【11月】〜【12月】
日ロ首脳会談/領土問題進展なし/道理なき交渉大失敗
「みなさん、がっかりすることになりますよ」。政府高官が予告していた通り、15、16両日に行われた安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領との首脳会談は共同声明も出されず、最大の懸案事項である領土問題で何の進展もなく、大失敗に終わりました。トランプ新政権のもとでの日米関係の不透明さとあわせ、外交で政権浮揚を図るという安倍首相の戦略にほころびが見えてきました。
(竹下岳、山田英明)
重大な主権放棄にも
首脳会談は初日、首相のおひざ元である山口県長門市で始まりましたが、プーチン大統領が予定より約2時間40分遅れて到着するという波乱の幕開けとなりました。
さらにプーチン氏は会談の冒頭、「温泉に入れば会談の疲れが取れる」と語りかけた安倍首相に対して、「大事なのは疲れない交渉をすることだ」とあしらいます。当初からロシア側のペースで進むことを予感させました。
果たして結果は、その通りになりました。
首相は16日午後の共同記者会見で、「私たちの話し合いの進展を70年以上、待ち続けている」と述べ、旧ソ連の不当な領土拡大で故郷を追い出された択捉、国後、歯舞、色丹の元住民に思いを致すかのような発言を行います。しかし、日本側は領土問題を先送りした上での「共同経済活動」で合意。これに関して16日付のロシア経済紙ベドモスチは1面トップで「(共同経済活動について)ロシアの主権を認めることになりかねず、日本は拒否してきた。日本がこの道を歩み始めるとすれば、日本からの非常に大きな、いわば歴史的な譲歩だ」との元駐日大使のコメントを紹介しています。
平均81歳になるという元住民を裏切る、重大な主権放棄につながりかねない内容です。「日本を取り戻す」という第2次安倍政権発足当時のスローガンは、もはや雲散霧消したといわざるをえません。
首脳会談では、「新しいアプローチ」と称して、日本側が提案した8項目の経済・民生協力プランに基づき、政府間で12件、民間レベルでは60件を超える協力案件で合意。民間を含めた日本側の協力は総額3000億円にも上ります。プーチン大統領は共同記者会見で、これら経済協力の具体的な項目を一つひとつ、誇らしげにあげました。
しかし、領土問題では「四島返還」どころか、北海道の一部である歯舞・色丹の返還についても、「1956年の日ソ共同宣言(別項)では日本に受け渡すことになっているが、どのような形で、受け渡すかは明快に提起されていない」として否定的な見解を示しました。ロシア側は領土問題で自らの主権≠ヘ放棄せず、一切の譲歩≠燻ヲしていません。
経済協力をテコに、ロシア側の見返りを期待する「道理ない」交渉では、領土問題の前進には向かわないことが、改めて浮き彫りになりました。
対ロ制裁の逆行行為
日本政府は、ロシアによるウクライナへの軍事介入問題に対して国際社会が行う経済制裁に参加しています。
そもそも5月の主要7カ国(G7)伊勢志摩サミットの首脳宣言に、議長としてロシアへの制裁の再確認を盛り込ませたのは安倍首相自身でした。
欧州連合(EU)は15日の首脳会議で、対ロシア経済制裁の延長を決めています。
領土交渉の「前進」に付け込まれ、軽々しく経済協力の拡大に合意することは、制裁への逆行行為と、国際社会から批判されかねない行為です。
「不公正」の是正こそ
日本政府は、「北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結する」との方針に固執。安倍首相は11月25日の参院本会議で、日本共産党の井上哲士議員の質問に、「サンフランシスコ平和条約第2条C項(別項)を一方的に破棄して、千島列島等の返還を求めることはなしえない」と言明しました。
政府は、サ条約のこの条項を不動の前提として、領土交渉を進めるために、「国後、択捉は千島列島にあらず。だから返還せよ」と主張してきました。
「千島列島は北千島と南千島の両者を含む」というサ条約批准当時の自らの見解もなげすて、「国後、択捉は千島列島にあらず」と主張する日本政府の姿勢は、歴史的にも国際法的にも通用しません。
日ロ領土問題の根源は、旧ソ連のスターリンが「領土不拡大」という第2次世界大戦の戦後処理の大原則を踏みにじり、「千島列島の引き渡し」を求め、米英がその要求に応じ、「ヤルタ秘密協定」に書き込まれたことにあります。サ条約の「千島列島の放棄」条項は、その不公正の延長線上に立ったものです。
問題解決のために必要なのは、戦後処理における不公正を「領土不拡大」という国際的な道理に立ち戻って是正することが必要です。
「領土不拡大」の原則に立つならば、日ロ両国が平和裏に国境を画定した領土交渉の到達点(=1855年の日魯通好条約、1875年の樺太・千島交換条約)に立つのは当然です。つまり、全千島列島が日本の歴史的領土となった到達点を交渉の土台に据えなければなりません。
日本政府は、サ条約の千島関連条項が第2次世界大戦の戦後処理の大原則に背く不公正なものだったと認識し、この条項を廃棄・無効化し、千島返還を要求する国際法上の立場を確立すべきです。その上で千島列島の全面返還を内容とする平和条約締結の交渉を行うべきです。
この立場での交渉を行ってこそ、国後、択捉の返還の道も開けてきます。
サンフランシスコ平和条約2条C項(1951年)
日本による千島列島の放棄を定めた項目。「日本国は、千島列島並びに日本国が1905年9月5日のポーツマス条約の結果として主権を獲得した樺太の一部及びこれに近接する諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する」としている。
◇
日ソ共同宣言
1955〜56年の日ソ国交回復交渉で最終的に結ばれた。この中で、「ソビエト社会主義共和国連邦は、…歯舞群島及び色丹島を日本国に引き渡すことに同意する。ただし、これらの諸島は、…平和条約が締結された後に現実に引き渡されるものとする」としている。
( 2016年12月17日,「赤旗」)
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臨時国会/共産党議員団の奮闘/1/強行採決国会=^道理と筋通し共闘で対決
9月下旬に始まった臨時国会が17日、閉幕しました。安倍政権と自民・公明・維新の悪政推進ブロックに、野党間や市民との共闘を進めて対決し、政治を前向きに動かすために奮闘してきた日本共産党国会議員団が果たした役割を振り返ります。
大手紙でも「採決強行国会」(「朝日」16日付)と特徴づけるほど強行採決が繰り返された臨時国会。議会制民主主義の道理を訴えて、筋を通し、政府・与党の強権的な国会運営をただしてきたのが日本共産党です。
年金カット法やカジノ解禁推進法への「反対」は、成立直前の世論調査では「賛成」のそれぞれ2倍・3倍以上(NHK調査)。環太平洋連携協定(TPP)にも多くの国民が不安や疑問を抱き、慎重な審議を求めていました。
多数頼み#癆サ
「にもかかわらず『こんな議論何時間やっても同じだ』と採決を強行し、国会と国民をないがしろにした安倍政権の責任は重大です」。15日未明の衆院本会議で内閣不信任案の賛成討論に立った日本共産党の穀田恵二国対委員長の声が響きました。
日本共産党はこの間、政府・与党から相次いだ「強行採決」けしかけ#ュ言を「審議を通じて国民の理解を得るという基本的見地が欠けている。根本には国会での多数を頼み、数で通せばいいという発想がある」(穀田氏)と厳しく批判。TPPについては、慎重審議を求める国民の声に応える、全分野での参考人質疑や10カ所での地方公聴会などを含む、徹底審議を求めました。
衆院でTPP承認案が本会議の開会をめぐって協議が続けられている最中に強行開会された特別委員会で採決された際には、衆院規則に照らしてもルール違反であることを明らかにし、佐藤勉議院運営委員長も「ルール上はできない。こんなことがまかり通れば議運はいらない」と語りました。
共産、民進、自由、社民の4野党国対委員長が、強行採決のたびに強く抗議し、大島理森衆院議長にしかるべき対応を申し入れると、議長も「決して平穏な状況のもとで採決が行われたわけではない」(TPP承認案)と認め、「提出者の努力で充実した審議ができなかったのかという思いがある」(カジノ法案)と語らざるを得ませんでした。
15日の討論で穀田氏はこう主張しました。
理解得られない
「そもそも、国会審議の責務とは、法案の内容、国民の生活や権利がどうなるのかを国民に明らかにすることにある。いくら国会で多数を占めていても、それは国民から白紙委任を得たものではない。国民が納得できる徹底審議で政治を進めるのが議会制民主主義ではないのか」
与党と維新が繰り返した強行採決は、その政策があまりにも国民の利益に反しているために、いくら審議しても国民の理解を得ることができないという国民との深刻な矛盾を示しています。たたかいはこれからです。
(つづく)
( 2016年12月19日,「赤旗」)
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シリーズ核兵器のない世界を/大阪/ヒバクシャ国際署名のとりくみ/上/寝屋川市/人口3割目標に幅広く
大阪原水協は、核兵器を禁止し廃絶する条約を結ぶことをすべての国に求める「ヒバクシャ国際署名」を、883万8000人の大阪府民過半数を目標に頑張るよう呼びかけています。先進的なとりくみをする寝屋川市と大阪市西淀川区を歩きました。
(大串昌義)
寝屋川市では、11月23日、原爆被害者の会(広長友の会)が中心になって、寝屋川労連や新日本婦人の会、革新懇など8団体が加わっている市段階の「ヒバクシャ国際署名」推進協議会を結成しました。まずは人口23万7000人の3割、8万人をめざしています。会長は、広島で被爆した「広長友の会」会長の山川美英(よしひで)さん(75)です。
市長に協力要望
「広長友の会」は10月25日、北川法夫市長に「被爆者のアピール『核兵器廃絶国際署名』の運動にひきつづきご協力をおねがいしたい」という要望書を提出しました。
「日本非核宣言自治体協議会及び平和首長会議と連携を図りながら、核兵器廃絶、恒久平和の実現に取り組んでおります」と、歴代市長として初めて回答が返ってきました。山川さんは笑顔を浮かべながら、「近々、市長に署名してもらい、市として運動してほしいと要請するつもりです」と語ります。
山川さんは、府段階の推進連絡会をつくり、宗教界や教育界など幅広い大きな運動にしたいと意気込みます。推進協議会の中谷光夫事務局長(寝屋川原水協事務局長)は「署名の集約は広長友の会がしています。寝屋川は大阪でも特に被爆者のみなさんが元気です」といいます。
被爆者が力発揮
「広長友の会」は、用紙の現物が届いた6月から署名を始めました。
被爆者同士が励ましあい、市民や友達、親戚に署名協力を呼びかけています。「被爆者は、何かできることをしたいと思っているのです」と山川さん。自分の名前を書き、82円切手を貼った署名入り返信用封筒を常に持ち歩いています。
ヒバクシャ国際署名の1回目の国連提出(10月6日)は56万人余でした。寝屋川市では9月までに1000人分を集めました。
広島の爆心地から4`bで被爆した松山五郎さん(87)は、署名の束を大阪原水協の小松正明事務局長のもとに持っていきました。「この署名はみんなして取り組める。これで世界中を包囲すれば、核兵器は地球上からなくせると思います」
(つづく)
( 2016年12月20日,「赤旗」)
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シリーズ核兵器のない世界を/大阪/ヒバクシャ国際署名のとりくみ/下/大阪市西淀川区/「継ぐ」若い世代が元気
集合住宅が立ち並ぶ人口9万5000人の大阪市西淀川区。住民過半数の5万にあたる「ヒバクシャ国際署名」を集めようと、若い世代が元気です。
全国福祉保育労働組合西淀川福祉会分会よどっこ保育園班の保育士、内田知也さん(25)は長崎生まれの被爆3世です。
甲状腺がんで亡くなった祖母が、怖がって被爆のことを語れなかったといいます。建物が壊れたり、友人を亡くしたりしたからではないかと考えています。
自分たちの声を
保育士になった3年前から駅前で核兵器廃絶署名を呼びかけています。「ヒバクシャ国際署名」は100人分集めています。「子どもたちが笑顔を絶やさないためにもっと集めたい。核兵器や原発などあってはいけません」
唯一の被爆国なのに、国連総会第1委員会で核兵器禁止条約の締結交渉国際会議を来年開く決議に「反対」し、被爆者を苦しめる政府に怒りをぶつけます。「国連には、政権の声でなく、自分たちの声を通してもらいたい。国際署名を、大阪で、日本で集めきって、被爆国として数多く集めたと世界にアピールしたい」
この8月広島でおこなわれた原水爆禁止世界大会に初めて参加したのは、同分会みどり保育園班の保育士、藤田かなえさん(25)です。
原爆資料館には小学生の時行ったことがありました。改めて見学しました。「世界大会に行って、原爆は怖いものだとわかりました。体験を周りに伝えることが大切だと考えています」と話します。
毎日当たり前に暮らせるのはみんなが平和をつくっているからだと学びました。戦争やテロで核兵器が使用される脅威に直面していることも。学んだことは街頭署名の対話で活用しています。
「戦争はあかん」
「戦争のなかでも怖いのが核戦争。なんとしても区民過半数の署名をやりきる」
こう語るのは、「戦争あかん!西淀川実行委員会」事務局長を務める西淀川労連の矢野正之副議長です。
区内の労働組合、市民・女性団体でつくる同実行委員会。戦争法廃止の2000万署名を共同して取り組みました。「1月から5月までの5カ月で3万超集めた経験は初めて。規模も速度も違った。この運動を継続したい」
「戦争あかん!! あなたの署名が世界を変える ヒバクシャ国際署名にご協力を!!」と書かれた横断幕を掲げて宣伝しています。
連合系や純中立の労働組合へも対話に足を踏み出しています。
来年3月、6月から7月、国連で核兵器禁止条約の締結交渉会議が開かれます。条約締結に賛成する圧倒的多数の国を後押しする草の根の運動が必要だと強調する矢野さん。「特に3月に世論を盛り上げることが否応なく迫られます。『6・9』行動、集合住宅への署名ローラーを成功させたい」と力を込めます。
(この項おわり)
( 2016年12月21日,「赤旗」)
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シリーズ核兵器のない世界を/禁止条約実現へがんばる被爆者/松山五郎さん大阪/国連の決議を励みに
国連総会が核兵器禁止条約の交渉会議決議を採択した背景に、被爆者を先頭にした日本の反核平和運動がありました。被爆体験を語り、「ヒバクシャ国際署名」にとりくむ被爆者は「生きている間に何としても核兵器のない世界を実現したい」と元気に活動しています。
(大串昌義)
大阪府寝屋川市に住む広島被爆の松山五郎さん(87)は、府内で行われる被爆証言を聞く会や「ノーモア・ヒバクシャ訴訟」、「ヒバクシャ国際署名」行動に精力的に出て行って、核兵器全面禁止・廃絶を訴えています。
松山さんは71年前の8月6日、広島市の旧制中学4年生(16歳)の動員学徒として、爆心地から4`b離れた三菱造船所(南観音町)の事務所で軽作業をしていました。
窓越しに紫色の巨大な閃光(せんこう)が走りました。防空壕(ごう)へ一目散に駆け込みました。
学校の指示で学徒が解散したのは午前11時すぎ。外へ出ると、診療所をめざして列をなしているおびただしい負傷者が見えました。誰もが黙って、むき出しの両手を胸の前に出し、髪はボウボウ、服はボロボロの姿でした。
心の傷
松山さんは、爆心地から1・8`bの寄宿舎の室長で、下級生の安否が気になりました。戻る途中の土手には、幼稚園の先生らしきひん死の人。先生の近くの人から「学生さん、荷車にのせて運んでくれ」と求められ、「人を連れてくる」といってその場を立ち去りました。「言い訳にしかならない」。心に傷を負いました。
被爆後、腕に紫色の斑点が現れ、歯茎からの出血、脱毛、激しい下痢に苦しみました。
戦後、広島で教員をしていましたが、体験は語りませんでした。放射能に対する偏見が怖かったからです。
