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なぜホロコーストもたらした
　ナチス・ドイツの総統ヒトラーの著書『わが闘争』を批判的に学ぶことで「過去の克服」を果たそうと、高校生の授業で同書を取り上げるようドイツの教育相や教員組織が呼び掛けています。ネオナチなどがインターネットでアクセス可能な同書を使って宣伝する中、教育に取り入れることで､若者たちに何がホロコースト(ユダヤ人大量虐殺）や破局をもたらしたのかを伝えようという試みです。
　（片岡正明）

　きっかけは、独バイエルン州が持っていた『わが闘争』の著作権が今年末に切れること。ドイツ国内ではオリジナル版の発刊禁止は継続されますが、来年１月に批判解説付き『わが闘争』が出版されます。この本の一部を授業に使おうとの提案です。
　『わが闘争』はヒトラーが自らの幼年期とウィーンでの青年期などの自伝的要素を記述、反ユダヤ主義や差別的人種観をもとにした世界観を主張しています。ナチス・ドイツ時代は１０００万部以上が販売されました。戦後、西独政府はナチス思想の宣伝を刑事罰の対象とし、国内では限られた歴史研究者だけに公開されてきました。
　新しい『わが闘争』は本文３５００カ所に細かな注釈を付け、計２０００㌻の上下２巻本となります。ミュンヘンのドイツ現代史研究所が３年の歳月をかけ作成しました。
　ワンカ教育相は２４日付の独紙パッサウアー・ノイエン・プレセのインタビューで、「著作権が切れ、『わが闘争』に接することが可能になり、生徒たちは当然の疑問を持つ。このテーマで授業を行うことが必要だ」と語りました。
　ドイツ教員連盟のクラウス代表は「すでに『わが闘争』はインターネットでアクセスできる。禁じられたものは余計に好奇心を刺激するだけだ」とし、積極的に反面教師として学ぶことを主張。そうすることで「若い人たちに、ヒトラー時代の１２年間の破局と大虐殺につながった極端な世界観に対する免疫をつけてもらえる」と訴えています。
　一方、ドイツのユダヤ人協議会は、新たな『わが闘争』出版について、「反ユダヤ主義の罵倒の表現は伏せたままが望ましい」と表明しています。
( ２０１５年１２月２９日，「赤旗」)

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戦争法廃止行動各地で／もっと運動広げよう／やめるべ戦争行動に元市長も／思いスピーチ、全員でコール／北海道函館市

　北海道函館市で１９日、「やめるべ戦争函館行動」が行われ、初参加の人も含め、６０人が集まりました。
　参加者は「アベ政治を許さない」「戦争法廃止、憲法を守ろう」など思い思いのプラカードでアピールし、スピーチを行いました。
　日本共産党の紺谷克孝函館市議は「１２月議会で共産党と民主・市民ネットが共同提案した『安保法制法廃止』の意見書は１４対１５の僅差で否決となった。さらに運動を大きくして頑張りたい」と決意を述べました。
　元函館市長の西尾正範さんは「戦争法案の強行などファシズムの自民党になってしまった。あきらめないで運動を盛り上げよう。私も毎回参加したい」と述べました。
　参加者全員で「戦争法絶対反対、憲法守れ！」などとシュプレヒコールをしました。
(２０１５年１２月２３日，「赤旗」)

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「子供ばんど」うじきつよしさん／「自由手放すな」今、言わなきゃ／オヤジのロック魂、理不尽許せない

国民連合政府に反対するのは度量狭いよ
　「戦争する国づくり」に突き進む安倍政権｡その動きに｢このままじゃまずいぞ！」と声を上げるロックミュージシャンがいます。うじきつよしさん。１９８０年に「子供ばんど」でデビュー。その後、俳優やタレント活動を経て､２０１１年､バンド活動を本格的に再開しました。今年５月、通算１４枚目となるアルバム「ロックにはまだやれることがあるんじゃないのか」を発表しました。
　小川浩記者

　アルバムは昨年末に構想をスタート。
　「ロックギターのカリスマ､ジミ･へンドリックスはベトナム戦争が激しかった１９６９年に『ウッドストック』で、戦争を泥沼化させたアメリカを痛烈に批判する演奏をしました。ロックバンドとして『俺たちはこう感じ､こう考えている』とメッセージを曲にして発信することはとても大切。『赤旗』読者のみなさんも、今のこの世の中、何とかしなきゃいけない、と強く感じてらっしゃるはず。僕たちも同じですよ」
　アルバムは全１３曲。１曲目のタイトルは『自由』。「手放すな自由！守り抜け自由！」と歌われるこの曲に、ファシズムや言論・表現の抑圧に対する危ぐ、怒りが強く感じられます。
　「世の中、どんな立場であれ､自由な発想､発言ができなくなったらおしまい。個人の尊厳がそがれていきます。自由を侵害する、抑えつけようとする理不尽は許せない。自由って大上段に構えた言葉ですが、今言わなきゃ、オヤジのロックバンドとしてやる意味がない」
　戦争法が参院本会議で強行採決される直前の９月１８日。うじきさんはＮＨＫの昼の番組「スタジオパークからこんにちは」にゲストとして招かれました。
　「あの時の生放送で『自由』を歌うことができた。歌詞の字幕も出してくれた。自分なりの主張ができたと思っています」
　戦後７０年、日本の進むべき道を考えます。
　「日本が直接戦火に巻き込まれず、平和な国でこれたのは、憲法９条があったから。９条は守り抜くべき。戦争は何があっても絶対に認めない」

戦犯だった父
　原点は、旧陸軍大尉で、Ｂ級戦犯である父（９４）の存在です。
　「父は、東南アジアを転戦する戦車隊を指揮し、終戦後、サイゴン国際軍事法廷で裁かれ、ベトナムと日本の巣鴨刑務所で計８年間、１９５３年まで収監されていました。父がＢ級戦犯であることは子どもの頃から知っていました。少し怖い存在だった。長く投獄されていたので、世の中の変化を感じ取り、受け入れるのは難しかったのだと思う」とうじきさん。
　「やがて、時に激しい口論をするようになる。『おやじみたいな元軍人こそ、戦争の真実、悲惨さをちゃんと伝えなきゃ、戦争は無くならない』と食ってかかると､『戦争や紛争が無くならないのは、過去の歴史が証明している。おまえだってその状況になれば、戦争に行くかもしれないんだぞ』と」
　２００７年、うじきさんはお父さんとともに、お父さんが収監されていたベトナムの地を訪ねました。のちにテレビ番組「僕の父はＢ級戦犯・戦争を語る父子の旅」（テレビ朝日）として放送されました。
　「孫のことがかわいくてしかたない、今はごく普通の好々爺（こうこうや＝気のいいおじさん)然とした父｡しかし心の内では、決して消えることのない大きなトラウマを抱えたまま、戦後７０年たとうとも『陸軍大尉』のまま生き続けているのではないか？たとえ生き残っても、戦争は人の心を容赦なく支配し続け、人格を踏みにじっていくものだと」
　自身の信念は、「撃たれたら撃ち返す、その恨みの連鎖をどこかで止めないと。人間には『言葉』がある。『対話』ができる。英知を振り絞れば、必ず超えていける。その理想を僕たち日本人が掲げなくてどうするの！」
　日本共産党が提唱している｢国民連合政府｣にも―。
　「素晴らしい提案。安保法制をなくしたら、即解散、総選挙ってのも理にかなって潔し。これにイチャモンつけるのは、右でも左でもなく、度量が狭いだけでしょ」
　「それまで限定で、『赤旗』をなんでもありの『七色旗・レインボーフラッグ』って、どうでしょう？」
　笑顔を交えながら、熱く語りました。

うじき･つよし＝１９５７年東京都生まれ｡ミュージシャン、俳優、司会者。８０年、「子供ばんど」でメジャーデビュー。８８年、２０００本のライブをやり切り一時休止。２０１１年「子供ばんど」の活動再開。映画｢グッド･ストライプス｣､ドラマ「経世済民の男」などに出演
(２０１５年１２月２０日，「赤旗」)

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ＮＨＫ変える民衆の力必要／広島・つどい

　政府から独立したＮＨＫをめざす広島の会（世話人共同代表＝利元克巳氏ら３人）は１３日、広島市中区で結成１周年のつどいを開き、６４人が参加しました。
　日本ジャーナリスト会議代表委員の隅井孝雄氏が「公共放送って何だ？　メディアと安倍政権」と題して記念講演をしました。
　利元氏は「戦争法に続いて改憲へ突き進む安倍政権は、ナチスと同じようにメディアへ介入している」と開会あいさつ。隅井氏は「安倍チャンネルと呼ばれるまでに変質したＮＨＫを、まともにするには民衆パワーが必要だ。受信料を払っている私たちこそ主人公なのだから、ＮＨＫに意見をあげ、大いに叱咤（しった）激励しよう」と呼びかけました。
(２０１５年１２月１７日，「赤旗」)

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１５回顧／映画／歴史、社会映し平和を

　戦後７０年の今年公開された内外の映画には、戦争を考えさせる秀作があいつぎ、映画の力を示しました。
　目についたのはドイツの過去と対決する作品です。ヒトラーのパリ破壊命令への抵抗を息詰まる展開で見せた「パリよ、永遠に」は、仏・独両国の和解へと歴史を前に進める作品でした。普通の市民のナチスへの加担に目を向けた「顔のないヒトラーたち」や、「ヒトラー暗殺、１３分の誤算」「あの日のように抱きしめて」など自国の歴史への真摯なまなざしがありました。
　他の国の作品も、復讐の連鎖の無残さを鮮烈に訴える「独裁者と小さな孫」、チェチェン紛争に材を得た「あの日の声を探して」など、独創性に満ち平和への願いがあふれています。
　日本映画も多様に戦争を描きました。山田洋次監督の「母と暮せば」は、母と息子の情愛を断つ長崎の被爆の瞬間をかつてない映像で映し、磯村一路監督の「おかあさんの木」は、息子たちを戦争に奪われた母の悲しみを伝え、塚本晋也監督の「野火」はフィリピン戦線での日本兵の過酷な体験を描きました。「沖縄　うりずんの雨」「戦場ぬ止み」ほかドキュメンタリーも数多く公開されました｡これらに込められた､今こそ作らなければの思い。その志向の強さこそ映画化を実らせたと思えます。
　ケン・ローチ「ジミー、野を駆ける伝説」（アイルランド）、ダルデンヌ兄弟「サンドラの週末」（ベルギー）、パトリシオ・グスマン「真珠のボタン」（チリ）、プ・ジヨン「明日へ」（韓国）など虐げられる人への連帯が胸打つ作品群は、映画が時代と社会を映し出す鏡であることを改めて示しました。
　ユニークな人間賛歌の是枝裕和「海街ｄｉａｒｙ｣､日本の近代化への問いをはらむ小栗康平「ＦＯＵＪＩＴＡ｣､生き難い世への声をほとばしらせた橋口亮輔｢恋人たち｣なども話題を呼びました。
　ホロコーストを告発した大作｢ショア｣(１９８５年)が再上映されるほど観客を集めたこと。山本薩夫、今井正監督らの独立プロ運動に光を当てた作品や、原発事故被災者、平和行進を描く記録映画が作られたことも注目されます。
　戦争法に反対する動きが広がる中、戦前の映画法で自由を奪われた教訓に学ばねばという映画人の発言が痛切でした。
　原節子の訃報に接してすぐ浮かんだのは「わが青春に悔なし」（４６年、黒沢明監督）。獄死した夫の志を継ぎ、「顧みて悔いのない生活」をとうたう作品は今も胸の中で生き続けています。
　（児玉由紀恵）
( ２０１５年１２月１６日，「赤旗」)

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２０１５年回顧／戦後７０年／反戦・平和の意志新たに

　２０１５年は第２次世界大戦の終結から７０年でした。世界で今も戦火が絶えず、テロの脅威もあるなか、反戦・平和の意志を新たにする機会ともなりました。

各地で式典が
　ナチス・ドイツが大戦中、ユダヤ人や少数民族ロマなどを虐殺した強制収容所も解放から７０年を迎えました。１月２７日には１１０万人が殺害されたアウシュビッツ強制収容所で、４月２６日には「アンネの日記」で知られるアンネ・フランクも命を落としたベルゲン・ベルゼン強制収容所で式典が行われました。
　ドイツでは２月１３日にも、東部ドレスデンで大戦末期に市中心部の大半が廃虚と化した連合軍による無差別爆撃から７０年の式典が開かれました。
　５月９日にはモスクワで旧ソ連の対独戦勝７０年を記念する軍事パレードが行われました。ロシアのウクライナ介入に抗議して先進７カ国（Ｇ７）首脳は事実上ボイコット。ただメルケル独首相は１０日、ロシアのプーチン大統領とともに、ナチス・ドイツとの戦争で犠牲になった数百万人の旧ソ連兵士を追悼し、献花しました。
　中国の抗日戦争記念日（９月３日）は、今回初めて軍事パレードを実施し、３０カ国の元首・政府首脳、国連の潘基文（パン・ギムン）事務総長らが出席。習近平国家主席は演説で、人民解放軍の現兵力２３０万人から３０万人を削減すると宣言しました。

国連憲章７０年
　２度の大戦を経て設立されたのが国際連合（国連）です。その設立の理念や活動の基本原則などを定めた条約である「国連憲章」も１０月２４日、発効７０年を迎えました。
　ニューヨークの国連本部では前日の２３日、第７０回国連総会のリュッケトフト議長が主宰して記念の会合が開かれました。
　潘事務総長が演説し、「国連の事業は完璧ではない」ものの「国連憲章に留意すれば将来世代を戦争から救えるはずだ」と強調。会合は、紛争の平和的解決や主権の平等、内政不干渉などを定めた国連憲章の原則を再確認し、「『戦争の惨害から将来の世代を救う』という国連憲章の決意を新たにする」とした宣言を採択しました。
　国連では安全保障理事会が２月２３日にも、国連創設７０周年にあたっての公開討論を開きました。
　（山崎伸治）
( ２０１５年１２月１５日，「赤旗」)

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〝必要なのは調和と尊重〟／トランプ発言に米市民ら抗議

　【ワシントン＝洞口昇幸】２０１６年米大統領選の野党・共和党指名争いトップの実業家ドナルド・トランプ氏が、イスラム教徒を米国に入れるなと発言したことに対し、１０日、ワシントンやニューヨークで抗議行動がありました。
　そのうちワシントンの行動は、建設中の「トランプホテル」前で、米女性反戦組織「コード・ピンク」が主催。参加者は「難民を受け入れよう」「イスラム教徒への嫌悪は米国的ではない」「信教の自由は米国の価値観だ」とのプラカードを手に、「必要なのは調和や尊重だ」と声を上げました。
　シリア人の女性反戦活動家ガーダ・マクダッドさんは、間違いを振りまくトランプ氏の発言を「米国民ははね返すと信じている」と訴えました。ユダヤ教徒で両親がポーランドからの移民だというジョン・ブラムさん（６５）は、「トランプ氏の発言は、祖父母が（ナチス・ドイツの）強制収容所に入れられていたことに通じるひどいものだ」と非難しました。
( ２０１５年１２月１２日，「赤旗」)

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絵本の世界にご招待／子どもに贈りたい８冊／安曇野ちひろ美術館副館長竹迫祐子さん

　クリスマスやお正月、子どもたちと絵本の世界を楽しみませんか？　プレゼントにもおすすめの本を、安曇野ちひろ美術館副館長の竹迫祐子さんに紹介してもらいました。

サンタクロースの秘密
　『ラップランドのサンタクロース図鑑～北欧コルヴァトゥントゥリからのおくりもの』は、西暦２０００年にそろって１５００歳を迎えたサンタ夫妻と、２人の生活をあらゆる面で支えているトントゥたちについて紹介するもの。世界中から届くサンタクロースに関するさまざまな質問に答えて､おもちゃ工房､印刷工房、日々の暮らしやクリスマス前の準備まで、詳細に解説しています。フィンランドの画家ペッカ・ヴォリが描き出す世界は､どれも興味津々です｡

プレゼントは誰から？
　『ひゃくおくまんのサンタクロース』は、なぜ、サンタに代わって近年は、お父さんやお母さんがクリスマスのプレゼントを用意するのかを語る絵本。サンタを信じつつ、同時に枕元にプレゼントを置いてくれるのはサンタじゃないことを知っている子どもたちに、説得力のある１冊です。

メキシコのクリスマス
　雪の降らない国のクリスマスを描いた『ポインセチアはまほうの花　メキシコのクリスマスのおはなし』。メキシコではクリスマスまでの９日間、夜、町のみんなが集まって歌いながら近所の家を訪ねて回るポサダがつづきます。けれど、家が貧しいフアニータは、神様への贈り物を用意できず、気持ちが沈みがち。ところが、クリスマスの夜、教会の片隅にいた彼女に、天使の像が声を掛けてきて…。メキシコの画家フリーダ・カーロを思わせる濃厚な描写で、欧米とは異なるクリスマス文化を伝えます。

国と国超えて平和築く
　第１次世界大戦中の１９１４年１２月２５日、イギリス・ドイツ両軍兵士たちが、ともに銃を置いて戦闘のない一夜を過ごした実話を描いた絵本が『世界で一番の贈りもの』。国と国の関係を超え、平和な関係を築くことができるかどうか、私たち一人ひとりに問われていることを考えさせます。

家族みんなで祝う春節
　お正月の絵本では、中国のお正月の風情を伝える『チュンチエ(春節）―中国のおしょうがつ―』があります｡春節で出稼ぎから帰ってきたお父さんと幼い娘の、穏やかで幸せなひとときを描いた絵本。父、母、娘それぞれの、互いを思いあう情感が伝わる秀作です。

おもちも楽じゃないよ
　日本の作品では、鬼才・かがくいひろしの『おもちのきもち』を。餅つきと称して頭をガンガンたたかれた揚げ句、のされたり、ちぎられたり。きな粉やあんこをまぶされ、極めつけは納豆でべたべた。おもちは楽ではないと、嘆くのは鏡餅。こんな生活はいやだと逃げ出したのはよかったけれど、おなかがすいて、ついにわが身を食べる羽目に。これが意外においしい。笑わずにはいられない、彼の変身ぶりに注目です。

戦争や貧困、ユーモア忘れず描く
　最後に、嵐のような１年が終わり、迎える新しい年は、この国の未来を分かつ年。この時期だからこそ、子どもたちに読んでほしい本があります。ドイツの作家、エーリヒ・ケストナーの作品です。
　『点子ちゃんとアントン』は、奇想天外、抱腹絶倒の主人公、点子ちゃんと貧しいアントンの物語。窓ぎわのトットちゃんを思わせるユニークな発想と、周囲をあっと驚かせる行動で、世の中の矛盾、貧富の差、おとなの不正や犯罪に、２人が愉快に立ち向かっていきます。
　ケストナーは、ナチス支配下で執筆を禁じられ、危険にさらされながらも、自由と民主主義の理想を曲げず、ユーモアを失わなかった作家でした。
　代表作は『どうぶつ会議』です。人間は戦争ばかりしていて、せっかくの国際会議も次々に決裂。これでは人間の子どもたちが気の毒だ、と立ち上がったのが、世界の動物たち。かくして動物の国際会議が開かれます。戦争を止めることができない人間に代わって、戦争のない平和な状況で子どもを育てようと、動物たちが世界中の子どもたちを連れて行ってしまいます。
　今の時代に示唆に富んだこの本が書かれたのは１９４７年。戦後処理で世界が混乱していた時代でした。
　親子で、家族で、一緒に本を読むひとときこそが平和そのもの。それを痛感する今年の終わりです。
(２０１５年１２月０６日，「赤旗」)

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おはようニュース問答／政治資金の問題が政治不信を強めている

　晴男　原発の再稼働や海外輸出推進への〝お礼〟みたいだな。
　秋平　２０１４年分の政治資金収支報告で判明した原発関連業界団体の会員企業から自民党側への７億円あまりの巨額献金だね。１２年の３億円から倍以上だ。
　晴男　国民に原発の危険を押し付けるのと引き換えの献金だ。

まるで政策買収
　秋平　国民に番号を付けて個人情報を国が一元管理し、情報流出への不安が強いマイナンバー制度のシステムを国から無競争で受注した大企業５社のうち４社からも、自民党の政治資金団体に２０１３年までの５年間で２億４０００万円超の献金があった。
　晴男　経団連が「政策評価」による献金呼びかけを再開し、自民党への企業・団体献金は前年比２億５０００万円も増えた。まるで政策買収だ。
　秋平　自民党は本部収入の７割を政党助成金に依存している。企業・団体献金も政党助成金も受け取らない共産党とは雲泥の差だ。
　晴男　自民党の国会議員にも重大な問題がある。３億円超の虚偽記載で元秘書２人が執行猶予付き有罪判決を受けた小渕優子元経産相の問題も記憶に新しい。昨年末の総選挙で〝みそぎ〟をすませたつもりだろうが、経産相辞任以外、責任はまともに取っていないよ。

支出にも問題が
　秋平　使途の問題もある。高木毅経産相が代表の党支部の収支報告に香典などを記載していたが、個人の支出を記載した「ミス」だとして訂正したが、１４年分でも５件で計１３万円の香典が発覚し、一部を訂正した。
　晴男　高木氏の政治資金管理団体の「赤飯」代約４０万円の問題もあるが、本人は先輩議員らへの「祝意」「感謝」を示したもので「問題ない」と強弁した。
　秋平　他の疑惑の説明責任も果たさず、閣僚として居座っているね。
　晴男　政治資金の問題が政治不信を強めている一方で、その政治不信に乗じて「既得権益打破」「破壊的改革」などを巧みに国民に売り込む勢力も存在する。極端な政治不信がファシズム＝全体主義への道を後押しするというのは戦前の教訓だ。政治資金のあり方をただすことは、日本政治の行方にかかわる重大かつ緊急な課題だね。
( ２０１５年１２月０４日，「赤旗」)

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映画／「杉原千畝　ＳＵＧＩＨＡＲＡ　ＣＨＩＵＮＥ」（日本）／気骨の人の半生、静かに

　第２次世界大戦下、外交官として赴任したリトアニアで、ナチスの迫害から逃れてきたユダヤ難民に、自らの判断で日本通過ビザを発給し、６０００人もの命を救った杉原千畝。近年テレビドラマや舞台化もされ、知られるようになったが、映画は千畝が政府の訓令に背いて独断でビザを発給したわけを波乱の半生をもとに描き出す。
　１９３９年、リトアニアのカウナスに領事館開設のため領事代理として赴任した杉原千畝（唐沢寿明)と妻の幸子(小雪)｡街には日本人の姿はなく、出迎えたのは、のち千畝の右腕となるペシュ（ボリス・シッツ）だ。
　映画は、語学堪能で各国に滞在経験もある千畝の、ペシュとの協力で身の危険を冒して集めた情報を日本に発信する有能な「諜報外交官」の一面も描いていく。
　独ソ不可侵条約締結、第２次世界大戦開戦の１９３９年、翌４０年には日独伊３国同盟締結の時代だ。ユダヤ難民がビザを求めて日本領事館に殺到した。苦悩の末に彼は決断した｡｢領事の権限でビザを出しましょう」と。千畝が、来る日も来る日もペンを走らせ印を押す姿が感動的だ。
　「頼ってくる人々を見捨てるわけにはいかない」という彼には難民の命の危機に対する切迫感があった。上からの指示に抵抗し「すべてを失うことになっても人間として正直に生きる」選択をした。お国のためにと命が軽んじられた時代に、人間の尊厳を守った気骨の人を映画は静かに描いた。監督チェリン・グラック。
　（うすいすみえ・映画ライター）
　５日から、全国東宝系で公開
( ２０１５年１２月０２日，「赤旗」)

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（１１月ヘッドライン）

ひと／作家小川洋子さん／長編小説『琥珀のまたたき』／心の自由は誰も奪えない

にちようシネマ館／黄金のアデーレ　名画の帰還／アメリカ・イギリス

野党共闘広げ戦争法廃止を／各地で街頭宣伝・集会／９団体呼びかけ、２５０人がつどう／和歌山市

旧秘密警察本部、難民施設に利用／ドイツ

朝の風／「観察」ということ

壁の中からホロコースト資料／「歴史の空白埋める助けに」／ハンガリー

波動／虐殺の〝リハーサル〟／藤久ミネ

戦争法に反対する若者・学者／民主主義問い立ち上がる

まど／条約に恥かかせないで

文化の話題／ノーベル賞作家スベトラーナ・アレクシエービッチ『チェルノブイリの祈り』に寄せて／白石草

ナチス収容所の父から７１年経て手紙／９２歳の息子「心が揺さぶられる」

スポーツ連盟創立５０周年シンポ／スポーツ権の向上を

ダブル選／ファシズム阻止／「橋下維新政治許さない」集会／小林節・白井聡両氏が提起／大阪

朝の風／空爆の犯罪性

おはようニュース問答／映画は僕らの知見を広げてくれるね

朝の風／テレジンの志村泉演奏会

第２８回東京国際映画祭／社会と向き合い世界の現実映す／中川洋吉

にちようシネマ館／ミケランジェロ・プロジェクト／アメリカ

試写室／ＥＴＶ特集障害者虐殺７０年目の真実／ＮＨＫＥテレ後１１・０／弱者への差別意識、戦争が助長

粘り強く力強く頑張ろう／はくい革新懇が総会／石川

ロマの碑に落書き／「和解への攻撃」と非難／ドイツ

１０月２５日ＮＨＫスペシャル「新・映像の世紀①第一次世界大戦」／２０世紀の前進面を軽視、ゆがめる／田代忠利

朝の風／戦後７０年、アウシュビッツ鎮魂

沖縄から安倍政権打倒／ヘリ基地反対協安次富氏が報告／フォーラム沖縄

あいち赤旗まつり／青年ジャック／池内議員参加／好き勝手する安倍政権倒したい

ナチスの強制収容所跡・マイダネク博物館副所長に聞く／人類の悲劇から学ぶために

辺野古めぐる安倍政権暴走／元海兵隊員の政治学者Ｃ・ダグラス・ラミスさんに聞く／「埋め立て承認違法消えぬ」

核兵器と共存できない／反核医師のつどい開く／名古屋

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（１１月本文）

ひと／作家小川洋子さん／長編小説『琥珀のまたたき』／心の自由は誰も奪えない

　長編小説『琥珀（こはく）のまたたき』（講談社）を出しました。心を病んだ母親に、家から出ることを禁じられた１１歳の姉と２人の弟たちの物語。３人は寄り添い支えあいながら成長し…。
　「お母さんは、一番下の娘を亡くしてからおかしくなり、残された子どもの愛し方を間違えちゃったんです。でも、子どもたちはけなげに生き、健全に育った。子どもを閉じ込めた母親を、世間が責めても被害者である子どもたちは許す。そういう親子の話になりました」
　閉ざされた世界で、感性を研ぎ澄まして生きる喜びを感じ取る子ども。濃密な生のきらめきを詩的に描きます。
　「私にとって小説は理屈で説明がつかない世界です。どうしてこの人がこんなことをするのか、私にも分からない。今回も、理屈じゃない世界に浸り無自覚に書きました」
　○　　○
　執筆中､｢映像が見えてくる」といいます。
　「一行目を書き始める時は神秘的で、潮が満ちるように、あ、書けるな、という時がくる。先が見通せず不安ですが、書け、と指令がくる感じです。先が分かって書いているわけではなく、一歩間違えば崩壊しそうな危うい感じのなか、頭の中で見えてくる『風景』を描写しています」
　「頼まれなくても書くのが作家」だと。
　「小説は、すべてが題材になりうる、何でも収められる入れ物のようです。そんな奥深さがあるから、書き続けてしまう。行けども行けども満足できず、しんどいけれど喜びでもあって、次を書きたくなります」
　○　　○
　『アンネの日記』が愛読書です。１５歳でナチスに殺された少女の言葉が、「私の人生に食い込んでくる」と。
　「どんな暴力的な抑圧を受けても、子どもの心の中の自由は誰にも奪えないし、子どもは成長する。アンネ・フランクは、それを実証してみせました。今回の私の小説も、そうした抑圧のなかの子どもの『自由』や『成長』と重なる部分があると思う。不自由であっても、それを補う力が人間にはあるのだと」
　２０年前、初めてアウシュビッツ収容所跡地を訪問し、５年前にも再訪。アンネの家族をかくまったミープさんをオランダに訪ねたこともあります。
　「ミープさんに会って、この人の目はアンネを見たのだ、と。アンネの悲劇は遠い話ではなく、自分につながることだと実感しました。『私はヒーローじゃない。人間として当たり前のことをしただけ』とおっしゃって。尊い使命感を感じました。作家には、一生かけて取り組むテーマがあると思う。私にとっては『アンネの日記』。私のどんな作品にも、根底にはホロコースト（大虐殺）文学があると自覚しています」
　金子徹記者

おがわ・ようこ＝１９６２年岡山県生まれ。『妊娠カレンダー』で芥川賞、『博士の愛した数式』で読売文学賞、本屋大賞、『ブラフマンの埋葬』で泉鏡花文学賞、『ミーナの行進』で谷崎潤一郎賞、『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞。芦屋「九条の会」呼びかけ人
(２０１５年１１月２９日，「赤旗」)

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にちようシネマ館／黄金のアデーレ　名画の帰還／アメリカ・イギリス

　クリムト１９０７年製作の名画返還裁判をサイモン・カーティス監督が描きました。
　１９９９年、米国在住のマリア(ヘレン・ミレン)はオーストリアに行き、伯母アデーレの肖像画の返還審理を政府に求めます。審理は却下。１年後マリアは弁護士ランドル(ライアン・レイノルズ)と米国裁判所で故郷の政府に対して返還訴訟を起こしました。
　過去の記憶を忘れたくないというマリアの姿勢に胸打たれます。１９３８年にユダヤ人マリアは夫とナチス支配下のウィーンから脱出。家族も財産もナチスに奪われました。ランドルも作曲家の祖父を強制収容所で失っています。絵の返還は人間の誇りを取り戻すため。裁判は６年続きはらはらさせられます。マリアは｢アデーレ｣の返還とともにユダヤ人迫害という歴史事実への謝罪を政府に要求しました。戦争は終わっていないことを痛感させます。
　（石）
(２０１５年１１月２９日，「赤旗」)

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野党共闘広げ戦争法廃止を／各地で街頭宣伝・集会／９団体呼びかけ、２５０人がつどう／和歌山市

戦争法危険知らせる
　和歌山市の和歌山城西の丸広場で２８日、県内の９団体が呼びかけた「憲法違反の安保法制を許さない」集会が行われ、２５０人が参加しました。
　９条ネットわかやまの歌舞さんが司会をし、６人がスピーチ。民主党県連の永野裕久副幹事長につづき、日本共産党の下角力（しもかど・つとむ）県委員長が「戦争法廃止の政府実現へ、戦争法の危険を知らせる２０００万人署名に全力で取り組む」と語りました。
　憲法９条を守る和歌山弁護士の会の豊田泰史共同代表は「黙って見過ごせばナチスがワイマール憲法を葬った二の舞いになる」と警鐘を鳴らし、若者でつくるＷＡＶＥｓの橋本大地代表は「市民レベルの行動で、民主党、共産党の後押しをして参院選で勝つ流れをつくろう」と呼びかけ。安保関連法に反対するママの会の多田寿江さんは、幼い３人の子と舞台に立ち「国会では絶句するような光景が繰り広げられた。そんなおとなが決めた法律で、なぜ子どもの未来が脅かされねばならないのか」と訴えました。
　集会後、ＪＲ和歌山駅前まで行進しました。
( ２０１５年１１月２９日，「赤旗」)

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旧秘密警察本部、難民施設に利用／ドイツ

　【ベルリン＝ＡＦＰ時事】ドイツ紙ベルリナー・ツァイトゥングによると、同国政府は難民の一時収容施設として、ベルリンの旧東独秘密警察（シュタージ）本部の利用を開始しました。
　シュタージの対外情報機関が使っていた建物には２０日から、シリアなどからの難民申請者約５００人が滞在。最大９００人を収容します。
　同機関は東独の伝説的な情報活動指導者マルクス・ウォルフが１９５８年から３０年近くにわたって率いました。西側情報機関が長年、写真すら入手できなかったことから「顔のない男」と呼ばれたウォルフは、西独に多数のスパイを潜入させました。
　１０月には、ナチスが整備し、冷戦時代に「ベルリン大空輸」の舞台となった旧テンペルホーフ空港が一時収容施設に姿を変えています。
( ２０１５年１１月２６日，「赤旗」)

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朝の風／「観察」ということ

　『日本人は民主主義を捨てたがっているのか？』『熱狂なきファシズム』などの著書を持つ映画監督の想田和弘さん。先日「赤旗」日曜版で「国民連合政府」への期待を語っていた。
　近著の『カメラを持て、町へ出よう』には、その「観察映画」の手法が書かれていて興味深い。撮影した映画について、「とにかく目の前の現実をよく観る、よく聴く。で、今気づいたことをどう画的に翻訳するか？」と語っているが、それは「こういう画を撮ろう」と初めに決めておかない点で、予定調和のドキュメンタリーとは異なると説明されている。
　「観察映画」といっても客観的ではなく、主観的だというのは、それは映画を撮ろうとする時点で、すでに「作為」があるからだ。しかし、撮る側の「作為」が前面に出れば、予想外の事態が起こって、現実に裏切られることになってしまう。
　起きていることをしっかり観て聴いて、自分の感情を交えないで受け入れ、気づいていくことが観察という行為だという。
　これは映画の撮影という芸術創造の方法論にとどまらない。現実をしっかりとらえてこそ、そこから発見することができる。そこに「民主主義」とは何かを問おうとする想田さんの「作為」が発揮されていることも忘れてはならない。(筑)
( ２０１５年１１月２４日，「赤旗」)

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壁の中からホロコースト資料／「歴史の空白埋める助けに」／ハンガリー

　【ブダペスト＝ＡＦＰ時事】ハンガリーの首都ブダペストで、改装中のアパートの壁から膨大な量のホロコースト（ユダヤ人大虐殺）資料が発見されました。ユダヤ人をナチス・ドイツの絶滅収容所に送る目的で実施した１９４４年の調査の資料で、第２次大戦中に破棄されたとみられていました。
　見つかった文書の重さは計６１㌔。住民の名前やユダヤ人かどうかのほか、隅にはキリスト教徒とユダヤ人の合計人数が記されています。住人によると、８月に作業員が工具を壁の割れ目に差し込んだ際、紙を発見。「隣室の壁紙を突き破ったかと思った」が、よく見ると手書きの文字が書かれていました。
　資料の寄贈を受けたブダペスト公文書館は「戦時中の配給紙は質が悪く、中世の書類より色あせや腐敗がひどいのに」とほぼ無傷の状態の文書に驚嘆。「内容、量ともに前例のない発見。ホロコーストの歴史の大きな空白を埋める助けになるだろう」と歓迎しました。
( ２０１５年１１月２４日，「赤旗」)

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波動／虐殺の〝リハーサル〟／藤久ミネ

　１１月７日放送のＥＴＶ特集「それはホロコーストの〝リハーサル〟だった～障害者虐殺７０年目の真実」（ＮＨＫ）というタイトルを見て驚いた。アウシュビッツ収容所に代表されるナチスによるユダヤ人大虐殺の前に、リハーサルつまり下稽古があったとは一体どういうことか。
　番組で教えられたのは、２０世紀初頭、ダーウィンの進化論を社会現象に応用して、優勝劣敗というか、適者生存の主張が社会的に拡がっていた、ということだ。ヒトラーの政界登場は１９３３年だが、それ以前からドイツでは、治る見込みのない精神病者やパーキンソン病、遺伝性のある身体障害者を排除する断種法などのいわゆる〝優生思想〟が医学界で実行されつつあったらしい。テクノロジーの発達もこれに力を貸して、シャワー室のようなタイル張りの部屋の壁にガス管をとりつけ、一挙に大勢の患者を処分する方法がすでに採用されていた。病院の煙突からたち上がる黒い煙とその匂いは、当然、人々に疑惑をもたせていたようだが、この前触れを止める人はいなかった。５年前、精神病医学界が死への加担を初めて謝罪したという。今秋には学会報告書を公開した。ホロコーストで失われたユダヤ人は６００万人、ロマ族も５０万人の生命が失われている。
　戦後７０年の今年、ＮＨＫＥテレの「ハートネットＴＶ」だけが、日本での同様な弱者排斥の問題をとり上げた。たとえば「精神障害者の戦後～病院か地域か」（８月１１日放送）。ドイツのような大掛かりなものではないが、敗戦まぎわ伊豆大島を要塞化するために、精神病院の患者を島から追い出し、一部を標高１３００㍍の清里に送った。寒さに加えてひどい食糧難のため、１年のうちに１０人が死亡したという惨事も、ようやく７０年経って初めて報道されたのである。
　こうした差別や弱者への虐待の問題は、もちろん日常的にも存在する。しかし戦争は、それを助長し、強調する。抹殺された弱者への言葉が、番組ナレーターの大竹しのぶの朗読によって、深く心に残った。「あなたはナチスの言うなりになった協力者によって殺され、家族によっても黙殺された。私はあなたを忘れない」
　（ふじひさ・みね　放送評論家）
( ２０１５年１１月２３日，「赤旗」)

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戦争法に反対する若者・学者／民主主義問い立ち上がる

　安倍政権が強行した戦争法への反対の声がやみません。法案審議中、国会前や街頭で反対を訴え続けた若者や学者たちの思いを集めた本が出版されています。

個人として発言
　戦争法阻止に立ち上がったＳＥＡＬＤｓ（シールズ＝自由と民主主義のための学生緊急行動）が編著者となった本が２冊出ています。一つは明治学院大学教授の高橋源一郎氏との共著『民主主義ってなんだ？』（河出書房新社・１２００円）です。
　高橋氏とＳＥＡＬＤｓの牛田悦正氏、奥田愛基氏、芝田万奈氏が、ＳＥＡＬＤｓ誕生までのいきさつや民主主義とは何かを語りあいます。奥田氏は２０１２年の原発反対デモに影響を受け、自ら学び始めたことが、秘密保護法反対や戦争法反対につながったといいます。最初はもっと勉強してから参加するべきだとデモに消極的だったという牛田氏は、学ぶ中で「このまま何も言わなかったら変わらない」と考えを変え、行動に立ち上がった経緯を語ります。
　民主主義とは「色んな人がいる社会の中でどうやって生きていくか、個人として引き受けて、考えたり、発言したりし続けること」（奥田氏）であり、「ＳＥＡＬＤｓがその個人として話しをできる場をつくってる」ことが「民主主義のかたちかもしれない」（芝田氏）といいます。
　もう一つは『民主主義ってこれだ！』（大月書店・１５００円）です。ＳＥＡＬＤｓによる戦争法反対の運動の歩みを写真やスピーチの記録から振り返り、現在の思いをつづります。
　デモや国会前でのスピーチも掲載され、メンバー一人ひとりが感じている経済的徴兵制など将来への危機感や、安倍政権の強引な手法と反対の声に耳を傾けない姿勢への憤りが、彼ら自身の言葉を通じて生き生きと伝えられます。

運動続ける決意
　「何もまだ終わっていない。これはお別れの挨拶でもないし、始まりの挨拶でもない。なぜなら、ある局面が終わり、次の局面がもう始まっているからだ」。奥田氏は戦争法成立後も運動を続ける決意を述べています。
　『「開戦前夜」のファシズムに抗して』（かもがわ出版・２０００円）は、白井聡、想田和弘、森達也、山口二郎、木村朗、熊野直樹の各氏ら学者・文化人が、安倍政権の危険性を、戦後史やファシズム研究などから明らかにします。
　浜矩子・柳澤協二・内橋克人著『民主主義をあきらめない』（岩波ブックレット・５２０円）は、鎌倉・九条の会での講演をもとにしたものです。「強い経済で強い日本を取り戻す」と唱えるアベノミクスと改憲策動の関係や、集団的自衛権行使の違憲性、安倍政権の反民主主義的な手法などを批判しています。
　（米重知聡）
( ２０１５年１１月２２日，「赤旗」)

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まど／条約に恥かかせないで

　「世話する家族が大変なので、障害のある子どもの出産を防げるものなら防いだ方がいい」。茨城県教育委員、長谷川智恵子氏のこの発言に怒りが抑えられません。特別支援学校に通う子どもが増える中、「大変な予算だろう」とも述べています。翌日、発言を撤回しましたが、決して許されるものではありません。
　○…長谷川氏の発言は、Ｅテレの番組「それはホロコーストの〝リハーサル〟だった」の内容と重なります。ナチス・ドイツ下で精神科医は、ユダヤ人大虐殺に先駆けて、２０万もの精神障害や知的障害のある人たちをガス室で殺したのです。背景には「障害者は不要」とする〝優生思想〟が。番組では、障害者や患者にかける国の予算で、健康な人の家がたくさん建てられるとの発言も紹介されました。
　○…日本政府は昨年、障害者権利条約を批准しました。同条約は、障害の有無にかかわらず、誰もが安心して地域でその人らしく暮らせる社会を描いています。家族の中に障害者がいても、その「家族が大変」であってはならない社会です。
　○…番組内でドイツを訪問した日本障害者協議会代表の藤井克徳さんの障害福祉施策をはじめ社会保障の充実を訴える言葉が重く響きます。「障害者権利条約に恥をかかせないで」
　（亜）
( ２０１５年１１月２２日，「赤旗」)

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文化の話題／ノーベル賞作家スベトラーナ・アレクシエービッチ『チェルノブイリの祈り』に寄せて／白石草

もう一つの戦争、原発事故／見落とされた歴史の目撃者として
　私はいま、ある原稿を抱えている。２０１２年初頭に依頼を受け、すでに３年が経過しているが、原稿用紙はまだ５分の１も埋まっていない。福島原発事故をテーマにした本だ。
　事故５年目にあたる来年の春には出さなければならない。そんな焦りのさなか、ノーベル賞のニュースが飛び込んできた。『チェルノブイリの祈り』を書いたスベトラーナ・アレクシエービッチが文学賞を受賞したというのだ。
　■　□
　ベラルーシ出身の彼女は、第２次世界大戦直後の１９４８年生まれ。ナチスとの戦争は知らない。
　３８歳の時にチェルノブイリ原発事故が起き、４８歳の時に『チェルノブイリの祈り』を出版した。この本では、彼女は自らも証言者のひとりとなり、こう記している。
　「以前何冊か本を書きましたが、私は他人の苦悩をじっとながめるだけでした。今後は私自身もみなと同じく目撃者です。私のくらしは事故の一部なのです。私はここに住んでいる」
　彼女の文章は詩のように美しく、まるで、チェルノブイリの大地に立ち、人々の息づかいを、目の前で聞いているような錯覚に陥る。描かれているのは、チェルノブイリ人たちの暮らし、壮大な大地、そして見落とされた歴史である。
　印象的なのは、冒頭と最後で多くの紙幅を割いている事故処理作業員（リクビダートル）の妻たちの言葉だ。二人ともまだ年齢は若く、被ばく障害によって、日々身体が朽ちていく夫を献身的に看病する。強烈な愛情、強い信念によって。しかし、夫は死に、ひとり残される。
　北海道で生まれ育った私の母はロシア聖教徒の家庭に育ち、日本では珍しいイコン（聖像画）画家をしている。私自身もイコンに囲まれて育ち、小さい頃は、教会で聖パンをもらうのが楽しみだった。物語には、そんなロシア正教の雰囲気があふれている。
　■　□
　小さな教会との関係を結びながら、自然と暮らしてきた人々。登場する一人ひとりの証言を重ね合わせると、そこに浮かんでくるのは、国家への忠誠や栄光と、個人の尊厳や愛との強烈な対比だ。勇気ある事故処理作業員はいくつもの勲章と特典を得、称賛を浴びながら、次々に命を落とす。多くの被災者が心や身体を病み、口を閉ざす。子どもたちは外で自由に遊べない。戦争とは異なる、もう一つの戦争・チェルノブイリ事故を浮き彫りにする。
　「連中が心配しているのは住民のことじゃない、政府のことです。政府の国であって、住民の国じゃないのです。国家が最優先され、人命の価値はゼロに等しいのです」
　事故直後から、住民にヨウ素剤を与えて、避難をさせようと努力しながらも挫折した、核エネルギー研究所の元所長の言葉だ。ページをめくりながら、私の脳裏には、セイタカアワダチソウが黄色く夕陽に映える国道６号線沿いの風景が浮かんだ。向こうにはうずたかく積まれた黒いフレコンパックの山。削られた田畑。
　この本には「未来の物語」という副題がつけられている。アレクシエービッチは、「人々は最初に体験したのです」とつづる。これは、原発事故が終わりのない惨事であることを告げているのか。あるいは、フクシマを予言していたのか。
　さて、私も原稿を書かねばならない。しかし、『チェルノブイリの祈り』を前に筆は全く進まない。私もまた事故の目撃者であり、私のくらしも事故の一部であると反芻する。

　しらいし・はじめ　インターネットメディア・アワープラネットＴＶ代表。著書に『メディアをつくる』『ルポ　チェルノブイリ２８年目の子どもたち』ほか。放送ウーマン賞、科学ジャーナリスト大賞など受賞
( ２０１５年１１月２０日，「赤旗」)

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ナチス収容所の父から７１年経て手紙／９２歳の息子「心が揺さぶられる」

　【パリ＝時事】第２次大戦中、ナチス・ドイツの強制収容所に送られたオランダ人男性が妻子らに宛てた手紙が見つかり、７１年を経て家族に届けられました。既に高齢の子どもらは「心が揺さぶられる」と抑え切れない感動を語りました。
　オランダのメディアなどによると、手紙はオランダで反ナチス活動をしていたペーター・ビルさんが１９４４年に収容所に移送される際に書きました。「家に帰りたい」と吐露し、家族には「信仰を強く持てば、どんな困難も乗り越えられる。心の中で皆を抱き締めるよ」とつづりました。
　手紙は収容所で没収され、ペーターさんは家族の元に戻れないまま死亡しました。関係者が今年、ドイツの文書照会システムを通じて手紙や写真を発見しました。息子のベアトさん（９２）は「気持ちが落ち着くまで時間がかかる。今は何度も読み返したい」と語りました。
( ２０１５年１１月１９日，「赤旗」)

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スポーツ連盟創立５０周年シンポ／スポーツ権の向上を

　新日本スポーツ連盟創立５０周年を記念して７日に開かれた国際シンポジウムで報告したパネリストの発言要旨を紹介します。

要求実現、誠実に努力／新日本スポーツ連盟会長永井博さん
　今回のシンポは「豊かで平和な生活のために―スポーツ運動が求められているもの」がテーマです。私たちはこの５０年、①国民のスポーツ要求実現のため誠実に活動し②スポーツ分野の反核平和運動の創造と国際連帯に取り組んできました。
　「いつでも、どこでも、だれでもスポーツを」を合言葉に施設などの条件整備に力を入れてきました。「スポーツきみが主人公」と、日常活動の向上にも取り組みました。とくに卓球のペアマッチ方式は、より多くの試合をしたいという愛好者の思いにかみ合い、加盟が急増し、大会方式は連盟外にも広がっています。
　２０１１年施行の「スポーツ基本法」はスポーツが「すべての人々の権利」と明記され、連盟の運動が結実したものです。
　同時に日本社会は厳しさを増し、経済格差が「スポーツ格差」につながっています。「年間でスポーツを行った人」は６３％と２０年で１３ポイントも減少し、施設も全国で毎年１千カ所も減っています。連盟の歴史と経験を踏まえ、新たな可能性を切り開くことが求められています。
　反核平和マラソンは１９８２年に始まりました。その２年前、モスクワ五輪で国際オリンピック委員会・キラニン会長（当時）が「ホロコースト（大虐殺）が来る前に世界のアスリートは、平和に向かって手を結ぼう」と呼びかけたことがきっかけです。今夏には初めて福島から長崎まで走り、近年は韓国やフランスなど国際交流も進んでいます。「スポーツは平和とともに」が地球規模に広がることを願うものです。

「人権」と近づき一つに／韓国体育市民連帯執行委員長ジョン・ヨンチョルさん
　スポーツを介して私たちが達成できる最高の価値が平和です。これはスポーツが、人類と世界に与える最も大きな贈り物です。同時にここにたどり着くために解決すべきものが人権です。
　スポーツと人権は似ています。これらはどこにでもなくてはならず、その両方が発展してこそ社会の発展があります。
　スポーツと人権は相反する属性もあります。スポーツは一人の勝者を決めることを重視し、人権はだれもが勝つように、公平感を求めます。ですからスポーツと人権の出合いは、いつもぎくしゃく感があります。
　スポーツを人権の領域に組み込むには、これが人間として当然享受すべき権利と理解することが必要です。それができれば、スポーツと人権は近づき一つになります。
　残念ながら韓国のスポーツは少数のエリートのためのもので、一般の人の参加は少ない。すそ野は日本と比べても広くありません。
　２０１８年の平昌（ピョンチャン）冬季五輪にも地域の人々の声がどれだけ反映されているのか疑問です。国際オリンピック委員会は肥大化した五輪をやめ、持続可能な五輪を打ち出しました。しかし、平昌は人口４万人で財政的な負担は重すぎると感じます。本当に持続可能な五輪ができるか、私は悲観的にならざるを得ません。私たちは、いまの五輪のあり方だけでなく、スポーツをめぐるさまざまな問題で行動を起こしていかなくてはいけないと思います。

韓国体育市民連帯
　スポーツを正しく発展させることを目的に２００２年、韓国で初めて結成されたスポーツ分野の市民団体。会員は体育教師・研究者、スポーツ指導者、現役選手、法曹人、医師、主婦など。選手への暴力や学生選手の学習権保障など選手の人権を守る運動に取り組んでいます。

安住せず変革を重視／ＦＳＧＴ事務局長エマニュエル・ボネ・ウラルディさん
　私たちは現状に安住せず、〝記憶〟に学び続けることを重視しています。フランスではファシズムからの解放を記念して５月８日に「平和のためのレース」が行われます。自由なスポーツに誇りを持ち、自由のために死んでいった草の根のスポーツの創始者に敬意を表すためでもあります。
　スポーツは内容が適切であれば、人間の心身を毎日の社会的な強制から自由にできます。
　スポーツをする権利は、たたかって獲得しなければなりません。緊縮政策で週３５時間労働などの労働条件が悪化し、権利が享受できていません。４０時間も働いて、どうしてスポーツができるのか。
　私たちは地方自治体にクラブを認めさせ、ともにスポーツ政策をつくるよう求めています。政策がある自治体があっても、スポーツ愛好者から意見を聞くことはほとんどありません。私たちは愛好者の要求を取り入れるように働きかけています。
　ＦＳＧＴはスポーツのイノベーション（革新・変革）を重視しています。これは束縛された状態から人間が必要とされていることに適合させることです。
　サッカーは暴力がよく起きます。そこで私たちは選手自身が審判をするサッカーをしています。勝ち負けも大切ですが、自分を向上させ、相手をパートナーとして見ることも大事だと考えているからです。来年はフランスで開かれる欧州選手権にあわせて大会を開き、私たちのサッカーをアピールします。

フランス労働者スポーツ・体操連盟（ＦＳＧＴ）
　フランスで１９３４年１２月に創立された草の根のスポーツを推進する自主的なスポーツ団体で、約４３００のクラブが加盟し、会員数は約２７万人。フランスオリンピック委員会の構成団体にもなっています。

憲章実現する五輪を／新日本スポーツ連盟付属スポーツ科学研究所事務局長青沼裕之さん
　スポーツ連盟は創立宣言で「スポーツは万人の権利である」とうたい基本的人権としてのスポーツ権の実現を掲げました。
　１９７０年代ごろは日本体育協会に加盟していないとスポーツ団体と認めない行政の非民主的な体質がありました。また、ドーピング（禁止薬物使用）や暴力問題などスポーツの文化的荒廃も社会問題となりました。
　私たちはこうした問題とたたかう中でスポーツ権を、国家からの権力介入を受けずにスポーツができ、スポーツが人々の文化的生活のために保障されるものと捉えてきました。スポーツと人権は密接不可分の関係にあるといえます。
　スポーツ権を明記した基本法は、憲法の精神を生かすための重要な位置にある法律です。ただ、条文からは国策としての競技力向上には前向きですが、国や自治体に財政措置の必要な指導者養成や施設整備には及び腰の姿勢が読み取れます。
　２０２０年に東京で五輪・パラリンピックが開かれます。私たちは市民団体とともに、都民施設をつぶし、巨額の建設費用をかける会場計画を批判し、既存施設を使うよう対案を出しました。国際オリンピック委員会（ＩＯＣ）とも面談し、ＩＯＣの環境指針や改革提言を尊重するよう働きかけた結果、計画は大幅に見直されました。
　五輪は首都東京改造計画や日本経済の成長戦略のための一過性のイベントではなく、五輪憲章の理念を実現し、国民のスポーツ振興につながるものにする必要があります。
( ２０１５年１１月１２日，「赤旗」)

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ダブル選／ファシズム阻止／「橋下維新政治許さない」集会／小林節・白井聡両氏が提起／大阪

　大阪府知事・大阪市長ダブル選の２２日投票へむけ「橋下維新政治を許さない」と市民団体「オール関西　平和と共生」が９日、大阪市内で開いた市民集会で、小林節慶応大名誉教授（憲法学）、白井聡京都精華大専任講師（政治学）が問題提起しました。
　「憲法をコケにし、主権者国民をバカにする政治家は退場させるしかない」と話し始めた小林氏は、「大阪の維新は話に一貫性がない。政治家という権力にかかわる人が話に一貫性がないというのは一番恐ろしい」と批判。橋下維新が住民投票で否決された「大阪都」構想を再び持ち出していることに触れ、「政治というのは個人では持ち得ない強大な権力を持ち、国民の中で利害の調整をして、全体の最大多数・最大幸福を進めるわざ。その中心に、私利私欲と、話がつながらなくても平気だというセンスの人たちが座っているのではこの国はあぶない」とのべ、大阪維新にここでとどめをさしてあげなければいけないと力説しました。
　白井氏は、「橋下氏（大阪市長）の政治はある種のファシズム。ファシズムとは、人間だれしもがある程度持つ、悪い気持ちの部分に依拠する政治だ」と指摘。「橋下さんや安倍さん（首相）に代表されるような政治は、人々のすさんだ心に依拠し、むしろそれをたきつけて権力を維持するという政治手法をとっている」とのべ、ファシズム的な傾向を食い止めなければいけないと強調しました。
　日本共産党の清水忠史衆院議員があいさつし「維新政治を終わらせ、府民のために民主主義を取り戻すたたかいに全力をあげる」と語りましました。
( ２０１５年１１月１１日，「赤旗」)

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朝の風／空爆の犯罪性

　『詩人会議』１２月号は全国１００詩誌の作品特集だ。それぞれの人生からしぼり出された声ばかりである。
　島峰信子「こうして新憲法誕生」は横浜大空襲のとき学童疎開の友と抱き合ってお寺の防空壕で耐えた時間を思い起こす。そういう体験は７０年たっても薄れない。どころか戦争参加をめざす安倍政治が逆に鮮烈に呼び覚ました。会員４９名で年４回発行の『京浜詩派』の作品である。
　ある作家が「昔と今は戦争も変わった。昔の戦争を引き合いに出しても……」とテレビで語っていた。たしかに武器は変わったし国家間の戦争は対テロ戦争になった。しかし人殺しに変わりない。犠牲になるのはいつも子どもや市民である。
　最近、筆者の叔父も横浜大空襲で死亡していたのを知った。昭和２０年５月２９日、西区楠木町２８番地付近。
　日本が始めた侵略の結果もたらされた米軍の空襲は、戦後政治の対米従属性が重なって、その残虐性が強く問われなかった。ナチスのスペイン空爆の残虐性に驚いたピカソは「ゲルニカ」を描いたが、先進国はみな空爆を採用したので、その地獄絵図はありふれた戦争風景になった。今の米軍の対テロ戦争も「間違えて」子どもや市民を殺す。空爆そのものの犯罪性をもっと強く問うべきだ｡
　（槐）
( ２０１５年１１月１１日，「赤旗」)

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おはようニュース問答／映画は僕らの知見を広げてくれるね

　ふゆみ　１０月に開催された東京国際映画祭はちょうど３０年目だったのね。何本か見た？
　のぼる　普段あまり上映されない国のをと思って、コンペに出品されたブラジルの「ニーゼ」を見たよ。

映画祭の面白さ
　ふゆみ　東京グランプリと最優秀女優賞を受賞した作品ね。実在した女医が主人公なんだって？
　のぼる　１９４０年代、リオデジャネイロ郊外の病院で精神病患者の治療に当たった。周囲の理解を得られず脅迫されたりしたこともあるけど、意志を貫いた人だったという。革命家でもあったとホベルト・ベリネール監督が語っていた。映画化まで１３年だって。
　ふゆみ　映画祭では、上映後の質疑応答などで、各国の監督や俳優たちのなまの声や映画化の苦労など、いろんな話が聞かれて面白いわね。
　のぼる　会場で、サインしてもらったり、握手したりという交流もあるよ。デンマークからコンペに出品された「地雷と少年兵」には、激しく胸をつかれた。第２次大戦中、ナチス・ドイツがデンマークの海岸に地雷を埋めて、戦後、捕らえられたドイツ軍の少年兵がその処理に当たらされた。これも史実をもとにした劇映画だ｡戦争には､｢勝ち」も「負け」もないことを思い知らされた。
　ふゆみ　あまり知らなかった国々の歴史や社会に目を開かれたりするのも、映画祭の醍醐味（だいごみ)だね｡全体では何本ぐらい上映されたの？
　のぼる　２０７本が上映されて､のべ参加者は､３１日までの１０日間で６万４千人近くにのぼる。
　ふゆみ　この映画祭に参加した作品たちが、今後どんな運命をたどるのか楽しみだね。

五感を刺激する
　のぼる　うん。普段から欧米中心ではなく、多彩な国の映画が上映されてほしい。五感を刺激する芸術で僕らの知見も広がるよね。
　ふゆみ　２１日からは、映画祭「東京フィルメックス」もあるわ。
　のぼる　１６回目を迎える。これは、アジアの映画に強く、国際映画祭での話題作などもいちはやく上映する。
　ふゆみ　アンジェイ・ワイダの６０年代の未公開作を含む「ポーランド映画祭」も１４日から始まるね。文化の秋を楽しみたいわ。
( ２０１５年１１月１１日，「赤旗」)

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朝の風／テレジンの志村泉演奏会

　３日付本欄「戦後７０年、アウシュビッツ鎮魂」に関連して一筆。チェコの首都プラハ北方６０㌔のテレジン市で５月１２日に志村泉さんの５回目のピアノ演奏会が催された。彼女は同市の名誉市民。
　志村さんは１９９７年に同市へ行き、大戦中の強制収容所内で奇跡とも言うべきユダヤ人の音楽活動があったことを知った。彼女は作曲家でピアノの名手ギデオン・クライン（１９１９～４４）が収容所内で作曲した唯一の曲の楽譜を見つけた。９９年５月、彼女は、収容者たちを励ます音楽活動の中心的存在だった彼をはじめ収容所で殺された作曲家の作品を同市で演奏した。壊れそうなピアノで。
　彼女の同行者たちはテレジンにピアノを贈る会を組織して募金活動を展開。翌年５月、同市で贈呈式が行われ、志村さんが献奏した。以降５年ごとに、彼女のリサイタルはプラハの春の音楽祭が催される５月に行われている。
　今年の志村さんは生命を絶たれた作曲家たちの一人ヴィクトル・ウルマンとクラウンのピアノ・ソナタを林光作品やスメタナのピアノ版「モルダウ」などと共に演奏した。「５年に１度ではなく、もっと頻繁に」の声があがったという。ナチスの悪業をもとに、われわれの歴史認識を問う活動である。
　（千）
( ２０１５年１１月１０日，「赤旗」)

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第２８回東京国際映画祭／社会と向き合い世界の現実映す／中川洋吉

　本年の東京国際映画祭は２８回目を迎え、１０月２２日から３１日まで六本木会場を中心に開催された。欧米人の参加が少ないのは例年と変わらないが、アジア人の姿が目立った。

因習とたたかうグランプリ作品
　今年の受賞作は、「ニーゼ」（東京グランプリ、最優秀女優賞）、「カランダールの雪」（最優秀監督賞）、「スリー・オブ・アス」（審査員特別賞）、「地雷と少年兵」（最優秀男優賞）など、納得のいくものであった。受賞作品は社会と向き合い、世界の現実を反映している。これは、実力派中堅監督中心の審査員たちの鋭い感性に裏打ちされたものといえよう。
　審査委員長はアメリカの監督ブライアン・シンガー、彼は旧大映出資の若手映画監督プロジェクトに通り、第１作「パブリック・アクセス」（１９９３年）でデビューし、その後世界へと羽ばたいた。ノルウェーのベント・ハーメル監督は現在「１００１グラム　ハカリ知れない愛のこと」が公開中。デンマークの女性監督、スサンネ・ビアはアフガン帰還兵を描いた「ある愛の風景」（２００４年）で注目された。
　「ニーゼ」は文句のない作品だ。ブラジルのホベルト・ベリネール監督の第２作目である。主人公のニーゼは実在のリオデジャネイロ郊外の病院に勤める女性精神科医であり、赴任先では、電気ショック療法を用い、精神病患者の人権を奪う治療が続けられている。これに対し、彼女は患者たちの個を尊重する治療を主張し、病院内で孤立する。しかし、無意識の中に人間性を見いだすユング理論により、今まで無気力であった患者たちに個性的な人間性を与え、改革に成功する。１９４０年代の社会の根深い因習と闘うニーゼの知性と実行力が見どころであり、ヒューマニズムに基づく骨太な人間ドラマとして見応え十分だ。

被害の国から問う加害責任
　審査員特別賞の「スリー・オブ・アス」は現在の社会的な問題、移民についての考察だ。ホメイニ政権下の活動家の、イラン脱出の物語である。イラン系フランス人監督ケイロンの父親の実話をベースとし、権力と闘う人間を、移民を通して描く現実的視点が鮮やかだ。注目すべきは最優秀男優賞「地雷と少年兵」である。第２次世界大戦後のデンマークで捕虜となったナチスの少年兵が、地雷除去の危険な使役に駆り出される、被害を受けた国から加害者責任を取り上げている。このテーマは、やはり表面化するには７０年の歳月が必要であったとの思いを強くする。
　日本からは「ＦＯＵＪＩＴＡ」（小栗康平監督）、「さようなら」（深田晃司監督）、「残穢［ザンエ］―住んではいけない部屋―」（中村義洋監督）の３作が出品された。小栗作品は戦前、パリ画壇の寵児であった藤田嗣治を描き、前半１時間はパリ、後半１時間は戦時中の日本と、２分割する構成で、二つの時代性が浮き彫りにされ、映像にも工夫がこらされ、レベルの高い作品である。本作が受賞の対象外となったことは残念だ。
　（なかがわ・ようきち　映画評論家）
( ２０１５年１１月１０日，「赤旗」)

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にちようシネマ館／ミケランジェロ・プロジェクト／アメリカ

　ナチスに略奪された美術品のうち５００万点を奪還した７人の男を描いた映画です。
　第２次世界大戦末期。ドイツ軍による美術品の略奪を知ったハーバード大学付属美術館館長のストークスは、その奪還のために大統領を説得。特殊部隊モニュメンツ・メンを結成します。メンバーは美術館学芸員、美術商、美術史学者などの専門家たち７名。フランスへ渡り、敗走するドイツ軍を追いますが…。
　銃を撃ったこともない中年男たちの奮闘はユーモラスですが、凄惨（せいさん）な戦場でメンバーに犠牲者も。彼らの友情が胸に迫ります。
　史実をもとにしており、奪還した美術品には、ファン・エイクの「ヘントの祭壇画」やミケランジェロの「聖母子像」などが含まれています。
　主演と監督他をジョージ・クルーニー。出演はマット・デイモン、ケイト・ブランシェットら豪華な配役。
　（伴）
(２０１５年１１月０８日，「赤旗」)

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試写室／ＥＴＶ特集障害者虐殺７０年目の真実／ＮＨＫＥテレ後１１・０／弱者への差別意識、戦争が助長

　６００万人以上のユダヤ人犠牲者を出したナチス・ドイツによるホロコースト（大虐殺）。しかしその前段に、いわば〝リハーサル〟として、約２０万人ものドイツ人の精神障害者や知的障害者、病人たちがガス室などで殺害された事実が近年明らかになりました。
　命を守るはずの医師たちが、いかにして自発的に殺人に関わっていったのか、ヒトラーの政策とどうつながっていたのか。日本障害者協議会代表の藤井克徳さんが、殺害現場の精神科病院や遺族を訪ね、実態に迫ります。
　叔母が「最終的医学措置」で殺されたと最近になって知った女性が、父親への不信感をつのらせ苦悩する姿は痛ましい。
　当時「障害者は金ばかりかかる。それが普通の人たちを苦しめる」の宣伝が行きわたり、自分の家族にさえ差別意識を持つようになったのです。藤井さんは「戦争がそれを助長した｣と指摘します｡
　しかし一人の司教があばいた殺害の実態が全国に知られ、国民感情を気にしたヒトラーは殺害中止命令を出します。どんな悪政も、国民が声を上げれば変えられるという希望も描かれています。
　（森保和史）
( ２０１５年１１月０７日，「赤旗」)

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粘り強く力強く頑張ろう／はくい革新懇が総会／石川

　石川県羽咋市の「はくい革新懇」は３日、市内で総会と記念講演会を開催しました。
　講演は、五十嵐正博金沢大学・神戸大学名誉教授が「憲法９条と集団的自衛権」と題して行いました。五十嵐氏は、安倍政権が強行した戦争法は「切れ目だらけの」違憲立法だと詳細に説明。「ヒトラーはナチスに全権委任を許す法律をつくって憲法と人権を破壊したが、安倍政権は憲法改正手続きを経ずに立法改憲と解釈改憲の同時並行で改正と同じ実態をつくった。ナチスよりももっとひどい」と批判しました。
　参加者は、講演会の前に「アベ政治を許さない」のポスターを掲げ抗議の意思を示しました。
　総会では、円山晃一郎代表世話人が「戦争法案が採決されたあと共産党がどんな方針を出すのか注目していた」と述べ、「戦争法廃止の国民連合政府の提案を歓迎している。立憲主義、民主主義を取り戻し、平和主義を守るため今こそ革新懇の本領を発揮する時。粘り強く力強く頑張ろう」と述べました。
　事務局から活動報告と運動方針の提起がされ、戦争法を廃止し、安倍自公政権を打倒するため「国民連合政府」の提案を積極的に支持し、戦争法廃止の２０００万人署名にとりくむことなどを確認しました。
(２０１５年１１月０６日，「赤旗」)

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ロマの碑に落書き／「和解への攻撃」と非難／ドイツ

　【ベルリン＝ＡＦＰ時事】ナチス・ドイツに虐殺された少数民族ロマを追悼するベルリン中心部の慰霊碑に、ナチスのシンボルマークのかぎ十字や「ガス室で殺せ」という言葉が落書きされ、当局が捜査に乗り出しました。
　２０１２年に設置された慰霊碑を管理する財団のウーウェ・ノイメルカー理事長は１０月２９日、「攻撃的な反ロマ行為」と非難。慰霊碑のための作曲を手掛け、ロマの権利を訴える活動家ロメオ・フランツ氏も「和解プロセスへの攻撃。大虐殺から７０年を経ても、われわれはドイツで日常的に疎外と差別を受けている」と語りました。
　ロマはユダヤ人同様に民族的に劣るとナチスに見なされ、組織的な迫害の対象となりました。１９３９～４５年に欧州全域で５０万人近いロマが殺害されたとみられています。
( ２０１５年１１月０５日，「赤旗」)

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１０月２５日ＮＨＫスペシャル「新・映像の世紀①第一次世界大戦」／２０世紀の前進面を軽視、ゆがめる／田代忠利

歴史的事実踏まえた番組作りを
　ＮＨＫが１０月２５日に放映した「新・映像の世紀」第１集「百年の悲劇はここから始まった　第一次世界大戦」は、「第一次世界大戦は２０世紀をおおう不幸の種子を世界にばらまいた」というナレーションで始まりました。新兵器、謀略、テロ、財力が威力を発揮し、そのため世界はいまも悲劇続きだという内容です。

映像の力を強調
　戦闘の壮絶さと被害の深刻さが当時の映像から伝わってきました。毒ガス兵器を開発したドイツのハーバー博士、イギリスの情報将校としてオスマン・トルコ打倒をアラブ人にけしかけ、裏切ったロレンス、ロシア革命を指導したレーニン、ドイツに国家予算２０年分の賠償をおしつけたアメリカの銀行家などの姿が映し出されました。何よりも国民の戦争動員に映画が役立つことを実感しました。
　番組は、この大戦は「あらゆる戦争を生み出す戦争」だったと結びました。イギリスの謀略が中東問題の根源であること、ドイツの巨額の賠償金がナチス台頭の背景にあったことはその通りです。今も戦争や抑圧は残っています。しかしそれは２０世紀の一面です。２０世紀は植民地支配が一掃され、国民主権が広がり、戦争の違法化が進んだ世紀でもありました。二つの世界大戦の惨禍を経てこれらへの志向が高まったのです。その端緒はロシアの十月革命（１９１７年）でした。

終戦の経緯無視
　番組は十月革命や終戦の経緯を無視しました。二月革命で誕生した臨時政府は戦争を継続しました。不満を抱いた国民にレーニンらは「平和と土地とパン」を訴え、政権につきました。この政権はドイツとの講和や民族自決を実行しました。これに対抗してウィルソン米大統領は民族自決の部分的承認など「１４カ条の平和原則」を発表しました。
　オーストリアの支配下にあった東欧の諸民族は独立運動を強め、戦争から離脱したロシアを見てドイツでも厭戦（えんせん）気分が広がりました。それを背景にドイツ、オーストリア両国は敗北し、帝政も崩壊したのです。なお毒ガス兵器禁止を国際政治で初めて提起したのはロシアでした。
　番組はレーニンを恐怖政治の創始者と描きましたが、それは一面的です。平和をえたロシアに米、英、仏、日本などは軍を侵攻させ、旧勢力を助けて政権打倒を図りました。干渉への対抗で政権は民間人に乱暴な措置もとりました。もちろん科学的社会主義の原則や国際的人権問題の到達点に照らせば、それは非常事態だからと正当化するわけにはゆかない問題点です。
　映像の力が大きいからこそ、歴史的事実をふまえた番組づくりが望まれます。
( ２０１５年１１月０４日，「赤旗」)

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朝の風／戦後７０年、アウシュビッツ鎮魂

　「戦後７０年、アウシュビッツ鎮魂」と題したコンサートが先月、京都の秋音楽祭の一環として開かれた。ドイツの強制収容所で殺されたユダヤ人の作品紹介に傾注してきたピアニストの田隅靖子さんを軸に、イスラエルの作曲家兼ピアニストのギリアード･ミショリ､フルーティストの大島義実、ヴァイオリニストのギオルギ・バブアゼの３氏が共演した。
　ブロッホの「ニーグン」や出演者ミショリの作品、内外の現代曲も交えたプログラムだが、圧巻はやはりエルヴィン・シュールホフの「フルート・ソナタ」と、ヴィクトール・ウルマンの「ヘブライ民謡による変奏曲とフーガ」の２曲だった。
　シュールホフは１９４２年、ヴュルツブルク強制収容所で病死した。フルート・ソナタは１９２０年代の作品で、ジャズの影響を受けた軽快な作風が印象的。だが、ナチスは彼の作品に「退廃音楽」のらく印を押した。
　ウルマンの作品は、１９４４年にテレジーン強制収容所で作曲したピアノ・ソナタ第７番の終楽章。ユダヤの民謡をテーマにした変奏曲。そこにバッハにくわえ、チェコのフス教徒のコラールが組み込まれ、壮大なフーガとなる。決然たる抵抗精神を示す楽想が胸に迫る。くしくも当日はウルマンの７１回目の命日だった。
　（弩）
( ２０１５年１１月０３日，「赤旗」)

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沖縄から安倍政権打倒／ヘリ基地反対協安次富氏が報告／フォーラム沖縄

　「第１４回『歴史認識と東アジアの平和』フォーラム沖縄会議」が１日、沖縄県宜野湾市で開かれ、ヘリ基地反対協議会の安次富（あしとみ）浩共同代表が「沖縄・辺野古のたたかい」と題して特別報告しました。安次富氏は、名護市辺野古の米軍新基地建設に反対する沖縄の非暴力の抵抗運動を紹介し「全国、国際世論に訴え、翁長雄志知事を支えるたたかいをつくっていきたい」と訴えました。
　同フォーラム沖縄会議は「戦後７０年、東アジアの平和を沖縄から考える」をテーマに、日本、中国、韓国の大学教授や研究者、学生、教育者、市民らが参加し、沖縄のたたかいから学び、議論しました。
　安次富氏は、「沖縄戦が基地問題の原点であり、戦後７０年、基地政策に苦しめられてきた。今後、そんなことがあってはならないと『オール沖縄』で大同団結した」と強調。また、法を悪用し、翁長知事の埋め立て承認取り消しの効力を止め、新基地建設を強行する安倍政権を「ファシズム政権だ」と批判し、「全国へ沖縄の思いを伝え、戦争法反対や脱原発などでたたかっている人たちと結びついて、安倍政権を打倒していく」と力を込めました。
　最後に安次富氏は「国際的視野を持って、東アジアの人々との共同体を沖縄の平和的発信でつくっていく努力をしたい」と述べ、会場から大きな拍手が送られました。
( ２０１５年１１月０３日，「赤旗」)

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あいち赤旗まつり／青年ジャック／池内議員参加／好き勝手する安倍政権倒したい

　１日に開かれた、あいち赤旗まつりで「ジャック・ザ・レッドフラッグ」が開かれ、愛知のほか東京、大阪、京都で安保法制反対、最低賃金アップなどを掲げて運動する青年７人と日本共産党の池内さおり衆院議員が参加しました。
　企画したのはアンチファシスト・ナゴヤのメンバー。「好き勝手やっている安倍政権を倒したい。若者にも、共産党にも、お互い知ってほしいと思って企画した」と話しました。
　司会を務めた、よこちんさんは「どうしても今の政治を変えなければいけない。路上で声を上げて行動する青年の声を聞いてほしい」と話しました。
　安保法制に反対する若手研究者・東海のメンバーは「安保法制が可決されたが、法律の専門家と協力して違憲訴訟や街頭で訴えていきたい。学者の立場でやれることをやっていく」。大阪で活動するＳＡＤＬ（民主主義と生活を守る有志）のフサエさんは「『路上はメディアだ』を合言葉に活動している。政治のハードルを下げていきたい」。ノンストップ京都の河本卓一郎さんは、デモの参加は気軽にできると述べ、「政治へのアレルギー反応を示す人は多いが、こっちが身構えると、相手も身構える。パーティーに誘うような感じで、日常の営みの中で誘い、どんどんデモを企画しよう」と呼びかけると、会場から拍手と「よし！」の声が上がりました。
　池内議員は、多くの人が、それぞれ直面した問題に声を上げたことが安倍政権を追い詰めているとし、「立憲主義という基盤を安倍政権は踏みにじった。安倍政権許せないの声をさらに広げてほしい。共産党も、野党共闘を必ず実現していきたい｣と語りました｡
　会場から「野党共闘を実現してほしい」「話をちゃんと聞いてくれる人を選んでいきたい」と声が上がりました。
( ２０１５年１１月０３日，「赤旗」)

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ナチスの強制収容所跡・マイダネク博物館副所長に聞く／人類の悲劇から学ぶために

〝ここで何があったか伝えなさい〟
　ナチスが第２次世界大戦中、ポーランド南部・ルブリンに作ったマイダネク強制収容所は、戦後、いち早く国立の博物館に生まれ変わりました。これまでに１０００万人が訪れています。同博物館副所長のグゼゴシュ・プレヴィクさんに聞きました。
　（聞き手　大内田わこ・ジャーナリスト、写真も）

　ルブリンは、首都ワルシャワから列車で３時間かかる田舎です。ここまで足を運び歴史を学ぼうという方々の存在を、私は素晴らしいと思っています。
　ナチスは、ソ連軍がここを解放する前年に、全設備を破壊して逃げようとしましたが、すべては壊せず、ガス室の一部や焼却炉などがそのまま残りました。収容者が入っていたバラックも、犠牲になった方々の靴やかばん、身につけていたものも、保存に注意しながら引き継いでいます。多くの人がそれを目にし、この場所を歩き、ナチスの強制収容所なるものを実感し強い衝撃を受けます。

施設ごと破壊し虐殺の跡を隠す
　このエリアには、ナチスがユダヤ人を殺すだけの目的で作った絶滅収容所があります。何十万人という人の処理が終わると、施設ごと破壊し跡形もなく解体。たくさんの死体が埋まった土地に松などを植えてわからなくした場所です。
　このナチスの「ラインハルト作戦」というユダヤ人大虐殺作戦では、１９４１年秋頃から４３年の秋にかけて、ルブリン北東部のソビブルで２５万人、南東部のベウジエツで６０万人がガス殺されたと言われています。こんなひどい歴史がいまだに広く知られていません。今やっと私たちはソビブルに博物館を建設中で、来年夏には完成の予定です。
　歴史は人生の師といいます。歴史が伝える事実をそっくり受け止め、その過程を知れば、同じような過ちをくり返さずにすみます。過去に目をつぶる態度は、人類が、憎しみや差別意識、民族間の争いなどの悲劇から学び築いてきたものを壊す道です。
　私はここで働くようになって２０年を超えます。その間には仕事に自信が持てなくなったこともありました。でも、来訪者の「来てよかった。自分も世界の平和のために行動したい」という感想に励まされてきました。世界では戦火が絶えません。人類が築いたものを壊すのが、どんなに簡単か。過去の記憶を学び、継承していく場所の存在がますます大事だと思います。

若者たちの知恵生かした教育
　私たちの博物館は、これからを生きる世代への教育を重視しています。人類が体験した歴史を語り継ぎたいのです。私が教育を担当していた時、学生ガイドシステムを作りました。若い人たちは、こんな過去の墓場のような場所でも、自らいろんな事を感じたり発見したりする能力を持っています。それを生かして、興味ある人にここで働いてもらうと、とてもいいのですね。訪問者とのやり取りでも、双方が率直に意見を言い合って理解を深め合えます。
　もう一つは、子どもたちへの教育プロジェクトです。ヨーロッパだけでなく、アメリカなどの学校と連携し、さまざまな教育プログラムを作り、学ぶものです。夏休みなどを利用して先生と若者のグループが世界各国からやって来ます。ここを訪れた学生が、今度は周りの仲間に呼びかけ、ボランティア組織を作り、参加したときの記録の展示会を開くなどしています。
　私たちの仕事は、過去の出来事を今日に伝える、一見やさしそうで難しい仕事です。時代に合わせて、伝える側の工夫が大事でしょう。ソビブルで起きた囚人蜂起の指導者の〝ここで何があったのかを伝えなさい〟という言葉を胸に、若い人たちの知恵をくみ上げていきたいと思っています。

マイダネク（正式名ルブリン）強制収容所
　ポーランドのルブリン市にあったナチス・ドイツの強制収容所。１９４４年７月、ナチスはここを放棄。同年秋、世界で初めて公開された。大量殺害のためのガス室を持ち、アウシュビッツ強制収容所に次ぐ規模。関係資料の大部分が消却され犠牲者数の推定は困難だが、博物館の推定では８万人、うち６万人がユダヤ人とされる。
( ２０１５年１１月０４日，「赤旗」)

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辺野古めぐる安倍政権暴走／元海兵隊員の政治学者Ｃ・ダグラス・ラミスさんに聞く／「埋め立て承認違法消えぬ」

　国が「停止」しても埋め立て承認違法の事実は消えない―。沖縄県の翁長雄志知事による新基地建設にかかわる「公有水面埋め立て承認取り消し」を執行停止し、さらに「取り消しを取り消す」処分を国が実施する「代執行」を閣議決定した安倍政権の暴走をこう指摘するのは沖縄県在住で、元海兵隊員の政治学者、Ｃ・ダグラス・ラミスさんです。
　（聞き手　山本眞直）

　私は毎週２回、米軍キャンプ・シュワブのゲート前での座り込みに参加しています。沖縄県民に寄り添い、「新基地ノー」の思いを内外に発信しています。
　政府には確かにいろんな力があります。しかし、事実までを変えられる力はありません。

瑕疵との結論
　翁長県知事は弁護士や自然科学者などの専門家による「第三者委員会」を設置し、半年間かけての調査で、仲井真弘多前知事の「公有水面埋め立て承認」について調べ、その結果、瑕疵（かし）があるとの結論により、「承認」を取り消しました。
　政府は、瑕疵はないというだけ。これはかつてガリレオが誤りを指摘した地球を中心に太陽が回っているとしたカソリック教会のいわゆる「天動説」と同じこと。当時のローマ法王は安倍首相よりも権威があったが、太陽は地球に従わなかった。政府が「瑕疵がない」からといっても瑕疵はなくならない。

政府縛る憲法
　なぜなら政府は大きなうそをついているからです。
　沖縄県の第三者委員会は二つの瑕疵を指摘しています。その一つが「埋め立てによる自然環境への影響」です。
　政府は自然への影響がないとしたが、これほどの大うそはない。１０㌧ダンプカー３５０万台、東京ドームの１７個分の土砂で大浦湾を埋め立てても、美しいサンゴ礁やジュゴンへの影響は少ない、環境破壊はない、と。これはヒトラーが「うそは大きければ大きいほど人を信じさせる」としたファシズムの論理をほうふつとさせます。これが瑕疵の一番の中心問題です。
　安倍政権のこうした暴走に翁長県知事と県民が抱える痛切な思いがあります。「戦後７０年、沖縄の県民が背負わされた基地負担、沖縄のあり方を自ら決めるという基本的人権、民主主義を否定するものだ」と。
　平和と民主主義を守るよう政府に対して命令しているのが日本の憲法。しかし辺野古をめぐる安倍政権の姿勢は、沖縄県民は国に従え、との態度だ。これは自民党の憲法改正草案の立場です。ここにあるのは憲法に縛られる政府が、国民に命令するという逆立ちした姿です。
( ２０１５年１１月０１日，「赤旗」)

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核兵器と共存できない／反核医師のつどい開く／名古屋

　核戦争に反対する医師の会は３１日、名古屋市内で「反核医師のつどいｉｎ愛知」を開き、医療関係者や医学生、市民ら２１３人が核兵器廃絶へ交流しました。今回で２６回目、２日間の日程です。
　同実行委員長の浅野晴義氏は、米国のビキニ水爆実験で死の灰を浴びた第五福竜丸の機関長を診察した経験にふれながら「人間が生きていく上で核兵器とは共存できない。廃絶の運動を世界に広げよう」とあいさつしました。
　前広島市長の秋葉忠利氏が、核なき世界実現をテーマに講演。「自国の安全保障のためといって、ナチス・ドイツのように強制収容所が必要だという世界の政治家はいないが、核兵器が必要という人はごまんといる」とのべ、その違いは、ホロコーストが学問化されているからだとしました。核兵器の問題を学問の形で伝える努力の必要性を強調しました。
　安倍首相の「戦後７０年談話」の中で、核兵器廃絶を究極の目標と位置づけたことについて「とんでもないことだ」と、秋葉氏は批判しました。
　南海放送（愛媛県）ディレクターの伊東英朗氏が、太平洋核実験による被ばくの実態について報告しました。
　２日目は分科会で、２０１５年ＮＰＴ（核不拡散条約）再検討会議の報告や、日本における放射線被害などについて意見を交わします。
( ２０１５年１１月０１日，「赤旗」)

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（１０月ヘッドライン）

国連憲章発効７０年／植民地崩壊を促した／各国発言

イスラエル首相発言「イスラム指導者がユダヤ虐殺勧める」／内外から批判の声／〝歴史をゆがめる〟

独裁期の拷問に実刑／秘密警察、反体制派５０人拉致／チリ

『スターリン秘史　巨悪の成立と展開』第４巻を語る／上

『スターリン秘史　巨悪の成立と展開』第４巻を語る／下

芸能テレビ／第２８回東京国際映画祭２２～３１日／閉幕作品に「起終点駅」

ＮＯ　ＭＯＲＥ　７３１日本軍細菌戦部隊／１５年戦争と日本の医学医療研究会編／評者山田裕一日本社会医学会理事長、元金沢医科大学教授

潮流

額にかぎ十字刻む覆面男拘束

戦争法廃止国民連合政府を／各界から／続報／鳥越俊太郎さん

戦争の「痛苦の歴史」振り返る／朝鮮・台湾出身学生を志願に追い込んだ戦時体制／倉田玲

『［新版］日本の民話』を刊行して／豊かな民衆的伝承の世界／西谷能英

トレブリンカ叛乱／サムエル・ヴィレンベルク著近藤康子訳／評者尾崎俊二ポーランド現代史研究者

障害者まつり５千人集う／埼玉

女性の目アラカルト／ドイツ／悲しい歴史記憶にとどめて

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（１０月本文）

国連憲章発効７０年／植民地崩壊を促した／各国発言

　【ニューヨーク＝島田峰隆】国連憲章発効７０年を記念して国連本部で２３日、開催された会合では、各国が発言しました。
　アフリカ諸国は、国連が植民地支配の崩壊を促したことを指摘しました。アフリカ諸国の大部分は国連発足時に植民地でしたが、今は５４カ国が独立国として加盟しています。ボツワナは「あらゆる国が加盟したことで国連の正当性が強まった」と述べました。
　オーストリアは、第２次世界大戦中のナチス・ドイツによる支配に自国民の多くも協力した歴史に触れ、「戦後の民主主義や繁栄への国連の貢献を忘れない」と語りました。
　一方で、シリアをはじめとした中東やアフリカでの武力紛争、急増する難民、地球温暖化など、解決が求められる問題が山積していることや、国連がそれらに効果的に対応できていないという指摘もありました。戦後７０年たち、新興国が発展するなか、世界の変化を反映した機構改革が必要だという声も相次ぎました。
　発言を希望する国が多く、会合は引き続き２６日にも開かれます。
( ２０１５年１０月２５日，「赤旗」)

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イスラエル首相発言「イスラム指導者がユダヤ虐殺勧める」／内外から批判の声／〝歴史をゆがめる〟

　【カイロ＝小玉純一】ドイツ・ナチス総統ヒトラーのユダヤ人虐殺、ホロコーストはパレスチナのイスラム教指導者が説得したものだ―。イスラエルのネタニヤフ首相が２０日、エルサレムでこう発言し、内外から強い批判を受けています。

　イスラエルの野党やホロコースト専門家は、歴史をゆがめていると首相を批判。米国務省報道官も「学術的証拠がない」と語りました。
　ネタニヤフ氏は発言後、ベルリンを訪問。同氏と２１日に共同会見したドイツのメルケル首相は「ヒトラーにホロコーストの責任があることを誰しも否定すべきでない」「歴史を変える理由はない」と述べました。
　パレスチナ自治政府のアッバス議長は「歴史をゆがめ反パレスチナに利用している」と批判しました。
　ネタニヤフ首相の発言は、イスラエル占領下のパレスチナで双方の緊張が高まり、衝突が増えているなかでのことです。１０月１日以来、イスラエル人の死者は９人。パレスチナ人の死者は５３人となっています。
　首相の発言はシオニスト会議での演説でありました。「ヒトラーは当時、ユダヤ人を絶滅させたくなかった。追放したかったのだ」と述べ、エルサレムのムフティ（パレスチナのイスラム教指導者）だったハジ・アミン・アルフセイニ師が１９４１年、ベルリンでヒトラーに赴いて説得した会話として紹介しました。
　師「ユダヤ人を追放しても、全員パレスチナに戻ってくる」
　ヒトラー「ではどうすべきなのか」
　師「焼却せよ」
　首相のこの説明に対しイスラエルの歴史学者が早速、反論。新聞紙上でヒトラーはすでに１９３９年１月、ライヒスターク（ナチスドイツの国会）で、ユダヤ人種絶滅の決意を演説しており、ユダヤ人の殺害ないし焼却をヒトラーに最初に語ったのがムフティだったというのは間違いと指摘しました。
　ホロコースト犠牲者を追悼するイスラエルの国立記念館ヤドバシェムの主任歴史学者でテルアビブ大学教授のディア・ポラット氏は「ヒトラーがムフティに会うはるか以前から、ユダヤ人を世界から一掃するという考えは、ヒトラーのイデオロギーの中心テーマだった」とラジオで語りました。
( ２０１５年１０月２３日，「赤旗」)

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独裁期の拷問に実刑／秘密警察、反体制派５０人拉致／チリ

　【サンティアゴ＝ＡＦＰ時事】南米チリの裁判所は１９日、ピノチェト独裁期（１９７３～９０年）の７５年に反体制派５０人を拉致し、カルト集団の集落に連れ込んでは拷問していた当時の秘密警察「国家情報局（ＤＩＮＡ）」の元警官１人とドイツ人２人にそれぞれ禁錮５年の判決を言い渡しました。元警官は人権侵害専用の刑務所、ドイツ人２人は性犯罪者専用の刑務所で服役します。
　判決は「電気ショックを用いた拷問で犠牲者らの尋問を続けていた」と４０年前の３人の犯行を認定しました。
　チリ中部では当時、ナチス残党で性犯罪者のパウル・シェーファー（２０１０年死去）率いるドイツ人のカルト集団が集落「コロニア・ディグニダ」を築いていました。ＤＩＮＡはここを利用し反体制派を弾圧。シェーファーは集落の独裁支配を続けましたが、民主化後の０６年に性犯罪や児童虐待の罪で禁錮２０年の判決を言い渡されています。
( ２０１５年１０月２１日，「赤旗」)

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『スターリン秘史　巨悪の成立と展開』第４巻を語る／上

戦前・戦中、スターリン外交の内幕を読み解く
　日本共産党の不破哲三社会科学研究所所長の『スターリン秘史　巨悪の成立と展開』第４巻「大戦下の覇権主義（中）」をめぐり、不破さん、石川康宏神戸女学院大学教授、山口富男社会科学研究所副所長が語りあいました。

　山口　第４巻は１９４１年６月の独ソ戦の開始前後を扱っています。スターリンが新たな事態に直面して何を考え、どう動き、とくにポーランドとユーゴスラヴィアで覇権主義の要求をどう貫徹していったかを追っています。大戦外交史の内幕に踏み込んで鋭く分析しており、歴史の臨場感がよく表れた巻です。

世界分割案に幻惑され、ドイツの不意打ちを食う

　山口　まず第１６章、独ソ戦の前ですが、不破さんは、ヒトラーが日独伊三国同盟にソ連を加える提案をしたベルリン会談（４０年１１月）から独ソ戦開始までの時期を重視していますね。
　スターリンは、「ドイツが攻撃してくる」という情報をすべて無視します。東京にいたソ連の諜報（ちょうほう）員ゾルゲ、イギリスの首相チャーチル、最後には中国から日にちまで指定した情報がくるのに問題にしなかった。
　不破　この時期のスターリンの態度は、実はこれまで謎とされてきました。ドイツの戦争が迫っていることを、スターリンが承知していたと見る文献もありました。
　ところが、６月２２日のドイツの対ソ攻撃は、スターリンにとってはまったくの不意打ちでした。その決定的な証言は、『ジューコフ元帥回想録』にあります。ジューコフはソ連の参謀総長で、開戦前夜にスターリンと同じ場所にいました。
　それによれば、スターリンは、国境の部隊から「ドイツ軍の攻撃が始まった」という報告が次々飛び込んできても、戦争開始の事態をのみ込めず、「対応は反撃にとどめよ」「真相を確かめよ」といった指示しか出さない。明け方、ドイツ大使が宣戦布告文をもってくるまでこの態度を変えませんでした。
　石川　歴史の本でも、この時期のソ連の態度の評価はあいまいですね。
　不破　これまでの歴史書の多くでは、ベルリン会談でヒトラーが世界の再分割をエサに三国同盟へのソ連加盟という提案を持ちだし、スターリンがそれを受諾したという事実の重みが見落とされてきたのですよ。

