【2020 慰安婦関係】

【見出し】

   12月

   「反日種族主義」に見る韓国 鄭栄桓 日韓合作の歴史修正主義 日本の運動が養分与える

   志位委員長 離任の韓国大使と懇談

   断面 学術会議への人事介入 フェイクと全体主義に抗するために

   女性国際戦犯法廷から20年 シンポ開く 旧日本軍の性奴隷制問う

   独ベルリン市「平和の少女像」日本政府の撤去要請に批判

   11月

   法治主義 危機に直面 京都 学術会議介入 緊急集会

   性暴力の根絶へ 「国際デー」 広島でキャンドル行動

   #学術会議介入に抗議します 大阪大学教授 牟田和恵さん

   総がかり11・3国会前大行動 あいさつ・スピーチから作家 北原みのりさん

   私たちはなぜ抗議し任命拒否の撤回求めるか 670学協会や大学人の主張は

   本と話題 日韓の歴史を知る本 植民地支配の事実を知り未来を開く

   10月

   ジェンダー平等へ会合 党国会議員団、取り組み報告

   育鵬社教科書 激減したわけ 鈴木敏夫 子どもと教科書全国ネット21代表委員・事務局長

   ジェンダー平等の東京ともに 対談 作家の北原みのりさん 衆院東京12区・比例候補の池内さおりさん

   明日をひらく 衆院比例候補 東京(定数17) 東京12区重複 池内さおり候補(38)

   「少女像」は当面維持 ベルリン 設置団体 差し止め申請

   杉田暴言は自民党の体質(下)世界の取り組みまで否定

   日韓の歴史をたどる(30)植民地支配責任 板垣竜太

   杉田氏暴言 自民に責任 総がかり ウィメンズアクション

   発言認めるが撤回せず 自民・杉田議員が釈明

   おはようニュース問答「女性はうそつく」自民・杉田議員の暴言許せない

   9月

   自民・杉田氏の暴言に抗議

   2020焦点・論点 菅氏は官邸で何をしてきたか 元文部科学省事務次官 前川喜平さん

   主張 杉田議員の暴言 どこまで尊厳踏みにじるのか

   性被害者おとしめる MeToo運動への挑戦 自民・杉田議員の暴言

   「女性うそつける」と暴言 性暴力被害で 自民の杉田衆院議員

   菅新政権 各国メディア論評

   徳島県女性協議会会長 立場違えど一緒に 共産党・白川候補と懇談

   安倍首相辞任 各国の報道 政治的にも経済的にも新鮮なスタートが必要 欧州各紙

   8月

   日本被団協にマスク1万枚 韓国の被爆者から届く

   終戦75年 憲法守る党大きく さいたま・川口市 塩川・伊藤・梅村氏訴え

   「慰安婦」メモリアルデー「戦争はまだ終わらず」日本の謝罪・補償を要求

   防衛白書を読む(3)韓国との「幅広い防衛協力」削除 関係悪化・冷却化反映

   戦後75年 いま問われるのは―日本の植民地支配と侵略戦争 アジア2000万人 日本人300万人が犠牲

   戦後75年 いま問われるのは―日本の植民地支配と侵略戦争 京都大学教授 永原陽子さん

   「慰安婦」証言の日 文韓国大統領がメッセージ 被害者中心の解決が原則

   戦後75年 wam(アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」)館長 渡辺美奈さんに聞く 「慰安婦」問題 正義への権利求め

   名古屋が育鵬社不採択 市民が侵略美化教科書ノー

   アートとジェンダーをめぐる旅 小勝禮子(1)イトー・ターリ 生きる限りの身体表現

   原水爆禁止世界大会 非核・平和の北東アジアと運動の役割 日韓の労組と市民 連携を

   戦後75年 日本の戦争が生んだ日系オランダ人たち 写真家(オランダ在住) 奥山美由紀さん

   知事リコール運動に反対 愛知の会が市民集会

   7月

   日韓の歴史をたどる(26)朝鮮人学徒兵 秋岡あや

   「水曜集会 各地開催を」韓国 「慰安婦」被害者が提案

   少女像前集会を禁止 ソウル市鍾路区がコロナ対

   6

   「慰安婦」運動 意義強調 韓国大統領、支援団体めぐり

   「2020年のナショナリズム」

   5

   韓国 寄付金私的流用 否定「慰安婦」団体前理事長が会見

   ジェンダー平等実現へ共に 婦団連 16万人超の4署名提出 政策・働き方に女性の視点を

   30年間の運動継承と再点検 韓国「正義連」集会

   2020焦点・論点 シリーズ ジェンダー平等求めて

   疑惑の解明は検察で 韓国「慰安婦」被害者会見

   「慰安婦」団体が家宅捜索に遺憾 韓国

   きょうの潮流

   「慰安婦」団体が募金横領を否定 韓国で水曜集会

   再放送直前差し替え NHK「バリバラ」 「桜」皮肉の回中止

   4

   生放送!とことん共産党 フラワーデモ1年 コロナとジェンダー考える

   若者BOXワイド ジェンダー平等めざして共産党に入った話

   日韓の歴史をたどる(21) 植民地公娼制 宋連玉

   韓国総選挙 公式運動始まる 文政権の中間評価 新型コロナ 北朝鮮関係など争点に

   3

   日韓の歴史をたどる(20)「皇民化政策」 水野直樹

   社会科で領土問題記述増 中学校教科書の検定結果公表

   日本軍慰安婦の半生を漫画に 現代の性暴力にも通じる 日本語版出版 作者が講演

    「表現の自由」を訴えるグラフィックデザイナー 花井利彦さん(64)

   2

   フェミ科研費裁判提訴1年で集い 表現・学問の自由考える

   2020焦点・論点 シリーズ歴史問題と人権 植民地の反省で画期的な動き 東京外国語大学准教授(イタリア近現代史) 小田原琳さん

   「ニュース女子」抗議から3年 市民有志が活動報告まとめる デマ・ヘイトに抗する連帯を

   平和へ誠実な歴史認識を 東京 「建国記念の日」反対集会

   被害者中心が「原則」 徴用工問題 韓国大統領が強調

   共産党ジェンダー平等委員会です 「学び、前進していきたい」 新婦人と懇談

   2020焦点・論点 シリーズ歴史問題と人権 旧日本軍「慰安婦」・「徴用工」問題 真の解決へ 東京造形大学教授(国際人権法) 前田朗さん

   1月

   2020焦点・論点 シリーズ歴史問題と人権 植民地支配の責任に向き合う 立命館大学教授(イギリス帝国史) 前川一郎さん

   第一決議(政治任務) (1)

   第28回党大会 綱領一部改定案についての中央委員会報告幹部会委員長 志位和夫(3)

   在日本大韓民国民団の新年会 小池書記局長が祝辞

   「若者の目」「若者の声」光る報道 新年の「赤旗」を読んで 元朝日新聞大阪本社編集局長 新妻義輔さん

   きょうの潮流

    

 

 

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【本文】

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「反日種族主義」に見る韓国 鄭栄桓 日韓合作の歴史修正主義 日本の運動が養分与える

20201228

 「韓国の嘘(うそ)つき文化は国際的に広く知れ渡っています」。2019年に刊行されて以来、韓国で10万部、日本では40万部を売り上げた『反日種族主義』(未来社、日本版は文芸春秋)のプロローグは、この衝撃的な一文から始まります。

 編著者の李栄薫(イヨンフン=元ソウル大学経済学部教授)は「嘘つき文化」の根本には隣人を悪の種族とみなすシャーマニズムがあり、韓国社会には悪の隣人たる日本にはどんな嘘も許されるとみなす精神文化=「反日種族主義」がはびこっていると主張します。

 こうした認識をもとに、朝鮮総督府による土地や米の収奪や日本軍「慰安婦」の強制連行は「でたらめな作り話」「無知の所産」「悪意の捏造(ねつぞう)」であると批判するのが、この本の論旨です。

●「揺り戻し」

 なぜこのような本が韓国であらわれたのでしょうか。これを理解するためには、2000年代はじめから本格化した歴史認識をめぐるバックラッシュ(揺り戻し)現象をふりかえる必要があります。

 韓国の歴史教科書は長らく国定でしたが、03年度から中学の「国史」と高校の「韓国近現代史」(選択科目)で検定済み教科書が用いられるようになりました。すると一部の教科書が「親北(北朝鮮)・反米・反企業」的であるとの批判が保守政治家から巻き起こり、05年には保守系の研究者たちが「教科書フォーラム」を結成して教科書の「左偏向」を改めることを求めます。

 このグループはその後「代案教科書」と呼ばれる近現代史の書籍を刊行することになりますが、その代表執筆者を務めたのが『反日種族主義』の編著者の李栄薫です。

 李栄薫らの「代案教科書」は、韓国の歴史を市場経済と民主主義を定着させ産業化を実現させた「成功国家」として描き出す一方、植民地下の収奪や人権弾圧の記述は最小限におさえ、むしろ「親日派」(日本の植民地支配の協力者)たちを、創意あふれる活動で後の経済発展を準備した企業家として高く評価します。

 その主張は日本の「自由主義史観」とよく似ています。同時に、韓国の権威主義体制や開発独裁を肯定的に描こうとする李栄薫らの運動は、民主化以降にあらわれた、韓国の国家暴力と反共主義的な歴史認識を問い直す営みへのバックラッシュといえます。

 保守政権期には政治的にも大きな影響力を及ぼし、李明博(イミョンバク)政権は「左偏向」教科書への介入を強め、朴槿恵(パククネ)政権は国定教科書を復活させました。しかし、その後、朴槿恵大統領が弾劾により退陣し、保守政権の不正や腐敗をただす声が高まるなか文在寅(ムンジェイン)政権が出帆します。

 『反日種族主義』が刊行されたのはこうした状況でした。プロローグ「嘘をつく政治」で批判されるのは李・朴両政権の「嘘」ではなく、これを批判した人々の「嘘」です。その政治的スタンスは明確といえるでしょう。

●SNS使い

 こうして「成功国家」として描くべきとされた韓国は、一転して「嘘の国」として糾弾されることになったのです。李栄薫らはSNSやyoutubeを通して新たな支持者をつかみ、日本の歴史修正主義グループともネットワークを構築しながら、文政権に不満を抱く層の受け皿となっていきました。

 植民地支配を肯定的に描き、徴用工裁判原告の主張を「嘘の可能性」が高いと決めつける、こうした『反日種族主義』の流行を、韓国の社会学者・康誠賢(カンソンヒョン)は日韓「合作」の現象だと指摘します。(康誠賢『歴史否定とポスト真実の時代』大月書店)

 朝鮮民族への偏見をうえつけ、植民地支配を美化するような本が、ほかならぬ韓国で少なくない読者を獲得した背景には、日本からヒントを得た韓国版歴史修正主義の運動があったからです。日本での歴史修正主義の伸張が、韓国の「反日種族主義」現象に養分を与え続けていることを忘れてはならないでしょう。

 チョン・ヨンファン 1980年生まれ。明治学院大学教授(在日朝鮮人史、朝鮮近現代史)。『朝鮮独立への隘路(あいろ) 在日朝鮮人の解放5年史』『忘却のための「和解」』ほか

 

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志位委員長 離任の韓国大使と懇談

20201218

 日本共産党の志位和夫委員長は17日、離任のあいさつのため党本部を訪れた南官杓(ナム・グァンピョ)駐日韓国大使と懇談しました。

 南大使は、1年半の在任中、コロナ禍で時間の制約はあったが志位氏と良い話し合いができたと感謝をのべ、日韓関係の改善にむけた協力を引き続き要望しました。

 志位氏は、在任中の大使の努力に敬意を表し、これからも両国関係の前進にとりくみたいとのべました。また、日本軍「慰安婦」、元徴用工の問題で党の立場をあらためて紹介し、被害者の名誉と尊厳を回復する解決策が必要だと強調しました。

 世界では新型コロナ危機の中で、奴隷貿易など過去の植民地支配の見直しが進んでいることをあげ、「日本も過去の植民地支配に真剣に向き合い、清算することが重要だ」とのべました。

 懇談には、日本共産党から緒方靖夫副委員長、田川実国際委員会事務局長、韓国大使館から金那媛(キム・ナウォン)1等書記官らが同席しました。

 

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断面 学術会議への人事介入 フェイクと全体主義に抗するために

20201216

 菅義偉首相が日本学術会議会員6人の任命を拒否し、その理由の説明から逃げ続けたまま閉会した臨時国会。さらに、学術会議のあり方自体に問題があるかのように論点をすり替え、自民党内に学術会議のあり方を検討するプロジェクトチームを設置して11日、国の機関から切り離すという提言を公表しました。

 日本学術会議法、そして憲法をも無視し、フェイクを流布することで全体主義を強める菅政権。11月27日、「ユナイトきょうと」と「自由と平和のための京大有志の会」が開催した集会から考えました。

 任命を拒否された松宮孝明立命館大学教授は、学術会議は、学術会議法前文で「世界の学界と連携して学術の進歩に寄与することを使命」とするとされており、菅首相が国会で答弁した「既得権益」など全くないと指摘。菅政権の暴挙を「法治主義の危機」だと批判します。

 牟田和恵大阪大学教授は、杉田水脈自民党衆院議員が、牟田氏らの「慰安婦」研究を「ねつ造」などと誹謗中傷したことを名誉毀損(きそん)として提訴した立場から発言。杉田氏が裁判の過程で、「『ねつ造』と言ったのは、政府見解に反するという意味で言った」という驚くべき主張をしたことを明らかにしました。

 2人の発言を受けてコメントした岡真理京都大学教授は、“パレスチナ自治政府の学校で反ユダヤ主義が教えられている”と大学のゼミで発表した学生の情報源がフェイクニュースであったことを紹介し、日本政府は世界で広がっているフェイク状況を「追い風にしている」と指摘。藤原辰史京都大学准教授は、全体主義、ファシズムの「火を消し止める消火剤になる言葉」とは「媚(こ)びない」言葉であり、「蓄積されてきた憲法研究やフェミニズム研究の時間を味方にし、それを信じて言葉を揺るぎなく発信し続ける」ことではないかと語りました。

 菅政権のフェイクと全体主義に抗するには、若い世代にも伝わる豊かな言葉で事実に基づいた正確な情報を発信し、より多くの市民と連帯することが重要であると認識した集会でした。

 

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女性国際戦犯法廷から20年 シンポ開く 旧日本軍の性奴隷制問う

20201215

意義再確認 被害者支援を交流

 アジア太平洋戦争中の日本軍性奴隷制(「慰安婦」制度)の責を問うた「2000年女性国際戦犯法廷」の開催から20年となった12日、同法廷20周年実行委員会はオンラインで国際シンポジウムを開催し、法廷の意義を再確認するとともに、被害者支援の実践などを交流しました。

 法廷で首席検事を務めたウスティニア・ドルコボル氏が基調報告を行いました。同氏は昭和天皇をはじめとする東条英機ら軍・政府の最高責任者や、国家の責任を問う法廷が開かれた背景について、「アジアの女性運動が歴史的な不正義をただし、国際的な人道法、刑事法の内容に影響を与えるべく努力してきたからだ」と強調。性暴力を告発した#MeToo運動や黒人差別への抗議など現在の運動との共通点にも言及し、不正義を公然と非難することが、被害者との連帯を示す一番の方法だと語りました。

 韓国で「慰安婦」問題解決に向けた水曜デモを行っている正義記憶連帯の李娜栄(イ・ナヨン)理事長は、「女性たちが、性奴隷制問題を戦争犯罪として扱わなかった戦後の国際法と国際秩序に挑み、女性の人権と平和の観点から戦時性暴力の責任を問うた裁判ということで大きな意味がある」と指摘。法廷で証言した犠牲者のほとんどが亡くなるなかで、「各国の被害者の勇気ある証言と、正義のための判決の意味が次世代に伝わることを願う」と述べました。

 台湾やフィリピン、韓国、日本、米国の若手活動家らは、コロナ禍でも被害者を支援し、インターネットなどを通じ発信していることなどを紹介しました。

〈女性国際戦犯法廷とは〉

 昭和天皇をはじめ東条英機ら軍や政府の最高責任者らの責任と国家責任を問うた民衆法廷。2000年12月8〜12日まで、東京で開かれました。九つの被害国・地域の女性64人が参加。被害者が証言に立ち、各国の検事団が日本軍の公文書などの証拠を提出。5日間の審理が行われ、最終日には天皇に「有罪」が言い渡されました。翌年の12月、オランダ・ハーグで「最終判決」が出され、軍と政府の最高責任者9人に対しても人道に対する罪での「有罪」を認めました。国際法上の国家責任も認定。また強制連行も事実認定しています。

 

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独ベルリン市「平和の少女像」日本政府の撤去要請に批判

2020127

「歴史を忘却する行為」

 日本軍「慰安婦」被害者の被害と慰労を表現し、戦時性暴力に反対する「平和の少女像」をめぐり、ベルリン市ミッテ区の許可を得て市民団体「コリア協議会」が公有地に設置した像に対し、加藤勝信官房長官は「撤去を要請する」と表明しました。「歴史の忘却」「声を上げた被害者に沈黙を強いるのか」と日本とドイツで批判が沸き起こっています。(日隈広志)

 少女像がミッテ区に設置されたのは9月末。加藤官房長官は直後の記者会見で「わが国、政府の立場やこれまでの取り組みとは相いれず、極めて残念」「政府として撤去に向けてさまざまな関係者にアプローチ」すると述べ、「撤去」を明言し、茂木敏充外相も独外相に「(像設置は)適切ではない」と述べました。平和を求める外国市民の取り組みに日本政府が圧力をかけるという異常な事態です。

市民が抗議行動

 また、ベルリン市と友好都市を結ぶ新宿区長は、像の設置に「違和感」を表明する書簡をミッテ区長宛てに送付。東大阪市や名古屋市などでも同様の動きが生じています。

 日本政府と一部首長の動きに対し、被害者支援や記憶の継承に取り組む日本軍「慰安婦」問題解決全国行動など市民は抗議し、菅義偉首相に対し撤去要請の撤回を要求しています。

 新宿区長には、日本共産党新宿区議団と新宿地区委員会が「内政干渉」など「介入ととられかねない」と批判し、撤回を要求。他の自治体でも市民などが抗議行動を行っています。

永続設置を要求

 ミッテ区では、日本政府の動きを受けて一度は像の設置許可を取り消し、撤去命令を出しました。しかしコリア協議会による設置許可取り消しの効力停止を求める仮処分申請やベルリン市民の抗議を受け、区は撤去方針を撤回。同区議会は12月2日に少女像の永続設置を求める決議を採択しました。

 この間、元ドイツ首相のシュレーダー夫妻は撤去命令が「反歴史的決定」だと反対を表明。「日本政府がこのような残忍な戦争と暴力の歴史を清算するどころか、むしろ沈黙するよう圧力をかけることは歴史を忘却する行為」(同夫妻からミッテ区長宛ての手紙)と批判するなど、ドイツでも日本政府の異常ぶりが浮き彫りとなっています。

被害者にさらに沈黙強いるもの

 日本軍「慰安婦」問題解決全国行動の梁澄子(ヤン・チンジャ)共同代表の話 ミッテ区の「平和の少女像」の碑文には、「沈黙を破って立ち上がったサバイバー(生き残った人)をたたえ、このような惨禍が世界中で二度と繰り返されないことを求めるものである」と書かれています。

 少女像は、アジア・太平洋地域の多くの国々で性奴隷状態に置かれた日本軍「慰安婦」被害者の全員を象徴し、被害者が長年の沈黙を破って声を上げ、平和運動を担うようになったことへの敬意と、その記憶の継承の決意が込められています。

 日本政府による像の「撤去要請」は、被害者や運動に対して「うそだ」「黙れ」と言うのも同然であり、被害者にさらに沈黙を強いる、許しがたいものです。

 ミッテ区での少女像の除幕式には、イラクで過激組織ISによって性奴隷の犠牲となったベルリン市在住の少数派ヤジディ教徒の女性が「私たちの姿そのものだ」と語りました。日本のフラワーデモでも、少女像とともに日本軍「慰安婦」問題の記憶の継承が語られています。少女像を通し、性暴力被害の当事者が時間や空間を超えて共感し、連帯していることに、希望を感じずにはいられません。

 

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法治主義 危機に直面 京都 学術会議介入 緊急集会

20201129

松宮教授ら講演

 菅首相による日本学術会議の人事介入問題をはじめ、「学問の自由」への攻撃や言論統制に抗議する緊急集会が27日夜、京都市下京区のキャンパスプラザ京都で開かれ、任命拒否された松宮孝明・立命館大学教授らが講演しました。130人が参加しました。

 京都で野党共闘をめざす「ユナイトきょうと」が主催し、自由と平和のための京大有志の会が共催しました。

 松宮教授は、SNSで任命拒否を発信し、最初に「しんぶん赤旗」が報道した経過などに触れ「他の新聞社も話は知っていたが、一番、敏感に反応したのが『赤旗』だ」と指摘。菅首相が任命拒否の理由を言わないことが忖度(そんたく)を生み、「学問の自由」の危機につながることや、国民主権を確認した憲法の条項をねじまげ首相に任命の裁量権があるとした法治主義の危機などを強調。政府が学術会議の民営化を言い出したことについて「目的も明らかにしないこと自体が大きな論点ずらしだ。早く6人を任命するように願う」と述べました。

 大阪大学の牟田和恵教授は「慰安婦」問題の研究を「ねつ造」などと誹謗(ひぼう)中傷し、「科研費」を攻撃する自民党の杉田水脈衆院議員を提訴した「フェミ科研」裁判について報告。牟田氏は「学術会議と同様に、学問への権力の介入だ。『科研費』の審査や採択に介入したいということだ」と告発しました。

 京都大学の岡真理教授、京都大学の藤原辰史准教授が訴えました。

 

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性暴力の根絶へ 「国際デー」 広島でキャンドル行動

20201127

 「女性に対する暴力撤廃国際デー」の25日夕、広島市の原爆ドーム前で、女性への暴力の撤廃を求めた「キャンドルアクションinひろしま」が開かれました。「女性に対する暴力はジェンダーに基づく重大な人権侵害であり、根絶しなければならない」との声明を確認した、約50人の参加者はキャンドルを手に、性暴力で亡くなった人たちを悼み、祈りをささげました。

 主催した「日本軍『慰安婦』問題解決ひろしまネットワーク」の岡原美知子事務局長は、♯MeTooや♯WithYou、フラワーデモなどの運動が広がる一方、今なお多くの被害者が沈黙を強いられていると告発。「被害者の声に耳を傾け、いかなる暴力被害者にならない社会、また被害者が声を上げやすい社会を一緒につくろう」と呼びかけました。

 リレートークで、広島市女性団体連絡会議の山本紀子さんは、性暴力被害をめぐり、女性蔑視発言を行った自民党の杉田水脈衆院議員を批判するとともに、辞職を求める署名を自民党が受け取り拒否していることを厳しく批判。「今後とも声を上げ、アクションを引き続き起こしていきたい」と話しました。

 参加した40代の男性は「あらゆる性の人が生きやすく、性暴力や性虐待を許さない社会にしていくとの思いを改めて強くした」と語りました。

 日本共産党の中原洋美広島市議が参加しました。

 

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#学術会議介入に抗議します 大阪大学教授 牟田和恵さん

20201122

ジェンダー研究攻撃と重なる

 私たちが科研費に採択されて行ったジェンダー・フェミニズム研究に対して、自民党の杉田水脈(みお)衆院議員は、無理解と偏見にもとづく誹謗(ひぼう)中傷を種々のメディアを通じて繰り返し、私たちの名誉を大きく傷つけました。私たちは、学問の自由とフェミニズムに対する攻撃と捉え、杉田議員を名誉毀損(きそん)で提訴しています。

「国益を損なう」

 杉田議員は、私たちの「慰安婦」問題を扱った研究を「反日」研究だとして、そうした「国益を損なう」研究に科研費を助成すべきでないと公言してきました。さまざまな社会運動や活動と連携してジェンダー平等への道をさぐっていこうとする私たちのプロジェクトを「政治活動であって研究ではない」とおとしめ、性や身体をテーマとするイベントに嘲笑(ちょうしょう)をあびせ、こんなのは学問ではないと評しました。こうした暴言を放置すれば、科研費への政治介入を許すことにつながると私たちは考えました。学問の自由を守るために、ここで歯止めをかける必要があるとたたかっています。

 日本学術会議への人事介入にかかわる動きは、杉田議員によるジェンダー研究への攻撃と重なります。どちらも学問への政治介入であり、国民を分断して統治するものです。

 ジェンダーが科研費のジャンルになったのはここ20年ほどのことです。先達の女性たちが草の根から研究を始め、声をあげて学問として成立してきました。

 日本学術会議は、ジェンダー平等を実践する立場から、女性会員の比率を高め、多様性に努力してきました。ジェンダーに関わる提言も数多く出しています。ジェンダー研究の成果にもとづいて、政府の政策・制度の不備、不作為を批判しています。

論点をすり替え

 自民党は、学術会議会員の任命拒否の理由を説明していません。その一方で、学術会議のあり方を検討する必要がある、と論点をすり替えています。6人の任命拒否にとどまらず、学問の自由を保障するために政権に対して高い独立性をもつ組織のあり方に、手を突っ込んでくるのではないかと懸念しています。

 私が所属する日本女性学会も任命拒否に対する声明を出しています。日本学術会議の独立性に対する政府の干渉・介入に抗議し、ジェンダー平等を実現するための研究を前進させるべくたたかいつづけます。

 聞き手 武田恵子

 むた・かずえ 1956年生まれ。大阪大学教授(歴史社会学、ジェンダー論)。著書に『部長、その恋愛はセクハラです!』など

 

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総がかり11・3国会前大行動 あいさつ・スピーチから作家 北原みのりさん

2020114

性差別に向き合おう

 杉田水脈議員の「女性はいくらでもうそをつく」発言に13万人以上の抗議署名が集まりました。自民党本部が受け取りを拒否したため、送りましたが戻されてきました。

 憲法で男女平等をうたっても、性差別が何か分かっていない。国連女性差別撤廃委員会が選択的夫婦別姓や慰安婦問題解決を求めても無視しています。

 しかし、性暴力に抗議するフラワーデモは毎月行われ、もう黙るのはいやだ、社会を変えたいと声をあげる人がいます。コロナ禍で性差別に苦しむ女性たちの声を聞いてください。性差別に本気で向き合いましょう。

 

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私たちはなぜ抗議し任命拒否の撤回求めるか 670学協会や大学人の主張は

2020111

 670もの学協会や大学人の声明、映画・演劇や作家・劇作家などの表現者、宗派を超えた宗教者から消費者団体や自然保護団体まで130を超える諸団体の抗議、かつてないスピードと規模で広がる、日本学術会議新会員任命拒否への抗議。彼らはなぜ抗議し、任命拒否の撤回を求めているのか―声明からみえてくるものは……。

学術会議法と憲法に反する

 ほとんどの声明で共通しているのは、菅義偉首相による任命拒否が、日本学術会議法や憲法に真っ向から違反するという指摘です。

 日本学術会議法は、会員を「優れた研究又は業績がある科学者」(17条)から、学術会議の「推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する」(7条)と規定しています。41の歴史研究団体が名を連ねる歴史学協会の声明は、この規定について、「何よりも学術会議の推薦が尊重され、内閣総理大臣の任命は形式的なものであることは明らかである」と指摘。

 142人(10月20日段階)の憲法研究者が賛同した有志の声明も、「真理探究の営みという学問の本質を支える『学問の自由』(憲法23条)の精神にてらせば、日本学術会議法は、研究者集団が政権から独立して自由に活動することを確保できるような解釈」が必要だとのべ、菅首相は「日本学術会議法の解釈を誤っている」うえ、憲法23条の趣旨を踏まえていないと批判します。

 刑事法研究者217人があげた声明では首相が「時の政治権力が恣意(しい)的に任命を拒否することが可能になれば、日本国憲法が保障する学問の自由に対する重大な侵害となる」とし、「自らの学術的主張のゆえに任命を拒否されたと疑われる状況に置かれること自体、学問の自由の侵害」だと糾弾しています。

国民の精神活動の自由侵害

 首相による任命拒否の本質は、国民の精神活動の自由に対する侵害だという核心をついた見解も多数あります。たとえば、国際基督教大(ICU)の岩切正一郎学長の「見解」は次のようにのべます。

 「批判的精神を許容せず、対話や説明を拒否し、任命権をちらつかせて単一の同質性へと思考を押しひしいでゆくふるまいを、我々は受け入れることも看過することもできない。こうしたふるまいは、それに慣れていくうちに、国民精神から健やかさを奪い、すさんだ無気力へと心を沈湎(ちんめん)させていく」

 また、北海道大学教育学研究院長の宮崎隆志氏の「見解」は、「学問の自由」は大学に在籍する研究者のみにかかわるものではなく、全ての人が所持している「真理探究という精神活動の自由」に関わるものであり、これが侵害されたと指摘しています。

 法政大学の田中優子総長も、「学問の自由」侵害が「最終的には国民の利益をそこなう」と指摘。「もし研究内容によって学問の自由を保障しあるいは侵害する、といった公正を欠く行為があったのだとしたら、断じて許してはなりません」と訴えました。

学問は国家のしもべでない

 “任命拒否の理由を説明しないことこそ、民主主義に反する権力の行使=国民に対する暴力だ”と批判するイタリア学会の藤谷道夫会長は、菅首相が学術会議に「バランスの取れた行動」「国の予算を投じる機関として国民に理解されるべき」を求めていることを批判。「国の税金を使っている以上、国家公務員の一員として、政権を批判してはならない」という意味になるとし、「学問は国家に従属する《しもべ》でなければならないという誤った学問観」だと指弾しています。そして、「学問研究によって得られる利益は人類全体に寄与するものでなければならず、時の政権のためのものではない」と指摘します。

