【2008年活動および関連情報】

　二〇〇八年新語・流行語大賞（自由国民社）の上位十位に、「蟹工船」が入りました。小説『蟹工船』の発表から七十九年。いま流行語としてよみがえりました▼作者の小林多喜二が特高警察に殺されたとき、誘い合って彼の家にかけつけ、死に顔を描いた画家がいます。一人は岡本唐貴。劇画『カムイ伝』の作者、白土三平さんのお父さんです。もう一人は岩松淳。のちの筆名、八島太郎▼多喜二の死後、岩松は、やはり画家だった身重の妻とともに特高に捕まります。獄中で彼は、拷問にも口を割らず、仲間を励ましました。しかし、特高に「手記」を提出し出所します。一九三九年、彼は妻とアメリカへ渡りました▼太平洋戦争中、絵本『あたらしい太陽』を著します。獄中での自身と仲間のたたかいを描き、アメリカ人に日本の良心のありかを示そうと。戦後来日した彼は、姉のように慕う宮本百合子に贈ります。アメリカの万年筆とインクと。百合子は、それで『播州平野』を書いたそうです▼ずっとアメリカに住んだ八島太郎。代表作が、絵本『からすたろう』です。遠い山奥からひとり学校へ通う「ちび」。誰からも相手にされないのけ者の彼に、心の通じあう先生が現れる。学芸会。彼は、ありとあらゆるカラスの鳴きまねをする。赤ちゃん。村人に不幸があった場合。うれしい時…▼驚き感動する人たち。もう誰も、「ちび」なんてよびません。「やあ、からすたろう！」。―そう、どんな人間も尊厳をもって生きているのです。
( ２００８年１２月２９日，「赤旗」) （Page/Topへ）

０８回顧／出版／「蟹工船」ブーム、貧困告発／新自由主義への反撃はじまる

　今年は七月に出た人気シリーズの最終巻Ｊ・Ｋ・ローリング著『ハリー・ポッターと死の秘宝』（静山社）が、十二月までに百八十五万部に達しました。奇妙な神様と主人公が珍問答する自己啓発ストーリー・水野敬也著『夢をかなえるゾウ』（飛鳥新社）も、累計百七十万部を超えました。
　当初は自費出版だったＪａｍａｉｓ　Ｊａｍａｉｓ著『Ｂ型自分の説明書』（文芸社）をはじめ、血液型シリーズ四点が五百万部を突破しました。従来の血液型性格判定本とは異なり、チェックリスト方式で複雑な自己分析を楽しむ新奇な発想が人気を呼んだようです。
　他方で、同シリーズなど〝軽い〟傾向の本の売れゆきが目立つ状況に日本の読書文化の危機を読む見方もあります。日本の不可解な血液型人気の深さを改めて示したことなど、この現象はさまざまな論議を呼びそうです。
　映画化やテレビ放映と結んだメディアミックスが目立っていますが、〇六年から出ている坂東眞理子著『女性の品格』（ＰＨＰ研究所）が息の長いベストセラーとなるなど、メディアに依存しない読まれ方も健在です。マックス・ウェーバーや夏目漱石をひもときながら人生を考える姜尚中著『悩む力』（集英社）、戦争ビジネスと貧困の関係を告発した堤未果著『ルポ　貧困大国アメリカ』（岩波書店）も注目を集めました。

つづく販売減・休刊
　一九九〇年代後半から続く出版不況は、深刻さを強めています。出版科学研究所によると一月―十一月の販売額は書籍が前年同期比２・０％減、雑誌が４・５％減で、両者を合わせた全体は３・４％減。『主婦の友』『論座』『月刊現代』など雑誌の休刊も続きました。
　中堅出版社の草思社が民事再生法の適用を申請したことは、出版界に衝撃を広げました。自費出版大手・新風舎の倒産は、企業の問題行動を浮き彫りにしましたが、広いすそ野をもつ草の根の自費出版文化の意義を再確認する機会ともなりました。
　出版不況にたいし、日本出版労働組合連合会（出版労連）は今月、シンポジウム「出版界を元気にしたい！」を開催。「出版は『人間を創る産業』であるという自覚をもとう」（平川修一書記長）など、困難のときこそ出版界の社会的役割に立ち返ろうとする意見が活発に交わされました。

広がる貧困を注視
　今年一年間で約五十五万部の増刷となった小林多喜二著『蟹工船・党生活者』（新潮文庫）はじめ、「蟹工船」関連書籍が歴史的ブームとなりました。多喜二の時代をほうふつさせる劣悪な雇用形態が広がったことが背景にあります。
　日本社会が抱えている貧困の現実に目を向けた本の出版も相次ぎ、湯浅誠著『反貧困』（岩波書店）が大佛次郎論壇賞を受賞しました。貧困を個人の責任に帰して国民の目から覆い隠そうとする新自由主義的な言説への反撃が、出版界で広がりはじめていることは重要です。
　（清水　博）

年間ベストセラー（トーハン調べ）
１．Ｊ・Ｋ・ローリング著『ハリー・ポッターと死の秘宝』（静山社）
２．水野敬也著『夢をかなえるゾウ』（飛鳥新社）
３．Ｊａｍａｉｓ　Ｊａｍａｉｓ著『Ｂ型自分の説明書』（文芸社）
４．Ｊａｍａｉｓ　Ｊａｍａｉｓ著『Ｏ型自分の説明書』（文芸社）
５．Ｊａｍａｉｓ　Ｊａｍａｉｓ著『Ａ型自分の説明書』（文芸社）
６．田村裕著『ホームレス中学生』（ワニブックス）
７．坂東眞理子著『女性の品格』（ＰＨＰ研究所）
８．坂東眞理子著『親の品格』（ＰＨＰ研究所）
９．Ｊａｍａｉｓ　Ｊａｍａｉｓ著『ＡＢ型自分の説明書』（文芸社）
１０．茂木健一郎著『脳を活かす勉強法』（ＰＨＰ研究所）
( ２００８年１２月２８日，「赤旗」) （Page/Topへ）

歌壇／是に抗い、是に還る

　一八七八年（明治十一年）師走の七日、堺の商家に生まれた与謝野晶子の、今年は生誕百三十年にあたる。
　『国文学　解釈と鑑賞』九月号が、「晶子論」と「歌集論」の二つを柱に特集を組み、『短歌研究』は十一月号で「私の与謝野晶子」を、『短歌』十二月号は「与謝野晶子生誕１３０年」を特集した。米川千嘉子が三誌に稿を寄せているほか、松平盟子、佐伯裕子も二誌に書き、今野寿美が二誌でインタビュアーとなっている。
　とくに『国文学』の特集は先行研究の目録を含めて、充実した企画だったが、他の雑誌も含め、今年後半の歌壇の注目すべき動向といえる。歌人として晶子が生きたのは日露戦争前後からアジア・太平洋戦争期（昭和十七年没）に至るまでの、日本という国が戦争国家に傾斜してゆく時代であった。晶子は歌人としてばかりでなく、女性として人間としてこの傾斜にさまざまな杭を打ち続けてきた。旺盛な評論・社会活動は晶子が短歌史に打った〝黄金の釘〟に比肩できるだろう。
　改めて与謝野晶子が注目されたのは何故か。それは文学における時代との格闘を学ぼうとする機運の高まりを背景にしているのではないか。例えば『蟹工船』。
　今年の「『蟹工船』ブーム」について、自らフリーターとして、生き辛さに自殺しようとした雨宮処凛が『国文学』（学燈社）〇九年一月号でこう語っている。「『蟹工船』…は、厳しい労働条件が現実と一緒というところばかりがクローズアップされるけれども…そうじゃなくて立ち上がっているところが一緒なんだと、そっちをもっと注目して」と。
　立ち上がるためには学ばなければならない。その道筋の中で、多喜二が読まれ出したのだ。晶子も多喜二も現代に受け継がれるべき「古典」である。
　晶子の誕生日の七日、加藤周一さんの死が報じられたが、加藤さんは私たちにこういう言葉を遺された。「是に抗い、再び是に還ることのできるものを、古典というのである」（『現在のなかの歴史』）
　（津田道明・歌人）
( ２００８年１２月２６日，「赤旗」) （Page/Topへ）

おはようニュース問答／非正規切り打開・反貧困連帯が広がってるね

　秋平　非正規切りにあった人や路上生活者の人たちのための相談活動が広がっているね。
　晴男　今週、国民大運動実行委員会がおこなった街頭相談にはたくさんの人がつめかけた。

「希望を感じた」
　秋平　通りかかって、おとなが真剣に活動している姿を見た女子学生は「希望を感じた」といったそうだ。
　晴男　「希望は、連帯」ということだね。
　秋平　若者が小林多喜二の『蟹工船』にひかれたのも、労働者が団結し、たたかう姿にひかれたからだ。
　晴男　時代はかわっても低賃金、不安定な働き方を打開する力は、働くものの社会的連帯だからね。
　秋平　若者たちの立ち上がりを阻んでいたのは、「構造改革」の政治をすすめた勢力が、責任逃れのために意図的に流した「本人の努力が足りない」という「自己責任論」だったね。
　晴男　働く人の三人に一人は非正規雇用、年収二百万円以下の働く貧困層が一千万人超。どんなに努力してもむくわれない社会の仕組みを見すえ、「悪いのは自分じゃない」と自己責任論の誤りを見抜き、反貧困の運動に加わり、状況は変わりはじめたね。
　秋平　二十代、三十代の若者たちが主力になり、反貧困という運動の火付け役となったし、労働組合や市民団体も反貧困の運動に積極的にとりくんできた。
　晴男　金融危機と景気後退を口実とした、自動車、電機などの大企業が派遣労働者や期間社員などの大変な人員削減を始めている。これをはね返すたたかいが広がっているのも力強い。
　秋平　新たに労組ができたいすゞ自動車では、期間工五百五十人の契約途中の解雇を撤回させたね。

たたかいの成果
　晴男　働く人たちやそれに連帯した日本共産党のたたかいの成果だね。でも、派遣社員は解雇撤回の対象外だし、期間社員も新たに希望退職を募集するというんだ。
　秋平　ひきつづきそうした大企業の横暴を許さず、社会的責任を果たさせるためのたたかいを広げたい。だれもが将来に希望を持って生きることができる社会へ、連帯の力をいっそう大きくしたいね。
( ２００８年１２月２６日，「赤旗」) （Page/Topへ）

文芸時評／宮本阿伎／『民主文学』／米谷ふみ子「二匹の狐と一本の楠」

『民主文学』思想性意識した新春短編小説特集／米谷ふみ子「二匹の狐と一本の楠」反戦思想を明瞭に打ちだす
　『国文学』（学燈社）一月号に「再読プロレタリア文学」の特集が組まれている。小林多喜二を荻野富士夫が、宮本百合子を大田努が、徳永直を岩渕剛が論じ、また「芸術的価値論争」の軌跡をたどる島村輝「『政治』と『文学』を転位する」などが所載されているが、「蟹工船」ブームがプロレタリア文学研究を進展させている事例として、また今日の文学を検証する一契機となりうる特集として紹介しておきたい。

通俗化への傾き現代文学に一石
　関連して言えば、『民主文学』新年増大号の新春短編小説特集には、文学における思想性を意識した気骨ある十編が並び、現代文学の通俗化の傾きに一石を投じている。
　吉開那津子「とこしえの光」は、歩行困難の八十八歳の父親を母親一人に看させるのは限界だと判断した娘の「わたし」が、整形外科のある病院に父親を入院させるところから始まるが、わずかに残っていた歩行能力を失わせる結果を招いた。父親は「俺みたいな者を生かしておくのは無駄だよ」と言い、リハビリも止めてしまう。「人間は最期の時が来るまでしっかり生きなくちゃ」という言葉が口をついて出たが、ほどなく「わたし」は婦長に呼び出され、リハビリをやらないのなら入院の意味はない、介護保険制度の発足に伴い改築計画の都合もあるので退院して欲しいと言われる。
　切れ味のある文章でどこの家にも繰り広げられている光景を映しだしているが、介護の苦労話に堕していないのは、生きていることが大切なのだと言うところに小説のねらいがおかれているからである。建設中の老人保健施設を見学した帰り、病棟で眠る父の衰えた姿を思い起こして、「父は生きていた。それだけで充分な気が、わたしはした」と描写して小説は終わる。ここに老人の生をないがしろにする現実への批評が込められていることを見逃してはならないはずだ。
　森与志男「いまを生きる」は、「後期高齢者医療制度」導入に異議申し立てをおこなう地域活動に参加する老作家の姿を描いた作品である。半年前糖尿病の治療のための教育入院中に脳梗塞を発症し、左眼を失明した。読んでいた本をめくろうとして「ふと右手がないことに気付いた」と始まる場面は、読者の目を釘付にさせずにはおかない。区の説明会で戦争体験をもつ者として「後期高齢者医療制度」導入の理屈に死をもてあそぶ低劣さを見ると発言し列席者を感銘させたその帰りがけ、活動家の一人が集約会議があるので送れないがとわびると、「大丈夫ですよ。今夜はいい月夜だ。お月さんに道案内をしてもらいますよ」と応じる飄逸な人物像がこの小説の光源となっている。

古マンションの巧みな人間模様
　稲沢潤子の「自来也」は、小説的発想と技量の妙味で読ませる。八階建ての古いマンションに新しい入居者があった。〝朱雀さん〟という渾名でひそかに呼んでいる女性と理事会の活動を共にする独り身の「私」は、彼にも早速〝自来也〟と渾名をつけた。「神出鬼没の怪盗で、盗みに入ると必ずその家の戸口に自来也と書き残したという。この時期、酔狂にもこのマンションに入居したのは自来也にちがいない」と書かれている。老朽化したマンションを購入したのは、このマンションが安いからだと「私」は睨んだ。定年退職後、それまで住んでいたマンションを買い換え、差額で「のんびり暮らす」ことを思いついたのだと。
　「私」はと言えば、三十年のローンを組んで購入し、借金を払い終えたとたん、マンションが老朽化するという憂き目にあっている。〝自来也〟も理事会にくわわってもらい、「給排水管の整備工事」の相談に及んだが、ある日〝自来也〟が救急車で運ばれる事件が起きる。スプレーの殺虫剤をもってゴキブリを追いかけていて倒れたのだ。〝朱雀さん〟は、このマンションでも孤独死をそろそろ警戒しなくてはならないと言う。将来建て替えの話にもなるだろうが、その時は「私」は区分所有権を売って小さな賃貸アパートに移ることにしている。「入居者も年老い、マンションも老いた」現代に不可避の現実を、今更じたばたしない潔さと機知でかわす「私」の眼を通じて見事に切り取っている。

戦時の記憶から為政者への批判
　他誌では、米谷ふみ子「二匹の狐と一本の楠」（『文学界』）が反戦思想を明瞭に打ち出して断然傑出している。アメリカに住みだして四十八年になる「私」が夫とともに二〇〇七年秋大阪を訪れ、子ども時代を過ごした界隈を歩き回る話だが、戦時の記憶をたどるところに真のねらいがある。「私」は終戦二カ月前に鳥取に疎開し、終戦近くの大爆撃を免れた。戦争中に六甲山の麓に引っ越した後も梅田駅で環状線（昔の城東線）に乗り換えてその界隈（鶴橋の次の桃谷駅）を通って女学校に通っていた。往時の姿をとどめていたのはお稲荷さんの境内の二つの狐像と背後の一本の楠だけだった。イラク戦争の残虐行為を読んだりテレビで観ては「私が経験したあの嫌な軍国主義のときの日本を思い出す。国が戦争に入るときはいつも政府はいろんなプロパガンダを編み出して、経験のない若い人々を騙すということを皆知るべきである」と語る個所があるが、戦時中の政府は国民を護らなかったという文脈は、現代の為政者たちへの批判をモチーフとするものであることは疑い得ない。
　佐藤友哉「デンデラ」（『新潮』）は「六二〇枚一挙掲載」の大作、登場人物は五十人におよぶ。深沢七郎「楢山節考」や村田喜代子『蕨野行』に続いての棄老伝説にもとづく物語だが、『デンデラ』とは、五十人の老婆が構成する地域集団である。作者は一九八〇年生まれだが、『デンデラ』を社会の縮図として設定し、いかに生きるかを問う真摯な意図に立つ力作である。
　（みやもと・あき）
( ２００８年１２月２５日，「赤旗」) （Page/Topへ）

国民救援会が総会と講演会／岩手・二戸

　岩手県の国民救援会二戸支部はこのほど、二〇〇八年度の総会と学習講演会を聞き、二十人が参加しました。
　総会に先立って行われた学習講演会では、治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟岩手県本部の牛山靖夫事務局長が「治安維持法と県内の抵抗―弾圧に抗して社会進歩をめざした人々」と題して講演しました。
　牛山氏は幕末の三閉伊一揆や自由民権運動、石川啄木と宮沢賢治の思想と足跡から話を進め、治安維持法がどんなに悪法だったのか、弾圧の歴史、犠牲者などについて詳しく話しました。
　犠牲者の中には小繋の入会権裁判闘争を支援した布施辰治弁護士､教員の織田秀雄､山本宣治最後の演説を聞いた松浦繁蔵（共産主義青年同盟に加盟して検挙｡投獄･拷問に屈せず、戦後は九戸村共産党村議。九十九歳で健在）らがいたことを紹介し、再び戦争と暗黒政治を許さないために「政府に対して犠牲者への謝罪と賠償を行わせよう｣と訴えました｡
　総会では、事件支援や学習活動、組織の強化拡大など、救援会活動のさらなる前進に力をつくす方針を確認。役員に田口一男支部長らを再任しました。
(２００８年１２月２３日，「赤旗」) （Page/Topへ）

たび／東京・多喜二めぐり／嵐の時代生きた「党生活者」の街

　プロレタリア作家・小林多喜二の作品「党生活者」（１９３２年）の舞台は、軍事工場「倉田工業」です。そのモデルの藤倉工業は、東京・品川区の五反田駅西口から近い所にありました。工場跡のそばに藤倉ビルがあります。「民主文学・東京文学散歩」に参加し、文芸評論家の三浦光則さんの案内と、前進座の上沢美咲さんによる作品の朗読に耳を傾けました。
　工場跡には、大企業のビルが建ち、ＪＲ山手線の電車が土手の植木の上を走りぬけていく様をガラスに映しています。
　東京・新宿区から参加の綿貫洋一さん（７５）はいいました。
　「六つ違いの女学生の姉が、藤倉工業に勤労動員され、防毒マスクをつくっていた。勤労が厳しかったため、昭和２１年、姉はカリエスで亡くなりました。『お母さん、私たちが病気になっているのは東条（英機）が悪いのよね』と繰り返し言っていました」
　地下鉄浅草線で東銀座に出ました。亀井橋を渡った角に、多喜二が拷問で殺された築地警察署があります。
　１９３３年２月２０日、多喜二は港区赤坂で、スパイの手引きで築地署の特別高等警察（特高）に逮捕されました。プロレタリア文学運動に参加し、非合法下の日本共産党員として活動中でした。築地署にきて数時間後に、虐殺されたのです。
　築地署の玄関前を通り過ぎその角を曲がると、多喜二が絶命した前田医院が近い。医院の前に立ちました。
　かつて映画「小林多喜二」を見たことを思い出しました。拷問の場面はこわくて見ることができませんでした。手塚英孝著『小林多喜二』（新日本出版社刊）の「死と葬儀」の項を読むと、特高のしうちのひどさがリアルに胸に迫ります。
　築地２丁目の築地小劇場跡にきました。日本で最初の新劇の常設劇場でしたが、戦災で焼失。当所での多喜二の労農葬は、権力に妨害されました。今はレンガ色の壁にレリーフが跡を残しています。
　築地市場から大江戸線で麻布十番駅で下車。十番稲荷神社そばの路地を入ったあたりに、「党生活者」が書かれた家があったそうです。外苑東通りを渡り、麻布十番通りに出ます。ビルの１階が薬屋で、当時の面影はありません。ここが、果物屋のヤマナカヤ跡にあたり、地下活動中の多喜二が母と会った喫茶室があった所です。
　会えない息子を心配し、会えば会ったで、目の前で捕まるのではないかと心配する―母。「党生活者」には、子を思う母の、胸打つ描写があります。
　麻布二の橋近くの称名寺の本堂。妻の伊藤ふじ子と暮らした借家は、当所にあった２階家の１室でした。
　今も多喜二が「モト以上の元気で、新しい仕事をやっている…」と語りかけているように思えるのです。
　宮島紀子
( ２００８年１２月２１日，『赤旗』)（Page/Topへ）

にちよう特番／０８青年／そして、彼らは立ち上がった

　２００８年は、青年の中で日本共産党への関心が広がり、青年の運動に注目すべき変化が生まれた１年でした。働く問題にとどまらず、憲法を守る運動や、学費をめぐる問題でも運動が広がりました。
　「小林多喜二の『蟹工船』が若者に読まれているらしい」
　意外な話を耳にしたのは新年早々。調べてみると、マンガ版『蟹工船』が相次いで出版され、ネット上でも書き込みがチラホラ。
　今年はプロレタリア文学を代表する日本共産党員作家、小林多喜二の没後７５周年。「新たな読み継がれ方をしている」とまとめて記事にしたのが１月半ばのことでした。
　２月８日。衆院予算委員会で、日本共産党の志位和夫委員長が「人間〝使い捨て〟では未来はない。派遣法を『労働者保護法』に改正すべきだ」と質問。直後から「私も同じ」「感激した」などの反響が続々と党本部に寄せられました。
　インターネット動画の再生回数は２週間で６万回を超え、新聞や雑誌で話題に。日本共産党への関心が高まるきっかけのひとつになりました。
　その後、『蟹工船』の売り上げもうなぎ上りに。出版元の新潮社によると、都内の書店で文庫本『蟹工船』が売れ始めたのが３月ごろ。全国に一気に広がったのが５月の頭。今年だけで例年の１００倍以上、約５４万部を増刷しました。
　購読者の３分の１が２０代。３０代と４０代で同じく３分の１を占めているといい、「蟹工船ブーム」を起こし、支えたのは青年でした。
　☆　　　☆
　「人間らしく働きたい！」と、１０月５日に開かれた「全国青年大集会」。集会に向けた実行委員会は２０都府県、５４地域でつくられ、全国で実態調査やプレ企画が取り組まれました。当日は昨年を大きく上回る４６００人の青年が参加しました。
　集会直後の１０月７日、志位委員長が国会で再び派遣問題を質問。ネットでの動画再生は２月の質問の倍のペースで増え続けました。
　１０月２９日。若い世代のなかに日本共産党を応援する「ゆるやかで大きなネットワークをつくろう」と、全国２４人の青年がよびかけ人になり､｢日本共産党と一緒に日本をかえるネットワーク・全国交流センター（日本をかえる全国ネット）」が結成されました。
　２月から１２月まで年間を通じて、総選挙勝利に向けた「青年キャラバンカー」が全国を２回遊説。走行距離は２・８万㌔、日本列島４・５周分になり、全国で話題を呼びました。
　こうした中、ネットで調べ、自ら日本共産党への入党を申し込む青年も全国で相次ぎました。
　「声を上げ、たたかえば変えられる」と、多くの青年が一歩を踏み出し、社会を変える足がかりを築いた１年でした。
　記事　平井真帆
( ２００８年１２月２１日，『赤旗』) （Page/Topへ）

奈良の９条の会開催講演会に２３０人

　奈良市内の各地域・分野の九条の会と九条の会奈良は二十日、伊藤真弁護士（伊藤塾塾長・法学館憲法研究所所長）を迎え、奈良市内で憲法講演会を開き、約二百三十人が参加しました。
　伊藤氏は、憲法九条が台湾出兵から七十一年間にわたる日本の加害の事実に向き合うためにあり、海外派兵など現在を悪い方向に進ませず、将来向かうべき方向を指し示す役割を持つとのべました。
　また｢憲法とは何か｣と問いかけた伊藤氏は、治安維持法などを例に国会や社会での多数は常に「正しい」とは限らないとして、その時々の多数決では奪ってはならない価値が人権であり、これを保障するのが憲法だと力説しました。
　最後に「理想と現実が違う社会に生きているからこそ、九条の理想を高く掲げて進もう」と結びました。
　講演に先立ち、奈良蟻の会合唱団が「新しい憲法の話」などを合唱しました。
(２００８年１２月２１日，『赤旗』)（Page/Topへ）

読者の文芸この１年／俳句／望月たけし／生きる課題を正面に

　ここ数年、くりかえし激動の年と言われ続けてきましたが、今年はその中でも特に、鮮明に記憶されるような大波乱が、アメリカから始まった金融危機によって発生しました。政治や平和の問題ももちろん激しい一年でした。本紙読者文芸俳句の投稿者の多くは、国民の怒りや不安に呼応し、生きる課題を正面に据え、行動の中から多くの作品を生み出してきました。〈「平和っていいね」とふくら雀云い　中光勇〉〈初夢や第九条にノーベル賞　岡野さとし〉
　今年は小林多喜二の「蟹工船」が多くの若者に読まれ、流行語大賞のトップテンにも入賞しました。〈降る雪に昭和多喜二が近く寄る　松井武石〉〈生き方を決めた多喜二の本を干す　がもう健〉〈「蟹工船」読む若者と終電車　渭原武司〉四月に後期高齢医療制度が導入されるとこれに一斉に反発しました。この「後期高齢者」も流行語大賞に入賞しました。〈遠霞後期高齢の玉手箱　角田勇〉〈四月来て追い剥ぎに遭う誕生日　井上晴実〉〈水温む医療費無料はその昔　三好あきを〉〈後期末期どれもいやです春なのに　右田捷明〉
　夏に、原油高騰で漁船が休漁しました。すると〈漁の灯が消えゆく盛夏重油高　久保英雄〉〈大漁旗畳まれたままステテコ姿　竹内たかし〉というような、俳句は時事を詠うには適さないなどという消極性を吹っとばすような句が送られてきました。表現することは生きることとはこの欄の投稿者の皆さんにぴったりのことばです。そして〈冬苺色づく希望点と線　真鍋美子〉のような高い詩性の作品も話題となりました。さらなる向上をめざし、句会に参加したり、俳誌の会員になって、専門的に学び始めるのもいいでしょう。来年も読者文芸作品進化のためひき続き火花を散らしたいものです。
　（もちづき・たけし　選者）
( ２００８年１２月１９日，『赤旗』) （Page/Topへ）

０８回顧／文学／真実に迫るべき言葉の重み／〝文学とは何か〟論議よぶ

　大江健三郎氏が「『人間をおとしめる』とはどういうことか」（『すばる』二月号）、「誤読・防諜・『美しい殉国死』」（『世界』六月号）で、同氏の『沖縄ノート』が訴えられた問題をめぐって、敢然と反対の論陣をはったことは、文学の問題に限定されない意味を持ちました。
　沖縄の集団自決を歴史の真実をねじ曲げて〝美しい殉国死〟とする「いかがわしい意図」に対して、「それに抵抗することを、自分の仕事の核心におくという決意」をのべた大江氏の思いは、十月三十一日の大阪高等裁判所の全面勝利判決で実りました。この裁判の起点に、作家・曽野綾子氏の意図的な〝誤読〟という問題がありました。事の真実に迫るべき言葉・日本語が、歴史捏造の一端を担うという問題として記憶に残ります。

生命力を示した「蟹工船」ブーム
　今年は、文芸誌の対談や座談会で、高橋源一郎、斎藤美奈子、島田雅彦各氏らによって、日本の近代文学への危機感がこもごもに語られました。若手作家の仕事を俯瞰しながら、人生と歴史を問う近代文学の精神が崩壊しつつあるのではという危惧は、まだ感覚的なものですが、引き続き〝文学とは何か〟という課題として論議されるでしょう。
　近刊の水村美苗『日本語が亡びるとき』（筑摩書房）が評判になり、楊逸が日本語で書いた『時が滲む朝』（文芸春秋）が話題になりました。これは先の日本文学の揺らぎという状況と無縁ではありません。一方、小林多喜二が八十年前に書いた「蟹工船」がブームになり若者を含めて読まれたことは、プロレタリア文学だけにとどまらない文学の生命力を示し、〝文学とは何か〟に一つの方向性を示していると思います。

青年の生き方や現代戦争に迫る
　長編小説では田島一『ハンドシェイク回路』（新日本出版社）が、大企業における現代の日本共産党のたたかいを描き、小田実の未完の大作『河』（集英社）が、関東大震災以降のアジアの激動を見すえ、また平野啓一郎『決壊』（新潮社）がインターネットが普及するなかでの人間のありように迫りました。また、旭爪あかね「月光浴」（『女性のひろば』）、秋元いずみ「鏡の中の少女」（本紙）が現代青年の心と生き方に迫る力作を発表し、稲沢潤子の初の歴史小説「海の灯」（全国商工新聞）、池澤夏樹「カデナ」（『新潮』）などの連載も過去に材をとりながら現代の戦争と平和の課題に取り組みました。
　松山で七月に開かれた日本民主主義文学会の第二十回全国研究集会は「『格差・貧困・閉塞』の社会と文学を考える」がテーマ。近年最高の参加者でにぎわった同集会は、文学によせる期待の大きさをうかがわせるものでした。
　（牛久保建男）

私の選んだ５点

碓田のぼる（歌人）
・竹西寛子『言葉を恃む』（岩波書店）
・加賀乙彦『雲の都第三部　城砦』（新潮社）
・瀬戸内寂聴『奇縁まんだら』（日本経済新聞社）
・田島一『ハンドシェイク回路』（新日本出版社）
・残雪／バオ・ニン『暗夜／戦争の悲しみ』（河出書房新社）

新船海三郎（文芸評論家）
・小田実『河』（集英社）
・飯嶋和一『出星前夜』（小学館）
・田島一『ハンドシェイク回路』（新日本出版社）
・右遠俊郎『小林多喜二私論』（本の泉社）
・山下政三『鴎外　森林太郎と脚気紛争』（日本評論社）
( ２００８年１２月１８日，『赤旗』) （Page/Topへ）

マルクスに世界が注目／ドイツ紙〝日本で共産党が人気〟

　フィナンシャル・タイムズ・ドイチュラント九日付電子版は世界経済危機が日本に影響する中、マルクスと日本共産党が人気を集めていると報じました。
　記事は、日本では一九九〇年代の経済危機以来、不安定雇用が増大し、今では有期・派遣・パートの労働者が労働者全体の４１％を占め、多くの労働者が生きることに不安を持っていると指摘。一方で、欧州と違い「目の粗い」セーフティーネットしかなく、生活保護は労働能力のない人か年金のないお年寄りにしか支給されないなどと記しています。
　「国民の大部分は国家や経済への信頼を失ってしまっている」と分析。「拡大する社会的不公正、不安定雇用の拡大、麻生政権に反対して全国で数千人がデモをするほど怒りは大きくなっている」と描写しています。
　日本では左傾化が進行しているとして、小林多喜二の『蟹工船』が七十万部も売れ、『資本論』のマンガ版もベストセラーになることが間違いないと指摘しています。
　日本共産党に、最近一万人以上が入党し、数十万人が志位和夫委員長の演説をインターネットでダウンロードしていると紹介。「カール・マルクスの『社会的存在は意識を規定する』というテーゼは正しかったようだ」と結んでいます。
( ２００８年１２月１８日，『赤旗』)（Page/Topへ）

岐阜知事選来月告示／木下さんで要求実現／土岐で決起集会

　岐阜県土岐市で十三日、「県民が主人公の会」土岐市連絡会の決起集会が開かれました。約七十人が参加し会場は満員。来年一月八日告示、二十五日投票でたたかわれる県知事選での木下一彦知事候補の勝利をめざして熱気あふれる集会となりました。
　あいさつに立った木下候補は公約と決意を表明。「憲法をくらしに生かします」「税金の使い方を変えれば、県民の要求は実現できる」などと力強く語りました。
　各団体から決意表明があり、民商の代表は多重債務の苦しみを、新婦人の代表は子育ての悩みを訴えました。
　年金者組合の代表は後期高齢者医療制度廃止の一点でも知事選を頑張ると決意を表明しました。
　治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟の代表は、戦前から戦争に反対し弾圧された人たちへの国家による謝罪などを求める運動の意義と、その運動が平和を守ることにつながると訴えました。
　日本共産党のおぜき祥子市議は、他党派の動きが、必ずしも現県政を応援している人ばかりではないことを指摘し、住民の声を大きくして県民の要求を木下知事によって実現しようと訴えました。
(２００８年１２月１８日，『赤旗』)（Page/Topへ）

葛飾ビラ配布弾圧事件／〝最高裁で無罪必ず〟／荒川さんの妻・英子さんの手記

言論の自由・民主主義守るため
　東京高裁で不当な逆転有罪判決を受け、最高裁でたたかう「葛飾ビラ配布弾圧事件」の荒川庸生さんの妻の英子さんから寄せられた手記を紹介します。
　「ビラを配ってくる」。いつものように出かけていった夫が、マンション住民の通報で逮捕されたのは、四年前の二〇〇四年十二月二十三日、よく晴れた気持ちのいい休日でした。東京都立川市でのイラク派兵反対のビラ配布事件が東京地裁八王子支部で無罪判決がでた、ちょうど一週間後のことです。
　この日は、京都で学生生活を送る息子が冬休みで帰省し、夕食は久しぶりの家族団らんのはずでした。翌日の夕方、十数人の警官に自宅を家宅捜索され、私たち家族は、恐怖と緊張の日々を余儀なくされました。夫は年末年始をはさみ二十三日間勾留、そして起訴されました。
　夫が配布したのは日本共産党の区議会だより、都議会報告、区民アンケートと返信用の封筒の四点です。しっかり届けたいとマンションのドアポストに配布したことが「住居侵入罪」とされたのです。夫は説明すればわかってもらえると、パトカーで警察署に同行し、帰宅を申し出た時に初めて逮捕を告げられました。
　「この国に治安維持法がまだ生きているのか」。とても恐怖を覚えたと、その時のことを語っています。

一審無罪判決
　不安を抱えながら始まった裁判闘争。地元の共産党、国民救援会の強力な支援のもとに、友人や地域の仲間が中心となって結成された「ビラ配布の自由を守る会」が、裁判闘争を支えてくれました。
　たたかいは全国に広がり、十五回の公判を経て、〇六年八月二十八日、東京地裁で「無罪」を勝ち取ることができました。
　新聞やテレビでも大きく報道され、今まで事件を知らなかった人からまで「おめでとうございます！　大変でしたね」と声を掛けられ、つらかったたたかいが充実感と感動に変わりました。

中村氏の分も
　しかし、検察側に控訴され、東京高裁では満足な審理もされずに「罰金五万円の有罪判決」が出されました。最初に結論ありきのお粗末な判決です。そして今、たたかいは最高裁が舞台です。
　十一月七日、裁判闘争の先頭に立ってくれていた主任の中村欧介弁護士が三十七歳という若さで、脳梗塞（こうそく）で急逝されました。
　夫の勾留中には、私の不安を受け止め、裁判闘争では、正義感あふれる弁論で検察・裁判官に迫っていた姿が目に焼きついて離れません。かけがえのない弁護士の死は、私たちに、ことばでは表せないほどの悲しみと衝撃をもたらしました。
　このたたかいは、言論の自由と民主主義、憲法を守るためのものであり、戦前のようなもの言えぬ社会の再来を許さないために、日本の未来がかかる歴史的なたたかいです。何としても最高裁で無罪を勝ち取らなければと、志なかばで逝ってしまった中村弁護士の分までみなさんとともに頑張る決意です。

あす「最高裁勝利をめざす大集会」
　「葛飾ビラ配布弾圧事件」でたたかう僧侶の荒川庸生さんを支援する、ビラ配布の自由を守る会は十九日､｢１２･１９　最高裁勝利をめざす大集会｣を開催します｡
　守る会は、最高裁での勝利をめざした決起の場として広範に参加を呼びかけています。
　集会では、東北大学名誉教授の小田中聰樹さんが「自由な理性、自由な言論―歴史に学ぶ知る権利の意義―」と題して記念講演。荒川さんが訴え、弁護団が報告するほか、ビラ配布弾圧事件で不起訴を勝ち取った日本共産党の幸野おさむ国分寺市議の報告なども予定しています。
　日時　１９日（金）、午後６時半開会
　場所　かめありリリオホール（東京都葛飾区亀有３の２６の１）
( ２００８年１２月１８日，『赤旗』)（Page/Topへ）

０８回顧／映画／邦洋とも戦争の真実に迫る／貧困と格差、環境への思い反映

　今年の映画界を振り返ると、邦洋とも戦争の真実に迫る作品群が大きな潮流として浮き上がってきます。

反戦の秀作続々政治介入に批判
　治安維持法で逮捕された夫を待つ家族を描いた「母べえ」（山田洋次監督）、出陣を控えた大学野球選手らの群像劇「ラストゲーム　最後の早慶戦」（神山征二郎監督）は、反戦を堂々と正面にすえた秀作。「石内尋常高等小学校　花は散れども」（新藤兼人監督）も、戦争の傷跡を、九十六歳監督の見事な手腕でみせました。ＢＣ級戦犯の悲劇を描く「私は貝になりたい」（福澤克雄監督）は公開約二週間で、興行収入（映画館の入場収入）十二億円超と好調なスタートを切っています。
　外国映画では「リダクテッド　真実の価値」（ブライアン・デ・パルマ監督）が、イラク人少女をレイプ、家族を惨殺した米兵の残虐を観客に突きつけ、都合よく情報操作する米政府を批判。次々公開された「対テロ戦争」批判作の中でもひときわ強烈な印象を刻みました。
　世界的な新自由主義へ、アンチテーゼを示す作品も目立ちました。「この自由な世界で」（ケン・ローチ監督）は、低賃金で働かされる移民の現実に切り込み、「ボーダータウン　報道されない殺人者」（グレゴリー・ナヴァ監督）は、米多国籍企業の非道を告発しました。
　社会的に話題を集めたのが、自民党の一部国会議員が問題視した「靖国　ＹＡＳＵＫＵＮＩ」（李纓監督）。上映を中止する映画館も出ましたが、抗議の広がりとともに上映館は逆に増加。しかし、二度と政府の介入を許さないよう、今後も注視が必要です。
　日本映画では、庶民の連帯を生き生きと紡いだ「歓喜の歌」（松岡錠司監督）、納棺師の仕事から生と死を見つめ、モントリオール国際映画祭でグランプリを受賞した「おくりびと」（滝田洋二郎監督）など、人と人とのつながりを描く作品も光りました。

厳しい局面打開願いが息づいて
　興収では、米国脚本家組合のストの影響も受け、ハリウッドの大作が低調だった今年、二位以下に大きく水をあけ、最高額百五十億円をたたきだしたのが「崖の上のポニョ」（宮崎駿監督）。自然との共生、他者への思いやりをストレートに表現した作風は幅広い層の支持を得、ジブリの手練を見せつけました。
　東京国際映画祭でも、環境を特集する部門が新設され、環境保護を訴えた「アース」（アラステア・フォザーギル、マーク・リンフィールド監督）が記録映画としては異例のヒットとなるなど、「環境映画」が一ジャンルとして認識されつつあるのかもしれません。戦争と平和、貧困と格差、環境保護。厳しい局面を打開しようとする人々の思いが、映画界には確かに息づいています。
　（田中佐知子）

私の選んだ５点

〈日　本〉山田和夫（映画評論家）
・母べえ（山田洋次監督）
・歓喜の歌（松岡錠司監督）
・ラストゲーム　最後の早慶戦（神山征二郎監督）
・石内尋常高等小学校　花は散れども（新藤兼人監督）
・私は貝になりたい（福澤克雄監督）
（上映順）

〈外　国〉中村　清（映画ライター）
①この自由な世界で（ケン・ローチ監督）
②チェチェンへ　アレクサンドラの旅（アレクサンドル・ソクーロフ監督）
③告発のとき（ポール・ハギス監督）
④ボーダータウン　報道されない殺人者（グレゴリー・ナヴァ監督）
⑤ブロードウェイ♪ブロードウェイ　コーラスラインにかける夢（ジェイムズ・Ｄ・スターン＆アダム・デル・デオ監督）
( ２００８年１２月１６日，「赤旗」) （Page/Topへ）

共産党も観光に一役／道議会で真下議員／知事・情報発信に努める

　ワーキングプア（働く貧困層）が大きな社会問題となり、今年の流行語に「蟹工船」が入賞しました。
　若者の不安定雇用と戦前・戦中の蟹工船での奴隷労働が重なり、「そして彼らは立ち上がった。もう一度」との最後のフレーズが労働者の勇気と希望につながると注目されています。小樽市教育委員会の協力を得たＪＴＢが「小林多喜二・一日文学散歩」という旅行を企画するほどです。
　第四回定例道議会でも、真下紀子道議が多喜二ブームを一般質問で紹介し、道内の観光資源の見直しと北海道観光に寄与する方策の探究を求めるよう提案しました。「いまや日本共産党をも観光資源にする時代だ」と真下氏が述べると、議場がわきました。
　高橋はるみ知事は「最近、小樽育ちの作家である小林多喜二のゆかりの地として在学した学校や勤務先をめぐるバスツアーが企画され、注目されていることは承知している」と答弁。さらに「さまざまな分野の関係者と協力して、こうした個性的なテーマの観光資源の掘り起こしや情報発信に努める」と答えました。「蟹工船」の影響力が改めて道議会でも認識されました。
(２００８年１２月１６日，「赤旗」) （Page/Topへ）

朝の風／小林多喜二と「活弁」

　先日、エイゼンシュテインの名作「戦艦ポチョムキン」（一九二五年）が｢活弁｣つきで上映され､盛況だった｡
　映画は一九三〇年代にトーキーに移るまで、音声のないサイレント時代。海外では映画館でピアノや楽団の伴奏つきの上映、日本では「活動写真弁士」（活弁）と呼ばれる映画説明者が映画の字幕に出る会話を中心に独特の名文調で語り、浪曲や講談など語り物芸能の伝統を生かし、人気を博した。今回「ポチョムキン」を語った澤登翠さんはその伝統芸を継ぐ一人。そして『蟹工船』の小林多喜二は熱烈な映画ファン、「戦艦ポチョムキン」を見たいと熱望していたが、当時の天皇制検閲はこの名画の輸入を禁止。もし当時多喜二が｢ポチョムキン｣を見ていたとしたら、間違いなく「活弁」と伴奏つきで見たはず。その状況を再現するのが、今回の上映の趣旨だ。
　その多喜二は一九二七年、「活弁」の重要性を指摘した。彼は「映画の説明」の芸術性を強調、チャップリンの「巴里の女性」を説明した織田暁堂氏を激賞、「如何にも教養のある、写真を深く理解したヴィヴィッドな説明にひかれて三回も見に行った。志賀直哉の名文章のおもかげがあった」と（『小林多喜二全集』第五巻所収）。「活弁」の意義を考えさせる。（反）
( ２００８年１２月１６日，「赤旗」) （Page/Topへ）

今、なぜ鶴彬か／来年生誕１００年、ドキュメンタリードラマ映画も３月公開へ／岡田一杜

平和希求に追憶と共感
　石川県高松町（現かほく市）に生まれ、その反軍反戦の川柳と活動を問われ、一九三七年十二月に逮捕され翌年九月十四日に獄中死した鶴彬（写真、一九〇九―一九三八）。出生から来年百年目を迎えるのと命日から七十年となった今年を記念して、鶴彬生誕百年祭実行委員会による映画「鶴彬―こころの軌跡―」（神山征二郎監督）が企画され、かほく市と金沢市でのロケも十一月十日に終了（来年三月公開）し、その締めくくりとして十五日に「今、何故鶴彬か？」と題したシンポジウムが催されました。
　戦後まもなく鶴彬への関心研究は徐々に幅広く高まっていく中で、彼の短い生涯での活動とその遺した多くの評論・川柳句などは単行本・句集となり幾つか出版されました。また童話作家による若干の冊子、あるいは雑誌新聞ラジオなどで断片的な紹介・評論も多く、最近では劇団による上演もあり、この秋には琵琶に編曲され金沢・かほく両市内で上演されました。また故人ゆかりの地である金沢、かほく、盛岡につづき今年は大阪に句碑が建立されて顕彰運動は幅広く進んでいます。このたびの映画「鶴彬」の完成上映により、鶴彬の死を賭しての平和希求の足跡に対する追憶と共感は一層幅広いものになるでしょう。
　現在私たちのささやかな生活を取り巻く状況は、かつて十五年戦争開始前後の小林多喜二の「蟹工船」に見えるように、労働者を非人間的に扱う仕打ちに相似の世相となり、派遣労働者など非正規の人々にみるワーキングプアの実態など弱肉強食の時代となっています。
　一九六五年に鶴彬句碑が金沢に、小林多喜二の文学碑が小樽に、くしくも年を同じくして建立されました。

川柳史への大きな足跡
　鶴彬がプロレタリア川柳の旗頭として、川柳雑誌以外にも寄稿しその主張を展開した時代は、彼が俗にいう七連隊赤化事件の主犯とされ衛戍監獄に収監一年八カ月の刑期を加えられた兵役四年間を除いてその前後六年間ほどですが、軍部の台頭と軍国化していく中で鋭い社会批判と反戦句で川柳史に大きな足跡を刻んでいます。
　しかしその頃は一般に民主的な活動は停滞しはじめ、やがてその表だった行動は直ちに弾圧され沈黙させられていましたが、その中でも短詩型文芸の川柳・俳句界の一部では少数の人々によって、平和のための反戦句がつくられていました。俳句でも鶴彬の死後二年ほどあとに「京大俳句」事件で、渡辺白泉など反戦句のかどで逮捕されています。一九三四年に日本プロレタリア作家同盟は解散しているのですが、一九三五年『詩精神』六月号で鶴彬は次のように結びました。
　「川柳はすでに通俗的ユウモアの諷刺短詩ではなく、厳粛な現実批判の諷刺的短詩である。」
　（おかだ・いっと　「和」川柳社主宰）
　映画に関する問い合わせは℡０７６（２２３）８４１５ドキュメンタリー映画「鶴彬」製作・普及を成功させる会事務局
( ２００８年１２月１２日，「赤旗」) （Page/Topへ）

新俳句人支部鳥取で結成

　新俳句人連盟鳥取支部の結成総会が七日、鳥取県倉吉市のせいきょう倉吉診療所で開かれました。
　新俳句人連盟の敷地あきら会長､石川貞夫､田中千恵子の両副会長、飯田史朗常任幹事が来賓・助言者として出席しました。
　敷地会長は、父の葬儀の翌日に長男が出征し、一家の大黒柱を奪われた塗炭の苦しみが理屈なしで俳句に向かわせたと、俳句との出会いを語り「戦前の治安維持法が俳句人を弾圧した経験から、反戦平和、自由と民主主義への思いが原動力となった」と当時を振り返りました。
　連盟役員は「ヒロシマ忌鳩の白さのシャツの街」（あきら）、「寒き真夜ナースは白き尾びれもち」（貞夫）、「被爆レンガのひとつがふいに朝鮮語」（千恵子）、「沖に咲くひまわり太し多喜二の書」（史朗）と書いた色紙を参加者にプレゼント。選句、披講、講評しました。
　総会では野田賢太郎氏を支部長に選出しました。
(２００８年１２月１２日，「赤旗」) （Page/Topへ）

多喜二から志賀直哉へ／獄中書簡に封印されたほとばしるメッセージ／神村和美

「あなたの変ることのない読者」
　十一月二十九日まで東京駒場の日本近代文学館で開催された、特別展「志賀直哉をめぐる人々」をみた。
　里見〇の絵はがきがあまりに異国情緒にあふれ、一つの芸術作品のように完璧で、しかもしゃれていて驚いた。志賀直哉を慕い、彼の周囲にあった人々が、いかに多才な人々であったかが深く感じられる展示の数々に、文学館の域を超えたものを感じた。
　ひときわ目をひいたのは、小林多喜二から志賀への書簡のコーナーだった。原稿用紙に書いたものもある。また、奈良で一泊したときの礼状もある。多喜二の体はこの世に存在していなくても、彼の残した手紙の文字は、美しく、堂々と自己主張していた。
　そんななかに、折りたたんだ跡のある小さな長い紙に、小さな字で埋め尽くされた書簡があった。志賀への獄中書簡である。七十八年前のまさにこの季節、小林多喜二は、治安維持法違反という罪名で、中野の豊多摩刑務所にその身を拘束されていた。その時の多喜二が、十代のころより傾倒した志賀直哉に書き送ったものだった。
　獄中書簡は封かんはがきで、私が想像していたよりも小さなものだった。折り畳むと、はがきの大きさになる。獄中の筆は非常に粗悪だと聞いたことがある。にもかかわらず、多喜二の字は粒が揃い、女性の筆跡のように小さな字が器用に紙を埋めていた。外界と遮断された寒中の独房で、まだ見ぬ志賀を胸に描き、端正な小さな字をびっしりと埋め込んでいく多喜二が目に浮かぶようだった。
　この書簡の消印は「５・１２・３」と読めるが、多喜二の書簡の文中に「今日は十二月十三日です」とあることから、これはおそらく末尾の「０」が摩耗したのであり、消印の日付は「５・１２・３０」ではないかと思われる。志賀直哉全集にもこの書簡の消印は十二月三十日とある。つまり、手紙が書かれてから、十七日間も当局のもとで足止めを食っていることになり、ここにも一つの弾圧の痕跡をみることができる。
　またこの書簡には、多喜二自身がまとまった文章を消している個所が、大きく二カ所あった。ペンで消された個所の背後に書かれたものを何とか目をこらして読み取ろうと試みてみる。一字一字が文章につながるまで、かなりの時間がかかったが、ようやく、私はそこに封印された一つの文章をみた。
　〈私は何処にいようと　どのように変っていようと　あなたの変ることのない読者であることを申し上げて置きます〉
　それは、多喜二の、志賀への敬愛の情をあらわす一文だった。多喜二はなぜそれを消したのだろうか。私には、多喜二が、最も志賀に伝えたいメッセージだからこそ、あえてそれを消したように思われた。志賀に迷惑がかかることを恐れ、それまで獄中から書簡を出さずにいた多喜二は、この書簡においてもほとばしる感情を抑制しようとしている。
　心の中の言葉まで権力に踏み込まれる多喜二の孤独と、まっすぐに届けたい大切な言葉であるから獄中書簡には書かないという抵抗、そして、消した痕跡こそを志賀にくんでほしいという多喜二の願いを、私はこの獄中書簡にみたように思った。
　（かみむら・かずみ　日本近代文学研究者）
( ２００８年１２月１１日，「赤旗」) （Page/Topへ）

ひと／「泊・横浜事件」を風化させない、と運動する古川松男さん（７７）

　「横浜事件が富山県から始まったことを伝えるのが私の使命です」。力強くハキハキとした口調です。
　今年五月、富山県朝日町（旧・泊町）の旅館「紋左」の敷地内に「泊・横浜事件端緒の地」の石碑ができました。「言論・出版・思想の自由のなかった時代を知らない世代が増えている」「事件が忘れられたら、また、同じ歴史を繰り返しかねない」と、仲間とともに建てたものです。
　横浜事件は、一九四二年に「紋左」で開かれた宴会を、神奈川県の特高警察が「共産党再建準備」とでっちあげたことが発端。出席者ら六十人以上が逮捕され、拷問などで四人が獄死した、治安維持法による戦時下の言論弾圧事件です。
　「戦時中に命を懸けてたたかった先達がいるからこそ、今がある」。治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟富山県本部の会長も務め、国家賠償法の制定を求めて署名運動をしています。
　以前は町議、町内会長、国鉄職員を兼任。「仕事をかけもちし、すべてをしっかりこなす、パワーにあふれた人」と慕われます。
　日本共産党の立山町議時代を知る人は「責任感が強く、大変な勉強家」と評します。「町議会の質問準備で二晩寝ないこともあったけど、なんともなかったね」と笑います。
　川釣りが一番の楽しみ。「忙しくて長いことやってないけど、時間がとれれば子どものころ好きだったイワナ釣りに久々に行きたいね」。目を輝かせます。
　文　高橋　拓丸
( ２００８年１２月１１日，『赤旗』) （Page/Topへ）

赤城さかえ生誕１００年に寄せて／望月たけし／重厚な俳句理論と実作の両立を貫く

　新俳句人連盟は、目標であった千名を超える会員を達成し、十月に第五十三回総会を成功させました。一九四六年五月の創立以来実に六十二年ぶりの快挙となりました。
　この間多くの先達たちが困難な活動を続け前進の力となってきましたが、今年六月、没後四十一年、生誕百年を迎えた赤城さかえもその中の一人であります。赤城さかえは戦後間もない俳壇に忽然と頭角を現し、以後二十年にわたって、俳句理論、実作を両立させた数少い作家でしたが、五十八歳という若さでこの世を去りました。赤城さかえは本名を藤村昌といい、父藤村作は東京帝国大学国文学教授でした。東大在学中に地下活動に入り「赤旗」の編集に参加しました。波瀾の青春期を経て、三十二歳で結核を発病。逗子湘南サナトリウムに入所し、そこで俳句を始めました。三十三歳でした。
　一九四七年「短詩型文学再出発の拠点」「草田男の犬」を執筆。その後の「草田男の犬」論争の中で新俳句人連盟員となりました。それ以来、赤城独自のリアリズム論は、全俳壇の注目を集めつづけました。俳誌「馬酔木」に連載した「戦後俳句論争史」は、赤城の業績の象徴とたたえられる重厚さで、桑原武夫の「第二芸術論」へも敢然と挑みました。赤城は論争を始めたら一歩も退かぬ闘魂の持ち主で、論争の多さから戦後俳句界を震撼させた男ともいわれています。小林多喜二型の厳しい生き方を貫いた反面、日常生活では酒も楽しみ、いつも「古代の微笑」といわれたほほ笑みを満面にうかべていました。病気と闘いつづけた生涯でしたが、後進発掘のために、若い投稿者を箱根山の石切り場まで訪ねて行った美談ものこっています。理論活動で到達した「写実の果ての象徴」「具象に具象を重ねて象徴へ」という俳句格言を実践し、秀作を多く遺しています。
　秋風やかかと大きく戦後　の主婦
　　第一回母親大会へ捧げる
　平和へ平和へ玉菜はつね　に蝶をかかげ
　向日葵かゞやく如き党務　が予後に待つ
　咽ぶごと雑木萌えおり多　喜二忌以後
　出港か月界がこたう夜の　巨笛
　療養所時代から他の療養者俳句と違い、自身の社会活動と結びついたリアリズムを推し進めました。俳句作品は約二千句。評論は約五十本。『赤城さかえ全集』（「青磁社」一九八八年刊）にほぼ収められています。他に『赤城さかえの世界』（「梅里書房」九二年刊）『赤城さかえ』（「花神社」九四年刊）があります。
　（もちづき・たけし　新俳句人連盟副会長）
( ２００８年１２月１０日，「赤旗」) （Page/Topへ）

ひと／薩摩琵琶演奏で鶴彬を語る寺本拳嶺さん（６５）

　「枯れ芝よ団結をして春を待つ」「手と足をもいだ丸太にしてかへし」「暁を抱いて闇にゐる蕾」。戦前活躍した石川県出身の川柳作家、鶴彬の代表作です。
　鶴彬の本を読み、何回も語るうちに、「大変な人だということが、わかってきた」と言います。「生命を賭して、川柳を武器に反軍態度を貫き通した人。多くの人に知ってほしい」
　鶴彬は治安維持法違反で捕まり、勾留中の一九三八年九月十四日、赤痢にかかって二十九歳の若さで亡くなりました。今年は没後七十年、来年は生誕百年。ドキュメンタリー映画「鶴彬―こころの軌跡―｣(神山征二郎監督）も製作中です。
　薩摩琵琶の演奏で鶴彬を語ることになったのは、文学仲間との話の中から。「この人を顕彰することで、日本が再び、危うい時代にならないように願う」と語ります。
　各所の弾き語りでは「食い入るように真剣に聴いてくれる」と、手応えを感じています。
　薩摩琵琶演奏者になったのは「京都でたまたま出合い、習ってみたいと思った」のが、きっかけ。
　たまたま出合ったものに少林寺拳法も。二段です。拳法と琵琶の師匠の名前から一字ずつをいただいて、つけたのが「拳嶺」。
　二〇〇五年、泉鏡花記念金沢市民文学賞を受賞した作家でもあります。
　座右の銘は「しぶとく継続すること」。継続して努力すれば、必ず上達するときがくると言います。
　文　森　明雄
( ２００８年１２月０９日，「赤旗」) （Page/Topへ）

