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2016ファシズム関連情報】

 

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12月見出し)

*         論壇時評/田代忠利/ポスト真実¢ホ抗いかに

*         芸能テレビ/「ドラマ東京裁判」を見て/日本の戦争は有罪=^国際法前進させた判事たちの苦闘

*         独テロ、極右が政策に利用/市民ら反発/近隣諸国にも影響

*         アンネ逮捕、密告でなく偶然か/オランダで新説

*         主張/17年度政府予算案/税の集め方、使い方の改革急務

*         ヒトラー生家取り壊さず/改装し福祉施設へ/オーストリア

*         本と人と/『国のために死ぬのはすばらしい?』ダニー・ネフセタイさん/戦争する日本への危機感

*         『日本近代の歴史』刊行/明治維新から戦後、時代の構造とらえ/大日方純夫

*         「戦争と平和」/市民が集会/静岡・沼津

*         映画/「ヒトラーの忘れもの」(デンマーク、ドイツ)/追及とゆるしの苦悶を経て

*         新しい非核思想/ビジョン語ろう/奈良で講演会

*         16回顧/映画/情報新時代、邦画に秀作

*         文化/マーチン・サントフリート監督「ヒトラーの忘れもの」/自国の歴史の影、隠さずに語って

*         試写室/NHKスペシャル ドラマ東京裁判/NHKテレビ12日後10・25/戦争を裁く歴史的意味を問う

*         「真珠湾」75年で声明/米大統領

*         おはようニュース問答/オーストリア大統領選、極右が敗北したね

*         オーストリア大統領選/統一候補、極右阻む

*         ナチス収容所の扉発見/ノルウェーで/2年前に盗難

*         潮流

12月本文)

論壇時評/田代忠利/ポスト真実¢ホ抗いかに

 アメリカ大統領選挙は、大方の予想を裏切って共和党のトランプ候補が当選しました。トランプ候補は、ミシガン州など従来は民主党の地盤だった州でクリントン候補を僅差で上回り、全国の得票数では下回りながら選挙人数で勝ったのです。これらの州は製造業の衰退で「ラストベルト(さびついた地帯)」とよばれ、とくに白人住民の生活水準が低下していました。
 北丸雄二(ジャーナリスト)「トランプの憎悪がもたらすトランプの利益」(『世界』)は、経済に取り残された白人男性層の鬱憤爆発はあったが、トランプ票の核心は「本来の、穏健で善良な主流派共和党支持者」だったと分析します。つまり「非民主的な経済に苦しんでいる層が、非民主的な経済で恩恵を受ける一部富裕層とかつてなくあからさまに協同する形」が生まれました。
 北丸氏によると、「苦しんでいる層」は、本来利害を同じくするはずの「反ウォールストリート運動層」を支持するのではなく、保守メディアによって「敵味方を、履き違えるように仕向けられ」ました。トランプ支持派はデマや誹謗記事を流してクリントン候補を攻撃しました。

ジャーナリズム衰退が生む現象
 イギリスでも欧州連合離脱をめぐる国民投票では、離脱派が虚偽の宣伝を行いました。これらの言説は「ポスト真実」とよばれ、イギリスのオックスフォード大学出版局が「今年の言葉」に選定しました。「POST
TRUTH【ポスト真実】って何だ」(「東京」14日付)は、「世論形成で客観的事実より、個人の感情や信念に訴えるほうが影響力を持つ状況」という同出版局の説明を紹介し、日本の例として「状況は完全にコントロールされている」という安倍首相の福島原発汚染水に関する発言や、南スーダンの首都ジュバは「比較的落ち着いている」という稲田防衛相の発言をあげています。
 三島憲一(大阪大学名誉教授)「ポスト真理の政治」(『世界』)は、戦争法案反対デモに中国人工作員が潜入していた≠ニいうネット上のうわさのように、「嘘を嘘と思わないで叫ぶと」人々が〔同調して〕怒るのは「新しい現象だ」といいます。普通は真実を知ると例えば、豊洲は盛り土がされていない怒るものです。三島氏は、「アベノミクスは道半ば」のような、反証が難しいのを幸いに「真か偽かの次元とは別の次元にずらして、感情に訴えかける」ようなやり方を警戒するよう呼びかけています。
 林香里(東京大学大学院情報学環教授)「ソーシャル・メディアに翻弄されるアメリカ」(『世界』)は、政治家が嘘を言い放ち、デマが飛び交うソーシャル・メディアの先にあるのは、「じっくり読ませて考えさせるジャーナリズムの衰退」だと憂慮しています。

ウソ暴き続ける愚直な作業大切
 では「ポスト真実」にどう対抗するか。「事実に基づいた議論や思考、社会の運用が重要だと説得し続けること。加えて、ウソを暴き続ける。そうした愚直な作業が、ポスト真実の時代には大切だ」という日比嘉高名古屋大学准教授の提言(「東京」)に共感しました。
 電通女性社員の過労死に関連して、『エコノミスト』(13日号)は「働き方改革」を特集し、「息子、娘を守れ! ブラック企業」で、ツイッターで話題の汐街コナさんのマンガを紹介しています。汐街さんは月100時間残業して自殺しかけた体験をマンガにし、「『死ぬくらいなら辞めればいいのに』と、思う人は多いでしょうが、その程度の判断力すら失ってしまうのが恐ろしいところなのです」と訴えています。
 この記事は、政府や企業側がホワイトカラー・エグゼンプション導入で長時間労働を強化しようとしていることについて、「『四の五の言わず、とにかく働け』というのが、いまだに経営者のホンネ」と指摘。「そうした経営者は時代錯誤」で、「そんな考えでは企業は存続不可能」と批判し、「慢性的な長時間労働が『当たり前』という風潮が残る企業には、共働きが当たり前で、家事や育児、介護を夫婦で分担するこれからの世代は入社しない」と警告しています。
 (たしろ・ただとし)

今月の動向
・吉田徹(北海道大学教授)「『没落する中間層』不満映す」(「日経」15日付) 米英の戦後の政治経済の構造的変化を分析し、グローバリズムによって安定雇用を得ていた中間層が没落したと指摘。
・シェリ・バーマン(バーナードカレッジ教授)「民主主義の危機にどう対処するか」(『フォーリン・アフェアーズ・リポート』) 1920〜30年代のファシズム台頭期と現状との、民主的な規範や制度の違いを強調し、「次のトランプ」の台頭は抑え込めると主張。
・三笠宮崇仁「何とかして戦争を終結せねばと」(『中央公論』) 軍参謀だった1944年に書いた陸軍を批判する文書「支那事変に対する日本人としての内省」についての94年のインタビューの再録。
 (編集部)
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2016年12月28日,「赤旗」)

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芸能テレビ/「ドラマ東京裁判」を見て/日本の戦争は有罪=^国際法前進させた判事たちの苦闘

欧米とアジアで温度差、積み残した課題現代に
 NHKが12日から4夜連続で放送した「ドラマ 東京裁判〜人は戦争を裁けるか〜」は、アジア・太平洋戦争を仕掛けた日本の指導者たちの責任を裁いた東京裁判(極東国際軍事裁判、1946年5月から2年間)をとりあげました。
 11人の判事たちのぶつかり合う個性と議論を通して裁判が問い詰めたものに迫ります。公式記録以外にも判事たちが残した手紙、日記、覚書などの発掘資料をもとにカナダ、オランダと共同制作したドラマです。
 焦土と化した東京の風景や、法廷(東京・市ケ谷にある旧陸軍省大講堂)、証言席の被告の様子などは着色した歴史フィルムを使い、俳優たちの演じるドラマの合間に挟んでいます。違和感なく融合していました。東条英機被告の戦争責任への無自覚な証言ぶりが際立っています。
 11人の判事は、米ソ仏英豪中蘭印、ニュージーランド、フィリピン、カナダから派遣された法曹や軍人です。戦勝国と日本の侵略を受けた国との違いが判事の見解にも表れます。
 ドイツ人の女性ピアニストやドイツ文学者の竹山道雄との対話から考えをまとめようとするオランダの判事・レーリンクや、本国(豪州)から召還されそうになるウェッブ裁判長の去就なども織り込んでいます。

隠れた部分
 フランスのベルナール判事の発言は大戦の隠れた部分を表出させました。彼はナチスから死刑宣告された経験があるのに、「植民地主義は場所によっていいものだ」と話します。理由は「国民が文明的な政府を持てず、まともな生活をできない地域では」是認されるのだと。これをフィリピンの判事は「植民地にふさわしい地域などない」と制止します。西欧とその植民地になったアジアが一緒になり、日本を裁くことの複雑さを示す場面でした。
 インドのパル判事は、「平和への罪」(侵略戦争を起こした罪)は極東国際軍事裁判所条例で初めて明記されたもので、戦争が始まる前にはなかった概念であり、事後法で裁くことは問題だとして25人の被告全員の無罪を主張します。
 これに対しレーリンクは法廷で聞いた戦争犠牲者らの証言に突き動かされ、「日本が戦争を始めたときに侵略戦争が犯罪ではなかったからという理由だけで、彼らを無罪にするようでは、国際法は前進しない」と反論します。
『パル判事』(岩波新書)の著書がある中里成章東大名誉教授も同書のなかで、「東京裁判はあるべき方向へ国際法を前進させるワン・ステップ」になったと指摘しています。
歴史的意義 国際社会では第1次世界大戦の惨禍をまのあたりにして反戦の機運が高まり、自衛戦争以外の戦争は違法というパリ不戦条約(1928年)が結ばれ、戦争を違法とする考えが勢いを増していました。パルの見解は「一九世紀的な後ろ向きのもの」(中里前掲書)でした。
 昭和天皇の戦争責任や広島、長崎への原爆投下にふれないなど、東京裁判は不十分な面はありますが、日本の侵略戦争を断罪したという歴史的意義は損なわれません。
 国際刑事裁判所が設立(2002年)されて、「平和への罪」を裁いた東京裁判が築いた到達は受け継がれています。
 他方、戦争犠牲者たちが自らの正義の回復と戦後補償を求め続けて悲痛な声をあげる姿を見れば、東京裁判後に積み残された課題は小さくありません。
 神田晴雄記者
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2016年12月25日,「赤旗」)

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独テロ、極右が政策に利用/市民ら反発/近隣諸国にも影響

 【パリ=島崎桂】ベルリンで19日に発生したクリスマス市へのトラック突入テロは、ドイツ国内政治だけでなく近隣諸国にも大きな影響を与えています。ドイツでの難民申請を却下されたチュニジア人の男が容疑者として浮上したことで、来年に総選挙や大統領選を控える国々で反難民を掲げる極右政党がテロを利用し、自らの政策を正当化。これに対して、極右を阻止するため市民らが行動を起こしています。
 ドイツの極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の議員は事件後、政府の難民受け入れ政策を改めて批判。「政府の無責任がテロを輸入した」と宣伝しています。
 21日にはAfDの呼びかけに応じた同党支持者ら約300人がベルリン市内をデモ行進し、メルケル首相の辞任を要求。これに対し約1000人の市民らが「ベルリンにナチスはいらない」と対抗デモを実施しました。
 事件現場となったシャルロッテンブルク区の区長は、「ナチズムに対する自由の壁を築いてくれた」と謝意を示しました。
 来年3月の総選挙を控えるオランダでは、自由党のウィルダース党首が20日、自身のツイッターに両手と顔を血に染めたメルケル氏の合成写真を投稿。「イスラム教徒はわれわれを嫌悪し、殺す」として、難民への敵意をあおりました。同党は現在、支持率で首位に立っています。
 来年4〜5月に大統領選が行われるフランスの極右「国民戦線」のルペン党首は20日の声明で、「仏政府が移民の入国禁止に動くまで、一体どれだけの死者が必要になるのか」と主張。最大野党・共和党の議員も「メルケル氏の『難民歓迎政策』は歴史的な誤りだ」と訴えました。
 こうした声に対し、与党・社会党のシェルキ議員は「戦火を逃れた99・9%の人々(の入国)を拒否すべきではない」と述べ、難民とテロリストを同一視する保守・極右に強い懸念を示しました。
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2016年12月24日,「赤旗」)

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アンネ逮捕、密告でなく偶然か/オランダで新説

 【ハーグ=AFP時事】オランダの首都アムステルダムにある、アンネ・フランク財団が運営する博物館「アンネ・フランクの家」が、1944年8月のフランク一家逮捕のきっかけについて、従来言われてきた密告ではなく「偶然だったのではないか」と推理する新説を紹介しています。このほど声明で明らかにしました。
 声明は「最近の研究は従来と違う視点を提供しており、偽造配給券の家宅捜索中だったナチス親衛隊情報部(SD)が偶然、アンネたちを見つけた可能性がある」と紹介。「裏切りがあったという定説に反論するわけではないが、別の説も考察されていい」と述べています。「誰がアンネたちを裏切ったのか突き止められていない」と定説の弱点も指摘しました。
 アムステルダムのアンネたちの隠れ家では44年4月、配給券偽造で2人が逮捕されています。これが8月の家宅捜索につながった可能性があります。アンネは逮捕から1年もたたず、ドイツ北部のベルゲン・ベルゼン強制収容所で死亡しました。
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2016年12月23日,「赤旗」)

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主張/17年度政府予算案/税の集め方、使い方の改革急務

 安倍晋三政権が、一般会計で97兆4547億円に上る2017年度の政府当初予算案を決定しました。16年度の第3次補正予算案とともに通常国会に提出します。安倍政権が政権に復帰して以来5度目の当初予算ですが、看板にしてきた経済政策「アベノミクス」が破綻して税収が伸び悩む中、軍事費の異常な突出と暮らしに関連した社会保障予算などの抑制が特徴です。国民の暮らしも経済もよくならず、「戦争する国」への暴走で平和が脅かされるばかりです。税金の「集め方」と「使い方」の抜本改革がいよいよ急務です。

「アベノミクス」が破綻し
 4年前の12年12月、政権に復帰した安倍政権は「経済再生」を最優先させると打ち出しました。しかし4年たったいま、異常な金融緩和や財政拡大、「規制緩和」による企業へのテコ入れを柱にした政策は、大企業や大資産家の懐を豊かにしただけで国民の所得や消費拡大に結びつかず、14年4月に消費税を増税したこともあって、経済の6割を占める消費の低迷が続いています。税収も伸び悩み、16年度第3次補正予算案で歳入を1・7兆円も下方修正して国債を増発したのも、「アベノミクス」の破綻を浮き彫りにしています。税収の伸び悩みで、税金で政策支出を賄う基礎的財政収支は17年度悪化する見込みです。
 税金は本来、負担能力のある大企業や大資産家に応分に負担してもらうのが原則です。ところが安倍政権は大もうけした大企業に負担を求めるどころか庶民に増税し、「企業が最も活躍しやすい国」を目指すと法人税などの減税を繰り返してきました。税金の「集め方」が根本から間違っています。
 「アベノミクス」が破綻した安倍政権は15年10月に予定した消費税の再増税を2回にわたって延期しました。その結果、16年度も17年度も予定した「低年金対策」などを延期しなければならなくなったのは、消費税に頼った税制の破綻です。税金の「集め方」の改革は、待ったなしです。
 安倍政権は税金の「使い方」の面でも財政のあるべき姿を破壊しています。財政は国民の税金で国の仕事を賄うとともに、金持ちだけが潤って格差と貧困が拡大しないよう、社会保障などで所得を再分配するものです。ところが安倍政権になって軍事費は5年連続で増え続け、当初予算で過去最大の5兆1千億円台に達したのに、社会保障予算は自然増さえ賄おうとせず17年度は概算要求からさえ1400億円も削減しました。医療も介護も年金も改悪の連続です。
 これでは国民本位の財政などとは言えません。税金の「集め方」と「使い方」の改革が不可欠です。

「大砲よりもバター」を
 「大砲よりもバターを」という言葉がありますが、実は1930年代、ドイツでナチスが大軍拡を進めたときのスローガンは全く逆に「バターより大砲」でした。異常な大軍拡のあげくドイツが亡国の道を突き進んだのは有名です。
 安倍政権の大軍拡で日本の軍事費はすでに世界有数の水準で、一方、社会保障の公的支出はドイツやフランスの7、8割、教育への公的支出は経済協力開発機構(OECD)の33カ国中32位です。安倍政権は歴史の誤りをたどるのか。税金を暮らしに役立てる転換がいよいよ求められます。
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2016年12月23日,「赤旗」)

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ヒトラー生家取り壊さず/改装し福祉施設へ/オーストリア

 【ベルリン=時事】オーストリア北部オーバーエスタライヒ州のピューリンガー知事は15日、同州ブラウナウに残るナチス・ドイツの独裁者ヒトラー(1889〜1945年)の生家について、当初浮上した取り壊しは行わず、改装して社会福祉施設として使う方針を明らかにしました。オーストリア通信が報じました。
 知事は「(生家を取り壊せば)重くのしかかる歴史の一章をなくす」という批判を招くと指摘しました。
 生家は家主からの強制収用が決まっており、ヒトラー信奉者の聖地になるのを避けるため取り壊す計画もありました。生家の建物には以前にも障害者の施設が入っていました。
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2016年12月20日,「赤旗」)

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本と人と/『国のために死ぬのはすばらしい?』ダニー・ネフセタイさん/戦争する日本への危機感じ

 著者はイスラエルのユダヤ人。18歳で徴兵され、空軍パイロット養成コースを経て、レーダー部隊へ配属されました。3年間の兵役後、旅行で訪れた日本が気に入り、日本人女性と結婚し、いまは家具作家として工房を営んでいます。
 来日して40年。日本語を流ちょうに話し、パソコンを使い漢字の文章も書きます。本書では軍隊経験を踏まえ、平和を説きます。
 「私たちは幼少期から、『国のためなら死んでもしかたない』と教えられてきました。捕虜交換を嫌うので、イスラエル軍は、味方でも捕まりそうになると、殺すこともあります」
 戦争する国<Cスラエルの怖さを知るだけに、いまの日本に対する危機感があります。「ナチスの手口を学んだらどうか」と発言した麻生元首相がいまも公職についています。よみがえる戦前。「日本はあの時代に私たちの想像以上に近づいているのではないか」と本書に書きました。
 「アベ政治を許さない」と毎週1回、地元の埼玉県皆野町で抗議活動を続け、脱原発運動にも取り組んでいます。「ものづくりの人の使命とは世の中を良くすることだ」といいます。
 「サラリーマンや公務員とちがって、家具作家の私は、商売上のしがらみは少ない。だから、社会的、政治的な活動はしやすい。声を上げやすい人が黙ると、世の中は悪くなります」
 職人としてのモットーは「樹齢100年の木材を使うので、100年使える家具をつくること」です。
 (豊田栄光)
 (高文研・1500円)

 57年生まれ。79年に初来日。
 89年に「木工房ナガリ家」を開設
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2016年12月18日,「赤旗」)

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『日本近代の歴史』刊行/明治維新から戦後、時代の構造とらえ/大日方純夫

 現在、月1回のペースで刊行中のシリーズ『日本近代の歴史』は、明治維新から戦後日本のはじまりの時期までを六つにわけ、政治の動きを中心に描いた近代日本の通史である。日本近現代史の分野では、新しい史料の発見などによって、詳細な歴史的事実が提示されている。また、政治史、経済史、対外関係史、思想史など、さまざまな領域に即した多くの研究成果が蓄積・発表されている。しかし、それらを見渡しながら、日本近代の全体像をとらえるのは、なかなか大変である。
 そこで、このシリーズでは、個々の部門史の研究状況に目配りしながら、国際環境とそれに対応する内政のあり方に力点をおいて、日本の近代全体をオーソドックスな通史として叙述することを試みている。したがって、大勢の執筆者が参加するスタイルではなく、各巻それぞれを1人の執筆者が担当し、それぞれの個性を発揮しながら、それぞれのとらえ方で各巻を書き下ろしている。
 その際のポイントは、各時期の時代像を鮮明に描き出すことにある。各巻は、基本的な事実をふまえながら、先行研究を組み込んで、時代の構造をとらえようと試みている。

国家意志決定の変革過程を解明
 第1巻の奥田晴樹著『維新と開化』では、明治維新によって近世の閉鎖的な政治システムがどう変わっていくのか、国家意思の決定のされ方の変革過程が明らかにされる。第2巻の大日方純夫著『「主権国家」成立の内と外』では、立憲制・議会制の成立過程が解明され、立憲主義の意味を解読することが試みられる。
 第3巻の飯塚一幸著『日清・日露戦争と帝国日本』、第4巻の櫻井良樹著『国際化時代「大正日本」』では、実際の政治運営システムのなかで、内閣・議会・政党がどう機能していくのかが解明される。その際には、中央の政局だけでなく、地方政治を含めた政治構造のあり方が明らかにされる。
 第5巻の河島真著『戦争とファシズムの時代へ』では、デモクラシーからファシズムへの時代の転換の意味が新たな視点からとらえ返され、第6巻の源川真希著『総力戦のなかの日本政治』では、総力戦のなかでの政治の性格を問い、戦後政治の出発のあり方が展望される。

現在と比べつつ近代と対話≠
 歴史は過ぎ去ってしまった過去に属する。しかし、近代の歴史は私たちが生きている現在と密接につながり、現在を大きく規定している。したがって、世界とのかかわり方、戦争の意味などをとらえ返しながら、政治≠問い詰めてみることは、現在を考えるためにも大切である。現在と関連づけながら、あるいは対比させながら、日本の近代≠ニ今≠ニを対話≠ウせてみたいものである。
 (おびなた・すみお 早稲田大学教授)
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2016年12月18日,「赤旗」)

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「戦争と平和」/市民が集会/静岡・沼津

 静岡県沼津市で12日夜、「戦争と平和を考える市民のつどい」が行われ、100人が参加しました。主催は平和団体のオリーブ・ジャムと、沼津母親連絡会です。
 オリーブ・ジャムの萩原繁之事務局長(弁護士)は、安倍政権が南スーダンに「武力紛争は存在しない」と、みえすいたウソをいい自衛隊を派遣したのはナチスの手法だと批判。「安保法制=戦争法を強行し、理不尽がまかりとおる状況のなかで、加藤周一さんから知性と理性を学びたたかおう」と語りました。
 つどいでは、作家で2008年になくなった加藤周一さんが最後に残したメッセージを構成したドキュメンタリー映画「しかし それだけではない。加藤周一 幽霊と語る」が上映されました。
 参加した女性(71)は「親が空襲で殺されていたら私は生まれなかった。戦争は人間の生活を全て奪う。戦争法なんて許せない」と話していました。
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2016年12月17日,「赤旗」)

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映画/「ヒトラーの忘れもの」(デンマーク、ドイツ)/追及とゆるしの苦悶を経て

 第2次世界大戦中、デンマークの海岸線には、ナチス・ドイツの占領軍によって無数の地雷が敷設された。戦後、この「ヒトラーの忘れもの」を、命がけで除去したのが、ドイツ人捕虜の少年兵たちであった。
 本作品は、長年タブー視されてきた史実をもとに、11人のドイツ人少年兵と彼らを監督するデンマーク人の軍曹カール(ローラン・ムラ、好演)との交流を描いた佳作である。祖国を蹂躙したドイツ兵を激しく憎悪するカールのもとに、地雷除去に動員された少年兵たちがやってくる。彼らを敵視し、食事抜きで、地雷除去に専念させるカール。1人の少年兵が地雷の処理を誤り、瀕死の重傷を負う。両腕を失い、泣き叫び、「ママ!」と呼ぶ姿にカールの心は激しく動揺する。彼らは子どもなのだ。戦争責任を子どもたちに負わせることは許されるのか。これこそが本作品の主要なテーマの一つだ。
 双子の少年兵による不必要な謝罪に対し「謝るな」と激しく叱責したカールは、苦悶する。彼ら子どもたちに果たして地雷除去という贖罪を求めて良いのか、と。彼が罪責の追及と赦しとの間で葛藤するなかで、次々と少年兵を残酷な爆発事故が襲う。自然美豊かな砂浜とそこで起こる非日常的な悲劇が印象的だ。
 家に帰り、祖国ドイツの復興に役立ちたいと強く願う少年兵たちの夢は情け容赦なく断たれていく。そうしたなかで最後に下したカールの決断は、戦争責任とその償いのあり方について新たな問いをわれわれに投げかけている。脚本・監督=マーチン・サントフリート。
 (熊野直樹・九州大学教授)
 17日から東京・シネスイッチ銀座ほか順次全国で
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2016年12月16日,「赤旗」)

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新しい非核思想/ビジョン語ろう/奈良で講演会

 非核の政府を求める奈良の会は8日、講演会「非核平和の集い 未踏の非核思想を求めて」を奈良市内で開催し65人が参加しました。ナチス政権について研究している京都大学人文科学研究所の藤原辰史准教授が講演しました。
 藤原氏は、ナチスの政治体制と「自民党改憲草案」が目指している未来を比較し、「事実を知るだけでは、未来に対応することはできない。広い事象に対応できる柔軟な考え方を持つことで、相手が繰り出してくる目くらましにも対応できる」と話しました。
 藤原氏は、「新しい非核思想」について、核をなくした後のことを市民がビジョンをもって楽しく語ることが大切だと訴えました。
 参加者からは「自由と平和のための京大有志の会の声明について教えてほしい」「ヒトラーが恐れていたものはなんですか」など質問があり、藤原氏が丁寧に答えました。
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2016年12月14日,「赤旗」)

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16回顧/映画/情報新時代、邦画に秀作

 日本映画がさまざまに話題を呼んだ年でした。
 山田洋次監督の20年ぶりの喜劇「家族はつらいよ」は鍛え抜かれた技で熟年離婚を描き、劇場を笑いで包みました。是枝裕和「海よりもまだ深く」は母と息子の、西川美和「永い言い訳」は夫婦の絆を見つめました。温かくもあり苦くもある厄介な家族が人間へのいとおしさを募らせ、明日への希望を抱かせます。
 言葉を発せない子や貧困児童に向き合う教師が奮闘する「校庭に東風吹いて」も上映が広がっています。
 アニメーションの力作も並びました。
 戦争の時代の日常が平和の尊さを刻み付ける「この世界の片隅に」。男女高校生の心身が入れ替わる設定で若い観客の夢を集めた「君の名は。」。いじめによる心の痛みが痛切な「映画 聲の形」。スタジオジブリが海外と共同製作した「レッドタートル」。
 大震災後の日本の現実を視野に入れた劇映画「シン・ゴジラ」や「君の名は。」などのアニメのヒットの一つの要素となった、SNSなどによる情報の拡散という新しい現象があります。
 民族間の紛争や報復の戦闘。いつまで悲しみを生み続けるのか―。そんな問いに真摯に向き合う数々の外国映画がありました。敵同士の兵士を一つ屋根の下にかくまう「みかんの丘」(ジョージア)、愛の強さで異民族の憎しみに立ち向かう「灼熱」(クロアチア)、派兵された兵士の苦悩を浮き彫りにする「ある戦争」(デンマーク)。ナチスの犯罪とその発掘も、「サウルの息子」(ハンガリー)、「アイヒマン・ショー」(イギリス)など、時効を認めない映画人の志です。
 米映画の力作も特筆されます。赤狩りに屈しない映画人の良心が浮かび上がる「トランボ」、真実の報道を目指し苦闘する「スポットライト 世紀のスクープ」などの劇映画。スノーデンの命懸けの告発や「マイケル・ムーアの世界侵略のススメ」などのドキュメンタリー。また、韓国の「弁護人」、暴圧に抗する「チリの闘い」も鮮烈に映画の力を示しました。
 日本のドキュメンタリーでは、東日本大震災の被災地のその後や、シールズ、沖縄など、たたかいの貴重な記録があります。
 映画人九条の会は、戦時中のアニメーション「桃太郎 海の神兵」の上映会などを開きました。映画の力を再び国策に貢献させてはならないという警告は生き続けています。
 (児玉由紀恵)
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2016年12月14日,「赤旗」)

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文化/マーチン・サントフリート監督「ヒトラーの忘れもの」/自国の歴史の影、隠さずに語って

ドイツ少年兵捕虜に戦後地雷除去させたデンマーク
 ナチス敗北後、デンマークの海岸に埋めた地雷の除去に駆り出されたのは若いドイツ兵捕虜たちでした。彼らを監督するデンマーク軍軍曹との間で生まれた物語。映画「ヒトラーの忘れもの」(デンマーク、ドイツ)を脚本・監督したマーチン・サントフリートさんに聞きました。
 神田晴雄記者

 遠浅の白い砂浜。水平線を見渡せる青い海。米英軍侵攻に備え、海岸線400`に地雷150万個が埋められました。武装解除されたドイツ兵のうち兵籍を外された1万人がデンマークに取り残されます。この映画の舞台になった海岸では11人の少年兵が地雷除去を命ぜられます。
 「捕虜による地雷除去という事実を知ったとき正直驚きはありませんでした。不幸なことではあるけれど戦争にはつきものだからです。最初は(捕虜虐待を禁じた)ジュネーブ条約をデンマークが破りドイツの少年兵を使って地雷除去をさせた(
)ところから物語を組み立てようと思いました。ところが墓地を回ったら少年兵の墓がすごく多かったのです。ショックを受けました。物語を変えようと考えました」

美しさの下
 11人を監督するのはデンマーク軍のラスムスン軍曹(ローラン・ムラ)。ナチスへの怒りと憎悪の塊です。
 「彼は地雷に似たキャラクターです。機嫌がよさそうでいて、いつ爆発するかわからない。地雷の危険を際立たせるために風景をなるべく美しく撮りました。美しい景色の表面下には悪魔が隠れていていつ飛びだしてくるか分からないのです」
 横一列で腹ばいになって地雷を探して信管をはずします。手元が狂えば一瞬のうちに吹き飛ばされる死と背中合わせの作業です。
 少年兵たちは望郷の念にかられながらじっと危険な任務に耐えています。鬼軍曹に最初はビクビクしていますが、寝食を共にするうち父子のような情の通い合いが芽生えます。
 「ドイツ人にとって第三帝国の時代、ヒトラーを父と呼んでいました。取り残された少年兵たちにとって父の不在と向き合ううちに、ヒトラーに代わる対象が軍曹だったのではないでしょうか。憎悪を発している軍曹でも彼を父親として見る関係が生まれていったのだと思います」
 ラスムスン軍曹は帰郷という少年たちの願いをかなえてやろうとするのですが。
 「僕自身、人は変わってほしい。どんな悪人でもその中に必ず善といえる部分があると思っています」

国民の反応
 映画は欧州で先行上映されました。デンマークでの反響は。
 「さまざまでしたが『真実を知りたい』とかポジティブなものが多かったです。マスコミの映画評も非常にポジティブでした。この映画を契機にテレビなどで歴史家たちのディベートが始まり、対話になりました。事実を知らなかった人にはショックのようでした」
 他方で、サントフリート監督に対し「愛国心が足りない」と批判する人もでてきたそうです。「人生初のヘイトメールが届きました」
 「他の国と同様にデンマークの歴史にも影の部分があったわけで、それを隠すとか話さないとかではなくて、むしろその物語を作りたいという気持ちでした。自分にとってこの物語をつづらなければという気持ちでした」
 「戦争を終わらせるために何かをしたとか反ナチであったという物語は多いです。しかしすべて善であったわけではない。戦争の時代に何が起きたのかを批判的な目で見る映画が生まれてくるといいと思います」
 歴史修正主義の潮流が世界に生まれている現在、「対話」が実現したというのは大きな意義があります。
 「同感です。恐ろしいことが起きたとしてもなぜそれが起きたのかを話すことが重要なのです。恐ろしいことも最初は善意があったと思うのです。残念ながら地獄に発展してだれも抜け出すことができなくなったのかもしれません。第2次世界大戦はどうしてそこに至ったのか、僕らは過去から学ばなければいけない。どこでわれわれは道を間違えたのかを。それが同じことを繰り返さない方法です」

 
デンマークは当時ドイツの保護国であり同条約は適用されないという研究者もいます。

 「ヒトラーの忘れもの」=17日からシネスイッチ銀座ほか全国で順次公開。101分

最優秀男優賞を受賞
 軍曹役のローラン・ムラと少年兵役のルイス・ホフマンは昨年の東京国際映画祭で最優秀男優賞を受賞
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2016年12月11日,「赤旗」)

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試写室/NHKスペシャル ドラマ東京裁判/NHKテレビ12日後10・25/戦争を裁く歴史的意味を問う

 東京裁判、正式には極東国際軍事裁判。ポツダム宣言に基づき連合国が戦争犯罪人として指定した日本の指導者への裁判です。原告となった11カ国の判事を通し、歴史の舞台裏を4夜連続で描きます。カナダ、オランダとの共同制作。
 焦点は、ナチスを裁くニュルンベルク裁判と同時に制定された「平和に対する罪」。侵略戦争を起こし遂行した責任を問う新しい法概念です。戦争が「合法」だった時代から「戦争の違法化」の流れが丁寧に説かれます。裁判長はオーストラリアのウェッブ判事。「天皇をなぜ訴追リストから外したのか」と連合国軍司令官マッカーサーに問う中で天皇を免責した裁判の政治性が示されます。そして原爆投下などの戦勝国の責任も問わないことも。
 日本に侵略された中国の判事など各判事が背負う思惑は複雑。裁判の意味を問う判事たちの議論は個性的で法への誠実さがあふれます。緊迫の開廷。無罪を主張する東条英機ら当時の映像と、判事を演じる各国俳優らの映像の合成が見事です。どのような議論が展開されるのか、戦争を裁く裁判の歴史的意味とは何か、興味が尽きません。
 (荻野谷正博 ライター)
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2016年12月11日,「赤旗」)

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「真珠湾」75年で声明/米大統領

 【ワシントン=時事】オバマ米大統領は6日、旧日本軍による1941年12月7日(日本時間8日)の真珠湾攻撃から75年となるのを前に、犠牲者を追悼する声明を発表し、「自由と民主主義の名の下にささげられた犠牲は、決して無駄ではなかった」と強調しました。また、政府機関や国民に対して、7日は半旗を掲げるよう要請しました。
 オバマ大統領は声明で、真珠湾攻撃やノルマンディー上陸作戦など第2次大戦で犠牲になった米兵について、「自由のために戦い、ファシズムを打倒し、敵国を同盟国に変えた」と称賛しました。
 大統領は26、27の両日、安倍晋三首相と共に真珠湾を訪問する予定ですが、声明では触れませんでした。
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2016年12月08日,「赤旗」)

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おはようニュース問答/オーストリア大統領選、極右が敗北したね

 晴男 極右の自由党候補との一騎打ちだったオーストリア大統領選決選投票で、統一候補のファンデアベレン緑の党前党首が勝利したね。
 陽子 オーストリアって、ドイツの南隣のドイツ語圏の国ね。国政の実権は国会選出の首相が持つけど、元首は大統領。事前には、ホーファー氏が欧州連合(EU)で初の極右の国家元首になるかもっていわれたよね。

統一候補を応援
 晴男 それを防ぐために、連立政権を組む中道左派の社会民主党と中道右派・国民党も左派のファンデアベレン氏を応援したんだ。両党候補は第1回投票で敗北した。
 陽子 それにしても極右・自由党の候補も得票率約46%と支持を伸ばしてるわね。大都市圏以外の地方ではほぼ互角だったし。
 晴男 一つの理由は難民問題だ。昨年は欧州への大量難民流入で、人口854万人の小国オーストリアに中東などから約9万人が難民申請した。今年も3万人以上が申請し、極右は「難民・移民排斥」を唱えて勢いに乗った。
 陽子 民族排外主義を許しちゃいけないって反極右の統一戦線をつくったのね。
 晴男 元ナチス党員らが旗揚げした自由党は、実は政権党になったこともある。2000年に連立政権を担った時の党首ハイダー氏は、ナチスの労働政策を称賛した人だった。当時はEU加盟諸国がこぞって批判した。
 陽子 自由党は今回の大統領選で「反エシュタブリッシュメント(既得権益層)」を強調していたそうね。

国民不満たまる
 晴男 同国では、長い間、社民党と国民党の二大政党の連立政権が続き、官庁や国営企業の利権を独占したことがある。今は低い経済成長が続く中、国民の不満がたまり、政治・社会エリートへの批判になった。
 陽子 経済的困難の中、難民排斥を唱える極右が伸びる同じような構図は、来年選挙があるフランスやオランダ、ドイツにも当てはまるわ。
 晴男 だから勝利判明後、ファンデアベレン氏は「寛容でも勝てることを示した。欧州に希望のシグナルを発した」と宣言した。
 陽子 来年の選挙でも、難民排除の極右は阻止してほしいわね。
 〔2016・12・8(木)〕
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2016年12月08日,「赤旗」)

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オーストリア大統領選/統一候補、極右阻む

 【パリ=島崎桂】オーストリアで4日、大統領選決選投票の再投票が行われ、極右阻止の統一候補<tァンデアベレン氏(72)=左派「緑の党」前党首=が約54%を得票し、勝利を確実にしました。対立候補のホーファー氏は、反移民を掲げる極右・自由党に所属。欧州で戦後初となる極右大統領の誕生は阻止されました。
 ファンデアベレン氏は選挙戦で、「多様で開かれた社会」の実現を訴え、移民問題を機に不信が高まっている欧州連合(EU)とも良好な関係を維持すべきだと主張。当選を受け、「平等と自由、連帯の価値を守る」と述べ、改めて「親欧州のオーストリア」を求めました。
 一方、国内の反移民感情に乗って支持を伸ばしたホーファー氏は、「ファンデアベレン氏の勝利を祝福する」と敗北を認めました。
 オーストリア大統領は議会解散権限を持ち、ホーファー氏勝利の場合、早期の解散・総選挙に打って出る可能性もありました。
 極右阻止で一致する与野党はファンデアベレン氏支持で足並みをそろえ、ホロコースト(ナチスによる大量虐殺)の生存者らも極右台頭を阻むよう呼び掛けました。国民の関心は高く、投票率は約74%に達しました。
 今年5月に行われた決選投票ではファンデアベレン氏が50・3%の得票で勝利したと発表されましたが、憲法裁判所は開票作業に不正があったとして再投票を命じていました。
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2016年12月06日,「赤旗」)

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ナチス収容所の扉発見/ノルウェーで/2年前に盗難

 【ベルリン=時事】ドイツ南部バイエルン州の警察は2日、同州にあるナチスのダッハウ強制収容所跡の入り口から約2年前に盗まれた物とみられる金属製の扉が、ノルウェーで見つかったと発表しました。
 ノルウェー南西部ベルゲンの警察に、屋外に置かれている扉に関する情報が匿名で寄せられ、発見に至りました。独警察は実物の可能性が「非常に高い」とみています。扉にはドイツ語で「働けば自由になる」という標語が掲げられています。
 実物の重さは約100`で、ネオナチグループが盗んだ疑いも指摘されていました。AFP通信によると、今のところ容疑者の情報は出ていません。見つかった扉は状態が良く、近くドイツ側に引き渡され、順当なら再び展示される見通し。
 2009年にはポーランドのアウシュビッツ強制収容所跡で、同じ標語の金属板が盗まれ、ネオナチの元活動家らが逮捕されました。
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2016年12月05日,「赤旗」)

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潮流

 この人の存在は、映画を見るまで知りませんでした。昨年、106歳で天寿をまっとうしたニコラス・ウィントン。イギリスのシンドラー≠ニ呼ばれた人です。その業績がドキュメンタリー映画「ニコラス・ウィントンと669人の子どもたち」で公開中です▼舞台は、ナチス・ドイツの支配下にあった1939年当時のチェコスロバキア。38年末、29歳の証券会社ディーラーだった彼は、チェコのユダヤ人難民キャンプを訪れます▼目にしたのは命の危険にさらされた小さな命。「子どもだけでも助けたい」という親たちの願いを受け、唯一、入国を許可した母国イギリスで里親探しが始まります▼幼いわが子を手放した親たちの勇気。異国の子を受け入れた里親たちの愛。第2次大戦が始まるまでに669人が救出されました。しかし誰がつないだのかは、88年に彼の妻が救出記録を発見するまで伏せられたままでした。ニコラスさん曰く「大したことではない」▼英国の公共放送BBCの働きかけで同年、ニコラスさんと生き延びた子どもたちが半世紀ぶりに再会。科学者、TVジャーナリスト、教師…。子どもたちは各国に散らばり、さまざまな分野で活躍していました。その子や孫は6千人近くに▼感動的なのは、この実話がもたらした影響力です。触発された子孫や世界の若者たちが、それぞれのやり方で人道支援に。「報復の連鎖」ならぬ「愛と勇気の連鎖」です。新たな難民が次々生み出されている今、美談ですますことはできません。
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2016年12月04日,「赤旗」)

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11月見出し)

 

*         オーストリア大統領選/強制収容所生還者が警鐘/極右台頭に

*         英下院議員殺害事件/被告に終身刑/自宅からナチス資料

*         にちようシネマ館/ニコラス・ウィントンと669人の子どもたち/チェコ、スロバキア合作

*         萩生田副長官あきれた品性/外国元首を「不良」呼ばわ

*         ドイツ高官「嫌悪感」/「ハイル・トランプ」動画に

*         ポーランド映画祭あすから/ワイダ監督の追悼特集/東京

*         バッキンガム宮殿、老朽化を総点検へ/イギリス

*         文化の話題/第29回東京国際映画祭/充実したコンペ部門/最高賞はホロコーストに迫る/中川洋吉

*         潮流

*         特派員日誌/フランス/交通マナーと日独伊

*         2016米大統領選/「戦争いらない」/米NYで市民がデモ

*         「スウェーデンのシンドラー」/不明後71年、死亡を認定/ユダヤ人10万人救出

*         「欅坂46」ナチス連想衣装/ワシ紋章・黒マント/米団体、謝罪要求の声明

*         映画/「手紙は憶えている」(カナダ、ドイツ)/今も続くナチス戦犯追及

*         女性の目アラカルト/ドイツ/街でみる「規制された生活」

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11月本文)

オーストリア大統領選/強制収容所生還者が警鐘/極右台頭に

 【ベルリン=時事】極右・自由党候補の勝利が現実味を帯びているオーストリア大統領選挙のやり直し決選投票を12月4日に控える中、ナチス・ドイツのアウシュビッツ強制収容所の女性生還者(89)がビデオメッセージで極右台頭に警鐘を鳴らし、注目を集めています。
 生還者のゲルトルーデさん=ウィーン出身=は16歳でアウシュビッツに家族と共に送られ、自分だけ生き残りました。
 「他者への侮辱や中傷が最も不快」と強調。かつてのユダヤ人差別に触れ、「こうしたことを繰り返そうという試みがあり、恐れている」と述べ、厳しい難民対応を訴える自由党への警戒感を示しました。
 5分弱の映像の最後で「私には多分最後の選挙だが、若者にとっては全人生が待っている」と指摘。良い未来のために理性的な投票を行うよう呼び掛けました。
 自由党候補と争うリベラル系候補の陣営にゲルトルーデさんがメッセージの収録を依頼。今月24日に映像が公開され、再生回数は既に約300万回に達しました。選挙では両候補の支持が伯仲しています。
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2016年11月30日,「赤旗」)

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英下院議員殺害事件/被告に終身刑/自宅からナチス資料

 【ロンドン=時事】英国の欧州連合(EU)離脱を決めた6月の国民投票直前に起きた野党・労働党の女性下院議員殺害事件で、裁判所は23日、殺人罪などに問われたトーマス・メア被告(53)に対し、仮釈放なしの終身刑を言い渡しました。先に陪審団が有罪評決を下していました。
 被告はイングランド中部の選挙区で活動中だったジョー・コックス議員=当時(41)=を銃撃するなどして殺害。公判では証言を拒否しましたが、裁判官は「ナチスの思想に関連した暴力的な白人至上主義」を訴えようと犯行に及んだと断罪しました。被告の自宅からナチス関連の資料が多数発見されました。
 判決は「彼女が下院議員だったため、この犯罪には付加的な重要性があり、特別な刑罰が必要となる」と指摘。コックス氏の夫ブレンダン氏は声明で「(殺害は)政治的行為であり、テロだった」と述べました。
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2016年11月28日,「赤旗」)

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にちようシネマ館/ニコラス・ウィントンと669人の子どもたち/チェコ、スロバキア合作

 1939年、ナチス・ドイツ支配下のチェコスロバキアからユダヤ人の子ども669人を脱出させたニコラス・ウィントン。マテイ・ミナーチュ監督の再現シーンも入れたドキュメンタリー映画です。
 29歳の英国の株仲買人ニコラスは38年末、プラハでユダヤ人難民の状況を目撃、子どもだけでも救出できないかと活動開始。英国のみが厳しい条件で受け入れます。プラハからドイツ、オランダを走り抜ける子ども列車の緊張感。今、老境に入った子どもたちの証言の数々。親たちは強制収容所で死亡しますが生命は受け継がれました。第2次大戦勃発で救出中断、その痛みで事実を封印します。
 88年にニコラスの妻が屋根裏で救出記録を発見、50年たって英雄的な活動が世に出ました。ニコラスと子どもたちの劇的な再会。6千人近くに広がった命が世界で続けている行動に感激します。
 (石)
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2016年11月27日,「赤旗」)

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萩生田副長官あきれた品性/外国元首を「不良」呼ばわり

 環太平洋連携協定(TPP)承認案の採決強行に反対する野党を「田舎のプロレス」「茶番」とののしった萩生田光一官房副長官の発言に批判と疑問が集中しています。
 萩生田氏が講演したのは「国家基本問題研究所」(桜井よしこ理事長)が23日に都内で開いた会合です。2013年に麻生太郎副総理が「(ナチスの手口を)学んだらどうか」などと発言し問題になったのも、同研究会の会合でした。
 萩生田氏は、安倍首相の外交を称賛しながら、「お坊ちゃま育ちのわりには不良と付き合うのはものすごく上手」とし、ロシアのプーチン大統領と15回会談したことや、米大統領に当選したトランプ氏とは首脳として世界で最初に会ったこと、フィリピンのドゥテルテ大統領と「兄弟分を誓い合った」こと、トルコのエルドアン大統領とハグ(抱き合うこと)できる首相は世界にいないことなどを例に挙げました。外国元首を「不良」呼ばわりする政治的品性のなさにあきれます。
 また、ロシアのプーチン氏については、平和条約や領土交渉の進展をめぐり「こういうときは独裁者は使える。プーチンだからこそ、ロシアの世論とか、国会とか関係なく、安倍総理との信頼関係の中で前進する方向を見いだせる」などと発言しました。
 世論や国会を無視して「独裁者」を活用して外交成果を目指す手法を自白するものであり、民意無視の安倍政権の姿勢を示したものです。
 (寅)
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2016年11月26日,
「赤旗」)

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ドイツ高官「嫌悪感」/「ハイル・トランプ」動画に

 【ベルリン、エルサレム=ロイター】ドイツ政府は、米国でドナルド・トランプ氏の大統領選出に白人至上主義組織が勢いづいていることを懸念し、事態をつぶさに見守っています。ドイツ政府高官がロイター通信に語りました。
 インターネット上では、ネオナチや白人国粋主義、反ユダヤ主義などの加わる「オルタ右翼」運動のメンバーが19日にワシントンのホワイトハウス近くで行った集会のビデオが回覧されています。
 このビデオに対しドイツ政府の公式な反応はありませんが、高官の1人は「嫌悪感を催されるし、心配だ」と語ります。ビデオでは1人が「ハイル・トランプ」(トランプ万歳)と叫び、聴衆がナチ式の敬礼で応える様子が見られます。
 匿名の高官は「これがトランプ氏の思想だとは思わないが、集会参加者は同氏に便乗している。事態をつぶさに見守っている」と語りました。
 イスラエル国会で外交・防衛委員会に所属するラピド議員はビデオについて、「気分が悪くなる」「許せない」と語ります。「人類がかつて犯した最大の誤りの一つは、ファシズムの危険に早くから気付かず、正面から対処しなかったことだ」「歴史を繰り返してはならない」と述べました。
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2016年11月25日,「赤旗」)

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ポーランド映画祭あすから/ワイダ監督の追悼特集/東京

 5年目を迎えるポーランド映画祭が26日から12月16日まで、東京・シネマート新宿で開かれます。
 10月に90歳で亡くなったポーランド映画の名匠アンジェイ・ワイダを追悼して急きょ特集したプログラム。ナチスに抵抗し蜂起したワルシャワ市民の苦闘を描く「地下水道」(1956年)や要人の暗殺を命じられた青年の姿を刻み付けた「灰とダイヤモンド」(58年、写真)、現代史に鋭く迫った「大理石の男」(77年)など代表作10本を上映。9月にワイダ監督がこの映画祭に寄せたビデオメッセージも26日に特別上映され、ワイダのコメント映像が付く作品もあります。
 ほかのプログラムは、昨年ポーランドで話題を呼んだ作品や日本初公開の新作などが並びます。
 シネマート新宿рO3(5369)2831
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2016年11月25日,
「赤旗」)

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バッキンガム宮殿、老朽化を総点検へ/イギリス

 【ロンドン=AFP時事】英ロンドン中心部にあるバッキンガム宮殿で来年4月から、老朽化した配管などの総点検工事が行われることになりました。18日公表された計画では、工期は2027年までの10年間で、事業費3億6900万ポンド(約503億円)。エリザベス女王と夫フィリップ殿下は期間中、居住部屋の変更を強いられるといいます。
 王室関係者によると、配管からの水漏れで絵画が傷ついたり、設置から60年が経過したケーブルの破損で感電や火災が起きたりする危険性が高まっています。今回の点検作業は、第2次大戦でのナチス・ドイツによる攻撃で受けた損傷を修理して以来の規模となります。
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2016年11月20日,
「赤旗」)

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文化の話題/第29回東京国際映画祭/充実したコンペ部門/最高賞はホロコーストに迫る/中川洋吉

 第29回東京国際映画祭は10月25日から11月3日まで、六本木を中心に開催された。

ユニークな表現
 コンペについて述べるならば、フランスのジャン=ジャック・ベネックスを長とする審査委員会は、コンペティション部門の最高賞「東京グランプリ」をドイツ、オーストリア合作の「ブルーム・オヴ・イエスタディ」に与えた。主人公をナチスのホロコースト研究家と設定する物語に発想の良さが感じられる。主人公は人付き合いの悪い変人である。彼を学者として尊敬する、若いユダヤ系フランス人の女性は彼の調査に加わる。2人はホロコーストについて深刻な議論を交わす。議論は脱線しがちだが、この問題に立ち向かう表現方法にユニークさがある。そして、ナチズムの悪は悪としても、永遠の憎しみに終止符を打つための和解もにじみ出る。クリス・クラウス監督は、日本でも大ヒットした「4分間のピアニスト」(2006)で知られるドイツの中堅監督。
 次席の審査委員特別賞は、北欧の作品「サーミ・ブラッド」(アマンダ・ケンネル監督)である。最優秀女優賞(レーネ=セシリア・スパルロク)も受賞した。サーミとは北欧最北端に居住する民族(ラップランド人)で、独自の文化とトナカイ狩猟で知られる。
 物語は差別されるサーミ人少女の、周囲との闘いがメーンとなる。狭いサーミ社会を離れ、今まで見たことのない世界に生きる女性の体験で、彼女の自立の覚悟と闘いの意志が描かれている。
 最優秀監督賞は、クロアチア、デンマーク合作、ハナ・ユシッチ監督の「私に構わないで」である。ヒロインの若い女性は大家族の一員で、家父長的な一家の中、発言権がない。父親の死により彼女にも負担がのしかかる。彼女は、結局家族と共に故郷に留まる決心をする。周囲や家族との関係のもとに生きることで、つらい選択だが現実の中で自身を変える決心と受け取れる。

