挙を勝ち抜く決意が語られました。とくに地区委員長のみなさんが、それぞれの地域で直接責任を負っている政治戦に勝ち抜くための指導的イニシアチブを発揮する決意を語ったことは、たいへんに重要であります。この会議は、みなさんの奮闘で、大きな成果を挙げたということができると思います。
法則的な党活動で、選挙に勝つとともに、選挙を通じて強く大きな党を
この会議は、「支部が主役」の党づくりを学びあう「組織活動の全国交流会」としても位置づけましたが、この点でも、報告をふまえてたいへんに豊かな経験交流が行われました。
「選挙のなかでこそ法則的な党活動を」という立場で、創造的な探求・開拓を行っているたくさんの発言がされました。この点でも、この会議は豊かな成果をおさめたと思います。発言は、そのすべてを大急ぎで「記録集」としてまとめて、全党のみなさんが活用できるようにしたいと思います。
私は、報告で、地区委員長のアンケートから学んだこととして、七つの点をのべましたが、それを受けて発言では、大いにその内容を生かしていこうという決意や抱負が語られました。
神奈川県川崎中部地区の佐川委員長は、「この(報告での)提起は七つ全部ではなく、一つでも、二つでもヒントをつかむことが大事で、わが地区の法則的な探求・発展をつくる、オリジナリティーある地区委員会をつくることだと受け止めました。川崎中部は支部にでかけて学び、知恵と力をつくすリーダーシップということを探求してきましたが、今回の報告や発言をヒントにして、全面的にオリジナリティーをつくっていきたい。考えただけでも楽しくなります」と発言しました。
埼玉県西南地区の辻委員長は、報告で1番目にのべた「地区委員長の構えが党組織の全体を励ます」という点にしぼって、これまで努力してきた内容を語りました。「これまでは支部から見ると地区委員会はまだまだ『上にある存在』という受け止めもありました。私たち地区機関は、課題を押し付けに行くわけではなく、一緒に困難に立ち向かい打開の糸口を見いだすため、一緒に綱領を実現するために行くようにしています。とにかく現場に足を運び、『支部や支部長と同じ目線で同じ方向を向いて一緒にたたかうんだ』という構えを見せることが大事だと考え、時間を惜しまず現場に行く努力を続けてきました。そうした活動の中で『特別月間』では52人の新入党員を迎え、読者拡大でも11月、12月と日刊紙、日曜版とも前進できました。『必勝作戦』の提起も非常に前向きに受け止められるようになってきています。この間の努力で感じているのは、報告でのべられた地区委員長の構えが党組織の全体を励ましているということです。そういう構えが全地区に伝わり、全地区が意気に感じているということです」
報告では、地区委員長のアンケートから私たちが学んだこととして7点をのべたわけですが、報告でも強調したように、そのなかから一つでも二つでもヒントをつかみ、実践に踏み出すことが大事だと思います。一つでも二つでも実践に踏み出し、新しい突破口を開けば、次の発展の新しい展望が開けてくる。党の活動は、そうしたダイナミックな発展の仕方をするのではないでしょうか。山登りと同じでありまして、一つの峰を登れば、さらにその先にもっと高い峰が見えてくる、そういうふうに発展していくものだと、私は思います。
そして「オリジナリティーある地区委員会をつくっていきたい」という発言がありましたが、315の地区委員会、315の地区委員長には、それぞれ個性があって当然です。315あれば315通りの「オリジナリティー」があって当然です。
今回の会議の成果を生かし、選挙のなかでこそ法則的な党活動を探求・発展させ、選挙に必ず勝つとともに、選挙を通じて強く大きな党をつくる。そして次のたたかいでさらに大きな成功をおさめる。そういう大きな志をもって頑張りぬこうではありませんか。
安倍政治の矛盾と破たんの焦点をつかみ、攻めに攻める論戦とたたかいを
情勢をどうつかみ、どう活動するかについても討論で深められました。
報告では、安倍政治が、あらゆる問題で深刻な矛盾が噴き出し、破たんに陥っているとのべました。とくに「矛盾と破たんの焦点をしっかりつかもう」ということを強調しました。たとえば消費税増税について言えば、「こんな経済情勢のもとで増税していいのか」――ここが矛盾の最大の集中点となっている。あらゆる問題で、そういう矛盾と破たんの焦点をしっかりつかんで、攻めに攻める論戦とたたかいに取り組むことが重要だと訴えました。
こうした安倍政治の矛盾と破たんが深刻な形であらわれていることが、討論でも報告されました。
京都の渡辺府委員長は、「5中総は安倍政治の大破たんを強調したが、あれからわずか3カ月で大破たんがいっそう進行しています。消費税の問題では、増税反対の1万人アピール運動を展開しています。協同組合、業界団体、学者など広く共同が発展しています。藤井聡京大教授が『京都民報』のインタビューに応じてくれ、『10月の消費税増税は法律で決まっていることですが、中止となる可能性はもちろんあります。デフレ不況の中で消費税を増税することは日本経済に破壊的なダメージを与えることは確実です』と語っています。あきらかに消費税問題は、報告で言われたように『火だるま』状態です。攻めに攻めていきたい」と発言しました。
青森県三八地区の松橋委員長は、「八戸市と商工会議所主催で1000人が集まった新年賀詞交歓会で商工会議所の会頭が冒頭に『消費税10%は困る』と主催者あいさつをしました。昨年の11月の漁業法改定については、漁協の組合長を訪問すると、組合長は1時間以上も熱弁をふるい、『突然の漁業法の改正は許されない。自分は選挙で選ばれた海の県会議員である海区調整委員だ』と、何の相談もなく法律が強行されたことに怒り心頭でした」と報告しました。香川県東部地区の田辺委員長は「漁業法改悪に対して、漁協のみなさんの激しい怒りがわきおこり、新しい共同の運動が始まりつつある」ことを語りました。地方では、消費税増税にくわえて、漁業、農業にかかわる悪法強行への怒りも広がっていることが語られました。
沖縄の赤嶺県委員長・衆議院議員は、「辺野古への土砂投入は属国日本の醜い姿に対する怒りに火をつけました。沖縄県民の予想を超えて全国に怒りが広がっています。ここまでの変化を私も予想していませんでした」とのべました。百戦錬磨の赤嶺さんであっても、予想していなかったようなスピードで県民の怒りが全国に広がり、世界に広がっている。ここでも安倍政権は大きな政治的な破たんに陥っているわけであります。
こうした安倍政治の矛盾と破たんの一番の焦点――ここをしっかりつかんで、そこを攻めに攻める論戦とたたかいに取り組み、統一地方選挙と参議院選挙を「安倍政治サヨナラ選挙」にしていこうではありませんか。
安倍政治への批判とともに、私たちの改革の展望を語り、希望を語ろう
そのさい、討論を聞いていて大切だと思ったことは――これは報告でも強調したことですが――、どんな問題でも、党綱領にもとづく私たちの改革の展望を語り、希望を語ることが重要だということです。
長野県諏訪・塩尻・木曽地区の上田委員長の次の発言は、たいへんに重要だと思って聞きました。
「どこでも安倍政治がひどいという怒りがあります。『しかし野党は本当にまとまれるのか』、『政権をとっても民主党のようなことになりはしないか』、『政権を任せることができるのか』という迷いが有権者のなかには根強くあります。安倍政権の批判だけでは党の支持は広がりません。今どうしたらこの政治を変えられるのか、どういう政治をつくるのかの希望と展望を有権者に語ることができるか、届けることができるか、これがカギだと感じています。一人ひとりの党員が、安倍政権を倒すための声をあげ、綱領が示す新しい政治の姿、その政治をつくる楽しさを生き生きと語り、行動できるようにすることが、地区委員長としての最大の任務だと感じています」
これはとても大事な観点であります。
日本共産党ほど、安倍政治を倒した後の日本をどうするのか、日本の新しい政治の姿を全面的に示している党はありません。わが党は、緊急の課題への対応として、5中総決定で「平和のための五つの緊急提案」、「暮らし第一で経済を立て直す五つの改革」という太い政策的方向を明らかにしています。「北東アジア平和協力構想」、日ロ領土問題の解決の方策、徴用工問題の公正な解決の道など、外交問題でも抜群の政策的な先駆性を発揮しています。そして「異常なアメリカいいなり」「財界・大企業中心」というゆがみをただす国政の抜本的な民主的改革の方策を綱領であきらかにしている党が日本共産党であります。
展望と希望を、生きいきと、豊かに語るうえで、中央としてさらに努力していきたいと決意しています。安倍政治への最もきびしい批判とともに日本共産党ならではの展望と希望を大いに語り広げる、そういう選挙にしていこうではありませんか。
「必勝作戦」の成功を(1)――全支部・全党員の運動にしていくことは可能
私たちが直面する最大の課題は、「統一地方選挙必勝作戦」を何としても成功させ、1、2月に党の躍進の流れをつくりだして、統一地方選挙で必ず前進・躍進を勝ち取る。ここにあります。すべての同志が、発言のなかで「必勝作戦」を成功させる強い決意を語りました。私は、討論を聞いて、大切だと考えたことを、3点ほどのべたいと思います。
第一は、「必勝作戦」を成功させる最大の保障は、この運動を全支部・全党員の運動にしていくことにありますが、そういう運動にしていくことが可能だということが、討論を通じて浮き彫りになったということです。
すなわち、連続選挙の歴史的意義を語り、この選挙に本気で勝とうとすれば、まずは「必勝作戦」をどうしても成功させなければならないことを、正面から訴えるならば、支部と党員は必ずこたえてくれる。ここに確信をもって、目標をやり抜くことに挑戦したいと思います。
埼玉県中部地区の山本委員長の発言はたいへん印象的でした。
「1月初めの上尾市の支部長会議では、新年初めての支部長会議なので、『新年の抱負など、全員発言にしよう』と提起したのですが、支部長の方から、『本当に地区は県議選で勝とうと思っているのか?』、『党旗びらきの提起は、統一地方選という目前に迫った関門をまず突破する、勝利に向けてやるべきことをやり抜くということではないのか?』、『対話・支持拡大など、遅れている支部をそのままにしていいのか?』、『本番になってから本格化するという従来の状況を変えようと言っている。上尾の現状もそうなっているのではないか?』などと言われました。まさに、機関の構えの問題を、支部長から提起されました。大いに反省し、対話・支持拡大への援助をどうするか、担当地区役員との相談が始まっています」