1995年に大阪に引っ越しました。広島から来たことを伝えて以降、寝屋川市原爆被害者の会(広長友の会)の人たちと毎年写真展を開く活動をしています。2005年からの核不拡散条約(NPT)再検討会議から、大阪代表団としてニューヨーク行動に参加。
広長友の会40周年の08年、77人の被爆体験をまとめた「八月のあの日」の編集責任者を務めました。「ここから被爆者同士が積極的に活動するようになりました」と振り返ります。
広島に帰っても、現場の土手だけは行けなかった松山さん。体験集ができたとき、1人で広島に行き、花を供えました。「負い目の何分の1かは返すことができました。被爆体験を後世に伝えることが生きている人間のやるべき仕事です」
仲間と
11月29日の大阪市西淀川区の塚本駅前。「戦争あかん!西淀川実行委員会」が宣伝すると聞き、駆けつけ訴えました。22歳の若者が「おっちゃんが被爆者やって聞いて、署名やらなあかんと思ってん」と話し、「署名書いたって」と仲間を呼ぶ場面があったといいます。
17年6月の核兵器禁止条約の交渉会議にぜひ行きたい≠ニ意気込む松山さん。「国連総会決議はうれしいし励みになります。命ある間に禁止条約をみたい。そのために追い込みをかけるのは『ヒバクシャ国際署名』だと思います。日本の署名活動が世界中に広がるよう頑張りたい」と力をこめます。(随時掲載)
( 2016年12月27日,「赤旗」)
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シリーズ安倍政権下で進む基地強化/10/進む拠点化、自動参戦の危険/横田
アジア地域の米軍の空輸拠点だった横田基地(東京都福生市など5市1町)は、@作戦地域へ部隊を送り込む拠点基地Aアジア地域の米軍と日本を含む同盟国の航空部隊を指揮する司令部―として姿を変えようとしています。横田基地の変貌は、米軍がインド・アジア太平洋地域で軍事作戦を開始すれば、戦争法の下、自動的に日本が集団的自衛権を行使し参戦する危険につながります。
「すさまじい音がして、窓ガラスがガタガタ震えました。戦争でも始まったんじゃないかと思いました。ここをついの住み家≠ニ思っていましたが、このまま住んでいけるか不安になりました」
基地北西に隣接する瑞穂町の都営団地に住む女性(73)は振り返ります。今年7月30日〜8月5日かけて、米軍三沢基地(青森県三沢市)のF16戦闘機14機が飛来し、爆音をまき散らしました。マレーシア軍との共同演習後、三沢基地への帰還途中でした。
海外に出撃
1月にも嘉手納(沖縄県)と烏山(オサン=韓国)両基地での演習に参加する米アラスカ州のF22戦闘機14機が飛来しました。
東京平和委員会の岸本正人事務局長は「多数の戦闘機が一度に横田基地へ飛来するのはベトナム戦争(1964〜71年)以来という異例の事態。米本土や日本国内の米空軍部隊が、アジア各地への展開で横田を使い、軍事力を誇示する一つの作戦になっているのではないか」と指摘します。
横田基地部隊の海外展開訓練も実施されています。
昨年11月1〜4日にかけ同基地配備のC130輸送機が、日米合意で飛行が制限されている午後10時〜午前6時の時間帯に離着陸しました。同時期に韓国で実施された夜間出撃訓練を含む米韓合同演習に関連したもの。横田基地を離陸したC130は嘉手納と三沢に展開し、韓国への物資・兵員の輸送を行いました。
2011年11月以降、C130輸送機による編隊・低空飛行や、パラシュート降下訓練が首都圏とその周辺で行われ、関東甲信と静岡の9都県に広がる訓練飛行ルートも明らかになりました。(地図)
今後、2017年後半からは特殊作戦部隊を敵地深く送り込むためのCV22オスプレイ特殊作戦機10機の配備が始まり、基地に隣接するIHI(旧石川播磨重工業)瑞穂工場(瑞穂町)には、F35ステルス戦闘機エンジンの整備拠点の建設が進んでいます。
軍事作戦へ
もう一つの大変貌は、横田基地の第5空軍司令部が、2000年代初めから米軍が進めた統合作戦体制に対応した軍事作戦司令部に転換したことです。
米軍の統合作戦体制は、1人の司令官が陸海空・海兵隊のすべての部隊を指揮する体制です。全体を指揮する統合任務部隊司令部のもとで、航空部隊を指揮する「統合部隊航空構成司令部」としての役割を担うのが、第5空軍です。
その転換は米軍単独でなく、航空自衛隊と一体で、オーストラリアなど他の同盟国も含めた多国籍軍の指揮まで視野に入れています。
10月30日から11月11日まで実施された日米共同統合実動演習「キーン・ソード2017」には、イギリス、オーストラリア、カナダ、韓国の各国軍がオブザーバーで参加。米国を中心とした同盟国軍による「合同演習」化=多国籍軍化の動きも強まっています。
横田基地の撤去を求める西多摩の会の高橋美枝子代表は「アメリカが横田基地を司令塔に各地の紛争地に軍事介入し、戦争法で日本全土を戦争にまきこみかねない危険を感じています。沖縄では、戦争のための新基地はつくらせないと頑張っています。私たちも横田基地強化を許さず撤去をめざし頑張ります」と話しています。
(佐藤つよし)
( 2016年12月14日,「赤旗」)
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シリーズ安倍政権下で進む基地強化/11/アジア関与強める米陸軍に対応/朝霞駐屯地
海外派兵任務指揮する陸上総隊司令部を新設
10月23日、陸上自衛隊朝霞訓練場(埼玉県新座、朝霞両市)で行われた自衛隊観閲式は、陸上自衛隊と米陸軍の一体化を象徴するものでした。
地上パレードの最後を走った暗緑色の車両7台は、米陸軍ストライカー装甲車です。米陸軍はインド・アジア太平洋地域への関与を強め、それに対応する陸上自衛隊の再編が、同訓練場に隣接する陸自朝霞駐屯地(東京都練馬区と埼玉県朝霞、新座、和光の3市)を中心に進もうとしています。
米軍と陸自の一体化の柱に
朝霞駐屯地での米陸軍と陸自一体化の柱となるのは、2017年度に新設される陸上総隊司令部(仮称)です。これまで陸自の最高作戦司令部だった全国5方面隊の上に立ち、海外派兵任務を含めた陸自全部隊を指揮する統一司令部です。
陸上総隊司令部を新設する構想は2000年代初めからとりざたされてきました。「日本防衛」を5方面ごとに担当する現体制を覆すもので、自衛隊OBなどの反発もあり、具体化しませんでした。
それが13年12月の中期防衛力整備計画に盛り込まれ、一気に加速。その背景に、米国のアジア重視による兵力再配置(リバランス)があります。
米国のイラク撤退完了宣言(11年12月14日)後のアジア重視で米太平洋軍司令官が打ち出したのが、イラク・アフガニスタン戦争に3度にわたり投入されてきた米陸軍第1軍団司令部(ワシントン州ルイス・マコード統合基地)の「太平洋地域へのシフト」です。同司令部はアジア重視への転換により、陸自と米陸軍の共同指揮所演習「ヤマサクラ」(YS)にも、13年12月のYS65以降毎年参加しています。
11月30日〜12月13日まで健軍駐屯地(熊本市)で実施されたYS71で、第1軍団司令官のスティーブン・ランザ中将は、日米で異なる意思決定過程を克服し、共通の基盤を見いだすことが最優先課題だと強調。「演習の重要な箇所は、日米部隊が相互に作戦上の観点、情報上の観点から何に接近するかの同一の図も持つこと、共通作戦図を構築することだ」と明らかにしました。(米陸軍ニュースサービス、12月13日)
演習も装備も一体化が進む
この第1軍団司令部に対応するのが陸上総隊司令部です。同司令部発足で、横須賀基地(神奈川県)の米第7艦隊と海自自衛艦隊、横田基地(東京都)の米第5空軍と空自航空総隊と合わせ、日米の陸海空の作戦司令部の一体化と連携関係が確立することになります。
一体化が進むのは司令部だけではありません。米陸軍は、第1軍団指揮下で軍事作戦を実施する第7歩兵師団と第25歩兵師団のもとに、輸送機で輸送することも可能であり、96時間以内に世界のどこへでも展開できるストライカー旅団戦闘団を集中配備しました。
10月の自衛隊観閲式で行進したのは、第7歩兵師団傘下にある、第2歩兵師団第2ストライカー旅団戦闘団第23歩兵連隊第4大隊B中隊でした。同中隊は、饗庭野(あいばの)演習場(滋賀県高島市)で8月〜9月に実施した日米共同演習「オリエント・シールド2016」に、陸自第3師団第36普通科連隊とともに参加。観閲式までの約1カ月間、米海兵隊キャンプ富士(静岡県御殿場市)で訓練を続けていました。
第1軍団司令部とこれらの旅団戦闘団は14年以降毎年、日韓豪やフィリピン、タイ、インドネシア、マレーシア各軍との連携・協力関係を構築するために、「パシフィック・パスウエイ」と名付けた一連の共同演習を実施。オリエント・シールドやYS71もこの一環です。
陸自は、この米陸軍の即応体制強化に対応する形で、14年度以降の防衛計画の大綱をもとに師団・旅団の「機動師団・機動旅団」への再編を行い、本州と四国の戦車を廃止しストライカー同様の8輪装甲車に105_戦車砲を搭載した「機動戦闘車」を導入しようとしています。
(佐藤つよし)
( 2016年12月25日,「赤旗」)
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シリーズ安倍政権下で進む基地強化/12/海外出撃の拠点、空爆に参加/米空軍三沢基地
ISを攻撃/参加常態化
F16戦闘機を主力とする第35戦闘航空団の基地である米空軍三沢基地(青森県三沢市)は、三沢対地射爆撃場、八戸貯油施設、パイプラインなどと併せて総面積2380f、三沢市の面積の約2割を占める広大な基地群です。
同基地は世界規模で軍事戦略を支えるアメリカの海外出撃拠点となり、F16はアフガニスタンとイラク戦争への出撃を繰り返してきました。さらに、イラクとシリアで進められている過激組織ISへの空爆作戦にも、三沢からの参加が常態化しています。
高高度対空型無人偵察機グローバルホークも一昨年から一時配備。今年は、滑走路補修工事があり見送られましたが、毎年5月ごろから10月ごろまで、週2回程度の運用を予定しています。
さらに、防衛省は21日、航空自衛隊三沢基地への自衛隊グローバルホーク配備を発表しました。
このほか、米海兵隊岩国基地(山口県)からのFA18戦闘攻撃機の天ケ森射爆撃場での移転訓練や、米ワシントン州オークハーバーにある米海軍第132電子攻撃飛行隊(EA18Gグラウラー)の一時配備、さらに2017年からは、米空軍横田基地(東京都)に配備されるCV22オスプレイが天ケ森で実弾訓練を行うことを発表しています。
日英共同で初演習実施
安倍政権が岩手県滝沢市の陸上自衛隊岩手山演習場で戦争法に基づく「駆け付け警護」と「宿営地の共同防護」の訓練を公開した10月24日、米空軍三沢基地(青森県三沢市)では、航空自衛隊と英軍の共同訓練「ガーディアン・ノース16」が行われました。
この訓練は日英両国の外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)の合意に基づき実施されました。空自が米国以外の国と国内で共同訓練を実施するのは初めてです。三沢基地を視察した稲田朋美防衛相は、初の日英共同訓練の意義について「法の支配という価値観を(日本と)共有する英国がアジア太平洋地域で存在感を示すことは意義深い」と話しました。
安保でなく憲法で平和
青森県は、中国・北朝鮮からの長距離弾道ミサイル発射に備えた米日「ミサイル防衛」計画に組み込まれています。
米軍は07年、米軍車力(しゃりき)通信所(つがる市)に移動型Xバンドレーダー、08年に三沢基地に情報処理システム「JTAGS」を配備。日本も自前の最新鋭レーダー「ガメラレーダー」を11年、むつ市大湊分屯基地に設置しました。
青森県平和委員会の大宮慶作事務局長は、安倍政権は集団的自衛権の行使で、米国向けに発射された弾道ミサイルの迎撃を可能にしていると指摘。「基地と共存共栄」で日米親善を図る三沢市、陸・海・空の三つの自衛隊を持ち、若者の入隊・就職率が全国一の青森県で、安倍政権が狙う戦争する国づくりの実態を知らせ、基地反対の世論を高める運動を広げたいと話します。
22年ぶりに三沢市で開かれた日本平和大会(10月22・23日)では全国から2日間で延べ1500人が参加。青森県の実態を共に学び、「基地はいらない、戦争法廃止、安保じゃなく『憲法』で平和を」と声をあげ市内をパレードしました。
(青森県・藤原朱)=このシリーズは終わります。
これまでの掲載日
「シリーズ 安倍政権下で進む基地強化」の前回までの掲載日は次の通りです。
@総論(10月31日)/A辺野古・高江・伊江島 米軍基地増強(11月4日)/B南西諸島への自衛隊増強(11月6日)/C佐世保・佐賀 自衛隊版海兵隊(11月13日)/D岩国・艦載機移転(11月19日)/E中国山地 米軍機訓練(11月27日)/F京都 Xバンドレーダー、福知山基地(11月29日)/G小牧・F35整備工場、富士・オスプレイ訓練(12月4日)/H横須賀・厚木 米軍増強、日米一体化(12月11日)/I横田 戦闘機飛来、司令部強化(12月14日)J朝霞駐屯地 陸上総隊司令部(12月25日)
( 2016年12月27日,「赤旗」)
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シリーズ安倍政権下で進む基地強化/9/配備強化と日米軍事一体化/横須賀・厚木
過去最大の14隻態勢も
米原子力空母の唯一の海外母港である米海軍横須賀基地(神奈川県)では、米軍・自衛隊の配備強化と日米軍事一体化が同時に進められています。
同基地には13隻が配備されています。内訳は@地球の約5分の1の地域を作戦範囲とする第7艦隊司令部がおかれる揚陸指揮艦ブルーリッジA原子力空母ロナルド・レーガン(RR、原子炉2基)Bイージス艦11隻―です。
米オバマ政権は、アジア太平洋地域に兵力配備の重心を移す「戦略的リバランス(再配置)」を進めてきました。2014年公表のQDR(4年ごとの国防計画見直し)には、20年までに米海軍艦艇の6割を太平洋地域に配備し「日本の海軍駐留を強化する」と明記。横須賀基地で過去最大の14隻配備を狙い、15年から17年にかけてイージス艦を追加配備しています。
08年9月25日から配備されていた原子力空母ジョージ・ワシントンにかわり、15年10月1日にRRが配備されました。米軍は横須賀を恒久的な原子力空母の母港にしようと狙っています。
同基地には原子力潜水艦も頻繁に寄港しています。入港回数は、すでに昨年(18回)を上回る21回。原子力空母と合わせると原子炉4基が存在する事態も起き、市民の不安を広げています。
戦争法で統合部隊化
日米軍事一体化の推進も深刻です。
米海軍のグリナート作戦部長は、米国での講演(14年5月)で米空母打撃群と海上自衛隊の統合に言及し、「将来的に北大西洋条約機構(NATO)の同盟国と同じように作戦を実施することも考えるべきだ」と強調しました。米国のブレア太平洋軍司令官(当時)も、「それら部隊は統合されるだろう」(14年7月、ニュースサイトのインタビュー)と述べています。
安倍政権は、14年から第7艦隊司令部への連絡官派遣を開始。日本共産党の畑野君枝衆院議員は国会質問(15年7月)で、戦争法によって米軍などのための「武器等防護」が規定され、自衛隊が平時から米艦防護を行う体制に組み込まれ、日米統合部隊化する事実を明らかにしました。
米海軍厚木基地(神奈川県大和市、綾瀬市)では、陸上自衛隊東富士演習場(静岡県)と米軍横田基地(東京都)、日米のオスプレイ整備拠点となる陸上自衛隊の木更津駐屯地(千葉県)と結ぶ訓練拠点のひとつとして、オスプレイの訓練が繰り返し強行されています。
厚木基地にオスプレイが飛来したのは14年7月でした。綾瀬市長(当時)は「さらなる負担増となり容認できるものではない」との抗議文を提出。市民や民主・平和団体、共産党も「厚木基地は訓練拠点ではない」と抗議しました。
米軍は、その後もオスプレイの訓練を繰り返し、今年に入ってからは、午後9時すぎに6機が飛来・着陸する事態もありました。無通告も目立っています。
横須賀基地への飛来もありました。米軍は空母に艦載する輸送機C2グレイハウンドを順次CMV22オスプレイに替える予定で、引き続き訓練が頻繁に行われる可能性もあります。
(神奈川県・下元怜美)
( 2016年12月11日,「赤旗」)
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そこが知りたい日本共産党/第27回大会決議案/その1/新しい時代開いた力って?