選外にも秀作が
 選外の中にも秀れた作品がある。「パリ、ピガール広場」だ。ラップ歌手として有名なアメとエクエの共同監督作品である。パリの繁華街ピガールに生きる移民の子弟たちが主役である。フランス映画界の中で、現在一番勢いを持つと言われるのが移民子弟世代である。そこには、彼らの社会への憎しみをたぎらせ生きる姿に力感があり、見る側は巻き込まれる。
 同じく選外で、イタリアの大物監督ミケーレ・プラチドの「7分間」が断然光る。物語はリストラ計画が進行する労働争議を巡り、労組が対立する。労使交渉で会社側は7分間の休憩時間削減を提案する。最初、女性労働者たちはすんなり受け入れようとするが、一度の後退で労働側が押し込まれることを経験上知る女性委員長は、懸命に仲間たちを説得し最後は拒否する。ここで見られる、徹底的な話し合いで問題に対処するエネルギーに驚かされる。
 映画祭は昨年より人出が多い印象を受けたが、欧米人の姿は少なかった。今年はコンペ部門も充実していたが、更なる発展のために、現在以上にアジアに特化する方向性も一つの方策かもしれない。
 (なかがわ・ようきち 映画評論家)
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2016年11月11日,「赤旗」)

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潮流

 もしヒトラーが現代によみがえったら。ドイツでベストセラーになった風刺小説「帰ってきたヒトラー」。映画になり、日本でも今年公開されました。主役がヒトラーの格好で街に出て市民の反応をみる場面がおもしろい▼握手や一緒に写真を撮る一方で不快な表情を浮かべる人も。独裁者を演じた俳優は「最初は笑って見ている人も物語が進んでいくにつれ、笑ってはいけない恐ろしいものを見ているような感覚に気づき始めるんだ」▼ナチスの軍服を想起させるとして、女性アイドルグループ「欅坂46」の衣装が物議をかもしました。米国のユダヤ人権団体は「強い嫌悪感」を示し、在日イスラエル大使館はホロコーストについてのセミナーにメンバーを招待したいと▼欅坂46のデビュー曲「サイレントマジョリティー」は権力者の言いなりになるな、NOと言おう≠ニ呼びかけ、若者の心をつかみました。いわばファシズムとは対極の歌です。今回の件で所属会社とプロデューサーの秋元康さんは謝罪しましたが、彼女たちを巻き込んだ責任は大きい▼日本では前にも人気バンド「氣志團」がナチス風の衣装で番組に出演し、同じ団体から謝罪を求められています。その際にも、先の大戦で日本軍やナチスが犯した罪について、多くの日本の若者は十分な教育を受けていないと批判されました▼過去と向き合わず、あまたの命と尊厳を奪った蛮行さえねじ曲げようとする。この国の姿勢が世界の日本を見る目に反映しているならば、罪は深い。
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2016年11月07日,「赤旗」)

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特派員日誌/フランス/交通マナーと日独伊

 愛の国≠ニも呼ばれるフランス。そこで暮らす人々は車の運転も情熱的です。
 以前、取材先から友人のアランさんの運転で帰宅した時のこと。大雨の影響で交通規制が敷かれ、パリ市内各地で大渋滞が発生していました。
 昨年に定年を迎え、普段は温厚なアランさんですが、この時ばかりはイライラが頂点に。クラクションは鳴りっぱなし、狭い隙間を見つけては猛スピードで割り込み…。他のドライバーも急発進と急ブレーキを繰り返します。
 その後も蛇行運転を続けるアランさんに、「こんな運転、日本では考えられない」と言うと、「日本人は規則正しい運転をするのか。ドイツ人と一緒だな」とポツリ。
 立て続けに「規則は権力者がつくるもの。規則の盲信は権力の盲信と同じだ。そんな運転をしているから、日本でもドイツでも(第2次大戦期に)ファシズムが台頭したんだ」
 屁(へ)理屈とは言い切り難い鋭い意見。より多くの論拠が欲しくなり、「世界で最も交通マナーが悪いと思う国」を聞くと「イタリアだ」と即答しました。
 イタリアといえば、ファシズムの語源となったファシスト党を生んだ国ではないか。
 直後に「しまった」という表情を浮かべるアランさん。やはり屁理屈か。
 (パリ=島崎桂)
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2016年11月04日,「赤旗」)

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2016米大統領選/「戦争いらない」/米NYで市民がデモ

 【ニューヨーク=洞口昇幸】米大統領選の民主、共和の二大政党の両候補の米軍国主義を継続・強化する公約に抗議し、転換を求める米市民の行動が2日、ニューヨーク市でありました。参加者は「米国にファシストはいらない! 戦争はいらない!」などとシュプレヒコールを上げて、市内を行進しました。
 参加者は横断幕や手書きのプラカードを手に、同市マンハッタン中心部のタイムズスクエアに集合。民主党候補のヒラリー・クリントン前国務長官と共和党候補のドナルド・トランプ氏の似顔絵に「主戦論者」と書いて厳しく批判するプラカードも見られました。
 同市在住のペギー・ラップさん(73)は、「トランプ氏はファシストのようだ。外国への軍事援助を含む軍事費に多額の予算を注ぎ込むことはやめて、国内の予算に充ててほしい」と訴えました。
 「戦争はノー」と書かれた横断幕を持ちながら行進したウィラード・クラインさん(24)は、クリントン氏に投票すると述べるものの、同氏が掲げるシリアでの飛行禁止区域の設定は「タカ派的な考えで、ロシアとさらに対立することになる」と批判。「軍事的措置より、交渉の強化でシリア内戦の解決を目指すべき」と語りました。
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2016年11月04日,「赤旗」)

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「スウェーデンのシンドラー」/不明後71年、死亡を認定/ユダヤ人10万人救出

 【ストックホルム=AFP時事】第2次大戦中にナチス・ドイツ占領下のハンガリーでユダヤ人を迫害から救出後、ブダペストに侵攻したソ連軍に呼び出されたまま行方が分からなくなったスウェーデンの外交官ラウル・ワレンバーグ氏について、同国税務当局は10月31日、死亡を認定しました。ワレンバーグ氏の消息は西側とソ連の対立の火種となり、冷戦最大の謎の一つともされていました。

 1944年にブダペストに赴任したワレンバーグ氏は、行方不明になる45年1月までの間、ユダヤ人に「保護証書」を発行してハンガリー国外に脱出させたほか、治外法権が適用される建物の確保や支援組織の設立に取り組みました。救われたユダヤ人は10万人に達するとも言われ、「スウェーデンのシンドラー」と呼ばれます。
 公式死亡日は52年7月31日。47年7月末まで生存していた兆候があり、規定に従い、その5年後の日付に定めました。
 ソ連は57年、ワレンバーグ氏が国家保安委員会(KGB)の刑務所に収容され、47年7月17日に心臓疾患で死亡したと発表。2000年になり、ロシア捜査当局はKGBが47年に政治的理由で射殺したことを認めましたが、詳細は明らかにしておらず、確実な証拠も示していません。
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2016年11月04日,「赤旗」)

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「欅坂46」ナチス連想衣装/ワシ紋章・黒マント/米団体、謝罪要求の声明

 米国の反ユダヤ活動監視団体サイモン・ウィーゼンタール・センターは10月31日、アイドルグループ「欅坂(けやきざか)46」がハロウィーンイベントで着た衣装がナチス・ドイツの軍服を連想させるとして、所属するソニー・ミュージックエンタテインメントと総合プロデューサーの秋元康氏に謝罪を要求する声明を出しました。
 イベントは横浜市で10月22日に開催されました。同センターは、ナチスの象徴を想起させるワシのエンブレムが付いた帽子や黒いマントを着用したメンバーの写真を声明文に添付し、「不適切で不快な表現」と抗議しました。
 海外メディアは10月中にこの問題を相次いで報道。英紙デーリー・ミラーは「ファンに衝撃を与えた」と伝え、ロックグループ氣志團が2011年、ナチスの軍服に酷似した衣装を着て同様に批判されたことを紹介。デーリー・メール紙やAFP通信も取り上げました。
 欅坂46の公式ホームページは「当該衣装は今後一切着用しない。再発防止に努める」との謝罪文を掲載。秋元氏は声明で、「監督不行き届きで大変申し訳ない」とコメントしました。
 (時事)
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2016年11月03日,「赤旗」)

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映画/「手紙は憶えている」(カナダ、ドイツ)/今も続くナチス戦犯追及

 今でもユダヤ人大量虐殺に関与したナチス親衛隊員などの裁判が報道されている。加害者も被害者も高齢になり、ナチス殺人罪の時効はなくなったが、真実の追求が次第に困難になっていることは確かだ。
 この映画もそうした状況を反映している。妻を亡くし、初期の認知症を患っているゼブ(クリストファー・プラマー)は90歳、アウシュヴィッツ収容所の生存者で家族をナチスの兵士に殺されている。
 そのゼブが友人のマックス(マーティン・ランドー)から1通の手紙を受け取る。体が不自由な自分に代わって復讐をしてくれという依頼だ。
 マックスの復讐相手の兵士は捕虜の身分を盗み、ルディ・コランダーという名前でアメリカへ逃れた。マックスのお膳立てに従い、ゼブはアメリカに飛ぶ。容疑者は4人に絞られている。ゼブは拳銃を買い、各地を尋ね歩き、時折認知症に陥りながらも目的を果たそうとするが…。
 ロサンゼルスにナチス戦犯を追及する非政府組織サイモン・ヴィーゼンタール・センターがある。ゼブとマックスもここで情報を入手する設定だ。
 現在も多くのナチス隊員が逃亡または行方不明になっている。時間との闘いになっている現実が映画にリアリティーを与えている。
 ロードストーリー仕立てだが、深い謎を含んだサスペンスドラマでもある。監督は「白い沈黙」のアトム・エゴヤン。
 (村瀬広・映画評論家)
 東京・TOHOシネマズシャンテほか全国で公開中
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2016年11月02日,「赤旗」)

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女性の目アラカルト/ドイツ/街でみる「規制された生活」

 ベルリンのとある住宅街を歩くと、街灯に看板がかけてあることに気づきます。看板の片面には絵が描かれ、もう一方には文字が書かれています。
 例えば、音符の絵には「ユダヤ人のコーラスグループからの排除。1933年8月16日」。パンの絵には「ユダヤ人は午後4時〜5時の間にしか食料品を買ってはならない。1940年7月4日」。「ユダヤ人の国外移住禁止。1941年10月23日」は、お先真っ暗という意味なのか、黒く塗られています。
 これらはナチス時代(1933〜45年)に出されたユダヤ人に対する法律や通達です。93年に記憶の場≠ニして、ふたりの芸術家が考えた80枚の看板が設置されました。
 看板があるのはバイエルン地区といい、アインシュタインなど著名な文化人が多く住んでいました。特にユダヤ人が多く住んでいたので「ユダヤ人のスイス」とも呼ばれていたそうです。
 年数が記されているため、当時のユダヤ人の生活が徐々に規制されていく様子がわかります。さりげない展示の仕方が、当時生活していた住民もその事実を知っていたのだと、人々に伝えているようでした。
 多数の側にいると知らないうちに加害者になってしまう可能性がある―。今の時代はどうなのか、自分自身はどうなのか、考えさせられる記憶の場でした。
 (ベルリン在住 伊藤悠希)
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2016年11月01日,「赤旗」)

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10月見出し)

*         禁じられた<Aクセサリー/アウシュビッツ屋根裏で発見

*         にちようシネマ館/手紙は憶えている/カナダ・ドイツ

*         潮流

*         「ヒトラー万歳」発言警官有罪

*         ひと/北海道・旭川で戦争法反対の若者行動に取り組む櫻田晶子さん(35)

*         ヒトラー生家、取り壊す方針/オーストリア

*         社会保障改悪、改憲止めよう/あいち高齢者大会

*         言聞録/2016年10月9日〜15日

*         文化の話題/ダリ展/奇才の生涯、俯瞰する/森下泰輔

*         ヒトラーの伝記、本人が書いた?/英教授が主張

*         旧西独法務省幹部/戦後すぐ、77%元ナチ党員/「旧悪隠し、第2の罪つくった」/独法相が発表

*         潮流

*         「抵抗3部作」監督ワイダさん死去

*         全国革新懇ニュース10月号/市民をつなぐ言葉の力/自由と平和のための京大有志の会発起人藤原辰史さん

*         右翼改憲団体「日本会議」が活発化/各地でキャラバン宣伝/自民幹事長代行呼びシンポ

*         政治は変えられる/ストップ!安倍暴走/池田浩士さん/高谷光雄さん/文章と絵で戦争の本質に迫る

*         統一候補勝利は市民の願い/滋賀でセミナー

*         国家と自由、考えよう=^学習院大学で集い/奥田愛基氏招き

*         憲法フェスで講演・コント/札幌市南区

*         ヒトラー発言≠謝罪/比大統領

*         アウシュヴィッツの図書係/アントニオ・G・イトゥルベ著、小原京子訳/評者荒井寿恵学校図書館司書

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10月本文)

禁じられた<Aクセサリー/アウシュビッツ屋根裏で発見

 【ワルシャワ=AFP時事】ナチス・ドイツによるホロコースト(ユダヤ人大虐殺)の舞台となったポーランド南部のアウシュビッツ強制収容所跡で、1945年の閉鎖から70年以上の時を経て、収容者が作ったとみられる小さな木靴のアクセサリーが見つかりました。
 木靴は大きさがわずか7_でチェーン付き。収容所関連史料を収集する財団のモレンダ理事長は20日、「アウシュビッツの真の芸術作品」と表現。収容者は装飾品の作製や着用が禁じられていたことから、抵抗の象徴だったかもしれないと語りました。
 木靴は今月、収容者が寝室に使っていた関連施設の屋根裏で、保守作業中に発見されました。モレンダ理事長は「虐殺犠牲者が所有していた可能性がある」と指摘しました。
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2016年10月31日,「赤旗」)

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にちようシネマ館/手紙は憶えている/カナダ・ドイツ

 戦後70年を超えても、ナチス戦犯の追及はおこなわれています。これは、家族を殺したナチス兵士を処罰するために旅に出た老人の話です。
 1週間前に妻を亡くした90歳のゼヴ(クリストファー・プラマー)。記憶障害が進んだゼヴは目覚めるたびに妻の名を呼びます。ユダヤ人のゼヴは、彼と同じアウシュヴィッツの生き残りであるマックスから手紙を渡され、旅に出ます。手紙には彼らの家族を殺害したナチス兵士がルディ・コランダーと名を変えて生きていて、それらしい人物が4人いることが書かれていました。目覚めるたびに手紙を読み、自分が何をしているのか確認しながら、4人のルディを訪ねるゼヴを待ち受けるのは…。
 シャワーや列車などの収容所を連想させる映像や、手紙だけが頼りという設定でサスペンスを盛り上げます。監督はアトム・エゴヤン。
 (伴)
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2016年10月30日,「赤旗」)

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潮流

「およそ人間がなしえた現象で、あのように途方もない力をもつものは、いままで起きたことがなかった」。1945年7月16日、人類史上初の核実験に立ち会った米陸軍准将の報告です▼第2次大戦中、ナチスの核兵器開発に焦った米国が中心となり、科学者や技術者を総動員し、膨大な資金を投じた原爆製造計画。広島・長崎への投下に至るまでのそれは、当初の本部があった場所から「マンハッタン計画」と呼ばれました▼解き放たれた悪魔の兵器。戦後も、他の国にひろがり、増えていくことを人類は止められませんでした。しかし、国際社会はいま、その流れを大きく変える歴史的な一歩を同じニューヨークのマンハッタンで踏み出しました▼国連総会で軍縮を取り扱う第1委員会。核兵器を法的に禁じる初めての条約の制定をめざす決議案を採択しました。核のない世界への扉を開いた圧倒的多数の笑顔。少数の核保有国の硬い表情。主流と逆流がくっきりと▼情けないのは、唯一の被爆国である日本政府の対応です。米国の核の傘に頼って反対した安倍政権に、世界から驚きや批判の声が上がっています。被爆者からは「新たな時代への一歩についていけない日本とは何なんだと」▼幕開けとなった核実験の直後、計画にかかわった多くの科学者は原爆の使用に反対する要請書を米大統領に送りました。想像を絶する破壊の時代に扉を開く責任を負わなければならない。いまそれは日本をはじめ、すべての核固執国に向けられています。
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2016年10月29日,「赤旗」)

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「ヒトラー万歳」発言警官有罪

 【ベルリン=時事】DPA通信などによると、オーストリアの裁判所は20日、今年4月に対ハンガリー国境での検問で、入国した車の運転手にナチス・ドイツの独裁者ヒトラーをたたえる「ハイル・ヒトラー(ヒトラー万歳)」と声を掛けた警官の男(29)に執行猶予付き禁錮9月の有罪判決を言い渡しました。
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2016年10月22日,「赤旗」)

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ひと/北海道・旭川で戦争法反対の若者行動に取り組む櫻田晶子さん(35)

 昨年9月に安倍晋三政権が戦争法を強行して以来、毎月19日に街頭宣伝に取り組んできました。AFMA(アフマ=旭川民主主義・反ファシズム行動集団)の中心メンバー。アフマは昨年9月、10〜30代を対象に発足しました。
 「イベントに顔を出すだけのつもりだったのに、すっかりはまっちゃって」
 旭川生まれの旭川育ち。社会や政治にあまり関心を持たないまま育ちました。
 「中学校の広報班ではジャニーズとクラスメートのゴシップで新聞を作りました」。先生からは社会問題でなく芸能ニュースを出すのかと心配されました。
 転機は27歳。「広い世界が見たい」と国際交流NGOのツアーで世界一周に参加しました。3カ月の船旅でアフリカのマサイ族と交流し、カンボジアの虐殺跡地などに衝撃を受けました。
 「それまでスペインがカリブ海にあると信じていたんです」。国際関係の知識がなく、驚きの連続。日本を振り返ると、貧困や平和など多くの問題があると考えるようになりました。
 帰国後、市民運動にかかわるように。7月の参院選では街頭で選挙に行こうと呼びかけ、9月には台風被害が甚大な南富良野にボランティアへ、環太平洋連携協定(TPP)反対の運動にも取り組んでいます。
 「地元に政治を語りあえる場があることが大事。声が届かないもどかしさも感じます。地方から中央の政治に影響を与えたい」
 文 清水  渡 
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2016年10月20日,「赤旗」)

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ヒトラー生家、取り壊す方針/オーストリア

 【ベルリン=時事】オーストリアのソボトカ内相は17日、同国紙プレッセに対し、北部ブラウナウに残るナチス・ドイツ総統ヒトラー(1889〜1945)の生家(写真・AFP時事)を取り壊す方針を明らかにしました。
 内相は専門家委員会の勧告に基づく判断だと説明。跡地に新しい建物を造り、「慈善目的か公的な利用になる」との見通しを示しました。
 政府はこれまで、この場所がヒトラー信奉者の「聖地」になるのを避ける方向で対応を検討。7月には家主から建物を強制収用することを決定しました。
 取り壊しによりナチス時代と向き合う機会が失われるとの懸念に対し、内相は強制収容所跡を保存している事例などを挙げ、「歴史を思い起こす文化は機能している」と強調しました。
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2016年10月20日,「赤旗」)

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社会保障改悪、改憲止めよう/あいち高齢者大会

 豊かな高齢社会をめざす「第18回あいち高齢者大会」が13日、名古屋市昭和区の市公会堂で開かれ、会場いっぱいの500人が参加しました。年金者組合県本部、愛知社保協、愛労連など8団体でつくる実行委員会主催。
 実行委員長の伊藤良孝さんがあいさつにたち、「安倍政権の憲法改悪、社会保障改悪にストップをかけるため、あらゆる人たちと手を結んで運動の輪を広げましょう」と話しました。
 全体会では長峯信彦・愛知大学教授が「安倍『お試し』改憲 その嘘(うそ)と危険性」について講演しました。長峯氏は、安倍政権が狙う緊急事態条項はナチス・ドイツの全権委任法強行と同じ手口で「議会の自殺にほかならない」と強調。日本国憲法は世界に先駆けて、「人権と民主主義」「徹底した平和主義」を完備したと述べ、「権力者や財界の保身や利益のために、耳当たりのよい言葉で改憲の本質が隠されている。未来に向けた責任ある選択をわれわれはしていかなければいけない」と話しました。
 参加した女性(73)は「憲法9条だけでなく、憲法の全体像がわかりやすかった。改憲は、『お試し』で済まされるものではない」と語りました。
 全体会後、参加者は年金、社会保障、介護保険などの講演や、川柳、囲碁、うたごえなど多彩な10分科会で交流しました。
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2016年10月18日,「赤旗」)

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言聞録/2016年10月9日〜15日

 ○「両岸(中台)の平和発展と両岸人民の幸福のためになるなら、何でも話し合う」(台湾の蔡英文総統)=10日、辛亥革命(1905年)を記念する双十節(建国記念日)式典で中台の対話再開を訴え。

 ○「(トランプ氏を)もはや擁護することも共に選挙戦をたたかうこともない」(米共和党のライアン下院議長)=10日、トランプ氏の過去のわいせつ発言に対し、同氏と距離を置き下院選での過半数維持に力を集中する意向を示して。

 ○「ナチスの過去が、(戦後の西独に)大きな汚染をしていたことがわかった。これを示すことは現在への義務だ」(ドイツのマース法相=写真、ロイター)=10日、戦後すぐの西独法務省の幹部の77%が元ナチ党員だったという報告書を発表して。

 ○「もしトランプ氏が、これまで語ってきたことを変えることなく大統領に選出されるなら、同氏が国際的な見地から危険だということは疑う余地がない」(ザイド・フセイン国連人権高等弁務官)=12日、ジュネーブの国連欧州本部で記者会見。

 ○「最も弱い立場に置かれた人々の苦しみを見てきた」(グテレス前国連難民高等弁務官)=13日、国連総会で来年1月からの国連総長に任命され、抱負を表明。
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2016年10月17日,「赤旗」)

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文化の話題/ダリ展/奇才の生涯、俯瞰する/森下泰輔

 東京・国立新美術館で開催中の「ダリ展」。スペインのガラ=サルバドール・ダリ財団や国立ソフィア王妃芸術センター、アメリカのサルバドール・ダリ美術館の所蔵品と国内にある大作を中心に約200点で画家の歩みを見せる本邦過去最大の回顧展となっている。
 ■■
 ダリは1904年、スペイン、フィゲラスに生まれた。美術学校時代は反抗的な画学生で、若くして印象派やピカソのキュビスム運動に感化された。その時期の作「アルルカン」をはじめ、初期の作品は森羅万象を立方体、球、円錐と捉えたキュビスムを思わせるものが多い。当時の前衛美術の様式を試したダリは、25歳くらいから独自の展開を見せるようになる。20世紀の大きな思想のひとつ、フロイトの精神分析学が潜在意識や無意識の問題を説き、影響力をもっていた時代、夢のなかのような無意識の風景を描くようになる。
 だが、ダリが最初に注目されたのはルイス・ブニュエルと共同で制作した映画「アンダルシアの犬」「黄金時代」で、だった。本展では、ディズニーと制作した「デスティーノ」といったアニメーションの映像まで展示されている。
 深層心理を問題にした美術運動シュルレアリスムがアンドレ・ブルトンを中心にパリに勃興するとダリはほどなく運動の若き旗手と目されるようになる。「子ども、女への壮大な記念碑」といった作品では、性、幼児期、欲望などが不定形の中で融解してゆくような光景を描いている。
 やがてダリはヒトラーやムッソリーニのファシスト党を支持したとのかどでシュルレアリスム・グループから締め出される。1940年から1948年まで戦火のヨーロッパを避け、ニューヨークに滞在したダリはすっかり著名文化人となり成功する。あまりにドルを稼ぐのでブルトンは皮肉まじりに「アヴィダ・ダラーズ(ドル亡者)」と呼んだ。これはサルバドール・ダリのアルファベットを入れ替えたものだ。
 ■■
 1945年、広島・長崎に原爆が落ちたことにダリは戦慄する。同時に原子物理学と神秘主義を結びつけることで新様式を打ち立てる。「ウラニウムと原子による憂鬱な牧歌」には核の恐怖を示すキノコ雲と爆撃機が不安な構図のなかに描かれている。一方で古典美術に倣い、「ラファエロの聖母の最高速度」では聖母の頭部が原子核の粒子に分解され高速で運動している。
 ダリは不気味な絵ばかりを描いていたわけではない。画家がなみはずれた描写力の持ち主であることが理解できる作品もある。奇才の生涯と画業が俯瞰できる構成は見応え十分だ。
 (もりした たいすけ 美術評論家・美術家)

 12月12日まで。国立新美術館
03(5777)8600(ハローダイヤル)
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2016年10月14日,「赤旗」)

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ヒトラーの伝記、本人が書いた?/英教授が主張

 【エディンバラ(英国)=AFP時事】1923年にドイツで出版された、ナチスを率いた若き日のヒトラーの伝記が、他人に書かせた体裁を取りつつ実はヒトラー本人が自分で書いた可能性が出てきました。英スコットランド・アバディーン大の歴史家トーマス・ウェーバー教授が「ほぼ間違いない」と主張しています。
 伝記の筆者は、ビクトル・フォンケルバーという人物とされます。教授は南アフリカのヨハネスブルクにあるウィットウォータースランド大に保管されているフォンケルバー氏の遺品を調べました。
 その結果、「伝記の発行人の妻の宣誓書を見つけた」と教授は語ります。宣誓では「伝記の筆者はヒトラー本人で(23年のミュンヘン一揆の際の盟友)エーリヒ・ルーデンドルフに、名前を借りるのに都合のいい第三者の紹介をヒトラーが頼んだ」と証言していました。
 フォンケルバー氏自筆の文書や書簡でも、この証言は補強されると教授は主張します。この伝記の出版は、2年後に発表する自伝的著作「わが闘争」につながっていきます。「恥ずかし気もなく巧みに自分を売り込む」才能は最初のこの伝記から発揮されていると教授はみています。
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2016年10月14日,「赤旗」)

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旧西独法務省幹部/戦後すぐ、77%元ナチ党員/「旧悪隠し、第2の罪つくった」/独法相が発表

 ドイツのマース法相は10日、戦後すぐのドイツ連邦共和国(旧西ドイツ)で法務省の幹部の77%がナチ党員だったと発表しました。第2次大戦後、ナチス党員が法務省に残り、ナチスの旧悪を隠したり、新たな不法行為をはたらいたことも告発しました。南ドイツ新聞などが報じました。
 調査は、ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)などナチスの犯罪を二度と許さないという決意の下で、ドイツ政府が実施している「過去の克服」事業の一つ。2012年に当時の法相が独立歴史委員会に委託し、調査を進めました。
 今回、報告は『ローゼンブルク(西独法務省があった場所)の記録』として、本にまとめられました。
 戦後、西ドイツではナチ党員を公職から追放するなどの反ナチ化が進められていましたが、ナチスの影響は司法界に大きく残っていたことになります。
 報告によると、1949年から1970年代のはじめまで法務省で指導的地位にあった170人のうち、元ナチ党員は90人を占めました。57年がそのピークだったといいます。うち34人がナチスの準軍事組織、突撃隊(SA)の隊員でした。
 西独最初の法相だったトーマス・デーラー氏らは、戦後、新たな法務省をつくるため、専門知識を持った人物を集めましたが、ナチスの過去については大目に見ていたとされます。
 ヒトラーや国家、軍に対する反逆罪などを裁いた「人民法廷」の検察官だった人物が50年代に、法務省の中で大きな影響力を持った事例もあります。
 また、ナチスの旧悪追及を妨害したり、同性愛者やシンティ・ロマに対する差別を続けたとしています。
 マース法相は「ナチスの旧悪を隠し、新たな不法行為をし、(戦中のナチ犯罪に続き)第2の罪をつくった」と語りました。
 ドイツではすでに外務省などが戦後のナチの影響について独立歴史委員会の検証を受けています。
 (片岡正明)
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2016年10月13日,「赤旗」)

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潮流

 ポーランドという国名は平原を意味する「ポーレ」に由来しているといいます。中欧に位置する平原の国は、他国からの侵略によって何度も割かれ、地図から消されてきました▼大波にさらされ、過去を奪われてきた祖国の苦難の歴史。そのなかにあってポーランド人としてどのようにあるべきか。世界に衝撃を与えた数々の作品からそれを問いかけたのがアンジェイ・ワイダ監督でした▼第2次世界大戦でナチス・ドイツとソ連による侵攻の犠牲となった若者たちへの鎮魂歌とされる「地下水道」や「灰とダイヤモンド」。戦後のソ連支配による国家体制の欺瞞を告発した「大理石の男」。労働闘争の悲劇と勝利を描いた「鉄の男」…▼80歳のときにとりくんだ「カティンの森」は大戦下で起きたポーランド将校の虐殺事件を題材にしたもの。これは当時、ドイツがやったと主張したソ連・スターリンの犯行でした。じつは彼の父親も犠牲者の1人です▼抑圧されたなかで自由を求めてもがく人間の心の動き。画面から伝わるポーランドの現実を映し出した張り詰めた空気は20世紀の世界が吸った空気でもあるでしょう▼日本の精神文化に大きな影響を受けたというワイダ監督。彼の作品を紹介した岩波ホールの故高野悦子さんとの対談で私たちの社会にこんなことを。「ほんとうの意味での日本の産業、文化をおもうのであれば、もっと日本の過去に戻ってみるべきではないでしょうか」。現代から過去を見つめ、未来を照らした名匠の提言です。
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2016年10月13日,「赤旗」)

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全国革新懇ニュース10月号/市民をつなぐ言葉の力/自由と平和のための京大有志の会発起人藤原辰史さん

 戦争法反対のたたかいの中で大反響を呼んだ「自由と平和のための京大有志の会」声明書。「全国革新懇ニュース」10月号1面インタビューに、声明書を執筆した同会発起人の藤原辰史さん(京大人文科学研究所准教授)が登場します。
 同会の活動を通じて市民と市民のつながりが広がってゆく実感を語り、平和の思いを言葉の力で伝える大学人の自負を明かします。参院選を振り返り、「ファシズムは日常から生まれる」との持論を説き、新しい自由と平和を創造する道しるべとしての日本国憲法の価値を再確認します。
 翻訳家の池田香代子さんが、沖縄・辺野古の新基地建設をめぐる高裁判決を論評。事実をゆがめ、あからさまに沖縄を差別する判決を鋭く告発します。
 2〜3面は、各地の革新懇の取り組みを紹介。草の根で豊かに根付く市民と野党の共闘や沖縄との連帯など、革新懇運動の新たな展開を予感させます。
 購読料は年間1820円(送料込み、1部から自宅に郵送)。連絡先は全国革新懇 〒151―0051 渋谷区千駄ケ谷1の7の8 千駄ケ谷尾澤ビル 電話03(6447)4334 ファクス03(3470)1185
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2016年10月10日,「赤旗」)

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「抵抗3部作」監督ワイダさん死去

 【ベルリン=時事】ポーランドで、弾圧を受けながらも反骨精神にあふれた映画を撮り続けた、アンジェイ・ワイダ監督が9日、死去、90歳でした。
 北東部スバウキ生まれ。第2次大戦中は反ナチスのレジスタンス活動に従事。54年、若者によるレジスタンスに焦点を当てた「世代」でデビュー。「地下水道」(56年)、代表作「灰とダイヤモンド」(58年)と合わせた「抵抗3部作」で歴史に翻弄(ほんろう)されたポーランドの悲哀を追いました。
 労働英雄として祭り上げられた男の悲劇を描いた「大理石の男」(77年)の続編に当たる「鉄の男」(81年)は、カンヌ国際映画祭で最高賞パルムドールを受賞。
 日本との関わりが深く、87年に京都賞の精神科学・表現芸術部門を受賞。賞金でクラクフに日本美術技術センターを設立しました。
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2016年10月12日,「赤旗」)

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右翼改憲団体「日本会議」が活発化/各地でキャラバン宣伝/自民幹事長代行呼びシンポ

 「いかにわが党案(自民党改憲草案)をベースにしながら3分の2を構築してゆくか、これが政治の技術」と公言し、「だまし討ち改憲」へ暴走する安倍晋三首相のもとで、右翼改憲団体「日本会議」の動きも活発化しています。
 日本会議のフロント団体である「美しい日本の憲法をつくる国民の会」(共同代表・ジャーナリストの櫻井よしこ氏)は9月2日から47都道府県すべてでの「キャラバン宣伝」を展開。各地で集会を開き、街頭で改憲賛同署名の呼びかけと宣伝を行いました。

街頭反応冷ややか
 同15日、東京のJR新宿駅前での宣伝には、日本会議に参集している新興宗教団体メンバーら30人が参加。「参院選で憲法改正に賛成の議員が3分の2を占め、戦後初めて憲法改正に向けての国会発議の環境が整った」と気勢をあげました。
 東京都神道政治連盟、日本青年会議所の代表を名乗る人物が訴え。自民党の東京都議会議員3人(柴崎幹男=練馬区選出、河野ゆうき=板橋区選出、栗山よしゆき=北多摩3区選出の3氏)もマイクを握り、「自民党都議団をあげて憲法改正に力をつくす」(柴崎都議)とのべましたが、街頭の反応はきわめて冷ややかでした。
 日本会議系のシンクタンク、財団法人「国家基本問題研究所」(桜井よしこ理事長)は同28日、東京都千代田区内で集会を開催。450人を集めましたが、会場には旧日本軍の軍服姿の男性もいるなど、時代錯誤感の強い集まりです。
 実はこの集会、3年前の参院選直後に麻生太郎副総理が出席し、「(改憲は)静かにやろうや」「ナチスの手口を学んだらどうか」という暴言を放つ舞台になりました。
 この日のゲストは自民党の下村博文幹事長代行。シンポジウムのテーマは「ひるまずに憲法改正を言え!」。

「お試し改憲」論も
 下村氏は、当面の改憲の課題について、緊急事態条項、私学助成、参院の合区問題、環境権などをあげ、「大方の国民がまとまるところから発議し、できるだけ早く国民投票をし、日本でも憲法改正ができるんだなという自信と誇りを取り戻す」という「お試し改憲」論を口にしました。
 櫻井氏が北朝鮮の核開発と中国の海洋進出をあげて「日本は100年に一度の危機に直面している」と憲法前文と9条の改憲を求めたのをはじめ、会場からも「なにをまどろっこしいことをしているのか」という声があがる、さながら自民党突き上げ大会の様相です。
 下村氏は、「客観情勢として、(9条改憲は)国民の過半数の賛同を得られる状況にない」とのべました。
 安倍政権のもっとも中核的な支持層である右翼改憲派がますます9条改憲への衝動を強め、政権がそれに応えようとすれば世論の前に孤立を深める―そんなジレンマのなか、憲法をめぐる秋のたたかいが始まっています。
 (竹腰将弘)
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2016年10月10日,「赤旗」)

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政治は変えられる/ストップ!安倍暴走/池田浩士さん/高谷光雄さん/文章と絵で戦争の本質に迫る

ファシズム研究者・京都大名誉教授池田浩士さん(76)/染色画家・京都精華大名誉教授高谷光雄さん(75)/共著『戦争に負けないための二〇章』を出版/話し合う素材に
 ドイツ文学者でファシズム文化研究者の池田浩士・京都大名誉教授と染色画家の谷光雄・京都精華大名誉教授が共著『戦争に負けないための二〇章』(共和国)を出版しました。「戦争は平和のためのたたかいです」「戦争、それは科学技術と文明の進歩をもたらします」など、戦争推進側の論理を紹介することで戦争の本質、推進側の矛盾に深く迫っていく意欲作です。

「一種の挑発」
 「これは一種の挑発です」と池田さん。日本の戦争はどういうものか。どのような脈絡で戦争しようとしているのか。「家族や友人と話し合うための素材にしてもらいたい」と話します。
 谷さんは「まず絵を見て感じてもらいたい」と言います。シュールレアリスムを使った絵には、1歳から5歳まで戦争一色だった原風景が散りばめられています。
 安保法制=戦争法の強行採決から1年。シールズやママの会といったメディアに正面から向かった人々の他にも、これまで声を上げていなかった人々が、それぞれの地域で政治について語り始めたことに、政治を変える萌芽(ほうが)を感じています。
 谷さんの周りでは美術家仲間が次々と声を上げました。毎月9日に行う街頭宣伝では1人から2人、3人と増えて今では20人以上が参加しています。平和をテーマにした展覧会では予想を大きく上回る約50人の美術家が参加しました。個展に訪れた女性が憲法について語ったこともあります。谷さんは「今まで言葉に出していない人がふっと話してくれる瞬間がとてもうれしい」と言います。
 池田さんも、生活や仕事場での政治談議など、小さな変化の積み重ねが大切だと考えています。「政治を政党や政治家に委ねるのではなく、ほんの小さな出会いや関係のなかで政治を語ることが第一歩です。私たちが政治と生活の主人公ですから」と語ります。

正念場迎える
 参院選では自民・公明、維新などの改憲勢力が、改憲発議を可能にする「3分の2」を上回る一方で、11選挙区で野党共闘の候補が勝利しました。両氏は、日本の行く末を決めるたたかいはこれから正念場を迎えると感じています。
 谷さんは「美術家も誰かが立ち上がることで運動が広がった。一人ひとりが確かな力になります。若い人たちも巻き込んでもっと大きな流れを作りたい」と意気込みます。
 池田さんも「相手は巨大な権力を持っています。そう簡単には勝てないのは当然です。いま、手にしているつながりを大切にし、さらに新しい関係を築いて豊かにしていくことが私たちの強さ。政治を語り、現実を知り、ともに考えつづけたい」
 (安岡伸通)
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2016年10月07日,「赤旗」)

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統一候補勝利は市民の願い/滋賀でセミナー

 滋賀県で反ファシズムを訴える市民団体「ANTIFA SHIGA(アンティファ滋賀)」は2日、近江八幡市で、「三重の野党共闘と選挙戦」と題するセミナーを開き、40人が参加しました。
 「市民連合みえ」の森原康仁(三重大学人文学部准教授)、岡歩美両氏が、7月の参院選三重選挙区で野党統一候補を勝利させた活動について報告。続いて、日本共産党の佐藤耕平県常任委員、民進党の今江政彦県連幹事長、若者憲法サークル「しーこぷ。」の佐藤萌海氏が加わり、5氏によるパネルディスカッションが行われました。
 佐藤萌海氏は「私たち市民は、これからも野党共闘をしていくことを望んでいます」と話し、佐藤耕平氏は「市民の願いから始まった野党共闘。必ず発展させなければならない」と力を込めました。今江氏は「いまの自民党の暴走は目に余るものがある。衆院選でも、しっかりと野党共闘に取り組んでいきたいと思っている」と述べました。
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2016年10月04日,「赤旗」)

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国家と自由、考えよう=^学習院大学で集い/奥田愛基氏招き

 「国家と自由について考えよう」というテーマで講演と映画のつどいが2日、東京の学習院大学で開かれました。福井憲彦学習院大前学長の講演、元SEALDs(シールズ)の奥田愛基氏へのインタビュー、映画「わたしの自由について〜SEALDs2015」の上映を行いました。学生を含む200人が参加しました。主催は学習院大学文学会と、福井憲彦先生講演会映画上映会実行委員会です。

 荒川一郎同大学副学長はあいさつで「防衛省からの研究資金という問題が起こっています。軍事研究に関与しないという日本学術会議の宣言があるがなし崩しになっています。一方、学者の抵抗は非常に大きくなっている。それが希望です」と述べました。
 福井氏はドイツやイタリアなどのファシズムの特徴を紹介。その中で、日本に排他的・排外的なナショナリズムが再興しつつあり、その対極にあるのは憲法の「前文」だと主張。「国民個々人の積極的な関与なしには自由や権利も守れない。どうするかは、シールズの活動が考えるきっかけを与えてくれた」と語りました。
 佐藤学教授のインタビューにこたえて奥田氏は「日常の普通の言葉でみんなが政治につながろうとしました」と述べました。佐藤氏は「シールズは革命家ではない。しかし、政治行動の革命家だ」とのべました。
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2016年10月04日,「赤旗」)

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憲法フェスで講演・コント/札幌市南区

 「安倍改憲を許さず、9条を守り抜こう」と第11回南区憲法フェスティバル(肘井博行実行委員長)が1日、札幌市南区で開かれ、130人が参加しました。
 橋本祐樹弁護士が「予防的に学ぶナチスの手口とアメリカの手法―緊急事態条項と経済的徴兵制を止めるために」と題して講演しました。橋本氏は、「徴兵制は日本国憲法のもとでは許されない」と強調しました。
家計所得の減少で貧困に陥る国民を、防衛省が学資金貸費などの制度を使い自衛隊に勧誘していると告発し、「自民党改憲草案の緊急事態条項は、戦前の戒厳令のようなもので人権抑圧だ。徹底的に反対しよう」と呼びかけました。講演後、橋本氏は、北海道合同法律事務所のメンバーと一緒に経済的徴兵制などをテーマにしたコントと歌を披露しました。
 北海道合唱団による平和の歌の合唱や平和パネル展なども行われました。
 南区在住の千葉尚子さん(36)は「自衛隊員の命が危険になっていく。安倍政権の暴走を止めないといけない」と話しました。
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2016年10月04日,「赤旗」)

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ヒトラー発言≠謝罪/比大統領

 【マニラ=時事】フィリピンのドゥテルテ大統領は2日、麻薬対策に関連して自らをナチス・ドイツの独裁者ヒトラーになぞらえた先の発言について、「ユダヤ人が殺害された記憶を汚す意図はなかった。心から謝罪する」と述べました。
 ただ、麻薬対策については正当性を強調。批判した米国に対して「公の場で私を非難した。この野郎、ばか」と再び暴言を連発。アキノ前政権下で結ばれ、米軍の実質再駐留を可能とした米比新軍事協定も見直しがあり得るとの見方を示しました。
 ドゥテルテ氏は9月30日、「ヒトラーは300万人のユダヤ人を虐殺したが、(フィリピンには)同じ数の薬物中毒者がいる。彼らを虐殺できれば幸せだ」と述べ、米独両政府やユダヤ人団体から批判が相次いでいました。
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2016年10月04日,「赤旗」)

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アウシュヴィッツの図書係/アントニオ・G・イトゥルベ著、小原京子訳/評者荒井寿恵学校図書館司書

秘密の図書館が語る迫害の記憶
 1944年1月、アウシュヴィッツ=ビルケナウに設けられた家族収容所三十一号棟には、500人の子どもたちの学校とその秘密の図書館があった。
 「図書館をやっていくには勇敢な人が必要だ」。責任者のフレディ・ヒルシュにこう励まされて、テレジンから移送されて来たばかりの14歳のディタは、図書係になった。蔵書はナチスの焚書を生き延びた8冊のみ。ディタの仕事は、授業をする教師に本を貸し出し、回収し、命懸けで隠すこと。教師にはシオニストや共産主義者もいた。「死の工場」になぜ「子どもたちのオアシス」が作られたのか。ディタはヒルシュの行動の謎を追い始める。
 ヒロインのモデルは、かつて児童書『テレジンの小さな画家たち』(野村路子)で紹介された少女の一人、チェコ出身で現在はイスラエルに住むディタ・クラウス。迫害の記憶を伝える本も映像も数多あるが、本書の特長は、被害と加害の双方の体験を登場人物が直接語ることだ。逢い引きする親衛隊の若者、体を売る母親らにも事情と考えがあった。「悪の権化」のメンゲレやアイヒマン、女看守らが「凡庸な悪」(ハンナ・アーレント)に見えてくる。
 ディタが読み聞かせる『兵士シュヴェイクの冒険』は、軍隊の陳腐さを笑い、愚者の抵抗を教えてくれる。
 EU高校生会議の提案で始まったという「ドイツ・ポーランド共通歴史教科書」の試みや、被害と加害を問い直す世界史の流れにも沿った作品ではないだろうか。自分も今の世界の虜の一人、抵抗と協力の間をどう生きるかと考えさせられる。現代史を学ぶ中高生に読んでほしい。

 67年、スペイン・サラゴサ生まれ。雑誌編集長
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2016年10月02日,「赤旗」)

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9月見出し)

 

*         首相演説/自民党議員起立に違和感/戦意高揚の異様な光景

*         映画と講演「国家と自由」/来月2日・学習院

*         南スーダン派兵撤退を/元自衛官が講演/仙台

*         草の根共闘/緊急事態条項の危険学ぶ/甲府

*         芸能テレビ/映画「コロニア」のドイツ人監督フロリアン・ガレンベルガーさん/歴史知り議論する契機に

*         独裁生む格好の条文/緊急事態条項の危険性学ぶ/愛知

*         関西勤労協、鯵坂ゼミ開講/25日から全10回

*         朝の風/優生学の狂い咲き

*         アウシュビッツ収容所元医師/ナチス戦犯の裁判始まる

*         悲しき「ミッキー」発見/アウシュビッツ

*         ひと/俳優佐々木蔵之介さん/映画「超高速!参勤交代リターンズ」主演/福島がおかえりなさい

*         歴史に向き合う/中国人強制連行/中国人強制連行・強制労働事件全国弁護団幹事長、弁護士松岡肇さん/政府の責任で全面解決を

*         絶滅収容所跡地に博物館建設へ/ユダヤ人約18万人を虐殺/ポーランド・ソビブル

*         ♪音楽人ら「戦争法に終止符を」/東京で集い

*         「派兵やめよ」/革新懇が宣伝/岩手

*         津島佑子の遺作/最後の小説に託されたもの/木村朗子

*         ロマの強制収容所の存在否定発言/チェコ第1副首相が謝罪

*         野党と市民の共闘さらに/総選挙で大激変つくろう/上智大学教授(政治学)中野晃一さん/大義で選挙協力≠ヘ世界標準

*         わたしの宝物/ロックチンドン奏者・歌手こぐれみわぞうさん/一人ひとりが、いとおしい

*         「跳弾」事件のあいば野演習場/基地問題解決へともに/大門参院議員が周辺住民と懇談/滋賀・高島

*         「ファシズムは『安酒の酔い』に似て」/大門参院議員のエッセーに反響

*         戦争法の危険性学ぶ/前橋平和委が交流会

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9月本文】

首相演説/自民党議員起立に違和感/戦意高揚の異様な光景

 「彼ら(自衛隊員ら)に対し、今この場所から心からの敬意を表そうではありませんか」
 安倍晋三首相が26日の衆院本会議での所信表明演説でこう述べ、演説を中断して、「夜を徹して任務に当たっている」自衛隊員らをたたえる拍手をし、多くの自民党議員が一斉に起立して拍手したことに、批判と違和感が広がっています。
 「戦時中、学徒動員を拍手で戦地に送りだした光景を連想する。自衛隊を拍手で送りだすもので、臨戦態勢、戦意高揚の異様な光景だ」。元私立高校校長という男性は共産党本部にこう感想を寄せました。
 まさに戦前の日本やナチス時代のヒトラーへの喝采≠ニ二重写し―。軍事的価値観の強制につながる権力者の異常な行動です。
 安倍首相は9月12日の自衛隊高級幹部会同での訓示で、戦争法や日米新ガイドラインの整備をあげ、「制度は整った。あとはこれらを血の通ったものとする。必要なことは、新しい防衛省・自衛隊による『実行』です」「今こそ『実行の時』」だと、「実行」という言葉を繰り返しました。戦争法の「実行」へ檄(げき)を飛ばしたのです。
 戦争法の新任務はいずれも、自衛隊が海外での武力行使・戦闘に踏み込み、「殺し殺される」重大な危険をはらみます。その自衛隊に感謝と敬意が示されなければ、隊員の士気は維持できず、隊員になる者もいなくなる―。安倍首相の行動の動機でしょう。
 米議会では、軍隊への敬意を示す場面で、民主党・共和党の区別なく一斉に議員が起立して拍手するのが通例です。理由は同じことです。
 日本もアメリカのような軍事国家になろうという安倍首相の野望をあらわにした光景でした。
 (中祖寅一)
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2016年09月30日,「赤旗」)

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映画と講演「国家と自由」/来月2日・学習院

 学習院大学文学会・福井憲彦先生講演会映画上映会実行委員会は10月2日、東京都豊島区の学習院百周年記念会館(JR目白駅下車徒歩3分)で、映画と講演の集い「国家と自由について考えよう」を開催します。安全保障関連法に反対する学習院大学・学習院女子大学有志の会が応援しています。
 前学長の福井憲彦氏が「バスモア『ファシズムとは何か』から学ぶこと」と題して講演。特別ゲストとして元SEALDs(シールズ)の奥田愛基(あき)さんを招き、佐藤学教授がインタビューします。あわせて、映画「私の自由について=SEALDs2015」を上映します。入場無料。
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2016年09月29日,「赤旗」)

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南スーダン派兵撤退を/元自衛官が講演/仙台

 野党共闘で安保法制を廃止するオールみやぎの会と自由法曹団宮城県支部は19日、仙台市で元自衛官の泥憲和氏を講師に、緊急講演会「自衛隊東北方面隊 危険な南スーダンPKO派遣」を開きました。
 泥氏は、政府が「停戦合意は守られている」として自衛隊をPKO(国連平和維持活動)で派兵させている南スーダンの現状について、現地勢力が激しく対立し武装勢力が国連施設や部隊を襲撃する事態になっていると指摘。1990年代に米軍PKOが撤退したソマリア内戦と現在の南スーダンを比較し、「自衛隊の南スーダン撤退の条件はすでにそろっている。一刻も早く日本に戻さなければならない」と強調しました。
 また、安倍政権による憲法解釈の変更により、自衛隊員が武器使用や殺傷行為を行わざるをえなくなる危険性について触れ、「真っ先にそうなるのは、震災の時に頑張ってくれた若い隊員たちです。この若者たちを死なせてはいけない。かつて大日本帝国政府は、東北の若者たちを最前線に送って死なせました。決して繰り返してはいけない」と訴えました。
 講演会に参加した男性(73)は「まさにファシズムの時代の直前にきていると危機感を強めました。もうすぐ後期高齢者だけど、戦争する国づくりを止めるためにまだまだ私も頑張っていきたい」と話しました。
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2016年09月23日,「赤旗」)