ドイツへの配慮がソ連外交の優先課題に
　不破　実際、ベルリン会談以後は、あらゆる問題でドイツへの配慮がソ連外交の優先課題になってきます。まず激変したのが、対バルカン政策です。
　ベルリン会談の前には、ヒトラーがバルカン半島で勢力拡張の動きをすると、スターリンはいつもモロトフ首相（当時）に抗議や警告の態度をとらせたものでした。
　ところが、ベルリン会談以後は、ドイツ軍がブルガリアに入っても文句を言わず、現地の共産党に闘争の指示もしない。ドイツ軍がルーマニアに進出しても、その理由は何かと質問はするが、ベルリン会談での説明の通りバルカン方面での対イギリス作戦のためだと説明されると、そのまま了解してしまう。
　４１年３月にユーゴスラヴィアでクーデターが起きた時の対応はもっとひどいものでした。新政府が親独・親ソの両面政策からソ連との友好条約を提案してきたので、喜んで条約を結ぶのですが、その数時間後にドイツ軍がユーゴスラヴィア攻撃を開始。ソ連はあわてて条約を取り消し、モスクワにあったユーゴ大使館まで閉鎖してしまう。こんな調子の露骨な譲歩外交でした。
　石川　なるほど。
　不破　この時期、ドイツとの同盟を実らせることが大目的だったと見ると、ふに落ちる話がいろいろあるんですよ。一つは、４１年４月の日ソ中立条約締結のいきさつです。この時、松岡―モロトフ会談が決裂に終わり、松岡外相が帰り支度をしていると、突然の電話で、スターリンが明日会談するという予想外の連絡でした。
　会談で、スターリンが、この条約は「大きな問題」への一歩になる、という。「大きな問題」とは日独伊三国同盟へのソ連の加入のことです。そのあと、帰国する松岡の見送りにスターリンが駅に出てきて、ドイツの外交官にまで愛想を振りまくのですが、これは、ドイツがユーゴに攻め込んでいる真っ最中のことでした。

突然のコミンテルン解散の指示
　不破　その次に起きたのは、松岡との会談の１週間後、スターリンがコミンテルン解散の指示を出したことです。ディミトロフは、突然の指示を受けて、解散の理屈を編み出すのに苦労することになりますが、ヒトラーと同盟して世界の再分割をめざすスターリンにとっては、その世界で革命をめざす革命党の存在など、もはや邪魔ものになったというのが、この指示の本当の動機でした。
　こうした動きは、スターリンが、ヒトラーの世界再分割計画を真に受けて、ドイツがソ連に矛先を向けてくることはないと思いこんでいたことを裏付けています。そういう目で見ると、この時期の出来事の意味が読み解けるのですね。この時期は、第２次世界大戦の外交史のなかの非常に重要な局面でした。
　山口　これまで部分的に語られることはありましたが、不破さんが事の経過を詳細に跡づけたことで、スターリンが完全な不意打ち状態で独ソの開戦を迎えたことがリアルに分かります。日独伊ソの四国同盟で世界を再分割するというヒトラーの謀略的構想に、スターリンが完全にのまれていたことを裏付ける有力な材料だと思います。
　不破　この時期の見方を混乱させる大もとには、ベルリン会談後にスターリンがドイツに送ったのは事実上の拒否回答だったという見方がありました。しかし拒否回答をしたのなら、スターリンはドイツを大いに警戒するはずです。真相は、多少の条件はつけたものの、まぎれもない受諾回答だったのです。スターリンは、四国同盟が実現の軌道に乗ることに確信をもっていたのですね。
　石川　そういう歴史の読み方をしたのは、不破さんが初めてですね。

百八十度の「頭の切り替え」で戦争指導に全力

　山口　話を独ソ戦に進めましょう（第１７章）。独ソ戦をめぐっては、スターリンが開戦時に〝意気消沈していた〟とか〝戦争指導では無能だった〟とかいう説が影響力を持ってきました。今度の研究で不破さんは、こういう俗論を打ち破ることに力を入れています。そうしないと、スターリンの覇権主義の実相をつかみ出せないという問題意識が強くあったのではないでしょうか。
　石川　昨年、〝スターリンの実像に迫る〟という新書本が出版されましたが、それもスターリン〝意気消沈〟説でしたね。

戦時外交で攻めの姿勢
　山口　今回の第４巻で明らかにされたことはいくつもありますが、その一つが、スターリンが開戦の日、ヒトラーとの同盟路線からヒトラー・ファシズムを撃滅する路線に、すぐ頭を切り替えた経緯です。ジューコフの回想も使って描きだしています。
　不破　ジューコフは、宣戦布告の報を受けた時、スターリンが椅子に深く身を沈めて「長い苦しい沈黙」を続けた、と書いています。この「長い苦しい沈黙」の時間に百八十度の頭の切り替えをおこなったわけで、その後、軍事面でも政治面でも活発な活動を開始するのですね。ジューコフは、続く部分で、戦争指導の面でのスターリンの活動状況も詳しく書いています。
　ジューコフの『回想録』はスターリンが生きているうちに発表されましたから、筆を曲げた可能性も問題になりますが、その点を補強しているのが『ディミトロフ日記』です。ディミトロフは、開戦の朝、午前７時にクレムリンに呼び出されてスターリンの活動を見、直接の指示を受けています。『日記』には、スターリンが頭を切り替えて活動しはじめた状況が出てくるわけです。日記だから筆を曲げる必要はない。その点でも、『日記』は重要な意味をもちました。
　山口　今度の研究は一点一点の資料について、裏付けをとれるものとそうでないものを区分けして歴史のなかに位置づけています。
　不破　ソ連は、ヒトラーにモスクワ前面まで攻め込まれて危急存亡の局面を迎えます。その援助国となったのがイギリスとアメリカですが、スターリンはこれらの国との外交で、「援助をお願いします」という受け身には全然立たないのです。
　ヒトラーと現に戦っているのはソ連だけなのだから当然援助を受ける権利がある、イギリスやアメリカはヒトラーを西側から攻撃する「第二戦線」を早く開くべきだ、こういう立場で、最初から攻勢的な外交を展開しました。ばく大な援助を受けながら外交的にはリードするのです。
　その経過が、スターリンとチャーチル、ルーズベルトなど英米首脳との９００通の往復書簡によく出ています。第２次世界大戦史では、チャーチルの『第二次大戦回顧録』と『米英ソ秘密外交書簡』の研究は不可欠ですね。
　開戦後のスターリンは、開戦前と違って、党と政府・軍の最高責任者としてあらゆる活動の前面に出てきます。５回の首脳会談を取り仕切り、文字通り全権をもった指導者として、ソ連国民と世界の前に姿を現しました。

戦争指導に現れた専制主義と覇権主義

　石川　不破さんはスターリン無能説を批判したうえで、スターリンの戦争指導の本当の問題点を指摘しています。戦争にもテロ方式を広く持ちこんで、失敗した将軍を銃殺するとか、捕虜になって脱走してきた者や敵の包囲網から脱出してきた者まで収容所に入れる、ドイツの占領下におかれた地域の住民を強制移住させる懲罰措置をとるなど、ひどいものですね。
　不破　戦争のやり方も専制主義なんです。最初に処分されたのは国境戦で敗北した将軍たちでしたが、その敗北の最大の責任はスターリンにあったのですから。それを罪だというなら、スターリンは自分を処刑すべきでした。
　山口　最大の問題は、スターリンが第２次世界大戦へのソ連の参加を、領土拡大という覇権主義の野望と結びつけたことだと指摘していますね。
　スターリンは、ドイツとの同盟路線から反ファシズム路線に切り替えるなかでも、各国共産党の闘争をソ連防衛戦争の応援団扱いしたり、各国共産党に社会主義や革命は問題にするなと指示したり、開戦の最初の日からソ連第一主義の態度をあらわにしています。
　不破　世界史的な意味では、ソ連がヒトラー打倒の主力軍の役割を担い、それを果たしたことは、確かです。しかしその担い方は、戦争の手法では専制主義を、対外的には覇権主義、領土拡張主義を露骨に現したものだった。その点をよく見る必要があると思います。
　（つづく）
( ２０１５年１０月１９日，「赤旗」)

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『スターリン秘史　巨悪の成立と展開』第４巻を語る／下

独ソ戦。覇権主義の二つの焦点

　山口　第１８章、第１９章はポーランド問題を軸に追跡しています。独ソ戦を戦いながらスターリンがポーランド問題で三つの目標を持ち、それを達成した経過を明らかにしています。こういう研究はこれまでなかったものですね。

ポーランド制覇の三つの目標
　不破　「三つの目標」というのは、スターリンがまとめて提起したものではなく、彼の行動から客観的に浮かび上がってくるものです。
　第一は、ドイツとの秘密協定（１９３９年）でソ連が併合した東部ポーランドをソ連領として認めさせること。第二は、その代償として、ドイツの一部をポーランドに割譲して、ポーランド領を西方に拡大すること。第三は、復活した新ポーランドをソ連の支配下におくこと。ドイツとの秘密協定で得たものより、はるかに大きいソ連勢力圏の大拡張でした。
　スターリンは、大戦の終結前に、この三つの目標を全部達成するのです。最大の難関は、当時ロンドンにいたポーランド亡命政府にこれを受け入れさせることでしたが、それを自分ではやらず、説得役はチャーチルにやらせました。文字通りの外交的〝荒業（あらわざ）〟です。
　石川　そういう点での狡知（こうち）の発揮はものすごいですね。

ヒトラー打倒の大義をかかげて
　不破　ソ連にとってポーランドは非常に難しい国でした。３９年にヒトラーと組んでポーランド国家を消滅させたのが、ほかならぬソ連ですから。一方、イギリスはポーランドと同盟関係にあり、そのことからドイツとの戦争に踏み切った国です。つまり、イギリスにとって、独立ポーランドの再興はこの戦争の最大の大義というべき問題でした。
　ところが、４１年６月に独ソ戦が始まった時、スターリンは、英ソ交渉の最初の段階から、東部ポーランドをソ連領と認めよ、という要求をイギリスに突きつけるのです。
　その年の１２月、イギリスのイーデン外相がモスクワを訪問しました。ドイツ軍の猛攻からモスクワを守りぬいた直後の時期でしたが、英ソ会談でスターリンが最大の議題としたのは、援助問題ではなく、戦後ヨーロッパの国境問題、なかんずくポーランドにかかわる領土問題でした。イーデン外相も驚いたのですね。
　石川　スターリンは、ソ連の役割なしにはヒトラーを倒せないというイギリス、アメリカの弱みを見事に逆手にとっていますね。英米に援助を〝お願いする〟というのでなく、ソ連の要求を受けいれるのは当然、という姿勢が、ここにもはっきり出ています。
　不破　ヒトラーを倒すという大義があるからなんです。スターリンが強気に出られるのは。〝ヨーロッパでヒトラーと戦っている唯一の国・ソ連を応援するのは当然じゃないか〟といわれると、英米側も受け入れざるを得ないわけです。
　山口　『秘史』では、「スターリンは、その急所をにぎって、反ファシズム世界戦争を自分の覇権主義的野望に結びつける方策を、頑強に追求した」と指摘しています。

〝カチンの森〟事件を逆手にとって
　山口　〝カチンの森〟事件で、ポーランド側の告発を逆手にとった反転攻勢もすごいやり方ですね。
　不破　大戦中の最大の〝荒業〟かもしれませんね。事件の解説をちょっとしておきますと、３９年９月のソ連のポーランド侵攻のあと、抑留されたポーランド軍将校の行方がわからないことが、ポーランドの関係者のあいだでは以前から大きな問題になっていました。そのことで、４３年４月、ドイツのゲッベルス宣伝相が、〝ソ連に虐殺された数千人のポーランド将校の遺体がロシア西部のカチンの森で発見された〟と発表したのです。ソ連を窮地に追い込む衝撃的な告発でした。
　これはまぎれもないスターリンの犯行で、事件の半世紀後でしたが、ソ連政府自身がその事実を認めました。しかし、スターリンは、これを逆手にとって、ポーランド問題の局面を変えてしまいます。ポーランド亡命政府が国際赤十字に調査を求めたことにたいし、〝ヒトラーのデマに踊らされた〟と抗議し、断交してしまったのです。
　イギリスもアメリカも、東欧で何が起こっているかほとんど情報を持たないまま、亡命政府の無分別な行動を批判する立場をとり、スターリンに同調する方向に傾きます。驚くべき逆転劇でした。
　石川　ルーズベルト米大統領までが、ソ連の主張に道理があるとして、ポーランド亡命政府の「誤り」を批判したという話は知りませんでした。
　山口　ここに光をあてた研究も初めてではないでしょうか。大戦外交史の隠れた内幕の一つですね。

ワルシャワ蜂起とソ連軍
　山口　４４年８月１日にワルシャワ蜂起が起きます。ドイツ占領下のポーランド市民が、亡命政府が国内に残していた軍事組織「国内軍」とともに立ちあがったんですね。この蜂起をソ連が援助しなかったことは知っていましたが、そこにスターリンの、「国内軍」一掃の狙いがあったことには驚きました。
　不破　もしソ連軍が援助して蜂起が成功し、ワルシャワに進撃したソ連軍が世界注視のなかで蜂起軍と握手する、こんなことになったら、ソ連もいや応なしに亡命政府側の「国内軍」を同盟者として認めざるを得なくなります。しかし、こんなことは、スターリンが絶対に認めるわけにゆかないことでした。
　亡命政府の基盤である「国内軍」の絶滅は、ソ連軍の基本方針でした。ワルシャワ以外の地域でも、こんなことが起きていたとのことです。ソ連軍がドイツ軍を打ち破ってその地域を解放して、「国内軍」が姿を現すと、最初の段階では歓迎して握手しあったりする、しかし次の段階では、「国内軍」の部隊は解体され、将校などは収容所に送り込む。このように、戦後のポーランド支配のために、「国内軍」などは根こそぎ取り除く、これがソ連の方針でした。
　だから、スターリンにとっては、ワルシャワでも、「国内軍」がドイツ軍によって壊滅された後でソ連軍が乗り込むということは、当然のやり方だったのでした。
　石川　最近読んだ本でも、ワルシャワ蜂起をソ連が見捨てた理由は、〝カチンの森〟事件で亡命政府と仲たがいしたからという説明でした。しかし、もっと奥深い、ポーランドを支配しようとする領土拡張主義があったわけですね。
　不破　スターリンは、ワルシャワ蜂起以前に、ポーランドのルブリンに臨時政府（ポーランド国民解放委員会）を樹立していました。チャーチルも、亡命政府こそが正統の政府だと主張するわけにはゆかず、ソ連製の臨時政府に亡命政府から数人の閣僚をいれて、これを統一政府とするという譲歩に追い込まれます。こうして、ポーランドをソ連の勢力圏に組み込むというスターリンの最後の目標も、チャーチルとルーズベルトの公認のもとで実現してしまったのですよ。

チャーチル、バルカンの権益分割を求める
　石川　４４年１０月、ワルシャワ蜂起壊滅の１週間後に、チャーチルがモスクワでスターリンと会談しますね。ここでチャーチルは有名な「百分率表」を持ちだしますが、これはソ連の攻勢に対する抵抗だったのでしょうか。
　不破　いや、チャーチルの頭には、もうポーランドはない、狙いはギリシアだったのですよ。「百分率表」というのは、バルカン５カ国についてソ連とイギリスがどれだけの権益をもつかの割合をパーセントで示した表で（写真）、チャーチルがその場でスターリンに渡したのです。スターリンは青鉛筆で印をつけて、チャーチルの手に戻す。〝沈黙のうちに〟進行した一幕でした。
　この表は、他のバルカン諸国でのソ連の権益を大きく認める一方、ギリシアだけはイギリスの勢力圏だとされていたのが特徴でした。実は、ギリシアでは、ドイツからの解放闘争が進み、解放勢力は国土の大部分を解放して、すでに臨時政府までつくっていました。そこへイギリス軍が、ドイツ軍と戦ったわけではなく、ドイツ軍の撤退後に乗り込んできたのです。
　そのギリシアがイギリスの勢力圏に属することを、スターリンに認めさせる。ここにチャーチルが「百分率表」を持ちだした最大の狙いがありました。
　チャーチルは、スターリンの東ヨーロッパ支配を容認することと引き換えに、ギリシア支配を要求した。イギリスの小さな覇権主義のために、スターリンの巨大な覇権主義を正当化してしまったわけです。
　山口　「百分率合意」は、その後の協議でも場面場面で、チャーチルのソ連批判をたしなめるのに使われますよね。

ユーゴの自主的な解放闘争を恐れたスターリン

　山口　第２０章はユーゴスラヴィアです。不破さんの今回の本格的な研究で、ユーゴ解放戦争が、ドイツという侵略者への抵抗にとどまらず、独立と自由をかちとり旧体制を打ち破る国民解放闘争だったという特質と、解放が成功に至った戦略的なとらえ方がよく分かりました。
　不破　ここにも、スターリンの覇権主義は、たいへん陰湿な形で現れました。
　ユーゴスラヴィアでドイツ軍にたいする武力解放闘争が始まったのは４１年６月ですが、早くも４２年には、ドイツ、イタリア両軍３０個師団以上がユーゴ戦線にくぎづけになるような発展を遂げます。これはスターリンが待望した「第二戦線」がバルカンに開かれたと言ってもよいほど、大きな意義をもつことでした。
　この闘争は、本来ならスターリンにとって有力な同盟者となるものでした。それなのに、スターリンはこの戦線を無視し続け、解放闘争への援助を請われても拒否の態度を取り続けるのです。その根底には、自主的な革命勢力にたいするスターリンの恐れがありました。ソ連軍がドイツ軍を撃破して乗り込む前に、自主的に立ち上がった解放勢力が勝利して革命が起きたら、その国をソ連の衛星国にすることができなくなる。それが怖いのですね。
　山口　不破さんは、スターリンの冷たい対応を、ディミトロフの『日記』とチトー側の資料を使って克明に明らかにしています。ユーゴの党が直面した問題を歴史的に見る上で欠かせないものだと思います。
　不破　この章では、私がユーゴの党大会（１９８２年）で手に入れた資料をかなり使いました。解放戦争中にユーゴの共産党や国民解放委員会などが出した主要公的文書をまとめた文献集や、解放戦争史などなどで、これらがなければこの章は書けませんでした。
　ただ、これらはみな、戦後決裂したソ連・ユーゴ関係の回復後に出されたもので、ソ連が一番嫌がるだろうものは省いたようです。たとえば、ドイツ軍との激戦の中でのチトーの電報、「われわれを助けることができないなら、邪魔はしないでくれ」というディミトロフ宛ての電報は、収録されていませんでした。
　石川　『スターリン秘史』には、そうした資料が一つひとつ丁寧に載せられています。長くスターリンの覇権主義を問題意識を持って追いかけてきたことの蓄積だなと感心させられています。
　不破　解放闘争の歴史を調べていて、チトーが独ソ戦の開始前に、独ソの衝突を予見していたことに驚きました。独ソ関係の具体的な状況はチトーの知るところではないのですが、国際的な環境を分析するなかで、事態が独ソの衝突の方向に進んでいることを読み取り、そこに解放闘争発展の国際的な根拠を求めた、というのです。
　自主的な運動も大衆的支持もないポーランドをおさえこんでソ連の勢力圏に引き込む、一方、自主的な解放闘争で独立と社会変革の事業をやり遂げようとするユーゴスラヴィアには冷酷な対応をとおす、手法はまったく対照的ですが、ここには、世界大戦下のスターリンの覇権主義の代表的形態、二つの焦点と呼んでもよいものがあったと思います。（おわり）
( ２０１５年１０月２０日，「赤旗」)

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芸能テレビ／第２８回東京国際映画祭２２～３１日／閉幕作品に「起終点駅」

第２８回東京国際映画祭が２２日から３１日まで、六本木ヒルズ（東京都港区）、新宿バルト９（同新宿区）などをメーン会場に開催されます。
　コンペティション部門には、１４０９本の応募作から選ばれた１６作品を上映。日本からは「ＦＯＵＪＩＴＡ」（小栗康平監督、フランスと合作）や「さようなら」（深田晃司監督）、「残穢―住んではいけない部屋―」（中村義洋監督）が出品されます｡
　特別招待作品は、ナチスによる美術品強奪を題材にした「黄金のアデーレ　名画の帰還」（サイモン・カーティス監督）など。その中から開幕作品に「ザ・ウォーク」（ロバート・ゼメキス監督）、閉幕作品に「起終点駅　ターミナル」（篠原哲雄監督）が上映されます。
　他に、原田眞人監督や「機動戦士ガンダム」の特集上映、オーソン・ウェルズの回顧企画も。問い合わせは℡０５７０（００６）５０６
(２０１５年１０月１８日，「赤旗」)

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ＮＯ　ＭＯＲＥ　７３１日本軍細菌戦部隊／１５年戦争と日本の医学医療研究会編／評者山田裕一日本社会医学会理事長、元金沢医科大学教授

部隊医師の非人間的所業を問う
　金沢大学の医学生時代に、ある教授が７３１部隊の関係者だということを耳にしたことがあった。当時、その詳細は不明だったが、何やらおぞましい物語があるように聞こえた。一方で、その教授が末期がんをおして教壇に立ち、水を飲み飲み、苦しげながらもがんの病理を講義する姿がその物語とうまく重ならず、ひどく当惑したことを覚えている。その後７３１部隊の残虐な行為が社会に知られるようになってからも、この教授と７３１部隊の関係は金沢大学内部では公には語られなかった。私がなぜ当惑せねばならなかったのか、そしてなぜ、いまだにタブーなのか、このままで良いのか？　その解答を本書の中に見いだすことができる。
　本書は、部隊の所業を詳述する。生きた人間である捕虜や敵国人への実験を行う残虐性と、それを隠ぺいするのに「サルを用いた」と論文に書く研究者の精神のあり様に戦慄を禁じ得ない。捕虜に対する実験はナチスドイツも行ったが、それは裁判によって厳しく糾弾されたのと対照的に、７３１部隊の所業は、敗戦後間もない時点で米軍によって免罪されてしまう。その結果、部隊に関係した医師や医学者は咎められることもなく、各地の医学部、医科大学で要職を占めていく。
　部隊の所業が次第に明らかにされてくると、彼らは協働してそれを必死に阻む行動を取った。そして、日本の医学界を代表する医師会も学会も、目をそらし、口をつぐんで実際的に彼らを擁護してきたのだ。戦争の非人間性と、医師、医学者としての生き方を問う本書を、今こそ、若い人たちに読んでもらいたい。

　執筆者＝常石敬一、杉山武敏、篠塚良雄、刈田啓史郎、莇昭三、西山勝夫ほか
( ２０１５年１０月１８日，「赤旗」)

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潮流

「過去に目を閉ざす者は現在にも盲目となる」。今年亡くなったドイツのワイツゼッカー元大統領が終戦４０周年の記念演説で訴えた有名な一節です▼彼はそのくだりの直前にこうも語っています。「罪の有無、老幼いずれを問わず、われわれ全員が過去を引き受けねばなりません。だれもが過去からの帰結に関わり合っており、過去に対する責任を負わされている」（『荒れ野の４０年／永井清彦訳』）▼いま、ナチスの戦争犯罪を告発する二つのドイツ映画が日本で公開されています。独裁者の命を狙った家具職人の人生と信念を描いた「ヒトラー暗殺、１３分の誤算」。忍び寄るファシズムを追いながら音楽や自由を愛する〝普通の男〟を突き動かしたものを描きます▼「顔のないヒトラーたち」からは戦後ドイツの苦闘が見えてきます。良き隣人として日常生活を送るかつてのファシストたち。正義感あふれる若き検察官がその偽りと沈黙を暴く。真実を追及するあまり、親しい人たちとも対立する主人公の姿が痛ましい。アウシュビッツ裁判につながり、ドイツの歴史認識を変えていきます▼くり返し、自国の戦争犯罪と向き合い、記憶を消さないドイツ。翻って日本はどうか。日本軍慰安婦や南京大虐殺の実態を隠そうとするなど、いまだにアジアの国々との関係はとげとげしい▼あの戦争は何だったのか―。個人と国の歴史を見つめ直した節目の今年。過去に対する責任は、侵略戦争を正しかったとする安倍政権に、刃となって向かうはずです。
( ２０１５年１０月１８日，「赤旗」)

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額にかぎ十字刻む覆面男拘束

【ウィーン＝ＡＦＰ時事】オーストリア検察当局者は１５日、ウィーン郊外で覆面をした男４人が自転車で走行中の男性を襲い、額にナチス・ドイツの象徴「かぎ十字」をナイフで刻み込む事件が起きたことを明らかにしました。主犯の男は拘束されました。
( ２０１５年１０月１７日，「赤旗」)

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戦争法廃止国民連合政府を／各界から／続報／鳥越俊太郎さん

日本史上初の市民革命／個々人の意思で今こそ／ジャーナリスト鳥越俊太郎さん
　安倍政権は、集団的自衛権の行使を容認する閣議決定をわずか十数人の閣僚で決めてしまった。歴代自民党政権の中で、安倍政権ほど国民をバカにし、主権をじゅうりんし、傍若無人に振る舞った政権はありません。
　安倍政権の暴走を食い止めるには国会で自公の議席数を半数以下にしないといけない。今回、志位さんが呼びかけられた。ぜひ野党のみなさんは政治的な差を乗り越えて、一致できるところで一致して、選挙をたたかってほしいと思います。
　ただ、国民連合政府というのはハードルが高いだろうと思って、志位さんにもそう言いました。すると「安倍政権を打倒した後、どうするのか」と。「政権構想を出すのが政党としての責任。安倍政権をやめさせたい。その私たちの本気度が国民に伝わってこそ、選挙に勝てる」と説明されました。
　言われてみればその通りで、安倍政権打倒を掲げるのなら次にどのような政権を目指すのかを示す必要がある。これは他の野党にも問われていることであり、同時に私たち国民一人ひとりにも、どのような政権を望むのかが問われている。
　フランスやイタリアでは、第２次世界大戦のとき、ファシズムに対抗する幅広い統一戦線ができました。残念ながら、日本ではそれができなかった。日本人は、自ら政府を変える市民革命をしたことがないんです。
　今回、安保法をめぐって広範な人々が国会前や全国各地で声を上げました。総評や全学連の動員が多かった６０年安保と違い、一人ひとりの意思で集まってきた。私自身、「アベ政治を許さない」のポスターを掲げようと訴えたところ、反響の大きさに「これはすごい」と思いました。年代・職業を超えて「ＮＯアベ！」と。安倍さんが国民の怒りに火をつけた。だからこれはチャンスです。日本の歴史上初めての市民革命を期待しています。
( ２０１５年１０月１１日，「赤旗」)

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戦争の「痛苦の歴史」振り返る／朝鮮・台湾出身学生を志願に追い込んだ戦時体制／倉田玲

憲法９条を壊すだけでなく、立憲主義を破壊する「戦争法」が成立したいま、戦争への道を許さないためにも、アジア・太平洋戦争中の大学の戦争加担を振り返りたい。
　私は立命館大学において、「日本の近現代と立命館」というリレー講義形式の教養科目の２回分を担当している。「ファシズムの時代の立命館」の回では、『立命館百年史　通史一』の第４章「戦時下の学園」をもとに、学生を軍需産業や食料生産に動員した１９４３年６月２５日の学徒戦時動員体制確立要綱（閣議決定）などによる教学への影響を概説している。
　『百年史』のこの部分には、あまり知られていない負の史実が、半世紀余を経て過去の清算が企図された事実を添えて記録されている。

組織的志願勧奨／拒否は休学処分
　１９４３年１０月から、文系学生などの徴兵猶予の廃止（学徒出陣）を決めた在学徴集延期臨時特例（勅令）、学校教育全般における戦時非常措置を打ち出し、文系の理系への転換も求めた「教育ニ関スル戦時非常措置方策」（閣議決定）、朝鮮人・台湾人学生を徴集するための陸軍特別志願兵臨時採用規則（陸軍省令）が矢継ぎ早に繰り出された。
　それによって、いまなら外国人留学生と呼ばれる若者たちも学徒出陣に志願できるようになると、全国の大学で朝鮮・台湾出身学生への組織的な志願勧奨が繰り広げられた。志願しないと休学や退学の申請を促され、それも拒否すると休学処分というのが帝国政府の基本方針であった。

志願しなかった３２人を除籍処分
　立命館は、「母校訪問説得団」の卒業生が、志願締め切り間際の１１月１５日に半島学徒総決起懇談会を開催するなど、過剰に迎合していた。この懇談会にも出席して志願の意義を説いた総長の命により、最後まで志願しなかった３２名が１２月７日に除籍された。
　朝鮮人学生学友会の会長の回想によると、連日の電報に呼び出されたり、自分が志願したという誤報に惑わされたりしたあげくの「退学」処分であったらしい。なお、当時の学籍簿や学徒出陣者関連名簿の調査により５１名の志願が判明しているが、どれほど自発的な志願であったのか、本当に自発的であったのか、かなり疑わしい例も含まれている。

除名を取り消し特別の卒業証書
　『百年史』のこの部分を執筆した歴史学者の尾川昌法が、「立命館大学常務理事会は学園を除名された朝鮮・台湾出身学生の名誉回復措置について検討を重ね、一九九五（平成七）年一二月六日、除名処分を取り消すとともに、謝罪の意味を込めて特別の卒業証書を送ることを決定し、一九九六年三月二〇日に判明した一〇名（韓国籍九名、台湾籍一名）に対して卒業証書を授与した」と付記している。確認してみると、証書には「誤った措置を謝罪し平和への決意を込めて」とつづられていた。
　２００６年７月２１日に制定された立命館憲章に「戦争の痛苦の体験」が刻み込まれているのには、このような学園の史実による裏付けがある。

　くらた・あきら　立命館大学教授。１９７１年生まれ。共著に『いま日本国憲法は』『法学ことはじめ』ほか
( ２０１５年１０月０７日，「赤旗」)

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『［新版］日本の民話』を刊行して／豊かな民衆的伝承の世界／西谷能英

この４月から『［新版］日本の民話』シリーズを毎月１５日に３巻ずつ定期配本している。すでに第１巻の瀬川拓男・松谷みよ子編『信濃の民話』を皮切りに第１８巻『佐渡の民話１』（浜口一夫編）まで、元版（１９５７～８０年）の巻数順に刊行してきた。

民俗的香りをそっくり保存
　［新版］シリーズでは、これまでのサイズをハンディにし、活字も読みやすく、価格も求めやすくした。旧版で好評だった挿絵もすべて再現したので、このシリーズの民俗的香りはそっくり保存されている。
　ある程度以上の年配の方ならご記憶にあろうかと思われるが、１９７５年にはじまったＴＢＳテレビ放映のアニメ「まんが日本昔ばなし」が市原悦子さんと常田富士男さんの名語りで毎週ゴールデンアワーに放映され、空前の「民話」ブームを巻き起こしたことがある。その原案として活用されたのが旧版『日本の民話』であった。
　誰でも知っている桃太郎や浦島太郎の伝説などが日本各地に少しずつ形を変えて語りつがれていることがわかるのもこのシリーズの特長である。劇作家木下順二が民話劇に取り組み、その代表作「夕鶴」は各地に伝わる「鶴女房」伝説から生まれている。
　戦後すぐに復活した生活綴り方運動などとともに、松谷みよ子を中心とする「日本民話の会」を母体とした民話発掘の文化運動は広く各地の民話を採集、編集、記録してきた。これらの成果はこの『日本の民話』シリーズに結集された。このシリーズは民衆文化を対象とする民俗学などによって高く評価されてきた。

政治や教育の荒廃に抗して
　いま日本の政治は安倍晋三というウルトラ右翼ファシスト政治家によって、空前の危機状態にさらされている。すでに教育現場は、長年にわたる自民党の教育政策によって荒廃させられ、文字を満足に読めず、本を読まない世代がどんどん生まれてきている。大学では国策に沿わない文科系学問などはどんどん切り捨てられ、ゆがんだ歴史教育によって間違った歴史認識が押しつけられている。
　この［新版］シリーズの再刊は、こうした政治や教育の荒廃に抗して、日本人のこころのふるさととも言うべき民話の豊かな民衆的伝承の世界を再構築し、これからの日本を背負っていく若いひとたちを中心にぜひ読んで語りついでいってもらいたい、という願いをこめている。
　本を読むことはおのずから自分が生きることの意味を考え、世の中の矛盾や問題にたいして批判的に対処する精神を涵養するものである。本を読むことのすばらしい経験をきっかけに、今後も読書する習慣を身につけ豊かな人間になってほしい。それが本シリーズ再刊の最大の希望なのである。
　（にしたに・よしひで　未来社社長）
( ２０１５年１０月１１日，「赤旗」)

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トレブリンカ叛乱／サムエル・ヴィレンベルク著近藤康子訳／評者尾崎俊二ポーランド現代史研究者

消された絶滅収容所の生き証人
　ポーランドの首都ワルシャワの北東約９０㌔に位置するトレブリンカ。その近くにナチス・ドイツのユダヤ人絶滅収容所の一つがあった。１９４２年７月から１年余りの稼働だったが、犠牲者は約８０万人と推定される。著者は同年１０月に移送されてきた。ワルシャワ・ゲットーから２５万人以上が「大作戦」で次々に移送されて約一月後である。
　そこは労働収容所でも政治犯収容所でもない、移送者を最も効率よくガス室に送る「死の工場」だった。貨車から引き出され、脱衣場、ガス室に至る「天国への道」へ追いたてられる人々、山をなす遺留品、残忍な親衛隊員とウクライナ人補助兵、老人や病弱者を即処分する「野戦病院」という名の射殺場、極限状況で支え合う囚人たち、そして４３年８月の囚人反乱と逃走、両親との再会。さらに４４年、ドイツ占領軍からの解放をめざすワルシャワ蜂起に加わった体験にも記述は及ぶ。
　収容所で運よく特別労務班員となる著者はガス室へ送られる数百人の女性の髪を刈ったことがある。「どのくらい苦しまなければならないの？」「ほんのちょっと、一瞬だよ」――ある若い女性との数分間の会話は胸を衝く。
　８６年にヘブライ語で初出版、その後英語訳されたが、原手稿は４８年に書かれたもので、昨日の出来事のように鮮明な語りである。絶滅収容所の犯罪はナチス・ドイツ自身の手で反乱鎮圧後に跡形も無く消し去られた。反乱時に囚人は約８５０人いたが、脱出に成功したのは約１００人、戦後まで生き延びたのは約７０人とされる。著者は９０歳をこえてイスラエルに健在、ただ一人生存する証言者である。

　サムエル・ヴィレンベルク　２３年ポーランドのチェンストホヴァ生まれ。体験を素材にした彫刻作品も発表
( ２０１５年１０月１１日，「赤旗」)

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障害者まつり５千人集う／埼玉

第３６回埼玉障害者まつりが４日、埼玉県障害者交流センター（さいたま市）で開かれ、晴天の下５０００人が参加しました。
　「今こそ手をつなぎ安心できる暮らしを！戦後７０年、戦争をしない、させない平和な社会を！」がテーマ。戦後７０年を検証する企画では、ナチスドイツがユダヤ人大量虐殺の前に障害者で実験を繰り返していた史実を参加者が学び、「こんなこと初めて知った」「戦争で最初に犠牲になるのは障害者なんだ。戦争なんか絶対ダメ！」などの感想が寄せられました。
　ホールでは、障害者が安心して生活できる場をどう保障していくか討論集会を開催。重度障害児の母親は「埼玉は人口で比べると他県より圧倒的に住まいの場が足りないと聞いて暗くなりました。私の体力はそう長くもちません。なんとか施設整備に力を入れてほしい」と発言しました。
　屋外では、太鼓やフォークバンドの演奏、ベリーダンス、朝鮮舞踊などが次々披露され、蕨市に拠点を置く女子プロレス「アイスリボン」の実演に参加者が沸きました。
(２０１５年１０月０９日，「赤旗」)

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女性の目アラカルト／ドイツ／悲しい歴史記憶にとどめて

日本からは遠い国のポーランドもベルリンからだと、ひとっ飛び。アウシュビッツ第１強制収容所（オシフィエンチム、現在は博物館）近くのクラクフへも飛行機で１時間ちょっとで行けます。
　第２次世界大戦の戦火を免れ、美しいたたずまいを今日に残すこの町は、ナチスの侵略による、たくさんの悲しい歴史を抱えています。
　ナチス・ドイツから多くのユダヤ人を救った実在の人物を描いた映画「シンドラーのリスト」にでてくる「わし座薬局」が、いまも営業を続けているズゴダ広場もその一つ（写真）。当時、この場所は１万５０００人以上が収容されていたゲットーの中でした。この広場は強制収容所へ移送するための「選別の場所」で多くのおとなたちが移送された後、残された乳幼児を含む子どもたちは、ここで虐殺されました。
　薬局を背に広場を見渡すと、無数の椅子が目に飛び込んできます。６８脚の椅子で、継承の空間をつくった地元の若いデザイナーたちは、「広場はクラクフのユダヤ人たちの虐殺の記憶をとどめる監視者である。私たちは、この歴史を覚えておく義務がある」と語っています。
　この場所に立つと、人々が連れ去られ、家具だけが残った広場に、１人取り残されているような錯覚にとらわれます。
　（ベルリン在住　杏・フランク）
( ２０１５年１０月０６日，「赤旗」)

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（９月ヘッドライン）

３０

ＶＷ排ガス不正／消費者欺く悪質行為

独ＶＷ排ガス不正／元閣僚が業界トップ、規制に反対／政・業の癒着に批判噴出

戦争法廃止へ声あげる／スタンディング／９条こそ抑止力／長野・下諏訪町

芸能テレビ／自国の戦争犯罪描くドイツ／顔のないヒトラーたち／ヒトラー暗殺、１３分の誤算

記憶遺産「命のビザ」推薦／「上野三碑」も／ユネスコ日本委

安倍政権１０００日／立憲主義・民主主義・平和主義を破壊／巨大な運動に追い詰められ

習近平中国主席あす訪米／矛盾深化も協力関係確認へ

２０

安保法制を問う本／違憲立法の廃止へ展望示す

朝の風／ベヒシュタインとヒトラー

国会緊迫／戦争法案ノー、与党の足元でも／創価学会員が泣いた／元公明党副委員長二見伸明さん

１０

朝の風／テレジンの小要塞

通すな戦争法案／「抑止力」はもう古い／元公明党副委員長二見伸明さん

文化通信／文系学部廃止政策／出版協が反対声明

戦争法案止める／私の一言／命脅かさないで／首相ウソだらけ

戦争法案／廃案は参院の責務／仁比氏意見表明／憲法審査会

朝の風／シールズの合言葉

９条は人類が実現すべきプロジェクト／山室教授のスピーチ／京大「安保法制反対集会」／要旨

「命のビザ」記念プレートを設置／リトアニア

言聞録／２０１５年８月３０日～９月５日

中国主席「侵略否定は人類の良識への侮辱」

中国、兵力３０万人削減／抗日戦勝利７０年式典で宣言／パレードでは軍事力誇示

中国に「花岡事件」記念園／強制連行の悲劇伝える／天津市

第２次大戦終結の日／慰霊施設訪問／ソ連兵に献花／ロシア大統領

中国、きょう抗日戦勝式典／各国首脳級集め軍事パレードも／市民〝規制厳しく見られない〟

対北外交努力を強化／中韓首脳会談で一致／６カ国協議再開へ協力

戦争法案廃案、大学人・市民ら連帯／「日本の危機」に行動／信州大学人の会がシンポ

潮流

中国レセプションに緒方・穀田両氏出席

〝難民を守れ〟／独で連帯広がる／政治家・メディア、極右に対抗

（９月本文）

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３０ ＶＷ排ガス不正／消費者欺く悪質行為

ドイツ自動車大手フォルクスワーゲン（ＶＷ）のディーゼル車排ガス不正問題は、ドイツ製品への信頼性やエコカーの動向など、多方面に甚大な影響を及ぼす歴史的不祥事の様相を呈してきました。疑問点をＱ＆Ａでまとめました。

　―ＶＷってどんな会社。
　創立は１９３７年で、社名は日本語で「国民車」。当初は、国民に大衆車を行き渡らせるというナチス・ドイツの独裁者ヒトラーの構想を基に設立された国策会社でした。最近はトヨタ自動車と世界販売台数の首位争いを繰り広げています。ドイツを代表する企業の不祥事なだけに、同国の国民も衝撃を受けています。
　―どんな悪いことをしたの。
　ディーゼル車の排ガス浄化装置を検査時だけフル稼働させ、通常走行時には弱めることができるソフトウエアを車に搭載していました。こうして、普段は最大で基準値の４０倍の有害物質を出しているのに、規制を逃れていました。消費者や当局を欺く悪質な行為です。このような車は世界で１１００万台に上ります。
　―なぜそんなことをしたの。
　ＶＷは理由を明らかにしていません。でも、浄化装置を通常時に切り、燃費を向上させていた可能性があります。ディーゼル車の性能を良く見せ、販売を伸ばしたかったのかもしれません。
　―ディーゼル車って何。
　燃料は軽油。ガソリン車より、大気汚染などの原因物質の排出量が多い。でも燃費は良いので、ＶＷなど欧州メーカーを中心に排ガス浄化機能を高め、エコカーとして売り出しています。今回の不祥事で、そうしたイメージに傷が付く恐れもあります。
　―経営への影響は。
　米国では最大１８０億㌦（約２兆２０００億円）の制裁金が科される可能性がある上、対象車の所有者らへの損害賠償も巨額になる見通し。ブランドイメージも失墜しました。経営への打撃は深刻です。
　―日本への影響は。
　日本ではディーゼル車の普及が欧州に比べ進んでおらず、ＶＷはディーゼル車の正規販売もしていないため、直接的な影響は少ない。でも、日本メーカーが海外でディーゼル車を販売する際、ディーゼル車自体のイメージ悪化で影響を受ける可能性はあります。一方、同じエコカーで日本メーカーが得意とするハイブリッド車（ＨＶ）の普及が進むかもしれません。
　（フランクフルト＝時事）
( ２０１５年０９月２９日，「赤旗」)

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独ＶＷ排ガス不正／元閣僚が業界トップ、規制に反対／政・業の癒着に批判噴出

米国で発覚したドイツ最大の自動車会社フォルクスワーゲン（ＶＷ）のディーゼル排ガスの環境基準不正問題に、ドイツ政界が揺れています。今回の不正の背景に、歴代政権が自動車業界と癒着してきたことがあるとの批判が噴出しています。
　（伊藤寿庸）

　企業による政府へのロビー活動を監視するドイツの非営利団体「ロビーコントロール」は「ドイツ政府は自動車産業を手厚く保護してきた」と指摘します。同団体によると「ドイツの自動車業界は、この国で最も強力で影響力のあるロビー団体の一つ」。中でもＶＷ社は「政治との極めて密接な関係」で知られています。

首相とも緊密に
　ＶＷ社はもともと、ナチスドイツの国策会社として出発。現在も北西部ニーダーザクセン州政府が株式の２０％を保有することが法律で保証されています。
　同州首相から連邦首相まで上り詰めたのが、社会民主党出身のシュレーダー前首相。同政権の報道官だったシュテーク氏は、現在ＶＷ社の主任ロビイストです。メルケル政権のガブリエル副首相らも同州首相として、ＶＷ社の経営陣に名を連ねたことがあります。
　ドイツ自動車工業会（ＶＤＡ）のウィスマン現会長は、キリスト教民主同盟（ＣＤＵ）主導のコール政権下の１９９３～９８年、自動車業界を管轄する運輸相を務めました。
　同政権で９４年、メルケル氏が環境相として初入閣し、翌年スモッグ対策として高速道路の速度制限や夏季の運転禁止を導入しようとしました。ところがウィスマン氏は自動車業界の意をくんで強硬に反対し、これをつぶしました。
　ウィスマン氏はＶＤＡトップに転じた後、メルケル首相と緊密な関係を維持。欧州連合（ＥＵ）が２０１３年、厳しい二酸化炭素（ＣＯ２）排出基準を検討していた際、ウィスマン氏が「親愛なアンゲラ」と首相のファーストネームで始まる手紙で、それに反対するよう求めていたことが発覚しました。
　ロイター通信によると、独政府は当時、ＥＵ内でＣＯ２排出基準を緩めるよう強硬に主張。メルケル氏は「環境保護を目指す私たちの行動が、自らの産業基盤を壊さないように保証する必要がある」と発言していました。
　その直後の総選挙でメルケル政権の３期目続投が決まると、メルケル氏の出身政党ＣＤＵは、独自動車大手のＢＭＷの支配権を持つ一族から計６９万ユーロ（現行レートで９３１５万円）の献金を受け取っています。

監督機関に疑問
　自動車業界を監督する連邦自動車運輸局は運輸省のもとに置かれており、独立性を疑問視されてきました。
　連邦議会で環境委員長を務める緑の党のヘーン議員は、ＥＵが数年前から、排ガス検査をごまかすコンピューター・ソフトウェアを自動車に搭載することを禁止するよう求めていたのに、独政府は応じなかったと批判。ＶＷだけでなく、すべての会社の自動車を対象に検査を実施すべきだとしています。
　ドイツ左翼党は「長年、国民や環境問題専門家は、独立した検査が必要だと主張してきたが、何も起こらなかった」と２５日の国会で指摘。環境団体や消費者団体の指名する専門家も加わった独立調査委員会を国会直属で設置することや、委員会が独自に排ガスの検査を行うことなどを要求しました。
( ２０１５年０９月２９日，「赤旗」)

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戦争法廃止へ声あげる／スタンディング／９条こそ抑止力／長野・下諏訪町

長野県下諏訪町の諏訪大社に向かう交差点で２７日、９人が参加し、スタンディング宣伝を行いました。時折、コールも行いアピールしました。諏訪湖・八ケ岳地域ぐるみの会の呼びかけで始まった宣伝は、３日から国会最終日まで毎日続け２５回目です。
　参加者は「日に日に反応がいい」といいます。平日には女子高校生が「私たちも同じ気持ち」と声をかけ、助手席から両手を振って通行する車や観光バスの乗客も手をふります。２７日は通りがかった男性が「日本の危機だ」。観光客の男性も「政権を変えるしかない」と声をかけていきました。
　参加した７８歳の男性は「『いい年して』っていわれても、許せない憤りでここに来ている。憲法９条こそが抑止力だ」と。小野真一郎さん（６５）は「何も意見を聞いていない。公聴会は形だけ、聞いたふりだけだ」と怒ります。６９歳の女性は「戦争へ導く法律だとみんなにわかってほしい」。武井秀夫さん（８３）は「一点共闘で政権を倒すことが大事だ。たたかう相手はファシストなんだから」と語りました。
　下諏訪町では廃止まで毎週木曜日にスタンディング宣伝を続ける予定です。
(２０１５年０９月２９日，「赤旗」)

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芸能テレビ／自国の戦争犯罪描くドイツ／顔のないヒトラーたち／ヒトラー暗殺、１３分の誤算

顔のないヒトラーたち・妨害はねのけ真実に迫る若い検察官／ヒトラー暗殺、１３分の誤算・村々に広がるナチ、ドキュメント風に
　戦後７０年の今年。ヒトラーの戦争犯罪、暗黒時代を告発したドイツの二つの劇映画が１０月、日本で公開されます。
　山本長春記者

　「顔のないヒトラーたち」（ジュリオ・リッチャレッリ監督）は３日公開。１９６３～６５年のアウシュビッツ裁判を題材に、西ドイツ（当時）の若い検察官の苦闘を描きます。強制収容所で虐殺に加担した元親衛隊員らを起訴。裁判では１７人が有罪になりました。
　１０月１６日公開は、オリヴァー・ヒルシュビーゲル監督の｢ヒトラー暗殺､１３分の誤算」。３９年、ミュンヘンで起きた暗殺未遂事件がテーマです。逮捕されたのは、ナチスの台頭に危機感を抱く３６歳の男性家具職人。終戦直前に処刑されました。
　「二つとも衝撃的な映画です」と語るのは映画評論家の石子順さん。
　「ナチ党員は１０００万人ともいわれ、戦後も市民の顔をして影響力を持った。『顔のない…』では、当初は功名心だった若い検察官が、ドイツ人の戦争犯罪に衝撃を受け、検察内外の妨害をはねのけ真実に迫る。見る者の心を揺さぶります」
　「ヒトラー暗殺…」について、望田幸男・同志社大学名誉教授（ドイツ近現代史）は言います。
　「地方の村々にまでナチスの影響が広がっていく状況変化の描写は、ドキュメント的で興味深い。同時に、普通のドイツ人のなかにも、ナチスへの抵抗が根強くあったことを知らせる上で劇的な効果があります」
　映画製作の背景は―。
　「ドイツは、ニュルンベルク国際裁判直後から、自国の刑法でナチスの犯罪を裁くことを続けています。欧州の世論が戦争犯罪を曖昧にせず、各国の信頼を得るうえでも、ドイツは徹底したナチス犯罪の追及が求められました」（望田さん）
　石子さんは、自国の戦争犯罪や抵抗運動を撮り続けるドイツ映画界の姿勢を指摘します。「ヒトラー～最期の１２日間～」（２００４年、オリヴァー監督）、「白バラの祈り」（０５年）などに続き、昨年の「シャトーブリアンからの手紙」を挙げます。
　「フランスのレジスタンスに対しナチスが共産党員らを処刑した犯罪を、ドイツ人監督が描きました。国外での加害責任にも向き合う姿勢に胸が震えました」

日本映画は…
　同じ敗戦国でも日本は―。「戦争犯罪の追及は東京裁判だけで、後は日本の政府は知らんふり。ドイツとは根本的に違います」と望田さん。
　今年、日本でも「野火」「おかあさんの木」など反戦映画が話題に。一方で天皇の戦争責任を免罪する「日本のいちばん長い日｣が公開されました｡石子さんは、「日本では侵略戦争、加害責任を真正面から描いた映画ができないのは残念な状況です。今回のドイツ映画は『歴史をみつめないと未来はない』と教えています。日本映画も批判精神の伝統を生かし強くなってほしいですね」。
(２０１５年０９月２７日，「赤旗」)

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記憶遺産「命のビザ」推薦／「上野三碑」も／ユネスコ日本委

国連教育科学文化機関（ユネスコ）の記憶遺産候補に、日本ユネスコ国内委員会は２４日、外交官杉原千畝（ちうね）が発行しナチスドイツの迫害から多くのユダヤ人を救った「命のビザ」の関連資料と、群馬県高崎市にある古代石碑「上野三碑（こうずけさんぴ）」を推薦すると発表しました。来年３月にも政府の推薦書を添え正式に申請。２０１７年の登録を目指します。
　記憶遺産の推薦は１カ国２件まで。
　命のビザなどの関連資料は、杉原氏の出身地・岐阜県八百津町（やおつちょう）が申請。駐リトアニア領事代理だった杉原氏が第２次大戦中にビザを発行したユダヤ人２１３９人のリストを含む外交文書やパスポート、手記などで構成します。
　上野三碑は飛鳥時代から奈良時代初期に建てられた「多胡碑（たごひ）」など高崎市内にある三つの石碑の総称で、地元の登録推進協議会が申請。漢字の伝達など東アジアの文化交流を示す貴重な記録とされました。
　記憶遺産は、文書や地図、絵画など歴史を記録した世界的に貴重な資料を保存するユネスコの事業。今年の審査に政府は国宝「東寺百合文書（とうじひゃくごうもんじょ）」と、「シベリア抑留に関する資料」（京都府舞鶴市）を推薦しており、１０月４日からアブダビで開く国際諮問委員会で登録の可否が決まります。
( ２０１５年０９月２５日，「赤旗」)

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安倍政権１０００日／立憲主義・民主主義・平和主義を破壊／巨大な運動に追い詰められ

安倍晋三首相が２０１２年１２月に首相に就任、自民、公明両党が政権復帰してから２１日で１０００日という節目となりました。安倍自公政権はこの節目を、自らつくり出した異常な政治状況のもとで迎えました。

基本的土俵壊す
　安倍政権と自民、公明の与党は、戦争法を１９日に強行成立させ、立憲主義という近代民主政治の基本的土俵を破壊しました。
　日本の政治は、政治の基本ルールを権力者が意図的暴力的に破壊するという、かつてナチスドイツが実行したような無法状態に陥っていると言って過言ではありません。政権は、戦争法成立後も「反対多数」の民意を無視し、その実行にのりだす姿勢です。
　日本国憲法前文は、民主主義、人権尊重主義とともに、「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し」という、強い平和への意思を込めて「この憲法を確定する」と宣言しました。とくに平和のために権力を制限する、立憲平和主義ともいうべき立場が示されています。平和的生存権、９条の戦争放棄・戦力不保持規定はその具体的現れです。
　この憲法のもとで、集団的自衛権の行使、米国の戦争への兵たん支援の全面的拡大、紛争地域での治安維持活動、平時からの米軍部隊の防護など、世界中で米軍の戦争にいつでもどのような形態でも協力する―。戦争法は、９条と平和主義、立憲主義を全面破壊するものであり、実質的な改憲です。国民の憲法改正権限を奪う国民主権の蹂躪（じゅうりん）です。
　戦争法案審議の「最終局面」で、参院安保法制特別委員会の締めくくり総括質疑を一方的に打ち切り、強行採決したことに象徴されるように、戦争法は質疑そのものに耐えられないほどボロボロでした。安倍政権は民主主義をズタズタに引き裂きました。

野党共闘で結束
　一方で、安倍政権は戦争法をつくると同時に、安倍政治に怒りを燃やす「憲法守れ」の巨大な人間の鎖を生み出しました。
　「九条の会」をはじめ、長年平和運動に取り組んできた草の根の人々に加え、学生、学者、子どもを持つ母親や若手弁護士、国際支援に取り組むＮＧＯなど、広範で個人レベルで立ち上がった市民による巨大な運動が全国的に形成されました。
　東日本大震災・原発事故後の、原発再稼働反対、秘密保護法反対、沖縄・米軍新基地建設反対などの世論の高揚も、そこに合流し拡大しています。
　強力な国民運動を背景に、日本共産党、民主党、維新の党、生活の党、社民党などによる野党共闘が最後まで強い結束を維持し、政権・与党とたたかったことは、戦争法案をぎりぎりまで追い詰める力となりました。

国民各層に衝撃
　安倍首相の１０００日目は、異常な安倍政治に対決する一大国民運動の形成という激動的局面にあります。
　この中で、日本共産党の志位和夫委員長は、「戦争法廃止の『国民連合政府』の実現」と「安倍政権打倒の新たなたたかい」を、戦争法強行成立のその日にいち早く提唱しました。異常な政治状態を回復し、立憲主義と民主主義を取り戻すため、日米同盟に対する態度など大きな政策的違いを置いて、他党との選挙協力を進める立場を表明。国民各層と政界に衝撃を呼んでいます。国民とともに進む立憲、平和、民主の統一戦線の推進は新しい日本への大きな可能性を秘めています。
　かつてない国民的結集を呼び起こした戦争法の強行が、「１強」といわれる安倍政権のターニングポイントとなることは間違いありません。
　（中祖寅一）

内閣支持率急落
　「第２次安倍内閣発足以降、初めて不支持率を下回った」（「読売」２１日付）、「第２次安倍内閣の発足以降、最も低かった」（「朝日」同）―。戦争法の強行成立を受けて全国紙・通信社が実施した世論調査では、安倍内閣の支持率急落ぶりがわかります。
　第２次安倍内閣の発足（２０１２年１２月２６日）直後に行った世論調査の支持率は６割台が大半でしたが、約１０００日間で支持率・不支持率は完全に逆転し、いまは３～４割台。「日経」調査（２１日付）では原発再稼働を「進めるべきではない」が５６％、１７年４月からの消費税率１０％への引き上げに「反対」が５７％と、いずれも賛成を大きく上回っています。
( ２０１５年０９月２２日，「赤旗」)

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習近平中国主席あす訪米／矛盾深化も協力関係確認へ

中国の習近平国家主席が２２～２８日、米国を訪問します。主席としての習氏の訪米は２０１３年６月以来２回目。今回初めて国賓として訪米し、２５日にワシントンでオバマ大統領と会談します。米中間の交流や協力が進む一方、両国間の矛盾や緊張も激しくなる中、首脳会談で何が話し合われるのか注目されます。
　（北京＝小林拓也、ワシントン＝島田峰隆）

　中国の王毅外相は１６日、北京市内で演説し、「中国はファシズム戦争勝利を基礎につくられた国際秩序に挑戦する理由もないし、国際システムを覆す動機もない」と強調。習主席の訪米を通じ「双方の発展方向と戦略的意図を再確認したい」と語りました。

米側の懸念念頭
　これは、中国が米国主導の国際秩序に挑戦しつつあるという米側の懸念を念頭においたものとみられます。中国主導のアジアインフラ投資銀行（ＡＩＩＢ）は年内に始動。中国が提唱するシルクロード経済圏（一帯一路）についても、米側には「中国の勢力範囲を定めるもの」との警戒感があります。
　そうした中、王外相は「今回の訪米で、両国の協力は新たな段階に進むだろう」と米中の協力の推進を訴えました。とくに、双方の企業に投資を促す「米中投資協定」締結に向けた協議の進展、経済や貿易、金融、気候変動などの分野で協力推進に期待しています。

重要性アピール
　習主席は訪米を西海岸のシアトルから開始します。中国メディアは、シアトルには多くの米大企業が本社を置き、米中経済協力にとって重要な場所だと指摘。習氏はシアトルで米経済界や市民らと交流し、米中関係の重要性をアピールするとみられます。
　習主席は１７日、北京で米企業の代表らと会談し、「今回の訪米で、両国指導者の友情を深め、各分野での協力を広げ、両国関係の新しいさらなる発展を推進したい」と呼びかけました。
　米中関係に詳しい中国外務省のシンクタンク・中国国際問題研究院の阮宗沢副院長は「中米関係に対しさまざまな考えがある中、習主席の訪米で、中米は協力パートナーになれるというメッセージが発信されることを期待する」と語りました。

「異なる意見、解決の機会」／ホワイトハウス発表
　ホワイトハウスは１５日の発表で、中国の習近平国家主席の訪米について、「国際的、地域的、および両国間の相互に関心のある一連の問題に関する協力を強めるとともに、オバマ大統領と習主席が意見の異なる分野の解決に建設的に取り組む機会」だとしています。
　１６日付の米紙ワシントン・ポストによると、ローズ米大統領副補佐官は、南シナ海での岩礁埋め立てや中国海軍の艦船がアラスカ沖の公海上で初確認されたことを挙げて、「習氏は予想したよりも主張の強い指導者だ」との認識を示しました。ローズ氏は「問題はそのしっかり主張する行為を米国の利益と合致した方向へ導くことができるかだ」と述べました。
　気候変動対策では、年末の国連気候変動枠組み条約第２１回締約国会議（ＣＯＰ２１）を前に、米中両国の積極姿勢をアピールする見込みです。両国の気候変動問題の交渉担当者は１５日、ロサンゼルスでの会合で、両国の都市や州、省などによる温室効果ガス削減の共同行動を発表しました。
　一方、南シナ海問題をめぐって、カーター米国防長官は１６日、「中国の行動は国際法や国際的な規範から逸脱している。アジア太平洋の安全保障の枠組みや、外交を支持し強制に反対する地域の合意を重視する決まりからの逸脱だ」と批判しました。
　ローズ米大統領副補佐官は、偶発的な衝突を避けるためにオバマ政権は中国との直接的な会合を強化してきたと指摘。「アジア地域の米国の同盟国は、米国に対し、中国を孤立させて困惑させるのではなく、中国に関与することを望んでいる」としました。
　サイバー攻撃問題について、オバマ大統領は１６日、「首脳会談での最大の議題の一つになる」と発言。制裁発動の可能性も示唆し、対策を求めました。
　対立点はあるものの、専門家からは、中東の混乱やウクライナ問題へ対処する中で「オバマ氏は米中関係での緊張の高まりを望んでいない」（米国のブルッキングズ研究所）という指摘が出ています。
( ２０１５年０９月２１日，「赤旗」)

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２０ 安保法制を問う本／違憲立法の廃止へ展望示す

国の根幹を揺るがす安保法制。法律の中身とともに、国民多数の反対や憲法学者・法律家の｢違憲｣の指摘を強引に押し切る安倍政権の手法を問う本が相次いで緊急出版されています。

政府が法秩序破壊
　長谷部恭男・杉田敦編『安保法制の何が問題か』（岩波書店・１７００円）は憲法学者など１５人の論文や対談で、安保法制がなぜ違憲か、集団的自衛権の「限定容認」のまやかし、「抑止力が高まる」は本当か―などを検証します。
　政府が、集団的自衛権の行使は「限定的」なもので憲法に反しないとするのに対し、長谷部氏（早稲田大教授）は、安倍首相が地球の裏側まで行って武力行使する用意があるのを隠そうとしないことを指摘し、「限定」する気が全くないのは明白だと批判します。
　石川健治・東大教授は、安保法制は「一見極めて明白に違憲」で、その強行は政府による「法秩序の連続性の破壊」であり、国民を置き去りにした「クーデター」「多数者による専制」だと指摘。その上で、クーデターに反対する幅広い国民の動きを「日本の立憲主義にとって歴史的な出来事」だと評価します。
　青井未帆・学習院大教授は、反対の声を上げ続けることが違憲な法律を執行させない｢大きな力になる｣と同時に「一票を投じる選挙権」の意義を強調します。伊藤真・伊藤塾塾長は、執行を押しとどめ、「今度はこの法律を廃止する法律を一つつくればいい」「そこに声を…送り続けていく」のが重要だとのべます。
　『現代思想』１０月臨時増刊号（青土社・１３００円）は「安保法案を問う」と題して４３人の論考を載せています。雨宮処凛氏は「国会の外では『民主主義の地殻変動』とも言うべき事態」が起きていると指摘。映画監督の想田和弘氏は、若者の運動が日本の民主主義に「『実』を与えていく」「災い転じて福となすことも十分に可能」といいます。

「平和憲法革命」
　栗田禎子・千葉大教授は、安保法制は「憲法に対するクーデタ」、推進勢力は民主主義の考え自体を否定する「ファシスト的相貌」を露呈していると喝破。それに対する国民の危機感が空前の反対運動を巻き起こし、「いかに国民が平和憲法に愛着を持っているか」が明らかになったといいます。市民一人ひとりが自覚的に憲法を選びつつある今の状況を、社会に深い変化を引き起こす「平和憲法革命」と名付けます。
　『砂川判決と戦争法案』（旬報社・８００円）は、米軍駐留の違憲性が問われた砂川事件裁判の当事者と担当弁護士が砂川判決とは何だったかを解説し、同判決を安保法制の合憲性のよりどころにする政府の言い分が「いかにインチキか」を明らかにしています。
　日本共産党の志位和夫委員長は高まる国民のうねりを「憲法の理念、民主主義の理念が国民にしっかり根をおろし成熟しつつある」と評しました。緊急出版されたこれらの本でも多くの識者が同様の認識を示し、違憲の法制を廃止させるたたかいに確信を与えます。
　（西沢亨子）
( ２０１５年０９月２０日，「赤旗」)

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朝の風／ベヒシュタインとヒトラー

ベヒシュタインといえば、世界的に有名なドイツのピアノ製造会社だが、今夏刊行された石田勇治著『ヒトラーとナチ･ドイツ』（講談社現代新書）に目をひく記述があった。
　「ヒトラーに、ポータブル型のタイプライターを寄贈したのは、ミュンヒェンの名士、ピアノ製作で有名なエトヴィン・ベヒシュタインの妻､ヘレーネ･ベヒシュタインだ。ベヒシュタイン夫妻は早くからのヒトラーの支援者で、エトヴィンは出獄したヒトラーに自家用車を買い与えている」
　ヒトラーの著書『我が闘争』は｢腹心ヘスの手をかりて口述筆記されたもの」と考えられてきたが、近年の研究によれば、ミュンヘン一揆後の獄中でタイプライターを使って自ら執筆したものという。１９２０年代から、同社は深い関係だったことがうかがえる。
　ところで、同社の日本代理店が作った「ベヒシュタインの歩み」という年表には、１９３２年の項で「ナチスの冷酷な迫害により移住を強制されたユダヤ人の顧客を大量に失ったことも会社に打撃を与えました｡当時､ベヒシュタインの楽器は、教養の高いユダヤ人家庭で愛用されていました｣と書かれている｡
　そのことは一面の事実だとしても、裏面の事実も見ておく必要があろう。
　（弩）
( ２０１５年０９月１５日，「赤旗」)

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国会緊迫／戦争法案ノー、与党の足元でも／創価学会員が泣いた／元公明党副委員長二見伸明さん

１２万人の国会前集会（８月３０日）をはじめ多くの集会に参加してきました。どこでも参加者の顔をみると、自分の意思、自分の判断で集会にこられたことがよくわかります。これが本当の意味での草の根民主運動です。日本の国の歴史に残る民主運動です。
　最近は集会で三色旗を持った創価学会の人によく会います。「元公明党副委員長の二見です」というと、私の手をとって泣かれる方もいます。私も「今の公明党の姿を見ると悲しくて泣きたくなる」と話しているんです。

通すな戦争法案／「抑止力」はもう古い／元公明党副委員長二見伸明さん

創価学会員が安保法案反対の集会に来るのは心の中では苦しいと思う。しかし、ここは勇気を奮い起こし、「公明党よ、目をさませ」と立ち上がってもらいたい。日本の未来がかかっている今こそ声を出すときです。
　日本は戦後７０年間、いろんな苦労・苦難があっても戦争はしませんでした。この平和国家日本を、戦争国家日本に変えようという安倍首相は確信犯的な異常なファシストです。なりふりかまわず、強行採決をねらってくるでしょう。
　しかし、どんな悪らつな手を使っても国民の力は絶対こわせません。力を合わせれば必ず押し返せます。
　この間の国会審議をみていると、安倍政権の論理は完全に破たんしています。集団的自衛権行使がなぜ必要か、その理由も説明できない。共産党の国会論戦はわかりやすくていいですよ。
　安倍首相は「抑止力」を持ち出してくるのですが、これはもう古い発想です。軍事力を強めて戦争がなくなるならもう戦争はなくなっていますよ。軍事力を強めれば相手も軍事力を強化し、戦争につながる。これは「抑止力のジレンマ」といわれます。北朝鮮問題にしても中国との紛争にしても、結局、外交で解決するしかありません。何としても憲法９条を守り抜きましょう。
(２０１５年０９月１３日，「赤旗」)

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１０ 朝の風／テレジンの小要塞

７月１日付本欄で紹介した「『プラハの春』音楽祭」の折、プラハ北方のテレジン小要塞を見学した。神聖ローマ帝国女帝マリア・テレジアから名をとったものだ。
　函館の五稜郭に似た小要塞は１８世紀末の創設当時から牢獄として使用され、軍人や中・南欧の民族運動の闘士らが投獄されていた。
　１９３９年、ナチス・ドイツがチェコを占領。４０年、小要塞はナチスのゲシュタポ（国家秘密警察）のプラハ本部刑務所となり、終戦までの囚人は３万２０００人（女性５０００人）を数えた。
　そのほとんどはチェコ人。大多数がレジスタンスの活動家で、その大半が重罪犯刑務所などへ移送され、約５５００人が殺害された。
　小要塞は当時のソ連人、ポーランド人、フランス人、ドイツ人が収容され、戦争末期は連合国軍の捕虜も収容されていた。
　ことに残酷に扱われたのはゲットー（強制隔離居住区）から投獄されたユダヤ人だった。
　戦争終結直前に小要塞で発疹チフスがまん延。当局の放置に４５年５月２日、チェコ人による自主的医療活動が始まった。５日のナチス軍の逃亡、８日のチェコ解放（プラハのみ９日）以前のことである。
　(千)
( ２０１５年０９月０９日，「赤旗」)

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文化通信／文系学部廃止政策／出版協が反対声明

日本出版社協議会は８月２７日、声明「国立大学の『文系学部廃止政策』に反対する」を発表しました。
　声明は、大学教育は若者の市民的成熟を支援するためにあるのであり、安倍政権の教養軽視の教育政策が進めば、政治や社会への批判的視点を持てない物言わぬ専門家が育成され、戦前のファシズムへ逆戻りすると指摘しています。
( ２０１５年０９月０９日，「赤旗」)

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戦争法案止める／私の一言／命脅かさないで／首相ウソだらけ

命脅かさないで
　東京都板橋区から、５歳と２歳の娘を連れ、夫（３２）と義父（７１）と参加した野崎知恵さん（３０）＝会社員＝　今日は、長女が描いたメッセージボードを持ってきました。子どもは自分で政治を決められません。この子たちが大きくなったとき、命を脅かすような日本にしたくなくて来ました。
　安倍総理は、戦争法案を、「国民を守るため」といいますが、国民のなかに自分が入っている気がしません。安倍さんが見ているのは、アメリカだと思います。
　（６日、東京・新宿歩行者天国での「学生と学者による街頭宣伝行動」で）

首相ウソだらけ
　群馬県桐生市から来た小林美恵子さん(３６）　「猫の生活が第一」を掲げる「肉球新党」のツイッターのフォロワーに８月下旬になりました。今日もけっこうたくさんの同志・「党員」がきています。
　安倍首相によって、ファシズム・恐怖政治に引き込まれそう。安倍さんの言っていることはウソだらけで、実際と逆のことばかり。２８年間ドイツに住んでいる友人が、そういった動きを見て「最近の日本は気持ち悪い」といっています。許せません。
　（同)
( ２０１５年０９月０８日，「赤旗」)

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戦争法案／廃案は参院の責務／仁比氏意見表明／憲法審査会

参院憲法審査会は７日、「二院制」をテーマに意見交換を行いました。野党議員からは、参議院で審議中の戦争法案を衆議院で再議決する「６０日ルール」の適用が取りざたされていることについて、「参議院の否定そのもので、断じて許してはいけない」と批判する意見などが出ました。
　日本共産党の仁比聡平議員は、「今、二院制をめぐり参議院に問われているのは、戦争法案を廃案にすることだ」と述べ、戦争法案が持つ違憲性、対米従属性を指摘。今国会での戦争法案成立に８割を超える国民が反対し、空前の法案反対行動が起こっていることをあげ、「この民意を正面から受け止めるのが参議院の責務だ。強行採決は絶対に許されない。世論に包囲され参議院で審議を続けているのに、衆議院が再議決するなど、国民主権の否定、ファシズムに他ならない」と述べました。
( ２０１５年０９月０８日，「赤旗」)

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朝の風／シールズの合言葉

戦後７０年、安倍政権は憲法を無視し戦争にかじ取りするが、それに反対する集会、世論は日本に民主主義や平和の思想が根づいていることを示した。国会周辺でシールズの学生が叫ぶノー・パサランを聞き、パウル・ツェランの詩｢シボレテ｣を思い出した。〈心よ、／きみが何者であるか明かせ、／ここでも、広場の中央でも。／叫べ、シボレテを叫べ、／故国の中の異国にむかって、／「二月」と｢ノオ･パサラン｣と〉(小寺昭次郎訳『現代ドイツ詩集』１９６３）
　シボレテは旧約聖書士師記の言葉。戦勝者ギレアド人がヨルダンの渡し場で「シボレテと言ってみろ」といった。エフライム人なまりがあると連行され４万２千人が殺された。壺井繁治の詩にも関東大震災の折、汽車が駅に着くたび兵隊が車内検索し「十五円五十銭と言ってみろ」といったとある。朝鮮人なまりがあると連行した。
　「二月」はオーストリア・ドルフス政府による１９３４年２月の左派弾圧のこと。「ノオ・パサラン」はフランコに抵抗した１９３６年のスペイン人民戦線の合言葉「やつらを通すな」である。
　シールズは「戦争法案を通すな」の思いに反ファシズムの世界史をかさねる。ツェランの詩で半世紀前にこの言葉を知った世代の筆者には心強い。
　（槐）
( ２０１５年０９月０７日，「赤旗」)

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９条は人類が実現すべきプロジェクト／山室教授のスピーチ／京大「安保法制反対集会」／要旨

京都大学人文科学研究所の山室信一教授（元衆議院法制局参事）が１日、「自由と平和のための京大有志の会」が京都大学で開いた「安保法制反対集会」で行ったスピーチの要旨を紹介します。

　私たちの研究所の先輩である鶴見俊輔さん（哲学者）の言葉で一番心に残っているのは「愚俗の信」に基づく平和という思想です。国際政治の専門家などの机上の安全保障論よりも、生命ある者として自分は人を殺したくない、あるいは殺されたくないという生活の実感から生まれた「愚俗の信」こそが戦争を防ぐ最後のとりでになるのではないかと訴えられました。
　民主主義というのは、集いの意識です。集まる中で多様な意見を聞く。今年の夏は津波のような国民の意思表示が全国津々浦々に響きました。戦後７０年の安倍首相談話ではなく、８月３０日の国会前１２万人、全国１０００カ所以上に集った人々の声が発露された夏として、長く記憶に残るのではないかと思います。
　菅官房長官や谷垣自民党幹事長は、「戦争法案」「徴兵反対」などと事実を歪曲（わいきょく）化したり、単純化していると言いました。しかし、国会審議をフォローしている限り、「戦争法案」ではないという事実は浮かび上がってきません。「存立危機事態」は、すべて政府がその時の状況を判断して決めるということになってきている。海外派兵についても、ホルムズ海峡以外には絶対あり得ないと断言されていたのに、参議院の審議では南シナ海という話に変わってきた。戦争するかしないかなどの決定が、すべて内閣に委ねられるのなら、それはナチスの授権法（全権委任法）と同じではないか。
　いよいよ、最終の決戦のときが近づきつつあります。私たちは何も恐れる必要はないはずです。国民の過半数が明確な反対の意思表示をすれば、それによってひとつの決着がつきます。
　「愚俗の信」にできることは、執拗（しつよう）に、したたかに、忘れない、あきらめないことです。
　フランスの哲学者、ボルテールは「魂について」という文章の中で言っています。「記憶力はミューズの女神たちの生みの親である」。本当に平和を創造しようと思ったら、記憶力を持つ、忘れない、あきらめないという思いが必要です。
　追い込まれた時に、はね返す力。その復元力こそが、民主主義の真髄である。私は、そう確信しています。
　想像する力、イマジネーション（想像力）こそが、クリエーティブ（創造性）、あるいはイノベーション（革新）を生み出す源泉となります。憲法９条を夢想として単なる理念として終わらせるのではなく、これから人類世界で実現すべき未完のプロジェクトとして、まだ完成していないけれど、日本から発信する人類の平和のあり方として、私たちは追求していきたいと思います。
( ２０１５年０９月０７日，「赤旗」)

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「命のビザ」記念プレートを設置／リトアニア

【ベルリン＝時事】第２次大戦中のリトアニアで、ナチス･ドイツに迫害されたユダヤ人に日本通過ビザを発給し数千人の命を救った日本人外交官、杉原千畝（すぎはら･ちうね）氏をたたえ、肖像と記録を刻んだプレートが中部カウナスのゆかりの地に設置され、４日、除幕式が行われました。
　設置されたのはメトロポリスホテルとカウナス駅。杉原氏はカウナスの日本領事館閉鎖後の１９４０年８月２８日からも滞在先の同ホテルで「命のビザ」を出し、９月４日にカウナス駅をたつ直前まで続けました。プレートにはこうした事実がリトアニア語、日本語、英語で記されました。
　４日は最後のビザ発給から７５年。在リトアニア日本大使館によると、一連の行事にはビザで命を救われたオーストラリア在住のマーセル・ウェイランドさん（８８）らも出席しました。
( ２０１５年０９月０７日，「赤旗」)

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言聞録／２０１５年８月３０日～９月５日

「デモではなく、犯罪だ」（ウクライナのアワコフ内相）＝３１日、首都キエフの国会前のデモで治安部隊に死者が出たことについて、デモを組織した民族派を非難。
　
　○「戦争を逃れた難民に対し、欧州各国は経済力や生産性、規模に応じて公平に負担を受け入れるべきだ」（メルケル独首相）＝１日、スペインのラホイ首相との共同会見で表明。
　
　○「中国が建設的な役割を果たすことを期待する」（韓国の朴槿恵〈パク・クネ〉大統領）＝２日、北京での中韓首脳会談で、北朝鮮が挑発行為を自制するよう中国側に協力を要請。
　
　○「法の適正手続きを尊重し、受け入れる」（グアテマラのペレスモリナ前大統領＝写真、ロイター）＝３日、汚職容疑で検察が逮捕状を取得したことを受け、裁判所に出頭後、記者団に表明。
　
　○「侵略の歴史の否定は歴史をもてあそぶことであり、人類の良識への侮辱だ」（中国の習近平国家主席）＝３日、北京で開かれた「抗日戦争・反ファシズム戦争勝利７０年の記念レセプションで演説。

　○「子どもたちは手をすり抜けてしまった。とても暗く、誰もが叫び声をあげていた」（シリアから欧州へ避難する途中、妻と２人の子どもを失ったアブドゥラさん）＝４日、トルコメディアに当時の様子を語る。
( ２０１５年０９月０７日，「赤旗」)

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中国主席「侵略否定は人類の良識への侮辱」

【北京＝小林拓也】中国の習近平国家主席は３日、北京の人民大会堂で開かれた「抗日戦争・反ファシズム戦争勝利７０年」の記念レセプションで演説し、「侵略の歴史の否定は、歴史をもてあそぶことであり、人類の良識への侮辱だ。必ず世界人民の信頼を失う」と述べました。名指しは避けたものの、安倍晋三首相の歴史認識を批判しました。
　習主席は「侵略戦争の性質を否定し、侵略戦争を歪曲（わいきょく）・美化し、侵略戦争の歴史的責任から逃れようとする一切の言動は、どのような形式であれ、どれほど聞こえがよくとも、自分も他人もだますものだ」と強く非難しました。
　戦後に生まれた世代でも、「正確な歴史観を堅持し、歴史の啓発と教訓を心に刻まなければならない」と強調しました。
( ２０１５年０９月０５日，「赤旗」)

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中国、兵力３０万人削減／抗日戦勝利７０年式典で宣言／パレードでは軍事力誇示

【北京＝小林拓也】中国の「反ファシズム戦争・抗日戦争勝利７０周年」記念日の３日、北京の天安門前で軍事パレードを含む記念式典が行われました。

　習近平国家主席が演説し、抗日戦争で中国は「日本軍国主義の野望を徹底的に粉砕し、近代以来の外国に侵略された民族の恥辱を洗い流した」と指摘。「この偉大な勝利は、中国の大国としての地位を再び確立し、中華民族の偉大な復興への前途を切り開いた」と述べ、反ファシズム戦争での中国の貢献を強調しました。その上で、反ファシズム戦争勝利の成果を守り、「人類への新しく大きな貢献のため努力する」と訴えました。
　また、「現在の世界はまだそれほど平和ではない」とし、「われわれは歴史をかがみとして、平和を守る決意を固めなければならない」と呼びかけ。中国は「平和発展の道を堅持する」とし、現兵力２３０万人から３０万人を削減すると宣言しました。
　式典の最後には、白いハトや色とりどりの風船が青空に放たれ、中国の軍拡への国際的批判が高まる中、「平和」を強調するものとなりました。
　約５０分の軍事パレードでは、１万２０００人の兵士が参加し、５００以上の装備と２００機近い航空機が披露されました。弾道ミサイルなども登場し、軍事のハイテク化を誇示しました。
　式典には、ロシアのプーチン大統領や韓国の朴槿恵（パク・クネ）大統領ら３１カ国の元首・首脳級が参加。国連の潘基文（パン・ギムン）事務総長も出席しました。江沢民元国家主席や胡錦濤前国家主席、李鵬元首相ら元最高指導部も顔を見せました。
　中国政府は、式典を「青空」で迎えるため、８月２０日から車の通行を半減させ、北京や周辺の工場の操業停止や生産制限などの措置をとりました。市内には厳戒態勢が敷かれ、２日夜から天安門周辺や軍事パレードが行われた長安街などを通行止めにし、中心部の地下鉄駅も封鎖。２日から中心部のレストランや店が強制休業となり、市民生活にも影響が出ました。
( ２０１５年０９月０４日，「赤旗」)

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中国に「花岡事件」記念園／強制連行の悲劇伝える／天津市

【天津＝時事】中国が抗日戦勝７０周年の記念日とする３日を前に、戦時中に強制連行された中国人労働者らが蜂起し多数の犠牲者を出した「花岡事件」の記念園が、天津市に完成しました。１日、現地で催された開園式には元労働者や遺族、天津市関係者ら約２００人が参加しました。

　大手ゼネコン鹿島との和解により設立された花岡平和友好基金や天津市民政局の主催。記念園は、被害者の遺骨を安置した記念館が建つ同市の「烈士陵園」内に整備され、約２０００平方㍍の広さがあります。
　式典では、祖父が強制連行された花岡受難者連誼会の張恩竜さん（３９）が「祖国は強大となり、歴史の悲劇を繰り返すことは決してない」と犠牲者に語り掛けました。
　中国にとって同事件は、祖国の尊厳を守るため勇敢にたたかった中国人民の偉大な気概を示す「世界反ファシズム戦争史の輝かしい一ページ」です。愛国・民族精神の発揚が強調され、強制連行や花岡事件の歴史を説明する記念館の展示も、７０周年に合わせてリニューアルされました。
　事件をめぐっては２０００年、使用者側の鹿島が元労働者らのために５億円の基金を設けることなどを条件に和解が成立。民間レベルで被害者救済を目指す先例にもなりました。
　戦時中の強制連行問題では、三菱マテリアルと元労働者側の和解交渉が大詰めを迎えています。記念園の開設に、主催者側は「歴史を心に刻み、日中の和解と平和友好を考えてほしい」と訴えました。

花岡事件
　終戦間近の１９４５年６月、秋田県大館市の花岡鉱山に強制連行され、鹿島組（現鹿島）の下で過酷な労働を強いられた中国人労働者が暴動を起こし、多数の死者を出した事件。この事件の犠牲者を含め、４００人以上が帰国できず死亡したとされます。元労働者側は鹿島を提訴し、２０００年に東京高裁で和解が成立しました。大館市でも毎年、慰霊式が開かれています。（北京＝時事）
( ２０１５年０９月０４日，「赤旗」)

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第２次大戦終結の日／慰霊施設訪問／ソ連兵に献花／ロシア大統領

【モスクワ＝時事】ロシアのプーチン大統領は２日、訪中の途上、極東ザバイカル地方チタに立ち寄り、ソ連兵の慰霊施設で献花しました。日本が降伏文書に調印した９月２日を、ロシアは「第２次大戦終結の日」として記念日にしています。
　サハリン（樺太）では２日、陸海空軍が初めてそろった軍事パレードが行われましたが、大統領は参加しませんでした。
　大統領は１日に配信された中ロの国営通信社によるインタビューで「欧州でもアジアでも大戦の歴史を見直す動きが見られる」と発言しました。
　さらに「（戦争）犯罪者に対する英雄化や名誉回復の動きは（ナチス・ドイツ戦犯を裁いた）ニュルンベルク裁判や東京裁判の決定の見直しという形で表れている」と指摘。「歴史の改ざんを許さない」とする立場を繰り返しました。
( ２０１５年０９月０３日，「赤旗」)

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中国、きょう抗日戦勝式典／各国首脳級集め軍事パレードも／市民〝規制厳しく見られない〟

【北京＝小林拓也】中国の反ファシズム戦争・抗日戦争勝利記念日である３日に、中国政府は北京の天安門前で記念式典を開き、軍事パレードを行います。式典に参加する韓国の朴槿恵大統領や、ロシアのプーチン大統領ら３０カ国の元首・政府首脳級が２日までに北京入り。国連の潘基文（パン・ギムン）事務総長ら１０の国際組織の責任者も出席します。
　中国外務省の張明外務次官は８月２５日の記者会見で、記念活動の目的は「世界の平和と発展を促進し、人類の美しい未来を切り開くためだ」と主張。「現在の日本や広範な日本国民に対するものではないし、現在の中日関係と直接の関係はない」と、「反日」の活動ではないことを強調しました。ただ、日本政府関係者は軍事パレードに参加しない見込みです。
　中国では１０月１日の国慶節（建国記念日）に軍事パレードを行うのが通例でした。最近は、１９９９年の建国５０年、２００９年の建国６０年にそれぞれ軍事パレードを実施。抗日戦勝記念日に軍事パレードを行うのは７０周年の今年が初めてです。
　北京市民からは「抗日戦争勝利での軍事パレードは当然だ」との声がある一方、「規制が厳しくて、見ることができないから関係ない」などと冷ややかな意見も聞こえます。
( ２０１５年０９月０３日，「赤旗」)

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対北外交努力を強化／中韓首脳会談で一致／６カ国協議再開へ協力

【北京＝小林拓也】反ファシズム戦争・抗日戦争勝利７０周年の記念式典に出席するため中国を訪問中の朴槿恵（パク・クネ）韓国大統領は２日、北京の人民大会堂で習近平国家主席と会談しました。両首脳は朝鮮半島の平和と安定のために、６カ国協議の再開など外交と対話を通じた解決を引き続き目指していくことを確認しました。

　両氏は会談の後に昼食会をともにしながら、計１時間４０分にわたって朝鮮半島や北東アジア情勢、中韓関係について意見交換。中国メディアによると、習氏は朝鮮半島情勢に関し、「状況を緊張させるどのような行動にも反対する」と述べ、「各方面が朝鮮半島非核化の目標を堅持し、６カ国協議の早期再開のために努力しなければならない」と訴えました。
　また、「韓国と北朝鮮が対話を通じた関係改善を続け和解と協力を推進し、自主的で平和的な統一を最終的に実現することを歓迎する」と表明しました。
　韓国側発表によると朴氏は、南北高官協議が８月２５日に軍事的緊張の解消、関係改善に向けた当局者会談の開催、離散家族再会事業の再開などで合意したことを説明し、中国が南北関係の改善を促進するために北朝鮮に働きかけるよう要請しました。
　朴氏は、北朝鮮が設置した地雷の爆発や、韓国側の宣伝放送設備への砲撃など、北朝鮮による「挑発行為」に言及し、「いつ緊張が高まるか分からない朝鮮半島の現実」を強調しました。
　その上で、北朝鮮が｢挑発行為｣を自制するよう､｢中国が建設的な役割を果たすことを期待する｣と表明｡「韓中両国の戦略的な協力と朝鮮半島の統一が地域の平和を実現する上でどれほど重要かを示している｣と述べました｡
　両氏の首脳会談は６回目。２０１４年７月の首脳会談後に発表した共同声明では、北朝鮮の核兵器開発に反対する立場を初めて首脳級の公式文書で明記しています。
( ２０１５年０９月０３日，「赤旗」)

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戦争法案廃案、大学人・市民ら連帯／「日本の危機」に行動／信州大学人の会がシンポ

信州大学と長野大学の教員の呼びかけで活動する「安保法制の撤回を求める信州大学人の会」は１日夜、長野県松本市で「新安保法制と日本の危機」をテーマに第２回シンポジウムを開き、専門的立場から多角的な議論を通じて問題を深めました。１５０人が参加し、廃案に向け行動を強めていくことにしました。
　久保亨（信州大、中国近現代史）、久保木匡介（長野大、憲法・行政法）、青木周平（信州大、経済学）の３氏が報告しました。
　久保氏は、「国同士の対立の多くは話し合いで解決してきた。軍事力で〝かたをつける〟のは危険だ」と警告。青木氏は、「戦後の諸制度はファシズムと戦争の反省の上に立つ」と１９７０年代以降の「福祉国家の危機」にもふれ経済から問題に接近しました。
　久保木氏は、戦後日本政治と改憲反対運動を詳しく述べ、自分も参加した８・３０国会包囲の感想を語り、「これだけの人が立ち上がったことに感動した。歴史の中で蓄積された国民の平和を守る運動が利いている。９月をたたかい切ることだ」と言い切りました。
　学生と学者の共同行動（７月３１日・東京）に参加した学生も発言。「それまで政治に距離を持っていたが、〝率直に意見を言ってみればいいんだ〟と変わって、友人とも積極的に議論するようになった。廃案にさせていく」と生き生きと語りました。
( ２０１５年０９月０３日，「赤旗」)

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潮流

東京湾を圧するかのように無数の軍艦が列をなした１９４５年９月２日。米戦艦ミズーリに乗り込んだ日本の全権団はポツダム宣言を受諾する降伏文書を交わしました▼日本が正式に降伏したＶＪデー（対日戦勝記念日）。この日を第２次世界大戦終結の節目とする国は多い。日本に侵略された中国も翌３日を抗日戦争勝利記念とし、今年から祝日としました▼きょう中国政府は「抗日戦争・世界反ファシズム戦争勝利７０周年」と題した行事を開きます。式典には国連の潘基文事務総長が出席しますが、会談した大島理森衆院議長は日本の政府や国民が懸念していると伝えました▼国連の中立性を問題にしているようですが、それを懸念する国民がどれほどいるのか。潘事務総長は「過去の教訓を学び、どのように未来に応用できるか学ぼうとしている」と、他の戦後式典や広島に国連の幹部を派遣したことをあげ、特別ではないと強調しています▼３０カ国の首脳も参加し、米国も国連事務総長の出席について「戦争の犠牲者を敬うことは適切」だと。式典とともに開く軍事パレードは不要ですが、「先の大戦への深い悔悟の念」（安倍談話）を誓うなら、どうしてこうした催しに背を向けるのか▼ドイツは節目の今年、改めて過去の過ちを認め、関連する式典でナチスの蛮行にたいする明確な謝罪と責任を口にしています。アジアの人びとを苦しめた反省もせず、戦後の立脚点さえ定まらない政治の無軌道ぶりは、国民や世界を不幸にするだけです。
( ２０１５年０９月０３日，「赤旗」)

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中国レセプションに緒方・穀田両氏出席

「中国人民抗日戦争・世界反ファシズム戦争勝利」７０周年記念レセプションが８月３１日、中国大使館でおこなわれ、日本共産党から緒方靖夫副委員長と穀田恵二衆議院議員が出席しました。
　緒方、穀田両氏は程永華中国大使とあいさつを交わすとともに、出席者と懇談しました。
( ２０１５年０９月０１日，「赤旗」)

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〝難民を守れ〟／独で連帯広がる／政治家・メディア、極右に対抗

【ベルリン＝時事】欧州に殺到する移民らの受け入れに極右勢力が反発を強める中で、ドイツのメディアや政治家、著名人が移民を守ろうと立ち上がっています。第２次大戦中にユダヤ人らを排斥したドイツにとって「外国人への寛容さ」は戦後築いてきた重要な価値観。移民だけでなくこうした戦後ドイツの「資産」も守れるのか、真価が問われています。

　独最大の部数を誇る大衆紙ビルトは８月３０日付で「難民歓迎。われわれは手助けする」と見出しを掲げ特集記事を載せました。各界１００人の声を取り上げています。
　記事ではノーベル文学賞作家ヘルタ・ミュラー氏が、「ナチスに追われた人々は（外国で）救われた。他国がドイツ人にしてくれたことをドイツもしなければならない」と訴えました。
　メルケル首相は２６日、極右勢力との衝突で警官多数が負傷した東部の町ハイデナウを訪問し、保護申請者に対する敵意に対し「嫌悪を覚える。一切容赦しない」と強い決意を示しました。
　今年のドイツは、保護申請者が最大８０万人に達し、過去最多を大幅に更新する見込みです。移民収容施設への放火などは上半期で約２００件と昨年１年間の総数を上回りましたた。最近も失業率が比較的高い旧東独地域で反移民デモや暴力行為が目立っています。
　郵便事業・物流大手ドイツポストＤＨＬのアペル社長はビルト紙上で「異なる文化圏の人の流入は比類ないチャンスだ」と強調し、国の将来像を前向きに捉えるよう呼び掛けました。サッカー独代表のトニ・クロース選手も「難民のおかげで私たちは自らの価値を改めて考え、他者への敬意を示す機会を得ている」と力説。連帯の輪が広がっています。
( ２０１５年０９月０１日，「赤旗」)

