【治安維持法2021年】

【見出し】

12月

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t  2021焦点・論点 社会保障のデジタル化 九州大学名誉教授(刑法) 内田博文さん

t  きょうの潮流

t  宮本百合子とケーテ・コルヴィッツ 大内田わこ

t  木崎争議100年に学ぶ 新潟 治維法国賠同盟が県大会

t  参院選へ共同さらに 治維法国賠同盟が中央常任理

t  きょうの潮流

t  「日本共産党常任活動家の墓」第36回合葬追悼式 田村副委員長のあいさつ

t  開戦80年 「赤紙」配 今を新たな「戦前」にさせない

t  くねくねTANKAロード(18)寺井奈緒美

t  おはようニュース問答 多喜二ゆかりの門が文化財になったね

10月

t  月曜インタビュー 俳優 嵐圭史さん

t  映画「伊藤千代子の生涯」故郷・長野で撮影始まる

t  新しい日本へ 共産党ここに期待 作家 早乙女勝元さん

9月

t  「比例は共産党」広げに広げ 京都6区 男女格差なくす たけやま候補

t  総選挙で野党勝利を 治維法国賠同盟が声明

8月

t  99歳の菱谷さん 平和と自由訴え 治安維持法違反問われ投獄 北海道旭川

t  全国いっせいの終戦記念日宣伝 治維法国賠同盟

 

7月

t  文芸時評 尾西康充 命と権利奪う暴力許すまい

6月

t  自由な思想を恐れる中国 東京大学教授 阿古智子さんに聞く

t  「現代版の治安維持法だ」埼玉・入間 土地利用規制法案学習会

t  土地利用規制法案を批判

 

5

t  土地利用規制法案 衆院内閣委 塩川議員の反対討論

t  土地利用規制法案 住民監視・基地強化ノー

t  米軍こそ生活阻害 キャンプ座間周辺市民連絡会代表委員 菅沼幹夫さん

t  土地利用法案 実質審議入り まるで戦前の弾圧法 赤嶺議員が追及 衆院内閣委

t  論戦ハイライト 土地利用規制法案 撤回せよ 処罰の対象 白紙委任 衆院内閣委で赤嶺議員

t  プーク人形劇場50周年 歴史刻む街の顔 劇場代表 伊井治彦さんに聞く

t  「自由で平和な社会を」治維法国賠同盟が国会請願

t  国民投票法改定 姑息な策動批判 治維法国賠同盟

t  2021焦点・論点 施行74年 憲法学者インタビュー 福島県立医科大学教授(憲法、社会保障法) 藤野美都子さん

4

t  はたやま氏 国民監視の法案許すな 北海道 演習場“真ん中”住民と懇談

t  市民と野党の共闘発展 治維法国賠同盟が常任理事会

t  任官拒否事件に学ぶ『司法はこれでいいのか』 出版記念集会

t  デジタル法案 監視国家と治安体制 経済研究者 友寄英隆さん(上)

t  デジタル法案 監視国家と治安体制 経済研究者 友寄英隆さん(下)

t  主張 土地調査規制法案 国民監視と人権侵害許されぬ

3

t  2021国際女性デー 声上げれば届く 各地で意気高く

t  どうみるデジタル法案 元行政機関等個人情報保護法制研究会の委員 三宅弘弁護士に聞く(上)

t  どうみるデジタル法案 元行政機関等個人情報保護法制研究会の委員 三宅弘弁護士に聞く(下)

t  2021国際女性デー ジェンダー平等目指そう 戦前と比べ現在を分析 和歌山

2

t  文芸時評 木村朗子 大震災10年 原発議論追う

t  “生き方引き継ごう”北海道 野呂栄太郎碑前祭

t  きょうの潮流

t  きょうの潮流

t  森会長暴言に抗議 各団体 即刻辞任を求める

1

t  千代子の思想 今に通じる 千葉 出版記念し4団体が講演会

t  きょうの潮流

t  宮本百合子没後70年に 北田幸恵 時空を超えて語りかける理知と情感の言葉

t  共に生きる 伊藤千代子に学ぶ志 北海道・苫小牧 戦前のたたかい描く入谷さん(91)、畠山さん(83)

【本文】

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2021焦点・論点 社会保障のデジタル化 九州大学名誉教授(刑法) 内田博文さん

20211227

個人情報 国家が根こそぎ把握

治安維持に利用―独裁の危険

 菅義偉前政権の肝いりで進められたデジタル化が岸田政権で、こどもデータベースの構築やデジタル化の推進に向けた規制緩和など、一段と加速しています。社会保障のデジタル化は日本をどこへ導くか。九州大学の内田博文名誉教授(刑法)に聞きました。(土屋知紀)

 ―社会保障のデジタル化については国連も警告を発しているそうですね。

 2018年、国連の特別報告者(フィリップ・アルストンニューヨーク大学教授)は、イギリス政府が進める社会保障のデジタル化が、社会的弱者に与える影響は「計り知れない」とする警告を発表しました。その概要は、▼システムが不透明でブラックボックス化し、国民に開かれた行政ではない▼停電など、システムダウンや情報漏えいなどのトラブルの時、国民が改善を求めても即座に対応できない▼パソコンやスマートフォンなど、デジタルの知識を持っていない人は情報システムを利用できず、立場の弱い人ほど行政サービスから排除される―といったものです。これは、日本にそのまま当てはまります。

 加えて言えば、日本のデジタル化は治安維持に活用されうるということです。

 ―詳しく教えてください。

 具体的に話しましょう。ブラックボックス化について言えば、デジタルではごく少数の専門家しか情報システムの全容は理解できないということです。公平で透明なシステムにしなければなりません。政府が進めるデジタル化の取り組みで問題が起きたとき、クレームなどに対応する24時間体制の第3者委員会をつくり、要望を受け付けたら直ちに審査し、改善するといったことが必要です。

 デジタルが治安維持に活用される可能性があるということは重大です。

 デジタル庁の資料には「治安維持」という文言が記載されています。一見、社会のデジタル化とは関係ないように見えますが、政府がデジタル技術で集めた個人情報を治安維持に使うことは当然考えられることです。なぜなら、さまざまな個人情報を全てガバメント・クラウドといった政府の情報システムに入力してしまえば、国民監視は容易となるからです。

 いまの警察はかつての組織とは全く異なります。事務方の内閣官房副長官と内閣調査室のトップは警察官僚が担っており、安倍内閣以後、「安全・安心な社会」と銘打った治安維持が、国の重要な政策となっています。

 すでに2017年7月に施行された「共謀罪」法で、通信傍受によりパソコンやスマホ、ネットに接続しているサーバー情報といった個人情報を取得する仕組みもつくられています。それらを使って容易にプロファイリング(人物像の推定)を行うことも可能です。

 例えば、Aさんの子どもはどこの大学に行き、どこで就職し、誰と付き合い、どのような集団に属しているのかといった情報と、病気や年金といった社会保障関係の情報をドッキングさせれば、個人情報は根こそぎ把握できます。

 現在の警察の犯罪捜査は「犯罪が起こる前に対応する」となりつつあります。その際、最も重要なことは、犯罪を起こしそうな人の情報を事前に把握することで、勤務先や家族関係、地域での活動状況や社会保障関係の情報など全ての情報が必要です。

 警察にとって、福祉関係の情報と犯罪捜査は表裏一体です。戦前、警察には「福祉警察」という組織があり、福祉問題は警察の所掌事務でした。つまり当時の政府は、福祉の問題は労働組合化すると「無産運動」と結びつきやすく、この動きを取り締まる必要があると考えていたのです。

 現在でも生活保護や児童虐待の窓口に警察官やOBが配置されています。福祉問題は治安事象なのです。だから、「警察白書」には生活に困った人がどのような状況にあるか把握することは犯罪防止につながると書いています。

 ―新自由主義路線は監視国家とも結びつくのでしょうか。

 日本は社会保障の削減など新自由主義的な政策を実施しています。「困ったときには、自ら頑張り、国に甘えては困ります」と「自助」「共助」を強調し「公助」は最後の手段です。そのような、国民をいわば切り捨てる国家で重要な対策は治安維持で、そのための警察力が必要です。

 現に地域の自治会・町内会を警察の指導でつくるとか、PTAと警察が防犯対策で連携したり、夏休みに警察が学校で生活安全の指導をする、さらには、企業が防犯カメラの情報を警察に渡すといったことが日常的に行われています。

 デジタル情報が警察にいかないという保証は何もありません。

 ―デジタル化が進むなかで、憲法を基底にするとどのような社会が求められますか。

 大切なのは「平和」「国民主権」「人権尊重」「地方自治」といった「普遍的な価値」です。

 デジタル庁は「行政の迅速性」「効率性」「公共の秩序」などを優先するとしています。これでは「多少の犠牲が出ても仕方ない」という発想になってしまいます。

 人工知能(AI)などの機械は、「普遍的な価値」に基づく判断はできません。

 いま、役所の受付窓口にチャット・ボットなど「対話型」ロボットが設置されています。住民が問い合わせた内容にAIが判断する対話型ロボットが回答するというものです。しかし、ロボットは想定外の質問には対応できません。

 また、政府は「オンライン診療」をコロナに乗じて原則的に認めてよいとしました。

 遠隔地医療の「効率性、迅速性を上げる」という理由ですが、パソコンやスマホの画面越しのため、患者の状態を把握しにくく、通信状況や撮影環境で診察の質に影響が出る、システムの導入・維持の負担がかかるといった弊害が指摘されています。

 効率性を追求していくと、これらの弊害は「仕方ない」という話になってしまいます。

 遠隔診療ができるのだから、身近に病院がなくてもいいじゃないか、と切り捨てられるのは地方の住民や社会的に弱い立場の人々です。

 さらに言えば、最も「効率的」な行政の統治形態は「独裁体制」だとする研究があり、デジタル化は民主主義とは異なる方向に機能する危険があります。

 根底に普遍的価値が据えられなければなりません。

 ―対抗軸は。

 デジタル化そのものを否定するものではありませんが、全てを「デジタル」で解決しようという発想をまず放棄しなければなりません。憲法13条に基づき、自己決定権やプライバシー権、自己情報コントロール権を確立しなければなりません。その上で、国連の特別報告は、運動にとって重要な対抗軸になります。

 また、国連の「持続可能な開発目標」(SDGs=エス・ディー・ジーズ)を活用し、国際的な基準から逸脱しないよう、政府に要求することが重要です。

 デジタル化により不利益を受けやすいのは自治体です。地方に住む人々が、党派を超えて「おかしい」と声をあげることも必要です。

 うちだ・ひろふみ 1946年大阪府生まれ。九州大学名誉教授。専門は刑事法学(人権)、近代刑法史研究。ハンセン病市民学会共同代表、全国精神医療審査会連絡協議会理事(2015年から現在)などを務める。著書に『治安維持法と共謀罪』『医事法と患者・医療従事者の権利』など多数

 

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きょうの潮流

20211220

 日々寒さが増し、野は冬枯れ…と思いきや、じつは12月は実りの季節です。「クラムボンはわらったよ」で知られる宮沢賢治の童話「やまなし」もそう。川底のカニの兄弟にとってカワセミに狙われる怖い5月に対し、12月はヤマナシが熟す楽しみな時期だと▼近所で借りたうちの畑でも、ネギやカブなど冬野菜が収穫時です。9月末に種をまいた大根が、もう土から十数センチも飛び出すほど大きくなりました。〈大根引(だいこひ)き大根で道を教えけり〉小林一茶▼ブロッコリーも冬が旬。日本で広まってまだ40年ほどです。季語としても新しく、詠まれ方もおもしろい。〈ブロッコリーの堅き団結解き放つ〉諸角直子、〈ブロッコリ小房に分けて核家族〉清水裕子▼白菜も冬の鍋料理には欠かせません。1日干して浅漬けすれば日持ちもします。〈白菜を漬けて曠野(こうや)に生きんとす〉。俳人の金子兜太が師事した加藤楸邨(しゅうそん)の句。凜とした決意と白菜の取り合わせにユーモアが漂います▼楸邨には〈十二月八日の霜の屋根幾万〉の句も。1941年の作です。開戦の日の緊張感、国民を覆う不穏さが感じられます。今年はアジア・太平洋戦争開戦80年。新聞やテレビでも多くの特集が組まれました▼〈大戦起(おこ)るこの日のために獄をたまわる〉。プロレタリア俳句の運動に尽力した橋本夢道の句です。治安維持法の違反容疑で検挙され、開戦を獄中で知りました。戦争の時代は俳句も自由に詠めませんでした。そんな時代が再びこないように心新たにしたい12月です。

 

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宮本百合子とケーテ・コルヴィッツ 大内田わこ

たたかう勇気の源泉に

20211220

 私がドイツの版画家、彫刻家のケーテ・コルヴィッツ(1867〜1945)を知ったのは、まだ学生のころ読んだ、宮本百合子の一文によってであった。

 「ここに一枚のスケッチがある。のどもとのつまった貧しい服装をした中年の女がドアの前に佇(たたず)み、永年の力仕事で節の大きく高くなった手で、そのドアをノックしている」

弾圧法下の執筆

 その「ケーテ・コルヴィッツの画業」は1941年、美術雑誌『アトリエ』3月号に発表された。日本軍国主義が中国への侵略戦争をさらに拡大し、米、英を相手に無謀な太平洋戦争へと突き進む年である。百合子はその年の2月、内閣情報局によって戦争が終わるまでの間の執筆禁止を言い渡されていた。だが彼女はその年、2編の小説、50編をこす評論や感想を書いている。ケーテの原稿はそのうちの1編であった。

 当時の日本は、1925年4月に天皇絶対の体制の変革をめざす主張や運動に関わるものを罰する「治安維持法」という新たな弾圧法ができ、3年後には、最高刑が死刑、または無期刑に厳罰化されていた。

 そんな時代の1930年に百合子はプロレタリア文学運動に参加し、当時非合法だった日本共産党員として生きる道を選ぶ。それは、17歳の時『貧しき人々の群』で文壇デビューして以来、百合子が求め続け苦悩の末つかんだ自分らしく生きる場所であった。

 覚悟の上とはいえ、その道は険しく、1932年宮本顕治と結婚後すぐに逮捕されたのを皮切りに、それからの9年間に4回の逮捕・拘留、度重なる執筆禁止に追い込まれ、肉体的にも経済的にも脅かされる日々が続く。夫の顕治は、1933年にスパイの手引きで逮捕され、非転向を貫き、獄中闘争のさなかにあった。

 『アトリエ』からの原稿執筆依頼があったのはそんな時だった。1941年1月19日、百合子は獄中の顕治へ書く。「私にケーテ・コルヴィッツのことについてかいてくれと云って来て、私は大変うれしく思って居ります。昨夜、ベルリンで買って来た画集出してみて、新しく真摯(しんし)な仕事ぶりに感服しました。人生的なモティーヴをもっていて」「ケーテなんか女でなければつかまない子供や女の生活のモメントをとらえて、それを深くつよいモティーヴで貫いて、技量も大きいし。…日本の婦人画家は目下展覧会へかいたりする人でこの位生活的なひとはいません。…伝記を学びたいと思います、ケーテの」(『獄中への手紙』)