 また、《説明しない》ことで国民を恐怖と不安から権力に従うように仕向けるものだと批判。「問題の本質は、時の権力が『何が正しく、何が間違っているかを決めている』点において、ガリレオ裁判と変わりない」と喝破します。

 普段、「特定の政治的見解を標榜(ひょうぼう)しないことを原則」としているという日本政治学会も、「異なる見解が共存・競争することこそが、なによりも研究の発展を促し、有益な知見を生み出す」として、推薦した全員の任命を要求。日本ポピュラー音楽学会も「今回の決定は、日本学術会議に対する不当な介入であり、学問の自由、その多様性と独立性、研究者の言論と活動を委縮させるもの」と批判しています。

弾圧の歴史 繰り返させない

 「『令和の滝川事件』とも称される今回の措置は、1933年に文部大臣が滝川幸辰(たきかわ・ゆきとき)京都帝国大学教授を『赤化教授』との評判に基づいて休職処分とした事件や、1935年に当時の学会の通説(天皇機関説)を『不敬』とする声に押されて文部省が美濃部達吉東京帝国大学教授の著書を発禁処分とした事件を思い起こさせる」

 こう指摘する、教育史学会の声明は「日本学術会議が政府からの独立を原則としているのは、戦前・戦中の学界が『国策』に全面協力したことへの痛切な反省に基づいている」と指摘します。

 日本科学史学会も、戦前の学問弾圧の末、「毒ガスや生物兵器の開発、人体実験、殺人光線や原爆の研究」など非人道的な研究に向かわせた戦前の反省にたって学術会議が誕生したと指摘。政治的利害から一部の科学者を排除すれば「科学的判断を歪(ゆが)め、結局は科学成果の利用においても国民の利害にも反しかねない」とのべ、いわゆる「原子力ムラ」を基盤に「安全神話」を展開したことが福島第1原発事故による被害をもたらしたことも忘れられないとしています。

 「拒否理由の説明がないということは、結局は歴史的に比をみない野蛮な公文書破棄まで生んだ『忖度(そんたく)』政治を科学界にまで持ち込もうとする狙いを疑わせざるをえない」。科学史学会は警鐘を鳴らします。

表現者 次に牙向けられるのは

 今回の事件は、「学問の自由」にとどまらず「言論表現の自由、思想信条の自由を揺るがす」との声が幅広い表現者に広がっています。

●文学者など

 現代歌人協会と日本歌人クラブは、1940(昭和15)年に大日本歌人協会が、国家に協力的でない会員がいるとして解散に追い込まれた歴史を想起。「政府に逆らう学者は排除」が「政府に逆らう表現者は排除」になるまでは「わずかな距離」しかないと訴えます。

 戦前、多くの児童文学者が国家の要請で好戦的な作品を子どもたちに提供した反省に立って創立された日本児童文学者協会。同会も、今回の事件は単に学問分野のことではなく、「表現の自由、日本の民主主義の行方に関わる由々しき事態」だと述べ「文化や教育、学術研究は決して政権の道具では」ないと強調します。

 図工美術教育研究団体「新しい絵の会」は、「かつて生活の姿を描くことだけで弾圧された」と訴え、自由な議論や表現が国家権力の暴走を止める礎であり、研究者、表現者をひるませてはならないと要求します。

●演劇・映画人

 映画・演劇関係者にも強い危機感が広がっています。NPO「独立映画鍋」は、抗議の声をあげなければ「あっという間に」表現や思想信条の自由への介入を許すことになると表明。是枝裕和、塚本晋也、森達也監督ら映画人有志22人は、学者に向けられた牙が次はどこに向けられるのかと問い、「あいちトリエンナーレ」への助成金が一時不交付にされたことを引き、問題を放置すれば「政権による表現や言論への介入はさらに露骨になるとことは明らか」と切迫感を示します。

 日本劇作家協会・日本演出者協会など8団体もこれが芸術への政府の干渉の引き金になると危惧。全日本リアリズム演劇会議は、政権の気に入らない公演には助成しない、受賞対象にしないなどの干渉を招くと訴えます。

●ペンクラブ

 著名な作家などが集まる日本ペンクラブは、今回のやり方を、安倍政権時代に批判を浴びた検事長の定年延長問題と同様「水面下での恣意(しい)的な法の解釈と人事によって政治をねじ曲げる手法そのもの」と批判。菅政権の最初の仕事がこうした「陰険なもの」であることに暗澹(あんたん)となるとして、6人の任命を強く求めます。

ジェンダー 状況の改善 困難に

 “任命拒否が社会的少数者の置かれた環境や社会的状況の改善を一層困難にする”と危惧するのが、日本女性学会です。同会は、学術会議がこの9月にもジェンダー問題で三つの提言を出したことを紹介します。

 一つは刑法改正に向けて、性犯罪で暴行・脅迫があったかでなく同意があったかを問題にすべきだとする「『同意の有無』を中核に置く刑法改正に向けて」、二つ目は、トランスジェンダーの尊厳を保障する法整備に向けた「性的マイノリティの権利保障をめざして」、三つ目は「社会と学術における男女共同参画の実現を目指して」です。

 こうした提言は「政策・制度の不備、不作為を厳しく批判するもの」でもあったと述べ、今回の政府の人事介入はこうした活動を鈍らせると指摘します。

 女性労働問題研究会も、女性が真に活躍できる政策作りには、自由な研究と政府に率直に提言できる条件の保障が欠かせないと訴え、今回の介入は、政府の掲げる「女性活躍」の実現を妨げると批判しています。

 日本軍「慰安婦」問題を研究し、戦争による性暴力の被害者の尊厳の回復を求めてきた「女性・戦争・人権」学会。これまでも自民党議員が国会で研究者を名指しして「反日で国益を損なう」から研究費を支給するなと公然と要求してきたことを指摘し、今回の任命拒否に「通底する事態が進行していることを深く憂慮」するとします。

宗教者 真理探究 声上げる

 権力に弾圧された歴史を持つ宗教者の団体は自分ごととして敏感に反応し、相次いで声明を出しました。

 宗派を超えた宗教者が集まる「平和をつくり出す宗教者ネット」は、学問の自由の侵害を許すことが信教の自由の侵害にも及ぶという危機感を吐露。学問の自由が専制的な力によってゆがめられれば「民主主義の根幹が崩れ、社会から批判的精神が失われ、全体主義がはびこり、最後には社会と国家の危機を乗り越える道をも見失う」と警告しました。

 日本キリスト教団北海教区は、任命拒否された芦名定道京都大学教授が、ヒトラー政権から亡命した神学者パウル・ティリッヒの研究者であることを「あまりに象徴的」と指摘。「誤った政策にも同調する御用学者ばかりが任命されれば」「ひいては戦時下のように科学全体の活力が失われ、国力衰退と世界の中での没落さえ招きかねません」と痛烈に批判しています。

 日本ナザレン教団も「かつて日本でキリスト教信仰ゆえに弾圧された、その歴史と先人の体験を思い起こし、キリスト教信仰が長い歴史を通して生み出した、人間の尊厳、信教の自由、そして民主的社会を、守り支える意志によって、この度の措置に抗議します」と、キリスト者としての矜持(きょうじ)を示しました。

 宗教法人「生長の家」は声明を意見広告として25日付一般紙に掲載しました。宗教が「真理を追究し、真理を現実世界にもたらすことで、人類と地球社会とを『より善なる方向』へ近づけるという目的では、科学と変わらない」と記述。「20世紀に多くの悲惨な戦争から学んだはずの日本が、再び国権によって真理探究の動向を操作しようという誤った方向に進むとしたら、私たちは声を上げて反対せざるを得ません」「科学的真理の探究を操作しようとする政治が、宗教的真理の探究を尊重するなどということはあり得ない」と鋭く指摘しています。

消費者 市民活動に規制か

 科学界だけの問題ではない―。日本消費者連盟は「このままいくと市民活動にも波及する」と危機感をあらわにしました。

 「権力介入を自分のこととしてとらえ」、任命拒否の撤回を要求しています。

 学術会議の特筆すべき業績として2017年の軍事研究に関する声明を挙げた上で「政府の意向に反する研究を行い発言する科学者を学術会議会員という公職から追放という今回の措置は、戦後米国で吹き荒れた赤狩り、マッカーシズムそのもの」と強調しました。

 「次に来るのは市民活動に対する締め付けであり規制の強化であることは容易に想定できます」「政府の意図に反する市民の活動を委縮させ、封じ込める状況が目前に来ている」と、安保法制や共謀罪などの国策に反対してきた同連盟が、特定非営利活動法人の認証を取り消されることにもなりかねない懸念をのべています。

自然保護 科学の基礎揺らぐ

 自然保護活動を通じ社会に貢献する目的で活動してきた日本自然保護協会、日本野鳥の会、世界自然保護基金(WWF)ジャパンの3団体は連名で抗議の声明を発表しました。

 声明は、学術会議がこれまで気候変動や災害対策など環境分野のテーマで多彩な提言を行い、「科学的根拠をもとに活動する自然保護団体はじめ多くの人々に理論的な拠(よ)りどころを示してきました」と高く評価。学会や研究者への政権の圧力が「自由な議論への圧力ともなり、不要な忖度(そんたく)や萎縮を引き起こし、政策の適切な実施を阻害するおそれがあります」としています。

 日本自然保護協会はホームページで、▽科学に立脚する自然保護団体の立場▽日本学術会議による自然保護の貢献▽日本におけるNGO活動の在り方の視点―の3点から、今回の問題が自然保護団体・運動にとって重大だと共同声明の意義を解説。本紙の取材に対し、自然保護活動に不可欠な「科学の基礎となる『学問の自由』が揺るがされていると感じています」と抗議の理由を説明しました。

 日本野鳥の会も「いろいろな分野の科学者が集まって自由に議論を交わすことで日本の社会は発展していく」と取材に答えました。

頼むから日本語痛めつけないで 上代文学会

 『万葉集』『古事記』など日本の古代文学の研究者らでつくる「上代文学会」は12日、戦前、津田左右吉が『古事記』『日本書紀』研究を国家権力に弾圧された経緯を踏まえ、その受難を二度と繰り返さない立場から、今回の菅政権の措置を「非常識極まる強権発動」とする抗議声明を発表。

 とくに、言語表現を扱う同学会として、「任命拒否の理由を菅総理がまともに説明しようとせず、無効で無内容な言い逃れを重ねていることをも看過できません」「日本語の破壊が目に余る」と指摘、皮肉をこめ次のように痛烈に批判しました。「日本語の無力化・形骸化を深く憂慮します。頼むから日本語をこれ以上痛めつけないでいただきたい」

 

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本と話題 日韓の歴史を知る本 植民地支配の事実を知り未来を開く

2020111

 徴用工問題をきっかけに日本の政府やメディアが韓国を非難し日韓関係が悪化しました。背景にある日本人の日韓の歴史への無知に対し歴史を学ぶための本の出版が相次いでいます。

日本の対外膨張

 山田敬男・関原正裕・山田朗著『知っておきたい日本と韓国の150年』(学習の友社・1000円)は朝鮮半島との歴史を学ぶのに最適です。明治維新以降の日本の歴史は、アジアの近隣諸国への対外膨張の歴史だと指摘。明治の初めから戦後までをたどります。

 朝鮮半島への膨張主義政策の結果、中国と覇権を争って日清戦争となり、朝鮮半島の確保を大きな要因として日露戦争となったこと、その中で朝鮮民衆がいかに日本の支配に抵抗し闘ったか、植民地支配の実態はどういうものだったかなど、多くの日本人の記憶・認識から抜け落ちている歴史がコンパクトにわかりやすくまとめられています。

 現在に至るまで日本政府が朝鮮の植民地支配を正当化し無反省であることが日韓の認識のギャップを生み、あつれきの元にあることが浮き彫りになります。

国際的に見ると

 纐纈(こうけつ)厚・朴容九(パク・ヨンク)編『時効なき日本軍「慰安婦」問題を問う』(社会評論社・2700円)は「慰安婦」問題を国際的な視野で見たとき、安倍政権(当時)と日本の右翼勢力がいかにガラパゴス化=外界から隔絶され世界の流れから取り残される=しているかを明らかにします。

 「慰安婦」問題はいま、日韓の問題から国際的な問題、尊重されるべき女性の人権を抹殺する問題と位置づけられていると指摘。また、元「慰安婦」が早晩みな亡くなる時を迎え、「その瞬間から『慰安婦』問題の無時効性が発効する」とし、国際的な視点を広げていくことが無時効性を担保する最良の方策だと強調します。2018年に韓国外国語大学で開かれた国際シンポジウムの内容をまとめたものです。

 安川寿之輔著『混迷する日韓関係打開の道』(ほっとブックス新栄・1000円)は「戦争責任・植民地支配責任は未来責任である」とのべます。日本軍「慰安婦」を「日本軍性奴隷」と明確に位置づけ、この問題に日本がどう向き合ってきたかをたどります。過去への誠実な謝罪と反省に立って再び同様の道に進むことを許さない、未来に向けた責任こそいま問われていると訴えます。

 韓国留学中に民主化運動を目撃し、韓国語教室を開いている村山俊夫著『つくられる「嫌韓」世論』(明石書店・2000円)は、韓国への反発・憎悪をあおる日本のメディアの報道や自民党議員などの発言を検証します。

 このほか、すでに書評欄で紹介した『日韓の歴史問題をどう読み解くか』(新日本出版社・2000円)や今後、紹介予定の『朝鮮半島を日本が領土とした時代』(同・1800円)も出ています。

 (西沢亨子)

 

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ジェンダー平等へ会合 党国会議員団、取り組み報告

20201021

 日本共産党国会議員団のジェンダー平等推進委員会(委員会責任者・高橋千鶴子衆院議員)は20日、国会内で会合を開きました。山添拓参院議員が事務局長(新)、本村伸子衆院議員、岩渕友参院議員が事務局次長(新)に就くことを確認しました。

 出席者は、国際人権問題、民法、性暴力、女性の政治参画、労働分野での平等、LGBT(性的少数者)―の各分野の動向や議員団の取り組み、団体・個人との共同の広がりを報告しました。

 紙智子参院議員は、フランスで発見された「慰安婦」問題での新しい資料などについて説明。井上哲士参院議員は、女性差別撤廃条約の選択議定書批准をめぐる国会論戦を紹介し、「(批准の)検討の加速が正しい方法」との答弁があったことなどを報告。本村議員は、フラワーデモや被害当事者団体、市民団体とさまざまな形で議員らが連携し、「性犯罪・性暴力対策の強化の方針」をつくらせてきたことなどを話し、意見が活発に交わされました。

 また、党中央委員会ジェンダー平等委員会と党国会議員団ジェンダー平等推進委員会が連名で、「第5次男女共同参画基本計画」策定に当たっての申し入れを行うことを確認しました。

 

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育鵬社教科書 激減したわけ 鈴木敏夫 子どもと教科書全国ネット21代表委員・事務局長

20201020

採択の公開制求める運動の成果

 今年はくしくも家永教科書裁判の杉本判決から50年にあたる。同判決が、家永三郎氏の教科書への検定を違憲・違法と断じ、子どもの学習権、国民の教育権を認めた結果、教科書採択において教員の意見を集約した学校票や教員が関わって教科書を採択する運動が1990年代に広がった。

教育委の独断と密室採択強いる

 そうした中、97年に「新しい歴史教科書をつくる会」(「つくる会」)が創設された。同会は、当時の教科書が「従軍慰安婦」の記述をしたことを「自虐史観」だと攻撃、2001年検定から自前の教科書を扶桑社から発行しはじめた。

 しかし、採択の結果は芳しくなかった。歴史研究の成果を無視した教科書は学校現場から支持されなかったからだ。彼らはそれを見越して、安倍晋三氏(当時「教科書議連」事務局長)などの協力で、教職員の投票などによる学校現場の教科書選択権を奪い、教育委員会の独断で教科書採択を行うよう「文部省通知」(00年、01年)を出させ、採択を増やしてきた。東京では石原慎太郎都知事が教育委員を入れ替え、全国にさきがけて01年に「つくる会」の教科書を公立学校で採択した。

 安倍氏も「首長が教育について信念を持っていれば、その信念に基づいて教育委員を替えていくのですよ」(12年、日本教育再生機構主催集会)と述べ、当時の中田宏横浜市長の教科書採択を絶賛した。

 「つくる会」らは、採択の際、教員による調査研究資料(教員の調査では育鵬社の評価は低かった)や、保護者も入った教科用図書選定審議会が教科書の評価を行い教育委員会へ答申を行ってきたのを攻撃した。

 上からの政治的思惑や圧力を受けた教育委員による密室での採択では、同審議会の答申が往々にして無視され、評価の低い育鵬社や自由社などの教科書が選ばれてきた。今回、育鵬社採択の多かった石川県や山口県の当該市は、今もって非公開で採択が行われ、結果もなかなか公表されない。

改憲発議許さず人権運動も高揚

 こうしたやり方に批判が高まり、今回、多くのところで、現場の声を軽んじることができなくなった。それは2000年代初めから、地域住民・教職員などが、教科書の採択を住民の前で理由をあげて採択するよう求め、教育委員会会議の透明性・公開制などを一貫して追求してきた結果である。その蓄積が今回の中学教科書の採択で集中的に現れた。

 学校現場からの批判も続いてきた。藤沢市では、実際に育鵬社歴史・公民教科書を使っている19校中17校の中学校教員からアンケートの回答を得た。それによれば、育鵬社の教科書は「使いにくい」が約80%、「使いやすい」は2%だった。こうした事実を突きつけ、運動を進めた結果、教育長が「(現場の先生方からの)調査書について、先生方の貴重なご意見なので大切にして、採択したい」と表明するようになった。

 私たち教科書ネットも教科書問題だけでなく、安倍政権の道徳教科化などの「教育再生」政策に対する批判、戦争法や憲法改正に反対する運動に参加してきた。運動の高まりで、16年以降、衆参両院で与党が3分の2の多数を得ても、改憲発議は実現しなかった。こうしたことが、「つくる会」教科書を推してきた日本会議などの足を止めた。ジェンダー、ヘイトスピーチ問題など人権をめぐる運動の高揚は教育委員にも影響を与え、育鵬社教科書の復古的な内容に対する批判も生まれてきた。

 育鵬社激減の要因を、「法律や制度の変更で『自虐的』とされた(慰安婦問題などの)記述が減り、以前と比べて教科書同士の差が縮まった」(「朝日」8月5日付)とする見方がある。これは長年の運動を軽視するものではないだろうか。

侵略戦争の美化 許してはいない

 育鵬社と同じような教科書の記述が増えているのは事実である。しかし教科書の基本的な考え方(コンセプト)として日本の侵略戦争や植民地支配を美化し、日本国憲法の基本原則を軽視し、その改正を強く打ち出すような教科書は育鵬社、自由社のほかにはない。

 教科書の“育鵬社化”は成功していない。今回の採択結果は、各地で「育鵬社などの教科書は子どもには渡せない」と地道に続けられてきた運動の成果である。

 

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ジェンダー平等の東京ともに 対談 作家の北原みのりさん 衆院東京12区・比例候補の池内さおりさん

20201019

北原みのりさん 本気の決意、行動で示して

池内さおりさん 暴力定義の法つくりたい

 次の総選挙で日本共産党の東京での比例4議席獲得と池内さおり東京12区・比例候補の勝利をと、17日夜、東京都北区で、池内候補と作家の北原みのりさんがジェンダー問題をテーマに対談しました。東京JCP Women’s Supportersと池内事務所の共催。

 フェミニストコメディアンの、あきおさんの軽快な話で開幕。自民党議員の「女性はいくらでもうそをつける」発言や北原さんらが呼びかけたフラワーデモ、医学部入試差別、コロナ禍でのジェンダー課題、日本軍「慰安婦」問題など、1時間にわたって語り合いました。

 この中で、10歳で市川房枝さんにあこがれたという北原さんは、若い女性の「女性が何かを諦めることで回る社会はおかしい」との言葉を紹介。「一番悔しい人は声を上げるのが大変。『その怒りや悔しさは正しい。あなたを信じる』という人や社会がないと声を上げられない」「With YouあってのMe Tooだ」と話しました。

 男尊女卑に苦しんだ母親との幼い日々が原点だと語った池内候補は「女性差別の結果としての暴力を定義する法律が必要。ここに挑む仕事をしたい」と強調。「政権を取って閣法(内閣提出法案)として国会に提案したいですね」と話すと大きな拍手が起こりました。

 最後に、北原さんは「(同問題に取り組む)共産党の決意は本気だとわかる。それを行動で示せるかも問われてくる」と期待を述べ、市民として世論を広げるとともに、党と池内候補を応援していきたいと話しました。

 看護師の大島野江子さん、角田由紀子、太田伊早子両弁護士、ライターのツルシカズヒコ、小川たまか両氏が党と池内候補への期待を語り、坂井和歌子衆院東京比例候補があいさつしました。

 

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明日をひらく 衆院比例候補 東京(定数17) 東京12区重複 池内さおり候補(38)

20201015

名もなき性被害の声 届け

 「政治は誰がやっても同じだとあきらめるのは終わりにしよう。個人の尊厳守り、暮らし最優先へ。正義や信頼が尊重される政治をつくりたいと言っている私がここにいます。日本共産党がいます。今度こそ総選挙で決着を」―雨天つく熱い訴えが、かさを差した会社員を振り向かせ、近隣の肉屋の主人の手を止めます。聴衆からは「あぁ元気もらえる」。

 衆院議員だった激動の3年間、忘れられないのは安保法制採決前夜、国会を包囲した市民の姿です。「あの時のドラムの音が節目節目で耳によみがえる」

 解体工事から市民参加でつくった事務所を構え、全国の市民や地元の他党議員らとの対話と共闘を重ねてきました。政権交代めざす今、「国会に戻って国民本位の政治の先頭に」(山口二郎法政大学教授)と、超党派の期待が寄せられます。

 培ったつながりでコロナ禍の声を聞き、虐待などで居場所がない少女たちに10万円の給付金が直接渡るよう実現。脆弱(ぜいじゃく)な立場の人ほど困難に陥り、社会や家庭での構造的差別にあえいでいます。

 「この国の女たちの地位向上に執念があります。日本軍『慰安婦』問題を心底から反省できる政治をつくると同時に、名もなき性暴力被害者の声を国会で明らかにしていきたい」

 安倍政治は日本に住む人々の尊厳や生活、政治への信頼を痛々しく傷つけ続けてきました。それを引き継ぐ菅政権を倒し、痛み癒やす“誰も置き去りにしない政治”へ、まっすぐ頑張り抜く決意です。

 いけうち・さおり 松山市生まれ。中央大学法学部卒。2014年から衆院議員1期。党都委ジェンダー平等委員会責任者。

 

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「少女像」は当面維持 ベルリン 設置団体 差し止め申請

20201015

 【ベルリン=桑野白馬】在独韓国人団体「コリア協議会」が「慰安婦」被害者を記憶するためベルリン市ミッテ区に設置した「少女像」に関し、撤去を指示していた区当局は13日、協議会が行政裁判所に暫定的な撤去差し止めを申請したため、像は当面維持されると発表しました。区は14日までの撤去を求めていました。

 フォンダッセル区長は声明で、裁判所の決定を待つとした上で「協議会と日本(政府)側の双方の利益になる妥協案を望む」と強調。「時、場所、原因にかかわらず、あらゆる女性への性暴力、特に戦時中でのものに強く反対する」と述べました。

 像は先月28日、市内住宅街の公有地に設置。区当局は当初、芸術作品として1年間の設置を許可していましたが、一転して今月8日に許可を取り消し、撤去を指示しました。

 13日には、像の撤去に抗議する集会が市内で行われました。

 

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杉田暴言は自民党の体質(下)世界の取り組みまで否定

20201014

 性差別と性被害者蔑視を行ったのは、自民党では杉田水脈衆院議員だけではありません。

 菅義偉首相・党総裁(当時官房長官)は、結婚した芸能人のニュースを受け、「これを機にママさんたちが子ども産みたいとか、そういう形で国家に貢献して」(2015年)などと述べ、“出産は国家のため”だと女性の人格と人権を無視した国家主義を振りまきました。

 麻生太郎副総理兼財務相は福田淳一財務次官(当時)のセクハラ事件で、「セクハラ罪という罪はない」(18年)と放言しました。

 下村博文政調会長も、被害者が福田氏の音声を録音して週刊誌に告発したことに対し、「隠してとっておいて週刊誌に売ること自体がはめられていますよ。ある意味犯罪だ」などと発言。その後発言を撤回しましたが、自分を守るために録音して告発した被害者を犯罪者扱いし、「売った」などと事実をゆがめたことには謝罪していません。

 19年に同党の田畑毅衆院議員(当時)が準強制性交容疑で刑事告訴された際には、同党は田畑氏を処分せず、伊吹文明元文科相・元衆院議長は派閥の会合で「問題にならないようにやらないと駄目だ。同じことをやるにしても」と性暴力をあおる発言まで行っています。

 杉田氏の発言が容認されているのは、こうした自民党の性差別と性被害者蔑視の体質によるものです。

支援への不見識

 杉田氏は、自身の発言を否定していた9月26日のブログで、部会での発言は、性暴力被害者を保護するワンストップ支援センターなど民間支援団体についてのものだとして、「被害者が民間の相談所に相談をして『気が晴れました』で終わっては、根本的な解決にはなりません」と述べて警察の関与と連携の強化を主張しました。

 しかしこれは事実に反します。同センターはすでに警察と連携しており、病院併設型のセンターでは傷の手当てや緊急避妊薬の処方、心のケア、証拠の採取、裁判支援など全面的、包括的な支援に取り組んでいます。

 “気が晴れましたで終わる”との認識は、支援事業に対する無理解を示すものです。

「慰安婦」問題も

 また、杉田氏は同日付のブログで日本軍「慰安婦」問題について「慰安婦問題と女性に対する暴力は全くの別問題」だと述べましたが、日本軍「慰安婦」の問題は、「女性に対する暴力」以外の何物でもありません。

 日本軍「慰安婦」問題は、女性が日本軍「慰安所」で監禁拘束され、強制的に兵士の性の相手をさせられ、性奴隷状態にあったという甚大な人権侵害であり、その事実は多数の被害者証言と旧日本軍の公文書で示されています。

 一方、1991年に元日本軍「慰安婦」だった金学順(キム・ハクスン)さんが初めて「戦時性奴隷」の実態を訴え出ると、93年の国連世界人権会議(ウィーン会議)は同問題を取り上げました。そうした会議をへて、ジェンダー平等実現に向けて「戦時性奴隷」はじめ「女性に対する暴力」は撤廃すべき国際課題になりました。日本軍「慰安婦」問題は世界の「女性に対する暴力」への本格的な取り組みの出発点にあります。

 杉田氏はこれまでも強制連行はなかったなどと、被害者の証言がうそであるかのような発言を繰り返していますが、さらに、世界の「女性に対する暴力」の撤廃の取り組みの歴史までもすり替えようとするものです。

 

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日韓の歴史をたどる(30)植民地支配責任 板垣竜太

20201014

戦後処理から抜け落ちたもの

 日本の歴史的責任といえば、まずアジア太平洋戦争の「戦争責任」が思い浮かぶ。日本と朝鮮半島のあいだの歴史問題でも、強制労働動員や日本軍「慰安婦」制度など戦時下の問題がまずあげられる。日本の侵略戦争が膨大な被害をもたらしたのだから、このことが筆頭に掲げられるのは当然である。

太平洋戦争前の反人道的な犯罪

 ただ、この「日韓の歴史をたどる」シリーズでも論じられてきた植民地下での三・一独立運動(1919年)や関東大震災での民衆虐殺(1923年)、あるいは植民地化過程での義兵の殺戮(さつりく)など、アジア太平洋戦争前に起きたことは、従来の戦争責任という枠組みでは、とうてい捉えきれない。そうした観点から提起されてきた概念が「植民地支配責任」である。

 植民地支配責任という考え方をとることで、アジア太平洋戦争以前、戦争中、戦後の日本の責任があらためて見えてくる。

 まず戦争以前でいえば、前述の虐殺等は単なる個別ばらばらの偶然の諸事件ではなく、植民地支配下だからこそ起きたものである。すなわち、植民地という「一つのシステム」(サルトル)が引き起こした反人道的な犯罪であるという観点から、一連の問題として見る必要がある。

内地ではなくて占領地でもない

 戦争中の問題に関していえば、日本軍「慰安婦」制度や戦時強制労働動員は、内地でも占領地でもなく、他ならぬ植民地だからこそ構造的に可能だった側面がある(『Q&A朝鮮人「慰安婦」と植民地支配責任』御茶の水書房)。内地では法的に禁じられていた未成年者の「慰安婦」としての動員は、植民地では、国際法適用の留保という抜け穴が用意されていたからこそ可能となった。異なる法制度を適用していたからこそ、援護施策のともなわない朝鮮人の戦時労働動員が広範におこなわれることになった。これらの問題は戦争責任と植民地支配責任が重なる領域にある。

 そして日本の「戦後処理」からは、いわば「植民地支配後処理」が抜け落ちてきた。極東国際軍事裁判(東京裁判)に際しては、在日朝鮮人や南北朝鮮から朝鮮総督府の罪を問う声があがっていたが、植民地の人々への加害に対する責任は問われないまま終わった。サンフランシスコ講和会議には、南北朝鮮も参加を希望していたが、かなえられなかった。その後、朝鮮半島の南の政権とは1965年に日韓条約が結ばれたが、北の政権とはいまだ何の「植民地支配後処理」もおこなわれていない。