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草の根共闘/緊急事態条項の危険学ぶ/甲府

 19日、甲府市で「学び・語り・行動へ 19日集会」(主催=戦争させない・9条壊すな!山梨行動実行委員会)が開かれ、230人が参加しました。
 集会では、山梨学院大学名誉教授の椎名慎太郎氏、日本国際ボランティアセンター元事務局長の清水俊弘氏が講演しました。
 椎名氏は、自民党が改憲で導入を狙う緊急事態条項について「安倍首相は、国民の抵抗感の少ない所から憲法改正に手をつけたいと考えており、大規模災害などを口実にした緊急事態条項がそのひとつだ」と指摘。「国民の権利を制限できるこの条項が憲法に書きこまれれば、独裁体制をつくりあげたナチスの再現になりかねない」と述べました。
 清水氏は、南スーダンでのPKO活動について「自衛隊が駆け付け警護≠ニいう形で武器を使えば、戦争の当事者になり攻撃の対象にされる」と述べ、「いま現地で必要なのは、中立の立場で和平プロセスをサポートする役割。日本は軍事に偏らず民生支援、人道支援を目玉にすえた活動に切り替えていくべきだ」と訴えました。
 主催者から、毎月の19日行動を広げるとともに、衆院選・小選挙区での野党統一を求めていくことなどが提起され、拍手で確認されました。
 集会には、宮沢ゆか参院議員、日本共産党の小越智子県議や各地の地方議員も多数参加しました。
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2016年09月21日,「赤旗」)

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芸能テレビ/映画「コロニア」のドイツ人監督フロリアン・ガレンベルガーさん/歴史知り議論する契機に

チリ軍政と結託、ナチス残党による恐怖支配
 前作「ジョン・ラーベ〜南京のシンドラー〜」で南京大虐殺を描いた、ドイツ人監督のフロリアン・ガレンベルガーさん。新作「コロニア」では、チリの軍事政権とナチスの残党が結託した史実を題材に、自国の歴史の暗部に切り込みました。
 湯浅葉子記者

 舞台は1973年のチリ。アジェンデ政権がクーデターで倒され、ピノチェト軍政が樹立します。元ナチスのパウル・シェーファー(ミカエル・ニクヴィスト)が60年代に創設したドイツ系移民のコミュニティーコロニア≠ナは、彼の協力のもと、アジェンデ派の国民が多数虐殺されていました。物語はある男女のコロニアからの脱出劇です。
 主人公はドイツ機の客室乗務員レナ(エマ・ワトソン)。恋人でドイツ人記者のダニエル(ダニエル・ブリュール)はアジェンデ派の活動家でもあり、クーデターのさなかにコロニアに収容されます。レナは彼を救出するためコロニアに潜入し…。そこはシェーファーが教皇≠ニして君臨し、厳格な規律と暴力、性的虐待で住民を支配するカルト集団の共同体でした。
 「コロニアには、北朝鮮のような独裁政治の国々の縮小版的な面があります。神とあがめられる指導者がいて、政治的なり宗教的な信仰が根付き、暴力がある。そういった国について学んでもらえると思ったのが、映画化の動機の一つです」とガレンベルガー監督。
 史実では、90年の民政移管後にシェーファーは起訴され、2010年に獄死。当時の幹部らも投獄されました。共同体自体は今も存在します。監督は加害者だった人物も含め、現在の住民や元住民に取材を重ねました。
 「世間話をしながら信頼関係を築いていくと、隠し続けることの荷の重さに、ぽろぽろと話し始める。劇中の出来事に作り事はなく、実際にあった話を描いています」
 ドイツ政府がコロニア関連文書の機密指定を解除したのは、今年4月。
 「ドイツ政府はホロコーストの歴史には素直に向き合ってきました。しかし残念なことに、政治家は基本的に自分の経歴に都合の悪いことはしない。本作の公開でこの問題が注目されたため、ようやく動いた。市民の働きかけは重要ですね」

意識高い俳優陣
 出演する俳優たちも、社会への問題意識が高い。国連を通じた男女平等の活動に熱心なワトソンさん。ブリュールさんは「ジョン・ラーベ」にも出演しています。監督は、「彼は聡明で政治的な人物。世界で起こる出来事への関心が強い。当時のチリにいたら傍観せず、活動家になったと思います」。
 「ドイツでは、歴史と向き合う映画を作りやすい雰囲気があり、実際に資金も集まる」と監督。
 「今作で特に若い人に伝えたいのは、指導者に黙って従うのではなく、自分の頭で考えてほしいということ。歴史を知り、自由に議論することで、過ちを二度と繰り返さないことが大切です」
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2016年09月18日,「赤旗」)

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独裁生む格好の条文/緊急事態条項の危険性学ぶ/愛知

 愛知県知多地域の29団体でつくる「秘密保護法の廃止を求める知多の会」は11日、半田市内で自民党改憲草案の学習会を開き、参加した73人が緊急事態条項の危険性について学びました。
 講師は同会代表の新美治一・名古屋経済大学名誉教授。新美氏は戦前のドイツでおこなわれたナチスの独裁政権確立の過程を紹介し、「緊急事態条項は、独裁者をつくる格好の条文で、戦争する国に不可欠な法体制。三権分立を否定し、国民の基本的人権も一時停止させられる非常に恐ろしい条文」と強調。「大規模災害やテロ等対策は現在の法体制で対処できる。改憲をめざす安倍首相の狙いを広く周りの人々に知ってもらい、改憲を阻止しよう」と訴えました。
 参加者から「緊急事態条項を安倍首相は改憲の突破口にしようとしている。改憲反対へ署名や反対集会など運動を広げる」「北朝鮮や中国の妄動が安倍政権に大いに利用されている中、日本国憲法の外交努力が求められる」などの意見がありました。
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2016年09月16日,「赤旗」)

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関西勤労協、鯵坂ゼミ開講/25日から全10回

 関西勤労者教育協会は25日(日)から鯵坂ゼミナール「現代観念論批判―反知性主義を中心に」を開講します。
 日程は、2017年6月25日(日)までの毎月第4日曜日、全10回。
 講義テーマは、
@現代の思想状況―反知性主義批判を中心にA右翼日本会議などの哲学的聖典とされる長谷川三千子の思想―『紙やぶれたまはず』などの検討B反知性主義の源流―ケルケゴールの実存主義C同―ニーチェの実存主義Dファシズムと哲学―ハイデガーの思想E反ファシズム実存主義者―サルトルの哲学F日本型ファシズムと西田哲学・京都学派G日本文化論と梅原猛の思想HK・ポッパーの批判的合理主義および相対的科学論I新カント派およびM・ウェーバーの哲学と価値論。
 いずれも大阪市中央区の関西勤労協会議室(JR・地下鉄「森ノ宮」駅下車)、午後2時〜5時。講師は鯵坂真さん(関西大学名誉教授)。受講料2万8000円。申し込み・問い合わせは06(6943)1451まで。
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2016年09月14日,「赤旗」)

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朝の風/優生学の狂い咲き

 ナチスのユダヤ人、障害者の大量殺戮と日本の「癩撲滅祖国浄化」の類似性にふれた詩を読んだ(『詩人会議』10月号の宇宿一成「ハンセン病と星塚敬愛園、そして、つきだまさしの詩」)。共通の根は優生学だ。民族の優秀性を保つため劣った遺伝子を国家政策で淘汰するという思想である。
 日本でも明治期、東大総長や枢密院顧問を務めた加藤弘之が優生学をひろめた。しかし戦後民主主義は優生学を一掃したはずだ。たとえば戦中の抑圧を暗喩した大江健三郎の初期の代表作『芽むしり仔撃ち』には、取るに足らない罪で感化院に入れられた子どもを抑圧者側の村長が「お前のような奴は(略)悪い遺伝をひろげるだけしかない出来ぞこないだ」とそしる場面がある。優生学批判のアイロニーである。
 ところが津久井やまゆり園事件の植松容疑者は優生学を信じ、障害者抹殺は「愛する日本国、全人類の為」だと考えた。この事件は優生学も戦争と同じく国家公認でなければただの殺人であることを浮かびあがらせた。容疑者は大島衆議院議長に「お力添え」を懇願し、「是非、安倍晋三様のお耳に伝えて」下さいと述べている。福祉を削り、戦前の抑圧体制に近づけようとしている安倍政権なら、公認してくれると錯覚したのだろう。
 (槐)
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2016年09月14日,「赤旗」)

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アウシュビッツ収容所元医師/ナチス戦犯の裁判始まる

 ドイツ北東部ノイブランデンブルクで12日、ナチス・ドイツがユダヤ人大量虐殺(ホロコースト)を行ったアウシュビッツ強制収容所の元医師、フベルト・ツァフケ被告(95)の裁判が始まりました。
 ツァフケ氏はナチス親衛隊(SS)の医師で、1944年8月15日から9月14日までの1カ月間に、3681人の殺人をほう助した疑いで訴えられました。
 同氏は、アウシュビッツ強制収容所では、SSやドイツ兵の医療手当てをしていたと主張し、嫌疑を否定しています。また、高齢で高血圧、精神状態も裁判に耐えられないとして、これまで2度、裁判開始が延期されてきました。ドイツでは、ナチの犯罪に時効はありません。
 ナチス戦犯裁判では2011年までは、残虐行為に直接加担した証拠が求められました。しかし、同年5月にミュンヘン地裁がソビブル強制収容所の看守を「抹殺を目的とする機構の一部だった」と認定し、被告に禁錮5年の判決を出しました。これがきっかけとなり、ドイツのナチス犯罪を追及する検察「ナチス犯罪解明のための州司法行政中央本部」が虐殺だけを目的とする収容所で看守などであった過去が確定できれば訴追できると判断。以降、次々と生存している元看守を訴追してきています。
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2016年09月14日,「赤旗」)

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悲しき「ミッキー」発見/アウシュビッツ

 【ワルシャワ=AFP時事】現在のポーランド南部にあったナチス・ドイツのアウシュビッツ強制収容所へ送られた子どもの遺品とみられるミッキーマウスの置物が、このほど見つかりました。収容者の遺品などを収集している財団が9日、明らかにしました。財団運営者は「ガス室で死亡したであろう子どもを想起させる悲しい遺品」と話しています。
 置物は磁器で、1930年代に米ウォルト・ディズニー社の許可を得ずドイツで製造されました。戦後、農民の男性が収容所跡近くを流れる川の土手付近で見つけ、自宅に保管してきましたが、最近になって孫娘が財団へ寄贈。財団運営者は「(実際の)所有者を突きとめることはできないだろう」としています。
 アウシュビッツ強制収容所では、23万2000人の子どもが犠牲になったと推定されています。
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2016年09月13日,「赤旗」)

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ひと/俳優佐々木蔵之介さん/映画「超高速!参勤交代リターンズ」主演/福島がおかえりなさい

 江戸まで10日かかる行程を4日で参勤せよ! 幕府の無理難題に、貧乏藩が知恵と団結で切り抜ける前作が大ヒット。続編「超高速!参勤交代 リターンズ」(本木克英監督)でも、主演を務めます。
 「こんなにヒットするなんて僕たち俳優も、多分監督も考えてなくて。ふざけたタイトルのおかげで(笑)、時代劇の敷居が低くなったのかな。いろんな世代の方に見ていただけてうれしかったですね」
 関西人のノリで、ユーモアを交えて語ります。
 演じるのは湯長谷(ゆながや)藩(現福島県いわき市)の殿・内藤政醇(まさあつ)。前作で何とか江戸に到着した殿と藩士の一行ですが、今作は、国元での一揆発生の報を受け2日間で帰郷することに…。抱腹絶倒の珍道中ながら、気骨と民への愛にあふれます。
 「浅知恵には笑ってしまうんですけど、がむしゃらに頑張る姿は美しく、のんびりした東北弁はチャーミング。応援したくなります」
 東日本大震災後の福島を励ますような作品。いわき市の、ある小さな映画館では、前作の観客動員数が全国3位でした。「それだけ応援してくださったんです。今回の撮影でも、『おかえり』という感じで迎えてもらいました」
 ○  ○
 実家は京都で120年続く造り酒屋。秋から春にかけて大勢の杜氏(とうじ)が家に泊まり込み、酒を仕込む環境に、幼い時から「みんなで物を作る尊さ」を感じて育ちました。
 大学時代に演劇にのめり込み、家業は継がず俳優の道へ。最近は、1人20役の舞台「マクベス」、ナチスの同性愛者迫害を描いた舞台「BENT」など新たな挑戦を続けています。
 「『マクベス』の時は3カ月たってもセリフを覚えられず、本当に怖かった。でも、稽古場に入ったら演出家もスタッフもいて、一人じゃないと思えました。仲間がいるからできる。それは(映画の)殿や酒造りも同じです」
 演じる妙味を、「演じる中で、自分では想像しえなかった声や間が生まれること」と。共演者や観客との化学反応で、「自分の思いもよらない感情が沸き、同じセリフでも、新しい表現になって生まれる瞬間がうれしい」。
 ○  ○
 「舞台の前は逃げたくなるし、本当は楽したい」という言葉とは裏腹に、物を作る情熱に突き動かされ、2005年から自身主催の舞台も興行中。「学生時代のような、手作り感ある芝居をしたい」とグッズの制作やチラシ作りにもかかわります。
 舞台の世界に飛び込んで26年。「舞台は厳しい。稽古から千秋楽までダメ出しばかりですから。終わってみて、『何とかやれたかもしれない』と思うことの連続です。でもそれが挑戦へのよりどころになる。まだ足りない、まだ終われないという思いは、芝居を始めた頃から変わりません」
 湯浅葉子記者

ささき・くらのすけ=1968年京都府生まれ。大学在学中から劇団「惑星ピスタチオ」で活躍。舞台のほかNHK連続テレビ小説「オードリー」、ドラマ「ハンチョウ」シリーズ、映画「ソロモンの偽証」などに出演。「超高速!参勤交代」で日本アカデミー賞優秀主演男優賞。「超高速!参勤交代 リターンズ」は10日から全国で公開
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2016年09月11日,「赤旗」)

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歴史に向き合う/中国人強制連行/中国人強制連行・強制労働事件全国弁護団幹事長、弁護士松岡肇さん/政府の責任で全面解決を

 三菱マテリアルは人権侵害を明確に認め、謝罪しました。過去3例の和解がありますが、人権侵害に踏み込んで責任を認めたのは初めてです。
 与党の国会議員のなかにさえ、日中両国の関係改善のため「和解を生かし、解決していくべきだ」という意見があります。今回の和解の成立は、日本と中国に真の歴史和解を実現させる貴重な道筋です。
 そもそも中国人の強制連行・強制労働事件は、外務省自らが作成した報告書があり、全く争えない事実です。
 1995年から日本各地で15の賠償請求訴訟がたたかわれました。最高裁判所は2007年、西松建設事件に関し日中共同声明(72年)で原告側が裁判上の請求権を失ったとして、被害者側の賠償請求を退けました。
 しかしそのなかでは、国を含む関係者による「被害者救済に向けた努力が期待される」と付言しました。事実はすべての裁判所が認定しています。
 政府は日中共同声明で「解決済み」とする姿勢をいまだに崩していません。しかし今回の和解を機に、政府の主導と責任で加害企業はもちろん、経済団体などの参加も得て、被害労工約4万人を対象とする全面解決にのりだすべきです。
 ナチスが東欧の人たちを強制労働させたドイツでは、政府と企業が拠出する「記憶・責任・未来基金」を設立し(00年)、被害者に補償金を支払ってきました。
 私たち弁護団はこの基金に学び、全面解決構想を提言(04年)しています。提言は日本政府と企業が責任を認めて謝罪し、その証しとして基金を設立し、その基金を生存労工または遺族に対する謝罪金のほか、事件の調査・研究・教育などにあてるとしています。

まつおか・はじめ=1931年生まれ。99年から中国人強制連行・強制労働事件福岡訴訟にとりくみ、和解に尽力する。著書に『日中歴史和解への道』(高文研)
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2016年09月11日,「赤旗」)

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絶滅収容所跡地に博物館建設へ/ユダヤ人約18万人を虐殺/ポーランド・ソビブル

ガス室に続く「蛇の道」に墓石と花とロウソクが
 ポーランドのソビブルに、新しく博物館が建つことになりました。ナチスが第2次世界大戦中に造った絶滅収容所の一つです。その裏を流れるブク河の向こうはもうウクライナという、国境の町です。西都ルブリン市から車でガタガタ道をひた走ること2時間余、深い森の中にその場所が見えてきました。
 (ジャーナリスト 大内田わこ・写真も)

 記憶をたどりながらあたりを見回すと、森の左手に青いコンテナハウスが見えます。そこが仮の事務所でした。クシシュトフ・スクフィロスキさん(64)が、笑顔で出迎えてくれました。1993年以来この場所を守り続けてきた人で、4年ぶりの再会です。
 「戦後70年も過ぎているのに、いまさら博物館を建てるなんて、と思われる人もいるかもしれませんが、ここでナチスがやったことを記憶していくことは、世界が再び同じような悲劇を生まないためにも、とても重要です。それは偶然でも、突発的なことでもなく、国家が、人間を抹殺するために、極めて巧妙に計画を立て、国家的事業として推し進めた犯罪だったのですから」
 ナチスは、ユダヤ人を殺す、ただそれだけのために絶滅収容所を造りました。42年の1月、「ユダヤ人の最終的解決」を決めたヴァンゼー会議。そこで計画した「ラインハルト作戦」の下、ベウゼツ、ソビブル、トレブリンカの3カ所に建設。それより先に稼働していたヘウムノと合わせて200万人近くのユダヤ人を虐殺したのです。

眼前に絶滅の森
 ここでは42年春から翌年の秋までに、17万7千人がガス殺されました。
 今はもう廃虚となったソビブル駅舎を背に、プラットホーム跡に立つと、目の前に絶滅の森≠ェ広がります。わずか1年半の間に、18万人近い人々が灰にされた場所。近くはルブリン地方、遠くはオランダ、オーストリア、スロバキア、ソ連などから運ばれ、殺された人びとの無念の叫びが聞こえてくるようです。
 当時は駅から1本の引き込み線が森の中へ引かれていました。そこで人々は移送列車から降ろされ、収容所長のこれから東の方へ働きに行くという、ウソで固めた演説を聞かされたあと、消毒のためと身ぐるみ脱がされ、裸のままガス室へと誘導されたのです。
 生還者が「ドイツ人は天国への道と呼び、われわれは蛇の道と呼んでいた」と、書き残しているガス室への道には、名前が刻まれた小さな墓石が並び、花や、ロウソクが供えてあるものも。
 収容所閉鎖の折、ナチがすべてを焼き捨てたため、ここには何の資料も残っていませんでした(注)。しかし、ヨーロッパから移送された人びとの遺族が、戦後、自国に残っていた移送リストなどを頼りに訪ねあて、墓石を置いたのです。

「歴史の体験」を
 ソビブルでは博物館建設のための丹念な地質検査の結果、ガス室跡も発見されていました。「2年前の秋でした。絶滅4カ所で初めての貴重な発見です。しかもそれが、われわれがここにあったであろうと予測していた場所に存在していたのです」と、スクフィロスキさんは、力を込めます。
 今、ソビブルの森では収容所の歴史や、ナチの犯罪を告発する生還者の証言などのパネル展示が行われています。
 熱心に見学していた50歳代の女性は、夏休みのついでに立ち寄ったら「まさか、ここで、こんなことが…」と、声を詰まらせました。
 スクフィロスキさんは、毎日、手書きでこの場所を訪れた人の数や国籍を記録しています。年間2万5千人余の来訪者があるそうです。
 「世界中からです。その40%が若者です。日本からも今年になって4人来ています。ここは歴史を身をもって体験できる場所です。不便な所ですが、新しい博物館もできます。ぜひここへ来て、ここで何があったのかを自分の目で見てほしい。そして語り伝えてほしいと思います」

 (注)1943年10月14日、ソビブルでSS(親衛隊)の手下として働かされていた収容者たちの決起が起きます。総勢数百人のうち、生存者は五十数人だったといわれています。しかしこの決起の直後ソビブルは閉鎖されました。ナチは、施設を爆破し、殺りくの跡を消し去りました。
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2016年09月10日,「赤旗」)

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♪音楽人ら「戦争法に終止符を」/東京で集い

 池辺晋一郎さんら著名な音楽家9氏がよびかけて結成された「戦争法に終止符を! 音楽人・団体の会」は7日、東京・新宿文化センターで「戦争法に終止符を! お話しと音楽のつどい」を開き、約80人が参加しました。
 よびかけ人で作曲・編曲家の井上鑑(あきら)さんが、カタルーニャ民謡「鳥の歌」をさまざまな分野の音楽家が演奏する連歌「鳥の歌」プロジェクトの活動を紹介しました。この曲は世界的なチェロ奏者パブロ・カザルスが広め、平和希求のシンボルとされています。井上さんは、若い演奏家とスペインのカタルーニャやチェルノブイリ事故30年のウクライナ・キエフを訪ね、「鳥の歌」を演奏したことを報告。この曲の魅力に触れ、「ファシズムや不平等など社会の問題に目を向けるきっかけとなる力を音楽が持つという証明ではないかと思う」と語りました。
 シンガー・ソングライターの橋本のぶよさんが「時代の風」「人生よありがとう」などを熱唱。「心を合わせることで平和がくると信じています」と語ると、参加者も手拍子と歌で応えました。
 日本原水爆被害者団体協議会事務局次長の児玉三智子さんは、7歳のとき広島で被爆した体験が71年たった今も忘れられない苦しみを語り、被爆者自身が声を上げて今年4月にスタートした核兵器廃絶国際署名への協力を訴えました。
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2016年09月09日,「赤旗」)

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「派兵やめよ」/革新懇が宣伝/岩手

 岩手県革新懇と盛岡革新懇は3日、盛岡市で「戦争法ノー!」リレートークを行い、署名への協力を呼びかけました。
 県革新懇の加藤辰男代表世話人は、政府は11月に南スーダンへ派遣する自衛隊に戦争法が認める「駆け付け警護」をさせようとしているとのべ、「自衛隊の若者を戦場へ送ってはならない」と訴えました。
 宗教者9条フォーラムいわての丸田善明事務局長は、ナチス・ヒトラーが合法的に独裁政権をつくった歴史を紹介し、立憲主義を守らない安倍政権を批判しました。
 署名をした市民からは「自衛隊が戦争に参加するのは恐ろしい」(60代女性)、「いま話を聞き、初めて署名することにした」(20代男性)などの声が寄せられました。
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2016年09月07日,「赤旗」)

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津島佑子の遺作/最後の小説に託されたもの/木村朗子

 今年2月に津島佑子さんが亡くなってから、「遺作」「絶筆」「絶筆長編小説」と帯のついた小説がたてつづけに3冊も出版された。エッセイをまとめた『夢の歌から』を入れると実に4冊もの本が出たことになる。

原発事故描く
 2011年の東日本大震災後、津島さんは福島第1原子力発電所がメルトダウンし、放射能汚染を引き起こしたことにいち早く、また精力的に反応した作家だった。震災後に書かれた長編小説『ヤマネコ・ドーム』をはじめとして、以後に書かれた作品には、必ず2011年の歴史的出来事として原発事故が描かれている。そこには、それをなかったことにするわけにはいかないという、作家の強い意志を読み取ることができる。
 『半減期を祝って』(講談社・1300円)は3作の毛色の異なる短編が並ぶが、表題作は30年後の日本社会を描く。30年後といえばセシウム137の半減期にあたる。しかし未来は決して明るいものではなく、独裁政権下で国防軍の予備組織たる「愛国少年(少女)団」略して「ASD」がつくられている。「ASD」に入れるのは「純粋なヤマト人種」だけだ。
 この不穏な団体はナチスドイツがつくった青年団「ヒトラー・ユーゲント」に似ている。そして同時に移民差別、外国籍差別などの横行する現代社会によく似ている。ヒトラー・ユーゲントは1938年に来日し、北原白秋が作詞した「万歳ヒトラー・ユーゲント」なる曲までつくられ熱烈歓迎されていたのだった。
 その出来事を描いたのが『狩りの時代』(文芸春秋・1600円)である。絵美子は、障がい者の兄・耕一郎について「こうちゃんは『フテキカクシャ』なんだよ。もう、うんざりだ」とささやかれた記憶にこだわっている。あの不穏な感じは何だったのか。自分の身さえ危うく感じたのはなぜだったのか。「フテキカクシャ」ということばはいったいどこから出てきたのか。

迫害テーマに
 次第にあきらかになってくるのは、幼年時代、山梨にやってきたヒトラー・ユーゲントを見に出かけ、金髪碧眼の青年にどうしようもなく惹かれてしまった創おじや、原子力という科学技術に惹かれた永一郎おじの姿だった。
 戦争が残したのは従軍と戦死の物語ばかりではなかった。物語は、あのときの優生思想あるいは原子力推進に私たちはいまだにからめとられたままなのではないかと問いかけてくる。
 『ジャッカ・ドフニ―海の記憶の物語』(集英社・2500円)もまた迫害をテーマとした物語である。17世紀に弾圧を逃れてマカオへ渡ったキリシタンの少年少女を描きながら、アイヌ人、キリシタン、そしてヒバクシャとをつなぐ。
 自らの出自を引け目に思って生きている人々が確かにいる。津島さんの作品は、そこに寄り添いながら見て見ぬフリの社会の欺瞞を暴いているのである。
 (きむら・さえこ 津田塾大学教授・日本文学研究者)
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2016年09月04日,「赤旗」)

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ロマの強制収容所の存在否定発言/チェコ第1副首相が謝罪

 【プラハ=ロイター】チェコのバビシュ第1副首相兼財務相は2日、第2次世界大戦中にロマの強制収容所が存在したことを否定する発言について謝罪しました。発言をめぐって、同氏は辞任すべきだとの批判が出ていました。
 バビシュ氏は1日、地方選の選挙運動で、同国のレティ強制収容所について、働かない人向けの労働キャンプだったと述べたと報じられました。同収容所は1939年、ナチス・ドイツに占領される前のチェコスロバキア政府が労働キャンプとして建設。42年にナチスの占領軍がロマの収容を命じました。
 チェコのホロコースト関連のウェブサイトによると、レティには1309人のロマが収容され、326人が収容中に死亡しています。東欧では、ロマは多くの場合貧しく、差別の対象となってきました。
 ネットニュース「アクツアルネ」によると、バビシュ氏は「ロマがみんな働いていた時代があった。ばかなやつらが新聞に書いていることはうそだ。あれは労働キャンプだった」と語りました。
 バビシュ氏は、現在世論調査でトップを走る「ANO2011」の党首で、チェコ有数の大富豪です。
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2016年09月04日,「赤旗」)

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野党と市民の共闘さらに/総選挙で大激変つくろう/上智大学教授(政治学)中野晃一さん/大義で選挙協力≠ヘ世界標準

 参院選での野党共闘が、過小評価されていると思います。非民主的で現職・世襲に有利な日本の選挙制度のもと、32の1人区では自民党が全部とってもおかしくない。共闘した結果、野党が11もとったのはすごい成功をおさめたといえます。
 衆院小選挙区は、地方だけでなく、無党派層が多い都市部にもあり、野党票のほうが自公票を上回っているところも多い。野党共闘で互角の勝負になることは容易に想像がつきます。与党側から「野合」批判が強まるのは、それだけ脅威を感じて、ヒステリックになっているからです。
 だいたい、選挙協力や連立政権を「野合」と呼ぶのは世界で通用しない論理です。野党が重要政策で一致して、リベラル左派連合をつくってたたかうことは普通です。

U字回復
 例えば、フランスです。右派のシラク大統領に対抗して、社会党のジョスパン氏が共産党や緑の党など左派連合を率いて、国会の多数と連立内閣を勝ち取り、首相に就任しました(1997年)。彼らは自らを、小異を抱えつつ一致点をともにする「複数形の左派」と呼んでいました。
 歴史的にみても、ファシズムの台頭のように民主主義が壊されようとしているときは人民戦線がつくられ、政治理念を超えて大同団結してきました。
 今回の野党共闘は「立憲主義を守る」の一点で、政党間で公式に交渉し合意したもので、世界標準です。
 確かに、参院選の結果をみれば、足踏み感があるかもしれません。しかし、日本のいびつな選挙制度もあいまって、ここまで追い込まれた野党が「すぐにV字回復できる」と考えるのは楽観的過ぎます。弱った状態が底を打ち、上向きになった。現実的にめざすべきは「U字回復」です。「一回で結果がでなかったから」と野党共闘を捨て去るのは愚の骨頂です。

共闘名を
 衆院選に向けて課題も残されています。
 一つは「何のための野党共闘か」という訴えをもっと前面に出していくことです。共闘する野党をどう呼ぶのか、いまだに名前がありません。例えば、「立憲野党」や「立憲勢力」といった呼称で、立憲主義を守るための共闘だ≠ニいうことを訴える。政策的にも、先の国会で法案を共同提出してきた実績があるわけです。共闘を釈明するのではなく、互いの一致点や中身を堂々と語っていくべきです。
 もう一つは、候補者調整の公開性を高めていくことです。野党共闘は、市民社会が後押ししています。勢いを広げるうえでも、共闘を支える市民を巻き込み、市民が納得する形で候補者調整を進めていくことが重要で、今後の工夫のしどころです。
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2016年09月04日,「赤旗」)

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わたしの宝物/ロックチンドン奏者・歌手こぐれみわぞうさん/一人ひとりが、いとおしい

 数少ないロック・チンドン≠演奏するグループ、ジンタらムータで、チンドン太鼓を担当しています。ドイツの劇作家で詩人のベルトルト・ブレヒトが主に劇中歌として作った曲「ブレヒト・ソング」も、その魅力にとりつかれたように原語で歌っています。
 3・11、東日本大震災。その時、私は東京の自宅にいました。ショックと恐怖で、しばらく動けませんでした。ある日、街に出てみると、行き交う大勢の人の姿が目に飛び込んできました。見ず知らずの人であっても、生きていてくれて、ありがとう、と一人ひとりがいとおしくて涙が出ました。私を大きく変えたのが3・11。人生のあらゆるものが宝物になりました。
 震災の翌月、東京・高円寺で「原発やめろデモ」があると聞いて、「自分も声をあげなければ」と思ったんです。こんな衝動は初めてだったのですが、演奏仲間に声をかけまくり、1万数千人の参加者と共に大規模編成のチンドン隊として歩きました。
 再稼働反対!=B怒りのコールを力強く後押しするなら太鼓です。チンドンの鉦はとても明るく、みなさんを笑顔にするので、怒りの表現には向きません。「あなたの人生を楽しんで」と、生きる喜びを表すのにピッタリです。
 宮城県石巻市の仮設住宅を訪ねて、プレハブの間をチンドンで練り歩いた時、大喜びする子どもたちと共に、高齢の夫婦も窓辺から笑顔で手を振ってくれました。でも、2人の後ろに真新しい仏壇が見えたんです。胸がつぶれる思いでした。
 4年前のある日、突然、「ブレヒトを歌いたい。歌わなければ」とひらめきました。ブレヒトは、人間の愚かさを歌っています。「こんな愚かな時代もあったのだ」と過去を紹介するはずが、いまを生きる励みとして、そして警鐘として、いまだリアルに響いているのが、とても複雑です。
 この歌が響いたのは、ナチスが台頭する第2次世界大戦前夜です。当時のドイツと今の日本の空気はおそらく同じで、このまま何もしなければ、戦争へ向かってしまう。ブレヒトの没後60年目の8月14日、東京・下北沢のライブハウスで、20曲近くを歌いました。ブレヒトソングで、今を感じ取ってほしいのです。
 聞き手 青野 圭
 (第1土曜掲載)
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2016年09月03日,「赤旗」)

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「跳弾」事件のあいば野演習場/基地問題解決へともに/大門参院議員が周辺住民と懇談/滋賀・高島

 日本共産党の大門実紀史(みきし)参院議員のエッセー「ファシズムは『安酒の酔い』に似て」が反響を呼んでいます。フェイスブックやツイッターで発信されたエッセーを紹介します。

 大門氏は、昨年7月に起こった「跳弾」事件に関し、同日行った演習場視察について報告。「二度と起きないよう安全にやってくれればいいという問題ではなく、実弾訓練はやめろというのが私たちの立場です。住民運動なしに基地問題の解決は進みません。みなさんが今まで奮闘されてきたことを今後に生かしていかなければ」と述べました。
 あいば野平和運動連絡会の早藤吉男共同代表は「近畿中部防衛局は、『跳弾』事件の被害を受けた民家と隣の家を移転させる作業を進めている。自衛隊にとっても事件は重大だ」と指摘。あいば野での日米合同演習反対の取り組みについても報告しました。
 日本共産党の斉藤幸子衆院滋賀1区候補、節木三千代県議、森脇徹、福井節子、粟津泰蔵各市議が参加しました。
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2016年09月02日,「赤旗」)

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「ファシズムは『安酒の酔い』に似て」/大門参院議員のエッセーに反響

 日本共産党の大門実紀史参院議員は8月31日、陸上自衛隊あいば野演習場のある滋賀県高島市で住民と懇談しました。

 7月27日の投稿「ファシズムは得体の知れない顔つきでやってくる」で、おおさか維新(の会=当時、現・日本維新の会)などの「既成政党(勢力)批判」がなぜ「ウケる」のかを、中間層の没落(貧困化)との関係でのべさせていただきました。「しんぶん赤旗」の近畿のページ(8月6日付)にも転載され、たくさんの反響がありました。
 ある方からご質問がありました。「人々のいらだちが『既成勢力』批判に向かうのはわかったが、それがどういう経路でファシズムにつながっていくのだろうか?」と。
 維新、あるいはアメリカのトランプ氏の言動をみて、こうおもいます。
 「既成勢力」批判で台頭し、公務員攻撃や議員の定数・報酬削減、組織いじりなどで「ウケ」をねらってきた政治屋たち。
 人々の「うっぷん晴らし」には応えても、本質は保守だから、人々が追い込まれている状況の解決策や本当の対決軸は示せない。
 そこでたどり着くのが「過激主義」。「既成の保守は生ぬるい、スピードが遅い、だからダメなんだ」と、保守の政策が悪いのではなく進み方や手法が悪いことにして、保守のなかの急進派を標榜(ひょうぼう)し「過激主義」をとなえることで「ウケ」をねらう。その「過激主義」は政治的には右翼タカ派、排外主義として、経済的には新自由主義への特化としてあらわれる。
 またそういう政治屋たちを利用しようと安倍晋三のような過激「既成勢力」も動き出す。
 「過激主義」に自分たちの解決策があると勘違いした人々が多数となり熱狂となったとき、まさに「ファシズムは得体の知れない顔つきでやってくる」のでしょう。
 それにしても、「うっぷん晴らし」から「過激主義」へのミスリード―それはまさに作家の村上春樹さんがかつて朝日新聞のコラム(2012年9月28日付)で排外主義を批判していわれたように、「安酒の酔い」に似ている。
 とりあえず自分を酒でごまかすが翌朝も気分が悪い。ファシズムは人々にとって何の解決にもならない毎晩の「安酒の酔い」にほかならず、やがて自分自身も死に至らしめる。
 しかしいまは第一次大戦後の世界とはちがいます。アメリカではトランプ氏だけでなく、格差と貧困の拡大にたいし民主党左派の対決軸を示したサンダース氏の存在があり、日本では安倍暴走内閣と補完勢力の維新に対決し戦後はじめて全国的な国政選挙で野党統一候補の議席を勝ち取り、日本共産党も前進した。「安酒の酔い」を拒否し、未来を真剣に考える人々がいる。ここに希望があります。
 せめぎ合いはつづきますが、政治屋のゴマカシに対し、あれこれではなく、正面から本当の対決軸、大道を示していくことこそ重要だと、あらためておもいます。
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2016年09月02日,「赤旗」)

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戦争法の危険性学ぶ/前橋平和委が交流会

 群馬県の前橋平和委員会は8月28日、前橋市で夏の学習交流会を開き、戦争法や自民党改憲草案をめぐる危険な動きや内容を学び合いました。
 第1部では、安保破棄中央実行委員会製作DVD「オスプレイの全国配備撤回!」を鑑賞しました。
 第2部では、太田平和委員会会長の斎藤匠弁護士が日本平和委員会発行の戦争法学習パンフを使って講演。戦争法施行によって陸上自衛隊が秋から南スーダンでの国連PKOで「駆け付け警護」の任務につくための訓練が始まったことや、改憲で「緊急事態条項」を設けるのはナチスドイツが利用した手法であり、日本国憲法では「民主政治を徹底し、国民の権利を守る」ためにあえて設けられなかった条項であることなどを説明しました。
 斎藤氏は、自民党改憲草案について、自爆連(自民党の憲法改正草案を爆発的にひろめる有志連合)発行の冊子『あたらしい憲法草案のはなし』を紹介し、草案の危険な内容をわかりやすく解説しました。
 最後に斎藤氏は、群馬県の安保法制違憲集団訴訟への参加を呼びかけました。
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2016年09月01日,「赤旗」)

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8月ヘッドライン】

 

 

*         文化の話題/金曜名作館/ドイツの版画家・彫刻家ケーテ・コルビッツ/イリス・ベルント美術館館長に聞く

*         シリーズ自民党改憲案の論点/識者に聞く/立命館大学教授植松健一さん/緊急事態条項/ドイツの経験と教訓

*         相模原殺傷事件を考える/優生思想と克服の方向/日野秀逸

*         シリーズ自民党改憲案の論点/識者に聞く/山口大学名誉教授纐纈厚さん/軍による専制の恐れ

*         平和への道を歩もう/戦争法廃止訴え宣伝/水戸

*         にちようシネマ館/栄光のランナー 1936ベルリン/アメリカ・ドイツ・カナダ

*         緊急事態条項の何が問題か/関西学院大学災害復興制度研究所編/評者田中淳哉弁護士

*         相模原事件/ひるまず共生へ活動/富山障連協が声明

*         番組をみて/ETV特集加藤周一 その青春と戦争/NHKEテレ13日放送

*         映画/「栄光のランナー 1936ベルリン」(米・独・カナダ)/伝説の陸上選手リアルに

*         朝の風/故郷と国家の混同

*         戦後71年敗戦の日8・15/アジア・太平洋戦争の教訓と日本国憲法/識者に聞く

*         読書のページ/科学者と戦争/池内了著/進む日本の軍学共同に警

*         安倍再改造内閣、憲法破壊の布陣/稲田新防衛相はウルトラ右派/閣僚に「日本会議」ぞろり

*         こちら経済部/誰でも障害者になる

*         原水爆禁止世界大会海外代表に聞く/英核軍縮運動(CND)キャロル・ターナーさん/トライデント更新反対続ける

*         上院改革問い国民投票実施/イタリア11月にも

*         相模原事件を考える/重度障がい者との日常と優生思想の克服/竹内章郎

*         大門参院議員のエッセー/「ファシズムは得体の知れない顔つきでやってくる」

*         緊急事態条項学ぶ「つどい」/15日・神戸市で

*         相模原事件「許せない」/日本障害者協議会

*         稲田氏は「タカ派」「強硬派」/改憲・海外派兵への布石/海外メディア報道

*         ホロコースト学ぶ/今と未来のために/犠牲者ハンナのかばんを携えて訪問授業1000回に

*         ナチス親衛隊長官の日誌発見/独紙、ロシアの資料館で

*         憲法9条守り広げる/改憲の危険性を考える/人権召し上げるものと批判/九条の会福岡県連絡会

*         自民改憲案/立憲主義崩壊する/緊急勉強会100人参加/由良氏が講演/和歌山

*         緊急事態条項いらんやろ!/大阪弁護士会のパンフが好評

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8月本文】

文化の話題/金曜名作館/ドイツの版画家・彫刻家ケーテ・コルビッツ/イリス・ベルント美術館館長に聞く

戦争の残酷さ告発続ける
 ドイツを代表する版画家・彫刻家ケーテ・コルビッツ。二つの世界大戦の中を生き、貧しい労働者の生活・闘い、戦争に子どもを奪われた母の苦しみを描き、ナチスの迫害にあらがいました。ベルリンにあるケーテ・コルビッツ美術館開館30年の今年、イリス・ベルント館長にジャーナリストの大内田わこさんが聞きました。

 ――30周年を迎えられたのですね。
 小さな美術館ですが、世界中からケーテを愛する人が来てくれます。人間はみな平等だという考えのもとに、貧困や差別、それを生み出す戦争に反対し、その思いを絵や彫刻にしたケーテに、みなさん深い共感を抱いてくれます。
 ――第2次世界大戦に日本の政党の中で、ただ一つだけ反対した日本共産党の党員に、作家・宮本百合子がいます。執筆禁止を受け投獄されても信念を曲げず書き続けました。評論「ケーテ・コルヴィッツの画業」で、ケーテの生涯と労作はドイツの誇りであるだけでなく、優れた女性画家という枠を超えた歴史的な存在と書いています。
 ケーテは1920年代にはロシアや中国で紹介され、30年代にはドイツからの亡命者が米国で展覧会を開いたりして世界に知られていました。

人間の生と死、息子の戦死で
 ――百合子がその評論を発表したのが41年、日本が太平洋戦争に突入した年です。海の向こうにナチに反対してたたかう女性がいることに深い連帯の気持ちを抱いたのだと思います。
 ケーテは第1次大戦で、かけがえのない息子を戦死させました。当時18歳だった息子が戦地に行くには両親の承諾が必要。夫は反対しましたが、ケーテは国のためにたたかいたいという息子の情熱に負けて承諾したのです。ところが出征後3週間で戦死。彼女は罪の意識にさいなまれながらも、愛するものを亡くし悲嘆にくれる母親やその家族を描き、人間の生と死、戦争の残酷さを告発し続けることになりました。
 ――それで、ナチスに迫害されることに。
 直接のきっかけは33年、ナチスが政権をとった時に、反対するアピールにアインシュタインらと署名したことです。アカデミーを追放になり、公の活動を禁じられました。牢獄に入れられているのと同じ生活だったと言っています。
 亡命も考えたようですが、当時70歳と高齢だったことや、医師だった夫の診療所に毎日列をなす労働者や社会の最下層の人々を見捨てられないと覚悟を決めます。37年にナチに強制収容所行きを告げられ、それ以後は2人して青酸カリを持っての生活だったと日記に書いています。
 ――その中でピエタ像など素晴らしい作品が生まれたのですね。あの時代、彫刻の材料の入手は困難だったでしょう。
 すべてが軍事優先でしたから、それは大変だったと思います。しかも型を作って流し込む重労働。でも彫刻は前からも後ろからも見られる、触ることもできる、表現したいことをじかに丸ごと知ってもらえて共感が深まると、とても気にいっていたようです。

労働者の町に生まれ育って
 ――労働者の闘いや貧しい人に心を寄せた作品を描き続けた原点は?
 彼女が生まれたのは労働者や貧しい人が多く住む町でした。子どもの頃から、着飾った人よりも働く人のごつごつとした手や、生き生きと会話する姿にひかれたようです。1891年に結婚してベルリンに住みますが、そこでも、夫の診療所を訪れる、保険もなく住む所もない人々と出会います。なぜこんな差別があるのか考え続けるなかで、自分にできるのは、この人たちを描くこと、それが画家としての使命だと考えるようになるのです。
 ――「織匠」はその時代の作品ですね。何度見ても感動します。
 19世紀半ば実際にシレジア地方で起こった、過酷な労働を強いられていた機織り労働者の決起を描いた連作です。この頃、黒と白の版画でたくさんの優れた作品を残しています。
 ――この美術館はベルリンの繁華街からほんの一歩なのに驚くほど静かです。
 この家は19世紀の建物です。1980年代に大型道路の計画が持ち上がり住民が大反対。その時に、画商のハンス・ベルス・ロイズデン氏が、この街を残そう、ここにケーテの美術館を作ろうと提案し、集めていた100点余りの絵を全部寄付しました。住民の願いをベルリン市が聞き入れてできた美術館です。
 いま、学校と連携し、ケーテの作品を子どもたちと見たり、彫刻を作ったり、ケーテが使っていたリトグラフの印刷機で印刷もしています。まず知ること、そして体験する中で、平和の大切さ、貧困や差別をなくすために自分は何をしたらいいのかなど、ケーテから学んでいるようです。

 ケーテ・コルビッツ(1867〜1945) 東プロイセン、ケーニヒスベルク生まれ。版画連作「織匠」(1897)で脚光を浴び、ドイツ農民戦争を描いた版画連作「農民戦争」(1908)が高く評価される。第1次大戦後、息子の戦死を題材とした木版画連作「戦争」や彫刻「両親」を制作。女性として初めてプロイセン芸術院会員になる一方、社会主義や平和運動に関わり労働者芸術会議に参加。ナチス時代、展覧会や作品制作を禁じられるがひそかに制作を続け、版画「種を粉に挽いてはならない」(1941)などを残す
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2016年08月26日,「赤旗」)

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シリーズ自民党改憲案の論点/識者に聞く/立命館大学教授植松健一さん/緊急事態条項/ドイツの経験と教訓

 緊急権をめぐる戦前のドイツの経験と教訓について立命館大学の植松健一教授(憲法学)に聞きました。
 (聞き手・中祖寅一)

 戦前のドイツのワイマール憲法は、その48条に「非常措置権」の規定を持っていました。
 ヒトラー率いるナチス党が1933年に制定した全権委任法によってワイマール憲法は崩壊に至ったことが強調されますが、ナチスが権力を握る以前の政治過程において、「非常措置権」が乱用的に発動されたことが、憲法体制の崩壊をもたらした側面を見逃すことはできません。
 1919年に成立したワイマール共和国は、ラントといわれる州政府の連合体で、各州と中央政府が対立する局面も多く、州が中央政府に抵抗したときに強権発動する余地を残すという目的から「非常措置権」が設けられました。

恣意的に乱用
 48条には、ラント(州)が法律上の義務を履行しないとき等に、「武装兵力を用いて義務を履行させる」と規定されました(1項)。そして公共の安全及び秩序に著しい障害が生じるときライヒ(帝国)の大統領は秩序の回復に必要な措置のために、「武装兵力を用いて介入できる」ことや、「通信・電話、意見表明、集会、結社の自由」などの基本権の「全部または一部を停止」できるとされていました(2項)。
 第1次大戦敗戦国のドイツでは、賠償金問題で経済的困窮が続き、政治的にも不安定な状況が続く中で、政府は法の枠組みを無視し、この48条を使って経済的な緊急命令を次々と出しました。さらに、左右の批判勢力の内乱的な動きに対し非常措置を乱発し、ナチスなど右派には甘く共産党に対しては過酷な適用がなされました。
 ナチスが政権をとる直前の1932年には、当時政権にあったパーペンという保守的な伯爵が、政府の閣僚をすべて罷免して自分の息のかかった政権をつくりだすクーデターまでやりました。1933年1月のヒトラー内閣成立後、共産党による国会放火事件をでっちあげ、その直後に基本的人権停止の大統領令(ヒンデンブルク大統領)が出されましたが、これも「非常措置権」に基づくものでした。
 このように「非常措置権」は、政治的な対抗者を恣意的に弾圧するために乱用され、また経済危機への対策に頻発された結果、国民的にも憲法秩序を軽視する風潮を拡大しました。その中でヒトラーが政権を掌握し、全権委任法という形で議会から憲法に縛られない権限の委任を受けるという事態に至ったのです。

危険な自民案
 こうした経験から、戦後のドイツ憲法は、非常事態システムを残しつつも、内乱や治安維持のための「非常措置権」の発動を認めないことにしています。また、防衛上の緊急事態の場合にも、緊急事態の確定に議会の関与を認めるなど、行政権が恣意的に権限を拡大することへの制限や配慮を設けています。
 これに対し、自民党の改憲案における「緊急事態条項」は、緊急事態の種類が無制限に拡大する恐れがあるうえ、事態の認定も政府の広い裁量に任されています。非常事態における内閣と首相の権限も無制限で、日本の戦前の国際的経験や教訓を踏まえないどころか、日本の戦前の政治で緊急権が猛威をふるったことへの反省も皆無です。

 うえまつ・けんいち 1971年生まれ。島根大学法文学部助教授を経て現職(憲法学)。著書に『憲法「改正」の論点』(共著、法律文化社)など。
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2016年08月26日,「赤旗」)

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相模原殺傷事件を考える/優生思想と克服の方向/日野秀逸

 神奈川県相模原市で障がい者施設入所者を殺傷した容疑者が、「障害者を殺すこと」が「全人類の為に必要不可欠」と主張しています。ここで改めて、優生思想を考えてみます。

人間の「価値」を恣意的に判断
 ある人びとが(A)、ある人びとを(B)、遺伝とからませて、「無価値」や「低価値」や「劣等価値」や「厄介者」であるとみなし、生殖過程への介入などの方法によって(C)、抑制や排除や抹殺をはかることが、社会(国家)や家族にとって必要であり、有益である、という考え方が、優生思想です。逆に特定の人種や人びとを「優秀者」として人為的に増やそうとするのも優生思想です。したがって、優生思想は差別思想です。
 Aには支配階級・階層をはじめ、さまざまな人が含まれます。19世紀後半にイギリスで自然科学と結びついた優生学が形成され、アメリカをはじめ多くの国で断種法ができました。優れた子孫を残して社会を改良しようと考えた「善意」の人びとには、社会主義者のウェッブ夫妻や経済学者ミュルダール(スウェーデン)も含まれます。
 Bの範囲は為政者の都合で勝手に決められました。特定の人種や精神疾患患者や障がい者やハンセン病患者や貧困者までもBに含まれました。遺伝との関係が明らかではないものまで含まれます。逆に、特定の人種が優れているから増やすとか、兵隊や労働力として役に立つから「産ませ殖やす」ことも各国で行われました。
 Cには、ナチスが実行したようなガス室などで工業的・計画的・大規模に殺害することや、当該の人たちの子孫を残させないための不妊手術や、結婚の禁止や、出生前診断を理由にした選択的中絶も含まれます。優生思想は、生存の権利・基本的人権を侵害します。

支援する気風と諸制度の拡充を
 優生思想を極度に大規模・暴力的に進めたのがヒトラーですが、日本で「優生保護法」が1996年(母体保護法へ)まで存在した事実を見ると、優生思想を簡単に過去のものと片付けることはできません。Bのうち、人種的対象(差別)については、ナチスの蛮行への反省・嫌悪から、50年には「人種に関するユネスコ声明」が人種差別を否定する見解を示し、生命科学の発展によって、すべての人種の差は同じ人種内の変異と本質的に等しいことが分かり、科学的・国際的には克服されました。
 障がいを持ち、不利な状態にある人びとを「無価値」などとみなす考え方は、60年代から70年代の女性運動、障がい者運動など、当事者による社会運動によって、一つ一つ克服されつつあります。さまざまな理由で社会的に不利な立場に置かれる人びとを、排除するのではなく受け入れて、支援する気風と諸制度を拡充することが、優生思想を克服する重要な課題と思われます。

 ひの・しゅういつ 1945年宮城県生まれ。医師、東北大学名誉教授。著書に『憲法がめざす幸せの条件』『憲法を生かす社会保障へ』など
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2016年08月23日,「赤旗」)