ナチス政権下に

 このころケーテもまたナチス政権下のドイツで、ヒトラー政権に反対する芸術家としてゲシュタポの厳しい監視下に置かれ、あらゆる芸術活動を禁じられていた。強制収容所送りになるかもしれない恐怖とたたかいながら、ひそかに製作を続け、彼女の代表作とされる「ピエタ」の像(1937年)など優れた作品を生み出していく。

 戦時下の日本にそうしたリアルな情報は届かないが、百合子は思いをはせる。「一九二九年の世界大恐慌から後一九三三年ナチス独裁が樹立するころ、ケーテの生活はどんなふうであったのだろう」と。そこには天皇支配のもとでの厳しい弾圧とたたかう自分と同じように、ファシズムの下でたたかうケーテによせる百合子の万感の思いが込められているように思う。ケーテの存在は、百合子のたたかう勇気の源泉ともなったのではなかったか。

 1941年12月8日、開戦の日の明け方、戦争に反対の見解を持つと思われていた人々が日本中で検挙された。百合子も逮捕されそのまま拘留。巣鴨拘置所に回された。そして翌年の7月20日すぎ、熱射病で人事不省に陥り、もう生きられないものとして家に返されたのだった。そういう意味では「ケーテ・コルヴィッツの画業」は、戦争中に百合子が公表できた最後の原稿でもあった。(おうちだ・わこ ジャーナリスト)

 

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木崎争議100年に学ぶ 新潟 治維法国賠同盟が県大会

20211216

 新潟市で11日、治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟新潟県本部の大会が開かれ、新会長に選出された小日向昭一氏が「100周年を迎える木崎村小作争議(木崎争議)」と題して講演しました。

 木崎争議は、1922年末に新潟県北蒲原郡木崎村(現新潟市北区)の小作農民が、収穫の5〜6割という重い小作料の減免を求め組合を結成し、法廷闘争などにとりくみ、全国の農民闘争の先駆けとなりました。

 小日向氏は、木崎争議は子どもに与える乳も出ないほどの飢えを強いた重い小作料や地主からの屈辱的な支配に対して、小作農民が人間平等の団結力を示したたたかいだったと指摘。組合弾圧と小作農の子どもを差別・虐待する学校教育に抗議して、全国の支援で開設された無産農民学校は、子どもらに働く農民の誇りや人格を育てたと紹介。争議は終結後に小作料の減額や無産者診療所設立、村政の民主化、戦後の農地解放につながる歴史的意義があったと話しました。

 法廷闘争が1930年に小作農民の敗北という形で終結した背景には、地主や国・県などが一体となった弾圧とともに、一部の中心的指導者による組合分裂策動が重大な要因になったと指摘。現在の市民と野党の共闘でも、どんな攻撃や困難にもぶれずに頑張り抜く人たちの存在と役割が重要なことが歴史の教訓だと訴えました。

 

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参院選へ共同さらに 治維法国賠同盟が中央常任理

20211215

 治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟は13日、中央常任理事会を東京都内で開き、来年6月開催の第40回全国大会までに2万人の同盟を建設する方針を決めました。

 増本一彦会長は開会あいさつで「総選挙で野党共闘は歴史的な成果を上げたが、憲法改悪勢力が3分の2超になったという現実を直視しなければならない」と述べ、「最大の危機に立ち向かうために、私たちは『市民と立憲野党の共同』の力をさらに発展させなければならない」と強調。「来年7月の参院選挙で、32の1人区で必ず勝利しよう」と呼びかけました。

 田中幹夫事務局長は、安倍・菅・岸田政権がすすめた秘密保護法や共謀罪法、集団的自衛権の閣議決定、安保法制(戦争法)、そして土地利用規制法の制定で、「新たな戦時体制形成の最終段階に入っている」と指摘。「『治安維持法犠牲者に謝罪と賠償を』『再び戦争と暗黒政治許すな』のたたかいを大きく発展させよう」と訴えました。

 

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きょうの潮流

20211214

 「二人でいると、ちっとも退屈じゃないねえ」。素朴な表現は、彼の十二年の獄中生活はどんなに単調な、変化のない時間の連続であったかということを、まざまざと告げたのであった―▼凶暴な権力に引き裂かれた歳月の重さ。宮本百合子の小説「風知草(ふうちそう)」はそれを肌で感じる場面から始まります。侵略戦争に抗し長く投獄された共産党員の夫を支え、自身も弾圧され書くことを禁じられた作家の戦後の幕開けとして▼抑え込まれてきた精神と肉体が解き放たれるなかで描かれた夫婦の姿。歴史の大転換時に記された作品は「播州平野」とともに「日本のすべての人にとって忘却することのできない治安維持法と戦争のために犠牲とされた理性と善意のために捧(ささ)げられる」と▼その小説と同じ題名をつけた「毎日」のコラムがいま問題になっています。日本共産党の綱領を度をこした現実離れと根拠もなく決めつけたことで▼コラムの異常さを指摘した本紙の記事には多くの声が寄せられています。とくに戦争指導者の慢心や過信をもちだしての党綱領批判には、先人のたたかいと重ね、体がふるえるほどの憤りを感じたと。こうしたメディアの姿勢への危惧も相次ぎます▼まさか特別編集委員の肩書をつけた記者が、あの戦争に国民をかりたてた自社の責任、それとは逆に命がけで戦争に反対した人々がいたことを知らないとはいわないでしょう。百合子の「風知草」が「播州平野」とともに毎日新聞主催の第1回毎日出版文化賞をうけたことも。

 

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「日本共産党常任活動家の墓」第36回合葬追悼式 田村副委員長のあいさつ

20211214

 11日に開かれた「日本共産党常任活動家の墓」第36回合葬追悼式で、田村智子副委員長が行ったあいさつは次のとおりです。

 「日本共産党常任活動家の墓」合葬追悼式にあたり、中央委員会を代表してごあいさつ申し上げます。

 中央委員会がこの八王子の地に、全国の常任活動家や議員の方々の共同の墓地を建立したのは1986年でした。党員の業者から寄贈を受けた墓石には、当時の宮本顕治委員長の揮毫(きごう)で『不屈の戦士ここに眠る』と刻まれています。全国の常任活動家の合葬を行うようになり、合葬追悼式は今年で36回を重ねてきました。

 今回、新たに合葬された方は、先ほどお名前を紹介した199人のみなさまです。北海道から沖縄県まで、任務や役割はさまざまですが、日本共産党員として党活動を担ってこられました。小林多喜二や野呂栄太郎などの戦前の党活動家、さらに戦後の党の礎を築いた諸先輩や党専従者の方々などと合わせて、4836人のお名前が銘板に刻まれました。

 一昨年までは、ご遺族のみなさんにご案内し、遺族代表の方から故人を偲(しの)ぶごあいさつをいただいてきましたが、昨年、新型コロナ感染症のパンデミックのもとで、これまでの開催様式を検討し、追悼式は中央関係者によって執り行うこととしました。

 本日、ここに足をお運びいただくことができなかったご遺族のみなさんと深い哀悼の思いを共有しながら、合葬されるお一人おひとりに思いをはせております。

 今回の合葬追悼式は、総選挙の日程を考慮することとなり、追悼式に選挙の結果のご報告もと思ってきました。

 日本共産党は沖縄1区で赤嶺政賢さんの宝の議席を守ることができましたが、比例代表選挙では11議席から9議席に後退したことは本当に悔しく、残念な思いでいっぱいです。

 11月27、28日の2日間をかけて、第4回中央委員会総会を開き、総選挙の総括と、7カ月後の参議院選挙で勝利・躍進するための方針を決定しました。そして、今月から来年1月末までを「4中総徹底と反転攻勢めざす特別期間」として、その具体化、実践を始めているところです。

 今回の総選挙は、共通政策、政権合意、選挙協力という、本格的な野党共闘の態勢をつくって挑み、日本共産党が初めて「政権交代」を掲げる歴史的な選挙となりました。

 憲法を踏みにじる強権政治、その上、新型コロナでの無策を続ける自民・公明政権に対して政権交代を正面から訴えたことは、野党として当然の役割だったと確信しています。また、野党共闘を前進させて「政権選択の選挙」にまでもちこむという、新しい情勢を切り拓(ひら)いたことも確信するものです。

 日本共産党が協力する政権が生まれる可能性―これは、自民、公明、補完勢力である維新にとっては心底おそろしい展開となりました。危機感にかられ、野党共闘への攻撃、とくに日本共産党へのレッテル貼りの宣伝が大量に行われました。その街頭演説はメディアで拡散され、選挙終盤になるにつれ強まりました。

 このもとでも、市民と野党の共闘は重要な成果を上げました。「共闘勢力」で一本化した59選挙区で勝利し、甘利明幹事長、また石原伸晃氏など自民党の重鎮や有力政治家を落選させ、僅差に追い上げた選挙区がいくつもありました。「共闘勢力」は比例得票も議席も増やした一方で、「与党勢力」は19議席の後退です。

 政権交代でどういう政治を実現するのか、中身も魅力も十分に国民に伝えていく。野党が肩を並べて訴え、共闘への攻撃に対してともに力を合わせて反撃する―野党共闘の発展こそが求められています。

 日本共産党に対する攻撃は、私たちが支配勢力に攻め込み、追い詰めたからこそのものです。この必死の攻撃、有権者に与えている影響を機敏につかみ、相手に負けない勢いで反撃する構えと活動が弱かった。第4回中央委員会総会では、このことを常任幹部会の厳しい反省点として総括しました。

 この攻撃は、共産党が協力する政権への不安を煽(あお)るものであり、綱領そのものを学び、語ることが反撃の最大の力です。しかも、わが党の総選挙の政策には、若い世代を含めて大きな共感が寄せられています。

 今度の総選挙は、攻め込み、追い詰めた。しかし、攻め落とすには至らなかった。共産党への攻撃は新しいステージのなかでの新しい困難であり、ここを突破すれば社会変革への大きな展望も見えてくる―このように、支配勢力と、野党共闘および日本共産党との攻防のプロセスを“政治対決の弁証法”という角度からとらえた4中総を、ぜひご遺族のみなさんにもお読みいただき、ご意見などをお寄せいただければと思います。

 日本共産党は来年、100周年を迎えます。

 戦前、天皇絶対の専制政治による暗黒支配のもとで非合法とされ、最高刑を死刑とする治安維持法による弾圧のもとでも、党は、不屈に勇敢に国民主権と反戦平和の旗を掲げてたたかいました。残虐な弾圧により命を奪われた党員も少なくありませんでした。戦後、日本共産党の主張が「憲法」のなかに実ったことは党の誇りです。

 戦後、綱領路線を確立以降、選挙での躍進を果たすと、1980年の「社公合意」を契機に「日本共産党を除く」の壁が築かれましたが、私たちはその壁を崩し、いま共闘の時代を築いています。

 4中総で志位委員長は、「日本共産党の100年は、支配勢力による攻撃に絶えずさらされながら、その攻撃を打ち破り、前途を切り開くという、奮闘と開拓の100年」、その歴史には「ひと時として“順風満帆”な時はありません。それは支配勢力との“政治対決の弁証法”のなかでの奮闘と開拓の歴史であります。そして、時代を切り拓くたたかいのなかにこそ、私たちの喜びがあるのではないでしょうか」と述べています。不屈の党として、必ず反転攻勢をと、私もその決意に燃えています。

 臨時国会では、空前の大軍拡、「敵基地攻撃能力の保有」、9条改憲への動きなど、安倍・菅政権を上回る岸田政権の危険な姿が現れました。平和と暮らしを守るために、日本共産党が大攻勢に転じることが急務となっています。

 参議院選挙では「650万票、10%以上」を必ず実現し、比例5議席を絶対確保し、選挙区での議席躍進で政権交代への足掛かりをつくる。参議院選挙の躍進で党創立100周年を迎えるために全力を尽くす決意です。

 結びに、合葬されたみなさんが歩まれた道もまた、平たんな道ではなかったでしょう。山あり谷ありの道のりを故人とともに労苦をともにされ、また励まし支えて下さったご家族のみなさんにあらためて心から感謝を申し上げます。本当にありがとうございました。

 みなさんが健康に留意され、お元気で日々を重ねられますことを心から願い、追悼のあいさつといたします。

 

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開戦80年 「赤紙」配布 今を新たな「戦前」にさせない

2021129

●さいたま

 太平洋戦争開戦から80年の8日、埼玉県各地で埼玉母親大会連絡会が赤紙配布宣伝に取り組みました。

 さいたま市の浦和駅東口では、「核兵器ない世界を!」「子どもたちに平和な未来を手わたそう」「日本政府は核兵器禁止条約に署名・批准を!」と書かれたプラスターを手にスタンディング。

 参加者らは「太平洋戦争で310万人の日本国民と2000万人以上のアジアの人々が犠牲になりました。二度と起こしてはなりません。武器はいらない、核兵器はいらないの声を広げていきましょう」「岸田文雄首相は所信表明演説で敵基地攻撃能力の検討を言明し、軍事費をさらに増やそうとしています。そんなものは必要ありません。医療や福祉、生活を支えることにお金を使うべきです」などと訴えました。

 赤紙を受け取る若者の姿も。「これから働くようになって、自分たちが安心して暮らせるのか心配だ」と話す女子高校生もいました。

●和歌山

 和歌山県母親大会連絡会と治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟和歌山県本部は8日、JR和歌山駅前で赤紙(召集令状)ビラなどを配布し、平和を訴えました。

 参加者らは、岸田文雄首相が所信表明演説で、「敵基地攻撃能力」について歴代内閣の憲法解釈を正反対に変更して「あらゆる選択肢を排除せず」「スピード感を持って」と軍拡路線の強化を明言し、「国民理解のさらなる深化」と、戦争できる国づくりのための「憲法改正」の姿勢をあらわにしていることを告発。「終戦から76年。いまを新たな『戦前』にしてはいけません。9条改憲にNOの声をあげましょう」とよびかけました。

 母連は同日を中心に県内25カ所で平和行動を実施し、赤紙7000枚を配布しました。

●栃木・壬生

 栃木県壬生(みぶ)町の新日本婦人の会壬生支部と壬生原水協準備会は6日、6・9行動に取り組みました。

 夕方のスーパー前で「赤紙」を配布。平和を守ろうと訴えながら「日本政府に核兵器禁止条約の署名・批准を求める署名」への協力も呼びかけました。

 町の遺族会の手伝いをしている女性は「東南アジアで親族が戦死した。今は、やり、刀の時代ではなく1発で何の罪もない市民を大量に殺しあう。二度と戦争をしてはいけない」と話しました。また、「9条を守ろう」の文字に目をとめた男性は「赤紙で伯父が召集され、亡くなった」と話しました。

 参加者は「赤紙を見せると、みんな驚く。大切な人が紙一枚で連れていかれ、戻ってこない戦争は恐ろしい」「もっと多くの世代に訴えられるよう、時間や場所を工夫しながら取り組みを続けていく」と話しました。

 

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くねくねTANKAロード(18)寺井奈緒美

2021126

冬のかもめ 秋元不死男

 古典音痴の私が歌碑や句碑を巡り、くねくね遠回りしながら歌のヒントを探すエッセー。今回は横浜港大さん橋国際客船ターミナルにある秋元不死男の句碑へ。

〈北歐の船腹垂るる冬鴎(ふゆかもめ)〉

 横浜市出身の不死男が、横浜港での貨物船を詠んだ句。自解によると「灰色に塗られた船と、カモメの白の対照が美しい。が、それよりも船腹に打ちこまれた鋲(びょう)の規格正しい点描が見上げる私に“船の美学”をさながらに、メカニックな構成と垂直の物体感を満喫させる」とある。確かに巨大な船は、機械の得体の知れない異物感が迫ってカッコいい。