こういう率直な報告でした。支部は、何としても勝たなければならない、いてもたってもいられないという思いになっている、地区がそれにしっかりこたえなければという発言だったと思います。
神奈川県北部地区の堀口委員長は次のように語りました。
「党旗びらきのあいさつで『必勝作戦』が提起され、地区委員会総会で議論しました。情勢論議はあんなに活発だったのに、『必勝作戦』の議論では、水を打ったようにシーンとなりました。ただ、議論を重ねるうちに、『年末の行動は多くの支部が頑張った。ただ、まだまだ一部の党員の活動になっているのが実態だ』、『対話をすれば相手から噴き出すように言葉が返ってくる』、『やっぱり党員を増やすことが重要だ』と議論を重ね、『何としてもこの目標をやり切って、再選を勝ち取る』、この決意がみなぎりました」
統一地方選挙と参議院選挙に何としても勝ちたい――都道府県、地区委員会の同志も、支部の同志も、そう願わない同志はいないと思います。ですから、私たちがここに信頼をおいて、報告で強調した連続選挙の歴史的意義――新しい軍国主義とファシズムへの歴史逆行を許さず、“安倍政治サヨナラ選挙”にしていくこと――を大いに語り、「必勝作戦」を思い切って提起すれば、必ずこたえてくれる。全支部・全党員の運動にしていく道が開かれてくる。ここに確信をもって頑張りぬこうではありませんか。
「必勝作戦」の成功を(2)――「集い」を活動の推進軸にすえよう
第二は、「綱領を語り、日本の未来を語り合う集い」を、「必勝作戦」成功のうえでも、推進軸にしていこうということです。
私たちは、5中総決定で、「集い」を、「選挙活動、党活動全体を発展させる推進軸」と位置づけ、「日本列島の津々浦々で開こう」ということを確認したわけですが、「必勝作戦」を成功させるうえでも、「集い」を、支部を基礎に、全国で網の目のように開くことを、推進軸にすえたいと思います。
私は、討論を聞いておりまして、「集い」の持つ大きな威力が三つの点で浮き彫りになったと思います。一つは、積極的支持者を増やす。二つ目は、選挙の担い手を増やす。三つ目は、党員を増やす。こういう運動であることが、討論を通じて浮き彫りになったと思います。
積極的支持者を増やす
一つ目の「積極的支持者を増やす」ということは、多くの発言からそれが裏付けられましたけれども、三重県南部地区の谷中委員長の発言は、とても大事なことをのべたと思います。
「南勢支部は得票目標20%が町議選では獲得できるのに、国政の比例選挙で半分しか入らない状況を話しあいました。昨年11月から毎週1回土曜日に、18ある全集落で『集い』を開くことを決め、昨日までに約半分の集落で『集い』に取り組み、3月中に全集落での『集い』と全戸訪問を終える計画です。『集い』では、『共産党が政権を取ったら天皇制はどうするのか』、『資本主義をやめるのか』、『自衛隊はどうするのか』など、たくさんの質問が出され、いつも時間オーバーとなり、夜の11時半まで続いた時もありました。『共産党って怖い党やなかったんやな』と言われ、こちらもびっくりすることもありました。支部では、『なぜ比例票が(町議選の)半分しか入らなかったのか、「集い」に取り組んでよくわかった』という声が寄せられています」
この発言の最後の部分がとても大事です。町議選では投票してくれるような方であっても、政党を丸ごと選ぶ比例代表選挙になりますとなかなか投票には至らなかった。その理由は、いろいろあると思いますが、「集い」で疑問として出されたようなさまざまな問題――天皇制の問題、資本主義・社会主義の問題、自衛隊の問題、「怖い党ではないか」という問題、そういう問題が引っかかっていて、「共産党だから支持する」という積極的支持者にするうえで、まだ課題が残されていた。そういうことが「集い」に取り組んでみてわかったという話でした。逆に言えば、「集い」に取り組めば、そういう疑問が一つひとつ解決され、積極的支持者がどんどん広がるということを示していると思います。
選挙の担い手を増やす
第2点は、「選挙の担い手を増やす」。大阪府木津川南地区の能勢委員長の発言は、そこに一つの焦点をあてた発言だったと思います。
「地区委員会総会で、『必勝作戦』の意思統一を朝から夕方まで時間をかけて行いました。勝利のための担い手づくり、自力づくりに正面から取り組むことを突っ込んで議論しました。この1年間、『集い』革命を起こそうと、支部主催の『集い』の開催と入党呼びかけに挑戦する支部、党員を広げることにこだわってきました。『集い』はこの1年間で77%の支部が取り組むところまで発展し、有権者の中に積極的支持者を増やしながら確実に結びつきを深める力になっています。いま真剣に、気軽に入党を呼びかける流れが生まれつつあります。入党呼びかけ運動は、選挙の担い手づくりそのものです。入党を呼びかける中で私たちの熱意が相手に伝わり、相手をよく知り、前向きな思いを引きだせるからです。確実に信頼関係が深まります」
「『集い』革命」――「集い」にどんどん取り組み、そのなかで真剣に気軽に入党の呼びかけを行う、そういう中で選挙の担い手を増やし、党員を増やす。これをひとつながりの流れ――ひとつながりの運動として、木津川南地区では取り組まれている姿が語られたのではないかと思います。
党員を増やす
第3点は、「党員を増やす」運動だということです。いまの木津川南地区の取り組みもそうですが、北海道苫小牧地区の西委員長の発言も、「集い」を通じて党員拡大をすすめた経験を語ったものでした。
「得票目標の実現のために、党員拡大を根幹とした党勢拡大で前進を勝ち取ろうとなりました。そのための推進軸は『集い』だということです。東京都議選の応援に行った市議が、非常に燃えて帰ってきました。先頭に立ち、支部とともに『集い』をどんどん開いていきました。一気に11人の入党者を迎えることになりました。この先進的な経験に学ぼうと、次つぎと『集い』で入党者が相次ぎ、7月の1カ月で30人が入党しました。この勢いは2018年に入っても続き、49人の入党者を迎え、7月の市議補欠選挙で大きな力を発揮することになりました」
党勢拡大の根幹である党員を増やす。そのためには、いろいろな取り組みを多角的・総合的にやっていく必要があると思いますが、「集い」が党員を増やすうえでも大きな威力を発揮していることは、全国各地の経験でも浮き彫りになったのではないでしょうか。
ですから、「集い」は、いわば「一石三鳥」ではないでしょうか。積極的支持者を増やし、選挙の担い手を増やし、党員を増やす。これに取り組んで失敗することはありません。必ず信頼関係が強まる。リスクはなくてメリットが三つもあるというのはとても素晴らしいことです。「集い」をぜひ「必勝作戦」を成功させるうえでも推進軸に位置づけていただいて、得票目標にふさわしい規模で、広げに広げていこうではないかということを、私は訴えたいと思います。
「必勝作戦」の成功を(3)――「期日と目標」にこだわって断固たる指導性を
第三に、そのうえで強調したいのは、「必勝作戦」をやりきろうと思ったら、個々の課題についての独自追求を断固としてやらなければならないということです。選挙勝利のための宣伝・組織活動をすすめるためには、それぞれについて独自追求が必要です。党勢拡大は一番力のいる仕事であり、党員拡大も「しんぶん赤旗」読者拡大も独自追求がなければ自然成長では絶対にすすみません。そういった独自追求を断固としてやり抜かなければ、「必勝作戦」は成功しない。
そして、そうした諸課題を前進させるための独自追求をやり抜くうえでは、党機関とその長が、断固たるイニシアチブを発揮することが決定的に重要となることが、討論で語られました。その点では、私は、福岡県の岡野県委員長の発言、福岡県の2人の地区委員長の発言はたいへんに重要だったと考えています。岡野県委員長は、次のように発言しました。
「福岡は県議2議席を死守し、5議席を目標にしています。そのため昨年の11月、12月に県議浮上作戦に取り組みました。後半戦を中心にたたかう党組織から400人以上の方に来てもらいながら、地元の決起と合わせて、5選挙区で、『赤旗』号外33万枚のうち29万枚、県議選号外33万5000枚のうち25万枚をまききりました。声の宣伝では、ハンドマイクなど599台を出動させて、7030回の声の宣伝を行い、支持拡大は5万9000を行いました。それまでに比べて飛躍をつくりました。これらをふまえて、今、(『必勝作戦』で)3月1日までにこれだけのことをやろうと提起された場合、決定的な問題は何か。機関が断固たるイニシアチブを発揮して、期日と目標にこだわった指導性を発揮するか否か、これが現瞬間、大きな分かれ目だと感じています」
これは、きわめて重要な、機関の長の構えについて語っていると思います。「必勝作戦」というのは、まさに必ず勝利するために必要不可欠な作戦であって、「頑張ってやれるだけやった」ということではすまされません。選挙独自の諸課題も、党勢拡大も、目標を掛け値なしにやりきって、躍進の流れを作り出しながら本番のたたかいに取り組む必要があります。そしてこの作戦は「3月1日まで」と期日を区切った作戦です。ですから、「必勝作戦」を本気で成功させようとするならば、全支部・全党員が立ちあがる状況をつくりだすことを大方針として一貫してすえながら、それと同時並行で、どんどん機関が主導して、積極的な作戦を打っていく必要があります。候補者の同志、機関の同志、力持ちの同志が先頭に立って切り開いていくことが決定的に重要であることもいうまでもありません。「期日と目標にこだわって」、そういう躍進の流れをつくる指導的イニシアチブを、県委員長、地区委員長のみなさんが断固として発揮することの重要性を、福岡の経験は教えているのではないでしょうか。
討論を踏まえて、「必勝作戦」をいかにして成功させるかについて、三つの点をのべました。全支部・全党員に正面から訴えれば必ずこたえてくれる。「集い」を推進軸に位置づけて得票目標にふさわしい規模で取り組もう。そして「必勝作戦」の諸課題を推進するうえでの機関の断固たるイニシアチブを発揮しよう。こういう点も握って、「必勝作戦」を必ずやりきり、選挙本番にむけてさらに広げに広げて、まずは統一地方選挙で必ず前進・躍進を勝ち取り、引き続く参議院選挙でも躍進を勝ち取る、その決意をみんなで固めようではありませんか。