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シリーズ自民党改憲案の論点/識者に聞く/山口大学名誉教授纐纈厚さん/軍による専制の恐れ

 自民党改憲案では、現行の9条2項の戦力不保持規定を削除して「国防軍」を創設するとした上で、「国防軍に審判所を置く」(9条5項)と明記しています。その問題点について山口大学名誉教授の纐纈(こうけつ)厚さんに聞きました。
 (聞き手・中川亮)

 自民党は、改憲草案に盛り込んだ「審判所」について「いわゆる軍法会議のこと」と説明し、「国防軍に属する軍人その他の公務員」による職務上の犯罪や、軍機の漏えいを処罰するとしています。

別次元≠フ制度
 軍法や軍事裁判所がつくられる理由は、通常の道徳規範に反して人の殺傷や器物の破壊という行動が求められる軍隊には、一般社会とは別次元≠フ司法制度が必要とされるからです。
 軍の体質は専制主義であり、軍人の特権化が不可欠だと考え、一般社会で保障されるべき透明性や民主性といったものはなじみません。たとえば自民党改憲案は、慎重・公正な裁判のための審級制・上訴について、認められるかどうかは「立法政策による」とあいまいにし、上訴を認めない可能性があります。
 自民党は軍法会議の裁判について「迅速な実施が望まれる」と述べており、慎重な裁判を行うことが事案解決を長期化させ、戦争遂行や戦争指導の阻害になるとの考えです。上訴が認められなければ、現行憲法も自民党改憲案も明記している「特別裁判所」の設置禁止(憲法76条2項)に違反する可能性があります。

一般人も対象に
 軍法会議で裁かれるのは軍人だけではありません。戦前、陸海軍に置かれた軍法会議は、軍人に限らず一般人の「犯罪」も対象にしました。軍が行政権や司法権を握る戒厳令が敷かれると、軍法会議の裁判権を拡大し、「戦時事変に際し軍の安寧を保持する」ためなどとして、一般人も裁くとしました。
 また、軍機漏えいを厳しく取り締まった戦前の政府・軍当局は、秘密を漏えいしなくても偶然に「探知」「収集」しただけで処罰対象とし、次々に一般人を不当に逮捕・拘束しました。
 自民党改憲案が新憲法となれば、同様に一般人への処罰規定が整備されることは否定できません。憲法に「軍機保護」が掲げられ、報道関係者や研究者、一般人も含め、外交防衛に関する発言をする人の言論・活動が脅かされます。
 自民党改憲案は軍法会議について、「裁判官や検察、弁護側も、主に軍人の中から選ばれることが想定されます」(自民党草案Q&A)としています。軍人が事実上、裁判審理を完全に掌握すると考えられます。そうなれば軍人による専制状態が出現し、民主主義にとってこれ以上危険なことはありません。
 すでに特定秘密保護法が施行されています。軍法会議は、これと連動して国家権力や軍に反抗する人々を事前にチェックし、恒常的に逮捕権や裁判権を振りかざし、戦争政策の遂行を円滑にしようとするものです。平時から、どう喝と抑圧をもたらし、まさにファシズム国家の到来です。

こうけつ あつし 1951年生まれ。83年一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了、現在は山口大学名誉教授。専攻は日本・アジア近現代政治・軍事史、現代政治論。『侵略戦争と総力戦』『集団的自衛権容認の深層』ほか。
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2016年08月23日,「赤旗」)

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平和への道を歩もう/戦争法廃止訴え宣伝/水戸

 「戦争法の廃止を求める茨城県民連絡会」は19日夕、水戸市のJR水戸駅北口で戦争法(安保関連法)の廃止や憲法改悪阻止をアピールする宣伝行動を繰り広げました。
 行動には、平和・民主団体、日本共産党などから10人余が参加。マイクを握った同連絡会の田中重博代表は「安倍政権は11カ月前に戦争法を強行した」と指摘し「明文改憲を許さず、ファシズムと戦争への道を阻止しましょう」と力説しました。
 県原水協の加藤岑生会長は、オバマ米大統領の核兵器先制不使用宣言に反対する安倍首相を批判し、核兵器廃絶を呼びかけました。
 丸山幸司弁護士は「日本は平和な道を歩むのか、それとも憲法9条を投げ捨てる国になるのかが問われている。戦争法廃止と改憲反対の声を上げ続けましょう」と訴えました。
 日本共産党の大内久美子県副委員長もマイクを握りました。先の参院選の結果にふれ「日本を戦争する国にしてはならない。危険な安倍政権を退陣に追い込むために力を合わせてたたかいましょう」と呼びかけました。
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2016年08月21日,「赤旗」)

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にちようシネマ館/栄光のランナー 1936ベルリン/アメリカ・ドイツ・カナダ

 ベルリン・オリンピックで四つの金メダルを獲得したアメリカの黒人選手の活躍を通し、スポーツマン精神の気高さ、おぞましい人種主義の根深さをスティーヴン・ホプキンス監督が描きました。
 陸上選手ジェシー・オーエンス(ステファン・ジェイムス)はその驚異的能力を名コーチに見いだされ、公私にわたる指導を受けてベルリン大会に出場。大会を国威発揚の場に利用しようとするヒトラーらは、貴賓席からオーエンスを苦々しく見つめます。彼は走り幅跳びのライバル、ドイツ選手のロングから競技上のアドバイスを受け、国境と人種を超えた友情を育みます。宿舎にロングの訪問を受けたオーエンスは思いがけない秘密を明かされます。
 立ちはだかるナチスの卑劣な手は米国400bリレー選手選考にも及び、巻き込まれたオーエンスは苦悩の決断を迫られます。
 (神)
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2016年08月21日,「赤旗」)

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緊急事態条項の何が問題か/関西学院大学災害復興制度研究所編/評者田中淳哉弁護士

憲法機能を停止させる危険指摘
 本書は、憲法学者や弁護士らによる共著である。五つの論文はいずれも書き下ろしであるが、関西学院大学災害復興制度研究所主催の連続勉強会における報告と議論がベースになっている。
 緊急事態条項すなわち国家緊急権は、憲法改正の最初のターゲットとして掲げられているテーマである。その本質は、国家の存立を守るために、憲法の機能(人権保障と権力分立)を停止させる点にある。「憲法の自爆措置」と評される極めて危険な条項であり、ナチスが独裁を樹立する際にもこの条項が悪用された。しかし、憲法9条の改正などに比して、その危険性が十分に認識されているとは言い難い。
 本書では、憲法に緊急事態条項を創設することが必要かという点について、自然災害やテロとの関連で詳細に検討されている。なかでも、災害対策の基本は事前の備えにあり、事後的に憲法の機能を停止しても対応できないこと、既に災害対策関連法規が整備されており、それが適切に運用されるよう準備や訓練を行うことこそが必要であるとの指摘は、極めて説得的である。
 また、緊急事態条項の危険性に関連して、「緊急政令によって『戒厳令』を制定することも可能となる」と指摘されている点は、とりわけ重大である。戒厳とは、行政権、立法権、司法権の大部分を軍隊に移すことを意味する。これが実施されれば、日本の立憲主義や民主主義は完全に瓦解することとなるだろう。
 衆参両院で「改憲勢力」が3分の2以上を占める現在の情勢のもとでは、必読の書といえる。

 著者=棟居快行専修大法科大学院教授、愛敬浩二名古屋大教授ほか 
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2016年08月21日,「赤旗」)

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相模原事件/ひるまず共生へ活動/富山障連協が声明

 富山県障害者(児)団体連絡協議会(略称・富山障連協)は15日、相模原市障害者殺傷事件(7月26日未明)に対する平井隆会長の談話を発表しました。
 談話は、なぜこのような事件が発生したのか徹底した真相解明が求められると指摘。特に、容疑者がナチスドイツ・ヒトラーの優生思想をもっての犯行だといわれるなかで、解明に当たっては社会や経済のひずみ、しわ寄せが社会的弱者に集中的に及んでいることと無縁かどうか、容疑者の措置入院後の対策や警備強化に矮小化(わいしょうか)することなく、開かれた施設と警備の関係、施設の職員待遇や希薄な夜間の支援体制など総合的な検討が必要だと強調しています。
 憲法13条、25条、9条を活動の柱に取り組んできた富山障連協として、「どんなに重い障害があっても、一人の人間として自立した生活をしたい」という当たり前の願いを実現する社会をつくるため、事件にひるむことなくインクルーシブ(共生)社会に向けた活動をいっそう強める決意を表明しています。
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2016年08月20日,「赤旗」)

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番組をみて/ETV特集加藤周一 その青春と戦争/NHKEテレ13日放送

戦時下に懐胎していた反戦と憲法9条の論理
 戦後日本を鋭く見つめてきた知の巨人♂チ藤周一。彼の「青春ノート」が没後8年の今、公開されました。一高から東大医学部へ、17歳から22歳の加藤が戦時下に綴った8冊のノートを立命館大学の学生たちが読み、大江健三郎らの証言で加藤の原点を探ります。
 初期に、漠然とした孤独をうたった詩があります。その孤独感は、中国戦線の勝利に湧きたち、国民精神総動員法体制に飲み込まれてゆく時代への違和感として具体化してゆきます。
 ヨーロッパではファシズムが台頭し、1939年に第2次世界大戦が勃発。40年のパリ陥落を見た加藤は「戦争は理性を壊滅せしむる」と喝破します。そして第1次世界大戦を描いた『チボー家の人々』の記述に「歴史は繰り返す」の感を深くします。
 太平洋戦争突入。時局に迎合してゆくジャーナリズム、学者、文学者への不信が深まります。ノートは42年で終わりますが、憲法9条の論理が若き加藤に懐胎していたことに驚かされます。45年、親友の中西哲吉がフィリピンで戦死。加藤が死の直前に記したメモには中西への思いが、憲法9条への思いの中にあることが記されています。
 加藤の評論は膨大な知識を繰り出して論理を導き、ことの本質を示します。その結果が反戦であり、憲法9条でした。番組は、若き加藤が感じた危惧から今の時代の危うさをも示唆します。加藤の理性と論理が今こそ必要であることを刺激的に描きました。
 (荻野谷正博 ライター)
 
19日(深夜0・0)にNHKEテレで再放送します。
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2016年08月18日,「赤旗」)

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映画/「栄光のランナー 1936ベルリン」(米・独・カナダ)/伝説の陸上選手リアルに

 80年前、ナチスドイツがドイツ人の優越性を示して、その威信を世界に広めようとしたベルリン・オリンピックで、四つの金メダルを獲得したアメリカの黒人陸上選手ジェシー・オーエンスの物語です。
 1933年、クリーブランドの貧しい街からオハイオ州立大学へ進学したジェシー(ステファン・ジェイムス)。コーチのラリー(ジェイソン・サダイキス)は、彼の才能に驚き、ベルリンに向けた練習を始めます。ジェシーが家族へ仕送りをするために、練習に専念できるアルバイトを紹介するなど、ラリーは公私ともにジェシーを援助し、絆を深めていきます。
 一方、アメリカではユダヤ人組織を中心にオリンピック参加反対の運動がおこり、ジェシーにも黒人組織から不参加の要請が来て、彼は苦悩します。
 アスリートとしてオリンピックに参加することの意味が、オリンピックを政治的に利用しようとする人たちとの衝突の中から鮮明になってきます。
 女性映画監督レニ・リーフェンシュタールとゲッベルス宣伝相との対立なども描かれますが、彼女はナチス党大会の記録映画を撮ったことも事実です。
 スティーブン・ホプキンス監督は、ナチスの人種差別とともにアメリカでの差別を描くなど、伝説のアスリートの苦悩をリアルに描いています。
 ベルリン競技場のシーンは、ジェシーの緊張が伝わってくるほど壮観です。
 (伴毅・映画評論家)
 東京・TOHOシネマズシャンテほかで公開中、順次全国で
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2016年08月17日,「赤旗」)

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朝の風/故郷と国家の混同

 『詩人会議』9月号の高良留美子「『辻詩集』への道――以倉紘平における故郷と国家」は鋭い。故郷と国家は大和言葉でともに「くに」と発音される。戦中、その二つの異なる概念は「お国のため」と意図的に混同され、戦争プロパガンダに利用された。言葉の専門家である詩人は、その二つを明確に区別しなければならない。ところが以倉紘平氏は詩「遠い国」で、戦死した日本兵を《故郷を思い祖国のために戦った》と混同して悼んでいると高良氏は批判する。
 しかも以倉氏は〈ぼくが死ぬとしたら/バルコンはあけといてくれ〉というロルカの詩句で始めている。スペイン人民戦線時代、ファシストに殺されたロルカを、戦争参加のムードづくりに利用するのはお門違いだ。
 戦地から帰り〈フランスの悩みは/かれら民衆の悩みだったが/ぼくら兵士の苦しみは/ぼくら祖国の苦しみだったろうか〉と自問した鮎川信夫も、自由主義国家を理想化した結果、アメリカのベトナム戦争を擁護した。戦争推進国家を肯定すれば、詩人は必ず錯誤に陥ると高良氏はいいたいのだろう。
 国家の犠牲者でもあるアジア侵略の戦死者を祖国のために戦ったと賛美すれば、戦中の戦争詞華集『辻詩集』にゆきつく。
 (槐)
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2016年08月16日,「赤旗」)

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戦後71年敗戦の日8・15/アジア・太平洋戦争の教訓と日本国憲法/識者に聞く

 「戦争する国」づくりへ暴走する安倍晋三政権が、昨年の戦争法の強行につづいて「任期中の改憲」に執念を燃やすなか、戦後71年の敗戦の日を迎えます。日本の侵略戦争はどのように推進されたのか、それと憲法はどんな関係にあるのか、日本国憲法にきざまれた戦争への反省とは何を3人の識者から聞きました。
 (若林明)

侵略への明確な歴史認識こそ/一橋大学教授吉田裕さん

 アジア・太平洋戦争にいたる日本の歴史から学ぶべき点の一つは、排外主義やナショナリズムとそれをあおるマスメディアの問題です。
 「満州事変」が起こると排外主義的な軍国熱が高揚し、軍部はそれを利用して政党内閣制を崩壊に追いこみます。日中戦争の時も、排外主義的なナショナリズムをテコにして、戦時体制への移行がはかられました。どちらの場合も、メディアが大きな役割を果たしています。ナショナリズムや排外主義を利用し、軍部独走や人権抑圧が正当化されていったことは歴史の大きな教訓でしょう。

危険な安倍政権
 その点で、安倍政権は極めて危険な内閣です。昨年の「戦後70年の首相談話」は、内外の世論に押されて一面では村山談話を継承せざるをえなかった。しかし、植民地主義に対する反省がほとんどみられないのが談話の最大の特徴です。反省の対象は満州事変以降の歴史だけです。日清戦争や朝鮮の植民地支配の問題はまったく入っていません。
 日清戦争以降に培われた中国や朝鮮に対する蔑視意識が、侵略と植民地支配を可能にしたことをあらためて考えるべきだと思います。
 日本共産党の山下芳生議員が、参議院の予算委員会で植民地支配の歴史に対する反省を繰り返し追及しました(2015年8月24日)。安倍首相は、結局自分の言葉としては植民地支配の歴史に対する反省を全く示しませんでした。歴史認識の問題で大きく後退しています。

立憲主義の問題も
 立憲主義の問題も日本の戦争の歴史から学ぶ点があります。アジア・太平洋戦争の開戦は、4回の御前会議を経て決定されています。明治憲法自体は非常に強力な大権を天皇に集中させているという意味で絶対主義的な要素が色濃い憲法です。しかし、閣議が天皇の大権行使を補佐するという形で一応の歯止めを設けていた。それにもかかわらず、アジア・太平洋戦争の場合は御前会議で開戦を決定したあとで十分な情報のないまま閣議がそれを追認しています。曲がりなりにもあった立憲主義的な要素を踏みにじって戦争を始めたのです。
 安倍内閣が立憲主義をないがしろにしていることを考えるならば、この点も改めて考える必要があります。
 日本国憲法の原点は過去の戦争への反省です。したがって、侵略戦争の歴史に対する明確な歴史認識があってはじめて、日本人の平和意識には、しっかりした芯≠ェ通るのだと思っています。

時代逆行の「自民党改憲草案」/獨協大学教授右崎正博さん

 日本国憲法の前文は「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する」と言っています。アジア・太平洋戦争の悲惨な経験がベースになって、日本国憲法が制定されたことは疑いようのないことです。明治憲法の国家統治のあり方に対する痛切な反省も日本国憲法の出発点にあります。

充実した人権規定
 明治憲法は外見的立憲主義憲法といわれます。三権が一見分立しているように見えながら、実は天皇がすべての権力を保持して、行使できる仕組みです。また、国民の基本的人権という考え方がなく、天皇が「赤子たる臣民」に対して恩恵として与えた権利です。明確に主権者は天皇という位置づけのもとに作られた憲法です。そういう体制の下で、天皇を担ぎ上げた勢力が戦争という暴挙にでました。その結果、広島と長崎への原爆投下、沖縄での地上戦を含め悲惨な体験をしなければならなかったのです。
 日本国民は悲惨な戦争の惨禍を経て初めて近代において確立した人間性に対する尊厳を得ることができました。基本的人権という考え方が憲法に取り入れられ、国民主権が明確に規定されました。権力が一つのところに集中していると、必ずや国民にとって害になるから、三権を分立させて、相互に抑制、チェックを働かせる仕組みを作る。これも日本国憲法で確認しています。
 「平和のうちに生存する権利」を具体化する仕組みは、憲法第9条の平和主義、戦争の放棄と戦力の不保持、交戦権の否認に関する規定です。戦争を二度としないという誓いです。
 日本国憲法の人権規定は充実した内容になっています。条文として第10条から40条までの中に30カ条に及びます。その中で特に詳しいのが、奴隷的拘束からの自由や不法な逮捕・抑留・拘禁からの自由などの人身の自由や刑事手続きにおける人権の保障に関する条項です。これは戦前の人権蹂躙(じゅうりん)の歴史と切り離せません。ここまで詳しい規定を持っている憲法はほかにはないと思います。

近代的価値を葬る
 日本の侵略戦争の歴史を考えるとき、安倍首相が改憲の「ベース」にするという「自民党改憲草案」を問題にせざるをえません。近代立憲主義的な価値をほとんど丸ごと葬り去ろうとしています。憲法によって国民を縛る、国民は国を守らないといけない、家族はお互いに助け合いなさいというような考えで、さらに国民に憲法尊重擁護義務を負わせています。これは立憲主義という考え方とはまったく異質なものです。国民主権との関係でいえば、天皇を再び国家元首にするという考え方を明示しています。
 「改憲草案」は戦争の惨禍を経て、日本国民がやっと獲得できた戦争放棄の条項を大きく改悪し、『戦争放棄』を『安全保障』というタイトルの章に変えたうえで、国防軍を設立する。まったくの時代逆行の改憲案です。

憲法の初心&雛ヘ行使しない/名古屋大学名誉教授松井芳郎さん

 第2次世界大戦の結果と日本国憲法を考える時、憲法前文と9条の平和主義が最大のポイントになることは当然です。同時に考えるべきは、9条だけではなく、憲法全体が軍事力を持つこと、戦争をすることを前提にしていない構造になっていることです。例えば、戦争の開始と終結を行う宣戦や講和の権限がどこにあるかの規定がない。76条で特別裁判所が禁止されていて軍法会議が置けないということもあります。
 先の戦争の教訓としての憲法の初心≠ヘ、武力によって自衛権を行使しないということだと思います。

国連憲章と憲法
 国際的に第2次世界大戦の反省にもとづいた文書である国連憲章(1945年6月、51カ国署名)と日本国憲法は多くの共通点を持っています。何よりも第2次世界大戦の経験を踏まえ、憲法の平和主義は、国連憲章が戦争をなくそう、武力行使をなくそうとしていることと共通しています。
 一方で、日本国憲法と国連憲章は、平和実現の方法に違いがあります。憲法は武力の使用を禁じています。国連憲章は最後の手段として、武力を使用する集団安全保障を認める制度になっています。その違いの理由は、国連憲章をつくった第2次大戦における連合国は戦勝国で、武力を使って侵略を退けた国の立場です。日本は自分が侵略をしかけて、負けたという立場の違いがあります。
 重要な相違の理由として、核兵器の存在、使用の経験の問題があります。国連憲章については、大部分の連合国は、原子爆弾ができたことを知らない段階で憲章の原案を作成しました。採択したのも広島、長崎への原爆投下の前です。大部分の国は、原爆の被害を知らない段階で国連憲章を採択しています。核戦争を基本的には想定していないということです。これに対し、日本国憲法の第9条は、原爆の惨禍を踏まえているということです。原爆の存在は人類の存続を脅かすという認識は武力を徹底的に否定する論理の基礎になったと思います。
 基本的人権や民主主義の保障を強調している点は、日本の憲法と国連憲章とが一致していました。ナチス・ドイツや軍国主義の日本は、国民や他民族の人権を無視し、民主主義を破壊した体制でした。人権や民主主義を踏みにじる国は戦争を起こします。戦争をなくすためには各国の国内で民主主義や人権が保障される体制をつくらないといけないという発想が国連憲章やポツダム宣言、そして、日本国憲法に明確に反映しています。

平和に生きる権利
 世界人権宣言(47年)はもちろん、国連のユネスコ(国連教育科学文化機関)やILO(国際労働機関)などの専門機関でも、設立趣旨を説明する文書に「平和のためには人権を確保しないといけない」という趣旨のことが書かれています。
 第1次大戦後に国際連盟規約や不戦条約など戦争を違法化する動きがありました。その規定を各国の憲法に取り入れる動きもありました。第2次世界大戦後、侵略戦争の放棄は多くの国の憲法に反映します。日本国憲法は軍備までなくすと、さらに一歩踏み込んで徹底させたものです。
 国連でも2000年代になって「平和への権利」という考え方が出てきています。これは日本国憲法の平和的生存権と同じ発想です。平和に生きる権利を個人の人権の一つとして認めようとする動きです。実効性のある決議とはなっていませんが、第2次大戦での反省が日本国憲法を生み、その思想は再び国際的な場に広がっているのです。
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2016年08月15日,「赤旗」)

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読書のページ/科学者と戦争/池内了著/進む日本の軍学共同に警鐘

 いま、日本では急速に防衛省や自衛隊などの「軍」と大学、科学者などの「学」が接近、いわゆる「軍学共同」が進みつつある。2015年には防衛省が「安全保障技術研究推進制度」という競争的資金制度の応募を開始し、来年度は北海道大学など10件の研究課題の採択が先ごろ発表された。また、日本の科学者の代表機関である日本学術会議は戦後、「軍事目的の研究は行わない」という方針を維持してきたが、現会長である大西隆氏が「個別的自衛権のための基礎的な研究開発は許容されるべきではないか」との私見を述べ、それを受けて「安全保障と学術に関する検討委員会」が発足した。
 本書は、日本を代表する天文学者である著者が、これまでの世界大戦でも洋の東西を問わず科学者が軍学共同に巻き込まれていった歴史を振り返りつつ、いまの日本の動きに警告を発するたいへん刺激的な一冊だ。そのベースには、科学的興味が高まるとその社会的意味を考えずに研究に夢中になる、といった科学者の特性があるとする仮説も、自らの経験に立脚するだけにたいへん説得力がある。
 ナチス時代の戦争犯罪に関して、当時の科学者たちが「自分たちには責任がない。なぜなら自分たちは科学が進歩することのみを追求しており、非政治的に振る舞ったのだから」という意識を持っていたのではないか、という著者の指摘はたいへんに重く、かつそのまま現在のわが国にも重なる。いまこそ科学者たちに社会的な自覚を持つことを強く望むとともに、一般の読者には本書を通じて現在進行形で起きている日本の軍学共同についてぜひ知ってもらいたい。
 (香山リカ・立教大学教授、精神科医)

 いけうち・さとる=1944年生まれ。名古屋大学名誉教授。宇宙論、科学・社会論
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2016年08月14日,「赤旗」)

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安倍再改造内閣、憲法破壊の布陣/稲田新防衛相はウルトラ右派/閣僚に「日本会議」ぞろり

 安倍晋三首相は3日、内閣改造と自民党役員人事をおこない、第3次安倍再改造内閣が発足しました。その顔ぶれから見えてくるものは―。
 田中倫夫記者

稲田新防衛相はウルトラ右派/危険な人事$[刻/自民党関係者
 「この人事はきついね」
 新内閣の顔ぶれを見た自民党元閣僚は、稲田朋美・新防衛相にたいし懸念を示します。「彼女が防衛問題に何かかかわっていたなんて聞いたことがない。国防部会でも見たことがない。同じ思想だから安倍さんが選んでいるのだろうが…」
 稲田氏の起用は今回の改造の「目玉」。安倍首相が直々に政界入りを口説いた人物で、ウルトラ右派です。(別項に語録)
 2011年6〜7月には、稲田氏と高市早苗総務相がそれぞれ、旧ナチス・ドイツを信奉する極右団体代表と会い、ツーショット写真を撮っていました。
 海外メディアは警戒を強めています。英紙フィナンシャル・タイムズは「防衛相に強硬派の国粋主義者を任命」と報じました。
 就任後の会見でも、過去の侵略戦争を美化する靖国神社参拝を否定しない稲田氏に、米国務省は「癒やしや和解を促進するようなやり方で歴史問題に望むこと」と注文をつけました。
 「NHK」世論調査(8日)では、稲田氏の防衛相起用を「評価しない」が54%。「評価する」35%を上回りました。
 自民党関係者は「まさに『稲田爆弾』。こんな危ない人事しかできないところが深刻だ」と話します。

閣僚に「日本会議」ぞろり/「バランス悪い権力はもろい」
 安倍再改造内閣はこれまでの安倍政権を支えてきた主要閣僚のほとんどを留任させ、暴走政治をさらに加速≠ウせる構えです。
 なかでも改憲への姿勢が際立ちます。安倍首相は参院選では街頭演説で一度も「改憲」を口にしなかったのに、選挙が終わるや「(改憲は)自民党の党是。党総裁として任期中に果たしたいと考えるのは当然」だと語りました。まさにだまし討ち≠ナす。
 改憲をめざす運動団体「日本会議」の国会議員懇談会のメンバーは、首相含む閣僚20人中16人です。
 政治評論家の浅川博忠さんは「『改憲準備内閣』だ」とズバリ。「安倍首相の目標は2020年の東京五輪を首相として迎えること。自民党総裁任期(18年9月)の延長を狙い、その前に憲法審査会を動かし、総選挙を乗り越えようとしています。それらを推進するために、『お友達』を集めた布陣です」
 立教大学名誉教授の五十嵐暁郎さん(日本政治論)は、「こんなバランスが良くない内閣は見たことありません」と話します。
 「昔の自民党なら、保守もいればリベラルもいてバランスをとっていました。小選挙区制の中で党総裁の権力が強くなり、イエスマン、イエスウーマンばかりが集まった。しかし、これは政権の強さを示すものではない。バランスが良くない権力はもろくなる。国民世論と大きくかい離し、裸の王様≠ノなりかねません」
 ある自民党衆院議員は「今の自民党は安倍一強=B異論は出せないよ」と嘆き、こう語りました。「いま、自民党の衆院議員が一番怖いのは自分の選挙区の野党がまとまること。安倍首相を追いつめられるのは野党共闘だな」

稲田防衛相語録
■「自分の国は自分で守る。そして自分の国を守るためには、血を流す覚悟をしなければならないということです。その意志と覚悟なくしてこの国は守れません」(2010年12月1日、民主党内閣倒閣宣言! 国民大集会でのスピーチ)
■「憲法は今すぐ破棄して、自主憲法を制定しなければならない」(12年5月10日、創成「日本」東京研修会あいさつ)
■「靖国神社というのは不戦の誓いをするところではなくて、『祖国に何かあれば後に続きます』と誓うところでないといけないんです」(『WiLL』06年9月号)
■「たとえば自衛隊に一時期、体験入学するとか、農業とか、そういう体験をすることはすごく重要。まあ、男子も女子もですね」(『女性自身』15年11月10日号)
■「長期的には日本独自の核保有を、単なる議論や精神論ではなく国家戦略として検討すべき」(『正論』11年3月号)
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2016年08月14日,「赤旗」)

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こちら経済部/誰でも障害者になる

 夏の休日、午睡から覚めると、2歳になる息子が眼鏡を振り回していました。大声を出したのも後の祭り。右側のヨロイが反対側に折り曲げられ、無残な姿に変わり果てていました。いつの間にか弱った視力。幸いスペアがあったものの、眼鏡がないと途端に生活が困難になります。
 相模原市の障害者施設を襲った恐ろしい事件。献花に訪れたパラリンピック選手の「年を取れば誰でも障害者になる」という言葉が胸に響きます。容疑者の言動から、ナチスの優生思想との共通性も指摘されています。犯行動機の一つが「世界経済の活性化」。暴力の矛先は、加齢や事故、過労などで働けなくなった人に向けられていたかもしれません。
 巨大企業のもうけ最優先の一方で、世代間対立をあおり、障害者にまで自助努力を押し付けてきた歴代政権。ゆがんだ価値観に重なるのはナチスだけではないでしょう。
 (佐久間)
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2016年08月13日,「赤旗」)

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原水爆禁止世界大会海外代表に聞く/英核軍縮運動(CND)キャロル・ターナーさん/トライデント更新反対続ける

 8月6日にロンドンでは、私たち核軍縮運動(CND)ロンドンの主催で、広島・長崎への原爆投下から71年の記念集会を開きました。被爆者とすべての戦争の犠牲者を悼むためです。
 集会では宗教の違いを超えて、ローマカトリック、イスラム教、ユダヤ教、仏教の宗教指導者が話をしました。ナチスドイツの虐殺からの生存者も話をしました。欧州連合(EU)離脱の国民投票の際に醜い人種差別、排外主義が噴出したので、今年はこのような集会となりました。
 2016年は私たちにとって重要な年です。英国政府は核兵器搭載の「トライデント」原潜の更新計画について決定することになっています。これには220発の核弾頭が含まれており、1発で広島型原爆の8倍の爆発力がある大量破壊兵器です。私たちの試算では、兵器の有効期間を通じて2050億ポンド(約27兆円)がつぎ込まれようとしています。
 私たちは2月、さまざまな団体と協力してトライデント更新反対で大規模デモを行いました。
 7月13日、国会での更新計画の審議が迫る中で、戦争ストップ連合など多くの全国組織やトライデント反対の国会議員らとともに、議会内でロビー活動と集会を組織しました。
 18日の下院での審議、採決では、更新賛成472、反対117、棄権52で、少なくない議員が支持しませんでした。私たちは、核兵器反対の世論の強さを示すことに成功しました。
 今秋には、戦争反対から緊縮反対まで、政治分野や文化分野までさまざまな学生団体に声をかけ、核軍縮問題に取り組む学生ネットワークを立ち上げたいと思っています。
 私たちCNDの副議長を務めたジェレミー・コービンが昨年、労働党の党首に選ばれました。彼は、首相になっても核兵器の発射ボタンは押さないと明言しています。しかし党内の反コービン勢力は、国民投票後の混乱に乗じて党首選に持ち込み、核軍縮など進歩的な政策を排除しようとしています。
 これに抵抗して、わずか1週間で18万4000人が新たに入党しました。党首選でジェレミーに投票するためです。再選されると思いますが、異例の状況です。
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2016年08月12日,「赤旗」)

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上院改革問い国民投票実施/イタリア11月にも

 【パリ=時事】イタリア最高裁は8日、レンツィ首相が進める上院改革の是非を問う国民投票について「実施を認める」と判断しました。政府は今後2カ月間で投票日程を決めます。欧州での報道によれば、11月下旬ごろ実施と予想する見方が強い。
 改革案は上院の定数を現行の315人から100人に減らし、内閣不信任や予算承認の権限をなくすことが柱。国民投票では当初「賛成派が優勢」と報じられましたが、緊縮財政への反発などからレンツィ首相の政治基盤が揺らいでおり、承認されるかは微妙な情勢です。
 首相は敗北の場合、退陣する意向を示し背水の陣で臨みます。政権崩壊となれば、英国に続いてまた国民投票で欧州に政治混乱が生じる恐れがあります。
 イタリアでは戦後、ファシズムの台頭を防ぐため上院に強力な権限を与えました。これが短命内閣が続く一因となり「政治不安を招いた」と批判が強い。政治の安定を目指すレンツィ政権が見直しを進めていました。
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2016年08月10日,「赤旗」)

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相模原事件を考える/重度障がい者との日常と優生思想の克服/竹内章郎

 神奈川県相模原市の津久井やまゆり園で重度障がい者が殺傷された惨禍。以前は「普通」に―何が「普通」かは本当は難しい―障がい者と接していたらしい元職員が、重度障がい者の人権無視や殺害を正当化するに至ったのだから、ナチスだけには限られない優生思想の問題は深刻だ。

ナチスだけか
 意外に思われるかもしれないが、英国の社会保障制度の土台となる「ベバレッジ報告」(1942年)を作ったW・ベバレッジは、最低収入に値しない欠陥ある人の隔離収容と彼らからの自由や生殖の権利の剥奪を力説した。漸進的な社会主義的改革を目指したフェビアン協会の中心人物シドニー・ウエッブらも、自らを優生主義者だと公言し、産業社会に役立たない人を消耗品扱いしてその排除を主張した。
 『青鞜』で有名な平塚らいてふが、「普通」に生活できない子どもの出生は大きな罪悪だとし、福沢諭吉が人間の産育を家畜改良と同じにせよと言うなど(同じ発言は電話の発明者ベルにもある)、「不適合者」の排除思想である優生思想は広くはびこっており、効率至上の現在の新自由主義の人間観とも結びつく。
 米豪由来の生命倫理学で、IQ20以下の存在は人間ではなく殺しても殺人ではないと明言したJ・フレッチャーの優生思想は、重度障がい者は人間の皮をかぶった物だ≠ニ言った相模原事件の犯人の発言そのものでもある。
 もちろん「不適合者」の排除とはいっても、殺傷にまで至るか、施設などに隔離しての貧困なケアの強要にとどまるかではかなり違うが、今回の惨禍の背後にある優生思想は、僕たち自身をも捉えかねない。

共同の豊かさ
 そこで優生思想の克服を本当に考えるための一助として、身近に重度障がい者と接するものとして、障がい者を巡る日常が「普通」になること、またその豊かさにふれたい。そんな話があまり知られていないことも優生思想がはびこる要因の一つだと思うからである。
 「優秀」な介助者ならくみ取れる意思を示すとはいえ、通常の言語的な意思疎通はままならず、食事や衣服の着脱はもちろん排泄も一人ではおぼつかない、それこそIQ20もない重度の知的障がいをもつ彼。彼が僕によりかかってテレビアニメに夢中な中、臭ってきた。ああ、やったなぁ、と大便の後始末が頭に浮かび、直前の少し尻を浮かせるサインの見逃しを悔やんで、やれやれと思う。
 けれど、やれやれと思う仕事が誰にでもあるように、この思いも当たり前で「普通」となる日常がある。「駄目でしょ、トイレでしょ」と僕に叱られる彼は、少し困惑しつつもオウム返しに「ぉトイレよー」とニコニコ顔で言い、便座に座って脚を広げ協力してくれる。だから便の拭き取りなども、手間はかかるが、信頼の視線を感じる僕のほほ笑みを誘う共同作業となる。
 どんな共同作業にもあり得る協力の楽しさを、彼との生活に慣れた僕は実感するし、そんな中で排泄の場の大切さを学びもする。
 腰や脚の付け根にもおよぶ軟便の処理には、確かにため息をつくこともあるが、その場合はトイレ後の風呂で、汚れに彼の手が触れないように工夫しての洗浄となる。洗われる彼が浮かべる気持ち良さそうな表情は、自然と理屈抜きに僕にも伝播する。
 そこには忙しさに追い立てられる生活とは全くちがう、ゆったりとした時間・空間のもたらす癒やしや豊かさがある。真夏の今頃なら、ついでに一緒にシャワーを浴びて一緒に心地良くもなる。汚い話で恐縮だが、大便を巡ってやれやれと思うようなことの中にも、「普通」の楽しい共同の営みや心地良さがある。
 重度障がい者とのこんな「普通」の生活の積み重ねから(特に彼らに直接関わる人たちによって)紡ぎ出される新たなコミュニケーション技法やより豊かな文化がなければ、優生思想の本当の克服と真の共生は難しいのだと思う。

 たけうち・あきろう 岐阜大学教授(哲学、生命倫理学)。1954年生まれ。『いのちの平等論』、『哲学する〈父〉たちの語らい ダウン症・自閉症の〈娘〉との暮らし』(共著)
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2016年08月09日,「赤旗」)

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大門参院議員のエッセー/「ファシズムは得体の知れない顔つきでやってくる」

 日本共産党の大門実紀史(みきし)参院議員のエッセー「ファシズムは得体の知れない顔つきでやってくる」が反響を呼んでいます。フェイスブックやツイッターで発信されたエッセーを紹介します。

 先日、ある集会で参加者から質問が出されました。
 「おおさか維新(の会)は自民党も共産党もいっしょくたに批判して勢力を伸ばしている。大阪の知事、市長選において共産党が自民党に協力して維新とたたかったのは間違いではなかったのか?」と。
 答えました。「わたしは正しかったとおもう。なぜなら、世界の歴史をふりかえると、ファシズムの台頭にたいし保守と左翼が共同して戦うことが出来ず、けっきょく各個撃破でつぶされてしまった。大阪はその教訓をふまえ、保守と左翼の共同という歴史的先駆的な経験に踏みだした。むしろ大阪の仲間を励ましてほしい」と。他の参加者から大きな賛同の拍手がおき、質問した方もうなずいてくれました。

 * *
 しかし、おおさか維新が自民党から民進、共産党まで「既成勢力」とレッテルを貼り、支持を伸ばしてきたのは事実。おおさか維新だけでなく、アメリカの共和党のトランプ氏も「反エスタブリッシュメント(既成支配層)」でのしあがってきた。ついでにいえば、小池百合子さんも反「既成政党」のポーズで都知事選をたたかっている。(都知事に当選=編集注)
 なぜ、中身がデタラメでも、反「既成勢力」をかかげるだけで「ウケる」のか。
 世界的に貧富の格差が拡大し、富裕層と貧困層の二極化がすすんでいます。しかし、それが政治的に保守対左翼の対決という構図をつくるには至っていない。
 格差の拡大の過程でまず生じるのは、大量の中間層の没落(貧困化)です。かれらは保守にたいし「なぜ自分たちをこんなめにあわすのか」と怒り、左翼にたいしては「なぜこんな状況を食い止められなかったのか」と非難する。そこから右も左も「既成勢力(政党、体制)」はダメだという「全否定」のささくれた気分がうまれる。ファシズム容認につながる危なっかしい気分です。
 そんな気分に「既成勢力」攻撃を売りにする政治屋がつけ入る。一番ウケるのは「既成勢力」の首切りや報酬の削減。だから異口同音に公務員、議員削減を叫び、首長選挙でも報酬削減を公約にする。
 行政の無駄をはぶき、報酬の適正化をはかることは必要ですが、それは中間層の貧困化とは別の問題。「全否定」の熱狂をいくら続けても状況の改善にはつながらない。いらだちは自分たちを追い込んだ真の敵ではなく、身近な弱者への攻撃や排外主義にむかうこともある。
 * *
 最も警戒すべきは、現れては消えていく政治屋より、本物のファシズムの台頭です。そしてそれは半世紀以上前にスペインの保守哲学者オルテガが指摘したように、あらかじめ判別がつかない「得体の知れない顔つき」でやってくる。
 わたしたちも、ほんとうの対決軸がどこにあるのか、今こそもっと太く、もっとわかりやすく、もっと広く、伝える努力が求められている、急がれている、とおもいました。
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2016年08月06日,「赤旗」)

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緊急事態条項学ぶ「つどい」/15日・神戸市で

 「兵庫の『語りつごう戦争』展の会」は3日、県庁内で会見し、15日に神戸市兵庫区の妙法華院で開く「8・15平和のつどい」の意義や内容を紹介しました。
 改憲勢力が「緊急事態条項」創設を突破口に改憲をすすめようとするなか、同つどいでは、永井幸寿弁護士が「ナチスより怖い、自公政権の緊急事態条項=\災害をダシにして、憲法を変えてはならない」と題して講演します。
 永井弁護士は「『緊急事態条項』は国家のために人権保障と権力分立をやめて、権力を集中し人権を大幅に制約する制度です。憲法そのものを破壊する可能性がある。しかし、ほとんどの方がよく知りません。いまのうちに内容を十分に理解することが必要です。十分時間を取ってご説明しますので、憲法改正を肯定する方も否定する方もぜひおいでください」とのべています。
 同つどいは午後1時半から。参加費500円(高校生以下無料)。連絡先=078(575)2608妙法華院内
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2016年08月06日,「赤旗」)

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相模原事件「許せない」/日本障害者協議会

 相模原市の障害者施設での殺傷事件を受け、日本障害者協議会(藤井克徳代表)は5日、「類をみない残虐な事件で、絶対に許せない」とした見解を発表しました。
 見解は、容疑者が「障害者は生きていても仕方がない」などと話していたことにふれ、ナチス政権下で約20万人もの障害者が虐殺された「価値なき生命の抹殺作戦」(T4作戦)と重なると指摘します。
 見解はまた、国連の「障害者を締め出す社会は弱くもろい」との発言や、障害者権利条約17条「その心身がそのままの状態で尊重される権利を有する」を否定するものだと強調。そして、今回の事件をわけ隔てのない社会をつくる新たなきっかけにし、市民社会で追求するとともに、主体的に取り組む、と表明しています。
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2016年08月06日,「赤旗」)

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稲田氏は「タカ派」「強硬派」/改憲・海外派兵への布石/海外メディア報道

 3日に発足した第3次安倍再改造内閣で防衛相に就任した稲田朋美氏について、海外のメディアはそろって「タカ派」「強硬派」「国粋主義者」と指摘し、第2次世界大戦中の日本軍の蛮行を認めず、靖国神社の常連℃Q拝者だと紹介しています。さらに同氏の防衛相就任を、安倍首相による憲法改悪や自衛隊の海外派兵拡大に向けた布石との受け止めもあります。
 英紙フィナンシャル・タイムズ(電子版)は3日、「安倍首相、防衛相に強硬派の国粋主義者を任命」との見出しで報じました。稲田氏を「首相の緊密なイデオロギー上の味方」と称し、「日本の歴史と憲法についてタカ派的見解」を持っていると紹介しました。
 米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)は4日、稲田氏が2005年、自民党員相手に日本の戦争責任に関して講演した際、安倍氏の目に留まったという経緯にふれ、安倍氏の「弟子」だと紹介。第2次内閣で行革担当相だった13年4月に靖国神社に参拝したと報じています。
 米軍準機関紙「星条旗」(電子版)は3日、稲田氏が今年、週刊誌を名誉毀損(きそん)で訴えた裁判で敗訴し、「在日特権を許さない市民の会」(在特会)とのかかわりが認定されたこと、14年には、旧ナチス・ドイツを信奉する極右団体代表と写真を撮っていたと報じられたことを紹介しています。
 米ABCテレビ(電子版)は4日、稲田氏が防衛相就任後の記者会見で、第2次大戦時の日本の戦争が侵略か自衛か問われたのに対し、「この場で個人的な見解を表明する立場にない」と明言しなかったと報道。ロイター通信は同じ記者会見について、稲田氏が靖国神社を参拝するかどうか問われたのに対し、明言を避けたと報じました。
 フィリピンの英字紙マニラ・タイムズ(電子版)は4日の社説で、安倍新内閣が「経済活性化」を最優先としながらも、「強硬派で国粋主義者として有名な稲田朋美氏を防衛相に指名」したことで、「安倍氏は安全保障の課題から離れたのではないというシグナル」を示したと論じました。
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2016年08月06日,「赤旗」)

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ホロコースト学ぶ/今と未来のために/犠牲者ハンナのかばんを携えて訪問授業1000回に

 第2次世界大戦でのユダヤ人虐殺(ホロコースト)で犠牲になった少女ハンナ。最後の地アウシュビッツでかばんが残されていました。NPO法人ホロコースト教育資料センターは、ハンナのかばんをたずさえて日本、世界の子どもたちに訪問授業を展開。2003年からはじめ、先月1000回になりました。
 (都光子)
  

 「これがハンナのかばんです」。大きな布をとると、茶色のスーツケースが現れました。都内の高校での訪問授業。生徒たちは息をのみました。NPO法人ホロコースト教育資料センターの石岡史子さん(45)は生徒たちに問いかけます。「このかばんにハンナは何をつめていたんでしょう。想像してみてください」
 両親、兄と幸せな暮らしを送っていたハンナ。第2次世界大戦がはじまってから、だんだん生きにくい社会になっていきます。ユダヤ人は映画を見に行ってはいけない、ユダヤ人とわかるように印をつけた服を着ないといけない…。ハンナが一番悲しかったのは学校に行ってはいけないといわれたことでした。小学3年生の時です。
 その後母親が、そしてその半年後に父親が強制収容所に連れていかれ、やがてハンナも収容所へ。収容所には、かばんをひとつ持っていくことが許されました。
 石岡さんはいいます。「実はお兄さんが生き残っていたことがわかって、ハンナがどんな女の子だったか知ることができたんです」
 カナダに住むお兄さんとの交流で、ハンナの物語は本になりました。
 「お兄さんは6年前に日本にきて、このかばんと出あいました。震える手でさわっていました。もう今では80歳を過ぎたおじいちゃんです。私たちに『命を大事にする社会をつくってください』というメッセージを送ってくれました」
 「なぜヒトラーは政権を握ることができたのでしょうか」と、石岡さんは問いかけます。虐殺の計画を指揮したナチス党のヒトラーはワイマール共和国という民主的な国家のなかから選挙で選ばれた人だったことを紹介します。「ホロコーストは一夜で起きたことではなく、合法的に政権を握り、いうことを聞かない、自分たちにとって『好ましくない』という人たちを巧みに排除して、差別を国民の中に持ち込み、独裁国家をつくり上げたんです」
 1枚の写真を映し出しました。ユダヤ人に道路を磨かせています。「よく見ると周りに人だかりができていて、磨いている人たちを見ているでしょう。暴力に加わった人たちがいた、それを黙って見ていた人たちが多くいたんです」
 一方でユダヤ人を助けた人たちもたくさんいたことを紹介。日本人の杉原千畝もその中の一人として紹介されました。
 「みんなだったら、どういう行動をとるか、ぜひ考えてほしい。人間の弱さ、強さを歴史から学んでほしい」
 石岡さんはいいます。「いま、日本でも世界でも、難民問題など、平和をどう築いていくのか問われています。ホロコーストの歴史は今、そして未来を考えさせる教材です。想像力をふくらませ、他者への思いやりをはぐくむ訪問授業を続けていきたい」

歴史は身近/高校生が感想
 「私は、それはおかしいのではないか≠ニいう少しの違和感に敏感でありたいなと思った」「本当に何かあった時に、自分の周りをきちんと見渡すことができるか不安でもあります。そうならないために、学ぶ力や知識を身につけたい」「歴史は教科書で学ぶだけのものではなく、身近なものなのだと実感した」「なぜ言葉の暴力や差別が本物の暴力へと変わってしまったのかということを考えた」「18歳になったら選挙権があたえられるので、自分が正しいと思う人をまず選べるような人になりたい」

 『「ホロコーストの記憶」を歩く―過去をみつめ未来へ向かう旅ガイド』(石岡史子、岡裕人/著 子どもの未来社 税別1200円=写真) ヨーロッパ各地にあるつまずきの石やアンネの生家はじめ、人々の暮らしのなかにあるたくさんの記念碑を地図や写真などで紹介。それがつくられた市民の活動にもふれ、読み物としても充実しています。
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2016年08月05日,「赤旗」)

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ナチス親衛隊長官の日誌発見/独紙、ロシアの資料館で

 【ベルリン=時事】ドイツ大衆紙ビルトは1日付で、第2次大戦中、ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)を進めたナチス親衛隊(SS)長官だったハインリヒ・ヒムラーの日誌の一部がロシアの軍事資料館から見つかったと報じました。
 日誌は1938、43、44年のもので、計1000n超。ナチス高官らとの会合予定や、強制収容所のガス室の視察日程が記されているほか、ポーランド人らの殺害の指示なども記録されています。
 研究者はビルトに「(日誌は)彼の全ての残虐行為を立証するカギになる」と語りました。
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2016年08月04日,「赤旗」)

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憲法9条守り広げる/改憲の危険性を考える/人権召し上げるものと批判/九条の会福岡県連絡会

 九条の会福岡県連絡会は7月30日、福岡市で学習講演会を開きました。約100人が参加し、安倍政権のもとで進められる憲法改悪の危険性について考えました。
 石村善治代表世話人が「国の未来の在り方への主権者の責任を問うた九条の会アピールをもう一度大きな声で訴えなければならない。学習会を契機に、9条を守り平和を世界に広げる運動を強めよう」とあいさつしました。
 九州大学大学院の熊野直樹教授が講演。自民党改憲草案の緊急事態条項について、政府に立法権を与えるなどナチスの全権委任法と同じ内容と指摘、「災害やクーデターを口実に人権を召し上げるもの」と批判しました。国防を基調とした管理国家をめざす安倍政権に対し「異議を唱える市民的勇気が今後より重要になる」と語りました。
 話を聞いた大野城市の松嶋雅子さん(58)は「戦時中、国民がなにも知らされないまま悪い方へ走っていった状況が再来するのではという危機感がある。危険な空気を分かりやすい言葉でまわりの人たちに伝えていきたい」と話しました。
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2016年08月02日,「赤旗」)

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自民改憲案/立憲主義崩壊する/緊急勉強会100人参加/由良氏が講演/和歌山

 「憲法9条を守る和歌山市共同センター」は7月31日、参院選和歌山選挙区で野党統一候補として奮闘した由良登信弁護士を招いた緊急勉強会「自民党『憲法改正草案』を斬る!」を和歌山市で開き、会場いっぱいの100人が参加しました。
 大きな拍手で迎えられた由良氏は、安倍首相がめざす憲法改正を「戦前へ。天皇をいただく国家。軍隊のある国家。人権はない」と指摘し、日米同盟について「対等でなければいけないと、アメリカの若者だけが血を流すのでなく、日本の若者も命を捨てなければいけないと主張する」と怒りを持って告発。自民党改憲草案について「権力が自由となって国民を拘束するというもので、立憲主義の崩壊だ」と批判するとともに、同草案が憲法前文にある不戦の誓いや平和的に生存する権利を削り、戦力不保持や交戦権否定の9条2項を削除し国防軍の創設を書き込むなど、戦争する国へ突き進む姿を浮きぼりにしました。
 また緊急事態条項についてナチスドイツの乱用を示し「安倍独裁が可能になる」とその危険性を強調。「このような内閣は早く退陣させなければいけないし、みなさんに知らせていく必要がある」と訴えました。
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2016年08月02日,「赤旗」)