日本共産党への関心、疑問にこたえる新シリーズ「そこが知りたい 日本共産党」。最初は、第27回党大会(来年1月15〜18日)の大会決議案を通じて、日本共産党が、日本や世界の情勢をどうとらえ、どう変革しようとしているのかを連載で紹介します。
「野党と市民の共闘を大きく発展させ、安倍政権を打倒し、自民党政治を終わらせ、野党連合政権をつくろう」―。決議案第1章のこのよびかけを「共産『本気』の共闘」(「朝日」16日付)とマスメディアも注目しました。
野党連合政権を先々の課題ではなく、当面の焦眉の課題とし、その実現をよびかけました。まさに、戦後かつてない激動的な新しい情勢が展開しています。
決議案では現在の情勢を「安倍自公政権とその補完勢力に、野党と市民の共闘が対決する、日本の政治の新しい時代が始まった」と規定しています。「新しい時代」とは何か―。
前回党大会(2014年1月)では、日本の情勢を「自共対決」の始まりと特徴づけました。3年弱の国民のたたかいが政治対決の構図をさらに一段前に進め、「自公とその補完勢力」対「野党と市民の共闘」という新しい時代が始まったのです。
先の参院選では32の1人区のすべてで野党統一候補が実現し、11の選挙区で勝利。10月の新潟知事選での野党と市民の統一候補の勝利は、国民の願いに応える「大義の旗」を掲げ、野党と市民が「本気の共闘」をすれば政府・与党に打ち勝てることを証明しました。
野党勢力の大同団結の障害になってきた「日本共産党を除く」という「壁」も崩壊。対決構図の一方の極で共産党は重要な役割を果たしています。
野党連合政権つくり自民政治終わらせる
この新しい時代を切り開いた力はどこにあったのか―。
決議案は明快に答えています。一つは安倍暴走政治に対抗する戦後かつてない新しい市民運動が発展したことです。このなかから「野党は共闘」の切実な声があがり、野党共闘がつくられていきました。もう一つは、日本共産党が一連の国政・地方選で躍進したことです。
この二つの力が合わさって情勢の前向きの激動をつくりだしました。(年表)
躍進した共産党が「戦争法(安保法制)廃止の国民連合政府」を提唱(15年9月)し、全国規模の選挙協力に踏み出したことが共闘の発展に大きく貢献しました。思想・信条の違いをこえた統一戦線によって社会変革をすすめる≠ニいう綱領を持つ党ならではの決断です。
新しい対決構図がつくられた根底には何が―。
決議案は党綱領を踏まえズバリ解き明かしています。「二つの異常」―「異常な対米従属」「異常な財界中心」を特質とする自民党政治の深刻な行き詰まりという「社会の土台での激動」です。
戦争法強行や辺野古新基地建設、貧困と格差の拡大、原発再稼働…。自民党政治は国民との矛盾を広げ、民意との衝突が不可避です。「安倍政権は、民意無視の強権政治に頼るほかに、いまやこの国を統治する術(すべ)をもてなくなっている」(決議案)のです。強権政治が国民の新たなたたかいを呼び起こし、新しい対決構図をつくり出したのです。
このように安倍政権の暴走政治は古い自民党政治と一体のものです。安倍政権の打倒は、単に暴走政治を阻止するだけではありません。自民党政治を終わらせる大きな一歩となります。
野党4党はすでに、国政選挙でできる限りの協力を行い、安倍政権打倒をめざすことを合意しています。安倍政権と対決する政治的内容も確認しています(別項)。野党が本気で、安倍政権を倒すのであれば、それに代わるどういう政権をつくるかを国民に示す責任があります。
日本共産党は、野党連合政権について「真剣な協議をつうじて、前向きな合意を得るために知恵と力をつくす」(決議案)と表明しています。
野党4党の合意
■政治的合意
国政選挙でできる限りの協力を行い、現与党およびその補完勢力を少数に追い込み、安倍政権の打倒をめざす
■政策的合意
(1)安保法制を廃止し、立憲主義を回復する
(2)「アベノミクス」による国民生活破壊、格差と貧困を是正する
(3)TPP(環太平洋連携協定)や沖縄問題など、国民の声に耳を傾けない強権政治を許さない
(4)安倍政権のもとでの憲法改悪に反対する
こうしてできた対決構図/安倍自公政権VS野党と市民の共闘
2013・6 共産党が東京都議選で17議席、第3党に躍進
7 共産党が参院選で改選3議席から8議席に躍進
12 秘密保護法が国会で成立
2014・1 沖縄県名護市長選で辺野古新基地反対の稲嶺進氏が圧勝
7 集団的自衛権行使容認を閣議決定
「閣議決定」に抗議する官邸前行動に約6万人
11 沖縄県知事選で新基地建設反対の翁長雄志氏が圧勝
12 共産党が総選挙で8から21議席に躍進/沖縄4選挙区で基地反対派が勝利
2015・4 共産党がいっせい地方選の41道府県議選で111議席(前回80議席)の躍進。初めて47すべての都道府県に議席確保
5 安保法制=戦争法を閣議決定・国会提出
7 衆院で戦争法を強行採決
「総がかり」と「SEALDs」が呼びかけた国会前抗議に6万人
「安倍政権NO!首相官邸包囲」に7万人
8 戦争法廃案を求める国会行動に12万人、全国で数十万人が参加
9 戦争法を強行採決
共産党の志位和夫委員長が「戦争法(安保法制)廃止の国民連合政府」を提案
12 市民団体有志が安保法制廃止と立憲主義回復を求める「市民連合」を結成
2016・2 5野党党首会談で戦争法廃止や国政での選挙協力など4項目の合意
3 戦争法施行
5 野党党首会談で、衆院選での「できる限りの協力」を合意
32の参院1人区すべてで野党統一候補が実現
6 「市民連合」の政策要望書に4野党が調印
7 32の参院選1人区のうち11で野党統一候補が勝利
共産党は改選3を倍増させる6議席獲得
10 新潟県知事選で野党と市民の共闘で米山隆一氏が勝利
11 南スーダンPKO「駆け付け警護」を閣議決定
野党と市民連合の意見交換会が参院選に続いて再開
(2016年11月27日,「赤旗」)
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そこが知りたい日本共産党/第27回大会決議案/その2/格差と貧困の拡大とは?/経済ただす4改革を
日本ではいま、格差と貧困が大きな社会問題になっています。日本共産党第27回大会(来年1月15〜18日)決議案は、格差と貧困問題に焦点をあて、どう打開するのかを示しています。
自民党政権のもとで、とくに1990年代後半以降、弱肉強食の新自由主義的な経済政策が続き、格差と貧国が拡大しました。安倍政権の経済政策「アベノミクス」はそれをいっそう深刻にしました。
決議案は、格差問題の全体像をつかむため三つの視点からとらえています(グラフ参照)。90年代後半と比べると―。
一つ目は富裕層への富の集中です。超富裕層の1人当たり金融資産は2倍に増えました。莫大(ばくだい)な配当と、「株価つり上げ政治」による株式の値上がり益が大株主にもたらされたためです。
二つ目は中間層の疲弊です。労働者の平均賃金は55万6千円も減少しました。給与所得者数では、年収500万〜1000万円の層が210万人減る一方、年収500万円以下の層が532万人も増えました。非正規雇用の増大で低賃金労働者が増え、中間層がやせ細っているのです。
三つ目は貧困層の拡大です。日本の相対的貧困率は14・6%から16・1%に上がり、OECD(経済協力開発機構)34カ国中ワースト6位に。先進国のなかでも「貧困大国」です。子どもの相対的貧困率は13・4%から16・3%に増え、「貧困の連鎖」が深刻です。
働きながら生活保護水準以下の所得しかないワーキングプア世帯は、就業者世帯の4・2%から9・7%と2倍に。「貯蓄ゼロ世帯」は3倍に急増し、30・9%に達しています。
決議案は「超富裕層がますます富み、国民の全体の所得が低下するなかで中間層が疲弊し、貧困層が増大する―これが現在の日本社会の姿である」と解明。貧困は特別な事情でなく「職を失えば誰もが貧困に陥ってもおかしくない。『板子一枚下は地獄』。そうした社会に陥っている」と指摘しています。
格差と貧困の拡大、中間層の疲弊をいかに克服するか―。これを国の経済政策の基本にすえる必要があります。
決議案は、格差と貧困をただす経済民主主義の改革として、四つの改革を提案しています。
税金の集め方の改革/能力に応じて負担する、公正・公平な税制
消費税増税は景気を悪化させるだけでなく、格差と貧困の拡大に追い打ちをかけます。富裕層と大企業は、巨額の富を蓄積し、税負担の能力を十分にもっています。消費税10%は中止し、「消費税に頼らない別の道」へ転換します。
税金の使い方の改革/社会保障、若者、子育て中心の予算
日本の国民1人当たりの公的社会支出は、アメリカの9割以下、ドイツの8割、フランスの7割です(2013年)。軍拡や大型開発中心の予算にメスを入れ、社会保障、教育、子育て支援など、格差と貧困の是正につながる予算を増やします。
働き方の改革/8時間働けばふつうに暮らせる社会
人間らしく働けるルールを確立し、格差と貧困の根本的是正に道を開きます。
産業構造の改革/大企業と中小企業、大都市と地方などの格差を是正
賃金格差は、中規模事業所で大企業の約6割、小規模事業所では5割程度です。大都市と地方の格差拡大、農村、地域経済の疲弊も深刻です。中小企業の振興と農業支援を行い、地域振興策を「呼び込み」型から、今ある地域の力を支援する「内発」型に転換します。
(2016年12月04日,「赤旗」)
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そこが知りたい日本共産党/第27回大会決議案/その3/世界に広がる新しい動きって?/その1
国連を舞台に来年には核兵器禁止条約交渉が始まり、欧米では新しい社会変革の動きが広がっています。日本共産党の第27回大会(来年1月15〜18日)決議案は、こうした世界の動きと日本共産党の立場を明らかにしています。注目は、こうした世界の平和と進歩の流れと、日本のたたかいが響きあっていることです。
核兵器禁止実現へ画期的な一歩
国連が条約交渉開始へ
20世紀に起こった世界の最大の変化は、植民地体制が完全崩壊し、100以上の国が独立して主権国家となったことです。前回党大会決議(2014年1月)は、この「世界の構造変化」が「世界の平和と社会進歩を促進する力として、生きた力を発揮しだした」ことを解明。その力はいま、「核兵器のない世界」実現へ画期的な動きとなってあらわれています。
「核兵器を禁止し、その全面廃絶につながる法的拘束力のある法文書を交渉するため、2017年の国連会議招集を決定する」
こううたった決議案を、米ニューヨークの国連本部で開かれてきた国連総会第1委員会(軍縮・国際安全保障問題)が採択しました(10月27日)。反対38カ国、棄権16カ国に対し、賛成は123カ国。国際社会の圧倒的多数が核兵器禁止条約の交渉開始を求めていることをはっきりと示しました。
国連会議は3月27〜31日と6月15日〜7月7日にニューヨークで開かれる予定。1945年の広島、長崎への投下で核兵器が初めて人類に対して使われて以降、国連が具体的に核兵器禁止条約の交渉開始を決めるのは初めてです。
核兵器禁止条約に、仮に最初は核保有国が参加しなかったとしても、国連加盟国の多数が参加して条約が締結されれば、核兵器は人類史上初めて「違法化」され、最も残虐な兵器に「悪の烙印(らくいん)」をおすことになります。そうなれば核保有国は、法的拘束は受けなくても、政治的・道義的拘束を受け、核兵器廃絶に向けて世界は新しい段階に入ることになります。大会決議案は「『核兵器のない世界』への扉を開く画期的な動き」だとして高く評価しています。
各国と市民運動の合流
こうした前向きの激動をつくりだす力になったのは、「二つの力の合流」(大会決議案)です。
一つは、圧倒的多数の途上国、先進国の一部を含めた諸政府の共同です。マレーシアなど非同盟諸国が中心となって1996年以降、国連総会には核兵器禁止条約を求める決議案が毎年提案され、圧倒的多数で採択されてきました。核兵器の非人道性を追及する「核兵器の人道的結末」決議は2015年に144カ国もの賛成で採択されました。
もう一つは、被爆者を先頭にした「核兵器のない世界」を求める反核平和運動―市民社会の運動です。被爆者を先頭に、日本の反核平和運動は、当初から一貫して、広島、長崎の実相を訴え、核兵器の非人道性、残虐性を告発してきました。核兵器の全面禁止・廃絶を求める国際署名にはこの10年余で、世界でのべ5000万人以上が賛同しました。これらの草の根からの取り組みが、国際政治を動かす大きな力となりました。
追い詰められる保有国
核兵器禁止が現実的な日程にのぼったことに危機感を深めたのは、核保有国です。
米国は、決議案採択前に北大西洋条約機構(NATO)加盟国に「単なる棄権ではなく、反対票を投じる」よう圧力をかける書簡を配布していました。NATO本部はその事実を日曜版編集部に認めています。唯一の被爆国である日本政府は国民の意思を踏みにじって同決議に反対しました。米政府は、この書簡が日本にも送られた可能性を否定していません。
この書簡は、核兵器禁止条約が実現すれば、保有国による生産・保有・使用だけでなく、他国への核兵器配備や核兵器搭載艦の入港なども禁止されると分析。「米国の拡大抑止(核の傘)の土台が破壊される」と危機感をあらわにしています。核兵器禁止条約がいかに保有国を追い詰めているかを示しています。
大会決議案は、この問題の帰趨(きすう)を決めるのは世界の世論と運動だと指摘。「ヒロシマ・ナガサキの被爆者が訴える核兵器廃絶国際署名」(ヒバクシャ国際署名)の成功のため力を尽くすと表明しています。
(2016年12月11日,「赤旗」)
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そこが知りたい日本共産党/第27回大会決議案/その3/世界に広がる新しい動きって?/その2
格差と貧困の拡大に高まる怒り
グローバル資本主義の深刻な矛盾
欧米で社会変革の動き
大会決議案は、欧米ではグローバル(地球規模)資本主義の暴走のもとで、格差・貧困の是正と平和を求め、選挙を通じた社会変革をめざす新たな社会変革の動きが生まれていることに注目しています。(左表)
グローバル資本主義とは、多国籍企業や国際金融資本が、最大限の利益を上げるために、各国の国境を超えて地球規模で動き回ることです。
それによって中間層が疲弊・縮小し、格差が急速に広がっています(右表)。全世界で見ると、世界の大富豪わずか62人の資産が世界の下位50%の富と同じという極限的な両極化が起こっています。(下図)
注目すべき新たな社会変革の動きの一つは、福祉予算削減や年金改悪など緊縮政策の転換を求める市民運動と連携した政党が選挙で勝利して政権に就いたギリシャとポルトガルです。
ギリシャでは急進左派連合(SYRIZA=シリザ)を中心とするチプラス政権が2015年1月に誕生し、9月の再選挙で再選されました。シリザはギリシャ共産党(国内派)の流れを引く左派諸派の連合体です。
ポルトガルでは同年10月、左翼ブロック、ポルトガル共産党などが社会党に閣外協力するコスタ政権ができました。
スペインでは反緊縮の市民団体を母体にしたポデモス(私たちはできる)が、初選挙で第3党に進出しました。
日本の運動とも響きあった発展
一方、英米両国では主要政党の党内選挙で、当初「泡沫(ほうまつ)候補」とみなされていた「民主的社会主義者」が勝利、大躍進しました。
英国では野党・労働党の党首選挙(昨年9月)で、戦争阻止連合議長、核軍縮運動(CND)副議長などを務めるコービン下院議員(67)が60%の得票で当選しました。
