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2017ファシズム関連情報】

 

 

ヘッドライン)

*         2017年回顧/ドイツ/敗北した二大政党

*         ロシア革命100年と社会主義を考える/ソ連の大国主義・覇権主義とたたかった日本共産党

*         ロシア革命100年と社会主義を考える/その1

*         ロシア革命100年と社会主義を考える/その2

*         独極右集会に抗議/ドレスデンで市民らデモ

*         習近平指導部の5年/中国共産党大会を前に/5/「大国外交」で摩擦も

*         習近平指導部の5年/中国共産党大会を前に/4/異論・批判に圧力

*         習近平指導部の5年/中国共産党大会を前に/3/空前の反腐敗闘争

*         習近平指導部の5年/中国共産党大会を前に/2/力を入れた「脱貧困」

*         習近平指導部の5年/中国共産党大会を前に/1/にぎわう習氏ゆかりの地

*         おはようニュース問答/独のメルケル首相続投のようだけど…

*         格差と貧困許さない/中央社会保障学校始まる

*         ファシズム・戦争もう二度と/労組・平和団体呼びかけ/ドイツ全国で「反戦デー」

*         働き方大改悪*@案の国会提出阻止を/志位委員長が記者会見

*         麻生氏ヒトラー発言/戦後政治の土台を否定

*         強硬派バノン氏辞任/人種差別あおる人物

*         原水爆禁止2017年世界大会・長崎、分科会/禁止条約/9条守る/被爆語る

*         トランプ大統領就任/米国民の思いは/経済停滞の打破、暮らし向上が願い/「差別・分断は許さない」

*         ナチスの歴史記憶を否定=^独極右政党幹部に批判/左翼政党やユダヤ人団体

*         個人の尊厳守る政治に/総選挙へ本気の共闘を/新潟市民連合がシンポ

*         おはようニュース問答/労働者抜きで労働政策決めようなんて

*         潮流

*         朝の風/強制収容所のバイオリニスト

*         映画「いのちの森高江」制作し思うこと/嘘を見抜き言葉で追及/監督・謝名元慶福さん

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1月本文)

2017年回顧/ドイツ/敗北した二大政党

20171217

 欧州の大国ドイツで政局の混乱が尾を引いています。9月の連邦議会選挙で歴史的な敗北を喫した二大政党の連立継続か、再選挙か、見通せない中、越年しようとしています。

極右政党が躍進
 4年に1度の最大政治イベント、連邦議会選挙は9月24日に投開票され、大連立を続けてきたキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と社会民主党(SPD)がともに大幅に得票と議席を減らしました。CDU・CSUは戦後2番目、SPDは最悪の結果となりました。
 一方で、極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)は前回選挙時の得票率4・7%(ゼロ議席)から12・7%(94議席)へと躍進。CDU・CSUとSPDからAfDに乗り換えた有権者は約150万人と報道されています。
 二大政党が敗北したのは、この間の新自由主義的経済政策の一つの決算ともいえるものでした。CDU・CSUは第1次メルケル政権が発足した2005年以降与党で、SPDは1998年のシュレーダー政権以降、2009〜13年の期間を除き連立与党。その間、進んだのは、失業保険の受け取り期間の短縮、年金受給年齢の引き上げ、低賃金雇用の導入などで、生活不安が高まりました。

批判にどう対応
 AfDは、ドイツの「福祉社会」崩壊による社会の分断を温床として生み出され、伸長。同党の「反難民・移民」の主張が、「働かない難民にお金を与える」と東西の経済格差が残る旧東独住民などの不満を引き寄せました。
 敗北したSPDのシュルツ党首は次の政権に加わらないと明言。連立交渉は、CDU・CSUと、自由民主党(FDP)、90年連合・緑の党の3党に委ねられました。しかし、11月中旬には、FDPが交渉を離脱。メルケル首相は新たな連立交渉を進めるのか、再選挙を実施するのか、対応を迫られました。再選挙になれば極右が一段と伸びる危険性もあります。一方、敗北した二大政党が今後、連立を継続するにしても厳しい批判にどう応えるのか。
 連邦議会選挙で得票率、議席を伸ばした左翼党は、「二度と戦争、ファシズムを繰り返さない」というスローガンの下、極右とのたたかいを前面に打ち出しています。
 (片岡正明)

ロシア革命100年と社会主義を考える/ソ連の大国主義・覇権主義とたたかった日本共産党

2017117

 1922年に創立した日本共産党は戦前、ロシア革命に対する日本帝国主義の干渉戦争に反対し、世界とアジアの平和のためにたたかいました。
 しかし、戦後、公然と活動を開始した日本共産党は1950年、スターリンによる武装闘争の押し付けという干渉を受け、党中央の一部が内通・呼応して中央委員会が解体されました(「50年問題」)。
 日本共産党は、党の統一を回復する過程で、自らの国の革命運動は自らの頭で決める、どんな大国でも干渉や覇権は許さないという自主独立の立場を確立しました。
 しかし、ソ連共産党は自らの言いなりにならない日本共産党を押しつぶそうと、国家権力まで動員して大干渉作戦に乗り出しました。
 日本共産党は全党の団結で干渉とたたかい、ソ連のチェコスロバキア侵略などの大国主義・覇権主義を厳しく批判。1979年の日ソ両共産党会談で、ソ連共産党に干渉の誤りを認めさせました。
 また日本共産党は、ソ連共産党との論争の中で、ソ連流のマルクス・レーニン主義の歪曲(わいきょく)を正し、世界観・革命論・未来社会論などあらゆる面でマルクス、エンゲルスの理論(科学的社会主義)の本来の姿と生命力を明らかにしました。
 1991年、ソ連共産党が解散に追い込まれると、日本共産党は「大国主義・覇権主義の歴史的巨悪の党の終焉(しゅうえん)を歓迎する」との声明を発表し、世界に巨大な害悪を流しつづけた党の終わりを「もろ手をあげて歓迎すべき歴史的出来事である」と表明しました。さらに綱領では「ソ連覇権主義という歴史的な巨悪の崩壊は、大局的な視野で見れば、世界の革命運動の健全な発展への新しい可能性を開く意義をもった」と明記しています。

 

ロシア革命100年と社会主義を考える/その1

2017117

 1917年11月7日(旧暦で10月25日)にロシア「十月革命」が始まって100年となります。ロシア革命の世界史的意義を振り返るとともに、今日の社会主義をめざす国ぐに≠どう見るか、日本における未来社会をどう展望するかを、日本共産党綱領と党大会決定をもとに考えてみます。

ロシア革命の世界史的意義

 ロシア革命が起きた20世紀初めの世界は「資本主義が世界を支配する唯一の体制とされた時代」(日本共産党綱領)でした。世界中の圧倒的地域を植民地として支配していた英、仏、独、露などの「列強」は、その再分割をめぐって、第1次世界大戦(1914〜18年)を引き起こしました。
 こうしたなか、皇帝(ツァーリ)による専制体制が敷かれていたロシアでは、「平和とパン」を求める国民の要求が高まり、1917年3月(旧暦2月)、首都ペトログラード(現サンクトペテルブルク)で労働者のストとデモが起き、これをきっかけに帝政が崩壊、臨時政府が樹立されました(「二月革命」)。
 しかし、臨時政府は戦争を継続したため、即時講和・食糧・土地を求める労働者・農民の運動の高まりの中で、レーニン(1870〜1924年)が率いるボリシェビキ(ロシア社会民主労働党内の革命派)の指導のもとで労働者・兵士らが11月7日(旧暦10月)、武装蜂起して臨時政府を打倒。労働者・兵士・農民ソビエト(ロシア語で「会議」の意)が権力を握りました。
 「十月革命」によって、人類の歴史ではじめて資本主義から離脱して社会主義への道に踏み出そうという試みが始まりました。

世界に与えた巨大な「持続的」影響
 「十月革命」の影響は「近代の他のいかなる歴史的事件よりももっと深く、もっと持続的な反響を世界中に及ぼしている源」(E・H・カー『ロシア革命 レーニンからスターリンへ、一九一七―一九二九年』)となりました。

世界の「構造変化」につながる民族自決権の宣言
 その一つは、民族自決権を全世界に適用されるべき大原理としたことです。
 ソビエト政権は、革命翌日の11月8日に「平和に関する布告」を公布。交戦諸国民に無併合・無賠償の講和を呼びかけるとともに、民族自決の原理を高らかにうたいました。それは、発達した民族か遅れた民族か、ヨーロッパに住んでいるか、遠い大洋を超えた諸国に住んでいるかにかかわりなく、植民地を含めたすべての民族の権利と宣言されました。
 それまで「民族主義」は、ヨーロッパや北米に限定され、植民地支配を当然視するものでしたから、「布告」は革命的な飛躍がありました。
 ソビエト政権は続いて「ロシア諸民族の権利宣言」を発して、帝政ロシアの支配のもとにあったすべての民族に、ロシアから分離し独立国家を建設する自由を認めました。ソビエト政権はそれを現実に実行し、フィンランドとポーランド、バルト3国―エストニア、ラトビア、リトアニアが独立国として分離しました。さらに、帝政ロシアが他国に押し付けた不平等条約を破棄し、秘密協定を公表しました。
 このように、すべての民族の独立と民族自決権の完全な承認を、対外政策の根本にすえました。このことが、世界に衝撃を与え、民族解放運動の高まり、第2次世界大戦後の植民地体制の崩壊といった世界の「構造変化」につながっていきました。