 *……*

 この句を読んでアキ・カウリスマキの「希望のかなた」という北欧映画を思い出した。冒頭でフィンランドの港に着いた貨物船から石炭まみれの姿で現れるのは、家を爆撃されてシリアから逃げてきたカーリドだ。難民申請を却下され行き場のない彼を、ポーカー博打(ばくち)で増やした金で居抜きの店を買ってレストランを開業したばかりの中年男は雇い入れる。監査が来ればカーリドを犬と一緒にトイレに隠し、偽造パスポートまで用意するのである。この世に不寛容が広がるのは事実だが、目の前の困っている人を放っておけない人々の善意で世界は回っているのだと希望を感じる。

 不死男の作風も善人性と庶民的ヒューマニズムを基調としていると言われる。不死男も苦労人だ。1941年、戦時中の治安維持法のもと新興俳句弾圧事件で検挙され、2年間獄中で過ごし職を失った。戦後、獄中で紙石盤に書き付けておいた句を含めて連作として発表し、当時、獄中吟をまとめた俳人は不死男のみで、俳壇に感銘を与えた。

 *……*

 こんな獄中句がある。

〈寝(い)ねて不良の肩の優しく牢霙(ろうみぞ)る〉

 「恐喝の不良少年と枕をならべて寝ると、触れるその肩がいじらしく優しかった」と不死男。留置所生活が長くヌシのようになっていた不死男は入れ代わり立ち代わりやってくる入房者の世話係をし、霜焼けをつくりながら汚物の掃除も進んで行った。行動こそが生に価値を与え、底辺にいながらもねじくれない秘訣(ひけつ)なのかもしれない。

 ところで、まもなくクリスマスだが、私は街で浮かれたクリスマスソングを耳にすると憂鬱(ゆううつ)になるひねくれ者だ。しかし、不死男のクリスマスの句は例外で元気が出る。

〈へろへろとワンタンすするクリスマス〉

 フライドチキンとケーキのクリスマスもすてきだが、時には胃と財布に優しい不死男流へろへろクリスマスなんていかがだろうか。

・冬の日の満ちることない空虚さに君くらいなら丸ごと入る 奈緒美

 (てらい・なおみ 歌人、写真も)

 

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おはようニュース問答 多喜二ゆかりの門が文化財になったね

2021121

 ふゆみ 11月の初めに、東京都中野区にある旧中野刑務所の門の見学会に行ってきたの。豊多摩刑務所っていったほうがわかるかな。

 のぼる 『蟹工船』で有名なプロレタリア作家・小林多喜二も一時収監されていたところだね。

 ふゆみ そう。戦前、多くの思想犯、政治犯が収監されていたから。

 のぼる 思い出した。その門は、今年6月に中野区の区の文化財に指定されたんだ。取り壊さずに残ることになった。

教育的効果ある

 ふゆみ そう。大正期を代表する建築家・後藤慶二さんの現存する唯一の作品で、1915年に建造されたのよ。

 のぼる 現存ってことは、関東大震災や第2次世界大戦の戦災をくぐり抜けたんだね。指定の理由は?

 ふゆみ 「わが国の煉瓦造(れんがづくり)建築の技術的・意匠的到達点を示すものとして極めて重要」「地域の遺産として重要」というのが主な理由。建造物の価値に着目し、政治的な理由はあげていない。

 のぼる でも、この門は文学や歴史など学問と深く結びついているし、戦争が起きた社会的背景を学ぶ教育的効果はあると思うよ。住民は保存に前向きだったのかな。

“歴史の証言者”

 ふゆみ 2014年に「平和の門を考える会」が発足し、写生会やお花見会、平和の門の100歳を祝う会、学習会などを続けて、保存の必要を訴えてきたの。

 のぼる 住民は「平和の門」と考えているわけだ。門は、治安維持法で逮捕、収監という“暗黒の歴史の証言者”で、平和を考えるうえで貴重な建造物だからね。

 ふゆみ 門の見学会は2日間だけだったけど、5500人以上が参加、関心は高かったわけよ。

 のぼる いまインターネットで調べたら、高さ約9メートル、幅約13メートル、奥行きは約7メートルだって。門というより家みたいだ。今後、門はどうなるのかな。

 ふゆみ 門をそのまま移動させる曳家(ひきや)の方法で、100メートルほど離れた所へ移築し、予算は約5億円、維持費も年間100万円ほど見込んでいるのよ。公開は先、26年度を予定している。

 のぼる 門を見学しながら、歴史を学ぶっていいよね。楽しみだ。

 

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10月

月曜インタビュー 俳優 嵐圭史さん

涙乗り越え新しい創造活動 時代の転換期の今こそ上演

20211018

 昨年の春と秋に予定していた舞台生活70周年全国巡演「玄朴と長英」(約50カ所)が、コロナ禍ですべて中止を余儀なくされた俳優の嵐圭史さん。「何度心が折れたか、わかりません」と振り返ります。今月から始まる再挑戦の舞台。心を奮い立たせたものはなんだったのでしょうか。(寺田忠生)

 「玄朴と長英」は4年前に前進座を離れて以後の「新しい創造活動の再スタート」と位置づけている公演です。昨年4月、圭史さん演じる高野長英の生まれ故郷、岩手県での舞台初日を目前にしての「中止」でした。結局、秋までの「全ステージが木っ端みじんに吹き飛んでしまいました」。

 各地で上演実行委員会を組織、1年以上前から準備したポスター、チラシ、チケット…。「つれあいと2人合わせて150歳の、いまどき通用しない事務所で、すっとんだ予算は私には天文学的でした。でも、いっさい補償はなし。同じように本当に困っている創造集団はほかにもたくさんいます。実に腹立たしい」

 「それでも今年こそ実現をという声に励まされ、上演予定地を訪ね始めたとたん、キャンセルが10件以上入って。『もう全部中止』と思っていた矢先、ある医療生協の組合員さんから電話があり、『うちの組織はキャンセルしたけど、自主的にいま集まって相談し私たちで実行委員会を立ち上げます。圭史さん、絶対来てくださいね』と言うんです。泣けましたよ。折れた心が再びつながった」

幕末の蘭学者 対照的な2人

 「玄朴と長英」は近代演劇史に大きな足跡を残した真山青果(まやま・せいか=1878〜1948)の1924(大正13)年の作品。幕末、シーボルト塾で共に学んだ蘭学者、伊東玄朴と高野長英が登場する2人芝居です。

 玄朴は大名のお抱え医師として地位を確立し、長英は幕府の攘夷(じょうい)策を批判して捕らわれの身という対照的な2人。長英が牢屋(ろうや)の火事に乗じて脱獄、自ら顔を焼いた姿で玄朴の屋敷を訪れ、逃亡資金を頼み込む緊迫した場面から始まります。

 「幕末という時代の転換期に、獲得した地位と名声を必死で守る玄朴と、新たな日本社会の到来に命をかける長英、2人の論争劇なんですが、作者の真山青果は、どちらが正しくてどちらが間違っているといった主張はいっさいしていないんです。しかし、長英の口をとおして、きたるべき社会への確信を語らせたり、玄朴にはヨーロッパに出現した夢のような法治国家の存在を語らせているんですね。この作品を世に出した大正13年は、大正デモクラシーから治安維持法の暗黒の時代への端境期です。ですから、幕末と大正末期と、そして今のコロナの時代、三つの時代の転換期が重なってみえる芝居です。そう考えると、この戯曲には社会史的な意義があると思うんです」

新たな時代へハートを刺激

 コロナ禍の激動に見舞われたことで、「玄朴と長英」の、これまでは気がつかなかったせりふの意味、時代との関わりをいっそう深くつかむことができたと語る圭史さん。「けがの功名ですかね」と苦笑い。

 「コロナ禍をとおして“このままの政治でいいはずがない”と多くの国民がもやもや感を抱き、野党連合政権がじわじわと現実味を帯びてきています。来たるべき新たな時代への転換期にあるいま、きっと多くのみなさんのハートを刺激する芝居になると思います」

 *「玄朴と長英」 作=真山青果、演出=十島英明。出演=嵐圭史、池田直樹。オペラ歌手の池田さんによる歌、妻倉和子さんによる口上付き。11月8日午後2時、午後6時半、9日午後1時半、東京・国立劇場小劇場(「赤旗」読者優待券あり)。ショートメール070(3768)4018。10月28日、東京・練馬区、11月3日、東京・大田区、ほか全国公演

 あらし・けいし 1940年生まれ。59年劇団前進座入座。紀伊国屋演劇賞個人賞、文化庁芸術祭賞、芸術選奨文部科学大臣賞など受賞。2017年に離座

 

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映画「伊藤千代子の生涯」故郷・長野で撮影始まる

20211014

自立し生きる姿を伝えたい

 「命のあるものはみんなあらん限りに生きようとしている」(「獄中最後の手紙」から)―。戦前、治安維持法下で特高警察によって拷問、虐待、投獄され、24歳の若さで命を奪われた日本共産党員の女性活動家、伊藤千代子(1905〜29年、長野県諏訪市生まれ)の生涯が映画になります。

 題名は「わが青春つきるとも―伊藤千代子の生涯」(桂壮三郎監督)。5日に東京都内で撮影開始を記念する集会が開かれ、11日の長野県松本市ロケなど撮影を進めています。

 物語は千代子の生い立ちから最愛の夫・浅野晃との出会い、獄中での最期までを描写。千代子が最愛の夫に裏切られ、転向を迫られる中、自立した女性へと立ち上がり、不屈にたたかう姿を描きます。

 13日の塩尻市ロケには、原作の増補新版『時代の証言者 伊藤千代子』(学習の友社)の著者、藤田廣登さんも同行。戦前の町並みが残る奈良井宿(ならいじゅく)で、千代子役の井上百合子さんが街道を歩くシーンを見守り「自立し、生き抜く千代子の生き方を若者に伝えたい」と語りました。

 他の出演者は竹下景子さん、嵐圭史さんら。来年6月公開予定です。長野県内では8地区全域で同映画の製作上映実行委員会などが結成され、支援が広がっています。

 

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新しい日本へ 共産党ここに期待 作家 早乙女勝元さん

2021108

筋を通して根拠示す

 私は、今回のオリンピックはウソから始まったと思っています。五輪招致の際、安倍元首相が放ったアンダーコントロールという言葉。一体どこがコントロールされていたというのでしょうか。汚染水を海に放出すればどうなるかはだれが見たってわかります。

 それだけではありません。ウソを幾つも重ねていき、いつの間にか社会はウソで塗り固められてしまいました。果たしてそういう社会に子どもたちを送り出してもいいのでしょうか?

 その点、共産党はちゃんと筋を通す。理由を明確にし、根拠を示す。だから私は共産党に期待していますし、それが子どもたちが人間らしく生きられる未来につながっていると考えています。

 つい先日、テレビ朝日のワイドショーに出演しコメントしました。その際、「今はもう世界中至る所、コロナです。軍事費にお金をかけている場合じゃない」と言ったんです。戦中だったらこんなことは絶対に言えなかった。私は戦後、小林多喜二の本を読んで体が震えるくらい感動したんですが、多喜二は治安維持法によって捕まり拷問の末殺されました。

 やはり憲法は絶対に守らなくちゃいけないんですよ。戦争の愚かさを伝えなくてはいけない。私は東京大空襲・戦災資料センター(東京・江東区)で体験を話しているんですが、子どもたちにこう伝えています。「知っているなら伝えよう。知らないなら学ぼう」

 これらのことは全て共産党に直結していると私は思っています。

 一票がとても大切です。小さな勇気の積み重ねが、大きな勇気を必要とする深刻な状況を未然に防いでくれるでしょう。

 

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9月

「比例は共産党」広げに広げ 京都6区 男女格差なくす たけやま候補

2021927

 日本共産党の小池晃書記局長は26日、京都6区(宇治市など)のオンライン演説会で、質問に答える形で演説し、「こくた恵二、たけやま彩子両候補を先頭に、比例近畿ブロックで4議席の絶対回復を」と強調して「京都6区は京都の中で市民と野党の共闘の最先端。共闘を強め、政権交代実現のためにも、『比例は共産党』の流れが絶対に必要だ」と訴えました。

 小池氏は、「『山宣』こと山本宣治さんをはぐくんだのが宇治だ」と述べ、戦前に反戦・平和、治安維持法反対を貫き殺された代議士・山宣を紹介。「山宣ひとり孤塁を守る。だが私は淋(さび)しくない。背後には大衆が支持してゐ(い)るから」との山宣の言葉を引用し、「今はもっと大きな広がりが共産党のまわりにはある」として、共産党への荒唐無稽なデマ攻撃に対し、市民や野党幹部の批判で反撃するなど、共闘のきずなが固くなっていることを語りました。

 小池氏は、党の「気候危機を打開する2030戦略」(1日発表)を紹介し、再生可能エネルギーの普及と省エネの組み合わせで30年までに温室効果ガスを5〜6割削減すると述べ、「省エネは企業にとってもコスト削減と効率化になる。再エネのための地域の発電所は、石炭火力や原発などよりはるかに多い雇用を生み出し、エネルギー自給率の向上など、いいことずくめだ」と強調。「政権交代を実現して、地球を守ろう」と訴えました。

 たけやま彩子・衆院近畿比例候補が決意を語り、「京都6区市民連合」のよびかけ人の一人、佐々木真由美・宇治市議(無所属)らが応援演説で訴えました。

 たけやま候補は「コロナ禍でジェンダー不平等が浮きぼりになった。非正規やひとり親の女性が困窮に陥れられている。新しい政治をつくり、正規が当たり前、最賃1500円で男女の賃金格差をなくす」と力を込めました。

 佐々木氏は「市民と立憲野党の共闘を一つひとつ積み上げることが、(政権を)ひっくり返す力になる」「共産党は立ち位置がぶれない。共闘の要になっている」と述べました。

 

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総選挙で野党勝利を 治維法国賠同盟が声明

202197

 治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟は6日までに、菅首相の退陣表明を受け、増本一彦中央本部会長の声明を発表しました。

 声明は、菅首相の退陣表明について、「安倍政権を引き継いだこの一年間の数々の『悪政』に対する国民の厳しい批判が表面化したもの」だと指摘。総選挙を「『市民と立憲野党の共同』による政権交代のチャンスと捉えて、『国民連合政権』を誕生させるために」奮闘を呼びかけています。

 同盟は、「迫り来る衆議院議員総選挙においても」国に対して「治安維持法犠牲者等に謝罪と賠償措置を執るよう、各立憲野党とその候補者に」要望書などを送ってきたと主張。「野党連合政権」の誕生によってその法制化の実現の可能性が生まれるとしています。

 さらに、「私たちは、治安維持法犠牲者等の『闘いと抵抗の歴史』を受け継ぐ立場にある者」とし、「『市民と立憲野党の共同』の確立によって、衆議院議員総選挙勝利・野党連合政権の樹立を目指して、同盟要求実現のために総決起する」と訴えています。

 

8月

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99歳の菱谷さん 平和と自由訴え 治安維持法違反問われ投獄 北海道旭川