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（８月ヘッドライン）

３１

戦争しない未来を／政権よ、これが民意だ

戦争しない未来を／政権よ、これが民意だ／難病をおして参加／佐々木公一さん（６８）東京都府中市

朝の風／戦後７０年、異色の特集

松尾羊一のドラマのドラマ／戦後７０年の８・１５特集／「戦争と女性」描く３作品

主張／戦争反対、９条守れ／列島揺るがす、この声を聞け

朝の風／戦後７０年、異色の特集

潮流

トークとーく／栃木市の真言宗智山派・寶連寺住職齋藤昭俊さん／戦争と相いれぬ仏教／力合わせ法案阻止へ

「ナチスの障害者迫害」に迫る／２５、２６日ＮＨＫＥテレ「ハートネットＴＶ」／薗部英夫

難民に暴力的対応／欧州各国で極右や警察／ドイツ収容施設に放火

戦争へ進む日本の立法に反対／国際民主法律家協会が声明

２０

にちようシネマ館／ふたつの名前を持つ少年／ドイツ・フランス

鶴見俊輔さんをしのぶ／共産党に寄せ続けた信頼

あす終戦記念日／侵略と植民地支配の５１年／憲法を支えに戦後７０年／その１

あす終戦記念日／侵略と植民地支配の５１年／憲法を支えに戦後７０年／その２

映画／「あの日のように抱きしめて」（ドイツ）／壮絶さ超え人間の美徳へ

１０

今年１００万人来場／アウシュビッツの博物館

ヒトラーとナチ・ドイツ／石田勇治著／評者熊野直樹九州大学教授

止めよう戦争法案／いま声あげる／青年／弁護士／共同／ママ

旧日本軍巨大要塞訪ねて／数万人を強制労働／中国・内モンゴル・ハイラル

若者が不破さんに聞いた／日本の戦争と戦争法案／上／その１／１、日本の戦争

若者が不破さんに聞いた／日本の戦争と戦争法案／上／その２／２、戦後政治の流れ

戦争法案絶対阻止へ連帯／立場・世代超え／学生・学者共同行動／９氏語る

（８月本文）

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３１ 戦争しない未来を／政権よ、これが民意だ

いま動かなくちゃ／山之内真奈子さん（３２）＝岐阜県高山市、主婦
　憲法違反という意見や、世論も反対の人が多いのに推し進めているのを見ると、「日本に民主主義はないの？」と思ってしまいます。
　インターネット上でママの会など各地の情報を知ることができて、励みになっています。
　いま動かなくちゃ、言論の自由とかどんどんなくなってしまいそう。

首相はうそばかり／今村尚美（なおみ）さん（６３）＝名古屋市、図書館職員
　『女性自身』を見て、自分もきょうの１０万人の一人になりたいと思ってきました。
　子どものころから父が戦争の悲惨さを話していました。安倍さんの言ってることはうそばかりです。
　法案がだされてからは毎月９のつく日にチラシを配っています。あしたの朝もチラシをまくつもりです。

戦争止めたいだけ／蟻塚亮二さん（６８）＝福島県相馬市、精神科医
　沖縄で仕事をしていたときに、戦後６０年以上たってから発症した沖縄戦由来のＰＴＳＤ（心的外傷後ストレス障害）をみつけました。沖縄戦を体験した方々にとっては、戦争は終わっていないのです。沖縄・辺野古では、米軍の新基地建設に市民が反対しています。きょう、参加することで戦争を止めたい。それだけです。

何かしたいと思い／伊藤真世さん（３７）＝東京都渋谷区、派遣社員
　新聞で学生たちの行動や戦争体験者の記事を見たり、行動している友人の話を聞いたりして、「じっとしていられない、自分も何かできることがないか」と思っていました。駅前でビラを受け取り、行動に参加しました。すばらしい憲法９条を守りたい。できることをやって、大きなうねりをつくり廃案にしていきたいです。

政府は本当に怖い／黒田野香（やか）さん（３７）＝ルーマニアから一時帰国中
　ルーマニアから日本の国会の動きをニュースで見て、戦争に向かうのではと危機感を持っていたので、一時帰国した折には行動しようと決めていました。国民の意向とは反対に、違憲であっても政府がなし崩し的に進めてしまうのは本当に怖い。憲法を守り、何があっても外交で解決することが政治家のやるべきことです。

戦争体験者として／鹿子木徹（かのこぎ・とおる）さん（７５）＝神奈川県茅ケ崎市、茅ケ崎革新懇代表世話人・事務局長
　終戦の時､私は６歳でした｡父親は兵士として戦死し、戦争を強く憎んだ。戦争体験者として法案に反対です。
　地元では毎月９のつく日にはスタンディング行動をしています。基本はいつも１時間ほどの行動ですが最近は２時間に増やしました。来月５日には地元で大集会もやります。

子らに平和残そう／山内真理さん（３２）＝横浜市、自営業
　戦争につながることに賛成することはできません。未来の子どもたちに、戦争をさせる世界を残してはいけない。戦争は、国同士が、大企業の金もうけのために行うもので、犠牲になるのは国民、子ども、自衛隊員です。安倍首相は、「国民の理解がすすんでいない」なんていいますが、理解することは、一生ありません。

危険性を伝えたい／齋藤維（ゆい）さん（４２）＝右端＝埼玉県小鹿野町
　無所属の町議です。何か自分でできることをと行動してきました。８月の臨時議会で、共産党の議員さんが中心になって提出した安保法案の廃案を求める意見書が採択されました。１０歳、６歳、そしておなかの中にいる子も含め、子どもたちを絶対に戦争に行かせたくない。地元では、廃案にするために多くの人に危険性を伝えたい。

地域から声広げる／白石大輔さん（３３）＝千葉市　千葉土建職員
　安倍首相のやり方はファシズム的です。立憲主義の面からもなんとしても廃案にしたい。
　建設や医療は戦争に真っ先に駆り出されてしまう。自分も、子どもも、職場のだれも戦争に行かせたくない。２日と９日には房総半島からアベ暴走を止めようと宣伝行動をします。地域から草の根で広げて、多数の声にしたい。

運動続けて廃案に／小室恵子さん（６７）＝山梨県笛吹市（右）、森田智瑠さん（１８）＝東京都、大学１年
　孫と参加です。誰も戦争に行かせたくありません。運動を続けて廃案にするしかない。わが家も「アベ政治を許さない」ポスターを外に張りだします。(恵子さん)
　憲法９条があるのに海外の戦争に参加するのはおかしいと思う。若い人が自分たちのこととして声を上げていて良いと思う。（智瑠さん

憲法９条守りたい／宮田茂樹さん（７４）＝奈良市、年金生活者
　奈良市登美ケ丘九条の会のメンバーと一緒に参加しました。地元でも集会があるけど、全国の熱気に触れ、エネルギーをもらいたいと駆けつけました。戦争の時は４歳で、大阪で空襲を体験しました。憲法９条を守りたい、いてもたってもいられない思いです。
　最近は若い人がビラをよく受け取ってくれて、うれしいです。

安倍政権はやばい／曽根愛佳さん（２５）＝左＝、大貫由紀子さん（５０）＝いずれも神奈川県座間市、ダンス講師
　安倍政権の動きは「これはやばい」と体で感じる。そういう皮膚感覚をみんなもっと大事にしてほしい。（曽根さん）
　行動の１０万分の１になりにきました。ダンススタジオの教え子の講師や、生徒たちに声をかけてみんなで参加しています。生徒たちには正しい情報を伝えたい。（大貫さん）

みんなハッピーに／樋山智和（ひやま・ともかず）さん（２９）＝山梨県、医学生
　私が願うのは、自分がハッピーで、地域の住民のみんなもハッピーでありたいということです。いろんなボランティアを体験してきて、いま医者をめざしています。この行動に参加するといったら、友人にはビックリされましたが、この様子を写真に撮り、インターネットにもアップして、アピールしていきます。

子らの将来のため／遠藤大河さん（２６）＝東京都多摩市
　専門学校１年生　保育士を目指して専門学校で学びながら、保育士補助としてパートで働いています。その保育園の組合の方たちと一緒に、初めて行動に参加しました。戦争法案が通って、戦争になれば被害を受けるのは小さい子どもたちです。子どもたちの将来のために、少ない力ですが、働きかけていけたらと思っています。

武力で平和違和感／相原海（あいばら･かい)さん（３５）＝神奈川県南足柄市、農業
　１０万人のデモっていうのを体験しておきたい気持ちもあって参加しました。集団的自衛権がどうこうより、軍事力で平和を守るという考えに違和感があります。横暴な意見に、ちょっと待ってよっていえる方がいいし、実際にいえるこの国はいいなとデモに参加して思いました。この盛り上がりがどう広がるか見ていきたい。）
( ２０１５年０８月３１日，「赤旗」)

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戦争しない未来を／政権よ、これが民意だ／難病をおして参加／佐々木公一さん（６８）東京都府中市

「平和でなければ生きられない」
　難病の筋萎縮性側索硬化症（ＡＬＳ）を発症して１９年、人工呼吸器を着けて１６年の佐々木公一さん（６８）＝東京都府中市＝は、車いすに乗り、妻やヘルパーらと国会正門前に参加。文字盤を目で追いながら、話しました。「わくわくしています。革命記念日になるかもしれません」
　佐々木さんは、ナチスドイツがユダヤ人虐殺の前に自国の障害者２０万人を殺した事実を知り、驚きました。
　「戦争は価値観を統一します。戦争遂行にすべてが優先され、現場では固有名詞のない上官の命令がすべてを支配します。役に立たたない者は邪魔にされ、あるときは殺される」と佐々木さん。「私たちは、平和でなければ生きられないと痛感します」
　現在や将来に多大な影響を与える戦争法案に意見を言えないかと思案し、自宅でヘルパーに、安保関連法案特別委員会のメンバーに電話とファクスを依頼しました。これまで３巡終わりました。「廃案までがんばります」
( ２０１５年０８月３１日，「赤旗」)

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朝の風／戦後７０年、異色の特集

戦後７０年企画はさまざまにとりくまれているが、異色の特集を組んだところがある。一つは漫画誌『ビッグコミックオリジナル』増刊号だ。松本零士やさそうあきらなどの新旧の収録漫画は多彩で、無着成恭、横尾忠則らの７０年談話など盛りだくさん。
　その中で「漫画と戦争」（南信長）の特別コラムは、マンガを描くこと自体が非国民だったと手塚治虫の作品から説き起こし、戦場のロマンと不条理、銃後の生活、原爆の悲劇、ファシズムの恐怖、と俯瞰しているのは読みごたえがある。「この時代の『嫌な感じ』に声をあげましょう」という編集後記に、この特集のポリシーがある。
　今一つは、『キネマ旬報』増刊。降旗康男、池谷薫、大林宣彦らのインタビューに加え、アーカイブとして黒木和雄、今井正、岡本喜八、木下惠介、新藤兼人らを再録している。さらに７月に行われた戦争法案に反対する映画人たちの記者会見を６㌻にわたって詳報している。
　１００年後の読者も想定したという同誌の編集後記は次のように述べている。「２１１５年、どんな世界になっているか皆目見当もつかない。しかし、その年が戦後１７０年であることを、いま強く願っている」
　考えさせる言葉である。
　（聳）
( ２０１５年０８月３１日，「赤旗」)

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松尾羊一のドラマのドラマ／戦後７０年の８・１５特集／「戦争と女性」描く３作品

戦後７０年の節目は自民党・公明党による「戦争法案」の危機感もあって、８・１５をめぐる特集は質・量ともに例年をはるかに凌駕する映像でわれわれに迫りました。
　戦場体験をもつ９０歳前後の元兵士たちが一斉に重い口を開き、学徒出陣や勤労動員で戦場や軍需工場に駆り出された若い世代も戦争末期の悲惨な状況を語り、とくに印象的だったのは女性たちと戦争という視点から戦時生活を振り返り、一億総特攻の時代に触れた企画が目立ったことでした。
　３本のＮＨＫ作品にしぼりますと、まずドラマ「一番電車が走った」があります。無残な広島の実写映像の遠景に電車が走っています。被爆からわずか３日後です。しかも運転手や車掌は女学生です。戦争末期、広島の市電は男たちは召集や徴用にとられ女学生が運転し、仲良しグループの中には８月６日、運転中に被爆したものもいます。
　彼女たちや軍需工場の女学生は苛酷な労働から女の力と知恵を知り、働く女性の権利として戦後を拓いたのです。
　一方、戦場と向き合った従軍看護婦の記録は民放でもＴＢＳが２夜にわたりドラマ化（「レッドクロス」）しましたが、ＮＨＫスペシャル「女たちの太平洋戦争」は日本赤十字社の業務報告書をもとに描いていました。
　生き残った彼女たちの証言でビルマ（現ミャンマー）やフィリピンの激戦地では麻酔剤なしの手術など、目を覆う悲惨な光景が語られます。敵味方を問わぬ白衣の天使の理想が幻想に過ぎず、非人間的な現実に苦悩するばかりでした。
　「武士の娘　杉本鉞子とフローレンス」（ＢＳプレミアム）は英文で書いた『ア　ドウター　オブ　ザ　サムライ』（武士の娘）が長くアメリカでベストセラーになった秘話。若くして渡米した長岡藩の家老の家に生まれた娘、鉞子に寄り添うフローレンス。２人はお互いの生き方を尊敬しあい、生死を共にします。戦時中の日本に永住し、鉞子と生きるフローレンス。２人を結ぶ強い絆の原点とは何か。
　サムライのプライドと開拓者精神のピュリタニズム（清教徒主義）が流れる２人を結ぶ生涯は感動的です。
　戦争に至る偏狭なナショナリズムとは無縁な２人の生き方が暗示する崇高な倫理観。それは国家と国家が対峙する間にこそ欠かせない絆のはずです。日本ではあまり話題にならないこのエピソードは７０年特集の大きな収穫でした。
　戦後７０年は、夏の映像ジャーナリズムでは常に傍流だった「戦争と女性」というもう一つの新しい視座を確立しました。来夏も期待したいものです。
　（放送評論家）
( ２０１５年０８月３１日，「赤旗」)

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主張／戦争反対、９条守れ／列島揺るがす、この声を聞け

「戦争法案、絶対廃案！」「安倍政権はただちに退陣！」―。地鳴りのようなコールが何度も繰り返され、色鮮やかなプラカードが揺れます｡国会議事堂の正門前は､身動きできぬほどの人波で埋まり、雨天を吹き飛ばす勢いの熱気で満ちあふれました。国会周辺で１２万人が参加、全国１０００カ所以上で繰り広げられた「戦争法案廃案！安倍政権退陣！８・３０国会１０万人・全国１００万人大行動」。戦後史に刻まれる、文字通り空前の規模となりました。日本列島に響きわたる「戦争法案廃案」の声を聞き、安倍晋三首相は戦争法案強行をきっぱり断念すべきです。

「黙ってはいられない」
　国会前は何時間も前から多くの人たちが続々と駆けつけ、行動開始前には車道も参加者で埋まりました。「未来へ平和のバトンをわたそう」と書かれたＴシャツを着た女性、「だれの子どももころさせない」と訴えるプラカード。父親に手を引かれた男の子が「戦争行きたくない」のプラカードを持ちます。一人ひとりの思いが切々と伝わります。参加者の多くが共通して口にするのは「安倍首相のむちゃくちゃなやり方に黙っていられない」気持ちです。
　安倍政権が戦争法案の衆院可決を数の力で強行し、参院で審議が始まって１カ月、審議がすすめばすすむほど、自衛隊をアメリカの戦争に参戦させる法案の危険性が鮮明になり、「国民の命を守る」という安倍首相の口実がまったく成り立たないことがいよいよ浮き彫りなってきています。国会論戦で、安倍首相や閣僚は、法案についてきちんと答弁できず、法案を審議する特別委員会での審議中断は７７回を数える異常事態となっています。政府自体がまともに説明できないボロボロの法案は廃案にすべきなのに、安倍政権は、参院での早期採決、衆院での再議決まで狙う、国民世論に完全に逆行する姿勢をあらわにしています。
　「戦争させない・９条壊すな！総がかり行動実行委員会」が呼びかけた３０日の行動は、安倍政権の国民無視の暴走を絶対に許さない、全国規模での巨大な意思表示です。東京では、多くの参加者が国会を包囲しただけでなく、官庁街の霞が関や日比谷まであふれました。全国的には大阪市の扇町公園２万５０００人をはじめ大小あわせた多彩な行動が１０００カ所を超えました｡全国いっせいに｢強行採決絶対反対！」などのコールが続いた光景は、まさに圧巻です。
　国会前で、日本共産党の志位和夫委員長が「ここが正念場です。絶対に止めようではありませんか」と力強く呼びかけ、民主、社民、生活の党首と手をつなぐと、「頑張って！」と大きな声援が飛び、激励の拍手がどっとわきました。戦争法案を廃案に追い込むために、国会の中と外で力を合わせてたたかいぬくことが、いよいよ重要です。

未来をかけ廃案必ず
　平和と憲法の危機に全国津々浦々で、世代を超えてこれほどの規模で立ち上がったことは、戦後７０年、日本の民主主義が社会に深く根を張り成長していることの証明です。国民の声を無視して戦争法案をあくまで強行することは独裁政治にほかなりません。安倍政権をさらに追い込むたたかいを、大いに広げ、戦争法案を必ず廃案にしようではありませんか。
( ２０１５年０８月３１日，「赤旗」)

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朝の風／戦後７０年、異色の特集

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潮流

「こうやって路上に立つことは恥ずべきことではありません。私は後悔して、声を押し殺して泣くようなことはしたくはない」。２３日のＳＥＡＬＤｓの行動での女子学生の胸打つスピーチの一節です▼この決意を聞いて、７９年前スペイン内戦でドロレス・イバルリが発した「ひざを屈して生きるより、立ちはだかって死のう」というよびかけを思い出しました。内戦が始まった翌日、ラジオで流れたスペイン共産党の女性指導者の言葉です▼イバルリはつづけて、歴史に残るスローガンでたたかいを励ましました。「ノー・パサラン！」（奴らを通すな）。以来、新聞で集会で、マドリードの通りに渡した横断幕で繰り返し使われ、反ファシズム闘争の合言葉になりました▼「奴ら」とは誰か。１９３６年の総選挙で勝利した人民戦線政府の転覆をはかろうとした、フランコ将軍率いる反乱軍です。ファシスト国家の独、伊から大量の武器援助を受けたファシストたちです▼ノー・パサランは、１９７９年にニカラグアの独裁政権を倒したサンディニスタ民族解放戦線のテーマソングの一つにもなりました。「我々が勝つのだ、愛しい人よ／奴らを通しはしない…たとえ私たちが一緒でなくても君に誓うよ／決して奴らを通しはしないと」（八木啓代訳）▼「ノー・パサラン」｢奴らを通すな｣はいま、戦争法案を通すなの熱い思いを込めて、ＳＥＡＬＤｓのコールの中で叫ばれています。きょう全国で、同じ思いをもった１００万人が声をあげます。
( ２０１５年０８月３０日，「赤旗」)

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トークとーく／栃木市の真言宗智山派・寶連寺住職齋藤昭俊さん／戦争と相いれぬ仏教／力合わせ法案阻止へ

栃木県栃木市の寶連（ほうれん）寺住職の齋藤昭俊さん（８５）は、憲法９条を破壊する「戦争法案」の成立を何としても阻止したいと声をあげ、地域で行動しています。その思いを聞きました。
　（聞き手　栃木県・団原敬）

　私が１０代だった戦時中は「２０歳まで生きられればよし」とされた時代でした。３３㍉機関砲をつくっていた軍需工場で終戦を迎えました。平和と命を奪う戦争は、絶対に繰り返させてはなりません。
　安倍首相の「戦後７０年談話」には、心がこもっていません。「植民地支配」「侵略」「お詫（わ）び」などの文字を散りばめただけで、おざなりの言葉です。中国や韓国を侵略した事実を認め、反省した「村山（首相の）談話」を真摯（しんし）に引き継いでいません。
　安倍政権は、ナチスの戦争犯罪と決別する意思と行動を取り続けているドイツ政府とは大違いです。
　小池晃参院議員が国会で暴露した戦争法案成立を前提にした自衛隊の「内部文書」をめぐり、中谷元・防衛大臣は、お盆前の１１日には「知らない」と答弁し、１９日には一転、「私の指示で作成した」と真逆の答弁で開き直る始末です。
　国会での議論を通じて、口癖のように「積極的平和主義」と強調する安倍首相の狙いが、世界の宝である憲法９条を事実上破壊して、米軍指揮下に自衛隊を置き、日本を海外で戦争する国につくりかえることにあることが、ハッキリしてきました。
　仏教の教えの中に「山川草木悉く皆成仏」という言葉があります。人間だけが生きているのではなく、自然と共生してこそ、人の命も育まれるとの考えです。仏教は、平和と命を尊ぶ思想です。平和と命を奪う戦争に導く動きとは、本来相いれない立場です。
　先日、大学の同期で大学教授なども務めた友人からはがきが届きました。文末には、安倍首相への怒りの言葉に続いて「日本の行方が心から心配です」と書かれてありました。安倍政権への怒りが劇的に広がっていると実感しました。
　「アベ政治を許さない」とのポスターを、寺の境内正面のガラス戸に張り出しました。「憲法９条を守れ、戦争法案は許さない」の一点で一人ひとりが力をあわせれば、法案の成立は阻止できます。頑張りましょう。

　さいとう・あきとし　１９３０年栃木県生まれ。栃木市・寶連（ほうれん）寺住職。文学博士、大正大学名誉教授、日本仏教教育学会名誉会長、太平山麓九条の会代表。
(２０１５年０８月２８日，「赤旗」)

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「ナチスの障害者迫害」に迫る／２５、２６日ＮＨＫＥテレ「ハートネットＴＶ」／薗部英夫

ＮＨＫＥテレは今週の「ハートネットＴＶ」で「戦後７０年・障害者と戦争～ナチスから迫害された障害者たち」を放送します。２５日「２０万人の大虐殺はなぜ起きたのか」、２６日「ある視覚障害者の抵抗」です。両日とも、日本障害者協議会代表で視覚障害者の藤井克徳さんが現地を訪ね、当時を知る人びとと対話します。
　ユダヤ人の大虐殺＝ホロコーストより前に、ナチスによって２０万人の障害者が虐殺されていた―「Ｔ４」とよばれるこの計画は、ドイツ国内六つの施設で実行され、５０人の精神科医が動員されました。ユダヤ人虐殺の事実は証言されてきましたが、その前に障害者の虐殺があったことは、これまでほとんど語られていません。２５日の放送で歴史の真実が解き明かされます。
　２６日は、迫害されたユダヤ人や障害者を命がけで守った作業所の存在と、その運営者で自らも視覚障害者であったオットー・バイトの足跡をたどります。
　映像を通して日本にこうした事実が伝えられるのは、今回が初めてです。
　戦争に役立たない者の生存を否定し、真っ先に命を奪った「Ｔ４計画」。それはまぎれもなく、戦争への道標であったことを、ドイツの歴史から知ることができます。日本においても、戦時下、障害者は非国民、ごくつぶしと罵られ、人間扱いされませんでした。障害者の生きる権利が根こそぎ奪われようとするとき、平和が脅かされる。障害者問題から戦争と平和を考えさせる内容です。
　（日本障害者協議会副代表）
( ２０１５年０８月２４日，「赤旗」)

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難民に暴力的対応／欧州各国で極右や警察／ドイツ収容施設に放火

中東やアフリカから欧州を目指す難民が急増していますが、これらの難民に対し、極右や警察などが暴力をふるう事例が顕著になっています。ドイツ国営第２テレビ（ＺＤＦ）は、「平和と民主主義を求めて、欧州連合（ＥＵ）をつくった欧州が、戦争から逃れ助けを求めてくる人々をこのように扱っていいのか」とコメントしました。

　最大の受け入れ国ドイツでは、極右勢力による収容施設への放火や暴力事件が頻発。２２日も東部ザクセン州ドレスデン近郊のハイデナウで難民を守ろうとする警官隊と極右が衝突しました。
　ドイツ・メディアによると、ハイデナウの難民収容施設に難民２５０人が深夜１時に入居しようとしたところ、待ち受けていた極右のデモ隊が石やビン、爆音花火を投げつけました。警官隊も催涙弾を発射して応酬、双方の十数人が負傷しました。
　４月には東部ザクセン・アンハルト州の難民収容施設が放火され、７月にはザクセン州ライプチヒ近郊の難民施設に銃弾が撃ち込まれる事件が起こっています。
　ドイツは第２次世界大戦中にナチスによるユダヤ人やロマ迫害など人種差別をしてきた過去の反省から、これまで難民には比較的寛容な政策を取り、過去にはボスニア・ヘルツェゴビナやコソボからの難民を受け入れてきました。
　しかし、亡命を申請する難民など保護申請者は年々増加し、「今年は年間で最大８０万人が見込まれ」（独内務省）、急増への懸念もでています。こうしたなか、極右が人種差別をあおる事態となっています。
　昨年秋以来、極右組織「西洋のイスラム化に反対する愛国的欧州人」（ペギーダ）が伸張し、地方議会で議席を獲得しており、対抗する人々のデモとのにらみ合いは続いています。
　一方、英独仏伊などを目指す難民の経由国では、警官隊が難民の流入を阻止するための暴力的な対応が目立っています。
　欧州東部のマケドニアは２０日、難民流入で緊急事態を宣言。警官が催涙弾、発光弾などを発射し、子どもを含む難民多数が負傷しました。ハンガリーでは、隣国セルビアとの国境沿いに１７５㌔㍍に及ぶフェンスの「壁」建設に着手し、難民流入への監視を強めています。
　ＥＵは難民対策で、受け入れ分担を決めていますが、強制割り当てではなく各国の自主申告によるもので、ハンガリーやオーストリアは全面的に拒否しています。
　（片岡正明）
( ２０１５年０８月２４日，「赤旗」)

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戦争へ進む日本の立法に反対／国際民主法律家協会が声明

世界９０カ国の法律家でつくる国際民主法律家協会（ＩＡＤＬ）は「戦争へと進む日本の立法に反対する」声明を発表しました。ＩＡＤＬ執行部と日本国際法律家協会（ＪＡＬＩＳＡ）は２０日、東京都内で記者会見しました。
　ナチスに対抗したレジスタンスの法律家を中心に創立されたＩＡＤＬは日本国憲法９条を支持し、世界平和を促進するため、９条とその理念を広げる運動を行っています。
　声明は９条を破壊する集団的自衛権の行使容認に強い懸念を表明。「平和条項としての９条の解釈にとどまらず、第２次世界大戦の降伏文書、ポツダム宣言、ならびに国連憲章２条４項（武力行使の禁止）から導き出された、国際的な義務を実現するための法でもある。すなわち９条は、国際法のもとで法的拘束力を有するのである」とのべ、「日本政府がすべての戦争を放棄し続けるよう求め」ています。
　ＩＡＤＬ執行部の新倉修青山学院大学大学院教授は「ＩＡＤＬに加盟する各国の協会と協力し政府に働きかけ、国際世論をつくり上げたい」と話しました。
　参院安保法制特別委員会で日本共産党の小池晃議員が暴露した自衛隊統合幕僚監部の内部文書について、大熊政一ＪＡＬＩＳＡ会長は「言語道断だ。法案成立前なのに、詳細に規定している。完全に米軍に従属してたたかうという内容も問題だ」と批判しました。
( ２０１５年０８月２１日，「赤旗」)

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２０ にちようシネマ館／ふたつの名前を持つ少年／ドイツ・フランス

ポーランドの厳しくも美しい農村で、ユダヤ人の少年はナチスの追跡から生き抜きます。実話をもとにペペ・ダンカート監督が映画化。
　１９４２年春、ワルシャワのゲットー（ユダヤ人強制居住区）を脱出した８歳のスルリック（アンジェイ＆カミル・トカチ）。父親はドイツ軍に殺される前、言います。「親は忘れろ、名前を変え生き残れ」。パルチザンにくみする農婦に助けられ、「ユレク」と名前を変え逃避行。農家の手伝いで命をつなぎ、捕らわれたドイツ軍からも逃れ、右手を失う事故にも遭います。
　オーディションで選ばれた子役の力強さ。ファシズム下で少年を助ける農村の温かさに救われます。
　（山）
(２０１５年０８月１６日，「赤旗」)

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鶴見俊輔さんをしのぶ／共産党に寄せ続けた信頼

「九条の会」の呼びかけ人の一人であり、哲学者で評論家の鶴見俊輔さんが７月２０日、肺炎のため死去しました。９３歳でした。
　１９２２年東京都生まれ。３８年に渡米し、翌年ハーバード大学哲学科に入学。日米開戦後、捕虜交換船で帰国し、４３年に海軍軍属としてジャワ島に勤務しました。
　この戦争体験と、「反戦のため自分は何もできなかった」という後悔が、戦後、平和運動に積極的に参加する動機となりました。
　４６年に姉で社会科学者の鶴見和子らと『思想の科学』を創刊。まんが、漫才などの大衆文化にいち早く注目しました。
　２００４年、評論家の加藤周一、ノーベル賞作家の大江健三郎氏らとともに９人の呼びかけ人の一人として「九条の会」を設立。憲法９条を守る運動の先頭に立ち、各地で講演しました。
　戦前、侵略戦争反対、主権在民を掲げて揺るがなかった日本共産党を「それを見ることによって、自分がどのていど時流に流されたか…を計る尺度」（『現代日本の思想』岩波新書、５６年）として、「北斗七星」にたとえたこともあります。
　晩年、「しんぶん赤旗」にたびたび登場し、共産党への信頼と期待を語りました。（別項）
　記者も何度か取材でお会いしました。日ごろは明るく穏やかでしたが、政権批判に及ぶ時など、眼光鋭く厳しい表情を見せました。表情の豊かな、好奇心の固まり。権力におもねらない自称「不良少年」にふさわしく、純粋さを失わない人でした。
　北村隆志記者

鶴見さんのインタビューから
■「私は…日本共産党と同じ年なんです。同時代を生きてきたものとして、戦後、一貫して共産党を支持し、投票してきました。日本が起こし１５年続いた戦争にこの党が反対を貫いたからです。これは歴史的事実として、すごいことです。私はそのことに脱帽し、敬意を持っています」（日曜版２００４年７月４日号）
■「共産党はいまの政治家で体制を担っている人と逆の側に立っているから、〝無関心層〟と背中を接しているんですよ。（中略）〝無関心層〟をしかるのではなく、ぜひこの状況をいかしてほしい」（日刊紙１９９８年６月１８日付）
■「私の信条は『反・反共』なんです。それは変わりません。反共に固まることがファシズムの極意であり、ファシズムに行くとすればそこからです」（日刊紙２００１年７月１４日付）
■「日本の今回のテロに対する対応は憲法の枠内で行うべきです。憲法も踏みにじってアメリカに協力するのでなく、憲法の枠内で何ができるかを考えてほしい」（日刊紙２００１年９月３０日付）
(２０１５年０８月１６日，「赤旗」)

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あす終戦記念日／侵略と植民地支配の５１年／憲法を支えに戦後７０年／その１

これを「間違った戦争」と認めない安倍政権

　「戦争する国」づくりへ安倍晋三政権が成立をねらう戦争法案の国会審議がつづくなか、戦後７０年の敗戦の日を迎えます。日本の戦争が何を意味しているのか、また戦後の日本の歩みから何がいえるのかをみました。

「非戦の感性、捨てるのか」
　「いつも国会前に立つと、かつての戦争に短い生涯を強いられた先人たちが近くにいてがんばれと背中を押してくれる気がするんです。憲法９条に表された非戦の感性を軽薄に投げ捨てることは、あの悲惨な戦争で亡くなった先人にたいしあまりにも冒とく的な態度ではないでしょうか」
　７月末に国会近くで開かれた戦争法案に反対する「学生と学者の共同行動」で、千葉奉真さん＝明治大学大学院生＝がこう話しました。「非戦の感性」を受け継ぐ思いに満ちた発言でした。
　中国への侵略戦争とつづくアジア・太平洋戦争の１４年間に、２０００万人以上のアジア諸国民と、３１０万人の日本国民が犠牲になりました。日本の戦争は台湾を奪い取った日清戦争（１８９４年開始）から実に５１年になります。
　日本は１９４５年８月１４日に米・英・中をはじめとする連合国のポツダム宣言を受け入れました。この宣言はカイロ宣言（４３年）の実行を明記し、日本が日清戦争で「盗取」した台湾を中国に戻すこと、朝鮮の「自由独立」を求めました。ポツダム宣言は５０年をこえる日本の侵略戦争と植民地支配の全体に審判を下したものでした。

ネルー「日本は恥知らず」
　日清戦争、日露戦争とはどういう戦争だったのでしょうか。
　明治維新（１８６８年）で資本主義の道に入った日本の指導者たちは、早く欧米列強と肩をならべて植民地をもつ帝国主義大国になることをめざしました。最初に目をつけたのが朝鮮でした。当時朝鮮半島は清国の権益とされていて、日本と清国のどちらが朝鮮半島の支配権をとるかが、日清戦争のいちばんの問題でした。
　日本はまず朝鮮の王宮を占領し国王をとらえたうえで、先制攻撃で清国への戦争を開始しました。清国に勝利して、台湾を奪うとともに、朝鮮を支配下におきました。日本は戦争後、公使（大使）指揮のもと王宮に乱入、反日の中心だった朝鮮王妃・明成皇后（閔妃、ミンピ）を殺害しました｡１９１０年には韓国併合条約を強要し植民地にしました。
　日清戦争で奪えなかった満州（中国東北部）の権益をめざして始めたのが、日露戦争（１９０４年開始）でした。これも日本は仁川・旅順での先制攻撃で戦争をはじめ、勝利後の講和条約で、南満州鉄道（満鉄）の権益をとり、ロシア領の南樺太もとりました。
　戦後７０年の安倍首相談話についての有識者懇談会の報告書（６日）は、日本が日露戦争で勝利したことが「多くの非西洋の植民地の人々を勇気づけた」「植民地化にブレーキをかけた」とのべています。しかし、事実は正反対で、日露戦争は満州と朝鮮半島の支配をめぐる日露双方からの侵略戦争でした。
　インド独立運動の指導者で戦後最初のインド首相になったネルーは、著書で日露戦争での日本の勝利がアジアの諸国民を喜ばせたとのべたすぐ後で、次のように実態を告発しています。
　「ところが、その直後の成果は、少数の侵略的帝国主義諸国のグループに、もう一国をつけ加えたというにすぎなかった。そのにがい結果を、まずさいしょになめたのは、朝鮮であった」「日本はその帝国政策を遂行するにあたって、まったく恥を知らなかった。日本はヴェールでいつわる用意もせずに、大っぴらで漁りまわった」（『父が子に語る世界歴史』）

中国領土を「生命線」と
　日本の次の標的は、中国でした。３１年９月、中国の関東州に配置された日本の関東軍は、南満州鉄道を自分で爆破して「中国に攻撃された」という謀略で戦争をはじめました（満州事変）。政府は現地の日本外交官から「日本軍が爆破したようだ」という電報をうけとりながら戦争を容認。昭和天皇も翌年には「関東軍の将兵は果断神速」「その忠烈を嘉(よみ)す」と称賛する勅語をだしました。
　満州事変に先立ち、後に外務大臣になる松岡洋右元満鉄副総裁が「満蒙は我が国の生命線である」という議会演説をおこない、これが侵略戦争のスローガンとして広がりました。いずれも中国領の満州と内蒙古が日本存立のために不可欠だという宣伝です。
　安倍内閣の戦争法案でいう「存立危機事態」の存立と同じ理屈です。〝狭い国土の日本が生きるうえで他国の領土がどうしても必要だ〟という手前勝手な侵略の口実でした。
　１９３７年７月の盧溝橋事件によって中国全土に侵略戦争を広げた日本は、国民党政権の首都だった南京での大虐殺など幾多の事件をおこし、「三光作戦」（焼きつくし、殺しつくし、奪いつくす）といわれた蛮行をひろげました。しかし、中国人民の抗日解放運動の全土での高揚を前にして、敗戦の日まで、抜け出せない戦争の泥沼に入り込んでいったのです。

戦争違法化の流れに逆行
　日本の戦争は、戦争そのものを違法とした第１次世界大戦（１９１４～９年）以後の世界の流れにも逆らうものでした。
　兵器の近代化による第１次世界大戦の未曽有の惨害や、ロシア革命後の世界的な革命運動と反戦平和運動の高揚によって、世界は戦争そのものを違法とする方向に動き出していたのです。１９２８年にはパリ不戦条約の締結へと発展し、戦争放棄、紛争の平和的解決が協定されるにいたりました。
　ところが、日本はみずから参加した国際法のとりきめを踏みにじり、「満州事変」をおこし、３３年には国際連盟を脱退、３７年に中国への全面戦争を開始し、４０年９月に軍国主義とファシズムの日独伊三国同盟を結んで、世界再分割をめざす第２次世界大戦の起爆国になりました。領土拡張と資源獲得をめざし「大東亜共栄圏」の名でアジア・太平洋地域の侵略にのりだしたのです。
　日本が「満州事変」といい、日中全面戦争を「日華事変」といったのは、当時「中立法」の下にあった米国からの物資輸入が止められるのを恐れたこと、また「戦争」というと捕虜の扱いなど戦時国際法を守らなければならなくなり、手を縛られたくないという戦争指導部の思惑もありました。このことが中国と東南アジアでの捕虜虐待や住民の大量殺害を生む重大要因の一つになりました。

決断遅れ国民全体が犠牲
　４１年１２月のアジア・太平洋戦争開始時には、真珠湾奇襲、シンガポール攻略などで〝快進撃〟といわれましたが、翌年６月のミッドウェー海戦での日本機動部隊の壊滅後は敗北につぐ敗北でした。４４年中頃には日本の戦争指導部も戦争に負けたと判断するようになってきました。大本営の作戦失敗で５０万人の将兵が命を失ったフィリピン戦の敗北は、戦争終結の決定的な機会でした。しかし、天皇はじめ戦争指導部は〝もう少し戦果をあげてからでないと、交渉が有利にできない〟とくりかえしました。
　４５年２月に近衛文麿元首相が「共産革命の進行」をあげながら、「敗戦はもはや必至」「一日も速やかに戦争終結」を天皇に上奏しましたが、態度は変わりませんでした。
　〝戦果〟に固執せず終戦を決断すれば、３月以降におきた国民的惨劇である東京大空襲など本土空襲、沖縄戦、原爆投下、ソ連の満州侵入など連続した出来事もありませんでした。
　最近公開された映画「日本のいちばん長い日」などで描かれた天皇の「聖断」は遅すぎただけでなく、「国体」という天皇絶対の政治体制を守ることを最優先にしたため国民全体が犠牲になったのが実態です。

餓死した「英霊」たち
　戦場に送られた兵士・軍人たちの運命はひどいものでした。日本軍の戦没者２３０万人のうち、半数以上が餓死だったのです。戦争の現地を陸軍軍人として体験してきた歴史学者の藤原彰氏が著書『餓死（うえじに）した英霊たち』で、各戦線での戦死者、餓死・栄養失調による病死者数をあげて紹介しています。
　「日本軍戦没者の過半数が餓死だった。戦闘の中で華々しく戦って名誉の死を遂げたのではなくて、飢えと病気にさいなまれ、痩せ衰えて無念の涙をのみながら、密林の中で野垂れ死んだのである。…軍隊が行動し戦闘するためには、軍隊と軍需品の輸送手段である交通と、弾薬、資材、食糧などの軍需品を供給する補給を欠かすことができない。…ところが日本陸軍では、作戦がきわめて重視されていたのに比べて、作戦遂行のために不可欠の交通と補給があまりにも軽視されていた。…その結果が、大多数の将兵を無残な餓死に追いこんだのであった」
　その最初の出来事が「餓島」といわれたガダルカナル攻防戦であり、東部ニューギニア、中部太平洋の島々でした。また、「白骨街道」といわれた旧ビルマのインパール作戦の無謀、フィリピン戦の大量餓死、中国での「大陸打通作戦」などもそうでした。
　そして「生きて虜囚の辱めを受けるな」という「戦陣訓」と陸軍刑法の罰則とによって日本の兵士は「餓死か玉砕かという選択を、いやおうなしに迫られることになった」（藤原氏前著）のです。
　若者に死を強制した特攻作戦は、降伏の選択を閉ざした大本営による極限の非人間的非道の「戦法」でした。
　そもそも、日本の戦争遂行の仕組みは、専制的な政治支配体制のもとで、軍事・外交・内政の全局をつかみ、戦争指導に一貫して責任を負った人物が「満州事変」以後を見ても一人もいませんでした。天皇は陸海軍の統帥権をもつ大元帥で戦争指導会議に継続して出た唯一の人物であり、戦争遂行の最大の責任者でしたが、実際には大本営参謀がたてた作戦に若干の質問をし補足をする程度でした。
　　◇
　軍隊の餓死、国際法無視の暴虐、国民の運命よりも「国体」が大事、戦争指導部の無責任―、アジア侵略の実態とともに、こうした事実を語り伝えていく必要があります。この戦争を「間違った戦争」とも認めない人物が「安倍政治」を推進しており、それは日本の歴史的後進性であると知らせることが、戦争法案廃案の確かな力になります。
　（山沢猛）

５１年に及んだ日本の侵略戦争

１８９４年７月　日清戦争（～９５年３月）、日本が台湾を奪取
１９０４年２月　日露戦争（～０５年９月）
　　１０年　　　韓国併合
　　１９年　　　韓国で三・一独立運動、中国で五・四運動
　　３１年９月　満州事変
　　３３年３月　日本が国際連盟を脱退
　　３７年７月　盧溝橋事件、日中戦争はじまる
　　　　　１２月　南京大虐殺事件
　　３９年９月　独がポーランド侵入、第２次世界大戦はじまる
　　４０年９月　日独伊三国軍事同盟
　　４１年１２月　アジア・太平洋戦争はじまる、日本軍がマレー半島上陸・真珠湾攻撃
　　４２年６月　ミッドウェー海戦で日本大敗北
　　４３年１２月　米・英・中がカイロ宣言
　　４５年２月　フィリピン戦敗退
　　　　　３月　東京大空襲
　　　　　３月　沖縄戦（６月２３日まで）
　　　　　５月　ドイツ降伏
　　　　　７月　ポツダム宣言発表
　　　　　８月　広島・長崎に原爆
　　　　　８月　ポツダム宣言受諾、敗戦
( ２０１５年０８月１４日，「赤旗」)

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あす終戦記念日／侵略と植民地支配の５１年／憲法を支えに戦後７０年／その２

平和求める世論と日米安保のせめぎあい

　安倍首相の戦後７０年談話に関する有識者会議の報告書（６日）は、戦後の日本について「第二次大戦後、日本は、日米安全保障条約が可能にした軽武装、平和路線の道を一貫して歩み、経済発展にまい進してきた」「日本が…一度も外国から攻撃を受けることなく、平和を享受できたのは、日米安保体制が作り出した抑止力によるところが大きい」などと安保条約＝日米同盟礼賛論を展開しています。
　しかし、これは歴史を歪曲する議論です。アメリカはみずからの世界戦略に日本を組み込み、「戦争する国」にしようとし、自民党などがそれに追随してきました。一方、憲法９条を守り、生かし、平和を希求する国民の世論と運動とが脈々と続き、その力が歴代政府を縛り、「戦争する国」への道を阻んできたのが実態です。

日本の「再軍備」を許さず
　アメリカの戦略と国民の世論と運動が最初に衝突したのは、憲法が制定されてまもなくでした。
　戦後の日本の原点は、軍国主義の除去と民主主義の確立を基本的な内容とする「ポツダム宣言」にありました。それを具体化しふたたび戦争をしないという日本国民の決意と願いによって生まれたのが日本国憲法（１９４７年）でした。
　ところが、アメリカは、ソ連との「冷戦」が確定的になると、憲法施行の翌年には日本に再軍備を迫るようになります。当時のロイヤル米陸軍長官は１９４８年１月、演説で日本を「反共の防波堤」にする政策を表明。国防長官が日本の「再軍備」研究を指示し、研究をへて翌年２月には、米統合参謀本部の決定として「日本の限定的再軍備」の方針が確定します。この方針では、「人的資源の節約」のために日本の軍隊創設を「望ましい」とし、その立場から「新憲法の改正を実現するための探求を行うべきだ」と再軍備と憲法改定を日本に押し付けようとしました。
　この方針のもと、朝鮮戦争（５０年６月～５３年７月休戦）勃発の直後に、自衛隊の前身となる警察予備隊が発足。日本全国にあった米軍基地は空爆や輸送に利用され、日本は朝鮮戦争の前線基地となりました。５１年にはサンフランシスコ講和条約とともに、日米安保条約（旧安保条約）が締結され、日本全土どこでも米軍基地をつくることができる（全土基地方式）という世界に例のない従属的な軍事同盟に組み込まれました。
　しかし、国民はすべての交戦国との平和を回復する全面講和を求める運動や各地で展開された米軍基地拡張反対のたたかいなど、戦争への動きにきびしく対決してきました。
　その一つが、東京都砂川町（現立川市）で米軍基地拡張に反対した砂川闘争です。たたかいの中で不当逮捕事件が起こり、裁判闘争の末、「米軍駐留は憲法九条に違反する」という画期的な東京地裁判決（伊達判決、５９年）が出されます。これを覆そうとアメリカ政府が介入し、最高裁に直接上告（跳躍上告）し、伊達判決を破棄したのです。この時の最高裁判決は安倍内閣が集団的自衛権行使の〝根拠〟だと強弁する「砂川判決」（５９年）です。
　戦後の改憲をめぐる歴史に詳しい渡辺治一橋大学名誉教授は「安保、再軍備、改憲に反対した５０年代の国民の運動は改憲の危機を壊しただけでなく、基地反対の運動などによって米軍基地を自由に使用できなくなるという危機感をもたせました」と指摘します。
　５４年に発足した自衛隊も、憲法が禁じる「戦力」ではない、「軍隊ではない」との解釈を取らざるを得なかったのです。

集団的自衛権禁止、明確に
　アメリカが次に狙ったのが、自衛隊を共同の戦争体制に組み込むことでした。ただ、この時代は米ソ対決のもと「極東」での戦争体制でした。
　この仕組みがつくられたのが、１９６０年の安保改定でした。安保改定では、自衛隊と米軍の共同作戦を義務づけられました（第５条）。そして１９７８年には、「日米軍事協力の指針」（ガイドライン）で、共同作戦計画づくりがはじめられます。
　しかし、この企ての最初から国民の大闘争、「安保改定反対闘争」が立ちはだかります。「安保条約改定阻止国民会議」（安保共闘）のもと、地域の共闘組織は２千に達し、６０年５月の衆院強行採決後には、５００万から６００万人の労働者が抗議のストライキに参加、反対署名は２千万を突破しました。
　渡辺氏は「安保闘争に恐れをなした自民党政府とアメリカは政策転換を余儀なくされます。米軍基地の自由な使用に集中し安保改定の目的であった日米共同作戦態勢づくりは７８年のガイドラインまで、大幅に遅れざるを得なくなりました」といいます。
　６０年代にアメリカはベトナムに軍事介入し、地上軍を５０万人以上派遣し、大規模な侵略戦争を行います。日本の自衛隊は直接戦争に参加しませんでしたが、沖縄を含む日本の米軍基地はベトナム戦争の出撃拠点、兵たん基地として重要な役割をはたします。
　これに対して侵略戦争への加担に反対する立場から、ベトナム戦争反対運動、沖縄の本土復帰運動などがたたかわれました。国会の状況にも変化が生まれました。
　渡辺氏は「７２年には共産党の議席は３８議席に躍進し、社会党や公明党も含めて、国会で政府の安保・防衛政策を鋭く追及しました。政府は防戦一方となり、自衛隊合憲をいうため、その活動にさまざまな制約を設けざるを得なくなりました」と指摘します。
　自衛隊を違憲とする憲法裁判闘争がたたかわれ、７３年には札幌地裁で自衛隊違憲判決（長沼裁判）を勝ち取ります。
　砂川裁判をはじめ多くの憲法裁判にかかわった内藤功弁護士はいいます。「砂川から長沼に続く諸闘争で追い込まれた政府は９条の解釈を整理します。集団的自衛権の行使は許されないとした『７２年政府見解』はその一つです。自衛隊の合憲性を守る一方で、自衛隊の任務や活動などに、集団的自衛権行使の禁止、海外派兵の禁止などの制限を設けざるをえなかったのです」
　「海外での武力行使は許されない」という縛りは、日米軍事同盟体制も大きく制約することになりました。さらに、政府は国民の批判に応えざるを得なくなり、非核三原則、武器輸出三原則、防衛費ＧＮＰ１％枠などを打ち出したのです。

戦争法案反対、空前の運動
　終戦７０年談話の有識者懇報告書（前出）は「湾岸戦争において巨額の財政援助をしたにも拘わらず、国際社会に評価されなかったことは、日本に大きな衝撃を与えた」とし、これを機に「現在まで続く日本の積極的平和主義の歩みが始まった」と描いています。
　しかし、日本政府が実際にやってきたことは、ソ連崩壊後、「ならず者国家」などに矛先を向けたアメリカの「先制攻撃戦略」にそって自衛隊の海外派兵を拡大するなど、地球規模の共同作戦体制を強化することでした。
　その第一歩として、政府は１９９２年にＰＫＯ（国連平和維持活動）協力法を制定し、自衛隊の海外派兵に道を開きました。９７年には、これまでの日米安保条約を超えて「日米防衛協力」の対象地域を「日本周辺地域」とする新ガイドラインを確認。日本側は、これを法律化した「周辺事態法」を成立させました。
　２００１年の米同時多発テロを受けてアメリカはアフガニスタン戦争、イラク戦争を開始しました。小泉内閣は真っ先にアメリカへの支持を表明。米側の「ショー・ザ・フラッグ（旗を立てよ）」「ブーツ・オン・ザ・グラウンド（地上部隊を出せ）」の要求に応え、「テロ対策特別措置法」「イラク特別措置法」を次々に強行成立させ、海上自衛隊をインド洋に、次いで陸上自衛隊と航空自衛隊をイラクに派遣しました。
　イラク派兵の実態は、サマワで陸自宿営地が１４回もの攻撃を受け、空自輸送機が命がけの回避行動を取るなど戦闘の一歩手前でした。しかし、自衛隊の活動は「武力行使と一体化しない」「非戦闘地域」に限るなど、憲法上の制約・「歯止め」によって、自衛隊員の犠牲者が出ることは避けられました。同時に、こうした制約がある限りアメリカの全面的な要求に応えることができないとして、米国内からは公然と日本に集団的自衛権の行使を要求する動きも出てきました。
　一方、海外派兵の拡大、９条改憲の動きに反対する国民の運動は急速に広がり、０４年につくられた「九条の会」は０８年に７０００を超え、同年の「読売」世論調査では改憲反対が賛成を逆転して多数となりました。
　２０１２年に再登場した安倍内閣はこうした国民運動に挑戦し、明文改憲、改憲手続きを緩和する９６条改憲を策しましたが、それがつまずくと、昨年７月、集団的自衛権を禁じたこれまでの憲法解釈を百八十度転換する「閣議決定」を強行。今国会に、それを具体化した戦争法案を提出し、成立に執念を燃やしています。これは、「非戦闘地域」など憲法上の「歯止め」をはずし、米国の戦争にいつでもどこでも自衛隊を参戦させるものです。
　しかし、同法案は審議すればするほど戦争法案としての本質が明らかになり、「反対」「違憲」の声が多数となっています。若い世代や女性たちが「憲法を未来に引き継ぎたい」「本当に（法案を）止める」と立ち上がれば、戦争体験者など年配の世代も「戦争を繰り返すな」と行動し、多くの学者・研究者・法曹界・文化人が知識人としての責任と誇りにかけて声を上げています。戦争法案に反対するたたかいは、その広さと深さ、自覚的・創意的なエネルギーの発揮という点で戦後の国民運動の歴史の中でも空前の広がりをみせています。
　「戦争か平和か」。日本の政治が歴史的岐路に立つ中、戦後７０年を迎えます。
　（若林明、入沢隆文）

安倍政権の源流はどこにあるか／戦犯勢力の温存と自民右派勢力の策動
　安倍首相は過去の日本の戦争を「侵略戦争」だったとも「間違った戦争」だったとも認めようとしません。この安倍政権の逆流の源流はどこにあるのか。
　侵略戦争を推し進めた日本の支配層は敗戦と極東国際軍事裁判（東京裁判）で深刻な打撃を受けました。東京裁判ではＡ級戦犯２５人が有罪とされ、元首相・東条英機ら７人が絞首刑に処せられました。
　しかし、米ソ冷戦の激化とアメリカによる日本の反共基地化という国際情勢を背景に、岸信介（東条内閣の商工相）らＡ級戦犯容疑者は不起訴・釈放され、有罪となったＡ級戦犯も仮釈放・赦免されました｡その後、Ａ級戦犯の一人、賀屋興宣（東条内閣の蔵相）は池田内閣の法相に、岸は自民党総裁･首相にまでなりました｡
　これは日本の政界に、侵略戦争への無反省という他国に例のない性格を刻むものとなりました。日中国交回復を実現した田中角栄首相も、その後の竹下登首相も、日本の行った戦争は侵略戦争だったと考えているのかという日本共産党の国会での追及に〝後世の歴史家が決めるものだ〟と答弁するほどでした。
　しかし、９０年代に自民党単独政権が終えん。非自民連立政権の細川護熙首相は就任会見で「侵略戦争だと認識している」と明言（９３年）し、自民・社会・さきがけ連立政権の村山富市首相は終戦５０年談話（９５年）で「植民地支配と侵略」への「反省」「お詫び」を初めて表明しました。
　これに衝撃を受けた自民党の右派勢力は「歴史・検討委員会」を結成、〝あの戦争はアジア解放と日本の自存自衛の戦争だった〟とする『大東亜戦争の総括』を発表しました。この潮流はさらに、「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」（教科書議連）を発足させ、〝戦争礼賛論〟を歴史教科書に持ち込む運動を支援しました。
　この「歴史・検討委員会」に国会議員に当選したばかりで参加し、「教科書議連」に当選４年目で事務局長に抜てきされたのが、安倍晋三氏でした。安倍氏はこうした「大東亜戦争肯定」論の異質な潮流の中心で育成されるとともに、自民党幹事長、官房長官、首相へと押し上げられていったのでした。
　第２次安倍改造内閣誕生時の１８人の自民党閣僚全員が、改憲右翼団体「日本会議」の国会議員連盟か、天皇中心の国づくりを目指す「神道政治連盟」の国会議員懇談会のメンバーでした。まさに、侵略戦争の美化・礼賛一色の内閣です。
( ２０１５年０８月１４日，「赤旗」)

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映画／「あの日のように抱きしめて」（ドイツ）／壮絶さ超え人間の美徳へ

冒頭、検問所の兵士が息をのむ。閃光灯が、血染めの包帯で顔全体を包んだ声楽家ネリー（ニーナ・ホス）を照らしたのだ。保護した弁護士レネ（ニーナ・クンツェンドルフ）は「収容所帰りなの｣と弁明する｡
　１９４５年６月、ユダヤ人強制収容所から奇跡的に生還したネリーは、ナチスにつぶされた顔面の整形手術を受けた後、愛するピアニストの夫ジョニー（ロナルト・ツェアフェルト）を捜すため、夜ごと瓦礫の山と化したドイツの街へ出る。
　しかし酒場の掃除夫にやつした夫は、変貌したネリーに気づかず「金儲けをしないか」ともちかける。妻は死んだ。一族も全滅した。「君が収容所から生還した妻を演じてくれれば遺産は山分けだ」と。
　弁護士レネは、ネリーが逮捕される直前に離婚されていた事実をつかみ「彼は裏切り者」と批判する。しかし「彼といると、昔の私に戻れるの」とネリー。かくして奇怪な「偽装夫婦」の生活が始まった。
　クリスティアン・ペッツォルト監督は、敗戦直後のドイツでユダヤ人大虐殺を直視できない人間の切ない倒錯を描き出した。ジョニーは「生還者ネリー」の現在を必死に飾り立て、演じるネリー本人は己の壮絶な体験を口にできない。イスラエル建国を夢見るレネは、思いがけない行為に走る。
　ネリーは収容所で刻まれた絶望と夫の真実に正対できるのか。緊張感みなぎる結末は、ファシズムの犠牲者にとどまらない人間の美徳を見事に映し出す。
　（浅尾大輔・作家）
　１５日から東京・Ｂｕｎｋａｍｕｒａル・シネマほか順次全国で公開
( ２０１５年０８月１２日，「赤旗」)

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１０ 今年１００万人来場／アウシュビッツの博物館

ナチス・ドイツによるホロコースト（ユダヤ人大虐殺）の舞台となったポーランド南部のアウシュビッツ強制収容所跡地の博物館は８日までに、今年１～７月の来場者が同期間としては初めて１００万人を超えたと発表しました。
　年間来場者が過去最高の１５３万人に達した昨年は、１００万人を突破したのは８月末でした。今年の年間来場者は昨年を１割以上上回る見通し。
　跡地では解放７０年を迎えた今年１月、追悼式典が営まれ、元収容者や欧州各国要人が参列しました。ツィビンスキ館長は「アウシュビッツの悲劇を研究することで、人間の希望や課題、脅威への理解を深められる」と強調しました。
　（時事）
( ２０１５年０８月１０日，「赤旗」)

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ヒトラーとナチ・ドイツ／石田勇治著／評者熊野直樹九州大学教授

独裁や大虐殺の過程丁寧に実証
　２年前、麻生太郎氏による「ナチスの手口に学べ」発言が物議をかもした。そのため歴史的にみて「ナチスの手口」とはそもそも何か、がこの間も重要な問いになっていた。本書はこの問いに正面から答えてくれる、現段階で最も信頼の置ける新書である。その意味でまさに待望の書だ。
　本書では、ヒトラーを中心としたナチ・ドイツの歴史がとても平易に叙述されている。そこでは、人種主義者であるヒトラーが巨大な大衆運動のリーダーとなって首相に上りつめた経緯や、ヴァイマル共和国の議会制民主主義が崩壊し、独裁体制が成立する過程、さらにはナチ時代のユダヤ人の追放政策が未曽有の国家的メガ犯罪であるユダヤ人大虐殺へ帰着した展開が、最新の研究成果や主要な資料に基づいて説得的に描かれている。
　本書が扱う歴史は、著者が強調するように、２１世紀を生きるわれわれが一度は見つめるべき事象であり、これに真摯に向き合うことで、現在と未来のためのたくさんの教訓を導き出してくれるものだ。
　本書の圧巻はユダヤ人大虐殺に至る過程とその原因の分析である｡そこでは､この分野における第一人者である著者の長年にわたる研究成果のエッセンスが大変わかりやすくかつ明快に論じられている。
　また、ヴァイマル憲法体制が授権法を中心とした「法的」な手段によって形骸化していった過程を丁寧にかつ実証的に描いている点も本書の特長である。日本の立憲主義とデモクラシーが危機的な状況にある現在、本書から多くの教訓をわれわれ主権者は導き出すことができよう。まさに今、主権者必読の書だ。

　いしだ・ゆうじ　５７年生まれ。東京大学教授。『過去の克服』
( ２０１５年０８月０９日，「赤旗」)

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止めよう戦争法案／いま声あげる／青年／弁護士／共同／ママ

青年

駅前熱気７００人／神戸
　関西の学生でつくる「ＳＥＡＬＤｓ　ＫＡＮＳＡＩ」（シールズ関西）は７日夜、神戸市の元町駅前で、シールズ関西としては兵庫県内初の戦争法案に反対する街頭宣伝をしました。
　関西電力神戸支店前の抗議行動を終えた青年らも参加するなど、約７００人の聴衆が駅前を埋めました。右翼の宣伝車による大音量の妨害もありましたが、スピーチする学生に聴衆から拍手と声援が上がり、熱気にあふれました。
　関西学院大学の大野至さん（２３）は「戦争が嫌だというのはだれもが持つ感情です。それを言って何が悪い。誰かを殺したくないという思いからなんです」と訴えました。
　西谷修・立教大学特任教授、柏木宏・大阪市立大学教授、岩佐卓也・神戸大学准教授、井口克郎・神戸大学講師がマイクを握りました。
　関西学院大学の鈴木詩穂（うたほ）さん（１９）は「法案自体も怖いし、政府の都合で憲法をねじ曲げることができることも怖い。自分たちが住んでいるところで声を上げるのは絶対に意味があると思う｣と話していました｡

議員に要請へ／大阪
　戦争法案の問題点を知らせ、廃案を求める国会議員への要請文を集めようと、ＳＡＤＬ（サドル＝民主主義と生活を守る有志）が７日、大阪・なんばで街頭宣伝しました。
　ツイッターで街頭宣伝の告知を見て手伝いに来た人を含め、７人が参加。「平和とは名ばかりの戦争法案を廃案に｣と訴え､２００枚のビラを配りました。
　自転車を降り、要請文にペンを走らせた中国からの留学生（２１）＝大阪大学１年＝は「平和は、先人たちの生命や血と引き換えにもたらされました。私たちはそれを守り、次の世代に引き継がないといけません。法案が通れば平和を求める世界の人々が失望するでしょう」と話しました。
　告知を見て、夫とともに話を聞きに来た溝部文世（ぶんせ）さん（５０代）は「戦中、愛媛にいた母が対岸から広島のキノコ雲を見、父は徴兵され、あと一歩で死ぬところでした。二度と戦争なんてしてもらったら困ります。憲法９条を大切にしてほしい」と語りました。

壁面使い映写／水戸
　戦争法案に反対している若者たちのグループ「Ｓａｕｄａ＠ｉｂｒ（そうだあっといばらき）」が６日夜、水戸市のＪＲ水戸駅南口で平和を考えるイベント「ＴＨＩＮＫ０８０６／ＰＥＡＣＥ　Ａｃｔ．」を行いました。
　若い母親や青年、高校生らがリレートークに立ったほか、原爆パネルの展示や原爆をモチーフにした詩と絵本の朗読、オリジナル映画のビル壁面への映写などで戦争法案の廃案をアピールしました。
　リレートークで蛭田美咲さん（２６）＝東海村＝は「悲惨な戦争は繰り返してはならない。娘２人には平和な日本で生きていってほしい」と胸の内を語り、男性（３８）＝栃木県益子町＝は「安倍内閣の独裁政治に反対の声をあげていこう」と訴えました。

弁護士

立憲主義守れ／大阪
　大阪弁護士会は８日、市民集会「日本はどこに向かうのかパートⅣ～各界から上がる安保法案への反対の声」を大阪市北区の大阪弁護士会館で開き、市民ら５４３人が参加しました。戦争法案を「立憲主義を否定し、国民主権を侵害するもの」と批判し、速やかに廃案にすることを求める歴代会長有志による緊急声明を発表しました。
　松葉知幸会長の開会あいさつに続いて、早稲田大学の水島朝穂教授が基調報告。「安全保障環境が変わった」などの安倍首相発言のごまかしや憲法上の矛盾など戦争法案の問題点を指摘。「違憲立法の法案には、対案ではなく廃案しかない」と語りました。
　リレートークで龍谷大学法科大学院の石埼学教授、関西大学の高作正博教授、神戸学院大学の塚田哲之教授、立命館大学の植松健一教授がそれぞれ憲法学者・研究者の立場で法案を批判しました。
　明日の自由を守る若手弁護士の会の橋本智子さんが憲法カフェのとりくみ、安保関連法案に反対するママの会の芋縄なつきさんが「誰の子どもも殺させない」、神戸女学院大学学生で自由と民主主義のための学生緊急行動（ＳＥＡＬＤｓ　ＫＡＮＳＡＩ）の山口晶子さんが「平和な国、武器を持たない国、戦争に加担しない国であることを示すことが最大の抑止力」、Ｔ―ｎｓ　ＳＯＷＬ（ティーンズソウル）関西の高校生が「戦争に行くのは私たち」と反対の思いを訴えました。

益川さんらメッセージ
　市民集会には、ノーベル物理学賞受賞者の益川敏英・京都大学名誉教授や思想家の内田樹・神戸女学院大名誉教授のほか、作家の森村誠一、玉岡かおる両氏、劇団リリパットアーミーⅡの、わかぎゑふ座長が、ビデオメッセージを寄せました。
　益川氏は、憲法解釈をねじ曲げて戦争法案を推し進める安倍政権の姿勢をファシスト的であるとし、「国民を戦火にさらして、命を犠牲にしてまで守らなければならない国益があるとは、私は絶対に思えません」と訴えました。
　内田氏は、同法案が成立すれば戦後７０年間の国の形が根本から変わると危機感を示し、「クーデターに近いものという国民的な認識がまだ十分ではない。これをきっかけにして政治の形を変えなければならないと強く思います。皆さんと協力して、この法案を廃案に追い込みましょう」と語りました。

憲法学ぶ講座／福島
　戦争法案反対を決議し、衆議院での採決強行抗議と廃案を求める会長声明を出している福島県弁護士会は８日、福島市で憲法問題連続市民講座をスタートさせました。
　大峰仁会長が「いま『平和安全法制』（戦争法案）問題が熱い状況になっている。憲法の仕組みを学んで、この問題にどう向き合うのがいいのか考えていただきたい」とあいさつしました。
　第１回講座の講師を担当した県弁護士会憲法委員会委員の渡邊純弁護士が､｢『平和安全法制』と日本国憲法｣と題して講演しました。
　渡邊氏は、県弁護士会として、戦争法案が憲法９条の平和主義に反し、憲法改正手続きによらず実質的に改憲してしまうという点について合意があり、反対を表明していると発言。集団的自衛権行使の体制づくり、海外派兵法制など法案の内容に立ち入って説明しました。
　渡邊氏は、同法案の問題点として、自衛隊をいつでも、どこにでも海外派兵させることが可能になり、兵たん（物資弾薬の輸送）は戦闘地域での武力行使と一体と見られることを指摘しました。
　講座には高校生も含め一般市民が参加し、活発な質疑がありました。

共同

党派こえ５００人／甲府
　「とめよう戦争法！集まろう甲府駅前！８・７山梨集会」が７日夕、甲府市のＪＲ甲府駅南口広場で開かれ、県下各地から５００人が集まりました。
　県内各地の９条の会や労組、市民団体などでつくる「戦争させない・９条壊すな山梨実行委員会」が開いたもの。關本喜文（せきもと・よしふみ）県弁護士会長や、民主党、日本共産党、社民党などの県代表が「徹底して頑張り廃案にさせる」「たたかいの広がりに確信をもち、力を合わせよう」と、次々あいさつし、パレードの先頭に立ちました。
　参加者のリレートークで、甲斐（かい）市の烏谷（からすだに）まゆみさん（６５）と、持原ひろ美さん（６０）は「安倍首相は抑止力が高まるというけど違う。武器が武器を呼ぶと思う。行動するのは勇気が必要だけど、みんなで声を上げていきましょう」と訴えました。
　共産党の小越智子県議が連帯あいさつ。椎葉かずゆき参院比例候補と市町村議が参加しました。

危険性明らか／愛知・岡崎
　「戦争法案いらない」「憲法守れ」―。愛知県岡崎市で７日夕、名鉄東岡崎駅前にラップ調の戦争法案反対の声が響き渡りました。
　同市内の労働組合、女性や業者、平和団体などでつくる実行委員会が呼びかけた宣伝集会に１００人を超える市民が参加。各党にも呼びかけ、日本共産党の井上哲士参院議員と木全昭子、鈴木雅子両市議、社民党県連の平山良平副代表が参加しました。
　実行委員会を代表して室（むろ）穂高弁護士は「戦争法案は憲法に照らして全く道理のない法案。廃案まで声を上げ続けよう」と訴えました。
　井上議員は参院安保委員会の追及で、クラスター爆弾や劣化ウラン弾など非人道的兵器の輸送も可能と防衛相が認めたことも述べ、「違憲性、危険性は明らか。戦争法案阻止に全力を挙げる」と強調しました。
　井上議員の訴えに「そうだ」と賛同の声をあげていた女性（６９）は「広島の平和記念式典で安倍首相が非核三原則に触れなかったのは、被爆国の首相として問題。戦争法案が成立したら『米軍の核兵器も輸送する』など怖いことになる」。ビラを熱心に読んでいた男性（５４）は「憲法を守るのに保守も革新もない｡みんなが一緒になって反対運動することが大事｣と話しました｡

ママ

この指とまれ／名古屋
　愛知県内のママさんや保育士たちが「子どもを戦争に送りたくない人、この指とまれ」と呼びかけた集いが８日、名古屋市内の繁華街で取り組まれ約８００人が集合しました。おみこしやベビーカーに「戦争いやです」などと書いた紙をはりつけたり、浴衣やおそろいの法被で参加するなど、まるでお祭り状態です。
　集いが始まった午後５時をすぎても３０度を超す中、ママたちは熱中症対策の麦わら帽子や水分補給を万全に参加。ときおり心地よい風の中「私たちは子どもを戦地に送りたくて産んだわけじゃない」と元気いっぱい声をあげました。
　３歳の子を子育て中の山森藤子さん（３３）は、「中国や北朝鮮の脅威をあおっているけれど、対話による外交の力で物事を解決する努力こそ必要です」と語ります。
　山本晃子さん（３３）は「子をもつ母として今声をあげないと後で絶対後悔するので」と行動に立ち上がりました。
( ２０１５年０８月０９日，「赤旗」)

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旧日本軍巨大要塞訪ねて／数万人を強制労働／中国・内モンゴル・ハイラル

冬は零下４０度、飢えと疲労で毎日死者が…
　１９３１年の満州事変勃発後、旧日本軍は当時のソ連との戦争に備え、ソ連の国境に近い中国東北部各地に要塞（ようさい）を建設しました。その数は、分かっているだけでも１７カ所に上ります。そのうち最も規模が大きい要塞といわれる内モンゴル自治区のハイラル要塞を訪ねました。
　（ハイラル〈中国内モンゴル自治区フルンボイル市〉＝小林拓也　写真も）

　大草原が広がるハイラル。そこを流れるハイラル川の河岸段丘上に、ハイラル要塞は建設されました。要塞は計５カ所の陣地からなり、総面積は２１平方㌔。要塞の中で北山陣地が「世界反ファシズム戦争ハイラル記念園」として２００８年から一般公開されています。
　要塞は５㌔に及ぶ地下道を備えていました。現在は５００㍍を見学することができます。地下道は夏でも氷点下に近い寒さ。当時の司令部や医務室、兵士の休憩所などが再現されています。地上には、砲台跡や通気口などが残されています。年間２０万人以上が参観します。
　旧日本軍は１９３２年１２月にハイラルを占領。３４年６月に要塞の建設を始め、３７年末に完成させました。多いときは７千人以上の日本兵が配備されていました。４５年８月９日にソ連が中国東北部に侵攻し、ハイラル要塞を攻撃。８月１８日に戦闘が終わるまで双方に２千人以上の死者が出ました。
　中国側の研究によると、旧日本軍は、この要塞建設で数万人の中国人を徴用、強制的に労働させました。劣悪な労働環境と粗末な食事のため、多くの中国人労働者が事故や病気で死亡。秘密保持のため、完成後に多くが殺されたとみられています。要塞近くには中国人の死体を埋めた「万人坑」があります。
　要塞の建設現場から逃げ、唯一の生き残りとされる故・張玉甫さんの証言によると、食料は、コーリャンのかゆやマントウ（中国式蒸しパン）しか与えられませんでした。飢えや疲労、病気で毎日少なくとも３、４人が亡くなったといいます。冬は零下４０度まで気温が下がるのに、麻袋のような上着しか与えられませんでした。張さんは病気で病棟に運ばれ、監視の兵が寝たすきを見て逃げました。
　ハイラル要塞を研究してきた徐占江さんは「中国人労働者の数や死者については、具体的な数はわからない。まだまだ研究が必要だ」と指摘。「日本軍要塞は、日本軍国主義による対外侵略の産物であり、侵略の証拠の一つだ」と強調します。
( ２０１５年０８月０９日，「赤旗」)

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若者が不破さんに聞いた／日本の戦争と戦争法案／上／その１／１、日本の戦争

植民地持つ大国への野望、侵略続けた５１年／国民の命より「国体」―空襲、沖縄、原爆も
　戦後７０年の節目を迎えた今年の夏。いま日本の歩みを大きく変える戦争法案が国政の大問題になっています。過去の日本の戦争と現在の戦争法案―。重なりあう二つのテーマで「ここが聞きたい」と１７歳の高校生、有賀実知さん、２８歳の日本民主青年同盟副委員長、小山農さんが不破哲三日本共産党社会科学研究所所長（前議長）宅を訪ねました。

１、日本の戦争／なぜ戦争を始めたの？
　有賀、小山　今日はよろしくお願いします。
　不破　いらっしゃい。有賀さんは高校３年で来年は１８歳だそうですね。
　有賀　はい。いよいよ来年、投票権を持つようになります。戦争するということが何を意味するか真剣に考えたいです。今日はいろいろ聞かせてください。
　小山　私たち民青では､いま戦争体験の｢聞き取りプロジェクト」に取り組んでいます。戦争体験者に戦争の実態を聞いてみようという試みです。戦後７０年に、安倍政権が強行しようとしている戦争法案への怒りも青年の中でかつてなく広がっています。今日は二つのテーマでいろいろ伺いたい、と楽しみにしてきました。
　有賀　どうして、日本は戦争をしたのか、まず知りたいです。
　不破　そうですね。日本の侵略戦争がいつから始まったかをまず考えましょう。第２次世界大戦は、１９４５年に、日本、ドイツ、イタリア３国の敗北で終わりました。ドイツのヒトラーはあれだけヨーロッパを荒らしましたが、侵略開始から降伏までは６年間です。
　他方、日本の侵略戦争は「満州事変」から数えても１４年間、台湾を奪い取った日清戦争（１８９４年開戦）からでは実に５１年間の歴史があります。
　日本は、１９４５年にポツダム宣言を受け入れました。この宣言は、カイロ宣言（４３年）の実行を明記し、日本が日清戦争で占領した台湾も中国に戻すよう求めました。５０年をこえる日本の侵略戦争全体に審判を下したのです。

〝存立危機〟を口実に開戦
　　有賀　侵略の歴史はナチスより長いんですね。最初の日清戦争とはどんな戦争だったのですか？
　不破　明治維新で資本主義の道に入った日本の指導層は、早く欧米列強並みに植民地を持つ帝国主義大国になりたかった。そこで最初に目をつけたのが朝鮮です。当時、朝鮮は清国の権益とされていて、日本と清国のどちらが朝鮮をとるかが、日清戦争の一番の問題でした。
　くわしい経過は『歴史教科書と日本の戦争』（２００２年、小学館）という本に書きましたが、日本はまず朝鮮の王宮を占領したうえで、先制攻撃で戦争を始めました。勝利した結果、朝鮮を支配下に置き、台湾を奪いました。さらに「満州」(中国東北部)の権益も取ろうとしましたが、ロシアとドイツ、フランスが干渉してやめざるをえませんでした。
　奪えなかった満州の権益をねらって始めたのが日露戦争（１９０４年）です。これも日本は先制攻撃で戦争をはじめ、南満州鉄道など満州の権益を奪い、ロシア領南樺太もとりました。
　小山　そして次の標的が中国だったのですね。
　不破　そうです。３１年９月に日本軍は南満州鉄道を自分で爆破し、中国に攻撃されたことにして戦争を始めます。これが「満州事変」ですね。日本政府は現地の日本の外交官から「日本軍が爆破したらしい」という内容の電報を受けながら、戦争を始めた軍部には文句を言えず、戦争を進めました。「事変」としたのは戦争というと、捕虜の扱いなど戦時国際法を守らねばならなくなるからです。
　「満州事変」が起きたのは、私が生まれた翌年ですが、この前後から日本で「満蒙生命線論」という主張が出てきます。｢満州｣とモンゴルの二つを日本の生命線、つまり日本存立の根拠としました。戦争法案でいう「存立危機事態」の〝存立〟と同じです。狭い国土の日本が生きるうえでどうしても必要だという勝手な理屈でした。

兵士と国民はどんな目に

　小山　日本は「満州事変」からさらに戦争を拡大するんですね。
　不破　満州を支配下においた日本は「満州国」というかいらい政権をつくるんですが、世界は変わっていました｡第１次世界大戦(１９１４～１８年）で、世界中が戦争にこりて、国際連盟（２０年）や不戦条約（２８年）をつくりました。まだ弱いものでしたが、ともかく国際紛争を平穏に解決する仕組みができたのです。この国際連盟が「満州」に調査団を出し、日本の不当な侵略だと結論を出しました。すると日本はさっさと国際連盟を脱退（３３年）しました。
　小山　日本が最初に脱退したとは不名誉なことですね。
　不破　日本軍は「満州」からさらに南をねらいます｡３７年には､北京郊外で盧溝橋事件という日中の小規模な軍事衝突が起きます。現地の日中両軍は交渉して停戦しますが、日本政府や軍部は｢戦争だ｣と大動員し､中国北部､続いて上海、さらに当時の首都・南京まで攻め込みました。これが中国への全面的な侵略戦争の始まりです。
　有賀　そのとき、南京大虐殺と呼ばれることが起きたんですね。
　不破　その直後に南京に派遣され、後に支那派遣軍総司令官になった岡村寧次(やすじ)という人の「陣中感想録」を読んだことがあります。岡村は部下に調べさせて｢約四､五万に上る大殺戮（さつりく)､市民に対する略奪強姦(ごうかん)多数ありしこと」は事実のようだと書き〝日露戦争のときはこんなに野蛮な軍隊ではなかった〟と嘆いていました。
　有賀　ひどい話ですね。日本はアジアを侵略して最終的にどんな世界をつくろうとしたのですか。
　不破　中国との戦争が続くなか、４０年に、日独伊三国軍事同盟を結びます。これは、ドイツ、イタリアはヨーロッパを自分の勢力圏としなさい、日本は東アジアを勢力圏とします、という勢力圏協定です。この時の日本の勢力圏にはオーストラリアまで入っていました。アジア侵略の絶好の位置にいる日本だから、力にまかせて広げるだけ広げ、この地域の全体を自分の支配下におこうと、野望をそこまでふくらましたのです。その支配計画を「大東亜共栄圏」とよびました。
　４１年にはアメリカの海軍基地・ハワイ真珠湾の奇襲攻撃で対米英戦争、太平洋戦争に突入していくんですね。
　こうしてみると、日本の戦争は、最初から領土の拡張、勢力圏拡張を目的とした侵略戦争であることは明々白々です。日本の「生命線」とか「東洋平和のため」「自存自衛」というのは口実で、まったくまやかしです。

戦没者のうち半数超が餓死
　小山　若い世代が戦争の現実を知る機会はますます少なくなっています｡昨年の｢赤旗まつり」での不破さんの講演（『「科学の目」で日本の戦争を考える』新日本出版社）―とくに日本兵士の多くが餓死したという指摘は衝撃でした。
　不破　日本の戦争を侵略戦争という角度からだけでなく、他の角度からも考える必要があると思って､｢赤旗まつり｣で話したのです｡
　そこでは、①動員された兵隊がどんな目にあったか、②国民がどんな扱いをされたか、③戦争をやった指導部はどんな体制だったか――という三つの角度から話しました。
　太平洋戦争開始の翌年には、太平洋方面の戦局は、敗戦に続く敗戦という状況となり、４４年の中ごろには、日本の指導部も、戦争に負けたと判断するようになっていました。ところが、戦争終結を決断しない。天皇も〝もう一度勝たないと、有利な交渉ができない〟と言いつづけました。ここで決断すれば、本土空襲、沖縄戦、原爆投下、ソ連の満州侵入など、４５年に連続して起きた国民的な惨劇はなかったでしょう。
　〝有利な交渉〟というのは、「国体」、つまり天皇絶対の政治体制をまもる交渉ということで、そのために、国民全体が犠牲にされたのでした。
　有賀　私の祖父は海外に派兵されていませんが､戦争末期に｢本土決戦｣というので､千葉県の九十九里浜で「たこつぼ」作戦の訓練を受け、そのまま終戦を迎えました。
　不破　あなたの祖父がした「たこつぼ」作戦は戦争末期に各地の海岸でやられました。米軍が上陸するのを、穴を掘って隠れて待つ。鉄砲も持たず、竹やりで刺し殺せという話でした。
　戦場に送られた兵士・軍人たちの運命はひどいものでした。藤原彰(あきら)さんという歴史学者が『餓死（うえじに)した英霊たち』という本で詳しく指摘していますが、日本軍人の戦没者２３０万人のうち、その半数以上が餓死だったというのです。
　戦争の指揮にあたった指導部が、食糧などの補給、兵站（へいたん）を考えないで軍を投入するのです。だから､戦闘ではなく､ジャングルのなかで多数の軍人が飢え死にしました。こんな無責任な戦争指導部というのは、世界に日本以外には見当たりません。
　軍隊の餓死、国際法無視の暴虐、国民の運命よりも｢国体｣が大事―こうした戦争の実態をきちんと語り伝えていく必要があります。
　そしてこの戦争を〝すばらしい戦争だった〟と思い込んでいる人たちが、今の「安倍政治」を推進しているのは本当に怖いことだと思います。
　２０面につづく

５１年間におよんだ日本の侵略戦争
１８９４年７月　　　日清戦争（～９５年３月）。台湾を日本に割譲
１９０４年２月　　　日露戦争（～０５年９月）
　１０年８月２９日　韓国併合
　１４年７月　　　第１次世界大戦（～１８年１１月）
　３１年９月　　　満州事変
　３３年３月２７日　日本が国際連盟脱退
　３７年７月　　　日中戦争（支那事変）
　　　１２月　　　南京事件
　４０年９月２７日　日独伊三国軍事同盟を締結
　４１年１２月８日　太平洋戦争を開始、真珠湾攻撃
　４２年６月５日　ミッドウェー海戦で日本が大敗北
　４３年１２月１日　アメリカ、イギリス、中国がカイロ宣言発表
　４５年３月１０日　東京大空襲　
　　　３月２６日　沖縄戦（～６月２３日）
　　　５月９日　ドイツ降伏
　　　７月２６日　ポツダム宣言発表
　　　８月６日　広島に原爆
　　　８月９日　長崎に原爆
　　　８月１５日　終戦

民青副委員長小山農さん
こやま・みのる＝１９８７年生まれ。日本民主青年同盟副委員長。戦争法案反対や核兵器廃絶など、広く青年と共同した運動に取り組む

１７歳の高校生有賀実知さん
あるが・みち＝１９９８年生まれ、長野県在住の高校３年生。戦争と平和にかかわる問題や、社会問題、マスメディアに関心を持つ

日本共産党社研所長（前議長）不破哲三さん
ふわ・てつぞう＝１９３０年生まれ｡日本共産党書記局長、委員長、議長を務め、現在は党社会科学研究所所長。６９年から２００３年まで衆院議員。著書多数
(２０１５年０８月０２日，「赤旗」)

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若者が不破さんに聞いた／日本の戦争と戦争法案／上／その２／２、戦後政治の流れ

平和・民主主義と再軍備・戦争国家の二つの流れ／１９面のつづき

２、戦後政治の流れ／憲法制定直後に変化

　小山　戦後の政治の流れについて聞きます。安倍首相は日本共産党の志位和夫委員長との党首討論で「ポツダム宣言をつまびらかに読んでいない」と語りましたね。これには驚きました。ポツダム宣言と日本国憲法は、戦後日本の原点だと思うのですが。
　有賀　私は社会科で学んだとき、憲法には日本国内の動きや世論が反映していると聞きました。他方、アメリカに押しつけられたという人もいます。どうなんでしょうか。
　不破　ポツダム宣言で日本は無条件降伏したとよくいいます。しかし、実際は無条件ではなく、連合国はポツダム宣言で日本に重要な条件をつけたのです。
　もっとも重要なのは、軍国主義を民主主義に転換することです。占領軍はまず治安維持法を撤廃し、婦人参政権を宣言します。最初の時期は、ポツダム宣言の民主的条項を実施しました。
　憲法の背景には、ポツダム宣言にあらわれた世界の平和と民主主義の世論があります。世界の諸国民が、反ファシズム、侵略戦争反対で団結してたたかい、勝ったのですから。今の憲法の大枠もポツダム宣言で方向づけられました。
　ただ、それを日本の政治に具体化する憲法案作成は、占領軍と日本の当時の保守党政府の交渉で進みましたので、いろいろ問題がありました。
　たとえば、最初に政府が議会に出した草案には「主権在民」が書いてなかったのです。日本の政党で「主権在民」を主張したのは、日本共産党だけでした。また、連合国を代表する極東委員会が「主権在民」を明記すべきだと、共産党と同じ主張を決定しました。それで憲法に主権在民がもりこまれたのです。
　大きく言えば、戦後沸き起こった日本国内の民主化の流れと、ポツダム宣言に象徴される世界の流れが合流して今の憲法が生み出されました。憲法制定の時期まではまさに民主政治への大転換の時期だったといえます。

ポツダム宣言、政府は無理解
　小山　当時の日本の指導部は、ポツダム宣言を世界が日本に突きつけた要請と受け止めなかったのでしょうか。
　不破　「つまびらかに読まなかった」のでしょう（笑い）。実際、本当に中身をまったく理解しませんでした。ポツダム宣言を受け入れたあとも、占領軍が命令するまで治安維持法で投獄した人を解放しませんでした。哲学者の戸坂潤は宣言受諾の直前、三木清は宣言受諾から治安維持法撤廃までの短い間に獄中で死んでしまったのです。
　その後、アメリカの政策転換で占領軍がポツダム宣言に反したことをやりだしたとき、「違うじゃないか」とこれに抵抗したのは共産党ぐらいでした。
　有賀　占領軍は最初の姿勢を変えるのですね。
　不破　日本の政治に、戦後３年ほどたつと、はっきり二つの流れができてきます。ひとつは、憲法を指針に平和と民主主義を目指す流れです。もう一つは、憲法の枠を取り払い、戦争国家への道を開こうとする流れです。
　４７年に憲法が施行されたあと、米ソ対決が激化し、アメリカは日本をソ連との対決の拠点にする動きを強めます。アメリカ統合参謀本部は４９年２月、日本の再軍備を目指す方針を決定し、そのなかで本格的な軍隊をもたせるために憲法の改定を研究することを明記しました（アメリカ統合参謀本部の決定）。つまり、軍隊の下地をつくりながら憲法改定の方法を研究せよという決定でした。これが日本の憲法改定を打ち出した世界初の文献だと思います。
　小山　アメリカが再軍備を押しつけたんですね。
　不破　５０年には、占領軍司令官マッカーサーの命令で警察予備隊をつくりました。その予備隊が５２年に保安隊になり、５４年に自衛隊になりました。そして６０年には日米安保条約を改定して、米軍と自衛隊が共同作戦をやる、という条項（第５条）を書きこみます。しかし、そこには、共同作戦発動の条件が、〝日本の施政下にある領域で日本あるいはアメリカが攻撃された場合〟と、限定されていました｡安保条約でも､自衛隊が海外へ出て米軍と共同作戦をやるという話は問題になりませんでした。
　日本再軍備をすすめたアメリカも、今の憲法のもとでは、自衛隊を地球上のどこへでも出動させることや、アメリカの戦争に参加させる集団的自衛権のようなことはできないことを心得ていました。
　有賀　今の戦争法案とは違うのですね。
　不破　日米安保条約の規定から言っても、戦争法案はその枠から大きく足を踏み出す大転換なんですよ。

　次回は、日本政治における戦争観と戦争法案について語ります

戦後改革と再軍備の動き
１９４５年１０月１５日　治安維持法廃止
　　　１２月１７日　女性参政権を認める改正選挙法が公布
　４６年１１月３日　日本国憲法公布
　４７年５月３日　日本国憲法施行
　４９年２月２８日　米統合参謀本部が、日本の限定的再軍備を決定
　５０年６月　　　朝鮮戦争（～５３年７月休戦）
　　　７月８日　マッカーサーが日本政府に対し警察予備隊の結成を指令
　　　８月１０日　警察予備隊を創設
　５１年９月８日　サンフランシスコ講和条約を締結。日米安全保障条約に調印
　５２年１０月１５日　保安隊が発足
　５４年７月１日　自衛隊が発足
　５６年１２月１８日　日本が国際連合に加盟
　６０年１月１９日　日米安保条約改定に調印
(２０１５年０８月０２日，「赤旗」)

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戦争法案絶対阻止へ連帯／立場・世代超え／学生・学者共同行動／９氏語る

７月３１日、国会周辺でおこなわれた「安全保障関連法案に反対する学生と学者の共同行動」。１０代・２０代の学生がつくるＳＥＡＬＤｓ（シールズ＝自由と民主主義のための学生緊急行動）と、学者たちでつくる「安全保障関連法案に反対する学者の会」が手を取り合って、午後５時から９時すぎまで、集会、請願デモ、国会正門前抗議と多彩な行動を繰り広げました。集会では学生５人、学者４人がスピーチしました。その要旨を紹介します。

平和主義僕らが守る／津田研人（けんと）さん＝神戸大院生、ＳＥＡＬＤｓＫＡＮＳＡＩ
　戦争でいかなる人も幸せにはなりません。これは歴史が証明していることです。だからこそ、人間は戦争という状況をつくらない努力をしていくことが必要です。
　僕たちに求められていることは、戦後７０年間、維持してきた平和主義を僕たち自らの手で守っていくことだと思います。
　安倍首相は日本を再び「戦争ができる国」へと変えようとしています。安倍首相は、本気で国民の命や平和を考えているわけではない。そうでなければ戦争、自衛隊のリスクという人の命にかかわる事実を否定することはできないはずです。
　安倍政権がつくりだすような社会で今後の人生を生きていきたくない。

国民勇気づけた学生／広渡清吾さん＝日本学術会議前会長、専修大学教授
　ＳＥＡＬＤｓのみなさんに、心から連帯のエールを送りたい。これまでの運動は、私たちを大いに励ましてくれました。今回の法案に反対する国民を勇気づけたと思います。
　現在の内閣は、反民主主義的、反立憲主義的な違憲の内閣です。加えて、反知性主義の内閣と呼ぶべきです。客観性や実証性を無視して、自分の思うがままに世界を理解する態度であり、「朝日」の川柳にもうち抜かれたように、「我思うゆえに正当かつ合憲」という立場です。
　絶対に採決を強行させないという状況をつくりだすことが必要です。法案に反対する国民の声を結集すること、国会や官邸を１０万人、２０万人で包囲し、安倍内閣を立ち往生させることが必要だと思います。

被災地から声あげる／斎藤雅史さん＝東北大学２年、ＳＥＡＬＤｓＴＯＨＯＫＵ
　今回の安保法制について、とてもムカムカしました。ひたすら同じ答弁を重ねる首相。民主主義的手続きを軽視する政権のあり方。７月１５日、１６日の強行採決に強い怒りを感じました。
　被災地は震災から４年がたっても復興は終わっていません。復興の仕方も、地元住民の話し合いを経ないままつくられた巨大防潮堤問題など、民主主義の問題は地方でも横たわっていると考えます。
　政権は、平和と安全のために集団的自衛権を行使するといいます。武力による「平和」です。しかし、暴力によって得られた「平和」は本当の平和でしょうか。この法案を本当にとめるまで努力を続けます。そして東北から声をあげたいと思います。

民主主義の産声聞く／岡野八代さん＝同志社大学教授
　ＳＥＡＬＤｓのみなさんに心より連帯の意を表したいと思います。
　いま民主主義は悲鳴を上げています。日本の民主主義は怒りに、怒号にまみれています。しかし、日本中で新しい、次世代の未来を予感させる民主主義の産声も聞いています。
　ＳＥＡＬＤｓのコールで「民主主義って何だ」という声をあげています。「民主主義って何だ」。それは、私が私であるための、あなたがあなたであるための、人類が長い時間をかけてつくりあげた政治システムです。民主主義を破壊するものは、私を破壊します。民主主義をかけたたたかいは、私をかけたたたかいでもあるのです。
　今日もまた「民主主義って何だ」と、みなさんとコールしたいと思います。

われらには夢がある／奥田愛基（あき）さん＝明治学院大学４年、ＳＥＡＬＤｓ
　国会審議を見ていて、とても腹が立ちます。まともに議論できていないのに、この法案が必要だとおっしゃる。憲法上の議論も何も説明できていない。
　憲法は国民の権利です。それを無視するということは、国民を無視するということです。
　本当に止めるといっている私たちですが、具体的なプランを出せ、とよくいわれます。しかし、人種差別を撤廃するときに、ワシントンの大行進で「Ｉ　ｈａｖｅ　ａ　ｐｌａｎ」（計画がある）といった人がいるでしょうか。私が言いたいことはこれです。「Ｉ　ｈａｖｅ　ａ　ｄｒｅａｍ」（夢がある）です。
　われわれには夢があります。変えたい未来があります。その未来を私たちは生きていきます。

剣取る者は剣で滅ぶ／桑島みくにさん＝横浜市立大学３年
　『戦争のつくり方』という絵本をご存じの方は多いと思います。
　「平和」のために自衛隊が武器を持って海外に出て行く。報道が政府の意向に従う。味方の国の戦争にお金を出す。そして、戦争に参加できると憲法を書き換える―。
　以前は｢ふーん｣という感じでしたが、この間読んだらぞっとしました。
　誰かを殺してまで勝ち取った「平和」なんて認めません。剣を取る者は剣で滅びます。
　私たちが向かっている未来は、絶望ではなくて希望です。必ず変わる、平和な社会をつくるという希望です。
　戦争法案を何としも、廃案にします。その先に、どういう社会をつくっていきたいのかを考えながら、活動を続けていきたい。