人権概念を発展させた社会権の承認
 二つ目は、人権概念をフランス革命以来の自由権から、生存権、労働基本権、社会保障といった社会権へと発展させたことです。社会保障という言葉も、革命後のロシアで初めて使用されました。
 ソビエト政権は1918年1月、人間による人間の搾取の廃止などをうたった「勤労し搾取されている人民の権利宣言」を発しました。「宣言」は「社会国家の理念が一般的に承認され、権利宣言が各種の社会権を宣言・保障することが原則に」なるうえで「注目される」役割(『人権宣言集』=岩波文庫=の宮沢俊義氏の概説)を果たし、ドイツのワイマール憲法(1919年)やILO(国際労働機関)創設などへとつながっていきます。
 ILOの設置を定めたのは、第1次世界大戦の講和条約・ベルサイユ条約です。その背景について、『日本労働年鑑』1995年版(法政大学大原社会問題研究所)は、「講和条約のなかに労働問題関係の条項を取り入れざるを得ないと関係者に考えさせた決定的要因は、一九一七年のロシア革命とその影響だったといわれている」と指摘しています。その結果、「本来は賠償、軍事などを処理する講和条約」で、政府、使用者、労働者の代表が平等の投票権と地位をもって労働条件について協議する「三者構成主義」に立った国際機関が実現しました。
 ソ連社会はその後、スターリンによって変質させられ、崩壊するにいたりましたが、ロシア革命はその後の世界に持続的影響を与える世界史的意義をもつ出来事となったのです。

レーニン最晩年の積極的努力
 ロシア革命では、「レーニンが指導した最初の段階においては、おくれた社会経済状態からの出発という制約にもかかわらず、また、少なくない試行錯誤をともないながら、真剣に社会主義をめざす一連の積極的努力」(日本共産党綱領)が行われました。

「新経済政策」(ネップ)
 ソビエト政権は1918年3月、ドイツと講和条約(ブレスト=リトフスク条約)を結んで、戦争から抜け出しましたが、同年春ごろから、イギリス、フランスを先頭とする帝国主義国がソビエト政権への干渉戦争を開始。日本も、最高時7万人を超える軍隊をシベリアに送りこみました(22年に撤兵)。
 ソビエト政権は、これら帝国主義諸国との干渉戦争、国内の反革命勢力との内戦を余儀なくされ、危機的な状況に陥りましたが、最終的に勝利しました。
 レーニンは、勝利の見通しがつき、資本主義諸国の網の目のなかで、ソビエト・ロシアが存立する条件を勝ち得たと見定めたころから、いくつかの路線転換をはかります。
 その一つが「戦時共産主義」から「新経済政策」(ネップ)への移行です。「戦時共産主義」では、農民から余剰穀物を強制徴発していました。この矛盾が激化するなか、レーニンが試行錯誤のうえたどりついたのが、市場経済を活用しながら社会主義への前進に向かう路線=「新経済政策」でした。それまでの「市場経済=敵」という考え方からの大転換でした。

資本主義国との平和共存外交
 帝国主義諸国との「平和共存」という問題も、転換の一つです。
 22年にイタリア・ジェノバで開かれた国際経済会議の準備会合では、どんな国であれ、自分の社会制度を他の国に押し付ける権利はないこと、自分たちの社会制度は自分たちで決めることがうたわれました。資本主義諸国がはじめて資本主義以外の制度の存在を認めた宣言となりました。
 レーニンは、この会議を重視し、自ら団長となり、経済問題だけでなく大量殺りく兵器の禁止などを提案。会議と並行して、ドイツとラパッロ条約という講和条約を結び、公式の外交関係を樹立しました。

多数者の獲得と統一戦線論
 革命論では、干渉戦争の時期は「世界革命近し」という情勢認識から、少数者による革命論を一般化していましたが、革命情勢の成熟には長い時間が必要だとの認識に変化。勤労人民の多数を獲得することや、社会民主主義的潮流との統一戦線論などが展開されました。これは、のちの反ファシズム統一戦線戦術につながる提起でした。

スターリンの「大国主義」との生死をかけた闘争
 さらにレーニンはソ連邦の結成をめぐり、ロシア連邦がウクライナ、ベラルーシ、グルジア、アルメニア、アゼルバイジャンの各ソビエト共和国を吸収・合併するというスターリンの大国主義的な方針に反対し、「大ロシア人的排外主義に対する生死をかけたたたかい」を宣言。最終的に、各ソビエト共和国が対等・平等の権利で新しいソビエト連邦に加盟するというレーニンの統合プランにもとづいてソ連邦が結成されました(1922年)。
 こうしたレーニン最晩年の積極的努力は、日本共産党の綱領にも生きるものとなっています。

スターリンによるソ連社会の変質と崩壊
 レーニン死後、ソ連の指導者となったスターリン(1878〜1953年)とその後継者は、社会主義の原則を投げ捨て、「対外的には、他民族への侵略と抑圧という覇権主義の道、国内的には、国民から自由と民主主義を奪い、勤労人民を抑圧する官僚主義・専制主義の道」(日本共産党綱領)を進みました。
 とくに、スターリンは1929年から30年にかけて、穀物供出を強化するため農民に集団農場への加入を強制する農業「集団化」を強行。党や赤軍幹部、人民に対する大量弾圧(大テロル)を実行し、全面的な専制・独裁の体制を確立しました。さらに、ヒトラー・ドイツと独ソ不可侵条約と「秘密議定書」を締結し、ポーランドなどを分割したのをはじめ、第2次世界大戦中から戦後にかけての領土併合などの覇権主義といった数々の暴虐をつくしました。
 日本の千島列島や北海道の一部である歯舞・色丹の占領も、連合国の戦後処理の大原則=「領土不拡大」を踏みにじった暴挙でした。
 スターリン死後も、覇権主義はその後継者たちに無批判に引き継がれ、ついにはアフガニスタン侵略(1979年)の「泥沼化」、国民への抑圧、経済停滞などが重なり、ソ連の衛星国家の東欧諸国が崩壊したのに続いて、1991年、ソ連共産党は解散、ソ連邦も解体しました。
 日本共産党は、ソ連崩壊後の第20回大会(1994年)で、スターリン時代以後のソ連を総括して、それが、覇権主義の国家であったにとどまらず、その経済的土台においても「人民を経済の管理からしめだし、スターリンなどの指導部が経済の面でも全権限をにぎる専制主義、官僚主義の体制」であったことを明らかにしました。

ロシア革命・ソ連の歴史
1914
年〜18年 第1次世界大戦
1917
年     ロシア「二月革命」「十月革命」
1918
年〜20年 英仏米日などによる干渉戦争
1921
年     「新経済政策」の開始
1922
年     ソ連邦結成
1924
年     レーニン死去
1929
年〜30年 農業集団化を強行
1935
年〜38年 大量弾圧
1939
年     独ソ不可侵条約、秘密議定書を締結。ドイツがポーランド侵攻、第2次世界大戦始まる。ソ連がポーランドの東半分を占領
1940
年     バルト3国を併合
1941
年     ドイツがソ連に侵略
1945
年     ドイツが無条件降伏。ソ連が対日参戦、千島列島と歯舞・色丹の占領
1950
年     日本共産党への干渉(「50年問題」)
1953
年     スターリン死去
1956
年     フルシチョフが「スターリン批判」。ハンガリーに軍事介入
1964
年     日本共産党への公然たる干渉攻撃開始
1968
年     ソ連などワルシャワ条約機構5カ国軍がチェコスロバキア侵略
1979
年     日ソ両党会談でソ連側が過去の干渉の誤りを認める。アフガニスタン侵略
1989
年     東欧の旧体制が崩壊
1991
年     ソ連共産党が解散、ソ連邦が解体。日本共産党「大国主義・覇権主義の歴史的巨悪の党の終焉(しゅうえん)を歓迎する」声明

ロシア革命100年と社会主義を考える/その2

2017117

社会主義をめざす国ぐに≠どう見るか

 ソ連に続いて、第2次世界大戦後、アジア、東ヨーロッパ、ラテンアメリカの一連の国ぐにが、資本主義からの離脱の道に踏み出しました。東ヨーロッパではスターリンの覇権主義のもとでソ連型の抑圧社会の従属国家がつくられ、崩壊しましたが、中国、ベトナム、キューバでは「社会主義をめざす新しい探究」(日本共産党綱領)が続いています。これらの国を日本共産党はどう見ているでしょうか。

社会主義に到達した 国ぐに≠ナはない
 日本共産党は第26回大会(2014年)で、中国、ベトナム、キューバについて、これらの国ぐには社会主義に到達した国ぐに≠ナはなく社会主義をめざす国ぐに≠セということを改めて確認しました。
 大会決議は、例えば中国について、経済規模では日本を抜いて世界第2位の経済大国となったものの、国民1人あたりの国内総生産(GDP)で見ればなお発展途上国並みであることを指摘し、「社会主義という以前に、社会主義の経済的土台である発達した経済そのものを建設することに迫られているのが現状である」と分析しています。
 その上で、「そこには模索もあれば、失敗や試行錯誤もありうるだろう。覇権主義や大国主義が再現される危険もありうるだろう。そうした大きな誤りを犯すなら、社会主義への道から決定的に踏み外す危険すらあるだろう」と率直に警告し、「私たちは、社会主義をめざす国ぐに≠ェ、旧ソ連のような致命的な誤りを、絶対に再現させないことを願っている」と表明しました。

