【2009年活動および関連情報】

 

【1月】　【2月】　【3月】　【4月】　【5月】　【6月】　【7月】　【8月】　【9月】　【10月】　【11月】　【12月】

 

【12月】

*         【12月】（ヘッドライン）

*         伝えよう侵略戦争の真実／続・忠君愛国／４／戦争協力させた過ち／桐山京子さん（８４）敏之さん（８０）

*         伝えよう侵略戦争の真実／続・忠君愛国／３／男の子は兵隊になれ／馬場怜さん（８４）

*         伝えよう侵略戦争の真実／続・忠君愛国／２／子どもにうそ教えた／叶美智子さん（８９）

*         伝えよう侵略戦争の真実／続・忠君愛国／１／計画された教員弾圧／坂口光邦さん（８６）

*         多喜二を読みたい／大館で読書会来年日程決定

*         文芸時評／稲沢潤子／ことばの役割ふたたび問う／新春短編小説のなかから

*         戦前特高警察に殺された倉岡愛穂先生を語る／１１２歳日本男性最高齢木村次郎右衛門さん

*         「多喜二と秋田」第３回講座で語る／市立図書館明徳館館長

*         ０９回顧／文学／時代とどう向き合うか／問われた日本文学と作家

*         『蟹工船』と重なる部分ある／中国語訳を出版／北京外国語大学助教授秦剛さんに聞く

*         後期医療廃止など自、公反対し意見書を否決／青森市議会

*         潮流

*         「聳ゆるマスト」／阪口喜一郎の碑前祭が大阪で

*         花岡事件の地／０９年案内は１２団体・個人２４８人／秋田県大館市

*         創作やエッセイ／『奔流』２２号発行／民主文学会

*         ０９回顧／演劇／注目のシェイクスピア劇／「組曲虐殺」など共感呼んだ新作

*         多喜二と交流田口タキさん死去

*         潮流

*         千葉市大空襲など証言集／有志６人が体験者訪ね発行

*         治維法国賠同盟憲法守れと宣伝／宮城・塩釜支部

*         有島武郎から小林多喜二へ／思想と実践の一体化／尾西康充

*         太平洋戦争開始６８年／「赤紙」配り、戦争二度と／札幌

*         伝えよう侵略戦争の真実／忠君愛国／４／教師生活の根っこに／大竹秀子さん（８７）

*         伝えよう侵略戦争の真実／忠君愛国／３／疑問もつこと許されず／久保俊子さん（９３）

*         伝えよう侵略戦争の真実／忠君愛国／２／殴った子らに謝りたい／畔上敏雄さん（８９）

*         伝えよう侵略戦争の真実／忠君愛国／１／教え子に今も会えない／田近治代さん（８３）

*         本立て／小林多喜二の手紙／荻野富士夫編

*         葛飾ビラ配布弾圧事件／最高裁に抗議／治維法国賠同盟

*         プロレタリア画家／よみがえる市村三男三／下／多喜二と重なった歩み

*         解放戦士の碑合葬者を追悼／静岡

*         プロレタリア画家／よみがえる市村三男三／上／町が受け入れ修復・展示

*         朝の風／『文学少女』と『蟹工船』

*         潮流

【本文】（Page/Top）

伝えよう侵略戦争の真実／続・忠君愛国／４／戦争協力させた過ち／桐山京子さん（８４）敏之さん（８０）

　「師範学校で徹底的に教え込まれたのが『国体の本義』です」と語るのは、桐山京子さん（８４）。１９４１年４月、１６歳で師範学校に入学しました。
　「国体の本義」は、「大日本帝国は、万世一系の天皇皇祖の神勅を奉じて永遠にこれを統治し給ふ。これ我が万古不易の国体である」という、当時の文部省が中学生以上向けに出した教科書です。

「天皇のお言葉」
　「修身」も「国史」も、「始めから終わりまで、天皇のお言葉でした」と京子さん。「先生のいうことは絶対で、疑問を口に出すことは許されない。疑問などもたないようになっていくんですよ」
　４４年４月、東京都荒川区立第３荒川国民学校高等科に赴任しました。学校では、式日のたびに、奉安殿から紫の袱紗（ふくさ）に包まれた教育勅語が三方に載せられてきました。「じかに触れては畏れ（おそれ）多い」と白い手袋をつけた校長が、厳かに読み上げました。「日本は万世一系の天皇の国だと信じて疑いませんでした」
　勤労動員で、子どもたちは一日中弾丸磨きをさせられました。その子どもたちを、ときどき手伝いながら見回るのが京子さんの仕事でした。
　「遺言だと思って書いたんですよ」。変色した小さなノートを開きながら、京子さんの夫の敏之さん（８０）がいいます。「必勝」「撃滅」などの文字が見え、「何處（いずこ）へ行かうとも国に盡す（つくす）心は同じだ」などとしたためられています。４５年３月旧制中学の卒業時に同級生と交わしたものです。

「お国のために」
　「いつ死ぬかわからない」という緊張のなかで過ごした敏之さんの中学生活は、「勅語奉唱」と「閲兵分列」の連続でした。徹底して仕込まれた「直立不動」。最敬礼はどのぐらい頭を下げるのか、ゲートルの巻き方から隊列の作り方まで、厳しく指導されました。学校には「報国団」が組織され、生活のすべてが「お国のために」統制されていました。やがて、「国家存亡のとき、学校で学ぶ知識が何になる。諸君は勤労奉仕によって戦地の兵隊とともにたたかうのだ」と工場に動員されました。
　戦後、京子さんは、「子どもたちを戦争に協力させるべく工場動員にかりだすという過ちをした」という思いから、夜間大学に入ります。「敗戦はとんでもない歴史観をたたきこまれてきた結果でした。大学で社会観、歴史観を学び直しました」。後に日本共産党の衆院議員になった故小林政子さんと出会いました。
　敏之さんは、「大好きだった小学校の先生のようになりたい」という素朴な願いから、戦後の自由な雰囲気の中で教師としての道を歩み始めました。
　二人の出会いは、アメリカの占領政策の転換で、レッド・パージが始まったころ。同僚のパージに敢然と立ち上がった京子さんの姿に感動したという敏之さん。勤務評定・学力テスト闘争、６０年安保を経て、二人で日本共産党に入党しました。
　「戦前の教育は人間を束で見ていた。何より大事なのは、一人ひとりの人間の可能性を信じ、育てること。教え子を再び戦場に送るまい」という信念を教育現場でつらぬき、今も二人三脚の歩みが続いています。
　（おわり）
　（荻野悦子が担当しました）
( ２００９年１２月２８日，「赤旗」) （Page/Top）

伝えよう侵略戦争の真実／続・忠君愛国／３／男の子は兵隊になれ／馬場怜さん（８４）

　馬場怜さん（８４）は、１４歳で高等小学校を卒業するとすぐ、北海道の岩内町の郵便局の事務員に採用されました。「当時の岩内（旧島野村）の子どもたちはみんな貧乏で、中学校に入った人はいませんでした」
　１９４１年に、小学校の先生から手紙がきて、教員になる講習があるからとすすめられて受けたのが、後志（しりべし）初等科准訓導養成講習というものでした。余市町の尋常高等国民学校に３０人ほどが集められていました。６カ月、国語、数学、地理、武道など各教科の指導細目を教わりました。
　翌４２年４月、岩内東国民学校に赴任しました。子どもたちは全員男です。真珠湾やアッツ島で「軍神」たちがいかにたたかったかとか、そういう話をしました。「東条英機内閣が倒れても、ガダルカナルから『転進』しても、なんかいい作戦がある、必ず勝つ、と。職員室はそういう雰囲気でした」

疑問感じても
　学校でも家庭でも、天皇の先祖代々に対して敬い拝むことが求められていました。四大節。大詔奉戴日。みんなで神社に参拝に行きます。「疑問を感じた人がいても、口にはできない。私的なところで口にする人はいても、公のところでいう人はいないのです」
　馬場さんは５年生に「国史」を教えました。「教師向けの指導書を読んでもぴんと来ない。天皇の先祖が雲のなかを下りてきてドロをかき回して島ができた、なんて自分でも本当のこととは思えなくて疑問を感じていたんですよ。でも、そのように教えろと。先輩教師の指導をうけて、そうしました」
　男の子は兵隊になれ、という教育。馬場さん自身も、４４年４月に志願して軍に入りました。「『負けつつあります。だから僕は行きます』と生徒にあいさつしました。生きて帰れないことを覚悟していました」

教えられない
　終戦は鹿児島県から山口県への転属の途中、久留米で迎えました。８月２４日に岩内に戻ります。４６年４月に校長先生から「また教師をやらないか」と声がかかりました。６年生の男子を教えることになりました。「あの戦争は間違いだった。天皇も神様ではなかった。歴史なんか教えられません。本当の歴史を僕ら知らないわけですから。自分を含めて、教師集団は大変な誤りを犯した」と馬場さん。続けていいます。
　「当時のわれわれがうけた教育、歴史認識が間違っていた。そういうことを反省して、疑問を追究できないでまわりに流されてしまう、いうことを聞かなければゲンコツでいうことを聞かせる、そういう教育ではだめだと思って、定時制の高校に通い、通信教育で大学を卒業しました」
　馬場さんは、軍隊で特攻機の整備をやりました。自分より１、２歳上の若い操縦士を片道の燃料だけで送り出しました。「特攻隊員は志願と聞いていましたが、事実はそうではないようでした。あんなことを繰り返してはいけない」
　馬場さんは今、余市九条の会の代表を務めています。（つづく）

大詔奉戴日
　太平洋戦争の開戦記念の儀式。毎月８日に行われ、教育勅語と宣戦の詔書が読み上げられました。
( ２００９年１２月２７日，「赤旗」) （Page/Top）

伝えよう侵略戦争の真実／続・忠君愛国／２／子どもにうそ教えた／叶美智子さん（８９）

　叶美智子さんが代用教員として教壇に立ったのは１９３０年代の後半だったといいます。北海道の苫小牧東小学校の２年生を担任しました。音楽が好きで、オルガンやピアノで伴奏して子どもたちと一緒に文部省唱歌を歌いました。「軍国主義的だというので、戦後になって歌詞が変わった歌もずいぶんありますよ」
　毎朝の朝礼。宮城遥拝（ようはい、皇居に向かっての敬礼）。紀元節などの四大節。儀式のたびに教育勅語が厳かに読み上げられました。「朕（ちん）オモウニ我ガ皇祖皇宗…」、今でもすらすらと暗唱できます。「覚えこまされたから」。６年生になったら見ないでも書けるように、難しい漢字も全部書かないといけないのです。先生も生徒も直立不動でみんな終わるまでずっと頭を下げて聞きます。「動いた子どもにはげんこをくらわせたり、つねったり。私はやったことがなかった。『なめられる』といわれたけれどね」

慰問文書かす
　子どもたちに兵隊さんを励ます慰問文を書かせたこともありました。「がんばって戦争に勝ってください｣というものばかりです｡
　「最後には勝つと信じていましたよ。ただ内心では負けたらどうなるのか心配でした。外国に連れて行かれるのかと」
　やがて毎日、お昼近くになると空襲警報が鳴るように。「『定期便』と言ってましたよ。終わると教室に戻って、『さっきの続き』となるんですが、もう何をやっていたかわからないですよ」
　校長先生は、いつも奉安殿から「御真影」（天皇、皇后の写真）を出して背負子（しょいこ）に入れて、みんなの先頭に立って真っ先に逃げていました。「一般の先生は生徒を守る。校長先生は御真影を守る。奉安殿は石造りで、校舎より立派なつくりでしたよ。何より大事なものが天皇の写真でした。傷つけたり何かあったりしたら校長の首がとぶといわれていました」
　「修身」の本の一番初めに天皇のことが書いてあります。「われら国民八千万が神ともあおぎ、親とも慕い、と。字でわかるようになるのは４年生ぐらいで、それより下の子たちはぽかんとして聞いていましたね。それを覚えて天皇の名前も書けるようにしなくてはいけなかったのです」

間違っていた
　戦争が終わって、叶さんは、「天皇は神様で、この戦争は正義の戦争だ」と教えたことが間違っていたと知りました。
　「私は子どもたちにうそばかり教えた。恥ずかしかったですね、平気で信じていたことが。おかしいと思ったこともありましたが、信じていましたから」
　もう教師は続けられないと学校をやめました。その後、いくつかの仕事を転々としました。新制中学が発足し、教師が足りなくなって「またやらないか」と声がかかりました。「真実を追究して、うそをつかない教師になろう」と決意し、教壇に戻りました。
　「どうしてうそばかり教えたんだろう。だれが考えてもおかしいのに。自分もうすうすおかしいと思っていたのに、子どもたちにうそを教えた。そのことへの反省が、私の戦後の出発点なのです」
　（つづく）

四大節
　元旦、紀元節（神武天皇の即位日として定められた祝日、２月１１日）、明治節（明治天皇の誕生日、１１月３日）、天長節（天皇の誕生日、昭和天皇は４月２９日）の四つの祝日のこと。戦前の学校では、「忠君愛国」の士気を興すことをねらいに儀式が行われました。
( ２００９年１２月２６日，「赤旗」) （Page/Top）

伝えよう侵略戦争の真実／続・忠君愛国／１／計画された教員弾圧／坂口光邦さん（８６）

　その事件が起きたとき、坂口光邦（てるくに）さん（８６）は小学生でした。１９３３年の「２・４事件」。長野県の共産党関係者など６００人以上が治安維持法により検挙された事件で、検挙された人に教員が多かったことから、「長野県教員赤化事件」と呼ばれました。報道が解禁になった同年９月１５日付の「信濃毎日新聞」は「戦慄（せんりつ）　教育赤化の全貌（ぜんぼう）」と報じています。
　坂口さんの家から５㌔離れた高瀬村の高瀬小学校の校長も検挙されました。校長で検挙されたのはその人ひとりでした。少年だった坂口さんは事件を鮮明に覚えています。「新聞に顔写真が出て、あそこの先生も、と衝撃だった。大きな声ではいわないけれど、おとなたちがひそひそと、その話でもちきりだった。子ども心に、『アカというのは大変なんだ』と思った事件でした」

人々に恐怖心
　「アカ」は暴力的に国家を転覆する集団だと宣伝され、「かかわれば職を失う」「家族も係累もいろんな目で見られ大変なことになる」と、多くの人が恐怖心を植え込まれました。
　坂口さんは戦後、新制中学の発足とともに中学校の教師となりました。占領政策の転換にともなうレッドパージのさなか、戦前の「事件」をあらためて学び、「何でこんなひどいことが繰り返されるのか」と研究するようになりました。
　「２・４事件」で検挙された教員のなかに、共産党員は１人もいませんでした。家が貧しいためにろくに勉強もできない子どもたちを前に何を教えるべきか悩んだ教師たち。哲学や文学、経済学などの勉強会をして教育研究サークルをつくり、大正デモクラシー期の自由主義教育の流れをうけた教育活動に力をそそいだ教師たちでした。
　「当時、ほかの事件では党員でも執行猶予がついたのに、この事件では中心メンバー全員が実刑判決を受けました」と坂口さんはいいます。当時の長野県の警察部長は元警視庁（東京）の特高課長でした。この人物は、３１年の夏休みに行われた新興教育研究会（教育研究サークル）の参加者を掌握していたことを、当時の県議会の秘密会で明らかにしています。３２年４月に石川県から異動してきた特高課長が、７月に教員の人事を握る学務課長に横すべりしています。「事件は、国家が教育界の思想を統一するために周到に準備したものだった」と坂口さん。

手段選ばない
　坂口さんは、「『教育県といわれた長野県の自由主義教育をたたけば、全国的に大きな影響を与えうる』と計画的に行われた大弾圧事件」といいます。「戦争の準備ですよ。反対の芽をすべて摘んでおく。手段を選ばない国家の実態があらわれたものでした」
　関係者はいまだに、話すことをためらうといいます。「拷問や虚偽の自白を強いられたことがどれほどつらかったか、ついに話すことのないまま鬼籍に入られた方が多いのです」と坂口さん。長野県の元教師たちと一緒に、事件の真実を語り伝えようと、「２・４事件」を学習する集いを毎年開催しています。（つづく）
( ２００９年１２月２５日，「赤旗」) （Page/Top）

多喜二を読みたい／大館で読書会来年日程決定

　秋田県大館市の「小林多喜二をふるさとで読む会」が、２０１０年読書会の日程を決め、参加者を募っています。
　同会は２０００年から丸１０年かけて多喜二の全小説を読書会で読み切りました。世話人会では、▽これまでに取り上げた主な小説をもう一回読もう▽評論や書簡など、多喜二全集の全作品を読み切ろう―などを確認しています。
　同会事務局の佐藤守さんは「参加者からは、『多喜二をもっと読みたい』『読書会を目標にして作品を読めるので読書がすすむ』『評論、書簡も１０年かけて読み切ろう』などの声が寄せられています。自由に楽しく語り合う読書会です。多くの方の参加を呼びかけます」と話しています。
　参加を希望する人は、読書会誌『多喜二通信』の印刷通信費用として１人１０００円必要（学生等は無料）です。申込先は、〒０１７―００４４大館市御成町１の１９の１９　佐藤守さん０１８６(４３)１７５７。
　読書会は１～４月の第４土曜日午後１時３０分から３時、大館市立中央公民館で行います。テキスト、講師は次のとおり。
　①１月２３日、『東倶知安行』（島内重昭さん）②２月２７日、『工場細胞』『オルグ』（小西育芳さん）③３月２７日、評論（野呂勝也さん）④４月２４日、書簡（大山兼司さん）
(２００９年１２月２５日，「赤旗」) （Page/Top）

文芸時評／稲沢潤子／ことばの役割ふたたび問う／新春短編小説のなかから

　新年号はほとんどの雑誌で短編に主力をおく編集をやっていて、目次面は通常にくらべてにぎやかである。しかし代表的作家を配置よく並べるというようにはいかぬらしく、どこか企画の中心軸を欠いているのが寂しい。
　理由はいくつかあるだろうが、書き手の多くを連載にとられているせいもあろう。昨今の連載ものの多さは異常なほどで、総ページのうち、いわゆる文芸四誌は連載が半分以上を占めている。残りのページに百数十枚、二百数十枚、あるいはそれ以上、といった小説が三、四作入っているのが通常である。

米国人と異なる日本人の不安感
　そんなわけで、今月は久しぶりに現代日本の短編をまとめて読むことができた。
　『新潮』は、河野多惠子、池澤夏樹、高橋源一郎、長野まゆみ、高村薫など八人の短編を載せている。河野多惠子「異国にて」は、ニューヨークで暮らした数年の生活のなかで恐ろしい体験をした話をいくつか拾っている。結局すべて無事な結末を迎えるのだが、日本人の不安感と、アメリカ人の感覚とがかなりちがっているところにこの作の興味がある。情報化社会といわれ、日米がこれだけ接近していてもやはり歴史の違う「異国」である。冷静な文体を押し通しているのでかえって怖い。
　池澤夏樹「監獄のバラード」の主人公は、札幌からかなり離れた丘陵地の墓地に向かって車を走らせる。荒天で視界もさえぎられ、墓地に着くと吹雪で積雪もかなりである。めざす墓は容易に見つからない。何のために危険を冒して墓探しをするのかと読者はいぶかるが、答えが示されるのは最後に至ってで、恋人を捨てたことを彼女の父の墓に報告に来たのである。彼女に苦しませたのだから、自分にも懲罰としての困難を与えるという動機がわかってしまうと肩すかしを食わされた感があるが、それまでの描写には舌を巻く。
　『文学界』の短編八編のなかでは、青来有一「ことばの蟻たち」の着想がおもしろい。爆心地近くの図書館の片隅で蟻が群をなして死んでいる。よく見るとそれは蟻でなく文字である。さらに調べると「爆心地郷土史」全三十巻のページから活字が欠落している。ほとんど読まれなくなった本から文字が蟻になって逃げだしたわけで、宮沢賢治にもボウフラを文字に見たてた詩があるそうだが、「ことばの蟻たち」の設定は、文字もことばも生き物である、ということになろうか。「文字は虫からできている」という学者の理論が精彩を欠くものの、作者の発想にはうなずける。
　これらの作品に比べると、いっぽうで刹那的短編も目につく。ことばを表現と思惟の道具としてではなく、コミュニケーションツールとしてだけ使っているのではあるまいか。追求する主題がこれといってなく、登場人物たちの駄洒落をまじえたおしゃべりと感覚の吐露が続く。こんなところにも新旧作家の違いの一端が現れているようだ。

常に求められるリアリズム深化
　『民主文学』は、終戦直後の家族を描く吉開那津子「谷間の家」をはじめ八編をならべている。野澤昭俊「カワセミ」がいい。老境に至った主人公は日ごろから近くの自然観察公園の散歩を楽しんでいる。ある日、偶然にカワセミに出逢い、それを教えてくれた活発な初老の女性と知りあう。二つの出会いによる心のときめき、小さなときめきを大切に味わう老人の心境が描かれていて、ここまでも読みごたえはあるが、冒頭になにげなく引いた王維の詩がいっきょに二人を戦争の生々しい悲しみに結びつける。戦場へ友を送った悲しみは、漢詩の一編にさえ託されて、このように日本人の心に生き続けているのだ。
　風見梢太郎「失われた時間」は、医師だった男の認知症の進行を描いている。しかしよくあるように、病状や介護の実態を描きだそうとするわけではない。その男がかつて主人公の義父だったいきさつも織りこまれ、作品世界に厚みを増している。実の親子なら愛憎交えての濃厚な関係になるだろうが、自立した二人の関係のなかで、いかに生きるか、いかに進行性の病と向きあうかが際だってくる。
　佐田暢子「糞尿炭」は、寓話としても読めるかもしれない。岩男は元炭鉱労働者で、エネルギー転換政策のときは激しくたたかい、その後も節を曲げず定年を迎えた。妻を亡くし独り暮らしになってから家中にゴミを溜めて暮らすようになるに不法投棄しているという噂もたち、困りはてた妹が唯一信頼する仲間とともに訪れると、投棄ではなく、路上に放棄されたゴミを再生工場へ運んでやっているのだから事業に協力しているのだといい、「糞尿炭」のいわれも説明する。皮肉な話をよく調べていて読ませるが、ではなぜ岩男は自家にあふれるゴミを処理しないのだろうか。
　ほかにも昨今の不況に材をとった解雇、失業の話など、まじめに社会と向きあっているが、短編の形として完成していても、油断すると現況の追認になってしまうこともある。リアリズムの深化がつねに求められる。若い人の作品もほしい。
　今月の編集には珍しく短編でないものが入っていて、絲山秋子「下戸の超然」（『新潮』、百十枚）をおもしろく読んだ。年ごろの男女の出会いから別れの予潮までを描いているが、気持ちがよいのは二人ともものを考える人間であること、見過ごしていた通念をときどきひっくり返していくことなどである。たとえば怒りはモチベーションを保ち続けるのが難しいが、善意は、ときに人を傷つけながら進んでいく、といったようにである。

「蟹工船」ブーム戯曲「組曲虐殺」
　「蟹工船」ブームは去ったわけではなく、『すばる』が十月に初演された井上ひさしの戯曲「組曲虐殺」を巻頭に掲載している。
　多喜二が思いをよせていた田口タキさんが今年六月に亡くなったと、今月初め、新聞で報道された。小樽文学館に家人から連絡があってわかったことである。あの時代に思いを馳せ、感慨新たである。
　（いなざわ　じゅんこ）
( ２００９年１２月２４日，「赤旗」) （Page/Top）

戦前特高警察に殺された倉岡愛穂先生を語る／１１２歳日本男性最高齢木村次郎右衛門さん


教育界におってくれたら
　生きていれば１１４歳。戦前、平和と自由な教育を求めてたたかい特高警察に殺された教師に倉岡愛穂（よしほ）という人がいます。幼なじみで１１２歳の日本男性最高齢、木村次郎右衛門さん（京都府京丹後市在住）がその生前の姿を語ります。
　
　日本軍が中国全面侵略を開始する直前の１９３６年、治安維持法による弾圧・逮捕は９府県２４０人に及び、倉岡さんは神戸市の御影署に勾留されました。
　その１０６日後の翌年４月９日。倉岡さんは、署内で絞殺体と変わり果てました。検視のための医者はおろか葬式、死亡通知を出すことも厳禁され、死の事実さえ抹殺されようとしたのです。
　それでも木村さんはその死を知りました。「悲惨な最期を遂げまして気の毒というより言いようがございません。多くはしゃべらんが優れた男でしたから、惜しいことをしたと痛切に思いました」
　２人は、丹後半島突端の隣り合わせた集落（現京丹後市）で生まれ育ちました。「私より２級上でしてね。風呂敷に成績表を巻いて一緒に小学校に通いました」
　倉岡さんが京都師範を出て教師となっても交流は続きます。
　「私は郵便局、倉岡君は小学校におりまして、毎晩に近いほど宿直室に寄って話をしました。気のいいまじめな男で、教育者としてもいろんな事を教えてくれ、いっそう親しみが深いわけでございます」

「人格的成長」
　倉岡さんは「自分に教師たる資格はありや」と日記に何度も記すほど苦悩しつつも、語らずにおれない教育への熱情がありました。
　その一端を親類の倉岡澄男さん（６６）は「伝えられたばかりのドッジボールを授業に取り入れ、文部省唱歌は歌わずにヨーロッパの歌を教えた、当時としては画期的だったと聞いて育った」と話します。
　貧しい子にも心を寄せた倉岡さん。戦争に駆り立てる教育ではなく、子どもを主人公とする新しい教育を実践していました。自身のノートにも教育の本質を「人格的成長」と記します。
　１千冊もの蔵書に見られる探究心は、文豪トルストイやツルゲーネフから、やがて、よって立つ思想に行き着きました。「マルクスといふ言葉やら唯物史観といふ耳新しい言葉が見出された」と喜びをノートに書くほど。自身の成長をも求めてやまなかったのです。
　その背景を木村さんは「お父さんの九左衛門さんは、なかなかのしっかり者でね。いろんな方面に活躍した名高い男でしたから一家そろって逸物。社会のために役立ったすばらしい家庭でした」と明かします。

命を絶たれる
　２８歳で校長となりますが、出張中の校舎焼失の責任を取って退職、兄弟が住む神戸市で教師を続けます。
　１９３０年、全国に新興教育運動が起こると３３年、『新興教育』創刊号からの読者だった倉岡さんらが同神戸支局を結成、４年後、４２歳の命を絶たれたのです。
　お墓はその３０年後の１９６７年に、郷里の丘に立てられました。木村さんは心を込めます。
　「お墓にも参ったことがありますが、あんな男が教育界におってくれたらもっと社会のために役立つ男であったと思います。戦争はもう、絶対あかんものです。だからいま、大いにその足跡を宣伝していただきたいと思います」
( ２００９年１２月２４日，「赤旗」) （Page/Top）

「多喜二と秋田」第３回講座で語る／市立図書館明徳館館長

　秋田県多喜二祭実行委員会が１９日、秋田市千秋明徳町のジョイナスで第３回小林多喜二講座を開きました。北条常久・秋田市立図書館明徳館館長が「小林多喜二と秋田」と題して講演しました。
　市民ら１５人が聴講しました。
　北条氏は、多喜二が『転形期の人々』で「秋田の村から『夜逃げ』をして出てきた」と書いたことについて、「本家の娘を嫁がせるためにいっしょに小樽に連れて行っており、夜逃げではなく移住だった。ニシン場で働くために北海道に渡るのは当たり前だった。釈迦内（多喜二の母の生家）からは何人も渡って小樽に住んだ人もいた」と話しました。
　北条氏は、多喜二を女性の視点から読む大切さを強調し、「多喜二の小説はもっと民衆に近いところにあったに違いない」「（現在）本当に困っている人たちの実態と重なっている。多喜二はたんなるブームではないのだ」とのべました。
　同実行委事務局の富樫耕一さんは、「講座は、毎年２月の多喜二祭だけでなく、県民にもっと深く広く多喜二とその文学を知ってもらいたいと始めました。来年１月２１日には好評だった第２回講座『小林多喜二の戦争と軍隊』（講師・斎藤重一さん）の続きを開きます」と話しています。
(２００９年１２月２２日，「赤旗」) （Page/Top）

０９回顧／文学／時代とどう向き合うか／問われた日本文学と作家

　文学は時代と社会にどう向き合うのか―多くの書き手たちがそれぞれに問いかけた１年だったといえないでしょうか。

壁の側に立つか卵の側に立つか
　２月に村上春樹氏がイスラエルでおこなったスピーチは、文学の責務について発言し世界に発信されました。村上氏は、小説を書くとき心にとめているのは、高く堅い壁とそれにぶつかって壊れる卵のことだとのべ、「私は常に卵の側に立つ」と比ゆ的にのべました。「壁」とはパレスチナの人々を囲い込む壁を意識したものですが、村上氏はその問題意識を広げて、この世界に生きる作家の問題として提起したのです。
　このスピーチの後に刊行された『１Ｑ８４』（新潮社）は、爆発的な売れ行きを示していますが、先の村上氏の問題意識との関連で興味をもった読者もいました。現代という時代の生き難さを主題にした作品として評価される一方で、描かれた神秘主義、報復などへの批判も出されています。
　文学状況の急速な変容を背景に日本の近代文学はすでに終わったという意見がある中で、「文学とは何か、それは人生における真実とは何か、という問いにかさな」る（『群像』１０月号、高橋源一郎）という発言がでるなど、村上氏の発言とあわせて、文学のあるべき方向を模索する発言として注目されます。

霧を突き破って若者や雇用描く
　現代に生きる人々の前には、複雑で深い霧がかかったような現実があるかもしれません。文芸誌の若い書き手にはかなりの混迷がみられます。しかしその霧を突き破るように、高村薫『太陽を曳く馬』、池澤夏樹『カデナ』（以上新潮社）、宮本輝『骸骨ビルの庭』（講談社）が書かれました。若手では津村記久子『ポストライムの船』（講談社）が不安定な雇用にはたらく若者の心をみずみずしくとらえ、民主主義文学の浅尾大輔も、独特の文体で若者の苦悩と苦闘を『ブルーシート』（朝日新聞出版）に描き出したのも印象に残りました。
　本紙連載の佐藤貴美子「われら青春の時」は、戦後の民主医療運動に、井上文夫「時をつなぐ航跡」（『民主文学』連載）が航空業界の客室乗務員のたたかいに材をとり、両作とも事実に取材しながらこの国を形づくってきた民衆のたたかいに光をあてたことは貴重な努力でした。本紙連載の能島龍三「夏雲」は、学生生活を題材に社会的に生きることの意味を問いかけました。

作家の記念の年戦争美化に批判
　今年は多くの作家の記念の年でした。大岡昇平、太宰治、松本清張は生誕百年でした。大岡昇平は戦争の非人間性を描くことを出発点にした作家でした。晩年たびたび本紙に登場し侵略戦争を美化する動きを批判していた氏の発言を思い出します。また太宰治について娘の太田治子さんが『明るい方へ』（朝日新聞出版）の中で父親の戦争責任に言及し、太宰評価に一石を投じました。その点では、戦争を賛美した多くの作家の日記を紹介した、ドナルド・キーンの『日本人の戦争』（文芸春秋）は、過去の問題として片づけることのできない問題提起として重要な仕事でした。
　（牛久保建男）

私の選んだ５点

新船海三郎　文芸評論家
・右遠俊郎『詩人からの手紙』（本の泉社）
・大江健三郎『水死』（講談社）
・古処誠二『線』（角川書店）
・司修『戦争と美術と人間―末松正樹の二つのフランス』（白水社）
・加藤周一『言葉と戦車を見すえて―加藤周一が考えつづけてきたこと』（ちくま学芸文庫）

乙部宗徳　文芸評論家
・能島龍三「夏雲」（赤旗連載）
・大江健三郎『水死』
・川上未映子『へヴン』（講談社）
・浅尾大輔『ブルーシート』（朝日新聞出版）
・ノーマ・フィールド『小林多喜二』（岩波新書）
( ２００９年１２月２２日，「赤旗」) （Page/Top）

『蟹工船』と重なる部分ある／中国語訳を出版／北京外国語大学助教授秦剛さんに聞く

　「ここに描かれたことは今も存在している。中国でも労働者の権利保障が急務だ」「『立ち上がれ』と呼びかけていることが魅力だ」―漫画と小説を一体にし、７月に出版された中国語訳『蟹工船』（小林多喜二著、１９２９年発表）に読者から寄せられた感想です。訳者の一人、北京外国語大学北京日本学研究センターの秦剛（しん・ごう）助教授に聞きました。
　（北京＝山田俊英　写真も）
　
　いまなぜ中国で『蟹工船』か―。「（中国では）経済発展にともなっていろいろな問題が出ています。一部は１９２０年代の日本と重なる部分があります」「自分たちの生きる世界の現実を考えるメッセージを訳者の序文などいろいろな形で出したつもりです」といいます。
　漫画（日本語原作は東銀座出版）を秦さん、小説を同僚の応傑さんが担当し、協力して訳しました。
　「比ゆ、方言、傍点、カタカナなど原作の感じを生かすのに苦労しました」。中国の北方方言を使い、傍点はそのまま使いました。過去いくつか出版された中国語訳では労働者たちの性に関する記述がカットされていましたが、今回はそれも訳し、「中国初の完訳」です。
　漫画と小説をセットにしたのは「若い人に読んでほしい」という思いからでした。片面から開くと漫画。もう片面から開くと小説という作り。日中の研究者による解説、多喜二に関する詳しい年譜も付けました。
　出版社を探すのが翻訳以上に大変でした。構想が持ち上がったのは２００７年。しかし中国では市場経済化で出版界も売れるかどうかがまず大事。「プロレタリア文学など売れない」「内容が古い」と言われ、何度も挫折しました。
　『蟹工船』が最初に中国に紹介されたのは１９３０年代。５０年代から翻訳が出版され、６２年には漫画も出されました。しかし「８０年代後半から中国社会の変化と文学観念の多元化にともなって多喜二は読者の視野から遠ざかって行った」と秦さんは序文で書いています。
　決め手となったのが日本の『蟹工船』ブーム。中国国内でも話題になり、大手の人民文学出版社が引き受けました。
　「感動を言葉に置き換えて現実を変える手段にする。『蟹工船』がそうです。これが文学の力です」
　
　１９６８年吉林省長春市生まれ。９９年東京大学大学院で博士号取得。日本文学研究の出発は芥川龍之介。宮崎駿アニメの研究にも取り組んでいます。
( ２００９年１２月２２日，「赤旗」) （Page/Top）

後期医療廃止など自、公反対し意見書を否決／青森市議会

　青森市の１２月議会は最終日の１８日、日本共産党が提出した「普天間基地撤去」、「後期高齢者医療制度の速やかな廃止」、「生活保護の老齢加算復活と母子加算の継続」、「治安維持法犠牲者への国家賠償」を求める計四つの意見書（案）は、自民党、公明党などの反対で、否決してしまいました。
　賛成したのは、共産党や社民党のほか、民主党議員も所属する会派などです。
　このうち、後期高齢者医療制度に関する意見書は、民主党が総選挙で廃止を公約したことや先延ばしの問題点を指摘し、政府に速やかな廃止を求めるもの。普天間基地に関する意見書は、「普天間基地の撤去を求め、アメリカと正面から交渉することを要望する」という内容です。
(２００９年１２月２０日，「赤旗」) （Page/Top）

潮流

　小林多喜二の恋人だった、田口タキさんの悲報が伝えられました。１０１歳でした▼いま、タキさんに書いた多喜二の手紙の言葉が、あらためて人々の関心を引いています。「闇があるから光がある」。『小林多喜二全集』に載る彼女あての手紙でもっとも古い、１９２５年３月２日付の書き出しです▼「闇から出てきた人こそ、一番ほんとうに光の有難さが分かるんだ」と続きます。家の事情で身売りされていた彼女を、必死で励ますのです。「僕のこの愛のことを思って、我慢し、苦しみ、悲しみに打ち勝ってくれ」「魂だけは売るな」▼多喜二は、借金の縛りからタキさんを救い出します。やがて彼は、作家として共産党員として、時代の闇に立ち向かいます。闇を照らし、切り裂き切り開く、光を燃やして▼光と闇。〝明けない夜はない〟という言葉も思い出します。シェークスピア『マクベス』の日本語訳せりふでも知られます。父の王をマクベスに謀り殺されたマルカムが、マクベスとの戦に出発するときの号令です。ほとんどの訳が同じ趣旨、といいます。しかし松岡和子さんは、原作に忠実に訳し直しました▼つまり、「朝が来なければ夜は永遠に続くからな」。松岡さんが解説します。「この一行は、希望を持てと臣下たちを励ます言葉というより、覚悟を促す言葉だと思う」（ちくま文庫『マクベス』）。明けない夜はないけれど、望むだけで人の世の闇を開けられようか。命がけでたたかった、多喜二たちの覚悟に思いいたります。
( ２００９年１２月１９日，「赤旗」) （Page/Top）

「聳ゆるマスト」／阪口喜一郎の碑前祭が大阪で

　戦前、海軍で反戦平和の新聞「聳（そび）ゆるマスト」を発行し、治安維持法違反で逮捕され虐殺された阪口喜一郎の碑前祭が１２日、命日（２７日）を前に大阪府和泉市黒鳥山公園前にある顕彰碑の前で開かれました。約１００人が参加しました。
　治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟中央本部の柳河瀬精会長が開会あいさつし、広島県や愛知県からの参加者、碑の建設・維持に協力している地元の高田俊さんがあいさつ。参加者全員で献花しました。
　交流会で参加者は、広島で制作したＤＶＤ「聳ゆるマスト―阪口喜一郎らが残したもの」を視聴しました。
　集いには、和泉市の辻宏康市長、日本共産党の宮本岳志衆院議員、清水ただし参院大阪選挙区候補、大塚やすき大阪１８区国政対策委員長からメッセージが寄せられました。
(２００９年１２月１７日，「赤旗」) （Page/Top）

花岡事件の地／０９年案内は１２団体・個人２４８人／秋田県大館市

　秋田県大館市の「花岡の地　日中不再戦友好碑をまもる会」の「フィールドワークサークル」（富樫康雄事務局長、略称・案内サークル）が２００９年に、花岡事件・強制連行事件の調査・研究、学習で花岡を訪れた１２団体・個人・グループの２４８人を案内したことが、同サークルのまとめでわかりました。
　これで、同サークルの案内は、累計で２０１団体・個人・グループの５５８１人になりました。
　ことしの案内は、５月６日から１１月１２日までの１２回でした。５月には『東北民衆の歴史　近世・維新編』の著者の故伊藤重道さんが２日がかりで事件関連の現地をまわりました。神奈川県の「ピースカフェ茅ケ崎」一行（６月）や栃木県の「那須塩原市９条の会」一行（９月）なども訪れています。１０月には、仙台市の中学校２年生３６人が校外学習で訪れました。
　案内サークルの富樫事務局長は、「『小林多喜二』と『花岡事件』をセットでまわる人たちが増えてきたのに加えて、『安藤昌益』と『小坂鉱山』の案内要望も多くなってきた。韓国政府の日帝強占下強制動員被害真相究明委員会の人たちを５鉱山跡に案内するなど朝鮮人・中国人強制連行にかかわる広範で深い学習が求められるようになった」と話しています。

花岡事件
　アジア太平洋戦争末期に日本軍国主義が引き起こした約４万人の中国人強制連行事件の一つ。９８６人の配属を受けた鹿島組（現鹿島）花岡出張所は過酷な労働を強い、虐待し、次つぎと死者を出しました。
　中国人らは１９４５年６月３０日（７月１日説もある）に蜂起、全員が捕らえられ、拷問されました。４４年７月から４６年３月までに４１９人が死亡しました。
(２００９年１２月１６日，「赤旗」) （Page/Top）

創作やエッセイ／『奔流』２２号発行／民主文学会

　札幌民主文学会はこのほど、『奔流』第２２号を発行しました。
　アイヌの教師を描いた「汽水域」（吉田たかし）をはじめ創作１２編。自伝「少年の戦争」（石川弘明）、旅行記「若い世代の文学研究集会二〇〇九ｉｎ東京」（薗田宜紀）、エッセイは、「あれこれと思う樺太時代のこと」（浜練太郎）など４編です。
　評論は「ノーマ・フィールド『小林多喜二―２１世紀にどう読むか』再読」（松木新）。
　１９人の執筆者のうち４人が初登場となります。
　頒価１０００円。問い合わせは松木新さん０１１（３９８）６２７７。
(２００９年１２月１６日，「赤旗」) （Page/Top）

０９回顧／演劇／注目のシェイクスピア劇／「組曲虐殺」など共感呼んだ新作

　ことしの演劇界で、注目を集めたのは、シェイクスピア劇上演の２つの大きな取り組みでした。新国立劇場は３部作合わせて９時間の大作「ヘンリー六世」（１０～１１月）を精巧な演出で上演。１４世紀中ごろからの英仏「百年戦争」と、その後の英国の王権争いの内乱の物語で、鵜山仁さんの演出は、親が子を殺し子が親を殺す場面を鮮烈に見せ、戦争への作者の憎悪をくっきり描きました。
　無名塾は石川・能登演劇堂で、仲代達矢さんが本物の馬で登場、数頭の馬と劇場裏の自然の林までも舞台として使う壮大なスケールの「マクベス」（９～１１月）を上演。「いいは悪いで、悪いはいい」という魔女のせりふを印象的に示すなど、権力の魔力にはまる人間の心の深層に迫りました。

命かけたたかう多喜二の心描く
　ことしは小林多喜二がキーワードになった年でもありました。資本による非人間的な労働者搾取の仕組みと命がけでたたかった多喜二の心を描いた、井上ひさしさんの新作「組曲虐殺」（１０～１１月）は、観客の共感を呼びました。俳優座は多喜二の小説「蟹工船」を新しく舞台化（５月）し、弾圧されても「もう１度！」と権力に屈しない労働者像を描き出しました。
　企業の農業参入を認める改定農地法と、農業に人生をかける人々との矛盾を取り上げた「結の風らぷそでぃ」（青年劇場、９～１０月）、農業を破壊する銀行の姿を告発した「来年こそは」（劇団民芸、５～６月）は、農の心に目を向けさせました。劇団東演の「どん底」（１１月）は最下層の人々の苦悩を斬新なスタイルで描き話題になりました。理想を捨てずに生きる人々を娯楽性いっぱいに舞台化した「高き彼物」（加藤健一事務所、１１月）は、観客の心を温めました。
　戦争にほんろうされシベリア抑留で苦難に遭った日本人とロシア人妻の悲劇を描く「クラウディアの祈り」（東京芸術座、９月）など、戦争の非人間性を告発する作品に目を引くものがありました。「銃口」（前進座、７～８月）は戦前、〝綴り方教育〟が治安維持法違反で弾圧された事実にもとづく芝居でした。

創造の可能性の広さ示した舞台
　火星に植民した人間を描き、さまざまな原理主義を風刺した「パイパー」（野田秀樹作、１～２月）、マルクス『資本論』の現代的な値打ちを舞台で見せた、ドイツのリミニ・プロトコルの「カール・マルクス‥資本論、第一巻」（２～３月）などが、舞台創造の可能性の広さを示しました。
　森光子さんは「放浪記」２０００回という金字塔を打ちたてました。森さんは、「非戦を選ぶ演劇人の会」による朗読劇（８月）にもビデオレターで参加し、平和を守ることの大切さを訴えました。
　（大井民生）

★………　私の選んだ５点　………★
菅井幸雄 （演劇評論家）
①「ヘンリー六世」（シェイクスピア作、新国立劇場）１０～１１月
②「組曲虐殺」（井上ひさし作、こまつ座＆ホリプロ）１０～１１月
③「蟹工船」（安川修一脚本、俳優座）５月
④「風と共に来たる」（ロン・ハッチンソン作、テアトル・エコー）８～９月
⑤「ハンナのかばん」（いずみ凜脚本、劇団銅鑼）２～３月

北野雅弘 （演劇学研究者）
①「寛容のオルギア」（ヤン・ファーブル演出、彩の国さいたま芸術劇場）６月
②「ブラスティッド」（サラ・ケイン作、ＳＰＡＣ）６､７月
③「ヘンリー六世」（シェイクスピア作、新国立劇場）１０～１１月
④「カール・マルクス：資本論、第一巻」（リミニ・プロトコル、東京・にしすがも創造舎）２～３月
⑤「ザ・ダイバー」（野田秀樹作、東京芸術劇場）８～９月
( ２００９年１２月１６日，「赤旗」) （Page/Top）

多喜二と交流田口タキさん死去

　小林多喜二が愛した女性として知られ、拷問死した多喜二の葬儀にかけつけてもいた田口タキさんが、６月１９日、横浜市の自宅で亡くなっていたことが分かりました。１０１歳でした。北海道小樽市立小樽文学館に、年賀の欠礼として親族から連絡がありました。
　多喜二は銀行に勤めていた小樽時代に、飲食店で働いていた田口タキさんと知り合い、借金のためその境遇からぬけだせずにいたタキさんを、多額の金を用意して救い出し、自宅に住まわせました。
　小樽、東京時代合わせて交流が続き、多喜二は結婚を考えていましたが、タキさんは自分の境遇が多喜二の負担になることを懸念し、身をひいたといわれています。
　「闇があるから光がある」というタキさんあての言葉が有名で、「じゃ元気で！　幸福で！」という置き手紙がタキさんあての最後の言葉といわれています。
( ２００９年１２月１３日，「赤旗」) （Page/Top）

潮流

　冬紅葉ふるえる清冽な夕映え。木枯らし吹きすさぶ星夜。吉田隆子のバイオリン・ソナタは、いまごろの季節に似合います▼民謡風の旋律の美しくも激しいソナタは、作者の死の４年前、１９５２年に完成しました。消え入るように閉じるまで、聴く者をとらえて放しません。いや、終わった後も消えていった音の行方が気になります▼１１月初めの本欄で、クララ・シューマンなど女性作曲家の曲を特集する演奏会のもようを紹介しました。以来、心残りでした。あの演奏会の報告にとどまらず、日本の女性作曲家の魅力を伝えられる機会があればいいのだが、と▼吉田隆子は１９３０年代初め、二十歳そこそこでさっそうと楽壇に登場しました。プロレタリア音楽同盟に加わり、｢小林多喜二追悼の歌｣や夫･久保栄の作「火山灰地」の劇音楽をかきます。弾圧でたびたび捕まり、太平洋戦争中は重い病の床に伏しました▼〝彼女は、戦争中に自分の主張を守りぬいた、ただ一人の音楽家だ〟。ある作曲家仲間の証言です。彼女の「主張」は、バイオリン・ソナタと並ぶ戦後の傑作といわれる、歌曲「君死にたもうことなかれ」にも刻まれています▼軍国日本に封印されながら戦後よみがえった、与謝野晶子の反戦詩。病から立ち上がった吉田隆子の、高ぶる思い。二つの魂がであった曲は親しみやすく、いまも歌い継がれています。この歌が生まれ、ことしで６０年。歌劇や交響曲も作りたいと願っていたという彼女に、４６年の命は短すぎました。
( ２００９年１２月１３日，「赤旗」) （Page/Top）

千葉市大空襲など証言集／有志６人が体験者訪ね発行

　多くの市民が犠牲となった千葉市大空襲の証言集『千葉市大空襲とアジア・太平洋戦争の記録　１００人の証言』が発行されました。全日本年金者組合千葉市支部協議会議長の白井進さん（８１）ら有志６人が１年間、体験者を訪ね歩いてまとめたものです。
　同空襲は１９４５年６月１０日と７月７日の２回で約千人が死亡。大阪の陸軍幼年学校にいた白井さんは、終戦で千葉駅（現在の市民会館付近）に降り立った際、自宅のある県庁付近まで焼け野原で家が一軒もなかったといいます。編集委員の中村敏夫さんは当時１５歳。学徒動員に行く途中、空襲に遭いました。飛び込んだ防空壕（ごう）が満員で追い出された直後に爆撃で壊滅し、一命を取りとめました。
　「涙を流しながら編集した。やむなく中国人の捕虜を殺したなど匿名の証言もあります」と白井さん。戦争に反対し治安維持法で逮捕された体験など最終的に約１２０人の証言集となりました。
　巻末資料では調査団体により被害者数にばらつきがあり、７歳で同空襲を逃げ延びた編集委員の千葉通子さんは「国や行政の責任で正確に調査すべきです」と話しています。
　証言集はＡ４判約３４０㌻、１０００円（送料別）。問い合わせは伊藤章夫さん０８０（５３０５）３７３９。
(２００９年１２月１０日，「赤旗」) （Page/Top）

治維法国賠同盟憲法守れと宣伝／宮城・塩釜支部

　宮城県の治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟塩釜支部は６日、宮城県塩釜市・多賀城市内の７カ所で街頭宣伝活動に取り組みました｡相原君雄支部長､上西寛事務局長、大槻清子幹事らが参加して国賠同盟の黄色のゼッケンや旗を繰り出しました。
　宣伝では、国民が初めて自公政治からの決別を選択した民主党連立政権には、必ずしも国民の期待にこたえた政権運営がされているとはいえない動きがあることを指摘。後期高齢者医療制度廃止の引き延ばしや普天間基地の移転問題でのぶれ、内閣法制局長官の排除による憲法解釈改憲の危険な動き、国民投票法の推進など大いに注意を喚起しなければならないと指摘しました。
　太平洋戦争で犠牲となった人たちの尊い命や志を忘れず、核兵器廃絶の運動の先頭に立って憲法９条を守り､｢戦争と暗黒政治の再現を許さない」と奮闘する決意を表明しました。
(２００９年１２月１０日，「赤旗」) （Page/Top）

有島武郎から小林多喜二へ／思想と実践の一体化／尾西康充

　小林多喜二が白樺派の人道主義、とりわけ志賀直哉のリアリズムの手法に学んだことはよく知られている。その前段として、庁立小樽商業学校（現小樽商業高校）に在学していた頃は『小さき者へ』や『生まれ出づる悩み』など、有島武郎の小説を読みふけり、卒業を前に創刊した回覧雑誌には「生まれ出ずる子ら」というタイトルを付けるほどであった。

青年木本への多喜二の共感
　『生まれ出づる悩み』（一九一八年）の主人公木本は、貧しさのために東京での学業をあきらめて北海道岩内の実家へ帰る。漁夫として「荒くれた自然の威力」と格闘する一方、芸術への情熱を抱いた青年画家として「宏大で厳かな景色」を描き続ける。有島自身がモデルとなった作家の「私」は、十年ぶりに木本に再会し、筋骨たくましい漁夫の姿への変貌ぶりを見て、木本が「パンの為めに生活のどん底まで沈み切つた十年の月日」に耐えてきたことを思い浮かべる。画家としての才能にも恵まれていた多喜二は、〈労働と芸術〉の間で葛藤する青年木本の生き方に深い共感を覚えたにちがいない。
　『生まれ出づる悩み』には、漁夫たちが資本を持たないために、「命をなげ出さんばかりの険しい一日の労働の結果」である漁獲を「外の土地から投資された海産製造会社によって捨て値で買ひ取られる無念さ」がリアルに描かれている。資本家による労働の搾取を、まるで「大きな手には掴まれる」ようだと感じた木本の悲痛な心境は、過酷な収奪がおこなわれていた北海道の〈内国植民地〉としての実態を伝えるものであり、多喜二が『蟹工船』のなかに描きこもうとした「殖民地に於ける資本主義侵入史」に繋がるテーマであるといえる。

有島の『宣言一つ』の思想
　有産階級の生まれである有島は晩年、「人間の生活の改造」が「生活に根ざしを持った実行」の他にはないと考え、「第四階級」の労働生活を通じてこそ、「思想と実生活とが融合」できると主張した（『宣言一つ』、一九二二年）。
　有島がこのような主張を持つに至ったのは、アメリカに留学していた青年時代、ニューハンプシャー州グリーンランドにある開拓農場で労働した体験によるものと考えられる。有島が働いたのは一九〇五年六月十二日から七月二十四日まで、それはちょうどグリーンランドから北東約七キロメートルのところにあるポーツマスで日露戦争講和会議が開かれる直前のことであった。
　有島はアメリカ留学中に黄色人種に対する差別を感じ、平和を唱えるキリスト教信者のなかにさえ戦争を好む者がいた現実に幻滅を味わっていたが、グリーンランドの農場では、〈新移民〉と呼ばれた最貧層のポーランド移民労働者たちと親しく交流した。このときの体験をもとにした『迷路』（一九一八年）では、「新しい文明の出発点を彼等に見出したやうに思つた。彼等の心があのまゝで成長したら、今の文明を覆へすに足る美しい文明が生れ出るに違ひない」と描いている。有島にとって実際に農場で働いたのは、生涯を通じてこのときだけであり、十三年もの時を経た後に、当時の体験を小説に描いたのは、｢思想と実生活｣を融合させるべく有島農場の開放を決意していたからであろう。

プロレタリア文学の先駆者
　私は今夏、グリーンランドを訪れ、農場で働いていた有島がニューハンプシャー州の地元新聞「ジ・エクスター・ニューズ・レター」（一九〇五年七月十四日）に「雇用主の意にかなう働きぶり」を見せ、「きちんとした身なりで、他の人びとに対して礼儀正しくふるまった」と報じられていたことを発見した。
　時代の制約からアナーキズムにとどまりはしたものの、思想と実践との一体化を重んじたプロレタリア文学の先駆者として、有島の文学は多喜二の作品とともに高く評価されてよいだろう。
　（おにし・やすみつ　三重大学人文学部教授）
　◇
　同テーマについては「山の文学学校・下諏訪」（２９日～１月２日）の講座「プロレタリア作家・小林多喜二の胎動」で話されます。ほかに澤田章子「近代の名作を読む」、田島一「実作研究」。連絡先は日本民主主義文学会℡０３（５９４０）６３３５
( ２００９年１２月０９日， 「赤旗」)（Page/Top）

太平洋戦争開始６８年／「赤紙」配り、戦争二度と／札幌

　太平洋戦争開始６８周年の８日、「憲法９条を守り、軍事同盟でなく話し合い・平和解決の道へ歩み出しましょう」と、札幌市の繁華街で多彩な行動が取り組まれました。
　青年を侵略戦争にかり出した召集令状を知ってもらおうと印刷した「赤紙」を通行人に配ったのは、「平和を守る母親全国連鎖行動」に呼応した５０人を超える女性。侵略戦争でアジア・太平洋諸国で約２０００万人が犠牲になったことを示し､｢武器はいらない　核もいらない｣｢再び赤紙が配られることのないようもっと声を｣と呼びかけました。
　太平洋戦争のことや「赤紙」について熱心に尋ねる若い女性、喫茶店でビラを読み話に聞き入る姿などが目立ちました。道平和婦人会や道労連女性部、新婦人札幌中央支部、北商連婦人協、道母親連絡会が訴えました。
　治安維持法国賠同盟道本部と同札幌支部は、「再び戦争を許さない声を大きく」と、戦後賠償を果たしていない日本の後進性を告発し、国家賠償法の制定を求める国会請願署名に取り組みました。
　「４歳だった私は、６８年前のこの日、サハリン（旧樺太）で軍艦マーチをラジオで聞いて騒いでいました」と宮田汎さん（７２）＝江別市＝。「父親、おば、引き揚げ船の同級生を戦争で失いました。戦争は人殺しそのものです。〝戦後〟はまだ終わっていません。国家賠償法署名をたくさん集め来年、国会に届けますよ」と署名を訴えました。日本共産党の小形香織市議候補もマイクで、「性奴隷被害者に謝罪・補償を」と強調しました。
　道高齢者等９条の会連絡会と札幌北区年輪９条の会も、中国大陸での日本軍による殺りく・戦争犯罪を告発し、そろいの法被で不戦をアピールしました。
(２００９年１２月０９日，「赤旗」)（Page/Top）

伝えよう侵略戦争の真実／忠君愛国／４／教師生活の根っこに／大竹秀子さん（８７）

　「栄養失調の子どもが多くてね。宮城遥拝（皇居に向かっての敬礼）から始まる朝礼の最中、ずっと『気をつけ』の姿勢をさせられるのだけれど、途中でぶったおれる子がたくさんいました」
　大竹秀子さんは１９４２年１月に、新潟県北蒲原郡中条町（現胎内市）の国民学校に赴任しました。代用教員でした。４年生を受け持ちます。
　若い男の先生は召集され、女の先生と年配の男の先生が残っていました。冬、雪のなか、はだしで子どもたちに駆け足をさせたり、「天突き体操」という握りこぶしを天に突き上げるような体操をさせたり。「洗脳だと思いますよ。何の疑問ももちませんでした」

神風が吹くと
　９人兄弟の末っ子だった大竹さん。４番目の兄は４２年１２月９日にガダルカナルで戦死しました。葬儀のあと母親が「日本はどうなるかわからない」ともらしましたが、「神風が吹くから大丈夫｣と思っていました｡
　家の玄関の表札には「誉の家」と張り出されました。両親は隠れて泣いていましたが、大竹さんは「日本は勝つ」と子どもたちに教え続けました。教室に張り出されている「大東亜」の地図のあちこちに小さな「日の丸」を張っていきます。日本が占領したところです。南京、上海、シンガポール…。
　１日に何度も、天皇の話が出るたびに「気をつけ」の姿勢をとらせます。「男の先生はしょっちゅう子どもたちにビンタをくらわせ、女の先生は日曜日も学校に行ってナギナタの稽古（けいこ）をしていました」
　夜、警戒警報が鳴ると、教師はみな学校に駆けつけました。「御真影」を守るためです。国民学校は「天皇と国を守る少国民を錬成するところ」でした。
　大竹さんは４４年３月に結婚し、退職しました。夫の実家で聞いた玉音放送は、よく聞き取れませんでした。隣家の人が「日本は負けた」と教えてくれました。大竹さんは２人の兄を戦場で失いました。単身で満蒙開拓団に入った夫は、現地で召集されたのち、生死もわかりませんでした。

語り部として
　日がたつにつれ、「私は子どもたちにうそを教えていた」と悔やむようになりました。「『神風が吹くから大丈夫』『神の国の日本が鬼畜米英に負けるはずがない』、それらはみんなうそでした」
　４８年に復員した夫とともに北海道に移り住みました。その５年後、夫婦そろって教師の道をふたたび歩くことに。
　「空襲から逃げ回った体験や食糧難の時代の苦労、あとから聞いた夫の満州・シベリアでの体験からも、この戦争がどんなにひどいものであったか、一言であらわすこともできません。このようなことを再び繰り返してはならない。その思いが、私たち夫婦の教師生活の根っこにあります」
　大竹さん夫妻は、北海道の鶴居村で、「赤い教師」と村八分にされたこともありました。筋を通し、たたかいぬこうと５４年に日本共産党に入党。今、「語り部として少しでもかつての戦争のおろかさ、残酷さ、無意味さを知ってほしい」と自分史をまとめています。
　（荻野悦子）
　（この項おわり）
( ２００９年１２月１０日，「赤旗」) （Page/Top）

伝えよう侵略戦争の真実／忠君愛国／３／疑問もつこと許されず／久保俊子さん（９３）

　１９１６年生まれの久保俊子さん（９３）は、高等小学校を出たあと、３０年４月、東京女子師範学校に入学し、教師の道をめざしました。
　「私たちが師範学校に入学したころには、まだ大正デモクラシーの自由な教育のかけらが残っていたのね」と振り返る久保さん。入学した年に入ってきた校長が軍国主義的だったのを嫌った生徒たちが、校長排斥運動を起こしたといいます。
　「新聞にもいっさい報道されなかったけれど…。まだ何人かは自由主義的な教師も残っていたのよ」

「国史」は神話
　師範学校での教育の内容は、「忠君愛国」に尽きるものでした。「国うみ」「天孫降臨」などの神話による「国史」。天皇家は万世一系で、南北朝時代については吉野の南朝が正しい政府で、足利尊氏は賊軍だと教えられました。日本がしている戦争は、アジアを解放するための戦争で、「自衛のために満州を解放した。朝鮮が困っているところを助けて独立させてあげた」などと説明されました。
　「疑問に思うようになったのは戦後になってから。当時は疑問にすら思わないように教育されていました。相対性原理って何ですかと先生に質問したら、『覚えなくていい』と。先生のいうことに疑問をもってはいけなかったんです」
　物心ついてから三・一五事件（２８年）など、共産党弾圧事件の報道も相次ぎました。「この人たちはとても悪いことをしたに違いないと思いましたよ」
　久保さんは３６年、「二・二六事件」（軍部によるクーデター）のあとの４月、東京の西多摩郡吉野尋常高等小学校（現青梅市）に赴任しました。

暗記多い授業
　授業は暗記が中心でした。教科書はどの教科も戦争に役に立つようにつくられていました。「日清戦争の『木口小平は死んでもラッパを離しませんでした』とかね。師範学校で教えられたことをそのとおりに教えるのです」
　４１年に結婚し、退職。子どもが生まれたあと、戦局が厳しくなって男性教員がどんどん召集されていくなかで「子連れでいいからきてほしい」と請われ、千葉県松戸市の国民学校に赴任しました。
　「毎朝、授業の前に教育勅語と宣戦の詔書を暗唱させましたね。４年生からの理科が始まりましたよ。戦車は鉄でできている、身の回りにある鉄製品を考えようとか､そういう話ですよ｣
　久保さんはいいます。「私たちは、日本の古代のアジアの国々との交渉の様子などは教わりませんでした。神武天皇の東征の話で説明されていたからです。韓国併合も『韓国が喜んで日本の統治に従ったのだ』と。今、あの戦争を『大東亜戦争』と書く教科書が出ていますが、『大東亜』というのはあの時代の軍国主義を支えた日本中心の思想の言葉なのです。写真が豊富できれいな教科書だからいいわねということではいけないんです」（つづく）

教育勅語と宣戦の詔書
　教育勅語は、１８９０年（明治２３年）に発布された「教育に関する勅語（天皇の言葉）」のこと。「一旦緩急あれば義勇公に奉しもって天壌無窮の皇運を扶翼すべし」と、戦争になったら国家に命をささげることを求め、日本が敗戦を迎えるまで、教育の指針とされました。宣戦の詔書は４１年１２月８日の対米英戦開戦にあたって出された詔書（天皇による公文書）で、「帝国は今や自存自衛のため蹶（けつ）然起って一切の障礙（がい）を破砕するの外なきなり」としています。
( ２００９年１２月０９日，「赤旗」)（Page/Top）

伝えよう侵略戦争の真実／忠君愛国／２／殴った子らに謝りたい／畔上敏雄さん（８９）

　「何を教えたか、覚えていません。ただ教科書のとおり、教えただけです」と語るのは、畔上敏雄さん（８９）。１９４１年４月から１年間、東京の江戸川区小松川第三国民学校の教壇に立ちました。
　畔上さんは、高等小学校を卒業して新潟師範を受験しますが失敗します。父親のいた東京に出てきて師範学校の予備校に通いました。翌年もう一度、受験し、青山師範に合格して５年間、徹底して「軍国主義教育」を仕込まれました。「当時の青山師範は、お国のための教師をつくる専門学校でした。勉強じゃない。軍隊教育です」
　週に２時間、教練という軍隊と同じ銃をもっての訓練がありました。
　小松川第三国民学校で担任したのは４年１組、男の子だけのクラスです。音楽と工作以外は全部教えました。

「教師は戦犯」
　「子どもをよく殴りました。気をつけの姿勢が悪いといってはめちゃくちゃに殴り、言うことを聞かないといっては殴り。理由もなく殴ったことも多かったと思う」
　あとになって当時の教え子から「先生は学校中で一番こわかった」といわれました。受け持ちのクラスの子どもだけでなく、男子のほとんど全員を殴ったといいます。
　１２月８日の開戦のころには、毎朝、生徒をパンツ１枚にして、自分はランニングと短パンで、学校のまわりをぐるぐる駆け足させました。クラスの半分くらいがかぜをひいてしまいましたが、校長も何もいいませんでした。
　畔上さんは４２年の４月に、甲種合格で軍隊に入りました。関東軍の第３方面軍司令部暗号班に配属されました。終戦のときには中国の奉天にいました。１２月にソ連に連れて行かれて、４９年に日本に帰るまでシベリア抑留生活を送りました。
　ナホトカで、「憲兵、警察、教師は第一級の戦犯だ」と糾弾されました。「批判会」といいました。「自分はそんなに悪いやつではないと思っていましたが、教師だった自分が子どもたちをだまし、ひどいことをしてきたのだと思い知らされました」

ウソ許せない
　日本に帰っても、もう教壇には立てないと思っていましたが、教師が足りない時代だったので元の学校に戻ることができました。「教師をやめるまで、殴った子どもに謝り続けようという思いでした」
　殴った子の子どもの担任にもなりました。「先生はあんたたちの父親を殴った。申し訳なかった」と謝りました。「殴った子どもたちのクラス会に呼ばれるたびに、『先生を殴ってくれ』というんですが、『先生、そんなことできないよ』といわれてしまうんですよ」と申し訳なさそうに話します。
　「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書に憤りを感じています。「とんでもないふらちな話だ。終戦前に軍が毎日やったのは文書の焼却だった。軍の秘密文書は全部焼けと。彼らは、沖縄の『集団自決』は証拠になる文書が残っていないから軍の命令ではないというが、証拠を残すまいと軍が焼いたんだよ。そういう論法は、許せない。関東軍のついたウソから始まった戦争を『自存自衛』と美化するのもね」
　（つづく）

師範学校
　師範学校を出ると正規の教員である「訓導」になることができました。戦争が激しくなって男性教員が出征し、教師の数が足りなくなると、「臨時教員養成所」などがつくられ、１５～１６歳で「代用教員」、「臨教」として採用されるようになりました。
( ２００９年１２月０８日，「赤旗」)（Page/Top）

伝えよう侵略戦争の真実／忠君愛国／１／教え子に今も会えない／田近治代さん（８３）

　「６４年たった今も、あの時の子どもたちには一人も会えないままなのです」
　田近治代さん（８３）は１９４５年３月１０日未明の東京大空襲で、当時の教え子すべてを失いました。
　４４年４月、１年間の東京都臨時教員養成所を修了して、１７歳で城東区（現江東区）第一大島国民学校（小学校）に赴任した田近さん。２年生の担任になり、読み書き、九九、「とにかく何でも教科書のとおりやりました」。すでに戦況が悪化し、落ち着いて勉強するどころではなく、空襲警報が鳴ると防空壕（ごう）に避難する毎日でした。

忠実に教えた
　「荷物をまとめ、耳と目を押さえ、物陰に入る。『動作を速く』と、子どもたちに指示して一緒に逃げる。その繰り返し」でした。
　教師になるために教わったのは、「上司の命令には従え」「教科書を忠実に教えろ」ということでした。教科書は文部省発行の国定教科書です。男の子は立派な兵隊になって、命を惜しまずに天皇陛下のために働く。女の子は銃後を守る。天皇陛下は、畏（おそ）れ多くて口に出すこともできない神様なのだ、と。「世の中全体がそういうもので、疑問にも思わない。私自身も完全に軍国少女でしたから、この戦争は正義の戦争で、必ず勝つのだと信じていました」
　田近さんの父親は、クリスチャンでした。当時はどこの家にもあった天皇の「御真影」が、田近さんの家にはありませんでした。小さいころ、父親が警官に連れられて行ったこともありました。数日で帰ってきましたが、捕まった理由は知らされませんでした。田近さんは戦後になるまで、治安維持法を知りませんでした。「御真影」がないこととキリスト教だということで、小学生のとき、教師から「非国民」といわれたこともありました。

集団疎開前に
　４５年３月１０日未明の空襲は、東京の下町を焼き尽くしました。千葉県の市川に住んでいた田近さんは、東京の空が真っ赤に燃え上がるのを見て、子どもたちが心配で眠れぬ夜を過ごしました。担任している子どもたちは１０日には集団で疎開（学童疎開＝空襲を避けて地方に行く）するはずだったのです。
　朝になって、父親と一緒に徒歩で学校に向かいました。一面の焼け野が原を、真っ黒にただれた目をやっとあけ、焼け焦げた髪の毛、やけどした肌、ぼろぼろの服で放心したように足をひきずりながら、ぞろぞろと切れ目なく歩いてくる人々…。亀戸駅近くからは真っ黒の炭になった人々、馬の死体。川には数え切れない水死体。学校は、コンクリートの土台と奉安殿だけが残っていました。学区域を歩きましたが、誰にも会えませんでした。
　戦時中の教育への悔恨の思いから、戦後、田近さんは夜間大学に通って、勉強し直しました。自身の体験を子どもたちに語り伝え、戦争について考えてもらおうと平和教育に力をいれてきました。
　「教え子たちへの償いの気持ちです。再び戦争をする国にしてはならない。戦争放棄を掲げた憲法９条を守る運動に残された日々を生きることが私の使命です」（つづく）

御真影と奉安殿
　天皇・皇后の写真を「御真影」と称しました。奉安殿は「御真影」と教育勅語の謄本を安置するために校舎とは別につくられた、耐震耐火式の蔵のような神社のつくりをした建物。奉安殿の前を通るときには立ち止まり、最敬礼をしなければなりませんでした。
( ２００９年１２月０７日，「赤旗」)（Page/Top）

本立て／小林多喜二の手紙／荻野富士夫編

　「『闇があるから光がある』　そして闇から出てきた人こそ、一番ほんとうに光の有難さが分るんだ｣｡２１歳の多喜二の、不幸な境遇にある田口タキあての手紙です。
　多喜二の手紙１５９通を収録。右の「田口タキへの恋文」のほか、文学修業時代や、豊多摩刑務所からのもの、非合法の地下活動中に、家族を思いやって原稿料は「自家へ」と編集者にあてたものなど、テーマごとに編集。多喜二の肉声が届くような味わいです。
　多喜二虐殺後、志賀直哉が多喜二の母にあてた悔やみや、「ユマニテ」の記事などの付録も。解説は、編者とノーマ・フィールド。
　（岩波文庫　税別９４０円)
(２００９年１２月０６日，「赤旗」)（Page/Top）

葛飾ビラ配布弾圧事件／最高裁に抗議／治維法国賠同盟

　治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟は１日、葛飾ビラ配布弾圧事件で、最高裁が被告の荒川庸生さんの上告を棄却したことに対して、「憲法違反の最高裁判決に抗議する」との声明を出しました。
( ２００９年１２月０４日，「赤旗」) （Page/Top）

プロレタリア画家／よみがえる市村三男三／下／多喜二と重なった歩み

　なかむらみのる氏（７３）が、市村三男三の業績や人間像を著す『信念と不屈の画家　市村三男三』（光陽出版社）の出版を思い立ったのは、意外なものを発見したからです。
　三男三の妻の愛子さんが２００７年に亡くなり、友人の鵜飼勲さんと市村家の遺品を整理していたとき、家計簿と料理レシピを書いたメモが、日本共産党への支持を訴えた支持者カードの控えと一緒に見つかりました。
　三男三は晩年、東京・練馬で心臓病の療養生活を続け、働く妻の帰りを待ちながら料理をつくり、選挙でも一人ひとりにこつこつと党への支持を訴えていたのです。

節を曲げずに
　党の支部会議の会場に自宅を提供し、会議では愉快な話題をふりまき、近くの工場の女性たちの争議を支援していた三男三。「療養しながら主夫とも言える生活をする一方、欲求やみがたく、売ろうともしない絵を描いていた。選挙になると日本共産党への一票を訴えていた三男三の脳裏には、いつも小林多喜二の姿があったのではないか」となかむら氏は推測します。
　なかむら氏は、三男三と多喜二が日本共産党に入党した年こそ違え、雪国生まれで同学年、結婚したのも２カ月だけの違いで、多喜二が虐殺される（１９３３年）までの二人の歩みは、数カ月の前後はあってもそっくりなことに着目。マルクスを学び始めたのも同じ時期、警察に検挙されたのも２９年４月、日本プロレタリア作家同盟と日本プロレタリア美術家同盟の役職についたのも同時期でした。
　新潟の経済人・故小林力三氏（貿易商、元新潟商工会議所副会頭）は戦前、新聞紙上で三男三の絵について、「一見、熱烈な生への意欲があり、肯定的の人生観を横溢（おういつ）し、野放図な生活力があふれている。今後かかる画が日本美術の主流をなすものと思うし、又せねばならぬと私は考える」（新潟日日新聞３１年９月２６日付）と評論しています。
　三男三が亡くなった翌年、日本美術会の画家・故小野沢亘氏は「市村さんは、政治運動に力を入れすぎると芸術運動がおろそかになるという矛盾に悩まされながら、その矛盾を持ち前の人間的誠実さと粘り強さによって統一し、最後まで節を屈することなくたたかった、数少ないプロレタリア美術運動の指導者の一人であった」（日本美術会『美術運動』９１年２月刊）と述べています。

現代の党員像
　なかむら氏の本を読んだ人からは「おもしろくて一気に読んだ」という感想が多く寄せられています。上越市の柳川月さん（８８）は「たちまちとりこになりました。近ごろこんなに夢中になったのは初めて。三男三の画業を世に出そうと、情熱を傾ける筆者の思いに私も体が熱くなりました。再読しています」と語っています。
　なかむら氏はいいます。「幾重にも広がったえにしの中で、どの人が欠けても実現しなかった三男三の絵の展示。ゆかりのあった人たちの世に出そうとした善意をドラマチックに描きたかった。同時に三男三を通して、弾圧の時代に抗した日本共産党員像だけでなく、人間的温かさを感じさせながらも、こつこつと社会進歩のために頑張ってきた現代の日本共産党員像とも言える姿を描きたかった」
　（おわり）
( ２００９年１２月０３日，「赤旗」) （Page/Top）

解放戦士の碑合葬者を追悼／静岡

　静岡県解放戦士の碑第１９回合葬追悼会（同実行委員会主催）が１１月２９日、静岡市葵区の愛宕霊園内で開かれ、遺族や民主団体関係者ら５９人が参加し、今回の合葬者７８人を含む千余人を追悼しました。
　合葬追悼会は３年ぶりの開催です。
　平野克明実行委員長は「社会進歩と平和、民主主義を守るたたかいの途上で亡くなられた方々を追悼するとともに、ご冥福を祈りたいと思います」とあいさつしました。
　日本共産党の山村糸子県委員長代理は、遠藤正・元党県委員長（元治安維持法国家賠償要求同盟県本部会長）をはじめ、各界で不屈に活動した諸先輩の遺志を受け継ぐとのべ、「立党の精神である国民の苦難軽減と社会進歩の事業にさらにこん身の力を尽くしたい」として来年の参院選勝利を誓いました。
　県評、県商連、新日本婦人の会県本部、治安維持法国家賠償要求同盟県本部、県平和委員会、国民救援会県本部の各代表が、静岡空港建設の是非を問う住民投票条例制定運動や労働、業者、女性、平和など諸活動で奮闘した故人らの功績をたたえる追悼の言葉をのべました。
　遺族代表各氏が謝意をのべ、同碑に献花し、故人をしのびました。
(２００９年１２月０３日，「赤旗」) （Page/Top）

プロレタリア画家／よみがえる市村三男三／上／町が受け入れ修復・展示

　「絵の前で動けなくなるほど感動した。こんなに圧倒された絵は初めて」「きびしい中でも確かなタッチと未来を見据えた明るさを感じた」―。戦前から戦後初期にかけて活動したプロレタリア美術家・市村三男三（みおぞう）＝１９０４年―９０年、日本共産党員＝の遺作展が１１月２３日まで、新潟県阿賀野市で開かれ、鑑賞した人の心をとらえました。廃棄処分されようとしていた絵が寸前で保存され、よみがえらせた人々の人間模様にも関心が高まっています。
　（新潟県・村上雲雄）
　
　三男三は、同じ新潟県出身のプロレタリア美術家・矢部友衛、鳥居敏文らと東京を中心に活動し、選挙やストライキ闘争の支援などに積極的に参加。美術展を開こうとして警察に検束・勾留されたこともあり、戦後も平和運動や国政革新のため一貫して活動しました。
　三男三は郷土を離れていたうえ、プロレタリア美術運動も官憲から弾圧されたため、郷土の人にまったく知られていませんでした。

先駆者を顕彰
　郷土で知られるきっかけになったのは、新潟在住の作家・なかむらみのる氏が、三男三と交流のあった東京都練馬区の鵜飼勲さん（０８年に死去）、妙子さん（６６）夫妻と友人だったからです。三男三が有名な画家で下越地方出身だと聞き、０３年から三男三のルーツ探しが始まりました。
　０４年に三男三の出身が旧横越町だと探し出したころ、同町も新潟市との合併（０５年）を控え、郷土の先駆者を顕彰する取り組みを進めていました。
　鵜飼さん夫妻は、妻・愛子さんから委託されていた三男三の油絵５００点、デッサン・スケッチ１５００点を横越町に寄贈することにしました。
　当時の浅見良一町長は、三男三の作品の芸術的価値を高く評価。町は、絵を受け入れただけでなく、絵の修復や額装などに約３千万円をかけました。その後０４年、０５年に町主催（合併後は新潟市主催）で、生誕百年三男三遺作展を開催。

見る人の心に
　浅見町長は、来場者に配布した記念冊子で「生き生きとした色鮮やかな作品の数々は、見る人の心に安らぎと生きる喜びを与えてくれます。改めて芸術作品が人の心に与える癒しと感銘の深さ、強さを実感させられます」と述べました。
　当時、文化財調査審議委員長で、絵の受け入れに尽力した神田一正さん（７３）は「昔はプロレタリア画家を『アカ』と言って偏見を持った人がいたが今はいない。だから埋もれていた人を世に出してしかるべきと思った。よみがえって感激している」と語ります。
　同じく阿部兵一中央公民館長（７５）も「絵に出合い、ほれ込んだので大事にしなければと思った」と話しています。
　三男三と親交があった日本美術会の画家・永井潔氏（故人）も当時来場し、「三男三の心の動きや時代環境、息吹を感じとってほしい。行政がこれだけの規模でプロレタリア作家の美術展を開くのは画期的」と語りました。
　趣味で長年絵を描いている新潟市秋葉区の五十嵐功次さん（７１）は「抑圧された時代の中でも将来の希望を描こうとしたのを感じる。派遣で働く今の若い人に見てもらい、感動と勇気を持ってもらいたい」と語ります。
　（つづく）
( ２００９年１２月０２日，「赤旗」) （Page/Top）

朝の風／『文学少女』と『蟹工船』

　昨年末のライトノベル人気ランキング１位は、野村美月著『文学少女』シリーズだった｡シリーズは完結したが、挿話集などが発行され、今年も上位にランキングされている。
　このシリーズは、文学の名作をベースにしながら高校生の悩みや葛藤を描く。今年発行された挿話集では、小林多喜二の『蟹工船』もとりあげられた。主人公の少女は、文学を〝食べる〟ほど愛しており、名作を料理にたとえ紹介する。『蟹工船』はこんなふうだ。「まるで魚のあらや、ぶつ切りのごぼうやこんにゃくや野菜を、大きなお鍋で煮た粕汁のようね！」「思いきって口へ入れてしまえば、荒々しい旨みが舌を震わせ、酒粕の原始的な香りに酔わされて、おなかも心も熱くなるの！」。
　このあと、『蟹工船』をモチーフに軽い学園ドラマが続くのだが、最後に、原作に立ち返り、ストライキ失敗のあと、労働者は「全員が団結して立ち上がらなければならないんだって」といい、「そう、まさにその瞬間、酒粕を飲みこんで、おなかと頭がカァァァァッと熱くなるような感動が、読み手であるわたしたちに、押し寄せるのよ！」と語る。ライトノベル風な表現だが、言いえて妙だと思った。これを読んだ若者が原作も手にするとうれしい。
　（支）
( ２００９年１２月０２日，「赤旗」) （Page/Top）

潮流

　かみそり、納豆、文庫本…。最近、自動販売機で簡単に買える物です。あわただしい世の中、自販機の是非はともかく、手軽さが受けるのもうなずけます▼自販機で本など売られているようすをみると、読書もままならなかった時代を振り返る人もいるでしょう。たとえば１９３０年代のこと。製紙工場で働いていた１３歳の少女が警察に捕まり、命を失いかねないほどの拷問、暴行をうけました▼与謝野晶子が日露戦争に出征した弟の身を案じ「君死に給うことなかれ」と詠んだ詩に、赤線をひいていたから。治安維持法に違反する、というのです。寄宿舎の私物検査で、特高警察に知られました▼しかし、現代の最高裁の裁判官が、そんな歴史に学ばず自販機のように軽く判断を下しては困ります。東京・葛飾のマンションに日本共産党の区議会ニュースを配り逮捕された荒川庸生さん。彼に対する弾圧を追認した最高裁判決の、なんという軽さ▼日本弁護士連合会の言葉を借りると、表現の自由は「民主主義社会の死命を制する重要な人権」です。ところが最高裁にかかれば、表現の自由は、住民の総意にもよらないマンション管理組合の張り紙１枚の前に、ひざまずかなければなりません。「住居侵入」の罪といいますが、被害届も出ていません▼憲法９７条の重みを、思い起こしたい。「…基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪え…侵すことのできない永久の権利として…」
( ２００９年１２月０２日，「赤旗」) （Page/Top）

【11月】

*         【11月】（ヘッドライン）

*         桑原英武著『治安維持法とわたし』（戦前編戦後編）を読んで／莇昭三／〝青年よ「志」をもて〟と

*         文化／ＣＤ＋ＤＶＤ「交響詩ジャングル大帝」／作曲家冨田勲さん

*         信念と不屈の画家　市村三男三／なかむらみのる著／評者根岸君夫画家

*         朝の風／市村三男三という画家

*         高橋とみ子氏墓前祭を開く／仙台

*         治維法国賠同盟県本部が集会／愛媛・松山

*         国家賠償法制定へ党道委に協力要請／治維法国賠同盟

*         日韓の心つなぐ詩人・尹東柱／作家多胡吉郎さんに聞く／下／国民感情理解しあう

*         日韓の心つなぐ詩人・尹東柱／作家多胡吉郎さんに聞く／上／民族文化守る純真さ

*         話題の交差点／プロレタリア画家市村三男三展／圧倒され動けなくなった／郷土の人の心とらえる／新潟県

*         相次ぐ「蟹工船」の外国語翻訳出版／世界的経済危機を映す鏡として／島村輝

*         「坂の上の雲」何が問題か／二つのシンポジウムから／下／司馬さんは映像化を拒み続けた

*         農地解放学ぶ／秋田で講演会／農林水産９条の会

*         「坂の上の雲」何が問題か／二つのシンポジウムから／上

*         文化／生誕１００年松本清張記念館を訪ねて

*         おはようニュース問答／治安維持法犠牲者が謝罪と補償求めてるね

*         武内清の没後６３周年で墓前祭／函館

*         治維法国賠同盟釧路支部が大会

*         治維法国賠同盟／新役員らが党本部訪問

*         治維法国賠同盟新会長柳河瀬精さんに聞く／国家テロ追及運動さらに

*         朝の風／勝山俊介さんの遺した仕事

*         朝の風／唯物論者でもあった瀧口修造

*         治維法犠牲者の賠償求め意見書／厚岸町議会

【本文】（Page/Top）

桑原英武著『治安維持法とわたし』（戦前編戦後編）を読んで／莇昭三／〝青年よ「志」をもて〟と

　桑原英武氏（９７歳）が治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟の機関紙「不屈―大阪版」と大阪民衆史研究会「会報」に連載された青春時代から今日までの「歩み」を戦前編、戦後編の２冊に纏められた。著者は戦前京都の旧制第三高等学校を中退、労働運動に参加。戦後は医療民主化運動、民医連結成に参画、晩年から治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟など多面的に民主運動の中核的役割を果たしてきた。

囚人「八八八」番
　「戦前編」は治安維持法下での当時の阪神地域での「左翼運動」を綴りながら、それに「ボランティア・オルグ」として参加した自らの青春時代を書き、「戦後編」では戦後直ちに大阪で民主診療所（上二病院）をつくり、今日の「全国民医連」の組織を立ち上げた歴史的経過と「治安維持法国賠同盟」の大阪支部発足の経緯と今日までの経過が書かれ、さらに自らの戦前の２回の検束と拷問の経験から日本独特の「代用監獄」の廃止を強く訴えたものとなっている。
　戦前の「左翼運動」については、小林多喜二はじめ多くの人々の記録があるが、本書での著者の記述（何人かの同志の個人的な記録の引用も含めて）はきわめて具体的で当時の「活動家」の生き様を彷彿とさせてくれる。また特に著者が囚人「八八八」番となってからの「獄中信」（初期の手紙は焼失してないが）を読むと、著者の悠々せまらない「不屈」が伝わってくる。

民医連の「歴史」
　後編には現在の民医連の発足の経緯を述べている。やや微細に書きすぎの感がないでもないが、最初の民医連「綱領」誕生の社会的背景などが読み取られ、さらに２年後の改定の経緯、そして第８回総会での再改定に至る情勢の変化や組織内討議の状況が書かれている。これは全日本民医連の「歴史」の貴重な資料となるであろう。
　著者は「第三高等学校」に入学して直ちに「職業革命家を志し」と書いているが、今日の青年には通用しにくい「志」である。当時荒れ狂った日本帝国主義の軍事的対外侵略は、国民にとっては前代未聞の暴力支配を伴っていたが、その圧制にたいする青年の純粋な感性がこの「志」となったであろうことは頷る。著者の青春時代から約８０年を経た今日、日本は「日米安全保障条約」という世界に前例のない長期間の軍事的支配下にある。そこから新たな矛盾が国民に覆いかぶさっているのが現状。その矛盾をどう見、どのような志を立てるか？を著者は今青年に呼びかけているのであろう。
　（あざみ・しょうぞう　医師）
( ２００９年１１月３０日，「赤旗」) （Page/Top）