真の民主主義築ける／高山佳奈子さん＝京都大学教授
　中国で反日感情が高まっているとの報道もありますが、なぜ反日感情が高まり、誰が高めているのか。ファシストが台頭すれば、反日感情が高まるのは当然のことといえます。
　日本は、武力行使はしない国として国際的な威信を保持してきました。これをやめてしまうことは、国際社会における日本の信頼を傷つけるばかりでなく、現地で傷ついている人びとをも傷つける結果になってしまいます。
　いま問題になっているのは、日本が近代国家としての〝箱〟を備えるのか、これを捨てて自らを独裁国家へとおとしめてしまうのかです。
　力を合わせれば、真の意味での民主主義は築けるし、若い人たちが希望をもってすすめる日本になることができると思います。

誠実な知性と想像で／千葉奉真（やすまさ）さん＝明治大学大学院生
　安倍内閣総理大臣、僕とあなたは違いますね。それは権力の大きさでも家柄でもありません。それは知性で色づけられた想像力です。あなたは戦争というすべての人権を否定する、人類の行いで最もおろかな行為に対する想像力が、またその結果もたらされる死への想像力が圧倒的に欠如しています。
　不条理を通そうとする政治に対し、悪政の烙印（らくいん）を押し、声をあげることで抵抗の意思を示すことは私たちの権利であるとともに義務であります。
　誠実な知性を用いて矛盾と向き合い続けることは、学問という知性を生業（なりわい）とするものの義務なのです。世代をこえ団結し、安保関連法案に反対します。必ず廃案にします。

主権者はわれわれだ／中野晃一さん＝上智大学教授
　学生たちが立ち上がり、既存の市民運動、そして新たな市民の方がたと手を携えてやってこれるようになったというのは、本当にもう驚きといいますか、正直、絶望の一歩で希望しか感じません。
　何が一番、希望を感じるかといいますと、学生の方たちが口を開く、一般の方たちが、自分たちの言葉で思いを語りだしたときというのは、立憲主義、民主主義というだけじゃなくって、平和主義の言葉を語ってるんです。殺したくない、殺されたくないと。これはすごいことだなと思うんです。
　まだまだ状況は厳しいですけれども、これは勝てると思います。
　主権者はわれわれだと（安倍政権に）きちんと教えてやろうじゃありませんか。
( ２０１５年０８月０２日，「赤旗」)

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（７月ヘッドライン）

３１

「戦争法案イケンじゃろ！」／広島・安佐地区市民アクション

戦争法案廃案へ夏の陣／国会前総がかり行動

戦争法案／私は、たたかう／大学で行動次々／宇都宮／千葉

衣服が語る戦争／柄には戦車や軍艦／日常生活がのみこまれ

戦争肯定の教科書／これで教えていいのか／下

戦争肯定の教科書／これで教えていいのか／中

戦争肯定の教科書／これで教えていいのか／上

戦争肯定の教科書採択やめて／５万人超す署名提出／横浜市教委

クローズアップ／京大有志の会「声明」話題に／〝詩のよう〟〝涙あふれた〟／賛同者１７６８人に広がる

文化の話題／金曜名作館／山本薩夫監督映画「戦争と人間」／大林宣彦

２０

「反ファシズム勝利７０年」展示／「両国民の交流が大事」／中国抗日戦争記念館

本立て／光る風／山上たつひこ著

ストップ戦争法案／京都産業大学教授・ノーベル物理学賞益川敏英さん／安倍首相の手法はファシズム

戦争法案廃案へ各地で行動／鳥取で抗議宣伝

アウシュビッツ元看守起訴／殺人ほう助の罪／ドイツ

戦争法案阻止力合わせ／大集会に２５００人／和歌山弁護士会

アウシュビッツ元簿記係・９４歳／禁錮４年の判決／ドイツの裁判所

上海協力機構が首脳会議／ウクライナ停戦訴え／宣言採択／印パ正式加盟へ

安保法案／東京大学人緊急抗議集会／学生・教員、活発に意見交流

新しい大阪へ／さらば維新政治／大阪大学大学院教授小野田正利さん／楽しく通える学校こそ

戦後７０年の８月に戦争と平和の特集／ＮＨＫ

１０

朝の風／だまされた悔しさ

作家中村文則さん語る／全体主義と戦争、非常に危険／多様性とは正反対のもの

「英国のシンドラー」ウィントン氏死去／ユダヤ人の子どもら６６９人救出

朝の風／「プラハの春」音楽祭での共感

（７月本文）

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３１ 「戦争法案イケンじゃろ！」／広島・安佐地区市民アクション

戦争法案の阻止を求めて広島市安佐北、安佐南の両区の市民団体などでつくる実行委員会（坂本裕委員長）が２９日、「ストップ！戦争する国づくり」安佐地区市民アクションと題して集会を開きました。３月と５月に続いて３回目のアクションで、約１３０人が参加し、安佐南区内をパレードしました。
　坂本委員長は「憲法違反を許したら、ファシズムに向かっていく。やり方がひどいという声が、ますます広がっている」とあいさつしました。
　医療従事者の佐々木歩さん（３４）は「憲法や平和のことなど考えてこなかったが、若い人たちを大いに巻き込んでいきたい」と表明。２児の母親の清水恭子さん（３６）は「子どもを戦場に送るために育てているわけではない。安倍政権に日本を任せるわけにはいかない」と訴えました。
　参加者は「戦争法案イケンじゃろ！」「安倍政権は退陣だ！」とシュプレヒコールをあげました。
(２０１５年０７月３１日，「赤旗」)

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戦争法案廃案へ夏の陣／国会前総がかり行動

「子や孫のために何もせずにはいられない」／「運動や学習、広げたい」と高校生
　空前のたたかいで違憲立法・戦争法案を廃案に追い込もう、と連日のように全国から飛行機、新幹線、バスに乗って数え切れない人びとが国会に押し寄せています。「総がかり行動実行委員会」が呼びかける国会前集会や国会包囲行動です。１万５０００人が集会、デモ、国会請願行動に取り組んだ２８日夜、廃案をめざす夏のたたかいに臨む決意を取材しました。
　（秋山豊、前田智也）

　小学校の息子と手をつないでコールする父親。子育てを始めたばかりの娘と参加した女性。祖父母の戦争体験を繰り返さないと語る青年。公明党に怒る創価学会員。衆参両院の議員面会所では、日本共産党や民主党、社民党の野党国会議員とのエール交換が続きました。
　「父親として守らなくてはいけないものがある」。こういってデモ行進に出発した緑川達也さん（３８）は、千葉県松戸市で４歳の娘を育てています。千葉土建の仲間と毎週、駅前で戦争法案反対署名を訴えています。
　緑川さんは、額に汗を浮かべ、シュプレヒコールをあげながら語りました。「戦争の悲惨な思いを子どもにさせるわけにいかない。仲間と力を合わせて運動を広げたい」
　戦争を知る世代も気持ちを語ります。父親がシベリアに抑留されたと話す金丸和代さん（７１）＝神奈川県茅ケ崎市＝は、９人の孫の未来を思って行動しています。「戦争へと突き進む安倍政権をみて、孫のために何もせずにはいられません。二度と戦争をしてはいけない。できることをすべてやって必ず廃案にさせたい」
　憲法９条をデザインしたブローチを身につけた植木利子さん（７４）＝東京都町田市＝にも忘れられない記憶があります。終戦直後、小学校の遠足で初めて上野動物園に行ったときのことです。弁当を広げると戦災孤児が大勢寄ってきて、おとなが追い払いました。
　「父親が戦死した友人もいました。街には傷痍（しょうい）軍人もいました。本当に大きな犠牲と侵略戦争の反省から日本国憲法はできました。憲法と民主主義を壊す法案は廃案しかない」
　名古屋市から新幹線で駆けつけた黒瀬杏子さん（５８）は、３１歳の娘らと初めて抗議行動に参加しました。
　広島県出身の黒瀬さんには、戦後７０年を迎える特別な思いがあります。「原爆慰霊碑にある『安らかに眠って下さい　過ちは繰返しませぬから』という言葉を安倍首相はどう受け止めているのか。次の世代をとんでもない時代にしないため、何としても廃案にしたい」

創価学会員も参加
　創価学会のシンボル三色旗を持って参加した学会員もいます。愛知県安城市の男性（５１）は、戦争法案を推進する公明党に怒りを覚えます。「抑止力を高めてはいけないと教わってきた。いわれてきたことと違う」
　「ＳＧＩ　ＡＧＡＩＮＳＴ　ＦＡＳＣＩＳＭ（創価学会インターナショナルはファシズムに反対する）」と書いたプラカードを掲げた横浜市の男性（６１）もこう憤ります。「公明党を応援してきたのは平和への願いからです。いまは、裏切られた気持ちです。平和の精神を忘れ、自民党と妥協するなら与党にいる意味はない。法案を止めるために支持者らが行動を起こすことを願っています」
　この夏、原水爆禁止世界大会に参加する高校生も参加していました。東京在住の吉岡実紀さん（１６）です。抗議行動にかけつける前に国会中継を見ていました。安倍首相は、何ひとつ納得のいく説明をしませんでした。
　「日本が他国に攻撃し、戦争に巻き込まれるかもしれません。法案の危険な内容を知れば賛成できるひとは少ないでしょう。戦争法案を廃案にする運動や学習を広げたいです」

来月３０日に大行動
　この日、同実行委員会の小田川義和氏は「毎週木曜の国会行動以外にも分野、世代を超えて広がる各地の運動を束ねるように８月３０日には１０万人で国会を包囲し、全国でも１００万人で決起しよう」と呼びかけました。
　同実行委員会は、７月３０日午後６時半から衆院第２議員会館前で戦争法案反対国会前集会に取り組みます。
( ２０１５年０７月３０日，「赤旗」)

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戦争法案／私は、たたかう／大学で行動次々／宇都宮／千葉

宇都宮
　宇都宮大学職員組合、日本科学者会議栃木支部、九条の会・栃木の３団体は２６日、戦争法案の成立阻止をめざし、「押し寄せる憲法の危機に対抗する集い」を、宇都宮市の宇都宮大学峰キャンパスで開きました。市民ら約８０人が参加しました。
　戦前の日本に降伏を勧告したポツダム宣言が７０年前に出された日に合わせて開催されました。
　中野重信宇都宮大学名誉教授が発言し、戦後の新憲法制定をめぐり、ＧＨＱ（連合国軍総司令部）が天皇制の存続などで当時の内閣と対立したことを紹介。戦争法案をめぐる安倍内閣の動きについて、大日本帝国憲法にしがみつき、戦後の民意に耳をかさなかった支配層の動きに似ていると指摘。「さらに反対の声をあげていこう」と呼びかけました。

千葉
　千葉大学で２３日、「安保関連法案（戦争法案）について考える緊急シンポジウム」が開かれ、市民や学生ら２００人以上が参加しました。
　呼びかけ人の三宅晶子教授が、ナチス台頭期のドイツについて報告。複数の大学教員が、政治学や近代日本文学、沖縄や大学をめぐる状況、中東情勢、現代中国論など、さまざまな分野・視点から分析や発言がありました。
　学生が次々に手をあげて発言し、戦争法案に反対するＳＥＡＬＤｓ（自由と民主主義のための学生緊急行動）の活動も紹介され、活発な議論が交わされました。
(２０１５年０７月２９日，「赤旗」)

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衣服が語る戦争／柄には戦車や軍艦／日常生活がのみこまれ

戦時下の衣服が語るものは―。展示「衣服が語る戦争」が文化学園服飾博物館（東京都渋谷区）で開催中です。日清、日露戦争当時から第２次大戦終戦までの衣服や小物、ファッション誌が約２００点紹介されています。
　（吉岡瑞代）

　日清戦争の頃から太平洋戦争開戦の頃まで多く見られるのが、戦争を反映した文様です。
　ナチスのシンボルマークが描かれた男児の着物は、１９４０年頃のもの。当時の国旗をデザイン化しています。展示で驚くのは、子どもの着物に緊迫した中国での戦闘シーンや戦闘機、戦車や軍艦などが描かれていることです。
　当時の向上した染色技術によって戦争が正確な描写で鮮やかに表現され、その迫力に怖さを感じます。「今は違和感がありますが、戦争柄の着物は数多く作られ当時は流行の一つだったのだと思います」と学芸員の村上佳代さんは話します。国旗を振って行進する子どもたちなど、当時の思想に従順な子どもの姿の文様も見られます。
　陸軍軍服を模した七五三の衣装は、３８年ごろの男児のもの。隣に並ぶ陸軍少尉軍服と帽子までそっくりです｡日清､日露戦争後、活躍した軍人の美談が熱狂的に伝えられ、子どもにとって軍人はあこがれの対象でした。
　軍装のデザインを取り入れた流行では、水兵を模した子どもの帽子、カーキ色や金ボタンが並んだ３０年代のミリタリー調の女性服も紹介されています。

物資不足を反映
　戦時下の日本の女性誌やファッション誌が見られるのも貴重です。戦況が深刻化すると、雑誌名は『婦人畫報』から『戦時女性』、『洋装』は『服装日本』に改題します。多くの雑誌は検閲や物資不足による紙の制限、統合などにより廃刊に追いやられました。
　日中戦争が始まり、戦況の悪化で輸入が滞り羊毛や綿花などが不足すると、衣服も節約が奨励されます。古着を仕立て直す更生服や、代用品も多く作られました。
　展示では回収された真鍮製の学生服ボタンと代用品の木や再生ガラス製のボタン、蓑虫の巣のバッグ、紙性の疑似革ベルト、サメ皮の靴などが当時の苦しさを伝えます。
　４０年には国民服が法律で定められ、４２年には衣料は配給制になります。女性は婦人標準服が奨励され、衣服の自由は制度上妨げられました。

誤った舵取りで
　婦人標準服には洋装、和装、活動衣(もんぺ)があり、活動衣が広く普及しました。友禅染の着物で作った活動衣は、柄の位置におしゃれ心を感じさせます。引き締めの中でも装う気持ちを満たそうと女性たちは、婦人標準服を元にデザインに応用や工夫を加えました。
　村上さんは「日常の暮らしがじわじわと戦争にのみこまれていく様子を感じ取っていただけたら」と話します。「自分の生活がこうなったら？と想像しながら見ていただけたら。国が誤った舵取りをすると人の生死ばかりか生活をも左右するということも」

◆「衣服が語る戦争」展
　８月３１日（月）まで（８月９～１６日は夏期休館）。日曜・祝日休館（８月２・２３日は開館）。ＪＲ新宿駅南口から徒歩７分。℡０３(３２９９)２３８７
( ２０１５年０７月２９日，「赤旗」)

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戦争肯定の教科書／これで教えていいのか／下

５、戦争への反省をＧＨＱの強制の結果と描く
　育鵬社版の「正しい戦争」論は、戦後の記述で完成します。
　「ＧＨＱは、日本がふたたび連合国の脅威にならないよう、国のあり方を変えようとしました。過去の日本の歴史教育や政策は誤っていたという宣伝を日本側に行わせ、報道や出版を秘密裏に検閲して占領政策や連合国への批判を禁じました。」（２５４㌻）
　「過去の政策」とは、軍部・政府による戦争政策に他なりません。育鵬社版は、日本は「自存自衛」「アジア解放」のために戦ったとしたうえで、その戦いが誤りだったという反省はＧＨＱ（連合国軍総司令部）の「宣伝」の結果にすぎないというのです。
　他の教科書は、国民の戦争への反省を尊いものと描きます。その中で共通して取り上げている資料があります。終戦直後、文部省（当時）が発行した『あたらしい憲法のはなし』です。それは「二度とおそろしい、かなしい思いをしたくないと思いませんか」と問いかけ、「こんどの戦争をしかけた国には、大きな責任があると言わなければなりません」と述べました。また、憲法９条による戦力の放棄について「けっして心ぼそく思うことはありません。日本は正しいことをほかの国よりさきに行ったのです。正しいことぐらい強いものはありません」と語りかけています。
　育鵬社版は、国民が戦争を反省し、二度と戦争をしない決意をかためていったことを書かず、『あたらしい憲法のはなし』も扱いません。執筆者から見れば、それらはＧＨＱの強要で生まれた、まがまがしいものにしか見えないのでしょう。

６、現在の政府の立場に明確に反している
　「日本は正しい戦争をした」と教える教科書は、政府の公式の立場に反していることを知らなければなりません。
　政府の立場は、１９８２年の「歴史教科書に関する宮沢官房長官談話」にあります。同談話は、「過去において、我が国の行為が韓国・中国を含むアジアの国々の国民に多大な苦痛と損害を与えたことを深く自覚し、このようなことを２度と繰り返してはならないとの反省と決意」を述べ、こうした精神は「我が国の学校教育、教科書の検定に当たっても当然、尊重されるべきもの」と国内外に宣言しました。この談話を安倍政権も引き継いでいることは、国会答弁で確認されています（昨年５月９日、衆議院文部科学委員会）。
　政府の立場とも埋めようのない溝があることは、その教科書の異常さを示します。そうした教科書を本当に選んでいいのか、選ぶ側が問われています。

７、この教科書は、「戦争する国」を支える
　「日本は正しい戦争をした」とすれば、その戦争を反省してつくられた憲法が誤りとなります。育鵬社版は「議員はＧＨＱの意向に反対の声をあげることができず」と、憲法制定を否定的に描きます。
　さらに育鵬社版公民教科書は､憲法９条の戦争放棄を｢異例｣と述べ､平和主義の説明のほとんどを自衛隊にあてます｡さらに｢日本の多国籍軍への多額の資金提供は､国際社会で極めて低い評価｣だったとし､｢自衛隊の海外派遣｣の重要さを説き､｢積極的に海外で活動できるよう法律を整備することが議論されています｣と述べます｡｢戦争法案｣の宣伝のようです｡
　こうした教科書が､｢戦争法案｣がねらう｢戦争する国｣づくりを教育の面から支えることは間違いありません｡戦前の軍国主義教育は､国民を無謀な戦争にかりたてました｡戦争は教育の右傾化とともに進められます｡
　過去に目を閉ざすとき、過ちが始まります。この夏、教科書のことを熱心に語り合う必要があります。（おわり）
( ２０１５年０７月２９日，「赤旗」)

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戦争肯定の教科書／これで教えていいのか／中

３、太平洋戦争を「アジア解放」の戦争と教える
　育鵬社版は「自存自衛」に加え、太平洋戦争を「アジア解放」の戦争とも教えます。
　まず緒戦の勝利を、「長く東南アジアを植民地として支配していた欧米諸国の軍隊は、開戦から半年で、ほとんどが日本軍によって破られました。この日本軍の勝利に、東南アジアやインドの人々は独立への希望を強くいだきました」（２３６㌻）と説明します。
　次に、戦争中期の「大東亜会議｣(１９４３年１１月)を｢この会議以降、欧米による植民地支配からアジアの国々を解放し、大東亜共栄圏を建設することが、戦争の名目として、より明確にかかげられるようになりました」(同上)ととりあげます。
　「大東亜会議」とは、日本が占領した中国や東南アジアから、現地「政府」代表を東京に集め、日本はアジア独立のためにたたかっていると宣伝するためのものでした。しかし集まった「政府」は、もともと独立国だったタイを除き、全てかいらい政権で、終戦とともに消滅します。他の教科書は、アジア独立の欺瞞（ぎまん）性を教えるために取り上げています。
　育鵬社版はそのうえで、「日本の占領とアジア諸国」という小見出しで、「兵士や民衆に多くの犠牲者が出ました」と数行の控えめな説明をするものの、さいごに「欧米諸国による支配からの独立を求めていたこれらの植民地は、戦争が終わった後、十数年のあいだに次々と自力で独立を勝ちとっていきました」とまとめます。
　日本軍の「南進」の先は、フランス、イギリス、アメリカ、オランダなどの植民地でした。日本軍が植民地を守っていた欧米諸国の軍隊を破ったことを、独立の希望をアジアの人々にいだかせた、戦争目的にアジア解放をかかげた、戦争が終わったらアジアは独立していったと持ち上げ、アジア解放の戦争と教えようというのです。
　しかし、日本軍は「アジア解放｣のためでなく､アジアを欧米諸国にかわって支配するためにたたかったのです。台湾や朝鮮の植民地化、中国侵略、東南アジアでの殺戮（さつりく）と収奪……日本の行った一つ一つの行為が動かぬ証拠です。
　他の教科書で太平洋戦争を「アジア解放の戦争」と教える教科書は皆無です。

４、日本軍の非道さを隠ぺいする
　日本軍は、人命と人権を著しく軽視し、非人道的な行いを重ねました。ところが育鵬社版は、「正しい戦争」論のために、それらを最大限隠そうとします。
　例えば、ニューヨーク・タイムズなどが世界に打電し、その残虐さに世界が震えた「南京事件」。育鵬社版は「日本軍によって、中国軍民に多数の死者が出た（南京事件）。この事件の犠牲者数などの実態については、さまざまな見解があり、今日でも論争が続いている」とするだけで、何が起きたかさっぱり分かりません｡他の教科書は｢女性や子どもなど一般の人々や捕虜をふくむ多数の中国人を殺害しました（南京事件）」など、虐殺と分かるように述べています。
　日本軍は、自国民の生命も軽んじました。その典型が沖縄戦です。沖縄を本土防衛の時間を稼ぐための「捨て石」とした、〝軍民一体〟の常軌を逸する戦争。県民の４分の１にあたる１２万人以上の犠牲を出しました。ところが育鵬社版は、沖縄戦を「若き婦人は率先して軍に身を捧（ささ）げ」など英雄譚（たん）として描くのみです。住民の集団自決は、「戦闘が激しくなる中で逃げ場を失い、集団自決に追いこまれた人々もいました」と、日本軍の関与を隠します。日本軍が「生きて捕虜になるな」と教育し、住民に自殺、親族同士の殺し合いなどを強要したのが集団自決だったにもかかわらずです。
　（つづく）
( ２０１５年０７月２８日，「赤旗」)

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戦争肯定の教科書／これで教えていいのか／上

この夏８月を中心に、４年に１度の公立中学校の教科書採択が、各教育委員会でおこなわれます。そのなかで「日本は正しい戦争をした」と教える歴史教科書（育鵬社と自由社）の採択をせまる圧力が各地で強まっています。「日本は正しい戦争をした」と教えることは、国際的な孤立を深め、かつ、「戦争する国」を教育からつくり始めることです。いずれも国の根本にかかわります。太平洋戦争の記述を中心に、問題の深刻さを考え、採択を許さない世論と運動の強化を訴えます。
　（党文教委員会責任者・藤森毅）

１、あいまいにできない太平洋戦争への認識
　戦後の国際社会は、第２次世界大戦―太平洋戦争はその一部です―が日独伊による侵略戦争だったという共通の認識から出発しています。安倍晋三首相が「つまびらかには読んでいない」と国会で答弁して話題になったポツダム宣言は、日本の戦争を「無責任なる軍国主義」による「世界征服の挙」と規定しました。今になってそれは間違いで、「日本は正しい戦争をした」と言うことは、ヨーロッパで｢ナチス･ドイツは正しい戦争をした」と言うようなものです。
　当時の日本は、「満州事変」（１９３１年～）、「日中戦争」（１９３７年～）と、中国全土への侵略をはじめていました。
　アメリカは日本に撤兵を求めましたが、日本は応じず、対立が深まります｡日本は､戦争に不可欠な石油のほとんどをアメリカに頼っていたため、経済制裁されても困らないよう、東南アジアを押さえて、戦争続行の資源を獲得しようとします｡
　その時、ヨーロッパではナチス・ドイツが優位に戦争をすすめていました（１９３９年、第２次世界大戦開始）。日本は、ヨーロッパとアフリカを独伊が、東アジアと西太平洋を日本が支配するという世界征服の構想にのり、日独伊三国同盟を締結（１９４０年）、日米対立を決定的にします。
　やがて日本は、日米交渉で中国侵略の遂行が認められなければ、対米英戦争に踏み切る方針を固めます。アメリカは中国侵略を認めず、日本は１９４１年１２月８日に米英に宣戦布告します。
　中国侵略をやめる気のない日本が、それに反対する米英に戦争をしかけ、中国や東南アジアを支配下におこうとした―これが太平洋戦争でした。

２、太平洋戦争を「自存自衛」の戦争と教える
　では、問題の教科書は太平洋戦争をどう描くのか。何より驚くのは、日本の戦争を「自存自衛」としていることです（以下引用は育鵬社版）。
　まず、「アメリカは、イギリス、中国、オランダとともにわが国を経済的に圧迫し、封じ込めを強化しました」（２３３㌻）として、アメリカなどによる経済制裁を、日本の中国侵略への制裁という肝心な点を隠して、強調します。
　つぎに、日米交渉でもアメリカ側が強硬だったと述べます。「アメリカは、中国やインドシナからの日本軍の無条件即時撤退、蒋介石政権以外の中国政権の否認、三国同盟の事実上の破棄などを要求する強硬案（ハル・ノート）を日本に提示しました。東条英機内閣は、これをアメリカ側の最後通告と受け止め、交渉を断念し、開戦を決断しました」（２３４㌻）。しかし、問題は、中国侵略に固執する点で強硬な日本のほうでした。
　育鵬社版はこうした説明の上に、「自存自衛」論を述べます。
　「米英に宣戦布告したわが国は、この戦争を『自存自衛』の戦争としたうえで、大東亜戦争と名づけました」。（２３４㌻）
　これは、当時の政府・軍部の「自存自衛」という主張にこそ、真実性があったというまとめに他なりません。
　なお、育鵬社版は、日本の中国侵略自体を侵略と認めていません。「満州事変」は「排日運動の激化」への措置とし、「日中戦争」も中国側の対応に問題があり、「ここにいたって日本政府は不拡大方針を撤回し、わが国と中国は全面戦争に突入」（２２９㌻）といった具合です。
　他の教科書に「自存自衛」の言葉はありません。「日本の中国侵略」を説明したうえで、「日本が侵略的な行動を取る中で、日米関係は悪化」したと述べ、日本に「早期に開戦するしかないという主張が高まり」、「アメリカが、中国とフランス領インドシナからの全面撤兵などを要求すると、…アメリカとの戦争を最終的に決定しました」と述べています(引用は､最大手の東京書籍版｡以下同様)｡
　（つづく）
( ２０１５年０７月２７日，「赤旗」)

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戦争肯定の教科書採択やめて／５万人超す署名提出／横浜市教委

横浜教科書採択連絡会は１４日、８月の中学校教科書採択で、憲法軽視、戦争肯定の教科書を採択しないよう求める要望書を署名５万２８４人分とともに、林文子市長、市教育委員会に提出しました。
　２１人が参加し、市教委ではカウンター越しに「署名に込めた市民の思いを受け止めてください」と訴えました。「子どもと教科書全国ネット２１」の俵義文さんは教科書の選択・採択で、教員の不可欠な役割を指摘したユネスコの勧告などの適用を求める「国際共同アピール」への賛同署名を提出しました。
　同市では、２００９年に８採択地区で自由社版歴史、１１年に全市１採択地区で育鵬社版歴史・公民教科書を採択。連絡会によると６学年、１６万２０００人が学んでいます。
　記者会見で参加者は、戦争肯定など育鵬社の教科書の問題点を指摘。市教科書取扱審議会の答申を無視して評価の低い教科書を採択したことを批判し「１０４種類、２万から３万㌻の教科書を素人の教育委員が調べて判断することは不可能。教育、教科の専門家の意見を尊重すべきだ」と主張しました。
　１４年の小学校教科書採択で「無記名」投票に戻したことや、採択会場が定員２０人で、１１年採択時は５００人が音声だけの別会場、１００人は帰したことを指摘。「公正、公平、公開」に反する市教委の姿勢を批判しました。
( ２０１５年０７月１５日，「赤旗」)

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クローズアップ／京大有志の会「声明」話題に／〝詩のよう〟〝涙あふれた〟／賛同者１７６８人に広がる

戦争は、防衛を名目に始まる…
　「海は、基地に押しつぶされてはならない。空は戦闘機の爆音に消されてはならない」―。京都大学の教員らでつくる「自由と平和のための京大有志の会」の声明書が話題です。声明書は１７行ですが「歴史をふまえた名文」「躊躇（ちゅうちょ）していた気持ちが吹っ切れました」と共感をよび、ＳＮＳなどで拡散し続けています。
　（京都府・岡本大介）

　京大有志の会は、「安保法案」や国立大学の人文社会科学の軽視など安倍政権の平和破壊、学問の愚ろうに対抗しようと２日に結成されました。
　賛同者は１７６８人（２２日現在）で半数がコメントを寄せています。京都弁護士会の集会（２２日）では、ビデオ出演した河野洋平氏（元自民党総裁）も「京都大学（有志の会）がいいメッセージを出された。じつによくできている。詩のようだ」と取り上げました。

法案の問題を根本的に問う
　声明書の草稿を書いた京都大学人文科学研究所の藤原辰史准教授（３８）は「法案の穴は、憲法学者が論破できないほど証明した。私たちは法案の問題を歴史的に位置づけ、根本的に問う必要があると思った」と執筆の動機を語ります。
　藤原准教授は「声明は一人ひとりが解釈し、イメージすればいい」としたうえで、書き出しの「戦争は、防衛を名目に始まる」の意味を「第１次世界大戦や満州事変など、戦争は『防衛』を演じて始まる。ベトナム戦争にいたってはアメリカの自作自演だった」と説明します。
　首相が「存立危機」を恣意（しい）的に決められる法案の問題と重ね合わせ「こんな穴だらけの法案が通れば、あっという間にファシズムの体制になる」と警鐘を鳴らします。
　「精神は、操作の対象物ではない。生命は、誰かの持ち駒ではない」―。マスコミのコントロール、労働者を駒のように扱う派遣法改悪、沖縄への愚ろうなど安倍政権の命や人間軽視をこのメッセージに凝縮したといいます。
　そして「学問は、戦争の武器ではない」「学問は、権力の下僕ではない」について、学問が戦争に過去に加担した自戒と「文科省の『人文社会科学は役に立たない』という方針に思いっきり抵抗したい」と力を込めます。
　シールズの学生の演説、憲法学者の反対意見、声明書の広がりに「言葉が力を取り戻し、力を増している。これを抑えることはできない」と実感する藤原准教授。
　廃案への展望は―。「参議院は同じように行かない。国会議員は選挙で選ばれている以上、自分の足元をみる。いま地域で声があがり始め、その足元を揺るがしている。言葉を発信し続け、政治家が立っていられないほど揺るがせば廃案にもっていける」

子ども向けの声明にも反響
　「わたしの『やめて』」と題した子ども向けの声明も反響があり、英語など多言語にも訳されています。
　有志の会は、勉強会を企画するとともに、９月１日（火）午後６時からは京大・西部講堂での集会を計画しています。

コメント次々
　数々の声明が出されていますが、完全にハートを撃ち抜かれました。
　この声明はまさに平和憲法の精神を表していると思う。憲法９条が壊されようとしている今、ひとりでも多くの国民にこの声明書を読んでほしい。
　これまで考えていたこと、感じていたこと、誰かに伝えたかった等々全てを代弁してくれた声明文でした。涙があふれてきました。私も微力ながら行動していこうと思います。
　過去を踏まえて未来にも通じる声明文だと思いました。今は京都から離れて関東にいますが、こちらでもできることを探していきたいです。
　素晴らしい声明文に感動いたしました。安倍政権の空疎な言葉に対抗して人の心に深く深く染み渡る真心を感じます。
　今まで政治的、外交的なことにはさほど関心がありませんでしたが、現政権のあまりの独走ぶりに、大きな危惧を抱かざるを得なくなっていく中で、貴会のこの良識ある明快な声明文を拝見し、ひとつの真実を見た思いです。
　声明文に感動いたしました。普段は医療のことばかり考えていますが、今回の安保法案、言論の威圧的発言等については納得がいきません。できることは少ないとは思いますが、個人的に協力していきたいと思います。
　まるで詩のような文章。こころが震えました。涙がこみ上げてきました。でも未来に向かって上を向いて歩いて行こうという気持ちになれる文章です。
(２０１５年０７月２５日，「赤旗」)

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文化の話題／金曜名作館／山本薩夫監督映画「戦争と人間」／大林宣彦

明日を示しながら問う、この国の過去
　安保法案強行採決に向かってひた走る、日本の敗戦後７０年目の夏のはじめ。アニメーション映画監督で、名作「火垂るの墓」の作者でもある高畑勲さんとこの僕は、「信じられないことになってきましたねぇ」と慨嘆し合っていた。
　その日、僕ら２人は、日本映画界の先達・山本薩夫監督が率先して始められた、今年で３２年目を迎える「日本映画復興賞」を、そろって受賞した。戦争と平和を考える、映画人の集いである。
　その授賞式の前日、僕は山本薩夫監督の全編１０時間近くに及ぶ大作「戦争と人間」３部作を、わが家のＤＶＤで再見していた。封切り時の１９７０年代初頭に、満席の熱い劇場に通って見て以来のことである。

映画から戦争を学ぶ若者たち
　今年の春ごろから、日本を代表する映画業界誌の『キネマ旬報』と『映画芸術』の２誌が、共に「戦争映画」特集の準備を始めた。僕が教授を務めている三つの大学でも、「映像社会学」の授業の内容は「戦争映画」。いま日本の若者たちの間で、「映画から戦争を学ぼう」という気運が一斉に高まっており、僕自身が作った映画の上映とティーチインは全国展開。夏から冬にかけては、海外の各地や大学での講義にも出向く予定。そんな中で僕はこの際、日本の敗戦から現在に至る７０年の間に作られた「戦争映画」を、集中的に見直してみた。
　敗戦から数年の連合国軍総司令部ＧＨＱの占領下にあった日本では、「戦争映画」は作られてはいない。それが日本独立前後の５０年代初頭になってから、一気に「日本戦歿学生の手記　きけ、わだつみの声」に始まり、「原爆の子」、「ひろしま」の原子爆弾の、ことに放射線被害を扱ったもの。そして軍隊内部の地獄を告発した「真空地帯」が製作される。「真空地帯」の監督が山本薩夫であり、僕らかつての軍国少年であり「靖国の子」でもあった敗戦後の日本の少年は、僕らが憧れた「名誉の戦死」とは、戦場で見捨てられ餓死したり、捕虜になるは恥辱であると命じられ自決したり、軍隊内部での理不尽な暴力による惨死であったという、戦争の実態を学ぶ。

確固とした志と娯楽の魅力備え
　これらの映画は「戦争への反省」という、当時の切迫感で破裂しそうなほどの、見るのが辛いが故に見せてもらうのが有り難い映画でもあったが、やがて過ぎゆく時の中で、「戦争映画」もまた次第に、「映画は娯楽である」という商業映画の制度の中で、反戦を踏まえた名作から感情移入を放棄した戦記物へ。さらにはアクション、アドベンチャー、人情もの、お涙もの、果ては軍歌バー風ノスタルジックなものから、とうとう戦意昂揚ものへと復古してゆく。
　その７０年にわたる「戦争映画」の推移のさまは、今現在の安保法案強行採決に至るこの国の現実を、鏡のように映し出している。
　その現在、僕は山本薩夫作「戦争と人間」を、必見の映画として読者諸兄姉にお薦めします。この日本という国と日本人に、なぜ戦争をするという理由があったのか。その結果この国と僕らは、この国と他の国において何をしたのか。そしてさらには僕らがこの祖国自身によって、なぜむざむざと残酷に殺されなければならなかったのか。繰り返す戦争の歴史の中で、過去の戦争の物語は、僕らの明日を指し示す光でもあるのです。
　確固たる平和への志を持ち、また映画作りの見事な業師でもあった山本先輩のこの一作は、娯楽としての魅力もたっぷり備えつつ、「風化せぬジャーナリズム」として、この今、僕らの胸に迫ってくるのだ。
　（おおばやし・のぶひこ　映画作家）

「戦争と人間」３部作
　１９７０～７３年、日活。原作は五味川純平の大河小説。張作霖爆殺事件が起こされた昭和初期（１９２８年）から第２次大戦勃発にいたる時代、新興財閥伍代家が、中国大陸で膨張する軍部と結託して利権を拡大していくなか、彼らに関わる人々は苦悩し、ファシズム進行の波にのみこまれ、あるいは抵抗して生きていきます。
　浅丘ルリ子、芦田伸介、江原真二郎、加藤剛、北大路欣也、栗原小巻、高橋悦史、高橋英樹、滝沢修、地井武男、三国連太郎、山本圭､吉永小百合ほか多彩な出演者｡

　山本薩夫　１９１０～８３年。３７年「お嬢さん」で監督デビュー。４３年に応召し４６年に復員。４７年「戦争と平和」（亀井文夫と共同）、４８年東宝争議で退社。独立プロ、大手で活躍。「真空地帯」「人間の壁」「武器なき斗い」「忍びの者」「にっぽん泥棒物語」「白い巨塔」「華麗なる一族」「不毛地帯」ほか。遺作は「あゝ野麦峠・新緑篇」。
( ２０１５年０７月２４日，「赤旗」)

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２０ 「反ファシズム勝利７０年」展示／「両国民の交流が大事」／中国抗日戦争記念館

北京市郊外にある中国人民抗日戦争記念館で始まった「世界反ファシズム戦争勝利７０年」を記念する展示に、多くの学生や市民らが詰め掛けています。記念館の羅存康副館長は「ぜひ多くの日本人にも来てほしい」と語っています。
　（北京＝小林拓也　写真も）

　記念館は、日本の中国への本格的侵略のきっかけとなった盧溝橋事件（１９３７年）の現場近くに、８７年に建てられました。事件から７８年となった７月７日、準備のため半年間の休館を経て再オープン。大型展示「偉大な勝利、歴史への貢献」が開幕しました。
　７日午後には、習近平国家主席や李克強首相ら、中国共産党の最高指導部である政治局常務委員７人全員が参観。一般開放初日の８日には約７８００人が入館し、大盛況となりました。

１５００点以上が初公開
　展示の総面積は６７００平方㍍。１１７０枚の写真と２８３４点の当時の銃や手紙などの文物が展示されています。休館前の２倍以上に増え、うち１５００点以上の文物は初公開。多くが、中国各地の民間の収集家や元兵士の家族らからの寄付だといいます。
　とくに目を引くのは日本軍の侵略行為の展示です。日本軍の無差別爆撃の写真や細菌兵器の展示などに多くの人が見入っていました。戦時中、日本に強制的に連行され炭鉱などで過酷な労働を強いられた「強制連行」の展示は、新たに被害者の名簿や写真などが大きく飾られ、内容が充実しました。
　展示の最後の部分では、「近年、日本の右翼勢力は、靖国神社参拝や歴史教科書、『慰安婦』などの問題で間違った行動を繰り返している」と批判。一方で、日本の友好団体などから寄せられた平和を求めるメッセージも飾られ、日中友好を強調しています。
　湖北省武漢市から来た劉興策さん（８０）は、「当時の日本軍の罪が具体的に分かった。若い人たちに、歴史を忘れず、いまの幸福な暮らしを大事にするよう伝えたい」と感想を語りました。
　北京で法律関係の仕事をしている方鴻博さん（２８）は友人と見学。「日中の間には良くない記憶があるが、避けてはいけない。日中の国民が交流することが大事だと改めて感じた」と話しました。

反日目的ではない
　羅副館長は、「展示は歴史をしっかり記憶し、悲劇を二度と繰り返してはいけないということを伝えるのが目的だ。その中で、中国人民が人類平和のために貢献したことを紹介している。日本への抗議や反日では決してない」と強調。「日本には中国とは考えが違う人もいる。そういう人こそ記念館を参観し、私たちと意見交換してほしい。私たちは民間交流を重視している」と語っています。
( ２０１５年０７月２０日，「赤旗」)

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本立て／光る風／山上たつひこ著

「がきデカ」の大ヒットで知られ、最近は小説家に転じた著者が、デビュー直後の７０年に少年誌に連載していた漫画作品。４５年後に改めて新版に。近未来日本のファシズム化を描いた問題作です。
　エリート軍人の兄を持つ主人公が反政府運動に巻き込まれ､｢防衛庁」が「国防省」となり、アメリカのインドシナ戦争への「介入」に日本軍が「国際平和と安全のために」と引きずり込まれていく…。現在の「集団的自衛権」問題を予言しつつ、全体主義の時代への恐怖をこれでもかと描きます。（フリースタイル　１９００円）
(２０１５年０７月１９日，「赤旗」)

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ストップ戦争法案／京都産業大学教授・ノーベル物理学賞益川敏英さん／安倍首相の手法はファシズム

安倍首相の手法はファシズムですよ。これだけ国民が反対しているのに強行しようとする。安倍首相の態度はつまるところ、〝おれが総理大臣だから、おれが良いと思えば決める〟という、それだけです。こんなむちゃな政治はありませんね。
　安倍政権のもとで政治のあり方が民主主義の限度、立憲国家としての限度を超えたと思います。安倍首相がどうしても憲法を変えたいのなら手順を踏むのが当然でしょう。
　安倍首相が憲法解釈を変えて強行しようとしている集団的自衛権行使は誰が考えても憲法違反です。圧倒的に多くの憲法学者も、歴代の内閣法制局長官も違憲だといっています。
　私は高校生の頃、ベトナム侵略戦争で米国はひどいことをする国だと思いました。そんな国と一緒に戦争しようというのはどうかしている。
　私は憲法前文や９条を読むたびに感動します。涙が出る。それをないがしろにする首相に本当に怒っています。いま、学生も国会前や街頭に出て、戦争法案反対を訴えています。もっと広がってほしい。
　国民が安倍政権と正面から対決する瞬間が近づいていると思います。国民の声、国民主権を踏みにじる安倍政権を許容するかどうか、はっきり答えを出しましょう。

京都大学基礎物理学研究所所長、名古屋大学素粒子宇宙起源研究機構長など歴任。現在、京都産業大学益川塾塾頭。２００８年ノーベル物理学賞
(２０１５年０７月１９日，「赤旗」)

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戦争法案廃案へ各地で行動／鳥取で抗議宣伝

憲法改悪反対鳥取県共同センターは１６日、戦争法案の強行採決に抗議し、ＪＲ鳥取駅北口で宣伝しました。
　新婦人県本部の田村真弓事務局長は「議論は尽くされていません。憲法違反が明らかな戦争法案を、国民大多数の反対を押し切って強行することは、ファシズムにほかなりません」と糾弾し、８月２日（午後１時半、県庁横の久松公園）に行われる弁護士会主催の集会・デモを紹介しました。
　日本共産党の岩永尚之県書記長は、強行採決は国民世論に追いつめられてのことだと指摘。反対世論をさらに広げて戦争法案を廃案に追い込もうと呼びかけました。
　国士舘大学出身だという男性（７２）も「わしも反対だ。がんばれ」と声をかけました。
(２０１５年０７月１８日，

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アウシュビッツ元看守起訴／殺人ほう助の罪／ドイツ

【ベルリン＝時事】ドイツ西部フランクフルトの検察は、第２次大戦中に現在のポーランドにあったナチス・ドイツのアウシュビッツ強制収容所で、少なくとも１０７５人の殺人をほう助した罪で、元看守の男（９２）を起訴しました。
　１５日付で出された検察の発表資料によると、男は１９４２～４３年、移送されてきた収容者がガス室で虐殺される過程に関わったとされています。検察は戦後７０年たった今もナチス犯罪の捜査を継続。独裁判所は１５日にはアウシュビッツ収容所の元簿記係の男（９４）に殺人ほう助の罪で禁錮４年の判決を言い渡しています。
( ２０１５年０７月１８日，「赤旗」)

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戦争法案阻止力合わせ／大集会に２５００人／和歌山弁護士会

和歌山弁護士会（木村義人会長）は１２日、「憲法違反の『安保法制』に反対する和歌山大集会＆パレード」を和歌山市で開催。会場の和歌山城西の丸広場いっぱいの２５００人が参加しました。
　木村会長は「在野の法曹として断固阻止する」とあいさつ。民主党衆院議員が安倍政権を批判し、日本共産党の宮本岳志衆院議員は「（安倍政権は）まさにファシズム。こんな政治を許すわけにはいかない｡力を合わせ､がんばろう｣と訴えました｡
　「９条ママｎｅｔキュッと」の小池佳世さんは「田辺から１３０人で来ました。廃案になるまで声を上げ続けます」。カトリック屋形町教会修道女の田村悠紀栄さんは「イエスの教えは非暴力です。武器に頼らない平和を」と願い、自民党員の丹生邦子さんは「与党は国民の声を聞け。国民をなめるな」と怒りを語りました。
　和歌山大学の江利川春雄教授は「絶対に許してはならない思いが全国のキャンパスにあふれている」と報告、若者憲法集会実行委員会の西澤正美さんは「総理のわがままで私たちの生き方を決めてほしくない」と力説しました。
( ２０１５年０７月１４日，「赤旗」)

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アウシュビッツ元簿記係・９４歳／禁錮４年の判決／ドイツの裁判所

【ベルリン＝時事】第２次大戦中、現在のポーランドにあったナチス・ドイツのアウシュビッツ強制収容所で簿記係として勤務し、約３０万人の殺害をほう助した罪に問われたドイツ人、オスカー･グレーニング被告（９４）に対し、独北部リューネブルクの裁判所は１５日、禁錮４年の判決を言い渡しました。ＤＰＡ通信などが報じました。
　検察は禁錮３年６月を求刑していましたが、これを上回る量刑となりました。裁判官は、被告が「殺人を目的とした組織」で「無難な事務仕事を進んで引き受けた」と厳しく指摘。被告は健康状態が思わしくないため、実際に収監されるかは現時点で決まっていません。
　被告は当時、ナチス親衛隊員で、収容者から奪った金品を管理する立場でした。被告は公判で「道義的にみて自分も共犯」と述べましたが、弁護側は法的観点から簿記係の任務が虐殺ほう助に当たるとはいえないとして、無罪を主張していました。
　存命するナチス関係者は高齢になっており、この公判はナチスの犯罪を裁く「最後の裁判の一つ」として注目を集めていました。
( ２０１５年０７月１７日，「赤旗」)

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上海協力機構が首脳会議／ウクライナ停戦訴え／宣言採択／印パ正式加盟へ

【北京＝小林拓也】中国、ロシア、中央アジア４カ国（カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタン）でつくる上海協力機構（ＳＣＯ）は１０日、ロシア中部バシコルトスタン共和国ウファで首脳会議を開きました。会議で採択された首脳宣言は、ウクライナ東部の停戦合意の全面的履行や、イラン核協議の最終合意に向けた努力などを訴えました。
　首脳会議は、準加盟国のインドとパキスタンを正式加盟国とするための手続き開始を決めました。２００１年に成立したＳＣＯは、両国の加盟で、中央アジアから南アジアまで広がる巨大な地域機構に発展することになります。
　首脳宣言は、「新メンバーを迎えることは組織の発展に重大な意義があり、組織の潜在力を高める」と表明しました。
　首脳会議は、準加盟国として新たにベラルーシを加えることを決定。準加盟国にはモンゴル、アフガニスタン、イランがすでに参加しています。また、イランの正式加盟を検討するとしました。
　拡大を続けるＳＣＯは、中国が提唱する「一帯一路」（新シルクロード経済圏）構想や、アジアインフラ投資銀行（ＡＩＩＢ）の範囲とほぼ重なっています。首脳宣言は、一帯一路への支持を表明。中国の習近平国家主席は演説で、「シルクロード経済圏とＳＣＯの発展は相互補完の関係だ」と強調しました。
　首脳会議は、反ファシズム戦勝７０周年の共同声明も採択。声明は「第２次世界大戦の成果を道徳・法律の上から歪曲（わいきょく）することに断固反対する」と呼び掛けています。
( ２０１５年０７月１２日，「赤旗」)

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安保法案／東京大学人緊急抗議集会／学生・教員、活発に意見交流

大学に戦争は、なじまない／立憲主義破壊許しません／「憲法の番人」は国民です
　「このように学生と共同で決起される集会は、画期的です」（佐藤学名誉教授）。１０日、東京・目黒区の東京大学駒場キャンパスで開かれた「安保法案　東京大学人緊急抗議集会」。「東京大学内における行動と議論を前進させる」「あらゆる方向から政府に圧力をかける」「それぞれの立場で学び続ける」などを提起したアピールを採択した同集会では、登壇した教員が口々に、学生たちをたたえました。学生自身の発言も活発でした。
　教養学部１年の男子学生は「大げさかもしれませんが、今の政治が続いたら、ぼくたちの子どもがおとなになったとき闇の時代になっているかも。いざというときに権力をしばる立憲主義が、機能しなくなっているかもしれません」と語りました。
　文学部博士課程２年の男子院生は「政府は文系学部廃止を言いだしました。立憲主義・平和主義の問題を批判されたくないのでは。大学は公的営造物である前に学問共同体です。大学に戦争は、学問に立憲主義破壊はなじまない」と大学の使命を指摘。
　教養学部１年の男子学生は「大学に入ってまだ３カ月のぼくらでも〝政府がいうから正しい〟ではなく、本や新聞を読み、意見も聞いて、自分で判断することが大事だと思う」と新入生らしい見方を語りました。
　「アメリカも残虐なことをしてきた。日本が世界から尊敬される道は、そんなアメリカと手を組むのでなく憲法を守ること」（農学部４年生の男性）など発言が続きました。
　集会後、会場内にいた学生も「政府が立憲主義を踏みにじっていることが、自分の研究や学問的立場から許せなかった」（文学部３年男性）との怒りや、「いま話題になっている法案にどんな問題があるのか、知りたくてきた」（教養学部１年男性）など、思いを語りました。
　卒業生や教員・職員からも活発な発言が続きました。伊藤真弁護士は「いま立憲主義という、法と知性と理性で政治をコントロールする人類の英知が、根底から覆されようとしています｡しかし『憲法の番人』は国民です｣と訴え。呼びかけ人の市野川容孝（いちのかわやすたか）教授も「全権委任法でナチスが権力を握る前にも､ドイツでは何度か､よく似た『授権法』が成立していました｡〝またか〟〝まだ大丈夫〟と思っているうちに手遅れになった。私たちも記憶すべきです｣と述べました｡
( ２０１５年０７月１２日，「赤旗」)

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新しい大阪へ／さらば維新政治／大阪大学大学院教授小野田正利さん／楽しく通える学校こそ

橋下・維新統治下の７年半で、教育は最も攻撃対象にされ、そして「改革」にさらされ、今なお翻弄（ほんろう）されています。
　橋下さん（大阪市長）の教育改革は、手当たり次第の「破壊のエクスタシー」だと思っています。壊すことによる快感が一貫してある。しかし、壊したあとに責任は取りません。
　橋下さんの改革は、人々の心のなかにある「ねたみ」や「恨み」をかきたたせ、目の前３０㌢の人間をたたくことで留飲を下げさせる効果をもつものです。これはファシズムへとつながっていて、とても危険だと思います。
　今年４月から教育委員会制度が改悪され、自治体の首長の権限が大幅に強化されました。

教員の意欲心配
　もう一つ、重要な政策が進められています。公立学校の民営化です。地域の子どもたちが通い学ぶ〝みんなの学校〟がなくなっていく中で、公共財産としての学校敷地等を売り飛ばし、いかに安上がりで効率の良い人材を育成するかということに関心を持つ政策になっていく。これに大阪は真っ先に手を上げました。
　そんな中、何が起きたか。教職員のモチベーション（意欲）も質も低下し始めているのではないかと危惧しています。
　大阪府下の自治体の教育委員会に依頼されて講演に出向くと、関係者が「教員の質が目に見えて下がった」などと口々に語ります。教職員の競争率が下がれば、質の低下が起こる割合は高くなります。実際に、大学生が大阪の公立校への就職を忌避して私学に行ったり、大阪出身者が他県に就職し始めています。
　この間、民間人校長による不祥事の数々と、現役教頭の士気の低下が顕著になりました。民間人校長がいるから長年教頭を務めていた人が校長になれず、モチベーションが下がる。目標管理システムが学校を席巻するなど、非常に息苦しい状況が生まれています。

深刻な校内暴力
　大阪には深刻な実態があります。校内での暴力行為の発生件数は、全国の中でも断トツの１位です。不登校児童・生徒数も、小中学校は全国２位、高校は１位です。これをどういう形で改善していくのか。教育で最も重要なことは、子どもが毎日、楽しく学校に来ているかどうかです。
　今、日本全体が、「教育改革病・教育改革依存症」に陥っている危うさがあります。そして声高に「改革だけを叫ぶ政治家」は責任を取らないのが現状です。
　４年前に成立した教育基本条例などの廃止と、見直しを含めた新しい条例制定の必要性があります。子どもや保護者、教師にとって、学校を魅力ある学ぶ場、信頼する場、働ける場につくり替えなければいけません。
(２０１５年０７月１１日，「赤旗」)

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戦後７０年の８月に戦争と平和の特集／ＮＨＫ

終戦から７０年の節目に、ＮＨＫで８月に放送される「戦争・原爆・平和」をテーマにした番組を紹介します。（民放は１５日付）

ＮＨＫスペシャル
　「きのこ雲の下で何が起きていたか」（６日、後７・３０）１９４５年８月６日、人類史上初めて核兵器が使用された広島。原爆投下直後の、ただ２枚だけ残る記録写真を、被爆者の証言をもとに立体映像化し、多くの事実を明らかにします。
　「〝あの子〟を訪ねて～長崎・山里小学校　被爆者の７０年」（９日、後９・０）長崎原爆を生き残り、体験を手記にした３７人の子どもたち。現在、平均年齢７８歳の彼らの、原爆に翻弄（ほんろう）されながら生きるしかなかった人生を見つめます。長崎放送局制作。
　アニメドキュメント「あの日、僕らは戦場で～少年兵の告白」（１１日、後７・３０）「撃たれた幼なじみを見捨てて戦闘を続けた。心は異常だった」。ある者は戦争末期の沖縄でたたかい、ある者は｢本土決戦｣に向けてゲリラ訓練を受けていた少年兵たち。子どもが戦争に利用された歴史をアニメで伝えます。
　「女たちの太平洋戦争～日赤報告書が語る戦場の現実」（１３日、後１０・０）アジア・太平洋に派遣された３万人もの「従軍看護婦」たち。残された２００冊の業務報告書と、おびただしい死と直面した彼女たちの証言から戦争の実像を描きます。
　「カラーで見る太平洋戦争」（１５日、後８・０）国内外から収集した太平洋戦争の記録映像をデジタル技術でカラー化。行軍、激戦、戦時下の庶民の暮らしが鮮やかによみがえります。

ドラマ
　「一番電車が走った」（１０日、総合、後７・３０）被爆からわずか３日後の広島で運転を再開した路面電車。運転士は女学校の少女たちでした。絶望の街を、家族を捜す人々を乗せて走る路面電車は、いつしか〝ヒロシマの希望〟となっていきました。出演は黒島結菜、阿部寛ら。広島放送局制作。

Ｅテレ
　「ウワサの保護者会～子どもにどう伝える？戦争のこと」（６日、後１０・２５）平和を未来につなげたくても戦争のことを子どもにどう伝えればよいかと悩む小・中学生の親たち。教育評論家の尾木直樹さんと、そのヒントを探ります。
　ハートネットＴＶ・シリーズ戦後７０年「知的障害者３０人の戦中戦後記」（１９、２０日、後８・０）温暖な伊豆諸島の施設を軍に追い出され、山梨県に疎開した知的障害者たち。１年で１０人が寒さと飢えで亡くなった苦難の道のりを伝えます。「戦争と障害者／ナチスは何を行ったのか」（２５日、２６日、３回目は未定、後８・０）〝優生思想〟に突き進んだナチスドイツは、ドイツ人を含む２０万人の障害者や遺伝病患者を虐殺、強制断種しました。ドイツと日本の障害者リーダーが対話し、７０年前のドイツと今の社会のあり方を見つめます。

ラジオ第１
　「クスノキの心を受け継ぐ」（６日、後８・０５）広島の被爆樹木を自らの姿と重ねる被爆者たち。「理解されず訴えも届かない」心情を見つめ、市の「被爆体験伝承事業」に参加する若者の姿などを通して、どう「ヒロシマ」を引き継ぐのかを考えます。広島放送局制作。
　「響け、長崎の鐘」（９日、後９・０５）原爆で破壊された浦上天主堂の鐘を掘り出した信者が、４０年にわたって鐘を鳴らし続けて市民を励ました史実をドラマ化します。長崎・大阪放送局制作。
　「遠くなる戦争を語り継ぐ～女性ノンフィクション作家の対談」（１６日、後８・０５）旧満州で終戦を迎え、難民生活も体験した８４歳の澤地久枝と、中国残留孤児だった父を持つ３９歳の城戸久枝。２人の対談から戦争体験の次世代への継承を考えます。
( ２０１５年０７月１１日，「赤旗」)

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１０ 朝の風／だまされた悔しさ

原発事故で苦しむ人びとを主題にしてきた南相馬市在住の若松丈太郎の詩「『積極的平和主義』って？」（『詩と思想』７月号）は、ふたりの元少年の、国にだまされていた悔しさを表現している。
　ひとりは敗戦を１０歳で迎えた作者自身で、戦中「遂げよ聖戦　興せよ東亜」「進め一億火の玉だ」などの標語を信じていたが、あとで侵略戦争だったと知った。「騙された悔しさは一生つきまとう」
　もうひとりは「原子力　明るい未来のエネルギー」という標語を考えた１２歳の少年。双葉町のメーンストリートにかかげられた。原発事故で町はそれを撤去しようとしたが、３９歳になった元少年は反対した。故郷をズタズタにした愚かさを後世に伝える負の遺産とすべきだと。「アウシュヴィッツの『ＡＲＢＥＩＴ　ＭＡＣＨＴ　ＦＲＥＩ』のように」
　『』内のドイツ語は｢働けば自由になれる｣の意味｡１９世紀の小説の表題で、ワイマール共和国時代、公共事業拡充の標語として使われたが、ナチスが強制収容所にかかげた。
　安倍首相もよくもまあとあきれるぐらいヌケヌケと言葉を正反対の意味で使う。積極的平和主義とは侵略戦争への加担の意味だ。作品はそれには何も言及せず、だまされた元少年の悔しさをこめて無言で告発する。
　（槐）
( ２０１５年０７月０６日，「赤旗」)

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作家中村文則さん語る／全体主義と戦争、非常に危険／多様性とは正反対のもの

『教団Ｘ』『あなたが消えた夜に』
　芥川賞、大江健三郎賞を受賞し、作品の多くが翻訳されて海外でも評価が高い作家の中村文則さん。近作『教団Ｘ』『あなたが消えた夜に』を語る中で、「作家は時代に向き合い、自らの社会的立場を表明すべきではないか」と言います。
　（平川由美）

　僕は今の日本の流れに危機感を持っています。秘密保護法制定、集団的自衛権行使容認の強行など、全体主義の方向に傾きつつあるのではないか。この傾向がもっとはっきり出てきた時にはもう遅い。誰も聞く耳を持たなくなる。
　第２次世界大戦前から敗戦までの１７年間に日本の政権は１７回変わりました。でも戦争を止めることができなかった。仮に安倍首相を信用したとしても、その次は信用できるのか、その次は？　と問いたい。一度システムができあがると止められなくなるんじゃないか。
　『教団Ｘ』では、謎のカルト教団に対抗する自称アマチュア思索家・松尾の語りの中で、僕の理想を掲げました。「我々は、平和平和と連呼する、戦争を望む国々から煙たがられる存在になるべきです」「『紛争』で大国の企業達が利益を得るような状態を防ぐために、『紛争』を事前に防ぐ行為をし続けたい」「暗躍する軍需産業を野放しにするわけにはいかない」
　ネット右翼の主張などに見られるような全体主義的快楽は非常に危険です。「国家万歳」と叫んで、自分で考えることを放棄し熱狂に身を置けば気持ちいいかもしれない。でもこの気持ち良さにおぼれてはいけない。
　ナチスに反対したドイツのマルティン・ニーメラー牧師の言葉がありますね。「ナチスが最初共産主義者を攻撃した時、私は声をあげなかった。私は共産主義者ではなかったから。社会主義者が牢獄に入れられた時、私は声をあげなかった。私は社会主義者ではなかったから」――そして最後に自分たちが攻撃された時には全てが遅すぎた、と。今ならまだ遅くない。
　僕がデビュー以来小説を通して伝えたかったのは、「全ての多様性を愛する」ということです。全体主義と戦争は、私たち一人ひとりの貴重な人生を侵食する、多様性とは正反対のものです。
生きづらさ抱く人に生きる希望こめ書く

『あなたが消えた夜に』は、連続通り魔事件をめぐって刑事、被害者、容疑者、犯人など、多様な人間の深層を掘り下げたミステリーです。主人公の刑事の中島もまた、少年の頃に犯した罪におびえています。

弱さ持つ刑事が殺人止める物語
　「犯罪者のそばにいると安心するという特殊な刑事像です。僕は人の弱さを認めていきたい。誰もが最初は子どもだったのに、なぜこんなことをする人間になってしまったのか、社会的理由も含めて分析しなければ、犯罪の抑止にはつながらないと思います。中島は犯人が憎いのではなく、これ以上罪を犯させないように早く捕まえようとします。刑事の意志によって連続殺人事件が止まる物語を書こうと思いました」
　登場人物はそれぞれ、子ども時代の傷を抱えています。父の不在、暴力、母の悲しみを救えなかった呵責、親に愛されたかった渇望。癒えない痛みを紛らわすかのように、さらに深い傷を求めてあがく人々が描かれます。
　「テレビ報道では『借金に追われ、金が欲しくて強盗に入った』というだけの事件でも、その奥には人間が絶望に陥っていく過程があります。幼少期の内面のダメージは、おとなになっても引きずってしまうもので、そういう人たちがどうやって生きていけばいいのかを僕は書きたい。この本も悲劇的な物語ですが、人は人に寄り添って救われるのだという希望をこめて、最後のシーンを書きました」

人間への不信感、小説に救われた
　人間と社会に不信感を抱いていたという少年時代。小説を読むことで救われました。その小説を書いたのも人間だという気づき。
　「高校時代は太宰治をひたすら読み、大学に入ってドフトエフスキーの『地下室の手記』に衝撃を受けました。自分だけが苦しいんじゃない、こんなに暗い人がいるんだったら、僕も生きていていいんだ、と。世の中に明るく朗らかな小説しかなかったら、孤独や疎外感を感じている人は救われません。僕は常に、少数派の側に立って、生きづらさを抱える人たちのために小説を書いてきた。それは僕自身がそうだからです」
　大学卒業後、フリーターをしながら１食２００円に切り詰め、２年間、小説を書き続けました。２００２年、拳銃を拾った青年の心理を描写した『銃』で新潮新人賞を受賞しデビュー。以来、救いとしての文学を追求し、著書は１６冊を数えます。本のあとがきを、いつも「共に生きましょう」という言葉で締めくくります。
　「世の中で肯定できるものを一つでも増やしていくために、少しでも何かしたいと思っています。テロ、飢餓、難民、環境破壊…、この世界は絶望的なことも多いけれど、そういう問題があると知るだけでも違うと思うんです。悪は連鎖するけれども、善も連鎖します。ささやかな善でいい。日々の中で、世界を善へ動かすことを共にしていきましょう」

　なかむら・ふみのり　１９７７年愛知県生まれ。福島大学卒業。『土の中の子供』（芥川賞）、『掏摸』（大江健三郎賞）、『Ａ』『教団Ｘ』『あなたが消えた夜に』など。米文学賞デイビッド・グディス賞を日本人で初めて受賞。
( ２０１５年０７月０６日，「赤旗」)

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「英国のシンドラー」ウィントン氏死去／ユダヤ人の子どもら６６９人救出

【ロンドン＝ＡＦＰ時事】第２次大戦の開戦直前、当時のチェコスロバキアからユダヤ人の子どもら６６９人を救出し「英国のシンドラー」と呼ばれたニコラス･ウィントン氏が、ロンドン近郊の病院で死去しました。１０６歳でした。家族が１日、明らかにしました。
　ロンドン証券取引所の職員だったウィントン氏は１９３９年、ナチス・ドイツに占領されていたチェコスロバキアを旅行中に、ナチスの収容所に送られようとしていた大勢の子どもらを列車で英国に避難させました。ウィントン氏は２００３年に英国からナイトの称号を授与され、１４年にはチェコの最高勲章を受章。
　勲章を授章したゼマン大統領はツイッターで「彼の勇気に感服した」と哀悼の意を表明。キャメロン英首相も「世界は偉大な人物を失った」とツイートしました。
( ２０１５年０７月０４日，「赤旗」)

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朝の風／「プラハの春」音楽祭での共感

５月６～１４日、「プラハの春」音楽祭があるチェコに行った。音楽祭は１９４６年以来、１９世紀チェコの作曲家で民族独立運動の戦士だったスメタナの命日５月１２日に彼の交響詩組曲｢わが祖国｣の演奏でオープンする。
　この日夜、スメタナホールで演奏したのは、トーマス・ヘンゲルブロック指揮のハンブルク北ドイツ放送交響楽団。ドイツの楽団の演奏は音楽祭で初めて。ナチスドイツに侵略された歴史から当初関係者から反対の声があったと聞く。
　同交響楽団は全員が起立して聴衆に丁重に敬意を表し、チェコ国歌に続いて｢わが祖国｣を演奏した。大曲のため通常は途中休憩を挟むが、一気に演奏し終えた。あまりの熱演に聴衆は感嘆し、拍手は鳴りやまなかった。
　この日朝、ヴルタヴァ川段丘上の聖パウロ教会と国民墓地に行きスメタナの墓前祭に参加した。この墓地はチェコ文化省に選定された文化功労者が埋葬され、交響曲「新世界」の作曲家ドボルザークや大作絵画「スラブ叙事詩」のミュシャらも眠る。大統領のメッセージ(代読)に｢音楽に国境なし」とあった。
　ドイツの交響楽団は「わが祖国」の演奏を志望して歴史認識を態度で示し、チェコの聴衆は共感の拍手で応えたのだろう。日本からの聴衆も｡
　（千）
( ２０１５年０７月０１日，「赤旗」)

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（６月ヘッドライン）

３０

ナチ強制収容所、私たち忘れない／ベラルーシ・記念碑建立

中国戦勝７０年記念大会／天安門広場で９月３日に開催

第２次世界大戦と日本／対外侵略のファシズム側、世界戦争引き起こした責任は明確／木畑洋一

ローマ法王「武器製造に携わるキリスト教徒は〝偽善者〟」／イタリアの集会で非難

にちようシネマ館／ピクニック／フランス

２０

ホイッスル

特派員日誌／ドイツ／「一生に一度はここで歴史を学ぼう」

富山県ＡＡＬＡ総会と講演会／アベノミクスを批判

女性の目アラカルト／ドイツ／靖国神社との関係

戦争法案／論戦・共同、政府追い詰める／戦争は最大の人権侵害／署名２６万人分手渡す／日弁連勉強会

九条の会よっかいち１０周年集い／戦争法案阻もう

育鵬社版歴史教科書を読む／えっ侵略が「自存自衛」！？／歴史教育者協議会石山久男さん

日弁連院内勉強会／自民・村上誠一郎議員のあいさつ

１０

演劇／「アドルフに告ぐ」（ＫＡＡＴ神奈川芸術劇場）／「正義」の戦い果てる日は

第６８回カンヌ映画祭／移民・ナチ追及・失業…社会性豊か／中川洋吉

仏最大野党「共和党」に党名変更／１７年大統領選にらみ／極右はイメチェン作戦

親子で映画プラス／工藤雅子／９／やさしい本泥棒・運命を切り開く少女／天才スピヴェット・家族の絆取り戻す

言聞録／２０１５年５月２４日～３０日

（６月本文）

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３０ ナチ強制収容所、私たち忘れない／ベラルーシ・記念碑建立

ベラルーシでナチス・ドイツの侵攻から７４年となる２２日、首都ミンスク郊外のトロステネッツ村のナチス強制収容所跡地に、犠牲者をしのぶ記念碑が建立され、除幕式が開かれました。（写真、ロイター）
　同強制収容所は、旧ソ連圏では最大の２０万人以上の犠牲者を出しました。記念碑は「記憶の門」と名付けられました。
　ルカシェンコ大統領は式典で、「〝誰のことも忘れない、何も忘れない〟というモットーが私たちを団結させた。碑が、私たちの子どもや孫たちに、平和を守る大切さを思い起こさせるものとなってほしい。ナチズムの思想がこの悲劇をもたらしたことを忘れないための碑となってほしい」と語りました。
　ベラルーシ国営通信によると、建設費用のために国民からの募金のほか、外国からの支援もありました。
( ２０１５年０６月３０日，「赤旗」)

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中国戦勝７０年記念大会／天安門広場で９月３日に開催

【北京＝小林拓也】中国が９月３日の抗日戦争・反ファシズム戦争勝利７０周年に合わせて実施する記念行事に関し、中国共産党中央宣伝部の王世明副部長は２３日の記者会見で、９月３日に北京の天安門広場で閲兵式などの戦勝記念大会を行うと明らかにしました。大会では習近平国家主席が演説します。
　閲兵式の目的について、閲兵指導小組弁公室の曲叡副主任は「わが国が断固として平和発展の道を歩み、国家主権や発展利益を守り抜く確固たる立場を示すものだ」と述べました。
( ２０１５年０６月２４日，「赤旗」)

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第２次世界大戦と日本／対外侵略のファシズム側、世界戦争引き起こした責任は明確／木畑洋一

人類は２０世紀に二つの世界大戦を経験したが、あくまでもヨーロッパを中心舞台とした第１次世界大戦と違い、第２次世界大戦ではヨーロッパとアジア・太平洋の双方が主要な戦争の場となった。
　第２次世界大戦が勃発したのは、１９３９年９月初めのドイツによるポーランド侵攻によってである、と述べられることが多いが、その時開始したのはヨーロッパでの戦争であり、アジアでの戦争は日中戦争としてすでに３７年７月にはじまっていた。

日本軍による英米領の攻撃
　アジアの戦争とヨーロッパの戦争とが結びついて、真に世界大戦となったのは、４１年１２月、日本軍による英米領攻撃によって米国が参戦し、日独伊という枢軸国陣営と英米およびソ連という連合国陣営が対峙する布陣が明確になった時点であった。
　この戦争を引き起こす上で責任があったのが、その両陣営の内、日独伊の側であったという点も、ドイツやオーストリアなどの同盟国側と英仏ロシアなどの協商国側のいずれかに戦争責任を帰すことが困難な第１次世界大戦の場合と大きく異なっていた。
　３１年の満州事変が日中戦争に直接結びついたかどうかは議論があるところだが、事変を引き起こして３０年代の国際政治動揺の火ぶたをきり、大戦への道を開いていったといえる日本の責任がきわめて大きいことは、改めて認識しておくべきであろう。
　こうして展開することになった世界大戦は、内政面で民主主義を抑圧しつつ対外侵略を行うファシズム諸国と、ファシズムから民主主義を守ろうとした国々との間の戦争、すなわち反ファシズムの戦いであった。日本を含む枢軸国３国は、それぞれの間で違いをもちながらも、ファシズム体制をとっていた。
　反ファシズムを掲げた国々も、広島、長崎への原爆投下につながった都市爆撃で多くの一般市民を殺害するなど、非人道的行為を行ったが、それをもって反ファシズム戦争としての第２次世界大戦の基本的性格を否定することはできない。
　アジアの戦争とヨーロッパの戦争が結びついた後しばらくの間、戦争は枢軸国側に有利に展開した。しかし、４３年には連合国側が優勢となり、同年１１月には米英首脳と中国の蒋介石がカイロで会談し、対日戦争終結を無条件降伏の形とするということが確認された。

ポツダム宣言黙殺した政府
　それから１年半後、４５年５月にドイツの降伏でヨーロッパでの戦争が終結してからも、日本は戦いをやめなかった。無条件降伏を求めた７月末のポツダム宣言を日本政府は黙殺し、その結果原爆投下という事態も生じて、原爆犠牲者を含む多くの人々が死においやられた。
　安倍首相はかつて、ポツダム宣言は原爆投下の後にたたきつけられたものだ、と語ったという。戦争の最後の段階におけるこの重要な局面にかくも無知な人物が、大戦の反省の上に築かれてきた戦後日本の姿を変えようとしている今、世界大戦における日本の位置、役割を改めて見つめ直してみることの意味は大きい。

　きばた・よういち　１９４６年生まれ。成城大学教授。東京大学名誉教授。『二〇世紀の歴史』ほか。
( ２０１５年０６月２３日，「赤旗」)

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ローマ法王「武器製造に携わるキリスト教徒は〝偽善者〟」／イタリアの集会で非難

【トリノ（イタリア）＝ロイター】フランシスコ・ローマ法王は２１日、訪問先のイタリア北西トリノでの集会で、武器の製造や投資に携わるキリスト教徒を偽善者だと非難しました。
　法王は戦争・信用・政治をテーマにした若者との長時間討論で、用意していた発言原稿を脇に置き、「自分自身をキリスト者と名乗る経営者やビジネスマンがいて、その人たちが武器を製造している。それはちょっと信用できないと思わないか」と発言。大きな拍手を受けました。
　軍需産業に投資する人たちについても「二枚舌が現代のはやりだ。言うこととやることが違っている」と非難しました。
　さらに、第２次世界大戦中のナチスによるユダヤ人虐殺について、ユダヤ人の言語であるヘブライ語で大虐殺を意味する「ショア」という言葉も使って非難。第１次世界大戦中の１９１５年にオスマン・トルコ帝国が行ったとされる「アルメニア人虐殺」についても触れました。
( ２０１５年０６月２３日，「赤旗」)

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にちようシネマ館／ピクニック／フランス

印象派の巨匠ルノワールの次男ジャン・ルノワール監督が撮影し、ナチスによっていったん破棄されながら、戦後に完成された作品のデジタル修復版です。戦後７０年を記念しての日本公開です。
　田舎へピクニックにやってきたパリの金物商一家の一日を、その娘（シルヴィア・バタイユ）と地元の青年との恋を中心に描いています。あふれる光の中でブランコを揺らす娘のはつらつとした美しさ。草の匂いが立ち上る森の木漏れ日。４０分、モノクロの作品ながら、父ルノワールの絵を思い浮かべずにはいられない美しい映像です。ルキノ・ビスコンティらそうそうたるメンバーが助監督を務めています。
　（伴）
(２０１５年０６月２１日，「赤旗」)

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２０ ホイッスル

サッカーの欧州選手権予選、クロアチア―イタリア戦のピッチ上に、ナチスの「かぎ十字」が浮かび上がる事態が起き、問題になっています。
　この試合は１３日、クロアチア国内で行われました。クロアチアは３月の試合で、サポーターに暴力行為や人種差別的行為があったため、この試合は無観客試合の制裁を受けていました。何者かが化学薬品を使い、試合時間に「かぎ十字」が浮かび上がるようにした疑いが濃厚だといいます。
　クロアチア連盟は「妨害行為」として警察に届け出ています。どんな背景があるのかはわかりません。しかし、行為の悪質さは言を待ちません。差別を助長する意味合いを持つこうした行為を許さないため、批判の声をあげていくべきです。
( ２０１５年０６月１９日，「赤旗」)

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特派員日誌／ドイツ／「一生に一度はここで歴史を学ぼう」

Ｇ７サミット（主要７カ国首脳会議）の取材を終えた後、ドイツ南部ミュンヘン近郊にあるナチスのダッハウ強制収容所跡を訪れました。１９３３年から４５年まで２０万人以上が収容され、４万人余りが殺害された場所です。
　平日の午前中でしたが、ドイツをはじめ欧州諸国の生徒、親子連れ、観光客など、訪問者の多さに驚きました。〝戦後７０年だから特別か〟とも考えましたが、「いえ、普段からこのぐらい多いですよ」と案内してくれた女性が話します。
　「ここは各地につくられた収容所のモデルになったところ。ドイツ国民は『一生に一度はここで歴史を学ぼう』と言われています。ミュンヘン観光とともに訪れる欧州の人が多いですね」
　５月には解放７０年を記念してメルケル独首相が訪れ、「未来の世代のためにここで起きたことを決して忘れない」と演説しました。
　記者が収容所跡を訪れた日（６月９日）も、ルクセンブルクでは政府と議会が、ナチス占領下で政府当局がユダヤ人迫害に加担した責任を認め、謝罪する宣言を出しました。
　過去の過ちから教訓をくみ取る欧州諸国の努力。日本も学ぶところが多いはずです。
　（ダッハウ＝島田峰隆）
( ２０１５年０６月１９日，「赤旗」)

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富山県ＡＡＬＡ総会と講演会／アベノミクスを批判

富山県アジア・アフリカ・ラテンアメリカ連帯委員会はこのほど、総会と記念講演会を富山市内で開きました。
　記念講演で富山大学名誉教授の星野富一氏が「アベノミクスと日本経済の行方とアジア｣と題し話しました｡
　星野氏は、結論としてアベノミクスは失敗したとのべ「大胆な金融緩和によるインフレ政策では、円安による物価上昇が進み、輸出比率の低い中小企業に打撃を与え、実質賃金が下落、個人消費は落ち込んでいる」と批判。「対アジア外交の手詰まりで地域経済統合が進むアジアで無策だ」と指摘。ナチスが不況対策と排外主義で独裁政権をつくった状況に似ていると警告しました。
　総会では、渡邊眞一代表など役員が留任しました。
(２０１５年０６月２０日，「赤旗」)

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女性の目アラカルト／ドイツ／靖国神社との関係

今年は第２次世界大戦終戦７０年。終戦にあたる５月８日を「ナチスからの解放の日」とも称しています。その日を前に、靖国問題をドイツで問うことを試みたシンポジウムが開かれました。
　そこで、靖国神社とドイツの関係を知りました。かつてナチスの将校たちが参拝していました。
　境内にはドイツから贈られたカシの木があります。これは１９７０年代に旧西ドイツ軍関係者が植樹したものです。一方、靖国神社から贈られたイチョウの木はドイツ北部のキール近郊にあります。こうした事実が連邦議会で問題になったこともありましたが、これまで「過ぎたこと」として重視されませんでした。
　「戦争責任を取らなければならないと運動を始めたのは戦後世代。それから長い年月をかけて市民の認識が変わってきた」
　シンポジウムでの９０年連合・緑の党の議員の発言です。反原発の運動もそうですが、地道な運動で社会の認識を変えて来た市民の姿が、歴史問題の取り組みからも見えてきます。
　「終戦日を『解放の日』と認識している人はドイツ国内でも少ない」（シンポジウム参加の左翼党副代表）。「昔のこと。自分には関係がない」と感じている若い世代もいます。しかし、戦争責任に向き合い、近現代史を学び続けることでドイツは欧州での信頼を回復してきました。
　これが未来につながる「希望」のもとなのかもしれません。
　（ベルリン在住　伊藤悠希　写真も）
( ２０１５年０６月１６日，「赤旗」)

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戦争法案／論戦・共同、政府追い詰める／戦争は最大の人権侵害／署名２６万人分手渡す／日弁連勉強会

与野党３０議員ら参加
　日本弁護士連合会（日弁連）は１０日、国会内で、憲法を根底から破壊する戦争法案（安保法制）の撤回を求めた勉強会を開きました。与野党国会議員３０人を含む１９０人余りが出席。日弁連が昨年来取り組んできた、集団的自衛権行使容認の「閣議決定」（昨年７月）撤回や関連法案反対の請願署名２６万人分を、日本共産党や民主党の国会議員に手渡しました。
　日弁連の村越進会長は、「戦争は生きる権利を奪う最大の人権侵害だ。人権を守ることと、戦争につながる動きに反対することは一体だ。人権と平和を守るために、国民が違いを超えて一丸となって力をあわせるときだ｣とあいさつ｡日弁連として法案阻止に全力を尽くす決意を表明しました。
　日本共産党を代表して山下芳生書記局長が発言し、「戦後最悪の政権による、戦後最悪の法案を何としても阻止するために、党の総力をあげてたたかいぬく」と表明しました。
　山下氏は戦争法案の三つの危険性として①違憲性②対米従属性③歴史逆行性に言及。「この中身を国民全体のものにしていけば、より大きく強い反対世論をつくることができる。日に日に平和を求める理性の声が広がる激動の状況だ。この声をさらに広げ、国会の力関係を乗り越えて、法案を阻止するために頑張りたい」と語りました。
　柳沢協二・元内閣官房副長官補が特別講演し、「流れが変わった。（反対の）世論をできるだけ持続させ、盛り上げることが、強行採決に対する最大の『抑止力』だ」と語りました。

自民党・村上誠一郎議員「民主主義の危機」
　勉強会では、「どこまで立憲主義をバカにしているのか。廃案にしたい」（民主）、「自民、公明を巻き込んで廃案にしよう」（社民）など野党の国会議員から意気高い発言が相次ぐなか、自民党の村上誠一郎衆院議員がマイクを握り、解釈改憲の手口にふれて「このことで突破口を開けば、主権在民、基本的人権に至るまで、ときの政府の恣意によって憲法を曲げることができてしまう。民主主義の危機、すなわちファシズムの危機だ」と批判。ひと際大きな拍手がわきました。
　（要旨２面）
( ２０１５年０６月１１日，「赤旗」)

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九条の会よっかいち１０周年集い／戦争法案阻もう

発足から１０年を迎えた三重県四日市市の「九条の会・よっかいち」が７日、四日市市総合会館で１０周年のつどいを開催し、１３５人が参加しました。地元のピアニスト・吉野りん子さんによるピアノ演奏に続いて、名古屋大学名誉教授の森英樹さんが「戦後７０年を考える～ドイツとの比較も踏まえ」と題して記念講演しました。
　森さんは、ドイツが「水晶の夜」（ドイツ各地で一斉に起きたユダヤ人襲撃事件）、「白バラの日」（ミュンヘン大学生の反ナチ抵抗運動）など、ナチスによる加害や弾圧の歴史を一つひとつ記念、記憶し、反省しているのに対し、日本は「満州侵略」「南京大虐殺」などの記念日を全く検証せず、８月１５日だけを「終戦記念日」として加害の歴史に向き合わない姿勢でいることを「大きな問題だ」と指摘しました。
　「戦争法案」について森さんは、衆院憲法審査会で参考人全員が違憲だと言い、国会答弁でも政府見解がバラバラな点を指摘。「米政府との事前約束をてこに今国会で強行することは許されない。まずは、今国会での阻止で幅広い共同を進めることが大事だ」と述べました。
(２０１５年０６月１３日，「赤旗」)

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育鵬社版歴史教科書を読む／えっ侵略が「自存自衛」！？／歴史教育者協議会石山久男さん

「戦争する国」、教育で支える
　「日本は正しい戦争をした」と主張する人々が発行する中学校歴史教科書（注）があります。育鵬社と自由社の教科書です。７、８月の教科書採択で「これだけは選んでほしくない」と声があがっています。いったいどんな中身なのか、ほかとどう違うのか。歴史教育者協議会の石山久男先生と記者が一緒に、育鵬社版を読んでみました。
　（米重知聡）

　安倍晋三首相の歴史認識が国内外で問題になっている太平洋戦争では―。
　「当時の日本は中国、インドシナ半島への侵略を続け、撤退を求める米英と対立していました。一方ナチス・ドイツが電撃的にヨーロッパで侵略を開始。『日本がアジアを、独伊がヨーロッパ・アフリカを支配する』という案に飛びついて三国同盟を結び開始した、無謀な侵略戦争が太平洋戦争でした」と石山さん。
　ところが育鵬社版では「米英に宣戦布告したわが国は、この戦争を『自存自衛』の戦争としたうえで、大東亜戦争と名づけました」とあります。当時の政府がそう主張したという形をとりますが、「自存自衛」が実はうそだったとはどこにも書いてありません。全体を読むと、日本はアメリカに圧力をかけられ、自国を守るためにやむなく戦争をしたと誤解してしまいそうです。
　ほかの教科書に「自存自衛」とは出てきません。旧日本軍の中国などへの「侵略」「侵攻」に対して撤兵を求めるアメリカに反発して戦争を起こした、と書いています。
　（写真１）
　「世界中を巻き込んだ戦争が、侵略だったのか自衛だったのか。あいまいにしたままでは、世界から相手にされません」（石山）

「アジア解放」／独立したのは日本の功績？
　次に驚いたのは、「アジア独立への希望」と見出しをつけて、日本の戦争が「アジア解放」に役だったと主張していることです。「日本軍の勝利に、東南アジアやインドの人々は独立への希望を強くいだきました」「欧米による植民地支配からアジアの国々を解放し、大東亜共栄圏を建設することが、戦争の名目として、より明確にかかげられるようになりました」とあります。（写真２）
　本当に、日本の戦争のおかげでアジアの国々は独立できたんですか？
　「ほかの教科書と比べてみるとわかります。期待したのは最初のうちだけで、日本軍の支配の過酷さはそれまでの英仏などを上回りました。そもそも解放と言いながら、朝鮮は植民地のまま、占領地のうち現マレーシア、インドネシアの地域は独立させず帝国領土とすると決めていました。もし将来、育鵬社の教科書で学んだ子どもたちが、『日本がアジア解放をした』とアジアの人々に言ったらどうなるでしょう」（石山）

沖縄戦／集団自決記述軍の関与なし
　国民を巻き込んだ国内唯一の地上戦となり、県民約１２万人が犠牲となった沖縄戦。育鵬社は「戦闘がはげしくなる中で逃げ場を失い、集団自決に追いこまれた人々もいました」と書くだけで、ほかの教科書が書いている「日本軍によって」という言葉はありません。また戦時下は、「国民の多くはひたすら日本の勝利を願い、励まし合って苦しい生活に耐え続けました」と美談調に描いています。

戦後の日本／連合国の圧力強調するが…
　戦後、軍部の重圧から解放された日本は、平和と民主主義の歩みを始めます。ほかの教科書は「日本政府も、大正デモクラシーの経験などに基づいて、民主化に積極的に取り組みました」（東京書籍）などとして、民主化が国民に支持され、自由と平和になった解放感が広がったことを描きます。
　ところが育鵬社版はＧＨＱ（連合国軍総司令部）が「過去の日本の歴史教育や政策は誤っていたという宣伝を日本側に行わせ、報道や出版を秘密裏に検閲して占領政策や連合国への批判を禁じました」と連合国の圧力を強調し、日本の過去が誤っていなかったかのように描きます。
　平和憲法制定も「議員はＧＨＱの意向に反対の声をあげることができ」なかったと否定的で、「わが国が独立国家として国際社会に責任ある立場に立つようになると、憲法改正や再軍備を主張する声があがりました」と書きます。
　これ、今の戦争法案とつながりませんか？
　「戦争をするには、すすんで戦争に行く若者が必要です。そこでまず日本は正しい戦争をしたと、戦争への反省を消し去る。戦争放棄も押しつけられた不名誉と感じさせる。戦争美化の教科書は、戦争立法と一体と考えた方が現実的です」（石山）
　あの戦争は正しかったと説く教科書でいいのか。国民一人ひとりに問われています。

他の教科書では

　日本が侵略的な行動を取る中で、日米関係は悪化していきました。近衛内閣は、アメリカとの戦争をさけるために１９４１年４月から日米交渉を行いましたが、軍部の要求などもあって、南進を止めませんでした｡(略）日米交渉の席でアメリカが、中国とフランス領インドシナからの全面撤兵などを要求すると、近衛内閣の次に成立した東条英機内閣と軍部は、アメリカとの戦争を最終的に決定しました。（東京書籍）

　東南アジアにおいても、日本軍は、労働を強制したり、物資を取り上げたりしました。また、日本語教育などをおし付けました。そのため、現地の住民の日本に対する期待はじょじょに失われ、各地で抵抗運動が発生しました。日本軍は、抗日的と見なした人々を厳しく弾圧し、多くの犠牲者が出ました。（東京書籍）

　（注）２００１年、「新しい歴史教科書をつくる会」が主体となって扶桑社から発行。その後、現在の育鵬社と自由社に分裂しました。
( ２０１５年０６月１１日，「赤旗」)

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日弁連院内勉強会／自民・村上誠一郎議員のあいさつ

自民党の村上誠一郎衆院議員が１０日の日弁連主催の院内勉強会「『安全保障法制』を問う」で行ったあいさつの要旨を紹介します。
　◇
　昨日（９日）、私は（自民党総務会で）このような問題（安保法制）は党議拘束をはずすべきだと主張した。すると、ある先輩の代議士が〝おまえは最高裁判決、砂川判決を読んだことがあるのか〟といってきた。私が「あなた（先輩）だけですよ、砂川判決が根拠だといっているのは」というと、〝学者は最高裁判決までおかしいというやからだから、話を聞く必要はない〟といった。私は激怒し、３人の権威ある憲法学者が４日の衆院憲法審査会で「違憲」だといったのを自民党が無視するのはあまりにも傲慢（ごうまん）ではないかと（いった）。
　なぜ私があえてこのような場所にきたのか、二つある。
　一つは、内閣の一部局である法制局が憲法の解釈を変えることができたらどうなるか。自民党のある方が、〝ナチス憲法の真似をしろ〟といった。戦前のドイツ議会で全権委任法を通し、民主的なワイマール憲法を葬り去ったという一番あしき例がある。これで突破口を開けば主権在民、基本的人権にいたるまで、ときの政府の恣意（しい）で憲法を曲げることができてしまうという、大変な民主主義の危機にある。
　もう一点。来年から１８歳の人たちが有権者になる。私は、次の世代が非常に気の毒だ。このままでいけば、地球の裏側まで（戦闘に）行くことになる。自民党はいつからこんなに惻隠（そくいん）の情（＝他人を思いやる気持ち）のない党になってしまったのか。
　私の父（村上信二郎元衆院議員＝故人）は警察予備隊を立ち上げた男だ。父が死ぬまでいっていたのは、防衛予算は少ないほどいいということと、自衛隊の諸君の身の安全は万全を期すべきだということだった。私は父がいったことが自分の政治命題だと考えている。この民主主義を守るために、次の世代のために、私はみなさんのお力をいただきたい。
( ２０１５年０６月１１日，「赤旗」)

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１０ 演劇／「アドルフに告ぐ」（ＫＡＡＴ神奈川芸術劇場）／「正義」の戦い果てる日は

１９３６年に始まる３人の「アドルフ」の物語。神戸に暮らす、ナチス党員の父と日本人の母を持つ少年カウフマン（成河）、その親友のユダヤ人カミル（松下洸平）、そしてベルリン・オリンピックを成功させたばかりの総統ヒトラー（高橋洋）。やがてドイツに渡ったカウフマンはナチス親衛隊としてユダヤ人虐殺に手を染め、一方カミルはヒトラー出生に関わる機密文書を預かり、ナチス転覆の時期をうかがうことに。三者それぞれの「正義」の闘争は４５年へ、そして７３年の中東へ。作家の峠草平（鶴見辰吾）が彼らの物語を語り始める。現代に生きる無数の「アドルフ」たちに向けて…。
　言わずと知れた手塚治虫の同名漫画（８３～８５）の舞台化である。木内宏昌の脚本は原作の核をつかみつつ、それぞれの人物に新たな像と役割を与え、栗山民也の演出、松井るみの美術がそれを濃密な時間と空間の中で見事に展開している。３時間に及ぶ大作だが、一瞬の緩みもない。ワグナーからマレーネ・ディートリヒまで、豊かな情感をたたえる〝ラブソング〟使いも鮮烈な印象を残す。
　３人のアドルフも原作とは違った独自の顔をしている。成河のカウフマンは、幼少時からややエキセントリックで脅迫的な勢いがあり、松下のカミルは素直でのびやか。最大の出色は高橋のヒトラー。名優の演ずるヒトラーは多いが、これほどしなやかで「絵になる」ヒトラーは見たことがない。だがヒトラー表象に厳しいドイツの批評家の目にこれはどう映るか。意見を聞いてみたいところ。
　（村井華代・演劇学研究者）
　１４日まで、横浜・ＫＡＡＴ神奈川芸術劇場
( ２０１５年０６月１０日，「赤旗」)

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第６８回カンヌ映画祭／移民・ナチ追及・失業…社会性豊か／中川洋吉

第６８回カンヌ映画祭は５月２４日、１２日間の幕を閉じた。
　今年の審査委員長はコーエン兄弟（米国）で、１９９９年に快作「バートンフィンク」でパルムドールを獲得している。ひねりの効いた作風で知られる彼らが、どのような判断を下すかに興味がもたれた。