資本主義国との対比が試される
 決議はさらに、社会主義をめざす国ぐに≠ェ世界の政治と経済に占める比重が年々大きくなるもとで、いやおうなしに資本主義国との対比が試されるようになっていると指摘。▽「人民が主人公」という精神が現実の社会生活、政治生活にどれだけ生きているか▽経済政策の上で人民の生活の向上がどれだけ優先的な課題になっているか▽人権と自由の拡大にむけて、自身が認めた国際規範にそくした努力がなされているか▽国際活動で覇権主義を許さない世界秩序の確立にどれだけ真剣に取り組んでいるか▽核兵器廃絶、地球温暖化などの人類的課題の解決にどれだけ積極的役割を果たしているか―という問題を提起しました。
 その上で、「中国やベトナム、キューバが、資本主義国との対比において、『社会主義をめざす新しい探究が開始』された国ならではの先駆性を発揮することを、心から願うものである」と表明しました。

中国に新しい大国主義・覇権主義のあらわれ
 今年1月に開かれた日本共産党第27回大会は、26回大会の分析を踏まえ、「この間、中国の国際政治における動向に、見過ごすことのできない問題点があらわれてきた」として、次の4点を指摘しました。
 @「核兵器のない世界」を求める動きに対する妨害者として立ち現れるなど核兵器問題での深刻な変質A東シナ海と南シナ海での力による現状変更をめざす動きB国際会議の民主的運営をふみにじる横暴なふるまいC日中両党で確認してきた原則に相いれない態度。
 大会決議は以上の事実にもとづいて「今日の中国に、新しい大国主義・覇権主義の誤りがあらわれている」と厳しく指摘し、「中国にあらわれた新しい大国主義・覇権主義が今後も続き、拡大するなら、『社会主義への道から決定的に踏み外す危険』が現実のものになりかねない」ことを率直に警告しました。
 同時に決議は、中国が戦後、「平和5原則」(1954年)や「バンドン平和10原則」(1955年)など、国際政治の重要な民主的原則の形成に関与してきた国であることに言及し、「それだけに、これらの原則の否定ともなる大国主義、覇権主義の誤りを真剣に是正し、国際社会の信頼をえる大道に立つことを求める」と表明しました。
 日本共産党の志位和夫委員長は今年1月、中国の程永華大使の訪問を受けた際、こうした党大会決議案(当時)の内容をくわしく説明し、本国に伝えるよう要請しました。
 中国共産党と日本共産党とのあいだには、1960〜70年代の「文化大革命」の時期に、中国側から干渉主義の猛烈な攻撃を受け、全党あげてのたたかいでそれを打ち破った歴史があります。中国側がこの干渉攻撃の誤りを率直に認め、「真剣な総括と是正」を表明して、両党関係の正常化に道をひらいたのは、干渉開始から32年後、1998年のことでした。そういう歴史があるだけに、日本共産党は、中国における新しい大国主義・覇権主義のあらわれにとりわけ深い懸念をもち、それが重大化しないうちに解決されることを、強く願うものです。

日本における未来社会の展望

 ソ連などの解体後、「資本主義万歳」論が一時的に流行しましたが、資本主義の優位性を示すことはできませんでした。逆に、現在の世界では、貧富の格差の拡大、不況と大量失業、金融投機の横行、環境の地球的規模での破壊など、資本主義制度の存続の是非が問われるような深刻な危機が進行しています。

「人間の自由で全面的な発展」を保障
 例えば格差と貧困の拡大では、OECD(経済協力開発機構)諸国では人口の上位10%の富裕層の所得と下位10%の貧困層の所得の比は1980年代には7倍だったのに対し、2014年現在では9・5倍に拡大。「過去30年で富裕層と貧困層の格差が最大」(OECDリポート、2014年)になっています。
 これは、マルクスが『資本論』で、資本の蓄積が進むと、一方に「富の蓄積」、他方に「貧困の蓄積」という富と貧困の二極分化が進むと指摘した「資本主義的蓄積の一般的法則」が、資本主義のもとで現実に働いていることを示しています。
 投機マネーの暴走という点では、世界の金融経済の規模は294兆jと実物経済(GDP)の合計78・5兆jの3・75倍に膨張(2014年)し、その多くが投機マネーとして世界経済を混乱させ、実物経済を支配し、各国の国民生活に打撃を与えています。
 こうした投機マネーを規制する国際的な協調体制が急務ですが、その根本的解決が資本主義の体制のもとで可能かということが問われています。
 これら資本主義の矛盾は、生産手段(工場、機械、土地など)が個々の資本家ににぎられ、生産の目的が資本の利潤を増やすこと(利潤第一主義)にあることから生まれています。したがって、これらの矛盾を解決するためには、生産手段を個々の資本家の手から社会の手に移し、生産の目的を「利潤第一主義」から「社会と人間の発展」へと変える必要があります。
 マルクスは『資本論』で、「生産手段の社会化」を中心とした変革によってつくられる未来社会―社会主義・共産主義の社会では、労働時間の抜本的縮小を可能にし、「人間の自由で全面的な発展」が保障されるという壮大な展望を描いています。

経済力――「浪費型の経済」一掃で豊かな生活に
 日本が社会主義の道に踏み出した際には、きわめて豊かで壮大な展望が開けています。
 日本は世界有数の発達した資本主義国で、巨大な経済力をもっています。社会主義への道を進む場合には、その経済力の水準を引き継ぐことになり、中国のような経済の急成長とそれに伴う社会的諸矛盾の拡大は決して起こらないでしょう。
 日本経済は現在の水準でも「健康で文化的な最低限度の生活」(憲法25条)を国民に保障するだけの経済力を持っています。格差と貧困、恐慌・不況をもたらす現在の「浪費型の経済」が一掃されれば、国民生活をはるかに豊かにすることを可能にするでしょう。

自由と民主主義、政治制度での豊かな展望
 自由と民主主義、政治体制でも、日本における未来社会は豊かで明るい展望をもっています。
 中国、ベトナム、キューバでは事実上の一党制をとっていますが、これはそれぞれの国で革命戦争という議会的ではない道で政権についたことと関連しています。スターリン型の政治体制が持ち込まれたという問題もあります。
 日本ではこのようなことは決して起こりえません。
 日本では憲法で国民主権、基本的人権、議会制民主主義がうたわれ、社会に定着しています。日本における未来社会は、こうした条件で出発しますから、一党制などは起こりえません。社会主義・共産主義の日本では、民主主義と自由の成果をはじめ、資本主義時代の価値ある成果のすべてが、受けつがれ、いっそう発展させられるでしょう。
 日本共産党の綱領はこのような未来社会の展望を明らかにするとともに、その実現をめざす事業について、次のように明記しています。
 「これまでの世界では、資本主義時代の高度な経済的・社会的な達成を踏まえて、社会主義的変革に本格的に取り組んだ経験はなかった。発達した資本主義の国での社会主義・共産主義への前進をめざす取り組みは、21世紀の新しい世界史的な課題である」

 

独極右集会に抗議/ドレスデンで市民らデモ

20171030

 【ベルリン=伊藤寿庸】極右団体「欧州のイスラム化に反対する欧州人」(ペギーダ)の発足3周年集会が28日、ドイツのザクセン州ドレスデンで開催されました。これに対抗して人種差別やファシズム反対を掲げたデモや集会が同市各地で繰り広げられ、約3000人が参加しました。
 「憎しみではなく心を」と銘打った人種差別、外国人排斥に反対する集会には、ザクセン州の副首相や文化相が出席。ドレスデンのダーク・ヒルバート副市長は、「何が(ドイツの憲法にあたる)基本法に反しているのか、越えてはならない線をはっきりと引くべきだ」などと述べました。
 これに先立ち市内のフラウエン教会では、平和と寛容の祈りに200人が参加しました。
 ペギーダは、難民・移民の流入に反対することを掲げて始まった運動で、同種の運動が欧州各地に広がりました。毎週月曜日にドレスデンで集会・デモを行っており、最高時は2万人にまで達しました。
 極右団体の集会には、約3000人が参加。ドレスデンから新たに選出された極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)の国会議員も出席しました。

 

習近平指導部の5年/中国共産党大会を前に/5/「大国外交」で摩擦も

20171017

 中国で今年夏、元軍人がアフリカで現地の人々や中国人を救うアクション映画「戦狼2」が大ヒット。興行収入は56億元(約950億円)を超え、過去最高を更新しました。

映画でテレビで
 映画の中にはいくつか特徴的なシーンがあります。▽敵である白人の傭兵(ようへい)から「弱い民族」とののしられた主人公が怒って傭兵をめった打ちにする▽主人公や中国人の乗った車がアフリカの武装勢力がたたかっている場所で、中国国旗を掲げると、「中国人は殺してはいけない」と武装勢力が戦闘をやめ道を開ける▽映画の最後に中国のパスポートの写真と共に、「海外で危険に遭遇してもあきらめてはいけない。あなたの後ろには強大な祖国がある」という文書が映し出される―などです。これらは、中国の大国意識やナショナリズムが反映されているといえます。
 また中国国営中央テレビは8月末から、5年間の中国外交を紹介する「大国外交」(全6回)を放映。冒頭で、習近平国家主席が「世界は大きく、問題が多い。国際社会は中国の声や計画に期待している」と語り、中国の自信を示しました。
 外交政策に詳しい北京大学教授は、5年間の中国外交の特徴として3点を挙げます。第一に積極的な首脳外交です。統計によると、習主席は5年間で28回外遊し、56カ国を訪問。年間1カ月以上は国外で過ごしました。
 第二は、数多くの国際会議の開催です。5年間で、アジア太平洋経済協力会議(APEC)、反ファシズム戦争・抗日戦争勝利の記念式典、20カ国・地域(G20)首脳会議、シルクロード経済圏構想「一帯一路」の首脳会議、新興5カ国(BRICS)首脳会議など国内で大規模な会議が毎年開かれました。