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緊急事態条項いらんやろ!/大阪弁護士会のパンフが好評

 大阪弁護士会が作成したパンフレット『憲法に緊急事態条項?いらんやろ!』が天神祭などで配布され、わかりやすいと好評です。(写真)
 このパンフレットは、大阪弁護士会の山口健一会長が発表した同条創設に反対する声明を受けて2万部作成。文庫本サイズ、カラー8n。イラストは絵本作家の長谷川義史さん。高校生が大阪弁護士会会長に尋ねる、大阪弁の軽妙な問答となっています。
 大きな災害やテロが起きたら「政府にバーッと権限をみな集めよって話です」「そんな必要はまったくあれへん」とズバリ。東日本大震災の後に、日本弁護士連合会が実施した被災市町村アンケートでも、政府への権限集中は必要なく、現場に近い自治体が主導すべきだという回答がほとんどで、災害対策基本法など法律が整備されていることを紹介。「じゃあ、緊急事態条項って、ほんま必要ない?」との問いに「ない、ない、絶対ない!」と即答。「歴史を振り返ってみても、あのナチス政権が、当時のドイツの憲法に入ってたこの緊急事態条項を利用して、ドッカーんとのし上がってきた」と警告し「必要もない、おまけに怖いもんやったら」「いらんやろ!」。
 問い合わせは、大阪弁護士会広報課
06(6364)1371。
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2016年08月01日,「赤旗」)

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【7月ヘッドライン】

 

*         虐殺の地、沈黙の祈り/ローマ法王、アウシュビッツ訪問

*         相模原事件/「ヒトラーの思想降りた」/措置入院先で植松容疑者

*         潮流

*         主張/障害者殺傷事件/「いなくていい人」はいない

*         相模原事件/憤る障害者/命奪うのは許せない/偏見助長に危惧

*         相模原殺傷/寄り添って共に生きる/障害福祉関係者の思い/制度に人権保障の視点を

*         潮流

*         仏映画「奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ」/マンションシャール監督に聞く

*         芸能テレビ/ウニー・ルコント監督/映画「めぐりあう日」/過去と向き合い前進する力を

*         ヒトラー生家強制収用決定/オーストリア政府

*         ポケモンゴー、自粛を/追悼地での利用に反発/米欧

*         盧溝橋事件79年/現地で記念式典/中国

*         変えるのは、私だ/寺脇正博さん(66)福島県相馬市/力合わせ戦争法廃止

*         女性の目アラカルト/ドイツ/ナチT4作戦の告発と追悼

*         ノーベル平和賞作家エリ・ウィーゼルさんが死去

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【7月本文】

虐殺の地、沈黙の祈り/ローマ法王、アウシュビッツ訪問

 【パリ=島崎桂】フランシスコ・ローマ法王は29日、ポーランド南部オシフィエンチムのアウシュビッツ強制収容所跡を訪問し、ホロコースト(ナチス・ドイツのユダヤ人大虐殺)の犠牲者を追悼しました。同地でのミサや演説は行わず、沈黙の祈りをささげました。
 アウシュビッツ収容所では第2次大戦中、ナチスがユダヤ人を中心に約110万人以上を虐殺しました。
 「働けば自由になる」と書かれた正門を徒歩でくぐった法王は、餓死刑が執行された地下監房や、銃殺刑が執行された「死の壁」、集団絞首刑の現場となった「点呼広場」など各所で黙とう。訪問帳に「主よ、これほどの残忍さをお許しください」と記帳しました。
 収容所で法王は、アウシュビッツの生存者10人、ナチスによるユダヤ人迫害から命がけでユダヤ人を守った「諸国民の中の正義の人」25人とそれぞれ面会しました。
 生存者の1人は仏メディアに対し、「ホロコーストの事実を否定する人やメディアが増える中、法王がこの地に来たことは重要だ」と語りました。
 法王はテロや暴力が相次ぐ国際情勢について「世界は戦争状態だ」と深刻な認識を示しており、平和を求めるメッセージをアウシュビッツから世界へ送りたい思いもあったとみられます。
 法王は、27日から同収容所跡近くのクラクフで開催されている「世界青少年デー」大会に参加しています。28日には約60万人の若者を前に演説した法王は、欧州入りを目指すシリア難民らの受け入れを求めました。
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2016年07月31日,「赤旗」)

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相模原事件/「ヒトラーの思想降りた」/措置入院先で植松容疑者

 相模原市緑区の障害者施設「津久井やまゆり園」の入所者19人が刺殺された事件で、元職員植松聖容疑者(26)が2月19日に措置入院した際、診察した医師に「ヒトラーの思想が2週間前に降りた」と話していたことが29日、関係者の話で分かりました。植松容疑者は同月上旬ごろから障害者を差別したり、殺害を予告したりする発言を繰り返すようになっており、神奈川県警津久井署捜査本部は障害者に強固な殺意を抱くようになった詳しい経緯を調べています。
 ナチス・ドイツはヒトラーの優生思想に基づき「安楽死計画」を立て、障害者らを虐殺したことで知られます。
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2016年07月30日,「赤旗」)

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潮流

 それはホロコースト(大量虐殺)のリハーサルだったといわれています。数百万ものユダヤ人の命を奪ったドイツのナチス政権。じつは、最初のガス室はユダヤ人を殺すものではありませんでした▼ポーランドに侵攻した1939年9月1日、ヒトラーは極秘命令書にサインします。医師に治癒の見込みのない患者を安楽死させる権限を与える―。障害者や病人が辺ぴな病院や施設につくられたガス室に運ばれ、20万人以上が殺害されました▼劣等な人間の淘汰というドイツ精神医学会の優生思想と、民族の優位性を強調して国民の心をつかもうとしたヒトラー。両者の一致が大量殺りくへと走らせたのです▼「ヒトラーの思想が降りてきた」。相模原の障害者殺傷事件の容疑者は以前そう語っていたといいます。障害者を価値なき命とする彼の言動はまさにナチス政権下の蛮行に通じます。戦後70年の昨年、ドイツの現場を回った日本障害者協議会の藤井克徳代表も今回の事件を聞き、それを連想したと▼働けるか、兵隊になれるか、それが彼らの価値基準だった。今の日本社会にある経済的な力や効率だけを評価する風潮につながってはいないか。藤井さんは危ぐします▼一億総活躍や長生きは悪という時の権力者、病み上がりの人を侮辱する女性都知事候補…。いま、つらく、悲しい思いの障害者やその家族からはこんなメッセージが。障害のある人もない人も、私たちは一人ひとりが大切な存在。差別や格差のない、共に生きられる社会を
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2016年07月30日,「赤旗」)

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主張/障害者殺傷事件/「いなくていい人」はいない

 神奈川県相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で、元施設職員の男性によって入所者19人が殺害され、26人が重軽傷を負った事件が、深い悲しみと憤りを広げています。多くの人命を奪った戦後最悪の殺人事件そのものの残忍性に加え、大きな衝撃を与えているのは、容疑者の元職員が事件前から「障害者なんていなくなればいい」という趣旨の言動を重ねていたとされることです。障害者の命と尊厳、存在をこれほどあからさまに否定する考えを、絶対に認めることはできません。

憎悪にもとづく異常犯罪
 事件現場の施設前に設けられた献花台には障害者や関係者が次々訪れ、「胸が張り裂けそう」と悲しみを口にしています。障害者や家族、関係者の団体が我がことと感じ、「命の重さに思いを馳せて」と相次いで声明を発表し、命の大切さを訴えていることに、この事件の特別の深刻さがあります。
 今年2月まで同施設に勤務していた26歳の容疑者は「重度障害者は安楽死させたほうがいい」など障害者の命や人権を真っ向から否定する姿勢があったといいます。2月半ばには2度にわたり衆院議長公邸に「私は障害者を抹殺できる」などとして事件を予告する手紙を持参していました。ぞっとする内容の手紙です。
 障害者をなくすことが日本国と世界のため=A障害者は不幸を作ることにしかならない≠ニ障害者を社会の邪魔者扱いする差別と偏見、その存在すら認めない憎悪と敵意に満ちています。障害者をふくめあらゆる個人の権利と尊厳を保障する人権思想に根本から反する記述です。
 障害のある人もない人も、相互に人格と個性、多様な生き方を認めて支え合い、学び合う社会の実現こそが、現代社会を形成する土台であることは明らかです。障害者であれ、健常者であれ「いなくなっていい人」はいません。障害者を「不要」とみなし「抹殺」を正当化する主張は、第2次世界大戦前、ヒトラー政権下のドイツで、障害者は「生きるに値しない」と「優生思想」を掲げ計画的に虐殺したナチスとあい通じるもので、到底許し難い危険な考えです。
 容疑者は、障害者への偏見などの問題を指摘され、施設を退職しました。一度は福祉現場で働いた容疑者が、なぜこれほど障害者への憎悪を膨らませ凶行にいたったのか―。詳しい経過や行政などの対応については検証が待たれます。しかし、多くの福祉関係者が、事件をきっかけに不安と危惧を募らせているのは、障害者をはじめ社会的弱者や少数者などにたいする偏見や差別、排除の社会的風潮が強まる傾向のなかで起きたのではないか、ということです。他民族にたいし侮蔑的な言葉を投げつけるヘイトスピーチなどはその典型です。危険な風潮の台頭を許さない、国民的合意と取り組みが不可欠です。

共に生きる社会へさらに
 格差や貧困を「努力が足りない」として自己責任にすりかえる、障害者施策などへの社会保障費を国の「お荷物」扱いする、高齢者と若者を分断し「世代間対立」をあおる―。こんな考え方が、誤った風潮を醸成する土壌になっていないか。一切の差別や敵意、偏見を許さないことが、障害者をはじめだれもが大切にされる社会をつくるための重要な課題です。
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2016年07月29日,「赤旗」)

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相模原事件/憤る障害者/命奪うのは許せない/偏見助長に危惧

 障害のある人だけを標的にした相模原市の障害者施設で起きた殺傷事件。障害のある当事者は「いらない命はない。身勝手に奪うのは許されない」と怒りの声を上げています。
 「ヒトラーがやったことと同じで許せない」―。軽度の知的障害のある女性(42)はこう語ります。ヒトラー政権下のナチス・ドイツは、障害者にかける予算は無駄だとして精神障害や知的障害のある人たち約20万人を虐殺したのです。
 容疑者は「障害者は税金の無駄」という趣旨のことを話しているといいます。
 同様の空気を感じると、脳性まひで車いすを使う松本誠司さん(48)=高知市=。安倍自公政権が消費税増税分は社会保障に充てると喧伝していることにふれ、「なんとなくだけど、消費税が上がったのはあんたら障害者のせいやで≠ニいう空気を感じることがある。先の戦争で障害者は米くい虫∞ごくつぶし≠ニ言われたのに似ているかもしれない」と話しました。
 かつて暮らしていた入所施設は、障害者が60人に対し、夜勤の職員が3人だけ。「仲間と半分冗談で、『いま強盗が入ったら殺されるよね』って話したことがあった」といいます。「障害福祉施策が脆弱だから、助かるはずの障害者の命を守れない状況にある」
 松本さんは「作業所で一緒に働く知的障害者はみんな、『障害者は死ねってことか』と怒っている。僕も憎しみを感じる」と語りました。
 「いらない命はない。障害があるからと、生きていたら悪いと判断するのは誤っている」。精神障害のある土屋晴治さん(61)=北海道江別市=は、語気を強めます。
 「被害者は事件当時、元職員だからと容疑者を信頼してしまったのではないか。そんな生身の人たちを次々刺すなんて理解できない。精神障害のせいではないだろう」と怒りで声を震わせました。そのうえで、精神障害者への誤解や偏見が助長されるのではと危惧していました。
 (関連15面)
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2016年07月29日,「赤旗」)

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相模原殺傷/寄り添って共に生きる/障害福祉関係者の思い/制度に人権保障の視点を

 「障害者の人権を保障する実践が必要だ」―。相模原市の障害者施設で障害のある人が殺傷された事件をめぐり、障害福祉の関係者がそれぞれの思いを語っています。

不寛容な社会危ぐ
 埼玉県内で障害者の入所施設などを運営する、みぬま福祉会(高橋孝雄理事長)は日々、重症心身障害者が少し目を動かす、手を動かすことで喜びやつらさなど何を訴えているのか、くみ取っています。高橋理事長は「こうした実践がなければ、重度の障害者は『いらない人』になる」と指摘。「その背景に、職員の処遇が悪く障害福祉現場が人手不足に陥り、福祉現場全般に職員の質の劣化がある」と述べます。
 かつてナチスが障害者に貴重な税金を費やすことはとんでもないというプロパガンダを発信したことや、石原慎太郎元都知事の障害者に対する「この人たちに生きていく価値はあるのか」との発言にふれ、「根は同じだ」と高橋理事長。「いまの社会全体にこうした雰囲気がある」といいます。
 そのうえで、「障害者の暮らしを支える制度に障害者の人権保障≠フ視点が欠けている。だからこそ、現場で働く人も社会も障害者に対し不寛容になるのだろう」と強調。

背景と原因究明を
 障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会の白沢仁事務局長は、同様の惨劇の再発防止のためにも事件の背景と原因究明が必要だと指摘します。また、障害者の入所施設を否定する議論が起きる懸念を表明しています。
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2016年07月28日,「赤旗」)

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潮流

 ことしはフランスとスペインに人民戦線政府ができて80年にあたります。ファシズムや独裁に立ち向かう各国の人民は、立場の違いを超えて共同の目標のもとに行動する、統一戦線という知恵を生み出しました▼思想家の内田樹さんは、参院選中の野党共闘への攻撃に対して「政治的立場の違う政党が限定的な政策の一致を足場に一時的な共闘関係を持ちうることは、民主主義の最もすぐれた点」と鋭く反論しました▼フランスの人民戦線は、「パンと自由と平和のための戦線」とよばれ、バカンスも獲得しました。第2次大戦が始まり、ドイツ軍に占領されると、思想・信条を超えてレジスタンス(抵抗運動)が展開されました▼そのなかで生まれた有名な合言葉が「神を信じる人も信じない人も」です。共産党員作家アラゴンが「バラと木犀草」と題した詩の中で繰り返しました。「神を信じたものも/信じなかったものも/ドイツ兵に囚われた…神を信じたものも/信じなかったものも/その足跡はかがやいていた…」(大島博光訳)▼詩の冒頭の献辞には、犠牲になった共産党員、王政主義者、カトリックの学生らの名を掲載。詩は、若者、キリスト者を勇気づけました。レジスタンスは、ナチスからの解放に大きく貢献し、いまも国家の顕彰の対象です▼私たちも先の参院選での共闘が、1+1が2以上の力を発揮することを体験しました。野党と市民の共闘は、政治を国民の手に取り戻すたたかいの産物です。大切に、大きく育てたい。
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2016年07月28日,「赤旗」)

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仏映画「奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ」/マンションシャール監督に聞く

アウシュビッツ学ぶ/生徒は信頼に応えた
 パリ近郊、移民の多い街の高校を舞台にした映画「奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ」。実話にもとづいて完成させたマリーカスティーユ・マンションシャール監督は「今日こそ重要な題材の映画化」だと語ります。
 (児玉由紀恵)

 映画の冒頭、卒業証明書を得るために高校に来た卒業生と教師との間でのスカーフ着用の是非をめぐる言い争いが、地域性を映し出します。ここは、29の民族が混在する地域です。
 映画化の始まりは、そこの高校で学んだアハメッド・ドゥラメさんからのマンションシャール監督へのメールでした。
 問題児の多いクラスが、教師の提案でアウシュビッツをテーマにしたコンクールに挑み変わっていったという話。そこには教師から生徒たちへの強い信頼がありました。

戦争の体験を伝えるために
 「彼は高校1年のときに経験したことがきっかけで内面から変わっていきました。学校教育が青年の人生にいかに影響を与えたか。過去のことをどうやって次の世代に伝えるか。過ちからどう学ぶか。どうすれば自分を信じられるようになるか。そのすべてを盛り込んで描きたいと思いました」
 生徒たちが奔放に自己主張し、まとまりのないクラス。彼らの表情が生き生きと描かれています。
 「高校生役の子どもたちは、個性の強い俳優を選びました。臆病で引っ込み思案のような子でも強いものを持っているので、変わったことをしたり言ったりしてくれる。それをそのまま映像に生かしたところもあります」
 名女優アリアンヌ・アスカリッドさんが演じる女教師アンヌ・ゲゲンは、高校1年のクラスの担任で、歴史と地理を教えます。情熱的で生徒に真正面から向き合い「退屈な授業はしない」と言います。教師仲間には「手に負えない」と評されているこのクラスの生徒たちに「レジスタンス運動と強制収容所を扱うコンクール」への参加を訴えます。戦争の体験を次世代に伝えていくため、61年に創設された国の行事です。
 「劣等生にできるわけない」と言う生徒に、「自分に自信をなくして劣等生を装っている」と叱咤するゲゲン先生。資料を調べたり記念館を訪ねたりホロコーストの実態を徐々に知っていく生徒たちは、収容所からの生還者レオン・ズィゲルさんから体験を聞きます。

相手受け入れ、偏見を持たず
 実際の体験者ズィゲルさん(昨年死去)が登場し、ナチスに肉親を奪われ「やり場のない怒りを持って生きた」と真摯に語るのを生徒たちが聞き入るシーン。演技指導をせず、一回だけの撮影で通しました。
 「話を聴いて感動するか泣き出すか、何が起こるかわかりませんが、純粋な気持ちが表れてほしいと思いました。レオンの話を一人のフランス人、市民として聴き、理解し、自分の栄養にしてほしかったので、なるようにまかせたのです。私自身はレオンに会ってすごいインスピレーションを受けていましたが、その感動を押し付けるようなことをしたくなかった」
 女教師ゲゲンのモデルの先生が生徒たちを信じていたのと同じように、監督自身、出演する若者たちに信頼を寄せての撮影でした。
 「フランス国内でみると、映画の舞台の地域よりもっと多い多様な民族の人たちが住んでいるでしょう。そういう社会で生きていくには、相手を受け入れ、偏見や優越感を持たず、相手の過去も文化も受け取ること。これを全部やれば共存しあうことが可能だと信じています」

 8月6日から東京・エビスガーデンシネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかで公開、順次全国で

1963年生まれ。プロデューサー、脚本家、監督。監督第3作「奇跡の教室」でワシントン・ユダヤ映画祭観客賞・最優秀作品賞ほか受賞多数
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2016年07月25日,
「赤旗」)

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芸能テレビ/ウニー・ルコント監督/映画「めぐりあう日」/過去と向き合い前進する力を

母はなぜ娘を捨てた
 過去と向き合い、力強く人生を踏み出す―。映画「めぐりあう日」は、捨てられた娘と捨てた母が30年越しに再会する葛藤の物語。自らの体験を本作に投影した、ウニー・ルコント監督に聞きました。
 湯浅葉子記者

 韓国で孤児として育った監督は、9歳で渡仏しフランス人の養子になります。その体験を基にしたデビュー作「冬の小鳥」(2009年)では、親に捨てられた少女の、絶望からはい上がる生命力を鮮烈に描きました。
 2作目となる本作では、「捨てられた側と捨てた側の人生に、その後どんな影響が出ているかを描きたかった」と監督。「私にもかつて、過去の一部が毒のように人生をむしばむ感覚がありました。過去に立ち戻っても現実と向き合うことが大切だと描いた作品です」
 産後すぐに捨てられたエリザ(セリーヌ・サレット)。実母を捜すため、息子のノエと港町ダンケルクに越してきます。一方、理学療法士として働く彼女の元に、熟年女性のアネット(アンヌ・ブノワ)が通院しだします。2人は交流を深めるうちに不思議な親しみを覚えますが、彼女たちをつなぐ過去が明らかになると、厳しい葛藤に直面することになります。
 「エリザは自分のルーツがわからず前に進めなくなっていた。ですから何が何でも、自分の両親にどんな物語があり、なぜ自分が生まれ、捨てられることになったかを知る必要があったのです」
 一方、産後間もない娘を捨てた過去のあるアネット。2人の関係を示唆するのが、理学療法の場面です。エリザが肌と肌を濃密に触れ合わせ、アネットの裸体をもみほぐしてゆくくだりは、2人の言葉にならない苦悩と生きるよすがを求める心が見えてくるよう。この場面に、監督は象徴的な意味を込めたといいます。

「お守り」の言葉
 本作の原題は、「あなたが狂おしいほどに愛されることを、私は願っている」。作家アンドレ・ブルトンの著書『狂気の愛』にある、生後間もない娘にあてた手紙の一文です。25歳の時にこの本と出合い、人生の「お守り」にしてきたという監督。「この文章は、エリザの人生に寄り添い、人生に意味を与えてくれる。映画自体が発する言葉です」といいます。
 舞台のダンケルクは、第2次世界大戦中にナチスに侵攻され、後に再建された町。「その後も衰退と再建を続けてきた町の歴史が気に入った」と監督。エリザとアネットの再生にも重なります。
 「私も捨てられた体験を経て、トラウマを乗り越える強さを持ち、今回の物語を語れました。人間は本来、悲劇を乗り越え前進する力を持っているのだと思います」
 今年で50歳。前作では多数の映画賞を受賞しました。「人間を深く掘り下げ探求したい。そして、いろんな境遇に置かれている人たちの、心の内面を含めた真実の姿に近づくことが、私の一番目指しているところです」

 *30日から東京・岩波ホールで公開、順次全国で
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2016年07月24日,
「赤旗」)

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ヒトラー生家強制収用決定/オーストリア政府

 【ベルリン=時事】オーストリア政府は12日、北部ブラウナウに残るナチス・ドイツ総統ヒトラーの生家を家主の女性から強制収用することを閣議決定しました。建物がナチス支持者の「聖地」になる事態を避けるのが狙いです。
 報道によると、ソボトカ内相は「建物を取り壊すのが最も明確な解決策だ」と主張。博物館や商店にして政治色を払拭(ふっしょく)しようという案もあり、内務省は今後、方針を固めます。
 政府はこれまで家主と利用方法などについて話し合いを続けてきましたが、まとまらず、2011年から空き家になっていました。ヒトラーは1889年4月20日にこの建物で生まれました。
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2016年07月15日,「赤旗」)

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ポケモンゴー、自粛を/追悼地での利用に反発/米欧

 任天堂などが開発したスマートフォン向けゲームアプリ「Pokemon GO(ポケモンゴー)」が米国などで爆発的な人気となる中、戦争犠牲者の追悼施設や墓地での利用は不謹慎だとして、神聖な場所ではゲームを控えるよう求める声が相次いでいます。
 ポケモンゴーはスマホの位置情報機能を使い、現実世界を舞台にスマホ画面を見ながら街中に隠れているポケモンを探して遊びます。ただ、熱中し過ぎて私有地に不法侵入したり、強盗に遭ったりする騒ぎも報告されています。
 米国では、ナチス・ドイツのユダヤ人大虐殺に関するホロコースト博物館(ワシントン)の広報担当者が米各紙に「(ポケモンゴーの利用は)われわれが掲げる教育や追悼の目的に当てはまらない」と反発。戦没者やケネディ大統領らが眠るアーリントン国立墓地(ワシントン近郊)も、公式サイトで「全ての埋葬者への敬意として、墓参する人々には最大限の礼儀が求められる」と自粛を促しました。
 欧州でも、ポーランド南部アウシュビッツ強制収容所跡地の国立博物館がツイッターで「ポケモンゴーの使用を許すな。犠牲者追悼への冒涜(ぼうとく)だ」と批判。AFP通信によると、担当者は「ここは数十万人が苦しんだ場所であり、不適切だ」と述べ、開発会社にアウシュビッツをアプリから削除するよう要請しました。
 (時事)
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2016年07月15日,「赤旗」)

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盧溝橋事件79年/現地で記念式典/中国

 【北京=小林拓也】日本の中国への全面侵略戦争のきっかけとなった盧溝橋事件(1937年7月)から79年となった7日、事件現場となった北京市郊外の盧溝橋近くにある中国人民抗日戦争記念館で記念式典が開かれました。中国メディアによると、郭金竜・北京市共産党委員会書記や市民、学生ら500人が参加しました。
 中国外務省によると、王毅(おうき)外相は同日、訪中した潘基文(パン・ギムン)国連事務総長との会談の中で、安倍政権の歴史認識を念頭に、「歴史を逆行させようとする言動は阻止しなければならない」と発言。抗日戦争での勝利は、「反ファシズム戦争勝利に大きく貢献し、国連成立のための強固な基礎を打ち立てた」と強調しました。
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2016年07月09日,「赤旗」)

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変えるのは、私だ/寺脇正博さん(66)福島県相馬市/力合わせ戦争法廃止

 日本共産党は、変身したと思います。大躍進することを期待しています。今回の1人区での野党共闘の実現は、心から感謝しています。安保法制(戦争法)を廃止させるためには野党が力を合わせる必要があります。県立高校で社会科の教師をしてきました。「教え子を戦場に送らない」ために今、生徒に手紙を書いて、自民・公明政治のひどさを訴えています。憲法を改悪して、基本的人権を蹂躙(じゅうりん)する安倍政治のファシズムを阻止しましょう。原発ゼロを実現しましょう。私は、そのために奮闘します。
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2016年07月06日,「赤旗」)

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女性の目アラカルト/ドイツ/ナチT4作戦の告発と追悼

 クラシック音楽好きなら誰もが知っているベルリン・フィルハーモニー。私もクリスマスコンサートを楽しみました。
 そのホール入り口前の広場に建つ赤い銅板の碑。芝生の向こうには青いガラスのモニュメント、それにそって資料ケースが並びます。ナチスによるT4作戦(安楽死作戦)の告発と犠牲者追悼の場です(写真)。かつて、ここティアガルテン通り4番地に、T4作戦本部が置かれていました。
 通りの名前をとってT4と名付けられたこの作戦は、1939年、第2次世界大戦開始と同時に始められ、ドイツ人を含む20万人余が殺されました。
 ヒトラーの命令で、国内の精神病院や障害者施設はもとより、医療、宗教関係者などを文字通り総動員。体に障害のある人、精神を患っている人、あるいは「生きるに値しない生命」と勝手に判断した人々をリストアップし、戦争のじゃま者として殺し続けた。と、ビデオ映像証言を交えて資料は生々しく告発します。犠牲者の家族は戦後初めて、その真実を知るのです。
 人間は平等であるという価値観すら捨て去られた時代があったことを忘れるな。強い警告を放つ碑と世界に知られるコンサートホール。このような光景が普通に存在するのも、歴史と共に生きる国ならではです。
 (ベルリン在住 杏・フランク)
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2016年07月05日,「赤旗」)

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ノーベル平和賞作家エリ・ウィーゼルさんが死去

 【ニューヨーク時事】ナチス・ドイツの強制収容所での体験を基に多くの著作を残し、ノーベル平和賞を受賞したユダヤ系米国人作家のエリ・ウィーゼル氏が2日、ニューヨーク市の自宅で死去しました。87歳。
 1928年、ルーマニア生まれ。第2次大戦中、15歳だった44年に家族と共にアウシュビッツ強制収容所へ送られました。その後、ブーヘンワルト強制収容所に移送され、45年に解放されました。ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)を題材にした小説や回顧録など50冊以上の著作を残しました。86年にノーベル平和賞を受賞しました。
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2016年07月04日,「赤旗」)

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【6月ヘッドライン】

*         詩壇/自由という名の詩句

*         「軍事研究しない」/科学者の決意、支えは市民/シンポ

*         潮流

*         共通の歴史教科書完成/2008年から編さん/秋から使用開始/独・ポーランド

*         音楽/サンクトペテルブルグ・フィル公演/眼前に迫る苦難の歴史

*         背表紙/『これでいいのか!日本の民主主義』……暴言と名言

*         ゲルダ/イルメ・シャーバー著、高田ゆみ子訳/評者篠田有史フォトジャーナリス

*         アウシュビッツの元看守(94)に禁固刑/17万人の殺人ほう助で

*         英議員殺害容疑者を訴追/注目される動機

*         伊の保守系紙が「わが闘争」配布/ユダヤ団体など批判

*         映画/「帰ってきたヒトラー」(ドイツ)/逆説的な手法で鋭く風刺

*         犠牲者遺品群を半世紀ぶり発見/アウシュビッツ/ポーランド

*         大阪AALA定期総会開く

*         朝の風/津島佑子最後の作品

*         歌手加藤登紀子さん/生誕100年記念エディット・ピアフ歌うコンサート/絶望を希望に変える歌

*         犠牲者遺品群を半世紀ぶり発見/アウシュビッツ/ポーランド

*         大阪AALA定期総会開く

*         朝の風/津島佑子最後の作品

*         歌手加藤登紀子さん/生誕100年記念エディット・ピアフ歌うコンサート/絶望を希望に変える歌

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【6月本文】

詩壇/自由という名の詩句

 横浜詩人会が主催する今年の現代詩セミナーで、作家の荻野アンナが「日常から詩をつかむ」と題して講演を行った。冒頭荻野は、学生時代、詩誌『ユリイカ』に投稿していた詩作体験を披歴し、一度も採用にならなかったため小説やラブレーの研究に専念したと語り、会場を沸かせた。ちなみにその時の選者は鈴木志郎康だったそうだ。
 本題で荻野は、日々に息づく詩をさぐるため、昨年11月に起きたフランス同時多発テロ事件を取り上げた。事件から間もなくパリのテロ現場を訪れた荻野は、そこに手向けられた花束やろうそくに交じって多くのメッセージカードがあり、そのほとんどに詩句が書かれていたことを紹介した。中でも目を引いたのが、小学生たちがエリュアールの「自由」から好きな一節を選び、絵を添えた連作カードだった。たぶん教師が呼びかけて作成したのだろうが、子どもから大人まで、詩が生活に根づいている証左だと指摘した。
 ポール・エリュアールは、ナチス占領下でレジスタンス運動を闘った詩人だ。「学校のノートの上/勉強机や木立の上/砂の上 雪の上に/君の名を書く」(安藤元雄訳)ではじまる代表作「自由」では、生活のさまざまな部面でもっとも尊重され守るべきものとして「君=自由」の名が記されていく。たとえ「望んでもいない不在の上/むきだしになった孤独の上/死神の歩みの上に」さえも。
 テロや戦争の対極にあるのが自由であり、詩は自由を守る力になると信じるフランス人が、いまだ大勢いることに期待したい。翻って為政者によって自由が脅かされている今の日本はどうだろうか。とにかく、あきらめずに自由という名の詩句を書き続けていきたい。
 (木島 章・詩人)
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2016年06月27日,「赤旗」)

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「軍事研究しない」/科学者の決意、支えは市民/シンポ

 シンポジウム「天文学者と語りあう平和」が23日夜、東京都内で開かれました。安倍政権のもとで科学研究の軍事への動員の動きが加速するなか、「軍事研究をしない」という科学者の決意を市民が支えようと、180席の会場を埋めた天文関係者や市民が誓い合いました。
 参加者は、映像による宇宙旅行≠ナ、ふるさと地球の大切さを共有。争うことの無意味さを確認しました。
 天文学の池内了・名古屋大学名誉教授は、軍学共同の急進展に対して最近、新潟大学や琉球大学などが軍事研究をしないと決めたと紹介。「こうした決議は、皆さんの支えがあって継続される」と訴えると、会場は大きな拍手で応じました。
 志田陽子・武蔵野美術大学教授は憲法学の立場から講演。研究の自由や市民の知る権利が踏みにじられ、「統治者が守るべきルールが守られず、科学の筋道が変わろうとしている」と告発しました。ナチスドイツ時代の科学者の例を引いて、成果がどう使われるのか、科学者自身が「血の通った想像力」をもつ大切さを強調しました。
 パネル討論では、市民・学生が、科学者と意見交換。軍事と科学の歴史や社会とのかかわりを討論しました。
 戦争・平和と地球をテーマにしたミュージカルを手掛ける松本MOCOさんは「軍事研究のことも、研究者の迷いも初めて知りました。自分で考えて世界に向けてどう行動すればいいのかわかった」と話していました。
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2016年06月25日,「赤旗」)

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潮流

 歓喜と失望が英国を二分しました。EU(欧州連合)からの離脱か残留か。世界が注視した国民投票、英国民の多数は「さようならEU」の道を選びました▼発足以降初めて加盟国が抜けた衝撃は大きい。残留を訴えてきたキャメロン首相は辞意を表明。EU第2位の経済大国の離脱は、統合を進める欧州だけでなく、各地に影響を及ぼしています。ポンドやユーロの暴落で日本でも急激な円高・株安が進みました▼離脱派が広がった背景には移民や雇用、暮らしへの積み重なった不満があるといわれています。英政府が発表した2015年の移民数は33万人超と前年より2万人も増加。そのうちEU諸国からの移民は半数を超えています▼英国はアメリカに次ぐ格差大国。格差の拡大と連鎖は国民生活を疲弊させています。そこに移民問題やEUの緊縮政策が拍車をかけました。もともと英国は自国通貨のポンドを使うなど、EUとは一定の距離をとってきました▼2度の大戦とナチスによる大量虐殺の惨禍を味わった欧州。戦後、平和や民主主義、人権や少数民族の尊重をかかげた共同体づくりが進んだのも、対立の歴史をくり返してはならないという思いがあったからです▼いま欧州では移民や難民排斥の動きとともに反EUを叫ぶ極右勢力が国民の政治不信につけこみ、勢いづいています。国境をこえた共同体の歩みは今後も紆余曲折があるでしょう。しかし国を閉ざし、世界が内向きの発想へと走ってしまえば、歴史は逆戻りするだけです。
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2016年06月25日,「赤旗」)

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共通の歴史教科書完成/2008年から編さん/秋から使用開始/独・ポーランド

 【ベルリン=時事】ドイツ外務省は22日、隣国ポーランドと共同で編さんした学校教科書「欧州、私たちの歴史」の第1巻が完成したと発表しました。それぞれの言語で書かれ、日本の中学生にほぼ相当する学年で秋から使われます。
 第2次大戦ではナチス・ドイツがポーランドに侵攻し、多大な被害を与えましたが、両国は戦後、関係を改善。2008年に教科書編さん委員会が立ち上がり、双方の歴史家らが内容を議論してきました。
 独メディアによると、シュタインマイヤー独外相は、教科書を通じ歴史に対する「共通のまなざし」を育んでほしいと呼び掛けました。ポーランドのワシチコフスキ外相は「(この教科書で学べば)固定観念から解放され、互いに寛容になれる」と強調しました。
 第1巻は先史時代から中世までをカバー。今後さらに3巻をまとめ、現代までを網羅します。
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2016年06月24日,「赤旗」)

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音楽/サンクトペテルブルグ・フィル公演/眼前に迫る苦難の歴史

 ロシアの指揮者ユーリ・テミルカーノフが、芸術監督を務める同国最古の楽団、サンクトペテルブルグ・フィルハーモニー交響楽団を引き連れ来日した。旧称レニングラード・フィル。その一夜にショスタコーヴィチ交響曲第7番「レニングラード」を取り上げた。
 同曲はナチス・ドイツの激しい戦闘、「レニングラード封鎖」の中で作曲初演された。「レニングラード」の名で呼び習わされるのも、その悲惨な歴史的事実に重ねて聴き伝えられてきたことによる。閉ざされた街で生き延びるため、人肉売買まで横行したことが今では公になっている。
 テミルカーノフは音楽を激烈にあおらず、その切り口はけしてリアルな絵柄を求めるものでない。押し付けがましさを排し、隅々までバランスが行き届く。どのように聴くか、その自由さがショスタコーヴィチの醍醐味といわんばかり。
 当楽団の表現の幅は広い。音が立ち上り、その強弱がおのずと聴き手の頭に絵を結ぶ。遠くに鳴る小太鼓が音を増し、金管群も音圧を上げれば、大隊列の軍隊行進が目の前に迫り来る。また、この作品のためにショスタコーヴィチが増強した金管群や、打楽器群が炸裂する総奏では、誰しも銃器だけでない、戦闘機の飛び交う現代戦争が目に浮かぶだろう。静かに流れるアダージョでは、この楽団の背負う街の苦難の歴史や、奏者自身の心の内にまで思いをはせたくなる。
 なるほど、この聴き手との共感こそ同作品の生命力だというのがテミルカーノフの狙いなのだろう。
 (宮沢昭男・音楽評論家)
 2日、東京・サントリーホール
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2016年06月20日,「赤旗」)

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背表紙/『これでいいのか!日本の民主主義』……暴言と名言

 選挙の前はだんまりを決め込み終わると改憲を持ち出す―。安倍首相の手口にごまかされないために、榎澤幸広ほか編著『これでいいのか! 日本の民主主義』(現代人文社・1500円)はピッタリです。「ナチスの手口を学んだらどうか」「ポツダム宣言をつまびらかに読んでいない」等々、首相や閣僚らの暴言を取り上げ、何が問題か読み解きます。首相らが歴史の基本的知識を欠き、人間が生まれながらに持つ人権≠ニいう近代憲法が立脚する考え方を否定していることがよくわかります。
 同時に、市民の中から生まれた名言も収録。ママの会の西郷南海子さんは本書で、菅官房長官の「(子どもを産んで)国家に貢献して」発言に「私たちの子どもを頭数としか見ていない」と怒り、権力に抗して自分の持つ武器は「言葉」だと語ります。シールズの高野千春さんは安保法制をめぐる首相答弁を「自衛隊員は死んでも構わないという前提」で話していると批判。「どんなに小さな行動でもやれば何かが必ず変わる」と明言。独裁と戦争か、新しい政治への道か、日本の岐路があぶりだされています。
 (亨)
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2016年06月19日,

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ゲルダ/イルメ・シャーバー著、高田ゆみ子訳/評者篠田有史フォトジャーナリスト

ファシズムに抗した写真家追う
 ちょうど80年前の7月、スペインに世界の注目が集まった。共和国政府に対して軍が反乱を起こし、反乱軍を独・伊のファシスト政権が、共和派をソ連が後押しする内戦が勃発したのだ。
 この本は、報道写真家としてスペイン内戦に参加し命を落とした、ひとりの女性の詳細な記録である。ゲルダ・タローについては、報道写真家・キャパの恋人だったという程度のことしか知らなかった。キャパの写真だと思われていた多くの写真がゲルダのものだったというのは、驚きだ。ゲルダは写真を始めたばかりだったが、戦争という緊張感の中で短期間に腕を上げていったようだ。人物の撮影に関しては、キャパより上ではないかとさえ思う。彼女の語学力、そして快活な性格と美貌が大いに役立ったのだろう。写真に必要なのは、被写体との対話だ。共和派を助けるために世界中から義勇兵が集まり、後のノーべル賞作家もいたが、彼らもゲルダに魅せられた。
 しかし1年あまりの活動後、取材中に戦車にひかれ死んでしまう。その死は、共和派を鼓舞するために利用されるが、それゆえに冷戦時代の西側では、ゲルダは抹殺される。
 ゲルダがなぜ内戦を撮ることにのめり込んでいったかが、これを読むと伝わってくる。ユダヤ人としてドイツに生まれ、パリに亡命、そこへもファシズムの影が忍び寄る。苦しい生活のなかで似た境遇のキャパと出会う。その時起きたスペイン内戦は、ファシズムとのたたかいの場であり、どんなに危険であろうと、そこが彼女の居場所だった。
 スペイン内戦に興味がある方にも、必読の一冊である。

 56年生まれ。ドイツの歴史学者、作家、キュレーター。本書は初の日本語訳
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2016年06月19日,「赤旗」)

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アウシュビッツの元看守(94)に禁固刑/17万人の殺人ほう助で

 【ベルリン=時事】DPA通信などによると、ドイツ西部デトモルトの裁判所は17日、第2次大戦中に現在のポーランドにあったナチスのアウシュビッツ強制収容所で看守を務め、約17万人の殺人をほう助した罪に問われていた元ナチス親衛隊員ラインホルト・ハニング被告(94)に、禁錮5年の判決を言い渡しました。
 検察は被告が看守の役割を通じ、収容所で行われていたユダヤ人らの虐殺に加担したと訴え、禁錮6年を求刑。弁護側は被告が殺害に直接関与していなかったとして、無罪を求めていました。被告は裁判で、収容所の任務に就いていたことについて「恥ずかしく思い、深く後悔している」と謝罪していました。
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2016年06月19日,「赤旗」)

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英議員殺害容疑者を訴追/注目される動機

 【ロンドン=時事】英国のウェストヨークシャー州警察は18日、中部リーズ近郊のバーストールで最大野党・労働党のジョー・コックス下院議員(41)が銃撃されるなどして殺害された事件で、同地に住む男(52)を殺人や銃の不法所持などの容疑で訴追したと発表しました。
 同警察当局者は17日、捜査の途中経過を説明、容疑者の極右思想や精神疾患と事件との関連について調べていることを明らかにし、これまでの情報から、単独の計画的犯行であるとの見方を示していました。ただ、犯行の動機などについては依然明らかではありません。
 コックス議員は、英国の欧州連合(EU)残留か離脱かを問う23日の国民投票に向け、残留派として活発に活動していました。容疑者が「ブリテン・ファースト(英国が第一)」と叫んでいたという証言もあり、極右思想に基づくEU離脱支持の立場から議員に反発したことが、殺害の動機だったかどうかが注目されています。
 当局者は「精神保健治療と容疑者の関連」は「捜査で追及している明白な線」であり、極右思想との関係も「殺害の動機を解明する上で、優先的な捜査事項」と認めました。
 英メディアは、警察が容疑者の自宅からナチスの紋章類や極右関係の文献を押収したと報じるなど、容疑者と極右思想の関係を指摘しています。容疑者が銃の製造法が載った本を所持していたとの報道もありますが、当局者は「銃器の入手経路の捜査を進める」と述べるにとどめていました。
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2016年06月19日,「赤旗」)

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伊の保守系紙が「わが闘争」配布/ユダヤ団体など批判

 AFP通信などによると、イタリア保守系紙ジョルナレは11日、ナチス・ドイツ総統ヒトラーの自伝的著書「わが闘争」を配布しました。イタリアは第2次大戦でドイツと同盟を組んだ過去もあり、レンツィ首相がツイッターで「下劣だ」と批判するなど物議を醸しています。
 ジョルナレ紙は11日から全8巻のナチス・ドイツ史の発売を順次開始し、第1巻購入者に「わが闘争」を無料で進呈しました。イタリア人歴史家による批判的注釈付きで、同紙は「拒否するには知らなければならない」と説明しています。
 これに対し、イタリアのユダヤ人組織代表は「恥ずべき行為だ」と非難。反ユダヤ活動監視団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター」のズロフ所長は、伊紙コリエレ・デラ・セラに、新聞が売り上げを伸ばすため「わが闘争」を使うのは聞いたことがないとコメントしました。
 ジョルナレ紙はベルルスコーニ元首相の親族が経営し、発行部数は約20万部。移民問題などで右寄りの立場を取りますが、紙面や経営陣が反ユダヤ的姿勢を疑われたことはないといいます。(時事)
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2016年06月16日,「赤旗」)

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映画/「帰ってきたヒトラー」(ドイツ)/逆説的な手法で鋭く風刺

 現代に甦ったヒトラーを「人間的」に描き、笑いと当惑が交錯する風刺喜劇。ドイツで賛否の議論を呼んだヴェルメシュのベストセラー小説を映画化した。
 自殺したヒトラーがベルリンの空き地に忽然と現れる。繁栄した平和な風景を訝り、売店の新聞で69年後の世界だと知る。衝撃で卒倒するヒトラーだが、闘いを続けよとの「神意」だと異常な野望が再燃する。
 芸人と思い込んだテレビ局のサヴァツキ(ファビアン・ブッシュ)は、ヒトラーを生放送に起用。ナチス時代そのままの思想とスタイルで、民族差別を煽り女性や民主主義を猛然と攻撃した。痛烈な皮肉の物まねと聴衆は誤解し喝采する。
 出演番組の視聴率は急上昇し、ネット空間はヒトラーの絶好の宣伝の場に。正体を見破る戦争被害者もいたが、希代の扇動家に大衆の心は再び奪われていく。サヴァツキが本物と気づいた時、すでにヒトラーは独裁者として復活を遂げて…。
 ヒトラーを怪演する無名の舞台俳優(オリヴァー・マスッチ)が街を巡り、政治家や市民の反応を記録。ヒトラーへの警戒心が薄れている危うい現実を映し出す。
 ヒトラーの「怪物視」は、ナチス台頭の原因や教訓を隠すと危惧するデヴィッド・ヴェンド監督。あえてヒトラーを「魅力的」に描くことで、歴史と向き合う真摯な論議を喚起する。
 極右勢力の台頭や難民排斥など、増大するファシズムの脅威。逆説的なアプローチでヒトラーと対決した異色の反ナチ映画である。
 (平沢清一・映画ライター)
 17日から東京・TOHOシネマズシャンテほか順次全国で公開
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2016年06月15日,「赤旗」)

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犠牲者遺品群を半世紀ぶり発見/アウシュビッツ/ポーランド

 ナチス・ドイツによるホロコースト(ユダヤ人大虐殺)の舞台となったポーランド南部のアウシュビッツ強制収容所跡から1967年に研究者チームが回収したものの、その後行方不明となっていた犠牲者の遺品1万6000点以上が見つかり、跡地にある国立博物館に返還されました。博物館が7日発表しました。
 研究者チームは67年夏に収容所の火葬場とガス室の跡地付近で発掘調査を実施しました。当時のドキュメンタリー映像に、博物館の保有量を上回る大量の遺品が回収される様子が映っていたため、博物館が数カ月にわたって捜索し、ワルシャワのポーランド科学アカデミーで発見しました。遺品は靴の断片、宝石、腕時計、ブラシ、鍵などで、段ボール48箱に保管されていました。
 (時事)
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2016年06月09日,「赤旗」)

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大阪AALA定期総会開く

 大阪アジア・アフリカ・ラテンアメリカ連帯委員会(大阪AALA)はこのほど、大阪市内で第54回定期総会を開きました。
 総会では、
@平和と歴史の進歩、諸国民の幸せをめざすA日本を戦争する国にさせない。ファシズムを許さず民主主義を前進させる―を柱に、戦争法廃止・立憲主義否定の閣議決定撤回明文改悪阻止東アジア共同体を目指す国際署名に取り組み、東アジア首脳会議の今年度議長国ラオスへ届ける―など方針を決議。その内容を織り込んだ総会アピールを採択しました。
 「沖縄の米軍軍属による日本人女性殺害・遺棄事件に対し、日米両政府に抗議し、辺野古新基地建設の中止と日米地位協定の抜本的見直し、米軍基地撤去を求める決議」を採択し、オバマ米大統領と安倍晋三首相に郵送しました。
 西澤信善・神戸大学名誉教授が「東アジアの経済成長と安全保障」と題して記念講演しました。
 理事長に長谷川道弘氏、事務局長に上村得世氏を選出しました。
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2016年06月08日,「赤旗」)

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朝の風/津島佑子最後の作品

 津島佑子の『半減期を祝って』が刊行された。この作品は、『群像』3月号(発売は2月初旬)に掲載された。彼女が68歳で亡くなったのは2月18日だから、遺言のような作品となった。
 「みなさま、おなじみのセシウム137は無事、半減期を迎えました。正確にはすでに四年前、半減期を迎えていたのですが、今年は戦後百年という区切りの年です」という女性アナウンサーの声。戦後百年にあわせて半減期を祝おうというのだ。
 一人の老女は、半減期をむかえたところで、「なにも変わった気がしない」のだが、しかし、この30年でなにもかもが変わってしまったとも思う。
 人々の差別、選別、ファシズム的少年団の組織…。ヒトラードイツのようなファシズム化が社会をおおっていた。「変化は思いがけないところからはじまった」と老女は、放射能で汚染された美しくかがやくトウキョウ湾を眺め、涙を流すのだ。
 死を前にしての警世の声である。暴走する安倍政治が、作品のような危機感を抱かせたのだろう。朝ドラの原作となった「火の山」で軍国主義下の日本を批判的に描いたが、彼女の杞憂を晴らすために、来るべき参院選は、「安倍政治の全体を問う」たたかいにしなければならない。
 (聳)
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2016年06月06日,「赤旗」)

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歌手加藤登紀子さん/生誕100年記念エディット・ピアフ歌うコンサート/絶望を希望に変える歌

戦火生き抜いた女たち/私も逆流にあらがって
 エディット・ピアフ(1915〜63)生誕100年を記念して、歌手・加藤登紀子さんが伝説のシャンソン歌手の人生を語り歌う全国ツアーを行います。日本語訳、脚本、演出、すべてを自分で手掛けた「ピアフ物語」。加藤さんに、コンサートに込めた思いを聞きました。
 板倉三枝記者

 初めてピアフを歌ったのは、デビュー前の64年。20歳で第1回日本アマチュアシャンソンコンクールに出場したときのことです。
 前年、ピアフが47歳で病死。テレビで繰り返し流れた彼女の代表曲「愛の讃歌」に刺激を受け、コンクールでピアフの「7つの大罪 メア・キュルパ」をフランス語で歌いました。女は恋をすると、どんな罪も犯してしまう≠ニいう激しい恋の歌。結果は4位でした。
 「ありありと覚えています。審査委員長の評論家・蘆原英了さんが、笑いながら『赤ん坊の顔をしてピアフを歌ったって、男心は動きませんよ』とおっしゃって。次の年、ピアフは敬遠してかわいい初恋のシャンソンを歌って優勝しました。それからしばらくピアフはお預けでした」
 「7つの大罪 メア・キュルパ」を歌う今回は、「50年前のリベンジのようなもの」と語ります。
 加藤さんにとってピアフの歌が特別な存在になったのは、2002年に夫の藤本敏夫さんを亡くしたときです。ピアフが、飛行機事故で亡くなった恋人マルセル・セルダンのために歌った「愛の讃歌」を05年のデビュー40周年で歌いました。
 「歌った時、不思議な力がわき起こるのを感じました。抑えきれなかった嗚咽(おえつ)が、喜びに変わるような瞬間でした」