問題を今に残す賠償なしの条約

 そして現在、この日韓条約が両国間の関係における問題の源泉となっている。韓国政府は当初より植民地支配の賠償を求めていたが、日本政府は当時の法令で支払うべきだったもの以外は考慮に入れようとしなかった。結局、日本からの資金をテコに「上」からの近代化を進めようとした朴正熙(パク・チョンヒ)軍事政権が妥結を急いだため、経済協力のみで賠償はなし、そして請求権は相互に放棄するという内容の条約が結ばれてしまった。

 このとき放棄された請求権は外交保護権とよばれるものである。被害を受けた個人が相手国や企業等に請求する権利(個人請求権)までが消滅したわけでないことは、当初より日韓共通の理解だった。ところが今世紀に入るころから、日本政府側は個人請求権の行使可能性を否定するようになった。

 一方、韓国では被害者や支援者の粘り強い取り組みの結果、個人請求権の継続を前提とした司法判断を勝ち取った。ここにあるのは両国間の日韓条約の解釈のズレであり、そこに解決すべき植民地問題があるのだが、日本政府はそれを「国際法違反」だと言いつのるのみである。

 こうして20世紀日本の植民地支配責任は、未済のまま21世紀を生きる私たちに相続されている。その過去を克服するところにこそ、未来の東アジアの平和と人権が開けてくる。

 *シリーズ「日韓の歴史をたどる」は今回で終わります。

 いたがき・りゅうた 1972年生まれ。同志社大学教授(朝鮮近現代社会史)。『朝鮮近代の歴史民族誌』、共編著に『日韓新たな始まりのための20章』『「慰安婦」問題と未来への責任』ほか

 

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杉田暴言は自民党の体質(上)発言“放免” 事態は深刻

20201013

 自民党の杉田水脈衆院議員(比例中国ブロック)が同党部会で性被害や被害者支援をめぐって「女性はいくらでもうそをつく」と暴言をはいた問題で、自民党は同氏に何ら処分を行っておらず(12日時点)、批判に開き直る態度を取り続けています。杉田氏は自身のブログ(1日付)で発言の事実を認めたものの、その重大な性差別と性被害者蔑視については認めず、発言も撤回していません。事態はいよいよ深刻です。

 性暴力の根絶を目指すフラワーデモが自民党に対して杉田氏の発言撤回と謝罪、辞職を求める署名は、12日時点で13万6000人分に上り、70の団体が賛同。しかし提出先の野田聖子幹事長代行は受け取る姿勢を示しておらず、デモは13日に署名を自民党に持ち込む予定です。

かばう政調会長

 こうした批判の広がりに対し、自民党は一貫して杉田氏をかばい続けています。世耕弘成参院幹事長は「今回が最後だ」(2日)と今回は処分しないかのように発言。下村博文政調会長は9月30日の杉田氏との同党本部での面談後、会見で「女性差別の意図はなかった」などと主張した杉田氏に対し、そうした「真意が分かるように、より丁寧に説明してほしい」と述べるにとどめました。

 そのうえ、下村氏は、杉田氏の発言の問題性について、部会の議論は非公開がルールだとしてコメントを拒否。杉田氏の発言が部会の「関係者」の証言として報道されたのは部会の「議論を萎縮させる恐れがある」などと述べて、“告発や報道の方こそ問題だ”と言わんばかりの姿勢を示しました。

 しかし、杉田氏の発言内容は、被害者が助けを求めるのも困難になるとして、WHO(世界保健機関)が「レイプ神話」(性犯罪などで広く信じられている偏見や誤解)の一つに規定するほど、性被害者への二次被害となっている言葉です。仮に「女性蔑視の意図がなかった」のであれば、発言の重大性に対する無自覚さを示すものです。

“真意が漏れた”

 杉田氏はこれまで、女性、貧困者、性被害者、民族、性的少数者など、社会的に脆弱(ぜいじゃく)な立場にある人々への差別発言を繰り返してきました。発言は“真意が漏れた”というものです。

 だからこそ政府からも、「党議員から性暴力被害者を傷つけるような発言があったのは大変残念だ」(8日、吉川赳内閣府政務官)、「(支援事業の職員らの努力を)踏みにじる発言だ」(9月29日、橋本聖子男女共同参画担当相)との批判が上がっているのです。

 問題を放置する自民党は同罪です。さらに杉田氏を比例代表で重用し、国会議員を続けさせてきた責任は重大です。杉田氏だけではない、自民党の差別的な体質が現れています。(つづく)

杉田水脈議員の暴言の数々

 「私は、女性差別というのは存在していないと思う」「(女性差別撤廃条約は)本当に受け入れるべき条約なのか」(2014年10月15日、衆院内閣委員会)

 「選択的夫婦別姓はまさしく夫婦解体につながる」(同)「男女平等は、絶対に実現しえない、反道徳の妄想です」(14年10月31日、衆院本会議)「実際シングルマザーはそんなに苦しい境遇にあるのでしょうか?」「『そんな男性を選んだのはあなたでしょ!』ということ」(『新潮45』17年9月号)

 「待機児童、待機児童っていうけど世の中に『待機児童』なんて一人もいない」(18年1月24日のツイッター)

 文部科学省の科学研究費の研究に対し、「ねつ造」「慰安婦問題は女性の人権問題ではありません」(18年4月11日のツイッターなど)

 山口敬之氏からの性被害を訴えた伊藤詩織氏に対し「女として落ち度がある」(18年6月のBBC放送)

 「LGBTのカップルのために税金を使うことに賛同が得られるものでしょうか。彼ら彼女らは子供を作らない、つまり『生産性』がない」(『新潮45』18年8月号)

 

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杉田氏暴言 自民に責任

総がかり ウィメンズアクション

2020109

 総がかり行動実行委員会は8日、東京・JR有楽町駅前で、「9条改憲NO!ウィメンズアクション」を行いました。冷たい雨のなか、女性蔑視発言を繰り返す自民党の杉田水脈衆院議員の辞職、菅義偉首相による日本学術会議会員の任命拒否撤回を求めました。

 司会の菱山南帆子さんは、杉田議員の暴言について「被害にあった女性を傷つけるもの。人の痛みを痛みと思わない人が議員でいることは許せない」と述べました。

 日本共産党の岩渕友参院議員は「被害者をおとしめ、女性を蔑視するもので、自民党の責任も重大だ」と強調。日本学術会議会員の任命拒否について「菅首相は、学問まで私物化しようとしている」と批判しました。

 新日本婦人の会の米山淳子会長は、杉田議員がジェンダー平等を敵視し、日本軍「慰安婦」を「ねつ造」と攻撃してきたと告発。「自民党の責任も重い」と語り、「いのちと暮らし、尊厳を守られる社会をつくりましょう」と述べました。

 

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発言認めるが撤回せず

自民・杉田議員が釈明

2020102

 自民党の杉田水脈衆院議員(比例中国ブロック)は1日、自身のブログを更新し、性暴力被害に関し「女性はいくらでもうそをつくものですから」と発言した問題で、これまでの発言の否定を一転し、認めました。しかし発言は撤回せず、「女性を蔑視する意図はまったくございません」と釈明。「発言で女性のみが嘘をつくかのような印象を与えご不快な思いをさせてしまった方にはお詫(わ)び申し上げます」と述べました。

 発言は9月25日の同党部会で、内閣府から来年度予算概算要求の性被害者への支援事業について説明を受けてのものですが、翌26日付のブログで否定していました。

 自民党の下村博文政調会長は30日に「真意が正確に伝わるよう、より丁寧な説明をする」ように「口頭注意」しました。

 杉田氏の発言撤回と謝罪、辞職を求める署名を行っているフラワーデモは10月1日、同氏のブログ更新を受け、「性暴力と性暴力被害者、支援者、および従軍『慰安婦』問題への理解がおよそまったくない、謝罪にあたらないものです。自民党は私たちの抗議の声を受け取ってください」と表明しました。

 

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おはようニュース問答

「女性はうそつく」自民・杉田議員の暴言許せない

2020102

 のぼる きれいな花だね。どうしたの。

 ふゆみ オンラインのフラワーデモに参加したときに買ったんだ。怒りが収まらなくて。

 のぼる 「女性はいくらでもうそをつける」という自民党の杉田水脈衆院議員の暴言に対する抗議デモだね。

撤回・謝罪なし

 ふゆみ 女性を差別し、性暴力被害に苦しむ当事者をさらに深く傷つける暴言だよ。杉田議員は発言をようやく認めたけど発言の撤回もせず謝罪にもなっていない。

 のぼる 到底許されないね。自民党の部会での発言だってね。

 ふゆみ 来年度予算の概算要求の性暴力被害者の相談事業について、内閣府から説明を受けたときの発言だよ。

 のぼる 前にフラワーデモで性被害当事者の話を聞いたよね。うそをつくどころか多くの人が自身の性被害を語ることもできず、沈黙を強いられてきたんだとわかり、胸が苦しくなった。

 ふゆみ 当事者や支援団体は警察や検察、周りから証言が疑われる実態を指摘している。その実態を悪化させ、被害者を追い詰める暴言だよ。

 のぼる 「#MeToo」やフラワーデモの運動で、当事者が勇気を出して声をあげ、性暴力をなくそうという流れが広がってきたのに、その声も運動も踏みにじる発言だよ。

 ふゆみ 杉田議員はこれまでも、性暴力被害を告発したジャーナリストの伊藤詩織さんをおとしめる言動をし、旧日本軍「慰安婦」問題も「ねつ造」かのような発言をしてきた。国会議員を辞めるべきだよ。

自民の責任重大

 のぼる 杉田議員を比例中国ブロックの高位に据え、放置している自民党の責任も重大だ。

 ふゆみ 橋本聖子男女共同参画担当相が「自民党が適切に措置すべき」と述べ、自民党の下村博文政調会長が「真意が正確に伝わるよう説明を」と注意したけど、これで幕引きなら同罪だね。

 のぼる 野党の国対委員長は自民党の責任を追及すると確認した。

 ふゆみ 杉田議員に発言の撤回と謝罪、議員辞職を求めるオンライン署名は12万人を超えて急速に広がっているよ。

 のぼる ぼくも署名する。抗議の声をしっかり届けよう。

 

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9月

自民・杉田氏の暴言に抗議

2020929

新婦人

 新日本婦人の会は28日、自民党の杉田水脈衆院議員の暴言の撤回、謝罪、議員辞職を求める抗議文を、杉田議員と菅義偉首相(自民党総裁)、橋本聖子・男女共同参画担当相に送付しました。

 杉田議員の発言は、被害者へのセカンドレイプ(2次被害)であり、当事者が声をあげるなかで進められている性暴力根絶への取り組みを後退させかねないと批判。これまで、男女共同参画法案を否定し、マイノリティーべっ視や日本軍「慰安婦」を「ねつ造」などとの発言を繰りかえしてきた人物を比例代表で公認した自民党の責任も重いと強調しています。

婦団連

 日本婦人団体連合会(婦団連)は28日、自民党の杉田水脈衆院議員の暴言に抗議し、同氏の議員辞職を求める柴田真佐子会長の談話を発表しました。

 発言は「性暴力被害者の尊厳を深く傷つけ、追い詰め、沈黙を強いる暴言であり、性暴力根絶に向けての動きを後退させかねません」と指摘。

 日本のジェンダー格差指数が153カ国中121位で、政治や社会に根深く存在する偏見や差別を取り除くべき役割が求められるなか、国会議員が性差別発言をすることは許されず、議員の資格はないとしています。

 

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2020焦点・論点 菅氏は官邸で何をしてきたか

元文部科学省事務次官 前川喜平さん

2020927

 菅義偉首相は約8年にわたり官房長官として、安倍政権を支えてきました。官邸で菅氏はどんな役割を果たし、何をしてきたのか―。文部科学省事務次官として政権中枢の一端を垣間見てきた前川喜平(きへい)さんに聞きました。

 (三浦誠)

 ―官僚として官房長官の菅氏をどのように見ていましたか。

 菅氏は安倍晋三政権を支えるため、権力基盤を維持・強化しました。安倍政権は「官僚を支配した」といわれますが、担当したのは菅氏です。

 官僚人事を握ったのが一番大きい。私は文部科学審議官と次官をした2年弱の間、大臣の了解を得た人事を官邸に覆されたことがあります。2016年4月に就任した文化庁長官の人事です。

 当時は文化庁の京都移転という課題があったので、行政官出身の長官がいいと考え、ある女性官僚を候補にしました。任命権者である馳浩文科相(当時)の了解をとって官邸に報告すると、杉田和博・官房副長官の感触もよかった。それが菅氏に上がってだめになった。その後、「菅氏は東京芸術大学の宮田亮平学長がいいと言っている」という話が伝わってきました。宮田氏で提案すると、すんなり通ったのです。

 宮田長官のもとで文化庁は昨年、日本軍「慰安婦」を象徴する「平和の少女像」などを展示した「あいちトリエンナーレ2019」への補助金を交付しない決定をしました。不交付決定に先立って菅氏は「補助金交付の決定にあたっては、事実関係を確認、精査して適切に対応したい」と述べています。宮田長官が政権の意に沿う人であることが、はからずもトリエンナーレで明らかになりました。

 ふるさと納税の問題点を菅氏に指摘した総務官僚(当時)の平嶋彰英さんが左遷されたことも霞が関では有名です。菅氏に盾突くと飛ばされる、お眼鏡にかなわないと出世できない、というのは霞が関の常識になりました。

 (1面のつづき)

行政私物化を隠蔽した 政権交代もう待てない

 ―安倍氏による「行政の私物化」も菅氏が支えたといえるのではないでしょうか。

 私は次官退任後、当時の安倍首相にまつわる加計学園疑惑で証言しました。安倍氏の「腹心の友」が理事長の加計学園が特例で獣医学部を設立できるよう政府が便宜を図った疑惑です。

 メディアの記事が出そうになったころ、官邸の和泉洋人首相補佐官からの働きかけがありました。文科省の藤原誠初等中等教育局長(現、事務次官)から「和泉さんから話を聞きたいと言われたら、対応される意向はありますか?」とショートメールが送られてきたのです。

 これ以上話すなという警告だったのでしょうか。面会に応じなかったら官邸は私が「信頼ならない人物」と人格攻撃にかじを切ってきた。私は文科省の違法天下り問題の責任をとって17年1月に自ら杉田官房副長官に辞任を申し出ました。ところが菅氏は会見や国会答弁で私が次官の地位に「恋々としがみついた」と批判したのです。事実を知りながら事実を曲げて発言したとしか考えられない。名誉毀損(きそん)です。

 加計学園疑惑ひとつとっても本来なら内閣が吹っ飛ぶ話です。菅氏は政権のスキャンダルを握りつぶしてきた。そのために官僚機構を思うままに動かした。人事で「アメとムチ」をふるうだけでなく、人格攻撃を平気でする。公正でも公平でもない、行政の私物化を隠蔽(いんぺい)させた。それが菅氏です。菅氏がいないと安倍政権はこれほどの長期政権にはならなかったでしょう。

 

 ―安倍政権から菅政権になって何が変わるのでしょうか。

 安倍政権以上に危険です。安倍氏の場合は経済産業省出身の「官邸官僚」と呼ばれる官僚が政策立案の中心でした。

 菅氏の場合はすでに子飼いの次官、局長が各省庁にいる。官房長官時代に各省庁の幹部を「私兵」として使える状態をつくっています。官邸官僚が政策立案を独占しなくても、すでに菅氏の言うことをきく官僚ばかりになっています。省庁が官邸に組み込まれて安倍政権以上に官邸を頂点として一体化するでしょう。

 官邸官僚でも一体化が進みます。安倍政権では安倍側近と菅側近という二種類の官邸官僚がいました。これからは官邸内も菅側近だけで一元化します。「安倍・菅政権」から「菅・菅政権」になったといえます。

 経済政策では、菅氏はビジョンも理念もない。ただ元総務相の竹中平蔵氏などブレーンがおり、新自由主義的な政策を強めるでしょう。

 私は安倍政権を継承した菅政権に対して、野党ははっきりと対立軸をつくることができると思っています。

 野党のスタンスは、一人ひとりの国民の生活を大切にすることが結果的に経済をよくするという方法論です。ワーキングプアになったり、路上生活したり、一家心中に追い詰められない、社会全体でセーフティーネットを張る。安心して暮らせる条件を整えれば、消費も伸び、経済が拡大します。内需中心の経済拡大になります。弱肉強食ではなく、格差をなくすことが経済拡大につながります。

 他方、菅政権は大企業に便宜をはかれば「トリクルダウン」で人々の生活にも恩恵が及ぶという考えです。しかしアベノミクスの8年間で国民の暮らしはよくなっていません。

 菅氏は今さらながら「規制改革」を主張しています。規制改革が経済成長の原動力になるというのは「神話」です。むしろ必要な規制をかけることの方が、新しい産業を生むと思います。人類にとって害になるものは規制しないといけない。そうすると人類にとって役立つものが新しい産業になっていきます。

 たとえば原発とか石炭火力は規制しないといけない。脱原発、脱石炭火力にしていけば、自然エネルギーは新しい成長産業になるはずです。

 

 菅氏は早期の解散・総選挙を狙っているように感じます。野党で一つの政権をつくってほしい。今度は初めて日本共産党が入る形の政権交代になります。ただ日本社会には共産党アレルギーがまだ残っています。安倍氏が国会で立憲民主党の議員に対して「共産党」と侮蔑(ぶべつ)の言葉としてヤジをとばしましたが、ああいう感覚は非常に危ない。

 私はいまの野党状況のなかで共産党はよく頑張っている、よく辛抱していると思っています。民主勢力が細かい対立は脇に置いて、大きな目標のため一つになるのは大切です。違いを乗り越えて手を結ぶ。そうしないと数と力と利権で一緒になっている相手に勝てない。市民と野党の共闘を応援します。政権交代を、これ以上待っていられません。

 まえかわ・きへい 1955年奈良県生まれ、79年東京大学法学部卒、文部省(当時)入省。文部科学省初等中等教育局長、文部科学審議官などを歴任。2016年6月から17年1月まで文部科学省事務次官。

 

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主張 杉田議員の暴言

どこまで尊厳踏みにじるのか

2020927

 自民党の杉田水脈衆院議員が、性暴力被害の相談事業などがテーマになった党内の会議で「女性はいくらでもうそをつけますから」と発言しました。性暴力に苦しむ被害者をおとしめ、女性を侮辱する許し難い暴言です。性暴力の根絶を願って自らのつらい被害体験について勇気をふるって語り始めた女性たちを深く傷つけ、尊厳をあからさまに踏みにじるものです。杉田議員は、かつてLGBTs(性的少数者)を侮蔑し、批判を浴びました。政治家としての資格がないのはいよいよ明白です。議員を辞職すべきです。

被害者に沈黙を強いる

 杉田議員の発言は、自民党の内閣第一部会・第二部会合同会議(25日)でのものです。内閣府が女性政策をはじめ2021年度予算の概算要求について説明し、性犯罪・性暴力被害者が直ちに相談でき必要な支援を受けられる「ワンストップ支援センター」増設の方針などが示されました。杉田議員の発言は、その質疑の中であったと報道されています。同議員は会議後、「そんなことは言っていない」と述べましたが、会議に出席した複数の関係者は、発言があったことを認めています。

 杉田議員の発言が深刻なのは、性暴力被害にあった女性たちを再び傷つけ、追い詰め、沈黙を強いるものだからです。被害者が悩みに悩み抜いて勇気を出して相談しても、証言が疑われる場合が少なくありません。信用されないことを恐れて泣き寝入りし、被害が顕在化せず温存される悪循環が大きな問題になっています。

 いまだ社会に根深くある偏見や性差別をただすことが政治に求められる役割なのに、被害者に向かって「うそをつける」などと心ない言葉を投げつけることは、到底許されません。

 杉田議員は、自ら受けた性暴力被害を告発したジャーナリストの伊藤詩織さんを誹謗(ひぼう)中傷するツイッターに賛同を示す「いいね」を押し、伊藤さんから損害賠償を求める裁判も起こされています。旧日本軍「慰安婦」問題でも、女性たちへの性被害は「ねつ造」であるかのような不当な攻撃をしています。女性の人権と尊厳を奪った行為を肯定し、痛みを感じない態度はあまりに重大です。

 性暴力被害の根絶をめざす取り組みが、世界的な「#MeToo運動」として大きなうねりとなり、日本では、「フラワーデモ」が各地で広がっています。性暴力被害にあった当事者たちが胸に秘めてきた痛切な思いを声に出したことが、政治と社会を動かし、歴史を前に進める大きな力へ発展しています。声を上げる被害者を侮蔑する杉田議員の発言は、世界の流れにも完全に逆らうものです。

自民党の姿勢が問われる

 杉田議員は2018年、LGBTsカップルに「生産性」がないなどとする差別的な暴言を月刊誌に寄稿し、国民の怒りをかいました。しかし、同議員は暴言を撤回せず、自民党は形ばかりの「指導」でうやむやにしました。今年1月の衆院本会議では、選択的夫婦別姓導入を求めた野党議員の質問時の杉田議員のやじが大きな問題になりました。自民党は、人権侵害の言動に無反省な杉田議員を不問にし続けるのか。17年総選挙で比例中国ブロックに同氏を擁立した同党の責任が厳しく問われます。

 

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性被害者おとしめる MeToo運動への挑戦

自民・杉田議員の暴言

2020927

 自民党の杉田水脈衆院議員が25日の同党部会の会合で、政府からのヒアリング中に、性暴力、性犯罪被害に関して「女性はいくらでもうそをつける」と述べたことは、「望まない性交」などで身体と精神、尊厳を傷つけられた性被害の当事者をさらにおとしめるもので、極めて悪質です。杉田氏に議員の資格はありません。

女性蔑視の発言

 「女性はうそをつく」という物言いは、ジェンダー・バイアス(偏見)に基づくものであり、公の場での女性蔑視の発言です。

 さらに関係者によると、杉田氏の発言は、内閣府による来年度予算概算要求での性暴力被害者の相談事業をめぐってなされました。

 内閣府の「男女間における暴力に関する調査」(2017年12月)では、「無理やり性交等された被害経験」があると回答した人のうち、「恥ずかしい」「相談しても無駄」などの理由で「どこ(だれ)にも相談しなかった」のは女性で6割、男性で4割に上っています。一方、当事者や支援団体は、警察・検察や周囲の人間から証言はうそではないかと疑われるなどして信用されない状況があると指摘しています。

 こうした実態を踏まえれば、杉田氏の発言は、被害の申告が信用されない状況をあおり、相談できない当事者をさらに追い込み、被害を訴えた当事者を否定するという何重にも深刻な二次被害(セカンドレイプ)に他なりません。

 性被害が語られ、受け止めるフラワーデモはじめ日本と世界での「#MeToo」運動に対する、反動的な挑戦(バックラッシュ)だと言えます。

人権踏みにじる

 杉田氏はこれまでも、旧日本軍「慰安婦」問題で、被害が「ねつ造」であるかのような発言を繰り返し、山口敬之元TBSワシントン支局長による性加害を訴えたジャーナリストの伊藤詩織さんに対し、英BBCの取材に「明らかに女としての落ち度があります」と述べるなど、当事者をおとしめてきました。

 国会では、女性差別撤廃条約を「本当に受け入れるべき条約なのか」(14年10月15日、衆院内閣委員会)といって敵視し、男女平等を「反道徳の妄想」(同10月31日、同本会議)というなど、ろこつに差別主義の言動を行ってきました。

 杉田氏は安倍晋三前首相の下で衆院中国ブロックの比例候補(17年、比例単独1位)に抜てきされました。安倍政権下では、閣僚や自民党幹部が女性を“産む道具”とみなし、女性の人権と人格を踏みにじる発言を繰り返しました。

 杉田氏の発言は自民党の部会でなされたものであり、「放置するなら自民党も同罪」(日本共産党の志位和夫委員長のツイッター)です。菅義偉自民党総裁の姿勢が厳しく問われます。

 

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「女性うそつける」と暴言

性暴力被害で 自民の杉田衆院議員

2020926

 自民党の杉田水脈衆院議員(中国ブロック比例)が25日、党内会合で、女性への暴力や性犯罪に関し「女性はいくらでもうそをつけますから」と発言していたことが分かりました。会合に参加した関係者が認めました。女性と被害者を蔑視する暴言です。

 杉田氏が来年度予算の概算要求をめぐって女性の性暴力被害への相談事業について述べる中での発言です。

 杉田氏の発言は明白な女性蔑視です。さらに性被害の当事者の申告がなかなか信用されない実態があるもとで、そうした風潮を助長するものであり、二重に許されません。

 杉田氏は、これまでも旧日本軍「慰安婦」や性的少数者に対する差別・蔑視発言を繰り返しており、今年8月には、元TBSワシントン支局長の山口敬之氏からの性被害を訴えたジャーナリストの伊藤詩織さんを「胡散臭(うさんくさ)い」などと中傷した多数のツイート投稿に「いいね」ボタンを押したことについて、伊藤さんから損害賠償請求の裁判を起こされています。

 杉田氏は会合後、記者団に「そんなことは言っていない」と述べたといい、本紙の取材に関係者の一人は「自分で説明すべきだ」と述べました。

 

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菅新政権 各国メディア論評

2020918

「安倍の影」が継承

仏紙 「報道の自由に圧力」

 フランスの有力紙ルモンド15日付は、「安倍の影、菅が継承」と題する東京特派員2人の連名記事を掲載しました。記事では、菅氏は、外交政策も通貨政策も環境への「無関心」も安倍前首相と同様で、「安倍の影」と評しています。

 菅氏は政府報道官として、「辛辣(しんらつ)なジャーナリストを邪険に扱い、日々の記者会見を無味乾燥にした」とし、メディアへの圧力は、「とりわけ報道の自由に対する陰険な圧力となった」と批判しています。

 また、安倍政権のさまざまなスキャンダルをうまく「切り抜け」、河井前法相夫妻の票買収事件でも「新たな調査すべてに反対」したと指摘。「菅辞めろ」のハッシュタグがネットで拡散していることも紹介しています。

植民地支配の反省を

韓国紙 「慰安婦」徴用工問題も

 菅政権発足に対して韓国のメディアは一様に、安倍政権の姿勢から脱して対話と協力に踏み出すよう呼び掛けました。

 東亜日報15日付の社説は、「隣国を感情的に無視して歴史を否定する関係は、両国にとって『戦略的に』役立たない」と指摘し、「安倍政権の影から脱して新しい地平を開くことを期待する」と日本側の変化を要求。中央日報15日付の社説は、「歴史をめぐるあつれきが直ちに消えるわけではない」とした上で、新型コロナ対策、北朝鮮の核・ミサイル開発、対中国政策、北東アジア地域の秩序などを協力すべき課題として挙げました。

 ハンギョレ紙は15日付社説で、日韓関係悪化の原因となった「慰安婦」と徴用工問題について、「植民地支配に対する真摯(しんし)な反省と責任意識を日本に求める原則は守りながらも、外交チャンネルを通じた持続的な協議で意見の違いをせばめていけば、現実的な解決策を見いだせる」と強調。京郷新聞の15日付社説は徴用工問題に関して、「韓国に解決の責任を押し付けて、韓国が提示した解決法に対する一貫して誠意のない態度から脱して、実利外交を行うべきだ」と求めました。

“女性閣僚 2人しか”

米2紙 「女性活躍」どこに

 新しく誕生した菅新政権の顔ぶれについて、米国を代表する2紙は、女性閣僚の少なさに注目しています。

 ワシントン・ポスト紙は、「いつもと同じ男性ばかりで、女性は2人しかいない」と始まる文章で、菅政権の誕生を伝えました。日本・韓国支局長のデニア氏による記事は、「先進国の一部では、職場での構造的差別とジェンダー不均衡に取り組むなか、日本の政府は多かれすくなかれ、しれっと、いつも通りを続けている」と紹介。「菅氏が、16日夜に閣僚を発表した際、20人の強力な顔ぶれのなかに女性はわずか2人。彼の前任者の指導部よりも1人少ない」と述べ、“女性活躍”などどこ吹く風の政権の陣容を痛烈に皮肉っています。

 菅氏は、自民党の強力な派閥の領袖から支援を受けており、「菅氏の最初の閣僚に見たことのある顔が多いことはそれほど驚くことではない」と指摘。麻生太郎氏の入閣については、「長年にわたる男女差別主義で国粋主義、いつもの無神経な発言にもかかわらず、副首相と財務相の職を維持した」と伝えました。

 ニューヨーク・タイムズ紙も、リッチ東京支局長が、「新首相の選んだチームは、顔なじみの男たちと、より少ない女」と題し、新政権の顔ぶれは、安倍首相のもとで仕事をしていた閣僚たちで独占され、「現状維持内閣だ」と紹介。この布陣は、「安倍首相の看板政策を継続する意欲」を示す一方、「ほとんど果たされなかった誓いだったが、(安倍首相が掲げた)女性活躍には扉を閉ざしたようだ」と指摘。「閣僚の女性の数が3人から2人に後退」し、顔ぶれも変わっていないと伝えました。

 

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徳島県女性協議会会長 立場違えど一緒に

共産党・白川候補と懇談

2020913

 日本共産党の白川よう子衆院四国ブロック比例候補は11日、徳島県鳴門市で県女性協議会の大寺禮子会長と懇談しました。

 大寺氏は、ボスニア・ヘルツェゴビナを訪れた体験を生々しく語り「戦争は子どもと女性が最も犠牲になる、戦争だけは絶対にダメ」と強調。白川候補が「従軍慰安婦問題などへの日本の無反省が対韓関係を悪化させている」と述べると、大寺氏は「侵略の歴史は変えられない。日本政府はなぜ反省しないのか」と怒りを込めました。