「知恵が必要だ」
 第三は、さまざまな新しい主張や概念の提起です。「新型大国関係」や「運命共同体」、「一帯一路」構想などが次々と打ち出されました。
 同教授は「中国外交の変化の背景には中国の国力増強と、習主席個人の風格がある。この流れは今後も続くだろう」と言います。
 また、別の北京大学教授は、南シナ海問題などを挙げ、「中国の国際的影響力が強まると同時に、周辺国との摩擦が起き、外交状況は逆に厳しくなった」と指摘。「領土問題などで強い言葉を発するだけでは緊張が高まるだけだ。今後の中国外交には知恵が必要だ」と強調します。
 (北京=小林拓也)

 

習近平指導部の5年/中国共産党大会を前に/4/異論・批判に圧力

20171016

 中国の民主活動家で、2010年のノーベル平和賞受賞者の劉暁波(りゅうぎょうは)氏が7月13日に死去して3カ月。同氏の妻・劉霞(りゅうか)さんが住む北京市内の団地は国慶節(建国記念日)の連休、人も少なく静かでした。

自信つけたが…
 劉霞さんの部屋がある棟の入り口には、黒い服の警官らしき人物が椅子に座って、周囲に目を光らせていました。劉霞さんはいまも事実上の軟禁状態にあると伝えられています。
 劉氏は末期がんと診断された後、国外での治療を希望していたとされます。しかし、中国政府は劉氏の出国を認めませんでした。
 北京在住のある民主活動家は「習近平指導部の5年間で、中国は大国としての自信をつけた。中国の国際的なイメージを考慮しなくなった」と話します。
 この5年間で中国当局は、民主や法治の実現をめざす「新公民運動」の中心人物である許志永氏や、天安門事件の真相究明を要求したとの理由で、著名な人権派弁護士だった浦志強氏らを逮捕。いずれも数年の懲役刑を受けました。
 さらに15年7月9日、「秩序を混乱させる重大犯罪グループ」として人権派弁護士や人権活動家ら数百人を一斉に連行・拘束。うち何人かは裁判で数年間の懲役刑とされ、いまだ「獄中」にいる人も多くいます。
 前出の民主活動家は「以前は代表的人物だけを拘束していたが、この5年間は誰でも連行される。いまは集まって活動することはできない」と嘆きます。
 また16年7月、中国の改革派雑誌『炎黄春秋』が当局の人事介入を受け、停刊に追い込まれました。10月には言論サイト「共識網」が閲覧不可能になりました。両方とも中国共産党に反対の立場ではなく、言論に対する圧力強化を浮き彫りにしました。

国家発展に懸念
 当局は今年9月、「わいせつな情報や民族間の対立をあおる書き込み」を管理する義務を怠ったとして、ネット大手3社に罰金を科しました。また、中国版LINE「ウイチャット」などで、「政治的に敏感な話題」や「内部資料」などを投稿した場合に処分すると発表。すでに何人かが拘束されています。
 中国政治に詳しい北京大学の准教授はいいます。「国家の安定を守るためとして、党や政府への批判でなくても、党と少しでも違う意見は厳しい圧力を受けている。このままでは社会の活力が失われ、国家の健全な発展にとってマイナスにならないか懸念する」
 (北京=小林拓也)

習近平指導部の5年/中国共産党大会を前に/3/空前の反腐敗闘争

20171014

 中国では、今年3月末から4月末に放映されたテレビドラマ「人民の名のもとに」(全52話)が大ヒットしました。最高人民検察院(最高検)の捜査官が法に基づき汚職官僚を摘発するという物語。黒幕が誰かわからない緊張感ある展開に加え、汚職にからむ官僚たちの人間関係など党・政府組織の様子がリアルに描かれ、視聴者の心をつかみました。
 中国メディアによると、国内ドラマとしては過去10年で最高の視聴率を記録。ネットでの視聴回数も、4月末までに210億回を超えました。

「虎もハエも」と
 中国共産党中央は5年前の前回党大会で、党内にはびこる腐敗に対し、「うまく解決できなければ、党も国家も滅びる」と強い危機感を表明。習近平総書記は「虎もハエも一網打尽にする」と宣言し、大規模な反腐敗闘争を展開しました。
 「虎」とは党・政府高官のこと。5年間で、周永康・前党政治局常務委員をはじめ、前中央軍事委員会副主席の徐才厚、郭伯雄の両氏、胡錦濤前国家主席の側近とされた令計画・前党中央統一戦線工作部長、孫政才・前重慶市党委書記ら大物が次々と摘発されました。中国メディアは、今年6月末までに280人以上の党・政府高官が摘発されたと伝えています。
 また「ハエ」とされる下級幹部や一般党員は、119万人以上が処分を受けました。国外に巨額の資金を持って逃亡した腐敗分子も、各国の協力を受け、2500人以上を逮捕したといいます。

制度的改革訴え
 ビッグデータ(膨大な電子情報)を研究する清華大学教授によると、2014年5〜10月の半年に、最も注目されたネットニュースのテーマは圧倒的に「反腐敗」でした。中国国家統計局の調査では、9割以上の国民が反腐敗闘争に満足しているといいます。
 一方、中国政治に詳しい北京大学教授は、腐敗で摘発された高官に、親が革命に参加したいわゆる「紅二代」がほとんどいないが、「紅二代は本当に清潔なのか」と疑問を呈します。習氏も紅二代です。
 また「反腐敗闘争は、中央規律検査委員会の権力を強める形で実施された。習氏を中心とした強力な権力による運動だった」と強調。「一方で、社会的な監督の強化は進んでいない。高官の財産の公開などが必要だが、高官のほとんどが反対だと聞いている」と述べ、制度的な改革が必要だと訴えました。
 (北京=小林拓也)

習近平指導部の5年/中国共産党大会を前に/2/力を入れた「脱貧困」

20171013

 中国で最も貧困な省とされる貴州省を車で走ると、「脱貧困のたたかいに必ず勝利しよう」などのスローガンがあちこちに書かれていました。地元ガイドは「脱貧困は貴州省の最重要任務だ」と語ります。
 貴州省はほとんどが山岳地帯で、山村が多く、昔からの貧困地帯です。近年は、交通の整備や転居による貧困脱却を推進。少数民族の文化や自然を生かした観光業など産業の育成にも力を入れています。

観光で収入増え
 9月末、省南東にあるミャオ族の西江村は、中国全土からの観光客であふれていました。村内の建物のほとんどは、民宿やレストラン、みやげ物屋。村への入場料に1人100元(約1700円)かかります。
 入場料収入で、村の各世帯に年1万〜3万元が分配されます。また、観光業に従事することで村人の収入は大幅に上がりました。
 西江村が観光地として成功する一方、周辺の村は刺しゅう、ろうけつ染め、紙すきなど伝統産業による貧困脱却を進めています。そのうちの一つ、ミャオ族の季刀村は刺しゅうを売ることで、女性の年収が3000元増えたとアピールしています。
 ただ、産業振興はまだ始まったばかりという印象でした。地元の男性は「交通が整備され、生活の改善は進んでいる。しかし、政府がめざす2020年までの貧困人口ゼロは難しい」と語ります。

「改善の余地大」
 中国政府は毎年1300万人以上の貧困人口を減らしたとアピール。中国政府の基準である個人所得が年間2300元以下の貧困人口は、昨年末時点で4000万人余。20年末までに貧困人口をゼロにし、「全面的な小康(ややゆとりある)社会」を実現するのが党の大目標です。
 社会保障などに詳しい北京師範大学中国公益研究院の王振耀(おうしんよう)院長は「政府の投資により農村のインフラが整備され、大規模な脱貧困が実現した。政府、産業界、民間組織が一体となって脱貧困を進めてきた」と評価。その上で、「貧困対策において、まだまだ問題は多い。農村が求める施策と政府の政策を合致させるなど、改善の余地は大きい」と提起します。
 (貴州省〈中国南部〉=小林拓也)

習近平指導部の5年/中国共産党大会を前に/1/にぎわう習氏ゆかりの地

20171012

 中国の中西部、陜西省の山奥にある人口1000人余りの小さな農村「梁家河村」がいま注目を集めています。中国共産党の習近平総書記(国家主席)が、文化大革命(文革、1966〜76年)中に北京から「知識青年」として農村に送られた、69年1月から75年10月までの約7年間を過ごした村だからです。
 同村は、かつて中国共産党の根拠地だった延安から北東へ約100`。2015年に高速道路が開通し、延安から1時間半ほどで行くことができます。
 5月上旬に村を訪ねた際、大型バスが何台も止まり、赤い旗を持った添乗員に連れられ、スーツを着た人々が村に入っていきました。視察や学習などで中国全土から党幹部らが、毎日1000人以上訪れるといいます。

党中央の「核心」
 村のガイドは「習氏は1974年に入党し、村の党委員会書記に就任した。井戸を掘ったり、製鉄などの産業を興したりして、貧困解決に力を入れた」と説明します。観光や政府の投資などで村は潤い、2016年の1人当たり年収は1万8000元(約30万5千円)と、12年の約8000元から大幅に増えました。
 習氏は、昨年10月の第6回中央委員会総会で、党中央の「核心」に位置づけられました。その上で総会は、全党が、思想、政治、行動を、習氏を核心とする党中央に一致させるよう強調。「権力の集中は最高レベルに達した」(北京大学教授)とされています。
 その後、北京はじめ中国各地に、「習氏を核心とする党中央に団結しよう」などのスローガンが掲げられ、宣伝がさらに強められました。書店には、『習近平氏が語る物語』『習近平氏の7年の知識青年の歳月』など習氏に関わる本が平積みされています。