文化／ＣＤ＋ＤＶＤ「交響詩ジャングル大帝」／作曲家冨田勲さん


手塚さんが自分で依頼に…ピアノを弾いて説得されて
　〝世界のトミタ〟と呼ばれる作曲家の冨田勲さん。日本国内のみならず、世界の音楽シーンをリードしてきました。１０月、ＣＤ＋ＤＶＤ「交響詩ジャングル大帝」（コロムビア）を発売。４３年ぶりの改訂版です。胸の内をたずねました。
　西條正人記者
　「交響詩ジャングル大帝」は、手塚治虫原作のアニメ「ジャングル大帝」をモチーフにした冨田さんによる管弦楽曲です。１９６６年、ＬＰが発売され、大ヒットしました。
　手塚治虫生誕８０年の今年、冨田さんは同曲を作編曲し直して、ＣＤ＋ＤＶＤ化しました。演奏は、藤岡幸夫指揮、日本フィルハーモニー交響楽団。
　リリースに先立って都内で開かれた記者会見には、どよめきが起きました。
　会場に、５・１チャンネル（四方に六つのスピーカーを設置して音を出す）システムを配置し、ＤＶＤの音声を再生。すると、バイオリンやフルート、ホルン、パーカッションなどの音が、前から後ろから、記者たちを包み込むようにして流れてきたのです。
　舞台には「ジャングル大帝」の絵を映し出し、ジャズ歌手の綾戸智恵さんがナレーション。今にもパンジャ（レオの父親）が飛び出してきそうな、物語と音楽が融合する臨場感。これらは、ＤＶＤに収録されています。
　冨田さんは言います。
　「５・１チャンネルは、エジソンの蓄音機以来の発明ですが、一部のオーディオ愛好家向けになってしまっています。私は、子どもや母親、教師にこそ、この音響を体験してほしいし、楽器の面白さを知ってほしいと思って、動物たちの音の舞台演出をつくったんです」
　♪　　　♪
　冨田さんの立体音響へのこだわり。それは６歳のとき、医師の父親に連れられて中国・北京の天壇公園を訪ねたのが原点です。
　「回音壁という音が面白く反響するところへ行って、そのときの印象がずっと残っているんです」
　クラシック音楽の管弦楽法をベースにしながら、日本でいち早くシンセサイザーを導入するなど、音の響きを追求してきました。
　大学在学中から作曲を始め、ＮＨＫ「新日本紀行」「きょうの料理」、大河ドラマなどの音楽を手がけました。手塚治虫本人から依頼があったのも、そのころです。
　「手塚さんは、マネジャーが行くより自分が行って話した方が手っ取り早いという人でした。相手が嫌と言えなくなる（笑い）」
　手塚は自らピアノでチャイコフスキーの交響曲第５番を弾き、「こんな壮大な広がりをもった音楽がほしい」と、冨田さんを口説きました。
　冨田さんは､｢ジャングル大帝」の収録の都度、オーケストラを率いて演奏。ディズニー映画を超えたいという手塚の熱情に、「私たちは手塚旋風に巻き込まれていたんだと思います｣と｡
　♪　　　♪
　冨田さんは、山田洋次監督の映画「学校」や「たそがれ清兵衛」「隠し剣　鬼の爪」「武士の一分（いちぶん）」「母べえ」の音楽でも知られます。
　戦時中、文学者の夫が治安維持法によって逮捕されながら、二人の娘を育て生き抜く母親を描いた映画「母べえ」（主演・吉永小百合）。作曲の際は、自らの重苦しい戦争体験が重なりました。
　「焼け野原、空腹、殺伐として…。今の若い人には理解できないと思いますが、あれは音楽にはならないです。それをどう表現するか。正直悩みましたが、結局、空の星から見ているような描き方をしました。静かに、静かに」
　自身は、終戦を中学１年生のとき愛知の学徒動員の工場で迎えました。
　日本人で初めてグラミー賞にノミネートされたほどの大家ですが、若手の音楽家にも気さくに話しかけます。
　「レコード印税だって、駆け出しだから安いということはない。同じです。私は、若い仲間と一緒に世間話をしたりお酒を飲んだりしているだけ。音楽に年齢は関係ないと思います」

とみた・いさお＝１９３２年東京生まれ。慶應義塾大学卒。尚美学園大学大学院芸術情報研究科教授。１０月２１日、ＣＤ＋ＤＶＤ「交響詩ジャングル大帝～白いライオンの物語～《２００９年改訂版》｣をリリース
(２００９年１１月２９日，「赤旗」) （Page/Top）

信念と不屈の画家　市村三男三／なかむらみのる著／評者根岸君夫画家


実像探しから顕彰まで熱く伝える
　あるきっかけから、それまで未知であった同郷出身の画家の作品と出会った著者は、その画家の不思議な生き方（絵を売らず、残した大量の作品の処理を知人に託して死んだ)への疑問と好奇心から､画家の実像探しを始める。
　この小説は画家・市村三男三の人と作品を追い求め、さまざまな人との接触を通じて念願を果たしてゆく著者自身の探求の旅の物語である。
　と同時に、その努力が公的機関の活動に広がり、他作品の所在の判明から、画家の故郷横越町『町史』への掲載、作品の一括寄贈、公費による修復、公営遺作展開催に至る、顕彰・作品保存の理想的な結果実現までのルポルタージュでもある。
　戦前、一九二〇年代末以降、社会主義運動興隆と呼応し、プロレタリア美術運動が展開され、日本美術史に特異な足跡を残しているが、市村三男三は、その中にあって小さくない役割を果たし、戦後も新しい統一戦線的な美術組織日本美術会の結成に参加し、創作と活動を展開した。
　その人物像解明の過程を、回想を交えながら作者は熱く語っている。
　調査に協力した人々＝作品を預かった鵜飼氏・共産党新潟県委の北村氏・町公民館員・町史編纂委員の他、画家の鳥居敏文・永井潔・小林春規の各氏や画家の妻愛子さんらとの接触の様の綿密な描写を通し、各人の人物像も浮かぶ。同世代の小林多喜二との比較も興味深い。作品そのものへの著者自身の言及が淡いきらいがあるが、市村三男三顕彰の成果を反映した貴重な書といえよう。
　ただ、画家の評伝として読むとき、多数の作品を知人に託しながら、最後まで経歴も語らずに他界したことや、病後、アンデパンダン展への出品が途絶えた経緯なども含めた解明が欲しかったと思う。

１９２９年生まれ。ＮＰＯ法人ホロコースト教育資料センター副理事長。
( ２００９年１１月２９日，「赤旗」) （Page/Top）

朝の風／市村三男三という画家

　市村三男三という共産党員画家がいたことを、なかむらみのる『信念と不屈の画家　市村三男三』（民主文学館)で初めて知った｡
　著者自身も、新潟から赤旗まつりに参加するときに宿泊した知人から、同郷のプロレタリア美術家がいたことを知って、その生涯を追っていく。その過程が一冊の本にまとめられた。
　市村は、小林多喜二と同時代の人で、二人の経歴を見ると、生年、マルクス主義へ関心をもったとき、治安維持法での逮捕、結婚の時期などが、ほとんど重なっている。
　市村は戦後、描きためた絵を売らず、その存在も知られてはいなかったが、著者の調査が縁で、市町村合併する横越町役場の最後の仕事となった町史で紹介され、遺作展も催されることになる。
　著者自身、この著作をルポルタージュなのか小説なのかと記している。事実を追ったという意味では報告文学と言ってよいのだろうが、立ち現れてくる市村の像、その市村の調査に奮闘する著者をはじめとした共産党員や自治体職員などの熱意は読者の胸をうつ。そこには芸術作品を受け継ごうという心根が示されている。
　表紙や扉も含めて、市村の絵が１１点収録され、その仕事を紹介していることもこの本の大きな魅力だ。
　（予）
( ２００９年１１月２６日，「赤旗」) （Page/Top）

高橋とみ子氏墓前祭を開く／仙台

　７５年前に特高警察の拷問により２５歳で亡くなった仙台市出身の高橋とみ子さんの墓前祭としのぶつどいが２１日、仙台市で開かれました。主催は、治安維持法国賠同盟宮城県本部で、４５人が参加しました。
　生誕１００周年をむかえた高橋とみ子さんは、プロレタリア美術家同盟などに参加し、仙台市の紡績・製糸会社の女工に対して労働組合の結成に向け活動、逮捕されて、中新田署で死亡しました。
　墓前祭は墓のある青葉区北山の秀林寺で行われ、同本部の大沼耕治氏と日本共産党の遠藤いく子県議があいさつし、出身校の後輩の尚絅学院同窓会長の鶴間順子さんと高見のり子市議ら３人が校歌を歌い、しのびました。
　つどいでは、日本共産党宮城県委員会の元委員長の本田勝利氏が「治安維持法の時代と不屈に生きた人びと」と題して講演。宮城県内での３０年代初めのプロレタリア文化団体の相次ぐ結成や、運動に参加した人たちの戦前・戦後の活動や生き方をさまざまな証言を駆使しながら明らかにし、不屈の志を受け継ごうとよびかけました。
(２００９年１１月２５日，「赤旗」) （Page/Top）

治維法国賠同盟県本部が集会／愛媛・松山

　治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟愛媛県本部はこのほど、全国大会を受けての臨時集会を松山市で開きました。
　中川悦良会長は、先月の全国大会で、新しい情勢のもとで、治安維持法犠牲者に対する謝罪と賠償を求める国会請願を早急に実現させるために「１１、１２月を特別月間として全国いっせいに取り組むこととしました」と報告。「愛媛でも愛媛選出の各党の国会議員に要請し、請願署名も今年こそ５千の目標を達成しよう」と提案しました。また、ＮＨＫの「坂の上の雲」の放映と関係行事について「明治の日本の韓国、朝鮮、中国、アジアへの侵略と軍国主義への無反省と右翼化に利用されないか注意してみていく必要がある」などの意見が出て、交流しました。
(２００９年１１月２４日，「赤旗」) （Page/Top）

国家賠償法制定へ党道委に協力要請／治維法国賠同盟

　治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟道本部（外尾静子会長）は２０日、日本共産党道委員会を訪れ、治安維持法犠牲者に対する国家賠償法制定への協力を要請しました。
　道本部役員で中央本部副会長の宮田汎氏、道本部事務局長の伊藤俊氏、副会長の横山博子氏が、道委員会の石橋哲郎副委員長と懇談しました。
　宮田氏は「政権が新しくなり、今が大事な時期だと思います。圧倒的多数の国会議員に紹介議員になってもらい、来年こそ制定を実現したいと思っています」「首相、官房長官、法務大臣にも『直接当事者の意見を聞いてほしい』と要請しています」と話しました。
　石橋氏は「道内の地方議会でも、国家賠償を求める意見書が可決されるなど変化が生まれています。今後も積極的に議会に提案していきます」と応じました。
(２００９年１１月２４日，「赤旗」) （Page/Top）

日韓の心つなぐ詩人・尹東柱／作家多胡吉郎さんに聞く／下／国民感情理解しあう

　私は韓国の国民的詩人･尹東柱(ユン・ドンジュ）をテーマにしたＮＨＫスペシャル「空と風と星と詩―尹東柱・日本統治下の青春と死」（１９９５年３月放映）を日韓共同で制作しました。１０年近く企画提案しつづけてようやく実現しました。
　ＫＢＳ（韓国放送公社）とＮＨＫ双方がディレクターを出し、取材から撮影、編集に至るまで共同で作業し、同一内容のものを放送しました。日韓放送史上、初の本格的共同制作となりました。
　福岡刑務所で獄死した治安維持法犠牲者の尹東柱を取り上げる―日韓を隔てる大きな壁を乗り越えた気持ちでした。それまで日韓共同制作の番組がなかったわけではありませんが、政治的に微妙な問題を含む近代史は避けるのが一般的でした。しかし、別の壁が出現しました。
　韓国では尹東柱の死（４５年２月）は「人体実験」によるものと考えられています。遺体を引き取りに来た父親が、おいの宋夢奎（ソン・モンギュ）から「２人ともわけのわからない注射を打たれた」と聞かされたことが、根拠となっています。宋夢奎も治安維持法違反で福岡刑務所に収監されており、４５年３月に獄死しました。
　私は、当時の看守と服役者にインタビューし、戦後まもなく米軍が押収した福岡刑務所に関する資料も調べました。「人体実験」を証明するものは発見できませんでした。
　編集段階でＫＢＳディレクターは「人体実験」による死亡にこだわりました。丸１日まったく編集が進まない日さえありました。お互いに声を荒らげることはありませんでしたが、心中は穏やかではいられませんでした。最後は、死因は謎ということで決着しました。
　私はこの体験を通して、目をつりあげていがみ合うのではなく、互いに相手が背負う国民感情を理解しあうことの大切さを学びました。民族、国境を超えた相互理解には不可欠なことです。
　取材の中で、尹東柱が同志社大学の同期生たちと撮った写真を発見しました。４３年初夏に宇治川にハイキングに行ったときのものです。この写真が起点となり、いま京都では、「京都府立宇治公園塔の島」に尹東柱の記念碑を建てようとする運動が起きています。府知事への署名が、およそ１万筆集まっているそうです。
　私は９９年からロンドンに滞在し、今年９月に帰国しました。地球の反対側にいる間に、私が発見した写真がきっかけとなり、尹東柱の碑の建立運動が起きているとは、とてもうれしいことです。
　番組でまいた種が芽を出し、幹に成長したと感じました。９月２４日、尹東柱を愛する（京都の）宇治の皆さんの前で講演しました。これが帰国後初めて、公の場での活動となったのも、何かの縁を感じます。
　日本にも韓国にも民族感情を全面に出し、相手を非難する人たちがいます。多くの国民は、本当はお互い理解しあいたいと願っていると思います。尹東柱の詩は必ず相互理解に役立つはずです。
　（おわり）
( ２００９年１１月２４日，「赤旗」) （Page/Top）

日韓の心つなぐ詩人・尹東柱／作家多胡吉郎さんに聞く／上／民族文化守る純真さ

　韓国では誰もがその名を知っている国民的詩人・尹東柱（ユンドンジュ）。京都の同志社大学在学中の１９４３年７月、治安維持法違反で逮捕され、４５年２月、２７歳の若さで獄死しました。「尹東柱は日韓の心をつなぐ」と語るのは、作家で元ＮＨＫディレクターの多胡吉郎さん（５３）です。ＮＨＫスペシャル「空と風と星と詩―尹東柱・日本統治下の青春と死」（９５年３月放送）をＫＢＳ（韓国放送公社）と共同制作しました。来年は日韓併合から１００年。尹東柱と日韓両国の友好について語ってもらいました。
　（聞き手　豊田栄光）
　私が尹東柱の詩と出会ったのは１９８０年代半ばのバブル期。株や不動産でもうけた金で、遊びまわる風潮になじめませんでした。
　尹東柱の代表作「序詩」には、彼の純真さと人間の魂の美しさを感じました。「死ぬ日まで空を仰ぎ／一点の恥辱（はじ）なきことを…そしてわたしに与えられた道を／歩みゆかねば」（伊吹郷訳）
　「序詩」は日本植民地時代の４１年に書かれたものです。日本に協力する朝鮮人もいたでしょう。せめて私（尹東柱）だけは「恥」に積極的に手を染めない、そう自分自身に誓った詩だと思います。
　◆　　◆
　尹東柱は同志社大学に入る前、立教大学で半年間学んでいます。その時代に「たやすく書かれた詩」（４２年６月）を残しています。日本植民地時代の朝鮮人青年の心の痛みが本当によく分かります。
　「窓辺に夜の雨がささやき／六畳部屋は他人（ひと）の国…かえりみれば、幼友達を／ひとり、ふたり、とみな失い…人生は生きがたいものなのに／詩がこう　たやすく書けるのは／恥ずかしいことだ」（伊吹郷訳）
　◆　　◆
　「失い」の中には姓の「尹」も含まれているはずです。彼は、日本に来るために「平沼東柱」と創氏しています。
　日本語が強制される時代、尹東柱は民族の文化を守りたいと、ハングルで詩を書き続けていました。それが朝鮮独立運動に関与したとされ、京都の下鴨警察に逮捕され、福岡刑務所で獄死しました。
　尹東柱はこぶしを振り上げて「日本帝国主義打倒！」と叫ぶ詩人ではありません。詩が純真で美しいがゆえ、あの時代の隣国人の痛みが、日本人の心にも入ってきます。
　「冬のソナタ」の主人公を演じたペ・ヨンジュンさんの登場で、日本では韓国への関心が高まりました。
　日韓の真の友好には歴史の理解も含まれます。尹東柱もハンサムな青年でした。日本人には、彼の詩をぜひ読んでほしい。「ヨン様プラス　尹（ユン）様で」と、なってもらいたいと思います。
　（つづく）

尹東柱（ユンドンジュ）　１９１７年、旧満州北間島（現在の中国龍井市）生まれ。４２年に日本に渡り、同年４月から半年間、立教大学で英文学を学ぶ。同年１０月、同志社大学に入学。４３年７月に治安維持法違反容疑で逮捕され、４５年２月に福岡刑務所で獄死。生前まとめた自選詩集「空と風と星と詩」が韓国で４８年に出版される。
多胡吉郎（たご　きちろう）　作家。１９５６年東京生まれ。ＮＨＫのディレクター、プロデューサーとして活躍。９９年にロンドン勤務となり、２００２年にＮＨＫを退職。英国にとどまり文筆活動を開始し、今年９月に帰国。著書に「リリー、モーツァルトを弾いて下さい」、「わたしの歌を、あなたに―柳兼子・絶唱の朝鮮」など。
( ２００９年１１月２３日，「赤旗」) （Page/Top）

話題の交差点／プロレタリア画家市村三男三展／圧倒され動けなくなった／郷土の人の心とらえる／新潟県

　戦前から戦後初期にかけてプロレタリア美術家として活動した新潟市江南区横越地区（旧横越町）出身の市村三男三（みおぞう）＝１９０４年～９０年、日本共産党員＝の遺作画展が阿賀野市で開かれていて、鑑賞する人の心をとらえています。
　同展は、治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟新潟県本部が開いたもの。三男三の業績や人間像を著した、なかむらみのる氏(第２９回多喜二･百合子賞受賞者)の『信念と不屈の画家　市村三男三』(光陽出版社）が出版されたのを受けて、三男三の作品を鑑賞しながら、「戦争と暗黒政治を許さない」社会を考えてもらう目的で後援しています。
　「絵の前で動けなくなるほど感動した。こんなに圧倒されたすごい絵は初めて見た。埋もれていた人の絵を世に出したことは大変なことだと思った」。同展を鑑賞した市内の酒井荘栄さん（７３）はこう語ります。
　三男三は、新潟県出身の同じプロレタリア美術家・矢部友衛、鳥居敏文らと東京を中心に美術活動をしました。選挙やストライキ闘争の支援などに積極的に参加。美術展を開こうとして警察に検束・拘置されたこともあり、戦後も平和運動や国政革新のため一貫して奮闘し、アンデパンダン展にも多く出展しました。
　地元では無名だった三男三が郷土に知られることになったのは、なかむら氏ら多くの人の努力と、郷土の先駆者たちを顕彰しようとした横越町の浅見良一町長の英断により、三男三の油絵５００点、デッサン・スケッチ１５００点が寄贈され、町主催で０４年と０５年(合併後は新潟市主催)に生誕百年の遺作展が開かれたからです。
　今回の展示は、町所蔵(現在は新潟市所蔵)のものではなく､個人所有の作品２４点を借りて展示｡初めて公開される作品ばかりです｡中には､日本共産党新潟県委員会所蔵の｢那須の茶臼山｣(８０㌢×１００㌢)などの大作もあります｡１５日には｢市村三男三の絵を楽しむ講演と音楽の集い｣が開かれ､多数が参加しました｡
　鑑賞した人からは｢簡潔にして澄んだ色彩に心が洗われました｣｢三男三の絵は､出合い､つながり､いろいろなえにしで私たちに感動を与えてくれているのだと思いました｡とてもすてきな時間を過ごさせてもらいました｣などの感想が寄せられました｡
　市村三男三展は､２３日まで阿賀野市の｢緑と花の古民家風ギャラリー･木り香｣(五頭いこいの森手前)で開催｡観覧料３００円｡問い合わせ＝０９０(２８８１)０６１０
(２００９年１１月２１日，「赤旗」) （Page/Top）

相次ぐ「蟹工船」の外国語翻訳出版／世界的経済危機を映す鏡として／島村輝

　過酷な条件のもとで生命までもしぼりとられるような労働をつぶさに描いた小林多喜二の「蟹工船」が、再び大きく注目を浴びるようになったのは、２００８年初頭からのことである。その後の、ブームともいえる「蟹工船」現象の背景には、資本主義の仕組みの行き詰まりと、「格差社会」の広がり、「貧困」の顕在化があった。これが日本ばかりの問題でないことはいうまでもない。そのため、日本の「蟹工船」現象は広く世界から注目を集め、各国語への翻訳・出版を含めたさまざまな反応が生まれてきた。

ブームに先行注目の伊語版
　最近、この作品の、これまで広く知られていなかった言語への翻訳のいくつかが、あらためて見出され、紹介されてきている。その一つが、１９８３年にキューバのウラカン社から出版されたリディア・ペドレイラ訳によるスペイン語版である（２００８年１１月１５日付、本紙に紹介記事）。様々な事情からキューバ国外にはほとんど出なかったとはいえ、８０年代という時期、スペイン語への初訳として大きな意義を持つ仕事である。
　ブームに先駆けての翻訳出版ということでは、ファリエロ・サリスの手によるイタリア語版も注目に値する。このイタリア語版は、２００６年に、ティレニア・スタンパタリ社から刊行されたもので、訳者による本格的な解説が付されている。表紙にデザインされた海軍旗は、１９５３年の映画『蟹工船』のラストシーンを思い起こさせる。これらは２００８年以前に企画、刊行されたものであり、この小説が決して一時のブームの中だけで注目されたものではないことを明かしている。
　韓国では、軍事政権下の１９８７年に李貴源による翻訳がチング出版社から刊行されて民主化闘争を大きく励ましたが、これとは別に昨年、梁喜辰による新訳がムンパラン出版社から出版された。帯広告には「なぜいま小林多喜二なのか！八八万ウォン世代、非正規職、両極化、ワーキングプア…、もしかしたら、この現実が蟹工船じゃないのか？三〇万人の日本人読者が再発見した話題の小説」と書かれている。

中国でシンポ仏で記念催し
　中国では今年１月、南京の訳林出版社から、葉渭渠による旧訳（１９７３年初版出版）が新たな体裁で再出版されたが、さらに７月には北京の人民文学出版社から、秦剛訳マンガ版『蟹工船』が、初の小説完訳（応傑・訳）を付して刊行され話題を呼んでいる。もう一つの中国語版として、台湾でも管仁健訳が、台北の文経社から「文経文庫二三四」として２００８年に発刊されている。これらの韓国語版、中国語版いずれも、日本での「蟹工船現象」を取り上げ、自らの国や地域の問題と結び付けてその意義を論じた解説を付している点が共通している。
　この１０月には、フランスのヤゴ出版社から、エヴリン・オドリ訳によるフランス語版も刊行され、さっそく様々なメディアの書評に取り上げられている。今年５月にはこうした「蟹工船」翻訳者たちが一堂に会したシンポジウムが東京で開催されたが、その後７月には北京でマンガ版の出版を記念するシンポジウムが開かれ、さらに来年１月３０日にはパリの日本文化会館でフランス語版の出版を記念する催しが予定されている。多喜二が「蟹工船」を発表して８０年、こうしてますます世界から注目されていることが、なによりもこの作品の今日的な意義と、文学としての息長い生命力を示しているといえるだろう。
　（しまむら・てる　フェリス女学院大学教授）
( ２００９年１１月１９日，「赤旗」) （Page/Top）

「坂の上の雲」何が問題か／二つのシンポジウムから／下／司馬さんは映像化を拒み続けた

　司馬遼太郎氏の小説「坂の上の雲」のＮＨＫテレビドラマ化には、どんな問題があるのでしょうか。神戸市内で８日に開かれたシンポジウム「なぜ、いま『坂の上の雲』かを考える」では、中塚明・奈良女子大学名誉教授の基調講演後、各界のパネリストたちが多彩な視点から解き明かしました。
　出席者は、石川康宏（神戸女学院大学教授）、〇橋亨（映画監督）、羽柴修（弁護士）、牧俊太郎（元「大阪民主新報」編集長）の各氏。司会は湯山哲守さん（ＮＨＫを監視・激励する視聴者コミュニティ共同代表）が務めました。
　司馬氏の小説を研究してきた牧さんは、司馬氏が生前、「ミリタリズム（軍国主義）を鼓吹しているように誤解される恐れがある」と語り、「坂の上の雲」の映像化を一貫して拒否してきたと指摘。「その理由が大事」だと語りました。

改憲論に批判的
　なぜ映像化を拒んだのか。牧さんは、「坂の上の雲」が明治国家を賛美し国内の反戦・非戦の動きを描いていない一方、司馬氏自身が晩年に改憲論に批判的な言動をするなど、「『坂の上の雲』と乖離(かいり)した心情のゆらぎがあったのではないか｣と推測します｡
　「極道の妻たちⅡ」など、数々の作品を手掛けてきた〇橋さん。制作者の視点から「司馬さんの作品はドラマチックだが、あくまでドラマであって、ドキュメンタリーではないということを押さえなくてはいけない」と、「映像」の持つ強大な力と影響力を懸念します。
　「ここ１０年の改憲の動きと呼応するように、戦争を賛美するような映画が次々と作られてきた」という〇橋さん。ＮＨＫが「坂の上の雲」の映像権を得た２００１年は、日本軍「慰安婦」問題を扱ったＥＴＶ番組が、自民党議員の圧力で改変された事件が起きた年と重なることなども指摘し、「危険で、うさんくささを感じる」と言います。
　石川さんは､｢坂の上の雲」で示されている「明治栄光論」は、「東アジアで起きている交流と平和の流れに、逆流を起こす役割を果たす」と、経済学の視点から解明します。
　「中国を中心とした東アジア経済の台頭が著しいなか、地位が低下している財界もアメリカも、金もうけのためにも東アジアと仲良くする方向に向かわざるをえなくなっている。しかし、順風満帆でなくなった『明治栄光論』を仕掛けてくるところに、反動側の役割とあせりがある」

歴史知る好機に
　「九条の会」で活躍する羽柴さんは、「来年５月に国民投票法が施行され、いよいよ改憲手続きができる政治情勢となったこの時期に、ＮＨＫが『坂の上の雲』を放送する影響は大きい」と言います。
　羽柴さんは、「坂の上の雲」への批判だけにとどまらず「とくに若い人との議論は大きな課題。ＮＨＫドラマの放映を好機にしていきたい」と対話活動を提起。石川さんも「事実を知ることは大きな力になる。国民の話題になるのを機に、学びを広める取り組みが必要」だと語りました。
　シンポジウム終了後、「坂の上の雲」の映像化にあたって「軍国主義賛美や他国への侵略を正当化するなどの描き方にならないこと」を求めた、福地茂雄ＮＨＫ会長あての要望書が確認されました。
　（おわり）
( ２００９年１１月１８日，「赤旗」) （Page/Top）

農地解放学ぶ／秋田で講演会／農林水産９条の会

　あきた農林水産九条の会は１４日、秋田市で学習講演会を開きました。会では政権交代の新しい情勢のもと、農業分野で憲法をまもる重要性を学ぼうと企画したものです。
　元日本共産党中央委員会農漁民局長で、現在治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟中央本部副会長・県本部会長の近江谷昭二郎さんが「農地解放のため不屈に闘った歴史と憲法」の演題で講演しました。
　近江谷さんは、戦前治安維持法の弾圧のもとで「土地を働く農民へ」と命懸けでたたかった秋田県の運動と、明治以来日本には国民主権を求める憲法制定の運動があったことを紹介し、それが戦後の農地解放実現と憲法を生み出す力になったと話しました。さらに憲法をまもり農業再生の共同を前進させることを訴えました。
　参加者（６３）＝農業＝は「歴史的な事実を学ばせてもらった。農業と憲法をまもる力になる。ほかの人にも聞かせたい」と語っていました。
(２００９年１１月１７日，「赤旗」) （Page/Top）

「坂の上の雲」何が問題か／二つのシンポジウムから／上


「明治」と「昭和」対立させ朝鮮の植民地化を宿命視
　司馬遼太郎氏の人気小説をドラマ化したＮＨＫ「坂の上の雲」が２９日から始まります。人気の実力派俳優をそろえ、全１３回を３年にわたって放送するという力の入れようです。一方、市民や学者、ジャーナリストから「憲法９条改悪の動きのあるこの時期に、なぜ？」など懸念の声も広がっています。各地で開催されたシンポジウムから「坂の上の雲」が抱える問題点を探りました。
　１日に川崎市で「日露戦争と天皇の軍隊―『坂の上の雲』が語らない真実」(主催･治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟川崎支部)､８日には神戸市で｢なぜ､いま『坂の上の雲』かを考える」（主催・ＮＨＫ問題を考える会・兵庫）が開かれました。
　二つの集会で共通して指摘されたのは、「坂の上の雲」で描かれた司馬氏の特異な日本近代史の見方でした。日露戦争は「祖国防衛戦争」で明治はよい時代だったが、日露戦争後に変質して昭和の太平洋戦争へと暴走していった、とする歴史観です。

連続性を否定
　川崎の集いで講演した山田朗・明治大学教授は、「司馬氏の歴史観は同時代人の共感を生んだが、太平洋戦争の失敗のタネは、近代日本の成功事例の頂点とされる日露戦争で、すでにまきつくされていた」と指摘します。
　そのおおもとになったのは、日露戦争の「勝利」によって軍が「軍部」として強化され、戦争の失敗や教訓が隠されていったこと、さらに日露戦争後に韓国を併合するなどの膨張政策でした。山田さんは「明治と昭和を対立させ、明治の延長線上に昭和という時代が出現したという両者の連続性を、司馬氏は軽視ないし意図的に無視している」と言います。
　こうした歴史観を生み出した背景について、山田さんは「司馬氏が当時の国家指導者の視点で歴史をとらえてしまったから」と言います。「現代の目から歴史を見ないと、植民地支配を批判する観点が当然薄くなるし、近代日本の膨張戦略も客観視できません」
　神戸のシンポジウムで講演した中塚明・奈良女子大学名誉教授も、「坂の上の雲」が明治の栄光を強調する一方で、「朝鮮の植民地化と没落がまともに触れられていない」問題を批判します。
　なぜか。中塚さんは司馬氏が小説の中で①朝鮮は地理的な条件が悪く②無力であり③帝国主義の時代に日本に従属するのは宿命だった、と論じている点に着目。「ここに『坂の上の雲』の大きなカラクリがある」と強調します。
　「読者のイメージする朝鮮像が〝自力では変わることができず、植民地は宿命〟ということになれば、明治以後に日本が朝鮮におこなった数々の侵略の事実や朝鮮民衆の反乱を書かずに済む。それで『坂の上の雲』が出来上がっているのです」

映像化に危惧
　山田さん、中塚さんともに、幾多の問題をはらんだ「坂の上の雲」のテレビドラマ化を危惧（きぐ）します。
　山田さんは「司馬氏が歴史上の人物になりきってセリフを構成しており、読者は本当の歴史書であるかのように見てしまう。さらに、映像化のインパクトは大きい」と語りました。
　中塚さんは「来年は韓国併合１００年というこの時に、なぜＮＨＫは朝鮮の民族的自主を認めない作品を映像化するのか」とのべ、参加者に「ＮＨＫに意見を投げかけてほしい」と呼びかけました。
　（つづく）

２９日から放送／ＮＨＫスペシャルドラマ「坂の上の雲」
　日露戦争の海軍参謀・秋山真之（本木雅弘）と、その兄で「日本騎兵の父」と呼ばれた好古（阿部寛）、俳人・正岡子規（香川照之）の成長と交流を軸に、日露開戦、旅順攻略戦、奉天会戦、ロシアのバルチック艦隊と日本の連合艦隊による日本海海戦までを描きます。第１部は２９日から１２月２７日まで５回放送（１０年は第２部４回、１１年は第３部４回、全１３回）。ＮＨＫは「国民ひとりひとりが少年のような希望をもって国の近代化に取り組み、存亡をかけて日露戦争を戦った『少年の国・明治』の物語」「現代の日本人に勇気と示唆をあたえるドラマ」だと企画意図を説明しています。
( ２００９年１１月１７日，「赤旗」) （Page/Top）

文化／生誕１００年松本清張記念館を訪ねて


歴史と社会の闇に迫った清張／今、この時代をどう書いただろうか
　『点と線』『ゼロの焦点』などの社会派推理小説を次々に発表し、国民的作家といわれた松本清張（１９０９～１９９２年）。１２月２１日、生誕１００年を迎えます。清張が前半生を過ごした北九州市小倉の松本清張記念館（藤井康栄館長）を訪ねました。
　玄間太郎記者
　小倉城内の一角にある記念館は、開館１１年。来館者は今年中に１００万人を超えるといわれます。
　記念館は、推理小説や歴史・時代小説、現代史・古代史など多分野にわたる創作活動と〝人間・松本清張〟を体系的に展示、紹介しています。
　４０年余で長・短編合わせて千編以上を執筆。１階展示室に入って目に飛び込むのは、壁面に飾られた全著作。壮観です。

推理小説が一変
　何をどう書き、何をメッセージしたか？　「松本清張　全仕事」の展示コーナーがこたえてくれます。
　〝清張ブーム〟に火をつけた『点と線』（５８年）や『ゼロの焦点』『砂の器』。これらの作品で「犯罪の動機」と「社会的背景」という二つの要素を導入しました。「社会が人間を犯罪に走らせる」。従来のなぞ解き重視の推理小説を一変させるもので、「清張以前・清張以後」といわれるようになります。
　探究心と情熱を注いだ現代史にかかわるノンフイクションの作品群―。
　６０年安保のうねりの中で書かれた『日本の黒い霧』は、読者に衝撃を与えました。タブーだった米占領時代の暗部を追及。帝銀事件や下山国鉄総裁事件、松川事件…。貴重なドキュメンタリー映像「日本の黒い霧―遥（はる）かな照射」（８０分）は、みごたえ十分です。
　『昭和史発掘』は、担当編集者だった藤井康栄さん（記念館館長）との二人三脚で生み出した１３巻の大作。精力的な取材、ぼう大な資料とち密な推理で、昭和初年から二・二六事件までの軍部を中心とした政治の内幕を解明しました。「スパイ〝Ｍ〟の謀略」や「小林多喜二の死」などの作品も含まれています。
　不断に新しい執筆領域と形式を広げて歴史と社会の闇に迫り、人間を深く見つめた清張文学。館内には、熱心にメモをとる若い人たちの姿もありました。

留置された事も
　清張とは、どんな人だったのか？　２２㍍に及ぶ年譜「松本清張とその時代」で、８２年の生涯をたどることができます。
　貧困のなかで育ち、学歴のない劣等感にさいなまれます。だが、けっして向上心を失わず、一家の大黒柱として家計を支えました。
　２９年３月（２０歳）の年譜には「文学仲間がプロレタリア文芸雑誌『戦旗』などを読んでいたため、〝アカ狩り〟の小倉署に検挙され、十数日間留置された」という記述も。
　５３年、「或る『小倉日記』伝」で芥川賞を受賞します。４４歳でした。森鴎外の「小倉日記」の復元に生涯をささげた男の悲劇を描きました。下積みの青年時代を投影したといわれる作品は、読者を勇気づけました。
　やがて上京、本格的な作家活動に入り、次々にベストセラーを発表。作品には平凡な、しかし生活実感のある人間たちを登場させました。多忙ななかで、社会的な発言や講演にも積極的でした。
　２階展示室は、「思索と創作の城」。応接室や書斎、書庫を再現しています。たばこを離さず執筆している清張や書庫で資料を読む清張が、今そこにいる錯覚に襲われます。
　映像ホールでは、清張原作の映画やテレビドラマを見ることができます。
　館内を見て巡って３時間。小倉城の石垣が見える１階の喫茶室でひと休み。コーヒーカップを手に思いました。清張が生きていたら、格差と貧困、混迷のこの時代をどう書いただろうか、と。

松本清張記念館
　北九州市小倉北区城内２番３号℡０９３(５８２)２７６１。休館は、１２月２９日～３１日
(２００９年１１月１５日，「赤旗」) （Page/Top）

おはようニュース問答／治安維持法犠牲者が謝罪と補償求めてるね

　みどり　治安維持法って知ってる？
　のぼる　なにそれ？
　みどり　戦前、戦争に反対したり、主権在民を訴えたりした人などを弾圧した法律なの。

日本は遅れてる
　のぼる　あっ、それなら聞いたことあるな。『蟹工船』という小説を読んだけど、たしか、その小説を書いた小林多喜二も治安維持法で捕まったんじゃなかったっけ？
　みどり　そうね。１９２５年に制定されて、その後、天皇制批判には最高刑を死刑にまでした改悪をされたの。共産党員をはじめ多くの人が捕まって、虐殺されたんだよ。
　のぼる　吉永小百合さんが主演した『母（かあ）べえ』って映画では、夫が治安維持法で捕まるシーンがでてきたね。
　みどり　最近、その治安維持法で犠牲になった人や支援者たちでつくる治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟の人たちが総会を開いたんだって。
　のぼる　犠牲者の人たちって、戦争中に活動した人だから、ずいぶん高齢になっているよね。
　みどり　そうなの。同盟が把握している範囲で、現在生存していらっしゃる方は１００人を切ったらしいのよ。日本政府は弾圧された犠牲者に謝罪も補償もしていない。だから同盟は国に対して、犠牲者に一日も早い謝罪と補償をすべきだと運動しているの。
　のぼる　世界では、賠償とか進んでいるの？
　みどり　人道に反する罪に対して謝罪する動きが強まっているね。ドイツでは、国家反逆罪に問われた人たちの名誉回復が行われ、アメリカでは黒人差別への謝罪決議が下院であげられた。韓国政府は、日本の植民地時代にこの治安維持法で懲役１年以上の犠牲者に、年金を毎月１６万円支給しているそうだよ。
　のぼる　日本は、ずいぶん遅れているね。

志を引き継ごう
　みどり　そうよね。同盟の人たちは聞き取り調査をして、犠牲者を発掘したりもしている。まだまだ埋もれている犠牲者の人も多いと言われていて、同盟は国に実態調査をするよう要求しているんだ。
　のぼる　憲法でうたわれている主権在民や反戦平和は、犠牲者のたたかいがあったからだよね。その志を引き継がないといけないな。
(２００９年１１月１５日，「赤旗」) （Page/Top）

武内清の没後６３周年で墓前祭／函館

　治安維持法国賠同盟函館支部は１０日、函館市高龍寺で、「武内清没後６３周年墓前祭」を開催、１０人が参加しました。
　斉藤幹雄支部長は「函館市議会で９月、治安維持法犠牲者国家賠償法の制定を求める意見書が採択されました。新政権のもとで『新しい風』が吹いています。この取り組みを力にがんばりましょう」とのべました。
　宮田汎全国副会長があいさつ。「今度、治維法同盟として国会議員に直接、制定を求める取り組みをすすめます。民主党議員にも紹介議員になってもらうことと、地方議会で賛成してもらえるように、一人ひとりの議員に要請することにしました。シベリア抑留者の賠償も行われることになり励みになります。署名活動を強化しましょう」と訴えました。
(２００９年１１月１４日，「赤旗」) （Page/Top）

治維法国賠同盟釧路支部が大会

　治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟（治維法国賠同盟）釧路支部の第２０回大会が８日、鶴居村で開かれました。
　支部幹事会は自公政権の敗北で、犠牲者に国家賠償法制定のための新しい条件がつくられたことから、国賠署名を旺盛に展開することの重要性を訴えました。
　大会では同盟員を新たに１１％拡大すること、市町村議会での意見書可決を釧路市、釧路町、根室市、厚岸町に続いて３町で取り組みを強めることを確認しました。
　今年は４・１６事件から８０年の節目の年であることから犠牲者の１１人について名前を確認し、顕彰していくことにしました。
　新役員は次の通り（敬称略）。▽支部長＝大友勝紘（新）▽副支部長＝安達正敏（再）▽事務局長＝天城正則（新）
(２００９年１１月１２日，「赤旗」) （Page/Top）

治維法国賠同盟／新役員らが党本部訪問

　治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟の第３４回全国大会で選出された柳河瀬精会長ら新役員が１１日、日本共産党本部を訪れ、上田均、和泉重行両常任幹部会委員らと和やかに懇談しました。
　柳河瀬氏は、治安維持法犠牲者に対する謝罪と賠償を求める国会請願に、多くの民主党議員が紹介議員となっていることをあげ、鳩山新政権のもと、「１１月、１２月を『特別運動期間』とした。要求実現へ国民運動を高めていきたい」と協力を求めました。
　上田氏は「自公政権の崩壊で新しい条件が生まれている。これまでの活動を本物にするいいチャンス。協力していきたい」と答えました。
( ２００９年１１月１２日，「赤旗」) （Page/Top）

治維法国賠同盟新会長柳河瀬精さんに聞く／国家テロ追及運動さらに

　治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟の第３４回全国大会がこのほど行われ、新たな方針を決定し、役員を選出しました。新会長の柳河瀬精さん（７７）に同盟運動の新たな役割について聞きました。
　（聞き手　栗原千鶴)
　――今回は、新しい出発点となりました。
　柳河瀬　これまで歴代の会長は治安維持法犠牲者でしたが、今大会で初めて犠牲者でも遺族でもない私が、会長を務めることになりました。犠牲者は、すでに１００人を切りました。同盟も新たな活動の発展が求められています。大任ですが、先輩の志を継ぎ、初心を貫き頑張っていきたいと思います。
　――初心とは。
　柳河瀬　小林多喜二の虐殺をはじめ、特高警察の国家テロリズム、壁の中の犯罪は許すことができません。しかも犯罪を指揮した特高官僚たちが戦後の政官界で大手を振っています。私はこれを追及し続けています。
　――大会では、世界的に戦後補償問題が前進していることが報告されました。

謝罪進む各国
　柳河瀬　世界では、人道に反する罪に対して、謝罪する動向が急速な広がりを見せています。オーストラリアやカナダで先住民への謝罪が行われました。アメリカ下院で黒人差別虐待への謝罪決議が行われ、イタリアではリビア植民地化への謝罪が行われました。スペインではフランコ時代の犠牲者を名誉回復させる「歴史の記憶法」が施行されています。早くからナチス犠牲者に補償してきたドイツで、新たに国家反逆罪に問われた人たちの名誉回復が行われています。
　一方、日本では戦争に反対し弾圧を受けた人たちに対して謝罪も補償もありません。
　――新しい政権になり、いま大きな可能性があると位置づけていますね。
　柳河瀬　これまで同盟は、国家賠償法の制定を求める請願署名を集め、国会要請を積極的に行ってきました。そして、共産党、社民党や、民主党の多くの人に、紹介議員になってもらいました。新しい政治状況は要求実現の可能性がつくられています。
　また、若い人に小林多喜二の小説が読まれたり、映画「母べぇ」で特高が描かれたりと、市民にも治安維持法の実相を知ってもらう機会も増えました。
　今大会では、可能性をさらに切りひらくために、国民運動に高めて攻勢的な取り組みをしていこうという特別決議をあげています。
　地方でも、犠牲者への国家賠償を求める意見書が３５６区市町村議会に広がりました。

次代に継承も
　――大会では地方での多彩な活動が報告されました。
　柳河瀬　犠牲者たちの志は、主権在民、反戦平和をうたった日本国憲法に結実されています。しかし、広い国民にはまだまだ知られていません。
　三重県で発行された冊子から、遺族との交流が生まれました。新潟県では治安維持法犠牲者で埋もれていた画家、市村三男三（みおぞう）さんを発掘した話や、岩手県では１９歳の青年が「山本宣治のことを知りたい」と言って入会したことが大会でも話されました。
　こうした犠牲者の功績をたたえ、次の世代に引き継ぐ運動も強めていきたいと思っています。

治安維持法
　戦前、侵略戦争に反対し、主権在民を主張した人たちを取り締まった法律。治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟は、その法律によって投獄されるなど犠牲にあった人たちやその支援者らでつくる団体。犠牲者に対して、国が実態を調査して公表すること、犠牲者に謝罪と賠償することを求めて運動しています。

やながせ・ただし　１９３２年岐阜県恵那市生まれ。小学校教員、大阪府議４期。治維法国賠同盟大阪府本部会長を歴任。著書に『告発　戦後の特高官僚』など。
( ２００９年１１月１２日，「赤旗」) （Page/Top）

朝の風／勝山俊介さんの遺した仕事

　劇作家の勝山俊介さんが膵臓がんで亡くなったのは、昨年の１２月だった。
　勝山さんが病身をおして、会議や集会に参加して、発言していた姿は、強い記憶として残っている。勝山さんの仕事をふりかえると、それが病気とのたたかいの中で生み出されてきたことを改めて思う。
　映画「小林多喜二」のシナリオや青年劇場第９回公演として上演された「日本兵」は悪性リンパ腫で余命が長くて数年、短くて数カ月と宣告される中で書かれたものだった。
　１９９０年頃に発症したパーキンソン病は、勝山さんの行動に多くの制限を課した。その中でも、勝山さんは千葉県宗教者平和協議会の相談役、パーキンソン病友の会千葉支部長などを務めながら、『民主文学』に長編小説「湖の別れ」を連載した。今回「七代目信濃屋喜右衛門」を加えて『湖の別れ』（東銀座出版）として刊行されることになった。この本は今月の２８日に千葉市で行われる「勝山俊介(西澤舜一)を偲ぶつどい｣で販売される｡
　偲ぶつどいでは勝山さんの仕事について、文学、演劇、宗教、党活動など多面的に語られるという。つどいの詳細、供花の受付は事務局が置かれている日本共産党千葉県委員会℡０４３（２４１）４２５１まで。（筑）
( ２００９年１１月１１日，「赤旗」) （Page/Top）

朝の風／唯物論者でもあった瀧口修造

　『現代詩手帖』に３０年前の瀧口修造特集の座談会（大岡信／武満徹／岡田隆彦）が復刻されている。大岡氏らの語る美術評論家・瀧口の批評姿勢に共感した。「瀧口さんはどんな人のものでも万遍なく平等にちゃんとした価値のあるものとして受け入れてくれたが故に、ある意味では全然駄目なものまでも、本人に自覚させない状態で、野放図に放置したのではないか、ということを口にする人がいる」（大岡）。つまり「アプリシエーション（真価の認知―引用者）批評」（岡田）なのだ。
　この座談会よりさらに数年前、黒田三郎と喫茶店で雑談していたとき、詩の本道はリアリズムだとする黒田さんが１９３６年に参加した北園克衛の「ＶＯＵ」や、そのシュルレアリスムを話題にされた。黒田さんより３０歳年下のわたしが「ぼくは大岡信や飯島耕一を通してシュルレアリスムを学んだ世代ですから、日本のシュルレアリスト詩人は瀧口修造ぐらいかな、と思っています」と受けると、黒田さんは嬉しそうに微笑み、「かれらが瀧口さんの評価を高めました」といわれ、瀧口と唯物論研究会とのかかわり、瀧口が治安維持法違反で特高に逮捕された事件を話してくれた。超現実的な言語表現の探求者、瀧口修造は同時に唯物論者だったのである。
　（槐）
( ２００９年１１月０５日，「赤旗」) （Page/Top）

治維法犠牲者の賠償求め意見書／厚岸町議会

　厚岸町議会はこのほど、「治安維持法犠牲者に国家賠償法の制定を求めることについての請願」を賛成多数で採択し、意見書を総理大臣、法務大臣に送付しました。
　釧路・根室管内では、釧路市、根室市、釧路町に続いて４市町目です。
　請願は、治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟釧路支部が提出したものです。
　意見書には戦争中の検挙事件について、『町史』も引用した参考資料をつけ、「反戦活動をしていた」「グループ活動や左翼的文献を読んでいた」などとでっち上げていたことを告発。犠牲者の名前を列挙しています。
　意見書は、治安維持法犠牲者に対して、「国家賠償法」の制定を行うことなど４項目が記載されています。
　請願の採択では、日本共産党の谷口弘、石澤由紀子両議員が各議員に請願採択の意義を説明しました。
(２００９年１１月０３日，「赤旗」) （Page/Top）

 

*         【10月】（ヘッドライン）

*         小林多喜二の生誕地訪ねる／治維法国賠同盟秋田・女性部

*         つぎの連載小説２６日から／人、立ち枯れず／平瀬誠一／え・小野絵里

*         「鶴彬」の生涯福岡市で上映／来月１１日

*         運動の継承さらに／治維法国賠同盟全国大会終わる

*         国会内外に新たな共同／治維法国賠同盟が大会

*         山宣碑前祭に７０人余が参加／長野・上田

*         戦前の反戦活動家遠藤元治没後７０周年／長岡市で記念行事

*         「坂の上の雲」めぐりシンポ、学習会開催／川崎、神戸で市民団体

*         治維法国家賠償法制定を／函館市議会でも意見書

*         バンコク中心部に治安維持法

*         治安維持法国賠同盟／中国平和・連帯の旅

*         ひと／史上最年少で北海道労連事務局長になった出口憲次さん

*         芸能テレビ／アンダンテ～稲の旋律～ロケ地訪問／ゆっくりでいいから／「赤旗」連載小説が映画化

*         現代に生きる「蟹工船」／金融危機、派遣切りの中で／札幌・小森氏の講演会に５００人

*         「生きる勇気」と「愛」と／三浦綾子没後１０年光彩放つ文学／黒古一夫

*         演劇／「組曲虐殺」（こまつ座＆ホリプロ公演）／多喜二の生、今をえぐる

*         再び戦争しない国に／治維法同盟が「おんなの集い」／新潟

*         潮流

*         １０月２日掲載の訃報松崎　濱子さん２８日死去

*         香川・治安維持法犠牲者国賠同盟県本部が総会

【10月】

【本文】（Page/Top）

小林多喜二の生誕地訪ねる／治維法国賠同盟秋田・女性部

　治安維持法国賠同盟秋田支部女性部（小川絢子事務局長）の呼びかけでこのほど、小林多喜二生誕の地を訪ねるツアーを行い、３０人が参加しました。
　老松が残っている小林多喜二の生家跡から「小林多喜二生誕の地」の碑を訪ねました。
　この碑は、地域住民や全国からの協力で１９５７年７月に建立され、除幕式には多喜二の弟と３人の姉妹がそろって参加しました。
　この碑が建立されたことによって、多喜二が４歳で小樽に移住してから５０年、虐殺されてから２４年目にしてようやく故郷の土に返ることができたと、宮腰孝悦・国賠同盟大館鹿角支部事務局長が詳しく解説しました。
　続いて２００３年９月２８日に建立された小林多喜二の「母セキ生誕地の碑」と１９９６年１０月１３日に建立された「小林多喜二文学碑」をめぐりました。
　「母セキ生誕地の碑」は、温故知新の会の人たちが、「セキさんの生い立ちを語り継ぐことが、われわれ住民の責務」「強い意志をもって子を育て、向学心旺盛だったセキさんの生涯を、地元で永久に語り継がれなければならない」と建立されたものです。
　文学碑は全国の募金協賛者１６７０人、３９団体の協力で建立され、碑の題額に刻まれている文字は作家の松田解子さんによるものです。
　交流会では、近江谷昭二郎・国賠同盟秋田県本部会長が講演。多喜二は、プロレタリア文学の思想的芸術的水準を国際的に高めた革命作家であり、「治安維持法」で特高警察の残虐な拷問により虐殺されたこと、国民主権、反戦平和、そして人間解放の未来社会をめざし不屈にたたかった先輩たちの精神を受け継ぐ重要性などを訴えました。
(２００９年１０月２７日，「赤旗」) （Page/Top）

つぎの連載小説２６日から／人、立ち枯れず／平瀬誠一／え・小野絵里

　連載中の能島龍三さんの小説「夏雲」は、２５日に完結します。２６日からは平瀬誠一さんの「人、立ち枯れず」が始まります。挿絵は小野絵里さんです。ご期待ください。

作者の言葉／平瀬誠一
　この小説の主人公は２０代で私立学校の教員になり、解雇を撤回させた経歴をもっています。定年後、特に身近な家族との連帯について、過去を反芻し、夫婦のさまざまな確執を通して自己の弱点に思い至り、その克服を本気で考え始めます。また、一方で地域社会の人たちとの連帯なしには、現代の閉塞した社会状況を切り拓くことはできないことにも気付きます。この小説からそういう意図を読み取っていただければさいわいです。
　略歴　１９３７年生まれ。８２年日本共産党創立６０周年記念文芸作品募集に「光の中に歩みいでよ」で入選。本紙連載「鳥たちの影」が、第３２回多喜二・百合子賞受賞。日本民主主義文学会常任幹事。

小野絵里
　この数年来のえたいのしれない不安の中で、それでも人は懸命に生きていかねばならない。私も年老いた母との最後の１０年間の生活を思い出して、格差や老人問題を考えながら、でもおしゃれな挿画を描きたいと思います。
　略歴　１９４９年生まれ。安井賞展（８３年には賞候補）などに出品。２０００年からは亡き父・絵麻との二人展「人間と宇宙への眼差し」を開催。九条美術展呼びかけ人。
( ２００９年１０月２３日，「赤旗」) （Page/Top）

「鶴彬」の生涯福岡市で上映／来月１１日

　昭和初期に日本が中国への侵略戦争に突入していく暗黒の時代、平和のために活動した反戦川柳作家、鶴彬（つる・あきら）の生誕１００周年を記念して制作された映画「鶴彬　こころの軌跡」（９０分。神山征二郎監督）の上映と講演が１１月１１日、福岡市中央区の福岡市市民福祉プラザで行われます。
　鶴彬の本名は喜多一二＝きた・かつじ＝。戦前、川柳を武器に反戦・反権力の意志を貫く半ば、その創作活動を理由に治安維持法違反で逮捕、拘置され、２９歳で獄死（病死）しました。
　上映作品は、平和のために生き抜いた一人の若者、鶴彬の生涯をドキュメンタリードラマとして構成されています。同市の上映が九州初の上映で、上映時間は当日午後２時と同６時半。
　主催者は「多くの方に、鶴彬の存在を知っていただきたい」と映画鑑賞を呼びかけています。
　各回の上映３０分前には、『隠された光』の編著者、堺弘毅氏が「福岡県下で荒れ狂った治安維持法」と題して講演を行います。
　料金は当日・前売り１０００円（中学生以下無料）。
　主催は、治安維持法国賠同盟福岡支部と日本民主主義文学会福岡支部。
　連絡先は、０９２（７１３）０１４４（国賠同盟）、０９２（７１２）５２９７（九州シネマ・アルチ）
(２００９年１０月２３日，「赤旗」) （Page/Top）

運動の継承さらに／治維法国賠同盟全国大会終わる

　２１日から東京都内で開かれていた治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟第３４回全国大会は２２日、討論を続行し、新方針と新役員を決め、閉会しました。
　討論では、犠牲者が高齢になるなかで、治安維持法の実相を受け継ぐことの大切さが口々に語られました。
　奈良県の代議員は、特高警察が出した『特高月報』から犠牲者の掘り起こし、ゆかりの人を探す活動を報告。三重県の代議員も、県内犠牲者の業績をまとめた冊子を作製し、遺族に喜ばれた経験を語りました。
　街頭での署名行動や、つながりのなかった団体に署名の協力を申入れるなど、同盟の運動を広く国民に知ってもらおうという活動も報告されました。
　政権交代という新しい政治情勢のもと、犠牲者に対する国家賠償法の制定を求める署名活動の強化を呼びかけた特別決議も採択されました。
　柳河瀬精会長（新任）、針谷宏一事務局長（再任）を選出。柳河瀬会長は「同盟結成以来、初めて犠牲者ではない私が会長を務めることになりました。新しい情勢のもと、責任の重さを感じています。みなさんとともに頑張りたい」と新任あいさつしました。
( ２００９年１０月２３日，「赤旗」) （Page/Top）

国会内外に新たな共同／治維法国賠同盟が大会

　戦争に反対し主権在民を訴えた戦前の治安維持法犠牲者に対して、国に謝罪と賠償を求めている治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟の第３４回全国大会が２１日、東京都文京区内で始まり、１２５人が参加しました。２日間の日程です。
　神戸照会長代行は「政権交代という新しい情勢のもと、今後の活動について、積極的に議論してほしい」と開会あいさつ。針谷宏一事務局長は、世界では独裁政権犠牲者の名誉が回復されている事例などを紹介しながら、「日本でも変化が起きている。（同盟が取り組む）国家賠償法の制定を求める国会請願署名に１００人を超える民主党議員が紹介議員になっている。総選挙の結果は、新しい可能性を示すもの。さらに自分たちの手で、情勢を切り開いていこう」と報告しました。
　討論では、同盟員の拡大が報告されると拍手がわき、新しい情勢のもと共同を広げたい、運動を強めたいとの決意が相次ぎました。
　新潟県の代議員は、「平和のための戦争展」を県同盟主催で初めて開催したと報告。山口県の代議員は、岩国基地問題で幅広い運動が進んでいると話し、青森県の代議員は、支部が署名ニュースを発行し、署名を目標の２倍を集めた経験が述べられました。
　全国労働組合総連合をはじめ、レッドパージ反対全国連絡センター、国民救援会、自由法曹団の代表があいさつ。日本共産党の宮本岳志衆院議員は「先輩のたたかいが若い人たちを励ましてきた。今後も同盟の運動に学んでいきたい」と述べました。
　社民党からメッセージが届きました。
( ２００９年１０月２２日，「赤旗」) （Page/Top）

山宣碑前祭に７０人余が参加／長野・上田

　第２１回「山宣（山本宣治）碑前祭」がこのほど、長野県上田市別所の山宣記念碑前で行われました。
　今年は、戦前の治安維持法に帝国議会のなかでただ一人反対してたたかい右翼の凶刃にたおれた「山宣」の没８０年・生誕１２０年の節目の年で、山宣の新しい資料の発掘や整備がすすんでいます。
　山宣は暗殺される４日前に上田市の上小農民組合連合会の講演会で最後となる演説をおこないました。さまざまな困難に抗し、農民たちにより山宣の一周忌に当地に記念碑が建立され守り抜かれ、１９７１年に再建されました。
　碑前祭には、京都宇治山宣会から２９人など７０人余が参加。政治が大きく変わりつつある今、山宣の生きざまに学んで歴史的な変革をなしとげるたたかいを発展させる決意をこもごも語りました。
　日本共産党からあいさつに立った岩谷昇介氏は、総選挙での全国的善戦奮闘と、自ら小選挙区候補として４万票をこす全国３番目の得票を得たことにも触れ、来春に迫った地元の市長・市議選と参院選での躍進へむかう決意を述べ拍手につつまれました。記念講演会では、坂口光邦氏（元長野県教組委員長）が「信州における進歩と革新の伝統―二・四事件を俯瞰して考える」と題して１時間余の講演を行いました。
(２００９年１０月２０日，「赤旗」) （Page/Top）

戦前の反戦活動家遠藤元治没後７０周年／長岡市で記念行事

　治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟新潟県長岡支部は１３日、戦前の反戦活動家・遠藤元治没後７０周年記念行事を、長岡市の善行寺で行い、２５人が参加しました。
　遠藤元治（１９１１年～３９年）は、侵略戦争反対、主権在民を主張し不屈にたたかい続けた日本共産党員です。当時の特別高等警察に捕らえられ、過酷な拷問を受けましたが、完全黙秘を貫き通し、調書一枚取らせませんでした。獄中で虐待のため発病、仮釈放の２日後の３９年１０月１３日、２７歳で死去しました。
　記念行事では墓参し、献花・黙とうに続き主催者あいさつ。来賓の党県委員会・中越地区委員会を代表して大矢健吉地区委員長が「日本共産党が平和と民主主義の旗を掲げて不屈にたたかい続けたことは、日本の平和と民主主義の事業にとって不滅の意義をもつものです。遠藤元治のような先達を郷土にもつことは私たちの誇りです。自公政治を退場させた今日、遠藤さんの不屈のたたかいを学び、さらに前進させるために頑張りたい」と述べました。
　同盟県本部顧問・小林与蔵氏、竹島良子県議、笠井則雄市議団長があいさつしたあと、同寺院本堂で「偲（しの）ぶ会」を開き、テレビ放映された「にんげん歳時記・遠藤元治」の録画ビデオを視聴。遠藤元治調査から分かった新しい発見やエピソードが紹介され、元治が愛唱した「琵琶湖周航の歌」を合唱しました。
(２００９年１０月１７日，「赤旗」) （Page/Top）

「坂の上の雲」めぐりシンポ、学習会開催／川崎、神戸で市民団体

　１１月２９日から放送が始まるＮＨＫスペシャルドラマ「坂の上の雲」（司馬遼太郎原作）をめぐり、市民団体が学習会やシンポジウムを開催します。

１１月１日川崎
　１１月１日には、川崎市で学習会「日露戦争と天皇の軍隊～『坂の上の雲』が語らない真実」が開かれます。講師は山田朗・明治大学教授。
　主催は治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟川崎支部。川崎総合自治会館ホールで、午後１時半開会。資料代５００円。連絡先０４４（８６１）１７０７（植田さん）。

１１月８日神戸
　１１月８日には、神戸市でシンポジウム「なぜ、いま『坂の上の雲』かを考える」が開かれます。第１部は、中塚明・奈良女子大学名誉教授が「司馬遼太郎の朝鮮論と『坂の上の雲』のしかけ」と題して講演。第２部のパネルディスカッションには、石川康宏（神戸女学院大学教授）、〇橋亨（映画監督）、牧俊太郎（「大阪民主新報」元編集長）、羽柴修（弁護士）の各氏が出席します。
　主催はＮＨＫ問題を考える会（兵庫）。兵庫県私学会館大ホールで、午後１時半開会。資料代１０００円。問い合わせ０７８（３５１）０１９４。
( ２００９年１０月１５日，「赤旗」) （Page/Top）

治維法国家賠償法制定を／函館市議会でも意見書

　函館市議会はこのほど、治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟道南支部が起案し、日本共産党市議団が提出した「治安維持法犠牲者国家賠償法」の制定を求める意見書を可決しました。全道の自治体では、昨年の根室市についで１３番目となります。
　同意見書は、世界的に、不当な弾圧に対する名誉回復や賠償などが相次ぐなか、新政権のもとで、治安維持法で不当弾圧を受けた人たちに、国は謝罪し、賠償せよというものです。
　同同盟道南支部は、斉藤幹雄支部長を先頭に４人の同盟員が、９月７日、市議会各派に陳情。参考資料として市が編集した函館市史に掲載されている治安維持法による犠牲者の実態を示しながら話をしました。
　３・１５事件で道内では、鈴木治亮をはじめ１０人の年齢や役職が紹介されています。また、当時の宗教界でも、護国神社参拝を拒否した青年牧師補の小山宗祐が、投獄され獄中自殺しました。
　また、生活綴（つづり）方事件で９人が逮捕されました。懇談のなかで、保守系の市議が「私を教えてくれた先生が、これで逮捕されたのを覚えています」と話していました。
　斉藤支部長は「道内３番目に大きな都市の議会で、意見書が可決されたことは時代の流れを感じます。運動を進める私たちには本当に勇気づけられます」と感慨深げに語りました。
(２００９年１０月１４日，「赤旗」) （Page/Top）

バンコク中心部に治安維持法

　【バンコク＝時事】タイ政府は１３日、東南アジア諸国連合（ＡＳＥＡＮ）関連首脳会議期間を含む１５～２５日の間、バンコク中心部に治安維持法を適用することを決めました。会議の会場となる中部ホアヒンには既に同法を適用しています。
( ２００９年１０月１４日，「赤旗」) （Page/Top）

治安維持法国賠同盟／中国平和・連帯の旅

　治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟の「中国平和・連帯の旅」（団長・斎藤久枝国際部長）の一行は１１日、南京大虐殺記念館を訪問し、候曙光副館長から展示の概況の説明を受け、館内を見学しました。生存者の伍正禧さん（８６）、揚翆英さん（８５）から当時のおぞましい事件状況も聞き、記念碑に花輪と持参した千羽鶴を納め、犠牲者を追悼しました。
　これに先立つ９日には、北京で中国国際交流協会の白宏魁副秘書長らと会談。白副秘書長は、第２次世界大戦ではアジアの人々とともに日本人民にも多くの被害をもたらし、親戚に戦死者がいることにふれ、「歴史の事実を正しく認識することができれば、未来に生きます。中日両国人民の友好と連帯をいっそう発展させましょう」とのべました。
　斎藤団長は、治安維持法国賠同盟が、日本が中国をはじめアジアで侵略戦争をすすめた時代に、過酷な弾圧に抗して戦争反対・主権在民を主張してたたかった犠牲者の名誉回復を政府に求め、「再び戦争と暗黒政治を許すな」とたたかっている、と自己紹介。須藤美也子・日本共産党元参院議員などが日本のＡＡＬＡ連帯委員会の活動などについて発言しました。
　中国からは、日本軍「慰安婦」についての調査が報告されました。
( ２００９年１０月１４日，「赤旗」) （Page/Top）

ひと／史上最年少で北海道労連事務局長になった出口憲次さん

　３４歳、都道府県労連の史上最年少事務局長が誕生しました。８月の北海道労連定期大会で。労働組合とのかかわりは１１年前。肩までの髪を切り、小樽で組合書記に。戦前から労働運動が盛んで、作家・小林多喜二が働いていたところです。
　「多喜二が告発した野蛮な働かせ方が復活し、労働者をモノ扱いする大企業の横暴勝手がまかり通っています。自分も組合と出合ってなければ、そうなっていたのではと痛感します」
　札幌市内の高校を卒業後、ラジオ局ディレクターやとび職人、フリーターと「数え切れないほど」の仕事を転々。ラジオ局では、月１００時間残業しても手取りは１５万円。食べていけず、転職したとびの仕事で負傷したのに補償はなし。
　トラック運転者の父の紹介で飛び込んだ組合。社長にも堂々と交渉する姿に、「このおとなたちは、ただ者ではないぞ」と驚き、活動が面白くなりました。「『労働者の喜怒哀楽に思いを寄せなければ組合じゃない』との先輩の教えを胸に、体当たりでした」
　２年前に道労連に移り、読んでもらえるニュースづくりを工夫してきました。
　貧困と格差が広がり、非正規の青年を、どう組合に迎え入れるかが課題。「組合は『きつい、暗い、くどい』という３Ｋから、『助け合う、ためになる、楽しい』の３Ｔに変えよう。これが合言葉です」
　格闘技が好きで、体を鍛えてきたジム通いが、忙しくてできなくなりました。
　文　土田　浩一
( ２００９年１０月１２日，「赤旗」) （Page/Top）

芸能テレビ／アンダンテ～稲の旋律～ロケ地訪問／ゆっくりでいいから／「赤旗」連載小説が映画化

　黄金色の稲田に置かれたピアノから優しい音色が流れます。温かい拍手を送るエキストラのみなさん。５月から撮影してきた「アンダンテ～稲の旋律～」。「赤旗」日刊紙に連載された旭爪（ひのつめ）あかねさんの小説の映画化です。千葉県横芝光町のロケ現場には、さわやかな秋の風が吹いていました。
　児玉由紀恵記者
　あぜで拍手をするのは、横芝光町や近県から集まった人たち｡町には､製作を支援する会が２月に発足しました。この田んぼの田植えも、撮影時期に合わせ、４週間ずらして行われたもの。
　横芝光町は、旭爪さんが、ここで自然農業に取り組む土屋喜信さんに農作業を教わったゆかりの町です。
　「アンダンテ～稲の旋律～」は、対人恐怖症で仕事もやめ、自宅にひきこもった２９歳の女性・千華が主人公です。彼女と、農業に生きる晋平との出会いを通して、自分らしい生き方とは？　効率的であることが本当に良いことなのか？　と問いかけ、日本の農業のありようをも問うていきます。「アンダンテ」は、〝歩く速度で、ゆっくりと〟の意味の音楽用語。

ひきこもり
　小説「稲の旋律」は、旭爪さんが、ひきこもり状態になり職場をやめざるをえなかった苦しい体験をもとに執筆。全編を往復書簡で主人公たちの悲喜を映しだし、大きな反響を呼びました。０３年、多喜二・百合子賞受賞。
　「人と会うのが怖い。誰か私を助けて」―競争社会の中で生きていけない千華は、このメモを入れたペットボトルを田んぼに投げ入れます。その田んぼの持ち主晋平が、千華のＳＯＳを受け止め、物語は進みます。
　この日の撮影は、田んぼでの〝ピアノコンサート〟で千華がピアノを弾くシーン。
　ピアノ教師になってという母親の期待の重圧から逃れた千華。稲田の広がる晋平の町での農作業やふれあいのなかで、人間性を回復しつつ、音楽の喜びも取り戻します。
　千華のピアノを聴きに、母親も東京から田んぼを訪ねてきて…という大きなヤマ場です。

自給自足で
　千華役の新妻聖子さんは、舞台で数々のヒロインを演じてきました。映画は初出演。原作を一気に読み、「千華と母親の関係に胸を揺さぶられた」と言います。
　ひきこもりになった千華は特殊な例ではないという新妻さん。完成の日まで「妥協のない毎日を過ごしたい｣と話します｡
　晋平役は､筧利夫さん｡コンサートのシーンでは、農道から「千華ちゃん、ゆっくりでいいから」と緊張する千華に声をかける晋平。〝曲がって植えようが転んで植えようが、稲はまっすぐ上を向いて伸びるんだよ〟など、映画のメッセージに連なるせりふを要所でのべます。「われわれの作ったこの映画と一緒に、人生を自給自足していきましょう」と笑わせます。
　「町をあげて応援していただいて」と監督の金田敬さん。映画化を通して、農家の置かれた立場の厳しさを思い知ったと言います。
　秋の日差しとの追いかけっこの撮影に､｢人間と食の再生の物語」の納得のいくカットを求めてやまない監督たち。夕焼けの田んぼは、稲が旋律を奏でているようでした。
(２００９年１０月１１日，「赤旗」) （Page/Top）

現代に生きる「蟹工船」／金融危機、派遣切りの中で／札幌・小森氏の講演会に５００人

　札幌市で１０日、「小林多喜二『蟹工船』と現代をむすんで」をテーマに東京大学大学院教授の小森陽一氏が朗読、講演しました。「小林多喜二『蟹工船』講演会実行委員会」の主催で、会場いっぱいの５００人以上が集まりました。小森氏は「おい、地獄さ行（え）ぐんだで！」で始まる『蟹工船』の一部を抜粋し朗読しました。
　小林多喜二（１９０３～３３年）が活躍した時代と「１００年に１度」といわれる現代の金融危機、大企業の派遣切りなどを結び付け講演しました。そのうえで、「１００年単位で歴史を振り返るなかで、多喜二が『蟹工船』で書こうとした意味は今を生きる人には理解できる。ここに『蟹工船』を改めて読み直す意味があると思う」と指摘しました。
　札幌市の男性会社員（４０）は「『蟹工船』が書かれた時代や歴史的背景がよくわかった。現代のリーマンショック後の世界や過労死問題など似ているところがある。これまでと違った角度で、また読み直してみようと思いました」。
　北海道大４年の女子学生（２２）は「話は難しかったけど、労働者は都合よく働かされたうえに派遣切りされるなど、『蟹工船』は今でも通じるものがあるとわかりました」。
　一緒に来た友人の女子学生（２３）は「ただ単に〝ひどい〟ということで終わらせず、社会全体の枠組みに気付かないと、自分たちは搾取され続けるという話が印象に残りました。現代の支配する側が『人員削減』という言葉で会社の合理化を片付けていることが、どういうことなのか理解できた」と話していました。
(２００９年１０月１１日，「赤旗」) （Page/Top）

「生きる勇気」と「愛」と／三浦綾子没後１０年光彩放つ文学／黒古一夫


「真面目」に「普通」の生活送る人々の健気で果敢な闘い描く
　この１２日で没後１０年になる三浦綾子さんに最初にお会いしたのは、お亡くなりになるちょうど１０年前（１９８９年）、ある新聞に月１回の約束で連載を始めた「地域・人・文化」の第１回に登場していただいた時であった。その時の取材は、『氷点』（６５年）以来『ひつじが丘』（６６年）や『塩狩峠』（６８年）など、次々とベストセラーを生み出してきた流行作家の三浦さんが、なぜ宗谷岬に近い幌延町に計画されていた「高レベル放射能廃棄物」の貯蔵庫建設に反対するのか、を目的にしたものであった。

恐ろしいもの嫌核反対の心語る
　それより前、１９８２年に始まった「文学者の反核運動」（正式には「核戦争の危機を訴える文学者の声明」署名運動）を手伝っていた私は、三浦さんが署名と共に多額の活動資金を寄せてくれていたのを知っていて、その取材において是非とも三浦さんの「反核」意識（思想）がどこから生じたものであるかをお聞きしたいと思っていたのである。
　私の質問に対する三浦さんのお答えは、実に明解であった。「核反対は、自然発生的なもので、そんな恐ろしいもの嫌よ、という素直な気持ちから出たもの。人間は神から自然の管理を任されているのに、利益優先のためなら何でもする、というのは子孫に対して残酷なことよ」というものであった。また、その時「平和」についても、「戦争がなければ平和というわけではないと思うわ。心の平和ということが大切なのよ」と言っており、ちょうど中国で「天安門事件」が起こったということもあって、「歴史的に見て、中国や朝鮮・韓国というのはお祖父さん、お祖母さんという感じね。尊敬と親しみを感じていたのに、何とも言えず悲しいわ。（民衆は）抑えられても抑えられても起き上がってくるものよ。権力の道具である軍隊が銃をどちらに向けるか、考えるだけで恐ろしいわ」とも言っていた。

「軍隊がどこに銃を向けるか」
　この取材から数年して、三浦さんは最後の長編であり私が三浦文学の最高傑作と思っている『銃口』（９４年）の執筆を始める。この作品は、戦時中の北海道で起こった「綴り方教育」弾圧事件を軸に、「正義＝良心」と「生命」の尊さを守ろうとして権力から手酷い仕打ちを受ける主人公像を描くことで、「昭和」という時代は何であったのかを問おうとしたものである。
　まさに「軍隊が銃をどこに向けるか」によって恐ろしい社会を生み出してしまう現実に、最後の気力を振り絞って警告を発したのが、この長編であった。舞台も、北海道（旭川）から満州（中国東北部）、朝鮮半島と広い範囲にわたっており、登場人物も日本人だけでなく強制連行された朝鮮人から満州の中国人まで多岐にわたっていて、読み応えのある作品になっていた。『氷点』は、人間の「原罪とは何か」を問う作品であったが、『銃口』は社会や歴史の「闇＝原罪」を明らかにする小説であった。

人と社会や歴史緊張関係とらえ
　三浦さんの文学は、処女作の『氷点』から最晩年の『銃口』まで、火山の爆発によって発生した土石流と闘う兄弟の姿を描いた『泥流地帯』（７７年）や、官憲に虐殺された小林多喜二の母親をモデル（主人公）にした『母』（９２年）がその典型と言っていいが、その特徴は作者の信仰（キリスト教）を超えて、「真面目」に「普通」の生活を送る人々が、襲いかかる「不幸」に負けず果敢に闘い、健気に生き抜いていく様を描くところにある。読者は、そんな三浦さんが紡ぎ出した物語を読んで「生きる勇気」を得、「愛」の存在を知るのだが、真摯に生きる人間と社会や歴史との緊張した関係を描く小説が少なくなっている昨今の文学界にあって、没後１０年、三浦さんの文学はますます光彩を放ってきている、と言ったら過言だろうか。
　（くろこ・かずお　文芸評論家、筑波大学大学院教授）
( ２００９年１０月０９日，「赤旗」) （Page/Top）

演劇／「組曲虐殺」（こまつ座＆ホリプロ公演）／多喜二の生、今をえぐる

　歴史は繰り返すのではない、続いているだけなのだ。井上ひさしの書き下ろし作品を観て、そのことを再認識した。
　時の権力によって壮絶死に至らしめられた作家小林多喜二の最後の二年九カ月を描いた作品だが、劇中二つの演出に大きく心を動かされた。
　まず、主人公は多喜二だけでなく、我々もまたそうであるということだ。多喜二はプロレタリア活動の弾圧によって拷問死しただけではない。自分とそして世の人々と向き合って生きたいという、一人の人間としての根源的な生き方を否定されて、国家により抹殺されたのだ。井上芳雄が演じる多喜二の書きたい、訴えかけたいというあふれる気持ちが、我々の生きたいという欲望を喚起させている。
　そして、それを摘んだのが誰であり、実は世を間違った方向へ進めた我々にも責任があるのではないかという疑問に対しては、登場人物達の明るさが答えを導き出してくれる演出を取っている。多喜二を囲む女性の中で、妻役の神野三鈴が発する怒りと恋人役の石原さとみが抱く悲しさも印象的だが、姉チマ役を演じる高畑淳子が導き出す明るさと笑いこそが強い意味を持つ。
　その笑いは決してシニカルなものではなく、生きる灯を絶やさないための明るさ故のものである。さらに人は笑い終えた時に、笑いの原因を探ることがある。抑圧された社会の真っ只中で笑った人は何を感じるのか。登場人物全員の精力込めた演技と、台本、演出が普遍的な人間のあり方に迫ってみせた。
　社会を見据えた結果起こる井上流喜劇特有の笑いが、この作品でも人間の生きるべき社会の真の姿をあぶり出してみせている。井上ひさし・作、栗山民也・演出。
　（瀧口雅仁・芸能史研究家）
　２５日まで＝東京・天王洲　銀河劇場、２８～３０日＝兵庫県立芸術文化センター　阪急　中ホール、１１月１、２日＝山形・川西町フレンドリープラザ
( ２００９年１０月０８日，「赤旗」) （Page/Top）

再び戦争しない国に／治維法同盟が「おんなの集い」／新潟

　治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟新潟県本部女性部は４日、新潟市で「戦争はいやだ、おんなの集い―ふたたび戦争する国にさせないために」を開き、５２人が参加しました。青年も参加しました。
　第１部では、同盟中央本部常任理事の四津谷伸子氏が講演。四津谷氏は、戦前、父親が消費組合運動をして治安維持法違反で検挙されたことや、戦後東京・板橋で保育園の運営をしながら平和運動に取り組んできたことを紹介しました。
　四津谷氏は、同盟の女性部がなぜ必要かについて、特高警察から女性がいかにひどい拷問や口には出せない恥辱を受けたことか、それが知られていないと強調。伊藤千代子など拷問されながらも、反戦・平和で節を曲げずにたたかった女性たちのことを思えば、女性が告発しなければならないと訴えました。
　県本部女性部の伊藤恭子さんは、政権交代したことで、同盟の活動をどれだけ大きくするかで、政府に国家賠償する姿勢へ変えさせることができると訴えました。
　第２部では、ソプラノ歌手の五十嵐尚子さんが「さとうきび畑」「ハノイの恋人」などを独唱しました。
　若い母親は「子どもを生んだ私に何ができるのか。それは自分の娘に私から平和について発信することかと思っています。日常生活の中で少しずつ私の聞いたことを伝えたい」と感想を寄せました。
(２００９年１０月０８日，「赤旗」) （Page/Top）

潮流

　小林多喜二を描いた井上ひさしさんの新作の音楽劇「組曲虐殺」の初日をみました｡｢蟻一匹殺せないような内気でやさしい少年が､なぜ｣拷問に耐え、虐殺さえも恐れない青年となったのか▼この｢なぜ｣に挑んだと、紹介チラシには書いています｡多喜二､姉のチマ、恋人田口瀧子、妻伊藤ふじ子。多喜二をつけねらう２人の特高刑事。「×と○と□と◎で猿ぐつわをはめられてしまうのだ」（「伏せ字ソング」）など、井上さんらしい風刺と哀愁にみちた歌詞と小曽根真さんの曲とともに、いつの間にか「なぜ」を真剣に考える自分に気づかされます▼公演パンフレットに「小林多喜二　二十九歳四ヵ月の生涯」が特集されています。その中で多喜二虐殺とかかわりのある特高についてかかれています▼驚きました。安倍源基警視庁特高部長＝警視総監２度、敗戦時内務大臣。毛利基特高課長＝敗戦時埼玉県警察部長。虐殺時の中川成夫取調主任＝高輪署長、築地署長などを経て敗戦時東京都滝野川区長。戦後東映取締役、東京都北区教育委員会委員▼多喜二虐殺は｢特高警察の勲章｡虐殺者は警察署長から行政の長へ。特高部長は内務大臣にもなり、出世の階段を上がり続けた」と特集では書きます▼警察署内での虐殺８０人、拷問による獄死１１４人。歴史の事実です。それだけに人間らしい世の中をめざした多喜二役の井上芳雄さんの笑顔が心に残ります。観客総立ちの拍手が続きます。瀧子が多喜二を励ます「絶望するな｣のメッセージを胸に｡
( ２００９年１０月０５日，「赤旗」) （Page/Top）

１０月２日掲載の訃報松崎　濱子さん２８日死去

　松崎　濱子さん（まつざき・はまこ、元准中央委員）９月２８日死去。９５歳。葬儀は親族でおこないました。喪主はおい、宏さん。連絡先は、日本共産党中央委員会厚生部。
　１９３２年、東京地下鉄ストに参加、中央闘争委員。４６年入党。神奈川県委員会婦人部長、関東地方委員などを務め、第１１回党大会（７０年）で准中央委員（７７年の第１４回党大会まで）。新日本婦人の会中央常任委員、婦人団体連合会事務局長、同副会長、治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟顧問などを歴任しました。

( ２００９年１０月０２日，「赤旗」) （Page/Top）

香川・治安維持法犠牲者国賠同盟県本部が総会

　治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟香川県本部の第２３回総会が２６日、高松市で開かれました。
　「自公政権退場の情勢下で同盟運動前進の新たな道を切り開こう」と、署名運動や会員拡大の方針を確認しました。
　総会では、会長に太田展生氏、事務局長に田中和夫氏を再選しました。
(２００９年１０月０１日，「赤旗」) （Page/Top）

*         【9月】（ヘッドライン）

*         月曜インタビュー／俳優・歌手井上芳雄さん／多喜二描く新作舞台で主演／思いを自分なりに伝えたい

*        「満州事変」７８周年集い／富山

*         治維法犠牲者国賠要求同盟東北ブロック会議

*         ブロック会議松山市で開く／治維法国賠同盟

*         私と戦争／大野英子さん（８８）埼玉・本庄市／兄を抹殺した治安維持法

*         山宣揮毫の「唯生唯戦」／越後・五泉を訪ねて／浜田紀男／ひたすら生きひたすら…

*         「私はあきらめない」／「蟹工船」と現代／合唱構成劇に／北海道

*         主張／敬老の日／名実ともに長寿を祝う日本に

*         平和や愛、働く喜び６０年の思い込めて／道うたごえ祭典／札幌

*         潮流

*         道うたごえ祭典／多喜二の時代と現代つなぐ構成劇／１９日から札幌

*         第２回伊勢崎・多喜二祭開く／延べ２００人余の参加で成功

*         鶴彬生誕１００年／９条守る運動呼びかけ／盛岡で墓前祭

*         近づく伊藤千代子没後８０周年／藤田廣登／先進不屈性示す資料に寄せて

*         演劇時評／菅井幸雄／８月の朗読劇／戦争を問い平和に生きるために

*         反戦川柳作家収監の地／大阪で鶴彬「碑前祭」

*         文化／自伝的エッセー集『遥かなる信濃』／歌人碓田のぼるさん／朝鮮人長屋で発見した啄木の歌

*         １０ｓ２０ｓＹモード／２０代候補出会い夏の陣／東京１２区池内沙織さん／福岡３区川原康裕さん

*         遥かなる信濃／碓田のぼる著／評者三枝昂之歌人

*         話題作を読み解く／松木新／桐野夏生『ＩＮ』／出口の見えない恋愛の不毛／世界に立ち向かうには

*         日本共産党知りたい聞きたい／日本共産党が命がけで反戦を貫けたのは？

*         潮流

*         安重根・千葉十七追悼会と日韓親善友好の集い開く／宮城

*         「鶴彬こころの軌跡」札幌で８日無料試写会

*         多喜二ゆかりの現存する民家保存の可能性探る／６日に伊勢崎・多喜二祭

 

【9月】

【本文】（Page/Top）

月曜インタビュー／俳優・歌手井上芳雄さん／多喜二描く新作舞台で主演／思いを自分なりに伝えたい

　透き通る美声、ずば抜けた歌唱力、演技の巧みさで「ミュージカル界のプリンス」と呼ばれる井上芳雄さん。その井上芳雄さんが、「蟹工船」の作家・小林多喜二を演じます。１０月３日から始まる井上ひさしさんの新作芝居「組曲虐殺」。ところが台本がまだ完成していず、毎日ファクスで少しずつ送られてくる状況。緊迫し燃え上がるような、東京都内のけいこ場で、井上芳雄さんにインタビューしました。
　「台本が全部できていないのはつらいところはありますが、できている部分を少しでも自分のものにするので精いっぱい、というところです」
　「台本が届くと、その夜のうちに小曽根真さんが曲をつけ、次の日に役者みんなで歌っていて、すぐ井手茂太さんが振り付けをつけてくれる。みんな一流の素晴らしい人ばかりのけいこ場で、毎日すごいことがおこっていて、いま、幸せな、とても豊かな感じがしています」と井上芳雄さん。

虐殺怖れぬ青年なぜなりえたか
　「蟹工船」「党生活者」などの小説で知られ、当時の人気作家だった２９歳の小林多喜二は、１９３３年２月２０日、東京・築地署で特高警察の手により虐殺されました。〝蟻（アリ）一匹殺せないような内気でやさしい少年が、なぜ、三時間にも及ぶ拷問に耐え、しかも虐殺さえも怖れない青年になりえたのだろうか〟（「組曲虐殺」のチラシ）。この疑問にたいする答えを探すように、書き進んでいる「組曲虐殺」。
　「多喜二自身、〝貧しい人がどんどん貧しくなって、一部の誰かが豊かになっていくのは、なぜなんだろう〟という疑問を持って、それを素直に厳しく追及して生きていった人なんじゃないでしょうか。井上ひさしさんの台本や、三浦綾子さんの『母』を読んで、そう思いました」
　「多喜二は、搾取というシステムのこと、人を貧しくする社会の構造の問題を発見してしまって、そのままにしておけなかった。自分のこと、周りのことだけを考えるのではなく、とても広い、世の中全体を見据えていたのが多喜二という人だったと思います」
　芝居の中で、歌がたくさん歌われます。井上さんが美しいテノールで歌う「代用パン」の歌も「代用パンは安いんだ…貧しい人にも買えるのに／売れ残るのはなぜなんだ」と、素朴な疑問を歌っています。