 白川候補が「四国選出の衆議院議員に女性が1人もいない」と紹介すると、大寺氏は驚き「比例代表で女性議員を増やす必要がありますね」と応じました。

 白川候補が「幅広い意見を取り入れ、一致点で共同するのは素晴らしい」と語りかけると、大寺氏は「立場は違っても、ご一緒できると思っています。共産党が変化したから。かつては拒絶されたが今は譲歩してくれる」と述べました。

 白川候補は「共産党が変化したのではなく、みなさんが共産党の姿をまっすぐに見てくれるようになったからです。連合政権をめざすのは党の一貫した方針です」と党綱領を手渡すと、大寺氏は「読ませていただきます」とこたえました。

 

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8月

 

安倍首相辞任 各国の報道

政治的にも経済的にも新鮮なスタートが必要 欧州各紙

2020830

 【ベルリン=桑野白馬】安倍晋三首相が28日に辞任を表明したことに対し、欧州各紙は厳しい論調を展開しています。

 独誌『シュピーゲル』(電子版)は28日、「日本は政治的にも経済的にも新鮮なスタートが必要だ」とするコラムを掲載しました。日本経済が縮小を続けていると指摘し、安倍首相の経済政策は「近視眼的」で「失敗」と断定。安倍首相の「1強体制」のもとで「自民党内から新しい提案は出てこなかった」と指摘しました。

 新型コロナウイルス対策について、安倍政権の「カオス(混沌=こんとん=)な危機管理」が感染再拡大を招いていると批判。「新首相は何よりもこの危機に対応する必要がある」と強調しました。

 また、「女性活躍」をうたったものの、閣僚に女性が少なく、多くの女性が非正規雇用で働かざるを得ない現状があると批判。貧富の格差も拡大しているとし、「安倍首相の“雇用の奇跡”は消えうせた」と主張しました。

 外交に関しては「次期首相は孤立している外交政策に対処する必要がある」と指摘。「ナショナリストの態度で中国や韓国を幾度となく刺激した」などと批判しました。

 仏紙ルモンドは「危機時におけるみじめな指導者だった」と酷評。国会を開かず数々の疑惑に説明責任を果たさなかったことや、新型コロナ対応への遅れを批判しました。

 英BBCは「安定と不祥事」と題したコラムで、「えこひいきや、公文書の改ざん・廃棄などの不祥事が相次いだ政権だった」と指摘しました。

右傾化もたらした 韓国各紙

 安倍晋三首相の辞任表明について、韓国各紙は29日付で社説やコラムなどを掲載しました。

 ハンギョレ新聞は、「安倍首相が在任期間中、日本は急激に右傾化した」と指摘。また「何よりも『嫌韓』を政治的に悪用し、韓日関係を大きく悪化させた」と強調し、「安倍首相の辞任が、最悪の状況に陥った韓日関係を改善する出発点になることを期待する」と求めました。

 東亜日報は「歴史修正主義的な観点で過去の歴史を美化しようとする傾向を見せ、戦争可能な普通の国づくりにこだわり、周辺国との摩擦をもたらした」と指摘しました。

 朝鮮日報は、靖国神社の参拝や「慰安婦」被害者に謝罪の手紙を送る考えは「毛頭ない」と発言した国会答弁などを紹介。「徴用工裁判について『国際法違反』と主張し、過去にはなかった貿易報復によって対抗した」とし、「露骨な韓国たたきを行ってきた。次の日本の首相は『嫌韓政治』をしてはならない」と述べました。

 

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日本被団協にマスク1万枚

韓国の被爆者から届く

2020821

 日本原水爆被害者団体協議会は20日、韓国原爆被害者協会からマスク1万枚余りが17日に届いたと発表しました。

 コロナの感染拡大で、日本がマスク不足に陥っていたことから、韓国の被爆者、被爆2世、日本軍「慰安婦」被害者らが寄付し、日本被団協に届けました。

 箱には、日本語で、「韓国原爆被害者協会は、広島と長崎の原爆による韓国人被害者たちを会員としている社団法人です。世界的にコロナ19が終焉(しゅうえん)せず外部活動は制限的で困難な時期だが、早い時期に静かになることを願いながら、日本の被爆者のために発送しますので、よろしくお願いします」と書かれた紙が貼られているといいます。日本被団協は、各都道府県に発送し、各地から感謝の電話やメールが寄せられていると語っています。

 

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終戦75年 憲法守る党大きく

さいたま・川口市 塩川・伊藤・梅村氏訴え

2020816

 埼玉県では、日本共産党の塩川鉄也衆院議員、伊藤岳参院議員、梅村さえこ衆院北関東ブロック比例候補が、さいたま、川口両市で終戦記念日宣伝に取り組み、おくだ智子衆院埼玉2区候補、村岡正嗣県議、市議らとともに訴えました。

 伊藤氏は、地元での差別を恐れて遠くの病院に通っているという被爆者の女性の声を紹介し「国は『黒い雨』裁判の控訴を取り下げ核兵器禁止条約に直ちに署名すべきです」と強調。梅村氏は性暴力に反対する「フラワーデモ」が全国に広がっていることに触れ「日本軍『慰安婦』問題など、戦争では多くの女性や子どもが犠牲になります。ジェンダー平等、性暴力のない誰もが尊重される社会を実現するためにも憲法を守りましょう」と呼びかけました。

 塩川氏は、安倍政権の下で9条改憲が狙われ、航空自衛隊入間基地(狭山市、入間市)などの強化が進められているとして「海外で戦争できる自衛隊にするのは認められないとの立場で、野党の共同を進めます。来る総選挙で、野党共闘、共産党を大きく伸ばしてください」と訴えました。

 

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「慰安婦」メモリアルデー「戦争はまだ終わらず」

日本の謝罪・補償を要求

2020816

 【ベルリン=桑野白馬】日本軍「慰安婦」国際メモリアルデーの14日、ベルリンのブランデンブルク門前広場で、日本政府が「慰安婦」問題で公式に謝罪・補償することや、すべての戦時性暴力の根絶を求める集会が開かれました。参加者は「慰安婦」被害者の写真や「日本政府は謝罪と補償を」と書いた横断幕を掲げてアピール。昨年に続き、日本軍「慰安婦」を象徴する「旅する平和像」が置かれました。

ベルリンで女性ら集会

 在独韓国人団体「コリア協議会」、日本人女性で作る「ベルリン女の会」のほか、ドイツの人権団体やスーダンの女性団体が支援団体に名を連ねました。

 コリア協議会は集会実施にあたっての声明で、第2次世界大戦の終結後75年が経過しても「日本政府は公式な謝罪を拒んでいる。『慰安婦』被害者にとって戦争はまだ終わってない」と強調。現在も世界中の女性があらゆる形態の被害に苦しんでいるとして、たたかいを継続していくと表明しました。

 ドイツ西部のケルンに本部を置く女性の権利擁護団体「メディカ・モンディアーレ」のサラ・フレンベルクさんは「ドイツ政府と国際社会が戦争や紛争下での性暴力を根絶するため努力し、被害女性の支援を適切に行うよう求める」と発言しました。

 スーダンの女性団体に所属する大学生、ミヘラさん(23)は「紛争下での女性を標的とした性暴力や殺人はスーダンでも顕著だ。全世界で今も起こっている問題なので、日韓の女性たちに連帯し活動を続けていきたい」と語りました。

 

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防衛白書を読む(3)

韓国との「幅広い防衛協力」削除 関係悪化・冷却化反映

2020815

 2020年版「防衛白書」は、同盟を結ぶ米国以外の国との関係を記述した安全保障協力の項目で、19年版にあった「韓国との間で幅広い分野での防衛協力を進めるとともに、連携の基盤の確立に努める」との記述を削除しました。最近の日韓関係の悪化・冷却化を反映したとされます。

 19年版では、韓国艦の自衛隊機への火器管制レーダー照射や日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)終了をめぐる問題などを挙げ韓国を非難。安全保障協力の各国の記載順で韓国を4番目に“格下げ”していました。

 日本共産党は第28回党大会の第一決議で、日韓関係悪化について「根本的原因は、安倍政権が、『徴用工』問題でも、日本軍『慰安婦』問題でも、過去、日本が犯した植民地犯罪に真剣に向き合おうとせず、被害者の方々の名誉と尊厳を回復する責任を投げ捨てていることにある」と指摘しています。

 

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戦後75年 いま問われるのは―日本の植民地支配と侵略戦争

アジア2000万人 日本人300万人が犠牲

2020815

 日本は日清戦争(1894〜95年)で台湾を中国から奪い、日露戦争(1904〜05年)で韓国(朝鮮)を保護国化するとともに南満州(中国東北部)を勢力範囲とし、アジアで唯一の帝国主義国として、アジア諸国にたいする侵略と戦争の道を進みました。

元「慰安婦」、元徴用工への賠償・補償求める運動続く

 日本は1910年に韓国を併合し、19年、独立万歳を叫ぶ朝鮮民族の独立運動(三・一運動)を徹底的に弾圧しました。第1次大戦中の15年には中国に対して権益拡大の21カ条の要求を突きつけ、中国大陸への野望をあからさまにしました。

 31年、日本軍(南満州鉄道の沿線保護を任務とする関東軍)が謀略で現地軍との戦端を開き(満州事変)、32年にかいらい国家「満州国」をでっちあげ、世界から非難されました。37年には北京近郊で中国に駐屯する日本軍と中国軍が衝突したのを機に、中国への全面侵略戦争を開始。南京では虐殺事件を引き起こしました。

 この侵略戦争の過程で、朝鮮、台湾は日本の兵たん基地、前進基地とされました。侵略戦争の進展とともに韓国では多数の女性が「慰安婦」とされ、多くの徴用工が過酷な労働に従事させられました。また、「皇民化政策」として朝鮮人固有の姓を廃止して日本式の名前を名乗らせる「創氏改名」が強行されました。

 中国との泥沼の長期戦に陥った日本は40年、ナチス・ドイツ、ファシスト・イタリアと3国軍事同盟を締結し、ヨーロッパでのドイツの「電撃戦」の勝利に乗じて、石油などの重要資源の確保と米英などの中国支援路を断ち切ることを目的に仏領インドシナに武力進出し、英米との対立を決定的にしました。

 中国からの撤兵を求めるアメリカに対して、日本は41年12月、ハワイ真珠湾の米軍基地、英領マレー半島に先制攻撃を行い、中国侵略の戦争をアジア・太平洋全域に拡大しました。

 当初優勢だった日本軍は42年のミッドウェー海戦、ガダルカナルなどソロモン諸島方面での戦いの敗北で守勢に回り、勝ち目のない絶望的なたたかいを続け、日本全土への空襲、沖縄戦、広島・長崎への原爆投下、ソ連の対日参戦を経て、45年8月、日本の降伏条件を定めた連合国のポツダム宣言を受諾し、降伏しました。

 日本の侵略戦争は、2000万人を超えるアジア諸国民と300万人を超える日本国民の命を奪いました。日本軍兵士も、補給を無視した無謀な作戦で、犠牲者の約6割は広い意味の餓死だったとされます。

 戦争と植民地支配の傷痕は戦後75年を経てもいまだに残り、韓国では日本政府に対し元「慰安婦」、元徴用工への賠償・補償などを求める運動が続いています。

日本の侵略戦争と植民地支配の歴史

1868年  明治維新

 74年 台湾出兵(初めての海外派兵)

 75年 江華島事件

 76年 日朝修好条規(江華条約・対朝鮮不平等条約)

 94年 日清戦争(台湾の植民地化、〜95年)

1900年 義和団運動鎮圧の干渉戦争

 02年 日英同盟

 04年 日露戦争(韓国の支配権獲得、〜05年)

 同年 第1次日韓協約

 05年 第2次日韓協約(外交権を奪取)

 07年 第3次日韓協約(内政の全権掌握)

 10年 「韓国併合条約」(韓国・朝鮮の植民地化)

 14年 第1次世界大戦(〜18年)

 15年 「対華21カ条要求」

 31年 「満州事変」(関東軍が「満州」占領)

 33年 国際連盟からの脱退

 37年 盧溝橋事件、日中全面戦争開始

 39年 第2次世界大戦開始

 40年 日独伊三国軍事同盟

 41年 真珠湾攻撃、アジア・太平洋戦争開始

 45年 ポツダム宣言受諾

 

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戦後75年 いま問われるのは―日本の植民地支配と侵略戦争

京都大学教授 永原陽子さん

2020815

植民地主義の不正問う国際的な潮流に合流を

 本年5月末の米国での白人警察官による黒人男性ジョージ・フロイド氏虐殺事件に端を発する「黒人の命は大切だ(ブラックライブズマター)」運動は、いま世界で構造的な人種差別と奴隷制や植民地支配の過去を問う動きへと広がっています。

 英国のブリストルで、奴隷貿易商人コルストンの銅像が市民によって海に投げ込まれると、自らもジャマイカのルーツを持つリース市長は、市内の記念碑を点検すると表明しました。

 オックスフォード大学では、英帝国主義のアフリカ支配を象徴する人物セシル・ローズの像の撤去が決まりました。背後には、5年前に南アフリカで始まった「ローズを倒せ」運動があります。

 一方、中央銀行のイングランド銀行は、過去の同行総裁らが奴隷貿易に関与したことを謝罪し、それらの人物の肖像の展示を取りやめることとしました。

 ベルギーでも、19世紀末から20世紀にかけてコンゴで残虐の限りを尽くした国王レオポルド2世の像が批判の的となり、6月末のコンゴ独立60周年の日にはフィリップ王がコンゴ大統領あて書簡で、植民地支配下の残虐行為にかんする「深い悔恨」の念を表明しました。

 フランスのマクロン大統領は、アルジェリア支配の誤りに言及し、フランスによる征服の過程で「処刑」したアルジェリア人抵抗者の遺骨を返還しました。

せめぎ合い激化

 フロイド事件を機に一気に顕在化したこうした動きの起点に、国連の「ダーバン宣言」(2001年)があります。奴隷貿易・奴隷制を「人道に対する罪」とし、植民地支配を「遺憾」とした同宣言は、それらの歴史的「罪」への謝罪と償いを求める旧植民地諸国と、それへの応答を迫られた旧植民地領有国との間のせめぎ合いの産物でした。そのせめぎ合いはこの間、ますます激しくなっています。

 植民地戦争の被害者からの補償を求める法廷闘争に加え、近年とくに注目されるのが、略奪された文化財や、虐殺・処刑された住民の遺骨の返還を求める動きです。

 18年にマクロン大統領の委嘱により作成されたフランスの文化財返還のリポートは、アフリカ植民地への全面的な返還を主張したものとして大きな議論を呼びました。現在、ヨーロッパ各国の博物館や大学では、「植民地主義的な文脈」で獲得されたものを返還することが常識となりつつあります。

 こうして社会のさまざまなレベルで、植民地主義のもたらした個々の不正義をただす動きが活発になる一方で、植民地支配そのものを不当とすることに対する各国政府の抵抗は根強く、何よりもそれを妨げようとしてきたのがアメリカ政府です。

不平等の根本は

 国連のグテレス事務総長は南アフリカのアパルトヘイト(人種隔離政策)を終わらせたネルソン・マンデラの誕生記念日(7月18日)の講演で、コロナ危機のなかで深刻化する不平等の根本的背景として、植民地主義と家父長制の存在を指摘し、「グローバルサウス」への連帯の重要性を強調しました。

 日本でも、「慰安婦」問題や「徴用工」問題をはじめ、植民地主義と戦争の過去に真摯(しんし)に向き合おうとしない政府に対し、市民のレベルで植民地支配を受けた人々の声に耳を傾け事実を明らかにしようとする努力が積み重ねられてきました。いまこそそれをさらに強め、政府を植民地主義の不正を正面から問おうとする世界の潮流に合流させなくてはなりません。(聞き手・日隈広志)

 ながはら・ようこ 1955年、東京都生まれ。京都大学教授(歴史学)、専門は南部アフリカ史、帝国主義史。『「植民地責任」論』など。

 

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「慰安婦」証言の日 文韓国大統領がメッセージ

被害者中心の解決が原則

2020815

 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は14日、中西部・天安市で開かれた政府が主催する「『慰安婦』被害者をたたえる日」の式典にメッセージを寄せました。文氏は「問題解決の最も重要な原則は被害者中心主義だ」と述べ、政府として被害者が受け入れられる解決策を模索するという立場を改めて示しました。

 8月14日は、1991年に「慰安婦」被害者の金学順(キム・ハクスン)さんが初めて公で証言した日です。

 文氏は、この証言に勇気を得た被害者たちが「自身が経験した苦痛を世に知らせ、歴史の証人として女性の人権と平和の価値を実践してきた」とたたえるとともに、「慰安婦」問題の解決に向けた運動は、「国際社会でも人類普遍の女性人権運動であり、世界的な平和運動として認識されている」と強調。被害者の尊厳と名誉の回復に向け「最善の努力を尽くす」と表明しました。

 

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戦後75年 wam(アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」)館長 渡辺美奈さんに聞く

「慰安婦」問題 正義への権利求め

2020815

 戦後75年のこの夏、wam(アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」)では、特別展「朝鮮人『慰安婦』の声をきく〜日本の植民地支配責任を果たすために」を開催中です(11月末まで)。女性たちの証言から何が見えてくるのでしょうか? 館長の渡辺美奈さんに聞きました。

 (手島陽子)

 戦争がない世紀をつくりたいとの願いもむなしく、今も世界中で武力紛争が続き、女性たちは性暴力を含めたさまざまな恐怖にさらされています。

性暴力残酷に

 女性たちへの差別と暴力は、平和な状況下でも存在しますが、武力紛争下ではエスカレートしてより残酷になります。国連の特別報告者として、戦時性奴隷制について報告したゲイ・マクドゥーガルさんは、「戦時性暴力をなくすのに何が必要か?」との質問に、「女性に対する暴力をなくすこと、そして戦争をなくすこと」と答えました。どちらも壮大なテーマですが、一歩一歩変えていくしかありません。

 2018年のノーベル平和賞は、武力紛争下での性暴力とたたかう2人に贈られましたが、受賞スピーチで印象的だったのは、性暴力の加害者を裁くこと、正義を実現することを国際社会に求めたことでした。武力紛争下で性暴力を受けて、どうにか生き延びたとしても、その被害を告発するのは極めて困難です。平和がなければ、法が機能していなければ、女性にとって告発は死を意味しかねません。

 加害者は圧倒的な力関係を背景に、被害者に沈黙を強います。それは「平和」な日本でも同じです。「平和」とカッコでくくったのは、性暴力被害を受けた女性たちにとって「平和」とは何か、いつも立ち止まって考える必要があると思うからです。

 性暴力は、訴えても起訴されない、起訴されても有罪にならないなど、日本では加害者が裁かれるまで高い壁があります。加害者は、告発した女性にさまざまな手段で報復する可能性があり、恐怖はいつでも付きまといます。苦しみを背負わされたサバイバーが、さらに不安や恐怖を感じて生きなければならない、そういう社会のありようを変えていく必要があります。「慰安婦」問題に関する活動をしていて感じるのは、この加害者を裁くことに対する認識の弱さです。一般に、謝罪や賠償、教育などが被害回復に必要なものとされますが、「これほどひどいことをした人が裁かれないままでいいはずがない」という正義への思いは、日本では不可能なものとして聞きおかれてきました。処罰は再発防止だけが目的ではなく、被害者には、正義への権利があります。

責任問い直す

 韓国の姜徳景(カン・ドッキョン)さんは、「慰安婦」にされた被害体験をもとに数々の絵を遺しましたが、その一つが「責任者を処罰せよ―平和のために」でした。朝日新聞記者で女性活動家だった松井やよりさんは、この絵のメッセージを受けとめて、「日本軍性奴隷制の責任者を裁く女性国際戦犯法廷」(2000年、東京)を提案しました。アジア太平洋に広がった性奴隷制を立案し、実施させたのは誰か、責任が問われるべきトップは誰だったのかを明らかにした民衆法廷でした。昭和天皇をはじめとした軍高官10人を有罪としたこの法廷から20年たって、公務の中で犯罪行為を指示した者の責任を問わない体質が今も続いていることに、戦後を問い直す必要性を強く感じます。

 そもそも明治以降の日本の近代とは何だったのか。wamでは昨年3月から、日本の朝鮮植民地支配をジェンダーの視点からみる特別展を開催しています。「慰安婦」として被害を受けた朝鮮女性189人の証言から読み取れる、圧倒的な貧困と脆弱(ぜいじゃく)な立場は、植民地支配下での暴力と搾取の構造、日本が持ち込んだ公娼制(こうしょうせい)や性差別の実態を知る必要があります。そういったシステム導入の最高責任者として明治、大正、昭和の天皇がいたのです。

 wamでは、エントランスで179人の女性たちの顔写真が人々を迎えます。戦争を生き抜き、戦後の貧困や差別も生き抜き、50年たってやっと、日本軍から受けた性暴力被害を告発することができた10カ国の女性たちのうち、さらにwamで写真を展示することを了解してくれた方々です。このまなざしの背後には生き抜くこと、語ることができなかった無数の女性たちがいることを忘れてはなりません。

 

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名古屋が育鵬社不採択

市民が侵略美化教科書ノー

202089

 名古屋市で来年度から使われる中学校の社会科教科書の採択をめぐって、市教育委員会は7日、定例会を開き、侵略戦争を美化する育鵬社の教科書を不採択にしました。歴史は教育出版、公民は東京書籍を採択しました。

 河村たかし市長が「表現の不自由展」をめぐって知事のリコール運動を支援するなど、日本軍「慰安婦」や南京大虐殺の否定、侵略戦争を美化する言動を繰り返すなか、市民の運動で採択を押しとどめました。

 前回(7月29日)の臨時会で育鵬社を推した委員も、「これまでの指摘を出版社や学校現場に伝えてもらえるならば教育出版の採択に賛成する」「大方の人が教育出版ということですので、そちらの方向で」などと話しました。

 傍聴には80人が参加。中学3年の息子がいる佐藤民代さん(50)は、前回審議で委員2人が育鵬社を強く推していたことに危機感があったとして、「たくさんの人が育鵬社不採択を求めて声を上げてくれたことが今日の結果につながった」と話しました。

 子どもたちに「戦争を肯定する教科書」を渡さない市民の会の三浦明夫さんが会見し、教員の研究報告や市民の意見が傍聴者に公開されないのは問題だと指摘し、改善を求めていくと話しました。

 

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アートとジェンダーをめぐる旅 小勝禮子(1)

イトー・ターリ 生きる限りの身体表現

202087

 新型コロナウイルスはいまだ収束せず、なかなか現実の旅に出ることが叶(かな)わない日常だが、日本におけるアートとジェンダー(社会的に作られた性役割・性差)をめぐって、4人の女性アーティストを紹介したい。彼女たちの表現との出会いは、時空を超えた旅になるだろう。

二重の少数派

 まず初回は、イトー・ターリさん(1951年生まれ)、東京都出身のパフォーマンス(身体を使ったアート)のアーティストである。彼女ははじめパントマイムを学んだが、1982年オランダに渡り、パフォーマンスの舞台経験を積んだ。86年に帰国後も、国内外のパフォーマンス・フェスティバルに参加しながら、自分の表現をめぐって模索を続けていた。

 その転機となったのは、1996年1月に発表したパフォーマンス《自画像》であった。自分のセクシュアリティーを隠して表現を続けていることの不安を振り払って、レズビアンであることをカミングアウトしたパフォーマンスだった。(写真右)

 この公演は1997年まで26回も続けたという。「女性」であり、「レズビアン」であるという二重のマイノリティー性を抱えながら、「家父長制」と「異性愛強制社会」の日本の中で生きることの困難を、ターリはパフォーマンスというアートによって表現できる喜びを実感したのであった。

 その後、ターリは自分以外の、社会の中のマイノリティーである、在日韓国朝鮮人や「従軍慰安婦」の存在にも深い関心を向けるようになった。《自画像》での経験から、アートの役割のひとつはメッセージを伝えることだということをつかみ取ったからである。2004年に亡くなった元「慰安婦」金順徳さんへのオマージュとして捧げた《あなたを忘れない》(2005年)、そして戦後も沖縄に残された元「慰安婦」ペ・ポンギさんの生涯と、今も続く沖縄米兵による性犯罪を重ね合わせた《ひとつの応答》(2009年)が作られ、さまざまな場所で上演された。

 《ひとつの応答》では、米兵が犯した凄惨(せいさん)な性犯罪のリストをマスキング・テープに書き写し、それを読み上げながら、女性の下着に貼っていった。「米兵が女性をレイプする」を繰り返すうちに、「米兵」と「女性」が入れ替わり、「私」もそこに介入して、最後には「私が私をレイプする」にたどり着いたという。

「当事者」宣言

 それは、本土の日本人であるターリが関係のない他者ではなく、これまで沖縄にもアメリカ支配にも関わりなく生きてきたことを省みて、自分自身も、今も続く米軍支配下の沖縄をつくった「当事者」なのだと宣言することではなかっただろうか。

 現在、イトー・ターリは徐々に身体が動かなくなる難病を患っている。しかし2019年には東京とカナダで、車椅子に座った身体で新しいパフォーマンス《37兆個が眠りに就くまえに》を上演した。それは、原発事故後の福島に生きる人々と、動かなくなる自分の身体の記憶の痕跡を重ね合わせたパフォーマンスであった。(写真上)

 パフォーマンス・アーティスト、イトー・ターリは、これからも自分ができる表現を続けていくのである。(金曜掲載)

 こかつ れいこ 美術批評。1955年埼玉県生まれ。近現代美術史、ジェンダー論。84年〜2016年栃木県立美術館学芸員。主な展覧会に「アジアをつなぐ―境界を生きる女たち」展(2012―13年)ほか。ウェブサイト「アジアの女性アーティスト:ジェンダー、歴史、境界」を管理・運営

 

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原水爆禁止世界大会 非核・平和の北東アジアと運動の役割

日韓の労組と市民 連携を

202085

 特別集会「非核・平和の北東アジアと運動の役割」では韓国の被爆被害者協会のイ・ギヨル会長も参加し、あいさつしました。

 全労連の小田川義和顧問は、米政権が中国との覇権争いを強め、韓国、日本への軍事的分担を迫ることが予想されると指摘。軍事力を背景とした覇権争いをやめ、平和と安定を求め、日韓の労働組合、市民団体の連携を呼びかけました。

 韓国・全国民主労働組合総連盟のオム・ミギョン副委員長は、二度と軍事的対決と戦争の時代に戻ることはできないと述べ、核兵器も核の脅威もない非核平和の世界のため連帯しようと語りました。

 新日本婦人の会・平野恵美子国際部長は、安倍政権は日本軍「慰安婦」問題など侵略戦争の加害の事実に向き合わず、禁止条約に背を向け、軍拡を続けていると批判。総選挙で野党連合政権を目指す決意を述べました。

 韓国女性団体連合のオ・ギョンジンさんは、コロナ危機で、軍事・安保が市民の生命と安全を守るものではなく、社会保障体制と経済的セーフティーネットが「人間の安全保障」の基本条件になると報告しました。

 全日本民主医療機関連合会被ばく問題委員長の藤原秀文さんは、日韓に共通する米国との軍事同盟は、北東アジアの平和と非核化への共通の敵だと強調。日韓両国の市民の共同と連帯で、米軍の基地強化・拡大、合同演習などを中止させる運動が必要だと語りました。

 人道主義実践医師協議会のキム・ミジョンさんは、朝鮮戦争の終息宣言を行い、北朝鮮は朝鮮半島の非核化、米国は国連制裁の解除、南北は平和協定体制をつくっていかなければならないと語りました。

 

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戦後75年 日本の戦争が生んだ日系オランダ人たち

写真家(オランダ在住) 奥山美由紀さん

202085

 写真家の奥山美由紀さん(オランダ在住)は、都内で4人が共同で開催中の写真展に、「ディア・ジャパニーズ:戦争の子どもたち」を出品しています。日本軍占領下のオランダ領東インド(現インドネシア)で生まれた日系オランダ人たちの人物写真です。奥山さんに聞きました。(山沢猛)

 私が写真にしたのは、占領下、父親が日本人、母親がオランダ人と現地の人との間に生まれた人、そういう両親を持った子どもや孫です。結婚して、オランダに住み、日系人がたくさんいることを初めて知りました。

 16世紀から三百数十年にわたり、現在のインドネシアの地域はオランダ領でした。この間にオランダ人と現地の人の間に子どもが生まれました。生活で使っているのはオランダ語、宗教はキリスト教、半分欧米なのです。現地の言葉もよく話せません。

生き証人

 日本軍は1941年から3年半、オランダ領東インドを占領し、軍政を敷きます。そのときの兵士や軍属の数は約30万人でした。現地の年頃の男はみな兵役か「ロームシャ」(労務者)として、「死の鉄道」と恐れられた泰緬(たいめん)鉄道(タイ―旧ビルマ間)の建設などに強制動員されました。

 残った多くの女性は生活に困り、飲食店や日本人のいる事務所などで働き、そこで目をつけられました。女性は20歳前後ですから恋愛関係もあったし、物資をもらい家族も助けられた人もいたようです。

 日本人の父親は敗戦で日本に帰ってしまい、母子が取り残されました。戦後、インドネシア独立戦争がおきると現地にいられなくなり、オランダに「帰国」した人は30万人にのぼります。

 日系人で父親探しを依頼している方は75歳前後です。日系人の団体は、戦争で生まれた日系オランダ人は推計約800人といいますが、数千人という数字もあります。調査がされていません。