一部には懸念も
 また、7月28日付の中央党学校主管の学習時報は1面に「習近平総書記の成長の道」と題する論評を掲載。習主席の経歴や5年間の功績を紹介し、習氏は「革命家庭」に生まれ、「赤いDNAを継承して成長した」とたたえました。
 党関係者からは「いま内外に多くの問題を抱えている。党が一丸となって解決するためには強い核心が必要だ」との声が多く聞かれます。
 一方、中国共産党史に詳しいある北京大学教授はこう懸念します。「現在の状況は、個人崇拝につながりかねない。個人崇拝の結果、指導者の誤った決定をただすことができなくなる。過去には毛沢東への個人崇拝で、文革という悲劇も起きた。知識層には懸念がある」
 ◇
 2012年に開かれた前回の大会で、党総書記に就任した習氏は、経済建設や外交政策の展開、また反腐敗闘争を主導すると同時に、自らへの権力集中を進めてきました。18日から始まる第19回中国共産党大会を前に、5年間の変化を振り返ります。
 (陜西省〈中国中西部〉=小林拓也)

 

おはようニュース問答/独のメルケル首相続投のようだけど

2017102

 陽子 日本はいよいよ総選挙ね。一足先に総選挙のあったドイツでは、メルケル首相が4期目を確実にしたそうね。
 夏江 メルケル首相は続投するようだけど、「大連立」を組んでいた二大政党のキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と社会民主党(SPD)は大幅に議席を減らしたのよ。
 陽子 そうだったの。
 夏江 CDU・CSUは第1党を維持したものの65議席も失ったわ。39議席を失い戦後最悪の結果だった社民党は、大連立の解消を宣言したの。

極右政党初議席
 陽子 極右政党が初めて連邦議会に議席を得たと聞いたよ。
 夏江 「ドイツのための選択肢」(AfD)ね。反移民・反イスラムを掲げ、ナチズム反省の見直しまで主張していたわ。94議席を得て第3党になったのよ。
 陽子 ドイツでも極右政党が国政進出とはショックだわ。

貧富の格差拡大
 夏江 背景には貧富の格差の広がりが指摘されているわ。この20年間、二大政党による新自由主義路線が続くなか、短期・低賃金雇用や失業給付の削減が行われた。最近では、企業の偽装請負や、最低賃金さえ下回る雇用など貧困を生み出す働き方が横行していたの。
 陽子 「構造改革」で社会保障が切り捨てられてきたのね。
 夏江 この20年間、低所得層の4割で実質賃金が低下しているという研究結果も出ていたわ。年金支給年齢が65歳から67歳に引き上げられ、投機による家賃の高騰もあり、生活不安が高まっていたの。
 陽子 ドイツ人は生活苦なのに、なぜ難民・移民は保護されているのかという批判をあおり、極右が伸びたのね。一方、左派はどうだったの?
 夏江 社会的公正と反ファシズムを訴えた左翼党は5議席増やして69議席になったわ。経済的に取り残されている旧東独部では、AfDに支持をかすめ取られたけれど、全国的には、結党以来、2番目の高得票率だったのよ。
 陽子 ベルリンでは投票日の夜、極右を許さないと市民がデモをしたそうね。格差と貧困を進める政治にノーの声を大きくして、日本でも、安倍政権に厳しい審判を下さないとね。

格差と貧困許さない/中央社会保障学校始まる

201798

 第45回中央社会保障学校が7日から青森市内で始まり、全国から260人が参加しました。中央社会保障推進協議会、中央社保協北海道・東北ブロック、青森県社会保障推進協議会が共催しました。9日までの3日間、多彩な講師による学習講演会やシンポジウムなどで学びます。
 中央社会保障学校長を務める大阪社保協の井上賢二会長、青森県社保協の大竹進会長があいさつし、安倍政権の社会保障への総攻撃による格差と貧困、「不平等」の拡大を許さないため、学び合い運動につなげようと呼びかけました。
 初日は、広島県立大学教授の都留民子氏、NPO法人ほっとプラス代表理事の藤田孝典氏が講演しました。
 都留氏は、社会保障誕生の過程やファシズムとのたたかいのなかで社会保障が発展したヨーロッパの歴史から現在のフランスやイギリスの状況を詳しく紹介しました。
 また、日本の対外純資産額が世界一であることから財政破たん論の根拠はないと指摘。社会保障運動の前進と新自由主義とのたたかいをよびかけました。
 藤田氏は、自己責任論で国民を貧困へ追い込む日本社会の実態を語り、「貧困の実態を知った人がおかしいと声をあげ社会を変えよう」と訴えました。

 

ファシズム・戦争もう二度と/労組・平和団体呼びかけ/ドイツ全国で「反戦デー」

201795

 ナチス・ドイツがポーランドに侵攻し第2次世界大戦がはじまった1939年9月1日に合わせた反戦デーが、今年もドイツ全土で9月初旬まで取り組まれています。反戦デーはドイツの労組や平和団体などがファシズムの阻止とドイツに再び戦争を許さないことを目的として1957年から毎年、実施しているもの。今年は全国数十都市で160以上の行動が行われ、国連での核兵器禁止条約採択を背景に、核兵器廃絶を求める催しが多く取り組まれました。
 (片岡正明)

 核廃絶は、主催者の一つであるドイツ労働総同盟(DGB)が今回の「核兵器禁止の努力支持」をスローガンの一つに取り上げたほか、平和団体のとりまとめ役の「ドイツ平和協力ネットワーク」が「核兵器禁止条約の(各国による)署名開始直前での重大なテーマ」として強調しました。

政府への批判も
 ベルリンでは1日、第2次世界大戦勃発78年に合わせた「今、暴力の連鎖を断ち、新たな平和政策を」をテーマに集会が開かれました。核戦争防止国際医師会議(IPPNW)のアレックス・ローゼン氏が国連で核兵器禁止条約が122カ国の賛成で承認されたことに触れながら、一方で独政府が会議をボイコットし、核兵器禁止への国民の注意をそらそうとしていると批判。この状況は国民が変えることができると強調しました。
 ハンブルクの集会では、平和運動の代表者から核抑止を主張する核保有国の抵抗を押しのけて、核軍縮が現実の日程にのってきたと強調されました。ライン川沿いにあるルードウィヒスハーフェンでは、ドイツのビュッヘルにある米軍の核兵器の危険を訴え、ドイツと欧州連合(EU)域内からの核兵器の撤去について討論を交わしました。

原爆パネル展も
 仏国境に近いラインラント・ブファルツ州のウォルムスでは、プロテスタントの牧師がミサで原爆での広島・長崎での被害を想起しながら、核兵器禁止条約への参加とドイツ国内の米核兵器撤去の意義を訴えました。独西部のリューデンシャイトでは、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の「原爆と人間」のパネル展を市役所で8月21日から9月1日まで催しました。
 このほか、各地で、ドイツの海外派兵反対や武器輸出反対などをテーマに劇やコンサート、青年によるフラッシュモブ、サイクリングなど多彩な催しが行われました。

 

働き方大改悪*@案の国会提出阻止を/志位委員長が記者会見

201791

 日本共産党の志位和夫委員長は31日、国会内で記者会見し、安倍内閣・厚生労働省が、「残業代ゼロ法案」と、「残業時間の上限規制」法案を「一本化」して、今秋の臨時国会への提出・成立を狙っていることについて、長時間労働をいっそうひどくし、過労死を促進するものだと厳しく批判。「働き方大改悪*@案の国会提出阻止のために大いにたたかう」と表明しました。
 志位氏は、「政府の動きは二重の問題がある」と指摘しました。
 第一に、「残業代ゼロ法案」は、労働時間規制をなくす「高度プロフェッショナル制度」を導入するとともに、何時間働いても一定時間しか働いたことにならない裁量労働制を拡大するもので、「過労死促進」法案として厳しい批判を受け、国会に提出したものの、2年間余り審議入りできない法案です。志位氏は、政府・厚労省が提唱する「一本化」とは、「『残業代ゼロ法案』という『猛毒』の法案を、『残業時間の上限規制』というオブラートでくるみ、無理やり飲ませようというものにほかならない」と批判しました。
 第二に、志位氏は、「しかも、『オブラート』の方も『毒入り』だ」と指摘。「残業時間の上限規制」法案は、「上限規制」というが、残業は、「2〜6カ月の平均で月80時間」、繁忙期で「月100時間未満」として、「過労死ラインの残業を公的に容認するものとなっている」ことをあげ、「こちらの方も事実上の過労死促進となる」と批判し、「結局、政府・厚労省のやろうとしていることは、『毒薬』を『毒入りオブラート』でくるんでおしつける、二重にけしからんものだ」と批判しました。
 志位氏は、「労働運動のナショナルセンターの違いをこえた共同、野党と市民の共闘で、働き方大改悪*@案の国会提出を阻止するためにたたかうことをよびかけたい」と訴え。「残業時間の上限規制というなら、大臣告示で定められた『残業の上限は週15時間、月45時間』の法定化を対案として掲げてのぞみたい」と表明しました。