米国では民主党の大統領選候補者を決める同党予備選(今年2〜6月)で、「民主的社会主義者」を名乗るサンダース上院議員(75)が43%の得票率で大健闘。「本命」クリントン前国務長官を脅かす支持を集めました。
「サンダース現象」は、米金融界の中心地ウォール街の占拠を訴えた「オキュパイ(占拠)」運動や、「時給15j」への最低賃金引き上げを求める運動など、米国の市民運動に根をもったものです。
大会決議案は「欧米での新たな動きは、格差・貧困の是正と平和を求める新しい市民運動と結びついた社会変革の動きとして、いま日本で発展しつつある野党と市民の共闘と響きあうものとなっている」と指摘しています。
アメリカが陥る深い行き詰まり
米国による01年以降のアフガニスタン報復戦争、イラク侵略戦争で、数十万人の民間人の命が奪われました。泥沼の内戦をつくりだし、テロを世界中に拡散させ、過激派組織ISを生み出す主要な原因になりました。この15年間の世界の現実は軍事的覇権主義が大破たんに直面していることを示しています。
米社会はグローバル資本主義、新自由主義の経済政策のもとで格差と貧困が拡大し、国内産業の空洞化、中間層の没落がすすんでいます。
11月の米大統領選では、得票数で260万票以上も多いクリントン氏が、獲得選挙人数で上回った共和党トランプ氏に負けました(表)。トランプ氏の勝利は、米社会の陥っている深刻な行き詰まりと矛盾の反映にほかなりません。
大国主義・覇権主義に未来はない
中国、見過ごせない誤り
中国の国際政治における動向に、見過ごすことのできない四つの問題点があらわれてきました。
一つは、核兵器の問題で、深刻な変質が起こっていることです。
中国はある時期まで、核兵器禁止の国際条約を繰り返し求めてきました。しかし15〜16年の国連総会で、核兵器禁止条約の国際交渉を現実の日程にのせようという動きに対して、核保有国の一員としてこれに背を向ける態度をとりました。「『核兵器のない世界』を求める動きに対する妨害者として立ち現れて」(決議案)います。
二つは、東シナ海・南シナ海での力による現状変更をめざす動きです。
東シナ海の尖閣諸島では中国公船による領海侵入が激増・常態化。南シナ海では南沙諸島での人工島建設などを露骨に進め、オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所は今年7月、国際法違反だとの判断を示しました。
三つは、国際会議の民主的運営を踏みにじる横暴なふるまいです。四つは、中国の横暴なふるまいは、日本共産党と中国共産党の間で確認してきた原則ともまったく相いれない態度だということです。
「以上の事実にてらして、今日の中国に、新しい大国主義・覇権主義の誤りがあらわれている」と大会決議案は指摘。現在のような新たな大国主義・覇権主義の誤りが今後も続き、拡大するなら、「社会主義への道から決定的に踏み外す危険」が現実のものになりかねない、と警告しています。
横暴なロシアの復活も重大問題
ウクライナ・クリミア併合(14年3月)などロシア・プーチン政権による大国主義・覇権主義の動きも重大です。これらの横暴は、スターリン時代の覇権主義の復活そのものです。
すべての国が立場対等
大国主義・覇権主義には決して未来はありません。すでに歴史によって審判が下されています。米国によるアフガン・イラク戦争など軍事的覇権主義は、失敗と破綻におわりました。旧ソ連は、スターリン以来の覇権主義の誤りを是正できないままに崩壊しました。
21世紀の世界は、一握りの大国が世界政治を動かした大国中心の世界ではなく、国の大小での序列がない世界になりつつあります。
核兵器廃絶に向けた歴史的激動を見ても明らかなように、世界のすべての国々が対等・平等の資格で世界政治の主人公になる新しい時代が開かれつつあります。
日本共産党は、半世紀以上にわたって堅持してきた自主独立の精神を発揮し、国際政治から大国主義・覇権主義を一掃するために奮闘します。
(2016年12月11日,「赤旗」)
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そこが知りたい日本共産党/第27回大会決議案/その4/「平和の対案」って何?/その1
日本共産党第27回大会決議案は、安保法制=戦争法への対案をしっかり示し、安保条約や自衛隊に対する党の立場を広く明らかにしています。
対案1/北東ア平和協力構想を提唱
決議案は二つの「平和の対案」―「北東アジア平和協力構想」(別項)と「グローバルな課題解決への五つの提案」を示しています。
「北東アジア平和協力構想」は3年前の前回大会で提唱。東南アジア諸国連合(ASEAN)が実践している、あらゆる問題を平和的に話し合いで解決する東南アジア友好協力条約(TAC)のような、平和の地域協力の枠組みを北東アジアでも構築しようという構想です。
国外から評価
提唱から3年。日本共産党は、関係国の政府・政党・大学・研究所との意見交換を重ね、国際会議も通じて「構想」実現を呼びかけ、多くの賛同と評価が寄せられています。
―アジア政党国際会議(ICAPP)第8回総会。志位和夫委員長が「構想」を紹介し、その後全会一致で採択した総会宣言はASEANのような地域の平和協力の枠組みを、北東アジアを含む全アジア規模に広げる≠アとが提起された。(14年9月)
―訪韓した志位氏が韓日議連の会長代行、幹事長と会談。両氏は「構想」に関し「望ましい方向」「良い方向」と賛意を示し、「韓中日3カ国の協力が重要」だと強調。(15年10月)
―ICAPP第9回総会。日本共産党は南シナ海問題など領土に関する紛争について国際法を基礎に平和的に解決する≠アとを提案し、総会宣言に明記される。(16年9月)
―マレーシア政府のシンクタンク・マレーシア戦略国際問題研究所(ISIS)と懇談。「構想」は「きわめて具体的」「ISISの中でも北東アジアでのTAC(友好協力条約)の議論を始めている」との評価が。(16年9月)
世論と合致
軍事対応一本やりから、憲法9条を生かした平和外交に切り替える―。この方向は国民の願いにもかなうものです。NHKが実施した世論調査では、憲法9条の果たす役割を圧倒的多数の国民が評価したうえ、「武力に頼らない外交」を願っているからです。(グラフ)
日本共産党第27回大会決議案は「この『構想』をもって対話をすすめ、国内外でこの方向での合意形成がはかられるよう力をつくす」と強調しています。
対案2/グローバル課題五つの提案
もう一つは「グローバルな課題解決への五つの提案」です。人類が地球的規模で直面している課題について、憲法9条を持つ国として、次のような努力方向を提案しました。
(1)国際テロ根絶
@国連を中心に法による裁き≠基本にすえ、テロ組織への資金・人・武器の流れを断つ国際的協力を進めるA貧困、教育、紛争などテロの根源を除去するB異なる諸文明間の対話と共存関係の確立に力を尽くす。
(2)貧困削減
食料、保健、教育など基礎的生活分野の支援を中心にODA(政府開発援助)を充実させる。
(3)難民支援
難民の定義をあまりにも狭く解釈する立場を改め、難民を受け入れ、生活や教育の援助を行う。
(4)人道危機への対応
内戦などがもたらす人道的危機に対し、非軍事の人道支援、民生支援を抜本的に強化する。
(5)気候変動への対応
温室効果ガスの削減目標を抜本的に上積みし、石炭火力増設の中止、再生可能エネルギーの大量普及、原発に依存しないエネルギー政策に転換する。
北東アジア平和協力構想とは
北東アジアで平和を築くために日本共産党は次の四つの目標と原則を提唱しています。
(1)域内の平和のルールを定めた北東アジア規模の「友好協力条約」を締結する。
(2)北朝鮮問題を「6カ国協議」で解決し、この枠組みを地域の平和と安定の枠組みに発展させる。
(3)領土問題の外交的解決に徹し、紛争をエスカレートさせない行動規範を結ぶ。
(4)日本が行った侵略戦争と植民地支配の反省は不可欠の土台となる。
北朝鮮問題どう対応?
北朝鮮の核・ミサイル開発に国際社会がどう対応すべきか。日本共産党はすでに(1)「軍事対軍事」の危険な悪循環ではなく、対話による解決に徹する(2)国際社会が本気になって「核兵器のない世界」への具体的行動に取り組む―という二つの方向を示してきました。
さらに、国際社会が北朝鮮の開発を止められていない事実を踏まえ、「従来の延長線上にとどまらない外交的対応と、中国を含む国際社会による制裁の厳格な実施・強化という両面での対応を抜本的に強化すること」(大会決議案)を提案しました。
(2016年12月18日,「赤旗」)
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そこが知りたい日本共産党/第27回大会決議案/その4/「平和の対案」って何?/その2
安保と自衛隊どうする
先の参院選で政府・与党は、野党と市民の共闘に対して共産党の主張は日米安保条約の廃棄と自衛隊の解散だ。無責任だ≠ニ攻撃をくり返しました。
大会決議案は、こうした攻撃に立ち向かう基本姿勢として二つの点を強調しています。
真の争点は
第一は、いま問われているのは日米安保条約や自衛隊の是非ではありません。真の争点は、安保法制=戦争法によって「海外で戦争する国」づくりを許していいのかどうかです。
野党と市民の共闘は、安保条約や自衛隊に対する態度の違いを超えて結束しています。
日本共産党は、共闘の一致点を何よりも大切にし、野党と市民の共闘に、日米安保条約や自衛隊についての独自の立場を持ち込まない態度を鮮明にしています。
政府・与党の共産党攻撃≠ヘ真の争点を隠し、自らの憲法破壊の行いを覆い隠すためのものです。
第二は、安保条約や自衛隊に対する党独自の立場を広く明らかにする努力です。
党綱領は日米安保条約の廃棄と対等平等の日米友好条約の締結≠ニ憲法9条の完全実施に向けた自衛隊の段階的解消≠フ方針を示しています。
安保/日本防衛と無関係/国民合意へ
安保条約に基づく駐留米軍は日本の防衛とは無関係。干渉と介入を専門とする「殴り込み」部隊です。(図)
日本が米国の無法な戦争の根拠地とされ、協力させられてきたのは歴史の事実です。しかも在日米軍は、夜間の離着陸訓練や低空飛行訓練、米兵犯罪が裁かれないまま放置されるなど、米国内でも許されない異常な特権を受けています。
安保条約をなくしてこそ日本は、米国の引き起こす戦争の根拠地から抜け出すことができ、米軍基地の重圧から解放され、真の独立国家となれます。決議案は「安保条約廃棄を求める国民多数をつくるための独自の努力を行う」としています。
自衛隊/憲法との矛盾、段階的に解消
憲法9条にてらせば自衛隊が憲法違反であることは明らかです。世界でも先駆的意義をもつ憲法9条の理想に向かって、自衛隊の現実を改革していくことが政治の責任です。
憲法と自衛隊の矛盾は一挙に解決することはできません。次のような段階を踏み、一歩一歩進めていきます。
(1)海外派兵立法をやめ、軍縮の措置をとる。
(2)安保条約が廃棄されても「自衛隊は必要」と考える国民が多数にのぼる状況は当然予想され、自衛隊を同時になくすことはできない。
(3)独立・中立の日本がすべての国ぐにと友好関係を築き、国民の圧倒的多数が「もう自衛隊がなくても安心だ」という合意が成熟したときに初めて、9条の完全実施に向けての本格的な措置に着手する。
かなりの長期間にわたって自衛隊と共存する期間が続くことになります。その際、急迫不正の侵害や大規模災害など、必要に迫られた場合に、自衛隊の活用も含め、あらゆる手段で国民の命を守るのは当然です。
大会決議案は「日本共産党の立場こそ、憲法を守ることと、国民の命を守ることの、両方を真剣に追求する最も責任ある立場である」と強調しています。
(2016年12月18日,「赤旗」)
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そこが知りたい日本共産党/第27回大会決議案/その5/歴史が決着、三つのたたかい
日本共産党は来年、党創立95周年を迎えます。第27回大会決議案は、95年のたたかいを経てつかんだ成果、到達点を明らかにしています。
「日本共産党の95年は、日本国民の利益を擁護し、平和と民主主義、社会進歩をめざして、その障害となるものに対しては、相手がどんな強力で巨大な権力であろうと、正面から立ち向かってきた歴史である」
大会決議案はこう強調し「歴史が決着をつけた三つのたたかい」に光をあてています。
1/戦前の暗黒政治/戦後に生きる先駆性
第一は、戦前の天皇制の専制政治・暗黒政治とのたたかいです。
1922年7月15日、日本共産党は、侵略戦争反対と主権在民の旗を掲げて結成されました。天皇制政府は、日本共産党に激しい弾圧を加え、作家の小林多喜二をはじめ、多くの党員が命を落としました。それでも日本共産党は国民主権と反戦平和の旗を降ろさず、不屈にたたかいつづけました。
日本共産党のたたかいの先駆性は、歴史が証明しました。敗戦で受諾したポツダム宣言は、日本の戦争を侵略戦争だと認定し、軍国主義の排除、日本の民主化を明記。日本国憲法は国民主権を明記し、戦前の日本共産党の主張が戦後日本の根本原理となったのです。
12年間獄中でたたかい抜いた故・宮本顕治元議長など戦前の日本共産党のたたかいは、戦時を知る良心的知識人からも高く評価されています。(別掲)
評論家加藤周一さん
「宮本顕治さんは反戦によって日本人の名誉を救った。戦争が終わり世界中が喜んでいるのに日本人だけが茫然(ぼうぜん)自失状態だった時に、宮本さんは世界の知識層と同じように反応することができた」(訃報に接しての談話、「しんぶん赤旗」2007年7月21日付)
2/ソ連、中国の覇権主義/あやまり認めさせた
第二は、戦後の旧ソ連などによる覇権主義とのたたかいです。
50年にはソ連のスターリンが中国を従えて、日本共産党に武装闘争を押し付けようという干渉を行い、中央委員会が解体されました。この党史上最大の危機を乗り越えるなかで、日本共産党は、どんな大国の干渉も許さない自主独立の路線を確立しました。
60年代にはソ連と中国・毛沢東派の双方から、日本共産党を押しつぶそうとする激しい干渉を受けました。このたたかいも歴史が決着をつけました。
ソ連共産党は、79年の日ソ両共産党首脳会談で、過去の干渉について反省を言明。さらに論争は続きましたが、91年、ソ連共産党の崩壊によって終止符が打たれました。
中国共産党は、98年6月の両党会談の合意文書で、中国による干渉行為について、「内部問題相互不干渉の原則にあいいれないやり方をとったことについて真剣な総括と是正をおこなった」と表明しました。
二つの大国の党にその誤りを認めさせた党は、世界にも日本共産党しかありません。
3/共産党除く「オール与党」体制/共闘が発展「壁」破る
第三は、「日本共産党を除く」という「オール与党」体制とのたたかいです。
60年代の終わりから70年代の日本共産党の第一の躍進に対して、支配勢力は共産党封じ込めを図って反撃してきました。
日本共産党を政権協議の対象にしないことを明記した80年の「社公合意」を契機として、日本共産党をかやの外に置く反共作戦が開始されました。
90年代前半には自民党政治の危機が深まるもと「自民か、非自民か」の共産党しめだしの一大キャンペーンが行われ、選挙制度も小選挙区制導入の大改悪が強行されました。
90年代後半、国政選挙で日本共産党が連続的に躍進するなか、2000年代には財界が主導して「自民か、民主か」の「二大政党による政権選択」の大キャンペーンを展開。日本共産党の前進を阻む最強・最悪の逆風となって作用しました。