2021822

 太平洋戦争が終結して76年。終戦記念日の15日、北海道旭川市では旭労連や道北原水協、平和委員会3団体が「赤紙」(召集令状)複製を繁華街で配りました。

 戦前戦中の暗い時代に侵略戦争に国民を駆り立てる一方、希代の悪法、治安維持法で逮捕、投獄された「生活図画事件」の菱谷良一さん(99)がマイクを握りました。共産主義も知らないのに、絵を描いただけで国民を啓蒙したといって、暴力で自白を強要され、氷点下30度の独房生活を強いられました。

 「赤紙」を渡され、死を覚悟しながら終戦を迎えた経験を語り、「先人の血と涙で得た平和と自由はゆめゆめ忘れてはなりません。明日の日本、平和と自由を守るべく頑張っていきましょう」と力強く訴えました。

 高校生や若者が「赤紙」を立ち止まって真剣に読んでいました。

 「初めて見ました」とジャズ部の先輩後輩という高校生2人は、戦時中、洋楽が自由に聞けなかった歴史に驚き、「たった1枚の紙で戦争に行かされる役割があったんですね」と隅々まで目を通していました。進んで受け取った女性(52)は「運動を広げないと、“平和ぼけ”してしまう」と語りました。

 日本共産党からは真下紀子道議、党旭川市議団が参加しました。

 

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全国いっせいの終戦記念日宣伝 治維法国賠同盟

2021819

 治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟は終戦記念日の15日、全国一斉の宣伝行動を行いました。

 悪天候の中、JR池袋駅前で吉田万三東京都本部会長、田中幹夫中央本部事務局長が訴えました。

 田中事務局長は「戦前、治安維持法で逮捕、投獄、虐殺という弾圧に抗して戦争に反対した犠牲者のたたかいは、敗戦後、憲法に不戦の誓いと戦争放棄の明記に引き継がれた」と語りました。菅自公政権はコロナ対策をおろそかに、緊急事態宣言のもとでオリンピックを強行し、専門家、国民の意見を聞かないと批判。「このような政権を倒し、民主的政権をつくるため市民と野党の共闘を強化しましょう」と訴えました。

 

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7月

文芸時評 尾西康充 命と権利奪う暴力許すまい

2021727

 5月末、勤務校に爆破予告があった。東京五輪開催に反対するという声明が記されていた。被害を受けたのは国立大学に限っても全国30校に上ったのだが、マスコミの報道は散発的なものにとどまり、声明の内容は、ほとんど報じられることがなかった。「五輪開催反対」が生活者の実感に即した声であるならば、テロに訴えるのではなく、言葉の力で伝えるべきではないか。

ともに生きよう 温もりある言葉

 今月は新刊の2冊から紹介したい。

 2020年11月に他界した旭爪(ひのつめ)あかね『こんなときこそ』(『こんなときこそ』刊行委員会)。遺稿となった詩を巻頭に据え、4編の小説と批評・エッセーを収録している。

 ひきこもり体験から創作活動をはじめた旭爪の「こんなときこそ/心は自由でいよう/離れていても/つながり合おう/ひとりひとりが/本当の思いを/言葉にしよう/そして/その勇気を讃(たた)え合おう」という最期の声は、格差社会に希望を失い、同調圧力に息ができない人々に生きる力を与える。温(ぬく)もりのある彼女の言葉には、永遠に薄れることのない珠玉の輝きがある。

思想犯を裁いた治維法の「現場」

 2冊目は荻野富士夫『治安維持法の「現場」』(六花出版)。戦前・戦時治安体制下の思想犯に関する刑事処分のプロセスが詳(つまび)らかにされている。

 当時は、刑の量定の基準として、日本共産党への入党で5年、党の目的遂行で3年、共産主義青年同盟加入で4年、同盟の目的遂行で3年とされていた。法の恣意(しい)的な拡大解釈によって罪に問われた人々が存在した。

 ほとんどの判決はこの基準に従ったものであったが、荻野によれば、何とか無罪判決を下そうと試みた「その狭間(はざま)でたじろぎ、悩み、葛藤する裁判官もわずかながら存在」したという。暗黒の時代の法曹界にも、良心を持った人間がいたのである。

健康損なう施策 許さぬ姿勢貫く

 今月の文芸誌に発表された小説の中から、現代の社会問題を鋭く突いた作品を紹介したい。

 『文学界』の佐伯一麦(かずみ)「うなぎや」は、2005年に明らかになった“クボタショック”(兵庫県尼崎市にある大手機械メーカー工場の周辺住民にアスベスト被害が広がっていた事件)をテーマにしている。これまでも佐伯は、電気工時代に被ばくした体験と被害者への取材に基づく作品を発表してきた。政府の誤った施策によって健康が損なわれ、数多くの生命が奪われた。それら一切を許すまいとする作家の姿勢を強く支持したい。

 『新潮』の中西智佐乃「祈りの痕」は、父や兄のDVによって「普通の生活」を奪われた女性たちの姿を描く。製パン南大阪工場に勤める野口美咲は、高校を卒業して6年目。兄から暴言に加えて身体的暴力をふるわれて育ち、将来の夢をことごとくつぶされてきた。同じ職場にバイトで勤務している高校3年生の戸田は、両親が離婚する前、父からタバコを押し付けられ、今でも左肘の内側に痕が残っている。

 二人は、父や兄から暴力をふるわれる原因が自分にあると思い込まされている。誰かに助けを求めたことはなく、助けられたこともない。暴力をやりすごすには、ひたすら祈るしかなかった。

 しかし小説の最後で、美咲は戸田に「では、どうやったら自分が自分を責めないか、一緒に考えましょう」と語りかける。生まれてはじめて、自己の存在を肯定し合えた瞬間であった。その日、帰宅した美咲は、金を要求する兄に向って「もういい加減にしいや」と言い返したのである。

隠れた暴力告発 大切なテーマに

 社会の陰に隠れた暴力を告発し、すべての人間が等しく生きる権利を訴えることは、文学における大切なテーマである。次作では、本来そこにあったはずの「普通の生活」を取り戻すために、♯MeTooの叫びを拡散して連帯する女性たちの姿を描いてほしい。

 『民主文学』の小西章久「枯死」は、2020年、トビイロウンカによって未曽有の被害が生じた米作農家が舞台である。農水省による頭ごなしの減反政策に抗議し、「腰をすえて農業をやりたいんだ」という決意の言葉が胸に響く。

 橋本かほる「瞳」は、門柱のブロックが落下して右手の指を失った5歳の娘が手術を乗り越えて登校する。母と娘の信頼が深まる結末には、胸が熱くなる。(おにし・やすみつ 三重大学教授)

 

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6月

自由な思想を恐れる中国 東京大学教授 阿古智子さんに聞く

2021630

 中国で人権問題に取り組む人々に寄り添い研究を続けてきた東京大学の阿古智子教授に、香港での国家安全維持法(国安法)施行から1年を機に話を聞きました。

 国安法は「政権転覆をはかる」「海外勢力と結託する」などを罪としますが、どの行為が罪にされるかはっきりしていません。

 「無許可集会扇動」などの罪で服役した民主活動家の周庭さんが先日、出所しました。国安法違反で逮捕され、起訴される可能性のある彼女は、無言で表情もありません。インスタグラムへの投稿画面は真っ黒でした。いきいきとしていた彼女が、喜怒哀楽さえ表せない。表現の自由を奪われてしまいました。

恐怖政治が常態

 国安法で「正しい」ことしか言えなくなりましたが、何が正しいかも分からない。結局、人々はお互いをけん制し、沈黙する。この日常化した恐怖政治が、国安法の本質です。監視し、見せしめで逮捕する―日本が戦前、治安維持法の時代にやっていたことがまかり通っています。

 このような厳しい状況の中でも、香港の若い人たちはペンネームを使い、身近なことから発信を続けています。自由が奪われるなかでも、表現をあきらめていません。

 香港の「一国二制度」を提案したのは中国自身でした。少なくとも50年は、これまでの制度を続けると言っておきながら、このような状況です。同じく区域自治制度をとる新疆でも、民族の言葉や文化を尊重していない実態が明らかになっています。

暴力装置の膨張

 なぜそこまでするのか。それは中国共産党が、正統性を確保できていないからです。

 中国社会はソーシャルメディアの時代に入り、中国版ライン「微信」などのサークルにほとんどの人が参加しています。そこではかなり自由な議論が行われています。政府の情報統制も全てを遮断できず、不満の声はどこからか漏れてしまう。だれかの強烈な意見が拡散され、街頭の抗議に発展する事態が最近も起きています。

 経済発展に伴い、環境への配慮を高め、労働者の権利を保護すべきですが、そちらは全く抜け落ちています。社会保障やセーフティーネットも整備できていません。

 これらの問題を見抜き、公共の問題として取り組む人たちがいます。そういう思考力ある人たちを恐れ、常に暴力装置を機能させているのです。一番恐れているのが、人々の自由な思想・表現です。

 ここまでの引き締めは、戦略としてもマイナスの方が大きいと思いますが、習近平氏は統制できていないのではないか。暴力装置は、治安維持や監視に予算や人員がつくと、自己膨張していくものだからです。

 中国は今や、経済、情報の分野で、世界一の力を持つ国となりました。しかし普遍的に人間が大事にすべき価値を大事にしない。違いすぎる価値観に対しては、国際社会がきちんと声を上げる必要があります。(聞き手 鎌塚由美)

 あこ・ともこ 1971年生まれ。在中国日本大使館専門調査員、早稲田大学准教授などをへて東京大学大学院教授。著書に『貧者を喰らう国 中国格差社会からの警告』ほか

 

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現代版の治安維持法だ」埼玉・入間 土地利用規制法案学習会

202166

 日本共産党埼玉西南地区委員会は4日、航空自衛隊の基地がある埼玉県入間市で「土地利用規制法案」学習会を開きました。

 神田三春地区委員長(衆院埼玉9区候補)は開会あいさつで「学んで何ができるか知恵を絞ってほしい」と呼びかけました。

 埼玉県平和委員会の二橋元長代表理事は、自衛隊や米軍の施設など重要施設の周囲1キロが調査対象とされているが、重要施設には「政令で定める施設」も含まれており、「国会の関与なしに内閣・政府が勝手に際限なく広げられる」と批判。調査によって土地の売買に不利益が生じても政府は補償しないと答弁しており、「これは財産権の侵害ではないか」と指摘しました。

 また、政府は「重要土地等調査法案」という名前で扱っているが、調査内容は政府次第であり、土地調査の名を借りた人の調査のための法案だと批判。「菅義偉政権がついに人の統制に乗り出そうとしている。国会閉会まで攻防がより激しくなるだろう。総選挙での政権交代も目指しつつ、廃案にしていこう」と訴えました。

 参加者から「自衛隊の給水場所も重要施設になるのか?」との質問が出され、二橋氏は「例外はないとされている」と答えました。「現代版治安維持法だと思う」「とんでもない法案だ」などの感想が出されました。

 

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土地利用規制法案を批判

202163

 政府与党と一部野党が衆院本会議で土地利用規制法案を採決強行したことに対し、各団体は1日、廃案にむけて全力をあげる声明を発表しました。

日本平和委

 日本平和委員会の声明では、同法案が米軍・自衛隊基地の周辺住民を日常から調査・監視し、「機能を阻害する恐れのある行為」に土地・建物の利用中止を命令し、応じなければ懲役を科すのは「国民の基本的人権と平和的生存権をじゅうりんする」と批判しました。日米軍事同盟強化の下での「戦争する国づくり」があると指摘。参院で廃案に追い込むため全力を尽くす決意を表明しています。

治維法国賠同盟

 治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟の増本一彦中央本部会長声明では、「憲法で保障されている『財産権と自由・人権を侵害』するもの」だと批判します。「同法案に対する政府答弁が二転三転し、法案提出の理由すらまともに説明できない」と指摘。政府のいう「国の安全保障」や「テロ対策」は、憲法の平和と民主主義・自由と人権保障の精神にのっとった方策がいくつもあるとして、同法案に反対しています。

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5月

土地利用規制法案 衆院内閣委 塩川議員の反対討論

2021529

 日本共産党の塩川鉄也議員が28日の衆院内閣委員会で行った土地利用規制法案に対する反対討論は次の通りです。

 初めに、憲法と国民の権利に関わる重大法案を、参考人質疑や連合審査も行わず、わずか12時間で質疑を打ち切り、採決を強行するなど断じて認められません。強く抗議するものです。

 反対理由の第一は、基地周辺住民の権利と尊厳をふみにじることです。

 本法案は、全国の米軍・自衛隊基地周辺や国境離島でくらす住民を監視の対象にし、土地・建物の利用を規制し、応じなければ処罰するというものです。

 基地あるが故の被害に日常的に苦しめられている住民、とりわけ米軍占領下の土地強奪で基地周辺での生活を余儀なくされた沖縄県民を、政府による監視と処罰の対象にするなど断じて容認できません。

 政府は基地被害の根絶にこそ取り組むべきであり、住民を監視の対象にする法案を押し通すなどもってのほかと言わなければなりません。

 重大なことは、法案の核心部分をすべて政府に白紙委任していることです。

 どこでどのような調査をするのか、いかなる行為を「機能阻害行為」とするかは政府の判断次第であり、憲法が保障する思想・信条の自由を侵害する危険は重大です。

 第二に、法案の必要性、すなわち立法事実自体が存在しないことです。

 政府は、法整備の根拠として、北海道千歳市や長崎県対馬市の自衛隊基地周辺の土地を外国資本が購入し、全国の自治体から意見書が上がっていることを挙げてきました。しかし、意見書は16件にとどまり、そこに両市は含まれていないことが明らかになりました。

 2013年度以降、2度にわたり全国約650の米軍・自衛隊基地の隣接地を調査し、運用に支障が生じるような事態は確認されていないと答弁してきたのは政府自身です。まるで立法事実を探すためのような法案を押し通せば、国会の見識が問われます。

 第三は、民間の経済活動に与える影響です。

 政府は、区域内の土地・建物が敬遠され、土地取引価格の下落を招く可能性があることを認めました。ところが、その一方で、「政府として補償は予定していない」と答弁したのであります。「機能阻害行為」とは全く無縁の国民が経済的不利益を被ることなど到底認められません。

 戦前、要塞地帯法や治安維持法、軍機保護法など一連の治安立法を制定し、国民の自由を奪い、戦争へと駆り立てていった歴史の教訓を思い起こし、本法案は廃案にすべきです。

 修正案についても以上の問題点を解消するものではなく反対であることを申し述べ、討論を終わります。

 

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土地利用規制法案 住民監視・基地強化ノー

2021528

 米軍・自衛隊基地周辺の住民を監視する土地利用規制法案が衆院内閣委員会で28日採決が狙われています。在日米海・陸軍の司令部がある神奈川県内で基地強化反対・撤去を求める住民団体に聞きました。

国民生活制限恐れ

原子力空母の母港化を阻止する三浦半島連絡会事務局長 新倉泰雄さん

 土地利用規制法案の重大な問題は、政府が重要施設の機能を「阻害する行為」とみなせば、土地や建物の利用中止勧告や罰則付きの命令ができることです。私たちが取り組んでいる基地の監視や反対運動に対して、土地や施設の利用が制限される恐れがあります。