大事なことをやさしい言葉で
　井上ひさしさんの戯曲の特徴について、こう語ります。
　「井上先生のすごいところは、専門用語を使わず、だれにでもわかりやすく社会の仕組みなり、時代なりを描いていることです。こんなことがあったんだ、という大事なことを、やさしい言葉で教えてくれています。井上先生のいっていることが、すごく自分の胸に響いてきて、明日から、そういうことを考えて生きてみよう、と、そんな気持ちになります。よくいえば素直に、悪くいえば何も考えずに生きてきた僕らのような世代にとって、とても大切なことが、たくさん語られているのが、井上先生の芝居です」
　「井上先生の芝居は『日本の優れたミュージカル』だと思っています。音楽の選び方、歌の入れ方がすてきです。楽しく見ているうちに、いつのまにか人生のために必要な言葉をもらっている、これがすごいところです」

役者の使命を感じるように
　ミュージカル、映画、テレビにと、引く手あまたです。これからがいよいよ楽しみな３０歳。
　「『ロミオとジュリエット』『ウエスト・サイド・ストーリー』など、若い役は若いうちにやっておいた方がいいですよね。まだ頑張ればやれるかな（笑い）。もっと年をとってやれる役は、たくさんあると思いますけど」
　舞台の仕事の大切さを、最近感じているといいます。
　「ミュージカルをやりたくて舞台に立ち始め、深く考えずにやりつづけてきました。やっと最近、井上先生の作品『ロマンス』（０７年）に出演し、ほかの井上先生の作品を見るようになって、役者の使命というものを感じるようになりました。歴史のある部分を今の人に伝える、などの。たとえば多喜二が命をかけて自分の思いを伝え続けた、その一生を調べると、比べてみて自分たちがあまりに心が貧しいのではないか、と感じたり、もったいない生き方をしてはいないか。多喜二と同じことはできないけれど、伝えるということはできるのではないか。自分なりの何かができるようになれればいいな、今考えているところです」
　静かな話し方ですが、ふつふつと芝居への情熱、活力がわいて、抑えきれない様子が感じられました。
　（大井民生）
　◇
　こまつ座＆ホリプロ公演「組曲虐殺」（栗山民也演出）出演＝井上芳雄、石原さとみ、山本龍二、山崎一、神野三鈴、高畑淳子、音楽・演奏＝小曽根真。１０月３～２５日＝東京・天王洲・銀河劇場、１０月２８～３０日＝兵庫県立芸術文化センター阪急中ホール、１１月１、２日＝山形・川西町フレンドリープラザ。℡０３（３８６２）５９４１こまつ座

いのうえ・よしお＝１９７９年、福岡県出身。俳優・歌手。東京芸術大学音楽学部声楽科卒業。在学中の２０００年、「ミュージカル　エリザベート」の皇太子ルドルフ役で鮮烈デビュー。舞台に多数出演、映画、テレビドラマにも出演。読売演劇大賞杉村春子賞、菊田一夫演劇賞を受賞。
( ２００９年０９月２８日，「赤旗」) （Page/Top）

「満州事変」７８周年集い／富山

　「アジアと世界の平和・友好を考える『満州事変』７８周年のつどい」が１８日、富山市内で開かれました。日中友好協会富山支部、県歴史教育者協議会、治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟県本部、県ＡＡＬＡ連帯委員会、安保破棄・諸要求貫徹県実行委員会が実行委員会をつくり主催したもの。
　県ＡＡＬＡの竹田勤さんが「謀略で始められた戦争を繰り返さぬために、戦争の企てに反対していこう」とあいさつしました。
　報告で県歴史教育者協議会の松浦晴芳さんは、日本軍「慰安婦」をめぐって森雅志富山市長が「軍の関与、官憲による強制はなかった」と重大な発言をしたことを取り上げ、歴史の真実を公然とゆがめる動きを許してはならないと訴えました。
(２００９年０９月２７日，「赤旗」) （Page/Top）

治維法犠牲者国賠要求同盟東北ブロック会議

　治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟の第１９回東北ブロック会議が２４、２５の両日、青森県大鰐町の大鰐温泉で開かれました。東北６県から８２人が参加、過去最高の規模の会議となりました。
　近江谷昭二郎中央本部副会長は「東北ブロックに対する報告」の中で、今回の総選挙結果が、「国民が自公政治に代わる新しい政治を探求する時代の本格的な到来」を示すものであり､｢再び戦争と暗黒政治を許すな」を掲げ、自公政権の「戦争する国」路線に反対して活動してきた国賠同盟運動も新たな可能性が生まれていると強調しました。
　東北６県の国賠同盟は３６支部、約１７００人の会員。国家賠償法立法化を求める今年提出した国会請願署名は５万３７２０人分、地方議会での陳情、請願の採択も１０５市町村議会になるなど大きな成果を上げています。
　各県の発言では、署名や市町村議会への請願、国会議員への要請行動、農協やお寺、町内会、老人クラブなど広く署名を訴えている経験、若い世代への働きかけ、ユニークな女性部の活動などが報告され、活動を交流しました。会議には日本共産党青森県委員会の堀幸光委員長が来賓として出席して､あいさつ｡
　夕食交流会には高橋ちづ子衆院議員もかけつけ、ともに最後の重い扉をこじ開けて勝ち取った議席の意義を確認しながら、交流しました。
(２００９年０９月２７日，「赤旗」) （Page/Top）

ブロック会議松山市で開く／治維法国賠同盟

　「総選挙後の新しい政治を展望し、第３４回全国大会の成功を勝ち取ろう」と治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟四国ブロック会議が１８、１９の２日間、松山市の民宿「山水」で開かれました。中央本部の主催。
　１日目は２２人が参加し、溝渕政子中央女性部長が主催者あいさつしました。
　中川悦良県本部会長が「ここは松山市河中。治安維持法の最初の犠牲者で、日本共産党創立大会に８人の代議員の一人として参加した渡辺満三の生地です。鳩山連立内閣が発足し、犠牲者への国家賠償、名誉回復に新しい情勢が生まれています。この会が同盟発展の契機になることを期待します」と歓迎のあいさつをしました。
　針谷宏一中央本部事務局長が、「同盟をめぐる情勢と課題」と題して記念講演。「同盟の運動の柱は、国による治安維持法犠牲者への謝罪と賠償であるが、それにとどまらず、日本が再び戦争を起こさない保障をつくりあげることを運動の中心にすえなければならない｣と訴えました｡
(２００９年０９月２６日，「赤旗」) （Page/Top）

私と戦争／大野英子さん（８８）埼玉・本庄市／兄を抹殺した治安維持法

　戦前、治安維持法による弾圧で兄を亡くした大野英子さん（８８）＝埼玉県本庄市在住＝が「小川町平和のための戦争展」で体験を語りました。
　大正生まれで終戦時は２４歳です。私たちの年代は戦争一色でした。国がどうにかして庶民を戦争に駆り立てることに狂奔（きょうほん）していた時です。労働運動を取り締まった治安警察法、言論の自由をじゅうりんした治安維持法を悪法として身に染みて覚えています。庶民は食べ物もなく、日夜空襲にさらされても「こんな無謀な戦争はやめてくれ」と言えなかった。そうさせたのが治安維持法でした。

詩のサークル
　昭和１２年（１９３７年）、私と姉は東京の池袋で１９歳の兄に養われていました。兄は昼間勤めて夜学に行き、詩を書くサークルに通っていました。
　９月のある日、兄が勤めに出たきり戻って来ず、帰りをじっと待って５日ほど過ぎると、憲兵が土足で家に上がり込んできました。家捜しを始め、何も出てこないと本箱をけ倒して出て行きました。その間一切無言でした。兄はいくら待っても帰って来ませんでした。「あそこは非国民の家だ」とささやかれました。
　翌年、兄の骨があると教えられて父は群馬の霧積山に行きました。そこには兄と、兄と同じサークルの１８歳の女の子の二つの骸骨（がいこつ）がありました。父は二人をねんごろに弔いました。たくさんの物を焼き捨て、二人は心中したと言い張りました。
　父はすべて知っていたのだと思います。大事な一人息子を殺されても、一族に累が及ばないようにしたのです。それが昭和の庶民の生き方でした。

反戦と疑われ
　それから５０年もたったころ、ある高名な詩人が私を訪ね、当時のことを教えてくれました。兄の所属したサークルは若い労働者や貧しい学生が集まって詩を書き、励まし合った小さなサークルでした。サークルを襲ったのは弾圧などという生やさしいものではなく、人間のせん滅でした。この団体が戦争反対の何かを起こしそうだと思われたため、葬られてしまったのです。
　治安維持法で人知れず抹殺されてしまった人が大勢いると言われています｡指導者や思想家だけでなく､まじめに底辺でいじらしく生きて､小さい妹を養っていたような者にさえ降りかかってきたんです｡戦争を進めるために若い命をどんどん消していったのです｡
　戦争の実態を語り継いでいかなければならないと思っています。戦争は体験で学習させてはならないのです。
(２００９年０９月２５日，「赤旗」) （Page/Top）

山宣揮毫の「唯生唯戦」／越後・五泉を訪ねて／浜田紀男／ひたすら生きひたすら…


右翼の兇刃に斃れる数日前に
　希代の悪法の治安維持法改悪に、国会議員としてただひとり最後まで反対したため、１９２９年３月５日、東京の神田の旅館・光栄館で、右翼の凶刃に斃れた山本宣治が、斃れる数日前に新潟県五泉市に、揮毫した「唯生唯戦」の掛け軸があるといわれている。それを検証してとの、小田切明徳（宇治山宣会顧問）さんの依頼があった。０９年３月１５日、長野山宣会第３７回総会に招待され、「現代に生きる山宣」の記念講演をした翌日に、五泉市を訪ねることとなった。

応接台の上の白い紙箱から
　山宣は１９２９年２月２７日、農民組合の招待で、五泉村を訪れている。演説会を予定するも、警察から「集会禁止」とされ、やむなく夕食後に磐越西線上野駅行き列車で、農民組合の石田宥全氏（１９０１～１９８１）と共に上京している。小田切さんによれば、ＪＲ五泉駅前の「かじや旅館」か、戦後社会党の衆議院議員となった、石田宥全氏の関係先を調査すれば分かるのではないかという。
　五泉市の猪熊豊日本共産党市議と連絡がとれ、案内をお願いすることになった。五泉市の人口は約５万５千人で、特産品として、牡丹栽培が盛んで苗木で全国１位、切り花が２位の生産があり、ニットの全国的な生産地である。もちろんお米もおいしい。猪熊市議が前日に電話連絡をしていたので、石田宥全氏の長男の和夫氏が待っていてくれた。応接間に通されると、その応接台の上に掛け軸を入れていると思われる、長方形の白い紙箱が置かれていた。和夫氏は紙箱から掛け軸を取り出し、床の間に披露してくれた。
　山宣独特の書体で縦書きで「唯生唯戦」と書かれ、左側に一九二九・二・二七於五泉　山本宣治とある。署名下の花押は卵子に向かう精子を象っている。山宣が良く使っているものだ。下部にはラテン語で、ＶＩＴＡ　ＢＲＥＢＩＳ　ＳＣＩＥＮＴＩＡ　ＬＯＮＧＡ（人生は短く科学は長し）と書かれている。「かじや旅館」で昼食しながら座談会を開き、山宣得意の科学的セックス論を聴き、そのとき揮毫してもらったものだと、宥全氏は記録している。

書を見た感銘ときめき再び
　山宣は１９２９年２月２５日でも、東京・羽田小学校にて、日本相愛会の主催で「治安維持法改悪絶対反対」で演説している。終了後、房前市三氏の一筆の求めに応じたが、適当な用紙がないため、障子紙、筆墨を用意し、講堂で｢唯生唯戦｣と横書きし、左側に為日本相愛会　一九二九・二・二五　山本宣治と一気に書き上げ、署名横に花押を記している。この書は現在、日本共産党中央委員会に寄贈されている。
　五泉の「唯生唯戦」は、戦後宥全氏の手により、その上部に宇治善法の山宣記念碑の裏面にある「山宣ひとり孤塁を守る　だが私は淋しくない　背後には大衆が　支持しているから」の拓本が貼り付けられている。唯生唯戦の意味はそれぞれだが「ひたすら生き、ひたすら戦う」といわれている。石田家により大切にされているのだろう、一点の染みもなかった。
　この書を見たときの感銘は、昨年の６月１日、山宣資料館で、山宣の突然の悲報に驚き、山宣の実家の花やしきに弔意を送った、俳人の河東碧梧桐の書簡を、７９年ぶりに発見したときのときめきと同一のものだった。
　（はまだ・のりお 大阪山宣会事務局長）
　◇
　この「唯生唯戦」は２６日の大阪山宣記念集会（午後１時からドーンセンター）で展示されます。℡０６（６７７２）７５５５
( ２００９年０９月２３日，「赤旗」) （Page/Top）

「私はあきらめない」／「蟹工船」と現代／合唱構成劇に／北海道

　日本共産党員でプロレタリア作家の小林多喜二の代表作「蟹工船」が発表されてから８０年。多喜二が告発した野蛮な労働とたたかいの世界が合唱構成劇「多喜二碑（いしぶみ）の前で」としてよみがえりました。２０日、札幌市で開かれた「北海道のうたごえ祭典」に登場しました。
　「蟹工船」ブームの多喜二のリポートをまとめようと、小樽市の多喜二碑を訪れた学生３人の前に突然、８０年前からタイム・スリップして蟹工船の労働者、宮口多助が現れるというところから物語は始まりました。４人は「派遣切り」やネットカフェ難民、ホームレスと蟹工船の時代とがあまりにも似ていることに驚きます。
　学生３人と再び８０年前に戻った宮口ら蟹工船の労働者がそれぞれ選んだのは、「そして立ち上がった」たたかいの道でした。
　２５０人の大合唱を指揮した作曲家の池辺晋一郎さんは「多喜二の『蟹工船』は私の愛読書です」と紹介し、「おい、地獄さ行ぐんだで！」で始まる小説の冒頭をそらんじて、会場をわかせました。
　「心待ちでした」というのは宮坂八重子さん（６５）＝札幌市＝です。３月に地域で開かれた「派遣村」で相談員を担当しました。「解雇、多重債務とやっとの思いで相談に来る人が多い。〝自分だけのことにしていたら現状は変わらないよ。まわりに話して世の中も変えましょう〟と必ず話します。『私はあきらめない』の言葉がすごく印象に残りました」と語りました。
( ２００９年０９月２１日，「赤旗」) （Page/Top）

主張／敬老の日／名実ともに長寿を祝う日本に

　今年の敬老の日は、長年にわたって「敬老」の心を踏みにじってきた自民党政権の崩壊の中で迎えました。日本の政治に文字通り「敬老」の心を取り戻す大きなチャンスが開けています。

若者と対立させる議論
　敬老の日は「多年にわたり社会につくしてきた老人を敬愛し、長寿を祝う」（国民の祝日に関する法律）日です。こどもの日、成人の日に準じて「老人」の日とはせず、「敬老」の日としていることに大きな意味があります。
　ところが自民党政府は１９８０年代以降、財界仕込みの「構造改革」路線によって高齢者の福祉をずたずたにしてきました。国の制度として７０年代に無料化した老人医療費を有料に戻し、それを皮切りに社会保障の連続改悪に踏み出しました。消費税の導入と税率引き上げは年金生活の高齢者に重い負担をかけています。
　何より許せないのは、自民党政府が〝高齢者福祉は若い世代の重荷だ〟と、若い世代と高齢世代の対立をあおって高齢者に負担増を迫ってきたことです。これほど、お年寄りに肩身の狭い思いをさせた議論はありません。
　実際には高齢者福祉の改悪を突破口にして、健保本人の窓口負担や年金保険料の引き上げなど現役世代の負担増が進められました。生活保護では老齢加算の廃止に続いて母子加算も廃止されました。消費税は不安定雇用に苦しむ若者や学生を痛めつけています。
　お年寄りをないがしろにする社会は若い世代も大切にされない社会です。憲法２５条はすべての国民に「健康で文化的な最低限度の生活」を保障しています。世代の対立をあおる議論はすべての世代にかけられた生活破壊の攻撃です。
　発足したばかりの民主党中心の連立政権は、後期高齢者医療制度の廃止など、高齢者・国民の声に応える姿勢を示しています。
　後期高齢者医療制度は高齢者いじめの極みであり、すべての世代の命と暮らしを脅かす社会保障抑制路線の先ぽうを担っています。全国の高齢者が怒りの声を上げて世論に訴え、日本共産党も国会で論陣を張り、政府に廃止を迫ってきました。高齢者の運動が政治を大きく動かす原動力となったことは明らかです。
　これを突破口に高齢者と若い世代が連帯し、高齢者と子どもの医療無料化を勝ち取り、社会保障の削減から充実へと抜本転換を進めようではありませんか。
　かつて老人医療費の無料化を実現した日本は、今よりはるかに貧しい時代でした。軍事費や大型公共事業の浪費を是正し、大企業・大資産家への行き過ぎた減税を改めるなら、消費税に頼らなくても財源は生み出せます。

心から「よかった」と
　ことし喜寿（７７歳）を迎えた方が生まれたのは３２年（昭和７年）です。世界ではドイツでナチスが第１党となり、日本は前年に中国への侵略戦争を開始しています。翌３３年には「蟹工船」の小林多喜二が特別高等警察に逮捕、拷問の末に虐殺されました。
　侵略戦争に心身ともに傷つけられ、戦後の窮乏と怒とうのような経済の構造変化の中で身を粉にして働いてきた世代です。
　そんな高齢者のみなさんが心の底から「長生きできてよかった」と思える日本へ、日本共産党は全力をあげてがんばります。
( ２００９年０９月２１日，「赤旗」) （Page/Top）

平和や愛、働く喜び６０年の思い込めて／道うたごえ祭典／札幌

　炭鉱労働者のたたかいや核兵器なくせの運動とともに始まった北海道のうたごえ６０年を記念した「北海道のうたごえ祭典ｉｎさっぽろ」が１９日、札幌市で始まりました。
　１日目はコンクール形式の合唱発表会。函館、釧路、旭川など全道から集まった２９グループ・合唱団約５００人が憲法９条に寄せる思いを歌う「我が窮状」（沢田研二作詞）、医療現場をテーマにした「いのちをつなぐ人たちのうた」など平和や愛、働く喜びを発表曲に込めました。
　道のうたごえ運動は空知の炭鉱地帯を中心にスタートし、１９５５年春の炭鉱のうたごえ祭典を機に、同年１０月の「第１回北海道のうたごえ祭典」へと発展。道民のたたかいと歩んできました。
　道国鉄合唱団の２１人は、「闘う我ら」「俺は枕木」を熱唱しました。分割・民営化でＪＲが発足した際の採用差別や広域配転で労働者が散り散りになり、活動を休止していましたが、「もう一度歌おう」と３年前の道祭典で復活しました。
　「職場は、工場や運転、保線とさまざまです」というのは岩見沢から駆けつけた菅原三七男さん（６５）。広域配転で東京駅のそば店などで１２年、埼玉県大宮工場で６年働いてきました。「みんなの願いは、一刻も早い国鉄闘争の解決と元気で長く歌い続けられることです」といいます。
　２日目の２０日は午後１時から札幌市教育文化会館で大音楽会。①うたごえ運動６０年②構成劇「多喜二碑の前で」③池辺晋一郎氏指揮で２００人の大合唱―３部構成です。
(２００９年０９月２０日，「赤旗」) （Page/Top）

潮流

　夏のあいだ南の空に輝いていた赤い１等星が、いまは高度をだいぶ下げました。アンタレス。さそり座の心臓にたとえられる星です▼ギリシャ語の名は、いちばん赤くみえる火星（アレス）に対抗（アンチ）する赤い星、という意味をもちます。５等星の伴星を連れていますが、肉眼では一つにしかみえません。太陽にくらべ、直径が７２０倍、明るさは６万倍以上の、巨大な星です▼宮沢賢治は、アンタレスが好きだったのでしょう。「星めぐりの歌」や「銀河鉄道の夜」に、それと分かる星がでてきます。「銀河鉄道の夜」の｢蝎の火｣です。「ルビーよりも赤くすきとおり、リチウムよりもうつくしく酔ったように」燃えあがる火▼小さな虫を殺して食べていたサソリは、自分がイタチに食べられそうになると逃げ回り、井戸の中でおぼれ始めた。サソリは祈る。「神様。…どうかこの次には、まことのみんなの幸いのために私のからだをおつかいください」。サソリは火となって、夜の闇を照らすようになった…▼「魂が星となるならさそり座のアンタレスならむよ多喜二の星は」。歌人の柳川月さんの一首です。人間解放のたたかい半ばで、弾圧に倒れた小林多喜二。彼の思いは、「みんなの幸い」を願って燃え続ける「銀河鉄道の夜」の「蝎の火」と、重なるかもしれません▼多喜二は、今秋も時の人です。多喜二を描く、井上ひさしさんの新作「組曲虐殺」（こまつ座・ホリプロ公演）の舞台が、１０月から東京・兵庫・山形を巡ります。
( ２００９年０９月２０日，「赤旗」) （Page/Top）

道うたごえ祭典／多喜二の時代と現代つなぐ構成劇／１９日から札幌

　札幌市で１９、２０の両日開かれる北海道のうたごえ祭典に、日本共産党員でプロレタリア作家・小林多喜二の時代と現代をつなぎ「私はあきらめない　私は絶望しない…」と訴える構成劇｢多喜二碑(いしぶみ)の前で｣が登場します｡
　舞台は多喜二が育った小樽の街。多喜二記念碑のある展望台前に来た大学生の前に突然、過酷な状態に置かれた８０年前の蟹工船の労働者がタイムスリップして現れます。話すうちに「派遣切り」の現代と蟹工船の時代が余りにも似通っていることにびっくりする大学生。８０年前の蟹工船に再び戻った労働者たちが選んだのは…。金田一仁志氏の脚本・演出です。構成劇を演じるのは、大学生役３人、子役１人を除いて北海道合唱団のメンバーです。
　増子捷二同祭典運営委員長は「〝うたごえはたたかいとともに〟といわれます。日本の現状を表した歌を通して、未来を切り開く力につながればと思います」と語ります。
　１９日は､合唱発表会(午前１１時半､キタラ小ホール)､大交流会(午後６時半､北区民センター､参加費１０００円)｡
　２０日は、大音楽会（午後１時、教育文化会館大ホール。一般２５００円・中高生８００円）。①歌でつづる炭鉱から始まった北海道うたごえ運動６０年②構成劇「多喜二碑の前で」③池辺晋一郎さん指揮２００人の大合唱―の３部構成です。
(２００９年０９月１８日，「赤旗」) （Page/Top）

第２回伊勢崎・多喜二祭開く／延べ２００人余の参加で成功


「よみがえれ、多喜二！」土井大助氏の講演に共感
　群馬県伊勢崎市で６日、１９３１年９月６日におきた「小林多喜二奪還事件」を記念して、第２回伊勢崎・多喜二祭が開催されました。午前１１時から、小林多喜二が立ち寄り、検束もされた故菊池敏清宅で現地説明会が開かれ、約５０人が参加しました。敏清氏の長女の規子さん、三女の利根子さんからのあいさつ、八田利重代表の説明に続き、群馬県文化財研究会会長の桑原稔氏から７月１９日に行った旧菊池敏清家調査の概要が報告されました。参加者は多喜二が茶話会で語った時に背にしたという床柱に見入っていました。
　午後２時から伊勢崎市文化会館大会議室で会場いっぱいの１６０人余の参加で記念講演会が開かれました。会では、八田利重代表のあいさつに続き、奪還事件の際に活躍した関係者の家族や県内研究者が紹介され、大きな拍手に包まれました。次に事務局の用意した大判の多喜二奪還紙芝居が披露されました。全国の多喜二祭の状況を藤田廣登氏が述べ、桑原稔氏が調査結果による菊池敏清宅の保存の必要性を訴えました。
　記念講演に立った土井大助氏は、自らが８２歳になったことを述べて、演題に入りました。土井氏はこれまでの多喜二研究の中で明らかにされてきた多喜二の人柄や思想的な発展をユーモアを交えながら話しました。多喜二と親交のあった手塚英孝氏や江口渙氏から聞いたエピソードなども披露、また多喜二文学の一節なども紹介し、時には会場は大きな笑いに包まれました。
　高校３年の女子高生は、「楽しい話が多く、聞いていておもしろかった。多喜二さんに親しみが持てた」と語っていました。
　またある参加者は、「『蟹工船』ブームが起きた理由に多喜二そのものの生きる姿勢への共感があったと実感した。改めて多喜二全集を読み直したい」と話していました。
( ２００９年０９月１７日，「赤旗」) （Page/Top）

鶴彬生誕１００年／９条守る運動呼びかけ／盛岡で墓前祭

　反戦川柳に命をかけた鶴彬（つるあきら）の命日である１４日、鶴彬を語る盛岡の会は盛岡市内で墓前祭を開きました。反戦川柳碑がある遠野市から来た女性など１７人が参加し、鶴彬の生誕１００年・没後７１年をしのんで献花と合掌をしました。
　鶴彬は治安維持法違反で２度逮捕され、２９歳で亡くなるまでに、千を超える句と８０余の評論などを残しました。
　あいさつで同会の牛山靖夫会長は、今年は鶴彬の生誕１００年にあたり、小説が発表され、映画「鶴彬　こころの軌跡」（神山征二郎監督）も全国的に上映されていると報告。盛岡市でも１１月１４日に上映会が計画されており、多くの人たちに鑑賞してもらいたいとのべました。また牛山会長は、政治が変われば反戦平和の運動がいっそう進むと話し、「枯れ芝（しば）よ団結をして春を待つ」の句のように、鶴彬の志を受け継ぎ、憲法９条を守る運動を広げようと呼びかけました。
(２００９年０９月１６日，「赤旗」) （Page/Top）

近づく伊藤千代子没後８０周年／藤田廣登／先進不屈性示す資料に寄せて

　戦前３・１５事件で検挙され、市ヶ谷刑務所での獄中闘争中病を得て特高警察の監視下の松沢病院で１９２９年９月２４日、２４歳２カ月の生涯を閉じ、諏訪高女時代の恩師・土屋文明によって「こころざしつつたふれしをとめよ」と詠まれた伊藤千代子の没後８０周年がめぐってきます。
　この間にも伊藤千代子の活動にかかわる資料が幾つか筆者のもとにもたらされています。これらは日本共産党に入党してわずか二週間後に検挙された伊藤千代子の先進不屈の活動を生きいきと示すものとなっています。

重要な任務示す「押収物リスト」
　その一つは伊藤千代子が１９２８年３月１５日朝、共産党中央事務局から託された重要文書のガリ切りを徹夜で行ない、その文書を北区滝野川の党秘密印刷所へ持参し特高警察によって検挙されたおり彼女の居室（文京区湯島）から押収された特高資料（大原社研提供）で、「政治経済情勢ニ干（ママ）スル日本共産党テーゼ」「大衆党活動ノ日本共産党ノテーゼ」原稿とその筆耕済の謄写原紙等が記載されたものです。これらの文書は開催を予定されていた大会方針にあたるもので彼女の受け持った重要な任務を示しているものです。

「ウエルカム・ニシムラ」
　伊藤千代子が東京女子大社会科学研究会のリーダーとして活動していた当時、日本女子大社研で清家齢や西川露子らとともに活躍していた西村櫻東洋（おとよ、１９０５～１９８３、戦後福岡県で農民組合運動に従事）は、卒業後労農党書記局で活動し山本懸蔵や岩田義道との連絡係の重要な任務ついていました。２９年の４・１６事件で検挙され、都内各署たらい回しの拷問に屈せず７月中旬、市ヶ谷刑務所未決監に収監されます。
　独房に入ると壁に「ウエルカム・ニシムラ」と書かれており、やがてコツコツと壁をたたく音、一部屋置いた隣室から伊藤千代子の「窓側に立ちなさい」の声、「サインは私が書いた」「獄中には一九人の同志たちがいる」ことなどを聞き出します。
　西村はやがて獄中のリーダーの一人と尊敬する伊藤千代子が夫・浅野晃らの変節とたたかいつつ傷つき、治療を与えられぬまま拘禁精神病を病んでいく日々を痛恨の思いをこめて『西村櫻東洋の遺稿集』(１９８４年発行・非売品）に書き遺しています（提供は甥の小川洵氏）。

「弔意を香典に」著名人呼びかけ
　伊藤千代子は松沢病院で快方へ向かう途上急性肺炎を併発、誰にも看取られることなく無念の死を遂げました。その直後に彼女への弔意を香典として送ろうという趣旨の「呼びかけ文」が櫛田民蔵、服部之総、蔵原惟人、大内兵衛、大宅壮一、小沢正元ら１０人の発起人名で出されていたことが判明しました（提供・大原社研・五十嵐仁所長）。その原文は『櫛田民蔵・日記と書簡』（社会主義協会出版局刊）の森戸辰男宛て２９年１０月５日分に収録されていることから本文は櫛田民蔵が起草したと推認され、「解放運動に二十五年の生涯を捧げつくした彼女」の世話に当たった浅野のお母さんに「香典を」と呼びかけています。当時、治安維持法下の弾圧の中でこころざしを同じくする多くの著名人らがいち早く伊藤千代子の解放運動への献身を評価しつつ義母ステさんの救援活動に手をつくしていたのです。
　伊藤千代子の活動への高い評価はそれにとどまらず翌３０年１月、モスクワで活動中の片山潜からも発信されました。片山潜は論文「世界経済恐慌に打ちひしがるる日本資本主義と日本共産党の任務」で党内に「×××の廃止」（伏字は君主制）のスローガンをおろし解党を主張する反対派が結成される中で「特に同志伊藤千代の如きは、苦悩なる生活を続けたにも不拘……その命を失う迄」「スパイが彼女を情け容赦もなく殴打したにも不拘、一言だに喋べらなかった」「我々は伊藤千代……等の同志が、法廷に於いても又牢獄に於いても如何に堅く守って動かなかったか」と賞賛の言葉を寄せています。
　日本共産党員としてその節を全うした伊藤千代子へのこれらの高い評価は彼女の先進性・不屈性を示しているもので激動の今を生きる私たちを励まし続けています。
　（ふじた・ひろと　伊藤千代子の会〈在京〉事務局・労働者教育協会理事）

伊藤千代子没後８０周年記念行事
　◇墓前・碑前祭　２３日午前１１時　長野県諏訪市湖南・龍雲寺霊園◇記念集会・午後１時　片倉館２階大広間（諏訪市）・講演・「無言館のこと」窪島誠一郎。伊藤千代子を歌う三つの歌曲　中村洋子◇全国参加者交流集会　午後５時半　諏訪湖畔・華乃井ホテル（宿泊も）◇オプショナルツアー　２４日９時～３時半　土屋文明・藤森成吉、伊藤千代子ゆかりの地を訪ねるフィールドワーク　
　連絡先・（記念集会等申し込み）伊藤千代子こころざしの会・三沢実方℡０２６６（５３）１２２４。（宿泊・交流会等申し込み）藤田方℡０９０・４５２７・１１２９
( ２００９年０９月１６日，「赤旗」) （Page/Top）

演劇時評／菅井幸雄／８月の朗読劇／戦争を問い平和に生きるために

　衆議院選挙が激しくおこなわれた８月、演劇人たちは、６４年前の戦争の意味を問いかけ、平和の尊さをあざやかに謳いあげる朗読劇を、相次いで公演した。青年劇場が８月７、８の両日、７年目をむかえる「平和へのメッセージ２００９年８月」を上演し、次いで名取事務所が朗読劇「なでしこ隊」を、８月１４から１６日までの３日間初演した。１９９５年の敗戦５０周年企画としてはじめて１５年目をむかえた俳優座は、朗読劇「戦争とは…２００９」を１４日から３日間おこない、「非戦を選ぶ演劇人の会」は１７、１８の両日、朗読劇「遠くの戦争―日本のお母さんへ―」を上演した。「非戦を選ぶ演劇人の会」のこの種の「ピースリーディング」も１２回目を数えている。

１１人の群読で風刺と否定と
　青年劇場の上演は二部構成になっており、第一部では、八つの作品が朗読された。それぞれが独自性を発揮していたが、なかでも、光山樹太郎の「短イ朝」を朗読した蒔田祐子、工藤雪枝の「特攻へのレクイエム」の一節を「特攻おばさん」と題して朗読した松永亜規子、俳優池田生二の「夢に駆けた治安維持法下の青春」の一節を朗読した中谷源が印象的であった。
　「ボクハボクノカタチノママ」８月９日の「イチバン短イ朝」で「白イ灰ダケニナリマシタ」と歌った詩人の思いは、いまもなお鮮烈である。移動演劇団櫻隊の一員であった池田生二は「広島に原爆が落ちた」時、家族が空襲にあったと聞いて、沼津に帰郷していた。そのために「僕ひとり遺」ったという。やりきれない思いが、淡々とした筆触を通して、伝わってきたのである。
　第二部は、花森安治の「見よぼくら一戔五厘の旗」の特徴的な個所を、小竹伊津子を中心とする１１人の俳優の群読でおこなっている。群読ではいっせいに揃うことが不可欠であり、その点でやや気になる個所もあったが、全体としては戦争を風刺し否定した花森安治の意図を、十分に感じとることができた。

「語り続ける」姿勢の意義を
　これにたいして、内田透が構成・演出をおこなっている俳優座の舞台では、世田谷被爆者証言集を山口みるが台本化した作品を、神山寛、飯原道代、桂ゆめの３人が朗読した以外の六作品は、すべて１人の俳優が朗読している。そのなかで、少年兵として戦争に参加した体験を、絶妙な話術で語りながら、土井大助の詩「山で死んだ男たちよ」を読んだ矢野宣が光っている。さらに、このシリーズの常連である阿部百合子が、『悪魔の飽食』の著者・森村誠一らとともに旅行したさいの記録「『平頂山遺骨塔』を訪ねて」も心に迫る内容であり、窪島誠一郎編著の「無言館」の一節を、岩崎加根子の朗読した場面も、胸に沁みた。平和への思いと芸の年輪とが、見事に融合していたのである。
　「非戦を選ぶ演劇人の会」の舞台（篠原久美子作、渡辺えり構成・演出）は、難民キャンプのパレスチナ少年と文通する日本の主婦を中心につくられているが、そのなかに、イスラエルによるパレスチナの民衆虐殺、イラクでおこなわれているアメリカの非人道的行為が告発されている。村井国夫、大塚道子らが語り、毬谷友子らが歌うという舞台だが、派遣労働の苛酷な実情をも描くという現代性に裏打ちされていた。
　「なでしこ隊」（飯野健雄脚本・小笠原響演出）は、特攻隊の基地に住む少女たちの目線を通して、特攻兵士の苦悩を謳いあげたものだ。最後に「少女」は「散っていった彼らに思いを寄せ」「語り続ける」行為を、現代に生きる者が共有する必要性を強調している。この姿勢のもつ意義を、あらためて痛感するのである。
　（すがい・ゆきお）
( ２００９年０９月１６日，「赤旗」) （Page/Top）

反戦川柳作家収監の地／大阪で鶴彬「碑前祭」

　第２回鶴彬（つる・あきら）の「碑前祭」が、あかつき川柳会と鶴彬顕彰事業基金の主催で１４日、大阪城公園内の、同碑前でおこなわれました。
　同碑の立つ大阪城公園内の豊国神社辺りは､反戦川柳作家･鶴彬（本名・喜多一二）が１９３１年４月から１年８カ月間、収監されていた大阪衛戍（えいじゅ)監獄のあった場所｡
　鶴彬が２９歳の若さで亡くなった９月１４日に昨年除幕され、「暁をいだいて闇にゐる蕾」の作品が書かれた石碑と３本のサルスベリが植樹されています。
　あかつき川柳会の近藤正幹事が、５年以上にわたって取り組まれた同碑建立に至る運動の経過を話しながら、「多喜二忌や山宣忌のように、今後毎年９月に『鶴彬忌』の記念事業としてこの運動は引き継がれていくことでしょう」とあいさつ。
　詩吟朗詠の後、出席者全員で献花、映画「鶴彬―こころの軌跡」大阪上映実行委員会の有川功さんが「喜多一二から鶴彬へ」と題して、話しました。
( ２００９年０９月１５日，「赤旗」) （Page/Top）

文化／自伝的エッセー集『遥かなる信濃』／歌人碓田のぼるさん／朝鮮人長屋で発見した啄木の歌

　叙情あふれる短歌や石川啄木の研究などで知られる歌人・碓田のぼるさんが、自伝的エッセー集『遥かなる信濃』を出しました。炭鉱長屋で出合った啄木の歌。私学を守る運動への献身。半生の歩みは、個人史の域を超え、読み応えがあります。
　児玉由紀恵記者
　碓田さんは、１９２８年、長野県北部の盆地で、貧しい小作農の次男として生まれました。太平洋戦争開戦の翌年(４２年)、１４歳からの５年間、蒸気機関車（Ｄ５１）を造る国鉄長野工場で働きました。
　本書の第１章は、「邂逅（かいこう）」。東京・上野公園の国立科学博物館での、この機関車と碓田さんとの五十余年ぶりの再会です。「あゝ、うちの工場のデゴイチだ！」という感動から、回想の筆は深まっていきます。老機関車のようだった義父や、彼が敬愛した新聞人・杉村楚人冠（そじんかん）、同じ上野公園の野口英世像にまつわる話…。
　全１２章がユニークに展開し、調べた事実、一つ一つの挿話が、近代史の一こまを味わうように知識を豊かにしてくれます。
　「折々に詠んだ短歌がとても助けになりました。詠んだときの場面が思い出され、記憶が引き出されます」

初恋のドイツ少女
　『民主文学』に１年半にわたって執筆。連載を続けるなかで、調べに調べて、事実が判明した喜びも。国鉄長野工場での孤独な少年工時代の初恋の人―ドイツ人の少女のその後のことです。
　少女の父は、第１次大戦で日本軍の捕虜となったドイツ人で、東京の西銀座でドイツ料理店を開いていた。碓田さんの娘が、アルバイトで働いたことのある店であり、亡き女主人こそ、碓田さんの初恋の人だった―。
　「連載の場がなければ、調べることもなかった。小説のような奇縁でしたね」と苦笑します。
　この初恋も、この１冊の自伝も、啄木なしには語れません。衝撃的なのは、啄木の短歌との炭鉱長屋での出合いです。

敗戦直後の炭鉱で
　敗戦直後、石炭不足で揺れるなか、碓田さんは、長野工場から「石炭増産隊」の一員として、北海道の炭鉱へ。宿舎は、戦時中、朝鮮人労働者が入っていた炭鉱長屋で、部屋のベニヤの板壁に朝鮮文字でぎっしり落書きが書かれていました。そこに、日本文字の啄木の歌２首を発見した驚き―。
〈今日もまた胸に痛みあり。／死ぬならば、／ふるさとに行きて死なむと思ふ。〉〈地図の上朝鮮国にくろぐろと墨をぬりつつ秋風を聴く〉
　「油と汗にまみれて黒ずんだ壁に、正確な日本語で書いてありました。２首目は、当時一般には流布していない。日本に留学した高度な知識を持った朝鮮人が、啄木全集などで探索して知ったとしか考えられません」
　「この出合いから、啄木の歌への関心が変わっていった」と碓田さん。
　「上級学校に行けないという精神的な屈折があり、啄木の感傷的な面を大いに気に入っていたのですが、啄木は、それだけじゃない、と」
　この若き日の発見が、その後の啄木研究に大きな示唆となります。｢革命的文学者｣として啄木をとらえた『石川啄木と｢大逆事件｣』(９０年)をはじめ、啄木研究の進展に大きな貢献をしてきました。

私学の教壇に立って
　碓田さんは、東京に出て働きながら学び、５４年から私立高校の教壇に立ちました。
　生徒の非行克服に心をくだき、教職員組合の結成、首きり撤回闘争と、私学を守る運動を担っていきます。その身に強烈に響いたという『アラゴン詩集』の言葉―〈教えるとは希望を語ること　学ぶとは誠実を胸にきざむこと〉が、たたかいの記述とともに胸をうちます。
　貧しい一家の「生活の重荷」を背負っていた父のこと。碓田さんが、一度だけ、信濃の盆地から東京に連れ出した母のこと。「――遥かなる信濃よ。」という一行で結んだ本書は、限りない郷愁を誘います。
　「生まれ故郷、風土と人間の関係は、どう考えても浅くない。私の場合は、故郷を思うことで、自分の今を励ましてきました」
　たたかって人生を切り開いてきた人の、心にしみる述懐です。
〈思想するどく今を起ちゆけと励ましくるわが裡よりの啄木の声〉
〈雪の秀を高くかかげしふるさとの山脈澄めば湧く力あり〉
　碓田のぼる

うすだ・のぼる＝１９２８年生まれ。高校教諭の後、全国私教連委員長、全教副議長などを歴任。新日本歌人協会全国幹事。歌集『花どき』で第１０回多喜二・百合子賞。歌集『状況のうた』『手錠あり―評伝渡辺順三』『ふたりの啄木』で渡辺順三賞。『石川啄木―その社会主義への道』ほか著書多数
(２００９年０９月１３日，「赤旗」) （Page/Top）

１０ｓ２０ｓＹモード／２０代候補出会い夏の陣／東京１２区池内沙織さん／福岡３区川原康裕さん

　炎天下を。雨の中を。総選挙の善戦・健闘に貢献した小選挙区候補者たち。２０代の２人の青年候補者に、初挑戦の感動体験を寄せてもらいました。

派遣の子と女子会約束／東京１２区池内沙織さん（２６）
　立候補したとき私にあったのは、〝Ｔシャツ・ジーンズと決意だけ〟でした。それから１年９カ月。いまは、「とにかくやりとげた」とほっとしています。３万人もの人が自分の名前を投票所で書いてくださった。感無量です。
　出会いや感動は思い出せないぐらいあります。区議さんと一緒に都営住宅で独り暮らしのお年寄りを訪ねたり、老人保健施設で介護を一日体験させてもらってトイレ介助などのご苦労を知り、職員の方と懇談したりと、実体験を通してみなさんの願いを代弁しようと演説原稿を考えました。
　自分でいうのも変ですが演説は「こん身の力をこめた」というのが実感です。ハンドマイク宣伝をしていると、「私も派遣です。将来に不安しかない」と２７歳の子が話しかけてきたり、家の前で水まきをしていて演説が耳に入ったという女性が最後には涙を流して「がんばって」と。
　選挙区は公明党の代表と民主党の新人が相手でした。
　「この１２区の公明党代表に自公政権退場のレッドカードをつきつけよう。決定的な一票をもっているのはみなさんです」と訴えると強い共感が返ってきました。
　残念だったのは公開討論会を公明、民主が拒否し、直接対決できなかったこと。
　『蟹工船』の作家・小林多喜二は日本共産党員、戦争反対と声を上げただけで命を奪われました。二度とこんな時代を繰り返さない。９条を守り抜くことこそ若い世代の最大の仕事―。私はそう思って入党しましたし､演説でも話しました｡泣きながら聞いてくださるお年寄りがいました。
　仲良くなった２７歳の派遣の子と「女子会」（飲み会）やろうと約束してます。楽しみ。

メール１本宣伝参加／福岡３区川原康裕さん（２８）
　私は昨年９月末に立候補を決意し、ほぼ１１カ月の間、選挙区中をかけめぐりました。いままで青年支部長として街頭宣伝でマイクを握り、共感のこもった声援をいただいたことは何度かあります。しかし、総選挙の候補者として街頭で訴えると、もっと切実な、社会を変えてほしいという大きな声援を何度もいただきました。
　高校の授業料無償化の話をすると、「そうだ！　そのとおり！」と激励をしてくれた青年。生活保護の母子加算復活をと訴えると、「私も母子家庭です。がんばってください！」と握手を求めてきた若いお母さん。後期高齢者医療制度の廃止を絶対にやってほしいと訴えかけてきた、母親を介護しているという男性。
　切実な声を聞くたびに、日本共産党の議席をのばして、何とかして実現しなければという思いが強くなりました。
　一番印象に残ったのは公開討論会です。景気対策や農業問題など地域の切実な問題で党の主張を訴えると会場に共感が広がるのを実感しました。
　逆に自民・民主の「二大政党」は、元閣僚と元議員でしたが、言い訳に終始し、互いにけん制してはっきりとモノが言えない姿をみて、党の出番を確かに感じました。
　この選挙で青年支部や民青同盟でつながった青年、友人など多くの青年が立ち上がり、支持を広げてくれました。中でも公示前に選挙ボランティアがしたいとホームページにメールをしてきた青年に会いに行ったら、その日の「お帰りなさい宣伝」にすぐ参加をしてくれたのは感激でした。
　「自公政権退場」の願いが民主への風として吹く中で、日本共産党が議席を維持したことに確信を深めています。これからも、青年・国民の切実な願いを実現するためにがんばりたい。
(２００９年０９月１３日，「赤旗」) （Page/Top）

遥かなる信濃／碓田のぼる著／評者三枝昂之歌人


時代と格闘を続けた真摯なドラマ
　碓田氏は、善光寺平の貧しい小作農の家に生まれたが、母君はほとんど信濃の盆地を出ることなく７７年の生涯を終えられたという。苦労ばかりのその人生にも尊いドラマはあったはずだが、自伝的エッセイの本書が教える碓田氏の軌跡はそれとは別の、時代の困難と正面から向き合った、起伏の多いドラマである。
　氏は小学校卒業と同時に盆地を出て国鉄に就職、苦学の末にやがて日教組本部の専従役員として教育界の先頭に立つことになる。その折々の闘争も本書に詳しいが、ご存知の方も多いだろうから、ここでは別の一面を紹介しよう。
　碓田氏のファーストキスは十六歳の時。相手はなんとドイツ人の「青い瞳が澄んだ」少女、しかも場所は野尻湖の夏の高原というから、とびっきりロマンチックである。少女一家は突然どこかへ移って初恋ははかなく終わるが、２００８年に意外な形で再会を果たす。だからこの一冊は、切なくてドラマチックな、碓田氏の初恋物語でもある。
　短歌に関する記述にも感動的なくだりが少なくない。
　戦後に石炭不足が深刻となり、国鉄の石炭増強隊に応募して碓田氏は北海道岩見沢の炭坑に入った。不潔極まる炭坑長屋のベニヤは細かい朝鮮文字で埋め尽くされていた。ある時その中に啄木の二首を発見、あッと声を挙げた。一首は歌集未収録の「地図の上朝鮮国にくろぐろと墨をぬりつつ秋風を聴く」。啄木と朝鮮人の心が一つになったこの逸話は、人々の心底に届く啄木短歌の深さを教えている。
　１９５９年の秋に氏は日本共産党に入党。申込書推薦欄にサインしたのが歌人渡辺順三と信夫澄子。「ちょっとニコッと」した順三の表情が見えてきて、なぜかうれしい。
　時代の変転と格闘しつづける運動家兼歌人の真摯な人生のドラマ、一読を勧めたい。

うすだ・のぼる　１９２８年生まれ。『花どき』で多喜二・百合子賞。
( ２００９年０９月１３日，「赤旗」) （Page/Top）

話題作を読み解く／松木新／桐野夏生『ＩＮ』／出口の見えない恋愛の不毛／世界に立ち向かうには

　「ドロドロの恋愛を書いてほしい」と編集者から頼まれた桐野が、初めて書いた恋愛小説が『ＩＮ』だ。桐野は愛読書である島尾敏雄の『死の棘』をテキストに、私小説風な率直さで、作中小説として緑川未来男作『無垢人』を創作し、この課題に挑戦している。

女の存在とは
　島尾の詳細な日記にもとづいて書かれた『死の棘』は、作家である夫トシオの浮気を知った妻ミホが嫉妬のために狂乱していく姿と、次第に崩壊していく家庭の実情を、トシオが当事者として克明に描出した作品だ。
　『死の棘』の「第九章過ぎ越し」に、ミホに命じられるまま訪ねてきた女の頬をトシオが平手打ちし、「女はさげすんだ目つきで私を見ていた」という場面がある。作品世界にほとんど姿をみせず、トシオによってその存在をあたかも抹殺されたかのようなこの女に桐野は執着する。ドロドロの恋愛を生きたはずのトシオにとって、女の存在は何だったのか。
　『ＩＮ』の主人公は、『無垢人』に登場する緑川の愛人「○子」だ。緑川は、妻の千代子に責めさいなまれ、自分だけの都合で「○子」との関係を絶ち、彼女の存在そのものを小説上で抹殺してしまう。『無垢人』を愛読する小説家タマキは、編集者青司との不倫の愛に苦しんでいるだけに、恋愛における抹殺というテーマに強い関心を持つ。「○子」はどのような生涯を送ったのかを、タマキは小説「淫」に書こうとしている。

「事実」の選択
　『無垢人』の「○子」と『死の棘』の女、千代子とミホ、緑川と島尾、タマキと桐野が、微妙なずれを見せながらも重なり合っているところに、この小説『ＩＮ』の面白さがある。
　『無垢人』では、緑川は身勝手で狡猾な夫、千代子は精神を病んだ哀れな妻、「○子」は緑川と千代子の間に潜む黒い影というイメージが固着して久しいのだが、緑川はこの作品が真実だとはどこにも書いていないし、死ぬまで虚構だと言い張っていた。ここから、フィクションである小説において、真実とはどのようなものなのかという興味深い問題が浮上してくる。
　緑川にとっての真実、千代子の真実、「○子」の真実が相互にぶつかり合い、激流となって『無垢人』の世界を流れている。登場人物それぞれが「真実と信じるものの集合が、事実という名の、過ぎゆく時間である」という指摘は、桐野の確信でもあるのだろう。その場合、どのような「事実」を選択するのかは、すぐれて小説家の価値判断にかかっているのだが、そこまでの言及はない。
　八十六歳の千代子に会ったタマキは、彼女が緑川の死後、残された膨大な日記を自分の気に入るように書き換えて、それを素材に恋愛小説を書いていることを知る。緑川の世界そのものを抹殺することで、千代子は彼に復讐をしているのだ。

社会的現実を
　桐野はこの作品『ＩＮ』でたしかにドロドロの恋愛を描いた。緑川と千代子と「○子」、青司とタマキら一線を越えて涯に近づいていかざるをえない恋愛の当事者たちは、あたかもガンジス川対岸の光景のような渺茫とした荒野に悄然と佇んでいるかのようだ。真っ暗な洞窟からの出口は見えない。
　小説の本質を語った言葉に、「芸術の世界、想像と創造の世界は便利な逃げ場であると同時に、世界に立ち向かう力を養う空間でもありうる」（ノーマ・フィールド『小林多喜二―２１世紀にどう読むか』）というものがある。
　『ＯＵＴ』で弁当工場の労働を詳細に描き、『メタボラ』では派遣労働の過酷な実態に光を当てた桐野には、やはり人間関係の内側へ内側へと切り進んでいく作品ではなく、社会的現実を視野に入れた、「世界に立ち向かう力を養う空間でもありうる」作品がふさわしいようだ。
　（まつき・あらた　文芸評論家）
( ２００９年０９月１１日，「赤旗」) （Page/Top）

日本共産党知りたい聞きたい／日本共産党が命がけで反戦を貫けたのは？

　〈問い〉戦前の天皇制のもと、日本共産党は命がけで反戦・平和を貫いたと聞きました。共産党だけが頑張り通せたのはなぜですか。　　（兵庫・一読者）
　〈答え〉戦前の日本では、天皇が統治権のすべてを握り、警察や軍隊は自由と民主主義を求める国民の運動に凶暴な迫害を加えていました。
　教育の場では、天皇は絶対で、アジア・太平洋での戦争は正しいものと、繰り返し教え込まれました。
　戦争が激しくなると、国民生活を戦争への協力に｢総動員｣する体制がつくられ、日本共産党以外のすべての政党が解散して大政翼賛会へと合流しました。当時、戦争に反対することは、天皇制に正面から挑む覚悟がなければできないことでした。
　日本共産党は、この時代に、貧困と抑圧から国民を解放するうえでの最大の障害が天皇絶対の政治体制だと見抜き、主権在民の民主政治を実現するために命がけでたたかいました。そして、科学的社会主義の理論に立った「どの民族も自分たちで国づくりをおこなう権利をもっている」という確信にもとづいて､戦争と領土拡張に反対し､侵略と植民地支配に苦しんでいたアジア諸国の人々との友好を広げるために力をつくしました。
　警察の弾圧で命を落とした党員も少なくありませんが、これに屈せず侵略戦争反対を貫いた党員が存在したことは、日本の戦前史の誇りです。戦前・戦後の党の指導者だった宮本顕治氏は、不当な迫害に対してたたかいぬいた小林多喜二の生き方を「もっとも気高い人間性の発揮」だと述べています。
　近年、アジアの国々を訪問した日本共産党の代表と、「戦争に反対した党」だと知った現地の人々との間に、心の通う友情が生まれています。反戦・平和を貫いた党の歴史は、２１世紀の日本とアジア諸国との友好の大きな土台になるものです。
　日本共産党は、戦争を礼賛する歴史教科書の問題や政治家の靖国神社への参拝など、過去の侵略戦争を美化する政治をおおもとから転換し、歴史を偽造する逆流の根を絶つために力をつくしています。
　（石）
( ２００９年０９月０９日，「赤旗」) （Page/Top）

潮流

　運動選手や会社勤めの人が、最近よくいいます。「もっとモチベーションを上げて」とか「モチベーションを保つ」などと▼文化庁が先週末に発表した２００８年度の「国語に関する世論調査」によると、「モチベーション」という語を聞いたこと・見たことのある人の割合が、０２年度に比べ５３・２％から８０・２％へとふえています。使ったことのある人も、２１・５％から４６・４％へ▼いずれも、カタカナ語の中ではもっともふえています。モチベーションとは、動機づけ、物事にとりくむ意欲を内側から高める働きかけ。たんに、「意欲」「やる気」の意味でも使われていて、社員のモチベーション低下に悩み向上研修を催す会社もあります▼８０年前の１９２９年２月、労農党の代議士だった山宣こと山本宣治は、筆をふるって書きました。「唯生唯戦」。ひたすら生き、ひたすら戦う。今風にいえば、なんというモチベーションの高さでしょう▼山宣は、揮毫から約１週間後、右翼団体の刺客に暗殺されます。首と胸を刺されながら相手ともつれ合って階段を転げ落ち息絶える、３９歳の壮絶な最期。権力者は、最高刑を死刑にする治安維持法の廃止を求める彼を憎みました▼先日、京都・宇治市の山宣資料館で「唯生唯戦」の墨跡をみました。命がけのたたかい最中の書とは思えないほど、伸びやかな筆づかい。性教育者でもあった山宣の、人間の豊かな「生」を尊ぶ思想が、きびしい「戦」にひるまない情熱を動機づけていたのかもしれません。
( ２００９年０９月０９日，「赤旗」) （Page/Top）

安重根・千葉十七追悼会と日韓親善友好の集い開く／宮城

　日本による韓国併合の前年の１９０９年、統監府の初代統監として韓国侵略の先頭にいた伊藤博文をハルピン駅頭で射殺した大韓義兵参謀中将・安重根（アン・ジュングン）と、獄中にあった安重根の看守だった千葉十七（とうしち）の第２９回追悼会が、宮城県栗原市若柳にある大林寺で約１００人が参加して開かれました。
　千葉十七は、同市栗駒出身で、安重根の裁判で明らかになった強い愛国心と正義感に感服しました。安重根は、死刑の直前に求めに応じて書「為国献身軍人本分」を千葉十七に贈りました。この書は、千葉家によって大切に保管され、７９年の安重根生誕１００周年を記念してソウルにある「安重根義士崇慕館」に納められました。８１年、千葉十七夫妻の菩提寺である大林寺に「日韓両国の永遠の友好を記念して」（碑文）顕彰碑が、山本荘一郎知事（当時）の撰文により建立され、毎年追悼会が続けられてきました。
　追悼会には、韓国側から駐仙台大韓民国総領事や在日本大韓民国民団宮城県地方本部関係者が参列。日本から遺族や栗原市議や治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟宮城県本部の会員らが出席しました。
　斎藤泰彦住職が、２００６年から毎年法要に出席していた故吉岡吉典氏（日本共産党元参院議員）が日韓友好に果たした役割を紹介しました。法要の最後には、韓国の少年少女合唱団が、安重根と千葉十七の心の交流をテーマにした歌を合唱し、参列者から大きな拍手を受けました。
　追悼会後に別会場で、日韓親善友好の集いが開かれ、ソウル教育大学校教授の安熙天氏と法政大学教授の牧野英二氏が、安重根の論文「東洋平和論」について講演しました。
(２００９年０９月０８日，「赤旗」) （Page/Top）

「鶴彬こころの軌跡」札幌で８日無料試写会

　映画「鶴彬（つるあきら）こころの軌跡」無料特別試写会が８日（火）午後７時（午後６時４０分開場）から、札幌市エルプラザホール（北区北８西３）で開かれます。
　治安維持法違反で逮捕され、留置所で赤痢にかかり、２９歳で人生を終えざるを得なかった鶴彬｡｢手と足をもいだ丸太にしてかえし」「胎内の動きを知るころ骨（こつ）がつき」と戦争の非情さを鋭く表現したその作品で平和をなによりも求めた青年詩人を神山征二郎監督が描きます。
　日本が中国に侵略していく暗い時代にあって､｢川柳」の革新と芸術的向上をめざし､｢川柳」で反戦平和をうたった鶴彬生誕１００年記念の映画です。
　治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟と国民救援会両道本部などが事務局の「映画『鶴彬こころの軌跡』を観る会」が主催します。
　問い合わせ先＝０１１（７４７）７９０７
(２００９年０９月０６日，「赤旗」) （Page/Top）

多喜二ゆかりの現存する民家保存の可能性探る／６日に伊勢崎・多喜二祭

　『蟹工船』で知られる日本共産党員作家・小林多喜二の文学と生涯を考える第２回伊勢崎・多喜二祭が６日、群馬県伊勢崎市文化会館で開かれ、多喜二が訪れた、故・菊池敏清宅の現地見学会が行われます。
　多喜二は７８年前の１９３１年９月６日、佐波郡伊勢崎町（現伊勢崎市）で開かれる文芸講演会の講師の一人として、群馬県を訪れました。当時講師陣が立ち寄った茂呂村（現伊勢崎市）の菊池敏清氏の家が、現在も残っています。
　敏清氏は文芸講演会の主催者の一人。この地域の大地主の１２代目で、東京帝大にすすみ、ナップ（全日本無産者芸術連盟）にも加盟しました。戦後の地域の日本共産党支部の創立者でもあります。
　敏清宅は伊勢崎市のはずれにある農村地区の静かな住宅地にあり、現在は空き家となっています。「近代和風建築」の大規模養蚕農家のつくりで、１８７７年（明治１０年）前後に大改築されたとみられています。
　多喜二ら講師陣は、講演会を前にここで休憩し、文芸講演会準備グループの人たちと茶話会（小集会）を開きました。多喜二も「台所と文学」という題で１時間ほど話しました。
　その後、近くの菊池盛男（講演会主催者の一人）宅で夕食をとり敏清宅に戻ってきた講師陣や主催者ら多数を警察が検束して伊勢崎警察署に連行。これを知り、講演会場に集まっていた聴衆や、県内各地の無産政党の支持者らが警察署に押し寄せました。民衆の激しい抗議で、深夜、この事件で犠牲者を出さないことや、講師全員の釈放、新聞発表しないことを条件として代表同士の交渉が成立し、多喜二らは釈放されました。多喜二奪還事件といわれています。多喜二は事件の１年半後の１９３３年２月２０日、特高警察によって逮捕され、その日のうちに虐殺されました。
　多喜二祭を前に実行委員会では、群馬県文化財研究会（桑原稔会長）に敏清宅の調査を依頼。７月１９日に研究会の調査団６人による調査が実施されました。調査内容の概略は多喜二祭当日、桑原会長が報告する予定です。
　実行委の長谷田直之事務局長は「多喜二ゆかりの現存する古民家として、保存への可能性を探っていきたい」と話しています。現地見学会は午前１１時（要予約）、講演は午後２時から。前売り１０００円、当日１２００円。問い合わせ０２７０（２５）３８５１八田利重さん
(２００９年０９月０４日，「赤旗」) （Page/Top）

*         【8月】（ヘッドライン）

*         音楽も蟹工船ブーム

*         おはようニュース問答／弁護士・布施辰治の生涯が映画になるよ

*         文化通信／８・１５語る歌人の集い

*         公正、自由な選挙を申入れ／権利守るセンター／室蘭、登別

*         潮流

*         日本共産党に期待します／クリスチャン西川治郎さん（１００）貝塚市／聖書に通じる平和主義

*         こくた候補が先達の墓参り／京都

*         核兵器のない世界実現しよう／水戸で宣伝

*         終戦の日／平和の願い共産党へ／衆院比例候補先頭に訴え／福岡／長崎／宮崎／熊本／鹿児島

*         終戦６４周年／９条守り平和を推進／共産党など各地で訴え／富山／石川／福井／岐阜／三重／長野／新潟

*         終戦記念日／治維法国賠同盟青森で署名訴え

*         終戦６４周年／戦争の本質ついた多喜二作品

*         終戦６４周年／侵略戦争に政党はどう向き合ったか／反戦貫いた日本共産党／９条と平和外交にこそ

*         平和願い戦争展／愛知／静岡／新潟

*         平和のための戦争写真展／室蘭

*         相沢良と平和展／治維法国賠同盟／札幌

*         きょう終戦６４年／各地で集い／函館／札幌・手稲区／江別

*         潮流

*         まど／悪いのは君じゃない

*         ベースボールと戦争／ライター・野球史研究家上田龍／６／敵性競技／中／民主的気風への反発

*         朝の風／『われら青春の時』と青木文次

*         舞台「銃口」のヒロインを演じ続けて／上沢美咲

*         治安維持法廃止を／野党・ＮＧＯがデモ／マレーシア

*         富樫正雄氏アトリエ展／札幌

*         北国から「平和な未来を」／札幌で全国大会始まる／歴教協

【8月】

【本文】（Page/Top）

音楽も蟹工船ブーム

　音楽界も蟹工船ブーム？　６月、キングレコードからＣＤ「蟹工船ＷＯＲＫ　ＳＯＮＧ　ＢＯＯＫ～日本の労働歌集」が発売されました。日本で歌い継がれてきた労働歌や革命歌を集めたアルバムです｡収録曲は｢聞け万国の労働者」「インターナショナル」「がんばろう」「手のひらの歌｣｢勝利を我らに｣など全１９曲｡歌･演奏はダークダックス､ボニージャックス､関鑑子(指揮)･中央合唱団ほか。ジャケットは小林多喜二の小説『蟹工船』初版（戦旗社刊）の装丁をアレンジしたものです。
　これに先だって昨年１１月発売されたＣＤが「プロレタリア・ソング選曲集　どん底の歌」（音楽センター)｡｢聞け万国の労働者｣のほか、「どん底の歌」「同志よ固く結べ」「くるめくわだち」「世界をつなげ花の輪に」など全１５曲を収録。演奏は中央合唱団、新星日本交響楽団ほか｡労働歌･革命歌の全盛期の空気とエネルギーがよみがえり、これらの曲を歌ってきた世代には懐かしく、初めて耳にする若い世代には新鮮でしょう。
　コロムビアからはＣＤ「明治・大正・昭和の哀歌集～蟹工船・あきらめ節～」（村田英雄「蟹工船」、森繁久彌「船頭小唄」など）が、キューンレコードからは映画「蟹工船」（ＳＡＢＵ監督）のサントラ盤「反撃。～映画『蟹工船』インスパイア・アルバム～」が発売中です。
　「蟹工船ＷＯＲＫ　ＳＯＮＧ　ＢＯＯＫ～日本の労働歌集」／オムニバス／キングレコード／ＫＩＣＳ－１４６４／税込み２０００円（写真）
　「プロレタリア・ソング選曲集　どん底の歌」／オムニバス／音楽センター／ＣＣＤ－８７３／税込み１５００円
(２００９年０８月３０日，「赤旗」) （Page/Top）

おはようニュース問答／弁護士・布施辰治の生涯が映画になるよ

　みどり　ねえ、おばあちゃん、布施辰治って弁護士を知ってる？
　藤乃　知ってるよ。「生きべくんば民衆とともに、死すべくんば民衆のために」を信条に、明治・大正・昭和を生き抜いた弁護士だよ。何でも聞いてよ。
　みどり　来年の春に、布施辰治のドキュメンタリー映画が完成するらしいよ。今月から撮影が始まっているんだって。
　藤乃　それは楽しみだね。来年はちょうど布施辰治の生誕１３０年、韓国併合１００年、節目の年だからね。
　みどり　韓国併合が何か関係あるの？

虐げられた人を
　藤乃　布施辰治は戦前から、共産主義者、小作人といった虐げられた人たちのために奔走したんだけど、朝鮮の独立運動も弁護していたんだ。そういう弁護士だから、布施自身も治安維持法違反で投獄もされて、弁護士資格をはく奪された時期もあったんだよ。戦後も、７３歳で亡くなるまで、三鷹事件、松川事件、メーデー事件などに精力的に取り組んでね。
　みどり　すごい。今の私たちが、布施辰治の生き方から学ぶことは大きいね。
　藤乃　そうだね。おととし、前進座が布施辰治の生涯を演劇にして、見に行ったけど、感激したなあ。それに、去年は、『布施辰治と朝鮮』（高麗博物館）という本も出版されたね。
　みどり　近年、注目が高まってきているんだね。

建国勲章を授与
　藤乃　韓国政府が朝鮮独立運動に寄与した人物に与える「建国勲章」を、２００４年に日本人では初めて布施辰治に授与したんだよ。
　みどり　そうかあ。映画の完成が待ち遠しいな。
　藤乃　タイトルは何ていうの？
　みどり　まだ仮題だけど「弁護士・布施辰治」。監督は、これまで小林多喜二や田中正造の記録映画を手掛けてきた、池田博穂さん。布施辰治と同じ宮城県出身の弁護士で元日弁連会長の阿部三郎さんたちが製作委員会を作って、一般の人たちから製作資金を募っているよ。来年の３月に完成試写会を開いて、そのあと、全国各地で上映会を広げていきたいそうだよ。
( ２００９年０８月２６日，「赤旗」) （Page/Top）

文化通信／８・１５語る歌人の集い

　第１９回「８・１５を語る歌人のつどい」が１５日、東京・新宿区の日本青年館で開かれ、約２１０人が参加しました。
　太鼓集団「座どんどこ」の元気のよいリズムで開幕。講演では音楽評論家・湯川れい子さんが「音楽から見えてくる平和」と題して、兄の戦死や、戦後のラジオで聞いたアメリカ音楽の体験から、感性を育てることの大切さを語りました。
　女性歌人による短歌朗読「女ひとりの戦後」は、戦争で夫と死別した女性の短歌３７首に映像、音楽を加えたもの。
　歌人・村岡嘉子さんは講演「『青鞜』に反戦的作品〈戦禍〉を発表した斉賀琴子」によって、歴史に埋もれた歌人に光を当て、小野弘子さんは「父矢代藤村のこと　私のこと」で、治安維持法によって捕らえられた反骨の口語短歌先駆者の父と、自身の学童疎開の体験を語りました。都留文科大学教授の笠原十九司さんは「中国山西戦線における宮柊二と田村泰次郎」と題して、両者が参戦した戦闘の実態を検察しました。
( ２００９年０８月２４日，「赤旗」) （Page/Top）

公正、自由な選挙を申入れ／権利守るセンター／室蘭、登別

　国民救援会室蘭支部や治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟室蘭支部などで構成する「選挙運動の権利を守る西胆振共同センター」はこのほど、衆院選が公正で自由な選挙として行われるよう登別、室蘭の両市選挙管理委員会と室蘭警察署に申し入れました。
　申し入れは①警察による違法な捜査・不当な尾行、張り込みなど干渉行為をやめる②マンションなどの集合住宅へのビラ配布の自由を保障する③謀略ビラや暴力による選挙・政治活動への妨害を取り締まる④「ぐるみ選挙」、金権腐敗選挙の徹底した取り締まりをする―の４項目です。
　両選管はいつものように快く受け取りましたが、今回は、室蘭警察署も申し入れ書を受け取りました。
　申し入れには、日本共産党の田村農夫成室蘭市議が同行しました。
(２００９年０８月２２日，「赤旗」) （Page/Top）

潮流

　読者から、作家・小林多喜二の切手を張ったお便りをいただきました。うつむき加減の多喜二に、「蟹工船」の文字▼２０００年発売の切手です。「２０世紀デザイン切手シリーズ」の１枚でした。しかし当時、「蟹工船」が８年後の流行語に選ばれるほど多くの人に読まれようとは、記者も予想できませんでした▼封書の差出人は、名古屋市に住む加藤俊二さん。小冊子が入っていました。加藤さんが折をみては２００人あまりの友人に送っているという、「ときは流れてゆく　友への通信」のできたての号でした▼加藤さんが児童相談所につとめていたとき母子家庭の母親に出した、手紙を紹介しています。彼女は３人の子を残し、生活保護費を受け取ったまま若い男性と姿を消しました。３人が児童相談所で暮らすと決まった日、連絡がつきます▼が、帰る気はなし。中学生の長女は望みを絶たれ、声を振り絞って叫びました。「ちきしょう、ババァめ！　きたならしい！」。そんな子どもたちの涙の意味を問いかける手紙を送り、半年後。彼女は戻ります。彼女も幼いとき父を亡くし、小学校にまともに通えず、夫とは死別しました▼バブルに浮かれる１９８８年のことです。そしていま、「蟹工船」「派遣村」の時代。「貧しい人々の生活の匂いを嗅ぎながら毎日の仕事にあたっていた」加藤さん、日本共産党について書きます。「絶望のふちにいる人々の心の叫び」にこたえる党、「こういう政党が日本に存在することを、私はうれしく思う」
( ２００９年０８月２１日，「赤旗」) （Page/Top）

日本共産党に期待します／クリスチャン西川治郎さん（１００）貝塚市／聖書に通じる平和主義

　日本共産党の「日本国憲法を丸々維持する」という考えに心から賛同しています。私は１５歳でキリスト教の洗礼を受けました。戦争中、憲兵に「天皇と神様とどっちがえらいか」と問い詰められ、正直に答えた宗教者は逮捕されました。私は１９３４年１月に東京で治安維持法違反で検挙されました。特高警察にいきなり暴力を振るわれて逮捕され、１２月まで警察署をぐるぐる回されて勾留されました。その後もう一度大阪で検挙され獄中生活をしました。
　ＳＣＭ（社会的キリスト教運動）研究会に、１９８６年の設立から参加しています。イエスの教えを今の社会でどう生かすかということを考えて、聖書を読みなおすというのが趣旨です。イエスの教えは「右の頬を打たれたら左をも出す」、つまり敵を愛せよという平和主義です。
　私の敬愛するローマ史の権威者、故・弓削達先生に教わったことですが、憲法の平和主義はイエスの平和主義よりも進んでいます。「二度と戦争をしない」という９条を、「日本が戦争をしない」と解釈している人が多いですが、憲法前文をきちんと読むと、「世界中に平和を広めたい」ということです。自国が二度と戦争をしないというだけでなく、他国の人の生存も維持しようという意図を持っています。日本国憲法が世界の理想をよくここまで体現しました。世界中どの国の人も皆本当は平和な社会を求めているのです。
　自民党と民主党は９条第１項と第２項への考えに違いはありますが、いずれにしても「攻められたときに何も持たずに大丈夫か」と、９条を変えようとしています。
　自公政権は終わらせたい。ただ、自民党の持っている悪いところを民主党もたくさん持っていますから、日本共産党が議席を増やさないと民主党が政権をとっても平和に貢献できません。「世の中は平和でなければ」という国民を広く味方にして、総選挙で日本共産党の議席をもう１議席、２議席と増やしたい。宗教者の意見も国会に伝わるようになってほしいです。
(２００９年０８月２１日，「赤旗」) （Page/Top）

こくた候補が先達の墓参り／京都

　日本共産党の、こくた恵二前衆院議員（比例近畿、京都１区候補）は１６日、京都にゆかりのある政治家４人の墓に参り、墓前で総選挙必勝の決意を新たにしました。
　こくた氏は、山本宣治（戦前、治安維持法に反対し、反戦を唱えた衆院議員）、蜷川虎三（元京都府知事）、谷口善太郎（元日本共産党衆院議員）、国領五一郎（京都の日本共産党創設者の一人）の墓を訪問しました。
　こくた氏は、「戦前の蟹工船の時代、民主主義と反戦の旗をかかげた先達のたたかいに思いをはせ、平和と国民が主人公の政治の実現への決意を新たにしました」と語りました。
(２００９年０８月１８日，「赤旗」) （Page/Top）

核兵器のない世界実現しよう／水戸で宣伝

　平和・民主・革新の日本をめざす茨城の会（茨城革新懇）と治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟県本部は終戦記念日の１５日、水戸市のＪＲ水戸駅北口で改憲阻止と核兵器廃絶をよびかける宣伝をしました。
　日本共産党の大内久美子県議がマイクを握り、「戦争をしないという憲法９条を守り、生かしていくことが日本の歩むべき道です。核兵器のない世界を実現しましょう」とよびかけました。
(２００９年０８月１８日，「赤旗」) （Page/Top）

終戦の日／平和の願い共産党へ／衆院比例候補先頭に訴え／福岡／長崎／宮崎／熊本／鹿児島

　さきの世界大戦から６４周年の終戦記念日となった１５日、日本共産党は衆院候補を先頭に九州・沖縄各地で、「戦争と平和、核兵器の問題について真剣に考える８月の総選挙です。核兵器も戦争もない、平和の願いを日本共産党に託してください」と街頭から訴えました。

９条生かす外交を／田村候補
　赤嶺政賢前衆院議員とともに､九州･沖縄を連日かけ巡る田村貴昭衆院比例候補は､福岡･博多駅で内田ゆたか同候補と､北九州市の小倉駅でしのだ清同候補と､憲法９条を生かす自主･自立の平和外交をめざす日本共産党の政策を訴えました｡
　田村氏は「世界が、アジアが平和への前向きの変化をみせている時に、日本国憲法を守って、戦争放棄、軍事ブロックに頼らない、外交で平和的に解決していく、この道を提起しています」と呼びかけました。
　また、今度の総選挙で民主党中心の政権ができた場合でも「国民の立場に立って、〝いいものはいい、悪いものは悪い〟と堂々とモノが言える日本共産党を、衆院比例選挙で大きく伸ばしてほしい」と力をこめました。
　同市小倉北区在住で買い物帰りの浜村イヨ子さん（７４）は「共産党が平和と反戦を訴え続けてきた政党であることはよく知っています。平和な社会でなければ私たち庶民は幸せに暮らせません」と話していました。

６候補各地で／福岡
　福岡県では、内田ゆたか衆院比例候補（福岡１区重複）が田村貴昭衆院比例候補とＪＲ博多駅前で、小林とき子同候補（同２区重複）は福岡市天神で、しのだ清同候補（同１０区重複）は田村同候補と小倉駅前や門司で、それぞれ終戦記念街頭演説をしました。
　また、川原やすひろ福岡３区候補は福岡市西区で、青木のぶやす福岡９区候補は北九州市八幡西・東区、戸畑、若松で、山下とみ子福岡１１区候補は行橋市で、それぞれ訴えました。
　内田候補は「日本共産党は核兵器も戦争もない日本と世界へ全力をあげます。世界から核兵器をなくすために総選挙で『核の傘』にしがみつく自公政権退場の審判を」と訴えました。
　しのだ候補は、大学入学の年に長崎での原水爆禁止世界大会に初めて参加したことにふれ、「被爆者の願いを心に刻み、それ以降、核兵器をなくす運動に携わっている」と自己紹介。「憲法を生かした核兵器廃絶と平和の外交実現のためにがんばる」と決意を表明しました。

核兵器ない世界を／長崎でふちせ候補
　長崎県では、ふちせ栄子衆院比例候補（１区重複）が、中田晋介元県議、中西敦信市議とともに長崎市のＪＲ長崎駅前で訴えました。「二度と悲惨な戦争はおこさない。憲法９条が戦後日本の出発点です」と強調したふちせ候補は、「日本共産党は自主・自立の平和外交を進め、核兵器も戦争もない世界をめざします」と訴えました。非核三原則の法制化と憲法９条を後世に引き継ぐために、「被爆地ナガサキからふちせ栄子、比例代表では日本共産党。九州・沖縄で２議席を」と力を込めました。
　訴えを聞いていた二人連れの女子中学生は｢憲法９条は世界にない､日本のすばらしいもの｣｢９条が変えられようとしていることは知っていますが､絶対に変えてはならないと思います｣｡２０代の男性は｢ほかの党が(９条を)どうしようとしているのかわかりません｡憲法はそのままでもいいのではないですか｣と話しました｡

平和な日本の実現へ全力／宮崎でばば候補
　宮崎県では、ばば洋光衆院比例候補が、前屋敷えみ県議らとともに宮崎市内で街頭から「平和を願う声はぜひとも日本共産党へ」と訴えました。
　ばば候補は、日本共産党が党創立から８７年間、反戦・平和を貫き、憲法９条をいかした平和な日本、平和外交を実現するため全力を尽くすとのべ、支持をよびかけました。市民からは手を振るなどの激励をうけました。
　日向市でも荻原紘一市議が日本共産党のタスキをかけ、自転車で街頭に出て、７カ所で終戦記念日の訴えをおこないました。

二度と戦争させない／熊本で上野候補
　熊本県では、上野哲夫衆院比例候補（熊本１区重複）が熊本市内で「二度と戦争をさせないために憲法９条を守ることに全力をあげる」との決意を表明し、日本共産党への支持を訴えました。
　また、上野候補は夕方からは新日本婦人の会内後援会の女性とともに市内繁華街の下通りをパレード。夜には県平和委員会と県原水協が毎年開いている「平和ちょうちん行列」に参加し、平和の大切さを訴えました。

「多喜二」ブーム反戦貫いた党／鹿児島で山口候補
　鹿児島県では、山口ひろのぶ衆院比例候補（鹿児島１区重複）が、まつざき真琴県議とＪＲ鹿児島中央駅前で訴えました。
　山口候補は、若者の間でブームとなっている党員作家の小林多喜二の生き方にもふれ、「日本共産党は戦前から侵略戦争反対を貫いてきた反戦・平和の党です。総選挙でこの党を躍進させていただいて、憲法９条を生かした世界の平和に貢献する日本をつくろう」と呼びかけました。
　奄美大島の喜界島で終戦を迎えたと語る８０代の女性は「結婚後南方のセレベス島に送られた夫は無事帰ってきましたが、戦争は二度といやです」と語りました。終戦は県内の旧制中学生だったと語る男性（７９）は、「当時は勉強もせずに食料確保の開墾作業や農家の手伝いに明け暮れていた。戦争ほどあわれなものはない」と語りました。
(２００９年０８月１６日，「赤旗」) （Page/Top）

終戦６４周年／９条守り平和を推進／共産党など各地で訴え／富山／石川／福井／岐阜／三重／長野／新潟

　戦後６４周年の終戦記念日にあたる１５日、日本共産党や民主団体は各地で街頭宣伝をおこないました。

富山／戦争繰り返させない
　富山県では日本共産党や民主団体が、二度と戦争を繰り返さぬよう、憲法９条を守り核兵器を廃絶しようと訴えました。
　日本共産党の佐伯めぐみ衆院北陸信越比例候補（富山１区重複）は、日本共産党といっしょに日本をかえるネットワーク・とやま（略称・かえるネットとやま）とともに、富山市内４カ所で宣伝しました。
　佐伯氏は、日本の侵略戦争と植民地政策で多くの人々がひどい思いをしたとして、戦争を繰り返してはならないと強調。「これまで、青年といっしょに核兵器をなくす取り組みをしてきたので、オバマ米大統領の『核兵器のない世界』をめざす演説に感動した」とのべた上で、戦前から命がけで侵略戦争に反対し、核兵器廃絶、「憲法９条を生かし自主・自立の平和外交」をかかげる日本共産党を総選挙で勝たせてほしいと訴えました。
　安保破棄・諸要求貫徹富山県実行委員会は、富山市のＪＲ富山駅前で宣伝しました。

石川／核依存の自公を批判
　日本共産党石川県委員会は、金沢市内の２カ所で街頭宣伝を行いました。佐藤まさゆき衆院北陸信越比例候補（石川１区重複）、尾西洋子県議が憲法９条にもとづく「自主・自立の外交」を進め、平和で安心して暮らせる日本を目指す共産党への支持を訴えました。
　佐藤候補は外交の力で平和を築く動きが世界で広がりつつあることを強調。その一方で世界の流れに逆行し、日米軍事同盟優先の外交、「核の傘」への依存を続ける自公政権を強く批判しました。
　多くのドライバーが手を振り、駅の利用者が立ち止まって訴えを聞いていました。

福井
　かねもと幸枝衆院北陸信越比例候補（福井１区重複）は佐藤正雄県副委員長と福井市内の街頭から、憲法９条を生かして日本と世界の平和に貢献する立場を訴えました。
　かねもと氏は「日本共産党は侵略戦争に一貫して反対してきた歴史をもつ政党として、憲法９条をしっかり守り抜く立場で全力を挙げます」と強調。憲法９条を生かし、核兵器も戦争もない世界を目指して「自主・自立の平和外交」に転換する党の政策に訴え、「唯一の被爆国で、憲法９条をもつ国としてもっと外交で日本が力を発揮すべき」だと指摘しました。
　福井市の女性（７５）は「子どもの時代には福井空襲にもあってきた。戦争だけは絶対にしてはいけない」と話しました。

岐阜
　岐阜県では、鈴木まさのり衆院東海比例候補（岐阜１区重複）と大須賀しずか県議が、司会の森久江・岐阜市議とともに名鉄岐阜駅前で街頭宣伝を行いました。
　鈴木候補は、「アメリカ軍による岐阜空襲では岐阜市も、市内の半数を超す家屋が焼失し、約９万人が被災するなど全国の都市や地方までもが焦土と化し終戦を迎えました。日本共産党は、戦前の『蟹工船』の時代から反戦平和を貫き、憲法９条を生かした『自主・自立の平和外交』を掲げ行動しています。この党を総選挙で伸ばして、財界・大企業、軍事同盟中心から抜け出し、『国民が主人公』の新しい政治をご一緒につくりましょう」と訴えました。

三重
　三重県の日本共産党は、中野たけし衆院東海比例候補（三重２区重複）を先頭に、議員や勤務員が各地で街頭宣伝を行い、憲法を生かし平和を守る党の決意を訴えました。
　四日市市内で萩原量吉県議や四日市市議団とともに街頭に立った中野氏は、「自公政権にきっぱり審判を下して新しい平和外交の流れをつくり、核兵器廃絶の流れを大きく進めよう」と呼びかけ、反戦・平和をつらぬく日本共産党への支援を訴えました。
　市民からは「戦争反対は共産党の専売特許や。がんばってや」（６０代の女性）など激励の声が寄せられました。

長野
　長野県では、中野さなえ衆院北陸信越比例候補、石坂ちほ、和田明子両県議、阿部孝二長野市議が長野駅前で訴えました。
　中野候補は、長野県は満蒙開拓団をもっとも多く出した県で、今でも残留孤児の人と出会うこと、戦争の傷跡が深く残っていることなどを語り、「日本共産党は戦前から戦争反対を貫いてきた党として、憲法９条を守り、平和の推進力となる日本にするため、がんばります」と決意を語りました。
　終戦４カ月前に生まれた男性（６４）は訴えを聞き、「戦争中のことは覚えてないが、おふくろが戦争はもう嫌だとよく言っていた。核兵器は世界からなくさないかん。そういう時代じゃないか」と語りました。

新潟
　日本共産党新潟県委員会は新潟市で街頭宣伝しました。たけだ勝利衆院北陸信越比例候補（新潟１区重複）、県学者研究者後援会の関根征士世話人が訴えました。
　関根氏は「戦後憲法９条をもつことで、日本は世界に名誉ある地位を誇ってきた。日本が進むべき道は９条を守り、核廃絶の道を歩むこと。そのリーダー的役割を果たしてきた日本共産党へのご支援を」と訴えました。
　たけだ候補は「自公政権は自衛隊海外派兵や核の傘、核抑止論を推進し、世界の平和の流れと逆行している。自公政権を退場に追い込み、平和な日本をつくるために、９条を生かし自主・自立の平和外交を旗印にしている日本共産党の前進を」と訴えました。
　同じ場所で、治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟県本部も宣伝・署名活動をしました。
(２００９年０８月１６日，「赤旗」) （Page/Top）

終戦記念日／治維法国賠同盟青森で署名訴え

　治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟青森県本部は１５日、青森市新町で「ふたたび戦争と暗黒政治を許すな」と訴えました。
　中村勝巳会長ら１５人が参加。日本共産党の高橋ちづ子衆院比例候補、よしまた洋衆院比例候補（青森１区重複）も参加しました。
　中村会長が、戦争がどんなにむごいものであるかや戦前治安維持法によって国民が弾圧されたことにふれ、「ふたたび戦争をおこしてはだめです」とのべました。
　参加者は、「憲法９条守れ」「若者を戦場に送るな」などのゼッケンを着け、治安維持法の犠牲者に対して国家賠償を求める署名への協力を訴えました。
　市民が足をとめ、署名していました。
(２００９年０８月１６日，「赤旗」) （Page/Top）

終戦６４周年／戦争の本質ついた多喜二作品

　近年、若者の間でブームとなっている日本共産党員作家の小林多喜二。彼が１９３１年に書いた小説「党生活者」には、命がけで反戦平和を訴える日本共産党員の姿が描かれています。
　「満州事変」の直後、舞台はガスマスクなどを作る軍需工場で、実在の工場がモデルになっています。増加する需要のため雇われた臨時工の首切り、戦争への協力を強要するさまざまな画策。それに対して、不屈にたたかう日本共産党員である主人公が描かれています。
　例えば、戦争に協力する慰問金を集めようとするのに対して、「慰問金を我々に出させるのは、彼奴等は戦争は自分たちのためにやられているのではなくて、国民みんなのためにやられているのだと思い込ませるためのカラクリなのだ」と、戦争の本質を鋭く突いています。
　日本政府は、そのような活動に過酷な弾圧を加えました。小林多喜二も１９３３年、上海での国際反戦大会に向けた活動中に検挙され、拷問によって命を落としました。しかし、この小説の最後は、解雇された３人が「新しい仕事をやっている」というもので、「８月１５日」の敗戦を小林多喜二が予想していたことを感じさせます。
( ２００９年０８月１５日，「赤旗」) （Page/Top）