欧州をなやます問題とりあげる
　受賞結果は、パルムドール（第１席）にフランスのジャック・オディアール監督作品「ディーパン」、主演男優賞にヴァンサン・ランドン（「マーケットの法則」）、主演女優賞にエマニュエル・ベルコ（「私の王様」）、そして、名誉パルムドールに女性監督の大御所アニエス・ヴァルダが選ばれ、フランス勢が４冠を占めた。
　パルムドールのオディアール監督は、著名な脚本家ミッシェル・オディアールの二世で、父親はコメディーに強かったが、息子は社会派として頭角を現し、「預言者」（２００９）でカンヌ映画祭グランプリを得、将来のパルムドール候補と目された逸材である。
　受賞作「ディーパン」は主人公のスリランカ人の名であり、彼は、同国内戦時の反政府組織「タミール―解放の虎」の戦士で、政府軍に追い詰められ家族を伴いフランスへ亡命する。本作では、現在、ヨーロッパを一番悩ます移民問題を扱っている。政治亡命し、大都市近郊の犯罪の温床である地区でしか生活をせざるを得ない、過酷な現実に胸が痛む。
　社会的テーマを持つすぐれた作品が、ハンガリーの新人監督ネメシュ・ラズロの手になる「サウルの息子」である。舞台はナチスの強制収容所があったアウシュヴィッツのガス焼却所で、登場人物はユダヤ系ハンガリー人の一団である。このナチスの犯罪を追う執念に圧倒される。グランプリ（第２席）を受賞した本作は今回の収穫の一作である。
　主演男優賞の「マーケットの法則」も、社会性に富む作品だ。リストラにあった主人公が、やっとの思いでスーパーの監視員の職を得るが、不正摘発の際の非人間的行為に耐えられず、せっかくの職を手放す物語であり、現在のフランスの最大の問題、失業に触れた力作である。
　アジアからは中国語圏の新旧エース侯孝賢監督（「黒衣の刺客」、スー・チー主演）とジャ・ジャンクー監督の「山河故人」が登場した。侯監督は監督賞を得た。

レベル高かった是枝監督の作品
　日本からは是枝裕和監督の「海街ｄｉａｒｙ」が出品された。是枝作品、大変行き届いた作りで、全てにおいてレベルが高かったが、審査委員のお眼鏡にかなわなかった。「ある視点」部門では、黒沢清監督が「岸辺の旅」で第２席の監督賞を獲得、彼独特の異次元的世界が描かれている。
　今回の受賞は、フランスの４冠獲得とコンペ１９本中５本を占める活躍ぶりが目を引いた。本年は突出した作品がないと言われるが、コーエン兄弟をはじめとする審査委員は、移民、失業、ナチスの過去の犯罪等と、時代の潮流をきちんと見据えていた。
　（なかがわ・ようきち　映画評論家）
( ２０１５年０６月０２日，「赤旗」)

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仏最大野党「共和党」に党名変更／１７年大統領選にらみ／極右はイメチェン作戦

【パリ＝島崎桂】２０１７年の次期大統領選を見据え、フランスの野党が党勢拡大への動きを強めています。サルコジ前大統領率いる最大野党・国民運動連合（ＵＭＰ）は、党名変更と併せ、党内改革を推進。移民排斥を掲げる極右・国民戦線（ＦＮ）は、有権者からの嫌悪感が強い極右としてのイメージ払しょくに力を入れています。
　ＵＭＰは５月３０日の党大会で、「共和党」への党名変更を承認しました。新党名はサルコジ氏が提案したもの。２８、２９の両日に党員による投票が行われ、８３％の賛成（投票率４６％）で決まりました。

新党名に「侮辱」
　フランスの正式名称はフランス共和国で、「自由・平等・博愛」に代表される「共和国理念」を国家の基本理念としています。そのため、一政党による「共和」の独占は、他党への皮肉として受け止められています。
　与党・社会党のバルス首相は新党名について、「侮辱」であり「他党を傷つけるだけでなく、国家を無駄に傷つけている」と語りました。
　対するサルコジ氏は党大会で、社会党を念頭に「左派による裏切りや責任放棄、堕落が無ければ、共和国を再建する必要などない」と批判。「信頼ある共和国を再建する」と訴えました。

再就任反対７２％
　共和党はこのほか、１７年までに党員数を５０万人（現在約２１万人）に増やす方針を決定。党内の民主化を進めるため、意思決定にあたる「政治局員」を現行６１人から１１５人に拡大し、地方議員、女性議員の登用や、派閥問題を解消する方針を示しました。
　こうした努力の一方で、０７年の大統領選での不正資金疑惑などから、サルコジ氏の人気は低迷したままです。最新の世論調査では、７２％の国民が、サルコジ氏の大統領再就任に反対しています。
　他方、最近の選挙で得票を伸ばし続けているＦＮは、大統領選で広範な有権者の支持を得るため、「脱悪魔化」と呼ばれるイメージ改善に努めています。
　同党は５月４日、ナチス・ドイツの蛮行否認や人種差別的な発言を繰り返してきたジャンマリ・ルペン前党首の名誉党首としての肩書剥奪を決定。その後、「ルペニスト」と呼ばれる同氏に近い人物の党職停止を進めています。
　ＦＮのベイ副幹事長は２７日、仏ラジオ・ヨーロッパ１に対し、同党の地方幹部ら６０人の党職停止を認めた上で、「今日のＦＮにとって、より代表資格のある人物を求めている」と述べました。
　ＦＮは昨年５月の欧州議会選挙で国内で第１党に伸長。３月の仏統一地方選挙の第１回投票でも約２６％を得票し、社会党（同２１％）を抑えて第２党となりました。
　世論調査によると、ＦＮのマリーヌ・ルペン現党首は、１７年の大統領選第１回投票で３０％を得票し、上位２人が争う決選投票への進出が有力視されています。
( ２０１５年０６月０２日，「赤旗」)

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親子で映画プラス／工藤雅子／９／やさしい本泥棒・運命を切り開く少女／天才スピヴェット・家族の絆取り戻す

ナチス政権下
■「やさしい本泥棒」
　１９３８年のナチス政権下のドイツで、本に導かれ数奇な運命をたどる少女リーゼルの物語です。原作はマークース・ズーサックの小説「本泥棒」。
　リーゼルの母は共産主義者で、ナチスから子どもを守るため、厳しいけれど心優しいローザとアコーディオン弾きでユーモアあふれるハンスに、リーゼルを託します。字が読めなかったリーゼルは、ハンスの助けで読み書きを覚えていきます。
　時代に翻弄されながらも、本を通して自分の運命を切り開くリーゼルの姿が、すがすがしく胸を打ちます。世界を知り、考え、行動することの大切さを教えてくれる秀作です。１３１分。
　（３日発売　２０世紀フォックス　ホームエンターテイメント　ＤＶＤ・税別１４１９円）
　小学校高学年～

壮大な家出を
■｢天才スピヴェット｣
　天才少年の壮大な家出を背景に家族の絆を描く感動のファンタジー。
　モンタナの牧場で暮らす１０歳のスピヴェット。天才科学少年ですが、変わり者の家族は彼の才能を理解してくれません。ある日、権威ある科学賞受賞の知らせに、認められる喜びを知った彼は、授賞式に出席すべく、アメリカ横断という壮大な家出を決意します。
　ユーモラスな登場人物、旅の愉快さの一方、大切な人の死にどう向き合うか、家族の絆をどう取り戻すかというテーマも描かれます。本編１０５分。
　（２日発売　ギャガ　ＤＶＤ・税別３８００円）
　小学校高学年～

揺れ動く少女
■「お引越し」（１９９３年）
　相米慎二監督の作品で、原作は、ひこ・田中の同名小説。
　小学６年生の漆場レンコは、父ケンイチが家を出ていき、母ナズナと２人暮らしを始めます。最初は、離婚がピンとこなかったレンコですが、不安が募り、両親のよりを戻そうと、家族旅行を計画するのですが…。
　受け入れがたい現実に、揺れ動く少女の心の葛藤と成長を、全く演技経験のなかった田畑智子が好演。思春期にぜひ見たい作品です。本編１２４分。
　（オデッサ・エンタテインメント　ＤＶＤ・税別３８００円）
　小学校高学年～
( ２０１５年０６月０１日，「赤旗」)

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言聞録／２０１５年５月２４日～３０日

「過激派組織と戦うイラク軍の意志に問題がある」（カーター米国防長官）＝２４日放送のＣＮＮテレビのインタビューで、過激派組織ＩＳに主要都市を制圧されたイラク軍を批判。
　
　○「総選挙で勝利を争う位置にいる」（スペインの新党ポデモスのイグレシアス党首＝写真、ロイター）＝２５日、前日の統一地方選挙で躍進したことについて指摘。
　
　○「主権の観点からはまったく変わりはない」（中国国防省の楊宇軍報道官）＝２６日、国防白書発表の記者会見で、南シナ海での岩礁埋め立ては、本土での道路建設と同じだと強弁。
　
　○「（ナチスによる）占領に対し、４人は即座に、強硬に『ノン』を唱えた」（オランド仏大統領）＝２７日、対ナチス抵抗運動（レジスタンス）活動家４人をパリの国立追悼施設に顕彰する式典で称賛。
　
　○「ミャンマーが責任を完全に負うことが求められる」（国連難民高等弁務官事務所〈ＵＮＨＣＲ〉のターク高等弁務官補）＝２９日、バンコクで開かれたロヒンギャ難民問題の関係国会合で、ミャンマー政府にロヒンギャの待遇改善を訴え。
　
　○「アジア諸国は前向きな米中関係を望んでいる」（シンガポールのリー・シェンロン首相）＝２９日、同国で始まったアジア安全保障会議の基調講演で強調。
( ２０１５年０６月０１日，「赤旗」)

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（５月ヘッドライン）

３１

本立て／ニュルンベルク裁判／芝健介著

週間日誌／１５年５月２４日～３０日

この夏１００歳、生存者が語るアウシュビッツ／６７年の沈黙破り体験出版ヘレナ・ニビンスカさん

認知症９３歳ナチ戦犯捜査中止

戦争法案学習会開く

フランス国立追悼施設／対独抵抗活動家４人を顕彰／〝ナチス占領にノン唱えた〟

チェコで戦後７０年の国際会議／日本共産党森原常任幹部会委員が報告

朝の風／芝居を見ることで変わるもの

週間日誌／１５年５月１７日～２３日

旧ソ連兵捕虜に補償へ／連立与党合意／４０００人、計１３億円／ドイツ

２０

女性の目アラカルト／ドイツ／アンネフランクセンターを訪ねて

演劇／「フル・サークル―ベルリン１９４５―」（劇団俳優座）／私たち自身に跳ね返る

おはようニュース問答／欧州はナチスからの解放７０年だね

潮流

言聞録／２０１５年５月３日～９日

ナチスからの解放７０年／若い世代へ歴史継承／独首相がメッセージ／国民に訴え

芸能テレビ／俳優座公演「フル・サークル」主演小山力也さん／無関心が「手遅れ」を招く前に

１０

各地で憲法のつどい／神戸／兵庫・姫路／奈良／和歌山／大津

独の戦後７０年／市民「歴史を継承」／旧ソ連軍捕虜の犠牲にも光

対ナチス戦勝ロシア・レセプション／井上議員が出席

〝ナチ犯罪〟二度と許さぬ／戦後７０年、決意新た／ドイツで催し

ナチス本部跡に博物館／独

潮流

人民日報「侵略への謝罪」言及なしに不満

水曜エッセー／中国に行こう／５／沢野ひとし／空ばかり眺めていた

強制収容所跡で追悼式典／独首相「忘れない」

親子で映画プラス／工藤雅子／８／ベイマックス・少年とロボットの友情／バルフィ！人生に唄えば・音のない世界で青年は

メーデー、各国で集会／フランス／ドイツ／ギリシャ／スペイン／英国／エジプト

（５月本文）

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３１ 本立て／ニュルンベルク裁判／芝健介著

ナチス・ドイツの侵略戦争を裁いたニュルンベルク国際軍事裁判｡その意味を､米国による１２件のニュルンベルク継続裁判も含め、最新の研究成果に照らして問い直します。▽第１次大戦後にドイツによるライプチヒ裁判が開かれ、自国の戦争犯罪を裁く先例に▽ナチ戦犯裁判はニュルンベルク後も続き、国際刑事裁判所に結びついている―ことなどを解明します。
　「ドイツは戦争責任をナチスに押し付けただけ」「ニュルンベルク･東京裁判は事後法なので無効｣などの俗論の真相も明らかに。
　（岩波書店　３２００円）
(２０１５年０５月３１日，「赤旗」)

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週間日誌／１５年５月２４日～３０日

政治・経済
　◆戦争法案が審議入り　米国が引き起こす戦争に､いつでも､どこでも自衛隊が参戦・軍事支援が可能になる戦争法案(安保法案)が衆院本会議で趣旨説明と各党質疑で審議入り。日本共産党の志位和夫委員長は代表質問で、憲法９条を破壊する三つの大問題を指摘、安倍晋三首相の基本姿勢をただす（２６日）
　◆医療保険改悪法案を可決強行　参院厚生労働委員会は、医療改悪法案を自民、公明の賛成多数で可決強行。日本共産党、民主、元気、無所属クラブ、社民が反対。日本共産党の小池晃参院議員が反対討論（２６日）
　◆円下落、一時１２年半ぶり１２４円台　東京外国為替市場で円相場が一時１㌦＝１２４円台に下落。２００２年１２月以来１２年半ぶりの安値（２８日）
　◆株価が２７年ぶり１１日続伸　東京株式市場で日経平均株価が２７年ぶりに１１営業日連続上昇。終値は２万０５６３円（２９日）
　◆消費支出が１３カ月連続マイナス　総務省による４月の家計調査で１世帯当たりの消費支出が前年同月比１・３％減。消費税増税以降１３カ月連続マイナス（２９日）

社会・国民運動
　◆「新基地いらない」沖縄と連帯　国会包む１万５千人の青い波　沖縄と連帯して安倍政権が強行する沖縄県名護市辺野古への米軍新基地建設を止めようと、東京・国会議事堂周辺で包囲行動｡｢新基地も戦争法案も許さない」と、青いＴシャツやスカーフなどを身につけた人が二重三重に囲む（写真＝２４日）
　◆川内原発審査終了　九州電力川内原発の重大事故対策の体制などを定めた｢保安規定｣を原子力規制委員会が認可。同原発１、２号機は、一昨年の新規制基準施行後初めて、再稼働に必要な審査を完了（２７日）
　◆ＦＩＦＡ幹部ら起訴　米司法省が国際サッカー連盟(ＦＩＦＡ)の幹部ら計１４人を国際大会の開催やスポンサー契約に関わる贈収賄の疑いで起訴（２７日）
　◆口永良部島で爆発的噴火　鹿児島県・口永良部島の新岳で爆発的噴火が発生し、火砕流が海岸まで到達。気象庁は噴火警戒レベルを３から５に引き上げ、口永良部島がある同県屋久島町は全島民に島外への避難を指示（２９日）

国際
　◆スペインの統一地方選挙で反緊縮新党が躍進　スペインの全１７州中１３州の州議会と８０００を超える市町村議会で統一地方選挙が実施､与党･国民党は大幅な議席減。反緊縮の国民運動から生まれたポデモスは躍進(２４日)
　◆中国が２年ぶりの国防白書　中国政府が２年ぶりとなる国防白書「中国の軍事戦略」を発表し、安倍政権の安全保障政策に懸念を表明。南シナ海問題では「海上軍事闘争の準備」など強硬姿勢を提示（２６日）
　◆セルビア首相がアルバニア初訪問　セルビアのブチッチ首相が、コソボ問題で長らく対立してきたアルバニアにセルビア首相としては初めて訪問し、ラマ首相と会談(２７日)
　◆仏大統領がレジスタンス活動家を顕彰　フランスのオランド大統領がナチス・ドイツ占領に抵抗した４人の活動家を国立追悼施設に顕彰（２７日）
　◆イスラム系少数民族ロヒンギャ問題で関係国会合　イスラム系少数民族ロヒンギャの密航船漂流や人身売買の犠牲となっている問題でバングラデシュ、マレーシアなど関係国の国際会議が開催（２９日）
( ２０１５年０５月３１日，「赤旗」)

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この夏１００歳、生存者が語るアウシュビッツ／６７年の沈黙破り体験出版ヘレナ・ニビンスカさん

悲劇くり返さないために／尊厳奪われた母／収容所音楽隊での苦悩、今も
　ヘレナ・ニビンスカさんは、つやつやとしたバラ色のほほがとても印象的です。この夏１００歳になります。ナチスの時代、母親ともどもアウシュビッツ（ポーランド名オシフィエンチム）へ強制収容され、地獄の苦しみを味わいました。その体験を綴った本を３年前に出版したところ、たちまち大きな反響があり、すぐに英語版が出て、ドイツ語、イタリア語版も、まもなく出る予定です。「絶対に誰にも話すまい」。そう自分に誓って戦後を生きてきたヘレナさんでしたが、その思いを覆したものは、何だったのでしょうか。
　（ジャーナリスト・大内田わこ、写真も）

　「私たち人間は、あの戦争からたくさんの教訓を得たと思うのです。でも、いまだにアウシュビッツには、ガス室も、焼却炉もなかったというような、否定的な声は絶えません。それを聞くたびに憤りを感じるようになったのです。いつになったら人類は目を覚ますのかと歯がゆく思いました。あの体験を共にした友人たちも大方死んでしまいました。今、ナチスの犯罪がどういうことだったのかを語ることが、自分の義務だと思うようになりました。あのような悲劇を再びくり返してはならないからです」
　小さな体から、絞り出すような細い声。ゆっくりと、自分に問いなおすように話します。

音楽隊の一員
　１９１５年ポーランド生まれです。母親とアウシュビッツに強制収容されたのは４３年１０月。２８歳の時でした。ＳＳ（ナチス親衛隊）に逮捕された隣人の巻き添えを食ったのです。何を言っても無駄でした。腕に囚人番号を彫られ、音楽学校のバイオリンのコースを出たと知ると女性音楽隊に配属されました。
　ナチスはポーランドをはじめヨーロッパのあちこちに建てた強制収容所に音楽隊を作りました。音楽の持つ力をも自分たちの強権支配の道具として利用したのです。「私はバイオリンが弾けて一応助かったけれど、母はどうなるのか、気が気でなりませんでした」。お母さんとの別れは間もなくでした。１１月の中旬、演奏活動からバラックへ移動中に、やっと会えた母親から病気になったことを知らされます。
　「血の混じった便がでると言いました。食べるものもほとんどない、トイレにも自由にいけない、人間の尊厳が奪われた環境で病気は当然のことでした。何とかしてあげたくても、私は無力でした。せめて自由に行き来できたら、母のそばに居てあげられたのです。でも、それすらかないませんでした。それでも音楽隊の友だちが、パンを焦がして炭にして、薬になるからと渡してくれたものをこっそり届けたりしました。でも結局、母を救うことはできなかったのです」
　お母さんの遺体が運ばれたという場所には、２００体ほどの裸体が山積みになっていて、近づくことすら許されませんでした。「私は娘として、もっと母のために何かできなかったのか。母は楽譜を読むことができました。そういうことを含めて手を差し伸べることができたのではないか。良心の呵責となっています」

囚人の憎しみ
　音楽隊の一員としてナチスのためにバイオリンを弾いた体験もヘレナさんを苦しめました。死の労働に出る囚人たちに向けて明るい行進曲を演奏する。送りだされる囚人たちの自分たちに向けられた目に、憎しみさえ感じることがありました。
「人間のすることではありませんでした。あそこでは非人間的なことが日常茶飯事でした。ガス室、焼却炉、おびただしい数の囚人バラック、そういうものを造り、朝から晩まで人を殺す。人間が人間にたいしてどうしてそんなことができるのか。その底にある差別意識を本当に怖いと思います。二度とこういうことがあってはならない。それには私も話すのだと、ずいぶん時間がかかりましたがやっと自覚できたのです」

幸運な出会い
　解放されて以後、音楽関係の出版社で働き、その後結婚した夫にさえ、一言も語らなかった体験でした。いざ書き始めようとしますが、自分に文才がないということに気がつきます。そんな時、アウシュビッツ博物館で開かれたある集いで、マリア・シェフチクさん（４９）と知り合います。博物館のあるオシフィエンチム出身で、同市の中学校で歴史を教えています。「本当にラッキーでした。彼女は正直で、親切で、私のような境遇にある人間に、強い関心を持っていました。何か手助けをしたいと思っていたようです。後に書くことを手伝ってくれないかと言ったら、喜んで、と言ってくれました」

正確に伝える
　マリシャ（マリアさんの通称）、ヘレナと呼び合う二人三脚が始まって、２年後に原稿は完成しました。「マリシャはとにかく研究熱心で、たくさんの資料を集めてくるので、こんなことまでいらないわよ、と言ったことが何度もあります。私の直しがあんまりたくさんあるので、困り果てたこともあったみたいです。彼女の熱意に助けられました」
　当のマリシャさんは、こう振り返ります。「ヘレナとの日々は、何物にも代えがたい素晴らしい日々でした。今、頭をつき合わせて仕事をしていたのに、家へ帰り着くころにはもう電話がかかってくる、そんな毎日でした。なによりこれからを生きていく若い人たちに、自分の体験をしっかりと、しかも正確に伝えたいというヘレナの強い思いにうたれました」

歴史に学んで
　戦後７０年、１００歳を前に、ヘレナさんはいまだに戦火のおさまらない世界のありように心を痛めています。
　「歴史をきちんと見れば、差別や憎しみから生まれるのは破滅だけだと分かります。私たちはあれだけの犠牲を払ったのですから、今、そこから学ばなければと思うのです。人類よ、目覚めてほしいと何度でも言いたいです」
( ２０１５年０５月３０日，「赤旗」)

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認知症９３歳ナチ戦犯捜査中止

【ベルリン＝時事】反ユダヤ活動監視団体、サイモン・ウィーゼンタール・センターがナチス・ドイツの重要戦犯リストのトップに挙げていたゲルハルト・ゾンマー元ナチス親衛隊員（９３）について、ハンブルクの検察は２８日、認知症を理由に捜査を打ち切ることを明らかにしました。
( ２０１５年０５月３０日，「赤旗」)

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戦争法案学習会開く

広島市西区の中広中学校区「九条の会」は２４日、三篠公民館で「戦争法案」に反対する学習会を開き、４２人が参加しました。
　日本ジャーナリスト会議（ＪＣＪ）広島支部代表幹事で「秘密法廃止！広島ネットワーク」事務局長の難波健治氏が「平和な未来を子どもたちに」と題して講演。「麻生元首相が『ナチスに学べ』と言ったが、これは、ヒトラーが憲法を変えずに戦争へ突き進んだ歴史に学ぼうということ。安倍首相の憲法破壊は、まさにナチスの手法だ」と訴えました。
(２０１５年０５月２９日，「赤旗」)

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フランス国立追悼施設／対独抵抗活動家４人を顕彰／〝ナチス占領にノン唱えた〟

【パリ＝島崎桂】フランス政府が定めるレジスタンス(対ナチス抵抗運動)記念日を迎えた２７日､同国のオランド大統領は､第２次大戦中のレジスタンス活動家４人を国立追悼施設パンテオンに顕彰しました｡
　オランド氏は顕彰式典の中、「（ナチスによる）占領に対し、４人は即座に、強硬に『ノン』を唱えた」と強調。レジスタンスとしての４人の活動を紹介し、「フランスを形作った四つの歴史」としてたたえました。
　今回パンテオンに顕彰されたのは、ジェルメーヌ・ティヨン、ジュヌビエーブ・ドゴール（以上女性）、ピエール・ブロソレット、ジャン・ゼイの４氏。
　ティヨン氏(２００８年に死去)は､対ナチス協調路線をとっていたビシー政権下で､多くの政治犯の脱獄を支援｡ティヨン氏と共にレジスタンスに参加したドゴール氏(０２年に死去)は戦後､貧困問題に従事し､国際ＮＧＯ｢ＡＴＤ第４世界｣の母体を創設しました｡
　ブロソレット氏は、国内のレジスタンス組織の結集に尽力した後、ビシー政権により逮捕。拷問を受ける中、秘密を漏らすまいと６階の窓から身を投げ、命を落としました。
　ゼイ氏は、社会党や共産党が反ファシズムを掲げて樹立した人民戦線政府（１９３６～３７年）で国民教育相を務めましたが、ビシー政権はレジスタンス活動を理由に同氏を逮捕。ユダヤ系の出自であったため、ナチス寄りの民兵により獄中から誘拐、殺害されました。
　レジスタンスには当時、非合法とされていた共産党員、共産主義者も数多く参加。仏共産党本部では２７日夜、レジスタンスの追悼集会が開かれました。
　同党のピエール・ロラン全国書記は集会で、レジスタンスが築いた反ファシズムの「記憶に対する義務」を強調。フランスや欧州で台頭する極右、排外主義とのたたかいや、平和への取り組み強化を呼び掛けました。
( ２０１５年０５月２９日，「赤旗」)

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チェコで戦後７０年の国際会議／日本共産党森原常任幹部会委員が報告

日本共産党の森原公敏常任幹部会委員・国際委員会副責任者は２３日、プラハで開催された国際会議にパネリストとして出席し､｢ファシズムの敗北と戦後平和秩序の形成―戦後７０年の東アジアから」と題して報告しました。
　会議は戦後７０年を記念してチェコ・モラビア共産党が主催したもので、欧州を中心に２４カ国の政党が参加。森原氏は会議の第２セッション「戦後７０年と反ファショ戦線構築の現代的意義」で、ロシア共産党、チェコ・モラビア共産党、ウクライナ共産党とともに冒頭報告しました。
　森原氏は、ナチス・ドイツのポーランド侵攻の８年も前から、アジアでは日本が「満蒙は生命線」との身勝手な口実で中国侵略を開始しており、アジアと欧州にまたがる世界戦争につながっていったことを指摘しました。
　▽日本型ファシズムを断罪し、戦争の放棄、戦力不保持、交戦権の否認を宣言した憲法の制定▽歴史修正主義と憲法の破壊をたくらむ安倍内閣の出現▽東南アジア諸国連合（ＡＳＥＡＮ）の平和の共同体の取り組み▽日本共産党の「北東アジア平和協力構想」―などを取り上げて見解を述べました。
　日本では現在、戦後の国際秩序そのものを否定して「海外で戦争する国」に向かう安倍内閣の道か、ファシズムと戦争の教訓の上に作られた憲法を生かして世界の平和に貢献するのか、をめぐって国民的なたたかいが展開されている、と結びました。
　参加者からは、「初めてアジアの平和をめぐる議論の背景を正確に理解できた｣｢軍事同盟から潜在敵を想定しない平和の共同体へ、という主張には説得力がある｣｢会議に大きな貢献をしてもらった」などの声が寄せられました。
( ２０１５年０５月２７日，「赤旗」)

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朝の風／芝居を見ることで変わるもの

俳優座公演「フル・サークル　ベルリン１９４５」は、上演の２時間、舞台に吸い寄せられ続けた。「西部戦線異状なし」で知られるレマルクの唯一の戯曲である。
　第２次大戦最終局面、廃虚となったベルリンのアパート。独り暮らしのアンナの部屋に、彼女の夫を頼りに収容所を脱出した政治犯のローデが入ってくる。彼を捕らえにゲシュタポが現れ、命のかかった３者の関係が変転し続け、緊張の糸に縛られる。進攻したソ連兵の登場でさらにそれが強まり題名の意味が判明する。ナチスの支配を許し〝手遅れになるまで待っていた〟というローデの深い自責が心に刻まれる。
　民芸の「冬の時代」も、繰り返し感銘がよみがえってくる。大逆事件後、社会変革に携わる者が厳しく取り締まられた時代、堺利彦が営んだ売文社に集う者たちを描く。木下順二の戯曲の５１年ぶりの上演。作者の人柄も映してか、厳しい時代を描きながらユーモアも漂う。時代に流されずにどう主体的に生きていくかを問い続けた木下氏の志が思われてならなかった。
　〈芝居を見ることで観客が変わり、変わった観客が芝居を変えていく〉とは、氏の持論だった。最近見た二つの舞台から、その言葉の重さを考えさせられている｡
　（響）
( ２０１５年０５月２５日，「赤旗」)

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週間日誌／１５年５月１７日～２３日

政治・経済
　◆大阪市、都構想住民投票で反対多数　大阪市の廃止・解体の是非を問う住民投票で反対が賛成を上回り、市の存続が決定(１７日)
　◆戦争法案、特別委の設置を強行　戦争法案を審議する特別委員会の設置を衆院本会議で、自民、公明などの賛成多数で議決。日本共産党と民主、維新、社民、生活の各党が反対（１９日）
　◆実質賃金４年連続減　物価変動を加味した賃金水準を示す実質賃金指数が２０１４年度、前年度比３・０％減に。４年連続のマイナス（１９日）
　◆志位委員長が党首討論　日本共産党の志位和夫委員長が１１年ぶりに党首討論。日本が過去に行った戦争に対する安倍首相の認識を問いただし、戦争法案の撤回を要求（２０日）
　◆翁長知事、訪米前に決意　沖縄県の翁長雄志知事が都内の外国特派員協会と日本記者クラブで記者会見し、同県名護市辺野古の新基地は「絶対につくらせない」と２７日からの訪米の決意語る(２０日)
　◆実質ＧＤＰ１・０％減　２０１４年度の国内総生産（ＧＤＰ、季節調整済み）は、実質で前年度比１・０％減（２０日）

社会・国民運動
　◆川崎の簡易宿泊所全焼、９人死亡　川崎市川崎区の木造の簡易宿泊所「吉田屋」と「よしの」が全焼し、２１日までに９人が死亡。２棟は違法に建て増しされていた可能性もあり、市が調査中（１７日）
　◆知事要請無視し、オスプレイ飛行継続　米ハワイ州で米軍の垂直離着陸機ＭＶ２２オスプレイが墜落した事故（１８日）を受け、沖縄県の翁長雄志知事が事故原因究明まで普天間基地の同型機の飛行を停止するよう要請していたにもかかわらず、米軍は沖縄上空での飛行を継続（１９日）
　◆伊方原発「適合」判断　原子力規制委員会は、四国電力伊方原発３号機（愛媛県伊方町）が再稼働の前提となる原発の規制基準に｢適合｣したとする審査書案を了承。事故時の住民避難は対象外など問題山積のまま(２０日)
　◆戦争法案阻止へ　国会前行動始まる　米国の戦争に自衛隊が参戦・軍事支援する戦争法案の衆院本会議審議入りが２６日に決まり､｢戦争はさせない・９条壊すな！総がかり行動実行委」が国会前行動を開始(写真＝２１日)

国際
　◆オスプレイ墜落２人死亡　米海兵隊所属の垂直離着陸機ＭＶ２２オスプレイが米ハワイ州の空軍基地で墜落事故。乗っていた隊員２人が死亡（１７日）
　◆アフガンで爆発、５人死亡　アフガニスタンの首都カブールで自爆とみられる爆発。少なくとも５人死亡。反政府武装勢力タリバンが犯行声明（１９日）
　◆マレーシアとインドネシアがロヒンギャ族受け入れ表明　ミャンマーのイスラム系少数民族ロヒンギャ族らが乗る密航船が漂流している事態を受け、マレーシアとインドネシアが７０００人の密航者の一時受け入れを表明（２０日）
　◆ドイツ、旧ソ連兵捕虜に補償へ　連立を組むキリスト教民主・社会同盟と社会民主党が第２次大戦中にナチスの捕虜となり、存命している旧ソ連兵約４０００人に計１０００万ユーロ（約１３億円）の補償金支払いで合意（２０日）
　◆ＮＰＴ会議、最終文書案採択されず　国連で開かれていた核不拡散条約（ＮＰＴ）再検討会議は米国、英国、カナダの３カ国が最終文書案に同意せず、最終文書案不採択で閉幕（２２日）
( ２０１５年０５月２４日，「赤旗」)

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旧ソ連兵捕虜に補償へ／連立与党合意／４０００人、計１３億円／ドイツ

【ベルリン＝時事】ロイター通信は２０日、ドイツ連立与党筋の話として、連立を組むキリスト教民主・社会同盟と社会民主党が第２次大戦中にナチスの捕虜となり、存命している旧ソ連兵約４０００人に計１０００万ユーロ（約１３億円）の補償金を支払うことで合意したと報じました。１人当たり２５００ユーロ（約３４万円）になります。
　ソ連兵捕虜は約５３０万人に上りましたが、過酷な環境での生活を強いられ、飢えや病気で半数以上が死亡したといわれます。独政府はウクライナ問題を受け、ロシアとの関係が悪化していますが、連邦議会（下院）主導で補償の議論が進んだ形。議会の承認は確実とみられています。
( ２０１５年０５月２２日，「赤旗」)

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２０ 女性の目アラカルト／ドイツ／アンネフランクセンターを訪ねて

アンネフランクセンターが、ベルリンの観光名所の一つになっていると聞いて、行ってみました。Ｓバーン（都市交通網）のハケシュマーケット駅のすぐそば、ファッショナブルな有名ブランド店が軒を並べる街の一角です。
　なるほど、この日もたくさんの旅行者や子どもたちが訪れ、いろいろな国の言葉が行き交っていました。
　私がこのセンターの存在を知った１０年前は、今にも崩れそうな廃屋の２階で、ひっそりとした展示でした。場所は同じですが、活気にあふれています。
　数々のアンネの写真で彼女の短い生涯をたどりつつ、ユダヤ人の絶滅を目指したナチスの犯罪を立体的に浮き彫りにした展示です。説明文だけでなく、コンピューターを使っての検索や、生存者のビデオ発言、センターを訪れた子どもたちの感想や考えを発言できるコーナーもあります。
　同センターの責任者ベロニカ・ナームさんは「歴史を知るだけでなく『参加する』がここのモットーです。活発な活動ができるのも、建物自体がベルリン市の文化遺産に指定されたから」と話します。
　この街が再開発されるとき、多くの文化人や心ある人たちが、「ここはもともとユダヤ人の町、その遺産をきちんと残そう」と市に働きかけ、それが実りました。
　歴史と共存し、未来につなげるドイツ。日本との大きな違いを実感しました。
　（ベルリン在住　杏・フランク）
( ２０１５年０５月１９日，「赤旗」)

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演劇／「フル・サークル―ベルリン１９４５―」（劇団俳優座）／私たち自身に跳ね返る

舞台は１９４５年４月３０日の陥落間近のベルリン。アパートの一室で暮らすアンナの部屋へ、エーリヒ・ローデという男がやって来る。アンナはユダヤ人収容所の実態を明かすために収容所を脱走してきたという政治犯のローデをかくまうことにするが、そこへ彼を執拗に追うゲシュタポの隊長が現れる…。
　張りつめた雰囲気の続く中、ローデ役の小山力也は切迫する自分の境遇へのいら立ちを咆哮に近い形で語り、戦乱の世をしたたかに生きるアンナを演じる斉藤深雪は物憂げなさまである。２人の演技が熱を帯びれば帯びるほど、その緊張感が、不満を覚えながらも現況を受け入れがちな私たち自身への煩悶として跳ね返ってくる。
　劇中でのナチスは完全悪ではない。時代を跋扈する存在を生み出したのは、現在につながる過去を能動的に見つめることなく、時局に受動的な態度を取ってきた日本人自身の姿勢でもあることが目の前にあぶり出される。そして、戦後７０年の今、過去を振り返るばかりでなく、人間が繰り返してきた行為と時代の連環を再考し、理性を保って声を上げる時期にきていることをも提示してみせる演出が光る。
　見終えたあとに緊張の後の緩和は訪れない。改めて気持ちを引き締めさせる力強さを持った芝居だ。原作はエーリヒ・マリア・レマルク。訳と演出は勝田安彦。
　（瀧口雅仁・芸能史研究家）
　２１日まで、東京・紀伊国屋ホール
( ２０１５年０５月１８日，「赤旗」)

おはようニュース問答／欧州はナチスからの解放７０年だね

のぼる　第２次世界大戦でナチス・ドイツが降伏してから８日で７０年がたったね。ヨーロッパの各国で、解放を記念する行事が行われた。

ドイツの姿勢は
　みどり　ベルリンの中心部では、ナチスの強制収容所から生還した生存者から当時の体験を聞く催しが行われたり、街頭に第２次大戦の始まりから和解までのパネルが展示されたりしていたよ。
　のぼる　ドイツは過去の教訓を現代に生かそうとしているね。メルケル首相が国民向けにビデオメッセージを発表したけど、見た？
　みどり　見たよ。「歴史に終止符を打つことはできない。ドイツ人にはナチス時代に引き起こしたことに注意を怠らず、敏感に対応する特別の責任がある」と言っていたね。基礎知識を、学校や社会に広め、学ぶことの必要性も強調していた。
　のぼる　首相が過去に正面から向き合うべきだと国民に話す姿が、新鮮だった。日本では、学校の授業でも近代史はあまり触れられないし、日本の侵略戦争を美化して、歴史を書き換えようとする政治家すらいる。
　みどり　本当ね。でもドイツでも、残された問題があるようだよ。強制収容所の売春宿で女性が強制的に売春させられたことが明らかになった。いま解決に向けた市民の運動や研究が広がり始めているそうよ。

世界は日本注視
　のぼる　ナチス・ドイツ軍の捕虜になった旧ソ連軍兵士の問題も今回注目されたね。ドイツのガウク大統領が、捕虜収容所を訪ね、ナチ時代の捕虜５３０万人のうち半分が、飢えや銃殺などで命を奪われた問題に言及し、重大な犯罪の一つだと演説した。
　みどり　戦後４０年の際に西ドイツのワイツゼッカー大統領が、「過去に目を閉ざすものは現在にも盲目となる」と語ったのはあまりにも有名な話だけれど、ドイツはいまも歴史の清算を続けている。だからこそ、欧州の一員として、認められているんだと思うわ。
　のぼる　日本は、戦後７０年の節目を８月１５日に迎える。世界は、日本がその日をどう迎えるのか注視している。安倍首相が７０年談話を出すというけれど､過去を反省し､アジアの国々と手を取り合って進んでいけるような談話を出すべきだろう。
　〔２０１５・５・１８（月）〕
( ２０１５年０５月１８日，「赤旗」)

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潮流

亡くなったドイツのワイツゼッカー元大統領は終戦４０周年の演説で、１９４５年５月８日が自分たちにとってどんな日であるかを語っています。「何よりもまず人びとがなめた辛酸を心に刻む日であり、同時にわれわれの歴史の歩みに思いをこらす日でもある」▼第２次大戦が欧州の地で終結を迎え、ナチズムの暴力支配と人間蔑視の体制から解放された日。「夢の中にいるようだった。戦争は終わったのだ」。死に向かう列車に乗せられていたユダヤ人の一人は、その瞬間をこう回顧しています▼欧州では独伊のファシズムを、アジアでは日本軍国主義を打ち破り、人類の歴史が大きく転換してから７０年。節目となる今年は各国で記念の行事や追悼式が行われています▼メルケル独首相も改めて国民に呼びかけました。「歴史に終止符はない。われわれドイツ人にはとくにナチス時代に引き起こしたことを知り、注意深く敏感に対応する特別の責任がある」と▼世界が過去と向き合い、戦争への反省と教訓から学ぼうとしているそのとき、日本を顧みれば暗然としてしまいます。ついに自民、公明の与党が「戦争立法」の全条文に合意。今週中に閣議決定し、国会にはかる構えです▼あれこれ言い繕っても、安倍政権がやろうとしているのは日本を海外で戦争できる国につくりかえること。自衛隊が武器を持ち、命を奪い、奪われる。憲法９条を掲げ、戦後日本が歩んできた道の逆戻りです。あのとき、心に刻んだ平和への思いを結集し、いまこそ。
( ２０１５年０５月１２日，「赤旗」)

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言聞録／２０１５年５月３日～９日

「犠牲者とわれわれ自身、未来の世代のために（ここで起きたことを）決して忘れない」（メルケル独首相）＝３日、ドイツ南部ダッハウにあったナチスの強制収容所が米軍に解放されて７０年の節目の追悼式典で強調。

　○「『飢えた者には食事を』がシークの教え。食べられない人がいればどこにでも行く。ネパール人かインド人かは関係ない」（カルナル・シン氏）＝３日、インドのシーク教徒団体が現地のＮＧＯと協力し行った炊き出しで表明。

　○「（１９４５年までの）５０年間の日本の支配は、台湾人が望んだものではなかった」（台湾の朱立倫・国民党主席＝写真、ロイター）＝４日、中台与党トップ会談後の記者会見で、会談中の発言として紹介。

　○「（ドイツで生きる）私たちは市民的勇気を持ち、人種差別、極右、反ユダヤ主義とたたかう義務がある」（インゲブルク・ガイスラー氏）＝７日、第２次世界大戦終戦・解放７０年を迎えベルリンで開かれた催しでホロコーストの生存者としてテレジン強制収容所での体験を証言。

　○「（「牙城」としていたスコットランドでの惨敗を念頭に）スコットランド民族党に圧倒された」「全責任を取る」（英労働党のミリバンド党首）＝８日、総選挙の敗北について支持者に謝罪し、辞任する意向を表明。
( ２０１５年０５月１１日，「赤旗」)

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ナチスからの解放７０年／若い世代へ歴史継承／独首相がメッセージ／国民に訴え

ドイツのメルケル首相は、第２次世界大戦終結とナチスからの解放７０年に当たり、国民向けにインタビュー形式のビデオメッセージを２日に発表しました。若い世代に歴史を継承しようとの思いが込められています。要旨を紹介します。
　（ベルリン＝片岡正明）

　質問　「（ナチスの犯罪を）二度と繰り返さない」という言葉が決まり文句となっていますが、いったい何を意味しているのですか。
　答え（メルケル首相）　「二度と繰り返さない」という言葉が陳腐なものにならないよう取り組まねばなりません。
　二度と繰り返さないとは一方で、ナチスの歴史、強制収容所の歴史、少数者や迫害を受けた人の歴史、ホロコースト（ユダヤ人虐殺）の歴史を分析し、働きかけることです。他方で、今日のわれわれの理想、価値観に注意を払うということでもあります。
　ドイツでは学校や保育園、記念碑などのユダヤ人の施設を警察官が警備しなくてはなりません。別の考えを持つ人、ドイツ人とは違って見える人がしばしば人種差別や過激主義にさらされることは問題です。
　問題が最初に始まったところに注意を向けるべきです。政治でもそうですし、一人一人が市民的勇気を持つことでもそうです｡幸いなことに､人種差別や過激主義に対し、若者を含め多くの人たちが立ち上がっています。
　質問　ナチスからの解放記念日など数日の記念日だけに、過去の克服を集中するのは危険ではないですか。
　答え　記念日には、はっきりしたことを考えます。時の流れが早いわれわれの時代には、繰り返し訪れる記念日はいいことだと思います。そうでないと、別のことに押されて、歴史の取り組みは後回しにされることでしょう。
　しかし記念日だけでは十分ではありません。記念日を迎えることは歴史を知ることですが、基礎知識を学校や社会でさらに広め、継続的に学ぶことが必要です。
　質問　ギリシャからは１９４２年に強制的に借用されたお金を返せという要求が出ています。一方で、ドイツでもギリシャでも過去に自分たちの将来を縛られたくないと思う若い世代がいます。
　答え　若い人たちの気持ちはわかります。でも、私は歴史に終止符を打つことはできないと思います。ギリシャや他の欧州諸国との討論の中でも、歴史に終止符はないということがいえます。
　ドイツ人には、ナチス時代に引き起こしたことに、注意を怠らず、敏感に対応する特別の責任があります。他の国に長く続く痛みと懸念があることは当然ですし、よく理解できます。だからこそ終止符があってはならない。
　そして、若い人たちに対しても言いたい。第２次世界大戦後、ドイツが発展し、欧州が統一の方向にむかったことで、多くのいい点がありました。だからこそ欧州の歴史を、そして各国それぞれの歴史をいつも振り返るべきです。
( ２０１５年０５月１１日，「赤旗」)

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芸能テレビ／俳優座公演「フル・サークル」主演小山力也さん／無関心が「手遅れ」を招く前に

陥落寸前のベルリン、ナチスから逃げる男は―
　ナチスから逃げる男の息もつかせぬサスペンスです。俳優座公演「フル・サークル―ベルリン１９４５―」に主演する小山力也さん。二転三転のどんでん返しの中、戦争と人間の良心を問います。
　大塚武治記者

　日本では２１年前、同座が初演。小山さんはソ連軍将校を演じました。
　「戯曲を読み、こんな面白い作品があるのかと驚きました。２時間の芝居の最後まで、次はどうなる？　という緊張の連続。当時、高校で公演し､高校生に『自分の世界が広がった』と言われたのがうれしかった」
　１９４５年４月、ソ連軍の猛攻で陥落寸前のベルリン。アパートの一室の一昼夜を描きます。
　ナチスに追われるドイツ人の政治犯ローデ（小山）は、反ナチ協力者である男を頼り、部屋に逃げ込みます。強制収容所の実態を暴くため、収容所を脱走したのです。でも男はすでに死亡、いたのは男の妻アンナ（斉藤深雪）でした。ゲシュタポの隊長（島英臣）が執念深くローデを追って現れ、３人を軸にした緊迫のドラマが展開します。
　「ローデは単純なヒーローではない。元は普通の市民だった彼は、ユダヤ人の子たちが収容所で殺されているのを聞きつけ、新聞社に『おかしい』と問い合わせたことで捕まります。そんな誰にでも起きうるリアリティー、人間味を出したい」
　アンナには、夫の死をめぐる痛恨の思いがありました。ローデと心が通い、愛が芽生える中、ベルリンが陥落します。
　「初演の時、８０代のお客様が『いまだにあの戦争は正しかったと言う人間がいる』とおっしゃっていました｡２１年後の今､まさか切迫した問題になるとは思いもしませんでした。無関心な人にこそ､見てもらいたい｣
　◇
　原作はドイツ人作家レマルク。第１次大戦に出征・負傷した体験を基に、『西部戦線異状なし』で戦場の無残な実態を活写しました。ナチス政権に追われて米国に亡命。祖国に残った妹は、政権批判の罪で斬首されました。
　「『フル・サークル』が初演されたドイツの劇場で、拍手の中、レマルクはぶぜんとしたままだったそうです。『面白い芝居』で終わらせてほしくない、自分の問題として考えてほしいという思いがあったのでしょうか」
　日本の現状を思う時、ローデのせりふが痛烈に響くと話します。ローデは戦争が始まる前の自分を省みて、「俺にも罪がある」と語ります。
　「それは『手遅れになるまで待っていた罪、やつらが力を蓄えるのを黙って許した罪だ』と｡かつてドイツも日本も、誰もが『まさか』と思ううちに戦争になりました。いま若い人に、『放っておいたら本当に戦争で殺されるよ』と言いたい」
　「俳優として、今の状況をどうすれば？　と考えます。ドキドキハラハラしていただいた後、見た人の次の生き方につながる何かを残せたら」

＊潤色／ピーター･ストーン､訳・演出／勝田安彦。１４～２１日＝東京・紀伊国屋ホール。℡０３(３４０５)４７４３
(２０１５年０５月１０日，「赤旗」)

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１０ 各地で憲法のつどい／神戸／兵庫・姫路／奈良／和歌山／大津

平和の国際貢献こそ／神戸
　憲法記念日の３日夕、日本共産党兵庫県委員会は神戸市元町で宣伝をおこない、金田峰生参院兵庫選挙区候補と大前雅裕神戸市議が訴えました。
　金田氏は、神戸港を米軍から取り戻し、核兵器を搭載した艦船を入港させない非核「神戸方式」を実現したことや、阪神・淡路大震災で１０年以上たたかい続け被災者生活再建支援法をつくらせたことなど、市民と日本共産党の共同の取り組みで憲法を普遍化させたことを強調しました。安倍首相の戦争する国づくりを批判し、憲法９条を発揮した平和と友好の国際貢献を訴えました。
　大前市議は、憲法を生かした政治への転換と市民の暮らしを応援する市政実現に全力を尽くす決意を表明しました。
　ビラを受け取った神戸市東灘区の女性（７８）は「憲法９条は絶対に変えてほしくない。なくなったらどんなことになってしまうのか。いまの平和を守るため、皆で守りましょう」と話していました。手を振って激励する人や、わざわざ近寄って声をかける男性がいました。

若者と共同呼びかけ／兵庫・姫路
　第３７回憲法を守るはりま集会が３日、兵庫県姫路市で開催され５５０人が参加しました。
　翻訳家の池田香代子氏が「安倍版ニュースピークにご用心」と題し講演し、悲惨な第２次世界大戦が日本国憲法を生み、二度と政府に戦争をさせまいという意思が日本国憲法の立憲意志だと強調しました。池田氏は、武器輸出三原則を「防衛整備移転」に、盗聴法を「通信傍受法」など言葉の言い換えが進行し、「積極的平和主義」と戦争準備をすすめる安倍政権を告発。若者たちのノーパサラン(やつらを通すな)、アンティファ（反ファシズム)など､言葉を先取りして一緒にたたかうよう呼びかけました。
　ラジオパーソナリティーの小山乃里子さんが司会をし、実行委員長の松本滋兵庫県立大学名誉教授は「国民が力を合わせて守った憲法は、再びみんなのものになり憲法を暮らしに生かす未来が開ける」と訴えました。
　兵庫県弁護士会姫路支部の平田元秀支部長が「憲法を守る一点で手をつなごう」と呼びかけました。

全国で世論高めよう／奈良
　「戦争立法」反対！５・３橿原市民集会が３日、近鉄大和八木駅前でおこなわれ６０人が参加しました。
　大槻烈事務局長が「『戦争立法』が成立したら自衛隊が海外で武器が使えるようになります。これに反対するために、国会の中に国民の世論を広げ、全国の大小の集会で世論を高めて、国会に反映させていこう」と訴えました。
　集会では、イラク戦争に参加した元海兵隊員ロス・カプーティさんの寄稿文が読み上げられました。
　参加者は、横断幕やプラカードを手に「戦争立法反対」「憲法９条を守れ」「９条を世界へ輸出しよう」などシュプレヒコールして、橿原市役所まで、デモ行進しました。沿道から拍手や手を振って応える姿が見られました。
　日本共産党の地方議員らも、奈良市内や大和郡山市内で宣伝をおこないました。

９条守る運動さらに／和歌山
　「守ろう９条　紀の川　市民の会」は６日、和歌山市で総会を開き、由良登信弁護士が記念講演しました。
　由良氏は、秘密保護法の可決強行や集団的自衛権行使容認の「閣議決定」など安倍政権による「戦争する国」づくりが、４月の日米ガイドライン改定合意、５月の戦争立法の国会上程、そして来年夏の参院選後から再来年春までに「憲法改正」発議を公言している状況を「戦後最大の憲法９条の危機」と指摘しました。
　戦争立法が憲法により、できない戦争を「憲法改正」をしないで可能にしようとしていることを告発しました。
　由良氏は、憲法で禁止されていることを勝手にやっていく政府や憲法違反の法律をつくっていく多数党の横暴を主権者として許してはいけないと強調。「日本の自衛隊によって貧しい国や派遣先の市民や子どもたちが殺されていくのを許していいのか。日本の若者が戦地に行きひつぎで帰ってくるのをさせるのか」と怒り、９条守れの運動の強化を訴えました。

歴史認識問い直そう／大津
　「滋賀・九条の会」は２日、大津市で第１１回憲法のつどいを開きました。県内各地の９条の会の人たちなどが参加しました。
　「滋賀・九条の会」世話人の土井裕明弁護士は、安倍首相が米議会で演説し、集団的自衛権の行使を可能にするような法律を、日本の国会に法案が提出されてもいない段階で成立させると述べたことを批判しました。
　歴史学者の吉田裕氏が「戦後の日中・日韓関係と歴史認識問題」と題して講演しました。吉田氏は、安倍首相の靖国神社参拝（２０１３年１２月）に対し、米オバマ政権が「失望している」との異例の声明を発表したことや、安倍首相の持論でもある「東京裁判克服論」の持つ反米的性格が日米安保体制と矛盾することを指摘。「日本国憲法を擁護しつつ、歴史認識の問題を常に問い直し、歴史的な和解はどうすべきかを議論していく必要がある」と述べました。
　つどいでは、野田淳子さんのミニコンサートが行われました。
(２０１５年０５月０９日，「赤旗」)

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独の戦後７０年／市民「歴史を継承」／旧ソ連軍捕虜の犠牲にも光

【ベルリン＝片岡正明】戦後７０年を迎えたドイツでは、街頭でも、積極的に過去を克服し現代に教訓を生かそうとする市民の声が多く聞かれました。
　「祖母が泣きながら戦争体験を語っていました。ドイツにとって大事な歴史で、戦後生まれの私たちが継承し、人種差別や極右を許さないことが重要です」というのは、働きながら学ぶレア・ライヒェルさん（３１）。
　かつてユダヤ人居住地があったベルリンのウィルマーズドルフ地区に住むブリギッテ・シュトイアーさん(７２)は｢子どものころ､ユダヤ人の隣人がナチに連れ去られたことを知りました。私の父も含め当時のドイツ人は何もしようとしなかった。こんなことがあってはなりません｣と語りました｡
　７０周年の今年は、これまであまり注目されてこなかったナチス・ドイツ軍の捕虜となり命を落とした旧ソ連軍兵士らの犠牲にも光が当てられました。
　ガウク大統領は６日、旧ソ連軍の捕虜が大量に殺されたシュトゥッケンロック捕虜収容所を訪ねました。「ナチ時代には５３０万人のソ連軍捕虜が独国内にあり、その半分が飢え、疫病、銃殺などで命を失った。第２次世界大戦の重大な犯罪の一つだ」と述べました。
( ２０１５年０５月０９日，「赤旗」)

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対ナチス戦勝ロシア・レセプション／井上議員が出席

日本共産党の井上哲士参院議員と田川実国際委員会事務局長は８日、都内のロシア大使館で開かれた対ナチス・ドイツ戦勝７０周年の記念レセプションに出席しました。
　井上氏は、エフゲニー・アファナシェフ駐日大使に「ドイツ・ファシズムを打倒するうえで、ロシア国民が果たした大きな役割はよく知られています」と述べてあいさつを交わし、内外の出席者と懇談しました。
( ２０１５年０５月０９日，「赤旗」)

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〝ナチ犯罪〟二度と許さぬ／戦後７０年、決意新た／ドイツで催し

【ベルリン＝片岡正明】第２次世界大戦でナチス・ドイツが降伏してから８日で戦後７０年を迎えたドイツでは、連邦議会で、ガウク大統領とメルケル首相が出席し、大戦終結とナチスからの解放を記念する上下院合同の式典が開かれました。
　（関連７面）
　首都ベルリンでは、終戦・解放７０周年を記念するさまざまな催しが行われており、ナチスによるホロコースト（ユダヤ人虐殺）などのような犯罪を二度と起こさせない決意を新たにしています。
　７日、中心部のブランデンブルク門近くのホロコースト・メモリアルでは、ホロコーストの生存者２人が証言。インゲブルク・ガイスラーさん（８３）は、テレジン強制収容所（現チェコ）で飢えと恐怖、病気に苦しみながら、生き延びた体験を語り、「（ドイツで生きる）私たちは市民的勇気を持ち、人種差別、極右、反ユダヤ主義とたたかう義務がある」と訴えました。
　メルケル首相は、戦後７０年のビデオメッセージで、「違う考えを持つ人や少数者、ユダヤ人に対し、ナチのような迫害を二度と繰り返さない決意を示す重要な日だ」と強調。７０年を区切りとして過去の克服を終わらせようとする試みがあることには、「決して終止符ではなく、若い人の学びの継続が必要だ」と警告しました。
( ２０１５年０５月０９日，「赤旗」)

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ナチス本部跡に博物館／独

【ミュンヘン（ドイツ）＝ＡＦＰ時事】ドイツ南部ミュンヘンのナチス本部跡に４月３０日、ナチスの過去を伝える博物館「ナチス歴史文書センター」が開館しました。寛容の文化と美術やビアガーデンを誇りとしたミュンヘンがファシズム発祥地となった経緯を検証。博物館を設置したミュンヘン市のライター市長は「（ミュンヘンは）ナチスの過去に立ち向かう」用意ができたと明言しました。
　３０日は、米軍による「ミュンヘン解放」および独裁者ヒトラーの自殺から７０年に当たります。開館式には政治家のほか、米国の退役軍人やナチスによるホロコースト（ユダヤ人大虐殺）を生き抜いた高齢者が参加しました。
　博物館では、軍の行進や連合国の空爆で破壊されたミュンヘンの様子を写した写真と映像を展示。終戦直前に処刑されたレジスタンス（対ドイツ抵抗運動）活動家のポケットから見つかった走り書きの詩も公開しています。
　また、戦後を扱ったコーナーで、ナチス高官が引き続き政界でキャリアを積む一方、ネオナチによる襲撃事件が発生したことを批判的に紹介しています。博物館の総工費は２８００万ユーロ（約３７億６０００万円）。
( ２０１５年０５月０８日，「赤旗」)

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潮流

天候に恵まれ、列島に子どもたちの歓声が響いた大型連休。季節は立夏もすぎ、新緑に薫る風が心地よい。夏の匂いも感じます▼〈五月には世界のすべてが美しくなる／なにもかもが生きたがる／緑の草は目を奪い／金色の太陽は私たちに呼びかける／森で心を温めなさいと〉。ジプシー（ロマ）の女性詩人が、この時期を歌っています▼文字を持たないジプシーの一族に生まれながら、独学で読み書きを学んだパプーシャ。いま、第２次大戦前後のポーランド史とともに彼女の生涯を描いた映画「パプーシャの黒い瞳」が公開され、残した詩を邦訳した本も出版されています▼自然の中で生きてきたジプシー。貧しい生活を送りながら、彼らが創造した情熱的な音楽やダンスは各地の音楽文化に大きな影響を与えました▼独特の生き方は差別や迫害を受けます。とくにナチスの民族浄化によって８０万人以上のジプシーが殺され、戦後は定住化が進められてきました。同化を望まない民族に心を寄せたヨアンナ・コス＝クラウゼ監督。本紙のインタビューに、自分は社会の片隅に追いやられた人たちの言葉に耳を傾ける義務がある、と語っています▼森の詩人パプーシャ。彼女がつむいだ言葉は、原発事故によって汚された自然やふるさとを奪われた人びとを思い起こさせます。〈黒い森と善き心と私の大地よ／私はあなたの娘／大地よ私はあなたを信じる／あなたの上に育ち生きるもの／すべてを私は愛している〉。人間が生きていく場所とは、を。
( ２０１５年０５月０８日，「赤旗」)

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人民日報「侵略への謝罪」言及なしに不満

【北京＝時事】１日付の中国共産党機関紙・人民日報は、安倍晋三首相の米議会演説に関する論評を掲載し、演説に国際的な批判が出ていると主張しました。その上で「国際正義にグレーゾーンは存在しない。言葉を濁して問題をやり過ごそうとするのは不可能だ」と反発し、「侵略への謝罪」などに言及しなかったことに不満を示しました。
　論評は村山談話について「前向きな評価を受けたのは、侵略戦争と植民地支配への反省とおわびを明確にし、暗黒の歴史に向き合う責任ある態度を示したからだ」と主張。一方、安倍首相が歴史問題に関し「あるべき態度で正面から回答せず、巨大な雑音を出して隣国を不安にさせている」と批判しました。
　今年が反ファシズム戦争勝利７０周年に当たるとして、日本が歴史問題で正しい態度を取るよう、各国は働き掛けを強めるべきだと訴えました。
( ２０１５年０５月０２日，「赤旗」)

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水曜エッセー／中国に行こう／５／沢野ひとし／空ばかり眺めていた

昨年の夏に内蒙古自治区の海拉爾に行ってきたが、濃紺ともいうべき空の青さと、存在感のある白い雲が忘れられない。大草原に立つと、あまりの広大さに思考が止まる。内モンゴルの草原の総面積は７９万平方㌔㍍、日本の本州の３倍以上大きい。緯度が高いので冬は１０月から４月まで零下が続き、真冬はマイナス３０度の日々が迫ってくる。
　シベリア鉄道が通る国境の町・満洲里まで２００㌔の距離である。草原を一直線に伸びる道をいくら走っても風景は一つも変わらない。なだらかな緑一色の地平線が延々と続いている。遊牧民の地には「中国第一曲水」と称されるモルグル川が原始河川さながらゆったりとうねり流れている。

　知人の中国人の女性ドライバーに「真っすぐな道で眠くなりますね｣と言うと､「ハイ、羊が１匹、羊が２匹」と羊の群れを指さし、「今夜は羊肉火鍋にしましょう」と笑っていた。太い腕がたくましい彼女の仕事は、ロシアから入ってくる材木の加工会社の管理だ。
　満洲里の町は高層ビルやロシア人向けの巨大なショッピングセンターが並び、今の中国の好景気を映している。満洲里のロシア風建造物は屋根に帽子をかぶせたような独特の形を残し、新しいビルもカラフルな色彩で塗られ、まるでおとぎの国に来たようだ。寒い地方は外側からまずは温かくしたいのだ。
　駅には、鮮やかなブルーの客車や原木や原油を積んだ貨車がロシア側からひっきりなしに入ってくる。国境地域は大観光地になっており、売店にはロシア製の双眼鏡やカメラ、ライター、時計など、見るからに「ゴツイ」ものが並ぶ。
　彼女は週に一度は、書類を届けにハイラルから満洲里に車で行くが、いつも交通事故に遭遇するという。道路を横断する羊にぶつかったり、やはり居眠り運転の事故が多いと聞いた。
　ハイラル郊外に旧日本軍の大規模な要塞があり、現在は「世界反ファシスト戦争ハイラル記念園」になっている｡青い空と大草原に､日本人は何を求めて、遠い国まで行ったのだろう。

　午前中は晴れていても、午後には地平線から入道雲が音を立てるかのごとくモクモクと現れてくる。あの雲は幼い頃に見た懐かしい雲とまるで同じである。
　そのうちに大粒の雨が辺り一面に降りだした。遠くの方で稲妻が走っている。車のライトをつけるが、視界が極端に悪くなり、手探りするようにゆっくり走る｡やがて不意に､また青空が戻ってくる。ハイラルでは空ばかりを眺めていた。
　（さわの・ひとし　イラストレーター　絵・題字も）
　（おわり）
( ２０１５年０５月０６日，「赤旗」)

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強制収容所跡で追悼式典／独首相「忘れない」

【ベルリン＝時事】ドイツ南部ダッハウにあったナチスの強制収容所が米軍に解放されて７０年の節目に合わせた追悼式典が３日、開かれました。式典は収容所跡で行われ、報道によると、元収容者ら約１３０人が参列しました。
　メルケル首相は式典で「犠牲者とわれわれ自身、未来の世代のために（ここで起きたことを）決して忘れない」と語りました。収容所では１９４５年４月２９日の解放までにユダヤ人ら４万人以上が犠牲になりました。
　一方、首相は式典に先立ち、第２次大戦でのナチス降伏から８日で７０年になるのを踏まえ２日付で映像メッセージを公開。「歴史に終止符はない」と述べ、ナチスの過去と向き合い続ける決意を表明しました。
　さらに「われわれにはナチス時代に引き起こしたことを注意深く敏感に、十分な知識を持って扱う特別な責任がある」と指摘。国内のユダヤ人関係の施設が今も警察の警備を必要としていることは「恥だ」と訴えました。
( ２０１５年０５月０５日，「赤旗」)

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親子で映画プラス／工藤雅子／８／ベイマックス・少年とロボットの友情／バルフィ！人生に唄えば・音のない世界で青年は

悪とたたかう
■「ベイマックス」
　兄を亡くした少年とロボットの友情と冒険を描くディズニー・アニメーションです。
　火事で最愛の兄を亡くし、心を閉ざしてしまった少年ヒロを救ったのは、兄が残した心やさしいケアロボットのベイマックスでした。兄の死が陰謀によることを知ったヒロは、ベイマックス、兄の友人たちと悪とのたたかいに挑みます。
　アメリカン・コミックを原案とした本作は、スピード感あふれるアクション映画。でもヒロとベイマックスの友情には涙が止まりません。本編約１０２分。
　（ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン　ＭｏｖｉｅＮＥＸ／デジタル配信・発売中　２枚組〈ブルーレイとＤＶＤ〉・税別４０００円）
　小学校低学年～

笑い泣かせる
■「バルフィ！人生に唄えば」
　音のない世界に生きる青年バルフィをファンタジックに描いたインド映画です。
　バルフィは生まれつき耳が聞こえず、話をすることもできません。しかし、ユーモアあふれる彼に、誰もが魅了されてしまいます。
　美しい女性シュルティと自閉症の少女ジルミルとの出会いによって、彼の運命は思いもよらぬ方向に進んでいきます。
　言葉ではなく、チャプリン映画のようなコミカルな動きとペーソスで、観客を笑わせ、泣かせます。紅茶で有名な町ダージリンの美しい風景や、豊かな音楽が、見知らぬ国に旅した気分にしてくれます。１５１分。
　（発売元ファントム・フィルム、販売元ポニーキャニオン　ＤＶＤ・税別３８００円、ブルーレイ税別４９００円）
　小学校高学年～

新しい発見も
■「サウンド・オブ・ミュージック」（１９６５年）
　今年製作から５０年を迎えるミュージカル映画の金字塔です。
　オーストリア・ザルツブルクを舞台に、母を亡くしたトラップ家の７人の子どもたちと、明るく歌が大好きな家庭教師マリアの交流が描かれます。
　「ドレミの歌」「私のお気に入り」などの名曲が、美しい風景に響き渡る前半から、ナチスの台頭と自由弾圧、一家の国外脱出という重いテーマの物語へ変わっていきます。子どもの年齢によって、さまざまな見方、新しい発見があるので、繰り返し見て楽しむことができます。１７５分。
　（２０世紀フォックス　ホーム　エンターテイメント　製作５０周年記念盤　発売中　ＤＶＤ・税別３９９０円）
　小学校低学年～
( ２０１５年０５月０４日，「赤旗」)

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メーデー、各国で集会／フランス／ドイツ／ギリシャ／スペイン／英国／エジプト

メーデーの１日、欧州各国の労働者が賃上げや雇用回復、労働環境の改善などの要求を掲げ、各地でデモや集会を行いました。またエジプトではシシ政権下で初めてのメーデーとなりました。

規制緩和法案の撤回を

フランス
　【パリ＝島崎桂】フランスでは全国３００都市以上で数百人から１万人規模のデモが実施されました。参加者はマクロン経済相がまとめた大規模な規制緩和法案、通称「マクロン法案」の撤回を要求。解雇規制の緩和や労働時間の拡大を狙う同国政府に抗議し、労働者の権利擁護や雇用拡大、賃上げを求めました。
　パリでは冷たい雨の中、約１万２０００人がデモ行進。大音量の音楽や労働歌が響く中、増税や社会保障の削減に抗議する横断幕やプラカードを手に、「緊縮政策に反対」「マクロン法案は労働者にとって利益なし」などと唱和しました。
　大学生の全国組織、フランス全国学生連合（ＵＮＥＦ）の隊列からも、「将来の雇用を脅かす」としてマクロン法案の撤回を求める声が上がりました。
　パリの職業訓練学校の職員、グレッグさん（２０）は「マクロン法案はあらゆる労働規制を破壊し、長時間労働や大量解雇を常態化させる。全ての労働者の共同により、法案を撤回に追い込む必要がある」と話しました。

最賃法空洞化許すな

ドイツ
　ドイツでは「最低賃金法の空洞化を許すな」をメーンスローガンに、全国４７０カ所で集会・デモが催され、４０万２０００人が参加しました。
　今年１月から実施された全国一律の法定最低賃金は現在、時給８・５ユーロ（約１１４３円）で、２０１７年までに段階的に実施されます。しかしファストフード産業などでは、最低賃金を実施する代わりに夏冬のボーナスや残業手当を廃止し、労働者に賃下げを押し付けようとする企業も出ています。
　ベルリンの集会ではドイツ労働組合総同盟(ＤＧＢ)のホフマン議長が「派遣労働者や請負労働者の使い捨てをやめよ｣と演説｡欧州各国の緊縮政策で数百万人の失業者があふれているとして、経済政策の転換を求めました。
　今年はナチス・ドイツの敗戦から７０年を迎えることもあり、人種差別・排外主義を掲げる右翼組織「ペギーダ」に警戒の声も上がりました。
　東部ドレスデンでは金属労組の代表が「（貧困層への）社会保障を充実させなければ、社会への不満が危険な状況になる」と強調。ワイマールの集会では、極右が労働者の集会を襲い、１５人が負傷する事件も起きました。
　（片岡正明）

雇用・賃金の回復求め

ギリシャ
　【パリ＝島崎桂】債務問題をめぐり、欧州連合（ＥＵ）などとの厳しい交渉が続くギリシャでは、第２の都市テッサロニキで約１万人、首都アテネで約２５００人（いずれも警察発表）がデモ行進しました。ＥＵなどが課した極度の緊縮政策で悪化した雇用と賃金水準の回復を求めました。
　アテネでのデモには、バルファキス財務相ら複数の閣僚も参加。「反緊縮」を掲げるチプラス首相はツイッターを通じたメーデー向けのメッセージで、「民主主義の強化や（労働者の）権利拡大、尊厳ある生活のためのたたかいで、われわれは勝利する」と述べました。

スペイン
　ギリシャ同様、近年の過酷な緊縮策で失業者が急増したスペインでは、首都マドリードでのデモに数千人が参加しました。
　同国政府が経済と雇用の回復傾向を主張する中、デモ参加者は「われわれはまだ、危機から脱していない」を合言葉に市内を行進。最低限安定した生活を保障する「生活賃金」の導入や雇用創出に向けた政府の方針転換を求めました。

英国
　総選挙の投票日を７日に控える英国の最大労組、労働組合会議（ＴＵＣ）は１日の声明で、公務員削減や賃金抑制策を継続してきた与党・保守党を批判。「仕事を通じて自らに価値を見いだし、（解雇の恐れがなく）安定を感じる人々は、より生産的になる」として、労働者の権利強化を求めました。
　ロンドンのトラファルガー広場での集会には、数百人の労働者らが参加。英国を代表する美術館「ナショナル・ギャラリー」の民営化に反対し、断続的なストを実施している同美術館職員への連帯を表明しました。

労働者の権利を制限

エジプト
　【カイロ＝松本眞志】エジプトではシシ政権下で初のメーデーを迎えました。シシ氏は反テロのたたかいと経済回復を優先し、労働者の権利擁護は後回しにする姿勢を示しました。
　シシ氏は４月２７日のメーデー関連行事で演説し、「国民は反テロで政府を支援するべきだ」と強調。好調な経済を「２年で取り戻そう」と呼び掛けました。
　シシ氏は２０１３年にムスリム同胞団出身のモルシ元大統領を軍事クーデターで退陣させた中心人物。その後、デモ規制法を施行するなど、民主化を求める国民への規制を強め、労働者の権利も抑圧しています。
　エジプト経済社会権利センターのナディーム・マンスール事務局長は４月２６日、独立系ニュースサイトで「デモ規制法は労働運動にも適用されている」と指摘。ストライキ権を行使する労働者に「脅迫、投獄、心理的弾圧、拷問が行われている」と批判しました。
( ２０１５年０５月０３日，「赤旗」)

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（４月ヘッドライン）

３０

『スターリン秘史―巨悪の成立と展開』第２巻を語る／上

『スターリン秘史―巨悪の成立と展開』第２巻を語る／下

アンネ最期の収容所／解放７０年で追悼式典／ドイツ

「ナチス最後の裁判」初公判／元強制収容所の簿記係／独裁判所

２０

芸能テレビ／文学座公演「２００００ページ」／トニー役釆澤靖起さん／リーザ役前東美菜子さん

守れ憲法・戦争ごめん／玉井信子さん山梨・北杜／弱者に犠牲、繰り返さない

文化の話題／「大坂夏の陣」４００年／戦国の世に終止符、求めた平和／渡辺武

潮流

ノーベル文学賞ギュンター・グラス氏死去

差別…ナチ時代に戻さぬ／欧州議会議長が決意／独強制収容所跡

福島に生きる／アンネのバラを庭に植えた続直人さん（７１）／平和の意志自分の庭に

インタビュー戦後７０年／俳優加藤剛さん／平和のために演じる使命／憲法は亡くなった人々の夢の形見

ナチの集団埋葬地か／強制収容所跡で発見／独北部

ウクライナがソ連象徴を禁止

１０

文化の話題／金曜名作館／世界一観られている映画「サウンド・オブ・ミュージック」５０年／瀬川裕司

戦時賠償額３６兆円／ドイツ政府「解決済み」／ギリシャ

断面／興行の常識をうち破る上映／観客が映画を支えている

日本共産党に期待します／京滋キリスト者平和の会代表榎本榮次さん／戦争止める一番の道

復活祭平和行動／海外派兵反対・核兵器廃絶掲げ内外８０都市超で／欧州に戦火二度と／独

ナチス略奪の絵画返還へ／オランダ王室

アンネの命日に新説／約１カ月早い／オランダの財団

（４月本文）

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３０ 『スターリン秘史―巨悪の成立と展開』第２巻を語る／上

変質を見極めると歴史の筋道が見えてくる
　日本共産党の不破哲三社会科学研究所所長の『スターリン秘史―巨悪の成立と展開』第２巻「転換・ヒトラーとの同盟へ」をめぐり第１巻に続いて、不破さん、石川康宏神戸女学院大学教授、山口富男社会科学研究所副所長の３人が語りあいました。

　―第２巻は、スターリンの覇権主義への変質における特徴、フランス、スペイン、中国の運動へのスターリンの介入、ヒトラーとの政治同盟という国家戦略の大転換―が主題です。

変質の下での共産主義運動を見る四つの角度

　不破　第６章の冒頭で書きましたが、スターリンは「大テロル」で、進歩とも社会主義とも革命とも無縁なところへ決定的に行きついてしまいます。その変質をリアルに見極めることで、スターリンの行動のその後の筋道がはっきり見えてきます。
　山口　今回の研究の重要な足場ですね。
　第６章では、スターリンが決定的に変質した段階での、「世界の共産主義運動をどう見るか」の四つの角度―①徹底した秘密主義を貫く、②絶対的な無条件服従の体制をつくる、③科学的社会主義の言葉で飾る、④支配・指導体系の矛盾はとくに対外関係で鋭く現れる―が大きく提起されています。
　不破　ここで挙げた四つの角度は、その後、共産主義運動にくわわってきたわれわれの実感でもあるのです。
　「大テロル」は、表舞台では、「反ファシズム」闘争の旗が掲げられている時期に、徹底した秘密主義のもとで強行されたものでした。その真相はソ連国内でも誰も知らない。
　コミンテルンにしても、スターリンは、ディミトロフをうまく押し立て、反ファシズムの方針を打ち出した第７回大会で、この組織を、スターリンの同意なしにはやれないシステムにつくりかえてしまいました。スターリンの打ち出す方針は、全部ディミトロフ経由でコミンテルンの指示として出ることになりました。
　世界の運動にたいするスターリンの支配体制をより決定的なものにしたのが、スターリンへの「理論」信仰ですね｡スターリンには､それまで理論的著作はほとんどないのですが、『ソ連共産党（ボ）小史』（１９３８年）をつくって、〝スターリンがロシア革命を指導した〟〝ロシア革命にはマルクス・レーニン主義の革命論のすべてがある〟と書いて、それを徹底させる国際運動をやったわけです。
　私が日本共産党に入った当時は、ソ連とその指導者スターリンに対する理論的、政治的な無条件の信頼がありましたね。それには、第２次世界大戦で、ソ連がヒトラー・ドイツを倒す主力軍になり、戦後の国際政治を動かす主役の一人となったという事実も大きく働きました。
　石川　前回の鼎談で、不破さんは学生の頃、熱心に『小史』を学んだと言っていましたね。今回、『秘史』第２巻を読んで『小史』の位置づけが納得できました。スターリンは、レーニン時代を知る世代を「大テロル」で壊滅させ、ソ連共産党やコミンテルンを、自分をあがめる人間ばかりの集団につくり変えた。その上で、自分を神格化させる思想・政治教育に乗り出していく。その産物が『小史』だったわけですね。
　山口　理論的な偽造をきちんとつかむことと、真実を知らされていなかった人たちが真実を知ってそれを乗り越えること―これは研究上の整理であると同時に、私たちの運動を考える上でも大事な観点ですね。
　石川　今回の研究は、ソ連の覇権主義とたたかった歴史をもつ日本共産党の理論的蓄積があってこそだったと不破さん自身、語っていますが、なぜ日本の共産主義者はスターリンの覇権主義とたたかえたのでしょうか。
　不破　スターリンが、世界の共産主義運動に覇権主義的な支配をめぐらせたとき、日本共産党はそこには入らなかったのです。「大テロル」が開始される前の１９３５年に、弾圧で日本共産党の中央委員会の活動が中断させられました。戦後、理論的、政治的な影響は受けましたが、その支配体制そのものは日本には及びませんでした。
　その日本共産党を、強引にスターリンの支配の枠に押し込めようとしたのが「五〇年問題」でした。この干渉のもとで苦難の時期を経て、自主独立の立場を確立した。それが、１９６０年代以後、スターリンの後継者たちの干渉とたたかう強固な基盤となっていったのでした。

フランス、スペイン、中国への介入

　山口　第７章では、統一戦線戦術を打ち出した１９３５年のコミンテルン第７回大会を受けて、それがどう具体化されたかや、変質したスターリンの介入がどう行われたかを、フランス、スペイン、中国で見てゆきます。解明していく上でさまざまな資料が使われています。不破さん自身、いろんなことを発見したと書いていますね。

なぜフランス共産党を入閣させなかったか
　不破　フランスでは１９３６年５月に人民戦線が総選挙で勝ちました。なのに、フランス共産党は入閣しなかった。これは、私の長年の疑問でした。これについては、『ディミトロフ日記』ではなく、アメリカで出版されたディミトロフとスターリンの『書簡集』を読んで、そのいきさつがわかりました。
　フランス共産党が望み、ディミトロフが勧めても、スターリンは断固として入閣を認めなかったのです。従来公表されていたのは、入閣しないのはフランス共産党自身の判断だったという説でした。しかし、事実は、そうではなくモスクワが認めなかったのですね。
　一方、スペインでは、フランスよりも３カ月早く、同年２月に人民戦線が総選挙で勝ちました。その時にはまだ共産党が政権に入る条件がなかったのですが、その後に政権が代わったときには当然入るべきだということになり、スターリンは閣僚を２人入れろという指示までしています。
　この違いは何なのか。
　スターリンは次の段階を考えていたのですね。当面は反ファシズム戦線でヒトラーの脅威を押し返すことに力をいれるが、将来は、ヒトラーと手を組む選択肢もありうるという考えが、スターリンの頭のなかには、かなり早くからあったのだと思います。そうなったときに、フランスで共産党が政府に入っていると、方針転換の手がしばられる。その事態を回避する予防措置だったのです。
　スペインはそうはいきません。大国ではないし、ドイツが支援する反乱軍に対して、反ファシズムのたたかいをしている国ですから。
　「大テロル」をやりながら、反ファシズム統一戦線にもこういう政略的な対応をする。スターリンの変質を見極めると、フランス共産党の人民戦線政府への参加になぜあれほど強硬に反対したのかも、読み解けてきます。
　ディミトロフはスターリンのそんな真意は読めませんから、１９３６年には入閣を断念したけれども、３８年にフランスが政府危機を迎えた時、今度は入閣してもよいだろうと考えてスターリンに提案します。しかし、スターリンからはなんの返事もありません。これは拒否の意味だと悟ったディミトロフは、自分で「入るな」という指示を出すのですが、全く説得力のない内容でした。
　石川　３５年のコミンテルン第７回大会で反ファッショ統一を提起しながら３９年には独ソ同盟に転換する。その間わずか４年です。第７回大会でスターリンはいっさい発言せず、方針に公的な責任を取りませんでした。その段階から先を見すえて、方針転換できるように考えていたのですね。第７回大会の決定を貫く意思はなく、どこの国に対しても、自分や自分の帝国の利害を最優先していたのがよくわかります。
　山口　スターリンが自分の利害、国家の戦略優先で決めていることをつかむと、フランス共産党には政権に参加するなと言い、同じ時期にスペインには参加しろと言った謎が解けてきますね。スペインについては「衛星国」化まで狙っていたと知り、驚きました。

スペイン内戦を「衛星国」化の実験場に
　石川　スペイン内戦は、学生のときにスティーブ・ネルソンの『義勇兵』を新日本文庫で読んだぐらいです。不破さんも手をつけるのに時間がかかったと言われてましたが。
　不破　スペイン内戦というのは当時の国際的な大事件で、各国の進歩派が心を寄せたんです。各国で共産党やスペイン支援組織が中心になって呼びかけた「国際旅団」に多くの義勇兵が参加しました。それに加わった米国の作家ヘミングウェイの『誰がために鐘は鳴る』という小説がありますが、ソ連の干渉のことをちゃんと書いているんですね。スペイン人の将校がみんなソ連系の人間なのに、経歴や名前を偽っていることなどを「じつに嘘の多い世界」と書いています。
　英国の作家ジョージ・オーウェルもスペイン内戦に参加しました。彼はイギリスの独立労働党が組織したルートでスペインのカタルニア地方に入ります。そして、ソ連が「トロツキスト」と呼んでいた別の革命派の組織・マルクス主義統一労働者党（ＰＯＵＭ）との関係で弾圧に巻き込まれたいきさつを書いています。
　私は、これまでこの話をスペイン内戦史のどこに位置づけていいのかわからずにいたのですが、今回の研究では、スペイン内戦時に現地のコミンテルン関係の幹部からコミンテルンに送られた書簡集（『裏切られたスペイン』、英文）がたいへん役に立ちました。『秘史』の第２巻に寄せられた感想で、私と同じようにスペインの歴史が初めてわかったという人が結構いましたよ。
　山口　スターリンは、スペイン共産党を入閣させて介入の舞台をつくり、「国際旅団」を利用した軍事援助で、軍隊と警察の指導権を握ることにすごく力を入れるんですね。
　不破　全部隊に政治委員（コミサール）というソ連式を導入して共産党の影響力を強め、さらに秘密警察ＮＫＶＤ（内務人民委員部）の幹部を多数送り込みました。スターリンは、まるで政権が自分の手中にあるかのようにスペイン政府の人事を語っています。ところが人民戦線政府が、クーデターを起こしたフランコ将軍との戦いに負けそうだとなると、スペイン問題に興味を失い、やがては見向きもしなくなります。
　山口　スターリンはスペイン内戦への干渉を通じて、他国の政権の指導権を奪い、その国を「衛星国」化するために、どんな手段が必要で有効かという経験と教訓をつかんだ、第２次世界大戦後の東欧の「衛星国」化の「最大の実験場」にした、という不破さんの指摘はとても大きいですね。
　石川　自分たちの帝国拡大のために役立ちそうなら力を入れるし、可能性がなくなれば途端に、現地はどうなってもいいと手を引いてしまう。「巨悪」の狡知（悪がしこい知恵）が、自分たちの帝国拡大のためにのみ使われていることが一つひとつの歴史のなかによく見えています。
　（つづく）
( ２０１５年０４月２９日，「赤旗」)

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『スターリン秘史―巨悪の成立と展開』第２巻を語る／下

独ソ不可侵条約／二つの覇権主義国の〝強盗の政治同盟〟

中国の抗日統一戦線とスターリン

スターリンはなぜ西安事変に激怒したか
　山口　第８章では中国がとりあげられます。西安事変（１９３６年１２月）が一つのテーマです。有力軍閥の一つの東北軍を率いた張学良が、国民党政権を指導する蒋介石を逮捕、監禁した事件です。これが国民党を共産党との内戦から「抗日」に転換させる大きな契機となりました。
　私は、１９９３年のＮＨＫのドキュメント番組「毛沢東とその時代」をまとめた本で、当時未公開だったディミトロフ日記の一部を読み、スターリンが事変の報に激怒したのを知りました。その理由はずっと謎でした。
　不破さんの研究では、それをスターリンの国家戦略優先主義と、中国の抗日統一戦線の発展段階の中で解明していますね。
　不破　私はその番組は見なかったので、ディミトロフ日記を読んで初めて、スターリンが怒ったことを知ったんです。事変の前年のコミンテルン第７回大会で中国代表の王明は、中国の統一戦線の方針は「抗日反蒋」―日本の侵略に抵抗し蒋介石政権にも反対する―だと報告してスターリンにも承認されています。
　そこからいっても、張学良が蒋介石に反旗をひるがえして捕らえたことを、なぜスターリンが「日本への最大の奉仕だ」とまで非難し、怒ったのか不思議でした。

スターリンと蒋介石の秘密交渉
　不破　今回わかったのは、蒋介石は国内で「反共」をやりながら、１９３５年１０月にソ連に軍事協定締結を求めて秘密交渉をしていたということです。この交渉は結局まとまりませんでしたが、スターリンは、そういう意思表示をした蒋介石を、それ以降、ソ連の仲間だと認識するんですね。その蒋介石を中国共産党の意をくんだ張学良が攻撃したと思って怒った、というわけでした。
　山口　裏にこの交渉があったというのは、これまでの歴史の空白部分ではないでしょうか。
　不破　私も、最近、『中蘇関係史綱』（２０１１年）という中国の歴史書を読んで初めて知りました。
　中国共産党の拠点は１９３０年代の初めまでは南方にあり、蒋介石の包囲攻撃をくりかえし受けるんですね。最初は毛沢東主導の軍事作戦で撃破するけれど、党中央が蒋介石軍に正面反撃する作戦をやって大敗します。
　それでこの拠点を捨て、１９３４年１０月、「大長征」といわれる大移動に乗り出すのです。目的地が最初から決まっているわけではなく、戦いながら１年かけて移動して、ようやく西北部の、解放勢力がわずかな地域を占領していたところに到達して、新たな革命根拠地をつくります。
　西安事変の前、中国共産党はコミンテルンの方針を受けて「抗日反蒋」で見事な統一戦線工作をやり、有力な軍閥で抗日の意志のある張学良や閻錫山と協定を結ぶんですね。
　蒋介石はそれを知らずに張学良を共産党掃滅部隊の総司令官に任命する。でも張学良が動かないものだから、蒋介石自身が命令しようと西安に乗り込んできて、逆に張学良に捕まっちゃう。それが西安事変です。
　張学良の意図は「抗日戦争をやれ」という蒋介石への兵諫―武力による諫言でした。そこで、調停役を果たし、蒋介石に抗日を説いたのが共産党の周恩来です。彼は、孫文がつくった軍官学校で蒋介石と一緒だったことがありました。張学良の真意と共産党の考えを真摯に説いて、蒋介石に抗日統一戦線を約束させたのです。
　西安事変のこうした経過は本当にわかりにくかった。これに関わる中国共産党中央関係の電報３４通が、山口さんが北京でたまたま見つけた『コミンテルン、ソ連共産党と中国革命に関する文献資料』という中国語の本の中にあったんです。初めて見ましたよ。
　山口　この電報で流れがよくわかりました。
　不破　西安事変７カ月後の３７年７月、日中戦争が始まるのですが、国共合作の抗日統一戦線はまさに形成の途上にありました。西安事変のさいに、中国共産党がスターリンとコミンテルンに対し一定の自主的態度を取っていなかったら、その後の抗日戦争の歴史は大きく変わっていたでしょうね。
　石川　中国共産党は、フランスやスペインの党と違って、なぜそうした態度がとれたのでしょう。他方でスターリンの張学良に対する評価などは、かなりずさんに思えます。目の前にドイツがいる、あるいはドイツ問題を利用して領土を再編できるかもしれないヨーロッパと中国とでスターリンの位置づけに違いがあったということでしょうか。
　山口　位置づけと同時に、中国共産党は大長征の中でコミンテルンと直接的な連絡が取れなかったんです。電信・電報など連絡の復活は３６年の半ばです。
　不破　大長征のなかで毛沢東が中国共産党の主導権を握るのですが、実際に国民党と戦うなかで、コミンテルンいいなりだと失敗するという経験を重ねていました。ただし毛沢東もスターリン信仰は強くて、その枠外ではなかったんですけれどね。

革命、反革命、二つの政権の統一戦線
　山口　西安事変を受けて第２次国共合作が成立しますが、不破さんは、これを「二つの政権の統一戦線だった」と強調しています。今回の新たな性格づけでしょうか。
　不破　共産党は革命をすでに実行しはじめている革命政権です。蒋介石政権は反革命政権ですね。この二つの政権が抗日戦争の勝利という当面の目標で協力し合うわけだから、統一戦線といっても革命政権を解体するわけにはいかないんですよ。
　石川　大学のゼミで元日本兵の証言映像を見ると、戦った相手について「中国の軍隊」というのと、「八路軍」というのと二つ出てくるんですね。「八路軍は天皇にたてつく共産主義者だと教育された」と。二つの軍隊の関係がずっといろんな解説書を読んでもわかりづらかったのですが、今回の不破さんの解説でよくわかりました。
　不破　八路軍というのは、西安事変の前までは中国共産党の紅軍でした。それが、統一戦線ができて国民党政府の指揮下にある軍隊だということで部隊番号をつけて八路軍という呼称になった。八番目の部隊といった呼び方ですね。
　石川　革命派と反革命派の統一戦線だから、軍隊も解体するわけにいかず、数字を付け足したんですね。
　不破　八路軍は国民党軍と統一した軍隊の一部ということになっているけれど、自治権を持っているんですね。中国共産党の支配区も「辺区政府」といって特別な自治権を持った地方政府扱いでした。
　ところが、スターリンには「二つの政権の統一戦線」というのがわからない。フランス共産党が反ファシズム人民戦線をつくって、政権には入らないで議会で与党になっているのと同じくらいの関係にしか見ないわけです。
　スターリンは、蒋介石がソ連とも一緒にやろう、抗日もやる、と言っている以上、中国共産党が「独自の政権を持っている必要はない」、蒋介石統治下で政党活動をやればいいじゃないか、くらいのつもりなんです。スターリンの自国の国家戦略優先主義からくる「蒋介石中心主義」は、その後の抗日戦争や戦後の対応にも影響を与えました。

ヒトラーとの〝あうん〟の駆け引き

　―第９、第１０章はいよいよスターリンとヒトラーの接近の問題です。
　不破　その前に、見て置きたい問題が一つあります。スターリンは、「大テロル」で軍の首脳部だけでなく下士官くらいまでふくめて大殺りくを実行しました。これは、ソ連の防衛力に深刻な打撃をあたえました。それを強行したスターリンの意図はどこにあったのか、という問題です。
　意図の一つは、軍部をきちんと握っておかないと、政治的な危機がおきたとき、軍部が反乱など起こしたら政権が崩壊する、そうならないよう徹底的に危険を除去したという目的があったでしょう。もう一つは、スターリンには、ヒトラーは当面、武力攻撃はしないという判断があったのだと思います。
　ヒトラーの側も、「大テロル」を見て、ソ連はドイツと事を構える気はないと判断したんですね。
　実際、ドイツとソ連の交渉が、あうんの呼吸で始まるのが、「大テロル」の終わる１９３８年１１月ごろからです。
　３８年９月のミュンヘン会談のあたりからスターリンの態度はおかしいのです。ミュンヘン会談で英仏がヒトラーの要求を丸のみしてチェコスロバキアの割譲を認めても、何の反応も示さないんです。
　山口　ソ連とヒトラー双方に、接近を可能にし、必要ともする条件が熟すわけですね。スターリンの領土欲はものすごく、旧ロシア帝国領に手を広げていく。そのためには、第１次大戦後の国際秩序を壊す必要があり、ヒトラーと手を結ぶ方に踏み切ります。
　石川　ミュンヘン会談で英仏がドイツに抵抗しきれなかったのを見て、スターリンは「ドイツと組めば道が開ける」と思ったわけですね。他方で、ドイツの外相が駐ソ大使に「共産主義は、もはやソ連に存在しない」「独ソ間にはイデオロギー的対立はない」と言ってくる。ソ連の変化を、ヒトラーの方がコミンテルン幹部より冷静に見ているのは不思議です。