母と重ねて
 生後数カ月で母親に捨てられたピアフ。路上で歌っているところを見いだされ、晩年モルヒネ中毒に苦しみながらも歌うことだけはやめませんでした。
 「ピアフ物語」は、ピアフの生きた時代も大きなテーマです。
 第1次世界大戦が始まった次の年にフランスで生まれたピアフ。大スターとして活躍した40年当時は、フランスはナチス・ドイツの占領下でした。物語は、ピアフの14歳年上の友人でドイツ生まれの米女優マレーネ・ディートリヒ(1901〜92)を進行役に展開します。実は101歳になる加藤さんの母・淑子さんも、ピアフと同い年生まれでした。
 「3人が生きた20世紀とは何だったのか。ピアフの初期のヒット曲は全部戦争の歌です。彼女の生きた時代をしっかりと見つめ、そこにつながる母やディートリヒを通して、二つの戦争を生き抜いた女たちの思いにたどりつきたいと思います」
 ナチス占領下のピアフの足跡を徹底的に調べた加藤さん。「ピアフ物語」のハイライトは、戦争中に恋人だったユダヤ人ピアニスト、グランツベルクとのエピソードです。
 ピアフは、危険を冒してナチスの迫害から彼をかくまいました。レジスタンス運動を応援し、戦争中もナチスに迎合せず戦後、人々から絶対の信頼を得ました。
 一方、ハリウッド・スターとして活躍していたディートリヒは、ヒトラーの帰国命令を拒否し、女優としてではなく、連合軍の正式な兵士として戦火をくぐります。
 「すごい決意だったと思います。彼女は、ドイツの兵士に向けてドイツ語で『リリー・マルレーン』を歌って聞かせました。国を愛することは戦争することじゃない、と思いながら。歌は戦場の放送で流れ、その間だけは敵も味方もたたかうことをやめたそうです。どんな男たちも抵抗できなかった独裁者ヒトラーに、一人の女性が立ち向かった。考えられないでしょ」

勇気と誇り
 「私たちにできることは、生きるために歌うこと。それは絶望を希望に変えること」と加藤さん。
 「日本では、歌手や俳優は自分の思想・信条がなくてもいいと思われがちです。でもこの2人はそうではありませんでした。ピアフは歌が人々に訴えるには、どういう詩じゃなきゃいけないかをすごく考えた人でした。2人の生き方にはいつも励まされます」
 今年2月にパリを訪れ、映画音楽の大御所フランシス・レイさんと25年ぶりに再会。戦後、最晩年のピアフが作詞し、彼が作曲した「響け太鼓」の誕生エピソードを聞きました。
 「曲ができるまで部屋から出るな、と言われたそうです。戦争で毎日のように死んでいく人のために、場末で泣き叫んでいる人のために、ヒロシマのために、パール・ハーバーのために、太鼓をたたこうという歌です。ピアフが書いたほぼ最後の歌詞だと思います」
 「今、世界のあちこちで起こっているすべてが不安に思えます。だからこそ、何があっても流されず、のみ込まれず、果敢に生きていきたい。自分の中に勇気と誇りがあって初めて逆流に抵抗できると思います」
 「響け太鼓」の披露は日本で初めてです。

「加藤登紀子コンサート ピアフ物語」
 5日=山形・シベールアリーナ、19日=大阪・梅田芸術劇場、25日=群馬音楽センター、7月2、3日=東京・Bunkamuraオーチャードホール
03(3352)3875トキコ・プランニング

かとう・ときこ=1943年、中国・ハルビン市生まれ。東大在学中の65年、第2回日本アマチュアシャンソンコンクールで優勝し、歌手デビュー。「ひとり寝の子守唄」「知床旅情」でレコード大賞歌唱賞受賞。近刊に『愛の讃歌 エディット・ピアフの生きた時代』(東京ニュース通信社)
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2016年06月05日,「赤旗」)

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犠牲者遺品群を半世紀ぶり発見/アウシュビッツ/ポーランド

 ナチス・ドイツによるホロコースト(ユダヤ人大虐殺)の舞台となったポーランド南部のアウシュビッツ強制収容所跡から1967年に研究者チームが回収したものの、その後行方不明となっていた犠牲者の遺品1万6000点以上が見つかり、跡地にある国立博物館に返還されました。博物館が7日発表しました。
 研究者チームは67年夏に収容所の火葬場とガス室の跡地付近で発掘調査を実施しました。当時のドキュメンタリー映像に、博物館の保有量を上回る大量の遺品が回収される様子が映っていたため、博物館が数カ月にわたって捜索し、ワルシャワのポーランド科学アカデミーで発見しました。遺品は靴の断片、宝石、腕時計、ブラシ、鍵などで、段ボール48箱に保管されていました。
 (時事)
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2016年06月09日,
「赤旗」)

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大阪AALA定期総会開く

 大阪アジア・アフリカ・ラテンアメリカ連帯委員会(大阪AALA)はこのほど、大阪市内で第54回定期総会を開きました。
 総会では、
@平和と歴史の進歩、諸国民の幸せをめざすA日本を戦争する国にさせない。ファシズムを許さず民主主義を前進させる―を柱に、戦争法廃止・立憲主義否定の閣議決定撤回明文改悪阻止東アジア共同体を目指す国際署名に取り組み、東アジア首脳会議の今年度議長国ラオスへ届ける―など方針を決議。その内容を織り込んだ総会アピールを採択しました。
 「沖縄の米軍軍属による日本人女性殺害・遺棄事件に対し、日米両政府に抗議し、辺野古新基地建設の中止と日米地位協定の抜本的見直し、米軍基地撤去を求める決議」を採択し、オバマ米大統領と安倍晋三首相に郵送しました。
 西澤信善・神戸大学名誉教授が「東アジアの経済成長と安全保障」と題して記念講演しました。
 理事長に長谷川道弘氏、事務局長に上村得世氏を選出しました。
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2016年06月08日,
「赤旗」)

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朝の風/津島佑子最後の作品

 津島佑子の『半減期を祝って』が刊行された。この作品は、『群像』3月号(発売は2月初旬)に掲載された。彼女が68歳で亡くなったのは2月18日だから、遺言のような作品となった。
 「みなさま、おなじみのセシウム137は無事、半減期を迎えました。正確にはすでに四年前、半減期を迎えていたのですが、今年は戦後百年という区切りの年です」という女性アナウンサーの声。戦後百年にあわせて半減期を祝おうというのだ。
 一人の老女は、半減期をむかえたところで、「なにも変わった気がしない」のだが、しかし、この30年でなにもかもが変わってしまったとも思う。
 人々の差別、選別、ファシズム的少年団の組織…。ヒトラードイツのようなファシズム化が社会をおおっていた。「変化は思いがけないところからはじまった」と老女は、放射能で汚染された美しくかがやくトウキョウ湾を眺め、涙を流すのだ。
 死を前にしての警世の声である。暴走する安倍政治が、作品のような危機感を抱かせたのだろう。朝ドラの原作となった「火の山」で軍国主義下の日本を批判的に描いたが、彼女の杞憂を晴らすために、来るべき参院選は、「安倍政治の全体を問う」たたかいにしなければならない。
 (聳)
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2016年06月06日,
「赤旗」)

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歌手加藤登紀子さん/生誕100年記念エディット・ピアフ歌うコンサート/絶望を希望に変える歌

戦火生き抜いた女たち/私も逆流にあらがって
 エディット・ピアフ(1915〜63)生誕100年を記念して、歌手・加藤登紀子さんが伝説のシャンソン歌手の人生を語り歌う全国ツアーを行います。日本語訳、脚本、演出、すべてを自分で手掛けた「ピアフ物語」。加藤さんに、コンサートに込めた思いを聞きました。
 板倉三枝記者

 初めてピアフを歌ったのは、デビュー前の64年。20歳で第1回日本アマチュアシャンソンコンクールに出場したときのことです。
 前年、ピアフが47歳で病死。テレビで繰り返し流れた彼女の代表曲「愛の讃歌」に刺激を受け、コンクールでピアフの「7つの大罪 メア・キュルパ」をフランス語で歌いました。女は恋をすると、どんな罪も犯してしまう≠ニいう激しい恋の歌。結果は4位でした。
 「ありありと覚えています。審査委員長の評論家・蘆原英了さんが、笑いながら『赤ん坊の顔をしてピアフを歌ったって、男心は動きませんよ』とおっしゃって。次の年、ピアフは敬遠してかわいい初恋のシャンソンを歌って優勝しました。それからしばらくピアフはお預けでした」
 「7つの大罪 メア・キュルパ」を歌う今回は、「50年前のリベンジのようなもの」と語ります。
 加藤さんにとってピアフの歌が特別な存在になったのは、2002年に夫の藤本敏夫さんを亡くしたときです。ピアフが、飛行機事故で亡くなった恋人マルセル・セルダンのために歌った「愛の讃歌」を05年のデビュー40周年で歌いました。
 「歌った時、不思議な力がわき起こるのを感じました。抑えきれなかった嗚咽(おえつ)が、喜びに変わるような瞬間でした」

母と重ねて
 生後数カ月で母親に捨てられたピアフ。路上で歌っているところを見いだされ、晩年モルヒネ中毒に苦しみながらも歌うことだけはやめませんでした。
 「ピアフ物語」は、ピアフの生きた時代も大きなテーマです。
 第1次世界大戦が始まった次の年にフランスで生まれたピアフ。大スターとして活躍した40年当時は、フランスはナチス・ドイツの占領下でした。物語は、ピアフの14歳年上の友人でドイツ生まれの米女優マレーネ・ディートリヒ(1901〜92)を進行役に展開します。実は101歳になる加藤さんの母・淑子さんも、ピアフと同い年生まれでした。
 「3人が生きた20世紀とは何だったのか。ピアフの初期のヒット曲は全部戦争の歌です。彼女の生きた時代をしっかりと見つめ、そこにつながる母やディートリヒを通して、二つの戦争を生き抜いた女たちの思いにたどりつきたいと思います」
 ナチス占領下のピアフの足跡を徹底的に調べた加藤さん。「ピアフ物語」のハイライトは、戦争中に恋人だったユダヤ人ピアニスト、グランツベルクとのエピソードです。
 ピアフは、危険を冒してナチスの迫害から彼をかくまいました。レジスタンス運動を応援し、戦争中もナチスに迎合せず戦後、人々から絶対の信頼を得ました。
 一方、ハリウッド・スターとして活躍していたディートリヒは、ヒトラーの帰国命令を拒否し、女優としてではなく、連合軍の正式な兵士として戦火をくぐります。
 「すごい決意だったと思います。彼女は、ドイツの兵士に向けてドイツ語で『リリー・マルレーン』を歌って聞かせました。国を愛することは戦争することじゃない、と思いながら。歌は戦場の放送で流れ、その間だけは敵も味方もたたかうことをやめたそうです。どんな男たちも抵抗できなかった独裁者ヒトラーに、一人の女性が立ち向かった。考えられないでしょ」

勇気と誇り
 「私たちにできることは、生きるために歌うこと。それは絶望を希望に変えること」と加藤さん。
 「日本では、歌手や俳優は自分の思想・信条がなくてもいいと思われがちです。でもこの2人はそうではありませんでした。ピアフは歌が人々に訴えるには、どういう詩じゃなきゃいけないかをすごく考えた人でした。2人の生き方にはいつも励まされます」
 今年2月にパリを訪れ、映画音楽の大御所フランシス・レイさんと25年ぶりに再会。戦後、最晩年のピアフが作詞し、彼が作曲した「響け太鼓」の誕生エピソードを聞きました。
 「曲ができるまで部屋から出るな、と言われたそうです。戦争で毎日のように死んでいく人のために、場末で泣き叫んでいる人のために、ヒロシマのために、パール・ハーバーのために、太鼓をたたこうという歌です。ピアフが書いたほぼ最後の歌詞だと思います」
 「今、世界のあちこちで起こっているすべてが不安に思えます。だからこそ、何があっても流されず、のみ込まれず、果敢に生きていきたい。自分の中に勇気と誇りがあって初めて逆流に抵抗できると思います」
 「響け太鼓」の披露は日本で初めてです。

「加藤登紀子コンサート ピアフ物語」
 5日=山形・シベールアリーナ、19日=大阪・梅田芸術劇場、25日=群馬音楽センター、7月2、3日=東京・Bunkamuraオーチャードホール
03(3352)3875トキコ・プランニング

かとう・ときこ=1943年、中国・ハルビン市生まれ。東大在学中の65年、第2回日本アマチュアシャンソンコンクールで優勝し、歌手デビュー。「ひとり寝の子守唄」「知床旅情」でレコード大賞歌唱賞受賞。近刊に『愛の讃歌 エディット・ピアフの生きた時代』(東京ニュース通信社)
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2016年06月05日,
「赤旗」)

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【5月ヘッドライン】

*         「報国農場」学生犠牲に/「満州」の悲劇学ぶ/立命大

*         災害口実の改憲反対/平和憲法ネット高知が総会

*         EU離脱問う国民投票まで1カ月/残留を″bワる声/経済悪化の懸念、影響か/イギリス

*         緊急事態条項いらぬ/民間「立憲」臨調が会見

*         欧州音楽祭/クリミア女性歌手が優勝/ロシアの編入不当性訴え

*         定点観読エンターテインメント/南陀楼綾繁/原田マハ著『暗幕のゲルニカ』/政治と戦争に翻弄された大作

*         レッド・パージ反対/23日に国会行動/講演と活動交流

*         近づく全商連総会/運動発展へ意気込む業者/大商連副会長小迫忠雄さん/中途障害者作業所長島崎孝子さん

*         安倍政治から立憲主義を取り戻そう/京都大学人文科学研究所教授山室信一さん

*         半藤一利さん/昭和史研究の重鎮/新刊『B面昭和史1926―1945』/今また歴史の岐路

*         作家半藤一利さん/戦時中、私も非人間的になっていた

*         犠牲者悼み1万人が行進/アウシュビッツ収容所

*         戦争法廃止、安倍退陣を/「憲法守れ」「野党は共闘」/各地で多彩な行動/石川/静岡/岐阜/三重/福井/富山/長野・諏訪

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5月本文】

「報国農場」学生犠牲に/「満州」の悲劇学ぶ/立命大

 戦争末期に、東京農業大学の学生が多数犠牲になった「満州」(中国東北部)の「報国農場」設置の背景や学者とのかかわりを探る学習会が21日、京都市北区の立命館大学国際平和ミュージアムで開かれました。主催は平和友の会、協力は自由と平和のための京大有志の会。
 京都大学の藤原辰史准教授、東京農大の小塩海平、足達太郎両教授が講演しました。
 足達氏は、学生がソ連軍の襲撃などから身を守るために森林をさまよい、戦闘や飢えで亡くなったことを証言を交えて報告。学生87人のうち約6割が犠牲になったとし「大学の正課の実習でこれだけの学生が殉難したのは学校教育史上、類例を見ない」と述べました。
 小塩氏は戦後、政府の命令で「報国農場」の資料が焼却されるなど隠ぺい工作があったと告発。「『満州』は清算されず、政治家や学者、財界はそのまま居座った。補償立法の一つもつくられていない。政府に謝らせたい」と述べました。
 藤原氏は、戦後民主主義の旗手といわれた法学者の川島武宜氏が「満州国」でナチス・ドイツの農業政策を取り入れた「開拓農場法」の策定にかかわり、農業経済学を確立した橋本伝左衛門氏も満州移民を促進した経過を紹介。「満州移民は『貧民対策』だったが、朝鮮人の水田を奪い、中国の農民を追放してつくったもの。現場を重視した学者ですら、そこにいた人たちのことが頭になかった。想像力の貧困がもたらされていたことをいまの学問は問わなければいけない」と語りました。
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2016年05月26日,「赤旗」)

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災害口実の改憲反対/平和憲法ネット高知が総会

 平和憲法ネットワーク高知は22日、高知市で総会を開き、憲法アクションと共催し、永井幸寿弁護士を招いての講演会を開きました。約70人が参加。永井氏は「災害をダシにして憲法を変えてはならない。これは被災者の声です」と語りました。
 永井氏は「乱用の危険性から日本国憲法ではあえて国家緊急権を規定しませんでした。現在の災害対策で憲法が障害になったことはありません」と語り、日弁連が行ったアンケートに東日本大震災で被害を受けた3県のうち24市町村のほぼ全ての市町村は、災害対策で憲法は障害にならなかったと回答したことを紹介しました。
 永井氏は自民党の改憲案は、使用目的の拡大や措置の期間に制限がないこと、過度な権力集中、人権制限が行われ、「ナチス・ドイツよりひどい独裁条項で極めて危険だ」と批判。「個々の被災者を救援するためにどうするかが全ての出発点。現場に近い自治体に権限を持たせることで効果的な支援が可能になる」と訴えました。
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2016年05月25日,「赤旗」)

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EU離脱問う国民投票まで1カ月/残留を″bワる声/経済悪化の懸念、影響か/イギリス

 【パリ=島崎桂】英国で6月23日に予定する欧州連合(EU)離脱の是非を問う国民投票まで1カ月余り。残留、離脱をめぐる議論が白熱する中、最新の世論調査では残留を求める声が高まっています。離脱支持派はEU批判を強めていますが、離脱に伴う悪影響の懸念払しょくには至っていません。

 調査会社ORBが17日に公表した世論調査では、EU残留支持が55%(先月比4ポイント増)、離脱支持が40%(同3ポイント減)。先月までの拮抗(きっこう)状態を破り、残留支持が離脱支持を大きく引き離しました。
 こうした変化の背景には、EU離脱により経済が悪化するとの懸念拡大があるとみられます。

「三つの脅威」
 英財務省はこれまでに、EU離脱により経済成長が鈍化するとの試算を公表。英最大労組・労働組合会議(TUC)や公共部門労組ユニゾンも、労働条件や労働者の権利縮小を懸念し、残留を呼び掛けています。
 先月末には、残留支持派を率いるキャメロン首相とTUCのバーバー前書記長が英紙ガーディアンに共同で寄稿。EU離脱により、雇用減少、賃金引き下げ、物価上昇の「三つの脅威」にさらされると訴えました。
 国際通貨基金(IMF)も今月13日、英国経済に関する報告書の中、EU離脱により英国の国内総生産(GDP)が最低でも1・5%、最大で9・5%縮小するとの見通しを発表。IMFのラガルド専務理事は、「(EU離脱に)良い面は何もなく、景気後退にまでつながりかねない」と警告しました。

離脱派に不信
 一方のEU離脱支持派は、EU圏内の輸出分野でドイツが「一人勝ち」している状況を示し、「(人、モノ、カネなどの移動を基本的に自由化したEUの)単一市場は英国経済を損なっている」と主張。英国単独での経済活性化を訴えていますが、キャメロン氏はこうした主張を「神話」にすぎないと一蹴しています。
 また、離脱支持派を率いるボリス・ジョンソン前ロンドン市長の失言も同派への不信感を買っています。
 ジョンソン氏は今月15日、英紙サンデー・テレグラフとのインタビューで、「ナポレオンや(ナチス・ドイツの)ヒトラーなど、多くの人物が(欧州統合を)試みた」「EUは別の方法で同じことを試みている」と語りました。
 EUのトゥスク大統領は17日、EUをヒトラーになぞらえた発言は「一線を越えた」ものであり、「黙っていられない」と強い不快感を表明しました。
 劣勢に立つ離脱派ですが、一部の世論調査では今も残留・離脱が拮抗しています。昨年5月の英総選挙では、与党・保守党が事前予想を覆す圧勝を収めたこともあり、多くの英メディアは「現状での結果予想は難しい」としています。
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2016年05月20日,「赤旗」)

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緊急事態条項いらぬ/民間「立憲」臨調が会見

 戦争法に反対する学者や弁護士、文化人らでつくる「民間『立憲』臨調」は17日、国会内で記者会見し、憲法学者の樋口陽一代表世話人らが、「緊急事態条項」を口実に改憲をねらう動きなどについて見解をのべました。
 日弁連災害復興支援委員会前委員長の永井幸寿弁護士は、災害対応を口実にした「緊急事態条項」について、「被災者支援に、そんなものは要らないし、むしろ障害になる」と強調。日弁連のアンケート調査でも、東日本大震災被災市町村の96%が憲法は「障害になっていない」と答えたことも示し、「災害で第一次的な権限は市町村に持たせなければいけない。災害現場を一番よく知っており、被災者のニーズが一番早く入り、一番効果的な対処ができるからだ」と主張しました。
 また、「全権委任法」を強行し立法権を国会から内閣に移して独裁体制を確立したナチス・ドイツの例も示し、「大変危険な制度だ」と批判しました。
 神奈川県議会で日本共産党県議団の代表質問権を制限する動きについての質問に、日弁連元会長の宇都宮健児弁護士は、「選挙で選ばれた代表が議論する議会は、(憲法が定める)集会、結社、言論の自由がもっとも守られなければいけない場所だ。そこで発言を制限することは、あってはならないことだ」とのべました。
 会見では、参院選に出馬表明した憲法学者の小林節慶応大名誉教授が、同臨調の事務局幹事を退任したことが報告されました。
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2016年05月18日,「赤旗」)

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欧州音楽祭/クリミア女性歌手が優勝/ロシアの編入不当性訴え

 【モスクワ=時事】欧州最大の音楽祭「ユーロビジョン」の決勝が14日夜(日本時間15日未明)、スウェーデンの首都ストックホルムで行われ、クリミア半島の先住民族タタール系の女性歌手ジャマラさん(32)が優勝しました。ジャマラさんは、クリミアを編入したロシア代表ではなくウクライナ代表として出場し、栄冠に輝きました。
 ロシアが2014年3月に強行した編入の是非を問う住民投票で、タタール系住民は多くが棄権し、ロシアから「過激派」と弾圧されています。ジャマラさんは大舞台で、タタール系の苦難を歌に込め、音楽を通じて編入の不当性を国際社会に訴えました。
 ジャマラさんは「(世界の)誰もに平和と愛が訪れますように」と喜びを語りました。
 ウクライナは、ロシアがクリミア半島に続き軍事介入した東部紛争や経済危機にも苦しんでいます。ユーロビジョン優勝は快挙と受け止められ、国民の希望の象徴となっています。ポロシェンコ大統領は、ツイッターで「素晴らしい歌唱と優勝で、全ウクライナ国民が感謝している」と称賛しました。
 ジャマラさんが歌った曲は「1944年」。タタール系は第2次大戦時、ソ連の独裁者スターリンに「ナチス・ドイツのスパイ」とぬれぎぬを着せられ、約20万人が強制移住させられた歴史を持っています。ジャマラさんは、曽祖母の追放の体験を基に、この歌を英語でつづりました。
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2016年05月16日,「赤旗」)

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定点観読エンターテインメント/南陀楼綾繁/原田マハ著『暗幕のゲルニカ』/政治と戦争に翻弄された大作

 「世界を変える力を秘めた、一枚の絵」。それが1937年6月にピカソが完成させた大作「ゲルニカ」だった。
 パリ万博のスペイン館に展示する絵を依頼され、悩んでいたピカソは、スペインのバスク地方の古都ゲルニカが空爆されたことを知る。前年にはじまったスペイン内戦で、フランコ率いる反乱軍はナチスドイツやイタリアと手を組んだ。ゲルニカはその反乱軍に無差別爆撃され、凄惨な被害を受けたのだ。
 ピカソはアトリエにこもり、一心不乱に描いた。彼の愛人である写真家のドラ・マールが、その制作過程を撮影した。しかし、完成した「ゲルニカ」は、政治的な駆け引きに巻き込まれてしまう。
 原田マハ『暗幕のゲルニカ』(新潮社・1600円)では、「ゲルニカ」が生まれた時代のパリと、21世紀のアメリカが交互に描かれる。前者の主人公がドラならば、後者はMoMA(ニューヨーク近代美術館)のキュレーター・八神瑤子だ。瑤子はピカソを専門とし、大きな展覧会を準備しているところだった。
 2001年9月11日のアメリカ同時多発テロで夫を失った瑤子は、「ピカソの戦争」という展覧会を企画する。その最中、アメリカはイラクへの空爆を発表する。その会見場に掛けられていた「ゲルニカ」のタペストリーは、何者かの手により暗幕で隠されていた。またしても、「ゲルニカ」は政治と戦争に翻弄されたのだ。
 瑤子はスペインに返還された「ゲルニカ」を展覧会に借り受けるべく、マドリッドに向かう。そこで彼女が知ったのは、ナチスドイツがパリに迫るなか、平和への祈りを込めたこの作品を守ろうとした人たちの物語だった。
 アンリ・ルソーの幻の作品をめぐる『楽園のカンヴァス』に続く美術サスペンス。「ゲルニカ」を観る目が変わるかもしれない。
 (ライター)
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2016年05月15日,「赤旗」)

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レッド・パージ反対/23日に国会行動/講演と活動交流

 レッド・パージ反対全国連絡センターは23日、2016年度の国会請願行動と活動交流集会、講演会を参院議員会館102会議室でおこないます。
 レッド・パージは、1949年から50年、政府と財界がGHQ(連合国軍総司令部)の示唆で、推定で4万人を超える日本共産党員や労働組合活動家を職場から追放した人権侵害事件です。
 今回の行動、集会では、レッド・パージを違憲、違法だと断じた日本弁護士連合会の勧告にそって、高齢となったすべての被害者をすみやかに救済し、名誉を回復することを求めます。
 当日は、午前11時半から議員要請をおこない、午後2時10分から請願行動をします。活動交流集会と講演会は2時40分から4時半までです。集会では、祖父が被害者だった名波大樹弁護士(北大阪法律事務所)が「レッド・パージを実行した政府の責任を問う」と題して講演。各地のレッド・パージ反対闘争の活動報告をおこないます。
 問い合わせ先=レッド・パージ反対全国連絡センターTEL03(3576)3755
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2016年05月11日,「赤旗」)

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近づく全商連総会/運動発展へ意気込む業者/大商連副会長小迫忠雄さん/中途障害者作業所長島崎孝子さん

 戦争法に反対する国民的運動が高揚するなかで、全国商工団体連合会(全商連)の第52回総会が21、22の両日、大阪市内で開かれます。大阪での総会は20年ぶり。地元の大阪商工団体連合会(大商連)は、立憲主義と民主主義を取り戻す共同のたたかいを広げ、仲間を増やす、大きな民商・全商連をつくろうと頑張っています。

中小業者の首しめる政治を変える場に/大商連副会長小迫忠雄さん
 小迫(こさこ)忠雄副会長(72)は今回の総会について、「安倍政権は中小業者の首を絞める政策をしている。消費税を戦費調達に使い、税率をどんどん上げようとしている。安心・安全な生活を保障するために、戦争法の廃止と消費税10%増税阻止をかかげて、全国の共同のたたかいを持ち寄って成功させたい。安倍自公政権とそれを補完するおおさか維新の会による政治を変える場にします」と意気込みます。
 大阪では、NHK大河ドラマ「真田丸」で活気づいています。「総会は中之島にある大阪市中央公会堂がメイン会場です。重要文化財の建物に全国から1000人が集まります。西成民商会員が作った戦国武将の赤い甲冑(かっちゅう)をまとって、総会を盛り上げたい」と小迫さん。
 重視しているのは、後継世代の業者青年です。府下全域の異業種のつながりを大事にする目的に、民商大阪青年部は2月21日に交流祭を開きました。名刺交換から、物品販売、ライブパフォーマンスと盛りだくさんでした。

障害者の働く場守る大切な相談役が民商/中途障害者作業所長島崎孝子さん
 何でも相談できて安心なところが魅力だとして会員が増えています。
 箕面(みのお)市に2005年4月開所した中途障害者作業所「いきがいワーク」の所長、島崎孝子さん(45)もその一人です。
 作業所は、手織り作業や、国産杉を使ったいすづくりをする部屋ごとに分かれています。午前10時から午後3時半まで、病気や事故によって障害を持った利用者たちが働きます。
 「利用者がいきいきと笑いながら、スタッフと仕事をしていると、やっててよかったと思います」
 島崎さんの願いは、利用者がもう一度働き、社会とつながり、生きがいを回復することです。その点では、自身の経営の相談相手になる民商は、なくてはならない存在です。福祉住宅リフォームの大工をしている夫の申告相談でも助けられているといいます。
 作業所が休みの日は、民商のイベントや戦争法廃止の2000万署名行動にあてます。戦争法への特別な思いがあります。
 「第2次世界大戦のとき、ナチス・ドイツは600万人のユダヤ人を虐殺する前に、予行演習として20万人の障害者を殺しました。戦争になれば障害者が真っ先に犠牲になります。戦争法は絶対に廃止です」
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2016年05月12日,「赤旗」)

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安倍政治から立憲主義を取り戻そう/京都大学人文科学研究所教授山室信一さん

 熊本出身の山室信一・京都大学人文科学研究所教授は3日、京都市内で開かれた憲法集会で、震災の政治利用も告発しつつ「憲法9条の新たな使命 戦う立憲民主主義へ」と題して講演しました。その要旨を紹介します。

立憲主義足蹴に
 憲法にもとづく政治である立憲主義が、足蹴(あしげ)にされています。
 2014年7月1日に安倍内閣は、閣議決定を覆して集団的自衛権を認めました。憲法が一番上にあり、次に国会で決める法律があり、法律に従った政令があり、その下にあるのが閣議決定です。閣議決定によって、憲法を変えてしまう。それは憲法の下克上であり、クーデターです。
 2015年9月、安全保障関連法案の強行成立後、安倍首相はていねいに説明していくといいました。ところが、いずれかの院の4分の1の要求があれば、国会を召集しなければならないのに、臨時国会を開きませんでした。野党が提出した安全保障関連法の廃止法案も審議せずに廃案にすることを決めました。
 緊急性があるといって強行採決したにもかかわらず、かけつけ警護とか、新たな自衛隊任務の付与などは参院選後に先送りした。
 なぜ、そんなに急いだのか。法案を出す前に、米上下院で約束してきたからです。
 だれが主人なのでしょうか。だれのための立法なのでしょうか。日本の主権をアメリカに献上した安倍政治から日本を取り戻す必要があります。
 今や、立憲主義はさまざまな形で空洞化されています。
 自民党の稲田政調会長が憲法学者の7割が違憲であるといっているような自衛隊をそのままにしておくことこそが立憲主義の空洞化だといいました。違憲の事実を変えるのではなく、憲法を変える。逆立ちです。憲法は現状を追認するだけのものになってしまいます。
 憲法13条は、すべて国民は個人としての権利が尊重されると定めています。自民党改憲草案は、「個人」を「人」に変えました。なぜ変えたのか。安倍首相は、さしたる意味はないといったのですが、根本的に憲法の在り方を変えます。憲法の柱は9条と13条と25条です。この三つがあって国民主権、平和主義、国民が平和的に生存する権利が守られ、個人として尊重されます。
 幸福の感じ方はそれぞれ違います。だから、「個人」として幸福を求めることを保障するのが13条です。それを「人」に変えて一律化することは、基本的人権の否定を意味します。
 さしたる意味のないおためし改憲をし、国民に改憲癖をつけ、そのうち改憲疲れをさせて、いずれ9条を改正していく。それは、憲法が有名無実化することです。日本は憲法停止国家となり、無憲法国家となります。

震災を政治利用
 震災の政治的利用も許されません。熊本震災でオスプレイを投入しました。運んだのは段ボール200箱です。わざわざオスプレイを飛ばしたのは佐賀空港にオスプレイを配置するための準備でした。
 改憲理由のひとつに緊急事態条項があります。福島、宮城、岩手の自治体に東日本大震災が起きたとき、緊急事態条項が必要でしたかというアンケートに、回答した37団体のうち、必要だと答えた団体はひとつだけでした。
 問題は緊急事態条項があるかないかではない。対応が後手後手に回っているのは、基盤自治体の人員削減など地方切り捨ての結果、対応できる職員が少なくなっているからです。
 緊急事態条項とは人権の保障と権力分立という立憲主義の二つの柱を停止することです。
 民主主義と立憲主義はいつもイコールではありません。民主主義は多数決民主主義でもある。ナチスの経験からも立憲主義を否定するようなものには、たたかわなければいけません。
 安倍首相は任期中に改憲を行うと宣言しています。安倍政治に引導を渡す絶好の機会です。立憲主義を取り戻しましょう。
 この京都から熊本にむけてエールを送りたいと思います。
 「がまだすばい(がんばろう)9条 負けんばい9条!」
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2016年05月10日,「赤旗」)

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半藤一利さん/昭和史研究の重鎮/新刊『B面昭和史1926―1945』/今また歴史の岐路

戦争しないため過去の教訓に学ぶ時/憲法の精神、何よりも大事
 ベストセラー『昭和史』で知られる作家の半藤一利さんが、戦争に突き進む時代を庶民の目線で描いた『B面 昭和史 1926‐1945』を出しました。昭和史研究の重鎮に、空襲体験、憲法の意義、メディアの役割などについて聞きました。
 金子徹記者

 新刊は、世相を映した流行歌や三面記事、作家の日記などを手掛かりに、1926年から45年までの戦前、戦中の昭和の時代を活写した、600n近い労作です。
 「ゲラを点検する時、われながらこんなに書いたのかとあきれました(笑い)。政府や軍部の動きを中心にした歴史をA面とすると、この本はB面です。なるべく物語的に書こうとして、素材の選択にはとても悩みました」
 歴史の裏側に埋もれがちな、庶民の生活。1年ごとに章を改め、戦争へ向かう時代の姿を浮き彫りにします。
 「日本人は、いまこそ戦争の前段階を教訓としなければなりません。後になって『あの時が分かれ目だった』と悔いないためにも。民衆が、いかに政府にだまされ、同調していったのかを伝えたかった」
 「いまの日本は戦前に似てきている」と憂慮します。
 「秘密保護法が出来たあたりから、これは危ない時代に入りつつあると感じていました。ただ、戦前と違い、まだいくつかのメディアはがんばっています。戦後、言論の自由を大事にしてきたことで、日本は戦前とは根本的に違う国家になりました。憲法の一番大事なところは、9条の平和主義と言論の自由、そして基本的人権の尊重だと思います。この三つはこれからも大事にしていかなければ」
 一内閣の勝手な判断でこれまでの憲法解釈を変え、安保法制=戦争法を強行した安倍政権の手法は。
 「あれはヒトラーのまねですよ。日本の政府のやり方はナチスのまねばかり。例えばナチスは国会議事堂放火事件の後、政府が立法権を行使できる授権法を成立させ、民主的なワイマール憲法を骨抜きにして独裁体制を固めました。麻生大臣の『ナチスの手口を学ぶ』という発言は冗談でなく本音で、本当に政権内部で話し合っていたのだろうと思います」

空襲の記憶
 東京の下町・向島(現・墨田区)生まれ。少年時代は「悪ガキ」でした。
 なぜ、半世紀以上にわたり昭和史を掘り下げてきたのか。
 「私は3月10日の東京大空襲で火と煙に追われ、川に落ちて死ぬ思いをしました。何とか助かりましたが、たくさんの人が死んでいくのを見ました。お母さんと子どもの死体などがごろごろしていた。それを見ても、何の感情もわかなかったんです。後で思うと不思議でしようがない。疎開先の新潟県長岡市でも、空襲による死体をたくさん見ました。でも、何とも思わなかった。終戦を伝える8月15日の天皇の放送を聞いた時も、助かったとは思ったけれど、たくさんの犠牲者のことは考えませんでした」
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作家半藤一利さん/戦時中、私も非人間的になっていた

 「私は戦争で、実に非人間的な男になっていました。戦争は、人間を殺すことでしかない。戦争は、人間をとことん非人間的にする愚劣なものです。そのことを、戦後しばらくたってから、やっと痛感しました。こうした体験は、ちゃんと残しておかなければ。それが昭和史に食いつくようになった始まりです。空襲で逃げる時、川のなかで人を蹴飛ばしたり、はねのけたりしました。歴史の本を書きながら、自分自身の戦争体験は戦後何十年も書いたり話したりしませんでした。こういうことは、好んで話したいようなことではないですよ。でもやがて、歴史を書いている者として、自分はどういう体験をしたのかを、東京の下町の戦争を知る者として伝えなければ、と思うようになりました」

恐怖あおる手口
 なぜ、歴史を学ぶことが大切なのか。
 「昭和前期の歴史のような、失敗の歴史のなかにこそ教訓がたくさんあります。これをよく学んでほしいですね。内政がうまくいかない時は、外国に対する危機感や恐怖感をあおる。愛国心をあおり、国民の意識を外にそらす。これは権力者がよくやる古典的な手であり、これがなかなか有効なんです」
 放送の自由を踏みにじる高市早苗総務相の停波発言には。
 「ああいうアホなことを大臣が平気で言える時代は恐ろしいですね。言論の自由が、いかに戦後の民主主義を守ってきたかという認識がない。本来なら内閣が崩壊するような発言なのに、あんな発言がまかり通るとは。『B面昭和史』でもメディアを何度もネタにしましたが、言論の自由が失われたことが戦争につながった面があります。最初はメディアが国民に戦争をあおり、やがては国民にあおられ、メディアがより悪い方向に進みました」

共産党提案に「ありがとう」
 日本共産党の野党共闘の提案には。
 「今度の選挙で共産党さんが本当に共闘してくれるのなら、ありがとうございますと、お礼を申し上げたい。よくぞ踏み切ってくれたと思います。第2次大戦前のドイツでは、小党分立でバラバラでナチスの台頭を許してしまいましたから。参院選では野党が共闘して、戦争に向かいかねないこの流れを止めてほしい。いまの日本にはまるで昭和13、14(1938、39)年ごろのような不気味さも感じます。同時に、戦前と違い現在は、戦後70年間で築いてきた民主主義の理念がまだ大きく根付いています。若い人たちの間にも、シールズのように、自分の頭で考え自発的に行動を起こす動きが出ている。私はとても期待しています」

はんどう・かずとし=1930年東京生まれ。東京大学文学部卒業後、文藝春秋入社。『週刊文春』『文藝春秋』編集長、取締役などを経て作家。『日本のいちばん長い日』『漱石先生ぞな、もし』『ノモンハンの夏』ほか著書多数。『昭和史1926
1945』『昭和史 戦後篇 19451989』で毎日出版文化賞特別賞、2015年、菊池寛賞


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2016年05月08日,「赤旗」)

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犠牲者悼み1万人が行進/アウシュビッツ収容所

 ナチス・ドイツによるホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)の犠牲者を悼む「生者の行進」が5日、ポーランドの南部オシフィエンチムで行われました。毎年、この時期に恒例となっている催しで、ドイツの海外向け公共放送ドイチェ・ウェレによると、今年は40カ国から生存者150人を含む約1万人が参加し、アウシュビッツ収容所跡地からビルケナウ収容所跡地までの3`を歩きました。
 アウシュビッツ収容所では、ユダヤ人110万人以上と、ロマ、ソ連軍捕虜、同性愛者など10万人以上が死亡しました。
 「行進」の主催者、シュムエル・ローゼンマン氏は「欧州や世界の他の地域はホロコーストから多くを学んでいないと思う」と語り、反ユダヤ主義、人種差別、ファシズムに対し断固たる対応を各国政府に呼び掛けました。
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2016年05月07日,「赤旗」)

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戦争法廃止、安倍退陣を/「憲法守れ」「野党は共闘」/各地で多彩な行動/石川/静岡/岐阜/三重/福井/富山/長野・諏訪

■石川/しばた候補訴え
 石川県の「戦争法廃止!憲法改悪阻止!」を呼びかける8団体は3日、金沢市の本多の森ホールで「平和憲法施行69周年記念石川県民集会」を開催し、1300人が参加し、集会後パレードしました。
 上智大学教授の中野晃一さんが「『改憲』に抗して!立憲主義・個人の尊厳をとりもどす」と題し、記念講演しました。中野氏は、市民運動の経験から「正しかったら伝わるか? そんなことはない。工夫して広げる、伝える。関心を持たせる。『リスペクト』=尊重すること。振り返ってみることが大事」と述べ、「日本の将来がかかっている。まだまだ止めることができる。石川から市民の力で安倍暴走政治にストップを」と訴えました。
 参院石川選挙区で共闘した民進党、共産党、社民党の各党代表と、しばた未来(みき)野党統一候補があいさつしました。
 しばた氏が「安倍政権の憲法改悪を許さない。参院選は絶対に負けられない」と訴えると大きな拍手に包まれました。
 パレードは約800人で会場から繁華街に向け「戦争法は廃止せよ!憲法改悪反対!」と書いた横断幕を先頭に、サウンドカーをしたて、楽しくにぎやかな行進になりました。

■静岡/戦争しない国に
 静岡県憲法会議は3日、「憲法を考える市民の集い」を静岡市葵区で行い、会場いっぱいの300人が参加しました。フリージャーナリストの西谷文和氏の「力をあわせて安倍政権を打倒、戦争しない日本にさせよう」の訴えに、参加者は熱心に聞き入りました。
 西谷氏は、戦争で傷ついたシリアの子どもたちの映像を紹介し、戦争で潤う人がいるから戦争が行われると説明。「テレビ・新聞で政府や大企業が不利になることは報道されないが、しっかり情報をつかまなければいけない。戦争法強行採決、原発再稼働、消費税増税などのひどい政治に反撃がはじまっている。忘れない、諦めない、だまされないでたたかおう」と訴えました。
 林克代表委員(県評議長)は「緊急事態条項創設でナチスのような独裁は絶対に許してはいけない。戦争法廃止の実現、現行憲法を守り生かさせよう」と呼びかけました。
 二胡奏者の鈴木裕子さんが「アメイジング・グレイス」など8曲のやわらかな音色を響かせました。

■岐阜/選挙で意思示す
 岐阜市で3日、憲法施行69周年記念岐阜講演会が開かれ、300人が参加しました。主催は憲法改悪阻止岐阜県連絡会、憲法9条を守る岐阜県共同センターで構成する実行委員会。近藤真実行委員長(岐阜大学教授)は、岐阜大学で行った9条の賛否を問うアンケートで「9条守れ」が7割近くに達したことを紹介。参院選では護憲派の勝利で安倍政権の暴走をストップさせようと述べました。
 京都法律事務所の金杉美和弁護士が「改憲の嵐に抗して、今こそ日本国憲法を選びとる」と題して講演しました。自民党改憲草案が「国を縛る憲法」から「個人を縛る憲法」へ大きく変えようとしていると批判。いまこそ憲法を知り、自分の言葉で憲法を語り、参院選で意思を示そうと訴えました。
 墓参りの帰りに聞きにきたという徳田幸憲さん(62)夫妻は「憲法を変えられてから元へ戻すのは大変。自民草案に腹が立つ」と語りました。

■三重/候補統一を望む
 三重県憲法会議は3日、津市で「憲法記念日に日本国憲法を考える三重県民のつどい」学習会を行い、約120人が参加しました。
 講師に龍谷大学法科大学院教授(憲法学)の石埼学氏を迎え、テーマは「平和憲法のために私たちに何ができるか」でした。安保関連法では「現に戦闘が行われている現場以外での後方支援・捜索救助活動、さらには弾薬の他国への提供が法律上認められる」と説明。そのうえで、自衛隊が救助活動にあたっていたとき、再びその場所が戦地になっても救助者がいた場合、活動を止めることはできず自衛隊は武器を所持しているため、標的になる可能性が非常に高いと、危険性を示唆しました。
 石坂俊雄弁護士は、参議院選挙で力を合わせて安倍政権を打倒しましょうと力強く訴えました。
 年配の女性は「こんな政治がまかり通っているのはおかしい。安倍政権を終わらせるために、三重県でも候補を統一してもらわないと」と野党共闘を望む声がありました。

■福井/横山候補が参加
 憲法記念日の3日、戦争する国づくり反対!福井総がかりアクションの主催で「憲法を守り育てる集会」が福井市のアオッサ県民ホールで開かれ約380人が参加しました。
 屋敷紘美代表が開会あいさつし、講談師の神田香織さんが講演しました。神田さんは、安倍改憲に対して「とてもおとなしくしていられない。同じ過ちは絶対繰り返さないため、みなさんと頑張りたい」と訴え。夏の参院選に向けて全国に広がる野党共闘を押し出し、「この選挙で目にものを見せてやりましょう」と呼びかけました。
 神田さんが30年間語り続けている「はだしのゲン」を熱演すると、会場いっぱいの拍手が起こりました。
 参院福井選挙区(改選1)の横山たつひろ野党統一候補があいさつしました。
 参加者らは集会後、「安保法制反対」「安倍政権を倒すぞ」と訴えてパレードしました。
 大野市の女性(34)は「これからの人たちが戦争で犠牲にならない、安心な世の中になる憲法であってほしい」と話しました。

■富山/平和を守るため
 日本国憲法をまもる富山の会と県平和運動センターは2日夜、富山市で憲法公布70周年記念講演会を開きました。300人が参加しました。
 「憲法と敗戦」と題して講演した神戸女学院大学名誉教授の内田樹氏は、第2次大戦後、日本はアメリカに深く従属し、歴代政権は重要事項をすべてアメリカの了解のもとで実行してきたと指摘。個別の政策に国民の多数が反対していても、安倍政権の支持率が4割以上あることの背景には、安倍政権へのアメリカの支持があるとのべました。それに対しSEALDs(シールズ)などの若い世代が登場してきたことは希望で、憲法が70年の間に空気のように身についてきたことの表れだと強調。参院選は1人区で野党共闘を実現して、安倍政治を終わらせたいと話しました。
 「オールとやま県民連合」世話人で参院富山選挙区に無所属で出馬する道用(どうよう)えつ子さん(共産、民進、社民、生活が推薦予定)もあいさつしました。
 参加した女性(54)は「政治に関心がなかったが、平和を守るためには憲法をめぐる状況を聞いているだけではダメだと思うようになった」と話しました。

■長野・諏訪/杉尾候補に拍手
 長野県諏訪市で1日、「われら主権者、憲法を愛す」と、諏訪地方憲法フェスティバルが行われ、記念講演やスピーチ、御柱(おんばしら)の木やり歌、絵画・写真など「平和のための作品展」、映画上映と多彩な中身で550人の参加者を魅了しました。「諏訪地方憲法集会」(武井秀夫会長)が主催。「戦争法廃止諏訪湖・八ケ岳ぐるみの会」が共催しました。
 憲法学者の小林節氏(慶応大名誉教授)は、「ズバリ『安倍暴走を止めるために』」と記念講演し、憲法違反の戦争法強行・立憲主義破壊と横暴を重ねる安倍政権を「21世紀の日本に王国≠つくろうとするもの」と喝破。「憲法を守らず、やりたい放題の安倍政権を主権者が選挙で倒すこと、野党がまとまり参院選で勝つことが大事だ」と訴えました。
 野党統一候補の杉尾ひでや氏も駆けつけ、「安倍政権の立憲主義、議会制民主主義破壊、メディアへの圧力に言論・報道の自由が危ないと行動に立ちあがった。参院選勝利へ頑張り抜く」と述べ、大きな拍手に包まれました。
 舞台では、30、40代中心に平和の活動・催しを続ける「八ケ岳ピースパレード」のメンバーも「いい日本にするように、この地方から進めていきたい」とスピーチしました。
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2016年05月07日,「赤旗」)

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(4月ヘッドライン)

 

*         災害口実の「緊急事態」条項/改憲への危険性警告/七人委員会

*         にちようシネマ館/アイヒマン・ショー 歴史を映した男たち/イギリス

*         ホイッスル

*         列島だより/埼玉/ナチスの歴史講演

*         極右創始者の審理開始/難民への憎悪扇動/ドイツ

*         安倍政権では日本壊れる/元民主党衆院議員、元農水相山田正彦さん/各国でもTPP反対増加

*         「戦争法廃止の一歩築く選挙に」/参院選で共産党躍進を/各地で行動/海南海草赤旗まつり/和歌山

*         なくせ戦争法/市民らが交流/静岡

*         二〇世紀文学としての「プロレタリア文学」/祖父江昭二著/評者尾西康充三重大学教授

*         「反共デマ答弁書」/野党共闘を恐れている証拠/上智大学教授中野晃一さん

 

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4月本文)

災害口実の「緊急事態」条項/改憲への危険性警告/七人委員会

 世界平和アピール七人委員会は25日、「大規模災害対策に名を借りる緊急事態条項追加の憲法『改正』の危険性」と題するアピールを発表しました。
 アピールは、安倍首相が憲法に「緊急事態」条項を新設させるねらいを公言していることを指摘。自民党の改憲草案では、首相が緊急事態宣言を発すれば政府は国会を経ずに法律と同一効果の政令を制定できるため、「基本的人権は、どこまでも制限でき、緊急事態の期限の延長も意のまま」だと批判。「これこそナチスのヒトラー政権が、ワイマール憲法のもとで合法的に権力を獲得し」、「独裁を続けた方式」だと警告しています。
 同条項の追加は「最悪の憲法『改正』」だと述べ、日本国憲法の平和主義・国民主権・基本的人権の尊重のために全力を尽くすことを誓っています。
 同委員会は人道主義と平和主義に立つ有志の集まりとして1955年に平塚らいてう、湯川秀樹らが参加して発足。現在は、武者小路公秀、土山秀夫、大石芳野、小沼通二、池内了、池辺晋一郎、高村薫の各氏が委員を務めています。
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2016年04月26日,「赤旗」)

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にちようシネマ館/アイヒマン・ショー 歴史を映した男たち/イギリス

 P・A・ウィリアムズ監督による戦犯裁判映画です。
 1961年4月。逃亡15年で捕らわれたナチス戦犯アイヒマンがエルサレムで裁かれます。全世界にテレビ放映を企画したプロデューサー、ミルトン(マーティン・フリーマン)は、ハリウッドの赤狩り≠フ被害者、記録映画監督レオ(アンソニー・ラパリア)を米国から招きました。4月11日の開廷から隠しカメラで撮影を始めますが―。
 ナチス戦犯裁判へのミルトンの意欲、生存者の怒り、ナチス残党の脅迫―緊張感がはじけそう。証言や遺体の実写のすさまじさ。なぜ600万人も殺したのかとレオがとらえ続けるアイヒマンは無表情のまま。カメラそのものが正体を暴く追及者のようです。
 テレビ画面が世界にナチスの虐殺事実を広めた威力。「あなたのおかげ」とレオに繰り返す収容所生き残りの女性の言葉がしみます。
 (石)
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2016年04月24日,「赤旗」)

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ホイッスル

 米大リーグで通算216勝をあげた元レッドソックスのカート・シリング氏(49)が、性的少数者をやゆする発言をしたと20日付の外電が伝えています。
 シリング氏は女装した男性の写真をインターネット投稿し、「彼を女性用トイレに入れてやってくれ。人種差別主義者になってしまうよ」とコメントしました。野球解説者だった同氏は放送局から解雇されました。
 スポーツは差別と相いれません。どれだけ優れた実績があったとしても、差別を容認、助長するような人物はスポーツ界にふさわしくありません。同氏は昨年にもナチス・ドイツとイスラム教徒を比較する投稿もしており、同局から停職処分を受けていました。スポーツ界は厳しい姿勢で臨むべきです。
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2016年04月22日,「赤旗」)

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列島だより/埼玉/ナチスの歴史講演

 埼玉県飯能市でこのほど、アジア・アフリカ・ラテンアメリカ連帯委員会(AALA)飯能支部が結成7周年講演会を開き、会場いっぱいの60人が参加しました。
 自由の森学園の社会科教員、菅間正道さんが「あなたならどうする?―ナチスのユダヤ人迫害問題を考える授業」をテーマに、授業形式で講演しました。ナチス・ドイツの独裁者ヒトラーが、ユダヤ人に対する迫害や市民権剥奪を進め、戦争を拡大していった歴史を説明しました。
 参加者は、安倍政権が狙う緊急事態条項などの憲法改悪の危険性とも関連させながら、意見を出しあいました。
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2016年04月21日,「赤旗」)