ヒトラー「動機は正しい」発言/麻生副総理の罷免求める
 日本共産党の志位和夫委員長は31日、麻生太郎副総理兼財務相がナチス・ドイツの独裁者ヒトラーを引き合いに「いくら動機が正しくてもだめだ」と発言した問題について、「撤回ですませられる問題ではない」と批判し、「安倍首相に罷免を求める」と表明しました。(麻生氏の発言要旨2)
 志位氏は、麻生氏の発言が、「(ナチスの)手口に学んだらどうか」という暴言に続き、2度目であることを指摘。「こうした発言が繰り返されたことは、麻生太郎氏という政治家が、ヒトラーに対するあるシンパシーをいだいていることを、否定しがたい形で明らかにした」と批判しました。
 さらに志位氏は、「『撤回』したというが、弁明会見でも反省はまったくない。ヒトラーは反ユダヤ主義を掲げて政治家としての一歩を踏み出した。『動機』が邪悪だったからこそ『ホロコースト』(ユダヤ人大虐殺)という残虐な結果が引き起こされた。(麻生氏は)そのことをまったくわかっていない」と指摘しました。
 その上で志位氏は、「第2次世界大戦後の国際秩序は、日独伊の軍国主義・ファシズムに対する断罪の上に成り立っている。それを否定するような人物に閣僚の資格はない。ヨーロッパでもおよそ通用しない。安倍首相に罷免を求める」と強調しました。

軍事衝突の危険直視し米朝は直接対話を
 志位委員長は記者会見で、北朝鮮の弾道ミサイル発射に対する日米両政府の対応について問われ、「いまの一番の危険は何か。米朝の軍事衝突が起きる潜在的な危険を直視する必要があります。米朝間の軍事的緊張が強まるもとで、当事者たちの意図にも反して、偶発的な事態、誤算などによる軍事衝突が起こる危険が存在している」と指摘。
 志位氏は、「米朝で軍事衝突が引き起こされた場合、一番の被害を受けるのは韓国と日本です。ですから、いま日本政府が最優先でやるべきは、いかにして破滅的な事態を招く米朝の軍事衝突を回避するか、危機を打開するかです」と強調。
 対話否定論を繰り返す安倍晋三首相を厳しく批判し、「危機打開のためには、米朝の直接対話が必要です。対話は、北朝鮮への譲歩、核武装の容認を意味しません。現在の危機を打開し、核・ミサイル開発を止め、放棄させるうえで、いま対話に踏み切ることがどうしても必要です。日本政府は、事態がそうした方向に向かうよう行動すべきです」と主張しました。

 

麻生氏ヒトラー発言/戦後政治の土台を否定

2017831

 撤回してすむ話ではありません。
 麻生太郎副総理が29日、派閥の研修会で行った「政治家になろうとした動機は、私は問わないが、結果が大事だ。いくら動機が正しくとも、何百万人も殺したヒトラーは駄目だ」という発言です。

発言の真意明確
 麻生氏は「真意と異なり誤解を招いた」と弁解しています。しかし、文脈を見れば明確に「ヒトラーの動機は正しかった」と述べています。
 麻生氏は2013年の講演でも、「ワイマール憲法もいつの間にかナチス憲法に代わっていた」「あの手口、学んだらどうか」と発言しています。麻生氏の発言は確信犯というべきものです。
 ヒトラーは首相となる(1933年)以前から、ドイツ人の人種的優位性とその世界征服の使命を強調し、ユダヤ人を排撃する極端な人種的排外主義を主張していました。こうした「動機」があったからこそ、第2次世界大戦を引き起こし600万人ともいわれるユダヤ人を虐殺(ホロコースト)したのです。
 麻生氏は「ヒトラーは動機においても誤っていた」と釈明していますが、ヒトラーのどこがどう誤っていたのかを明確にすべきです。

自民党の歴史観
 重大なのは、こうした発言が、自民党の歴史観と深く結び付いていることです。
 自民党は、ヒトラー・ドイツと結んで行われた日本の過去の戦争を侵略戦争と認めることを拒否してきました。それにとどまらず、1989年、日本共産党の不破哲三衆院議員の質問に対し、竹下登首相は、ヒトラーのやった戦争についても「どの戦争も学問的に定義するのは非常に難しい」と、侵略戦争と認めることを拒否しました。
 しかし、それでも竹下氏はヒトラー・ナチスを美化することはありませんでした。麻生氏はその一線を越えて、ヒトラーを公然と賛美するようになったのです。そして、菅官房長官も会見で、麻生発言を批判・謝罪するどころか、「副総理自身で説明すると聞いている」と述べるだけで、問題視することさえしていません。
 この根底には、安倍現内閣の首相を含む20人の閣僚のうち麻生氏ら自民党所属閣僚19人全員が、日本の侵略戦争を肯定・美化する「日本会議議連」などに加盟する「靖国」派内閣であるという事実があります。
 戦後の国際政治は、日本、ドイツ、イタリアのファシズムと侵略戦争への断罪を土台としてつくられています。その土台を否定しようとする安倍政権には、国際政治に参加する資格も、国政を担う資格もありません。
 (入沢隆文)

 

強硬派バノン氏辞任/人種差別あおる人物

2017820

 辞任したバノン氏は昨年の大統領選でトランプ陣営の最高責任者を務め、論功行賞で政権入りしました。人種差別や女性蔑視、特定の宗教を攻撃する発言を繰り返してきた同氏については、解任を求める声が以前から強く出ていました。辞任はこうした国民の声に押された結果といえます。
 バノン氏は2014年に、西側世界が「イスラム・ファシズム」との戦争状態にあるという認識を示し、攻撃を呼び掛けたことがあります。特定のイスラム諸国からの入国禁止令、移民取り締まり強化など、国内外から非難されたトランプ政権の排外主義政策の背景には、バノン氏の影響があったとされます。
 ロイター通信によると、南部バージニア州で12日に起きた白人至上主義者のデモと人種差別に反対する人々との衝突以降、バノン氏の解任を求める声が一気に強まったといいます。同事件でトランプ大統領は、白人至上主義者を擁護し、元大統領など共和党重鎮や米軍トップからも問題視されていました。
 バノン氏の辞任について、「米国を分断させる人種間対立をあおる人物には居場所はない」(人権団体)と歓迎する声が上がっています。
 ただ人種差別や排外主義はバノン氏だけでなく、トランプ大統領自身やその他の閣僚にもみられます。民主党執行部に入っているサンダース上院議員は「問題は決してバノン氏だけではない」として警戒とたたかいを呼び掛けています。
 (島田峰隆)

 

原水爆禁止2017年世界大会・長崎、分科会/禁止条約/9条守る/被爆語る

201789

 原水爆禁止2017年世界大会・長崎で8日、長崎市内各地で10の分科会、三つの動く分科会などがおこなわれ、核兵器禁止条約の意義を含め、さまざまなテーマで学び、交流しました。

禁止条約/調印迫る運動進める
 第1分科会では、核兵器廃絶をめざす国内外の草の根運動の経験が交流されました。
 反核日本法律家協会の代表は、核兵器禁止条約について「核兵器の違法性の明文化は画期的だ」と発言。
 広島の被爆者は、母親と一緒に被爆し、病気に悩まされた体験を語り、6日に行われた安倍首相との会談で被爆者が、核兵器禁止条約の調印を迫ったことを語りました。
 長崎の民主商工会から参加した被爆2世の男性は、核兵器廃絶をめざすヒバクシャ署名の活動をすすめている経験を報告しました。
 海外代表のインドから参加の男性は核兵器を保有する自国政府を批判。核兵器禁止条約調印を迫る運動を進めると語りました。
 米国から参加の男性は、「米国憲法は政府が国民への奉仕をやめたとき、それを変えることができる」と記されているとし、条約調印を拒否する政府への抗議行動を訴えました。
 欧米で平和活動をすすめる女性は、イタリアが反ファシズムの平和運動の歴史をもつ一方、政府が核兵器禁止条約に背を向けたことに国民が疑問をもっていると語りました。日本の平和運動と連携し、核兵器廃絶を政府に迫る決意を語りました。
 日本原水協の安井正和事務局長は、核兵器禁止条約に参加する政府をつくる重要性を強調し、「核兵器禁止条約に背を向ける安倍政権に退陣を求めていこう」と呼びかけました。

9条守る/対話通じ平和実現へ
 分科会「憲法9条守り、憲法生きる日本を」では、核兵器禁止条約に反対し憲法改正を目指す安倍政権への怒りを共有し、市民の力で平和憲法をいかす社会をつくろうとの決意が相次ぎました。
 世界大会・国際会議宣言の起草委員長である冨田宏治氏(関西学院大学教授)は、条約採択の背景に民主主義と「法の支配」の実行、「抑止力」批判や紛争の平和的解決を求める世界の不可逆的な流れがあると指摘。「安倍政権はことごとく逆行している。戦争被爆国の首相が禁止条約に反したこと自体許されない。総選挙で、平和と国民の願いを実現する候補者を勝たせよう」と語りました。
 東京慈恵会医科大学の小沢隆一教授は、9条3項として自衛隊を明記するという安倍首相の主張について、「法の世界では『後法は前法を破る』原理がある。1・2項が無力化される危険がある」と指摘しました。
 討論では、北海道・音更町の「九条の会」で憲法9条を守る署名を集める男性(73)が、2005年から累計対話数7481、賛同署名数6942人に達したと報告。「署名活動は勇気と根気が必要。各地域で運動を展開しよう」と呼びかけました。
 世界大会初参加で、埼玉県内の病院に勤める女性(22)は、安倍政権の改憲の動きに対し、「国民の声を聞いていないと感じる。一人ひとりとの対話の中で平和な社会を実現したい」と話しました。