対英仏交渉の裏で独ソ交渉
　山口　仕かけが見えたんでしょう。それで、３８年にドイツ側からソ連に、経済交渉という形で打診的な接近があります。その交渉は中断しますが、翌年５月、ソ連のモロトフ外相がドイツの駐ソ大使、シューレンブルクとの会談で「〝政治的基礎〟が築きあげられた場合のみ交渉の再開に応じる」と意味深長な発言をしますね。この点に注目した解明は初めてではないでしょうか。
　不破　〝政治的基礎〟とは何だろうとドイツ側は一生懸命考えて、だんだん「領土問題だな」とわかってくるんですね。ソ連側からは言わずにずっとほのめかして、結局、ドイツ側からバルト海諸国でもリトアニア３国でも、ポーランドでも、「領土分割の交渉に応じる用意がある」と言わせた。この手口はやっぱりスターリン流の巧妙さですね。
　一方、ドイツによるポーランド侵攻の危機が迫るなか、英仏もポーランド防衛をめぐってソ連と交渉します。しかし英仏には真剣さがないわけです。ドイツの侵略の矛先をソ連に向けさせたいだけだと指摘されても仕方がない姿勢でした。スターリンが巧妙なのは、それを承知の上で時間をかけて交渉を続けて、英仏側にやる気がないことを事実で示すように仕向けたことですよ。そこだけ見ていると、スターリンに理があるように見えちゃうのね。
　山口　表の英仏ソの３国交渉と、裏のドイツとの交渉で、スターリンの打つ手が立体的にわかりました。でも、これは「二股戦略」ではないんですよね。
　不破　戦争の問題ですからね。スターリンが本気で英仏との交渉をまとめる気がなかったことは、ドイツがポーランドに攻めてきた場合の戦争の用意を実際には何もしていないことでわかります。ドイツとの関係が確立できると見通しての政治作戦だったんですね。
　もう一つ面白いのは、スターリンは部下には〝おまえはこれをやれ〟と言うだけで、ほかのことは何も教えないんですよ。
　英仏交渉のとき、代表団長のウォロシロフ（国防人民委員、党政治局員）に交渉の順序を全部教えて、その通りやって成功する。でも、ウォロシロフは自分が何をやっているかわからない。裏で進んでいた独ソ交渉を知らず、独ソ交渉の当日には、自分の狩場で政治局員のフルシチョフと一緒に狩りをやっているわけ。帰ってきたら独ソ不可侵条約が締結されていた。
　山口　３９年８月に独ソ不可侵条約が結ばれます。領土の分け取りを取り決めた秘密議定書について不破さんは、〝覇権主義国家どうしの強盗の政治同盟〟という性格が決定的に表明されていると書いています。真相に迫る解明です。
　驚いたのは、ポーランド分割の際に、ヒトラーの親衛隊とソ連のＮＫＶＤ（内務人民委員部）の幹部が提携したことや、独立回復をめざすポーランドの運動を弾圧する秘密協定までつくっていたことです。
　石川　「不可侵条約」といえば、字づらは〝平和を維持しましょう〟という条約に見えるわけですが、実際は略奪を推し進めるための同盟をスターリンが積極的につくっていったということですね。
　山口　当時の六つの独立国の領土を分割する、恐るべき略奪同盟ですね。

大義名分を仕立てコミンテルンに押し付け
　石川　そういう条約を、政治局員が狩りに行っている時に決めてしまうという、このスターリンの個人専制ぶりはすごいですね。将軍や天皇でも、もう少し周りと話し合ったんじゃないかと思います。
　不破　これだけ一人の指導者が自由にできる内政、外交の体制というのは、ほかに存在しなかったですね。
　それから、反ファシズム戦線の方針転換についてスターリンの発言がないのと同じように、この時期についても証拠となるような発言がありません。公式に発言しているのは、もっぱらモロトフやディミトロフです。これがスターリンの狡猾なところです。
　ドイツがポーランドに侵攻した直後の３９年９月２８日には、「独ソ両政府宣言」が出されますが、これがまた巧妙なんです。独ソのポーランド分割が終わったら「これで戦争が終わった」と宣言したわけです。これ以上戦争をやる者（イギリス､フランス)が戦争継続勢力で、われわれが平和勢力だという宣言なんですよ。
　ソ連には、ドイツの側に立つための大義名分が必要だったのでしょう。ドイツの側についた行動を正当化し、これをコミンテルンに押し付けました。
　山口　第２巻は「スターリンは、ヒトラー・ドイツとの同盟を展開軸として、『社会主義』国家ソ連の対外政策を、その根幹にドイツ・ファシズムの擁護論をすえるところまで、ねじまげてしまった」と結ばれています。本当に、すさまじい変貌だと思います。
　（おわり）
( ２０１５年０４月３０日，「赤旗」)

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アンネ最期の収容所／解放７０年で追悼式典／ドイツ

【ベルリン＝時事】第２次大戦中、「アンネの日記」で知られるアンネ・フランクも命を落としたナチス・ドイツのベルゲン・ベルゼン強制収容所が英軍に解放されてから７０年の節目に合わせ、独北部の収容所跡で２６日、追悼式典が開かれました。
　ガウク大統領は「われわれは（ナチスの）罪を否定も矮小（わいしょう）化もせず、犠牲者の記憶を守っていく覚悟だ」と強調しました。独メディアによると、式典には被収容者だった約９０人を含む１０００人以上が出席しました。
　この収容所では７万人以上が犠牲になり、アンネは１９４５年３月ごろ、チフスのため１５歳で死亡しました。
( ２０１５年０４月２８日，「赤旗」)

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「ナチス最後の裁判」初公判／元強制収容所の簿記係／独裁判所

【ベルリン＝時事】ナチス・ドイツ関係者の罪を問う「最後の重要な裁判の一つ」と注目を集める公判が２１日、ドイツ北部リューネブルクの裁判所で始まりました。戦後７０年を迎え、生存するナチス容疑者も少なくなる中、ホロコースト（ユダヤ人大虐殺）を行った側の説明を直接聞こうと、強制収容所の元被収容者も傍聴に訪れました。
　報道によると、ドイツ人の年金生活者オスカー・グレーニング被告（９３）はホロコーストの象徴の地ポーランドのアウシュビッツ強制収容所で簿記係として約３０万人の殺害に関わった罪に問われています。公判で「道義的には自分も共犯であることに疑いはない。許しを請いたい」と訴えました。
　被告は１９４２年からアウシュビッツ収容所に勤務。被収容者から奪った現金や荷物を管理する係だったとされます。以前から「自分は『小さな歯車』にすぎなかった」と釈明していました。
　裁判は７月末まで続く見通しで、被告には最長で禁錮１５年の刑が言い渡される可能性があります。
　ドイツ検察は以前「収容所での虐殺に直接関与していない」とグレーニング被告の訴追を見合わせていました。しかし、２０１１年に南部ミュンヘンの地裁で、強制収容所の元看守の男が有罪判決を受けたことを踏まえ方針を変えました。
( ２０１５年０４月２３日，「赤旗」)

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２０ 芸能テレビ／文学座公演「２００００ページ」／トニー役釆澤靖起さん／リーザ役前東美菜子さん

ナチスの犯罪に加担したスイスの過去見つめる／忘れちゃいけない歴史がある
　歴史の本が頭にぶつかったら、中身が全部記憶された―。文学座アトリエ公演「２００００ページ」は、自国の〝負の歴史〟を知った青年のてん末を描く、スイス発のＳＦ調の物語です。出演する釆澤（うねざわ）靖起さんと前東美菜子さんが魅力を語ります。
　大塚武治記者

　ある日、トニー（釆澤）の頭上に本の詰まった箱が落ちてきました。本は第２次大戦中、スイスがユダヤ人らに犯した罪を記した２万㌻に及ぶ報告書。なぜか、その内容が全てトニーの頭に記憶されます。恋人リーザ（前東）は入院を勧めますが、彼は病院を去り行動を起こします。

政府報告書
　釆澤さんは、「トニーは純粋な男。スイスがナチスに肩入れした歴史を知り、伝えなきゃ！　と考えます。トニーの信念が問われていく物語でもあります」と話します。
　無職のトニーを支えてきたのはリーザ。「彼のことは好きだけど、ちゃんと定職に就いてほしいと考えている現実的な女性です。お客様に一番近い役です」と前東さん。
　トニーはラジオに出演。「過去の歴史」を知ってほしいと訴えます。
　スイスまで逃げ延びながら、ナチスに引き渡されて殺されたロマ族の少年のこと、ナチスと結託して強制労働をさせ、戦後スイスの名誉市民になったドイツの工場主のこと。トニーは怒りと空しさをはき出しますが、世間の反応は冷たく―。
　材を取ったのは、内外の歴史家ら１００人以上からなる委員会が発表した「ベルジエ報告書」（２００２年、最終報告）。大戦中、スイス政府がナチスの大量虐殺を知りながら、ユダヤ人ら難民２万人以上の入国を拒んだ事実などを明らかにしました。大統領が謝罪しましたが、右派は報告を攻撃しました。
　「スイスの人にとって、ナチスとの歴史はイエス・ノーとはっきり言いにくい話題だそうです。南京大虐殺の話題になると、あいまいな顔でやり過ごす日本人とどこか似ています」（前東さん）、「みんなが直視しない事実にメスを入れようという作者（ルーカス・ベアフース）の思いを感じます」（釆澤さん）

自分の一部
　稽古前、広島の原爆資料館を見学した釆澤さん。「入り口でキノコ雲の写真を見た時、これは日本人が絶対知っておかなきゃいけない歴史だと感じて涙が出ました。どこの国にも忘れちゃいけない歴史があると思います。その気持ちがトニーを演じる軸になっています」
　前東さんは、トニーが自国の「過去の歴史」について、「僕にはまるで関係ない。でも僕の一部なんだ」と語る場面に考えさせられると話します。
　「考えてみると、いま私がいるのは、おじいちゃんやおばあちゃんがいて、両親がいたから。だから、祖父母の歴史は私の歴史と言えなくはない。見た方の頭の隅を、そんなことがよぎったらいいかなと思います」

　＊訳／松鵜功記、演出／中野志朗。３０日まで＝東京・文学座アトリエ℡０３（３３５１）７２６５
(２０１５年０４月１９日，「赤旗」)

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守れ憲法・戦争ごめん／玉井信子さん山梨・北杜／弱者に犠牲、繰り返さない

「山梨障害者・患者９条の会」設立
　「障害者である私にしかできないこと、自分だからやれることをやるの」―。脳出血で右半身にまひが残る玉井信子さん（７４）＝山梨県北杜（ほくと）市＝の決意です。この決意は昨年８月、「山梨障害者・患者９条の会」の設立に実を結びました。体が不自由な障害者が、地域で独自に「九条の会」を立ち上げるのは珍しい。その思いは…。

地元に作る
　玉井さんが倒れたのは１９９６年。１カ月間意識が戻らず、「もうだめだよ」といわれましたが生還。その後、心の病にもかかり治療しています。つえを離せず歩みもたどたどしい。
　昨年７月１日、安倍内閣が集団的自衛権の行使を容認する閣議決定をしました。同４日、全国障害者・患者９条の会が「緊急・学習交流会」を都内で開きました。玉井さんは「どんなことがあっても参加しよう」と決心。精神、視覚、肢体障害者など１００人が参加、安倍内閣に断固抗議・撤回を求める「緊急アピール」を発表しました。玉井さんは「アピールを実現するためにも地元に９条の会をつくろう」と設立を呼びかけました。
　呼びかけの賛同者は１５人。障害を持っている人が１０人、健常者が５人です。これまで講演会を３回開催。全国障害者・患者９条の会の世話人市橋博さんを招いたり、ハンセン病をテーマにしたり、明治期、国民の権利保障に重きを置いた東京の「五日市憲法」の紙芝居などを行ってきました。
　案内の原稿は自分で書き、友人にビラの形にしてもらいます。それをファクスし、電話で誘います。「私、機械はファクスしか使えないの」とケラケラ笑います。
　参加者は２２人ほどですが多くが健常者です。「憲法のことなど今まで考えてもみなかった」人など少しずつ輪が広がっています。

集会で発言
　３月１５日、東京都内で開かれた「九条の会」全国討論集会に玉井さんの姿がありました。全国２８０の「会」から４５２人が参加。３４人が発言しました。
　障害者ではただ１人、玉井さんがマイクを握り訴えました。▽ナチスがポーランドに侵攻し第２次大戦が始まった時、初めに殺されたのは障害者・精神障害者だったこと▽戦争が始まる時、必ず弱者の上に犠牲がくることを歴史は教えてくれており一番底辺にいる人たちの立場に立って、９条を考えることが非常に大切―。
　玉井さんは発言する予定ではありませんでしたが、仲間が「ぜひ、沢地久枝さんや大江健三郎さんに、私たちがやっていることを伝えてほしい」と要望され発言したのです。
　青森から参加した男性は「まだまだ自分たちの視野が狭かった。これからは、障害をもった人たちとも手を結んでいきたい」と注目します。
　玉井さんは「自分はこれをやらなきゃいけないと心と体が感じる。病院の主治医が『それは大切なことだ』といってビラを診察室に張ってくれたんです。今が楽しくて幸せです」。その声はさわやかで確信に満ちていました。
　（遠藤寿人）
( ２０１５年０４月１８日，「赤旗」)

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文化の話題／「大坂夏の陣」４００年／戦国の世に終止符、求めた平和／渡辺武

今年は「大坂夏の陣」４００周年にあたる。慶長２０年（１６１５）５月７日、豊臣大坂城は徳川軍の総攻撃を受けて落城・焼亡し、３０万人前後かと推定される大城下町大坂も戦火によって全焼・消滅した。その翌日、豊臣秀頼・淀殿ら３０余名が焼け残りの庫で自刃、豊臣家は滅亡した。その結果、徳川将軍家を中核とするいわゆる徳川幕藩体制が確立し、およそ１５０年も続いた「戦国の世」に終止符が打たれた。

「元和偃武」
　夏の陣終結後、幕府は一国一城令・武家諸法度・禁中並びに公家諸法度などを相次いで発令、支配体制作りが一段落した同年７月１３日、年号を元和と改めた。後世、人々は、この年の大戦とその後の新時代到来を「元和偃武」と呼ぶようになる。「偃武」とは「いくさ道具をふせて用ゐぬ義｣｢天下が太平になる意」（『増補・詳解漢和大辞典』、冨山房）。まさに軍備・戦争放棄路線の元和版である。
　それにしても、なぜ人々は戦争のない世を強く求めるに至ったのか。武士も民衆も必ずしも徳川の覇権確立を喜ぶ者ばかりではなかったはずだ。しかし、かれらが体験したいくつもの大規模戦争の残酷悲惨な現実、中でも夏の陣決戦当日のすさまじい、絶望的な地獄の様相は、戦いの勝者と敗者、武士と民衆とを問わず、もうこれ以上の戦禍には耐えられない、ぜひ「偃武」の時代の到来を、との切実な願いを強めたに違いない。

戦国ゲルニカ
　大坂落城の日の戦闘と戦災の実態を賛美も肯定もしない厳しい目でリアルに、かつ、いかにも写実的に描きあげた６曲１双の極彩色金屏風がある。重要文化財・大坂夏の陣図屏風(通称｢黒田屏風｣､大阪城天守閣蔵)のことだ｡夏の陣５月７日の決戦に参戦した福岡藩主黒田長政の命令で、同じく参戦した家老黒田美作が絵師八郎兵衛を指図して作成させたという。この黒田家の伝承の真偽については疑問点もあるが、作品の内容を丹念に眺めてゆくと、現実を反映した描写としかいいようのないリアリティーがある。
　たった１日で数万にのぼる死者を出した戦闘。侵略遠征軍による略奪・婦女暴行・人攫い・豊臣残党狩りなどに加え､避難民らの渡河の惨状､郊外での野盗の横行等々の実態が生なましく伝わってくる。
　これは恐るべき戦争告発の絵画といわねばならない。ピカソが１９３７年ナチス空軍のスペイン・ゲルニカ村無差別爆撃に怒りをこめて描いた大作「ゲルニカ」に匹敵する「戦国のゲルニカ」である。
　このような体験を無にせず、先人たちは戦争阻止だけは守り続け「元和偃武」はおよそ２５０年も続いた。明治以降「富国強兵」で突進してきた日本がまさに国策を誤り、天皇制軍国主義をもってアジア侵略と植民地支配に暴走し、日本国民にも絶望的な地獄を強要した。
　１９４５年の敗戦を迎えたあと、圧倒的多数の国民が新憲法ことに第９条を歓迎したのには深いわけがある。いわば「昭和偃武」が切実に求められていたのである。

暴走許さない
　戦後７０年。「偃武」の真の心を知らぬ好戦勢力が恥ずべき妄言・暴走を強めているが、ここで再び「富国強兵」路線に逆行することを許すようでは、江戸時代人にも笑われよう。
　さらに今強く思う。大阪市を解体する「大阪都」構想の賛否を問う住民投票が近く実施される。橋下徹大阪市長は「都」構想を実現させるため、「戦争立法」、さらに「改憲」をねらう安倍晋三首相と連携している。大阪のまちを守るためにも、憲法９条を守るためにも、「都」構想を許してはならない。

　わたなべ・たける　１９３７年生まれ。元大阪城天守閣館長。著書に『図説再見大阪城』『豊臣秀吉を再発掘する』ほか。
( ２０１５年０４月１７日，「赤旗」)

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潮流

バルト海に面する、ポーランド最大の港湾都市グダニスク。交通の要所として、古くから支配の荒波を受けてきた町です。第１次大戦後はどこの国にも属さない自由都市ダンツィヒとなり、多くの民族が集まりました▼そこで生まれたドイツの作家ギュンター・グラスが故郷を訪ねたとき、１枚のボロ布を贈られます。それは子ども時代に翻っていた共和国の旗。「ある日、ナチの軍隊が進撃してきて彼らの旗を掲げた。それからというもの、何もかもがめちゃめちゃになった」▼ナチスによって蹂躙されていく町や戦争に染まっていく市民の様子を間近で見てきた少年。彼の体験は、３歳で成長を止めたオスカルの目を通して、｢ブリキの太鼓｣に描かれます▼民族のはざまで揺れ、暴力や国家に翻弄されてきたノーベル賞作家は、言葉の力を信じるとともに、政治や社会にたいして声を上げることを惜しみませんでした▼米国のアフガニスタン戦争を「多くの罪のない人々を犠牲にする第二のベトナム｣と批判｡イラク戦争にも「超大国の道徳的没落だ｣と反対しました｡また、利潤だけを追求する資本の力に「銀行や大企業のロビイストが民主主義を上回る力を行使している」と疑問を呈したことも▼２００６年に発表した自伝の中で、第２次大戦末期、１７歳のときにナチの武装親衛隊に入り、戦地に赴いたと告白したグラス。重くのしかかるドイツの過去、自身の過去から逃げず、最後までみずからの言葉で時代と社会に向き合った生涯でした。
( ２０１５年０４月１６日，「赤旗」)

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ノーベル文学賞ギュンター・グラス氏死去

【ベルリン＝時事】ドイツのメディアによると、ドイツのノーベル文学賞作家ギュンター・グラス氏が１３日、北部リューベックの病院で死去しました。８７歳でした。
　ダンチヒ（現ポーランド北部グダニスク）生まれ。第２次大戦後、執筆活動を始め、１９５９年の長編小説「ブリキの太鼓」は戦後ドイツを代表する作品となり、映画にもなりました。「猫と鼠」「犬の年」と合わせて「ダンチヒ３部作」として知られます。９９年ノーベル文学賞を受賞。
　２００６年にはナチスの親衛隊に入っていたことを明らかにし、メディアから批判を浴びました。１２年には事実上の核保有国とされるイスラエルがイランを滅ぼしかねないと懸念を示す詩を発表し、ドイツで物議を醸しました。
( ２０１５年０４月１４日，「赤旗」)

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差別…ナチ時代に戻さぬ／欧州議会議長が決意／独強制収容所跡

ナチス・ドイツによりユダヤ人ら５万６０００人以上が殺害されたドイツ東部テューリンゲン州のブーヘンワルト強制収容所の解放記念７０年式典が１１日、同収容所跡で催されました。欧州議会のシュルツ議長（独社会民主党）は、「克服したとわれわれが思ってきた（ナチ時代の）人種差別主義、反ユダヤ主義、国粋主義、不寛容の悪魔が戻ってきた。われわれは（ナチ時代の）犠牲者に敬意を表し、悪魔とたたかう」と決意を表明しました。ロイター通信などが報じたもの。
　シュルツ氏が指摘したのは、ザクセン・アンハルト州トレグリッツでシリアから避難してきた亡命申請者の入居予定のアパートが放火された事件。極右政党であるドイツ国家民主党（ＮＰＤ）のメンバーかネオナチの犯行が疑われています。また、同氏は昨年１０月から移民・難民の排外を訴える「西洋のイスラム化に反対する愛国的欧州人」（ペギーダ）も批判。「扇動者や放火犯に、沈黙する多数は彼らを支持していると思わせてはならない」と訴えました。
　１９１９年に制定されたワイマール憲法に基づき、当時、曲がりなりにも民主主義があったワイマール体制下で、ナチスは、国粋主義や排外主義の猛烈な扇動、人種差別主義を掲げ、強い反対のないまま沈黙の多数の支持を得て、１９３３年に政権を掌握したとされます。シュルツ議長の訴えは、排外主義や極右の現状をナチスになぞらえて警告したものです。
　一方、式典には欧州各国や米国、イスラエルからの同収容所生存者約８０人や収容所を解放した当時の米兵が参加しました。
　（片岡正明）

ブーヘンワルト強制収容所
　ドイツの文化都市ワイマールの郊外につくられたドイツ最大の収容所で１９３７年の開設から４５年４月１１日の解放までに、２５万人が収容され、５万６０００人の収容者が殺されました。日常的な虐待、拷問や飢えによる死者のほか、人体実験や処刑もおこなわれました。米軍が解放した際の生存者は２万１０００人（うち子ども９００人）でした。
( ２０１５年０４月１４日，「赤旗」)

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福島に生きる／アンネのバラを庭に植えた続直人さん（７１）／平和の意志自分の庭に

福島県西郷村に住む続直人（つづき・なおひと）さん（７１）は、自宅の庭に三種のバラを植えました。アンネのバラ、カズエバラ、バラ・ピースの三つです。
　福島市で３月１４日に開かれた「２０１５原発のない福島を！県民大集会」に横浜市から参加した樋口義博さん夫妻から譲り受けました。

■愛と平和の象徴
　アンネのバラは、ナチス・ドイツの大虐殺の犠牲になったアンネ・フランクが自然を愛し、とりわけバラが好きだったことからアンネの父のオットー・フランクが育てました。それが世界中に広がり、日本へも寄贈され広まりました。「愛と平和のシンボル」となっています。
　カズエバラは、横浜市で起きた米軍機墜落事故で亡くなった林和枝さんの父親が園芸家だったことから作りました。親交のあった樋口さん夫妻に託されて全国に広げています。
　バラ・ピースは、ロバート・パイルが１９４５年にベルリン陥落を記念して発売したバラです。ロバート・パイルはこの年の国際連合の初集会に持参し、「平和のバラが人々の胸に世界平和を永久に印象づけることを希望する」という言葉を贈ったといわれています。
　「原発は平和と両立しない」と思っている続さんは、「脱原発と集団的自衛権行使容認の動きに抗する意志を自分の庭に表すために平和と脱原発の象徴として三つのバラを植樹しようと考えた」といいます。「一人持っていて満足するということではなく福島県全体にアンネのバラが広まってくれれば、うれしい」と思っています。

■「人間の尊厳」を
　続さんは、東北福祉大学を卒業後、社会福祉事業財団の職員（生活指導員）として大阪府の東大阪市や羽曳野市で働いてきました。福島県にもどり社会福祉事業団で働きました。「人間としての尊厳を守りたい」という思いからです。定年後は、実家が福島県川俣町にあったことから福島県に住むことにしました。
　国は、集団的自衛権の行使容認と「戦争をする国」へと舵（かじ）を切り、原発再稼働をさせようとしています。
　「今の政治は心配だ。何を考えているのか。拡大解釈して戦争に参加する事例をつくる。国民が分からないうちにどんどん進められてしまうのではないか」と危惧します。
　「原発事故の教訓は賠償すればよいということでもない。原発事故がなかったものとされています。古里をなくすということはつらい。古里に簡単に戻れない県民たち。被害者みんなが人間として扱われているか？　人間の生活とかけ離れている原発。廃炉にするほかにない」と痛感しています。
　「２０１１年に原発事故にあい、この地に語り部が必要だ。県民の一人としてやりたい。原発関連の情報発信として多彩に送り出していきたい」
　（菅野尚夫）
( ２０１５年０４月１３日，「赤旗」)

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インタビュー戦後７０年／俳優加藤剛さん／平和のために演じる使命／憲法は亡くなった人々の夢の形見

「戦争を伝え、憲法を守ることは俳優の使命」と語る俳優・加藤剛さん（７７）。俳優としての原点と、憲法、未来の子どもたちへの思いを聞きました。
　大塚武治記者

　戦後７０年、今が憲法にとって一番の危機だと思います。
　歴史の歯車を逆に回す動きを何とか止めたくて、毎日寝る前に、今日は何ができたか、あすは何ができるかと考え、眠れないことがよくあります。
　いろいろ解釈を変えて９条を骨抜きにしよう、戦後つくってきた民主主義のしくみを壊してしまおう。国を動かしている人たちが、なぜそんな世の中にしたいのか、戦争を体験した僕にはまったく理解できません。本当の戦争というものを知らないからでしょうか。

肉親が犠牲に
　――加藤さんは１９３８年、静岡の御前崎の浜辺の町で、７人きょうだいの６番目として生まれました。
　上空を、東京方面を爆撃しにいくＢ２９がよく飛んでいきました。近くに焼夷（しょうい）弾が落とされて家畜が死に、空中戦で日本の戦闘機が撃墜され…。恐ろしい光景が目に焼き付いています。
　身内も亡くしました。
　実の兄のように慕っていた軍医の義兄は、北マリアナ諸島のテニアン島玉砕で頭を撃たれて即死しました。指揮刀を握ったままだったそうです。戦死公報を受け取った、妻である一番上の姉は、その場で気絶しました。
　戦後は、食糧難と物資不足がいっそうひどくなりました。二番目の姉が結核を患い、嫁ぎ先から戻り、離れに隔離されました。良い薬も適切な医療もありません。医師にみとられることもなく、父が見守る中、亡くなりました。２８歳でした。
　亡くなる時、家族に菌がうつらないようにと、父はアルコールで姉の顔をふきながら、「ごめんね、ごめんね」と泣いていました。優しかった姉と、死にゆく娘を見守るしかなかった父の気持ちを思うと、今も涙が出ます。
　誰もが生きたかった、みんなが幸せに暮らせる世の中を望んでいたに違いありません。
　戦争が終わった時の、「もう枕元に防空頭巾を置いて寝なくていいんだ」といううれしさ、「戦争はやめることができるんだ」という発見。平和憲法は、人類が到達した最高の英知であり、亡くなった人々の夢の形見だと思います。
　――俳優として、平和を伝える数々の作品に出演してきました。原点は２４歳の時、初出演したテレビドラマ「人間の條件」（原作／五味川純平、６２年、全２６回）。戦争の中でも人間としての良心を貫こうとして死ぬ青年・梶を演じました。
　五味川先生は、彼に「梶」という姓だけで、名前をつけませんでした。僕は、「梶は戦争に行って亡くなったすべての人の象徴なのだ」と思いました。
　スタッフや共演者に軍隊経験者が多く、「俺たちが伝えなければ」という使命感にあふれていました。１年間の撮影を通じて、戦争というものの本質を教わった気がします。
　「人間の條件」で、平和な世の中をつくり、戦争に反対することが、僕の俳優という仕事の基本になりました。以来、どの作品に出ても、平和のために自分は何ができるかと考えてきました。
　――舞台でライフワークにしてきたのは、コルチャック先生の役です。ポーランドで孤児院を開き、子どもの自治による教育を実践した実在のユダヤ系の医師です。後にナチスの犠牲に。
　コルチャックは、２００人余りの子どもたちと、収容所のガス室で命を絶たれました。でも彼の思いは、子どもの生きる権利をうたった「子どもの権利条約」の中に取り入れられています。
　舞台では、３歳の子とも共演しました。こんな子たちがガス室に送られて人生を断たれたのだと思うと、胸が裂かれる思いでした。
　――いまの情勢を危ぶみます。
　日本はまだ本当の意味で「独立国」といえないと思っています。日本中にこれだけ多くの米軍基地があり、とくに沖縄の現状を見れば、とても独立国とはいえないと思うのです。

真の独立国へ
　外国の基地が一つもなく、戦争に巻き込まれることもない。そんな日本になって初めて、真の独立国です。そうしなきゃいけません。
　でも事態はまるで逆方向に進められています。秘密保護法の強行、「後方支援」の縛りを緩めて海外派兵を自由にできるようにすること…。来年の参院選後に改憲を発議し、国民投票で問うとまでいっています。恐ろしくなります。
　自分にできることは小さいですが、「戦争の一番小さな目撃者」として、体験を語り継ぎたい。平和な世の中をつくるという俳優の使命をまっとうし、「これからの子どもたちは、すばらしい世の中を生きていけるぞ」と思って逝きたい。
　衆院選挙では、戦争に反対し、憲法を守ろうとする共産党が躍進してうれしかった。今度の選挙でも、ぜひ大躍進を遂げてください。
　一人ひとりの心の中にある「戦争はいやだ」という気持ちがつながって、憲法を守る大きな力になることを願ってやみません。

かとう・ごう＝１９６４年、俳優座入団。テレビドラマ「大岡越前」、映画「砂の器」、舞台「波・門・心　わが愛」３部作などに出演
(２０１５年０４月１２日，「赤旗」)

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ナチの集団埋葬地か／強制収容所跡で発見／独北部

【ハーグ＝ＡＦＰ時事】第２次大戦末期のユダヤ人の少女アンネ・フランク最期の地として知られるドイツ北部にあるナチスのベルゲン・ベルゼン強制収容所跡で、オランダの研究チームが「集団墓地を発見した」と公表しました。１０日放送のオランダのテレビ番組で明らかにしたもので、戦後７０年を経てなお不明な史実の存在が脚光を浴びました。
　研究チームによると、見つかった「集団墓地」は縦４㍍、横１６㍍の広さで「生存者の一人が正確な位置を地図で示せた」ため判明。収容所は１９４５年４月、英軍が解放しましたが、間もなくチフスの流行を恐れ焼き払ってしまいました。収容所一帯に１万人は埋められていたはずですが、墓標もなく各埋葬地の正確な位置は分かりません。
　一方、収容所の追悼団体によると、これ以上の調査は難しい。「近隣のユダヤ人団体と話してみたが、収容所跡全体が既に墓地と宣言され、発掘は宗教的理由で困難だ」と団体は話しています。
( ２０１５年０４月１２日，「赤旗」)

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ウクライナがソ連象徴を禁止

【キエフ＝ＡＦＰ時事】ウクライナ最高会議（議会）は９日、旧ソ連とナチス・ドイツの全てのシンボルの使用と流布を禁じる法案を賛成多数で可決しました。禁止対象にはソ連指導者にちなんだ通りの名称やソ連旗、記念碑も含みます。
( ２０１５年０４月１１日，「赤旗」)

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１０ 文化の話題／金曜名作館／世界一観られている映画「サウンド・オブ・ミュージック」５０年／瀬川裕司

心つかむ〝必勝〟ストーリー
　映画「サウンド･オブ･ミュージック｣(１９６５年、米国）の公開から５０年になる。この題材は、それ以前にブロードウェイ・ミュージカルとして成功を収めていたわけだが、映画も予想通りにヒットし、５部門のアカデミー賞に輝いた。
　物価変動を計算に入れて２０１２年に発表された歴代興行収入ランキングによると、第１位は「風と共に去りぬ」（１９３９年）、２位が「スター・ウォーズ」（１９７７年）、３位が「サウンド・オブ・ミュージック」である。ＶＨＳやＤＶＤなどの販売数やレンタル数を考慮すると、〈世界でもっとも多くの人が観た映画〉は「サウンド・オブ・ミュージック」だと考えられている。
　かつてこの作品の人気は、ベトナム戦争の泥沼化、学生運動、黒人暴動、性解放、ドラッグのまん延といった荒れた時代に、人々がせめてスクリーン上の〈古きよき時代〉にひたりたい気分だったためだと説明されていた。
　だが、世界がすっかり変わった現在も同作品は新しい観客を獲得し続けている。撮影がおこなわれたオーストリアのザルツブルクでは、いまもロケ地を訪ねる各種ツアーに世界各国の人々が参加しており、その人数はむしろ増加傾向にあるという。「サウンド・オブ・ミュージック」が時代・国境を越えて人々の心に訴えかけていることは、客観的事実のようなのだ。

教養小説の構造を踏襲
　「サウンド・オブ・ミュージック」は、ザルツブルクとその周辺地域の絵葉書のような風景を生かし、〈ナチの脅威〉を物語に活用した通俗的な映画である。実際、封切当時はインテリ批評家からはかなり厳しい言葉を浴びていた。しかし大衆はこれを愛し続けており、私自身をはじめ、何度も繰り返して観たという人も多い。その魅力はいったいどこにあるのか。
　まず指摘できるのは、トラップ一家の〈実話〉をベースとするストーリーに必勝パターンとも呼ぶべき構造があるということだ。
　「サウンド・オブ・ミュージック」は、主人公マリア（ジュリー・アンドリュース）が子どもっぽい〈見習い修道女〉から、成熟した〈妻＝母〉となるまでの成長を描くという意味で、世に無数に存在する〈教養小説〉の構造を踏襲している。さらに年齢の幅のある７人もの子どもたちと大佐（クリストファー・プラマー）も登場するので、まさにあらゆる層の観客が登場人物の誰かに自分の身を重ね合わせてストーリーを楽しめる。
　またこれは、とつぜん現れたアウトサイダーが、危機にひんしていた共同体の秩序を再生させるという神話的物語であり、さらにいえば、妻の死後、別人のようになっていたトラップ大佐の〈凍りついていた〉心を純粋な魂＝マリアがとかすというお話でもある。
　こういった古今東西の人気作品に共通する展開によって、「サウンド・オブ・ミュージック」は広い層の観客の心をつかんでいるのである。

歌いやすい名曲の数々
　そして何よりも、小学校の教科書にも載っており、大人の合唱団でも歌われるような楽しい曲がそろっていることが最大の魅力をなしていることは疑いがない｡たとえば｢雨に唄えば｣（１９５２年）なども素晴らしい曲がそろった名画だが、各曲のシンプルさ、歌いやすさという点で「サウンド・オブ・ミュージック」は群を抜いている。
　また、ほかのミュージカル映画と大きく異なっているのは、屋外撮影された場面がきわめて多いという事実だ。シネマスコープでとらえられたザルツブルクとその周辺の美しい背景のおかげで、この作品は劇場ミュージカルにはありえないダイナミックさと爽快さを獲得することになった。
　主演のジュリー・アンドリュースやクリストファー・プラマーも一世一代の演技を見せているし、監督ロバート・ワイズも細かい配慮の行き届いた演出を見せている。「サウンド・オブ・ミュージック」は、これから５０年後も人気作品であり続けるのかもしれない。

　音楽はリチャード・ロジャース（作曲）、オスカー・ハマースタイン２世(作詞)｡見習い修道女のマリアは､妻に先立たれた退役軍人のトラップ大佐の屋敷で７人の子どもの家庭教師となり、一家に欠かせない存在となります｡一方､オーストリアはナチス・ドイツに併合され、大佐はナチの命令を拒否し亡命する道を選びます。モデルとなったトラップ一家はファミリー合唱団として実際に米国で活躍しました。

　せがわ・ゆうじ　１９５７年生まれ。明治大学教授。『「サウンド・オブ・ミュージック」の秘密』『ナチ娯楽映画の世界』ほか。
( ２０１５年０４月１０日，「赤旗」)

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戦時賠償額３６兆円／ドイツ政府「解決済み」／ギリシャ

【パリ＝島崎桂】第２次世界大戦中にナチス・ドイツの占領を受けたギリシャ政府が、当時の損害に対する賠償額を２７８７億ユーロ（約３６兆円）と算出していたことが６日、わかりました。
　ギリシャは１月の政権交代以降、ドイツに繰り返し賠償を求めてきましたが、公式に請求額を示したのは今回が初めてです。金額の内訳は、ナチスが同国を占領中の１９４２年にギリシャのかいらい政権に強制した融資の額を１０３億ユーロと算出。残りは、占領に伴う犠牲者への補償金と、ナチスが破壊した国内インフラ設備の復旧費用だとしています。
　ギリシャのマルダス副財務相は６日、議会で請求額を発表。５万㌻に及ぶ資料を基に今回の請求額を算出したことを示し、調査にあたった会計検査院の報告は「完全なものだ」と評しました。
　欧州債務危機以来、ギリシャへの金融支援と、その条件となってきた緊縮政策をめぐり、両国の関係は冷え込んでいます。独政府内には、債務問題で行き詰まるギリシャ政府が戦後賠償を蒸し返しているとの見方も根強くあります。
　ドイツのガブリエル独副首相は７日、ベルリンでの討論会の中、ギリシャの賠償請求について「率直に言って、ばかげている」と述べ、ギリシャの賠償請求に取り合わない姿勢を改めて示しました。メルケル独首相も一貫して、「戦後の賠償問題は解決済み」との立場をとっています。ただ、一部野党からは支払いに応じるべきだとの声も上がっています。
( ２０１５年０４月０９日，「赤旗」)

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断面／興行の常識をうち破る上映／観客が映画を支えている

ナチスのユダヤ人大量虐殺・ホロコーストを描くノンフィクション映像「ＳＨＯＡＨ　ショア」（クロード・ランズマン監督）が、１１日から東京・渋谷のシアター・イメージフォーラムで、１８日から大阪・シネ・ヌーヴォで、アンコール上映されることが決まりました。
　全編の長さが９時間２７分。１２年がかりで１９８５年に完成した歴史的大作です。絶滅収容所で下働きをさせられ生き残ったユダヤ人や虐殺にかかわった元ナチス親衛隊員らの膨大な証言と、収容所跡地の風景などで構成されています。シアター・イメージフォーラムでは、２月中旬から３週間の期間限定で４部に分けて公開。１８年ぶりに日本の観客の目にふれました。
　「見て楽しいという作品ではないので、興行としては３週間でも長いかな、と案じていた」と同劇場支配人の山下宏洋さん。ところが、公開が始まると観客が続々詰めかけ、満員札止めのときもありました。
　「『ショア』という作品が伝説的に評価が高いということもありますが、深いものを求めているお客さんがたくさんいると思いました」
　今回、２週間の再上映が決まったことに、観客が映画を支えていることをあらためて実感します。
　３月に東京・亀戸で開催された「南京・史実を守る映画祭」でも同様のことを考えさせられました。
　この映画祭が初めて開かれたのは、２００９年。世界で見られている南京事件を扱った映画が肝心の日本で上映されない現状を考えようとすすめられてきた上映運動です。
　今年は、「南京！南京！」（中国、陸川監督）と、「ジョン・ラーベ　南京のシンドラー」（独・仏・中、フロリアン・ガレンベルガー監督）が上映され、５５０人が参加しました。
　２作をめぐるシンポジウムが行われ、「かぞくのくに」などの監督ヤン・ヨンヒさんは、「こういう映画が普通に劇場で上映される時代がこないと、日本は厳しいのではないか」と語りました。
　司会の熊谷伸一郎さん（雑誌編集者）は、「今日来てくれた人たちがいるから上映会も続けられる」、「映画祭は引き続きやっていきたい」と抱負を語りました。
　実行委員会に寄せられたアンケートには、〝日本では事件のことを学ぶ機会が少ないので、自覚的に知ろうとしなければいけない〟〝映画の表現力の高さを実感した〟などの声がありました。
　足を運ぶ観客の力によって映画も映画祭も支えられています。
　（児玉由紀恵）
( ２０１５年０４月０７日，「赤旗」)

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日本共産党に期待します／京滋キリスト者平和の会代表榎本榮次さん／戦争止める一番の道

戦争はなにより悪いことです。どんなことがあっても止めなければなりません。
　知り合いのフランス人が、フランス語学校でアフリカやイタリア、アラブ諸国から来ている人に「何が一番格好悪いか」と聞いたら、９０％の人が「戦争」と言ったそうです。そして日本の憲法ほどすばらしいものはない、と言ったそうです。
　日本を戦争する国にしようとしている、安倍政権の動きを止めなければなりません。そのために、いっせい地方選挙で共産党に伸びてもらうのが一番だという結論に至りました。共産党の県議・市議が全員当選し、日本中で声を上げていただきたい。それが戦争を止める一番大事なことだと思います。
　これまで宗教は、いろいろな形で為政者の弁護者になってきました。本当の意味で宗教者は自由でなければなりません。フランスでファシズムに抵抗するために「神を信じる者も信じない者も、ともに手を取り合ってファシズムに立ち向かおう」という言葉が生まれました。
　いっせい地方選でこの滋賀県から、本当の平和の党・共産党に勝利していただきたい。
　（５日、大津市での街頭演説で）
( ２０１５年０４月０７日，「赤旗」)

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復活祭平和行動／海外派兵反対・核兵器廃絶掲げ内外８０都市超で／欧州に戦火二度と／独

毎年、キリスト教の復活祭に合わせて実施されるドイツの復活祭平和行動が３日から本格的に始まりました。ドイツの平和運動ネットワークによると、１日からのプレ企画の集会と合わせると６日までに、国内外８０都市以上で催され、市民数千人が参加します。

　今年はウクライナで親ロシア派と政府軍の戦闘が一時、深刻になる中での平和行動で、欧州に二度と戦争の大火をもたらしてはならないがスローガンの一つになっています。また、欧州からの核兵器撤去や、ドイツの海外派兵反対、すべての核兵器廃絶などを訴えます。
　復活祭平和行動は、１９６０年にキリスト教徒や市民が核兵器廃絶を求めてデモをしたことが始まり。毎年、さまざまな平和の課題を掲げておこなわれてきました。
　今年はナチ支配からの解放７０年を記念する行動があるのが特徴です。シュツットガルトでは「ファシズムからの解放７０年。われわれは平和に責任を持つ」が集会名に掲げられ、オールドルフではナチ強制収容所跡のブーヘンワルトをバスで訪ねる行動も。
　また各地で、ウクライナ戦争の拡大の可能性を念頭に「紛争を戦争ではなく平和的に解決を」といったスローガンが掲げられました。
　ウラン濃縮施設のある中部グローナウでは３日、原発の早期閉鎖と核兵器反対を訴えました。米国の無人機攻撃網の要となっている米空軍基地のある西部ラムシュタインでは４日、戦争をやめろとアピール。
　また、自転車での平和サイクリング（ブラウンシュワイク）やイスラム教徒の代表を含む多宗教者での討論や共同の平和祈願（アウグスブルク）など多彩に取り組まれます。
　ドイツ以外では４日、スイスの首都ベルンやオーストリアのブレゲンツで集会が開かれました。
( ２０１５年０４月０５日，「赤旗」)

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ナチス略奪の絵画返還へ／オランダ王室

【ハーグ＝ＡＦＰ時事】オランダ王室は３月３１日、収蔵絵画の１枚がナチス・ドイツの略奪品であることが判明したとして、元のユダヤ人所有者の家族に返還する方針を示しました。
　王室は２０１２年、ナチスが１９３３年に政権を奪取した後に王族が入手した美術品を調査。絵画のうち、１７世紀のオランダ人画家の作品は４２年にナチスがユダヤ人収集家から押収。戦後、オランダの画商の手に渡り、６０年に当時のユリアナ女王が経緯を知らないまま購入したことが明らかになりました。
　王室は返還に向け、元の所有者の子孫と連絡を取っているといいます。
( ２０１５年０４月０２日，「赤旗」)

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アンネの命日に新説／約１カ月早い／オランダの財団

「アンネの日記」で知られるアンネ・フランクの命日について、オランダ・アムステルダムの「アンネ・フランク・ハウス財団」は３月３１日、従来の説よりも約１カ月早かったとみられるとの調査結果をまとめました。１９４５年３月３１日が公式な命日とされてきましたが、２月には死亡していた可能性が高いと分析しています。
　アンネはドイツ北部にあったナチスのベルゲン・ベルゼン強制収容所でチフスを罹患（りかん）して死亡しました。別の収容者の証言から、赤十字社は３月１日から３１日の間に死亡したと断定。オランダ当局はアンネと姉マルゴットの命日を３１日に定めました。
　今回の調査で財団は、赤十字社や同収容所記念館などの資料のほか、「できる限り多くの生存者の証言」を検証。２月７日までにアンネとマルゴットがチフスを発症していたことが判明しました。
　財団はオランダ国立公衆衛生環境研究所の見解を引用し、「チフスによる死者は大半の場合、その１２日ほど前に発症していた」ため、「アンネが３月末まで生存していたとは考えにくい」と結論付けました。
　（時事）
( ２０１５年０４月０２日，「赤旗」)

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（３月ヘッドライン）

３１

「わが軍」発言／憲法破壊、首相の本音

月曜インタビュー／ポーランドの映画監督ヨアンナ・コス＝クラウゼさん／「ジプシー」女性詩人の生涯

芸能テレビ／子の尊厳守る―父は英海軍を裁判に訴えた／舞台「ウィンズロウ・ボーイ」出演小林隆さん

「戦争立法」許さない／「あなた方が頼り」署名・宣伝に声援／福岡市南区革新懇

神奈川知事選告示／平和・くらし第一に／岡本知事で県政転換／安倍暴走政治から県民守る

ナチス幹部用の隠れ家か／アルゼンチンで発見

文芸時評／柴田三吉／震災と原発事故を見つめて言葉を重ねてきた作家たち

第６８回日本アンデパンダン展を見る／鮮烈なドキュメント／情へのメッセージ性／ワシオ・トシヒコ

守れ憲法・戦争ごめん／福祉、平和でこそ発展／関係者ら「考える会」発足、運動広げる

２０

演劇／「第三帝国の恐怖と貧困」（東京演劇アンサンブル）／世の現実と見事に共鳴

九条の会討論集会／各地の活動交流／地域全自治体に会／署名道内２万人…

第２次世界大戦終結７０年／アンネの最期の地で／独ベルゲン・ベルゼン強制収容所記念館の広報チーフステファニー・ビルブさん

潮流

世界．ｎｅｔ／左翼政権誕生のギリシャ／ユーロ圏初「反緊縮」／東京大学特任講師村田奈々子さんに聞く

抗日戦争勝利７０年記念活動を強調

第２次大戦中、アルバニアで墜落／英兵の指輪、７０年経て遺族へ

歴史認識・原発問題／独メルケル首相の発言／要旨

「過去の総括が和解の前提」／独メルケル首相が発言／東京

１０

ヒトラーランド　ナチの台頭を目撃した人々／アンドリュー・ナゴルスキ著、北村京子訳／評者星乃治彦福岡大学人文学部教授

おはようニュース問答／国連７０年、公開討論が開かれたね

指の骨／高橋弘希著／評者渥美二郎作家

（３月本文）

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３１ 「わが軍」発言／憲法破壊、首相の本音

安倍晋三首相が自衛隊を「わが軍」と発言（２０、２７両日）しました。「自衛隊を軍にする」という安倍首相の本音を示したものです。

「改憲」を先取り
　安倍首相は、米国が起こすあらゆる戦争に「切れ目なく」参加・支援する「戦争立法」の骨格を受け、法案作成作業に着手。集団的自衛権行使の権限を付与され、戦地派兵されることになれば、自衛隊は「自衛のための必要最小限度の実力」から「世界標準の軍隊」となります。
　安倍首相は「戦争立法」の先に、明文改憲を進める考えを繰り返し明言。自民党改憲草案は、戦力不保持・交戦権否認を定めた憲法９条２項を削除し「国防軍を保持」すると明記しています。「わが軍」発言はこれを先取りしたものでもあり、憲法を厳格に尊重擁護（９９条）すべき首相自身が、国の最高法規をいかに軽んじているかを示しています。
　安倍首相の「わが軍」発言が最初にあったのは、２０日の参院予算委員会。自衛隊が米軍をはじめとした他国軍との共同訓練についての評価を問われ、「いっしょに訓練する国々との関係がより親密になり、絆が強化されていく。わが軍の透明性をあげていくことにおいても大きな成果をあげている」と答弁したのです。
　さらに２７日、同委では「共同訓練の相手国である他国の軍と対比をイメージし、自衛隊を『わが軍』と述べたもの。それ以上でも以下でもない」などと居直りました。
　他国軍隊との共同訓練の中だから「軍」だといいますが、他国軍隊との「対比」なら自衛隊はいっそう「軍ではない」はずです。
　実態的には自衛隊は世界有数の戦力です。しかし憲法９条２項の戦力不保持規定のもと、政府は長年、自衛隊が「戦力」にあたらず〝合憲〟とするため、自衛隊は「日本に対する武力攻撃の排除」だけを行い、海外派兵や他国防衛となる集団的自衛権の行使は許されないとしてきました。
　これを覆すのが、集団的自衛権行使容認の「閣議決定」（昨年７月１日）であり、その具体化のための「戦争立法」です。

官房長官は擁護
　菅義偉官房長官は、「自衛隊はわが国を防衛することを主たる任務とし、このような組織を軍隊と呼ぶなら、自衛隊も軍隊」「（首相の発言は）全く問題はないし、誤りもない」（２５日の記者会見）と首相を擁護しています。首相をいさめ、釈明するどころか、逆に歴代政権の見解を踏みにじる異常な対応です。
　さらに安倍首相は２２日の防衛大学校の卒業式の訓示で、「『不戦の誓い』を現実のものとするためには、決然と『行動』しなければならない。グレーゾーンから集団的自衛権まで、切れ目のない対応を可能とする法整備を進めていく」と述べました。
　「わが軍」発言に続き、まさに「進軍ラッパ」を吹き鳴らすような姿勢です。憲法破壊を意図的に進める政治に、主権者国民の視線はますます厳しさをましています。
　（中祖寅一）

ファシズム的本性現す／守中高明・早稲田大学教授（フランス現代思想）の話
　安倍首相が自衛隊を「わが軍」と呼んだことは、自民党の三原じゅん子参院議員による「八紘一宇（はっこういちう）」礼賛とともに、単なる失言として看過できない、現政権のネオ・ファシズム的本性が現れ出た「症状」と解すべきでしょう。この発言が「防衛省設置法改定案」の閣議決定による文官統制の撤廃（６日）と船田・憲法改正推進部長による「２年以内に改憲発議」の予告（２５日）とのあいだに聞かれたことは、きわめて徴候的です。立憲主義を蹂躙（じゅうりん）する「戦争立法」そして憲法９条抹消による軍事大国化へのどす黒い欲望が今国会を支配している状況を私たちは直視し、その実現を断固阻止しなければなりません。
( ２０１５年０３月３０日，「赤旗」)

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月曜インタビュー／ポーランドの映画監督ヨアンナ・コス＝クラウゼさん／「ジプシー」女性詩人の生涯

同化望まない人に心を寄せ
　ジプシー（ロマ）の初めての女性詩人を主人公にしたポーランド映画「パプーシャの黒い瞳」が４月４日から公開されます。言葉を愛して詩を紡いだ女性の喜びと悲しみを、モノクロの鮮烈な映像に映し出します。来日したヨアンナ・コス＝クラウゼ監督にききました。
　（児玉由紀恵）

　キャラバンを組んで旅をするジプシーの一族に生まれ、パプーシャの愛称で呼ばれたブロニスワヴァ・ヴァイス（１９１０～８７年）。ポーランドの代表的な女性詩人６０人の１人に選ばれているといいます。本作は、その生涯をもとにした劇映画です。

文化の独自性をほりさげて描く
　パプーシャは、文字を持たない民族の中で独自に習得した文字をつづります。旅をともにするポーランド人に詩才を見いだされて世に存在が知られ、初のジプシー詩人と話題に。しかし、ジプシーの世界のことをもらした「おきて破り」の罪に問われてジプシー社会から追放され、不遇の晩年を送ります。
　「高校生の時に、詩の授業でパプーシャを知りました。自分の民族から疎外された詩人というイメージでしたが、その詩の素晴らしさに気付いたのは、ずっと後です。長年映画化を願っていました。ジプシーの文化的なアイデンティティーをほりさげて描きたいと思いました」
　パプーシャの生涯を描くことは、２０世紀のポーランド史のなかでジプシーを見つめることになります。ナチスによるジプシーの迫害、第２次大戦後、ポーランドの政権が打ち出した定住化政策。時代の波に翻弄されながらも、結束を図ろうとする集団。雪原や樹林の間を行く馬車や、野営キャンプなど、遠景でとらえる映像が白黒画面に映えます。
　「白黒は、センチメンタリズムを避けることができると思います。記憶の写真帳をめくるような映像にしたかったのです」
　映画化に際し、欧州連合（ＥＵ）の中に、定住しない民族が住む場所があるのかという問題意識があったといいます。「統一されて同化されることを望まない人たちがいるということを考えたい。違いを認めあいたい思いもあります」
　簡明で力強く悲しいパプーシャの詩が流れ、胸をうたれます。同時に作品からは、彼女の人生は幸せだったのかという問いが投げかけられます。
　「それへの答えはないでしょう。でも私は、彼女が詩を書いてくれて良かった、と。それを読むことで私たちが豊かになります。ただ、功績を残したために支払わねばならなかった代償ははてしなく大きい。『境』を超えた人間が支払う代償だと思います」

片隅に追われた人々の声聞いて
　本作は、夫のクシシュトフ・クラウゼ監督と共同で監督。その夫は昨年１２月、闘病の末、６１歳で亡くなりました。ほかにも共同製作や共同監督を重ねてきた同志でした。
　「そのこともあって、永遠に残る物語を残せた人は幸せだと思うようになりました。といっても、痕跡を残せなかった人生が無意味だというのではありません。痕跡を残した人の人生を例にして、生きるとはどういうことか、考えることができます」
　脚本家、監督として活躍してきたクラウゼさん自身、さまざまに代償を支払ってきたことでしょう。
　「多くの人がそうではないでしょうか。私は、自分をあまやかすのが一番嫌いで、自分に厳しくやってきたつもりです」
　幼い頃は映画館に行くお金もなく、図書館に通い、「作家になりたかった」と言います。
　「社会の片隅に追いやられた人たちに目がいきますね。その人たちには、語るべきことがある。誰も耳を傾けようとしなくても、私は耳を傾ける技術を持っている人間として、聴く義務があると思っています」

　１９７２年生まれ。脚本家としてデビュー後、クシシュトフ・クラウゼ監督「借金」に脚本協力。同監督と「ニキフォル　知られざる天才画家の肖像｣を共同製作､｢救世主広場｣を共同監督。
( ２０１５年０３月３０日，「赤旗」)

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芸能テレビ／子の尊厳守る―父は英海軍を裁判に訴えた／舞台「ウィンズロウ・ボーイ」出演小林隆さん

稽古は迷宮、心の中は嵐です
　１００年前の実際の裁判を題材に、映画化もされた名作です。舞台「ウィンズロウ・ボーイ」は、息子の無実を晴らすため、国とたたかった家族の物語。厳格な父親を演じるのは、小林隆さんです。
　大塚武治記者

　「物語は、日本でいえば大正元年から始まります。でも全然古くない。こんないい芝居があったのか？　と思わされました」と小林さん。軽妙な会話の中、「正義」と「家族愛」を問います｡
　第１次大戦直前のロンドン。元銀行員アーサー（小林）が家族３人とメイドと暮らす家に、海軍兵学校の寄宿舎から１４歳の次男が突然帰宅します。校内で５シリングを盗んだとされ、退学になったのです。「僕はやってない！」と訴える次男。父は信じ、ある決意をします。それが社会を揺るがす大問題に―。
　「世界一の海軍を相手に、一般人が裁判を起こす。大それたことですが、父親はそうするしかなかったし、僕が同じ立場でもそうしたと思います。だって、次男はやっていないんですから」
　英国一の敏腕弁護士を雇う父。高額の弁護士費用と「小さなことで国を騒がせるな」という世論が、家族を苦しめます。官僚志望の長男は大学を中退させられ、女性参政権運動家の長女の結婚話は破談に。家族を犠牲にしてもたたかう父に、妻は「何のため？」と厳しく問います。
　「父親はボロボロになります。でも一人の少年の尊厳を守ることは、決して『小さなこと』ではありません。実際のこの話は、１９０８年に起きたことなんです。けれど作者はあえて大戦直前の話にすることで、『国家』と対比し、人間の尊厳の大切さを強調したんだと思います」
　迷い傷つきながら、それぞれが見つける大切なもの。感動の結末です。
　＊　＊
　穏やかな語り口。劇団の養成所を経て、三谷幸喜さん主宰の「東京サンシャインボーイズ」へ。この道２９年｡大河ドラマ「新選組！」、井上ひさし作の舞台「闇に咲く花」など、「実直な人」の役に、誠実な人柄がそのままにじむかのようです。
　「自分でも自分にうんざりですが、稽古では毎回ラビリンス（迷宮）に入り込み、悩む日々です。〝簡単にできる芝居〟なんてないんですね」
　ナチスドイツを題材に、「国家と芸術」を問う舞台「国民の映画」（作・演出／三谷）では、出自を隠して宣伝相に仕えるユダヤ人執事を演じました。感情を抑えた表現で見せた民族の苦しみや生への渇望。高い評価を得ました。
　「よく当時の映像を見ました。大事なのは見た資料の数でなく、その世界を考えること。一人の背後に、とてつもない悲劇があったんですから」
　今回もせりふと格闘中。威厳を出すため、あえて父親の言葉だけが直訳調に翻訳されています。「ある種の様式性から、ふと、父親の人間性がもれて見えてくれば面白いんですが。まだまだ心の中は嵐です！（笑い）」

＊作／テレンス・ラティガン、翻訳／小川絵梨子、演出／鈴木裕美。出演は竹下景子、中村まことほか｡４月９～２６日＝東京・新国立劇場℡０３(５３５２)９９９９
(２０１５年０３月２９日，「赤旗」)

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「戦争立法」許さない／「あなた方が頼り」署名・宣伝に声援／福岡市南区革新懇

福岡市南区革新懇話会、校区９条の会は２０日、「集団的自衛権行使の具体化、戦争立法反対、憲法９条改悪を許さない」と、同区の西鉄大橋駅前広場で宣伝・署名活動を行いました。
　ゼッケン姿の参加者２０人は、のぼり旗などを掲げて宣伝。同革新懇の安東毅・代表世話人（九州大学名誉教授）や別府正次事務局長がマイクで署名への協力を呼びかけました。
　約３００枚のビラを配布する中、駅利用者らが「私には３人の子どもがいる、絶対に戦争は反対」「安倍さんの閣議決定はファシズムですね、怖いです」「あなた方のご努力が頼りです」の声を寄せ、約４０人が署名しました。
　宣伝には日本共産党の宮本秀国市議、堀内てつお市議候補が参加しました。
(２０１５年０３月２７日，「赤旗」)

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神奈川知事選告示／平和・くらし第一に／岡本知事で県政転換／安倍暴走政治から県民守る

２６日告示（４月１２日投票）された神奈川県知事選は「平和で明るい神奈川県政をつくる会」の岡本はじめ候補（６９）＝無所属新、日本共産党推薦＝と自民、公明、民主などの「オール与党」が推す現職の黒岩祐治知事（６０）との一騎打ちです。岡本候補は横浜市の横浜駅西口で、共産党の志位和夫委員長の応援を受けて第一声をあげ、安倍政権の暴走を持ち込む黒岩県政を批判し、知事選を「戦争とファシズムに突き進む安倍政権打倒の一里塚に」と呼びかけました。

　岡本候補が第一声をあげた横浜駅西口前は、デパート前や連絡通路にも人垣が。県政への願いを書いたうちわや横断幕をもった市民が集まり「子どもに優しい神奈川に」「知事が変われば県政変わる」とコールが起きました。
　「平和で誰もが健康に働き、文化的な生活ができる、子育てしやすく、高齢者に優しい神奈川をつくるために全力で奮闘します」と決意表明する岡本候補に「いいぞ！」と歓声や拍手がわきます。
　日本共産党の畑野君枝衆院議員、県議候補も勢ぞろいし、県民の暮らし・福祉優先の県政への転換をともにと呼びかけました。
　明るい会の鴨居洋子代表委員、萩原伸次郎・横浜国大名誉教授が、「暴走政治の突破口を開く県政は続けさせられない」「知事を岡本さんに代え、基地のない、中小企業、住民の暮らしに優しい神奈川に」と呼びかけました。
　横浜市戸塚区の会社員の女性（３１）は「戦争が始まったら、命を奪われるのは今の子どもたち。安倍政権を後押しする現知事は、県民の命を軽く扱っていて怒りを覚えます。岡本さんは憲法９条を守ると明言し、信頼できる」と期待します。
　買い物の途中で立ち寄った、大手ゼネコン技術者の男性（４１）は、「集団的自衛権や労働者派遣法改悪など、やりたい放題の安倍政権や大企業にモノを言い、平和や雇用を守る政策をもつ岡本さんに期待します」と話しました。
(２０１５年０３月２７日，「赤旗」)

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ナチス幹部用の隠れ家か／アルゼンチンで発見

【サンパウロ＝時事】アルゼンチンのブエノスアイレス大学考古学チームは、隣国パラグアイとの国境付近のジャングルで見つかった石造りの建築物について、ナチス・ドイツが第２次大戦当時、幹部用に建設した隠れ家だった可能性があると明らかにしました。地元紙クラリンが２２日報じました。
　建築物は厚さ３㍍の壁で囲まれ、住居用、倉庫用、監視用とみられる３種類の建物で構成されていました。コケで覆われた壁にはかぎ十字が彫られ、１９３８～４１年発行のドイツ硬貨５枚や陶器のかけらも見つかりました。
　近くに集落はなく近づくのは難しい。考古学チームは「大きな労力を割いてこの場所に建物を建てるのは（ナチス以外に）説明がつかない」と分析。敗戦に備え建設されたものの、結局使われなかったとみられます。
　第２次大戦後、ペロン大統領率いるアルゼンチンは、ユダヤ人虐殺の責任者アドルフ・アイヒマンら多くのナチス幹部を受け入れ「ナチスの天国」と呼ばれました。
( ２０１５年０３月２６日，「赤旗」)

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文芸時評／柴田三吉／震災と原発事故を見つめて言葉を重ねてきた作家たち

東日本大震災から４年が過ぎた。この間、震災と原発事故を見つめた作家たちによって〈震災後文学〉は静かに積み上げられてきた。なかでも大きな仕事をしてきた津島佑子氏へのインタビュー、「『ヤマネコ・ドーム』に込めた思い」（『民主文学』）は、今日の文学にとって示唆に富む内容だ。津島氏は、戦中、戦後社会を生きた人々の困難を描いてきた作家だが、その蓄積から今度の震災・原発事故もとらえている。
　〈自分はかろうじてこうやって生きているのだけれど、その言葉はこの世界に属しているわけで、小説をいま書くとしたら、原発事故と切り離せないなと思いました。世界がもう変わっちゃっているわけだから、変わっていないという仮定は、少なくとも私にはあり得ないという感覚です〉
　事態を全身で受け止めてきた作家の言葉に深くうなずく。また、同誌の座談会「創造の課題としての３・１１」も、災厄を間近に見つめてきた作家たちの言葉が重く伝わってきた。

「安全神話」の虚構抜け出す
　もちろん、こうした受け止め方とは異なる考えもある。『３・１１―死に神に突き飛ばされる』『ふたつの講演―戦後思想の射程について』などで活発な発言をしてきた加藤典洋氏もその１人だ。氏は〈科学がもたらす困難は科学で越えるしかない〉という吉本隆明の主張を踏襲してきた。だが震災後に考えを変え、まずは核兵器開発につながる再処理技術を放棄すべきだと主張する。その指摘は極めて重要だが、続けて、今は原発を〈つなぎ〉で使うしかないと語る。経済活動を優先し、新たな事故の可能性、蓄積される核廃棄物への配慮は薄い。私たちがこの事故で学んだのは科学と技術の限界で、〈安全神話〉という虚構から抜け出すことではなかったか。

人類史たどり見えてくる今
　創作では上田岳弘「私の恋人」（『新潮』）が力作だ。人類が登場してから今日までの歩みを、３度生まれ変わった主人公を軸に描いていく。〈一人目の私〉は１０万年前、突然変異し、洞窟の中で未来の世界像を思い描くクロマニョン人。〈二人目の私〉はナチスドイツの強制収容所で殺されたユダヤ人。そして〈三人目の私〉は現在の東京で生きる３０代の井上由祐である。
　由祐の恋人キャロラインは、癌に侵された日本人、高橋陽平から託された、人類の足跡をたどる旅を継続している。陽平は、人類はこれまで２度の行き止まりを経験したと語る。１周目は、数万年前、地球上に人類が行き渡った時代。２周目は〈２つの原子力爆弾〉で世界大戦が終結した時代。つまり大航海時代と植民地主義、侵略戦争による大量殺戮時代が終焉した時期だ。現在は高度なＩＴ技術によって、国家と個人がボーダーを失っていく３周目。
　〈三人の私〉と、キャロライン、高橋陽平をつなぎながら、上田氏は綿密な思考実験をしている。文明とは何だったのか。激化するテロにさらされながら、やがてくる３周目の行き止まりとは何か。こうした問いから、現実世界がはらむ脆弱さと危機が見えてくる。
　この大きな物語に対し、栗田有起「抱卵期」（『文学界』）は、子宮という内部世界に降りていく。大学受験が終わった日、〈私〉は失踪して特別な仕事をはじめる。不妊女性の卵子を自分の子宮に移し〈成熟〉させて返すのだ。他人の卵子を抱える〈私〉は外界との関わりを断つ静かな暮らしに満足している。１０年で１０個の卵子を成熟させた〈私〉にある出来事が起こり、物語は意外な方向に展開するが、焦点は前半で描かれる奇妙な生活の方にある。まだ受精していない卵子の棲む場所は、この世界から隔絶されていなければならないという喩。それゆえ孤立し、歪んでいく生命。
　世界は変わった。長大な人類史の先端で。かつて空想でしかなかった科学技術が現実を侵し、人間存在とは何かと、新たな問いを投げてくる。この問いに向き合うとき手放せないのは、津島氏が語ったように、生の根幹である、私たちに属する言葉への信頼、立て直し以外にないだろう。
　（しばた・さんきち　詩人）
( ２０１５年０３月２５日，「赤旗」)

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第６８回日本アンデパンダン展を見る／鮮烈なドキュメント／情へのメッセージ性／ワシオ・トシヒコ

自主独立を意味するアンデパンダン。非審査で無賞、しかも〝表現の自由〟が約束されている日本美術会主催の全国公募展覧会が、桜の開花と共にことしもスタートした。
　昨今、日本を含む世界の情勢の雲行きが、何だか怪しくなっている。現実から目をそらすまいとする多くの表現者の深い思いが、各美術ジャンルを通し、果たしてどのように造形されているだろうか。

犠牲と蛮行を数値化し記憶化
　今回、全体として鮮烈に印象に残ったのが、知に働きかけるドキュメントと、情に訴えるメッセージ性のようなものだ。
　前者を代表するのが何といっても、石川雷太の構成的インスタレーション「ジャパン・アメリカ・イスラエル」。壁面から落下するのは、赤く記号化されて描かれた各種ミサイルや爆弾の類い。その足もとに置かれるのが、第２次世界大戦から現在へ至る戦争での犠牲者たちの漆黒の四つの柩だ。ここには一切の感情を排した、数値化された事実だけがある。
　同じドキュメントでも、戦争世代の鯨井洪「オキナワの悲劇と南京」、石野泰之の南京事件を扱った２作「追悼の譜」シリーズは、見る者の感情にダイレクトに訴えかけてやまない。ナチスの蛮行を記憶化させる若山保夫「浮遊」も、この系列に入るだろう。

人間世界への自然からの警鐘
　一方のメッセージ性で、もっとも異彩を放つのが藤井守「杜・火・水」の絵画作品だ。展がる緑の杜の中央に石が配され、そこから火が燃え盛り、火と背中合わせに水が垂直に噴き上がるという、まったく造形的でもある不可思議なイメージだ。
　私利物欲化した人間世界へ対する大自然からの警鐘、とも受け取れるのではなかろうか。
　コンクリートの壁に囲まれた空間に、ポツンと椅子が一つだけ置かれる安藤ニキ「痕跡」。この不気味で重く深い、沈黙と孤絶と空虚な時間へ託すメッセージとは、いったい何なのか。それを思惟するために椅子が用意され、それに掛けなければならないのは、評者の私であり、観客としてのあなたなのかもしれない。
　約１０００点の作品を短時間で見て、限られたスペースに評するのは、至難の業だ。堤彰「美しい国からの使者｣､森田隆一「沈黙の譜｣､大野美代子「進化のための実験室」、御笹更生「安全神話｣､ゲルタマ「ゲルタマ・シッタルダｖｏｌ．８」、梅村哲生「蒲生の大クス(千年王国)」などについても、一言触れたかったけれど、例によって見送らざるを得ない。
　（美術評論家）
　東京・六本木の国立新美術館で３０日まで。
( ２０１５年０３月２４日，「赤旗」)

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守れ憲法・戦争ごめん／福祉、平和でこそ発展／関係者ら「考える会」発足、運動広げる

安倍内閣の戦争政策を拒否
　「福祉は平和であってこそ発展する」―。安倍内閣が戦争する国づくりに向けて法制化を急ぐ中、社会福祉の研究者や関係者らが「戦争と福祉をみんなで考える会」を立ち上げ、反対運動を広げています。
　（岩井亜紀）

　「社会福祉は人々の命と暮らしを守るものです。安倍内閣の戦争政策を拒否する姿を示したい」。会のメンバー、佛教大学社会福祉学部の植田章教授は、こう強調します。
　「社会福祉は本来、人間の尊厳を守り、命と健康・発達を保障するもの」。それを阻害するのが戦争政策です。そして、戦後の社会福祉事業は、児童養護施設、母子寮、身体障害者施設など戦争犠牲者の救済として〝再出発〟しました。「負の歴史を繰り返してはならない」と植田さん。
　「考える会」は２月末、戦争と福祉をテーマにした集会を東京都内で開きました。

青年３人の思い
　集会では、イラク支援をする高遠菜穂子さんの講演の他、３人の青年が平和への思いを語りました。
　東京都足立区内の児童養護施設の児童指導員、白坂岳（がく）さん（２９）は「社会的養護の下にいる子どもたちが戦地に赴く可能性が高い。戦争は福祉と対極にあり、おとなの都合によるものだ」と訴えました。
　自治労連主催の沖縄の平和・基地問題を学ぶ取り組みに参加したことを報告した高田真理子さん（２３）。「沖縄の（人々の）自己決定権や平和的生存権が脅かされていると感じた」
　４歳の息子を持つ斉藤真里子さん（３９）＝足立区＝は、「大切に育てたわが子を戦場に送るわけにはいかない」と「秘密保護法を考える女子会＠足立｣を立ち上げ､地域での活動を紹介しました。
　「ナチスによるホロコーストでユダヤ人以外にも多くの障害者も殺された。他の民族・宗派の人を迫害すること、障害のある人を排除しようとする根っこは今も変わっていないと感じた。自分たちの日常に関連は薄くても、無関心ではすまされない」。参加した団体職員、鈴木寛子さん（２６）の感想です。
　植田さんは「秘密保護法に反対の声を上げるなど若者が立ち上がっていることが希望です」と話します。

後始末ではだめ
　「継続的な草の根の運動にすることで、戦争する国づくりへの暴走に対抗していこうと考えています。その一助になればと、研究者仲間と本を出版しました」。『戦争と福祉についてボクらが考えていること』（本の泉社）です。
　著者の１人、浅井春夫立教大学教授は集会で、「戦争の後始末をする福祉ではだめです。福祉が発展するには戦争に関わらないことが必要です」と強調しました。
　考える会は６月、立教大学（東京・池袋）で２回目の集会を企画中。戦後７０年の節目に安倍晋三首相が出す談話に対し、独自の談話を発表する予定です。
( ２０１５年０３月２２日，「赤旗」)

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２０ 演劇／「第三帝国の恐怖と貧困」（東京演劇アンサンブル）／世の現実と見事に共鳴

ナチス政権から逃れ亡命をした劇作家のベルトルト・ブレヒトが、恐怖の中で人間らしさを喪失するさまを描いた１４の短編を紡ぎ上げていく芝居に胸に迫るものを感じた。それは、劇中で描き出される独裁による政治や文化の支配、国民統制、忍び寄る戦争といったものが、芝居の持つテーマで終わることなく、今の世の現実と見事にシンクロしているからだ。
　突撃隊員である恋人が訪ねてきて、反乱分子の検挙の仕方を見せる「白墨の十字」の場面。その彼と言い合いになる女中を演じた永野愛理が、なぜこんな状況を招いてしまったのかと現状に対して不安と疑問を感じる。「法の発見」の場面では判事役の竹口範顕が、事実と政治に板挟みにされた状況で、ユダヤ人が経営する宝石店で突撃隊員が起こした事件とどう向き合えばいいのか、混乱していく。それらの姿に身震いさせられた。
　圧倒的なセリフの量と、そこに次々に盛り込まれていく史実と専門用語が、観客の思考能力を止めるときがある。だがその瞬間も芝居は進み、実際の時間も過ぎ、現実という状況は悪化している可能性がある。ラストで二つのメッセージが提示されるが、今やるべきことは未来へメッセージを残すことではない。混乱する世の中で時代を安易に容認することを許さず、同じ過ちを繰り返さぬ方向へと導かなければならないことを強く感じさせる、現実を直視した芝居に仕上がった。演出は劇団の俳優でもある松下重人。訳は千田是也。
　（瀧口雅仁・芸能史研究家）
　２２日まで、東京・ブレヒトの芝居小屋
( ２０１５年０３月１８日，「赤旗」)

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九条の会討論集会／各地の活動交流／地域全自治体に会／署名道内２万人…

安倍政権が今国会で提出する憲法９条破壊の「戦争立法」の成立許すな―。１５日開催の九条の会全国交流討論集会では、「戦争する国」づくりを許さない各地の取り組みや熱い決意が語られました。

若い人たちと
　みやぎ憲法九条の会事務局長の板垣乙未生（きみお）さんは「県総人口２２０万人の１割未満の仙南地域で燎原（りょうげん）の火のような広がりある活動が展開されている。４月４日には８００人以上の集会を企画。そのなかで新たに四つの九条の会がつくられ、仙南地域全ての自治体で九条の会が設立された」と語りました。
　札幌市「九条の会ネットワーク北海道」の今野平支郎事務局長(７７)は、集団的自衛権行使の閣議決定撤回への運動を道内各地の九条の会に呼びかけたところ、１９０の会が実行委員会に参加し、道内で２万人分の署名を集めたことを紹介。協賛を呼びかけた民主団体や平和団体、労組が４万枚のチラシを配ってくれたことを挙げ、「横のつながりをつくり運動の幅をいかに広げるか。活動を休止している会にも働きかけることが重要」と話しました。
　長野県小諸市「憲法９条を守るこもろの会」副会長の小山宥一さん(６９)は、市内の各戸を訪問して対話をし、有権者の過半数を目指して署名を訴えていることを紹介。昨年１２月に開いた「集団的自衛権を考える市民のつどい」で高校生にシンポジストをつとめてもらった経験をはじめ、若い人たちとのつながりを進めていきたいと話しました。

改憲派の人も
　山梨障害者・患者９条の会の玉井信子さんは、ナチスがポーランドに侵攻し、第２次大戦が始まった時、初めに殺されたのは障害者・精神障害者だったと指摘。「戦争が始まる時、必ず弱き者の上に犠牲が来ることを歴史は教えてくれています。一番底辺にいる人たちの立場に立って、９条を考えることが非常に大切です」と訴えました。
　愛知県尾張旭市「九条の会尾張旭」事務局の筒井洋さん(７１)は、改憲派の人たちにも、自衛隊の海外での戦争をやめさせようの一点で共同しようと呼びかけているといいます。この取り組みのなかで、「日の丸」が大好きという人も、民主党の候補者も参加してくれたとのべ、「憲法を変えたほうがいい、でも戦争は避けたい」という人にも言葉を届けていくことが大切だと話しました。
　参加した栃木県の那須野が原九条の会の小菅博史さん(６５)は「外に出る運動と内を固める学習を繰り返してきた」と話します。憲法カフェが毎回四十数人の参加で盛況です。「特に戦争への危機感をもった人の参加が目立ちます」
　東京のみなと９条の会の久保田明人さん(３３)＝弁護士＝は「改憲勢力も草の根の結びつきを学習会などで強めている。大江さんの話にもあったように、九条の会の活動が海外でも評価されている。戦争立法阻止のために自信をもって草の根から頑張りたい」と話しました。
( ２０１５年０３月１６日，「赤旗」)

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第２次世界大戦終結７０年／アンネの最期の地で／独ベルゲン・ベルゼン強制収容所記念館の広報チーフステファニー・ビルブさん

ナチスの犯罪と向き合って若い人に悲惨な生涯伝える
　『アンネの日記』の著者として知られるユダヤ人少女アンネ・フランクが、１５歳の短い命を落とした地、ドイツのベルゲン・ベルゼン強制収容所跡を訪ねました。過去の悲劇を伝え、歴史の継承につとめる同収容所記念館の広報チーフ、ステファニー・ビルブさんに、アンネの最期について話してもらいました。
　（聞き手　ジャーナリスト・大内田わこ）

　――１９４４年の秋、アンネ・フランクと姉マルゴットが、アウシュビッツ（ポーランド）から送られて来た時の、ベルゲン・ベルゼンは、どんな状態だったのでしょうか？
　一言で言えば、まさに混乱状態だったと思います。当時、至る所でヒトラー・ドイツの戦争が行き詰まり、連合軍に攻められていました。それでナチスは、ポーランドにつくったたくさんの強制収容所から、まだ働けると思える多くの人々を、国内の強制収容所へと移送しました。
　ベルゲンもその一つです。もともと１万人ぐらいを収容する戦争捕虜用の収容所だったのが、４３年からナチスの強制収容所として使われるようになってから、収容者の数もどんどん増えています。戦争末期の４５年３月は、１カ月だけで１万８千人もの人が移送されました。

飢餓も常態化
　――アンネ姉妹は、４４年１０月末にアウシュビッツを出て４日がかりでベルゲンへ着いています。その旅は、貨車にすし詰め状態の上、食べ物はおろか水さえ満足に与えられなかったと聞きます。その頃ベルゲンは、もう霜柱が立つような気候ですよね。衰弱した彼女たちにとってさらにつらい状態が待ち構えていたのですね。
　アウシュビッツからの、アンネを含む３千人の女性たちが到着したとき、すでに囚人を収容した木造のバラックは飽和状態でした。それで新たにテントを建てることになったのですが、床はむき出しの土の上にわらを敷いただけ、もちろんベッドもありません。雨が降れば、すぐにぬかるむ状態でした。
　その上、アンネたちが着いてまもない１１月８日、ベルゲンは大きな嵐に見舞われます。テントは吹き飛ばされ、行き場を失った女性たちは結局、過密状態だったバラックの中に押し込められることになるのです。食料は同じ分量のものを２倍３倍の人数で分けることになるわけですから、飢餓状態も常態化していたと言えます。
　――そんな中で、チフスに。
　そうですね。彼女たちがいつ亡くなったのか、はっきり分かっているのは３月ということだけで、日にちは分からないのです。ここは４５年３月１５日に、イギリス軍によって解放されたのですが、連合軍の接近を知ったナチスが、逃亡するとき重要な資料のほとんどを焼いてしまったものですから。
　ただ、解放後、生きてここを出ることができたアンネの友達（ヤニー・プリレスレイベル）の証言によると、病人用のバラックに移されていた姉妹を見舞ったら、いるはずのベッドに２人はいなかった。すぐに意味を悟って探し、バラックの前の死体の山に２人を見つけ、そこから引きずり出して、集団の墓地とされていた露天の場所まで運んで葬った、と語っています。
　――そうですか…、その年には、ものすごい数の人々が亡くなったそうですね。
　３月だけで、１万８千人が亡くなり、その多くがチフスか餓死です。ここにはガス室はなく、小さな焼却炉が一つあったのですが、死者の数があまりにも多く、焼くこともできなくなり、大きな穴を掘ってそこを墓場としたのです。
　ですから、この跡地を歩かれると分かりますが、あちこちに、２０００、５０００など数字を書いた塚があります。それぐらいの数の方たちがそこに眠っているという証しです。跡地にはアンネ姉妹のお墓のように、いくつかの墓標がありますが、それは後に建てられたものです。
（ベルゲン・ベルゼンは、後にニュルンベルク国際軍事裁判で「巨大なる恐るべき死体置き場」と呼ばれ、ナチスの犯罪の証拠とされました）
　――若い人の訪問も多いですか？
　特に学校の授業の一環として、たくさんの生徒たちがやって来ます。彼らは、ここへ来るまでにもうすでにアンネ・フランクのことは、『日記』を読んだりしてよく知っているのですが、ここへ来て、アンネがカオス（混乱）状態の中で死んでいったということを知るのです。そしてまた、彼女が多くの悲惨な生涯を終わった人々のなかの１人であるということも学びます。
　――アンネを通してナチスの犯罪についても学んでいくわけですね。
　私も１６歳のときに『日記』を読みました。自分と同じぐらいの年齢なのにとてもおとなという感じを持ちました。彼女の日常、２年間という長い時間を、隠れ家で息をひそめて生きなければならなかった少女がいたということにとてもショックを受けました。なぜ、どうして？　ユダヤ人だというだけで。そういう疑問や関心から、ホロコースト（大虐殺）やわが国の歴史、特に国家社会主義の問題が私の勉強のテーマとなりました。

心痛めること
　――それでこのお仕事を。
　２０００年からここで。やりがいのある仕事です。心を痛めることもたくさんあります。例えば、生存者の方のお話をうかがうときです。４０人あまりの方から貴重な体験を聞きました。また、アンネの最期を語る時なども勇気がいります。
　今、こういうタブレット（液晶画面を持つ携帯パソコン）を使って、収容所の説明をしています。ここは病気のまん延で、手が付けられない状態だったため、解放したイギリス軍がバラックなどすべてを焼き払いました。ですから訪れた人は広い跡地に立った時、当時の様子をイメージするのが、なかなか難しいのです。やってみると、若い人たちにとても人気です。彼らは扱いも上手です。私などより。（笑い）
　――日本は、戦後処理の問題を含めてドイツに学ぶべきところがたくさんありますね。
　私には忘れられない思い出があります。大学のゼミ（歴史学部）で、それぞれの国の国歌を歌おうということになった時、日本の留学生くみこが歌えない、歌いたくないと言ったのです。私にはすぐ、それが歴史問題だと分かりました。ドイツも日本も過去の問題を抱えた国です。ただドイツは過去ときちんと向き合い、反省し、周りの国とも仲良くやってきています。その経験を私は誇りに思います。確かに時間がかかることでしょうが、日本のこれからにとっても、それはとても大事なことではないでしょうか。
( ２０１５年０３月１６日，「赤旗」)

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潮流

先週来日したドイツのメルケル首相が歴史認識について述べた言葉をドイツの主要紙が解説しています。痛烈です▼一つは、ナチスの戦争犯罪をめぐり「過去の総括が(欧州の)和解の前提になっている」という発言。南ドイツ新聞は、メルケル首相が「公然たる批判は逆効果」と考えて、安倍晋三首相に「礼儀正しい批判を試みた」と伝えました。安倍首相のことは「戦争犯罪を相対化しようとしている」と紹介しました▼メルケル氏は「ドイツには、物事をその名で呼ぶ覚悟がある」とも述べました。このわかりにくい表現を、フランクフルター・アルゲマイネ紙は「行間に込められた警告」と読み解きました。侵略という言葉すら消し去ろうとする安倍首相への警告だったのです▼たとえドイツの首相が誰であっても、安倍首相には物を言ったでしょう。ドイツでは街の各所に、そこでナチスがいつ何をしたかを記した｢警告碑｣があります。過去を「忘れるな」と警告する碑です▼こうした社会が簡単につくられたわけではありません。ネオナチだけでなく、普通の市民の中にいまも人種差別をする人がいます。本紙２月２４日付国際面｢女性の目アラカルト｣ではベルリン在住の筆者が地下鉄で見知らぬ女性にののしられた体験を書いています▼だからこそ国民を代表する政治家の役割が決定的です。ドイツでは「戦争犯罪を相対化」する人物は政治家として失格です。ドイツ人の目には、過去を消そうとする安倍首相の姿は異様に映ったようです。
( ２０１５年０３月１６日，「赤旗」)

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世界．ｎｅｔ／左翼政権誕生のギリシャ／ユーロ圏初「反緊縮」／東京大学特任講師村田奈々子さんに聞く

ＥＵ継続と弱者対策、自尊心回復も課題
　１月末の総選挙で「緊縮ノー」の左翼政党中心の連立政権が誕生したギリシャ。何が起こっているのか―。ギリシャ近現代史に詳しい東京大学特任講師の村田奈々子さんに聞きました。

　最近ギリシャを訪問しました。緊縮政策の下のアテネでは、１年前と比べ、シャッターの下りた店や路上生活者が増えていました。若者の失業は５割に達しています。
　一方、急進左派連合（ＳＹＲＩＺＡ）が総選挙で勝ち、ユーロ圏で初めて反緊縮を掲げる政権が誕生したことで、「何かやってくれるのでは」との前向きな雰囲気も感じました。
　これまで３０年間、政権を担ってきた二大政党、全ギリシャ社会主義運動（ＰＡＳＯＫ）と新民主主義党（ＮＤ）の首相は、外国で教育を受けるなどエリートばかりでした。これに対し、チプラス新首相は留学経験がなく、アパート住まいで、庶民には身近に感じられているようです。
　ギリシャは１９６７～７４年の軍政後、民政に戻りました。８１年の欧州共同体（ＥＣ）加盟後、資金が大量に入ってきました。同年にできたＰＡＳＯＫ政権以降、外国からの借金に頼るバラマキ政策がとられ、ＮＤに政権交代しても、その政策は変わりませんでした。
　２００９年の財政危機発覚後、公務員削減、給与・年金減額、民営化などの緊縮策がとられました。しかし経済は冷え込むばかりです。

続く〝綱渡り〟
　新政権はユーロ圏・欧州連合(ＥＵ)離脱の意思はありません。貧困層３万世帯の電気料金・食費無料化といった政策を進める一方、ＥＵなどから金融支援を受けるため、緊縮策を継続する必要に迫られています。チプラス新首相にとっては綱渡りの状態が続きます。
　今の危機は単なる経済問題ではなく、ギリシャ人の自尊心に関わる問題でもあります。新政権が、１９４１～４４年のナチス・ドイツによるギリシャ占領の損害賠償請求を検討すると表明したのも、自尊心回復と関連しています。
　当時、独軍占領経費もギリシャが負担し、厳しい食料難で多数の国民が亡くなりました。損害額は、今日の負債の半分に当たるとの試算もあります。ドイツ側は問題が決着済みとの立場ですが、ギリシャ国民には「現在最大の貸し手であるドイツは過去の負債が不問に付されているのに、なぜギリシャが今、国際的圧力を受けるのか」との思いがあります。
　ＥＵ側も、欧州文明の源流としてのギリシャを考えるなら、経済問題のみを理由に、簡単に切り捨てることはできません。
　今後の注目点の一つは、ギリシャ民族中心主義の極右政党「黄金の夜明け」（得票率６・３％）の動きです。ギリシャでは歴史的経験から右派への嫌悪感は強いものの、新政権がＥＵ言いなりになると、国民が反発し、右派が台頭する危険があります。

○ギリシャ
面積１３万平方㌔
（日本の３分の１)
人口１１００万人

むらた・ななこ＝著書に『物語　近現代ギリシャの歴史』『ギリシア語のかたち』など
(２０１５年０３月１５日，「赤旗」)

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抗日戦争勝利７０年記念活動を強調

【北京＝小林拓也】北京で開かれていた中国国政への助言機関である全国政治協商会議（政協）第１２期第３回会議は１３日、清潔な党風建設と反腐敗闘争を断固推進することなどを盛り込んだ政治決議を採択し、閉幕しました。
　決議は、「抗日戦争と反ファシズム戦争勝利７０年を記念する活動を行い、国際社会と共同して、第２次世界大戦勝利の成果と国際的な公平・正義を守る」と強調しました。
( ２０１５年０３月１４日，「赤旗」)

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第２次大戦中、アルバニアで墜落／英兵の指輪、７０年経て遺族へ

【ベルリン＝時事】第２次大戦中、東欧のアルバニアで行方不明になった英空軍爆撃機乗組員の結婚指輪が見つかり、アルバニア国防省で９日、遺族に手渡されました。受け取った妹のドロシー・ウェブスターさん（９２）は「兄がやっと帰ってきた」と感極まった様子で語りました。
　英メディアなどによると、乗組員はジョン・トンプソン軍曹＝当時（２３）＝。１９４４年１０月、ナチス・ドイツが占領していたアルバニアで、抵抗活動を行っていたグループに物資を投下していて山中に墜落。行方不明になっていました。
　指輪は６０年に地元の男性が山中で見つけましたが、独裁政権下のアルバニアでは、当局に申し出ても持ち主を探せないと判断。託された息子が２年ほど前に首都ティラナの英大使館などに連絡、持ち主と機体の存在の確認につながりました。
　ウェブスターさんは「７０年間待ち続けてきた」と涙を浮かべました。アルバニアのコデリ国防相は「お兄さんはこの国を解放するために努力してくれた。決して忘れない」と語り掛けました。
　トンプソン軍曹は４４年６月に結婚。指輪の内側には自分と妻の名が刻まれていました。妻は戦後再婚し、９０年代に亡くなりました。
( ２０１５年０３月１２日，「赤旗」)

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歴史認識・原発問題／独メルケル首相の発言／要旨

９、１０日に来日したメルケル・ドイツ首相が語った歴史認識問題と原発についての発言（要旨）は次の通りです。
　【歴史認識問題】
　戦後、ドイツではどのように過去の総括を行うのか、どのように恐ろしい所業に対応するのかについて、非常に突っ込んだ議論が行われてきた。ナチスとホロコースト（ユダヤ人大虐殺）は、われわれが担わなければならない重い罪だ。過去の総括というのは、やはり和解のための前提の一部分だった。一方で、和解には二つの側面があり、ドイツの場合は、例えばフランスが、第２次世界大戦後、ドイツに歩み寄る用意があった。今日、ＥＵ（欧州連合）があるのは、こうした和解の仕事があったからだ。
　（９日、日独共同記者会見）
　【原発問題】
　私は長年、平和的な核利用を支援してきた立場だった。福島の原発事故は、日本という高度な技術水準を持つ国で起きた事故だ。そんな国でも、リスクがあり、事故は起きるのだということを如実に示してくれた例だ。それをきっかけに、予期できないリスクがある、われわれが現実に起こるとは思えないと考えていたリスクがあるということが分かったからこそ、私は当時、政権にいた多くの男性の同僚と共に脱原発の決定を下した。
　（９日、東京都内での講演）
( ２０１５年０３月１２日，「赤旗」)

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１０ 「過去の総括が和解の前提」／独メルケル首相が発言／東京

来日したメルケル独首相は安倍首相との共同記者会見（９日）で、戦後７０年の日本の歴史認識をめぐる問題に関し「過去の総括が和解の前提となる」と述べ、日本と中国、韓国との関係改善に期待を示しました。
　（関連２面）
　これに先立ちメルケル首相は東京都内で講演し、第２次大戦中に関係が悪化した周辺国との和解には「過去と向き合うことが重要」との認識を示しました。
　首相はナチスによるホロコースト（ユダヤ人大虐殺）にもかかわらず、ドイツは国際社会に受け入れてもらう幸運に恵まれたと指摘。「ドイツがきちんと過去と向き合った一方、連合国が過去を克服するドイツを見守ったからだ」と強調しました。
　また、不倶戴天の敵だったドイツとフランスの関係が和解から友情に発展したのは「両国民が歩み寄ろうとしたところから始まった」と語り、隣国との対話の重要性を訴えました。ただ、日本と中国や韓国との関係については「アドバイスする立場にはない」と述べるにとどまりました。
( ２０１５年０３月１０日，「赤旗」)

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ヒトラーランド　ナチの台頭を目撃した人々／アンドリュー・ナゴルスキ著、北村京子訳／評者星乃治彦福岡大学人文学部教授

魅了される恐ろしさ　今と二重写し
　今から１年半ほど前、当時の麻生副総理が、「憲法は、ある日気づいたら、ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていたんですよ。だれも気づかないで変わった。あの手口学んだらどうかね」と発言して大問題になった。大量弾圧があったことなどに目をふさぐなど、事実誤認も甚だしい。ただ、この間の日本では、麻生発言通りに、改憲に向けた静かなファシズムが進行していることが恐ろしい。このままわれわれは、再び戦争、「アウシュヴィッツ」を経験するのだろうか？
　本書は、８０年前のアメリカ人ジャーナリストや外交官などがみたナチスである。当時の新聞記事、日記、手紙、インタビューが駆使される。彼らアメリカ人はドイツ人の復讐心、絶望やヒトラーに対する妄想、期待を観察しながら、自らも多くがヒトラーにインタビューしたり、市井の様子をリポートしたりする中で、次第にヒトラーに魅了されるようになっていく。ナチスの魅力的宣伝、経済的復興、民族の復興というスローガンに、アメリカ人もいつしか引き込まれていく。ナチスの恐ろしさが浮き彫りにされる手法が面白い。ストーリーを組み立てているのは、戦後生まれのポーランド系アメリカ人ジャーナリストであるナゴルスキ。両親がナチスに追われた経験を持つ。
　なぜヒトラーに引きつけられていったのか、リアルに追経験できるが、人ごとではない。１９３０年代のドイツと現在の日本が二重写しになる。多数登場する語り部のうち、知の力を持った者だけが、戦争、アウシュヴィッツに行きつくナチスの本質を見定めていたということも、歴史的教訓にしたい。
( ２０１５年０３月０８日，「赤旗」)