 彼らは日本の占領支配で生まれたのであり、戦争は現在の問題であることの生き証人なのです。

 オランダに落ち着き、旅行・宿泊を受け付ける職場で同僚にすすめられたのが、葉子ハュス-綿貫著『わたしは誰の子? 父を捜し求める日系二世オランダ人たち』(梨の木舎、2006年)でした。著者に連絡をしたら、日系人と会ってみないかといわれて、初めて新年のお祝いの集まりに出ました。そのとき、顔は日本人ぽい普通のおじさん、おばさんなのに、言葉はオランダ語ということに強い印象を受けました。

 綿貫さんが文章なら、私は写真で記録に残そうと思うようになりました。でも、人物を撮ったことがなくためらいもありました。

 東日本大震災(2011年)が起きると、東北出身なので、オランダにいても日本にかかわる仕事ができないかと考え、日系人の写真は私がやるしかないとやっと決心が固まりました。協力をお願いし、少しずつ撮影をすすめた感じです。

 オランダに来たときは無邪気で無知でした。でも、私が住むアーネム市にある歴史博物館で日本の収容所で俘虜(ふりょ)になった人たちの絵が、苦しみの記憶から黒くぬられていたことはショックでした。

「敵の子」

 日系人は「敵の子」と見なされ小さい頃から苦労しました。40代になって「おまえの父親は日本人だ」などと親戚から知らされます。今もトラウマを抱えているのです。あるオランダ人から、日本の旗など見たくないといわれました。両国は暗い歴史も共有しています。

 現インドネシアにいたオランダ人の女性数十人が収容所に入れられ日本軍「慰安婦」を強制された事件で、軍当事者は裁判で有罪となり処罰されています。

 オランダ本国はドイツにも占領されました。ドイツはかなり戦争責任をとっています。ところが、日本政府はオランダ人が収容所で苦労したことへの補償も、父親捜しへの協力もいっさい行っていません。

 私が写真を撮るのは、日本人が知るべきことだと思うからです。

写真展「Reimagining ar

 出品者・奥山美由紀、小原一真、木村肇、林典子。9日()まで。午後1時〜7時(最終日は午前10時〜午後5時)。入場無料。ギャラリーOGU MAG=東京都荒川区東尾久4の24の7 電話03(3893)0868

 おくやま・みゆき 山形県生まれ。2008年からオランダ在住。16年、日系オランダ人を扱った自作写真集がイタリアの国際写真祭で受賞。www.miyukiokuyama.com

 

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知事リコール運動に反対

愛知の会が市民集会

202083

 あいちトリエンナーレ「表現の不自由展・その後」(2019年)の展示内容を不服として、高須克弥医師と河村たかし名古屋市長が呼びかけている大村秀章知事のリコール運動に反対する市民集会が1日、名古屋市中区で開かれました。弁護士や市民らでつくる「表現の不自由展・その後」をつなげる愛知の会が主催。200人が参加しました。

 久野綾子共同代表は、「河村市長は南京大虐殺や慰安婦を否定する根っからの歴史改ざん主義者」と批判。「リコールを悪用した不当な暴力であり、断固抗議する。息苦しい社会にしないためにも必ず阻止しよう」と話しました。

 中谷雄二弁護士は「誰でも作品内容に好き嫌いはあるが、自治体は金は出しても口は出さないのが大原則。首長としてふさわしくないのは河村市長。声を高らかに上げていこう」。愛知県文化団体連絡会議の石川久事務局長は「芸術はいろんな人に見てもらい、高め合っていくもの。抗議し、反対運動がんばりたい」と話しました。

 立憲民主党の高木ひろし県議、共産党の江上博之市議があいさつ。江上氏は「市長がいまやるべきは新型コロナ対策。共産党は、はっきりとリコール運動に反対し、市民の命と暮らし、文化を守るために全力を尽くしていく」と述べました。

 リコール署名は、8月中旬ごろから始まる見通し。同会は各地での抗議宣伝や署名集めなど提起しました。

 

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7月

日韓の歴史をたどる(26)

朝鮮人学徒兵 秋岡あや

2020727

玉砂利投げて抵抗、脱走も

 1937年の日中戦争から45年の敗戦まで、朝鮮では皇民化政策のもと戦時動員が行われました。戦時動員は労働動員と軍事動員に分けられます。労働動員は39年の「募集」、42年の「官斡旋(あっせん)」、44年の「徴用」の3段階があり、次第に強制性が強まり動員数も増えました。

志願という名で徴兵された学徒

 軍事動員も、38年には「志願兵」でしたが、44年からは「徴兵」になります。この間、女子勤労挺身(ていしん)隊、軍慰安婦、軍属、軍夫の動員も行われました。学徒兵は形式的には志願兵でしたが、学徒以外の若者が志願兵制から徴兵制へ移行する時期に動員されたため、強制性が強く、抵抗も大きかったのが特徴です。

 朝鮮人学徒兵の動員過程に関する研究としては、姜徳相(カン・ドクサン)『朝鮮人学徒出陣』(岩波書店、1997年)があります。新聞資料と回顧録を丹念に分析することで、強制動員と抵抗の実態の詳細を明らかにしています。

 朝鮮人学徒兵は、1943年10月、日本人学生の徴兵猶予の停止措置が植民地の学生にも適用される形で動員されました。形の上では志願兵だったため、受付開始直後は大部分の学生が忌避。しかし朝鮮総督府の志願勧誘政策により、多くの学生が志願を強いられることになりました。

 勧誘政策の第一は、志願手続きの簡素化です。手続きを学校長のもとで一元化し、修学地以外での志願・電報志願・代理志願を許可。既卒者も適格化し、締め切り後の受け付けも許可するなど、さまざまな改変を行いました。第二は、地縁・血縁関係の利用です。翼賛委員会、国民総力朝鮮連盟、各大学・高専、マスメディア、朝鮮奨学会、協和会などを総動員しました。そして第三に、警察力の動員です。

 その結果、43年11月、学徒兵は朝鮮内では96%、帰省者(日本で学徒動員を知り忌避のため朝鮮に戻ったものの志願させられた人)は93%の高い志願率を出しました。同年12月に徴兵検査が行われ、翌年1月20日に入営。志願しない者は徴用され労働現場に動員されました。

 入隊後は、朝鮮、日本、中国などの各部隊に分散配置されますが、朝鮮内の部隊では軍隊内の反乱や脱走が相次ぎました。中国戦線では脱営して独立軍に参加する者も多くいました。

 学徒兵といえば、戦没学生の手記『きけわだつみのこえ』が有名ですが、ここに朝鮮人学徒兵の手記は含まれていません。当時、朝鮮人が本心を書き残すことは困難でした。彼らが語り出すのは解放(日本の敗戦)後で、韓国で出版された文学作品や回顧録にその一端が垣間見られます。

狂ったふりをし戦死をのがれる

 以下は、回顧録をもとに、私が証言を聞き取ったものです。学徒兵の視点からもう一度この時代を見てみましょう。

 許相Z(ホ・サンド)氏は、1923年、慶尚北道慶山郡に生まれ、独立運動家の祖父の下で育ちました。日本に留学した43年10月、中央大学法科1年次に学徒動員となります。朝鮮へ帰省して伯父の家に隠れますが、警察が祖父を拷問したため出頭し、願書から「志願」の2字を消すことを条件に母印を押しました。

 選考の結果は甲種合格(第一級の順位)。壮行会では神社の玉砂利を投げて抵抗しました。44年1月20日、第20師団歩兵第80連隊(朝鮮第24部隊)に入営。歩兵で階級は2等兵。朝鮮人学徒兵は28人いました。初年兵訓練では何をしても殴られ、朝鮮人は露骨にいじめられました。

 入営から3カ月後の一期検閲で1等兵となり、勧誘を受け幹部候補生試験を受けますが、わざと間違え落第。初年兵訓練後は、炊事場や物干し場に集まり脱出計画を企てました。44年7月に1人、8月に6人が脱出しますが、許氏自身は当日は寝ずの番となり皆が逃げるのを見送ります。捕まった者は小倉刑務所に収容されました。

 44年11月、許氏ら2人に転属命令がありますが、気が狂ったふりをして医務室に運ばれ、数カ月間営倉(懲罰房)に入りました。もう一人は「南方」へ送られ輸送船の撃沈で戦死します。45年2月、本土決戦準備のため第96師団歩兵第293連隊に編成され、45年3月、済州島へ移動。そこで解放を迎えました。

 あきおか・あや 1983年生まれ。一橋大学大学院博士課程単位取得退学(朝鮮近現代史)。韓国水原市の水原外国語高校教師。韓国で聞き書きを重ねる

 

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「水曜集会 各地開催を」

韓国 「慰安婦」被害者が提案

202075

支援団体と面会

 韓国の「慰安婦」被害者、李容洙(イ・ヨンス)さんは3日、支援団体「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」(正義連)の李娜栄(イ・ナヨン)理事長と面会し、ソウルの日本大使館前で開かれている「水曜集会」について「変化が必要だ」と述べ、各地域での開催を提案しました。正義連が発言内容を公表しました。李容洙さんは今年5月、正義連の募金の使い方や集会のあり方などを批判していました。

 正義連によると、李さんは「デモをしたくないわけではない。方法を変えよう」と発言。自身も直接参加したり、各地に映像メッセージを送ったりする意思を示しました。日韓の若い世代への教育や交流について、地域に歴史教育館を造ることを求めました。

 被害を記憶し、被害者を慰労するために建てられた「平和の少女像」に関し、李さんは「私自身でもあり、何人もの(被害者の)ハルモニ(おばあさん)の役割をしている」と述べ、韓国各地や日本にも建てるべきだと表明。また、被害者の呼称は、「性奴隷」ではなく、日本軍「慰安婦」被害者が正しいと主張しました。

 これを受け、正義連は「李さんの言葉を深く受け止め、諸団体と議論し、連帯していく」と述べました。

 

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少女像前集会を禁止

ソウル市鍾路区がコロナ対策

202074

 ソウル市鍾路区は3日、新型コロナウイルス感染防止を目的に、在韓日本大使館周辺での集会を禁止すると発表しました。政府は新型コロナの警戒レベルを最高の「深刻」としており、今回の措置は「深刻」が解除されるまで続きます。

 集会禁止の場所には「慰安婦」問題を後世に伝え、被害者を慰労するための「平和の少女像」が建つ道路も含まれており、28年間開かれてきた「慰安婦」問題解決に向けた水曜集会も禁止されます。主催する「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」は、オンラインで続けることを検討しています。

 少女像をめぐっては、日本側から撤去を求める声が上がっていることから、2016年に像の横で学生たちの座り込みが始まり、現在も続いています。この間、韓国の保守系団体が撤去を求める集会を像の横で開くなどしており、今回の措置は衝突を回避する狙いもありそうです。

 

6月

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「慰安婦」運動 意義強調 韓国大統領、支援団体めぐり

202069

 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は8日、首席補佐官会議で、寄付金の不正疑惑などで検察の捜査を受けている「慰安婦」支援団体をめぐる一連の動きに言及し、「『慰安婦』運動の大義はしっかりと守られなければならない」と強調しました。また、市民団体の活動方式や行動について振り返る機会になったとし、「政府と地方自治体の補助金など透明に管理する」と語りました。

 文氏は、「『慰安婦』運動30年の歴史は、人間の尊厳を守り、女性の人権と平和のための歩みだった」と指摘。また、被害者が街頭や法廷、国内外で証言し、「正義ある解決を訴えた。韓日間の歴史問題を超えて、人類普遍の人権と平和の問題に議論が発展し、全世界的な女性の人権運動の象徴になった」と被害者をたたえました。

 さらに、30年間粘り強くたたかった市民運動が「世界的な人権運動として根付いた。決して否定したり、おとしめたりできない歴史だ」と指摘。今回の疑惑をめぐり運動そのものを否定する動きについて「被害者の尊厳と名誉まで打ち崩すもの」と語りました。

 「今回の議論と試練が『慰安婦』運動を発展的に昇華させる契機になることを期待する」と述べ、市民団体への寄付金や補助金の透明性を高める考えを示しました。

 

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「2020年のナショナリズム」

安保法に反対する学者の会シンポの発言(5月30日の詳報)

202062

 5月30日に開かれた「安全保障関連法に反対する学者の会」のオンラインシンポジウム「2020年のナショナリズム」(31日付既報)での発言を詳報します。(配信はChooseLifeProject)

自民議員が右傾化

慶応大学教授 小熊英二氏

 歴史社会学の小熊英二慶応大学教授は、政治、社会学者らの調査データなどから、日本は右傾化したのかを分析しました。

 「日本では右傾化というより、左が弱い分極化が起きていると言えます。2000〜10年に、民主党との差異化と固定支持層をつかもうという要因から、有権者の意識と離れて自民党議員の右傾化が進み、議席の多さから政界全体が右傾化する結果になりました。

 社会意識ではLGBTや夫婦別姓への寛容度は増しています。ただ10年代に入って高学歴男性で排外主義の高まりが見られる。政治の言葉に影響されていると考えられます。

 今の60歳以下では、投票の際に憲法、安保や自衛隊といった保革の軸が弱まっていることが示されていますが、それに代わる軸が形成されていない。そのため有権者がうまく政党選択できないのが現状だと言えます」

個人尊重の社会を

立教大学教授 香山リカ氏

 香山リカ立教大学教授は、戦後日本のナショナリズムに関わる流れと現状を考察。

 「戦後の日本では、戦前の記憶から“大きなものに一つにまとまる”ことに抵抗感があり、個が大事にされてきました。しかし1990年代後半から、グローバル化に乗り遅れるなかで、個人を消して公を重視する動きが急速に起き、2002年の日韓共催のサッカーワールドカップでは韓国へ批判を浴びせるなどプチナショナリズムが勃興。安倍政権下では日本の歴史の無謬性(むびゅうせい)を主張するようになっています。東日本大震災では、『心を一つに』が批判しがたい言葉として“解禁”されたと感じます。

 コロナ対応では、東京オリンピックの成功を優先し初動の対応が遅れました。これは命にかかわる問題です。この流れを変え、一人一人の人権が大事にされる社会になってほしいと思います」

心脳操作する手法

東京大学名誉教授 小森陽一氏

 小森陽一東京大学名誉教授は、安倍政権のナショナリズムをあおる手法を批判しました。

 「視覚、聴覚を利用して有権者の心と脳を操作する政治手法を私は心脳コントロールと呼んでいます。とくに危険なのは、怒り、恐怖の刺激です。

 1990年代に日本の戦争責任、植民地支配を問う動きが強まると、戦争責任を負う祖父をもつ安倍首相のような世襲議員に怒りと恐怖が生まれました。

 2002〜03年、北朝鮮との国交回復が日程にのぼるなかで北朝鮮が拉致問題を認めると、日本政府は国民の怒りをかき立て日本の過去の責任を曖昧にし、北朝鮮をテロ支援国家とみなして国民の恐怖をあおりました。安倍政権は、韓国に対しても徴用工や『慰安婦』問題で同様の政治手法を続けています。

 日本はいま、歴史的な反省を踏まえ、近隣諸国との国際連帯を通じ、アジアにおいてコロナ後の世界を共に構築していく努力をすべき時ではないでしょうか」

メディアの体制化

東京大学教授 林香里氏

 ジャーナリズム研究者の林香里東京大学教授は、日本のマスメディアとナショナリズムとの親和性には三つの要素があると指摘しました。

 「高い。多くの記者は高学歴・高収入のエリートで、ジャーナリズムの批判精神とは対立する教育制度の勝ち組。暗記したデータをもとに正解を見つける訓練で、データを批判的に問いません。

 古い。明治期の新聞は3面記事といわれるゴシップ紙で、現在もこの伝統が消えず、多角的な分析や批判が少ない。コロナ報道では行政の発表を書き写しています。政府発表を中立な情報のように報じることは結果的に政府の肩を持つことになり、政治を甘やかし、差別を再生産し、社会を分断します。

 でかい。新聞発行部数は巨大です。古い伝統を背負い、大きく、エリートとなると限りなく体制側で国家を背負う感覚になる。一方でいまはネットに追われ、商業化、情報産業化が加速。権力の透明化に貢献する役割が後回しになっていると思います」

中東からの視点は

千葉大学教授 酒井啓子氏

 特別報告をした、酒井啓子千葉大学教授は、中東情勢から問題を提起しました。

 「イラクでの反政府行動の写真を見た日本の学生が、来日したイラク人の先生に『反政府デモでなぜ国旗を掲げるの』と聞きました。先生は質問の意味が分からない様子でした。反政府デモは、かつては外国やその手先から祖国を取り戻すものでしたが、いまは腐敗した政府から祖国を取り戻す運動です。

 中東の産油国でいま危惧されているのは、油価の低迷で国家が機能を失い民兵組織が代替の国家主体となることです。その民兵組織は国家以上に祖国を奪う存在だと国民は気付きました。

 イラクの反政府デモには医師や医学生が参加し、貧しい層のバイク便の運転手が救急車の役割を担っています。デモ隊は、国家や民兵組織に頼らず、自分たちで生き延びる力を獲得することを模索しています。日本にも国民が取り戻す何かがあるのではないでしょうか」

地殻変動が起きる

東京大学名誉教授 佐藤学氏

 佐藤学東京大学名誉教授はシンポジウムの締めくくりとして次のように呼びかけました。

 「今回のコロナ禍で社会の分断と新自由主義政策の破たんが明らかになりました。これを国家中心に解決するのか、個々の人権を尊重する形で解決するのか、今後の社会のあり方を探っていきたい。

 あらわになったことの一つは安倍政権の政治の本質です。ウソで固め私物化をごり押しし、しなくていいことをし、すべきことをしない。アベノミクスはいまやアベノマスクになりました。若い層で支持が急落し、日本社会の地殻変動が起きています。新しいたたかいが起き、学生や市民が声を上げ社会を動かしています。これは2013年の反原発運動から始まり、安倍政権に代わる政治を求め、野党共闘を求める動きへつながってきたものです。

 コロナ後に、シェア(資産・資源の分かち合い)、ケア、学びを通じた新しい社会をつくりたい。共生と連帯を生み出し、命、人権、反戦と平和を願う希望をもとにしたつながりを築き、今後も活動していきたい」

 

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5月

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韓国 寄付金私的流用 否定 「慰安婦」団体前理事長が会見

2020531

 韓国の「慰安婦」被害者支援団体「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯(正義連)」の尹美香(ユン・ミヒャン)前理事長が29日、ソウルで会見し、寄付金などについて「個人的に使ったのではない」と私的流用を否定しました。

 尹氏は会見の冒頭、「信じてくれた方々に深い傷と心配をかけ、心からおわびする。国民が十分だと判断するまで疑惑を晴らしていく」と表明。30年間続けてきた活動を紹介し、「すべての被害者の名誉回復につながるように支援してきた」と説明しました。

 2015年の日韓合意をめぐっては、内容を事前に知っていたが被害者に伝えなかった、被害者に支給される現金を受け取らないよう働きかけたとする主張に対し、「事実ではない」と否定しました。

 尹氏は今年4月の総選挙で与党系「共に市民党」から立候補し、当選。30日から任期が始まります。尹氏は、今後の検察の捜査に対し「議員を口実にして逃げるつもりはない」と強調。「慰安婦」問題の解決に向け最善を尽くすと語り、議員職を辞退しない考えを示しました。

 (栗原千鶴)

 

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ジェンダー平等実現へ共に 婦団連 16万人超の4署名提出 政策・働き方に女性の視点を

2020529

 日本婦人団体連合会(婦団連)は28日、ジェンダー平等(性差による差別のない社会)の実現と女性の地位向上を求める4種類の署名、合わせて16万6278人分を国会に提出しました。

 このうち、女性差別撤廃条約選択議定書の速やかな批准を求める請願署名は、女性差別撤廃条約実現アクションとして提出。他の三つは、選択的夫婦別姓制度の導入など民法の改正、「慰安婦」問題の解決、家族従業者の給与を認めない所得税法56条の廃止を求める署名です。

 衆院第2議員会館で開かれた署名提出集会で柴田真佐子会長は、コロナ禍で経済的負担や健康被害が女性に対しより深刻な影響を与えていると語り、国や自治体の対策にジェンダー視点を反映させるために、女性の参画が求められると指摘しました。

 日本共産党の高橋千鶴子、畑野君枝、田村貴昭の各衆院議員、井上哲士、紙智子、岩渕友、吉良よし子の各参院議員、立憲民主党の大河原雅子衆院議員が署名を受け取り、それぞれあいさつしました。

 井上議員は、外交防衛委員会で選択議定書の批准を求める質問を行い、茂木敏充外相から「先延ばしにせず、関係省庁の間で結論をださなければならない」との答弁を引き出したと語り、「これをきっかけに早期批准へ一緒に頑張りたい」と述べました。

 高橋氏は、コロナ後の「働き方」の政府内の議論にふれ、「今の働き方は政治の失敗のつけが噴出したことへの反省から出発するべきだ」と語りました。

 

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30年間の運動継承と再点検 韓国「正義連」集会

2020529

 韓国の「慰安婦」被害者を支援する「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯(正義連)」は27日、ソウルの旧日本大使館前で定例の水曜集会を開催しました。

 李娜栄(イ・ナヨン)理事長は被害者の一人、李容洙(イ・ヨンス)さんが行った正義連の寄付金不正などを告発した会見について、「深い苦しみ、怒り、寂しさの根をすべて重く受け止める」と表明。「30年間の闘争の成果を引き継ぐとともに、被害者の苦痛が解消されず、問題解決が遅れている根本的な原因を再点検しなさいという意味だと受け止める」と語りました。

 その上で「知られていなかったり、間違って受け取られてきた植民地の女性の人権侵害と性暴力の歴史を再び喚起するきっかけになった」と述べました。

 また、李容洙さんを誹謗(ひぼう)・中傷する一部の人々に対し、即刻中止するよう要求。このような行為は「慰安婦」問題の解決に向けた運動の意味と価値を根本的に壊すことになると批判しました。

 (栗原千鶴)

 

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2020焦点・論点 シリーズ ジェンダー平等求めて

国際人権法学会前理事長・青山学院大教授 申ヘボンさん

2020528

女性差別撤廃条約 批准35年

 今年6月、日本が女性差別撤廃条約(1979年成立)を批准(85年)して35年を迎えます。コロナ危機後も見据えた同条約の意義について、国際人権法学会前理事長の申ヘボン(シン・ヘボン)青山学院大学教授に聞きました。(日隈広志)

性別分担転換うたった意義 急がれる日本の国内法整備

 ―「コロナ後」の社会にとってジェンダー平等の視点がいっそう必要になっています。

 コロナ危機では、世界中でこれまでの社会の問題点が顕在化しています。国連女性機関(国連ウィメン)が提言したように、DV(家庭内暴力)や子ども(多くは少女)への性的虐待は深刻です。女性や子どもなど、社会的に弱い人々をさらに追い込んでいます。

 日本の場合は、大臣や議員など政治の意思決定の場に女性が少ないために、こうした事態がより深刻化しています。一律10万円の給付がDVや虐待被害者の実態を考慮しない制度設計になっていたことなどがそうです。

 コロナ危機に対する各国女性リーダーの的確な施策が注目されています。「#MeToo」運動など、社会の中で女性が権利を訴える力は強まっています。そうした声に応えられるよう政治、経済の意思決定の場で女性を増やすべきです。

 ジェンダー平等の視点が安全保障や気候変動など、あらゆる国際問題を考える際に不可欠になる中、女性差別撤廃条約はますます重要になっています。

 ―女性差別撤廃条約の画期的な点はどこにあるのでしょうか。

 同条約が、ジェンダー平等の実現にとって重要な、日常生活にある性差別の解消を目指したことと、そのために「男は仕事、女は家庭」という性別役割分担の発想の転換を打ち出したことです。

 性差別の禁止は国連憲章(45年)や世界人権宣言(48年)で規定され、男女の政治的平等を目指して婦人参政権の国際条約が成立(52年)しましたが、それだけでは日常生活での女性の権利は向上しませんでした。

 女性が家庭に縛り付けられ、経済的自立を阻まれていることが、女性の教育の機会を奪うことやDVなど、深刻な性差別の温床となっていたのです。

 女性差別反対を掲げるフェミニズム運動などによってそうした認識が広がり、67年の国連総会で採択された「女性差別撤廃宣言」は、経済・社会という日常生活での女性差別の解消を掲げました。それを踏まえ、条約の前文に「社会及び家庭における男子の伝統的役割を女子の役割とともに変更することが男女の完全な平等の達成に必要」との記述が盛り込まれました。

 ―女性差別撤廃条約が成立した後、女性の権利をめぐってはどのような国際的な展開がみられましたか。

 国連のウィーン世界人権会議(93年)で、女性の権利は、「普遍的な人権」の問題として強調されました。

 同会議は、世界人権宣言45周年を記念し、植民地体制が崩壊して国連加盟国が190を超える中で人権の普遍性を再確認し、行動計画を採択しました。行動計画の中で「女性の権利は人権だ」と明言されました。90年代前半、旧ユーゴ内戦中の集団レイプや日本の「慰安婦」問題表面化などで女性への暴力が世界的な問題として浮上する中、暴力に対する取り組みにも重点がおかれました。

 ウィーン会議の行動計画は、北京での世界女性会議(95年)で採択された「ジェンダー主流化」を目指す行動綱領や、人権侵害の被害者が国連に直接訴えるための「個人通報制度」を女性差別撤廃条約にも設ける「選択議定書」(99年)の採択などにつながっています。

 ―女性差別撤廃条約から見て日本の問題は何でしょうか。

 日本は、いわゆる男女平等ランキングで毎年順位を落としていますが、特に、国・地方の議員や企業幹部など、政治や経済の意思決定の場に女性があまりにも少ないことが影響しています。女性差別撤廃条約も認めている「クオータ(男女同数)制度」の導入を考えるべきです。

 また、日本政府はいまだに条約の「選択議定書」を批准しておらず、日本にいる個人が委員会に個人通報を出すことができません。

 性差別の過去に向き合う姿勢も重要です。世界が過去の重大な人権侵害に目を向けたきっかけの一つに、元日本軍「慰安婦」の女性の訴えがあります。彼女らは日本の植民地支配下での戦争被害者であり、同時に性暴力・性差別の被害者です。女性差別撤廃条約の委員会は彼女らを救済するよう日本政府に繰り返し勧告していますが、日本政府は「強制連行はしていない」と繰り返し、十分な措置を講じていません。

 その他にも、例えば、何がセクハラにあたり禁止されるのか、法律できちんと規定していないことが挙げられます。セクハラは条約第1条にいう「女性差別」とみなされる性暴力ですが、日本では明確なセクハラ禁止の規定はありません。

 ILO(国際労働機関)では昨年、就活セクハラなども含めた包括的なハラスメント禁止条約を採択しました。日本政府は賛成したのですから、早急に批准し、国内法を整備すべきです。

 ―ジェンダー平等の実現に向けて喫緊の課題は何でしょうか。

 一つは、レイプや性的虐待など「ジェンダーに基づく暴力」(ジェンダー暴力)を許さない施策の整備です。女性が家庭や企業、地域社会などでさらされているジェンダー暴力は、ジェンダー平等実現の大きな障害になっています。法的には、「暴行又は脅迫」を要件とした刑法の性犯罪規定の改正が急がれます。

 女性にとって安全で計画的な妊娠・出産のために「性と生殖に関する健康・権利(リプロダクティブ・ヘルス・ライツ)」の保障も重要です。アフリカなどでは、女性の地位や発言権の低さを原因とする人口の爆発的増加が問題となっており、食糧難や武力紛争とあいまって、移民・難民などの問題につながっています。

 シン・ヘボン 1966年東京都生まれ、青山学院大学教授(国際法)。国際人権法学会理事長など歴任。国際的な人権侵害の被害者の救済など市民運動に尽力。『人権条約上の国家の義務』『国際人権法』など著書多数。

 

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疑惑の解明は検察で 韓国「慰安婦」被害者会見

2020527

 韓国の「慰安婦」被害者を支援する「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」(正義連)による寄付金の不正疑惑などを告発した李容洙(イ・ヨンス)さん(91)が25日、南東部・大邱市で会見を行いました。

 韓国メディアによると、李さんは冒頭、「過ちを指摘するのは前回の会見で行った。疑惑の解明は検察がすることだ」と述べました。

 李さんは、正義連や前理事長の尹美香(ユン・ミヒャン)氏について、「慰安婦」を利用しているなどとあらためて批判しました。

 一方で、「慰安婦」問題の解決には、日本の謝罪と賠償が不可欠だとの考えも明らかにし、解決のためには、日韓の学生が「正しい歴史を勉強しなければならない」と指摘しました。

 

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「慰安婦」団体が家宅捜索に遺憾 韓国

2020522

 韓国の検察は20日、「慰安婦」被害者を支援する女性人権団体「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯(正義連)」の事務所を、寄付金をめぐり不正な会計処理の疑惑があるとして、家宅捜索しました。正義連は21日、遺憾の意を表しました。

 韓国メディアによると、ソウル西部地検は21日の朝方まで家宅捜索を行い、会計処理関連の資料を押収しました。

 これを受けて正義連はフェイスブックなどSNS上で「検察の電撃的な家宅捜索に遺憾の意を表明する。正義連は公正な捜査手続きを通じて、これまで提起された疑惑が速やかに解決することを期待する」と述べました。

 