「蟹工船」に思わず拍手／福岡・行橋かえるネット見て語る会開く

　戦前の共産党員作家・小林多喜二の小説の同名映画「蟹工船」を見て語り合う会が十一月三十日、福岡県行橋市で開かれました。昼夜二回の上映にあわせて六十五人が参加しました。主催は日本をかえるネットワーク京築。
　かえるネット京築は十月に行われた全国と福岡県の青年雇用集会や「青年おしごとアンケート」に取り組む中で、「蟹工船」が描く世界が今の若い人の働く状況と同じであり、映画を見て労働状況をみんなで考えようということになり、準備をすすめてきました。
　映画のあと、かえるネットの活動報告があり、山川花子さん（仮名）はアンケートに「給料が安い。ボーナスや有休もなく将来が不安」「工場で派遣として働いているが正社員と同じ仕事をしても評価されない」などの声が寄せられていることを紹介し、「ひどい労働状況を変えていきたいというみんなの思いを集めて社会を変える力にしたい」と話しました。
　夜の部には田村貴昭衆院比例候補もかけつけ、参加者と交流しました。
　映画には、「会社が法律という理不尽さが今と共通する」（アルバイトの三十七歳の女性）「労働者が立ち上がった場面では思わず拍手を送りたくなった」（六十代男性）「私は派遣社員です。派遣だけど一生懸命がんばります」などの感想が寄せられました。
(２００８年１２月０５日，「赤旗」) （Page/Topへ）

おはようニュース問答／流行語「蟹工船」のような社会を変えたいね

　秋平　「アラフォー」って、なんだい？
　晴男　ああ、流行語大賞のことか。「アラウンドフォーティ」という英語を略したんだ。四十歳前後の世代の女性を指す言葉だ。テレビドラマで使われてヒットしたんだよ。
　秋平　「今年の世相を反映した新語・流行語」というけど、初めて聞く言葉もあるよ。
　晴男　もう一つの大賞の「グ～！」は知っているだろう。
　秋平　タレントのエド・はるみさんだろう。これはよく目にしたね。

「後期高齢者」も
　晴男　福田康夫前首相の「あなたとはちがうんです」も入ったが、福田氏は受賞を辞退した。
　秋平　後任の麻生太郎首相は、わずか二カ月のうちに、暴言や失言、漢字の誤読を連発して、福田氏はすっかりかすんでしまったなあ。
　晴男　麻生氏は、通称の「ローゼン麻生」が候補になったが選外だ。
　秋平　今回を逃すと次はないよ。来年のいまごろは、過去の人かもしれない。
　晴男　この数年、劇的に浮かび上がった貧困と格差の広がりを反映した言葉も目立つね。
　秋平　「後期高齢者」が入った。
　晴男　七十五歳以上のお年寄りを「うば捨て山」に追いやる差別医療に、国民の怒りが広がったね。
　秋平　「名ばかり管理職」という言葉も、人間をモノのように使い捨てる雇用破壊のなかで生まれた。

たたかいに共感
　晴男　しかし、なんといっても注目は「蟹工船」だと思うよ。
　秋平　共産党員作家、小林多喜二の七十九年前の作品が、五十万部のベストセラーだからね。
　晴男　当時の奴隷のような労働が、いま派遣や期間工、請負で働く若者たちに、「まるで自分たちのことのようだ」と受け止められた。
　秋平　厳しい現実の告発だけではなく、たたかいでこれを打ち破ろうとした多喜二の訴えに、共感が広がっているのがすごいことだよ。
　晴男　最後の一文は「そして､彼等は､立ち上った。――もう一度！」だね。
　秋平　そうだ。新しい年へ、「蟹工船」社会を変える国民のたたかいを大きく広げたいね。
( ２００８年１２月０５日，「赤旗」) （Page/Topへ）

日本共産党知りたい聞きたい／米軍占領下でも破壊活動防止法のような法律があった？

　〈問い〉戦後の占領期にも、戦前の治安維持法と同じような法律（政令）があって、たくさんの人が逮捕・起訴・投獄されたと年配の方が言っていました。どういうことだったのでしょうか？（大阪・一読者）
　〈答え〉敗戦直後、占領軍は当初、ポツダム宣言にそって民主的措置をとりますが、４８年ごろから弾圧政策に転じ、まず、もともとは超国家主義的な政党や団体の結成禁止などが対象であった勅令（４６年勅令１０１号）を改正し４９年４月、団体等規正令（団規令＝政令６４号）を制定しました。取り締まりの範囲を革新的な団体にまで広げ、「暴力主義的及び反民主主義的な団体」の名のもとに、構成員の登録を義務づけ、団体の解散の指定ができる規定を設けた弾圧立法です。
　団規令が平和条約の発効で効力を失うのに対応して制定されたのが、治安維持法の戦後版といわれる破壊活動防止法です。
　多くの民主的な活動家が逮捕されたのは、これとは違って「占領目的阻害行為処罰令」（４６年勅令３１１号、５０年に改正されて政令３２５号）といわれる政令です。この政令は「占領目的に有害な行為」を１０年以下の懲役で処罰するもので、占領軍にかかわる批判すべて―米軍基地の実態を知らせたり、朝鮮戦争への米軍の介入を批判したりすることから、原爆投下による被害の実態を伝えることにまで―が取り締まられました。特に新聞報道やビラ・パンフレットの類、街頭演説などが厳しく罰せられ、なかにはビラやポスターを持っていただけで逮捕された例さえあります。憲法が保障した言論・表現の自由は完全にじゅうりんされ、治安維持法下と同じような言論弾圧がおこなわれたのです。
　しかもいったん事件として取りあげられたら、起訴することが政令の規定で義務づけられていました。多くの共産党員や大衆団体の活動家が、この政令によって逮捕･起訴され､投獄されました。米軍による軍事裁判で裁かれた人も多くありました。
　なお、これらの法規は、「法律」ではなく、「勅令」「政令」という名称になっています。法律は国会で審議して決めますが、占領下では、連合国軍最高司令部（ＧＨＱ）が絶対的な権力をもっていましたので、国民の権利に重要な影響を与えるこのような法規でも、占領軍命令にもとづいて政府が定める政令という形で通用したのです。「勅令」は、「天皇の命令」という意味で、現行憲法の発効までは、「勅令」でしたが、実際の効果は政令と同様でした。
　（柳）
( ２００８年１２月０４日，「赤旗」) （Page/Topへ）

０８流行語大賞／「蟹工船」入賞／ワーキングプアで注目／名ばかり管理職・後期高齢者も

　今年の世相を反映した言葉を選ぶ「２００８ユーキャン新語・流行語大賞」（「現代用語の基礎知識」選）が一日発表されました。
　「トップテン」には、日本共産党員作家の小林多喜二によるプロレタリア文学の代表作、小説「蟹工船」（一九二九年発表）が入賞。戦前の無権利な職場で酷使されながら、負けずにたたかう労働者群像が、格差・ワーキングプアなどの現代日本の社会問題と重なり、ブームとなったことを受賞理由としています。
　このほか、管理職の肩書だけで残業代などが支払われず実質は一般社員と同じ「名ばかり管理職」も入賞。七十五歳以上のお年寄りの医療を差別して抑制し、新たな保険料負担を課すなど、今年四月に導入された「後期高齢者医療制度」で使われた「後期高齢者」という言葉も入賞しました。
　「年間大賞」には、迷い多き世代とされる四十歳前後の女性「アラフォー（Ａｒｏｕｎｄ４０の略）」と、お笑い芸人エド・はるみさんの親指を立てる軽妙なギャグ「グ～！」が選ばれました。
( ２００８年１２月０２日，「赤旗」)

【11月】（Page/Topへ）

本と人と／『伝説の日中文化サロン上海・内山書店』太田尚樹さん／国際交流に貢献、内山完造の魅力

　大正から日中戦争の激動の時期。「魔都」上海にあった内山書店には、魯迅、郭抹若ら中国人、尾崎秀実、谷崎潤一郎ら日本人、そしてスメドレーなどが集まり、交流を深めました。作家、ジャーナリスト、社会運動家らが現状を憂え、変革を模索して―。
　「国籍・思想・信条を超えた国際交流のたまり場でした。その要因は、店主・内山完造の魅力にあったと思う。暗いつらい時代に一条の光明となった、その姿を描きたかったのです」
　昨年、著者は、『赤い諜報員―ゾルゲ・尾崎秀実、そしてスメドレー』（講談社）を出版。何度も上海に足を運び、内山書店跡などゆかりの地を訪れました。
　「魯迅ら日本留学生が帰国して進歩的な運動や左翼組織にかかわっていった時代背景、精神性に興味が広がりましてね｡多喜二の『蟹工船』がいち早く中国語に翻訳・出版され、上海で上演されて大きな反響を呼んだことも、多喜二虐殺につながったのではないか」
　すぐに魯迅が「同志小林の死を聞いて」の小文を発表｡また､多喜二の偉業をたたえ、「日本帝国主義と日本の官憲を糾弾する」という怒りの趣意書をまわし、多喜二の遺族のための募金も呼びかけられました。
　「募金の発起人の多くがその後、逮捕・投獄・処刑されたことも含め、多喜二にまつわる経緯を書きましたが、彼らは本物の知日派です。内山の危険を冒しても手弁当で文化活動を支援した精神、民あっての商売という目線もいいですね」
　大学で西洋と日本の「比較文化」論を講義してきた著者。退職した今は、「人間とは何か、日本の中国侵略とは何だったか、を尾崎秀実を通して書きたい」
　（澤田勝雄）
　（平凡社・七四〇円）
　一九四一年生まれ。東海大学名誉教授。作家。『ヨーロッパに消えたサムライたち』ほか。
( ２００８年１１月３０日，「赤旗」) （Page/Topへ）

「蟹工船」と「戦艦ポチョムキン」／山田和夫／時空こえ、響き合う２作／「幻の名画」に思い馳せた多喜二

　小林多喜二原作の映画化「蟹工船」（一九五三年）が再上映されている。むろん爆発的ブームを続ける原作の波及効果。その機会に映画化作品を見た何人かの友人から「『戦艦ポチョムキン』そっくりね」と同じ感想を聞かされた。
　いうまでもなく一九〇五年の第一次ロシア革命の挿話を映画化したセルゲイ・エイゼンシュテインの名作映画（一九二五年）との比較だが、一九三三年に官憲によって虐殺された多喜二は、この名作映画を見ていない。日本には一九二六年に一度横浜税関にまで到着しながら、当時の天皇制映画検閲によって輸入そのものを禁止され、ソビエト本国に送り返された。
　戦後は米占領軍による一方的な外国映画の輸入統制で、一九五九年二月の非劇場自主上映開始まで、「戦艦ポチョムキン」は幻の名画のまま。一九五三年に俳優の山村聡が第一回監督作品として、自分の独立プロで「蟹工船」の映画化に成功したときも、製作スタッフはだれもこの名画を見る機会はなかった。

見たいと切望
　にもかかわらず、「蟹工船」がフランスで公開されたとき、共産党員の世界的映画史家ジョルジュ・サドゥールも「この映画は『戦艦ポチョムキン』に酷似しており、エイゼンシュテインの技法に大きな影響を受けている」と書いた（『映画辞典』Ｔｈｅ　Ｄｉｃｔｉｏｎａｒｙ　ｏｆ　Ｆｉｌｍｓ　一九六四年）。
　多喜二自身、たしかにこの名画を見ることが出来なかったが、「戦艦ポチョムキン」についてはかなりくわしく知っていて、あこがれの名画としてぜひ見たい、日本映画にもこのような作品をと切望していた。
　一九二七年十一月二十一日、小樽市中央座で上演された築地小劇場の演劇、ドイツのプロレタリア作家ゲーリング作『海戦』を見て「自分は幕が下りた時、興奮したまま『戦闘艦ポチョムキン』を考えていた。その二つの間に、しかし厳然として存在している大きな画線について考えた」と書き、「築地の『海戦』（もう少しだ）」と見出しをつけている（「『海戦』を中心の雑談」、『シネマ』誌一九二八年新年特輯号）。対象となった『海戦』が反戦劇であること以上、筆者は知らないが、多喜二は明らかに「戦艦ポチョムキン」の一貫した革命性とくらべ、「もう少しだ」と指摘している。
　そして多喜二が『蟹工船』を書いた一九二九年末、札幌松竹座が新築開場したときの「松竹座パンフレット」第一集に「我等の観点から１９３０年以後の松竹映画に望む事」のアンケートに答え、当時の日本映画が人気小説の映画化に夢中になっている状況を批判、「『不壊の白珠』の代りにゴールキーの『母』であったらどうだろう。『斬人斬馬剣』の代りに『戦闘艦ポチョムキン』ならどうだろう」と書いて、さらに「何も外国に例をとらなくても」と尊敬する葉山嘉樹の『海に生くる人々』と並んで自分の『蟹工船』『不在地主』の名前を挙げている。『斬人斬馬剣』は多喜二が期待する伊藤大輔監督が時代劇の形を借りて反権力のテーマを試みた力作だ。
　さらに一九二七年九月号の『キネマ旬報』誌に「最近のソビエト映画界」と題するレポートが掲載された。このレポートはモスクワ滞在中の蔵原惟人によるもので、現地で見た「戦艦ポチョムキン」を詳細に論じている。蔵原はすでにプロレタリア文化運動の指導者の一人であり、多喜二の文学上の師である。小樽映画鑑賞会の積極的な活動家であり、数多くの映画論も執筆している多喜二が、蔵原の「戦艦ポチョムキン」論を読まなかったはずはない。多喜二がこの名作を「戦闘艦ポチョムキン」と表記しているのも、蔵原論文にならったと思われる。
　蔵原はエイゼンシュテインがアメリカ映画のスター中心主義を排除していることを指摘､｢この映画からあえて主人公を求めれば、それは帝政の軛に圧せられながら、それでも何等かの出口を見出そうとしている『大衆』である｣と書く｡多喜二が『蟹工船』を書きつつ、まだ見ぬ「幻の名画」に思いを馳せたとすれば、たとえばこの言葉に響き合ったに違いない。映画化スタッフも原作のなかで同じ共鳴を感じ取ったであろう。ただ今回改めて原作を読み直し、映画を見直して考えさせられたのは、原作と違うラストのあり方である。

ラストの改変
　原作ではストライキを決行した漁夫たちの指導者らが水兵に連行され、ストは敗北するが映画では漁夫たちは水兵に抵抗して虐殺される。映画化当時（一九五三年）、日本は自衛隊創設へ向かう「再軍備」反対闘争が盛り上がっていたので、日本軍隊の反国民的な性格を強調したかったが故の改変であろう。
　しかし「戦艦ポチョムキン」は一九〇五年革命が敗北に終わったが、ロシアの民衆はまさに「もう一度！」立ち上がって一九一七年の革命に勝利した史実の予兆として、反乱の勝利で映画をしめくくった。多喜二の『蟹工船』は多くの新しい読者を奮起させた本文の末尾「そして、彼等は、立ち上った。もう一度！」で結び、さらに「付記」として漁夫たちの二度目の闘争の勝利を簡潔に伝える。原作のこのラストは多喜二の文学的才能を示すあざやかさである。
　多喜二の『蟹工船』とその映画化作品、そして時空を超えて響き合う「戦艦ポチョムキン」――この歴史的共鳴をさぐり考える作業はなお進行中。十二月四日、東京で行われる活弁つき「戦艦ポチョムキン」上映も、その一つである。
　（やまだ・かずお　映画評論家）
　◇「戦艦ポチョムキン」メイド・イン・ジャパン＝１２月４日午後４時から、東京・江戸東京博物館ホール（ＪＲ両国駅）。第１部▽シンポジウム「エイゼンシュテインとロシア映画１００年」、ゲスト・ウラジミール・ドミトリエフ（ロシア国立映画保存所第一副所長）、司会・山田和夫（エイゼンシュテイン・シネクラブ〈日本〉代表）、第２部▽活弁・伴奏付き「戦艦ポチョムキン」上映。活動弁士・澤登翠、ピアノ伴奏・柳下美恵、当日券２５００円。問い合わせはエイゼンシュテイン・シネクラブ℡０８０（５４６２）２３８９（井上）
( ２００８年１１月２６日，「赤旗」) （Page/Topへ）

故高橋とみ子仙台で墓前祭／治維法国賠同盟

　治安維持法国家賠償同盟宮城県本部は二十二日、高橋とみ子の墓前祭を仙台市青葉区北山の秀林寺で開き、十五人が参加しました。
　高橋とみ子は、一九〇九年に仙台で生まれ、宮城県第二高等女学校を経て尚絅女学校に入学。卒業後に労働運動に参加し、仙台市にあった片倉製紙工場の組合の結成を指導しました。一九三四年の弾圧「九・一一事件」で逮捕され、激しい拷問によって二十五歳で虐殺されました。
　主催者あいさつで、同本部の大沼耕治副会長は､｢田母神俊雄･前航空幕僚長の言動に見られるように歴史の歪曲(わいきょく)が今も続くなかで､高橋とみ子さんをしのぶにつけて機敏な反撃をしていかなければならない｣と訴えました｡
　宮城県第二女子高校を卒業した遠藤いく子県議と尚絅女学院高校を卒業した高見のり子・仙台市議の二人が、日本共産党の議員としてたたかいを引き継ぎ頑張っていくと決意をのべました。
　参加者は、遺影を掲げた墓前に線香を添えて故人をしのびました。
(２００８年１１月２５日，「赤旗」) （Page/Topへ）

「蟹工船」上映貧困語る／夕べに８００人／くまもと九条の会

　「くまもと九条の会」四周年を記念して二十日夜、熊本市民会館で講演と映画の夕べが開かれ、約八百人が参加しました。小林多喜二の「蟹工船」の映画上映と、反貧困ネットワークの湯浅誠事務局長が講演しました。
　「くまもと九条の会」の猪飼隆明代表は、航空自衛隊の田母神氏が先の戦争を美化した論文を批判。「内容は陳腐だが、彼らを教育している人たちがいる。〝憲法を変えるべき〟を後ろめたさも感じないで主張できるのが怖いことだ。こうした勢力を九条の会が追い詰めないと、また、戦前と同じ道を歩むことになる」とあいさつしました。
　湯浅氏は、アメリカ発金融危機の影響で景気悪化が日本にも及び、労働者と国民生活への犠牲転嫁として、雇い止め、派遣切りがはじまる状況を告発。自衛隊員勧誘が激化していることを示し、「九条と二五条をセットで語らないといけない」と訴えました。
　参加者からは「わかりやすく、よかった」との声が多く寄せられました。
　菊池市の保育士（５８）は「若い人たちが多く見られたのに勇気づけられた」と語っていました。就職が内定しているという女子学生（２３）は「テレビなどでは知っていたけど、貧困の実態がよくわかった。自分とは関係ない、人ごとと思ってはいけないと知った。それに九条と二五条は一緒に考えないといけないと思った。これから、自分に何ができるかを考えたい」と話していました。
(２００８年１１月２２日，『赤旗』)（Page/Topへ）

鳥取の農民文学作家故佐々木一夫／倉吉で語る会

　鳥取県倉吉市で十六日、同市出身の農民文学作家である「佐々木一夫(一九〇六―八七)を偲(しの)び語る会｣が開かれ､五十二人が参加しました。同実行委員会と治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟鳥取県本部が主催しました。
　郷土文芸史研究家の竹内道夫氏、日本民主主義文学会鳥取支部の田治米芳郎氏、長男の佐々木泉氏がそれぞれの立場で語りました。
　竹内氏は、佐々木が日本の農民文学史に欠かせない一人で、戦争推進の戦前の国策に服従せず、農民の生活実態を告発した郷土が誇る作家だと述べ、発表した小説で「ぜひ短編集をつくってほしい」と呼びかけました。
　田治米氏は、他の農民文学作家が満蒙（まんもう）開拓をあおる小説で多くの農民に犠牲者を出したこととの対比で、佐々木が一貫して農民の立場に立ったことを強調し、宮本百合子との交流を語りました。
(２００８年１１月２１日，『赤旗』)（Page/Topへ）

命がけで戦争に反対した川柳作家鶴彬の映画製作成功へ／神山征二郎監督迎えシンポ／金沢

　石川県かほく市（旧高松町）出身の川柳作家、鶴彬（つる・あきら）の映画製作を成功させるためのシンポジウム「今、何故　鶴彬か」が十五日、金沢市の県教育会館で開かれ、約百三十人が参加しました。
　鶴彬は、戦前の軍国主義、侵略戦争を痛烈に批判し、「手と足をもいだ丸太にしてかへし」などの川柳を発表。一九三八年九月、治安維持法違反容疑で捕まり、勾留中に赤痢にかかって死去。享年二十九歳でした。
　今年が没後七十年、来年が生誕百年になるのを記念し、神山征二郎監督によるドキュメンタリー映画「鶴彬―こころの軌跡」の製作が進行中。来年三月二十九日、かほく市で作家の澤地久枝さんを迎え上映会が予定されています。
　シンポジウムで神山監督は今月十日のクランクアップまでの約三週間の県内撮影を振り返って、地元の人たちの熱意に感謝し、「この世にこんな人がいたことはうれしい」「みなさんの期待にそむかない映画ができつつある」と述べました。
　鶴彬についての著作で泉鏡花記念金沢市民文学賞受賞者の深井一郎金沢大学名誉教授、同じく著書のある岡田一杜氏（和川柳社主宰）、酒井路也・県川柳協会会長らが、「いのちがけで戦争に反対した」鶴彬の生きざまを語りました。金沢文学会主宰の千葉龍氏は「鶴彬が生きた時代を再現させてはならない。映画を成功させることが、今、最も大事」と発言。鶴彬のめいにあたる城戸寿子さんが、「勇気ある鶴彬を敬愛します」と語りました。
　主催者の鶴彬生誕百年祭実行委員会は二千五百万円募金（製作協力券、協賛金、募金）を訴えています。問い合わせ０７６（２８１）１２０１
(２００８年１１月１９日，『赤旗』)（Page/Topへ）

日本共産党知りたい聞きたい／破壊活動防止法は治安維持法の戦後版？

　〈問い〉終戦後も治安維持法をなんとかして存続させようとする動きがあったと聞きました。どういうことだったのでしょうか。そして、現在もある破壊活動防止法は形を変えた治安維持法だという人がいます。日本共産党の見解は？（滋賀・一読者）
　〈答え〉１９４５年８月１５日のポツダム宣言受諾によって、治安維持法をはじめとする弾圧法規は効力を失いました。ところが敗戦処理にあたった東久邇内閣や裁判所などは、弾圧法規をなお有効なものとして扱い、哲学者の三木清などが敗戦後になってから獄中で死亡するとか、横浜事件のように戦後になっても有罪判決を受けるなどの事態も生じました。
　そこで、占領軍はあらためて民主主義に反する弾圧法規の撤廃を命令しましたが、東久邇内閣はそれを拒否して総辞職しました。次の幣原内閣になってからの１０月１５日になって、ようやく治安維持法などの廃止が正式におこなわれました。
　このように、軍国主義的な支配勢力は、あくまでも日本共産党や民主的な勢力にたいする弾圧体制、弾圧法規の存続をめざして抵抗をしたのです。
　破壊活動防止法（破防法）は暴力主義的破壊活動の名目で､言論･集会･結社の自由などの基本的人権を抑えつけようとする悪法です。
　破防法は、なによりもまず、日本共産党や民主的な諸団体の活動を抑えつけ、事実上思想を弾圧しようという意図のもとにつくられたことによって、憲法違反の「治安維持法の戦後版」といわれる理由があります。ですから、破防法は本来廃止されなければならない法律です。
　とくに破防法で活動を規制した団体の「ためにする活動」のすべてを禁止する条文をもち、治安維持法のように、ひろく網をかけて国民の権利を奪おうという目的が、治安維持法に類似したものとして批判されています。
　しかし、破防法は、１９５２年の制定当時の国会内外のたたかいや、その後の運動の影響もあって、戦前の治安維持法の場合と違って、今日まで広範な国民の運動を抑制するようなこの法律の適用による弾圧は許していません。
　破防法制定以来五十数年のなかで適用されたのは、右翼団体（三無塾）とニセ左翼暴力集団だけで、当時から支配勢力が狙っていた日本共産党への適用はこれまで一件もありません。（明）
( ２００８年１１月１９日，『赤旗』)（Page/Topへ）

第四次横浜事件再審裁判の勝利判決／橋本進／反戦思想を弾圧／事件捏造の国家責任明らかに

歴史の真実と正義にこたえた
　「今回の判決で裁判所は事件捏造という原点に初めて向き合ってくれた。成果は一九八六年に母も参加した九人の請求人と、永い間支援して下さった方々がかちとったものと思う」
　第四次横浜事件再審請求に対し、十月三十一日、横浜地裁（大島隆明裁判長）が再審開始決定を告げた時の齋藤信子さんの言葉だ。

〝再び過ちをおかすな〟と
　齋藤さんは兄・新一さんと共に、第二次、第四次の請求人である。八六年、治安維持法再来というべき国家秘密法案の登場に危機感をもち、再び過ちをおかすなと横浜事件被害者本人及び遺族が再審を申し立てた（第一次）。二人の母、小野貞さんは故・小野康人氏（事件当時、『改造』編集者）の妻として加わった。
　第一次請求は一件記録の不存在（敗戦時、戦犯追及を恐れた裁判所は資料焼却。横浜事件判決書の大半は存在せず）のため審理不能、という無責任きわまる理由で却下。そこで例外的に予審終結決定書と判決書の両方がそろっている小野康人氏のケースにしぼって第二次請求が行われた（九四年七月）。貞さんは自分の老齢を考え、息子、娘に請求に加わることを望んだ（九五年六月没。八十六歳）。こんな経緯から「国の誤りを正すこと」は第一次の九人、さらには全事件被害者に共通の願い、という思いが信子さんにはある。
　第一次も第二次も、裁判所は〝さわらぬ神にたたりなし〟と門前払いをつづけ、事件の実態には一指もふれなかった（地裁、高裁、最高裁）。特高の拷問を認定し再審開始を決定した第三次の東京高裁判決（中川武隆裁判長）は例外だが、開始された再審は〝くさいものに蓋〟の免訴判決ばかり（地裁、高裁、最高裁）、事件の実相には全くふれなかった。
　第四次請求は、①横浜事件はすべてが当局の捏造、②有罪判決は捏造の追認、つまり警察・検察・裁判所総ぐるみの国家犯罪であり、その責任の認定を求めるものだった。
　今回の大島判決は、原有罪判決の唯一の根拠＝本人の自白は、特高の拷問の結果と認定した。敗戦間もない四七年、被害者三十三名が拷問特高を共同告発（五二年、最高裁で有罪確定）した折の各自の口述書が、再審開始の「新証拠」に採用された。「小林多喜二がどうして死んだか知ってるか」とわめきながらの拷問の凄惨さ（獄死四名、保釈直後死一名）は読むのも息苦しいが、小野康人他二名の口述書が、八㌻にもわたって判決書に引用されている。判決はまた小野が参加したという「共産党再建準備会議」（富山県泊町）が、細川嘉六氏が友人たちを郷里に招待した慰安会だったことを認定した。原有罪判決は「拙速」の（被告六人共同で即日判決）「ずさんな事件処理｣だったと指摘｡こうして当局の捏造及び司法責任が明らかにされた。
　判決は右口述書のほか、小野貞さんら被害者の著書、第一次請求の九人の証言ビデオ、小野家保存の泊慰安会アルバム、陸軍報道部・平櫛少佐著書、拙論文（『世界』九九年十月号所載）等、第一次以来請求側提出の諸資料を「新証拠」に採用した。裁判官がこれら資料を、誠実に、丹念に吟味したことは、判決文の各所に示されている。

裁判所批判正論をみた
　判決はさらに一件記録の不存在に言及、当時の裁判所が「連合国との関係において不都合な事実を隠蔽しよう」と「廃棄した可能性が高い」と指摘、そのことで「新旧の証拠資料の対比が困難」といって再審請求を認めないのは、「裁判所の取るべき姿勢ではない」と批判したのである。第一次却下以来、二十年目にして出合った正論である。
　横浜事件は、太平洋戦争下、反戦平和の声や思いを根だやしにしようとして、でっち上げまでして起こされた言論・思想弾圧事件である。言論・表現、思想・良心の自由が徐々に侵され、歴史の偽造者（たとえば田母神前空幕長）が大声をあげる現在、歴史の真実と正義にこたえた判決を歓迎し、開始再審（免訴の可能性大と予測されるが）を機に、この成果をより確かでより広いものにしていきたい。
　（はしもと・すすむ　元『中央公論』次長、元日本ジャーナリスト会議代表委員）
　◇
横浜事件再審決定―第四次再審請求勝利の報告集会＝２８日（金）午後６時。東京・全水道会館（都営三田線・ＪＲ水道橋下車）。支援する会事務局℡０３（３２９１）８０６６

横浜事件
　一九四二年から四五年にかけて特高警察によっておこされた大規模な言論弾圧事件。神奈川県特高課は細川嘉六の雑誌論文を手がかりに、日本共産党再建計画をでっちあげ、雑誌編集者ら六十余名を検挙。拷問で五人を獄死させました。敗戦前後の裁判で多くの者に治安維持法違反の有罪判決が下されました。
( ２００８年１１月１９日，『赤旗』)（Page/Topへ）

映画「蟹工船」試写会に１００人／いわき

　福島県いわき市のＪＡグリーンプラザいわきで十五日、映画「蟹工船」の試写会が開かれました。「蟹工船を見る会（仮称）準備会」の主催で、約百人が観賞しました。
　準備会は、来年二月二十一日の上映会実施をめざして実行委員会を立ち上げる予定です。準備会を代表してあいさつをした渡辺藤一・治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟いわき支部長は、「来年の上映会を成功させたい」と参加者に協力を呼びかけました。
(２００８年１１月１８日，『赤旗』)（Page/Topへ）

多喜二読む会０９年日程発表／秋田・大館

　秋田県大館市の「小林多喜二をふるさとで読む会」実行委員会が二〇〇九年の読書会日程を発表しました。
　読書会は来年一月から四月までの第四土曜日に同市中央公民館で開かれます。
　同会事務局の佐藤守さんは、「〇九年読書会にあたって、二つの目標を決めました。一つは、多喜二の小説を全編読むことで、これまでで残った短編十作品を読みます。もう一つは四月に『蟹工船』を再度取り上げ、青年から感想、意見を聞き、『蟹工船』ブームの意義を考えてみたいと思います。明るく勇気の出る楽しい読書会にしましょう。多くの方の参加を呼びかけます」と話しています。
　多喜二読書会は〇〇年一月から始まり、〇九年で十年目を迎えます。県外の大学生たちや県内の大学教授が参加したこともありました。昨年一月の読書会に参加したシカゴ大学のノーマ・フィールド教授は、同読書会を「日本の民主運動の底力、希望」と表現し、「みなさんと青年たちとの出会いを望みます｣と話していました｡
　参加は自由ですが、会誌『多喜二通信』の印刷通信費として、年間千円が必要です（学生等無料）。『多喜二通信』は八十二号まで発行され、県内外の会員約二百人に送られています。
　同会への連絡先は、大館市御成町一丁目一九番一九号、佐藤守さん０１８６（４３）１７５７。

読書会の日程
　０９年読書会の日程、テキスト・作品名、講師名は次の通り。

①１月２４日
　＝「継祖母のこと」「ロクの恋物語」「ある役割」「彼の経験」、野呂勝也さん
②２月２８日
　＝「万歳々々」「最後のもの」「来るべきこと」、大山兼司さん、「市民のために！」「壁にはられた写真」「プロレタリアの修身」、長崎恵子さん
③３月２８日
　＝「飴玉闘争」「七月二十六日の経験」「疵」「失業貨車」、宮腰孝悦さん
④４月２５日
　＝「蟹工船」、小西育芳さん
(２００８年１１月１６日，「赤旗」)（Page/Topへ）

スペイン語訳『蟹工船』／初訳の翻訳家を訪ねて／新藤通弘（中南米研究者）

１９８３年キューバで出版、５０００部完売
　小林多喜二の『蟹工船』のスペイン語初訳は、今から二十五年前の一九八三年にキューバのウラカン社から出版されている。同じ多喜二の『不在地主』も収められている（ともにリディア・ペレデイラ訳）。
　調べたところ、翻訳は米国のフランク・モトフジ訳の英語版（『加工船（Ｆａｃｔｏｒｙ　Ｓｈｉｐ）』一九七三年、ワシントン大学出版）からの重訳であった。しかしスペイン語訳本には、原本の書名、発行所も、著作権取得の表示もない。米国の経済封鎖で米国とキューバの間には著作権協定がないからだ。
　スペイン語訳は、有名な冒頭部の『おい、地獄さ行（え）ぐんだで！』から、終結部の『そして、彼等（かれら）は、立ち上がった。――もう一度！』まで、的確な訳で、訳者の並々ならぬ力量がうかがわれる。

豊富な国際活動
　このたびキューバを訪問した折、翻訳者のリディアさんを、ハバナの新市街のマンションに訪ねた。
　ハバナもハリケーンの被害で停電地区が目立つ。リディアさんは、「電気もつけられないので申し訳ありません」といいながら、筆者を迎えてくれた。小柄で快活な知識人である。
　リディアさんは、一九三九年にハバナ市で生まれ、革命前、ハバナ・ビジネス・アカデミーで英語を学んだ。
　革命勝利後の六〇年九月、フィデル・カストロ首相（当時）が最初に国連総会に出席し、演説した際、代表団の通訳の一人として同行した。同年十二月、キューバ諸国民友好協会（ＩＣＡＰ）の創立にも参加した。国際活動が豊富な翻訳家である。
　七三年からキューバ国立出版公社で翻訳に従事し、九四年に定年退職するまでの二十一年間、十五冊の翻訳を出版している。その中には､『日本短編小説集』、ジョン・リードの『反乱するメキシコ』、『マルコムＸ演説集』、ローゼンバーグ夫妻の『歴史は私たちの名誉を回復するであろう』(日本語題名『愛は死をこえて―ローゼンバーグの手紙』）などがある。現在は、ハバナ市歴史家事務所の雑誌『ＯＰＵＳアバナ』に編集委員として参加している。

集団が〝主人公〟
　『蟹工船』出版の経緯を聞いてみると､八〇年当初､キューバ国立出版公社でアジアのプロレタリア文学を出版しようという話が持ち上がり、美術・文学出版部責任者のマリア･テレサ･オルテガさんが、いろいろ読んだ中で、多喜二の『蟹工船』(モトフジ訳の英語版)を選択した。彼女もまた英語の翻訳者であるが、翻訳部の友人のリディアさんに翻訳を依頼してきたという。
　悲惨な内容に引き込まれ、二カ月で翻訳したとか。しかし、印刷して出版されたのは八三年だった。
　リディアさんは、マリア・テレサさんに出版経緯を聞くようにと電話をかけてくださった。
　テレサさんは次のように語った。「アジア、日本のプロレタリア文学の出版のため、いろいろ読んでみたが、多喜二の『蟹工船』は、中心人物がなく、集団が主人公という新しい文学を試みたもので、蟹工船内の海の男たちの生活は、感動的な自然主義文学だった。資本主義の残酷な現実を描いた素晴らしい作品で傑出していた。そこで編集会議にかけて認められた。五千部印刷したが完売した」
　読者の印象は､｢蟹工船の資本家は、奴隷の主人よりももっと過酷に労働者を収奪するものだ」というものだったという。
　最後にリディアさんは、日本の若い読者へのメッセージとして「新しい世代の人々が、この素晴らしい小説を読んで、より良い未来の建設のためにたたかうという多喜二の精神を引き継いでいただくよう願っています」と語った。
( ２００８年１１月１５日，「赤旗」)（Page/Topへ）

不屈の闘い語る／女性が交流集会／治維法国賠同盟

　第十九回治安維持法国賠同盟全国女性交流集会は、九日、十日の二日間、静岡県熱海市で開かれました。これまでの最高となる女性部代表約八十人が参加、女性地方議員や二十代の女性も多く参加しました。
　治安維持法犠牲者の水谷安子さん（９５）が体験を報告、「国は一度も治安維持法犠牲者に対して謝罪をしていない。日本は今も戦前の軍国思想を引きずっている。航空幕僚長のような言動に負けてはいけない」と参加者を激励しました。
　特高警察に逮捕され千葉刑務所に敗戦まで投獄されていた市吉澄枝さん（８５）は、友人二人で社会科学の勉強をしていて検挙された二十歳当時の体験を語り、友人の妹の岸本てる子さんは、獄中生活が原因で戦後二十三歳で亡くなった姉の活動を紹介しました。
　各地の女性部活動の報告があり、吉川春子前参院議員が「翔びたて女性たち―慰安婦問題と女性の人権」と題して講演｡吉川氏は｢元従軍慰安婦が自ら人権救済を訴えた勇気が国内のみならず全世界をゆり動かしたが、国会議員として『慰安婦』問題、女性の人権問題に取り組むなかで、一貫して戦争に反対した日本共産党員だからこそ闘いぬけた」とのべ、憲法九条を守ることは女性の人権を守ることだと結びました。
( ２００８年１１月１３日，「赤旗」)（Page/Topへ）

たび／北海道・函館／蟹工船体感

　小林多喜二が過酷な労働を強いられた労働者の決起を描いた「蟹工船（かにこうせん）」が大ブームです。蟹工船の根拠地である北海道函館市。ゆかりの地を訪ねました。
　函館駅を出て、西に向かうとすぐに朝市です。カニ、イカ、ウニなど新鮮な魚介類が店先に並び、食堂が軒を連ね、観光客でにぎわっています。そこを西に抜けると函館港です。
　やがて左手に赤レンガ倉庫群が見えてきました。北洋遠洋漁業が盛んな時には、倉庫は船に積み込む空き缶や漁具などで埋まっていたそうです。今は倉庫に洋品店やレストランが入り、「ベイエリア」として、函館でも屈指の観光拠点｡この日も､たくさんの観光客がショッピングや食事を楽しんでいました。
　港に沿って３分ほど行くと､東浜桟橋です｡明治時代には青函（せいかん）連絡船の発着場でしたが、その後北洋遠洋漁業の根拠地になり、蟹工船の漁夫も、ここからはしけに乗って出かけました。
　「１９５３年製作の映画『蟹工船』の乗船シーンはここで撮った」と、撮影に協力した佐藤美津雄さん（８４）は言います。
　周辺には、昭和の大火からも空襲からも逃れた、明治・大正時代の建物が多数残っています。桟橋の前の家も船具店看板をかかげ、当時の面影を伝えています。
　電車道路には、大正から昭和初めに走っていた市電「箱館ハイカラ號（号）」が今も走っています。
　東浜桟橋をまっすぐ西に上るのが日和坂です。映画では、蟹工船に乗り込む漁夫が娼婦（しょうふ）といっしょに下ってくるシーンになったところです。
　名物の函館塩ラーメンで腹ごしらえ。スープは透き通ってあっさり味、めんはこりこりしています。くせになりそうです。
　市電に乗り、五稜郭（ごりょうかく）公園へ。１０分ほど歩くと、公園前の北洋資料館に着きました。当館には北洋航海体験室があります。穏やかなカムチャツカの海でのピッチング（たて揺れ）だけの体験ですが、それでも立つのがやっとという状態です。これにローリング（横揺れ）が加わり、しけになったら、作業するのは命がけです。
　６７、６８年に蟹工船の独航船に乗った男性（６７）は、「いろいろな遠洋漁業に行ったが、蟹工船は過酷だった。暴力はもうなかったが、ご飯は立って食べ、寝るのはカッパ着たまま３、４時間だった｡毎年２人は死んだ｣といいます。
　蟹工船は２００カイリ時代となり、廃止されましたが、あの過酷な労働は、今、派遣労働や非人間的な「使い捨て」労働として横行しています。五稜郭タワーに登り、函館港と市街を一望し「蟹工船」の最後の言葉、「そして、彼等は、立ち上がった。―もう一度！」を、胸に強く刻みました。
　佐藤俊明
　【問い合わせ】函館国際観光コンベンション協会℡０１３８(２７)３５３５
　函館市観光コンベンション部ブランド推進課℡同(２１)３３２３
(２００８年１１月０９日，『赤旗』)（Page/Topへ）

まち・人・とき／『草の根の九条　萃点の人々』の著者なかむらみのるさん／草の根の中に分け入って

　多彩で幅広い人々が参加する新潟県阿賀野市の九条の会。保守陣営の看板だった元水原町長、町長選で対立候補だった元社会党県議、草の根で活動する日本共産党員たち。このほど『草の根の九条　萃点（すいてん）の人々』（新日本出版社）を上梓しました。
　「原点をたどると、そこには九条を守ろうと頑張っている驚きと感動の萃点（いろんな考え方や動きが、まとまって重なっていく場所）があった」といいます。
　同九条の会事務局長として元町長らの「戦争には絶対反対。戦争をしないことを誓った九条は世界に誇る宝物」との思いを束ね、幅広い結集に尽力してきました。
　なぜ事務局長にはまり込むのか。終戦直後の中学校で『あたらしい憲法のはなし』で平和教育をうけ、定年まで反共攻撃の厳しい郵政の職場で働き、思想・信条の自由と日本共産党支持を主張し続けるために「憲法に守られていた」からです。
　もう一つ描きたかったのが現代の日本共産党員像。著書に登場する人物は二十六人、その多くは日本共産党員です。自身は本名・稲垣恵造として、かつて衆院選新潟３区に立候補した日本共産党員。
　だからこそ地域で草の根で活動するさまざまな党員の個性的で魅力あふれる姿にいつも感動していました。「日本共産党が注目される中、小林多喜二など弾圧の時代をたたかった党員像とは違った、草の根で粘り強く頑張る現代の党員像に光をあてたかった」
　時間があれば新潟シネ・ウインドで映画を見て小説を書く目を養い、冬はスキークラブで汗を流します。
　「九条の会に参加する人たちに接し、九条は変えられない、かりに国民投票になっても必ず勝利する確信をもった。まして日本共産党が前進すれば改憲勢力は困難に陥ります。わくわくする時代です」
　（新潟県・村上雲雄）
(２００８年１１月０８日，「赤旗」)（Page/Topへ）

「蟹工船」上映の新潟シネ・ウインド／齋藤正行代表に聞く／映画を通し議論の場に

　新潟市中央区の市民映画館「シネ・ウインド」で、八日から始まる二十三周年映画祭のメーン企画に小林多喜二原作の「蟹工船」（山村聡監督）が上映(二十一日まで)されます。同館の齋藤正行代表に話を聞きました。
　（村上雲雄）
　　―なぜ「蟹工船」が上映されることになったのですか。
　直接的には、夏ごろから会員から多くの要望があったことです。派遣労働やワーキングプアがまん延している中、貧困と格差の問題を考えるタイムリーな映画だと思いました。当館では、六月に「靖国」を上映しましたが、右翼の妨害も懸念される中、何事もなく上映することができました。よい映画や話題性のある映画はもちろん、ときにはまったく逆の主張の作品も市民に見てもらい、そのときどきの問題を考え、議論する場を提供するという当館のスタンスが理解されているのだと思います。
　　―二十三周年祭の内容は何がテーマですか。
　二十三周年祭では、コミュニティーがテーマです。メーンの「蟹工船」をはじめ、「コドモのコドモ」の先行上映会＆監督トーク、「ツヒノスミカ」「船、山にのぼる」などの上映、長岡市出身の落語家・入船亭扇辰の独演会、パントマイムも企画し、コミュニティーを考えます。
　　―シネ・ウインドが目指していることはどんなことですか。
　当館は、二十三年前に私が呼びかけて、映画・演劇・文学を愛する市民が集まり、出資して建設されました。大きな特徴は、会員が活動を担っていることです。地元企業の経営する映画館がほとんどなくなり、県外の大手資本が主流になっている中、地域に根ざしながら昔からある映画文化を継続し、発展させたいと思っています。
　昔のように、お菓子屋や本屋、レコード屋、喫茶店がある街で人々が、二十三周年祭でのテーマであるコミュニティーを深め、自由な雰囲気で地域の文化をはぐくんでいく、ネットワークや互助の精神で元気になってもらう、そんなイメージを抱いています。
　問い合わせは、シネ・ウインド０２５（２４３）５５３０。
(２００８年１１月０７日，「赤旗」)（Page/Topへ）

片山潜没後７５年党県委が碑前祭／岡山

　日本共産党の創設者の一人、片山潜没後七十五年の五日、日本共産党岡山県委員会は、潜の記念碑のある久米南町羽出木で、片山潜碑前祭と日本共産党員の墓合葬式をしました。
　黄色に染まったイチョウが目にしみる青空のもと、合葬された党員の遺族や友人、党員や県、地区委員会の役員、東つよし衆院比例中国ブロック候補ら二十八人が集いました。
　石井ひとみ県委員長は碑前祭で、三日の志位和夫委員長を迎えた演説会が「志位さんだ！」「おれ『蟹工船』読んだよ」との声もうけ、これまでにない反響を呼んだことを報告しました。「片山潜が亡くなった同じ年に、小林多喜二が虐殺されました。先人たちが切り開いた不屈のたたかいが、いま若い人たちを励ましています。新しい政治を求める声が日本国中に広がっているいま、おおもとから政治を変えたい」とのべました。
　潜の記念碑に隣接した日本共産党員の墓で、亡くなった十四人の党員が合葬されました。
　遺族を代表して佐久間長信さん（享年六十七歳）の妻、公子さん（５９）は「志を同じくする人々と一緒に眠ることができて、幸せだと思います。遺志を受け継いで頑張ります」とあいさつしました。
　石井委員長は「今度こそ比例中国ブロックで議席を勝ち取り、遺志にこたえたい」と語りました。
(２００８年１１月０６日，「赤旗」)（Page/Topへ）

朝の風／映画「蟹工船」の結末

　社会現象化している小林多喜二の｢蟹工船｣ブームとあわせて、映画「蟹工船」の再上映がすすんでいる。
　この映画は、山村聰氏の第一回監督作品として一九五三年に製作された。この映画をつくるにあたっては、コミュニストでない山村氏にとって俳優として監督として誤解を受けるのではないか、当時とは違って「蟹工船」には芸術的価値はないなどの反対論があったという。
　多喜二・百合子研究会の機関誌『多喜二と百合子』№１（一九五四年）をひもとくと、蔵原惟人（評論家）、山田典吾（映画「蟹工船」製作者）、壺井繁治（詩人）、間宮茂輔（作家）による「映画〝蟹工船〟をめぐって」という座談会が企画されていて興味深い。
　原作と映画の決定的違いは、結末である。映画を見ていない人のために紹介は避けるが、公開当時から議論があったようだ。
　この座談会でも山田氏が原作の付記をどう生かすかで監督と論争したこと、その上で戦争反対、再軍備反対という太い線で貫きたいという監督の意向によって結末を変えたことを紹介している。
　蔵原氏が「不成功だとはおもわない」といいながら、歴史的・芸術的真実からいってどうなのかという問題を提起しているのも考えさせる。
　（聳）
( ２００８年１１月０４日，「赤旗」)

「赤旗」読みたい／１０月、党本部に１００人超／中小業者、パンフ見て「自民もうダメ」　

　「『赤旗』を読みたいのですが」。メール・電話・手紙で日本共産党本部に「しんぶん赤旗」の購読申し込みが相次いでいます。
　十月は、日刊紙が三十五人、日曜版は七十六人の計百十一人から申し込みがありました。このうち三十三人は、全国で配られている党押し出しパンフレット「私たちはこんな新しい日本をめざしています。」を読んだことがきっかけでした。
　全国でも、宣伝中や各地の党事務所に同様の声が寄せられています。
　日刊紙の購読を申し込んだ大阪府豊中市の男性は「テレビで『蟹工船』のことをやっていて興味をもちました。配られていたパンフレットを読んだらいいことが書いてあり、こういう活動が大事だと思った」と胸の内を語ります。
　高知県の男性は「パンフを読んだ。共産党の政策はすばらしい。中小企業を経営しており、自民党ともつきあってきたがもうダメだ。本当に政策を実現してほしい」と言います。日曜版を読むことになりました。
　福岡県久留米市の女性は「『蟹工船』を読んで小林多喜二に共感しました。私も派遣社員として十二年勤め、やっと正社員になれたのですが、形を変えた『蟹工船』が待っていました。共産党が派遣社員を救ってくれる唯一の党であると感じました」と日曜版を購読しています。
( ２００８年１１月０４日，「赤旗」)（Page/Topへ）

ビラ弾圧改善勧告を評価／国連委意見書４団体が声明

　憲法公布日の三日、国際人権活動日本委員会、自由法曹団、日本国民救援会、治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟は、国連自由権規約人権委員会が日本政府に死刑廃止などを勧告する最終意見書をまとめたことをうけ、「（政府が）早急に現状を改善すべく、行動に着手することを強く求めます」という共同声明を発表しました。
　声明は、国連の同委員会が「市民の表現の自由や、公的な事柄に関与する権利が制限されていることに懸念を抱く」と、選挙期間中のビラ配布の枚数や種類の制限、政府批判のビラ配布を住居侵入罪や国家公務員法違反として逮捕・起訴されたりしていることの改善を求めたことを高く評価しています。
　「政治的表現の自由にたいする不当な侵害は、民主主義を失わしめ、国民主権を奪うことになる」とのべ、同委員会の勧告を「非常な喜びを持って迎える」としています。
( ２００８年１１月０４日，「赤旗」)（Page/Topへ）

主張／文化の日／芸術や文化を楽しめる社会に

　芸術の秋―。コンサートや演劇、映画館、美術館にお出かけになりましたか。すぐれた芸術作品は、国や時代の違いを超えて、私たちの心を深くとらえます。
　芸術や文化は心豊かなくらしに欠かすことができません。それらをつくり楽しむことは人びとの権利であり、その条件を整えることは政治の責務です。

国民も専門家も困難に
　ところが、先月発表された内閣府「消費動向調査」によると、十―十二月期にコンサート、演劇、映画、美術館、博物館等への支出を「今より増やす予定」と回答した世帯は７・６％にとどまり、逆に「今より減らす予定」の世帯が１４・３％に達しました。差し引きでマイナス６・７ポイントという数字は過去十年間で最悪です。
　二〇〇三年の内閣府の「文化に関する世論調査」では、一年間に「ホール等での文化芸術の直接鑑賞経験」があるかとの問いに「ない」と答えた人は４８・８％でした。国民の半数は、一年に一度も生の舞台を見たり、映画館に行ったりしたことがないという実情です。先の「消費動向調査」と重ねれば、今日その状況がいっそう厳しくなっているのは明らかです。
　自公政権の「構造改革」路線が雇用の悪化、社会保障の連続改悪などで国民のくらしを直撃し、貧困と格差の拡大にくわえ、金融危機に伴って不況が深まっていることが、その背景にあります。こうして多くの国民が芸術・文化から遠ざけられているのです。
　芸術団体や専門家のおかれている状況も深刻です。
　麻生首相は十月二十六日、東京の秋葉原で、漫画やアニメを例に「日本のもっているサブカルチャーの力」を誇り、「日本って国は意外と元気」と演説しました。
　しかし、アニメの製作現場は極端に劣悪な労働条件におかれ、アニメーターを志す若者は「半年で半分、一年で七割が業界を去っていく」といわれています。
　舞台芸術の実演家の収入も減る一方です。さらに、民間劇場や映画館の閉鎖が相次ぎ、文化活動の基盤が脅かされています。
　にもかかわらず自民党政治は、文化をうみだす専門家や芸術団体に冷たいままです。文化庁予算は今年度千十八億円にすぎず、米軍への「思いやり予算」二千五百一億円のたった四割です。そのうち芸術・文化振興費は三百九十六億円で、トヨタ一社への研究開発減税七百七十九億円の半分です。
　国家予算に占める文化関係予算の比率は、文化庁の調査でもフランスや韓国の約七分の一という水準です。地方自治体での文化予算の削減も深刻です。こういう政治を切りかえ、文化予算を抜本的に増やすことは急務です。

文化活動の自由を守る
　十一月三日を「文化の日」と定めてから今年で六十年。祝日法はこの日を「自由と平和を愛し、文化をすすめる」日としています。文化の自由を圧殺し、他民族の文化をふみにじった戦前への反省がそこには込められています。
　日本共産党は、戦前の小林多喜二「蟹工船」の時代から平和と民主主義を掲げ、表現の自由のために命がけでたたかってきた政党です。その立場から、現在も将来も文化活動の自由を守り、国民が芸術・文化をつくり楽しむ権利を確立するために力をつくします。
( ２００８年１１月０３日，「赤旗」)（Page/Topへ）

潮流

　十一月。霜月の訪れとともに、東京に木枯らし一号がふきました。「十方にこがらし女身錐揉みに」（三橋鷹女）▼街ゆく人々の装いも、しだいに秋から冬へ。なかにはすでに、コートをはおる勤め人らしい男性や、マフラーをまく若い女性も目につきます。木々が彩りを変え、やがて葉を散らして裸になってゆくにつれ、人の装いは厚みをまします▼戦前の哲学者、戸坂潤は、服装や風俗にも関心をよせた人です。ある逸話を『思想と風俗』に記しています。知人の高校教師がアメリカへ行き、教え子とならんで撮った写真を向こうの学生にみせたところ、聞かれたそうです。「あなたの学校は士官学校ですか」▼生徒の制服姿が不思議だったらしい。戸坂はさらに、制服の〝魅力〟を論じます。たとえば、国家のもとで仕事する人が身につけると、自分が権力者に仲間入りしたかのように皮膚で感じる〝魅力〟▼戸坂が書いたのは、日中戦争の前です。当局は勤労者にも制服を着せることに熱心で、社会を軍隊調に組織しようとしていました。やがて戸坂自身、その犠牲者となります。治安維持法で捕らえられた彼は、終戦間近の一九四五年八月九日、獄死しました▼「我が国が侵略国家だったなどというのは正に濡れ衣」という自衛隊の空幕長は、どんな気持ちで制服を着ているのでしょう。六十二年前のきょう公布された新憲法は、侵略にあけくれ、戸坂らの命を奪った軍国日本を否定しました。たんに衣替えでなく、生まれ変わりを願って。
( ２００８年１１月０３日，「赤旗」)

人は生きているだけで価値がある／エッセー集『遊行の門』を出版五木寛之さん

「蟹工船」ブームと混迷の時代に
　「地獄のような時代では、人は生きているだけで価値がある」という作家の五木寛之さん。人々の不安な心を支え、励ますエッセー集『遊行（ゆぎょう）の門』（徳間書店）を出しました。作家は、この時代をどう見ているのでしょう。
　玄間太郎記者
　京都の有名書店に入った五木さんは、驚きました。「貧困」コーナーがあり、『蟹工船』（小林多喜二）コーナーまでありました。その前には多くの若者たちがいたといいます。『蟹工船』ブームに思うことは。
　五木　奴隷のような過酷な労働、暴力、そしてリアルな搾取の描写。貧困・格差という今の状況とも重ねて、若い人の関心はそうした小説前半にあるようにもみえますね。しかし、大切なのは、労働者たちが団結して組織的に立ち上がっていく後半なんです。
　同じプロレタリア文学の葉山嘉樹の『セメント樽（だる）の中の手紙』は、私にとってとても思い出深い作品です。６０年代初め、大阪労音が創作ミュージカルを制作していました。私も、『セメント樽の中の手紙』を現代風にアレンジ・脚色して、「傷だらけのギター」という作品を書きました。ペギー葉山さんと友竹正則さん（故人）の主演で、大阪フェスティバルホールで上演されたんです。
　プロレタリア文学が読まれる時代なんですね。

～転～
　米国発の深刻な金融危機やワーキングプア。あるいは若者たちを〝使い捨て〟にする日雇い派遣、お年寄りいじめの後期高齢者医療制度…。『遊行の門』の中で「世はまさに大転換時代のきざしを示している」と書いています。
　五木　変わらぬものは何一つありません。欧米先進国の優位も必ず変わります。きざしはまずアメリカから現実のものになるでしょう。
　資本主義という巨大な恐竜が、これまで何度も何度も補修を重ねつつ生き延びてきたが、もう万策尽き、老いた巨体でのたうち回り、倒れようとしている。断末魔のあがきなんです。そのために人間だけではなく動物も森も蹂躙（じゅうりん）され、すさまじい被害を受けている。
　ソ連が崩壊したとき、資本主義はソ連型の社会主義に勝利して、永遠の構造であるかのような皮相な見方があった。しかし、それは違います。資本主義はマルクスのいったようにいつかは終えんを迎えます。そして新しい次の社会が出現するのではないでしょうか。