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おはようニュース問答／国連７０年、公開討論が開かれたね

みどり　今年は戦後７０年だけど、国連がつくられてからも７０年ね。

憲章の核心力説
　晴男　ファシズムに抗して結成された「連合国」が前身だ。第２次世界大戦の惨禍を教訓に、戦争を起こさないための平和のルールを国連憲章として定めたのが出発点だった。
　みどり　このまえ、国連の安保理で、国連創設７０周年にあたって各国の外務大臣クラスが集まって公開討論が行われたと聞いたよ。
　晴男　国連の潘基文（パン・ギムン）事務総長は、「国連がなかったらこの７０年はもっと流血の時代になっていただろう」といって、国連が世界大戦の再来を防いできた功績を評価した。
　みどり　「国連憲章は、時の試練に耐えてきた大事な原則だ」ともいったそうね。核心は、紛争の平和解決と人権尊重だと力説していた。
　晴男　戦後新たに独立を勝ち取ったアジア、アフリカ諸国などが加わって、欧米中心から各国が重要な役割を果たす方向に世界が大きく変化するなかで、国連の役割も大きく発展してきた。
　みどり　ブラジルの代表が「今日の世界の新しい課題は一つの国では解決できない」といったのはその通りだと思う。
　晴男　いま人類は、地球温暖化、国境を越えたテロなどの新しい問題に直面している。「新しい課題の中でこそ、加盟国は、国連憲章の文言と精神を生かす責任がある」といったフィリピンの代表に共感した。
　みどり　「歴史を振り返る」という討論テーマもあったよね。
　晴男　ドイツは「過去の教訓」を学んで、平和や人権に貢献する決意を語ったそうだけど、かつての第２次大戦の侵略国としての反省を踏まえた重みのある発言だ。

世界的な協力を
　みどり　ウクライナやシリア・イラクの紛争では、国連は十分に役割を果たせていないという批判も出た。アフリカの国からは、地域紛争の頻発などを挙げて、国連がその理想にふさわしい役割を果たしてこなかったとの声もあったみたい。
　晴男　大国が、自分の都合に合わせて国連を利用したり、無視したりしてきた歴史を繰り返させず、国連を通じた世界的な協力を実現することが求められていると思う。
( ２０１５年０３月０５日，「赤旗」)

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指の骨／高橋弘希著／評者渥美二郎作家

戦場の数々の死描き戦争を問う
　「一人の死は悲劇だが、集団の死は統計上の数字にすぎない」―ナチスのアイヒマンの言葉だ。彼は数百万人のユダヤ人を強制収容所へ移送する指揮的役割を果たした。
　南方戦線に送られた主人公は、数々の死を目撃する。機銃掃射を受け、穴だらけとなった日本兵、自らが射殺した白人兵、味方の流れ弾に当たった同郷の戦友、屋根の修理中に転落死した兵士、志願して死地に赴いた分隊長、現地の村を描き切って息絶えた美術学校志望の兵士、医薬品が尽きると自決した軍医など。
　脳症による幻覚で、傷病兵から蕎麦の注文を取り始めた兵士もいた。まるでそこが隅田川沿いの蕎麦屋であるかのように。兵士たちは好きな蕎麦を注文し、衛生兵も「繁盛するね」と声をかける。注文を取り終わり、兵士は一息入れてから旅立っていった。
　指の骨とは、墓標である。息絶えた兵士の親指を、衛生兵が小刀で切り落とす。その指は焼かれ、骨となる。「指を切り取ってもらえるヘータイは幸せだよ」とつぶやく傷病兵もいた。
　肩に貫通銃創を負い、療養していた主人公だが、傷も癒え、撤退ならぬ転戦のため、野戦病院を後にした。自決もしきれず、手榴弾を握りしめ、熱帯の黄色い道を、ただ歩いている。果たしてこれは戦争だろうかと自問しつつ。
　彼の背嚢の中の弁当箱には戦友の指の骨と認識票が入っている。たとえ自分の命が果てようと、骨だけは遺族のもとに戻ることを祈っている。
　著者は３５歳だという。「統計上の数字」を一つずつ掘り起こし、「悲劇」として立ち上らせることこそ、文学の戦争に対する使命なのだ。

　たかはし・ひろき　７９年生まれ。本作で新潮新人賞受賞。本書が初の著書。
( ２０１５年０３月０１日，「赤旗」)

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（２月ヘッドライン）

２８ 映画の窓／小さいおうち／こわされていく戦時の日常

国連創設７０年／安保理が公開討論／紛争の平和的解決再確認／事務総長「憲章は時の試練に耐えた」

「わが闘争」再出版へ／独で扇動懸念、注釈付き限定

戦後７０年の安保理討論／「歴史の真実認めぬ者いる」／中国外相

３６８１人の殺人ほう助容疑／元ナチ親衛隊９４歳の男を起訴

２０ 第２次世界大戦終結７０年／「４５年飢餓」起こした日本ファシスト支配／ベトナム史学研究所元所長バン・タオ氏に聞く

公開討論を呼びかけ

シリーズ戦後７０年を考える／侵略の「過去克服」、政府も市民も／ドイツ

無差別爆撃７０年／平和誓う／被害も加害も目そらさぬ／独ドレスデン

こちら経済部／「大砲かバターか」の教訓

「建国記念の日」平和・歴史を考える／各地で集会／山口／熊本／岡山

ギリシャ、ナチ占領期賠償請求も／独「解決済み」と支払い拒否

ホロコースト告発、ランズマン監督特集上映／「過去のものにさせない」

１０ 現行金融支援を拒否／ＥＵなどに「つなぎ措置」要求／ギリシャ

文化／映画「ＳＨＯＡＨ（ショア）」１８年ぶり公開／元ＮＨＫプロデューサー・立正大学教授桜井均

本と人と／『「サウンド・オブ・ミュージック」の秘密』瀬川裕司さん／何度見てもウルッとなる

国際社会の「イスラム国」対応／人権教育こそ蛮行防ぐ砦／国連人権高等弁務官

反イスラム組織が分裂／各地で対抗デモ、批判強まる／ドイツ

第２次世界大戦終結７０年／中国の元外交学院院長呉建民さんに聞く／侵略の美化をやめ正確な歴史伝えて

対テロで協力強化へ／「イスラム国」批判／中ロ印外相会談

阪神・淡路大震災２０年／たたかい生きる／医師をめざす震災遺児池田祥平さん（２３）見守るバイオリニスト松野迅さ

記憶の場所でアウシュビッツ強制収容所解放７０年式典／ジャーナリスト大内田わこさんのリポート

月曜インタビュー／音楽評論家佐々木光さん／問い続ける音楽家の戦争協力／文化創造支える評論家の役割

ワイツゼッカー元独大統領死

週間日誌／１５年１月２５日～３１日

（２月本文）

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２８ 映画の窓／小さいおうち／こわされていく戦時の日常

「小さいおうち」。山田洋次監督が、赤い屋根の家の中流家族に戦争がしみこんでくるさまを松たか子、黒木華で描く。日常が徐々にこわされていく生活に今の平和を考えさせる。「ジャッジ！」、ＣＭプランナー妻夫木聡がサンタモニカ国際広告祭に審査員として参加してぶつかる驚き。
　ＮＨＫＢＳは今週もアカデミー賞特集｡｢スパルタカス｣は､ローマ帝国の圧政に反乱を起こして戦うスパルタカスと奴隷軍団｡〝赤狩り〟から復活したＤ･トランボの脚本､Ｓ･キューブリック監督による権力への抵抗映画｡｢ライフ・イズ・ビューティフル｣､イタリア系ユダヤ人が子どもとナチスの強制収容所へ。死の恐怖のなかで父は子どもを励まし続ける。「戦場のピアニスト」、実在したポーランドのユダヤ人ピアニストが命ぎりぎり生き抜く衝撃作。監督、主演男優賞など受賞。廃虚のワルシャワに響くピアノ曲の壮絶美。「ラウンド・ミッドナイト」、ジャズピアニストとサックス奏者の伝説的事実を描く｡｢未知との遭遇　ファイナル･カット版｣、異星人と人間との最初の出会いを描くスピルバーグ監督のＳＦ映画。
　日本映画は「川の底からこんにちは」。無気力な女性が魅力的になっていくさまを満島ひかりが好演。
　（石子　順　評論家）
( ２０１５年０２月２７日，「赤旗」)

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国連創設７０年／安保理が公開討論／紛争の平和的解決再確認／事務総長「憲章は時の試練に耐えた」

国連安全保障理事会は２３日、国連創設７０周年にあたって公開討論を開きました。多くの国が、国連創設の原点である紛争の平和的解決の意義を再確認し、過激派テロ組織の台頭や気候変動など解決に多国間の協力が求められる課題がある今こそ、国連憲章に基づいた世界秩序をつくることが重要だと指摘しました。
　（ワシントン＝島田峰隆、洞口昇幸）

　討論テーマは「国際の平和と安全の維持。歴史を振り返り、国連憲章の目的と原則への強力な関与を再確認する」です。今月の安保理議長国の中国が主催し、約８０カ国の代表が発言しました。
　国連の潘基文（パン・ギムン）事務総長は「国連は世界大戦の再来を防ぐために設立され、その点では成功してきた」と強調。武力紛争などは発生したものの「もし国連がなければこの７０年はもっと流血の時代になっていただろう」と語り、「国連憲章は、詳細な行程表ではなく生きた文書だ。時の試練によく耐えてきたわれわれの大事な原則、羅針盤だ」と述べました。
　また地球温暖化や病気の流行、テロなど新たな国際問題が生まれるなか、「７０周年の今年を共通の活動について真剣に考える機会にしよう」と国際社会の協力と結束を呼び掛けました。
　議長役の中国の王毅外相は「国連創設７０年は歴史から教訓を学び、将来の進路を立案する上で重要な機会だ」と強調。「ファシズムとたたかい犠牲になったすべての人をたたえる。主権と平等、紛争の平和的解決、平和の集団的維持を主義とする国連憲章は世界平和を鼓舞するものとなってきた」と述べました。

新しい課題では
　討論では、ウクライナ問題やシリア内戦など軍事的緊張が今も絶えないことへの懸念も出ました。一方で「新しい課題の中でこそ各加盟国は国連憲章の文言と精神を生かす責任を負っている」（フィリピン）という声が上がりました。
　チリは「国連憲章は国際システムの背骨」だとし、「新しい現実に向き合う場合も国連創設の原則を順守する点で選択の余地はない」と指摘。ブラジルは「今日の世界の新しい課題は一つの国では解決できない。多国間主義は望ましいだけではなく、唯一の責任ある行動方向だ｣として､国連憲章に基づいた協力強化を訴えました。
　南アフリカも「国連憲章が定める主権平等と、限られた場合を除いた武力行使の禁止は、今では国際慣習法の一部になっている」と強調しました。
　ドイツは「国連は武力の支配を法の支配に置き換えた」と指摘。「ドイツにとって国連加盟こそが国際社会へ復帰する重要な節目になった」「過去の教訓を学び、平和、人権、開発へ、一層の責任を負う準備がある」と力を込めました。

比重高い新興国
　一方で、戦後７０年が経過し、新興国が政治的、経済的に比重を高めるなかで、国際社会の現実をより反映した安保理改革が必要だとする声も目立ちました。
　インドネシアは「選ばれた少数ではなく国際社会全体の利益に奉仕する代表性のある民主的な安保理」を要求。南アフリカは安保理を現在の１５カ国から２６カ国へ拡大し、一定数をアフリカから選ぶことを提案しました。エジプトは「包括的で透明性のある安保理」を求め、各地で発展している地域機構との協力強化を求めました。
　大量虐殺など重大な人権侵害に関わる問題では常任理事国が拒否権の行使を控えるとするフランスの提案へ賛成する国もありました。
( ２０１５年０２月２６日，「赤旗」)

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「わが闘争」再出版へ／独で扇動懸念、注釈付き限定

【ベルリン＝時事】ドイツのメディアは２０日、ナチス総統ヒトラーが反ユダヤ主義思想をつづった「わが闘争」が来年１月に「現代史研究所」（バイエルン州ミュンヘン）から注釈付きで再出版される見通しになったと報じました。
　著作権を持つバイエルン州はこれまで、ナチスの称賛につながる恐れがあるとして、国内での出版を認めていませんでした。しかし、著作権が今年末で切れ、ネオナチが来年以降、「わが闘争」を扇動に用いる懸念があるため、州政府は学術的な注釈付きの発行に限り認める方針を示していました。
　原作は約７８０㌻ですが、現代史研究所は２巻、計約２０００㌻での再出版を予定しています。
( ２０１５年０２月２６日，「赤旗」)

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戦後７０年の安保理討論／「歴史の真実認めぬ者いる」／中国外相

【ニューヨーク=時事】第２次世界大戦終結と国連創設から今年で７０年になるのをとらえ、国連安保理で２３日、「国際平和と安全の維持」と題する公開討論が中国主催で行われました。議長役の中国の王毅外相は「反ファシズム戦争の歴史的事実が明確になって久しい」と述べた上で、「それにもかかわらず、真実を認めたがらず、審判を覆そうとしたり、過去の侵略の罪を歪曲（わいきょく）しようとしたりする者が依然としている」と強調しました。
　討論には８０近い国から閣僚を含む代表が出席。日本の吉川元偉国連大使は「日本は第２次大戦の深い反省の下、国連憲章の目的と原則を守ることを通じ、平和愛好国家の道を歩んできた」と説明しました。
( ２０１５年０２月２５日，「赤旗」)

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３６８１人の殺人ほう助容疑／元ナチ親衛隊９４歳の男を起訴

【ベルリン＝時事】ドイツ北東部シュウェリンの検察は２３日、第２次大戦中、ポーランドにあったナチス・ドイツのアウシュビッツ強制収容所でナチス親衛隊伍長として勤務していた９４歳の男を殺人ほう助の罪で起訴したと明らかにしました。
　検察によると、男は１９４４年に約１カ月間、収容所の親衛隊員用の病院で診療・看護に従事。任務を通じ、虐殺を行った収容所の機能に加担したと見なされました。勤務期間中に命を落とした被収容者少なくとも３６８１人の殺人をほう助した罪に問われました。
　男の弁護人は独紙に、具体的な犯罪行為の証拠はないと訴えています。
( ２０１５年０２月２５日，「赤旗」)

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２０ 第２次世界大戦終結７０年／「４５年飢餓」起こした日本ファシスト支配／ベトナム史学研究所元所長バン・タオ氏に聞く

７０年前の１９４５年、日本軍とフランス植民地政府に支配されたベトナムでは、北部を中心に空前の飢餓が襲い、２００万人以上が命を落としました。５５年からその実態を調査し、９５年に『ベトナムの１９４５年飢餓―歴史の証拠』を出版したベトナム史学研究所元所長のバン・タオ教授（９０）に聞きました。同書はベトナムで２０１０年度の「科学技術にかんする国家賞」を受賞しています。
　（ハノイ＝松本眞志　写真も）

　私はポーランドのアウシュビッツ絶滅収容所を訪れた際に、現地の人から「日本の戦争犯罪はどのようなものだったのか」と聞かれたことがあります。
　「日本ファシストの犯罪を世界に知らしめたい」「飢餓がなぜ起きたのか」―こうした思いが研究の出発点となりました。科学的な調査によってのみ問題を解決できると思ったのです。

見解さまざま
　「１９４５年飢餓」の原因については、当時からさまざまな見解がありました。日本のファシストとフランスは「干ばつ」「戦争」「地主の食料隠匿」などが原因だと主張していました。あるフランスの新聞は、当時のベトナムの人口が２０００万人だったことから、２００万人は多すぎると死者の数を疑問視しました。「だれも数えたものはいない」「死者数を証明する文書がない」というのです。
　調査・研究は飢餓１０年後の５５年から始めました。しかし、調査チームの調査員や資金が不足するなど、聞き取り調査には大きな困難がありました。
　９２年から古田元夫東京大学教授（日本ベトナム友好協会会長）の財政支援を含む協力が力となり、飢餓が発生したクアンチ省以北の２７省に調査員を派遣できたことで調査活動は前進しました。

ついに実証へ
　餓死者が約２００万人であることや、その原因が「コメの強制供出」協定などフランス植民地政府の協力を得た日本ファシストの占領政策によるものであることも、研究によって実証できました。
　当時、フランス植民地主義者が「ベトミン（ベトナム独立同盟）はゲリラ戦が得意だ。われわれは彼らの〝胃袋〟を空にすることで、彼らに勝利できる」と日本軍に進言し、飢餓を促す役割を果たしたことも明らかになっています。
　日本のファシストは「１９４５年飢餓」に責任を負っています。しかし、この事実を知っている日本人が現在でも少ないことを憂慮しています。私たちの研究が飢餓への理解を深めるために役立てられることを期待します。

ベトナムの１９４５年飢餓
　旧日本軍占領下の１９４５年、ベトナムで２００万人以上が餓死しました。４０年にインドシナに進駐した日本軍は、仏植民地政府との間で食料供給に関する協定を締結。一定量のコメをベトナム南部から北部に移送することを禁じたほか、ジュート（黄麻）への転作強要などを取り決めました。日本軍がコメ供出を強制した結果、北部では極めて深刻なコメ不足となり、闇市でのコメの価格も急上昇して貧困層を中心に死者が増えました。
( ２０１５年０２月２０日，「赤旗」)

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公開討論を呼びかけ

【北京＝時事】中国外務省の華春瑩・副報道局長は１６日の定例会見で、国連安全保障理事会で「国際平和と安全の維持」に関する公開討論を２３日に開催することを呼び掛けたと明らかにしました。
　中国は２月の安保理議長国を務めており、華副局長は「今年は国連発足と反ファシズム戦争勝利から７０年だ。歴史をかがみにし、国連憲章の趣旨と原則への断固たる決意を改めて訴える」と語りました。
　公開討論には王毅外相が議長として出席します。
( ２０１５年０２月１９日，「赤旗」)

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シリーズ戦後７０年を考える／侵略の「過去克服」、政府も市民も／ドイツ

日本と軍事同盟を結び、第２次大戦の主要侵略国となったドイツ―。同国では日本と対照的に、政府も含めて、侵略戦争の過去を直視する取り組みを進めています。
　ベルリンで坂口明記者

企業・個人の責任も問う

　ドイツ人だけでも７００万人が犠牲となったヒトラー・ナチス政権の戦争。米英仏ソ４カ国による占領後、１９４９年に東西ドイツで分断国家ができます。西独ではアデナウアー保守政権（～６３年）が誕生します。
　ナチスの戦争犯罪は、戦争直後のニュルンベルク国際軍事裁判（４５～４６年）で裁かれます。しかしドイツ自身が侵略の歴史に向き合う作業は直ちに始まったわけではありません。ベルリン州政治教育センターのヨアヒム・メアフォード氏は言います。
　「西独では戦後しばらくナチス時代の旧エリートが国家機構に残り、ナチス時代に起きたことは忘れようとする時期がありました」

５０年代から
　それでも戦争を反省し再発を防ぐ布石が打たれていきます。これを「過去の克服」と表現したのはホイス西独初代大統領（４９～５９年在任）だとされます。
　その柱は①侵略した諸国への補償と謝罪②ナチス戦犯の追及③ナチス時代への批判と反省を深めるための教育―です。具体的には▽国民の政治教育を推進する連邦祖国奉仕センターの設立（５２年）▽ナチス犠牲者のための連邦補償法の成立（５６年）▽ナチスの犯罪を解明する司法行政中央本部の設置（５８年）―などが着手されました。
　西独自身が強制収容所幹部らを裁くアウシュビッツ裁判（６３～６５年)も実施されました｡それに先立ち、数百万人のユダヤ人を強制収容所に輸送する計画を指揮したナチス幹部をイスラエルが裁いたアイヒマン裁判（６１年）は衝撃を与えました。
　６８年に高揚した学生運動は、戦争の反省を深化させる契機になったといわれます。その翌年に就任した社民党ブラント首相は、自身は反ナチス抵抗運動に参加した人物ですが、７０年末､３･４平方㌔に４５万人のユダヤ人を閉じ込めたワルシャワ・ゲットーの記念碑でひざまずいて謝罪しました。
　敗戦４０年にワイツゼッカー大統領が行った「荒れ野の４０年」演説（別項）も広く知られています。
　ナチスに協力した企業による強制労働への補償、ドイツ国軍やナチスの幹部個人の戦争責任を問う動きも広がり、「過去の克服」は今も続いています。

教育／国際教科書づくりで和解進める／国際教科書研究所フックス副所長

　「過去の克服」の一つとして重視される教育。ベルリンから西へ特急列車で１時間余、ブラウンシュバイクにあるゲオルク・エッカート国際教科書研究所（ＧＥＩ）でエックハルト・フックス副所長に話を聞きました。
　ＧＥＩは、各国の社会科系教科書１８万冊以上を集める世界で唯一の図書館を持っています｡研究者４０人を含め､１００人以上が働いています。その活動で有名なのは、ドイツが侵略した諸国との共通歴史教科書づくりです。フックスさんは語ります。
　「歴史教科書は、外国について排外主義的な考えを抱かせ、紛争の種になることもあります。そこで取り組んできたのは、和解を進める国際教科書づくりです。ポーランドとの間では１９７２年に、その委員会ができ、多くの議論をへて、２００８年にドイツ語の共通教科書が出ました」
日本が提起　ここに至るには長い歴史があると同氏は言います。
｢第１次大戦後､子どもを平和的な方法で教育し、戦争を防止する思想が生まれました。１９１９年結成の国際連盟は、教科書改革の委員会を設けました。実は、これを提起したのは、日本の教員連盟だったんですよ」
　それは日本教員組合啓明会のことです｡｢全人類愛の精神に立脚して、敵愾(てきがい)心を助成すべき教科を排斥し、紳士閥（有産階級）の自衛策に根源する侵略主義に反対」するなどの綱領を掲げ、国際教育会議の開催を提案しました。
　戦後、この取り組みを継承したのがゲオルク・エッカート歴史学教授です｡没後､同氏の研究所はニーダーザクセン州が公的に支えるＧＥＩとなりました。
　「〝過去の克服〟は容易ではなく、ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)問題が教科書に取り入れられるまでに１５～２０年かかった。戦争中のドイツの役割について政治家が確信を持つことが決定的でした」とフックス氏は言います。
　同氏は日韓中の歴史教科書づくりにも関与してきました。安倍政権の愛国心教育推進の動きについて、こう感想を述べます。
　「私たちが望むのは多面的な歴史観を提供する教科書です。安倍政権はそれを避け、第２次大戦での日本の罪を語らず、日本を世界の中心に置こうとしています。これは１９世紀に逆行する一歩だと思います」
　「日本は世界から第２次大戦での日本の役割を認めるよう求められています。それには学生や国民が、なぜ侵略が起こり、地域にどんな影響を与え、そこから何を学べるかを考えることが重要です」

語り部／子どもなりに反ナチの意思表示／ベルリン在住アンガーさん（８５）

　ドイツでも戦争体験者が各地で語り部をしています。ベルリンのティアガルテン地区のブルンヒルデ・アンガーさん（８５）は、地元の民間成人教育グループ「歴史工房」で２０年以上、ユダヤ人迫害と市民による救援活動などについて語っています。講座には１４～１５歳の生徒も参加します。
　アンガーさんは敗戦時に１６歳でした。
　「学校でナチの会合があると『ハイル・ヒトラー』と手を挙げさせられます。けれど私は前の人の肩に手をかける感じで、子どもなりに反ナチの意思表示をしていました」
　当時、学校では誰も政治のことを語りません。唯一、話ができたのがイレーネでした。
　「彼女の家に行くと、ユダヤ人をかくまっていました。カーテン越しに２人いて、びっくりしました」
　イレーネの家は、ドイツ国内を逃げ回るユダヤ人を助ける中継点で、のべ５０人ほどをかくまっていました｡｢イレーネも父親も逮捕されましたが、戦後は『ナチス抵抗者』と認められました。ユダヤ人や捕虜を助けたドイツ人もいたことを知ってほしい」
　「歴史工房」は、地元で助けられた６９人のユダヤ人の記録を本にまとめました。同様な歴史の発掘がドイツ各地で行われています。

「過去の克服」―ドイツの歩み

１９４５年
　１１月ニュルンベルク裁判（～４６年１０月）
１９５２年
　１１月　連邦祖国奉仕センター設立（６３年に連邦政治教育センターに改称）
１９５６年
　６月　ナチス犠牲者のための連邦補償法が成立
１９５８年
　１２月　ナチス犯罪解明司法行政中央本部設置
１９６０年　刑法に国民扇動罪を追加。ナチス礼賛は違法に
１９６１年
　４月　エルサレムでアイヒマン裁判（～１２月）
１９６３年
　１２月　アウシュビッツ裁判（～６５年８月）
１９７０年
　１２月　ブラント首相がワルシャワ・ゲットー記念碑でひざまずいて謝罪
１９７９年
　１月　米テレビ番組｢ホロコースト｣が西独で放映
　７月　ナチス犯罪の時効廃止
１９８５年
　５月　ワイツゼッカー大統領が｢荒れ野の４０年｣演説
１９８６年
　６月　ユダヤ人大虐殺をめぐる｢歴史家論争｣始まる
１９９４年
　８月　ワルシャワ蜂起記念式典でヘルツォーク大統領がポーランド侵略を謝罪
１９９５年
　３月　｢国防軍の犯罪｣展開始
２０００年
　８月　強制労働に対し政府と企業が補償する「記憶・責任・未来」基金設立

「荒れ野の４０年」演説／ワイツゼッカー独大統領

　ドイツ人だからというだけで罪を負うわけでない。しかし先人は重い遺産を残した。罪の有無を問わず、われわれ全てが過去を引き受けなければならない。
　後になって過去を変えたり、起こらなかったりすることはできない。過去に目を閉ざす者は結局、現在にも盲目になる。非人間的行為を記憶しようとしない者は再び、そうした危険に陥りやすい。
　ヒトラーは常に偏見、敵意、憎悪をかきたてようとした。若い人にお願いしたい。他人への敵意や憎悪に駆り立てられてはならない。敵対でなく、互いに手をとりあって生きていくことを学んでほしい。
　（１９８５年５月８日)
(２０１５年０２月１５日，「赤旗」)

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無差別爆撃７０年／平和誓う／被害も加害も目そらさぬ／独ドレスデン

【ベルリン＝時事】ドイツ東部ドレスデンで１３日、第２次大戦末期に市中心部の大半が廃虚と化した連合軍による無差別爆撃から７０年の節目の式典が開かれました。参列者は平和への誓いを新たにしました。
　ガウク大統領は演説で「われわれは誰が戦争を始めたかを知っている。ドイツの犠牲者に思いを寄せるときも、ドイツの侵攻で命を落とした人たちのことを忘れてはならない」と訴えました。
　空爆では２万５０００人が犠牲になり、多くの歴史的建造物もがれきとなりました。ナチス・ドイツの敗色が濃厚となっていた中で、民間人居住地に爆撃が行われたとして、空爆に参加した英国でも当時、批判が起きました。
( ２０１５年０２月１５日，「赤旗」)

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こちら経済部／「大砲かバターか」の教訓

「大砲かバターか」といえば、軍拡か社会保障かの例えです。暮らしをバターに象徴させるあたりは、日本の例え話ではなさそうです。調べてみると、１９１６年ごろ、第１次世界大戦参戦をめぐる米国議会の議論から出た言葉だったようです。肥料の原料である硝酸を爆薬の原料に回すべきだという論議がありました。それをメディアが「ガンズ・アンド・バター」（大砲とバター）と報じたのが始まりだったとか。
　後にその言葉を使ったのはナチスでした。「われわれはバターがなくても構わないが武器なしにはやっていけない」（ゲッペルス宣伝相）、「大砲はわれらを強くし、バターは肥満をもたらす」（空軍総司令官などを務めたゲーリング）と大軍拡を推し進めました。
　この言葉が生まれてほぼ１００年。独裁者が「バターより大砲」と言い出すことがどんなに危険か。今に至る歴史の教訓です。
　（山田）
( ２０１５年０２月１４日，「赤旗」)

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「建国記念の日」平和・歴史を考える／各地で集会／山口／熊本／岡山

平和憲法軸に運動を／山口
　「今こそ平和憲法！この道しかない」と題した第４９回思想と信教の自由を守る山口県民集会（同実行委員会主催）が１１日、山口市で開かれ、１６０人が参加しました。
　講演した広島市立大学広島平和研究所の河上暁弘准教授は、戦後、憲法９条のもと平和国家を築いてきた日本が、安倍政権により「戦争できる国」と「死の商人」に変えられようとしていることを、外交や暮らしなどさまざまな角度から指摘しました。
　「今あきらめたら本当にものが言えない世の中になる｣とのべ､戦争国家にしないためには今後の反対運動が大事だと強調しました。
　参加者は、平和憲法を軸にした社会をめざす集会宣言を採択し、集会後に４０人余で会場周辺をデモ行進しました。
　県内では同日、周南市や下松市などでも同様の集会が開かれました。

「歴史偽造」許さない／熊本
　第４９回「２月１１日」を考える熊本県民集会が１１日、熊本市で開かれました。映画「ジョン・ラーベ～南京のシンドラー～」（独・仏・中国合作）を九州で初めて上映し、３００を超える人で会場は満席となりました。
　同映画は、１９３７年の｢日本軍｣による南京事件で、南京市民の保護を目的に設立された、非武装中立の「南京安全区国際委員会」の委員長のジョン・ラーベ氏＝ドイツ＝ら同委員会のメンバーの人道的活動を、史実をもとに描いたものです。
　熊本大学の三澤純准教授は作品について、「『過去の克服』と厳しく向き合うドイツで、映画人や若い世代の人たちが、ナチスの同盟国だった日本の戦争犯罪に厳しい視線を向けている」と述べました。
　集会では、「２月１１日」を、安倍首相の「歴史偽造」を許さず、日本の「自信と誇り」は憲法９条を守りさらに世界に広げることでこそ獲得できることを確認する日とする宣言を採択しました。

考古学で記紀を検証／岡山
　第４７回「建国記念の日」を考える県民のつどいが１１日、岡山大学で開かれ、８０人が参加しました。
　菱田哲郎さん（京都府立大学文学部教授）が「考古学と記紀研究」と題して講演。考古学の立場から日本書紀・古事記の内容を検証し、神話と歴史との関係を明らかにしたもの。「真実を見つけ出すことが非科学的歴史をつくる抑制になる。道半ばで困難を伴うが、体系的に研究を進めていくことが大切」と話しました。
　報告「教科書にとりあげられる神話」では、県内小・中・高で使用されている教科書の中で、神話がどのように記述されているか、また学習指導要領の内容がどうなっているかについて現場の教師が説明。各教科書の特色を比較・分析した報告を参加者は興味深く聴きました。
(２０１５年０２月１３日，「赤旗」)

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ギリシャ、ナチ占領期賠償請求も／独「解決済み」と支払い拒否

【ベルリン＝時事】ギリシャのコチアス外相は１０日、訪問先のドイツ・ベルリンでシュタインマイヤー外相と共同記者会見し、第２次大戦中のナチス・ドイツによるギリシャ占領期の損害に対する賠償請求を検討していることを明らかにしました。一方のシュタインマイヤー外相は解決済みだとして支払いを拒否しました。ロイター通信が報じました。
　ギリシャでは債務返済を強硬に求めるドイツへの不満が高まっており、チプラス首相は８日の議会演説で、賠償請求を明言していました。シュタインマイヤー外相はナチス占領期の「おぞましい出来事」に対する政治的、道義的責任は十分認識していると表明。その上で、「全ての賠償問題は法的に完全に解決していると強く確信している」と強調しました。
( ２０１５年０２月１３日，「赤旗」)

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ホロコースト告発、ランズマン監督特集上映／「過去のものにさせない」

ナチスドイツが敗れアウシュビッツ強制収容所が解放されて７０年。歴史的な作品「ＳＨＯＡＨ　ショア」などでホロコースト（ユダヤ人大量虐殺）を告発してきたクロード・ランズマン監督の新作を含めた特集上映が東京を皮切りに各地で行われます。
　（児玉由紀恵）

「絶滅政策」の全体像に迫る
　ランズマン監督は、１９２５年、パリ生まれのユダヤ系フランス人。高校在学中にレジスタンス活動に加わり、７０年から映画製作に携わります。
　今回日本で１８年ぶりに一般公開される「ＳＨＯＡＨ　ショア」は、１９８５年に発表。１４カ国で追跡調査などを行い、１２年をかけた９時間２７分の大作です。絶滅収容所から生還したユダヤ人や元ナチス親衛隊員、強制移住させられたワルシャワゲットーで蜂起したユダヤ人ほか多岐にわたる人々の証言と、ヘウムノ、トレブリンカほか各地の収容所跡地などの風景で構成したノンフィクション映像です。
　絶滅政策の「全体像」「巨大な規模」に迫ろうとした（ランズマン著『ＳＨＯＡＨ　ショア』）という膨大な取材。遺体を焼く焼却炉の状況や、家畜を運ぶ列車での移送、致死ガスを吐くトラックの構造など惨殺の仕組み…。迫害による極限を生きて「人間の言葉では恐怖を語れない」という体験者の記憶を掘り起こすのは、体験者に「トラウマ」を乗り越えてもらうことでもあります。
　ホロコーストの抹消を謀ったナチスに抗し、ホロコーストを「過ぎ去ったもの」とさせない強い意思の結晶した作品。証言者の一人でアウシュビッツで５度の抹殺の危機を逃れたフィリップ・ミュラーは「生きている限り希望があると確信した」と言います。
　今回の特集では、監督の最新作、テレージェンシュタット収容所のユダヤ人の長老ベンヤミン・マーメルシュタインへのインタビューの記録「不正義の果て」（２０１３年、２１８分）が同時公開されます。

野蛮な行為にどう抗うのか
　「ホロコースト犠牲者を想起する国際デー」の１月２７日、この最新作の上映と、中央大学教授のミカエル・フェリエさん、作家の小野正嗣さんによるランズマン映画からホロコーストを学ぶシンポジウムが東京で開かれました。
　冒頭に監督のビデオメッセージが映され、その中で監督は語っています。
　―７０年という時間は「小さな一滴」にすぎないが、その間にかつて敵だった人間が和解し、「人道に反する罪」を拒否することを共有し、その象徴として自作が上映されることを喜びとしたい、と。
　「不正義の果て」では、ナチスから収容所を運営するためのユダヤ人評議会の代表に任命され、ユダヤ人の虐殺に加担したとみられてユダヤ人から憎悪されたが、ナチスに利用されながらユダヤ人の救済もしたというマーメルシュタインの複雑な人間像が示されます。ナチスが「模範収容所」と宣伝した同収容所の実態や、ユダヤ人のガス室送りの指導者、アドルフ・アイヒマンの狡猾さも彼の証言で伝えます。
　シンポジウムでは、監督が「ＳＨＯＡＨ　ショア」を作る過程でマーメルシュタインへの取材をしながらも、映画に盛り込まなかった時代的背景や、野蛮な行為が広がる時に、一人ひとりがどうあらがうのか、現代の若者が映像を見る力をどう育むのかなど、貴重な論議がありました。
　アラン・レネ監督の「夜と霧」（５５年）は、アウシュビッツでのナチスの暴虐の実録を３１分の端的な映像で伝えて世界に衝撃を与えました。ランズマン監督作品は、壮大な映像世界に身を浸すことで想像力を強く刺激します。未来への志向を促す映画の力です。

　特集上映は、「ＳＨＯＡＨ　ショア」１～４部、ソビブル収容所での武装蜂起を語る「ソビブル、１９４３年１０月１４日午後４時」（２００１年）、「不正義の果て」を入れ替えで上映。１４日～３月６日、東京・シアター・イメージフォーラム℡０３(５７６６)０１１４。順次各地で公開。
( ２０１５年０２月１１日，「赤旗」)

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１０ 現行金融支援を拒否／ＥＵなどに「つなぎ措置」要求／ギリシャ

ギリシャのチプラス首相は８日、議会で所信表明の演説をし、欧州連合（ＥＵ）から押し付けられた緊縮政策を条件とする今までの枠組みでの金融支援を断固拒否する姿勢を改めて示しました。現行の金融支援は２月末に期限が切れます。
　アテネからの報道によると、チプラス首相は「選挙前の公約をひるがえすことはない」と強調。その上で「議論のための猶予が必要だ」として、新たな枠組みの支援合意に至るまでの間の「つなぎ措置」をＥＵなどに求めました。ギリシャの要求や３月以降の金融支援をどうするかについては、１２日のＥＵ首脳会議で協議されます。
　同首相は、「金融支援による悲惨な緊縮財政の傷を治し、人道的危機に取り組むことが最優先課題だ｣と指摘｡所得を増やす施策では最低賃金を現在の月５８０ユーロ（約７万８２００円）から２０１６年末までに７５１ユーロ（約１０万１２００円）に引き上げることや、１３年に閉鎖された国営放送局の再開、解雇された公務員の再雇用をあげました。所得税の最低課税基準を再び年間所得１万２０００ユーロ（約１６２万円）にすることや前政権によって導入されたすべての不動産への課税を廃止し、高額不動産に限ることなどを約束しました。
　また、ナチス・ドイツ占領下で受けた損害に対する賠償や強制された対独融資の返済をドイツに求めました。チプラス首相は「ギリシャはナチとたたかい血を流したギリシャ人、すべての欧州人への道徳的な義務を負う」と賠償を正当なものだと指摘しました。
　ギリシャの新たな枠組みの支援に対し、欧州中央銀行（ＥＣＢ）やドイツなどは否定的。一方、仏伊の首脳は一定の理解を示しています。
　（片岡正明）
( ２０１５年０２月１０日，「赤旗」)

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文化／映画「ＳＨＯＡＨ（ショア）」１８年ぶり公開／元ＮＨＫプロデューサー・立正大学教授桜井均

ユダヤ人虐殺生還者、元ナチス親衛隊らの証言記録／「動く証拠」、表情が語る真実
　アウシュビッツ強制収容所解放から７０年になる今年、ナチスによるユダヤ人大量虐殺（ホロコースト）の全貌を証言のみで構成したクロード・ランズマン監督の映画「ＳＨＯＡＨ　ショア」（１９８５年製作）が１８年ぶりに日本で一般公開されます。１４日からの公開に先立ち、この作品に詳しい元ＮＨＫプロデューサーで立正大学教授（メディア、映像ジャーナリズム論）の桜井均さん（６８）に寄稿してもらいました。

　「ＳＨＯＡＨショア」が最初に日本に来たのは、１９８７年のこと。イメージフォーラムがまだ東京の四谷にあったころ、『広告批評』の主催で上映され、翻訳者の高橋武智さんの同時通訳で見た。９時間半に及ぶ作品に､私の思考力､集中力は限界にきて途中で退散してしまった記憶がある。結局、この年、日本では一般公開されなかった。
　ようやく日の目を見たのは、９５年。東京日仏会館で行われた特別試写会であった。多くの知識人、学生に大きな衝撃を与えた。あわせてランズマン監督も来日し、ＮＨＫのＥＴＶ特集番組で加藤周一、高橋哲哉両氏それぞれとの対談が実現した。この機会にもっと多くの人に見てもらおうと、ＢＳで深夜４回に分けて放映された。
　まさに戦後５０年、過去の「植民地支配と侵略」について「痛切な反省」を述べた「村山談話」が出される時期と重なった。アジアの民主化が進むなかで元日本軍「慰安婦」の女性たちが相次いで名乗りを上げ、忘れようとしていた過去をよみがえらせた。国際的には、ユーゴ、ルワンダの内戦で起きた集団レイプが「戦時性暴力」として裁かれようとしていた。
　◆　◇　◆
　映画「ショア」は、日本社会に多くのものを残した。当時、日本軍の関与を示す歴史資料が発掘されたにもかかわらず、ハルモニ（おばあさん。元「慰安婦」女性）たちの証言を疑う声が根強くあった。このとき、「ショア」はほかに置き換えることができない証言が持つ潜在力を私たちに教えてくれた。
　ドキュメンタリーを制作していた私は、歴史資料のような「動かぬ証拠」だけではなく、人間の感情や表情の変化を記録する「動く証拠」というものがあることに気づかされた。
　こんなシーンを覚えている。同胞をガス室に送り込む仕事をさせられていたユダヤ人男性は、死を悟った女性たちの間から故郷の歌が湧き上がるのを聞いて、自分はもう生きている価値がないと思い、ガス室に入った。すると、一人の女性が近づいてきてささやいた。「あなたはここを出て、私たちが受けた苦しみや不正を証言しなくては…」と。
　そう語る彼の表情は見る見る変わり、私をくぎづけにした。絶滅収容所から奇跡的に生還した証言者は、語ることで２度目の「死」を体験し、それを見る私たちをその場所に導く。
　日本のメディアも元「慰安婦」の女性たちの声と表情を「動く証拠」として記録しなければならないと思った。
　◆　◇　◆
　ランズマン監督は、言う。「ユダヤ人絶滅は、その肉体的抹殺のみならず、その痕跡の抹消という徹底性にこそその本質がある」。いまは、それにもう一つ加えなければならない。記憶の抹殺が起こっている。戦後７０年、歴史の修正主義が大手を振るい、過去を忘れ、次なる戦争に向かおうとしている。
　３０年前よりも、２０年前よりも、今年ほど「ショア」を見たいと思ったことはない｡日々､破滅に向かいつつあるのかもしれない私たちの未来を、この映画の中で見いだし、引き返す力を得ることができるかもしれない。

映画「ＳＨＯＡＨ」
　フランスのドキュメンタリー作家、クロード・ランズマン監督（１９２５年～）が、予備調査１４カ国、３５０時間に及ぶ撮影で１０年の歳月をかけて完成させた映像記録。８５年に発表後、８６年ベルリン国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞し、その後、世界各国の主要な映画賞を２０以上も獲得。しかし、日本で一般公開（９７年）されるまで発表から１０年余の歳月を要した。「ＳＨＯＡＨ」は、「絶滅」の意味。９時間２７分の全編が、ナチスの収容所から生還したユダヤ人、収容所の元ナチス親衛隊員、収容所近くに住むポーランド人農夫らの証言で構成されている。
　今回は、「ショア」の続編ともいえる２本の作品「ソビブル、１９４３年１０月１４日午後４時」と、「不正義の果て｣も上映される｡

＊１４日から３週間､東京･渋谷シアター･イメージフォーラムで公開｡「ＳＨＯＡＨ」は４部に分けて上映。詳しくは℡０３(５７６６)０１１４
(２０１５年０２月０８日，「赤旗」)

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本と人と／『「サウンド・オブ・ミュージック」の秘密』瀬川裕司さん／何度見てもウルッとなる

日本でも親しまれている「エーデルワイス」や「ドレミの歌」。ミュージカル映画「サウンド・オブ・ミュージック」（１９６５年）の曲です。ナチスから逃れて米国に渡り「家族合唱団」として人気を博した一家の実話にもとづきます。
　「ＤＶＤなどを含めた実質視聴者数は世界一、オーストリアのロケ地を巡るバスツアーは今も盛況で、しかも若い人が多いんです」
　映画研究者として年間２００本近い映画を見ても、感情移入することはほとんどありません。「カメラがどこからどう撮っているか常に考えています。感情移入していると、重要な細部を見落としてしまうのです」。ところが、「サウンド―｣は別｡繰り返し見たくなり、見た回数が一番多く、細部までわかっているのに「最初の場面からウルっとなってしまう」。
　「通俗的で、芸術的な革新性は全然ない。研究者がとりあげるような作品ではないんです｡だけどみんなが好きで､何度見ても面白い。なぜなのか。ちゃんと考えるべきだと思うんです」
　多くの人が好む物語には、語り継がれた神話や民話に原形をもつものが多いといいます。「主人公の成長物語、頑なな心が無垢な魂によって変わる〈氷が溶ける〉展開、外から来た人や教師が状況を変える話―。この映画は、その〝黄金の方程式〟を見事に踏んでいる」。加えて、歌の力、俳優の魅力、ロケ地ザルツブルクの美しさ、〝実話〟ということの力。「それが、すべてはまった奇跡の一本なんです」
　（西沢亨子）
　（平凡社新書・７８０円）

　５７年生まれ。明治大学教授。『ナチ娯楽映画の世界』『ビリー・ワイルダーの映画作法』ほか。
( ２０１５年０２月０８日，「赤旗」)

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国際社会の「イスラム国」対応／人権教育こそ蛮行防ぐ砦／国連人権高等弁務官

【ワシントン＝島田峰隆】ザイド・フセイン国連人権高等弁務官は５日、過激組織「イスラム国」などへの国際社会の対応について「爆撃だけでは機能せず、それはこれらの組織を拡散させ、その力を強めただけだった」と述べ、イスラム教指導者によるイニシアチブや人権についての教育が必要だと語りました。ワシントン市内での講演で述べました。
　フセイン氏は「必要なのは、イスラム教の考えに基づいたイスラム諸国や指導者による異なる種類の戦線だ」と強調。昨年９月に世界各国のイスラム識者が連名の公開書簡を発表し、「イスラム国」指導者の演説の誤りを指摘したことを挙げ、「これは希望ある始まりであり、支援に値する」と訴えました。
　またナチス・ドイツによる蛮行の歴史を振り返り、「われわれは苦い経験から人権こそが残虐行為を防ぐ重要な砦（とりで）であることを知っている」と指摘。「子どもたちは、偏見に根差した憎悪や熱狂的愛国主義がもたらしうる恐ろしい誤りについて学び、盲目的な服従は権力に利用されうることを学ぶ必要がある」として、人権についての教育を強めるよう呼び掛けました。
( ２０１５年０２月０７日，「赤旗」)

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反イスラム組織が分裂／各地で対抗デモ、批判強まる／ドイツ

昨年１０月以来、ドイツでイスラム教徒や移民の排斥を訴えるデモを繰り広げてきた「西洋のイスラム化に反対する愛国的欧州人」（ペギーダ）が反撃に直面しています。批判の声が高まり、対抗デモには多くの人が参集。組織は分裂するなど退潮の兆しも見え始めています。
　旧東独地域のドレスデンで始まったペギーダのデモは、同地域を中心にドイツ各地に拡散。週刊紙シャルリエブド本社襲撃など、１月にパリで起きた一連のテロ事件直後には、ドレスデンで２万５０００人を集めました。
　ドイツでは昨年、主に東欧諸国からの移民が４３万人、中東やアフガニスタンなどからの難民が２２万人と急増。ペギーダは〝移民・難民がドイツ人の仕事を奪っている〟と不安をあおり、排外主義を掲げました。
　ペギーダの本質が広く明らかにされたのは１月２１日。代表のルッツ・バッハマン氏がナチス・ドイツの独裁者ヒトラーのような口ヒゲをつけている写真を独紙ビルトが暴露。バッハマン氏がドイツの難民申請者を「見下げた野郎ども」「ごみくず」と言っていた事実も判明し、同氏は代表を辞任せざるを得なくなりました。
　後任のカトリン・エーテル氏ら５人の幹部も「バッハマン氏がまだ組織に影響力を行使している」と批判して２８日に辞任。別組織の結成を表明しています。
　ペギーダには批判の声も上がっています。メルケル首相は新年の演説で「キリスト教徒やユダヤ教徒がドイツの一員であるように、イスラム教徒もドイツの一員だ」「（ペギーダに）従ってはいけない。彼らの心は偏見と憎しみを宿している」と訴えました。
　またペギーダを人種差別、排外主義だとして抗議し、対抗するデモも各地で開催され、ペギーダのデモを上回る参加者が集まっています。ドレスデンでの対抗デモは１月２６日、ロック・コンサートを開き、ペギーダのデモを圧倒しました。
　しかし組織分裂後もペギーダはデモを継続しようとしています。極右・ネオナチは毎年２月１４日、１９４５年の同日に連合軍が実施したドレスデン空襲を「空爆テロ」だったと主張し、ナチスによる犯罪を免罪しようと、デモ・集会を実施しています。今年はどうなるか注目を集めています。
　（片岡正明）
( ２０１５年０２月０６日，「赤旗」)

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第２次世界大戦終結７０年／中国の元外交学院院長呉建民さんに聞く／侵略の美化をやめ正確な歴史伝えて

第２次世界大戦終結７０年の今年、日中関係や北東アジア協力をどう発展させていくのか、中国の駐フランス大使や外交学院院長などを務め、中国外交や国際情勢などについて積極的に発言している呉建民さんに聞きました。
　（北京＝小林拓也　写真も）

　第２次世界大戦をめぐって、日本にはいまだに、歴史認識問題が存在しています。

重要性認識を
　侵略の歴史を否定する動きは、当時の日本と同盟国だったドイツやイタリアでは基本的にありません。ところが、日本では首相が靖国神社に参拝するなど、絶え間なく問題になります。政治家が第２次世界大戦に対し正確な認識を持っていない国というのは、世界では日本以外にほとんどありません。
　日本に求められているのは、第一に、政府が「河野談話」と「村山談話」の国際社会とアジア諸国に対する重要性を認識し、ここから後退しないことです。同時に、侵略の歴史を美化し否定する一切の言動、とくに靖国神社への参拝をやめることです。
　第二に、過去に行った日中歴史共同研究で両国の研究者が共同で作成した成果に基づき、正確な歴史を日本国民、とくに若い世代に伝えることです。
　第三に、両国の国民、特に若い世代がお互いの国を訪れ、交流を深めることです。交流を通じて、過去の戦争への理解を深めることができます。
　戦後７０年の今年に期待するのは、「歴史を忘れず、未来に向かう」ことです。悲劇を繰り返させず、未来に向かって中日関係を発展させていくことです。中日両国は平和・友好・協力こそが唯一の道です。

中日韓協力を
　北東アジアの協力も重要です。とくに中日韓３カ国の協力が非常に重要です。どのように協力を進めていくのか。
　第一に、中日韓の経済協力や貿易を増やしていくことです。また環境問題やエネルギー、金融などさまざまな分野で協力を強めていくことです。
　第二に、危機に対して３カ国が共同で対応することです。いまこの地域の大きな危機は北朝鮮の核問題です。３カ国が協力して、外交を通じて解決することを期待します。
　第三に、領土問題などの矛盾や食い違いをうまくコントロールしていくことです。中日両政府による海上連絡メカニズム運用に向けた協議再開は歓迎すべきことです。
　欧州は、ドイツとフランスによる長い対立の歴史を乗り越えて、欧州連合（ＥＵ）をつくりました。
　問題は、ドイツがナチスを完全に清算したのに対し、日本は軍国主義を清算できていません。北東アジアの協力推進に、日本の歴史問題が障害になっているのは残念なことです。

　１９３９年生まれ。北京外国語大学フランス語学科を卒業し、中国外務省に入省。報道局長や駐フランス大使などを歴任し、２００３～０８年に外交官養成機関である外交学院の院長を務めました。
( ２０１５年０２月０６日，「赤旗」)

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対テロで協力強化へ／「イスラム国」批判／中ロ印外相会談

【北京＝小林拓也】中国、ロシア、インド３カ国の外相が２日、北京で会談し、３カ国間の協力を強めることで一致しました。
　コミュニケによると３外相は、過激組織「イスラム国」などのテロ行為を「国際平和と安全への脅威であり、反人類的行為だ」と批判。国連安全保障理事会の決議などに基づき協力してテロとたたかう必要性を強調しました。
　また「戦後７０年を記念すること」を国連の議事日程に乗せることを歓迎し、国連加盟国が関連の記念活動を開催することを支持すると表明しました。
　ロシアのラブロフ外相は同日、中国の習近平国家主席と会談。中国外務省によると、習氏は戦後７０年に関し、「両国は国際社会と共同して一連の記念活動を行い、両国が反ファシスト戦争で歴史的貢献をしたことを示そう」と呼び掛けました。ラブロフ氏は、両国が共に記念行事を行うことの意義を強調しました。
　習氏は、インドのスワラジ外相とも会談し、モディ首相の早期の訪中を歓迎すると表明。スワラジ氏は、モディ首相が年内に訪中することを期待していると応じました。
( ２０１５年０２月０４日，「赤旗」)

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阪神・淡路大震災２０年／たたかい生きる／医師をめざす震災遺児池田祥平さん（２３）見守るバイオリニスト松野迅さん

音楽と医学で癒やしたい
　３歳のときに阪神・淡路大震災に関連して母親を亡くした池田祥平さん（２３）はいま、大阪市立大学医学部４年生です。「多くの人の温かさに助けられて育ちました。今度は自分が社会の役に立ちたい」。臨床研究医を目指しています。ピアノも演奏する池田さん。１０年前、ポーランド政府が震災遺児を招いたツアーでバイオリニストの松野迅さんに出会います。以来、松野さんは池田さんの成長を見守り続けてきました。
　（内藤真己子)

　「母が頭から掛け布団をかぶせて抱きかかえてくれた。母親の体を通して揺れが伝わってきたのを覚えています」。２０年前の震災が池田さんの最初の記憶です。

○きっかけ
　母親の裕子さん＝当時（２６）＝は離婚し、１９９５年１月に兵庫県芦屋市で被災。同年４月、裕子さんは新任の美術教師として神戸市東灘区の本庄中学校に赴任しました。激震地にあった同校の教員には、授業以外に避難所の世話や宿直勤務の仕事があり、３カ月後、過労死しました。
　伯母と祖父母に育てられた池田さん。母の遺品のピアノに興味を示したことからピアノを習いはじめます。
　一方、松野さんも西宮市の稽古場兼住居が被災。震災直後の区画整理事業で移転を求められました。
　２００６年には松野さんの復興支援コンサートに池田さんが出演し、以来（日本大学）カザルスホール（東京都千代田区）や福祉施設などで共演を重ねてきました。
　小学生のころから生命科学に興味があったという池田さん。音楽か医学か進路を迷った末、医学の道に進みました。「人のために動くのは苦にならない。小・中学生でいじめにあい、逆に人の優しさが分かった」こともきっかけになりました。
　「ライフワークとして音楽をはなさないでほしい」。松野さんはアドバイスしました。
　「音楽は自分を守ってくれる存在」と語る池田さんは「音楽も医学も人を癒やすのが共通点」と話します。昨夏、再びポーランドに招かれ松野さんと共演、オランダやチェコを旅しました。ナチスが人体実験を行ったアウシュビッツ収容所にも足を運びました。
　「医学の名で残虐なことが起きました。人間の愚かさをまのあたりにしました。一番大切なのは患者さんを人として尊重する心。それは、生活や文化の豊かさによって得られます。音楽は欠かせない存在です」

○寄り添い
　雄弁で明るい池田さんですが、「荒れた」時期もあったと言います。そんな時期も松野さんはずっと寄り添ってきました。
　新しくなった松野さんの稽古場では、時間の許す限り演奏し、楽曲について語り合います。連絡も頻繁にとりあって意思疎通を密にしてきました。
　松野さんは「同じ時代を生きる仲間として、ともに歩んできました。私にも、これまで多くの先輩が手を差し伸べてくださった」と振り返ります。「音楽や芸術を通じて自然や生命の奥深さに触れてほしい」。松野さんの希望です。
( ２０１５年０２月０４日，「赤旗」)

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記憶の場所でアウシュビッツ強制収容所解放７０年式典／ジャーナリスト大内田わこさんのリポート

ポーランド・ビルケナウ／生存者の声、胸に刻む
　アウシュビッツ強制収容所解放７０年の記念式典が１月２７日、第２アウシュビッツと呼ばれるポーランド・オシフィエンチムの、ビルケナウ収容所跡地でおこなわれました。ジャーナリストの大内田わこさんのリポートです。

　まだ数日前の大雪が一面を覆うビルケナウ。ここは、ナチス・ドイツが、欧州全土からユダヤ人をはじめ、１３０万人もの人々を移送し、１１０万人あまりを殺し、焼いた殺人工場の跡地です。
　当時の鉄道の引き込み線や、死体を焼いたガス室跡が、いまも生々しく残る記憶の場所。たたずむと吹き付ける雪や風に乗って、無惨に命を絶たれた無数の人々の声が聞こえてくるような錯覚に陥ります。
　いま、ナチスの残虐行為を直接体験した人々が年々減少する中、記憶を次の世代にどのように伝えていくかが大きな課題です。

元囚人が語る
　メーン会場として、死の門の前に大きな白いテントがはられ、そこに、５０カ国の各国代表や、３００人の生存者とその家族などが集結。式典は午後３時半に始まりました。元囚人の高齢化が進み、これまでのような外での開催は無理との博物館側の判断です。
　そしてもう一つの特徴は、各国代表のあいさつをなくしたこと。「われわれが受け継ぐべき生存者や、目撃者が語る言葉に耳を澄まし、深く考える場にしよう」が、合言葉となりました。
　私たち一般参加者は、防衛上の問題もあり、そのテントに近づくことは禁止され、ビルケナウの林の前に設けられた野外の大型画面を見ながらの参加となりました。
　身も心も凍てつくような寒さとのたたかいをものともせず、１０００人あまりの人々が大型画面を食い入るように見つめ、元囚人３人の語る体験と、この悲劇を二度とくり返さないためにも、忘れてはならない、伝えていかなければならないという訴えに、涙したり、共感の拍手を送ったりしました。

私が受け継ぐ
　式典の終わりに、ピョートル・チュビンスキ博物館館長はこう呼びかけました。
　「まだ、私たちのまわりに、ナチスの蛮行の目撃者がいます。でももうこれが最後の式典になるかもしれません。私たち一人一人が自分に問いましょう。未来に向けて私たちの記憶をより成熟させていくことを。それは簡単なことではないかもしれない。しかし、ぜひ、やってほしいし、やり抜きましょう」
　参加者の一人、元囚人のボグダン・バルトニコスキさん（８３）は、１９４４年８月のワルシャワほう起に、子どもながら参加。母親とともにアウシュビッツに送られました。式典の感想を聞くと「こんなにも私たち元囚人のことを考えてくれてとてもうれしい。でも、私たちはお客ではない。二度とあのようなことをくり返させないためにも、ナチの犯罪を語り続けます」と力強く語りました。
　そして野外で式典を見つめた１４歳の少女は「ここへ来てよかった。とても寒かったけれど、私たちが記憶を受け継いでいくのだと､よくわかった｣と笑顔をみせました。

アウシュビッツ強制収容所
　ポーランド南部のオシフィエンチム（ドイツ語名アウシュビッツ）に１９４０年～４５年にかけてつくられた強制収容所の総称です。第２次世界大戦中にナチス・ドイツが行ったユダヤ人大虐殺の象徴とされます。アウシュビッツ第１強制収容所は４０年開設、４１年ブジェジンカ村（ドイツ語名ビルケナウ）に第２強制収容所が建設されました。
( ２０１５年０２月０３日，「赤旗」)

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月曜インタビュー／音楽評論家佐々木光さん／問い続ける音楽家の戦争協力／文化創造支える評論家の役割

９４歳の音楽評論家・佐々木光さんは、長年、独自の切り口と鋭い視点で評論活動を続け、日本の音楽界と真摯に向き合ってきました｡｢あの時代、音楽家はなぜ戦争に巻き込まれていったのか―」。戦後７０年の今、改めて問い直します。
　（中村尚代）

　昨年１２月に、戦前の音楽界の状況や自らの戦争体験をまとめた『音楽の戦争責任と現代』（ロシア音楽出版会）を出しました。戦争に協力した音楽ジャーナリズムや作曲家、演奏家の多くが反省をせず、戦後、音楽活動を再開したことについて触れています。

若い人たちに事実伝えたい
　「積極的に戦争協力した人、疑問を持ちつつも協力した人などさまざまですが、本当の思いを発言すれば弾圧され、みんな何も言えなくなった。音楽家もそう。どこに問題があったのか、なぜ反省できずにきたのか、僕の中では通奏低音のように鳴り響いています。国民がいつのまにか戦争に巻き込まれていった空気が、秘密保護法の危険が迫る今の状況と似ていて怖い｡だからこそ､最後まで言い続けていきたいんです」
　軍国主義が強まっていく中で、作曲家は戦意高揚のための軍歌や軍国歌謡を競って作るようになりました。本書では、戦前戦後の音楽界で中心的存在だった山田耕筰らの戦争協力や戦後の姿勢を問います。
　「山田耕筰は、『天皇も戦争責任を問われなかった』といって自分の責任も棚上げにしました。トップの作曲家が反省しなかったことで教え子たちも何も言わなくなった。その責任は大きい。音楽家が二度と戦争に協力しないためにも、音楽によって戦意をあおり、国民を戦争に巻き込んでいった事実を若い人に知ってもらいたい」
　ファシズムに抵抗したプロレタリア芸術運動の存在や国の統制のひどさに言及し、音楽界全体が〝たたかう力〟をつけることの重要性を語ります。

学校新聞さえ検閲の対象に
　幼いころから音楽好きだった佐々木さんは、中学時代、ヨハン・シュトラウスやショスタコービッチの作品に親しみました。自由な校風の文化学院へ進学し、作曲を学びながら学内の新聞編集に携わりますが、その学校新聞さえも事前検閲の対象になりました。
　「ものを書くことへの統制や圧迫はひどいものでした。〝平和がいい〟と思っても言えない。文字で書けないなら音楽で表現しようと考えて、本格的に作曲の道へ進もうと決めました」
　作曲の勉強をしながら大日本映画協会で働いていたとき、横須賀重砲兵の部隊に徴集されました。２１歳でした。
　「ロシアの作曲家リムスキー＝コルサコフの『管弦楽法原理』を持って入隊しましたが、一回も手をつけられなくて。兵隊生活を甘くみていたんでしょうね」
　すぐに中国の国境虎林へ送られ、終戦後はシベリアの収容所に抑留。厳寒の中、いくつもの生と死を見つめてきました。１９４７年に帰国して、作曲の勉強を再開しますが、同時に始めた文化関係雑誌の編集の仕事が忙しく、思うように進みませんでした。
　「自由にものが言えるようになったので作曲でなくてもいいかな、と。でも音楽の仕事はしたくて…」
　５２年に音楽旬報社を立ち上げて新聞「音楽旬報」を創刊。「クラシックを普及し、普及に値する音楽文化の創造を支えたい」と、約半世紀にわたって音楽の情報を市民に提供しました。武満徹、伊福部昭をはじめ、数多くの日本の作曲家の作品も取り上げてきました。
　「日本独自の音楽文化を切り開いていく作曲家や演奏家を後押しするというのは、評論家の大切な仕事。本当のことをみんなに分かるように書く。それが一番いいと考えます」

　ささき・ひかる　１９２１年生まれ。元「音楽旬報」代表・編集長。東京労音の設立に参画。９８年からフリーライターに。著書に『みんなで聴く音楽』、戦争体験記『国境の落日』（自費出版）ほか。
( ２０１５年０２月０２日，「赤旗」)

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ワイツゼッカー元独大統領死去

【ベルリン＝時事】ドイツ大統領府などによると、同国のリヒャルト・カール・フォン・ワイツゼッカー元大統領が１月３１日死去しました。９４歳でした。１９９０年のドイツ統一時の大統領で、新生ドイツの象徴として国民統合に力を尽くしました。
　８４年に旧西独の第６代大統領に就任。格調高い演説で知られ、ドイツの第２次大戦降伏から４０年となる８５年５月８日、「過去に目を閉ざす者は現在にも盲目となる」と語り掛けた連邦議会（下院）演説は戦争責任を直視し、戦後ドイツ史に残る名演説として国民の記憶に刻まれています。
　また、民主主義の原則と寛容の精神を訴える姿勢は国民の敬愛を集め、再選された８９年の大統領選では史上初めて対立候補が出ませんでした。
　南部シュツットガルト生まれ。第２次大戦に従軍。戦後は旧西独で法律を学び、弁護士事務所で研修中、ニュルンベルク裁判でナチスの外務次官だった父の弁護に関わりました。
　５４年にキリスト教民主同盟に入党し、６９年に下院議員に初当選しました。８１年に西ベルリン市長に就任し、同市長として初めて東独を訪問。８４年の大統領選で当選を果たしました。
　９４年の大統領退任後も、欧州連合（ＥＵ）の機構改革を話し合う「３賢人」や、ドイツ連邦軍の改革に関する委員会のメンバーに加わり、政治への関与を続ける一方、慈善活動に取り組みました。
( ２０１５年０２月０２日，「赤旗」)

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週間日誌／１５年１月２５日～３１日

政治・経済
　◆日本共産党国会議員団が政党助成法廃止法案を衆院に提出　総選挙での躍進で獲得した議案提案権を行使し、政党の劣化や堕落を招いている政党助成金制度の廃止を要求（２６日）
　◆沖縄県が新基地建設のための埋め立て承認を検証する第三者委員会を設置　２月第１週にも第１回会合を開き、前知事による承認に法的欠陥があったか結論が出るまで辺野古沿岸域での埋め立て作業を中断するよう沖縄防衛局に要請（２６日）
　◆沖縄防衛局が新基地建設の調査作業を強行　ボーリング調査のためコンクリート・ブロックを海に投入。県の許可がない違法工事(２８日)
　◆スカイマークが再生法申請　国内３位の航空会社スカイマークが民事再生法の適用申請。負債総額約７１０億円｡運航継続(２８日）
　◆１２月の消費者物価２・５％上昇　２０１４年１２月の消費者物価指数(生鮮を除く総合)は前年同月比２・５％上昇。１９カ月連続上昇。１４年平均は前年比２・６％上昇（３０日）

社会・国民運動
　◆「憲法破壊させない」国会前で共同行動　通常国会開会に合わせ終日、安倍暴走政治を許さない集会､デモ｡集団的自衛権行使容認の「閣議決定」具体化の法案阻止を掲げる「総がかり行動」に、２５００人が参加（写真＝２６日）
　◆汚染水放出反対、全漁連が国に要請　全国漁業協同組合連合会の岸宏会長は東京電力福島第１原発の放射能汚染水を安易に海へ放出しないよう、宮沢洋一経済産業相に要請（２７日）
　◆震災復旧舗装談合の疑いで１３社強制調査　東日本大震災で被害を受けた道路の復旧を含む舗装工事の入札で談合した疑いが強まったとして、公正取引委員会は独禁法違反（不当な取引制限）容疑で、業界大手のＮＩＰＰＯ（東京都）など舗装業者１３社を強制調査（２８日）

国際
　◆ギリシャ総選挙で反緊縮派が勝利　緊縮財政の是非が問われたギリシャ総選挙で反緊縮派の急進左派連合（ＳＹＲＩＺＡ）が第１党に躍進（２５日）。反緊縮派の右派政党・独立ギリシャ人党と連立合意（２６日）
　◆アウシュビッツ解放７０年で式典　ナチス・ドイツがユダヤ人ら約１１０万人を殺害したアウシュビッツ強制収容所跡（ポーランド）で追悼式典。独仏大統領、生還者らが他民族、他宗教を認める寛容さを訴え（２７日）
　◆ＡＳＥＡＮ外相会議が「イスラム国」非難　東南アジア諸国連合（ＡＳＥＡＮ）非公式外相会議がマレーシアのコタキナバルで開催。「イスラム国」を非難する声明を採択。１２月の共同体創設への課題、創設後のビジョンを協議（２８日）
　◆黒人差別への抗議、５４年ぶり有罪取り消し　米サウスカロライナ州の裁判所が、１９６１年に人種差別に抗議して白人専用軽食カウンターに座った黒人学生ら９人への有罪判決を５４年ぶりに取り消し（２８日）
　◆ＣＥＬＡＣ首脳会議が極貧解消目指す宣言　中南米カリブ海諸国共同体(ＣＥＬＡＣ)はコスタリカで開いた第３回首脳会議で｢５年で極貧を無くす｣と議長が提案(２９日)
( ２０１５年０２月０１日，「赤旗」)

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（1月ヘッドライン）

３1 中国外相「和解は正確な歴史認識から」

国際ホロコースト記念日／死と隣り合わせの日々／アウシュビッツ生還者が語る

国際ホロコースト記念日／「悲劇伝える」誓う／国連式典で参加者

国際ホロコースト記念日／憎しみ・不寛容なくそう／国連総長「再び試されている」

アウシュビッツ解放記念式典／ナチスの犯罪、胸に刻み７０年／「全ドイツ人に重要」大統領強調

アウシュビッツ解放７０年／悲劇繰り返さない／各地で式典

韓国外務省「反省とおわび」継承を

レーダー／サザンとヘイトスピーチ／表現の自由すえた番組に手応え

アウシュビッツ解放７０年／ガス室・犠牲者の靴・髪…ユダヤ人大虐殺の痕跡今も／ポーランド

ダボス会議／「違法取引防止を」／仏大統領訴え／対テロで企業に

反イスラムデモ代表辞任／ヒトラー顔まね写真流出／独

ナチ被害への賠償要求高まる／ギリシャ

２０

おはようニュース問答／仏週刊紙銃撃が波紋を広げているね

潮流

世界．ｎｅｔ／フランス連続テロ事件／暴力の連鎖ノン／全土でデモ４００万人／各国首脳も参加

にちようシネマ館／ジミー、野を駆ける伝説／イギリス・アイルランド・フランス

メディアをよむ／上田月子／戦後７０年振り返る週刊

二見元公明党副委員長と懇談／塩川・梅村両衆院議員／茨城・土浦

アウシュビッツ解放７０年行事にロ大統領不参加

『スターリン秘史―巨悪の成立と展開』第１巻を語る／人民戦線と「大テロル」が並行

銃撃犠牲者追悼／仏４００万人、テロに抗議／「反イスラムにノー」の声も

第２次世界大戦終結７０年／ベトナムの歴史学者・国会議員ズオン・チュン・クオック氏に聞く／ファシズム陣営を当時の日本が代表

シリーズ戦後７０年を考える／今も苦しむ軍「慰安婦」たち／関西学院大学元教授野田正彰さんにきく

躍進の土台に綱領の力／２０１５年党旗びらき志位委員長のあいさつ

１０

第２次世界大戦終結７０年／トビアス・バスキ氏に聞く／なぜ東南アジア諸国間に戦争がないのか

おはようニュース問答／戦後７０年「談話」逆流の台頭許さない

おはようニュース問答／戦後７０年、平和の日本・アジアをつくる年に

綱領を指針にさらなる躍進に挑戦しよう／２０１５年党旗びらき志位委員長のあいさつ

マスメディア時評／歴史の教訓をどう踏まえるか

シリーズ戦後７０年を考える／ドイツ／ベルリン州政治教育センター、ヨアヒム・メアフォートさん

十五年戦争期の京大学生運動／岩井忠熊著／評者広川禎秀大阪市立大学名誉教授

平和を願って／朗読

主張／戦後７０年の年明け／歴史に向き合い未来開く責任

（1月本文）

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31 中国外相「和解は正確な歴史認識から」

【北京＝時事】中国の王毅外相は２８日、北京訪問中のイスラエルのリーベルマン外相と会談しました。ナチス・ドイツによるホロコースト（ユダヤ人大虐殺）の象徴であるポーランド南部のアウシュビッツ強制収容所で２７日に解放７０年式典が開催されたのを踏まえ、「欧州にはアウシュビッツの事件があり、中国には南京大虐殺がある」と述べ、「真の和解は正確な歴史認識の上に構築されるべきだ」と強調しました。
　王外相はアウシュビッツ強制収容所、南京事件に関し、「共に人類歴史上の暗黒の１㌻だ」と指摘した上で「ユダヤ民族、中華民族および世界の多くの国家・人民はファシズムと軍国主義による侵略の被害を受けた」と語りました。
　さらに、今年が反ファシズム戦争勝利７０年であることに触れ、「歴史を振り返り、未来を展望する重要な契機」と語り、「われわれは前を見たいが、歴史の事実は否定できない」と強調。「歴史の教訓を心に刻み、第２次大戦の成果を守りたい」と訴えました。
( ２０１５年０１月３０日，「赤旗」)

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国際ホロコースト記念日／死と隣り合わせの日々／アウシュビッツ生還者が語る

ポーランド南部のアウシュビッツ強制収容所の生還者、ヨゼフ・パチンスキーさん（９４）が２４日までに収容所跡のあるオシフィエンチムで外国メディアの取材に応じ、死と隣り合わせだった収容所での日々について語りました。

　―収容された経緯は。
　当時ポーランド兵でしたが、政治犯として１９４０年６月、２０歳でアウシュビッツ収容所に送られました。到着時、生きられるのはせいぜい３カ月と告げられましたが、約４年半に及んだ収容所生活を生き抜きました。
　―収容所内での労働は。
　ナチス親衛隊のための美容室で働きました。所長のルドルフ・ヘスの髪を切ることになり、浴室で彼と２人になったときは緊張のあまり震えが止まりませんでした。何度も屋敷に通いましたが、言葉を交わすことはありませんでした。

試験的に大量殺害
　―ガス室のことは当時知っていましたか。
　４１年９月にガス室で試験的に大量殺害が行われた日を鮮明に覚えています。日中はそれぞれの持ち場で仕事に当たりますが、夜に収容棟で活発に情報交換していました。
　―なぜ収容所を生きて出られたのですか。
　親衛隊のために働かされていたポーランド人は皆若く、助け合おうという暗黙の了解がありました。薬局から医薬品を黙って取って来たり、食堂から食べ物を持ち出したりして分け合いました。親衛隊の中に親切な人がいたことも事実です。

私にとっての終戦
　―ソ連軍が迫る中、被収容者を移動させた「死の行進」が行われましたが。
　４５年１月に雪の中、オーストリアの収容所へ貨車や船で移動させられ、過酷な採石作業に従事しました。その年の５月６日は忘れられません。昼前に収容所の窓から米軍関係者の姿が見えたのです。思わず涙が込み上げました。その瞬間が私にとっての終戦でした。
　（オシフィエンチム＝ポーランド南部＝時事）
( ２０１５年０１月３０日，「赤旗」)

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国際ホロコースト記念日／「悲劇伝える」誓う／国連式典で参加者

【ワシントン＝島田峰隆】ナチス・ドイツによるホロコースト（ユダヤ人大虐殺）犠牲者を追悼する国際記念日（２７日）の式典が２８日、ニューヨークの国連本部で開かれました。国連関係者をはじめとする参加者は、人種や宗教に基づく差別や偏見、暴力の根絶を訴え、「悲劇を二度と繰り返さない」と誓い合いました。

　戦後７０年の今年、式典のテーマは「自由、いのち、ホロコースト生還者から受け継ぐもの」とされました。
　国連の潘基文（パン・ギムン）事務総長は開幕演説で、２０１３年秋にホロコーストの舞台となったポーランド南部のアウシュビッツ強制収容所跡地を見学したことに触れ、「その犯罪の規模は現在でも衝撃的なものだ」と指摘。７０年前に国連を創設した人々の念頭にはホロコーストの恐怖があったとし「人間の尊厳を守る決意が国連憲章に書き込まれた。それが国連の活動の特徴になってきた」と強調しました。
　潘氏は一方で「今も世界は多くの課題に直面している」として、過激主義や反ユダヤ主義に基づく偏見や暴力、イスラム教への攻撃などを挙げました。「過去に失ったものを思い出し、現在の危険を考えれば、今やらなければならないことが分かる」と語り、人権や民主主義の尊重、テロや挑発とのたたかい、異なる宗教間の対話、次世代への教訓の伝承などを呼び掛けました。
　国連総会のデニ・アントワーヌ副議長も「われわれはホロコーストのような悲劇が二度と起こらないようにする義務がある」「教訓を引き出し、それを現在と将来の世代に伝える集団的な責任がある」と力を込めました。
　式典にはホロコースト生還者、イスラエルのリブリン大統領らも出席しました。
　国連は０５年１月、アウシュビッツ収容所解放６０年を記念して特別総会を開催し、同年１１月、毎年１月２７日を国際記念日とするよう決議。以来、毎年この日に式典を開いてきました。今年はニューヨークで大雪が予想されたため、１日順延して開催されました。
( ２０１５年０１月３０日，「赤旗」)

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国際ホロコースト記念日／憎しみ・不寛容なくそう／国連総長「再び試されている」

【ワシントン＝島田峰隆】潘基文（パン・ギムン）国連事務総長は２７日、今年発足から７０年を迎える国連の使命は「第２次世界大戦とホロコースト（ユダヤ人大虐殺）の悲劇を踏まえて決められた」と語り、戦後７０年の今こそ「憎しみや不寛容の根源をなくす努力を強めよう」と訴えました。ナチス・ドイツによるホロコースト犠牲者を追悼する国際記念日のメッセージで述べました。
　潘氏は、世界で宗派間対立や反ユダヤ主義、少数派への偏見などが増えているとして懸念を表明。「人類は団結してナチスの脅威とたたかった。今日、われわれは再び試されている」と強調し「人々はどこでも、不和のサイクルを止め、人を包み込み相互に尊重する世界をつくるために団結しなければならない」として、この面で国連の活動を強める決意を示しました。
　ザイド・フセイン国連人権高等弁務官は２６日の声明で、「ホロコーストと第２次世界大戦の結果つくられた国連憲章は、新しい〝あるべき世界の姿〟を目指している」と強調。国際法に基づいて自由、尊厳、平等などの人権を誰もが行使できる世界をつくることを呼び掛けました。
( ２０１５年０１月２９日，「赤旗」)

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アウシュビッツ解放記念式典／ナチスの犯罪、胸に刻み７０年／「全ドイツ人に重要」大統領強調

アウシュビッツ強制収容所がソ連軍に解放されてから７０年の２７日、収容所跡が残るポーランド南部のオシフィエンチムで記念式典がありました。ホロコースト（ユダヤ人大虐殺）の生還者ロマン・ケントさんは、約３００人の参加者を前に「７０年を経てもなお、当時の日々のむごたらしさは私の胸に刻まれている」と訴えました。

　他の生還者も、飢え、病気、虐待や殺害を待つ恐怖の体験を振り返り、「政治家はナチスの残虐さを思い起こし、（他民族や他宗教を認める）寛容さのためにたたかってほしい」と呼び掛けました。
　ドイツ連邦議会では２７日に式典が開かれ、ガウク大統領が「アウシュビッツはドイツに住むすべての市民にとって重要だ。ドイツ人としての自己認識は、アウシュビッツを核とすることなしには成り立たない」と強調しました。
　アウシュビッツには１９４０年から欧州各地のユダヤ人、少数民族ロマ、同性愛者らが連行され、１１０万人がガス室などで殺害されました。１９４５年１月２７日の解放時に生存していたのは、わずか７０００人。ホロコーストによって殺害されたとされるユダヤ人約６００万人の象徴となっています。
　国連は２００５年、１月２７日を国際ホロコースト記念日と定めました。
( ２０１５年０１月２９日，「赤旗」)

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アウシュビッツ解放７０年／悲劇繰り返さない／各地で式典

第２次世界大戦中にナチス・ドイツがユダヤ人など少なくとも１１０万人を虐殺したポーランド南部のアウシュビッツ強制収容所が解放されてから７０年となった２７日、各地で二度と悲劇を起こさない決意をこめた式典や集会が開かれました。
　　アウシュビッツ強制収容所のあったオシフィエンチムでの追悼式典には、生還した約３００人、ドイツのガウク大統領、フランスのオランド大統領ら５０カ国の代表が出席。今回の式典は「多くの生還者が参加できる最後の節目」（アウシュビッツ博物館）と位置付けられています。
　ポーランドのコモロフスキ大統領は式典で、「ナチス・ドイツはわがポーランドをユダヤ人の墓地に変えた。アウシュビッツは憎悪と暴力の地獄だった｣と語りました｡
　一方、ドイツのメルケル首相は２６日、ベルリンでの追悼集会で、「ナチスの残虐さを思い起こすことはドイツ人の恒常的な責任である」と演説。「ドイツは宗教や出身地、民族の区別なく、自由で安全に生きられる国でなければならない」と右翼の排外主義を警告しました。
　（片岡正明）
( ２０１５年０１月２９日，「赤旗」)

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韓国外務省「反省とおわび」継承を

【ソウル＝時事】韓国外務省報道官は２７日の記者会見で、日本の戦後７０年談話に関し「日本政府は歴史を直視し、歴代首相談話の核心的内容を削れば国際社会と周辺国がどう反応するかを熟考すべきだ」と述べました。戦後５０年の「村山談話」や６０年の「小泉談話」と同様、植民地支配と侵略についての「反省とおわび」を今回も盛り込むべきだとの考えを示しました。
　報道官は、ドイツのメルケル首相が第２次大戦でユダヤ人らがナチスに殺害されたアウシュビッツ強制収容所の解放７０年に際し、「人道主義に反する犯罪は時間がたっても消えはしない」と発言したことを紹介。日本政府が「ドイツの指導者が一貫して示してきた歴史に対するざんげと反省から教訓を得ることを願う」と強調しました。
( ２０１５年０１月２８日，「赤旗」)

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レーダー／サザンとヘイトスピーチ／表現の自由すえた番組に手応え

ＮＨＫで政治家ネタが没になったと、民放ラジオで告白した爆笑問題。サザンオールスターズは「紅白歌合戦」で、つけヒゲで登場しました。その後、どちらも「反省」「謝罪」を公言しました。しかし、これで決着となると何とも、ふに落ちません。
　在特会系を名乗る団体が、サザンの所属事務所へ押しかけて圧力をかけたことが明らかになっています。民族や人種差別をあおるヘイトスピーチ（差別扇動行為）を各地で展開しているのが在特会です。暴力的ともいえる言動が文化、芸能にも及んでいることを示しました。
　ＮＨＫテレビ「クローズアップ現代」が１３日、ヘイトスピーチの問題を取り上げました。過激に聞こえていても、内向きで内容は乏しく、日本のビジョンを語っていないことを指摘します。「暴走する言葉の先に何があるのか」として、ナチス・ヒトラーによるユダヤ人虐殺が、言葉による攻撃から始まったと説明しました。
　「自分たちの国が１００％正しく、美しく、相手が悪いんだとなったら社会全体が多様性を失う。暴力的な方向へ近づく」。作家・保阪正康さんの話です。現政権の進めようとする方向への警鐘と聞こえました。
　ＴＢＳラジオ「たまむすび」では１３日、アメリカ在住の映画評論家町山智浩さんが出演。日本で公開の見込みがない映画「アンブロークン」について話しました。主人公は、戦争で日本軍の虐待にあった元米兵。なぜ、公開できないのか。町山さんは、一部週刊誌が「『反日的』と騒いだ」からだといいます。米国で実際に見た町山さんは、「日本が悪いという映画ではない。自分をひどい目にあわせた相手を許す物語です」。
　「反日」と決めつけ、「間違った情報を流すいやな世の中になっている。サザンが愛と平和を歌ったら抗議される」と町山さん。
　１８日のＴＢＳテレビ「サンデーモーニング」は、「表現の自由にキシミが出てきた」として、ヘイトスピーチ、秘密保護法、サザンの「謝罪」をあげました。表現の自由は弱者のためのものであるのに、強者のための自由になっていないかと問いかけたことにはうなずけます。
　表現の自由の問題を真正面にすえた番組がさらに続いてほしいところです。
　（辺）
( ２０１５年０１月２６日，「赤旗」)

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アウシュビッツ解放７０年／ガス室・犠牲者の靴・髪…ユダヤ人大虐殺の痕跡今も／ポーランド

【オシフィエンチム（ポーランド南部）＝時事】第２次世界大戦中、ナチス・ドイツが行った約６００万人に上ると言われるユダヤ人大虐殺の象徴の地、ポーランド南部オシフィエンチム（独語名アウシュビッツ）の強制収容所が旧ソ連軍に解放されてから２７日で７０年になります。現場は国立博物館となっており、想像を絶する非人道的殺害の痕跡が今も残されています。

　ポーランド南部の中心都市クラクフから車で約１時間。民家が点在し、針葉樹林や冬枯れた木立が所々に広がる地域に強制収容所跡はあります。
　博物館はアウシュビッツ第１と第２（ビルケナウ収容所）の二つから成り、広さは計約１９０㌶。敷地内に入ると、れんが造りの建物が整然と並びます。殺害用のガス室内は地下壕（ごう）のようで、造りの荒いコンクリート壁が四方を囲み、冷たい空気が空間を満たします。
　展示された被収容者の靴数万足やかばん、眼鏡、布地用に切り取られた犠牲者の髪約２㌧が生々しい。
　アウシュビッツ収容所は１９４０年の設立から徐々に規模を広げ、最終的にユダヤ人を中心に約１１０万人を殺害。各地の収容所の中で最多の犠牲者を出しました。多くは到着と同時にガス室に送られました。最終的に生還できたのはわずか１０人に１人でした。
　ドイツ生まれで、収容所生活を生き抜いたハインツ・ヘスデルファーさん（９１）は取材に対し、「『ここへは門から入り、出られるのは煙突からだけだ』と毎日言われていた」と語りました。宣告された半年間の収容所生活の途中で命を落とさなくても、最後はガス室送りになるという話も聞かされていたといい、過酷な精神状態を強いられていたことをうかがわせました。
　解放７０年の２７日には、大規模な式典が収容所跡で開かれます。
( ２０１５年０１月２６日，「赤旗」)

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ダボス会議／「違法取引防止を」／仏大統領訴え／対テロで企業に

【ダボス＝ロイター】フランスのオランド大統領は２３日、スイスで開催中の世界経済フォーラム年次総会（ダボス会議）で演説し、世界的企業の代表らに対し、テロリズムとたたかうためマネーロンダリング（資金洗浄）や違法な取引の防止で協力するよう求めました。
　オランド氏は「いま犯罪者をのさばらせておくと、将来あなた方が襲われかねない」と指摘。政府だけでテロとたたかうことはできないと述べました。
　企業代表らに対し、人身売買や麻薬、商品の違法取引を根絶し、タックスヘイブン（租税回避地）を摘発することで、テロリストの資金源を干上がらせねばならないと強調。欧州連合（ＥＵ）加盟国に対しても、航空機搭乗者のデータベース化で合意するよう求めました。
　ケリー米国務長官も同日、ダボス会議で演説。フランスやパキスタン、ナイジェリアなど各地でイスラム過激組織が武装攻撃を行っていることについて、「こうした活動を決して許すことはできないし、対抗する必要がある。全身全霊を傾けてやめさせねばならない」と強調しました。
　ケリー氏は過激組織による暴力の拡大を抑えることを、第２次世界大戦の反ファシズムのたたかいになぞらえ、「文明社会がこうした暴力に直面してもひるまないことを明確にすることが第一だ」と述べました。
　同時に、一部のイスラム勢力による犯罪に対し、イスラム教徒全体を非難してはならないと強調しました。
( ２０１５年０１月２５日，「赤旗」)

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反イスラムデモ代表辞任／ヒトラー顔まね写真流出／独

【ベルリン＝時事】ドイツ東部ドレスデンでの反イスラム化デモを率いてきたルツ・バッハマン氏が２１日、ナチス・ドイツの独裁者ヒトラーの顔まねをした写真が流出したことなどを受け、デモ主催団体「ペギーダ」の代表を辞任しました。
　バッハマン氏が口ひげに七三分けの姿で撮影された写真が独紙に掲載されると、批判が殺到。かつてフェイスブックで難民を「けだもの」とののしっていたことも報じられ、追い詰められました。
　イスラム系移民の受け入れ阻止を訴えるバッハマン氏のデモに対し、ドイツでは反発が強まっていました。バッハマン氏は最近、自分たちはネオナチとは違うと強調したばかりでした。
( ２０１５年０１月２３日，「赤旗」)

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ナチ被害への賠償要求高まる／ギリシャ

２５日投票の総選挙を前に、ギリシャでは、第２次世界大戦中にナチス・ドイツによる侵略を受け、占領下に置かれたことへの損害賠償を求める動きが強まっています。
　ドイツ・メディアなどによると、ギリシャの日曜紙「トビマ」はこのほど、ギリシャ政府が、第２次世界大戦中のナチス・ドイツによる占領に対する損害賠償金として約１１０億ユーロ（２０日時点で１ユーロ＝１３７円）を検討していたと報じました。
　同紙１１日号によると、ギリシャ政府が１月初旬に損害賠償金として検討していたのは、ナチス・ドイツがギリシャを占領した際に、ギリシャのかいらい政権をつくり、その中央銀行に貸与した４億７６００万ライヒスマルク（１９２４～４８年のドイツの通貨単位）で現在の欧州単一通貨ユーロに換算すると１１０億ユーロ。このお金はナチス・ドイツのギリシャ占領のために使われました。
　戦後の１９６０年代、ドイツはギリシャに１億１５００万マルク（約５８億円）を戦争犯罪に対する賠償金として支払いました。以後、ドイツ政府はギリシャ占領に関連した賠償の問題は解決済みだとしています。
　ギリシャは２０１３年４月にも当時のアブロモプロス外相が議会で「厳しい占領期間中のギリシャ人の苦痛に関する正義・真実の回復が必要だ」と訴え、「賠償金をギリシャは諦めていない」とドイツに賠償を求める考えを示しています。
　今回、総選挙で第１党になるとみられている野党の急進左派連合（ＳＹＲＩＺＡ）のツィプラス党首は、過去にドイツに対し、賠償を求める発言を繰り返しています。同党が第１党になり、政権入りした場合には、この問題が取り上げられる可能性があります。
　（片岡正明）
( ２０１５年０１月２２日，「赤旗」)

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２０ おはようニュース問答／仏週刊紙銃撃が波紋を広げているね

ふゆみ　フランスの風刺週刊紙で起きた銃撃事件は衝撃だったね。
　のぼる　パリ出身のアルジェリア系フランス人の犯行だった。犯人は射殺されたけど、イエメンの「アラビア半島のアルカイダ」という過激組織が犯行声明を出した。

４００万人がデモに
　ふゆみ　犠牲者の追悼やテロ反対を訴えて、事件から４日後にフランス全土で４００万人の大デモがあったというのもすごいわね。フランスがナチスの占領から解放されたときのデモの人数を上回ったそうじゃない。
　のぼる　なんといっても表現の自由を暴力で圧殺しようとしたのは許されない。それだけ市民の強い怒りが表れた。
　ふゆみ　週刊紙シャルリエブドというのは、イスラム教の預言者ムハンマドを風刺画に描いたりして、イスラム過激派から「冒涜（ぼうとく）」だとして目の敵にされていたそうね。
　のぼる　テロが許されないのは当然だけど、多くのイスラム教徒を傷つける表現には強い批判があった。
　ふゆみ　移民の多いフランスでは人口の８％がイスラム教徒。一緒に社会をつくっていくうえでは、言論の自由だからといってイスラム教を敵視するような論調は行き過ぎだと思うな。
　のぼる　シャルリエブドは、支援を受けて事件から１週間後に特別号を発行した。また表紙にムハンマドの風刺画を載せたんだ。「論調は変えない」と編集長は言っていたそうだけど…。
　ふゆみ　オランド仏大統領は、国民の団結がテロに対処する「最大の武器」だと言ったそうだけど、社会の亀裂が深まりそうで心配だな。

特別号に非難も
　のぼる　特別号の表紙にはイスラム社会からも強い非難が出ている。
　ふゆみ　そもそもイスラム教徒の住む中東や北アフリカなどは、西欧が植民地として過酷な支配を敷いた歴史がある。アメリカがアフガニスタンやイラクで起こした戦争も多くの人命を奪い、現地の社会に深い爪あとを残した。
　のぼる　過激主義を克服し、テロの温床をつくらないためにも和解の努力が必要だ。
　ふゆみ　互いの宗教、価値観を尊重しあえるようにならないとね。
　〔２０１５・１・１９（月）〕
( ２０１５年０１月１９日，「赤旗」)