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きょうの潮流

2020516

 政治を笑い飛ばすような記事やコラムを届けたい。そう願いながら、うまくいかないことが多い。笑って考える番組として定着しているのが、NHKEテレの「バリバラ」です▼社会や心の内にある障壁を取り除く“バリアフリー”と、多様性を意味する“バラエティー”を掛け合わせた番組名。差別や偏見の中で、生きづらさを掘り下げようとする趣向です▼4月23日は「桜を見る会 バリアフリーと多様性の宴(うたげ) 第一部」と題して、コントにアブナイゾウ総理と不愛想太郎副総理なる人物が登場。これが25日深夜に再放送されるはずだったのが、新型コロナを取り上げた別の回のものに差し替えられました▼何が起きたのか。制作した大阪放送局の広報部は「障害者の立場からの新型コロナ対策の番組を再び伝えるべきと判断した。圧力や介入はなかった」としています▼番組への圧力といえば、「慰安婦」問題を取り上げた2001年の「ETV特集」の改変がありました。最近でも、かんぽ生命の不正販売を追及した「クローズアップ現代+」について日本郵政グループが抗議すると、当時のNHK会長が謝罪。続編の放送は見送られました▼NHKはこれらの問題の全容を明らかにしていません。「バリバラ」の関係者は言います。「差し替えの指示は現場の知らないところから来た。番組は、ものを考えてもらうきっかけになればと思ってつくった」。スタジオの桜の下で語られた、ヘイトや優生保護法の話は視聴者に深く問いかけるものでした。

 

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「慰安婦」団体が募金横領を否定 韓国で水曜集会

2020515

 韓国の「慰安婦」被害者を支援している女性人権団体「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」(正義連)などは13日、ソウルの日本大使館前で、毎週行っている水曜集会をオンラインで開催し、日本政府に対し、公式謝罪と法的賠償を求めました。

 現地からの報道によると、被害者の李容洙(イ・ヨンス)さんが今月7日に、募金の使途に疑問を呈し集会の廃止を主張した会見後、初の水曜集会となったことから、通常より多い2500人が視聴し、参加。現地にも数十人の市民が駆け付け連帯を示しました。

 集会で正義連の李娜栄(イ・ナヨン)理事長は、「個人の資金横領や違法流用など絶対にない。毎年、弁護士と公認会計士から監査を受けている」と強調しました。

 尹美香(ユン・ミヒャン)前理事長は、4月の総選挙で「共に市民党」から当選したばかり。同氏はソウル新聞(12日付)の取材に「今回のことで李容洙ハルモニ(おばあさん)や他の被害者を傷つけるような言動はしないでほしい。国会に行っても、すべての被害者、社会が抱えている傷を癒やす努力をできるよう応援してほしい」と述べました。(栗原千鶴)

 

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再放送直前差し替え NHK「バリバラ」 「桜」皮肉の回中止

202051

 社会的少数者(マイノリティー)や障害者のためのバラエティー番組、NHKEテレ「バリバラ」の4月25日深夜の再放送が、放送直前に別の回の番組に差し替えられたことがわかりました。

 予定されていたのは、21日にオンエアした「桜を見る会 バリアフリーと多様性の宴(うたげ) 第一部」の再放送でしたが、実際に放送されたのは、2日の「新型コロナ“自粛”検討会議」です。

 「桜を見る会 バリアフリー…」は番組独自の“桜を見る会”をスタジオに設定して、出演者たちが差別や偏見による生きづらさを語り合うといった内容。性暴力被害を訴えるフリージャーナリストの伊藤詩織さん、人種・民族差別撤廃に取り組む崔江以子(チェ・カンイジャ)さんらが自身の実体験に基づいて話を進めました。そこに安倍首相と麻生副総理を皮肉ったコントや、漫才がはさみ込まれたものです。

 突然の番組差し替えに、制作したNHK大阪放送局の広報部は「コロナ感染の現状を鑑みて再び伝えるべき内容だと判断しました。圧力や介入ではない。大阪放送局ではなく、NHKとして決めました」と回答。これに対して、NHK元職員らが「事態を憂慮。何とかしないと(『慰安婦』問題を取り上げた)『ETV2001』問題の再燃です」とインターネットで声を上げています。醍醐聰・東京大学名誉教授は納得のいく説明と、速やかな再放送を求める質問と要望をNHKにメールで送りました。

4月

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生放送!とことん共産党 フラワーデモ1年 コロナとジェンダー考える

2020430

ゲスト北原みのりさんと小池書記局長

 日本共産党のインターネット番組「生放送! とことん共産党」は28日、ゲストとしてウェブ参加した作家・フラワーデモ呼びかけ人の北原みのり氏と、小池晃書記局長が「フラワーデモから1年 いま考える新型コロナとジェンダー」について語り合いました。司会は朝岡晶子氏。

 二つの会社を経営し、社員20人を抱える北原氏は、新型コロナウイルスの感染拡大で、社員の休業手当を保障するため雇用調整助成金を活用しようとしたものの、「いまだに申請もできない状況が1カ月続いている」と語りました。

 小池氏は「手続きの複雑さだけでなく、休業手当を出さなければ助成金が下りない制度がおかしい。スピードも規模も、今までとはケタ違いのものでなければならない」とのべました。

 10万円の現金給付が世帯対象のため、DV被害の女性が給付を受けられない恐れに直面するなど、コロナ禍において、日本のジェンダー格差による多くの問題が、浮き彫りになっている事態に話題が集中しました。

 昨年4月、北原氏らが呼びかけて始まり、その後全国に広がったフラワーデモの話題になりました。北原氏は、フラワーデモを始めたのは、昨年3月に相次いだ性暴力の無罪判決に対して「おかしい」と声を上げた人たちの訴えを聞き、集まりたいと思ったからとのべ、「韓国の元『慰安婦』を支える運動のように、性暴力被害者に対して『With You あなたの声を聞きます』という力が必要だと思った」と話しました。

 全国で上がった声が、福岡、名古屋両高裁で無罪判決を覆すことにつながり、「1年でここまで変えられたということが本当にうれしかった」と振り返った北原氏に、小池氏は自らがフラワーデモに参加したときの思いを、「被害者の訴えをじっと聞いて、人生観が揺さぶられる感じがありました」と語りました。

 小池氏は、問題だらけの安倍政権のコロナ対策に対して、中堅企業の経営者からも「自民党にもう愛想がつきた、何とかしてくれ」などの声がいくつも寄せられていると紹介。「コロナ収束後は、別の新しい日本をつくりましょう」とのべると、北原氏は「本当にそうです。あきらめないでやっていきたい」と応じました。

 

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若者BOXワイド ジェンダー平等めざして共産党に入った話

2020420

 日本でもジェンダー平等を求める多様な運動が広がっています。その中心を担うのは若者たち。日本共産党の池内さおりさん(衆院東京12区・比例東京候補)は、自身の事務所「TOKYO12HAUS」(東京都北区)を拠点に「訪問者が主役」の活動を展開し、スタッフとともにジェンダー平等を切実に求める5人の20代、30代を党に迎えています(昨年8月から)。なぜ若者たちは入党したのか? 池内さんはどんな思いで語りかけているのか?(足立裕紀子)

一緒に差別とたたかう

大学4年生 橋下真理さん(21)=仮名=

 高校時代に日本軍「慰安婦」の問題に出合いました。知るほどに、父に責任がある問題でも祖父母に責められていた私の母と「慰安婦」の女性ゆえの苦しみが重なりました。

 昨年末、「慰安婦」問題の勉強会に参加し、発言したのですが、思いがあふれて泣いてしまいました。その時、「大丈夫?」と声をかけてくれたのが池内さおりさんでした。

 栃木の実家は選挙では自民党。でも調べると、学費とか国民をみて政策を出しているのは共産党だと思うようになっていました。

 入党をよびかけられた頃、「#KuToo」呼びかけ人の石川優実さんの「なんで一緒に戦ってくれないんだろう」という文章を読みました。賛同するだけじゃなく「一緒にたたかう人になりたい」と思っていました。

 綱領を知り、ここで学んだら広い視野で問題が見られる、人のための行動を起こせると、3月に入党しました。

 「世の中おかしい」って普通に話せることは私には大きなことです。でも話すだけじゃない。綱領がある。それに沿って行動する。だから国民目線の政策を出せる。もし間違っても綱領の立場で個人も組織も正される。意見を言うとたたかれたり、なかったことにすらされてしまう日本で、理想の民主主義があると思いました。

 ジェンダーの現実を男女問わず知ってほしい。そして女性が声をあげやすい世の中にしたい。ジェンダーをちゅうちょなく語り合える場を、仲間を増やしていきたいです。

「悪だ」と思っていたが

専従活動家を決意 伊藤五月さん(28)=仮名=

 祖父の教えで、10カ月前まで「共産党は悪だ」と思っていました。そんな私が入党し、専従活動家になることを決めました。

 大学でジェンダー問題を学び、卒業後も運動してきました。その中で知り合った共産党の人が昨年6月、ジェンダーをテーマにした共産党のイベントに呼んでくれたんです。

 温かな場で驚きました。型にはめられていない女性議員も印象的で、池内さおりさんにも出会いました。

 池内さんは「あなたのことを知りたい。共産党のことも何でも聞いて」と。私も心を開いて語り合い、すっかり“解毒”されました(笑い)。偏見の中身って空っぽなんです。ジェンダー差別と同じで根拠がない。昨年10月から毎月、綱領を学ぶ中で入党しました。

 政治は難しいと思ってきました。ただ高校時代から「社会を変えたい」と思い、貧困や環境汚染、利益第一の世の中に「資本主義って嫌。私って社会主義的だな」とは感じていたんです。でも中国? ソ連? って考えると違う。そんなモヤモヤの先に綱領や科学的社会主義があった! ぴったりきた感じです。

 綱領があるから全国の党員がぶれずに草の根から一緒にたたかえる。収入に応じた党費にも感動。一律じゃない! 「明日が90歳の誕生日」っていう人がジェンダーを勉強してる! 綱領の信念が行動になってますよね。

 「問題意識はあるけど政治は遠い」という人と共産党をつなげられる党員になる―そう覚悟しています。

「怒っていい」伝えたい

衆院東京12区・比例東京候補 池内さおりさん

 ジェンダーに苦しむ人たちと出会いたい。私の苦しかった日々と「絶対あなたを一人にしない」というある種の自信があるから思いを共有できる。政治課題にされてこなかった性暴力への怒りに突き動かされてもいます。

 自分の声に価値があると思えない人たちに寄り添い、「怒っていい」と伝えたい。それが尊厳ある人生を開く力になり、政治に目を向ける一歩になります。

 ジェンダー問題で共有できた問題意識を、社会変革へ広げてもらう力が綱領にはある。

 自分の人生を生きようとした時、それを阻んでいるものは何か? なぜそんなことが起こるのか? 共産党なら答えられる。ジェンダーに苦しむ人たちにとって、この党が必要だと確信しています。

 

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日韓の歴史をたどる(21) 植民地公娼制 宋連玉

2020415

日本軍「慰安婦」制度に結びつく

 1876(明治9)年の日朝修好条規により釜山が開港するや翌年、日本の釜山管理庁が「酌取女(しゃくとりおんな)」の取り扱いを決め、ついで領事館が1881年、「貸座敷営業規則」「芸娼妓営業規則」を制定した。貸座敷とは娼妓解放令(1872年)以降の、遊女屋に代わる新造語である。

 この時期の居留地地図には、吉原の「中米楼」を含む9軒の妓楼と6軒の料理店が記載されている。外務省の80年の旅券発給記録を見ると、吉原の業者は特権的に朝鮮行きを保証されており、個人の起業意欲だけで説明できるものではない。名だたる明治新政府の政治家たちもひいきにしていた大店(おおだな)があえて釜山へ渡ったのは、それだけの保証があったからだろう。

 1911年、鎮海に軍港を建設する際、社会基盤整備の費用を負担する条件で貸座敷敷地の貸し下げが許可された。ここにも吉原の大店格の遊廓が関わっている。この計画は結果的には実現しなかったが、遊廓業者と公権力の結びつきがうかがえるエピソードである。

国家管理売春を植民地へと移植

 近代公娼制とは「軍隊慰安と性病管理を機軸とした国家管理売春の体系」で、「公娼制度の温存は植民地において本国より重要」(藤目ゆき『性の歴史学』)であり、日本は植民地支配をした台湾と朝鮮に公娼制を移植した。それまで朝鮮、台湾に公娼制はなかった。

 営業区域の指定や性病検診の義務化、娼妓(公娼)の外出禁止などは日本と同じだが、娼妓の許可年齢が日本では18歳に対し、台湾は16歳、朝鮮は17歳と差が設けられた。そのために、より貧しい娘たちが日本「内地」から朝鮮へ、朝鮮から台湾へなどと移動する回路が形成された。

 朝鮮の釜山・元山には日本と清国が居留したが、1883年開港の仁川では欧米諸国の領事館も開設された。日本の外務省は国家的な体面から釜山・元山のようなあからさまな遊廓経営に難色を示し、公娼制存続を訴える仁川領事館との妥協案として、貸座敷を「料理店」、娼妓を「芸妓」「酌婦」と呼ぶようにした。

 やがて日露戦争(1904〜05年)の前から、貸座敷と変わらない料理店を「特別料理店」と呼びかえ、娼妓も「乙種芸妓」などと呼んで公娼制の地ならしをする。香月源太郎『韓国案内』(1902年)の巻末広告(写真)は、この偽装公娼制の実態を雄弁に物語る。この広告から日露戦争前夜、すでに日本人業者が朝鮮人娼妓を雇用していることもうかがえる。

憲兵隊司令官が制度確立を担う

 1910年の「韓国併合」以降、武断政治の下で性管理が強化され、1916年5月に朝鮮総督府警務総監部令第4号「貸座敷娼妓取締規則」が施行される。貸座敷、娼妓という名称が1881年以来復活したのである。この背景には1916年4月からの朝鮮軍19師団、20師団の逐次編成がある。立役者は、朝鮮総督・寺内正毅の下で憲兵隊司令官を務めた明石元二郎である。

 朝鮮の公娼制が日本「内地」のものと異なる点は許可年齢だけではなく、廃業規定について朝鮮では業者の裁量とされたことだ。法令以外にも、娼妓に対する民族差別は待遇全体に及ぶ。

 植民地支配が進むにつれ朝鮮人娼妓の数は増加し、1939年には日本人と朝鮮人の数が逆転する。台湾においても1920年代初めから朝鮮人娼妓の台湾渡航が増えはじめ、40年前後には台湾全体の娼妓数の約4分の1を占めるようになる。

 日中戦争下、大量の朝鮮人娼妓が台湾から中国・華南地方の戦地「慰安所」に送り込まれた。これは日本軍が「慰安婦」制度において植民地の公娼制を最大限に活用した一例である。公娼制と「慰安婦」制度の違いを平時と戦時の違いに求める見解もあるが、日本の植民地支配が軍事主義と深く結びついていることを見逃しては問題の本質は見えてこない。

 ソン・ヨノク 1947年生まれ。青山学院大学名誉教授、文化センター・アリラン館長。『脱帝国のフェミニズムを求めて』、『軍隊と性暴力』(共編著)ほか

 

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韓国総選挙 公式運動始まる 文政権の中間評価 新型コロナ 北朝鮮関係など争点に

202043

 韓国で15日に投開票される総選挙(定数300)の公式選挙運動が2日、始まりました。残りの任期が2年となった文在寅(ムン・ジェイン)政権の「中間評価」と位置づけられる今回の選挙。新型コロナウイルス対策や経済格差の解消、北朝鮮との関係改善をはじめとした外交などが争点となっています。(栗原千鶴)

 コロナ拡大の影響にともない、選挙運動にも変化が起きています。大規模な街頭演説などが中止され、候補者のインターネット交流サイト(SNS)には地下鉄の改札口で一人プラカードを掲げたり、車に向かって手を振りあいさつしたりする姿が投稿されました。

最多35政党登録

 与党「共に民主党」は、文政権の目玉公約だった検察の改革を実現した実績をアピール。コロナ対策では、検疫にかかわる人員の大幅な拡充、感染症専門病院や研究機関の設立などの公約を発表しています。

 保守派は最大野党だった「自由韓国党」を中心に3党が合流し、「未来統合党」を2月に結成しました。2016年に韓国へ亡命した元北朝鮮駐英公使を擁立。文政権を北朝鮮寄りの独裁だと非難し、コロナ対策でも初動の遅れを批判しています。

 民間調査会社ギャラップの世論調査によると、マスク購入の管理や7割近い世帯が対象となる経済損失への個人補償などを実施した文政権のコロナ対応には国民は一定の評価を与えています。一方、医療従事者からは、両党の公約に公共医療の拡充が盛り込まれなかったことに不満の声が上がりました。

 中央選挙管理委員会によると、253の小選挙区に1116人が立候補、比例代表には史上最多の35政党が登録しました。

 登録した政党数が増えた背景には19年の選挙法改正で小政党に有利とされる「準連動型比例代表制」を導入したことがあります。同制度は、小選挙区の獲得議席数が政党得票率に及ばない場合、比例代表の議席を通じて政党得票率に見合った議席数を保証します。

比例政党を結成

 議席を減らしたくない大政党は、小選挙区と切り離した比例政党を結成。「未来統合党」は「未来韓国党」をつくり、「共に民主党」は文氏に近い市民団体を基盤とした比例政党「共に市民党」に参加しました。

 「共に市民党」からは「慰安婦」被害者を支援し、ソウルの日本大使館前で行われている「水曜集会」を主宰してきた「正義記憶連帯」の尹美香(ユン・ミヒャン)氏が立候補。環境団体、女性団体で活動してきた人たちも名簿の上位に名を連ねています。

 「準連動型」の導入を主導した少数野党「正義党」は、比例政党の結成について法改正の精神に反すると批判。「市民党」には参加せず正義党として比例選挙に臨んでいます。

 同制度の導入に尽力した「参与連帯」など75の市民団体は「選挙法の穴を悪用している」と非難し、「審判を下すのは有権者たちだ。賢い有権者にならなければならない」と呼びかけました。

 最新の世論調査によると文政権の支持率は55%、「共に民主党」は37%、「未来統合党」は22%となっています。

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3月

日韓の歴史をたどる(20)「皇民化政策」 水野直樹

2020331

権利なき「帝国臣民」

一 私共は大日本帝国の臣民であります

一 私共は心を合せて天皇陛下に忠義を尽くします

一 私共は忍苦鍛錬して立派な強い国民となります

 これは、1937年10月、朝鮮総督府が制定して朝鮮人に唱えさせた「皇国臣民ノ誓詞」(児童用)である。戦時期朝鮮での「皇民化政策」を象徴するもので、45年の日本敗戦まで、各種の会合、学校の朝礼などで必ずこれを唱え、新聞や雑誌は、これを掲載しなければ発行を許さないという政策が続けられた。

「内鮮一体」唱え戦時動員を強化

 36年に朝鮮総督に就任した陸軍大将南次郎(前関東軍司令官)は「国体明徴」を掲げていたが、37年7月に日中戦争が開始されると、朝鮮での戦時動員体制を強化するため、「内鮮一体」を唱えて朝鮮人の「皇国臣民」化を推し進めた。

 その最初の手段として制定されたのが、「皇国臣民ノ誓詞」であった。児童用のほか中等学校生徒や一般人用の「誓詞」も定められたが、これは総督府学務局長の通達で唱えることを指示しただけで、法的根拠のないものであった。

 総督府は神社参拝や日常生活での日本語使用などについても、それまで以上に強制的な手法をとりはじめた。「皇国臣民」としての自覚を朝鮮の子どもたちに持たせるために、11年に公布された朝鮮教育令を改定すること、志願兵制度を実施することなどを決め、37年12月に閣議決定した。それを受けて、南総督と拓務大臣は昭和天皇に対して、これらの政策が「朝鮮の日本化」を促進するものであると説明した。皇民化政策は日本全体の政策になったのである。

 それまで朝鮮人が通う学校は普通学校、高等普通学校と呼ばれていたが、教育の「内鮮一体」を図るとする朝鮮教育令の改定によって、日本人学校と同じように小学校、中学校に名称が変更された。しかし、日本人と朝鮮人が別々の学校に通う実態はほとんど変わらなかった。

 「内鮮一体」を口実として朝鮮語の授業が随意科目とされ、実質的に学校での朝鮮語教育は廃止されることになった。皇民化教育を強化・拡張するため、学校数は戦時期に増え続けたが、義務教育は結局実施されずに終わった。

地域に「愛国班」 創氏改名を強要

 日本「内地」で総動員体制が固められていくのに合わせて、朝鮮でも38年7月に国民精神総動員朝鮮連盟が結成された(40年に国民総力朝鮮連盟に改組)。総督府政務総監を頂点に総督府や朝鮮軍(朝鮮駐屯の日本軍)の官僚・軍人が名を連ねた官製団体だったが、下部では地域・職域ごとに連盟が置かれ、最末端には愛国班が組織された。「内地」での隣組に類するもので、神社参拝や国防貯金、金属類の供出など、皇民化政策や戦争協力に動員された。

 このような皇民化政策は40年以降、いっそう強化され、朝鮮人経営の朝鮮語新聞の強制廃刊や「創氏改名」が実施されるとともに、労働者や「軍隊慰安婦」の動員、徴兵制の実施などの形で日本の戦争遂行に直接動員されることになる。

 「内鮮一体」を掲げた皇民化政策だが、朝鮮人に日本人同様の権利を認めるものではなかった。朝鮮人の側が政治的権利(日本の議会への議員選出権など)や社会的権利(「内地」渡航の制限廃止など)を要求しても、日本政府は決して受け入れようとしなかった。

 冒頭に紹介した「皇国臣民の誓詞」は、皇民化政策の強圧性を示している。誓詞は一時朝鮮語に翻訳されラジオで放送されたこともあるが、日本語で唱えなければならないとして、朝鮮語訳は禁止された。

 図版の「誓詞」の文章の横にハングルが書かれているが、これは朝鮮語の翻訳ではなく、日本語の読みをハングルで記しただけのものである。つまり、内容を理解しなくても、日本語で唱えることが強制されていたのである。この「誓詞」カードに皇民化政策の強圧性と矛盾を見ることができる。

 みずの・なおき 1950年生まれ。京都大学名誉教授。『創氏改名』、『在日朝鮮人―歴史と現在』(共著)ほか

 

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社会科で領土問題記述増 中学校教科書の検定結果公表

2020325

 文部科学省は24日、2021年度から使われる中学校教科書の検定結果を公表しました。学習指導要領の改定を受けて、社会科で領土問題の記述が増える傾向にあります。

 領土問題については17年に改定された学習指導要領で、地理・歴史・公民で「北方領土」、竹島、尖閣諸島について「固有の領土」などとして取り上げるよう定めました。

 同様の趣旨が14年の指導要領「解説」の改定で示されていたため、多くの教科書会社は前回の検定から記述を増やしており、今回は大きな変更はありませんでした。しかし一部には記述を増やす会社もあり、全体として増加傾向。多くは政府の見解に沿った内容ですが、「各国が冷静に問題に向き合い…平和的な解決を目ざすことが重要」と書いている教科書もあります。

 一方、合格した歴史教科書7点のうち、日本軍「慰安婦」について取り上げた教科書は2点で、現行の1点より増えました。いずれも検定意見はありませんでした。

 新学習指導要領で「主体的・対話的で深い学び」が強調されたことを反映して各教科で、学習の最後に内容を振り返ってグループで話し合うなどの内容が盛り込まれました。

 侵略戦争を美化する「新しい歴史教科書をつくる会」が主導する自由社の歴史教科書は、欠陥箇所が多すぎることを理由に不合格になりました。同社の公民教科書は合格。同様に侵略戦争を美化する育鵬社の歴史と公民の教科書も合格しました。道徳では批判の強かった日本教科書社の教科書が引き続き合格しました。

 今回検定を受けたのは10教科(特別の教科道徳を含む)110点の教科書。このうち歴史で自由社を含む2点、技術でも2点の教科書が不合格になりました。

 

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日本軍慰安婦の半生を漫画に 現代の性暴力にも通じる 日本語版出版 作者が講演

202037

 旧日本軍の慰安婦にされた女性の半生を描いた漫画『草』の日本語版が、2月末に出版されました。作者のキム・ジェンドリ・グムスクさんが2月21日、東京都内で講演。「現代の性暴力にも通じる、人類普遍の問題。1人の女性の身に起こったことを知って考えてほしい」と訴えました。(都光子)

 『草』の主人公は、韓国の元「慰安婦」のための施設「ナヌムの家」で暮らす李玉善(イ・オクソン)さん(92)。作者のキム・ジェンドリ・グムスクさんがイ・オクソンさんのもとを何度も訪ね、「慰安婦」にさせられた経過、どう生き延びてきたのかを聞き取り、独特のタッチで描いています。

 軍人に初めて強姦された話では、真っ黒のコマが4ページにわたって続きます。「性暴力のシーンは直接描かないと決めていました」とキム・ジェンドリ・グムスクさん。「暴力はする方、される方、みる方ともに傷つきます」

 黒いコマのあとに、当時のことを語る李さんの顔と手を何コマも並べました。また、山や木々、草など李さんが目にしたであろう自然の姿を通して、かなしみや痛みを表現しました。

真っ黒に描く

 「性暴力被害者といっても李さんは明るく、ユーモアもある、そして本当に強い人」とグムスクさんは強調しました。

 李さんは1927年釜山で生まれ、14歳のときに朝鮮人と日本人の男性2人に連れ去られました。中国東北部の日本軍の飛行場に連れていかれ、女の子ばかりが集められた建物に入れられました。そこが慰安所だと知ったのは後になってからでした。

 戦争が終わったあとも故郷に帰るお金がなく、「汚い娼婦め!」と虐げられながら、中国で生きてきました。

 2000年になってやっと韓国に戻ることができましたが、慰安所にいたことを知った、きょうだいたちは会おうとしませんでした。

 李さんの足跡をたどるため中国に行ったグムスクさん。その旅を最終章に描きました。最初に連れていかれた飛行場は、小麦粉工場になっていました。ようやく探し当てた元慰安所は真っ黒に描きました。

議論を重ねて

 日本語版の発行を提案し、翻訳も手掛けた都築(つづき)寿美枝さんは「李さんから体験を何度か聞いていましたが、(漫画には)知らないことも多く語られていて、胸に迫ってきました」といいます。

 都築さんは地元広島・福山で元「慰安婦」支援活動に取り組み、李さん、グムスクさんそれぞれと親交がありました。「私の知っている2人だし、漫画なら若い人にも多く読んでもらえると思い、仲間に日本語版発行を持ちかけました」

 日本の大学で講師をしながら「慰安婦」問題の解決に尽力する李ヤ京(リ・リョンギョン)さんと、ふさわしい日本語は何か一つひとつ議論を重ねました。元「慰安婦」をさげすむ言葉をそのままにしたり、脚注をつけて理解を深める工夫もしました。

 巻末にはフランス漫画に詳しい翻訳家の原正人さん、歴史学者の吉見義明さん、一般社団法人「希望のたね基金」代表理事の梁澄子(ヤン・チンジャ)さんの解説がついています。

世界に広がる

 『草』は英語版、フランス語版、イタリア語版がすでに出版されていて、昨年は英米でベストコミックの1冊に選ばれています。フランスでは、第1回ユマニテ漫画賞の特別賞を受賞しています。さらにスペイン語、ポルトガル語、アラビア語、ロシア語でも出版が予定されるなど、世界に広がっています。

 グムスクさんは「海外からの反響に『ぜひ娘に読ませたい』というものがありました。もしかしたら娘さんは、性暴力の被害者なのではないかと思った」と話します。

 「李さんの体験は歴史の一コマ。慰安所での3年間は言葉にできないほどのものだったけれど、その後も壮絶な人生を生き延びてきた。その理不尽さと、彼女の強さを多くの人に知ってほしい」

 

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ひと 「表現の自由」を訴えるグラフィックデザイナー 花井利彦さん(64)

202035

 昨年、三重県伊勢市で開かれた市美術展で中国の「慰安婦」の写真を使った作品が展示不許可にされました。事前に印刷された美術展の紹介冊子には展示されるはずだった作品名「私は誰ですか」の文字があったのに。まさかの出来事でした。

 「慰安婦」の写真を入れたのは「『表現の不自由』を考えてほしかったから」。ところが市教育委員会などが「反日的」「市民の安全を守るため」と問題視。手直ししても認めませんでした。「安倍政権への忖度(そんたく)が地方にまで広がっている」。美術展の運営委員を辞めようと考えたものの後進のために続け、「表現の自由」を訴えていきます。

 絵を描くことが好きな少年で小6の秋につくった4冊の“週刊誌”は学校中で話題に。表現の原動力は「社会の矛盾」です。父親が難病で生活が苦しく幼い頃から貧困や差別について考えてきました。

 大学卒業後はデザイン事務所や広告代理店を経て独立。1984年にクリエイターズ協会を創設し、日本グラフィックデザイナー協会の県代表も務めました。国内外で展覧会を開き仕事と並行して戦争や原発などをテーマに数多くの作品を発表してきました。

 昨年12月中旬から今年1月末まで韓国で開かれた美術展で「私は誰ですか」が展示されました。「作品を東アジアの人々に見てもらえて感無量。日本の異常さを実感しました。表現を萎縮させる検閲の行きつく先は戦争です」

 

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2月

 

フェミ科研費裁判提訴1年で集い 表現・学問の自由考える

2020226

 ジェンダー・フェミニズムの研究者4人が、日本軍「慰安婦」問題やフェミニズム研究に対して誹謗(ひぼう)中傷を行った杉田水脈(みお)自民党衆院議員の名誉毀損(きそん)を問う「国会議員の科研費介入とフェミニズムバッシングを許さない裁判」(フェミ科研費裁判)の提訴から1年を迎えた24日、京都市の同志社大学でシンポジウム「フェミ科研費裁判から考える『表現の自由』と『学問の自由』」が開かれました。裁判を支援する市民・研究者ら約80人が参加しました。

 上瀧浩子弁護士が裁判の状況を報告し、原告の4人が発言。岡野八代同志社大学教授は、「金学順(キム・ハクスン)さんが元日本軍『慰安婦』であったことを告発して30年、女性国際戦犯法廷から20年。多くの人の努力で女性の人権問題について国際社会で議論する土台ができてきた今日、杉田氏の発言はそれに逆行するもの。私たち一人ひとりの問題として共有していきたい」と語りました。

 シンポジウムでは、明戸隆浩東京大学特任助教が「ヘイトスピーチ解消法後の『表現の(不)自由』」をテーマに報告。「ナショナリズムと歴史否定論が結びついたときに悪質なものとなる場合が多い」と指摘しました。

 志田陽子武蔵野美術大学教授は、昨年のあいちトリエンナーレ問題や元朝日新聞記者・植村隆氏の名誉毀損裁判などを例に挙げ「フェミ科研費裁判も研究者に深刻な不利益がありうることや、助成金など公との関係にもかかわる問題。表現の自由の意義に照らして検討することが必要だ」と問題提起しました。

 

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2020焦点・論点 シリーズ歴史問題と人権 植民地の反省で画期的な動き 東京外国語大学准教授(イタリア近現代史) 小田原琳さん

2020216

ジェンダー平等求める動き貢献

 日本が植民地支配を反省するためにどのような視点が必要か。イタリアでの植民地支配に対する謝罪やジェンダー平等の動きについて、小田原琳・東京外国語大学准教授(イタリア近現代史)に聞きました。

 ―イタリアによる植民地支配への反省の重要点は何でしょう?