連続選挙の勝利・躍進へ、党の活動を「トップギア」に切り替えよう
昨年10月の5中総では、連続選挙の勝利・躍進を前面に、党の活動を「ギアチェンジ」しようと誓い合いました。この全国会議を、いよいよ目前に迫った連続選挙での躍進・勝利にむけて、私たちの活動を「トップギア」に切り替える会議にしようではありませんか。そのことを最後に訴え、みんなで力を合わせて歴史的選挙を勝ち抜く決意を固め合って、討論のまとめとします。ともに頑張りましょう。
2019年1月17日【特集】
全国都道府県委員長・地区委員長会議で15日に志位和夫委員長が行った報告は次の通りです。
全国からお集まりの同志のみなさん、インターネット中継をご覧の全国のみなさん、おはようございます。
都道府県委員長と地区委員長のみなさんの日夜を分かたぬ奮闘に、私はまず、心からの敬意と連帯のあいさつを送ります。
私は、常任幹部会を代表して、会議への報告を行います。
都道府県委員長と地区委員長が一堂に会する会議は、2007年以来、12年ぶりとなります。この会議の目的は次の2点としたいと思います。
第一は、目前に迫った統一地方選挙、引き続く参議院選挙――歴史的な連続選挙での勝利にむけた意思統一を行うことであります。
第二に、第27回党大会決定で開催を確認した「『支部が主役』の党づくりを学びあう『組織活動の全国交流会』」としてもこの会議を位置づけ、成功させたいと思います。政党間の最も激しいたたかいが行われる選挙戦のなかでこそ、法則的な党活動を前進させるよう、中央と地方がお互いに学びあう会議にしていきたいと思います。
報告は、党大会決定、5中総決定、「党旗びらき」のあいさつ、「しんぶん赤旗」の新春インタビューなどを前提として、重点的に行います。
一、統一地方選挙と参議院選挙の歴史的意義
まず統一地方選挙と参議院選挙の歴史的意義についてのべます。
新しい軍国主義とファシズムへの歴史逆行を許してはならない
今年の連続選挙は、日本の命運を分けるたたかいになります。
安倍政権の強権政治、ウソと隠蔽(いんぺい)の政治がいよいよ極まっています。国会を愚弄(ぐろう)する強行採決が常態化し、沖縄に対する常軌を逸した強権政治が続いています。公文書の改ざん、データのねつ造、統計の偽装など、ウソと隠蔽の政治が横行しています。これは安倍政権の強さの表れでは決してありません。強権とウソでしかこの国を統治できない。それはこの政権の破たんの証明にほかなりません。
同時に、この暴走を許すなら、日本の政治と社会に取り返しのつかない災いをもたらすことになることを強く警告しなくてはなりません。
安倍首相の最大の野望は、憲法9条を改定し、日本を「戦争する国」へと改造することにあります。それは、新しい軍国主義とファシズムへの国家改造の野望にほかなりません。歴史逆行のこの暴走を絶対に許してはなりません。
日本の命運がかかった一大政治戦――“安倍政治サヨナラ選挙”に
強権とウソの政治を支えているものは何か。それは、安倍・自公政権が、衆参ともに3分の2以上を占めるという、国会での「数の力」によってのみ支えられています。主権者・国民の審判で、「3分の2」体制を崩し、さらに少数に追い落とし、日本に民主政治を取り戻すことがまさに急務となっています。
参議院選挙は、野党にとってチャンスの選挙になります。全国32の1人区での「本気の共闘」が実現すれば、力関係の大変動を起こすことは可能です。わが党は共闘を実現し、勝利をかちとるために、とことん力をつくす決意であります。同時に、「比例を軸」に日本共産党の躍進をかちとることが、大変動を起こすもう一つのカギになります。
全国の同志のみなさん。日本の命運がかかったこの一大政治戦を、元気いっぱいたたかいぬき、“安倍政治サヨナラ選挙”にしていこうではありませんか。市民と野党の共闘の勝利、日本共産党の躍進で、安倍政権を退陣に追い込み、野党連合政権にむけた第一歩を踏み出す選挙にしていこうではありませんか。
参議院選挙に先立って行われる統一地方選挙は、「住民福祉の機関」という自治体本来の役割を取り戻すとともに、安倍・自公政権に地方から審判を下す選挙になります。日本共産党の前進・躍進は、それぞれの自治体で福祉と暮らしを守るかけがえないよりどころを大きくするとともに、参議院選挙での共産党躍進にとって決定的に重要となります。それはまた参院選での共闘を成功させる最大の力ともなります。
歴史的な連続選挙での勝利にむけ、心一つに大奮闘する決意を、まずみんなで固めあいたいと思います。
二、国政の熱い焦点と、日本共産党の立場
次に国政の熱い焦点と、日本共産党の立場について、報告します。
私は、「党旗びらき」のあいさつで、2019年のたたかいの四つの争点を提起しました。積極的に受け止められ、全国どこでも新たなたたかいに踏み出しています。
四つの争点のどれをとっても、安倍政治は、深刻な矛盾が噴き出し、破たんに陥っていることが特徴であります。矛盾と破たんの焦点をしっかりとつかみ、攻めに攻める論戦とたたかいにとりくむことを訴えたいと思います。
消費税10%への大増税――「異議あり」の声が広がり「火だるま」状態に
第一は、消費税10%への大増税を中止し、暮らし第一で経済をたてなおす改革を求めるたたかいです。
いまの特徴は、消費税に賛成という人も含め、「今度の10%増税には異議あり」という声が大きく広がり、増税がいわば「火だるま」状態になっていることにあります。
「こんな経済情勢で増税を強行していいのか」という危惧、批判が広がっています。5年前の8%への消費税増税を契機にした深刻な消費不況、昨年12月に発表された7〜9月期のGDPの大幅な落ち込み、「米中貿易戦争」をはじめ世界経済を覆う暗雲など、日本経済は深刻な危機に直面しています。
日本銀行が9日発表した「生活意識に関するアンケート」(昨年12月調査)では、1年後の景気が今よりも「悪くなる」と答えた人の割合は39・8%となり、「良くなる」の7・8%を大きく引き離し、安倍政権になって最悪となりました。多くの経営者から、今年の景気見通しについて、お天気にたとえて、「激しく曇り」「台風」「ひょう」「逆風」などの悲観的な見方が広がっています。
こうしたもとで、「増税は必要」という立場の学者や経済人からも「いま増税を強行すれば日本経済を破壊する」との警告の声が次々にあがっています。
にもかかわらず安倍首相は、年頭所感で「景気回復の温かい風が全国津々浦々に届き始めた」とのべました。いったいこの日本のどこに「温かい風」が吹いているというのでしょうか。安倍首相の頭の中にだけ吹いているとしか言いようがありません。日本経済の実態とも、多くの国民の実感ともまったくかけ離れた驚きの経済認識というほかないではありませんか。これ一つをとっても、安倍首相に日本経済のかじ取りを担う資格なし、といわなければなりません。
さらに、安倍政権の消費税増税に対する「景気対策」なるものが、異常で奇々怪々なものとなったことへの強い批判が広がっています。とくに「ポイント還元」は、複数税率とセットになることで、買う商品、買う場所、買い方によって、税率が5段階にもなり、混乱、負担、不公平をもたらすとして怨嗟(えんさ)の的となっており、日本スーパーマーケット協会など3団体が見直しを求める異例の意見書を政府に提出しました。複数税率にともなう「インボイス」導入に、日本商工会議所など中小企業団体がこぞって反対しています。
まさに10%増税は「火だるま」状態です。連続選挙で安倍自公政権を大敗に追い込めば、10%を止める道が開かれます。「10月からの10%は中止せよ」の一点で大同団結し、世論と運動を広げに広げようではありませんか。「増税するならまず大企業と富裕層から」――日本共産党が提唱している「消費税に頼らない別の道」を大いに語ろうではありませんか。
「戦争する国づくり」を許さない――大軍拡、安倍9条改憲の矛盾と致命的弱点
第二は、「戦争をする国づくり」を許さないたたかいです。
異常な大軍拡の是非が国政の大争点になっています。「専守防衛」という建前すら投げ捨てた空母や長距離巡航ミサイルの導入。トランプ大統領言いなりでの「浪費的爆買い」。あまりの道理のなさに自衛隊関係者からも批判の声が広がっています。
安倍内閣は、トランプ大統領の言うままに、ステルス戦闘機・F35を147機も大量購入する方針を決めましたが、これにかかる経費は、政府が公表した資料で計算しても運用の費用も含め総額6・2兆円にもなり、どこまで膨らむかわかりません。大軍拡への暴走が、国民の暮らしを押しつぶそうとしています。「軍事費を削って、福祉と暮らしに使え」を合言葉に、論戦とたたかいにとりくもうではありませんか。
昨年の国会で、憲法審査会を動かして改憲の発議をしようという安倍首相の野望を、水際で撃退したことは大きな成果でした。しかし、首相は、今年も年頭から改憲への執念を語っています。安倍首相による憲法9条改定の野望を許さないたたかいは、引き続き国政の最大の争点となっています。
安倍首相の改憲策動の最大の矛盾は、首相が自ら改憲の旗振りをすること自体が、憲法99条の憲法尊重・擁護義務に反し、立憲主義に反する暴挙となっているということにあります。首相が旗を振れば憲法違反になる、首相が旗を振らなければ進まない、ここに致命的な矛盾があります。朝日新聞は10日付の社説で、昨年の憲法をめぐる動きを振り返って、「憲法に縛られる側の権力者が自ら改憲の旗を振るという『上からの改憲』が、いかに無理筋であるかを証明した」とのべました。憲法と立憲主義に反する「無理筋」を進めようとしていることに、首相の策動の最大の矛盾があり、致命的な弱点があるのであります。
この矛盾・弱点を徹底的に突き、「憲法をないがしろにする首相に、憲法を変える資格なし」という立場で結束してたたかおうではありませんか。そのなかで「海外での無制限の武力行使」という9条改憲の真の狙いを広く明らかにしていきたいと思います。草の根からのたたかいと連続選挙での審判で、今年を、安倍9条改憲を安倍政権もろとも葬り去る年にしていこうではありませんか。
沖縄への連帯のたたかいの発展を――追い詰められているのは安倍政権の側
第三は、沖縄への連帯のたたかいをさらに発展させることです。