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潮流

露天風呂に山歩き、正確な鉄道と四季の自然、新鮮な魚料理や源氏物語。前駐日ドイツ大使のフォルカー・シュタンツェルさんが挙げた、もう一度日本で味わいたいことの例です▼昨年までの４年間、大使を務めたフォルカーさん。子どもの頃から日本に興味をもち、２３歳の時に留学生として来日。ヒッチハイクで各地を旅しました。この国の文化や人間性にひかれ、ブログにつづった「大使日記」をもとに本を出しました▼関心を抱いたきっかけは学校で教わった原爆の悲惨さと反核運動でした。世界が反核平和で連帯するイースターデモを知り、自分も参加。広島や長崎にも足を運びました▼著書の中に「隣国と和解するということ」と題した文章があります。戦後、訪独したドゴール仏大統領は若者たちに「あなたたちと私たちの国の若い世代が、一緒に平和な将来をつくりなさい」と呼びかけました。そのとき〝宿敵同士〟も友人になれるんだと▼３年前の独仏和解５０周年の記念式典。オランド仏大統領とメルケル独首相は、ドゴールが語りかけた同じ場所に立ち友情を認め合いました。先日も反テロのデモで腕を組む姿を示したばかりです▼ベルリンに住む日本人の知人は「日本とアジアでは見られない光景」と嘆きました。政権を担う者が歴史をゆがめ、隣国とまともな会話さえできない現実。誰もがナチスの蛮行や戦争への強い後悔と、和解を望んでいたというフォルカーさんの言葉に、その出発点にも立てない苦々しさが募ります。
( ２０１５年０１月１９日，「赤旗」)

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世界．ｎｅｔ／フランス連続テロ事件／暴力の連鎖ノン／全土でデモ４００万人／各国首脳も参加

世界を震撼（しんかん）させたフランスの連続テロ事件（７～９日）。１７人が犠牲となり、容疑者３人は射殺されました。１１日には仏全土で４００万人のデモが繰り広げられました。何が起きたのか。その背景は―。

　パリのデモには５０近い各国首脳を先頭に約１５０万人が参加。鉛筆などを掲げ言論の自由を守れと訴えました。「１９４４年のナチス・ドイツ支配からのパリ解放を上回る」デモとなりました。
　今回の事件の発端は、風刺週刊紙「シャルリー・エブド」本社襲撃でした。アルジェリア系フランス人のサイド・クアシ（３４）、シェリフ・クアシ（３２）兄弟が同紙編集会議を襲い、編集長や風刺漫画家など１１人を射殺しました。
　兄弟は警官１人も射殺。逃走時に「（イスラム教）預言者ムハンマドの復讐（ふくしゅう）だ」と叫びました。
　ロイター通信によれば兄弟は２０１１年８月に中東・イエメンを訪問。テロ組織「アラビア半島のアルカイダ」（ＡＱＡＰ）のアウラキ説教師と会い、射撃訓練を受けます。仏紙によれば兄弟は仏情報機関ＤＧＳＩの監視下に置かれたものの、昨年夏までに解除されました。
　兄弟による射殺事件と並行して、西アフリカ・マリ系フランス人のアメディ・クリバリ容疑者（３２）が警官１人を射殺後、ユダヤ系商店に立てこもり４人を殺害しました。同容疑者はクアシ兄弟と連携し、武装集団「イスラム国」の支援を受けていると表明。内縁の妻はシリアのイスラム国支配地域に逃げたとみられています。
　ＡＱＡＰとイスラム国は、０１年以降の米国主導の「対テロ世界戦争」に対抗して誕生。「対テロ」名目の戦争がテロを拡散する悪循環となっています。
　潘基文（パン・ギムン）国連事務総長は１１日、声明を発表。「いかなる理由もテロ行為を正当化しない」とし、「イスラム教徒を報復の標的にするな。それはテロリストの術中に陥り、暴力の連鎖をもたらすだけだ」と訴えました。
　オランド仏大統領も９日、「われわれの分断を図る全てに抵抗すべき。狂信者や過激主義はイスラム教とは無縁だ」と強調しました。
　シャルリー・エブド紙はこれまでムハンマドの風刺画を掲載。「親より大切とされる預言者への冒涜（ぼうとく）だ」とイスラム教徒から反発も出ていました。
　坂口明記者
(２０１５年０１月１８日，「赤旗」)

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にちようシネマ館／ジミー、野を駆ける伝説／イギリス・アイルランド・フランス

「麦の穂をゆらす風｣のケン･ローチ監督が、故郷に自由の風を吹かせようとした実在人物を描きました。
　１９３２年、１０年ぶりに米国からアイルランドの村に帰郷したジミー（バリー・ウォード）は、仲間と集会所を再建。新しい音楽やダンスなどの文化活動で村人は活気づきます。教会は左翼活動ではないかと警戒し参加者を名指しで批判します。ジミーは神父に協力を求めて拒否され、ファシストたちが動き出し…。
　文化を楽しんで老いも若きもわくわく。民衆の喜びの連帯を阻もうとする勢力の陰険さ。ジミーと昔の恋人との切ない愛。自由な生き方を求めて自転車で駆け抜ける青年たちが明日を感じさせます。
　（石）
(２０１５年０１月１８日，「赤旗」)

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メディアをよむ／上田月子／戦後７０年振り返る週刊誌

戦後７０年、週刊誌も年頭からさまざまな特集を組んでいます。
　「あの頃、エライ人がよく、『国のために死ねるのは若者の特権だ』と訓話をやっていました。若者たちは、まるで全国民におどかされて死に赴いているようだった」
　こう言うのはラバウルの戦闘で片腕を失った漫画家の水木しげるさん。成人の写真といえば、軍服姿で撮ったものだけとのことです。（週刊文春１５日号）
　愛知県に住む板津忠正さんは、特攻隊員でしたが、エンジントラブルや悪天候のため、生き残りました。終戦後、悲劇を繰り返さないために正確な記録を後世に残したいと、遺族のもとを訪ね歩き、手紙や遺影を集めました。（週刊ポスト１６、２３日合併号）
　その結果、知覧特攻平和会館(鹿児島県)には、陸軍特攻隊１０３６人全員の遺影が掲示され、その下には、家族・知人に残した遺書・手紙・辞世・絶筆等が展示されています。
　まだ１０代の長谷川三郎少尉（１９）は、母に「三ちゃん」という一人称で遺書を。先立つ不孝を詫び、遺書の最後は「母上様御身体に注意してください」と締めくくっています。
　ファシズム体制を批判する遺書も。上原良司大尉（２２）は、敗れたイタリアやドイツに触れ、「今や権力主義国家は、土台石の壊れた建築物のごとく次から次へと滅亡しつつあります」。
　サンデー毎日は、戦中は「敵性語」だからと「週刊毎日」の題字になっていました。玉音放送の日に新聞社を辞したむのたけじ氏は、戦時中、「新聞自身が『見ざる聞かざる言わざる』の姿勢に陥り、それが今なお克服できていない」と指摘します。（１８日号）
　安倍政権は集団的自衛権の行使を容認して若者たちを再び死地に送ろうとしています。しかし、それは国家による殺人であり、断固阻止すべきです。そのために、事実に基づき戦争の悲惨さを伝え続けることをメディアに求めます。
　（うえだ・つきこ＝弁護士）
(２０１５年０１月１８日，「赤旗」)

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二見元公明党副委員長と懇談／塩川・梅村両衆院議員／茨城・土浦

昨年１２月の総選挙比例北関東ブロックで当選した日本共産党の塩川鉄也、梅村さえこ両衆院議員は１３日、元公明党副委員長で運輸大臣を務めた二見伸明氏を茨城県土浦市の自宅に訪ねて懇談しました。総選挙と同日投票の茨城県議選で当選した山中たい子、上野高志両県議も同行しました。
　塩川、梅村両氏は、今回の総選挙・県議選で日本共産党への期待を表明した二見氏に選挙結果を報告し、今後の決意をのべました。
　二見氏は、終戦間近の１９４５年に東京から伊香保（いかほ＝群馬県）や蕨（わらび＝埼玉県）に疎開したこと、父親が召集された後、妊娠中の母親と空襲の中を逃げ回った体験を紹介。「戦争はこりごり」と語り、集団的自衛権の行使を容認した安倍政権の危険性に言及し「私の孫子の時代に戦争になったら大変だ」と「しんぶん赤旗」への登場を決意した経過を語りました。
　「今、安倍首相の暴走に、多くの国民が危うさを感じています」と語る塩川氏に二見氏は、「ファシズムは怖い顔をして来ない。女神みたいな格好をして来るんだ。いつの間にか、危ない方向に行く。戦前がそうだったようにね」と応じました。
　塩川、梅村両氏は、国会での論戦をはじめ安倍暴走政治と正面から対決する決意と、今後の共同を語り合いました。
( ２０１５年０１月１５日，「赤旗」)

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アウシュビッツ解放７０年行事にロ大統領不参加

【モスクワ＝時事】ロシアのペスコフ大統領報道官は１３日、ポーランド南部で２７日に行われるアウシュビッツ強制収容所解放７０年記念式典に、プーチン大統領が出席しないと明らかにしました。インタファクス通信が伝えました。
　アウシュビッツはナチス・ドイツによるホロコースト（ユダヤ人大虐殺）の舞台となり、ソ連軍が解放しました。ロシア大統領不参加には、ウクライナを支援するポーランドとの関係悪化が影を落としている可能性があります。
　ペスコフ報道官は、プーチン大統領が記念式典を極めて重要な行事とみなしていると強調しながらも「大統領の予定に（アウシュビッツ）訪問は含まれていない」と説明。ポーランド側から招待状を受け取っていないとも述べました。
( ２０１５年０１月１５日，「赤旗」)

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『スターリン秘史―巨悪の成立と展開』第１巻を語る／人民戦線と「大テロル」が並行

神戸女学院大学教授石川康宏さん／党社会科学研究所所長不破哲三さん／党社会科学研究所副所長山口富男さん
　日本共産党の不破哲三・社会科学研究所所長が『前衛』で好評連載中の「スターリン秘史―巨悪の成立と展開」をまとめた第１巻が、昨年１１月に刊行されました。テーマは「統一戦線・大テロル」。不破さんと石川康宏・神戸女学院大学教授、山口富男・社会科学研究所副所長の３人に、本の読みどころなどを語ってもらいました。

覇権主義の角度から「巨悪」の全貌に迫る

　―最初に不破さんから、今回の研究の意義をお話しいただければと思います。
　不破　ソ連の大国主義・覇権主義との闘争のなかで、１９８２年に「赤旗」に「スターリンと大国主義」を連載したのですが、その時は公開の資料しかありませんでしたから、肝心の１９３０～４０年代の問題はごく簡潔にしか書けませんでした。
　ソ連崩壊後、流れ出てきた内部資料を使ったスターリン問題の研究や著作が世界的にずいぶん出ましたが、大量テロルや独裁など国内問題が中心で、国際的視野で覇権主義を研究したものはほとんどなかったのです。この角度からの仕事は、ソ連の覇権主義とたたかってきた私たちしかやれないと思って取りかかりました。

『ディミトロフ日記』をタテ糸、内外資料をヨコ糸に
　不破　その直接のきっかけとなったのは、『ディミトロフ日記』に出合ったことでした。ベトナム共産党とコミンテルンの関係を書いた日本の研究者の著作（２００５年）を読んでいたら、コミンテルンの解散の２年以上も前に、スターリンがディミトロフに解散を促していたという話が出ていたのです。初めて聞く話で、典拠をみると、『ディミトロフ日記』からの引用でした。英文を手に入れて読んでみると、これまで謎だと思っていたいろいろなことが、思わない形で解けてゆくのですね。
　スターリンは完全な独裁者でしたから、側近にも担当分野のことは知らせても自分の考えや方針の全体像は知らせない。重要な決定でも会議で決めるわけではないから、記録も残らない。だから生の記録は本当に少ないのです。そのなかで、ディミトロフは１９３４年から１９４８年までの約１５年間、スターリンの近くにいて、自分が聞いたスターリンの発言は、忠実に『日記』に書いていました。このようにスターリンの言動を直接記録したものはほかに例がありません。
　スターリンはディミトロフにも自分の真意は明かさず、いつも政略的に対応しているのですが、ともかく『日記』からはその時々のスターリンの肉声が聞こえるのです。これをタテ糸に、内外の資料をヨコ糸にして編みあげれば、スターリンの覇権主義の実態が分かると考えて研究し、『前衛』で連載を始めたのが一昨年の２月号、やっと今年７月号（第３０回）で完結するところまできました。
　山口　スターリンの覇権主義の問題を中心に、各国の内政から外交、国際政治、戦争史に話が及ぶ大きな歴史研究ですね。研究の舞台となった国と登場人物は、ざっと見ても、十数カ国、数百人規模でしょう。
　スターリンによる戦慄（せんりつ）すべき事実の数かずが明らかになるわけですが、決して暗い読後感で終わらない。科学的社会主義の事業に対する誤解や疑問の発生源の一つになっている巨悪を、正面からとらえて実像を明らかにし、乗り越える姿勢がすわっているから、読んで面白いのだと思います。
　石川　特に関心を持っているのは、１９３０年代に大きく変質したとされるソ連社会が一体どういう社会だったかについてです。ポスト資本主義をめぐる議論の中には、ソ連＝「社会主義」＝「あんな社会になりたくない」という議論が強く残っています。それに対し、社会主義とも、そこへの過渡期とも、縁もゆかりもない社会だったといわれる意味を、より深く理解したいと思っています。（Page/Top）
　２０１３年に行った「『古典教室』を語る｣鼎談（ていだん)の際､不破さんは覇権主義の問題でソ連やスターリンに対する認識が深まっていった過程を話されました。そこを、もう少しうかがえればと思うのですが。
　不破　スターリン批判は、彼の死後間もなく、ソ連で開始されたのですが、覇権主義の批判は完全に欠落していました。私自身は、１９６４年３月、党本部の任務に就くまで、世界の共産主義運動のなかでソ連はしかるべき役割を果たしていると思っていました。学生のころは、スターリンの著作やスターリン公認の『ソ連共産党小史』をいちばん熱心に勉強したほうでした（笑い）。党本部に来て初めて、ソ連と激烈な水面下の闘争が始まっていて、相手はまさにソ連の大国主義・覇権主義の無法だということが分かったのです。それまでイギリスの歴史家Ｅ・Ｈ・カーの本などはかなり読んでいましたが、一番の転機は、スターリンの後継者たちの覇権主義とのたたかいの中で、そういう目でソ連とその歴史を見たことでした。
　石川　なるほど、半世紀にわたる問題意識と研究の集成ということですね。

スターリンの言動の真意を探究する
　山口　そこには、独特の特徴もありますよ。タテ糸にした『日記』を徹底的に読み込むと同時に、それだけでは分からない歴史の脈絡を、ヨコ糸にした関連文献の利用でつかんでゆくのです。例えばコミンテルン第７回大会（１９３５年）での反ファシズム統一戦線への路線転換のさいに、なぜディミトロフが登場してくるのか。スターリンの真意はどこにあったのか。その節目や相互関係が、「なるほどそうだったのか」という感じで明らかにされる。それに、読者とともに問題を考えるという研究スタイルが貫かれているので、話にスーッと、引き込まれます。
　不破　脈絡をつかむことに関連するのですが、スターリンはディミトロフに対するときも、どうしたら彼を心服させ、自分の有能な道具として使えるかという策略をもって対しています。だから、『日記』に書かれたスターリンの言葉をそのまま受け取ってはだめなんですね。スターリンがどんな意図で発言したか吟味して初めて真意が分かります。
　ディミトロフは最後までスターリンの信奉者として活動しますが、自分は共産主義者のつもりで、革命家としての善意をもっていました。戦争中、スターリンがユーゴスラビアの解放闘争を白眼視した時には、一生懸命スターリンへの説得を試みたりしました。それでも、スターリンは彼を排斥せず、最後まで利用し続けるという独特の関係があったので、そういう裏まで読みとらないといけませんでした。
　石川　各国の政治史など、ヨコ糸のばく大な知識がないとできない仕事ですね。
　不破　大まかな歴史は知っていても、詳しい知識を持たないところからの挑戦でしたから。例えば、１９３０年代のスペイン内戦史なども、簡単には手をつけにくい暗黒面を感じていて、研究しないままでいました。今度思いきって調べてみて、やっと暗黒面と感じていた事態の真相が分かりました。私自身の頭の中でも、世界現代史がだいぶ変わってきましたよ。
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コミンテルン第７回大会の光と影

　山口　第１章では、ドイツ国会議事堂放火事件（１９３３年２月）の容疑者とされたディミトロフがその年の裁判でナチス・ドイツ権力と対決します。この法廷闘争が、『日記』や当時のジャーナリスト・鈴木東民のルポも使って生なましく再現されています。ディミトロフが獄中で手錠をはめられて数カ月過ごした苦労や、ドイツ語しか話せない人とドイツ語を話せない人がどうして会談できるのかなど、ナチス政権の謀略を暴いてゆく論戦ぶりも分かり、この裁判の歴史的意味を強く印象づけられました。
　不破　この論戦は当時、世界を驚かせたのです。ディミトロフは、亡命先のドイツで活動していたブルガリアの共産党員で、世界的にはまったく無名の人物でしたからね。

スターリン、ディミトロフに注目
　石川　ディミトロフが、革命的気概に燃えているのがこの本でよく分かります。論戦も優れており、ナチス政権側の論拠を次つぎと覆しました。でも、これほどの人物が、スターリンの道具にされてしまうんですよね。そのことを思うと、たたかいの姿が痛ましくも見えました。
　山口　そこの謎解きがなされているのではないかな。無罪を勝ち取ったディミトロフが、３４年２月にモスクワに渡る。「オーストリアの労働者への手紙」を作成するディミトロフに、スターリンが念入りな指導と柔軟な対応をおこなう。それにディミトロフが感激し、心服していく過程が、『日記』や関連資料で、手にとるように明らかになってゆきます。
　不破　スターリンは、ディミトロフの裁判闘争を見て「この男だ」と目をつけたんでしょう。それで、ソ連に迎え入れ、実際に人物を見て、ディミトロフをコミンテルンの長にすると決めたのです。そのときのスターリンは、反ファシズムの人民戦線の立場とは、まだかけ離れた立場にいました。それでも、ファシズムの台頭にもかかわらず、社会民主主義に「主要打撃」を向けるとか、社会民主党をファシズムと同列に置く「社会ファシズム」論――これらはみんなスターリンがコミンテルンに持ち込んだ方針だったのですが――、それらの失敗が明らかになったあとでも、旧来型のこうした方針に縛られているコミンテルンの連中ではダメだと考え、おおもとから改革しようという考えがあったんです。
　そこで、ディミトロフが、コミンテルン第７回大会（１９３５年）で主報告をすることに決まり、新しい方針を出そうとします。ところが、旧来路線に固執する執行委員は誰も相談に乗らない。『日記』に「墓場のなかだ！」と書き付けています。そのときスターリンに送ったのが、報告草案の骨子をまとめた「覚え書」（３４年７月）でした。
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路線転換の裏で次の局面への布石も
　不破　この「覚え書」にスターリンの書き込みをした文書があるのですが、これは、これまでの研究では、ディミトロフの構想した戦術転換に反対だという意思表示だとされてきました。しかし、現実はそうではなかった。コミンテルンは「墓場だ」と嘆いていたディミトロフが、この書き込みを出発点にスターリンとまる１日議論して「徹底的な討議！」と感動の言葉を『日記』に書き付けています。〝打てば響く〟深い討議ができ、確信をもって大会準備にあたります。スターリンの考えも彼との対話を通じて発展する、そういう相互関係があったのですね。
　この時、スターリンがとったのは、ディミトロフを中心に、必要な路線転換を思い切って発展させよ、という立場でした。ただ、将来を考えて、この大会にいくつかの重大な枠をはめています。一つは、旧来路線の根本的な総括を徹底的に回避させたことです。
　また、それまでのコミンテルンには「長」という役職はなかったのに、書記長という部署を新たにつくって、ディミトロフを任命したことも、その一つです。ディミトロフはすでに何をするにもスターリンの了解なしにはやらない人間になっていたから､結局､コミンテルンはすべてスターリンの決裁で動かされる上意下達の機関に変わりました。
　この大会のこういう否定面は、ほとんど注目されませんでした。各党の自主性を強調した大会とよく言われていますが、内実はまったく反対で、第７回大会以降、各国の代表が集まる公的な会議は一切開かれなくなりました。
　反ファッショ統一戦線の大会ということで世界に名をはせた大会でしたが、スターリンは、将来のさらなる方針転換への布石を周到に準備していました。レニングラードの党指導者キーロフの暗殺事件（３４年１２月）も、「大テロル」への引き金としてスターリン自身が起こしたもので、最も重大な布石でした。
　山口　第２章で、ディミトロフの「覚え書」に対するスターリンの書き込みが全文紹介されていますが、これもはじめての本格的な研究ですよ。第７回大会でのコミンテルンのいわゆる〝路線転換〟が、脇役どころか、スターリン主導ではかられていったことが、はっきり示されました。
　第３章で、コミンテルンの指導機構の変化をスターリンの覇権主義の狙いとの関わりで明らかにしたのも、面白いですね。覇権主義の巨悪を見据えるという点で、ここでも、大きな見方を与えたものだと思います。

スターリンとヒトラー
　石川　ディミトロフと話し合うなかでスターリンも発展していくというお話がありましたが、スターリンも大きな課題を前に迷うような時には、いろいろな人の知恵に学ぶということがあったのでしょうか。
　不破　スターリンが本当に革命家だったら、革命の戦略はそう簡単に転換できないですよ。彼にとって、第７回大会での転換は、対ソ戦争を公然と呼号して政権についたヒトラー・ドイツにどう対応するか、ソ連防衛という当面の緊急課題を根底においた対応措置でした。そのために必要なら、自分が唱えてきた路線でも平気で捨てるのです。こういう転換は、そのあとも、何度もくりかえされました。
　実際、スターリンがどの程度本気でヒトラーを「敵」と見ていたのかには、疑問があります。「テロ独裁」国家というファシズムの規定にしても、スターリンの方が、ヒトラーよりも先に、大規模なテロに乗り出しているわけですから、ヒトラーが「テロル独裁」だからこれに対抗するという理屈は、スターリンには本来ないのです。
　スターリンの元通訳の回想録があって、ヒトラーが政権獲得の後の３４年６月、ナチスの突撃隊幹部を大量に虐殺するという事件が起こった時、スターリンが「ヒトラーって男は大したやつだ。政敵を片づけるのにあれが一番いいやり方だ」と絶賛したと書いています。ほかの傍証がないので「秘史」には書かなかったのですが、ありうる話でした。
　だから、フランスやイギリスとの連合戦線や反ファシズム人民戦線運動でヒトラーを包囲するという路線の限界がはっきりしたときには、百八十度の方針転換が平気でできるのです。
　山口　第７回大会で反ファシズム統一戦線という、その後の歴史に生きる方針がつくられた一方で、コミンテルンの変質が起き、テロルも始まっている。その歴史をどう見たらよいのか。不破さんは「スターリンを動かした国家的利害と社会的進歩の運動の歴史的利害が大きな意味で合致した場合には、共産主義運動に、世界史を前進させる大きな力と成果をもたらした」と述べ、「スターリン時代の世界の共産主義運動の歴史を研究する場合には、こういう歴史的な視点がどうしても必要です」と言います。歴史を振り返るときに、考えさせられる大事な提起ですね。
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コミンテルン
　１９１９年、レーニンの指導のもとにつくられた国際組織、共産主義インタナショナルの略称。１９４３年に解散。日本共産党は２２年に加入。
　石川　スターリンは、いつごろから、ヒトラーがもたらすソ連の国家的危機を乗り越えるための国際環境づくりを考えたのでしょう。
　不破　推測ですが、スターリンは、ヒトラーが政権をとったときすぐに、ソ連への侵略を防ぐあらゆる手段をとる必要があると考えたと思います。
　スターリンはそれまでのコミンテルン執行委員会総会にはすべてタッチしてきましたが、３３年１１～１２月の第１３回総会には目もくれませんでした。この総会は、ヒトラーが政権をとりナチ以外の政党を禁止して専制独裁体制を確立した後に開かれました。しかし、コミンテルン中央の政治的な感覚と思考の貧しさをさらけ出し、これまでどおり「ドイツ革命近し」の決まり文句を繰り返すものでした。ヒトラーに対する国際的な包囲網を構築するには、コミンテルンの組織と活動の再編が必要でしたが、コミンテルン指導部にはその能力がないことを、スターリンはよく見ていました。
　山口　コミンテルンの執行委員会総会は、２９年から３３年までに４回開かれていますが、ドイツでのナチスの登場と第１党になっていく過程をまともに見ていなかったことがこの本で明らかにされ、驚きました。「社会ファシズム」論や「主要打撃」論も、そもそもがスターリン由来だったという、その歴史と過程も明らかにされましたね。

大会では過去の路線の自己批判はなかった
　不破　若いころ、第７回大会でピークがおこなった、前大会以来の執行委員会の活動についての報告を読みました。そのときは良いものだと思い込んでいましたが､今読み返すと､本当に自己批判がない(笑い)。コミンテルンの誤りにまったく口をぬぐって、路線を大転換しながら、転換という意義づけをしないのです。
　石川　スターリンは一面、驚くほど賢いですね。
　不破　「巨悪」の知恵、狡知（こうち＝悪がしこい知恵）の働き方はすごいですよ。
　山口　スターリンの巨悪をきちんと見たからこそ、ピーク報告の問題点をつかみ出せたのですね。平板に読んでいたら気づかない論点です。
　石川　スターリンについては、いいところも悪いところもあるという両論併記的な評価がありますが、不破さんが明らかにしたのは、根本にソ連の国家的利害を貫く自己中心主義があるということですね。結果として歴史の進歩につながる場合にも、単純に「いいこともした」ととらえることはできないわけですね。
　不破　スターリンの「巨悪」と、コミンテルンを通じてその指導下にあった世界の共産党の運動とを、同じ目で見るわけにはゆかないのですね。コミンテルンが１９３５年に統一戦線方針を打ち出した時には、全世界で多くの党が反ファシズムの闘争の先頭に立ちました。４１年にソ連がドイツに攻め込まれて反ファシズム戦争の側に立たざるをえなくなったときにも、各国の共産党はレジスタンスの闘争を展開しました。これらの闘争は積極的意義を持ったし、歴史に残る役割をしました｡しかし､３９年以後の独ソ同盟時代には、上から押し付けられる誤った方針のために、出口のない混迷を余儀なくされました。
　石川　ところで、ロシア革命を体験したスターリンが革命家としての自覚を失うのは、どの時点でのことでしょう。
　不破　スターリンの主観的な意識の判定はなかなか難しいのですが、１９２２～２３年にスターリンの立場の有害性を見ぬいたレーニンが、スターリンの大国主義と粗暴な官僚主義に対する「最後の闘争」を決意したころには、すでにかなり危険性を強めていたでしょうね。それでも、２０年代の「反対派」との闘争の時には、革命家という立場で、「マルクス・レーニン主義」を尺度に、比較的よく考えた論争をやります。その時は、ソ連一国で社会主義が成立するのか、世界革命が勝利しない限り成立できないのかが、論争の大きな争点でした。しかし、「反対派」が壊滅すれば論争の必要がなくなります。
　２８年から始まる「農業集団化」のあたりからは、自分の立場に理論的な一貫性を持たせようとする努力も、もうやらなくなってゆきます。とくに「大テロル」以後は、ヒトラーと手を結ぶことも、スターリンの決定一つで進んでゆきます。スターリンの自覚うんぬんでなく、この段階では、ソ連という存在そのものが、革命とも社会主義とも無縁なものに変質したとみるべきでしょうね。
　この段階になると、スターリン自身が、いろいろな問題で自分の主張をころりと変えても、まったく意に介さないのです。『スターリン全集』は第１３巻、３４年の著作まで出して、刊行を中断してしまいました。自己誇示の好きなスターリンには珍しいことですが、ヒトラーや第２次世界大戦の各段階の評価など、立場がころころ変わっていて全集を続刊するとボロが出るからではなかったかと、邪推しています。（笑い）
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「大テロル」は何を目的としていたか

　山口　第４章、第５章で取り上げた「大テロル」について話を進めましょう。１９３４年１２月のキーロフ暗殺事件は、３５年から３８年に荒れ狂った「大テロル」の発火点になりました。

スターリン自身がすべてを取り仕切った
　山口　今回の研究では、この事件の「疑惑」を告発したフルシチョフの２回にわたる報告を取り上げています。不破さんは、そこであげられた「疑惑」にこだわり、キーロフ事件の仕掛けをつくれる人物は、スターリン以外にいなかったと論証しています。
　不破　スターリンは、この事件をソ連共産党の敵対勢力によるものだと位置づけ、その犯罪集団を断罪するという名目でテロ作戦を実行したのです。その段取りは、ヒトラーが専制独裁体制樹立の口実とした３３年２月の国会議事堂放火事件と似ています。
　スターリンは、キーロフ暗殺直後、現場に行く車中で、〝容疑者は短期間の即決裁判で銃殺せよ〟など、その後の作戦要領とも言える仕掛けをメモに書きました。これは後「十二月一日法」と呼ばれ、「大テロル」の法制的基盤となります。この経過から見ても、キーロフ暗殺が起きたときには、スターリンの頭のなかにすべて筋書きがあったのですよ。
　これを境に、ソ連社会の相貌がすっかり変わったと思います。
　石川　この本には、フルシチョフの「秘密報告」（１９５６年）と合わせて、ゴルバチョフ時代にソ連共産党の政治局特別委員会が「大テロル」を調査したことも紹介されています。彼らはどういう動機で調査したのでしょうか。
　不破　ソ連全土で無実の人が無数に弾圧され殺された「大テロル」の根本に何があったか言わないわけにいかなくなったのが、ソ連共産党第２０回大会でした。フルシチョフの報告はいいかげんなもので、彼は、第２２回党大会（１９６１年）でも、キーロフ事件についてもう少し詳しい報告をしますが、調査を徹底しないうちに失脚します。
　ゴルバチョフ自身もいいかげんで、スターリンの「農業集団化」をほめたたえたりしていました。しかし、いま話題に出た政治局特別委員会は、「大テロル」がスターリンの意識的な計画で生み出されていった全経過を調べ上げました。調査結果をまとめた報告書は８９年に「ソ連共産党中央委員会通報」に連載され、米国の歴史学者ラカーの著書『スターリンとは何だったのか』でその重要部分が紹介されています。
　これには、スターリン自身が、キーロフ暗殺事件をはじめ「大テロル」の筋書きを描き、調査機関に拷問の結果まで詳しく報告させていた経過が出ています。ところが、この報告が、なぜかソ連でも米国でも、ほとんど利用されないままになっていました。
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「大テロル」の真相を隠す道具立て
　山口　不破さんは、スターリンが仕掛けた陰謀のシナリオが３段階で進化を遂げていくのを、「大テロル」の経過全体を分析して読み取ってきました。報告書に示された調査結果は、この分析の結論の裏づけとなりましたね。
　レーニン時代からソ連共産党の幹部だったブハーリンをモスクワ裁判で弾圧する仕掛けも、スターリン自身がつくっていたことには驚きました。スターリンは、一連の弾圧裁判を、「見世物裁判」に仕立てあげ、ロシア語、英語による記録本をつくって、世界各地にばらまきました。それだけ見ると本人たちが罪を認めたように読めますが、そこにいろんな仕掛けがあったわけですね。
　不破　ブハーリンの遺書を読むと、ブハーリンもスターリンの真意を知らなかったのですね。スターリンに弾圧された人たちは誰も真相をつかまないまま殺されてゆきました。
　スターリンの病的な猜疑心（さいぎしん）によるものだとか、スターリンはＮＫＶＤ（エヌカーヴェーデー＝内務人民委員部）にだまされてテロをやっているのだという見方が広くありました。ブハーリン夫人のラーリナさえ長期に収容所に送られながら、スターリンが真相を知れば助けてくれると思っていたんです。
　石川　さらにスターリンはテロをソ連社会の全体に広げるため、超法規的な「トロイカ体制」を各地につくっていったのですね。
　不破　スターリンは「農業集団化」の時、反対する農民を「富農」としてすべて追放します。「富農」かどうか判定するのに、地方の党委員会書記やソビエト執行委員会議長らで三人組をつくり、即決裁判で農民の追放を進めました。それが「トロイカ体制」です。
　スターリン自身が１千万人追放したと言っているように、膨大な人間を弾圧する仕掛けでした。おまえの地方では何万何千の人間を整理せよ、超過達成せよ、という調子です。
　石川　そのような行為に対して、社会の中から抵抗は出てこなかったのでしょうか。
　不破　出てくる条件がなかったのでしょう。戦争中の日本みたいなものです。ただ、日本共産党の幹部たちは、天皇絶対の専制体制が敵だと分かっていました。しかしソ連では、誰にも真相が分からないまま弾圧が広がりました。
　ＮＫＶＤの責任者を務めたベリヤは収容所体制を一つの有力な「産業」部門にまでしました。収容所という非常に安い労働コストで、大運河や原爆をつくりました。日本のシベリア抑留者もベリヤ部門に配属されたのです。
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ポーランド共産党解散の本当の目的は？
　山口　スターリンが１９３７年にポーランド共産党を解散させ、非公表にする措置を取って、闇の中の出来事にしようとしたことも裏づけられましたね。スターリン死後、５６年２月、ソ連、ポーランド、イタリア、ブルガリア、フィンランドの５党による共同声明が発表され、ポーランド共産党解散の誤りを認めました。不破さんは、ポーランド共産党の解散について、スターリンの領土拡張主義に向かう地ならしという特別の目的があったと喝破しています。
　不破　ポーランド共産党の解散というのは本当に無理な話でした。海外の「階級敵」の危険があるといって、スターリンの指導のもとでＮＫＶＤがソ連在住の亡命者やコミンテルンの機構のメンバー、他国の亡命中の幹部まで大量に逮捕、弾圧します。特にその矛先を向けられたのがポーランド共産党です。
　ポーランド共産党の書記長のレンスキーや、亡命してパリで非合法活動をしていた指導部もコミンテルンに呼ばれ、到着するとすぐにＮＫＶＤの管理下に置かれ、処刑されました。レンスキーの「自白書」には、党をつくった最初からスパイで、指導部にも地方にも全部スパイを配置したと書いてあります。スターリンは、パリにいた指導的幹部もソ連で活動していた幹部も根こそぎ絶滅したのです。
　石川　ユーゴスラビアのチトーも危ないと思ったときがあったが、３８年１０月ごろまでに共産党解体の危機は去ったと回想していましたね。スターリンが、「大テロル」を終結させると決めたきっかけは何でしょうか。
　不破　専制体制の確立という目的がほぼ達成されたこと、くわえて対ドイツ政策の変更の必要性があったと思います。スターリンは、「ドイツの指図によるソ連へのテロ」を口実に「大テロル」をやってきた。それをそのままに続けていたのでは、独ソ間に友好関係を結ぶことはできません。それには、３８年中に「大テロル」を清算する必要があった。
　山口　「大テロル」を終結する方法も、非常に特徴的ですね。
　不破　コミンテルン第７回大会で執行委員会に送られたソ連共産党の幹部で、「大テロル」の執行役だったエジョフとモスクヴィンは、３８年末に解任されます（その後処刑）。こういう具合に、テロを組織した責任者がすべてテロで殺され、真相が闇にほうむられるわけです。

「世代の絶滅」で個人専制の体制きずく
　山口　不破さんは、スターリンは何を目的に「大テロル」をおこなったのかという問いに対し、「大テロル」以前と以後で何が変わったかを見れば、答えが出てくると述べています。
　そうすると、スターリンが専制的な独裁体制を確立したことがズバッと出てくる。単なる反対派の排除ではなく、スターリンの決定に無条件に服従する政治体制をつくることに目的があった、と。
　石川　スターリンは、国内では政敵をすべて排除し、コミンテルンを上意下達の機関に変質させながら、それでも自分の行為を社会主義・共産主義の言葉で飾りつづけます。スターリンはなぜ、世界の共産主義運動の指導者たりえたのでしょうか。スターリンを疑うことのできない空気は、どのようにつくられたのでしょう。
　不破　個人の専制支配を可能にするには、個人崇拝、スターリン絶対信仰がないとダメです。それで、スターリンは「世代の絶滅」を強行したのです。レーニン時代は、ソ連共産党内でもコミンテルンでも、自由な討論がおこなわれました。だから、レーニンとその時代を知っている人がいると困るのです。政策転換が求められるときに、批判勢力になる可能性があるからです。
　「大テロル」が終結した翌年３９年のソ連共産党大会の代議員名簿を調べると、代議員１５７０人のうち、十月革命以前に入党した人は３４人しかいません。たったの２％です。革命前の入党者は、ほとんど絶滅してしまったのです。
　「公開裁判」もすごい役割を果たしました。外国の共産党が真相をつかめないなか、かつての指導者が、死刑になると分かっていながら裁判で誤りを認めたわけで、裁判の公正さを装うものになりました。
　反ファシズム人民戦線運動も、ある意味で、「大テロル」を覆い隠す役割を果たしました。独ソ不可侵条約が結ばれる直前、人民戦線を支持する米国の知識人の間でソ連の人気がものすごく上がりました。「大テロル」と「公開裁判」を目の前にしながら４００人がソ連支持の声明を出した。スターリンは、反ファッショ人民戦線運動の威光も利用して指導性を保ったのです。
　もう一つは、３８年に『ソ連共産党小史』を出したことです。コミンテルンの決定もなしに、イタリアやフランスなど主要共産党指導部の連名で、革命の武器として勉強せよという声明を出しました。指導性を確保するため、あらゆる手段を使っていたのです。
　山口　今度の研究は、スターリン覇権主義をめぐる研究に、新しい飛躍をもたらしました。スターリンの巨悪をきちんと認識し、歴史の真実を明らかにしてゆくことは、科学的社会主義の事業を発展させるためにも、大きな財産になります。
　今年は、戦後７０周年ということであらためて歴史が振り返られるでしょう。世界の平和・民主主義の秩序がどうつくられたのか知る上でも今度の研究から学ぶものは大きいと思います。
　不破　予告編ですが、これまで私たちは、日本共産党の「五〇年問題」の経緯を解明してきましたが、スターリンが、資本主義国の中で日本にだけ武装闘争を要求した理由が謎でした。今度の研究では、その答えを探究することも一つの課題となりました。
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　全６巻が順次出版されるのにあわせ、鼎談をおこなう予定です。
( ２０１５年０１月１３日，「赤旗」)

銃撃犠牲者追悼／仏４００万人、テロに抗議／「反イスラムにノー」の声も

【パリ＝島崎桂】風刺週刊紙シャルリー・エブド本社への銃撃に始まる連続テロ事件が起きたフランスで１１日、テロに抗議し、犠牲となった１７人を追悼する大規模なデモが行われました。地元メディアは、全国で約４００万人が参加し、ナチスからの１９４４年の「パリ解放」時を超える「前例のない規模」だと報じました。（関連６面）
　デモ参加者は「表現の自由を守ろう」「われわれはテロを恐れない」などと唱和。林立するプラカードには、テロにつながる過激主義への抗議に加え、「反イスラム感情にノー」など、過激主義者と一般のイスラム教徒の区別を求めるメッセージも並び、「宗教や肌の色にかかわらず、平和に共存できる」との声も聞かれました。
　約１５０万人が参加したパリの大行進では、出発地となったパリ中心部の共和国広場に、午前中から人が詰めかけました。大行進が始まる午後１時半には、身動きが取れなくなるほどの混雑となりました。その後も続々と参加者がかけつけ、約３㌔にわたって行われた大行進は、およそ８時間、続きました。
　友人と参加したパリの大学生コンタン・ジャンクールさん（２３）は「（テロにより）多くの記者や風刺画家、警察官が殺された。表現の自由や（文化の）多様性、民主主義は自分たちの手で守る」と語りました。
　同広場には終日、犠牲者を追悼する花やろうそくに加え、表現の自由を象徴する無数のペンが供えられました。
　パリのデモでは、オランド仏大統領やメルケル独首相、キャメロン英首相ら約５０カ国の首脳が参加し、腕を組みながら行進。オランド氏は、「パリはきょう、世界の首都だ」と述べ、国際的な連帯をたたえました。
　全国での参加者は、東部リヨンで３０万人、西部ボルドーで１４万人を数え、各地で数万人規模に達しました。仏内務省は、仏全土の参加者数を３７０万人と推計していますが、今回のデモは前例のない規模だとし、推計は「不可能」と発表しました。
( ２０１５年０１月１３日，「赤旗」)

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第２次世界大戦終結７０年／ベトナムの歴史学者・国会議員ズオン・チュン・クオック氏に聞く／ファシズム陣営を当時の日本が代表

旧日本軍は太平洋戦争直前の１９４０年にフランス領インドシナ半島に侵入し、４５年８月の敗戦まで支配しました。ベトナムの歴史学者で国会議員のズオン・チュン・クオック氏(６７)に話を聞きました。
　（ハノイ＝松本眞志）

　日本軍は当初、中国との戦争の長期化を打開することを目的に、米英の中国支援ルートだったフランス領インドシナに兵を進め、仏植民地政府と共同してベトナムを支配しました。その後、４５年３月９日にクーデターを実施して仏植民地勢力を追い出し、傀儡（かいらい）政権を樹立して日本が単独でインドシナ半島を支配するようになりました。

社会進歩に逆行
　４５年８月には日本が降伏し、ホー・チ・ミンが率いる革命勢力が独立を宣言しました。よく日本がフランスの植民地からベトナムを解放したとの話を聞きますが、ベトナムの革命勢力は、４５年３月から日本の敗戦まで、フランスとではなく日本のファシストとたたかっていたのです。
　日本がインドシナ半島で果たした役割は、この地域の社会進歩と発展に逆行するものであり、ベトナムの歴史において当時の日本はファシズム陣営と反動勢力を代表していました。
　日本の占領期間に起きた大飢饉（ききん）の責任も指摘する必要があります。大飢饉では多くの人が餓死しました。要因には、洪水を伴う天候の不順、連合軍の爆撃により南部地域からのコメの輸送がとだえたことなども影響しましたが、主要な要因は日本の占領政策にありました。
　ベトナムでは農民に軍需物資の麻の栽培を強制して米作地を縮小。これが要因の一つとなって飢餓が発生し、２００万人以上が餓死しました。日本のファシストは、欧米列強に対抗するためだと「大東亜共栄圏」を主張しましたが、繁栄をもたらすことなく失敗に終わり、アジア諸国民に大きな惨害を与えました。

反戦勢力と緊密
　米国によるベトナム侵略戦争で、日本は米軍の出撃基地となりましたが、日本国内の強力な反戦勢力、特に日本共産党とは非常に緊密な関係を築いてきました。第２次世界大戦後７０年、日本は大きく発展しました。私たちは発展を支えた日本人の精神力を尊敬していますが、軍国主義が復活する動きには絶対反対です。

　１９４７年ベンチェ省生まれ。６８年ハノイ大学歴史学部を卒業し、６９年から２００７年までベトナム歴史研究所に勤務、副所長も務めました。８８年から現在までベトナム歴史家協会の事務局長。２００２年に国会議員に選出。
( ２０１５年０１月１２日，「赤旗」)

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シリーズ戦後７０年を考える／今も苦しむ軍「慰安婦」たち／関西学院大学元教授野田正彰さんにきく

被害者を精神鑑定した関西学院大学元教授（精神医学）野田正彰さんにきく／ナチ収容所生還者と同じ／事実認めることが真の謝罪
　戦後７０年―。日本軍「慰安婦」問題で安倍晋三首相は、軍の強制性を否定し、「性奴隷はいわれなき中傷｣と開き直っています｡しかし性奴隷とされた女性は、戦後も重い精神的後遺症に苦しんできました｡その実態を中国･海南島の被害者らを精神鑑定してきた関西学院大学の野田正彰元教授(精神医学)に聞きました。
　本吉真希記者

　野田さんは２００７年３月と６月に海南島を訪れ、生存者６人の精神鑑定を行いました。６人は海南島裁判（別項）の原告です。
　「最悪の精神状態にあった」と野田さんがいう譚亜洞(たん･あどう）さん（１９２５年７月生まれ、２０１０年９月死去)｡１６歳のころ日本軍に徴用され、駐屯地で働かされ、性暴力を受け続けました。譚さんの体験は…。
　―兵士の相手をするのを嫌がると谷へ突き落とされ、左の骨盤を骨折。戦後も腰は大きく左へ曲がったまま。
　―四つ足の牛のような姿勢をとる拷問を受け、姿勢が崩れるたびにこん棒で打ちのめされた。
　―軍慰安所で逃走に失敗した少女の虐殺を見せられた。日本兵は妊娠しているその少女の腹を銃剣で切り裂き､胎児を取り出した｡
　「日本兵は徹底して死の恐怖を植えつけた」と野田さん。「いかなる助けも支えもない時間の継続は、生き残った少女たちの精神を変えた｣と指摘します｡終戦後、日本が復興に向かう一方で、被害者には耐え難い戦後が始まりました。
　譚さんは野田さんにこう証言しました。
　「昼間突然、拷問や強かんの場面が浮かぶ。そんな日は夜も悪夢にうなされる。道端の木が何か叫んでいるように見える。腹を裂かれて殺された少女の夢をよく見る。悪夢で叫んで跳び起きると、冷や汗がべっとりと出ている。…いまの娘たちと同じように私も歌ったり、おしゃべりをして生きたかった」

人格の変化
　他の被害者も同様の精神的障害がみられました。１４歳で日本軍の駐屯地に拉致・監禁され、強かんされた陳亜扁（ちん・あへん）さん（２７年１２月生まれ）は、次のように語りました。
　「夜、突然緊張し、後ろで音がしたりすると、自分を連れ去る人が来ているような気がする。心臓が躍り、食事ができなくなり、そんな夜は寝られない」
　野田さんは、６人すべてが重いＰＴＳＤ（心的外傷後ストレス障害）に苦しみ、うち５人は､ナチス･ドイツの絶滅収容所の生還者にみられる「破局的体験後の持続的人格変化」を伴っていると診断しました。
　野田さんはこれらの被害事実を詳細に記した精神鑑定書を東京高裁に提出しました（０７年８月)｡鑑定書の意義について「慰安婦」問題は過去の問題と主張する日本政府に対し「戦後こんなにも被害が継続していることを証明した」と語ります。

高裁も認定
　東京高裁判決（０９年３月）は５人について「『破局的体験後の持続的人格変化』に罹患（りかん）している｣と認定しました｡
　被害者らは戦後、下腹部の痛みと炎症にさらされ、周囲に「日本の女｣と軽蔑されました｡野田さんは「苦しみのなか、やっと生きてきた」といいます。そんな彼女たちをさらに苦しめているのが、日本で繰り返される「慰安婦」の事実否定です。被害者らは「自分が生きてきたことを全否定されるような気持ちになる」と抗議してきました。
　野田さんは加害国の政府の責任についてこう訴えます。
　「国の責任で調べ、事実を認識し、明らかにする｡それを報道し､子どもたちに教える。これこそが真の謝罪です。それがあって初めて、困難を耐え抜いた人生の意味を被害者が追認できるのだと思います」

海南島裁判＝２００１年７月、日本政府に謝罪と賠償を求め、被害女性８人が東京地裁に提訴。最高裁まで争いました｡１０年３月、最高裁で原告の請求は退けられましたが、地裁と高裁で認定された事実は認められました。
　高裁判決は「当時１４～１９歳の女性で…軍の力により威圧・脅迫して自己の性欲を満足させるために凌辱（りょうじょく）の限りを尽くした軍人らの加害行為は、極めて卑劣な行為であって厳しい非難を受けるべき」だと断罪。「（深刻な被害が）既に癒やされたとか、償われたとかいうことはできない｣としました｡
(２０１５年０１月１１日，「赤旗」)

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躍進の土台に綱領の力／２０１５年党旗びらき志位委員長のあいさつ

三つは、安倍政権が進めようとしていることのどれもが、破たんした道―「先のない」道だということです。
　たとえば、深刻な格差拡大をもたらしてきた「アベノミクス」。ＯＥＣＤ（経済協力開発機構）の報告書（昨年１２月）は「格差拡大は各国の経済成長を損なっている」とし、格差拡大のために日本の経済成長率は２０年間で５・６％押し下げられたと分析しています。
　「アベノミクス」は「大企業や富裕層がもうかれば、いずれは庶民の暮らしに回る」というトリクルダウンの考え方に立っています。英紙ガーディアンは「ＯＥＣＤはきょう、トリクルダウンという考え方を捨て去った」と断じました。志位氏は「『この道は先がない』ことは、世界の動きにてらしても、いよいよ明瞭となっている」と強調しました。

戦後７０年に問われる二大焦点
　そのうえで志位氏は、暴走する安倍政権に対し、総選挙で訴えた「暴走ストップ、日本の政治の五つの転換」の旗を高く掲げ、その実現のためにたたかう決意を表明しました。
　「五つの転換」―▼消費税に頼らない別の道▼暮らし第一の経済再生▼憲法９条を生かした平和外交▼原発ゼロの日本▼基地のない平和で豊かな沖縄―は、どれも今年の政治対決の大争点です。
　総選挙の躍進で、日本共産党は、衆院の全１７常任委員会に委員を、そのうち１１で複数の委員を配置し、発言力が格段にアップします。参院に続き衆院でも議案提案権を獲得。党首討論への参加もできるようになります。
　志位氏は「躍進した力を縦横に発揮し、安倍政権と正面から対決するとともに、国民の立場に立った抜本的対案をあらゆる分野でさらに豊かに発展させ、国民との共同で政治を動かす―『対決、対案、共同』の政治姿勢を貫いて、新しい国会で大奮闘する」と決意を表明しました。
　１５年は、第２次世界大戦が終結して７０年目の歴史的節目の年。志位氏は、日本の命運がかかった二大焦点について訴えました。
　第一の焦点は、日本が戦後政治の羅針盤としてきた憲法９条を破壊する暴挙を許していいのかということです。
　志位氏は「海外で戦争する国」づくりを許すな―の一点で、広大な国民的共同のたたかいを発展させようと呼びかけました。
　第二の焦点は、過去の侵略戦争と植民地支配を肯定・美化する逆流の台頭を決して許さないということです。
　戦後の世界秩序は、ファシズムと軍国主義による侵略戦争の断罪の上に成り立っています。それを否定するものは、世界でもアジアでも生きる道はありません。
　志位氏は「歴史を偽造する極右勢力による政治支配を一日も早く終わらせ、アジアの国ぐにと真に心通う友好の道を開くため、あらゆる力をつくす」と表明しました。

いっせい地方選で躍進さらに
　最後に志位氏は、告示まで３カ月を切ったいっせい地方選にのぞむ政治的な構えを訴えました。
　日本共産党は１３年の都議選・参院選で〝第３の躍進〟を開始し、昨年の総選挙でさらに大きく発展させました。志位氏は「いっせい地方選で躍進をかちとってはじめて『〝第３の躍進〟を本格的な流れに発展させた』といえる」と強調。同時に、総選挙での躍進が党勢拡大の広大な可能性をつくりだしたことを示し、「国政選挙で躍進した今こそ、強く大きな党づくりでも躍進をつくりだそう」と呼びかけました。

政党助成金／国会冒頭に廃止法案提出へ／志位委員長が表明

　日本共産党の志位和夫委員長は「党旗びらき」のあいさつで、「総選挙の公約実現の第一歩として、通常国会の冒頭に、政党助成金廃止法案を提出する」と表明しました。
　志位氏は「政治を劣化させ、政党を堕落させる根源となっている年間３２０億円、憲法違反の政党助成金こそ廃止すべきだ」という日本共産党の訴えに強い共感が寄せられたことを紹介しました。その上で「すべての政党に対し、わが党の法案を真剣に受け止め、検討することを強く呼びかけていきたい」と表明。「もとより、この問題を決するのは、国民の世論と運動の力だ。政党助成金廃止の国民的運動を大きく発展させることを心から呼びかける」と述べました。
(２０１５年０１月１１日，「赤旗」)

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１０ 第２次世界大戦終結７０年／トビアス・バスキ氏に聞く／なぜ東南アジア諸国間に戦争がないのか

インドネシア戦略国際問題研究所研究員
　東南アジアでは戦後７０年間に、東南アジア諸国連合（ＡＳＥＡＮ）が創設され、平和な環境づくりがすすめられてきました。背景に何があるのか。インドネシア戦略国際問題研究所（ＣＳＩＳ）のトビアス・バスキ政治国際関係部研究員に聞きました。
　（ジャカルタ＝松本眞志　写真も）

　第２次世界大戦後の７０年間、東南アジア諸国の間では、ＡＳＥＡＮを中心に、平和的方法で問題の解決をはかってきました。
　米国によるベトナム侵略戦争やベトナムのカンボジア侵攻、インドネシアのスカルノ政権によるマレーシアとの対決政策といった例はあります。加盟国間で領土問題を抱えているところもあります。
　しかし、戦争で問題に決着をつけるとか、武力で他国を屈服させるといった考えは基本的に排除されてきました。

「兄弟げんか」
　東南アジア諸国間で、大きな戦争が起きないのはなぜか。第１に、東南アジア諸国間の紛争は「兄弟げんか」のようなものだからです。東南アジア諸国には、第２次世界大戦で日本の侵略と占領を経験し、戦後の独立でも苦労したという共通の基盤があります。
　第２に、互いに戦争を遂行する軍事力をもっていないからです。軍事力は純粋に国防のためであり、他国を征服して打ち負かすというものではありません。
　第３に、戦争を起こす動機が独立後、歴史的に存在してこなかったからです。東南アジアの国境の基本的枠組みは、この地域を支配した欧米諸国が決めたもので、私たちが征服や侵略で得た国境ではありません。それは欧米諸国の成り立ちと根本的に違うところです。
　北東アジアに目を移すと、日本と米国との軍事同盟がどうなるのかわかりませんが、日本の政治家に過去の戦争について反省のない人がいるというのは非常に残念なことです。

歴史の真実を
　これはドイツと違います。ドイツでは、ナチスのやったことを反省し、ドイツが変わる努力を見せているので周辺国は安心しているのです。
　歴史は正しく教える必要があると思います。日本の教育で過去の戦争の歴史の真実を正しく教えていないというのは残念なことです。過去に何が起きたのかを突き止めることは大事です。
　北東アジアでＡＳＥＡＮのような平和機構をつくろうとすれば、歴史を客観的に評価していく作業が重要になると思います。

　１９７８年生まれ。インドネシア戦略国際問題研究所の政治国際関係部研究員。インドネシア国内や国際政治における政治・宗教・国家の統一性、民主化問題、信教の自由からの人権問題などを研究。
( ２０１５年０１月０９日，「赤旗」)

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おはようニュース問答／戦後７０年「談話」逆流の台頭許さない

晴男　安倍首相が、戦後７０年の歴史的節目の今年発表するという「７０年談話」が問題になっているね。歴史問題にきちんと向き合っているのかとの厳しい見方が国内外から上がっている。

「どう踏襲する」
　秋平　５日の年頭記者会見だね。「７０年談話」にかかわって記者から、アジア諸国に対する日本の「植民地支配」と「侵略」への反省とおわびを表明した「村山談話」（１９９５年）の表現を含め「どう踏襲するのか」と質問が出た。ところが安倍首相は「村山談話を含め、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいく」としか答えなかった。
　晴男　メディアは「村山談話を踏襲」と報じたけど、「植民地支配」と「侵略」というのが「村山談話」の核心部分だよね。それには触れず、「全体として引き継ぐ」なんて答えていないのに等しい。安倍首相の姿勢は不誠実きわまりないよ。
　秋平　まったくだ。安倍首相は国会答弁で、過去の侵略戦争の認識を具体的に問われると「侵略の定義は定まっていない」と言い放っている。靖国神社参拝という「村山談話」の精神を根本から踏みにじる行動を平然と行っているしね。

海外は見ている
　晴男　海外は安倍首相の姿勢をよく見ているね｡中国外務省の報道局長は｢日本の指導者が過去の侵略の歴史でどのような対外的な信号を発し､どのような態度を取るのか注視している｣と述べた｡韓国の外交安保首席秘書官も｢どんな宣言を出すのか注意深く見守る｣と語っている｡
　秋平　目を見張ったのは、５日の米国務省のサキ報道官の発言だね。安倍首相の年頭会見を受けて「村山元首相と河野元官房長官の（談話で）示した謝罪が、日本が近隣諸国との関係を改善するための努力のなかで重要な１章を刻んだ」と語った。後日、「歓迎」と態度を変更させたけど、米側として安倍首相の歴史認識に懸念を示していることを示している。
　晴男　ファシズムと軍国主義による侵略戦争の断罪の上に立つ戦後世界秩序を否定するものは、世界とアジアで生きていけないということだ。
　秋平　今年は過去の侵略戦争を肯定・美化する逆流の台頭を許さない年にしないとね。
( ２０１５年０１月０９日，「赤旗」)

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おはようニュース問答／戦後７０年、平和の日本・アジアをつくる年に

藤乃　今年は第２次世界大戦終結から７０年の節目だわ。
　晴男　１９４５年５月にドイツが降伏し、８月にアジア太平洋戦争で侵略を重ねた軍国主義の日本が無条件降伏して、終わったんだったね。

平和秩序へ努力
　藤乃　戦後世界の平和秩序形成に向けたさまざまな努力が行われてきたわ。その年の１０月には国家間の紛争を平和解決する目的で国際連合が発足した。
　晴男　５５年には大国主導の軍事同盟にかかわらずに国連憲章に基づく世界秩序を目指す、アジア・アフリカ首脳会議などの非同盟運動も始まった。
　藤乃　和平への努力も結実したわね。昨年６月には、第２次大戦のヨーロッパ戦線での帰趨（きすう）を決めた連合軍のノルマンディー上陸作戦７０年式典に、敵同士としてたたかった米英ロシアと独の首脳らが一堂に会したんだよ。
　晴男　ナチス・ドイツの行為にたいする明確な否定が、国家の指導者の共通の土台にあるからね。敵同士だった国で戦没者の追悼ができるなんて、和平の象徴だ。日本を含むアジア・太平洋地域ではそこまでは至っていないね。
　藤乃　歴代の自民党政権はこの戦争を「侵略」と決して認めず、アジア諸国への謝罪・補償もまともに行っていないからね。
　晴男　さらに安倍政権は、侵略戦争賛美の靖国神社参拝に固執、解釈改憲で集団的自衛権の行使容認の閣議決定を具体化する法律を制定しようとしている。

対話の枠組みを
　藤乃　国連憲章第１章にあるように、戦後国際秩序の土台は侵略戦争の否定なのにね。今日の安倍政権の立場では東アジアできちんとした外交関係は築けないわ。
　晴男　とはいえアジアでも対話によって「紛争を戦争にしない」枠組みの基礎ができつつあるね。東南アジア諸国連合（ＡＳＥＡＮ）が国連憲章より徹底した武力行使放棄を定めた東南アジア友好協力条約（ＴＡＣ）を持っている。
　藤乃　北東アジア諸国がＴＡＣ型の条約を締結し「二度と戦争をしない」と誓った憲法９条の精神にのっとり平和の日本をつくる一年にしていきたいわね。
( ２０１５年０１月０８日，「赤旗」)

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綱領を指針にさらなる躍進に挑戦しよう／２０１５年党旗びらき志位委員長のあいさつ

共同通信が、選挙後に行った世論調査では、「憲法改定」について「反対」が５０・６％、「アベノミクスで、今後景気がよくなると思うか」について「思わない」が６２・８％、「消費税１０％」について「反対」が５７・５％、「集団的自衛権行使容認」について「支持しない」が５５・１％、「名護市辺野古への移設計画」について「いったん停止」「白紙に戻す」をあわせると６３・７％となりました。さらに、日経新聞とテレビ東京が、選挙後行った世論調査では、「原発再稼働」について「進めるべきではない」が５５％となりました。こうして安倍政権が進めようとしている主要な問題のすべてに対して、国民の５割から６割が反対の意思表示をしているのであります。
　もともと安倍首相が、昨年１１月の時点で解散に打って出た動機は、「先に延ばせば延ばすほど追いつめられる」という一点にありました。この現実は、総選挙を経ても何ら変わるものではありません。今年、安倍政権の暴走の一歩一歩が、大きな矛盾をつくりだし、自らを「追いつめ」、自らの墓穴を掘ることになることは、疑いありません。政治的大激動の年となることは間違いありません。
　みなさん。今年を、国民との共同の力で、安倍政権を包囲し、その暴走をストップし、内閣打倒の運動を大きく発展させる年にしていこうではありませんか。（拍手）

【「この道は先がない」――世界の動きにてらしてもいよいよ明瞭に】
　三つは、安倍政権がこれから進めようとしていることは、国民多数の意思に背くだけではありません。そのどれもが破たんした道――「先のない」道だということです。
　たとえば、安倍政権が最大の売り物としている「アベノミクス」はどうでしょうか。
　昨年１２月、ＯＥＣＤ（経済協力開発機構）は、「格差と成長」と題する報告書を発表しました。この報告書では、「多くのＯＥＣＤ諸国で、過去３０年間で富裕層と貧困層の格差が最大となった。格差拡大は各国の経済成長を損なっている」との最新の分析を明らかにしました。報告書の分析によれば、格差拡大のために、日本の経済成長率は、ここ２０年間で５・６％押し下げられたといいます。英紙ガーディアンは１面トップでこう断じました。「ＯＥＣＤはきょう、トリクルダウンという考え方を捨て去った」
　私たちは、総選挙の論戦で、「アベノミクス」が何よりも深刻な格差拡大をもたらしてきたことを、厳しく追及してきました。また「アベノミクス」が、「大企業や富裕層がもうかれば、いずれは庶民の暮らしに回る」という「トリクルダウン」の経済論にたっていることを、「考え方の根本が間違っている」と批判してきました。ＯＥＣＤが、わが党の批判と共通する立場にたった分析を発表したことは、きわめて重要であります。
　格差拡大の政策では経済成長はできない、「トリクルダウン」という考え方は誤りだ――ＯＥＣＤのこの分析は、「アベノミクス」とその「成長戦略」に対する痛烈な批判ともなっているではありませんか。
　「この道は先がない」。そのことは、世界の動きにてらしても、いよいよ明瞭となっていることを私は強調したいと思います。

「暴走ストップ、五つの転換」の旗を高く掲げて――政党助成金廃止法案を提出
　国民の民意に背き、「先のない」道を暴走する安倍政権に対して、日本共産党は、総選挙で訴えた「暴走ストップ、日本の政治の五つの転換」の旗を高く掲げ、公約実現のためにたたかいぬく決意を表明するものです。
　私たちが総選挙で訴えた「五つの転換」――消費税に頼らない別の道、暮らし第一の経済再生、憲法９条を生かした平和外交、原発ゼロの日本、基地のない平和で豊かな沖縄は、そのどれもが、そのまま今年の政治対決の大争点になっています。
　総選挙の躍進によって、国民から与えられた力は大きなものがあります。日本共産党は、衆議院の１７の常任委員会のうち、これまでは六つに委員を出すことができませんでしたが、１７すべての常任委員会に委員を配置し、そのうち１１では複数の委員を配置し、発言力が格段にアップすることになりました。参議院につづいて衆議院でも議案提案権を獲得し、国民の要求を法案の形で提起することが可能となりました。党首討論に参加する権利を、文句なしに獲得することができました（拍手）。私にとっては、１１年ぶりの党首討論への復帰でありますが、大いに奮闘したいと決意しております。（拍手）
　躍進した力を縦横に発揮し、安倍政権と正面から対決するとともに、国民の立場に立った抜本的対案をあらゆる分野でさらに豊かに発展させ、国民との共同で政治を動かす――「対決、対案、共同」の政治姿勢を貫いて、新しい国会で大奮闘する決意を表明したいと思います。（拍手）
　私たちは、総選挙で政党助成金廃止を強く訴えました。この制度は、政治を劣化させ、政党を堕落させる根源となっている、政治の不当な特権をなくすというなら、年間３２０億円、憲法違反の政党助成金こそ廃止すべきだという訴えに対して、強い共感が寄せられました。わが党は、総選挙の公約実現の第一歩として、通常国会の冒頭に、政党助成金廃止法案を提出いたします（拍手）。すべての政党に対して、わが党の法案を真剣に受け止め、検討することを強くよびかけていきたいと思います。
　もとより、この問題を決するのは、国民の世論と運動の力であります。政党助成金廃止の国民的運動を大きく発展させることを、年頭にあたって心からよびかけるものであります。（拍手）

戦後７０年――日本の命運がかかった二つの大きな焦点について
　２０１５年は、第２次世界大戦が終結して７０年目の歴史的節目の年となります。日本の命運がかかった二つの大きな焦点について訴えたいと思います。

【「海外で戦争する国」づくりを許すな――広大な国民的共同のたたかいを】
　第一の焦点は、日本が戦後政治の羅針盤としてきた憲法９条を破壊する暴挙を許していいのかということであります。
　安倍政権は、集団的自衛権行使容認の「閣議決定」を具体化する安全保障法制案を、いっせい地方選挙後に一括して国会に提出し、通常国会を大幅延長してでも一気に押し切る構えを強めています。
　安倍首相は、選挙が終わると、集団的自衛権の行使容認に「国民の信任を得た」、それを具体化する安保法制については「約束してきたことは進める義務がある」などと言い放っています。これほど自分勝手なねじ曲げはありません。首相が総選挙で語ったのはもっぱら「アベノミクス」の〝自慢話〟ばかりであり、憲法問題を争点化することを避け続けたではありませんか。党首討論などで論争になったときも、答弁に窮しても、あくまで国民に真相を語らず、「海外で戦争することはない」とゴマカシに終始したではありませんか。
　国民は、「海外で戦争する国」への信任状など、断じて与えていません。たたかいはこれからが、今年が正念場であります。わが党は、憲法違反の「閣議決定」の撤回とともに、それを具体化する一切の法案、日米軍事協力の指針（ガイドライン）再改定の作業の中止を強く要求します。かりに国会提出を強行するなら、国会内外のあらゆる力を総結集して、それを葬るために全力をあげてたたかいぬきます。戦後７０年の今年、「海外で戦争する国」づくりを許すなの一点で、広大な国民的共同のたたかいを発展させ、安倍政権の野望を必ず打ち砕こうではありませんか。（拍手）

【歴史を偽造する極右勢力による政治支配を一日も早く終わらせよう】
　第二の焦点は、過去の侵略戦争と植民地支配を肯定・美化する逆流の台頭を決して許さないということであります。
　安倍首相は、総選挙中の党首討論の場で、２０１５年に、「戦後７０年をふまえた新談話を出す」と表明しました。
　歴史問題に対する安倍首相の姿勢は、きわめて不誠実なものです。
　首相は「村山談話」の「踏襲」を口では言います。しかし、「村山談話」の核心部分――「国策を誤り、……植民地支配と侵略」を行ったことを認めるかと問うと、決して認めるとは言いません。「侵略の定義は定まっていない」と言い放ちます。靖国参拝という「村山談話」の精神を踏みにじる行動を平然と行って恥じるところがありません。
　首相は、「慰安婦」問題で旧日本軍の関与と強制を認めた「河野談話」についても、「継承」と口では言います。しかし、「性奴隷というのはいわれなき中傷」「強制連行はなかった」などと言い放ち、「河野談話」を事実上否定する言動を公然と行っています。
　口では「継承」といいながら、行動ではそれを裏切る。こんな不誠実な態度はないではありませんか。
　こうした異常で卑劣な態度の根源に、安倍首相自身のゆがんだ歴史観があることは、隠しようもないことであります。安倍政権の閣僚のほとんどは、首相を先頭に、侵略戦争美化の中心組織である「日本会議国会議員懇談会」、天皇中心の「国体」の復興をいまだに理想として掲げる「神道政治連盟国会議員懇談会」に所属しています。安倍政権は、歴史を偽造する極右勢力によって支えられ、またその震源地となっているのです。
　こうした極右勢力による政治支配に対して、自民党の元幹部の方々からも強い危惧と批判の声が起こっています。ある自民党元重鎮は、総選挙の結果を受けて、わが党の躍進への祝意とともに、「戦後７０年の節目の年に、もう共産党に頼るしかありません」という切実なメッセージを寄せてこられました。立場の違いを超え、理性の声を一つに集めるときであります。
　戦後の世界秩序は、ファシズムと軍国主義による侵略戦争の断罪の上に成り立っています。それを否定するものは、世界でもアジアでも生きる道はありません。
　日本共産党は、戦後７０年の今年、歴史を偽造する極右勢力による政治支配を一日も早く終わらせ、アジアの国ぐにとの真に心通う友好の道を開くために、あらゆる力をつくすことを、表明するものであります。（拍手）

いっせい地方選挙での躍進、強く大きな党づくりをめざして

いっせい地方選挙で躍進してはじめて、〝第３の躍進〟が本格的な流れに
　いっせい地方選挙の前半戦告示まで３カ月を切っており、文字通り選挙戦はまぢかに迫っています。
　私は、選挙戦をたたかう基本姿勢として、二つの点を訴えたいと思います。
　一つは、総選挙での躍進は、党と国民との関係、政党間の力関係を大きく変え、いっせい地方選挙での躍進の大きな客観的条件が生まれているということです。それを余さずくみつくす攻勢的な大奮闘をしようではありませんか。総選挙の躍進が切りひらいた新しい状況を踏まえて、政治目標を見直すことも含めて、得票と議席の躍進に思い切って挑戦し、地方議会第１党に道を開く大きな成果を必ずかちとろうではありませんか。
　いま一つ、同時に、わが党にとって、どんな場合も「風頼み」の勝利はありえません。やるべきときまでに、やるべきことをやりきってこそ、躍進の可能性は現実のものになります。このことをお互いに肝に銘じて奮闘しましょう。とくに、予定候補者を一刻をあらそって決定すること、投票日からの逆算で宣伝・組織活動を着実にやりきることを、訴えたいと思います。
　私たちは、一昨年の都議選・参院選で〝第３の躍進〟を開始し、昨年の総選挙でそれをさらに大きく発展させました。それに続く今年のいっせい地方選挙で躍進をかちとってはじめて、「〝第３の躍進〟を本格的な流れに発展させた」ということができます。参議院、衆議院、地方政治の三つの全国選挙で躍進をはたし、それを新たな土台として、民主連合政府樹立に向けた「成長・発展目標」の全面的達成に向かいましょう。そういう位置づけで、いっせい地方選挙での躍進に全力をあげようではありませんか。（拍手）

国政選挙で躍進した今こそ、強く大きな党づくりでも躍進を
　同時に、訴えたいのは、国政選挙で躍進した今こそ、強く大きな党づくりでも躍進をつくりだそうということです。
　総選挙での躍進は、党勢拡大でも広大な可能性をつくりだしています。それがどれだけのものか。一つの指標を紹介したいと思います。
　「しんぶん赤旗」日曜版読者１人あたり、何票の得票を得たか。歴史をさかのぼって調べてみました。そうしますと、〝第１の躍進〟のさいに得票率でピークを記録した１９７２年の総選挙（得票率１０・７５％）では、日曜版読者１人あたりの得票は３・１０票でした。〝第２の躍進〟のさいに得票率でピークを記録した１９９８年の参院選（得票率１４・６０％）では、日曜版読者１人あたりの得票は４・３７票でした。それに対して、昨年の総選挙（得票率１１・３７％）では、日曜版読者１人あたりの得票は実に６・１４票におよびます。
　これは、昨年の総選挙で、全党と後援会のみなさんが、小さい党勢のなかでどんなにがんばったかを示すものですが、同時に、いま私たちの前に、党の歴史のなかでもかつてない規模で、党勢拡大の広大な条件が存在していることを示すものでもあります。
　この広大な条件を党員と読者拡大の飛躍に結実させるとりくみに、今年は思い切って挑戦しようではありませんか。選挙で躍進した力で党勢拡大を前進させ、その力でさらなる選挙での躍進をかちとる。選挙で勝った今こそ、選挙躍進と党勢拡大の好循環をつくりだそうではありませんか。
　私たちが、昨年の総選挙でかちとった成果は画期的なものでありますが、民主連合政府樹立という綱領的目標の実現にてらせば、最初の一歩にすぎません。もとよりこの到達点に安住することは許されません。この一歩を、日本の政治を根本から変革する躍進につなげることができるかどうか。それは何よりもまず党建設の前進にかかっています。
　今年を、党大会が決定した２０１０年代の党建設の二大目標――党勢倍加と世代的継承の達成にむけて、大きな成果を記録する年にするために、新たな知恵と力をつくすことをよびかけて、新春にあたってのあいさつとします。みなさん、ともにがんばりましょう。（長く続く拍手）
( ２０１５年０１月０６日，「赤旗」)

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マスメディア時評／歴史の教訓をどう踏まえるか

第２次世界大戦の終結とアジア・太平洋戦争での日本の敗北から７０年となる２０１５年の幕開けです。歴史の節目の年明けにあたり、ほとんどの全国紙と地方紙が新年の社説で「戦後７０年」を中心テーマに掲げたり、議論の切り口にしたりしています。昨年末に発足した第３次安倍晋三政権の｢歴史認識｣をめぐって国内外で大きな注目が集まり、不信と警戒も高まっているさなかでもあります。過去の戦争とどう向き合い、未来にどうのぞもうとするのか。マスメディアの基本的な立場も浮き彫りにしています。

首相の「歴史認識」めぐり
　新年の各紙社説は「戦後７０年」を共通タイトルに歴史、政治、経済などさまざまな問題を論じていますが、「朝日」（３日付）は「忘れてはならないこと」、「毎日」（４日付）は「歴史と政治　自分史に閉じこもるな」で、安倍政権の過去の戦争にたいする認識や外交姿勢について問題を提起しました。
　一昨年の秘密保護法、昨年の集団的自衛権行使容認の閣議決定の賛否についてのマスメディアの立場の違いが、「歴史認識」でもあらわになっているのが特徴です。
　「朝日」は、安倍首相が戦後７０年で新たな談話を出すというが、「戦争責任を素通りしてしまったら、どうなるか」と問い、日本の植民地支配と侵略に痛切な反省とおわびを表明した「村山談話」（１９９５年）の「価値を台無しにすることは許されない」と強調。「毎日」も「首相の周辺には、戦前への反省を『自虐史観』と排する人が少なくない。こうした考え方は、日本が少しずつ積み重ねてきた『和解』への努力を踏みにじるものだ」と指摘します。両社説ともに過去の戦争の反省にたち、「平和主義の歩みこそ、日本は誇り、守っていかねばならない」（「朝日」）「誇るべきは戦後の歩み」（「毎日」）としていることも大切な視点です。
　これにたいし「読売」（３日付）は「誤解正す対外発信力を高めたい」などとのべ、安倍首相について「戦後体制を否定する『歴史修正主義者』ではないか、との極めて偏った見方」が欧米「一部メディアなど」にあることの方を問題視します。しかし、侵略戦争を美化する靖国神社参拝を一昨年に強行し、いまだに無反省なのが安倍首相です。第２次大戦における日本やドイツの侵略国の行為を正当化しようとする安倍首相の立場こそ、世界のなかで異質な存在であることは明らかです。この安倍氏を擁護する立場では、いくら「未来志向」といってもアジアや世界に受け入れられないどころか、未来を閉ざすことにしかなりません。
　昨年７月に第２次安倍政権が、憲法解釈を乱暴に変更し強行した、集団的自衛権行使容認の閣議決定に賛成した「読売」（１日付）が「安全保障法制の整備を確実に進めなければならない」とあおったり、「産経」（１日付）が、日本の「自立」のために改憲を「躊躇（ちゅうちょ）せずに決断」することをけしかけたり（論説委員長の論評）するなど、引き続き安倍政権の暴走を加速させる立場を強めていることは、「言論・報道機関」としての資格が根本から問われるものです。

翼賛報道への責任と反省は
　侵略戦争を美化・正当化しようとする安倍政権にたいして、従来の自民党支持層からも強い警戒と批判の動きが出て、自民党元幹部らが「安倍政権では危ない」と声を上げる状況です。安倍政権が「戦争する国」づくりに向けた動きを強め、改憲姿勢を露骨にするなかで迎えた今年は、戦後７０年という「歴史の節目」にとどまらず、戦後史の大きな転換の年となる様相を呈しています。
　日本の新聞は、戦前・戦中を通じて国民に真実を伝えず、「守れ満蒙　帝国の生命線」などと侵略戦争を推進するお先棒をかついだ深刻な歴史があります。「東京」（「中日」）（１日付）が、その過去に触れ「新聞の痛恨事は戦争を止めるどころか翼賛報道で戦争を煽（あお）り立てたこと」とのべ、「国民の側に立ち、権力を監視する義務と『言わねばならぬこと』を主張する責務」を強調したことは重いものがあります。
　第２次大戦で敗北したナチス・ドイツの新聞がすべて廃刊になったのにたいし、日本の新聞は戦後も同じ名前で存続するなど、戦争をあおった責任や反省を明確にしていません。いま戦争か平和かの歴史的な岐路に立つなかで、７０年前までと同じ過ちを繰り返さないのか。マスメディアの責任が鋭く問われています。
　（宮澤　毅）
( ２０１５年０１月０６日，「赤旗」)

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シリーズ戦後７０年を考える／ドイツ／ベルリン州政治教育センター、ヨアヒム・メアフォートさん

ナチスの反省、政治教育の原点
　ヒトラー政権が誕生したのは１９３３年１月。前年１１月の総選挙でナチス党が第１党になった結果でした。ナチスは政権につくや、国会議事堂炎上事件などを理由に共産党弾圧を開始。急速に独裁体制を固めました。
　こうした歴史への反省から戦後の西ドイツでは、国民の政治教育、歴史教育が重視されるようになりました。その推進役の一つが連邦政府と州政府の「政治教育センター」です。５２年に設立された「連邦祖国奉仕センター」が６３年に今の名称に代わりました。
　侵略戦争の反省に基づき、政治的・歴史的知識を国民が身につけることを公教育の一環として明確に位置づけ、促進する仕組みがつくられています。ベルリン州政治教育センターのヨアヒム・メアフォート氏に話を聞きました。

　私たちのセンターは①教材提供②事業支援③他団体と協力した取り組み―の三つをしています。センターが指定した教材は、定価の５～１０％で提供します。１９８９年の「ベルリンの壁」崩壊などをテーマにしたカードゲームもあります。学校教員以外の関心ある市民でも買えます。
　事業支援では、例えば〝戦後７０年でこんな事業をしたい〟と教会や労組などが申請してくれば、それを審査し、承認すれば財政支援を含めた協力をします。年５万～６万ユーロ（９００万円弱）の予算です。
　他団体との協力の一例は、ベルリン自由大学と共催した連続講演会です。「ナチス時代の報道機関」「旧東独反対派の活動」などのテーマで開いています。講演と討論が各１時間で、一般市民も参加します。
　学校では模擬選挙も実施します。（キリスト教民主同盟や左翼党など）現存する政党名を使い、選挙運動や投票をします。
　ベルリン州センターの職員は８人。年間予算は１００万ユーロ（約１億５千万円）です。労働者が政治教育の催しに参加するので休暇が欲しいと言えば、企業は反対できません。これは連邦特別休暇法など国の法律で定められています。
　ヒトラーのＮＳ（国家社会主義）の過去があったことが、今の政治教育の大きな契機です。ドイツが欧州に大きな悲劇を引き起こしたことが明らかになり、それが再発しないように、何らかの方法で歴史と向き合わなければならない。それが政治教育の出発点です。
　紆余（うよ）曲折はありましたが、一つの転機となったのが７６年に合意された「ボイテルスバッハ・コンセンサス」（注）です。
　ナチスの問題は〝あれは悪かった〟と確定しています。この問題は出発点となる本質的要素ですが、それだけでなく、ベルリンの政治、西独や東独の歴史、日本を含む諸外国のことなど、政治教育の課題は、さまざまです。論争問題では私たちの立場は示しません。
　ドイツでは教育は各州が責任を負います。各州の政治教育センターも独自の権限を持ち、連邦政治教育センター（ＢＰＢ）の下部組織ではありません。
　旧西独地域で政治教育を疑問視する声はありません｡旧東独では､旧体制時代に体制支持を強いた「国家市民教育」を想起するとの批判もあります。しかし政治教育は、ナチス、ファシズム、不寛容、人種差別、独裁に反対するというもので、特定の政策、宗教、党派を支持するといったものではありません。

（注）ボイテルスバッハ・コンセンサス…①期待される見解で生徒を圧倒しない②論争問題は論争があるものとして扱う③個々の生徒の利害・関心を重視する―の３原則
(２０１５年０１月０４日，「赤旗」)

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十五年戦争期の京大学生運動／岩井忠熊著／評者広川禎秀大阪市立大学名誉教授

戦争とファシズム断罪の信念
　安倍内閣による改憲の現実的脅威が強まるなかで、日本の戦争とファシズムに抗した思想、運動への関心も高まっている。本書は、未曽有の侵略とファッショ体制に抗し、自由を守ろうとした京都大学学生とその周辺の人々の抵抗の歴史をたどり、今日の危機に立ち向かう人々の糧となることを期待してまとめられた書である。
　著者の岩井忠熊氏は、１９４３年に京大文学部史学科に入学し、その年に学徒出陣、九死に一生を得て、戦後大学に復学し、日本近代史研究の分野で多くの業績をあげた研究者である。著者にとって戦争体験の意味は重く、その学問的姿勢や天皇制批判につながり、本書にも戦争とファシズム断罪の信念が脈打っている。
　本書は、第１章「二〇世紀日本の戦争と平和」、第２章　「京都大学とは」、第３章「学生運動の登場」、第４章「京大学生運動の展開と弾圧」、第５章「人民戦線の周辺」となっている。著者は、学問の自由擁護の滝川事件と京大内外の学生運動にページを割いてその歴史的意義を説く（第３・４章）。つづいて３０年代の反ファッショ運動の創意的な合法性確保の史実なども発掘しつつ、治安維持法による犠牲者の広がりに弾圧の凶暴化を説き、その犠牲が戦後民主主義に生かされると展望する（第４・５章）。
　今日、スターリン体制の否定的影響の全貌も明らかにされつつある。本書は、犠牲を恐れない京大学生や周辺の諸抵抗、さらには戦時下の抵抗の全体像を歴史のなかに正確に位置づける課題がますます大きくなっていることを示しているといえよう。

　いわい・ただくま　２２年生まれ。立命館大学名誉教授。『｢靖国｣と日本の戦争』ほか。
( ２０１５年０１月０４日，「赤旗」)

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平和を願って／朗読

竹下景子が「アンネの日記」を読む、「新春朗読特集」がＮＨＫラジオ②で１日（後２・３０～４・０）から放送されます。連続３回。
　第２次世界大戦中、ユダヤ人少女のアンネ・フランクがナチスに追われ、アムステルダムの隠れ家で書いた日記。１３歳から収容所に送られる１５歳までの日常をつづった、魂の叫びともいえるものでした。今年はアンネ没後７０年にあたります。
( ２０１５年０１月０１日，「赤旗」)

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主張／戦後７０年の年明け／歴史に向き合い未来開く責任

２０１５年の新しい年の門出です。日ごろのご購読とご支援に感謝し、新年のごあいさつを申し上げます。日本共産党は昨年末の総選挙で画期的に躍進し、衆参両院で３２人の議員団に前進しました。暴走を加速する第３次安倍晋三内閣と対決し、対案を掲げて、国民的共同を大きくすすめるため、さらに力を尽くす決意です。
　今年は、アジア・太平洋地域で侵略を重ねた軍国主義の日本の敗北から７０年です。歴史に真摯に向き合い、痛苦の教訓にたって未来を切り開けるかどうか。節目の年に政治の姿勢が問われています。

戦後の原点に逆らう暴走
　１９４５年の８月、アジア・太平洋戦争での日本の無条件降伏により、第２次世界大戦は終結しました。ドイツの降伏は先立つ５月です。この年は、アメリカ、イギリスなど連合諸国と世界の民主勢力が、日独など侵略国家を破った記念すべき年として世界史に刻まれています。６月に国際連合が発足し、世界の平和秩序形成に道を開いた年とも記録されています。
　昨年６月、第２次大戦のヨーロッパ戦線での帰趨を決めた連合国軍のノルマンディー上陸作戦７０年式典には敵同士としてたたかった米英ロシアと独の首脳らが一堂に会しました。欧州ではこのような記念日に各国首脳が顔を合わせ、戦争犠牲者の追悼ができる―。矛盾を抱えながらも、ドイツ自身を含めナチス・ドイツの行為にたいする明確な否定が国家の指導者の共通の土台にあるからです。
　アジア･太平洋地域はどうか｡日本の侵略戦争と植民地支配によって３１０万人の日本国民とともに２０００万人を超すアジアの人々を犠牲にしたにもかかわらず､日本を含むアジア･太平洋の首脳が過去の戦争での式典に集まることなど考えられない状況です｡
　なぜか。日本は降伏のさい「世界征服の挙に出づるの過誤を犯さしめたる者の権力及勢力は永久に除去」とするポツダム宣言を受諾し、戦争指導者を断罪した東京裁判も受け入れました。しかし歴代自民党政権は、この戦争を「侵略」と認めることを避け続け、アジア諸国への謝罪・補償もまともに行っていません。過去の戦争を直視しない自民党政権の姿勢が、アジア諸国との和解や対話のうえで障害になってきたからです。
　今日事態をさらに深刻にしているのが､歴代自民党政権とも異質な､侵略戦争を正当化する立場の安倍首相が政権についていることです｡侵略戦争賛美の靖国神社参拝を強行し､米政府からも｢失望｣を表明される安倍首相では､中国や韓国とのきちんとした外交関係も築けません｡侵略戦争の断罪の上に築かれた戦後国際秩序を根本から覆す安倍政権のもとでは､日本がアジアでも世界でもまともに生きていけないのは明らかです｡

憲法９条を輝かせてこそ
　戦後の再出発にあたって日本は「二度と戦争をしない」ことを誓い憲法９条を決めました。９条は世界への公約です。９条を壊し日本を「戦争する国」にすることを狙う安倍政権の暴走を阻むことは国際的にも重要な使命です。
　日本共産党は戦前も戦後も、文字通り命がけで反戦平和を掲げてきました。戦後７０年の節目、この党とともに、「戦争する国」づくりを阻止し、希望ある平和な未来を切り開こうではありませんか。
( ２０１５年０１月０１日，「赤旗」)

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【2015年ファシズム関連情報】

【1月】 【2月】 【3月】 【4月】 【5月】 【6月】 【7月】 【8月】 【9月】 【10月】 【１１月】 【12月】

（12月ヘッドライン）

（１２月本文）

仏がナチ協力時公文書公開へ

ヒトラー著『わが闘争』／反面教師的に〝過去克服〟／教育相・教員「高校授業に」

戦争法廃止行動各地で／もっと運動広げよう／やめるべ戦争行動に元市長も／思いスピーチ、全員でコール／北海道函館市

「子供ばんど」うじきつよしさん／「自由手放すな」今、言わなきゃ／オヤジのロック魂、理不尽許せない

ＮＨＫ変える民衆の力必要／広島・つどい

１５回顧／映画／歴史、社会映し平和を

２０１５年回顧／戦後７０年／反戦・平和の意志新たに

〝必要なのは調和と尊重〟／トランプ発言に米市民ら抗議

絵本の世界にご招待／子どもに贈りたい８冊／安曇野ちひろ美術館副館長竹迫祐子さん

おはようニュース問答／政治資金の問題が政治不信を強めている

映画／「杉原千畝 ＳＵＧＩＨＡＲＡ ＣＨＩＵＮＥ」（日本）／気骨の人の半生、静かに

（１１月ヘッドライン）

（１１月本文）

ひと／作家小川洋子さん／長編小説『琥珀のまたたき』／心の自由は誰も奪えない

にちようシネマ館／黄金のアデーレ 名画の帰還／アメリカ・イギリス

野党共闘広げ戦争法廃止を／各地で街頭宣伝・集会／９団体呼びかけ、２５０人がつどう／和歌山市

旧秘密警察本部、難民施設に利用／ドイツ

朝の風／「観察」ということ

壁の中からホロコースト資料／「歴史の空白埋める助けに」／ハンガリー

波動／虐殺の〝リハーサル〟／藤久ミネ

戦争法に反対する若者・学者／民主主義問い立ち上がる

まど／条約に恥かかせないで

文化の話題／ノーベル賞作家スベトラーナ・アレクシエービッチ『チェルノブイリの祈り』に寄せて／白石草

ナチス収容所の父から７１年経て手紙／９２歳の息子「心が揺さぶられる」

スポーツ連盟創立５０周年シンポ／スポーツ権の向上を

ダブル選／ファシズム阻止／「橋下維新政治許さない」集会／小林節・白井聡両氏が提起／大阪

朝の風／空爆の犯罪性

おはようニュース問答／映画は僕らの知見を広げてくれるね

朝の風／テレジンの志村泉演奏会

第２８回東京国際映画祭／社会と向き合い世界の現実映す／中川洋吉

にちようシネマ館／ミケランジェロ・プロジェクト／アメリカ

試写室／ＥＴＶ特集障害者虐殺７０年目の真実／ＮＨＫＥテレ後１１・０／弱者への差別意識、戦争が助長

粘り強く力強く頑張ろう／はくい革新懇が総会／石川

ロマの碑に落書き／「和解への攻撃」と非難／ドイツ

１０月２５日ＮＨＫスペシャル「新・映像の世紀①第一次世界大戦」／２０世紀の前進面を軽視、ゆがめる／田代忠利

朝の風／戦後７０年、アウシュビッツ鎮魂

沖縄から安倍政権打倒／ヘリ基地反対協安次富氏が報告／フォーラム沖縄

あいち赤旗まつり／青年ジャック／池内議員参加／好き勝手する安倍政権倒したい

ナチスの強制収容所跡・マイダネク博物館副所長に聞く／人類の悲劇から学ぶために

辺野古めぐる安倍政権暴走／元海兵隊員の政治学者Ｃ・ダグラス・ラミスさんに聞く／「埋め立て承認違法消えぬ」

核兵器と共存できない／反核医師のつどい開く／名古屋

（１０月ヘッドライン）

（１０月本文）

国連憲章発効７０年／植民地崩壊を促した／各国発言

イスラエル首相発言「イスラム指導者がユダヤ虐殺勧める」／内外から批判の声／〝歴史をゆがめる〟

独裁期の拷問に実刑／秘密警察、反体制派５０人拉致／チリ

『スターリン秘史 巨悪の成立と展開』第４巻を語る／上

『スターリン秘史 巨悪の成立と展開』第４巻を語る／下

芸能テレビ／第２８回東京国際映画祭２２～３１日／閉幕作品に「起終点駅」

ＮＯ ＭＯＲＥ ７３１日本軍細菌戦部隊／１５年戦争と日本の医学医療研究会編／評者山田裕一日本社会医学会理事長、元金沢医科大学教授

潮流

額にかぎ十字刻む覆面男拘束

戦争法廃止国民連合政府を／各界から／続報／鳥越俊太郎さん

戦争の「痛苦の歴史」振り返る／朝鮮・台湾出身学生を志願に追い込んだ戦時体制／倉田玲

『［新版］日本の民話』を刊行して／豊かな民衆的伝承の世界／西谷能英

トレブリンカ叛乱／サムエル・ヴィレンベルク著近藤康子訳／評者尾崎俊二ポーランド現代史研究者

障害者まつり５千人集う／埼玉

女性の目アラカルト／ドイツ／悲しい歴史記憶にとどめて

（９月ヘッドライン）

（９月本文）

３０

ＶＷ排ガス不正／消費者欺く悪質行為

独ＶＷ排ガス不正／元閣僚が業界トップ、規制に反対／政・業の癒着に批判噴出

戦争法廃止へ声あげる／スタンディング／９条こそ抑止力／長野・下諏訪町

芸能テレビ／自国の戦争犯罪描くドイツ／顔のないヒトラーたち／ヒトラー暗殺、１３分の誤算

記憶遺産「命のビザ」推薦／「上野三碑」も／ユネスコ日本委

安倍政権１０００日／立憲主義・民主主義・平和主義を破壊／巨大な運動に追い詰められ

習近平中国主席あす訪米／矛盾深化も協力関係確認へ

２０

安保法制を問う本／違憲立法の廃止へ展望示す

朝の風／ベヒシュタインとヒトラー

国会緊迫／戦争法案ノー、与党の足元でも／創価学会員が泣いた／元公明党副委員長二見伸明さん

１０

朝の風／テレジンの小要塞

文化通信／文系学部廃止政策／出版協が反対声明

【1月】　【2月】　【3月】　【4月】　【5月】　【6月】　【7月】　【8月】　【9月】　【10月】　【１１月】　【12月】

映画／「杉原千畝　ＳＵＧＩＨＡＲＡ　ＣＨＩＵＮＥ」（日本）／気骨の人の半生、静かに

にちようシネマ館／黄金のアデーレ　名画の帰還／アメリカ・イギリス

『スターリン秘史　巨悪の成立と展開』第４巻を語る／上

『スターリン秘史　巨悪の成立と展開』第４巻を語る／下

ＮＯ　ＭＯＲＥ　７３１日本軍細菌戦部隊／１５年戦争と日本の医学医療研究会編／評者山田裕一日本社会医学会理事長、元金沢医科大学教授