 それだけでなく戦前のように軍事目的のために土地の収用を可能にしていくことにもつながり、周辺に住む住民の生活、土地の売買や利用など経済活動まで制限される危険があります。

 とりわけ米海軍横須賀基地は米国外で唯一の米海軍原子力空母の母港とされるなど、沖縄とならんで日米の軍事作戦の拠点です。

 安保法制=戦争法が施行され5年がたち、この法案が出てきたのは、さらなる横須賀の基地機能強化と一体のものだと思います。基地撤去・反対運動に取り組む人だけでなく、戦前の治安維持法と同じように国民すべてを監視し弾圧するものになっていく危険はぬぐえません。

 国会での徹底審議と国民の運動で危険な中身を知らせ、なんとしても廃案にしていきたい。

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米軍こそ生活阻害 キャンプ座間周辺市民連絡会代表委員 菅沼幹夫さん

 私は、在日米陸軍「キャンプ座間」基地(神奈川県座間、相模原両市)から1キロ以内のところに住んでいます。生まれてから75年間、基地と隣り合わせで生活しています。

 この基地は、戦争司令部で外部から閉ざされていますが、横須賀を母港とする空母の出港間際の5月の連休あたりは毎年、艦載ヘリ部隊が着艦訓練「タッチ&ゴー」と住宅地周辺での危険な低空飛行訓練を繰り返します。その様子を動画に撮影し、自治体に伝え、政府にも中止をさせるよう求めていますが一向に改善されません。

 2019年10月には低空飛行の風圧で窓を開けていた住宅室内のガラス製品が破壊される事故も起き、被害の軽減と回復を求めています。それが「機能を阻害する行為」とみなされ、犯罪者のごとく身上調査され監視されることは許せません。

 キャンプ座間には、自衛隊情報保全隊や米軍のスパイ活動の専門部隊がいます。公安警察だけでなく直接、軍によって日常的に監視される。総がかりの「国民監視体制」に背筋がゾッとします。

 住民生活を阻害しているのは米軍で、取り締まるべきは米軍です。政府のやるべきは住民の監視ではなく、住民の被害に耳を傾け、被害の回復を米軍に要求することです。

 

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土地利用法案 実質審議入り まるで戦前の弾圧法 赤嶺議員が追及 衆院内閣委

2021522

「住民の不安」立法根拠なし

 基地周辺や国境離島の住民を監視する土地利用規制法案が21日の衆院内閣委員会で実質審議入りしました。与党は今国会中の成立を狙っています。同法案は、基地などの「機能阻害」のおそれがあれば土地の利用中止を命じ、応じなければ刑事罰を科すというもの。日本共産党の赤嶺政賢議員が追及しました。(論戦ハイライト2面)

 赤嶺氏は、戦前、要塞(ようさい)地帯法や治安維持法、軍機保護法などが制定され、基地などを撮影・模写しただけで逮捕されたと指摘。一連の治安立法は戦後、廃止されたにもかかわらず、「当時を彷彿(ほうふつ)とさせる法案の提出に憤りを感じる」と批判しました。

 赤嶺氏は、こうした治安立法で国民が弾圧され、戦争へと駆り立てられた歴史への反省・教訓は議論したのかと追及。木村聡内閣審議官は「土地利用に関する有識者会議では特段議論していない」と述べ、戦前の教訓は踏まえていないことを認めました。

 政府は法案提出の根拠として、外国資本による北海道千歳市や長崎県対馬市の自衛隊基地周辺の土地購入に対する自治体・住民の「不安」をあげています。

 赤嶺氏は、全国約1800の自治体のうち意見書提出は16件にとどまり、千歳市と対馬市から意見書は提出されていないと指摘。政府もこの事実を認めました。

 赤嶺氏は、千歳基地周辺で土地が購入されたとされる北海道苫小牧市を含め、3市議会で同問題が議論されたのはそれぞれ数回程度だとして、「『住民の不安』に根拠がない」と強調しました。さらに、苫小牧市での土地購入は、市が統合型リゾート(IR)構想を進める下で行われ、購入された土地もIR施設の予定地に隣接していると指摘。「安全保障ではなく、IRとの関連を考えるのが常識的だ」とただしました。

 木村審議官は、千歳市議会の一部議員のやりとりの例をあげるだけで根拠を示しませんでした。赤嶺氏は「議員の質問は、そのまま安全保障上の危機にはつながらない。うわさや思いこみのレベルで法案を提出した」と批判しました。

 

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論戦ハイライト 土地利用規制法案 撤回せよ 処罰の対象 白紙委任 衆院内閣委で赤嶺議員

2021522

 日本共産党の赤嶺政賢議員は21日の衆院内閣委員会で「土地利用規制法案」の問題点を指摘し、撤回を求めました。

 赤嶺氏は、政府が昨年、外国資本による土地売買の本格調査を開始し、中国系資本が関与した可能性のある買収を計700件確認したとの報道(「産経」14日付)について事実関係をただしました。

事実関係調査を

 小此木八郎領土問題担当相は「調査した事実はない」と否定しましたが、赤嶺氏は、「読売」昨年12月22日付が中国系資本による土地買収事例が約80カ所あったとする政府調査を報じるなど、同様の報道が繰り返されていると指摘。「法的根拠なく調査をしているならば法案審議どころではない」として、事実関係の調査を求めました。

 赤嶺氏は、戦前、要塞地帯法や治安維持法、軍機保護法など一連の治安立法により、基地や軍艦などを撮影・模写しただけで逮捕され、戦争に反対する者は容赦なく弾圧・拷問の対象にされたと指摘。今回提出された法案は戦前を彷彿(ほうふつ)とさせるものだと追及しました。

 赤嶺 法案提出にあたり、戦前の歴史への反省・教訓を議論したのか。

 木村聡内閣官房審議官 教訓等について有識者会議で議論いただいていない。

軍事行動を優先

 赤嶺氏は「法案は、政府が国民を日常的に監視し、基地などの機能阻害行為、つまり軍の行動を邪魔する者がいれば処罰の対象にするものだ」と強調。しかも、何を処罰するかを政府に白紙委任していると告発し、「軍事行動を至上価値とし、国民の権利が制限されても構わないという発想は戦前と変わらない。現行憲法下でこのような法案が許容される余地などない」と断じました。

 赤嶺氏は、自民党内で土地利用規制問題に関する検討会を主宰した高市早苗元総務相が自身のホームページのコラムで、中国の国防動員法(2010年施行)に触れ「仮に日中間に軍事的対立が起きた場合には、莫大(ばくだい)な数の在日中国人が国防勤務に就くことになる可能性がある」などと述べていることを指摘。このような認識では差別感情により在日外国人が殺害された関東大震災のときと同じ過ちを繰り返すことになりかねないとして、法案の撤回を求めました。

 

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プーク人形劇場50周年 歴史刻む街の顔 劇場代表 伊井治彦さんに聞く

2021518

 人形劇団プークが1971年に東京・渋谷に建てた日本初の現代人形劇場「プーク人形劇場」。建設50周年を迎える思いを、劇場代表の伊井治彦(いい・はるひこ)さんに聞きました。(林直子)

 「週末に孫が遊びに来るのですが、何か人形劇をやっていますか」という問い合わせも多い劇場なんです。開設当時、劇を見に来た子どもたちが親や祖父母になり、3世代で観劇に来る姿もあります。

客席と近い距離

 人形劇団プークが結成されたのは1929年。戦時中の40年、治安維持法違反容疑で全劇団員が検挙、強制解散されました。戦後活動を再開し、48年にこの地に稽古場をつくりました。プーク人形劇場は、劇団員の積み立てや市民のカンパを基にした融資と、市川房枝さんなど多くの方々の協力により、都の建設特別許可が出て、ようやく建てられました。

 ヨーロッパ各国の人形劇場を視察して設計された劇場は地下3階地上5階建て。「せり」や、糸操り用のブリッジを備え、あらゆるスタイルの人形劇に対応しています。

 定員は106人。新宿駅からもほど近く、舞台と客席の距離も近いので交流しやすい。寄席、コンサート、お笑いにも利用され、地域の文化を50年間支えてきました。地元の町内会長さんからも「代々木と言えばプーク。掘っ立て小屋のときから稽古をのぞき見してたよ」と、コロナ禍の中、励ましてもらいました。

共感の芸術大切

 私が学生の時に見た、プーク上演の「スカートをはいたネロ」は衝撃でした。暗い舞台全体を横切る、白いスポンジでできた、付け根から先だけの女王の巨大な生足。その足をもむ、舞台底から突き出した生身の人間の何本もの手、という始まりで、圧政を象徴していました。人形劇でしかできない表現です。

 人形劇は子ども向け作品が多いと思われがちですが、日本は元来、文楽や人形浄瑠璃などおとなも楽しめる人形劇が盛んな国です。

 人形が語るセリフは、時に人間の言葉よりも深く響くことがあります。人形には触れたくなるかわいさがあるし、無垢(むく)です。だから人間以上に感情移入しやすい。観客は、表情の変わらない人形の動きを見て、笑ったな、悩んでるな、と想像します。人形劇は、観客の想像力があって初めて成り立つ演劇です。

 コロナで分断が進む今、他者の気持ちを想像し理解・共感することができる芸術鑑賞の機会が、一層大切になっていると思います。

行政への要請も

 プーク人形劇場は、地域交流や国際交流の拠点の役割も果たしています。2018年には新宿・高島屋の屋外会場で、国際芸術祭「A-hoj!新宿」を開催。町内会や百貨店と協力して、チェコやイタリアの人形劇団も招き、3日間で1万人以上が集まりました。

 昨年4月、緊急事態宣言で休業を余儀なくされました。3カ月間観客のいない劇場は、50年の歴史の中でも、初めての事でした。交流のある海外の劇場の感染対策も参考に、徹底した感染防止ガイドラインを作り、7月に再開しました。

 行政への要請も同時に行ってきました。文化庁の継続支援事業で感染対策費が助成されたのは前進ですが、額は全く足りません。

 ドイツでは文化大臣がいち早く、芸術は市民の生命維持装置と発言し、芸術家への補償をしています。一方、長い間民間が努力して文化をつくってきた日本では、舞台関係者への支援が遅れました。しかし日本でも2012年、ようやく劇場法が制定され、劇場が社会基盤を支える文化施設と認められました。舞台芸術は不要不急ではないと私は考えています。

 生命の維持装置としての舞台芸術を大切にするためにも、地域と共にある劇場であり続けたいと思います。地域のさまざまな人と一緒に取り組んで、劇場に来たことのない人にも、舞台芸術に触れてもらうことが必要です。いま地域の人と協力して、2度目の芸術祭を準備中です。各地の伝統的なお祭りのような、人形ならではの芸術祭をつくりたいですね。

 

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「自由で平和な社会を」治維法国賠同盟が国会請願

2021513

 治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟(増本一彦会長)は12日、治安維持法による弾圧犠牲者への国家賠償法の制定を求めて国会議員への請願行動に取り組みました。行動は48回目で、首都圏を中心に全国から64人が参加しました。

 国会内で開かれた集会で増本会長は「治安維持法犠牲者に対する国の謝罪と賠償を求め、私たちは全国各地で頑張ってきた。この運動をさらに前進させるために、これからも全力を尽くそう」と呼びかけました。

 日常生活を描いた絵が「共産主義を啓発した」として逮捕・勾留された「生活図画事件」の弾圧被害者、菱谷良一さん(99)=北海道=がビデオメッセージを寄せました。菱谷さんは「自由で平和な社会をつくってほしい。私も生きている限り、歴史の証言者として伝えていきたい」と述べました。

 田中幹夫事務局長は、約9万8000人の請願署名が集まったと報告。参加者は19の班に分かれて議員を訪ね、請願への賛同と紹介議員となることを要請しました。

 集会には日本共産党の清水忠史衆院議員と立憲民主党の山花郁夫、近藤昭一両衆院議員が参加。清水氏は「自民党改憲案の阻止に全力を尽くしたい」と決意を述べました。

 

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国民投票法改定 姑息な策動批判 治維法国賠同盟

202154

 治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟(増本一彦・中央本部会長)は1日、憲法改定国民投票法改定案採択に反対する声明を出しました。

 声明は「国民投票法の改定を呼び水にして、憲法改定を急ごうという自民・公明・維新など改憲勢力の姑息(こそく)極まりない改憲策動」であることを指摘。「改憲のためのいかなる策動にも、こぞって反対して、平和と民主主義の前進のために奮闘されることを願います」としています。

 

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2021焦点・論点 施行74年 憲法学者インタビュー 福島県立医科大学教授(憲法、社会保障法) 藤野美都子さん

202153

憲法の精神からコロナ対策を

 日本国憲法の精神から、政府の新型コロナ対策を問う必要があります。

 感染しても適切な医療が受けられない、あるいは予定していた手術を延期せざるを得ないなどの状況が生じています。憲法25条の生存権、13条の幸福追求権で保障されている健康への権利、医療を受ける権利が脅かされる事態です。

 昨年春の1回目の緊急事態宣言からこの1年、政府が何をしてきたのかが問われます。政府はこの間、「Go To トラベル」などに大金をつぎ込み、東京五輪開催へと突き進んできました。聖火リレーは、原発事故からの復興もままならない福島から出発しました。一方、医療体制の充実や、感染を封じ込める対策はきちんととられてきませんでした。命と五輪とどちらが大切なのでしょうか。

 政府の対応の間違いが、感染の第3波、第4波を招いてしまったと言わざるを得ません。

脆弱さ浮き彫り

 コロナ禍は、日本の医療体制の脆弱(ぜいじゃく)さを明らかにしました。

 少ない医療スタッフでベッドの稼働率をギリギリまで上げなければ病院経営が成り立たないなど、感染拡大前から、多くの問題がありました。2012年に成立した新型インフルエンザ等対策特別措置法が求めていた、感染症の拡大に備えた常時からの体制整備が進んでいなかったことも問題です。

 社会保障制度の弱さは、普段から弱い立場に置かれている人たちに被害が集中している現状に表れています。

 食料品配布などの緊急支援が各地で展開されています。憲法の要請にそって“健康で文化的な最低限度の生活”を支える社会保障の仕組みを普段から国が整えてこなかったことが問題です。

 その点で、セーフティーネットである生活保護制度をいつでも安心して使える制度にしていくことも重要です。

 日本は生活保護の捕捉率が2割程度で、その利用は極めて低い状況です。生活保護に対しネガティブな印象があることや、親族に照会されることなどを恐れ申請自体のハードルが高くなっています。支給を抑制するような行政の姿勢を改め、困ったときは「生活保護があるから大丈夫」と思えるような社会に変えていくことが必要です。

根拠の説明なし

 緊急事態宣言下で、移動の自由や営業の自由などが制限されています。感染抑止のためにやむを得ませんが、憲法で保障される権利を制限する以上はきちんと科学的根拠を示し丁寧に説明すべきです。

 現状は、そうした根拠のある説明が行われていません。休業を求める業種の根拠は何か、なぜ五輪選手は待機期間もなく入国できるのか。国民が納得できる説明がなければ政府の感染症対策に理解は得られません。

 いま国会では憲法審査会を動かし、憲法改正の議論を進めようとしています。

 東日本大震災のときもそうでしたが、災害や感染症への対応のためにと緊急事態条項の創設を求める議論があります。しかし、今ある法律の枠内でできる対策をきちんと取らずに憲法を変えようというのは本末転倒です。戦前の日本では緊急勅令の規定によって治安維持法などが「改悪」されました。内閣総理大臣や内閣に大きな権限を認めるのは危険です。