辺野古新基地建設をめぐるたたかいで大切なことは、大局でみて、追い詰められているのは安倍政権の側だということに深い確信をもつことです。
何よりも昨年9月の県知事選挙で玉城デニー知事の圧勝をかちとったことは、今後のたたかいの巨大な土台をつくるものとなりました。
安倍政権は、無法な土砂投入を開始しましたが、政府の側には工事をやりとげる展望はまったくありません。大浦湾側にはマヨネーズ状の超軟弱地盤などが存在し、防衛省の担当者も「護岸工事を着手できる見込みがない」と認めています。
土砂投入を契機に、沖縄県民の怒りが沸騰し、県民の怒りがあふれるように全国に、世界に広がっています。アメリカのホワイトハウスに寄せられた辺野古埋め立て中止を求める署名は、タレントのローラさんや、イギリスのロックバンド「クイーン」のブライアン・メイさんなど、国内外の著名人が協力を呼びかけたことも話題となり、この1カ月で、またたくまに10万をこえ、20万をこえました。民主主義も地方自治も自然環境も破壊して恥じるところのない安倍政治の異常さが、世界からも指弾されているのであります。
安倍首相が、1月6日に放映されたNHK党首インタビューで、「土砂投入に当たって、あそこのサンゴは移植している」とすぐにわかるウソを平然とのべたことに強い批判が集中しています。沖縄県民が怒りを募らせているのは、民意を無視した暴挙を行いながら、安倍首相が「県民の皆さまの心に寄り添う」と繰り返していることです。何という厚顔無恥でしょうか。この問題でも、安倍首相を一刻も早く辞めさせることが、問題解決への道であります。
2月24日に行われる県民投票を、妨害をはねのけて大成功させようではありませんか。4月21日の衆院沖縄3区補選で必ず勝利をかちとりましょう。米軍基地問題は全国の自治体でも切実な問題となっています。全国で連帯のたたかいをさらに大きく発展させることを心から呼びかけるものであります。
「原発ゼロの日本」を――国際的にも国内的にも原発はビジネスとして成り立たない
第四は、「原発ゼロの日本」をめざすたたかいを発展させることです。
安倍政権の原発推進政策が大破たんに陥っています。安倍首相が「成長戦略」の目玉に位置づけトップセールスを展開してきた「原発輸出」が総崩れに陥ったのはその象徴であります。それは、「安全対策」のためのコスト急騰などで、原発はもはやビジネスとしても成り立たなくなったことを劇的に示すものとなりました。
国内ではどうか。昨年の臨時国会で行われた原子力損害賠償法の改定で、事故の賠償に備えて義務づけられた民間保険会社などによる保険金額が、原発ごとに最大1200億円に据え置いたままとされたことが大きな問題となっています。東京電力福島第1原発事故の約8・6兆円におよぶ賠償額の深刻さを反映した増額が行われなかったのです。なぜか。民間保険会社が「増額を引き受けるのは困難」と拒否したためであります。すなわち、民間では原発事故のリスクを負いきれない。手におえない。国民に負担を付け回しするしかない。このこと自体が、原発の「ビジネス失格」を示すものではありませんか。
国際的にも、国内的にも、もはやビジネスとしても成り立たなくなった原発に、なおも「コストが安い」とウソをついてしがみつくのか。このことが厳しく問われています。この期におよんで原発にしがみつく安倍自公政権に連続選挙で厳しい審判を下し、「原発ゼロの日本」、「再生エネルギーへの大転換」を実現しようではありませんか。
破綻の根本に自民党政治の二つのゆがみ――党綱領の立場が大きな生命力を発揮
四つの争点のどれをとっても安倍政治は大破たんに陥っています。
破たんの根本には、「異常なアメリカ言いなり」「財界・大企業中心」という二つのゆがみをもった自民党政治が、深刻な行き詰まりに直面しているという大問題が横たわっています。このゆがみを根本からただし、「国民が主人公」の日本への改革をめざす日本共産党の綱領が、大きな生命力を発揮しています。
そしてこの綱領の立場があるから、日本共産党はどんな問題でも、ブレずに対決を貫き、解決の展望を示すことができるのであります。
全国の同志のみなさん。直面する問題で一致点にもとづく共同のたたかいを発展させる先頭に立ちながら、党綱領の示す日本改革の展望を大いに語り広げ、党の積極的支持者を大いに増やし、連続選挙での日本共産党の躍進をかちとろうではありませんか。
三、二つの外交問題――日本共産党の先駆性が際立つ
次に、この間、大きな焦点となっている二つの外交問題について報告します。
日ロ領土問題――戦後処理の不公正にメスを入れる立場でこそ道が開かれる
一つは、日ロ領土問題についてです。
安倍首相は、昨年11月、ロシアのプーチン大統領との会談で、「日ソ共同宣言を基礎に平和条約交渉を加速させる」ことで合意するとともに、自らの任期中に日ロ領土問題に「終止符を打つ」と繰り返しています。期限をくぎって「終止符を打つ」としているのです。安倍首相は、交渉にのぞむ方針をそれ以上説明していませんが、安倍首相の方針は明らかです。
日ロ領土交渉に関わってきた元外務省高官は、「安倍首相の方針を歯舞、色丹の『2島先行返還』と見るむきがあるが『2島先行』ではない、『2島で決着』が首相の方針だ」と指摘しています。その通りだと思います。歯舞・色丹の2島返還だけで平和条約を締結して領土問題を終わりにしてしまい、国後・択捉などそれ以上の領土要求を放棄する。安倍首相の方針は、そういうものにならざるをえません。
これは、歴代自民党政府の方針すら自己否定し、ロシア側の主張に全面屈服するものです。領土は安倍首相の私物ではありません。このような“売国外交”は絶対に許されるものではありません。
安倍首相は「70年間、領土問題が動かなかった」ことを強調しますが、日本政府は、国際的道理に立った領土交渉を、戦後ただの一回もやっていません。
日ロ領土問題の根本には、1945年のヤルタ協定で、ソ連のスターリンの求めに応じて米英ソが「千島列島の引き渡し」を取り決め、それに拘束されて51年のサンフランシスコ平和条約で日本政府が千島列島を放棄したという問題があります。これは「領土不拡大」という第2次世界大戦の戦後処理の大原則に背く不公正な取り決めでした。日本共産党が主張しているように、この不公正にメスを入れ、全千島の返還を正面から求める道理ある立場に立ってこそ、解決の道は開かれるのであります。
そのことは、いまプーチン大統領が「南クリルは、第2次世界大戦の結果、ロシア連邦に帰属しているのであり、そのことをまず認めるべきだ」と日本に迫っているもとで、いよいよ重要になっていることを、強調しておきたいと思います。
北東アジアの平和構築、朝鮮半島からの徴用工問題について
いま一つは、北東アジアの平和構築の問題についてであります。
昨年行われた史上初の米朝首脳会談、3回にわたる南北首脳会談によって、朝鮮半島では戦争の危険が遠のき、平和への大転換が起こりました。
この間の米朝交渉には停滞も見られますが、年末・年始の動きで、米朝双方から第2回米朝首脳会談による事態打開の意思が示されたこと、南北双方から首脳間の往来を頻繁に行い平和プロセスを進展させる意思が示されたことは注目されます。米朝、南北が、困難をのりこえ、歴史的合意を具体化・履行することを強く求めます。
こうした新しい情勢の進展のもと、日本共産党の「北東アジア平和協力構想」は、この「構想」を提唱した第26回党大会から5年をへて、その今日的意義がいっそう浮き彫りになっています。そのさい、わが党の「構想」でものべたように、北東アジアに真の平和と友好の関係を築くためには、日本が過去の歴史問題に誠実な態度をとることが不可欠の土台となることを強調しなくてはなりません。
こうした立場から、わが党は、朝鮮半島からの徴用工問題について、第一に、この問題の本質は、植民地支配と結びついた人権侵害ということにあり、植民地支配への反省にたって被害者の名誉と尊厳が回復されるよう日韓がともに努力することが重要であること。第二に、そのさい、被害者個人の請求権が消滅していないという点では日韓両国政府は一致しており、この一致点を大切にして、前向きな解決が得られるよう日韓の冷静な話し合いが大切であることを表明してきました。
私は、この立場を、昨年12月14日、日韓議員連盟の一員として韓国・青瓦台(大統領府)で文在寅(ムン・ジェイン)大統領と会談したさいにも表明しましたが、そこでの話し合いを通じても、この方向にこそ解決にむけた道理ある道があることが明らかになったということを報告しておきたいと思います。
日本共産党は、過去の侵略戦争と植民地支配に命がけで反対を貫いた唯一の政党であります。そして本当の愛国者とは、自国の誤った歴史に正面から向き合い、その教訓を未来に生かすことのできる者だということが、私たちの確信であります。そうした立場に立って、アジア諸国との本当の友好の関係を築くために、引き続き知恵と力をつくす決意を表明するものです。
四、連続選挙をいかにたたかうか――「二つの構えを一体的に貫く」
次に、12年ぶりの連続選挙――統一地方選挙と参議院選挙をどういう構えでたたかうかについて報告します。
私は、「党旗びらき」で、5中総決定で確認した「二つの構えを一体的に貫く」ことを肝に銘じて奮闘することを訴えましたが、そのことの重要性を重ねて強調しておきたいと思います。
統一地方選挙――「きびしさ」を直視しつつ「チャンス」を攻勢的かつ手堅く生かす
第一は、目前に迫った統一地方選挙という関門をまず突破する――ここで日本共産党の前進・躍進をかちとることを前面にすえ、勝利にむけてやるべきことをやりぬくことであります。そのさい、次の二つの面を握ってたたかいます。
一つは、現有議席の確保自体が容易ならざる課題だということです。4年前の統一地方選挙は、2014年12月の総選挙でわが党が606万票、21議席に大躍進した直後のたたかいでした。今回は、17年10月の総選挙で獲得した440万票をベースにして850万票の目標に向けてどれだけ伸ばせるかのたたかいとなります。現有議席も既得の陣地ではないことを肝に銘じてたたかいたいと思います。現有議席を絶対確保すること、新たな空白議会をつくらないこと――この二つを最優先にすえるとともに、新たな議席増に攻勢的かつ手堅く挑戦する、こういう構えでたたかいにのぞみます。