～心～
　この現代をどう生きるか。『遊行の門』は、人々の不安な心を支える言葉に満ちています。「遊行」とは、古代インドの、人生を四つに分ける思想からきています。「学生期」「家住期」「林住期」、そして「遊行期」（７６～１００歳）。人生のしめくくりの時期です。
　五木　物忘れやボケを嘆くことはありません。カメラでいうとフォーカスの状態を考えればいい。中心に焦点を当て、周りをぼかす。ボケてきたら世間のどうでもいいことはわきにおき、自分にとって一番大事なことだけを見て生きていこうということです。子どもに還（かえ）って遊び、戯れる。気ままに、わがままに、そして無心に生きるのです。
　本書では、「ウツ時代の歩き方」という章も設けて、励ましのメッセージをおくっています。
　混迷の時代だから、素朴でやさしいヒューマンな人ほど傷つき、ウツウツたる気持ちを抱かざるを得ないといいます。
　五木　陽に比べ陰をマイナスと思う時代は終わったのではないでしょうか。道教に「玄」という思想があります。陰から生気が生ずるという。ウツのなかにエネルギー、生命力があるということです。文字を見てもそうですよね。「鬱蒼（うっそう）たる樹林」「鬱然（うつぜん）たる大家」「鬱勃（うつぼつ）たる野心」…。その生命力がフタをされて、生かされずにいるからこそウツウツたる気分が生ずるんです。

～命～
　生命の重さ、人間の価値、生死。五木さんの変わらぬテーマです。〝交通戦争〟に対して〝心の内戦〟という自殺は、年間約３万３千人を超えています。
　五木　自己の命をかけがえのないものと感じないということは、他人の生命の重さも感じられないということでしょう。自殺の増加と殺人事件の増加は同じ楯（たて）の両面なんですね。
　人はだれも苦しみ悲しみ、絶望、挫折します。しかし、成功しようが、不遇のままで過ごそうが生きていることに意味があるのです。１本のライ麦が４カ月の命を支えるのに、顕微鏡でなければ見えない微細な根毛までカウントすると総長１万１２００㌔根を張り巡らせているという（アメリカの生物学者の実験報告）。ならば人間は、とほうもないほどの〝根〟を張り巡らせて生きているのです。すごいことなのです。人は生きているだけで価値がある、と私は思うのです。
　いつき・ひろゆき＝１９３２年福岡県生まれ。６６年「さらば、モスクワ愚連隊」で小説現代新人賞、６７年「蒼ざめた馬を見よ」で直木賞、７６年「青春の門」筑豊編で吉川英治文学賞を受賞。著書に『朱鷺の墓』『戒厳令の夜』『風に吹かれて』『大河の一滴』『林住期』『人間の関係』など多数。０２年に菊池寛賞、０４年に仏教伝導文化賞を受賞
(２００８年１１月０２日，「赤旗」)（Page/Topへ）

草の根の九条　萃点の人々／なかむらみのる著／評者工藤威作家

地域の人を愛して紡ぐ温かな交流
　「九条の会」が大江健三郎氏ら九名の呼びかけで発足したのが二〇〇四年。発足会見で大江氏がつかった南方熊楠の『萃点』〈いろんな考え方や動きが、まとまってある点になる〉という言葉に励まされて、著者は新潟・阿賀野地域に「憲法九条を守る」会を結成。その中心になって活動を開始した。
　吉川正夫さん八十三歳。保守陣営の看板だった。旧水原町長時代には共産党町議と対決していた人が「九条の会」に賛同し、講演会では三度も戦死から逃れた体験を語り「人の命を奪ってしまう戦争に、私は絶対に反対／戦争をしないことを誓った憲法九条は世界に誇る宝物」と話を結ぶ（萃点のふたり）。
　「草莽点描」には二十二名の人たちとの出会い、生活現実の温かな交流が短いエッセー風のルポルタージュとして描出されている。
　教師をしていた一九六〇年代に国旗掲出の是非をめぐる「日の丸問題」の事件にかかわる。教師、労働運動、退職した今は年金者組合の活動をしながら絵を描いている。三人前分の欲張り人生の船山さん（苦労ならやめなよ）。
　ページを自由に開いてどの一編から読んでも、そこには土地改良の技師、町議、教師、共産党の地区委員、地域の労働者、農家、郵政職員など多くの人々の生活が、登場した人の背景と経てきた人生、そして支えてきた家族にまで、その想いを心に響く言葉として紡ぎ出されている。
　氏は定年まで郵便配達の仕事をし、その後、共産党の衆議院選挙に本名の稲垣恵造で立候補もしている。自身の体験と「九条の会」に集まった一人ひとりの胸の襞々まで心優しく汲みとる描写は、地域でくらす人を愛し、活動してきた自信と人柄が滲み出て心地よい。
　なかむら・みのる　一九三六年生まれ。『山峡の町で』で多喜二・百合子賞。
( ２００８年１１月０２日，「赤旗」)（Page/Topへ）

広島・呉で文芸講演会／民主文学会支部

　広島県呉市の日本民主主義文学会呉支部（小栗勉支部長）は十月三十日、同支部が発行する「瀬戸文学通信」の創刊二百号を記念する文芸講演会をビューポートくれで開き、四十二人が参加しました。文芸評論家の新船海三郎氏が「なぜ、いま多喜二なのか」と題して講演し、没後七十五年となる小林多喜二と阪口喜一郎をしのびました。
　小栗支部長は「多喜二と『聳ゆるマスト』の発行に携わった阪口は、拷問を受けて殺された。権力による弾圧を糾弾し、明日への糧としなければならない」とあいさつ。多喜二の小説『一九二八年三月十五日』のうち官憲の拷問のむごさを描いて「日本共産党、万歳」と叫ぶ終章を、小倉多香子さんが朗読し、篠笛奏者の梶川純司さんが「田月の笛」を独奏しました。
　新船氏は「多喜二を『蟹工船』の執筆に向かわせたものは、このままでは日本も労働者もだめになるという危機意識だった。それを昇華させた芸術の力が時代を突き抜けて、現代においても感銘を与えている。人間一人ひとりの人権や民主主義の意識を変え、集団を変えることでしか、社会を変えることはできない」と語りました。
(２００８年１１月０１日，「赤旗」)（Page/Topへ）

横浜事件再審を決定／言論弾圧許すな／共産党神奈川県委

　日本共産党神奈川県委員会の小池潔委員長は三十一日、横浜地裁が横浜事件の第四次再審請求で再審開始を決定したことを受け、「治安維持法によって多くの犠牲者を生み出した時代を絶対繰りかえすことがないよう、あらためて決意する」とのコメントを出しました。
　コメントは「再審では、非道な特高警察の行為の実態とともに、権力犯罪の一端をになった裁判所のみずからの責任も問われています」と指摘。「権力による人権侵害、思想弾圧を明らかにすることは、権力による言論と民主主義に対する弾圧事件が続発している現在、今日的にも重要な意義があります」としています。
( ２００８年１１月０１日，「赤旗」)

横浜事件再審を決定／無念晴らすきっかけ／遺族喜び

　「やっとおやじの無念を晴らすきっかけができた」。再審開始の決定が出た横浜事件の第四次請求。記者会見した元被告の遺族らは、事実関係にも踏み込んだ横浜地裁の判断を評価し、笑顔を見せました。
　故小野康人さんの二男新一さん（６２）は「再び無罪への扉が開いたという気持ち。戦後の司法に風穴が開いた」と喜びをあふれさせました。「決定理由はこちらの請求に沿っていて、ものすごくよかった」と語りました。
　長女の斎藤信子さん（５９）は、決定理由について「初めて事実に向き合った画期的なもの」と話し、「今の司法を見直しました」と評価。「無罪に近い決定が出たと、両親や元被告ら全員に報告したい」と述べました。
　雑誌「改造」の編集部員だった小野さんは一九四三年五月、治安維持法違反容疑で逮捕されました。新一さんは一緒に川遊びに行った記憶があるといい、「いろんな話はできなかったけど、明るいおやじでしたね」と振り返りました。
　八六年、第一次の再審請求に参加した母貞さんは事件についての俳句を詠んだり、集会で講演したりし、九五年に八十六歳で亡くなりました。今回の決定は「おふくろにもう心の中で報告した」と話しました。
( ２００８年１１月０１日，「赤旗」)（Page/Topへ）

横浜事件再審を決定／〝拷問で虚偽の自白〟／横浜地裁

　戦時下の言論弾圧事件、「横浜事件」で、終戦直後に治安維持法違反の有罪判決が確定した編集者の遺族による第四次再審請求について、横浜地裁（大島隆明裁判長）は三十一日、「関係証拠を総合すれば、命にかかわる脅迫、激しい拷問を加えられ、やむなく虚偽の自白をしたとうかがえる」として、再審を開始する決定を出しました。

第４次請求
　再審開始後の判断については、中央公論元編集者の木村亨さんら元被告五人（故人）を免訴とした今年三月の最高裁判決に触れ、治安維持法の廃止と大赦を理由に「免訴判決をするほかない」と言及しました。
　再審請求していたのは、雑誌「改造」の編集部員だった故小野康人さんの長女ら。
　大島裁判長は、小野さんらを取り調べた警察官三人の特別公務員暴行陵虐罪での有罪判決（一九五二年確定）などを「無罪を言い渡すべき新証拠」と判断。治安維持法違反罪の裏付け事実として、小野さんらが日本共産党再建のため四二年に富山県で開いたとされた会議を「慰労会であり、党再建準備会が行われた雰囲気はない」と認定しました。
　懲役二年、執行猶予三年とした四五年九月の横浜地裁判決を「小野さんらの供述を慎重に検討したとは認められず、拙速と言われてもやむを得ないずさんな事件処理がされた」と批判しました。
　横浜事件の裁判記録について「裁判所側で、不都合な事実を隠ぺいする意図で破棄した可能性が高い」と指摘。「証拠の対照が困難という理由で再審請求を認めないのは裁判所の執るべき姿勢ではない」と述べました。

横浜事件
　戦時下の特別高等警察（特高）が引き起こした大規模な言論弾圧事件。評論家の細川嘉六氏（戦後、日本共産党参院議員）が雑誌『改造』１９４２年８月・９月号に執筆した論文が共産主義の宣伝にあたるなどとして、特高が同氏を検挙。同氏が富山県で開いた宴会を「共産党の再建準備」などとでっち上げ、出席した研究者や編集者約６０人が治安維持法違反容疑で逮捕されました。このうち拷問などで４人が死亡、３０数人が起訴され、終戦後の４５年９月ごろにかけて有罪判決を受けました。
( ２００８年１１月０１日，「赤旗」)

【10月】（Page/Topへ）

映画「鶴彬」製作成功を／金沢で集い

　ドキュメンタリー映画「鶴彬（つる・あきら）―こころの軌跡」の製作を成功させる集いが二十九日、金沢市の県生涯学習センターで開かれ、約五十人が参加しました。映画「鶴彬」製作・普及を成功させる会が主催しました。
　鶴彬は一九〇九年に石川県かほく市（旧高松町）に生まれ、「枯れ芝よ団結をして春を待つ」「手と足をもいだ丸太にしてかへし」などに代表される反戦川柳作家。一九三八年、治安維持法違反容疑で逮捕され、東京の野方署に拘置中、赤痢にかかり二十九歳の若さで死去しました。来年の生誕百年を記念して神山征二郎監督によるロケの最中です。
　会事務局の森昭氏が、「鶴彬が生きた暗黒時代を再現させないためにも映画製作を成功させなければならない」とあいさつ。寺本拳嶺さんが薩摩琵琶を弾きながら、創作「鶴彬」（野海青児作詞）を演じました。
　映画製作を成功させる取り組みの経験交流が行われ、鶴の出身地旧高松町の角島廣治・鶴彬生誕百年祭実行委員会事務局次長が物心両面にわたる支援を訴えました。
　「成功させる会」は三千万円目標の募金、十一月十五日に県教育会館で神山監督を迎えて開かれるシンポジウム「今、何故鶴彬か？」の成功を訴えています。問い合わせ先０７６（２８１）１２０１。
(２００８年１０月３１日，「赤旗」)（Page/Topへ）

総選挙私の思い

　せまる総選挙でどんな選択をしたらいいのか。いまの政治に言いたいこと、変えたいことは―。｢私の思い」を聞きました。

北京五輪男子レスリング代表池松和彦さん／農業を「公務」並みに手厚く
　実家が酪農を営んでいます。いま全国の酪農家が、飼料代の高騰で打撃を受けています。飼料の多くは外国からの輸入に依存しています。
　食料自給率が４０％しかないなんて、まるでぼくらの国が外国に飼われているみたいですよね。
　北京五輪直前の７月に、地元（福岡・朝倉市）で開かれた「日本の食料を守る生産者総決起大会」に参加しました。「政治家よ、なんとかしてくれ」。そんな叫びが続き、ぼくもマイクを握りました。「牛乳も野菜も自家製だったから、強い体になれました」。食料自給の大切さを、自分なりに訴えたつもりです。
　９月には福岡市の繁華街・天神で、酪農家の方々と「牛乳を飲みましょう」と呼びかけました。
　１２日に開いた自分の結婚披露宴にも、メッセージを込めました。乾杯は牛乳で。アイガモ農法でつくった地元の無農薬米を引き出物にしました。
　「農は万業の大本」（二宮尊徳）です。後継者を増やすためにも、農業を「公務」並みに位置付けて、手厚い生活保障をしてほしい。
　自分としても、健全な食生活ができる人間を育てる「食育」に、力を入れていきたいです。

俳優小沢昭一さん／国家百年、千年の大目標を
　為政者は人々がいま困っている、いま不満を感じていることを解決しますと叫ぶ。もちろんそれは大事なことですが、それが毎度続いて、何だかこの国が、どんどんセコイ国に落ちてきてるような気がするのですよ。
　さる病院に「病気を診ずして病人を診よ」という額がかかっていて、私、ナルホドと思ったのですが、どうも政治家が、対症療法ばかりに、つまり目先の問題ばかりをあげつらっているうちに、どんどん国の品格が落ちているように思えてなりません。どうして、国家百年、千年の計を述べないのでしょうか。それも具体的に、戦争をやらない国とか、経済利益は二の次にするとか、世界に先がけての大目標、大思想をかかげる志の高い政治家を、私は選びたいと思うのです。
　なんだか、政治家という存在を、人々がバカにし始めていますよ。親近感なんか、なくったっていいじゃないですか。

料理研究家上村泰子さん／米の価格保障制度の実現を
　食の安全を脅かす最近の事件には怒りを感じます。食は本来、私たちの命を養い、日々の幸せをもたらすものです。それが今、体をいためる有害な食品がたくさん出回っている。輸入された事故米が食用として不正に売却されていたなど、本当に許せないことです。
　日本の農業を壊して、私たちの食料を安易に輸入に頼ってきた政治の責任は大きいと思います。
　稲作は日本の文化の礎でした。米はとても優れた栄養食です。大切に引き継いでいきたい。
　私の親せきも農家です。トラクターだけは立派な機械貧乏で四苦八苦しています。共産党が訴えている米の価格保障制度は、ぜひ実現してほしい。生産者の顔が見える安全な食品を食卓に並べたいものです。
　家族がそろって食卓を囲める環境も大切だと思います。両親が残業、残業で一緒に夕食も食べられないようでは、子どもに食の大切さを伝えることもできません。人間らしい働き方に変えていくことも必要ですね。
　共産党は、生活に根ざした党だと思います。私たちが毎日困っていることに取り組んでくれる党として期待しています。

免疫学者エッセイスト多田富雄さん／リハビリ制限する政府にＮＯを
　今度の総選挙は、福祉をどうするかを問う踏み絵になるのではないでしょうか。私はリハビリの日数制限に代表される、診療制限がどうなるかを注目したい。
　また、後期高齢者医療制度について、一度は「抜本的見直し」をいいながら、舛添厚労相の発言が日増しに後退しているのを見ても、自民党内閣に期待することはできないのはいうまでもない。
　私ははっきりした対立軸を持った政党による、ぶれることない正論が、この国を救うと思う。
　必要なリハビリを制限するなど命にかかわる制度を強行している非人間的政府に強いＮＯを突きつけられる政党に私は期待したい。

映画「母べえ」原作者野上照代さん／言論・表現の自由守らねば
　戦前、非合法の文化活動をしていた、ドイツ文学者だった私の父親は、治安維持法違反で検挙され、１９４０年に投獄されました。特高警察がわが家を襲った、あの朝の光景は、いまだに忘れられません。
　それだけに、私が痛切に思うのは、言論・表現の自由だけは守られなければ、ということです。それが、公正な社会の基本だし、言いたいことを自粛したり、批判することもできなくなったりしたらおしまいです。
　私が教育を受けた時代は、忠君愛国の精神が徹底していましたが、女学校のときの先生は、とてもリベラルで、生徒に自由な気風を育ててくれました。いまだに忘れられません。
　「従軍慰安婦」の記述が教科書から消されたり、日の丸・君が代の強制に反対する教師が処分されたりというニュースに接すると、日本の教育を憂えてしまいます。思いやりのある優しい子どもたちに育ってほしいという願いに逆行することですね。
　日本をこのまま放っておくと一体どうなるのか。すじを通してものを言う日本共産党にがんばってもらいたいと思っています。

女優馬渕晴子さん／「２大政党」では米国と同じ
　いまの政権を見ていると、全国民の生活を守らなければという自覚がまるでないとしか思えません。国会中継やニュースをみていると、毎日毎日、腹立たしいことばかりです。自分たちの利権のことしか考えていないんじゃないでしょうか。
　いまの金融危機にたいしても、日本の場合、なんの政策もないじゃないですか。やっていることといえば、すべて場当たり的なことばかり。
　お金がお金を生むという金融資本主義の仕組みが問題なのに、そこを根本から考え直そうとする気配がない。これは、日本の危機だと思います。
　だから２大政党かといっても、結局、アメリカの２大政党となにも変わるところがない。利権の構図が変わり、どちらが羽振りを利かせるかということだけでしょう。
　かつての社会党をみても、政党って、〝大臣病〟にかかるとダメになるんです。
　すべての人間が、人間らしく暮らせる政治であってほしい。人間による、別の人間に対する抑圧とか、差別がなくなることを願っています。

噺家柳家さん八さん／格差社会気にいらないね
　戦後日本は、国民の英知と努力によって平和で豊かな国をつくりあげてきたんですね。
　復興の名のもとに勤勉な日本人はガムシャラに働いたんです、いや働かされたんだよ。暮らしの程度は上がったけど、内容はどうかね。何でも金、カネ、かねの世の中になり、人の心は病んできちまった。まさにキンゾク疲労だね。
　その挙げ句が格差社会といわれる現在さ。
　６０年以上もそんな政治を選んできたのも国民なんだ。強いものが勝つのはスポーツの世界だけで結構。普段の生活に勝った負けたは気にいらないね。政治家も無党派浮動の一票を大切にすべきと思うね。

コント集団ザ・ニュースペーパー渡部又兵衛さん／「共産党入りなさい」がウケて
　クルクル替わる首相。小泉から安倍、福田。今は麻生さんですね。あの声、口、〝上から目線〟。まねしやすい。で、〝麻生役者〟が〝上から目線〟でしゃべる。するとお客さん、笑うよりも、いやーな気分になるらしい。「そこまで言うか」という顔をしてますよ。
　若い人を使い捨てにする日雇い派遣、お年寄りいじめの後期高齢者医療制度、はたまた景気問題。麻生さん、一体何を考えているんでしょうね。
　ブームの『蟹工船』（小林多喜二）。こんなふうに舞台でやってます。
　ワーキングプアの若者二人。一人の手には文庫本『蟹工船』。もう一人が聞く。『蟹工船』とワーキングプアとはどういう関係？　が、答えられない。「ま、蟹工船で働くことをワーキングプアというんじゃないの」という具合。通りかかったおばちゃんがいう。「あなた方えらいわねえ、『蟹工船』を読んで。分かったでしょう、一人じゃだめなのよ。たたかわなくちゃ。団結がんばろう！」。若者が聞く。じゃ、どうすればいいの？　おばちゃんは小さな声でいう。「共産党に入りなさい。収入の１％の党費を納め、『赤旗』新聞を読めばいいのよ」と。
　これ、ウケてますよ。
(２００８年１０月２６日，「赤旗」)（Page/Topへ）

『蟹工船』流行の背景は／澤田さん迎え講演会／熊本

　戦前の共産党員作家・小林多喜二の小説『蟹工船』がベストセラーになるブームをどう見たらいいのか―。文芸評論家の澤田章子さんを迎えて「小林多喜二『蟹工船』が今、呼びかけるもの」と題する講演会が二十二日、熊本市民会館で開かれ、約二百人が参加しました。主催は日本民主主義文学会熊本支部などでつくる「呼びかけ人会」。
　林敦世話人代表のあいさつの後、シャンソン歌手でもある高杉稔さんが『蟹工船』の一節を朗読しました。
　澤田さんは、講演のなかで、どんな小さな町の本屋にも『蟹工船』の本が平積みされているなどブームが本物であることを紹介。ネットなどに寄せられる感想に、「八十年前の労働の実態を今の青年が自分たちと重ね合わせて読んでいる」として、「本の中で〝殺される〟という表現がよく出てくるが、私もそう思う」「団結できるのは素晴らしい。今は一人ひとりがバラバラにされている」などと書かれていることを紹介。「文字離れがいわれていますが、若者は読んでいいものはいいと感じることができるなど、感覚的にすぐれたものを持っている。いっしょにいい世の中をつくっていきたい」と語りました。
(２００８年１０月２４日，「赤旗」)（Page/Topへ）

「文学と人生」辻井喬氏が講演／神戸で関西文芸講演会開く

　日本民主主義文学会は十八日、作家の辻井喬氏を招いて、「民主文学」関西文芸講演会を神戸市中央区のホテル北野プラザ六甲荘で開催、会場満杯の三百四十人が参加しました。
　辻井氏は「文学と人生」と題して講演し、日本人の戦前からの差別意識をとらえて話を進め、絶対的天皇制の下での他民族蔑視による差別の思想がまだ、充分に克服されていない状況を自身の体験をまじえて語りました。
　さらに、この問題に立ち向かう上で文芸の歴史的伝統継承の重要性などを深く解明し、これから日本はいっそう困難な時代を迎えるかも知れないが、それに応えうる文学の創造が必要であると指摘しました。
　「講演会」後半の日本民主主義文学会田島一事務局長との対談では、田島氏の「今の日本の現状をどう捉えるか」という質問に答えて、辻井氏は、民衆の想像力が大事だとして、小泉内閣の登場を許した経験にふれ、お人好しであってはならないと語り、小林多喜二の『蟹工船』が若い人に読まれていることについて、労働組合が力を無くしている現状の反映ではないかと感想を述べました。
　また文学の創造の問題で「単に戦争反対と言うだけでは力にならない。自らの血肉となった感性豊かな表現が大事」と指摘して民主文学への期待を表明。最後に、宮本百合子についての想い出を語りました。
　参加者からは「文学の持っている重い意味がよく分かった」などの感想が語られ、辻井氏の著書のサインセールには長い行列ができました。
( ２００８年１０月２４日，「赤旗」)（Page/Topへ）

ひと／小林多喜二の母・セキのひとり語りを演じる田中ケイ子さん（６５）

　「ほれ　多喜二もう一度　立ってみせねかー　みんなのために、もう一度立ってみせねかーっ」。絞り出すような声。そこによみがえったのは作家・小林多喜二の死に直面した母・セキ。迫力ある演技に、場は静まりかえります。
　当時の時代背景や、思いを交えての語り。見た人、聴いた人の心をゆさぶります。泣きながら駆け寄ってきて、「小学三年の時、多喜二の本を持っていた担任の先生が、授業中に警察に連行された理由が今、分かりました」と言った人もいました。
　始めたのは十年前。日本共産党の素晴らしさを自分の言葉で語り広げたいとの思いから。高校時代の演劇部活動が役立ちました。
　台本は、友人の協力を得ながら、さまざまな文献や資料を集めて作成。当初、四十分間だった台本は、声援に押され、五十分間に〝成長〟しました。
　週三日、機械工場に勤務し、練習は日光市の自宅。風呂や布団の中で「モゴモゴ」と。夫が「多喜二の無念さを思うと胸が痛む。おれの前では練習しないで」と嘆願したからです。
　『蟹工船』ブームもあり栃木県内の党や団体などの催しに呼ばれます。
　「七十五年前、プロレタリア作家、多喜二が二十九歳の若さで虐殺されました。愚痴ば聞いてもらいたくて、やってまいりました」。二人の息子への思いを重ね合わせて演じます。結びは「憲法九条を守るために力を合わせましょう」。
　文　団原　敬
( ２００８年１０月２２日，「赤旗」)（Page/Topへ）

貧困の現場／東海林智著／評者桐野遼日本民主主義文学会会員

悲しみと怒りこめ人間の商品化告発
　ある野宿者の死から始まるこの本は、貧困の現場を記者として十年にわたって取材してきた著者の、悲しみと怒りをこめたルポルタージュだ。
　著者は派遣労働の実態、名ばかり店長の残業手当請求事件、過労死、過労うつ病、自殺などを取材する中で、必ずのように言われる「自己責任」という論に真っ向から反対する。
　派遣労働自由化によって労働力として人間が商品化され、不要になれば簡単に切り捨てられる。企業の利益が優先する劣悪な雇用環境が広がり､貧困が増え､広がっている実態を、取材と緻密な分析によって告発している。とくに小泉内閣の「改革」以後、今や、ホームレスになるのも、ネットカフェ難民になるのも、過労死させられるのも、決して特殊な例ではなくなり、多くの人にその可能性が迫っていることを読者に感じさせる。ルールなき資本主義の現象としてとらえている。
　このルポルタージュのもっとも優れた特徴は、単に現実を告発し、分析するだけにとどまらず、貧困の問題を解決するためには、労働組合、反貧困ネットワークなどをはじめ、正規労働者、非正規労働者を問わず、多くの人々の連帯を作り出す運動が必要なことを示していることだ。著者が実際に野宿者とともに深夜の空き缶拾いを体験し、野宿の体験、ネットカフェ体験もし、そんな中で、反貧困たすけあいネットワークの人たちと連帯し、生活保護の申請で、区役所の窓口「水際作戦」と闘うようになっていくことでも報道記事をまとめただけのルポルタージュとは違っている。
　「おわりに」の中で小林多喜二「蟹工船」の一部から「今、殺されているんでねぇか。小刻みによ」の労働者の会話が紹介されているのは、とても印象的だ。
　とうかいりん・さとし　一九六四年生まれ。毎日新聞記者。
( ２００８年１０月１９日，「赤旗」)（Page/Topへ）

発言／私の選択／「蟹工船」エッセーコンテスト大賞受賞者山口さなえさん／多喜二の時経て私が在る

　真っ暗な海を漂うクラゲか、空の雲…。集まるのも離れるのも自分の意思ではなく、孤独の日々を漂っている―いまの若者の苦しさはそういう感じです。
　私も美大卒業後、いろんな会社を受けて、落ちて、「どこでもいいから」と十カ月後に、やっと経理の仕事で正社員になりました。
　母の看病があるため、「残業はない」ということで入ったのに、まったく違い、しかも残業代がつかない。同僚はどんどんやめていきました。

労基法の衝撃
　入社後、十カ月たったころです。取引先に不利になる経理を断ったら、即日解雇され、ショックでした。
　法律も何も知らなかったんですが、腹が立ったし、困ったので、必死の覚悟で地域の労組に相談に行き、力になってもらえず、結局、労働局のあっせん制度でたたかい、三カ月後に解決できました。
　あっせん委員に「こんな話はざらにある。あきらめなさい」と言われないか心配でした。解決するまで、権利が認められるか不安でしたが、法律はちゃんと機能してたんです。
　それまで社会に興味がなくて、新聞も読まなかったし、世の中は不正が通るものだと感じていました。自分の存在価値にも不安を感じていました。「連帯」とかいわれても、「それが通用してたら、こんな社会じゃないよ」と｡
　争議も初めは、自分の利己心でやるんだし、その点では自分も会社と同じようなものだと思っていました。
　私が変わったのは、労働基準法を知ったことからです。衝撃でした｡｢こんなすごい法律があったのか」と。そして自分が、その法律をたてに会社に勝つことができた―。戦前や戦後の労働運動や私の経験したようなたたかいがあって、法律が生きたものになっていることを学び、自分の争議も社会につながり、貢献しているんだと分かった。「自分が存在してよかった」とまともに肯定できました。

共産党伸びて
　秋葉原の無差別殺傷事件は「身勝手な犯行」といわれます。身勝手って、自分の利益だけ考えることですね。でも彼は、他人だけでなく自分も大切にしていない。
　「蟹工船」の労働者がうらやましく思えるほど、いまの若者はバラバラにされています。でも、多喜二の時代にはなかった国民主権という武器もある。
　去年の参院選で民主党が勝った後、若者を痛めつけてきた「小泉改革」が止まった感じがして、民主党に期待したところがあったんです。そしたら「大連立」騒動が起きて、度肝を抜かれました。
　いま、政治への最大の願いは労働者派遣法の抜本改正です。民主党の改正案は自民党とたいして変わらないので、今度の選挙で民主党が勝ってもだめ。大企業に真っ向からものをいう共産党が伸びてほしいと思っています。
　聞き手　西沢亨子
　写　真　山形将史

やまぐち・さなえ
　小林多喜二｢蟹工船｣エッセーコンテスト(小樽商科大学･白樺文学館共催)大賞受賞｡１９８２年､兵庫県生まれ｡２６歳｡現在､労働組合書記｡
( ２００８年１０月１９日，「赤旗」)（Page/Topへ）

青年雇用／希望は連帯／大集会に４６００人

「まともに生活できる仕事を」「人間らしく働きたい｣｡５日､東京･明治公園に､昨年を上回る４６００人の青年が全国から集まりました｡｢全国青年大集会２００８」です。雇用問題で政治を動かしつつある―。そんな自信が参加者の表情に浮かびました。
　「ワン・ツー・スリー、スタート！」。みんなの元気なカウントダウンで始まりました。
　会場を彩るのは思い思いの手づくりプラカードや横断幕。小林多喜二の小説『蟹工船』にちなんだカニのかぶり物も。赤やピンクの派手なつなぎ服の建設労働者は、大きな掛け声で集会を盛り上げました。ひときわ目を引くロリータファッションの一団は、不当解雇とたたかう神戸地域労組の岩上愛さんとその支援者たちです。
　日本民主青年同盟の委員長・田中悠さんが､｢きょうは一人ではありません。同じ思いを持った仲間がいます。『連帯』という道があります」と力強く開会あいさつ。
　松下プラズマディスプレイ、日亜化学、キヤノンなど大企業の偽装請負を勇気をもって告発し、社会と政治を動かす原動力になってきた青年たちが次々と舞台に立ち発言しました。
　「ショップ９９」〝名ばかり店長〟の残業代未払いで裁判をたたかう清水文美さん（東京）は、こう発言しました。
　「病気になって何もできなかった自分の手をつかんで離さなかったのが首都圏青年ユニオンの仲間たち。自分に課せられているのは、仲間とつながり続けることです」
　日雇い労働者の過酷な体験報告や、各地の青年ユニオンのとりくみ、学費問題で頑張る学生らが壇上から思いの丈を訴えました。
　福島県から来た岩渕望さん（２５）は、「勇気を奮って集会のことを話したら、仕事のことで悩んでいる友人がたくさんいました。力を合わせれば社会は変えられる。この集会で元気と希望がわいてきた」と話しました。
　日本共産党の志位和夫委員長、反貧困ネットワークの湯浅誠さんらが連帯のあいさつをしました。

若者が政治動かしている／日本共産党志位委員長があいさつ
　あいさつで志位委員長は「みなさんのたたかいは現実の政治を動かしつつある」とのべ、「今後重要な四つの問題」を提起しました。
①違法行為を正そうと勇気を持って立ち上がった若者が、逆に職を奪われるということを絶対に許してはならない。
②派遣法の改正を中途半端に終わらせず、抜本改正で９９年の派遣労働原則自由化以前に戻す。
③「首切り自由の使い捨て労働」をなくし、正社員にしろという声を突きつけていく。
④非正規労働者と正社員の団結で人間らしい労働のルールをつくる。
　『蟹工船』が描いた団結して立ち上がる労働者の姿に若い方々は希望を見いだしているのでは、と問いかけた志位さん｡｢そういう若者が広がっているのは日本の大きな希望です。みなさんが未来に希望をもてる日本をつくるために、最後までともにたたかいます」と力強く結び、歓声と拍手に包まれました。

参加者の声、声、声
　「青年大集会」の参加者にその思いを聞きました。
ヒントつかみたい／求職中の男性（３３）＝埼玉
　共産党のホームページを見て来ました。図書館で「赤旗」をよく読みます。志位さんが国会で質問したりして、労働者の実態をよく伝えています。９年間派遣や日雇いで働いてきて、突然５月に派遣先を解雇されました。今日は生きるヒントをつかみたい。

温かい仲間がいる／医療事務の派遣で働く女性（２８）＝千葉
　うつ病などを抱えながら働いています。昨年参加して励まされたので、今年も来ました。ここには温かい仲間がいて〝つながっている感〟を持てる。青年を取り巻く状況はきびしいけれど、変えようと行動する人も増えている。勇気をもらいました。

希望は社会変える／「働く権利」の交流会で発言した大卒の青年（２４）＝東京
　夜中の２時まで倉庫のアルバイトをして８５００円。深夜手当が出ないのでどうしたらと思い質問しました。４回仕事を変えたけど、どこでもいいように扱われてきた。社会を変えられる、そう思えることが僕の「希望」です。

無責任な雇い止め／トヨタ系列会社で働く男性技術者（３６）＝愛知
　夜勤明けだけど来ました。不況だからとトヨタや系列会社は期間工を数千人も雇い止めにし、求人していない。責任がなさすぎる。

もっとつながろう／東京土建の藤澤拡海さん（３０）＝東京
　これだけ参加するとは…。建設の交流会で、４千時間も働かされて訴訟を起こしたと報告した人がいた。自分たちはまだ、そこまでギリギリの人とはつながっていない。もっと広げたい。

教師になりたいが／高校生の交流会「金八先生と語ろう」に参加した男子高校生（１７）＝埼玉
　教師志望です。三上満さんみたいな明るい先生になりたい。学費の問題は関心あります。心配するなと親は言ってくれますが、３人きょうだいで負担が大きいので…。

正規も非正規も／自治労連書記の岩谷元気さん（２８）＝長野
　役場でも非正規の職員がいて、１年か２年で入れ替わります。彼らもワーキングプアで苦しんでる。正規も非正規も団結して頑張りたい。

渋谷をウオーク
　集会後、渋谷の街を練り歩いたアピールウオークに、沿道が大注目しました。
　イカ型の帽子をかぶり、「怒りを希望に」と書いた横断幕を掲げたのは福島の青年たち。歌うようなシュプレヒコールに、若い女性二人組も思わず口ずさみます。
　ウオークをじっと見ていた中学２年生の女の子は、「賃金が安いとか、教育予算を増やせとか、いっていることは納得できることばかり」といいます。
　かたわらの母親は「すき家でパートをしています。これからは子どもの教育費がかかるし、心配。すき家で働いている人がアピールしていましたが、残業代をきちんと払ってほしい。こういう運動は大事ですね」と話していました。

私の思い

ユニオンつくりたい／岩手／金野裕紀さん（２３）
　僕は高校卒業後、結婚式場の調理場で正社員として働きました。長時間過密労働で、４カ月間に１３㌔もやせ、「このままでは病気になる」と辞めました。
　２００６年１０月、トヨタ自動車傘下の関東自動車グループのＫＩＫ北上工場で働いていたときのことです。
　訓練や講習もないままオイルタンクを製造するベルトコンベヤーで作業していたとき、手を機械に挟まれました。
　骨には達しませんでしたが、軍手を外したら血がダラダラ出て…。全治１週間のケガでした。
　しかし、派遣会社の日研総業は労災として認めず、同社担当者の国保を流用させて治療させました。
　職場に復帰すると、派遣先工場のリーダーなどから無視され耐え難くて、２週間で辞めました。
　同じように苦しんだり、声をあげ変えさせた発言を集会で聞いて、元気が出ました。僕の住む一関市にも青年ユニオンを結成したいです。

キヤノンで月給１２万／青森／ユウジさん（３１）仮名
　僕は、２００５年から青森県弘前市のキヤノンプレシジョンで派遣として働き始めました。ラインから流れてくるカートリッジを１４秒でこん包し、その作業を一日８、９時間もくり返します。給料は月１２万、１３万円で、お盆休みなどで仕事が減ると月１０万円にしかなりません。
　就職氷河期の真っただ中､高校を卒業しました｡新聞配達、荷物の仕分け、簡単な事務作業、タクシー運転手など、さまざまな仕事をしてきました。しかし、一度も正社員になったことがありません。実家にいたから、何とか生きてこれました。
　３年間就業し、正社員の道が開かれるかと思っていましたが、９月に派遣から請負に変わり、直接雇用の機会が奪われました。
　集会で同じように苦しむキヤノン宇都宮や日亜化学の青年とつながり、勇気づけられました。全国のあたたかな仲間のひろがりに「世の中捨てたもんじゃない」と思いました。同僚や周りの青年と世の中を変える運動をしていきたい。
　この特集は那須絹江、小松幸枝、米重知聡、写真・橋爪拓治の各記者が担当しました
(２００８年１０月１２日，『赤旗』)（Page/Topへ）

治維法国賠同盟がブロック会議開く／東北６県

東北六県の治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟はこのほど、福島市で第十八回東北ブロック会議を開き、六十五人が参加しました。
　同同盟福島県本部の加藤起会長が歓迎あいさつをのべ、日本共産党福島県委員会の最上清治県委員長が来賓あいさつしました。
　国賠同盟中央本部の近江谷昭二郎副会長は会議への提案で、侵略戦争を正当化し、改憲と海外派兵の強行を狙う「靖国」派の麻生内閣の発足は、再び戦争と暗黒政治を許さない同盟運動の役割をいっそう重要にしていると述べました。近く開かれる総選挙では「財界中心の『二つの政治悪』を大本からただす選挙にするため、全力を尽くそう」と訴えました。同時に五十万署名の実現や地方議会への請願・陳情の強化、支部活動の定着などを呼びかけました。
　各県・支部の十三人が活動経験について報告しました。国家賠償法を求める署名の目標を超過達成した活動、寺院の署名協力を広げている経験などが生き生きと語られました。

(２００８年１０月１１日，『赤旗』)（Page/Topへ）

「蟹工船」上映とトークに３９０人／巧妙な搾取を告発／静岡

「尊厳ズタボロ」「人ごとでない」
　「現代の『蟹工船』、私たちの仲間がここにいる」トークと「蟹工船」上映が五、六両日、静岡市で行われ、それぞれ二百五十人、百四十人が参加しました。県労働者学習協会、静岡地区労連主催。
　トークでは、県労協の青池則男さん（静岡市労連）と、小林多喜二「蟹工船」エッセーコンテストに入賞した狗又ユミカさんが対談しました。
　狗又さんは、「私たちは『蟹工船』に乗っているよう」と話し、自身が十一年間、派遣やパートで働き、十一回職場が変わった体験を紹介。「要らなくなると『他の派遣会社のほうが料金が安いから』と〝衣替え〟でもするかのように首を切られ、尊厳をズタボロにされた」と証言。解雇のたびに労基署に相談しても相手にされず、「政府は企業を守っても労働者を守らない。味方だと思ったら敵だった。『蟹工船』に出てくる駆逐艦と同じ」とのべました。
　青池さんは、県内の「日雇い派遣」の青年実態を紹介。低賃金で手当や交通費はなく、カラオケ割引やローンあっせんなどのみで福利厚生もない無権利状態を告発しました。
　狗又さんは、「蟹工船」のころと現代とを比べ、「搾取が巧妙になっている。『自己責任論』で会社への怒りを自分に向けさせて能力がないと思わせたり、リストカットさせる」。分断された労働者が泣き寝入りせず、労組に加入ないし組織して団結してたたかい、世論を起こしていくことをよびかけました。
　「ネットで話題になり『蟹工船』を読んだ」という男性（４０）は、「三年前まで非正規でした。正社員と同じ仕事なのに、賃金や社会保険が違い、いつ首を切られるか不安でした。『蟹工船』の話は決して人ごとではありません」と話しました。
(２００８年１０月１０日，『赤旗』)（Page/Topへ）

発言／私の選択／映画監督神山征二郎さん／共産党なければ、日本は闇

　映画「ラストゲーム　最後の早慶戦」（公開中）は、おかげさまで好評です。太平洋戦争末期に学生を戦地に送った学徒動員や軍部の圧力で、大学野球ができなくなったことを描いた映画です。こうした映画がお客さまに受け入れられていることは、国民に〝戦争はいやだ〟という気持ちが強くあることを示しているのではないか、と思います。

金もうけ第一
　今度、反戦川柳作家・鶴彬を描くドキュメンタリー・ドラマ映画を作ることになりました。鶴は戦時中、国家権力に立ち向かい、特高警察にとらえられ過酷な目にあって、二十九歳で亡くなりました。病院に見舞いにいったら、見る影もない、やせ衰えた体になっていて、病床でも手錠をかけられていたという知人の証言が残っています。
　これで三國連太郎さん主演の映画「北辰斜にさすところ」（０７年）、「ラストゲーム」に続き、三作連続で戦争を描く映画をつくることになります。
　私が「郡上一揆」を撮ったのが二〇〇〇年で、翌年、小泉政権ができました。新自由主義を推し進めた小泉政権は規制緩和という一見よさそうに聞こえる名前で、労働者にひどい働かせ方をさせる法律をつくりました。
　金もうけが第一で、なんでも金もうけの対象にする、小泉路線の新自由主義は破たんして、国民の目に実態がわかりはじめてきているんじゃないでしょうか。私の身内でもひどい目にあったのが何人もいます。小林多喜二の『蟹工船』が二十代の人たちの間でブームになるということは、誰も予想できなかったことです。
　新自由主義が国民を苦しめることに気付いた中南米では、新自由主義とたたかう政権が次々に誕生しています。社会主義的な理念をいろんな分野に導入すべきだという議論も起きているようですね。

デモクラシー
　今の日本の政治で一番気になっているのは、デモクラシーが危機にひんしているのではないか、ということです。メディアも財界寄りに見えます。気付いたらどこかの戦争に巻き込まれていた、ということになる恐れがあると、心配しています。
　ベトナム戦争では韓国の兵士が先兵にされ多くの戦死者がでました。こんどは世界各地の戦争で、自衛隊員を給油活動どころか、戦場そのものにおし出そうと腹の底では考えているような気がするんです、アメリカは。そういうときに、戦争に参加することも辞さず、という勢力が日本に存在することは座視できない問題だと考えています。
　社会がこうなってきた今、新自由主義に反対している日本共産党の存在意義はものすごく大きい。この党がなかったら日本は闇ですよ、と私はいろんな機会にいっています。
　聞き手　大井民生
　写　真　佐藤光信
　こうやま・せいじろう　１９４１年、岐阜県生まれ。映画監督。新藤兼人、吉村公三郎、今井正各監督の助手を務めた後、７１年、監督デビュー。８３年「ふるさと」で文化庁優秀映画奨励賞などを受賞。８７年「ハチ公物語」が大ヒット。「月光の夏」「大河の一滴」など話題作多数。
( ２００８年１０月１０日，『赤旗』)（Page/Topへ）

新たに１５人を合葬／「濃飛のいしずえ」追悼会／岐阜

　「濃飛のいしずえ」の第八回碑前顕彰追悼会が五日、岐阜市内で開かれ、九十人が参加しました。
　主催者を代表して大澤直志さんが、今年新たに十五人が合葬され、四百五人の方の顕彰追悼会になったことを報告しました。
　来賓として日本共産党の堀田信夫岐阜市議が、「平和を守ることはもとより、当たり前に生きていくうえでの人間の尊厳が奪われる事態が日々進行しています。たたかいぬいた先輩の皆さんの遺志を受け継ぐ決意を新たにします」とあいさつ。年金者組合県本部の福井信郎さん、県労働者組合総連合会議長の竹中美喜夫さんもあいさつしました。
　国民救援会中央本部と治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟のメッセージが読まれ、追悼歌「命の限り」を合唱し、献花をしました。遺族の一人が、合葬された夫の生前の生きざまを語りました。
(２００８年１０月１０日，『赤旗』)（Page/Topへ）

イラク住民訴訟結審／違憲の判断求める／原告団が陳述／仙台地裁

　宮城県の自衛隊松島基地で開かれたイラクへ派遣される自衛隊員の壮行会に自治体の首長らが公費で参加したのは違法だと周辺住民らが返還を求めた訴訟の第十八回口頭弁論が七日、仙台地裁でありました。原告弁護団が最終弁論をして結審しました。判決は十二月十六日に言い渡されます。
　原告弁護団は、当時のイラクが実質的な戦闘地域であったことを具体的に示し、壮行会が危険なイラクに派遣される自衛隊員を激励し、士気を高揚させる目的で開かれたものであることを出席した当時の自治体首長らや基地司令の証言をもとに論証。単なる社交儀礼と評価することはできないと批判しました。
　米英軍によるイラク攻撃は、国連安保理決議に基づかない違法な武力行使であり、イラク特措法を適応することはできず､違憲･違法であると断じました。
　戦前･戦中､ほとんどの裁判官が治安維持法のもとに戦争に反対する国民を弾圧し､戦後､その責任が問われることはなかったと指摘。「過去の過ちをくり返さず、憲法の番人として違憲･違法の判断を｣と強く求めました。
　裁判後、勅使河原安夫弁護団長は、「問われているのは、裁判官が本気になって憲法を守る気があるかどうかだ」と語りました。
　原告の佐藤好彦さん（７３）は、「小学生のころ、『日の丸』を振って兵隊さんを送り、数日後、亡くなった兵隊さんを迎えたという経験や空襲の経験もした。あの思いをくり返すきっかけになるのでは大変だ。裁判所が正しい判断を下してほしいと思う」と話していました。
(２００８年１０月０８日，『赤旗』)（Page/Topへ）

「蟹工船」―今に重なるものは…上映会盛況観賞者の思い／福岡・過去の話ではない／那覇・労働者の団結大事

　共産党員作家・小林多喜二の小説を同名映画化した「蟹工船」の上映会が三日、福岡と那覇両市で開かれ、どちらも盛況でした。無権利で過酷な非正規雇用が若者に広がるなか、観賞した人たちは、昭和初期の労働実態を描いた『蟹工船』の何をいまに重ね合わせたのか。感想を聞きました。

福岡／過去の話ではない
　福岡市中央市民センターで開かれた「蟹工船」上映会は、昼夜二回の上映に会場いっぱいの計九百人が参加しました。主催は日本共産党福岡中央南地区委員会などでつくる上映実行委員会。「蟹工船」ブームの中、当日券が二百八十枚も売れました。
　上映前に日本共産党の小林とき子衆院比例候補（福岡２区重複）が実行委員長あいさつ。「『蟹工船』の過酷な労働は過去の話ではなくいまにも十分通じる内容だと思います。政治が働くルールを壊し、貧困と格差を広げてきました。今度の総選挙で政治の力で働くルールを取り戻したい」と話しました。
　上映後、「しんぶん赤旗」の折り込みを見て参加したという会社員の男性（３８）は「底辺で働く人たちがしいたげられるのは今と同じ。働くルールを取り戻そうという共産党の考えに接すれば共感する派遣やフリーターの人はいっぱいいると思う」といいます。
　話題が共産党になると、「個人的には共産党に党名を変えてほしい」というその男性。日本共産党は戦前から侵略戦争に反対し、民主主義を求めてたたかい、原作者の小林多喜二は拷問で虐殺されたと聞くと、「党名にプライドがあるんですね」と話しました。
　転職前は給料十二万円、三年間で二日しか休みがなかったという南区の男性（３１）は「法律なんか関係なく『監督』が労働者をこき使うのは今と似ている。『蟹工船』が売れるのは生活が立ち行かなくなっている今の時代の反映だと思う」と話しました。

那覇／労働者の団結大事
　那覇市で開かれた上映会は、昼夜二回で計四百七十人が観賞しました。当日の上映直後、実行委員会は小説『蟹工船』のある個所を朗読しました。
　「そして、彼等は、立ち上がった。――もう一度！」
　上映実行委員の小松直幸さん（３０）は「自分たちが特に感銘を受け、まぶしいとさえ思い、勇気をもらった部分。参加した人に、どうしても(この感動を)伝えたかった」と朗読した思いを語ります。
　観賞後、那覇市の男性（５６）は「あれ（朗読）がないと中途半端なままだった。やはり労働者の団結が大事だと思った」と話します。
　『蟹工船』ブームについて､｢貧困と格差の広がりが大きな背景になっていると思う。いまの政治そのものの反映だ」と語りました。
　「いま求職中で、とてもつらい状態です。当時の人たちの気持ちをわかりたいと思って…」。そう話すのは、市の広報で上映会を知り、ぶらりと来たと話す三十五歳の女性＝那覇市＝です。「昔も今も何も変わっていない」と感想を語りました。
　「現代は殺されることまではないけど、会社から精神的に追い詰められ、つぶされていくのは同じです。いまの政治は本当に許せないと思う。人間を使い捨てにして、（税金も）とるだけとって…」。当時と何も変わっていない社会状況に憤ります。「やっぱりモノを言い続けることでしか社会は変えることはできない、と思いました」
　新聞の案内を見て来たという三十六歳の男性は、感想文に「苦難の歴史をへて勝ち取った労働基準法。みんなが意識しなければ労働環境は良くならない」と書きました。
(２００８年１０月０８日，「赤旗」) （Page/Topへ）

『蟹工船』は新たな連帯の機軸／東北初の文学カフェ開催／盛岡で民主文学会

　日本民主主義文学会は四日、盛岡市の岩手県公会堂で「若い世代の文学カフェｉｎ盛岡」を開きました。岩手や青森、宮城などから約三十人が参加しました。（写真）
　東北地方での「文学カフェ」開催は初めて。作家の旭爪あかね、燈山文久両氏が司会を務め、いま再び脚光を浴びている小林多喜二の「蟹工船」が問いかけるものは何かをテーマに、語り合いました。
　同会常任幹事で作家の浅尾大輔氏が、「現代の『蟹工船』と立ち上がる青年労働者」と題して講演。青年の二人に一人が非正規雇用の実態を語り、「自民党政治が青年の生存や誇り、未来を破壊してきた」と分析。思想・信条を乗り越えた新しい連帯を実現するために、その可能性の中心に「蟹工船」があると述べました。
　青森県の同会弘前支部に所属する作家・三浦協子氏は、自身の創作体験から「書いて考えて行動する力」について講演し、「現実に体感したことを作品に生かすことが大切。自分を客観視することで書くことが生まれる」と語りました。
　同会盛岡支部所属で、日本共産党の衆院岩手一区候補の吉田恭子氏（２７）＝筆名・河内こう＝が、「若い人が正規職に就けない現状を変えるため、頑張りたい」とあいさつしました。
　岩手で青年運動に取り組む八幡志乃さん（２５）は、「いま社会を変える活動をしているのは、生きる意味を見いだすためだとこの集会で思い返せた」と感想を話しました。
( ２００８年１０月０８日，「赤旗」) （Page/Topへ）

朝の風／「蟹工船」、時代を超えた共感

　「蟹工船」ブームに関連して、最近ではその火付け役を論ずるものまで現れている。ここまでくると、「蟹工船」ブームのとらえ方という面でも首を傾げさせる。そんな中で、「朝日」五日付文化欄、作家の帚木蓬生の言葉が真っ当に思える。
　「小林多喜二が読まれているのは現代作家の怠慢。読んだ人の人生が変わるくらいの小説を書かないと、作家の存在意義はない」
　帚木は作品「蟹工船」に「読んだ人の人生が変わるくらいの」力量を率直に認め、そうした作品が見られない現状にこそブームの根拠を読み取っているのである。そう言えば、戦前も「蟹工船」は同じ読まれ方をしていた。その意味で、「蟹工船」ブームは今に始まったものでないことが分かる。経済学者の故都留重人が若き日に作品に出合った時の回想を見てみよう。
　「『一九二八・三・一五』や『蟹工船』は、単に私の眼をそれまで未知の現実にたいしてひらいてくれただけでなく、文学そのものにたいする私の態度までも変えてしまった。」（「文学と私」一九五三年八月）都留はこの後学生運動に加わり、捕まる。時代に挑んでその先端をリアルに切り取ってきた文学が、時代を超えて共感をもたらすのは何とも壮観である。
　（乾）
( ２００８年１０月０８日，「赤旗」) （Page/Topへ）

全国青年大集会／連帯と希望、全国に広げよう／志位委員長のあいさつ

　日本共産党の志位和夫委員長が五日、「全国青年大集会２００８」でおこなったあいさつは次の通りです。
　みなさん、こんにちは（「こんにちは」の声）。日本共産党の志位和夫です（拍手）。私は、毎年、全国青年大集会に参加してきましたけれども、こんなにも多くの若いみなさんが、全国のたたかいを持ち寄り、連帯のきずなを強め、新たなたたかいに立ち上がろうとしていることに、感動で胸がいっぱいの思いです。日本共産党を代表して、心からの熱い連帯のあいさつを送ります。（大きな拍手）

若者のたたかいが、現実の政治を動かしている
　一年半前の集会で、私は、この場所で、みなさんのたたかいに社会的注目が注がれているということを話しましたが、いまやみなさんのたたかいは、現実の政治を動かし、社会を変える力を発揮しつつあります。（拍手）
　規制緩和一辺倒だった政府・与党も、きわめて不十分ながら「派遣法の改正」ということをいいだしました。一部の大企業の製造現場でも派遣解消の動きが生まれています。若者のたたかいが、労働者のたたかいが、現実を一歩前に動かしつつあるということに、まずみんなで確信をもとうではありませんか。（歓声、拍手）

違法行為を正そうと勇気をもって立ち上がった若者の職を奪うことは許せない
　もちろん、たたかいはこれからが正念場です。
　私は、今後のたたかいで重要になってくる四つの問題について、ともにたたかう決意をこめて、のべたいと思います。
　第一は、違法行為を正そうと、勇気をもって立ち上がった若者が、逆に職を奪われるということを、絶対に許してはならないということであります。（大きな拍手）
　松下プラズマ、日亜化学、キヤノン宇都宮光学機器などで、若いみなさんが、やむにやまれず偽装請負からの救済を求めて立ち上がりました。ところが大企業の側は、違法行為を反省するどころか、雇い止めによって職を奪った。日亜化学の島本さんたちにしても、キヤノンの宮田さんにしても、松下プラズマの吉岡さんにしても、違法行為の被害者でしょう。被害者がさらに職を奪われるという被害を受ける、こんな理不尽なことを絶対に許すわけにいかない。この決意を固め合おうではありませんか。（「そうだ」の声、大きな拍手）

派遣法の改正――中途半端な取り繕いでなく、抜本改正を
　第二に、派遣法の改正を、中途半端な取り繕いに終わらせては絶対にならないということであります。
　政府・与党は、「日雇い派遣の原則禁止」をいうものの、「使い捨て」労働の大本にある「登録型派遣」は野放しにする姿勢です。派遣法の改正をいうならば、一九九九年の大改悪――派遣労働を原則自由化にした大改悪前に法律を戻し、さらに違法行為があった場合には受け入れ企業に正社員とする義務を負わせる――「使い捨て」労働を許さない抜本的な法改正を求めていこうではありませんか。（拍手）

どんな形であれ「首切り自由の使い捨て労働」をなくせ
　第三は、派遣、請負、期間社員、パート、どんな形であれ、「首切り自由の使い捨て労働」をなくしていくことです。
　キヤノンは、国民の批判をあび、私たちが国会で追及するなかで、「年内に製造現場での派遣労働を解消する」といいました。しかし、派遣はなくすものの、期間社員と請負に置き換えるという。現地にいってうかがいますと、期間社員は、五カ月、六カ月の短期契約を繰り返し、最長でも二年十一カ月で雇い止めとされる。これでは問題は解決しません。どんな形であれ、「首切り自由の使い捨て労働」はなくせ。正社員にしろ。この声を一つにしてつきつけていこうではありませんか。（「そうだ」の声、拍手）

非正規社員と正社員の団結で、人間らしい労働のルールを
　第四に、非正規社員と正社員の団結と連帯を訴えたいと思います。
　「名ばかり管理職」が一大社会問題となり、マクドナルドの直営店長さんの勇気あるたたかいをきっかけに、残業代を支払う企業が相次いでいます。
　正社員もまた苦しんでいます。「過労死」を生み出す長時間・過密労働、「サービス残業」、成果主義のおしつけ、メンタルヘルスに苦しんでいます。正社員になっても、三年で三割もの若者が辞めています。「辞めなければ死んでしまう」――こういう悲痛な叫び声が聞こえるではありませんか。
　非正規社員と正社員が、互いの要求を自らの要求として、連帯し、人間らしい労働のルールを団結の力でつくりあげていこうではありませんか。（拍手）