 コロナ禍で困難な状況にある人々のために、憲法の要請に応え、一人ひとりの命、健康、権利を守る対策、社会保障制度の充実こそ求められていると思います。

 ふじの・みつこ 憲法をいかす福島県民の会呼びかけ人。共著に『日本国憲法の力』、『憲法理論の再構築』など。

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4月

 

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はたやま氏 国民監視の法案許すな 北海道 演習場“真ん中”住民と懇談

2021429

 「新たな治安維持法とも言うべき危険な法律」(「琉球新報」3月27日付)と批判が上がる「重要土地等調査規制法案」。日本共産党の、はたやま和也前衆院議員は27日、国民監視と人権侵害が進みかねないと、北海道別海町矢臼別演習場内の“ど真ん中”にある「ピース矢臼別」を訪れました。石川明美衆院道7区候補が同行しました。

 法案は3月26日に閣議決定し、政府が米軍や自衛隊の「重要施設」周囲1キロと国境離島を「注視区域」「特別注視区域」に指定、「重要施設」の機能を「阻害する」「明らかなおそれ」があれば、政府は土地・建物の利用中止を勧告・命令できます。具体的中身は法案に書かず、私権制限は時の政府のさじ加減次第となります。

 政府が農場を次々買い取り拡張した矢臼別演習場。故川瀬氾二氏が平和に生きる権利を掲げて売らなかった土地を、現在は一般社団法人「ピース矢臼別」が保有しています。

 1989年から住み続けている浦舟三郎氏(83)は「安保法制=戦争法がある中、このような法案が出てきて油断できない」。「夜間行進訓練の隊員とバッタリ会った」と4年前に移住した二部黎氏(77)も「居住権がいつ脅かされるかわからない」と言います。

 はたやま氏は「平和運動を監視し、軍事優先の国は許されない。廃案へ声を上げましょう」と応じました。

 

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市民と野党の共闘発展 治維法国賠同盟が常任理事会

2021428

 治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟は26日、中央常任理事会をオンラインで開催しました。増本一彦会長は菅義偉政権の危険性を訴え、「来たるべき総選挙で『市民と野党の共同』を発展させ、野党連合政権樹立めざして奮闘しよう」と呼びかけました。

 増本会長は開会あいさつで、菅首相が発足早々に日本学術会議が推薦した会員候補6人の任命を拒否したことは、戦前戦中の治安維持法下で学問や表現の自由などが侵害された歴史と重なる暴挙だと批判。田中幹夫事務局長が「コロナ禍に打ち勝ち総選挙勝利のための同盟躍進期間」を提案した後、討論に入りました。

 兵庫県では、毎月10人以上の会員拡大を続け、自主目標にしていた会員1050人を達成。青森県五所川原市議会が治安維持法問題の意見書を採択するなど、コロナ禍の中でも活動が前進している経験が報告されました。

 会議では、5月12日に予定されている国会請願要請行動の成功にむけた取り組みの強化を呼びかけました。

 

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任官拒否事件に学ぶ『司法はこれでいいのか』 出版記念集会

2021425

 『司法はこれでいいのか―裁判官任官拒否・修習生罷免から50年―』出版記念集会が24日、東京都千代田区で開かれました。同書は50年前にあった裁判官任官拒否・修習生罷免事件について当事者らがまとめたものです。

 法律家は、司法試験合格後に司法修習生として学んだあと、弁護士・裁判官・検察官になります。1971年4月に裁判官を希望していた修習生のうち青年法律家協会(青法協)の7人が任官を拒否されました。

 弁護士の阪口徳雄さんは当時、代表して終了式の場で任官拒否された人の発言の場を求めたところ修習生を罷免されました。「私が2年で再採用されたのは全国に支援が広がったことと、最高裁判所裁判官国民審査で、500万人が裁判官を信任しなかったことが力になった」と振りかえりました。

 パネル討論「司法の現状把握と希望への道筋」では、早稲田大学法学学術院の岡田正則教授が戦前、戦後と日本の司法は権力にゆがめられて「行政権に対して従属的な体質になっている」と指摘。明治大学政治経済学部の西川伸一教授は当時、青法協を弾圧した最高裁の石田和外長官について「戦前、治安維持法を推進してきた思想判事だった」と述べました。

 伊藤真弁護士は、全国25カ所で安保法制違憲訴訟に取り組んでいることを紹介。そのうち11の裁判で憲法判断を避けており、「官僚だけでなく裁判官にも忖度(そんたく)がまん延している」と強調しました。

 全体を受けて青法協弁護士学者合同部会議長の上野格さんは「たたかいを引き継いで、司法の民主化を追求したい」と語りました。

 

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デジタル法案 監視国家と治安体制 経済研究者 友寄英隆さん(上)

 

便利さに隠れた危険

2021423

 デジタル法案の危険性について、経済研究者の友寄英隆さんに寄稿をお願いしました。

 菅義偉内閣のデジタル関連法案は、これまでの国会での質疑を通じて、その危険な性格がしだいに明らかになってきました。菅内閣のデジタル改革は、安倍晋三前内閣のときから強化されてきた治安体制を情報基盤の面から支えるものでもあり、その危険性を決して軽視してはなりません。

 菅内閣のデジタル改革の危険性は、デジタル技術が原理的に持っている特徴(情報処理の集積・流通・検索の容易さ、不可視性など)を背景としています。それは、デジタル技術の利便性を前提としているために、その危険性が隠されてしまうのです。

 例えば、今では多くの人がスマホを使って、移動中も日常的に連絡を取り合っています。また、スマホにはデジタルカメラも搭載されているので、フィルムを入れて、暗室で現像しなくても、いとも簡単に写真や動画を撮って保存できるようになりました。

 スマートフォン、インターネット、コンピューター、メール、デジタルカメラ、デジタルテレビなどなど、すべてデジタル化の最先端の技術の応用によるものです。こうしたデジタル技術の発展は、人間社会のさまざまな分野での利便性を高めることになりました。

情報処理が容易

 しかし、情報のデジタル化は、アナログ時代にはなかった新たな危険性を拡大しています。

 デジタル化の情報処理は、コンピューターを利用して、きわめて簡単に膨大な情報の集中・集積、流通、検索を行うことができます。スマホの個人情報は、ネットを通じてIT(情報技術)大企業に吸い上げられてビッグデータとして集積しています。地方自治体の個人データを政府に集中したり、何千何百万の個人情報を小さなUSBメモリーにコピーしてかばんに入れて持ち運んだり、パソコンでワンクリックして必要なデータを瞬時に検索して引き出すことができます。

 デジタル化による利便性は、同時に、その情報処理の管理の方法を少しでも誤ると、きわめて危険なものになります。国家が住民データをもとに個人の活動を監視したり、数百万人の個人情報が簡単に大企業に流出したりします。

不可視の「空間」

 コンピューターでは、徹底的にデジタル化された情報が電子的に高速処理されるために、その過程は、人間にはまったく不可視的な(目に見えない)ものとなります。

 サイバー空間(デジタル情報の世界)は、コンピューターが日常的な情報処理の結果として生成・収集・累積するビッグデータがネットワークを通じてグローバルに拡大した仮想的な空間です。つまり、サイバー空間は、情報処理の「不可視性」をグローバルに拡大した世界であり、そのなかで個人情報がどのように処理されるのかも、まったく「不可視」になります。

 菅内閣の「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」(2020年12月)では、「基本原則」として、「ベース・レジストリ」による「データ共通基盤の構築」を強調しています。「ベース・レジストリ」とは、「人、法人、土地、建物、資格等の社会の基本データ」、「社会の基盤となるデータベース」のことです。菅内閣が決定した「デジタル・ガバメント実行計画」(20年12月)では、「デジタル社会においては行政機関が最大のデータ保有者であり行政自身が国全体の最大のプラットフォーム」になる、と強調しています。

 

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デジタル法案 監視国家と治安体制 経済研究者 友寄英隆さん(下)

 

治安強化へ ひそむ策略

2021424

 菅義偉内閣の「デジタル庁設置法案」では、「第6条 デジタル庁の長は、内閣総理大臣とする」となっています。

 つまり、デジタル庁は、単に一つの「庁」が増えるということではないのです。内閣総理大臣のもとにあらゆる情報の指揮権を集中して、国家が「最大のプラットフォーム」になるということです。行政のあり方、国家の基本的な構造にもかかわる問題です。

 行政のデジタル化の法制化によって住民のマイナンバーやプロファイル(人物記録・履歴)などの個人情報が集積・流通する過程は、デジタル技術の「不可視性」のために、ブラックボックス化します。予算の計上や執行などの指揮命令権を持つデジタル庁の指揮のもとに国家に個人情報が集中すると、知らない間に国民の民主的な権利が踏みにじられ、自由を抑制する監視国家になる危険があります。

国家による監視

 菅内閣の「デジタル社会形成基本法案」が示す基本理念には、「個人情報保護」の文言がありません。プライバシー権などの人権保障をないがしろにしたまま、個人データの利活用を推進する内容です。

 日本の個人情報保護の現行法は、諸外国と比べても、きわめて不十分です。むしろ抜本的な改善・強化こそが求められます。例えば、個人情報保護委員会の権限を強化して、行政機関や警察機構などに対して厳しい監視を行えるようにすべきです。

 現行の個人情報保護法では、民間事業者、行政機関、独立行政法人のそれぞれ別の3本の法律にして、個人情報を分散管理して、なるべく集約できないようにして保護を図ってきました。しかし、菅内閣は3法を統合して、関係機関が個人情報を容易に共有できるようにします。その結果、所得や資産、医療、教育など膨大なデータが政府に集中し、国家による個人情報の管理が進むことになります。

 菅内閣は、デジタル改革の目標を「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」としていますが、これは、「監視の網の目から誰一人取り逃さない」ということでもあるのです。

 日本では、安倍晋三前政権のもとで、反動的な治安立法が次々と強行されてきました。例えば、2013年の特定秘密保護法、15年の憲法違反の安保法制(戦争法)、17年の組織犯罪処罰法改正(共謀罪:現代版の治安維持法)などなど、いずれも国民の強い反対を押し切って成立しました。

 菅内閣のデジタル改革は、デジタル技術そのもののもつ危険性と「新自由主義」という反民主主義的な政治・行政が結びつくことによって、こうした「治安体制」を情報体制の面から支える「監視国家」を実現するものです。すでに、警察などへの「捜査照会」の名目で利用される懸念が指摘されています。

 菅内閣のデジタル関連法案は、それ自体は治安立法ではありません。しかし、個人情報を国家が一元管理して、マイナンバー機能と一体化すれば、「治安体制」にとって不可欠な「国民監視」の技術的基盤となります。

コロナ禍に乗じ

 コロナ禍を利用した新たな「治安体制」強化の策略にも警戒が必要です。

 すでに、昨年4月、最初のコロナ対策の「緊急事態宣言」を発令するさいの国会での質疑の中で、安倍首相(当時)は、「今般の新型ウイルス感染症への対応を踏まえつつ」、「(憲法改正において緊急事態条項を検討することは)極めて重く大切な課題」だ(20年4月7日、衆院議院運営委員会)と強調しました。

 こうしたコロナ対策に乗じた「治安体制」強化の新たな策動をも念頭において、菅内閣のデジタル改革の危険性をしっかりとらえておくことが必要です。

 

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主張 土地調査規制法案 国民監視と人権侵害許されぬ

202142

 菅義偉政権は、米軍や自衛隊の基地周辺などの土地・建物の所有者らを調査し、その利用を規制する「重要土地等調査規制法案」を閣議決定し、国会に提出しています。法案は、政府に基地周辺住民の個人情報を収集する権限を与え、思想調査も可能にしかねません。米軍基地が集中する沖縄では「新たな治安維持法と言うべき危険な法律だ」(琉球新報3月27日付)と厳しい批判が上がっています。

反対運動抑え込み

 法案は、米軍や自衛隊の基地、海上保安庁の施設、原子力発電所などの「重要施設」と国境にある離島について、それぞれが果たしている機能が阻害される事態を防ぐのが目的とされています。

 法案によると、内閣総理大臣は、「重要施設」の周囲おおむね1キロと国境の離島を「注視区域」、これらのうち司令部を置く基地など特に重要とみなすものを「特別注視区域」に指定します。その上で、これら区域内にある土地・建物の所有者や賃借人などの情報を集め、必要なら利用状況に関する報告を求めることもできます。

 政府は、調査事項は「氏名、住所、国籍等」と「利用状況」、調査方法は「現地・現況調査」、「不動産登記簿や住民基本台帳等の公簿収集」などと説明していますが、それらに限られる保証はありません。思想信条や所属団体、職歴、家族・交友関係、海外渡航歴などが調べられ、憲法が保障するプライバシー権や思想・良心の自由が侵害される恐れがあります。

 法案は「個人情報の保護に十分配慮」するとしていますが、努力規定にすぎず、恣意(しい)的運用に対する歯止めにはなりません。

 調査の実施機関についても限定がなく、公安調査庁や警察、自衛隊が行うことも可能です。基地や原発に反対する住民の監視、反対運動の抑え込みにつながる危険もあります。前出の琉球新報は「国に調査されるかもしれないというだけで、政府への批判的な言動を萎縮させ、施設から起きる騒音や環境汚染に抗議することをためらう空気を生むだろう」と指摘しています。

 調査の結果、「重要施設」や国境の離島の「機能を阻害する行為」やその「明らかなおそれ」がある場合、内閣総理大臣は利用中止の勧告・命令を行うことができます。命令に応じなければ2年以下の懲役、200万円以下の罰金が科されます。「特別注視区域」では、一定面積以上の売買について、氏名、住所、国籍、利用目的などの事前の届け出が義務付けられます。個人の財産権、経済活動の制約にもなります。

徹底審議で廃案に

 自民党はこれまで、自衛隊や米軍の基地周辺の土地が外国資本に買い占められると、安全保障上問題があると主張してきました。

 しかし、防衛省は全国約650の「防衛施設」に隣接する土地を調査した結果、「現時点で、防衛施設周辺の土地の所有によって自衛隊の運用等に支障が起きているということは確認をされていない」(2020年2月25日、衆院予算委員会第8分科会、山本ともひろ防衛副大臣=当時)としていました。法案の必要性を裏付ける根拠はありません。

 国民監視を強化し、基本的人権を踏みにじる法案は、徹底審議で廃案にする必要があります。

 

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2021国際女性デー 声上げれば届く 各地で意気高く

202139

@北海道

 「声を上げれば必ず届く」―2021国際女性デー全道集会実行委員会は8日、「女性のリレートーク」で宣伝を繰り広げました。

 時折雪が舞う札幌市の中心街で、60人の女性らが「コロナ禍 ひとりで悩まずつながろう 世界の女性と手をつなぎ、平和・ジェンダー平等へ」の横断幕やプラカード、ミモザの花を手に、次々と訴えました。

 「子育て緊急事態アクション」メンバーで小学2年と3歳の子を持つ田中小夏さんは、「小学校休業等対応助成金」制度が個人の申請で受給できる制度見直し方針を受け、「子育て緊急事態宣言(1日)で全国の子育て中の親たちが現状を告発したことで世論が動きました。私たちが声を上げれば必ず届く」と紹介しました。「今後は、休めなかった労働者にも不公平のないよう行動していきたい」と語っていました。