終戦６４周年／侵略戦争に政党はどう向き合ったか／反戦貫いた日本共産党／９条と平和外交にこそ

　８月１５日は、３１０万人以上の日本国民と、２０００万人以上のアジアの人々を犠牲にした日本の侵略戦争が敗戦という形で終結した日です。あれから６４年、今年の８月は自民党政治に決定的審判を下し、新しい日本の政治を開く歴史的総選挙が行われます。侵略戦争の歴史にどう向き合ってきたか、政党の真価が問われます。

侵略の開始／反戦貫いた日本共産党
　１９３１年９月１８日、天皇制政府と軍部は、明治以来の侵略と拡張のうえ、中国領である南満州に配置していた「関東軍」の謀略によって、中国東北部（満州）への侵略を開始しました（満州事変）。日本は、戦争を違法としたパリ不戦条約（１９２８年）を最初にふみ破る侵略国となったのでした。
　非合法下で活動していた日本共産党は「満州事変」の２カ月前、機関紙「赤旗」で、日本が「満州」への侵略を準備していることを指摘し、これとの闘争をよびかけました。事変の翌日１９日には「日本帝国主義の満蒙（まんもう）侵略を撃退せよ」と国民に呼びかけました。党の活動は国内にとどまりませんでした。２０日には中国共産党との「共同声明」を出しました。声明は、「日中両国民衆の間の憎しみを煽（あお）る民族的、愛国的宣伝についてはわれわれは断固として反対すべきである」と国際的な連帯の意思を示していました。
　他の政党はどうだったか。保守政党の前身である民政党は、軍事行動を「正当防衛の拳」と支持し、同じく政友会も軍事行動は当然との幹事長声明を出しました。社会民主主義政党だった社会民衆党も侵略を支持。その後、社会大衆党になりますが、一貫して戦争を支持していきました。

歴史の教訓／９条と平和外交にこそ
　日本政府は１９３７年、盧溝橋（ろこうきょう）事件を契機に、現地の停戦協定も無視して、中国への全面的侵略を開始します。４０年には、ヨーロッパで侵略を開始していたドイツ、イタリアと「三国同盟」を締結。それを背景に、４１年には真珠湾の米軍を攻撃し、戦線をアジア・太平洋全域に拡大していきました。
　戦争が終結するまでに、アジアで２０００万人もの被害者を出しました。日本人の軍人軍属あわせて２３０万人の戦没者のうち、半数以上が餓死者でした。中国での南京大虐殺、セントポール大学での虐殺事件をはじめフィリピンでの住民虐殺、シンガポール、マレー半島での華僑虐殺など、日本軍による虐殺事件の犠牲者は数え切れません。
　この悲惨な戦争に最後まで一貫して反対し続けた政党は日本共産党だけでした。作家の小林多喜二をはじめ多くの幹部、活動家が命を落としましたが、不屈の活動を続け、軍隊内の反戦活動や各地の共産主義者グループなどが組織されました。また、獄中や裁判での不屈のたたかいも続けられました。
　戦後、自民党の党員研修用教科書は「社会党を含めて他の政党が何らかの形で協力したのに対し、ひとり共産党は終始一貫戦争に反対してきた。したがって共産党は他党にない道義的権威を持っていた」と書きました。
　日本共産党は今回の総選挙で「憲法９条を生かし、自主・自立の平和外交で、世界とアジアに貢献する日本に」を掲げています。これは、侵略戦争の惨禍から、「戦争のない世界」をめざした痛切な教訓と深く結びついているのです。
　命がけで反戦平和を貫いたこの党が伸びてこそ、侵略戦争と植民地支配を真に反省し、世界とアジアの平和・友好に大きく寄与することになります。

侵略戦争と共産党の反戦活動の歩み
１９２８年６月　４日　関東軍による張作霖(ちょうさくりん)爆殺
１９２９年４月１６日　４・１６事件。日本共産党に対する一斉弾圧。検挙者約１０００人
１９３１年７月　６日　「赤旗」（第４５号）に「日本帝国主義の戦争準備と斗へ！」を発表
　　　　　　９月１８日　柳条湖事件、「満州事変」
　　　　　　９月１９日　労働者、農民、兵士に対する檄（げき）を発表
１９３２年２月　　　日本共産党呉地区の海軍水兵向け新聞「聳（そび）ゆるマスト」創刊
１９３３年２月２０日　小林多喜二築地署に検挙。拷問により虐殺
　　　　　　３月２７日　日本が国際連盟から脱退
１９３７年７月　７日　盧溝橋事件。日中全面戦争開始
　　　　　１２月　　　南京事件
　　　　　１２月１５日　人民戦線事件。戦争に反対する学者・文化人などの検挙
１９３９年９月　１日　独がポーランド侵攻。英仏、対独宣戦
１９４０年９月２７日　日独伊三国同盟
１９４１年１２月８日　真珠湾攻撃と東南アジア侵攻。太平洋戦争開始
１９４５年４月　　　沖縄戦（～６月）
　　　　　　８月６日　広島原爆投下
　　　　　　　　　９日　長崎原爆投下
　　　　　　　１５日　日本の敗戦｡｢ポツダム宣言」受諾
( ２００９年０８月１５日，「赤旗」) （Page/Top）

平和願い戦争展／愛知／静岡／新潟


愛知
　「あいち・平和のための戦争展」が、１３日から名古屋市公会堂（昭和区）で始まりました。（１６日まで）
　旧日本軍の侵略行為や県内の戦争被害を記録・調査し、若い世代に語り継いでいる約３０の市民団体が実行委員会をつくり、今年で１８回目の開催です。
　実行委員会代表の倉橋正直愛知県立大学名誉教授は、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起きないよう、市民運動を大きく広げたい」と話します。
　会場内には「戦争の中のアジア」「現代日本の戦争と軍隊」など４テーマごとにブースが設けられています。「ノモンハン事件」の現地調査報告会や映画上映も行います。
　「名古屋三菱・朝鮮女子勤労挺身（ていしん）隊訴訟を支援する会」のコーナーには、「会」の活動に共感する思いをつづった韓国・光州市の中高生６６人のメッセージ（一部日本語訳あり）を展示。見学した高校生たちは、返信用の大判の布に「今日知ったこの現状を未来へ伝えていきたい。一緒にがんばりましょう」（２年生女子）などと寄せ書きしました。
　私立高校３年生の松村ちあきさん（１７）は、「考え方が違う国の人たちとも交流して、お互い理解しあえば、戦争なんて起きないと思います」と語りました。

静岡
　第１１回清水平和のための戦争展（同展実行委員会主催）が、静岡市清水区の岡生涯学習交流館（旧清水中央公民館１階）で１８日まで開かれています。
　「子や孫に伝え残そう　清水での戦争と戦災」では、１９４５年７月の清水大空襲や艦砲射撃など旧清水市への空襲が１０回に及び、被災率は全市域面積１４・７％、市街地１００％、死者３５１人、負傷者６５０人の犠牲が出たことを紹介。
　市民の戦争体験記では、終戦当時１５歳だった奥山敏子さん（７９）＝清水区在住＝の体験を新たに展示。「低い爆音と大きな地響きがして近くに爆弾が落とされ、防空壕（ごう）まで逃げた…近所では一家が全滅したり、人の足がとんできて２階に落ちていた家も」などと証言し、「絶対に戦争をしてはいけない」とふり返っています。

新潟
　治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟新潟県本部は１４日から、新潟市の県民会館ギャラリーで、「第１回にいがた平和のための戦争展」を開きました。１６日までの会期で、７～８日の上越展に続き２カ所目です。
　同展は、①中国・東南アジアへの侵略②戦時中の国民・県民のくらし③平和を求めて戦争に反対した人々―などについて展示。当時の生々しい写真や資料で戦争の実態を知るとともに、一つの場所で戦争について系統的に学べる画期的な戦争展になっています。
　１４日は、中国人強制連行裁判弁護団だった中村洋二郎弁護士が講演。１５日も午前１０時半から、満州移民研究家の高橋健男氏が講演します。
(２００９年０８月１５日，「赤旗」) （Page/Top）

平和のための戦争写真展／室蘭

　第１６回「平和のための戦争写真展」がこのほど､室蘭市で開かれ､９４０人の市民が入場しました。（写真）
　今年は、①オバマ米大統領のプラハでの核兵器廃絶演説の世界の動きを受け、「戦争も核兵器もない世界をめざして」②市史編纂委員会が作製した「戦争下の市民生活」③日本の戦争責任を問う「中国人、朝鮮人の強制連行室蘭」④治安維持法による弾圧下で「戦争に反対した人々」―の４テーマで市から提供されたものも含めて写真や資料約２００点を展示しました。
　会場は説明者の話を真剣に聞く若者の姿、戦時下の写真を見て昔のなつかしい町並みを思い出す人々であふれました。
　会場での核兵器廃絶の国際署名は、３１５人分が集まりました。
　アンケートに回答したある参加者は「多くの資料の収集ご苦労様です。今後も続けてください。若い人たちに見てほしい」と訴えていました。
(２００９年０８月１５日，「赤旗」) （Page/Top）

相沢良と平和展／治維法国賠同盟／札幌

　治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟札幌支部はこのほど、西区で「相沢良と平和展」を開きました。（写真）
　平和展が開かれた公園には、戦前１９３１～３３年に日本労働組合全国協議会の組織化と反戦運動に力を注ぎ、治安維持法で検挙され、虐待によって２５歳で亡くなった相沢良のレリーフ像と案内板があります。
　相沢が働く女性労働者と平和や働く者の幸福を語り学習したゆかりの地で、毎年夏、相沢と平和を考える写真展を開いています。
　展示した約１００枚の写真と図表には相沢の生涯と活動のほか、日本軍の侵略戦争の実態を示す写真が新たに紹介されました。
　若者や家族連れが訪れ、展示に見入っていました。「戦争って学校で習ったことないなあ」という青年や、女学生が銃を担ぎ行進する写真を見て、母親に「何しているの」と話す子どももいました。
(２００９年０８月１５日，「赤旗」) （Page/Top）

きょう終戦６４年／各地で集い／函館／札幌・手稲区／江別


戦争語る会／函館で３１人
　「８・１５戦争を語る会」が１２日、函館市で開かれました。
　「終戦、引き揚げそして戦後」と題して、乃木町百寿会会長・民生委員の柳生瓊子（けいこ）さんが体験を報告しました。「地域で憲法語ろう会」が呼びかけたもので、３１人が参加しました。
　清野きみ代表委員があいさつし、青木路夫代表委員の司会で進行。柳生さんは小学生の時、中国の山西省で終戦を迎え、貯金など財産を没収されたうえ、貨物列車に乗せられて収容所を移動させられたと告発。母親が何かあった時のためにと青酸カリを持っていたこと、ぎゅうぎゅう詰めの状態でたくさんの物を捨てなければならなかったことを生々しく語りました。
　同じ引き揚げ体験をもつ参加者が苦労した体験を発言。佐竹淳司代表委員が「憲法を守るためにも、来年も開きましょう」と閉会あいさつをしました。
　高橋佳大市議、古岡友弥道議候補が参加しました。

すいとん食べ平和を考える／札幌・手稲区
　札幌市手稲区の新発寒９条の会は９日、区内で「すいとんを食べて平和を考える」集いを開きました。
　ビラを見て参加を申し込んできた年配者や母親と一緒の小学生たちも含め１７人が参加。用意された材料を使って「すいとん」作りを体験しました。
　年配者は、戦中・戦後の食料事情についての思い出を次々に語りました。「当時、これを食べるのもごちそうの部類だった」「米がなくて毎日、イモ、カボチャばかりだった」との感想も出ました。
　できあがったすいとんはおいしくて、何杯もおかわりをする人もいました。
　参加者は、選挙も近いいま、９条を変えさせない、日本を再び戦争する国に戻させないと話し合いました。

生活図画事件検挙者に聞く／江別
　江別平和を語る集い実行委員会（叶美智子委員長）は８日、江別市で１４回目の集いを開きました。１９４１年の治安維持法弾圧事件、生活図画事件の犠牲者である松本五郎、菱谷良一両氏の話に１００人を超える人が耳を傾けました。
　事件当時、２人は旭川師範学校（現道教育大旭川校）の５年生。卒業間近に美術部顧問の熊田満佐吾先生が検挙され、松本、菱谷両氏は９月、寄宿舎に踏み込んできた特高警察に検挙されました。
　松本氏は「自分たちの生活をどうしたら向上させることができるかと絵を描いていました。戦争と軍国主義は許さなかった」。菱谷氏は「のっけから『お前は共産主義を信奉して国体変革の準備をしたな』とどなられ、殴られ、調書を書かされました」といいます。
　参加者からは「心にしみました。私も平和の大切さを広げていこうと思いました」と感想が寄せられました。
(２００９年０８月１５日，「赤旗」) （Page/Top）

潮流

　「木々のこゑ石ころのこゑ終戦日」（鷹羽狩行）。１９４５年８月１５日、日本人は天皇から終戦を告げられました▼８月１５日が巡ってくると、木々や石ころも戦争と終戦の記憶をよびさます。そんな句なのでしょうか。歳時記から、終戦にまつわる句をもう１句。「終戦日妻子入れむと風呂洗ふ」（秋元不死男）▼作者は戦中、反戦句を詠んだとみなされ、治安維持法違反のかどで２年間、捕らわれの身となりました。特高警察は、別の俳号の「東京三」を「きょう（京）さん（三）とう（東）＝共産党」のもじりだろうと疑うありさまでした▼日本とアジアで２３００万を超す人命を奪った、軍国日本の亡国への暴走。戦後、のちに首相となる石橋湛山が振り返っています。「軍部は、どうして、さような専横を働くにいたったか。それには私は大いに日本の政党に責任があると思う」（『湛山回想』）▼軍部を抑えられなかった、議会政党。しかし当時、非合法だった日本共産党は、弾圧のなか、命がけで侵略戦争に反対したのでした。海軍大将だった井上成美は、戦後のある日、親友で海軍省元書記官の榎本重治に、次のように語っています▼「いまでも悔やまれるのは、共産党を治安維持法で押さえつけたことだ。いまのように自由にしておくべきではなかったか。そうすれば戦争がおきなかったのではあるまいか」（『井上成美のすべて』から）。知る人も多い話ですが、政党の値打ちが問われることしの８月１５日、あらためて紹介しました。
( ２００９年０８月１５日，「赤旗」) （Page/Top）

まど／悪いのは君じゃない

　先日、やや厚い封書が送られてきました。中には、音楽ＣＤ「ひとりひとりがＨＥＲＯ｣｡作詩作曲はケイ･シュガーさん｡その澄んだ歌声がしみいるようです。
　○…「明日から来なくて／いいよと言われた／やっと見つけた仕事だった／自分を責める私に／仲間は言った／悪いのは君じゃないんだと／…」。歌詞の原案は、地域労組おおさかがつくりました。パート、アルバイト、派遣や請負の人も入れる労働組合です。働く人の権利を守って果敢にたたかってきました。昨年が結成１０周年。その記念のテーマソングでもあります。
　○…歌のなかの「私」や「僕」は閉ざした心を開いて立ち上がっていきます。「働く人たちの応援歌として歌われたらいいですね。『地域労組おおさか』のことも知ってもらえたらうれしい」と同労組の平佳子書記長がいいます。反響をよんだＣＤ「多喜二へのレクイエム」（２００５年）で知られるケイ・シュガーさんは、「力も名もない民衆が汗と涙で歴史をつくっていくことを、ポップに歌った」といいます。
　○…「聞いていると涙が出そうになります。すばらしい曲をありがとう」。ＣＤに寄せられたメールです。「一方で、まだＣＤを聞く勇気がないと、深く傷ついたまま、癒やされていない青年もいるんです」と平さん。人間らしく、自分らしく生きたい、そして働きたいというのは当たり前の願い。「使い捨て」が横行するいま、平さんのことばは重く迫ってきます。
　（二）
( ２００９年０８月０９日，「赤旗」) （Page/Top）

ベースボールと戦争／ライター・野球史研究家上田龍／６／敵性競技／中／民主的気風への反発

　時代が大正期に入り、日本の野球はいよいよ「国民的娯楽」として、飛躍的な発展を遂げていきます。
　中等野球では現在の高校野球全国（夏）、選抜（春）大会がスタート。大学球界では東京六大学連盟が結成され、応援の過熱から１９年間も中止されていた早慶戦も１９２５年秋に復活し、中等・大学野球の専用球場として甲子園（２４年）、神宮（２６年）の両球場も建設されました。
　また、１８年には鈴鹿栄（すずか・さかえ＝２００３年野球殿堂入り）によって軟式ボールが発明され、これを利用しての少年野球大会や旧制女学校での女子野球も盛んになります。野球は日本に伝来してわずか半世紀で、もっとも人気のあるスポーツとしての地位を確立しました。

片山潜が論陣
　この時代、吉野作造が「民本主義」を唱えるなど「大正デモクラシー」の機運が高まり、普通選挙や婦人参政権を求める大衆政治運動や労働運動が活発になっていきました。日本共産党の創立（２２年）もこのころの出来事でしたが、前述した東京朝日新聞による「野球害毒論」キャンペーンのとき、当時の東洋経済新報記者で同党創設者の一人である片山潜（かたやま・せん）が「野球は遊技として最もよく発達せるものである」と擁護の論陣を張ったのは野球研究者の間では有名なエピソードです。
　球技のなかでも牧歌的で、ルールにも民主的な精神が反映している野球の発展には、大正デモクラシーの風潮も色濃く反映していました。しかし、それゆえに反動的な勢力による野球への反発や抑圧の動きも存在していたのです。
　１８年、米価の急騰に対して起こった「米騒動」や、寺内正毅内閣による「シベリア出兵」（ロシア革命への干渉戦争）の影響で、「大阪朝日」主催の第４回全国中等学校優勝野球大会は全代表校が決定していながら中止に追い込まれました。中止を決めたのは創設者でもあった社会部長の長谷川如是閑（はせがわ・にょぜかん）でしたが、まもなく長谷川は米騒動やシベリア出兵をめぐり「大阪朝日」が寺内内閣を批判して政府や右翼の攻撃を受けたのを機に退社へと追い込まれます（白虹事件）。

「女子不適切」
　軟式野球ができたことで、２０年代になると和歌山、大阪、愛媛、福岡、熊本などの旧制女学校に野球部が次々と誕生し、対抗試合や全国大会も開催されています。女性の社会進出が時代背景にありましたが、初代文部大臣・森有礼が「良妻賢母教育」を国是として定めていたこともあり、女子野球は保守的な教育者や官僚の不興を買うことになります。
　２２年、福岡県立直方高女野球部に、熊本第一高女との対抗試合直前、知事による禁止通達が出され、２６年には和歌山県学務課が「女子に不適切、不妊の恐れあり」として女子野球の中止命令を出しています（『ベースボーロジー　１０』竹内通夫「わが国における女子野球の歴史」）。
　早大野球部ＯＢで学生野球界の重鎮だった飛田穂洲は、直方高女への理不尽な試合中止命令を激しく批判しました。その命令を出した当時の福岡県知事・沢田牛麿が、勅選貴族院議員だった終戦直後、日本国憲法、とくに第９条や、教育の民主化をうたった教育基本法の制定に強く反対していた人物だったことは注目すべき事実です。
　大正期、全国の高等教育機関では、京都帝大で教授の人事権をめぐって総長と教授会・学生が対立した「沢柳事件」や、学内での軍事教育に学生が反対運動を起こした「早稲田軍教事件」をはじめ、大学自治機運の高まりを象徴する出来事が起こっています。東京六大学野球連盟も学生野球部員による自治の精神で運営されていました。
　しかし、治安維持法の制定（２５年）をきっかけに大正デモクラシーが衰退し、時代が昭和へと変わっていくなかで政治・社会の保守化・右傾化が進み、野球の運命も大きく翻弄（ほんろう）されていったのです。
　（つづく）
( ２００９年０８月１１日，「赤旗」) （Page/Top）

朝の風／『われら青春の時』と青木文次

　佐藤貴美子の『われら青春の時』（本紙連載、新日本出版社）は、１９５２年の大須事件に始まり、５９年の伊勢湾台風での全国民医連と日本共産党の救援活動を終章に置いている。その間、名古屋の学生セツルメントで育ち、愛知で初の民主診療所を誕生させた若き女医が主人公の、感動的な物語である。
　小説の中で基調低音のように青木文次という名前が、たびたび登場する。青木文次とは何者か。小説は語る。
　「青木文次はキリスト教徒で、官立名古屋医科大学を昭和八年に卒業した。…同級生の米沢進と共に、熱田区波寄町の工場地帯の一隅に無産者診療所をおこした。…昭和九年一月には入隊…入隊後しばらくして、『治安維持法違反容疑』で逮捕拘禁され…陸軍刑務所から直接召集され、中国大陸の武漢戦線に送られ」て、戦死。３１歳だった。
　小説では触れられていないが、青木は学生時代、ＳＣＭの活動家だったのである。ＳＣＭとは、１９３０年代初頭のＹＭＣＡに所属する学生たちの社会的キリスト教運動のことである（中原賢次『基督者学生運動史―昭和初期のＳＣＭの闘い』）。それは短命に終わったが、青木らの無産者診療所は民医連運動に受けつがれ、ＳＣＭはキリスト者平和運動に生きている。(許)
( ２００９年０８月１１日，「赤旗」) （Page/Top）

舞台「銃口」のヒロインを演じ続けて／上沢美咲

　三浦綾子原作「銃口」で主人公の恋人、中原芳子役をつとめています。９日の千秋楽を終えると初演から２６７ステージにもなります。
　舞台俳優は子供の頃からの憧れでした。夢が叶ったのは多くの支えによるものですが、何よりも平和あってこそではないでしょうか。日本が戦争へと突き進む時代に教師となった「銃口」の主人公、北森竜太の歩みを考えるにつけ、それを強く感じます。
　竜太は恩師坂部先生のような立派な教師になろうと師範学校に進み、生徒を愛する誠実な教師になり、同じく教師となった幼なじみの芳子と将来結婚を誓い合います。ところが北海道綴り方教育連盟の会合にただ一度出席したという理由で治安維持法違反の嫌疑をかけられ検挙、執拗な取り調べと拷問の末、退職を強要され、教壇から追放、召集令状によって満州へと送られるのです。
　前進座が三浦綾子作品を舞台化したのは『母』が初めでした。小林多喜二の母セキを演じたいまむらいづみ先輩の一人芝居と言っても過言ではないこの舞台は１９９３年から足掛け９年、３４１ステージのロングランとなり、私は多喜二の妹ツギ役で出演しておりました。
　旭川での公演翌日、お招きを受けての楽しい宴席で綾子先生とご主人光世さんお二人のお人柄に直接ふれたことは私の一生の宝です。『母』の執筆をためらっていた綾子先生に「こんなことがあっていいのか、白黒つけてくれる人はいないのか」と怒りを含んだ語調で強くすすめたのが光世さんだと聞いていたのでどんなこわい方かしらと想像していたら、唄やモノマネをまじえて楽しくお話して下さるユーモア溢れる方。本当の強さとは優しさから生まれるのだと多喜二という人の育った環境と重ね合わせました。
　『銃口』は１９９４年に出版された綾子先生最後の長編小説です。舞台初演は２００３年３月、アメリカがイラクへの爆撃を開始した翌２１日に幕を開けました。１９９７年に神のもとに召された綾子先生に舞台をお見せ出来なかったことが悔やまれますが、観劇後光世さんが「綾子の伝えたかったことをこのように演じて下さって…」と声を詰まらせながら労って下さった事は私たちの確信になりました。
　「母」で９年、「銃口」で７年、連続１６年上演されている三浦綾子作品に全ステージ出演しているのは何と私一人だけ、大変名誉なことです。綾子先生に良いご報告が出来るよう、千秋楽まで心を込めて舞台をつとめたいと思っています。
　（かみさわ・みさき　女優・劇団前進座）
　◇
　「銃口」(前進座公演)　７～９日＝東京・前進座劇場。℡０４２２（４９）２６３３前進座
( ２００９年０８月０４日，「赤旗」) （Page/Top）

治安維持法廃止を／野党・ＮＧＯがデモ／マレーシア

　【クアラルンプール＝時事】マレーシアの首都クアラルンプールで１日、野党と非政府組織（ＮＧＯ）が、政権側の恣意的な運用が疑われる国内治安維持法の廃止を求め、大規模なデモを行いました。当局は群衆に催涙弾などを発射。国営ベルナマ通信によると、警察当局はデモ参加者約２００人を拘束したことを確認しました。
　同法は、国家の安全を脅かすと判断された場合に、裁判なしで容疑者を拘束できることなどを定めています。１９９８年に当時のマハティール首相が政敵のアンワル副首相を逮捕した際に適用したことでも知られます。
　１日のデモは１万人規模に上り、現在は野党・人民正義党（ＰＫＲ）の顧問を務めているアンワル氏も参加しました。
( ２００９年０８月０３日，「赤旗」) （Page/Top）

富樫正雄氏アトリエ展／札幌

　日本共産党員として絵筆をふるった故富樫正雄氏のアトリエ展がこのほど、札幌市手稲区の富樫正雄アトリエギャラリーで開かれました（写真）。「疎林みずばしょう」（１９６８年）「小川流れる牧場」（６６年）「真冬のサイロ」（７０年）など１７点を展示。「札幌から小樽の小林家によく通っていたのを覚えています」と息子の耕さん。「小林タキ像」「小林多喜二像」には、年配の夫婦が見入っていました。
(２００９年０８月０２日，「赤旗」) （Page/Top）

北国から「平和な未来を」／札幌で全国大会始まる／歴教協

　「現在を見つめ、平和な未来」を掲げ、歴史教育者協議会は１日、第６１回全国大会を札幌市で開きました。日程は３日間です。
　創立６０周年を迎えた歴教協は、世界的な経済危機のもとで、改めて歴史認識が問われるとして、過去の歴史に学び、平和で豊かな未来を構築しようと呼びかけています。
　「アイヌの昔語り」や「北の移民史を全国へ」など、「地域に学ぶ集い」も開催しました。
　全体会では、歴教協の山田朗委員長が開会あいさつと千葉誠治現地実行委員長が歓迎あいさつ。北海道アイヌ協会の加藤忠理事長、分科会の開催校、北海高校の北明邦雄校長、韓国「全国歴史教師の会」の李星昊事務局長があいさつしました。
　歴教協常任委員会の村松邦崇氏が「日本の教育危機の根源のひとつは学習指導要領体制にあります。歴教協や民間教育研究サークルの力を高め、教育を変えていきましょう」と基調提案をしました。
　２、３の両日は会場を北海高校に移して分科会を開催。４日からはアイヌ民族博物館や小林多喜二文学碑を訪ねる現地見学を行うことにしています。
( ２００９年０８月０２日，「赤旗」) （Page/Top）

*         【7月】（ヘッドライン）

*         日本共産党知りたい聞きたい／憲法制定にいたる時期の政党状況は？

*         小林多喜二の古里訪ねる旅／苫小牧の２団体

*         プロレタリア作家本庄陸男の墓前祭／紋別

*         岡本　庄次（おかもと・しょうじ）さん２４日死去

*         「日本の将来像」について積極的な議論を／志位委員長が発言／ＢＳフジ番組

*         本紙連載小説の映画化すすむ／「アンダンテ～稲の旋律～」ロケ訪問／青年主人公の再生物語

*         今年は中学教科書採択の年／つくる会侵略美化教科書／生徒「これだめだ」

*         発言０９／映画監督神山征二郎さん／今、安穏としていられない

*         治維法国賠同盟県本部が大会／青森

*         映画／「蟹工船」（同映画製作委員会）／一人一人に「立ち上がれ」

*         詩人・尹東柱の記念碑を宇治に／京都府に署名提出

*         「田母神問題を斬る」／治維法国賠同盟塩釜支部が総会

*         涼を求めて平和の滝に／札幌

*         あす福岡で「銃口」公演劇団／前進座

*         演劇／「鶴彬こころの軌跡」（同映画製作委員会）／反戦・反権力みずみずしく

*         治維法国賠同盟支部総会開く／岐阜・東濃西支部

*         横浜事件発端の地富山・朝日町で再審報告集会

*         芸能テレビ／映画「鶴彬こころの軌跡」／神山征二郎監督／危機はらむ今、世に問いたい

*         芸能テレビ／映画「鶴彬こころの軌跡」／主演池上リョヲマさん／時代に負けない強さ感じた

*         憲法守ろう各地で多彩に／講演と文化のつどい開く／札幌・手稲区

*         「蟹工船」で映画初出演／お笑いコンビＴＫＯ／あきらめず立ち上がり続ける「これ、おれらの映画やん」

*         「人ごとではない」／参院議長と面会／治維法国賠同盟

*         治維法同盟が定期大会開催／鳥取

*         一日も早い解決ぜひ／法相に要請／治維法国賠同盟

*         署名５万人達成を／治維法国賠同盟道本部が大会

 

【7月】

【本文】（Page/Top）

日本共産党知りたい聞きたい／憲法制定にいたる時期の政党状況は？

　〈問い〉憲法制定時に「主権在民」を主張した政党は日本共産党だけだと聞きました。当時の政党の主張は？。（東京・一読者）
　〈答え〉日本共産党は１９４５年１０月、治安維持法の廃止と政治犯の釈放によって公然とした活動を開始しました。そして同年１１月には、いち早く「新憲法の骨子」を発表しました。この提案は「主権は人民にある」と主権在民を明記し、「民主議会は主権を管理する。民主議会は十八歳以上の男女の選挙権・被選挙権の基礎に立つ」「政府は民主議会に責任を負ふ」「人民の生活権、労働権、教育される権利を具体的設備を以て保障」するなど、普通選挙権や議会制民主主義、基本的人権の保障といった、戦後日本の大事な原則を先どりしたものでした。
　また憲法制定議会では、主権在民の明記を求める主張をつらぬき、４６年６月に「日本共産党憲法草案」を発表しました。
　この時期には、戦争中に自ら解散して大政翼賛会に合流していた政党の再編と結成もすすみました。４５年１１月には、戦前の社会大衆党の流れから日本社会党が生まれ、政友会や民政党という保守政党の流れから日本自由党や日本進歩党が生まれました。日本自由党は４６年１月、「憲法改正要綱」を発表しましたが、「統治権の主体は日本国家なり」と主権の所在をあいまいにし、「天皇は統治権の総攬者なり」「天皇は万世一系なり」とのべるなど、戦前の天皇主権の考えをひきついでいました。
　日本進歩党が４６年２月に発表した「憲法改正問題」も、「天皇は臣民の輔翼に依り憲法の条規に従ひ統治権を行ふ」とし、天皇主権の考えを戦後の体制にもちこもうとしていました。
　日本社会党は４６年２月に「新憲法要綱」を発表しましたが、中心部分は「主権は国家（天皇を含む国民協同体）に在り」「統治権は之を分割し、主要部を議会に、一部を天皇に帰属せしめ、天皇制を存置す」として、主権を天皇と議会に分割してもたせ、主権在民の原則にまったくふれないものでした。
　主権在民の原則を掲げて新憲法制定にあたろうとした政党は､日本共産党だけでした｡（土）
( ２００９年０７月２９日，「赤旗」) （Page/Top）

小林多喜二の古里訪ねる旅／苫小牧の２団体

　苫小牧市で活動する国民救援会支部と治安維持法国賠同盟支部はこのほど、「小林多喜二の古里を訪ねる旅」と題して４０人が小樽市を訪れ、小樽文学館や多喜二文学碑、小林家の墓をめぐりました。
　小樽文学館の見学は初めてという人たちが多数を占める一行。文学館での特別展「蟹工船の時代―プロレタリア文学とモダニティ」（８月９日まで開催）を鑑賞、小樽多喜二祭実行委員会の寺井勝夫さんが案内しました。
　小林家の墓前で献花し、往時をしのんだ参加者は、運河周辺で買い物を楽しみ、余市町のニッカウヰスキー工場を見学しました。
(２００９年０７月２５日，「赤旗」) （Page/Top）

プロレタリア作家本庄陸男の墓前祭／紋別

　小説『石狩川』で知られる当別町出身のプロレタリア作家、本庄陸男の没後７０周年墓前祭が１８日、紋別市で行われました。めいの山本笑子さんら遺族が参加しました。
　「本庄陸男を語る会」代表の野村淳一氏（日本共産党紋別市議）があいさつし、西辰寺の大柏法恩住職の読経が響くなか、遺影の掲げられた墓の前で偉業をしのびました。
　山本さんは「叔父がいつまでもみなさんに親しまれ、大事にされていてとてもうれしいです」と話しました。治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟の本間昭一北見支部長は「本庄の遺志を受け継いでたたかっていきたい」と決意表明しました。
　参加者は、紋別市立博物館で本庄の写真、著作、原稿などの資料を鑑賞しました。館内で開かれた「語るつどい」で佐藤和利館長が記念行事開催に至る経過を報告しました。
　治安維持法国賠同盟道本部の宮田汎事務局次長は、本庄がプロレタリア作家同盟で小林多喜二とともに活動したと紹介しました。
(２００９年０７月２５日，「赤旗」) （Page/Top）

岡本　庄次（おかもと・しょうじ）さん２４日死去

　岡本　庄次さん（おかもと・しょうじ、東京都町田地区）２４日死去。８４歳。通夜は２６日午後６時３０分から、葬儀は２７日午前１０時から、いずれも町田市上小山田町２１４７の南多摩斎場で。喪主は長男、道夫さん。
　９３年入党。げんきな小山党後援会役員。
　鈴木　義澄さん（すずき・よしずみ、北海道釧根地区）２４日死去。８３歳。通夜は２６日午後６時から、葬儀は２７日午前１０時から、いずれも釧路市星が浦南１の７の１０の博善市民斎場で。喪主は妻、京さん。
　４７年入党。元党釧路市議（１期）、同白糠町議（２期）、同音別町議（４期）。元党地区常任委員。治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟釧路支部長。（2009/7/25　「赤旗」）（Page/Top）

「日本の将来像」について積極的な議論を／志位委員長が発言／ＢＳフジ番組

　日本共産党の志位和夫委員長が生出演した２１日夜放送の「ＢＳフジ　ＬＩＶＥ　ＰＲＩＭＥ　ＮＥＷＳ」。国民が待ちに待った衆院解散直後の熱気の中、司会のフジテレビ報道局政治部の反町理氏と元同テレビアナウンサーの八木亜希子氏、解説役の若松誠・フジテレビ解説委員長、政治アナリストの伊藤惇夫氏と語り合いました｡テーマは､日本共産党が訴える「新しい日本の将来像」、「建設的野党」の役割、さらには党名に込められた思いまで、あっという間の１時間となりました。

「目指すべき進路の積極的提言を」
　番組では冒頭、日本共産党についてこんなナレーションが流れました。
　――「民主党が政権をとった場合、一致する政策に関しては協力する『建設的野党』を宣言。これまでの路線からの〝転換〟を表明した。さらに、アメリカに対する姿勢も変わろうとしている。これまでアメリカに対して批判的だった共産党が、オバマ大統領の『核兵器のない世界』を追求するとの演説に対して、４月末に志位委員長が核兵器廃絶に向けたイニシアチブを求め、オバマ大統領に書簡を送付。その後、アメリカ政府から返書が届いた。また、支持層にも変化が起こっている。景気が悪化した昨年、貧しい労働者たちの姿を描いた小林多喜二の『蟹工船』が大ヒット。こうしたブームもあり、先日、おこなわれた東京都議選では得票数を（前回都議選から）２万７千票あまり増やした。しかし、結果は５議席減の８議席。変化し始めた共産党は衆院選をどのようにたたかうのか…」
　そして若松氏は――。
　「私はこの間、何度か志位さんのお話を聞く機会があったのですが、さかんに、今後の日本の進路をどうするのかということを提起されている」「政権交代は一つの手段であって、その先に何があるのかということになりますし、今後、各党が自分たちが選挙後にどういう日本の進路を目指すのか、国家像というのを積極的に提言していただいて、そのほうが有権者も選択しやすいわけで、ぜひ志位委員長に積極的にこの問題を提起していただきたいと思うんですね」

新しい歴史の扉を開く選挙が始まった
　解散の衆院本会議後、新宿、横浜と２カ所の街頭演説に臨んで駆けつけた志位氏は、解散の思いについて「新しい歴史の扉を開く選挙がはじまったなという感じです」とのべ、こう表明しました。
　志位　今度の総選挙で私たちがまず何よりも訴えたいのは、〝自公政権はもう退場〟というはっきりとした〝審判〟をくだす選挙だということです。そして、同時にもう一つは、自公政権が退場した後の政治をどうするのか、ここにこそ、いま議論すべき大問題があると思います。自公政権を倒した後の日本をどうするのか、２１世紀の日本の進路をどうするのか、このことを骨太に議論するような総選挙にしたいと思っています。
　志位氏は、自公政権の〝罪〟について、「暮らしの安心と希望を奪ってしまった。国民の多くの方々が、雇用の不安、社会保障の不安、あらゆる面で不安を募らせ、さらに明日の希望が見えない」と指摘。文部科学省の全国調査でも、これから暮らしが「豊かになる」と答えた人が過去最低の１１％、一方で「貧しくなる」が５７％で過去最悪となっていることについて、「国民の過半数が明日が悪くなると答えているのは、これは恐るべき数字です。そこまで希望を奪ってしまっている」とのべ、こう指摘しました。
　志位　今日、麻生さんの（解散会見での）発言を聞いていたら、「安心社会実現選挙」と（いっていた）。でも「安心社会実現」のためには、自公が身を引くことがまず一番にやるべきことではないですか。この自公政権の退場の決定的な〝審判〟をくだすというのが一つ（の総選挙の意義）です。ただ、もう一つ、〝選択〟があります。退場させた後に、日本の進路をどうするかということが大事で、国民の関心はもう、だんだんとそちらに向かいつつあると思います。

国民の関心は「日本の将来像」に向かいつつある
　「私たちは、自公政権を退場させた後の日本の進路として、『ルールある経済社会をつくる』『憲法９条を生かした自主・自立の平和外交』ということを大きな旗印に掲げています」
　フリップも掲げながら、日本共産党の「二つの旗印」を力説する志位氏。日本は、同じ資本主義国でも、雇用でも、社会保障でも、税制でも、ヨーロッパに比べてあまりに暮らしを守るルールが弱い、そこをただして「ルールある経済社会」をつくる。アメリカ大統領が「核兵器のない世界」を目指すというように世界が変化しているにもかかわらず、いまだに何でも軍事で身構える日本から、憲法９条を生かした「自主・自立の平和外交」にきりかえ、世界に貢献する日本にする――。
　志位氏が強調したのは、日本共産党が「旗印」を掲げるだけではなく、その「旗印」にそくして実際に行動してきたことです。
　志位　たとえば一つ目の問題でいえば、「派遣切り」がひどくやられたときに、初めて日本経団連と会談をやったり、トヨタと直談判をやって、雇用の維持を求めました。二つ目の問題では、アメリカと――これまでは話し合いのルートがなかったのですけれども、（核兵器廃絶を目指す書簡送付という）働きかけをやって、初めて先方からも返事が来るという形になりました。「旗印」を掲げるだけでなく行動する党だと。こういう方向にぜひ、日本の政治は向かうべきじゃないかということを大いに議論していきたいと思います。
　ここで伊藤氏は、日本共産党が全小選挙区の半分程度に候補者擁立を絞っていることも指摘し、「自民党対民主党という正面対決のなかに、他の政党が埋没しつつあるのかなという状況の中で、共産党は今度の選挙をどう勝ち抜いていかれるつもりなのか」と問いかけました。
　志位氏は、候補者を立てない小選挙区でも、演説会を旺盛に開くなど、比例代表での前進のために全力をあげていることも語りながら、こうつづけました。
　志位　「自民か民主か」というなかで埋没しないかというお話ですが、私はいまはもう、国民のみなさんは「自民か民主か」であまり迷ってはいないと思うんですよ。もう圧倒的多数は自公政権退場という判断が、流れになっていると私は思います。むしろいま痛感するのは、自公政権に「ノー」の審判をくだしたうえで、その後をどうするかというところに関心が向かいつつあると。ですから、民主党にしても政権交代したらいったい何をやるんですかと。これは当然、問われてきますよね。そこで私たちはさっきいった「二つの旗印」を太く訴えかけていきたい。こういう骨太の旗印を示していく。個々の政策論も大事ですが、同時にどういう方向に日本が進むのかという太い筋をきちんと示していくことが、いま各党に求められているのではないでしょうか。

「建設的野党」に込められた決意
　番組の後半、議論はさらに白熱して――。
　「こういう言葉が最近、志位委員長からよく出ます。『建設的野党』という言葉なんですが、これは何でも反対ということではなくて、民主党が政権をとった場合にこういう立場をとられるというお話をされますが、これはどういうことですか」。「建設的野党」と書かれたフリップを手に質問する反町氏にたいし、志位氏はこう答えました。
　志位　なぜこういうことを言い始めたかといいますと、今度の総選挙の第一の目標は、自公政権の退場の〝審判〟をくだすことだとさきほどいいましたけれども、その実現のために党として全力をあげてがんばると言った以上、それでは、自公政権に代わってどんな政権を考えるのかということが当然、出てくるわけです。自公政権に代わる新しい政治の中身として「二つの旗印」をいいました。これを実行する日本共産党が参画する政権ができれば一番いいのですが、（この総選挙の後に）すぐにできる条件がないのも事実です。総選挙の結果、民主党中心の政権になる可能性が大きいわけですよね。そうすると、その政権に対してどういう態度を取るかということを、責任を持って明らかにする必要があります。
　それでは、民主党のとっているスタンスを見るとどうなるか。私たちと大きく違うのは、たとえば財界・大企業に対する姿勢ですね。私たちは財界・大企業中心の政治を変えるといっていますが、ここは立場が違ってくる。それから日米軍事同盟に対する姿勢です。私たちは軍事同盟からの脱却といっていますが、ここも大きく違ってきますね。
　八木　さきほど「旗印」で二つ大きく掲げられたことですね。
　志位　ええ。これは一致しないんですね。ただ、個別の政策を見ますと、たとえば後期高齢者医療制度撤廃、障害者自立支援法の応益負担の廃止のように一致点はいろいろあるわけですね。もちろん一致できない、いろいろな問題点もある。憲法９条改定、消費税の問題、衆院の比例削減などですね。そういうなかで私たちとしては、「建設的野党」として、簡単にいえば、「良いことには賛成、悪いことには反対」と、「是々非々」の立場を貫いていこうと。ただ、「是々非々」という言葉は、相手が出してくるものに対して受け身に反応するという感じもありますが、私たちの場合はそうではなくて、私たちの方から攻勢的、能動的にいろいろなアプローチをしていこうと思っていますから、「行動する是々非々」という言葉も使いました。（「建設的野党」と）同じ意味なのですけれども、こういう立場でやっていこうということです。
　民主党中心の政権ができれば、そのときに野党がどうなるかと考えたら、共産党とおそらくは自民党、公明党になってくるわけですね。それでは自公が「建設的野党」の役割を果たすかというと、私たちは「是は是、非は非」でやっていくんだけれども、自民党はその対応とは逆に、「是は非、非は是」というふうにやるかもしれないわけですね。

日本共産党という党名に込められたもの
　このやりとりを受け、伊藤氏は、「要するに提案型野党ですよね。今度は自公が完全野党で、共産党さんはそこにはくみしないというのであれば、第三極ということになりますね」とのべるとともに、「そういう構図のなかで存在感をどう提示していくのか。提案型野党から場合によっては政権により接近していく過程で、僕はやっぱり党名問題って、絶対に譲れないってことはよくわかるんですけれども、僕からすると何かちょっと不思議な感じがする。そこまでこだわらなくてもいいんじゃないですか」と発言。視聴者の意見でも「共産党が第三極になったほうがずっと日本の政治がよくなるという気がするんですが、そのためにはこの際、共産党の名前を変えたらどうでしょう」などの声が紹介されました。
　志位氏は「私は日本共産党という党名に対するアレルギーというか、拒否はだいぶ変わってきたと思っています」とのべつつ、次のように日本共産党の党名に込められた思いを語りました。
　志位　おそらく、「もっと伸びてほしい」という立場でそうおっしゃっておられる方も多いと思うんですね。ただやはり、いまの世界の全体の大状況を見ますと、昨年の秋に世界経済危機が起こった。世界資本主義の総本山のアメリカで起こった。まぎれもない過剰生産恐慌が金融危機と結びついた事態が起こっているわけです。そうなってくると、「資本主義の限界」という問題が提起されてきます。そしてこの問題をとことん究明したマルクスに関心が向かう。そういう状況が全世界的に起こっているわけですよね。ですから、広い目で見ると、また長いスパンでいえば、資本主義を乗り越えた、つぎの社会にいかないと、いろんな人類がかかえている問題が解決しないという機運も起こり始めているんじゃないですか。それを乗り越えた社会が、私たちのいう社会主義、共産主義なんですよ。
　共産主義といいますと、英語では「コミュニズム」でしょう。コミュニズムの語源はというと、ラテン語の「コムニス」なんですよ。コムニスとはどういう意味かというと「共同」という意味なんです。人間と人間が角を突き合わせて、足を引っ張り合うのではなくて、支えあって幸福な社会をつくろうというのが語源なのです。共同社会ですよね。たとえば「コミュニティーセンター」というのがあるでしょう。あれと同じ語源なんです。だからコミュニティーセンターを直訳しますと、「共産センター」になる。
　共産主義の一番の根本にある考え方は、自由で平等な共同社会ということです。だから、私たちが目指している先の未来社会では、資本主義のもとでつくった民主主義や自由、いろいろな諸権利を、すべて発展的に継承するという立場を明らかにしています。崩壊したソ連型の社会は社会主義でも共産主義でもないと、きっぱり拒否すると。私はこの名前にとても愛着を持っています。

共産党を伸ばし、安心と希望の新しい日本を
　番組は最後に、「国民への提言」を求め、志位氏はフリップに「安心と希望の日本を」としたためました。その心は――。
　志位　やはり、自公政権によってあまりにも国民の安心と希望が奪われてしまっている。さきほど、文部科学省のデータも示しましたけれども、本当の意味でみんなが安心して暮らせる、希望を持って暮らせる社会にしたいと。そのための方策としては、大企業の身勝手を抑えて、国民の暮らしや権利を守るルールをつくっていく必要があります。たとえば雇用の問題でしたら、労働者派遣法を抜本改正して、正社員が当たり前の社会にする。それから均等待遇のルールをきちんとつくって、同じ労働には賃金も休暇も同じという、ヨーロッパで当たり前になっているルールをきちんとつくる。残業時間を法律で規制して、長時間労働を抜本的に短縮して、過労死を日本からなくしたい。
　それから社会保障の問題で言いたいのは、いま医療がたいへんな危機にあります。公立病院をしっかり守っていくことが大事ですが、あわせて、お金のない人がお医者さんにかかれないという問題がある。窓口負担が３割でしょう。こんな国はないんですよ。ヨーロッパでは多くが無料です。ですから、窓口負担の軽減に踏み出していく。まずは７５歳以上のお年寄りと、小学校就学前の子どもさんの医療費は、国の制度として無料にすることから始めたい。雇用と社会保障という二つの柱で、安心できる、希望を持ってみんなが暮らせる、そういう社会にしたいと訴えていきたい。
　「そういう目標を実現するためにも、前提は政権交代でしょうし、その政権に対して影響力を行使していくことが大事になってくるわけですよね。そのためにまず、選挙で存在感を示さないといけない」と応じた伊藤氏。志位氏は、「私たちが前進、躍進して、そして選挙後につくられる政権が民主党中心の政権の場合にも、『建設的野党』として実際の政治に影響力をもつようにするためには、議席を伸ばさなければいけないということでがんばりたいと思います」と決意を述べ、議論を締めくくりました。
( ２００９年０７月２４日，「赤旗」) （Page/Top）

本紙連載小説の映画化すすむ／「アンダンテ～稲の旋律～」ロケ訪問／青年主人公の再生物語

　本紙で、爆発的人気を得た連載小説「稲の旋律」（旭爪あかね作）の映画化が決まり、５月から撮影が始まっています。タイトルは「アンダンテ～稲の旋律～」（同映画製作委員会）。千葉県横芝光町のロケ現場を訪ねました。
　引きこもりの生活に苦しむ主人公の千華(新妻聖子)が、自然農業に取り組む晋平（筧利夫）との交流から、再生の道を探っていく物語。原作は、２００１年の連載中から連日のように読者から感想が寄せられる人気ぶりで､０３年に多喜二･百合子賞を受賞しています。
　この日は、陽光照り付ける田んぼでのロケーション。この田んぼは、横芝光町の佐藤晴彦町長が会長を務める、同映画を支援する町民の会のメンバーが提供。メガホンをとる金田敬監督は、「自然相手でこちらの思い通りにいかない難しさはありますが、田んぼがとても奇麗で説得力がある」と話します。
　これまで主にミュージカルで活躍し、文化庁芸術祭新人賞などを受賞している千華役の新妻さんは、今作が映画デビュー作。晋平役の筧さん、千華の元同僚・逸子役の秋本奈緒美さんは、ともに舞台、テレビ、映画と幅広く活躍中です。
　この日、メーンキャストの３人はそろって農作業スタイル。千華と晋平を乗せて、逸子が軽トラックを運転する場面の撮影が進みました。危なっかしい運転で農道を走る軽トラが田んぼに突っ込み、そこからさらに、晋平がトラクターで軽トラを引き上げます。細かいカット割りで、約４時間かけて撮っていきました。
　脱輪にあわてる千華と逸子とは対照的に、「落ちたらまた引き上げればいいんだから」という晋平の大らかなせりふが現場に響きます。効率優先の競争社会で生きづらさを抱えてきた千華が、そんな晋平を見つめて｢アンダンテ(歩く速さで)｣というタイトルにもなっている言葉を、ふとこぼす重要なシーン｡監督は｢効率的に物事を進めることがすべてではないというメッセージを、原作のイメージを壊さず伝えたい」と話します。ほかに、松方弘樹さん、宇都宮雅代さん、村野武範さんらが出演します。
　制作費の大半は、映画の鑑賞券をかねた製作協力券（１口１０万円＝１００枚）の販売でまかないます。１２月１１日に、東京・有楽町朝日ホールで完成有料試写会を開き、その後全国で上映予定。問い合わせは
　℡０４２（３９６）７８１５映画「アンダンテ～稲の旋律～」製作委員会
　田中佐知子　
　木下浩一撮影

千華役／新妻聖子さん
　原作はとても面白くて、一晩で読んでしまいました。人に良く思われたくて、良い格好をして、疲れてしまうというのは、誰でも多かれ少なかれ経験していること。千華は、我慢のタンクがいっぱいになって、それ以上前に進めなくなってしまいます。疲れて休んでいるのは、無理をしていたから。転んでけがをして痛くて立ち上がれないんだから、無理やり立ち上がらないで、傷が癒えるまで待って、そこからまた歩き出せばいいんだよ、という晋平さんのセリフは、本当にその通りだと思います。「引きこもり」の一歩手前で苦しんでいる人も多いのではないでしょうか。映画をご覧になった方が、今一度自分を見つめ直して、無理のない範囲で優しく生きていけることができたら、と思います。

逸子役／秋本奈緒美さん
　逸子は一度離婚をしていて、女ひとりで頑張らなければと、キャリアを積んできた女性。逸子も千華ちゃんと同じように農作業を通して、ほぐれていきます。今の若い人たちは、私の若いころより、生きづらいのではないかと思います。情報はあふれてはいるけれど､体感する情報が少ない｡農業問題もこの作品の大きなテーマですが、お説教くさくなく、晋平を通して語られていきます。日本の食の現状をもっと知らせるために、この作品の果たす役割は大きいと思います。

晋平役／筧利夫さん
　農業問題が前面に押し出された作品です。ストーリーを通して、こうした問題について考えていただけたらいいな、と思いますね。「曲がって植えようが転んで植えようが、稲はまっすぐ上を向いて伸びるんだよ」というせりふに、晋平という役の魅力が象徴されていると思います。農作業の服装にもなじんできて、変に力が入ることなく、やれるようになってきましたね。晋平役のモデルといわれる土屋喜信さんに、いろいろお話を聞きながら、演じています。

原作者旭爪あかねさん／伝えたかったこと
　映画化の話を聞いたときはとても驚きました。脚本を読みましたが、私が伝えたかったことを大切にしてくださっていると感じています。「稲の旋律」を書いた当時、千華のような人間を「甘えている」とおっしゃるのは、主に上の世代の方で、若い人たちには共感してもらえていたように思います。それから７年がたち、状況が変わってきました。ワーキングプアや貧困の問題がクローズアップされ、若い人の中でも、「働かずにひきこもっていられる千華」を甘えていると感じる方が多くなってきているような気がします。けれど、千華の抱えている問題も、働いても食べられない、働きたくても働けない問題も、根底ではつながっているのだと思います。この映画が、千華や私と同世代の方にも共感してもらえる作品になったらうれしいです。
( ２００９年０７月２０日，「赤旗」) （Page/Top）

今年は中学教科書採択の年／つくる会侵略美化教科書／生徒「これだめだ」

　今年は４年に一度、各中学校で使われる教科書が決められる年です。日本による侵略戦争を美化、合理化する歴史教科書が２種類も登場し、その採用（採択）を許すかどうかが問われています。
　高間史人記者
　侵略戦争を美化する教科書をつくったのは「新しい歴史教科書をつくる会」（藤岡信勝会長）。１９９７年に結成され、侵略美化の歴史教育を学校現場に持ち込もうと策動してきました。
　ことしは、同会のメンバーが中心になって書いた中学校の歴史教科書が２種類発行されています。２００５年に文部科学省の検定に合格した扶桑社発行の教科書と、ことし検定に合格した自由社発行の教科書です。
　内容は扶桑社版も自由社版もほとんど同じです。とくに日本の侵略戦争についての描き方は、自由社版が扶桑社版をほぼそのまま踏襲しています。
　例えば、日本とアメリカ・イギリスとの戦争についてはいずれも「大東亜戦争」という言葉を表題にして次のように書いています。
　「日本は米英に宣戦布告し、この戦争は『自存自衛』のための戦争であると宣言した」「日本の緒戦の勝利は、東南アジアやインドの人々に独立への夢と勇気を育てた」（扶桑社版は「育んだ」）
　日本の侵略戦争が「自国を守るための戦争だった」「アジアを解放するための戦争だった」とするのが「つくる会」の教科書の基調です。
　しかしこれは、ドイツと日本の侵略戦争を断罪した戦後の世界政治の出発点を無視するものです。「植民地支配と侵略によって…アジア諸国の人々に多大の損害と苦痛を与えた」（１９９５年村山首相談話）とする日本政府の立場にも反します。
　日本共産党の石井郁子・国会議員団文部科学部会長は文科省が自由社版教科書を検定合格にしたことについて次のように批判しました。
　「侵略戦争と植民地支配についての歴史の真実を知り、その反省の上に平和と民主主義の日本国憲法があることを学ぶことは、わが国の子どもたちが主権者として育ち、世界の人々と手をたずさえて生きていくうえでの大前提。それを否定するような歴史教科書に内外の批判は必至です。政府の責任は重大です」

抗争と分裂
　ほとんど同じ内容の教科書が違う出版社から二つ出ること自体が異常です。背景には「新しい歴史教科書をつくる会」の内部抗争と分裂があります。
　自由社版、扶桑社版とも代表執筆者は藤岡信勝氏。現在の「つくる会」の会長です。
　「つくる会」では２００６年に元会長の八木秀次氏らが脱退、別組織「日本教育再生機構」を立ち上げます。
　藤岡氏の「つくる会」側は、新たな教科書を自由社から発行。藤岡氏は０８年３月、扶桑社に１０年度以降の著作権使用許諾を打ち切ると通告しました。
　それでも発行を継続する扶桑社にたいし、出版差し止めを求める訴訟も起こしています。教育とは無縁の〝泥仕合〟です｡

採用自治体保護者たちが批判／「受験に不利、歴史わからない」
　４年前、「つくる会」教科書の採択率は全国でわずか０・３９％。栃木県大田原市と東京の杉並区などが採択しました。
　大田原市では市民の反対にもかかわらず今回も採択されました。杉並では住民が採択反対の運動を強めています。
　「高校の受験勉強にも不利」。中学校の保護者会でそう発言したらほかの母親たちから驚きの声が上がったと話すのは、同区の泉川真理さん（４７）。低い採択率なため問題集を出す出版社がないからです。
　泉川さんは高２と中１の二人の息子の母親です。
　「長男は使わずにすんだんですが、次男が使っている扶桑社版を見てこれじゃあだめだっていうんです。『普通選挙法と治安維持法はセットで出てきたのに別のページに書いてある。脈絡がわからない』って」
　わが子用にＢ４判で二十数枚のプリントを作り、一緒に高校受験の勉強をした父親がいます。大江健一さん（５３）です。
　「高１の次男が去年、『この教科書じゃ歴史の流れがわからない』という。読んでみるとたしかにそうでした。そこで参考書をもとにパソコンで作りました。『日本は中国や朝鮮の人たちに学んだりかかわったりしたんだね』って言ってくれました。こんな教科書はもう使わせないでほしい」
　市民グループ「杉並の教育を考えるみんなの会」は、「本当に困っているのは子どもたちです」と街頭で呼びかけ、採択しないよう区教委に申し入れるなど４年前と同様に活動しています。
(２００９年０７月１９日，「赤旗」) （Page/Top）

発言０９／映画監督神山征二郎さん／今、安穏としていられない

　「北辰斜にさすところ」「ラストゲーム　最後の早慶戦」「鶴彬　こころの軌跡」と３作続けて、戦争を描いた作品を撮りました。意図的にそうしたわけではないんですが、危機感があって、安穏としていられないんですよ。

今すぐ作ろう
　最新作は、反戦・反権力を貫いた川柳作家・鶴彬の生涯を描いたドキュメンタリー・ドラマ映画です。「手と足をもいだ丸太にしてかへし」「万歳とあげて行った手を大陸へおいて来た」。１９０９年に生まれた彼は、こういう句を作って、戦争へ突き進む国を批判しまくりました。
　鶴彬の出身地である石川県の皆さんが中心になって、彼の生誕１００年を記念して、映画の企画を進めていたんですが、監督を頼まれた当初、私は鶴彬を知りませんでした。しかし送ってもらった資料を読んで、これは今すぐ作って世に送り出した方がいいという気がしたんですよね。５年先ではいけない、今だと。
　戦後六十数年たっても保守系の議員は、あの戦争を反省していません。平気で核武装論を唱えたり、日本が他国を侵略した事実を認めず、「自虐史観」と批判したり。日米安保条約のもとで米軍再編の動きもありますし、油断もすきもない。かつての戦争時代への郷愁を感じさせるような映画が、近年ポツポツ出てきているのも気になります。

甘く見るなと
　鶴彬は世の中がよく見えていた人だと思うんですよ。今だけでなく、先々まで見通していた。そういう目をもった人は、当時の国にとっては邪魔ですから、治安維持法という法律で排除された。治安維持法違反で検挙され、留置所で赤痢にかかり、鶴彬は２９歳の若さで獄死しました。
　今の日本に、治安維持法ほどの悪法はありませんが、ビラを配っただけで罪に問われてしまうじゃないですか。冗談はやめろと言いたいけれど、権力は本気でやってきてるわけですよ。
　人に物を言わせないというのは、それ自体が暴力です。いま比例定数削減を自民党・民主党が唱えていますが、これも少数政党にものを言わせないという企みですね。
　そろそろ解散・総選挙になりそうだと、昨年の１０月にも「赤旗」の１面のインタビューに出ました。そのとき「共産党がなければ、日本は闇」と話しましたが、その気持ちは今も変わっていません。本当の民主主義、デモクラシーを実現してくれるのは共産党だと思っていますよ。
　政府の仕事は、国の予算をどう動かすかということ。医療や教育。ここは、お金をもうけようとしてはいけない分野です。いい予算の使い方をするのはどの政党なのか。そこをよく考えて投票権を行使したいですよね。
　人気取りで高速代を１０００円にしたり、党首をすげかえたりしていますけどね、国民を甘く見るなと、知らしめなければいけませんね。
　聞き手　田中佐知子
( ２００９年０７月１９日，「赤旗」）（Page/Top）

治維法国賠同盟県本部が大会／青森

　治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟青森県本部は１１日、青森市のアピオあおもりで第２０回大会を開きました。
　中村勝巳県本部会長が、「平和・くらし・民主主義を守る力を総選挙のたたかいに結集しよう」とあいさつ。
　来賓の日本共産党のよしまた洋書記長（衆院比例候補、青森１区重複）は、「諸先輩や人々の熱い思いに励まされて奮闘しています」と決意をのべ、国民救援会県本部の杉山俊雄事務局長は、「権力の弾圧・介入を許さない心構えが大事」と訴えました。
　県同盟顧問でもある高橋ちづ子衆院議員からメッセージが寄せられました。
　高杉さと県本部事務局長が、この１年間の活動と今後の運動方針について報告。会員増、請願署名目標突破、支部確立・活性化での前進を報告し、請願運動、宣伝活動、顕彰と風化させない活動などを提案しました。
　討論の後、報告事項を承認しました。野村昭俊副会長が閉会あいさつで、「会員の力を結集して運動を広めよう」と呼びかけました。
(２００９年０７月１８日，「赤旗」) （Page/Top）

映画／「蟹工船」（同映画製作委員会）／一人一人に「立ち上がれ」

　８０年前の小林多喜二のメッセージが、２１世紀に映画となってつきつけられた。４４歳のＳＡＢＵ監督は原作者に恥ずかしくない映画を撮ったといった。しいたげられた者たち一人一人に立ちあがれと呼びかけるところにその思いがこめられている。
　カムチャッカの海で蟹を獲り、船内で缶詰に加工する工場船・博光丸。過酷でドレイ的な労働が昼となく夜となく続いている。監督の浅川（西島秀俊）は日本帝国の使命のために死ぬ覚悟で働けと非道のかぎりをつくす。労働者の一人新庄（松田龍平）は、あきらめ気分からしだいに反抗心がめばえてくる。元炭坑夫たちや少年工たちの性格点描、夢を見る思い、絶望に耐える人間のおかしさも忘れていない。
　蟹缶が生産される現場の描写がリアルだ。人力によるベルトコンベヤー、プレス機操作の重労働。湯気が人間の命をけずったかのように吐き出される。
　船内は極限的空間として造型され、そこに押し込められた労働者たちは個性を奪われた道具として描かれる。新庄がある事件をきっかけに「考える」ことを学び、少年工たちともつながって、抑圧をはね返す行動へと発展させる。
　ぎりぎりの中に生まれた決意が印となり少年工によって旗や布に描かれていく場面がいい。団結する行動力が勢いとなり目的に凝縮される。
　ＳＡＢＵ監督は演出のたくみさとともに視覚的な手法も加えて、人間らしさを奪取されたものの目覚めと力をあわせる大切さを具体的に描いた。なだれを打つ終幕にあきらめるなと現実に脈打つ感動をきざんだ。
　（石子順・映画評論家）
　東京・渋谷・シネマライズ、大阪・テアトル梅田ほかで上映中
( ２００９年０７月１３日，「赤旗」) （Page/Top）

詩人・尹東柱の記念碑を宇治に／京都府に署名提出

　戦前に治安維持法違反で逮捕され、終戦の半年前に獄死した韓国の国民的詩人・尹東柱（ユン・ドンジュ、１９１７～１９４５年）の記念碑「記憶と和解の碑」を、京都府立宇治公園塔の島（宇治市）に建立することを求めて、「詩人尹東柱記念碑建立委員会」がこのほど、京都府に、６３５８人分の署名を提出しました。
　建立委員会に加わる安斎育郎・立命館大学国際平和ミュージアム名誉館長らが参加しました。
(２００９年０７月１２日，「赤旗」) （Page/Top）

「田母神問題を斬る」／治維法国賠同盟塩釜支部が総会

　宮城県の治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟（国賠同盟）塩釜支部は４日、塩釜市公民館で第１６回支部総会を開きました。
　多賀城アンサンブルによるミニコンサートの後、県国賠同盟副会長の大沼耕治氏を講師に、記念講演「田母神問題を斬る」が行われました。
　大沼氏は「田母神（俊雄・元空幕長）論文は歴史論文としては粗雑だが、無視したり軽視したりするのは誤りだ」と警告し、論文のごまかしとわい曲について史実を紹介しながら批判しました。
　また、「軍人勅諭」をたたきこまれた自らの体験と重ねて、「田母神問題は単なる田母神個人の思想や動きではない」と強調。皇国史観や右翼的思想に同調する潮流と結びついて戦争へ巻き込まれていった過去の苦い経験を思い起こし、歴史の事実に基づいた反戦平和の世論をつくることで、そうした潮流の動きを押しとどめる積極的な学習と活動が強く求められていることを浮き彫りにしました。
　講演後の支部総会では、全議案が承認され役員改選が行われました。
(２００９年０７月１０日，「赤旗」) （Page/Top）

涼を求めて平和の滝に／札幌

　ようやく夏らしくなってきた７日の札幌市。手稲山（１０２３・７㍍）のふもとにある「平和の滝」には、涼を求める人が次々と訪れ、「さわやか。気持ちいい」のささやきがもれていました。（写真）
　木漏れ日のなか、約１０㍍の高さから落ちる滝に「すごい」の歓声が起こりました。
　僧侶の修行の場としても有名で、平和の滝道場が残りました。
　平和の滝は戦前、日本共産党の再建に協力し、労働者解放のためにたたかった女性活動家、相沢良（１９１０年～３６年）のゆかりの地です。良は女性労働者と滝へハイキングし、学習や労働歌を歌って交流しました。
　滝の入り口には、治安維持法国家賠償要求同盟道本部と札幌支部が建てた案内板とレリーフ像碑があります。
(２００９年０７月１０日，「赤旗」) （Page/Top）

あす福岡で「銃口」公演劇団／前進座

　劇団前進座は７月、長編小説『銃口』（三浦綾子作）と同名の舞台劇「銃口」を、福岡県大牟田市に続いて、福岡市、行橋市で巡演します。「銃口」は１９４０年から翌年にかけて治安維持法違反容疑で教師ら５０人が検挙された「北海道綴方教育事件」を題材にした物語です。いずれの公演も上演実行委員会などを結成。「ぜひ観劇に来てほしい」と呼びかけています。
　【福岡会場】９日午後６時半開演。福岡市・ももちパレス。料金は自由席（一般４５００円、大学生以下２０００円〈障害者を含む〉）、指定席は１０００円追加（電話で事務局に申し込み）、当日はいずれも５００円増。主催・前進座「銃口」福岡公演を成功させる会。連絡先は、事務局・シアターネットプロジェクト０９２（７３９）２３１８。
　【行橋会場】１０日午後６時半開演。行橋市・行橋市民会館。料金は一般４０００円、中高生２０００円＝全席自由。当日はいずれも５００円増。託児あり。主催・前進座「銃口」実行委員会。
(２００９年０７月０８日，「赤旗」) （Page/Top）

演劇／「鶴彬こころの軌跡」（同映画製作委員会）／反戦・反権力みずみずしく


退けば飢えるばかりなり前へ出る
枯れ芝よ！団結をして春を待つ
手と足をもいだ丸太にしてかへし
胎内の動き知るころ骨がつき
　戦争の無残を鋭く突き、社会の底辺に生きる人びとに温かな目を向けた川柳作家、鶴彬。小林多喜二とほぼ同時代の人だが、その存在は広く知られることはなかった。生誕百年にあたり、その生涯を描く映画が生まれた。神山征二郎監督ならではの端正な美しさをたたえた作品である。
　鶴彬（池上リョヲマ）は、１９０９年石川県（現在のかほく市高松）に生まれた。本名・喜多一二。幸せとはいえない生い立ちから人の痛みがわかる少年に育った一二は、１５歳のころから川柳にいそしむ。日常茶飯事を詠む句にあきたらず、青年期には社会の矛盾に目をむけた痛恨の句が堰を切って噴き出す。
　故郷・高松の荒れ狂う海の映像に、資本家の横暴、労働者の生活苦を詠んだ句が刻まれ、ナレーションが軍国の世の切迫を告げる。川柳の先達・井上剣花坊（高橋長英）信子（樫山文枝）夫妻、年上の句友・渡辺尺蠖（安藤一夫）との信頼に結ばれた交流、１９歳で鶴彬の柳名を名乗ることになった経緯など、映画は貧苦にも軍隊や権力の暴圧にもめげなかった若者の一途な姿を描いてみずみずしい。
　なだれを打って侵略戦争へと向かう時代に生き、それに抗い、反戦・反権力を貫き通した鶴彬は、母思いの民衆思いの心優しい青年だった。留置所で赤痢を病み、手鎖をされたまま２９歳の若さで死んだ〝詩人の魂〟を映画はいとおしむように描いている。
　（うすいすみえ・映画ライター）
　東京・ポレポレ東中野で上映中、順次各地で
( ２００９年０７月０８日，「赤旗」) （Page/Top）

治維法国賠同盟支部総会開く／岐阜・東濃西支部

　岐阜県の治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟東濃西支部は４日、土岐市内で第１８回支部総会を開きました。
　２７人が参加し、治安維持法犠牲者への謝罪と国家賠償法の実現をめざす国会請願署名が目標２０００を大きく上回る２２００以上を集約できたことを喜びあいました。
　総会では、署名の取り組み、国会請願の感想など３人の特別報告がありました。日比野富春さんは、先に９４歳で亡くなった母親の遺品整理の中で発見された、父が３４歳の時に召集され、戦死を覚悟した「遺言状」や、１９４１年から敗戦までに発行された雑誌『家の光』などを紹介しました。「遺言状」は達筆な毛筆で書かれ、妻や３人の子どもたちに「名誉の戦死」を喜び、たくましく生きよなどと書かれていました。
　また、後藤金夫支部長の手記『あの、いくさの下で』が出版披露されました。「民主とき」に連載されたものを会員がまとめて出版にこぎつけたものです。
(２００９年０７月０８日，「赤旗」) （Page/Top）

横浜事件発端の地富山・朝日町で再審報告集会

　第２次大戦下の言論弾圧事件｢横浜事件｣の再審裁判報告集会が４日、事件の端緒の地となった富山県朝日町の料理旅館「紋左」で開かれました。当事者の遺族、弁護団、支援者など８５人が参加。足利事件で再審開始が決定した菅家利和さんも参加しました。横浜事件再審裁判を支援する会と泊・横浜事件端緒の地建立委員会が主催しました。
　横浜事件は、１９４２年、国際政治学者の細川嘉六氏（戦後日本共産党参院議員２期）と雑誌編集者らが泊町（現朝日町）で行った慰安会が「共産党再建準備会議」だと決めつけられ、細川氏と雑誌編集者、新聞記者らが弾圧された事件。元被告や遺族は、１９８６年から４次にわたり再審を請求。横浜地裁は３次、４次請求で再審を開始したものの今年３月、裁判を打ち切る免訴を判決し確定。遺族は、刑事補償を申し立てています。
　報告集会では、横浜事件弁護団長の大川隆司弁護士と主任弁護人の佐藤博史弁護士が講演。大川弁護士は、横浜事件の本質は時の権力にとって都合の悪い思想の弾圧であり、再審は当時の特別高等警察の拷問と、拷問を見破れなかった裁判所の責任を問うものとのべました。
　佐藤弁護士（足利事件の主任弁護人も務める）は、第４次再審請求を受けての横浜地裁の免訴判決は、治安維持法の廃止などの法的な障害が無ければ無罪判決が可能とした実質無罪の判決であることを強調しました。
　菅家さんは「（逮捕後の）１７年間を簡単に終わらせるのは納得できない。横浜事件と足利事件は似ていると思っているので徹底的にたたかっていきたい」とあいさつしました。
　朝日町に住む舘長久さん（７５）は「泊出身なので事件のことはかすかに覚えているが、今日の話で権力犯罪の恐ろしさが骨身にしみた。絶対にこんなことは許してはいけない」と話していました。
(２００９年０７月０７日，「赤旗」) （Page/Top）

芸能テレビ／映画「鶴彬こころの軌跡」／神山征二郎監督／危機はらむ今、世に問いたい

　監督デビュー以来３８年目ですが、うれしいのは、俳優が期待通りに成長してくれることですね。池上君には、彼の映画デビュー作「ドンマイ」以後、数本に出てもらっていますが、今回、僕が求めたものに百パーセント応えて、映画の生命力を出してくれたと思っています。
　地元の実行委員会に宿泊所、食事の面倒、応援のスタッフまで世話していただき、協賛金を募って手弁当での映画づくりでした。〝少数精鋭〟のスタッフの一人ひとりが何役も受け持ち、脚本は、妻の加藤伸代が担当。僕は、美術、スチールカメラマン、プロデューサーも兼ねました。
　それでも鶴彬を描きたかったのは、この青年に魅せられたからですね。治安維持法の時代とたたかって句を作り続けた人ですが、人間的な明るさがあり、映画にもそれは出したつもりです。
　鶴彬が警鐘を乱打した時代と同じような危機をはらむ今こそ世に問いたいと思って作りました。
(２００９年０７月０５日，「赤旗」) （Page/Top）

芸能テレビ／映画「鶴彬こころの軌跡」／主演池上リョヲマさん／時代に負けない強さ感じた

　〈手と足をもいだ丸太にしてかへし〉などの句で知られる反戦川柳作家の鶴彬。生誕百年のことし、神山征二郎監督のドキュメンタリードラマ「鶴彬　こころの軌跡」が各地で上映されます。鶴彬にふんした池上リョヲマさんは、「一つのことを貫徹するかっこ良さを感じた」と語ります。
　児玉由紀恵記者
　池上さんにとっては、初めて接する鶴彬。「どんな人物か知ろうとしてもあまりに資料が少なくて。少なければ自由に作れるかといえば、そうではないですね。うそがあっても、鶴さんに無礼があってもいけませんし」
　体重を７㌔減量。台本の、時代性のある言葉を辞書と首っ引きで探り、石川なまりも身につけました。

獄死した生涯
　鶴彬は、日本が中国への侵略戦争を広げていく時代に鋭く切りこむ冒頭の句などを発表。川柳を社会変革の武器とし、人々のための川柳を唱えました。治安維持法違反で特高に捕らえられ、３８年に獄死。小林多喜二と同じ２９歳でした。
　映画は、その生涯を、時代の変遷を映す記録映像を交えながら展開。抑圧の時代にあらがう青春を描く画面に詩情があふれます。
　撮影は、昨年秋、鶴彬の出身地、石川県かほく市高松で行われました。期待のこもる視線の中、重圧と格闘しながら鶴役に挑戦。「地元での完成上映会に行くのが怖かった」と苦笑します。
　「どんな反応が出るかと―。上映後、拍手がワーッと起きて、本当にうれしかったですね」

自分がいたら
　志を曲げなかったがために命を奪われた鶴彬。清新に、また力強く池上さんが演じたその像が、心に深く刻まれます。
　「狂った時代だったと思います。そんななかで、鶴さんは、歯向かい、正直に居続けた。そういう人たちがもっと多ければ、何かが変わったかもしれない。その時代に自分がいたら、どうするんだと常に考えますね」
　本名は竜馬。「名前が重すぎて背が伸びなくて」と笑う小柄な体から情熱あふれる３４歳。小学６年のときモデル事務所に所属し、映画、舞台で活躍。４月には「中也が愛した女」の舞台で中原中也役を好演しました。
　「普遍性、倫理観があり、見た人が日常に思いを還元できる。それをエンターテインメントの世界で失ってはいけない、と僕は思っています」
　今作を自分の「代表作」と胸をはります。
　〈地下にくぐって／春へ、春への／導火線となろう〉〈枯れ芝よ団結をして春を待つ〉―池上さんの好きな鶴彬の句。
　「ものすごい力強さを感じます。敵対しているものはあまりに大きいというくやしさ､葛藤(かっとう）がありながら、でも負けないという思い。貫徹する意思の強さがびんびん伝わる句です」
(２００９年０７月０５日，「赤旗」) （Page/Top）

憲法守ろう各地で多彩に／講演と文化のつどい開く／札幌・手稲区

　札幌市手稲区で活動する星置９条の会はこのほど、区内で第２０回「講演と文化の集い」を開きました。
　三浦綾子の小説「銃口」の「生活綴（つづ）り方事件」と同時期に旭川師範学校の美術部の教師と生徒が治安維持法違反で逮捕され、１年半も刑務所につながれた「生活図画事件」の生き証人、松本五郎さんを講師に迎えました。宮田汎氏（道高校教職員センター付属教育研究所長）が映像機器で講演を援助しました。
　松本氏は「こんな私たちの絵が反戦思想の絵だ、共産思想の絵だとして、逮捕され、拷問を受けました」と当時の状況を語り、「私の体験は過去のものではなく、いまもその危険が存在しています。反省が日本国憲法に生かされていることを忘れてはなりません」と訴えました。
　講演に先立ち、星置の菅原邦楽研究室の松藤圭子さんと福島ひろみさんが箏曲の演奏を披露しました。
(２００９年０７月０５日，「赤旗」) （Page/Top）

「蟹工船」で映画初出演／お笑いコンビＴＫＯ／あきらめず立ち上がり続ける「これ、おれらの映画やん」

　小林多喜二の小説「蟹工船」が、ＳＡＢＵ監督の現代的演出で映画化され、４日から公開されます。お笑いコンビＴＫＯの木本武宏さんと木下隆行さんが、雑夫役で映画初出演。不人気にあえぎ、後輩芸人に先を越されても、あきらめず立ち上がり続けた２人は、「これ、おれらの映画やん」と声をそろえます。
　ＴＫＯが長かった不遇時代を抜け出したのは、結成１７年目の昨年。遅咲きの苦労人コンビの顔と、蟹工船の労働者の顔が重なったと、監督から白羽の矢が立ちました。出演依頼の理由を聞いたときは「素直に喜べなかった」と笑う木下さん。
　撮影は、ちょうどバラエティーの特番収録が集中する時期と重なりました。「そちらにも出たくてしょうがなかったけど、こんな恵まれた映画出演の話はきっともうない」と木本さん。１カ月間、泊まり込みで蟹工船に集中しました。
　カムチャッカ沖の博光丸で、「死ぬ覚悟で働け！」と監督（西島秀俊）から罵声と鉄拳をあび、蟹漁と加工作業に追い立てられる出稼ぎ労働者たち。地獄さながらの過酷さに、漁夫の新庄（松田龍平）から、〝自殺して、来世は金持ちの家に生まれよう〟の声まで出ます｡
　「（新庄につられて）みんなで自殺を図るシーンは、ほんまに恐怖でした。死んだら終わりなんや、もう立ち上がることは出来ないんやって」と振り返る木下さん。
　木本さんは、多喜二が８０年前に描いた労働が、現代に重なることが怖いと言います。「社会の仕組みは絶対進化しなければいけないもんやのに、今の日本は戻ってしまっている。この映画が大々的に公開されれば、そっちにいったらあかんていう、強いメッセージになると思うんです」
　労働者たちは、自殺で来世に希望をつなぐのではなく、ストライキによって現状を変えようとします。
　「団結は苦手やった」という木下さんですが、「『蟹工船』を通じて、団結って、ええなと。助けてくれる人もおるやん、仲間もできるやん、皆でいい方向に進むで、と今の若者に伝えたい」と話します。
　ぎりぎりの苦境で、労働者が集団の迫力を見せるラスト。木本さんは、「男のかたまり」を大画面で見てほしいといいます。「暗いニュースが多いけど、希望を見失わずに、『蟹工船』を見て、あきらめずに立ち上がってほしいなと思ってます」
　東京・渋谷・シネマライズ、大阪・テアトル梅田ほかで
( ２００９年０７月０３日，「赤旗」) （Page/Top）

「人ごとではない」／参院議長と面会／治維法国賠同盟

　戦前の治安維持法で国家権力による不当な弾圧や迫害を受けた犠牲者に対し、国の謝罪と賠償を求める治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟の代表は２日、国会内で江田五月参院議長と面会しました。日本共産党の山下芳生参院議員が同行しました。
　神戸照会長代行は一日も早い犠牲者の名誉回復を要請しました。
　犠牲者の一人、９５歳の水谷安子さんは「学生時代に社会科学の勉強をしたというだけで逮捕された。学校は退学させられ、学業をめちゃくちゃにされた」と語り、世界では弾圧された犠牲者に対し「国が謝罪して、生活の補償までしている。日本でも早く解決してほしい」と訴えました。
　秋田から参加した近江谷昭二郎さんは、１９３０年ごろの小作争議でたくさんの人が検挙されたことを説明。「拷問でなくなった人もいた。人権問題に時効はない。しっかりとりくむべきだ」と述べました。
　江田議長は、父親が同法で検挙された経験を語り、「人ごととは思っていません。請願署名が出ているが、請願そのものには意見の違いはあっても、国会でも請願者のお話をうかがう機会があってもいいと考えている」と応じました。
( ２００９年０７月０３日，「赤旗」) （Page/Top）

治維法同盟が定期大会開催／鳥取

　治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟鳥取県本部第１８回大会が６月２８日、倉吉市の伯耆しあわせの里で開かれ、３０人が参加しました。
　松本光寿弁護士が「治安維持法の今日的意義　国賠・憲法訴訟」と題して講演しました。
　松本氏は、憲法２５条の生存権をもとに、政府には治安維持法の犠牲者に対する原状回復義務があると主張しました。足利事件の菅家さんに国家公安委員長が謝罪したように、政府は犠牲者に対して謝罪し、現存する被害に対して損害賠償する義務があると指摘しました。
　大会は伊藤昭二会長を再選しました。
(２００９年０７月０２日，「赤旗」) （Page/Top）

一日も早い解決ぜひ／法相に要請／治維法国賠同盟

　治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟の代表は１日、法務省内で、森英介法相と面談しました。戦前の治安維持法で国家権力による不当な弾圧や迫害をうけた犠牲者に対し、国が謝罪と賠償をするよう要請文を手渡しました。日本共産党の仁比聡平参院議員が同行しました。
　神戸照会長代行は「先日、３０万人の署名を提出した。現在、確認できている治安維持法の犠牲者は１００人を切った。一日も早い解決をお願いしたい」と述べました。
　今回の面談には９５歳の水谷安子さんも車いすで参加。１９４４年３月に検挙され、同法が廃止されるまで獄中にいた経験を語り、「戦争に反対すればつかまる時代を生きてきた。私の青春時代は台無しにされた。名誉を回復して命をまっとうしたい」と訴えました。
　犠牲者の遺族、四津谷伸子さんは「人権問題に時効はありません。戦争に反対した人は敬われ、補償がされるというのが世界の流れ。早く国会で取り上げてもらい、早期解決をお願いしたい」と述べました。
　森法相は「直接、お話を聞いて胸に迫るものがあった。法務大臣としては、発言を控える面もあるが、お話は、しかとうけとめて肝に銘じたい」と応じました。
( ２００９年０７月０２日，「赤旗」) （Page/Top）

署名５万人達成を／治維法国賠同盟道本部が大会

　治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟道本部（外尾静子会長）は６月２６日、札幌市で第３１回大会を開きました。全道から代議員３８人が参加、１３００人会員、犠牲者への国家賠償を要求する署名５万人を達成するなどの方針を決めました。
　討論では「自衛隊の記念行事への賛同署名が町内会の回覧板で行われている」（登別）、「函館開港１５０年行事のなかに田母神（俊雄元空幕長）講演会が組まれている」と身近なところから戦争の気配が忍び寄っている報告がありました。
　国家賠償要求署名では「地域ごとの目標をしっかり立て、決めたことは役員が責任を持ってやりぬきたい」、犠牲者の国家賠償法制定を求める自治体の意見書採択では「釧路支部の自治体の過半数で採択をめざす」「函館でも９月議会に出せるように準備している」との発言が相次ぎました。
　特別決議「総選挙では国賠法制定への紹介議員を多数国会に送り出そう」を採択。外尾静子会長、伊藤俊事務局長を再選しました。
　日本共産党道委員会から石橋哲郎副委員長が出席、「自民・民主の悪政の競い合いは戦争への道。暗黒政治を許さないためにともにたたかいましょう」とあいさつしました。
(２００９年０７月０１日，「赤旗」) （Page/Top）

 