補償で50億ドル 友好協約結ぶ

 イタリアは2008年、アフリカのリビアとの間でかつての植民地支配を謝罪し、その補償として25年間で50億ドルを支払う友好協約を結びました。イタリアは19世紀末からアフリカのエチオピアやリビアなどを植民地支配し、リビアは1951年に独立しました。

 協約は前文で「植民地化後のリビア国民に生じた苦しみに対する後悔」と述べて、植民地支配に対する謝罪を表明しました。その補償として資本整備の支援や鉱山労働の被害者のための治療、第2次大戦でイタリア軍に徴用されたリビア人への年金支給も含まれています。当時のベルルスコーニ首相が「植民地支配期にイタリアがリビアに与えた損害を具体的かつ道義的に認めるもの」と述べたように、個別の事件にとどまらず、植民地支配全体の反省を行ったことは画期的といえます。同首相は右派でもありました。

見落とされた植民地の歴史

 ―イタリアは以前から植民地支配を反省していたのでしょうか?

 そうではありません。同国には市民がレジスタンスとしてムソリーニ政権と対決し、連合軍に協力したバドリオ政権が43年7月にムソリーニを逮捕し、戦後を「連合国の一員」として迎えた意識が強くあります。また連合国によって植民地支配の責任を問われなかった経緯があり、国内でも植民地支配を反省する動きはほとんど見られませんでした。

 しかしイタリアは20年代以降のムソリーニ政権の下で、国際的に禁止されていた毒ガスを使用してエチオピアで30万人、ソマリアで10万人を虐殺しました。戦後、アフリカ諸国はじめ独立した旧植民地国が国際社会で台頭するもとで、90年代になって歴史学でイタリアの植民地主義・人種主義を批判する研究が本格化しました。人種差別と暴力による植民地支配の歴史が明らかにされてきました。

 こうした動きを受け、イタリア政府は96年、調査委員会を設置し、公式に毒ガスの使用を認定。2005年にはエチオピアに文化的な象徴の「オベリスク」を返還し、リビアへの謝罪につながりました。

 政権交代で協約が凍結されるなど植民地支配への謝罪や補償が進んでいるとは言えません。しかしこの間、ジェンダー(歴史的に作られた社会的・文化的な性差)の視点を取り入れて植民地支配の実態解明がさらに進んでいることは注目すべきことです。

 ―日本で言えば、旧日本軍「慰安婦」問題は植民地支配のもとでの戦時性奴隷の被害です。

 イタリアでは、入植者は主に兵士などの男性に限られ、現地女性を事実上の妻にして使用人のように劣等に扱いました。そうした男性の植民地生活は「マダマート」と呼ばれ、政府や軍も黙認しました。さらに「アーリア人」と「非アーリア人」の混交を禁じた「人種法」(1937年)の成立によって、彼らの下に生まれた子どもが捨てられるなど事態は深刻化しました。

 イタリア歴史学は、こうした植民地支配下での現地女性に対する暴力について、人種差別であると同時に、ジェンダー不平等に基づく暴力(ジェンダー暴力)だとみなし、植民地支配がジェンダー暴力によっても支えられていたことを明らかにしています。

 そうした動きの背景には、イタリアで2010年のベルルスコーニ首相の少女買春事件をきっかけに、性犯罪は「ジェンダー暴力」だという告発と根絶を求める運動の高まりがあります。今日的な人権発展の動きが、植民地支配の封印されてきた“記憶”を明らかにしているのです。

 おだわら・りん 1972年広島生まれ。東京外国語大学准教授。博士。「『平和の犯罪』としての戦時・植民地主義ジェンダー暴力」『ジェンダー史学』(2016年10月)など論文多数。

 

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「ニュース女子」抗議から3年 市民有志が活動報告まとめる デマ・ヘイトに抗する連帯を

2020215

 沖縄の新基地反対運動を「日当をもらっている」などと誹謗(ひぼう)中傷し、あざ笑った「ニュース女子#91」を東京MXテレビが放送(2017年1月2日)してから3年がたちました。公共の電波で流されたことに憤り、東京・麹町のMX前に集まり抗議してきた「沖縄への偏見をあおる放送をゆるさない市民有志」は、このほど3年間の活動報告をまとめました。

 これによると、丸3年にわたる行動は大きく二つに分けられます。第1期は、放送倫理・番組向上機構(BPO)が17年末に「重大な放送倫理違反があった」と認定し、18年3月、MXが「ニュース女子」の放送中止を発表し、8月には不十分ながらもおわびの見解を公表するまで。MX前抗議行動は34回続き、3回の屋内集会と3回の街頭デモも行いました。

 第2期の現在は、「ニュース女子」の制作をやめないDHCテレビ(元DHCシアター)を支える化粧品大手DHCの不買運動と、その後も「ニュース女子」を放送し続ける地方局への働きかけを中心に活動しています。

 このなかで、「この間の状況は3年前より深刻です」として、「DHCテレビとその出演者たちが、国会議員、作家、大学教授、ジャーナリストなどの名のもとに、沖縄だけでなく在日、韓国、『慰安婦』問題、LGBTなどに対するデマ・ヘイトをまきちらしている」と指摘。「その彼らを安倍首相は『桜を見る会』に招待するなどして権威づけている。しかし、変えていくことはできるはず」として、新しい輪を広げ、つながって、状況を反転させようと呼びかけています。

 

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平和へ誠実な歴史認識を 東京 「建国記念の日」反対集会

2020212

 憲法改悪に反対し立憲主義を回復することなどを掲げ「建国記念の日」に反対する集会が11日、東京都内で開かれました。歴史研究団体などでつくる「『建国記念の日』に反対し思想・信教の自由を守る連絡会」の主催で、約200人が参加。全国各地で同様の集会が開かれました。(各地の集会11面)

 一橋大学の加藤圭木(けいき)准教授と、日本平和委員会の千坂純事務局長が講演しました。

 加藤氏は、日本で不当な「韓国バッシング」が広がっている根底に、朝鮮半島に対する侵略・植民地支配への反省の欠如があると指摘し、問題を「人権侵害」の視点でとらえることが重要だと述べました。徴用工や日本軍「慰安婦」の問題とともに、日露戦争などにさかのぼる数々の人権侵害を紹介。その不法性・犯罪性を認め謝罪と賠償をすることは、日本の「民主主義の質」に関わると提起しました。

 千坂氏は、米国防総省高官も「あぜん」としたほど危険な、トランプ米大統領によるイラン司令官殺害を、批判もせず自衛隊を中東へ派兵する安倍政権を批判。死傷者も出る「リスク」を米軍と「共有」すべきだとする発言が政権中枢から相次ぎ、防衛大学校人権裁判に象徴されるような人権侵害が自衛隊でも常態化していると告発しました。

 辺野古新基地問題や、慰安婦問題のドキュメンタリー映画「主戦場」の上映中止要求をはね返した川崎市「しんゆり映画祭」、入試への英語民間試験導入問題などのテーマでリレートークが行われ、「誠実な歴史認識の向こうにアジアと世界の平和を見据える」ことを呼びかける集会アピールが採択されました。

 

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被害者中心が「原則」 徴用工問題 韓国大統領が強調

2020212

 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は11日、徴用工問題における自身の被害者中心主義について、「国際社会の原則だ」と改めて強調しました。地元メディアが、大統領府関係者の話として伝えました。

 文氏は、「被害者中心主義は国連人権委員会など国際社会で合意された原則だ」と説明。「慰安婦」問題の解決をうたった2015年末の日韓合意は「被害者中心主義に立脚できず、国民の同意を得られなかった」と指摘し、強制動員問題の解決には、「被害者の同意が一番大きな原則だ」と述べました。

 この発言は、元徴用工問題をめぐる文氏の姿勢を批判する日本の一部メディアの報道に反論した形です。

 

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共産党ジェンダー平等委員会です 「学び、前進していきたい」 新婦人と懇談

202027

 ジェンダー平等を綱領的課題だと位置づけた日本共産党第28回大会を受け、新たに設置されたジェンダー平等委員会の倉林明子責任者(参院議員)と坂井希事務局長、飯田洋子事務局次長は6日、東京都内にある新日本婦人の会(新婦人)中央本部を訪れ、米山淳子会長らと懇談しました。同委員会が市民団体と懇談するのは初めて。

 倉林氏は、「ジェンダー平等を党綱領に位置づけたことで、新しい挑戦に一歩踏み出したように思う」と述べ、「これまで新婦人が積み上げてきたことを学びながら、日本共産党としても前進していきたい」と決意を語りました。

 新婦人の米山会長をはじめ、笠井貴美代副会長、高杉しゅん事務局長らが、女性差別や性暴力、選択的夫婦別姓、ハラスメントなどさまざまなテーマで行動してきたことを紹介しました。

 さらに、▽女性差別撤廃条約選択議定書の批准▽日本軍「慰安婦」問題の解決▽家族従業員の給与を必要経費と認めない所得税法56条の廃止▽選択的夫婦別姓を実現するための民法改正―の四つの意見書を地方議会で可決するよう求める行動も紹介しました。

 性暴力をめぐってフラワーデモが全国に広がっていること、当事者が立ち上がったことが国会論戦にもつながっていることなどについて交流しました。

 

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2020焦点・論点 シリーズ歴史問題と人権 旧日本軍「慰安婦」・「徴用工」問題 真の解決へ 東京造形大学教授(国際人権法) 前田朗さん

202027

国際人権に基づくアプローチ 被害者の意向を十分反映せよ

 旧日本軍「慰安婦」問題と「徴用工」問題の真の解決のためには、被害者の意向が十分に反映された救済方法の「被害者中心アプローチ」が必要とされています。同アプローチについて、東京造形大の前田朗教授(国際人権法)に話を聞きました。(日隈広志)

 ―「徴用工」問題、「慰安婦」問題などをめぐり日韓の政治的対立が激しくなっています。

90年代に大きく転換

 真の解決には「被害者を救済し、人権を回復する」という視点が何よりも必要です。しかし日本政府もメディアも世論も、この視点が決定的に欠けています。危機感と憤りを持っています。

 国際社会に目を向ければ、深刻な人権侵害に対して「被害者救済」を第一とする考えはいまや当たり前です。「被害者中心アプローチ」は、戦時・平時を問わず、国際人権法と国際人道法に即した被害者の救済の在り方です。2005年の国連総会決議「国際人権法及び国際人道法の重大な違反の被害者のための救済と補償に関する基本原則及びガイドライン」(基本原則と指針)が一つの到達点を示しています。さらに国際刑事裁判所(ICC)や国連の各人権条約の委員会などでさらに発展しています。

 「基本原則と指針」には締約国に対して救済の仕方として▽原状回復▽賠償▽リハビリテーション▽満足▽再発防止の保証―を義務づけました。「満足」は被害者らの意向が反映された救済策を講じることを意味し、加害国がその事実を認めて責任を受け入れ、公的に謝罪を行うことなどが必要だとしています。

 国際社会が国際法の中で「被害者救済」の在り方を大きく発展させたのは1990年代です。私は当時、人権問題を研究するため毎年国連に通いましたが、このころの「国家から個人へ」という国際法の変化には目を見張りました。

 日本軍「慰安婦」ら戦時性奴隷の被害者が告発し、旧ユーゴとルワンダでの大規模なレイプや虐殺が世界に衝撃を与え、現実に拡大する被害をどう食い止め、どう被害者を救済するかという議論が一気に進んだのです。国連で被害者個人の「救済」の制度整備が急がれ、最終的に「基本原則と指針」へとまとまりました。ICCが被害者重視の規定を定めたことも「基本原則と指針」に影響を与えています。

 ―日本政府は「慰安婦」問題について1993年以降、人権機関から勧告を受け、“被害者救済の不十分さ”を指摘されています。(表)

人権侵害の安倍政権

 とくに安倍政権は、拷問禁止委員会が行った「基本原則と指針」に基づく勧告(13年)に対し、「強制力がなく、従う必要はない」と閣議決定までして拒否を表明しました(日本共産党の紙智子参院議員の質問主意書に対する答弁書)。ここまで人権条約に敵意を示した政府はあったかと衝撃を受けたほどです。

 15年の「慰安婦」問題での日韓合意には、女性差別撤廃委員会(16年)や人種差別撤廃委員会(18年)が「被害者中心アプローチを十分に採用していない」と批判しています。安倍政権は「性奴隷という事実はない」などと主張しますが、それはさらなる人権侵害であり、国際社会で孤立を深めるばかりだと認識すべきです。

 ―一部改定された日本共産党綱領は、植民地支配体制の崩壊が国際人権保障の発展の土台となったと位置づけました。

 そのような見方を歓迎します。これからの国際人権保障に対する責任も感じられます。

 重要なのは、「被害者救済」の発展の歴史は植民地体制の崩壊と不可分だということです。

 国連では1945年の発足当初、人権侵害の禁止や防止は理念にとどまり、個別の被害の通報に対応できていませんでした。米英仏など常任理事国が最大の人権侵害である植民地を保有し、人権は国内問題だとする意識が根強くありました。

 しかし国連の「植民地独立付与宣言」(60年)など、植民地から独立した国々が国連に加盟するなかで、人種差別撤廃条約が成立(65年)します。同条約はナチス・ドイツのホロコースト(ユダヤ人大虐殺)、米国の黒人差別、南アフリカのアパルトヘイト(人種隔離)を禁止すべき人権侵害の犯罪だと明記しました。被害者の保護と救済が具体的な課題となったのです。

 まえだ・あきら 1955年北海道生まれ。東京造形大学教授。日本民主法律家協会理事、NGO国際人権活動日本委員会運営委員など。『「慰安婦」問題の現在』、『ヘイト・スピーチ法研究原論』など著書多数。

 

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1月

 

2020焦点・論点 シリーズ歴史問題と人権 植民地支配の責任に向き合う 立命館大学教授(イギリス帝国史) 前川一郎さん

2020128

根本問題突きつける「告発」 現在の人権意識が問われる

 韓国大法院の徴用工判決(2018年10月)によって、日本の朝鮮半島に対する植民地支配の不法性が改めて提起されました。過去の植民地支配の不法性を問う声について、前川一郎立命館大学教授に聞きました。

 ―過去の植民地支配をめぐり「合法だった」とする議論が根強くあります。

 戦後、植民地支配をめぐり大きな変化が起こりました。1945年6月に国連憲章が、旧委任統治領や敗戦国の統治から分離された地域を「信託統治地域」とし、それらの地域で「自治または独立に向かっての住民の漸進的発展を促進する」仕組みをつくりました。これ以降、植民地は認められないという建前を示したものです。また、「アフリカの年」といわれる1960年には17カ国が一斉に独立し、同年末には国連総会決議1514第15項で「植民地と人民に独立を付与する宣言」が出されました。

 そして、2001年9月には、9・11同時多発テロ直前に開かれた「人種主義に反対する世界会議」(ダーバン会議)で、アフリカの貧困をもたらした奴隷制や人種差別、そして植民地主義の「罪」が問われました。

 このように第2次世界大戦後の世界では、植民地支配は不正義である、という考えが世界に広く共有されるようになりました。

 しかし、植民地支配の不法性を法理論ベースに求め、旧宗主国の法的責任を追及する基盤はまだないのです。

 ―日本やドイツの戦争責任が、東京裁判、ニュルンベルグ裁判でさかのぼって処罰されたことと違いがありますね。

 そこにはいわゆる「過去の克服」をめぐるダブルスタンダードがあると思います。戦争責任については法の不遡及(ふそきゅう)の原則を例外的に破って裁いたが、植民地支配責任についてはしていない。

 これは法理論の問題というより歴史の問題です。つまり、ナチスと日本の戦争指導者を裁かなければ正義が成り立たない、戦争に決着をつけられない状況だったわけです。戦争が終わった後の「法」で例外的に戦争責任を裁いたのです。

 ―徴用工裁判も含め、世界のあちこちで植民地支配下での虐殺や暴力に対する裁判が起こされていますね。

 植民地支配下での暴力や差別の一つ一つを不法として訴え、責任追及の正当性を積み重ねていく努力は重要です。それがないと、国際法的な合意は形成されません。ケニアのマウマウ土地解放運動への弾圧(1950年代)、オランダのインドネシアにおける虐殺、ドイツのナミビアでの虐殺(1904年)などが被害者から告発され、裁判が行われ、賠償や謝罪を求める政治的動きも起こっています。

 しかし、植民地支配そのものについての責任となると、実際は、過去に植民地を支配した側=旧宗主国は、植民地支配責任に向き合っているとは言えません。

 よくドイツは過去に向き合い日本はだめだと言われますが、植民地責任になると、日本もドイツも全く向き合っていない。イギリスやフランス、オランダもそうです。虐殺事件について謝罪し、「道徳的責任」と称して金銭の拠出を伴うなんらかの対応に出ることはあっても、植民地支配の「罪」について国家として法的責任を引き受けることは決してない。

 ―そこにはどんな要因があるのでしょう。

 戦後の国際社会をけん引してきた国々が、全体として、植民地責任に向き合ってこなかった歴史があります。また、旧植民地の独立が、現地のエスタブリッシュメント(有力者)と宗主国側との「妥協」という形で進み、独立した側の政府が、責任を追及しないという「共犯関係」もありました。例えば、ケニアは、独立(1963年)に際しては「イギリスに補償を要求しない」として、イギリスから開発援助等の支援を受けた。それで、植民地は独立する一方で、イギリスは帝国解体の衝撃を和らげることができたと言われています。

 また、日本も戦後、侵略戦争の責任は追及されたが、東京裁判でも、サンフランシスコ講和会議でも、朝鮮半島への植民地支配の責任は追及されなかった。これは、戦勝国の多くが植民地支配国であったため、その責任を問うことを避けたからです。

 そうした戦勝国を中心に構築された戦後の国際社会では、その後も歴史問題は棚上げされたままでした。

 しかし、そのもとでも1970、80年代に人権が国際化する中で、あるいは冷戦構造が崩れてくる中で、封印された記憶、被害者の声が噴き出してくる。グローバリゼーションの進展で、世界の動きを瞬時に共有できるようになったことも大きな要因です。

 ところが、90年代にそうした動きが盛り上がる一方で、いわば「不都合な事実」を嫌った旧植民地支配国側のバックラッシュ=反動が強まったのです。「ホロコーストはなかった」とか、「慰安婦はなかった」とか、地域的な装いはあるが、共通するのは戦争や植民地支配の過去を問い直す潮流への反動です。これは日本だから、西洋だからという問題ではなく、20世紀的な世界の垂直的な支配・被支配関係の問題がなお影を落としていると考えざるを得ません。そのせめぎあいの中で今があるという状況です。

 ―21世紀に入り、アジア、アフリカなど20世紀に独立を勝ち取った中小国が、国際政治における役割を大きくする中で、新たな流れも起こっているのではないでしょうか。

 その通りだと思います。徴用工の問題を含め、今起こっている声は、植民地の独立の時代に「封印」され、90年代以降の民主化の流れの中でも旧植民地支配国の反動などで抑え込まれ続けた民衆の声です。それが表に出てきた。今起こっている植民地支配の責任を本格的に問い直す動きは、近代史上初めての状況とも言えます。

 同時に、その被害者たちはすでに世界のどこでも高齢で、その声を直接聞くことは間もなく不可能になる。この点で、今が最後のチャンスであり、今が最初の第一歩でもある。

 だから今やらなければならない。事実を「なかった」ことにするわけにはいかない。重要なことは、歴史認識の問題は、過去の虐殺や性奴隷の事実を、現在の私たちがどう受け止めるかということです。過去を通して、現在の私たちの人権意識が問われているのです。

 法は過去に遡及しないという理屈を振りかざし「謝る必要はない」「責任はない」ということでいいのか。それは歴史を道具にして、人間を差別、蔑視することではないのか。それで、未来に向かって日本でも世界でも平和で民主的な社会をつくっていけるのか。根本的な問題を突き付けています。大きく言えば、近現代の根本には、植民地支配の問題があり、これを乗り越えられないまま、世界を変えるといっても絵に描いた餅です。

 徴用工裁判をはじめ、植民地支配下での暴虐に対する司法の積み重ねとともに、過去を克服するための市民による社会運動の役割は大きいと思います。

 まえかわ・いちろう。1969年東京生まれ。立命館大学教授。イギリス帝国史。『イギリス帝国と南アフリカ』ほか著書・論文・翻訳多数。

 

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第一決議(政治任務) (1)

2020119日【特集】

 第28回党大会で18日に採択された第一決議(政治任務)は次の通りです。

 傍線部分が修正・補強した箇所

目次

 

第1章 日本の政治を変える二つの大仕事――共闘の発展と日本共産党の躍進を

(1)市民と野党の共闘の到達点と、共闘を前進させながら党を躍進させる課題について

(2)日本共産党の躍進で、市民と野党の共闘を発展させ、新しい政治への道をひらこう

第2章 戦後最悪の安倍政治を終わらせ、野党連合政権を実現しよう

(1)日本社会を根底から破壊する、戦後最悪の安倍政権を倒して、新しい政治を

   (1)憲法と立憲主義の破壊――「戦争する国」に向かう暴走政治

   (2)戦後最悪の大増税を押し付け、暮らしと経済を根こそぎ破壊

   (3)大国に追随し、覇権主義にモノが言えない屈従外交

   (4)侵略戦争と植民地支配を美化する歴史逆行と排外主義

   (5)強権とウソと偽りと忖度の、究極のモラル破壊の政治

   (6)安倍政権の最悪の補完勢力としての「維新の会」

(2)市民と野党の共闘が直面する課題――いまこそ政権問題での前向きの合意を

   (1)市民と野党の共闘はどこまで来たか――4年間の共闘を通じて築いてきた到達

   (2)いまなぜ野党連合政権か――連合政権に向けた話し合いを呼びかける

(3)野党間の政策的な合意はどこまで来たか――野党連合政権がめざす政治転換の方向

   (1)「市民連合」との政策合意、野党共同提出の法案などで一致している政策課題

   (2)安倍政治からの転換の三つの方向にそって、野党連合政権をつくろう

   (3)政策上の不一致点に政権としてどう対応するか

(4)草の根からの国民の世論とたたかいで、野党連合政権への道をひらこう

第3章 内外情勢の激動と日本共産党の役割――党躍進で日本と世界の進路をひらこう

(1)日本の政治の二つのゆがみ「アメリカいいなり」「財界中心」と歴史逆行をただす

   (1)安保法制廃止とともに、「アメリカいいなり政治」の根本にある日米安保条約を廃棄する

   (2)日本経済の長期低迷と、貧困と格差の拡大――根底にある財界中心の政治をただす

   (3)侵略戦争と植民地支配に反対した政党の躍進は、アジア諸国との真の友好の道を開く

(2)「統一戦線」で政治を変える立場を貫く党の躍進は、共闘発展の推進力に

(3)日本共産党の躍進は、21世紀の世界の平和と進歩への貢献となる

   (1)世界で進む平和の地域協力の流れ――「北東アジア平和協力構想」の実現を

   (2)核兵器禁止条約に署名・批准する政府をつくろう

   (3)ジェンダー平等社会の実現を――財界、「靖国派」の抵抗を打ち破る力を持つ党を

(4)資本主義を乗りこえる展望を語り広げよう

   (1)世界的規模でも、各国ごとにも、貧富の格差拡大が深刻になっている

   (2)人類の未来にとって死活的な地球的規模での気候変動

   (3)資本主義を乗りこえる展望を持つ党の役割を正面から訴えよう

第4章 総選挙方針――「市民と野党の共闘勝利」と「日本共産党躍進」の二大目標を一体に

(1)来たるべき総選挙の「二大目標」を一体的に取り組み、達成しよう

   (1)共闘の時代に党躍進をかちとるカギは、「積極的支持者」を増やす日常活動の強化

   (2)あらゆる分野で、国民のたたかいを発展させる中で「二大目標」に挑戦する

   (3)「比例を軸に」をつらぬき、「850万票、15%以上」の実現を

   (4)小選挙区では、野党共闘の勝利と、日本共産党議席の大幅増をめざす

   (5)あらゆる選挙で、女性議員を増やすことに力を注ぐ

(2)地方選挙の取り組みを日常的に強化し、草の根から野党共闘の前進と党躍進の流れを

   (1)安倍自公政治による地方こわしを許さず、住民の命と暮らしを守る

   (2)地方議員第1党の奪回に向けた取り組み強化、草の根から市民と野党の共闘を広げる

   (3)地方議員の活動と成長を支え、地方議員(団)の日常活動を強める

(3)新しい情勢にふさわしく、選挙方針を抜本的に発展させよう

   (1)批判とともに希望を語る政治論戦

   (2)あらゆる活動で「双方向」をつらぬく

   (3)選挙の「担い手」を広げ、みんなが立ち上がる選挙にする

   (4)新しい情勢にふさわしく後援会活動を発展させる

   (5)幅広い団体との協力共同の取り組みを発展させる

   (6)若い世代が、生き生きと力を発揮できる選挙に

   (7)熟達した選挙指導の発展・継承を

(4)全党が力をあわせ未踏の道を開拓し、勝利をつかもう

 

第1章 日本の政治を変える二つの大仕事――共闘の発展と日本共産党の躍進を

 

(1)市民と野党の共闘の到達点と、共闘を前進させながら党を躍進させる課題について

 安倍自公政権とその補完勢力に、市民と野党の共闘が対決し、安倍政権を終わらせて野党連合政権への道を開く、日本の政治の新しい時代が到来している。

 前党大会後、2017年の総選挙では、党は共闘を破壊する突然の逆流に直面した。しかしそれを、全国の草の根での市民の取り組みと力を合わせて乗りこえ、共闘を守ることができた。この結果は、その後の国会での野党共闘の発展に大きく寄与することになった。

 19年の参院選では、全国すべての1人区で野党統一候補がたたかい、10選挙区で自民党との一騎打ちに勝利した。これは、自民・公明・維新など改憲勢力の参議院での議席を、改憲発議に必要な3分の2割れに追い込み、自民党を参議院での単独過半数から大きく割り込ませる上で、決定的な力となった。

 日本共産党自身は、17年総選挙では悔しい後退を喫したが、19年参院選では比例代表の得票数・得票率ともに押し返し、次の総選挙で躍進をかちとるうえでの重要な足掛かりをつくることができた。

 わが党にとって、市民と野党の共闘を前進させながら、いかにして日本共産党自身の躍進をはかるかは、きわめて重要な課題である。そのためには、党の積極的支持者を増やす日常的な活動の強化と、党の自力を強くするための独自の努力が必要であり、さらなる努力と探求を強めることは、いささかもゆるがせにできないわが党の最大の任務である。

(2)日本共産党の躍進で、市民と野党の共闘を発展させ、新しい政治への道をひらこう

 今大会期は、二つの大仕事に取り組み、その目標を成しとげる。

 一つは、4年間の取り組みの到達と成果の上にたって、市民と野党の共闘を野党連合政権を実現する共闘へと、質的に大きく発展させることである。

 いま一つは、次期総選挙で「850万票、15%以上」を実現し、日本共産党そのものの躍進をかちとることである。

 日本共産党を国政選挙でも地方選挙でも躍進させることは、共闘を発展させ、野党連合政権を実現するための決定的な保障となる。

 同時に、党を躍進させることは、党綱領が示した民主的改革を実現し、日本政治のゆがみを根本からただす最大の力となる。

 共闘の発展と党の躍進は一体に取り組まなければならないが、わけても、党を躍進させることは、わが党が担う独自の任務であり、どんな情勢のもとでも、いついかなる時も成しとげなければならない、わが党の独自の国民に対する責任である。

 全党の総力をあげて、党躍進の流れを切り開こう。

第2章 戦後最悪の安倍政治を終わらせ、野党連合政権を実現しよう

 

(1)日本社会を根底から破壊する、戦後最悪の安倍政権を倒して、新しい政治を

 安倍政権がこの7年間でやってきたことは、憲法と平和、暮らしと経済、民主主義と人権などあらゆる分野で、戦後どの内閣もやってこなかった史上最悪の暴政の連続だった。戦後最悪のこの内閣をこれ以上延命させてはならない。