いま一つは、前進・躍進のチャンスはあるということです。安倍政治に対するもっとも強烈な対決者として、市民と野党の共闘の一貫した推進者として、“ブレない党”に対する期待が広がっています。「オール与党」議会のもとでの共産党地方議員団のかけがえのない役割がきわだっています。県議空白を克服した議会では空気が一変しています。「党旗びらき」で紹介したように、総選挙後の中間地方選挙で、わが党は議席占有率を伸ばす健闘の結果を出しています。たたかいいかんで、わが党の「のびしろ」は全国どこでも存在します。
全国の同志のみなさん。「きびしさ」を直視しつつ、「チャンス」を攻勢的かつ手堅く生かす――こうした立場を揺るがず貫いて、統一地方選挙での前進・躍進を何としてもかちとろうではありませんか。
「比例を軸」に参院選躍進を一貫して追求――四つの「試金石」で自己検討を
第二は、「参議院選挙は統一地方選挙が終わってから」という「段階論」に絶対に陥ることなく、「比例を軸」にすえた参院選での躍進を一貫して追求することです。
私は、5中総の結語で、「『段階論』に陥らず、『比例が軸』にすわっているかどうかは、ただ言葉のうえで『比例を軸』ということを繰り返すだけではなく、実際の活動で試される」として、次の4点をいわば「試金石」として、たえず自己点検しながら選挙戦にとりくむことを訴えました。そのことにあらためて注意を向けていただきたいと思います。
一つは、「すべての支部・グループ、党機関で、得票目標を『850万票、15%以上』で一本化し、それを達成することをあらゆる党活動の軸にすえ、日常的・意識的な追求がなされているか」。各党が統一地方選挙を参院選の前哨戦に位置づけ、両者を一体に激しいとりくみを展開しているときに、わが党が、統一地方選挙を参議院選挙の比例の得票目標とは別の低い目標でたたかうというとりくみに陥っては、両方の選挙で勝利をのがすことになります。本気で「一本化」してたたかうことが重要であります。
二つは、「宣伝、対話・支持拡大、『集い』などの中身が、日本共産党の綱領・歴史・理念などを丸ごと知っていただき、積極的支持者――『日本共産党だから支持する』という支持者を増やす活動になっているか」。積極的支持者を増やす活動を強めることは、前回総選挙のとりくみから引き出した重要な教訓であることを、銘記して頑張りたいと思います。
三つは、「参議院選挙を『前回時比3割増以上』の党勢でたたかうという目標を、本気の目標にすえて、正面から挑戦しているか」。
四つは、「選挙活動が、狭く統一地方選挙をたたかう党組織を中心とした活動でなく、すべての党組織の活動になっているか」。
これらの諸点を「試金石」として、たえず自らの活動の自己点検を行い、「比例を軸」にすえた参院選での躍進を一貫して追求してこそ、連続選挙での勝利をつかむことができます。このことをしっかり握って、奮闘する決意を固めあいたいと思います。
五、統一地方選挙の政治論戦について
次に統一地方選挙の政治論戦について報告します。
統一地方選挙の政治論戦では、国政論での党の値打ちを大きく語ることと一体に、地方政治における党の値打ちを押し出すことが重要になります。近く「政策アピール」を発表する予定ですが、いくつかの留意点をのべておきたいと思います。
国言いなりに福祉と暮らしを切り捨てるか、暮らしを守る「防波堤」になるか
第一は、地方政治における政治的争点の中心点についてであります。
全国の自治体が置かれている状態を見ますと、一方で、国が主導して、「住民福祉の機関」としての自治体の役割を破壊する悪政が押し付けられ、あらゆる分野で深刻な矛盾が噴き出しています。
国民健康保険の制度は、昨年4月から「都道府県単位化」に移行しましたが、国は、これを契機に一般会計から国保会計への繰り入れの解消を求め、多くの市町村で国保料(税)値上げが大問題になっています。
介護保険では、保険料の値上げ、要支援1、2の方の保険外し、利用料の引き上げ、介護施設の不足など、「保険あって介護なし」の矛盾がいよいよ広がっています。
子育てでは、「待機児ゼロ」は2020年度末まで3年間も目標達成を先送りし、「受け皿」拡大は基準緩和・詰め込み型が中心で、求められる認可保育所の建設が足りず、自治体の公的保育への責任放棄も起こり、「保育の質の低下」が重大な問題になっています。学童保育でも、資格をもつ指導員を2人以上から1人でも可能にする基準の引き下げを実施しようとしており、不安を広げています。
住民に身近で必要な公共施設――学校・保育所・公立病院・公営住宅などの統廃合・縮小、上下水道の広域化・民営化が計画されていることも重大であります。
他方で、大都市を中心にした、環状道路や国際戦略港湾、国際拠点空港の整備をはじめ、不要不急の大型開発・大規模事業が行われ、カジノ誘致合戦が過熱しています。企業誘致のための巨額の補助金バラマキも続けられています。
地方自治体が、国言いなりに福祉と暮らしを切り捨てるのか、それとも住民の暮らしを守る「防波堤」になるのか。ここに統一地方選挙の最大の争点があります。
「住民福祉の機関」としての自治体本来の役割を取り戻すために献身的に奮闘している日本共産党地方議員団の存在意義がきわだっていることに確信をもって、「この党をさらに大きく」と訴えていこうではありませんか。
要求実現の財源問題――自治体の基金=「ため込み金」の活用も重視して
第二は、要求実現のための財源問題についてであります。
不要不急の大型事業や企業誘致のバラマキなど無駄遣いをやめれば、大きな財源が出てくることは、これまでも訴えてきたことであります。
くわえて、近年、自治体の貯金である基金――「ため込み金」が増えています。2017年度の「ため込み金」は全国で23・8兆円と、07年度の13・9兆円から1・76倍にもなりました。このうち使い道が自由な財政調整基金だけでも7・5兆円で、10年前の4・2兆円の1・77倍になっています。基金について、総務省も「優先的に取り組むべき事業への活用を図る」ことを求めています。多くの自治体では、この基金を適切に活用すれば、住民要求は十分に実現できます。政策論戦を進めるさいに、このことも重視していただきたいと思います。
政党対決の構図――なぜ「自民・公明対日本共産党」という対決構図を打ち出すか
第三は、政党対決の構図の打ち出しについてであります。
5中総では、対決構図の基本を「自民・公明対日本共産党」にすえ、党の政策・実績・役割を押し出すことを提起しました。なぜこの対決構図を押し出すか。5中総の結語で討論を総括して詳しく解明しています。その内容を踏まえて、私は、次の3点を強調しておきたいと思います。
一つは、地方政治では多くの自治体でわが党をのぞく「オール与党」となっていますが、国政では、わが党は自治体では「オール与党」のなかにある国政野党とも共闘を追求しています。そういう状況のなかで、自民・公明と同列において国政野党を批判したら、共闘を真剣に追求するわが党の立場が誤解されることになりかねません。
二つは、有権者は、統一地方選挙で、地方政治の問題だけでなく、国政の問題を含めて政党選択を行うでしょう。そうしたもとで、「国政でも、地方政治でも、自民・公明の政治ときっぱり対決を貫いているのは日本共産党です」として、わが党の値打ちを押し出すことを基本にたたかうことが、すっきりした、説得力ある訴えとなり、参議院選挙の訴えにも無理なく発展させることができます。
三つは、ただし、「オール与党」の実態について、情報提供のような適切な形で、有権者に伝えることは必要であります。また、攻撃に対しては節度を持って反撃することは当然であります。
これらの諸点を正確にとらえてたたかいたいと思います。
大阪では、維新政治への審判も問われます。維新は、国政で、安倍政治の補完勢力としての姿をあらわにしています。大阪では、住民投票によって否決された大阪市つぶしの「大阪都構想」にしがみつき、自治破壊、福祉破壊、カジノ誘致、異常な管理・競争教育など、“異質の悪政”を押し付けています。「日本共産党躍進で、安倍政権退場、維新政治の転換を」と訴え、躍進を期して奮闘している大阪の党組織への連帯を心から訴えたいと思います。
日本共産党地方議員(団)の値打ち・実績に誇りをもち、広く訴えよう
第四は、日本共産党地方議員(団)の抜群の値打ちを大いに押し出してたたかうことであります。
日本共産党は、78%を超える自治体に2762人(昨年末)の議員をもち、自民、公明についで第3党です。全国の草の根で、支部とともに、日夜、住民要求の実現のために献身するネットワークを築いていることは、わが党の誇りであります。
わが党の女性議員は、ちょうど1000人で第1党であります。都道府県議では148人中80人、54・1%が女性です。党綱領に「男女の平等、同権をあらゆる分野で擁護し、保障する」ことを明記した党ならではの姿が、ここに現れているということを強調したいと思います。なお、自民党地方議員の中での女性比率はわずかに5・4%、都道府県議では3・1%です。こうした政党に「女性の活躍」をいう資格があるのかが、厳しく問われていることも、言っておきたいと思います。
党議員団の実績を、さまざまな角度から光らせ、有権者に伝えていくことが重要であります。わが党議員団は、全国どこでも住民の声を議会に届け、住民とともに政治を動かす素晴らしい働きをしています。行政と議会を住民の立場でチェックする監視役としてなくてはならない存在となっています。安倍暴走政治に草の根から立ち向かう共同を、地方政治においても真剣に追求しています。「共産党の地方議員がいるといないとでは大違い」という角度から、空白克服の意味もわかりやすく伝えていきたいと思います。
日本共産党は、地方政治においても、住民要求にこたえた確固とした政策的立場をもち、政党対決の構図でも自公ときっぱり対決する揺るがぬ存在感をもち、全国どこでも住民とともに政治を動かす大きな実績をあげています。都道府県委員長、地区委員長のみなさんが、わが党議員団の値打ちに、ほれこみ、その豊かな値打ちをあますところなく住民に伝える先頭に立っていただくことを、私は、心から訴えるものです。私たちも同じ立場で、ともに奮闘する決意であります。
六、「統一地方選挙必勝作戦」をやり抜こう
次に、「統一地方選挙必勝作戦」について報告します。
1〜2月に勝利に必要な土台をつくり、本番に向けて広げに広げよう