*         【6月】（ヘッドライン）

*         「対面式」の応援合戦／北大と小樽商大／１２年ぶり復活

*         学生社研結成に寄与中川篤二郎をしのぶ会開く／秋田・治維法国賠同盟

*         映画「蟹工船」ＳＡＢＵ監督／原作のラスト「彼等は、立ち上った。もう一度！」／新しさ感じた

*         プロレタリア詩人今野大力追悼／旭川で碑前祭／おぎう候補あいさつ

*         治維法国賠同盟県本部が大会／岐阜

*         ひと／「蟹工船」を演歌でうたう高橋一仁さん（８０）

*         鶴彬の川柳碑見学と講演会／岩手

*         今月の短歌／ゴミの感傷／碓田のぼる

*         詩と歌の家―大島博光記念館１周年／小林園子／そこに変えるべき生があり、変革すべき世界がある限り

*         月曜インタビュー／俳優日色ともゑさん／被爆の子描く「夏の雲は忘れない」／声の出る限り、朗読を続けたい

*         歴史的総選挙／人生かけて／小樽の長橋支部の人たち／暗黒政治再現許さない

*         久米明さん役者道を語る／「お買い物」で演技賞獲得／芝居は誰のためにある姿勢は今も変わらない

*         農民運動主題／米子で講演会／治維法国賠同盟

*         現代人形劇の８０年に寄せて／曽根喜一／（上）「糸操り」ではじまった（中）戦前、弾圧に抗しながら（下）／戦後のめざましい発展

*         「蟹工船」足利で先行試写会／一歩でも前向きに／ＳＡＢＵ監督語る

*         戦争する国阻止へ共同／治維法国賠同盟秋田県本部が総会

*         治維法同盟が歴史学ぶ学習会／きょう福岡市

*         受賞ドキュメンタリー民放との垣根越え放送／「認罪」、「光と影」など８作品／ＮＨＫ衛星②で１４、２１日に

*         その声が聞こえる／まつやまふみお大回顧展に寄せて／石子順／時代を逆行させてはならない

*         本立て／山宣／西口克己著

*         住職ら次々マイク／清潔な共産党前進を／金沢で後援会

*         国会通信／……５月３１日

【6月】

【本文】（Page/Top）

「対面式」の応援合戦／北大と小樽商大／１２年ぶり復活

　北海道大学と小樽商科大学の応援合戦「対面式」が２８日、両校学生と市民が見守るなか、小樽市の小樽商大構内で１２年ぶりに復活しました。
　「北の早慶戦」の異名もある北大と小樽商大の野球定期戦は、小樽高等商業学校（小樽商大の前身）が開学した翌年の１９１２年から続いており、戦時中の中断をはさむものの、今年で９８年目を迎えます。日本共産党員のプロレタリア作家・小林多喜二が小樽高商に入学した１９２１年の定期戦では、北大予科１２―１小樽高商の記録が残されています。
　両校応援団と学生による顔合わせは、戦後「対面式」と名付けられ、札幌市と小樽市で交互に開催し、初夏の風物詩として市民に親しまれてきました。小樽商大応援団の団員不足による休団でしばらく途絶えていましたが、再興を目指す商大応援団ＯＢらが、今年の「対面式」を企画したものです。
　伝統の羽織に身を包んだバンカラスタイルの両校応援団長が、片足２０㌔㌘の重さがあるといわれる高下駄をふり上げて歩くと、学生や市民から大きな歓声があがりました。両校団長は長さ数十㍍の巻き物に仕立てられた「挑戦状」「応戦状」を、大声をふり絞りながら読み上げ、学生が校歌や寮歌の交歓を行いました。
　（鈴木渉通信員）
( ２００９年０６月３０日，「赤旗」) （Page/Top）

学生社研結成に寄与中川篤二郎をしのぶ会開く／秋田・治維法国賠同盟

　秋田県の治安維持法国家賠償要求同盟鷹巣阿仁支部はこのほど、北秋田市で戦前、学生社会科学研究会の結成に携わった中川篤二郎氏（１９１１～４３年）をしのぶ会を開きました。１５人が参加しました。
　高堰定治支部会長のあいさつの後、近江谷昭二郎県本部会長が１９２０年代における秋田県の学生社会科学研究会の運動を紹介し、「中川さんは郷土の誇るべき社会進歩への不屈の先覚者だ」と語りました。
　九嶋征一事務局長が中川氏の歩みを紹介。農民運動の支援に取り組んだことや３７年の人民戦線事件で検挙されたことなどに触れました。遺族の中川はる子さん（８７）が「篤二郎さんは、無産党とののしられながらも懸命に活動を続けた」と語り、参加者に感銘を与えていました。
(２００９年０６月３０日，「赤旗」) （Page/Top）

映画「蟹工船」ＳＡＢＵ監督／原作のラスト「彼等は、立ち上った。もう一度！」／新しさ感じた

　時代を超えて脚光を浴びる小林多喜二の小説「蟹工船（かにこうせん）」が、装いも新たに映画化されました。出演は、人気俳優の松田龍平さん、西島秀俊さんら。メガホンをとったＳＡＢＵ監督は、これまで国際的な映画祭での受賞経験もある人です。いったい、どんな映像が展開されるのか―。
　寺田忠生記者
　「とにかくなんか熱くなる、やる気になる映画にしたかったんです｡子どものころ､ブルースリーの映画を見て、そこらじゅうにけりをいれていたんですけど、あんな感覚かなぁ（笑い）」
　ユーモアたっぷりに語るＳＡＢＵさん。
　監督が小林多喜二の原作を読んだのは、映画化の依頼があってからでした。監督の目がとくにくぎ付けになったのは、最後の一言でした。
　「『彼等は､立ち上った｡―もう一度！』。あの部分を読んで､『きたっ!』と思いましたね｡気持ちいいし、かっこいいじゃないですか。未来に向けたメッセージとしての新しさを感じたし､いける､と思ったんです｣

現代と重ね
　映画は、薄暗い船内のシーンから始まります。カムチャツカ沖で蟹をとり、缶詰に加工する蟹工船・博光丸の船内です。
　ギギギと不気味な音を立てて回る歯車。黒いマントのような作業着を着て黙々と作業する出稼ぎ労働者たち。一人がつぶやきます。「このままだと､いつか殺されちまうぞ｣
　そこに登場するのが、労働者を酷使する冷酷非道な浅川監督(西島秀俊)です。「日本帝国の大きな使命のために、死ぬ覚悟で働け！」
　原作の骨格を大事にしながら、言葉づかいは現代風。衣装、セットなどをみるとむしろ近未来のようにさえ見えます。多喜二が「糞壺（くそつぼ）」と書いた労働者の寝床は、ドラム缶を２、３段重ねた巨大なハチの巣のよう。
　「映像的に、まず新しく面白い方がいいかなと思いました。若者も含めて、まず見てもらわなきゃいけないんで。あえて時代を特定させないセットにしたんです」
　労働者の一人、新庄（松田龍平）は､嵐の日､漁に出てロシア船に救助されたことをきっかけにストライキを扇動。がっしりと手を組む団結のしるしを染め抜いた旗､鉢巻で鼓舞し､一斉蜂起を呼びかけます。
　「あきらめるにはまだ早すぎる。おれたち次第で未来が変わるんだ！　弱気になるな。前進だ！」。労働者の決起に、一時は動揺する浅川ですが…。
　銃で撃たれた労働者の流す血で団結の白い旗が、赤く染まるシーン。「本当は、旗全体が真っ赤に染まる赤旗にして、印象深くしたかったんです」と語るＳＡＢＵさん。
　記者会見では､｢小林多喜二さんには、(生きていたら)自信を持って、『これが蟹工船だ』と言います｣と胸を張った監督｡少し照れながら､こう語りました｡
　「いま、派遣切りとか就職内定取り消しとか、本人はなにも間違ったことをしていないのに、ひどいことが起こるじゃないですか。そんな若者にも、自分で考えて立ち上がる、そこに希望があると、背中をそっと押してあげたい。この映画をきっかけに、全国みんなが同じ方向でまとまったり、団結できたらすごいですよね」

弱者の味方
　ＳＡＢＵさんは、１９９６年に｢弾丸ランナー｣で監督デビュー。躍動感あふれる描写と大胆なストーリー展開で注目を集め、「ＭＯＮＤＡＹ」（９９年）でベルリン国際映画祭・国際批評家連盟賞を受賞。ある小心者の一日をとおして、強いものに巻かれる現象を皮肉りました。
　８本のオリジナル脚本作品を映画化した後、０５年の｢疾走｣で重松清の同名小説の映画化に挑みました｡地域差別､犯罪加害者の家族崩壊という重いテーマに正面から取り組んだ作品です。
　「主人公を特殊な人間にするものより、普通の人間がなにかに巻き込まれて、大きなテーマを投げかけてくるというのが好きなんです。『蟹工船』も、マイナスからプラスに転化するところが面白い｡やっぱり映画って､エンターテインメントも大事だけど、弱者の味方でなければいけないと思うんですよ」
　今回の作品にも、原作を現代風に解釈したメッセージがちりばめられています。
　「どの言葉でもいいので、なにかにひっかかって『やってやろう』と思ってもらえればいいですね。ただ、説教くさい映画ではないんで、あまり気合は入れずに（笑い）、肩の力を抜いて見てください」
　※出演者は､ほかに高良健吾､新井浩文､柄本時生､木本武宏(ＴＫＯ)､木下隆行(ＴＫＯ)など。７月４日から東京･シネマライズ､テアトル新宿ほか全国で公開。
２００９｢蟹工船｣製作委員会
　さぶ＝１９６４年、和歌山県生まれ。８６年、俳優デビューの後、９６年に監督デビュー。「ＭＯＮＤＡＹ」（９９年）でベルリン国際映画祭・国際批評家連盟賞、「ＤＲＩＶＥ　ドライブ」（０１年）でカナダ･ファンタジア映画祭・審査員部門最優秀アジア映画作品賞、「幸福の鐘」（０２年）でベルリン国際映画祭・最優秀アジア映画賞を受賞
(２００９年０６月２８日，「赤旗」) （Page/Top）

プロレタリア詩人今野大力追悼／旭川で碑前祭／おぎう候補あいさつ

　旭川市出身のプロレタリア詩人、今野大力の没後７４周年｢大力祭｣が命日の１９日、同市にある詩碑前で開かれ、４２人が参加しました。
　献花、黙とうに続いて「夢と幻を見る家」を朗読、各界を代表し市教育委員会の長谷川明彦社会教育部長、治安維持法国家賠償要求同盟道北支部の今村登事務局長、日本共産党のおぎう和敏衆院比例候補（道６区重複）があいさつしました。
　おぎう氏は、日本共産党が新しい国会でとりくむ「三つの仕事」を紹介、「困難ななかで不屈にたたかった大力に学び、総選挙で勝利し、碑前に報告したい」と表明しました。
　大力祭運営委員長の能登谷繁党市議は、先月オープンした旭川文学資料館に今野大力コーナーが設置されたと報告。「日本も世界も進むべき道が問われる時代に、大力たちが命をかけてたたかった暮らしや平和を守るたたかいを大いに広げたい。総選挙では、大力たちの志を引き継ぎ、日本共産党の勝利のために全力を尽くしましょう」と訴えました。
(２００９年０６月２７日，「赤旗」) （Page/Top）

治維法国賠同盟県本部が大会／岐阜

　治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟岐阜県本部は１８日、関市内で第２２回大会を開きました。
　大会では、情勢や国会要請などが話され、中濃、東濃西支部の署名目標を達成した教訓など各支部の活動が交流されました。「再び暗黒政治を許さない」をすべての基本に据え、署名目標の達成、会員拡大などの方針を確認しました。
　新たに片桐義之氏が会長に就任。顧問となった神戸照氏は､｢わたしたちがめざす社会を生きていくのは青年。青年に積極的なはたらきかけをしていく｡『蟹工船』が演劇や映画になり、テレビのクイズに出されるなど、労働者を激励する本に関心がよせられている。情勢をリアルにみて、どう運動を前進させるかを考えていこう」とあいさつしました。
(２００９年０６月２６日，「赤旗」) （Page/Top）

ひと／「蟹工船」を演歌でうたう高橋一仁さん（８０）

　「同志」、「赤旗」、「革命」。背筋がピンと伸びそうな言葉が、歌詞カードに並びます。「率直な言葉で多喜二先生の思いを伝えたいと、こうなりました」
　過酷な労働を強いられる小説『蟹工船』の世界を、哀愁漂う演歌のメロディーに乗せて歌います。作詞・作曲・歌すべてを一人で担当し、今年５月、ＣＤ「蟹工船」をリリース。最後の歌詞には「小説の続きを創作したかった」という思いが込められています。
　♪ほどけ腹巻　「赤旗」を　掲げて斗え　仲間たち　砦を守るぞ　ああ蟹工船
　「北の海に沈んだ船や亡くなった人たちの無念を晴らすたたかいに『赤旗』は欠かせないと思いまして」
　２９歳で特高警察に虐殺された小林多喜二。同年齢のころの高橋さんは知人の勧めで童謡の作詞を始めます。３０代は童謡と合唱曲、４０代は歌謡曲に力を注ぎ、５００曲を作詞。
　「親しみやすくて、だれでも口ずさめる。歌謡曲の良さはそこにあります」
　貧富の差を生む社会に疑問をもったのは、小学校時代の弁当の思い出。自分は卵焼きのおかず、友人は「日の丸弁当」でアルミの弁当箱のフタには梅干しで大きな穴が。ひもじさでゆがむ友人関係｡以来､社会の矛盾を見つめてきました。
　３年前、脳こうそくを患いますが、「持ち前のフレーズ感覚」に助けられて復活。手元にある未発表曲の〝解放〟を狙います。
　文　　中村尚代

( ２００９年０６月２５日，「赤旗」) （Page/Top）

鶴彬の川柳碑見学と講演会／岩手

　岩手県釜石市の治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟釜石支部（佐藤恵蔵支部長）は２０日、遠野市上郷町に建立されている反戦川柳碑の見学と講演会を開きました。会員など１７人が参加しました。
　国賠同盟県本部の牛山靖夫事務局長が「反戦川柳に命をかけた鶴彬（つる・あきら）」と題して講演。資料を用いながら、鶴彬（本名・喜多一二）の生誕１００年に反戦川柳作家として、なぜ現代社会の注目をあびているのかを語りました。
　また、盛岡市の松園観音墓地や遠野市の反戦川柳碑など「鶴彬と岩手と縁が深い関係がある」とのべました。
　遠野市の反戦川柳碑は、１９８３年８月に沢田市治氏らが建立、鶴彬の「手と足をもいだ丸太にしてかえし」の句が入っています。
　講演会には、反戦川柳碑を建立した関係者の縁者も参加。参加者は会場で昼食、交流を深めました。
(２００９年０６月２５日，「赤旗」) （Page/Top）

今月の短歌／ゴミの感傷／碓田のぼる


不燃、可燃のゴミら生活を濃くまとい
収集車待つ梅雨くる街に

今朝の食卓よりじかに来し如き茶碗にて
欠けず捨てられている危険物の位置

人間に深くかかわりゴミとなれば
やや感傷をひき収集車去る

道に沿うご近所のゴミ置場なりしたたかに
暮らしのにおい持つ春夏秋冬

使い捨てはゴミならず人間の首切りに
彼ら収集車ほどの感傷もなく
　うすだ・のぼる＝１９２８年長野県生まれ。新日本歌人協会元代表幹事。歌集『花どき』で第１０回多喜二・百合子賞。歌集『星の陣』『花昏からず』、評論『石川啄木―その社会主義への道』ほか。
( ２００９年０６月２２日，「赤旗」) （Page/Top）

詩と歌の家―大島博光記念館１周年／小林園子／そこに変えるべき生があり、変革すべき世界がある限り

　友よ　友よ　私が死んだら／灰になった　私のひとつまみを／わがふるさとの　赤坂橋の上から／千曲川の流れに　まき散らしてくれ
　大島博光がうたった、その千曲川の岸辺近く、長野市松代町に大島博光記念館が開館して１年になろうとしています。
　詩人、フランス文学者であった博光は、３年前９５歳で亡くなりました。アラゴンの「フランスの起床ラッパ」をはじめエリュアール、ネルーダなど、世界の愛と平和、抵抗の詩人たちの訳詩多数。『大島博光詩集・ひとを愛するものは』で多喜二・百合子賞を受賞した博光は、「愛が存在するにふさわしい」社会の実現のために、詩人としての闘いを生涯貫きました。
　博光は今、「詩人にならないではいられないほど美しい松代」と愛した故郷で、記念館を訪れる人々の中で生き続けているのです。
　記念館は、博光の業績を伝えるために、いわば墓のようなものとして建てられたのではありません。その「愛と平和、社会進歩の実現」を願った精神を受け止め、今生きている人々が元気になれる記念館を目指して建てられました。
　見学者は予想をはるかに超えて２０００人を数えています。遠くは九州から「私の青春と闘いはいつもアラゴン・博光さんの詩とともにありました」と来られた方。博光の「春が来たら」やエリュアールの「自由」、アラゴンの「薔薇と木犀草」を子どもたちと歌っている音楽教育の会の皆さんは、作曲者の丸山亜季先生のピアノ伴奏で記念館に歌声を響かせてくれました(博光が弾いていたピアノで)｡
　先日は、地元松代の婦人会の皆さんが見学にみえました。初めての方には説明をしています。展示している詩の中から幾つかを朗読し、博光夫妻の生涯を話します。深いため息とともに涙ぐんだ人は「お父さんに不満ばかり言っていた自分がはずかしい」、「実家の両隣の人が戦死をした。戦争は嫌だといえなかった時代は繰り返したくないね」と話が続きました。
　「久しぶりに、忘れていたいい時間を過ごしました。また来ます。ありがとう」と、明るい顔で玄関を出て行かれる人を見送るとき、記念館をつくってよかった！　と思います。
　詩と歌のつどい、コンサート、朗読の夕べ、歌声喫茶などの企画のほかに、記念館は、長野詩人会議、日韓市民文化交流実行委員会の事務局であったり、夜は二つの合唱団のレッスン場であったり、俳句の会の例会やハングル講座が開かれたりと、見学者としてカウントされない大勢の利用者がいます。
　今、７月１８日（土）に開催する開館１周年記念・島本弘子シャンソンの夕べを準備しています。レジスタンスの中で書かれたアラゴンの詩が、フランスでは今もシャンソンとして歌い継がれているのです。詩にうたわれた赤坂橋から博光の灰をわずか千曲川へ流した後、シャンソンを聴く予定です。
　詩と歌の家・大島博光記念館もまた、博光とともに、「そこに変えるべき生があり、変革すべき世界がある限り」、人々の中に生き続けます。
　（こばやし・そのこ　同館事務局長）
　◇
　大島博光記念館　長野市松代町清野２５６７―１（松代駅からタクシー５分）℡０２６（２７８）１００４　月曜休館
( ２００９年０６月２２日，「赤旗」) （Page/Top）

月曜インタビュー／俳優日色ともゑさん／被爆の子描く「夏の雲は忘れない」／声の出る限り、朗読を続けたい

　広島、長崎で被爆した子どもたちや母親らの言葉や手記で構成した朗読「夏の雲は忘れない」を､今年も７､８月に全国各地で上演する女優たちのグループ｢夏の会｣｡その一人､日色ともゑさんは、｢声がでる限り続けたい｣と、この公演への特別な思いを語ります。
　原爆による被害は二度とあってはならない、と訴えているのが朗読「夏の雲は忘れない」。その上演を前にしているだけに、「核兵器のない世界」をめぐる、アメリカのオバマ大統領と志位和夫日本共産党委員長の書簡のやりとりについて、「画期的ですね」と日色さんは笑顔いっぱいに語ります。
　新聞の特集記事を読んで「いいな、いいな、と思いましたよ。マルクスがリンカーン大統領に再選を祝う手紙を出し、リンカーンが返事を送った話をその記事で知って、何か運命の糸で結ばれているような感じを持ったんです｣といいます｡
　「さまざまに核兵器をなくそうという運動がおこなわれて、大統領の演説へとつながっていると思うし、私たちの『夏の雲は忘れない』も、そうした大きな木の枝の端っこにピュッとひっかかっているのかもしれないな､とも思えるんです｣

子どもの言葉と母親らの手記で
　一昨年まで２３年続いた朗読劇「この子たちの夏」が地人会の解散で終了。新しく台本をつくり、昨年夏から始めたのが「夏の雲は忘れない」です。原爆の悲惨な体験を、子どもらの言葉や母親らの手記で伝え、淡々とつむぐ舞台は、各地で歓迎され､成功しました｡
　「今年は昨年より多い２７カ所で上演します。見た後、親子で手をつないで帰りながら話し合った、戦争には私たちは絶対反対するんだと思った、という声が寄せられました」
　「ことしの特徴は、初めて、男の子が出演すること。昨年、各地でオーディションしたときに『なぜ男の子は出演できないのか』という声があり、出演してもいいのではないか、となったんです。高校生までなら、と」
　すでに来年の公演依頼がきているといいます。
　「宇野重吉先生（１９１４～８８、俳優・演出家、劇団民芸の創立者の一人）が亡くなる前におっしゃったのは『体が動く限り声が出る限り、舞台へ出るのが役者の仕事だ』ということでした。私も声が出る限り朗読を続けたいと思っています」
　今、各地で上映中のドキュメンタリードラマ映画「鶴彬　こころの軌跡」では、ナレーションを担当。暗黒の時代に、川柳の革新と芸術的向上を志し、平和をめざして治安維持法でつかまり拘束されたまま死亡した鶴彬を描いた作品です。「自分の信念を曲げないで生き抜いた人です」

胸に刻みこんだ映画「原爆の子」
　俳優・日色さんの原点は映画「原爆の子」（新藤兼人監督）だといいます。
　「小学５年のときに見ました。乙羽信子さん、民芸の滝沢修さん、宇野さんらが出演していました。この映画を見て、私の家が東京大空襲で焼け祖母、８カ月の身重だった叔母が亡くなったけれど、あの戦争で広島、長崎に原爆が落とされたことが私の胸に刻みこまれました。物事に敏感になるころですから、衝撃を受けたんですね」
　劇団民芸に入団、宇野重吉さんから大きな影響を受けます。大事な思い出の一つに、宇野さんのエピソードがあります。
　「宇野先生が若い時、東京へ出てきたものの挫折し田舎へ帰ろうと思ったそうです。最後だと映画館に入って見たのが、『スミス都へ行く』というジェームズ・スチュアート主演の映画だったんです。一人の青年が誠実に生きていくという映画で、『その映画で生き返った。入るときにうなだれていた自分が、見終わった後、胸を張って出てきたんだぞ。なんてすごいことを教えてくれたんだ、と思った｡演劇や映画は､これほど影響力を持っている。だから、いいかげんな仕事をしてはいけない。真剣に取り組まなくてはいけない』とおっしゃっていました」
　宇野重吉の秘蔵っ子といわれるだけに、インタビューの途中、何度も何度も師匠の言葉、思い出を語りました。
　（大井民生）
　◇
　「夏の雲は忘れない」＝出演は大原ますみ、高田敏江、寺田路恵、中村たつ、山口果林、山田昌、渡辺美佐子ほか（各公演に「夏の会」女優６人と地元有志が出演）。７月１日、２日＝東京・跡見学園小講堂をはじめ、８月１１日まで、東京、広島、岡山、石川、岐阜など各地巡演。℡０９０（８００４）１９８５「夏の会」事務局
　ひいろ・ともえ＝１９４１年、東京生まれ。６１年、劇団民芸入団。６７年、ＮＨＫ朝の連続テレビ小説「旅路」のヒロインに。映画は「郡上一揆」など、舞台は「アンネの日記」「明石原人」など、出演多数。９月１日から劇団民芸稽古場公演「鬼灯町鬼灯通り三丁目」に出演。
( ２００９年０６月２２日，「赤旗」) （Page/Top）

歴史的総選挙／人生かけて／小樽の長橋支部の人たち／暗黒政治再現許さない

　小高い丘に向かって坂が続く小樽市西部の長橋地域。伊藤利勝さん（６２）は、息を弾ませて、ビラ配りに、「しんぶん赤旗」の配達・集金に、ポスター張りにと活動しています。
　「自分も仕事がないけど、いま、小林多喜二が『蟹工船』で告発した暗い時代のように将来のある若者がこき使われたあげく、職も住まいも失って路頭に放りだされています。こんなひどい社会は絶対に許されない」
　１０年前に木材工場を解雇された後、本州へ出稼ぎに。市役所の嘱託で働いていましたが、６０歳で失職、「それっきり仕事がありません。だから毎日活動できる」と笑います。
　小樽で生まれ育った伊藤さんが「戦前の暗黒政治への逆戻りは許さない」とこだわるのは、理由があります。
　日本共産党員の多喜二が特高警察の残虐な拷問で殺されたのが１９３３年の２月２０日でした。伊藤さんは１４年後のこの日に産声を上げたのでした。
　「伊藤さんは多喜二の〝生まれ変わり〟みたいね」。このことを知った長橋支部の人たちが声をあげました。
　総選挙を前に、マスメディアは、消費税増税や憲法改悪をすすめる悪政の競い合いには触れず、〝自民か、民主か〟と国民に「二大政党」を選択させようとするキャンペーンをくり広げています。

切実な声
　「問題なのは、自民が衆院の定数を削るといえば、民主は『比例定数を８０削減する』と主張していることです。日本共産党を国会から締め出し、国民の声を届かないようにするもの以外にありません」と伊藤さん。
　「そうよ。地域では〝自民か、民主か〟といっている場合じゃないぐらい命と暮らしが壊される事態がすすんでいるんだから」と告発する女性（５５）。「何カ月も仕事がないという訴えは、あちこちにあります。日本共産党のポスターに『人はモノじゃない』と書いてあった言葉がぴったりの事件が身近で起こり、『年越し派遣村』を見て、『人ごとではない』と実感する人が増えました」
　長橋支部は、切実な声をくみあげ、「弱い人を切り捨てる政治を日本共産党と一緒に変えましょう」と党支持を広げてきました。

２票ある
　当初の目標だった９８２人の支持拡大を突破。第８回中央委員会総会を受けて、５０００人と対話し、３０００人に支持を広げようと話し合いました。
　介護ヘルパーをしている鎗水（やりみず）邦子さん（６９）は、介護や後期高齢者医療制度でどんどん対話できるといいます。
　「自民・民主の悪政競い合いでは変わりません」と民主党支持者を電話で２０分にわたって説得することもありました。いまは、「総選挙は２票あります。比例代表では日本共産党に」という訴えがぴったりくると語ります。
　支部長の早苗睦子さん（６９）は、戦後一家４人で家も財産も失い、樺太から引き揚げてきました。親類の世話になり、６畳１間に４人が暮らしました。
　小樽のデパートで働いていた時、メーデーに誘われました。
　「先輩からいまの政治では生活が苦しいから楽しくするため一緒に頑張ろうといわれて。それなら」と日本共産党に入党します。
　「多喜二の時代は、党活動は文字通り命がけでした。いまは、２１世紀の進路をさし示す『赤旗』を毎日配って、増やせます。国民が、自由にものがいえなかったあの暗い時代の再現を許さないためにも、総選挙をみんなで勝ちぬきます」
　（小池光栄）
(２００９年０６月２１日，「赤旗」) （Page/Top）

久米明さん役者道を語る／「お買い物」で演技賞獲得／芝居は誰のためにある姿勢は今も変わらない

　２００８年度に放送されたテレビドラマのなかで、一風変わった作品が話題になっています。ＮＨＫ制作の特集ドラマ「お買い物」。田舎で暮らす老夫婦の日常を描いたシンプルな物語が、第４６回ギャラクシー賞（テレビ部門）と第３５回放送文化基金賞（番組部門）の優秀賞に輝きました。主役の「おじいさん」を演じて同基金賞演技賞を獲得した久米明さんは、８５歳。久米さんに作品への思いと、「役者哲学」を聞きました。
　（佐藤研二）
　「この年で個人賞をもらえるとは、夢にも思いませんでした。僕は、ただ（共演の）渡辺美佐子さんの手のひらで踊っていただけなんですが…」
　終始、おだやかな笑顔。まるでドラマのおじいさんがそこに座っているようです。
　そのおじいさんといえば、おばあさん（渡辺さん）がいないと身の回りのことは何もできません。でも、東京に大好きなカメラを買いに出かけるため、一念発起。トレーニングを積み、おばあさんと東京へと向かいます。

生きてる証し
　目を見張るのは、演技とは思えない自然さ。「周りは『地でやってるね』と言いますが、自分は逆に、何事もきちんとしないと気が済まない性格で。テレビの前でドテッと寝て、無為な老後を過ごす男を表現するのは難しかったですね」と意外な答え。ディレクターからの要求も「ごく､普通に｣でした。
　「僕は、役柄について『こういう人生設計をしました』と筋道をつけなきゃ安心して演技できないくどい役者です。シェークスピアは『芝居はさりげなく、セリフは自然の調子で』と、『ハムレット』のなかで見事な演技論を展開してますが、なかなかそうならない。どこか緊張やこわばりが入ってしまう」
　しかし、お目当てのカメラを手にした時の何ともいえない笑顔、思い出の東京駅前でおばあさんと静かに手を握り合うラストシーンは、じんと見る者の胸を打ちます。「あれは、全く意図もなしに自然に出たもの」。目を細めて振り返ります。
　「あの年でカメラを東京まで見に行こうという意欲が働いたのは、生きている証しを求めたかったから。そういう老境を、役を通じて僕も垣間見たのかもしれません。実際、そういう生活に足を踏み入れているんでしょうな」

学徒出陣から
　役者の道を志したのは、戦後間もなくのことでした。学徒出陣で一度は死を覚悟した青春時代。生き延びた自分は何をすればいいのかと悩む中、友人に誘われて見た新劇に心を奪われます。「世の中にこんな面白いものがあったのか」。復学した大学で演劇研究会を立ち上げ、１９４７年に劇団「ぶどうの会」を結成します。
　「当時は役者の養成機関もありませんでしたが、劇団の山本安英先生、木下順二先生、演出の岡倉士朗先生に、こつこつと本物の芝居を教わりました。戦時中、治安維持法で弾圧されてきた３人の先生方がいつも話題にしていたのが、『芝居はだれのためにあるのか』ということ。演劇の一番の基本を僕はたたき込まれ、その姿勢はいまも変わりありません」
　以後、舞台を中心に、テレビや映画、ナレーターとして幅広く活躍。「健康に自信が持てなくなった」と、９６年から舞台から遠ざかる一方で、意欲的に取り組んでいるのが「声」の仕事。一般の人を対象にした朗読講座を開き、「表現する楽しさ」を伝えています。
　「いま、朗読が人気ですが、人に心地よく聞かせようと思ったらそれなりの準備、基礎が必要です。みんながのびのびと朗読を楽しんで、本物のブームが来たらプロの一人としてうれしいですね」
　「まだまだ、やる気だけはありますよ」と豪快に笑う久米さん。先人から受け継いだ役者魂は、健在です。

｢お買い物｣ストーリー
　福島で暮らすおじいさん（久米明）とおばあさん（渡辺美佐子）の元に、東京で開かれる中古カメラ市を知らせる手紙が届きます。カメラが趣味だったおじいさんは、反対するおばあさんと共に上京。東京で暮らす孫（市川実日子）を巻き込んだ珍道中のなか、老夫婦は２０年前のある光景を思い出します。脚本・前田司郎、演出・中島由貴。
　くめ・あきら　１９２４年東京生まれ。東京商科大学（現・一橋大学）卒。おもな作品は、舞台｢セールスマンの死｣｢テムペスト｣､ＮＨＫ｢大河ドラマ｣はじめテレビドラマ､映画に多数出演｡現在ＮＨＫ｢鶴瓶の家族に乾杯｣でナレーターとして活躍中｡
( ２００９年０６月２１日，「赤旗」) （Page/Top）

農民運動主題／米子で講演会／治維法国賠同盟

　治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟鳥取県西部支部は１３日、米子市南部の箕蚊屋地方で大正から昭和初期に起こった農民運動、小作争議をテーマに講演会を開き、５０人が参加しました。
　近世、近代農業と農民運動の郷土史研究家の中井龍一氏が講演しました。
　大正時代、箕蚊屋地方には５００㌶の水田があり、記録によると約６０人の地主が所有していました。中井氏は「大きな地主は２５０人以上の小作を雇っていて、当時の小作は小作料としてできた米の６割を地主に納めていた。１０㌃当たり４俵程度の生産で、小作は少量のコメにイモやダイコンの食事が主だった」として、小作料の引き下げをめぐって争議が起きたとのべました。
　さらに、大山初太郎が１９２３年に日本農民組合山陰連合会をつくり、２４年から小作料永久３割減を掲げて小作料を納めないたたかいを始め、３０年代には地主の協力をとりつけ、小作の自作農への転換をはかったことなど紹介しました。
(２００９年０６月１７日，「赤旗」) （Page/Top）

現代人形劇の８０年に寄せて／曽根喜一／上／「糸操り」ではじまった

　東京・新宿の人形劇団プーク（１９２９年設立）が、劇団創設８０周年を記念して、紀伊国屋ホール、プーク人形劇場などで多彩な記念年間公演を展開しています｡この機会に､今日の現代人形劇の創造的・運動的発展を考えると､私としては､戦前と戦後の一時期までの激しい時代が続いた、そのことの歴史的経過に思いをはせてしまうのです。先人たちの痛苦を思い、その経験から大いに学び教訓とせねばならないと考えます。
　日本における新興人形劇（伝統人形芝居ではない）運動の始まりは、１８９４（明治２７）年イギリスのダーク一座が来日し各地で上演しました。特に浅草花屋敷での常設館公演が話題になり、当時の新聞などでも取り上げられました。１９００年代に入り、国内では伊藤熹朔や千田是也の通称「築地人形座」、九代目結城孫三郎や小糸源太郎らの「お人形座」、永瀬義郎・山本鼎らの「テアトロ・マリオネット」。関西では「フタバ座」「人形小劇場」などが出現し公演活動を行いました。プークの前身である「ダナ人形座」も１９２６年に、開成中学同級生である川尻東次、小寺（中村）伸郎、鳥山榛名、青柳忠正、土方正巳など６名によって活動を始めました。
　日本で最初の現代人形劇―新興人形劇の運動はこうして華やかにスタートを切りましたが、これらの人形劇はすべてマリオネット（糸操り）であったのが特徴です。先程の来日したダークの影響や、伊藤熹朔や永瀬義郎などが訪欧し、向こうでマリオネットを観劇したり、人形劇の書物を買って人形構造を研究したことによると見られます。ダナ人形座に参加した６名は、その後大正から昭和にかけてメンバーを増やし青年総合文化サークル「ラ・クルーボ」（エスペラント語でクラブの意）を立ち上げました。ドイツのワンダーフォーゲル運動の延長でありました。そして１９２９（昭和４）年に人形クラブ（ＬＡ　ＰＵＰＡ　ＫＬＵＢＯ＝略称プーク）を創設したのです。記録によると創立メンバーは川尻東次を含めて１８名（すべて故人）でありました。以上の新興人形劇として始まった劇団は、人形クラブ（プーク）を除いてすべて２～３回の公演を終えて消滅しました。
　一方新劇では１９２４年に、土方与志の築地小劇場が設立されました。しかし新劇が現代人形劇との比較の上で幸いな事は、発表・表現の場として「築地小劇場」があったこと。それに給料の不足分を土方が負担したことが劇団が分裂するまで続いたことが新劇には幸いしたと思いました。まだ新劇も人形劇も職業化を目指していたとしても、社会的にはまだ未確立の状況でした。
　（そね・きいち　人形劇団プーク功労劇団員）（Page/Top）

現代人形劇の８０年に寄せて／曽根喜一／中／戦前、弾圧に抗しながら

　戦前プークは１９２９年第１回初演以来、３６年第９回公演（劇団名ユーナ・プーポ＝プーク）まで積み上げてきました。その間パンチ座、お人形座、ユーナ・プーポ（若い人形＝エスペラント語）と幾つかの劇団名を使っています。実体は同じメンバーでありながら、なぜ使い分けたのか、理由は当局の干渉と弾圧の目をくらませるためでした。
　当局の干渉は次第に厳しくなり、第６回公演の「黒色鞄」（作・演出高山貞章）の検閲台本は墨塗りでめためたでした。またアンデルセンの「はだかの王様」は不許可（天皇を風刺すという理由）だったものがスウェーデン大使館の推薦をもらったらすぐ許可になったという笑い話もあります。
　戦前の活動の困難は新劇と同様、治安維持法による活動への干渉と弾圧とのたたかいです。上演台本（表現）と劇団活動（結社）の自由がないときのことです。そして職業として社会的にまだ未確立だったために、財政的に成り立たせることの困難があったことです。
　現代人形劇には新劇のような篤志家はいませんでした。プーク創立者川尻東次が中野療養所で結核のために他界したのが１９３２年１１月のことでした。当時、弟の泰司（注）は友人の家に立ち寄って運悪く中野警察に検束されたので、東次の他界には会えませんでした。しかし、東次が元気な時に泰司に言い残した言葉は、「たとえひとりになっても私は歩みをやめない。新しい仲間は必ず集まってくる。プークがやろうとするのはそのような人形劇の仕事だ」、また中野療養所で見舞いに行った病床で「芸術としてよい仕事をするためにリアリズムを学ぶこと。伝統人形劇の遺産の批判的摂取の必要なこと。職業的専門劇団に育てること」を結核菌に冒されたかすれた声で語った事が、明確に川尻泰司の胸をうったのでありました。
　プークは前回述べたように、人形の形式は他の新興劇団同様マリオネット（糸操り）で出発しましたが、第２回公演以降徐々に手使い形式のものを採用しています。手使い形式の人形は、移動公演に便利だし、人形の出し入れもすぐ出来るのが重宝でありました。人形の形式もその作品や内容によって大胆に取り入れることを始めたのもプークでした。
　戦中のプークは、移動公演をやったり、人形ブローチなどを作って販売する人形工房を作って活動したり、川尻などは治安維持法違反で目白署に拘束され戦争終結を願っていたようです。
　戦前の活動の困難な時に、治安維持法とたたかい、結核や病気でたたかった劇団員で、戦後名誉劇団員の称号を贈られた団員は次の通りでありました。劇団員松沢元典は豊多摩刑務所で獄死。同岩崎晃病死。同梅原樹一病死。同久保憲三戦死。同榊原慎三検挙投獄されるも敗戦後保釈され数時間後に死亡。同川尻泰司治安維持法違反により目白署に拘束される。この間の戦争によって多くの犠牲者をプークは出したものです。
　（そね・きいち　人形劇団プーク功労劇団員）
　（つづく）
　（注）川尻泰司（１９１４～１９９４年）人形劇作・演出・美術家　中学３年よりプークを手伝い１９３１年劇団員となる。９４年まで人形劇団プーク代表者、日本ウニマ（国際人形劇連盟日本センター）会長、日本人形劇人協会会長。

現代人形劇の８０年に寄せて／曽根喜一／下／戦後のめざましい発展

　戦前からプークの中心的活動家だった川尻泰司は、敗戦の報を目白署で聞きましたが、釈放されたのは９月２６日でした。川尻の中には今度こそ強固な劇団をつくらねばならない。そのための基礎である人形工房（人形ブローチなどを作る）を再建しなければならない、と考え目白の兄連夫の敷地内にバス小屋風の狭い工作場を作りました。そこに再建の話を聞いて多くの若者が、さらに戦前プークで活動した劇団員高山貞章や中江隆介なども集まってきました。
　そこへ大正製薬労組から人形劇上演の話が持ち込まれ、川尻は皆の熱意に押され上演することになりました。こうして２度の劇団再建試演会を経て、戦前から通算の第１０回公演を開催したのが４８年でありました。戦後になってなんの制約もなくなって自由な創造活動が出来るようになったのです（実は占領下ＧＨＱから幾つかの干渉はありましたが）。
　以後、川尻やプークの目覚ましい活動が始まりました。創造活動では第１０回（４８年）・１１回公演（４９年）で「オッペルと象」「ファウスト博士」を上演し、現代人形劇がおとな対象の演劇としても十分に鑑賞に堪えるどころか内容的に大きな感動を呼び起こし、新聞やマスメディアから大変な評価をされました。
　しかし不幸にして「５０年問題」（注）が起きて、プークは多くの退団者を出し、劇団活動が停滞混乱しました。この克服に１０年近くかかりました。私は日本共産党の分裂、解体が大衆団体に対して大きな損失を与えたかを身を持って経験したものの一人であります。
　５７年の第８回世界青年学生平和友好祭（モスクワ）に、プークから川尻を含む３名の代表を派遣しました。これがきっかけになって外国の人形劇人との交流の窓口が開けたのです。ウニマ（国際人形劇連盟）は４年ごとに大会とフェスティバルを開催しています。今でこそウニマの国際フェスティバルには、日本から全国の１００人を越える代表団が参加し、プロもアマも各国代表が楽しく交流が出来るようになりました。昔は海外交流もドル３６０円時代で、交通費と言葉の問題があって、川尻たちの困難は理解できます。戦前からの人形劇運動の豊かな経験をもっている川尻のフェスティバル運動の提唱や、日本ウニマの結成、プロの人形劇人協会の組織も川尻の呼びかけで始まり、現代人形劇は、１９６０年を越えてから運動は急速に発展しました。それは何といっても川尻の国内での活動と、海外での交流と経験から生まれ、その結果としてプークが「劇場」を建設したことによる社会的信用が大きいと思います。その根底には創造面で川尻が９４年に他界するまで数多くの作品を創り、物体、もの、人形で表現する領域での理論と実際の分野で、多くの信頼を獲得したからにほかなりません。私は現代人形劇が川尻の不屈の精神と探求心に学び、さらなる発展を願うものです。
　（そね・きいち　人形劇団プーク功労劇団員）
　（おわり）

（注）５０年問題
　１９５０年、徳田球一、野坂参三らがスターリンらの干渉を受けて日本共産党中央委員会の内部に分派を作り、同年６月６日のマッカーサーの弾圧を利用し、日本共産党を分裂、解体した事件。全国の党組織が分裂、混乱し、大衆団体、文化団体にも悪影響をもたらしました。
( ２００９年０６月１７日，「赤旗」) （Page/Top）

「蟹工船」足利で先行試写会／一歩でも前向きに／ＳＡＢＵ監督語る

　日本共産党員作家・小林多喜二が１９２９年に発表した小説「蟹工船」をモデルに脚本・監督した映画「蟹工船」（ＳＡＢＵ監督）の特別先行試写会が７日、全編ロケ地となった栃木県足利市で開かれました。会場の足利商工会議所ホールにはほぼ満席の約４００人が駆けつけました。
　「蟹工船」は昨年１１月から１２月下旬にかけ市内の工場跡地や美術館などでロケが行われ、市民ら２００人余がエキストラとして参加しました。
　蟹工船の経営者側に対し労働者が団結して立ち上がる緊迫した場面が連続する２時間。「いやしくも仕事が国家的である以上、戦争と同じなんだ。日本帝国の大きな使命のために働けっ」と西島秀俊さんが労働者を酷使する鬼監督役を演じ、労働者役の松田龍平さんが「あきらめるには早すぎる。絶望の向こうに成功が待っているんだ。…一人ひとりが自分の意思で立ち上がらなければならないっ」と団結を呼びかけます。ラストシーンは「もう一度だ」。試写会では目頭を押さえる姿も見られました。
　ＳＡＢＵ監督は「若者に分かりやすくするためビジュアル的に描いた。見た人が一歩でも前向きになれる『やる気の火』をつける映画にしたかった」と制作への思いを語りました。エキストラで缶詰プレス機を操作する役を演じた市内徳正寺の釆澤（うねざわ）良浩住職は「格差社会の解決に向け、一人ひとりに考えることを呼びかけた映画ですね。いつ見ても新鮮な思いを奮いたたせる映画です」と話しました。
　公開は７月４日、テアトル新宿ほか全国ロードショー。
(２００９年０６月１４日，「赤旗」) （Page/Top）

戦争する国阻止へ共同／治維法国賠同盟秋田県本部が総会

　治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟秋田県本部は７日、秋田市で第２０回定期総会を開き、４９人が出席しました。
　総会では、現在の情勢は国内外ともに大きな激動と転機の中にあることが強調され、総選挙での革新勢力勝利に全力を尽くすとともに、海外派兵や憲法改悪など「戦争する国」への道を阻止する国民的共同の発展に貢献することなどが訴えられました。
　１１人が発言し、治安維持法犠牲者への謝罪と国家賠償法の実現をめざす請願署名が２万３０００人余集まったことや「田母神問題と靖国派政治」などの学習会を１０カ所で開いて成功させた教訓などについて討論しました。
　総会は、来年５０周年を迎える日米安保条約廃棄の国民的世論を高めるなどの方針案を全会一致で採択しました。新役員には、近江谷昭二郎会長ら２７人を選出しました。
(２００９年０６月１４日，「赤旗」) （Page/Top）

治維法同盟が歴史学ぶ学習会／きょう福岡市

　治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟福岡支部は１３日午後１時３０分から、福岡市中央区の福岡市民福祉プラザで、「『４・１６』８０年を記念して　歴史に学び歴史を創る学習会」を開きます。
　日本共産党創立７年後の１９２９年４月１６日、党に対する大弾圧事件が起きてから今年で８０年がたちます。
　学習会は「戦前のたたかいから何を学びどう生かすか」をテーマに､大滝一さんが｢現代から治安維持法の時代を見る」と題して記念講演。参加費（資料代）３００円。問い合わせは、同福岡支部０９２（７１３）０１４４。
(２００９年０６月１３日，「赤旗」) （Page/Top）

受賞ドキュメンタリー民放との垣根越え放送／「認罪」、「光と影」など８作品／ＮＨＫ衛星②で１４、２１日に

　２００８年度の主だったテレビ賞に入賞した民放とＮＨＫのドキュメンタリーが１４、２１の両日、ＮＨＫ衛星②で放送されます。民放２６社が協力。受賞優秀作はダイジェストで、グランプリ８作品は全編まるごと放送します。受賞者の横顔も紹介しながら、ゲスト（森達也、井筒和幸、室井佑月､石井彰､吉岡忍ら）がドキュメンタリーの面白さを話し合います｡タイトルは「ザ・ベストテレビ｣､昨年に続き、２度目の企画です。３部構成です。
　第１部　１４日（後１・０～６・０）
▽日本民間放送連盟賞
　テレビ報道番組最優秀賞「光と影～光市母子殺害事件　弁護団の３００日」（東海テレビ）
　テレビ教養番組最優秀賞「映像’０８　家族の再生～ある児童養護施設の試み」（毎日放送）
▽｢地方の時代」映像祭
　グランプリ「映像’０７　夫はなぜ、死んだのか～過労死認定の厚い壁」（毎日放送）
▽ＡＴＰ賞テレビグランプリ
　「ＥＴＶ特集　アンジェイ・ワイダ　祖国ポーランドを撮り続けた男」（ＮＨＫ）
　第２部　２１日（前１０・３０～１１・５４）
▽日本放送文化大賞
　グランプリ「山で最期を迎えたい　ある夫婦の桃源郷」（山口放送）
　第３部　２１日（後１・０～６・０）
▽文化庁芸術祭賞
　大賞「ヒューマンドキュメンタリー　いのちの記憶～小林多喜二　二十九年の人生」（北海道放送）
▽放送文化基金賞
　本賞「ＮＨＫスペシャル解かれた封印～米軍カメラマンが見たＮＡＧＡＳＡＫＩ」
▽ギャラクシー賞
　大賞「〝認罪〟～中国撫順戦犯管理所の６年」（ＮＨＫ）
( ２００９年０６月１２日，「赤旗」) （Page/Top）

その声が聞こえる／まつやまふみお大回顧展に寄せて／石子順／時代を逆行させてはならない

　没後２７年、まつやまふみお（１９０２～１９８２）の大回顧展が故郷近くの上田市で開かれる。その内訳は、風刺画、童画、油彩画、水彩など多彩にわたっていて、夫人前島ともの作品も展示される。
　まつやまふみおは漫画、童画、タブロー画の大家だ。戦前は反戦、反体制漫画と地下活動で何回も検束、投獄される試練に耐えぬいた。童画の恩師・岡本帰一の死を知るや、官憲の目をかすめて駆けつけデスマスクを描いて風のように姿を消した。小林多喜二の悲報は獄中でも伝わってきた。１９３５年、２年８カ月ぶりに仮出獄したとき、出迎えたのが前島ともと柳瀬正夢だった。

ベトナム出撃米軍機を告発
　戦後すぐ、１９４５年１１月の「赤旗」復刊第１号から政治漫画を描きはじめて３０余年にわたって描き続けた。日本アンデパンダン展などにタブロー漫画を毎年描き発表してきた。またいわさきちひろたちも参加した日本童画会を結成し、グループ展を開いた。
　今回はその風刺画３０余点が集められてまたとない機会となっている。吉田茂、鳩山一郎、佐藤栄作、田中角栄など歴代の首相や、ダレス、ジョンソン、ニクソンといった相手たちを〝個性豊か〟に、とらえそのあくどさを「その心臓まで　つきさしてやる」批判力で描破して痛烈だ。対象を誇張・比喩して本質をあばくだけでなく、滑稽感も漂わせ笑いがこぼれてくるのであり、風刺画は〝笑いの芸術〟という本物の精神を見せてくれる。
　なかでも「わたしはひばりがききたい」がとくに強烈だ。爆撃機が群をなして飛び、その爆音の下で小さくうずくまっている女の子の耳をふさぐ姿が目にやきつく。愛らしい童画タッチで、日本の空からベトナムに出撃する米軍機を告発する怒りの一点だ。

漫画は怒りと笑い声あげよ
　まつやまふみおは、政治漫画を描くことを禁じられて、１９３９年から絵画研究所に通って人体画の勉強をはじめた。その成果が油彩画となって残された。今回展示される工場を描いた作品や、１９４０年代の習作、ヌードなどである。またブリューゲルに接するという思いで秋田に行って描いたのが「炭焼きの娘」などだ。そこにはさらに絵画の基本を学び取り、画家としての実力を高めようとする学習意欲が然えている。逆境を機会に次への飛躍を期した漫画家の向上心と息をひそめて力をためる楽天性、強じんさが作品を生み出していった。
　この回顧展は、鳥獣戯画に託して国内外の政治のひずみを描くだけでなく、童画に小さな生命をとらえつづけたまつやまふみおの自由奔放なペンや筆や色彩が勢いよくあふれている。風刺漫画はその瞬間に終わることなく、時代の証言として長く残る抵抗心をきざみつけている。戦争はイヤだという意志、笑うことを忘れないゆとり、抒情性ともいうべきやさしさ、人間らしさをうたいあげている。
　これらの作品からまつやまふみおの声が聞こえてくる。時代を逆行させてはならないという訴えだ。漫画は怒りの声と笑い声をあげよ。現代人よ、批判精神を持て。子どもの可愛らしさ強さを見つめてよりましな未来に生きよう。といったことばが聞こえる。
　（いしこ・じゅん　漫画評論家）
　　◇
　まつやまふみお大回顧展＝１３日～２２日。平林堂書店上田原店２階ギャラリー（長野・上田市上田原１０７６）
( ２００９年０６月１２日，「赤旗」) （Page/Top）

本立て／山宣／西口克己著

　戦前に山宣（やません）という愛称で庶民から慕われた生物学者で労農党代議士の山本宣治。１９２９年３月、治安維持法の改悪に帝国議会でただ一人反対し、右翼テロリストに暗殺されました。
　肺を患って中学校を退学させられた宣治の理想は、「花をつくって世の中を美しくする」ことでした。心の優しい少年が、天皇制政府と戦争推進勢力に命がけで立ち向かうまでになったのは？　その確信はどこからきているのか？
　初版刊行から５０年目の新装版。映画化（山本薩夫監督）もされたこの伝記小説は、読む者に明日への勇気を与えてくれます。
　（新日本出版社　税別２３００円）
(２００９年０６月０７日，「赤旗」) （Page/Top）

住職ら次々マイク／清潔な共産党前進を／金沢で後援会

　日本共産党石川県後援会は５月３１日午後、多くの若者たちが行き交う金沢市の竪町商店街入り口で宣伝行動を行いました。
　後援会代表世話人の鳥越順丸・等願寺住職は「企業・団体献金も政党助成金も受け取らないからこそ、国民の立場にたった政治ができる日本共産党が好き」と訴え。「消費税増税を許さない党の前進を」（業者後援会）、「若者が人間らしく働けるルールをつくろう」（労働者後援会）と、各分野別後援会の人たちが次々マイクを握りました。
　佐藤まさゆき衆院北陸信越比例候補（石川１区重複）は、６月末に上映される映画「蟹工船」を紹介しながら、「日本共産党員作家・小林多喜二のメッセージを多くの人に」と訴え、若者の願い実現へ、学費値下げ・奨学金充実に全力をあげると強調。核兵器廃絶の決意を表明したオバマ米大統領の演説など核兵器廃絶の機運が高まっているもとでの、北朝鮮による地下核実験を厳しく批判しました。
　「応援します」と手を振って激励する若者、「自民党はきらい」と演説に聞き入る高齢の女性、「解雇された会社の社長は民主系。小選挙区は佐藤さんに入れる」と話す若者など、大きな反響がありました。
(２００９年０６月０３日，「赤旗」) （Page/Top）

国会通信／……５月３１日

　塩川てつや衆院議員　在日本大韓民国民団関東地方協議会主催「永住外国人に地方参政権を！５・３１集会」で党代表あいさつ

……２９日　
　笠井亮衆院議員　日本被団協、原爆症認定集団訴訟全国原告団等主催の原爆症認定集団訴訟「にんげんをかえせ！座り込み」厚生労働省前集会で激励あいさつ

……２７日　
　こくた恵二衆院議員　埼玉大運動実行委員会主催の「定例国会行動」で国会情勢報告
　高橋ちづ子衆院議員　全国Ｂ型肝炎訴訟原告団主催の「Ｂ型肝炎訴訟最高裁判決勝利３周年集会」で激励あいさつ
　小池晃参院議員　神奈川大運動実行委員会主催の「定例国会行動」で国会情勢報告
　小池晃、山下芳生参院議員　全国学童保育連絡協議会の「全国学童保育連絡協議会と党国会議員団との懇談会」に出席し、懇談

……２６日　
　笠井亮、塩川てつや、高橋ちづ子衆院議員、小池晃、大門実紀史参院議員　日本被団協、原爆症認定集団訴訟全国原告団等主催「原爆症認定集団訴訟全面解決」国会請願デモ激励
　塩川てつや衆院議員　公務労組連絡会主催の「国家公務員の給与法案反対」の行動で国会情勢報告

……２５日　
　紙智子参院議員　国労闘争団などのＪＲ１０４７名採用差別問題の早期解決を求める国会前座り込み集会で激励あいさつ

……２１日　
　塩川てつや衆院議員　首都圏建設アスベスト訴訟提訴１周年集会で激励あいさつ

……１９日　
　仁比聡平参院議員　奄美の未来を考える共同の会の代表から「名瀬測候所の気象台格上げなどを求める」要請を受け、懇談　治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟の九州の代表からの「治安維持法犠牲者に国家賠償法の制定を求める」要請を受け、懇談　新日本婦人の会の広島・長崎の代表と「核兵器廃絶をめざす問題」で懇談
( ２００９年０６月０４日，「赤旗」) （Page/Top）

*         【5月】（ヘッドライン）

*         加賀金由さんしのぶ会開く／秋田・にかほ

*         いっぽいっぽの行進日記／１５／多喜二文学館作りたい

*         月曜インタビュー／作家吉開那津子さん／１０年をかけた『夢と修羅』出版／時代に働きかける反戦の思い

*         えべつ革新懇１周年の総会

*         岩見沢９条の会総会／多喜二の時代で荻野氏が講演

*         葉山嘉樹への旅／原健一著／評者江崎淳文芸評論家

*         演劇／「蟹工船」（俳優座）／リアル、圧倒的な迫力

*         総選挙・千歳市議選応援します／帯広畜産大学名誉教授道昆虫自然史研究所長西島浩さん（８９）

*         自民議員質問に「蟹工船」

*         「共産党の出番」／民主文学党後援会が講演会／盛岡市で開く

*         相沢良碑前で献花と黙とう／青森・語り継ぐ会

*         国に謝罪・賠償要求／治安維持法犠牲者が国会請願

*         裁判員制度２１日から施行／自由法曹団事務局長加藤健次さんに聞く／上／刑事裁判のゆがみどう正す

*         久保楠蔵の生涯／党支部が冊子／三重・南伊勢町

*         番組をみて／ＮＨＫスペシャルシリーズＪＡＰＡＮデビュー第２回天皇と憲法／ＮＨＫテレビ３日放送

*         解放運動戦士各地で追悼／大阪で４５０人参列／京都で２８０人参列

*         文化／松田解子さんなら労働者が解雇される今何を書いただろう／『自選集』完結によせて／澤田章子

*         模索に応える創作を／民主主義文学会大会始まる

*         多喜二を特集／私鉄連帯する会『交流誌』２４号

*         治維法犠牲者国家賠償求める国会請願へ全力／道本部

*         舞台「蟹工船」出演者対談／脇田康弘さん／頼三四郎さん

*         芸能テレビ／俳優座「蟹工船」に挑む

*         本立て／小林多喜二と宮本百合子／三浦光則著

*         横浜事件の遺族／刑事補償を請求

【5月】（本文）（Page/Top）

加賀金由さんしのぶ会開く／秋田・にかほ

　秋田県の治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟本荘由利支部は二十六日、にかほ市で元日本共産党仁賀保町議の加賀金由さん（一九三四―一九九九年）のしのぶ会を開きました。十九人が参加しました。
　三十五年間、九期議員を務め、毎議会での質問と週一回の議会報告を続け、千四百号を超えて発行し続けたことが紹介され、故人の思い出を語りました。
　日本共産党の村上次郎市議が議会報告をしながら、加賀さんの遺志を引き継ぎ、週一回の議会報告の発行を続けていると述べ、参加者に感銘を与えました。
(２００９年０５月３０日，「赤旗」) （Page/Top）

いっぽいっぽの行進日記／１５／多喜二文学館作りたい

　二十日（水）快晴　波がなく、底が見える日本海を眺めながら小樽市に入りました。
　日本共産党の菊地葉子市議と道原水協の岩渕尚事務局長らと市役所を訪問。トイレの入り口は木のドアで廊下の幅が広く、「これまでの庁舎と違う」。「北海道　小樽市」とペナントに記入した秘書課の笹原馨さん、お世話になりました。
　夕方から花園グリーンロードで集会。私の顔を見るなり駆け寄ってきた花岡ユリ子道議。「核兵器を廃絶しよう」「小樽を軍港にするな」と唱和し、道議を隣に横断幕を持ち、中心街を行進。「これまでになく多く、十四団体七十五人です」
　行進の後、交流会。「核兵器のない世界の追求を宣言する」とのオバマ米大統領演説が話題となり、「宣言を実行するよう見守り、できる支援を」。交流会でも花岡道議が隣の席。〝二つ年下の優秀な妹〟とわかり、より身近になりました。
　「花のユリ、座る姿は」と思いながら、「激務解消のためにも道議を増やさなくては」「ＮＰＴ（核不拡散条約）再検討会議に参加したい」と話していました。菊地市議も参加し、「礼文島生まれで、小学校には約十㌔を歩いて登校していました」。「多喜二の文学館をつくりたい」と盛り上がりました。
　（小川基弘）
(２００９年０５月２７日，「赤旗」) （Page/Top）

月曜インタビュー／作家吉開那津子さん／１０年をかけた『夢と修羅』出版／時代に働きかける反戦の思い

　十年以上の歳月をかけた長編小説『夢と修羅』三部作（本の泉社）を出版した作家の吉開那津子さん。『旗』でデビューして四十二年、時代を見据え、時代と格闘しながら書き続けてきました。現在は日本民主主義文学会の会長も務めます。今、転換の時代に文学の持つ力とは―。
　「若いころからずっと書きたかったことが、やっと形になりました」
　『夢と修羅』は、明治四十四年（一九一一年）、福岡県生まれの古賀太一郎が、戦前、戦中、戦後の激動を生き抜く姿を描いた三千四百枚の大作です。わからず屋で頑固だったという父がモデル。
　「どうして日本が日中戦争から太平洋戦争と、戦争の時代に突っ込んでいってしまったのか、民衆の中に戦争を準備する意識がどのようにして植え付けられ、巻き込まれていったのか。明治、大正、昭和を生きて死んでいった庶民を通して描きたいと思ったんです」

個人の感受性も判断も否定され
　家父長制の下、天皇に忠誠を尽くし、目上の言うことには服従するのが美徳とされ、個人の感受性も判断も否定された時代。貧しい境遇の少年たちに、そこから抜け出し、人として尊重されるためには、軍人になるしかないと思わせた日本の富国強兵策。西洋に追いつけ追い越せと駆り立てられて、日露戦争に勝てば、ちょうちん行列をして祝った人々。
　「気がついた時には遅かったわけでしょ。もう二度とだまされないために、あの時代をリアルに書いておきたいと思いました」
　戦争になだれこむ暗い世相が描かれる一方で、軍国主義にがんじがらめになりながらも自分の生き方を模索し、精いっぱい努力する主人公の姿は胸を打ちます。小学校五年で母を亡くし、その悲しみに耐えて極貧の中で刻苦勉励し、弟たちの面倒も一身に背負う太一郎。立身出世を夢見て上京するも、夢はついえ、愛する弟はフィリピンで戦死。太一郎の人生は修羅の様相を帯びてきます。
　「確かに時代の限界を乗り越えることはできなかったわけですが、その中でも一生懸命に生きる人間の姿はとても尊い。人間存在の不思議さですね。戦争に反対できなかったからアホだとは言えないんですよ」
　克明に描き出される登場人物一人ひとりの日常から立ち上がってくるのは、ひたむきな人生の真実です。読者は、彼らの命が戦争で奪われることに憤り、あるいは十全に生きられないことを惜しみ、平穏な明日が来て幸せになってほしいと願ううちに、いつの間にか心中に、おき火のように静かな反戦の思いがともっていることに気づきます。
　「人間の心の中には、小説でなければ表現できないことってあると思うんです。小説によってしか到達できない、つかめないことがあると…」

受け継ぐものと乗り越えるもの
　雇用破壊、貧困と格差が広がる現代。日本民主主義文学会の会長として、文学の果たす役割を改めて考えています。折しも、文学会がその理念を引き継ぐプロレタリア文学運動の先達、小林多喜二の『蟹工船』がブームです。人の心を震わせ、寄り添い、生きる糧になると同時に、時代に働きかけるような文学が、今、求められていると言います。
　「そんな作品は、そう簡単には書けないものです。そこが切ないところでね。でもそれを目指して」
　これから書いていきたいものは―。
　「やっぱり、戦争の最後のところを経験した世代として、人類は決して戦争をすべきではないということを、繰り返し書いておきたいと思います。幼い子どもであっても、非常につらかった時代です。サイレンが鳴り出すと庭の防空ごうに逃げ込んだ日々や、三日間飲まず食わずで父の郷里へ疎開した時の身動きできない列車の中の光景など、今も忘れられません」
　祖父母、父母の時代から受け継ぐべきものがある。新たな時代に乗り越えるべきものがある。そして何を次の世代に伝えていくのか。吉開さんの作品はいつも、長い歴史の発展の中に自分を位置づけることを教えてくれます。
　（平川由美）
　よしかい・なつこ＝１９４０年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。著書に『葦の歌』『前夜』（第十二回多喜二・百合子賞）『緑なす山河』など多数。
( ２００９年０５月２５日，「赤旗」) （Page/Top）

えべつ革新懇１周年の総会

　えべつ革新懇はこのほど、「力合わせて新しい政治へ」と題して創立一周年総会を開きました（写真）。この一年間、無党派層、保守層の人たちへの呼びかけを広げ、新たに三人の世話人が加わったことを報告。憲法や安保、消費税増税問題を重視し、共同を広げようと話し合いました。
　七十人が参加した記念行事では、ソプラノ歌手の清水紫さんが多喜二の母を歌った「赤き花燃ゆ」や、『約束の夏』の著者・若松みき江さんの母を歌った「安東の子守歌」を熱唱しました。劇団一揆は、戦争が狂わせた母親の人生をテーマにした寸劇を演じました。
　全動労争議団の池田孝治さんが講演しました。
(２００９年０５月２４日，「赤旗」) （Page/Top）

岩見沢９条の会総会／多喜二の時代で荻野氏が講演

　岩見沢九条の会（卜部喜雄代表）はこのほど、岩見沢市で第五回総会を開きました。
　小樽商科大学の荻野富士夫教授（歴史学）が「多喜二の時代・横浜事件・そして現代」と題して講演。小林多喜二が「人が幸福になるには」を模索し、プロレタリア文学を通じて「権力・支配勢力への『憎悪』を持続して」作品を発表していたと語りました。
　多喜二の虐殺に、上海の郁達夫の日本警視庁への抗議記事（『現代』一九三三年五月）を紹介。「秘密裏に暗闇の中で彼を惨殺し、彼を弔い見送ることを禁じ、彼の死体の解剖を禁じ、この殺害事件を新聞に掲載することを禁じ、ただ『心臓麻痺』のわずか四文字でこれを片づけた。けだものの振る舞いだ。法治の精神はどこに行ったのだ」との国際的な批判を引用しました。
　講演は、八十人の参加者がメモをとりながら聞き入りました。
　総会では、活動方針を承認。新役員には二十代の女性が二人選ばれました。
(２００９年０５月２４日，「赤旗」) （Page/Top）

葉山嘉樹への旅／原健一著／評者江崎淳文芸評論家


作家の真実に迫り新たな関心誘う
　「ソコクノナンカンニオモムキタシ／グンカンカゴヨウセンナドニ／ニンムヲアタヘラレタシ／ヘンマツ」
　プロレタリア作家葉山嘉樹が、真珠湾攻撃の翌日、大政翼賛会文化部長・岸田国士に宛てた電報である。葉山は結局、軍用艦乗船でなく、一九四三年三月、満州建国勤労奉仕班班長として北安省徳都県に赴き、三度目の渡満の帰途、車内で脳溢血のため死去、ハルピン南の徳恵駅付近に埋葬された。一九四五年十月十八日のことという。
　小林多喜二に影響を与え、プロレタリア文学の発展に大きく寄与した「淫売婦」「セメント樽の中の手紙」「海に生くる人々」などの作家・葉山の敗戦前後の事情である。
　作者は、地域の文学仲間との文学碑探索をきっかけに、菊枝夫人との出会い、『葉山嘉樹短編小説集』刊行に加わるなど、十九年にわたる「葉山嘉樹への旅」を続け、『民主文学』などに発表した小説をまとめたのが本書である。｢旅｣のモチーフは､｢プロレタリア文学の旗手的な作家」が今では読み継がれていないこと、その原因としての「満蒙開拓」への協力、戦後それを挽回する機会のなかったことをあげ、晩年の作家の真実に迫ろうというものである。
　作者の葉山探索は､昭和史や､ノモンハン事件に遭遇した自身の父親の行動を繙きながら、各種追悼集や碑文、葉山日記を丁寧にたどり、葉山の顕彰に携わる人々や文学仲間との交流、はては「海に生くる人々」の舞台・室蘭の踏査など多岐に及んでいる。そこには、豊富な葉山追跡の行程が表明されていて、葉山文学への新たな関心を誘う。
　葉山の行動を「転向」と見るかどうかなどの問題も含めて､｢葉山をそこまで追い込んだ」ものへの追及には、現代を再び｢戦前｣にさせまいとする作者の意欲を感じさせる。
　はら・けんいち　一九四六年生まれ、日本民主主義文学会会員。
( ２００９年０５月２４日，「赤旗」) （Page/Top）

演劇／「蟹工船」（俳優座）／リアル、圧倒的な迫力

　小林多喜二の「蟹工船」が、脚光を浴びている。俳優座が安川修一の脚本・演出でおこなっている舞台「蟹工船」は、北緯五十度以北の海で、蟹漁に狩り出された季節労働者の集団的演技を創り出して、圧倒的な迫力だ。
　「蟹工船」は、いままでに数回劇化されている。最初は、小林多喜二が虐殺される前の一九二九年七月、新築地劇団が高田保、北村小松の共同脚色によって上演。二回目は戦後の一九七〇年二月、大垣肇脚色・村山知義演出で上演されている。新築地劇団の公演は改題させられ、検閲も厳しかったので、今回の俳優座公演と厳密に比較しうるのは、東京芸術座の舞台だ。安川脚色の特徴は、第一に、この船に乗りこむことを「地獄」にたとえていることである。幕明きのせりふが「地獄さ行くんだで！」ではじまる。大垣脚色では、第一場での人間関係の説明があって、ようやく最後に、このせりふが語られる。
　安川脚色、したがって演出の第二の特徴は、一回はおさえつけられて、ストライキを断念せざるをえなかった労働者が、再び闘いに立ち上がろうとする姿を、結末の場面で印象づけた点にある。もちろんその間に、労働者の生態と、小林多喜二をおもわせる学生の姿がリアルに描かれているので、客席には緊迫した雰囲気がただよう。この雰囲気は、劇場でなければ味わうことはできない。
　満員の客席に座っていてわたしは、労働者をいとおしく思って書き綴った小林多喜二の、類い稀な姿勢を、いまさらのように感じざるをえなかったのである。
　（菅井幸雄・演劇評論家）
　２４日まで、東京・俳優座劇場
( ２００９年０５月２２日，「赤旗」) （Page/Top）

総選挙・千歳市議選応援します／帯広畜産大学名誉教授道昆虫自然史研究所長西島浩さん（８９）


自・民は戦争の予算肯定／断固たたかう党必要
　帯広畜産大学名誉教授で北海道昆虫自然史研究所所長の西島浩さん（８９）は、総選挙と二十四日告示（三十一日投票）の千歳市議選（佐藤ひとし議員）で「日本共産党にどうしても勝ってほしい」と思いを寄せました。千歳市の自宅を訪ねました。
　（小池光栄）
　私が日本共産党にもっともっと大きくなってほしい理由は、戦争に反対し、国民のために断固たたかう政党が必要だからです。
　戦前の暗い時代に希代の悪法、治安維持法で国民を国のいうままにし、「侵略戦争反対」を主張していた日本共産党や労働組合を次々に弾圧しました。
　私の恩師は、雪虫研究の著書もある昆虫学の北大の河野広道先生です。国家の方針に反対する動きを全部抑えつける特高警察が先生の自宅に踏み込み、書斎に小林多喜二の「蟹工船」やマルクスの本があっただけで治安維持法違反だといって逮捕され、三カ月も牢（ろう）に入れられました。先生は将来を期待される研究者でしたが、大学を辞めざるを得ませんでした。
　私は、昆虫の研究をしていますが、動物の社会も人間社会も似たところがあります。例えば、害虫がなぜ大発生するかというと、「天敵」がいなくなるからです。人間の社会でも、一つの考えでしばりつけ、封殺し、弾圧した結果が、二千万人のアジアの人たちと三百十万人以上の日本人が殺されたあの悲惨な太平洋戦争でした。
　いまも戦争につながるきな臭さを感じています。自民党も民主党も戦争のための予算を肯定しています。民主党は小沢一郎さん（前代表）の西松献金疑惑とか、自民党と変わらない金権腐敗事件を起こしていながらも、まったく反省はありません。本当に腹立たしい限りです。
　千歳市議会も、日本共産党以外はおかしな政党と議員ばかりでしょ。敬老年金など福祉の切り捨てにこぞって賛成しています。千歳市は、温泉や空港などで収入は十分あるはずなのに、どうしてこんなに市民のくらしを切り捨てるのか。困っている人や、いろいろな人のためにやっているのは日本共産党の佐藤ひとし議員だけです。
　南千歳駅周辺の大規模商業施設にお金をつぎ込みましたが、もともとあった店が商売を続けられなくなってつぶれました。工業団地も破格の値段で企業を誘致したのに次々撤退し、結局、借金だけが残りました。
　市民の生活を大事にし、市の無駄遣い・暴走をチェックすることが大切です。佐藤ひとしさんにぜひ頑張ってほしい。私も周りの人に声をかけ、力を尽くしたいと思います。
(２００９年０５月２１日，「赤旗」) （Page/Top）

自民議員質問に「蟹工船」

　「今日、本屋にいくと『蟹工船』という本が、隠れたベストセラーで売れている」。二十日の参院予算委員会で自民党の吉村剛太郎参院政審会長は、今の社会・経済情勢と戦前の一九三〇年代を重ねて「国民が感じることが似ているのではないか」と質問しました。
　吉村氏は、財閥批判が高まった戦前の風潮を紹介し、「最終的には拷問で亡くなった小林多喜二が、盛んに読まれておった時代背景」があったと強調。いま「所得格差、地域格差」が広がるなかで、国民は「これはおかしいのではないか、と受け止めていると私は感じている」と述べました。
　麻生太郎首相は、「閉塞（へいそく）感やら、格差感、地域格差感を含めて、いろいろある」と認めたものの、大企業にはバラマキ、ツケは消費税という二〇〇九年度補正予算案の早期成立を訴えただけ。貧困を拡大させ、庶民の暮らしに閉塞感をもたらした根本にメスを入れる姿勢はありませんでした。
( ２００９年０５月２１日，「赤旗」) （Page/Top）

「共産党の出番」／民主文学党後援会が講演会／盛岡市で開く

　日本共産党と衆院岩手１区候補の吉田恭子さんを応援する「文学講演会」が十六日、盛岡市のアイーナで開かれ、八十人が参加しました。民主盛岡文学・日本共産党後援会が主催しました。
　主催者を代表して柏朔司代表世話人は「いまの『蟹工船ブーム』は起こるべくして起こっている本物のブームだ。自民党と民主党の二大政党による『政権交代ブーム』は、財界やマスメディアによってつくられたニセのブームだ。青年の雇用問題の解決を第一に訴えてがんばっている日本共産党の吉田恭子さんの出番のときだ」とあいさつしました。
　吉田さんが「『蟹工船』と日本共産党」と題して講演しました。岩手県関係者が多数乗り込んでいた一九二六年の秩父丸遭難事件について当時の新聞記事などの資料を駆使し、蟹工船の奴隷状況を詳しく報告。今日の派遣労働と日本共産党の果たしている役割についてのべました。
　「小林多喜二の青春とその友人たち」について労働者教育協会理事の藤田廣登さんが講演し、多喜二を取り巻く人々、思想的影響を与えた友人たちについて語りました。
　会場からは、吉田さんの友人など青年から激励の発言もありました。
(２００９年０５月２０日，「赤旗」) （Page/Top）

相沢良碑前で献花と黙とう／青森・語り継ぐ会

　青森県の｢相沢良を語り継ぐ会｣は十七日､青森市浪岡の花岡展望台にある相沢良顕彰碑前で碑前祭を開き約六十人が参加しました｡
　会代表の木村昭四郎さんは｢日本の夜明けを切り開く総選挙でかならず勝利しよう｣とあいさつ｡治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟県本部による献花と黙とうを行いました｡
　第二部で､日本共産党県委員会の吉俣洋書記長は｢戦争から国民を守る先頭にたった相沢良さんの遺志は世界の流れ｡日本共産党を大きくしよう｣と訴えました｡｢相沢良の獄中の書簡より｣を作間博子さんが朗読しました｡
　記念講演では､佐藤豊彦さんが二十五歳八カ月の青春を反戦･平和･民主主義にささげた人間愛に満ちた生涯を語りました｡来年は生誕百周年になりますが､民放が｢獄死｣というテーマで相沢良の映像を撮っていることを紹介すると会場から拍手がわきました｡
(２００９年０５月２０日，「赤旗」) （Page/Top）

国に謝罪・賠償要求／治安維持法犠牲者が国会請願

　治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟は十九日、戦前、天皇制政治のもとで主権在民をとなえ侵略戦争に反対してたたかった治安維持法犠牲者に対し、国が謝罪と賠償をすることを求めて国会請願を行いました。全国から百五十五人の代表が、三十万五千百五十二人分の署名をもって参加しました。
　集会で、神戸照会長代行は「昨年は犠牲者で生存しているのは百五人。今年は百人をきっている。犠牲者が生存しているうちに、問題を解決していきたい」と決意を表明しました。
　犠牲者の一人、水谷安子さん（９５）。姉、妹、夫も治安維持法のもと、弾圧されました。「監獄に閉じ込められていた二年の間に、ますますマルクス主義（科学的社会主義）の思想を強めました」と話しました。
　日本共産党から吉井英勝衆院議員と仁比聡平参院議員が参加。吉井氏は「国は、人道に反する罪について明確にし、謝罪しなければならない」と指摘し「犠牲の事実を明らかにすることは、自由と民主主義を確立するということ。過去の問題ではなく、現在、将来につながることだ」と強調しました。
　仁比氏は、「非正規切り」にあった労働者たちの運動を紹介。「今は連帯と反撃の時代」と話し、「われわれ国民のたたかいの力で、改憲派勢力を弱めよう」とのべました。
　集会後、それぞれ地元議員に要請。今回は、衆議院、参議院の各法務委員会の委員長と理事にも要請しました。
( ２００９年０５月２０日，「赤旗」) （Page/Top）

裁判員制度２１日から施行／自由法曹団事務局長加藤健次さんに聞く／上／刑事裁判のゆがみどう正す

　裁判員制度が、今月二十一日に施行されます。裁判員制度で何が期待されるのか。どう参加していけばいいのか。自由法曹団の加藤健次事務局長に聞きました。
　（阿曽隆）
　裁判員制度は、重大事件（殺人や強盗致死など）について、市民が裁判員として刑事裁判に参加し、被告人が有罪か無罪か、有罪の場合どのような刑にするのかを裁判官とともに判断する制度です。
　なぜいま市民が参加する裁判制度が必要なのか。それはこれまでの刑事司法が構造的な問題点を抱えており、職業裁判官とは違う感覚をもった市民が参加することでこれを正さなければならないからです。
　「無実の人を罰してはならない」のが刑事裁判の大原則です。しかし、戦後死刑判決が確定した四つの事件が再審で無罪となりました。最近でも、自白を強要した「踏み字」が問題となった鹿児島の志布志事件や、服役後に真犯人が現れた富山の女性暴行事件など冤罪（えんざい）は絶えません。

捜査にも問題
　冤罪が起きる要因は裁判だけの問題ではなく、警察や検察の捜査のあり方に大きな問題があります。
　被疑者は逮捕されれば最大で二十三日間と長期にわたって代用監獄に拘束され、自白を強要されます。実際の冤罪事件ではウソの自白や、アリバイ崩し、証拠隠しなどがつきものです。これを裁判所も追認して有罪判決を下してきました。日本の刑事裁判の有罪率は９９・９％にものぼるのです。職業裁判官は、検察官や警察といつも接しているために、きぜんとした批判がしにくく、自分も治安を維持する側で仕事をしているという感覚になります。毎日毎日、有罪判決を書いているなかで、たまに否認事件があったら、むしろ被告人のほうがウソをついているのではないかと思ってしまうのです。個々の裁判官によって多少の違いがあっても、全体としてそういう構造にあります。
　官僚的裁判官のほかに六人の市民が参加し、「疑わしきは被告人の利益に」という大原則を守る立場で証言や証拠をチェックすることができれば、刑事裁判の現状を変えていく大きな力になります。

憲法守ること
　日本国憲法は刑事事件の被疑者・被告の権利を詳細に定めています。「拷問の禁止」など手続き法で定めればいい項目も、わざわざ定めています。この背景には、小林多喜二が拷問で虐殺されたように、戦前の刑事裁判や特高警察に象徴される被疑者・被告人の権利を無視した刑事司法に対する根本的な反省があります。
　現在では刑事裁判をうける被疑者・被告の権利が保障され、公正な裁判が行われているかどうかは、その社会全体の人権と民主主義をはかる大きなバロメーターです。被疑者・被告人の権利を保障することは、刑事裁判の原則であり、憲法を守るということなのです。しかし職業裁判官は、一部の人を除けば、被告の権利よりも秩序や自らの立身を優先してきたといえます。
　みなさんには、市民感覚を生かし憲法を守るという立場で裁判員制度に臨んでいただきたいと思います。
　（つづく）
( ２００９年０５月１８日，「赤旗」) （Page/Top）

久保楠蔵の生涯／党支部が冊子／三重・南伊勢町

　三重県南伊勢町の日本共産党南勢支部がこのほど、同町の出身で海上労働者の人権を守ってたたかい、一九二八年に特高（特別高等警察）に虐殺された日本共産党員・久保楠蔵の生涯を紹介した冊子『不屈の青春』（写真）を発行しました。
　冊子を手にした人からは「こんなすごい人がいたのかと驚いた」「誇るべき先輩の遺志に応えるためにも、今度の選挙では共産党を大きく前進させたい」などの声が寄せられています。
　楠蔵の生地については長らく不明でしたが、『解放のいしずえ』（解放運動犠牲者合葬追悼会世話人会編）に三重県出身とあるのを見付けた日本共産党三重県委員会の中川政一元委員長が長年の調査のすえ、七三年に出身地を確認しました。
　今回の冊子は、八二年に故山岸一章さんが『前衛』に連載した｢輝く無名戦士｣を基にまとめたもの。
　小林多喜二が『蟹工船』を発表したのは、楠蔵の死の翌年の二九年。党南勢支部では、『蟹工船』そのままの過酷な海上労働のなかでたたかい倒れた、すぐれた先輩の業績を今に伝え、悪政をはねのける力にしたいと、普及に努めています。
　冊子はＡ５判、十四㌻。頒価は送料を含めて三百円。問い合わせは同町の岡田和夫町議０５９９(６６)０２１５へ。
(２００９年０５月１７日，「赤旗」) （Page/Top）

番組をみて／ＮＨＫスペシャルシリーズＪＡＰＡＮデビュー第２回天皇と憲法／ＮＨＫテレビ３日放送


政党崩壊突くも、座標軸定まらず
　横浜開港で日本が世界にデビューしてからの１５０年の歩みをたどるシリーズの２回目。大日本帝国憲法の誕生、政党政治の自滅、｢国体論｣の暴走という３部構成で、明治憲法と天皇というテーマをとりあげました。台湾統治を扱った初回に対して右派メディアの「偏向」攻撃もあっただけに、注目して見ました。
　番組はまず、伊藤博文や井上毅による大日本帝国憲法起草の経緯をたどり、第一条の「万世一系」や第十一条の「統帥権」規定が天皇絶対化の根拠となったことを指摘します。政友会総裁の犬養毅が１９３０年、民政党浜口内閣のロンドン海軍軍縮条約締結を「統帥権干犯」と攻撃し、軍部と結びつきを強め、逆に政党内閣制の崩壊を導いたことにもふれています。これらの事実は歴史の教訓を考える素材となるでしょう。
　憲法学者の美濃部達吉と上杉慎吉の間でおこなわれた「天皇機関説」論争の経過も簡潔に紹介されています。１９３０年代、この論争に政治が介入し、美濃部学説が排撃された経過は、天皇中心主義の強化が日本の対外侵略と不可分だったことを示しています。歴史学者の平泉澄の天皇絶対思想が｢玉砕｣や｢特攻｣に与えた影響も、戦争と学問の関係を考えさせます。
　しかし「国体」問題をとりあげるなら、治安維持法の批判的検討は不可欠のはずですが、番組はなぜかこの悪法にはふれません。昭和天皇が十五年戦争で果たした「大元帥」としての役割も描かれません。これではテーマの掘り下げは不十分にならざるをえません。
　番組の冒頭、天皇が国会開会式で「お言葉」をのべる場面に「この天皇の役割も明治時代に初めて定められ、今に続いています」という説明を付したことも問題です。そもそも天皇の開会式出席と「お言葉」は、現行憲法の「国事行為」に含まれません。それに日本国憲法は大日本帝国憲法の改正という形をとりましたが、天皇主権の明治憲法と国民主権の現行憲法とは、主権原理が百八十度違います。そこをあいまいにし、両者の連続性を強調する描き方はうなずけません。
　このように番組は興味深い事実を紹介したものの、座標軸が定まらない印象をぬぐえませんでした。
　（土井洋彦　党学術文化委員会事務局長）
( ２００９年０５月１６日，「赤旗」) （Page/Top）

解放運動戦士各地で追悼／大阪で４５０人参列／京都で２８０人参列


遺志受け継ぎ頑張ると決意／大阪で４５０人参列
　第二十回大阪解放戦士合葬追悼会が十日、四条畷市の大阪生駒霊園で行われ、新遺族をはじめ推薦団体や故人ゆかりの人など四百五十余人の参列者で厳粛に行われました。
　碑の正面には今年新たに八十七人の合葬された人の氏名、死亡年月日、主な活動歴を刻んだ銅版が安置されています。
　日本国民救援会大阪府本部の戸谷茂樹会長が主催者を代表してあいさつ。大阪いしずえ会柄谷サムエ会長、長野富子副会長の合葬者紹介に続いて大阪労連、大阪商工団体連合会、新日本婦人の会大阪府本部、日本共産党府委員会の各代表が追悼の辞をのべました。
　日本共産党の宮本たけし府副委員長が「遺志を受け継いで頑張ります」と追悼の言葉を述べました。遺族代表あいさつ、治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟府本部の柳河瀬精会長の閉会の辞に続いて、アコーディオンと合唱団の歌声とともに参列者が献花しました。

社会変革へ決意新た／京都で２８０人参列
　第五十四回京都解放運動戦士の碑合祀（ごうし）追悼祭が十日、京都市東山区の浄土宗総本山・知恩院境内の碑前で開かれました。遺族、労組、民主団体、日本共産党などの関係者二百八十人が参列し、社会の進歩と革新の運動に貢献した故人をしのび、社会変革への決意を固めあいました。
　京都解放運動戦士の碑維持委員会を代表して大平勲・日本国民救援会京都府本部会長が、「人間らしく働き生きられる社会を求めるたたかい、憲法九条守れの流れが大きく広がっている。ここに確信と展望を持って奮闘する」と故人の遺業を受け継ぎ、発展させる決意をのべました。
　日本共産党の成宮まり子京都国政委員長が追悼の言葉をのべ、小泉「構造改革」による雇用破壊や社会保障切り捨てにたいする国民の反撃が始まっていることを強調し、総選挙での党躍進を誓いました。
　今年は新たに六十一人を合祀。一九五八年の碑建立以来、合祀者は二千三百九十一人となりました。
(２００９年０５月１３日，「赤旗」) （Page/Top）