同時にこの反共作戦は、最悪の「反国民作戦」でした。新自由主義的「構造改革」路線により、格差と貧困が広がりました。自衛隊の海外派兵体制がエスカレートし、沖縄の基地問題の矛盾も噴き出しました。
このもとで、さまざまな分野で「一点共闘」が広がり、悪政を国民的に包囲する流れが広がっていきました。こうした国民のたたかいが合流して、15年から16年に野党と市民の共闘を生み出しました。「日本共産党を除く」という「壁」は過去のものとなったのです。
「共産党除く」壁を打破するまで
1980・1 日本共産党排除の「社公合意」締結
93・7 総選挙で「自民か、非自民か」の大キャンペーン
8 「非自民」の細川連立政権が成立
94・1 小選挙区制と政党助成金制度を導入(「非自民」連合は短期で破たん)
96―98 日本共産党が総選挙・参院選で躍進
2003・10 民主党と自由党が合併し(新)民主党発足(「二大政党による政権選択」キャンペーン)
11 総選挙で共産党20議席から9議席へ
04・7 参院選で共産党20議席から9議席へ
09・8 総選挙で民主党大勝。鳩山民主党政権成立
12・12 総選挙で民主党大敗。安倍自公政権成立
13・7 参院選で共産党6議席から11議席へ
14・12 総選挙で共産党8議席から21議席へ
15―16 戦争法のたたかいで野党と市民の共闘発展
16・7 参院選で野党統一候補11人当選、共産党が11議席から14議席へ
(2016年12月25日,「赤旗」)
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地球と宇宙の平和/インドで議論/日本共産党副委員長緒方靖夫/2/「ヒバクシャ国際署名」注目
会議での発表テーマは、韓国での米軍基地問題、高高度防衛ミサイル(THAAD)問題、宇宙での軍事情勢と軍拡阻止の課題、インドでの反原発と新しい原発建設反対闘争、ガンジーと平和思想と実践など多岐にわたりました。
「戦争の経験」を訴えた31歳のウィリアム青年(米国)は、アフガン、イラク戦争に参加しての非人道的な経験、兵士から平和活動家への転身を語りました。
原爆そもそも
私は、核兵器廃絶と北東アジアの平和について20分間発言しました。国連で来年、核兵器禁止条約締結にむけて議論が開始される画期的な情勢、それを阻止しようとする核兵器5大国とのたたかいの政治地図と展望を紹介し、広島、長崎でおきた現実を報告し、「ヒバクシャ国際署名」をひろめてほしいと訴えました。
若い学生はじめ参加者のなかには、広島、長崎は知っていても、71年前にそこで21万もの生命が失われ、その被爆後遺症が続いている実態までは知らない方が多数おり、原爆のそもそもの話をすることの大切さを改めて実感しました。
「私は50人」「僕は30人」などと訴えに応えて、838人分の署名が会議最終日までに集められ、構内のガンジー像の前で、サタナヤラナ法科大学院院長から受け取りました。ある教授は「自分は1000人分集める」とのべ、共催団体のナラヤナ・ラオ「グローバル・ネットワーク」理事長は、「2万5000人分を目標としている」とのべました。
韓国代表とは「街は人であふれており、インドは署名には最良の場所」と意見が一致しました。1カ月のキャンペーンをすれば、万単位の署名が集められると確信しました。
「実態に衝撃」
私の発表の後に、「被爆実態に衝撃をうけた。被爆者はどのような支援を受けているのか」「日本は被爆国でありながら、日本政府は米国の核兵器の傘に入り、核兵器廃絶にあまり取り組んでいないようにみえる。なぜか」という質問がありました。
これらは普通でしたが、「あなたの話には疑問を感じる」と切り出して、「米国ではトランプ大統領が誕生する。これは、核兵器廃絶の流れに逆行することにならないか。なぜ、核兵器廃絶が前進できるのか」という興味深い質問がありました。これには、米国の政治いかんを問わず、世界は中小国がプレーヤーとして活躍する大きな変化が生まれており、トランプ政権の出現の背景や、今後、確定していく外交政策を見る必要があることなどを話しました。
「インドは核不拡散条約(NPT)に参加していない核兵器保有国だが、どう働きかけるのか」という率直な質問には、核兵器を非合法とする条約をつくるもとで、すべての国の核保有を道義的に追いつめる情勢をつくっていく道を訴えました。
日本からは、立命館大学の藤岡惇教授が参加されており、パワーポイントを使用して、宇宙軍拡と福島の原発について素晴らしい発言をされました。先生は、もともと専門のアメリカ経済に加えて、宇宙軍拡問題も研究され「グローバル・ネットワーク」日本代表として活躍されています。
(つづく)
( 2016年12月01日,「赤旗」)
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「映画の未来」と出合う/映画祭第17回東京フィルメックス/社会と切り結び、もがく人間像/松岡環
東京フィルメックスも回を重ねて第17回を迎えた。作家性の強い、個性的なアジア映画を上映する映画祭だが、今回はコンペ部門の審査員を引き受けたため、いつもと少し違った視点から作品を見ることができた。
デビュー作が最優秀作品賞
今回のコンペ作品は、「オリーブの山」(イスラエル、デンマーク)、「バーニング・バード」(フランス、スリランカ)、「普通の家族」(フィリピン)、「マンダレーへの道」(台湾、ミャンマー、フランス、ドイツ)、「神水の中のナイフ」(中国)、「よみがえりの樹」(中国)、「恋物語」(韓国)、「私たち」(仮題/韓国)、そして日本映画「ぼくらの亡命」と「仁光の受難」の10本。この中で最優秀作品賞を受賞した「よみがえりの樹」は、1987年生まれという若い張憾依監督のデビュー作である。
中国陝西省の山間の村を舞台にした本作は、実は幽霊譚だ。数年前に亡くなった妻が小学生の息子に憑依し、心残りだった思い出の木の移し替えを夫に依頼する。夫はもちろんのこと、妻の両親もこの憑依をいささかも疑わない。そういった豊かな精神世界を持つ村も、経済発展に伴う人々の町への移住で徐々に荒廃していく。
チャン監督は幼い頃、転生や憑依の話を老人たちから聞いて育ったそうで、後年、学校で「聊齋志異」を読んだ時には、同じような話が載っていると驚いたという。そんな経験をベースに、異界を現実世界に潜ませた映像がシンプルなカメラワークで重ねられ、去った人々の思いが残る土地が映し出される。将来の伸びしろを感じさせる、繊細な作品だった。
内戦の余波で夫を殺されて
審査員特別賞の「バーニング・バード」は、サンジーワ・プシュパクマーラ監督の2作目で、スリランカ内戦の余波で夫を殺された妻が、8人の子どもと義母を養うためにどん底まで落ちざるを得ない姿を描く。映像に力があり、象徴性に満ちた画面からは緊迫感が漂ってくる。
また、賞は与えられないが秀作として言及しておきたいという「スペシャル・メンション」になった韓国映画「私たち」(仮題)は、10歳の少女のひと夏を描いた作品で、アップを多用し、子どもたちの表情だけでさまざまな感情の動きを見せる。いじめ問題を核に、経済格差や親の離婚など子どもを取り巻く世界も織り込みながら少女の成長する姿が描かれるが、自在に子どもたちを動かすユン・ガウン監督の演出力は、とても初監督作品とは思えない。
映画の力信じ思い凝縮させ
このほか、マニラの路上生活者ティーンズ夫婦が誘拐された赤ん坊を必死で捜す、エドゥアルド・ロイ・Jr監督の「普通の家族」や、ミャンマーからタイに密入国して働こうとする男女を描く趙徳胤監督の「マンダレーへの道」も、見応えのある作品だった。
どの作品も社会と切り結び、もがく人間を描いていて、見る者の胸に迫る。そこに感じられるのは、まさにフィルメックスのテーマである「映画の未来へ」、あるいは「映画で未来へ」という意志である。映画の力を信じる作り手たちの思いが凝縮する作品群と向き合えた、幸せな8日間だった。
(まつおか・たまき アジア映画研究者)
( 2016年12月05日,「赤旗」)
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シリーズ今こそ聞きたいTPP/時代遅れのモデル/格差・貧困助長する
日本や米国の政府は、環太平洋連携協定(TPP)を「21世紀型」と自賛し、今後のモデルとして世界に押し付けようとしています。しかし、TPPは、国境を越えて活動する多国籍大企業の利益に奉仕する従来型の増強版≠ナす。多国籍企業本位のグローバル化(地球規模化)が貧富や格差を助長することは、今や、国際的な共通認識になりつつあります。
日米など12カ国がTPPに署名する直前の2月2日、国連人権理事会の「民主的で平等な国際秩序の促進」に関する独立専門家、アルフレッド・デ・サヤス氏が声明を発表し、TPPは人権を尊重しない「時代遅れのモデル」だとして、署名も批准もしないよう訴えました。
人権に逆流生む
同氏が2015年7月に国連総会へ提出した報告書は、従来の投資協定や自由貿易協定(FTA)が国際秩序にもたらす、人権に反する影響を取り上げ、もうけ中心の市場原理主義に人権が服従させられていると批判しました。特に投資家対国家紛争解決(ISDS)について、万人の福祉を保障する国家の機能を損ない、人権に対する逆流をもたらすと警告しました。同報告は、国連憲章や、国際機関の活動を通じて国際的に確認された人権基準に基づく代案をめざす「行動計画」も提言しています。
そのほか、人権問題を担当する国連の特別報告者や専門家10人も15年6月2日、TPPを含む投資協定やFTAについて、人権への否定的影響を懸念する連名の声明を発表しています。声明は、TPPが健康保護、食品の安全、労働基準に関する基準を引き下げ、医薬品独占の権益を企業に与え、知的財産権の保護期間を延長すると指摘。人権の保護と促進に逆行する影響をもたらすと警告しました。また、極貧問題を深刻化させ、対外債務を軽減する交渉を困難にし、社会的弱者の権利に悪影響するとしました。
民主平等の秩序
国連人権理事会の「食料に対する権利」に関する特別報告者(当時)のジャン・ジグレール氏は08年1月の報告書で、新自由主義理論は民営化や貿易自由化が飢餓を根絶すると主張するが、実際はその逆だと指摘しました。その上で、「食料に対する人権は、全国家、全国際機関、多国籍企業を含む全非国家部門が実行しなければならない」と勧告しました。
米大統領選挙の結果は、一部の大企業と富裕層に富が集中し、格差と貧困が拡大し、中間層が没落するなど米国社会の矛盾と行き詰まりを反映したものとなりました。共和・民主両党候補がともにTPPに否定的だったのも、TPPが雇用を失わせ、貧困と格差を広げることへの強い批判を反映したものでした。
国際的にも各国でも批判の強い、多国籍大企業奉仕の従来型であるTPPではなく、各国の経済主権や食料主権を尊重し、環境や人権に配慮した民主的で平等な国際経済秩序が求められています。
( 2016年11月11日,「赤旗」)
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シリーズ今こそ聞きたいTPP/ISDS条項/上/外国企業が政府を提訴
環太平洋連携協定(TPP)には、多国籍企業が投資先の政府を国際的な仲裁機関(裁判所)に訴えることができる仕組みが盛り込まれています。投資家対国家紛争解決(ISDS)条項です。訴えを起こせるのは企業だけです。裁判で問われるのは、政府が企業の利益を侵害しなかったかどうかです。仲裁法廷が設置されるのは国外です。徹底して、多国籍企業の利益をはかる仕組みです。
原発・最賃も標的
―スウェーデンの電力会社バッテンフォールが、ドイツ政府による原発ゼロの決定によって損害を受けたとして、同政府をエネルギー憲章条約違反として投資紛争解決国際センター(ICSID)に提訴。47億ユーロ(約5400億円)の賠償請求。係争中。
―エジプト政府が最低賃金を引き上げたことに対し、フランスの水道会社ベオリアが契約違反、両国投資協定違反としてICSIDに提訴。係争中。
―メキシコで地方自治体が廃棄物処理場建設を不許可としたことに対し、米国のメタルクラッド社が北米自由貿易協定(NAFTA)違反としてICSIDに提訴。2000年8月に1670万j(約17億円)の賠償をメキシコ政府に命じる判決。
いずれもISDS条項にのっとった国際的な裁判です。原発、最低賃金、環境といった国民の生命、暮らし、安全を守るために政府のとった政策が、多国籍企業の利益を侵害したとされ、巨額の賠償を求められています。
米国企業が乱発
ISDS条項を使って世界中で裁判を乱発しているのが米国企業です。国連貿易開発会議(UNCTAD)の集計によると、これまでのISDS裁判のうち、米国企業が起こしたものが145件で最多。2位のオランダ企業(89件)、3位の英国企業(64件)を大きく引き離しています。
訴えられた国は、アルゼンチンが59件でトップです。同国が経済危機に陥った際にとった政策変更が、多国籍企業の利益を侵害したとして訴訟の標的にされました。訴えられた件数が多い国を見ると、経済危機への対応や政権交代で政策が変わった南米や東欧諸国。さらに、米国中心のNAFTAに加盟しているカナダとメキシコ、などです。
TPPもNAFTA同様、米国を中心とする協定です。TPPのISDS条項は、米国企業が日本を含む各国政府に自らの利益をごり押しする仕組みを提供します。
(この項つづく)
( 2016年11月01日,「赤旗」)
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シリーズ今こそ聞きたいTPP/ISDS条項/下/暮らしも主権も脅かす
投資家対国家紛争解決(ISDS)で多国籍企業が国を訴えた件数は、国連貿易開発会議(UNCTAD)の集計によると、現時点までの累計で739件。1990年代から急増しています。
政府に委縮効果
ISDSの仲裁(裁判)で巨額の損害賠償を請求されること自体、政府を委縮させる効果があります。あらかじめ多国籍企業の主張を考慮して政策を決めるよう圧力が働きます。
UNCTADによると、賠償請求額が判明した訴訟498件のうち最も多いのが1億j(約105億円)以上5億j未満で166件。次いで1千万j以上1億j未満が151件です。裁判で確定した賠償額は1千万j以上1億j未満が最も多く、47件、次いで100万j以上1千万j未満が35件。請求、判決とも日本円にして億単位です。
裁判が行われる仲裁機関は世界銀行傘下の投資紛争解決国際センター(ICSID)や国連国際商取引法委員会(UNCITRAL)などです。裁判官は訴えを起こした企業、訴えられた企業と仲裁機関の三者がそれぞれ選任します。しかし、選任の対象となる法律家は、国際的な商取引で多国籍企業のために働いている弁護士が多く、途上国などは不利な立場です。
国内司法に優先
仲裁法廷の判決は国際法で強制力を持ち、国内司法機関の判断に優先します。
タバコの外箱に健康に害があることを表示する義務をめぐって米国のタバコ多国籍企業フィリップ・モリスの香港子会社がオーストラリア政府を訴えたケースがありました。同社はまずオーストラリアの裁判所に訴えて敗訴。その判決を無効にするために国際仲裁法廷に訴えを起こしました(敗訴)。日本の国会でも国際仲裁法廷と国内裁判所の判断が異なった場合、どちらが優先するかをめぐる質疑が行われ、2月8日の衆院予算委員会で岩城光英法相(当時)はどちらが有効かを答弁しませんでした。
国際仲裁法廷の判決は賠償命令であって、企業側が勝っても、直接、政府に政策変更を求めるものではありません。しかし、敗訴した国が判決に沿って政策を変えなければ、また訴訟の対象となり、いつまでも損害賠償を求められ続けることになります。結局、巨額賠償を通じて多国籍企業の言いなりにさせられます。