今回の統一地方選挙は、歴史的な参議院選挙の前哨戦としても特別の意義をもちます。それゆえに、他党も自民党が候補者の大量擁立をはかるなど、党派間のたたかいはかつてなく激烈なものとなっています。一昨年の総選挙では3分の1を超える人が期日前投票を行うなど、告示日以降は毎日が投票日となります。それらを考慮しますと、早い段階――とくにこの1月、2月に勝利に必要な土台をつくりあげ、本番に向けて広げに広げることが、統一地方選挙勝利のために絶対に必要となります。
そこで、「党旗びらき」で、「統一地方選挙必勝作戦」として、前半戦の告示日のおよそ1カ月前――3月1日までに、全党が次の二つの課題をやりきることを訴えました。
第一は、3月1日を「投票日」にみたてて、選挙戦の勝利に必要な草の根での宣伝・組織活動をやりきることです。すべての支部が得票目標を決め、その実現をめざし、要求にこたえた活動、声の宣伝やポスターなど大量宣伝、「集い」に大いにとりくみながら、支持拡大目標をやりきりましょう。すべての支部で後援会員を拡大し、単位後援会を確立し、ともにたたかう体制をつくりましょう。
第二は、党勢拡大では、参議院選挙を「前回比3割増」の党勢を築いてたたかうことを展望し、その中間目標として、すべての都道府県、地区委員会、支部が、3月1日までに、党員、「しんぶん赤旗」日刊紙読者、日曜版読者で、前回参院選時を回復・突破することです。統一地方選挙をたたかう党組織は、前回統一地方選時を回復・突破することを目標に奮闘し、全党をリードする役割を果たしましょう。
率直な議論をぶつけあい、打って出るなかで確信をつかみ、掛け値なしにやりきろう
「統一地方選挙必勝作戦」は、全党に衝撃的にかつ積極的に受け止められ、いっせいにとりくみがスタートしています。
ある県からは、県の常任委員会・地区委員長合同会議で、「はたしてできるか」などの意見も出されたが、大議論のすえ、「できる、できないでなく、勝つために必要な作戦だ」、「自民党はもう2回も回ってきているのに、わが党が直前にならないと力が入らないというのではいけない」、「全支部に依拠してやりぬこう」となり、元気に足を踏み出しているという報告が寄せられました。そうした本音の議論を大いにやりながら、「必勝作戦」をやりぬきたいと思います。
「必勝作戦」をやりきるのは大仕事ですが、勝利のためにはどうしても必要不可欠な作戦であります。みんなで荷を分かてば、やりきる道が必ず開かれます。率直な議論をぶつけあって決意を固め、打って出るなかで、やりきる確信と展望をつかみ、勝利へのこの最初の関門を掛け値なしに突破することを、心から訴えるものであります。
七、いかにして勝利の道を切り開くか――地区委員長アンケートから学んだこと
次に、いかにして勝利の道を切り開くかについて、私たちが、地区委員長のみなさんのアンケートから学んだ内容を、のべたいと思います。
選挙戦のなかでこそ、法則的な党活動の探求・発展を
連続選挙に全支部、全党員が立ち上がっていくうえで、支部を直接指導・援助する地区委員会とその長の果たす役割は決定的に重要です。政党間の最も激しいたたかいが行われる選挙戦のなかでこそ、法則的な党活動を探求・発展させることが大切です。
そうした立場から、地区委員長のみなさんに、「生まれているすぐれた経験・教訓」「打開できずに困っている問題」の2点で、アンケートをお願いしました。全国315のすべての地区委員長からアンケートへの回答が寄せられました。アンケートでは、困難に直面して苦闘する姿が率直にのべられるとともに、困難を打開するカギがどこにあるかを教えてくれる豊かな内容が報告されています。
私は、感動をもってアンケートをすべて読みました。常任幹部会として大事だと受け止めたこと、学んだことを、順不同で、7点のべます。地区委員長のみなさんから寄せられたアンケートの紹介は報告されたままに行いますが、文体は「です、ます」調で統一させてもらったことを、ご了解いただきたいと思います。ぜひとも討論でさらに深めてほしいと思います。
地区委員長の構えが党組織の全体を励ましている
第一は、地区委員長の構えが党組織の全体を励ましているということです。
行政区ごとに大志とロマンある政治目標を決め、自覚的な力を引き出すイニシアチブを発揮することの重要性が報告されています。神奈川・北部地区の堀口望委員長は、「すべての党員が自覚的に目標達成に向かって活動できるよう、政治目標がみずからの目標になるように心がけてきました。座間市は『福祉の座間をとりもどす』、海老名市は『議会のすべての常任委員会に議員を配置する』、相模原市中央区は『比例目標を正面に次の選挙(2023年の選挙)では議席増と県議選をたたかえる党になる』など、行政区ごとに『この地域でどんな党になるのか』が議論され、『特別月間』では前回参院選時比を回復・突破する力となりました」と報告しています。
高知・高知地区の金子協輔委員長は、「『比例を軸に県都決戦を勝ちぬき、新しい時代を高知から!』をスローガンに、定数15に4人の県議という日本一の政治目標をやりきる意義をみんなのものにしてきました」と報告しています。
支部と党員を信頼し学べば展望が開けるという経験が寄せられています。神奈川・川崎中部地区の佐川潤委員長は、会議の参加者が少なく沈みがちだった団地支部の支部会議が、支部員の要望にこたえて昼間の会議を開いたことで大きく変化した経験を報告し、次のようにのべています。「支部・党員から学べば展望が開けます。地区委員会の活動は時間がかかっても必ず切り開けます。苦しいときもあるがやりがいは多い。支部・党員の営みすべてが地区委員会の(活力の)源、そう考えるとどの支部・党員も可能性があるだけに展望が開けます。そうした努力のなかで、常任体制は強まり、各選対に複数の常任を配置することができました」
党の決定に対する真剣な姿勢を貫くことの重要性が報告されています。北海道・旭川地区の石田尚利委員長は、「3中総以降の活動を振り返り、私自身が感じていることは、当たり前ですが、やるべきことは、党大会決定に書いてあるということ。……やはり、二つの選挙で勝利・躍進をかちとるには、言い過ぎかもしれませんが、大会決定を黒くなるまで読み込み、決定を深く理解し、情勢を前向きに打開できる根拠を明確にし、地区内で共通の認識にし、全党員の力を引き出し、現場で実践を積み重ねる努力が大事だと感じています」と語っています。「黒くなるまで読み込み」とは印象的な言葉です。党大会決定の提案者としては、「提案者冥利(みょうり)に尽きる」、うれしい言葉であります。
これらの報告は、地区委員長の構えが、党組織全体を励まし、自発的なエネルギーを引き出すうえで決定的に重要だということを教えているのではないでしょうか。
党員拡大を根幹にすえ、党員拡大を突破口にして困難を打開している
第二は、党員拡大を根幹にすえ、党員拡大を突破口にして困難を打開していることです。
北海道・苫小牧地区の西敏彦委員長は、次の報告を寄せています。「党大会決定を“どこから具体化するのか”の議論を重ね、党員拡大を根幹にすえて一貫して追求することを確認しました。党大会以降『集い』を推進軸に117名の党員を迎えています。特に困難支部を絶対に放置しないことが選挙戦では大事と位置づけ、ここでの党員拡大に力を尽くしてきました。ある支部は支部会議開催も月1回がやっと、人間関係でモメごとが多く、支部長は『もうやっていけないから支部長もやめるし、配達・集金もしない』と訴えてきました。支部存続をどうするかを常任委員会で議論し、『核になる新しい党員を増やす』ことで合意し、地域に繰り返し入りました。そういうなかで、町内会役員、サークル活動のリーダー的存在の女性の入党がきっかけで連続して8名が入党しました。7月の市議補選では、それぞれの結びつきで支持を広げ、これまでの支部の支持拡大を大きく上回る300を確認。今では支部長も“元のさや”に戻り、配達・集金も平常に戻りました」
同様の報告は、全国各地から寄せられています。
私は、「党旗びらき」で広島・東部地区の上下支部の経験を紹介しました。昨年の「特別月間」から12月末までに30人の党員を増やし、現勢39人の支部へと躍進し、今年1月3日から待望の日刊紙の配達が始まったという経験であります。
上下支部のとりくみに対して、全国からたくさんの共感の声が寄せられ、「わが支部でもできる」「足を踏み出そう」という意欲が語られています。「『1人の入党で、つながりは何倍にもなる』との考え方は大切と思う」、「入党した30人のほとんどが読者と聞いて、私の支部にも読者はたくさんいる。もう一度足を運んで読者を訪ねていこうと思った」、「3日から、日刊紙配達体制が整った話は、すべての支部に活力を与える力になると思う」、「全員の誕生日を張り出し、みんなで祝うということに感銘を受けた。わが支部もみんなの心を集めたい」などの共感の声がたくさん寄せられています。
上下支部では、「必勝作戦」の提起を受けて、支部長の同志が、「1支部平均で、1人の党員、1人の日刊紙読者、5人の日曜版読者ならすぐにやれる」と先頭に立って足を踏み出し、新年に入ってすでに3人の党員、1人の日刊紙読者、6人の日曜版読者を新たに増やしているとのうれしい報告が寄せられていることも、お伝えしておきたいと思います。
困難を打開する突破口は党員拡大――この立場を選挙戦の中でも太く貫き、党を根幹から強く大きくしながら、歴史的な連続選挙を勝ちぬこうではありませんか。
地区役員の指導力量を高める努力を払っている
第三は、地区役員の指導力量を高める努力を払っていることです。
正規の党機関の会議を系統的に行い指導の質を高めている教訓が報告されています。東京・中野地区の亀井清委員長は、「地区委員会総会をかならず毎月、第1日曜日に固定して開催する努力を続けてきました。定例化によって出席率も上がっています。また科学的社会主義の集団学習も続けています。翌月曜日は、2回(午後2時と午後7時から)支部長会議を開催します。こちらも出席率が上がり、方針の徹底が進んでいます」という報告を寄せています。
地区常任委員会、非常勤も含む地区委員のチームワークの発揮で地区委員が成長し、指導力量を高めている経験が報告されています。石川・金沢地区の南章治委員長は、次のような報告を寄せています。「女性も含めた3人の非常勤常任委員に加わってもらい、地区委員もこれまで経験のない方にもお願いして入ってもらいました。市議・候補者を含め市内4ブロックで指導体制をとり、その責任者を常任委員が担当。東ブロックでは、地区委員で関係地域のすべての支部を分担、新しい地区委員も含め支部指導(1人の地区委員で2〜3支部)にあたるようになり、地区委員が成長し、支部に寄り添って活動するスタイルができました。決定の討議・読了が大きく前進し、『特別月間』では8割の支部の成果で地区全体をけん引しました」