 道医労連の鈴木緑委員長は、法律で禁止されている「日雇い看護師派遣」を容認する菅義偉政権を強く批判。「女性の多い看護では、妊娠中の看護師が夜勤に入り、出血など母子の命が脅かされる現場も多い」と告発し「技術が必要な専門職を安易に派遣することは事故にもつながり、安上がりに使い捨てするやり方では国民の命は守れません。反対の声を一緒に上げましょう」と呼びかけました。日本共産党から真下紀子道議が参加しました。

@岐阜

 2021年国際女性デーが8日昼、岐阜市の名鉄岐阜駅前で取り組まれ、50人の女性たちがミモザの花を持ち、「ジェンダー平等の社会を実現しよう」と声を上げました。

 参加者は「多様な生き方を認める社会に」「選択的夫婦別姓制度に○を」と書いたパネルや、「PCR検査増やして!」「生理用品無料に」などコロナ対策の要求プラカードを一斉に掲げました。

 リレートークで6人が発言。治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟県本部の代表は「岐阜は保守王国。男性中心で遅れています。女性よ自ら立ち上がろう」と呼びかけました。岐阜県商工団体連合会婦人部の代表は「明治時代の家父長制度の遺物を押し付けた、事業専従者の働き分を経費として認めない所得税法56条を廃止しよう」、退職女性教職員の会の代表は「女性が光り輝く社会めざし力を合わせよう」と訴え。県保険医協会、“人間と性”教育文化センター、新日本婦人の会県本部の代表が続きました。

 通行人の女性がスマホで写真を撮り、車から男性が手を振るなど注目を集めました。

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どうみるデジタル法案 元行政機関等個人情報保護法制研究会の委員 三宅弘弁護士に聞く(上)

202138

監視社会を加速させる

 「官民のデジタル化をダイナミックに進めます」と菅義偉政権が鳴り物入りで2月9日に閣議決定したデジタル関連法案。利便性を宣伝して個人データの利活用を推進する法案ですが、監視社会を加速させる危険はないのか。法制定の際に総務省の行政機関等個人情報保護法制研究会の委員だった三宅弘弁護士に聞きました。(伊藤紀夫)

 「改革の象徴」と位置付けるデジタル庁設置法案は、国の情報システム、地方共通のデジタル基盤、マイナンバー、個人データの利活用を強力に推進するとし、その長である首相が政府のみならず地方公共団体、民間部門を含めて情報統制を図るものとなっています。

本人に同意なし

 今回の関連法案で特に重要なのは、個人情報保護法の改定です。個人情報保護法の体系は、基本理念と民間部門を規定する個人情報保護法、行政機関、独立行政法人等の個人情報保護法の3法と地方自治体の条例から成り立っています。こうした分散管理は、それぞれの部門が持っているデータを勝手にやりとりできないようにして個人情報を保護するための仕組みです。

 今回の法案では、行政機関と独立行政法人の個人情報保護法は廃止し、個人情報保護法に一本化します。分散管理を集中管理に変え、本人の同意なしに個人データを利活用しやすくしようとするものです。

 昨年成立したスーパーシティー法(改定国家戦略特区法)は、企業、自治体、政府から大量の個人情報を「データ連携基盤整備事業」に集めて民間企業にゆだね、自動運転など生活全般にわたる各種サービスを提供する「未来都市」づくりを推進するものですが、今回の法案はその全国版ともいえます。政府や自治体、民間企業が多分野の個人情報をひも付けして利用できるようになれば、個人情報の侵害・漏えいが深刻化するでしょう。

警察が無制限に

 個人情報保護法23条は「第三者提供の制限」を規定していますが、その例外として「法令に基づく場合」があり、警察は刑事訴訟法197条の捜査照会で個人データを入手できます。犯罪捜査でコンビニの監視カメラのデータが入手できるのも、この規定が根拠となっています。

 行政機関個人情報保護法は行政機関が保有する個人データの「利用及び提供の制限」を定めていますが、「相当な理由」や「特別な理由」があるものは他の行政機関に個人情報を提供できることになっています。

 この規定は今回の法案にそのまま残っており、本人の同意なしに捜査を理由に個人データが警察に無制限に流れる危険があります。

 コロナ禍で10万円一律給付が迅速に進まなかったことをデジタル化の遅れのせいにするなど、電子政府化に対する以前からの怠りを隠して、便利さを強調して一気呵成(かせい)にデジタル化による個人情報の利活用を進めようというのが、大きな問題です。(つづく)

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どうみるデジタル法案 元行政機関等個人情報保護法制研究会の委員 三宅弘弁護士に聞く(下)

202139

権力監視に強い権限を

 人は監視されていると感じると、自由に行動し、表現することもできなくなります。個人情報の保護は、知られたくないプライバシーを守るだけではありません。情報を知られることで弱みを握られ、表現の自由を奪われてしまうこともあります。

表現の自由侵す

 事実、加計学園問題で「総理のご意向」が問題になったとき、警察庁警備局長も務めた杉田和博官房副長官が前川喜平元文部科学省事務次官を首相官邸に呼び出し、特定の個人情報を示して脅し、黙らせようとしていました。

 憲法13条に基づき保障されているプライバシー権は民主主義の基盤で、表現の自由をも守る前提条件になっているのです。

 秘密保護法や共謀罪法ができ、監視カメラや顔認証技術と結びついて監視社会化が進む中で、今回の法案が出てきた点を警戒しなければなりません。

 デジタル化で個人情報を集約することによる便利さだけに走れば、プライバシー保護と表現の自由という民主主義国家の基盤を揺るがしかねません。デジタル化が進む中国のように四六時中、市民が監視される社会、戦前の治安維持法下の日本のような「壁に耳あり障子に目あり」の国にしていいのかが、問われています。

 この点で大事なのは自己情報をコントロールする権利です。個人情報を出す、出さないを本人が決定し、それを自分がチェックできる権利です。

 そのために必要なのが、権力監視の仕組みの強化です。その点で、個人情報保護委員会の権限をどこまで強くできるかが問われています。

 個人情報保護法の一本化で、これまで民間部門だけを監督してきた個人情報保護委員会が行政機関、独立行政法人もチェックすることになります。

 民間の事業者には立ち入り調査をして個人データの帳簿のチェックもできますが、行政機関に対しては曖昧で、資料提出要求、実地調査、指導・助言・勧告だけでは、権限が弱すぎます。しかも同委員会の委員は9人、そのうち個人情報保護法の専門家は1人で、体制としても極めて不十分です。

警察をチェック

 ヨーロッパやカナダには、行政機関や警察をチェックする強い権限をもった機関があります。

 たとえば、ドイツでは憲法改定を求める右翼過激派をチェックするために憲法擁護庁と連邦警察、州警察がそれぞれに個人情報データベースをもっています。そこにデータ保護監察官が2年に1回立ち入り調査でデータベースをチェックし、“この人は単なる市民運動家であって右翼過激派ではないから削除せよ”というようなことをやっています。

 ヨーロッパ諸国では民間部門は二の次で、行政機関をどうチェックするのかということが基本になっています。

 行政部門に立ち入り検査してデータベースの中をチェックできるような強い権限をもつようにしないと本物ではありません。ドイツに視察に行ったとき、連邦憲法裁判所の裁判官から「日本は何て野蛮な国」と言われました。日本はそこをもっと強化しなければならないと思います。

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2021国際女性デー ジェンダー平等目指そう 戦前と比べ現在を分析 和歌山

202138

 国際女性デー和歌山市集会(同実行委員会と「ぽぽんた文庫」主催)が6日、和歌山市で開かれました。

 第1部「治安維持法と現在・当時の女性のたたかいにも触れて」で講演した治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟和歌山県本部の鶴田至弘(よしひろ)会長は、「現在の状況が治安維持法の時代と極めて似てきた」と述べ、自衛隊の軍備拡張と侵略性を帯びてきたこと、秘密保護法や共謀罪法など民主勢力を取り締まる法律が大きな反対運動を無視して成立されたことなど取り上げ、「今こそ民主主義を守るためにがんばろう」とよびかけました。

 第2部「平和紙芝居リレー」では、紙芝居・絵本作家の故まついのりこ氏をしのぶ話とともに、子どもによる紙芝居2作、紙芝居愛好家による4作が上演されました。紙芝居独特の温かい雰囲気の中で参加者らは「平和大好き、戦争絶対ダメ」の思いを確認し合いました。

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京都・山宣墓前祭 「政権交代へ力尽くす」参加者が決意

202136

 戦前、反戦・平和と治安維持法反対を貫き、暗殺された代議士、山本宣治(山宣)の命日となる5日、出身地である京都府宇治市の善法(ぜんぽう)墓地で、第92回山宣墓前祭が行われ、雨の中、約200人が参加しました。

 生物学者・性科学者で労働運動などを支援していた山宣は、1928年第1回普通選挙で労農党から当選。議会で治安維持法改悪に反対を貫く中、29年3月5日、39歳の若さで右翼に刺殺されました。

 本庄豊実行委員長は「山宣は家父長制の時代にジェンダー平等を主張した先駆者であり、議会内外で治安維持法改悪反対の共同をつくった。今年の総選挙では、山宣のように市民的共同の可能性を信じ歩んでいきたい」とあいさつしました。

 立憲民主党国会対策委員会(安住淳委員長ら8人の連名)が「いまこそ、野党と市民が結集し、政権交代を」とのメッセージを寄せました。

 各党・団体が追悼の言葉をささげました。日本共産党京都府委員会の地坂拓晃書記長(衆院京都2区候補)は、山宣のたたかいを振り返り「総選挙で、すべての野党が力を合わせて新しい政権をつくるため、全力を尽くしたい」と決意を述べました。

 山本家を代表し、山宣の孫の山本勇治さんがあいさつしました。

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文芸時評 木村朗子 大震災10年 原発議論追う

2021222

 東日本大震災から10年の節目を目前にした2月13日、福島県、宮城県沖を震源とするマグニチュード7・3の大地震が起こった。世界的なコロナ禍とも相まって復興五輪という名目が急速に褪(さ)めていくようである。2020年10月には、宮城県の海岸線沿いに位置する女川原発の再稼働を県知事と県議会が決め、いよいよ被災地たる東北地方で原発再稼働が実現へと向かっていた。その矢先の大地震である。この10年、原発についてどれほどの議論があったか。

 日高勝之『「反原発」のメディア・言説史―3・11以後の変容』(岩波書店)は、「反原発」という視座の下に、主流新聞メディア、ジャーナリスト、人文社会学系知識人、ドキュメンタリー映画、劇映画の表現を追った労作である。

 また映画研究者のミツヨ・ワダ・マルシアーノが震災後の原発をめぐる映像作品、アート作品について論じた評論集を出した。タイトルはその名も『NO NUKES』(名古屋大学出版会)。原発について、どれほどの非があったかを明らかにする。

Zoom演劇の可能性を模索し

 文芸誌が震災後10年の特集を組むのは3月発売号の来月だろう。だがそれに先駆けて『群像』には、2020年の夏、福島を取材して書かれた古川日出男「国家・ゼロエフ・浄土」の前編が載る。また「消しゴム式 チェルフィッチュ群像公演」と銘打った岡田利規の作品は、作家自身の「解説」によると「岩手県陸前高田市の復興のための嵩(かさ)上げ工事」を見たときの「衝撃というかなんともいえない違和感というか、巨大なクエスチョンマーク、それが発端となってつくられ」たものだという。

 本文にQRコードが入れ込まれ、実際のZoomによる演劇も楽しむことができるようになっている。本作は、そのZoom演劇の文字化だが、コロナ禍の岡田利規の試みは、KAAT(神奈川芸術劇場)で上演予定だった「挫波/敦賀」が中止に追い込まれた後の配信にしろ、演劇の可能性を十全に模索したものとして注目に値する。

 コロナ禍においては「対面」による「通常」の芝居こそが至上だとする声もあったが、結果として、そのような制約の中で何ができるかということを模索した作り手の存在が光った。

 ところで、津波の被災地を12メートル嵩上げするために山をつぶして土を運ぶ陸前高田の復興事業について問うた作品としては、アートユニットの小森はるか・瀬尾夏美による映像作品「波のした、土のうえ」(2014年)があり、岡田利規の問題意識は、それに呼応する。同じテーマについての異なるアプローチを見比べる意味でも興味深い。

 岡田利規しかり、震災後の演劇人の反応の速さには特筆すべきものがあったが、演劇誌『悲劇喜劇』は「震災から十年 呼び返される言葉たち」という特集を組んで、震災を受けて芝居をつくってきた演劇人の言葉を集めている。

 ちなみに特集とは別に収録されている石原燃(ねん)「花樟(かしょう)の女」が、植民地台湾を経験した女性作家・真杉静枝を描いて読み応えがあった。

没後70年記念の宮本百合子特集

 『文学界』は李琴峰(り・ことみ)の大作「彼岸花が咲く島」が光る。漢字語を廃して再構成した日本語を話す女主人公が、かつての日本語が生きていた頃に住み着いた人々から成る島にたどり着く、というSF的設定だ。島では争いばかりの歴史を築いてきた男たちを廃して、女性ノロ(祭司)たちが統治している。しかし、それはユートピアとは言えないところが読みどころだろう。

 『すばる』では和田忠彦『タブッキをめぐる九つの断章』を織り込んで構成した、水原涼「焚火(たきび)」が印象を残す。本作を読むと、和田の本が読みたくてたまらなくなるのだから大成功だ。

 『民主文学』は、没後70年記念の宮本百合子特集がなんといっても重要だ。宮本百合子が治安維持法の下に拘禁され、執筆禁止措置を受けていたことが、今になって、いとうせいこう『小説禁止令に賛同する』、桐野夏生『日没』など、小説の主題となってもいるからだ。

 『新潮』は、52人によるコロナ禍日記リレー「2020コロナ禍」を特集し、時代を刻んだ。(きむら・さえこ 津田塾大学教授)

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“生き方引き継ごう”北海道 野呂栄太郎碑前祭

2021221

 戦前の日本共産党の指導者で理論家の野呂栄太郎没後87年碑前祭(党南空知地区委員会、治安維持法国賠同盟南空知支部共催)が19日、出身地の北海道長沼町で開かれました。名著『日本資本主義発達史』や、弾圧に屈せず果敢にたたかった功績、生き方を引き継ごうと、参列者が碑に花を手向けました。

 宮田汎国賠同盟道本部会長は「5年前、全国で初めて市民と野党の統一候補を擁した衆院道5区補選が、野呂が学者や研究者と共同して日本資本主義を解明した当時の“統一戦線”と重なります。総選挙は野呂の遺志を継ぎ、頑張りましょう」と呼びかけました。

 長沼町の間嶋勉教育長は「学ぶことを諦めなかった野呂の生き方を見本にしたい。平和と豊さが先人の尊い犠牲と労苦の上に築かれたことを忘れてはならない」と語りました。

 “野呂は利口で温かいという以外に人格的に非常に重みのある尊敬すべき人だった。資本主義が発達したおごりは、ヒューマニズムに欠けていること”と中学の同級生、真鍋真次郎さんの言葉を紹介した日本共産党の、はたやま和也前衆院議員。国民の苦難に背く冷酷な菅政権を批判、「市民と野党の共闘で必ず政権交代を果たしたい」と表明しました。