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極右創始者の審理開始/難民への憎悪扇動/ドイツ

 【パリ=島崎桂】ドイツで移民やイスラム教徒排斥を訴えるデモを続けてきた極右団体「西洋のイスラム化に反対する愛国的欧州人」(ペギーダ)の創始者、ルッツ・バッハマン被告(43)に対する審理が19日、同国東部ドレスデンの裁判所で始まりました。
 バッハマン被告は2014年、自身のフェイスブックへの投稿で、中東などから戦火を逃れてきた移民・難民らを「家畜」「くず」などと罵倒。検察当局は、こうした投稿が憎悪の扇動や人間の尊厳を傷つける行為を禁じた民衆扇動罪にあたるとして起訴しました。有罪が確定した場合、5年以下の懲役が科されます。
 ペギーダは、欧州への移民・難民が増加し始めた14年にドレスデンで創設されました。その後、同様の主張を行うデモが近隣国にも拡大。移民・難民らを標的にした暴力事件も発生しており、独警察は最近も、難民らへの爆発物を使用した襲撃を計画していた容疑で、極右活動家5人を逮捕していました。
 バッハマン被告は過去にも強盗、傷害、麻薬密輸の罪で有罪判決を受けた人物。15年1月には、ナチス・ドイツの独裁者ヒトラーに扮した写真が流出したことなどを受けペギーダの代表を辞任しました。
 ただ、影響力は保持しているとみられ、出廷時には、ドイツでの難民受け入れを主導してきた「メルケル(首相)を法廷に送れ」などと書かれたプラカードを手にした数人の支持者が同氏を見送りました。
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2016年04月21日,「赤旗」)

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安倍政権では日本壊れる/元民主党衆院議員、元農水相山田正彦さん/各国でもTPP反対増加

野党一丸で暴走止めよう
 元民主党衆院議員で農水相をつとめた山田正彦さんに、戦争法、憲法改悪、TPP(環太平洋連携協定)など安倍政治の危険性や野党の選挙協力についてききました。
 田中倫夫記者

 安倍政権を続けていると日本が壊れますよ。なんとかしてこの暴走を阻止しないと大変なことになると思っています。それは大きく言うと、安保法制(戦争法)、憲法改定、TPPです。
 憲法改定で「緊急事態」条項などを入れると、かつてドイツでナチスがワイマール憲法の同じような条項を使い、独裁体制を完成させたようなことになるのではないか。
 たとえば、安倍政権がそんな憲法改定をやって、ある日、過激組織ISが日本で大規模なテロを行ったとします。政府は「緊急事態」を宣言して、一気に国会の機能を全部失わせ、まさに独裁国家になってしまう。ナチスの場合は「国会放火事件」をでっち上げ、共産党のせいにしましたが、日本でもその類いの謀略があるかもしれない。報道の自由などはなくなって、選挙の自由もなくなることに一気になってしまう危険性があります。絶対に許してはいけない。
 経済もむちゃくちゃです。4年連続で実質賃金は下がり、GDP(国内総生産)はマイナスなのに、安倍政権はアベノミクスで経済はよくなった≠ニ強弁しています。
 政府は今国会でのTPP批准を狙っていますが、肝心のアメリカで、批准が混とんとしていますよ。民主党も共和党も大統領候補はほとんど反対じゃないですか。下院選挙でも反対派が増えそうです。各国とも反対が増えてきている。そんな中で日本だけが批准を急ぐなどというバカなことをしてはいけない。そもそも協定全文の翻訳もできていないし、交渉内容も公開されていません。
 自民党は総選挙で「TPP交渉参加断固反対」「ブレない」といっていたのに、結果は8割の農産物で関税撤廃。アメリカいいなりです。農業だけではなく、国民皆保険制度も食の安全も崩れる危険があります。
 安倍内閣の支持率が下がったとはいえ、まだ4割もあるのは明確な対抗軸がなかったからです。ここは野党みんなで頑張ってほしい。共産党が選挙協力であそこまで踏ん切ってくれて本当に良かった。私は評価しています。いま、好き嫌いを言っている場合ではありません。衆院小選挙区での協力を含め、野党でしっかりつめて、安倍暴走を止めるしかありません。

やまだ・まさひこ=弁護士。93年総選挙で新生党公認で初当選。新進党、自由党、民主党を経て菅内閣で農水相。野田内閣の消費税増税に反対し除籍され、前回総選挙で落選。現在、TPP交渉差止・違憲訴訟の会幹事長
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2016年04月17日,
「赤旗」)

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「戦争法廃止の一歩築く選挙に」/参院選で共産党躍進を/各地で行動/海南海草赤旗まつり/和歌山

堀内議員が講演
 海南海草赤旗まつりが10日、和歌山県海南市で開かれました。同地域での赤旗まつりは初めてです。
 開会あいさつした雑賀光夫県議は、全国ですすむ野党統一候補擁立が和歌山でも努力されていることを紹介。坂口多美子参院和歌山選挙区候補は、「軍事費が5兆円を超えました。こんな政治をこれ以上続けさせるわけにはいかない」と安倍政権を倒すため全力をあげる決意を表明しました。
 講演した堀内照文衆院議員は、「国の政治は国民が動かすものだということを実感した」と戦争法廃止をめぐる運動を紹介。自衛隊が戦闘に巻き込まれる危険が高まるなか「戦争法廃止の一歩を築く選挙にしよう」と参院選での日本共産党躍進を訴えました。また、安倍政権による改憲の動きを「ナチスドイツの再来」と告発。自公とその補完勢力に、国民と野党の協力とが対決する選挙に勝利しようと訴えました。
 「9条守れ『戦争法』廃止海南海草共同センター」の藤井穂住氏は、戦争法廃止を求める2000万署名が同地域目標1万の7割を超え7100に達したことを報告しました。
 参加者らは、模擬店や、バンド演奏などの文化行事を楽しみ、おたけびコンテストで「安倍政権はどもならん」「消費税上げるな」など訴えました。
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2016年04月12日,
「赤旗」)

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なくせ戦争法/市民らが交流/静岡

 静岡県伊東市で3日、高田健氏(戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会)を迎え、安保法制(戦争法)廃止めざす講演と交流のつどいが行われ、66人が参加しました。
 主催は、立憲主義と民主主義の擁護、軍事力に頼らない平和の構築などを理念に幅広い個人が集まり1月に結成した「『平和と人権』市民ネットワーク@伊東」です。
 高田氏は「戦争法廃止のためにあらゆる手を尽くさなくてはいけない。戦後最悪の安倍内閣を倒すために全国で力をあわせる時がきている。特に2000万署名運動は大事。政権打倒のためつながりをいかしきろう」と訴えました。
 結成呼びかけ人の浦島浩司氏(ミュージシャン)、日吉雄太氏(公認会計士)が会場から発言。浦島氏は「私も、このままではまずいと戦争法廃止署名を100人分集めた。FM伊東で話をするなど、さらに、より多くの人に呼び掛けたい」。日吉氏は「共産党に破壊活動防止法の調査団体だと不当な攻撃があった。ナチスが反共にはじまり民主主義を攻撃したことを想像した。会計士仲間に戦争法の恐ろしさを訴え、宣伝も頑張る」と語りました。
 日本共産党の重岡秀子市議も安倍政権打倒の決意を表明しました。
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2016年04月06日,「赤旗」)

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二〇世紀文学としての「プロレタリア文学」/祖父江昭二著/評者尾西康充三重大学教授

 戦前の主要なプロレタリア文学雑誌は現在、復刻版を読むことができる。だが、それら雑誌が持っていた価値を正当に評価するためには、雑誌の背景にあった社会問題や思想状況を究明しておく必要がある。その膨大な作業をおこない、独自の「書誌的な解説」を記したのが祖父江昭二であった。
 本書は、プロレタリア文学に関する祖父江氏の論考をまとめたものである。冒頭の章に収められた〈政治と文学〉をテーマにした論文は、今なお斬新な視点を提供している。祖父江氏によれば、過去にたびたび繰り広げられた〈政治と文学〉論争では、「非人間的な巨大な力を持った政治と人間的で非力な文学(者)との対抗」という短絡的な図式が使われた。文学の自律を主張するグループからは「政治の完璧な拒否」という発言が「さっそうと」なされた。だがそれは「襲いかかってきた政治の専制に対し本当に強いだろうか」という疑問の残るものとなった。
 他方1930年代の中国に目を転じれば、「安易に政治と文学を結びつけない」魯迅は、「抗日」という政治目的の一点に凝縮させてゆく姿勢を打ち出した。この対比から、祖父江氏は、日本では戦争とファシズムへの危機意識が欠如していたために、政治の拒否を貫くことが「成熟した」文学者の態度とみなされるような錯誤が生じていたとする。
 祖父江氏が問い続けたのは、「ぼくたちにまといつく問題のたて方、思考の枠組の日本的なゆがみの貧しさ」であった。それはいまだに克服されていない、我々の眼前に立ちはだかる課題である。

 そふえ・しょうじ 1927〜2012年。和光大学名誉教授、劇団民芸顧問
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2016年04月03日,「赤旗」)

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「反共デマ答弁書」/野党共闘を恐れている証拠/上智大学教授中野晃一さん

 私の知る共産党は真面目で穏健です。戦後築いてきた民主主義や立憲主義を守り育むために野党共闘を大胆に決断し動く党です。「暴力革命」とは、およそ縁もゆかりもない。証拠があれば見せてほしい。安倍政権は言いがかりをつけて、無い事実をでっちあげた戦前の特高警察のようです。
 憲法を破壊した安倍政権こそクーデター勢力です。独裁の過程で最初に共産党を攻撃したナチス政権に非常に似ています。そのレベルまで落ちぶれました。
 ナチスの手口は人びとを分断することで支配する「分断統治」です。野党共闘が実現してくると、政権維持が危ぶまれる。だから「暴力革命」を持ち出して人びとを不安にさせ、野党の共闘にも不協和音を生じさせて分断を図りたいのです。
 安倍政権は明らかに野党共闘に恐れをなしています。幅広い市民と野党の共同が効果をあげているからこそ、なりふり構わず攻撃してくる。それだけ余裕がないのです。こちらがあせれば、向こうの思うつぼです。毅然(きぜん)とした態度で、市民と野党の連帯を広げていきましょう。
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2016年04月03日,「赤旗」)

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(3月ヘッドライン)

 

*         特別号外を広げ対話/霧が丘支部とあさか参院候補/横浜市緑区

*         32選挙区まとまれば自公に勝てる/小林節氏迎え講演会/富山県革新懇

*         潮流

*         平和こそ国際貢献/元自衛隊員が講演/和歌山

*         緊急事態改憲を狙う政権を批判/『憲法運動』3月号

*         戦争法反対/自衛官の父親毎週行動/「息子を戦地に送るな」/福岡でスタンディング富山正樹さん(52)

*         「反アベ」いま必死にならないと/野党共闘を応援/福岡・自衛官の父、富山正樹さん

*         ナチ収容所生還の112歳、世界最高齢男性に認定

*         中国国防費7〜8%増/6年ぶり1桁台に/16年度予算

*         文化/作曲家・ピアニスト加古隆さん/人間の愚かさと素晴らしさ

*         海外小説が描くホロコースト/記憶と継承の自覚/丹羽郁生

*         登場/東京演劇アンサンブル女優永野愛理さん/相手役に踏み込む

*         トランプ氏はヒトラー=^メキシコ前大統領が痛烈批判

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(3月本文)

 

特別号外を広げ対話/霧が丘支部とあさか参院候補/横浜市緑区

 横浜市緑区の霧が丘支部は30日、あさか由香参院神奈川選挙区候補とともに地域を訪問し、「赤旗」購読や、2日に開く演説会への参加を訴え、日曜版読者2人を増やしました。
 支部から8人が参加し、組に分かれて、「赤旗」特別号外、日曜版の見本紙、演説会のお知らせビラなどを手渡しながら19人を訪ね、9人と対話できました。
 「共産党はブレないのがいいね」という男性に、あさか候補が特別号外を広げて紹介しました。男性は「『後方支援』というけど、戦争になれば後方も前方もない。みんな巻き込まれる。安倍首相が自分ではちまき巻いてドンパチやるならまだしも、戦地に行くのは若い人たちだ」と語り、あさか候補を激励。「読んでみましょう」と日曜版の読者になりました。
 公園で遊んでいた5組の母子連れとも対話に。「今の政治はナチスみたい」という母親に、野党共闘について説明すると、「そういうことが報道されないのは、マスコミにも原因がある」と話が弾み、「選挙は7月ですか。がんばってください」との声が寄せられました。
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2016年03月31日,
「赤旗」)

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32選挙区まとまれば自公に勝てる/小林節氏迎え講演会/富山県革新懇

 「平和・民主・革新の日本をめざす富山の会」(略称・富山県革新懇)は22日、富山市内で、慶応大学名誉教授で弁護士の小林節氏を迎えた講演会を開きました。会場いっぱいの470人が参加しました。地元の北日本放送テレビでも大きく紹介されました。
 小林氏は冒頭、安倍政権はナチスとそっくりだとして、野党は選挙に勝って絶対に安倍政権を倒さないといけないと訴え。32ある参院1人区で野党がまとまれば、必ず自公に勝てると強調しました。安倍政権が消費税増税を延期して衆参同日選を狙っているが、増税の延期はアベノミクスの失敗を認めることになり、安倍政権にプラスになるわけではないと指摘し、恐れる必要はないと述べました。
 その上で、「国民連合政府」構想を示して、野党共闘を呼びかけた日本共産党が全力をあげてたたかってこそ勝利できるとして、党への期待を表明しました。
 「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める『オールとやま県民連合』」準備会世話人の星野富一富山大学名誉教授が連帯のあいさつをしました。
 14歳の娘と参加した男性(46)は、「安倍政権のやり方はウソが多くて心配。小林さんの話は安心できるし、わかりやすい。富山でも野党の統一候補を実現して、風を吹かせてほしい」と話していました。
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2016年03月26日,「赤旗」)

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潮流

 4月からキャスター交代の「報道ステーション」。古舘伊知郎・現キャスターが満身の力で訴えたドイツ・リポートが大きな話題を集めています▼テーマは安倍晋三首相が明文改憲で新設をもくろむ「緊急事態条項」。「お試し改憲」といわれるこの条項が、独裁につながる劇薬であることをワイマール憲法と重ねて検証しました▼「ヒトラーは軍やクーデターで独裁を確立したわけじゃありません」と切り出した古舘氏。世界一民主的なワイマール憲法の下、独裁に道を開いたのが48条の「国家緊急権」だったといいます▼その条文は「大統領は公共の安寧と秩序回復のため必要な措置を取ることができる」というもの。首相に就任したヒトラーは、この条文を悪用し、言論・集会を制限し、あらゆる基本的人権を停止。共産主義者を逮捕し、野党の自由を奪い、「全権委任法」を成立させました。古舘氏は「緊急事態条項は、国家緊急権を思い起こさせる」というコメントをドイツ・イエナ大学の教授から引き出します▼思い出すのは今から3年前、麻生太郎副総裁の「ワイマール憲法はいつの間にかナチス憲法に変わっていた。あの手口に学んだらどうかね」という発言です。その手口が「緊急事態条項」の新設なのでしょう▼野党共闘が進む中、破壊活動防止法を持ち出し、「暴力革命」という悪質なデマで日本共産党と国民的共同の分断を図る政府。ヒトラーが国家緊急権で真っ先に共産党を弾圧し、独裁への道を固めた歴史も記憶に留めたい。
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2016年03月26日,
「赤旗」)

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平和こそ国際貢献/元自衛隊員が講演/和歌山

 和歌山県の「くしもと9条の会」は20日、元自衛官の泥憲和氏を招いた講演会を串本町で開き40人が参加しました。
 泥氏は「日本を守るためなら納得できる。なぜアメリカの利益のために危ないまねをしなければいけないのか」と自衛官たちの気持ちを代弁し「安保法制は国を守る法律ではない」と断言。アフガニスタンで緑化事業をやるJICA(国際協力機構)が一度も襲撃されず、フィリピンのミンダナオ島で長年続いた内戦ではJICAの農業支援や学校建設が内戦終結に結びついたことを紹介し「政府は軍隊を送らないと評価されないと言い続けてきたが、先進国でたった一つ軍隊を送らず平和支援をしたから信用された。この信用を根底から壊そうとしているのが安倍総理だ」と怒りました。また、ヒトラーが「独裁」を「決断できる政治」、「戦争の準備」を「平和と安定の確保」と言いかえたことを示し「安倍さんが同じやり方をやっている。いまファシズム直前だと思っている」と危機感をいっぱいに、戦争する国づくりを止める世論をつくるため正面からしっかり訴えようとよびかけました。
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2016年03月22日,「赤旗」)

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緊急事態改憲を狙う政権を批判/『憲法運動』3月号

 『月刊憲法運動』(憲法会議刊)3月号(写真)が発売されました。
 「憲法の眼」は森英樹名古屋大学名誉教授「壊憲から改憲に転じた安倍政権?―緊急事態改憲を批判する―」です。ナチスがワイマール憲法48条の非常事態条項を「活用」し、政権を掌握した歴史の教訓を説いています。
 民意が届く選挙制度をもとめて運動している憲法会議など11団体が1月におこなった学習集会の記録を収録。
 穀田恵二日本共産党国対委員長の国会報告、中野晃一上智大学教授の講演「小選挙区制による『少数決型新自由主義』と国民国家の空洞化―イギリスの事例をふまえて」などを掲載しています。
 戦争法廃止求める2000万署名の活動などについて全労連と全教がリポートしています。
 同時発行の「憲法しんぶん」3月号は、2000万署名を労使が共同して推進している建交労の活動や全国各地の運動の特徴を報じています。
 『月刊憲法運動』3月号は定価400円(送料70円)、「憲法しんぶん」は30円(送料62円)。申込先=憲法会議 電話03(3261)9007、ファクス03(3261)5453。
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2016年03月15日,「赤旗」)

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戦争法反対/自衛官の父親毎週行動/「息子を戦地に送るな」/福岡でスタンディング富山正樹さん(52)

 「愛する人を戦地に送るな」―。29日の戦争法(安保法制)施行を前に、毎週、このプラカードを掲げ、街頭で訴える男性がいます。富山正樹さん(52)=福岡市在住=。現役の自衛官の息子をもつ父親です。
 (山田英明)

 富山さんは、毎週木・日曜日には福岡市天神、毎金曜日には北九州市の小倉駅前で戦争法廃止を訴えています。
 10日夜、商業施設・天神コア前。冷え込みの中、十数人の仲間とともに「民主主義と人権を奪い、戦争の道に踏み込むことは絶対に許せません」と訴える富山さんの姿がありました。

1人立ちあがる
 息子は、自ら志願して自衛官になりました。
 昨年7月15日、衆院で安倍政権と自民、公明両党が戦争法を強行採決した瞬間、富山さんは「このまま何もしなかったら日本は大変なことになる。自分が何もしないで、息子が戦場に行くことになったら、自分で自分を許せない」との強い思いに襲われました。
 じっとしていられず、3日後の18日には1人で小倉駅前に立ちました。「アピールしないといけないのですが、とてもとても。通行人から隠れて立っていました」。「ほかにもやり方があるじゃない」、妻にもそう強く反対されました。
 それでも、ツイッターでその日のスタンディングの様子と翌日の案内を発信しました。「驚きました。翌日、コア前に立つと、見知らぬ女性が1人、次の日には男性3人が来てくださいました」
 「みなさん、『自分も何かしたい』と思っていました」。たった1人で始めたスタンディングは、9月19日の戦争法成立時には仲間が60人近くに。10日のスタンディングでは、十数人が富山さんとともに街頭に立ちました。今では妻も一緒に立つ大切な仲間です。(3面につづく)
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2016年03月15日,「赤旗」)

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「反アベ」いま必死にならないと/野党共闘を応援/福岡・自衛官の父、富山正樹さん

 昨年末、米国に住むある日本人女性からインターネットの交流サイト・フェイスブックを通して富山さんにメッセージが送られてきました。そこには「自分が抱えている後悔を絶対に富山さんにさせたくない」とありました。

米兵の母の思い
 彼女は、イラクに派兵され帰還した米海兵隊員の息子をもつ日本人女性・長島志津子さん。「息子の笑顔 戦争が奪った―イラクの前線部隊にいた日本人」(「しんぶん赤旗」日曜版2015年11月15日号)の記事に描かれた女性でした。
 「志津子さんは息子を戦場に送ってしまったわけです。当時、眠るのが怖いほどの思いを抱えていた彼女。今も息子さんは、普通の生活に戻れていない。その事実を知りえた自分の責任として、このことを伝えきらないといけない」。今では、志津子さんとは、海を越えて互いを励ましあう仲間になりました。
 同じ思いを抱くほかの自衛官の家族にも一緒に立ってほしいという思いもあります。しかし、「親の行動が自衛隊内で問題視され、もし息子が戦場で捨て駒にされるようなことになれば…。そう思うと…」。富山さんに苦悩が浮かびました。
 「でもね、息子は『父さんは父さんの人生、思いがあって生きているのだから、それをまっとうすればいい。自分は自分の生きる道がある』と言ってくれる。彼には自衛官として自分の正義に誠心誠意尽くしているという思いがあります。こっちは、早くやめればいいのにと思いますけどね」
 最近の訴えで力を込めているのは、安倍政権が打ち出した改憲と「緊急事態条項」制定のたくらみです。

命がかかってる
 人権と民主主義の抑圧につながる「緊急事態条項」。戦前の日本やナチス・ドイツでは、反戦や民主主義を訴える人々が弾圧されました。「参院選で負ければ、今度のクリスマスには、この場所で仲間たちとスタンディングができるかどうか分からない。ここに来る仲間は、そういう覚悟の上で、ここに来ています」
 だから、安倍政権打倒をめざす野党共闘の動きに対し、「期待どころの話ではないです。やってくれないと、私たちの命がかかっています」。スタンディングには、富山さんの思いに共感する全野党、候補者ののぼりを掲げています。「政党がどうのと言っていられない。負けるわけにはいかないのです。必死になって『反アベ』のすべての政党を応援しないといけない」の思いからです。
 10日のスタンディングには、日本共産党のしばた雅子候補(参院福岡選挙区)が参加しました。
 「今日ここに、私たちが票を投じるべき野党の候補、日本共産党のしばた雅子さんが来てくださっています」。富山さんはこう語り、しばた候補にマイクを渡しました。
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2016年03月15日,「赤旗」)

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ナチ収容所生還の112歳、世界最高齢男性に認定

 【エルサレムAFP=時事】英ギネス・ワールド・レコーズは11日、ナチス・ドイツのホロコースト(ユダヤ人大虐殺)を生き延びた112歳のイスラエル人のイスラエル・クリスタルさんを世界最高齢男性に認定しました。
 クリスタルさんは、ライト兄弟が人類初の動力飛行に成功する3カ月前の1903年9月15日生まれ。出生地は現在のポーランドで、第2次世界大戦でナチスが占領したのに伴い、アウシュビッツ強制収容所に送られました。
 クリスタルさんは「長生きの秘訣(ひけつ)は分からない。全ては天からの意思で決まり、われわれにはその理由など決して分からない」とコメントしました。
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2016年03月13日,「赤旗」)

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中国国防費7〜8%増/6年ぶり1桁台に/16年度予算

 【北京=小林拓也】急速に軍拡を進め、25年以上ほぼ2桁の伸び率を続けてきた中国の国防費が、今年の予算で「(前年比で)7%から8%の間の伸び率」にとどまることが4日わかりました。5日開幕の中国全国人民代表大会(全人代、国会に相当)に提案される予定で、全人代の傅瑩(ふえい)報道官が記者会見で明らかにしました。
 中国の国防予算の伸び率は1989年以降、2010年を除いて2桁増が続いていましたが、今年は6年ぶりに1桁増となる見込みです。
 今年の国防予算は9500億元(約16・5兆円)規模になる見通し。中国の国防費は米国に次ぐ世界第2位で、過去10年で3倍以上に急増しています。
 傅報道官は、中国の国防予算は、
@国防建設の必要性A経済発展と財政収入状況―を考慮して決めていると解説。経済成長が減速し、財政収入が悪化する中で、国防予算の伸びも抑えざるを得なくなったとみられます。
 習近平国家主席は、昨年9月に実施した「反ファシズム戦争・抗日戦争勝利70周年」の記念式典で、人民解放軍の現兵力230万人から30万人を削減すると宣言。また、大規模な軍改革も進めており、国防予算はこれらを踏まえたものとみられます。
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2016年03月05日,
「赤旗」)

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文化/作曲家・ピアニスト加古隆さん/人間の愚かさと素晴らしさ

代表曲「パリは燃えているか」に込めた思い/「新・映像の世紀」オリジナル・サウンドトラック
 「パリは燃えているか」をはじめ詩的な音楽を紡ぐ作曲家でピアニストの加古隆さん。CD2枚組のアルバム「NHKスペシャル『新・映像の世紀』オリジナル・サウンドトラック完全版」を出しました。来月、コンサートも開きます。
 西條正人記者

 加古さんの代表曲といえば、「パリは燃えているか」。1995年のNHKのドキュメンタリー番組「映像の世紀」のテーマ曲です。
 曲名は、第2次世界大戦中のナチス・ドイツが、パリを破壊しようとした作戦から生まれた言葉≠ノ由来しています。
 「人間は愚かな戦争を繰り返す。だけれども、素晴らしい文明や精神世界を生み出すことができる。その二つの側面を書きたいと思って、タイトルを選んだんです」
 現在では、コンサートでこの曲を弾かないと観客が帰してくれない、と笑みをこぼします。
 「決して明るい曲ではないですけども、ただ暗くて悲惨な世界を感じさせるものではない。何か、そこを突き抜けるものがある。音楽って抽象的な表現ですから、そういうところに良さがあると思います」
 「新・映像の世紀」のサントラ盤は、「パリは燃えているか」など20年前の曲の中から厳選した新録音に、新曲の「神のパッカサリア」「愛と憎しみの果てに」なども録音しました。下野竜也指揮・NHK交響楽団の演奏もあり、豪華です。

「運命」と出合い
 7歳の時、トスカニーニ指揮のベートーヴェンの交響曲「運命」を聴いて、音楽に目覚めました。
 「同じ曲をフルトヴェングラーが振ると長くなりますが、誰が演奏するかということよりも、ぼくはベートーヴェンの曲にひかれるんです」
 中学でストラヴィンスキーなど現代音楽に、高校ではアート・ブレイキーなどジャズに傾倒。東京芸術大学入学後、三善晃さんの薫陶を受け、現代音楽の作曲家として生きる道を決意しました。
 「三善先生は、音楽に人生の全てをささげていました」
 同大大学院修了後、フランスに留学。現代音楽の巨匠オリヴィエ・メシアンさんに師事しました。
 「メシアン先生は、『日本人であることは財産だよ』とおっしゃってくださいました」
 既に作曲の技術は完璧なのに、あなたは何を勉強したいの? と問われたのです。
 「日本人は、西洋のものまねではなく、独自の文化と風土に根ざした音楽を生み出すことができるという意味だったと思います。それが、ぼくに与えられた宿題でした」
 自分らしさ―それを追求して73年、フリージャズのピアニストとしてパリでデビュー。「当時、フリージャズの即興性とドライブ感が現代音楽の語法と合っていたんです」

懐かしさ大切に
 帰国して作曲活動を中心に据え、テレビドラマ「白い巨塔」や映画「博士の愛した数式」など映像の音楽も数多くつくってきました。
 「自分の感性の中で美しい、懐かしいと感じられるものを大切にしてきました」
 12日公開の映画「エヴェレスト 神々の山嶺(いただき)」(夢枕獏原作・平山秀幸監督・岡田准一主演)の音楽も手がけています。
 最近、歌舞伎を見に行くようになったといいます。「どの役者が好きということはありませんが、実に情緒豊かですよね」
 来月、演奏ツアーで全国4都市を回ります。
 「新作をピアノソロで弾きます。第2部はカルテットですが、東京だけゲストで羽毛田丈史さん(シンセサイザー)も出演してくれます。もしかしたら映像も付くかもしれませんが、それは当日を楽しみにしてください(笑)」

かこ・たかし=1947年生まれ。大阪府出身。パリ国立高等音楽院卒業。95〜96年、NHKスペシャル「映像の世紀」の音楽を担当

コンサートは4月10日=札幌、23日=名古屋、24日=大阪、30日=東京・サントリーホールで開催。
0570(550)799キョードー東京
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2016年03月06日,
「赤旗」)

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海外小説が描くホロコースト/記憶と継承の自覚/丹羽郁生

 人類が体験した未曽有の惨事であるナチ・ドイツの大量虐殺、ホロコーストは、これまでに膨大な研究が積まれ、芸術作品も数多くの名作が生み出されている。とりわけ戦後70年の昨年前後にこれらが画期をなしたことは心強い。永遠に忘れてはならず「記憶」を保持し続け、語り継ぐ「継承」の責務が人類にはある、そのことの厳粛な自覚のあらわれであろう。

加害被害の証言
 ゾフィア・ナウコフスカ著、加藤有子訳『メダリオン』(松籟社・1600円)は、1946年という早期刊行の短編集だが、日本で昨年末まとまって訳出されたものだ。ポーランドのナチス犯罪調査委員会に参加した作者が、加害・被害の両者から聴取した内容などをもとにした「証言文学」作品8編が収録されている。
 焼き殺される前に、窓から飛び降りるユダヤ人家族が固い地面に落ちる「ぴしゃん、ぴしゃん」という死の音は、「墓場の女」の耳から離れない。一番小説的な「線路脇で」は、絶滅収容所への移送列車から脱走する女性の、ポーランド人の見守る中での意外な最期が描かれる。
 証言・記録文学といえば数多くあるが、エリ・ヴィーゼル著、村上光彦訳『夜』(みすず書房・2800円)を挙げたい。作者は、ルーマニア生まれハンガリー育ち、アメリカに在住する作家だ。アウシュヴィッツで最も多く殺害されたユダヤ人はハンガリーに住んでいた人々である。
 1944年5月に始まる収容所移送などを、予想だにしなかったユダヤ人一家族のアウシュヴィッツ体験を経て、翌年1月からのドイツ国内収容所への「死の行進」の酸鼻の体験が描かれる。炎の中に赤ん坊が次々に投げ込まれ、絞首刑でつるされた子どもが自重で絶命できずに苦しむ。神はしかし沈黙し続け、ヴィーゼルは「神を殺害し」「神を告発する」。

幻想と現実絡め
 アメリカのスティーヴ・エリクソン著、柴田元幸訳『黒い時計の旅』(白水社・1500円)は、驚嘆の想像力を自在に駆使した1989年の作品だ。邦訳再刊され昨年末に第4刷りが出た。ナチ・ドイツは敗北せず、ヒトラーは老醜をさらして占領国イタリアで生きているという設定だ。1970年、戦争はまだ継続中で、ニューヨーク・シティまで逃避行したヒトラーは81歳で死ぬ。
 「たら・れば」の仮定でなおかつ幻想と現実が絡み合う。ストーリー展開や人物配置や場面描写が実に巧緻で明視的で独創に富んでいる。作者はなぜヒトラーを「たら・れば」の世界に投げ込んだのか。それは終盤に描かれる、ヒトラーのために小説を書き続けてきた主人公がユダヤ人に成り代わって試みるヒトラーへのすさまじいばかりの〈想像力の復讐〉のためであろう。ここにも「記憶」の「継承」の一端を見ることができる。
 (にわ・いくお 作家)
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2016年03月06日,
「赤旗」)

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登場/東京演劇アンサンブル女優永野愛理さん/相手役に踏み込む

 劇団に入って5年目の26歳。最近の劇団公演でヒロインに相次ぎ抜擢される注目の若手俳優です。
 3月に出演する劇団公演「最後の審判の日」は1936年の作品。33年のヒトラー率いるナチスの政権獲得後、ドイツ国内で上演の可能性を失った劇作家のエデン・フォン・ホルヴァートが、国外を転々としていたときの作品です。
 「ナチスの足音を背景として、大衆という存在のうつろいやすさや、戦争前夜の社会状況を、普通の人々が巻き起こす事件の中で描き出した作品です」
 物語は実際の列車事故をモチーフにしています。小さな駅の駅長が、奔放な女性・アンナに絡まれた揚げ句、信号の切り替えを怠り衝突事故を起こしてしまいます。アンナの偽証で駅長は無罪になりますが…。真相は? 罪はどうあがなわれるのか? 緊迫の展開です。永野さんは事件の鍵を握るアンナを演じます。
 「流されるままに生きていると、世界も人生も誰かに動かされてしまう。自分で自分の中の真実を見つけ、どんなに小さな個人の単位であっても変わる≠アとが悪い連鎖を断ち切ることになる。そんな気持ちを込められたらと思います」
 熊本県出身。子どものころから親子劇場で演劇に親しみました。「生きづらさ」を感じ始めた中学時代。劇団のワークショップに参加して「生きるすべが学べる」と入団を決めました。
 「人に面と向かえるかどうか。役者としては相手役にどれだけ踏み込めるか。永遠の課題です」
 (寺田忠生)
 *「最後の審判の日」(訳/大塚直、演出/公家義徳)9〜21日、東京・ブレヒトの芝居小屋。
03(3920)5232(東京演劇アンサンブル)
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2016年03月04日,「赤旗」)

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トランプ氏はヒトラー=^メキシコ前大統領が痛烈批判

 【メキシコ市=AFP時事】メキシコのカルデロン前大統領は2月27日、米大統領選の共和党候補者指名争いでトップを走る不動産王ドナルド・トランプ氏が、メキシコからの不法移民を性犯罪者呼ばわりしたことを取り上げ、「(ナチス・ドイツの独裁者)ヒトラーがやったのと同様に」社会の不安につけ込んでいると痛烈に批判しました。
 カルデロン氏は、トランプ氏が攻撃の標的としているのは「自分と肌の色が異なる移民であり、はっきり言えば人種差別主義者だ」と非難。指名争いでトランプ氏が浮上することによって、世界中で反米主義が高まっていると主張しました。
 トランプ氏は不法移民問題をめぐり、性犯罪者や殺人犯を送り返し、メキシコ側の負担で国境に壁を建設すべきだなどと発言。メキシコ側はこれに激怒し、フォックス元大統領も最近、米テレビで「(トランプ氏は)どうかしている。そんなばかげた壁に金を出すつもりはない」と断言しています。
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2016年03月01日,「赤旗」)

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(2月ヘッドライン)

*            潮流

*            戦場の性 独ソ戦下のドイツ兵と女性たち/レギーナ・ミュールホイザー著、姫岡とし子監訳/評者岡野八代同志社大学大学院教授

*            民族の苦難、歌で訴え/クリミア女性歌手、ウクライナ代表に/欧州最大の音楽祭

*            日本文学研究者ドナルド・キーンさん(93)/オペラは何度でもおいしい/日本の映画館でアメリカの公演を見よう

*            差別は戦争につながる/障害者平和のつどい/富山

*            「ポーランドの強制収容所」表現したら禁錮5年も/法案まとめ

*            片手の郵便配達人/グードルン・パウゼヴァング著、高田ゆみ子訳/評者石井正人千葉大学教授

*            ナチス元看守の裁判始まる/ユダヤ人大量虐殺の関与問う

*            アベ政治倒す流れ大きく/戦争法廃止へ「会」が集会/真島議員参加/福岡・久留米

*            内戦・独裁下で犠牲/遺骨返還へ/遺族らの要求に応じる/スペイン

*            排除より連帯を/反難民運動に対抗デモ/ドイツ

*            緊急事態条項必要ない/立憲デモクラシーの会シンポ

*            「原発はいらん」思い強く/高浜現地訪問/参院大阪選挙区候補わたなべ結リポート

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2月本文)

潮流

 80年前、1936年のきょう、陸軍の青年将校が「昭和維新の断行」を掲げてクーデターを起こしました。二・二六事件と呼ばれています▼青年将校が下士官・兵約1400人を率い首相官邸を襲撃、内大臣、蔵相ら政府の要人3人を殺害し、永田町一帯を占領しました。陸軍大臣に面会し、「天皇親政」のもとでの軍部の独裁、戦争体制の人事を求めました▼統帥権を侵された天皇が激怒して反乱軍に強硬な態度をとり、クーデターは4日間で鎮圧されます。軍法会議は、非公開、弁護人なし、控訴なしの暗黒裁判。19人が処刑されますが、事件の真相は隠されたままです▼作家の澤地久枝さんはNHK取材班と共同で、特設軍法会議の主席検察官の秘蔵資料を手に入れ、読み解きました(『雪はよごれていた』)。反乱を鎮圧する最高責任者の戒厳司令官が、反乱をほう助したとして憲兵隊の逮捕・検挙の対象になっていた―。陸軍首脳部が関与していたと思わせる驚くべき事実を紹介しています▼二・二六事件のとき、東京は大雪でした。「雪はよごれていた。よごれた軍衣の男たちのどす黒い野心と背信のせいである。よごれた雪のなかから軍ファシズムの公然とした前進がはじまった」(澤地さん)▼安倍政権下で自衛隊制服組の権限拡大の動きが顕著です。昨年の戦争法審議の中で、自衛隊統幕長が法の成立時期をいち早く米軍に約束していたことが発覚、軍≠フ暴走と大問題になりました。軽視できないことは、戦前の歴史が教えています。
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2016年02月26日,
「赤旗」)

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戦場の性 独ソ戦下のドイツ兵と女性たち/レギーナ・ミュールホイザー著、姫岡とし子監訳/評者岡野八代同志社大学大学院教授

暴力構造が生む称揚・隠蔽・沈黙
 「(売春は)はい、食料とパンのために。レイプは見たことがありません。(中略)レイプする必要はなかったのです」(元ドイツ兵の証言)
 戦場の「性」。敵を殲滅することを目的とする戦場と、他者との親密な結びつきを希い、温もりを求める「性」。日本に比べ格段に過去の加害と向き合ってきたと紹介されることの多いドイツでも、戦場と性という異様な組み合わせから目を背けてきた。まずこの組み合わせが、いかに異様かを認識すること、それが本書の第一のメッセージだ。
 本書では、優生思想と反共に貫かれたナチス・ドイツの兵士たちが、ソ連との戦いの中で、ユダヤ人女性を含む現地女性にふるった多様な「性暴力」のあり様とその文脈が丁寧に読み取られていく。
 「性暴力」「取引としての性」「合意の上での関係」「占領下ドイツ兵の子どもたち」と、各章で述べられる全ての事象を、暴力として一くくりにできるのか。軍規に反しているはずの軍用売春施設を、清潔な売春という名目で許容する。戦中は、英雄のたけだけしさとしてむしろ称揚さえされた敵国女性への性暴力が、戦後には軍の「恥」とされ隠蔽される。女性たちは被害者ではなく、裏切り者とされ、沈黙を強いられる。戦場の「性」はそうしたさまざまな矛盾を私たちに突きつける。
 しかし、この矛盾が引き起こされるのは、男女の不平等を支え、戦争状態においてむき出しになる暴力構造のなかで、性暴力が生じるからだ。丁寧な序文と訳者解説のなかで触れられる日本軍「慰安婦」問題を、また新たな地平で考えるためにも、貴重な歴史書として読み継がれてほしい労作である。

 71年生まれ。独ハンブルク社会研究所研究員 
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2016年02月28日,
「赤旗」)

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民族の苦難、歌で訴え/クリミア女性歌手、ウクライナ代表に/欧州最大の音楽祭

 【モスクワ=時事】欧州最大の音楽祭「ユーロビジョン」のウクライナ最終予選が21日夜に行われ、ロシアに編入された南部クリミア半島の先住民族タタール系の人気女性歌手ジャマラさん(32)が代表の座を勝ち取りました。
 タタール系の多くは編入をめぐる2014年3月の住民投票を棄権し、ロシアから「過激派」と弾圧されています。ジャマラさんは民族の苦難を込めて5月のスウェーデンでの決勝で歌い、音楽を通じてロシアの不当性を国際社会に訴えます。
 タタール系は第2次大戦時、ソ連の独裁者スターリンに「ナチス・ドイツのスパイ」とぬれぎぬを着せられ、約20万人が強制移住させられました。ジャマラさんは今回の楽曲「1944年」を、曽祖母の追放の体験を基に英語でつづりました。
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2016年02月25日,「赤旗」)

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日本文学研究者ドナルド・キーンさん(93)/オペラは何度でもおいしい/日本の映画館でアメリカの公演を見よう

「METライブビューイング」の魅力を語る/見るたびに新しい発見、生涯味わえる芸術
 アメリカ出身の日本文学研究者、ドナルド・キーンさん(93)は、実は大のオペラ好きです。現在のお気に入りは、アメリカの最新オペラ公演を撮影し映画館で上映する「METライブビューイング」。オペラの魅力と平和への思いを合同取材会で語りました。
 金子徹記者

 キーンさんのオペラ歴は80年近く。15歳でビゼー作曲の「カルメン」を見たのが最初です。
 「オペラの一番の魅力は音楽(声)です。音楽は私にどうしても必要なものです」
 16歳で、世界三大歌劇場のひとつであるニューヨークのメトロポリタン歌劇場(MET)を初体験。以来、熱心に何回も通ってきました。イタリアのオペラ歌手パバロッティの声の美しさに、共演者が思わず舞台上で拍手したことなどを、楽しげに振り返ります。
 「METは私の第二の『家』です。特別なものを感じます」
 METの最新公演の映像を、日本各地の映画館で上映するのが「METライブビューイング」。歌手のインタビューや舞台裏の様子など特典映像も盛り込んでいます。
 「日本の生活は非常に好きで、永住することにしました。でも、オペラが無ければ何かが欠けている感じです」と語るキーンさん。

特等席で舞台
 「しかし幸い、ここ(東京・東劇)にライブビューイングがありますから。毎回来ています」
 上映作は、舞台を特等席で見るようなものだと。
 「昔のオペラは演劇としてのおもしろさはなかった。でも、いまの歌手は演技が上手で、姿がよくなりました。(それなのに)現在の若い人はオペラに興味がないようです。私は早く(本物の)文化が(若者に)戻ってくることを祈っています。現在の歌手は歌も以前より上手です。(本当なら)もっと歌劇場の前に行列ができるはずです」
 「オペラはいまの薄くて退屈な文化とは違います。生涯(にわたって楽しめる)ものです。同じものを何回見てもいつも新しいものを見つけることができる。だんだん慣れて、なくてはならないものになる。何回も聴くと、良さが分かります。本物の芸術のしるしだと思います」
 「オペラと料理は似ている」とも言います。
 「尊敬する人が食べるから、何か味があるのだろうと(思って未知のものを食べてみるのと同じように、オペラも)おいしさが出てくるに違いないと信じるべきです(笑い)」
 待望の注目作はイタリアの作曲家プッチーニの遺作「トゥーランドット」。
 「ニーナ・ステンメは聴いたことがありません。彼女の声を、ぜひ聴きたい。(公演プログラムに)見たくないものはありません(笑い)」

戦争は人間の一番悪い行為
 アメリカで大学に通っていた18歳の時、「源氏物語」と出合いました。日本語を学び、戦時中は日本軍捕虜の通訳に。フィリピンのレイテ島から沖縄と激戦地を遍歴。特攻機の来襲で命の危険にさらされたこともありました。
 戦後はアメリカの大学で後進を育て、たびたび来日。谷崎潤一郎、安部公房、三島由紀夫、有吉佐和子、先代・松本幸四郎、坂東玉三郎、茂山千之丞、平野啓一郎などの作家、芸術家と親交を深めてきました。
 文学から歌舞伎、能、文楽と幅広く日本文化を研究。東日本大震災後、「いまこそ日本人になりたい」と決意。2012年に日本国籍を取得しました。
 「平和主義者」を自任します。
 「平和とオペラ、この二つは私にとって非常に大事です。私は日本の政治家と違って、戦争を知っています。(アッツ島での日本軍の)『玉砕』や、沖縄の恐ろしい戦争も見ました。(戦争は)もう二度と見たくない。戦争は、人間の行為のなかで、一番悪いと思っています」
 ナチスを逃れアメリカに渡った指揮者で作曲家のブルーノ・ワルターのMETでの公演(1941年2月)が「一番、忘れられない」と。作品はベートーベンのオペラ『フィデリオ』でした。
 「当時、ヨーロッパは戦争(第2次世界大戦)が始まりましたが、アメリカはまだ参戦していませんでした。みんなヨーロッパのことを心配していました。(終演後)3千人(の観客が)みんな立って(拍手をしながら)泣いていました。あれは、忘れられないです。そういうことは、生涯に一回です」

METライブビューイング
 2月27日〜3月4日、トゥーランドット。4月2日〜8日、マノン・レスコー。5月7日〜13日、蝶々夫人。以降、ロベルト・デヴェリュー、エレクトラを上映。上映都市は札幌、仙台、東京、名古屋、京都、大阪、福岡など

1922年ニューヨーク生まれ。コロンビア大学名誉教授。2008年、文化勲章受章。『日本文学の歴史』『私の大事な場所』『日本人の戦争 作家の日記を読む』『戦場のエロイカ・シンフォニー 私が体験した日米戦』ほか多数。『ドナルド・キーン著作集』(全15巻)を刊行中
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2016年02月21日,「赤旗」)

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差別は戦争につながる/障害者平和のつどい/富山

 「富山県障害者・患者・関係者 平和(9条)・社会福祉(25条)を守る会」が15日、富山市で2回目の「障害者平和のつどい」を開きました。
 つどいでは、ドイツのナチス政権下で行われた障害者などの虐殺を調査したドキュメント映像を鑑賞し、意見交換しました。映像は、ユダヤ人虐殺に先立って、医師が「生きる価値のない」と判定した障害者を精神病院などでガス室送りしたことや「優生思想」のプロパガンダ宣伝が家族にも浸透していたこと、殺害行為と明言した1司教の行動が命令を停止させたことなど衝撃的な内容でした。
 意見交換では、「障害者への差別的見方は根本的には変わっていないのではないか」「社会や福祉制度が生きる権利を十分に保障していない」「差別が戦争につながる前兆であったように、今日の日本も戦争の前兆が表れている」「障害者が積極的に露出して訴える必要がある」などが出されました。
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2016年02月20日,「赤旗」)

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「ポーランドの強制収容所」表現したら禁錮5年も/法案まとめ

 【ジュネーブ=時事】ポーランド政府高官は15日、同国にあるナチス・ドイツの強制収容所跡を「ポーランドの強制収容所」と表現した人物に最高で禁錮5年の刑を科す法案をまとめたと明らかにしました。AFP通信などが報じました。
 ポーランドにはホロコースト(ユダヤ人大虐殺)の象徴となったアウシュビッツ強制収容所跡もあります。国民の間には、ナチスに占領され、多大な被害を出しながら、収容所での残虐行為に責任があるかのようなイメージを持たれることに困惑もありました。
 2012年にはオバマ米大統領が「ポーランドの死の収容所」と発言。米政府があくまで場所の意味だったと釈明する事態になりました。ポーランド司法省報道官は「外交問題は望まない」として、今からオバマ氏の罪を問う考えはないと明言。こうした表現の使用をなくすことが法案の狙いだと説明しました。
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2016年02月19日,「赤旗」)

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片手の郵便配達人/グードルン・パウゼヴァング著、高田ゆみ子訳/評者石井正人千葉大学教授

戦時の体験元に歴史と向き合う
 原発事故を題材にした近未来小説『みえない雲』によって日本でも知られるこの作者は、高い社会的問題意識と使命感を持つドイツの教育者・児童文学者である。前作『そこに僕らは居合わせた』に続き本書でも、主人公と同様終戦時に17歳であった自らの体験を元に第2次大戦前後のドイツの暗い歴史と向き合う。
 旧ドイツ東部の奥深い田舎に生まれたヨハンは、軍国教師にあおられるまま未成年の身で勇んで徴兵されたが、間に合わせの訓練のあと前線に送られ、2日目に左手首を失って除隊、故郷に戻り郵便配達人となる。配達区域の七つの集落をつなぐ何キロもの山道を、吹雪の時などはそれこそ命がけで毎日勤勉に回った。大事な息子・夫・父親を兵隊に取られ、便りを心待ちにする人々に、うれしい便りばかりでなく、無慈悲な戦死公報を届けるのも任務だった。傷痍軍人の悲惨な暮らし、戦没者遺族の女性達の筆舌に尽くせぬ苦労、積極的にナチを支持して活動した人々の哀れな末路。田舎町にまで深い傷痕を残した戦争の惨禍を、ヨハンは日々見て回った。戦争とヒトラーを呪う庶民の声はちまたに満ちていたが、ついに公然たる力にならない。
 終戦直後、新しい人生が始まろうという時に、ヨハンはナチス協力者と間違えられ、悲劇を迎える。時代に翻弄された哀れな少年の物語のあっけない終結がかえって読者の心に深い印象を残す。日本の読者に向けたあとがきで、ドイツと同じく周辺国に非道な行いをした日本は誠実にその事実と向き合ったかと作者は率直に問いかけているが、まさに今の時代私たちにとって重い質問である。

 28年旧ドイツ領ボヘミア生まれ。作家。『そこに僕らは居合わせた』ほか
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2016年02月14日,
「赤旗」)

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ナチス元看守の裁判始まる/ユダヤ人大量虐殺の関与問う

 ドイツ北西デトモルトで11日、ナチス・ドイツがユダヤ人大量虐殺(ホロコースト)を行ったアウシュビッツ強制収容所(ポーランド)の元看守、ラインホルト・ハニング被告(94)の裁判が始まりました。ロイター通信が報じました。
 この日は、ホロコーストで35人の親族を失ったレオン・シュワルツバウム氏(94)が証言。「なぜ数百万のユダヤ人が殺され、われわれ2人がここにいるのかを知りたい」と訴えました。
 同被告は18歳で、ナチス親衛隊(SS)で強制収容所を監督していた部隊に志願。1942年1月〜44年6月、アウシュビッツで少なくとも17万人の殺害に関与した疑いを持たれています。
 被告代理人は、看守だったことは認めましたが、大量虐殺への関与は否定。検察側は「生死の最終判断はSSが行っていた」として、被告は虐殺を促していたと主張しました。
 シュワルツバウム氏は「ほどなく、われわれ2人は上級の裁判所に出廷することになる。(アウシュビッツで)何が起きたのか、ここでみんなに話せ」と被告に迫りました。
 ナチス戦犯裁判は、さらに3人の被告の審理が予定されています。被告はいずれも90代です。
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2016年02月13日,
「赤旗」)

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アベ政治倒す流れ大きく/戦争法廃止へ「会」が集会/真島議員参加/福岡・久留米

 戦争法の廃止を目指し活動する「ちくご意思表示の会」は11日、福岡県久留米市で「アベ政治を許さない!主権の覚醒」をスローガンに集会を開き、170人が参加しました。日本共産党から真島省三衆院議員が参加し、あいさつしました。