『蟹工船』ブーム――連帯して立ち上がれば希望がある
　いま若者のなかで小林多喜二の書いた『蟹工船』がブームです。若者が、なぜいまあの小説に心を寄せて読むのか。それは、ただ単に『蟹工船』に描かれている奴隷的な労働が、現代に新しい残酷な形をとって立ちあらわれたというだけではないと思います。『蟹工船』には迫害に耐えながら、最後は団結して立ち上がる労働者の姿が描かれています。帝国海軍の軍艦が出てきて、労働者のたたかいを鎮圧する。しかし、「彼等は、立ち上った。――もう一度！」という希望ある言葉で、あの小説は結ばれています。
　あの小説を若い方々が読み出したのは、悲惨な実態に自らの実態を重ねているだけではない。連帯して、立ち上がれば希望はある。そこに希望を見いだしているからではないでしょうか（拍手）。私はそういう若者が日本全国に広がっていることこそ、日本の大きな希望だと考えるものであります。（「そうだ」の声、拍手）

若者のすべてが、安心して学び、働き、幸せになれる日本をめざして
　私は、この問題について、みなさんに背中を押されて国会で頑張ってまいりました。二月の予算委員会で派遣労働の問題をただしました。先日の衆院本会議でも、冒頭に雇用問題を取り上げましたが、あさっての予算委員会でもすべての時間を使って、この問題を再度追及するつもりでいます（「オー」「いいぞ」の声、拍手）。みなさん、この日本から、生きている人間をモノのように「使い捨て」にして恥じない、そんなやり方をなくしていこうではありませんか。（拍手）
　若いみなさんが、ほんとうに未来に希望がもてる日本、みんなが安心して、学び、働き、幸せになれる、そういう日本をつくるために、私は最後までみなさんとともにたたかう決意を表明して、連帯のあいさつとします。ともに頑張りましょう。（「イエーイ」の声、指笛と大きな拍手）
( ２００８年１０月０６日，「赤旗」) （Page/Topへ）

潮流

　始まる前だというのに、「きょうの資料はすべてなくなりました」と、受付の男性。その声が、少し誇らしげです▼五千人近い「全国青年大集会２００８」。ある男性は、Ｔシャツの背に手書きで「ＴＧＪ」。一瞬、「？」。謎はすぐ解けました。下に「多喜二グッドジョブ」と書いてあったから。〝小林多喜二、いい仕事をしてくれたね〟といったところか▼「蟹工船世代」とよばれるかもしれない青年たち。壇上で訴えた千葉県の女性は以前、常用の派遣でした。睡眠時間が三時間という激務で体を壊し、やむなく日雇い派遣に。三九度の発熱で仕事を休もうとしたときです▼会社は「どうにかならないか」。困窮し追いつめられていた彼女も、医者にききます。「なんとか働けないものか…」。医者に叱られ、やっと目が覚めました。なんとおかしい毎日だったのか、と▼「二十人に満たない組合で大きなキヤノンとたたかっていく」と、不当に解雇された期間工。「私は一人ではない。私たちに課せられていることがあるとすれば、つながること」。残業代の支払いなどを求めて会社を訴えた〝名ばかり店長〟です。ここに名前を記せませんが、みんなみんな、気高くみえました▼徳島の日亜化学で偽装請負を告発し、雇用を打ち切られた人たちが、口々に語りました。「ふつうの平凡な生活をしたいだけ」「それがなぜ悪い」。青年たちのその思いが人とのつながりを広げ、社会を変え、『蟹工船』の労働者を乗り越えていくでしょう。
( ２００８年１０月０６日，「赤旗」) （Page/Topへ）

東京の多喜二祭の報告集完成／不破さんの講演も収録

　今年二月に東京で開かれた第二十回杉並・中野・渋谷多喜二祭のすべてを収めたＤＶＤと報告集が完成しました（写真）。どちらも日本共産党の不破哲三さんの記念講演を収録しています。
　ＤＶＤではオープニングのコーラス、鈴木瑞穂氏の「蟹工船」朗読、村上弦一郎氏のピアノ演奏も視聴できます。ほかに能島龍三、吉開那津子両氏のあいさつなど。
　報告集とＤＶＤあわせて千円。送料無料。申し込みは実行委員会℡ファクス０３（５３８２）３１７７高木方。
( ２００８年１０月０３日，『赤旗』) （Page/Topへ）

多喜二を現代の視点で読む／オックスフォード国際シンポに参加して／尾西康充

　これまで近代社会が無条件に是としてきた自由や正義という理想が、現代のグローバリゼーションのなかで人間を抑圧するための方便に転化させられている。
　それは非正規雇用の増加やマネーゲームによる貧富の差の拡大を見ても、９・１１事件以後のテロ予防を大義名分とした戦争と人種・宗教差別を見ても分かる。
　グローバリゼーションがもたらすさまざまな弊害を視野に入れ、現代の視点から多喜二の文学を読みなおすという試みがこのたびイギリスでおこなわれた。
　国際学会「小林多喜二記念シンポジウム」は九月十六日から三日間の日程で、イギリスのオックスフォード大学キーブルカレッジで開催された。同大学のリンダ・フローレス氏とヘザー・ボーウェン＝ストライク氏（アメリカ・ロヨラ大学）、島村輝氏（女子美術大学）が中心になって企画を立案し、多喜二ゆかりの小樽商科大学と白樺文学館の後援を受けて実現した。

８つの分科会で
　プログラムは、ベラ・マッキー氏（オーストラリア・メルボルン大学）の基調講演に加えて、「女性―身体とメディア」、「身体と権力」、「地域と植民地主義」、「モダニズムとリアリズム、大衆文学」、「群衆と闘争」、「植民地時代のＫｏｒｅａ」「労働と教育に関する諸問題」「多喜二と映画」という全八分科会が開かれた。日英米はもとより中国、韓国、カナダ、オーストラリア、ノルウェー、ポーランドの研究者六十余人が出席した。多喜二の文学を多角的にとらえ返そうとする試みがなされ、新聞雑誌はもとより映画やアニメーションにまで対象を広げて、多喜二の文学および彼が生きた時代のプロレタリア文化運動が検討された。
　本学会の特色は、海外の女性研究者が女性に対する暴力を告発するという観点から、性を商品化する「酌婦（売春婦）」の生活を描いた多喜二の初期作品に注目していたことである。フローレス氏は、多喜二が『安子』という小説を通じて「ジェンダーが階級化され、階級がジェンダー化される方法をうまく証明してみせた」と論じた。曖昧屋の酌婦は当時、男性から性的に劣位におかれるだけでなく、不当な雇用形態のために自己の体を収奪し尽くされていたのである。
　これに対して小森陽一氏（東京大学）は、この問題は単に資本主義を分析して済まされるものではなく、（男系優先や、朕と臣の主従関係など）天皇制にはらまれた根本的な差別の構造を考える必要があると発言した。

日米で授業実践
　また日米の女性研究者からは、多喜二の小説をテキストにして読んだという授業実践の報告がおこなわれた。生徒と『蟹工船』を読んだ岡村洋子氏（鈴鹿中学高等学校）は、多喜二が描き出した暴力こそが歴史の本質であり、これに向き合う力をつけさせことが教育の役割であると論じた。
　他方、荻野富士夫氏（小樽商科大学）は多喜二を拷問死させた「軍事的＝警察的反動支配」の構造を解明したうえで、世田谷ビラ不当弾圧事件に象徴されるように、現代の日本社会も多喜二が生きていた「満州事変前夜」と同じ状況にあるという警告を発した。
　『蟹工船』は「そして彼等は、立ち上った。―もう一度！」という言葉で終わる。社会の矛盾が噴出する今の時代、国内外を問わず、危機感を共有する人間が連帯して行動することこそ、多喜二が遺したメッセージに応える正しい方法である。
　（おにし・やすみつ　三重大学教授、日本近代文学）
( ２００８年１０月０３日，『赤旗』) （Page/Topへ）

ハンドマイク日和／平瀬誠一／公園のベンチから拍手が起こった。かなりの人々から、やさしい笑顔が

　九月二十六日の午後、麻生内閣が成立してから初めて街に出て、ハンドマイク宣伝をこころみた。この日はどんよりと曇っていた。
　男性三名、女性二名、総勢五名のメンバーである。手には「後期高齢者医療制度の撤廃｣の青い旗ざしものと｢政治の中身を変える」というポスターを貼りつけた合板と「しんぶん赤旗」日曜版など宣伝材料をそれぞれ持っている。
　この日は私たちの主戦場の中央にある、商店街を真っ直ぐに突っ切って、いつもグラウンドゴルフでにぎわっている公園へと曲がる道をたどった。公園には、グラウンドゴルフの人たちの姿はなかった。
　慣例だが、私たちのメンバーは、全員がハンドマイクを手にすることにしている。この方式が身についていて、順番がくると、誰もがまったくこだわりなく、マイクに手を伸ばす。Ｓさんのうったえが終わった時、思いがけず公園のベンチから拍手が起こった。こんなことはこの十数年ハンドマイクをやってきて、そうあることではない。にわかに私たちの意気は上がった。
　桃太郎行進をしながら、すれちがう見知らぬ人に挨拶をすると、かなりの人々がやさしい笑顔を返してくれる。「がんばって下さい」「ご苦労さまです」などという言葉が返ってくる。こんなことは最近の選挙ではなかった。若い頃たたかった美濃部選挙の時のことを思い出した。この日は十回うったえて、二時間半ほどで終了した。
　勢いにのって、翌々日の二十八日もおこなった。この日は午前十時から正午までだった。この日も曇っていたが、秋らしい涼気が漂う日だった。
　静かな日曜日の午前中、商店街の裏側の道を歩いた。参加したのは四名、男性二名、女性二名のメンバーである。
　人通りは少ない。しかし、街の風景は一昨日と同じで、こちらが挨拶するとやさしく返してくれる。どうして、こんなに人々はやさしいのだろう。
　「自民党内の政権たらいまわしでも、自民党と民主党の政権のキャッチボールでも、政治は変わりません。肝心の『政治の中身を変える』ことが必要です」
　ここのくだりになると声がひときわ大きくなる。まさにマスコミは、二大政党、政権選挙を大々的に宣伝している。私たちは本当の争点を明らかにしてたたかわなければならない。
　曇天の下、木々の葉はそれぞれ季節の色を濃くしていた。
　ひらせ・せいいち　作家。『鳥たちの影』（多喜二・百合子賞）、『光の中に歩みいでよ』（党創立６０周年記念文芸作品入選）、『時を繋ぐ』ほか。
( ２００８年１０月０２日，『赤旗』) （Page/Topへ）

総選挙勝利へ新パンフで宣伝、対話／静岡・島田／新潟／岐阜
〝自民党は反省ない〟／静岡・島田
　日本共産党のパンフレット『私たちはこんな新しい日本をめざしています。』を使った宣伝、対話が静岡県島田市で始まっています。
　同市では、比例二議席以上の獲得をめざし、ひらが高成衆院東海比例候補の「まちかど演説会」を一日に開催します。松本敏、桜井洋子両市議は九月二十八日、その演説案内とともにパンフレット五百五十部を配り、有権者と対話しました。
　桜井市議からパンフレットを手渡された女性＝元幼稚園長＝は、「テレビは麻生首相のことで大騒ぎ。二人続けて政権を投げ出したことに自民党はまったく反省がない。子どもたちの将来のためにも核も戦争もなくしてほしい」と言います。
　桜井市議が「国民の今の苦しみをそっちのけにした政治を早く変えたいですね。マスコミを使った異常な宣伝にだまされないで政治の中身をこそ、変える選挙にしていきましょう。日本共産党は九条を守り核兵器廃絶を綱領に明記している党です」と話すと「国民がしっかりした政治的教養をもたないといけない。一票だけど共産党に入れます」と話しました。
　宣伝カー付近の畑で農作業をしていた女性に、党員が「今の政治をどうご覧になっていますか」と声を掛けると、女性は、「官僚の天下りをやめさせたい。自民党は駄目だけど民主党もいまいちなのよね」と言います。
　党員がパンフレットを示して、「天下りの根っこに『政・官・財』の癒着があり、民主党は官僚批判をしますが財界を批判できません。企業・団体献金をもらっているからです。企業・団体献金をもらわない共産党を大きくしてこそ天下りをやめさせることができます」と訴えると、「共産党は企業から献金をもらわず、自前でやっているのね。がんばって」。
　宣伝カーのアナウンスを聞いて店から飛び出してきて大きく手を振る人や、「公明党を上回る議席をとって」と期待を寄せる人もいました。

〝政治変えなくちゃ〟／新潟
　日本共産党新潟県委員会は三十日、新潟市の万代シティで、党の新パンフレット『私たちはこんな新しい日本をめざしています。』の配布・宣伝活動をしました。小日向昭一委員長、たけだ勝利衆院北陸信越候補（新潟１区重複）らが参加しました。
　たけだ候補が「日本共産党は派遣労働をやめさせるために力を尽くします。政権の担い手を代えるだけでは政治は変わりません。日本共産党は大企業中心・アメリカいいなりの二つの政治悪を正し、政治の中身を変えて、新しい日本をめざしています」と訴えました。
　信号待ちしていた女性から「政治は変えなくちゃだめ。頑張ってください」と声がかかりました。
　勤務員がパンフを開き、「『蟹工船』を知っていますか」と声をかけ対話した青年は、「知っているし、読んだ」と答えました。すかさず「作者の小林多喜二は日本共産党員だったことは知っていますか」と話すと、「そうなんだ。頑張ってください」と激励しました。

〝ずっと前から応援〟／岐阜
　鈴木まさのり衆院東海比例候補（岐阜１区重複）は二十八日、党パンフレット『私たちはこんな新しい日本をめざしています。』をつかって十カ所で宣伝しました。
　鈴木候補は、日本共産党が「後期高齢者医療制度」の廃止や派遣労働の規制強化への転換に大きな役割を発揮したことを語り、「今の政治を変えるために共産党を伸ばしてください」と訴えました。
　各務原市内のスーパー前での宣伝では、買い物に来た人たちが関心を寄せ、鈴木候補の演説を聞いていました。また、車から声援が送られました。パンフレットはほとんどの人が受け取りました。岐南町では、畑仕事をしていた人が聞き入り、アパートの窓から聞いている人もいました。
　パンフレットを渡しながら対話し、事務所開きの日程を知らせました。近所に住む男性は、「ずっと前から応援している」と激励しました。
(２００８年１０月０１日，『赤旗』)（Page/Topへ）

俳壇／話題の『蟹工船』

　文学の森『俳句界』九月号は、「小林多喜二の隠れ宿」という矢島康吉氏（「朴の花」編集長）のエッセーを掲載している。
　「２００８年５月になると、『蟹工船』の報道はピークに達し、新聞、週刊誌、テレビでは、みのもんたの「朝ズバ」でも取り上げた」―「上野駅構内の書店に行ってみた。入口に新潮文庫の『蟹工船・党生活者』が、山のように積まれていた。週に８０冊売れて、この店の文庫売上げベスト３に入っていた」と紹介。そしてその背景として『蟹工船』のマンガ化、その広告が赤旗日曜版と朝日新聞に載ったこと、『蟹工船』の読書エッセーコンテストに多くの応募があったことを指摘。またその感想に、「フリーターや派遣労働者は、『蟹工船』は遠い過去の話ではなく、状況は今も生きているのではないか」と述べられていたと矢島氏は続ける。まさにである。
　今日の新しい「貧困と格差」の結果であることは間違いない。
　矢島氏は「多喜二は、日本共産党への資金援助と、『蟹工船』の最後の方で、『献上品』の蟹缶に『石ころでも入れておけ！――かまうもんか！』という５、６行の文章で不敬罪の追起訴を受け」一九三〇年に収監され、一九三一年保釈出獄。神奈川県七沢温泉の福元館に一カ月逗留し、『オルグ』を書きあげたと紹介。氏もこの福元館を訪ね多喜二を偲んだと一句を添えている。
　小鳥来る小林多喜二の隠れ家に　康吉
　『蟹工船』はいま大きなブームとなっているが、俳人の中でも話題が広がっている。
　新俳句人連盟の『俳句人』九月号では、多喜二や『蟹工船』を詠った句が増えている。
　青年眩し『蟹工船』の漫画本　後藤蕉村
　読み返す『蟹工船』や街薄暑　秩父豊仙
　等時宜に適している。
　大いに現代の『蟹工船』であるひどい「貧困と格差」を告発すべきではなかろうか。
　（千曲山人・俳人）
( ２００８年１０月０１日，『赤旗』)

【9月】（Page/Topへ）

文化／俳人現代俳句協会会長宇多喜代子さん／俳句には人を救う力がある

　人生の悲しみ喜びを十七文字に詠み込んだ女性俳人たち。俳人、宇多喜代子さんの『女性俳句の光と影』（ＮＨＫ出版）は、明治、大正、昭和と、時代の厳しさをまといながら生み出された句の数々を現代によみがえらせます。「残された句は、明日への財産」と宇多さんは語ります。
　児玉由紀恵記者
　「俳句」という呼び名が明治時代に定着してまだ百余年。そのなかの女性俳句史が書かれています。
　「女の俳人は、点としては研究されているのに、線として、表現史としては表に出なかった。俳句ブームといわれながらふしぎなことでした」と宇多さん。

「台所雑詠」から
　１９１６（大正５）年１２月、高浜虚子が、俳誌『ホトトギス』に「台所雑詠」欄を設け、女性の投句を呼びかけます。近代の女性俳句の始まりです。その欄に、２０代で登場したのが杉田久女や竹下しづの女でした。
　苦闘の中で〈足袋つぐやノラともならず教師妻〉と詠んだ久女。男社会で「職業婦人」となり、〈汗臭き鈍の男の群に伍す〉という句を残したしづの女。
　さらに、昭和初期にかけて名が知られ始め、「４Ｔ」と称された４人の俳人―〈外にも出よ触るるばかりに春の月〉とうたった中村汀女や、〈初嵐して人の機嫌はとれませぬ〉と潔い三橋鷹女らのこと…。
　時代とのかかわりを明らかにしながら「女性俳句史に杭を打ち立てた」人々を記します。語りかけるような文章から、俳句に接する喜びに誘われます。
　戦争や病、恋、老い、別れ。さまざまな苦悩の中から多くの人に愛される句が生まれている―そこに俳句定型が持つ、人を救済する「瞬発力」がある、と。
　底流を貫くのは、先人への深い思いやりです。
　「多くの人が、不如意の人生を送っています。私自身が、先輩たちの句を読んで心の琴線を震わせる体験をしていますから。良い句からは、作者のフルネームが立ち上がってきますね。自分の言葉で、飾らずに自分を出している句です」

いとおしさが
　昭和初期に生まれた、俳句革新の新興俳句運動。そのなかに少数ながら存在した女性俳人にも光を当てています。〈戦死せり三十二枚の歯をそろへ〉と詠んだ藤木清子もその一人。
　戦時中、この運動にかかわった俳人が治安維持法違反容疑で検挙・投獄され、運動は終息。俳句表現によって弾圧された不幸な歴史を、「俳句史をつづるうえでけっして忘れてはならぬこと」と記しています。
　「戦争中に、今ぐらい多くの人が俳句をつくっていれば、夫や父のいない暮らしぶり、本音などが、作品から伝わったのですが」
　作家たちへの尊敬といとおしさも伝わってきます。〈炎天の一片の紙人間の上に〉と召集令状を詠んだ文挟夫佐恵。１９１４年生まれ、女性俳人の最高齢です。〈春暁の焼くる我家をしかと見き〉と詠んだ桂信子は、大阪大空襲の炎が迫るわが家から句稿をふところにして逃れ、戦後、貧苦のなかで句集を出版。宇多さんが師事した人でした。
　そして印象深い鈴木しづ子。宇多さんは、〈夏みかん酸つぱしいまさら純潔など〉の句で〝性愛俳句〟と称された彼女の知人を探し出し句作が彼女の独白手段だったと悟り、句の背景の戦争の傷跡も判明させます。
　「戦後、電気製品の普及で、女性が家事労働から解放され、すごい勢いで俳句人口が増え、〝電気釜俳句〟なんてからかわれたこともありました。何と言われようと、女性が自己表現のための俳句を学ぶのは良いことです。女性史的にも画期的なこと。〝おまいり〟に行く、と言わなければ、女性は句会にも出られない時代さえあったのですから」
　宇多さんは、金子兜太、松澤昭両氏の後を継ぎ、０６年から女性で初めて現代俳句協会会長に｡俳句史に｢杭を打ち立てた」一人です。句を詠み始めたのは高校時代。ある僧侶との出会いが俳句人生の始まりでした。
　「赤貧洗うがごとし、といった方で、どんな句であろうとほめられて、うれしくて続けました。高潔な人たちに巡り合えて、それが人生最高の幸せですね」
　〈兵の死に砂一握を奉る〉喜代子

うだ・きよこ＝１９３５年、山口県生まれ。『草苑』創刊に参加し７８年から編集長。第２９回現代俳句協会賞、第３５回蛇笏賞受賞。句集『りらの木』『夏月集』『象』、評論集『ひとたばの手紙から』『里山歳時記　田んぼのまわりで』『つばくろの日々』など
(２００８年０９月２８日，「赤旗」)（Page/Topへ）

治維法国賠同盟ブロック会議新篠津村で開く

　治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟道本部（外尾静子会長）は二十四、二十五の両日、新篠津村で道ブロック会議を開きました。
　中央本部の近江谷昭二郎副会長が「同盟運動の新たな前進のために」と題して講演。「治安維持法は、日本共産党を壊滅させるためにつくられ、当時の刑法でも許されていない拷問や検挙を乱用した。国際人道法に照らしても許されず、国家は賠償しなくてはならない。戦後補償問題では、世界で日本が最も遅れている」と語り、同盟が治安維持法犠牲者の国家賠償を求めている運動の法的根拠とその正当性を明らかにしました。
　この後、署名、組織、顕彰の三つの分科会に分かれて全員が発言。近江谷さんの話に学んで、討論と経験を交流しました。
　「国家賠償要求の署名を年内に目標の６０％をやる。そのために活動の範囲をいままで以上に広げたい」「会員拡大を意識的、計画的にすすめる」「総選挙と結合して同盟活動を旺盛にしたい」との発言が相次ぎました。
　会議では、日本共産党の高橋至新篠津村議があいさつしました。
(２００８年０９月２８日，「赤旗」)（Page/Topへ）

私たちの〝老人力〟信頼してください／北海道委員会名誉役員外尾静子さんに聞く

　党中央役員、国政候補として奮闘してきた外尾静子さんはいま、北海道委員会の名誉役員です。居住する苫小牧市では、地区委員会と協力し、ベテラン党員に声をかけ、選挙活動への参加をひろげています。外尾さんに話を聞きました。
　私は、腰を悪くして、足が不自由になり、つえをついて歩いています。でも、治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟の北海道本部の会長、うたごえ運動、短歌など趣味のサークルの活動で、日々忙しく過ごしています。地区委員会も、私が〝忙しいのでは〟と遠慮されて、あまり、お手伝いもできずにきました。
　今回、地区委員長から「市田忠義書記局長を迎える街頭演説を成功させたい。手伝ってもらえないでしょうか」と声がかかりました。とてもうれしかった。地区に出かけて、名簿を見せてもらい、電話で知っている党員に、演説会と、選挙活動への参加をよびかけました。
　相手は、みんな７０歳以上です。「懐かしいね」と声をかけると、「夜は出歩けない」とか、「身体の調子が悪くて」とか、〝申し訳ない〟との思いが伝わってきます。「私も腰が悪くてね」というと、互いにいたわりあう話になります。「気持ちはあるんだけど」といいますので、「党員でいることが何より。お体を大切にして、若い人を励まして」というと、とても喜んでくれ、懐かしい思い出と、党員としての誇りが語られました。
　後期高齢者医療制度など、いまの政治への大きな怒りと、「こういう世の中を変えなくちゃ」との決意は大きく、「自分自身のことを話しながら、対話し、支持を広げられるわね」というと、どの党員も、「そうね」とこたえてくれました。
　街頭演説に誘うと、「行きたい。でも、足が悪いので」の返事だったので、「バスが出るからね」と紹介すると、「それじゃあ」と、参加した人もいました。
　どの党組織にも、昔、先頭に立ってがんばっていた党員がいると思います。７０、８０代になると、とても大事にしてくれます。けれども、遠慮して、声がかからなくなっていることが、少なくないのではないでしょうか。
　いま、地区委員会は大変です。少人数で、ご飯を食べる時間も惜しんで活動しています。健康を害している地方議員もいて、苦労なさっています。昔がんばっていた私たちに、「何か手伝ってくれますか」と、声をかけてほしいと思います。〝ベテランに、雑用させては〟なんて思わないで、私たちに、できる仕事をさせてもらうと、喜びになります。
　党員の悩みを聞き、おしゃべりをして、励ましていくことはできると思います。昔からがんばってきた私たちは、今度こそ勝ちたい、このチャンスを生かしたい思いが、とても強いのだから、〝老人力〟を信頼してほしいと思います。
( ２００８年０９月２５日，「赤旗」)（Page/Topへ）

満州事変７７年／富山でつどい

　アジアと世界の平和・友好を考える「９・１８『満州事変』７７周年のつどい」が十八日、富山市内で開かれました。日中友好協会富山支部、富山県歴史教育者協議会、治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟富山県本部、富山県ＡＡＬＡ連帯委員会、安保破棄・諸要求貫徹富山県実行委員会の五団体が実行委員会をつくって開いたもの。
　日中友好協会富山支部の堀口尚支部長は開会あいさつで、「戦争で日本がアジアの人々二千万人を殺した事実は国民にあまり知られていない。中国では日本人は鬼と呼ばれていた。日本の加害事実を国民全体に知らせることは大切」とのべました。
　県歴史教育者協議会の松浦晴芳氏が、日本の中国侵略の経過や歴史の歪曲（わいきょく）・戦争美化の策動などについて基調報告。ドキュメントビデオ「教えられなかった戦争　中国編―侵略からの解放・革命」を上映しました。
　参加者からは「映画をみて、改めて中国の方々におわびしないといけないと思った」などの意見が出ました。
(２００８年０９月２４日，「赤旗」)（Page/Topへ）

共産党員の伊藤千代子没後７９周年で集い

　戦前、治安維持法違反として検挙され、拷問に屈せず、二十四歳で亡くなった日本共産党員、伊藤千代子の命日の前日に当たる二十三日、「没後七十九周年・伊藤千代子のつどい」が東京都内で開かれ、約三百人が参加しました。
　「つどい」は、ソプラノ歌手の中村洋子さんが組曲「伊藤千代子に捧げる」などを歌い、俳優の遠藤真弓さんが千代子の手紙を朗読して開会。「在京伊藤千代子の会」会長の畑田重夫氏が、総選挙を目前にしたこの時期に、「つどい」を開く意義をのべました。
　「伊藤千代子といわさきちひろ」と題して、松本善明弁護士・日本共産党名誉役員が記念講演。十一期、衆院議員を務めた松本氏は「初当選したころは、ちひろは善明さんの奥さんと紹介されたが、今はちひろの夫と紹介される」と会場を笑わせながら、ちひろの絵と人生を解説。千代子については、「彼女の生き方、人生そのものが芸術であり、感動を与える」とのべ、千代子の四通の「獄中最後の手紙」をもとに彼女の不屈の人生を語りました。
( ２００８年０９月２４日，「赤旗」)（Page/Topへ）

党議席回復碑前に誓う／あらたに４９人を合葬／札幌

　日本共産党道委員会は二十一日、「北海道で活動した日本共産党員の墓碑第十六回合葬者追悼会」を札幌市南区で行いました。
　墓碑は北海道で日本共産党の歴史を刻み、国民のために生涯をささげた党員の献身的な活動をたたえ、長く記録にとどめるものです。戦前、命をかけてたたかった小林多喜二や野呂栄太郎、今野大力らもとむらわれています。黒御影石の上段に党章のレリーフと「不屈」の文字が彫られています。
　新たに四十九人が合葬され、墓碑の合葬者は千二百九十四人となりました。秋の気配がただよう静かな墓苑には遺族や関係者、約百五十人が集いました。
　西野敏郭委員長は「国民本位のルールある社会をつくる新しい政治への道がいよいよ避けられない時代に入りました。墓碑に眠る同志のみなさんの不屈のたたかいに学び、目前の衆院選で北海道から必ず議席を獲得する決意です」と追悼の言葉を述べました。
　宮内聡衆院比例候補のメッセージが紹介され、遺族を代表し西浦博美さんがあいさつしました。西浦さんは、父・源吉さんの思い出と「父と先人のたたかいを受け継ぎます」と決意を語り、関係者に感謝を述べました。
　追悼会を終えた参列者は懇親会で、故人の思い出や衆院選勝利を語り合いました。
(２００８年０９月２３日，『赤旗』)（Page/Topへ）

小林多喜二と手塚英孝／新装版『小林多喜二』刊行を喜ぶ／土井大助

弾圧と戦禍の無二の盟友／戦後の全集編さんが今に生きる
　小林多喜二虐殺の直後、彼より三歳若くなお地下活動中の手塚英孝が「一労働者」名で、『大衆の友』多喜二記念号外（一九三三・三・一○）に寄せた「同志小林多喜二を憶う」はこう書き出されている。
　「同志小林は、実に断乎とした撓むことを知らぬ、溢るるばかりの戦闘的熱意とを持った真にボルシェビーキー典型だった。／私が彼に初めて会ったのは一年許り前である。実を云うと私はこの勝れた人物を想像して何か堂々とした紳士（？）を思い浮べていたのであるが、会ってみると彼は丸切り予想とは違った小男だった。私は初めは人違いではないかと思ったが、直ぐその事を話して大笑いをした。」
　当時二十六歳の手塚さんは、三一年四月『ナップ』に処女作「虱」を発表してプロレタリア文学運動に参加、多喜二最晩年の懸命の活動をともにしていた。この追悼文は、「同志小林は既に居らぬ。併し彼の偉業、彼の流した血は、幾千万の労働者、農民の血潮となり、プロレタリアの旗になるであろう。」と結ばれている。

禁書・資料散逸困難のなか献身
　戦中、多喜二の文学はすべて禁書。資料も散逸を免れず、関係物故者もあいついだ。手塚さんが「小林多喜二の編纂に専心することになった」のは、敗戦翌年の八月ころ、宮本百合子に全集の仕事をうけもつようにいわれてからだ、という。「小林多喜二は、ふかく心にきざまれている私には師友のようななつかしい間柄だった。長年の弾圧と戦禍の直後ではあったし、容易なことではないとは思ったが、数年間、私はこの仕事に心身をうちこもうと決心した。そのときには、その後半生の仕事になろうとは思いもしなかった」（「二人のお母さん」）。こうして、各地を回っての資料収集・整理・照合から編集・刊行まで、実務とその指導に手塚さんは献身し、多喜二全著作の復元を果たした。加えて綿密な評伝「小林多喜二」の執筆。手塚英孝なしに、今日の「蟹工船」ブームはありえなかっただろう。
　新資料の発見、新事実の発掘があれば、その確認と伝記の改訂も喜んで重ねた。作品でも、「蟹工船」の原稿（全編十章中四章まで）発見のとき、たまたまぼくは赤旗文化部記者として、それが全集刊行委員会の壷井繁治宅に届けられるときき、提供者に取材した。原稿の筆跡鑑定は、数多いノート稿まで幾度も通読してきた手塚さんの確認によった。結果多喜二直筆と確認され、定本全集のその巻は原稿通り改訂のうえ刊行されたのである。
　評伝でも「党生活者」のモデル工場名、奈良の志賀直哉訪問の時期、「オルグ」執筆の温泉宿の地名など、新日本新書版中で誤記とされた部分はその都度厳密に補訂された。

学習と社会活動「ぼくの北極星」
　「『定本・小林多喜二全集』発刊にあたって」、手塚さんはこう書いた。「弾圧と、戦争による荒廃の二重の困難をうけながら、戦後、全集編纂の事業がうけつがれた。資料集成の仕事をつうじて、なによりもつよく感銘をうけたことは、小林多喜二の業績にたいする日本人民の支持と共感がいかに深く、根づよいものであるかということであった」と。そういう気運の後押しがあったからこそ、数年どころか八一年末急逝されるまでの三十数年、多喜二全集編纂と評伝「小林多喜二」執筆・補訂に精魂を傾けられたのである。
　珠玉の短編を遺しつつ寡作の人と惜しまれた手塚英孝は、無二の盟友の評伝を、生き残ったわが仕事として引き受け、文学史上稀有の伝記文学を成立させた作家である。とりわけ、巻末の「回想」は一編の実話小説とも読める。そこには当時の青年革命家たちの不屈な奮闘ぶり、元気で陽気に互いを愛称で呼びあう若々しい人間関係が活写されている。
　遅まきでなお初歩的なぼくの多喜二研究は、手塚さんから直接頂戴した新書判『小林多喜二（上下）』に徹頭徹尾依拠しつつ今日に至った。その本はぼろぼろに傷んでいるが、手放せない。評伝『小林多喜二』は、ぼくの多喜二学習と社会活動の「北極星」である。その新装版の刊行は嬉しい限りである。
　（どい・だいすけ　詩人）
( ２００８年０９月２３日，『赤旗』)（Page/Topへ）

語ろう総選挙／「蟹工船」時代から日本共産党は／新総裁に麻生氏が選ばれたけれども

「蟹工船」時代から日本共産党は
　七十九年前に書かれた戦前の小説「蟹工船」が、派遣などで働く若者に共感を広げ、ベストセラーになっています。北の海で奴隷労働を強いられる労働者が、団結して立ち上がる姿を描いた小説です。作者の小林多喜二は日本共産党員でした。
　多喜二は、貧しい農民や労働者に心を寄せ、国民が主人公の日本をめざす日本共産党に加わりました。中国への侵略戦争に反対する活動をしたために、特高警察に捕まり、拷問で殺されました。
　戦前は、国民主権、反戦・平和を訴えただけで厳しく弾圧されました。命を奪われた日本共産党員は多喜二だけではありません。
　日本共産党という党の名前には、戦前から一貫して国民主権と反戦・平和を訴えてたたかった歴史が刻まれています。私たちは、この党名に誇りを持っています。
　また、日本共産党という党名には、搾取のない自由で民主的な未来社会へのロマンもこめられています。
　いま投機マネーの暴走や地球環境問題など、利潤第一主義という資本主義の下では解決困難な問題に人類は直面しています。日本共産党は、まず資本主義の中での「ルールある経済社会」の実現をめざします。同時に、資本主義の枠を乗り越えた未来社会を展望しているのです。

新総裁に麻生氏が選ばれたけれども
　自民党が国民そっちのけの総裁選のあげく、麻生太郎氏を新総裁に選出しました。しかし、総裁選は、国民が直面している暮らしの不安、将来への不安に何一つ応えたものではありませんでした。
　若者を「使い捨て」にする派遣労働の問題は、議論さえありませんでした。一方で、汚染米、年金記録の標準報酬月額の改ざん、金融不安と足元から問題が噴出し、国民の不安はいっそう増大しています。自民・公明に政権担当能力がないことは明らかです。
　お年寄りを七十五歳という年齢だけで差別する後期高齢者医療制度は、「極めて合理的」だと擁護していた厚労相が見直しを言い出し、麻生氏も「抜本見直し」を口にしました。与党が固執してきた制度の破たんを自ら認めざるを得なくなったのです。
　しかし、中身はさだかではなく、今後一年かけて議論するというもの。国民の怒りはおさまりません。この制度の原型がつくられたときから唯一反対を貫いてきた日本共産党を、今度の総選挙で伸ばして、撤廃へきっぱり決着をつけましょう。
( ２００８年０９月２３日，『赤旗』)（Page/Topへ）

地域・職場で革新懇結成／東京・東久留米／愛媛・今治

東京・東久留米
　東京都東久留米市で東久留米革新懇結成のつどいが二十一日、開かれ、雨のなか七十七人が参加しました。
　三上満全国・東京革新懇代表世話人が、「宮沢賢治研究家が『蟹工船』を語る」と題して、記念講演を行いました。
　三上氏は「蟹工船における労働は、周旋屋、手配師による人集め、成果主義、アメとムチの支配、分断政策と手口など、いまの派遣労働と驚くほど通じている」「たたかってこそ人間、変革への展望を今こそ語り合おう」と話しました。
　参加者からは「蟹工船ブームはどうして起きたのか」「どうして多喜二は命を捨ててまでがんばったんだろう」などの質問が次々と出ました。
　結成の申し合わせでは、「大規模店舗イオン進出の問題にもとりくむ必要がある」「もっと共同を広げよう」「女性の世話人をもっと増やそう」などの積極的な発言があり、提案は確認されました。

愛媛・今治
　愛媛県今治市の自治体労働者やＯＢなどでつくる今治自治体職場革新懇が十九日、結成されました。八月以来、相談会を三回開き、会員が約三十人に広がっています。
　総会では、自公政治のゆきづまりがあらわになっているいま、「国民が主人公の政治」をめざす革新懇運動の出番の時だと訴える運動方針を確認。自治体をめぐる動きをリアルにつかみ、憲法や平和を守る活動を重視することにしています。
( ２００８年０９月２３日，『赤旗』) （Page/Topへ）

共産党はどんな日本をめざすか／志位委員長が講演／経営塾フォーラム

　企業経営者らが参加する第二百五十六回「経営塾フォーラム」（針木康雄代表）が二十二日、東京都内で開催され、日本共産党の志位和夫委員長が講演しました。
　経営塾の針木代表の紹介で壇上にあがった志位氏は、「今日は、日本共産党がどんな日本をめざすのかについてお話ししたい」と述べ、ユーモアも交えて講演しました。
　志位氏は、日本共産党が利潤第一主義の社会を乗り越えた社会を展望していることを語りながらも、「私どもが、まずやるべき課題と考えているのは、資本主義の枠内での改革です」と強調。①「ルールなき資本主義」とよばれる異常な大企業中心主義②アメリカいいなりの従属関係―の二つの転換の必要性を述べるとともに、小林多喜二の『蟹工船』ブームや若者がおかれている雇用の実態などにも迫って、日本共産党の立場を説明しました。
　志位氏が「私たちがめざす当面の改革は、どちらも資本主義の枠内でおこなう改革です。だから、みなさんとも『共存、共栄できる関係』と考えております｣と訴えると､会場も大きくわきました。
( ２００８年０９月２３日，『赤旗』)（Page/Topへ）

日本共産党がのびれば政治は必ず変わる／志位委員長の訴え／東京・新宿／

　日本共産党の志位和夫委員長が二十日、東京・新宿駅東口でおこなった街頭演説は次の通りです。

大企業中心、アメリカいいなり――「二つの政治悪」を正面からただす
　いよいよ待ちに待った総選挙が目前に迫ってまいりました。私は、今度の選挙は、がんばりぬけば日本共産党が前進、躍進できるチャンスの選挙だと考えています。
　九月七日、京都市南区で市議補選がありました｡定数一を争う選挙で､自民党と共産党の一騎打ちのたたかいでしたが、後期高齢者医療制度が大争点となり、ふたを開けてみたら、びっくりする結果が出てきました。共産党候補が一万票以上を獲得し、自民党候補に二千票以上の差をつける圧勝となりました。（拍手）
　私たちは、九月十二日から全国遊説を開始していますが、どこでも盛況です。自民党の総裁選の方はしぼむ一方ですが（笑い）、私たちの方はたいへんな盛り上がりであります。（拍手）
　ただ、みなさん、選挙は風頼みでは勝てません。私たちは、自ら風を起こし、チャンスを勝利という結果に必ずつなげるためにがんばりぬきますので、どうか絶大なご支持を共産党にお寄せください。よろしくお願いいたします。（拍手）
　いま、国民のみなさんが解決を願っているどんな問題も、根っこをたどると、あまりにひどい大企業中心、異常なアメリカいいなりという「二つの政治悪」にぶつかるのではないでしょうか。この「二つの政治悪」を正面からただし、政治の中身を大もとから変える、この立場に立ってこそ国民の願いが実現し、国民の利益にかなった新しい日本をつくれます。このことを正面から掲げて、共産党は今度の選挙で躍進をめざしたい。この決意を申し上げるものです。（拍手）

暮らし不在の自民党総裁選――汚染米でも根本にある自民党農政を問う議論なし
　まず暮らしの問題です。
　いま、自民党の総裁選挙をやっていますが、一言でいってあまりに暮らし不在だと思います。国民の暮らしの不安、苦しみに正面から向き合い、具体的にどう打開していくのかのまじめな議論がまったく見られない。
　たとえばいま汚染米――農薬やカビ毒で汚染された米が、給食や焼酎やお菓子に使われていたということが大問題になっています。もちろん、悪徳企業の責任は重大ですし、汚染米とわかっていながら流通に回していた農水省の責任も重大で、大臣の首をすげかえたくらいですむ問題ではありません。（「そうだ」の声、拍手）
　ただ、この問題は、もっと根本を見ますと、自民党の農政そのものに二重の重大な責任があると、私は言いたいのです。
　第一に、年間七十七万㌧ものお米をミニマムアクセス米＝輸入米として日本に入れている。国民のみなさんが必要でもないお米を毎年輸入している。汚染米も八割は輸入米でした。みなさん、日本の国民の主食を輸入に頼るというのは根本から間違っているのではないでしょうか。（「そうだ」の声、拍手）
　第二に、「小泉改革」の農業版――二〇〇四年に実施された「コメ改革」というのがある。この時にお米を扱う業者の許認可制をいっさい取り払って、届け出さえすればだれでも米売買に参入できるようにしてしまった。国が米流通の管理責任を完全に放棄してしまった。この規制緩和をやったことが、悪質な業者の横行につながり、こういう問題が起こっても、いったいどこに汚染米がいっているのか、つかむことすらできない政治の体たらくを招いてしまっているのです。
　こうした問題を大もとから解決しようと思ったら、必要のないミニマムアクセス米の「義務」的輸入は中止すべきです（拍手）。お米の流通の管理責任を国はしっかり果たすべきです（「そうだ」の声、拍手）。そして、「安全な食料は日本の大地から」――食料自給率の向上のためのとりくみを、国は本腰を入れてやるべきだということを強く訴えたいと思います。（拍手）

人間らしい労働のルールを――労働者とともに「潮目の変化」をつくった共産党
　自民党は、暮らしについて語る中身を失ってしまった。でも、国民の側からすれば、大争点はたくさんあります。
　たとえば働く貧困層の問題です。「ワーキングプア」と呼ばれる、懸命に働いても貧困から抜け出せない、そういう人が数百万人という規模で広がっています。その原因は、人間らしい労働のルールを壊してきたことにあります。共産党は、その一番の象徴となっている派遣労働の問題に力を入れてとりくんできました。
　いま派遣労働者は、三百二十一万人まで広がっていますが、その七割は登録型派遣といって、派遣会社に登録だけしておいて、仕事があるときだけ雇用される、明日の仕事があるかどうかわからない、究極の不安定雇用を強いられています。派遣会社にマージンとして三割、四割ともっていかれますから、必死に働いても手取りは十万円そこそこです。
　今日は製造現場、明日は物流倉庫と使い回しされるもとで、労働災害が後を絶ちません。「倉庫作業だと言われて行ってみたら冷凍庫だった。零下二五度の世界で一日働いたら両手とも凍傷になってしまった」ということも訴えられました。私はその若者に、真っ赤になった手を見せてもらいました。「まだひきつって物もつかめない」という訴えです。昨年一年間だけで、派遣労働者で労働災害で亡くなった方は三十六人に達しています。若者を、人間をモノのように「使い捨て」にする、こんなやり方には未来はないということを私は訴えたいのです。（拍手）
　私が、わけても許すわけにいかないのは、キヤノン、トヨタ、松下といった世界的大企業といわれる企業が、正社員を減らし、非正規雇用を増やし、そのことで大もうけをあげていることです。
　私は、二月の予算委員会の質問で、キヤノンの派遣労働の実態を告発し、六月には滋賀県長浜の工場に調査に行きました。派遣労働者として働いていた若者は、私にこう訴えました。「私たちは、二重の搾取を受けている。まずマージンをピンはねされている。それにくわえて寮に住まわされて、寮費、電気代、水道代、テレビ代、布団代、冷蔵庫代、給料から引かれて手取りは十万円以下です」
　私は、寮というところに行ってみました。一つの部屋を、ぺらぺらの壁で三つに区切って、一人当たりの部屋はたったの三畳です。小さな小窓がついている、まるで刑務所の独房ですよ。寮の入り口にあるコンビニを経営しているのも派遣会社です。ひどい高い値段で売りつけている。
　巨大企業が、こうやって生きている人間を搾れるだけ搾って、モノのように「使い捨て」にする、こんな働かせ方は絶対に放置するわけにはいかないと思うのであります。（「その通り」の声、大きな拍手）
　この問題では「潮目の変化」が起こってきました。全国各地で労働者が違法・無法な実態を告発し、たたかいに立ち上がっています。いま小林多喜二が七十九年前に書いた『蟹工船』が大ブームですね。あの小説には、戦前のカムチャツカで操業する蟹工船のなかでの奴隷労働が描かれていますが、最後の場面は、労働者がそれに抗してストライキで立ち上がる、軍隊が出てきて弾圧する、しかし最後の言葉は、「彼等は、立ち上がった。――もう一度！」という希望ある言葉で結ばれています。それを若者たちが読んで、連帯して立ち上がろうとしている。ここに私は、日本の未来があると考えるものであります。（拍手）
　こういう流れのなかで、日本共産党も、この問題にとりくみ、国会で大いに追及してきました。そういう力があわさって、これまで規制緩和一辺倒だった労働法制が規制強化の方向に、潮目が変わりつつあるではありませんか（拍手）。与野党を超えて派遣法の改正が必要だという議論が出てきました。
　キヤノンに調査にいったさいには、キヤノン本社から諸江（昭彦）さんという専務が出てきて二時間半ほどきびしいやりとりになりました。キヤノンの側は「年内に製造派遣は解消する」という約束をせざるをえませんでした（拍手）。ただし、こんどは期間工や請負という、これも「使い捨て」の労働に置き換えるということですから、問題は解決していません。期間工の労働者は、時給制ですから、盆と暮れになると工場が休みになって、手取りがうんと減ってしまうという問題もある。正社員ならボーナスがある月に手取りが減る。これはなんともひどい。私は、こういう話をきいて、諸江専務にこの問題をつきつけたら「検討する」と約束しました。私がキヤノンに調査に入って、十日後、盆と暮れに休業手当が、四万円ですが支給されることが決まったということもご報告しておきたいと思います。（拍手）
　労働者と共産党のたたかいが政治を前に動かし、巨大企業も動かしつつある、このことに大いに自信を持って、つぎのたたかいにのぞみたいと決意しています。（「がんばろう」の声、拍手）
　どうしてここまで、「使い捨て」労働が広がったか。一九九九年に、それまで派遣労働は専門業務に限られていたものを原則自由化にしてしまった、この派遣法大改悪が大きなきっかけとなりました。このときに、そのたくらみを見抜いて反対を貫いたのは日本共産党だけでした。（拍手）
　このときは共産党だけだったけれど、いまやその声は多数の声となって、一九九九年の原則自由化は大間違いだったということが、これだけはっきりしたんですから、九九年の前にもどす派遣法の抜本改正が必要です（拍手）。そして、派遣であれ、請負であれ、契約社員であれ、人間をモノのように「使い捨て」にする非正規雇用から正社員への転換こそ必要であります（拍手）。さらに正社員のみなさんの長時間過密労働、「サービス残業」をなくせということも訴えたい。どうか人間らしい労働のルールをつくろうという願いを、日本共産党に託してください。（大きな拍手）

後期高齢者医療制度――最初から一貫して反対貫いた共産党をのばして撤廃を
　社会保障の問題はどうでしょう。後期高齢者医療制度への国民の怒りはつのる一方です。こともあろうに、終戦記念日の八月十五日に、三回目の年金からの天引きがおこなわれました。四回目は十月十五日。今度は、これまで天引きされてこなかった「後期高齢者」の方から新たに三百二十五万人が天引き。さらに六十五歳から七十四歳までの「前期高齢者」の国保料も天引きになる。こちらは約三百万人。あわせて新たに六百二十五万人の天引きが始まる。これまでやられてきた方とあわせて、千五百万人もの天引きが予定されています。「１０・１５ショック」が日本列島を襲うことになります（「絶対に許せないぞ」の声）。本当にそうですね。（拍手）
　私は、先日、東京・豊島区の「巣鴨地蔵通り商店街」で訴える機会がありました。私の訴えが終わりましたら、八十二歳のおじいちゃんが、「わしにも訴えさせてくれ」と、マイクを握られたんですよ。「私は特攻隊の生き残りです。戦後まじめに働き、一月も欠かさず年金を納めてきた。ところがこの年金通知書を見てくれ。介護保険料が引かれ、後期高齢者医療の保険料が引かれる。戦火を生き抜き、復興を支えてきた私たちに、早く死ねと言わんばかりのこの仕打ち。我慢ができない」
　みなさん、この制度の一番ひどいのは、生きている人間を七十五歳で線引きする。七十五歳というお年を重ねただけで、これまで入っていた国保や健保から追い出して、別枠の医療制度に囲い込む。保険料は天引きで二年ごとに上がっていく。長寿の人が増えるほど上がっていくのです。そして診療報酬はどんどん下がっていく。まず高血圧や糖尿病の治療や検査が抑えられるという事態が始まっています。
　お年寄りを年齢で差別するような、こんな制度を導入している国が世界にありますか。日本だけですよ。「恥を知れ、自公政権」と、私は言いたい（「そうだ」の声、大きな拍手）。お年を召したら、みんなでお祝いして、医療費は無料にしましょうというのが真っ当な政治のあり方だと私は訴えたいのであります。（拍手）
　この問題の出発点は、二〇〇〇年十一月の健保法改悪のさい、「付帯決議｣というのがやられた｡この「付帯決議」には、高齢者の医療を別建てにする、診療報酬をきりさげるという二つのことが入っている。いまの後期高齢者医療制度の原型が打ち出されたのです。これは差別医療になると見抜いて、きっぱりと反対を貫いたのは日本共産党だけでした（拍手）。しかし、最初は共産党だけだったけれど、いまでは国民多数の声になって、とうとう参議院では撤廃法案が可決されたではありませんか。（拍手）
　そして、今日、舛添（要一）厚生労働大臣は、「後期高齢者医療制度に代えて、新制度の創設について検討する」という発言をした。これはこの制度を推進した当人が、自ら制度の破たんを認めたものではありませんか。（大きな拍手）
　国民の世論がここまで政府を追い詰めてきたわけですから、総選挙で決着をつけようではありませんか（拍手）。共産党をのばして、希代の高齢者差別制度はきれいさっぱり撤廃させようではありませんか。（大きな拍手）

むだにメス、大企業に応分の負担――消費税に頼らなくても財源はつくれる
　それでは社会保障の財源をどうするか。財源というと、消費税のことしか思いつかない議論が多い。しかし、これほど間違った議論はありません。
　自民党の総裁選挙を聞いていましても、どの候補も「すぐに上げる」とは恐ろしくて言えませんけれど、「いずれは消費税を上げる」と、みんな言っているでしょう。
　民主党はどうか。民主党も、日本経団連との「政策を語る会」のなかで、「消費税の税率はいずれ上げることが必要だ」ということを言っています。財界には本音を言い、約束しているのが民主党です。

( ２００８年０９月２２日，『赤旗』)（Page/Topへ）

映画鑑賞と総選挙勝利へ決起の集い／俳人後援会

　日本共産党俳人後援会主催（後援・映画人後援会）の「映画『小林一茶』鑑賞のつどい」が十三日、党本部多目的ホールで開催され、会内外から百十人が参加しました。
　「小林一茶」は、亀井文夫監督が太平洋戦争直前に製作したドキュメンタリー映画。映画評論家の山田和夫さんは講演で「治安維持法下、一茶の俳句を巧みに配しながら、信濃の自然と農民の暮らしを描いた戦中抵抗の一典型」と語り、戦後、民主的な映画人として活躍した亀井文夫監督の足跡を紹介しました。
　つどいでは、党学術・文化委員会責任者の足立正恒さんが「福田首相の政権投げ出しで情勢が一変した。党は、後援会のみなさんと協力して、総選挙で必ず躍進したい。俳人後援会の奮闘を期待する」とあいさつ。長野県出身の田村智子さん（党参院東京選挙区予定候補）も「総選挙の比例での躍進、東京ブロック二名当選のためにがんばる」と決意を語りました。
　文化後援会事務局長代行の山口逸郎さん（映画人後援会代表委員）が、文化後援会の選挙勝利にむけたとりくみを報告。俳人後援会世話人の望月たけしさんが「国民中心の政治実現のためがんばり抜こう」とつどいを締めくくりました。みなさん、しかし消費税というのは、所得の少ない方に重くのしかかる、最悪の〝福祉破壊税〟ではないでしょうか（「そうだ」の声、拍手）。そして、この消費税を大企業は一円も払っていません。すべて価格に転嫁して腹が痛まない。払っているのは、転嫁しきれずに身銭を切って苦しんでいる中小業者のみなさんと、転嫁しようにもしようがない消費者のみなさんです。だから消費税という税金は、最悪の不公平税制だということもいわなくてはなりません。（拍手）
　これを社会保障の財源にするなどというのは、邪道中の邪道です。共産党は、消費税増税は絶対反対、そして食料品は非課税にということを訴えて、この総選挙をたたかい抜きたいと思います。（拍手）
　それでは、財源をどうするのか。
　第一に、あらゆるムダづかいにメスを入れます。最大、最悪のムダづかいは、年間五兆円におよぶ軍事費ではないでしょうか（「そうだ」の声、拍手）。なかでも、条約上出す義務のない米軍への「思いやり予算」に、年間二千五百億円も注ぎ込んでいる。ところが、社会保障の費用は、（自然増から）毎年二千二百億円ずつ削っているでしょう。社会保障費を削って米軍に貢ぐというのは、「思いやる」方向を百八十度間違っています。（「そうだ」の声、拍手）
　それから、イラクとアフガニスタンでの米軍の戦争の応援のために自衛隊を派兵しています。アフガンで罪のない女性や子どもやお年寄りを空爆で殺している米軍の活動のために、油をただでくれてやっている。これら戦争支援にこれまで千五百億円ものお金を使っている。米軍の戦争のためにくれてやる油代があるのだったら、燃油高騰に苦しむ漁業者、農業者、中小企業の補てんにこそ使えと訴えたい。（拍手、「その通り」の声）
　さらに、政党助成金です。年間三百二十億円。共産党以外の各党が分け取りしています。この前、各党の政治資金報告が報道されましたが、自民党は収入の６５・６％、民主党は８４・２％が政党助成金です。こんな税金頼みの政党になっている。「官から民へ」といいながら、自分たちは「国営政党」になっているということを、恥ずかしく思わないのかと私は言いたいのであります。（「そうだ」の声、拍手）
　南アメリカのボリビアという国に、左翼政権ができました。ここでは政党助成金をなくして、障害者福祉に使うための法律を通したというんですね（「ほー」の声）。日本でも、これをやらせようではありませんか（「そうだ」の声、拍手）。私たちは、厚生労働省に、障害者福祉の「応益負担」を撤廃するのにいくらかかるのか、資料を求めました。出してきた数字を見たら、三百二十億円（「おおー」の声）。額がぴったり一致ですね（笑い）。政党助成金をなくして、障害者福祉にあてようということを、私は訴えたいと思います。（拍手）
　第二は、大企業や大資産家など、一番もうかっているところに、もうけ相応の負担を求めるということです。
　いまの大企業のもうけはすごいですよ。大企業の利益は、一九九〇年度には十九兆円だったのが、二〇〇六年度には三十三兆円（「ほー」の声）。あのバブルの絶頂期の一・七倍の利益をあげている。ところが税金は、大企業減税をやってきましたから、横ばいなのです。トヨタは、ほぼ同じ時期に、もうけは二・二倍、世界一の自動車企業になった。ところが税金は逆に八割に減っている。数々の優遇措置を受けてきた結果です。大銀行の大手十三社の年間の所得は二兆九千二百十八億円。ところが払っている税金は、いろいろな減税の仕掛けで、たったの千百六十九億円。税率４％ですよ。消費税より税率が低いのです。（どよめき）
　大企業、トヨタ、大銀行は、もうけにふさわしい負担をするのは当たり前だ、それが企業の社会的責任だということを、私は言いたい（「そうだ」の声、拍手）。ゆきすぎた大企業・大資産家減税を元にもどせば、財源は七兆円くらい出てきます。これを福祉にあてようではないかというのが私たちの考えです。
　あらゆるムダづかいにメスを入れる、大企業・大資産家に応分の負担をさせる。この二つをやれば、消費税に頼らなくとも安心できる社会保障は築ける。これが日本共産党の提案であります。（拍手）
　これは当たり前の改革ですが、やれるのはどの党でしょうか。財界献金をもらっている党ではできませんね（「その通り」の声）。自民党と民主党は、日本経団連に政策の「通信簿」をつけてもらっています。この「通信簿」の成績にそって、企業献金のあっせんをしてもらっています。こういう党では、トヨタやキヤノンに「税金払え」とは言えませんね。（「そうだ」の声、拍手）
　みなさん、日本共産党は党をつくって八十六年になりますが、財界献金をびた一文受け取ってこなかった清潔な党です（拍手）。この党でこそ、大企業の横暴勝手に堂々とものを言うことができる。みなさんの暮らしの一番の守り手になる。どうかこの党をのばしてください。（大きな拍手）