文化／松田解子さんなら労働者が解雇される今何を書いただろう／『自選集』完結によせて／澤田章子

　労働者の解雇が深刻さを増している今、松田解子（ときこ）さんなら、どんな小説を、どんな詩を書いただろうか、と考えます。
　鉱山に生きる女性像を、明治の労働者・農民群像のなかに描いた名作「おりん口伝」で知られる松田さん。筆名の解子は、もとは〝かいこ〟と読みました。二十歳で上京して以来、就職しては解雇されてばかりだったからです。
　本名はハナ。１９０５年、秋田の荒川鉱山に生まれましたが、１歳で父と死別。三菱の鉱山は女に長屋を貸さなかったため、母は６人の子持ちの坑夫と再婚しますが、その父もじん肺のために死亡。３人目の粗暴な製錬夫の父の飯場で成長しました。小学校時代にビクトル・ユゴーの翻訳小説「噫（ああ）無情」に出合ったことが、作家への道につながりました。
　失業者救済に働く組合活動家と結婚しましたが、貧困と弾圧のなかでの長男の出産となりました。その体験を力強く描いた「産む」が、１９２８年に読売新聞の短編小説募集に入選し、プロレタリア文学運動に参加しました。
　小林多喜二とともにプロレタリア作家同盟の講演会へ出向いたこともありました。多喜二虐殺の際には赤子の二男を背負って弔問にかけつけ、赤ん坊ごと検束されました。その５年前の三・一五事件直後にも特高警察の家宅捜索を受け、ノートに書き写した「共産党宣言」がみつかったために、生後３カ月の長男もろとも警察に引っ張られています。
　労働者の家庭に生まれ、労働者の権利のために働く活動家の妻となり、貧困家庭の母として数々の困難をかかえた松田さんは、どんな時にも、搾取され、抑圧される弱い立場の人間を愛し、いつくしむ心で詩や小説を書き、そしてひたむきに行動する作家でした。
　戦争中に、中国から強制連行され、虐使と迫害に耐えかねて蜂起した４１９人が、無惨に殺された出来事がありました。秋田の花岡鉱山で起きた事件です。戦後５年目に「アカハタ」などで知り、早速金を借りて現地取材に。その惨劇が、戦争のための乱掘による坑道崩落事故で、徴用された朝鮮人と日本人の労働者が生き埋めにされたまま坑内を閉じた非道な事件とも関連したことを突きとめ、ルポルタージュで告発するとともに、小説「地底の人々」の発表となりました。
　侵略国家と独占資本が、自国の労働者とともに、中国、朝鮮の人々の人権を踏みにじり、命を奪ってきた、その罪悪に対し、満身の憤りをこめて書きつづるとともに、犠牲者の遺骨収拾にも参加、故国へも付き添ったのでした。
　戦後の数々の謀略事件の犠牲者に対しても親身でした。松川事件では、幼い長女の手を引いて仙台の拘置所に被告を訪ね、手記を書くことを説き、冊子『真実は壁を透して』の刊行に力を尽くしました。これが作家の広津和郎や宇野浩二を動かすことになり、全員無罪を勝ち取る大きな力となりました。
　２００４年に９９歳で亡くなるまで、作家活動とともに、平和と人権を守る行動に情熱を注いだ松田さんは、晩年に『松田解子自選集』（全１０巻）の刊行に着手しました。それが長女の橋場史子さんと研究者の江崎淳さんによって引き継がれ、出版事業の困難ななかにも、完結の運びとなっています。
　シカゴ大学教授のノーマ・フィールドさんや、韓国・全南科学大学の金正勲教授が、松田作品の英訳・韓国語訳をすすめておられるとも聞いています。日本でも、松田さんの読者が広がることを期待しないではいられません。
　（さわだ・あきこ＝文芸評論家、日本民主主義文学会常任幹事。著書『一葉伝　樋口夏子の生涯』、共著『いまに生きる宮本百合子』ほか）
　松田解子さん（２００４年４月、片桐資喜撮影）　著書に『おりん口伝』『桃割れのタイピスト』『あなたの中のさくらたち』、自伝『回想の森』、『松田解子全詩集』、随想集『歩きつづけていまも』ほか。１９６７年、第８回田村俊子賞、６９年、第１回多喜二・百合子賞受賞
(２００９年０５月１０日，「赤旗」) （Page/Top）

模索に応える創作を／民主主義文学会大会始まる

　日本民主主義文学会第二十三回大会が九日、二日間の日程で東京都内で始まりました。北海道から九州まで約百二十人が参加し、「転換の時代の始まりに新たな文学運動の創出を」のテーマで討論しました。
　開会あいさつに立った吉開那津子会長は「作家はいつも苦しみの中から時代と格闘して書いてきた。今をどう生きるか模索する人々の問いかけに真剣にこたえる創作活動を」と呼びかけました。
　田島一事務局長は幹事会報告の中で、この二年間の活動にふれながら「今、政治と社会の激動の中で根本的転換が求められている」と指摘。「社会と人生の真実を描こうとする民主主義文学運動も真価が問われている」とのべ、文学が現実に大きな力を与え、生きる糧になることを『蟹工船』ブームを例に強調しました。
　討論では、現代の過酷な労働実態をどう描くのか、小林多喜二をはじめプロレタリア文学の研究を深めていくことの重要性、若い作家が人間性の回復と連帯を描いていることに文学再生の希望が見える、などの発言が相次ぎました。
　大会初日には第八回民主文学新人賞の授賞式が行われ、佳作を受賞した小説『送り雛』の大川口好道さん、同じく佳作の小説『煤けた暦』の田中誠さんに賞状が手渡されました。
( ２００９年０５月１０日，「赤旗」) （Page/Top）

多喜二を特集／私鉄連帯する会『交流誌』２４号

　鉄道やバス労働者らでつくる私鉄「連帯する会」が、『交流誌』第二十四号（写真）を発刊しました。
　特集の第一は、第二十四回全国交流集会。講演「小林多喜二と現代―私たちに語りかけるもの」（井上昌三氏）や分科会・分散会の報告を紹介しています。
　第二は、「持続可能で安全・安心な交通運輸をめざして」と題した座談会。公共輸送を脅かす規制緩和の実態や住民との共同を語っています。ポイント制による退職金改悪や交通政策提言も掲載。
　Ｂ５判百五十四㌻。頒価二千円（送料込み）。
　問い合わせ　事務局・吉田省三さん℡０３（３９５９）４７２８ファクス兼用。
( ２００９年０５月０９日，「赤旗」) （Page/Top）

治維法犠牲者国家賠償求める国会請願へ全力／道本部

　治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟道本部（外尾静子会長）はこのほど、札幌市で常任幹事会を開き、治安維持法犠牲者の国家賠償を求める十九日の国会請願成功に全力をあげることを決めました。
　会議では、道民に広く署名を訴える各地の取り組みを交流しました。教会や寺院、連合系の労働組合を訪問して快く署名が寄せられた経験、その際、北海道における犠牲者の実態を語り、外国の戦後補償と比べてはるかに立ち遅れている日本政府の対応をニュースやビラにしているなどの報告がありました。
　根室市議会では先ごろ、国は治安維持法犠牲者に国家賠償をせよとの意見書を可決し、道南、道東など各地で意見書可決への取り組みが起きています。これらの取り組みを促進するためにも一月以降開かれた西田信春、野呂栄太郎、小林多喜二らの碑､墓前祭､三・一五集会に例年になく多くの人たちが集まりました。
　国会請願には四人の代表を派遣、道選出の全議員を訪問するために、五万の署名をやり抜こうと決めました。
(２００９年０５月０９日，「赤旗」) （Page/Top）

舞台「蟹工船」出演者対談／脇田康弘さん／頼三四郎さん


派遣切りとのたたかいと通じる・頼／一生懸命生きている人間像を・脇田
　小林多喜二の同名小説の舞台化作品「蟹工船」（脚本・演出＝安川修一）が十五日から、東京・俳優座劇場で始まります。出演の脇田康弘さんと頼三四郎さんに、この芝居の魅力について話し合ってもらいました。
　脇田康弘　多喜二のような人物が、「男７」として登場します。その男７が僕の役です。「蟹工船」を書いた時点より前の、運動に加わることを考え出したころの多喜二のイメージだと思います。特殊な人間なのではなく、周りの人たちのことを考え心配する人間で、だからこそストを主導する側になっていく。そういう物語になればいいかな、と思いながら、けいこをしています。
　頼三四郎　僕の演じる「学生１」という役は、男７と意見をぶつけ合っていく役です。極限状況の中で、どう自分たちが行動を起こしていったらいいのか、どう生きていったらいいのか、と悩む。

二人が多喜二的人物ではないか
　脇田　学生１も、もう一人の多喜二的な人物ではないかな、と思っています。
　頼　そうですね。
　脇田　一人の人物の中で起こりうるかっとうを、二人のやりとりの中に反映させているんじゃないかな。二人は最後まで死なずに、船に残る。
　頼　描かれている世界は、現代社会の派遣切りとのたたかいと、通じるところがあると思います。自分らしさをだせない極限の状況の中で、団結することによって、一つの意思が生まれ、そこに人間のエネルギーが生まれて、物事を変えていく。そういうエネルギーを感じてもらえるお芝居になるんじゃないか、という気がします。
　脇田　男が二十二人出演していて、俳優個々のエネルギーと描かれた人たちのエネルギーとが重なっていく。作・演出の安川さんの、すごく速い展開の舞台の中で、その重なりが説明しようのない、エネルギーになっていくと思います。
　頼　そうですね。正義をやっている、という単純なものにならないようにしたいですね。
　脇田　かっこいいヒーローというものではなく、一生懸命生きている中で行動を起こさざるをえなかった、という、そういう実感を感じられるようにしたいね。非人間的な扱いをされて「悔しい」だとか、登場人物たちの喜怒哀楽はけっこうシンプルなものだし、しかも一口にいえない、という面もある。一言、一言のやりとりの重さを僕らは理解して、この登場人物たちは共感しあっているんだと、わかってもらえるようにしたい。

「もう一回だ」と流されない力が
　頼　人が集まって結束し、意思として行動に移していく。一回失敗しても、「もう一回だ」と立ち上がる。流されない、そういう力を見て、見る人の元気につながる、そういうお芝居にしたいですね。
　脇田　原作もそうだし、この芝居も、何か完結するというのでなく、何か考えさせられる、というものなんだと思う。
　頼　僕はことし二十九歳ですが、多喜二が虐殺されたのも二十九歳。多喜二は何か特別な人間ではなく、普通のみずみずしい人間であるがゆえに、あのような人生になったとも言えるのかもしれない。
　脇田　お母さんが語っていらっしゃる幼少のころのエピソードなどを見ると、感受性がすごく豊かな人で、喜怒哀楽も、きっとはっきりしていた人だと思う。いろんな人のことを心配する、聡明でやさしい人だからこそ、「蟹工船」のような作品を残せたんじゃないか。人間性に幅があった、ということも感じます。
　頼　だから、作品も教訓じみていないんじゃないかな。小説が現代人に受け入れられたのも、その点があったと思います。
　脇田　多喜二は軍国主義の時代には「非国民」として扱われた。八十年たって、戻ってきた。怖いと思うのは、社会が昔と変わっていないのか、人間が変わっていないのか、ということですね。
　頼　舞台では、物語はもちろん、蟹工船の中の空気感を生みだして、今の時代の人の心に直に伝えたい。
　脇田　そうだね。嵐の中、十数人がロープに振りまわされながら演じているシーンがあります。まさに体だけを使って、ぎりぎりのところを演じているんです。出演していない人は、それを見て面白がっている（笑い）。
　頼　演じる側も、疲れている自分にすごく満足している（笑い）。けいこが終わった後も、気づけばそのまま足をひきずって歩いていたりしています（笑い）。
　写真・縣章彦
　　◇
「蟹工船」（劇団俳優座創立６５周年記念公演第２弾）、出演は対談者のほか中寛三、星野元信、河野正明、矢野和朗、川井康弘、来路史圃ら。１５～２４日＝東京・俳優座劇場。℡０３（３４７０）２８８８劇団俳優座
〔下段に読者優待情報〕
　らい・さんしろう　８０年生まれ、東京都出身。加藤剛さんの次男。０４年、俳優座入団。映画、テレビに出演。舞台は「上意討ち―拝領妻始末―」、「颶風のあと」など。
　わきた・やすひろ　７５年生まれ、三重県出身。０１年、俳優座入団。映画、テレビに出演。舞台は「春、忍び難きを」「喜多川歌麿女絵草紙」「野火」「夏光線」など。
( ２００９年０５月０８日，「赤旗」) （Page/Top）

芸能テレビ／俳優座「蟹工船」に挑む

　時代を超え人々の心をとらえる小林多喜二の「蟹（かに）工船」が舞台でよみがえります。劇団俳優座の創立６５周年記念作品です。脚本・演出の安川修一さんは、「世の中をひっくり返すような熱気を伝えたい」と話します。
　寺田忠生記者

高校の時、多喜二の母を訪ね／脚本・演出安川さん
　札幌生まれの安川さんは高校時代、小樽に住んでいた多喜二の母・セキさんに友人と会いに行ったことがあります。セキさんは当時、８０歳を超えていましたが、突然の若者の訪問を快く受け入れてくれました。
　「『若い人が多喜二を訪ねて来ることはうれしい。これからの時代にとって、いいことじゃないか』と言ってくれました。多喜二がノートに書いた構想やメモ、新聞の切り抜きも見せてくれて」
　その後も、セキさんのメッセージを心にとどめ、「いつか小林多喜二の作品の舞台化を」と考えていたと言います。
　物語の舞台は、海軍の保護のもと、オホーツク海で操業する蟹工船の船室です。〝国策〟の名のもとに、過酷な労働を強いられる労働者たちは、ついに手を取り合い立ち上がりますが―。
　多喜二が「糞壷（くそつぼ）」と書いた蟹の缶詰を製造する工場・船室。けいこ場には２階建て構造の鉄骨が組まれ、最上部分は船のデッキになります。
　「閉鎖的な鉄の箱の中でもがいている労働者と、彼らを遠目で見ながら操り、搾り取っている資本家の構図を見せられたらと思いました」

実は私も〝派遣切り〟された／浅川役川井さん
　資本家の手先となって労働者を徹底的に虐待する監督・浅川を演じるのは、入団２０年目の川井康弘さんです。
　けいこ場では、労働者役の若手俳優たちとは言葉を交わさず、一人で黙々と役をとらえます。「演出家からも『孤独になれ』と言われました」
　川井さんは、出演が決まってから小林多喜二全集を読破。多喜二が浅川をとおして何を表現しようとしたのかを、つかもうとしました。
　「単純な〝悪〟の浅川を演じるだけでは足らないと思うんです。彼なりに一生懸命仕事に打ち込むなかで、一人の人間が〝悪〟に変わってゆく、その悲しさ、おかしさ。彼をとおして、資本家が底辺の労働者を虐げている構図が見えてくればと思うんです」
　実は､川井さん自身､俳優のかたわら、派遣労働者として働いていたものの、３月末で突然､〝派遣切り〟されました。部署全部がなくなる大規模なものでした。
　「同じ部署の仲間で、再就職が決まったのはまだ１割だけです。みんなで舞台を見にきてくれます。いま僕らになにができるか、この舞台をとおして社会に提示できればと思います」
　＊１５～２４日＝東京・俳優座劇場。℡０３（３４０５）４７４３
(２００９年０５月０３日，「赤旗」) （Page/Top）

本立て／小林多喜二と宮本百合子／三浦光則著

　著者は、多喜二・百合子研究会会員の文芸評論家。四半世紀にわたる評論を収めています。
　１００編を超える評論、エッセーを残した多喜二。その評論に、「読者に訴えかける作者の息づかい」が感じられると指摘。理論家としての側面に光を当てます。
　戦後、６年足らずしか生きられなかった百合子は、小説とともに精力的に社会評論を執筆。著者は、百合子が、平和の擁護を、民主主義の血肉化とともに訴えていることの大切さを説きます。
　治安維持法に抗したプロレタリア文学や、手塚英孝、窪田精らの業績など、貴重な論考です。
　（光陽出版社　税別１４２９円)
(２００９年０５月０３日，「赤旗」) （Page/Top）

横浜事件の遺族／刑事補償を請求

　戦時下最大の言論弾圧とされる「横浜事件」の第四次再審請求で、裁判打ち切りの「免訴」を言い渡された雑誌「改造」元編集者の故小野康人さんの遺族は三十日、刑事補償法に基づき、横浜地裁に九百八十万円の補償を請求しました。弁護団は「刑事補償法にある『無罪の判決を受けるべきものと認められる充分な事由』に該当する」とし、請求額を同法が定める最高額一万二千五百円に小野さんが身柄を拘束された日数を乗じた額としました。
　小野さん側は、横浜地裁が免訴判決で「刑事補償請求の審理で無罪の裁判を受けるべきと認められる充分な事由があるかを判断する」と言及したことから、「実質的な無罪の判決は、刑事補償請求の中で示される」と判断。「勝ち取れば歴史的な意義を持てると考える」としています。
　弁護団は、法的には国家賠償請求も可能としたものの、「納得できる決定が出れば、これを最後にする」としています。
　請求申立書によると、小野さんは治安維持法の嫌疑で逮捕され、七百八十四日間にわたり身柄拘束されました。
( ２００９年０５月０１日，「赤旗」) （Page/Top）

*         【4月】（ヘッドライン）

*         文化の集いで小説「母」朗読／札幌・光陽９条の会

*         スペイン内戦・独裁時代の犠牲者名誉回復で意見交流／人権活動日本委代表委員吉田好一氏に聞く

*         多喜二をふるさとで読む会／「蟹工船」を語り合う／秋田・大館

*         映画「蟹工船」／新作の完成会見／今夏公開

*         四・一六弾圧講演と上映会／塩釜

*         「戦艦ポチョムキン」自主上映から５０年／山田和夫／米画優先の輸入制度に観客が初めて挑戦した

*         民青同盟が「蟹工船」ツアー／社会の仕組み変えたい／多喜二の足跡たどる

*         田母神論文の狙い国賠同盟が学習会／札幌

*         列島だより／長野／映画「草の実」完成

*         共産党なぜ元気？注目世界から／海外メディアが見た日本

*         文化／『小説　鶴彬　暁を抱いて』／児童文学作家吉橋通夫さん／反戦川柳作家の苛烈な生涯

*         近江谷氏が講演「靖国派」を批判／新潟・治維法国賠同盟

*         横浜事件第四次再審判決に関して／いま、あらためて問う「世界史の動向と日本」／橋本進

*         映画「草の実」完成しました／長野で記念試写会

*         三浦光則文芸評論集　小林多喜二と宮本百合子／三浦光則著／評者新船海三郎文芸評論家

*         『北海道経済』４月号を発行

*         講演と文化つどい開く／札幌・星置９条の会

*         横浜事件再審免訴が確定／地検・遺族控訴せず

*         わが街ふるさと／岐阜・高山市／今も生きる一揆の思い

*         映画の中の日本文学／東京で開催中

*         治維法犠牲者に国賠法を／根室市議会が意見書

*         富山にも蟹工船あった／上映を機に市民が発掘／午前２時から午後１１時まで労働／スト弾圧／熱湯あびせ暴行

*         遅筆堂文庫が移設１５年／井上ひさしさん寄贈書２０万冊／今も毎年５０００冊／山形・川西町

*         寄席／民族芸能を守る会弥生例会／講談初の「蟹工船」重厚に

*         潮流

【4月】（本文）（Page/Top）

文化の集いで小説「母」朗読／札幌・光陽９条の会

　札幌市北区の光陽九条の会はこのほど、新琴似西会館で「文化の集い」を開きました。
　「土曜の午後を楽しみませんか」と近隣住民に呼びかけた集いには六十人が参加。三浦綾子の小説「母」の朗読に耳を傾けました。
　会場には小林多喜二の肖像画の原画が飾られ、飯田信之演劇事務所の長谷川京子さんが「多喜二の母」を約四十分熱演しました。
　ギター演奏、全員合唱で楽しんだ参加者は「ソマリア沖への自衛隊派兵は許されない」「憲法九条を守る世論をさらに広げよう」と話し合いました。
(２００９年０４月２９日，「赤旗」) （Page/Top）

スペイン内戦・独裁時代の犠牲者名誉回復で意見交流／人権活動日本委代表委員吉田好一氏に聞く


〝近代史の苦しみから〟
　スペインの首都マドリードで二十二日、二〇〇七年十二月にスペインの議会で成立した「歴史の記憶に関する法律」について、国際人権活動日本委員会を中心とする十五人の日本側メンバーとスペインからこの法律の専門家七人との意見交流会が行われました。意見交流会に参加した同委員会代表委員の吉田好一氏にその様子を聞きました。
　スペインでは一九三六年に選挙で成立した民主主義的な共和政府を打倒するためにファシストのフランコ将軍がドイツのヒトラーやイタリアのムッソリーニの力を借りて、反乱軍を蜂起させ、内戦状態となり、以後、フランコの独裁体制が三十六年間続きました。
　この法律は、内戦と独裁時代の犠牲者の名誉を回復し補償するためのもので、フランコ死後三十二年ぶりに成立しました。
　意見交流会は、国連人権理事会の拷問禁止委員会委員でカルロス三世大学教授のマリーニョ・メネンデスさんのお世話で開かれました。スペイン側の出席者は、同氏のほか、マルチン・パリン最高裁判事、法務省職員ら。
　スペイン側からこの法律について、大要次のような説明がありました。
　近代史のなかでのスペインの苦しみから生まれた法律である。野党・国民党が一部を除いて反対するなど、法律が生まれるまでは難産だった。
　この法律は、政治家、政党からではなく、一般社会の市民の力で成立した。共同墓地に埋葬されている十三万人の遺体の発掘や身元確認などにかかる費用は政府が支払うのが当然であるが、そのことがはっきりしていない。法律には強制力がないなどの批判があるが、ゼロよりはよい。妥協の産物である。
　この法律に関心をもっていただき感謝している。完全なものではないが、よりよいものにするために研究している。法務省に犠牲者のためのオフィスを設けている。四つの政令、二つの省令がすでに出されている。
　この法律はブラジルなど国際的な関心が持たれ、国内でも人権問題での問い合わせがくるようになった。スペイン国内ではファシストグループの反対なども起きている。
　日本側の参加者からは、「日本の歴代政権は、第二次大戦当時に日本人民に対して行った治安維持法や横浜事件などへの大弾圧ついて反省も謝罪も行っていない。『従軍慰安婦』や強制連行・強制労働、虐殺を伴う侵略と植民地支配についてもきちんとは反省・謝罪をしていない」
　「この法律の成立は、スペインの未来の平和と民主主義のためにつくられたすばらしい法律だ。日本にもこのような法律をつくることができればと、私たちに展望と確信を与えてくれました」との発言がありました。
　日本側からは、この法律を日本語に翻訳した南山大学の黒田清彦教授、「横浜事件」の無罪判決のためにたたかっている橋本進氏も参加、話し合いは三時間にも及びました。

歴史の記憶に関する法律
　スペイン内戦や独裁体制の間に、政治的・思想的な理由により迫害された人に対し、その刑罰・人権侵害の不当性を宣言し、名誉回復をする権利を認めました。犠牲者、遺族に年金・賠償金を国が支給。犠牲者の発見、遺体発掘を国が支援するとしています。スペイン内戦に共和政府側の義勇兵として参加した外国人にもスペイン国籍取得の権利を認め、その場合、賠償などが適用されます。独裁政権を賛美する公共の記念物の撤去、資料センター設置などを定めています。
( ２００９年０４月２９日，「赤旗」) （Page/Top）

多喜二をふるさとで読む会／「蟹工船」を語り合う／秋田・大館

　秋田県大館市の「小林多喜二をふるさとで読む会」が二十五日、同市立中央公民館で二〇〇九年読書会第四回例会を開きました。
　同会メンバーに加え、斉藤大悟・日本民主青年同盟県委員長や二月に同市内で開いた映画「蟹工船」（山村聡監督）上映会の阿部幸一実行委員長ら三十人余が参加しました。
　講師の小西育芳さんは「時代を超えた共感が広がっている。『蟹工船』は新たな連帯の機軸になっている」と話しました。
　斉藤さんは、「よくメールをくれる二十代の男性（厨房の仕事）は午前四時三十分に出勤して終わりは翌日の午前二時だった。青年への異常な働かせ方がどれだけ広がっているか。時代は違うけれども青年たちは（多喜二の小説から）労働者が立ち上がって（社会を）変えていける可能性を感じ、共感している」と発言。
　阿部さんは、「文学というよりは、ノンフィクションのドキュメンタリー番組を見ているようだ。いまの世の中をこれ以上過酷にしてはならないとの願いがブームに込められている。『蟹工船』という言葉が世の中にブレーキをかけるアピールになっていると感じている」と話しました。
　同会メンバーから「シラミをつぶしたときの生臭い感覚」などを聞かれ、斉藤さんは「シラミもノミも知りません。でも労働の問題を通して筋は理解できます。きょう参加してよかった」と話しました。
(２００９年０４月２８日，「赤旗」) （Page/Top）

映画「蟹工船」／新作の完成会見／今夏公開


「勇気と希望の熱い作品」ＳＡＢＵ監督／主演・松田龍平さん「つらい世界に光がある」
　小林多喜二の代表作「蟹工船」の二度目の映画化作品が完成しました。メガホンをとったのは、「勇気と希望を与えられる熱い作品に仕上がった」と語るＳＡＢＵ監督。十日、都内のホールで記者会見が開かれ、主演の松田龍平さん、西島秀俊さんらメーンキャストが顔をそろえました。
　時代を超えて読み継がれる原作に感動したというＳＡＢＵ監督は、「原作にはない主人公をつくりましたが、集団で立ち上がる話なので、全員にスポットライトがあたるように脚本を書いた」と話しました。出来上がりについては、「笑えて泣けて感動して、燃えられる映画です。『燃える』というのがポイント。原作にいろいろ付け加えてはいますが、最後は『もう一度立ち上がる』というところに着地していますし、自信をもって、これは『蟹工船』だといえる」と胸を張りました。
　主人公の漁夫・新庄を演じる松田さんも、「撮影を通してパワーをもらった。つらい世界のなかに光があるし、やればできるという気持ちにさせてくれるはず」と自信をのぞかせました。いまも多くの若者が不安定雇用に苦しんでいる状況について問われると「映画には鬼監督の浅川のような分かりやすい敵がいるけれど、今は向かっていくべき相手が見えにくく、つらいのでは」と答えました。
　その鬼監督・浅川にふんしたのが西島さん。「単に暴力的な極悪人にならないよう演じました。考えることを放棄しなければ行動につながるという監督のメッセージが胸に響いています。前向きな力を与えてくれる作品」と語りました。
　公開は今夏。監督は「多くの人に見てもらい、よりよい日本につなげられたら最高」と力をこめました。
　原作「蟹工船」は、北洋で過酷なカニ漁や加工作業を強いられる労働者たちがストに立ち上がる姿を描き、一九二九年に発表されました。昨年、無権利な非正規雇用が広がる若い世代を中心に共感をよび、異例のヒットに。累計売り上げは百六十万部を超え、流行語大賞トップテンにも選ばれました。五三年に、山村聡監督によって映画化された「蟹工船」も、昨年から各地で上映会が開かれています。
( ２００９年０４月２４日，「赤旗」) （Page/Top）

四・一六弾圧講演と上映会／塩釜

　治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟塩釜支部は十八日、塩釜市公民館で四・一六弾圧事件を記念して「人間・坂猶興（なおき）を語る」講演と「燃やし続けた炎」の上映を行い五十六人が参加しました。
　塩釜坂総合病院名誉院長の村口至氏が講演しました。村口氏は、無料診療化など地域医療の創造的発展を模索しながら、反戦・平和運動を貫いた坂猶興の人間像を貴重な資料と映像を使って浮き彫りにしました。坂猶興は肉親・兄弟から受けた影響をはじめ、青年時代に東北帝大で社会衛生学を学び、米騒動にもかかわるなど農民組合運動や消費組合運動に強い関心を持ち、四・一六事件で検挙され、秋田医療利用組合での診療活動の後に、大衆的な力で建てられた私立塩釜病院（後の坂病院）院長に着任しました。
　戦後、日本共産党宮城地方委員会結成に貢献、全日本民医連創設準備委員にかかわるなど、科学的社会主義思想に裏付けされた民主主義者として生きた医師坂猶興がめざした生き方を語りました。
　治安維持法違反の弾圧を聞けた関係者からの発言があるなど、田母神問題など歴史の歪曲（わいきょく）の動きが活発な中で先人のたたかいに学び、声を上げていくことが重要な課題となっていることを再認識する集いとなりました。
(２００９年０４月２４日，「赤旗」) （Page/Top）

「戦艦ポチョムキン」自主上映から５０年／山田和夫／米画優先の輸入制度に観客が初めて挑戦した


受動から能動へ歴史的転換点
　もう五十年たった。一九五九年二月二十一日、世界的な名画「戦艦ポチョムキン」（監督セルゲイ・エイゼンシュテイン）が完成して三十三年を経て、日本ではじめて上映された。その場所、横浜県立音楽堂に私はいた。この映画を何とか日本で上映したいと願う、個人と組織があつまった「『戦艦ポチョムキン』上映促進の会」による自主上映であり、私もその一員だったからである。

米占領軍下できびしい統制
　なぜ映画会社によって輸入され、映画館で一般公開されず、非商業ベースの非劇場における「自主上映」として上映がはじまったのか？　そこに五十年前のこの日のことをぜひいまの人に知らせたいと熱望する理由がある。本来どんな外国映画でも、輸入契約ができ、フィルムが到着すれば上映にとりかかれる。しかし敗戦後、一九五二年までは「連合軍」（実は米軍）の占領統治が、日本映画の製作から外国映画の輸入公開まで、きびしく統制していた。世界最大最強のハリウッドを持つアメリカは、占領期に米軍の日本市場を強権的に確保するため、外国映画の輸入割当制を施き、不公平な米画優先を押しつけた。一九五一年、日本の大蔵省にその制度が移管されたとき、実質的にその不公平が温存された。
　一九四九年、「戦艦ポチョムキン」の音楽入り新版がソ連本国でつくられ、一九五二年にはベルギーの世界映画・美術博で世界の映画監督による投票で、「戦艦ポチョムキン」は「世界映画史上のベストワン」に推された。ある小業者がその輸入を企てたが、前記「輸入割当」を持たず、持っている企業は三十年以上前の古典に目を向けなかった。
　当時映画の業界通信記者をやりながら、エイゼンシュテインの研究をはじめていた私は、周囲の仲間とともに、何とか「輸入割当制」に特例を設けさせようと広く映画を愛する人びとに訴えたが、当局は米画優先の「割当制」に固執して、広範な陳情活動を拒み続けた。一九五八年十二月、ついに前記「上映促進の会」が誕生、ソ連からの寄贈フィルムでの非劇場自主上映に踏み切ったのである。

ハリウッドの市場支配続く
　「戦艦ポチョムキン」は完成直後の一九二六年、横浜港にまで到着したが、天皇制検閲はロシア革命を描く名作の輸入自体を許さず、日本の映画人、映画愛好者にとって〝幻の名画〟となっていた。小林多喜二がその名声を聞き、「日本でも」と熱い気持ちを吐露したことも有名。そして戦後は日本を支配する米占領軍とその継承者日本政府による米画優先体制によって、長く日本公開を阻まれてきた。戦後日米映画界で今日までハリウッドの市場支配が続き、日本映画企業の対米依存を脱却できないでいる状況は、この体制からはじまっている。
　そして映画の対米依存体制に、最初の勇敢な挑戦を試みたのが、五十年前の「戦艦ポチョムキン」の自主上映であった。今日、全国の映画愛好者たちによる鑑賞運動が、受動的な観客の存在から、自分たちの見たい映画、仲間に見せたい映画を自分たちの力で上映する「自主上映」を進める能動的な観客へ、たしかに踏み出した歴史的な転換点であった。私はそう信じている。
　（やまだ・かずお　映画評論家）
　一九五九年に発行された「戦艦ポチョムキン上映促進の会」の冊子。映画についての本格的紹介とともにカット入りのシナリオも収録しています。
( ２００９年０４月２３日，「赤旗」) （Page/Top）

民青同盟が「蟹工船」ツアー／社会の仕組み変えたい／多喜二の足跡たどる

　貧困と格差が広がるもとで、日本共産党の大先輩で国民注目の作家、小林多喜二の生き方に学ぼうと、日本民主青年同盟道委員会は十九日､多喜二の足跡をたどる｢蟹工船ツアー｣を実施しました｡
　新入生・新社会人の歓迎企画として呼びかけたもので、十二人が小樽市の多喜二ゆかりの地を訪ねました。参加者は「自分たちの生き方を振り返る、いい機会になりました」と感想を述べました。
　はじめに日本共産党小樽地区委員会事務所で小樽多喜二祭実行委員長の寺井勝夫さんから多喜二の年譜と業績の講演をうけました。
　「多喜二の生涯から、人間愛、不正に毅然（きぜん）とたたかう勇気、科学的視野を持つためのたゆまぬ学習の姿勢を学んでください」と寺井さん。
　昼食には、地元産の白身魚・八角（はっかく）の刺し身やソイのあら汁が並び、「わー、すごいごちそう。民青やるじゃん」「やばいよ、道委員会」と歓声があがりました。
　午後からは、寺井さんの案内で小林多喜二文学碑、市立小樽文学館、多喜二が勤めていた旧北海道拓殖銀行、恋人田口タキとのデートスポットだった水天宮、小樽運河を訪ね、党地区事務所で花岡ユリ子道議から「雇用をめぐる道政の諸問題」の講演を聞きました。
　「冬が近くなると、ぼくはそのなつかしい国のことを考えて深い感動に捉（とら）えられている」―。獄中で書いた手紙の一節が刻まれた文学碑は、市内を一望する旭展望台のそばに建っています。
　寺井さんは、多喜二文学が抑圧された人々を励まし、文学碑は地道な募金活動で建てられたと説明しました。
　東京からやってきた「多喜二ツアー」の観光客三十人も一緒に耳を傾けていました。
　手紙や原稿、多喜二の虐殺を伝える当時の新聞記事、デスマスクを展示する小樽文学館では、「こういう字を書いた人なんだ。身近に感じるね」との感想が相次ぎました。
　水天宮は参加者の強い希望で訪れました。寺井さんは多喜二とタキの交流を紹介し、「みなさんもぜひ、すばらしい恋をしてください」と語りました。
　小樽運河では、小説「工場細胞」の舞台となった北海製罐小樽工場を見学し、当時の小樽の街の様子や労働者の実態について、説明を聞きました。
　参加者は「多喜二が生きた場所を訪ね、身近に感じました。すごい人だけど、人を愛する同じ人間だなあと思いました。巧妙に隠されているけど､『蟹工船』と同じような仕組みが今の社会にあると思います。変えていかなければいけません」（十九歳･男子学生)、「最近まで本当に生活が苦しかった。今では当たり前の権利も声をあげて一つ一つ勝ち取ってきたものだとわかりました」（二十六歳･会社員男性)と感想を出し合いました。
　四月に短大に入学した女性（１８）は「人と話すのが苦手でした。多喜二の小説を読んでみたいし、いろんな勉強もしてみたい」と、ツアーの後、民青同盟に加盟しました。
　（小泉健一郎）
(２００９年０４月２２日，「赤旗」) （Page/Top）

田母神論文の狙い国賠同盟が学習会／札幌

　治安維持法国家賠償要求同盟札幌女性部は十八日､｢日本の平和と田母神（俊雄・前防衛省航空幕僚長）『論文』が狙うもの」と題して札幌市で学習会を開き、八十五人が集まりました。講演の後、感想や情勢を話し合いました。
　講師の児玉健次氏（元日本共産党衆院議員）は、田母神氏の発言に表れている今の時代の危険さは一九二九年の世界恐慌の時期と重なるものもあると述べ、自衛隊のイラク派遣に言及｡｢イラク派遣違憲訴訟の名古屋高裁判決は、憲法を守る運動を励ましましたが、一方の『靖国派』は予想以上の打撃と深刻な衝撃を受け、これが田母神氏の発言に連なりました｡しかし､世界の流れは平和の方向に大きく動いており、誰も押し戻すことはできません｣と強調しました｡
(２００９年０４月２２日，「赤旗」) （Page/Top）

列島だより／長野／映画「草の実」完成

　戦前、治安維持法違反として多くの教員が弾圧された「二・四事件」を描いたドキュメンタリー映画「草の実」がこのほど、長野市内で公開されました。「信州の教育と自治研究所」と「長野映研」による製作委員会が完成記念の試写会として開いたものです。
(２００９年０４月２０日，「赤旗」) （Page/Top）

共産党なぜ元気？注目世界から／海外メディアが見た日本

　いま海外メディアが日本での貧困の拡大や若者の実態、そのなかでの日本共産党の活動に注目しています。この１０カ月間に、志位和夫委員長や市田忠義書記局長ら党幹部にたいする海外メディアの直接インタビューは３２回にも。報道の特徴を紹介すると―。

「経済大国」の貧困／たたかいの中、入党者次々
　世界第２の「経済大国」である日本で進行する貧困の広がり、若者たちの窮状とたたかい―。海外メディアが共通して指摘する日本の特徴です。
　「日本はＧ７諸国のなかで米国に次いで多くの貧困者を抱えている」と特記したのは、オーストリア紙ウィナー・ツァイトゥング（０８年１１月２８日付）です。記事はこんな描写から始まります。
　「『貧困反対！』とメガホンが叫ぶ。『立ち上がろう、そして社会を変えよう！』。こうした要求を掲げ、最近、何千人もの日本人が東京を行進した。今年、かれらは孤立していなかった。４０以上の都市で、人びとが路上で行進した」「『仕事がなくて、住むところを見つけるのも大変だ』と訴える若い女性。…背景にあるのは労働状況の激変である」
　そして、「届かない生活保護」と指摘し、「日本は福祉国家を知らない。…国は職業再教育のためにほとんど何もしない。すべての工業国のなかで日本は、労働市場への資金投入がもっとも少ない。批判者たちは『すべり台社会』と呼んでいる。一度落ちれば二度とはいあがれないからだ」
　こうした日本の実態が、日本共産党員作家、小林多喜二の『蟹工船』やマルクスの著作が読まれたり、日本共産党への接近の背景になっている―。この指摘もメディアに共通しています。
　仏紙ルモンド（０８年７月１１日付）では―。
　「小林多喜二の『蟹工船』は、１９３０年代のプロレタリア文学の傑作である。書店の最良の位置に平積みされ、文庫再版本の３大ベストセラーの座を定期的に占めている。…（読者層は）不安定雇用の青年で、よく『新たな貧困層』と称される人たちなのだ」
　「不安定雇用の青年は『蟹工船』の登場人物のように、個性をはく奪され、取り換え可能で、『使い捨て』だと感じている。なかには労働組合の萌芽をつくることで応えようと摸索している人たちもいる」
　とくにメディアが注目するのが共産党への関心の高まりや入党です。
　「資本主義に裏切られたと考える日本の若者が共産党に救いを求める」（英国の高級紙で発行部数が最大のデーリー・テレグラフ電子版０８年１０月１８日付）。「日本の不幸な非正規労働者たちが答えを求めて向かう先は、しっかりした左翼だ」（オーストラリア紙エージ電子版０８年９月２２日付）…。
　日本の隣の韓国は、主要紙すべてが、日本共産党に注目しました。
　志位委員長にインタビューして、「大企業の人間使い捨てで共産党入党者増える」という記事を掲載したのは中央日報電子版（０８年１２月２３日付）。「日本で最近、共産党入党者が増加傾向だ。今年(０８年)に入って、１万２千人の新入党員を確保した。経済不況で雇用不安になった若者たちが、頼る所を探しているのだ」とコメントしました。
　朝鮮日報（０９年１月１２日付）は、「最近の経済危機で非正規労働者の解雇が現実化し、共産党に対する社会的関心がぐっと高まり、まさに『解雇があるところに共産党がある』という言葉まで生まれている」と報道しました。

弱者助ける安全網／草の根組織が大きな力に
　今年２月２０日付の韓国紙ハンギョレは、「国会で、莫大（ばくだい）な黒字でお金（内部留保）を積み上げても非正規職を切り捨てる大企業の実態を指摘」した、と「志位委員長の活躍」に言及。志位氏へのインタビューを１ページ使って掲載しています。
　「日本社会の社会安全網が、新自由主義の構造改革でおろそかになり、共産党が構築した全国組織網が社会的弱者のための安全網の役割を果たしている｣と解説しました｡
　派遣村の活動など労働者・市民のたたかいとともに、日本共産党が草の根の活動で、社会のセーフティーネットの役割を果たしている―という指摘はほかにもあります。
　仏週刊誌『レクスプレス』（０９年２月１２―１８日号）は、「この党こそ国民のことを考える唯一の政党」だとの新入党員の言葉を紹介。「不安定な状況に置かれた人たちを守る側に常にいる日本共産党に加わることは彼らにとって当然のこと」だと伝えています。
　中国の国際問題専門紙環球時報（０８年７月２９日付）は、「日本共産党の支部会議を傍聴する」と題して、東京都内の党支部の活動や党員像を真正面にすえてくわしく紹介。また、インターネットサイトの「人民ネット」（同８月２日付）は、「客観的にいえば、日本共産党は弱者の代弁者であり、政府の言動を監督し、平和憲法を擁護し、右翼勢力をけん制する重要な勢力である｣とのべています｡

自主独立に驚いた／他国追随しない姿に信頼
　日本共産党の自主独立の立場に注目を寄せたのは、日本で発行している英字週刊誌の『メトロポリス』です。
　同誌１月１６日号の特集「赤い星、人気急上昇中」は、ソ連の覇権主義とたたかってきた日本共産党の歴史に触れ、「（ソ連）解体を積極的に歓迎する声明を発表する世界で唯一の共産党」とのべています。
　「日本共産党はモスクワであれ、北京であれ、ワシントンであれ、日本の問題を外国が牛耳るのを拒否してきた」「日本のアメリカ追随にも強く、はっきりと反対している」とも。
　前出の仏誌『レクスプレス』の特集「日本　日出ずる共産党」は、日本共産党に入党者が相次ぐ要因について「その独自の立場からも利を得ている」と分析。「１９６０年代、ソ連や中国の党から距離を置き、自主独立路線を選び、１９９０年代初頭のソ連崩壊を歓迎するほど」だった、とのべています。さらに、「日米同盟を拒む」が、モスクワに対しては千島列島返還を要求している―とし、どの国・勢力に対しても自主独立を貫く姿勢に注目しました。

未来社会論に関心／共産主義にどんな意味？
　少なくないメディアは、日本共産党の未来社会論にも関心を寄せています。
　前出の韓国紙ハンギョレは、志位委員長へのインタビューのなかで、「世界的金融危機で、資本主義の問題点が指摘されています」「こういう状況を分析して打破するのに、共産主義はどんな意味があるということでしょうか」と質問。志位氏が「ルールなき資本主義」から「ルールある経済社会」への転換を目指す党の立場を説明したうえで、次のように語った部分を紹介しました。
　「投機資本や恐慌を解決しようとするなら、利潤第一主義、すなわち資本の利益のための生産ではなく社会全体の利益のための生産へ、社会経済を根本的に変えなければならないということです。私たちはこれを、共産主義や社会主義と呼びます」
　また、ルモンド紙３月７日付は、「日本共産党の元気の源は何か」と題する志位委員長の講演（東京の外国特派員協会）に注目。「大企業が社会的責任を果たすならば、大企業に反対しない」との立場や「日本の戦略的独立と日米安保条約の友好条約への転換」を訴えていることなどを伝えました。
　英紙デーリー・テレグラフは志位氏の講演のあと追加取材を要請、学生党員を取材しています。
　◇
　この１年間、米国やノルウェーなど欧州各国、アジアでは韓国からインドネシア、台湾、トルコまで、多くの報道機関が日本共産党にかかわる記事を掲載・配信しました。世界に広がる日本共産党への注目を反映しています。
(２００９年０４月１９日，「赤旗」) （Page/Top）

文化／『小説　鶴彬　暁を抱いて』／児童文学作家吉橋通夫さん／反戦川柳作家の苛烈な生涯

　〈手と足をもいだ丸太にしてかへし〉―川柳で戦争をするどく告発した鶴彬（つる・あきら）。ことしは生誕１００年に当たります。日中戦争下、２９歳で命を奪われた苛烈（かれつ）な生涯を、『小説　鶴彬　暁を抱いて』に書いた児童文学作家の吉橋通夫さんを長野県の大町市に訪ねました。
　児玉由紀恵記者
　鶴彬は、１９０９年、石川県の高松町で生まれます。本名＝喜多一二（きた・かつじ）。本書は、１７歳の少年一二が、「天職」を見つけたいと、故郷高松を立って大阪に向かうところから始まります。それから命を断たれるまで十数年。貧窮の中で節を曲げなかった短い人生を、事実に虚構を交えて描き出します。
　「多くの人にお世話になりました。鶴彬の生涯の詳しい年表だけで、原稿用紙８０枚ぐらいになってしまって」と吉橋さん。出会いは、１８年前でした。
　「子ども向けの平和の本のシリーズ企画で、戦争に反対した人間を書きたいと探していたとき、川柳の本で鶴彬のことを知りました。あの戦争の時代に、こんな川柳をつくった人間がいたのかと大変な驚きでしたね」
　〈万歳とあげて行った手を大陸へおいて来た〉
　〈枯れ芝よ！　団結をして春を待つ〉
　〈地下へもぐって春へ春への導火線〉
　プロレタリア川柳作家として、時代に突き刺さる川柳を残した鶴彬。
　３７年、〈手と足を…〉の句や、戦死した兵の遺骨が、胎動のある妻に届く、という〈胎内の動き知るころ骨がつき〉など６句を雑誌『川柳人』に発表。治安維持法違反の容疑で特高警察に捕らえられます。獄内で感染した赤痢のため、３８年に死去。「時代の心臓を描き、歴史の未来をうたい得る短詩」「厳粛な現実批判の諷刺（ふうし）短詩」としての川柳に命をかけた生涯でした。
　「シリーズ企画のときは、鶴彬と仲良しの少年が主人公でした。その後鶴彬が主人公の作品を書きたい、と取材も続けて何度も挑戦したのです。でも、鶴彬という壁は大きくて、はね返されて」
　鶴彬のドキュメンタリー映画（神山征二郎監督）も発表される今年にこそと、書き上げた本です。

生身の人として
　「いかに生身の人間として読んでもらえるものにするか。それが一番の問題でしたね」
　残された作品や調べ得た事実、関係者への取材を重ねて物語を紡ぎました。
　１９２８年に郷里で高松プロレタリア川柳研究会を設立した契機は？　筆名・鶴彬の由来は？　心を寄せた女性は？　作家の目を生かし、大胆な推理を働かせます。
　「もっと生きていたら、すごい文芸評論家になったはず」と吉橋さん。本書には、澤地久枝さんが復刻した『鶴彬全集』から､川柳はもとよりたくさんの評論も引用。川柳の革新、大衆化を目指す鶴彬のほとばしる情熱にうたれる文章です。
　「〈今日も亦（また）あぶれか野宿雨に明け〉の句など、まるで失業者があふれる今の日本のようです。鶴彬の生きた時代と今とが似ている、時代が変わっていない、と悔しい思いでした。農村の句にも弱い者への温かい目があります」
　「鶴彬のすごさ」を何度も口にします。

若者への励まし
　書名は、吉橋さんが一番好きな句〈暁を抱いて闇にゐる蕾〉から。書斎に、鶴彬の書いたこの句の短冊（複製）を張り、鶴彬と向き合い続けてきました。
　「この句は、闇の中で苦しんでいる今の若者たちへの励ましになると思いますね」
　自身、子どもたちの生きる力になるものをと、児童文学の世界で活躍してきました。
　明治の初めの気骨あるジャーナリストを書いた長編『ザ　ジャパニーズ　コミックペーパー』。少年たちの人生の目覚めに温かいまなざしを注ぐ短編集『なまくら』…。
　「自分があまり素直ではないからか、反骨の人が好き。鶴彬にひかれたのもそうです。彼の願ったことを受け継ぐ人がひとりでも出てくれるとうれしい。鶴彬を多くの人に知ってほしいですね」
　よしはし・みちお＝１９４４年、岡山県生まれ。『たんばたろう』で毎日童話新人賞。『京のかざぐるま』で日本児童文学者協会賞。『なまくら』で野間児童文芸賞。『少年倶楽部のなぞ』『凛九郎』全３巻ほか著書多数
　鶴彬（１９０９～３８年）＝１５歳のときから、新聞に川柳の投稿を始める。２８年、高松プロレタリア川柳研究会を結成し、検束される。３０年、金沢歩兵第７連隊に入営。反戦活動で懲役２年の刑。川柳作家の井上剣花坊・信子らと交わり、『蒼空』『川柳人』などの編集に参加。『鶴彬全集』（７７年＝一叩人編、９８年＝澤地久枝復刻）
(２００９年０４月１９日，「赤旗」) （Page/Top）

近江谷氏が講演「靖国派」を批判／新潟・治維法国賠同盟

　治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟新潟県本部は十一日､新潟市で同中央本部の近江谷昭二郎副会長を迎え､｢３･１５､４･１６大弾圧記念集会｣を開き､八十人以上が参加しました｡
　｢田母神問題の背景と軍暴走の歴史の教訓を考える｣と題し講演した近江谷氏は､｢靖国派｣の田母神俊雄前航空幕僚長の論文が､侵略戦争を自存自衛の戦争だと言ったり､憲法九条を廃絶し､自衛隊の集団的自衛権行使や核兵器保有も可能にすべきだと述べるなど､愚劣な暴論だが､戦争を知らない世代が国民の７０%以上になっている今､若者への影響は軽視できないと指摘しました｡
　近江谷氏は､今はこうした｢靖国派｣の台頭とのせめぎ合いのときで､五･一五事件や二･二六事件のように､軍部が暴走して侵略戦争に突き進んで行った教訓から､｢靖国派｣の暴走をやめさせ､再び戦争と暗黒政治を繰り返させないよう､ともに全力をあげて奮闘しようと訴えました｡
(２００９年０４月１８日，「赤旗」) （Page/Top）

横浜事件第四次再審判決に関して／いま、あらためて問う「世界史の動向と日本」／橋本進


読みとれる実質無罪／過去の克服が未来をひらく
　さる三月三十日、横浜事件第四次再審裁判の判決が行われた（横浜地裁。大島隆明裁判長）。判決主文は「免訴」であった。しかし、その判決理由をみると、〝くさいものに蓋〟の免訴ではなく、実質無罪の趣旨が読みとれる。

法的な障害さえなければ無罪に
　判決理由は前半部分で①拷問の実在、拷問による自白の信用性の欠如、②泊宴会を共産党再建準備会議とすることの虚構性についての請求側提出証拠を、「無罪を言い渡すべき」新証拠と認定、再審開始を決定（〇八年十月三十一日）し、すべての証拠を取り調べたから、「法的な障害がなければ、直ちに実体判断をすることが可能な状態にある」（傍点・引用者）とのべた。法的障害さえなければ、法的形式論ではなく、事実実体についての判断をして無罪言い渡しをするケースとの趣旨である。だが、後半部分では免訴とせざるを得ない理由が説明される。論述は第三次再審での横浜地裁↓最高裁判決（〇八年三月十四日）よりずっとていねいだが、免訴論の基本点は変わらない。要するに最高裁判決とそれに至る法・判例の解釈操作（スリ替え論理）に従わざるを得ないのが法的障害なのである。今次再審開始決定理由において、原有罪判決の裁判を「杜撰」だったと明言し、敗戦時の記録焼却とそれを理由とした再審拒否を「裁判所の取るべき姿勢ではない」と言い切った大島裁判長までも、最高裁を頂点とした司法界のヒエラルキーの前に、立ち止まらざるを得なかったのであろう。
　しかし判決はそこで終わらず、あくまでも無罪を求める遺族の心情は十分に理解できるとし、刑事補償法にもとづく請求がされれば、その決定の中で「実体的判断」（すなわち無罪。公示される）ができる、とのべた。

百年たとうとも国の過ちただす
　第四次請求人、弁護団、支援する会は、控訴をせず刑事補償、実質無罪公示を求めていく方針をきめた。舞台をかえてたたかいはつづく。このたたかいは、無罪公示が実現してもひきつがれていくであろう（形態は変わっても）。なぜなら横浜事件再審請求の動機は、国家秘密法案という言論・表現・思想の自由の危機にあったし、請求人の要求は「百年たとうが、二百年たとうが、国の過ちは正されなくてはいけない」（小野貞さん）、個々人の被害はともかく「歴史のけじめを国につけさせたい」（畑中繁雄元中央公論編集長）というものであったからだ。その意味では、治安維持法が非人道の悪法だったことを国が宣言し、犠牲者・被害者すべてに謝罪と補償が行われて、初めて事件の最終決着が実現した、といえるだろう（現に治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟は、こうした要求を掲げる）。
　〇七年十二月、スペインで成立した「歴史の記憶に関する法律」（略称）は、つぎのように宣言する。市民戦争（内戦）及び（フランコ）独裁時代における政治的・思想的理由によるすべての刑罰、制裁の根本的不当性を認める（第二条）。同様に日本の侵略戦争と軍国体制の時代に、治安維持法を武器とし、平和・民主の思想と行動を、事件捏造までして弾圧した国家行為の根本的不当性が宣言される日は、来るであろうし、来させねばならない。

過去克服の努力世界は誠実対応
　過去（の誤まり）の克服が未来を拓くとの考えで、横浜事件再審請求は取り組まれてきた。ナチ司法への反省を含むドイツの過去克服の努力は知られているが、近隣の韓国でも「真実・和解のための過去史整理委員会」（〇五年）等の取り組みがすすめられている。規模、対象などは各様、曲折もあるが、過去への誠実な対応が世界の流れになりつつある。六十七年前、言論統制下、細川嘉六氏が必死の思いで提起した「世界史の動向と日本」（事件発端の論文名）の課題は、いまあらためて、新しい形で私たちの前に提起されているのである。
　（はしもと・すすむ　元『中央公論』次長）
　　◇
　横浜事件第四次再審裁判―判決報告集会＝５月８日（金）午後６時。東京・全水道会館（都営三田線・ＪＲ水道橋下車）。支援する会事務局℡０３（３２９１）８０６６
( ２００９年０４月１６日，「赤旗」) （Page/Top）

映画「草の実」完成しました／長野で記念試写会

　戦前、治安維持法違反として多くの教員が弾圧された「二・四事件」を描いたドキュメンタリー映画「草の実」が九日、長野市内で公開されました。「信州の教育と自治研究所」と「長野映研」による製作委員会が完成記念の試写会として開いたものです。
　長野県は同事件で検挙された教員が二百三十人と、全国一の人数でした。映画は、農村地域の貧困という時代背景やその子どもたちに心寄せる教員たちの姿に触れながら、当時の証言などもおりまぜて事件を振り返っています。
　監督・脚本を務めた野口清人氏は「今の日本にとって、二・四事件がどういう意味を持つか、この映画をきっかけに深めてもらえれば」と舞台あいさつ。
　鑑賞した横田晃治さん（７９）＝長野市＝は、「今でこそ治安維持法はないが、君が代不起立の教員が処分されるなど、人間を大事にする立場を否定するようなことがあって見過ごすことはできない。そのことを映画は呼び覚ましてくれた」と感想をのべました。
　「草の実」は佐久市や飯田市など、各地で順次公開される予定です。
　詳しくは０２６（２３２）１２２６長野映研まで。
(２００９年０４月１５日，「赤旗」) （Page/Top）

三浦光則文芸評論集　小林多喜二と宮本百合子／三浦光則著／評者新船海三郎文芸評論家


作者の意図を汲んだ誠実な作品評
　著者初の評論集である。プロレタリア文学、小林多喜二と宮本百合子、窪田精論はじめ民主主義文学にかかわる十四の論考を収めている。
　構造主義的に攻めるでも、テクスト論を立てるでもなく、流行病のような批評態度には見向きもせずに作品に分け入っている。作者の意図を汲みとり、それが作品にどのように具現されているか、作品に迫る著者の批評態度はそれに尽きている。新奇は求めるべくもないが、批評の誠実がここにはある。
　それでも、多喜二の「蟹工船」「不在地主」「工場細胞」を「小樽三部作」と位置づけ、戦争と資本と政府・国家と労働者をつないで解き明かそうとした多喜二の意図を証すあたりには、多喜二作品を深く読み込んだ著者ならでは面目躍如たるものがある。
　寡作だった手塚英孝が、ふとした側聞をどのようにして現今の社会状況と結びつけて世界を大きくしたのか、それによって作品が鋭い時代批判を獲得したことに踏み込んだ「父の上京」の分析も、著者の感動が率直に表されていて気持ちがいい。
　とりわけ､窪田精の｢工場のなかの橋｣｢鉄格子の彼方で」「流人島にて」の論考は、各論ながらそれらを通じた一個の作家論ともなっていて、読みごたえがある。窪田は、体験にもとづく世界と取材をもとにした世界とを二つながらに追求してきた作家だが、それは時代の課題に向き合ううえで必要な方法だった。自動車の独占企業に材を得た「工場のなかの橋」は、共産党を主人公の位置に据えて大河のように流れさせることで自分に引きつけ、自分の戦時下の体験である｢鉄格子…｣「流人島…」は時代社会を見る目を外に据えて客観に努力した。著者はそれを丹念に追い、窪田精という作家の輪郭、内心を鮮やかによみがえらせる。
　文章も平明な好著である。
　みうら・みつのり　一九四八年生まれ。
( ２００９年０４月１２日，「赤旗」) （Page/Top）

『北海道経済』４月号を発行

　北海道経済研究所はこのほど、『北海道経済』四月号を発行しました。三月十五日に開かれた「三・一五」大弾圧事件八十一周年記念講演会での治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟道本部事務局次長・宮田汎氏の記念講演「貧困と格差社会とたたかった戦前北海道の若ものたち」を収録しています。
　治安維持法下のきわめて困難ななか、労働者、農民の切実な要求の実現を求めて、侵略戦争反対を掲げて勇敢にたたかった若者たちの運動を紹介し、それを引き継ぐ今日の運動を励ましています。
　北大大学院の河野仁志氏の連載を掲載しています。
　頒価五百二十五円（送料六十八円）。
　北海道経済研究所は、電話・ファクスとも０１１（８５３）９３６６
(２００９年０４月１２日，「赤旗」) （Page/Top）

講演と文化つどい開く／札幌・星置９条の会

　札幌市手稲区で活動する星置九条の会は四日、二十三回を数えた講演と文化のつどいを同区で開きました。
　元電力中央研究所主任研究員で工学博士の本島勳氏が講演。「安全性の面からも、大型の原子力発電は急ぐべきではなく、技術の発達を優先すべきです。特にプルサーマル発電は、慎重であるべきです」と強調しました。
　文化プログラムとして、元劇団さっぽろの俳優、長谷川京子さんが三浦綾子の『母』の「多喜二の死」を朗読しました。四十分にわたる朗読に参加者は涙して聞き入りました。
　参加者全員で「日本国憲法五月晴れ」を合唱しました。呼びかけ人の吉原宏さんは「二十三回を数える九条の会ですが、今日は一番充実し、感動した集会でした」と閉会あいさつしました。
(２００９年０４月０９日，「赤旗」) （Page/Top）

横浜事件再審免訴が確定／地検・遺族控訴せず

　戦時下の大規模な言論弾圧とされる「横浜事件」の第四次再審請求で、治安維持法違反の有罪が確定した元雑誌編集者に対し、有罪無罪を判断せずに裁判を打ち切る「免訴」を言い渡した先月三十日の横浜地裁判決について、横浜地検、元被告の遺族側双方が、旧刑事訴訟法の控訴期限だった六日までに控訴しませんでした。これにより免訴が確定しました。
　遺族側は、控訴せずに国へ刑事補償を請求する方針。
　別の元被告五人の再審は、最高裁で昨年三月、免訴が確定しています。
( ２００９年０４月０８日，「赤旗」) （Page/Top）

わが街ふるさと／岐阜・高山市／今も生きる一揆の思い

　寒紅は　無常の風にさそわれて　つぼみし花の　今は散りゆく
　常盤木と思うていたに落ち葉かな―善九郎（寒紅かんこう―椿のこと。勘考とかけている。常盤木＝ときわぎ＝常緑樹。自分＝青年とかけている）
　これは、一七七三年（安永二年）大原騒動といわれる百姓一揆をたたかった、現在高山市上宝町本郷地区の青年リーダー本郷村善九郎（当時十八歳）が、高山で処刑される寸前に詠んだといわれる歌です。
　その裁判が行われた場所が、高山陣屋（高山市八軒町）です。陣屋の中には、本郷村善九郎が、妻おかよに送った手紙も展示してあります。
　高山陣屋は、江戸幕府の直轄地となったことにより、郡代・代官所だったところですが、忠実に復元したもので、全国でも唯一全体像が現存する陣屋です。陣屋門前は、「陣屋前広場」と市民に親しまれ、早朝から、おもち、つけもの、野菜など地元農産物が売られる「朝市」の場所となります。
　また、毎年四月十四―十五日は、春の高山まつりとなっており、屋台が立ち並ぶ絢爛（けんらん）豪華な「曳（ひ）きそろえ」の場所ともなります。
　冒頭の短歌は、一七七四年に、この陣屋で裁きを受け処刑された善九郎の処刑寸前の歌ですが、最後まで権力に屈しなかった若きリーダーへの感動をよびおこすものとなっています。陣屋に残されている善九郎の妻にあてた手紙には「私は、処刑も覚悟した。その方もあきらめなさい。この世では会えないと思うけれど、最後に一度会えば心残りも無いけれど、それもかなえられないようだ。ともかくご両親様を十分に十分に大切に願いたい」（要約筆者）とあります。
　小林多喜二の手紙の親を思う気持ちと通じて、大変興味を覚えます。この善九郎の思いは、今もなお高山市民に語られ引き継がれ生きています。
　（高山市議･伊嶌明博)
(２００９年０４月０６日，「赤旗」) （Page/Top）

映画の中の日本文学／東京で開催中

　東京・京橋のフィルムセンター（７階展示室）で、「映画資料で見る　映画の中の日本文学・パート２｣が､３日から６月１８日まで開催中です。
　時代の文化状況の中で、文学作品がいかに１本の映画になり伝えられたかを、スチール、ポスター、脚本などの展示でたどります。昭和の始まりから終戦期までに活躍した作家の原作による映画作品の特集です。
　小林多喜二原作・山村聡監督「蟹工船」（写真）や、岸田国士原作・吉村公三郎監督「暖流」、火野葦平原作・田坂具隆監督「土と兵隊」ほか。
　また、大ホールでは、関連企画として、「太陽のない街」（山本薩夫監督）、「無法松の一生」（稲垣浩監督)など１６本(１５プログラム）の上映が、４月１９日まであります。
　問い合わせは、℡０３（５７７７）８６００（ハローダイヤル）
(２００９年０４月０５日，「赤旗」) （Page/Top）

治維法犠牲者に国賠法を／根室市議会が意見書

　根室市議会（遠藤輝宣議長）はこのほど開いた本会議で、「治安維持法犠牲者に『国家賠償法』の制定を求める意見書」を全会一致で可決し、衆参両院議長、麻生総理大臣、法務大臣に送付しました。
　意見書は、治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟釧路支部（鈴木義澄支部長）が提出し、日本共産党根室市議団の奮闘などで可決されたものです。
　同趣旨の意見書可決は、根室管内では初めて。釧根管内十三市町村では三議会目です。
　意見書は、治安維持法による犠牲者が検挙者数十万人、送検者約七万五千人、虐殺・獄死も多数にのぼったと述べ、再び侵略戦争と暗黒政治を許さないために同法が人道に反する悪法であったことを認める、犠牲者に謝罪し賠償を行う、実態を調査し公表する、「国家賠償法」の制定を行う―ことを強く求めています。
　国賠同盟支部は、釧根十三市町村議会すべてで意見書が可決されるよう取り組みを強めることにしています。
(２００９年０４月０５日，「赤旗」) （Page/Top）

富山にも蟹工船あった／上映を機に市民が発掘／午前２時から午後１１時まで労働／スト弾圧／熱湯あびせ暴行

　「富山県にも蟹工船があった」―。小林多喜二原作の映画「蟹工船」（山村聡監督）が五日、富山県高岡市で上映されます。上映を機に藤本一夫さん（８０）＝同市＝が富山県の蟹工船の歴史を改めて調べたところ、労働者を虐待し、死亡させた事件が発掘されました。（海老名広信）
　事件の舞台は、冨山工船所有のエトロフ丸（四二〇〇㌧）。船団を引き連れ一九三〇年四月二十七日、函館を出港、カムチャツカ東海岸沖へ。富山県で最初の蟹工船でした。
　乗員は約四百人。当時の地元紙・冨山日報（現・北日本新聞）に載った練習生の談話によると、「労働時間は午前二時から午後十一時まで」。想像を絶する過酷さでした。

「１７名死亡」
　エトロフ丸は日露戦争（一九〇四年）の捕獲船を、この出漁にあわせて蟹工船に改装したもの。飲料水タンクが不良で野菜貯蔵庫が小さく、米や野菜は腐り、ろくな食事を与えず、栄養失調や病気の労働者が続出しました。「雑役　百名病み十七名死亡」と冨山日報は伝えています。
　漁雑夫たちは六月末、労働時間短縮、食糧改善を要求しましたが、拒絶されたため、ストライキで対抗しました。怒った漁労長ら幹部は熱湯をあびせ、殴る蹴るの暴行を加えました｡｢かたきをとってくれ」と遺言を残して亡くなった労働者もいたと報じられます。

素人ばかり
　事件当時は大恐慌で失業者があふれていました。県知事の号令で仕事のない農民や職人などを集め、素人ばかりの蟹工船を仕立て、過酷な労働に駆り立てた揚げ句の悲劇でした。
　当時大々的に報道された事件ですが、「歴史の陰に隠された」と藤本さん。県の公文書館に関係資料は保管されていません。「富山県史・資料編」に新聞記事が載るのみ。藤本さんは地元紙に勤めていた祖父や父から蟹工船の話を聞いた記憶はありません。古い漁業関係者も「知らない」というばかり。
　藤本さんが、図書館に眠る冨山日報のマイクロフィルムから、当時の様子を明らかにしたのです。
　各種の「漁業史」にあたりましたが､『富山県北洋漁業のあゆみ』に記述があるのみ。会社側の立場から、「（前年に発表され）話題をよんでいた『小説蟹工船』のイメージと重なり、けん伝された」「暴行事件は軽度」「報道内容と事実とは大きな相違」と事件を否定しています。

現代に警鐘
　結局、特高警察に「思想事件」として扱われ、加害者は裁かれませんでした。「魔の船」「地獄船」と書きたてた新聞も、その後を追っていません。
　違法な「派遣切り」が横行し、ミサイル防衛などきな臭い動きがあるいま、元電電公社で活動していた藤本さんは語ります。「新自由主義の嵐で、戦後、私たちが獲得してきた権利が奪われています。中国侵略を告げる『満州事変』の前年におきた富山の蟹工船事件は、私たちに『反撃せよ』と警鐘を鳴らしているのではないでしょうか」
(２００９年０４月０４日，「赤旗」) （Page/Top）

遅筆堂文庫が移設１５年／井上ひさしさん寄贈書２０万冊／今も毎年５０００冊／山形・川西町

　作家・劇作家の井上ひさし氏の寄贈書を展示する「遅筆堂文庫」が、山形県川西町の文化施設「フレンドリープラザ」に移設して今年で十五年になります。
　文庫のフロアには、井上氏が所有していた美術書や雑誌など膨大な書籍が並んでいます。中には、戯曲の資料にしたという『小林多喜二全集』もありました。井上氏が付せんを張ったり、メモをしたりした本をそのまま読めるのが文庫の魅力です。
　寄贈書の数は、未整理のものを含めると二十万冊を超えます。
　管理者であるＮＰＯ法人遅筆堂文庫プロジェクトの阿部孝夫代表（５４）は「毎年五千冊、段ボールに詰めた本が井上さんから送られてきますよ」と言います。
　文庫は一九八七年、井上氏が故郷の川西町に蔵書約七万冊を寄贈したことを機に、同町の公共施設に開館。九四年、完成したフレンドリープラザに町立図書館と合併する形で移設しました。
　演劇学校や編集講座など、文化活動にも取り組んでいます。「演劇学校の生徒だった女性が先日、シナリオ大賞を受賞しました」と阿部さん。遅筆堂文庫は、文化の風を川西町から送っています。
(２００９年０４月０１日，「赤旗」) （Page/Top）

寄席／民族芸能を守る会弥生例会／講談初の「蟹工船」重厚に

　「弥生例会」は講談の会。今回の聞きどころは、宝井琴星「蟹工船」（原作・小林多喜二）。
　日清・日露の戦争を経て一等国の仲間入りした日本だが、アメリカ発の世界恐慌のあおりを受けての昭和恐慌、農村は疲弊し、都市には失業者が溢れ…、現代と確かに世相が似ている。そんな時代に北海の果てで過酷な労働を強いられる者たちがついに立ち上がる。
　「蟹工船」は勧善懲悪の講談らしい話でもある。勿論、悪は利潤のためには人の命すらなんとも思わぬ資本家たちだ。琴星は、原作に忠実に、重厚な語り口で物語を綴ってゆく。最初のストライキは失敗に終わる。そのことで、労働者たちはホントに戦うべき相手が誰なのかを知る。そして、一人また一人と労働者たちは行動をはじめる。多喜二の作り出した見事な結末があるからこそ、今日、昭和初期のこの作品を語ることに大きな意義を見た。
　宝井琴嶺「佐倉義民伝」。これも農民のために己や家族を犠牲に権力と戦った名主の話。古典であるが、テーマは今を十分に語っている。琴嶺は文化芸術を愛した父親への思いも込め、歌舞伎の面白さを講談の中のあちらこちらに読み込んで聞かせた。
　トリは神田松鯉「出世高松」。ご存じ徳川光圀の、兄の出生の秘密を重厚な語り口で綴る。貧乏だが心優しい夫婦のやりとり、随所に交える軽い笑いが活きた、本格話芸を堪能させた。
　松鯉門下で連続講談を得意とする若手、神田阿久鯉は「天明白浪」。盗賊と町娘の恋を描いた世話物。町娘の心情の変化が女性らしい視点で面白い。
　ほか、田辺駿之介「秋色桜」、親孝行な少女の話を丁寧に綴る。宝井琴柑「寛政力士伝、谷風の子供時代」は師匠、琴星ゆずりの滑稽味が楽しみ。
　（稲田和浩）
　３月１９日　上野・宋雲院
( ２００９年０４月０１日，「赤旗」) （Page/Top）

潮流

　今年は、反戦・平和運動の歩みに消すことのできない足跡を残した二人の記念の年です。一人は山本宣治、もう一人は鶴彬（つるあきら）▼山本宣治は生誕百二十年、没八十年になります。山宣という愛称で呼ばれ、一九二八年の第一回普通選挙で当選した日本共産党系の代議士です。彼は国会で治安維持法による三・一五事件での権力の拷問の実態を生々しく暴露、弾圧者たちの憎しみをかいました▼鶴彬は生誕百年になります。プロレタリア川柳作家の彼は、川柳は「現実批判の風刺短詩」であるとし、美辞麗句で国民を動員する侵略戦争の欺（ぎ）瞞（まん）を暴き続けました。鋭い問題意識と芸術的刻苦は、「手と足をもいだ丸太にしてかへし」など、まれにみる秀句に結実しますが、これらの川柳の発表で特高警察に逮捕され、警察の留置場で赤痢にかかり死亡▼山宣は最高刑死刑を盛り込んだ治安維持法改悪が国会で可決された日、右翼に刺殺されます。殺されたあと洋服のポケットから、国会で治安維持法撤廃を訴える草稿が発見されました。そこでは「悪魔的誹（ひ）謗（ぼう）の的」になっている共産党こそ､労働者･農民の味方であると書いていました▼鶴彬の故郷石川県には「枯れ芝よ！団結をして春を待つ」の句碑がたっています。山宣の京都府宇治市の墓には「山宣ひとり孤塁を守る　だが私は淋しくない　背後には大衆が支持してゐるから」の碑文が書かれています▼二人をしのぶ出版が相次ぎ、鶴彬は今回映画化されました。先達の歩みを知る機会にしたい。
( ２００９年０４月０１日，「赤旗」) （Page/Top）

*         【3月】（ヘッドライン）

*         「蟹工船」上映と講演のつどい／神戸・長田区

*         ３・１５、４・１６弾圧／和歌山市で集い

*         横浜事件「４次」も免訴／元編集者の再審、無罪とせず／地裁

*         本立て／多喜二の時代から見えてくるもの／荻野富士夫著

*         「蟹工船」一般館で上映／２８日から／福岡・シネテリエ天神

*         ３・１５大弾圧事件記念講演会／札幌で市民１１０人参加

*         憲法の花開く時代に／治維法国賠同盟が講演会／青森

*         「多喜二」書いてますます好きに／シカゴ大学教授ノーマ・フィールドさん

*         不戦を決めた憲法／大和郡山で品川氏講演／奈良

*         多喜二の時代から見えてくるもの　治安体制に抗して／荻野富士夫著／評者尾西康充三重大学教授

*         鶴彬生誕１００年で集い／盛岡

*         ３・１５弾圧事件記念講演会開く／室蘭

*         市川正一の碑前祭／遺志を総選挙に生かす／山口・光

*         塩釜と多賀城定例街頭行動／治維法国賠同盟

*         若者が希望をもてる日本へ／志位委員長が語った丸ごと日本共産党／「ニコニコ生放送」

*         近畿の散歩道／詠んで走って／岩佐ダン吉／２／国有地に鶴彬の碑

*         野呂栄太郎没後７５年記念の集いから／児玉健次／専制政治下で搾取と貧困、戦争を企てる勢力を告発

*         反戦川柳の鶴彬生誕１００年／１４日に墓前で集い／盛岡

*         おはようニュース問答／没後８０年の山本宣治って知ってる？

*         いま行動しなければ／多喜二と野呂語る集い／札幌

*         たび／北海道・網走／弾圧と抵抗の跡／流氷砕き進む船

*         江別多喜二祭に１００人／作品朗読や愛唱歌演奏

*         山本宣治没後８０年／貧困根絶墓前に誓う／京都

*         潮流―戦前の労農党の代議士だった山宣

*         朝の風／「平和の正念場」住職の思い

*         没後８０年生誕１２０年山本宣治の節目の年に／小田切明徳

*         現代を映す「蟹工船」／発表から８０年／大阪で多喜二祭

【3月】（本文）（Page/Top）

「蟹工船」上映と講演のつどい／神戸・長田区

　映画「蟹工船」上映と講演のつどいが二十七日、神戸市長田区内で開かれ、三百人が参加しました。
　石川康宏・神戸女学院大学教授が「人間らしく生き・働くために」と題し講演しました。石川氏は小林多喜二の生き方に触れながら、全国の非正規労働者のたたかいや年越し派遣村の成果を示しました。神戸一日派遣村やストライキ権を確立して「派遣切り」とたたかう日本トムソンの労働者、郵産労のストなど兵庫のたたかいを紹介し、衆院選挙と七月の兵庫県知事選挙で政治を変えようと呼びかけました。
　「仕事探し中で、先生の話は身にしみてわかった。たたかいが社会を動かしている。元気が出ました」と語る兵庫区の男性（３０）や、高校一年の女子生徒＝長田区＝は、「映画は難しかったけれど、悔しいと思う気持ちが自然と出ました。講演は、ニュースでやってなかった派遣村の様子や、派遣の人が決意を訴えるのを見て、こんなことやっているんだとちょっとびっくりした」と話していました。
(２００９年０３月３１日，「赤旗」) （Page/Top）

３・１５、４・１６弾圧／和歌山市で集い

　「三・一五、四・一六大弾圧記念のつどい」（実行委員会主催）が二十九日、和歌山市で開かれ、五十七人が参加しました。「聳（そび）ゆるマスト」上映と橋爪利次日中友好協会和歌山県連会長の講演「蟹工船の時代と今日」がありました。
　橋爪氏は、小林多喜二の名作「蟹工船」の特徴と当時の治安維持法による野蛮な弾圧の実態、それに屈せず反戦平和と労働者、農民の権利を守るため奮闘した日本共産党と自覚的民主勢力のたたかいや三・一五事件の実態、県内での弾圧事件の実例を紹介。今日の蟹工船ブームと日本共産党入党者が毎月千人以上も増えている新しい情勢や世界情勢の変化について大きな希望のもてる時代がきたとのべました。
　引地延子実行委員長が「歴史に学んで私たちの運動を強めよう」と訴えました。
(２００９年０３月３１日，「赤旗」) （Page/Top）

横浜事件「４次」も免訴／元編集者の再審、無罪とせず／地裁

　戦時下の大規模な言論弾圧事件である「横浜事件」の第四次再審請求で、治安維持法違反の有罪が確定した雑誌「改造」元編集者の故小野康人さんの再審判決公判が三十日、横浜地裁であり、大島隆明裁判長は有罪無罪を判断せずに裁判を打ち切る「免訴」を言い渡しました。小野さん側は控訴せず、国に刑事補償を請求します。
　有罪確定から六十四年。小野さん側は「事件は捏造（ねつぞう）」と無罪判決を求めましたが、地裁は最高裁判例を踏襲し、退けました。
　大島裁判長はまず、拷問による虚偽の自白を認定した昨年十月の再審開始決定を踏まえ、「法的な障害がなければ再審で直ちに実体判断が可能な状態にある」と述べました。
　その上で、法的に無罪判決が言い渡せるかを検討しました。死後再審について「元被告の名誉回復の手段」と指摘｡｢遺族らは無罪を望んでおり、実体判断せずに免訴判決を下せば遺族らの意図は十分達成されず、心情は理解できる｣としました｡
　さらに、横浜事件について▽歴史的背景事情▽神奈川県警特高による拷問を認定した判決▽事件記録の破棄―を「一般の再審と異なる特殊な事情」に挙げました。
　一方で、小野さんが治安維持法の廃止により大赦を受けたことから、旧刑訴法の規定が適用されると判断。免訴でも無罪でも有罪の確定判決が失効して不利益がなくなる点は同じと言及し、「特殊事情があったとしても通常と異なる取り扱いをする理由にはならず、免訴すべきと判断せざるを得ない」と結論づけました。
　小野さんは一九四三年五月に逮捕、四五年九月に懲役二年、執行猶予三年の判決を受け確定。五九年に死亡し、次男新一さん（６２）と長女斎藤信子さん（５９）が再審請求しました。別の元被告五人の再審は、最高裁で昨年三月、免訴が確定しました。
( ２００９年０３月３１日，「赤旗」) （Page/Top）

本立て／多喜二の時代から見えてくるもの／荻野富士夫著

　「多喜二の時代」とは、２０世紀前半の「戦争と抵抗のせめぎあった時代」。「小林多喜二から見えてくるもの」で、多喜二が、社会変革をめざす「憤怒」を原動力として「一九二八年三月十五日」「蟹工船」を書くなど、プロレタリア作家・社会主義者として成長していった姿を描き、「暴圧」にどう向き合ったかをたどります。
　横浜事件の被害者たちが、戦後、特高警察を告発した思いも、多喜二の憤怒と同様のもの、と著者｡｢治安体制に抗して｣(副題）生きる人々に光を当てる論集です。
　（新日本出版社　税別２５００円）
(２００９年０３月２９日，「赤旗」) （Page/Top）

「蟹工船」一般館で上映／２８日から／福岡・シネテリエ天神

　映画「蟹工船」が福岡市のシネテリエ天神（中央区親富幸通り）で二十八日から上映されます。来月十日まで。「蟹工船」は昨年から福岡県と佐賀県の学校や諸団体に映画の配給や普及をしている九州シネマ・アルチ（福岡市）が自主上映を行ってきましたが、一般映画館での二週間にわたる上映は珍しいものです。
　作品は、プロレタリア文学作家で共産党員・小林多喜二の小説を映画化。カムチャッカ沖の蟹工船で過酷な労働を強いられ、それに立ち向かう労働者の物語です。
　昨年、ワーキングプアや派遣切りが社会問題となるなか、小説はベストセラーとなりました。「蟹工船」が流行語大賞に選ばれるなどブームに。今回の上映は、こうしたなかでシネテリエ天神がシネマ・アルチに上映したい旨を相談し実現しました。シネマ・アルチの担当者・吉村秀二さんは「プロレタリア文学に興味がなかった方にもぜひ見てもらいたい」と話しています。
　◇
　上映時間は百九分。①午前十時②午後一時五十五分③同六時二十五分―の一日三回上映します（二週目から変更の可能性あり）。一般当日千八百円。特別鑑賞券（千円）も発行しており、同券の問い合わせは０９２（７１２）５２９７のシネマ・アルチまで。
(２００９年０３月２６日，「赤旗」) （Page/Top）

３・１５大弾圧事件記念講演会／札幌で市民１１０人参加

　３・１５大弾圧事件八十一周年記念講演会が十五日、札幌市で開かれました。百十人の市民が集まりました。
　主催は、日本共産党道委員会、自由法曹団道支部、国民救援会道本部、民青同盟道委員会、治安維持法国賠同盟道本部です。
　外尾静子国賠同盟道本部会長は「八十一年前、侵略戦争に反対し国民主権を訴えた日本共産党や労働組合、無産青年同盟に大弾圧が加えられ、日本は悲惨な戦争に突入していきました。再び暗黒政治と戦争を許さない決意を固めましょう」とあいさつしました。
　党道委員会から宮内聡衆院比例候補が「ソマリア沖に派遣される護衛艦には死体安置所が設けられています。派兵恒久法を阻止し、雇用破壊をやめさせるために日本共産党の衆院議席を取り戻す決意です」とのべました。
　道高校教職員センター付属教育研究所長の宮田汎さんが「貧困と格差社会とたたかった戦前北海道の若ものたち」と題して講演。磯野小作争議や小樽港湾争議を労農同盟でたたかった一九二七年の北海道に共産党の組織が誕生し、３・１５弾圧に屈せずたたかった労働者、農民と小林多喜二らを語りました。
　札幌地区労連ローカルユニオン「結」の宮部末信さんが発言、拍手に包まれました。
　フロアからは「宮部さんの話は涙が出るほどうれしかった」との発言がありました。
(２００９年０３月２５日，「赤旗」) （Page/Top）

憲法の花開く時代に／治維法国賠同盟が講演会／青森

　治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟青森県本部は二十一日、松本善明元衆院議員を迎え､青森市の｢アピオあおもり｣で､戦前の大弾圧(三･一五事件､四･一六事件)を記念する講演会を開きました。県内各地から約二百人が参加しました。
　中村勝巳会長が､｢ふたたび戦争と暗黒政治を許すな｣とあいさつ｡日本共産党の､よしまた洋県書記長(衆院比例･青森１区候補)が｢先達に学び前進しよう｣と呼びかけ､高橋ちづ子衆院議員もメッセージを寄せました。
　松本氏は､｢あの時代は何だったのか」と題して講演。日本共産党への弾圧が苛烈（かれつ）を極めたのは、「主権在民、侵略戦争反対・平和」を掲げたためであったことを当時の情勢をもとに詳しく明らかにしました。
　松本氏は、治安維持法の弾圧に抗してたたかい抜いた人々の活動や、大きな変化の中にある現在の世界の動きも紹介し、「力を合わせれば、憲法の花開く時代をつくり上げていくことが可能な時代」と話しました。
　参加者からは、「松本さんのお話は、時代、社会は必ず前に進むことを示したもので感動しました」という声が寄せられました。
(２００９年０３月２５日，「赤旗」) （Page/Top）

「多喜二」書いてますます好きに／シカゴ大学教授ノーマ・フィールドさん


人はあなたのように本気で生きてみたいと一度は
　シカゴ大学教授で日本文学を専攻するノーマ・フィールドさんが、『小林多喜二―２１世紀にどう読むか』（岩波新書）を出しました。「この中には、私が四半世紀の間、考えてきた問題が全部入っている」とノーマさん。多喜二没後７６周年の２月２０日をはさんで来日した際に聞きました。
　児玉由紀恵記者

予期せぬ出会い
　「多喜二さん」―そう呼びかける手紙の形の「プロローグ」から、この本は始まります。「世界と向き合う作家へ」「銀行員からプロレタリア作家へ」「小樽から東京へ」の３部構成。資料､証言を駆使し､小林多喜二の２９歳４カ月の生涯と作品を浮き彫りにします。
　日本人の母と米国人の父の間に生まれ、１８歳まで日本で暮らしたノーマさん。多喜二との「予期せぬ出会い｣は､１９９８年のことでした。祖母光江（てるえ）さんが少女期を送り、戻ることのかなわなかった小樽の地をいつかは踏みたいという夢を実現させた旅で、ついでのように飛び込んだのが小樽文学館でした。
　そこに展示されていた多喜二の１通の手紙。貧しい家族のために身をひさぐ酌婦（しゃくふ）だった恋人に、自分を卑下するなと懸命に訴えるものでした。
　「その手紙を読んだとき、すごい吸引力を感じたんです。こういう青年だった多喜二さんは、生涯全体が魅力的な人だったんじゃないかな、と強い印象を受けました。昔、『蟹工船』を読んだだけで片付けていたことへの疑いが出てきたのです」

勇気必要だった
　多喜二研究を決意したのは、さらにその数年後でした。「階級」を古い概念とする研究者たちや、〝なぜいまさら多喜二？〟と言う周囲に向き合う勇気が必要だった、と言います。ブッシュ政権が生まれ、日本では、小泉内閣の「構造改革」で社会の疲弊が進み、イラク派兵が断行されるという時代が、多喜二研究へとノーマさんの背中を押しました。
　「私の〝多喜二探し〟の一部」という本書は、ノーマさんの清新な視点が大きな魅力です。登場人物の「ほとんど、だれもが何かひとつ捨てがたいものをもたされている」多喜二の作品。そこから、多喜二は「根本的に人間好きだった」ととらえるなど、多喜二と作品の発見に読者を誘います。
　「多喜二さんを理解しようとし、調べて考えることによって、この四半世紀に、私が直面してきた問題の一番大事なところを考える機会になりました」
　それは、文学と政治、社会の関係、そして資本主義というものについての探究です。
　「資本主義のなかでどう生きていくのか。その先を想像することはできるのか。多喜二さんたちは、それを真摯（しんし）に考え、体当たりしていた。その生き方を追うことを通して、自分が大学で教える人間になってから突き当たった矛盾などを考えざるをえなかったのです」
　日本が中国侵略に突き進もうとする時代に、反戦・平和、社会変革を目指し、プロレタリア（労働者の）文化運動を担った多喜二や仲間たち。ノーマさんは、なぜ彼らは、文学、文化を必要としたのか、と問います。
　「多喜二さんは、革命運動にコミットして、指導的立場にありましたね。文学だけで革命が起こるとは決して思っていない、けれども文学もあきらめないのは、政治的な活動だけで革命が起こるとも思っていないから。社会変革には、人々の心をとらえるものが絶対必要だと、彼らはわかっていたのではないかと思います」