ISDS条項は国民の暮らし、安全も国家主権も危うくする仕組みです。しかも米国が中心となるTPPはISDS条項をいっそう危険なものにします。
( 2016年11月02日,「赤旗」)
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シリーズ今こそ聞きたいTPP/日米同盟強化/早期批准へ突き動かす
環太平洋連携協定(TPP)は、アジア太平洋地域を重視する米国の戦略的「リバランス(再配置)」の重要な柱です。そのことが、アベノミクス(安倍晋三政権の経済政策)の「成長戦略」の柱という位置付けと合わせて、安倍政権をTPP早期批准へ突き動かしています。
米国の戦略的「リバランス」は、アジア太平洋地域で、日米同盟をはじめ米国の同盟関係を強化する一方、台頭する中国には外交的関与の強化で対処し、米国の影響力を維持していくことを目指しています。TPPはその経済版≠ネのです。
戦略の中核的柱
オバマ米大統領は9月6日、訪問先のラオスで演説し、「TPPはアジア太平洋に対する米国のリバランスの中核的な柱だ」と断言しました。大統領は、「TPPが支える貿易と成長は、米国の安全保障同盟と地域連携を強化する」と述べる一方、「TPPを推進できないと、経済的悪影響を招くだけでなく、この死活の地域における米国の主導権に疑念を生じさせることになる」と強調しました。
安倍首相も9月19日、対日投資セミナーでの演説で、「TPPは、米国の『アジア・リバランス戦略』の柱であり、米国がアジア太平洋地域の発展をリード(主導)するとの意思を示すものだ」と述べ、「基本的価値を共有する国々が絆を深め、さらにその輪を広げていく」ことに「TPPの戦略的意義」があると強調しました。
オバマ大統領は2009年の1期目就任当初から、経済成長が著しいアジア太平洋地域を重視する姿勢を打ち出しています。同年11月には、東京での講演で、TPPを通じてアジア太平洋地域に米国主導の経済圏を形成する意図を、次のように語っています。
「米国は、環太平洋連携諸国とともに、広範な参加国を持ち、21世紀の貿易協定に値する高い基準を持つ地域協定を形成するという目標を目指す」
同年12月、カーク通商代表(当時)が議会へ送った書簡は、もっと率直に、アジア太平洋地域の市場における米国の取り分を増やすと述べています。
それが、現在のTPPなのです。
日米財界が期待
日米財界も、日米同盟に期待をかけています。日本がTPP交渉に参加した13年の日米財界人会議の共同声明は、次のように強調しました。
「日米両国は特にアジア太平洋地域において、アジア太平洋自由貿易圏の構築を長期目標に、ルールに基づく高い水準の経済圏創設に向けた主導的な役割を果たすことができ、かつそうした役割を果たすべきである」
その立場から、日本のTPP交渉参加を「日米経済関係や日米同盟を強化する歴史的な機会をもたらすものともなった」と歓迎しました。
日米など12カ国がTPPに署名した2月4日(米国時間3日)には、オバマ大統領は声明を発表し、「TPPは、アジア太平洋のような活力ある地域で特に重要な21世紀の交通規則≠、中国のような諸国にではなく、米国に書かせる」と強調し、米国主導を誇示しました。
安倍首相が15年4月、米上下両院合同会議での演説で述べた通り、「単なる経済的利益を超えた長期的な安全保障上の大きな意義」があるため、「米国と日本のリーダーシップ(主導権)」でTPPを推進することが、安倍政権の役割なのです。それは、米国の戦争に集団的自衛権を掲げて日本が参加する安保法制(戦争法)とともに、日米同盟強化の車の両輪をなすものです。
( 2016年11月09日,「赤旗」)
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シリーズ今こそ聞きたいTPP/批准進まない背景/各国でも強い反対運動
環太平洋連携協定(TPP)に署名した12カ国の中で、批准した国はまだありません。交渉を主導してきた米国でさえ、議会審議の見通しが立っていません。早期批准が予想されていたベトナムも、国会議長が「米大統領選挙を含め各国の動向をみて検討する」として、批准を急がない意向を示しています。TPP施行に必要な関連法の整備にかなりの時間がかかる国もあります。
各国で批准が進まない根底には、TPPに強く反対する各国内の運動があります。
見通しない米国
米国では、米労働総同盟・産業別組合会議(AFL―CIO)や消費者団体「パブリック・シティズン」などが反対運動を展開し、TPPを批准しないよう連邦議員に働きかけています。広範なTPP反対世論の圧力を受けて、民主・共和両党の大統領候補がそろって現状のTPPに反対を表明しています。クリントン候補は第1次オバマ政権の国務長官として、TPP推進の立場にあった人物です。しかし、大統領選挙の中ではTPP反対を表明せざるを得なくなっているのです。
残り任期がわずかのオバマ大統領は、任期中に議会承認を得たい意向です。しかし、大統領選挙と同時に、下院の全議席と上院の3分の1が改選されるため、現在の議会が審議するのは無責任だとする声が強まっています。また、現行のTPPでは不足だとする批判もあり、審議の見通しが立っていません。
カナダでは、全国に60の支部を持つ民間非営利団体(NPO)の「カナダ人評議会」がTPP反対を表明しています。各支部がTPP反対の公開討論会を開いているほか、下院国際貿易常任委員会の意見公募に対し、反対意見を集中するよう訴えています。
オーストラリアでも、豪公正貿易投資ネットワーク(AFTINET)、医療諸団体、豪労働組合評議会(ACTU)などが、集会や討論会を開き、反対運動を繰り広げています。また、76議席の上院で、与党・保守連合の30議席に対し、TPP反対の3野党の合計が38議席の半数を占めるため、上院での審議に向けて反対意見を集中するよう呼び掛けています。
批判には共通点
各国のTPP反対運動の批判は共通しています。そこにも、各国国民を犠牲にして多国籍大企業の利益を図るTPPの本質が表れています。
まず、投資の章に含まれる投資家対国家紛争解決(ISDS)条項を、国家主権を侵害するものだと批判しています。知的財産の章に含まれるバイオ新薬のデータ保護については、安いジェネリック医薬品(後発医薬品)の市販を遅らせ、貧しい患者の命を危険にさらすと非難しています。労働や環境では、多国籍大企業に基準を守らせる強制力がなく、基準が引き下げられると指摘しています。そのほか、TPPの秘密交渉が民主主義の原則に反し、TPPの評価が客観的でないなど、日本の反対世論と同じです。
( 2016年11月08日,「赤旗」)
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シリーズ安倍政権下で進む基地強化/1/強権・全土で・戦争法対応/暴力で弾圧してまで―過去に例なし
安倍政権下で日米ガイドライン(軍事協力の指針)が改悪され、戦争法が強行されるなか、沖縄県の米軍オスプレイパッド(着陸帯)や辺野古新基地建設の強行だけではなく、全国で米軍・自衛隊基地の強化が進んでいます。その背景と、各地での最新の動きをシリーズで伝えます。(次回から4面掲載の予定)
「負担軽減」と裏腹に
「政権として基地負担の軽減のため、できることは全てやる」
8日、沖縄県を訪問した菅義偉官房長官は沖縄県東村の伊集盛久村長らを前にこう語り、同村高江の着陸帯6カ所を年内に完成させる意向を示しました。菅氏の訪問を境に、砂利などを搬入するダンプカーは1日10台から一気に60台まで増えました。
安倍政権は高江で抗議する市民らを弾圧するため、7月から機動隊員約500人を動員。名護市辺野古の米軍新基地建設(現在は裁判中で一時停止)に反対する市民らに対しても、2014年8月以来、海上保安庁や機動隊を動員し、力で押さえつけてきました。
日本の歴代政権は「日米安保絶対」の立場から米軍基地の維持を至上命令としてきました。しかし、市民らの非暴力の抵抗を暴力で弾圧して基地建設を進めるのは、安倍政権以外に例がありません。
高江も辺野古も、口実は「沖縄の負担軽減」です。着陸帯を建設すれば、米軍北部訓練場(東村、国頭村)の「過半」が返還される―。辺野古新基地ができたら、普天間基地(宜野湾市)が返還される―。
しかし、実態は@辺野古に垂直離着陸機MV22オスプレイが100機も運用可能で、強襲揚陸艦も接岸可能な最新鋭の基地をつくるA高江にも、使い勝手の悪い既存の着陸帯に代わり、オスプレイのための最新鋭の着陸帯をつくる―。その結果、「負担軽減」どころか負担が強まり、基地が恒久化されます。
沖縄と本土を一体に
重大なのは、「沖縄の負担軽減」を口実に、全国で基地強化が進んでいることです。
「沖縄への配慮」―。17年後半から米空軍横田基地(東京都福生市など)に配備される特殊作戦機CV22オスプレイについて、防衛省関係者はこう述べます。同機は当初、米空軍嘉手納基地(沖縄県嘉手納町など)への配備が想定されていましたが、辺野古新基地ノーの世論との兼ね合いから、横田配備となったのです。しかし、嘉手納や伊江島補助飛行場(伊江村)などでの訓練が想定されており、実態は沖縄と本土の一体的な強化です。
さらに、@オスプレイの整備拠点(千葉・陸自木更津駐屯地)A嘉手納所属機やオスプレイの訓練移転(費用は日本側が負担)B普天間から米海兵隊岩国基地(山口県岩国市)へのKC130空中給油機移駐C嘉手納のMC130特殊作戦機や沖縄の特殊部隊が頻繁に横田を利用してパラシュート降下訓練を強行―などの動きが出ています。
艦載機移転も「純増」
米海軍厚木基地(神奈川県大和市など)の米空母艦載機部隊の岩国移転も「基地負担の軽減」を口実にしています。しかし、移転先の岩国では艦載機59機が「純増」となり、F35Bステルス戦闘機の配備とあわせ、大幅な負担増になります。空母離着陸訓練(FCLP)のための新たな基地建設も、馬毛島(鹿児島県西之表市)などで狙われています。
しかも、米軍は厚木基地を手放すつもりは全くありません。
自衛隊―日米一体化
米軍と並んで、自衛隊基地の新たな強化が進んでいます。
米軍と自衛隊の一体化はこれまでも@インド洋・イラク戦争での米軍支援A自衛隊司令部の米軍基地移転B日米共同演習の拡大・深化―などにより加速してきました。その上で安倍政権下で新たな動きが出ています。
@ガイドラインと戦争法に基づく強化 昨年9月、安倍政権が強行した戦争法により、集団的自衛権の行使容認と「戦地」での米軍支援が可能になり、日米の軍事一体化は新段階を迎えました。
戦争法の上位にある新ガイドライン(日米軍事協力の指針)に盛り込まれた戦争司令部=「同盟調整メカニズム」(ACM)運用が昨年から始まり、横田が日米一体化の拠点として強化されつつあります。
また、同指針では基地の共同使用を明記しており、自衛隊基地の「米軍基地化」が加速する危険があります。オスプレイや米海兵隊地上部隊の訓練が激化している陸自北富士、東富士演習場(山梨県、静岡県)などで、その傾向が強まっています。
A南西諸島での自衛隊基地新設 中国の軍事的台頭を念頭に、自衛隊の「南西諸島シフト」が急速に進んでいます。
これまで自衛隊基地がなかった沖縄最西端の与那国島に自衛隊基地がおかれ、宮古島、石垣島、さらに鹿児島・奄美大島でも基地建設や部隊増強が狙われており、地元住民との深刻な矛盾を引き起こしています。
長崎県佐世保市を拠点に、自衛隊版海兵隊といえる「水陸機動団」が置かれます。これに伴い、県営佐賀空港に自衛隊オスプレイの配備が狙われています。同空港は軍事利用を前提にしておらず、深刻な矛盾を引き起こしています。
B米国製最新鋭装備の導入 安倍政権になり、オスプレイなど米国から高額兵器の導入が相次いでいます。軍事費を引き上げ、基地の新たな増強につながっています。
大きな影響を与えるのが、F35Aステルス戦闘機の空自三沢基地(青森県三沢市)への配備です(42機)。これに伴い、整備拠点(リージョナルデポ)を、横田基地に隣接するIHI瑞穂工場(東京都瑞穂町)と、空自小牧基地(愛知県小牧市)に隣接する三菱重工小牧南工場に設けます。両基地には今後、米軍を含むF35が頻繁に飛来する危険があります。
オスプレイなど海軍、海兵隊機にも給油可能な最新鋭の空中給油機・KC46Aが空自美保基地(鳥取県境港市)に配備される計画が明らかになり、地元に不安を広げています。
「抑止力」通用しない
一連の動きは在日米軍基地の恒久化・地球規模の出撃拠点化に加え、米軍・自衛隊の一体化を加速して、日本を「海外で戦争する国」に変えるためのものです。その口実になっているのが「抑止力」の強化です。
しかし、これだけ日米同盟の強化を進めても中国や北朝鮮に対する「抑止力」足りえず、米軍主導の地球規模の「対テロ」戦争も失敗に終わっています。
辺野古新基地建設に反対する「オール沖縄」のたたかいをはじめ、基地強化に反対する超党派のたたかいも全国に広がりつつあります。日米両政府の足場は決して強固ではありません。
(竹下岳)
( 2016年10月31日,「赤旗」)
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シリーズ安倍政権下で進む基地強化/2/沖縄、新たな「銃剣とブルドーザー」
辺野古・高江・伊江島一体で海兵隊強化
「銃剣とブルドーザーを想起させる」―。沖縄県の翁長雄志知事は、「オール沖縄」の世論を無視して名護市辺野古の米軍新基地を推進する安倍政権をこう評しました。
「銃剣とブルドーザー」とは、沖縄を占領していた米軍が1953年〜55年にかけて住民の土地を強制接収し、基地を拡張したことを指します。
キャンプ・シュワブ沿岸部の辺野古新基地、北部訓練場の高江オスプレイパッド(着陸帯)、伊江島補助飛行場の着艦訓練場「LHDデッキ」の大幅拡張(地図)…。2014年以降、沖縄本島北部で進む新たな基地増強は、伊江島を除いて機動隊や海上保安庁といった実力組織を用いて住民を弾圧しながら強行している点で共通しています。
オスプレイ・F35の拠点に
さらに重大な共通項は、いずれも侵略部隊・海兵隊の強化につながっている点です。
土地の強制接収が続く最中の54年7月29日、当時のアイゼンハワー米政権は、本土に配備されていた海兵隊(第3海兵師団)の沖縄移駐を承認。海兵隊の基地として沖縄本島北部の民公有地が大規模に接収され、56年にキャンプ・シュワブ(現・名護市)、57年に北部訓練場(現・国頭村、東村)の運用が開始されたのです。
以来、沖縄は米本土以外で唯一の海兵隊の拠点として強化され、ベトナム戦争、湾岸戦争、イラク・アフガニスタンでの「対テロ」戦争への出撃・侵略拠点となってきました。
今、進められている基地増強の狙いは、海兵隊をアジア太平洋全域で強化し、出撃能力のさらなる強化と基地の恒久化です。
辺野古、高江、伊江島の基地強化はいずれも、米海兵隊の垂直離着陸MV22オスプレイやF35Bステルス戦闘機の配備・運用を前提にしたものです。米空軍の特殊作戦機CV22オスプレイの運用も想定されており、これらの基地強化は一体で進められています。
海からの侵攻能力強化狙う
さらに、@辺野古に強襲揚陸艦が接岸できる軍港をつくり、エアクッション型上陸艇(LCAC)用の斜路をつくるA高江着陸帯のうち、G地区から沖縄本島東海岸の訓練水域を結ぶ歩行ルートを建設する―という計画があります。海兵隊が海から敵地に侵攻する強襲上陸作戦能力の強化につながります。
安倍政権はこれらを「基地負担の軽減」と称して正当化しています。実態は、世界的にも貴重な生態系を持つ沖縄本島北部のやんばるの森や辺野古の海を破壊し、沖縄を地球規模の侵略拠点として強化・恒久化するものにほかなりません。