被爆語る/次の世代が育ってる
 「被爆体験の継承・普及と援護連帯」について考える分科会では、148人の参加者が被爆者らの話を聞き、地域の活動などを報告しました。
 冒頭、全日本民医連の山本淑子事務局次長が、核兵器の非人道性を伝える被爆者の証言は、核兵器禁止条約にも大きな役割を果たしたと指摘。「被爆者の平均年齢が81・4歳となり、高齢化が進む今、体験の継承がますます重要になっています」と話しました。
 長崎で被爆した森口正彦さんが講演。「ただ被爆体験を話すだけでは足りません。原爆は戦争があったから投下された、その視点がいつも問われなければなりません」と強調。「これからどんな社会をつくるのか、どんな政治家を選ぶのかまで語っていく必要があります」と訴えました。
 会場からの発言で、被爆2世で、広島市の語り部として活動してきた古田光恵さんは、「私は、語り部1期生に応募した176人のうちの1人でした。3年の研修のあと、残ったのは51人。被爆体験を毎日聞いていると、親の話を聞いていた被爆2世でも涙がとまらなくなることがありました」と話し、「今は被爆3世や縁者ではない若い人が参加し、どんどん次の世代が育っています」と語りました。
 原爆症認定集団訴訟・全国弁護団連絡会事務局長の宮原哲朗さんが支援をよびかけました。
 大阪府から参加した女性(52)は、「私たちが被爆体験を伝えていくためにも、できるだけ多くの体験者の話を聞かなければと感じました」と話しました。

 

トランプ大統領就任/米国民の思いは/経済停滞の打破、暮らし向上が願い/「差別・分断は許さない」

「米国第一」に期待も
 20日に米大統領に就任したドナルド・トランプ氏。この日、首都ワシントンで開催された就任式やパレードには、各地から熱烈な支持者が集まりました。一方、トランプ氏の差別・排外主義的な公約や言動などに抗議する市民も集会やデモ行進を開催。双方に、新大統領に対する思いを聞くと、停滞する経済の打破や暮らし向上を願う点では、共通点があることが浮かび上がりました。さらに、トランプ氏批判派には差別的な言動は許さないという厳しい視点がありました。
 (ワシントン=遠藤誠二、洞口昇幸)

偉大な米国″トび
 まだ朝日の昇らない午前5時半、ワシントン郊外の地下鉄のプラットホームや車両内ではすでに、トランプ氏のスローガン「米国を再び偉大に」が印字された赤い帽子をかぶった人たちが目立ちました。
 就任式の会場に近い主要駅「ユニオンステーション」からは、支持者が次々と出てきて、会場を目指す人波が続きました。
 支持者らは、昨年の大統領選時から、既存政治の打破や停滞する経済・雇用・暮らしの打開を、トランプ氏に強く託す思いを抱いていました。
 赤い帽子をかぶり、笑顔のジェイコブ・レインさん(27)=団体職員=は、イリノイ州からやってきました。トランプ氏の「米国第一主義」に賛同すると述べるレインさんは、「グローバル化で米国内の経済は大損害を受けました。『米国第一』の姿勢でトランプ氏には経済を立て直してほしいんです。そのためには企業への規制緩和や減税も必要じゃないでしょうか」と主張しました。
 ユタ州から来た元経営者の白人男性(65)は、「移民を全否定してはいません。不法移民対策として、メキシコとの国境に『壁』をつくることに賛成なのです」と自分の理解を説明。新大統領にとくに実行してほしい政策として、「税金が高すぎるから、経済のためにも低くしてほしい」と述べました。
 友人らとオハイオ州から来た年金生活者の女性(66)は、オバマ前政権が打ち立てた医療保険改革法(オバマケア)を、トランプ氏が廃止・置き換えを目指していることに賛成だと述べた上で、「トランプ氏が保険料のより低い、より良い医療保険制度にしてくれると信じています」と改善への期待を述べていました。
 同女性は友人らと口をそろえて、既存政治に不満を抱いていると強調。子や孫たちのために「もっと多くの給与の良い雇用を」と訴えました。

公約・言動に抗議
 一方、就任式の会場付近などワシントンの複数の場所で、トランプ氏の公約・言動に抗議する集会やデモ行進が実施されました。
 「追放するのは憎しみだ」「われわれ米国民は分断されない」「権利が失われることを怒ろう」という、それぞれの思いを書いたプラカードなどが林立。「米国を白人至上主義、ファシストの国にするな!」「NO!トランプ!」などのシュプレヒコールが鳴り響きました。
 メリーランド州から来たマシュー・ムルギアさん(46)は、パレードの行われるペンシルベニア通り近くで「(トランプ氏は)倫理のない領域に入った」とのプラカードを掲げていました。ムルギアさんは、トランプ氏を心底、支持しているわけではないが、選挙で選ばれた大統領だということは認めるとしつつ、「倫理面で問題があるからここに立っています。トランプ氏は国のうたう権利より自分の方が大きい存在だと思っているようで、それは改めるべきです」と語りました。
 連邦捜査局(FBI)ビル近くの抗議行動に参加していたキャシー・ボイランさん(73)は、「女性を物のように扱うスキャンダルの続出、イスラム教徒や同性愛者を嫌悪する姿勢、公立学校をなくすといってはばからない教育長官の起用、環境を保護する姿勢に立たないエネルギー長官の起用など、トランプ氏を支持しない理由はたくさんあります」と語ります。「60年にわたり平和活動をしてきた者として、(トランプ氏が)核兵器保有を強化するなどと唱えていることは恐ろしいことです」と強調しました。
 「トランプ氏が『変革』を実現してくれるとは思えない」と語るのは、ユニオンステーション前の抗議集会に参加したマイケル・ジョージセンさん(34)です。「これまでの既存政治を強く推進してきた共和党が議会で多数を占め、閣僚人事で指名したのも大企業の最高経営責任者や億万長者です。これではこれまでの富裕層、特に上位1%のための政治からの転換ができるとは思えない」と述べました。
 カリフォルニア州から「われわれは引き下がらない」とのプラカードを持ってデモ行進に参加した女性、クリス・フィリップスさん(67)は、「米国内の経済的不平等を本当に正すには、大企業や富裕層上位1%から応分の税負担をしてもらう、最低賃金の引き上げ、教育へのさらなる支援などが重要だと思います。私たちは今後もトランプ政権に対する運動を続け、広げていくことが大事です」と、意気込みを語りました。
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2017年01月23日,
「赤旗」)

 

 

ナチスの歴史記憶を否定=^独極右政党幹部に批判/左翼政党やユダヤ人団体

 難民やイスラム教排除を掲げる極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」幹部がナチスの過去を克服しようとするこれまでのドイツ政府などの取り組みを非難し、「ナチスの歴史を記憶しようとする政策は百八十度転換しなければならない」と呼びかけ、大きな批判を浴びています。
 同党のテューリンゲン州代表のビエルン・ヘッケ州議会議員が17日、ドレスデンで青年層の支持者を前に演説したもの。同氏は「首都中心部に国辱の記念碑を設置しているのは世界でドイツ人だけだ」とベルリンにあるホロコースト記念碑を批判し、「ドイツ人の気分・感情は残酷に打ち破られた民族のものとなっている」と述べました。また、「おろかな過去の克服の政策が社会をまひさせている」「ナチスの歴史を記憶しようとする政策は百八十度転換しなければならない」と語りました。
 さらにワイツゼッカー元大統領が1985年に「過去に目を閉ざすものは現在に対しても盲目になる」とし、ナチスの罪に対するドイツ人の集団的な歴史的責任を認めた演説を「ドイツ国民に敵対する演説だった」と話しました。
 この発言に対し、ユダヤ人中央評議会のシュスター代表は「AfDが本当の顔を表した」と批判。同評議会は、ヘッケ氏発言がナチスに殺された600万人のユダヤ人への追憶を足で踏みつけたと批判。「まったく受け入れられない、深く怒りを表明する」としました。
 政府の副首相兼独社会民主党党首のガブリエル氏はドイツ人の自己認識を挑発するもので、「このデマゴーグには反論しないわけにはいかない」と強調。左翼党のデーム連邦議会議員は「ナチスの言葉でしゃべっている。民衆扇動で告発する」と述べました。90年連合・緑の党のペーター代表はAfDに謝罪するよう求めました。
 ヘッケ氏は「意図的に悪意を持って解釈された」と釈明しています。
 AfDはこれまでも元党首がヒトラーの格好をしたり、ナチス・ドイツ時代の言葉を復活させたりと物議をかもしてきました。
 これまで反難民をあおり、各州議会選で議席を獲得するなど支持を伸ばしてきた同党ですが、過去のナチス犯罪の克服に背を向ける姿勢が表面化。ドイツ国民が秋の総選挙に、この党をどう評価するのかが改めて問われています。
 (片岡正明)
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2017年01月21日,「赤旗」)

 

個人の尊厳守る政治に/総選挙へ本気の共闘を/新潟市民連合がシンポ

 安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める新潟市民連合は11日、新潟市で個人の尊厳を守る政治実現と総選挙の勝利に向けての市民シンポジウムを開きました。4野党代表が参加しました。
 水内基成共同代表が「総選挙に向けて、みんなで考える第一歩にしたい」とあいさつ。
 続いて、市民7人が医療・社会保障、原発、農業、憲法、若者、子育て、高齢者の願いで、個人の尊厳を守る政治実現と安倍政治の転換を訴えました。
 それをうけて、佐々木寛共同代表の進行で各野党が発言しました。
 日本共産党の樋渡士自夫県委員長は「安倍政権の支持は、代わりの受け皿がない消極的支持。野党が大同団結し、しっかりした受け皿をつくれば安倍政権を変えることはできる。カギは野党と市民の共闘だ」と強調しました。
 社民党県連の渡辺英明幹事長は「安倍政権はトランプ以上のファシスト政権だ。野党が力を合わせるために汗をかかしてもらう」と力説。自由党県連の佐々木茂幹事長は「日本の将来は自民党政権を打ちのめすかどうかにかかっている」と強調しました。
 民進党県連の大渕健幹事長は「安倍政権を変える思いは同じ。4党で共通政策を発展させている。野党が力を合わせていくことは確認している。個人の尊厳を守る政治実現で頑張っていく」と述べました。
 樋渡氏は「総選挙では本気の共闘で、お互い尊敬しあい、相互支援、相互推薦で六つの全選挙区で野党が候補を一本化し、すべてで勝てるよう全力を挙げる」と表明しました。
 森ゆうこ自由党県連代表(参院議員)は「野党共闘すれば必ず勝てる。政権交代を実現しなければ、国民の危機的状況は脱することができない。違いを尊重し、本気の共闘で力を合わせていこう」と訴えました。
 22日には県民会館で、市民連合と総がかり行動実行委員会の共催で、市民と野党の共同を求める県民集会(午前10時)が開かれます。
(
2017年01月14日,「赤旗」)

 

おはようニュース問答/労働者抜きで労働政策決めようなんて

 晴男 労働政策審議会(労政審)の3者構成原則を破壊しようだなんて、まったくけしからん。
 のぼる いきなり、どうしたの?