(1)憲法と立憲主義の破壊――「戦争する国」に向かう暴走政治

 安倍政権は、戦後70年にわたって自民党政権が「憲法上できない」としてきた集団的自衛権の行使を、一内閣の閣議決定で可能にし(2014年7月)、安保法制=戦争法を強行した(15年9月)。まさに「憲法破壊のクーデター」である。

 立憲主義を破壊した政治のもと、権力行使に抑制がなくなり、数を頼んだ暴走が横行するようになった。特定秘密保護法(13年)、盗聴法の適用拡大(16年)、共謀罪法(組織的犯罪処罰法改正、17年)の強行など、国民の目と耳と口をふさぎ、自由と権利を侵害し、モノ言えぬ監視社会への動きを加速させてきた。

 日米安保体制を地球規模の軍事同盟に変質させた日米新ガイドライン(15年)と安保法制=戦争法のもとで、「戦争する国」づくりがすすんでいる。

 安倍政権が2018年12月、閣議決定した新「防衛計画の大綱」、「中期防衛力整備計画」は、日米同盟をいっそう強化するとともに、「従来とは抜本的に異なる速度で防衛力を強化する」とした。20年度の軍事費は、政府予算案で8年連続増額、過去最高の5兆3千億円となった。とくに、「いずも」型護衛艦を最新鋭戦闘機F35Bが発着艦できる空母に改修することや、敵基地攻撃能力の保有をめざして長距離巡航ミサイルを導入したことは、「専守防衛」をたてまえとしてきた従来の政府の立場をもくつがえし、自衛隊を海外で実際に武力行使する軍隊へと大きく変貌させるきわめて重大なものである。

 安倍政権の「戦争する国づくり」の策動は、憲法9条の「改定」を最大の目標としている。先の参院選で改憲勢力は、発議に必要な3分の2の議席を失った。「期限ありきの早急な改憲には賛成できない」というのが、参院選で主権者・国民が示した民意にほかならない。それにもかかわらず、安倍晋三首相は「2020年までの改憲」に執念を燃やしている。憲法9条に自衛隊を明記し、海外での戦闘に無制限に参加させる自民党改憲案を準備し、発議を虎視眈々(こしたんたん)とねらっている。

 憲法99条で「憲法尊重擁護義務」を課されている首相が、国民が望んでもいない改憲の旗を振ること自体が、立憲主義を乱暴に破壊するものである。

 憲法9条改定によって、戦後日本の、「海外の戦争で一人も殺さない、殺されない」というあり方を根本から変え、日本を「米国と肩を並べて戦争できる国」にする暴挙を、決して許してはならない。

(2)戦後最悪の大増税を押し付け、暮らしと経済を根こそぎ破壊

 安倍政権は、国民の暮らしの悪化も、景気と経済を壊すこともかえりみず、2度にわたり消費税の大増税を強行した。合計13兆円という大増税は、歴代自民党政権でも最大規模であり、安倍政権は戦後最悪の増税政権となった。

 経済の6割近くを支えている家計への負担増は、消費不況と国内需要の低迷に悩む日本経済にとって致命的な打撃となる。消費税増税は、地域経済を担っている中小企業をさらに疲弊させる一方、史上最高の利益を上げ、巨額の内部留保をかかえている大企業には負担を求めない。日本社会で深刻となっている貧困と格差に追い打ちをかける。経済政策としても最悪だと言わねばならない。

 安倍政権は、「消費税は社会保障のため」と言いながら、年金も医療も介護も生活保護も改悪の連続で、7年間で合計4・3兆円もの負担増と給付削減が行われた。

 口では「賃上げ」を言いながら、労働法制の改悪による雇用破壊を重ねた。消費税増税を含む物価上昇が、わずかな賃上げも吹き飛ばし、第2次安倍内閣が発足してから実質賃金を年間18万円も低下させた。

 消費大増税と社会保障の連続改悪、そして、雇用破壊と賃金の減少――まさに暮らしと経済を根こそぎ破壊してきたのが安倍政治である。

(3)大国に追随し、覇権主義にモノが言えない屈従外交

 安倍外交は、「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」を売り物にしているが、大国に追随し、覇権主義にモノが言えない屈従外交があらわになっている。

 安倍首相のトランプ大統領に対する「言いなり」ぶりは際立っている。憲法を踏みにじる軍事面での対米追随にくわえ、米国製兵器の「爆買い」、日米貿易交渉にみられるような食料主権と経済主権の放棄など、これまでのどの自民党政権と比べても、その対米従属ぶりは異常で深刻なものとなっている。

 対ロ領土交渉で、安倍政権は、これまで政府がまがりなりにも掲げてきた「4島返還」の方針さえ投げ捨て、事実上の「2島決着」の立場を打ち出し、それが破綻するなかで、国益を深刻な形で毀損(きそん)した。もともと自民党政府の対ロ領土交渉は、「領土不拡大」という第2次世界大戦の戦後処理の大原則を踏みにじった不公正を正すという原則的立場をもたない重大な弱点をもつものだが、安倍政権のもとでこの弱点と矛盾が噴き出している。

 対中外交では、昨年来の日中首脳会談などで、双方が「正常な発展の軌道」に戻ったと評価しているが、中国公船による尖閣諸島周辺の領海侵入は、その後も激増し、常態化している。安倍政権は、こうした中国の横暴な振る舞いについて、正面から抗議し、是正を求めることをしていない。他方、閣僚の靖国神社参拝が続き、内外の批判を招いている。歴史問題に誠実な態度をとるとともに、「言うべきことを言う」という姿勢をつらぬいてこそ、真の日中の友好関係を築くことができることを強調しなければならない。

(4)侵略戦争と植民地支配を美化する歴史逆行と排外主義

 安倍政権は、歴代自民党政権のもとで、まがりなりにも表明されてきた一連の到達点をも踏みにじって、歴史を改ざんし、侵略戦争と植民地支配を美化する歴史逆行の政治をすすめてきた。

 その象徴が、2015年8月に発表された「戦後70周年の安倍談話」だった。この談話は、朝鮮半島への植民地化を進めた日露戦争を礼賛するなど、1995年の「村山談話」で表明された「植民地支配と侵略」への反省を事実上投げ捨てるものとなった。

 その背景には、改憲右翼団体「日本会議」との深刻な一体化がある。第4次安倍再改造内閣の閣僚20人のうちの安倍首相を含む12人が、「日本会議」と一心同体の「日本会議国会議員懇談会」(日本会議議連)の幹部である。

 今日、日韓関係が最悪となっているが、その根本的原因は、安倍政権が、「徴用工」問題でも、日本軍「慰安婦」問題でも、過去、日本が犯した植民地犯罪に真剣に向き合おうとせず、被害者の方々の名誉と尊厳を回復する責任を投げ捨てていることにある。

 

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第28回党大会 綱領一部改定案についての中央委員会報告幹部会委員長 志位和夫(3)

2020116日【特集】

 世界のカトリック信者は約13億人とされていますが、バチカン市国が明らかにしているデータから算出しますと、そのうち6割以上が核兵器禁止条約に賛成した国に住んでいることが明らかになります。8中総の提案報告で、「核兵器禁止条約は、『世界の構造変化』のもとで、一握りの大国から、世界の多数の国ぐにと市民社会に、国際政治の主役が交代したことを、最も象徴的に示す歴史的出来事となりました」とのべましたが、「世界の構造変化」がローマ教皇の発言にも反映しているといえるのではないでしょうか。

 バチカンは、核兵器禁止条約を真っ先に批准した国となりました。私は、2017年、核兵器禁止条約の国連会議に参加したさいの、バチカン代表との心がこもった交流を思い出します。同年7月、核兵器禁止条約が採択されたさい、バチカンの国連首席代表と懇談し、条約成立をともに祝福しあいました。私が、「核兵器禁止条約の前文に、市民的良心の担い手として、被爆者などとならんで、宗教指導者と国会議員が明記されました。ともに手を携えてすすみましょう」とのべますと、バチカン代表は「その通りです。そうしていきましょう」と応じ、今後の協力で意気投合しました。バチカン代表が、「日本の共産党がこの平和の至高の課題にとりくんでいることが印象的です」「今後、イスラムなど世界のさまざまな宗教との共同を追求したい」と語っていたことも深く印象に残っています。

 宗教・宗派の違いをこえて、世界の宗教者とも広く手を携え、この人類的課題の実現のために力をつくそうではありませんか。(拍手)

核兵器禁止条約にサインする政府をつくろう

 こうした新しい動きが起こっているときに、唯一の戦争被爆国である日本政府がとっている態度はどうでしょうか。

 ローマ教皇が被爆地において、核抑止力論の否定と核兵器禁止条約を訴えたことは、米国の「核の傘」に頼り、核兵器禁止条約に背を向けながら、ポーズだけの「平和」を唱える日本政府の立場に対する痛烈な批判でもありました。しかし、この発言を受けての日本政府の反応は、「核抑止力は安全保障の基礎」だとして、核兵器禁止条約に背を向ける従来の態度を繰り返すだけの情けないものでした。

 日本政府が、2019年の国連総会に提出した核兵器問題の決議案は、核兵器禁止条約への言及は一切なく、核兵器廃絶を「究極の目標」として永久に先送りし、これまでのNPT(核不拡散条約)再検討会議で合意された一連の積極的内容を反故(ほご)にして米国など核保有国への異常なまでの追随姿勢をあらわにし、世界から厳しい批判を受けました。

 ローマ教皇は、訪日後、バチカンのサンピエトロ広場で行われた恒例の一般謁見(えっけん)で、世界中から集まった信徒を前にして、日本訪問についてこう語りました。

 「原爆の消えることのない傷を負う日本は、全世界のためにいのちと平和の基本的権利を告げ知らせる役割を担っている」

 これは世界の多くの人々の声でもあります。党大会として訴えようではありませんか。日本政府は、核兵器禁止条約にサインせよ(拍手)。そしてみなさん、サインしなければ、政府を代えようではありませんか(拍手)。私たちの手でサインする政府をつくろうではありませんか。(拍手)

ジェンダー平等について――全党討論をふまえて

 いま一つは、ジェンダー平等についてであります。

 一部改定案は、21世紀の新しい希望ある動きの一つとして、国際的な人権保障の新たな発展、ジェンダー平等を求める国際的潮流の発展を明記しました。さらに、日本の民主的改革の課題として、「ジェンダー平等社会をつくる」「性的指向と性自認を理由とする差別をなくす」と明記しました。この提案には、全体として強い歓迎の声が寄せられています。

 全党討論をふまえて、いくつかの点をのべておきたいと思います。

ジェンダーとは何か、男女平等と違うのか

 全党討論のなかで、「そもそもジェンダーとは何か。男女平等と違うのか」という質問が寄せられています。

 ジェンダーとは、社会が構成員に対して押し付ける「女らしさ、男らしさ」、「女性はこうあるべき、男性はこうあるべき」などの行動規範や役割分担などを指し、一般には「社会的・文化的につくられた性差」と定義されていますが、それは決して自然にできたものではなく、人々の意識だけの問題でもありません。時々の支配階級が、人民を支配・抑圧するために、政治的につくり、歴史的に押し付けてきたものにほかなりません。

 たとえば職場で、「女は妊娠・出産があるから正規で雇われないのは仕方ない」、「男は会社につくし、妻子を養って一人前」といった規範を押し付けることで、女性も男性も過酷な搾取のもとに縛り付けてきたのがジェンダー差別であります。ジェンダー平等社会を求めるたたかいは、ジェンダーを利用して差別や分断を持ち込み、人民を支配・抑圧する政治を変えるたたかいであることをまず強調したいと思います。(拍手)

 「男女平等」は引き続き達成すべき重要な課題ですが、法律や制度のうえで一見「男女平等」となったように見える社会においても、女性の社会的地位は低いままであり、根深い差別が残っています。多くの女性が非正規で働き、政治参加が遅れ、自由を阻害され、暴力にさらされ、その力を発揮することができていません。その大本にあるのがジェンダー差別であります。

 ジェンダー平等社会をめざすとは、あらゆる分野で真の「男女平等」を求めるとともに、さらにすすんで、「男性も、女性も、多様な性をもつ人々も、差別なく、平等に、尊厳をもち、自らの力を存分に発揮できるようになる社会をめざす」ということであると、考えるものです。

 2015年、国連で採択された「持続可能な開発目標」(SDGs)は、2030年までに達成すべき17の目標を掲げましたが、その5番目の目標に「ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と少女のエンパワーメントを図る」ことを掲げるとともに、すべての目標に「ジェンダーの視点」をすえることが強調され、「ジェンダー平等」はあらゆる問題を前向きに解決するうえで欠かせない課題と位置づけられました。

 ジェンダー、ジェンダー平等という概念は、私たちの視野を広げ、より幅広い方々とともに、性による差別や分断のない社会、誰もが尊厳をもって自分らしく生きることのできる社会をめざす運動の力になるものであり、そういう認識にたって、今回、綱領一部改定案に盛り込むことにいたしました。(拍手)

日本の著しい遅れの原因はどこにあるのか

 この問題で、日本は著しい遅れにあります。世界経済フォーラムが公表したグローバル・ジェンダー・ギャップ指数で、2019年、日本は、153カ国中121位となり、これまでで最低となりました。その原因はどこにあるか。

 一つは、財界・大企業が、口では「男女平等」を言いながら、実際の行動では、利益最優先の立場からジェンダー差別を利用していることであります。女性には「安上がりの労働力」と「家族的責任」を押し付け、男性には「企業戦士たれ」と「長時間労働・単身赴任」を押し付けています。日本経団連の会長と18人の副会長は全員が男性です。19人の全員が男性とは、異常な光景ではないでしょうか。ILO(国際労働機関)総会でハラスメント禁止条約が圧倒的多数で採択されても、日本経団連は棄権をしました。日本は「ルールなき資本主義」の国といわれますが、その最悪のあらわれの一つがジェンダー差別の押し付けにあることを、厳しく指摘しなくてはなりません。(拍手)

 いま一つは、戦前の男尊女卑、個人の国家への従属を当然視する勢力が、戦後政治の中枢を占め、とりわけ安倍政権で逆行が著しくなっていることであります。日本の歴史で女性差別の構造が国家体制として強固に押し付けられたのは明治期でした。絶対主義的天皇制国家を底辺で支える「家制度」に女性差別ががっちりと組み込まれました。明治期につくられた差別の構造は、戦後も引き継がれ、さらに、戦前の日本への回帰をめざす安倍政権のもとで、男尊女卑の言動が横行し、日本軍「慰安婦」問題で歴史の真実が否定されるなど、権力者がジェンダー差別をふりまいていることは許すわけにはいきません。(拍手)

 ジェンダー平等の上に利潤追求を置いて恥じるところのない財界・大企業の無分別と節度のなさ、明治時代の男尊女卑の価値観をいまだに押し付ける政治――この二つのジェンダー差別のゆがみをただすたたかいにとりくもうではありませんか。(拍手)

日本共産党としてどういう姿勢でのぞむか――学び、自己改革する努力を

 日本共産党としてこの問題にどういう姿勢でとりくむか。このことが、全党討論で活発に議論されていることは重要であります。

 まず何よりも強調したいのは、党が、ジェンダー平等を求める多様な運動――性暴力根絶をめざすフラワーデモ、就活セクハラやブラック校則を変えるたたかい、性的マイノリティーへの差別をなくし尊厳を求める運動などに、「ともにある」(=#WithYou)の姿勢で参加し、立ち上がっている人々の声を耳を澄ませてよく聞き、切実な要求実現のためにともに力をつくすことであります。ジェンダー平等を妨げている政治を変えるたたかいにともにとりくむことであります。

 同時に、戦前・戦後、女性解放のためにたたかってきた党の先駆的歴史に誇りをもちつつ、学び、自己改革する努力が必要であります。私たち自身も、ジェンダーに基づく差別意識や偏見に無関係ではありません。私たち一人ひとりが、無意識に内面化している人権意識のゆがみと向き合い、世界の到達、さまざまな運動の到達に学び、勇気をふりしぼって声をあげている人々に学び、自己改革のための努力を行おうではありませんか。

 党自身がジェンダー平等を実践してこそ、ジェンダー平等社会の実現に貢献することができます。そのためにお互いに努力することを、心から訴えたいと思います。(拍手)

四、21世紀の世界をどうとらえるか(2)――世界資本主義の諸矛盾

 続いて、一部改定案は、綱領第一〇節で、世界資本主義の諸矛盾という角度から、21世紀の世界の姿を明らかにしています。この問題にかかわって報告します。

貧富の格差拡大と地球規模の気候変動――どういう姿勢で立ち向かうか

 一部改定案は、冒頭に、「巨大に発達した生産力を制御できないという資本主義の矛盾」の七つのあらわれについてのべたうえで、「貧富の格差の世界的規模での空前の拡大」、「地球的規模でさまざまな災厄をもたらしつつある気候変動」の二つを、世界的な矛盾の焦点として特記しました。そして、この二つの大問題について、「資本主義体制が二一世紀に生き残る資格を問う問題となっており、その是正・抑制を求める諸国民のたたかいは、人類の未来にとって死活的意義をもつ」とのべました。

貧富の格差が空前の広がりを示すもと、「社会主義」の新たな形での「復権」が

 この二つの大問題は、人類の死活にかかわる緊急の課題であり、資本主義の枠内でもその是正・抑制を求める最大のとりくみが強く求められます。

 同時に、これらの問題にとりくんでいる人々のなかから、「資本主義の限界」が語られ、「利潤第一の経済システムそのものを変える必要がある」などの声が広く起こっていることは注目すべきであります。

 アメリカでは、貧富の格差が空前の広がりを示すもとで、「社会主義」を掲げるさまざまな運動が広がっています。「1%のためでなく、99%のための政治」を掲げ、社会保障の拡大を求め、富裕層への課税など経済的不平等をただすことを訴えています。私たちがいま日本でめざしている方向とも共通性をもった運動であります。

 そうしたもと、最近、大手世論調査会社「ピューリサーチ」が実施した世論調査(2019年4〜5月に調査)では、若い「ミレニアル世代」――23〜38歳の半数が社会主義を肯定的に見ているとの結果が明らかになりました。

 別の大手世論調査会社「ハリス」が実施した世論調査(2019年4月)では、社会主義への支持が拡大しているという調査結果が明らかになりました。それによれば、アメリカ人の10人に4人、18歳〜54歳の女性の55%が、資本主義の国よりも社会主義の国での生活を好むと表明しています。この結果を伝えたメディアは、「社会主義は特に女性の間で、そのソ連時代の汚名を消している」と報じました。

 ソ連崩壊から30年近くたった今日、世界資本主義の矛盾がむき出しの形で噴き出しています。そうしたもと、世界最大の資本主義国・アメリカで「社会主義」の新たな形での「復権」が起こっていることは、注目すべき出来事ではないでしょうか。(拍手)

地球規模の気候変動――非常事態に人類は直面している

 昨年12月に開催されたCOP25(国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議)は、温室効果ガス削減目標の引き上げを促す決議には合意したものの、「パリ協定」の運用ルールの決定が先送りにされ、世界の人々を失望させる結果となりました。

 地球規模の気候変動をめぐって、もはや問題の先送りは許されない非常事態――文字通りの「気候危機」に人類は直面しています。

 昨年12月に発表された国連環境計画(UNEP)報告では、現在各国から出されている目標通りに削減したとしても、世界の平均気温は産業革命前に比べて、今世紀中に3・2度上昇し、現在の排出ペースが続けば3・2〜3・9度上昇すると予測され、地球は破局的事態に陥ります。

 「パリ協定」で掲げる「1・5度以内」に抑制する目標を実現するためには、削減目標の緊急の大幅引き上げが必要であります。そのためには、2050年までに温室効果ガスの排出量を「実質ゼロ」にしなければなりません。あと30年です。人間でいえば1世代の間に、それを成し遂げなければなりません。そして、それを成し遂げるには、あと数年のとりくみが正念場となっています。グテレス国連事務総長が「気候危機」というほど、事態は切迫しているのであります。

この日本から、世界に連帯して、気候変動の抑制をもとめる緊急の行動を

 こうしたなか、世界的規模で、気候変動の抑制を求める運動が広がっています。

 昨年9月末に行われた「グローバル気候マーチ」には、185カ国で、760万人の市民が参加し、2003年のイラク戦争反対の世界的デモの参加者数を超え、史上最大規模となりました。若者たちが「私たちの将来を燃やさないで」とたちあがっています。17歳のスウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさんは、「一番危険なのは行動しないことではなく、政治家や企業家が行動しているように見せかけること」だと指摘し、「私たちは、大量絶滅の始まりにいる」と訴え、世界の若者の共感を広げています。

 グレタさんに対して、トランプ米大統領は、彼女が米タイム誌の「今年の人」に選ばれたことを、「全くばかばかしい。……落ち着け、グレタ、落ち着け!」とコメントし、ブラジルのボルソナロ大統領は「小娘」呼ばわりし、ロシアのプーチン大統領は「現代の世界が複雑で多様であることを誰もグレタさんに教えていない」といい、小泉進次郎環境大臣は「おとなたちに対する糾弾に終わってしまっては、私はそれも、未来はないと思っている」と批判しました。「ばかばかしい」のはどちらか、「現代の世界」を理解していないのはどちらか、「未来はない」のはどちらか。あまりにも明瞭ではありませんか(拍手)。若者の真剣な訴えを聞く力をもたない政治家に、恥を知るべきだと、私は強く言いたいと思います。(拍手)

 日本でも、台風・豪雨災害の大規模化、猛暑によるコメ生産への打撃、海水温上昇による不漁など、気候変動の深刻な影響があらわれています。ドイツのシンクタンク「ジャーマンウォッチ」は、地球温暖化の影響が指摘される豪雨や熱波など気象災害の影響が大きかった国のランキングを発表しましたが、2018年は日本がワースト1位となりました。にもかかわらず、日本政府は、石炭火力発電所を増設・輸出し、削減目標の上乗せを拒み、環境NGOから何度も「化石賞」を受賞するという恥ずべき姿をさらしています。

 日本でも、「グローバル気候マーチ」に連帯した若者たちの運動がはじまっています。世界の運動に連帯し、この日本から気候変動抑止のための緊急の行動を大きく発展させようではありませんか。(拍手)

気候変動の打開の道は「社会主義の理想を現代に適合させること」(米有力誌)

 いま注目すべきは、こうした運動にとりくんでいる人々のなかから、「いまのシステムで解決策がないならば、システムそのものを変えるべきだ」という主張が起こっていることであります。

 アメリカの有力外交誌『フォーリン・アフェアーズ』(2020年1―2月号)は、「資本主義の未来」を特集しましたが、その論文の一つは、次のように主張しています。

 「資本主義は危機にある。……経済成長を何よりも優先する経済モデルが必要とする大量消費と化石燃料の大量使用が大きな要因となり、気候変動は今や人類生存の将来を危機にさらしている。……人々の生活の質をぼろぼろにした経済崩壊と同様、環境の悪化は資本主義の危機に根がある。そのどちらの課題も、オルタナティブな経済モデル――社会主義の理想を現代に適合させることにより真の改革への渇望にこたえるようなモデル――を採用することで、対応できる」

 アメリカの有力外交誌が、気候変動の打開の道は、「社会主義の理想を現代に適合させること」にあるとする論文を掲載したことは、注目すべきことではないでしょうか。「利潤第一主義」――利潤追求を地球環境の上におき、生産のための生産につきすすみ、エネルギーの果てしない浪費を行う資本主義というシステムそのものが、いま問われているのであります。

 みなさん、貧富の格差の問題でも、気候変動の問題でも、資本主義の枠内で解決のための最大の努力を行いながら、資本主義をのりこえた社会主義によって問題の根本的な解決の展望が開かれることを、大いに語っていこうではありませんか。(拍手)

 

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在日本大韓民国民団の新年会 小池書記局長が祝辞

2020111

 在日本大韓民国民団(民団)の新年会が10日、都内で開かれ、各党代表らと共に、日本共産党から小池晃書記局長・参院議員、笠井亮衆院議員が出席しました。

 小池氏らは呂健二(ヨ・ゴニ)民団中央本部団長、南官杓(ナム・グァンピョ)駐日韓国大使、韓日議連の姜昌一(カン・チャンイル)会長らとあいさつを交わしました。

 呂団長は主催者あいさつで、両国の友好がしっかりしてこそ在日の生活と北東アジアの安定につながると述べ、「友好の橋を揺さぶり壊す嫌韓」を批判しました。また朝鮮半島の平和定着に寄与したいと表明し、北朝鮮にミサイル発射の中止などを求めました。

 小池氏は祝辞で、昨年11月の日韓・韓日議員連盟合同総会は、1998年に小渕恵三首相と金大中大統領の署名した「『日韓パートナーシップ共同宣言』の精神に立ち戻り、両国関係を早期に正常化させなければならない」と声明したと指摘。

 「日本側に問われているのは、過去の植民地支配への真摯(しんし)な反省の立場の堅持だ。そうしてこそ、徴用工問題であれ、日本軍『慰安婦』問題であれ、解決の道が開かれるし、両国関係も改善し、確かな日韓友好が築かれるのではないか。その精神で他党の皆さんと力を合わせて頑張る」と強調しました。

 ヘイトスピーチの根絶、定住外国人の地方参政権の実現に、引き続き努力するとも表明。日本共産党の第28回党大会の決議案が、めざす野党連合政権の柱の一つに「多様性を大切にし、個人の尊厳を尊重する政治」を掲げたと紹介し、今後の民団との交流・協力の発展を願うと述べ、大きな拍手を受けました。

 

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「若者の目」「若者の声」光る報道 新年の「赤旗」を読んで 元朝日新聞大阪本社編集局長 新妻義輔さん

202019

「おかしい」と声上げれば政治は動く

 「政治はあなたのためにある」―「しんぶん赤旗」が若い人たちに「希望」を本気で届けようとしているのに気づきました。2020年1月1日付の日本と世界の問題をわかりやすく読み解いた、日本共産党委員長の志位和夫さんと上智大学教授の中野晃一さんの新春対談は、「若者の声に耳を傾けるところから始め、政治を変えていく年にしたい」と締めくくっています。

 1面コラム「潮流」も、生きづらさや痛みを押しつける社会に疑問と怒りを感じている若者の声で綴(つづ)っています。元「従軍慰安婦」の韓国人女性との出会いをきっかけに、加害の歴史やジェンダー平等に取り組む関西の女子大生、この冬、根雪が少ないことから地球温暖化に危機感をもつ札幌の高校生、地方でコンビニとガソリンスタンドをかけもちして働き、貧困と格差を目の当たりにした20歳の青年…。

 3日付の1面トップには、野党連合政権をめざして新潟で取り組んでいる、20代から40代の若者の「日常風景に」さえなっている共闘。4日付の3面では、「気候危機 行動の時は今」とウガンダ、日本、サモア、オーストラリアの18歳から23歳の4人が声を上げています。「言わなきゃ気づかない」「社会変える選択しよう」「生活直撃もう時間ない」「私たちが運動をリード」と。

 7日付には、4月24〜26日に米国・ニューヨークで初めて開かれる原水爆禁止世界大会に参加する東神戸病院の24歳の診療放射線技師の男性と医療事務の女性が「被爆者に寄り添う」「被爆者の方の想いを届ける」と語っています。

 若い人たちの未来社会への変革のエネルギーが世界でも、日本でも噴きだし、広がり、勢いを増しつつあります。16歳のスウェーデンの環境活動家、グレタさんの国連での言動は世界に影響が及んでいます。香港では、若い人たちが民主主義と自由を求めて半年以上、政治変革を求め抗議行動をつづけています。

 日本でも、大学入学共通テストで予定していた英語民間試験活用の見送りは、高校生や受験生にとって「おかしい」と声を上げれば、「政治は動く。自分たちで国や社会を変えられる」という実体験になりました。不安を抱えている若者は、自分1人が何か言ったところで政治が変わるとは思わないとあきらめてきました。確かに、社会の変化はほとんど悪い方向に向かい、これ以上悪くならないようにと、「事なかれ主義」「現状維持」を求める傾向になっていたのです。

 「若い人たちが社会の変化と自分の歩みを重ねる喜びを実感し、実際に現実を動かしはじめています。政治はあなたのためにあるのです」―「しんぶん赤旗」が、若者たちに希望を語ることに力を入れるのは、時にかなっています。(寄稿)

 

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きょうの潮流

202011

 人生のいろんな階段で、だれもが同じ機会を等しくあたえられる。そんな社会をともにめざしたい▼関西の大学に通う田中あずささんは、中学生のときに行った韓国の「ナヌムの家」で心の奥底を揺さぶられました。同年代の少女が日本軍の「慰安婦」として連れ去られ、ひどい目にあった。その事実と今も解決されていないことに衝撃をうけ、加害の歴史やジェンダー平等を学んできました▼この冬は根雪が少ない―。札幌の高校生は地球温暖化に危機感を抱いています。異常気象が日常のように報じられ、それは身の回りにも。模擬選挙で仲間と一緒に気候変動をテーマにした政策も考えました。自分たちの未来を奪われたくないと▼首都圏の大学で社会保障の勉強にいそしむ安田美桜(みお)さんは、この国のあり方に疑問と怒りを感じています。必要なところに使われない税金、国民一人ひとりが大切にされない政治、生きづらさや痛みを押しつける社会。そのなかで立ちあがり、運動をひろげています。勇気と展望をもって▼それぞれが、社会を変えたいという思いとともに日本共産党に入ったばかりの若者です。時代の潮流や資本主義に横たわる問題を通して志を結んだ新しい力。そこには変革の意思が確かに▼地方でコンビニとガソリンスタンドをかけもちして働く20歳の青年は、貧困と格差を目の当たりにする日々です。ほんとうに助けを求めている人たちから政治は目を背けてはいけない。人間らしく、生きたい。「共産党はぼくの希望です」

 

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