「綱領で党をつくる」という立場で、学習を一貫して重視しているとりくみが報告されています。京都南地区の河合秀和委員長は、「地区党学校(地区教室、出前教室、青年教室、分野教室)を27回開催し、のべ170人を超える参加がありました。『一向に政治が変わる展望がもてずにいた。今の話でもう一度頑張りたいと思った』『日本はアメリカの奴隷や、ひどすぎる』などの感想が出されています。年齢、党歴のいかんにかかわらず、党員の心に灯をともすのが党綱領です。さしあたり2〜3割の党員の受講をめざして努力しています」という報告を寄せています。
選挙の中でこそ、地区役員の指導力量を高める努力を行い、「学びつつたたかい、たたかいつつ学ぶ」という立場を貫いてこそ、支部と党員の心に灯をともす指導・援助が強まり、全支部・全党員を自発的・自覚的にたちあがらせることができます。そのための努力を大いに強めようではありませんか。
「楽しく元気の出る支部会議」を軸にした「支部が主役」の活動の探求・開拓
第四に、「楽しく元気の出る支部会議」を軸にした「支部が主役」の活動の新たな探求・開拓が報告されています。
「楽しく元気の出る支部会議」への努力は、多くの地区から報告されています。大阪・木津川南地区の能勢みどり委員長からの報告は、迎えた後に多くの党員を成長させられなかった反省に立ち、新たな探求と開拓を語っており、多くの教訓にみちています。次に紹介します。
「党建設の根幹である党員拡大に積極的にとりくみ、かつてなく入党を働きかける支部が広がりつつあります。勇気を出して『入党よびかけパンフ』を届けるなかで対象者との信頼関係が深まってきています。2月以降、65支部・76%が377人に入党を呼びかけ、そのうち入党者は、29支部・34%、47人となっています。5中総後は候補者が先頭に立って『選挙型の党勢拡大』に挑戦し、訪問活動のなかに党勢拡大の独自追求を位置づけるなかで、入党呼びかけに挑戦する党員・支部がさらに広がり、『選挙のなかでも党員・読者は増やせる』が地区党組織の確信になっています」
「『楽しく元気の出る支部会議』や全党員参加の支部活動、党勢拡大の持続的前進をかちとるためには、新入党員を迎え支部を活性化させることと一体に支部指導部づくりが決定的であることも分かってきました。現在、地区内には約180人の支部委員がいますが、支部指導部があっても機能していない支部が少なくありません。支部指導部づくりの強化をはかりながら、10人以下の支部でも指導部を複数選出し、30人以上の支部は5人以上を目標に連絡・連帯網を強めていく必要があります」
新入党員を迎え支部を活性化させることと、支部指導部をしっかりと機能するようにすることを一体にとりくむことで、「楽しく元気の出る支部会議」を軸にした全党員参加の党活動の新たな境地を開いているこの経験は、多くの学ぶべきものがあると思います。
要求実現のたたかいと、党建設・党勢拡大を一体にすすめる「車の両輪」の活動が、党に新鮮な活力をもたらし、選挙勝利、党勢拡大の大きな力になっていることが、全国各地から報告されています。国政問題とともに地域の問題にとりくみ、要求を実現したことが、党員に喜びと確信をあたえ、見違えるような力を発揮する経験が生まれています。
広島・西部地区の坂村由紀夫委員長は、次のような報告を寄せています。
「『車の両輪』の活動を位置づけ、支部が要求実現の活動にとりくんでこそ、自覚的で元気な活動ができると考え努力してきました。……憲法、岩国基地問題では、党員が積極的役割を果たし幅広い人との共同の経験をつくりだしています。地域要求実現のとりくみでは、支部が『保育園民営化反対』や『ごみ有料化反対』『こども医療費無料化』などの運動にとりくんできました。どの運動も党外の人の参加が広がり、若い層を含む幅広い人たちとの結びつきが生まれています。運動の広がり、市民の生の声にふれるなかで、支部や党員が激励され自発的な活動が広がりました。数は少ないが読者も増えました。党大会後、青年2人を含む3人を党に迎えたM支部は、不定期だった支部会議を定例化し、学習を位置づけるなかで結集が広がり、元気に活動しています」
選挙の中でこそ、「楽しく元気の出る支部会議」を軸に「支部が主役」の活動を発展させるという党大会決定の大方針を全党に定着させ、全支部・全党員の参加する壮大な選挙戦にしていこうではありませんか。
労働者、青年・学生の中での新しい前進の可能性に働きかけている
第五は、労働者、青年・学生のなかでの新しい前進の可能性に働きかけていることです。
広大な労働者、青年・学生のなかでの活動を強めることは、「世代的継承」というわが党の未来を見据えた大方針の実践であるとともに、直面する連続選挙で日本共産党躍進をかちとるうえでも重要となっています。
中央が主催した「2018年職場問題学習・交流講座」を力に、職場支部の活動強化の手がかりをつかんだという報告が、全国各地から寄せられています。職場支部の支部長会議を分野別に開催したことが支部活動の強化につながった経験が報告されています。職場支部を担当する地区委員会議を系統的に行い、支部や労働者がおかれている現状を出し合ってきたことが、教職員支部を担当する同志から「自分はこうした場を待っていた。地区委員のチームワークが大事」と歓迎されているという経験が報告されています。生まれている前進の流れ、発展の芽を大切にし、選挙戦のなかでも絶対に中断せず、大きく育てていくようにしたいと思います。
若い世代のなかでの活動は、東京から学生のなかでの民青同盟づくりが前進したことが報告されていますが、地方からも、党と民青が空白だったところから出発し、系統的な努力で民青学生班をつくり、学生党支部を再建した次のような経験が報告されました。東北地方のある地区委員長の報告を紹介します。
「地区党が抱えるあらゆる問題の解決のためには『党員を増やすしかない』と決意し2016年に、機関、議員、支部から同志を集めて『青年学生委員会』を結成。地区委員長を責任者として毎月欠かさず開催してきました。とりわけ地区内にある三つの大学(いずれも民青、党ともに空白)に班と支部を結成することを目指し、あらゆる結びつきをたどって学生との結びつきを広げてきました。2017年8月に3人目の同盟員を迎えて班を再建してからは、『毎週の班会を成功させる』ことに力をつくし、学生の要望や疑問を徹底して聞き、即実践に移し、新歓企画や被災地フィールドワークなど一つひとつのとりくみを成功させてきました。その中で、学生同盟員自身が民青の魅力を実感し、友人を次々に班会に誘い、体験型で民青の魅力を実感して2018年には11名の同盟員を迎えています。民青の活動と自分の生き方を重ね合わせて確信をもった学生同盟員から4名の新入党員を迎え、12年9カ月ぶりに学生支部を再建しました」
民青も党も空白だった大学に、民青班をつくり党支部をつくった。集団の力で系統的にとりくめば道が開けることを示す、素晴らしい経験ではないでしょうか。
今度の統一地方選挙は、18歳選挙権が施行されたもとで初めての統一地方選挙となります。統一地方選挙は学生新歓と重なりますが、学生はすべて有権者となります。ですから、選挙と新歓は対立するものではありません。新歓に思い切ってとりくむことが、選挙にも、党づくりにも、大きな力となります。
若い世代のなかで党はいわば「白紙」の状態であり、マイナス・イメージも他の世代より少ないのが特徴です。若い世代は、平和と民主主義への強い関心と願いをもつとともに、格差と貧困の広がり、学費・奨学金・雇用などの悩みは切実であり、双方向のとりくみで、党への支持が急速に広がる可能性があります。
選挙のなかでこそ、広大な労働者のなかでのとりくみ、青年・学生のなかでのとりくみを思い切って強め、党の新しい支持を開拓するとともに、「世代的継承」のとりくみを前進させようではありませんか。
体制強化のため、潜在的な力の総結集に本気でとりくんでいる
第六は、連続選挙をたたかう体制強化のため、潜在的な力の総結集に本気でとりくんでいることであります。
地区委員長のみなさんが直面している最大の悩みが、選挙をたたかう臨戦態勢の確立の問題であることは、たくさんの報告で共通しています。いかにして県・地区機関の指導体制を維持しながら、統一選対と個別選対の体制確立をはかるか。党のあらゆる潜在的力の結集と、集団の力・チームワークの発揮が求められています。本気のとりくみで困難を打開し、たたかう体制をつくりあげていった次のような経験に学びたいと思います。
神奈川・湘南地区の岡崎裕委員長は、「『機関の指導体制を維持』という点で、文字通り党のもつあらゆる潜在的な力を総結集するという点で、職場支部と地区直属から60名の党員の名簿をつくり、中断が許されない専門部の補強と統一選対・個別選対の体制確立へ議論し、具体的に要請を開始しています」と報告しています。その後のとりくみで、自治体職場の党員が体制の弱い居住地での後援会役員を引き受けてくれた、大和市の市議選対に教員支部の退職教員が協力してくれた、職場支部の同志が地区機関紙部の実務を引き受けてくれたなどの体制強化が前進しているとのことです。
千葉・南部地区の篠崎典之委員長は、議員兼務の地区委員長ですが、次のように地区委員会の体制の強化をはかってきた経験を報告しています。
「『非常勤を含む地区委員会のチームワーク』の発揮へ、生協で組織活動を行ってきた同志が地区の事務局長の役割を発揮し、小さい地区ながら常任委員11人の体制を構築し、集団指導と個人責任が進んできていて、市議と地区委員長の活動も支えてもらっています。機関紙、教育、財政、選挙対策、青年学生など各部の日常活動が独立して機能し、全常任委員が主体的に活動するようになってきました」
選挙をたたかう体制の確立は、一番の悩みの一つだと思いますが、解決の道は党のあらゆる潜在的な力を結集するしかありません。そして、わが党はいま、職場を退職した力ある同志を、かつてないほどたくさんもっています。党のもつ潜在的な力を総結集すれば、選挙をたたかう体制を立派につくりあげることができることは、進んだ経験が教えていると思います。そうした立場で、困難を打開することを心から訴えるとともに、全国の経験をさらに交流することを呼びかけるものです。