 岩見沢、夕張、美唄3市長と長沼、栗山、南幌3町長のメッセージを紹介しました。札幌市平岸霊園では、墓前祭が行われました。

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きょうの潮流

2021211

 纐纈弥三(こうけつ・やぞう)。知る人ぞ知るその名は、この国の暗黒史に深く刻まれています。戦前の警視庁・特高課長として、日本共産党の弾圧を指揮した人物です▼内務官僚として思想弾圧の先頭に立った弥三はその後、文部官僚に転身。青年を戦争へと駆り立てます。戦後は国会議員として紀元節の復活に奔走。天皇=神の国の皇国史観にどっぷりとつかり、日本が民主化の道にふみだすなかでも戦前回帰をもくろみました▼彼の軌跡は同じ美濃地方を里とする政治学者の纐纈厚さんが記した『戦争と弾圧』に詳しい。著者は、苛烈な弾圧なくして侵略戦争も植民地支配も遂行できなかったと。さらに弥三の歩みを追うことで、現在の日本社会にある「新たな戦前」づくりにも言及しています▼戦争と表裏一体になって進められた思想弾圧。それは学問の自由が攻撃された滝川事件でも。トルストイの刑法観を語ったにすぎない京大教授の講演をあえて無政府主義と問題にしたのは、当時の治安維持法体制と密接な関係をもった人たちでした▼それは今も。菅政権による学術会議への介入問題でも特高の流れをくむ公安出身者が暗躍していました。官僚トップの杉田和博・官房副長官が任命拒否のリストをつくっていたのです▼きょうは、弥三が旗振り役となった紀元節を復活させた日。神話によってつくり上げられた神の国をよみがえらせ、歴史を逆戻りさせようとたくらむ勢力。そのふたたびの台頭を許さず、思想や学問の自由を守るための戒めの日としたい。

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きょうの潮流

202129

 最近、「明けない夜はない」という文句を時どき見聞きします。人気アイドルグループの歌にも使われています。コロナ禍の苦難を乗り越えたい強い思いを感じます▼題名が、『明けない夜はない』という本があります。著者は、戦前山形の小学校で教員となり、獄中の夫を支え、戦後は母親運動で活躍した村山ひでさんです。1969年に出版、版を重ね多くの読者を得ました▼夫は、生活綴方(つづりかた)教育の実践で知られる村山俊太郎(としたろう)。治安維持法違反で2回逮捕、検挙されました。結核で保釈されるまで2年間、獄中にいた夫を“こんな世の中がそう長く続くはずがない”と励まし続けた言葉が「明けない夜はない」でした▼終戦を迎えた時の心境をこうつづっています。「暗闇の戦争のなかで生きてきたわたしたちに、その苦しみの根元である巨大な天皇制の権力がどっとくずれ、一度に太陽がさんさんと照り輝いた」▼19世紀の米国では黒人奴隷が、「夜明け」をめざしました。カナダとの国境を越える出発地と到着地を「ミッドナイト」(真夜中)、「ドーン」(夜明け)と暗号を使って逃亡を計画。南北戦争前に約3万人の奴隷が自由に▼東日本大震災で津波に襲われ、屋上の倉庫に避難した宮城県山元町の小学校でのこと。52人の児童を前に校長先生が言いました。「今夜はここに泊まります。食べ物はありません。水もありません。とても寒くなります。でも朝までがんばろう。暖かい朝日は必ず昇るから」。夜明けは、希望そのものでした。

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森会長暴言に抗議 各団体 即刻辞任を求める

202129

治維法国賠同盟中央本部女性部

 治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟中央本部女性部(大石喜美恵女性部長)は8日、東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長の女性蔑視発言に強く抗議し、即刻辞任を求める談話を発表しました。

 「女性が自分の意見を持ち、発言することをこのように侮辱、差別するなど、女性蔑視そのものです」と批判。「オリンピック憲章」の精神を真っ向から否定する発言に世界中で大きな批判がおこっていると指摘しています。

 治安維持法の弾圧がきびしかった時代に、女性の先駆者たちは生命をかけて戦争に反対し、男女平等をかかげてたたかってきたと強調。JOCはじめ日本のスポーツ界の女性差別、ジェンダー差別の一掃を求めています。

全国人権連

 全国地域人権運動総連合(全国人権連)は6日、東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長の女性蔑視発言に抗議し、辞任を求める常任幹事会の抗議声明を発表しました。

 森氏の発言は「オリンピック憲章」に反するものであり、反省もなく、開き直りの態度を続けていると批判。同氏を擁護・弁護する発言は、女性差別を容認するものであり、「とうてい許されない」と指摘しています。

 人間の尊厳の保持、いかなる差別も許さないとするオリンピックの精神に反する見解を持つ森氏は即刻辞任すべきだと述べています。

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千代子の思想 今に通じる 千葉 出版記念し4団体が講演会

2021131

 千葉市内で28日、「時代の証言者・伊藤千代子」の出版記念講演会が密を避けて行われました。主催は治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟千葉県本部など4団体。

 戦前の治安維持法で弾圧され24歳で命を奪われた伊藤千代子が注目されています。

 小松実国賠同盟県会長があいさつで、菅政権の強権性を批判しました。

 著者の藤田廣登氏が講演。諏訪高等女学校(長野県)時代の男女平等へのめざめ、高島小学校(同)教員時代の貧しい児童への励ましなどを紹介し「最も良きヒューマニズムの継承者だ」とたたえました。また「彼女の思想は現代のジェンダー平等に通じる」「100年前の日本の国家的犯罪に決着をつけよう」と述べました。

 さいとう和子国賠同盟県女性部長・衆院南関東比例候補(千葉7区重複)は「伊藤千代子の思想、たたかいがいま求められている」と強調。過去の侵略戦争の歴史に無反省な日本政府を批判し「政治を大本から変えるために力を合わせよう」と呼びかけました。

 「伊藤千代子のたたかいが胸に迫った」「何としても政治を変えたい」などの感想が寄せられました。

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きょうの潮流

2021130

 日本学術会議への政府の人事介入で「学問の自由」が焦点になる中、戦前に弾圧を受けた一人、河上肇の名がたびたび挙がりました。マルクス主義経済学者だった河上は、言動が不穏当だとして、京都大学を追われました▼河上はまっすぐな性格でした。学生時代、足尾鉱毒被害の救援演説会で感動し、着ていた外套(がいとう)や羽織、襟巻きをその場で寄付。下宿に帰り、身に着ける以外の衣類もすべて行李(こうり)に入れて送り、関係者を驚かせたという逸話も▼経済学者として貧困の原因と解決を追究。京大教授時代、学生だった岩田義道(後の日本共産党幹部)から唯物弁証法の研究の必要を説かれ、学生と一緒に弁証法の講義を受けたこともあります。そうしてマルクス主義の正しさを確信し、1932年53歳で日本共産党に入りました▼治安維持法違反で検挙され5年間入獄。出獄後は体調を崩しながら著述に励みます。戦争末期の45年新春には「なべて物みな終あり戦ひもいつしかやまむ耐へつつ待たな」と詠みます▼迎えた8月15日終戦。河上は「あなうれしとにもかくにも生きのびて戦やめるけふの日にあふ」と喜びにあふれた歌をいくつも詠みましたが、翌年に死去▼きょうは河上肇の没後75年にあたります。墓のある京の法然院には入党の感慨を詠んだ歌が彫られています。「たどりつきふりかへりみればやまかはをこえてはこえてきつるものかな」。いまも、社会変革の志をもって入党する人たち。老若を問わず胸に秘めた思いはいかばかりか。

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宮本百合子没後70年に 北田幸恵 時空を超えて語りかける理知と情感の言葉

2021120

 今年は、1951年1月21日に51歳で急逝した宮本百合子の没後70周年にあたる。

 十五年戦争下の極限状況においても、戦後の激動の中でも、反戦平和と歴史の進歩を求め、良心の灯を掲げて生き抜いた文学者宮本百合子。その輝かしい全業績は『宮本百合子全集』33巻(新日本出版社)となって私たちの前にのこされている。

 今、日本は、新自由主義の破綻と新型コロナ感染拡大の中、思想信条、学問の自由を侵す学術会議会員任命拒否が起こり、戦前回帰の様相を示しつつある。しかし他方ではコロナ後の未来の新しい価値観が各方面で真剣に模索されている。

 百合子が命懸けで切り開いた思想と文学は、閉塞(へいそく)感を乗り越えていこうとする現代の私たちに、何を語りかけているだろうか。

 百合子の評論集『新編 文学に見る女性像』の刊行(1月)、『民主文学』3月号で掲載予定の没後70年記念座談会、昨年11月刊行の『宮本百合子裁判資料』など、現在の視点から百合子の人と文学を全体的に見直し、再評価しようとする多様な新たな動きが今起こっている。

日本文学の伝統に挑む

 日本文学の伝統は、個と社会を対立的に捉え、社会や政治からの文学の隔離を正統としてきた。百合子の文学は、これに挑む革新的な本質をもつものであった。17歳で書いた『貧しき人々の群』の人道主義から、ソビエト・ヨーロッパの旅を経てプロレタリア作家へ。文学者の相つぐ転向の中で、1934年、評論「冬を越す蕾(つぼみ)」を書く。初期資本主義から帝国主義への時代の急速なテンポでの変化の中で、日本の知識人に対して、敏捷(びんしょう)な適応性はあるが、封建制が作用し、「対立する力」に対して「人間の理性の到達点を静にしかし強固に守りとおし」「その任務を歴史の推進のために光栄あるものと感じ得る」知識人らしい知識人さえも日本には少ないと批判している。

 自ら反戦、反ファシズムの闘いの中心に立ち、終戦までに5回、検挙・投獄された。太平洋戦争開始の翌日、百合子は検挙され、翌年夏、熱射病で昏倒(こんとう)し出獄。以後も執筆禁止が続く。戦後は独立、反戦、革新の立場からの発言を繰り広げ、代表作『播州平野』『二つの庭』『道標』を発表し、民主主義と平和をあらゆる方法で訴えた。

ジェンダー問題の提起

 百合子はまた、現在、注目を集めているジェンダー問題を先駆的に提起した文学者でもある。ほぼ100年前の『伸子』では、女が個人としてではなく家父長制と性役割に縛られて生きることからの解放を追求した。『二つの庭』『道標』に描かれ、往復書簡に示されたロシア文学者湯浅芳子との愛と友情の葛藤の過程は、今日のLGBT問題を考えるうえでも重要な意味を持つ。

 革命運動の中で出会った9歳年下の宮本顕治との恋愛と結婚は、顕治の投獄によって隔てられるが、獄内外をつなぐ往復書簡『十二年の手紙』は凶暴な治安維持法さえ破壊することができなかった戦時下の愛を語る珠玉の人間ドキュメントとして結晶している。

 このような百合子の姿勢は、性・階級・人種を複合的に捉えるフェミニズムを提起して注目されているポスト・コロニアル批評のガヤトリ・スピヴァクの到達点に通じている。

 絶筆「『道標』を書き終えて」には、3千枚の『道標』の次に、続編『春のある冬』『十二年』が予定され、創作方法においても模索の途上にあり、さらなる発展を試みようとしていたことが語られている。これらの課題は後世に託されたといってよいだろう。

 半世紀にわたって百合子が紡いだ理知と情感が融合した豊かな言葉は、時空を超えて私たちに語りかけてやまない。誰しもが自分らしく幸福に生きる権利を持ち、それを阻む力に対しては取り除く努力を怠らず、願いの実現のために協同すること、それこそがよりよい未来への扉を開く最高の魔法の鍵であるのだと。

 きただ・さちえ 1947年生まれ。日本近代文学研究者。元城西国際大学教授。著書『書く女たち 江戸から明治のメディア・文学・ジェンダーを読む』、共編著『宮本百合子の時空』『女たちの戦争責任』ほか

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共に生きる 伊藤千代子に学ぶ志 北海道・苫小牧 戦前のたたかい描く入谷さん(91)、畠山さん(83)

2021115

 「命のあるものはみんなあらん限りに生きようとしている」(「獄中最後の手紙」から)―。戦前の暗い時代に未来を見つめ、不屈にたたかった女性活動家、伊藤千代子。映画製作も決まり、千代子の志を引き継ごうと、手紙を発見した北海道苫小牧市の人たちが意欲を燃やしています。

 千代子は、1905年長野県諏訪市で生まれました。社会科学研究会を通じて知り合った浅野晃と結婚し社会運動に身を投じます。日本共産党と出あい、侵略戦争反対、男女平等の社会をと頑張る千代子に希代の弾圧法、治安維持法が牙をむいて襲いかかります。国や政治を批判したり、自由や平和を求める者は「国賊だ」と、最高刑は「死刑」に。これに屈した浅野らが変節していきます。

人柄の良さが魅力

 「人の話をじっくり聞いて励ます千代子の人柄の良さが大好き。大ファンです」。こう話すのは、入谷寿一さん(91)です。

 入谷さんは、浅野と縁がありました。浅野は45年の東京大空襲で家を失い、三・一五事件(28年)で検挙され思想検事に屈服して変節した水野成夫の経営する苫小牧の製紙工場に身を寄せ、自らの過去を伏せて詩作や文芸活動を手がけ、地域文化の発展に寄与しました。

 浅野と親しく懇談したことがある入谷さんは、穂別町(当時)の「浅野晃資料室」の資料を整理していた時、浅野の「幻想詩集」(66年)を発見、大きなショックを受けます。

 浅野が変節した思想を千代子に押しつけていた…。「最期まで非転向を貫いた千代子の思想までも塗り替えるとは。魂を扱う詩人としてとんでもない」と見方が一変しました。

 変節と自己保身のために理屈をつけて生きてきた浅野。自由にものが言えない暗い時代に国民を救いたいと行動し、逮捕され、短い生涯を閉じた千代子。

 「2人を対比することで千代子の真価が見えた」と入谷さん。

 「獄中最後の手紙」を発掘したのが、畠山忠弘さん(83)=日本共産党元市議=でした。「手紙と出あったことは、人生が変わるほどの衝撃だった」と振り返ります。そのままにはしておけないと諏訪へ何度も足を運んで、連携して顕彰運動をすすめました。

100万円以上の募金

 畠山さんは、映画製作にあたり、手紙公開記念誌『地しばりの花』(2005年発行)を増刷し、映画製作実行委員会を立ち上げ、募金は100万円を超えて集まりました。入谷さんが苫小牧上映実行委員会の委員長を引き受けました。映画には、「最後の手紙」も登場する予定です。

 「いま安倍―菅政権のもとで、学術会議会員任命拒否、秘密保護法や共謀罪と戦前の言論抑圧を思い起こす危険な動きが強まっている」と危機感を募らせます。

 暗い厳しい時代を生きた千代子。映画では、一貫して女性の地位向上や社会変革に明るく元気いっぱい活動していく姿がよみがえります。

 「公開は偶然にも日本共産党創立100周年と重なる年です」と苫小牧などで活動する党衆院道9区候補の松橋ちはるさん(38)。

 「とても勇気をもらいました。千代子の生き方は、ジェンダー平等を進める私たちの羅針盤。頼もしい存在です」と語りました。

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