安倍政権は中国や北朝鮮の存在をあげ、在沖縄海兵隊を「抑止力」だとしています。しかし、在沖縄海兵隊の主力である第31海兵遠征隊(31MEU)は佐世保基地(長崎県佐世保市)の強襲揚陸艦隊とともに、毎年、1年の半分は海外展開しています。「抑止力」とは無縁の存在です。
ただ、米軍は近年の戦争で水陸両用作戦を事実上、行っていません。「負担軽減」どころか、火事場泥棒的な基地機能の強化が進められているのです。
しかも、高江・辺野古の基地建設は日本国民の税金によるものです。新基地ノー・オスプレイパッドノーの沖縄のたたかいへの全国的連帯は、国民生活にも直結します。
( 2016年11月04日,「赤旗」)
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シリーズ安倍政権下で進む基地強化/3/自衛隊増強、広がる反発/沖縄・奄美に「初動隊」配備計画
防衛省は中国の軍事的台頭を念頭に、南西諸島に自衛隊基地を新設・増強する計画を進めています。垂直離着陸機オスプレイや水陸両用車、ヘリ空母などで構成される陸上自衛隊版「海兵隊」部隊などが機動展開するための基盤づくりです。
この中に、真っ先に軍事的対応を行う「初動担任部隊」として、鹿児島県の奄美大島、沖縄県の与那国島(与那国町)、宮古島(宮古島市)、石垣島(石垣市)への陸上自衛隊の配備計画が進められていますが、住民の不安と反発が広がっています。
奄美大島には、北部の奄美市に警備部隊と地対空ミサイル部隊の350人、南部の瀬戸内町に地対艦ミサイル部隊など200人を配備するとし、2015年度に用地取得に着手。与那国島には3月28日に与那国駐屯地を開設し、約160人の沿岸監視部隊を配置しています。
ミサイル部隊、島に配置計画
宮古島には700〜800人規模、石垣島には500〜600人規模の警備部隊と地対艦ミサイル部隊、地対空ミサイル部隊などを配備する計画です。
防衛省は各地で開いている説明会で、中国や北朝鮮の軍事動向を強調し、脅威をあおって陸自配備の必要性を訴えるなど地元工作を繰り返しています。
しかし、一方的な配備計画に住民たちは黙っていません。
与那国島では自衛隊配備が進められましたが、島人口の約1割が自衛隊関係者となったことで「自衛隊が町長や議員のキャスチングボートを握り、島の自治が根底から失われる」といった懸念が住民から出されており、反対運動も継続されています。
宮古島では、下地敏彦市長が6月、自衛隊の受け入れを表明する一方、候補地のひとつの大福牧場への配備は認めないと述べるなど、二転三転。防衛省も9月に、もう一つの候補地の千代田ゴルフ場への施設配備案を提示しましたが、ミサイル発射装置は配備するものの、弾薬庫は千代田には配備しないという矛盾した方針を示すなど迷走してきました。
軍事基地反対世論の広がり
その背景に、6月の県議選で配備反対を掲げたオール沖縄候補の勝利や、反対運動の強まりがあります。来年1月の市長選でも焦点となっています。
石垣島では、防衛省が示した配備候補地周辺の開南(かいなん)、於茂登(おもと)、嵩田(たけだ)の3地区に続き、開南に隣接する川原地区も10月に反対決議をあげました。
10月11日には、これら4地区や自衛隊配備反対運動に取り組む市民団体や労組などが、一致団結し連携を強めるため「石垣島に軍事基地をつくらせない市民連絡会」を結成。配備反対署名は1次と2次集計分あわせて2万1621人分にのぼりました。
10月23日には県選出野党国会議員4人が、同市を訪れ市民と意見交換し、反対運動を発展させようと一致。議員らは2日、防衛省で若宮健嗣防衛副大臣に市民から託された署名を提出しました。
同市の田口るりさん(69)は「武力による弱肉強食が許される時代ではない。軍が入ってくるのは絶対に反対」と話しています。
(柳沢哲也)
( 2016年11月06日,「赤旗」)
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シリーズ安倍政権下で進む基地強化/4/佐世保・佐賀で自衛隊版「海兵隊」/日米殴り込み°駐_に
佐世保/最新鋭艦船配備、水陸機動団創設
米国防総省はアジア太平洋に兵力配備の重心を移す「戦略的リバランス(再配置)」を進めています。その一環として、2020年までに海軍艦艇の60%を太平洋地域に配備するなど、日本への海軍駐留を強化しています。
米海軍はすでに、最新鋭のドック型揚陸艦グリーン・ベイを佐世保基地(長崎県)に配備。これに加えて最新鋭ステルス駆逐艦ズムワルト、F35Bステルス戦闘機の運用が可能な強襲揚陸艦ワスプを17年秋にも配備しようとしています。
そのために17会計年度の国防予算案には佐世保基地立神岸壁の改修工事費を盛り込んでいます。19年には次世代の強襲揚陸艦アメリカの佐世保配備を狙うなど、侵略力をいっそう強めています。
一方、日本政府は新防衛大綱で、「統合機動防衛力の構築」と称し、@陸海空自衛隊が海外に迅速かつ持続的に展開できる能力を構築するA前線との間で兵士や武器を迅速に輸送するためのオスプレイ、水陸両用戦闘車両、無人偵察機、新型空中給油機などを新たに導入するB米海兵隊のような「殴り込み」作戦を行う水陸機動団を創設する―との方針を盛り込みました。
その具体化として、佐世保では@相浦陸自駐屯地に水陸機動団団本部・連隊を2100人体制で発足させ、最終的に3000人体制にするA崎辺地区に水陸両用車両基地(52両)、その訓練場を陸域・海域に設けるB隊舎や庁舎を建設する―計画です。関連の施設整備には183億9200万円の費用を要するとしています。
戦争法発動のための日米共同演習も積み重ねられてきました。水陸機動団の前身(相浦西部方面普通科連隊)は06年以降毎年、米海兵隊との演習を実施。最近では米軍オスプレイ、LCAC(エアクッション型上陸艇)も交えた「離島奪還統合訓練」まで行うようになりました。
佐世保の米海軍、陸自、海自はいつでも共同で作戦を強行できる態勢を整えたといってよいでしょう。戦争法廃止の課題は急務です。
(山下千秋・日本共産党佐世保市議)
佐賀/県営空港で狙うオスプレイ配備
佐世保の水陸機動連隊の輸送を担うために狙われているのが、県営佐賀空港(佐賀市)への陸上自衛隊の最新鋭輸送機V22オスプレイの配備です。
オスプレイ17機のほか、同県の陸自目達原駐屯地から攻撃ヘリAH1、AH64など約50機を移駐させ、自衛隊員700〜800人を配置。空港の西側約33fに駐機場や格納庫、燃料タンク、弾薬庫などを整備するとしています。米国からのオスプレイの納入が始まる18年度にあわせて「駐屯地開設」をめざしています。
防衛省は、九州北部には水陸両用作戦の主要部隊が多く存在していると配備の理由を説明しています。しかし、佐賀空港は民間空港です。空港建設時に県・市(当時は川副町)・漁協で交わした公害防止協定覚書付属資料に「自衛隊との共用は考えていない」という文言があります。
公害防止協定の解釈を変更してでも配備を進めようとする動きに反発が強まっています。9月に地元川副町4校区で行われた防衛省の説明会では、オスプレイの安全性や環境への影響などで反対意見が相次ぎました。安倍首相が国会で「(米軍の)訓練の一部を佐賀で行うということで進めている」と発言(10月13日)したことでさらに反対の声が広がっています。
(佐賀県・古賀誠)
( 2016年11月13日,「赤旗」)
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シリーズ安倍政権下で進む基地強化/5/岩国・最新鋭機の重大事故で自治体反発/極東最大の米航空基地へ
米海兵隊岩国基地(山口県岩国市)は、2017年度以降に米海軍厚木基地(神奈川県)の空母艦載機部隊59機が移駐すれば、配備機数は約130機、軍人・軍属・家族合わせて約9500人となり、極東で最大の米航空基地に変貌します。
10年前の3月に空母艦載機部隊移駐の賛否を問う住民投票が行われ、圧倒的な市民が移駐反対の意思を示しました。現在の福田良彦市長は、@普天間基地の移設先が決まらないうちの先行移駐は認められないA市民の安心安全対策の実施―というハードルを示して、「艦載機部隊移駐は容認していない」と述べています。しかし、日米両政府は移駐に向けて着実に準備を行っています。
基地内では新たに兵舎や格納庫、学校、病院といった施設が建設されています。さらに、米軍の滑走路沖合移設事業の土砂取り場となった愛宕山開発事業跡地には、野球場や陸上競技場などの運動施設と1坪約130万円といった豪華な家族住宅約260戸の建設が急ピッチで進められています。
福田市長は、「米軍再編交付金」と一般財源を活用して、医療費の助成対象を中学校3年生まで拡大し、所得制限も撤廃、子どもの医療費を中学校卒業まで無料にする補正予算を提案。基地の機能強化に対する被害や不安を交付金で「麻痺(まひ)させる」施策を取っています。
海自機と共用、大型停泊場も
米軍岩国基地の大きな特徴は二つあります。
一つは、滑走路を沖合に移設したことで、水深13bの大型バースを基地施設として取得したことです。これにより3万d級の大型艦船が接岸可能になりました。このバースを使って武器・弾薬・食料などをフリーの状態で荷積みや荷降ろしできるようになりました。沖縄に配備されたMV22オスプレイの陸揚げは全てこのバースが使われ、岩国で整備調整されました。
もう一つは、海上自衛隊の航空機部隊が米軍岩国基地を共同利用している点です。情報収集、機雷掃海、海難救助などの任務を持つ37機が配備されています。昨年4月の新たな日米軍事協力の指針(ガイドライン)で「日本以外の国に対する武力攻撃の対処行動」の一つとして、「海上作戦」を行うことが記されています。米軍との訓練の一体化が急速に進むことが考えられます。
来年配備控えF35引火事故
急浮上してきた問題が、最新鋭の米F35Bステルス戦闘機の配備です。国は8月末、17年1月にFA18ホーネット12機をF35B10機に、同年8月にAV8Bハリアー8機をF35B6機に機種変更することを伝達してきました。これに対して福田市長は11月2日の市議会全員協議会で、「配備計画を承認する」との考えを示しました。
ところが、F35Bが10月27日、米本土で飛行中に引火する事故を起こし、最も重大な「クラスA」に分類されていたことが発覚しました。山口県の村岡嗣政知事は9日、配備容認を撤回。福田市長も14日の市議会で「きちんとした対策が取られるまで承認できない」と述べ、配備容認を撤回しました。
日米両政府は来年1月のF35B配備を目前にして、深刻な矛盾に直面しています。
(松田一志・日本共産党岩国市委員長)
( 2016年11月19日,「赤旗」)
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シリーズ安倍政権下で進む基地強化/6/米軍機爆音眠れない/米軍のため新空中給油機配備へ
米軍機爆音眠れない/中国山地低空飛行訓練
広島県北広島町から兵庫県朝来市にかけて中国山地を横断する米軍の低空飛行訓練ルート・ブラウンルートや、広島、島根、山口3県にまたがる自衛隊訓練空域・エリア567の周辺では、米軍機の激しい爆音で住民の生活が脅かされ続けています。防衛省が日本共産党の塩川鉄也衆院議員に提出した資料によると、2007年〜16年9月末までの苦情件数は、島根県で238件、広島県で118件にのぼります。
防衛省中国四国防衛局が設置した島根県浜田市旭町の騒音測定器では、9月30日の午前7時から午後7時までの間に9回の爆音を確認しました。
「恐怖感じる」
電車が通過する際のガード下の騒音(100デシベル)に匹敵する最大99・4デシベル記録しました。夜間の訓練も繰り返され、住民は「恐怖を感じた」「子どもが眠れない」と悲鳴を上げています。
低空飛行解析センターの大野智久代表は、「中国山地には長く深い谷が散在していて、米軍にとっては訓練に好都合な条件が整っている。ルートは目安にすぎず、旋回して戻ってくるとの目撃情報も多い」と言います。
艦載機が移駐
岩国基地(山口県)の拡張・強化に反対する広島県西部住民の会の坂本千尋事務局長は、「岩国基地に59機の空母艦載機が移駐すれば、低空飛行訓練も激しくなる。情報共有ネットワークを広げ、運動を強めたい」と語ります。
10月19日には、島根県西部の5市町(浜田、益田、江津、川本、邑南)で構成する米軍機騒音等対策協議会が、防衛省と外務省に「強い対応」を要請しました。
広島県では、低空飛行の目撃件数が多い4市町(廿日市、三次、北広島、安芸太田)が情報交換会を開く(10月12日)など、自治体の取り組みも強まっています。
(丹田智之)
米軍のため新空中給油機配備へ/鳥取・美保基地
防衛省は2020年以降、鳥取県の航空自衛隊美保基地に新空中給油機KC46Aを3機配備する計画です。同機が給油可能な自衛隊機の機種は、小牧基地(愛知県)に配備されているKC767と同じですが、給油可能な米軍機の機種は、新たに戦闘機のF35、FA18、オスプレイのCV22、MV22へと大幅に拡大します。
最新鋭に再編
米軍岩国基地(山口県)には来年、最新鋭ステルス戦闘機F35Bが16機配備され、厚木基地からFA18スーパーホーネットなど米空母艦載機が59機移駐し、オスプレイも頻繁に飛来しています。美保基地への新給油機は、事実上、米軍のための配備です。
KC46A配備に伴い、空中給油機部隊、約120人が小牧基地から移設し、T400練習機の教育飛行隊、約10機、100〜190人が他基地に集約、一元化します。自衛隊のパイロット養成のための訓練基地が、自衛隊・米軍への空中給油を含む輸送基地、最新鋭の出撃基地に再編強化されるのです。
市街地上空で
防衛省は、通常の訓練は島根県沖の日本海上空の「U訓練空域」で行うとしていますが、戦闘時には即発進できるように24時間待機飛行するため、市街地上空での空中給油の可能性も否定しません。
KC46Aは「空飛ぶガソリンスタンド」と呼ばれ、一度事故が起これば大事故につながりかねません。1994年には土佐湾で空中給油訓練中のFA182機が接触事故を起こし、1機が墜落しています。
美保基地には、燃料の貯蔵タンクも必要となり、空中給油機とその施設は有事の際に格好の標的にされます。
また、新輸送機C2が来年3月までに3機、18年度までに計8機が配備される計画です。C2配備は美保基地のみです。
(鳥取県・岩見幸徳)
( 2016年11月27日,「赤旗」)
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シリーズ安倍政権下で進む基地強化/7/米「本土防衛」の最前線/日米一体化が年々強化
米「本土防衛」の最前線/米軍経ケ岬通信所
運用2年で相次ぐ事故
京都府京丹後市に配備された米軍Xバンド・レーダー(TPY2)基地・米軍経ケ岬(きょうがみさき)通信所は、本格運用からまもなく2年がたとうとしています。同通信所は、アメリカの「本土防衛」を目的に弾道ミサイルを探知・追尾するもので、近畿では唯一の米軍基地。戦争になれば「レーダー基地がまず攻撃されるのでは」と、住民は不安な日々を送っています。
稼働当初から住民を苦しめた発電機による激しい騒音は一定の対策がとられたものの、なお低周波による健康への被害などが懸念されています。米軍関係者による交通事故は後を絶たず、発生件数は人身事故を含め約30件にのぼります。事故当事者への十分な支援もなく、住民が一方的な不利益を被っています。