アメリカいいなり転換へ――安保をなくし、ほんとうに独立国といえる日本を
　こんなアメリカいいなりの政治でいいのかということも、総選挙で問われる大問題です。
　自公政権は、イラクからの自衛隊の撤収は決めました。政策が破たんした結果です。しかし、アフガニスタンで戦争をやっている米軍を応援する海上自衛隊の給油活動はやめようとしない。民主党は、「海上に出すのはだめだけど、アフガンの陸上に部隊を出すんだったら結構だ」、こういう提案をしています。
　しかし、戦争でテロはなくなったか。これを見る必要があるのではないでしょうか。
　この八月一日に、アフガニスタンで活動している国内外の百のＮＧＯでつくるＡＣＢＡＲという組織が声明を出しました。この声明は、治安が最悪になっている、多くの民間人が米軍などの軍事行動で命を奪われているとして、最後にこうのべています。「紛争を軍事的手段で終わらせることはできない。民生支援と政治的な和平のプロセスこそ必要だ」（拍手）。私は、ブッシュ大統領と自公政権に、現地で一番苦労している、このＮＧＯの声を聞けと言いたい。（「そうだ」の声、拍手）
　世界の動きは、どうなっているでしょうか。東南アジアの諸国中心にＴＡＣ――東南アジア友好協力条約というのが広がっています。この条約には、すでにユーラシア大陸を覆う二十五カ国が加入し、人口でいえば地球人口の５７％が加入している。ＴＡＣの根本精神は、「紛争の平和解決」「戦争放棄」です。この世界から、紛争をなくすことはできないかもしれない。しかし、紛争を戦争にしない、そのことは人類の英知でできる。この流れが、世界を覆って広がっているのは、二十一世紀の希望ではないでしょうか。（拍手）
　そして、「紛争の平和解決」と「戦争の放棄」を世界で最も先駆的に掲げたのは、わが日本国憲法九条ではないでしょうか。（「そうだ」の声、大きな拍手）
　みなさん、あまりに異常なアメリカいいなり政治をただしましょう。世界に誇る憲法九条を守り抜こうという願いは、党をつくって八十六年、『蟹工船』の時代から、反戦平和を貫いてきた日本共産党に託してください。（拍手）
　そして、日米安保条約をなくし、基地のない日本、本当に独立国といえる日本をみんなの手でつくりあげましょう。私たちは日米安保条約に代えて、日米友好条約をむすぶことを提案しています。そういう平和日本にむけて、大きくかじを切り替える選挙にしていこうではありませんか。（歓声、大きな拍手）

はじめは少数の声が、国民多数の声となり、政治を動かす力となっている
　私は、先の日曜日に、フジテレビの「報道２００１」という番組に出演する機会がありました。そこで「つぎの首相はどちらがいいか、麻生さんか小沢さんか」という世論調査の結果をしめされ、「志位さん、これをどう思いますか」と聞かれました。
　同じ番組で紹介された街の人々の声のなかで、「もう自民党はだめだ。しかし、民主党もだめだ」という声があったんです。私は、この声を引いて､｢最近この声をよく聞くんですよ」と言いました（拍手）。そして「政治の中身を変えないで、政権の担い手だけ代えても、日本の明日は良くならない」とのべました。
　みなさん、昨年、「大連立」騒動というのがあったでしょう。福田首相と小沢代表が密室で会って、いったんは自民・民主で「連立政権」をつくろうという合意をした。総理大臣は福田さん、副総理は小沢さんでいこうじゃないか、そこまで話をつけていた。これはうまくすすみませんでしたが、ともかくいったんではあれ、そういう合意が結べるというのは、この両党の間に、政治の中身のうえで、違いがないということを、自ら証明するものではないでしょうか。（拍手）
　私は言いたい。政治の中身を変えずに、政権の担い手だけを代えても、国民が希望が持てる明るい日本への道は開かれません。（拍手）
　今度の選挙で日本共産党がのびれば、政治は必ず変わります。今日お話しした派遣労働の問題でも、後期高齢者医療制度の問題でも、はじめは共産党の主張は孤立しているように見えたけれど、やがてそれは、国民のみなさんの声と響きあって、多数の声となったではありませんか（拍手）。そしていまや政治を動かす力になっているではありませんか。（大きな拍手）
　共産党は現在、衆議院で九議席、参議院で七議席ですけれど、その議席でもこれだけの仕事ができました。総選挙でうんとのばしていただいたら、もっと国民のお役に立って、国政をリードする働きができることは間違いありません。（拍手）
　みなさん、財界・アメリカ中心から、「国民が主人公」に、政治の中身を大もとから変える日本共産党をのばして、国民のすべてが――若者も、お年寄りも、女性も、男性も、みんなが安心して暮らせる日本、未来に希望が持てる日本をつくろうではありませんか。（「よし」「そうだ」の声、大きな拍手）
( ２００８年０９月２２日，「赤旗」)（Page/Topへ）

総選挙のページ／語ろう総選挙／軍事費のムダ一掃暮らしに回せ／「生きづらい」社会若者の真の味方は

軍事費のムダ一掃暮らしに回せ
　自民・公明の与党や民主党は、「ムダの一掃」と言います｡しかし､年間五兆円近い軍事費のムダに根本的なメスを入れようとは決してしません。
　軍事費の中でも典型的なムダの一つは、約二千五百億円にのぼる米軍への｢思いやり｣予算です。
　今年度予算では、▽豪華家族住宅など米軍施設の建設費▽米軍が使い放題の水光熱費▽バーやゴルフ場など米兵用娯楽施設も含め基地で働く従業員の労務費―などに二千八十三億円となっています。
　このほか、沖縄の米軍基地を「移設」の名でたらい回しするＳＡＣＯ（サコ）経費（百八十億円）や、空母艦載機部隊の岩国基地（山口県）移駐や沖縄での海兵隊新基地建設などの米軍再編経費（二百三十八億円）もあります。
　これらを合わせれば二千五百一億円にも上ります。
　軍事費のもう一つのムダは、一九九一年に崩壊した旧ソ連の侵攻に備えて開発された９０式戦車などの兵器の調達が今でも続いていることです。今年度も九両分七十一億円を計上しています。これは、今年度の私学助成減額分四十五億円の約一・五倍になります。
　ヘリ空母（一隻約一千億円）など海外派兵用兵器の導入も進んでいます。軍事費を削って暮らしに回すことが必要です。

「生きづらい」社会若者の真の味方は
　派遣、請負などの「使い捨て」労働が増え、若者の二人に一人が不安定雇用となっています。正社員も長時間過密労働が横行し、強いストレスにさらされています。
　学生は耐えがたい学費負担にあえぎ、アルバイトに追われて体を壊す人、学校を辞める人も相次いでいます。
　この苦しみは若者の責任ではありません。
　財界・大企業のもうけのために、労働の規制緩和を進め、働く条件をひどくしてきたのは政治です。米軍には毎年二千五百億円も「思いやり」予算を出しながら、教育にお金を回さず、高学費を押し付けてきたのも、自民・公明がすすめてきた政治です。
　財界・アメリカ言いなりの自公政治が、若者の「生きづらさ」の大もとにあります。
　これを切り替える日本共産党が伸びてこそ、若者の未来は開けます。
　日本共産党員作家、小林多喜二の小説『蟹工船』がブームです。困難を乗り越えて団結し、理不尽なことに対して声を上げるところに共感が集まっています。派遣労働問題を追及した日本共産党の志位委員長の国会質問にも、若者から大きな反響がありました。
　若者が生きやすい社会を目指し、いまこそ力を合わせましょう。日本共産党は全力で若者を応援します。
( ２００８年０９月２０日，「赤旗」)（Page/Topへ）

唯物論研究に功績永田廣志をしのぶ／没後６１周年の集い開く

　日本における唯物論哲学の開拓者である永田廣志（写真）の生前をしのび、業績を顕彰する「永田廣志没後６１周年記念の集い」が十三日、出身地である長野県東筑摩郡山形村のミラ・フード館で開かれました。鰺坂真ほか編著『日本における唯物論の開拓者　永田廣志の生涯と業績』（学習の友社）が今年八月に刊行されたことに呼応したもの。約百三十人が参加しました。
　宮田哲夫長野県学習協会副会長が一年半に及んだ同書編集の経過を報告し、古畑俊彦｢集い｣実行委員長が開会の辞、清沢實視山形村村長が歓迎のあいさつをのべました。
　鰺坂真関西大学名誉教授が「現代と哲学者永田廣志」と題し、記念講演。永田廣志が戸坂潤らとともに唯物論研究会（唯研）を創立した一九三二年は、天皇機関説事件や滝川事件など反動の嵐が強まる「きわめて困難な、苦しい時期」で、唯研が治安維持法下でも合法的に活動できる研究団体として、日本の民主的な前途を担う「最後のとりで」になっていたことを指摘しました。永田らの仕事が「国際的にも非常に高い水準にあった」と紹介し、必ず原典にあたるなど「理論を根本にまでさかのぼって突き詰め」「自分の頭で考える」気風が、伝統として今日に受け継がれていると述べました。
　永田廣志の長女の今崎則子さん、戦後設立された民主主義科学者協会（民科）で永田廣志と活動をともにした物理学者の伊藤正一さんが、それぞれ永田廣志の思い出を語りました。
( ２００８年０９月１８日，「赤旗」)（Page/Topへ）

議席獲得へ決起／まつり・演説会盛況／北空知留萌／釧根／札幌・西区／洞爺湖町／札幌・東区

宮内候補を参加者激励「必ず送り出す」
　自民党が政権投げ出しに口をつぐみ、総裁選を総選挙準備へと躍起になっているなか、日本共産党と後援会は、道内各地で青空まつりや演説会を開き、総選挙で必ず党議席を奪回しようと元気よく活動を広げています。

青空まつり／北空知留萌
　第十九回北空知留萌青空まつり（同実行委員会主催）が十四日、新十津川町で開かれ、三百人の後援会員、支持者らが集いました。
　さわやかな秋空のもと、「サウンドトレイン」の演奏で始まったまつりでは、心ゆくまで交流し、総選挙での日本共産党の勝利へ決意を新たにしました。
　林貞晴後援会長があいさつし、拍手で迎えられた宮内聡衆院比例候補が登壇しました。
　宮内氏は、汚染された輸入米について、国民の命や健康が脅かされていると告発。「徹底的な事実解明と再発防止が必要であり、国会で徹底論議すべきです」とのべ、「早期の解散・総選挙になっても、何としても北海道で議席を勝ちとり、国会でこの問題を追及したい」と訴えました。
　各後援会員ら一人ひとりと握手して回った宮内氏に、「頑張るからね」「必ず国会に送り出すから」の激励の声が相次ぎ、募金を寄せる人もいました。
　各後援会からの民謡やカラオケなどが披露され、各行政区後援会対抗の玉入れ大会は、熱戦の末、赤平後援会が優勝しました。

釧根
　二〇〇八年釧根青空まつり（同実行委員会主催）が十四日、釧路町で開かれました。
　約四百人が参加。七田次光実行委員長（日本共産党釧路市後援会代表委員）、党釧根地区の渋谷肇委員長があいさつしました。宮内聡、渡辺ゆかり両衆院比例候補らのメッセージが紹介されました。
　大門実紀史参院議員は、「国会・情勢を語る」と題して講演。行き詰まっている自公政治や、財界いいなりの政治がなぜ横行するのかについて国会の様子を交えて話しました。
　大門氏は「国民の要求と運動が政治を動かすことができるし、変えることができる」と強調、総選挙で北海道の共産党議席を獲得するために力をつくそうと呼びかけました。
　帯広・民族芸能守る会の獅子舞、餅（もち）つきばやしや玉入れ合戦、お楽しみ抽選会、物産展で交流し、参加者全員で九条風船を飛ばし、国民のくらし、平和を守る決意を固めました。

札幌・西区
　日本共産党札幌西・手稲地区委員会と西区後援会は十五日、札幌市で第十三回西区青空まつりを開催、三百五十人が参加しました。
　第二部の「つどい・大門さん、宮内さんと語ろう」では、参加者が総選挙に勝利しようと誓いあいました。
　宮内聡比例候補は、大企業から献金を受けず、アメリカに堂々とものが言える党だから「税金の使い方を国民本位に改めろ」と言えると紹介。「暮らしを守り、憲法を生かす議席を取り戻させてください」と訴えました。
　大門実紀史参院議員は、二代続けての政権投げ出しは自民党がもはや末期症状だと指摘。「党が前進しなければ国民の要求実現はストップします」と支援を呼びかけました。
　精神障害者を支援する会の田中啓介氏は「共産党が昨年発表した『国民の願う高齢者介護・障害者福祉の実現を　深刻な人材不足を打開するための緊急提言』の早期実現のため、宮内さんに国会の場で頑張ってほしい」と期待を込めました。

演説会／洞爺湖町で９０人超が参加／町始まって以来
　日本共産党室蘭地区委員会は十三日、紙智子参院議員を迎えて、洞爺湖町で演説会を開きました。町始まって以来の九十人を超える人たちが参加、紙議員らの訴えに大きな拍手で応えていました。
　演説会成功へ町内会役員はじめ保守層の人たちなど広い層に参加を呼びかけました。
　紙氏は、最初に汚染米転売問題で農水省の責任を追及し、「早急に農水委員会を開催するよう求めている」とのべ、後期高齢者医療制度や労働派遣法など決定的場面での党の役割、国会議員団の論戦と国民の運動が政治を変えつつあると紹介。「何としても北海道から衆院議席を回復するために力を貸してください」と訴えました。
　さとう昭子衆院比例候補（道９区重複）は「国民いじめの自公政治を何としても変えましょう。そのために全力で頑張ります」と決意をのべました。
　参加者からは「わかりやすかった」「議席を勝ち取るために私も役に立ちたい」との声が寄せられました。

地区委と後援会地域２カ所で／札幌・東区
　日本共産党札幌東区地区委員会と東区後援会は九、十月に連続して地域演説会を開きます。栄地域で開いた初日の十三日、七十五人が参加しました。
　岡ちはる衆院比例候補（道２区重複）は、企業・団体献金、政党助成金がいかに政治を腐らせているかを事実に基づいて話し、「一円も受け取らない日本共産党だから国民の立場に立って頑張ることができます」と強調。「日本共産党と一緒に人間が大切にされる政治をつくりましょう」と呼びかけました。
　金倉昌俊道議候補は、「日本共産党員である小林多喜二の志を受け継ぎ、国民の立場に立って未来を切り開こうと奮闘する日本共産党を大きくしてください」とのべました。
　太田秀子札幌市議候補も訴えました。
　十四日の光星地域では、八十人が参加しました。宮内聡、岡両比例候補は「平和、暮らし、雇用とどの問題をとっても北海道はとくに厳しい状況です。国民の暮らしや安全を第一に考える共産党の議席がどうしても必要です」と語りました。
　党東区後援会の伊古田俊夫副会長（勤医協中央病院名誉院長）があいさつしました。
(２００８年０９月１７日，「赤旗」)（Page/Topへ）

真実のためには妥協しない厳しさ／永井潔さんを偲んで／根岸君夫

　民主的文化運動の精神的支柱的存在であった永井潔さんが八日、亡くなられた。氏の九十二年の歳月を休む間もなく活きつづけた生涯を想い、悲しみに耐えて言葉を記す。
　永井さんは一九一六年、師範学校教師の父と、光悦の家系に繋がる母との間の長男として生まれ、知的・文化的な環境の中で育った。
　長じて一高に入学、将来は東大という学問のコースの一歩を踏み出しながら、思い立って画家・硲伊之助氏の門を叩き画業の道へと進路を大転換させた。
　しかし、その後、敗戦までの間に、三回延べ約四年間兵役を課せられ、その中で、胸に銃弾を受け、瀕死の重傷を負うという災禍にも遭遇する。兵役の合間を縫うように、作画活動のかたわら、文化学院助手、美術出版社編集助手などを経験、また、社会科学の勉強に真剣に取り組んだが、治安維持法違反容疑で検挙され、たらい回しされること四カ月。この中で多くの人士の知遇を得たとはいえ、貴重な青春はこま切れにされたのだった。
　戦後、永井さんの飛躍的な活動が始まった。戦中の美術への批判・反省の上に立って、所属団体や表現方法の違いを超えて結集する、自由で民主的な、まったく新しい美術団体＝「日本美術会」が一九四六年四月結成された。
　これには有名無名の多くの作家が参加したが、当時新進画家だった永井さんは、準備の段階から加わり、理論的にも組織活動でも中心的な役割を果たした。翌年にはその主催による「日本アンデパンダン展」が発足した。以後、書記長（二、八代）、初代付属研究所長、八代代表、など要職を歴任し、会の発展に尽くされた。同時に、「リアリズム研究会」などのグループの運営にも心を砕かれた。
　永井さんの絵は、色の美しさと品格によって、多くの人に親しまれている。それは、単に平明なだけでなく、色価（ヴァルール）の厳しい見極めと、形態の面的要約、構成への周到な配慮、それらが結びついて典雅な画面が生み出されているのだと思う。人物画が最も多く、「蔵原惟人氏像」「母」などは戦後美術の名作というべきであろう。大作「歴史」や「合唱」「燃える心臓」その他、群像構想画にも取り組み傑作を残した。
　永井さんの活躍は美術の枠を超え、思索・著述の分野により多くのエネルギーが注がれた。哲学的著作、文化運動論、言語論のほか、日本民主主義文学会会員でもあった氏は、小説、エッセーも多く、画集を含め著書は十五冊に及ぶ。統一戦線的観点の重要性を説き、自らの頭で考えることの大切さを説き、文化団体連絡会議・九条美術の会・共産党美術後援会等多くの場で人々に感銘を与えてきた永井さんは、真実のためには妥協しない厳しさと、人を尊重する心の優しさを併せ持ち、さまざまな人から慕われ、敬われた。
　入院中も筆を執り、生きつづけた永井潔さん、安らかにお眠りください。
　（ねぎし・きみお　日本美術会代表）
( ２００８年０９月１７日，「赤旗」)（Page/Topへ）

反戦川柳作家鶴彬の銘石建立／大阪で除幕式

　治安維持法違反で逮捕され、一九三八年に二十九歳で獄死した反戦川柳作家・鶴彬（つる・あきら）をしのんで、十四日午前、大阪城公園で顕彰植樹・銘石建立除幕式が行われました。
　銘石は、表に「暁をいだいて闇にゐる蕾　鶴彬」と刻まれ、裏に彬の紹介文があります。彬が二十二歳で収監され一年八カ月を過ごした大阪衛戍（えいじゅ）監獄があった、豊国神社の隣に建立。福岡県や石川県など全国から百七十人以上が参加し、顕彰・銘石に献花しました。
　彬の没後七十年を記念して、あかつき川柳会を中心とした鶴彬顕彰碑建立実行委員会が〇三年二月から建立に向けて取り組んだもの。作家の澤地久枝さんや『上方芸能』誌代表の木津川計さんらがよびかけ人となり、全国から千三百人以上の賛同募金が寄せられました。
　除幕式では、川端一歩実行委員長があいさつ。石川県から参加した彬のおいの山田裕一さん（６６）が、「母（彬の妹の文子さん）は、『兄は美少年で、歌が好きで、腕ずもうでわざと負けてくれた』と話していました。おじは命を賭して信念を貫き通した勇気ある偉大な人だと敬愛しています。鶴彬の名と心が後世に伝えられることを切に願います」とのべました。
( ２００８年０９月１５日，「赤旗」)（Page/Topへ）

芸能テレビ／「蟹工船」が話題／映画で見る〝多喜二〟

　小説『蟹(かに)工船』が、海外のメディアも注目するほど広く読まれているなか、映画「蟹工船」にも関心が高まっています。作者・小林多喜二の生涯を伝える映画も各地で上映されています。いずれも見ごたえのあるものです。
　北洋で蟹を捕獲し加工する漁船で、奴隷扱いに怒った漁夫らがストライキに立ち上がった―。この事実を綿密に調査し、多喜二が書いた小説『蟹工船』は、１９２９年に発表されました。
　映画「蟹工船」（製作・現代ぷろ）は、俳優の山村聡が、小説を大胆に脚色し、監督。映画の独立プロ運動が盛んな時期、５３年の作品です。
　生活の困窮のため、蟹工船に乗り、漁夫や雑夫として働く者たちと、彼らを支配する鬼のような監督浅川。過酷な労働、仲間の死。非人間的な待遇に耐えかねてついに決起のときが。しかし、帝国海軍の軍艦が来て…。
　虐げられる者と支配する者との対比が鮮烈です。モノクロ映像、伊福部昭の音楽で昭和初年の雰囲気をかもし出します。出演＝森雅之、山村聡、日高澄子、中原早苗、河野秋武ほか。１０９分。
　多喜二は、『蟹工船』発表の前年、２８年に、『一九二八年三月十五日』で作家デビュー。天皇制政府の日本共産党への大弾圧を暴き、一躍注目されました。３１年１０月に日本共産党に入り、翌春、弾圧を逃れて地下生活に。３３年２月２０日、２９歳で特高警察に虐殺されます。
　そうした生涯は、厳しい地下生活をともにした作家の手塚英孝によって評伝『小林多喜二』に明らかにされています。著者は、多喜二についての「回想」で、快活で、仲間に愛され、真実に対して「ひたむきな献身的な努力」をした青年であったことを記しています。
　今井正監督の映画「小林多喜二」（多喜二プロ）は、そんな多喜二の「愉快で愛すべき」人間像を監督が知ったことが、大きなモチーフになってつくられたものです。
　先の手塚著『小林多喜二』をもとに、脚本＝勝山俊介で、７４年に製作。多喜二の生涯と、その作品世界を表すシーンとを俳優が演じて、丸ごとの多喜二を味わうユニークな成り立ちです。
　横内正（語り）、山本圭、中野良子、北林谷栄ほか。１１９分。
　ドキュメンタリー「時代（とき）を撃て・多喜二」は、池田博穂監督の０５年のデビュー作｡８８分｡
　多喜二の母セキの生映像や思い出を語る弟三吾などの貴重な映像や、田村高広、赤井英和ら多彩なインタビューで構成。
　少女のころ、多喜二の隣家に住み、彼にもらった絵を持っていただけで官憲にひどい仕打ちをされたという女性が言います。多喜二を、あんな死ぬ目に遭わせた者でも罪にならないのか、と―。
(２００８年０９月１４日，「赤旗」)（Page/Topへ）

本立て／杉並の戦争と平和／すぎなみピースフォーラム実行委員会編

　生活している地域を見つめ、戦争、平和にかかわる歴史、事跡を掘り起こしている「すぎなみピースフォーラム」。関係地を訪ね歩くピースウオークの運動のなかで作られたガイドブックの、アンコールに応えた改訂増補版です。
　映画「母べえ」（１月公開）のモデル、独文学者・野上巌（筆名・新島繁）が営み、作家の小林多喜二も出入りした大衆書房や、プロレタリア作家同盟の編集出版部跡地など、新発掘も新たに収録。戦前、戦中、多くの文化人が住み、たたかいの拠点とした地域の歴史の息遣いが感じられます。
　（光陽出版社　税別１１４３円)
(２００８年０９月１４日，「赤旗」)（Page/Topへ）

たび／京都・宇治／山宣の歩いた道

　来年は侵略戦争と治安維持法に反対し、１９２９年３月５日、右翼に暗殺された山本宣治生誕１２０年、没後８０年です。京都府宇治市の墓前にいます。
　「山宣ひとり孤塁（こるい）を守る、だが私は淋（さび）しくない、背後には大衆が支持してゐるから」
　お墓の碑文を指でなぞってみました。この言葉は、実は「赤旗を守る」であり「孤塁を守る」としたのは、政治的配慮だったのではともいわれています。
　山宣が育った家、花やしき浮舟園は、世界遺産・平等院に近い宇治川のほとりにあります。竹久夢二や与謝野晶子も親しく訪れ、多くの文化人に愛された料亭は、もとは体の弱い宣治のために両親が建てた別荘でした。
　旧館の石段を上ると、茶室風数寄屋造りの母屋と離れが、山宣の生きた時代を色濃く残しています。そこには山宣家族が「カフェー」を楽しんだときのアカシアの木が残っていました。
　４代目となる割烹（かっぽう）旅館。新館ロビーの目の前に塔ノ島、川向こうは宇治神社や興聖寺（こうしょうじ）です。川の景色とくつろげる空気に、一杯のコーヒーが幸せでした。
　資料館を見学しました。膨大な資料や書籍、遺品の多くは、お母さんの多年（たね）さんの知恵で守られていたもの。「唯生唯戦」の書に記された「オタマジャクシ（精子）」とイモリのユーモラスな印は、生物学者・性科学者であった山宣自作のロゴマーク。
　山宣記念性教育研究室長の小田切明徳さんは「山宣は解放運動の組織者・反戦平和の政治家であり、世界的性科学者・性教育のパイオニアだった」といいます。
　「性は自然の営みであり、善悪はない」と青年の悩みに答えた山宣。キンゼイ報告に先がけること２５年、世界で初めて学生の性の調査を分析しました。
　「性現象の中特に人生の花とも見るべき高潮の美を味わう基礎となし…偽りなく性を楽しみ…世界同胞に奉仕しうる余力を養わんとするを旨とする」
　山宣がすすめようとした性教育の思想は、真実の追究、自由と人間性の解放でした。
　８０年の歳月を経ていまだ戸惑いを生む性のタブー。山宣の言葉が新鮮です。
　琵琶湖から流れ出た水はただ一つ、瀬田川から宇治川へ。平家物語の宇治川先陣争いで有名な急流です。
　二人の女性鵜匠（うしょう）がいると聞き、鵜飼い見物（９月２８日まで)をしました｡ちょうちんをともした客舟に乗り込み、かがり火をたいた鵜飼い舟が動きます。舟体を激しくたたく音が響くと、操られた鵜が魚を捕っては吐き出します。そのたびに拍手喝さい。舟のそばにきた鵜の背中をなでてやりました。のどかな宵の舟遊び。千年の別業（別荘）の地は平和です。
　田村祐好
　【問い合わせ】宇治市観光協会℡０７７４(２３)３３３４
(２００８年０９月１４日，「赤旗」)（Page/Topへ）

あいの里後援会平和の集い開く／札幌・北区

　あいの里平和のつどい（同実行委員会、日本共産党あいの里後援会主催）が七日、札幌市北区で開かれました。「生活図画事件を語る」と題して、道高校教職員センター付属教育研究所の宮田汎さんが講演しました。
　生活図画事件は一九四一年、子どもたちの生活に根ざした図画教育を実践していた道内の小中学校、師範学校の教師や学生ら二十七人が治安維持法違反で検挙された事件です。
　宮田さんは、子どもが除雪をしている絵を「児童の意欲的なる表情と姿は作者の共産主義の意識をはっきりと表している」と司法当局が同法違反としたと紹介すると、驚きの声が上がりました。
　「当時どのような世相だったの」と質問があり、年配者が「一九四〇年は『紀元は二六〇〇年』と歌を歌い、皇国史観が大宣伝された」と答えました。
　日本共産党の岡ちはる衆院比例候補、坂本恭子札幌市議が出席、あいさつしました。
(２００８年０９月１３日，「赤旗」)

１５日は敬老の日／その１／青森市五味迪子さん／明るく不屈に１００歳

　１５日は敬老の日。元気な人たちを訪ねました。ラッキーナンバーは〝１００〟。
　（内藤　真己子）

治安維持法で投獄されて
　「こんなに生きるとは思ってないから、１００歳と聞いてびっくりしてますよ」。青森市の自宅で五味迪子さんがあっけらかんと語ると居間に笑い声が広がりました｡｢お母さんはいつも前向きだから｣｡同居する長女の暁代さん(６９)も笑顔です｡来月１００歳の誕生日を迎える迪子さん｡戦前､労働組合運動をしていて治安維持法で投獄され、戦後すぐに日本共産党に入党しました。
　「戦前から不屈にたたかった力でいまの平和な世の中にしたんだよね。今はいいよね。やりたいことができるものね。言論の自由があるから」。しみじみ語ります。
　静岡県富士市生まれの迪子さん。旧制女学校を卒業後、東京の専門学校に学び生命保険会社で働きます。そこで日本労働組合全国協議会（全協）の組合員になりました。
　３３年、活動のなかで知り合った五味宣雄さん（元党青森県委員会常任委員、８５年死去）と結婚。東京・亀戸の長屋に新居を構えますが、入党していた五味さんとともに同年末検挙されました。市谷刑務所の独房で「拘禁性精神病」を発症。１年半後に保釈されました。
　その後も働きながら３人の子どもを産み、実家で敗戦を告げる「玉音放送」を聞きました。「万歳！って両手を挙げて叫んだ。うれしくて」

毎朝１時間かけ「赤旗」目を通し
　敗戦の翌年４人目の子どもを産み１カ月後、宣雄さんの仕事の都合で知る人のいない青森市に移り住みます。道路工事現場などで日雇いで働きました。
　入居した市営住宅には戸外の共同水道しかなく、各戸に水道を敷設させる運動も。当時からの知り合いの相馬ナツイさん（８３）は「五味さんは人柄が良く尊敬する人です。共産党は庶民の味方」と信頼を寄せます。
　お米が買えず、代わりに農家の党員からもらったジャガイモを何日も食べるような厳しい生活でした。それでも「明るい家庭だった」と振り返る長女の暁代さん。「１つの卵やコッペパンをワイワイ言って分けたり、父も明るい人でいつもみんなで革命歌を歌っていました」。長男の耿兵さん（６２）も「地域の党が大きな家族というか、同志愛に包まれて育ったと思います」。４人の子どもはみな共産党員か熱心な党の支持者です。
　いまも迪子さんは毎朝１時間ほどかけて「しんぶん赤旗」に目を通します。第６回中央委員会総会の決定文書もすぐに読みました。「決定を身につけてないと活動に差し障りがありますから」
　福田首相の辞任表明を受けて３日、同市内でおこなわれた街頭演説会にも暁代さんといっしょに参加。高橋ちづ子衆院議員としっかり握手し「さあ選挙だ。がんばらなくちゃ」と意気込みます。
　１００年の人生を振り返っての思いは―。「有意義だった。自信を持って言えますね。それに楽しかった。私の力はなくなってきているけど、これからも（党に）くっついて行きますよ。だって楽しいものねぇ」
( ２００８年０９月１３日，「赤旗」)（Page/Topへ）

国賠同盟中国ブロック交流／鳥取・米子で

　治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟（以下同盟）中国ブロック交流会が九、十の両日、鳥取県米子市皆生温泉で開かれ、約六十人が集まりました。
　中央常任理事の勝部庸一さん（島根県本部事務局長）、林洋武さん（山口県本部会長）の司会で、中央副会長の増本一彦さん（神奈川県本部会長）が活動を報告しました。
　増本さんは、国会で法律をつくり「政府に治安維持法が悪法であることを認めさせ、犠牲者に謝罪・賠償させ、実態を調査・報告させること」は、過去と現在をつなげ「戦争と暗黒政治を許さない」未来をつくる活動だと強調し、「衆院でキャスチングボートを握れる真の革新政党の前進を｣と訴えました｡
　鳥取県本部女性部が、生活綴（つづ）り方教育運動の峰地光重の戦前、戦後の活動と人生を紙芝居で口演しました。
　鳥取県本部の美甘美智子女性部事務局長は「犠牲者の検証活動が、会員たちを励まし力になった。訪問活動はいろんな話ができて楽しい」、保田睦美事務局次長は「夫婦会員が全体の三分の一以上。ぜひすすめてほしい」、草刈司事務局長は「連続七年増勢で同盟の３７％が女性。宣伝で十人の若者と対話し、一人は『蟹工船』を読んでいた」と発言しました。
(２００８年０９月１２日，「赤旗」)（Page/Topへ）

朝の風／大島博光記念館

　「友よ　友よ　わたしが死んだら／灰になった　わたしのひとつまみを／わがふるさとの　赤坂橋の上から／千曲川の流れに　まき散らしてくれ」
　一昨年亡くなった詩人、大島博光氏の「千曲川へおくる歌」の一節だ。詩でうたわれている長野県松代町の千曲川、赤坂橋のそばに、七月、「大島博光記念館」がオープンし、あわせて『大島博光選集１』（文芸出版）が刊行された。詩集『ひとを愛するものは』で多喜二・百合子賞を受賞した日本共産党員詩人。党員詩人としての誇りをもって活動した芸術家の記念館の完成と、選集の刊行開始を喜びたい。文化交流の場として活用するということだが、大島氏も喜んでいるだろう。
　本書に収録されているアラゴン、エリュアール、ネルーダなどの訳出は、心をうつ魅力がある。
　「神を信じた者も／信じなかった者も／ドイツ兵に囚われた　あの／美しきものをともに讃えた」（アラゴン「薔薇と木犀草」）は、思想と信仰は違っていても、ともに祖国解放のために倒れていったものへの賛歌であると大島氏は解説。このフレーズとともにアラゴンの名を胸に刻んでいる人も多い。
　政治の激動のなかで、改めて彼の仕事に思いをはせるのも意味があるだろう。
　（雲）
( ２００８年０９月１１日，「赤旗」)（Page/Topへ）

金沢で映画祭／１２日から１９日まで

　石川県で「カナザワ映画祭２００８フィルマゲドン」が十二日から十九日まで金沢２１世紀美術館などで開かれます。主催は映画サークル「かなざわ映画の会」。
　上映作品は小林多喜二原作の「蟹工船」や中沢啓治原作の「はだしのゲン」など約二十本。イラク人捕虜虐待事件を描いた衝撃のドキュメンタリー映画「アブグレイブの亡霊」（二〇〇七年、アメリカ制作）など三本は日本初公開。ヤコペッティ監督の「世界残酷物語」（一九六二年、イタリア制作）が十二日午後七時半から金沢市片町二の新天地商店街広場で上映されます。
　米映画「ビッグ・スライドショウ」のクリスピン・グローバ監督との「Ｑ＆Ａ」、サイン会も予定されています。
　チケット取り扱いは金沢２１世紀美術館ミュージアムショップ、シネモンド、文苑堂ほか。問い合わせ先０７６（２５１）３１１０（「Ｓ・Ｈ・Ｃ・Ｃ住まいの研究社共同」内の吉村真美さん）。
(２００８年０９月１０日，「赤旗」)（Page/Topへ）

朝の風／『民主文学』の味な趣向

　文芸誌の『民主文学』１０月号が、「私の好きな短編小説三編」というアンケートを特集していて興味深い。
　近現代・国内外の作品からということだが、５３人が選んだなかで作品では、葉山嘉樹「セメント樽の中の手紙」（５人）、夏目漱石「夢十夜」（４人）、中島敦「山月記」、ゴーゴリ「外套」、北條民雄「いのちの初夜」、チェーホフ「ねむい」、同「可愛い女」が３人と続く。
　作家別ではチェーホフ（８人）、志賀直哉（７人）、梶井基次郎（６人）、小林多喜二（６人）、以下右遠俊郎、魯迅らが続く。
　ああこんな作品もあったなと思い出すものもあれば、まったく知らない作品もある。沖縄の作家大城立裕さんは、「夢十夜」の運慶の話をあげている。「『芸術は宇宙の真実を掘り出すことだ』という芸術論が、夢なればこそ小説として造形できた」とコメント。長崎の原爆体験を書き続ける林京子さんが井伏鱒二「狸と狢」をあげて、作品のもつ巧みなユーモアについてコメントしている。大城、林両氏の作風の根にかかわるものとして興味深い。
　プロレタリア文学と民主主義文学の作品もあげられ、これらが日本文学の重要な流れであることも再認識させられた。同誌としては味な趣向だ。
　（聳）
( ２００８年０９月１０日，「赤旗」)（Page/Topへ）

プロレタリア文学魅力再発見／三浦光則／小林多喜二…徳永直…松田解子／五感フルに使ってゆかりの地を散歩

　小林多喜二の『蟹工船』が、ベストセラーになっているという。先日も、ある書店で、平積みになっている文庫本の『蟹工船』を見ていた初老の男性が、同行していた若い夫婦に「ヘェー、こんな本が売れているんだ」とびっくりしたように話しかけているのを目撃した。

若い読者に受ける理由
　『蟹工船』が若い人の間でブームになっているのには、今日の若者のおかれている現実を反映していることが指摘されており、さらには書店の側の販売努力とマスコミでの取り上げということもあるのだろう。
　しかしそれ以上に多喜二の作品そのものの魅力が、若い読者に受けている理由になっているといっていいのではないだろうか。最近発行された多喜二・百合子研究会の「会報」に、大田努氏が『蟹工船』の現代性について述べている。その中で、未組織労働者をとらえる視点が今日においてもなお斬新さを失っていないことを論じている点に、わたしは特に注目した。
　ところで徳永直の『太陽のない街』は、高校の文学史の教科書などで、プロレタリア文学の代表作の一つとしてとりあげられているが、この作品は一九二九年に発行された雑誌『戦旗』に『蟹工船』と同時に掲載された。作者も参加した共同印刷の大ストライキを描いたものである。多喜二や直の作品は、当時の高揚したプロレタリア文学運動を背景にして生まれたこともあらためて知る必要があるだろう。

前進座俳優作品を朗読
　『蟹工船』だけでなく、多くの作品がこうした運動の中から生み出されている。また当時の文学運動が、その時代の直面する課題に正面から取り組んで、文学作品として描こうとしていたことにも驚かされる。
　その一つとして、松田解子の三・一五事件と天皇の即位礼を背景に書かれた「乳を売る」という初期の作品も思い起こされる。
　さて、九月からプロレタリア文学の舞台を歩く「民主文学・東京文学散歩」が企画されている。小林多喜二や徳永直、松田解子という三人の作家の東京でのゆかりの地をおとずれ、現地では関連する作品を前進座の俳優が朗読する。五感をフルに使って文学作品を味わおうというちょっとぜいたくな催しである。わたしはその案内役をおおせつかって今準備を進めているところである。
　（みうら・みつのり　文芸評論家）
　　◇
　民主文学・東京文学散歩（全３回）　２１日（日）小林多喜二＝五反田、築地、麻布十番。１０月１９日（日）松田解子＝中野。１１月１６日（日）徳永直＝小石川。各回とも午前１０時―午後３時。通し参加６０００円、一回参加２５００円。申し込み℡０３（５９４０）６３３５日本民主主義文学会
( ２００８年０９月１０日，「赤旗」)（Page/Topへ）

人間に対する深い愛と真理を求める心を学ぶ／伊勢崎で多喜二祭開く

　一九三一年の「伊勢崎署占拠・多喜二奪還事件」の舞台となった群馬県伊勢崎市で七日、伊勢崎・多喜二祭が開かれ、会場いっぱいの二百三十人が参加しました。首都圏はもちろん愛知、熊本から来た人もいました。
　事件が起きたのは一九三一年九月六日。文芸講演会の講師として伊勢崎を訪れた小林多喜二らは、伊勢崎警察署に拘束されました。講演会場に集まった聴衆や県下の無産党の人たちは、多喜二らの釈放を求め警察署を占拠。交渉の末、一人の犠牲者も出さずに釈放を勝ち取りました。
　多喜二祭では、三氏が講演しました。
　「事件」の調査・研究を続けてきた多喜二研究家の蛎崎澄子さんは、当時の情勢にふれながら「事件」を解説。「権力の思想弾圧に対して民衆の知恵と力と団結が見事に統一した、まれに見る民衆の勝利だった」とのべました。労働運動研究家の藤田廣登さんは、多喜二の生涯を振り返りながら、「人間を励まし続ける多喜二の精神は戦後、日本国憲法で実現された。憲法を守る運動は多喜二の遺志を継ぐ重要な取り組み」だと強調しました。
　弁護士の平山知子さんは、当時多喜二らとともに拘束された父、菊池邦作の生き方や、画家のいわさきちひろとのエピソードを交え、「人間に対する深い愛と、真理を求める心が、日本共産党員としての二人の生き方を結びつけた。偶然にも父がその一端を担ったことに喜びを感じています」と語りました。
　母親と参加した伊勢崎市の女性（３２）は、「『蟹工船』ブームの小林多喜二が、こんな身近にきていたのを知って驚きました。『蟹工船』もかならず読みます」と話していました。
( ２００８年０９月１０日，「赤旗」)（Page/Topへ）

反戦川柳作家鶴彬たたえる／石川・かほくで集い

　石川県かほく市（旧高松町）出身で、戦前の軍国主義を痛烈に批判した反戦川柳作家・鶴彬（つる・あきら、本名・喜多一二）の第十回たたえる集いが七日、同市南町会館で開かれ県内外から約五十人が参加しました(写真）。主催は鶴彬を顕彰する会と鶴彬生誕百年祭実行委員会。
　第一部では、同会館横に建つ「枯れ芝よ団結をして春を待つ」の句碑前で、参加者全員が黙とうし、「平和の誓い」朗読、献句・献花がおこなわれました。
　第二部は富山市在住の詩人・野海青児氏が鶴彬の生き方について講演しました。治安維持法違反容疑で逮捕された鶴彬が赤痢にかかり、一九三八年九月十四日、東京都・豊多摩病院で死去。享年二十九歳でした。
　野海氏は「警察署で鶴彬がなぜ赤痢にかかったのか疑問」と述べるとともに、「鶴が留置場の中でいつも明るくふるまっていたのは、人のために自分のいのちをささげようと思っていたから」と語りました。
　同日夜、さつま琵琶奏者の寺本拳嶺師による創作びわ「鶴彬」の上演がありました。
　来年の鶴彬生誕百年を記念して神山征二郎監督の手によるドキュメンタリー映画の制作がすすんでいます。
(２００８年０９月１０日，「赤旗」)（Page/Topへ）

日本共産党知りたい聞きたい／戦前の「司法官赤化事件」とは？

　〈問い〉戦前の１９３０年代にあった「司法官赤化事件」とは、どんな事件だったのですか？（福岡・一読者）
　〈答え〉「司法官赤化事件」とは、１９３２年から３３年にかけて、１０人をこえる裁判官や裁判所の職員が、全国各地で治安維持法違反を理由に逮捕され、そのうち東京地裁の尾崎陞判事など４人の判事と書記の西館仁など５人の裁判所関係者が起訴された事件です。
　天皇制の絶対的な権力のもとで、「天皇の名で」裁判をおこなう裁判所にまで、日本共産党の組織が及んでいたということで、「神聖な司法部まで」日本共産党の影響があった重大問題だと大々的に報道されました。
　事件は、これらの人々が、日本共産党に資金カンパをしたとか、「赤旗」の配布を受けていたとか、研究会に参加したとか、あるいは一部の人が活動家に住居を世話したとか、日本共産党員になったとかいう、今でいえば全く当然の何でもない普通の活動が罪にとわれたものです。
　しかし、そもそも治安維持法は、こうした日本共産党への加入や活動支援、協力を、「国体の変革（国の政治のあり方を根本的に変える）」として、天皇制のもとでは、許せない考え方だとし、最高刑は死刑をもって厳罰に処すという、思想を罰する悪法でした。
　裁判の結果は、判事の尾崎が６年、滝内礼作、為成養之助が各３年、福田力之助が２年、組織の活動の中心メンバーで、「転向しなかった」とされた書記の西館仁は８年と、この５人には懲役の実刑が科せられました。
　なお、戦後前記の４判事は、いずれも弁護士となり、自由法曹団に加入して、各方面で活躍しました。また、西館仁は日本共産党中央委員・北海道委員長などとして活動しました。（法）
　( ２００８年０９月１０日，「赤旗」)（Page/Topへ）

ひと／『田村泰次郎の戦争文学』をまとめた三重大学教授尾西康充さん（４１)

　「肉体の門」など〝肉体派作家〟としてのイメージの強い田村泰次郎。しかし、旧日本軍兵士としての中国山西省での体験をもとに、「裸女のいる隊列」など、反戦をテーマにした戦争小説を数多く、書いています。ここに光を当てた、初めての研究書（笠間書院）を執筆しました。
　研究スタイルは、徹底した〝現場主義〟。小説に出てくる中国の農村を、日時まで場面に合わせて訪ね、そこで何があったのか、現地の声を聞いて回りました。訪中は十回に及びます。
　その結果、田村が、小説で戦争の非道さを誇張なく描いていることを確認しました。「これをきっかけに、自分たちが加害者であったことを描く戦争文学が評価されるようになってほしい」
　広島大学の出身。自身の白血病を受け入れられないまま道半ばで亡くなった被爆二世の友人がいます。また、被爆前日に「日本は勝つ」と講演した広大教授がいたことを知り、真実を追究し、「市民の立場に立った研究者」になることを決意しました。
　この七月、三重県での日本共産党創立記念の集いで小林多喜二の文学を語り、感銘を与えました。今月、イギリス・オックスフォード大学で開かれる「多喜二記念シンポジウム」で研究発表します。
　「日本社会は今、重大な岐路に立っています。研究者としてもがんばらないと」。柔和な語り口の端々に、平和への熱い思いがのぞきます。
　文　白瀬　総彦
( ２００８年０９月０９日，「赤旗」)（Page/Topへ）

潮流

　少々カビくさいレコードに針をおろす。ギターに導かれ、スペイン語の男声の歌が流れます。「お前を想いだすよ、アマンダ…」（「アマンダの想い出」）▼「宣言　ビクトル・ハラ―チリ１９７３年９月」。レコードの表題です。チリ軍事クーデターで殺された歌手ビクトル・ハラを悼み、翌一九七四年、彼の妻と仲間がイギリスで制作しました▼民謡にねざす新しい民衆の歌の作り手、歌い手だったビクトル。軍は彼をボクシング競技場に捕らえ、拷問を加えます。人民連合政権とともに歩み、民衆に愛されていた彼は、軍部の特別の獲物でした▼四日間の拷問と飢えで苦しむ彼に向かい、将校がわめく。「できるもんなら歌ってみろ、こん畜生！」。ビクトルは最後の力をふりしぼって歌う。人民連合の歌、「ベンセレーモス！」。彼は引きずり出され、銃弾を浴びせられた…。仲間が伝える彼の最期です▼特高警察の特別の獲物だった、小林多喜二の最期とも重なります。のちのチリ民主化、さらにもう一つの事件が彼の歌声をよびおこしました。アメリカの９・１１同時テロです。アメリカが支援したチリ軍事クーデターも、９・１１の悪夢でした▼虐殺から三十五年。今週の９・１１、東京・よみうりホールで「ビクトル・ハラ　もう一つの９・１１」が催されます。出演は歌手の横井久美子さんや、あの追悼レコードに解説をよせた評論家、濱田滋郎さん。歌い継がれるビクトルの歌の力の秘密をあかし､今日の中南米の民衆の息吹を感じよう､と｡
( ２００８年０９月０８日，「赤旗」)（Page/Topへ）

燦然と輝く革命の花伊藤千代子／松本善明

土屋文明を感動させた人生を今
こころざしつつたふれし少女よ新しき光の中におきて思はむ
　これは土屋文明が一九三五年（昭和十年）秋、日本の中国全土への本格的侵略の準備期、治安維持法が荒れ狂っているときに、東京杉並にある、伊藤千代子の学んだ東京女子大の講演のあとで、彼女について歌ったものだ。長野県諏訪にある伊藤千代子顕彰碑にも刻まれている。いま、小林多喜二や「蟹工船」がブームの時代、いうなれば「新しい光」が燦燦と輝いているときに伊藤千代子について深く考察することは大きな現代的意義がある。

獄中からの手紙「地しばりの花」
　伊藤千代子の人生の真価は四通の「獄中最後の手紙」にあらわれている。私は苫小牧市中央図書館で実物を見て感動を深くした。内容はその公開記念誌『地しばりの花』に全文収められている。
　最初の一通は市谷の刑務所から、中野野方に住む義妹浅野淑子に宛てた手紙である。中心部分を現代仮名遣いにするなど読みやすくして紹介する。
　「ここではね。いま地しばりの花ざかりです。高い赤煉瓦の塀に沿ってまるい黄色な頭を春の風にユラユラゆすぶっています。淑ちゃんは地しばりをご存知ですか、強情な大変力のある面白い草ですよ、ダリアの畑へでも菊の畑へでもおかまいなしにずんずん押し込んでいって肥料を横取りしてしまいます。田舎では野菜や桑を荒らすのでお百姓は眼の敵にしていじめています。…命のあるものはみんなあらん限りに生きようとしているのですね。生きようとするからこそその大事な命を投げ出すのですね」
　多喜二が小説にした一九二八年三月十五日、日本共産党中央委員会事務の中心的仕事をしていた彼女は格闘の末、特高に逮捕される。男性に対するのとは違った、凄まじい拷問がおこなわれたことは想像に難くない。しかし、彼女はそれに耐え抜き、元気に生き生きとたたかっていたのだ。これは翌二九年五月八日付、彼女が身柄を拘束されてから約一年二カ月後のものだ。

問題の核心とはどこが別れ道か
　問題の核心は、その二カ月後、義母浅野すて宛の七月二十六日付二通と七月二十九日付の一通だ。二十六日付の二通は、夫だった浅野晃などの公判闘争にたいする感動を伝えるもの。その三日後に書いた文字どおり最後の手紙は、夫の裏切りを知らされた後のものだ。「次便で詳しくと、申し上げましたが、もうその必要がなくなってしまいました。理屈がいやになりました」。この短い文章は明確な夫への決別だ。そのあと夫の家族に対する優しい思いやりがつづられている。
　浅野晃が彼女の直接の上司だった水野成夫とともに裏切った理由は「主権者天皇のもとでの社会主義」ということだ。これは「国民主権」という日本共産党の尊い旗印を捨てることを意味する。彼女は「国民主権」が科学的社会主義の根幹にあることをはっきりと認識していたから、毅然とした態度をとった。私は彼女が学んだ東京女子大と、仙台の尚絅女学校に残されている当時の状況を見て、彼女が最高の女性高等教育を受けた俊秀だったことを実感した。

大輪の花・人生そのものが芸術
　それから二カ月後が、松沢病院での獄死だ。わずか二十四歳。多喜二のように特別の業績は残さなかったが、彼女の清冽な人生そのものが限りなく美しい芸術である。まさに革命の花、それは時代とともにますます大輪になるだろう。
　（まつもと・ぜんめい　日本共産党元衆院議員）
　伊藤千代子のつどい＝二十三日午後一時半、平和と労働センター・全労連会館（東京都文京区湯島２の４の４、ＪＲ御茶ノ水駅８分）、松本善明氏の記念講演「伊藤千代子といわさきちひろを語る」や組曲、朗読など。参加費五百円、主催・伊藤千代子の会。参加申し込みは事前に、℡・ＦＡＸ０３・３６７６・３７０９中村か、℡０９０・２２０８・６１１４藤田へ。
( ２００８年０９月０８日，「赤旗」)（Page/Topへ）

蟹工船海外でも注目／世界第二の経済大国で何が…／韓国／英国／中国／シンガポール

　日本共産党員の小林多喜二が書いた小説『蟹工船』（一九二九年発行）は海外でも注目されています。メディアは、世界第二の経済大国での国民の貧困やワーキングプア、劣悪な若者の状況などとの関連を指摘し、日本共産党にも関心の目を向けています。

この現象も『蟹工船』？／２０年ぶり出版「若者に勇気」／韓国
　韓国の翻訳版『蟹工船』が八月十八日、初版本以来約二十年ぶりに出版されました。初版は軍事独裁政権を打倒した民主化直後の一九八七年八月に出版されています。
　ハンギョレ新聞社の雑誌『ハンギョレ２１』は六月、「七十九年前に発表されたプロレタリア文学作品が日本で爆発的人気だ」と紹介。韓国日報、ソウル新聞なども八月、日本共産党の党員が増加していることとあわせて、「社会的な雰囲気が変わっている」（ソウル新聞八月五日付）と伝えました。
　日本のブームの背景にある貧富の格差の拡大、ワーキングプアの増大は韓国でも深刻な社会問題になっています。
　韓国にも多数の非正規労働者がいることを念頭に「もしかして、この現象は『蟹工船』ではないのか」というのが韓国版『蟹工船』の宣伝文句です。出版社は、日本より深刻な状況にあるともいえる韓国の若者にとって、「この間違った現実は自分のせいではない、変えることができるという勇気を奮い起こさせる」のが『蟹工船』だとも指摘しています。
　地方紙・釜山日報は八月二十三日付で書評を掲載。「七十九年前の他の国の小説を今どのように受けとめるべきか。訳者の言葉が参考になる」として、次のように締めくくっています。
　「目をそむけていた自分の社会的位置について覚醒（かくせい）させられた。小林多喜二は問い詰める。『お前は誰だ』と｡そのたびに､どうにも分からない恥ずかしさで全身の血が熱くなった」

〝マルクス主義〟小説復権／複数メディアが記事／英国
　英国では複数のメディアが取り上げました。
　ロイター通信は八月十二日、『蟹工船』が不安定な雇用や賃金格差の拡大にあえぐ日本の若者などの間でベストセラーになっていると伝える東京発の記事を世界に配信しました。
　記事は「一九二九年に書かれたマルクス主義者の小説が日本のベストセラーの上位を占めている。世界第二の経済大国での雇用不安や所得格差の拡大への不安が反映されている」と指摘。「残虐な監督のもとで過酷な条件でカニ加工の労働を強いられる船員についての小説だ。一九三三年に二十九歳で警察に拷問され殺害された共産主義者小林多喜二によって書かれた｣と紹介しています｡さらに、いま読まれている背景に「低賃金のパートタイムや契約労働者の層が増大していることがある」と分析しています。
　ガーディアン紙は同月二十一日付でこの通信を掲載しました。
　インディペンデント紙二十二日付は同じく東京特派員電で取り上げました。小説冒頭の「おい、地獄さ行（え）ぐんだで！」と叫ぶ漁師の言葉を引用しながら、現在の日本の若者が置かれた状況と重ね合わせて紹介しています。同紙は「マルクス主義小説の復権は、世界第二の経済大国で、この十年間の構造『改革』のなかで多くの被雇用者保護の措置が取り払われてきたことに対し不満が増大していることの証明だ｣と分析しています｡
　そして、「日本の労働力の三分の一以上が非正規雇用であり、数百万の人たち、とりわけ若者たちは賃金が目減りし、将来の希望がしぼむなかで、いかに生活するかを模索している」と述べています。
　記事は「日本はなお企業優先の政策をとる自民党に支配されているが、『蟹工船』現象は多くの若者が急激な変化に飢えている兆候だ」と指摘しています。
　さらに、「こうした国民の気分の変化」は日本共産党にも追い風になっていると指摘。「同党の志位和夫委員長が二月に国会で非正規雇用の問題を取り上げ、福田首相を追及」してからは「毎月千人の新入党員を迎えている」と述べています。

国際情報紙で特集／日本共産党の活動を紹介／中国
　中国共産党機関紙・人民日報が発行する国際情報紙「環球時報」七月二十九日付は、今日の日本共産党の活動を多面的に紹介する記事を一㌻を使って掲載しました。
　そのなかで『蟹工船』を｢漁業資本家、反動的軍隊に対する労働者のたたかいを描いた小説」と紹介。この小説が百万部も売れる背景には、若者と女性の半数が非正規雇用であり、多くの労働者が派遣社員だという現実があると説明しています。

〝日本の窮状映す鏡〟／元凶に小泉「構造改革」路線／シンガポール
　「今日の日本のワーキングプアの窮状を鏡に映したような小説」―シンガポール紙ストレーツ・タイムズは八月十三日付国際面トップで日本の『蟹工船』ブームを報じました。
　同紙は「年間二百万円未満の所得の日本人は一千万人ほどいるといわれる。その多くは一九九〇年代から徐々に導入されてきた経済自由化政策の犠牲者だ」と指摘。「常用スタッフを賃金のもっと安いパートタイム労働者に置き換えるよう奨励されたのが、二〇〇〇年代初めの小泉政権の時期だった」と小泉「構造改革」路線に元凶があるとしています。
　「多くの日本の若者は高校、大学の卒業後、正社員としての勤め先を見つけられなかった」と若者の労働の現実にも触れています。
( ２００８年０９月０６日，「赤旗」)（Page/Topへ）