初の日本語の本
　本書の「エピローグ」に、ノーマさんは多喜二にあててこう記しています。〈私はこころからお礼をいいたい。あなたが全身の力をふりしぼって、文学と社会変革をともに求めたことに対して､です｡人はだれでも、あなたのように本気で生きてみたいと、一度は思うのではないでしょうか〉と。
　０４年から０５年にかけて１年間小樽に住み、多喜二の墓前で言葉にならない思いを語りかけてきました。「第二の古里」と呼ぶその地の人々や、ブームの前から多喜二を大事に思ってきた人たち。本書は、それらの出会いや、多喜二研究の先達の成果なしには生まれませんでした。
　ドキュメンタリー映画「時代を撃て・多喜二」（池田博穂監督、０５年）の中で、〝多喜二にひどい拷問をした人は何の罪も問われないのか〟と素朴に語った老婦人。多喜二に会ってみたかったか、というノーマさんの問いに、間髪入れず大きな声で「ずっと会いたかった」と応えた９３歳の多喜二のいとこ…。多喜二に思いを寄せる人々との出会いの描写に胸を揺さぶられます。
　「今回、多喜二さんを書きましたけど、彼は独りではなかったということを強調したいですね。仲間があり運動があった。それがどんなに大切なことであったか。宮本百合子さんや松田解子さんら、プロレタリア作家の短編を英訳して出したいと思っています」
　初めて１冊を日本語で書くという格闘も終えた今、ノーマさんは言います。「この人と、この人の運動は、限りなく好きだなという思いが続いています」
　Ｎｏｒｍａ　Ｆｉｅｌｄ＝１９４７年、東京で生まれる。６５年、アメリカンスクール卒業後、渡米。８３年にプリンストン大学で博士号取得。シカゴ在住。著書『天皇の逝く国で』『祖母のくに』『へんな子じゃないもん』『源氏物語、〈あこがれ〉の輝き』ほか
(２００９年０３月２２日，「赤旗」) （Page/Top）

不戦を決めた憲法／大和郡山で品川氏講演／奈良

　奈良県の大和郡山革新懇話会と大和郡山市教職員組合などでつくる実行委員会が主催する経済同友会終身幹事の品川正治氏を迎えた講演会が十九日、同市内で行われ、二百七十人が参加しました。
　品川氏は「これからの日本の座標軸」と題して講演し、「日本の憲法だけが、戦争を人間の目で見て、戦争は二度としないと決めている」と語りました。
　また、大企業による派遣労働者切りに労働者、国民が強く怒っていることは「人間の目でみた資本主義をつくることに、一歩近づいていると感じている」と話しました。
　さらに､｢国民投票で改憲にノーとはっきり言い、選挙で日本とアメリカの資本主義のあり方は違いますとはっきり言えば、世界史が変わるともいえる。皆さんの出番だとはっきり意識していただきたい」と訴えました。
　ピースライブでは、シンガー・ソングライターのケイ・シュガーさんが「多喜二のレクイエム」などを歌いました。
(２００９年０３月２２日，「赤旗」) （Page/Top）

多喜二の時代から見えてくるもの　治安体制に抗して／荻野富士夫著／評者尾西康充三重大学教授


死してなお監視される暴圧を検証
　著者の荻野富士夫氏は横浜事件再審請求において、特高・治安維持法研究の第一人者として事実の解明に努めた。本書は小林多喜二を虐殺した「軍事的＝警察的反動支配」の正体を暴くと同時に、「治安体制」の「暴圧」が戦前から戦中、戦後へと連続・継承されたプロセスを検証している。
　荻野氏によれば、多喜二がプロレタリア作家として目覚める「思想的な跳躍台」になったのは一九二五年の「小樽高商軍事教練事件」であった。多喜二はこの「事件の遺産を引き継ぐ後輩の学生たちへのエール」として「『北方文芸』の数度の寄稿」と同誌の「左翼的傾向化」に「積極的な働きかけ」をおこなったという。
　そして『転形期の人々』が小樽高商軍教事件の前後から造形されているのは「社会主義者としての自覚に至る、紆余曲折といってよい長い『内的進展』の出発点」があったからで、多喜二は「小樽の街の輝かしい左翼の伝統」に連なる一員であることに誇りを持っていたとする。
　荻野氏は「治安体制」による「暴圧」に対して一貫して抵抗し続けた多喜二の内面には「権力・支配階級への『憎悪』」と「不屈の闘志および『火を継ぐもの』への絶対的な信頼」が存し、「権力や権威によって理不尽な犠牲を強いるものへの『憤怒』」は「人間性の豊かさに発する、虐げられたものへの共感と愛情、それゆえの社会の変革への強い意志」と表裏一体の関係にあったという。
　二〇〇四年の秋田多喜二祭記念展は陸上自衛隊情報保全隊による調査対象に含まれていた。「死してなお多喜二は監視されつづけている」と警告する本書は、多喜二の闘いが今も終わっていないことを主張する。
　おぎの・ふじお　一九五三年生まれ。小樽商科大学教授。『横浜事件と治安維持法』。
( ２００９年０３月２２日，「赤旗」) （Page/Top）

鶴彬生誕１００年で集い／盛岡

　反戦川柳に命をかけた鶴彬（つる・あきら）の生誕百年と「三・一五弾圧事件」にちなみ、鶴彬を語る盛岡の会と治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟岩手県本部は十四日、盛岡市内にある墓前で「春のつどい」を開きました。初参加者や秋田県からの参加者など三十人が献花と合掌をしました。
　語る会の牛山靖夫会長は、鶴彬をめぐる岩手の人々について、盛岡市の兄のところに助けを求めて来たことがある、母親の姉と妹が花巻市と一関市に嫁いでいる、北上市の長谷川英夫は鶴彬とは職場の同僚で、死の直前の鶴彬を見舞ったことを一九五〇年の「アカハタ」新聞に書いている―と報告しました。
　また鶴彬は「失職すると啄木が兄のやうに思はれます」と手紙に書き、治安維持法の弾圧で検挙されたため、未完となった評論「井上剣花坊と石川啄木」があることを紹介しました。
　参加者からは、映画「鶴彬こころの軌跡」の完成や小林多喜二のことが語られました。
　語る会の浦川陽子事務局長は、岩手とは縁の深い鶴彬の志を語り継ぎ、活動を広げようと訴えました。
(２００９年０３月２０日，「赤旗」) （Page/Top）

３・１５弾圧事件記念講演会開く／室蘭

　「三・一五大弾圧八十一周年記念講演会」が十三日、室蘭市で開かれ、六十人余が参加しました。
　治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟室蘭支部が呼びかけ、日本共産党室蘭地区委員会など八団体による実行委員会が主催しました。
　同盟道本部の宮田汎事務局次長が「戦時下、室蘭でたたかった不屈の人々」と題して講演。室蘭の労働者が一九二〇年代、不況と「合理化」、首切りに反対して室蘭合同労組に結集する様子を若き指導者、山口利哉らを中心に紹介。二八年に党室蘭地区が結成され、直後の三・一五弾圧で二十八人の検挙者を出すが、果敢にたたかったとのべました。室蘭出身の山田キヨやアイヌの森竹竹市にふれた宮田氏は「戦前のたたかいに学んで貧困と格差とのたたかいに団結し、立ち上がろう」と結びました。
　会場からは「若い人が頑張っていて励まされた」「アイヌ民族のことも掘り起こしてくれてよかった」との発言がありました。
(２００９年０３月１８日，「赤旗」) （Page/Top）

市川正一の碑前祭／遺志を総選挙に生かす／山口・光

　日本共産党山口県委員会（山本丈夫県委員長）は十五日、光市鮎帰りの市川正一碑の前で碑前祭を行い、約五十人が参加しました。
　光市出身で戦前、獄中で亡くなった日本共産党幹部、市川正一をしのび、毎年行われているもので、三十七回目になります。
　山本県委員長は「いろんな分野で、党の主張と国民の要求が合致して、党と共同するたたかいが大きく発展し、党と国民とのカベが低くなっている。来る総選挙で、中国ブロックで失った日本共産党の議席を今度こそ回復したい」とのべました。
　治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟県本部の林洋武会長は「市川正一をはじめ、多くの人が侵略戦争と命をかけてたたかった遺志を引き継ぎ、資本主義の先には何があるか、大いに語ろう」と強調しました。
　日本共産党の吉田さだよし衆院比例中国ブロック・山口１区候補は「国民の痛みがわからない政治を変えていくため、総選挙で勝利するため、全力をつくす」と決意をかたりました。
　参加者は、総選挙での勝利を誓い、碑に花をささげました。
(２００９年０３月１７日，「赤旗」) （Page/Top）

塩釜と多賀城定例街頭行動／治維法国賠同盟

　宮城県の治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟塩釜支部は七日、治安維持法改定案に反対したため労農党山本宣治が戦前暗殺された三月五日に合わせて、塩釜市と多賀城市で定例街頭宣伝を行いました。
　相原支部長は「この三月期には四十万人の失業者がでるともいわれ、治安維持法で虐殺された小林多喜二が描いた〝蟹工船〟よりひどい状況が広がっています。自公政権と民主党の混迷政治が深まるかたわらで国民投票のための予算が計上され、海賊対策を口実としたソマリア沖への自衛隊派兵の動きが強められています。田母神前空幕長による侵略戦争を肯定する発言を容認するなど、過去の戦争につながる、歴史を逆流させる動きに警鐘を鳴らしたい」と訴えました。
(２００９年０３月１５日，「赤旗」) （Page/Top）

若者が希望をもてる日本へ／志位委員長が語った丸ごと日本共産党／「ニコニコ生放送」

　日本共産党の志位和夫委員長が十二日に出演したインターネットの動画サイト「ニコニコ動画（ββ）」の「ニコニコ生放送」。その〝紙上再現〟です。

党名に刻まれた夢とロマン
　番組は、政治ジャーナリストの角谷浩一氏がコネクター（出演者と視聴者をつなぐ役割）を務め、あらかじめおこなわれた六つのアンケート（約六万人が回答）をもとに進んでいきました。

「ＣＧＪ」――志位・グッド・ジョブ
　冒頭、角谷氏は、志位氏が「ニコニコ動画」で「志位和夫チャンネル」を開設し、国会質問や記者会見の様子を発信していることを紹介。アンケートの第一問は、「ニコニコ動画上などで志位委員長が『ＣＧＪ』（志位・グッド・ジョブ）などの愛称で呼ばれているのを知っていますか」でした。
　「知っている」が８・９％となったことについて志位氏は、「結構多いですね。最初は（私も意味が）わからなかったのですが、若い人が教えてくれて。（国会質問などの）事実と論理をよくみていてくれるという感じがします」と。こう語っている最中にも「ＣＧＪ」の文字が次々と書き込まれていきます。
　二問目は、「『日本共産党』について、志位委員長にもっとも聞いてみたいこと」です。トップは「党の綱領」（日本の改革プラン）で３９％。これに、「組織上の特徴」２３％、「海外との交流」１４％、「マルクス」１３％、「党の歴史」１１％がつづきます。角谷氏は、とくに野党外交の問題を質問しました。

野党外交と、どうするアメリカとの関係
　角谷　海外との交流、野党外交という意味では、海外とどんな付き合いがあるのかということも結構、興味があるという答えが出ています。
　志位　私たちは野党ですけれども、外交活動に力を入れています。ひとことでいうと、全方位外交です。つまり、共産党だから他の国の共産党だけと仲良くするというやり方でなく、与党であれ野党であれ、革新であれ保守であれ、交流の意思のある政党とは全方位でお付き合いしようと。
　◇
　ロシアとは、旧ソ連時代の日本共産党への干渉にたいし大論争をおこない、ソ連が崩壊したときには歓迎の声明を発表したこと、中国共産党とは過去に断絶した時期もあったが、十一年前に関係を正常化し、現在は友好な関係を築いていると語った後、話はアメリカとの関係に移りました。
　◇
　角谷　（日本共産党は）反米ではないと。ここを少しわかりやすく説明してもらえますか。
　志位　日本とアメリカは本当の友好が必要というのが私の考えですが、本当の友達になるには支配と従属の関係ではなれませんよね。いまの「日米同盟」というのは、日米安保条約が結ばれていて、はっきりいえば、アメリカが日本を本拠地にしてイラク戦争をやる、アフガニスタン戦争をやるというものです。これはいまの時代に合わないものであり、それをなくす代わりに日米友好条約を結ぼうということを提案しています。私たちは、アメリカがいまおこなっている軍事政策は批判しています。しかし、アメリカの国民とは仲良くしたい。アメリカは民主共和制を世界で初めてつくった偉大な伝統をもっており、それには尊敬の念を持っています。だから本当の意味でアメリカと友好関係をつくりたい。そのためには対等・平等でなければ。
　◇
　角谷氏から、視聴者から「共産党は理想だけでは」と書き込まれたことが紹介されて――。
　◇
　志位　共産党は一九二二年に誕生しましたが、戦前の共産党は「国賊」とか「非国民」と呼ばれ、さんざん弾圧され、『蟹工船』の作者の小林多喜二たち先輩が、特高警察に引っ張られ拷問で殺されたんです。そういう弾圧を受けたが、あの時代に戦争反対をいい、専制政治をなくして民主的な日本をつくろうという主張は戦後、実ってきたでしょう。そのときは少数でも、道理に立つものが未来には多数になるというのが私たちの信念です。

日本共産党のめざす未来社会
　ここで届いたメールには、「こういう世の中だからこそ、良いものは良い、悪いものは悪いとはっきりいえる政党が必要だと思います」とありました。さらに別のメールでは、「党綱領を読んだのですが、日本共産党は最終的には社会主義・共産主義へと日本社会を移動させるとあり、その過程で生産手段の社会化がおこなわれると書いてありますが具体的にはどのようなことでしょうか」。
　◇
　志位　資本主義では、生産手段、たとえば工場とか機械とか土地など、生産のために必要な用具を資本家が握っていますよね。資本はこれを握っているために、働く労働者を搾取することができる。いま、派遣労働が問題になっています。むきだしの搾取ですね。労働者をしぼるだけしぼる仕掛けは、このように生産の用具を独り占めにしているからで、生産は社会全体のためではなくて資本の儲（もう）けのためになっています。私たちは〝利潤第一主義〟といっていますが、それをなくしていくためには、生産手段を社会全体、みんなのものにする、そのときに初めて、資本主義の矛盾を解決できる。
　角谷　「働く人が主人公だ」という書き込みがありました。頑張っている人が全体的にみんなでよくなると。資本至上主義ではないところで、みんなで幸せになる社会が目標だと思えばいいのですか。
　志位　目標は、働く人が本当の意味での社会の主人公になることです。そして、働く喜びとともに、人間は潜在的な能力をみんなもっている、一人ひとりがかけがえのない能力をもって生まれてくるけれども、今の資本主義の世の中は、とくに日本では開花できず、能力が押しつぶされる世の中です。そうではなく、人間が自分のもっている可能性、潜在力を自由に発展させることができるような社会というのが私たちの理想です。

政策の関心は、景気・雇用がトップ
　視聴者アンケートの第三問は、「共産党のかかげる主な政策のうち、志位委員長にもっとも聞いてみたいこと」です。第一位は、「景気悪化から庶民を守る」で２５％。これに、「正規雇用を増やし、長時間労働をなくす」１６％、「政治とカネのゆ着をたつ」１３％がつづき、志位氏はそれぞれに丁寧に答えました。さらにアンケートの第四問は、「志位委員長個人のことで、もっとも聞いてみたいこと」。「大学時代（東大工学部）の研究内容や生活について」などに関心が集まりました。これにも志位氏は、大学時代に日本共産党に入党し、学生運動に明け暮れながらも、超伝導の研究にとりくんだこと、二十歳代のときに猫を六匹も飼っていたことなどをユーモアを交えて語りました。

人類の社会は資本主義で終わらない
　そしてアンケートの第五問。「日本共産党という党名についてどう思いますか」です。
　「現状のままでよい」が５６％で、「変更したほうがよい」の４４％を大きく上回った結果に、志位氏は「温かい結果ですね」とのべ、党名に込められた思いをこう語りました。
　◇
　志位　私たちは共産党という名前に、「夢とロマン」ということを託しています。人類の社会は資本主義でおしまいではないという。資本主義は金儲けが第一ですよね。そこから貧困の問題が生まれたり、投機、恐慌、環境破壊などさまざまな矛盾が生まれてくる。この悩み多い体制、これで人類の社会は終わりではない、その先がちゃんとありますよという展望があるんですよね。
　角谷　書き込みに、｢夢とロマンの革命党｣というのが来ました。
　志位　それはいいなあ。共産党の語源のことをいうと、英語では「コミュニズム」でしょう。さらにその語源は、ラテン語で「コムニス」というんです。これは共同ということで、つまり、人間と人間が角を突き合わせて弱肉強食でたたかう社会ではなくて、共同して連帯して幸せな社会をつくろうというのが語源なんですね。この「コムニス」がそもそもの語源にあって、「コミュニズム」という言葉がある。だから、たとえば「コミュニティー・センター」というのがあります。これは直訳したら「共産センター」ともなりますよ。
　角谷　新しい理屈ですね。（笑い）
　志位　それくらい当たり前の話なんですよ。そういう社会をめざしているのだということを知っていただけたらうれしいな。でも、５６％が、いまのままの党名がいいというのはうれしいですよ。共産党アレルギーというのが、「ニコニコ動画」の（視聴者の）方々のなかにはあまりないんじゃないかという感じをもってこの結果を見ました。
　◇
　「政権について共産党に期待することは何ですか」――。アンケートの六番目の設問にたいする答えは、「今後も野党として与党を追及してほしい」５７％、「他党と連立して与党をめざしてほしい」２６％、「共産党単独で政権樹立をめざしてほしい」１７％でした。
　志位氏は、「この結果も、『与党をめざしてほしい』が（合計で）四十数％でしょう。共産党に政権までいってくれという声を激励として受け止めました」と語ったうえで、こうのべました。

本物の政権交代こそ
　志位　私たちは単独政権が目標ではないんですよ。あくまでも連立政権で、私たちのパートナーとして組める政党が出てきたら連立でやっていこうというのが大きな方向なんです。ただ、政権交代をやるときには、政治の中身を変えなければだめですよね。大企業が横暴勝手をやっている、それからアメリカいいなりになっている、この大本のところを本当に「国民が主人公」の日本にそっくり変えるという、そういう政権交代であって初めて、本物の政権交代になると思うんです。
　◇
　ここで番組がおこなったのが生アンケートです。ずばり、日本共産党が他党と連立する場合にどこがいいかという質問で、①自民党系、②民主党系、③それ以外の三つの選択肢で、結果は、①１９％、②６％、③７５％となりました。圧倒的多数の視聴者が、自民党はもちろん、民主党も、連立対象にすべきでないと考えている――。
　◇
　志位　なるほど。
　角谷　いまやろうとしている野党共闘のなかで、民主党と組むのはあまり、という声が…。
　志位　私たちも、民主党と政権を組もうというふうには思っていません。やはり日本の進路をめぐる大きな問題、憲法や消費税、雇用の問題などで考え方が違いますから。個別の問題で一致点があれば協力しますが、政権を組むということは考えていない。自民とも民主とも政権協力の条件はないと。
　角谷　ではどこと組むのか。政界再編が起こったほうがいいんですか。
　志位　いま日本の社会は大きな激動期に入りつつあると思うんですね。戦後ずっとやってきた、外交はアメリカ頼み、経済は財界頼みがもうやっていけなくなった。そこを大きく乗り越えた社会の変革が必要なところに来ているわけですが、その志は自民党にも民主党にも見られません。そういう本当の激動期には、「政界再編」というよりも、共産党と政権をいっしょにできるような新しい政治潮流、政党が出てくると思います。
　角谷　新しい波というか勢力が今後、生まれる可能性はあるかもしれないと。
　志位　必ず生まれると思いますね。

マスメディアへの注文
　最後の設問は「メディアについて、志位委員長にもっとも聞いてみたいこと」。３５％で第一位となった「ＴＶ、新聞等における政治報道の姿勢について」に関し、志位氏は二点、〝注文〟をしました。一つは、政党や政治家の離合集散など政局報道だけではない、政治の中身の報道をしてほしいということです。二つ目は、自民と民主の「二大政党」の枠内に国民を押し込むような報道をやめ、各政党を公正・平等に扱うことが必要だということです。その点で、「ニコニコ動画」の平等性を高く評価しました。

政権をとったら
　五千人以上が視聴し、約三万二千件を超える書き込みのコメントが寄せられた番組後半、角谷氏は、こんなメールを紹介しました。「もし共産党が政権をとったら何を一番したいですか」――。
　◇
　志位　やっぱり若い人が希望を持てる日本をつくりたいですね。なんといってもいま、若い人が「派遣切り」の問題もありますけれども、未来になかなか希望が持てない、安心して結婚して家庭をつくって子どもをつくってという未来が見えないというのは、社会のあり方として一番不幸なことです。そういう社会にしてしまった政治の責任は大きいんですけれども、若い人が本当に安心して未来に希望を持って暮らせるような日本をつくりたいな。
　◇
　その具体的な課題として志位氏は、切り刻まれた「使い捨て」の労働をなくし、正社員が当たり前の社会をつくること、均等待遇の実施や長時間労働をなくすなどの労働のルールをつくること、さらに、社会保障から、一番弱い立場の人々が排除されている現実をただすことの意義を強調。「雇用と社会保障という、人間が生きていくうえで一番基本のところで安心して暮らせる日本をつくりたい」と語りました。
　そこで最後に紹介された書き込みが、「革命でやるんですか」。こんなやりとりで番組は終わりました。

国民と相談しながら一歩一歩すすむ
　志位　やっぱり私たちがやろうとしているのは革命なんですよ。革命というのは世の中を根本から変えることで、アメリカ・財界頼みの日本から、本当に国民が、憲法に書いてある通り主権者になる、そういう日本に変えるというのは大きな革命です。しかし、これは社会主義の革命でなく、本当の民主主義を日本に打ち立てる民主主義の革命です。まずこれをやり遂げたうえで、さらに国民の合意でその先の社会を、私たちは社会主義・共産主義といっていますけれども、その方向にすすんでいこうというのが私たちのプログラムなんです。
　角谷　そこは平和的にということで暴力革命ではないと。
　志位　どんな社会の発展も、選挙で事前に国民のみなさんと相談する。つまり、選挙での審判をへて、一段一段と階段を上るようにやっていくのが私たちの考えです。
　◇
　視聴者からは、「えーもう終わりなの」「また来てねー」「さすがＣＧＪ！」「いつまでも労働者の味方でいてください」「総理大臣になってくれ」などの書き込みが相次ぎました。
( ２００９年０３月１４日，「赤旗」) （Page/Top）

近畿の散歩道／詠んで走って／岩佐ダン吉／２／国有地に鶴彬の碑

　梅の香巡りの人からスケッチや、中には三味線の伴奏で「黒田節」を歌う人、三月一日の大阪城公園の梅林は人の渦でした。私の足は〝鶴彬（つる・あきら）の碑〟へと向かいましたが、天守閣を仰ぎ見る豊国神社の南東の林では、木漏れ陽を浴びて猫一匹が毛繕い。七㌧もある白い伊勢御影石の碑には人ひとりいませんでした。
　妻と碑周辺の雑草を抜いたり、指を熊手にして落葉を集めていたら昨年の没後七十年の忌日、九月十四の句碑除幕式の熱い日がどっと甦ってきました。
　
　金沢の歩兵七連隊内での反戦活動が治安維持法に問われ、鶴彬がこの地にあった大阪衛戍（えいじゅ）監獄に送られてきたのは一九三一年、彬二十二歳の春でした。
　タマ除けを産めよ殖
　やせよ勲章やらう
　手と足をもいだ丸太
　にしてかへし
　命かけて反戦の川柳を貫き二十九歳で獄死した彬、その太い背骨を培った地に句碑を建立したい、あかつき川柳会が中心を担った運動は五年余に及びました。
　彬の碑は出身地である石川県などに三基ありますが、大阪城公園という国有地での建立は初めて―管理する大阪市との交渉は「川柳とは、鶴彬とは」に始まり三十回。ついに「（百日紅三本の）植栽を寄贈する」ことで合意、全国からの賛同募金者は千三百人に達しました。川柳とは、庶民の思いや暮らしを面白おかしく詠む言葉遊びのような世界と思っていた頭をガツンと叩いた鶴彬は、私の永遠の師でもあると思っています。
　碑の掃除が終わった頃に浪速区の友人・坂口富美子さんら新日本婦人の会・のぐさ班の一行が訪ねてくれしばし歓談、帰りに「ありがとう、また来てや」、彬の声が聞こえました。
　（川柳人＝週一回掲載）
(２００９年０３月１３日，「赤旗」) （Page/Top）

野呂栄太郎没後７５年記念の集いから／児玉健次／専制政治下で搾取と貧困、戦争を企てる勢力を告発

　二月十九日は天皇制政府の暴虐とたたかいぬき、警察の拷問で病状を悪化させ三十三歳で生涯をおえた野呂栄太郎の没後七十五年にあたります。野呂の遺骨は厳重な監視のなか弟武男（故人）の手により郷里北海道長沼の佛現寺に運ばれ、葬儀も許されませんでした。記念の集いはその佛現寺で行われました。これは初めてのことです。本堂は九十名をこす参加者でいっぱいになりました。
　土田玄住職の読経、何人もの方が唱和しました。続いて「２１世紀に野呂栄太郎が残したもの」と題して私はいくらかのことを話しました。
　長沼の小学校から札幌市の北海中学に入り、義足の野呂は野球部スコアラーになりました。自らが編集主任を担当した協学会会誌１９号（一九二〇年一月）野球部の頁で、Ｐ（ピッチャー）大坂「天性の頑強な体から投出される球には一種の魔力が潜んで居るかと思われる」などと各選手の特徴を紹介しています。参加者は野呂を身近に感じたようです。

『日本資本主義発達史』に結実
　二〇年四月、慶応義塾大学に進学、やがて労働学校で『資本論』を講述します。「労働者の科学的要求は、私をして、進んで明治維新を契機とする日本の政治的、経済的、社会的変革及び発展過程の分析に没頭せしめた」、これが『日本資本主義発達史』に結実します。遅く出発した日本資本主義の特徴を、『資本論』に導かれながら官庁統計などを駆使して解明していきます。天皇の絶対的支配権が「資本家階級と地主階級のブロック」を支柱とし、地主が小作農民からとりあげる封建的「年貢」が収穫の五割内外に及ぶことを事実に基づいて明らかにします。これは、雑誌『労農』に依拠する論者が、「わが地主の多くは消極的に地代を収得するにすぎない」「地主階級はもはや支配の実権を失っている」（猪俣津南雄）などと議論を展開することへのきびしい批判でした。野呂は、数多くの社会科学者を結集して三一年から『日本資本主義発達史講座』の刊行に向けて協議を始めました。ちなみに、「講座」の最初の印刷は三二年五月十五日、犬養毅首相が軍部ファシストによって「問答無用」と暗殺された日です。
　コミンテルンでは、片山潜、山本懸蔵なども参加して日本問題が検討され、三二年五月「日本における情勢と日本共産党の任務にかんするテーゼ」が決定されました。野呂は、自分たちの研究が、これを学問的に支えるものとなったことを喜びました。
　いま、日本共産党綱領は、戦前の日本社会を「国を統治する全権限を天皇が握る専制政治（絶対主義的天皇制）がしかれ…農村では重い小作料で耕作農民をしめつける半封建的な地主制度が支配し、独占資本主義も労働者の無権利と過酷な搾取を特徴としていた」とし、これとのたたかいに党活動の原点があることを示しています。

世界恐慌、 中国侵略拡大のさなかで
　野呂は、三〇年一月、日本共産党員になります（宮本顕治「野呂栄太郎の思い出」）。
　二九年十月、世界恐慌始まる。三一年九月、満州事変。この状況で野呂は国民のたたかいを組織するために、日本共産党の指導的幹部の一人として結核の病状をおして全力をあげます。野呂が執筆した失業、飢餓反対闘争の要求（「赤旗」三三年二月十五日所載）を参加者に配りました。
　政府、資本家全額負担の失業保険即時実施、二十二億の軍事予算を失業者、労働者、農民にふりむけろ、失業者の要求どおり仕事を出せ、臨時工を即時本雇いにしろ、植民地より即時撤兵しろ――

学びつつ国民のたたかいに参加
　派遣切り、期間切りをやめ雇用の確保、消費税の食料品非課税、あらゆる形態の自衛隊海外派兵反対―現在私たちが国民的緊急課題としている諸要求と重なりあっているではありませんか。
　搾取と貧困、戦争を企てる勢力へのきびしい告発、学ぶことと国民のたたかいに参加することをしっかり統一する、野呂栄太郎の生き方に深く学びたいと願います。
　（こだま・けんじ　元衆議院議員）
( ２００９年０３月１２日，「赤旗」) （Page/Top）

反戦川柳の鶴彬生誕１００年／１４日に墓前で集い／盛岡

　生誕百年を迎える反戦川柳人・鶴彬（つるあきら・本名喜多一二）の功績をしのんで、十四日午前十一時から盛岡市の墓前で「春のつどい」が開かれます。「鶴彬を語る盛岡の会」会長の牛山靖夫さんが一文を寄せてくれました。
　手と足をもいだ丸太にしてかへし
　胎内の動き知るころ骨がつき
　鶴彬は一九〇九年＝明治四十二年一月一日、石川県高松町（かほく市）に生まれました。ことしは生誕百年になります。
　十五歳から川柳をはじめ、金沢歩兵七連隊に入営後、「赤化事件」のため、治安維持法違反で懲役二年の刑をうけ、大阪の衛戌（えいじゅ）監獄に収監されます。
　一九三七年、再び治安維持法事件で検挙され、翌年九月十四日に東京で絶命しています。二十九歳でした。
　小学校卒業までの十四年と軍隊での四年を除く十年に、千四十四句の川柳と十四編の詩と八十五編の評論を書いています。遺骨は盛岡市で染物屋をしていた兄の孝雄がひきとり、葬りました。
　このほど故孝雄の妻、多鶴さんが「警察に追われて、殺されるかもしれない。助けてくれと、夫を訪ねてきたことがある。夫は逃げろといって逃がしてやった」と語りました。鶴彬が盛岡市に来ていたことが初めて明らかになりました。
　鶴彬はよくよく岩手には深い縁があります。母の姉と妹が花巻市と一関市に嫁いでいます。鶴彬は盛岡市光照寺の名須川町にある喜多家の墓に、いまは父母や兄とともに眠っています。
　生誕百年を記念して神山征二郎監督の映画「鶴彬こころの軌跡」が完成し、三月に石川県で初公開されます。
　岩手では鶴彬を語る盛岡の会と治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟県本部が、今年は十四日に鶴彬春のつどいを開きますので、ご参加ください。
(２００９年０３月１１日，「赤旗」) （Page/Top）

おはようニュース問答／没後８０年の山本宣治って知ってる？

　秋平　今年は山本宣治の没後八十周年なんだね。五日に京都府宇治市で墓前祭があったよ。
　晴男　うん。きみは山宣（やません）を知っているのか。

大弾圧に抗して
　秋平　もちろん。日本共産党を弾圧した治安維持法の大改悪に反対し、特高らによる残虐な拷問などを帝国議会で告発・追及した衆議院議員だろう。一九二九年三月五日に、右翼のテロリストが彼を刺殺したんだ。
　晴男　日本共産党は、彼の死後、その活動をたたえて党員の資格を送ったんだね。京都府宇治市の墓碑には「山宣ひとり孤塁を守る／だが私は淋（さび）しくない／背後には大衆が支持しているから」という、暗殺前日の演説の句が刻まれている。
　秋平　労働者や農民を信頼した彼の生き方があらわれているね。
　晴男　長野県の別所温泉にも、彼の記念碑があるんだよ。
　秋平　へえ。それは知らなかったな。
　晴男　彼は、三月一日に当地の農民組合に招かれて演説したんだ。彼の暗殺の報を聞いた農民らが、その死を悼み記念碑を建てた。当局に取り壊しを命じられても密かに守ってきたんだよ。
　秋平　ほんとうに大勢の人に親しまれてきたんだな。ところで山宣は、議員になる前は何をしていた人なの。

科学的な性教育
　晴男　新進の生物学者で、性に対する偏見に満ちていた時代に、官憲の妨害にあいながらも科学的な性教育や産児制限を紹介したんだよ。そこから社会問題にもとりくんでいったんだね。
　秋平　すごいな。アインシュタインにも会ったことがあるって聞いたけど。
　晴男　よく知っているね。一九二二年にアインシュタインが来日したとき、自分が翻訳した反戦運動家の生物学者Ｇ・Ｆ・ニコライの『戦争の生物学』への推薦文をもらったんだ。そのとき平和運動のありかたも話しあったらしいよ。
　秋平　本当に幅広く多彩な活動をしていたんだなあ。今年は五月二十三、二十四日に京都で開かれる「生誕一二〇年記念全国交流会｣や､十月十､十一日の｢足跡を訪ねる信州のたび」などの催しがある。彼の業績や生き方を､深く学びたいね｡
( ２００９年０３月１１日，「赤旗」) （Page/Top）

いま行動しなければ／多喜二と野呂語る集い／札幌

　「小林多喜二と野呂栄太郎の志を引き継ごう」と、札幌市の中心街職場九条の会・ＨＡＴＯＳの有志でつくる実行委員会は七日、「小林多喜二と野呂栄太郎を語るつどい」を札幌市で開き、七十人が参加しました。
　「多喜二祭」実行委員長で治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟小樽支部長の寺井勝夫氏が多喜二について、野呂栄太郎碑管理委員会現地責任者で野呂の出身地・長沼町の薮田享日本共産党町議が野呂について、それぞれ講演しました。
　寺井氏は、多喜二の年譜をたどって人生と業績を語りました。
　多喜二の死が「派遣切り」「蟹工船」が話題となるいまの社会と断絶していないと語り、「虐げられた人々への人間的な思いやり、支配勢力と容赦なくたたかう気概、たえざる理論の深化で科学的洞察力をつけることを多喜二の生き方から学ぶことが大切です」と強調しました。
　薮田氏は、自らの営農体験を交え、長沼町で頻発した小作争議や水害の歴史から野呂の育った環境や、多くの人に慕われ、弾圧に屈せずに信念を貫いた生き方を紹介。「野呂の遺志を引き継いで、人間らしく生きられる社会実現のために、人をモノ扱いにする政治とたたかうことが重要です」と述べました。
　参加者は「虐げられた人たちに心を寄せる多喜二や野呂の生き方に感動しました」と語っていました。
　最前列で熱心に聞いていた女性（５９）＝札幌市東区＝は「多喜二の小説が書かれた背景を知ることができ、改めて作品を読んでみたいと思いました。そしていま行動しなければ、と思います」と話していました。
(２００９年０３月０８日，「赤旗」) （Page/Top）

たび／北海道・網走／弾圧と抵抗の跡／流氷砕き進む船

　北海道の網走駅に降り立ったら、南風。普段の行いが災いしたのか、流氷ははるか沖合に流されています。
　まずは、白樺の林の中に建つ北方少数民族資料館「ジャッカ・ドフニ」（ウィルタ語で、「大切なものを収める家」）をウィルタ協会の弦巻宏史さん（７１）の案内で訪問。
　ウィルタはサハリンの先住民族です。第二次世界大戦前、支配した日本による民族同化政策のもと、戦争に協力させられました。戦後は戦争犠牲者にも、シベリア抑留者にも、日本政府は今なお補償していません。
　それに抗議して教師や教員組合、民主団体、市民が立ち上がり、訴訟を起こし、ウィルタの文化と精神を伝えるためにと、募金で作られたのがこの資料館です。
　冬季は雪に埋もれて内部の見学ができませんが、ウィルタの文化・技術、精神に接するために、同資料館が開館する５月以降に訪ねたいと思いました。
　翌朝、期待通りの北風です。流氷観光砕氷船「おーろら」に乗船しました。出航してほどなく流氷原に突入し、ガツンという音をたてながら、前進します。氷の丘の上には、国の天然記念物のオオワシがとまっていました。極地以外で広大な流氷を見ることができるのは、世界でもこの地方だけです。日本共産党の松浦さとし、いいだ敏勝両市議は「最近は流氷が少なくなっています。来なくなると観光だけでなく、魚介類のえさのプランクトンも減り、漁業も大変です」と口をそろえて心配します。
　午後、網走刑務所を見て、旧網走刑務所を移築、復元した博物館「網走監獄」を訪ねました。囚人を収容した五翼放射状の平屋舎房は、廊下の両脇にずらりと並ぶ牢獄で、鉄格子の小さな窓、むき出しに近い便所、粗末な暖房施設…。
　ここは、明治の自由民権運動家から平和と民主主義の運動家も投獄されたところです。日本共産党の指導部を長年務めた故宮本顕治さんが天皇制反対と主権在民、侵略戦争反対と植民地解放を唱えて節を曲げず、治安維持法等事件による獄中生活１２年のうち１９４５年６月から同１０月まで、入れられた所です。宮本さんはのちに、監獄を「私の大学」にしてきたとふりかえっています。その第４舎房、不屈の現場の前に立ち、深い感慨を覚えずにはいられませんでした。
　治安維持法の撤廃で、宮本さんが釈放された時に、宮本さんに会った女性が語ります。「私の親が今後の日本について聞くと、宮本さんは背筋をびしっと伸ばして、『災い転じて福となす』と答えたことを今も鮮やかに覚えています。私も同じ道を歩んでいます」
　網走の風はまだ冷たいものの、明るく、温かい心にあふれた街でした。
　佐藤俊明
　問い合わせ (社)網走市観光協会 ℡０１５２(６７)５００７
( ２００９年０３月０８日，「赤旗」) （Page/Top）

江別多喜二祭に１００人／作品朗読や愛唱歌演奏

　「江別の多喜二祭」（同実行委員会主催）が一日、江別市のドラマシアターどもⅣで開かれ、百人を超える市民が参加しました。
　多喜二の『防雪林』と田口タキへの書簡を劇団ドラマシアターどもの安念智康さんと金子このみさんが朗読。佐藤洋一さんは、多喜二が『オルグ』を書くために滞在した神奈川県七沢温泉の福元館で湯船につかって歌ったという「折ればよかった」（ブラームス原曲「日曜日」）、少年時代にきょうだいでよく歌った賛美歌「まぼろしの影を追いて」など五曲をギターで演奏しました。（写真）
　宮田汎道高校センター教育研究所長が「多喜二の青春」と題して講演。労働者や農民が「いかに惨めな生活をしているか」ではなく、「いかにして惨めなのか」を作品に表現することを追求した多喜二を語りました。
　最後に長谷川京子さん（飯田信之演劇事務所）が三浦綾子『母』より「第六章　多喜二の死」を朗読、涙をぬぐう人もいました。
　「とても良かった。多喜二の作品を読みたくなった」と感想が寄せられました。
(２００９年０３月０６日，「赤旗」)

山本宣治没後８０年／貧困根絶墓前に誓う／京都

　戦前の労農党代議士で右翼の凶刃に倒れた山本宣治（山宣）の没後八十年となる五日、京都府宇治市の善法墓地・山本家墓前で第八十回墓前祭が行われ、全国から山宣を慕う市民ら三百人以上が参加しました。
　新日本婦人の会、年金者組合有志のコーラスによる追悼歌の合唱につづき、小松直人実行委員長があいさつ。小松氏は、山宣の不屈のたたかいを振り返りながら、自衛隊の海外派兵や労働者の大量解雇、貧困の拡大に触れ、来る総選挙で平和憲法を守り貧困をなくす政治の実現を墓前に誓いました。
　治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟京都府本部の岡本康会長、民青同盟京都府委員会の長谷川幹委員長、やましろ健康医療生協の佐藤京子理事長、新社会党京都府本部の池内光宏書記長、日本共産党京都府委員会の細野大海書記長が追悼の言葉を述べました。
　宇治山宣会の本庄豊氏が、山宣暗殺の真相と黒幕を解き明かした著書など二冊を献本しました。
　山本家を代表して山宣の孫にあたる山本勇治氏が、感謝の言葉を述べ、山宣の功績を伝える決意を語りました。
( ２００９年０３月０６日，「赤旗」)

潮流―戦前の労農党の代議士だった山宣

　戦前の労農党の代議士だった山宣こと山本宣治の墓を訪れたのは、ずいぶん前の話です。秋だったでしょうか▼京都の宇治市。宇治川のほとりから坂を登る。この目で確かめたかった、「山宣ひとり孤塁を守る…」の墓碑銘。戦後まで、ぬりつぶさないと建立を許されなかった墓の前に、しばし立ちつくしました▼帰り道、平等院に寄った記憶もよみがえります。おごそか。みやび。最近、神居文彰住職が平等院の「平等」とはなにかを説く文章に接しました｡｢全く異なる人間が、生きていく機会の平等と、最終的に救済される約束の平等であり…」（『古寺巡礼　京都⑬平等院』）▼山宣の時代、｢生きていく機会の平等｣は、現実のものではありませんでした｡国家は､思想の違いで人の生死を振り分けました。一九二八年、治安維持法を､｢国体」を変革しようと結社をつくった者や指導者を死刑にできる法律に。山宣は、命をかけて治安維持法とたたかったのでした▼二九年二月、衆院予算委員会。山宣は、共産党への弾圧で逮捕された人たちに対する権力の拷問を生々しく告発し、こうしめくくりました。無産階級は政治的自由を獲得するため、犠牲と血と涙と生命までをつくしているのだ―▼彼自身、一カ月後に犠牲者になろうとは…。国会で治安維持法の「改正」に反対しようとして阻まれ、暗殺者の手にかかったのは、八十年前の三月五日でした。墓碑銘は、セメントでぬりつぶされるたびに、遺志をうけつぐ誰かに彫り返されました。
( ２００９年０３月０６日，「赤旗」)

朝の風／「平和の正念場」住職の思い

　大分県は宇佐市の在に、真宗大谷派に属する安養寺という古い寺がある。その寺の住職林正道さんは、宗門の大学を出て全日自労の機関紙の編集に携わり、やがて全労連や建交労の役員にもなるが、寺を継ぐことになっていた兄弟が亡くなり、やむなく自坊に帰り、住職となった。
　以来、寺報「安養寺だより」を毎月発行しつづけ、日本機関紙協会の『機関紙と宣伝』（〇八年六月号）に紹介されたこともある。この三月一日号には、大谷派日豊教区の研修会で、林さんが発題した「真宗の解放論」の要旨が載っている。林さんは語っている――「八十年前の世界恐慌の時は、一九二九年に小林多喜二の『蟹工船』が出版された。日本は『満州事変』から太平洋戦争へと侵略戦争を拡大していった。真宗大谷派などあらゆる宗教宗派が、これに積極的に協力加担してきた。」
　いま反動側は「今年を天皇即位二十年、結婚五十年、大日本帝国憲法百二十年を一緒に祝おうとしている。」
　｢その一方で､真宗大谷派九条の会はじめ全国、世界で平和を守る運動が大きく広がっている｡今､まさに正念場ではなかろうか」と。
　焼津市・弘徳院境内で営まれた、日本宗平協主催の「三・一墓前祭」に、今年も林さんの姿があった。
　（許）
( ２００９年０３月０４日，「赤旗」) （Page/Top）

没後８０年生誕１２０年山本宣治の節目の年に／小田切明徳


「山宣ひとり孤塁を守る」／大衆への無限の信頼背に
　今年は第一回普通選挙で当選し、治安維持法に反対して右翼のテロに倒れた山本宣治（山宣＝やません）の没八十年・生誕百二十年の節目の年に当たります。それを記念して様々な事業が行われますが、改めて彼の足跡を振り返ってみました。

国策に抗して産児制限の本
　山宣は父は楽天的、母は弱者にやさしく共にキリスト教徒の愛の溢れる家庭の一人息子として、京都の新京極に生まれました。山宣は花を作って世の中を美しく平和にしたいとの夢を生涯にわたって貫きます。その反戦思想は父亀松が内村鑑三に心酔していた事から影響を受けました。園丁見習いに大隈重信邸に行き、その後親戚に誘われて単身でカナダに、ちょうど百年前、その夢を求めて渡りました。
　カナダ・バンクーバーで五年間数多くのアルバイトをしながら語学、科学や社会主義を苦学しました。帰国後、東京帝国大学まで進学して動物学を学びます。京都に戻ると大学講師として性学研究と日本初の本格的性教育を大学予科で始めました。展覧会の裸体彫刻には腰巻をさせられた時代に健全な性のあり方を説いたのです。
　そのころ、アメリカから来日した産児制限（ＢＣ）運動の指導者のＭ．サンガーの通訳をし、内務省に押収された彼女のパンフレットを翻訳、出版法に抵触しないように幾多の工夫をした『山峨女史家族制限批判』を出版しました。時の政府の国策｢産めよ殖えよ｣に抗してのＢＣ運動の結果、京都大学講師を辞めさせられ､同志社大学では｢京都学連事件」での社研の学生の指導を理由にこれも馘首。しかし彼は怯まず民間の研究者の道を選び、午前は主幹雑誌『産児調節評論・性と社会』の執筆・編集、午後には自転車で小作争議支援に駆けつけました。

「民衆の握る槍となって」
　反戦平和の活動を続け、民衆からは山宣と慕われる草の根の政治家として労働・農民運動から労農党員となり、京都二区から立候補。買収と激しい選挙弾圧を跳ね返して堂々と当選しました。議員としての活動はわずか一年余、「これからの私は民衆の握りしめる一本の槍である。私個人はもはや存在しない」の決意で奮闘します。
　例えば、小林多喜二が小説『一九二八年三月十五日』（三・一五事件＝共産党と民主団体への大弾圧事件）で告発したと同じ事を山宣は予算委員会で「拷問・不法監禁に対する質問」として行いました（二月八日）。まさに生命がけの追及でした。

治安維持法に徹底的に反対
　最後の努力は、時の田中義一内閣の中国大陸侵略の動きに反対し、病気を押してドイツの生理学者ニコライの反戦書『戦争の生物学』の翻訳に力を注ぎました。死の直前の大阪の演説はあまりにも有名です。「山宣ひとり孤塁＜独塁＞を守る、だが私は淋しくない。背後には大衆が支持しているから」（この言葉は大山郁夫の揮毫となって宇治の善法の墓碑銘となっている）。私は、孤塁を守るとは、真理を守る事であり、後半の言葉は山宣が愛してやまない大衆への無限の信頼から生まれたのだと思います。ここまで権力者を追い詰めれば、〝山宣は許せん〟となったのでしょう。治安維持法に徹底的に反対しての活動中にテロで刺殺されました。著書には『性教育』、『恋愛革命』など多数あります（『山本宣治全集』全七巻）。
　靖国派の策動がある中で、ワーキングプア（あの時代には無産者といわれた）に寄り添って活動した山宣の姿勢に学ぶことは、今日的意味があるでしょう。
　（おたぎり・あきのり　山宣記念性教育研究室長）

・「没後８０年山宣墓前祭」＝５日午後０時１０分、宇治市善法墓地。午後２時半から「山本宣冶を偲ぶ茶話会」、花やしき浮舟園。ミニ講演「人権無視、横暴勝手な雇用破壊の実態」（土井重勝京都労働相談センター相談員）。連絡先・宇治市職員労働組合℡０７７４（２２）５６５３
・「山本宣治生誕１２０年記念全国交流会」＝５月２３日、午後６時、花やしき浮舟園。「記念講演会」＝５月２４日午後２時、同志社大学今出川キャンパス。記念講演「山本宣治と現代」（林直道大阪市立大学名誉教授）、報告・中田進関西勤労協講師
・「足跡を訪ねる信州のたび」＝１０月１０日から１１日
( ２００９年０３月０４日，「赤旗」) （Page/Top）

現代を映す「蟹工船」／発表から８０年／大阪で多喜二祭

　労働者が搾取される実態を暴いた小説「蟹工船｣の作者で､特高警察に虐殺された小林多喜二の｢火を継ごう｣と二十八日、大阪市中央区内で「０９年大阪多喜二祭｣が開かれました｡今年は､｢蟹工船」発表から八十周年。三百五十人が参加しました。
　実行委員長の柳河瀬精・治安維持法国賠同盟府本部会長が冒頭にあいさつしました。講演した尾西康充・三重大学教授（日本近代文学）は、政府やマスコミ各紙が「〝自己責任〟という言葉で政府の責任を個人責任に転嫁している」と批判。「踏みにじられた人間に立ち上がる力を与える」、「蟹工船」が、現代の格差社会とつながることを示しました。
　「地域労組おおさか」の青年らは相談数の激増を紹介し､｢すべり台社会を実感した。『蟹工船』はまだ終わってない」などと訴えました。まんが「蟹工船」の解説者でもある島村輝・女子美術大学教授は、労働法制の改悪の経過を指摘し、一過性の問題ではないことを強調しました。
　多喜二の書簡集などの資料展示も開催｡｢蟹工船」の朗読や歌も披露されました。
(２００９年０３月０１日，「赤旗」) （Page/Top）

 

 

*         【2月】（ヘッドライン）

*         古河市で多喜二祭／新日本歌人協会支部

*         山口、田島氏が『蟹工船』を語る／神戸

*         多喜二と文学語り合う／松山で集い

*         労働者支援誓う／多喜二関連の映画鑑賞／宮城／青森／福島・いわき

*         人々励ます多喜二文学／秋田、大館市で記念の催し

*         韓国紙ハンギョレ志位委員長インタビュー掲載／「共産党の全国組織網が社会的弱者のための安全網」

*         朝の風／尹東柱の評伝決定版

*         多喜二に学び、志生かす／没後７６年の墓前祭／北海道・小樽

*         野呂栄太郎没後７５周年／党道委が墓前祭

*         野呂栄太郎没後７５周年／不屈の業績引き継ぐ／北海道で碑前祭

*         横浜事件４次再審／元被告、無罪求め結審

*         各地の多喜二祭

*         日本共産党知りたい聞きたい／小林多喜二が虐殺されたのはなぜ？

*         大館の青年が「蟹工船」上映／秋田

*         野呂栄太郎没後７５周年／１９日に集い／野呂墓前祭

*         小林多喜二没後７６周年／２０日に夕べ／多喜二墓前祭

*         ひと／朗読劇「蟹工船」に出演する岡部政明さん（７６）

*         過ち繰返してはならない／「建国記念の日」異議ありと集い／山口／広島／鳥取／島根

*         「建国記念の日」／歴史の逆行許さない各地でつどい／大阪／兵庫／奈良／和歌山

*         西田信春氏の墓前祭あす／福岡、治維法国賠同盟

*         小林多喜二記念の行事／秋田２１日、大館２２日

*         日本共産党知りたい聞きたい／党名を変えないのはどうしてですか？

*         「多喜二の母」の思い出／「蟹工船」の脚本を書き終えて／安川修一

*         映画「蟹工船」へ思いを馳せて／嵐圭史

*         ひと／本邦初、『蟹工船』を演じるアマチュア講談師荒到無形さん（４８）

*         相沢良没後７３年碑前祭と集会／札幌

【2月】（本文）（Page/Top）

古河市で多喜二祭／新日本歌人協会支部

　新日本歌人協会古河支部は二十日、茨城県古河市の古河文学館で「古河多喜二祭」を催し、四十四人が参加しました。
　多喜二作品の朗読や多喜二を詠んだ短歌の朗詠のあと、日本民主主義文学会会員の奈良達雄氏が「小林多喜二と上野壮夫の作品の文学性と今日性」と題して講演。秋野宏氏が多喜二ゆかりの曲を演奏しました。
　参加者から「プロレタリア文学になじめなかったが、いまなぜ『蟹工船』なのかがよくわかった」との感想が出されました。
(２００９年０２月２８日，「赤旗」)

山口、田島氏が『蟹工船』を語る／神戸

　「『蟹工船』がいま問いかけるもの」と題した小林多喜二記念集会（実行委員会主催）が二十二日、神戸市内で開かれ、百五十人が参加しました。『蟹工船』エッセーコンテスト大賞受賞者、山口さなえさんと作家の田島一氏が語りました。
　山口さんは、派遣会社で寮付きの仕事を見つけたが上司から体の関係を迫られ、辞めて半ホームレスになった若い女性の例をあげ、「なぜこんなに痛めつけられるのか。生きるため権力ともたたかわなくてはいけないのではないか。『蟹工船』につながるのでは」と思ったと述懐。労組をつくるなど若者が声を上げていることをしめし、「いまの若者はふがいなくないといいたい」と語りました。
　「現代（いま）を撃つ、文学の力」と題して講演した田島氏は「『蟹工船』が社会現象になるような時代は不幸。多喜二が苦笑いしているのでは」と話し、「現代社会とのかかわりで文学の意義を八十年後に実証した」とのべました。『蟹工船』はいまの読者に生きる勇気と連帯の意義を伝えているとし、「私も多喜二を範にしてすすんでいきたい」と語りました。
(２００９年０２月２６日，「赤旗」) （Page/Top）

多喜二と文学語り合う／松山で集い

　「蟹工船」で知られるプロレタリア作家の小林多喜二が特高警察に虐殺されて七十六周年を迎えた二十日、「多喜二を語り合う集いｉｎ松山」が松山市民会館で開かれ、約四十人が参加しました。
　治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟県本部（中川悦良会長）の主催によるもの。参加者は黙とうをした後、多喜二と文学について思いを語り合いました。
　同本部顧問の木山隆行氏は、多喜二を〝自らの生きた時代と確かな将来を描きだすことに挑戦した革命的な作家〟と位置づけ、日本資本主義が軍国主義へと向かう時代を描くことに果敢に挑戦した多喜二の姿を紹介しました。
　中川会長は、一九二九年の大恐慌の時代にプロレタリア文学誌へ掲載された「蟹工船」が、今日、百万部を超えるベストセラーになっていることを紹介。多喜二が残した唯一の色紙が愛媛にあることにも触れ、「これからも、このような集いを続けていきたい」と話しました。
(２００９年０２月２６日，「赤旗」) （Page/Top）

労働者支援誓う／多喜二関連の映画鑑賞／宮城／青森／福島・いわき


塩釜で「時代を撃て・多喜二」／宮城
　宮城県の塩釜市公民館で治安維持法犠牲者国賠同盟塩釜支部主催で二十一日、記録映画「時代を撃て･多喜二｣の上映会が開かれ、四十人を超える人が鑑賞しました。
　上映会に先立ち、元日本共産党宮城県委員長本田勝利氏が「多喜二を語る」と題して語りました（写真)｡自ら平和と民主主義の旗を掲げてたたかいながら、作品に結実させていった多喜二の文学が、資本主義社会の本質を真正面から告発していることで今日につながる作品の普遍性となっていることを浮き彫りにしました。
　その後、上映が行われて、参加者からは「多喜二のたたかいは今日も続けられていると実感させられた」「多喜二が虐殺された二月二十日は忘れてはいけない日であることを再認識した」などの声が寄せられました。

「蟹工船」上映八戸で４００人／青森
　映画「蟹工船」をみる八戸の会が二十一日、青森県八戸市の三八教育会館で開催した上映会には、四百人を超える参加者がありました。
　主催者は、最近「蟹工船」がベストセラーになったことや若い人たちに読まれていることから、参加者が多いことを予想｡ところが､前日の二月二十日が小林多喜二の命日で、民放で多喜二や｢蟹工船｣のことが取り上げられたこともあって、予想を上回る参加者となりました。
　会場には、昔、蟹工船に乗ったことがある人も来ていて、実行委員長に「戦後だったので、暴力的な支配はなかったものの、仕事のきつさは、映画と変わらない」と当時のことを語っていました。
　「タイムリーな企画に感謝します」という感想も寄せられました。若い人たちも訪れ、モノクロ画面でやや聞き取りにくい音声でしたが、食い入るように見ていました。見終わって、漫画の「蟹工船」を購入した人もいました。

首都圏青年ユニオン委員長が講演／福島・いわき
　福島県いわき市の産業創造館ホールで二十一日、映画「蟹工船」（山村聡監督）の上映会が行われました。市内の労働組合と民主団体などでつくる実行委員会「見る会」が主催し、約二百六十人が観賞しました。
　主催者あいさつで、実行委員会代表の高橋美保さんが「二月二十日は映画『蟹工船』の原作者、小林多喜二が権力によって命を奪われた日です｡映画会は､多喜二をしのんで計画されました」と述べました。
　首都圏青年ユニオンの武田敦委員長が「今に生きる蟹工船」と題して講演。団体交渉など青年ユニオンの活動を通して、青年が「蟹工船」の労働者のように、結びつきとつながりを広げていることを紹介し、「三月にも派遣切りが心配されます。参加者の皆さんのネットワークで支援を進めてほしい」と訴えました。
　参加した三十代の女性からは「映画に感動し、講演から労働者たちの新しい動きを知ることができ、うれしく思いました」との感想が寄せられました。別の男性は「実際に派遣切りされている人たちにも見てほしい映画だった」との感想を寄せました。
(２００９年０２月２６日，「赤旗」) （Page/Top）

人々励ます多喜二文学／秋田、大館市で記念の催し

　秋田県大館市出身の作家・小林多喜二（一九〇三―三三年）を記念する行事が二十一日秋田市で、二十二日大館市でそれぞれ行われました。
　秋田市での第四十四回県多喜二祭には、韓国と県内外から二百八人が参加しました。
　二〇〇九年県多喜二祭賞の発表があり、元十文字町長の西成辰雄さんと慶州ナザレ園協力会の松島啓昇さんの二人が受賞しました。
　大館市での第三十回小林多喜二記念の集いには、「小林多喜二をふるさとで読む会」メンバーや弘前市、能代市などから七十四人が参加しました。
　両会場とも新日本歌人協会全国幹事の碓田のぼるさんが「いまに生きる小林多喜二―私が学んできたこと」と題して講演しました。
　碓田さんは、「多喜二は殺されてからも文学として生き続けてきた。地下水のように深いところを流れてきた。だからこそ資本主義の弱さが露呈しているいま地表に噴出し人びとを励ましているのだ」と話しました。
　「講師が歌人なので参加した」という女性（５４）は、小樽から上京する途中で秋田市に立ち寄った多喜二が佐々木妙二(歌人､小樽高等商業の後輩）に「『ダメなのは短歌でない、君の生きざまだ』と話したくだりを聞いてそのとおりだと思った。肝に銘じなければいけない｣と話していました｡
(２００９年０２月２４日，「赤旗」) （Page/Top）

韓国紙ハンギョレ志位委員長インタビュー掲載／「共産党の全国組織網が社会的弱者のための安全網」

　韓国紙ハンギョレ二十日付は、「共産党員増の秘けつ？」と題して、日本共産党の志位和夫委員長のインタビューと日本共産党に関する記事を十六面の一ページ全部を使って掲載しました。
　記事では、「世界第二位の資本主義大国日本で、この間、共産党が注目されている」として、この一年半で一万五千人が新しく党員になり、二十二の海外メディアが日本共産党を取材したことを紹介。自民党などの主要政党の党員が減り、無党派が増える状況下で、日本共産党の党員が増えている理由について、新自由主義による規制緩和のもとで非正規雇用と「ワーキングプア」が増大していること、共産党の草の根の活動が力を発揮していること、プロレタリア作家・小林多喜二の『蟹工船』がブームになっていること、志位氏の国会での派遣労働問題の質問がインターネットで人気を博し「ＣＧＪ」（志位グッド・ジョブ）という「新造語」ができたことなどをあげています。
　記事では、志位氏について、「韓国とも縁が深い」として、「二〇〇六年、日本共産党の党首としては初めて韓国を訪問し、西大門刑務所を訪れて献花した。一月には在日本大韓民国民団新年会に参加し、在日外国人に（地方）選挙権・被選挙権を付与すべきだと発言した」と紹介した上で、志位氏のインタビューを掲載しています。
　インタビューで志位氏は、質問に答えて、党員増の背景、草の根の党組織が行っている生活・労働相談、日本での貧困の拡大とその根源にある労働法制の規制緩和、「ルールある資本主義（経済社会）」への転換、大企業の内部留保と雇用への社会的責任、「国際競争力」論と企業経営のあり方、世界金融危機と「カジノ資本主義」の問題点、「利潤第一主義」を特徴とする資本主義の矛盾とマルクスの恐慌論、社会主義・共産主義への発展の展望、次期総選挙の焦点、日朝関係の前途などについて縦横に語っています。
　記事は志位氏がインタビューで「国民の苦難を軽減することが、党を創設した根本理由です」と述べたことを受けて、「日本共産党は全国四十万人の党員と二万余の支部でネットワークを構成している。日本社会の社会安全網が新自由主義の構造改革でおろそかになり、共産党が構築した全国組織網が社会的弱者のための安全網の役割を果たしている」と書いています。また、日本共産党を「アジアで最も成功的な非執権共産党」「日本で最も強力な草の根組織をもっている唯一の政党」と評した米国誌『タイム』の記事（二〇〇七年）を引きながら、「『本当にそうだろうか』と首をかしげるような内容だが、日本共産党をのぞいてみれば、決して誇張された表現ではない」と述べています。
　ハンギョレ紙は一九八八年に創刊された日刊の全国紙。「民主、民族、統一」を三大創刊精神に掲げています。
( ２００９年０２月２３日，「赤旗」)（Page/Topへ戻る）

朝の風／尹東柱の評伝決定版

　尹東柱は、日本で獄死したただひとりの朝鮮人詩人である。今年も命日の二月十六日前後、東京他で追悼集会が開かれ、宋友恵の『尹東柱評伝』も出た（藤原書店）。
　星をうたう心で／すべての死にゆくものを愛おしまねば／そしてわたしに与えられた道を／歩みゆかねば。／今夜も星が風に身をさらす。（「序詞」後半）
　どこかで聞いたこのフレーズは、彼の死後、友人がひそかに保管していた詩稿が詩集『空と風と星と詩』にまとめられて知られるようになった。日本の侵略下、創氏改名で姓名を、治安維持法で言葉を、投獄で命を（一九四五年二月、福岡刑務所で生体実験の注射直後といわれる）奪われた尹東柱は、死後、詩人になることでそれらを奪い返した。
　しかし、「戦闘的」でないと退けられ、反共軍事政権下で彼を知る友人たちは口を開けずにいた。そのなかを宋は書き、最初の評伝（一九八八）から一〇年後に改訂、そして今回の再改訂と、情勢の変化や日本での留学生活の新事実などを入れて尹東柱の実像に迫った。邦訳は最初の著作の抄訳（約三分の一）があったが、これが決定版になるだろう。
　尹東柱は文学の生命力とともに、わが国の歴史も語る。星のきらめきはどんな風にも負けない、と。
　（泰）
( ２００９年０２月２３日，「赤旗」)（Page/Topへ戻る）

多喜二に学び、志生かす／没後７６年の墓前祭／北海道・小樽

　貧困と格差が広がるなか、八十年前にたたかいを呼びかけた小説「蟹工船」ブームが続く作家、小林多喜二の没後七十六年の二十日、北海道小樽市で墓前祭が開かれました。
　道内をはじめ長崎や広島、大阪などから百四十人が参加。奥沢墓地の小林家墓前に赤いバラを献花しました。
　参加者のなかには治安維持法国賠同盟大阪府本部が企画した「野呂栄太郎・小林多喜二ツアー」で参加した十五人がいました。井上敏江大阪府本部副会長は「昨年秋から計画したツアーです。多くの人たちと多喜二の墓前に立てて感無量。雪のなかの墓前で戦争をしない誓いを新たにしました」と語ります。
　初参加という札幌市の三十代の女性は「いまなぜ多喜二の『蟹工船』なのかと思ってきました。非正規で働いていましたが、多喜二の時代と重なるひどい働かせ方がまかり通り、私たちも頑張らなければと思いました」と話していました。
　小樽多喜二祭実行委員会の寺井勝夫委員長は「いまこそ多喜二の生涯に学び、志を生かす運動をいっそう強めていきたい」と主催者あいさつしました。
　日本共産党北海道委員会の青山慶二書記長とノーマ・フィールドシカゴ大学教授が連帯あいさつをしました。
( ２００９年０２月２１日，「赤旗」)（Page/Topへ戻る）

野呂栄太郎没後７５周年／党道委が墓前祭

　日本共産党の戦前の指導者で経済学者の野呂栄太郎の没後七十五周年となる命日の十九日、墓前祭、碑前祭と記念の集いが開かれました。
　野呂家墓地がある札幌市豊平区の平岸霊園で開かれた日本共産党道委員会主催の墓前祭では、二十人が黙とう、献花し、業績をしのびました。
　道委員会の石橋哲郎副委員長は「昨年から『蟹工船』が空前のブームになり、日本共産党に注目が集まっています。自民・公明政治にかわる政治のあり方だけでなく、資本主義にかわる社会体制が話題になっています。野呂の業績は今日の日本共産党と民主勢力のたたかいに生命力を発揮しています」と述べ、「不屈の精神を受け継ぎ、北海道から衆議院の議席を奪還するため全力をあげます」とあいさつしました。
　治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟道本部の前田大蔵副会長、国民救援会道本部の守屋敬正会長が革命的気概に燃えて短い生涯を生きた野呂の業績を引き継ぐと語りました。
　紙智子、大門実紀史両参院議員がメッセージを寄せ、豊平区の池田由美市議候補があいさつしました。
　長沼町での記念の集いで、宮内聡衆院比例候補は「野呂の業績を現在に生かすために全力をつくします」と決意を述べました。
(２００９年０２月２０日，「赤旗」)（Page/Topへ戻る）

野呂栄太郎没後７５周年／不屈の業績引き継ぐ／北海道で碑前祭

　天皇制政府の暴虐とたたかい、侵略戦争に反対した戦前の日本共産党指導者で経済学者である野呂栄太郎の没後七十五年碑前祭が命日の十九日、出身地の北海道・長沼町で行われました。党南空知地区委員会と治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟南空知支部が主催。参列した八十人が不屈の業績をしのび献花しました。
　同盟道本部の外尾静子会長は「貧困と格差が広がる今こそ、資本主義の限界を明らかにした野呂の業績を引き継ぎ、再び暗黒政治と侵略戦争を許さないたたかいをすすめよう」と主催者あいさつ。
　戸川雅光長沼町長代理の相沢昌之教育長、駒谷広栄議長が「景気後退で閉塞（へいそく）感の広がる時代だからこそ、今につながる歴史を振り返る必要がある」「郷土が誇る野呂氏の功績を伝えていきたい」とあいさつしました。隣町の椿原紀昭栗山町長、紙智子、大門実紀史両党参院議員のメッセージが紹介されました。
　十五人が参加した国賠同盟大阪府本部の井上敏江副会長は「野呂栄太郎のすばらしい功績に敬意を表し、婦人部で千羽鶴を折りました」と話しました。
　菩提寺の佛現寺では「没後七十五周年記念の集い」が開かれ、児玉健次元衆院議員が生前の業績を語り、宮内聡衆院選道比例候補があいさつしました。
( ２００９年０２月２０日，「赤旗」)（Page/Topへ戻る）

横浜事件４次再審／元被告、無罪求め結審

　戦時下の言論弾圧である「横浜事件」第四次請求の再審初公判が十七日、横浜地裁（大島隆明裁判長）で開かれました。元被告の口述書を遺族が朗読するなどし、弁護側は無罪を主張。検察側は治安維持法の廃止を理由に、有罪無罪を判断せずに裁判手続きを終わらせる免訴を求め結審しました｡判決は三月三十日｡
　大島裁判長は冒頭、事件に関する訴訟記録が存在しないことに触れ、「米国軍の進駐を前に、保存するのが不都合であるから破棄されたと推認され、裁判所としても遺憾」と述べました。
　第四次は、雑誌「改造」の元編集部員、故小野康人さんの次男小野新一さん（６２）と長女斎藤信子さん（５９）が請求していました。
　弁護側は「被疑者を拷問した捜査官に『正しい法の執行をしている』との自負を与える法環境をつくった裁判所に責任がある」とし、「重大な誤判で損なわれた司法の名誉は無罪判決を下すことで初めて回復できる」と主張しました。
( ２００９年０２月１９日，「赤旗」) （Page/Top）

各地の多喜二祭

　古河多喜二祭＝２０日、午後１時、茨城・古河文学館。講演・奈良達雄（歌人）「多喜二と上野壮夫の文学作品の文学性と今日性」。会費三〇〇円。
　大阪多喜二祭＝２８日、午後１時半、大阪市立中央区民センター。講演・尾西康充三重大学教授「現代の格差社会における『蟹工船』」。資料代一〇〇〇円。
　阪神北多喜二祭＝３月２２日午後１時半、アイホール（伊丹市立演劇ホール）。講演・島村輝女子美術大学教授「家族から世界まで　多喜二が語る連帯の可能性」。会費一五〇〇円。
　兵庫多喜二祭＝２２日、午後１時半、神戸市生田文化会館。講演・田島一（作家）「『蟹工船』がいま問いかけるもの」。参加費一二〇〇円。
　２２回小林多喜二を語る早春・文化の集い＝２１日、午後６時、熊本・人吉・カルチャーパレス。講演・藤田廣登労働者教育協会理事「小林多喜二の盟友たち」。資料代一〇〇〇円。
( ２００９年０２月１８日，「赤旗」) （Page/Top）

日本共産党知りたい聞きたい／小林多喜二が虐殺されたのはなぜ？

　〈問い〉「蟹工船」の作者・小林多喜二は、当時の警察に虐殺されたと知りました。なぜ殺されたのでしょうか。（東京・一読者)
　〈答え〉１９３３年２月２０日の小林多喜二の虐殺はあまりにも有名です。天皇が絶対的な権力を持ち、警察も軍隊もそのもとで横暴を極めた戦前には、天皇制や軍国主義に反対したために逮捕・投獄、虐殺された人はかなりの数にのぼっています。
　２３年９月の関東大震災の折には混乱に乗じて初代共産青年同盟委員長・川合義虎や労組活動家・平沢計七ら１０人が軍隊の手で殺され、さらに無政府主義者・大杉栄が妻・伊藤野枝、おいとともに虐殺されました。
　２５年、普通選挙法（男子のみ）と抱き合わせに、天皇制廃止、侵略戦争反対を掲げる日本共産党をはじめ、革命的労働・農民運動を弾圧する目的で治安維持法が制定されました（２８年に死刑・無期刑に改悪）。その違反名目での逮捕者は数十万人にのぼり、司法省調査でも送検者７万５６８１人、起訴者５１６２人、治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟の調査では、明らかな虐殺だけでも日本共産党幹部など６５人、拷問・虐待死１１４人、病気その他の獄死１５０３人といわれています。
　多喜二の虐殺もそういう歴史の文脈のなかでのことです。同時に彼の場合は、逮捕数時間後の激しい拷問によるものでした。それは彼の作品が、治安維持法の適用による大弾圧「三・一五事件」での警察の拷問の実態を暴いた「一九二八年三月十五日」や、労働者搾取の国家構造を描き出した「蟹工船」、農民と労働者の共同闘争を描いた「不在地主」など、戦争突入前夜に、政府の戦争と労働者抑圧政策を鋭くえぐる内容で、しかも読者も多く、国際的にも高く評価され、為政者から特別に憎悪され、恐れられたからです。
　多喜二が作家同盟の中央委員・書記長、プロレタリア文化団体の党グループ責任者など重要な位置にあったことも、「生かしてはおけない」理由だったのでしょう。多喜二の作品は敗戦までは持っているだけで逮捕される国禁の書とされました。（淳）
( ２００９年０２月１８日，「赤旗」) （Page/Top）

大館の青年が「蟹工船」上映／秋田

　秋田県大館市の青年たちによる「『蟹工船』をみる会」実行委員会が十五日、同市立中央公民館で、映画「蟹工船」（山村聡監督）上映会を開きました。午前と午後の二回上映され、二百四十七人が鑑賞しました。阿部幸一実行委員長は、格差と貧困がすすむ中で同市出身の作家・小林多喜二の小説『蟹工船』がいま青年に注目されている中でこの映画の上映を企画したことをのべ､｢みなさんが何かを感じていただければ」とあいさつしました。
　終了後、実行委員の女性は「受け付け担当で映画を見ることができませんでした。近く開かれる反省会でじっくり見ます。小説の方がおもしろいという人もいるので、映画を見た後､読んでみたい｣と話していました。阿部実行委員長は「こんなにたくさんの人が参加してくれてびっくりしている」と話します。
　同実行委員会に助言してきた民主主義文学会大館支部の大山兼司さんは「二十代の人たちのパワーは大きい。青年たちが積極的に動いての行事は初めてだと思うし、意義は大きい」と話しています。
(２００９年０２月１７日，「赤旗」) （Page/Top）

野呂栄太郎没後７５周年／１９日に集い／野呂墓前祭

　『日本資本主義発達史講座』を監修し、戦前の絶対主義的天皇制のもとで不屈にたたかい抜いた日本共産党の指導者で経済学者、野呂栄太郎の没後七十五周年の墓前祭、碑前祭と「記念の集い」が十九日に行われます。業績と生涯をしのび、総選挙勝利の決意を新たにするため、主催者は多数の参加を呼びかけています。
　墓前祭　十九日午前十一―十一時半、札幌市豊平区・平岸霊園の野呂家墓（地下鉄南北線南平岸駅下車約十分。会場まで目印の看板）。主催＝日本共産党道委員会０１１（７４６）１１５１
　碑前祭　午後一時―一時半、長沼町の野呂栄太郎碑小公園（東一線北二番地）
　記念の集い　午後二時―三時半、長沼町の佛現寺本堂（西一線北一四番地）、記念講演「二十一世紀に野呂栄太郎が残したもの」（児玉健次道革新懇代表世話人・元衆院議員）。主催＝党南空知地区委員会０１２６（２３）２４８８、治安維持法国家賠償要求同盟南空知支部０１２６（２４）１８５５
(２００９年０２月１５日，「赤旗」) （Page/Top）

小林多喜二没後７６周年／２０日に夕べ／多喜二墓前祭

　日本共産党員で、プロレタリア作家の小林多喜二没後七十六周年で二十日、小樽市で「小樽多喜二祭」（墓前祭と音楽と講演の夕べ。同実行委員会主催）が開かれます。
　夕べでは、小樽出身で多喜二の母校、小樽商科大学でも教鞭をとった浜林正夫一橋大学名誉教授が「極める眼―多喜二の『蟹工船』をどう読み解くか」と題して講演します。現代と「蟹工船」、現状を変える方向と求められるものを考えます。ソプラノ歌手の清水紫さんが多喜二への思いを託した創作曲「赤き花燃ゆ」を独唱します。
　墓前祭　午後一時半から、奥沢墓地（奥沢五丁目）①小樽駅前から中央バス１６番「天満宮下」下車②午後零時四十五分に小樽駅から貸し切りバスがでます。往復四百円。
　音楽と講演の夕べ　午後六時半開会（六時開場）、小樽市民センター「マリンホール」（色内二丁目。小樽駅徒歩約五分）、参加前売り券・千円（当日千二百円）、高校生以下は前売り・当日とも八百円。
　連絡先＝０１３４（３２）８５６０（斎藤さん）
(２００９年０２月１５日，「赤旗」) （Page/Top）

ひと／朗読劇「蟹工船」に出演する岡部政明さん（７６）

　「朗読劇はお客さんが想像力を広げて作りあげる空間・世界。『蟹工船』に描かれた、すさまじい世界を舞台で表すには限界があります。お客さんが膨らませるイメージに手伝っていただかないと成立しません」
　朗読劇「蟹工船」（小林多喜二原作）で、語りと漁夫役を担当します。『蟹工船』は、昭和初期、蟹漁をし缶詰にする過酷な船内労働に対して立ちあがる労働者を描いた小説です。
　「今、派遣切りなど働く人が人間らしい扱いをされていません。八十年も前の物語が、遠い昔のことではないですね」
　北海道・旧雨竜郡納内村（現深川市）出身。子どものころ、海水浴場から見える家を、〝多喜二ゆかりの家〟と教えられたと、いいます。雀荘に入り浸っていた札幌での大学生時代、見かねた高校の同窓生らが、演劇研究所を強引に受験させました。「俳優になるつもりは、なかったのに」。妻子連れでの困窮の上京など、苦労多い俳優人生を歩みました。
　「芝居の魅力は、奥行きが深く、追究すればするほど無限です」。豪快な印象を裏切る、繊細さを持った人柄です。
　視覚障害者と目が不自由になってきた人のための「声の日曜版」の朗読を、重厚な声で二十七年間担当しています。
　十九―二十二日、東京・武蔵野芸能劇場。連絡先＝伽羅ＫＹＡＲＡ　℡０９０（４９６４）０８０１
　文　　大井　民生
( ２００９年０２月１３日，「赤旗」) （Page/Top）

過ち繰返してはならない／「建国記念の日」異議ありと集い／山口／広島／鳥取／島根


山口／憲法を〝チェンジ〟させるな
　思想・信教の自由や平和を守ろうと十一日、山口県内では下関、山口、周南、下松、岩国市で集会やシンポジウム、デモ行進などが行われました。
　山口市では、「〝憲法〟Ｎｏ　Ｃｈａｎｇｅ．Ｙｅｓ，Ｗｅ　ｃａｎ！」を主題に、第四十三回思想と信教の自由を守る山口県民集会が同実行委員会の主催で開かれ、市民ら二百人が参加しました。
　記念講演では、早稲田大学の水島朝穂教授が「平和の憲法診断―二月十一日に山口から考える」と題して講演しました。水島教授は、憲法をその成立過程にまで立ち返りつつ「憲法は、権力者が暴走しないよう縛るためにある」と指摘し、「憲法を変えるには、『なぜ、どうやって、何を』を明らかにしなければならない」と強調しました。
　会場からの「押しつけ憲法との批判があるが」との問いには、「日本国憲法の骨格部分は日本人学者の案をもとにＧＨＱ（連合国軍総司令部）が草案をつくったもので、押しつけられたものではない」と答えました。
　集会参加者は、「憲法を生かそう」「米軍再編反対」「自衛隊はソマリア沖に行くな」と訴えながら市内をデモ行進しました。

広島／イラク派兵違憲判決を学ぶ
　広島県革新懇（平和・民主・革新の日本をめざす広島の会、略称＝ヒロシマ革新懇）は十一日、建国記念の日を「革新懇デー」と位置づけて今回で十二回目となる集会を広島市東区で開きました。
　百十二人が参加し、イラク派兵阻止訴訟弁護団の川口創弁護団長が「生かそうイラク派兵違憲判決！　名古屋高裁判決から見えてくるもの」と題して講演しました。
　利元克巳事務局長は「建国記念の日は明治時代に紀元節として、天皇制国家による歴史の偽造を国民に強制している。事実を見極める立場で、日本国憲法を真に生かす行動を続けたい」と開会のあいさつをしました。
　川口弁護士は、名古屋高裁判決について「自衛隊が戦争に加担している実態がある。イラク市民の尊い命を守ることが、平和的生存権を具体的な権利性として認めさせた」と指摘。田母神問題について「根本は、自衛隊が軍隊として肥大化し、海外派兵を本来任務とした外征軍化であり、その本質を軽視せずに対応することが必要だ」と述べました。

鳥取／憲法の原文に照らし解明
　鳥取県米子市と鳥取市で十一日、「建国記念の日に考えるつどい」が開かれました。
　米子市では、日本基督教団鳥取県西部地区と平和・民主・革新の日本をめざす鳥取県西部の会が主催し、百六十人が参加しました。
　主催者を代表して、高橋英美・倉吉教会牧師が「憲法九条は、再び軍事侵略をしないとアジアの人々に約束したもの。過ちを繰り返してはならない」とあいさつしました。
　岡山大学法学部の小畑隆資教授が田母神俊雄・前航空幕僚長の論文にかかわって「田母神問題の政治学」と題して講演しました。
　小畑教授は、歴史認識問題を追究するだけでは改憲キャンペーンを打ち破れないとして、政治学的に「憲法と国家」を解明しました。
　日本政府が憲法を翻訳するとき、原文のピープル（人民）をネーション（国民＝国を形成する集合体）とすり替え、国家（ステート）と混同させた、国家は支配機構であり人民は含まない、憲法は人民（人権の主体としての個々人であり、その意思は立法府の多数決によってつくられる国民の意思と一致しない）が人権を守るために、国家におしつけたものだと指摘し、憲法を原文の精神で読み解く意義を強調しました。

島根／９条の会広がり歴史的変化
　第二十一回「『建国記念の日』に考える集い」が十一日、松江市で開かれ、四十人が参加しました。日本科学者会議島根支部など四団体の主催です。
　県憲法会議代表委員の渡部節雄さん（７７）が「私の戦争体験から日本の平和・人権・憲法を考える」と題し報告しました。
　父親の出征と戦死や将兵遺児部隊の靖国集団参拝、平田一式飾りの戦時一色の様変わり、勤労動員など小学校、旧制大社中学時代の戦争体験を語りました。
　同じ町内出身の人が治安維持法の犠牲者となったことやレッドパージにもふれ、戦争が最大の暮らしや人権抑圧であることを強調。田母神自衛隊前空幕長など憲法破壊の「逆流」を厳しく批判しました。
　「今の社会のどんな点に希望を見いだしているか」との参加者の声に、渡部氏は「九条の会は全国で広がり、派遣切りへの労働者のたたかいなど歴史的変化も始まっています。憲法九条と二五条、二七・二八条を力に頑張りましょう」と強調しました。
(２００９年０２月１３日，「赤旗」) （Page/Top）

「建国記念の日」／歴史の逆行許さない各地でつどい／大阪／兵庫／奈良／和歌山

　「建国記念の日」の１１日、近畿各地では反対する集会が開かれました。

大阪
　「大阪府民のつどい」は、大阪市天王寺区で開かれ、約三百人が参加しました。
　つどいでは、神戸大学の二宮厚美教授が「憲法九条プラス二五条の力で新自由主義に決着」と題して講演しました。現代社会における九条と二五条の相互関係などについて解明。貧困・格差社会化に根ざした金融危機と世界同時不況のもと、小泉改革の破たんと新自由主義的構造改革と格差社会に対する国民各層の政治的反撃が起こっていることを紹介し、「憲法九条や二五条にもとづいて不況や貧困問題を解決し、新自由主義に決着をつけることが重要だ」と強調しました。
　「大阪の高校生に笑顔をくださいの会」の高校生三人が、集会やパレードのとりくみ、橋下徹大阪府知事との直接対話の経験を報告し、「教育は公立、私立関係なくみんなが公平に等しく受けられるのが当たり前であり、学ぶ権利が保障されています。私たちの最大限の武器は憲法です。もっと勉強し、あきらめないことで大阪を変えていきたい」と話しました。

兵庫
　不承認兵庫県民集会（同実行委員会主催）は、神戸市内で開かれ百人が参加しました。
　吉岡吉典元参院議員が講演し、平和と人権、働く権利の関係、治安維持法や従軍慰安婦問題にも触れながら歴史的流れの中でとらえる重要性をのべました。十九世紀の近代的平和運動の誕生や第一次世界大戦をへて「戦争の違法化」、国連憲章の「戦争のない世界」など運動の発展を三つの段階に分けて示しました。紀元節をもとにした「建国記念の日」は戦前の亡霊の考え方だと批判し、「世界の進歩の方向を学びつくして日本も世界の進歩に役立つ国にしよう」と呼びかけました。
　上田隆氏が「新指導要領による『道徳』のおしつけと学校現場」について報告し、西宮市の実態を紹介しました。
　参加者から「地域で保護者と教員が一緒になって教育基本法改悪の反対運動が広がった。力関係を大きく変える展望が見える」などの発言がされました。

奈良
　奈良県では十日、奈良市内で県民集会が開かれ、七十三人が参加しました。
　集会では中塚明奈良女子大学名誉教授が「日本の近代とどう向き合うのか―ＮＨＫスペシャルドラマ『坂の上の雲』を問う」と題して講演しました。
　中塚氏は「希望を持ち近代化に取り組む明治」を描く同ドラマの原作で著者の司馬遼太郎氏が、日清戦争や日本による朝鮮支配の原因に朝鮮の「地理的位置」と「主体的無能力」をあげていることを示し、「これでは日本が朝鮮に何をしたかを語らないで隠してしまう」とのべました。
　実際には、朝鮮での日本軍の王宮占領（一八九四年）や抗日闘争（同）に対する大本営の「皆殺し作戦」などをウソの記述や戦史から外すことで隠ぺいしたと指摘し、番組が日本の国外では通用しない内向きのナショナリズムをあおることにならないか危惧（きぐ）するとのべました。

和歌山
　和歌山市では「平和・人権・民主主義二・一一和歌山市集会」（同実行委員会主催）が開かれ、九十八人が参加しました。
　講演した元参院議員で弁護士の橋本敦さんは、侵略戦争を正当化する田母神俊雄前航空幕僚長の論文について、「きわめてずさんであり評価に値しない」「改憲キャンペーンの一環である」と批判する歴史家有志百四十三人による反論を紹介。改憲を待たずに狙われているソマリア沖への海上自衛隊の派遣強行や自衛隊海外派兵恒久法などの策動を許さず、憲法を守り抜こうと訴えました。
(２００９年０２月１２日，「赤旗」) （Page/Top）

西田信春氏の墓前祭あす／福岡、治維法国賠同盟

　治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟福岡県本部は西田信春没後七十六周年の墓前祭を行うことを決め多くの市民の参加を呼びかけています。
　戦前、一九三二年七月、日本共産党中央委員会から派遣された西田信春は福岡県を中心に全九州の農民運動、共産党組織建設の任務につき、一九三三年には農民組織、共産党組織建設に大きく貢献しました。
　一九三三年二月十日、西鉄久留米駅でスパイの手引きで特高警察に逮捕され、福岡署に連行、激しい拷問によって二月十一日未明絶命しました。現在、福岡市東区香椎の三日月山霊園の行路者の墓に眠っています。
　国賠同盟県本部は毎年二月十一日に墓前祭をおこない、反戦平和の活動前進の決意を固めています。なお参加される方は、当日午前十一時にＪＲ香椎駅集合。タクシーで三日月山霊園へ。正午から墓前祭がおこなわれます。
(２００９年０２月１０日，「赤旗」) （Page/Top）