「丹後松島」とも言われる風光明媚(めいび)な景観も、基地による破壊が進んでいます。保護を要する地形などを登録する京都府のレッドデータブック2015年版では、京丹後市丹後町の海食洞「穴文殊」について、米軍基地によって「海からの景観が大きく損なわれた」と記述されました。地域の信仰の対象でもある「穴文殊」の真上に設置されているのが米軍のトイレであることがわかり、住民の怒りが沸き起こっています。
また、レーダー基地所属の米軍人・軍属による実弾射撃訓練が、陸上自衛隊福知山駐屯地(福知山市)の射撃場で行われることを受け入れることを政府が閣議決定し、大問題になっています。福知山駐屯地の米軍との「共同使用施設」化は、事実上、第二の米軍基地が京都府内に生まれることになります。使用される銃器や訓練内容は明らかにされず、騒音・安全対策についても不安の声が上がっています。
(京都府・渡辺研一)
日米一体化が年々強化/陸自饗庭野演習場
オスプレイ同乗し訓練
陸上自衛隊饗庭野(あいばの)演習場(滋賀県高島市)では、毎年のように米軍との共同訓練が行われ、日米軍事一体化が進んでいます。
2013年10月には、米海兵隊の垂直離着陸機MV22オスプレイを使った国内初となる日米共同訓練を強行。飛来した2機のオスプレイに米海兵隊員と自衛隊員が同乗し、敵陣地に降下・侵入するヘリボーン訓練を実施しました。市街地上空を避けて飛ぶよう求める地元の意向は無視されました。
自衛隊の実弾射撃訓練で、演習場近くの民家の屋根を銃弾が貫通した事件のあった15年には、事件後中止されていた実弾射撃訓練を日米共同訓練に合わせて再開させ、日米軍事同盟優先の姿勢をあらわにしました。
戦争法施行後初めて行われた今年9月の日米共同訓練では、米陸軍のストライカー装甲車と陸上自衛隊の74式戦車がいっしょに目標を攻撃する訓練を実施。有毒化学物質に汚染されたという想定で、自衛隊員がストライカー装甲車の除染作業を行うなどの訓練も行われました。
あいば野平和運動連絡会の早藤吉男共同代表は「饗庭野の『米軍基地化』を許さないたたかいがますます重要になってくる」と話します。
(滋賀県・浜田正則)
( 2016年11月29日,「赤旗」)
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シリーズ安倍政権下で進む基地強化/8/F35戦闘機整備拠点に/オスプレイ訓練が激化
F35戦闘機整備拠点に/三菱重工小牧南工場
飛来が増え安全に懸念
県営名古屋空港に隣接した三菱重工小牧南工場(愛知県豊山町)がF35ステルス戦闘機の整備拠点(リージョナル・デポ)に指定され、日本が購入する42機中、38機の最終組み立ても同工場で始まり、新たな軍事強化が進んでいます。
整備拠点は2014年12月に米国政府が発表しました。エンジンは東京のIHI瑞穂工場(瑞穂町)に、機体は愛知の三菱重工が担当することになりました。韓国も40機を購入する予定で、米軍も含め小牧南工場で整備することが狙われています。名古屋空港でのF35の飛行は最終組み立て後の試験飛行も含めて相当な数となることが考えられます。
名古屋空港の滑走路を挟んで向かいには航空自衛隊小牧基地があり、輸送機からの部品落下などが頻繁に起きています。利用増による騒音被害防止を含めて、周辺の春日井市・小牧市・豊山町は何度も要望書を出しています。名古屋空港周辺の市民および議会、市で組織する春日井市飛行場周辺対策市民協議会も同様の要望をしています。
日本が購入するF35は青森県の空自三沢基地に配備される予定です。3年前には、騒音がF16よりも10デシベル大きくなるとしたデータが防衛省から三沢市議会に伝えられました。F16は100デシベル(電車の通るガード下程度の騒音)を出しています。
春日井市議会の3月議会で共産党の宮地隆議員はこのデータを示し質問。市はリージョナル・デポについてはFAX1枚での連絡しかなく、同様の説明はされていないことを明らかにしました。宮地議員は、情報提供の欠如を批判し、対策を求めています。
(今村一路)
オスプレイ訓練が激化/富士周辺の演習場
基地返還に公然と逆行
静岡県の陸上自衛隊東富士演習場(御殿場市、裾野市、小山町)は、演習場内の一角を占める米軍キャンプ富士(御殿場市)を拠点に、オスプレイの飛来・離着陸訓練などが定期的に行われる常用常設の訓練エリアとなっています。
11月4日には1度に7機の米海兵隊・MV22オスプレイが、米軍普天間基地(沖縄県)から飛来し、演習場内で離着陸訓練を行いました。海兵隊が行う長距離襲撃演習「ブルー・クロマイト」のため、空中給油機を使って海兵隊員を運んでいたことが判明しています。
米海兵隊は、「戦略展望2025」のなかで、キャンプ富士、東富士演習場に加え、地続きの陸上自衛隊北富士演習場(山梨県)を重要な演習場と位置づけて、海外と同様の実戦的訓練ができる場所にしようとしています。加えて、南側にある米軍沼津海浜訓練場(今沢基地、静岡県沼津市)も「海岸の保持、使用は必要不可欠。より一層の収容能力を持つように開発していくこともありうる」としています。
同訓練場の見た目は何もない砂地の海岸ですが、ベトナム戦争時には揚陸艦を使って戦車などがキャンプ富士と往来した歴史があります。2014年9月には米海兵隊がキャンプ富士から水陸両用車(AAV7)4両をトラックで運び、揚陸訓練を強行しました。
来年以降、横田基地(東京都)配備が狙われているCV22オスプレイが東富士演習場で射撃訓練を行う計画も、米軍公表の「環境レビュー」に明示されています。
御殿場平和委員会の渡辺希一事務局長は、「東富士演習場の使用協定では米軍基地の早期全面返還が前提となっていますが、逆行することを公然と発表していることは許せません」と話しています。
(静岡県・内田伸治)
( 2016年12月04日,「赤旗」)
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シリーズ今こそ聞きたいTPP/多国籍企業に利/農業・地域経済に打撃
政府は、環太平洋連携協定(TPP)で日本の輸出が増え、国内総生産(GDP)も雇用も増えると説明しています。ところが、実際は、それとは逆に、TPPが利するのは国境を越えて事業を展開する多国籍大企業で、被害を受けるのは国内の農業生産、地場産業、地域経済、そして国民生活です。
多国籍大企業は、最適地生産といって、最も有利だと考える国に生産や流通、販売の拠点を置き、現地で生産、調達、流通、販売しています。利益を最優先する行動の結果、日本の「産業空洞化」が起き、地域の再生産構造が破壊され、経済の持続可能性が掘り崩されています。
国内取引と同じ
TPPは、各国の関税・非関税障壁を撤廃し、規制を緩和・撤廃し、行政手続きを簡素化し、基準や規格を共通にします。TPP参加12カ国間の貿易を、一国内の取引と同じように変えます。多国籍大企業は、国境を越えて製品・部品を移動させても、関税もかからず、多くの手続きも免れます。一国内で行う企業グループ内の取引と同じように、国境を気にせずに利益を追求する環境ができるのです。
そのことは、関税減免の対象になる製品の生産地を定めるルールである「原産地規制」にもよく表れています。例えば、自動車の場合、日本車に日本製でない部品が組み込まれても、TPP参加12カ国内で製造された部品の合計が、二つの計算方式で45%以上または55%以上に達していれば、参加12カ国で関税減免の対象になります。メード・イン・ジャパン(日本製)ではなく、メード・イン・TPP(TPP域内製)の原則なのです。
100%日本製でなくてもよいわけですから、他国で販売する車を日本で生産し、日本から輸出する必要はありません。政府の説明とは逆に、日本の「産業空洞化」が加速され、日本への逆輸入も増えることになるのです。
苦境さらに加速
他方、国内の下請け企業は、多国籍大企業が進出した先の下請け単価との競争を一層強いられます。単価引き下げ競争が嫌なら、多国籍大企業について海外へ出ていかざるを得ません。日本企業のアジア進出が本格化して以降、東京都大田区でも東大阪市でも、多くの中小企業が苦境に陥りました。すでに起きていることが、TPPで加速されることになるのです。
地域経済へ与える影響が甚大です。中小企業の活動は、製造業のノウハウや熟練技能を持つ多くの異業種の企業が集まる地域の産業集積の中で、人、モノ、金を回すネットワークで成り立っています。TPPによって中小企業の経営が悪化し、ネットワークのある一工程が欠けると、ネットワーク全体が崩壊の危機に陥ります。
農業はもちろん、履物・皮革などの地場産業も、TPPによる関税撤廃・削減で、輸入・逆輸入が増えると、大打撃を受けます。
このように、TPPは、多国籍大企業を栄えさせるのと引き換えに、地域経済に被害を与え、地域社会を疲弊させることになるのです。
( 2016年11月04日,「赤旗」)
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シリーズ今こそ聞きたいTPP/農産物輸入が拡大/最悪の農業破壊協定
環太平洋連携協定(TPP)は、関税撤廃を原則としています。関税撤廃で農産物輸入が拡大されれば、国内の農業が大打撃を受けることは必至です。
国会衆参両院農林水産委員会の決議は、TPP交渉で、米、麦、牛・豚肉、乳製品、砂糖の農産物重要5項目を「除外」または「再協議」とするよう求めました。「除外」とは関税撤廃・削減の対象にしないことです。「再協議」とは将来の交渉へ先送りし、当面は交渉しないことです。
関税撤廃を約束
しかし政府は、国会決議に反して交渉し、農産物重要5項目の28・6%の品目で関税撤廃を約束しました。撤廃しなかった品目でも、米の輸入で米国とオーストラリアに対して合計7万8400dの国別枠を新設し、麦の輸入でも米国、カナダ、オーストラリアに対して国別枠を新設しました。さらに牛・豚肉の関税を大幅に削減するなど、全く「無傷」の品目はありません。明らかに国会決議違反です。農林水産物全体では、82・3%の品目で関税を撤廃します。
政府は、関税割り当てやセーフガード(緊急輸入制限)などを用いて、関税を撤廃しない「例外」を確保したと強弁しています。しかし、国内向けの言い訳にすぎません。
TPP発効後7年たつと、米国、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、チリのいずれかから要請があれば、日本の輸入を増やすために、関税、関税割り当て、セーフガードに関する日本の約束を見直す協議に応じなければなりません。5カ国はみな農産物輸出大国です。TPP発効の時点で農産物の一部に関税が残っていたとしても、撤廃を迫られ続けることになるのです。
対策込みで試算
TPPの影響を評価した政府試算は、農林水産物の生産減少額は1300億〜2100億円にとどまり、米には「影響なし」としています。ところがこの試算は、現行の関税率が10%以上で、国内生産額が10億円以上の農産物19品目と林水産物14品目について試算したにすぎません。しかも、政府が対策を講じるので基本的に影響が出ないという前提に立っているのです。
これに対し、農業関係者をはじめとして、対策を前提としない影響試算を求める声が相次いでいます。一部の道府県が独自試算を行っているほか、東京大学の鈴木宣弘教授も政府試算と同じモデルを使った独自試算を発表しています。それによると、農林水産物で1兆円、食品加工で1・5兆円の生産額減少が生じるといいます。
政府は、国会決議に反して重要農産物の関税に手を付けただけでなく、関税撤廃の「例外」を確保したとごまかして、関税撤廃へのレールが敷かれた過去最悪の農業破壊協定を押し通そうとしているのです。
( 2016年11月03日,「赤旗」)
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シリーズ現代の視点/東京理科大学教授大庭三枝さんに聞く/南シナ海とASEAN
平和的解決へルール作り推進
中国の南シナ海への強硬な海洋進出が、同国と東南アジア諸国連合(ASEAN)の加盟国との間で大問題となっています。この問題でASEANはどのような対応をしているのか―。東京理科大学の大庭三枝教授(国際関係論)に聞きました。
(豊田栄光)
ASEANは1976年に、武力不行使、紛争の平和的解決などの原則を定めた東南アジア友好協力条約(TAC)を結び、地域の平和を構築するルール作りを推進し、自らも実践してきました。南シナ海問題でも、武力不行使、話し合いによる解決を一貫して主張しています。
中国は92年、南シナ海の大部分を領域だとする領海法を制定しました。それに対してASEANは、紛争の平和的解決などをめざす法的拘束力のある「南シナ海行動規範」(「行動規範」)の策定を打ち出しました。
ASEANと中国は2002年、国際法やTACの順守、航行の自由尊重などを記した「南シナ海行動宣言」(「行動宣言」)に合意し、「行動規範」策定でも一致しました。
意見が違っても一定の合意形成
しかし中国は09年ごろから、南シナ海問題で強硬姿勢にでています。カンボジアがASEAN議長国だった12年には、外相会議で共同声明が採択されませんでした。
カンボジアが中国寄りの姿勢を示し、これに紛争当事国であるフィリピンなどが反発し、共同声明案で合意できなかったためとみられています。ASEANの「一体性」が崩壊したとの見方も出ました。
しかし、こうした意見の相違があるなかでも、ASEANは一定の合意を形成し、それを対外的に表明することで、地域紛争解決へ向けた存在感を示そうとしています。
ASEANは、首脳会議や外相会議で「行動宣言」の重要性や、「行動規範」策定作業の継続の必要性に言及するほか、紛争の平和的解決などを繰り返し確認しています。
15年4月の首脳会議の議長声明は、南シナ海での「埋め立て」は平和と安定を脅かすとし、同年11月の首脳会議の議長声明は、「軍事化」に懸念を表明しています。今年8月には、来年前半までに「行動規範」の枠組み合意をめざすことを確認しています。
中国が想定以上に強硬姿勢をとり、ASEANは戸惑っていますが、彼らは軍事力で中国と対決しようとは考えていません。
国際司法裁判で領土問題を解決
ASEANはTACを地域の規範とし、域内の平和と安定を図る仕組みづくりに取り組んできました。94年に、アジア太平洋地域の安全保障を話し合うASEAN地域フォーラムが発足しました。このとき、TACの目的と原則を「地域の諸国間関係を管理する際の行動規範」として承認することが議長声明に盛り込まれました。同フォーラムのメンバーには米国、中国、日本などが含まれています。
05年誕生の東アジア首脳会議(ASEAN+日中韓印豪ニュージーランド)に参加するにはTAC署名が条件とされました。米国も09年にTACに署名、この会議に参加しました。
ASEAN諸国間の領土問題では、02年にインドネシアとマレーシアが、08年にマレーシアとシンガポールが国際司法裁判所の判決で問題を解決しました。TACに準拠した紛争の平和的解決の実践です。
安倍晋三政権はASEANのこれらの実績を評価してというよりは、中国をけん制するうえでASEANを重視しているようです。
大国間関係が国際関係の95%を決めるという見方もありますが、私は中小国の役割と影響力は無視できないと思っています。
ここ30年ほどの歴史を振り返ってみると、ASEANが納得しない地域制度は実現していません。中小国の連合体であっても、ASEANの外交交渉力は評価できると思います。
( 2016年11月01日,「赤旗」)
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