 九州大学名誉教授の石川捷治氏は、安倍政権をファシズムに肯定的な勢力と批判。市民一人ひとりが主権者として憲法に依拠して行動する意義を強調しました。
 真島議員は、5野党共同で戦争法廃止法案を提出すると報告、「『野党は共闘』の声を上げ続けてほしい」と呼びかけました。あらゆる分野で民主主義、憲法に反する暴走を続ける安倍政権に対抗し、「怒っている国民を総結集してアベ政治を倒す流れをつくっていこう」と訴えました。
 民主党の野田国義参院議員があいさつ。西原親みやま市長がメッセージを寄せました。
 集会後、参加者らは市街をデモ行進。「戦争法絶対廃止」と声をあげました。
 久留米青年革新懇の竹下浩太郎さん(31)は、「憲法を勝手に変えるのはおかしいと感じ参加した。政府がアベさん色になろうとしているのをみんなで立ち上がって阻止したい」と語りました。
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2016年02月13日,
「赤旗」)

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内戦・独裁下で犠牲/遺骨返還へ/遺族らの要求に応じる/スペイン

 1930年代の内戦と、フランコ将軍による独裁(39〜75年)で数十万人の市民が犠牲となったスペインでこのほど、犠牲者の埋葬されている合同墓地が遺族らの求めに応じて掘り返されました。ロイター通信などが報じました。
 (島崎桂)

 1月中旬にスペイン中部グアダラハラの合同墓地で始まった掘り返しの作業は、アルゼンチンの裁判所が求め、スペインの裁判所が許可しました。アルゼンチン側はこれまでも、フランコ政権による市民迫害の捜査などを繰り返し求めてきましたが、スペイン側がこうした要望に応じたのは初めてです。

ようやく埋葬が
 「父がどのように墓に投げ込まれたのか、うつぶせだったのか、あおむけだったのかもわからなかった」と語るのは、父・ティモテオさんの遺体を家族の墓に移葬するため訴訟に参加したアセンシオン・メンディエタさん(90)。およそ80年ぶりに対面した父の遺骨を前に、「ようやく、父を人間らしく埋葬できる」と語りました。
 労働組合員だったティモテオさんは内戦中、フランコ軍に対抗するため共和国軍に参加。内戦終結後の39年、フランコ政権による元共和国派への報復・迫害の中で銃殺され、合同墓地に埋葬されました。
 掘り返し作業では、ティモテオさんの遺骨のほか、同時期に処刑された計22人の遺骨が重なるように見つかりました。作業の支援者らは、こうした遺骨が同墓地内だけで200体、スペイン全土では11万体以上に上ると推計しています。見つかった遺骨の一部はアルゼンチンに送られ、身元を特定するといいます。
 亡くなった母親から「あなたの祖父母はこの墓地で眠っている」と聞かされていたパブロ・ロドリゲスさん(63)は、「祖父母を母と同じ墓に入れてあげたい」と語り、作業員や支援者らに連絡先を伝えました。
 スペインでは、フランコ死去後の民主化の過程で「大赦法」が制定され、フランコ政権側も、反政権側も犯罪行為の法的責任を問われません。

名誉回復求めて
 こうした中、スペインの「歴史的記憶回復のための会」(ARMH)など複数の市民・人権団体は2010年、内戦や独裁下で処刑された人々の名誉回復を求め、アルゼンチンの裁判所に提訴しました。大量虐殺のような犯罪が当該国で訴追されない場合、どこの国でも訴追できるとする「普遍的管轄権」を主張し、受理されました。
 同国の裁判所は14年、フランコ政権に協力した疑いで、元閣僚ら20人の逮捕を求めましたが、スペインの裁判所は「大赦法」を理由に要求を退けていました。
 遺族やARMHは、今回の掘り返し作業の許可が、スペイン内戦や独裁に関わる他の訴訟を後押しするものと期待を寄せています。

スペイン内戦
 1936年2月の総選挙で共産党、社会党、共和党などが参加する人民戦線政府が成立。同年7月、フランコ将軍率いる極右・軍が反乱を起こし、ドイツのヒトラーやイタリアのムソリーニがそれを支援しました。これに対し、反ファシズムを掲げる国際旅団が組織され、55カ国からのべ6万人の志願兵が参加しました。
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2016年02月12日,
「赤旗」)

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排除より連帯を/反難民運動に対抗デモ/ドイツ

 難民の排斥を主張する極右団体「西洋のイスラム化に反対する愛国的欧州人(ペギーダ)」が呼び掛けた反難民のデモが6日、欧州各地で行われました。ロイター通信によると、ドイツ東部ドレスデンでは、これに対抗するデモも行われました。
 同市では、ペギーダのメンバーが「欧州内外で国境を守り、管理せねばならない」などと主張。メルケル首相の退陣を要求しました。
 これに対し、対抗するデモは「排除より連帯を」と呼び掛け、「ナチスの台頭は許さない」などのプラカードを掲げて市内をデモ行進しました。
 ドイツのメディアは同市の反難民デモの参加者を8000人と報道。事前の1万5000人との見通しを大幅に下回る数字となりました。
 極右勢力による反難民デモはこの日、フランスやオランダ、チェコ、英国などでも行われました。
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2016年02月08日,「赤旗」)

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緊急事態条項必要ない/立憲デモクラシーの会シンポ

 立憲デモクラシーの会は5日、安倍政権が改憲のテーマにあげる「緊急事態条項」について、東京都千代田区・全電通労働会館でシンポジウムを開きました。会場には500人を超える市民がつめかけました。
 長谷部恭男・早稲田大学教授が基調講演。緊急時の法制に関して「現に災害対策基本法や有事法制という制度がある」と指摘し、「緊急事態条項は必要ない」と主張しました。
 長谷部氏は「具体的な根拠もないのに国民の不安をあおり『対応する必要がある』というのは、安保関連法制と同じ手口だ」と安倍政権を批判。自民党改憲草案の緊急事態条項について、ドイツでナチス独裁を許した全権委任法(授権法)のように憲法を変えるとまでは書いていないものの、「実際に発動すれば、授権法と実質的に変わりない運用がされる危険がある」と語り、独裁へと進む危険性を強調しました。
 パネルディスカッションには長谷部氏とともに石川健治・東京大学教授が出席。石川氏は、緊急事態への対処を法整備ではなく、あえて憲法に盛り込もうとする自民党の狙いについて、「結局、法律を待たないで、内閣が物事を決められるようにすること」だと指摘し、「これは、ほぼ戒厳の問題と一致する」と語りました。「戒厳とは、議会を飛ばして決定できることと、軍隊を動かせるのがポイントだ」と説明し、「デモが国会前に大勢集まり、警察では防げない時に自衛隊を投入する。そのために意味が出てくる条項だ」と強調しました。
 石川氏はまた、戦前の反省をふまえ、戒厳令を排除して現憲法で緊急事態条項を入れなかったことは、戦後日本の立憲主義を支える要因になってきたとして、「(安倍政権は)戦後レジーム(体制)≠否定したいというだけでやっているが、立憲主義を押し流す議論になっていないかどうかを十分に見ていただく必要がある」と呼びかけました。
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2016年02月07日,「赤旗」)

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「原発はいらん」思い強く/高浜現地訪問/参院大阪選挙区候補わたなべ結リポート

 関西電力は、高浜原発3号機(福井県高浜町)の再稼働を1月29日、強行しました。日本共産党の、わたなべ結参院大阪選挙区候補は、その直前に現地を訪ね、「再稼働反対」「原発ゼロ」の思いを強くしました。わたなべ候補のリポートを紹介します。

 1月26、27日、福井県の高浜町役場と高浜原発周辺、小浜市の明通寺に足を運びました。
 高浜町では昨年夏に避難計画を策定、自主防災組織を立ち上げ、要支援者を特定するなどの対策を進めているとのことでした。しかし、県単位の避難訓練は実施したことはあるものの、今年度中の実施を目標としていた町独自の細やかな避難訓練がいまだに実施をされないままでした。いざという時の訓練と備えが不十分なまま再稼働が先にされるというのは、どう考えてもおかしな話です。県や国も地元自治体にだけ対策を丸投げにしているのであれば問題です。
 その後、渡邉孝町議の案内で高浜原発近くへ車で移動。周辺は警察による厳重な警備がしかれ、運転手だけでなく同乗者に対しても「身分証明になるものはありますか」と聞くほどの検問がされていました。

■痛烈な批判
 翌日、明通寺の中嶌哲演住職(原発設置反対小浜市民の会)と佐藤正雄共産党県議との懇談に向かいました。1200年の歴史をもつ明通寺には国宝の本堂と三重の塔があり、一面真っ白な雪に包まれ、厳かで神秘的な雰囲気を醸していました。
 中嶌住職は、科学的お墨付き主義といえる「安全神話」と経済成長至上主義の「必要主義」が振りまかれ、住民の中には対立と分断が持ち込まれ、若狭に15基もの原発が建てられてきたことを「原発マネー・ファシズム」の「国内植民地化」だと痛烈に批判。電気の消費地元である大阪や京都と連携した運動の展開、再稼働反対の潜在的な世論の可視化が必要なこと、原発依存から抜け出していくためには住民本位の町おこしを国や県が支援することが重要であることを指摘されました。
 小浜市には鯖街道の起点があり、奈良時代以前から「御食国(みけつくに)」として栄えてきた歴史をもちます。そして周辺自治体に次々に原発が建設される中、住民のたたかいで再三拒否の意思を示してきた自治体です。2000年代には「食」の町づくり政策を掲げ、地産地消の給食や保育所での食育などを進めてきたそうで、当時持ち上がった使用済み核燃料の中間貯蔵施設誘致に対しても、「食」と原発の危険性は相いれないと拒否をしました。この小浜市の歩みに、原発に頼らない街づくりのヒントがあるのではないかと感じました。

■願い届ける
 あっという間の視察でしたが、人に触れ、歴史に触れ、文化に触れ、ひとたび福島のような事故を起こせば全てを奪ってしまう「原発はいらん」の思いを強くしました。何よりも、あの福島の原発事故で、いまだに12万もの人が避難生活を強いられ、事故の実態の解明も検証もされないままに、「世界最高水準の規制」だと再稼働にひた走る安倍政権には、国民の命と安全を語る資格はありません。「原発再稼働反対」「原発ゼロ」の願いを国政に届ける役割をしっかり果たせるように頑張ります。
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2016年02月03日,「赤旗」)

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(1月ヘッドライン)

*            ヒトラーに抵抗した人々/對馬達雄著/評者星乃治彦福岡大学人文学部教授

*            極右の舞踏会に抗議のデモ/オーストリア

*            ホロコーストを伝えよう/犠牲者追悼式典を開催/国連本部

*            志位さん、代表質問の傍聴者と懇談/緊急事態条項、危険分かった/派遣法抜本改正提案に共感/ネットで知り高知からも

*            難民申請者の財産没収法可決

*            「アンネの日記」来月ベルリンで初上映

*            潮流

*            芸能テレビ/アウシュヴィッツ描く映画「サウルの息子」監督ネメシュ・ラースローさん

*            映画/「サウルの息子」(ハンガリー)/収容所に灯る希望の行方

*            エットーレ・スコラさん死去

*            元強制収容所をリゾート改修へ/モンテネグロ

*            田辺で新春の集い/坂口氏が決意/和歌山

*            朝の風/「武器なき斗い」が問うもの

*            断面/「SHOAH ショア」がDVDに/ホロコーストの真実見つめ

*            今年も黒人候補なし/ネット上などで批判/米アカデミー賞

*            難民の財産を没収へ/デンマークが法案を審議/「ナチス的」と内外で批判/国連が取り下げ要求

*            ナチスに例えて「自民改憲」懸念/民主岡田代表

*            「立憲主義の危機に立ち上がる」/信州大学人の会シンポ

*            月曜インタビュー/作家星野智幸さん/暴力的、空虚な言葉の増殖/今こそ文学が必要な時代

*            『わが闘争』戦後初出版/著作権失効で歴史研究に/ドイツ

*            映画/「フランス組曲」(英、仏、ベルギー)/ナチ支配下、生き抜く人々

*            列島激変/無党派や保守も動く/愛知選挙区にみる

*            列島激変/安倍暴走に危機感、共産党ファンに/愛知選挙区にみる

*            「アンネの日記」、ネット上に公開/著作権保護期間めぐり対立

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1月本文)

ヒトラーに抵抗した人々/對馬達雄著/評者星乃治彦福岡大学人文学部教授

迫害の中やり通した市民の勇気
 深い感動を呼ぶ本である。周りの誰も彼もがナチスを支持し、ナチス党員だけで850万人いた時代のドイツの話である。迫害を恐れながらもやり通すことを、この本の副題ともなっている「市民の勇気(ツィヴィル・クラージュ)」という。彼らをつき動かした倫理観は崇高だが、彼ら自身にすれば、抵抗者の一人が11歳の娘に対して処刑直前に最後の手紙で書いた「いつでも人には親切にしなさい。助けたり与えたりする必要のある人たちにそうすることが、人生でいちばん大事なことです」といったことを実践しただけだったのかもしれない。
 彼らでさえ最初から抵抗していたわけでもない。むしろ1933年にナチスが政権をとった当初は、それ以前の経済的困窮や政治的混乱を嫌って、彼らもナチスを支持していた。だが、そのうちに良心に従って、ニーメラー牧師やニッケル夫人といった個人や「エミールおじさん」というグループが、ユダヤ人を救援する活動を展開するようになる。
 それが次第に、白バラ抵抗運動、「赤い楽団」、クライザウ・サークルのように、体制転換を考えるようになっていった。とくにクライザウ・サークルには、幅広い市民や、シュタウフェンベルクのような国軍内部の反対派が合流し、ヒトラー暗殺事件で名高い1944年7月20日事件を起こすようになっていく。抵抗は、大きな犠牲を伴うものであったし、報復も熾烈を極めた。さらには戦後になっても長らく、「謀反人」「裏切り者」扱いのままであった。だからこそ、彼らの「市民の勇気」は、後世の人間の共鳴や感動を呼び、我々の救いとなるのであろう。

 つしま・たつお 45年生まれ。秋田大学名誉教授
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2016年01月31日,「赤旗」)

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極右の舞踏会に抗議のデモ/オーストリア

 オーストリアのウィーンで29日、極右自由党が主催する舞踏会に抗議して人々がデモ行進を行いました(ロイター)。「ナチスは議会から出ていけ」と書かれたプラカードや「人種差別や性差別、社会保障の削減に反対」と書かれた横断幕などを掲げました。
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2016年01月31日,「赤旗」)

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ホロコーストを伝えよう/犠牲者追悼式典を開催/国連本部

 【ワシントン=島田峰隆】ナチス・ドイツによるホロコースト(ユダヤ人大虐殺)犠牲者を追悼する国際記念日の式典が27日、ニューヨークの国連本部で開かれました。潘基文(パン・ギムン)国連事務総長は「憎しみを広げ、歴史の事実をもてあそべば不和と危険の行き詰まりに陥るだけだ」と語り、ホロコーストの事実を次世代に伝える重要性を強調しました。
 潘氏は、600万人のユダヤ人が殺害され、政治犯やロマ人、同性愛者なども犠牲になったと指摘。「ホロコーストはとてつもなく大きな犯罪だった」「その証拠に反論はできない。ホロコーストを否定する人々は、いつまでもうそをつき、痛みを嘲笑しているだけだ」と語りました。
 また暴力的過激主義や宗派的な対立、憎悪に満ちた思想が広がっていると懸念し、「宗派的な緊張があるときこそ、相互尊重が最も大事にされなければならない」と強調。「人権を守り、外国人嫌いとたたかい、新たな虐殺を防ぐ最も効果的な方法の一つは、ホロコーストの恐怖を次世代へ教育することだ」と呼び掛けました。
 一方、ポーランド南部オシフィエンチムのアウシュビッツ強制収容所跡でも27日、追悼式典が開かれ、同収容所の生存者などが参加しました。
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2016年01月29日,「赤旗」)

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志位さん、代表質問の傍聴者と懇談/緊急事態条項、危険分かった/派遣法抜本改正提案に共感/ネットで知り高知からも

 日本共産党の志位和夫委員長は27日の衆院本会議での代表質問の後、東京、神奈川、千葉、山梨、栃木などの各都県から参加した約50人の傍聴者と国会内で懇談しました。ネットなどで代表質問を知り、愛知、高知の各県から駆けつけた傍聴者もいました。
 傍聴者が「やじで聞き取れない」と振り返るほど議場が騒然とする中、戦争法や辺野古新基地、貧困などの国政問題で安倍首相を追及した志位氏。戦争法の問題では、自衛隊が南スーダンPKOでの任務拡大や過激武装組織ISへの軍事作戦への参加で殺し殺される危険が差し迫っていると指摘し、「戦争法は廃止しかない。引き続き首相を追及し、廃止への論陣を張っていきます。ともに頑張りましょう」と呼びかけました。
 東京都文京区の宮崎優子さん(65)は「首相のいう緊急事態条項は、ナチスの全権委任法のように危険。小学生の孫のために、何としても戦争法を止めたい」と語っていました。
 横浜市から参加した伊藤雄三さん(33)は「労働者派遣法を抜本改正し、均等待遇のルールを確立せよという共産党の提案に共感しました。みんなが人間らしく働ける雇用のルールづくりをしてほしい」と話していました。
 懇談に参加した椎葉かずゆき参院比例候補は「参院選で勝利し、自公を少数派に追い込みます」と決意表明。畑野君枝、斉藤和子の両衆院議員、あさか由香(神奈川)、浅野ふみ子(千葉)、宮内げん(山梨)の各参院選挙区候補もあいさつしました。
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2016年01月28日,「赤旗」)

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難民申請者の財産没収法可決

 【ロンドン=時事】デンマーク議会は26日、難民申請者の所持金や貴重品を当局が没収できるようにする法案を賛成多数で可決しました。AFP通信が伝えました。第2次大戦中にユダヤ人から財産を没収したナチス・ドイツを連想させると強い批判が上がっています。
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2016年01月28日,「赤旗」)

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「アンネの日記」来月ベルリンで初上映

 【ベルリン=AFP時事】第2次大戦中、ナチス・ドイツによってアウシュビッツ強制収容所に送られたユダヤ人少女アンネ・フランクがつづった「アンネの日記」がドイツで映画化され、来月11日開幕の第66回ベルリン国際映画祭で初上映されます。映画祭事務局が24日までに発表しました。
 事務局は「歴史的な証言を映画化し、アンネが家族と隠れ家で暮らしたアムステルダムの日々を描いている」と公表。アンネ役はドイツ人女優が演じます。作品は1959年にも米ハリウッドで映画化されました。
 アンネと家族は42年、ナチスの迫害から逃れるため、アムステルダムで隠れ家生活を開始。日記には44年に捕まるまでの日々の出来事が書かれています。アンネは姉マルゴットと共にアウシュビッツ収容所へ送られ、独北部のベルゲン・ベルゼン収容所で命を落としました。
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2016年01月26日,「赤旗」)

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潮流

 ドイツ史の悲劇的な転換点となる出来事が起きたのは、83年前の1月30日でした。ナチ党首ヒトラーの首相就任。その後、悪名高い全権委任法を手に入れ、ナチ党以外の政党を禁止し一党独裁体制を敷くまでわずか半年でした▼ヒトラーが謀略と暴力を駆使して手にした全権委任法は、政府に立法権を与え、国会審議ぬきに法律を制定できるとし、しかも憲法に反する法律の制定まで可能にしました。『ヒトラーとナチ・ドイツ』(石田勇治著)に詳しい▼憲法も国会も「法的」に破壊したヒトラーの手法。まさかいまの日本では通用しないと思いつつも、安倍政権の動向を見るにつけ、不安に駆られる人も多い▼現に麻生副総理・財務相は3年前の夏、「ナチスの手口から学んだらどうですかね」と発言し物議をかもしました。実はこの発言は、現政権の重要な流れを示唆していたのではないかとの指摘もあります。改憲作業に取り組むことなく憲法を骨抜きにする手口、それは安保法制・戦争法をめぐる事態にあらわれた、と▼「大規模災害のような緊急時に国民の安全を守るため」。いま安倍首相は大災害やテロなどを口実に、首相権限の強化や国民の権利制限をねらう「緊急事態条項」で明文改憲に乗り出す構えです。ヒトラー全権委任法の名称は「国民と国家の苦境除去のための法」でした▼災害とか国民の苦境とか、もっともらしい口実で緊急事態をあおりたてる。「一刻の猶予もない」とあおるのは暴走する政治家の常套句、という警句を胸に刻みたい。
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2016年01月26日,「赤旗」)

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芸能テレビ/アウシュヴィッツ描く映画「サウルの息子」監督ネメシュ・ラースローさん

殺された者の視点で悲劇を伝えきりたい
 アウシュヴィッツ強制収容所を舞台に、ナチスの残虐さと、迫害の中でなお光る人間性を描いた映画「サウルの息子」。自身も親類を同収容所で虐殺されたハンガリー系ユダヤ人のネメシュ・ラースロー監督(38)は、「人類は負の遺産を忘れてはならない」と話します。
 湯浅葉子記者

 昨年のカンヌ国際映画祭で、最高賞に次ぐグランプリを受賞した本作。主人公は、ユダヤ人囚人の中でもナチスに選ばれ特別任務を負った囚人=ゾンダーコマンドです。
 1日に数千人もの大量殺りくを滞りなく行うため、同胞らを安心させてガス室に送り込むのが彼らの仕事でした。死体の処理やガス室の掃除なども担わされた彼らは、犯罪の目撃証人を残したくないナチスによって、3〜4カ月で殺されました。
 「ナチスの大量虐殺は、20世紀の文明を考える際に避けては通れないものです。その悲劇を伝えきりたかった。ゾンダーコマンドを題材にすることで、よりリアルに残虐さを掘り下げ、一人の人間が極限状態でどのように生き、行動したかを伝えられると思いました」
 1944年10月。ゾンダーコマンドのサウル(ルーリグ・ゲーザ)は、過酷な日々の中で感情を殺して生きています。ある日、殺された少年を息子と思い込み、彼をユダヤ教の教義にのっとって埋葬すべく行動を始め―。
 監督は、ゾンダーコマンドが収容所に隠したメモ等を読み込み、「生存者が戦後に考察するような視点ではなく、死者の目を目指した」といいます。
 機械的に任務を遂行する一方、埋葬に異常な執念を燃やすサウル。カメラは徹底して彼の視点を追うため、視野が極端に限定されます。おぞましい惨劇の様子はぼやけた背景として映り込み、それだけに、否応なく見る者の想像を促します。
 「全体を提示すると情報量が増え、一人ひとりにどれだけひどいことが起きたのかが弱まってしまう。サウルの気持ちを深く描くことで、逆に見る人が、描かれていない部分に思いをはせる余地を残しました」
 映画は、ユダヤ人囚人らのレジスタンスも描きます。44年に同収容所で起こった武装蜂起の事実に沿った展開です。
 「当初から、殺人工場≠止めようとした人々がいた事実をきちんと描こうと決めていました。サウルが埋葬の使命に駆られるのも、人間として存在するためのこだわりから。卑劣な地上の地獄で、人間性を持ち続けることができるのかという物語でもあります」
 親類を同収容所で殺された監督。「彼らが生きていた痕跡も全く残っていません。文明は文明自体を殺す危険をはらんでいます。今の文明はそれを忘れて良いほど成熟していない。歴史から学ぶことによって、自滅せず、未来に向けて歩いてゆけるのだと思います」

*23日から東京・新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国で公開
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2016年01月24日,「赤旗」)

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映画/「サウルの息子」(ハンガリー)/収容所に灯る希望の行方

 1944年10月、アウシュビッツ強制収容所には、移送列車で多くのユダヤ人が運ばれてきていた。彼らをシャワー室=ガス室へ誘導するのは、ナチスが選んだ「特別労務班」と呼ばれるユダヤ人集団だった。
 カメラは、特務班員サウル(ルーリグ・ゲーザ)に密着し、裸になった人々を追い立て、彼らが残した衣服から金品をあさるサウルの暗い目を、そしてガス室の阿鼻叫喚に――激しく壁をたたく音や泣き叫ぶ声に聞き入る無表情をとらえる。
 大量虐殺の目撃者でもある特務班は、数カ月後に同じ運命をたどる。その日まで工場労働者のようにコンクリート床の血をタワシで洗い流し、折り重なった死体の山を崩しては焼却室へと運び続けるのだった。
 しかしサウルは、ある日のガス室の清掃時、まだ息のあった少年がナチスの軍医に殺されるのを目の当たりにして一変する。彼は、ユダヤ教の火葬禁止に従って少年を埋葬しようと聖職者を探し回る。彼は「息子だ」とつぶやくのだ!
 収容所内を奔走するサウルを追うカメラは、ユダヤ人の生き地獄を事実のままに映し出し、ナチスに対する武装蜂起をひそかに計画する特務班の姿も収める。指導者はサウルの危険な行為に「死者のために生者を犠牲にするのか!」と詰め寄るが、かすかにともった二つの希望の行方は重なり合うのか。
 戦後70年にふさわしい傑作。ハンガリーの新人ネメシュ・ラースロー監督は1977年生まれ。2015年のカンヌ国際映画祭グランプリ受賞作。
 (浅尾大輔・作家)
 23日から、東京・新宿シネマカリテほかで公開、順次全国で。
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2016年01月22日,「赤旗」)

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エットーレ・スコラさん死去

 エットーレ・スコラさん(イタリアの映画監督)19日、ローマの病院で死去、84歳。
 1953年に脚本家として映画界入り。ファシズムが台頭する30年代のイタリアを描き、ソフィア・ローレンさんが主演した「特別な一日」(77年)はアカデミー賞にノミネートされました。
 (ローマ=AFP時事)
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2016年01月21日,

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元強制収容所をリゾート改修へ/モンテネグロ

 【ポドゴリツァ=AFP時事】旧ユーゴスラビア構成国のモンテネグロで、アドリア海に浮かぶマムラ島に残る第2次大戦中の強制収容所をリゾートホテルに改修する計画が進んでいます。元収容者の親族からは「歴史をちゃかす行為だ。世界のどこに強制収容所をホテルに改装した話があるのか」と批判が激しい。
 島はもともと19世紀の要塞(ようさい)で、イタリアのムソリーニ・ファシスト政権が強制収容所に転用しました。モンテネグロ観光開発当局は、北朝鮮での携帯電話サービスで有名なエジプト通信大手オラスコムと1500万ユーロ(約19億円)で49年間のリース契約を結びました。
 当局者は「選択肢は二つ。放置してがれきの山にするか、観光客を呼べる投資家を見つけるかだ」と批判に反論。強制収容所の外観は残し、内部に記念施設もつくると述べ、理解を求めています。
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2016年01月21日,

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田辺で新春の集い/坂口氏が決意/和歌山

 日本共産党田辺市後援会は16日、「新春のつどい」を和歌山県田辺市で開きました。
 高田由一前県議は、国民よりも国家を優先する安倍政権の政治手法がナチスドイツと似ていると指摘し「アベ政治を変えるため日本共産党が伸びることがどうしても必要だ」と訴えました。
 坂口多美子参院和歌山選挙区候補は、「誰の子どもも殺させないとお母さんたちと運動を続けてきた」と戦争法廃止の先頭に立つ決意を表明しました。
 堀内照文衆院議員は国政報告で、「安倍政権の暴走に対し、国民一人ひとりが主権者として声をあげ行動したことが画期的に広がった一年だった」と昨年をふり返り、国民運動の高まりのもと野党共闘が広がったと強調。大阪維新の会が自民・公明両党とともに改憲の一翼を担うと公言していることを指摘し「改憲勢力に負けるわけにはいかない。参議院選挙を国民連合政府の大きな一歩を踏み出せる選挙にしよう」と必勝を訴えました。
 真砂みよ子、川崎五一、久保浩二の3市議と来年4月の田辺市議選で真砂市議からバトンを引きつぐ前田佳世氏が決意表明しました。
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2016年01月20日,「赤旗」)

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朝の風/「武器なき斗い」が問うもの

 先月下旬、横浜で山本宣治を描いた山本薩夫監督「武器なき斗い」(60年)の上映会があった。戦争法反対運動の一環で企画された。初めて見る映画で、山宣の下元勉、地下党員谷の宇野重吉、母親の細川ちか子などの演技がすばらしかった。
 俳優、スタッフは安保反対のデモに通いながらの撮影だったという。そのせいで地主の横暴とたたかう小作人と、それを弾圧する警察との対峙の場面ではエキストラが本気になりすぎたという逸話も紹介された。山宣が右翼に刺殺される場面では女性客がアッと悲鳴をあげた。
 本庄豊著『テロルの時代』は暗殺者黒田保久二の黒幕を大久保留次郎と推定する。山宣の当選した第1回普選直後の1928年3月15日、無産政党に危機感を抱いた政府は全国一斉検挙をおこなった。それを指揮した特高官僚が大久保である。大久保は戦中東京市長に任命され、戦後は国会議員になって岸内閣の国家公安委員長などを歴任した。
 戦後ナチスを根絶したドイツと違って日本は戦争責任を問わなかった。岸信介同様、大久保は戦争推進勢力が戦後政治を継承したことを示す象徴だ。岸の亡霊として戦前の復活をめざす安倍政治を阻止することは、戦争責任の問い直しでもある。
 (槐)
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2016年01月19日,「赤旗」)

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断面/「SHOAH ショア」がDVDに/ホロコーストの真実見つめ

 クロード・ランズマン監督のドキュメンタリー映画「SHOAH ショア」は、ナチスドイツのユダヤ人大量虐殺(ホロコースト)をテーマにした映画のなかでいわば古典的存在で、映画人にもさまざまな影響を与えています。
 23日から公開される「サウルの息子」は、ナチスが作った絶滅収容所で働かされたハンガリー系ユダヤ人の特務班員の壮絶な体験を描き、昨年のカンヌ国際映画祭でグランプリを受賞。ハンガリー人のネメシュ・ラースロー監督は、この映画化に当たり、「SHOAH ショア」の中の証言を参考にしたと述べています。
 戦後70年に当たる2015年、戦争を題材にした映画の公開があいつぎましたが、とりわけ注目した一つが「SHOAH ショア」の公開でした。
 この映画が完成したのは、1985年。特務班員のユダヤ人や、虐殺に手を貸した元ナチス親衛隊員ら、加害、被害の膨大な生き証人を14カ国にわたって追跡。12年に及ぶ撮影でした。
 86年のベルリン国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞し反響を呼びました。ところが日本では、97年になってやっと公開されました。
 昨年春、18年ぶりの公開となりました。1部と2部で合わせて9時間27分。ユダヤ人を滅ぼすためのガス室や焼却炉、移送する列車のもようをはじめ、人間の尊厳を奪いつくす蛮行の証言をつないで描く作品に、どれだけ観客が集まるのか―。興行的には、不安を抱えながらの公開でした。
 結果は、満員札止めの回もあるなど好評を博し、2カ月後には再上映にこぎつけています。「深いものを求めているお客さんがたくさんいる」と劇場の支配人は語っていました。
 秋には、DVD「クロード・ランズマン決定版BOX」(マーメイドフィルム発売)が、7枚組みで発売されました。「SHOAH ショア」と、テレージエンシュタット収容所の実相やアイヒマンの狡猾さをユダヤ人の長老へのインタビューで伝える「不正義の果て」、絶滅収容所での武装蜂起を体験者が語る「ソビブル、1943年10月14日午後4時」が収められています。絶滅政策の全体像に迫ろうとしたというランズマンの執念を感じさせる長編作品群。歴史のなかで、どのような存在として生きるのか、一人ひとりに突き付けられます。
 歴史の真実を描き出す作品に、今年も大きな関心をはらいたいと思います。
 (児玉由紀恵)
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2016年01月19日,「赤旗」)

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今年も黒人候補なし/ネット上などで批判/米アカデミー賞

 【ロサンゼルス=AFP時事】14日発表された今年のアカデミー賞候補に黒人の俳優や監督が含まれなかったことに対し、インターネット上で批判が巻き起こっています。発表直後から、ツイッターでは昨年に続いて「(受賞者に贈られる黄金像の)オスカーは真っ白」とやゆするハッシュタグ(投稿を検索しやすくするための目印)が登場しました。
 あるユーザーは、米国の黒人選手の写真とともに「(ナチス・ドイツ政権下で行われた)1936年のベルリン五輪の方が多様性に富んでいた」と投稿。米映画の題名をもじった「存在の耐えられない白さ」との言葉も繰り返し書き込まれました。
 リベラル系ブログの「シンク・プログレス」は記事で、「ハリウッドは確かに続編が大好きだ。2年続けて、有色人種の俳優はアカデミー賞にノミネートされなかった」と指摘。黒人の俳優や監督が候補にすらならなかったことに、多くの人が驚がくしている気持ちを代弁しました。今年はイドリス・エルバさん、ウィル・スミスさんらの候補入りが予想されていました。
 自らも黒人である米映画芸術科学アカデミーのシェリル・ブーン・アイザックス会長はAFP通信に、「われわれは多様性の導入に努めてきたが、業界全体がより開放的になるよう行動する必要がある」と話しています。
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2016年01月19日,「赤旗」)

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難民の財産を没収へ/デンマークが法案を審議/「ナチス的」と内外で批判/国連が取り下げ要求

 デンマーク国会で、難民申請者の財産の没収を可能とする法案の審議が進んでいます。欧州で急増する難民の保護費を工面するとの名目で作成された同法案は、今月中にも可決される見通しです。あまりに露骨な難民抑制策に対し、国内外からは「人間の尊厳への侮辱」「ナチス的政策」など強い反発や懸念が上がっています。
 (パリ=島崎桂)

 法案が成立すれば、警察当局に難民の所持品検査の権利が与えられ、1万クローネ(約17万円)を超える現金や貴重品が没収されることになります。結婚指輪など「思い入れのある財産」や生活必需品は除外されるといいます。
 グランディ国連難民高等弁務官は7日、同法案を「人間の尊厳に対する侮辱だ」と厳しく非難。「難民が人道的支援を必要とする中、深く憂慮すべき対応だ」として、法案取り下げを求めました。

統合相は正当化
 デンマークで難民支援を行うNGO「難民会議」のアンドリアス・カム代表もスイス紙ルタン(14日付電子版)に対し、「大半の難民に所持金がなく、実際の没収が不可能なことは政府もわかっているはずだ」「政府はただ、デンマークが(難民にとって)避けるべき目的地だと警告したいだけだ」と語りました。
 このほか、米メディアも昨年来、同法案をナチスによるユダヤ人の財産没収に類するものとして報じています。
 こうした批判に、法案を準備したストイベア統合相は「自分で(生活費を)支払える人々に国家が支出しないのは当然だ」と正当化しています。

右派政権誕生で
 デンマークでは昨年6月の総選挙の結果、ラスムセン首相率いる右派政権が誕生しました。同政権は移民排斥を掲げて第2党に躍進した極右デンマーク国民党の支援を受け、厳しい難民抑制策を採用しています。
 昨年9月には、レバノンの新聞各紙に大々的に広告を出し、
難民支援金の大幅削減難民が家族を呼び寄せる権利の制限難民認定を拒否された者の即時国外退去―など、難民規制策を告知しました。デンマーク雇用省は広告掲載にあたり、「難民にとって魅力のない国にする」との声明を発表していました。
 難民に経済的負担を強いる措置は、スイスでも実施されています。同国は難民申請にあたり、約1000スイスフラン(約12万円)を徴収。7カ月以内に国外に移住する場合は出国時に全額返済しますが、同国で就職し滞在を続ける場合は、10年間にわたり収入の10%の納入を課しています。
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2016年01月19日,「赤旗」)

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ナチスに例えて「自民改憲」懸念/民主岡田代表

 民主党の岡田克也代表は16日放送のBS朝日の番組で、自民党が憲法改正の優先項目の一つと位置付ける「緊急事態条項」創設について、「法律がなくても首相が政令で(国民の)権利を制限できる。これは恐ろしい話だ。ナチスが権力を取る過程とはそういうことだ」と述べ、ドイツのナチス政権の手法に例え、独裁体制につながる可能性があるとの懸念を示しました。
 岡田氏は「安倍晋三首相は立憲主義を全く理解していない。そういう人が改憲に火を付けたらとんでもないことになりかねない」とも語り、安倍政権との間では改憲の協議に応じられないとの考えを改めて示しました。
 自民党は改憲草案で、テロや大規模災害などの際に首相の権限を一時的に強化する緊急事態条項の新設を掲げています。
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2016年01月17日,「赤旗」)

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「立憲主義の危機に立ち上がる」/信州大学人の会シンポ

 長野県で戦争法(安保法)廃止を求め運動を進める「新安保法制の撤回を求める信州大学人の会」は12日夜、松本市で第7回シンポジウムを行い、大学関係者や市民ら110人が参加しました。
 「戦争・ファシズム・民主主義―信州の経験から」と題して大串潤児信州大准教授が報告し、戦争法反対の国民的運動を通じ、戦後70年に加え終戦に至る70年間を含む「日本の近代全体の見直しが問われた」と述べ、戦前の圧政下で果敢に自由、子どもや女性の権利を主張した人々や、「満蒙開拓」の負の歴史をふまえ、今に生かす歴史的教訓を語りました。
 大串氏は、「立憲主義の基礎は個人の尊厳」と強調する中野晃一上智大教授の言葉を引きながら、立憲主義の危機に対し広がった「大学人の会」、シールズ、「ママの会」、県内での「村デモ」などの運動と声を「共振≠ウせ、ぶつけ合い、対抗的市民社会構想に結実させるために、知恵を出しあうことが大事だ」と問題提起して、「安倍政権の動きを抑え込む力を、私たちは持っている」と語りました。
 参加した教員は「学生たちが考え始め政治を語るようになった。このままでは危ない、選挙に行こう≠ニ考えるようになった」と大きな変化を紹介。また同会「学生部会」の代表は、学生部会が新たに「ピースタディ」として活動を始めたことを明らかにしました。
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2016年01月14日,「赤旗」)

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月曜インタビュー/作家星野智幸さん/暴力的、空虚な言葉の増殖/今こそ文学が必要な時代

 新作『呪文』で、寂れていく商店街を舞台に、現代日本の縮図を描き出した作家・星野智幸さん。排外主義と全体主義に傾斜する社会への危機感から、ファシズムがどのようにつくられていくのかを書きたかったと語ります。
 (平川由美)

 「この3年ぐらいで強権的な組織運営の仕方が企業から大学、小さな組織に至るまで急速に浸透した感があります。それは、政治の姿勢がそうだからです。現政権は、異論は全く顧みず、権限があるのはこっちなんだからと強引に自分たちのビジョンを実現しようとする。人々が自分の意思を放棄して強い者に身をゆだねてしまうと、この『呪文』のような世界になるのではないかと思います」
 物語の主人公は、ある商店街にメキシコのサンドイッチ「トルタ」の店を開いた30代の霧生。客足が伸びず悩む霧生にとって、同じ商店街で居酒屋を繁盛させ、商店組合の事務局長を務める図領は頼もしい相談相手でした。しかし図領が、難癖をつける悪質な客を撃退したことから、事態は異様な展開を見せます。

『呪文』の世界、権力は暴力に
 「物事が突然うまくいって支持を集めた図領は、権力を握ったんですね。自分が理想とする商店街を実現するため、不必要だと判断した店や住民をどんどん切り捨てていきます。選別するのは自分だと思った瞬間に、権力は暴力に変わる。自分の判断に間違いはないと思った瞬間に、独裁者になってしまうんです」
 図領に共鳴した若者たちは自警団「未来系」を組織し、「失格住民」の追い出しを画策します。脅しのために切腹も辞さない彼らの合言葉は「クズ道というは死ぬことと見つけたり」。
 「若い世代は社会で、お前なんか代わりはいるんだと言われ続けて、自分を無駄な存在だと思ってるんじゃないか。そんな若者が生きる意義を取り戻そうとすると、公のために命を投げ出すことが美しいという価値観に取り込まれるのではないかと思いました。その究極の形が徴兵でしょう」
 熱狂に流されていく商店街で、霧生は好きなトルタ作りを続けたい、トルタで人を喜ばせたいという一心で踏みとどまり、逆風に向かって歩き出します。
 〈呪いにかからずに生き延びられた人が、呪われる前の時代の記憶を、後の世に持ち込める〉―物語の最後に語られるのは、多様な個人が違いのままに共存する未来への希望です。
 小学生の頃の夢はSF作家でした。新聞記者、メキシコ留学を経て、1997年に『最後の吐息』で文芸賞を受賞しデビュー。
 今こそ、文学が必要な時代だと感じています。
 「単純化され、暴力的な強さのある空虚な言葉が増殖しています。これらの言葉の呪術性を言葉で批判する行為が文学であり、自分にとって切実で実感のある言葉で表現する行為自体が文学だと思っています」
 文学は対症療法ではない、とも言います。
 「例えばヘイトスピーチに抗議するカウンター(対抗)言動は対症療法で、血が流れている時にはまず止血が必要ですが、根本治療をしないとよくならない。それを担うのが文学で、両方の言語が機能していることが大切だと思います」

「路上文学賞」4回を数えて
 2010年からホームレスの人たちの文学作品を募る「路上文学賞」を主宰しています。昨年11月で第4回を数え、100を超える作品が集まりました。
 「路上で生きる人にも日常の生活があり、彼らの常識や世界観があります。作品を広く読んでもらって、その人の存在の核となる部分を理解してほしい。書き手の人たちは、自分の言葉を書けた時の充実や喜びを知って、自信を取り戻してくれたら…。個人がそれぞれの声を発し、認め合うために、多くの人が文学をすべきだと思っています」

 ほしの・ともゆき 1965年生まれ。『目覚めよと人魚は歌う』(三島由紀夫賞)、『俺俺』(大江健三郎賞)、『夜は終わらない』(読売文学賞)ほか。『呪文』は河出書房新社刊
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2016年01月11日,「赤旗」)

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『わが闘争』戦後初出版/著作権失効で歴史研究に/ドイツ

 【フランクフルト=時事】ナチス・ドイツの独裁者ヒトラーの自伝的著書『わが闘争』が8日、第2次大戦後初めてドイツで再出版されました。昨年末に著作権が失効したのを機に、学術的な注釈を大幅に加えた形で再出版が認められました。
 ヒトラーの生い立ちをつづり、反ユダヤ思想を唱える同書は、ナチズムの原典とも言える書物。ヒトラー死後は住所登録地だったバイエルン州が著作権を管理してきましたが、ナチスによる虐殺の犠牲者への配慮や極右勢力による利用の懸念から、国内での再出版を認めてきませんでした。ただ、古書や海外版の入手に加え、インターネット上でも原文は閲覧可能になっています。
 同州は、ヒトラー死後70年の著作権保護期間が切れる昨年末以降については、学術的な注釈付きの発行に限り認める方針を示していました。
 出版元は州都ミュンヘンの研究機関、現代史研究所。原書は約780nですが、多くの注釈を加え、2巻で計約2000nの再出版となります。同研究所は、原文への注釈による論評を加えることで「歴史や政治の研究・教育に資する」としています。
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2016年01月10日,「赤旗」)

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映画/「フランス組曲」(英、仏、ベルギー)/ナチ支配下、生き抜く人々

 フランス人女性とドイツ人将校の禁断の情愛を通して、ナチスの支配に直面した住民の心の深淵に迫る。英・仏・ベルギー合作で、監督は「ある公爵夫人の生涯」のソウル・ディブ。
 出征した夫の帰還を待つリュシル(ミシェル・ウィリアムズ)。フランスの田舎町ビュシーで地主の義母(クリスティン・スコット・トーマス)と暮らす。
 パリの爆撃で避難民が殺到し、町は混乱を極めた。ドイツ軍も侵攻し、リュシルの屋敷の2階をブルーノ中尉(マティアス・スーナールツ)が占拠することに。
 作曲家だったブルーノは、夜毎リュシルのピアノで自作曲「フランス組曲」を奏でた。戦禍に疲弊し厳格な義母に束縛されるリュシルは、甘美な旋律と彼の誠実な人柄に惹かれていく。
 農民ブノワ(サム・ライリー)の家には、領主の町長が極悪なボネ中尉を押しつけた。妻への卑猥な態度に憤るブノワは、格闘の末にボネを殺害してしまう。リュシルやブルーノの助けを借り、ブノワはパリの抵抗組織へ逃亡を試みるが…。
 許されぬ恋に苦悶しながらも自立していくリュシルをはじめ、戦乱の極限でも人間性を失うまいと生き抜く女性たちの姿が胸を打つ。
 保身に走る町長、隣人を密告する者、ドイツ兵に取り入る女性など支配される側の弱さも忌憚なく描く。
 原作は強制収容所で命を奪われたイレーヌ・ネミロフスキーの未完小説。没後60余年を経て出版された。ファシズムに抗した不屈の精神に強い感銘を受ける。
 (平沢清一・映画ライター)
 8日から、東京・TOHOシネマズシャンテほか全国で公開
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2016年01月06日,
「赤旗」)

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列島激変/無党派や保守も動く/愛知選挙区にみる

 参院選に向け、日本共産党が提案している「戦争法廃止の国民連合政府」を歓迎する流れが、愛知県でも保守や無党派の間で進んでいます。戦争法成立後も広がり続ける安倍政権への怒り。連日県内を回る日本共産党の、すやま初美参院愛知選挙区候補(37)も確かな変化を感じつつ、比例での躍進とともに愛知選挙区(定数4)で議席獲得を何としてもと奮闘しています。
 (和田肇)

 年の瀬、すやま候補はキャラバン宣伝で知多半島を巡りました。国民に耳を貸さない安倍政権に代わり「私たちの声で動く新しい政府をつくりましょう」と語りかけるように訴えます。半田市では、初めて訪れたにもかかわらず「頑張れよー」の声援が。店から出てきて演説に耳を傾ける男性や、手を振り激励するドライバーも見られました。
 昨年7月の候補者発表以来、県内のほぼ全自治体を訪れ、宣伝や対話を重ねたすやま候補。衆院での強行採決後、「情勢がぐーっと動いた」と言います。
 「抗議行動に『脱原発』グループに加えて高校生や大学生、主婦が加わってきました。デモに足を踏み出したことがなかった人たちも『自分が何かしなければ』と変わってきました」

五島さんスピーチ
 人気バンド「電気グルーヴ」でボーカルを務めたこともあるシンガー・ソングライターの五島良子さん(46)もその一人です。昨年7月、「ANTIFA758」(アンティファ・ナゴヤ)など若者グループが行った名古屋駅前の抗議宣伝で初めてスピーチ。多くの人を驚かせました。
 「安倍さんが特定秘密保護法を通して以来、やり場のない怒りがありました。表現者の一人として、自由を奪われる危機感があったんです」と五島さん。
 もともとは「選挙に行っても何も変わらない」と考えるネガティブな無党派≠ナした。自由を奪われる危機感に加え、集団的自衛権行使容認の「閣議決定」で、国会中継をよく見るようになりました。
 戦争法の強行直後、日本共産党が発表した「国民連合政府」構想。「やってほしいと思っていたことを、やってくれた。さすがロックスター。私の中で共産党はロックスターなんです」と喜びます。

市議は自民離党
 保守層も変化しています。県西部に位置する、あま市の八島進市議は、戦争法に反対して自民党を離党しました。「安倍首相と一部のとりまきが、国民をないがしろにしていったんだ」と語気を強めます。
 昨年8月、断腸の思いで離党を通告。支援者に「裏切り者」と非難されました。
 「自民党員として票を集めることは、間接的に安倍さんを支援することになる。戦争で苦しむのは国民。私は、安倍さんを利する結果をつくりたくなかった」「同じような思いの自民党員は大勢います」

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列島激変/安倍暴走に危機感、共産党ファンに/愛知選挙区にみる

 八島さんは議員歴12年。もともと保守系無所属でしたが、小泉政権時に自民党入党。2009年に下野したときも応援し続けました。しかし、11年の福島原発事故後の原発推進政策に違和感を持ちます。「ずっともやもやしていた」なかで、安倍政権が誕生。内閣法制局長官をすげ替えてまでの憲法解釈変更や戦争法の採決強行に危機感を強めました。

連合政府は当然
 「言葉は悪いが、ヒトラーと一緒。反対する者を消し去って、あり得ない方向へ突っ走る」
 いま、日本共産党の亀卦川参生(きけがわ・みつお)市議の呼びかけに応えて「戦争法に反対する議員有志の会」に参加。「国民連合政府」提案は「戦略として当然とるべき方法だ」と評価します。
 五島さんが表に出るきっかけをつくった「アンティファ・ナゴヤ」。格差や貧困、差別などさまざまな問題をインターネット上で発信している名古屋市のグループです。街頭宣伝などのデモ行動を提起することもあります。自民党が改憲マンガビラを作って配ると聞いたとき、すぐさま反論するビラをつくってネット上に公開し、全国で使われました。名前の由来は「アンチ・ファシスト」。ずばり安倍政権をファシズムと考えています。
 メンバーの男性(41)は戦争法とのたたかいを通じて、共産党への見方も変わったと話します。

すやまさん必ず
 「初めはまったく知らなかった。知りだして、基本的な考え方が一緒になってきたんです」「一ファンとしてすやまさんを国会に送り出したい。彼女は庶民の声を聞いてくれる。まじめで、絶対的な明るさのある人です」
 定数が3から4に広がった愛知選挙区は、昨年末時点で自民、民主、公明、社民が立候補する予定で、自民・民主両党には複数候補擁立の声もあります。愛知県の地域政党「減税日本」や「維新の会」も立候補の構えです。
 一般マスコミで戦争法の報道が減るなかでも、すやま候補は「国民の戦争法への怒りがなくなったわけではない」と話します。名古屋市の繁華街・栄の宣伝では、戦争法廃止の2000万署名に行列ができました。「署名を届ければ、広がりをつくれる」と確信。「共産党の国会論戦は政治を変えられます。定数の増えた愛知県で、絶対に議席を取りたい」
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2016年01月04日,
「赤旗」)

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「アンネの日記」、ネット上に公開/著作権保護期間めぐり対立

 【パリ=AFP時事】フランスの学者と野党議員は1日、著作権の保護期間が切れたとして、「アンネの日記」初版本と同じオランダ語版をインターネット上に公開しました。しかし、著作権を保有するアンネ・フランク基金は強く反発しています。
 アンネは、ナチスの迫害を逃れてオランダのアムステルダムで隠れて暮らした2年余りを日記につづり、父親がアンネの死後の1947年に「アンネの日記」として発表。これまでに3000万部以上販売されました。
 欧州連合(EU)の規定では、書籍の保護期間は著者の死後70年間。学者らは、アンネがベルゲン・ベルゼン強制収容所で死亡した45年から既に70年が経過しており、「規制なく共有することが(著者への)最大の追悼」と訴えました。
 これに対し基金側は、日記は「死後の作品」のため、保護期間は出版日から50年間との立場。オランダ戦争資料研究所による86年発行版は2037年まで保護されるとして、法的闘争も辞さない構えを見せています。
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2016年01月03日,「赤旗」)

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