財政的基盤を強めながら、選挙をたたかう努力を強める
第七は、財政的基盤を強めながら、選挙をたたかう努力を強めることです。
歴史的な選挙戦をたたかうために財政活動の強化に攻勢的にとりくみたいと思います。地区委員長のみなさんからのアンケートも踏まえ、次の3点を強調します。
第一に、財政活動の根幹である党費と、地区財政にとっても最大の財源である機関紙誌代の集金を位置づけ、独自に追求できる体制を確立・堅持して奮闘することが決定的に重要です。地区委員長のアンケートでも、「党費納入を高める努力を強め、2年前は60%台から現在は80%台に前進してきました」などの努力が報告されています。
第二は、募金に思い切って広くとりくむことです。神奈川・川崎北部地区の岡田政彦委員長からは、候補者活動を支える募金1600万円と選挙募金の二つで、2600万円をこえるかつてない募金を集めた経験が報告されています。東京・北多摩東部地区の鈴木文夫委員長からは、特別募金にとりくむなど努力し、専従2人体制から5人体制に前進させている経験が報告されています。募金成功のカギは、募金の目的を明確にすること、大口募金も訴えつつ支部が募金目標をもち達成するための自覚的活動を広げること、党内だけでなく読者・支持者に広く大胆に訴えること――この三つを堅持して奮闘することにあります。
第三に、選挙作戦に即した積極的な予算を立て、財源を保障し、赤字を出さないことも重要であります。
企業・団体献金、政党助成金に頼らず、草の根で国民に依拠して財政活動を進める日本共産党の姿に誇りと確信をもち、財政的基盤を強めながら連続選挙をたたかいぬこうではありませんか。
苦労は多いがやりがいも大きい仕事への誇りをもち、連続選挙勝利の先頭に
以上、7点について、私たちが地区委員長のみなさんのアンケートから学んだ内容を報告しました。この7点のすべてについて一挙に実践することは困難でも、そのなかから一つでも、二つでもヒントをつかみ、直面する連続選挙に勝利するとりくみに生かしていただくことを、私は、願ってやみません。一つでも二つでもヒントをつかみ、新しい突破口を開けば、そこからまた新しい展望が生まれてくるのではないでしょうか。また、この会議での討論を通じて、困難を打開するうえでの経験と教訓をさらに豊かに交流していただくことを心から訴えるものです。
私は、アンケートを昨年の年末から今年のお正月も繰り返し読みまして、地区委員長のみなさんが、山のような苦労・困難と格闘しながら、不屈に奮闘していることに胸が熱くなりました。
同時に、神奈川・川崎中部の佐川地区委員長がのべたように、地区委員長の仕事が、「苦しいときもあるがやりがいが多い」仕事であることも、多くのアンケートから実感をもって読み取ることができました。
全国の同志のみなさん。日本の命運を分ける連続選挙――統一地方選挙と参議院選挙で何としても連続勝利をかちとろうではありませんか。
都道府県委員長・地区委員長のみなさんが、支部のみなさんと心を通わせ、苦労は多いがやりがいも大きい仕事への誇りをもち、連続選挙勝利の先頭に立って奮闘することを呼びかけるとともに、私たちも心一つにたたかいぬく決意をのべて報告といたします。
2019年1月16日
日本共産党は15日、党本部で全国都道府県委員長・地区委員長会議を開きました。(1)目前に迫った統一地方選、引き続く参院選―歴史的な連続選挙での勝利に向けた意思統一(2)第27回党大会で開催を確認した「『支部が主役』の党づくりを学びあう『組織活動の全国交流会』としてもこの会議を位置づけ成功させる」―ことを目的にしたものです。会期は16日までの2日間で、都道府県・地区委員長が一堂に会した会議は12年ぶり。志位和夫委員長が、常任幹部会を代表し、連続選挙の歴史的意義、国政の熱い焦点と日本共産党の立場、統一地方選での政治論戦、いかにして勝利の道を切り開くかについて報告しました。討論では25人が発言し、「支部が主役」の党づくりについて活発な交流を行い、勝利への決意を固め合いました。
志位委員長が報告
「今年の連続選挙は、日本の命運を分けるたたかいになる」と連続選挙の歴史的意義を強調した志位氏は、安倍政権の強権政治、ウソと隠ぺいの政治がいよいよ極まっていると指摘。それが安倍政権の破たんの証明であると同時に、「この暴走を許すなら、日本の政治・社会に取り返しのつかない災いをもたらすことになる」と強く警告。安倍晋三首相の最大の野望が、憲法9条を改定し、「戦争する国」へと改造することにあるとし、「新しい軍国主義とファシズムへの国家改造の野望にほかならない。歴史逆行の暴走を絶対に許してはならない」と呼びかけました。
参院選が「野党にとってチャンスの選挙」だとし、「全国32の1人区での『本気の共闘』が実現すれば、力関係の大変動を引き起こすことは可能だ」と強調。同時に、「比例を軸」に共産党躍進をかちとることが、大変動を起こすもう一つのカギだとし、「一大政治戦を元気いっぱいたたかいぬき、“安倍政治サヨナラ選挙”にしよう」と訴えました。
統一地方選は、「住民福祉の機関」という自治体本来の役割を取り戻し、安倍自公政権に地方から審判を下す選挙だと強調。共産党の前進・躍進は、福祉と暮らしを守るかけがえのないよりどころを大きくし、参院選での党躍進にとって決定的に重要であり、共闘を成功させる最大の力ともなると述べました。
党旗びらきで提起した四つの争点について、(1)消費税10%への大増税に対する「異議あり」の声が広がり、「火だるま」状態になっている(2)大軍拡、安倍9条改憲に矛盾と致命的弱点がある(3)沖縄への連帯のたたかいが発展し、安倍政権の側が追い詰められている(4)国際的にも国内的にも原発はもはやビジネスとして成り立たない―ことを鋭く告発。「四つの争点のどれをとっても、安倍政治は、深刻な矛盾が噴き出し、破たんに陥っていることが特徴だ。矛盾と破たんの焦点をしっかりとつかみ、攻めに攻める論戦にとりくもう」と訴えました。
直面する問題で、一致点にもとづくたたかいの先頭に立つとともに、「党綱領の示す日本改革の展望を大いに語り広げ、党の積極的支持者を大いに増やそう」と呼びかけました。
志位氏は、外交の大きな焦点として、(1)日ロ領土問題(2)北東アジアの平和構築、朝鮮半島からの徴用工問題―について、道理ある解決の方向を示し、党として知恵と力を尽くす決意を表明しました。
連続選挙をいかにたたかうか。志位氏は、「二つの構え」を一体的に貫くことが大事だとして、(1)統一地方選は、現有議席も既得の陣地ではない「きびしさ」を直視しつつ、「チャンス」を攻勢的かつ手堅く生かすという立場を貫く(2)参院選は、「統一地方選が終わってから」という「段階論」に陥らず、「比例を軸」に躍進を一貫して追求する上で、5中総の結語で述べた四つの「試金石」で実際の活動をたえず自己検討してとりくむ―ことを呼びかけました。
志位氏は、統一地方選の政治論戦で、「国政での党の値打ちを大きく語ることと一体に、地方政治での党の値打ちを押し出すことが重要だ」とし、いくつかの留意点を述べました。
統一地方選の最大争点は、「国言いなりに福祉と暮らしを切り捨てるか、暮らしを守る『防波堤』になるか」にあるとズバリ。国が主導して、国民健康保険では、一般会計から国保会計への繰り入れの解消、多くの市町村での国保料(税)値上げが大問題になっていると告発。介護では保険料値上げや保険外し、保育では公的責任の放棄、「質の低下」が重大問題になっているとし、一方で、不要不急の大型開発やカジノ誘致合戦などが続いていると指摘しました。
また、住民の要求実現のための財源問題として、大型開発の無駄遣いをやめることに加え、自治体の貯金である基金―「ため込み金」が増え、2017年度は23・8兆円にのぼることを紹介。基金を適切に使えば住民要求は十分に実現できることも、重視してほしいと述べました。
さらに、政党対決構図として「自民・公明対日本共産党」を打ち出す意義を強調。「国政でも、地方政治でも、自民・公明の政治ときっぱり対決を貫いているのは共産党だ」という打ち出しが、すっきりした説得力ある訴えとなると述べました。
日本共産党地方議員(団)が、住民とともに政治を動かし、安倍暴走政治に草の根から立ち向かう共同を真剣に追求しているとし、豊かな値打ちをあますところなく伝えようと呼びかけました。
志位氏は、1、2月に勝利に必要な土台をつくり、本番に向けて広げに広げることが勝利のために絶対に必要だと述べました。
統一地方選が参院選の前哨戦として特別の意義をもち、党派間のたたかいはかつてなく激烈だと指摘。「統一地方選挙必勝作戦」―(1)3月1日を「投票日」にみたてて選挙勝利に必要な草の根での宣伝・組織活動をやりきる(2)参院選を「前回比3割増」の党勢を築いてたたかうことを展望し、中間目標として、全ての都道府県、地区委員会、支部が3月1日までに前回参院選時の回復・突破をやりきる。統一地方選挙をたたかう党組織は、前回統一地方選時を回復・突破する―という大仕事が、勝利に必要不可欠だと訴えました。
「いかにして勝利の道を切り開くか」と述べた志位氏は、選挙戦の中でこそ、法則的な党活動を探求・発展させることが大切だと力説。その上で、全国315の全ての地区委員長から寄せられたアンケートへの回答が、困難を打開するカギがどこにあるかを教えてくれるとして、順不同に7点述べました。
第1は、地区委員長の構えが党組織の全体を励ましていることです。
第2は、党員拡大を根幹にすえ、党員拡大を突破口にして困難を打開していることです。
第3は、地区役員の指導力量を高める努力を払っていることです。
第4は、「楽しく元気の出る支部会議」を軸に「支部が主役」の活動が新たに探求・開拓されていることです。
第5は、労働者、青年・学生の中での新しい前進の可能性に働きかけていることです。
第6は、連続選挙をたたかう体制強化のため、潜在的な力の総結集に本気でとりくんでいることです。
第7は、財政的基盤を強めながら、選挙をたたかう努力を強めることです。
志位氏は、「地区委員長のみなさんが、山のような苦労・困難と格闘しながら、不屈に奮闘していることに胸が熱くなった。同時に、『苦しいときもあるがやりがいが多い』仕事であることも、多くのアンケートから実感をもって読み取ることができた」と述べ、「日本の命運を分ける連続選挙で、何としても連続勝利をかちとろう」と呼びかけました。