治維法国賠同盟福島県本部が蟹工船を上映

　治安維持法犠牲者国賠同盟福島県本部は八月三十一日、第三十一回総会を開きました。「治安維持法犠牲者に対する謝罪と国家賠償を求める五十万署名運動」や「民主主義のなかった時代―治安維持法犠牲者たち」の顕彰運動など、一年間の運動方針を決めました。
　今年で創立三十周年の節目を迎えた同盟県本部は、公開記念行事「『蟹工船』―映画と講演のつどい」を福島市で開き、会場いっぱいの三百人が参加しました。
　映画「蟹工船」（山村聡監督）を鑑賞したあと、詩人の土井大助氏が「小林多喜二と『蟹工船』」と題して講演しました。
　土井氏は「青年多喜二の人間と生涯」「代表作『蟹工船』をめぐる内外の歴史的評価」など、蔵原惟人が残した評論や多喜二の盟友・手塚英孝が書いた評伝『小林多喜二』（新日本出版社）を駆使して、原作の理解を助けました。
　土井氏は、映画「蟹工船」の感動をいっそう深いものにするために『蟹工船』をはじめ多喜二の作品、あわせて手塚英孝『小林多喜二』を読んでほしい、と訴えて講演を結びました。
(２００８年０９月０５日，「赤旗」)（Page/Topへ）

「集産党事件」思想弾圧名寄で講座

　名寄市の北国博物館でこのほど、講座「朔北の青春にかけた人びと　名寄新芸術協会・集産党事件をめぐって」が開かれました。
　同博物館が主催したもので、昨年十一月に『朔北の青春にかけた人びと　北海道初の治安維持法弾圧集産党事件をめぐって』を出版した宮田汎氏が名寄地方の戦前の思想弾圧について講演しました。
　集産党事件は一九二七年十一月、名寄を中心に士別、稚内などで四十人以上が逮捕拘束された国内で二番目、道内では初の治安維持法弾圧事件です。
　第一次大戦後、名寄駅や機関庫の労働者を中心に多くの文芸誌が発刊され、七十人余で名寄新芸術協会を発足。二七年の磯野小作争議と小樽港湾争議、中国への出兵反対のたたかいに参加した同協会の青年たちは同年、社会主義をめざす組織として集産党を結成しました。
　事件関係者や親族を訪ねて証言を聞いた宮田さんは、弾圧の経過を映像で解説。「いまこそ戦争に反対した犠牲者のたたかいを継承していくことが大切です」と話しました。
(２００８年０９月０５日，「赤旗」)（Page/Topへ）

『弘前民主文学』第１３２号を発行

　青森県の日本民主主義文学会弘前支部は、機関誌『弘前民主文学』百三十二号を発行しました。
　創作は、幼い子どもの病死を通して家族のありようを描いた「二輪草｣(国麻美)｡写真を撮り続けている大学生の俊治が、津軽の原風景を求めて訪ねた「オロサキ」でおばあちゃんと出会う「アカシアの郷で」（野呂光人）。戦争直後、樺太から引き揚げてきた姉のみさ子とその子百子に対する妹やす子の思いを通して戦争のむごさが描かれている「百子・初年越」（三浦やよゑ）など六編を収めています。
　現代の労働現場を反映して、小林多喜二の「蟹工船」が読まれていることを題材にした講演録「『蟹工船』の衝撃」（三浦協子）が収録されています。
　そのほか四編のエッセーやルポ、詩や俳句など充実した作品が載っています。
　連絡先は、民主主義文学会弘前支部（弘前市浜の町東３の１３の２２・山田大輔さん）。
(２００８年０９月０４日，「赤旗」)（Page/Topへ）

ひと／朝鮮の子たちと生きた父・上甲米太郎の思い出を語る上甲まち子さん

　植民地時代の朝鮮で、朝鮮人学校の教師・校長として子どもたちと共に歩んだ上甲米太郎。朝鮮語でも授業をし、励ましました。社会変革に目覚め、教え子らと雑誌の読書会を始めた途端、治安維持法違反で逮捕されました。東京都新宿区大久保の高麗博物館では、当時の日本人としては、まれなその生き方に光をあてた特別展を開催中（十月二十六日まで℡０３・５２７２・３５１０）。六日、同館で父の思い出を語ります。
　「私の名前は、あの時代の目覚めていく女性を描いた野上弥生子の小説『真知子』からなんです」。舞台俳優らしい、よく通る声で笑います。
　「演劇人になったのは、考えると父の影響ですね」。朝鮮で生まれ、戦争末期に福岡県大牟田市へ。戦後、焼け残った地元の劇場に、父に連れられて通いました。著名劇団も来演し、「新劇の薄田研二さんの顔も覚えています」。
　学校でも演劇部。高校卒業後は上京し舞台芸術学院に入学。「後で弟から、見送った父が家で泣いていたと。父が泣くとは思わなかったなあ」
　今年五月、高麗博物館の人たちと、韓国に調査に行きました。「学校が残っていて、歴代校長の年表に父の名を発見して、衝撃を受けました」
　劇団・青年劇場で公演中の「族譜」では、無実の罪で捕らえられた知日派の朝鮮人青年の母親役。青年は獄中で反日運動の闘士に。弾圧でむしろ生きる方向が定まった父と「似ている話ですねえ」。
　文・写真　清水　博
( ２００８年０９月０４日，「赤旗」)（Page/Topへ）

治維法国賠同盟県本部が総会／富山

　治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟富山県本部（古川松男会長）は八月二十九日、富山市内で第二十四回県本部総会を開きました。
　戦時下最大の言論弾圧事件「横浜事件」発祥の地、泊町（現朝日町）の料理旅館「紋左」に記念碑を建設する運動に取り組み、十一団体百六十人を超える協力で五月に建立したことなど前総会からの活動の経過を報告。治安維持法犠牲者の国家賠償を求める署名に引き続き取り組み、組織拡大をすすめることなど、今後の活動方針を決めました。
　日本共産党の佐伯めぐみ衆院北陸信越ブロック比例候補（富山１区重複）が連帯のあいさつをしました。
(２００８年０９月０３日，「赤旗」)

【8月】（Page/Topへ）

風の色／美帆シボ／もう一つの追悼碑

　７月７日午後３時半、長崎空港に到着。空はからりと晴れ上がっていた。同日、平和公園内に建てられた追悼碑の除幕式で、午前１１時２分に黙祷が行われた。もっと早くこの情報を得ていたら式に参加したかったが、もはや飛行機の変更は不可能だった。
　短い長崎滞在中に、せめて追悼碑を写真に収めようと、平和公園に向かった。公園内にはたくさんの碑がある。が、目的の碑はなかなか見つからない。炎天下を歩き回っているうち、友人との約束の時間が迫ってきた。近くの店に駆け込んで､｢中国人原爆犠牲者追悼碑｣はどこですか､と聞いたが､誰も知らない｡
　公園内をよくよく見ると、旧浦上刑務所支所の壁があり、刑務所について説明が施されていた。
　もう一度、ひとつひとつ碑を確認し、あきらめて帰ろうとしたとき、木陰の下にひっそり建っている黒い御影石の碑に気づいた。これだ！　戦時中、炭鉱での労働に強制連行された中国人が治安維持法違反の嫌疑をかけられ、投獄された。そして、原爆投下。
　刑務所は爆心地の近くにあった。碑には被爆死した３２人の名前が刻まれている。
　７月７日は日中戦争の発端となった盧溝橋事件の日。黙祷は原爆が長崎に投下された時刻に行われた。遺族と碑の建立に尽くした方々が１００人ほど集まったという。
　遅れてやってきた私はひとり追悼碑に向きあった。何をどうするというのでもなく、ただ史実の重みをずっしり身に感じて、しばし佇んだ。
　（仏平和自治体協会顧問）
(２００８年０８月３１日，「赤旗」)

党創立記念講演パンフ／１００部普及多くの共感／福岡県粕屋町議川口学さん（６８）

　党創立８６周年記念講演のパンフレットが出版されると聞いて、私はすぐ宗粕地区委員会に１００部注文して買い取り、支持者の方や友人、知人、各党派の議員、役場職員などに「ぜひ読んでほしいから」といって手渡しています。
　私がその気になったのは、「赤旗」日刊紙に講演の内容が掲載されたのを読んで、感動を覚えたからです。
　私の父は、戦前からの党員で昭和８年（１９３３年）の２・１１九州共産党弾圧事件（治安維持法違反）で検挙投獄されました。その父から私が２２歳の時に、小林多喜二の「蟹工船」と「党生活者」を読むようにすすめられてから、貧しい人々の暮らしを守る共産党員の姿に共感して入党し、以来４０年が過ぎました。
　記念講演を読んで、改めて共産党員として活動を続けてきたことへの誇りと確信をいっそう深化させることができました。
　まず「正義と道理に立つものは未来に生きる」という表題が素晴らしいと気に入りました。非常に「垢（あか）抜け」した説得力のある言葉ではないかと思ったのです。
　内容も語り口もわかりやすく、ユーモアもある。共産党にたいしてたとえ偏見を持った人でも抵抗なく読んでもらえるパンフだと思います。
　読後の感想、意見も寄せられています。現地調査にもとづくキヤノンの派遣労働の実態、その源となった労働者派遣法の大改悪に反対した唯一の党が共産党であること、高齢者のみならず多数の国民の怒りをかっている後期高齢者医療制度の原型となった健康保険法改悪の際の「付帯決議」に共産党を除く野党もいっしょに共同提案していたことに、「びっくりした」などの感想が、役場の職員や元町議会議長からも寄せられています。
　また、ソ連崩壊後の国際情勢の動向を的確に見通した共産党の先見性と、第一にめざすべきは資本主義の枠内での民主的改革であり、「ルールなき資本主義」の現状を打破することが共産党の当面の目標であることを知って「共感している」という感想が一番多く寄せられています。
　こうした反響に気を良くしている私は、１００部といわず、２００、３００と普及しようと燃えています。
　来年４月はわが粕屋町の町議会議員の改選期です。私は現在副議長をしていますが、１０期目に挑戦です。そのためにも頑張ります。
( ２００８年０８月３０日，「赤旗」)

暗黒政治、戦争許さぬ／治維法国賠同盟仙台で署名訴え

　治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟宮城県本部と仙台支部はこのほど、「ふたたび戦争と暗黒政治をゆるさないために、治安維持法犠牲者に国家賠償の制定を求める署名」行動を仙台市内の東二番町と名掛丁の角で五人の参加で行いました。
　仙台支部の鈴木事務局長が「第二次世界大戦が終わって六十三年。戦前は日本の戦争は『聖戦』として死ぬことを名誉と教えられてきました。戦争に反対した勇気ある人々は治安維持法によって監獄にいれられ、拷問によって殺された人もいます。国民は目と耳と口をふさがれ戦争がはじまりました。ふたたび戦争と暗黒政治を許さないために、治安維持法の犠牲者に国家賠償法の制定を求める署名を」と呼びかけ、「平和といのちの尊さを大切にする政治に」のビラを配布しました。
　信号待ちしている人たちが「戦争は絶対反対です。頑張ってください」といいながら十一人が署名に応じました。
(２００８年０８月２８日，「赤旗」)

民衆とともに／弁護士布施辰治／８／「生きべくんば…」

　敗戦後、直ちに再建された自由法曹団と国民救援会の中心に布施辰治がいました。
　占領軍下での軍事裁判や労働組合運動に加えられた弾圧事件（三鷹・松川）の弁護団にも加わりました。

権力もたたえる
　一九四九年十一月十二日､明治大学講堂で､「布施辰治弁護士誕生七〇年記念・人権擁護宣言大会」が開催され、会場で返礼として配られた短冊に辰治は「生きべくんば民衆とともに、死すべくんば民衆のために」と書いたのです。この言葉を大書きした顕彰碑が石巻市蛇田にあります。
　辰治の残した膨大な資料は、現在、母校の明治大学、東京の朝鮮大学校、そして石巻市の三カ所に保管されています。
　石巻市の保管物の中で、私がぜひ紹介したい物は一枚の感謝状。「一九三三年三月一五日」の日付で、贈り主は「治安維持法違反事件被告一同」。
　文面は「親愛なる同志布施辰治君」で始まり、大審院判決によって弁護士資格を奪われた辰治の弁護活動の健闘への感謝を記しています。この感謝状の贈り主は当時非合法活動中の地下の共産党と伝えられています。
　辰治をたたえる言葉をもう一つ。「多年人道的戦士として弱者の為に奮闘したる貴き情熱を有するの士」。これは治安維持法違反事件での大審院判決の記述です。時の権力でさえこのように辰治を評したのでした。
　戦後、共産党の集会で行った辰治の生の声が残っています。そこで辰治は戦前の共産党が実践した「黙秘の闘争｣をたたえています｡辰治自身が言論犯として下獄したことを想起すれば、憲法の諸人権規定は、戦前の日本人民が求め続けた闘争の結果としてたたかいとった権利なのです。

今、新しい光
　今、辰治に新しい光が当てられています。
　二〇〇七年には、劇団前進座の『生くべくんば…』上演。また同年には「布施辰治著作集」全十六巻（ゆまに書房）が刊行されました。辰治の著作・文章に直接に接することができるようになりました。今後は、転向を拒絶し抜いた辰治の強靱（きょうじん）な思想形成を学ぶことが私の課題です。
　「先達に学ぶ」ことは憲法擁護運動にとっても大切です。そこにこそ「人類の多年にわたる自由獲得の努力」（憲法九七条）がしっかりと刻まれているからです。
　（弁護士　庄司捷彦）
　（おわり）
(２００８年０８月２８日，「赤旗」)

絵や音楽、学習で―憲法９条守れ／粘り強く運動／立場超え一緒に／札幌／室蘭

　憲法擁護の世論が国民多数派になるという画期的な変化が生まれています。国政の場では自民、公明、民主が憲法審査会を合作で始動させようとする動きもしつように続けられるなか、草の根では地道に憲法を知り守ろうとする運動がねばり強く進んでいます。札幌と室蘭で、地道に続けられている取り組みと運動を追いました。
　（小池光栄）

自由な文化発信こそ／２０回目の「つどい」／札幌
　一見遠い関係に思われる絵や音楽と、「憲法九条を守る」ことを結びつけて活動している「九条の会」が、札幌市内にあります。三年前の三月に結成された「星置九条の会」（手稲区）です。
　設立総会を兼ねた第一回の「講演と文化のつどい」から数えて二十回目の集いが二十三日に行われ、筝（そう）曲演奏、講演、水彩画展…と、にぎやかなものになりました。
　この日のメーンは戦前、旭川師範学校の教員と生徒が治安維持法違反として弾圧された「生活図画事件」（一九四一年）の被害者、松本五郎さん（元音更町下音更小学校校長）の講演でした。
　本を読み、話し合う光景など、まったく普通の絵を描いただけで「反戦・左翼思想」と一方的に断定され、特高警察の弾圧対象に。「まさか生活のことを描いたものが対象になるとは夢にも思わなかった」と証言します。警察での自白強要、未決囚としての独居房生活で「神経がすり減り、自殺を考えたこともあった」と、非人道的な事件を告発。「今、時代逆行的な動きが見られ心が痛むが、この話が世界の平和のために役に立てれば」と結びました。
　参加者も聞き入り、「ひとごとではない」と共感が広がります。ビラ配布規制や自衛隊情報保全隊の国民監視活動など憲法を侵す今の危険な動きを許してはいけないと発言が相次ぎました。毎回歌う「憲法九条　五月晴れ」で結びとなりました。
　会代表の伊藤太郎さん（画家・理学博士）はいいます。「九条を守るということは堅い話に思われるが、九条を守ることで自由な文化の発信ができる。文化は人間性を発露する素晴らしいもので、絵や音楽を大切にするというのは原点です。私たちはありったけの力でやっていきたい」

風通しのよい社会に／月１回の学習会／室蘭
　港湾都市・室蘭市には、スタートしてから八年目になる、「室蘭・憲法を学ぶ会」があります。地域のお米屋さんも加わって、にぎやかにねばり強く、毎月一回の学習を続けています。
　年に一回は、広く市民にも呼びかけて講演会を開きます。この二十五日に開いた「憲法を学ぶ特別講演会」には、補助いすを出しても出しても足りず、予想を超える約百四十人が詰めかけました。
　講師は「九条の会」呼びかけ人の一人、奥平康弘東京大学名誉教授（釧路生まれ）。
　「表現の自由の現在・過去・未来―日本は今『息苦しい社会』へと向かっているのか？」のテーマで話し始めた奥平さん、ビラ配布への干渉や映画「靖国」上映の妨害などをあげ、戦前の日本で国民の言論・表現の自由を奪った治安維持法などの弾圧立法を説明します。今後の問題として「多少〝トゲのある〟表現をも受容できるような社会、市民社会のなかで解決していけるような風通しのよい社会が必要だ」とのべました。また「国家が暴力で気ままにやろうとするのを、九条が歯止めをかけている」といいました。
　聞き入っていた一人、沓澤統太さん（２２）は、「表現の自由弾圧の歴史の反省に立って今の憲法があることがわかった。だれかが守ってくれると思い、受け身にならないことが大事」と語ります。
　世話人の一人、奥野恒久さん（室蘭工業大学教員）は「継続のエネルギー」について、「室蘭市民が社会に関心を持ち問題意識を持っていること、またメディアが伝えないことについて思いを交流し合える場になっていて、このままでいいのかということを実感できるのが力になっている。心がけているのはいろいろな立場の違いを超えて一緒にやること」と、〝秘訣（ひけつ）〟を話しました。
(２００８年０８月２８日，「赤旗」)

民衆とともに／弁護士布施辰治／７／２度の投獄に屈せず

　辰治は生涯で三回起訴され、二回下獄しています。
　第一の起訴は一九二九年八月（①事件）。これは三・一五事件大阪法廷での弁護活動が標的とされ、検事が「弁護士会除名」を求めた裁判です。
　この事件は一九三二年十一月、大審院の「除名判決」が確定、辰治は弁護士資格を失います。第二の起訴は①事件裁判中の一九三〇年八月、彼の著作活動が新聞紙法違反・郵便法違反に問われたもの（②事件）。
　この事件は前記資格喪失の翌年・一九三三年三月に「禁固三カ月」の実刑判決が確定。辰治は四月五日から同年七月二十日まで下獄。
　その出所から二カ月後、九月十三日「日本労農弁護団に対する治安維持法事件」で検挙されます。稀代（きだい）の悪法は遂に「同法違反を弁護すること自体が同法に違反する」ところまで行き着いたのです。
　同じ年の十二月「皇太子生誕恩赦」で弁護士資格を回復しますが、辰治は非転向のままに未決囚として獄に置かれました。
　一九三四年三月、辰治は獄中にとらわれたままで、治安維持法違反で起訴され（③事件）、保釈を得たのは翌年三月（この間の身体拘束は約一年半）。この保釈中の旅については既述。
　そして、一九三九年五月に③事件判決「懲役二年、未決算入二〇〇日」が確定し、辰治は、再度弁護士資格を喪失し、六月二十六日千葉刑務所へ二度目の下獄をします。
　出獄は翌年七月二十九日で在監四百日。辰治は、転向を拒絶しつつ敢然と受刑生活を送ったのです。
　同時代にこのような過酷な時期を過ごした弁護士を、私は他に知りません。
　もう一つの悲しい受難は、辰治の三男杜生（もりお）が一九四四年二月、再逮捕の末、京都拘置所で獄死したことです。
　二十九歳九カ月｡彼の名前は､辰治が傾倒していたロシアの作家･思想家トルストイの和訳名｢杜翁｣に由来します｡杜生は短歌･詩などを遺していましたが､その作品群は戦後一九七八年､｢獄中詩　鼓動｣(永田書房)として刊行されました｡
　（弁護士　庄司捷彦）
　（つづく）
(２００８年０８月２７日，「赤旗」)

市立釧路図書館多喜二展が好評／『蟹工船』の貸し出し増

　釧路市の市立釧路図書館郷土資料室による企画「小林多喜二展」が好評です。
　市立図書館では六月以降、『蟹工船』の貸し出し希望が増え、予約者が待っています。
　同展では、多喜二の日本共産党入党や特高警察による虐殺が書き込まれた略年譜をはじめ、『蟹工船』『一九二八年三月十五日』『東倶知安行』『不在地主』の初版本（復刻版）や、残虐な死を伝える当時の「赤旗」「無産青年」などの新聞（コピー）が展示されています。
　市立図書館には、全集所載を除いて、多喜二関係の資料、図書は約八十点あります。
　通常は閉架書庫にあるもので、請求しなければ見ることのできないものです。
　釧路、根室での治安維持法犠牲者の発掘、調査をしている治維法国賠同盟釧路支部の大友勝紘事務局長は「公立図書館が没後七十五周年の年に多喜二の企画展を催したことは大変意義あることです。共産党員作家・多喜二を多くの人に知ってもらいたいと思います」と語っています。十月末まで開催予定。
(２００８年０８月２７日，「赤旗」)

日本共産党知りたい聞きたい／戦前の唯物論研究会への弾圧とは？

　〈問い〉映画「母べえ」のモデルも参加したという唯物論研究会への弾圧とはどんなものだったのですか？（東京・一読者)
　〈答え〉「唯研事件」（「唯物論研究会関係者治安維持法違反被告事件」）とは、１９３８年（昭和１３年）１１月２９日早朝、雑誌『唯物論研究』改め『学芸』にかかわる主要メンバーが一斉検挙されたことに始まる弾圧です。このときとその前後に検挙されたのは、岡邦雄、戸坂潤、永田広志、森宏一（本名、杉原圭三）、伊藤至郎、伊豆公夫（赤羽寿）武田武志（沼田秀郷）、服部之総、信夫清三郎、古在由重ら３０余人、映画「母べえ」のモデルとなった新島繁（野上巌）もその一人です。
　「唯研事件」は、４０年１月の第２次一斉検挙（本多修郎、今野武雄、岩崎昶ら１２人）、さらに２、３千部発行されていた雑誌の購読者にまで数年にわたって追及がつづき、検挙者は総数１００人余ともいわれ、完全にはつかまれていません。
　唯物論研究会は、３０年代のはじめに科学的社会主義にもとづく文化運動がはげしく弾圧・解体されていったとき、唯物論の学問的研究のための幅広い研究団体をめざし３２年１０月に結成されました。発起人には長谷川如是閑、三枝博音、羽仁五郎、舩山信一、大塚金之助、住谷悦治ら４０人が名を連ねています。月刊誌『唯物論研究』を発行、『唯物論全書』を出版、研究・講演会をひらくなどしていましたが、弾圧が必至となった３８年２月、会の解散を決議、雑誌名を『学芸』に変えていました。
　しかし、天皇制政府は、侵略戦争遂行のために反戦平和のたたかいの先頭に立った日本共産党への弾圧を徹底し、３７年７月、日中全面戦争に突入する段階になると、リベラル派、左翼運動の生き残り部分など文字どおりいっさいの進歩的な言論と運動の圧殺をはかります。事件はこういう状況下でつくりあげられたのです。
　裁判では「…日本共産党ノ目的達成ニ寄与…支援スルコトヲ目的トスル唯物論研究会ナル結社ヲ組織シ」（控訴審判決）とこじつけ、４４年４月、戸坂、岡に懲役３年、永田に同２年半、森、新島、伊豆、伊藤に同２年の刑が確定しました。戸坂は４５年８月９日、長野刑務所で、栄養失調で疥癬をやみ腎臓を悪化させ獄死。永田、伊藤も獄中の虐待がもとで戦後間もなく死にました。この事件とは別に三木清は４５年、治安維持法違反の被疑者高倉テルをかくまったとして、豊多摩刑務所に収監され、終戦一カ月後９月２６日、戸坂と同じく疥癬と腎臓悪化で獄死しました。（喜）
( ２００８年０８月２７日，「赤旗」)

民衆とともに／弁護士布施辰治／６／山村農民の権利守る

　辰治は二〇〇四年一〇月、韓国政府から「建国勲章愛族章」を授与されました。地元石巻では翌年三月、記念講演会を開催した際、講師として岩手大学名誉教授・早坂啓造氏を招きました。その講演録によりながら、辰治が関与した二つの事件を紹介します。

労働者を弁護
　一つは一九一九年に発生した岩手県釜石鉱山でのストライキ弾圧事件です。この弁護をした辰治の働きを、当事者の一人が書き残しています。
　｢布施弁護士は､事件発生以来、進んで弁護担当を引き受けられ、事件の原因結果を深く理解され、最後まで終始一貫、被告全員の救護に努力されたのみならず、釜石に於(お)いても講演会を開いて、労働者の自覚と資本家の反省を促し、且（か）つ社会改革の必要を力説強調するなど、実に感激に堪えぬものがあった」、「全被告はもちろん地方労働者としても永久に記憶すべき人物である」と。
　前記「告白」の精神に忠実な辰治の姿が目に見えるようです。
　この釜石事件で岩手に滞在中の辰治を、入会(いりあい)訴訟で苦労していた小繋（こつなぎ）部落（現岩手県一戸町）の農民が訪れたのです。詳細は不明ですが、訴訟記録には｢大正一三年九月一日｣付の訴訟委任状がつづられていて、そこに黒田寿男、神道寛次らとともに辰治が受任弁護士と記されているのです。この時が、辰治の入会事件との長いかかわりの始まりです。
　一九三五年、辰治は入会の山々を旅します。六月二十六日に上野をたち、帰京したのは七月十四日。保釈中の辰治には、監視のため警察官が同行しています。

農民から信頼
　行く先は各地の入会紛争地。ある村では山林地主と面談して和解条項の実施を求めたり、ある村では裁判所の証拠調べに参加したりしています。辰治はこの旅行を「奥の入会紀行」と題して書き残しています。この紀行文には辰治と山村農民との温かい交流が記録されています。また末尾で辰治は「私はあくまで大衆の中の一人なのだ」と記述していますが、ここにも「告白」の精神が強く脈打っています。
　後の一九三九年五月、千葉刑務所に下獄していた辰治を岩手の農民たちが訪問し、一時間余の面談をしています。ここにも農民らが辰治に寄せる信頼の深さが垣間見えます。
　（弁護士　庄司捷彦）
　（つづく）
(２００８年０８月２６日，「赤旗」)

民衆とともに／弁護士布施辰治／５／「法廷から社会へ」宣言

　ここでは有名な「自己革命の告白」について触れなければなりません。
　一九二〇年六月、辰治は個人雑誌『法廷より社会へ』を発行します。時に辰治四十歳。弁護士として繁を極めていた辰治です。
　前年の事件数が記録されています。刑事一九二件、民事二七件、その他を合計すると二百五十件を超えて、超人的な多忙さです。
　この雑誌は休刊を挟んで翌年八月まで十一冊が発行されています。いわば弁護士として最盛期ともいえる時期に発行された雑誌なのですが、その創刊号に辰治は、その年五月に発表した「法廷から社会へ自己革命の告白」を掲載したのです。
　ここで辰治は自らを省みつつ「従来主として法廷の戦士たりし弁護士の戦線を拡張し更に社会運動の闘卒たらん事を任ずる」と宣言し、今後弁護を引き受ける事件は「一、官憲の専恣（せんし）に泣く〇罪（えんざい）者の事件　二、富豪の暴虐に悩む弱者の事件　三、真理の主張に干渉する言論犯事件　四、無産者階級の社会運動を圧迫する騒擾（そうじょう）、治警法違反等、社会的意義を含む特別事件の取扱に制限したい」としたのです。
　ここには朝鮮・台湾の文字はありませんが、前年に朝鮮留学生の事件を担当していることから、言論犯事件や無産者階級の社会運動を圧迫する事件の中にこれら植民地のことも意識されていたのではないでしょうか。むしろ二・八宣言事件を担当し、朝鮮青年等の純真さに触れたことが、この「告白」に至らせた一つの動機だったように思えてなりません。
　この「告白」直後に辰治は「東京市電ストライキ事件」を弁護します。辰治からこの事件被告人らへの書簡が残されています。そこで辰治は被告人を「卿等（きょうら）」と呼びかけており、また「裁判上救い得るものはこれを裁判上に救い、裁判上どうしても救い出す事のできないものはその犠牲の大を世論に訴えて社会的に救い出したいと念じる」と記しています。
　この社会運動家としての視点、一兵卒としての意識は、以後の辰治の活動を貫いている姿勢です。
　一九二一年自由法曹団、一九二八年解放運動犠牲者救援会、辰治はこの二つの団体の創立者の一人です。彼の人権思想は今も続くこれら団体に継承されているのです。
　（弁護士　庄司捷彦）
　（つづく）
(２００８年０８月２４日，「赤旗」)

「若者、変化に飢える」／蟹工船ブームを分析／英紙

　英紙インディペンデント二十二日付（電子版）は東京特派員電で、プロレタリア作家・小林多喜二の「蟹工船」が日本でブームになっていることを紹介しました。
　記事は、「おい、地獄さ行（え）ぐんだで！」という小説中の漁師の言葉とダブらせながら、現在の日本の若者が置かれた状況を分析。「マルクス主義小説の復活は、世界第二の経済大国で、この十年間の構造改革のなかで多くの被雇用者保護の措置が取り払われてきたことに対し不満が増大していることの証明だ」と強調しています。
　そして、「日本の労働力の三分の一以上が非正規雇用であり、数百万の人たち、とりわけ若者たちは賃金が目減りし、将来の希望がしぼむなかで、いかに生活するかを模索している」と解説しています。
　同紙はさらに、「こうした国民の気分の変化」は日本共産党にも追い風となっていると指摘。「同党の志位和夫委員長が二月に国会で非正規雇用の問題を取り上げ、福田首相を追及」してからは「毎月千人の新入党員を迎えているといわれる」と述べています。「人間をモノのように使い捨てる日雇い派遣」を告発した志位氏の国会追及のテレビの場面がインターネットでエンドレスで流れていることも紹介しています。
　記事は最後に「日本はなお大企業優先の政策をとる自民党に支配されているが、『蟹工船』現象は多くの若者が急激な変化に飢えている兆候だ」と指摘しています。
( ２００８年０８月２４日，「赤旗」)

潮流

　故手塚英孝氏の名著『小林多喜二』（新日本出版社）が新しい装いで刊行されました。最初の筑摩書房版が一九五八年に刊行されてから半世紀ぶり、途中の新日本出版社版をはさんで、手塚氏の著作集に収録されてからも二十五年になります▼小林多喜二を知るための伝記として評価が定まっていながら、なかなか手にすることができなかっただけに喜ぶ声も多い。この伝記が完成した五八年は多喜二没後二十五年の年▼「二十九年の小林の生涯を再現しようとつとめて、私はかなりの年月をこの仕事にかけた」と手塚氏はのべています。一つの事実を確かめるための「石橋をたたいて」の仕事ぶりは、はたでみていてもじれったいほどの慎重さでした▼志賀直哉を奈良に訪ねていった時期、「党生活者」のモデル工場などで、事実の違いが指摘されると、手塚氏は、むしろ確かな事実を喜び、反省も「私が学んだことは、どのような場合でも、実証的な調査で裏付けをしなければならない」と真摯なものでした▼「小林多喜二の生涯と業績は…彼の死後も、長い年月にわたって、天皇制権力による抹殺が加えられた」だけに、その正確な再現を後世への責任として考えていたのでしょう▼多喜二とはあだなで呼び合い、非合法活動をともにした手塚氏。本書の最終章「回想」は、多喜二の息づかいが伝わるもの。虐殺される数日前、ともに入った喫茶店での多喜二の描写は胸をうつものがあります。ぜひこの機会に一読をと思います。
( ２００８年０８月２４日，「赤旗」)

民衆とともに／弁護士布施辰治／４／朝鮮農民に勇気与える

　今年一月、私は辰治の孫の大石進氏に誘われて、韓国での辰治の足跡を訪ねる旅に参加しました。
　訪問先の一つに「羅州宮三面（ナズ・クサンミョン）」がありました。この地は辰治が一九二六年三月に赴いた地です。当時の辰治は、朴烈・金子文子大逆事件の渦中にありました。
　当時朝鮮で東洋拓殖会社が行った不法な土地買収に抗議し農地の返還を求める農民運動があり、「宮三面」（面は村にあたる行政単位。この地が昔宮廷の所有地にちなむ通称）はその中心地の一つでした。耕地返還訴訟の準備のための渡朝でした。官憲の妨害で目的を達することはできませんでしたが、辰治の激励は朝鮮の農民を深く感動させたのです。

今もなお記憶
　今も広大な耕地が広がる宮三面の地に、二㍍を超える大きな石碑が建っています。表に「羅州宮三面抗日農民運動紀念碑」と刻まれ、裏面にはハングル文字に混じって「日本人弁護士布施辰治」と漢字でしっかりと彫ってありました。
　この運動の中で辰治がこの地の農民に大きな勇気を与えたこと、それを現在もなお記憶している人々がいることを知りました。石碑建立は一九九一年。
　羅州は光州の隣町です。今回の訪問で、「一九二九年光州学生独立運動」の存在を知りました。あの万歳事件から十年後に羅州と光州に端を発した壮大な運動があったのです。

足跡訪ねる旅
　この運動も含めて韓国では今、独立運動の事跡の保存活動が盛んです。その一環として、事件の発端となった「羅州駅」が復元され、この隣接地に「羅州宮三面抗日農民運動紀念館」も今年三月オープンしました。この記念館が辰治をどう紹介しているのか、知りたいものです。
　辰治と日本の農民とのかかわりですが、彼は自分が農民出身であることを強く意識していました。戦前の農民のたたかいは不在地主との小作争議として展開されましたが、辰治が関与した事件としては、新潟県木崎、香川県伏石、宮城県前谷地（まえやち）の各事件が著名です。前谷地事件の指導者矢後利明は静岡の人、石巻・箟々岳（ののだけ）山ろくに記念碑が建っています。
　宮城県の有志で今秋、「布施辰治の足跡を訪ねる韓国の旅」を企画していますが、ぜひ実現させたいものです。
　（弁護士　庄司捷彦）
　（つづく）
(２００８年０８月２３日，「赤旗」)

民衆とともに／弁護士布施辰治／３／朝鮮独立運動を激励

　一九一〇年の日本による朝鮮併合を辰治はどのように受け止めたのでしょうか。記録に残る朝鮮人との出会いは一九一九年です。
　この年二月八日、東京の朝鮮キリスト教青年会館に集まった朝鮮人留学生たちが「独立宣言」を発表しました。

２・８宣言が
　これが出版法違反に問われて二月十日に起訴され、「二・八独立宣言事件」として刑事裁判が行われました。辰治はその控訴審を受任します。
　東京発のこの独立宣言文はひそかに朝鮮・ソウルに運ばれました。この年の三月一日、ソウル・パゴダ公園での「独立宣言」に始まって朝鮮全土に波及した運動、後に「三・一万歳事件」と呼ばれますが、運動に東京から伝え渡った二・八宣言が大きく影響したといわれています。
　辰治の孫・大石進氏は、「二・八宣言には日本国憲法の平和主義・国際主義に通じるものがある」と評しています。法廷で辰治はほかの弁護人とは異なり、朝鮮独立の正当性を主張する弁論を展開して朝鮮青年たちの信頼を勝ち得た、と大石氏は語っています。
　辰治は一九二三年、ある雑誌でのアンケートに応じて「朝鮮民衆の解放運動に特段の注意と努力とを献じる要ありと信じます」と記しています。この年、七月末から八月にかけて、辰治は初めて朝鮮に渡ります。義烈団員事件の弁護や北星会（朝鮮人留学生の思想団体）が本国で開催した巡回講演の講師としての渡朝です。

総督府を批判
　講演の中で辰治は「徳を恃（たの）む者は栄え、力を恃む者は亡（ほろ）ぶ」と弁じたと伝わっています。総督府政治への痛烈な批判です。
　その後の辰治と植民地人民との交流は濃密なものです。
　朝鮮から帰国した直後の九月一日に関東大震災が起き、官憲が流したデマが元で、自警団や警察の手で多くの朝鮮人が虐殺されました。この時、辰治は、二年前に創設していた自由法曹団の弁護士らと協力して、虐殺への抗議と真相究明の調査活動に奔走します。地震直後にサイドカーを疾駆させて都内を駆け巡ったり、市ケ谷刑務所で受刑者等を激励したりしたことは有名なエピソードです。
　辰治はその後、朝鮮へ三回、台湾へ一回渡航して、当地の農民運動などを励ましたのです。
　（弁護士　庄司捷彦）
　（つづく）
(２００８年０８月２２日，「赤旗」)

治維法国賠同盟／平和、命大切にビラ配り訴え／岐阜

　治安維持法国家賠償要求同盟岐阜支部は十五日、岐阜市高島屋前で終戦記念日の宣伝行動をしました。二十人が参加し、「平和といのちの尊さを大切にする政治に」のビラ五百枚を配りました。
　片桐義之支部長がハンドマイクで「世界の平和のために、日本は憲法の精神を生かしていこう」と訴えました。
　支部の人に､｢父が戦争に行った｣｢きょうは終戦記念日ですね｡あれ(戦争体験)は忘れられない」と話しかける人もいました。
(２００８年０８月２１日，「赤旗」)

民衆とともに／弁護士布施辰治／２／普通選挙権を求めて

　辰治の民主主義を目指す活動の一つに普通選挙運動があります。

民衆に参政権
　明治半ばに自由民権運動が制圧された後、大正デモクラシーの中で普選運動が展開されましたが、辰治が展開した運動は積極果敢なものでした。
　『君民同治の理想と普通選挙』（一九一七年）、『普選の実施は果して何時？　如何にして！』（二三年）、『急進徹底普選即行』（二四年）などを相次いで出版して普通選挙権思想の普及に努めました。
　辰治はまた各地で、自分で主催する演説会を挙行しています。東京だけで三十カ所、蔵前国技館には数万の聴衆が集まったと伝えられています。宮城県内でも、石巻など数カ所で行われました。
　辰治が求めた普通選挙は「成年男女の平等選挙」です。「参政権は民衆のもの」「巻き上げられた参政権を本来の持ち主に返還させる運動」と記述していますが、この思想は「天皇主権」と「国民主権」のどちらに近い思想でしょうか。私には限りなく現憲法の国民主権思想に近いものに思われます。
　辰治が女性の参政権も当然のこととして要求していることも注目すべきことです。その実現は戦後のことですが、辰治は一九二六年に『公娼自廃の戦術と法律』なる著作を出版しています。この書は辰治が一七年ごろから、当時展開されていた公娼廃止運動の機関誌とも言える雑誌『廓清』に寄稿していた諸論考の集大成です。

男女平等を
　辰治は最下層の女性とも言われがちな娼婦らに「自由廃業」を説き、「不退転の決意」と「無産階級解放運動の信念の自覚」を求めています。辰治の男女平等を求める姿勢は彼の思想に深く根差したものであることが理解できます。
　わが国で、成年男子による参政権を認めた普通選挙法が成立したのは一九二五年のことです。
　この同じ年に、稀代（きだい）の悪法・治安維持法が成立していたことは忘れてならないことですが、この選挙法に、無産政党の躍進を恐れて戸別訪問禁止が定められ、この禁止規定が今日まで続き、以来八十年余にわたって、国民の自由を厳しく制約していることも記憶しなければなりません。
　なお辰治は二八年実施の第一回普通選挙に新潟２区から立候補し､落選しています(得票八千八百六十八票)｡
　（弁護士　庄司捷彦）
　（つづく）
(２００８年０８月２１日，「赤旗」)

民衆とともに／弁護士布施辰治／１／権利のための闘争

　宮城県石巻市出身の布施辰治(１８８０―１９５３年)は､戦前から労働者､農民､朝鮮人ら民衆のために献身的な活動をした人権弁護士です。４年前には韓国政府から勲章を与えられました。同郷の弁護士で顕彰運動にたずさわっている庄司捷彦氏に、先達から学ぶことなどを書いてもらいました。
　布施辰治（以下、辰治と略記）の生涯は、日本人民が基本的人権獲得のためにたたかった尊い歴史を示しています。

波乱の生涯
　辰治の生涯を要約すれば、明治から昭和への戦争が相次ぐ時代に平和と人権のために献身的にたたかった人生であり、まさに波乱の生涯と言えます。
　辰治は、宮城県牡鹿郡蛇田村（現石巻市）で、中農の次男として生まれました。一八八〇（明治十三）年から一九五三（昭和二十八）年までの七十三年の生涯です。十八歳で上京、明治法律学校（現明治大学）に学び、卒業年に判事検事登用試験に合格。九カ月の判検事見習生活を経て、二十三歳で弁護士登録をします。
　辰治は以後の生涯を庶民と共に生きる弁護士として過ごしました。彼が生きた時代は、大正デモクラシーの一時期を除けば戦争に明け暮れた時代であり、庶民（農民・労働者）の暮らしは戦争拡大いちずの政治に翻弄（ほんろう）され続けた時代でした。
　思想の自由、言論表現の自由は治安維持法などの弾圧法規によって抑圧され、植民地とされた朝鮮・台湾の人々も言語を絶する状況に置かれていたのです。ですから、この時代、弁護士として庶民の側に立つことは必然的に同時に、自らも権力と正面から対決する場に身を置くことでした。

権力に屈せず
　弁護士資格の剥奪（はくだつ）や二度の受刑者生活など困難な時期を過ごしながらも、辰治は遂に権力に屈することはしませんでした。その生涯は「権利のための闘争」そのものであったと言えます。
　辰治も一翼を担ったこの時代の人民のたたかいこそ、基本的人権を憲法に明記させた礎なのです。
　私は、現在当面する最大の課題は憲法改悪を阻止すること、「九条の会」運動を全国で展開することだと考えています。改憲派の主張の一つに「押しつけ憲法」論＝「憲法は占領軍に押しつけられたもの、日本人が自主的な憲法を作るべきだ」があります。自国の歴史から学ばないこの主張を聞くたびに、辰治を思い浮かべるのです。
　（つづく）

庄司捷彦
　しょうじ・かつひこ　一九四三年、宮城県石巻市生まれ。中央大学法学部卒。国民救援会県本部会長。弁護士
(２００８年０８月２０日，「赤旗」) （Page/Topへ）

国賠同盟が各地で宣伝／秋田

　治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟秋田県本部と県内の八支部は十五日、「再び戦争と暗黒政治を許さない八・一五いっせい宣伝行動」に取り組みました。
　秋田、大館鹿角、鷹巣阿仁、本荘由利、湯沢雄勝の五支部が宣伝カーを出し、駅頭や商店街、住宅団地などで「平和といのちの尊さを大切にする政治に」のビラを配布しながら訴えました。
　七人が参加した秋田支部は、藤田實県本部副会長が「戦争に反対した勇気ある人々は、治安維持法によって監獄に入れられ、多くが拷問で殺された。国民の目と耳をふさいで戦争が始まった」と述べ、「今は主権者である国民の意志と世論で政治を動かせる時代だ。憲法九条を生かせば平和を守ることができる」と呼びかけました。
　日本共産党北秋田市議団が参加した鷹巣阿仁支部と、同湯沢市議団が参加した湯沢雄勝支部は、午前九時から正午まで市内の商店街数カ所で訴えました。
　本荘由利支部は、七人が宣伝カーを使い駅頭と商店街で演説しながらビラ配布し、大館鹿角支部は三人で街頭演説をしました。
(２００８年０８月２０日，「赤旗」) （Page/Topへ）

治維法弾圧の犠牲者相沢良をしのぶ／大平和寺で平和展／札幌・西区

　戦前の治安維持法による弾圧の時代に鮮烈に生き抜いた若き女性の先駆者、相沢良をしのぶ「ミニ平和展」が十日、札幌市西区の平和の滝近くの大平和寺で開かれました。
　治安維持法国賠同盟道本部などの有志で構成する「相沢良の会」が企画しました。
　平和の滝は、相沢良がキャラメル工場の女性十数人と河原の石でかまどを作り、豚汁を食べたゆかりの地。滝入り口には、相沢良の案内板とレリーフ碑が建てられています。
　会場には、相沢良が特高警察から拷問を受けた美唄警察署や、本人の写真、経歴が紹介され、「小樽新聞」「東京日々新聞」の記事が展示されました。
　「（二十五歳八カ月で亡くなった）相沢良と同じ年の娘がいるけど、大変な時代にここでハイキングをしたとは驚きです」と年配の女性たちが食い入るように見入りました。
　懇親会では、「相沢良が亡くなって九十八年。百年祭をやろう」と盛り上がりました。
(２００８年０８月２０日，「赤旗」) （Page/Topへ）

朝の風／多喜二作品の復原努力

　小林多喜二の「蟹工船」は文芸誌でも話題に上り始めている。多喜二の著作は戦前権力によって一度は抹殺されようとした。当時の文芸誌の伏せ字や削除はその痕跡である。同時に、心ある編集者によってゲラ刷りが残されるなど他日を期しての努力が払われた。しかし、戦後原作の復原のために三十五年の歳月が費やされたことは忘れてはならない歴史である。
　新日本出版社版『定本小林多喜二全集』の校訂者・手塚英孝は「発刊にあたって」（一九六八年）で、「全作品が、原型に復され、ほとんど完全といっていいほどの全集となっ」たことは、「どんな権力による弾圧も、人民大衆の意思、志向をうち砕くことはできない」証だと書いた。
　最近出た『小林多喜二名作集「近代日本の貧困」』（祥伝社）に、そんな事情への配意がないのは残念だ。表記や伏せ字復原をオリジナルに編集したように記されているが、この本の典拠したテキストが定本版全集であることは一見して明瞭となる。たとえば定本版では掲載紙不明でノート稿から起こされた「宗教の『急所』は何処にあるか」が、この本でもそのままだ。
　そんな折、全集完成に尽くした手塚の労作『小林多喜二』が復刊された。タイムリーな出版である。（乾）
( ２００８年０８月１９日，「赤旗」) （Page/Topへ）

全国青年大集会／人間らしく働きたい／各地でプレ企画／今年は１０月５日東京・明治公園

　青年がまともに生活できる賃金と、人間らしく働ける労働条件を求めて、「全国青年大集会２００８」が１０月５日（日）、東京・明治公園で開かれます。この集会を成功させようと、猛暑つづきのこの夏、青年たちが雇用アンケートや学習会、要請行動、パレードなどに取り組んでいます。
　開催地・東京では７月１５日、集会実行委員会が派遣法改正をテーマに学習交流会を開催し、参加者は「労働者保護となる労働者派遣法の改正に向けて力を尽くそう」と確認しました。
　また、都内２０を超える地域で実行委員会が結成または結成準備され、集会などを開いています。
　広島では７月２０日、首都圏青年ユニオンの河添誠書記長を招いて学習会が開かれ、約６０人が参加。２１日には、大阪で青年大集会が開かれ、約２００人が集まりました。
　福島では２４日、県労連や民青同盟などでつくる青年雇用フェスタ実行委員会が、県の担当者と懇談しました。担当者は「非正規雇用でなく正社員を増やしていきたいという考えは私たちも同じ」「みなさんの意見も聞きながら、やれることをやっていきたい」とのべました。
　主催団体のひとつ、民青同盟の田中悠委員長は「悩んでいるのは一人じゃない。みんな同じ思いを持っている。みんなで手を取り合って変えていける、ということを示す『連帯の集会』にしていきたいですね」と意気込みを話しています。

連帯して勝利する／ユニオンに結集・活動
　全国青年大集会は今年で５回目です。今回は、秋の臨時国会に、政府が日雇い派遣の原則禁止などを盛り込んだ労働者派遣法の改正案提出を予定、派遣法の抜本的な改正を求める国会論戦のまっただ中で開かれます。
　全国青年大集会を主催するのは全労連青年部、首都圏青年ユニオン、全学連、民青同盟など約２０団体でつくる実行委員会です。
　第１回参加者は１０００人ほど。回を重ねるなか、昨年は３３００人が集まりました。
　青年の高失業率を背景に、第１回が開催されたのは２００３年。労働者派遣法が大改悪され、派遣期間の延長や製造業への派遣の解禁が行われた年でもありました。
　０７年の集会に先立って集められた仕事の実態調査アンケートは５０００を超え、青年の労働実態を告発し、労働者派遣法の改正を求める世論を大きく広げる力になりました。
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　集会を契機に、青年たちが職場や地域にある労働組合に入ったり、「青年ユニオン」を結成したりして、不当解雇やサービス残業、偽装請負などに対して力をあわせてたたかい、勝利する動きが各地に広がりました。
　京都や大阪など各地で、個人でも加入できる地域単位のローカルユニオンに多くの青年が入り、元気いっぱいに活動しています。
　全国で初めて、東京などで働く青年たちが「首都圏青年ユニオン」を結成したのは２０００年の末。以後、青年ユニオンは各地に広がり、０７年以降、岩手、山形、岐阜、滋賀、兵庫、新潟の６つの県で結成され､現在､１３の県で活動しています。

青年の運動が政治・社会を動かした

１９８５　労働者派遣法成立　派遣労働が可能に
１９９５　日経連（現日本経団連）が「新時代の『日本的経営』」発表
１９９６　労働者派遣法改悪　対象業務が１６から２６業務に大幅拡大
　　　日経連が労働者派遣の自由化などを要望（「政府規制の撤廃・緩和要望について」）
１９９８　青年の失業者が１００万人を超える
１９９９　労働者派遣法改悪　派遣業務が原則自由化
２０００　首都圏青年ユニオン結成
２００１　小泉内閣発足　「構造改革」路線始まる
２００３　労働者派遣法改悪　製造業への派遣解禁、派遣期間の延長(６月)
　　　第１回　全国青年大集会開かれる　約１０００人　（１０月）
２００４　集会に向け各地で仕事シンポ広がる
　　　若者の２人に１人が非正規雇用に
　　　第２回　全国青年大集会　（１２月）
２００５　京都・円山青年一揆　９２２人　（６月）
　　　第３回　全国青年大集会（１１月）
　　　全国で青年ユニオン結成広がる
２００６　神奈川･京都など約３０都道府県で仕事の｢実態調査｣
　　　偽装請負が社会問題に
　　　参院予算委で市田書記局長が偽装請負追及（１０月）
　　　派遣先企業に対する労働局の是正指導８００回超える
２００７　日テレＮＮＮドキュメントで「ネットカフェ難民～漂流する貧困者たち」放送
　　　集会実行委員会が全国で「ネットカフェ」調査
　　　第４回全国青年大集会に約３３００人（５月）
２００８　衆院予算委で志位委員長が派遣問題追及　福田首相が｢日雇いというかたちは決して好ましいものではない｣と答弁(２月)
　　　志位質問　「ＹｏｕＴｕｂｅ」（ユーチューブ）で動画６万回再生
　　　小林多喜二の小説『蟹工船』が大ブームに
　　　キヤノン、いすゞなどが製造現場から派遣労働解消方針出す
　　　日雇い派遣最大手グッドウィル廃業（７月）
　　　第５回　全国青年大集会へ取り組み進む
　雇用をめぐる青年の運動と政治･社会の動きを､年表にまとめました。青年や労働者の運動と国会での日本共産党の国会質問が偽装請負の解消や労働者派遣法の改正に向けた流れを、大きく推し進めたことが分かります。
( ２００８年０８月１８日，「赤旗」) （Page/Topへ）

共産党４議員テレビ討論／暮らし守る運動の展望語る／穀田・赤嶺・高橋・吉井議員

『蟹工船』、党名の意味も
　日本共産党の穀田恵二国対委員長と赤嶺政賢、高橋ちづ子、吉井英勝の各衆院議員が十六日放送のＢＳテレビ「ＢＳイレブン」の「本格闘論ＦＡＣＥ」で、『蟹工船』ブームから派遣労働、後期高齢者医療制度、物価高などの緊急課題まで、五十分間にわたって話し合いました。
　司会役の穀田氏は、日本共産党員作家・小林多喜二著の『蟹工船』が最初に掲載された『戦旗』(一九二九年五月号)を示しながら､｢ブーム｣の背景に現代の派遣労働という形で苦しめられている若者の憤りがあることを指摘。団結と社会的連帯で立ち向かうことに共鳴し、政治を変えていこうという方向性が生まれているとして、派遣労働の問題から討論をすすめました。

■派遣労働
　高橋氏は、党のホームページに設けられた「若者ネット」に、企業によって派遣労働者がモノのように扱われている実態を告発するメールが相次いで寄せられていると述べました。
　討論では、今年二月に日本共産党の志位和夫委員長が、キヤノンの各工場の実例を挙げて派遣労働の実態を追及し、六月にはキヤノンの長浜工場を視察調査したことが話題に。キヤノン本社の専務取締役が、偽装請負などの違法行為について、「大いに反省している」「御党の追及や『赤旗』のキャンペーンもあり、正直言って相当懲りております」などと発言し、製造部門での派遣労働の解消を表明したことなどが紹介されました。
　各氏は、労働者派遣法を一九九九年の原則自由化以前に戻し、派遣労働者保護法へと変えることなど、秋の臨時国会での取り組みを確認し合いました。

■後期医療
　続いて、後期高齢者医療制度が話題に。高橋氏は、「戦争中は、お国のために死になさいといわれ、そしていまはお国のために早く死ねというのか」という怒りが全国から巻き起こっていると述べました。
　赤嶺氏は、同医療制度への怒りが沖縄県議選（六月八日投開票）の結果に大きな影響を与え、日本共産党が二議席から五議席へと躍進したことなどを示し、同制度は廃止すべきだという県民の審判がすでに下っていると強調しました。
　穀田氏は、二〇〇〇年の健康保険法改悪の際の「付帯決議」に、新たな高齢者医療制度をつくることが盛り込まれたとき、自民、公明、民主、社民の各党はすべて賛成し、反対したのは日本共産党だけだったと指摘しました。
　その上で、日本共産党が国民とともにたたかうなかで、先の通常国会で野党が一致して廃止法案を参院に提出し可決させたことを振り返り、臨時国会では、いよいよ衆院で可決・成立させる番だと語りました。

■社会保障
　医療の問題に関連して、社会保障費の抑制や消費税増税問題がテーマになりました。
　消費税の税収が今年度の見込みも含めた累積で二百一兆円に上り、その大半（百六十四兆円）が法人税減税に消えている実態が紹介され、「あまりにひどい。それをさらに増税するというのはまったく論外だ」（吉井氏）と主張。
　穀田氏は、「資本金十億円以上の大企業は、バブル時の一・八倍のもうけをあげる一方で、税金は当時より年間で二千億円も減っている」と事実を示し、「ここにしっかりメスを入れることが大事だ」と述べました。
　赤嶺氏は、今年の米軍にたいする「思いやり予算」が二千八十億円に達し、自衛隊の装備もイージス艦や長距離の軍用機など「海外派兵型」になっていると指摘。これらをただせば、「社会保障のための十分な財源が生まれる」と力説しました。

■原油高騰
　話題は、国民生活を直撃している原油・物価高騰問題に。政府が２％程度の物価上昇だとしているのに対し、高橋氏は八月に入ってから、卵１２％、冷凍食品２０％など生活必需品が軒並み一割から二割前後も高騰していることを強調しました。
　小泉内閣以降、「貧困と負担増、物価高という『三重苦』が国民を襲っている」（穀田氏）という実態があります。
　諸物価高騰の原因が「投機マネー」にあることは国民的には明らかになっているにもかかわらず、政府は「お知恵があれば教えていただきたい」（町村信孝官房長官）などと、まったく無策です。
　各氏は、「投機マネー」の規制を求める世論を広げていくために全力をあげることをあらためて確認。吉井氏からは、燃油や小麦など国民生活に影響を与える物資への投機マネーの規制や短期的な投機取引にたいする課税導入に「本格的に乗り出すべきだ」との具体的な提起がされました。
　穀田氏は、日本共産党国会議員団が七月に原油高騰問題対策委員会を設け、「投機マネー」規制と原油高への直接補てんを政府に申し入れてきたことを紹介しました。

■存在意義
　討論の最後に穀田氏は、「共産党という名前を変えたらどうか」という声があることにふれ、「共産」とは、ラテン語などの「共同」に語源があると指摘。「日本共産党という党名には、もうけ第一主義ではなく、人間らしい新しい社会をみんなでつくっていこうというロマンと、侵略戦争に一貫して反対した歴史が刻まれている」と語りました。
( ２００８年０８月１８日，「赤旗」) （Page/Topへ）

９条守り恒久法やめよ／終戦の日各地で共産党訴え／熊本／鹿児島

　多くの人が平和を願い、戦争反対の思いを新たにする十五日の六十三回目の終戦記念日｡日本共産党の熊本､鹿児島の各県委員会は街頭でマイクを握り､二度と戦争を繰り返させないために｢共に力を合わせていこう｣と市民らに呼びかけました｡