公労使3者構成
 晴男 労働政策を決めるときは、国会で議論する前に、労働者代表と使用者代表、学識者から選ばれた公益代表が同数ずつ出席する労働政策審議会で審議しているんだ。
 のぼる 公労使の代表で話し合うから3者構成だね。
 晴男 安倍政権は、この原則を崩して、労働者抜きで議論できる仕組みをつくろうと、厚生労働省に設置した有識者会議で労政審見直しの報告書を出した。
 のぼる それはひどい。労働者に不利益な法律が、どんどんつくられてしまうかもしれない。
 晴男 安倍政権はこれまでも、有識者会議に労働者代表を入れず、「生涯ハケン」や「残業代ゼロ制度」などの原案をつくって、労政審に押し付けてきた。今度は、労政審を変質させて、労働者保護を受けられない請負労働を増やす仕組みづくりなどを狙っているから、非常に危険だ。
 のぼる 3者構成原則は、どうしてできたの?
 晴男 1914年に起きた第1次世界大戦と17年のロシア革命がきっかけだ。戦後の19年に国際労働機関(ILO)が設立され、各国代表として、政府だけでなく、労働者と使用者を加えたんだ。
 のぼる 労働者を押さえつけて、戦争や過酷な搾取を行ったことを反省して、労働者と話し合う場をつくったんだね。

ILO呼び掛け
 晴男 第2次大戦終結にあたってのILOフィラデルフィア宣言(44年)では、各国内で、労使代表と政府代表が「同等の地位」で自由な討議と民主的な決定に参加するよう呼びかけた。
 のぼる ファシズムや独裁政権の暴走に歯止めをかけて、民主主義を守るためにも、3者構成原則が大事なんだね。
 晴男 厚労省有識者会議の座長、小峰隆夫法政大学教授は「ILOというのはどのぐらい偉いのか知らない」と言い放っている。許しがたい。
 のぼる 非正規雇用が4割まで増え、長時間労働による過労死が社会問題になっている。3者構成原則を徹底して、労働者の声を尊重することこそ必要だね。
 〔2017・1・10(火)〕
(
2017年01月10日,「赤旗」)

 

潮流

 ナチスという強大な独裁権力の前に息子と娘どちらかの死の道を選ばなければならなかった母親。映画「ソフィーの選択」で極限の役を演じた俳優がメリル・ストリープさんでした▼原作者の小説家ウィリアム・スタイロンは「映画の歴史始まって以来の女優の最良の演技」とまで。徹底した役づくり、なまった英語を操るせりふ回し、内面から役柄になりきろうとする姿勢。その後の数々の役にも共通したものです▼世界がたたえる演技。それをツイッターで口撃≠オた人物がいます。「ハリウッドで最も過大評価されている女優の一人」だと。あのトランプ次期米大統領です。ゴールデングローブ賞の授賞式で彼女に批判された腹いせに▼ハリウッドの多様さを強調したスピーチでストリープさんは、腕に障害のある記者の物まねをしたトランプ氏を痛烈に非難しました。「軽蔑は軽蔑を招き、暴力は暴力を生む」▼勇気ある発言に「ディア・ハンター」や「恋におちて」で共演したロバート・デ・ニーロさんをはじめ、多くの俳優や映画関係者が称賛の声を上げています。他の国や文化の異なる人たちとの間に壁をつくれば、映画や役者は成り立たなくなると▼トランプ氏の「演技」に胸が打ち砕かれたというストリープさん。役者の仕事は自分たちとは異なる人の人生に入っていき、それを人びとに感じてもらうこと。「他者への共感は俳優の芸の核心」との彼女の信念は、権力の座につく人物の愚かな振る舞いを決して許しませんでした。
(
2017年01月12日,「赤旗」)

 

朝の風/強制収容所のバイオリニスト

 新日本出版社から昨年末に刊行された『強制収容所のバイオリニスト―ビルケナウ女性音楽隊員の回想』を、正月に読んだ。
 著者のヘレナ・ドゥニチ
ニヴィンスカさんは、1915年生まれのポーランド人。ユダヤ系ではないが、自宅に反ナチス活動家を下宿させたことから、43年1月、ポーランド領ルヴフ(現・ウクライナ領リヴィウ)の自宅で、母親とともに逮捕された。ルヴフ市内の刑務所を経て、アウシュヴィッツに移送された。第2強制収容所にあたるビルケナウで1年3カ月に及ぶ過酷な生活を強いられ、母親と死別しつつも、辛うじて生き延びた。
 アウシュヴィッツ=ビルケナウの女性音楽隊は、ナチス親衛隊の命により、ポーランド人音楽教師ゾフィア・チャイコフスカを中心に結成され、後にマーラーの姪のアルマ・ロゼが指揮者に就任。著者はその第1バイオリン奏者となった。
 アルマ・ロゼについては、ナチスに追従したとするファニア・フェヌロンの回想があるが、本書はその見方を否定しており、資料的にも貴重である。
 胸をつかれるのは、彼女らの奏でる音楽がユダヤ人収容者を日々の作業に送り出す行進曲としても利用されたという事実だろう。
 重い読後感の残る歴史の証言だ。
 (弩)
(
2017年01月11日,「赤旗」)

 

映画「いのちの森高江」制作し思うこと/嘘を見抜き言葉で追及/監督・謝名元慶福さん

 安倍政権は、司法まで抱き込んだ高江でのオスプレイパッドの建設に続き、中断していた辺野古大浦湾への、オスプレイ100機以上の拠点となる新基地建設を再開した。欠陥機オスプレイは心配した通り辺野古のすぐ近くの安部集落に墜落した。これを政府は「不時着水」と説明して小さく見せている。沖縄の人々は全国の仲間たちの支援を受けて、高江のオスプレイパッド撤回、辺野古新基地建設反対のたたかいを今日も続けている。

自然保護と沖縄の闘い
 さて、去年11月に完成したドキュメンタリー映画「いのちの森高江」は、新年も、監督の手を離れ、全国各地で草の根の上映が続けられている。そして映画を見た方たちが高江や辺野古へ支援に駆けつけてくれている。ありがたいことだ。
 映画は、高江の自然の豊かさとそこに生きる人々の静かな暮らしを破壊するオスプレイパッド建設とのたたかいを記録したものだ。
 制作にあたって、いくつか心に決めていたことがある。一つは高江という沖縄北部の150人が住む小さな集落のことを、しっかりと伝えよう。そしてそこがノグチゲラをはじめ貴重な動植物たちの棲むいのちの森であることを。
 もう一つは、住民たちがどのような闘いをしてきたか、である。瀬長亀次郎や阿波根昌鴻ら沖縄の先達がたたかいの基本としたのは、民主主義と命を守るために、言葉での説得活動、非暴力的な抵抗運動であるが、それに自然保護の観点を加味して現代に生かしていることである。
 映画にも登場する元高校教師・故大西照雄の言葉と姿は感動的で説得力がある。まさに言葉こそ相手の心を射る。国は、高江でも「オスプレイは来ない」という嘘の言葉を連発した。その嘘を住民は見抜きさらに言葉で追及する。

動植物の名知ってるか
 また、高江の森をこよなく愛する蝶類研究者は、木々が無残に切られ運ばれて行くのを見て、それに加担している機動隊員に語りかける。「あなたが殺した動植物の名前を一つでも知っているか」と。言葉の強さがある。そのときの機動隊員の表情は、映画で見ていただくしかない。
 編集終了後に起きた、抗議する市民への機動隊員の「土人」発言と、それを擁護・容認する大阪府知事、日本政府の姿勢は、権力機構が、沖縄県民を含む国の政策に反対する人々を敵視し、蔑視していることの表れで怒りを禁じえない。
 今、政府がやっていることは、あのナチスと同じ手法である。嘘の言葉を繰り返し、報道機関を通じて伝播すれば、嘘も真実にみせられる。しかし、沖縄の人々はよく知っている。「不時着水」が「墜落」であることを。

 「いのちの森高江」=同制作委員会、63分。語り・佐々木愛。問い合わせ
080(3225)1854

 じゃなもと・けいふく 劇作家。1942年沖縄県生まれ。ドキュメンタリー「軍隊がいた島/慶良間の証言」、戯曲集『アンマー達のカチャーシー』、戯曲「島口説」「美ら島」ほか
(
2017年01月11日,「赤旗」)

 

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