小林多喜二記念の行事／秋田２１日、大館２２日

　秋田県出身のプロレタリア作家･小林多喜二(一九〇三―三三年）の命日（二十日）にあわせ、ことしも多喜二を記念する行事が行われます。
　秋田市では、二十一日午後一時三十分から、同市山王中島町の県生涯学習センターで、「第四十四回秋田県多喜二祭」が開かれます。作品朗読（『蟹工船』から）や〇九年県多喜二祭賞の発表などもりだくさんです。資料代千円。主催は、県多喜二祭実行委員会。
　大館市では、二十二日午後二時から、同市豊町の同市労働福祉会館で、「第三十回大館市小林多喜二記念の集い」が開かれます。入場無料。主催は、「ふるさとで多喜二を読む会」メンバーや青年たちも参加する同集い実行委員会です。
　両会場とも、歌人の碓田のぼるさんが「いまに生きる小林多喜二―私が学んできたこと―」と題して記念講演します。
　集い実行委の大山兼司実行委員長は、「派遣切りの嵐の中で青年たちが『蟹工船』の描く労働者と自分たちとの共通性を見つけ社会について考え始めています。碓田さんは〝閉塞（へいそく）の時代〟とたたかった石川啄木の研究者です。多喜二は金融・世界恐慌の時代に作品を発表しました。時代は似通っています。青年も楽しめる集いです。ぜひ参加してください」と呼びかけています。
(２００９年０２月０５日，「赤旗」) （Page/Top）

日本共産党知りたい聞きたい／党名を変えないのはどうしてですか？


〈問い〉「いま共産党が注目されている。党名を変えたらもっと支持が広がるのでは」という人がいます。党名を貫いているのはなぜですか？（北海道・一読者）

〈答え〉選挙で前進するためには、日本共産党そのものをよく知ってもらうことが大事で、理解してもらえば「イメージが変わった」と言ってくださる人が少なくありません。「日本共産党」という名前に、どういう理想と歴史が込められているかを、ぜひ知ってもらうことが大切です。
　日本共産党は、まず、資本主義の枠内での民主的改革をめざしていますが、未来の展望として資本主義を乗り越えた社会――社会主義・共産主義の日本を展望しています。
　日本共産党という党名には、この理想が刻まれています。共産主義（英語でコミュニズム）の語源は共同体（コミューン）と同じです。この名前には「真に平等で自由な人間関係からなる共同社会」（日本共産党綱領）をめざすという意味が込められています。
　人間の社会は資本主義で終わりではなく、日本でもやがて「もうけ第一主義」を乗り越えた社会への前進が課題になるでしょう。この認識は、日本共産党だけのものではありません。たとえば昨年５月には、全国ネットの民放テレビ番組で「資本主義は限界か」がテーマになり、志位委員長がインタビューを受けたほどです。近年、日本共産党のホームページで綱領を見て、とくに未来社会論に共感して入党する若者が増えているのも、そのあらわれです。
　また、日本共産党の党名には、国民の利益、日本と世界の平和のためにたたかってきた党の不屈の歴史が刻まれています。昨年は、若者の間で「蟹工船」がブームになり、小林多喜二が日本共産党員だったことも知られるようになっています。私たちは、戦前の天皇制の暗黒政治の時代から、主権在民・民主主義の政治の実現、侵略戦争反対の旗をかかげてきた８６年の歴史を、この機会に、多くの人に知ってもらうよう努力しています。（石）
( ２００９年０２月０４日，「赤旗」) （Page/Top）

「多喜二の母」の思い出／「蟹工船」の脚本を書き終えて／安川修一

　私は、父の留守によく父の部屋で大きな箱型の手回し蓄音機で、ＳＰ盤のスクラッチの多い音楽を聴きながら、本棚より小林多喜二を手にした在りし日の自分が蘇って来る。

故郷の川は
　私の在所は札幌で、今は大都会だが、子供の頃は、山と川のある街といった感じで、街の中心を豊平川が南北に流れ、シャケが遡上していたこともあった。その川沿いに小・中・高の木造校舎が並ぶように建っていて、私はその三校を順繰りに卒業した。
　小学低学年の時、私は母に川に入ってはいけないと注意された。それは、日本が敗戦と同時に米軍が進駐し、豊平川の上流、真駒内に大規模な米軍キャンプが出来、糞尿処理に川へ垂れ流しをしていたからだ。歴史を感じさせる石塊は茶色に被われ、ぬるぬると滑る。
　とある夕暮時、私は川の中に荷馬車を追い込む馬子が、馬共々滑って転び、馬子は必死に馬に鞭を打ち、馬は何度も立ち上ろうとするが、荷馬車の重みに立ち上がることが出来ずにいる。私は近くの交番に走り、巡査と戻ると、馬子は、馬の頭を正座した大腿に抱えるように泣き崩れていた。夕陽は浅い川面を赤く染めていた。進駐軍は、キャンプから小樽、函館へと軍用の弾丸道路を整備し、深夜に装甲車、ジープを走らせていた。冬は子供たちの格好の遊び場となった。禁じられれば禁じられる程に子供たちは、竹スキーを履き、軍用車の後に掴まり距離を競った。若い米兵は面白がってスピードを上げた。

一枚の写真
　私はその弾丸道路、後に札樽道路を、高校生になって一週間と少し、机を並べる小林という男と親しくなり、自転車で小樽へ行くことにした。途中で、小林が、小林多喜二のお母さんが朝里に住んでいるので、行ってみないかと誘った。私は父の本棚より数冊読んだのと、特高により寒中素っ裸にされ、殺意のこもった拷問により惨殺されたと知るだけだった。
　なぜ、小林は、多喜二の母、セキさんを知るのか、私は興味が沸いた。セキさんは、小柄なうえにお歳を召され、上がり框で小さく挨拶され、私たちを快く奥へ通して下さった。
　セキさんは、多喜二のノート稿や新聞、雑誌の切り抜きを一枚一枚出し、最後に何度か目にした写真を見せて下さった。ご自分が多喜二のデスマスクを手にする写真。この顔は、築地小劇場の方が取って下さったと。
　私は後に、それは千田是也氏であることを知った。若き日の氏がそこにいた。
　セキさんは「若い皆さんがおいでになって、多喜二のことを思ってくれて、喜こばねばならないね」。

変色した本
　長い年月が過ぎ、私は多喜二の代表作の一作「蟹工船」の舞台化を思いついたのは、一昨年の暮れ、正月公演の稽古も一段落し、本を整理していたら茶色に変色した多喜二の文庫本が出てきた。捲り読みするうち、自分の走り書きが目に付き、新たに買い求めようと、新宿の本屋に行くと、平積みされ、並んでいた。それから数カ月後、文芸雑誌の何冊かに特集が組まれ始めた。私は急にその気になり脚本化に取り組んだ。
　（やすかわ・しゅういち　演出家）

俳優座公演「蟹工船」
　原作＝小林多喜二、脚本・演出＝安川修一、５月１５～２４日＝東京・俳優座劇場、℡０３（３４７０）２８８８劇団俳優座
( ２００９年０２月０４日，「赤旗」) （Page/Top）

映画「蟹工船」へ思いを馳せて／嵐圭史

　世の〝蟹工船ブーム〟をみるにつけ、それを呼び起こした現今の社会状況への憤りと共に、一方で言い難き嬉しさもあって、何やら複雑な心境です。
　小林多喜二の『蟹工船』が多くの人々に読まれている！　当然の喜びです。しかし私にはもう一つ、私自身の、映画『蟹工船』撮影時の微かな追憶も重なって、ブームに付随した形でのその上映活動がいま全国に拡がって、やはり多くの人々にこの秀作を見ていただける機会を得たことへの喜びがあります。

三本の映画
　映画『蟹工船』は一九五三年に公開されましたから、撮影はその前年、私の中学一年生の時でした。当時劇団前進座の子供部（座員の子弟）は、独立プロダクション系の映画では〝子役〟の供給源として結構重宝された存在でした。もっとも子役といっても様々で、演技感鋭く名子役といわれた子（例えば松山政路『にごりえ』『どぶ』『狼』、河原崎建三『足摺岬』『しいのみ学園』）がいる一方、さして目立たぬ普通の〝その他大勢〟子役もいて、私はもちろん後者だったのですが……。
　そんな私でも中学生時には三本の映画に出ています。利根川沿いの貧村で、農業の未来に夢を托す中学生の群像を描いた、慈父のように優しかった家城巳代治監督の『ともしび』。下手なヴァイオリンをギーコと鳴らしながらも、やがて交響楽団の一員に加わっていく少年役の、今井正監督『ここに泉あり』。いまも旺盛に演奏活動を続けている〝群馬交響楽団〟創成期をモデルとした映画です。

雑夫役で出演
　そして『蟹工船』。座の男児（十代）ほとんどが、船底の缶詰工場で働く雑夫・少年工役で出演、私もその中の一人でした。缶詰作業のシーンは静岡県清水港の、本当の缶詰工場を使っての撮影で、実際に動くベルトコンベアーに目を丸くしたものです。
　何よりもびっくりしたのは〝蟹工船〟の巨大なオープンセットで、千葉県勝浦の港にそれは組まれていました。暴風雨のシーンでは激しい放水のなか、出演者もスタッフもずぶ濡れになっての撮影、メガホンを手に奮闘していた山村聡監督の姿が忘れられません。
　ちなみに、船のすべてを支配する監督・浅川役を見事な存在感で、冷酷かつ荒っぽく演じたのは、実は素人さんで現地勝山漁協の組合長さんだったとか。花沢徳衛、河野秋武、浜村純といった、独立プロ作品には欠かせなかった名脇役が雲霞の如く揃った労働者群像に対峙して、一歩もひけをとらぬまことに堂々たる演技でした。
　この映画には私の兄（故・六代目嵐芳三郎）も出演しています。子役では唯一人目立った役の、作業現場を逃げ出して捕えられる宮口少年を演じていました。閉じこめられた便所を俯瞰した映像が、未だ私の眼に焼きついて離れません。名ショットでした。

原作の本質
　それにしても名優山村聡が何故『蟹工船』を撮る決意をしたのか。その動機、プロセスも定かではないように思われます。独立プロ映画史上からも非常に興味のあるテーマで是非とも知りたいところです。
　「そして、彼等は、立ち上った。――もう一度！」このとても重要な原作のメッセージは、当然ですが映画にはありません。明らかに活字と映像の機能、その特性によるところであることは言をまたないでしょう。
　しかし原作の本質が、それによって少しも損なわれていないところに、山村聡監督の凄さを私はいま、あらためて感じています。
　（あらし・けいし　俳優）
( ２００９年０２月０３日，「赤旗」) （Page/Top）

ひと／本邦初、『蟹工船』を演じるアマチュア講談師荒到無形さん（４８）

　パン、パン。〝おい、地獄さ行ぐんだで！〟「これが、小林多喜二著『蟹工船』の冒頭でございます」。
　高座に置かれた釈台の前に座り、張り扇で調子をとり、読み上げます。死と隣りあわせの過酷な労働、ストライキに立ち上がった労働者…。抑揚のある通る声、思わず引き込まれ、さながら、その場にいる感覚になります。
　「落語は、笑い。浪曲は泣き。講談は怒りを表すのに適した伝統芸」「『蟹工船』は、講談向きです」
　秋田県生まれ。一年前まで北海道の高校で書道、国語の教師をしていました。教員時代、収入がないため給食費やＰＴＡ会費が払えない家庭の姿を目の当たりにしたことが、蟹工船とつながります。「働いても命のつなげぬような世の中が続いたら、この国は滅んでしまうぞ」―多喜二の思いが、心に響きました。
　本名は荒井到。十三年前、落語の原作募集にしゃれで応募。最終選考に残りました。「もしかしたら、才能がある？」。落語や講談の作品は二十作にもなります。「自分で読み、聞かせたい」と講談を演じる側に。「教師を辞めて単身赴任の釧路から函館の自宅に戻る」といったら五人の子は大喜び｡｢これで生活ができれば本当にありがたい」
　講談仲間、神門久子さん（５０）は「まじめ。でも、ちょっと変わりもの（笑い）」と評します。「アイヌを扱った講談、落語、浪曲は一つもありません。北海道ゆかりの話をし続けたい」
　文　矢藤　実
( ２００９年０２月０３日，「赤旗」) （Page/Top）

相沢良没後７３年碑前祭と集会／札幌

　相沢良没後七十三年の碑前祭と記念集会が一月二十八日、札幌市で行われました。主催は治安維持法犠牲者国賠同盟道本部と札幌支部です。
　西区平和の滝の碑前で前田大蔵道本部副会長が開会あいさつし、黙とうしました。
　午後からは宮の沢の「ちえりあ」で記念集会を開き、三十五人が参加。宮田汎道本部事務局次長が「治安維持法下でたたかった北海道の女たち」と題して講演しました。
　宮田氏は、無権利状態だった戦前の女性が尊厳と平等を求めてたたかってきた歴史を二十五人の北海道出身の女性に触れて話しました。無名とも言える女性たちのたたかいが戦後民主主義の基礎を築き、私たちがたたかいの炎を受け継ぎ、貧困・格差ノー、真の平和・平等をつくるためにたたかうことができると結びました。
　レッド・パージ犠牲者の苗川清一郎さん（当時国鉄苗穂工機部）が訴えました。
(２００９年０２月０３日，「赤旗」)

 

 

*         【1月】（ヘッドライン）

*         ソマリア沖派兵決定に抗議／全労連などが声明・談話

*         米軍再編反対広げよう／安保破棄中央実行委が幹事会

*         多喜二を読む会ことしで１０年目／秋田・大館

*         相沢良の碑前祭／あす札幌、「平和の滝」

*         社会科学者・河上肇の多大な影響力／物語は物語を生んだ／関きよし

*         日本共産党知りたい聞きたい／敗戦の前年に獄死した池田勇作とは？

*         映画「蟹工船」が盛況／東京の映画館、上映を延長

*         『弘前民主文学』１３３号を発行

*         日本で発行の英字週刊誌／日本共産党を特集／『メトロポリス』

*         呉市軍艦内の反戦機関紙／「聳ゆるマスト」記念碑を／広島の党地区委、大阪府委訪問／進む建設運動ＤＶＤも

*         花岡事件を紹介／案内サークル１１団体１８８人来訪／秋田

*         いま、なぜプロレタリア文学か／現代的魅力に迫るために／三浦光則

*         わが街ふるさと／秋田・横手市／華やかで勇壮ぼんでんまつり

*         シリーズ『季節風』が完結／作家重松清さん／生きてあることだけは全面的に肯定したい

*         治維法国賠同盟塩釜市で新年会

*         映画「蟹工船」１７日に上映会／長崎市

*         「不屈・秋田県版」合本１８集発行／治維法国賠同盟

*         日本共産党知りたい聞きたい／特高に殺された京都出身の教師、倉岡愛穂とは？

*         日本共産党知りたい聞きたい／韓国から建国勲章うけた弁護士の布施辰治とは？

*         治維法国賠同盟／土岐で学習会／岐阜

*         賠償法求める署名２万超す／秋田県治維法国賠同盟

*         １５０人派遣切り函館ＮＤＫ／〝気持ちわかってくれる〟／共産党に解雇の労働者訴え／市、雇用対策実施へ

*         日曜版創刊５０年／女優冨士真奈美さん／毎週楽しみにしています

*         志位さん＆２０代新春トーク

【本文】

【1月】（Page/Top）

ソマリア沖派兵決定に抗議／全労連などが声明・談話

　政府が二十八日、ソマリア沖派兵を決定したのに対して各団体が抗議の声明、談話をだしています。
　全労連は小田川義和事務局長の談話を発表しました。
　談話では、「政府・与党は、自衛隊法の『海上警備行動』を根拠に自衛隊を派遣した上で、『海賊対策新法』の制定をねらっている」と指摘。
　「新法」について、「集団的自衛権の行使に道をつける重大な問題を有している」ことや、武器使用についても「『正当防衛』に限定していたものを、『任務遂行』にまで拡大しようとしている」ことから、「憲法九条を乱暴に踏みにじるもの」と批判しています。
　また次の団体が声明や談話を出しています。
　婦人民主クラブ、新日本婦人の会、治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟中央本部、日本平和委員会。
( ２００９年０１月３０日， 「赤旗」（Page/Top）

米軍再編反対広げよう／安保破棄中央実行委が幹事会

　安保破棄中央実行委員会は二十八日、東京都内で二〇〇九年度幹事会を開き、一年間の運動方針を決定しました。
　開会あいさつした全労連の柴田真佐子副議長は、アメリカ覇権主義と自民党政治の路線が破たんする歴史的局面のなかで、雇用とくらしの危機への国民の反撃が始まったとのべ、諸悪の根源である日米安全保障条約を廃棄する展望を切り開くときだと訴えました。
　早坂義郎事務局長が報告し、大激動の時代にふさわしく、海外派兵を許さず、米軍基地の再編・強化や自衛隊の米軍との従属的一体化反対のたたかいを広げようとよびかけました。来年の日米安保条約五十年にむけて、安保廃棄の旗をかかげた大運動をと提起しました。
　討論では、中学生への勧誘や子ども、女性を対象とした体験など、さまざまな形で自衛隊が国民生活に入り込んでいる実態が出され、「海外派兵ストップの行動を草の根からやっていく」（新婦人）と語られました。
　青年の間での安保条約反対の運動について、「沖縄での体験学習などをおこない、社会保障と安保条約との結びつきを考えている」（民医連）「青年協議会が六月に沖縄で研修をする」（国公労連）「青年諸団体の横断的なとりくみが必要」（平和委員会）など、積極的な発言が続きました。
　安保五十年にむけた議論では、「五十年前のたたかいでは憲法との関係が国民の心を大きくとらえた。諸悪の根源とは何かをもう一度とらえなおす必要がある」（治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟）などの意見が出されました。
( ２００９年０１月２９日，「赤旗」) （Page/Top）

多喜二を読む会ことしで１０年目／秋田・大館

　秋田県大館市の「小林多喜二をふるさとで読む会」が二十四日、同市中央公民館で、約三十人が参加して二〇〇九年読書会第一回例会を開きました。
　二〇〇〇年一月に始まった同会の多喜二読書会はことしで十年目。
　一―三月の例会で短編小説十四編を取り上げる予定で、これで多喜二の小説を全編読むことになります。
　この日取り上げたのは、「継祖母のこと」「ロクの恋物語」「ある役割」「彼の経験」の四編で、多喜二が二十―二十二歳のときの作品です。
　講師の野呂勝也さんは、作品論と志賀直哉や菊池寛らの影響の二側面から報告し、参加者の評価、討論を求めました。
　参加者からは、「『継祖母のこと』は良く書けている。恋愛小説三篇はしっくりこない」「志賀直哉に似た題名のものがある。多喜二がまねたのでないか」「恋愛小説三篇は心理描写に踏み込んでおり、後の小説につながるものとして見るべきでないか。女性観が日記と三小説とでは明らかに違いがあり、多喜二は問題を投げかけようとしたのではないか」などの意見、感想が飛び交いました。
　「『継祖母』をどう呼んだのか。子どものころは継母も継祖母もギギと呼んだように記憶している。継祖母はあまり記憶がないが継祖父はたくさんいたように思う」などの話も出ていました。
(２００９年０１月２７日，「赤旗」) （Page/Top）

相沢良の碑前祭／あす札幌、「平和の滝」

　札幌・手稲山のふもとにある「平和の滝」。一部は凍りついていますが、ゴーゴーと音をたて、勢いよく流れ落ちています。
　少雪とはいえ積雪四五㌢ほどの銀世界が広がり、滝までは下り坂になります。一人が歩けるほどの道があり、滝の近くまで行くことができます。
　「平和の滝」は、戦前の厳しい弾圧を受けながら働く者の解放のため不屈にたたかい抜いた女性活動家・相沢良（一九一〇―三六年）ゆかりの地として知られています。
　滝の入り口には、治安維持法国賠同盟道本部と札幌支部が建立した記念碑（レリーフ）と案内板があります。
　没後七十四年の二十八日は、「碑前祭」が午前十一時から平和の滝広場で、「学ぶ集い」が午後一時から西区の「ちえりあ」で開かれます。宮田汎高校センター研究所長が「治安維持法下でたたかった北海道の女性たち」と題して講演します。
(２００９年０１月２７日，「赤旗」) （Page/Top）

社会科学者・河上肇の多大な影響力／物語は物語を生んだ／関きよし


『貧乏物語』を貫く「人はパンのみにて生くものにあらず」
　人は物語を好む。一八七九（明治十二）年に生まれ、一九四六（昭和二十一）年に死去した社会科学者河上肇さんは、明治から大正・昭和期にかけて多くの本を書き広大な読者を持ち社会に大きな影響をあたえてきた。もっとも有名なのは『自叙伝』と『貧乏物語』であろう。ぼく自身の河上さんとの出会いも敗戦から間もなくこの二つの物語から始まった。『貧乏物語』初版の「序」は述べる。「人はパンのみにて生くものにあらず、されどまたパンなくして人は生くものにあらずというが、この物語の全体を貫く著者の精神の一である。」。筆にまかせた書き下し文は、音読され耳から受けるとき作者の「気魄」には身がふるえる。河上さん自らも「学者たるもの、すべて文人でなければ」といい、口で喋るより速く筆が認めるそうだ。「文は人なり」の極意といえる。加藤周一氏は『日本文学史序説』で「その文章は流麗――彼の『利他主義』と直接につながって」当時の青年に与えた「衝撃と影響」の大きさ広さは「『貧乏物語』を抜くものはなかった」、それは「知的な小器用さの反対のものである」「一箇の人間の劇として感動的なものでもあるだろう」と、河上の項を結ぶ。

女性の物語に
　劇作家井上ひさし氏が戯曲『貧乏物語』を書きこまつ座が初演したのは一九九八年。二〇〇〇年十二月に池袋小劇場でも初演、昨年七月に再々演した。
　河上さんの大阪朝日新聞連載は一九一五年だから敗戦をはさんで八十年余の年月が経つ。上演を見られなかったぼくは翌年に戯曲が雑誌に掲載されたのを読んで始めはびっくりした。なんと劇の「時」は一九三四年春、河上さんが小菅監獄に収監されていた時期、留守宅を守る六人の女性の「物語」となっている。
　一九三三年一月十三日東京朝日新聞社会面に五段抜きの見出しで〝わが国論壇の老闘将　元京大教授遂に捕る〟の記事が出た。法学博士○○○氏が誰であるか読者には明らかであり、博士が書斎から街頭に出て政治の実践運動に参加し、日本共産党員として治安維持法違反で追及され五十五歳の老境で特高警察に検挙されたことはビッグニュースなのだ。いったい河上肇とは何者であったのか、学者として波瀾万丈の生涯は昭和史のなかでどんな意味をもったのか、井上ひさし氏の『貧乏物語』はそのことを考えさせる物語＝劇だ。
　物語にはまず〝ひと〟が登場する｡肇さんは登場しない､おなじみの肖像画が掛けられてある。まずは家族の妻ひで四十九歳と次女ヨシ二十二歳。前年の「大森ギャング事件」に連座するが起訴猶予となるが留置場生活でトラウマをかかえたヨシの看護婦で女中の初江十七歳。河上家に十六年仕えた元女中の美代三十二歳、博士の教え子で内務省警保局の役人の妻となった早苗二十八歳、新劇女優を夢見るが舞台に出られずカフェの女給をしているクニ二十七歳。
　次は舞台書き〝音楽の中からやがて、棟割り二軒長屋の西側の半分がゆっくりと現れてくる〟とある。劇はファンタジーで現実をそのまま写すものではないという。小さく区分した仕切りは牢獄を想わせる。質素を通りこして粗末の見本。ここは東京市相生町十番地の借家。

超格差の象徴
　この稿を書くにあたって河上肇さん入獄中留守宅だった所を十年ぶりに訪ねてみた。いまは地下鉄・中野坂上駅に近い本町一丁目、交差点に聳え立つ高層ビルとその陰の露地裏の小住宅がひしめく中に陶製の標札「相生町十番地」が残されてある。いまの超格差社会の「貧乏」を象徴するような一枚の標札を見つめていると、経済学者と劇作家の「物語の全体を貫く、精神が一であり、人はパンのみにて生くものにあらず」がひびいてくる。
　（せき・きよし　演出者、池袋小劇場代表）
　『貧乏物語』は昨年十二月、新日本出版社が刊行。林直道大阪市立大学名誉教授の解説を載せています。
( ２００９年０１月２７日，「赤旗」) （Page/Top）

日本共産党知りたい聞きたい／敗戦の前年に獄死した池田勇作とは？

　〈問い〉山形県には戦前、獄死した池田勇作という忘れてはいけない先駆者がいると聞きました。どんな人だったのですか？（山形・一読者）
　〈答え〉池田勇作は、戦前、弾圧に屈せず、反戦を訴え、プロレタリア文学を志し、４０年６月に治安維持法違反で検挙され、１９４４（昭和１９）年３月１３日、東京・豊多摩刑務所で３０歳の若さで獄死した人です。勇作の妻、郁（旧姓阿部、日本女子大卒、紀伊国屋書店勤務）も夫とともに検挙され半年後釈放されますが勇作の遺骨を抱いて故郷・余目町に帰り、終戦の３日前８月１２日、過酷な取り調べのために発症した結核で病死します。
　池田勇作は１９１３年、鶴岡市で下級士族の家に生まれ、訓導をする伯母たちに支えられ旧制中学に学び、４年生（１６歳）の時、仲間と共に社会科学研究会をつくります。その後中退し上京、電機学校（現東京電機大）に入学。東京では築地小劇場に刺激を受けますが伯母の死で学費が途絶えて３１年春、帰郷。「荘内春秋」新聞の編集に加わり、「プロレタリアスポーツとは何か」など多くの記事を寄稿。その一方、プロレタリア作家同盟、演劇同盟、映画同盟また同文化連盟などの支部を鶴岡の町に次々と発足させ、それらの活動を「荘内春秋」や「荘内新報」に載せる活動を精力的におこないます。また、作家同盟機関誌『荘内の旗』を創刊しますが、多喜二労農葬の日（３３年３月１５日）に４回目の予防検束を受け、第１号はすべて押収され、第２号も所在不明。第３号の１冊だけが奇跡的に発見され、そこに多喜二への思いと虐殺への怒りをこめた作品「黙祷（二）」（筆名、浮田進一郎）をみることができます。この時期の著作には戯曲「遺族」（演劇同盟機関紙『鍬と銃』）など１４編が見いだされています。
　３６年２月、再び上京、岡部隆司らとともに日本共産党の再建運動に取り組む一方、雑誌『機械工の友』の創刊（３８年９月）から編集に深くかかわり読者会を精工舎や東京計器など数社に組織、『中央公論』に「生田修」名で２編、ダイヤモンド誌に１編とほかに絶筆となる長編小説「河岸」を「最上駿作」名で発表しています。これらの作品は、「労働者の幸せのためにこそ新しき政治が打ち立てられるべき」（「一旋盤工の生活より」『中央公論』５４年巻）という勇作の思想にそって、労働者の向上心と仲間同士の助け合い、励ましあい、家族への温かい思いやりの大切さ、を描いています。
　池田勇作は、これまであまり知られていませんでしたが、池田道正・山形大学名誉教授らの努力で、昨年春、遺作集『魂への道標―池田勇作と郁の軌跡』が出版され、ブログhttp://ikeda-yusaku.blogspot.com/ もつくられています。
　（道）
( ２００９年０１月２４日，「赤旗」) （Page/Topへ戻る）

映画「蟹工船」が盛況／東京の映画館、上映を延長

　映画「蟹工船」の上映会が盛況です。十日から二十三日までの二週間、期間限定でリバイバル上映していた東京・新宿武蔵野館は、連日の満席を受け、急きょ二週間の上映延長を決めました。
　小林多喜二の原作刊行後、二十四年を経た一九五三年、俳優・山村聡がメガホンを取り映画化した作品です。昨年からの一大「蟹工船」ブームの折とはいえ、新宿武蔵野館の支配人・小畑勝範さんは、古い映画にどれだけの人が集まってくれるか予想できなかったといいます。しかし「ふたを開けてみたら多くの方に来ていただけた」。観客は二週間で約三千人が集まり、立ち見の出る回もあったといいます。特に込み合うのは昼間。見終わって出てきた人、次の上映を待つ人で、同館のロビーはにぎわいます。
　連れ立って見にきていた公務員の井野口教治さん（６３）＝調布市在住＝と、同じ職場で派遣として働く女性（２１）＝さいたま市＝は「すごい迫力だった」と口をそろえます。「多くの人に見てもらって、団結の力を知ってほしいし、現代の派遣労働を克服していきたいですね」と井野口さん。一方で、過酷な労働に耐えかね蜂起した漁夫らを、帝国海軍が鎮圧するラストについては、「原作にある、『彼らは立ち上がった。もう一度』というくだりをナレーションで入れてほしかった」と映画の脚色に注文も付け加えました。
　いま、職探し中だという女性は、「蟹工船」を人ごとではないと感想を語ります。「団結することの素晴らしさを描きつつ、権力の恐ろしさも出ていた」
　会社員の吉川りかさん（３５）＝世田谷区＝も同じく、「明日はわが身」と思って見にきたといいます。「私もいつ首切りにあうか分からない。働く側も、自分をしっかりもたないといけないと感じました。組合なんかが頑張らないと。こういう映画をもっと応援してほしいと思います」

◇新宿武蔵野館０３（３３５４）５６７０。上映終了日は２月上旬ごろの予定。各地の今後の上映会の問い合わせ＝共同映画０３（３４６３）８２４５、映画センター全国連絡会議０３（３８１８）６６９０
( ２００９年０１月２３日，「赤旗」) （Page/Topへ戻る）

『弘前民主文学』１３３号を発行

　青森県の日本民主主義文学会弘前支部はこのほど、機関誌『弘前民主文学』百三十三号を発行しました。（写真）
　創作は、認知症が発病した妻に寄り添う夫の夫婦愛を描いた「霧の向こう」（野呂光人）や戦中・戦後・現在と社会の変動に翻ろうされてきた親子三代を描いた「蟻（あり）地獄を生きる人々」（霧山正彦）、街の小さな団地で生まれ育つ子どもたちを描いた「団地物語」（三浦やよゑ）など七編を収めています。
　弘前支部主催の多喜二祭の講演録「なぜ、今『蟹工船』が読まれるのか」（山田大輔）と「多喜二の『火を継ぐもの』について」（兵頭勉）を収録しています。そのほか、四編のエッセー、詩や俳句などを載せています。
　連絡先は、民主文学会弘前支部（弘前市浜の町東３の１３の２２・山田大輔さん）。
(２００９年０１月２３日，「赤旗」) （Page/Topへ戻る）

日本で発行の英字週刊誌／日本共産党を特集／『メトロポリス』

　日本で発行されている英字週刊誌『メトロポリス』十六日号が、日本共産党を紹介する特集を組んでいます。
　同誌は一九九四年に創刊され、関東の六百カ所以上で外国人などを対象に配布されている無料の雑誌。同誌によると、発行部数は約三万四千部です。
　この号の表紙には、志位和夫委員長が登場しています。
　記事は「赤い星、人気急上昇中」という見出しで、日本共産党員作家・小林多喜二の『蟹工船』がベストセラーになっていることを入り口に、「マルクス主義の観点で書かれたこの小説の人気は、一般の日本人有権者が…日本共産党への関心を高めていることをも示している」と指摘しています。
　これまでの日本の高度経済成長について、「サービス残業」や「カローシ（過労死）」など「人間らしい生存条件という面で大きな犠牲を払ってもたらされたもの」と説明。「『蟹工船』で描かれているひどい搾取が、今日の世代と響き合っている」と強調しています。
　そのうえで、日本共産党が昨年、毎月約千人の入党者を迎えていることに注目しています。志位委員長について「日本で増え続ける派遣労働者たちの権利を一生懸命擁護してきた」と紹介。日本共産党については、一九九一年のソ連共産党の解体を積極的に歓迎する声明を発表した「世界で唯一の共産党」だとして、「モスクワであれ、北京であれ、ワシントンであれ、日本の問題を外国が牛耳るのを拒否してきた」党だと特徴づけています。
　総選挙を前にした日本の政治情勢に触れ、「志位氏にとっては、（自民、民主の）この二つの主要政党は、経済政策もいまの対米関係を継続する立場もほとんど同じである。民主党に参加する前、小沢一郎氏が自民党の幹事長を務めていたという事実は、主要政党に疑念を深めつつある有権者の間で、この（自民党と民主党がほとんど同じだという）見方をいっそう強めることとなった」と指摘しています。
　志位氏が同誌のインタビューに「国民は自民党にも民主党にも幻滅しているのです」「人々は包みの顔だけ変えるのでは十分ではない、政府の中身も変えなければならない、と気付き始めたのです」と答えたことを紹介しています。
　そして、「輸出を主力とする日本経済――これは、労働者を締め上げて競争力維持に熱中する大企業が牛耳り、大企業の献金に大きく依存する政治体制に支えられた経済だが――これは、政治変化を増幅するのに必要な不満をつくり出している」「共産党は、二〇〇九年には重要な地歩を築くことになりそうだ」と結んでいます。
( ２００９年０１月２３日，「赤旗」) （Page/Topへ戻る）

呉市軍艦内の反戦機関紙／「聳ゆるマスト」記念碑を／広島の党地区委、大阪府委訪問／進む建設運動ＤＶＤも

　戦時中、広島県呉市の軍艦内で侵略戦争に反対した反戦機関紙「聳（そび）ゆるマスト」の記念碑建設の運動が現地で進んでいます。発行の中心となった反戦兵士・阪口喜一郎が大阪府和泉市出身のため、日本共産党広島県中部地区委員会の二階堂洋史委員長らが二十日、党大阪府委員会を訪れ、建設への協力を要請しました。
　「聳ゆるマスト」は、一九三二年二月から十月にかけて、呉市の軍港で、絶対主義的天皇制と軍国主義に立ち向かい、軍艦内で日本共産党呉地区軍事部が発行した機関紙です。六号まで発行されました。阪口喜一郎は、「治安維持法」違反の汚名を着せられ、過酷な拷問のすえ獄死。和泉市黒鳥山公園に記念碑が建っています。
　呉市では、「大和ミュージアム」開館や海上自衛隊の潜水艦の展示など、軍都・呉を賛美する動きが強まっています。記念碑建設は、「喜一郎がたたかったこの呉市に、反戦・平和のたたかいをたたえるモニュメントと資料館建設を」との声が広がり、党中部地区委員会は一昨年六月、市内の適地に「記念碑」の建設を決め、十二人の「呼びかけ人」を選びました。
　呼びかけ人会議では、「聳ゆるマスト」と阪口喜一郎のたたかいを発掘し、その偉業を知らせようと、当時の写真と関係者のインタビューで構成するＤＶＤ「聳ゆるマスト～反戦兵士・阪口喜一郎が残したもの」（三十五分）を作製し、普及をはかっています。
　ＤＶＤの問い合わせは、治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟大阪府本部まで。建設資金の協力は、ゆうちょ銀行５１８―１５１４０普通預金２７０９３９７１二階堂洋史まで。
(２００９年０１月２２日，「赤旗」) （Page/Topへ戻る）

花岡事件を紹介／案内サークル１１団体１８８人来訪／秋田

　秋田県大館市の「花岡の地　日中不再戦友好碑をまもる会」の「フィールドワークサークル」（富樫康雄事務局長、略称・案内サークル）が二〇〇八年に、全国から花岡事件の調査･研究､学習で花岡を訪れた十一団体、個人・グループの百八十八人を案内したことが、同サークルのまとめでわかりました。
　案内は、二月十五日から十一月七日までの十一回でした。
　案内サークルの案内を受けた個人・団体は軍事政権下の韓国で小林多喜二の「蟹工船」「一九二八年三月十五日」「党生活者」を翻訳した人たちや日本の朝鮮人強制連行事件を調査している韓国政府の調査団も含みます。
　仙台市の中学校が修学旅行で訪れて学習したほか、宗教者、歴史研究者などが目立ちました。
　二月に訪れた韓国・ソウルの出版社社長の男性は、「韓国人が日本に強制連行されたことは知っていたが、中国人が花岡に連れてこられ、虐待、虐殺されて多くの命を失ったことを花岡に足を運んで初めてわかった。人間はそれほどまでに残酷になれるのか」と第四十三回県多喜二祭（二月十六日、秋田市）で発言しています。

花岡事件
　アジア太平洋戦争末期に日本軍国主義が引き起こした約四万人もの中国人強制連行事件の一つ。九百八十六人の配属を受けた鹿島組（現鹿島）花岡出張所は過酷な労働を強い虐待しました。一九四五年六月三十日に人間の尊厳をかけてほう起。全員が捕らえられ拷問されました。四四年七月から四六年三月までに四百十九人が死亡しました。
(２００９年０１月２１日，「赤旗」) （Page/Topへ戻る）

いま、なぜプロレタリア文学か／現代的魅力に迫るために／三浦光則

　「蟹工船」ブームということがいわれて久しいが、最近では、角川文庫で葉山嘉樹の『セメント樽の中の手紙』が刊行されたり、国文学の専門誌『國文學』が「再読プロレタリア文学」という特集を組むなど、多喜二だけではなく、プロレタリア文学全体を見直そうという雰囲気が生まれているようである。

不当に批判され軽視されたころ
　それにつけても、私はいまは亡き手塚英孝氏のことを思い出さずにはいられない。手塚氏は最近再刊された、評伝『小林多喜二』のすぐれた作者であることはよく知られている。私が初めて手塚氏にお会いしたのは、手塚氏が代表をつとめていた多喜二・百合子研究会の講座に出席するようになってからだった。
　そのころはまだ新日本出版社の『日本プロレタリア文学集』全四十一巻も刊行されていなかったので、多喜二や百合子などプロレタリア文学の代表的な作品は手に入れることはできたが、それ以外の作品は容易に目に触れることができなかった。
　一方文壇や学会の風潮として、プロレタリア文学に対する不当な批判や軽視が目立っていた。そうした論調に対してなにか有効な反論を学びたいと強く思っていた私は、講座の後の懇談会の席で、「プロレタリア文学は理論はすぐれているが、実作の面ではたいしたものがないという批判がありますが…」といささか言葉足らずの質問をした。すると、手塚氏はいつもの温和な表情から厳しい面持ちになり「そんなことはありません」と怒ったように一言言って黙ってしまわれた。今になって思えば、当時まだ強くあったプロレタリア文学に対する否定的な評価や民主的な文学運動に残っていた清算主義的な見方に対して、それを許すことができないという気持ちがあったからではないかと想像するのである。

歴史の根本問題様々な角度から
　評伝『小林多喜二』の冒頭には、戦前は多喜二の作品を持っているだけで逮捕・投獄され、その作品は国禁の扱いを受けたことが記されている。多喜二の名は、物故作家名簿からも抹殺された。多喜二をはじめとするプロレタリア文学の多くの作品は、人々の目から隠されようとしたことを忘れてはならないと改めて思う。同時に「蟹工船」をはじめプロレタリア文学作品は、戦前の歴史の根本的問題をさまざまな角度から鋭く迫っているからこそ、当時の権力を恐れさせ、読者に大きな感銘を与えたことも忘れてはならないだろう。
　多喜二・百合子研究会では、二月より十二回にわたって「今、なぜプロレタリア文学か」と題した講座を企画している。この講座は、大逆事件後の近代の激動を写した代表的な作家・作品をとりあげ、今改めて関心が向けられているプロレタリア文学の現代的魅力を明らかにするものとして、私は期待している。
　（みうら・みつのり　多喜二・百合子研究会運営委員）

「講座　いま、なぜプロレタリア文学か」＝２月～１１月、第２・第４火曜日午後６時半、東京労働会館（ＪＲ大塚駅下車）。
　前期　２月２４日「大逆事件とプロレタリア文学の萌芽―平出修『逆徒』」（祖父江昭二）、３月１０日「谷中村鉱毒事件の波紋―伊藤野枝『転機』」（久野通広）、３月２４日「獄中で描かれた代表作―葉山嘉樹『海に生くる人々』」（浦西和彦）、４月１４日「戦場の日本兵の末路―黒島伝治『橇』」（能島龍三）、４月２８日「労働者の連帯―徳永直『太陽のない街』」（岩渕剛）、５月１２日「大陸侵略を告発する戯曲―村山知義『暴力団記』」（菅井幸雄）。
　後期　９月～１１月「貧と苦悩に生きる労働者の妻―松田解子『乳を売る』」（澤田章子）、「経済恐慌下のたたかい―小林多喜二『工場細胞』」（大田努）、「台湾農民への無法な支配―伊藤永之介『総督府模範竹林』」（未定）、「反戦・革命の詩人―槇村浩『生ける銃架』」（土井大助）、「権力の非人間性の追及―宮本百合子『一九三二年の春』『刻々』」（北田幸恵）、「渡辺順三、鶴彬ら短歌革命の歩み」（碓田のぼる）。
　申込先＝多喜二・百合子研究会ファクス０３（３４２３）９３２５
( ２００９年０１月２０日，「赤旗」) （Page/Topへ戻る）

わが街ふるさと／秋田・横手市／華やかで勇壮ぼんでんまつり

　秋田県横手（よこて）市は、古くから周辺の農林産物の集積地であり、四方を山に囲まれた、穏やかな盆地でしたが、二〇〇五年十月に八市町村が合併して、六百九十三平方㌔㍍の面積に広がりました。その半分以上は森林です。
　「オラが秋田は、お米の出どこ」。そして江戸時代から続く造り酒屋が多い酒どころでもありますが、里山の傾斜を生かしたリンゴ、ブドウをはじめ、サクランボやスイカなどの果物はコクがあって、他地域に類を見ない美味さです。
　加えて「横手やきそば」も〝半熟たまご乗せ・福神漬け添え〟で国内は言うに及ばず、アジアに売り出し中。
　今年は、全国Ｂ級グルメ・グランプリ大会が当地で開催されることに決まりました。
　〝冬のメルヘン〟と評される「かまくらまつり」は横手市の代名詞になっていますが、その、静かな幻想の世界に続いて開かれる「ぼんでんまつり」は華やかでにぎやかで勇壮な行事です。
　屋根まで届く大きな棒に、その年の干支などを題材にした頭飾りの豪華さを競うコンクールがあり、翌日は郊外の旭岡山神社へ奉納の一番乗りを競います。昨年は三十一本上がりました。
　町内会や事業所、子ども会、中学校などで正月明けから頭飾りの製作に取りかかり、一カ月半かけて仕上げていきます。それぞれの工房では、六十代の先輩たちが三十―四十代の後輩たちと話し合いを重ねて作っていく中に、共産党員の姿があります。
　草の根で「まちおこし」に力を尽くす、真摯（しんし）な日々の活動が、地域を支えているのです。
　農民運動をリードし、治安維持法とたたかった先達は「不屈の精神」を私たちに根づかせてくれました。
　旧正月の二月十四日から同十七日に繰り広げられる「静と動の雪まつり」が終われば、春は早足でやってきます。
　（横手市議　立身＝たつみ＝万千子）
(２００９年０１月１９日，「赤旗」) （Page/Topへ戻る）

シリーズ『季節風』が完結／作家重松清さん／生きてあることだけは全面的に肯定したい


衣食住も保障できないなら国家じゃないですよ
　出会い、別れ、旅立ち、思い出…。人々の日々の哀歓を季節の移ろいとともに描く重松清さんの、ものがたり歳時記『季節風』（文芸春秋）。冬編『サンタ・エクスプレス』で完結しました。主人公はどこにもいそうな普通の人々です。今、その人々にも広がる貧困、格差、生きづらさ。作品の行間にこめた思いは―。
　玄間太郎記者
　春夏秋冬どの巻の作品も、切なくて、やさしくて、温かい。涙がポロッとこぼれます。テーマは親子、家族、ふるさとなどへの、想（おも）い。なぜ「思い」ではなく「想い」なのでしょう。
　重松　「思い」は、自分のなかだけで完結するものと考えます。「想い」は、「相」に「心」と書く。相手がいるから生まれる思いです。人を好きになるということもそうです。想像する「想」でもあります。相手に何かを伝えたい、届けたい。が、百パーセントは届かない、なかなか分かりあえない。それでも、分かりあいたい。それが小説に限らず世の中を見る僕の前提です。

じゃあ、またな
　各巻１２編、全４８編。主人公も４８人。性別も年代も、職業も社会的立場も違う人々の日常の物語。完結して見えてきたものは何でしょう。
　重松　あの４８人、どこかにいたよな、会ったよなという思いです。僕が頭のなかでつくった主人公なのにね。１年がかりで４８人と会って、とっておきの話を聞いて小説にしたような感じです。どこにもいそうな、だれもが会ったことがあるような、そんな人々。僕も大好きになりました。主人公がかかえている悩みや問題は、百パーセント解決はしていません。でも、少しでも元気にし、幸せにしてあげたかった。彼らとの別れ際、笑顔で「じゃあ、またな」と手を振ってやりたかった。
　例えば音楽でも、高度なテクニックやアレンジで再現不可能のようなすごい演奏もあれば、その一節を自分で弾いたり、ふと口ずさみたくなるような音楽もあります。僕の小説は後者だと思っています。

小説でよかった
　作品は、その普通の人々を取り巻く現実も映して、共感をよびます。例えば『春　ツバメ記念日』の表題作は、子どもを産み、育て、働くことの厳しさと喜びを描きます。｢島小僧｣の背景にあるのは、瀬戸内の島に架けられた橋と、その後のさまざまな問題です。
　重松　僕はフリーライターですから、取材などで現実のシビアさは知っています。知れば知るほど小説でよかったなと思うこともあります。何が正しくて何が間違っているか。そう軽々に結論を出せるものではありません。いろいろな見方、考え方があっていいんです｡少なくとも僕は､小説の中にむりやり解決策を提示しません。読者に考えてもらいます。僕の小説をどう読んでくれるか。それは読者の問題です。けれども、人間生きてあることだけは全面的に肯定したい。
　メディアにのらない普通の人々のなかにも、内なる声やドラマがある。懸命に時代を生きている。リアリティーがある。それは小説という形でしか書けません。だから僕の小説は、文学というよりジャーナリズムと隣接しているフィクションかもしれません。

多喜二の時代と
　若い人たちに『蟹工船』（小林多喜二）ブームが続いています。背景にあるのは貧困、格差、非正規労働者の大量解雇など、時代の閉塞（へいそく）感だともいわれていますが。
　重松　『蟹工船』のストーリーだけではなくて、今と似ているこんな時代が昔あったんだと確認したいんじゃないかな。それは安心感かもしれない。逆に７０年たっても何も変わってないじゃないかという怒りにつながるかもしれない。若い人たちは歴史性がないとか、連続性をもたないといわれてきました。それが、小林多喜二とその時代に直結したわけです。
　大企業の大量解雇が続いています。去年の春には史上最高の利益を記録していた会社でさえ、いまは工場を休止せざるを得なくなった｡こんなことは､かつてなかったのではないでしょうか。悪化の速度はもっと早くなるような気がします。
　僕が心配なのは、景気のよかった時代の亡霊のように「自己責任」という言葉がばっこしていることです。派遣が先に首になるのは当然だろうとか、介護が必要になって病院に入れなくてもそれは本人の責任だとか。「自己責任」は、本来そんな意味ではなかったはずです。なのに、この時代のある種の免罪符にされている。言葉が都合よく使われているんです。
　派遣、非正規労働者が大量に首を切られる。寮を追い出される。ひどい現実です。ほんとにささやかな幸せまで奪われている。今は、住むところがある幸せ、というレベルまで落ちています。「衣食足りて礼節を知る」といいますが、その衣食、住がキープできていない。最低、衣食住は保障しないといけない。それができないんだったら国家じゃないですよ。
　しげまつ・きよし＝１９６３年岡山県生まれ。早稲田大学教育学部卒業。出版社勤務を経て、フリーライターに。９１年『ビフォア･ラン』で作家デビュー。９９年『ナイフ』で坪田譲治文学賞､『エイジ』で山本周五郎を受賞｡０１年『ビタミンＦ』で直木賞受賞。著書に『疾走』『その日のまえに』『きみの友だち』『カシオペアの丘で』『気をつけ、礼。』『とんび』など多数
(２００９年０１月１８日，「赤旗」) （Page/Topへ戻る）

治維法国賠同盟塩釜市で新年会

　宮城県塩釜市で十日、治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟塩釜支部の新年会が開かれ、十八人の会員が参加しました。
　相原君雄支部長から、新年のあいさつに続いて、「今年は総選挙の年であり、歴史の転換点でもあるたたかいなので、同盟の伝統と歴史を踏まえて奮闘しよう、その前提となる健康に留意して頑張ろう」と二つの訴えがありました。
　そのあと、八甫谷実顧問の乾杯の音頭で懇親会に入り、参加者全員が今年の決意や抱負を語りあい、旧交を温めあいました。
(２００９年０１月１６日，「赤旗」) （Page/Topへ戻る）

映画「蟹工船」１７日に上映会／長崎市

　戦前の共産党員作家・小林多喜二原作の小説「蟹工船」の同名映画上映会が十七日、長崎市で開かれます。映画「蟹工船」を観（み）る会（飯田彰吾代表）の主催です。
　飯田さんらは、昨年十一月に会を立ち上げ、上映会成功のために奮闘してきました。「現在でも同じように労働者が使い捨てにされる社会に怒ってほしい」と労働組合の書記でもある飯田さんは語ります。
　「昨年から蟹工船ブームといわれていましたが、実際、自分の身の周りでは蟹工船ブームを実感することはありませんでした。これまで私たちの運動とは結びついていなかったところで蟹工船が読まれているということです。それならば、そういった層にどんどん入っていこうという思いで企画しました」と上映の動機を語りました。「若い人たちに見てもらいたい」と長崎大学でも許可を得て講義前に学生たちに宣伝。「三回の上映を満席にしたい」と意気込んでいます。
　当日は、「労働問題なんでも相談会」も同時に開かれます。
　上映会は、一月十七日（土）①十一時②十四時③十八時半。長崎県勤労福祉会館講堂。千二百円（前売り千円）、小中高生八百円。連絡先＝長崎県映画センター０９５（８２４）２９７４
(２００９年０１月１５日，「赤旗」) （Page/Topへ戻る）

「不屈・秋田県版」合本１８集発行／治維法国賠同盟

　治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟秋田県本部はこのほど、「不屈・秋田県版」合本第十八集（二〇〇八年版二百号から二百十一号）を発行しました。
　「半封建的な地主制度解体に貢献した小作争議」「鈴木清の思想と文学の原点―横手中学時代」「共産党員として戦前・戦後を不屈に闘いぬいた佐藤儀右エ門」「獄死した鵜沼勇四郎の手紙」「資料・宗教関係・弾圧年表」「わが国の戦後責任と戦後補償」「麻生首相に過去（麻生炭鉱）の戦争犯罪を問う」「田母神論文―増長させた政治責任を問う」ほか、最上健造氏の「小説のなかの治安維持法」（連載五回）、近江谷昭二郎氏の「由利地域の人民の闘いと革新の伝統」（連載三回）の紹介なども収められています。
　頒価千円。問い合わせは同盟県本部の近江谷さん０１８（８３２）９８６５
(２００９年０１月１５日，「赤旗」) （Page/Topへ戻る）

日本共産党知りたい聞きたい／特高に殺された京都出身の教師、倉岡愛穂とは？

　〈問い〉戦前、京都出身で特高に殺された倉岡という教師がいると聞きました。どんな人ですか？（京都・一読者)
　〈答え〉戦前、天皇制政府は「国定教科書」から少しでもはみだす教育はいっさい許さず、民主的な教育者にはげしい弾圧を加えました。１９３７（昭和１２）年、特高によって虐殺された教師、倉岡愛穂は、その犠牲者の一人です。
　倉岡は、１８９５(明治２８)年２月､京都府竹野郡上宇川村(現･京丹後市)の農家で生まれ、京都師範学校を卒業し、郷里近くの中浜小学校訓導となります。
　折から発表された河上肇の「貧乏物語」に影響を受け、新教育運動の共鳴者として、自然に親しむ学校教育などを地道にすすめ、２８歳のとき、虎杖小学校校長になります。しかし、丹後の潮風のせいか気管をいため校長は１年で辞め、気候温暖な神戸市の御蔵小学校へ転任します。
　倉岡は、同小の窪田弘道、下村鋼三ら若い教師たちと「チョンガー会」（独身会）という学習サークルをつくり、子どもを戦争に駆り立てるよりもよく考える子どもを育てていこうと話し合い、３２年５月には新興教育研究所兵庫支局を結成、その中心となります。
　窪田は後に「殺してかえすとはなにごとか」という一文の中で、「先生の家で読んだ『赤旗』とその『レポ』の小林多喜二の虐殺のこと」、約千冊の蔵書には発売禁止にされた本のほとんどをふくむ社会科学の重要な文献が集められていたこと、授業は「すばらしく円熟していて、校長が出題する一斉学力テストは各課いつも一番の成績であった。綴り方の文集を作ると、子どもたちは生活を生き生きと書いた」ことなどの思い出を書いています。
　３４年には、校長は視学と打ち合わせて、雑誌『児童問題研究』を持っていたことを口実に１０人余の教師を人事異動、倉岡も二葉小学校に転任になります。
　３６年１２月、人民戦線をめざして活動する人々が関西９府県だけで数百人が一斉検挙され、倉岡、窪田、下村らも逮捕されます。神戸市の御影警察署に連行された倉岡は、屈せずたたかい、逮捕１０６日目の３７年４月９日、拷問のため死去します。４２歳でした。警察は、死去後１０時間も過ぎてから遺族に連絡をとり、「葬式を出さないという条件で死体を引き取れ」と命じました。拷問死があばかれるのをおそれたのです。
　丹後半島の北端、宇川の丘の上にある倉岡の墓碑には「平和を愛し戦争に反対して未決百五十七日取調中に殺された」と記されています。（喜）
　〈参考〉岡本康『革新京都の先駆者たち～治安維持法犠牲者の群像』（つむぎ出版）、大槻健、寒川道夫、井野川潔編『いばらの道をふみこえて―治安維持法と教育』（民衆社）
( ２００９年０１月１５日，「赤旗」) （Page/Topへ戻る）

日本共産党知りたい聞きたい／韓国から建国勲章うけた弁護士の布施辰治とは？

　〈問い〉日本人でただ一人、韓国の建国勲章をうけた弁護士、布施辰治とは、どんな人ですか？（福岡・一読者）
　〈答え〉布施辰治は、「生くべくんば民衆と共に、死すべくんば民衆のために」を座右の銘に、明治、大正、昭和の５０年間を生きた弁護士です。
　１８８０年、宮城県石巻市の農家に生まれた布施は、すでに３０代で東京屈指のらつ腕弁護士として知られていました。しかし、トルストイの影響をうけて人道主義を貫こうと、１９２０年５月１５日、４０歳のときに「自己革命の告白」を公表。以後の弁護を「官権の人権蹂躙に泣く冤罪者」「財閥の横暴の枉屈に悩む弱者」「心理の主張を圧迫する筆禍舌禍の言論犯」「無産階級の社会運動の迫害」事件に限ることを宣言します。
　その宣言の３日後、布施は、東京市電ストライキ事件で獄中にあった組合員に「卿らと苦汁を分けてのむ覚悟をもって弁護にあたる」という手紙を送ります。
　その後、布施は、虐げられた民―植民地朝鮮・台湾の民、廓にしばられている娼婦酌婦、貧しき借地借家人、労働者、小作人―の弁護に奔走。２１年には、自由法曹団を創立、２８年の最初の総選挙に労農党公認で新潟２区から立候補、日本共産党への大弾圧「３・１５事件」などの弁護をし、弁護士資格をはく奪され、３９年、治安維持法違反で懲役２年の刑を受けます。
　第２次世界大戦の敗北で弁護士資格が回復されると、布施は再建された自由法曹団の顧問となり、三鷹事件、松川事件、メーデー事件などの弁護活動を精力的にこなし、５３年９月１３日、７３歳の生涯を閉じました。
　朝鮮のかかわりでいうと、布施は当初から韓国併合に反対で、１９１１年には「朝鮮独立運動に敬意を表す」という一文で検察の取り調べを受けます。１９年２月８日に起きた「独立宣言事件」で１１人の弁護を引き受けたのが朝鮮人の弁護活動の最初といわれます。
　２３年４月、雑誌『赤旗』創刊号に「日韓の併合は、ドンナに表面を飾っても、裏面の実際は、資本主義的帝国主義の侵略であったと思う。…朝鮮民衆の解放運動に特段の注意と努力を献じる要ありと信じます」と書き、その後たびたび朝鮮に渡り、朝鮮共産党の弁護をしたりしました。
　こうしたことから、韓国政府は０４年１０月、朝鮮独立運動に寄与した人物に与える「建国勲章」を、日本人で初めて布施に授与しました。
　戦争末期、布施の最大の悲しみは、京大哲学科出身で詩人でもあった三男、杜生が治安維持法違反で逮捕され、４４年２月４日、２９歳で、京都の山科監獄で獄死したことでした。（喜）
〈参考〉高史明、大石進、李〇娘、李圭洙共著『布施辰治と朝鮮』（高麗博物館）、布施柑治『ある弁護士の生涯』（岩波新書）
( ２００９年０１月１４日，「赤旗」) （Page/Topへ戻る）

治維法国賠同盟／土岐で学習会／岐阜

　岐阜県土岐市で六日、治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟東濃西支部（後藤金夫支部長）が新春学習会を行いました｡(写真)
　講師に招いた片桐義之岐阜支部長が「治安維持法と軍歌」と題して特別報告をしました。
　片桐さんは、軍歌が日露戦争後、軍を鼓舞する目的と国民を思想動員するために作られたことを述べ､｢大正デモクラシー」以降に軍歌に代わって歌謡曲がたくさん生まれたことや、「満州事変」以後にまた大量の軍歌が生まれ､その中で｢軍歌」にも哀愁を帯びたものや、替え歌で権力者を皮肉る歌も流行したことなどを紹介しました。
　また、戦前の言動に無反省な文化人の例をひきながら、軍国主義に非協力の態度を貫いた小林多喜二などの活動を紹介し、治安維持法の犠牲者を真の愛国者として掘り起こし顕彰し、後世に伝えることの重要性を強調しました。
　学習会に先立ち、参加者はエレクトーン演奏で、「青い山脈」など三曲を斉唱しました。後藤支部長は、あいさつの中で、地方自治体への請願運動を強める意義と、他団体への申し入れ活動の経験も紹介しました。
(２００９年０１月１１日，「赤旗」) （Page/Topへ戻る）

賠償法求める署名２万超す／秋田県治維法国賠同盟

　治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟秋田県本部はこのほど、支部事務局長会議を開きました。
　会議では、「ふたたび戦争と暗黒政治を許さぬために、国に治安維持法の犠牲者に謝罪し、国家賠償法（仮称）制定を求める」国会請願署名が、団体署名七百、個人署名一万九千三百四人に達したことを確認しました。
　大企業中心･アメリカいいなりの政治悪に対する国民のたたかいとの連帯を強め､｢政治の中身を変える｣総選挙に全力を尽くすことなどを確認しました｡
(２００９年０１月０９日，「赤旗」) （Page/Topへ戻る）

１５０人派遣切り函館ＮＤＫ／〝気持ちわかってくれる〟／共産党に解雇の労働者訴え／市、雇用対策実施へ


共産党要求／『蟹工船』の出航の地
　「派遣切り」と呼ばれる無法・違法な解雇に国民の怒りが高まるもとで、攻撃にさらされている非正規労働者が「人の苦しみに向かい合い、打開へ懸命なあなたたちに私の話を聞いてほしい」と、日本共産党と「しんぶん赤旗」に信頼と期待を寄せています。
　（北海道・土田浩一）
　小林多喜二の『蟹工船』の出航の地、函館市。携帯電話や液晶テレビに使う人工水晶製造大手の日本電波工業の１００％子会社、函館エヌ・デー・ケー（ＮＤＫ）は昨年十一月末、派遣社員二百四十人のうち六割を超える約百五十人の契約を打ち切り、解雇を強行しました。
　次から次へと非正規労働者の解雇を報じるテレビ局や大手紙の取材に対し、二十代の上田和美さん＝仮名＝は「私たちの気持ちがわかってくれるのはここしかありません。『赤旗』以外の取材はお断りしています」と党函館地区委員会の事務所に足を運びました。長い茶髪が印象的です。
　「私は親と一緒なので解雇になっても当面の生活はできますが、一人暮らしの友人は前に勤めていた会社にいこうかなと求職を始めています」「妻子のいる三十八歳の男性もいて、突然の首切りに怒りにふるえていました」と告発します。

■ローンが
　上田さんも十一月二十八日、仕事を終えて詰め所でタイムカードを押すと、担当者から「今日で終わりです」と告げられました。
　「契約は半年ごとの更新で来年三月までの契約でした。収入を見込んで自動車のローンを組んでいたのに」
　函館ＮＤＫでは、派遣社員は正社員と雇用形態が違っても働き方は同じといいます。
　午前八時から午後八時までの日勤を四日続け、二日間の休日をはさみ午後八時から午前八時までの夜勤を四日するという交代勤務です。十二時間勤務には、最初から三時間の残業が組み込まれています。
　ところが休憩は日勤で昼四十五分、夕方五分しかありません。
　しかも、「機械にエラーがでたら解除」する仕事で、十二時間立ちっぱなしになることもあるといいます。
　「こんな勤務ですから、ある日突然、会社に来なくなる人がいっぱいいます。休憩後に逃げて帰るとか、トイレにたったまま戻ってこない人もいました」
　上田さんから話を聞いた日本共産党の古岡友弥道議候補は「派遣労働者が機械より先に使い捨てにされているひどいやり方に、体が怒りでブルブルふるえました」と話します。

■紙切れに
　三十代の浜保男さん＝仮名＝も「『赤旗』にぜひ書いてほしい」といってきました。
　正社員から「昨日で解雇になったと聞いているぞ」と言われました。詰め所に戻ると、「三十日付で解雇する」と書いた紙きれをポイと渡されました。
　「これまでも、残業代カットや二交代を三交代にし、勤務時間を短縮するという話はあって我慢を重ねてきたけれども、解雇通告は寝耳に水でした」
　大学を卒業後、本州で就職した浜さん。体を壊して函館に戻ってきたものの、求人が少なく派遣に登録、函館ＮＤＫで働きました。
　浜さんの部署は少人数の体制で、短い昼食休憩すら満足にとれない忙しさでした。
　「一月に新しい機械が入り、生産量が増えたのに人は増えませんでした。『四月から増産体制に入る』といって建てた新工場棟には機械が入っておらず、いまのだだっぴろい体育館のようです」
　「九月から残業をなくすため三交代にして雇用を守る努力をしてきたというけど、百五十人の首切りはひどすぎます」といい、「会社都合の退職にしてやる」といわれ、解雇を受け入れてしまったと悔しがりました。
　函館ＮＤＫ敷地の隅には、二階建てのプレハブが三棟並んでいます。プレハブはそれぞれ、別の派遣会社の詰め所です。派遣社員はここで着替えや休憩をし、工場にいきます。正社員は工場内に休憩室があります。
　派遣会社は「これ以上削減されることはない」といっているものの、残った派遣社員たちは「信じられない。自分たちもいずれ辞めさせられるのでは」と話しています。
　函館市はこれまで、誘致企業の函館ＮＤＫに三億六千万円を超える補助金を交付してきました。昨年度は、いまだ機械が入っていない新工場棟のために千三百万円もの補助金をつぎ込みました。
　日本共産党函館地区委員会と市議団は昨年暮れ、「市から助成を受けている企業は一方的な解雇はせず、市と事前協議を確立せよ」と市に要求しました。
　補助金交付を続けてきた市は昨年十二月二十五日、失職者や解雇された派遣社員を一月中旬から三月まで臨時職員として五十人を採用することや、市営住宅の提供など五千万円の緊急雇用対策を実施すると発表しました。
( ２００９年０１月０８日，「赤旗」) （Page/Topへ戻る）

日曜版創刊５０年／女優冨士真奈美さん／毎週楽しみにしています

　日曜版の創刊５０周年、ああ、そんなになるんですね！　私、毎週読んでいます。
　日曜版は、１面からお料理のページまで、とにかく分かりやすくて､読みやすい｡読み物としてとても品がいいなあと思っています。
　このごろは､すごくくだけて､エンターテインメントとしても読みやすい新聞になったなと思います｡いろいろな方が登場なさって､いまをときめく若手の方も出てらっしゃったりして。
　お料理や俳句、「ひとインタビュー」欄なども楽しみですね｡お料理は､つくるときにいつも参考にしますよ。
　タブロイド判（通常の新聞の半分の大きさ）もいいですね。お料理欄をとっておこうというときには、引き抜けばいい。タブロイド判だと記事がぐっと身近になる感じがします。
　以前、私は日曜版で、将棋の大山康晴さん、漫画家の手塚治虫さん、水泳の古橋広之進さんなど、本当にそうそうたる方たちとお話しさせていただきました｡(７１～７３年、２９回掲載。新日本出版社『冨士真奈美　素顔対談』に収録）
　テープを起こした厚い原稿を全部読んで構成しましたから、すごく記憶に残っているんですよ。
　取材を受ける立場からいっても、「赤旗」はどんな一言のコメントも確認をとってくれるので安心できますね。
　日曜版は､さばけたというか､一般の感覚になじんできていて、そういう感じはいいなと思います。
　より多くの人に読んでいただくために､日曜版を見る人が｢この欄は好きだわ｣っていう､呼び物みたいなものをつくって、これからも楽しませていただきたいですね。
　ふじ・まなみ＝静岡県生まれ｡俳優座養成所卒｡ＮＨＫ専属女優として「この瞳」でデビュー｡｢細うで繁盛記｣｢小林多喜二」などテレビドラマや映画に多数出演。０８年公開の映画「たみおのしあわせ」に出演。近著に『てのひらに落花―俳句のある人生』、句集『瀧の裏』など。０９年より「俳壇賞」選考委員
(２００９年０１月０４日，「赤旗」)（Page/Topへ戻る）

志位さん＆２０代新春トーク

雇用反撃の年

　雇用をめぐる緊迫した情勢のなかで迎える新年。「働く人をモノのように使い捨てるな」とたたかってきた２０代の労働者４人が、日本共産党の志位和夫委員長と語り合いました。共通の思いは、「今年を大反撃の年に」です。
　徳島県の黒坂和也さん（２８）。トヨタ自動車の孫会社、光洋シーリングテクノ(徳島県)で４年前に労組を結成、請負労働者の直接雇用、正社員化を要求して、０８年末ついに正社員となりました。
　「一日も早くほかの非正規の人を正社員にしたい。労働組合を信じてやれば絶対プラスの結果になる。４年前と比べたら全国に仲間が増えた」と語ります。
　千葉県の前田奈津恵さん（２６）。２年間、日雇い派遣で働いた企業は８０社を超えます。０８年１１月、仲間と千葉青年ユニオンを結成しました。
　「人間扱いされないことが山のようにある。そんな働かされ方を強いられても、自分が悪いと思っている人がまだたくさんいる。そうじゃないんだ、とぜひ伝えていきたい」
　徳島県の山下奈津子さん（２３）。日亜化学で２年前に結成された労組に参加。偽装請負を告発し、直接雇用を要求しましたが、昨年不当解雇されました。テレビでたたかいが報道されました。
　「全国から手紙をいっぱいもらいました。自分の娘と同じ世代の子ががんばっとるのを見て、ごっつい応援したいって。たくさんの人が真剣に考えてくれているのがうれしい」
　愛知県の篠田哲男さん（仮名）。トヨタ自動車の期間従業員です。
　「期間従業員６千人首切りで寮にいる人が４分の１ぐらいに減った。僕もいつ切られるかわからない｡でも､いろんなところでたたかいが始まり、すごく勇気づけられる」
　４人の話を聞いた志位さんが語ります。
　「０８年は若者たちが連帯して立ち上がり始めた歴史的な年となりました。今年は、このうねりをさらに大きく広げ、社会的大反撃の年にしましょう。良い政治をつくる年にもしましょう。一緒にがんばりましょう」
人間らしく働きたい

　志位　あけましておめでとうございます。
　一同　おめでとうございます。

非正規はモノ扱い
　黒坂　光洋シーリングテクノでは、正社員、期間従業員、派遣、請負が同じ職場で同じように働いているのに差別される。請負・派遣にはボーナスがなく、月収も半分くらい。屈辱的で、はがいたらしい（はがゆい）。これが積もり積もって、僕らは４年前に組合を立ち上げたんです。
　山下　私は日亜化学で請負で働き、契約はずっと２カ月更新でした。「人間扱いされていないな」と思っていました。組合に入り、「これは偽装請負で、いけないことなんだ」ということが分かったんです。
　偽装請負を告発したら、１０カ月間も仕事が与えられず、掃除ばかりやらされました。どん底まで落ちて悩んで、「これは日亜のみせしめじゃ」と思い直した。本当に鍛えられました。

生活悪循環
　前田　私は日雇いから抜けたくても抜けられません。給料は週払いで、それを翌週に使うという悪循環にのみ込まれています。
　街でコンタクトレンズ屋のチラシを配っているときでした。「今度、千葉で青年ユニオンをつくるんだよ」と話しかけられ、「参加したい」と答えたんです。
　篠田　私が住んでいるトヨタの期間従業員寮で、人がどんどん追い出されています。きのうは午後４時すぎに寮に戻りました。同じ寮の青年に会ったら、「退寮させられ、今から故郷の鹿児島に帰る｣という話でした｡
　志位　期間満了になったんですか？
　篠田　ええ。でも、１年も働かせてもらえなかったようです。
　志位　トヨタには、期間従業員がピーク時は９千人前後いたのに、年末には６千人に減らされ、さらにことし３月末までに３千人のクビが切られる計画ですね。
　篠田　何が起きるか心配しているんです。去年の１１月には、トヨタの下請け企業で働く派遣社員が電車に飛び込みました。僕もお花を供えてきました。
　志位　みなさんの話をうかがって、人間扱いされていない、悔しいという気持ちが痛いほど伝わってきました。若者をモノのように使い捨てるやり方を、何としても政治の責任で解決しなくては。
　同時に、若いみなさんが労働組合に結集し、立ち上がっているというのは、とてもすばらしいことです。みなさんが勇気をもって切り開いてきた、団結してたたかおうという道が、いま全国に広がりつつある。今年はこの流れを大きく広げ、社会的大反撃の年にしたい。さらに、良い政治をつくる年にもしたいと決意しています。

質問に反響
　志位　私は、昨年２月と１０月の衆院予算委員会で、「働く貧困層」の問題、とくに派遣労働の問題を取り上げました。
　前田　その質問はネットで見て、「私が悪いんじゃないんだ」と分かり、パソコンの前で、一人で「すばらしい！」と、ガッツポーズして号泣しました。（笑い）
　志位　あの質問で、派遣労働がいかにひどい「使い捨て」労働かを告発しましたが、それが景気悪化のもとで、「派遣切り」「非正規切り」という最悪の形で猛威をふるっています。これは絶対に止めなければいけないと思い、いすゞ自動車の本社にも行って直談判しました。
　党首会談で麻生首相に「政府はお願いしているだけじゃ駄目だ､指導･監督してでも解雇をやめさせるべきだ」と申し入れました。経団連とも初めて会談し、「会員企業に解雇をやめさせるよう働きかけを｣と要求しました｡
　前田　２回とも質問時間のすべてを雇用問題にあてたのはなぜですか？
　志位　もちろん社会保障、農業、税制、憲法など、ほかにも大事なことはたくさんあります。そこは国会議員団全体で手分けしてやっています。ただ人間社会というのは労働が土台になってできているのに、日本はいまこの土台から崩れている。これは一大事だという思いがありました。
　この間、労働法制の改悪を繰り返して、正社員をどんどん非正規に置き換えた。とくに１９９９年の労働者派遣法の原則自由化、２００４年の製造業への解禁が、「使い捨て」労働をまん延させました。人間らしい労働が、こんなに崩されたときはないと思うんですよ。
　日本を土台から立て直さないと、若者たちの現在も未来もない。社会の未来もない。雇用は一分野の問題じゃないんです。
　一同　そうですね。
　志位　とくに世界的な大企業が、「使い捨て」労働に置き換えてもうけ、不景気になったら「調整弁」として平然と切り捨てる。これは許せません。
　若者は、未来に夢や希望を持ち、いちばん輝いているべき世代です。その世代に、明日の生活も分からないような「使い捨て」労働を強いている。政治にたずさわる者として、これを見過ごしては責任を果たせないとも思い、国会で取り上げました。
　質問をやるたびに、「もっと頑張って」との激励もあります。解決するまで一緒に頑張りたいと思っています。

自動車関連企業の人員削減と利益･配当･内部留保
　　　削減計画(人)　今期経常利益見通し(億円)　今期中間配当(億円)　中間配当昨年比(円)　００年中間配当(億円)　０８年９月末内部留保(円)　００年９月末内部留保(円)
トヨタ関係
　トヨタ自動車　                  ９，２５０　　　　　６，４００　　　　　　　　　　　２，０７８　　　　　　　＋０　　　　　　　　４１５　　　　　　　　　　約１３.８兆　　　　　　　　　約７.６兆
　デンソー　　　７００　　　　　　２，０５０　　　　　　　　　　　２１７　　　　　　　　＋２　　　　　　　　６９　　　　　　　　　約２.４兆　　　　　　　　　※約１.４兆
　豊田自動織機　５１０　　　　　　７００　　　　　　　　　　　　９３　　　　　　　　＋２　　　　　　　２３　　　　　　　　　　約１.２兆　　　　　　　　　約８６００億
　小計　　　　　１０，４６０　　　　　９，１５０　　　　　　　　　　　２，３８９　　　　　　　　　　　　　　　　５０６　　　　　　　　　　約１７.４兆　　　　　　　　　約９.９兆
その他
日産自動車　　１，５００　　　　　２，６００　　　　　　　　　　　４４８　　　　　　　　▲９　　　　　　　　０　　　　　　　　　　約４.０兆　　　　　　　　　約１.３兆
　いすゞ自動車　１，４００　　　　　６００　　　　　　　　　　　　５１　　　　　　　＋３　　　　　　　　０　　　　　　　　　　　約４１００億　　　　　　　　　約１９００億
　マツダ　　　　１，５００　　　　　９００　　　　　　　　　　　　４２　　　　　　　＋０　　　　　　　　０　　　　　　　　　　　　約６２００億　　　　　　　　約１７００億
　三菱自動車　　１，１００　　　　　４３０　　　　　　　　　　　　０　　　　　　　　＋０　　　　　　　　０　　　　　　　　　▲約１１００億　　　　　　　　約３３００億
　富士重工業　　８００　　　　　　２００　　　　　　　　　　　　３５　　　　　　　＋０　　　　　　　　３３　　　　　　　　　　約４６００億　　　　　　　　　約３２００億
　スズキ　　　　６００　　　　　　１，１００　　　　　　　　　　　３６　　　　　　　＋０　　　　　　　　１７　　　　　　　　　　約１.０兆　　　　　　　　　　約５５００億
　ホンダ　　　　７６０　　　　　　５，８００　　　　　　　　　　　７９８　　　　　　　　＋２　　　　　　　　１０７　　　　　　　　　　約５.５兆　　　　　　　　　　約２.６兆
合計　　　　　　１８，１２０　　　　　２０，７８０　　　　　　　　　　３，８００　　　　　　　　　　　　　　　　　６６４　　　　　　　　　　約２９.４兆　　　　　　　　　約１５.３兆
（注）トヨタ自動車は、連結子会社（日野自動車、トヨタ自動車九州、関東自動車工業）を含む
内部留保額は、資本剰余金＋利益剰余金＋各種引当金＋有価証券・土地再評価差額金
ホンダの配当は、第１・四半期と第２・四半期の合計額
このほかに､日産ディーゼル(２００人)､三菱ふそうトラック･バス(５００人)などの削減があるが､外資系企業のため省略した
※デンソーの００年９月決算データが入手できなかったため､００年３月と０１年３月の中間の値を代用している

ルールなき資本主義

　志位　個々の企業でみれば人員削減をやったら、その瞬間は財務状況が良くなるでしょう。しかし、みんながいっせいにやったら、日本の経済の底が抜けてしまいます。そうしたら企業の先もなくなる。いま大企業は「赤字でたいへんだ」と宣伝していますが、ほんとうの危機に陥ってしまいます。
　日本経済は、もともと外需・輸出頼みで、内需・家計が弱い。ゆがんだもろい構造だったのです。だから、アメリカの景気が悪くなって輸出が減ると、いっぺんに日本経済も落ち込んだ。
　内需を活発にする、国内で物が売れるようにしなかったら、企業にとっても先はありませんよ。雇用を安定させ、賃金を上げ、労働条件を良くしなかったら、誰も物を買わなくなりますよね。
　黒坂　このままではトヨタの車が買えません。（笑い）
　前田　キヤノンのカタログの発送をしているのに、そのプリンターが買えません。（笑い）
　山下　トヨタの車のカタログ送ってもらっているんですけど…。見てるだけです。（笑い）

財界の狼狽
　志位　日本経団連と会談し、「大量解雇を中止させよ」と要求したんですが、先方は「雇用の安定のためには、景気の回復が必要だ」と繰り返すだけです。大量解雇をやったら、それこそ景気の底が抜けてしまうじゃないですかといっても、答えがありません。
　率直に言って財界はいま、慌てふためいて狼狽（ろうばい）しているという感じなのです。世界金融危機が起こった。不景気がどこまでいくか分からない。恐怖感にとらわれ、とにかく身軽になりたい。そのためには人を切るのが一番だとなった｡となると､これを止めるのが政治の役割です。
　前田　そんなときに、政府は何をやっているかわかりませんね。
　志位　ヨーロッパでは、政府が乗り出して大量解雇に待ったをかけているんですよ。
　たとえばフランスでは、ルノーがリストラ計画を出した。するとボキエ雇用大臣が、「ルノーのような巨大企業で、資産も持っている企業が、リストラをやるのは言語道断だ」と言ってストップをかける。
　スペインでは、日産がバルセロナの工場でリストラ計画を出したら、セバスチャン産業大臣が「計画を撤回せよ」と日産に直接要求し、撤回させました。
　日本ではどうかというと、財界は周章狼狽、政治は機能マヒです。麻生首相は、大企業に向かってまともにやめなさいの一言もいえない。

通達を力に
　山下　国会で志位さんが日亜の問題を取り上げたとき、麻生さんの反応がしっくりこなかった。あまり理解してもらえてないのかな、と。
　志位　日亜化学は、偽装請負の被害にあってやむにやまれず救済を求めた人を解雇したわけですから、これは誰がみても許しがたい理不尽な話です。「理不尽だと思わないか」とただしたのですが、きっぱり理不尽だと言わない。それでも、「事実とすれば極めて不当だ」と最後に言った。これはたたかいの足がかりになります。
　山下　そうですね。「事実とすれば」っていうけれど、事実なんですから。
　志位　いまおこなわれている「派遣切り」でも、違法が横行しているんです。麻生首相との党首会談でも、法を守らせるよう強く要求したら、厚生労働省が「派遣切り」を防止する方向での「通達」を出しました。（０８年１２月９日）
　有期労働契約の場合、期間従業員でも派遣労働者でも、よほどの理由がない限り、契約途中での解雇は労働契約法１７条違反になる。契約満了でも、繰り返し雇用が更新されていたり、実質的に正社員と同じ仕事をしている場合などは、違法にあたることがある。これらが政府の公式見解として「通達」に明記されました。これもたたかいの足がかりにする必要がありますね。
　篠田　法律を守れと政府が厳しく言えば、ずいぶん違うはずですね。
　志位　そのとおりです。
　たとえばいすゞ自動車です。これは解雇の違法性があまりにも明々白々であり、小池晃参院議員、塩川てつや衆院議員など国会議員団が繰り返し追及してきた問題でもあったので、本社を訪問して違法解雇撤回を求めたんです。
　いすゞは昨年１２月末をもって、期間従業員、派遣労働者の約１４００人の全員に対し、クビを切ると通告しました。１４００人のうち契約期間満了で雇い止めの人は何人いるんですかと会社に聞いたら、「ほとんどいません。ほとんど全員が期間途中です」と言う。「それは明らかな違法解雇です」と指摘すると、会社は合法だという説明はできません。
　まず、いまの法律を厳格に守らせることでも、かなりのたたかいはできます。
　非正規雇用での違法告発は、偽装請負から始まりました。光洋シーリングテクノ、日亜化学と、偽装請負を告発した。「法律を守れ」というたたかいをみなさんが起こし、それがいまのたたかいの広がりにつながっているんですね。

今、社会は大きな変わり目


法律変えて
　山下　私たちを苦しめている法律を早く変えてほしい、という気持ちがいちばん強いです。
　志位　そうですね。現行法を厳格に守らせながら、法律の枠組み自体を根本的に変えることがどうしても必要ですね。「労働者派遣法は１９９９年の原則自由化が大きな間違いだった。自由化前に戻せ」と、共産党はずっと言ってるんです。とくに登録型派遣という働かせ方は一番不安定ですから、原則禁止すべきで、例外的なものだけに厳しく限定すべきだと。
　それから「みなし雇用」という制度を導入することが非常に大事だと思います。違法行為を企業がやったとする。その場合、受け入れ先企業の責任で、望む人は全員正社員にする。これが「みなし雇用」という考えです。
　前田　そうしないと「無法やり得」になってしまいますもんね。
　志位　そうですよ。それから均等待遇です。派遣社員、期間従業員、パート、正社員、すべて同一労働には同一賃金、労働条件も同じにする。派遣労働や有期雇用は、合理的理由がある一時的・臨時的なものに限る。そういう安心して働ける人間らしい労働のルールをつくっていく必要があります。
　篠田　ほんと、非正規雇用の均等待遇をすぐに実現してほしい。昨年１０月５日の青年大集会で、不当解雇とたたかうロリータ服を着た岩上愛さんが「アルバイトも立派な社会人だ」と発言して、胸に響きました。

根本を改革
　志位　一つは、有期雇用は例外にして、期限の定めのない雇用、つまり正社員を大原則にすること。もう一つは、間接雇用じゃなくて直接雇用にすること。この二つを原則にし、例外的なものを特殊な場合にしか認めない社会にしていかなくちゃいけない。
　ヨーロッパの場合は、だいたい非正規雇用の比率は１割前後です。日本は４割近くまでいっちゃっている。ヨーロッパでは非正規雇用をリストラの手段として使えないけど、日本はリストラの手段として使っている。
　前田　ヨーロッパって、法律がすごく厳しいんですよね？
　志位　同じ資本主義国でもずいぶん違いますね。日本は、パートはほとんど有期雇用です。ところがヨーロッパの場合、パートの８割が正社員なんですよ。派遣社員であっても、正社員と賃金・労働条件・社会保障が同じです。そうすると、企業の側からいっても、リストラの手段として非正規への置き換えをやるということができなくなってくる。
　日本の資本主義は、「ルールなき資本主義」といわれてきました。同じ資本主義国でも暮らしを守るルールがないか、あっても弱い。その弱点が、景気悪化のもとでの「派遣切り」といわれる形で、噴き出しているのです。ここを根本からただし、「ルールのある経済社会」に改革していきたい。

総選挙で審判を
　志位　最近、３２歳の女性から手紙をもらいました。フルタイムのパートで働いている女性です。低賃金で職場の状態もひどくて、つらくてつらくて自殺未遂をしたと書かれていました。
　でも私の国会質問をネットで見てくれて、「まだ絶望してはいけない。死んではいけない。共産党が頑張ってくれている限り、死なずに頑張っていこうと思いました」とつづられていました。一つ一つの手紙が胸にずしりと響きます。責任も強く感じます。
　篠田　労働現場で起きていることは、労働者の生死にかかわるひどい状態です。これを許す自民党に憤りを感じています。トヨタとか大企業に対して、志位さんのように堂々とものを言ってほしい。それができない政治家は退場してほしい。

今年の目標
　黒坂　共産党がほんまに弱いものの立場に立って、当たり前のことを言っている。若い人に興味を向かせるような、魅力的な政治をぜひ共産党にやってほしい。
　前田　今年の目標は、まわりの人と一緒に自分が成長し、自己責任論から抜け出すことです。共産党にはずっと一緒にたたかってほしい。
　山下　日亜化学では、今年中に争議を決着させ、大きな結果を出したいなと思っています。もう頼れるところはほかにない。共産党の力添えをお願いします。
　志位　みなさんの期待はしっかりと受け止めました。ちょっと長い視野で見てみると、いま日本の政治は、自民党政治に代わる新しい政治を必要とする、新しい時代に入ってきたと思います。
　戦後ずっと、外交はアメリカまかせ、内政は財界まかせでやってきたが、それがいよいよ立ち行かなくなった。それは世界経済危機にさいしての、財界の周章狼狽、政治の機能マヒという体たらくにもあらわれています。
　アメリカ・財界中心から、「国民が主人公」の日本へと、大きく社会を変えていくことを、歴史の歩みそのものが求めている、そういう新しい時代に日本が入ってきた。今年をそういう新しい歴史的時代を大きく前にすすめる年にしたいと思います。総選挙で勝ちたいと決意しています。
　篠田　トヨタの寮では取れないから、図書館で「赤旗」日曜版を読んでいます。いろんな記事に励まされるんです。ぜひ共産党に勝ってほしい。
　黒坂　これまでほとんど選挙行ったことなかったけど、組合にたずさわるようになってから、「行かなあかんなあ」と思うようになりました。（笑い）歴史の深部　志位　世界を見ると、資本主義の「総本山」のアメリカで起こっていることは何か。ものづくりが衰退し、経済全体が金融化し、金融投機に熱中して、それで大ばくちに失敗して穴をあけちゃったということです。「投機資本主義」、「カジノ資本主義」が大きく破たんした。
　もちろんいまの体制のもとでも、世界が協力して投機の規制に踏み出すことは重要だけれども、同時に「２１世紀に資本主義のままでやっていけるのか」いうことが問題になる時代となってきた。深いところで歴史が動いている感じがします。
　前田　最近、志位さんはよくマスコミに登場しますよね。
　志位　「資本主義は限界か」というテーマで、メディアから考えを聞かせてほしいということが、よくあります。世界でも、日本でも、資本主義という「もうけ第一主義」の体制そのものの是非が問われる新しい時代に入っているんです。ここでも歴史の新しい扉が開こうとしています。
　日本でも、世界でも歴史の大きな変わり目に、いま私たちは立っています。ただ人間の歴史というのは自然には前にすすまない。たたかってこそ前にすすむ。とくに若いみなさんが、どう動くかが未来を決めていきます。新しい歴史をつくるため、一緒に頑張っていきましょう。
　一同　頑張りましょう。
(２００９年０１月０４日，「赤旗」) （Page/Topへ戻る）