熊本
　日本共産党熊本県委員会は県内各地の街頭から、「戦争を許さず、憲法九条を守りましょう」と市民らに呼びかけました。
　熊本市の辛島公園では、山本伸裕衆院比例候補（熊本１区重複）と上野美恵子熊本市議が訴えました。
　山本候補は、いまブームになっている『蟹工船』などを書き、特高警察に虐殺された日本共産党員作家・小林多喜二に触れて、日本共産党が命をかけて戦争反対を貫いてきたと指摘。「憲法九条は、先の戦争で多くの日本人、アジア諸国民の悲惨な体験をもとにつくられたものです。いま、自衛隊がイラクでアメリカの戦争に参加していますが、政府はこうした海外での戦争へいつも参加できるような恒久法をねらっています。絶対に許せません」と訴えました。
　演説を終わると､｢憲法九条を読んで防衛大学をやめた」という五十歳の男性が宣伝カーによって来て､｢今の日本はおかしい。小林多喜二の話も出たが、読んで同感した。共産党にがんばってほしい」と激励しました。
　また、路上や車の中から手を振る人の姿も多くありました。

鹿児島
　日本共産党の鹿児島県委員会は鹿児島市内で街頭演説を行い、山口ひろのぶ衆院比例候補(１区重複)、野元徳英県委員長、まつざき真琴県議、崎田正輝民青同盟県委員長が参加しました。
　山口氏らは、福田改造内閣の保岡法務大臣らが終戦記念日に靖国神社に参拝したことを厳しく批判｡｢二十一世紀は、地域的なもめごとは、武力ではなく話し合いで解決するのが世界の常識。こうした平和の流れの先頭に日本が立つべきだ｡しかし､日本はアメリカが軍隊を出せと言えば自衛隊を出し、九条が邪魔だと言えば憲法を変える、異常なアメリカ言いなり政治だ」と指摘しました｡｢日本共産党はアメリカ言いなり、大企業優先の政治を転換し､憲法の平和･国民主権の原則にそって世界の平和に貢献する日本のために全力をつくします。衆院選挙での日本共産党へのご支持を」と道行く人々に呼びかけました。
　薩摩川内市では、井上勝博市議が、曽於市では徳峰一成市議が街頭から市民に訴えました。
(２００８年０８月１７日，「赤旗」) （Page/Topへ）

暗黒政治を再び許すな／青森市

　治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟青森県本部は終戦記念日の十五日、青森市新町の「さくら野」前で、「再び戦争と暗黒政治を許すな」と街頭宣伝をしました。
　中村勝巳会長ら十五人が参加。日本共産党の高橋ちづ子衆院議員もかけつけました。
　「若者を戦場に送るな」「世界に広げよう憲法九条」などのゼッケンを着け、治安維持法犠牲者への国家賠償を求める法律の制定を求める署名への協力を訴えました。
　呼びかけに応えて家族がそろって署名する姿も見られました。
(２００８年０８月１７日，「赤旗」) （Page/Topへ）

終戦６３年命大切にする政治を／９条生かし平和守ろう／函館

　治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟道南支部は十五日、函館市で宣伝をしました。平和と命の尊さを大切にする政治にしましょうと呼びかけました。
　治維法国賠同盟の後藤隆さんと川村清さんは「昔と違い、今は主権者である国民の意思と世論で政治を動かせる時代です。憲法九条を生かして平和を守りましょう」と強調。治安維持法犠牲者への賠償を国に求める請願署名を呼びかけました。
　戦争を体験したという女性は「思い出したくもありません。二度とくり返してはいけない」と署名しました。
　日本共産党函館地区委員会の古岡友弥道議候補と三国武治副委員長が「戦争と治安維持法の暗い政治をくり返さないため、平和・民主主義の原則にそって世界に貢献する国にするため、全力をあげます」と話しました。
(２００８年０８月１７日，「赤旗」) （Page/Topへ）

平和訴え豊橋で行進

　「平和都市をめざそう愛知県豊橋市実行委員会」は十五日、平和を訴えながら市内を行進しました。今年で十七回目。三重県津市から参加した人を含め三十人が行進しました。
　向山緑地公園「平和の塔」の前で開かれた出発集会で、主催者あいさつした安間慎「豊橋空襲を語りつぐ会」代表は、「日本軍国主義は国民三百万人とともに、二千万人以上の外国人の命を奪ったことを忘れてはなりません。小林多喜二など戦争に抵抗した人たちも数多く殺されました。憲法で保障された言論・表現の自由を大いに生かして、九条を守り抜きましょう」と呼びかけました。
　炎天のもと、参加者は通行人やドライバーに「平和憲法を守りましょう」とアピールしながら、湊町公園「豊橋空襲犠牲者追悼の碑」まで約四㌔㍍の道のりを行進しました。
　毎年参加している五十六歳の女性は、「両親から、空襲や食糧不足で戦争中大変苦労した話をよく聞かされました。日本が二度と戦争に巻き込まれないよう、若い人たちに平和の大切さを伝えたい」と話します。
　同市は一九四五年六月二十日未明の空襲で、七万二千人が被災、六百数十人が亡くなりました。
(２００８年０８月１７日，「赤旗」)

治維法国賠同盟和歌山県本部が不戦の誓い訴え

　治安維持法国賠同盟和歌山県本部と和歌山市内三支部は十五日、合同で、二度と戦争はしない思いを新たに十三名で宣伝行動をしました。
　五人の弁士が次々と訴え、署名とチラシ配布を行いました。二人の若い女性会員が浴衣姿で弁士や宣伝に参加し、「私と同じ二十九才で多喜二は拷問、虐殺されました。再び戦争と暗黒政治を許さないよう憲法九条を守りましょう」などと訴えると、戻って来て署名をする人もいました。
(２００８年０８月１７日，「赤旗」) （Page/Topへ）

終戦記念日／民主団体が宣伝／富山／石川

富山
　富山県の安保破棄・諸要求貫徹県実行委員会と憲法改悪阻止県連絡会議は十五日、終戦記念日にあたって富山市の中心商店街で、構成団体によるリレー宣伝を行い、十三人が参加しました。
　米谷寛治知事候補(写真）らが、自衛隊の海外への「派兵恒久法」を許さず、憲法九条を世界に広げようと呼びかけました。

石川
　終戦六十三周年にあたり十五日、金沢市で治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟県本部がビラをまき、寺町台九条の会が平和の鐘つきをしました。
(２００８年０８月１６日，「赤旗」) （Page/Topへ）

多喜二再発見／『党生活者』ゆかりの地東京・品川で戦争展

　東京都品川区の中小企業センターで十六日まで「しながわ平和のための戦争展」が開かれています。小説「蟹工船」がブームになっている戦前の日本共産党員作家、小林多喜二と品川とのかかわりや、一九四五年五月の大空襲の資料などを展示しています。
　多喜二の小説「党生活者」に登場する「倉田工業」は、同区西五反田にある藤倉工業（現・藤倉ゴム工業）がモデルです。多喜二も港区に住み城南地域とかかわりがあります。
　十四日には、多喜二を研究する藤田廣登（ひろと）さんが、多喜二の足跡を記した地図や年表、単行本『蟹工船』や『党生活者』の新聞広告などを示して説明。「過酷な労働現場の実態を描いた『蟹工船』『党生活者』は、若い人たちに新鮮な驚きをもって読まれている。その反戦運動に励まされながら、憲法を守る運動に頑張っていきたい」と語りました。
　説明を聞いた同区の女性（５８）は「多喜二がこんな身近なところで生きていたと知って驚きました」と話していました。
　区民がつくる実行委員会の扇谷道子さんは「多喜二が品川にも深いかかわりがあると知って展示しました。『戦争をする国』づくりが進められようとしているいま、戦争当時の実情を明らかにしたい」と話しています。
　会場は東急大井町線下神明駅徒歩三分。
( ２００８年０８月１６日，「赤旗」) （Page/Topへ）

治維法国賠同盟／戦争の過ち繰り返すな／塩釜支部訴え

　治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟塩釜支部は十二日、宮城県塩釜市と多賀城市内で定例街頭宣伝をし、相原君雄支部長、上西寛事務局長、大槻清子幹事が参加しました。
　街頭宣伝では、六十三年目の終戦記念日を迎えるこの十五日は、太平洋戦争とは日本国民にとって何であったのかをあらためて考える日でもあり、「治安維持法」という希代の悪法によって、弾圧され、投獄され、「蟹工船」作家の小林多喜二のように虐殺された歴史を直視し、二度と再び戦争の過ちを繰り返してはならない不戦の誓いの日でもあることを訴えました。
　治安維持法によって三度投獄された大川芳夫会長（仙台市在住）は今年で九十六歳になり、戦争に反対し弾圧された歴史の生き証人が元気なうちに国に対して謝罪と賠償を認めさせるための署名に協力を訴えました。
　四月の名古屋高裁における「自衛隊のイラク派兵は違憲」判決に確信を持って、非核・平和憲法を国際に発信する運動に先頭に立って奮闘する決意を表明しました。
(２００８年０８月１５日，「赤旗」) （Page/Topへ）

同意か強制か／普通の人とナチス／星乃治彦／忘れがちな「もう一つのドイツ人」

　「過去の克服」というと、靖国の扱いに象徴されるような日本の姿勢に対して、ドイツの真摯な姿勢が多くの人の共感を呼ぶ。たしかに、「過去の克服」は、ドイツ人にとっても、日本人にとっても国民的課題である。
　ただ、問題は、誰のどういった「過去」や「責任」を問題にするかである。ドイツ史研究は、たしかに一方では石田勇治の『過去の克服―ヒトラー後のドイツ』（白水社）といった真摯で緻密な実証研究を生み出しながらも、他方、最近の研究者たちの関心は､｢普通の人」のナチス支持・戦争責任追及に向かいがちである。要は、「普通の」人たちが強制されていたのか、ないしは自ら積極的に同意していたか、つまり、強制か同意かという点である。

偏見や差別意識動員した状況は
　ロバート・ジェラテリー『ヒトラーを支持したドイツ国民』（みすず書房）は、ナチスが「敵」には排除や容赦のない強制手段をとる一方で、普通の国民の「同意」を取り付けるあらゆる措置をとり、それに成功したとする。
　さらに、ゴールドハーゲン『普通のドイツ人とホロコースト』（ミネルヴァ書房）になると、「同意」「積極的関与」に大きく傾斜し、警察大隊などの例をあげながら、外からの強制を受けることなく彼ら「普通のドイツ人」は積極的に虐殺行為を展開した、とする。その根源をゴールドハーゲンは、ドイツ史の中に求め、ホロコーストもそこで長らく醸成されてきた反ユダヤ主義の帰結と描き出す。
　こうしたドイツ人＝悪という結論にさえなりかねないゴールドハーゲンの論法には、同じ警察大隊の史料を分析し「強制」を強調したブラウニングとの間での議論が展開されたし、ゴールドハーゲンの強引な論証のやり方にも疑問が付されているものの、最近の研究を見ると、同意論は、結構地歩を固めているように思える。
　ただ、「同意」していたというなら、なぜ今ナチスは支持を集めないのだろうか、という疑問は有効であろう。たしかに、一般に民衆の中には偏見や差別などどろどろとした要素がある。ナチス体制下では、直接的暴力だけではなく、ラジオ・映画等メディアを動員したナチスイデオロギーの注入、既存の組織やナチス団体による動員、など様々な回路を通して「普通の人たち」の偏見や差別意識がかき立てられていった。そうした状況の説明が本来はなければならない。それがなければ、「強制」が「同意」を作り上げるのではなく、「同意」が「強制」を作り上げたという説明にさえなりかねない。

良心や正義感でたたかった人は
　そもそも「普通のドイツ人」といっても、実際には様々なドイツ人、いわば「もう一つのドイツ人」がいた、ということは忘れられがちである。例えば、「白バラ」抵抗運動とか。そうした少数者だが、良心や正義感からたたかった人たちの姿に後世の人間は感動し、共鳴し、歴史の教訓としようと顕彰し、記念碑を建て、通りの名前とし、記憶にとどめようとする。そこでいったんは「同意」した人間にも反省の機会が与えられる。
　現在でも、ドイツというと、ネオナチの活動ばかりが注目を浴びがちである。だが私がライプチヒでみたのは、そうした三千人ほどのネオナチに対抗して、「（ハイル・ヒトラーと）手をあげるのではなく、（自信を持って）頭をあげよう」といったスローガンを口にする、市長を先頭にした十万人近い反ファシズムのデモ隊であった。彼らは歴史から学んだ「普通のドイツ人」の姿であろう。
　戦前、治安維持法違反容疑で裁かれた法廷で宮本顕治は、「人類の正義に立脚する歴史の法廷」は必ず弾圧者の誤りと自分たちの正しさを証明するだろう、と陳述し、それは現実のものとなった。歴史の流れを味方にしているという確信が未来を切り拓いたもう一つの例である。

ほしの・はるひこ
　福岡大学教授。一九五五年生まれ。専攻はドイツ近現代史。『社会主義と民衆』『ナチス前夜における「抵抗」の歴史』ほか
( ２００８年０８月１５日，「赤旗」) （Page/Topへ）

終戦６３年／平和の流れ／変わる世界／日本の侵略戦争問われる教訓

　八月十五日は、一九三一年の中国東北部への侵略から十五年にわたる日本の侵略戦争が敗戦を迎えてから六十三周年の記念日です。日本国民三百十万人とアジア諸国の人たち二千万人以上の犠牲を出した日本の侵略戦争。あの戦争がなんだったのかを考えるとともに、戦後の日本が戦争の教訓を生かしているのか、あらためて問い直す日でもあります。

戦争違法化の流れを進める
　「国際紛争解決の為戰爭に訴ふることを非とし…国家の政策の手段としての戦争を抛棄（ほうき）することを…宣言す」
　一九二八年のパリ不戦条約の第一条です。日本の天皇制政府もこの条約を批准しながら、一九三一年の「満州事変」で最初に条約を踏み破り、その後、三七年の中国全面侵略（「支那事変」）、四一年の太平洋戦争と領土拡張のための侵略戦争を拡大していきました。
　中国侵略で、戦争ではなく「事変」とごまかしたのは、条約違反との非難を避けるためでした。
　一九四五年、日本はポツダム宣言を受諾し終戦。数え切れない尊い犠牲のうえに、新しい憲法で戦争放棄と戦力の不保持、交戦権の否認を宣言しました。戦争違法化を明確にした国連憲章の流れのなかで、それをさらに一歩進めることで国際社会に復帰したのです。

ＴＡＣ加入国世界人口５７％
　それから六十三年。世界は、国連憲章にもとづく平和秩序を求め、前向きに大きく変わってきています。
　「すべての国の独立、主権、平等、領土保全及び主体性の相互尊重」「意見の相違又は紛争の平和的手段による解決｣｢武力による威嚇又は武力の行使の放棄」
　日本国憲法九条にも通じる原則をもつ東南アジア友好協力条約（ＴＡＣ）が、今年七月の北朝鮮の加入で二十五カ国に広がりました。世界人口の５７％にあたる約三十七億人を擁し、ユーラシア大陸のほとんどを覆うまでになったのです。
　ＴＡＣの精神にたって、南シナ海の南沙諸島をめぐる領有権問題でも関係国が平和的解決に向け「行動宣言」に署名、共同で資源開発をする合意がすすんでいます。
　日本による植民地支配とその後の米ソ冷戦で分断された朝鮮半島をめぐっても、核開発問題の外交的解決をめざす六カ国協議の枠組みが前進しています。

イラク戦争は破たんに直面
　一方、国連憲章を踏みにじった米英のイラク戦争は泥沼化が続き、米軍の駐留継続のための地位協定交渉も難航。対テロ報復のアフガニスタン戦争もいまだ多大の犠牲者を出すなど、深刻な破たんに直面しています。両戦争での米国の戦費は十年間続いたベトナム戦争を上回り、第二次世界大戦につぐものになっています。
　ところが日本政府は、破たんした米国の先制攻撃戦略を支援。アフガン戦争を支援する自衛隊のインド洋派兵継続のため、新テロ特措法を延長しようと狙っています。自民党の麻生太郎幹事長は「給油以外の国際貢献も考えておかなければならない」（五日）などと、アフガン本土への派兵も視野に米軍支援にしがみついています。
　これに対し、日本共産党は｢戦争でテロはなくせない｣と主張、ただちに自衛隊をインド洋から撤退させよと迫っています。戦争と平和をめぐる世界の大きな変化のなかで、どちらの立場が日本の進路として正しいのか、総選挙でも厳しく問われることになります。

日本の侵略戦争問われる教訓／不屈の共産党／反戦運動軍隊でも／「兵士の友」配布は軍中枢に衝撃与えた
　日本共産党は、日本軍による中国東北部侵略開始（一九三一年九月十八日）の前から、機関紙「赤旗（せっき）」で、「日本帝国主義の戦争準備と斗（たたか）え！」（同年七月六日号）と侵略戦争発動の狙いを暴露。戦争勃発翌日の同年九月十九日には「帝国主義戦争反対、中国から手を引け」と題する労働者、農民、兵士にたいする「檄（げき）」を発表しました。
　一九三二年九月には党の兵士向け新聞「兵士の友」を刊行し、過酷な兵役や演習の実態、初年兵への残酷な体罰などを告発。兵士に人間あつかいを求めるたたかいを呼びかけました。
　アジア歴史資料センターが公開している「共産主義宣伝ビラの配布を受けたる件報告」によれば、「兵士の友」配布が近衛師団長から陸軍大臣の荒木貞夫にまでただちに通報されています。軍当局が党の反戦運動の影響を極度に警戒していたことを物語っています。
　広島県の海軍呉軍港内の党細胞（細胞＝党の基礎組織）は一九三二年二月、「聳（そび）ゆるマスト」を発刊。最盛期には百部以上を発行し、呉、横須賀の兵営内や軍艦「榛名」などで密かに配布されました。
　治安維持法による検挙者は旧司法省の統計でも七万五千人を超えますが、反戦運動が高まった一九三一年から三三年までの三年間に検挙された日本共産党員などは四万五千人あまりに上ります。
　歴史研究者は、日本の政党で「一貫して戦争反対の闘争を勇敢にたたかったのは、共産党であった」（遠山茂樹、今井清一、藤原彰著『昭和史』）と書いています。

今に生きる小林多喜二／新たな読者を獲得、戦前の軍国主義を告発した『蟹工船』
　『蟹工船』ブームで新たな読者を獲得するプロレタリア文学作家の小林多喜二（一九〇三―三三年）。日本共産党員として侵略戦争反対に命がけでたちあがった一人でした。
　「『地区』は昨年の九月十八日頃から、又その様子を変えはじめた。――『九月十八日』と云えば、『満州侵略戦争』の火蓋が切られた日である」
　多喜二最後の作品「地区の人々」では、天皇制政府が国際法違反を隠すために使った「事変」という言葉を使わず、「侵略戦争」と本質をずばり突いています。
　日本の侵略には、国際的にも批判が集中。一九三二年のアムステルダム世界反戦大会で設立された国際反戦委員会（ロマン・ロラン、アインシュタインら）は同年十二月、中国侵略に反対する大会を翌年上海で開くことを提唱しました。
　日本が「戦時体制」に向かう中、日本共産党に入党（三一年）した多喜二は、上海反戦大会に向けた運動で街頭連絡に奔走。そのさなかに、詩人の今村恒夫とともに東京・赤坂福吉町の街頭で検挙され、七時間後に築地署で虐殺されたのでした。多喜二の死には、中国の作家･魯迅(ろじん）やフランスの作家ロマン・ロランら内外から多数の抗議と弔文が寄せられました。
　多喜二は国家権力と侵略戦争の問題を中心的主題の一つにすえました。『蟹工船』も実際の漁夫虐待事件をヒントに軍国主義の告発を意図した作品でした。
　多喜二には、「プロレタリアは帝国主義戦争に、絶対反対しなければならない、と云う。然し、どういうワケでそうであるのか、…今これは知らなければならない。緊急なことだ」（蔵原惟人あての書簡）という問題意識がありました。

労働者教育協会会長、現代史研究者山田敬男さん
ファシズムとのたたかい憲法と社会保障を生んだ
　全国各地で、若い人たちに戦前・戦後の歴史を講義する山田敬男さん（労働者教育協会会長、現代史研究者）に、八月十五日に終結した戦争の意味について聞きました。
　若い人たちに歴史を講義して、驚くのは、戦争に関する基本的な事実関係があまり理解されていないことです。戦争を語る人が身の回りにいないし、学校教育でも体系的な現代史教育がきちんとやられていません。
　しっかりした事実関係のうえに第二次世界大戦がもっている意味をつかむことが重要です。アメリカが勝って日本が負けたとか、民主主義が勝ってファシズムが負けたというだけではなくて、それが戦後社会にどういう影響を与えたのかを深めないといけないと思います。
　このことは、いまの「構造改革」とのたたかいでも大きな意味をもちます。
　第二次世界大戦でのナチスとの戦いで、イギリスでベヴァリッジ報告（「ゆりかごから墓場まで」）が発表（一九四二年）され、フランスのレジスタンス運動の綱領で社会的経済的民主主義が提起されます。ファシズムとの戦いの中で生存権保障による社会改革がテーマになります。
　その結果、一九四八年の「世界人権宣言」で、社会権の一つとして社会保障が位置づけられました。画期的な日本国憲法第二五条もこの流れのなかで生まれました。
　ファシズムとの戦いのなかで、五千数百万人という犠牲者を出しながら、民主主義の発展があったのです。「構造改革」は、歴史の中で人民が勝ち取った社会保障をつぶそうとしています。
　予想以上に知られていないのは、一九四一年からの太平洋戦争以前から日本が中国を侵略していた事実です。だから「アメリカに戦争で負けた」という認識になります。
　日本は戦争でアメリカに負けたと同時に中国にも負けました。この中国への侵略のなかで、南京大虐殺とともに、毒ガス戦や細菌戦という戦争犯罪が行われたのです。
　一九四一年以降の太平洋戦争も「日米戦争」という狭い枠で見ることはできません。反ファシズムの民主主義連合とファシズム勢力との戦争のなかに位置づけるのが重要です。
　この視点がないと、敗戦後の日本国憲法の制定も「アメリカに押しつけられた」ということになる。日本の降伏後、反ファッショ国際連合の枠組みが存続するなかで、日本国憲法が制定されたことを強調したいと思います。
　私はいま、戦後日本史を執筆中で、改めて戦争中のことを見直してみたのですが、日本共産党の反戦運動は、国民の財産として語り継いでゆくべき性質のものだと思います。
　驚異的な例は、軍や軍港、戦艦の中での反戦闘争です。広島の呉では「聳（そび）ゆるマスト」を発行して、軍の中で反戦を訴えました。
　「満州事変」から日中全面戦争に向けて弾圧のもっとも激しい時代に、こういう活動が行われたのは、驚くべきことというほかありません。
( ２００８年０８月１５日，「赤旗」) （Page/Topへ）

国民救援会岩手・北上支部／総会と学習会

　岩手県の国民救援会北上支部が九日、二〇〇八年度の総会と学習講演会を開催し、三十二人が参加しました。
　総会では加茂敏彦支部長があいさつし､｢この一年、県内や東北での支援事件や学習講演会などに取り組み、会員拡大では目標を超えた」と述べ、救援会活動の一層の発展をよびかけました。
　佐々木睦雄事務局長が「他団体と連携し、政治革新の運動に力を尽くす。重点的に事件支援を継続し、救援意識を高める学習・講演会を開催する」など支部活動の方針について提案。全体討議の後、活動方針を確認しました。
　総会の後、治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟・岩手県本部事務局長の牛山靖夫氏が「治安維持法と和賀・黒沢尻の運動」と題して講演しました。
　牛山氏は、治安維持法とはどんな悪法だったのか、弾圧の歴史と事件、県内の犠牲者などについて詳しく話し、再び戦争と暗黒政治を許さないために、「いま、私たちが語っていかなければならない」と訴えました。
(２００８年０８月１４日，「赤旗」) （Page/Topへ）

中四国リポート／岡山／息長い「蟹工船」ブーム／若い労働者の圧倒的支持！／いまも文庫本売り上げ３位

　小林多喜二の小説「蟹工船・党生活者」の売れ行きが、岡山県内で、引き続き好調です。
　自宅近くにある、岡山市の「ＴＳＵＴＡＹＡ　ＡＺ平井店」を訪ねると､｢ＴＳＵＴＡＹＡ｣チェーンの文庫本売り上げ全国ベストテンを紹介するコーナーがあり､｢蟹工船｣は二位に入っていました。
　店員に聞くと「入荷が厳しくて、入ってもすぐ売り切れたりするんです。出版社も品薄なんでしょうね。売れ筋だと、どこの本屋さんも注文しますから」と話します。メディアで取り上げられると情報が入った五月ごろから「あっという間に売り切れ」、いまでも在庫が無くなることがあるといいます。
　紀伊国屋書店クレド岡山店では、いまも「若い労働者の圧倒的支持！」「現代の『ワーキングプア』にも重なる過酷な労働環境を描いた名作が平成の『格差社会』に大復活！」とコピーをつけて、平積みにされています。
　最高の売り上げになった五月は同店で文庫本売り上げ一位になり、いまも三位。係長の男性は「ベストセラーのなかでも、息の長いほうです。格差社会の問題が取り上げられて、そこから火がついていった感じですね」といいます。
　同市内の別の有名店でも「蟹工船」が、新潮社の売れている文庫本のコーナーで、売り上げ二位として、紹介されています。文庫本全体でも同店三位。担当者は「昔の本がこうして、新刊のベストセラーやロングセラーと肩をならべて売れるのは珍しい傾向といえます」と話しています。
　津山市の「津山ブックセンター」で、「蟹工船」の売り上げがピークを迎えたのは七月。同店のすべての書籍でトップをしめました。「最近、若い人が増えて、高校生や中学生も買っていきます」と。漫画の「蟹工船」を読んだ人が、小説も読んでみたいと、求めていく傾向もあるといいます。
　（岡山県・宮木義治）
(２００８年０８月１４日，「赤旗」) （Page/Topへ）

『蟹工船』ブームロイターが配信／「経済大国での雇用不安や格差拡大が反映」

　ロイター通信は１２日、小林多喜二の小説『蟹工船』が、不安定な雇用や賃金格差の拡大にあえぐ日本の若者などの間でベストセラーになっていると伝える東京発の記事を世界に配信しました。
　記事は「１９２９年に書かれたマルクス主義者の小説が、日本のベストセラーの上位を占めている。世界第２の経済大国での雇用不安や所得格差の拡大への不安が反映されている」と指摘。「『蟹工船』は、残虐な監督のもとで過酷な条件でカニ加工の労働を強いられる船員についての小説だ。１９３３年に２９歳で警察に拷問され殺害された共産主義者小林多喜二によって書かれた」と解説しています。
　また、「この小説の人気の背景には、低賃金のパートタイムや契約労働者の層が増大していることがある」と分析。ワーキングプアの概念と結びつけた広告宣伝が読者を引き付けている―との出版社のコメントを紹介しています。
( ２００８年０８月１３日，「赤旗」) （Page/Topへ）

「自衛官募集」外せ／市役所横断幕で党が要望／岐阜・土岐

　岐阜県の土岐市役所庁舎正面に真新しい横断幕が掲げられています。「陸海空自衛官募集中」と書かれています。老朽化した庁舎に不釣り合いに感じる真新しい横断幕に、異様さを感じる市民も少なくありません。
　日本共産党土岐市委員会は八日、治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟東濃西支部、新日本婦人の会土岐支部、全日本年金者組合土岐支部とともにこの横断幕の撤去を求め、要望書を市へ提出しました。
　秘書広報課長が応対しました。市側は、総務課からの指示で七月一日から八月三十一日まで掲示することになっており、近隣では土岐市だけが今まで掲示していなかったなどと答えました。
　県内では、市民を巻き込んだ自衛隊員の歩行訓練、自治体による防災訓練への自衛隊の参加、お祭りやスーパーでの装甲車の展示などが行われています。これに対する市民の抗議の声が上がっています。
(２００８年０８月１２日，「赤旗」) （Page/Topへ）

象のトンキーに涙／平和展・９条祭り／岩見沢

　岩見沢九条の会（卜部喜雄代表）と岩見沢市民平和展実行委員会（上田久司事務局長）は六、七の両日、同市で「市民平和展」と「九条祭りｉｎいわみざわ」を開きました。
　実行委は、広島平和記念日の六日午前八時十五分、市内三カ所の寺院で「平和の鐘」を鳴らし、午前十時から平和展を開催。「イラク戦争の子どもたち」「原爆と人間」「治安維持法の犠牲者たち」「平和絵手紙」、「写真・絵画」を展示し、訪れた市民は平和の大切さをかみしめました。
　午後からは九条の会が主催し、「子どもたちへの贈り物」として、紙芝居、腹話術、群読を披露しました。
　大型紙芝居では、戦争のために上野動物園で軍の命令で猛獣たちが殺される様子に子どもたちは目を凝らし、象のトンキーの最期に涙を浮かべました。
　「北海道の七夕祭り」を飾る行事では、会場に大きな柳の木が置かれ、「このしあわせがいつまでも続きますように」と短冊に願いを書いて飾りました。
(２００８年０８月１２日，「赤旗」) （Page/Topへ）

日本共産党知りたい聞きたい／戦時下の抵抗・反戦運動とは？

　〈問い〉戦前は国民すべて戦争賛成で、反対はごく一部だったという人がいます。日本共産党をはじめとする抵抗・反戦運動の規模・概要を教えてください。（大阪・一読者）
　〈答え〉治安維持法によって送検された人びとは、同法の最高刑が死刑に改悪された１９２８年から終戦の４５年までのあいだに７万５千人をこえ、逮捕者は数十万人を数えました。さらに、治安維持法による弾圧と一体になっていた予防拘束や警察への拘留は、数百万人におよび、特高（特別高等警察）などの拷問によって、獄死・病死した人は判明分だけで１６８２人にのぼります（治安維持法国家賠償同盟の調べ）。
　これらの数字は、そのまま反戦運動の規模を意味しませんが、侵略戦争に反対あるいは批判的な人々が決して少数ではなかったことを示しています。
　戦前、日本共産党以外のすべての政党は侵略戦争に加担しました。治安維持法が死刑法に改悪されるなかで、戦争に反対するのは命がけのことで、科学的世界観と未来への確信がなければできないことでした。後年、鶴見俊輔氏は、こう書きました。
　「すべての陣営が、大勢に順応して、右に左に移動してあるく中で、日本共産党だけは、創立以来、動かぬ一点を守りつづけてきた。それは北斗七星のように、…自分がどのていど時勢に流されたか…を計ることのできる尺度として、…日本の知識人によって用いられてきた」（岩波新書『現代日本の思想』）
　中国への侵略が拡大した２７年１月、日本共産党はいち早く「対支非干渉同盟」の結成を訴え、その後も反帝同盟日本支部、「極東平和友の会」準備会、「上海反戦会議支持無産団体協議会」などの中心になり、軍隊内にも党組織をつくり「聳ゆるマスト」「兵士の友」などを発行して反戦闘争を広げました。党員作家の小林多喜二は「沼尻村」「党生活者」「地区の人々」などの作品で戦争反対のたたかいを描きました。
　３５年、日本共産党中央は弾圧で破壊されますが、専制と侵略戦争に反対するたたかいは、獄中でも不屈にたたかわれました。宮本顕治の獄中・法廷闘争は、その重要な記録の一つです。獄外でも、個々の党員、共産主義者のグループは、盧溝橋事件の翌日には各地でビラをまき、反戦をよびかけました。
　天皇制政府は日本共産党に攻撃を集中、次いで、良心的な左翼社会民主主義者や自由主義者にも迫害の手をのばします。これに抗して、戦争に批判の声をあげた人びとも少なくありません。草の根の反戦・抵抗の歴史は今後も発掘し語り継ぐことが求められています。（喜）
　〈参考〉『日本共産党の８０年』
　( ２００８年０８月０９日，「赤旗」)

広海大治「章魚人夫」「サガレンの浮浪者」／浅尾忠男／現代にかよいあうプロレタリア詩の〝詩と真実〟

　いわゆる『蟹工船』ブームとも取りざたされるなかで、初版本(戦旗社版)の朱と黒の鮮やかな二色のデザインの美しさにも魅かれながら新潮文庫の一冊を買い求めました。
　わたしにとって『蟹工船』は、「おい、地獄さ行ぐんだで！」の冒頭の詩句から始まり、「そして、彼等は、立ち上った。――もう一度！」の最後の詩句でおわる長詩・長編詩だ、というのが今回、あらためて読みくだしての率直な受けとめでした。

労働現場から
　そして〈長編詩『蟹工船』〉の「附記」の最後に記された「――この一篇は、『殖民地に於ける資本主義侵入史』の一頁である。」を読みながら、小林多喜二と同時代に生きたプロレタリア詩人広海大治の樺太における鉄道開発とその労働現場を題材とした長詩「章魚人夫」と「サガレンの浮浪者」を思いおこしていました。
　「章魚人夫」は日本プロレタリア作家同盟高知支部の雑誌『田園の花』（一九三二年）に〝西森輝生〟名で発表されたもので、「北方の海には氷が張りつめた／食物がなくなった章魚は／おのれの足を食いつくした」の三行から始まるそれは、「章魚人夫」つまり「前借金二十五円にしばられて」鉄道工事現場に働く人夫、その人夫たちに鉄砲を向けて監視している棒頭、その目を盗んで逃げる人夫と捕えられた人夫へのリンチなどを描きながら、「ああ北サガレンへ行きたい／三十里の北走りたい／其処には七時間労働の俺達の仲間の祖国があるんだ」と希望を謳いあげたあと、起ちあがった人夫たちは人夫部屋に火をつけ、燃えあがる炎の中、「――おーいみんなカタマッて行くんだぞう――／人夫は雪崩の様に／激流のように／枕木の上を馳った」とドラマチックな終連で閉じられる六十余行の作品で、ともにプロレタリア詩人として高知で活動をした槇村浩の「生ける銃架」（三一年）などの戦闘性とは一味ちがった作品としてあらためて注目されるものです。
　広海大治（本名藤原運・筆名西森輝生、広海大治など）は一九一〇年（明治四十三年）高知に生まれ、高等小学校をおえてのち北海道の開拓地をへて樺太・サガレンへ渡り、樺太鉄道開発工事の少年駅員土木工としてその現場にかかわり、そこでの見聞をもとにうまれたのが「章魚人夫」であり「サガレンの浮浪者」でした（猪野睦「広海大治のサガレン詩」）。

激越な叙情で
　そのいまひとつの作品「サガレンの浮浪者」は、詩誌『詩人』に一九三六年に発表されたもので、前作につづく鉄道工事の実態を濃密なリアリティーをもって描きだし、工事完成とともに捨てられていく人夫の明暗の心情を、激越な叙情でうたいあげた二百余行のすぐれた長編詩です。
　「明日の為に！　此の傷いた身体を曳ずろう／何処までも何時までも曳ずって行こう／ぶたれけられてもしつこく生き伸びてやろう／生きるために体温をたくわえ／大地の氷の解ける春を待とう／サガレンの赤い夕焼を死んでいった仲間達に代って／生れ変った浮浪者の肉としよう／呻いている　生きている　戦っている／無数の労働者の為に血に変えよう」――この終連の絶唱は、現代の貧困と格差、ネット社会に生きる若い世代にかよいあうプロレタリア詩の〝詩と真実〟であり、わたしもまたあらためて耳かたむけずにはおれません。
　〔広海大治の作品は『日本プロレタリア文学集３９／プロレタリア詩集２』（新日本出版社）に掲載されています〕
　（あさお・ただお　詩人）
( ２００８年０８月０６日，「赤旗」) （Page/Topへ）

軍隊に反戦訴えた人／久木興治郎生誕１００年で集い／大津

　戦前、反戦運動を貫いた滋賀出身の日本共産党員久木興治郎（一九〇八―三七年）生誕百年の二日、大津市で「顕彰のつどい」があり、約五十人が参加しました。青年らが制作したビデオ『久木興治郎さん聞こえますか』を上映し、久木の生涯を冊子『反戦・平和へ先駆けた青春』に書いた西田清・治安維持法国家賠償要求同盟県本部事務局長が講演しました。
　西田氏は、久木が軍隊内に反戦組織をつくろうと行動し、検挙されても非転向を貫き、日本共産党を解散するという弾圧への屈服の主張にも反対した生涯をたどり、「久木の学ぶ姿勢を学びたい。確信あってこそ頑張れる」「いま日本は久木のような青年の輩出を求めている」と述べました。
　久木が主に活動した大阪から治維法同盟府本部の柳河瀬精会長、久木が少年・青年期を過ごした旧愛知川町（現愛荘町）の元中宿区長の森千司穂氏もあいさつ。久木と同じ八日市中学（八日市高校）で学んだ縁の日本共産党市田忠義書記局長が「不屈の先覚者の遺志を受け継ぎ、頑張ることを誓います」とメッセージを寄せました。
(２００８年０８月０３日，「赤旗」)

文化／『ハンドシェイク回路』田島一さん／労働現場の新しいたたかい／激変する現実描かなければ

　大企業のなかで、こうべを垂れずがんばる日本共産党員。作家の田島一さんは、その群像を描き続けてきました。最新の『ハンドシェイク回路』（新日本出版社）も、そこに連なり新しいたたかいを描く長編です。「労働現場の最先端を描きたいと意欲を燃やした」と田島さんは語ります。
　児玉由紀恵記者
　『ハンドシェイク回路』の舞台は、北関東にある総合電機メーカーのＮ製作所。日本有数の大企業です。
　主人公・沖元は、定年間近の技術者。ここで働きながら、日本共産党の一員として労働者の要求を掲げてたたかってきました。長年かかわった争議が解決したのもつかの間、会社の「稼ぎ頭」と目される、最新鋭の製造装置の開発プロジェクトに配置転換されます。
　モデルの製作所に３年前まで勤め、思想・信条を理由にした差別に三十数年にわたってあらがい続けた田島さん自身が投影された作品です。
　「長い差別扱いが、２０００年の和解で基本的に是正されました。すると、それまで差別で軽い仕事ばかりを命じられていたのとは違って、〝普通の人〟として仕事にどう向き合うか、新たな問題をかかえたのです」
　開発プロジェクトに組み込まれて、「普通の人は、こんなに仕事をしている」と大きな驚きがあったと言います。
　田島さんたちが、職場に憲法は通用せずとばかりに、差別によるいじめ、仲間はずしにされていた苦悩の歳月は、労働者が自由にものが言えず過酷に働かされた日々であることの再発見でもあります。
　自足的な生活で定年を迎えることを拒み、プロジェクトで働き始めた沖元は、チームの最年長メンバー。自身の技術も生かし、労働者の相談にものり、休日も定まらない粉骨砕身の働きのあげく音をあげてしまいます。
　そんな沖元の進退に大きな影響を与えるのは、彼に苦境を救われた、チームの立川でした。
　ロボット開発の夢を抱く立川は２７歳。有能な社員です。母親を看取るための休暇を願い出たり、科学技術が兵器に使われることを疑問視したり。会社に自らの声を発するユニークな立川像には、田島さんの若者への信頼があります。
　「会社で、あるプロジェクトに加わったとき、若者たちは優秀で、よく働いていました。でも、土曜、日曜も仕事で、結婚相手に出会う機会もない。金だけではないはずだと人生に悩みながらやっている。企業を支えていく彼らに、企業は未来を指し示せないのです」

握手そのもの
　多彩な人物が描き分けられています。部下のクビを切れずに辞職して派遣会社に移り、そこから労働者として派遣されてきた元管理職。低賃金でも派遣で働かざるをえないシングルマザー。出世街道を走る策士のようでいながら苦渋を漂わせるチームの責任者。沖元が尊敬する先輩の党員…。
　細分化され緊密にからみあう仕事に携わるチームの面々が、沖元を軸に連帯し苦難に挑んでいく―胸の熱くなるシーンが幾度もあります。
　「『ハンドシェイク（握手）回路』は、通信の専門用語です。題名は早くからこれに決めていました。差別是正以後の、職場の労働者とのつながりは、握手そのものでしたので」
　労働者の心を引き裂く成果主義､裁量労働制｡低賃金､無権利の派遣労働｡現場の〝今〟を映しながら描いた｢新しい職場変革」の物語は、日本の〝今〟をもあぶり出します。
　「書き手のモチーフの醸成が追いつかないままに現実がひどく変わっていく。それでも書かなければ」と強い意思が―。
　０５年から民主主義文学会の事務局長。７月には愛媛で全国研究集会を開催。１６９人、最高の参加者で成功させました。
　「『格差・貧困・閉塞（へいそく）』の社会と文学を考える、のテーマでしたので、多くの方が思いを持って参加されたのだと思います。蟹工船現象を見ても、文学には人々を励ます大きな力があります」
　書き続けること、意欲的な挑戦を―と語る姿に〝文学青年〟の情熱があふれます。
　たじま・はじめ＝１９４５年、愛媛県生まれ。高校卒業後、大手電機メーカーに就職。働きながら書き、８５年、初の小説「蟻の群れ」で第１回『文化評論』文学賞。「赤旗」に「戦士たち」（８８～８９年）「湾の篝火（かがりび）」（０２～０３年）を連載。９４年、『遠景の森』で多喜二・百合子賞。ほかに『川の声』『青の画面』など
(２００８年０８月０３日，「赤旗」) （Page/Topへ）

きょう札幌で「蟹工船」上映

　現代の若者たちに支持を受けるプロレタリア作家・小林多喜二の作品を映画化した「蟹工船」（山村聡監督、一九五三年）が二日午後一時半、札幌市教育文化会館四階で上映されます。入場料千円。
　問い合わせ先＝北海道共同映画社０１１（５６２）１７１１。
(２００８年０８月０２日，「赤旗」)

【7月】（Page/Topへ）

漁民の叫び伝える血脈桜／「美術協会賞」を受賞／室谷孝枝さん＝苫小牧市／脳梗塞を乗り越えて

　脳梗塞（こうそく）の後遺症とたたかい、リハビリを続けながら水彩画の絵筆を握る苫小牧市在住の室谷孝枝さん（５９）＝元日本共産党苫小牧市議＝。二十六日まで開催された第八十三回苫小牧美術協会展で大賞にあたる「苫小牧美術協会賞」を受賞しました。
　（小泉健一郎）

悪政に反対して立ち上がった場
　絵の題名は「松前城下光善寺の血脈（けちみゃく）桜」です。「水彩画の協会賞受賞は珍しい」（関係者）といいます。寺の門前に咲く桜の花が鮮やかに描かれています。
　「血脈桜」は、桜の名所・松前町を代表する樹齢約三百年におよぶ名木です。今年四月末、夫の車で松前を訪ねました。
　地元の漁民から「光善寺は明治時代に悪政に反対する二千人の漁民が立ち上がり、拠点にしたところだ」と聞かされました。
　未曽有の燃油高騰に苦しみ、全国で立ち上がった漁民たちの突き上げるこぶしと、光善寺に結集したであろう明治の漁民の姿が血脈桜を通して重なります。水彩画に描かれた桜は、漁民の叫びのほとばしりのようです。
　室谷さんは市の職員でした。議会の速記者として議場のやり取りをもらさず書き写していました。日本共産党の群を抜いた論戦に、「この党しかない」と確信しました。市議会議員時代は、市内の製紙工場の排煙による大気汚染調査を市民とともに取り組みました。

たたかいの歴史今に伝える絵を
　市議を辞め、地域で活動していた八年前、「しんぶん赤旗」の配達中に飲酒運転の車にはねられました。
　全身打撲で、意識不明の重体に陥りました。一命は取り留めたものの、脳梗塞で失語症になりました。
　自分の名前をようやくいえるようになったのは、事故から一年たってのことです。
　「理解できても言葉が出ない。伝えられない悔しさで、すぐ泣くようになりました」
　十カ月間の入院中、リハビリを兼ねて続けたのは、好きな絵を描くことでした。つらいことも、楽しいことも絵なら表現できるからです。
　絵筆の動きは遅くても、時間をかけて仕上げます。水彩画同好会に参加し、たくさんの桜や古い建物の水彩画を描いてきました。
　リハビリはいまも続けていますが、会話もできるようになりました。周囲が驚くほどの回復です。三年前からは水泳も始めました。
　「貧困と格差の広がりで多くの国民が苦しめられています。たたかいの歴史をいまに伝える絵を描きたい」という室谷さん。今度は若者を中心に爆発的なブームを呼んでいる「蟹工船」を書いた小林多喜二が働いていた旧拓銀小樽支店を描きたいと意気込みます。
(２００８年０７月３１日，「赤旗」)

治維法国賠同盟宮城県本部が総会

　治安維持法国賠同盟宮城県本部は二十六日、岩手・宮城内陸地震のため延期していた総会を開催しました。
　総会は、この一年間に死去した八人の会員をしのび黙とうした後、日本共産党宮城県委員会の五島平書記長、宮城県労連の高橋正利議長、宮城県レッド・パージ反対同盟の渡辺愛雄事務局長が連帯のあいさつをしました。
　事務局の情勢報告、前総会からの運動のまとめと方針の提案を受けて、草の根からの運動が政治を変える力になっている情勢を踏まえて討論しました。
　治安維持法の時代からの不屈の伝統を生かし、誤った歴史認識の払しょくに努め、小林多喜二や共産青年同盟の活動家だった高橋とみ子をはじめとする多くの犠牲者の顕彰活動を進めることや、署名活動の推進、憲法改悪阻止などの当面する諸課題の取り組みを強めることを決定しました。
　特別決議「自衛隊の海外派兵と武力行使のための『恒久派兵法』法案提出を許さぬ世論と運動を強めよう」を採択しました。
(２００８年０７月３１日，「赤旗」) （Page/Topへ）

１３０人が参加し「蟹工船」上映／岐阜・中津川

　岐阜県中津川市の日本共産党後援会は二十六日、市内の中央公民館で映画「蟹工船」を上映し、百三十人が観賞しました。
　六十代の女性は「労働者を『ブタ』扱いする資本家に怒りがわいた。ストライキを応援したい」と感想を語りました。
　上映後、党中津川市議団が七月初めに「蟹工船」の原作者の小林多喜二のふるさと、小樽市を訪ねたことなどを報告。黒田ところ市議は、多喜二の文学碑や小樽文学館の多喜二コーナーなどを、写真を使い説明しました。可知いさむ市議は、市内落合にある戦前のプロレタリア作家・葉山嘉樹の碑文「馬鹿にはされるが　真実を語るものが　もっと多くなるといい」の文学碑を訪れる人が増えていることを紹介し、その文学碑を移転させる計画があることを報告しました。
(２００８年０７月３０日，「赤旗」) （Page/Topへ）

朝の風／映画で多喜二を読む

　小林多喜二の『蟹工船』ブームのさなか、その映画化作品、山村聰監督の「蟹工船」（一九五三年）再上映運動がはじまった。一九五〇年代、独立プロ高揚期の力作だけに、とりわけ未見の若い世代にはぜひ一見をすすめ、原作とくらべて論議してほしいし、その論議自体が有益だ。
　たとえば原作とラストが違う。しかし映画は映画で原作の精神を映画的に発展させたと考えてもいい。また映画を見れば、多喜二の文学がきわめて映画的な文体であることに気づく人もあるはず。多喜二は小樽映画鑑賞会の積極的な活動家で、内外の映画をよく見、チャップリン論などすぐれた映画評論を多く執筆、『全集』の評論部分ですぐ読める。
　多喜二と音楽については、多喜二の愛した音楽がＣＤにもなって普及されているので、〝多喜二の愛した映画〟といったプログラムも可能ではないか。
　残念ながら多喜二の原作で映画化されたのは「蟹工船」一本だが今井正監督が多喜二の生涯を描いた秀作「小林多喜二」（一九七四年）があるし、生誕一〇〇年・没後七十年を記念して池田博穂監督が長編ドキュメンタリー「時代を撃て・多喜二」（二〇〇六年）を製作、普及中だ。
　映画で多喜二を読む作業も興味津々だと思うが……。
　（反）
( ２００８年０７月３０日，「赤旗」) （Page/Topへ）

ひと／鶴彬の顕彰・銘石を大阪城公園にと、活動する川柳人岩佐ダン吉さん（６６）

　「手と足をもいだ丸太にしてかへし」。戦前、川柳で反戦を訴え治安維持法違反で検挙、二十九歳で獄死した鶴彬。二十二歳で収監され、一年八カ月を過ごした大阪衛戍監獄は、毎週マラソン練習コースにしていた大阪城公園内天守閣の南にありました。
　今年二月、その地に鶴彬顕彰実行委員会として、百日紅の木を三本植樹。命日・九月十四日には、彬の句「暁をいだいて闇にゐる蕾」を刻んだ銘石を木の横に設置します。
　彬の写真を見せて「男前でっしゃろ？」と、にやり。実行委員会をつくった「あかつき川柳会」の幹事長です。川柳歴二十六年。毎月六、七誌の川柳欄に選評を書き、月十回は各句会に参加します。
　銘石の設置をめぐる大阪市との交渉は五年間・三十回に及びました。「鶴彬の川柳は昔話ではない。あの時代に権力に刃向かって、憲法九条の礎になった人。今こそ、彬のような川柳を詠まないと」
　作家の澤地久枝さんらの賛同も得て募金を呼びかけ、全国の千二百六十人から目標を上回る額が寄せられました。
　大阪商工団体連合会を一九九三年に退職。好きな彬の句は、「タマ除けを産めよ殖やせよ勲章やらう」です。
　講師を務める川柳教室では「世論を動かすような川柳を」と指導します。最近「やられた｣と思った句は｢年寄りは医者に頼るな山へ行け｣｡
　彬の句碑を生誕地の石川県金沢市に訪ねての一句。「九条を殺す彬を二度までも」
　文・写真　かせ野真里
( ２００８年０７月３０日，「赤旗」) （Page/Topへ）

治維法国賠同盟鳥取県東部支部が総会

　治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟鳥取県東部支部は二十日、鳥取市の鳥取民商会館で第九回総会を開きました。鳥取聾（ろう）学校の元教諭・塩田健夫さんが「障害者の歴史と戦争」をテーマに講演しました。
　塩田さんは､｢歩けないのか」「耳がないのか」山田の案山子（かかし）と障害者をやゆする唱歌、いざなみがヒルコ（障害児）を川に捨てたと古事記にあるように農村社会で障害者が疎まれたこと、言葉のしゃべれないおし乞食（こじき）が茶わんをたたくさまを小林一茶が歌に詠んでいることなどを紹介｡｢視覚障害者ははり、きゅう、あんまと職業があったが、聴覚障害者はおとなになると乞食になるか、座敷牢（ろう）に入れられました。江戸時代にできた寺子屋で文字を覚えるまでは、沈黙と孤独の世界で生きるしかありませんでした」と、近代までの障害者の歴史をひも解きました。
　総会では、戦争犠牲者を出さない決意が語られ、田江裕氏が支部長に再選されました。
(２００８年０７月２３日，「赤旗」) （Page/Topへ）

作家徳永直没後５０年／庶民の生活と闘い描く／「太陽のない街」で労働争議をリアルに／岩渕剛

　最近の若者の厳しい労働実態のなかで、小林多喜二の「蟹工船」が脚光を浴びている。その「蟹工船」は一九二九年五月・六月と二回にわけて、日本プロレタリア作家同盟の機関誌『戦旗』に掲載された。その後編の載った六月号から連載をはじめ、「蟹工船」とともに『戦旗』の評判を高めた作品が、今年没後五十年を迎えた徳永直（一八九九―一九五八）の「太陽のない街」だったのである。

小学校を卒業後職を転々として
　「太陽のない街」は、一九二六年に東京の共同印刷で起きた、おおきなストライキを題材にしている。徳永自身も、その時ストライキの一員として争議に参加したのであった。ストライキは労働者側の敗北に終わってしまうのだが、「太陽のない街」は、その敗北にいたるプロセスを描いている。
　争議団に対する経営者側の圧迫の強さから、この争議が単なる一企業のなかの争いにとどまらず、労働者側と資本家側との全面的な対決の一環であったことを知ることができる。また、ストライキをたたかう労働者たちも、さまざまな弱さも含めて描かれ、一面的な「闘士」にはなっていない。
　こうした労働者の生活とたたかいのリアルな描写が、初等教育しかうけておらず、小学校を卒業してからさまざまな職に就き、そのなかで労働運動に参加してきた人物によって書かれたこともあって、「太陽のない街」は、徳永を作家として世の中におしだすことになったのだ。

時流の批判にはなりきれずに…
　その後、徳永は、プロレタリア文学運動の代表的な作家として活躍するが、小林多喜二が虐殺されるころには動揺をはじめ、国策に協力する労働者の姿を作品に取り上げるようになる。日中戦争の時期には、「満州」の〈開拓団〉を美化するルポや小説を書くようにもなる。そこに徳永の主観としては、当時の庶民の生活に対する共感や応援の気持ちがあったことは、みずからの幼少年期に題材をとった「最初の記憶」や「他人の中」のような作品で、貧しい庶民の暮らしをていねいに描いていたり、義務教育の延長が家計を圧迫する現実を静かにうったえる｢八年制｣という作品を書いたりしたことからも推測はできるのだが、それは時流を批判するものとはなりきれなかった。

労働者や農民の戦後の成長みる
　その反省もあって、戦後の徳永は、大きくうごきはじめた労働者のたたかいを描くことを仕事の中心においている。そのとき、徳永はたたかいの先頭にたつ労働者をえがくときに、かれらが戦争中は戦場で過酷な体験をしたり、「玉音放送」を聴いたときにがっかりしたという経験をしていたり、そうした、〈どこにでもいるような〉人物として作品に登場させる。それは、多くの国民が真実を知らされずに戦争へと流れていった過去をふまえて、それだからこそ新しい日本のためにたたかうようになるという変化を、徳永は労働者のなかに見ていたからなのである。
　戦後の徳永の代表作としては、全体の構想からみればまだ途中の第二部で終わってしまった「静かなる山々」がある。長野県川岸村（現在は岡谷市に合併されている）の東芝の工場のたたかいをモデルにしたこの作品で、戦前戦中の軍国主義や封建的なシステムのなかで育ってきた労働者や農民たちの、戦後の成長とたたかいとを、経営側や地主層の動向も含めた広い視点から描こうとしたのも、そのあらわれであったのだ。
　徳永直は二十世紀前半の日本の庶民の生活とたたかいを描いた作家として、もっと読まれてよいと思っている。
　（いわぶち・つよし　文芸評論家）
( ２００８年０７月２２日，「赤旗」) （Page/Topへ）

「蟹工船」ブーム語る／フジ「報道２００１」佐々木議員／ピンハネ、過酷労働…モノ扱いの派遣と共通

「おかしな政治変えよう」
　「おい地獄さ行ぐんだで！」で始まる小林多喜二の『蟹工船』が「前代未聞の大ブーム」―二十日放映のフジテレビ番組「報道２００１」が紹介しました。日本共産党の佐々木憲昭衆院議員が出席しました。
　（２面に関連記事)
　番組は、「ブームの背景には、いったい何があるのか」と問いかけつつ、『蟹工船』を題材にした映画や漫画をバックに、地獄の日々に怒りを爆発させた労働者がストライキを決行するまでのあらすじを紹介しました。
　また、「格差問題に取り組んできた共産党で、新規党員が月千人単位で増えている」として、街頭で訴える志位和夫委員長の姿を大きく映し出しました。
　司会者から、多喜二が学んだ小樽高等商業学校（現小樽商科大学）の後輩として紹介された佐々木氏は、「多喜二が描いたのは、周旋屋にピンハネされ、非常に過酷で奴隷的な労働を強いる時代だった」「いまの若い人たちが置かれている労働現場の、人をモノ扱いする無権利な実態と非常に共通している。そこが共感を呼んでいる」と発言。派遣労働の自由化によって、貧困と格差が広がった実態を明らかにしました。
　佐々木氏は、「大企業減税の一方で、庶民からは（増税と負担増で）吸い上げ、労働者の賃金は下がっている。もうけは株主への配当と政治献金となっている」と指摘。そのうえ、他の党は政党助成金まで受け取っていると批判し、おかしくなっている政治を変えるべきだと強調しました。
( ２００８年０７月２１日，「赤旗」) （Page/Topへ）

花岡事件現地会員ら訪ねる／岩手・国民救援会

　岩手県の国民救援会二戸支部(支部長･田口一男二戸市議)は十二､十三の両日､秋田県大館市を訪ねる歴史の旅を行いました｡国民救援会員ら十一人が参加しました｡
　ことしが小林多喜二没後七十五周年にあたる年で､花岡事件の現地を直接訪ね､平和と人権を守る思いと救援運動のさらなる前進をめざして取り組んだものです｡
　現地案内サークルの富樫康雄さん(日中不再戦友好碑を守る会事務局長)の案内で､参加者は小林多喜二､安藤昌益の生地を巡り､花岡事件の現地を見て歩きました｡
　多喜二の面影を残す生家跡や生誕地碑､母セキの生誕地碑などに立ち寄りました｡
　花岡事件の関連現場として惨劇の舞台となった共楽館跡や中国人強制収容所跡､朝鮮人と日本人の犠牲者を出した七ツ館事件｢弔魂碑｣､日中不再戦友好碑などを詳しく見て回りました｡
　参加者は､｢現地にきて実相を知り衝撃を受けた｣｢強制連行し､残虐行為を行ったのは､最大の拉致ではないのか｣などと口々に語っていました｡
(２００８年０７月２０日，「赤旗」) （Page/Topへ）

「蟹工船」に社会の縮図／民主主義文学会が研究集会

　日本民主主義文学会による第二十回全国研究集会「『格差・貧困・閉塞』の社会と文学を考える」が十九日、松山市の愛媛県県民文化会館で始まりました。二十一日までの予定。全国から、過去最高の百六十人以上が参加しました。
　評論家の牛久保建男、乙部宗徳、新船海三郎、田島一・同会事務局長の各氏によるシンポジウムと、中川悦良・日本共産党元愛媛県議の「松山の文学的風土」と題した講演が行われました。
　シンポジウムでは、現実社会と対決し、閉塞（へいそく）を打ち破る人間像の発見に、現代文学の発展の可能性があると各氏が共通して指摘。小林多喜二の「蟹工船」には、今日の社会の縮図そのものが描かれており、そこで連帯してたたかう人々の姿に共感する現象が表れているとの意見が出されました。
　中川氏は、松山ゆかりの文学者らを紹介。英国に留学し貧困と格差の実情に、マルクスの登場を必然性と記した夏目漱石、軍国主義者から軍備撤廃論者へと発展した水野広徳、松山高校出身の宮本顕治らの足跡を語りました。
( ２００８年０７月２０日，「赤旗」) （Page/Topへ）

市田忠義著『人情対談　平和がいちばん！！』／人間らしい社会への願いにじむ／畑田重夫

多彩な人々と意気投合
　日本共産党書記局長・参院議員、市田忠義さんの対談集です。
　対談相手は十二人。『ルポ　貧困大国アメリカ』の著者である堤未果さんにはじまり、映画監督、俳優、狂言師、作家、エッセイスト、宗教家、元プロ野球監督、歌手、パントマイミストというように実に多士済々です。読みやすくて、得るところ、訓えられるところが多い読みものとなっています。

どんな政党かを
　もちろんこの本は、それ自体が日本共産党の歴史や路線、政策を論じたものではありませんが、直接、間接に日本共産党とはどんな政党なのかを知るうえでも一読の価値があると思います。
　話題は、映画「シッコ」と後期高齢者医療制度、非正規雇用の増大とワーキングプア・ネットカフェ難民、イラク戦争と小林多喜二、胸に迫る戦没画学生の絵と不戦の誓い、大戦で亡くなった野球人と憲法九条のこころ、お釈迦さまの悟りの原点と平和憲法、金子みすゞの詩と日本共産党など多岐にわたり、対談相手と意気投合し、思いを重ねています。
　市田さんは「はしがき」で、どの対談にも共通するキーワードがあり、それは「平和」と「人情」とである、と書いていますが、まさにこの本には「平和」「憲法九条」「人間」「人間らしさ」「やさしさ」「生き方」などの言葉があちこちに出てきます。

母の生き方みて
　「共産党」とか「書記局長」とかいえば、何となく「こわい」「固い」「理屈っぽい」「いかめしい」といった先入観を抱いている人が少なくありませんが、そういう人にこそ、ぜひとも読んでほしい。
　パントマイミストの松井朝子さんとの対談（二〇〇二年十一月の第三十八回赤旗まつり）のなかで、市田さんは自分の生いたちや入党の経緯をつぎのように語っています。
　「六〇年安保の影響や高校時代の恩師が良心的で進歩的な先生だったということもあるんですけれども、（中略）曲がったことがきらいで、正義感が強くて涙もろくてお人よしでロマンティストで、という母親の生き方をみて、人間が人間らしく、当たり前に扱われるような、まじめに働く人間が報われるような社会になったらいいのにな、という思いから自然に入党したように思います」

味わい深い短歌
　市田さんは今でこそ日本共産党の顔の一人として知られていますが、京都在住時代には同党のなかのあらゆる部署での仕事を経験してきた人です。女優の中原ひとみさんは、「初めてお会いしたときにとても柔らかい雰囲気で、誠実そうで、すごくうれしくなりました」と語っています。
　本書の巻末に「母の句歌集によせて」という「付」が掲載されていますが、そのなかに市田さんのお母さんの作になるつぎのような短歌が紹介されています。
夜学び昼は勤めて得しお金肉など買えと送りてくれぬ
　若い時に苦学していた「青年市田忠義」の親孝行ぶりを偲ばせる味わい深い短歌です。
　（はただ・しげお　国際政治学者）
( ２００８年０７月２０日，「赤旗」) （Page/Topへ）

学生／労働組合に注目

　日本共産党員作家・小林多喜二の「蟹工船」のブームはなお衰えず、七月最初の週の週間ベストセラー（オリコン調べ）では、文庫部門の三位です。そのなかで、若者の労働組合への意識も変わりつつあるようです。
　東京にある日本大学で、約百五十人の学生に社会政策論を講義する牧野富夫・同大名誉教授は、ここ十年以上毎年、学生に、①労働組合の意義を認めるか②就職したら組合に入るか、という質問をしてきました。
　約八割の学生が労組の意義を認めるけれど、自分も入る気があるのは二割台―この間ほぼ一定した回答でした。ところが今年は、５０％を超す学生が自分も労組に入ると答えたのです。
　「びっくりしましたね。昨年の十一月には、アルバイト先で組合を作りたいが、どうすればいいか、と学生が聞きにきました」と牧野さんはいいます。
　「労組が、かっこよく見えるようになったんじゃないでしょうか。教育が競争的になっているなかで、組合に入って団結しようという意識が広がっているのは貴重です」
　今年一月の「蟹工船」エッセーコンテストにネットカフェから応募した狗又ユミカさんは、小林多喜二からの「手紙」には「一人で戦っては駄目だ。労働組合に加入して（なければ組織するなどして）団結して戦え！」と書いてある、と書きました。
　若者の苦難の解決に取り組む労組の献身的な活動が、学生のなかにも、多喜二のメッセージを広げているようです。
　（西沢亨子）
( ２００８年０７月２０日，「赤旗」) （Page/Topへ）

多喜二ゆかりの小樽へのツアー

　「小樽日帰りバスツアー・多喜二と啄木の歴史」がこのほど行われました。「小説『工場細胞』の跡地（現在は北海製缶）を見て、より身近になった。多喜二の小説を読み直したい」（西区の男性・七十歳）など参加者が感想を寄せました。
　二十八人が乗ったバスが札幌駅前を出発。小樽築港駅の近くにある「多喜二住居跡」で、ツアーを企画した旅システムの内山博社長が「どの鉄道の枕木も、それはそのまま一本一本労働者の青むくれた『死骸』だった」と代表作『蟹工船』を紹介。彼が見たことが小説の原点だったとのべました。
　多喜二の遺骨が納められた小林家の墓を囲んだ参加者。感慨深げに手を合わせました。地獄坂を通り、旭展望台にある多喜二文学碑へ。小樽文学館では、多喜二のレプリカに触れました。
　豊平区の池田由美さん（党市議候補）は「二十九歳の人生はあまりにも短かった。でも、いま『蟹工船』がブームになり、語り続けられていることに『すごい人』の一言ですね」と語っていました。
(２００８年０７月１８日，「赤旗」）（Page/Topへ）

映画「蟹工船」全国２００カ所再上映運動へ／映画センター全国連絡会議

　小林多喜二の代表作『蟹工船』が若者の間で広く読まれ一大ブームとなるなか、映画センター全国連絡会議が今月から、映画「蟹工船」（写真、山村聡監督・脚本・主演、一九五三年）の全国二百カ所再上映運動を呼びかけています。
　映画｢蟹工船｣は、山村監督の第一回監督作品です。撮影を宮島義勇、音楽を伊福部昭が担当。海のタコ部屋ともいわれる蟹工船を舞台に、過酷な奴隷労働の日々に耐えかねた漁夫らが団結し立ち上がる姿をダイナミックに描いています。
　映画センター事務局長の吉村秀二さんは、「映像の世界で活動するものとして、映画を通じて多喜二の世界を現代の若者に伝えたい。またこれを機に、私たちが続けてきた自主上映運動の根を広げたいという思いもあります」と話しています。同センターのよびかけにこたえ、すでに各地で上映会が決まっています。予定は以下の通り。
　〈上映会予定〉１９日（土）兵庫県尼崎市▽８月２１日（木）秋田県秋田市▽８月３０日（土）京都府京丹後市▽８月３１日（日）京都府宮津市▽９月２１日（日）京都府綾部市▽９月２７日（土）福岡市▽１０月１１日（土）札幌市。会場・主催者・上映時間等についての問い合わせは映画センター全国連絡会議（℡０３・３８１８・６６９０）へ
　〈上映会の条件〉１６㍉、業務用ＤＶＤは１回６万３千円。３５㍉使用の場合は要相談
( ２００８年０７月１８日，「赤旗」）（Page/Topへ）

現代に生きる多喜二／党創立記念で講演会／帯広

　日本共産党十勝地区委員会は十二日、帯広市で「党創立八十六周年記念講演会」を開きました。「君の手を握る　小林多喜二の書簡から」と題して、荻野富士夫小樽商科大学教授が講演しました。
　荻野さんは、「蟹工船」ブームにふれ、その背景に多喜二の作品が社会のゆがみや不条理、矛盾に対する怒りと同時に未来への光明も描いていること、そこには民衆に対する限りない優しさや信頼とそれを踏みにじるものへの激しい怒りをかきたてた多喜二の人間性があると指摘。書簡を中心に、獄中の様子や多喜二が何を考えていたかを詳しくのべ、「多喜二は『闘士』のイメージが強いが、等身大の多喜二は、率直で恋もするしユーモアもある。ふくらみや豊かさのある人間性を考えて、作品にふれるきっかけにしてほしい」とよびかけました。
　参加者は「あたたかさや思いやり、やさしさあふれる多喜二の人間性を書簡から知ることができた」「田口瀧子への手紙にジーンと来るものを感じ、感動した」「心が洗われるようなひとときを過ごすことができた」との感想を寄せました。
(２００８年０７月１７日，「赤旗」）（Page/Topへ）

まど／『女工哀史』と『蟹工船』

　群馬県富岡市には日本の官営工場第一号として一八七二年（明治五年）に設置された富岡製糸場が、ほぼ当時の姿のまま残り、世界遺産への登録を待っています。
　○…日本で最初の賃労働者は富岡製糸場の伝習生と綿糸紡績業の年若い女性たちです。最低限の労働条件を定める工場法もない時代、製糸工場の労働時間は一日十六時間を超え、人権無視の寄宿舎生活が強いられました｡｢生糸で軍艦を買った｣といわれる日本の｢富国強兵」「殖産興業」政策は、女性たちの命を削る労働であがなわれたのです。
　○…細井和喜蔵が『女工哀史』を著したのは一九二五年です。繊維産業を底辺で支える女性労働者の過酷な実情を暴き、当時頻発していた争議にも注目しました。一九二二年創立の日本共産党は、当初から八時間労働、最低賃金制の実施をかかげていました。党員作家である小林多喜二は『女工哀史』から四年後の『蟹工船』で「この奴隷労働を断ち切るのは労働者自身の団結とたたかいによるしかない」と高らかに宣言します。いまむき出しの資本主義の搾取と抑圧にさらされる若者が、苦しみをなげくだけでなく、『蟹工船』のたたかいに未来の展望を見いだし、共感を寄せはじめています。
　○…富岡製糸場は、当時の日本の建築技術の粋を集めた特徴あるレンガづくりの建物です。そのかけらを手にとりました。そこには日本資本主義の礎石とされた女性たちの血と涙が結晶しているようでした。（竹）
( ２００８年０７月１７日，「赤旗」）（Page/Topへ）

ビラ配布の自由守る集会／渡辺治一橋大大学院教授の記念講演／言論の自由憲法実現の土台

　「あぶない！　言論の自由が！　ビラ配布の自由を守る７・９集会」（九日、東京都千代田区）で、一橋大学大学院・渡辺治教授が「ビラ配布の自由と日本国憲法」と題しておこなった記念講演の要旨を紹介します。
　ここ数年、ビラ配りなどの言論活動への弾圧事件が続いています。これは保守勢力が二十年来の課題として推し進めている、憲法改定と新自由主義的「構造改革」の試みと一体のものです。
　さまざまなケースがありますが、共通する特徴が四つあります。
　①対象が日本共産党など、改憲と構造改革の流れに正面から立ち向かう諸組織のメンバーに絞られている②公安警察が組織的・計画的に事件化している③ビラ配布をターゲットにしている④国家公務員から一般市民へ、また選挙運動から日常活動へと取り締まり対象を拡大している―。
　ここに、権力側の狙いが表れています。
　一九九〇年代以降、保守勢力の「二大課題」は、彼らが思い描くほどにはうまく進んでいません。
　安倍晋三前首相は「任期中に改憲する」と言いましたが、改憲反対の運動の高揚によって退陣を余儀なくされました。逆に、「九条の会」は立ち上げから四年間で、全国に七千以上の会ができました。この力は世論を変え、読売新聞の世論調査で「改憲賛成」という回答が減り続け、ついに「反対」を下回りました。
　「なぜ進まないのか」。こう考えた彼らは、市民や労働者が根っこにあると気づいています。ビラ弾圧には、「二大課題」を改めて推進するというねらいがあります。

なぜビラ狙う
　ではなぜ、ビラをねらうのか。市民の運動、組合や政党の活動にとって、ビラの配布がもっとも基本的な手だてとなっているからです。なぜ共産党をねらうのか。彼らの「二大課題」に対する反対運動の結節点になっているからです。
　本当は彼らは、戦前の治安維持法のように、気に食わない団体を一網打尽にできる法律を作りたい。しかし一九五二年に作った破壊活動防止法は批判を受け、ほとんど適用できません。だから弾圧のためには、住居侵入や国家公務員法違反を使わざるを得ないのです。
　まず国公法で、公務員の運動を委縮させる。しかし、これでは限界があるから住居侵入で市民の動きを止める。これを許しておくと、必ず、「九条の会」など市民の組織に対する攻撃が起きてくる。ここでくい止めるために、弾圧事件の裁判では、どうしても無罪を勝ちとる必要があります。

焦りは彼らに
　私たちは一方的に押されているわけではありません。改憲の策動に対して憲法九条を守り続けている。後期高齢者医療制度に対しても怒りがあふれ返っています。焦っているのは彼らです。弾圧の背後にある焦りを見ておく必要があります。
　もちろん、われわれの運動にも、まだまだ弱さがあります。
　公職選挙法の戸別訪問禁止規定を、いまだに廃止できていません。ＧＨＱ（日本を占領した連合国軍総司令部）の指令でできた国公法の政治運動規制も撤廃できず、それが弾圧の道具に使われています。
　彼らは決してあきらめていません。民主党を巻き込み、自衛隊の派兵恒久法を制定して九条に大穴を開けた上で、改めて改憲運動のまき返しを謀ろうとしています。
　私たちは、海外派兵恒久法の制定に反対する反改憲の運動に全力を挙げる必要がありますが、同時に、憲法を実現する運動に取り組むことも求められています。
　自衛隊のイラク派兵を違憲とする判決を勝ちとった運動は、九条を実現する大きな一歩です。後期高齢者医療制度に反対することは、憲法二五条（生存権）を実現するステップです。憲法を実現する運動が強ければ、改憲運動は前進できません。
　重要なのは、運動を進めるためにどうしても必要なのが、二一条が定める言論・表現の自由だということです。これがつぶされると、九条の運動も二五条の運動もストップします。言論の自由こそ、憲法理念実現の土台となる権利なのです。

弾圧包囲する
　だからこそ私たちは、この自由を大いに使っていく。とても弾圧できないほどの、多様な言論・表現活動を展開する。弾圧を逆に包囲するほどの運動が必要なのです。
　ビラを配る自由を奪うということは、情報を発信したい市民や政党にとっても致命的ですが、害悪はそれにとどまりません。ビラを受け取る側の人が情報を知り、取捨選択する機会があらかじめ奪われてしまうからです。どんな意見があるのかを知ることすらできず、「目隠し」の状況に置かれます。これが一番恐ろしい。「民主主義」を生き生きと成長させるためにも、改めて、言論の自由を守り拡大することが求められています。
( ２００８年０７月１２日，「赤旗」) （Page/Topへ）

書籍展示会に共産党コーナー

　日本最大の本の展示会「第十五回東京国際ブックフェア」が十日、東京都江東区有明の東京ビッグサイトで始まりました。十三日まで。
　今年は世界三十カ国から、過去最多の七百七十社が参加。各社の展示ブースには本がずらりと並び、商談席では、版権取引などの活発なやりとりが行われていました。デジタル関連会社の区画もあり、最新のネットサービスによる印刷物制作の実演、ケータイマンガの展示などに立ち止まる姿も見られました。
　日本共産党も新日本出版社などと共同で出展。カール・マルクス著『資本論』や不破哲三著『マルクスと「資本論」』、小林多喜二著名作ライブラリー、ワーキングプアや後期高齢者医療制度をとりあげた日本共産党の出版物などが二割引きで並び、初日から訪れる人でにぎわいました。
　週末の十二日（土）、十三日（日）は一般公開日で、書店・出版業者以外の人も来場できます。五万冊を超える「洋書バーゲンコーナー」などが人気スポットとなっています。
( ２００８年０７月１１日，「赤旗」) （Page/Topへ）

国賠同盟県本部大会で方針決定／青森

　治安維持法犠牲者国家賠償請求同盟青森県本部は五日、青森市の県民福祉プラザで第十九回大会を開き、運動方針を決めました。
　大会には東青、弘前、むつの各支部と十和田地域準備支部から合わせて三十五人が出席。高杉さと事務局長が運動方針を提案しました。討論では、「語り部」活動の重要性などについて活発な意見が出されました。
　会員拡大、支部建設を進めるとともに、請願署名の推進、地方議会への陳情・請願、犠牲者の顕彰活動などを柱とする運動方針を決めました。
　役員改選で会長に中村勝巳氏、事務局長に高杉さと氏を選出した後、憲法を守り、自衛隊海外派兵恒久法に反対することを盛り込んだ特別決議を採択しました。
　国民救援会県本部の杉山敏雄事務局長、日本共産党の諏訪益一県副委員長（県議）が激励のあいさつをし、高橋ちづ子衆院議員からメッセージが寄せられました。
(２００８年０７月１１日，「赤旗」) （Page/Topへ）

「平和の滝」に涼求める人々／札幌

　真夏日となった六日の札幌市。手稲山のふもと、西区の「平和の滝」に涼を求める人たちが次つぎと訪れていました。（写真）
　バス停から十五分かけて坂道を上ってきた男性は、顔に水をつけて「冷たくていい気分だ」といいます。
　父親と一緒に来た二歳と五歳の兄弟は、川の中に手を入れて大はしゃぎです。
　十㍍の高さから流れ落ちる滝を見つめ、若いカップルが「すごい迫力」と話しました。
　平和の滝は、戦前の治安維持法のもと、侵略戦争に反対し、働く者の解放のためにたたかった相沢良のゆかりの地です。一九三二年夏から秋にかけて仲間とハイキングをして、労働歌をうたった場所として知られています。滝の入り口には相沢良のレリーフ像と記念碑が建っています。
(２００８年０７月１０日，「赤旗」) （Page/Topへ）

映画「蟹工船」秋田市で上映

　五日午後、秋田県多喜二祭実行委員会が秋田市中央公民館サンパルで開催した『映画「蟹（かに）工船」を観（み）るつどい』に秋田・仙北・大仙・潟上などの市民三十八人が集いました。
　上映に続き、斎藤重一実行委員長が、小林多喜二の生き方や作品がもつ現代的な意義や映画について語りました。
(２００８年０７月０８日，「赤旗」) （Page/Topへ）

〝多喜二の党〟の出番です／小樽のまつりに１３００人／紙参院議員、宮内比例候補があいさつ

　強い日差しのもとで日本共産党小樽地区委員会と後援会は六日、小樽市のもがみ公園で第二十九回あおばまつりを開きました。千三百人が集まり交流しました。
　二十の後援会がテントを出し、焼きそばやおでんの模擬店、余市産のサクランボやトマトといった後志管内の新鮮な産直野菜や果物がずらりと並びました。
　頭にタオルをまき、焼き鳥を焼いていた勤医協内後援会の森大樹さん（３１）は「初めて模擬店に参加しました。人がいっぱいで盛り上がって、元気が出ますね」と話します。
　舞台では、小樽潮太鼓やうたごえ、尺八、民謡、カラオケ大会が行われ、来場者が拍手を送っていました。
　宮内聡衆院比例候補があいさつ。後期高齢者医療制度に怒りが集まり、共同が広がっているとのべ、「保守を支持していた地元有力者の家でつどいを開かせてもらい、国会で働いてほしいと激励を受けました。みなさんの思いを背負って頑張ります」と語りました。
　紙智子参院議員は、原油高騰でイカ釣り漁が経営危機に陥っている背景に新自由主義による金融投機野放しがあると指摘。「Ｇ８サミットに世界中から大企業のもうけ優先を規制しろと声が上っています」とのべ、全道の漁業者の決起集会や余市漁協で切実な声を聞き、サミットにむけて集まった世界の農業者や市民と連帯、交流していると報告しました。
　派遣労働問題では、日本共産党の追及と若者たちの運動で政府と大企業を追い詰めていると紹介。「『蟹工船』が若者の間で大きく共感が広がっているいまこそ、小林多喜二を生みだした小樽の党の出番です」と強調すると、会場から拍手がわきあがりました。
　花岡ユリ子道議と北野義紀、古沢勝則、新谷とし、菊地葉子、中島れい子の各小樽市議、熊倉義城、佐々木正江両余市町議が壇上であいさつしました。
(２００８年０７月０８日，「赤旗」) （Page/Topへ）

不破哲三著『小林多喜二　時代への挑戦』／多喜二の長編構想に迫る刺激に満ちた解明／牛久保建男

　二月に行われた著者の記念講演「小林多喜二　時代に挑戦した五年間」は、刺激と問題提起に満ちた講演でした。本書は、その講演を軸にして、その講演にのぞむにあたっての問題意識を語るインタビュー、三十年前に行われた没四十五周年記念講演「小林多喜二の文学と生涯」を収録しています。

歴史の中で読む
　私がなぜ新しい、刺激をうけたのか。それは著者いうところの「二つの前提」が、講演に貫かれているからです。一つは、日本共産党の苦闘と開拓の歴史の中に多喜二をおき、そのなかで読むこと。もう一つは、〝多喜二を歴史のなかで読む〟です。この第二の前提のヒントになったのが、著者のマルクス・エンゲルスの古典研究で、〝マルクスを歴史の中で読む〟を合言葉にしたことでした。それはマルクス自身の思想と理論に歴史的発展があることをよくつかむということです。著者自身、その方法で今までに見えてこなかった新しい脈絡が浮き彫りになって見えてきたと語っています（「はじめに」）。
　同じ方法を、多喜二研究の指針になるに違いないと考えたところに、多喜二を語りながら、新しい発見へと誘う刺激に満ちたものになった理由があると思います。
　私は、本書に収録されているインタビューを同僚記者と担当した当事者の一人ですが、とくに多喜二が東京に出て来て、「満州侵略戦争」が始まった年から始まる彼の第二の飛躍についての解明の新しさについて胸に落ちるものがありました。多喜二の文学的刻苦がどのようなものであったか、彼の文学的構想に基づいての解明は、多喜二研究に新しく鍬を入れたものといえるでしょう。

人の変化発展を
　この時期の多喜二の飛躍への跳躍台として、多喜二の評論の中から著者が指摘するのは①「時代を概括した、時代に透明した」ものを書く②いろいろな事件を断面だけでとらえるのでなく、弾圧や失敗を経験してもそれに屈しないで立ち上がる連続的な流れとして書く③人間を諸事情のなかでどんなに変化し発展するかを書く―の三点。
　そのことが、三一年の後半の時期から二つの長編構想として試みられたことを跡づけます。「転形期の人々」が、日本共産党の組織と活動がどのように生まれてきたかを描こうとした長編構想の一つであったこと。もう一つの構想が「満州侵略戦争」が始まった情勢とそのもとでの日本社会、およびそこでの闘争を描くことであったこと。この第二の長編構想の部分として「沼尻村」「党生活者」「地区の人々」が描かれているという解明は、新しい問題提起というだけでなく、わくわくするような再読への意欲をかきたてられます。人間を変化・発展の中で描くという多喜二の挑戦も、「党生活者」のいわゆる笠原問題で論じています。「なぜあのようなトラブルに満ちた」男女関係を設定したのかという問いかけは、多喜二の文学的努力の方向と重なって、考えさせる提起です。
　かつて著者は、宮本百合子の八百九十四通の｢獄中への手紙｣を読み込み、百合子の長編構想の意味について語り、百合子研究に、私流にいえば衝撃を与えましたが、本書もまた、多喜二研究に大きな示唆を与えるものとなるでしょう。また、日本共産党史研究の今日の到達から彼の作品を分析しており、戦前の反戦闘争、党のたたかいの歴史を考える上でも好適の書ともいえます。
　（うしくぼ・たつお）
( ２００８年０７月０６日，「赤旗」) （Page/Topへ）

治維法同盟石川県本部が総会

　治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟石川県本部第二十五回総会がこのほど、金沢市内で開かれました。
　治安維持法犠牲者へ謝罪と国家賠償を要求する団体署名二百五十、個人署名三千を集め、地方議会へ請願することや、犠牲者の体験を聞く会を開くなどの運動方針を決定。憲法九条を守り、憲法を暮らしに生かす特別決議を採択しました。
　平舘道子・金沢大学名誉教授（第三次再審原告）が「泊・横浜事件」について講演しました。
(２００８年０７月０４日，「赤旗」) （Page/Topへ）

無名戦士合葬追悼会を開催／札幌

　第四十六回道解放運動無名戦士合葬追悼会が六月二十九日、札幌市で開催され、新たに遺族となった七人を含め三十三人が参加しました。
　今回合葬される四十五人に黙とうをした後、主催者を代表して国民救援会道本部の守屋敬正会長があいさつしました。
　日本共産党道委員会の青山慶二書記長、治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟道本部の伊藤俊事務局長、道民主医療機関連合会の佐藤秀明事務局長が追悼のことばをのべ、故人の遺志を受け継ぎ活動したいと表明しました。
　参加者は、月寒公園そばにある労農運動犠牲者碑に移動して献花し、式典会場で懇親・交流しました。
　遺族は「『不屈』という言葉がそのままあてはまる人生だった」などと思い出をこもごも語り、愛する人を亡くした悲しみを乗り越えようとする気持ちのあふれるなごやかな交流となりました。
(２００８年０７月０４日，「赤旗」) （Page/Topへ）

対談／若者が分断を乗り越えるために／東京大学准教授本田由紀さん／作家浅尾大輔さん

多声的な言葉で運動の広がりを／本田／「連帯」「団結」の自覚的な運動に／浅尾
　若者の間で「蟹工船」が読まれ、過酷な雇用状況の改善を求める運動も広がっています。現状をどう見るのか、三月まで労働組合で青年の労働相談を担当してきた作家の浅尾大輔氏と、青年の生活と雇用に詳しい本田由紀・東京大学准教授に話し合ってもらいました。
　本田　若い人の雇用状況の打開のためには運動の広がりが不可欠です。「蟹工船」ブームを見ていると、私は天の邪鬼で心配性なので、ブームに浮かれてはいられないという気がするんです。ブームといっしょに背景にある青年の雇用の問題が押し流されては困ります。
　浅尾　「蟹工船」読書エッセーコンテストを見ても、若い人は社会の現実を見つめ、いかに生きていくかなど驚くほどしっかりした読みをしています。客観的な生きづらさや過酷さがあるから多喜二が八十年の時をこえて呼び出された気がします。
　本田　就職難や労働の過酷さにはさまざまな質の違いがあって、若い人は細かく分断されています。こうした分断を超えていく可能性が、文芸の共感力に期待できるのではないかという気はするんです。
　浅尾　そうですね。労働相談自体が一つ一つ違います。昼休みに文庫本を読んでいたら「協調性がない」と言われて自宅待機を命じられた青年がいました。別の若い女性は団体交渉を申し込むかどうかを占い師に相談させてほしいと言い出したり（笑）。同じ職場の二人が一緒にやりたくないと別々に一人団交やることもあります。分断を痛感します。

「貧困双六」から抜け出るために
　本田　日本社会には集団主義へのアレルギーもけっこう強くあると思うんです。若者の間で「団結」や「連帯」を直接掲げることの有効性を疑問に思い、私は言葉遣いにも気をつかっているんです。最近出した本（『軋む社会』）でも「働く側は、個々に、そして皆で、雇う側のフリーハンドに対抗しなければならない」と、「皆で」という表現でとめています。
　浅尾　ぼくも単純には使いません。でも、貧困双六から自分だけ上がればいいというのではない意識が生まれています。未払い残業代の問題でも、自分だけでなく、みんなに同じように払えと要求して団交というオプションを選び、勝利している。「連帯」「団結」は、自覚的な運動のなかで生きた言葉となると思います。
　本田　いま新卒就職は売り手市場で、いい企業に入った新入社員のなかには「ワーキングプアは上の世代の過ぎた話、オレたちはラッキー」と考える人も生まれています。労働問題で騒いでいるのは一部だけと見られないような運動が必要だと思います。
　浅尾　最近は個人加盟のユニオン（労働組合）に学生も入ってきているんです。そういう人が大企業に就職した後もユニオンに残っていることをご存じですか。仲間と話し合ったり団交に出たりするのが楽しいし、自分の豊かさにつながると言っています。きめ細かい対応は大変だけど、可能性があります。
　本田　社会学には、人間関係の類型として、濃くて緊密なボンド（きずな）型と、浅くゆるやかなブリッジ（橋）型という概念があります。日本はボンド型ばかりでブリッジ型が足りないという指摘もあります。ユニオンがブリッジ型の役割を果たし始めているのはすごく大事ですね。

個々人の波長に共振が広がって
　本田　今の自己責任論は間違いです。資本の力に比べてそもそも個人の力は弱すぎるのに、労働組合が弱体化している現在、いっそうパワーバランスが崩れています。雇う側にも、組合は職場がちゃんと機能するために必要ですと言っていかなければならない。学校教育で組合のことを教えなければという声も増えています。
　浅尾　労働法や憲法について語ることが、「アカ」と思われるようなことではなく、ごく普通のことになる必要があります。文学も多喜二だけでなく、新しい書き手の新しい物語が必要です。ぼくも書いていきたい。
　本田　雨宮処凛さんや湯浅誠さんやいろいろな人が出てきて、多声的に現実を明るみに出しています。さまざまなタイプの言葉や表現手法が必要で、異なる環境や感性をもつ個々の人々がどれかの波長に共振すれば動きに広がりが出てゆく、そういう状況になっていると思いますね。
( ２００８年０７月０３日，「赤旗」) （Page/Topへ）

治維法国賠同盟塩釜支部が総会

　治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟塩釜支部は六月二十八日、支部総会を開きました。
　総会を記念して宮城憲法会議事務局長であり、自衛隊監視活動違憲訴訟原告でもある、小野寺義象弁護士が「自衛隊情報保全隊の狙いと共謀罪法の動向」と題して記念講演しました。
　小野寺氏は､｢国民統制の二つの側面（動員と監視）からの攻撃が国民生活の中に浸透しつつある危険性」について具体的な事実を示しながら、情報保全隊による国民監視活動と共謀罪法が根深く結びつき、国家権力による「警察国家」の再現の動きを解明。名古屋高裁違憲判決の意義と情報保全隊違憲訴訟の今日的意義の重要さを強調し、大きな国民運動として構築していくことを呼びかけました。
　講演終了後開かれた支部総会では、「蟹工船」上映会や宮城における弾圧の戦前史を学ぶ活動、治安維持法犠牲者への国家的謝罪と賠償を求める署名運動を広く呼びかけ運動方針を決めました。
(２００８年０７月０３日，「赤旗」) （Page/Topへ）

日本共産党知りたい聞きたい／「搾取」という言葉は古いのでは？

　〈問い〉「搾取」という言葉を使うと「古くさい」と言われました。搾取はもう古いのでしょうか？（神奈川・一読者）
　〈答え〉いま、若者のあいだで戦前のプロレタリア文学『蟹工船』（小林多喜二著）が読まれたり、「資本主義の限界」がテレビで大きく取り上げられ、志位委員長が出演して、マルクスが『資本論』で何を明らかにしたかを語って注目を集めたりしており、「搾取」は古くさくなるどころか、ますます重要になってきています。
　『蟹工船』ブームの背景には、パート・アルバイト、派遣など、安い賃金と不安定な雇用のもとで働かざるをえない人たちが、若者を中心に増えていることがあります。
　そうした若者たちが、北洋の蟹加工船で、非人間的な扱いをうけた労働者たちが団結してストライキに立ち上がる姿を読み、「自分たちの境遇を描いているようだ」「ともかく声を上げていかなければいけないと励まされた」と受け止めているのです。
　またいま、サブプライムローン（低所得者向け住宅融資）の破たんから始まった経済・金融の混乱は、アメリカだけでなく世界的な大問題になっています。さらに、国際的な投機マネーが次のもうけの場として原油市場や穀物市場に流れ込んだため、石油や食糧品が急騰し、発展途上国の一部では食料暴動まで起きるなど、その影響は深刻です。
　こうした「貧困と格差」の広がりや、投機マネーによる経済の混乱の大もとには、もうけのためにはなりふり構わない資本主義の「利潤第一主義」があります。日本の財界・大企業は、この間、労働者の賃金を抑える一方で、もうけを二倍以上に増やしています。
　マルクスは、資本主義の利潤の大もとが労働者からの剰余労働の搾取にあること、その剰余労働による富をさらにたくさん手に入れようと「利潤第一主義」に突き進むところに、資本主義の「目的」「動機」があることを明らかにしました。
　ですから、搾取は古くなるどころか、現代の世界と日本の経済や社会の動きをとらえる上で、もっとも基本的な、欠かすことのできない考え、見方になっているといえます。
　（学）
( ２００８年０７月０２日，「赤旗」) （Page/Topへ）

治安維持法の史実若い人に／道国賠同盟が大会

　治安維持法国賠同盟道本部はこのほど、札幌市で第三十回大会を開き、激動する情勢のなかで、「再び戦争と暗黒政治を許さない」との同盟の任務を確認し、新役員を選出しました。（写真）
　日本共産党党道委員会の青山慶二書記長、自由法曹団道支部の佐藤哲之支部長、日本国民救援会の澤本富延副会長が来賓あいさつしました。
　活動報告、運動方針の提案、財政・監査報告を受けて討論しました。
　「『治安維持法』を若い人に説明するのが難しい」という話に、「真実の歴史を伝えるため、これを避けて同盟の活動はない」と学習の重要性を強調する発言がありました。小林多喜二の『蟹工船』が注目されるなか、歴史の教訓に学ぶ活動の重要性など、十三人の代議員が発言しました。
(２００８年０７月０１日，「赤旗」)

【6月】（Page/Topへ）

「蟹工船」まさに現実／ピンハネ、過酷労働、使い捨て…／戦後、禁止された「周旋屋」派遣法でよみがえる

　若者の間で小林多喜二の小説、『蟹工船（かにこうせん）』がブームです。蟹工船で奴隷労働をさせるために労働者を各地から集めていたのが、戦前の周旋屋でした。今でいえば人材派遣会社｡戦後､禁じられた周旋屋が、なぜまた〝復活〟してきたのでしょうか。
　岡清彦記者
　「学生は十七、八人来ていた。六十円を前借りすることに決めて、汽車賃、宿料、毛布、布団、それに周旋料を取られて、結局船へ来たときには、一人七、八円の借金（！）になっていた」
　『蟹工船』が描く周旋屋の実態です。労働者、農民、学生らを集めてピンハネし、工場や土木・建設現場などに売り飛ばしていました。労働者が住む劣悪な住居は、タコ部屋と呼ばれました。
　北海道小樽市に住んでいた多喜二は１９２７年、『蟹工船』の取材のために新聞などの資料を収集し、蟹工船の母港、函館港に通いました。
　当時の「北海タイムス」や「小樽新聞」が、蟹工船内で繰り返される虐待を報じています。
　病気で休養を求めた労働者にお灸（きゅう）をすえるとして、アルコールを浸した綿に火をつけてやけどさせたり、蟹缶製造室に監禁したり…。
　フリーターの体験がある作家の雨宮処凛さんは昨年１２月、初めて『蟹工船』を読みました。
　「現在の労働現場とあまりにも重なるところがあるのでびっくりしました。蟹工船に連れてこられるときにすでに借金しているんですね。これもいまと似ています。労働者が立ちあがっていく場面では、泣きました」
　多喜二と宮本百合子を研究している｢多喜二･百合子研究会」の大田努副代表（６６）が語ります。
　「多喜二は、小樽の家の裏手に立ち並ぶタコ部屋の現実を見て育ちました。その体験や取材を通じて、周旋屋と奴隷労働の実態、立ちあがる労働者を共感をこめて描くことができたのです」

中間搾取
　戦後の４７年、「職業安定法」が制定されました。４４条は「労働者供給事業の禁止」をうたっています。人身売買を禁止するものです。違反者は１年以下の懲役、１００万円以下の罰金です。
　労働省職業安定局の斎藤邦吉局長が序文を書いた「職業安定法解説」（４８年発行）は、「職業安定法は、憲法の精神に即応し、その精神を実現するために制定されたもの」と強調しています。
　その上で、「労働者供給事業は、中間搾取を行い、労働者に不当な圧迫を加える例が少なくないのにかんがみ、労働の民主化の精神から全面的にこれを禁止しようというもの」とのべています。
　職業安定法が施行されると、違反者が相次いで告発、起訴されました。
　職安法と同じ年に制定された労働基準法の６条には、「中間搾取の排除」が明記されています。

労働者は立ち上がる。もう一度！
　新憲法のもとで生まれた職安法に風穴をあけたのが、自民党などが成立させた労働者派遣法です（８５年）。財界の要求にもとづくものでした。
　当初はソフトウェア開発など専門１３業務に限定されていたものの、規制緩和で次々と改悪され、９９年には日本共産党をのぞく政党の賛成で原則自由化になりました。０４年３月からは、製造業も解禁になりました。
　その結果、偽装請負や「日雇い派遣」が激増し、派遣職場は違法・無法地帯に。今では青年の２人に１人が、派遣などの非正規労働者です。時給は数百円から千円前後、年収が２００万円以下のワーキングプア（働く貧困層）が急増しました。
　プラズマテレビを生産している松下プラズマディスプレイ（大阪府茨木市）で、人材派遣会社の請負労働者として働いてきた吉岡力さん（３３）もその一人です。
　鉛を扱う工程があり、松下の社員には健康診断が実施されていました。しかし、請負労働者には実施されませんでした。
　松下に配属された請負労働者がずらりと並ばされました｡松下の班長が、いいました。「オレ、この子をもらっていくわ」
　まるで奴隷の競り市のようでした。「請負」は名ばかりで、仕事の指揮・命令をしていたのは、松下の正社員でした。典型的な偽装請負です。
　吉岡さんが、偽装請負を告発（０５年５月）すると、松下は吉岡さんを直接雇用しました。しかし、わずか５カ月余の雇用で解雇しました。
　大阪高裁は、これに断を下しました（ことし４月２５日）。松下は職業安定法４４条（労働者供給事業の禁止）と労働基準法６条（中間搾取の排除）に違反しているとのべ、解雇は無効としました。
　つまり、人材派遣会社は、松下に労働者を供給しているにすぎず、松下から受け取った請負料から中間搾取をしていると認定したのです。
　吉岡さんが語ります。
　「僕の体験と『蟹工船』はいくつもの点でダブります。『蟹工船』の労働者は立ちあがり、軍隊に鎮圧されます。しかし最後に、『そして、彼らは、立ちあがった。―もう一度！』とあります。感動的です。いま多くの労働者が、『蟹工船』の労働者のように立ち上がっているのですから」

共産党の求める法改正
　日本共産党は、労働者派遣法を派遣労働者保護法に抜本改正するよう求め、各党や労組に賛同をよびかけています。派遣法改正法案（骨子）＝２００８年４月１０日＝のポイントを紹介すると―。
　◇　　　　　　　◇
　法律の目的に、労働者派遣は、臨時的・一時的業務についておこなわれるものであり、常用代替としておこなわれてはならないことを規定する。
▽労働者派遣は、常用型派遣を基本とし、登録型派遣を例外としてきびしく規制し、日雇い派遣を禁止する
派遣受け入れ期間の上限を１年とする
▽派遣期間をこえた場合や違法行為があった場合、派遣先が直接雇用したものとみなす
▽均等待遇の実現　▽ピンハネ規制
▽大企業は、派遣労働者を期間工として直接雇用（最長２年１１カ月）しているが、労働基準法を改正し、期間の定めのある契約を制限する
(２００８年０６月２９日，「赤旗」) （Page/Topへ）

潮流

　意外なところで、小林多喜二と出会いました。音楽評論家の吉田秀和さんがことし二月にだした本、『永遠の故郷―夜』の中です▼吉田さんは、まもなく九十五歳。いまも、ＮＨＫＦＭ「名曲のたのしみ」の語りをうけもっています。歌曲の数々を紹介する『永遠の故郷』でも、みずみずしい感性で詩と歌の世界に分け入ります▼吉田さんは小学六年生のとき、東京から北海道の小樽に引っ越しました。父が小樽の病院の院長になったからです。母はピアノを弾き、四人きょうだいそろって音楽好き。バイオリンをたしなむ銀行員がよく家に来て、母のピアノと合わせていた、といいます▼のちに兄が話していたそうです。「同じころ小林多喜二も一、二度来て、母と合奏した」。多喜二はバイオリンではなく、ビオラだったとか。ただし、吉田さんは彼のビオラをきいた覚えがありません▼もし本当なら、多喜二が銀行につとめながら文学の道を模索していたころの話でしょう。彼は、貧しくて進学できない弟の三吾さんにバイオリンを習わせていました。自身も楽譜がよめるほどの音楽通。文化団体のレコードコンサートの世話役もしていました▼ビオラは、華麗なバイオリンに比べ音が暗めで、「男性的」（作曲家バルトーク）ともいわれます。二十世紀には、はりつめた雰囲気の曲によく用いられました。そんなビオラの響きは、やがてプロレタリア小説作家として弾圧の時代をかけぬけていく多喜二の青春と、どこかで重なりあっています。
( ２００８年０６月２９日，「赤旗」) （Page/Topへ）

『蟹工船』ブーム語る／毎日放送志位委員長が出演

　日本共産党の志位和夫委員長は、二十七日放送のニュース番組「ＶＯＩＣＥ」（毎日放送）に出演しました。
　志位委員長が登場したのは「いま解（ど）き」のコーナー。「いまどういうわけか若者を中心に空前の『蟹工船』ブームです」とのナレーションが流れ、「プロレタリア文学」の字幕の下、『蟹工船』の内容を映像で紹介。東京・上野駅の書店では、いままで売り上げが一カ月に一冊だった『蟹工船』が、いまは一週間に二百冊以上売れていることを報じました。
　『蟹工船』読書感想文コンテストの入賞者や若者が開く「蟹工船を読む会」の様子を映し、『蟹工船』に関心を示す三十歳前後の若者は、失業率が高いことが表で示されました。
　「いまこの『蟹工船』ブームに期待を寄せているのは…」とのナレーションで紹介された志位委員長は、「小林多喜二は日本共産党員として当時の侵略戦争に命がけで反対しました。その多喜二の生涯は、まさに日本共産党と不可分に結びついた生涯でした」とのべました。
　その上で、「新自由主義と市場原理主義が、若者の未来と両立しなくなってきた。むきだしの形での野蛮な搾取が横行するようになってきた中での『蟹工船』への共鳴ですから、今の社会をもとから変えようという流れにつながってくると思います」と指摘しました。
( ２００８年０６月２８日，「赤旗」) （Page/Topへ）

織田秀雄生誕１００年にあたって／反戦と反天皇制訴えた詩人／「顕彰する会」呼びかけ人菅原恭正さん（寄稿）

「教育勅語」を風刺／宮沢賢治とも交流
　岩手県に生まれ、その平和思想は宮沢賢治にも影響を与えたといわれる詩人・織田秀雄（一九〇八―四二）が生誕百年を迎え、地元で顕彰する動きが高まっています。元小学校教師で、今年三月に発足した「織田秀雄を顕彰する会」呼びかけ人の一人である菅原恭正さんに寄稿してもらいました。
　岩手県出身の文人として石川啄木や宮沢賢治は著名だが、織田秀雄の名前はほとんど知られていない。
　今年はその織田秀雄の生誕百年にあたるので、奥州市在住の有志たちによって、彼の顕彰碑を建立しようという運動が始まった。

軍国主義の中『新興教育』を
　織田秀雄は、一九〇八年、岩手県胆沢郡小山村（現・奥州市胆沢区）の貧しい農家の長男として生まれた。父は金ケ崎駅の保線係、母は踏切番であった。
　小学校高学年での成績は全甲で、自治会の名議長でもあった。
　県立水沢農学校に進学した秀雄は、同窓会紙「胆農」『赤い鳥』「岩手日報」などに、詩・童謡・随筆・民話・小説などを精力的に投稿する。代用教員として小学校に勤務するようになってからも、旺盛な創作活動を続けた。『大工と鬼六』は彼の古老からの「聞き書き」をもとに生まれた民話といわれる。
　一九二九年、教職を退いた秀雄は、東京に出て、「反戦平和」と「反天皇制」の立場にたつ新興教育研究所の創立に参加する。そして、『新興教育』の発行兼編集人になる。

治維法違反で逮捕されても
　一九三〇年、秀雄は「岩手共人会事件」にかかわったとして、治安維持法違反で懲役二年の刑を受け、秋田刑務所に収監される。彼はそこで、『教育勅語』を痛烈に風刺した「通信簿」という詩を書いている。
　《忠君愛国甲の上／親に孝行甲の上／まじめに働け甲の上／主人に使へろ甲の上／先生の言ふことすぐ書けば／うそでもなんでも甲の上／おいらをだます通信簿／こんなものには用がない》（プロレタリア童謡集『小さい同志』所載）
　一九三二年に仮出所した秀雄は、「岩手日報」に小説などの投稿を続けるが、宮沢賢治とも交流があり、石灰を贈られている。そして、一九四二年、療養中の胆沢病院で三十四歳の生涯を終えるのである。法名は「興覚院達心法光清居士」。
　戦時中なのにこんな立派な法名をおくった住職にも頭がさがる。
　「教育基本法」の改悪で愛国心を強要し、道徳教育と学力テストを押しつける昨今の教育の反動化をみるにつけ、織田秀雄を顕彰することの今日的な意義がいっそう明らかになってくるのではないだろうか。顕彰碑建立の事業が成功するよう、読者の皆さんのお力添えを切にお願いしたい。
(２００８年０６月２７日，「赤旗」) （Page/Topへ）

日本共産党知りたい聞きたい／葉山嘉樹とはどんな人？

　〈問い〉毎日新聞６月３日付の『蟹工船』の記事で葉山嘉樹という名前がでていました。どんな人ですか？
　（三重・一読者）
　〈答え〉葉山嘉樹は、若き日の小林多喜二に大きな影響を与えたプロレタリア文学作家です。
　葉山は、１８９４（明治２７）年、福岡県豊津（現みやこ町）に生まれ、早大高等予科にすすみますが、学費未納で中退、下級船員など職業を転々。戸畑の明治専門学校につとめ、待遇改善交渉をしたり、名古屋セメント会社では労災死した仲間の見舞金増額を要求し首にされます。１９２１年「名古屋新聞」の記者になり、労働運動に深くかかわるようになります。日本共産党に指導された労働組合活動家の組織「レフト」に参加、２３年「名古屋共産党事件」で検挙されます。
　獄中で「資本論」を読み、「淫売婦」や「海に生くる人々」の原稿を書きます。一方で、葉山は獄中で陳情書を書き、労働運動から身を引く決意をしていました。出獄後、妻子の行方不明を知り、捜しまわった末、単身木曽の水力発電所の工事場にいくのです。そこで「セメント樽の中の手紙」を脱稿します。
　葉山の「淫売婦」や「セメント樽の中の手紙」が発表されると、たちまち有力新人として注目され、既成文壇からも認められます。２６年３月『文芸戦線』同人に推薦されました。労働運動から転身した葉山は、東京にうつり、作家生活に入り、１１月『海に生くる人々』を発刊、この長編もプロレタリア文学の傑作として注目を浴びました。
　プロレタリア文学運動は、２７年の日本プロレタリア芸術連盟の分裂以後、２８年政治的には日本共産党を支持するナップ（全日本無産者芸術連盟、機関誌『戦旗』）が結成されると、ナップと「労農派」支持の労農芸術家連盟（労芸、機関誌『文芸戦線』・『文戦』）との対立が固定化していきます。葉山は終始労芸派に属し無産大衆党の中央執行委員にもなっていました。
　しかし、小林多喜二は、「今、不幸にして、お互に、政治上の立場を異にしていますが、…私は、貴方の優れた作品によって、『胸』から、生き返った…、云うならば、私を本当に育ててくれた作品は『戦旗』の人達のどの作品でもなくて、実に貴方の作品…でした」（２９・１・１５、全集第７巻）と書き送るなど、葉山の文学を高く評価しています。
　葉山は戦時色が深まるなか、木曽渓谷に転居、農耕生活に入りますが、終戦末期には国策に従い「満州」開拓団員として渡満、４５年１０月、帰国途中に病死しました。
　（喜）
( ２００８年０６月２６日，「赤旗」) （Page/Topへ）

多喜二作品盛岡で語る集い／現代に通じている

　なぜ､いま小林多喜二の｢蟹工船｣が注目されているのか｡二十二日に盛岡市で開かれた「多喜二の作品を語る集い」で浮き彫りになりました。
　「集い」は日本民主主義文学会盛岡支部が主催したもので、会場には青年・学生をはじめ作家や労働者、主婦、研究者など会場いっぱいの八十五人が参加し、多喜二の生涯と作品について学び感想を交換し合いました。
　「集い」第一部の講演に立った作家の柏朔司氏（民主文学盛岡支部長）は、「多喜二の生涯と作品、その今日的意義」と題して話し、多喜二は科学的社会主義理論を学び労働者や農民のたたかいにかかわる中で、処女作の「一九二八年三月十五日」などを書き上げたと語りました。
　第二部は、多喜二の文学作品の中から七つを選び、十六人がそれぞれ感想を述べ「蟹工船」では六人の青年が発言しました。
　民主青年同盟岩手県委員会の佐々木圭史委員長は、十九時間労働にさらされている職場で労働者が「首をつる」事件が起きているとして「たたかうという選択肢を青年に示していきたい」と述べました。東京で派遣労働に従事していた青年は、朝早く出勤し夜八時に帰宅して二時間後に別の職場で深夜労働させられたが、もう我慢できないと思い「仲間たちと立ち上がりました。蟹工船と同じです」と涙ながらに話し、参加者から拍手で激励されました。
　「工場細胞」の感想を述べた「いわてローカルユニオン」執行委員長の工藤和雄氏は、旧国鉄盛岡工場で二十年間勤務しながら労働組合を民主化した経験を話し、「いま、未組織労働者の組織化に全力をあげています。多喜二の残したメッセージを受け継ぐ歴史のランナーとなりたい」と力強く語り、感動の拍手に包まれました。
　「集い」に参加した大学院生は、「プロレタリア文学は現代に通じていると思った。多喜二の作品を読んでみたくなりました」と話し、団体職員の青年は「工藤さんのお話は、元気付けられる内容だった」と感想を述べました。
　「集い」が終わったあとも、盛岡支部の事務局へ「小説を書きたくなりました」とか、「多喜二の作品を読む会を開いてほしい」という感想が寄せられています。
　今回の「集い」は、小林多喜二の作品を多くの人へ広めるために民主文学会盛岡支部が総力をあげることにより若者たちを励まし、文学運動のすそ野を大きく広げることに成功した企画となりました。(大宮純通信員)
(２００８年０６月２６日，「赤旗」) （Page/Topへ）

異なる文明の相互理解と平和共存を／志位委員長と宗教者懇談／各宗教・宗派１４０人が参加／横須賀

　宗教人と日本共産党の志位和夫委員長との懇談会が二十五日、神奈川県横須賀市内で開かれました。「眼前の世を憂い、打開のために、日本共産党にも思いを届けたい」と、仏教、神道、キリスト教など宗教の違いを超えて、百四十人が参加しました。
　懇談会は、日本キリスト教会元牧師の南穆（あつし）氏、真宗大谷派住職の鞠川了綽（りょうしゃく）氏、日本キリスト教団牧師の岡崎晃氏、天理教布教所長の梶山登氏が呼びかけました。
　志位氏は、「私たちと、宗教人の方々とは世界観に違いもあります。しかし、共通するところも多くある。今日は、世界の現状と人類の未来について、大きなところをお話ししたい」と述べ、「資本主義は限界か―二十一世紀の前途を考える」と題して語りました。

資本主義の矛盾が全面的に噴出した
　志位氏は冒頭、日本の情勢をめぐって、「これまでにない新しい状況が広がっている」とし、マスメディアがさまざまな角度から資本主義そのものの是非を問う特集を組み、小林多喜二の「蟹工船」がブームになっていることを紹介。背景として、世界の資本主義、とくにアメリカ型の資本主義が、「新自由主義」「市場原理主義」というむき出しの形で日本に直輸入され、その矛盾が全面的に噴出していることをあげました。
　志位氏は、その矛盾の現れとして①貧困の拡大②投機マネーの暴走③環境問題という三つの問題を指摘。いずれの問題でも、かつてマルクスやエンゲルスが資本主義の矛盾として警告していたことが現実のものとなっていることを縦横に語りました。
　さらに志位氏は、①「どの問題でも、まず目指すべきは資本主義の枠内での解決です」とのべるとともに、②「資本主義の枠内でぎりぎりの努力をするなかで、その限界がおのずと明らかになり、次の体制への条件が熟していくのではないか。私たちは、資本主義を乗り越えた未来社会――人間が社会の主人公となる真に自由で平等な人間関係の社会を目指していますが、その未来社会の展望についても、大いに語っていきたい」と結びました。

共産党と宗教者の対談と共同広がる
　全国宗教人・日本共産党を支持する会代表世話人の鈴木徹衆氏（真宗大谷派住職）は、この間、九州や静岡で日本共産党と宗教者の対談を重ね、共同が広がってきたことを紹介。実行委員会を代表して南氏が、さまざまな問題にたいする宗教者の対応を語りつつ、「私たちの願いを共産党に託すという時代になるのではないか」とあいさつしました。
　鞠川氏、日本キリスト教団の元牧師の小林利夫氏、東京都八王子市にある浅川金刀比羅（こんぴら）大権現神職の奥田靖二氏がパネリストとして発言。鞠川氏は、共産党が自公民の悪政に対峙（たいじ）し、生存権をかかげてたたかっている姿は地蔵菩薩（ぼさつ）にみえると語りました。
　小林氏は、天皇制、自衛隊、政権交代のために他の野党との協力をどうすすめるかについて質問し、奥田氏は、宗教についてどう考えているのかまとまった話を聞きたいと要望しました。
　会場からの「東西文化の融和を図る活動をすすめているが、文化の多様性が大切ではないか」との発言に志位氏は、パキスタンのタキシラ遺跡を訪問した思い出を語り、「東西の異なった文明の出合いのなかから、仏像という新しいものが生まれた。今日の世界でも、異なる価値観・文明が、相互に理解しあい、平和的に共存するなかから、新しい世界が形づくられるのではないでしょうか」と応じました。また、「それぞれの宗教は、平和や平等など、人類の普遍的な価値を大切にする考えをもっていると思います。それは、私たち共産党と響きあうものだと思います」と語りました。
　このほか出された質問に、志位氏は一つひとつていねいに答えました。元参院議員の、はたの君枝衆院南関東比例候補も参加しました。
( ２００８年０６月２６日，「赤旗」) （Page/Topへ）

反戦訴えた軍人水野広徳を学ぶ／愛媛いしずえの会

　「軍備の撤廃こそ戦争を防ぐ唯一の道」と海軍大佐を辞し、反戦を訴え続けた松山市出身の〝反戦軍人〟水野広徳について理解を深めようと、愛媛いしずえの会（門田久会長）は二十一日、松山市民会館で学習会を開き、二十二人が参加しました。
　講師を務めた治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟県本部の中川悦良会長は「いま思わぬ人物らが再注目されている」として、『蟹工船』の小林多喜二や『資本論』のカール・マルクスに並んで、水野広徳をあげ、「ここ最近、水野を語る機会が増えている。これはひとつの時代的特徴ではないか」と述べまし